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1981-05-29 第94回国会 衆議院 外務委員会内閣委員会安全保障特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年五月二十九日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員   外務委員会    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石井  一君    石原慎太郎君       太田 誠一君    栗原 祐幸君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       坂本三十次君    竹内 黎一君       中山 正暉君    水野  清君       古井 喜實君    飛鳥田一雄君       井上  泉君    勝間田清一君       河上 民雄君    大久保直彦君       渡部 一郎君    和田 一仁君       金子 満広君    野間 友一君       田川 誠一君   内閣委員会    委員長 江藤 隆美君   理事 稻村左近四郎君 理事 染谷  誠君    理事 岩垂寿喜男君 理事 鈴切 康雄君    理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    粕谷  茂君       川崎 二郎君    木野 晴夫君       倉成  正君    田名部匡省君       竹中 修一君    角屋堅次郎君       渡部 行雄君    市川 雄一君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君   安全保障特別委員会    委員長 坂田 道太君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 三原 朝雄君 理事 箕輪  登君    理事 前川  旦君 理事 横路 孝弘君    理事 市川 雄一君 理事 吉田 之久君       石原慎太郎君    後藤田正晴君       塩谷 一夫君    竹中 修一君       玉沢徳一郎君    辻  英雄君       原田昇左右君    堀之内久男君       石橋 政嗣君    嶋崎  譲君       永末 英一君    東中 光雄君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         外 務 大 臣 園田  直君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局総務         主幹      大出 峻郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         外務政務次官  愛知 和男君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房審         議官      栗山 尚一君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         運輸省海運局長 永井  浩君         運輸省船員局長 鈴木  登君         海上保安庁長官 妹尾 弘人君         高等海難審判庁         長官      松本金十郎君  委員外出席者         安全保障特別委         員会調査室長代         理       麻生  茂君         内閣委員会調査         室長      山口  一君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより外務委員会内閣委員会安全保障特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、質疑される委員各位に申し上げます。  質疑時間につきましては、理事会協議により決定いたしました時間を厳守していただきますよう特にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 時間が限られておりますから、早速質問に入りたいと思いますが、運輸大臣出席を要求しておりましたにもかかわらず出席されない、そのために開会がおくれたことを非常に残念に思います。私が運輸大臣に質問するときには必ず来ていただくように、委員長の方で取り計らいをお願いしたいと思います。  鈴木首相アメリカから帰りまして以来、いろいろな問題で非常に混乱、混迷を続けているような気がするわけです。それが象徴的にあらわれたのが伊東外務大臣辞任ではないかと思います。国民皆さんも一体何が何やらさっぱりわからぬ。総理自身の発言なりあるいは政府の見解にいたしましても、二転三転という例が幾つかあるわけでございますが、これらのことについて解明するのが本連合審査会の任務であろうかと私は思うわけです。  そこで、その象徴的な例としてあらわれております伊東外務大臣辞任の問題についてですが、一体なぜ大臣をおやめになったのか。せっかくアメリカに行って首脳会談をやられ、共同声明まで発表された。その直後に所管大臣である、主要な閣僚である外務大臣辞任するということは大変に影響も大きいわけです。国際的な信義の問題にもかかわる問題でもございます。よほどの理由がなければ外務大臣がやめるということは、特にこの時期にやめるということはなかったのではないか、そのように考えるのが筋だと思うのですが、国民がわかりますように、なぜやめたのか、まずこれからお尋ねしてみたいと思います。
  4. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先般の日米首脳会談は、日米両国の揺るぎない友好信頼関係を確認いたしました。そしてその上に立って、多難な国際情勢の中で、日米両国が世界の平和と安定、そして繁栄のために、それぞれの国の立場においてこれに貢献していこうということを確認いたしたところでございます。また、私とレーガン大統領との間におきましても、個人的な友情と信頼関係を確立することができました。こういうことで、米政府におきましてもわが方におきましても、今回の首脳会談成果を上げ得た、このように評価をし、私も満足しておるところでございます。  したがいまして、伊東君が私に辞意を表明されました際に、伊東外務大臣辞任をするなどということは、いま申し上げたような立場からすれば考えられないことである、むしろ私に協力し、一緒になってこのような日米会談を円満に終了し得たというふうに自分は感謝しているということで、伊東君に対しまして誠意を尽くして慰留に当たったわけでございます。しかるところ、私が辞表を受理いたしません間において、外務省記者クラブにおいてみずから辞意を天下に表明された、こういうことでございまして、事ここに至りましては、これはやむを得ないということで辞表を受理するということになったわけでありまして、まことに残念なことでございます。  しかし、これは私の政府の中における人事の問題でございまして、これによってわが国外交基本というものはいささかも変わるものではないし、国際間の約束というものをたがえるようなことがあるわけでもありません。こういう残念な事態にはなりましたけれども、私は、既定のわが国平和外交路線を堅持し、また、国際間の信用を維持回復してまいりますために最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いまの総理大臣答弁ではだれも納得できないと思うのです。首脳会談成果が上がった、共同声明には満足だと言いながら、実際に、総理大臣、あなたを補佐いたしました外務省のトップの座にある外務大臣がやめてしまった。これは明らかに矛盾するのではないですか。満足しているのだったら、成果を上げたのだったら、何もやめる必要はないのじゃないかというのが常識なんだ。それを、あなたのいまのお話を聞いておりますと、理由もないのに伊東君は勝手にやめたのだ、責任放棄だ、こういうふうにもとれるわけですけれども、そんな無責任な方だとは私は思いません。ここがその後のいろいろな二転三転の一番のポイントだと思うのですよ。だから、はっきりさせておく必要があると思うのです。  それで、振り返ってみますと、やはり端緒になったのは、総理自身が、この共同声明がつくられるつくられ方というものについて、第二回の首脳会談自分主張は全然盛り込まれてないじゃないかという御不満を述べられたことで、ここがスタートになっていると思うのです。率直に申し上げて、私も首相主張を正しいと思うのです。大体おかしな話ですよ。第一回の首脳会談が終わった途端に共同声明ができ上がっておって、プレスの手に渡っている。もう日本まで来ておりましたからね。その後、あなたは第二回の首脳会談で、かねがね国会国民に向けていろいろおっしゃったことを述べておられる。これが共同声明に全然入ってこないということになれば怒るのがあたりまえだと思う。そして伊東さんが責任を感じてやめるのもあたりまえだと思う。  ところが、後で満足ですと撤回された。成果が上がりましたと言って撤回された。これはやはり国際関係であるがゆえにあなたは不満をがまんしたというのですか、そういうことになるのだろうと思うのです。これは実際は見逃すことのできない問題なんですよ。  共同声明というものは、少なくとも首脳会談終了直後という中で発表されるのが筋だと私は思います。事務レベルでずっと詰めてきたこと、それを受けて首脳会談したこと、その結果としての共同声明というのであって、共同声明事務レベルででき上がっておって首脳会談は飾り物、こんなばかな話はないとおっしゃるあなたの主張が正しいと私は思います。確かに外務省のやり方はおかしいです。私に言わせれば越権行為ですよ。だから、いろいろな皮肉も出てくるわけなんです。  これは読売の記事でございますけれども、あなたはいままで以上の非常な歓迎を受けた、それは、事務レベルで積み上げられた共同声明アメリカが完全に満足した、そのごほうびにかっこうをつけたのだ、こういう解説記事まで出ておるのです。これでは首脳会談なんて言ったって外務省操り人形にすぎない。私は憤然と政治家鈴木善幸が怒るのがあたりまえだと思いますよ。その責任伊東さんがとるのもあたりまえだと思いますよ。私はこのごろ盛んに聞く国士気取りとかいう外務省官僚皆さんがのほほんとしておるのが納得いかぬぐらいですよ。  結局はあなたはがまんしたのじゃないですか。あなたは国際関係影響はございませんと言うけれども、国際関係に余りにも影響が大きいので、ここはひとつがまんのしどころと思ったにすぎないのじゃないかという気がしてならないのです。そうじゃないでしょうか。
  6. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほどるる誠意を尽くしてお話を申し上げたとおりでございます。伊東君が私に提出をいたしました辞表は、一身上の都合、こういうことでございます。これはいろいろ御本人にも心境があろうかとは思いますが、もう新聞記者会見でみずから辞意を表明された事態におきましては、私はこれを受理せざるを得なかった、このことを先ほど申し上げたわけでございます。しかし、今後そのようなことがあってはならないということを深く私自身も反省いたしておりますし、今後はそのようなことは二度と繰り返さないように十分注意をしてまいりたいというふうに考えております。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最近は首脳外交の時代だとよく言われるのです。サミットというのも何回もやってきたし、ことしもまた行われるわけですが、首脳会談の実態がこんなものかというふうに見られるということは重大な問題ですよ。官僚が全部おぜん立てしているのだ、その作文の上に立って首脳がちょっと顔を合わせて写真を写すだけ、そういうことになりかねないじゃないですか、今度の例は。あなたが第二回目の首脳会談主張されたことの中には、首脳会談に臨むに当たって国民に向かっていろいろ約束したこと、この国会でもあなたがおっしゃったこと、事実そういうものを述べられているのですよ。  たとえば、防衛力整備国民コンセンサスを得つつ進め得るものだが、急激に防衛費を増大することは、最近着実に形成されつつある防衛問題に関する国民コンセンサスを損う結果となり、かえって逆効果をもたらしかねない。このため、世論の動向と国民意識の変化、財政状態、他の政策との調整、アジアの近隣諸国に与える影響などを配慮しながら、みずからの国はみずからで守るの憲法の枠組みの中で自主的に整備していきたい。現在の日本財政状況はきわめて困難な状況下にある。私にとってこの財政状態再建政治生命をかけたものであり、安上がりな政府をつくることが私の願いだ。あちらこちらに、私たちが賛成、反対ということとは別に、確かに予算委員会なり国会の本会議、各委員会においてあなたがおっしゃったことと国民に向かって言っておられたことは述べておられる。共同声明にはこれは全然関係ないですね。全然反映してない。  これは私、何度も申し上げるけれども、あなたが怒るのはあたりまえだと思う。非常に大切な問題だから、怒ったのだったら一貫してもらいたいのですよ。問題はそこなんです。それを一貫しないで、伊東さんがあなたと官僚の間に入って困ってしまって、これではちょっとあと外務省で仕事は続けられぬと言ってやめられたということは重大な問題なんです。これはやはり初心を貫いてもらいたかったと私は思うんですね。しかし同時に、あなた方の立場からいって、日米関係に非常に大きな影響をもたらすから、まあここのところはがまんしたのだという主張もわからないではない。ただし、これからあなたが、いままで言ってきたことが本当だ、自分アメリカに行ったらいわばタカ派迎合国内に帰ったらハト派ポーズ、そういうことでは断じてない、いままで言ってきたこと、第二回目の首脳会談で言ったこと、これは私の信念だ、こう言うならまだチャンスはあると思うのです。非常に問題は残しましたけれども、チャンスはあると私は思います。  あなたは本物だ、いわゆるハト派ポーズじゃない、本気だ、そういうことを国民に示す、私たちにも示す手だてというものは、今後のあなたの行動いかんによってはまだまだ立証できると私は思うのです。その一つが、六月に開かれます、まずハワイで行われる日米安保事務レベル協議、そしてそれを受けて行われる大村ワインバーガー会談、これが一つ一つは、来年度予算案の編成、これですね、ここであなたがおれの言っているのは本当だということを貫く場所が与えられている。ここで今度はおかしなことになったのじゃ、いままでおっしゃることと違うようなことになったのでは、幾ら言ったってもう通じませんよ。あれはポーズにすぎない。よそに出たら向こうに都合のいいように、国内では国民向け使い分けた、こういう批判をなされてもやむを得ないということになると私は思うのです。  そこで、過去のことを私も影響が非常に大きいのでこの程度にして、この二つの問題についての信念と御所信を承っておきたいと思うのです。
  8. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま二つの問題、一つハワイにおける日米防衛関係者協議、六月の大村防衛庁長官ワインバーガー長官会談の問題。まずこの問題につきましては、先般私が帰ってまいりましてから、大村防衛庁長官に対しまして、具体的な問題は大村防衛庁長官ワインバーガー国防長官話し合いになるが、日米首脳会談のこの私の述べたこと、それに対してレーガン大統領が言われたこと、そういう議事録を詳細にひとつ玩味して、その方針を踏まえてこの会談に臨んでもらいたい。私は、先ほど石橋さんがお述べになったようなことを憲法及びわが国防衛政策基本に沿いまして主張をし、また他の政策とのバランス、整合性国民世論等々を十分配意しながら、今後の防衛力整備は自主的にこれを進めていくということを明確に申し上げて理解を求めてある、そういうことをひとつきちっと踏まえてワインバーガー長官との会談に臨んでもらいたいということを指示してあるわけでございます。私は、必ずやこの種の会談方針を踏まえてこの防衛当事者間の話し合いが行われるもの、こう考えております。  また、私はこの際つけ加えてはっきり申し上げておきますが、レーガン大統領日本に対して押しつけがましい、あるいは強要するような、いやしくもそういう印象を与えるようなことすらも自分たちとしては避けなければいけない、こういう考えを持っておる、でありますから、その点ははっきりこの際申し上げておきます、こういうことでもあったわけでございます。そういうことでございますから、私はよくこの会談録というものを点検をし、熟読玩味してこの会談に臨んでもらいたいということを指示してあるわけでございます。  それから、第二の五十七年度の防衛予算の問題につきましては、いまいろいろ大蔵省が中心になりまして関係各省庁と検討を進めておりますし、また第二臨調にも中間答申等もお願いをしておるということでございまして、この問題につきましては、わが国の、自分の国はみずからが守っていくのだということ、そして国民コンセンサスを得ながら着実にこれを「防衛計画の大綱」の水準に近づけるように進めていく、こういう線で五十七年度以降の予算につきましても考えていかなければならない、このように考えております。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 歴代総理は、アメリカの方から軍事力を増強しろというような要請は行われなかったのだ、大統領から直接言われたことはないのだということを、大平さんもそう言っておられましたし、鈴木首相も今回も何回もそうおっしゃっているのですが、私どもは首脳会談で出たか出ないかわからないけれども、はなからそういう正式のアメリカ政府国防報告なら国防報告に堂々と書いてくるんですね。ここにも出てくるんですよ。本当首脳の間では出なかったかもしれぬが、外務官僚と国務省との間、あるいは防衛庁役人、ユニホームとペンタゴンとの間では、どんどん進めている。その証拠を示しましょうか。  本年初頭に発表されましたアメリカ国防報告、御承知でしょう。堂々と書いてありますよ。「特に米国は日本に対し、その経済と技術の目覚ましい成長に伴い、防衛能力の着実で顕著な改善を進めるよう促す。」「われわれはこの努力を称賛し、予定を一年間早めるよう勧めた。日本は将来の防衛努力で、われわれを助ける大きな能力がある」、いいですか、「促す」とかあるいは「勧めた」、正式の国防報告の中に出てくるんですよ。大統領が言わなかった、言わなかったと幾らおっしゃっても、「勧めた」、「促す」、やれと言ったとはっきり出てくるのです。だから、それを本当に言ったのか言わないのかということを正しく検証しようと思えば、その結果を見るしかないということになるんですよ。  大平さんの場合も、訪米の前にはこの部屋で、いま以上のペースで防衛力の増額をやるわけにいかぬ、なぜならば三つの選択を迫られることになるから。それを一言で言えば、軍事力増強優先じゃなくて、財政再建優先なんですという基本方針をお示しになった。ところが、アメリカへ行ってカーター大統領から、いまこの国防報告にもはっきり出てきているように、軍事力増強優先を促されて引き受けて、帰ってきてどういう形であらわれたか、そのしっぽが出たかというと、防衛予算別枠扱い、こういう形で出てきたのですよ。やはり約束してきたんだな。  しかも、熱心なのは防衛庁を乗り越えて外務省。私は予算委員会で確かに言いましたよ。外務省、いつから第二防衛庁になったのだ、園田さんも聞いておったでしょう。第二防衛庁どころか、防衛庁を乗り越えてしまった。防衛庁はなまぬるい、アメリカで約束したことを守らなければ国際信義にもとるというような旗印を持って、そして別枠別枠とやったのが外務官僚ですよ。  だから、鈴木さん、去年の例から言っても、いまのあなたの答弁を聞いても、本当かいな国民にしてみれば言わざるを得ない。本当だとおっしゃるならば、結果としてアメリカが何と言おうと、あなたがこの第二回の首脳会談で述べられた、これはどちらかというと財政再建優先だという思想だと私は受け取っておる、これを示すしかない。  共同声明にもとるのじゃないかという御心配をなさる方があったら、絶対それは心配ないですよ。共同声明というのは、本来合意事項だけ載せるものなんです。意見の一致を見なかったものは載せないものなんです、原則として。私たちも野党なりに何回もその努力をして、経験を持っています。たとえば北方領土の問題など意見が一致しなかった、しなかったということを書いてくれと言うのは大変、決裂寸前まで行く、そういう経験幾らも持っています。大体一致しなかったものは書かないのだ。これが共同声明原則だと私は思いますからね。第二回の首脳会談で言ったことは、アメリカとしては受け入れがたい、不一致という点で盛られなかったのだということになれば、決して国際信義にもとることもない、私はそう思います。  だから、大村さんにもあなたはしっかり指示をして、役人の言いなりにならぬように、書いたものを読むだけでないように一生懸命やりなさいと言って、あなたの所信を貫く。それから防衛予算特別枠、早くもきのうきょうの新聞あたりはわいわいやっておる。基準を幾らにしようかと始まっている。こんなのはおかしい、財政再建を何と考えている、おやりなさいよ。そうして初めてリーダーシップ発揮、名首相ということになるわけです。それがなければ、あなたは幾ら弁明されても、やはり使い分けというようなことになると思うので、このことは十分に念頭に置いていただきたいと思います。御所信をさらにもう一回お聞かせ願えれば幸いです。
  10. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 使い分けということをおっしゃるのですが、私は愚直な男でございますから、さようなことはございません。レーガンさんに会って調子を合わしておいて、そして日本へ帰ってそうでないことを言うということではございません。出発前に予算委員会等国民皆さんにもお話をしたこと、それははっきりと申し上げておるわけでございます。私はそういう方針に基づいて今後対処してまいる考えでございます。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私も一縷の期待は持っておるわけなんです。なぜならば、去年、大平さんが帰ってこられて特別枠を認めまして、ほかの予算はシーリングがみんな七%、防衛庁だけは九・七%、外務省努力だろうと思うのですが、結果的には七・六一というところまで戻されておる、そういう実績を私も認めていますかち。七・六一がいいという意味じゃないですよ。だから、全然絶望的だという見方を持っておるわけじゃないので、がんばっていただきたい。ここのところは大いに激励の意味を込めてお尋ねをしておるわけなんです。  とは言っても、やはり疑惑の残る部分はあるわけなんです。それは共同声明の中で述べられておる「同盟」という問題ですね。あなたはこれは譲らない方がよかったのじゃないかという気がするわけです。日本人記者団との会見で、軍事的側面は持っていない、軍事側面役割り分担という意味合いはないと言い切ったわけですが、二転、三転、最終的には政府統一見解が示されて、外務省から押し切られたような感じがする。ここのところが私は非常に不満なんです。  あなたも使い分けるような男じゃない、愚直な男だ、私は一応それは信じましょう。これからの審議の過程で、それが本当本当でないかということは明らかになってくるわけですけれども、一応信じるにやぶさかじゃありません。これは重大な問題だと直観的にお感じになったのじゃないかと思うんですね、「同盟」という言葉を使ってみて。大平さんが向こうへ行ったときに口で言った、だからもう構わないのだということで説得されたかどうか知りませんけれども、私も口で言ったのだったらまあまあ、文書にしたら重大というのはおかしいという考え方もあるかもしれませんが、国際関係は何といっても文書ですよ。  口で言う分には多少のリップサービスだって、そのときの雰囲気で言う場合だって外交関係の場合にあり得ると私は思う。初めて文書にしたということの重み、これは大きいと思いますよ。それを直観的に、戦前の経験を持たれる鈴木さんがこれはと用心なさった気持ちは私はわかる。この点でも本格的に貫いてもらいたかったと実は思うのです。  いままで安保条約というものがあるから、その意味では軍事関係があるのだという変な理屈をこねておりますけれども、少なくとも安保条約は軍事同盟じゃないと一貫して言い続けてきたはずですよ。これは全然軍事的な色彩を持っていないなんということはだれも考えていません。しかし、少なくとも軍事同盟ではないということは一貫してきた。それを「同盟関係」なんというあいまいな言葉で、俗に言う軍事同盟とは違うのだという悪知恵を働かせる。  私はこういうのを見ると、かつての重要事項指定方式だとか、逆重要事項指定方式だとかいう悪知恵をひねり出した昔を思い出すのです、十年前の霞が関のさま変わりを。あのときだって、自分たちが一番賢明だと思ったのでしょう。だから、もう国際世論が、国連に台湾を代表として迎えておることはおかしい、北京の政府を迎えるのが自然だという世論が十分に熟しておるときにすら、先頭切って妨害したその霞が関が、百八十度考え方を変えて、今度はいまの主張がまるで万能、政治家無能と言わんばかりの態度、本当に私は納得できないのですよ。  ここにもあらわれています。何が「同盟関係」ですか。こういうところに、総理のその意思がなくても使い分けが起きておるんですよ。英語では「アライアンス」、同盟そのものじゃないですか。それが何で日本向けには「同盟関係」に化けるんですか。そこのところにやはり鈴木さんも警戒心を働かしたのは当然だ。戦前の経験を持った政治家ならば当然だと私は思う。私だって「同盟」という言葉が共同声明に出たという活字を見たときに何を思い出したかと言えば、やはり日独伊三国同盟ですよ。どちらかというと、初めて体制擁護というのが今度の共同声明で出てきましたから、そういう意味ではその前の防共協定の方に近いのですが、それを直観的に頭に思い浮かべましたよ。あれ以来日本は破滅への道に結局転落していったんですからね。また同じ過ちを犯すのじゃなかろうかと心配するのは私は当然だと思う。この「同盟」の言うところ、これはやはり問題だと私は思います。  そして、それを裏づけるかのように、この共同声明の中には、適切な役割り分担の必要性を認め、具体的に日本の領域及び周辺海空域における防衛力を改善するためになお一層の努力をすると約束をしてしまっている。これを根拠に押しまくってくるのじゃなかろうかという心配を私は非常に持っております。その点についての御懸念はいかがですか。あなたが最初に直観的に軍事問題は含まれないのだと言ったそこのところ、私はその原点が正しいのだと思うんですが、いかがでしょう。
  12. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日米関係は、民主主義と自由という共同の価値観の上に、戦後三十年にわたって日米両国民の努力によって築き上げてきたこの揺るぎない信頼協力関係、成熟した関係、これが非常に重要だ、私はこう考えております。そして、そういう関係に立ちまして、多難な国際情勢の中で日米が世界の平和と安定のためにそれぞれの国力、国情にふさわしい協力をしていくという責任がある。こういうことを確認をした。私はそういうことを総合的、全体的にとらえて「同盟関係」ということを言ったものでございまして、そこにいささかもいままでの日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味はない。  それをもう少し砕いて申し上げますと、石橋さんがおっしゃったような攻守同盟的な、軍事同盟的な性格、あるいは個別自衛権から集団的自衛権に移る、これは安保条約を改定するということが前提になる、また憲法にも照らしてわれわれはそういうことはできない、そういうようなことを今度の日米首脳会談協議をした、合意した、こういうことであれば、まさにこれは御批判に値すると思うわけでございます。私は、そういうようなことから、決してそうではないのだということを国民皆さんに知っていただく、強調したいために、今度の「同盟関係」とうたつたからといって軍事的な意味はないのだということを申しました。しかし、これは条約局その他で検討いたしますと、安保条約がございますから、軍事的側面もあるということはこれは事実でございます。  そういう意味で、私が国民皆さんに端的に申し上げたかった、こういうことを強調したこと、これがいろいろ法理論的に言うと、それは間違っておるのではないかというようなことで議論を呼んだ、こういうことで、私はそのことを大変残念に思っておるわけでありますが、私の真意はそういうことであった。したがいまして、今回の首脳会談におきましても、役割り分担であるとかあるいは協力であるとか、こう申し上げましても、それはいままでの枠組みを変えるものではないということをここで明確にいたしておきたい、こう思います。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この「同盟」の問題についても、さっきもちょっと触れましたけれども、いままで大平さんが行ったときにも口頭で言っているのだから、もう成熟しているのだ、だから今度は文書にしてもいいのだという論法で説得しているんですね、新聞で見る限りにおいては。だから、いますぐにそういう懸念がもう満ち満ちていると私は言っているのじゃないですよ。どんどんそっちの危険な方向に推し進めていく一過程に置かれている。いままでは軍事同盟というものを口頭で言っておった、今度は初めて共同声明という文書で活字としてがちっとあらわれた、今度は内容をきちっと整えていって完全に軍事同盟的なものにしていく、そういう過程の中に追いやられたじゃないですかと申し上げているのですよ。  それを裏づけるものとして、「全方位外交」というものが口にされなくなっている。いままで実態がどうあろうと「全方位外交」ということが一貫して言われてきたのです、福田さんも、大平さんも。「全方位外交」というのがこのごろ出てこないですね。そして「同盟」というものが出てきたら、これまた対比してとらえるのが常識ですよ。  それを裏づけるものとして、「日米両国間の同盟関係は、民主主義及び自由という両国が共有する価値の上に築かれていることを認め、」——私たちの言葉で言えば、安全保障、日本の防衛とおっしゃっているが、本音は体制擁護だ。これは後で幾ら「中華人民共和国との間で協力関係をそれぞれ引き続き拡大してゆく」と言おうと、理論的には破産ですよ、矛盾ですよ。そうじゃないですか。それじゃそこのところはどういうように割り切るのですか。ソ連は「民主主義及び自由という両国が共有する価値」を認めない国だが、中国は認める、そうおっしゃるのですか。
  14. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日本外交基本は、いずれの国とも平和的でありたい、友好親善関係を増進をしたい、こういうことには変わりがございません。ただ、最近における国際情勢を見ておりますと、もう私が申し上げるまでもなしに、アフガニスタンに対するソ連の軍事介入でありますとか、また第三世界に対する浸透、また北方四島に対する軍事施設の構築、こういうような状況で、ソ連の方針をただ傍観し見逃すわけにはいかない、世界の平和、安定のためにこれは改めてもらわなければならない。それをあえてしようとすれば、それだけの犠牲をやはり強いられる、こういうことでございまして、私は、その事由はソ連側がつくったものである、このように思います。  ソ連がそういう方針を改めて、世界の平和と安定のためにやっていこう、国際間でみんなと力を合わせてやっていこう、こういうことであれば、わが方の外交は一時的であってもそういうふうにはならない、やはり世界全体の平和と繁栄、友好という外交基本には変わりがないということを私は申し上げておるわけであります。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 必ずしもいまの御説明で私、納得いったわけじゃないですけれども、時間が非常に限られておりますので、次に入りたいと思うのです。  総理は、この共同声明の中で「役割の分担」という約束をした。それが何を意味するのだろうか。その一つに周辺海空域の防衛力を改善するために一層の努力をするといったことが含まれてきたような気が私はするのです。しかも初めて、周辺海空域とは周辺三百海里、航路帯千海里というふうなことまで記者会見でおっしゃっているわけですね。これが非常に重要な問題な気がするわけなんです。  一体、日本の個別的自衛権というのはどこまで及ぶのですか。三百海里だ一千海里だと言ってどんどん広げていっても構わないものなんですか。いまの憲法との関連で、日本の個別的自衛権、あなた方が言う憲法九条が容認する個別的自衛権の範囲というのはどこまで及ぶのか。いまのままいくとどんどん広がっていくのじゃないか。グアム以西、フィリピン以北なんということを言われている。今度初めてそれを受けた形で三百海里だ千海里だというのが出てきた。大体こう重なるらしい、少しは向こうの方が広いけれども。これはどんどん広がっていいのですか。制限のないものなんですか。あなたはそういうことについてどういう理解を持ってわざわざ三百海里だとか千海里だとかおっしゃったのか。ただ防衛庁答弁のときにちょいちょい言いおったからもういいのだろう、そんな軽いことじゃないと思いますので、お伺いしたいと思います。
  16. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 「役割の分担」の問題につきましては、まず日本自体の防衛、この問題につきましては、御承知のように日米協議あるいはガイドライン等におきまして、有事の際におきまする役割りの分担、こういうことがございますし、また極東の平和と安全につきましては、日本が安保条約によりまして施設、区域を提供しておる、こういうことがございます。しかし、日本自体の防衛以外の面につきましては、日本は軍事的にこれをなし得るところはございません。これは個別自衛権であり、集団的自衛権に入ることが許されない日本立場におきましてはそれはない。極東の平和と安全という分野におきまする日本の役割りというのは、経済、技術協力でありますとかいろいろな外交の分野でありますとか、そういう面に重点が置かれるということでございます。この点ははっきり申し上げておきたいと思います。  それから、いまの周辺海域等の問題につきましては、これは向こうに行って初めて私が言ったのではございません。予算委員会その他におきましてもしばしばそういうことは政府考えとして申し述べて、それを防衛するための防衛力整備、これは現在の「防衛計画の大綱」の中で何とかその程度の防衛はやっていかなければならないということを国会でもまず明らかにいたしておるところでございまして、これをどんどん拡大をしていくなどということはございません。この点も御理解を賜りたい、こう思います。
  17. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカで初めて言ったのではないというなら、それはそれで結構です。私が聞いているのは、一体個別的自衛権というものがどこまで及ぶのでしょう。他国の領海にさえ入らなければ、すなわち公海でありさえすればどこまででも行っていい。マラッカ海峡だろうが、それともインド洋やペルシャ湾であろうと、どこにでも行ってよろしい、そういうことになるのですかとお伺いしているわけです。最近のいろいろの説明を聞いていますと、いかにもこの範囲は自衛隊の能力に応じているみたいな話なんですね。いまのところは三百海里、一千海里しかカバーできませんからこの程度、自衛隊がもっと増強されればもっともっと広げられると言わんばかりです。その論法でいけば、他国の領海でなければどこまででも行ける。そんな個別的自衛権があるのですかとお聞きしているわけです。
  18. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  法律的に申しますれば、個別自衛権と申しますのはわが国憲法上持っている自衛権でございまして、急迫不正の侵害があったときに必要やむを得ざる場合、その日本に対する侵略、侵害を排除する限度において実力を行使するということでございます。したがいまして、日本国が個別的自衛権を行使する範囲というのは、地理的範囲をもってあらかじめどこからどこまでと特定することのできないものでございまして、日本に対する武力攻撃の態様いかんによる、そして日本が自衛権を行使する場合に、それは公海ないし公空というものに及び得るものであるということは、従来も御答弁申し上げているところでございます。
  19. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたはそうおっしゃるけれども、私、ここへ六〇年の安保特別委員会における岸総理大臣の御説明を持ってまいりましたから、読んでみます。  「かつての自衛権のように、自衛のためなら何でもできるという考え方でないということを、先ほど来申し上げておるのでありまして、安保条約の五条をごらんになってもわかるように、施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合、われわれは本来持っておる自衛権というものを発動して、自衛権の行使によってこれを排除する、武力をもって排除する、こういうことがこの意味でありまして、日本の自衛のために必要な線を領土以外に拡大して、そこが武力攻撃を受けた場合においても自衛権が発動するという性質のものではないのであります。」  いいですか。日本の領土以外、領海以外で攻撃を受けても発動するといったようなものではないのでございますと明快に岸総理がおっしゃっているのですよ。それをこのごろどんどんもう当然かのごとく、それこそペルシャ湾で日本の船がやられても反撃するのだ、自衛権を発動するのだと言わんばかりの態度で、一体いつからそんなに変わったのか、そんなに勝手に憲法解釈がゆがめられていいものだろうかと疑問を持つのは当然じゃないですか、そのことをお伺いしているんですよ。
  20. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 岸総理のそういう答弁があつたことは事実でございますが、私どもとしましては、岸総理の答弁につきましては若干言葉足らずの面があったのじゃないかという気がいたします。しかし、これは私が申し上げることではないと思います。  そこで、第二の問題につきまして、いつから変わったかという点でございますが、これは昭和四十四年に春日議員の質問主意書に対して、政府といたしましては、自衛のために必要最小限度の武力行使を行う場合の地理的な範囲として、必ずしも領海、領土、領空に限られない、公海、公空にも及ぶことがあり得るということを質問主意書に対する答弁書でお答えをいたしております。
  21. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなに憲法解釈を勝手にゆがめられちゃ困りますよ。少なくともいまの安保条約というものができました段階において、総理大臣責任を持って国民に説明したことを、あなたもお認めになったとおり、昔と違うのだ、これで納得させているのです、いま国民に向かって。いまの憲法が認めている自衛隊というのは、昔の軍隊と違うのだ、どこまでも自衛のため、自衛のためと称して出かけていくなんということはあり得ないのです、仮に公海で攻撃されても。個別的自衛権を発動しで、それがきっかけになって大戦争というようなことは過去においても幾多例があったから、そんなことも絶対に今後はないのです、本当日本がやられたときだけなんです、そうか、それじゃしようがないなという方だってたくさんおったと思うのですよ。  そうしたらそれをいいことに既成事実にしておいて、今度はどんどこどんどこ自衛隊の力がふえれば、増強されれば、その力に応じてどこにでも行ける。今度の三百海里、一千海里だって、防空識別圏の及ぶ範囲なんて自分の方の能力の範囲で決めてしまっている。能力が拡大すれば範囲も拡大する、そんなことで国民が納得しますか。そういうやり方は本当国民を欺くものでございます。私、しっかり総理大臣の頭の中に置いておいていただきたいと思うのです。  この問題は引き続き機会を見てずっと継続的にやらなければならない問題だと思いますが、きょうのポイントに入る時間がなくなると困りますから、核の問題に入りたいと思うのです。  この周辺海空域において日米両国が共同で対処することは許されるという考え方なんですね、総理。あなたが、今後は日本の領域及び周辺海空域における防衛力を改善するために、なお一層の努力をするとお約束になった、その日本の領域じゃなくて、周辺海空域の方ですね、ここで作戦する場合には日米共同で対処することも許される。
  22. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  先ほどの極東の平和及び安全に関する役割り分担ということで、総理の御説明からも明らかだろうと思うのでございますけれども、この日本の領土、領海を離れまして、いわゆる周辺海域においては日本日本の防衛のみをやるわけでございまして、第五条の事態、すなわち日本の領域が攻撃を受けて安保条約が発動した場合を除きましては、アメリカと共同に対処をするというようなことはあり得ないものでございます。
  23. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると、いま有事の際の演習をしているので、あくまでも日本の施政下における領域が攻撃されない以前においては共同対処の道はないということですね。  そうすると、この共同対処の場合、核装備をした米艦艇、航空機との共同作戦は可能なんですか。
  24. 塩田章

    ○塩田政府委員 日本は、核の抑止力につきましてはアメリカの核抑止力に依存をしております。アメリカは、したがいまして当然核戦力を持っております。そういうアメリカの、たとえば第七艦隊等が核装備をしておるということは有事の際には考えられるということもここでしばしば申し上げているわけでございますが、そういった核装備を持ったアメリカの部隊と共同対処行動をとることは、いまの安保の第五条事態において考えられると思います。
  25. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そこのところなんですが、まずそれでは総理大臣に確認しておきたいと思うのですが、非核三原則は堅持する、つくらず、持たず、持ち込ませず、これはあくまでも堅持する。その持ち込ませずというものの中には、単に国内に導入するという場合以外の一時的な入港であろうと領海通過であろうと含まれる、このことは御確認願えますか。
  26. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 明確に確認をいたしておきます。
  27. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると、どうしても私、納得いかないのですよ。共同作戦はやるというのですよ。アメリカの艦艇や航空機が核装備しておっても、日本の航空自衛隊も海上自衛隊も共同作戦はやるというのです。しかし、そのアメリカの艦艇、航空機が日本に入ってくることはお断り、それこそ寄港もお断り、領海通過もお断り、そんなことが常識的に通用するのだろうかという疑問がございますが、これは通用すると言われればそれまでですから、法律的に詰めてみましょう。  一体何を根拠に認めないのですかと言えば、第六条に基づく交換公文とおっしゃるのでしょう。そうでしょう、法的根拠は。その点をまず確認をしておきます。
  28. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 艦船による核の持ち込みであれ、核の持ち込みについてこれは事前協議の対象になるという根拠は、いま石橋委員が言われました岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解でございます。
  29. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これしかないと思うのですよ、条約上は。そうしますと、この条約六条の実施に関する交換公文を幾ら読んでも、規制を受ける事前協議の対象になるのは日本の施設及び区域を使用するもの、これに私は限定されると思う。日本の施設及び区域を使用しないアメリカの艦艇や航空機がどうして事前協議の対象になるのだろうか。領海通過も認める、領海でぶらぶらするのも、停泊するのも認める。どうしてこの六条の交換公文が出てくるのですか。
  30. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御提示のございました交換公文は「同軍隊の装備における重要な変更並びに」ということでございまして、それ以外に配置と戦闘作戦行動でございますが、いまの御質問に関係ございませんので省略いたします。したがいまして、「同軍隊の装備における重要な変更」の対象たる同軍隊とは何か。これは日本に配置されているか否かにかかわりなく安保条約の適用を受けるすべての合衆国軍隊、すなわち、日本に配置された垣隊、あるいはわが国の施設、区域を一時的に使用している軍隊、さらに領海、領空を通過する等わが国の領域にある軍隊を意味する、これは交換公文の文脈上からも明らかでございます。
  31. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 一つも明らかじゃないです。六条の交換公文は六条から来ているのです。六条というのは「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」いいですか、アメリカの陸海空軍が日本の施設及び区域を使用することが許される。ただし、六条の交換公文で制限規定がある、こういう場合は事前協議で制限しますぞというのがある。本文の方に、施設及び区域を使用するアメリカ合衆国軍隊、はっきりしていますよ。常識ですよ、条約解釈としたって。日本の施設に何も関係のないアメリカの艦艇や航空機が日本の領海をぴゅうっと通るのに、日本の施設や区域を全然利用しようがないのに、何で交換公文が適用されますか。何で事前協議の対象になりますか。  安保特別委員会の例を見ますと、もっとひどい例があるんですよ。正式に提供した施設及び区域以外ならば通常開港の港に入ったって事前協議の対象にならぬという解釈だってあるんですよ、御承知でしょう、専門家たるあなたは。正式答弁しているのですよ。事前協議の対象になるのは、正式に施設及び区域として提供したものだけだ。通常開港からという場合だって対象にならないという答弁さえ藤山外務大臣はしているんですがね。おかしいじゃないですか。
  32. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま御指摘になりました地位協定五条、これについては米軍艦船の本邦の施設、区域への入港あるいは本邦開港についての入港ということが定めてございます。それはあくまでも、米軍艦船のわが国の開港についての入港についてあるいは施設、区域の入港についての手続面を決めているものでございまして、他方、事前協議の対象というのは、米軍艦船の装備に着目して決定しているものでございます。したがって観点が、片方は日本の港あるいは施設、区域に入るという手続事項、あるいは他方はそのアメリカの軍艦あるいは航空機の装備というものに着目しているということでございます。
  33. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私たちはもちろん、聞いている国民皆さんがみんなわかるように説明してくださいよ。それでは、五条と六条と分けてやりましょう。  五条の場合、日本が武力攻撃を受けて、そしてアメリカが出撃する、それは戦闘作戦行動であろうと何であろうと、こんなものは事前協議の対象にならぬですね、配備の問題も、核装備の問題も。いかがです。
  34. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 戦闘作戦行動に関しましては、日本の施設、区域からその五条の事態の場合は除くということでございます。ただし、配置あるいは装備における重要な変更というものは、五条、六条、そのいずれの事態にも適用されるということでございます。
  35. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私が言っているのは、施設及び区域を使用しない合衆国の軍隊の装備をなぜ条約上規制できるのですか。これはもうできっこないじゃないですか。条約論という以前の問題じゃないですか。  アメリカの艦艇、航空機が日本の施設に入ってくる、港に入ってくるときにこそ、そんなものは困りますと言えるけれども、入ってもこない、領海をうろうろしているという、日本の施設、区域を使ってないものを、どうして核装備をのけろと言えるのですか。そんな条約論はないでしょう。法律家ならそんなことは恥ずかしくて言えないでしょう。  委員長、こんな答弁を私は聞く気はないですよ。まともな御答弁をしてくださいよ、わかるように。
  36. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど私が申し上げた答弁は、まさに安保国会以来政府が繰り返し答弁していることでございまして、装備の重要な変更の対象になる軍隊というのは、単に日本に配置された軍隊だけではないのだ、安保条約の適用を受けるすべての合衆国軍隊だ、こういうことでございます。
  37. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんな解釈でアメリカが納得するはずがないですよ。あなたがそんなことを自信があると言うなら、正式にアメリカ話し合いをして、アメリカもわかった、そのとおりだという合意を取りつけてください。それでない限り、われわれも納得できないのに何でアメリカが納得しますか。日本の施設、区域なんて全然お世話になっておりません、ちょっと通らせてもらうだけです、その辺をうろうろさせてもらうだけです。施設も区域も利用しないものについて、核を外してこい、そんなことが条約上何で言えるのですか。言えると言うならば、日本は国是ですから、国会でも決議しているのですから、国民の意思ですから、理屈として合わないかもしれぬけれども守ってくださいと、合意事項をがっちりかち取ってきてください。鈴木さん、いかがですか。そうでなければ私、こんなあほらしい質問はしません。
  38. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 累次他の委員会でも御説明しておりますとおり、核の持ち込みが艦船による持ち込みであれ、いかなる態様であれ、事前協議の対象になり、これは岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解から明瞭でございます。その点についてアメリカ日本と同じ理解に立っていると考えるということでございますので、ここで改めてアメリカに対して了解を求めるという必要はないと考えます。
  39. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなものをアメリカが了解するはずがないですよ。条約上どう読んだって施設及び区域を使用する場合のアメリカ合衆国軍隊とはっきりしているのに、使用もしないものに日本からそんなことをごたごた言われる覚えはないとやられちゃう。ないと言うならば、きちっとした合意を文書で確認してください。了解もない。了解があると言うなら、向こうに都合のいいような了解があると言って、ライシャワーさんもジョンソンさんもみんな言っているのだから、それはきちっとやっていただきたい。そのお約束がない以上、私は質問は続けられません。
  40. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これは石橋さん、私と石橋さんお互いに政治家同士でございますが、いま法理論でいろいろ闘いがございましたが、私は法理論は政府答弁を信頼をいたしております。  そこで、石橋さんの御主張は、そういうものはもう外せ、こういう意味であるのか、あくまでそういうものも堅持せよということなのか、私は後段であろう、こう思いますので、あなたと私の意見には何らの食い違いがございません。
  41. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういう考え方は通用しませんよとアメリカが再三にわたって言ってきているわけです。いままでもどんどん入っていますよ。それは決して条約にも反していませんし、入っちゃいけない、事前協議の対象になるなんというお約束をした覚えもございませんよと向こうが言っているのだから、そんなことがないと言うならば、確認しなくちゃだめじゃないですか。どうも法理論としてこちらの方が弱い。施設も区域も使ってないアメリカの合衆国の軍隊の装備をとやかくわれわれが条件をつけるというのは、それは無理です。ただ、日本の大方針なんだから、国是なんだから、まあ無理は承知でお願いするのだと言ったって、それは通用しませんよ。やはり通用すると言うならば、通用するようにきちっと合意を取りつけていただきたい。  今度これだけ問題が起きているのに、問い合わせもしません、相談もしません、交渉もしません、そんなことで国民が納得いきますか。私はアメリカと交渉していただきたい。そして、がっちりと国民が安心するように、単なる空文でないような非核三原則の堅持を貫けるように、ひとつ法的にもカバーしていただきたい、このことを要求します。(「総理、答弁答弁」と呼び、その他発言する者あり)
  42. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、先ほど申し上げましたように、いわゆる装備における重要な変更、その適用のある軍隊というものは、日本国に配置されているか否かにかかわらず安保条約の適用を受けるすべての合衆国の軍隊、すなわち日本に配置された軍隊、わが国の施設、区域を一時的に使用している軍隊及び領海、領空を通過する等わが国の領域にある軍隊、このことは三十五年の安保国会のときにも同様な答弁をしておりまして、まさに岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解から非常に明白でございます。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 何度も申し上げるように、どう考えたって日本の施設及び区域を使用しない米軍の装備なり行動なりというものを規制できるはずはありません。アメリカがいまになって、そんな約束をした覚えはない、入っておると言うのは、ここに問題があるんですよ。こんなものはあいまいにして通ることはできないわけですよ。だから、私たちは唯一の被爆国の国民として、核なんというのはもう真っ平御免、ましてや核を持ち込まれるということになると、真っ先に核攻撃の目標にされる、何はともあれいやでございますというので、国是として非核三原則というものが確立しているのですから、筋が通ろうと通るまいととにかく頼む、こういう一念でどうしてもいかなければならぬ。  それにしても、国際関係というものはやはり条約、協定というものが優先するわけですからね。だから、向こうがいままではそんな約束をしたこともないよと言うから、大丈夫というように改めて確認の交渉をしてくださいと私は言っているわけです。  向こうも、いままでのように黙っておればまだしも、そんな約束をした覚えはない、いままでだって行っているよと、二の矢、三の矢、次々に言ってくるのだから、そんな不安を国民に持たせないような義務が日本政府にはあるじゃないですか。その不安を持たせないようにするためには、かくのごとく堅持できるのです、アメリカの誤解ですと言って説得するためには、ここできちっとした了解を確立する必要がある。少なくとも日米両国政府の間で合意に達しておく必要がある。だから、その交渉をおやりなさい。いままでの真意も確めていただくと同時におやりなさい。そうしないと弱いと私は思うのです。  アメリカ合衆国の軍隊、日本の施設も区域も全然使わないものを、どんな形であれ規制するなんということは、これは条約論、協定論、成り立たないと思いますから、交渉をやっていただきたい。
  44. 園田直

    園田国務大臣 御発言の中にもありましたが、非核三原則が打ち出され、これは日本が内々に決めたわけではなくて、国会の決議もあり、かつまた事あるごとに諸外国に向かって声明をいたしております。国連総会等においても、非核三原則を堅持するということを私自身の口から言っているわけであります。  そこで、今度の事件が起きて、アメリカを代表する駐日大使マンスフィールド氏が私と会った際、私が照会するに先立って、向こうの方から、ライシャワー発言を前提として、この問題はアメリカはいままでどおりに理解しておるからそれで結構であると言われたわけでありますから、これをことさらに事改めて問いただす必要はない、こう思うのが私の考えでございます。
  45. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そのいままでどおりというのが解釈が違うのですから。日本は、日本の施設、区域を使っておらなくても事前協議の対象になると解釈する。向こうは、とんでもない、条約のどこにそんなことが書いてあるかという解釈をする。全然違うのですからね。いままでどおりというのは、アメリカにとってはいままでどおりの解釈ですよ。入ってきますよ。それははっきりとそのとおり、領海通過も入港も絶対に核を積んではいたしませんと言った覚えはないと向こうは言うのだかち。それを、ライシャワーさんはおやめになった方だ、ジョンソンさんもおやめになった方だ、古いことしか知らないお方だなんて、失礼ですよ。  わが党の野坂代議士が鳥取の選挙区へお帰りになったときに、百人近くの聴衆にアンケートを出してみたそうですよ。ライシャワーさんの言うことと鈴木さんの言うこととどちらが本当だと思いますかと聞いたら、あなたが本当と言った人は一人もおらないそうですよ。一〇〇%ライシャワーさんの言うことが本当でしょうと言ったそうですよ。これは常識なんです。一人くらいおるかと思ったと言うのです。それだけ向こうの方が説得力もあるし、やはり駐日大使時代の実績なんでしょうね。そういう人を選んでこういう発表をさせたという、私はなかなかアメリカ政府もやるじゃないかというところですよ。  これはこのままうやむやにしておくというわけにいきません。どうしたって両国政府が話し合って、そして国民の納得いくような手だてを講ずるのは政府としての義務です。非核三原則を堅持するというならば、そのことをやるのは日本政府としての義務だと私は思います。何で事アメリカに対してはそんなに軟弱なんですか。当て逃げされてもろくに報告もない。返事にもならないような中間報告が出てきたら、ありがとうございますなんで感謝している。自動車問題で向こうに不利なやつは、首脳会談に支障がないようにと事前に一生懸命駆けずり回って解決する。網を切られたって抗議をするでもない。  いいですか。あなたが幾ら電話で直接レーガン大統領と話ができるような関係になったからといって、外務省のお役人が国務省の役人とそれこそファーストネームで呼び合うようになったって、そんなことで本当日米関係が、あなた方の念ずる友好的な関係が確立するのですか。冗談じゃないですよ。根っこは国民の信頼ですよ。それを、直接電話をかけられるようになったのだ、それはその方がいいです。それは話し合いするのにマイナスになるなどとは私は言いませんよ。しかし、そんなことで友好関係が確立するなんというものじゃないと私は思う。それは国際外交場裏になればいろいろと外交的な言辞もあるし態度もある。どこまで信頼できるのだろうかと一定の線を引く方が正しいのじゃないかなと私は思うが、仲よくなることについてとやかく言う気はない。  外務省だってそうですよ。アメリカの言うことさえ何でも聞いておけばいい、いまはアメリカと一体になることがすべてだ。個人的にどう思われようと勝手です。しかし、そのために国民の利益を犠牲にしてよろしいなんという、そんな態度がかりそめにあったら、あなたたちのねらいとは全然反した方にいきますよ。思い上がりというものです。政治家に対してどういう考え方を持っているか知らぬけれども、外務官僚が優秀だということを私は認めるにやぶさかでないけれども、政治家は選挙で洗礼を受けている。どんなに優秀だからといって、おれは優秀なんだからおれの方が正しいなんという理屈は民主国家においては成り立たない。国民が納得いくようにおやりなさいよ。なぜ交渉ができないのですか。外務大臣、あなたは私の言っていることわかりませんか。あなたなら多少通ずるところがあるのじゃないかと思う。いかがです。
  46. 園田直

    園田国務大臣 あなたのおっしゃることはよく通じております。わかっております。しかし、通じていいことと通じてはならぬこともあるわけでありまして、私が申し上げることは、ライシャワー、かつて大使をした人で、この人の話も確かに聞く必要がありましょう。しかし、アメリカ政府を正式に代表して、ライシャワー、かつての日本大使ではあるが、いまでは一民間人であるから、この人の発言についてはアメリカ政府は一切関与しない、ノーコメントだ、したがって、アメリカ政府方針はマンスフィールドを通じて、私に向こうから声明する、こういうわけであります。  確かにおっしゃるとおりに、日米関係はなかなかむずかしいところでありますから、国民が納得されるよう互角に物を言えるような態勢を逐次とっていくことは、確かにおっしゃるとおりで、胸に強く響いております。しかし、いままで無事にきておったものがライシャワーという人の発言で、このように上を下へ大騒動して、政府の言うことは信用できない、ライシャワーの言うことは正しい、こう言うわけには私はまいりません。石橋(政)委員 ライシャワーさんが言ったのだから、そんなものはもうやめた人だし民間人だというようなことでは済みませんよ、この問題は。アメリカ政府が言うわけにいかぬ部分をかわりに言わせるということだってあり得るじゃないですか。  それと、古いことだとおっしゃいますけれども、核については法律で禁止されているわけでしょう。時効というものもあるでしょう。新しいことを言えるわけでもないでしょう。まして現職の政府高官なり官僚が言うわけにもいかぬでしょう。そこのところをライシャワーという人を選択してこういう重要な微妙な発言をさせたということは、私はなかなか微妙だと思うのですよ。もうこれであなた方が交渉もしない、このままほったらかすということになると、あのとき言ったじゃないの、ライシャワーを通じて言ったじゃないの、ジョンソンを通じて言ったじゃないのと、この問題はそういうことになってしまいかねないのですよ。  それまでは多少ごまかしておったかもしれぬけれども、あれ以来はあなたたち、知っておって受け入れたはずだ、もうライシャワー元大使が言った時点から、ジョンソン元国務次官が言った時点からは、多少間接的ではあるけれども、真実をお伝えしておったはずです、それを百も承知の上で受け入れたではございませんかという材料に十分なるやり方だと私は思う。そんなことにならないようにするためには、どうしてここでがっちり合意に達するような交渉をおやりにならないのか、それさえすれば疑惑はないわけです。そういう意味の交渉をなぜおやりにならないのか、やってくださいと申し上げているのです。
  47. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ライシャワー発言に関連してのいろいろの報道あるいは国内のいろいろの御意見があったわけでございますが、ただいま園田外務大臣が、そういうライシャワー発言という背景の中でマンスフィールド大使にお会いした際に、マンスフィールド大使の方から、この問題についてのアメリカの正式見解というものは従前と変わっていない、誠実にこれを実行していくのだ、こういうことをおっしゃっておるわけでございますから、改めてこれを日米間で協議する考えは私は持っておりません。
  48. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は、ライシャワーさんが大使時代に三時間にわたって話し合いをしたことがございます。これは、私がベトナム戦争に対する厳しい批判をしたものですから、大使はアメリカ政府立場に立って猛烈に反論いたしました。初めは日本語でおやりになっておられたけれども、まどろっこしくなったのでしょう、しまいには英語でやられるくらいに真剣におやりになった。大使のころはアメリカ政府の意を体して一生懸命ベトナム戦争弁護をやりました。ところが、大使をおやめになってからは、私が当時言っておったと同じようなことを一市民として国内においておっしゃっているのを見て、私は非常にその微妙さなりあるいは物を感じ取ったのです。  いまのマンスフィールド大使だって、大使ですから勝手なことを言えないですよ。大使をやめて一民間人に戻って何か言ったら、また、あれはマンスフィールド一私人の意見だと言うつもりですか、同じじゃないですか。ライシャワー大使は自分が大使時代の経験を踏まえておっしゃっているのですよ。それじゃマンスフィールド大使だって腹の中でどう思っておるかわからないじゃないですか。そんなもの、拘束力はないじゃないですか。どうして政府政府の間できちっとした取り決めをやろうとなさらないのです。そこにごまかしを感じ取るのですよ。国民にライシャワー大使の言うことと鈴木さんの言うことと、どっちを信じますかと言ったら、残念ながらライシャワー大使の言うことを信ずると言う。そういう不信感というものが満ち満ちておるわけです。日本政府としては、それを解消するのは義務じゃないのですか。なぜおやりにならないのです。  特に、私、申し上げているように、条約論としてはちょっと弱いと思うからですよ。日本の施設、区域も使わないアメリカ合衆国の軍隊の装備についてとやかく言うということは、これはちょっと大変なことだと私は思うから、その無理を承知で、頼む、国民の意思だ、非核三原則は国是だ、もうかりそめにも核にかかわりを持つことは真っ平御免なんだということを一生懸命説得して、そして合意を取りつけるという努力をしていない限り、これは幾らあなた方がおっしゃってもだめ、だめというだけではなくて、さっき申し上げたように、あのとき本当のことを言ったはずだと言って、これはこれから大変な既成事実の積み重ねということになると思う。私は何としても交渉をやっていただきたい。いかがです。
  49. 園田直

    園田国務大臣 マンスフィールド大使がどう考えているかは別として、彼が本件に関して私に表明した意見は、アメリカ政府の指令によって表明したことは事実であります。かつまた、ライシャワー氏の発言についても、アメリカの正式の意思表明があっておりますから、これが今後どうこうという交渉上の問題になるはずはありません。  確かに、おっしゃるとおりに立場が違うとなかなか微妙でありまして、石橋さんが外務大臣で私が石橋さんなら、またお互いに言うことが違うかもわかりません。ということは、私はライシャワー氏がどういうつもりで言ったか、これはわかりません。また、現職の大臣でありますから言うわけにはいかぬ。しかし、評判はいろいろございます。  第一に、どうもこれはアメリカ政府がなし崩しにしようと思って言わしたのではなかろうか、言ってみたら案外日本の方で騒ぎが大きくなった、そこでアメリカ政府は知らぬぞ、こういうふうに出ているという憶測をする人もあるし、もう一つは、ライシャワー氏がつくった「日本」という本が売れない、初版、二版、三板、三版になって初めてこの問題を追加しております。そして、この問題が大きくなった。近く翻訳して日本で売り出そうとしておられる、その前宣伝は巧妙だと言う人もおりますが、どちらも私はわかりません、どういうために言われたか。  そこで問題は、この事件が起きると、非礼は別として、大体三つの育児があると思います。こんなめんどうくさいことはもう崩してしまってなしにしろやという意見、もう一つは崩れずにがんばれという意見、もう一つ石橋さんたちもおっしゃるとおりにもつとはっきりきちっと鉄輪をはめろ、この三つのどれをとるかは、総理並びに総理の指示を受けた私の現状でどれをとったら一番いいかという判断に基づき、その責任は今後われわれが食わなければならぬ問題でありまして、現段階ではアメリカ政府が表明したわけでありますから、それでいままでどおりにいこうや、こういうことで、私は信頼のもとにやっていった方が無難である、将来はまた、だんだんこれをうまくやっていく、こういうことだと考えております。
  50. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 法制局長官に一言お聞きしておきます。  この安保条約六条及び交換公文ですが、日本の施設及び区域を使ってない合衆国軍隊の装備について、日本政府がとやかく制限をするなんということが含まれていますか、それは可能だというようなことがこの六条から含まれますか。私がどう読んでも、施設及び区域を使う合衆国軍隊という解釈しか出てこぬと思いますけれども、法律家としてのあなたの見解をお聞きします。
  51. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 たびたび申し上げておりますが、交換公文では「同軍隊」と書いてありまして、その「同軍隊」の文脈として、必ずしもいわゆる石橋委員が言われるような施設、区域を使用するあるいは配置された軍隊に限らないというふうに読むべきものだと私も思います。
  52. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんな解釈をしたら、それじゃ領海と関係なしに公海で走っている米軍についても何か言えるという、法律上変な解釈になりませんか。
  53. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これは先ほど条約局長からも御答弁申し上げましたけれども、もともと安保条約は日本関係のある米軍に適用があるわけでございますから、全く日本関係のない米軍について適用があるというようなことは、論理的にはあり得ないことだと思います。
  54. 奥田敬和

  55. 松本十郎

    松本(十)委員 今月初旬の日米百脳会談の後に、共同声明の「同盟」あるいは「役割の分担」、こういった意味をめぐりましていろいろな議論が行われました。伊東外務大臣辞任もございました。また、ライシャワー発言に端を発しました核に関する議論もいま沸騰している状況でございます。こうした問題、非常に重要な問題ではありますが、同僚議員からもまた核問題について質問があろうかと思いますので、一方でいまや八〇年代の危機というものを踏まえまして、国際情勢は政治の面でも経済の面でも刻々に激しく動いております。それにわが国はどのように対応していくか、これは重要な問題でございまして、本日はそういう角度から総理の基本的な外交に対するお考え方というものを質問したいと思うわけでございます。  第一点は日米関係、常々日本外交の基軸と言われておりまして、政治はもとより経済面でも密接不離の関係にあるわけでございまして、いまのような時代にはどうしてもこの基軸としての日米関係を深い信頼関係に立って確立しなければならない、こう考えるわけであります。不幸にして原潜の当て逃げ事件とか、あるいは合同演習のはえなわ切断事件とかございましたが、これらは政府において国民の納得のいくような形で解決していただき、何としましても、この際は日米間の信頼関係、連帯関係、これの確立に邁進してください、この願いでいっぱいでございます。  そういう角度から、先般の共同声明、これは正しく評価されるべきであり、今後の日米関係を展望しますときに一つの大きな転機になろうかと思うわけでございますが、総理のこの日米共同声明に対する評価なり、あるいは今後の日米外交についての御所見を伺いたいと思います。
  56. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 松本さん御指摘のように、対米外交日本外交の基軸でございます。私は先般訪米をいたしまして、レーガン大統領並びに米政府首脳とひざを突き合わせて率直な意見の交換をいたしました。そういう中で、日米の友好、信頼関係というものは全く揺るぎないものである、こういうことを確認いたしたわけでございます。  そしていま、日米両国は、世界の中における最も有力な両国として、この多難な激動する国際情勢の中で相ともに協力して世界の平和と安定のために、繁栄のために力を合わせていこうではないか、こういうことも確認をいたしたところでございます。  私は、このことが今後の国際社会において日本がいろいろな重要な役割りを果たしてまいります際に非常に大事なことだ、こう思っております。そして、日本にはできることとできないことがございます。私は、日本の国をみずから守るという面につきましては、できるだけ早く防衛力整備を図らなければなりませんが、それ以外の外に向かっては、日本にそういうことを期待されては、これはできないことでございますから、その他の政治的、経済的あるいは技術的、学術文化その他のあらゆる分野において、世界の平和と安定に日本は国力、国情にふさわしい寄与と貢献をしていかなければならない、このように考えており、このことは率直にレーガン大統領にもお話をし、理解を求めたところでございます。  なお、その後におきまして、御指揺のように、原潜の問題あるいは日米の合同演習における漁具被害等々いろいろの問題がございますが、いままでも日米間におきましては、そういうような問題が起こりましても、この両国の信頼関係の上に立ちまして、話し合いによってすべて円満に解決してまいりました。私は、今回のそれらの問題につきましても、両国政府誠意を持ってこの問題に当たってまいりますれば、日米関係にひび割れを生ずる、将来に影を落とすというようなことは絶対にないということも、レーガン大統領との間に確認をしてきたような次第でございます。
  57. 松本十郎

    松本(十)委員 総理の今後の外交日程を考えます場合に、ヨーロッパの訪問、続いて七月のカナダにおけるサミットというものが考えられるわけでございますが、いまの国際情勢を展望しますときに、日本アメリカとヨーロッパ、この西側陣営が結束してソ連の脅威に備える、これがいまほど強く要請されるときはないと考えるのであります。  一方、ヨーロッパの国々は、外にポーランドの一触即発とも言われる危機をはらんでおりますし、域内の各国、戦域核配備問題等もございまして、いろいろと微妙に揺れているように感じます。経済そのものはまたインフレと失業に悩んでおるようであり、日本との関係におきましても、通商摩擦と申しますか、自動車を初め電子産品等についても問題があるように思われるわけでございます。とりわけフランスにおきましては、ミッテラン左翼政権が登場いたしましたし、オランダは総選挙の結果、少し動きが、変化の兆しが見えておりますし、イタリアの内閣は総辞職し、イギリスではアイルランドの紛争あるいは地方選挙における与党保守党の敗北等々がございますし、西独もいろいろの問題で若干微妙な動きがあるように考えるわけでございます。  そういう中であえて総理はヨーロッパを訪問されるわけでございますが、それには総理なりの御決意なり御抱負なりがあろうと思うわけでございまして、その辺のところをますお伺いし、さらにまた、それに続くオタワ・サミット、これは西側陣営の大事な会議でございまして、かつては経済が中心でありましたでしょうが、現下のような国際政治の厳しい現実を前にしますと、何といたしましても政治問題が当然討議されると思うのでございますが、それらにつきましても総理はどのような御決意で臨もうとしておられますか、これをお伺いしたいと思います。
  58. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 松本さん御指摘のように、この激動する国際社会の中で世界の平和と安定を確保するというためには、西側民主主義諸国家が相協調し連帯をして、そしてそれぞれの国力、国情にふさわしい貢献をしていくということが私は大事であろう、こう思います。  それにつきまして、従来とかく日本アメリカの方にばかり顔を向けておるのではないか、こういうヨーロッパの国々から一部批判も出ております。私は、松本さん御指摘のような状況下でございますので、この際、ヨーロッパ各国につきましても、各国の首脳と率直な意見の交換をしたい。特に、いろいろヨーロッパの情勢というのは政治的にも経済的にも大きく動きつつある、こういう転換の時期に当たりまして、直接首脳同士で話をするということは、今後のわが国外交政策あるいは国際経済政策というものを進める上に大きなプラスになるであろう、こう私は判断をしたからでございます。  そして、さきに米大統領と会い、今度ヨーロッパの各国の首脳と会いまして、そして来るべきオタワ・サミット、恐らくこれは経済サミットだけではない、国際情勢を反映して国際政治の問題も当然取り上げられ、論議されることとなろうと思うのでありますが、その前に各国首脳と個別に会っておくこと、これも非常に大事なことではないか、このように私は考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、日本はこれだけの国際的な大きな地位を占めるに至りました。世界の平和に外して日本はそれなりの、できる分野におけるところの平和へのコストというものは払わなければいけない、責任を果たしていかなければならない、このように考えます。そういう意味で、今後私はそういう観点に立って国益を踏まえてこれらの国々の首脳とも率直な話し合いをしてみたい、このように考えております。
  59. 松本十郎

    松本(十)委員 最後にいま一問、総理の外交推進に対する御決意を伺い、勇気と自信を持って現下の困難な外交情勢に対処してくださいと期待するわけでございますが、わが国の歴史を明治以来振り返ってみましても、外交面で国内の常識といいましょうか、国内で論ぜられている争点と国際的な感覚というものとにギャップがあった。これは覆いがたい事実だろうと思うのであります。  古くは明治維新前のあの攘夷論を振り返ってみましても、あるいは満州事変以来、三国同盟、太平洋戦争のあの悲劇に突き進んだことを振り返ってみましても、やはり国内の議論というものと国際的な視野から見たセンスというものとがずれがある。それに対して国際的な感覚を生かして国論を誘導することによって外交を正しく持っていく、国民の理解を得、支持を得ながら、世界的な常識の線に沿って、世界的国際政治の求めている線に沿って外交を進めていくということが大事だと思うのでございますが、なかなかそのようにはいきません。  外交の衝に当たられる方々の宿命的な責任と申しましょうか、日露戦争に勝ってポーツマス条約を結んで帰った小村外務大臣が石もて迎えられ、日比谷の焼き打ち事件が起こった。世界から見れば日本立場を十分考えた条約であったのでありましょうのに、国内ではこれを歓迎しなかった。あるいはまた、陸奥宗光の蹇蹇録を読んでみましても、厳しい国際情勢の中で国内のむずかしい議論を踏まえて病躯を押して外交のかじ取りをしなければならなかったということがしみじみ書きつづられておると思うのでありますが、この国際的なセンスと国内的な良識、争点、このギャップをどのように埋めていくか、なかなかむずかしいことではございましょうが、やはりそれに挺身していただくということが総理なり外務大臣にとっていただかなければならない立場であろうと思うわけでございます。  幸いにいたしまして戦後は、多数講和か全面講和かと争ったときに、吉田内閣は多数講和を選択いたしました。また、昭和三十五年、安保賛成、反対で国論が二分いたしましたときに、岸内閣は安保改定を選択したのであります。そのときに反対論者は、この条約を改定すれば日本は戦争に巻き込まれて悲劇に陥る、こうまで言ったのでありますが、少なくとも二十年たった現在までのところ、歴史が、改定してよかった、日本経済はここまで発展し、国民が一応世界レベル以上の生活をエンジョイしているのは何であったかと考えます場合に、あの決断は正しかったと思うわけでございます。  現在の日本の置かれております立場、表面的には講和の時期あるいは安保条約の時期のようにドラマチックではございません。しかしながら、八〇年代の危機を前にいたしまして、日本としましては、やはりここで正しい選択をし、正しい方向に決断しなければならないところへきていると私は確信するものであります。  そういう意味で、最後に総理の御決意を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  60. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 松本さんから政府に対して非常に高い立場から激励、鞭撻をいただきまして、本当に感謝を申し上げるところでございます。  外交ということが国の将来、民族の命運にかかわるような重大な意味合いを持っておるということ、そしてわれわれの先人がそういう重要な時期において的確な誤りのない対応をした、決断をしたということにつきましては、御指摘のとおりでございます。  今後日本は、こういう国際情勢の中において、日本立場がここまで非常に高まってきた、重要な地位にのし上がってきた、こういうことをわれわれは自覚し、またそれだけの責任も持ち、また自信も持って、そしてこれからの世界の平和あるいは経済の発展、振興、こういう面につきまして、日本として政治的、経済的に自信を持って、また責任を持って国際の繁栄、平和に貢献していかなければならない、このように考えておるところでございます。  これを進めてまいりますためには、何といってもこういう民主主義の時代でございますから、国際情勢等を十分国民皆さんに説明をし、御理解を得ながら、そして国民コンセンサスを得ながら、それを背景として、バックとして外交を進める、国民外交を進める、こういうことが肝要であろう、このように思います。
  61. 奥田敬和

    奥田委員長 箕輪登君。
  62. 箕輪登

    ○箕輪委員 主として外務省、淺尾さん、先ほどから熱心に答弁しておられるが、お聞きいたしたいと思います。  総理もお聞きをいただきたいのですが、六〇年の安保改定で初めて六条において事前協議事項が入りました。それから、核の持ち込みの問題が国会答弁されました。また質問に対しては、常に一貫して非核三原則、あるいは核の持ち込みとか寄港も含まれる事前協議だという答弁が行われてまいりました。今日鈴木内閣もまた非核三原則を守る、私は賛成であります。そうあらなければならないと考えております。  ところが、だんだんライシャワー発言以来いろいろな、エルズバーグだとか、ジョンソンだとか、アメリカの人々が関連発言をされておる。一貫して総理は、また外務大臣もそうでありますが、政府の従来の方針を貫くというような態度でまいられた。私は非常に結構だと思うのです。  しかし、私は初めて知ったのですが、「持ち込まず」という言葉の中にトランジットも入るし、ポートコール、寄港も入るという解釈をされているが、アメリカの「イントロダクション」という言葉を「持ち込まず」と日本では訳している。また、日本の「持ち込まず」をアメリカは「イントロダクション」。どうも言葉の持つ意味が、両国の間にちょっと差があるのではないだろうか、基本的には三原則を守る、そういうような感じがしてならないのであります。  そこで、外務省にお尋ねをしたいのですけれども、確かにおっしゃるとおり、「装備における重要な変更」、そのときには事前協議だ、こう言う。ところが、私、一つ疑問だからお尋ねをするのですけれども、この前、たしか二十六日の日に伊達条約局長国会答弁をされて、どうも四十三年四月以前は通ったかもしれないというような御発言ですね。そうすると、改定安保の以前からアメリカの核の装備をされた搭載艦が通過をした、寄港した、こういうことになると、「装備における重要な変更」には当たらないのではないだろうか。いみじくも伊達さんがそうおっしゃった、それ以前には通過したかもしらぬ、寄港したかもしらぬ、これは変更に値しないでしょう。そうすると、事前協議の事項にならないでしょう。その点を聞きたいのです。
  63. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  事前協議制度においてアメリカから事前協議をかけてくるものは、第六条の交換公文と、それから藤山・マッカーサー口頭了解によるものであるということは先生も御承知だろうと思います。  そこで問題になるのは「装備における重要な変更」とは何かということでございますが、それは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにこれらのものの基地の建設ということになっているわけでございます。その場合、持ち込みというのは、前から入っていたから、それをそのまま物理的に存在し続けることは新たな持ち込みではないから、別に事前協議にかける必要はないのではないかという御質問の御趣旨だと思うのでございますが、そうではございませんで、やはり事前協議制度というものがしかれましてからは、核弾頭ないし中長距離ミサイルを日本の領域の中に置くということ、これ自体は事前協議の対象になるものであると考えている次第でございます。  なお、私の二十六日の御答弁を御引用になったわけでございますが、私は通過に関してだけ申し上げたわけでございまして、寄港に関しましては、改定安保の当初以来、寄港は当然事前協議の対象であるということは政府の一貫した立場でございますし、また通過に関しましては、従前、三十五年以来、無害航行に該当するものは事前協議の対象ではないのだという解釈をとっておりましたところ、四十三年で、核を積載した軍艦の領海通航は無害通航とは認めないという立場政府がとるに至りましたので、それ以前はどうだったのかということでございますれば、それは通ったかもしれないし、通っていなかったかもしれないということを申し上げたわけで、いずれにいたしましても、政府は通ったということを確認しているわけではございませんということもあわせて申し上げたわけでございます。
  64. 箕輪登

    ○箕輪委員 それでは、たとえば核の持ち込みの場合に、アメリカを信用しております、持ち込みの場合には事前協議があります、現在まで事前協議の申し入れが一回もありませんでした、だから核は通過もしておりませんし、寄港もしておりません、一貫してそういう答弁をされておる。  私はもう一つ考えてみて、事前協議に持ち込むということがあり得るであろうか、私は絶対にないと思うのです。そういう答弁をするから国民が惑うわけです。外務省がしっかりしなければいけませんよ。これは鈴木総理やなんかの責任でも何でもないのです、従来二十年間それでやってきたのですから。事前協議に持ち込むことがあり得るでしょうか。  その解釈上の違いがあるけれども、仮に一歩譲って、あなたのいまの解釈が正しいとしても、アメリカは事前協議に持ち込むことはない。マクマホン法があるでしょう、核の存在と配置については一切しゃべってはならないという原則があるのですよ。事前通告をしたなら、その軍艦に核が存在することを意味するわけですから、これは持ち込むわけがないのです。いつまでもそういう答弁をしていると国民が惑うので、私は非常に心配だから言うのです。  たとえば横須賀の市長さんが、あれは国民が惑っている証拠なんですよ、ミッドウェーの帰港はこの際適当でない、こう言っている。拒否反応を示している。はっきりしないからなんです。とうにはっきりさせるべきではないでしょうか。核の存在を認めることじゃありませんか。事前協議に持ち出せますか。事前協議に持ち出していないからそれは存在しないのだ、通過もなかったのです、アメリカを信頼しますという議論が成り立ちますか。出すわけがないのに、事前協議がなかったから通過しておりません、寄港しておりませんという、そういう筋書きの答弁ではだんだん通らなくなったのではないでしょうか。  私は時間があればやりたいのですが、たった十分しか与えられた時間がありません。私は、日本にとって日米安保条約は重要であり、常に実効性のあるものでなければならないと思うのです。そうすると、横須賀でこういう拒否反応が出てきた、佐世保でまた連鎖反応が起きる、いつまでもこの繰り返しではいけないと思うのですよ。事前協議があり得ると思いますか。  まず防衛庁長官にちょっとお尋ねしますが、こういうような拒否反応が起きてきますと、日米安保条約の実効性、これがやはり阻害されませんか、次から次からこういう問題が起きてきたら。いや、どこどこにもあるぞ、どこどこにもあるぞ、また騒ぎが大きくなりますよ。そろそろこの辺の解釈をはっきりさせないといけない時期に来たのではないだろうか。いみじくも外務大臣は、いま政府はそういう方針です、将来何だかかんだかと言って終わってしまったけれども、お考えではないのだろうか。やはりいつの日かはっきりさせなければ、こういう問題はいつまでも続くだろうと思うのです。  まず、日米安保条約の実効性というものに対して阻害になるかならないか、一言でいいです、御答弁をいただきたい。
  65. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  ただいまお尋ねのミッドウェーの横須賀帰港問題につきまして、地元でいろいろな動きがあるということは承知しておりますが、こういったことで帰港が阻害されるということになりますとすれば、日米安保体制の円滑かつ有効な運営に支障を来すおそれがあると思いますので、防衛庁といたしましては、事態の解決が図られる、入港ができるということを強く期待しておる次第であります。
  66. 奥田敬和

    奥田委員長 午後一時四十分から連合審査会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後一時四十二分開議
  67. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き連合審査会を再開いたします。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。土井たか子君。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 午前中から出席を要求いたしておりました運輸大臣がついに午前中はお姿をお見せにならず、午後は必ず出席するというお約束のはずであったわけです。御出席なさるまで待たせていただきます。
  69. 奥田敬和

    奥田委員長 土井君に申し上げます。  委員長としては運輸大臣出席を要求し続けております。現在、調査しましたところ、参議院運輸委員会連合審査会出席中とのことでございます。政府委員として妹尾海上保安庁長官、永井海運局長鈴木船員局長らが答弁予定者として見えておるわけでありますけれども、質疑を続行していただけませんか。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 本委員会は、委員長、何とお心得でいらっしゃいますか。この連合審査がそもそもきょう行われるために、国対委員長会談の中でどういうことが討議されたかを御承知で委員長席にお座りであると思います。運輸大臣が御出席までお待ちいたします。
  71. 奥田敬和

    奥田委員長 土井委員に申し上げますが、運輸大臣に対する質疑運輸大臣出席した時点で行っていただくということで、各会派の持ち時間の予定もございますので、質疑をお願いいたします。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 午前中も石橋議員の質問について、運輸大臣出席のとき運輸大臣への質問をど言われて午前中が終わりました。出席なさらなかったじゃありませんか。同じことです。待たせていただきます。
  73. 奥田敬和

    奥田委員長 ちょっと速記をやめて。     〔速記中止〕
  74. 奥田敬和

    奥田委員長 速記を始めて。  この際、委員長から一言申し上げます。  ただいま理事間において協議いたしましたが、本連合審査会は与野党の国会対策委員長協議の上開会を決定したものであり、運輸大臣出席がないのははなはだ遺憾に存じます。しかし、各党予定の質疑者の用意もあり、総理大臣出席時間にも限定があることを考慮して、この際、土井委員質疑続行に御協力を願うことになりました。さよう御了承願います。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 約束は約束として守っていただくことが必要であります。午前中も約束はほごにされました。再度この約束について守ってもらうことを強く要望して始めますから、途中でお約束の時間が来てお見えにならなければ、またそれで私は待たせていただきますよ。
  76. 奥田敬和

    奥田委員長 了承いたしました。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、大変緊迫している問題からひとつ総理にお尋ねを申し上げたいと思います。  空母ミッドウェーというのは核を積載しておりますか、どうでございますか。     〔奥田委員長退席、江藤委員長着席〕
  78. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ミッドウェーは年鑑その他によれば通常の攻撃型の空母でございますが、核搭載の可能な兵器としては飛行機を積んでいるということでございます。しかしながら、現実にミッドウェーが核を積んでいるのかどうかという点について、米側としては上否定も肯定もしないというのが前提でございますが、われわれとしては、事前協議アメリカが申してこない以上、核を積んでいないということで了解しておるわけでございます。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 たてまえにもいろいろございまして、そういうことをおっしゃっても、国民はいま非常に不信を持っているのです。あるに違いないだろうということを国民は強く思っているわけであります。  きょうも新聞で、ワインバーガー国防長官が、ミッドウェーは日本に対して核のかさを与える権利を持っているということを、横須賀帰港は戦略上必要だと言いながら、二十七日にコロラド州の米空軍士官学校の卒業式に出席をされた後、記者に対して明らかにされているわけでありますが、横須賀の市長を初め市民を挙げてこれに対して帰港反対ということで抗議をし続けておられます。政府にも強力に申し入れがあったはずであります。  事前協議はいままでに一回もないのです。しかし、安保条約の四条に言うところの随時協議というのはいままで何回もやっているのでしょう。いかがですか。
  80. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 御承知のとおり、安保条約四条に基づく協議、安保条約の実施あるいは極東の安全と平和、それについては随時協議を行っております。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、これからは官僚の出る幕じゃないのです。政治の問題でございますから、政治責任を持ってひとつ大臣にお答えを願いたいのです。  この四条に言う随時協議を行う、まずこの問題です。そこで、核がないことが明らかになって入港を認める、そうでない限りは入港を認めないというのが、ただいま国民が持っている不信にこたえる政治責任ある立場だと思われるのですが、どうでございますか。
  82. 園田直

    園田国務大臣 入港する空母または軍艦が核を持っていないということを一々証明したりあるいは表明してやるべきものではなくて、いままでの話し合いに応じて、ある場合には向こうから申し出るべきであって、そうでない場合には帰港は自由であると考えております。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 園田外務大臣らしくない御答弁をいまされましたね。いまの御答弁は私の質問に対する御答弁になっていないのですよ。もう一度申し上げましょうか。  日米安保条約の四条に言う随時協議は何回もやっているのです。ただいまの問題も随時協議の対象にするということは矛盾しない。やっていいのです。「この条約の実施に関して随時協議し、」とちゃんと四条に書いてあるわけですから。  そこで、いま問題は、国民はミッドウェーに核があるに違いないと思っているのです。したがって、帰港に反対をしているのです。この国民アメリカ不信の気持ちですよ、これを考えたら事は重大なんです。随時協議によって核がないということが明らかになって初めて入港を認めるというのが当然のとるべき措置とお考えになりませんか。いかがですか、大臣、もう一度。
  84. 園田直

    園田国務大臣 事前協議は、装備に変更のある場合、すなわち核を持っている場合の協議でございますので、そうは考えておりません。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 ちゃんと御答弁をいただきたいと思います。すりかえですね。おわかりになっていて御答弁になったのだから、にやっとお笑いになる。四条の随時協議を私は問題にしている。もう一度。——北米局長はいいです。大臣にいまお尋ねしているわけですから、御答弁は要らない。これは政治的判断です。質問者が大臣の御答弁を要求しているのです。どうぞ大臣、お願いします。
  86. 江藤隆美

    ○江藤委員長 局長に答えさせて、後で大臣からまとめて答弁を願います。
  87. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 随時協議は、御承知のとおり条約の実施に関して随時協議する、こういうことでございます。今回のミッドウェーの帰港に関して、私たちとして、政府としては、ミッドウェーが核を持っているというような疑念を持っておりません。横須賀の市長が言われているのは、核を持っている疑惑があるからミッドウェーの帰港を延ばしてほしいということでなくて、横須賀が母港化されて。そこにアメリカの軍人、軍属が住んで日本人と生活を営んでいる、そういう良好な生活を今後続けていくという観点から今回の帰港を延ばしてくれたらどうか、こういうことでございます。
  88. 園田直

    園田国務大臣 いま局長から答えたとおりでありまして、ミッドウェーが帰ってくることは事前通告の対象になっておりません。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 随時協議の対象にはできますね。
  90. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまお尋ねの随時協議は条約の実施でございますから、これは実施に関する部分というふうに判断すればそれはできるわけでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣は人一倍国民の気持ちを大切にされる大臣だと私は思っているのです。いま大事なときですよ。いかがです。アメリカに対して問いただすと同時に、この問題に対してアメリカのなすがままにどうぞどうぞと言うのは、国民の気持ちにこたえるゆえんじゃありませんよ。大臣、もう一回そこのところを気持ちを込めて御答弁ください。
  92. 園田直

    園田国務大臣 いままでの日米関係及び慣例でございまして、今度のライシャワー発言があった後、これを前提にしてアメリカ政府を代表するマンスフィールド氏から、向こうから釈明があったわけでありますから、その上に問い合わせることは考えておりません。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 これはずっと質問を続ける中で私は再度取り上げて問題にしましょう。  総理大臣、いままで何回となく、総理大臣自身は、非核三原則を遵守するということを国会答弁の中でおっしゃってまいりました。そうでございますね。そのことは、いままでずっと一貫して歴代内閣の御答弁の中で非核三原則という問題について御答弁をされてこられたことをお変えにならないということでございますか、いかがでございますか。
  94. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 歴代内閣が非核三原則堅持という基本的な政策を誠実に実行していこう、こういうことでやってまいったわけでございますが、私もその政策をそのまま踏襲をし、誠実に実行してまいりたい、このような考えに基づくものでございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、いままで歴代の内閣の御答弁をずっと見てまいりまして、だめ押しのつもりでひとつ総理にお尋ねを進めたいのです。  事前協議という問題にはイエスもノーもあるのです。ただしかし、核持ち込みに関する事前協議は、いかなる場合もいかなる場所であってもノーということであるのかどうか、いかがでございますか。
  96. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 核に対する国民感情等を私、考えました場合に、いかなる場合でもノーと言うべきである、こう考えております。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 べきであるから、当然総理もそうなさる、そうでございますね。
  98. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 非核三原則というのは、平時の場合は当然のことでございますが、緊急時あるいは戦時を通じても不変の原則だという御答弁がすでに歴代の総理からございます。総理、この点はいかがでございますか。
  100. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 佐藤内閣当時、その点もはっきり政府の正式見解として表明されております。自来、歴代政府はそのとおりに考えております。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 本会議を含めまして、国会では衆参両院四たびにわたって非核三原則国会決議をいたしております。  総理御自身は、非核三原則というのは国是というふうにお考えですね。
  102. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国是という言葉、われわれ古い人間はよく国是ということを使ったのですが、国是というのは、私は、国民世論に支持されておる重要な政策である、基本的な政策である、こういう意味に国是というものを解しておるわけでありますが、そういう意味合いからいたしますと非核三原則はまさに国是である、こう言っていいと思います。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 この原則は、外務大臣も国連の軍縮総会で有名な演説をされているわけでありますから、全世界各国、その国々に向かって日本という国は非核三原則を国是としている国である、そして逆に言うと、アメリカもそして他の諸国も日本の国是である非核三原則を遵守してもらう、こういうことを鮮明にしているものだと考えられますが、いかがでございますか。
  104. 園田直

    園田国務大臣 しばしば各国に正式の場所で、日本立場、非核三原則は宣明しているわけであります。これに対して各国とも理解をしているものでございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、外務大臣、非核三原則は国是であり、いま御答弁になったとおりなんですが、わが国基本政策であって、そして外務大臣自身は国連軍縮総会でも各国に向かってすでに鮮明に訴えられている、そういう御経験からお伺いをいたします。  わが国の内外に対する基本政策を少しでも変更するような場合、これは国民に信を問うくらいこの非核三原則というのは重要な政策だと思われますが、どうお考えになりますか。
  106. 園田直

    園田国務大臣 その点は私もそのように思います。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、外務大臣、午前中の石橋議員の質問に対しまして、御答弁で三つのカテゴリーを分けられたのです。非核三原則を変える、非核三原則を堅持する、非核三原則をさらに強化する、この三つのカテゴリーの中でいま政治選択をどうするかという問題があるというふうな御答弁をされたのですが、この三つのカテゴリーというのはどこで決まっているのですか。外務省で三つのカテゴリーというものを選別して分けて、外務省としては、たとえば一番でいこうとか二番でいこうとか、そういうことを考えていらっしゃるのですか。それとも、閣議でこの三つのカテゴリーに鈴木内閣としてはお分けになって、ひとついろいろな点で問題にしていこうということにでもなっているのですか。いかがですか。
  108. 園田直

    園田国務大臣 外務省で検討したわけでもなければ、閣議で話題になったわけでもなくて、私自身が、大体聞いておって、そういう三つの意見があるということを言っただけでございます。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 総理大臣、いま外務大臣が、外務大臣自身のお考えとしてそういうことをおっしゃらねばならぬくらいに、この非核三原則に対して、自民党の一部、さらに残念ながら野党の中の一部にも、非核三原則を見直せというふうな論議が出ているわけであります。少しずつ出かかってきている。非常に大事なときであります。非核三原則は遵守するということを言い続けられた総理とされては、これにくみするお考えはないと私は思っておりますが、絶対にこれに対しくみするお考えはお持ちじゃございませんね。
  110. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、非核三原則をあくまで堅持するという人間でございます。
  111. 江藤隆美

    ○江藤委員長 ただいまお待ちかねの運輸大臣出席いたしました。
  112. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、総理のいまの御発言からいたしますと、この非核三原則に対してゆるがせにするとかこれを変更するとかというふうな場合には必ず国民に信を問う、このことが必要になってまいりますが、どうお考えでいらっしゃいますか。
  113. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は信を問うというような物騒なことは考えておりません。したがって、あくまで私は非核三原則を堅持してまいる、こういうことを繰り返し申し上げております。
  114. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、確固としたお気持ちがあるならば、信を問うことが物騒だなんとおっしゃるというのはまことにおかしいのですよ。
  115. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そういう必要があれば私も決断をいたします。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 この非核三原則の一部を改正するなんというふうなこと、いや改正じゃなくて、これは改悪と言わなくてはならないと思うのですが、軽い政策じゃない、こういうことをやるというのは。  一般論でよろしゅうございますから、もしいささかでもこれをゆるがせにするような、中身を問題にしようというときには、それなりに種々の国会の手続を踏んで行っていかなければならない重大問題だとわれわれは思うわけであります。基本原則なんですから、国の基本政策なんですから、国是なんですから。そして総理は、これに対しては明らかに遵守するということを言い続けられている問題なんですから。これについて、ある日突然ぱっと、これは政策変更だと言って内閣の手で握りつぶしたり、塗りつぶしたりするようなことは万々ないと思いますが、それなりの国会の手続を踏んでいかなければならない、このように思われますが、いかがでございますか。
  117. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は先ほど来、非核三原則堅持ということを繰り返し申し上げておるわけでございまして、土井さん御心配のようなことはございません。ひとり相撲にならないようにしてください。
  118. 土井たか子

    ○土井委員 御注意をどうもありがとうございます。  それで、この非核三原則のうち、日本語で言う「持ち込み」、「イントロダクション」ということについて、日米間に解釈の違いがあるということがライシャワー元駐日大使の発言で、あとは大変大騒ぎでございます。  その点について少しお尋ねを進めますが、総理御自身は五月二十一日、衆議院内閣委員会におきまして、岩垂寿喜男議員の質問に答えて答弁をされているのですが、私は速記にも当たってまいりましたので、そこの部分は大事だと思われますから、いまここで総理にだめ押しをさせていただきます。よろしゅうございますね。  「イントロダクション」の中に寄港や通過が含まれることは、合衆国軍隊の重要な装備の変更や部隊の移動にかかわる日米間の交換公文や藤山・マッカーサー口頭了解からして十分明らかであり、日米間に了解の違いはないと、このような御答弁なんですが、これはこのとおりにお答えになりましたね。
  119. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  120. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、この御答弁の中で、「イントロダクション」ということについて寄港や通過が含まれるということが日米間に成り立っている了解事項であって、了解の上で違いはないとおっしゃっている根拠になっているのには、一つは条約第六条の実施に関する交換公文ということになると思うのですが、この条約第六条の実施に関する交換公文の中で特に問題になるのは、事前協議の対象となる合衆国「軍隊の装備における重要な変更」というところなんですね。この「軍隊の装備」には、在日米軍だけではなく、日本の領空、領海を通過する米軍隊も含むという意味に理解をしていいのでございますね、どうですか。
  121. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そういう法的な解釈につきましては政府委員から答弁をさせますが、いまお話しになったようなことは、午前中の石橋さんの御質疑に対して淺尾北米局長から御答弁申し上げた内容と同じでございます。
  122. 土井たか子

    ○土井委員 これは、責任を持って総理が二十一日の日にお答えになっている中身について私はだめ押しをしているのです。こういうことを御存じなくて総理はお答えになるのですか。
  123. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 それは先ほど私が確認したとおりでございます。内閣委員会で私が答弁したことをいま確認を申し上げたところでございます。
  124. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、この条約第六条の実施に関する交換公文の中の「同軍隊の装備における重要な変更」という中には、いまの総理大臣の御答弁では、在日米軍だけではなくて、日本の領海、領空を通過する米軍隊も含むというふうに総理自身も認識をされ、解釈されているわけですね。そうでございますね。
  125. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 午前中に北米局長から、法解釈その他の面でずっと今日まで政府が一貫してとってきております解釈を申し上げたところでございまして、私もそのとおりに受けとめております。
  126. 土井たか子

    ○土井委員 ここの点をアメリカ側も同様に理解しているのでしょうか。アメリカ側も同様に、こういうふうに解釈し、理解をしているのでしょうか。
  127. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 午前中も答弁いたしましたように、まさに「同軍隊」というのは、先ほど来御答弁いたしますように、日本に配置された軍隊のみならず、その他の軍隊、要するに安保条約が適用になる軍隊すべてでございます。これは安保条約の改定の国会、三十五年五月二日において当時の舟橋政府委員から御答弁申し上げているとおりでございまして、自乗、日本政府のこの解釈というのは内外に明らかにしておるわけでございます。したがいまして、私たちとしては日本側とアメリカ側との間にこの点について了解の差異はないと考えております。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 アメリカ側もそのように考えている、了解に差異はない、こういうただいまの局長の御答弁なんですが、それならば、その中身について、日本側の考えアメリカ側の考えが同じであるということを、いつはっきり確かめられたのですか。
  129. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 その点につきましては、当時の安保条約の改定のときにこの交換公文ができたわけでございまして、それからさらに口頭了解が同じようにできているということでございますので、すでにそのときから日本側とアメリカ側との間に了解の差異はないというふうに考えております。
  130. 土井たか子

    ○土井委員 答えになっていないのです。いま私が聞いているのは、「同軍隊の装備における重要な変更」の中に日本の領空、領海を通過する米軍隊も含むということに対して日米間で了解に差異はないと先ほど言われたのだから、その事柄を一体いつはっきりお互い同士が確認をしたのかと聞いているのです。いまのでは、局長、答えになっていませんよ。
  131. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 すでに先ほど来御答弁いたしているように、その交換公文の「同軍隊」というのは先ほど来の答弁のとおりでございまして、これはもう文脈上非常に明らかであって、これに対してアメリカ側も、そのときから日本側の了解と差異はないというふうに考えられるわけでございます。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 文脈上明らかなんて、これはちょっと聞いてあきれますよ。どこにそんなことが書いてあるのですか。在日米軍だけでなくて、日本の領海、領空を通過する米軍隊も含むと、どこに書いてあるのですか。このことに対して、だれがそれをどう日米相互間で認めているのですか。どこにも書いてないことを、それじゃどこで認めているのですか、お尋ねします。
  133. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 その前後を読んでいただきますとわかるわけでございますが、まず第一に「配置における重要な変更、」その次に「同軍隊の装備における」ということで、ここに明らかに配置とそうでない軍隊というふうに使い分けているわけでございまして、その点については、当時の交渉のときからすでに日米間で同じような了解に立っている、こういうことでございます。
  134. 土井たか子

    ○土井委員 いまのでも御答弁になっていないのです。装備の「重要な変更」の中に、在日米軍の基地だけではなくて、日本の領空、領海を通過する軍隊についてまでもこれを含めて考えるということには、いまの御答弁じゃならないですよ。どこでだれがこのことを日米間で了解し合ったということになるのですか。これじゃさっぱりわからないですよ。どうですか。
  135. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 一月十九日にこの交換公文を交換しております。そのときから日米間で解釈について相違はない、こう考えているわけでございます。
  136. 土井たか子

    ○土井委員 そのときからというと、こういう交換公文をつくられるまでにいろいろ交渉の過程があるわけです。したがって、交渉の過程があって交換公文ができているのですから、交換公文の中に言うこの文言の中身として、日本の領空、領海を通過する、それをこの中に含めて考えている、そういうふうに日本側は理解をしておるという先ほどからのお答えで、アメリカ側もそう理解しておるというお答えなんだから、一体いつ、日本側はだれがそういう話し合いアメリカとやったのですか。
  137. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま土井委員が言われましたように、まさに交渉の中で日米間においてそういう意見の一致があり、ここで「装備における重要な変更」とは何かという交換公文が出ているわけでございますから、交渉の担当者の間でそういう了解ができている、こういうことでございます。
  138. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、そういう交渉の過程について、外務省には記録なりメモなりがありますね、大事な問題ですから。それをはっきり出してもらいましょうか。出してもらいましょう。
  139. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは、せっかくの御要請でございますが、交渉の過程に関するものについては国際慣例上お出しできない、こういうことでございます。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 国際慣例上出せないとおっしゃっても、この問題はいま日米間で食い違いがあるかないかという国際間の大変な問題になっているのですよ。アメリカ側にこれを公表することの交渉をやったって当然じゃないか。疑義を晴らすことのためには、ある記録を出すということはABCですよ。外務大臣、いかがですか。
  141. 園田直

    園田国務大臣 いま局長から答えたとおりでありまして、これは公表すべきものではございません。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、外務大臣、そういうことが続く限り、国民から見ればこの点の疑義は永久に晴れないですよ。ここが常に、総理大臣も、事前協議の対象に、核の持ち込みの中で特に領海通過、一時寄港も含まれるというふうにおっしゃっている根拠になっているのですから、根拠になっている点を明らかにしないでおいて信じろ信じろと言われたって、それは無理です。園田外務大臣外務大臣としてこの点に対してはやはり責任を持って晴らすべく最大限の努力をいまなさるべきときじゃないでしょうか。再考をお願いします。いかがですか。
  143. 園田直

    園田国務大臣 慣例に従って公にできないということは、そういう記録はないことはありません、こういう意味であります。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 あることをいまお認めになったのですから、そうするとその次の段階は、国民がこれに対して納得してないのですよ、いままだ。日米間に食い違いがあるというのは、どんどんアメリカ側から出ている発言なんです。上院の議事録を持ち出すまでもない。私は持ち出しますよ。向こうでは、日米間ではそんな取り決めはなかったと言っているんですよ。トランジットとイントロダクションというのはまるで違う、一時持ち込みと持ち込みは違うのだ、こういう認識なんです。これにこたえることのためには、この点についていまあるということをお認めになった文書を公にする努力をなさるべきじゃないですか、どうでしょう外務大臣。——後ろからこそこそはやめてください。
  145. 園田直

    園田国務大臣 日米両国の了解に差異はないと米国は言っておりますので、われわれも差異はないと考えております。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 まあそれは外務大臣とすれば、こういうときに、疑いなく大丈夫だとお思いになるときには、ああ出しましょう、その努力をしますとおっしゃる大臣なんです。その大臣が口かたく、日米間に了解があってもう大丈夫なんだから出さないとおっしゃるのは、つまり、これは国民考えておるとおり、どこまでいっても日米間に相違があるということになりますよ、根拠の一番大事なポイントなんですから。  さらに、この交換公文に従って先ほど来総理大臣がその根拠の一つにされているもう一つの藤山・マッカーサー口頭了解の問題がございます。この口頭了解の問題ですが、口頭了解というのはいつなされたのですか。
  147. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 藤山・マッカーサー口頭了解というのは、その根っこになります岸・ハーター交換公文、それの口頭了解でございますので、岸・ハーター交換公文が交換された日、一月の十九日でございます。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 四十三年四月二十五日に、外務省が「日米安保条約上の事前協議について」という表題でこの文書を国会に提出された、私が手元に持っているこれでございます。これがいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解だと言われているのですが、これは口頭了解を文書にして国会に出した、こういうかっこうになるのですね。
  149. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 口頭了解でございますから、まさにそのときに文書はなかったわけでございますが、その後、国会等で口頭了解は何かという御質問がございまして、四十三年四月二十五日に「日米安保条約上の事前協議について」という文書の中で、口頭了解の内容を文書の形にして御提出したわけでございます。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、口頭了解の内容を文書にして提出された。文書を見ますと、「「装備における重要な変更」の場合」というのがございます。このことについて口頭了解のときには、ここに言う「装備における重要な変更」とは核を指すということだけを確かめたにすぎないということなんじゃないですか、いかがですか。
  151. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 この藤山・マッカーサー口頭了解というものは、事前協議の対象になる三つのカテゴリー、その中でいま問題になっている核については、核についてはと申しますか、重要な装備の変更については、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み及びその基地の建設である、こういうことを書いてあるわけでございます。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、そういうことも口頭了解の中で問題になったわけなんですね。そう理解していいですね。
  153. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 そのとおりでございます。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 この「持ち込み」ということなんですが、だれが日本側からこのことを問題にしたのですか、アメリカ側はだれがこの持ち込みの問題について口頭了解のときに問題にしているのですか。藤山さんが言い始められたのか、マッカーサー側が言い始められたのか、いずれが言い出したのですか。
  155. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは両当事者の合意でできたわけでございまして、だれが、どの時点で、どちらから発議したかということは、先ほど申し上げましたように会談の内容といいますか、それ自体に関係するものでございまして、個々のやりとりについて触れることは妥当でないというふうに考えております。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 会談の内容について触れることは適当でないと言われる限りは、この中身は実は釈然としないのですよ。ここがポイントなんですよ。これを根拠にして総理は一貫して答弁されているのだから。安保条約締結後、政府はその解釈、見解を一貫して変えておりませんと総理は言われるのだけれども、その根拠になっているのがこれなんです。そうでしょう。  では、「持ち込み」という日本語、「イントロダクション」という英語、これは日本側の通訳の人が言い始め出した言葉なんですか、それともアメリカ側がイントロダクションという言葉を使って言い出したのですか、いかがですか。
  157. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 口頭了解でございますので、通訳がというお尋ねでございますが、要するに両当事者がこの核の持ち込みということを言って、その英訳としてイントロダクション、こういう言葉を使っておるわけであります。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 その両当事者のいずれが先にこの問題について言い始めていますか。日本側ですか、アメリカ側ですか。
  159. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど来御答弁しているように、個々のやりとりについて、ここで私としてその点について触れるということは差し控えさせていただきたいと思います。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ「持ち込み」、「イントロダクション」という中身には、日本に対する核の貯蔵、配備、領海通過、一時寄港、すべてを含めて考えるということを双方は理解しているのですか、どうなんですか。
  161. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お尋ねのとおりでございます。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 こういうことを質問するとお尋ねのとおりと至極すっぱりおっしゃるのだけれども、肝心かなめは、そのことがどういう形でどのように了解されたかというところが肝心なんですよ。それについては記録があり、文書があるのだけれども、一切これは国際慣例で公にできないと言って突っぱねられる限りは、これは全然この点の疑惑が消えない。日米間でこの理解に対して相違がある、これに対して打ち消すことができないですよ、この点をはっきりさせない限りは。外務大臣、どこまでもこの問題は続きますよ。  先ほど外務大臣は午前中の御答弁の中で、今回のライシャワー氏の発言以後いろいろあったけれども、アメリカ大使とお会いになってお話をなさる際に、これから、ただいまはこれでやっていこう、しかし今後もごまごまとうまくやっていくというふうな御発言があったのです。ごまごまとうまくやっていくというのはどうも私はわからないので、逆にするとまごまごとうまくやっていく、こうなるわけでありますけれども、しかし、これはうまくやっていく、うまくやっていくと言われたって、こういうことに対して答えるべきことを答えないでおいて、うまくやっていけるはずがない。日米間でうまくやっていこうとすると、いまこそ疑惑を晴らさなければいけないときなんです。したがいまして、国際慣例に従ってアメリカ側と話をして、これについての文書を公にしていくという取り決めをまずなさるべきだと思いますが、外務大臣、どうですか。
  163. 園田直

    園田国務大臣 午前中に私が一番最後の方でむにゃむにゃと答えましたことは、大体三つの意見があるが、いまはわれわれの判断はいまの状態を必死になって守ることが最適であると考える、将来はよくよく努力をしてこれをだんだん締めてかたくしていく、それをいまやることはかえってやぶからヘビを出すことのおそれがある、こういう意味のことでございます。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、それは大変な発言ですよ。ヘビがひそんでいるということをそれではお認めになるのだ。大問題じゃないですか。  ヘビがひそんでいるということを外務大臣ははっきりお認めになっているわけだけれども、それではヘビをたたき出して、日本としては厳然たる非核三原則の国であるということをはっきりさせましょうよ。ヘビをたたき出した上で、アメリカ側とそういう意味でのきっちりした取り決め、話し合いをすることがどうしても必要だと思います。いかがでございますか。
  165. 園田直

    園田国務大臣 私は、現段階では、いままでやってきたことを守りつつ、将来に向かって一つの道を開くことがいいと考えております。
  166. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣はヘビを抱えていらっしゃる身でございますけれども、アメリカ側からいろいろあるたびごとに、日本側としては日本の理解をおっしゃる。それは当然だと思いますが、口頭了解が、これは英文に訳されております。これは、先ほどの国会に出された藤山・マッカーサー口頭了解の文章化したものを英訳になすった英文でございますね。先日私が外務省に資料要求していただいた、これがまさにその英文なんです。そうでございますね。
  167. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 昭和五十年でございますか、ちょっと正確に記憶しておりませんけれども、いわゆる口頭了解についてアメリカ側と……
  168. 土井たか子

    ○土井委員 私の質問に答えてください。
  169. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 そのとおりでございます。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 要らないことは要りません。  さあ、それでは、さっきの日本文、この日本文と同じものがアメリカにありますか。
  171. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ございます。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、口頭了解を活字にしたものを、アメリカ側はこの日本文で理解しているのですか。
  173. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 当時の外務大臣がまさに英訳文を添えてアメリカ側に伝えております。したがって、アメリカ側の了解は日本文とそれに付してある英訳文と両方ということでございます。
  174. 土井たか子

    ○土井委員 この英訳された文章によって、アメリカ政府側は、ここに言うイントロダクションということについて、寄港、通過も事前協議の対象にするということを了解したのですか、どうなんですか。
  175. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 日本側のその英訳文を付したものに対して、アメリカ側は日本側の理解と同じだということを言っておりますが、そのもとになります三十五年から、いわゆる艦船の持ち込みを含めて核は事前協議の対象である、これは昭和三十五年以来のことでございます。
  176. 土井たか子

    ○土井委員 要らないことをちょろちょろと局長はおっしゃるのですが、御答弁は質問に対する答弁に限りますよ。よろしゅうございますね。  そうすると、先ほど来、日米間で、この藤山・マッカーサー口頭了解を文章化したものの日本文で言う「持ち込み」、英語で言う「イントロダクション」、その中には、アメリカの核の貯蔵、配備は言うまでもなく、領海通航、さらには通過、一時持ち込み、寄港、こういうものを含めていると両者間で了承しているというふうに理解しなければならないと政府は思っておられるわけですね。ここのところ、ヘビを抱えていらっしゃるからなかなかむずかしいのですよ。
  177. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 直接お答えしないと怒られますが、まさにそのとおりでございます、それは昭和三十五年以来。
  178. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、この口頭了解を文章化したもの、文書によって日米お互いは合意をしたわけでありますから、広い意味で言うとこれは条約と考えていいですか。
  179. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 口頭了解そのものも両国政府の約束するものでございます。それをさらに念のために照会した、こういうことでございます。
  180. 土井たか子

    ○土井委員 まだお答えになっていらっしゃらない。この文書によってお互いが了解をしたのでしょう。合意をしたのですね。したがいまして、そういう点から言うと、広い意味で条約と言えますね、こう言っているのです。
  181. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  昭和五十年にアメリカ政府アメリカ大使館に提示をいたしましたいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解の日本文及び英文というのは、それはそのときに合意をされたというようなものではなくて、そのときにはそういう内容であったという確認が行われたというものでございまして、もとはと言えば三十五年の一月に交換公文が締結されました際に藤山・マッカーサー口頭了解というものがあったわけでございまして、そしてこの藤山・マッカーサー口頭了解と申しますのは国会の御承認を得た第六条の実施に関する交換公文の解釈を日米間で確認したものでございまして、この口頭了解というものによって確認された交換公文の解釈というものが日米両国を法的に拘束するものであるということが言えます。
  182. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それは法的に拘束するものという範疇に入っているのですから、これも広い意味の条約の中に含めて考える、そういうことになりますね。
  183. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 広い意味の条約に入る、つまり両国、国際間、国家間の了解であるという意味においてそのとおりであります。
  184. 土井たか子

    ○土井委員 さあ、そこで、総理大臣、三十五年四月二十八日の国会で岸総理は、交換公文、事前協議事項について、日本がノーと言ったときに、それでもなお日本側の意思を無視してアメリカ側が行動した場合、これは条約違反になると明確に答えられているのです。そういうことからいたしますと、今回の、事前協議を受けずに核の寄港や通過をした場合はもちろん条約違反ですね。総理はずっと一貫した答弁をしてこられているのだから。総理に対してお答えを要求します。条約局長はいいです。これは総理に対して。
  185. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  口頭了解は、第六条の実施に関する交換公文という、国会の御承認を得た一つの交換公文という形式はとっておりますが、条約であるという、その条約の実施に関しての両国間の了解であるということでございまして、ただいまの御質問にお答えするといたしますれば、もし、私どもはそんなことはないということは従来しばしばたび重ねてお答えしていることでございますけれども、仮に核を積んだまま事前協議にかけることなく日本の領域に入るということになれば、これは第六条の実施に関する交換公文、すなわち事前協議を決めてあります交換公文の違反になるということでございましょう。ただ、私どもはそのようには考えていないわけでございます。実際に持ち込まれているとは考えていないわけでございます。
  186. 土井たか子

    ○土井委員 どうも官僚というのは要らない答弁をしますね。すっぱり言えばいいのです。  総理大臣、いまのは答弁としてすでに前座があるわけですから、いよいよ真打ちにお願いしたいと思います。この点はどうですか。事前協議を受けずに核の寄港、通過をした場合は条約違反、これははっきり言えるでしょう。岸総理の当時の答弁からすると当然だと思います。
  187. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、アメリカ側はこの事前協議制というものを誠実に遵守するということを明確にいたしておりますから、そういうことはないと思いますが、もし、もしですよ、そういうことがありとすれば、それは第六条の事前協議に対する違反である、こう思います。
  188. 土井たか子

    ○土井委員 事前協議に対する違反であると同時に、これは、広い意味で条約とさっき言われたのだから、条約違反です。それを受けて総理大臣はやっていらっしゃるのじゃないですか、一貫した答弁というのは。総理の答弁の裏は全部それで用意されているのでしょう。それでは、総理はそういうことを御存じなくああいう御答弁をなさっているのですか。御存じで御答弁だと思えば、この辺はやはり確信を持って言っていただかないとならないのですよ。
  189. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、条約違反ということを申し上げたのではなしに、一貫して米側はそれを遵守する、こういうことを言っておるし、日本政府はそれに信頼をしておる、こういうことを繰り返し申し上げており、したがって、この事前協議制というものを今後も非核三原則堅持の基盤として遵守していくのだ、こういうことを私は繰り返し申し上げておるのでありまして、いま条約論、口頭了解も両国の合意であるから即条約である、こういうことで、それが国際上の通念ということになれば、まさにそれは条約と見ていいでしょう。
  190. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、事前協議を受けずに核の寄港、通過というのはないということをかたく信頼しているとおっしゃるのですけれども、もしそういう事実が明るみに出れば、総理、総理の政治責任は大きいですよ。これは大変なものです。もちろん政治責任をきっぱりとおとりにならなければならぬ。それはそうですね、それぐらいの御覚悟はおありになるでしょう。
  191. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、いままでもそういうことはなかったし、今後もそういうことはないものと確信をいたしております。
  192. 土井たか子

    ○土井委員 さあ、それぐらい総理とすれば自信を持っておっしゃる、この問題の根拠になっている二つの交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解の中身、その特にポイントについてお伺いすれば、肝心のところについては言えない、出せないと言われるのです。これで総理がおっしゃることに対して、もっともだ、総理を信頼していたら心配はないと思っている国民があるとお思いになったら間違いですよ。これはいざとなったときに済まなかったで済む問題じゃないのです。そういうことからすれば、幾ら言っても、園田外務大臣はやぶからヘビを出すようなものだというふうな御答弁で、この文書そのものがあることはお認めになるけれども、出すことに対しては非常に消極的。当委員会としては、いまその委員長の席にお座りは外務委員長ではありませんが、ひとつ、当時の岸信介元総理を初め藤山愛一郎外務大臣、山田久就当時の外務事務次官、東郷文彦当時の外務省安全保障課長、それぞれの方々に国会に参考人として来ていただいて、事情聴取する以外にないのです。証人喚問をひとつ委員長に強く要請をして、これを外務の場所に持ち運びたいと思います。委員長、了承してくれますね。
  193. 江藤隆美

    ○江藤委員長 後日、理事会において御協議を願うことにいたします。
  194. 土井たか子

    ○土井委員 いろいろ証人として国会に御出席をお願いして事柄を聞いてまいりますと、それはそれに先立って、やはりあるその文書というものを外に出すという苦労を外務省としてはしていただかなければ、これはおさまりがつきません。園田外務大臣、しつこいようですが、これは非常に大事なところなんです。政治的配慮が大事ということも私はわかる。わかった上で、しかし大事なときだから私はあえて言っているのです。御決断をお願いしますよ。いかがですか。
  195. 園田直

    園田国務大臣 御意見はわかっておりますので、よく検討いたしますが、これは困難であると考えております。
  196. 土井たか子

    ○土井委員 これはひとつ外務省に、というよりも外務大臣にお預けします。外務大臣がこれに対してどのようにあと対応なさるか。  さて、来年、国連の軍縮会議がまたありますね。この席にまだ園田外務大臣外務大臣だということを私は希望している一人でありますが、御出席をされるであろうと思います。前回のこの軍縮総会での演説の中には、国是であるということをはっきりとうたい込んで、非核三原則を鮮明に演説の中で述べられておりますが、今度はこの非核三原則の中で核の持ち込みについて、日本という国はいろいろいきさつがあってほかの国とは違う、この非核三原則のもとに、核の貯蔵も、配備も言うまでもなく、領空の通過、領海の通過、一時持ち込み寄港も認めないということを内容とした演説をひとつ全世界に向かってやっていただきたい。これは単にアメリカだけの話ではありませんよ。ひとつそのことを大臣に対して申し上げたいと思いますが、御所信をお伺いいたします。
  197. 園田直

    園田国務大臣 どうなるかわかりませんけれども、仮に私が国連総会まで外務大臣の職にあったとすれば、平素からの私の考えでもありますし、非核三原則について具体的に各国に理解を求めることは大事でありますから、いまの御発言は十分理解をいたして、努力をいたします。
  198. 土井たか子

    ○土井委員 もちろん、外務大臣も含めて、閣僚の中での最高責任は総理でございますから、総理がそういうお心構えということで私はお尋ねを進めているわけでありますが、総理としてもできる限りそういうことに対しては努力を惜しまない、できたら自分自身が国連の場に出かけてそういうことを全世界に宣明してみたいというふうなお気持ちをお持ちですか、どうですか。
  199. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この前の特別総会におきましても、園田外務大臣が明確にこの非核三原則、軍縮、これを提唱いたしました、また、ジュネーブにおける軍縮特別委員会等におきましても機会あるごとにその点を鮮明にいたしております、また明年ですか、国連においてそういう特別総会がありました場合には、日本政府としていまの非核三原則、軍縮、そういう面を天下に宣明をいたしたい、このように考えております。
  200. 土井たか子

    ○土井委員 非核三原則と口で言うことでなくて、中身が肝心なんですね。いま問題になっているのは、核の持ち込みについて、どういうことを持ち込みと認識するかというところで、アメリカ日本との間で理解の上で食い違いがあるということが実は一つの問題になっているのです。そういうことも御認識の中にきっちりおさめていただいて、日本としては核の持ち込みを一切許さない。認めない。その中身はどういうものか。それは総理が先日衆議院の内閣委員会で御答弁になったその中身を鮮明にされる、これくらいは必要最小限度だと思いますが、どうでございますか。
  201. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 土井さんのるるお述べになっておる趣旨は、十分私も理解をいたしております。
  202. 土井たか子

    ○土井委員 政府についてここまで言いますと、そういうことでありますから、国会の方もいままでは非核三原則について国会決議を四たび、しかもそれはそのとき、そのときに節があるわけですね。沖繩返還、さらには核兵器の不拡散条約締結、先ほど来問題になっている外務大臣国際連合軍縮特別総会に関する決議、そういう節々に国会ではいままで非核三原則に対しての国会決議をしてまいりまして、そして順を追って中身は今日に至るまで強化されてきています。当初は非核三原則を遵守するとともにという表現が、後に非核三原則が国是として確立されていることにかんがみとなり、さらに後には非核三原則を国是として堅持するわが国はと、順を追って強くなっているのです。私は、今回非常に大切な時期である、このように認識をする立場で、お互いの党で寄り寄り御相談のようでございますけれども、外務委員会の場所においても、非核三原則の核の持ち込みについて事前協議の対象になる、その中に領海通過、一時持ち込み、寄港を含むという意味も鮮明にした非核三原則がこの節非常に意味があるし、大切だと思われます。このことをひとつ外務委員会の方でも取り上げて、そして委員会決議にまで今国会会期中に持ち込む努力をそれぞれにもお願い申し上げているところでありますが、努力を尽くすということをここで鮮明に申し上げさせていただいて、時間が参りましたので質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
  203. 江藤隆美

    ○江藤委員長 高沢寅男君。
  204. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、きょうの午前中の石橋委員の質問、ただいまの土井委員の質問、これを受けながら、時間は三十分というわずかの時間でありますが、その中で関連をしつつ、またさらに総理、外務大臣防衛庁長官にお尋ねをしたいと思います。  それで、一番初めの問題は、実は淺尾北米局長のお答えにも関連するので、初め淺尾さんとのやりとりになりますが、総理、外務大臣もよくそのやりとりをお聞きいただきたいと思います。  ここにありますのは五月十一日の外務委員会の速記録であります。五月十一日といいますと、総理御承知の五月十日にアメリカからお帰りになった翌日の外務委員会でありまして、伊東外務大臣出席をいただいて、私どもも日米首脳会談共同声明についていろいろお尋ねしました。その際も当然「同盟関係」というものは一体何だということが最大の焦点になったわけであります。それでいろいろお尋ねをいたしましたが、淺尾政府委員のお答えの中でこういうふうな言葉がありますので、ここで一応読み上げてみたいと思います。  「確かに英語では「アライアンス」、片方は「同盟関係」というふうに訳しておりますけれども、ここで言っております同盟というものは、「同盟関係」と日本語で訳しておりますように、そこではいわゆる軍事的な同盟ということでなくて、日米が共通の価値観を分かち合っているということを念頭に置いて、日本語においては「同盟関係」という言葉を使っているわけでございます。」つまり軍事的な同盟ではない、こう言っておられます。  さらに、これも淺尾政府委員の発言でありますが、「これは、共同声明アメリカ側と実際にいろいろワシントンにおいて協議いたしました。その際に、「アライアンス」ということに書かれているその内容は、先ほど私が申し上げましたような意味でのアライアンスであって、即軍事的なものを含まないということは日本の認識であるということを先方に言い、先方もそういうふうに理解して結構であるということをやりとりした経緯がございます。」この場合の先方というのは言うまでもなくアメリカ側であります。  アメリカ側というのはさらに具体的に何だということになりますと、「この点について日米間で誤解があってはいけないという問題意識はまさに私たちも持っておりまして、共同コミュニケの作業をワシントンで集中的に行っている際に、在ワシントンのわが方の政務担当の参事官と、先方の国務省の国務次官補代理を含める責任者との間で、日本側の解釈は先ほど申し上げたようなことである、アメリカ側もそれで差し支えないということを何回も話をしております。」私、いま読みましたのは、いずれも淺尾北米局長のお答えであります。  総理も外務大臣もおわかりのとおり、この説明の中には、アライアンス、同盟関係には軍事的な関係は全くない、これが一つです。もう一つは、軍事的な関係は全くないということを先方、アメリカも十分に了解しておる、そういう上でつくった共同声明である、こういうお答えであったわけですが、きょう石橋委員の質問の中で、外務省官僚がそういう土台をつくって、その土台の上でただ踊ったにすぎない、総理、あなたはこれでいいのかというような実は御質問があったのでありますが、しかし、ともかく実際上、共同声明作成でアメリカ側の責任者と詰めた人が、ここまで詰めてつくったのだ、こういう御説明であったわけです。  したがいまして、ここで私はまず淺尾局長に、この十一日の外務委員会のあなたの御説明をもう一度、このとおり間違いないかということを念を押したいと思いますが、いかがでしょうか。
  205. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま高沢委員が御引用になりましたとおりでございますが、その御引用の中で、「いわゆる軍事的な同盟ということでなくて」云々というくだりがございます。さらに、その前の質疑応答を見ていただきますと、そこで軍事同盟というのは集団的自衛権の行使を含むような軍事同盟であるとか、あるいは攻守同盟、そういう意味ではないというやりとりがございまして、その後を受けて私の方から、いわゆる軍事同盟というのは攻守同盟あるいは集団的自衛権の行使を伴わないということを申し上げた次第でございます。  確かに、もう一つ御引用になりました、即軍事的側面がないというくだりがございます。これは私、いまから読み返しまして舌足らずであったという点は否定いたしません。ただ、ここで言っているのは、軍事的同盟という意味での軍事的な側面でございます。
  206. 高沢寅男

    ○高沢委員 当時の背景を振り返って考えていただけばわかりますように、この共同声明ができて、総理大臣アメリカにおける記者会見の中で、この同盟関係には軍事関係は全くない、こういう御説明をされてきた、そのお帰りになった直後という一つの背景があるわけであります。そうしてその後、今度はこれに対して外務省首脳から、同盟と言ったら軍事関係がないというのはそもそもナンセンスだ、あって当然だというようなことになって、その中で伊東外務大臣はおやめになったというふうな、こういうきわめて微妙にしてかつ重大な当時の状況の背景の中でなされた御答弁であるということでありますから、ここで舌足らずであったというようなお答えではちょっと済まぬのじゃないのか、私はこういうふうに考えるのでありますが、これはもう一度御本人に重ねて言ってもそれ以上のお答えは無理かもしれません。  この辺の関係について、まず外務大臣伊東外務大臣のおやめになったその後をあなたが受けられた。この当時はあなたは外務大臣ではなかったけれども、しかし、当然伊東外務大臣がやめられたその経過を受けて就任されたあなたとしては、この重大な政治問題を十分理解をされていま大臣の席におられると思いますが、この淺尾局長の御答弁について園田外務大臣はどのようにお考えになりますか、評価をお聞きしたいと思いますが、総理から答えられますか。じゃ総理からお願いします。
  207. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この「同盟関係」につきましての説明、これは伊東外務大臣外務委員会、安保特別委員会等で説明しておりますものを私、全部目を通しました。決して私の考え方と変わっておりません。と申しますことは、私は当初ワシントンで首脳会談が終わりました直後の記者会見で、記者団から、軍事的な意味はありますか、今度初めて共同声明の中に「同盟関係」という注目すべき表現を用いられた、軍事的意味はありますか、こういうお尋ねでございます。  私は、その際、直観したのでありますが、同盟関係という言葉を使ったことによって、国民皆さんは、これはえらいことになった、こう考えられるのではないか。つまり、個別的自衛権から集団的自衛権へ踏み出したのではないかとか、あるいは攻守同盟的な同盟、いわゆる軍事同盟に踏み切ったのではないか、こういうような疑問をお持ちになったのでは、これは大変なことである、こう私は直観的に感じまして、そこで私は、軍事的な意味はございません、こう申し上げたところでございます。  これは政治家としてそういうことを申し上げる。これが、私が条約局長であるとか、あるいは法制局長官であるとかいうことになれば——いままで日米安保条約というものがございますから、これも一つ日米関係の大きな基礎になっておるわけでございます。それから、自由と民主主義、そういう共通の価値観の上に長年にわたって築き上げられたところの信頼友好関係、こういうものを総体的に含めて同盟関係という言葉を今回用いたのでございますが、しかし、安保条約があるということは全然隠しおおせるものでもない、これは当然あるわけでございます。  そういうことからいたしまして、私はそういう意味で申し上げた。現在の安保条約、これはずっと続いておる。こういうものが存在するということであれば、軍事的側面は当然ある。しかし、前段で私が強調いたしたいと考えましたのは、そういういわゆる攻守同盟的な軍事同盟、あるいは個別自衛権から集団的自衛権への踏み外し、そういうようなものはない、つまり、現在の日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的意味はない、こういうことを私は申し上げたかった。これも舌足らずといえばさようでございますけれども、私は政治家としてはそういう信念を申し上げた、こういうことでございますから、御理解を願いたいと思います。
  208. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま総理から、自分の真意はもともとそういうところであった、こういう御説明があったのですが、私たちは、この同盟関係という言葉の中に軍事的な関係があったら大変だ、あってもらいたくない、あるべきじゃない、こういう立場ですから、本来なら淺尾局長の言われたようなその言葉どおりで当然あってほしいし、なければいかぬ、こう思うわけです。     〔江藤委員長退席、奥田委員長着席〕  それにしても、経過は、この点についての二転三転の経過があって……(鈴木内閣総理大臣「ないです」と呼ぶ)いや、現実には、少なくもアメリカが見てもそうでしょう。あなたはないと言う、外務省高官はあると言う、伊東外務大臣はやめると言う、いろいろなその経過が現にあったわけです。  そういう経過のあった場合に、先ほど私が読んだ淺尾さんのその外務委員会で述べられた中には、相手があるのですね。アメリカの国務省の国務次官補代理との話の中でこういうふうに合意しているということになってくれば、日本側が考え方、解釈をこう変えるということだけでこれは通る問題じゃなくて、先方の相手がある問題ですから、淺尾さん、あなたがアメリカから帰られた後、このことについて対アメリカ関係で、共同声明作成の経過との関連から何らかの話し合いをされたか、そういうふうな経過があるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  209. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 特にアメリカ側と共同声明についてその後話し合いをしたということはございませんけれども、マンスフィールド大使が伊東大臣を訪問された際にも、共同声明について日米の間で理解の差はないということを申しておりますし、また、共同声明が発出された後、先方の高官が二人、背景説明をしております。その中でも、同盟関係というものは、日本が理解しているとおり、日米間の広範囲な関係、もちろんその中には安保条約も含む、そういう背景説明をしているということからして、同盟関係について日米間で意見の差異があるというふうには考えておりません。
  210. 高沢寅男

    ○高沢委員 ただいまの総理の御説明の中で、新たな軍事関係を広げるようなものではないのだ、こういう御説明であったわけです。そういたしますと、これもきょう午前中の石橋委員のお尋ねの中で、日本の周辺数百海里あるいは航路帯は一千海里、こういう体制、しかもこの共同声明第八項で役割り分担の約束をしたということは、これはまさに新たな日米の軍事関係、その中で日本が新たな責任を負うということではないか、こういうやりとりがありました。  そこで、それに関連して防衛庁長官にお尋ねをしたいのでありますが、日本の周辺数百海里と言う場合、一千海里の航路帯というのは、グアム島の方面とかフィリピンの方面とか、新聞に出る地図で見ても、大体南西、南東に方向がいつも図で出るわけでありますが、そういたしますと、この周辺数百海里をもし北の方へとったら一体どこまで及ぶのか、西の方へとったらどこまで及ぶのか、その関係をここで防衛庁からしっかりとお考えをお聞きしたいと思います。
  211. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま周辺数百海里の範囲についてお尋ねがあったわけでございますが、これは防衛庁が海上交通保護のために防衛力整備の目標として考えているものでございます。  それで、わが国の周辺の海域は、先生御承知のとおり状況がまちまちでございますから、太平洋側、日本海側、機械的に数百海里ということではないことはもとよりでございます。したがいまして、ソ連とか朝鮮半島の領域とか領海を含むというようなことは考えておらないわけでございます。  北と南はどうかと言われますが、それぞれの状況に応じて数百海里の範囲でそれぞれ海上防衛力整備目標として考えている、こういうことでございます。
  212. 高沢寅男

    ○高沢委員 ソ連やあるいは朝鮮民主主義人民共和国、その領域や領海までこの中に含むと言ったら、これは大変なことになりますね。ですから、いま防衛庁長官はそこは含まぬと言われたけれども、しかし少なくも、たとえばソ連の領海のもうすぐ前、言うならば軒先、朝鮮の領海のすぐ前、軒先、そこまではカバーするのだというようなことに周辺数百海里といえばなるのじゃないのか、私はこう思うわけであります。そうなると、これはまた日本アメリカ役割り分担という関係でもってまことに重大な質の問題がそこに出てくる、こう考えるわけでありますが、この点、もう一度長官のお考えをお尋ねしたいと思います。
  213. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま長官からお答えいたしましたように、周辺数百海里と言います場合に、わが国の地形からしておのずから太平洋側なりあるいは日本海側なり東シナ海側で具体的な区域が変わってくることは当然でございますが、その場合に、いま先生から具体的な、朝鮮半島とかあるいはソ連とかというところに、領海ぎりぎりまで行くのかというお尋ねでございますが、これは、私どもかねて申し上げておりますことは、周辺数百海里、航路帯を設けた場合に千海里の海上防衛についての防衛力整備したいということを申し上げておりまして、ある一定のオペレーションのエリアとして具体的なものを考えて、ある区域を設定して、ここで作戦をするのだ、こういう意味である一定の区域を考えておるという意味ではございませんで、防衛力整備の目標をそこに置いておる、こういうことであります。  したがいまして、日本海側にしましても、東シナ海側にしましても、あるいは北海道周辺にしましても、実際のオペレーションをどうするかという話は別でございまして、必要に応じて海上防衛作戦は行われるということになると思いますが、区域としてあらかじめ特定の区域を決めておって、ここまでは常にオペレーションするのだ、そういうような意味の区域があるわけではございません。
  214. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま言われた区域をカバーできるだけの防衛力整備、これもきょうの午前中の石橋委員の質問で、それをやったらどれだけの予算が必要か、そのためには五十七年度予算防衛予算別枠でやるのかどうかとずっとお尋ねがあった問題で、私はこれ自体大変重大な問題である、こう思いますが、同時に、そういう能力を持ったとして、その持った能力で周辺数百海里、航路帯一千海里を日本の自衛隊はいつでもやれるぞというような力ができてきて、そしてこの共同声明ではアメリカとの関係におけるお互いの役割り分担、こうなってまいりますと、これはもう日本の自衛隊の本来の任務という役割り、質が明らかに変わって、この場合には日米の共同のいわば防衛体制、しかもその共同防衛体制は、安保第五条の日本の領域に攻撃があったとき、それを守るためのというこの枠を明らかに超えて、日本の周辺数百海里というこの区域における共同防衛体制ということになるとすれば、これはもう個別自衛権ではなくて集団自衛権である、私はこういうふうに言わざるを得ない。  これはもう安保第五条を明らかに超えておる。むしろ安保第六条の、アメリカが極東の範囲に出動していくというこの規定を日本の自衛隊も一緒にやるのだという、その問題になってきておる。今度の共同声明は、まさにそういう方向を確認し、アメリカと約束したというようなものになっておると私は思うのでありますが、この点は、長官、あなたの評価はいかがですか。
  215. 大村襄治

    大村国務大臣 共同声明をよく読んでみたわけでございますが、第八項におきましては、憲法及び防衛の諸原則に基づいてわが国の領域内並びに海空域において防衛力の一層の充実を図るということでございまして、憲法の個別自衛権、専守防衛、非核三原則、そういったものを踏まえての防衛力整備でございますので、集団的な防衛というものは当然除外されておるわけでございます。具体的には、「防衛計画の大綱」の範囲内で整備を行うものだというふうに受けとめている次第でございます。
  216. 高沢寅男

    ○高沢委員 憲法の、こういうまくら言葉を置けば何をやってもいいというふうなお答えだと私は思います。  きょう午前中の石橋質問でも、それじゃ日本の自衛隊の持つ飛行機の航続距離、足が伸びれば伸びたところまでやるというようなことじゃないかという御質問があったわけです。私は、今回の航路帯一千海里は、この次の段階は今度はマラッカ海峡まで行きます、これも日本憲法の自衛の枠で、というような話にどんどんなっておるというのが今度のこの共同声明の本質である、こう考えるわけであります。この点については、絶対にそうあってはならぬというかねての、われわれは政府とは立場が別ですけれども、少なくも政府立場でも、憲法の枠を超えない、専守防衛の枠を超えない、非核三原則を守る、こういう一線をもしまじめに考えるならば、今回の共同声明はもうその枠を超えておるというふうに私は考えますが、この点は防衛庁長官に答えてもらって、あと総理にお願いします。
  217. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  私は、憲法なりそれに基づく防衛の諸原則というものはまくら言葉ではないというように考えておるわけでございます。これを熟読玩味いたしまして、この防衛力の充実に真に適合した姿で進めるべきものと考えております。
  218. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 午前中に社会党の石橋さんに私、相当詳細にお話を申し上げたところでありますが、この役割り分担と申しますことは、日本の防衛及び極東の平和と安全というその対象に対してうたっておるわけであります。この役割り分担というのは、日本自体の防衛に当たりまして、在日米軍、駐留しております米軍と日本の自衛隊とが共同対処をする、そういう際におきまして、日米安保協議やガイドラインによって役割り分担や機能分担についていろいろ協議をしておる、こういうことが一つございます。  それから、極東の平和と安全という面につきましては、わが国が安保条約に基づきまして施設と区域を提供しておる、こういうことで極東の平和と安全のために寄与しておる。これも一つ役割り分担であるわけでございます。  それから、日本日本自体を守る防衛力以上のことは持てない。これは憲法やあるいは基本防衛政策に基づいて持てない。したがって、その他の政治的、経済的分野においてアジアの平和と安定、そういうために日本は大いに寄与しよう、こういうことでございまして、決してこれが集団自衛権になるとかそういうものではない。今度の共同声明はあくまで従来の憲法の精神並びに基本防衛政策の枠内のものであるということを明確に申し上げておきます。
  219. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう時間がほんのわずかでありますから次へ進みますが、ミッドウェーの問題です。  このミッドウェーは、アメリカの国防長官の発言によって、これ自体核のかさの役割りをするものである、どうしても横須賀へ入れる戦略上の必要がある、こういうことなんです。そういたしますと、土井委員が繰り返し繰り返し、この持ち込み、寄港、通過等は認めないという、政府は、そのとおりでございます、事前協議がありませんからないはずです、こうやってきましたが、もう総理大臣、あなたも、ミッドウェーは核兵器がないとお考えじゃないでしょう。あなただって腹の中では、あれは持っているに違いない、こうお考えになっておると思います。日本国民全部そうです。それが六月五日に入ってくるのです。入ってくるのだが、事前協議はないのです。私は、一体この事態がどれほど日本国民をばかにしたものであるかということについて、もう一度総理大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
  220. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私はまだワインバーガーさんのこの御発言の成文を入手いたしておりませんから、それを論評する立場にいまございませんが、空母ミッドウェーに核装備をしておる、こういうことをおっしゃっておるものではない、このように理解をいたしておるものでございます。  なお、私は、このミッドウェーの帰港の問題につきましては、横須賀の市長さんから政府に対して申し入れがございましたことも承知をいたしております。横須賀はかねてから航空母艦ミッドウェーの母港でございまして、いままで何遍かここに帰港したり出港したり、また休養をしたりしておるわけでございます。その後、ミッドウェーの装備等において変更があったということは私、聞いておりません。  ただ、いまのライシャワーさんの発言等によりまして横須賀の市民の皆さんも大変心配をしておる、市長さんもそれを踏まえてそういう延期の申し入れをされた、これは私、非常によくわかるわけでございます。したがいまして、政府といたしましてはいままでと変わらない、このミッドウェーが母港に入ってくることであるから、ライシャワーさんの発言はあるかもしらぬけれども、これはいままでと変わらないことであるし、ひとつ理解をしてもらいたいということで市民の御了解を得るように一層努力をしたい、このように思っておりますし、また、横須賀の地元の雰囲気なり世論なりというものにつきましても引き続いて私ども耳を傾け、よく調査もしてみたい、このように考えておる段階でございまして、空母ミッドウェーの入港を延期してもらいたいということを政府から米側に申し入れる考えはございません。
  221. 高沢寅男

    ○高沢委員 現地の市長、市長だけじゃありません、川崎の市長も神奈川県の知事もみんな同じことを要望されておるのです。しかし、あなたはこのミッドウェーの入港を認める、いまこうなっています。それは事前協議がないから核兵器はないはずだ、こういう論理で認めるということになっておりますが、私たちもこれからこのミッドウェーその他の核装備の実態の究明にさらに努力をいたしたいと思いますが、こういうものは生き物でありますからね、あなた方がないはずだと言っておるものが実はあったということが明らかになるという事態が私は必ず来ると思うのです。そういうときに、鈴木総理、あなたの責任のとり方、これは先ほど土井委員も尋ねました、一方、アメリカに対する責任のとらせ方についてのあなたの御所信をお尋ねをして終わりたいと思います。その御所信をひとつしっかりと聞きたいと思います。
  222. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非核三原則、これは国民的合意であり、国是にもなっておる基本的な政策でございます。政府におきましても今後とも誠実にこれを堅持していくという考えでございまして、いまそういうことがあり得るとは私は毛頭考えておりません。したがいまして、そういう考えていない問題について私から申し上げるということは差し控えますが、しかし、私が非核三原則の堅持を国民皆さんに対して誓約をしておる、これだけははっきり申し上げておきます。
  223. 高沢寅男

    ○高沢委員 終わります。
  224. 奥田敬和

  225. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この連合審査に当たり、質問のチャンスを与えていただきました諸先輩に敬意を表したいと存じます。  まず、総理に対して、困難をきわめた日米交渉に対してまことに御苦労さまであったと申し上げたいと存じます。事の正否あるいはその内容についてはいろいろ私も申し上げるところがあるわけでございますが、きょうは核の問題が主力になっておりますので、ここのところ日本外交は足並みが乱れているのではないかという批判に対して、私は総理の御所信を承りたいとまず思うわけであります。  私が先ほどから承ったところ、またその他の政府説明を拝見いたしましても、総理とおやめになった外務大臣との間には意見の相違はない、私はペーパーの上では御両所の意見が一致しておるのに驚いているわけでありますが、そういう状況であるにもかかわらず、手続上の問題、あるいはマスコミに対するレクチュアの問題、あるいは事前、事後の打ち合わせの問題等につき円滑を欠き、それが大きく報道され、わが国外交に対するリーダーシップがはなはだ棄損された感を抱かしめるものがあるわけであります。  私は、現在の日本の省庁がえてして、縦割り型の諸官庁でありますので、自分の所轄する問題についてはきわめて鋭敏な判断、責任のある執行が行われておるものとおおむね理解しておるわけでありますが、総理がそれらの諸官庁を統合し指導する場合に、とかく手が足らず連絡その他不十分であるというような事態がいままでにも見えたように思うわけであります。したがいまして、防衛庁長官が所管されろ防衛経費が何%というのが一々衝撃をもって語られるとか、あるいは外交問題に対する問題が一々総理と外務大臣と官房長官と通産大臣と複雑なニュアンスをもって語られるというようなことは余り賢明なことではなかろうと私は思っておるわけであります。したがって、総理のサイドにおいて新たなる構成を持つプロジェクトチームのようなものを考えられ、対外的な政策についてそうした機構を考えられるときが来たのではないかと私は思っておるわけであります。  それがアメリカ大統領府のようなものがいいのか、内閣補佐官を拡充したものがいいのか、政策マンを充実したものがいいのか、各省庁の連絡会議をもっと充実したものがいいのか、私はここで論評の限りではありません。少なくとも外交の二元性を避けること、また、多元化する国際的な判断、執行というものに対して統合的な戦略センターがあってしかるべきだ、その必要性は総理十分にお感じのことではなかろうかと存じます。今後の課題としてこの点お考えになってはいかがかと提言するわけでございますが、これについて総理の御見解を承りたいと思います。
  226. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 渡部さんから大変ありがたい適切な御示唆、御教導をいただきまして、本当に感謝をいたします。私は、反省を含めましていま渡部さんの御意見を伺っておったところでございます。  特に、このような多難な国際社会の中で、日本が世界の中の日本として今後外交を展開していく、しかも日本国際的な地位は非常に高まってきております、それだけに責任が大きい、そういう時代に入っておるわけでありまして、今後の日本外交というのはそういう意味わが国にとってもまた国際社会に対する影響という面から言っても非常に重大だ、このように考えております。  そこで、外交に対する諸般の政策というものが整合性を持って統合的に展開される、実施されることが必要だということは、私は御指摘のとおりだと思います。そういう意味合いで、私は、御承知のように就任以来、総合安全保障政策というものを提唱いたしまして、総合安全保障閣僚会議を設置いたしました。これはいろいろな重要な政策整合性を持ち、総合的な観点に立って対外的な施策を進めていこう、こういうことでございます。  渡部さんの御提案は。そのほかに行政的にも何か工夫が要るのではないかということでございますが、御意見等を参考にしながら今後の課題として研究さしていただきます。
  227. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、私は、非核三原則の問題について承りたいと存じます。  先ほど園田外務大臣は、下手なところを突っつくとヘビが出てくるというふうにジョークを交えておっしゃいましたけれども、われわれにとってはいまめんどうなことは、平和憲法のもとにあるわが国にとって、わが国民の大きな合意になった非核三原則というこの原則が揺れていることであります。それは外部の発言あるいは多くの事実によっても揺れており、そして、国民の感情の中でも揺れているわけであります。すでに七割の国民が、非核三原則にもかかわらず、核は持ち込まれているらしいということについて意見を表明されているところから見ても、そのことは言えると私は思います。ですから、大事なことは、討論の前提に当たって、非核三原則を堅持する、あるいは非核三原則に基づいて行政をこれから構築していく、対外折衝もそれになぞらえてやっていくという、まずその基本方針の明示だろうと私は思います。  外務大臣から伺いましょうか。私のこの意見について大臣はどうお考えか、端的にお答えをいただきたいと存じます。
  228. 園田直

    園田国務大臣 総理からもしばしば言われておりますとおり、非核三原則は堅持すべきであって、しかもこれはだんだんとわれわれは努力をしてこれを世界各国に確固たる日本の国の三原則として理解をしてもらう必要がある、そのために努力すべきであると考えております。
  229. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この原則を堅持するだけでなく、実態もまたこれに合わせて構築していかなければいかぬと思いますが、総理、いかがでございますか。
  230. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この非核三原則、これはもう先ほど来申し上げておりますように、国民の広範な支持の上に立つところの基本的なわが国政策である、国是である、こういう意味合いから、今後もあくまで堅持していかなければならない、こう考えております。そして、中身を強化するとかいうお話がございましたけれども、私は、今日までこの非核三原則についての事前協議の制度は健全に機能してきておる、このように考えておるわけでございます。これを国民皆さんにも、また国際社会に向かっても、わが国のこの非核三原則はあくまで堅持していくのだということを十分徹底をさしたい、こう思っております。
  231. 渡部一郎

    渡部(一)委員 せっかくの総理のお言葉ではございますが、私の方はいままでの公明党の核プロジェクトチームの調査により、日本国内に核はしばしば存在し、あるいはその重大な疑惑が存在したということを申し上げておきたいと思います。  まず第一番目に、ここに提示いたしましたのは、横田の空軍基地の消防勤務報告書であります。こう重なっておりますが、その中身は、現物はこういうものであります。この消防勤務報告書は、「ウィークリー・アンド・マンスリー・レコード・アクティビティーズ」と書かれまして、下に「フェデラル・サプライ・サービス」連邦政府補給部と入っております。  そして、その中で問題なのは、この消防の記号が一から27までついておりまして、その二十七の消防の記号について、何の事故が起こったかがこのレコードの中に全部書いてあります。だから、きょうはそういうことがあったらしいじゃなくて、ありましたということで申し上げられるのですけれども、この紙をまずちょっとごらんいただいておきまして、この中のナンバー26「ブロークン・アロー・エクササイズ」というのがここにございます。  このブロークン・アロー・エクササイズといいますのは、原爆事故の演習であります。この原爆事故の演習というのはときどきやるのはわかっておるのでございますが、どのぐらいのケースが行われておるか。この資料にありますのは、一九六九年の七月から七一年の六月まででございますが、まとめてこれを解読いたしますと、六九年の七月一回、九月に四回、十月がゼロ、十一月が一、十二月が二。七〇年の一月が二、二月が二、三月が四、四月が二、五月が二、六月がゼロ、七月が二、八月が二、九月が一、十月が一、十一月が三、十二月が一。七一年の一月がゼロ、二月が二、三月が一、四月が二、五月がゼロ、六月が一であります。これはこっちの方をまとめたものでございます。  このように多数行われておりますのは、緊急事態が起こった場合に何でも対応できるように、またこの部隊が日本以外に移動したときに対応できるように訓練しているのではなかろうかという答弁がすでにこれまで行われたわけでございます。ところが、この二年間で三十六回というような大きな回数というのはちょっと回数として多過ぎる、これは何か重大なことをやっておるのじゃないかと傍証的に思われるわけでございます。  そこで、私どもは一体何が起こっているのだろうということで、いろんなデータをあさってみたわけでございます。それで、結局ようやく入手をいたしましたのが、「テクニカル・マニュアル・トランスポーテーション・オブ・ニュークリア・ウエポン・マテリアル」核兵器物質の輸送に関する技術マニュアルであります。これを見ますと、どういうふうなケースに入れて、どういう形で運ぶかがここのところに克明に表示されております。  それからその次が、「デパートメント・オブ・ディフェンス・ディレクティブ」国防総省の核兵器の安全管理令であります。サブジェクトは「セキュリティー・クリテリァ・アンド・スタンダーズ・フォー・プロテクティング・ニュークリア・ウエポンズ」となっております。この中に、核兵器の倉庫というものが一体どんなものであるか大体書かれておりまして、警備の態様、フェンスのつくり方、軍用犬の置き方、照明の照らし方、そういったものが大体全部載っております。  それで、私どもとしては、きょうは時間がありませんからそれを一つずつ読み上げるわけにもいきませんが、後ほど政府の方にも表示したいと思いますけれども、こういうのがありますと、実際的にはまあ中身はわかってしまうわけですね。いままでわれわれが本当かうそかなどと言っていたものが、大体がっちりと、それは核倉庫ですということが言えるかと思います。そして、それはある意味日本国民の目の前に、遮蔽されておりませんから、こうしたものがあって、しかもなおかつ報道その他を通して、また直接の場合には、ある場合には肉眼で日本国民に触れているシステムというものは、核の持ち込みというニュアンスがきわめて高いわけであります。  それから、今度は傍証を少し申し上げます。  これは、沖繩の米軍の核弾薬庫の設計図であります。これはすでに廃棄されたものでありまして、沖繩が返還された後、この地域については核は取り除かれました。ですから問題はないのですが、この中を見ますと、幾つかのマガジンが掲載されております。ごらんになりますか。−まだあるのです。きょうはオンパレードでいろいろ持ってきましたから。そして、実際に返還のときに公明党の核プロジェクトチームに対して米軍は核倉庫を公開しました。そして、いまは核はございません、いままではこういうことで、ここと、ここと、ここにはございましたと言って、マガジンの中を全部公開してわれわれに見せました。そのとき、どういうのが特徴であるかを私たちに見せてくれました。これがその写真です。これがナンバー4です。これは消防のマークなんでありますけれども、核を含む倉庫にはこれがついております。中には核と同じような高性能の爆薬もこの4というのがついておりますから、多少この4の中にはいろいろなマークのより分けがあるのは事実ですけれども、この写真もこれがついております。これが二重フェンスであります。これが特殊な排気塔であります。そして、この写真がその全景であります。これもちょっとごらんに供します。  さて、こういういろいろな材料を集めた上、申し上げるのです。そして、ここには公開しておりませんが、核を見たという証言を集めてあります。私どもはその上で申し上げるのです。  そこで、横田の米軍基地におきまして、これは数年前の出来事でございますが、核兵器が存在したということが言えるかと思います。正確に言えば核倉庫が存在し、先ほど申し上げました米国側の資料に合致するシステムが存在し、そして、その中に高性能爆発物が存在していたと言い切ることが可能であります。そして、それが核倉庫であったということを、私の口からでなく証言する人を私は持っております。  その核倉庫のナンバーがこの写真、地図を写真に撮ってまいりましたが、4という字の書いてあったのを真っ黒に塗ってあるものでありまして、Tの一四八七あるいはTの一四八八の番号だと思われます。そして、その全体図面がこれであります。ここは赤で書かれてありますが、この部分にナンバー4のマークも存在いたしますし、二重フエンスも存在し、軍用犬もあり、探照灯もついており、その他こちら側のマニュアルで出てくるものは全部そろっておるということを付言しておきたいと存じます。  その後、この横田の基地はこの部分はどうなったかといいますと、在日米軍は弾薬貯蔵管理施設の修繕を開始いたしました。そして、いままでのような、上のところに土をかぶせたかまぼこ型と称するこういう倉庫ではなくなりまして、現在では平屋根のコンクリート建ての大型のもので地下にかなり掘り下げた倉庫に切りかわってまいりました。従来の十数棟分の機能力に匹敵するものになり、内蔵量も増大し、作業も合理化、近代化と申しますか、迅速化され、防護さくも非常に大きくなってきたというふうになっているわけであります。  私は、こういう事実について、たとえば最近報道あるいは問題になっておる岩国におきましても、同様の施設が存在しているということも付言しておきたいと思います。これについても調査の必要があると存じます。こういう国民の前に重大に言われているテーマでございますから、この内容をお調べいただくことが、またこれに対する対処をされることが必要ではないかと私は存じます。政府としてどうされるか、お伺いいたしましょう。
  232. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいま渡部先生から数々の核持ち込みの疑惑について御提示がございました。その中では、先生御自身が四十九年の外務委員会で提起されて、当時のアメリカ局長が答えておりますブロークンアローの訓練計画がございます。そのときのアメリカ側の回答は、これは核事故に対する対応能力をテストすることを目的とする訓練であるという回答を得ております。さらに、昨年の四月十一日にもそういうような報道がございました。それに対して在京米大使館からは、ブロークンアローという計画は実施されておらず、十日は横田基地の第四七五航空基地団が空軍災害対策規則にのっとりC141ジェット輸送機の事故を想定した通常の消火訓練計画を実施した、この種の訓練は少なくとも通常年二回行われており、いかなる兵器も包含されていない、こういうことでございます。  また、核弾薬庫につきましても、すでに国会等で疑惑が提案され、その際に政府として米側に照会し、回答を得て、その旨国会で御報告しておりますが、本日また改めて渡部委員の方からいろいろと御提示がございました。私たちとしてはその御提示の内容を見ましてこれを政府部内で検討し、あるいはその検討の結果、対米照会をするかどうかということを決めていきたいと思います。いずれにしましても、政府としては具体的事実に基づいての証拠の御提示については具体的な対処を考えていきたいと思います。
  233. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まことに申しわけないけれども、古い対米照会のお答えはこの際役に立たないのじゃないですか。というのは、ブロークンアローなんというのをやっていないというのは、これだけたぐさん書いてあるのですから。これはもう現地の消火隊を初めとする訓練のデータを出して申し上げておるわけですから、それは間違っていると言うしかないと私は思いますし、弾薬庫についても、マニュアルからプロシーデュアからシステムから、アメリカ側の資料を提示して私は述べておるわけですから、それを頭から否定もできないだろうと思うのですね。  私は、お立場が大変なことを察しながら言っておるのです。同情もしておる。こういうものの交渉のしにくいことはよくわかっておるわけであります。だからこそ、日本はいまからどういうようにこれに対応しなければならないか、かなり困難な問題になるだろうと思う。だから私は、この際、妙な答弁の応酬でこの場を荒らすことなく、深刻にひとつ御相談いただいて、非核三原則を守るにはどうしたらいいかという観点を外すことなく、それは外せば物は簡単です、そのかわり、日本は軍事大国になって、それこそ世界はすさまじいことになるだけの話になると私は思いますから、この立場を堅持してこれを守り抜き、そして何とか筋を通していくためにどうしなければいかぬか、資料の確認も含めて御照会なり米国との相談なり、全部含めて対応策を検討し、御報告をいただきたいと思うのですが、総理いかがですか。
  234. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 具体的または客観的な資料等をお示しの上で調査方を求められた案件等につきましては、外務省を中心によく検討いたしまして、なお必要があれば米側にも照会をする、そういう措置をとりたいと思っております。
  235. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうしたら今度は、この話はちょっと横に置いておきまして、最後にまたすごいことを言いますが……。  この間からライシャワーさんとか、ジョンソンさんとか、エルズバーグさんとか、またきょうの夕刊段階では国防長官の御発言とか、いろいろたくさんアメリカ側からお話がございますね。そして、そのアメリカ側の言っていることというのは、いままでのわが国の方向とかなり違う御発言が続いておるわけであります。まとめてそういうのに対してどういう見解でこれからやっていかれるのか、ちょっと承りたい。  というのは、ある部分は妙な答え方をするとかなり架空的話になり、それがアメリカへ打ち返され、また向こうが怒って言い返しという形で、日本はますますだめになっていくだろうと私、日本外交のために心配しているわけであります。  この質疑応答の前に私のところへ来られたある外務省の偉い方が、高官ではありません、むしろ低官の方でありますが、どんなことを言われても、われわれとしては鉄かぶとをかぶってこの連合審査を切り抜ける決意であります、それしかないとお国のために思っておりますと言っておられましたが、それにしても、これまでの外務省のせりふというのはよくないですな。後々論議を引きそうな話が多過ぎる。だから、このライシャワー発言とか、ジョンソン発言とか、エルズバーグ発言とか、かなり具体的でありますね。  たとえばエルズバーグさんというのは、LSTの六一年の岩国核持ち込みの件に関してがんがん言っておりますし、かなり信憑性の高い言い回し、マクナマラさんがどう言ったとか、その次の人がどう言ったとか、海軍さんがどう言ったとか、切々と語っており、それはテレビで中継され、日本国内にまで来ておるわけであります。また、ライシャワーさんがイントロダクションについていろいろおっしゃったのも入っておるわけであります。また、それを証言するかのごとく、自民党政府の大先輩である岸元総理は、イントロダクションについて当時は余り詰めておらなかった、これはライシャワー発言を上回る大原爆的発言でありますが、そう言われておるわけです。  また、下田元条約局長は、寄港や通過は、安保改定当時、事前協議の対象外だった、別に了解も必要としていないのではないかと言った。  また、木村元外務大臣は、三原則を守れるのは安保条約で核の抑止力があるためだという第四の原則があったが、国会決議で落とされ変質してしまった。  岸元総理は、安保改定当時、核装備艦船や飛行機による寄港、通過の問題は話し合っていない、寄港、通過があったかどうかは知らない。  ライシャワーさんのお話は、言うまでもなく、イントロダクションについて大平総理に日米の見解の差が広がっているので申し入れたところ、大平外相は「わかった」と答えた。わざわざ日本語でその部分「わかった」と発言している。「わかった」と答えている。そしてそれはうまくやってくだすった。  さて、一括しまして、ここは外交ですからたちの悪いことを考えておく必要がある。アメリカを信じておるのはいいが、信じられないときだってあるわけなのが外交なんですから、この際、日本側に非核三原則の問題について非核三原則に違反するものを山ほど突きつけて、日本側の非核三原則をつぶしてしまえという方向で言っておる可能性だって逆にある。日本に非核三原則を守らせておいて、非核三原則という上に日本外交政策を立てておいて、それを架空のものにうんと舞い上げてしまって神学的、哲学的な理論に追い上げておいて、実体的には核艦船をどんどん入れてくるというやり方だって向こうはできる。  また逆に、それじゃ日本側の言うとおり非核三原則を堅持しますというので、日本の防衛は知りませんよという大運動を起こすことだって可能なんです。選択肢はいろいろある。それが先ほど園田外相が言われた大ヘビ、小ヘビのたぐいなのかもしれない。正直言って、そういうことについてよく討議されておるのですかと私は言いたい。  ところが、この間から新聞紙上を通して、あるいは各委員会を通しての御発言を私は議事録で拝見しておるわけですが、同僚各位から熱心な御質疑が行われておる。それに対する応酬に熱中する余り、よく考えないで次から次へといろいろなことを言っておる形跡を感ずる。ばらばらだ。もうめちゃくちゃだ。きょう私が質問するので一番困ったのがそれなんです。どっちからどっちへ向かって攻撃したらいいのかわからない。何から何を守ったらいいのかわからない。どう思われますか。大臣各位、口を閉じて家へ帰って、そして顔突き合わせてもう一回相談し直した方がいいのじゃないかというのが私の率直な気持ちなんです。  だけれども、そうも言っておられませんでしょう。では、どういう戦略を立てるのか、どういうふうに応酬するのか、どういうふうに答弁をするかなんということはくだらぬことで、どういうふうにわが国の体制をこれから守り続けていくか。いま非核三原則は守りましょうということだけはわかりました。だけれども、ほかについてどうするのですか。そしてこれが単発ではない。本日のわれわれの質疑応答は、直ちにアメリカに報道され、ソビエトに報道されておるでしょう。両方の高官たちは必死になってそれを分析して見ておるでしょう。きょうの夕方にはある種の見解すら彼らば出すでしょう。その前でこんな粗っぽいのでいいのかと私は言いたい。  たとえば宮澤官房長官、令名ある日本外交の達人と言われておる人ですが、ライシャワーさんのことを指して、ライシャワーさんは少し古い年代のことだから御記憶が違うのではないかというふうに切って落とした。それならそれでいいと思いますよ。ライシャワーもうろく説で突っぱねる。それはいい。ジョンソンがしゃべった。ジョンソンもまたアル中じゃないだろうかというふうに言ったっていい。一人目はもうろくで切り抜けられたって、二人目はそれじゃきかぬじゃないか。そして、岸元総理の発言はどうなんです。岸元総理までお年を召したと言いますか。それじゃ説明はもう無理なんです。いまのジョンソンさんのアル中は撤回しておきます。これは言葉のあやで申し上げたので、本人がアルコール好きかどうか私は知らない。  どうでしょうか、総理、ここのところ、どうお考えになりますか。
  236. 園田直

    園田国務大臣 まず最初に、外交というものが足並みがそろっておらなければいけない、特に混乱した感じを与えるのはいけない、こういうこと、御指摘のとおりでありまして、ただいまは総理の方針のもとに外務省、官房、総理一体となって努力をしているところであります。かつまた、本件も当然でありますが、これをどういう方向に持っていくかということも、総理の御指示のもとに完全に足並みをそろえて努力をしておるところでございます。今後ともその努力はきわめて必要であると考えております。
  237. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はもうこれ以上聞くに忍びない。だけれども、政府がこの問題について何かを述べられるとすると、これに何らかの対応をする前によく打ち合わせることが必要だということだけは銘記していただきたい。そして、少なくとも本日のいろいろな応酬の中で出てくるような種類の、いままでここであったような答弁ではもう対抗できない、私、それだけは厳に指摘しておきたいと存じますし、総理、リーダーシップを発揮されてこの問題に対処していただきたいと思いますが、どうですか。
  238. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非核三原則を堅持する、その堅持するに当たっての具体的な対応、この問題につきましては、御指摘もございましたが非常に重要な問題でございますから、さらに一層私どもも研究し、努力をしてまいりたいと思います。
  239. 渡部一郎

    渡部(一)委員 最後に、私はもう一つ申し上げておきます。具体的にいろいろ御検討いただくということですから、これは大きい月報の中の一ページをコピーしたものですが、これを差し上げておきます。これは一九七二年の九月三十日の月報になっておりますが、その中で十九番という欄のマンスリーというところに、一とついております。これはヨギベアの事故が起こったことを示しております。このヨギベアというのはきわめて重大な事故のようでございまして、私はこの御研究をいただきたいと存じます。  私の方で言わせていただきますと、こうしたのはこれ一つではなく何回か起こっておるわけであります。七〇年の十二月にもう一息で核それ自体の事故につながるような大事故が横田であったという情報がございます。このヨギベアの内容については外務省に先日お尋ねをしましたが、御報告はございませんでした。米軍の用語のようでございます。もしそういうことがあれば私は重大な点であると思いますし、次回の審議のために御調査をお願いしたいと存じます。そして、私らの同僚議員、核プロジェクトチームの鈴切君や市川君や黒柳君等が検討をいたしておりますので、また申し上げさせていただきたいと存じます。私は本日この問題について指摘するにとどめますので、ぜひとも御調査をいただくように重ねてお願いして、私の質問とさせていただきたいと存じます。
  240. 奥田敬和

  241. 市川雄一

    市川委員 最初に、総理にお伺いしたいのですが、総理は先ほど来、日米安保条約における事前協議制は健全に機能しておる、こういうことでございましたが、日米安保条約における事前協議制が有効である、しかも今後有効たらしめていかなくてはならない、こういう御認識というか、決意が総理御自身にあるかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  242. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  243. 市川雄一

    市川委員 先ほどのやりとりで、米軍の核積載艦船による日本への寄港あるいは日本の領海通過がもし事前協議を無視してあれば、これは事前協議の違反、安保条約の違反である、こういう見解でございました。  そこでお伺いしますが、米国は一方では核の存否については言及しない、こういう立場をとられているようですが、この核の存否について言及しないという米国の立場は、日本政府としては米国の方針あるいは国是、軍事機密、どういうふうに受けとめておられるのか、これをお伺いしたいと思います。
  244. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ただいまお尋ねの、アメリカ政府が核の問題はアメリカの最高の機密であるということでその存否を明らかにしておりません、これは核の抑止力という点から理解し得るところであるというふうに考えております。
  245. 市川雄一

    市川委員 これは事前協議制と非常にかかわり合いを持った非常に大事な問題だと思うのですよ。アメリカ基本方針なのか、軍事機密なのか、法律によって禁止されたものなのか、一体その根拠を聞いていますか、どうですか。
  246. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 一つには、アメリカの国防機密という基本的な政策でございます。それからさらに技術的な側面をとらえれば、マクマホンという法律がございます。
  247. 市川雄一

    市川委員 これは外務大臣にお伺いしたいのですが、そういう核の存否については言及しないというアメリカ立場、これを日本政府は支持しておるわけですか、どうですか。
  248. 園田直

    園田国務大臣 アメリカのただいまおっしゃいました方針は、日本だけではなくて世界各国でやっていることであります。今日日本アメリカの核の抑止力に依存しておるわけでありまして、その核の存在を明らかにすることは抑止力を減少すること等からいっても、これはやむを得ないことだと考えております。
  249. 市川雄一

    市川委員 やむを得ないことだと考えているということは、要するに支持している、こういうふうに理解してよろしいですか。
  250. 園田直

    園田国務大臣 さようでございます。
  251. 市川雄一

    市川委員 そうなりますと、米国が核の存否について言及しないという方針を持っている限り、日米安保条約における事前協議は成り立たないのじゃないか、こういう指摘がたびたびなされているわけですが、この点については、外務大臣、どういうふうにお考えですか。
  252. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど申し上げましたように、アメリカは核の存否について否定も肯定もしないということでございますが、同時に、マクマホン法あるいはその他のいかなるアメリカ国内法も、正当な権限を付与されたアメリカ政府の官吏が事前協議に関する約束を履行することを禁止し、またこれを妨げるものではないという回答を、外務省はすでに昭和四十九年十一月に得ております。
  253. 市川雄一

    市川委員 事前協議に関してもう一つお尋ねしたいのですが、事前協議は確かにアメリカ側の行動についての定めでございますけれども、条約関係信頼関係に基づいてあるのだ。しかし、日本側がこれだけ核の持ち込みや寄港、通過についていろいろな形で疑惑が投げかけられている。日本政府アメリカ側のそういうことについて疑う権利というのは事前協議制には全くないのですか、どうですか。
  254. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは御承知のとおり事前協議の主題というものがございまして、事前協議の主題にかかわるものについてアメリカ側が日本側に提起してくるということでございます。したがって、アメリカ側から事前協議がない限り、政府としては、核の持ち込みは行われていない、あるいはその他事前協議に当たる事項は行われていない、こういうことでございます。
  255. 市川雄一

    市川委員 そういう前提でお伺いするのですが、イントロダクションも、あるいは日本語で言う持ち込みに日本領海の一時通過や寄港が含まれているのだ、こういう解釈は、安保国会以来、あるいは岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解以来、解釈に食い違いはないのだ、こう一貫してずっと御答弁されているようですが、その解釈まで本当に詰めたことがあるのかないのか。先ほども答弁を聞いておりますが、もう一度次の質問のためにお聞きしたいのですが、詰めたことがあると断言できますか。
  256. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、事前協議の主題にかかわる事項、特にいま委員から御提示のございました核の持ち込みにつきましては、岸・ハーター交換公文及び藤山・マッカーサー口頭了解、その二つの文脈上明白でございまして、その点に関して日米の間に了解の差異はないと考えているということを先ほど来申しているわけでございます。
  257. 市川雄一

    市川委員 淺尾北米局長内閣委員会以来、文脈上とか、文理上明白でございますと御答弁しているのですけれども、藤山・マッカーサー口頭了解を読んでも、イントロダクションとか持ち込みに寄港や通過が含まれるなんということはもちろん明記してないわけですね。明記してないから、苦しまぎれに「装備における重要な変更」というものを今度は持ち出してきて、これは在日米軍だけではなくて、一時的に日本の領域を使用する米軍も含まれる、だから一時通過も寄港も含まれているのだ、こういう解釈をしているわけですけれども、そういう解釈を日米間で詰めたことがあるのかどうか。日本が勝手に拡大解釈しているのか。いま日本側の言う解釈は日米間でちゃんと詰めたものなのかどうなのか、それをお伺いしているのです。詰めたことがあるということなのか。
  258. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 それは先ほど来御答弁いたしておりますように、「装備における重要な変更」の「同軍隊」というのは、在日米軍だけでなくて、米軍の中で安保条約、地位協定がかかわってくる軍隊ということでございまして、これは交換公文の中から非常に明白でございます。
  259. 市川雄一

    市川委員 交換公文から明白だというのはもう聞いているんですよ。そういう解釈を詰めたことがあるのかないのかということを聞いているので、御答弁にはなってない。ぼくは詰めてないのじゃないかと思うのです。  その一つの例を挙げますと、たとえば昭和三十五年五月六日、日米安全保障条約等特別委員会会議録によりますと、当時の高橋条約局長は、いわゆる核積載艦船が一時的に日本の区域あるいは施設を使用する場合、これは当然事前協議の対象ですねという質問に対して、「国際法上の一般原則として、無害通航というのがございます。インノセント・パッセージ、これは、そういう場合にはこの問題の対象ではないわけでございます。」したがって事前協議の対象にはなりませんという答弁をこの際したわけです。  同じように、三木外務大臣も、四十三年三月十二日の楢崎委員の質問に対して、すうっと通り抜ける、そういうときに領海をかすめる、核を持ち回ってはおるけれども持ち込みじゃないのですから事前協議じゃございません、無害通航の典型的な姿であって、事前協議条項にはかからない、こう答弁したわけですね。その約一カ月後ですか、国会でこれが問題になって、同じ三木外務大臣が、核積載船は無害通航ではありませんという見解を四十三年四月十七日に出す。  それからしばらくたって、九年前に行われたという藤山・マッカーサー口頭了解なるものが三月十四日、これは符節を合わして出てくるわけです。  ということは、安保国会においても、また当時の三木外務大臣が核積載船の領海通過は無害通航でございます、したがって事前協議の対象ではございませんと答えた、ということは、事前協議の対象となる核持ち込み、核持ち込みとしての領海通過と、いわゆる国際法の無害通航というものが区別されてなかった。区別されてなかったということをこの国会答弁が明らかに物語っておるわけですね。しかも、区別されないどころか、事前協議よりも国際法の無害通航権を尊重するのだ、優先するのだということを国会答弁しているのじゃありませんか。ということは、岸・ハーター交換公文、藤山・マッカーサー口頭了解以来、日米間に解釈が一致して詰まっていますなんということは言えないじゃありませんか。  その後の国会答弁でこういうことを言っているんですよ。事前協議の対象となる核持ち込みの領海通過と無害通航が区別されてない。区別されてないだけではない。無害通航を優先すると答弁をしている。これでも三十五年以来解釈が一致していたなんて言えるのですか。この事実をどう考えているのですか。
  260. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  三十五年の安全保障条約の国会の御審議の際に政府側が、藤山・マッカーサー口頭了解及びそれの根っこになります岸・ハーター交換公文ということで、「装備における重要な変更」というものの中に核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み及びそれらのものの基地の建設ということを言ったわけでございます。そこで、その際に政府答弁としてお答え申し上げておりますのは、いま以上申し上げたことに基づきまして、核の持ち込みはいずれにしてもすべて事前協議の対象になるのだというお答えを申し上げているわけでございます。  そこで、領海の無害通航に関してでございますが、これは市川議員もただいま御指摘になりましたように、その当時の安保国会におきまして高橋条約局長から、これは別なんだ、無害通航というのは古来国際法上海洋を利用する船の権利として打ち出されているものであって、無害通航に該当するような通過というものは別である、ただし、これは細かいことになりますけれども、通過の中にも無害通航でない場合があるではないか、そのものは当然のことながら事前協議の対象になるものだという考え方でいるわけでございます。     〔奥田委員長退席、江藤委員長着席〕 したがいまして、その間に何ら矛盾はないわけでございます。  そして、無害通航の考え方、これは昭和四十三年に領海条約の審議をいたします際に、無害通航についての領海条約第十四条で、無害通航の考え方ということにつきまして、当時だんだんと具体化され強化されてきましたわが国の非核三原則というものも考慮に入れまして、物理的に核の持ち込みに該当するものはもはや無害通航とは言えないという考え方を打ち出したわけでございます。したがいまして、その際には、三十五年以来考えておりました、国際法上の無害通航はよろしいのだと言っていたその無害通航も、核を持ち込む限り無害通航ではないということになったわけでございまして、これも非常に一貫しているもので、何らそこには矛盾がない。変わりましたのは、一般国際法上の無害通航に関する観念ないしは基準の考え方が変わったわけでございまして、核の持ち込みということについての政府考え方が変わっているわけではございません。
  261. 市川雄一

    市川委員 そこがまさにまやかしなんですよ。いいですか、問題になっているのは、核の持ち込み、その持ち込みの解釈として寄港、通過が含まれているのかどうかということが問題になっているんですよ。持ち込みが問題になっているのではないのです。持ち込みの中に、領海を通過すること、寄港すること、特にあやふやなのは通過ですよ、通過が含まれているのかどうか。  しかも、この安保国会での質問は、一般論として無害通航権を聞いているわけではないんですよ。安保条約の審議の中で、安保条約の事前協議の対象として米国の核積載船が日本の領海を通過する場合はどうなんですかと質問している。それに対して、そういう場合は事前協議の対象にはなりません、無害通航でございますと答えている。この事実は、三木外務大臣も同じことを答えているんですよ。ということは、国際法で言う無害通航権と日米安保条約の事前協議の中で言う持ち込みの対象になる、持ち込みに含まれる通過との区別が当時ついてなかったということを物語っているのじゃないですか。  区別がついていれば、おっしゃるように、三十五年以来もう核積載船は全部通過も寄港もだめなんだ、要するにそれは核の持ち込みなんだ、だからこれは事前協議の対象だし、ノーと言うのだということが、あなた方が言うように三十五年以来はっきりしていれば、どうしてこういう国会答弁が生まれてくるのですか。それでは、無害通航だけは別でございますという口頭了解でもあるのですか。そんなことはないじゃなりませんか。区別がついてないのですよ。無害通航と、事前協議の対象になる持ち込みの中の通過、区別がついてない。しかも無害通航はいいのだと答えている。いまごまかそうとしているのは、無害通航権にかかわる解釈の変更で逃げようとしているのですが、それはそうはいきませんよ。あなた方が区別がついてなかったというのは、国会答弁ではっきりしている。  したがって、私が申し上げたいことは、口頭了解では解釈の一致はなかったのじゃないか、詰めてなかったのじゃないか、こう思うのです。新しく日米間で、総理、日米間に食い違いがないとおっしゃるなら、これだけ疑惑を持たれているのですから、日本側の言う持ち込み、イントロダクションには通過も寄港も含まれるということを、アメリカも同じ解釈に立っていると言うなら、もう一度確認して国民に発表しても何ら差し支えないと思うのですが、総理どうですか、おやりになるお考えはありませんか。
  262. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど条約局長が御答弁したまさに三十五年、安保特別国会の中においても、無害通航に当たる一時通過は事前協議の対象にならない、しかし無害通航に当たらない一時通航については当たるというのを同じ政府委員答弁しているわけでございまして、その点については、三十五年の安保以来政府の解釈というのは一貫しているということをまず申し上げて、さらに午前中申し上げましたように、岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解で、すべての艦船の核持ち込み、イントロダクションという言葉であらわされている中で、寄港であれあるいは無害通航に当たらない一時通過であれ、これは事前協議の対象になるということでは日米の間にはもうすでに差異がないというふうに明白になってきていると政府考えておりまして、この際改めてさらに問い合わせるということを考えておりません。
  263. 市川雄一

    市川委員 要するに、核積載船で無害通航になるケースが当時あるとおっしゃるのですか。これは安保国会でちゃんと事前協議ということを前提に聞いているのですよ、この質問は。よろしいですか、高橋条約局長答弁の前提は、米国の核積載船が日本の領海を通過した場合、これは事前協議の対象になるのですかという質問なんです。それに対して、これは国際法で言う無害通航ですから事前協議の対象にはなりませんと、こう明確に答えているじゃありませんか。  したがって、無害通航と事前協議の対象になる持ち込みとしての通過との区別が当時の政府にはなかったということ、しかも、ないのみならず、無害通航権の方を優先させて考えていたということがはっきりしているのじゃありませんか。ということは、藤山一マッカーサー口頭了解、岸・ハーター交換公文にもそういう解釈は初めからなかったということがはっきりしているじゃありませんか。どうですか、これは。
  264. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは先ほど御引用になりましたところで、国際法上無害通航に当たる、これは事前協議の対象にならないということは確かに言っております。しかし、その後も読んでいただきますと、「領海を遊よくしたり、停泊したりしているということは、これは無害通航ではございません。」さらに、そういう意味で、無害通航でないという場合でありますれば、これは当然事前協議の対象になるということで、明白に無害通航とは何か、無害通航に当たらない一時通過とは何かということを当時の政府委員答弁しているわけであります。
  265. 市川雄一

    市川委員 だからその答弁の中身は、遊よくとか停泊は無害通航にはならないと言っているのですよ。いいですか。その答弁は私も読んでいますよ。遊よくと通過と停泊、こういう言葉を使っている。停泊と遊よく、これは無害通航に該当しませんと答えているのであって、あなたのいまの答弁はおかしいのじゃありませんか。通過は無害通航でございますということはあくまでも言っているのですよ。停泊と遊よくが無害通航ではありません、通過は無害通航でございますと言っているのですよ。どうですか、それは。
  266. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私の申し上げたのは、通過に二つの種類がある。一つは無害通航である。それ以外の領海を通る場合、ここで答弁しているのは、停泊したり何とかと、こういうことで、それはやはり通過という観念でございまして、いわゆる無害通航に当たるのは事前協議の対象にならない、それはいま言われたとおりでございます。
  267. 市川雄一

    市川委員 だから、いわゆる無害通航は事前協議の対象にならないというのですから、米軍の核積載艦が日本の領海を通過する、これはいわゆる無害通航ですから、事前協議の対象にならない、こういうことでしょう、どうですか。
  268. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいま市川委員が最後に言われました、核を積んでただすうっと通る、それが無害通航に当たる場合は事前協議の対象にならないということをお答え申し上げているわけです。三十五年以来お答え申し上げているわけです。
  269. 市川雄一

    市川委員 ですから、核を積載した艦船がすっと通るのは無害通航でございますから、事前協議の対象にならないということは、先ほどから指摘しておりますように、この答弁の基調にある考え方というのは、無害通航と、持ち込みとしての領海通過というものは区別されていない、あるいは区別されている——区別されていると言った方が正確でしょう、そのうち、いわゆるこの無害通航については、核を積載している艦船でも領海を通過していいのだ、こういうことですよ。  ところが、最近に至っては、三十五年以来無害通航を含めて、とにかく米の核積載艦が領海を通過することは、これはもう持ち込みに当たるのだ、持ち込みに当たるのだからそれはだめなんだ、こう答えているわけでしょう。三十五年以来そういう見解があるなら、何で三十五年の国会やあるいは四十三年の国会で三木外務大臣が、米軍の核積載船が領海を通過することは無害通航でございますので、事前協議の対象にはなりませんなんという答弁が出てくるのかということを聞いているのですか。
  270. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 どうもよく問題のあれが、私はあるいはまだわかっておらないのかもしれませんけれども、三十五年の安全保障国会におきまして、核の持ち込みは事前協議の対象になるということをお答え申し上げているわけでございます。ただその場合に、核を積んでもただ単にすうっと通っていくような無害通航というものは国際法上の無害通航権を行使するものであって、これは事前協議の対象になるものではないと言っているわけでございまして、その場合にそれを持ち込みと言うのか言わないのかというのは、これは私は言ってもいいし言わなくてもいい、どちらでもいいような問題だと思うわけでございます。つまり、要するに三十五年の当時において日本は無害通航というものを、沿岸において停泊するとか、あるいは蛇行するとか遊よくするとかいうことではなく、単に通過していくのは一般国際法上の無害通航権の行使である、それは国際法を尊重するという意味からよろしいのだという考えでいたわけでございます。  ところが、四十三年になりまして、やはり非核三原則という立場考えますと、単に通過するのであっても物理的に核が日本の領域に入るということは無害とは認められぬという考え方になったわけでございまして、そのとき以来は、それは当然のことながらもはや国際法上の無害通航権を行使する通航ではなくなったわけでございますから、そうすればそれが持ち込みと観念されて事前協議の対象になるという考え方になったわけでございます。
  271. 市川雄一

    市川委員 要するに、二つの点でいまの見解は問題があると思うのですね。一つは、核積載艦が日本の領海を通過する場合は、日本政府はいままでは無害通航と認めておりましたけれども、これは今後有害通航になりましたということをアメリカと詰めて了解を得ているのかどうかということが一つと、それからもう一つは、あなた方の答弁は、持ち込みの解釈として一時寄港も領海通過もその持ち込みという言葉の中に含まれます、通過も含まれます、この解釈は三十五年以来日米間で一致して、一貫してきました、こう答弁しているわけです。  ところが、それではその通過の中に無害通航だけは当時は入れてなかった、日米間の打ち合わせでは、無害通航だけは事前協議の対象にしないのだということを話し合ってあったのですか。それはどうですか。
  272. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 無害通航については事前協議の対象にならないということは安保国会当時から政府答弁しておりまして、アメリカ側もその点について十分に了解しているわけでございます。その後、四十三年、四十九年において、無害通航であっても常時核を装備している軍艦については無害通航に当たらないというふうに日本政府は解釈を領海条約との関係で変えたわけでございます。  それをアメリカ側が了解しているかどうかというのが次のお尋ねでございます。四十三年以降、アメリカ側は国会の論議を十分フォローしてその点は承知しておりますが、四十九年に政府統一見解を出しました際に、その後日を置かずして、日本側の無害通航に関する統一見解というものはこういうものだということを北米局から当時の在京アメリカ大使館に説明して、アメリカ側もその点については十分承知しております。
  273. 市川雄一

    市川委員 要するに無害通航までは詰めてなかったということ、そういう詰め方だったわけですよね。だから、三十五年以来解釈が一致しているというのはちょっとまゆつばなんですよ。これは再々いろいろな方から指摘されておりますが、その岸・ハーター交換公文の一方の当事者である岸元首相は、これは朝日新聞ですが、「日米安保条約の改定交渉の時には、核装備の艦船や飛行機による寄港、通過の問題は話になっていない。核を持ち込んで基地を造るというような、大所高所からの議論だった。」こう言っておるわけですね。  それから、藤山・マッカーサー口頭了解の一方の当事者藤山当時外相は、一番問題になったのは核兵器を陸に揚げることなんで、船に積んで領海を通るということまで当時詳しく日本側も交渉者として意識していなかったと思う、こういう証言がたくさん新聞に載っておるわけですね。あるいは持ち込み問題では藤山氏は、当時はもう陸上に持ち込まれなければ大成功と言うのはおかしいかもしれないけれども、まあそれが限界だったように思います、核兵器に対する私どもの知識から言えば。こういうことも言っておるわけですね。潜水艦の中からぽんと核兵器を打ち上げるというようなことは想定してなかったと思います、こういうことも言っておりますし、また一方のマッカーサー当時の大使は、私は通過の問題が言及されたという記憶はないと、はっきり断言しているわけですね。これは毎日新聞です。こういう当事者の話から見て、間違いなくこの解釈は詰めてなかった、こう思うのが私は常識だと思うのです。  ですから、これをはっきりさせるためには、岸元首相、あるいは藤山元外務大臣、あるいは関係者を国会へ参考人、証人いずれにせよおいでいただいて事情をお聞きする、これしかないのじゃないかなと思うのですが、委員長においてこの問題をどうぞお取り扱いをしていただきたいと思います。  そこで、横須賀のミッドウェー帰港の問題を総理大臣にお伺いしたいのですが、総理は、P3Cの厚木基地配備等々の問題のときに、再々にわたって、安保条約の有効な運営あるいは基地の運営については地元住民の十分な理解が必要である、市民の協力なくしてはできない、こうおっしゃっているわけてす。  昨日、横須賀市長は声明を発表した。それに基づいて外務省や米軍に申し入れをしたわけですが、この横須賀市長の見解を読んでも、「日本政府の一貫した「非核三原則」の順守に基づく一連の見解の表明にもかかわらず市民の疑惑と不安は現在解消されているとは言いがたい。」ですから、先ほどから何回も指摘されておりますように、政府幾ら非核三原則を守りますと言っても、いろいろな疑惑の証言の方が多い、したがって、この際そういう中でミッドウェーが横須賀に帰ってくるということは市民感情を著しく刺激し、また同時に、市長もここで心配しておりますが、多くの米軍人、軍属の家族が地元の横須賀市民とともに生活している、この地元レベルのよき日米関係も損なわれてしまう、こういう非常に現実的に考えた、かなり政府立場を配慮した声明文だと思うのですよ。こういう要請にもかかわらず、政府は全く米側に配慮をしないのですか、その点はどうですか。
  274. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ミッドウェーの問題につきましては、先ほどもお答えしたところでございますが、ミッドウェーは横須賀を母港として以前から使用しておるわけでございます。乗組員の家族も横須賀市民とともに生活をしておる、こういうことでございます。ただ、今回ライシャワーさんのような発言があって、それが日本国民並びに横須賀の市民の皆さんにも衝撃を与えた、御心配をなさっておる、これは私も非常によく理解ができるわけでございます。横山市長がそういう市民のお気持ちを踏まえて政府に対して入港延期方の申し入れをしてまいった、こういうことでございまして、私は、この問題は非常にデリケートな問題であると考えておるわけでございます。  ミッドウェーは、いま申し上げたようにいままでに何遍も入港もし、係留も停泊もしておったわけでございまして、これが装備の変更などがその後あったということを私ども聞いておりません。従前のとおりの姿で今度も帰港するものであろう、こう思います。  ただ、ライシャワーさんの発言等によって市民が不安を覚えておる、こういうことでございますから、政府としては市民の皆さんに、ライシャワーさんの発言についてはいろいろな見方がある、政府としては一貫して、こういうアメリカに対する信頼の上に立った事前協議制というものをあくまで堅持しているのだということで御理解も願い、説得もする、こういうことで当面努力をいたしておるところでございます。  米側に対しましては、いままでと変わらない、ミッドウェーが母港に帰ってくるということでございますから、米側に入港延期等を申し入れるということを考えておりません。
  275. 市川雄一

    市川委員 時間が来ましたのですが、あと一問。  先ほども出ましたけれども、ワインバーガー氏が、われわれは第二次大戦後、日本に対し核のかさを与える権利を持っておる、日本に対し核のかさを与える権利、そのような活動を可能にできるような関係を引き続き維持することを望んでいると言っておる、この文章を読みますと、ミッドウェーは日本に対する核のかさの一環である、同時に、米国の世界戦略上不可欠である、こういうことを明らかにしていると思います。ということは、ミッドウェーは間接的ながら核を搭載しているのだということを認めているのじゃないかと私は思うのですね。  何か証拠があればお問い合わせしますということでございましたが、ワインバーガー氏がこういうことをおっしゃっている。こういう問題がまた出てきますと、これは横須賀市民としてはますます疑惑、不安を強める。ところが日本政府は、アメリカを信頼している、事前協議の申し出がないからあれはないのだ、こういうことでは納得できないと思うのです。したがって、ワインバーガー氏が間接的にせよ、ミッドウェーは核のかさである、したがって、核を搭載しているということを言っておる、これはきちんとなさる御意思はございませんか、どうですか。
  276. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ワインバーガー国防長官の発言について、私たちはまだフルテキストを持っておりません。したがって、ここで有権的な解釈を申し上げる立場にございませんけれども、新聞等で報じられている限りで、ここで言っている核のかさというのは、アメリカが戦後以来日本に核のかさを提供してきた、権利という言葉を使っておりますけれども、そのために日本経済的に繁栄してきたということでございまして、ミッドウェーが核を搭載して日本に帰港してきているということを指しているわけではない。これは報道等の文脈上からもそういうふうに読むのが自然であろうと思います。
  277. 市川雄一

    市川委員 では、終わります。
  278. 江藤隆美

    ○江藤委員長 吉田之久君。
  279. 吉田之久

    ○吉田委員 いま公明党の市川さんからお尋ねのありました、今度のミッドウェーの帰港に伴いましてワインバーガー国防長官が、ミッドウェーは核のかさであるとはっきりそういうことをおっしゃっているわけでございます。そこで、いまこの時期にワインバーガー国防長官自身が、今度のミッドウェー帰港に際しましてはっきりとそういう表現を使われたということ、これは日本の今日の政治に対する痛烈な批判であり、あるいは一種のパンチを与えておる事実だ。決して空軍士官学校の卒業式に事寄せて五月二十七日に記者会見で言われたというだけではなしに、もっと重要な新しい今日的意味を含んでいると思うのです。  現に、いま外相も新聞をごらんいただいておりますが、その中でも丁寧に長官は、横須賀市民の気持ちはわかるけれども、しかしアメリカ日本に対して核のかさを与える権利がある、——この権利ということにつきましても外務大臣のお考え方を聞きたいのでありますけれども、権利がある、そう表現しておられます。しかも、ミッドウェーの帰港はそうした日本に与える核のかさの重要な一環である、こうおっしゃっているわけなんです。これは明らかに、だれが何と言いましても、いま北米局長が牽強付会な解釈をされておりますけれども、そんなものではないと思うのです。  先ほど総理は、直観的にいろいろ国民の動向を考えて、今度の日米同盟というものが決して軍事大国を意味するものではない、こう申したとおっしゃいました。そういう直観的な判断からいって、総理大臣は、いまそのワインバーガーのコメントに対してどうお考えになるか。彼がいまわれわれに何を言わんとしているのか、その辺をやはり真剣に受けとめてお答えいただかなければならないと思うのです。
  280. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ワインバーガーさんの発言という新聞報道、正式のことを私どもも照会をしなければならない、こう思っております。したがって、いまの段階でこれにコメントをするということは私、差し控えたい、こう思っておりますが、日米安保条約によりまして日本アメリカの核の抑止力に依存していることもこれは事実でございます。抑止力に依存しておるということは事実でございます。しかし、このミッドウェーが核装備をしているというようなことをワインバーガーさんが直接的に言っておるのではない、そういうようなアメリカの核抑止力ということによって日本の平和と安全が確保され、それが今日の日本の繁栄をもたらしておるということを強調しておられるのでございまして、私は、ミッドウェーについて直接云々ということを言っておられるとは受けとめておらないわけでございます。  しかし、これは成文を私ども手に入れませんと、詳細なことを論評することができませんが、いまのところ、私はそのように考えておるところでございます。
  281. 吉田之久

    ○吉田委員 もちろん、重要なことでありますから、きちんとした成文をごらんになってから十分協議して政府の態度を決めていただきたいと思うのですけれども、もちろんワインバーガー長官は、このミッドウェーが帰港しますが、ここに核を積んでおりますよという直接表現はなさっておりません。しかし、言うならば間接話法的に、いま日本でこういう論議をしているさなかにミッドウェーが入るけれども、これを中心としてわれわれはあなた方の国を核で守っているのではないかということだけは確かに言っているわけなんですね。これはやはり相当重要な意味が含まれていると思うのです。まして、先ほどからのいろいろな御答弁で、ラロックさんにしても、ライシャワーさんにしても、ジョンソンさんにしても、エルズバーグさんにしても、それはすでに過去の人だ、退役された人なんだ、一市民なんだ、政府皆さんがそう答えてこられました。しかし、ワインバーガー国防長官は、市民どころか、ばりばりの現役の一番責任者なんでしょう。その方がおっしゃっているということは、これはいままでの一連の発言や証言とはまた変わった重みと深刻さを持っている、重要さを持っているというふうに御認識いただかないと、これは日本のこれからの防衛や外交に重要な間違いを生ずる始まりではないかと思います。  したがって、先ほど総理は、ライシャワーさんが言われた直後、いろいろ横須賀市民の人たち心配だろう、心配なさるのはわかるけれども、この空母の寄港は在来どおりきわめて重要なんだ、了解してほしい、こうおっしゃっておりますけれども、きょうのこの新聞を見てさらに新たに横須賀の市民たちは、これはいよいよやはり核を搭載している可能性ある航空母艦ではないかという印象を、すいぶん持つと思うのです。持つなと言う方が不自然でございます。  そういう状況の中で、依然としてただ聞きっ放しでおられるのか、こういう事態の中でやはりアメリカに対して現在の日本世論の状況というものを説明されて、何らかの慎重なる考慮をひとつしてほしい、寄港そのものを否定するわけではないけれども、いろいろと気を使っていただかなければならない時期ですよというぐらいのことはおっしゃらないと、私は、総理は国民に対して責任を果たしておられるとは言えないと思うのです。
  282. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、先般日米首脳会談に臨みまして、そしてレーガン大統領を初めワインバーガーさんにも直接日本憲法基本防衛政策防衛政策は専守防衛に徹する、非核三原則を堅持する、そして近隣諸国に脅威を与えるような軍事力は持たない、こういうような点を相当強調もし、御理解を願ったわけでございます。  そういうようなことから、その私の意見に耳を傾けて理解を示しておったワインバーガーさんが、ミッドウェーが核を装備しているのだ、どうもこういうことが私には非常に意外であり、理解ができない、こういうことで、どうしてもこれは米政府に対して照会をし、成文を取り寄せてその辺を明らかにしなければいけない、このように考えるものでございます。したがって、いまの新聞の報道につきましては論評を差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  283. 吉田之久

    ○吉田委員 それでは、他の質問に移らせていただきます。  総理に明快にお聞きしたいのでございますけれども、今度の日米同盟関係、そしてあなたの共同声明、これを拝見いたしまして、私どもはいろいろな日米間のこれからの強い友好のきずな、そして共同の目的を達していくための多面的な関係そのものはよく理解いたしますが、そのもろもろの関係の中に当然軍事的側面も含まれると私どもは思うわけでございますけれども、いかがでございましょう。
  284. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 現在の日米安保条約、日米協力及び安全保障に関する条約が厳として存在をいたしております。これはわが国外交一つの基盤にもなっておるわけでございます。その限りにおきましては、私は軍事的側面があるということを申し上げておるわけでございます。  ただ、あのとき、あのアメリカにおける記者会見で、共同声明の中で今度初めて日米の同盟関係ということをうたい上げたのであるが、これに軍事的な意味はありますかと、こう聞かれたわけでございます。これは政治家として、日米安保条約を忘れておるわけはございません、私としては、いままでの日米関係の枠組みを変えるような新たな軍事的な変更はない、こういうことが頭にあったものでございますから、そういうことを申し上げた、私はその気持ちを国会においては申し上げておるのでありまして、決して外務省と私との間に意見の相違というものはございません。  現在の安保条約の個別自衛権を集団的自衛権に変えるとか、あるいはいわゆる攻守同盟的な軍事同盟になるとか、そういうものではないということを国民皆さんにはっきり御認識をいただくために、あえて軍事的な意味はございませんということを言った、これは確かに舌足らずでございます。これは法制局長官なり条約局長なり、そういう諸君が、それはいまの現行の安保条約が存在するのでありますから軍事的な側面はございますと言うのは、法律的にはそれが正しい。でありますから、国会におきましては、私も伊東君も、また外務省の事務当局も一致してそのように申し上げておるということを御理解をいただきたいと思います。
  285. 吉田之久

    ○吉田委員 今度の日米同盟関係によって日米間の軍事的諸問題が特段の激変をもたらすものではないということをあなたは言いたかったのだと思います。しかしながら、あれ以来のいろいろな御発言が非常に何かこうぐらぐらなさっているような印象を国民は受けました。あるいはそれが諸外国でもそのように受けとめられているとするならば、私は日本の今後の諸外国に対する、特にアメリカに対する信頼関係をぐらつかせることになりはしないかということを非常に恐れるわけでございまして、いやしくも一国の総理でいらっしゃるわけでございますから、一たん自分が声明したことに対して、ぐちめいたことをおっしゃったり、あるいは、国民心配を与えないようにという気持ちはわかるけれども、何か全面的に軍事的な面を否定されたような印象を残す発言をされたことは、大変私は遺憾に思うわけでありまして、ひとつ今後一層毅然たる態度で、あくまでも国民の平和と安全のためにその責任を果たすという立場を貫いていただきたいと思うわけでございます。  そこで、いまあなたは、その日米共同声明の中でソ連の脅威に対して対応するということを明確に表明されたわけでございますけれども、今日日本に対して、特にこの核問題を中心にいたしまして、ソ連がわが国に対してどのような脅威を与えようとしているのか、あるいは与える可能性があるとお考えになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
  286. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日米首脳会議におきまして国際情勢の分析もし、情報の交換もやり、そして認識の一致もいたしたところでございますが、それはソ連の引き続いての軍事力の増強、それを背景としたところのアフガニスタンに対する軍事介入、また第三世界への浸透、また極東における軍事力の増強や北方四島に対する軍事基地の構築、あるいはカムラン湾やダナンに対する南下、いろいろ客観的に見ましてソ連のそういう脅威といいますか、そういうものがあるわけでございます。そういう点につきましては、どうしてもこの際、西側の民主主義諸国が協調、連帯をして、そして世界の平和と安定のために、そのような力を背景とした第三世界等への進出、特にポーランド情勢等も緊迫をしておるということで、そういう問題について認識の一致を見た。そして、日米両国はその国力、国情にふさわしい、日本は軍事的には外に向かっては憲法の制約その他がございますからできませんが、その他の政治的、経済的、いろいろな面での世界の平和への寄与、貢献ということをやらなければいけない、こういう点についても意見の一致を見ました。国際的、世界的な視野におけるところの総合安全保障政策という理念、こういう問題につきましても私からも話をいたしたわけでございます。
  287. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、先ほど総理は、われわれ日本アメリカの核の抑止力に依存しているとおっしゃいましたけれども、この核の抑止力の中身でございますね、防衛庁長官にお伺いいたしますけれども、それはいわゆる戦略核だけでありますか、それともその他最近の戦術核あるいは戦域核、戦場核というものまでできているように聞いておりますが、それら全般を含むものでありますかどうか。
  288. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  わが国が米国の核抑止力に依存していることは申すまでもないところでございますが、その場合、戦略核のみかというお尋ねでございますが、わが国といたしましては、米国の総合的な核戦力によってわが国の安全は確保されるものと考えております。
  289. 吉田之久

    ○吉田委員 それはまずそのくらいにしておきます。  そこで、結局、先ほどからいろいろお話がありましたけれども、アメリカは、軍の最高の機密である核の存在につきましては、まして特にその配置等につきましては、これはなかなかに語れないはずでございますし、また、マクマホン法やあるいは軍のマニュアルによりましてもかたく禁じられていることだろうと思います。それは先ほど来政府も篤ど承知の御様子のようであります。にもかかわらず、核持ち込みの場合にはアメリカはそれを事前協議にかけてくるはずだということを一方においてかたく信じておられるわけでございますけれども、これはもともと一つのトリックになってしまっているのではないかという気がするわけです。  要するに、事前協議というものがあって、そして向こうは核を持ち込むときには事前協議を言ってくる、事前協議を言ってこないのだから核は持ち込んでいないのだ。もともと向こうは核の存在をはっきりできないわけでございますから、それを言わないだけでございますのに、わが方はいわゆる事前協議制というかきねをつくって、そのかきねを通るたびに核がどこかへ隠れてしまう、こういうトリックになっておる。  どうせ向こうは言いはしないのだから、われわれは非核三原則というものが国是としてある、その厳しさを、そしてアメリカに対応するあくまでも厳然たる態度をあらゆる機会にもっと明確にしようということで、だんだんと厳しい規定をみずから言い張ってきてしまっているだけではないか。実際は、事実上あり得ない事前協議制というものを隠れみのとして、国民に核がないということで世論を操作してきてしまっているわけではないか。だとするならば、私は明らかに、事実上核の持ち込みの既成事実化を図っていることと何ら変わらないと思うのです。先ほど来のいろいろな事実の指摘にいたしましても、あるいは今度のワインバーガーのお話にいたしましても、私は一連のこういう事実関係とそれとを考え合わせてみますときに、これは一つの巧妙なトリックではないかと思うわけでございますけれども、総理、そのようにはお考えになりませんか。
  290. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私はるる申し上げておりますように、非核三原則は、国民の大多数がこれを支持しておるところの基本的なわが国政策である、つまり国是である、このように考えておりますから、誠実に政府としては非核三原則を堅持していく、実効あるものとして努力をしていくということでなければならない、私はこのように考えておるわけでございます。
  291. 吉田之久

    ○吉田委員 わが国が非核三原則を国是としていることは、それは大変正しいと思うのです。しかし、向こう、アメリカの方が核の存在を明らかにしないというのも、ある種の国是に近いものだと私は思うのです。この国是と国是がぶつかってしまって、そして事前協議制というかきねをつくってさえおけば、いつまでたったって向こうは全然発表しないわけでありますから、わが国に核は持ち込まれていないということに形式上はなりますね。しかし、そんなことは現実にあり得るはずがありません。  私はその辺が非常におかしいと思うのですが、同時に、もしも向こうが特にいろいろ事情があって、核の持ち込みを事前に通告しなければならないという事態があり、そうしようとしても、わが国の方が事前協議があるときにはすべてノーなのだ、寄港も通過も全部ノーなのだということになってしまっているわけなんです。初めから答えがわかり切っているわけなんです。絶対に協議に応じてくれるはずのないこの事前協議制に、彼らが核を持ち込んでもよろしいかということを問いかけ、協議を発議することがあり得るだろうか。まさに向こうにとりましてはナンセンスなことになりはしないかと思うのです。外務大臣、この辺はどうお考えですか。
  292. 園田直

    園田国務大臣 非核三原則については、米国も日本の三原則は理解をして、これに理解を示すと表明しているところでありますから、ただいまおっしゃったようなことはないと考えております。
  293. 吉田之久

    ○吉田委員 国民が納得しないのは、それは双方にそう理解をし合ったことにして、実際は、うちは絶対言わないよ、うちは絶対入れませんよ、だから黙って入っていればいいんだなということに事実上なってしまっている。これはたまたまそうなったことであるかもしれませんけれども、結果的には政治的な、外交的な巧みなトリックに終わってしまっている、私はそう思わざるを得ないわけなんです。現に国民は薄々、そんなはずはない、何か持ち込まれているようだと思っているやさき、今度の一連のこうした証言や発言が続いているわけなんです。したがって、この時期に改めて事前協議制を本当に活用しようとするならば、いま日本の政治は何をなさなければならないかということを考えなければならないと私は思うのです。  そのことは、こういう日本の特殊な国柄でございますから、どうかひとつ、すべてをノーと言うわけではない、単なる寄港や立ち寄りについてはいろいろと慎重に考慮していただくことを前提として、さらに一度話し合ってみようじゃないか、あるいはいろいろ緊急避難の際等はやはり特殊な例外もあり得ることもあるだろう、よく検討してみる余地もある、だからひとつきちんと事前協議をしてくれないかという話し合いをしなければならないと思うのですが、そんな必要をお感じになりませんか。
  294. 園田直

    園田国務大臣 これはなかなか大変な問題でありまして、たとえば緊急避難の問題一つ取り上げてみましても、緊急避難というのは、これはしばしば想像できる事態ではありません。しかし、非核三原則の中で緊急避難の場合は別だなどということになりますと、それを利用して、緊急避難だ、緊急避難だといって着陸をして、非核三原則がなし崩しにされるという心配もあるわけでありますから、こういう問題はよほど慎重にしてかからなければならぬと考えております。  いずれにいたしましても、非核三原則を断じて守るという総理の方針わが国方針、これをあらゆる折に強化し、推し進めていくことが大事であると考えております。
  295. 吉田之久

    ○吉田委員 全く納得できません。総理、日米関係というのはそれほど信頼できない関係なんでしょうか。一たん緊急避難を認めれば今後は全部緊急避難だというかっこうで入ってくるおそれがあるといま外務大臣はおっしゃいましたけれども、それほど信じられぬ両国関係でございますか。
  296. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この非核三原則というのは、国会におきましても全会一致で支持され、政府に対して強くその実行を求めておるところでございます。また、国会の決議というものは国民的な支持の上にできておるということでございますから、政府としては厳格にこの非核三原則を今後とも堅持してまいりたい、私はこう思っております。
  297. 吉田之久

    ○吉田委員 堅持するのはわれわれも全く異存はないのです。異存はないのですけれども、万に一つどうしても入れなければならないというときも私はあり得ると思うのです。  たとえば、こんなことはめったにありませんけれども、アメリカの核搭載艦船が核ジャックされそうになった、事なきを得たけれども、異常事態だからちょっと寄港したい、このときは、この艦船が核を持っているということはもう世界じゆうに証明されるわけですね。にもかかわらず、乗組員の生命の安全のためにどうしても一時立ち寄りしたい、こういうことを申されたときに、それでもノーとおっしゃるのですか。
  298. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いろいろ緊急避難だとかいまのような例を挙げてのお話でございますが、これは吉田さんの御意見として伺っておきます。
  299. 吉田之久

    ○吉田委員 一つ意見として伺ってくださったようでありまして、伺ってくださった以上は、今後そういうこともあればどうしようということを当然いろいろと御検討なさることだろうと思います。そうでなければ、何のために聞いてもらったのか意味がないわけであります。  私は、そういう一つの仮定の問題ではありますけれども、国家の防衛というのは仮定の問題から始まると思うのです。いつ戦争があると決まっているわけではありません。しかし、もしも侵略された場合にはどうしようということから今日のわが国の防衛の組織があると思うのです。したがって、もしも万が一、そういう明らかに世界じゅうで核を持っている船だと認知されながら、かつどうしても入れさせてほしいというときにもなお、非核三原則があるから断じてだめですと、その核自身が全く使用の目的のかけらもないのにそれを拒絶するとするならば、私は日米同盟関係というのは非常に情のない、非情な同盟だと思うわけであります。  日昇丸事件、あのジョージ・ワシントン号が人命救助を怠った形で去っていったということに対して、日本国民は怒りに燃えております。その怒りに燃えている日本国が、そんなときにでもなお同盟国であるアメリカの乗組員を救おうともしないのかということは、私どもにはどうしても解せないわけであります。この辺のところは政府みずからが、そういう異例の場合にはどうしようということの検討を始められなければならないのではないか。私は、そういうことがあってこそ初めてこの事前協議制というものが本来の意義を持ち、機能を発揮することができると思うわけでして、そのことによって初めて日本国民は非核三原則の持つ重要な意義ということも確認できると思うのです。  そういう意味で、ただかたくなに、すべてノーだ、ノーとさえ言えばそれで国民は安心するだろうという考え方の時代は終わったのではないか。それは一つのフィクションでありまして、そういう手法によって国民をすべて納得させようとする考え方はいまみごとに破産してしまっているのではないか。そういう現状の中でどうするかということが問題だと思うのです。  そこで、お伺いしたいのでありますけれども、事前協議の交換公文の中で、核弾頭については事前協議されなければならない、これはよくわかりますが、先ほど大村長官にもお聞きいたしましたけれども、この核弾頭の核というのはおよそすべての核に該当するのかどうか。  私がなぜこんなことを聞くかと申しますと、ある専門家たちが申しますのには、戦略核は遠くから相手の大都市を攻撃する兵器でありますけれども、もしも日本の領海に敵が入ってきてしまったとき、そのときに戦略核をぶち込んだのでは日本が吹っ飛んでしまうわけでありまして、そういうときには当然、戦場核とか戦域核というものが開発されており、それが有効な一つの力を発揮するのだと聞いております。そういう人たち、専門家から見れば、そういう小型の核についても、もちろん認めるとは軽々に言えないはずでございますけれども、すべて同じように扱うべきかどうか、この辺は今後の一つの検討課題になりはしないかと思うのですが、いかがでございますか。
  300. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 事前協議の対象については再三申し上げておりますけれども、まさに核弾頭、それから中長距離ミサイルということでございまして、いま御指摘のものについては、これは核弾頭というふうに申し上げた方がいいのかと思いますが、したがいまして、わが方としては、核の持ち込みについては、それが弾頭であればもちろん核兵器でございますので、一切持ち込みはしないというのが政府方針でございます。
  301. 吉田之久

    ○吉田委員 その次に、核弾頭、それから中長距離ミサイル、こう書いてありますけれども、核弾頭を装備しない、装てんしない中長距離ミサイルは、これは事前協議を受けたときにはどうするのでございますか。
  302. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 中長距離ミサイルそのものは、その経済性あるいは精度等からして非核であるということは考えられないということでございますので、中距離ミサイルということはやはり核戦用ということで、私たちはこれは事前協議の対象というふうに考えております。
  303. 吉田之久

    ○吉田委員 その次に、先ほどもいろいろ質問がありましたけれども、いわゆる核を搭載している艦船がただ通過する場合、これは無害航行である、こういう解釈であったけれども、昭和四十九年、単なる通過の場合もそれはノーであると宮澤氏の政府統一見解の発言がなされて以来、それも通せないことになっているのだ、私どもはそう聞き、そう認識しておるわけなんですが、そういうことでしょうか。
  304. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  無害通航に対しますわが国考え方というものが変わりましたのは、昭和四十三年の三木外相の際に出されました政府統一見解がございます。したがいまして、核を積んで外国軍艦が日本の領海を単に通過していくのも、その四十三年の統一見解以後は無害とは認めないわけでございます。そういう時点は四十三年の統一見解以後ということでございまして、四十九年の政府統一見解ということではございません。
  305. 吉田之久

    ○吉田委員 それならば、一つ例を挙げてお聞きしたいわけでありますけれども、これも望まないことでありますがもしも不幸にして朝鮮半島においていろいろ動乱が起こった、そして同盟国であるアメリカから韓国に対して核搭載の航空機が日本の上空を通過していく、それが明らかなときに、これに対してはどうなさいますか。
  306. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これはすでにどちらかの委員会答弁が出ておりますけれども、核搭載機の領空の通過、これも事前協議の対象でございます。
  307. 吉田之久

    ○吉田委員 ただ通過していくわけですから、それをどうやって事前協議するのでしょうか。  防衛庁長官外務大臣、その航空機が通過していく場合に、しかも韓国救援のために核を搭載していく、そのことはすでに明らかである場合に、それをどうして食いとめるのですか。また、食いとめなければいけないでしょうか。
  308. 園田直

    園田国務大臣 これはいま事務当局からもお答えしましたし、非核三原則の堅持という点からいっても明瞭になっている点でございますから、これはいささかの疑念もない、こう思います。
  309. 吉田之久

    ○吉田委員 時間が参りましたので質問を終わりますけれども、ただ、非核三原則堅持だとそれさえ言っておればすべて事はそのまま、国民の前に澄まし込んで何事もなかったように終わるんだ、そういう考え方、そういう説明の仕方をこれ以上今後も続けていかれるということは、最も大事な非核三原則そのものを国民が全く信頼しなくなるということを私どもはおそれているのです。  ですから、いろんな場合を想定し、こういう場合には協議する、こういう場合にもいろいろといまから検討しよう、だから事前協議をしてほしい、そして、お互いに日本の特殊事情というものも知って、日本が核の影もない領海である、領空である、領土であるということを世界に鮮明にしたい、こういう強い意思と目的を達する政治の指導でないと、ただ十年一日のごとく、三十年、四十年、今後とも非核三原則があります。事前協議がありませんので何ら核は持ち込まれておりません、このようなことばかり言っておられるとするならば、やがてわが国政府は詭弁を弄するソフィスト集団にすぎないというふうに国民は判断すると思うのです。  特に総理にそのことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  310. 江藤隆美

    ○江藤委員長 渡辺朗君。
  311. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 吉田議員の後を受けまして、お尋ねをいたしたいと思います。  総理が訪米からお帰りになりまして、その後一連のさまざまな事態が起きました。これにつきましては、実は内外の新聞にも大きく報道されております。中には、その論調の中で、こういうことによって日米間の亀裂が生じるのではあるまいか、あるいは信頼関係が揺らいでいくのではあるまいか。そしてまた、外国の新聞を見ておりましたら、こういうことすら言っていて、私はまことに残念に思いました。それは、日本の記者クラブかどこかでのお話のときに、総理に向かって、うそつきという言葉すら使われた、一国の総理に対してそのような言葉が使われるというのは、これは珍しいことだ、そんな記事が海外の新聞に出ている。まことに残念に思います。  私は、総理は非常に苦労しておられると思う。そうであるならば、ここでそういう言葉が使われるような、あるいはそういう記事によって日本の国のイメージがダウンするというようなことになっては断じてならないし、私は、率直な意見をもっともっとおっしゃっていただいて、悩んでおられる——いまも質問者でございました吉田議員とも、実はどのような姿勢で御質問をしていこうか、協議したのです。そのときに、せめてここでいまの虚構の上に虚構を重ねていくような御返答をいただくのではなくて、国民とともに、いまむずかしい問題にぶつかっているのだから、一緒に考え、一緒に悩んでいるそのお姿をぜひひとつ示していただこう、これを示していただくことによって、言えないこともあるだろうし、われわれはそれは理解しようというような話し合いも実はしてまいりました。  そういう気持ちで、いま日本国民が政治に対して不信感すら持ち始めている、非核三原則日本国民の悲願です、これが揺るぎ始めているということをはだで感じています、こういった問題に対して、総理あるいは関係閣僚の方々の率直な御意見を聞くことによって、国民の中に真実を、あるいは一緒に悩んでいく、考えていくその姿勢を打ち出していただきたい、こういう立場から質問をさしていただきたいと思います。  さて、第一番目に、私、どこからこういう国民の不安感、不信感がいま出てきているのであろうかということを考えるとき、一つには、わが国の非核三原則日米の事前協議制、こういったものにつきまして日本アメリカの解釈の仕方が違っているから、そこから出てきているのじゃあるまいか。違っているのを無理につじつまを合わせようとすること、これがほころびるところに不信感が出てきたのではあるまいかという気持ちを私は持っております。  たとえばアメリカ側のラロック発言、あの問題が起こった後、そしてまた、今日の核持ち込み問題がいろいろ論議されている、このことにつきまして、総理は、アメリカ側の元高官による核持ち込み発言、そういったものについてはあくまでも伝聞に基づく一私人の発言として扱っておられる。そしてまた、ラロック発言に関連して当時のインガソル国務長官代理が示した見解、これを確認したから、事前協議については改めていまさら確認するつもりはないのだということを繰り返し言っておられます。  しかし、インガソル国務長官代理が当時の安川大使でございましたか、それにお示しになった見解、この中身を読んでみますと、これは佐藤・ニクソン共同声明の第八項を引用しております。その八項では、日米安保条約の事前協議について、実は私、大変気になる言葉がございます。この解釈については、これはむしろ条約局長アメリカ局長に先にお尋ねをしたい。後で総理にも御見解をお聞きしたいと思いますが、この事前協議について八項のところを引用して、こういうふうに書いてある。  「総理大臣は、」佐藤総理大臣は、「核兵器に対する日本国民の特殊な感情及びこれを背景とする日本政府政策について詳細に説明した。これに対し、大統領は、」当時のニクソン大統領は、「深い理解を示し、」そして「日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府立場を害することなく、」ここでございます。「沖繩の返還を、右の日本政府政策に背馳しないよう実施する旨を総理大臣に確約した。」たとえばここでなぜ「米国政府立場を害することなく、」という言葉が挿入されてきているのか。  ここら辺は、英文で読んでみると——私は英語は余りよくわかりませんから、アメリカ人に読んでもらいました。そして、口語体に訳してもらいました。ここは「ウイズアウト・プレジュディス・ツー・ザ・ポジション・オブ・ジ・ユナイテッド・ステーツ・ガバメント」という言葉になっています。これを訳してもらいましたら、ちょっとこの解釈じゃないのですね。  というのは、私、外務省に聞けばよかったのですけれども、この間から共同声明の訳文を見ても、日本向けに訳しなさるときには水増しになって訳されて出てくるような場合が往々にしてあります。ですから、アメリカ人に一遍聞いてみました。そうしたら、確かに佐藤総理はこう言っておられるのです。日本国民が核兵器に対する特殊な感情を持っているということをるる説明しておられる。わかりましたとニクソン大統領は言った。だけれども、それはそれとして、自分立場を変更することなく、いいですか、自分立場を変更することなく、事前協議に対しては臨んでいきますよというふうな理解になってくるわけです。これをどのように御解釈になりますか。アメリカ局長でも、伊達局長でも、どちらでも結構です。
  312. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まさにそれは当時、沖繩返還のときに、第八項でございますか、共同声明の中にうたってあるところでございまして、そこで言っております「米国政府立場を害することなく、」ということは、その当時アメリカの高官が背景説明でも言っておりますように、事前協議の制度のもとにおいてアメリカは必要があるときに日本側に対して事前協議を申し入れることができる、そういう理論的な立場をそこで再確認したのだ、こういうことでございます。
  313. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ちょっと余りよくわかりませんね。もう一遍お聞きします。  この、アメリカ側の立場を害することなくというのは、これは権利を侵害せずにとか、あるいは既得権を侵すことなくとかというふうには読めませんか。
  314. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカ側としては、日米安保条約に基づいて日本側に対して必要があれば事前協議をする立場にございます。そういう立場を害することなく、ということでございます。
  315. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実を言うと、そこが問題なわけです。いま局長はそのように解釈されるのですが、そうではないのですね。どうも読み方によりますと、違ってくる。外国の人に読んでもらうと、自分たち立場あるいは考え方、権益、そういうものを損なわないような立場で事前協議に臨む、ということになってくる。これは水かけ論みたいなことになってしまいます。大変むずかしいところです。実はこういうところからいまの日米間に、事前協議の解釈そのもの、適用範囲についても食い違いが出てきているのではないだろうか、そう思うのです。もう一遍、伊達条約局長、どのようにお考えでございますか。その点はいかがでございますか。
  316. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 安全保障条約で定められました事前協議制度というものは、装備における重要な変更でございますとか、あるいは配置における重要な変更、あるいは戦闘作戦行動の際にその基地として日本の施設及び区域を使用するということについて、アメリカ日本に事前協議を申し込んでくるという一つの、先ほどの先生のお言葉を拝借しますれば一種の既得権と言えば既得権であろうと思うわけでございます。  したがいまして、沖繩の返還の際には、私の承知しておる限り、沖繩に核があったのかなかったのか、いずれにしましても本土並み返還ということが非常に問題になったわけでございまして、全部撤去するのだということが争われ、しかもそれが日本の言い分が通ってアメリカ側がそれを実施したということがあるわけでございまして、ただ、必要がある際には、アメリカ側はその事前協議の権利があるのだから、それでもって事前協議をすることがあるのだよということを、念のためにこの表現でもって、「米国政府立場を害することなく」という表現で入れたものであるというふうに解すべきだと思います。これは北米局長が御答弁申し上げたのを敷衍しただけでございまして、北米局長の見解と変わっているわけではございません。
  317. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは、もう一遍北米局長にお聞きしますが、当時の背景説明で、アメリカの高官が、というふうにおっしゃいました、その点をいまのように解釈していますということをおっしゃいました。実際にジョンソン国務次官の背景説明がございます。それによるとどう書いていますか。第八項は核問題についてであります。「第八項は、特別の事態にさいしアメリカがもし必要と認めれば日本協議をおこなうというアメリカの権利をきわめて慎重に留保しており、しかもこのことが核兵器に適用されることは明確であります。」と述べています。  その後がもう一つある。「第八項にいう協議は、日本の答がいかなる場合においてもつねにノーであることを前提としているわけではありません。」と背景説明に書いてある。これについてはどういうふうに御解釈されますか。
  318. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま委員がお読みになったとおりでございまして、その後に、それでは日本が拒否した場合にはどうするのかという質問がございまして、ジョンソンさんはそのときに、日本が同意した場合には核の持ち込みができる、こういうふうになっています。
  319. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、大変時間のないところでこれをやっておりますので、総理、こういうところにも解釈の食い違いが始まるわけです。また、私は、始まっているのではないか、特に事前協議制における核問題について、政府国内で説明しているものと米側の理解とでは違っているのじゃないだろうか、この問題かこれから尾を引いていくということになると大変だと思う。いままでもすでに尾を引いてきています。総理は、この点についてはどのようにお考えでございましょう。
  320. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 核の持ち込みにつきましての事前協議制のもとにおきまして、いままでるるお話がございましたが、先般の園田・マンスフィールド大使の話し合いにおきましても、ライシャワー氏のああいう発言でいろいろ国内でも論議がされておるという背景の中で、マンスフィールドさんがあくまで米側としては約束を誠実に守っていくのだということをおっしゃっております。私どもはアメリカのこの誠意ある態度をそのとおりに評価をいたし、今後も事前協議制、これに基づくところの核の持ち込みの問題、こういう問題ははっきりと規制をしていく、ノーと答えていく、こういう方針に変わりがございません。
  321. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 この問題はまた後でいろいろと触れさせていただきたいと思っております。先に進ましてもらいます。  もう一つ、いま日本国民が感じているギャップというもの、特に日本アメリカの間のギャップというもの、そこからまた不安というものが出てきているのじゃあるまいかと私は思うのです。それは、昭和三十五年に日米安保条約改定が行われた、それからすでに二十年間、それ以上たっています。その間に国際情勢も大きく変わりました。特に、ただいまも吉田議員の方からも指摘がありましたけれども、国際的な核戦力の体制あるいはまた核兵器の質、量、こういったものが大変な変化を遂げてきている。ところが、いま日本はこういう問題については、核抑止力については全部アメリカのかさのもとで、核を論じることもいたしておりません。アメリカだけに依存している。その依存されていると言われるアメリカの方は、この二十年間にやはり技術的にも大変に進んだものができてきたのではなかろうか。また関連して、他の国々も大変なものを開発しているのじゃなかろうか。そうすると、その中に置かれている日本国民は、一体何か行われているのかわからないままに、大変な核のかさの中に置かれていることになっている。昔の二十年前と違うのじゃなかろうか、こういう不安感であります。  たとえば先ほども吉田議員の方から防衛庁長官にお尋ねがありましたけれども、アメリカの何に核抑止力を依存しているのだという問いに対して、総合的核抑止力と言われましたね。総合的ということはどういうことなんです。何と何、どんなものが入っているのでしょう。もう一遍ちょっと言ってください。特にそれに関連して、極東地域における核戦力体制というものについて、概略ちょっと教えてください。
  322. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま渡辺委員から御指摘がありましたように、ソ連の軍事力がグローバルにも増強されまして、また、極東地域に相当な分が配備されたことは事実でございます。その中におきまして、先ほど吉田委員から、SS20とかバックファイア爆撃機とか、そういった新型の核兵器が極東に配備されておる、それに対する対応策はどうか、こういうお尋ねがあったわけでございます。そこで私から、わが国といたしましては、核抑止力は米側に依存することにいたしておりますので、お尋ねのSS20等につきましてもアメリカの総合的な核抑止力の中に依存しているのだという趣旨のことをお答え申し上げた次第でございます。個々の配備等につきましては、またお尋ねがあればお答えいたしたいと思いますが、全般的にはそのような考え方を持っておるということを申し上げた次第でございます。
  323. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ここでもう一つ防衛庁長官にお尋ねしたいのですけれども、いまここで核の問題を論じるということは、私は日本が核を持てとかそういうことを言っているんじゃないのです。核の問題について余りにも私ども情報が渡されていない、持たされていない、どう判断していいかわからない、だから不安が出てくるということをまず申し上げているのです。そうしますと、日本では防衛庁の中でちゃんと核戦略という問題について専門的に調査研究しておられるのですか、まずお聞きします。
  324. 大村襄治

    大村国務大臣 繰り返し申し上げますが、わが国としましては米国の核抑止力に依存することとしておりますので、自衛隊自身が核抑止力を保有するということは考えておりません。これは御存じのとおりだと思うのです。  調査研究についてどうしているかということにつきましては、政府委員からお答えいたします。
  325. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 ただいま長官から申し上げましたとおりに、わが方は防衛計画及び作戦としての核の研究はいたしておりません。すなわち、わが国の核戦略というものはアメリカの抑止力に完全に依存しておるわけでございまして、これはもっぱら調査関係の事務になっております。私どもといたしましても、できる限りの資料を集めまして、米ソの核バランス、特に極東における核バランスについてはできるだけ詳細にフォローしているつもりでございます。
  326. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 総理、いまのようなお話でございました。  総理、この間レーガン大統領とお会いになった際にも、ソ連のアフガニスタンに対する姿勢であるとか、あるいはポーランドの問題、軍事的な問題もいろいろ論議されている。だからこそ防衛の問題があそこで共同声明の中にうたわれているのだと思います。その際に、特定の国の名前を挙げて、ソ連の脅威ということが共同声明の中にも出ております。いまもお話があったように、ソ連には極東地域にバックファイアあるいはまたSS20が配備されたという問題も、防衛庁の方でも言っているわけです。そうすると、当然総理もそういう問題を踏まえて、これが脅威だからということで合意点が共同声明に盛られたわけでございましょう。いかがでございますか。
  327. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国際情勢全般につきまして、いろいろな角度から意見の交換がなされたわけでございます。その中で顕著な動向といたしまして、ソ連軍の引き続いての軍事力の増強、それを背景としたアフガニスタンへの侵攻、また第三世界への浸透、極東及び北方領土への問題、あるいはインドシナ半島に対する、カムラン湾であるとかダナンであるとか、そういうところに基地を設定するとか、いろいろな情勢分析がございました。いずれにしても、世界の平和と安定を確保いたしますためには、西側の民主主義の国々が協調し、連帯をして、そして世界の平和と安定のために協力していかなければならない。日本は、みずからの防衛はしなければならぬわけでありますけれども、外に向かって軍事的な貢献ということはできません。したがいまして、日本アメリカとの間におきましても、日本のこの国情、大きな経済力というものがございます。そういう点から、日本としてはもっぱら政治、経済あるいは技術、学術、いろいろな分野における世界平和への貢献、協力というようなことをやっていこうということについて意見の一致を見た、こういうことでございます。
  328. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま総理はおっしゃいましたね。レーガンさんともいろいろお話をされた、その際に、これは防衛庁長官も言っておられる、総理もたびたびいままで繰り返しておられる、核の抑止力についてはアメリカに全面的に依存するということですね。一朝有事の際の日本防衛ということを想定するから、核抑止力はアメリカに依存するというお言葉が出てきているのだろうと思うのですが、その場合のアメリカの軍事行動というのはどんなものになるのか、日本としては何にも知らされてないし、また、知る立場にない。  先ほどの防衛庁長官におかれても、防衛作戦としての核戦争、核抑止力の展開をどのようになどということは研究しておられないわけでしょう。そうすると、アメリカが何とかしてくれるだろうという漠然とした期待感だけではないですか。具体的にどういうふうなことをしてもらいたいのか、これはしちゃいけませんとか、これをぜひやってもらいだいとかいうようなことが何にも言えない状態の核抑止力論議あるいは日米同盟であり、核のかさのもとにということになってしまう、これが私は大変に不安だということなんです。国民はそこから不安感をいま持っているのです。この問題をどうしたらいいか。  私は別に、何かこうひっかけ答弁でもやってもらおうなどという気持ちで言っているのじゃないのです。本当国民の不安感がそういうところにいまあるのだ。あるならば、これに対して、一国を預かる総理としてはどういう姿勢で不安をなくしていくのか、核について特にどのようなお考えを持っておられるのか、私はもうちょっとはっきり言っていただいた方がいいと思うのです。  たとえば私、心配なのは、一私人の、竹田さんとおっしゃる前統幕議長、この方がおやめになったときの提言として、その中で、自衛隊も核は一切タブーだということにしております、したがって討論、研究もございません、こういうことを言っておられる。こんな状態で本当にいいのだろうかと、実は心配をいたします。私は、日本が核武装せいとかそういうことを言っているのじゃないことは再三繰り返します。非核三原則、核非武装日本、これは国民の悲願だと思います。しかしながら、日本の置かれている状況というのは、周辺に戦略ミサイルが、あるいはまた戦域核が、戦術核が何千何万と配置されている状況でしょう。その中において日本の安全はどうするのだ、総理、ここら辺をもうちょっと国民には語っていただきたいと思います。
  329. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日米安全保障条約、急迫不正の小規模の侵略に対しましては日本の自衛隊の力によってこれを排除する、しかし、核戦力等を背景としたような圧倒的な大規模な侵略に対しては、これはアメリカのかさの抑止力に依存するということになるわけでありますが、この点につきましては日米の揺るぎない信頼関係が何といっても基礎でございます。そういう際にアメリカ日本を救援するであろうかどうか、そういう不安定な、アメリカに対する信頼を持てないというような状態では、この日米安保体制というものは本当意味がないということになるわけであります。  そういう点につきましては、今回の首脳会談を通じまして、米側としてはそういう際においては責任を持って日本の防衛に当たる、また極東の平和と安全についてもプレゼンスを今後もきちっと持っていくのだ、こういうことも明確に言っておるわけでございます。  私どもは、みずから核武装するとかいうようなことは、日本民族の核における悲惨な体験等からいってこれは絶対にとらざるところ、この非核三原則はあくまで堅持していかなければならない、このように考えております。
  330. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 非核三原則の堅持、これは賛成でございます。  もう一つお尋ねしたいのですが、この間総理がレーガン大統領とお会いになったときに、米ソのデタントがやはり大事だと思うのですが、レーガン大統領からSALT交渉を再開するというような話はなかったのでしょうか。  私はなぜこんなことをお聞きするかといいますと、つい最近、レーガン大統領とシュミット西ドイツ首相会談がありました。それを見ても、一方にヨーロッパにおける戦域核を配置する、同時に米ソ間のヨーロッパにおける軍備削減交渉を早急に開催する、大変矛盾した話ですけれども、これを同時に進めるという話し合いをやっておられる。つまり、よく言う片手に剣、片手にコーランとでも言うのでしょうか、そういう姿勢が安全保障だと思うのです。恐らく総理が大統領とお会いになったときも、そういう意味では、総理のいままでのお考え方をお聞きしますと、当然国際緊張緩和のためにこういうことをしよう、あなたはやりなさいということを言われたに違いないと期待するのです。その点、どういうお話をされましたでしょうか。
  331. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 共同声明にも明記いたしておりますように、軍縮、軍備管理、このことを国際的にも、また現実の事態を踏まえながらこれに向かって努力をしていかなければいけないということを日本側として強く米側に求めたわけでございます。その際に、いま渡辺さんからお話しになりましたようなNATOに対する戦域核の配置の問題、しかしNATO側としては、いまデタントが平和存立の問題でございますので、米側に対して年内にもSALTの交渉に入ってもらいたい、こういう話が出ておるということも伺っておるわけでございます。私どもは、この米ソを中心とする核戦力の均衡の上に立っている、しかし、バランスをとりながら徐々にこれを縮減していく、圧縮していく、低位に抑えていく、そういう努力が今後なされなければならない、そういう観点で私どもも共同声明の中にあの点を強くうたい上げたわけでございます。
  332. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間もなくなってしまいましたので、残念でありますが、これをもってやめざるを得ません。ただ、最後に総理にもう一度だけ要望をさせていただきたいと思います。  近々、総理は訪欧もされるようであります。続いてオタワ・サミットあるいは南北サミット、これも待っております。そういう中において、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、各国首脳と率直に話し合ってくるということでは困るのです。これは確固とした戦略、平和戦略をお持ちになって、ぜひとも日本の国是を向こう側にもわからせる、特に非核三原則もわからせていただくと同様、日本の経綸抱負を総理としてお持ちでございましょう、平和戦略を大いに説いていただきたい、これを要望させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  333. 江藤隆美

    ○江藤委員長 午後六時十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後五時五十七分休憩      ————◇—————     午後六時十三分開議
  334. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き連合審査会を再開いたします。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。金子満広君。
  335. 金子満広

    ○金子(満)委員 核持ち込み問題は、国会の審議を通じてだけでなくて全国的に大きな政治問題になっていると私は思います。この核持ち込みの疑惑を晴らすことは国会に課せられた大きな責務であると同時に、政府はみずから先頭に立ってこの事態を解明し、国民の前にすべてを明らかにしなければならないと私は思います。  核兵器の持ち込みの問題については、ライシャワー発言だけではなくて日本の元総理、外務大臣あるいはまたわが党の調査によってもその事実が明らかにされてきました。核兵器が持ち込まれているというこのことはもう隠すべくもない事実だと私は思います。少数の人を短時間だましておくことはあるいは可能かもしれませんけれども、数百万、数千万の人々を長期にわたってだまし続けることはとうていでき得ないことだと思うのです。率直に申し上げて腹芸とか以心伝心というようなことが余りにも政治の中に多過ぎると私は思うのです。こういう点で、具体的な質問に入る前に幾つかまとめて、これまでも言われたことでありますが、総理に確認をしておきたいと思うのです。  第一は、わが国の領土、領海、領空にはいかなる形においても核兵器を搭載した艦船、航空機の乗り入れ、入港は許さない、持ち込みは許さない、これが第一です。それからもう一つは、事前協議をかけられた場合は平時であれ有事であれ一切ノーと答える、これが第二です。第三番目は、そうした上に立って非核三原則を厳守する、遵守する。こういうことをいままで言われてきたようでありますが、この三点はまず確認できることだと思いますが、いかがですか。
  336. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま御質問がありました三点につきましては、わが党内閣が今日まで堅持してやってまいったところでございまして、今後におきましても、政府においてその三つのいま御指摘になった点、これは誠意を持って堅持してまいる考えでございます。
  337. 金子満広

    ○金子(満)委員 いまの言葉が真実かどうかというのは、私はこれから具体的に質問をいたしますが、それに対する答え及び今後展開されるであろうさまざまな事実がこれを明らかにすると思うのです。  まず第一の質問でありますが、今国会でわが党の不破書記局長が、一九七五年二月に五日間、沖繩の嘉手納の基地に核爆弾B61が持ち込まれたということを米軍の資料に基づいて明らかにいたしました。新聞の報道によりますと、外務省はこの点について米側に問い合わせたと言われますが、どんな内容をどういう期限つきで問い合わせたかどうか、その点を端的に伺いたいと思います。
  338. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 政府としては、従来から御説明しておりますとおり、核兵器が事前協議なしに持ち込まれているというふうには考えておりませんけれども、先般不破書記局長の方から、沖繩におけるB61の整備計画について具体的な資料をもって御提示がございました。そこで、早速政府としてはアメリカ側に対して、このB61の整備計画の文書は何を意味するのかということについて照会をしております。まだ先方からは返答は参っておりません。
  339. 金子満広

    ○金子(満)委員 期限はつけましたか。
  340. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 できるだけ早くということで要請しております。
  341. 金子満広

    ○金子(満)委員 この種の問題は、ポラリス潜水艦の当て逃げ事件のときもそうでしたし、今回もそうですけれども、非常に簡単でそう時間のかからないものが、なるべく早くというのが延び延びに延びているわけですから、当然きょう連合審査があることはわかっているわけで、しかもホットラインがあると言われる時期ですから、私は早急にこれをしてもらう、出してもらう、今後はこういう大事な問題については期限を切ってやってもらいたいと思うのです。そういう点、期限を切るということはどうですか。
  342. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは事実の究明ということを急ぐということは私たちも同じ立場でございます。ただ、相手があることでございますので、いつからいつまでという期限を切る、これは相手に対する礼儀というものがございます。したがって、私たちとしてはできるだけ早くということで対処しております。
  343. 金子満広

    ○金子(満)委員 相手があるからこそそういう点は迅速に、しかも期限を切って、国民に納得のいくような答えが一刻も早く出されなければならぬ、こういう意味でやってほしいと思うのです。  提起したこの文書は、不破書記局長が本会議でも述べましたように、第四〇〇弾薬整備中隊の週間の整備計画でありますけれども、この中には準備、それから点検、そして承認という担当官のサインが全部入っているわけであります。こういう文書はだれが見ても、このことによって核兵器が持ち込まれているという証拠のものでありますから、こういう点で、これは単なる一私人の何とかとか、何々の風聞にすぎないとかいう無責任なものでなくて、厳然たる事実を明示したものでありますから、この点について私は総理の考えを聞きたいと思うのです。こういう文書をごらんになって総理はどういう感じを持たれたか、こういう問題です。
  344. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま北米局長からお答えを申し上げましたように、具体的な資料に基づいて調査方を要請されたということでございますので、早速政府としても調査を進めておるところでございます。
  345. 金子満広

    ○金子(満)委員 総理、これを見たときに、非常に重大な内容が書いてあるわけです。どのようにお感じになったのか、こういうことを聞いているのです。
  346. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非常に重大なことと考えましたから、直ちに調査をさせる、こういうことにしたわけでございます。
  347. 金子満広

    ○金子(満)委員 この週間整備計画の中でも明らかでありますけれども、いろいろの修理や何かと一緒に核爆弾まで入って、日常茶飯事にこれをやっているのですね。非常に軽い気持ちで米軍の方はやっているというのがこれを見てすぐわかるわけでありますが、いままで核模擬爆弾であるとか、あるいは核兵器を取り扱う部隊であるとか、こういう問題が出たときには、政府もいろいろの言い逃れで、これは核そのものではないから事前協議の対象にはならない、だから事前協議はなかったとか、こういうことを言ってきたわけですけれども、今度は核爆弾そのものでありますから事は重大だと私は思います。  総理は先ほど、平時、戦時を問わず、いかなる場合でもわが国の領海、領土、領空には核兵器を持ち込ませないということを言われたわけですけれども、そういう日本政府の態度、総理の態度というのを公式に外交ルートを通じてアメリカ大統領に伝えてあるかどうかです。日本国会で総理が答弁をして、こういうことでありますということにとどめてあるのだと私は思うのです。公式に日本外交文書としてレーガン大統領に、わが国政府はこういう態度だ、そして、いつ、どんな場合でもノーと言うことをやるというのを伝えてあるかどうか、この点を伺っておきたいと思うのです。
  348. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先般の首脳会議におきまして、伊東外務大臣がヘイグ国務長官に対しまして、わが国の非核三原則につきましてるる説明をし、日本立場日本国民の感情、そういうものをよく説明もし、理解を求めたところでございます。
  349. 金子満広

    ○金子(満)委員 首脳会談で時の伊東外相がどう言った、こう言ったじゃなくて、総理も帰国された後でも、イエスと言う場合もあるしノーと言う場合もあるという発言もされて、いろいろ幾変遷をたどって、いまたどりついて議会で言った最終的なことは、平時、有事を問わずいかなる場合でもノーと言います、核持ち込みは許しません、こういうことを言われているわけです。これは首脳会談の後なんです。  そういうことでありますから、いま総理が表明されていることを相手側に伝えなければならぬ。持ち込んでくるのは向こう側なんです。持ち込んでくる側に伝えないで、国会の中で言ったからあるいは聞こえているかもしれないとか、いろいろのニュースに伝わるからとか、これは全く無責任なやり方で、いま国是であり断固としてこれを守るのだということであれば、米国に、持ち込んでくる側にこれを正確に伝える。そうでないと、もうすぐ国会が終わるから、言葉は悪いですけれども、国会の一時しのぎにこれを使われては困るし、そうでないと言うのなら、私は、きょうでも遅くはありませんから米国に正式に伝えるべきだ、こういうふうに思うのですが、総理、どうですか。
  350. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非核三原則わが国の国是である、このように心得ております。そして、いかなる場合においても、有事の場合においても一切核の持ち込みは認めないということは、佐藤内閣以来わが政府の堅持してきておるところでございます。こういう点は、先ほども申し上げたように、文書よりもじかに伊東外務大臣が向こうの外交の最高責任者にこれを伝えてあるということでございますから、この点は、明確にわが国方針米政府に伝わっておる、このように御理解願いたいと思います。
  351. 金子満広

    ○金子(満)委員 首脳会談伊東外相のことを言っているのか、あるいは現園田外相のことを言っているのか知りませんけれども、伝えてあるだけでは困るのですね。伝えてあっても持ってくるんですから。よろしいですか。沖繩にあった五年前の二月三日から七日まで、B61が現実に持ち込まれていたわけですよ。これはわが国の主権下にある沖繩です。ここで、この問題に関連してどういうことがいま政府に対して迫られているか。一つは非核三原則を厳守すると言っているのです。よろしいですか。非核三原則は国是であるから厳守する。その非核三原則わが国の主権の及ぶ範囲にいま全部適用することになっています。アメリカは、核があるかないかは言わないというのがアメリカの国策だと言っているのです。さあ、そういうところで沖繩に持ち込まれているという事実をわれわれは出したわけです。ですから、非核三原則を守れという国民の強い要望と、アメリカの国策と言われる核隠しとが、わが国の主権下である沖繩でいま闘われているわけです。  われわれはそこで物を解明しなければならぬと思うのですね。こういうときにもしわれわれが、核があるかないかわからない、また言わないところに価値があるのだというようなアメリカの国策にもし迎合して、わが国の主権下でこういうものが明らかにされない、しかも決めている方針を、それは外務大臣が公式に伝えた、伝えるだけじゃなくて、もしそうであったらどういう回答があったか、そのことも伺っておきたいと思うのです。
  352. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 現在、先ほど来申し上げているとおり、米側に対して調査を依頼中でございます。したがって、その結果を待ちましてわが方としての方針というものは決定するわけでございます。
  353. 金子満広

    ○金子(満)委員 それで、われわれはこれは事実あったことだ、これは確信していますけれども、これが今度国会でも政府でも確認をされたら事は重大だと思うのです、これは明白に安保条約の違反になりますから。そして、非核三原則を厳守するなどと言っていたこれまでの政府の態度というのは全くの虚構であったということ、これは音を立ててではなくて一瞬に崩れ去る、こういう重大な問題だと思うのです。  いまそれが大げさに言わなくとも現実に問われているのですから、この点は妥協なく、この問題はうやむやだとか、あるいは示談にするとか、これ以上追及しないとかいうものでなくて、シロかクロか、あったかなかったか、この点は黒白をつける問題ですから、そういう点でひとつやってもらいたいと思います。結局政府責任にすべてかかっている。非核三原則を文字どおり貫くということであれば、この究明はしっかりやっていかなければならないし、やるべきだ。わが国の主権にかかわる問題であり、安保にかかわる問題ですから、この点をまずはっきりさせておきたいと思います。  核持ち込みとか、あるいはまたそれに関連した問題は後でも触れますが、私は、次に、横須賀の米軍基地の問題について触れたいと思います。  表向きは非核三原則を守る、アメリカを信頼するから、事前協議がかけられてこないから、核は持ち込んでいないと思う、あるいは信ずる、こういうことが判で押ししたようにいつも出てくるのですけれども、そういう態度がアメリカの核持ち込みを許しているということだと私は考えます。  横須賀の問題について具体的に質問をしたいと思いますが、横須賀のミッドウェーが核兵器を積載する航空母艦であることは、もう先ほど政府も認めておりますから、その点はそのとおりだと思います。こういう中で、今度横須賀に入港するということでありますが、神奈川の県知事、横須賀の市長、川崎の市長、藤沢の市長などが入港の中止を要請しております。こういう点について、政府は、新聞報道によると、入港の中止は要請しない、こういうことを言っておりますが、現在どうですか。(「総理大臣が答えろよ」と呼ぶ者あり)
  354. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私からまずお答えいたします。  横須賀市長の声明等を私たちもよく承知しております。われわれとしては、横須賀の基地が有効に作用する上で横須賀の市民あるいは横須賀の市長の御協力というものは従来も大変高く評価しておりますし、今後もその御協力というものが必要であるというふうに考えております。したがって、われわれとしては、今回横須賀市長から寄せられ、その声明の中に盛られている点について引き続き政府として、現在この核の持ち込みが行われているということに対して、そういうことはないということを御説明しておりますけれども、今後ともそういう努力を続けていく、こういうことでございます。
  355. 金子満広

    ○金子(満)委員 後でまた触れますけれども、ミッドウェーが核爆弾を搭載していないということを信じている人は政府の中でいないと私は思うのです。いたら相当どうかしているんじゃないかと私は思うのです。腹の中では知っていると思うのです。いまこのミッドウェーが核爆弾を搭載し、そしてまた核爆弾を積んで飛び立つことのできる航空機を載せていること、これは厳然たる事実で、どこでも常識になっていると思うのです。  そういう中で幾つかの問題が最初にありますが、これは一九七四年の八月十三日に横須賀の米軍基地内の海軍の軍法会議の席でミッドウェーの乗組員であるマイク・ハモンドという一等水兵が、ミッドウェーが日本に核兵器を持ち込んでいると具体的な証言をしようとしたその途端、軍事法廷の裁判官が発言を停止して直ちに休廷を宣するという、えらい衝撃的な事件が起こりました。これも記憶に新しいところですよ。  ラロック証言については、もうたくさん国会で言われていますから内容は申し上げませんけれども、核兵器積載可能な軍艦は、航空母艦はもちろんすべて核を積んでいるのだ、こういうことで明らかであります。  三年前、七八年の二月七日にクレーター海軍長官も、アメリカの下院の軍事委員会でみずから証言をして、ミッドウェーはベトナム戦争で空からの制圧のための母艦、プラットホームとして、またわれわれの戦略抑止力の部分をなす核攻撃用航空機の母艦として、さらに対潜水艦作戦の母艦としての役割りを果たしてきた、海軍長官がこのように証言をしていますし、きょうこの連合審査の席でも、ワインバーガー国防長官の二十七日の発言がありましたが、これは日本を核のかさに入れる権限をアメリカは持っておる、だからミッドウェーは横須賀に入るのだ、これは一私人じゃないのですね、これは風聞ではないのです、これは日本防衛庁長官が今度会う人ですから。こういうようなことまで言われていて、まだ核を持ち込んでいない、積み込んでいない、事前協議がかけられていないから。これを信ずるなどということは、私は本当にどうかしていると思うのです。  たとえばけさの毎日新聞に、自民党の中の安保・外交関係の幹部の人の世論調査の結果が出ています。四十三名に聞いた。そういう中で、「米核積載艦の寄港・通過が行われていた」というのは四十三人のうち二十三人いるのです。この中には大臣経験者もいっぱいいますよ。「わからない」十四人。「行われていない」というのはたった六人ですよ。自由民主党のこの方の衝に当たっている幹部の人たちが、大部分と言っていいほど核が持ち込まれているということを信じているのです。にもかかわらず、持ち込まれていないということを、今度の入港についても、総理、これは政治的な問題ですから、言明できますか、どうですか。
  356. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほどもお答えを申し上げましたように、ワインバーガーさんが新聞記者会見でどういうことをおっしゃったか、詳細を承知いたしておりません。非常に大事なことでございますから、急いで成文を取り寄せたい、こう思っておりますが、あのワインバーガーさんの会見の要旨というのは、日本は安保条約によってアメリカの核のかさの提供を受けておる、権利という言葉を使っておりますが、安保条約上の、これはむしろ米側の義務であるわけでございます。そういうような関係にあるのでございますが、しかし、ミッドウェートに核を装備しておるという直接的なことをおっしゃっておるようには、私、見ておりません。よく成文を調査をいたした上で、その点を明らかにし、また政府としてのこれに対する対応というものを考えなければならない、こう思っております。
  357. 金子満広

    ○金子(満)委員 いま米側のだれかれが何を言っているかではなくて、目の前に具体的な問題として提起されている、ミッドウェーに核兵器が積んであるかどうかという問題なんです。事前協議をかけてくるのは、持ち込んでくる側なんです、こちらから事前協議はできないのですから。だとしたら、われわれは調べなければならぬ。随時協議という手もあるのだし、言われるホットラインというものもあるのですから、幾らでも聞けるし、調べられるし、核が積んであるかないかぐらいは、わが国の科学技術の水準をもち、われわれの力で幾らでも確かめられるわけですね。こういう点について総理は、いまでも、いま入港を予定されているミッドウェーは核兵器は積んで入港することはないと本当に信じているのかどうなのか、もう一度伺っておきたいと思うのです。
  358. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、米艦船の寄港に当たりまして、もし核兵器を積載しておるということであれば、これは事前協議の対象でございます。そういうことが私は今日までなされていないということ、したがって、核兵器が艦船によって持ち込まれておるというぐあいには見ておりません。
  359. 金子満広

    ○金子(満)委員 若干の資料をお渡ししたいのですが、委員長、よろしいですか。
  360. 奥田敬和

    奥田委員長 はい。
  361. 金子満広

    ○金子(満)委員 この写真は、まず飛行機の写っている方から説明申し上げます。これは一九七六年七月三日、アメリカの独立記念日に横須賀の米軍基地が一定部分一般公開をされました。そのときに、入港していたミッドウェーにはその乗組員の家族と家族の友人が入ることが許されました。その友人という中で日本人が約二百人から三百人、同日午後一時から二時ごろ、このミッドウェー空母の甲板からいろいろの部屋を米軍の案内で見て回りました。この写真は、直接そのミッドウェーに参観に行った一市民が、現在の事の重大性にかんがみて私どもに提供してくれたわけです。これは全部連続のフィルムがありますから、間違いなくミッドウェーであります。二枚だけ抜いたのは説明をするためでありますが、これはいまの航空機の上甲板の下の格納庫であります。そして尾翼のところにNFというマークがあります。これはミッドウェーの搭載機であります。そのマークである。これが明らかになっています。  もう一つ、これは説明しながら申し上げますが、少しぶれた写真があります。これは上甲板の上で、この一参観者は滑走路になっているところで写真をたくさん撮りました。もちろん米兵が見ておってやったわけであります。そして、案内されながら甲板の下一階に入りました。その一階がこの格納庫で、NFという尾翼にマークのついた航空機であります。A6イントルーダー攻撃機。  そしてもう一つ、案内されて上甲板の地下二階に下がりました。幾つかの部屋があり、廊下があった。そして中央の前後にエレベーターがあります。この写真の方は中央の後方のエレベーターのある付近です。そのエレベーターは上甲板までもちろん上がれます。  たまたまそこを案内されて通過をするときに、この一市民はトイレに行きたくなって、列から外れてトイレを探して一人で細い道に入っていった。そのときにこの鉄のドアにぶつかったわけであります。それを撮影したのがこれであります。大きさはこの真ん中にある核のマークのついた、放射能マークのついたものでありますけれども、はかったわけではありませんが、おおよそ見当で縦が三十センチ、横が二十センチぐらいであろう、ドアにしっかりとこれが取りつけてある。そこには英語で「警告 放射能区域」と真ん中に大きく書いてある。そしてその下には「権限のない要員の立入禁止」権限を持った人だけが入れます、それ以外はだめですと書いてある。  もちろん、ここには米兵がいたという証言であります。その一市民はカメラを向けたとたんにどきっと自分でもした、そのように証言をしています。話には聞き、核装備しているということは間違いないと思っていたけれども、そこにぶち当たったときに手がふるえてシャッターがぶれたというのがこれなんです。(笑声)だから、お笑いになりますけれども、その写真以外は全部ピントが合っている。こういうような写真がこれであります。  さて、このミッドウェーは核推進力でないことは政府も御存じのとおりであります。核推進力でない空母の中に、このようにして「警告 放射能区域」というのがあるというのは、だれが考えても、これは艦内に核爆弾を搭載している、こういうふうに考えるのが当然であり、それ以外のものでない。事は重大であり、これだけのことを私どもが提起をするわけですから、総理、あなたは核を事前協議がないから持ち込んではいないであろうというようなことで事態は済まされないと思うのです。きょうこれを提示したのですから、ひとつこの点について総理の所見を聞いておきたいと思うのです。
  362. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 本日お示しになった写真は、けさの朝日新聞に掲載された写真でございます。私たちも早速これについて調査いたしました。その結果、在京アメリカ大使館からの回答が参っておりますので申し上げます。  米海軍艦船内にあるこれらの標識、というのはラジエーションに注意しろということでございますが、標識は、対水上及び対潜捜索レーダー、さらにあらゆる形式のレーダー、高周波無線アンテナ並びに医療及びエックス線設備の近傍に人がいることによってもたらせられることの危険に対する警告として存在しているものである、こういう回答を本日得ました。
  363. 金子満広

    ○金子(満)委員 私はこのマークのことでそういうふうに言うだろうと思ったのです。よろしいですか。新聞に出たから確かめました、こう言うのですが、私どもはこれは幾つかの事実で裏づけをして出しておるのです。この点については、核兵器を積んでいるか積んでいないかは、積んで入ってくる側に聞いたらだめなんです。そのくらいはっきりしていることはないと思うのです。あなた、持っていますか、持っていませんか。持っているか持っていないかは、向こうは国策として言わないことになっているのです。いや、非核三原則です、それはわが方は関係ありません、あなたの方はそういうことがあっても、私の方は言わないことになっています、すうっと入ってきますよ。  そこで、こういうことについていま北米局長はそのような答弁をされましたけれども、私はこれは具体的に調べるべきだと思うのです。調べないで、何かいろいろレーダーで、こうでああで、何かこういう放射性物質を扱うところがあるから危険だから。いいですか、ここに「権限のない要員の立入禁止」なんというのは、普通のところにはないです、レントゲン室と違うのですから。こういう点をもしアメリカの大使館から聞いて、それをそのまま信ずるのだったら、相当人がいいか、アメリカ外務省と言われても仕方がないような状態だと思うのです。  私は、こういう点については政府として、これは約四十三万の横須賀市民だけじゃないのです、いま日本国民の注目の的になっている、重大関心を持たれているミッドウェーの入港について、そのやさきに出たことですから、いまの大使館のようなことで人々を納得させようとしても——私は淺尾北米局長自身だって本当は納得していないと思いますよ。こういう事態ですから、これは徹底した調査をする、そうして本当に核爆弾を持っていないということが明白に日本側で確認できるまでは入港をさせない、こういう措置をとるべきだ。それは多くの日本国民の共通の要求であり、神奈川県知事のみならず、現地の横須賀市長を含めて広範な人の共通の願いだ、要求だ。  いまこれを執行するかしないかというその責任は、内閣総理大臣である鈴木善幸さん、あなたの判断にかかっていると思うのです。あなたがよろしいと言えば入ってくるのですよ。ノーと言えば、ここでアメリカがどういう態度に出るかは知らぬけれども、日本の主権の及んでいるところですから、入港を中止させることはできる。これは総理、あなただけが持っている権限なんですから、ひとつこの点は明確に答えていただきたいと思うのです。この答えを横須賀の市民も日本国民も全部聞いているのですから、よろしく、明確に一言で答えてください。
  364. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど私が在京アメリカ大使館に対して尋ねたということを申し上げて、それはアメリカ政府の見解であるという回答でございます。  それから、従来お示しになっているB61の整備計画についても調査しろということでございまして、これも私たちは御要望のとおりアメリカ側に調査をしているということでございまして、アメリカ側の調査だけでは信頼できないということでございますが、私たちはやはりアメリカと安全保障の体制にあり、日本アメリカとの連帯関係ということからいって、いやしくもアメリカ政府の代表の言うこと、これについては信頼するほかはない、こう思います。
  365. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 金子さんは、日本政府は、ミッドウェーが核を搭載しておるかどうかの調査をまずしなければ、ミッドウェーの入港を認めるべきではない、こういう御意見でございました。御承知のように、日米安保条約、地位協定等によりまして、日本は横須賀をミッドウェーの母港として提供をいたしておるわけでございます。したがって、これを入港を拒否するというようなことは考えておりません。  なお、この調査の問題につきましては、いま北米局長からお答えを申し上げましたように、金子さんからそういう写真等をお示しになって、この調査を求められたということでございますから、けさ早速アメリカ大使館にはやりましたけれども、引き続いて外務省において調査をさせることにいたします。
  366. 金子満広

    ○金子(満)委員 では、この写真、ひとつ調査をするということですから、ぜひそれをして国会に報告をしてもらいたいと思います。  それでは、榊委員が関連に立ちます。
  367. 奥田敬和

    奥田委員長 関連質問の申し出がありますので、金子君の持ち時間の範囲内でこれを許します。榊利夫君。
  368. 榊利夫

    ○榊委員 やはり同じ船の問題でありますが、米原潜当て逃げ事件の問題で質問いたします。命にかかわる問題ですので、ひとつ真剣な御答弁をお願いします。  四月九日の米原潜当て逃げ事件、ここでは日昇丸の野口船長、それから松野下一等航海士が死亡されました。残り十三人の船員の方も、昼夜十八時間以上生死の境を漂流をして、助かったときは、話によりますと、波に洗われたおしりだとかそれから腕の皮、これがぺろりとはげた、こういうふうに話しておられます。子供を抱えた遺族の方あるいは被害船員の苦痛はいかばかりであろうか、こういう思いがするのでありますが、そこでお尋ねいたします。  今回の事件は、まず第一に、米海軍が日本近海で、必要な演習区域の告知もしないで演習をして、そうして鹿児島県宇治島沖合いわずか二十二海里のところで日本貨物船を原潜によって沈没させた、死者まで出した重大事件であります。  さらに二つ目の問題として、日米安保条約で日本は軍事的協力関係にある、その当事者の相手の原潜がわが国民に加害したわけでありますから、当然日本政府は特別のかかわり方をしなければならないということになると思います。政府国民外交保護権を持っているわけでありますから、そういう点で米軍と米政府に対して外交折衝を行ってしかるべきだと思うのであります。日本政府として、被害者である国民の側に立って損害補償などのそういう問題解決に努力するつもりだろうと私は思うのでありますけれども、その点についての所見を伺います。まず外務大臣から。
  369. 園田直

    園田国務大臣 補償その他、報告についても、外務省としては関係省と連絡をしながら交渉いたしております。その交渉の経過は事務当局から報告をいたさせます。
  370. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず補償の問題でございますが、これはすでにアメリカの海軍長官が、補償についてアメリカ側に責任があるということを述べておりまして、現に乗組員を代表される弁護士の方と在日米海軍との間において補償の話し合いが進められております。その過程において外務省としても、弁護士の方からいろいろなお尋ねがございまして、それについて側面的な協力を行っている、こういうことでございます。
  371. 榊利夫

    ○榊委員 いまの補償問題でありますが、総理にお尋ねいたします。  亡くなった船長、それと一等航海士について、政府は葬儀の際、たとえば見舞い金を贈るとか香典を贈るとか、そういうことはなさったのでしょうか。総理はなさったのですか。
  372. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 日本政府として見舞い金は贈っておりません。しかし、葬儀の際に当時の外務大臣から花輪を贈っております。
  373. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、前の外務大臣伊東さんは花輪を一つ贈られた。総理大臣からも内閣からも香典の一つも出ていない、見舞い金も出ていない。冷たいと思うのですね。遺族の方々は一家の大黒柱を一瞬にして失った、その悲しみに加えて、生活費その他大変苦労されていると聞いております。私は、いまからでも遅くないと思うのです。たとえばその遺家族に対する香典だとか見舞い金を出す、そういうお気持ちは総理大臣あるいは外務大臣にはおありなんでございましょうか、率直にお伺いします。
  374. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 総理大臣名の弔電をお届けしてございます。弔意は心から表しておる次第でございます。  なお、この原潜の事故の問題につきましては、米海軍においては、これは米海軍の責任であるということをはっきり確認もいたしております。そして、その損害の補償、遺族に対する補償、見舞い、そういうものについても誠意を持ってこれに当たるということも言っておるわけでございまして、現在、北米局長から申し上げたように、弁護士と米側との間でその最終的な詰めをやっておる、こういうことでございます。  なお、米側としては、中間報告を寄せましたが、最終的な報告につきましては、第七艦隊からアメリカ海軍省の上層部にいまその報告がもたらされて検討されておる、近くそれがわが方に報告される、こういう段階に相なっておりまして、政府としても早期に最終報告を求める問題、また事故に対する補償の問題、こういう問題につきましては米側に対して強く折衝をいたしておる、こういうことでございます。
  375. 榊利夫

    ○榊委員 その真相の問題については、相当重大な、これからも究明しなければならない問題があることを私はいろいろ感じております。  それはさておきまして、総理としまして、総理、見舞い金くらいはいまからでも贈るようなお気持ちはないのでしょうか、重ねてお尋ねいたします。電報だけでお済ましになる計画でございますか。
  376. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これは加害者が補償その他に当たるのが第一義であり、また政府としては、早急に誠意ある措置がなされること、これに最善を尽くしたい、こう思っております。総理大臣としてはこれに心から深甚の弔意は表しておる次第でございます。
  377. 榊利夫

    ○榊委員 日本国民が不意に海上でアメリカの船から、結局は沈没させられて、死にまで至った。それに対して一国の総理として、責任アメリカにあるという、これはもちろんでありますけれども、同時に一国の総理として、政府として、これに温かい見舞い金を贈る、それくらいの気持ちがあっていい、こう私は思います。  その当て逃げの当事者であるアメリカですけれども、当て逃げ後三十時間も知らぬ顔をしていた。その後も、マンスフィールド大使から贈られたのは香典としてわずか十万円です。総領事から見舞い金として二十万円を遺族に渡しただけ。十三人の船員に対しましては十万円の見舞い金だけです。航空遭難だって、さしあたっての葬儀代その他お金が要るだろう、当座の費用として百万、二百万出すのは常識です、現在の日本で。アメリカ大使館付のオコーネルという大佐は、最初の方は人命や船の損失は痛ましい、こう言っていたのですけれども、その後の遺族や船員に対する誠意というのは実にこの程度のものです。損害賠償は後日のことになるといたしまして、そういうアメリカ側の冷たい態度、これに対しては日本国民はとうてい納得できないということは、外交ルートを通じてでもアメリカ側に率直に伝えるべきではなかろうか、この点、外務大臣しかと御答弁願いたいと思います。
  378. 園田直

    園田国務大臣 補償の問題、交渉中ではありますが、そういう実情についてはなるべく過ちのないように伝えます。     〔奥田委員長退席、江藤委員長着席〕
  379. 榊利夫

    ○榊委員 今後のことにつきましても、損害補償につきましても、日本国民の利益を守るという立場から御努力をお願いいたします。
  380. 金子満広

    ○金子(満)委員 次に、横田の問題に移りたいと思うのです。  先ほど、ミッドウェーのあれは調査をするということであります。これは調査するのが非常に早いのですけれども、B61の方も急いでほしいというのは、実は横田の米軍基地であります。嘉手納にB61が陸揚げされて、とにかく修理をされる、整備をされる。そういう中で、アメリカの核爆弾がおかの上にあるということははっきりしていると私たちは信じます。そういう中で、首都東京の横田にも核兵器が持ち込まれている、あるいは今後持ち込まれるだろうという疑いはますます大きくなってきていると思うのです。本連合審査会でも質問があったようですけれども、横田基地でブロークンアローの訓練がやられているということは政府も御存じですね。
  381. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど御答弁したとおり、ブロークンアローという訓練が行われているということは承知しております。
  382. 金子満広

    ○金子(満)委員 このブロークンアローが核兵器による事故を含めてやっていることはもう天下周知の事実で、だれも隠しているものはないわけですけれども、横田におけるブロークンアロー、核事故を想定した訓練というのはどういう性質のものか、これが問題だと思うのです。  七八年、三年前の二月二十一日に、共産党の調査団が沖繩の嘉手納の三一三師団の司令官のバクスター准将と会って、このブロークンアローの問題について詳細に聞きました。そういう中で明らかになっていることは、次のようにバクスター司令官は当時答えているわけであります。  「このブロークン・アローというのは、日本では嘉手納基地だけでやっているのか。」「司令官 空軍がいるところではどこでもやっている。」「横田基地でもやっているか。」「やっていると想像する。」「この訓練は年に何回ぐらいやっているか。」「司令官 定期的にやっている。年に四回、三カ月に一度ぐらいだ。必要なときにはそれ以上やる。」「ブロークン・アローは核兵器および核兵器の構成部分にかかわる重大事故のことではないか。」「司令官 核兵器も含められるが、全体的に爆発力の強いものを対象としておこなう訓練だ。」「米国防総省の指示書によれば、ブロークン・アローはもっぱら核兵器と核兵器の構成部分にかんする重大事故のことだ。」「司令官 指示書がそういっているならそうだろう。私はあまりくわしくない。皆さんのほうがよく知っているようだ。」  こういうことを述べておりますし、このブロークンアローは、この司令官も後で述べておりますが、世界どこでもやっているというだけではない、それぞれの基地に適応して属地主義もとっている、そこでどのように対応するかということもやっているということでありますから、この点でも横田の基地というのは、核兵器が持ち込まれる、あるいは可能性がある。こういう点でも非常に重大な基地だと思います。  それからもう一つは、この点に関連して申し上げるのですが、チームスピリットの問題です。これは核兵器搭載機が来ているのは、これも周知の事実でありますが、そういう中で今度はミサイルが現実に持ち込まれて訓練をやっている。つまり、米韓の合同演習の中でランスミサイルが持ち込まれている。これは七八年の三月のときには六門、十八発ということが言われておるわけですが、これが横田にも配備をされ、同時に横田を経由して韓国にも行っている、こういう点は明らかであります。この点で横田の基地が核兵器を輸送する、あるいは一時そこでとめておいて運搬をする、こういうような基地にされている可能性は非常に強いわけだし、時間がありませんからまとめて申し上げますから、まとめて答えていただきたいと思うのです。  このことは、一九七二年、当時ベトナムの戦争が激しかったころ、この横田基地が盛んに使われている時期です。核兵器を運んだというアメリカの空軍軍曹アル・ハバドという人の証言が七二年三月一日に行われました。私はこの人にも何回か会って、具体的に私自身も聞いております。この軍曹は、ワシントン州の米用基地からこの横田の基地、それからまた三沢、ジョンソン、千歳、嘉手納、ここに核兵器、核爆弾を運んだという証言をみずから行っていますし、一九六六年の夏には、沖繩の嘉手納で核兵器を積んだC124輸送機が火災事故を起こした、そしてブロークンアローという核事故が発生して緊急指令が出たということも当時証言をされ、私どももそれを聞いたわけです。  きょうの新聞によりましても、核兵器による事故というのは非常に多い。外国のところだけは場所を明かさないということがありますが、この横田基地というのがそういう危険な要素を持っている、こういう点について、これも米側に問い合わせるだけでなくて、東京のすぐそこなんですから、われわれは政府調査をすべきだ、こういうように思いますが、その点はいかがですか。
  383. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま横田の基地についていろいろお尋ねがございました。  まず、ブロークンアローについては、先ほども私、御答弁いたしましたけれども、四十九年の時点でブロークンアローということが横田の基地で行われているのではないかということでございまして、その際のアメリカの回答は、これは核事故に対する対応能力をテストすることを目的とする訓練を指す、しかし、このような訓練は通常災害対処計画及び実施に関する空軍の規則手引きに従って、世界じゅうで定期的に行われているという回答を四十九年十一月一日、アメリカ大使館から得ておりますし、また昨年も同じようにブロークンアローという訓練が横田で行われているのではないかという報道がございました。その点につきましても、照会した際には、これは四月の十日でございます、ブロークンアローという訓練は実施されていない、十日は横田基地の四七五航空基地団が、空軍災害対策規則にのっとりC141ジェット輸送機の事故を想定した通常の消火、救難訓練を実施した、この種の訓練は少なくとも通常年二回は行われており、いかなる兵器も包含されてない、こういう回答を得ております。  さらに、先ほどチームスピリットに関してランスが持ち込まれているのではないかというお尋ねがございました。ランスは、御承知のように核、非核両用でございます。本年に限ってアメリカ側の回答は、ランスは持ち込まれていないという回答を得ております。  さらに、横田基地について日本側が立入調査すべきであるというお尋ねでございます。御承知のとおり、アメリカ軍は施設、区域について管理権を持っております。したがって、横田の施設、区域について、これはアメリカ側が安全を含めて十分管理しているということでございまして、米軍のステータス、これは何も日本だけのステータスでございませんが、軍隊の特性からいって、その軍隊に対して直接日本側があるいは第三国が立ち入りをして調査をするということはできないわけでございます。もちろんわれわれとしては、従来から施設、区域の安全が確保されるようにということについては米側に再三申し入れているというのは、御承知のとおりでございます。
  384. 金子満広

    ○金子(満)委員 では、その調査の点はまた別な機会に譲るとして、次に、核兵器を搭載した航空機あるいは核兵器積載の艦船の寄港問題で、日米間でどのような合意、食い違いが——ないという話がたびたび出るのですが、一問だけここはしておきたいと思うのです。  領空、領海ですけれども、領海の通過も寄港も事前協議の対象となる、具体的に通過、寄港も事前協議の対象であるという点についてアメリカ側との合意がありますか。
  385. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お尋ねの趣旨が、通過、寄港だけを取り出して日米間に合意があるかということであれば、それはございません。しかし、核の持ち込みの中に通過、寄港も含まれるということは、再三御答弁しておりますように、岸・ハーター交換公文あるいは藤山・マッカーサー口頭了解の中から、核の持ち込みについては、先ほど申し上げました寄港あるいは通過、もちろん通過を厳重な意味で分けました場合のイノセントパッセージは除きますけれども、それ以外の通過については、あくまでも事前協議の対象になるというのが当初からのわが方の考えでございまして、この了解についてアメリカもわが方と同じである、こういうふうに考えております。
  386. 金子満広

    ○金子(満)委員 わかったようなわからないような話をいつもここはされるのですけれども、つまり灰色の部分なんですよ。通過と寄港というそのことの合意があるかと言うと、岸・ハーター交換公文で、やれ藤山・マッカーサーの口頭了解で、含まれているとわれわれは言っておる、向こうもそうだと言っておる、そうでなくて、その事前協議の対象の中には、明確に寄港も通過も含まれているということで発表できるものがあるのですか。そう思うとか、考えるとか、であろうとか、信ずるのでなくて、明確に、このとおり寄港も通過も事前協議の対象です、こういう合意があるのですか。イエスかノーだけお答えください。
  387. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 何がそうかということであれば、交換公文と口頭了解でございます。
  388. 金子満広

    ○金子(満)委員 これは結局、ないのです。  そこで、最後に一つ、尋ねておきたいというよりただしておきたい問題は、前の委員の方からこういう話がありました。四十三年まで、核兵器を積載した船でも、当時六〇年安保のときの議論の中で高橋条約局長が無害通航の問題で、遊よくしたり、出たり入ったりするものでなければこれは無害通航であるということを言われた。それは事前協議の対象にならないということは淺尾北米局長も伊達条約局長もそこはお認めになりました。問題はその後ですよ。  四十三年で、核兵器を積んだ船は無害通航ではありません、こういう日本政府の公式見解が出たわけです。今度は有害通航という話もありましたが、無害通航でないということになったのだから、そうしますと、すべての核兵器を積んでいままで無害通航だったその船も今度は事前協議の対象に入るわけです。よろしいですか。ここが一番大事な問題ですね。当然そうあるべきことは皆さんわかっているはずだと思うのです。  ところが、これは事前協議の対象にこちらがしても、向こうがしなければ、合意がなければ、これは事前協議ということにならずに、アメリカの側は引き続き無害通航、国際慣習法に基づいてアメリカの固有の権利として無害通航していると思うのです。まかりならぬとこっちが言っても、通告をして、事前協議の対象ですよ、わかりました、それならこうしましょうというのがアメリカからあるのですか、ないのですか。これは専門的なことですから、条約局長に伺っておきたいと思うのです。
  389. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答えを申し上げます。  昭和四十三年の統一見解は、先ほど来御答弁申し上げておりますように、当時の領海条約の国会審議をめぐって、その背景のうちに出されたものでございます。アメリカ側は、現在もそうでございますように、当時もわが国国会審議を詳細にフォローしているところでございます。また、一般国際法上特定の通航が無害通航に該当するかどうかということにつきましては、領海条約に規定する一般的基準の枠内におきまして、いかなる通航が無害であるかということを認定する第一次的な判断の権限というものは沿岸国にあるものと考えられております。この四十三年の統一見解につきましては、何分古いことでもございまして、アメリカとの接触について明確な記録はございませんが、アメリカは、この統一見解につきまして当然承知していたと考えられますし、また、先ほど申し上げましたような無害航行についての判断は、沿岸国の主権的な判断でございまして、関係国の了解を得なければ相手国に対抗できないということではございません。  御承知のとおり、政府は昭和四十九年にも同様の統一見解を出して、その際には、念のため米側に説明したものでございますが、アメリカ側からは何らの反応もございませんし、異議があるという反応がないわけでございます。このことは、そもそも昭和四十三年の見解にも異論がなかったということを改めて示すものと考えております。
  390. 金子満広

    ○金子(満)委員 答弁漏れが一つありますから。答弁漏れですね、返事がないのは。
  391. 江藤隆美

    ○江藤委員長 金子満広君、時間が過ぎましたから。
  392. 金子満広

    ○金子(満)委員 事前協議の対象になったわけですよ。その事前協議の対象というのは、向こうが事前協議を言ってくるのですから、その点を米側に通告し、米側がそれをすると言わなければ事前協議の対象にならぬ、無害通航どころじゃない。そこのところは答弁漏れですから、それをお願いしたいと思います。
  393. 江藤隆美

    ○江藤委員長 伊達条約局長、最後の答弁ですから簡単明瞭に。
  394. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 四十三年の見解が出まして、無害通航、つまり核を持って、従来無害通航と考えられておりました領海をかすめて通る、まあ、かすめてと申しますか、単純に通航するということが無害通航でなくなったわけでございますから、それから事前協議の対象になるものである、核の持ち込みという観点から事前協議の対象になるものであるというふうに了解しております。
  395. 金子満広

    ○金子(満)委員 アメリカは了解しておるか。アメリカは了解しておるかが聞きたいのですよ。それを答えないからしようがない。アメリカがそれを了解しているか、事前協議を。
  396. 江藤隆美

    ○江藤委員長 後日また。
  397. 金子満広

    ○金子(満)委員 その一言だけですよ。
  398. 江藤隆美

    ○江藤委員長 中馬弘毅君。
  399. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ライシャワー発言以来、総理も相当お悩みになったといいますか、いろいろな意味でのお迷いも若干はあったのではないかと拝察はいたしますが、しかし、従来どおり非核三原則の堅持という政府統一見解を出されたこと、これは私もほっとしたような次第でございます。  従来、歴代政府はずっと内外に向かってこのことを宣言してきているわけですね。時間がございませんから全文はもちろん読みませんけれども、七四年の佐藤元総理のノーベル平和賞の受賞記念講演にしましても、要するに非核三原則というものを日本の国是としてやっていくのだ、そしてここで、いかなる政府のもとにおいても継承していくということをはっきりおっしゃっているのですね。したがって、佐藤さんも草葉の陰でほっとされているのではないかと思いますが、福田総理も、マニラの演説で一九七七年に、これ以外の選択は日本にとってあり得ないということをはっきりおっしゃっております。  また、園田外相は国連において、日本国民の強い願望を背景として、三原則を国是として堅持する、このように内外に向かって宣言してこられておるわけでございます。したがって、これを堅持していくということを先ほど来御答弁なさっておりますけれども、しかし、国際情勢が変わっても、またどのような事実が出てきても、あるいはどのような圧力が出てきても、これを遵守されるお気持ちかどうか、お聞きしておきたいと思うのです。  と言いますのは、これはいまの時期において、日本がどういう態度をとるであろうかということを非核保有国がじっと見ていると思うのです。したがって、ここで何らかの形で少し後退したような形になりますと、結局、ブルータスよ、おまえもかという形になってくる。それを私は国際的な情勢の中から恐れるわけでございまして、鈴木総理として、鈴木内閣として、もちろん、先ほども言いましたように、どのような事実が出てこようとも、どのような圧力がかかろうとも、遵守していくおつもりかどうかをもう一度再確認さしていただきます。
  400. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非核三原則は、国民の多くの方々から支持されておる基本的な政策でございます。つまり国是である、このように私は受けとめております。国会でも全会一致の決議で、これを堅持すべし、こういうことに相なっております。政府としては、今後におきましても引き続いて、いかなる状況のもとにおきましてもこれを誠実に守っていく、堅持してまいる考えでございます。
  401. 中馬弘毅

    ○中馬委員 御自身のお口から、それこそ国連の場でおっしゃった外務大臣といたしまして、このことを今後さらに強く諸外国に対しても宣言していかれるか。おっしゃっていかれるか。アメリカに対しても、そのような理解を積極的に得るようにしていかれるかどうか、お気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  402. 園田直

    園田国務大臣 総理の御発言のとおりでありまして、私としましても、ただいまおっしゃいましたとおり、あらゆる場所でこれを訴え、これが徹底するように努力をいたします。
  403. 中馬弘毅

    ○中馬委員 他国との友好関係、特にこの場合は日米友好関係でございますが、これは国民同士の信頼関係がどうしても必要でございますし、ライシャワー、ラロックの発言をただ否定するだけ、無視するだけでは、国民の信頼を得ることができないと思うのです。日本国民の信頼だけではなくて、さらに日米双方の国民に誤解と不信を与えてしまうのじゃないかということを恐れております。  一九八〇年、去年でございますが、ソ連の原潜が日本を通過いたしました。これは、外務省は三原則を盾に領海通過の拒否をはっきりと宣言されました。この態度は私は評価したいと思うのです。しかし残念ながら、相手が無視してしまいました。アメリカの艦船の核搭載、これも残念ながら立入検査はできないでございましょう。先ほどからいろいろ確認するというような御発言も出ておりますけれども、しかし残念ながら立入検査はできないのが現実だと思うのです。  しかし、それでも、やはり入ってもらったら困るのだということを非核三原則を盾にとって堂々とおっしゃっていくべきではなかろうか。そして無視されても、残念ながら無視されるけれども、しかし、疑わしきものはノーと言い続けるのだということをおっしゃることが、国民に対して鈴木さんのまた御信頼を得ることになるのじゃなかろうか。鈴木さん、がんばってくれよ、われわれも応援するぞという形で、国民の声が上がってくるのじゃなかろうか。また、そういう態度こそが、今後世界の中において核軍縮の先頭を切ってキャンペーンを張っていく日本立場ではなかろうかと思うのですが、いかがでございますか。
  404. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、わが国が非核三原則を堅持する、これをただ日本国民の中で堅持するというだけでなしに、世界に向かって、この人類の悲願と申しますか、世界平和への願いといいますか、こういうことを十分徹底をさせる、理解を求める、こういうことが非常に大事だ、こう思っております。特に日米の間におきましては、安保条約によってアメリカの核の抑止力に依存をしておるというような関係もございまして、アメリカに対して日本の非核三原則、この国民的な悲願というものを、よくアメリカ国民にも理解をさせ徹底をさせるということが大事だ、私はこう考えております。  先般、私、訪米いたしました際に、ジャパン・ソサエティーにおきまして、この核の問題、核軍縮の問題等々につきまして触れました。アメリカの各界の名士千四百人がお集まりになりましたが、私は、そういう機会こそこういう問題を強く訴えるべきだ、こう考えましてやったわけでございますが、今後政府におきましては、国連の場あるいはジュネーブの軍縮会議の場、あらゆる場所において、このことを十分世界に向かって主張してまいりたい、理解を求めてまいりたい、こう思っております。
  405. 中馬弘毅

    ○中馬委員 しかし、一方で、自民党内に二原則ないしは二・五原則論が高まっていることは御承知のとおりでございます。これは先ほど申しますように、非核三原則の理念、日本はこれ以外に選択の道がないのだとおっしゃっております、福田さんもおっしゃっておることでございますけれども、こういうことを理解されてないのじゃないかという気がするわけでございます。自民党の総裁として、これに対してどのように説得をされるおつもりなのか。先ほどのお気持ちであれば、どのようにしてそれを説得されるおつもりであるか。  また、国民の中にも、非常に単純に、事実が事実なら追認すべきじゃないかといった声も上がってきていることも事実でございます。そうすると、これに対して非核三原則の理念、日本はこれしか方法がないのだということをもう少し理解してもらう必要があるのじゃなかろうか。それに対してどのようなことを今後お進めになりますかどうか。
  406. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、自民党の中におきましてもいろいろの御意見があろうかと思います。しかし、その方々も、将来の課題としていろいろ研究してみよう、こういうことをおっしゃっておるようでございます。私は、この非核三原則ということが国会の全会一致の決議によってなされておる、また政府もその国会の決議を尊重して今後もやってまいる、こういうことでございますので、国会における大きな比重、勢力を持っております自由民主党は、この国会の決議というものを今後においても尊重してやってまいる、このように思っております。
  407. 中馬弘毅

    ○中馬委員 日米安保についてお聞きいたしますけれども、核のかさが言われておりますが、この核のかさというのは、私はアメリカの対ソ戦略上の必要性から日本にかさをかぶせているのであって、日本が望んでかぶせてもらっているわけじゃない、このように判断いたしております。軍事面における日米安保というものは、大体結んだときから、これは通常兵器を想定しての日米安保、軍事的な日米安保であって、核装備を想定してないのじゃなかろうか。核装備を想定した場合でありますと、完全に非核三原則といろいろな面でぶつかってまいります。ここの整理が少しできてないがために、このような問題が起こっているのじゃないかと思うのですが、いかがでございますか。
  408. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカは、御承知のとおり安保条約第五条に従いまして、日本に対する武力攻撃が発生した場合には、その攻撃が起きた場合に日本を援助する義務を負っておりますが、その場合、その援助する仕方としては、別に通常兵器に限っておりません。核兵器も含まれているわけでございまして、ただそのことと、核の持ち込みと核の抑止力に頼る、これはまた別個の問題でございます。
  409. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それは確かにそう書いてない。逆にまた、別に言えば核を想定したとは書いてないわけでございまして、それを両立させようと思うから非常に政府もお困りになっている。非核三原則日本の国是として守っていく、このことをずっと押し詰めてまいりますと、日米安保、核のかさも含めた日米安保ということであれば、それが配備されない、相手の核に対してそれを防御する意味での配備ができない、そのような非常な矛盾がここで起こってきているわけですね。  当然日本の中にも基地を置いて結構です、そして場合によっては一緒に協力もしましょう、日本も補完的なこともやりましょう、そしてそれで一つの集団安全保障という形で——いま一国で自分の国を守れるのはソ連とアメリカしかございません。世界の防衛の体制として集団安全保障を前提とするならば、日本もそういうことで協力していきましょうというのが日米安保であるはずですね。そのときに核を含んでしまったら、これは、いま言っている、いまここで起こっているようないろんな矛盾が起こってくるわけでございます。日本には核を持ち込ませない、持たない、こういうことは、核を前提とした日米安保であれば完全に非核三原則とぶつかってまいりますけれども、どうですか。
  410. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほどの御答弁の繰り返しになって恐縮でございますけれども、日本アメリカの核の抑止力に依存するということは、日本に核を持ち込まなくてもその抑止力は働く、こういうふうに考えております。
  411. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ある程度核のかさが必要だということを前提に——私はそう思ってないのですけれども、前提にされるのであれば、じゃ核の脅威があるのですか。広島、長崎に落とされて以来、国際紛争はいろいろございました。朝鮮戦争もございました。ベトナム戦争もございました。また、その他の局地的な紛争がかなりあったわけでございますけれども、しかしまだ、ソ連とアメリカはかなり人類史的なことで言えば火遊びをやっているかもしれません。しかし、そこにまだ一縷の良識が働いているのか、核を使ってないんですね。まして非核保有国に対して、何か核で攻撃したといったようなことが現実問題でありましたか。
  412. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 米ソの間では、米ソそれぞれに核兵器を開発いたしまして以来、核の相互抑止力が働いておりまして、その結果、核が使用されたことはございません。ただ、これはその抑止力がなければ使われたかどうかということはわからないわけでございます。
  413. 中馬弘毅

    ○中馬委員 非常に現実離れした御答弁でございますが、何か現実にそのような局地的な紛争にでも核が使われ始めた、そのときには場合によってはアメリカに頼んででも、日本にもひとつ核のかさをかぶせてくれということは言ってもいいかもしれません、場合によっては。しかし、そのような状況にも全くないのに、アメリカ一つの——アメリカはソ連を相手として世界に対抗しているわけですから、そのときに日本の基地も使わしてくれ、日本にも置かしてくれ、場合によっては持ち込ましてくれというのも、アメリカの側から言えば当然かもしれません。しかし、日本としてはその必要性がないということをむしろ言うのが役目じゃないでしょうか。非核三原則を世界に向かって宣言した日本の役目じゃないですか。
  414. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 核の戦略というのは戦後いろいろな戦略理論がございまして、いろいろな議論があるのでございますけれども、最も基本的に申しますと、第二次大戦直後、米国は動員を解除したのでございますけれども、ソ連が動員をそのまま大兵力を東ヨーロッパに置いておった。それに対して、通常兵力のアンバランスをカバーするためにアメリカが大量核報復戦略をとった。それが発端でございまして、その後いろいろ変遷がございまして、いまはいわゆる確証破壊戦略というものと、その下につながります柔軟反応戦略、その中には通常兵力から戦域核すべてを含む兵力のバランスがあるわけでございますけれども、その結果によって世界の平和が保たれてきた。これはその結果によってかどうかは議論がございましょうけれども、少なくとも核によるバランスがいままで存在いたしまして、その結果、いまだ一度もその核による戦争はなかった、これは事実でございます。
  415. 中馬弘毅

    ○中馬委員 総理にお伺いいたしますが、日米安保条約に含まれた核のかさのことですけれども、核のかさと言った場合に、では、どこを対象としての核のかさなんですか。相手の脅威があるという相手の国はどこだとおっしゃるのですか。
  416. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 こういう問題は、特定をしてどこを対象としてそういう日米安保体制というものを組んでいるのか、またアメリカの核の抑止力に期待をしているのか、そういうことは言えないわけでございます。私どもは、日本の平和と安全を確保するという観点から、日米安保体制というものを日本の防衛の一つの大きな柱にいたしておるわけでございます。
  417. 中馬弘毅

    ○中馬委員 防衛庁長官にお聞きしますけれども、現実問題として、日米安保に基づいて一つの核のかさということで、その抑止力を期待するということでの核戦略をある意味ではアメリカと一緒にやっているわけでございます。そうすると、やはり日米安保は、先ほど私が言いましたように、核兵器と通常兵器を分けた考えではなくて、一緒の形である、ということは、核戦争をも想定したものだ、このように御判断されますか。
  418. 大村襄治

    大村国務大臣 核の抑止力につきましては、米側に依存するということはわが国基本方針一つでございます。日米ガイドラインにおきましても、日本の領域及び周辺海空域は日本が防勢的な戦力を保持して当たる、アメリカはこれを補って支援するという役割りの分担を決めているわけでございまして、核の脅威に対しましては米側にもっぱら依存するということでございますので、わが国自身は核の抑止力を保有しない、こういうことでずっときているわけでございます。将来もその点は変わりはないと考えております。
  419. 中馬弘毅

    ○中馬委員 場合によってはそういった核の抑止力までも期待して日米で組んでいるということであれば、それこそ自衛隊が守るのは日本国民であるはずなんですね。そうしますと、いろんな戦術上の軍備をそろえたり、あるいは場合によっては核を持ち込ませたりというようなことよりも、まず国民の安全の方を先にするべきじゃないのですか。これはあくまで核戦争があるという前提でおっしゃっているのであれば、スイスのように核のシェルターをつくったり、あるいは核攻撃のときの訓練をすることの方がまず大事だと思うのですけれども、どうでございますか。
  420. 大村襄治

    大村国務大臣 自衛隊の任務は、もとより法律で決めておりますように、国の安全と独立を守り、そして国民の生命、財産を守るのが使命でございますから、当然その点を眼目にして自衛力の整備を図る、これは当然であると考えております。  また、スイスを例にお引きになりましてシェルター等のお尋ねがございました。これはいわゆる民間防衛のものでございますので、防衛庁だけの問題ではございません。政府全体として取り組むべき問題であると考えております。
  421. 中馬弘毅

    ○中馬委員 私どもは、日米安保条約における一つの集団安全保障機能というものは認めております。もちろんそれは通常兵器においての話であって、そういう通常的な兵器における局地戦争に備えることは必要であり、それはまた、アメリカと手を組んで集団安全保障という形でやっていくことを私たち主張もしているわけでございますけれども、しかし、先ほども言うように、核兵器を前提とすると非常におかしくなってくるのですね。  総理大臣に再度お聞きいたしますけれども、むしろわれわれはアメリカに対して、そういう形でアメリカとの協力をどんどんやっていこうじゃないか、場合によっては質的な意味日本に必要な装備があればそれもそろえていこうじゃないか、しかし核だけは別ですぞ、もちろん持ち込んでもらっても困るが、そういうことにすることが、また先ほども言いましたような軍縮の先頭に立てる形になってくるのではないか、このように思うのですが、安保条約にどうしても核兵器も含むのだということになってくると、先ほどいろんな方々が御指摘になっているように、この非核三原則と論理矛盾が起こってまいります。いかがですか。
  422. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 中馬さんは、先ほど来集団安全保障とかそういうことをおっしゃっておりますけれども、わが国憲法並びに基本防衛政策に基づきまして、個別自衛権しか私どもは考えておりません。集団的自衛権は考えていないわけでございます。  それからもう一つ、私どもは戦争という事態が起こらないためにもアメリカとの間に日米安保条約を締結をしておる、これが戦争への抑止力になっておるということ、これは平和と安全、戦争を未然に防止するということをわれわれは念願をしておるところでございます。
  423. 中馬弘毅

    ○中馬委員 総理は、日米共同声明、あるいはそれより前でしたか、記者会見で、日本の前庭の太平洋千海里を役割り分担で防衛肩がわりするということをかなり具体的におっしゃったようでございますが、そうしますと、これは、現実にいまアメリカが太平洋全面におきましてソ連の核潜水艦をずっと追尾しながらある意味では防衛している、ある意味では警戒しているわけでございますけれども、これには核爆雷を積載している、こう言われております。これはいかがですか、防衛庁長官。     〔江藤委員長退席、奥田委員長着席〕
  424. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 誤解があってはいけませんので私から申し上げておきますが、ナショナル・プレス・クラブにおきまして私が講演をした際に、外人記者から質問がございまして、そして自分の前庭は日本が守るのだ、こういうことを言いました。これは、われわれの前庭という概念の中には、非常に狭い日本の周辺、こういうことであることをまず比喩的に私は申し上げた。  それから、アメリカとの間の役割り分担ということで私は言っておるのではございません。したがって、その周辺海域、具体的に防衛庁からもしばしば申し上げておりますように、周辺海域数百海里、航路帯にして一千海里という場合におきましても、これは日本の船舶の安全航行を図る、こういう意味のことでございまして、よその国の艦船等を守るためではない、日本の船舶、これを守るための日本の自衛力である、こういうぐあいに御理解をいただきたいと思います。
  425. 大村襄治

    大村国務大臣 核爆雷のお尋ねでございましたが、これはP3Cをどうするか。防衛庁におきましてもP3Cの整備をいま進めております。これは五十二年の国防会議の決定に基づきまして五十三年以降整備を進めておるのですが、これは現在持っております対潜哨戒機が古くなりましたので、更新、近代化を図るために性能のいいP3Cを自衛力の整備の一環として進めておるものでございまして、これはアメリカの肩がわりという性質のものではございません。
  426. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それは肩がわりではないにしても、先ほど言いました千海里の範囲を守るのには、大綱を達成すればそれで十分だとおっしゃるわけですか。
  427. 大村襄治

    大村国務大臣 現在進めておりますP3Cの整備が済みますと、いま目標としております海上警備の使命達成上相当な効果が上がってくるものと考えております。
  428. 中馬弘毅

    ○中馬委員 時間がございませんので、最後に一つ。  わが国が非核三原則を堅持するのは当然といたしまして、先ほどのようなことでございましたら、さらに一歩進めて、ASEANの外相会議でも問題になっておりますし、またそれに加えてオーストラリアやニュージーランド等に呼びかけて西太平洋に非核武装地帯をつくることは、非常に安全なことだと思うのですね。そして、ちょっと極端な表現を使いますならば、人類にとっていまのアメリカとソ連の核競争というものは、これはもう暴走族的なことでございまして、われわれのこの静かな住宅街で暴れ回ってほしくないわけですよ。むしろどうしてもやるのであれば、北極か何か人のいないところでやってほしいわけで、ここに一つの非核武装地帯をつくるということは、日本の今後の安全と平和にとっては非常に大事なことだと思うのですね。  ですから、ただ日本自分のところは非核三原則を守るんだ、守るんだと言う、これはもちろん大事でございますけれども、それだけではなくて、一歩進めて、これらの国に呼びかけて、そのようなブロックの形成を推進していく御意図はおありかどうか、総理並びに外務大臣にお尋ねしておきます。
  429. 園田直

    園田国務大臣 非核武装地帯というのは数年前からいろいろ出ている意見でございますけれども、これは第一はその地帯の国々が同意をしなければならぬこと、同時に、核を持った国々がこれに対して、非核武装地帯であるということに対する了解がなければならぬことでございますから、現実の問題としては、いろいろ言われながらなかなか進んではいないわけであります。  しかし、その理想はわれわれは見失わないように努力をしなければならぬと考えておりますけれども、日本は、先ほどから言いますとおりに、日米安全保障条約によってアメリカの核のかさに依存し、これを抑止力としている関係もありますので、現実にはいろいろむずかしい問題があると考えております。
  430. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 外務大臣の所見と同じような考えであります。
  431. 奥田敬和

  432. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はおとつい、この傍聴席に来ております同僚の秦豊参議院議員と一緒に山田弾薬庫の調査に参りました。そこで新しい証拠になるものを発見をいたしました。  私がねらいをつけて行ったのは、せんだっても指摘をいたしましたナンバー4というファイアシンボルマークのある覆土式の弾薬庫です。覆土式の弾薬庫は三十ぐらいあるのですね。時間がないからねらいをつけて行った。そこで何を発見したかというと、入り口にツタやカヤが生い茂っておりました。その中からプレートがほの見えておった。それを分けて見てみますと、ここに写真がありますが、弾薬のクラスがありまして、エアフォースでは1から12までクラスがあるようですが、クラスのところのナンバーが白く消されておる。しかし、こすってみますと、天網恢々疎にして漏らさず、だんだん「7」という数字が浮かんできました。この写真です。写真には写り切れないほどの薄さです。テレビ等にははっきり映っておりました。  それで、このクラス7というのは嘉手納にもあったし、それから横田にもあった。それからメースB基地にもありました。それで、これはアメリカのマニュアルではどういう弾丸の種類かといいますと、対戦争地雷、二百八十ミリりゅう弾、ミサイル弾頭、特に超高性能爆薬、それにボムヘッド。このボムヘッドというのは、英英辞典を見られたらわかりますけれども、大体アメリカにおいては原子物質のつく弾頭となっております。  これで、ファイアシンボル・ナンバー4、それから弾薬のクラス7、それにせんだってお見せをいたしましたニュークリア・カジュアルティー、これはさっきのラディエーションをエックス光線と言われた人がおりますけれども、これはニュークリアですからね、三つそろった。私も二十一年間いろいろやってきたけれども、三つそろったのは初めてですよ。これはまさに言い逃れができない。断言しておきます。調査にかかられておるそうですか、それを待っております。  念のために、きょう横田の問題も出ました。それからメースB、これはもうおわかりのとおりに核そのものを貯蔵しておった基地ですね、このメースB基地にナンバー4がある。これは幸いカラーですから、バックが赤です。赤というのは核ですよ。この写真もちょっと念のためお見せします。こちらが横田です。こちらがメースB基地です。  それから、次にミッドウェーの問題に移りたいと思いますが、私はいまから、おとついのワインバーガー国防長官がミッドウェーについて指摘された点、それから先ほど金子委員が指摘をされた点、それを補強をしたいと思うのです。  まず、一九七四年十月十八日付アメリカ海軍省の公文書があります。これはどういう公文書かというと、ミッドウェーに関する一九七四年七月二十二日付、米民主党下院議員ロナルド・V・デラムス氏の照会に対するD・S・ポッター海軍長官代理の署名入りの回答書であります。内容は、ミッドウェーで水兵の乗艦拒否事件がありました。それに関して、人種別の兵員配置に関するデラムス議員の照会に対しての海軍省人事局長の報告であります。その内容は、一九七四年九月二十日現在のものであります。  この報告書の二枚目のナンバー(九)のところに、ミッドウェーの兵器部の説明があった。ウエポンズ・デパートメントとなっている。そのミッドウェーの兵器部にスペシャル・ウエポンズ・デパートメント、これが載っております。つまり、スペシャル・ウエポンズというのは特殊兵器、直訳すればそうですけれども、いまはNBC兵器のことを言うのです。特に核兵器の場合は、いまはニュークリアと余り言いません。スペシャル・ウエポンでやっておるのです。御存じのとおりです。  それで、この兵器部のスペシャル・ウエポンズ・デパートメントには、要員は白人二十三名、黒人一名、計二十四名のいわゆる核兵器要員がおります。また、この兵器部にはスペシャル・ウエポンズ・デパートメントのほかにマリーンデタッチメント、つまり海兵分遣隊がこのミッドウェーに派遣をされております。そしてミッドウェーの核兵器を警備することを主な任務にしております。この海軍省の公文書は、六年前に私は宮澤長官に見せました。宮澤さん、あなたに見せましたね。——お忘れですか。お忘れであれば注意を喚起しておきます。  それで、ミッドウェー積載の核兵器はどうなっておるか。ミッドウェー積載の核爆弾は、艦内ではニューキーというニックネームで呼ばれております。このニューキーという爆弾は、先端部とそれから尾部に四枚の羽根があるけれども、そこが赤い色で塗られております。米軍のマニュアルでは、爆弾表示の際に赤色を使うのは核兵器であるということは、かつて私は国会で確かめました。普通弾は緑色であります。このニューキーの本体全体は白色、長さは六フィート、約一・八メートル、直径三フィート、約九十センチ、普通弾よりは一回り大きいのです。そして、このニューキーという核爆弾を貯蔵しておるところはSASと言います。SAS、つまりスペシャル・アミュニション・ストーレッジ、核爆弾貯蔵庫ですね、弾薬庫、これは二カ所あります。そして、このニューキーがそのSASの中に格納されております。  このSASはミッドウェーのどこにあるかというと、艦体の中央部の上甲板から四番目、第四甲板の下方の艦底に近いところにあります。第四甲板には入り口があります。その入り口から二つのエレベーターがある。これはさっき金子さんが言ったとおりです。二つのエレベーターがある。最初のエレベーターからまずおりて次のエレベーターに乗りかえたところに、このSASがあります。  ミッドウェーではどういう訓練をしておるか。ミッドウェーは航海を一回するたびに最低一回以上の訓練をやっております。三つの訓練をしておる。一つ、ブルーベルズ。二つ、ブロークンアロー、これはさっき出たとおりであります。三番目、キャメロット。ブロークンアローは御指摘のとおり核事故訓練であります。キャメロットは核兵器積みおろし訓練であります。ブルーベルズ、これはどういうことかわかりますか、防衛庁長官
  433. 塩田章

    ○塩田政府委員 わかりません。
  434. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 よく勉強しておくことですね。ここで知った方、おりますか。これは私もわからないのです。だから聞きたかったのですよ。  それで、このニューキーの飛行機への取りつけ、取り外しなどは、夜間、洋上で非常呼集をして行っております。訓練のときは、関係兵員は全部、原発に入るときにつけられるような、胸のボタンのところに放射能検出の胸バッジをつけることになっております。そして、もし核の汚染が、放射能が出たときにそのバッジにあらわれますから、そういう場合には直ちに訓練を停止することになっております。  そして横須賀にミッドウェーが入港する際は、核兵器は決しておろさない、積載のまま入港しております。  さらに、きょう金子委員が出したあの写真の問題は、これはエックス線じゃない、つまり核区域注意という、まさにそこにあるのです、SASのところに。これでワインバーガー国防長官の内容も裏づけられます。  そこで、私は提案をしたい。委員長においてお諮りをいただきたい。ミッドウェーは六月五日に入るようになったのですか、確認をします。
  435. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 報道等で承知しておりますが、海軍のスポークスマンが六月五日に入港するということを発表したということを承知しております。
  436. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何ですか、報道で知っただけですか。日本政府は許可をしたのですか、官房長官。さっき官房長官の記者への記者会見のあれが出ておりましたが、どうですか。(「アメリカ局長答弁」と呼ぶ者あり)いや、これは局長関係ないですよ。
  437. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も海軍の関係者が発表したということを報道で知っております。
  438. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これだけ問題になっているのに、それでいいのでしょうか。もし入ってきたら、この際わが国会から調査団をミッドウェーに派遣してもらいたい。これが一つの提案です。  もしそうでなければ、それはそれとして、これは野党第一党の社会党にお願いしたいが、野党をまとめて、野党の連合調査団をぜひ組織して別個に独自の調査をされるように、これは社会党に対する提言であります。(「治外法権のところに入れるのか」と呼ぶ者あり)入れるんですね。やってみなくちゃわからぬでしょうけれども、立ち入りできますよ。  委員長、その点どうですか。
  439. 奥田敬和

    奥田委員長 御提案を心して承りました。
  440. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうですか。善処をお願いします。  それから、私は余り時間がありませんから駆け足でいきますけれども、いま問題になっておるこの非核三原則の問題については、実際は現実と非核三原則は乖離しておる。それで私どもは、原則の方を現実に合わせるのではなしに、この際乖離があれば原則の方に現実を合わせるべきである、そういう立場です。したがって、その非核三原則の中に寄港、通過も含むという鈴木内閣の方針を私は支持します。  問題は、その方針の有効性ですね。有効性をどうするかという問題です。それで、私も二十一年間何回もやった。ついに、この問題はむなしい。一つは何か。事前協議がないから持ち込みはないと思いますというその間接話法。もう一つは、アメリカは核の存否について明らかにできないという政策の堅持であります。事前協議を申し込むということは核の存否を明らかにすることである。そうでしょう。これがある以上はそれをしないと言うのだから、私に言わせれば事前協議にかけるわけはないのです。さっき局長はマクマホン法のことを言いましたね。これは私が四十九年十一月に質問して、あなたが答えたのですよ。だから、あなたの答弁のとおりであれば、鈴木さん、あなたアライアンスと言っているのだから、それならば、こういう核の存否は言えないというような政策をひとつ変えてください、そうせぬと、日本国民としては困ります、はっきりこれだけ疑惑が出ているからひとつはっきりしてくれませんか、それくらいは言うべきではなかろうかと私は思うのですね。そうしないと、この核問題は不毛です。  たとえば、ここに核爆弾があると言っても、これは模擬弾ですと言われれば、あと検証の方法は何がありますか。一つアメリカ政府が言うか、もしくはジョージ・ワシントンの衝突事故のように、あってはならないことだけれども、何か事故が起こらない限り——あのジョージ・ワシントンと日昇丸の衝突が領海内で起こっておったらどうなるかという問題です。そういうことがなくては明らかにできないのです。そういう性質のものですから、これはひとつ鈴木総理のお考えを聞いておきたいと思います。
  441. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非核三原則は国是であるという立場からあくまで堅持してまいらなければならない、これが国会の超党派の決議の御趣旨にも沿うゆえんである、こう考えます。  それから、原則に実態を合わせるように努力すべきだ、こういう御意見、私は非常に勉強させていただきました。よく拝聴いたします。
  442. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昭和四十六年十一月三十日に、そのとき私、社会党におりましたけれども、ここに横路委員もおりますが、私ども一緒に十名で質問主意書を出した、その答弁書が参りました。この中で佐藤総理の答弁書はこういうことになっております。「核兵器の持込みを事前協議の主題とすることが合意されたのは、当時わが国には核兵器が存在しない事実が前提にあってのことであり、」これからいくと、もし何らかの都合で当時わが国に核兵器が存在したという事実が明らかになったらこの前提は崩れますね、事前協議の合意はそれを前提にしておるのだから。  そして、私は沖繩国会のときに佐藤さんに、非核三原則がもし壊れるようなことがあったらあなたはどういう政治責任をとりますかと聞きました。そうしたら佐藤さんは、佐藤内閣の運命をかけて政治責任をとります、さらに自分の進退も含めて政治責任をとります。これは国是ですから、総理としてはそのくらいの決意があってしかるべきだ。何度か総理にその責任問題をやりましたけれども、私は以前のような答弁は要りません。この佐藤さんと同じ決意であるかどうかだけ、イエスかノーか聞きたい。
  443. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非核三原則わが国の国是であるという立場からいたしまして、佐藤元総理の御決意を私もそのように心得ております。
  444. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に、核軍艦の領海通過の問題について答弁書をきょういただきました。ここではっきりしたことは、何のかの言ったって、少なくともまず四十三年までは、この核軍艦の領海通過は事前協議の対象でなかった。これだけはまずはっきりしました。そして問題は、ここに何と書いてあるのですか。四十三年四月十七日の三木さんの統一見解を例に出して、「核の持込みという観点から事前協議の対象となるというのが、政府の見解である。」この四十三年四月十七日の統一見解から何でこういうことが出てまいりますか。どこに一行でも書いておりますか。冗談言っちゃいけませんよ。  それが証拠に、四十九年の十二月三十一日、参議院の内閣委員会、これは内藤委員の質問です。このときに松永さんは、この四十三年統一見解は領海条約との関係ですと言っているのです。何も事前協議関係で言っているんじゃないと言っているのです。読み返してごらんなさい。だから統一見解を求められて、四十九年十二月二十五日に統一見解が出たんじゃないか。そこで初めて領海通過も事前協議の対象としますと統一見解を出したのだ。結局は四十九年の十二月二十五日までは事前協議の対象になっていなかったのです。  最後に、一問だけ聞きます。四十九年十二月二十五日の統一見解で、アメリカの艦船については通過も寄港も事前協議の対象となる、そうなりましたね。厳しく拘束した。ところが、ほかの国の軍艦、たとえば今度の共同声明第二項でソ連の脅威をあなた方は指摘した。ソ連の潜水艦を例に挙げましょうか。ソ連の潜水艦は領海通過について何の条約的な拘束もない。なぜならば、領海条約では……(「委員長、注意しろよ。何をやっているんだ。時間が過ぎたじゃないか」と呼ぶ者あり)事前通告の制度というものはまだ領海条約で、海洋法会議で決められてないんですよ。だから、日本がただ言うだけですね。  そうすると、アメリカの軍艦とソ連の軍艦を比較した場合に、アメリカの方はすごく拘束することになる、ほかの国の軍艦は条約的な拘束はない、これでいいのでしょうか。だから私は、この際、たとえばソ連に対しても、宣言するだけじゃだめです、外交交渉を通じて、領海通過は絶対困る、それをきちんとやってもらいたいと思います。どうでしょうか。——鈴木総理、最後に共同声明と関連して私はお伺いしたのですから。この点は重大ですよ。そんなことで自民党はいいのですか。そんな、アメリカの艦船は厳しく規制して、ほかの国は規制できないということを言っていていいのですか。
  445. 奥田敬和

    奥田委員長 楢崎委員に申し上げます。  傾聴すべき質疑中でありますが、お約束の持ち時間が参りましたので、結論を急いでください。  伊達条約局長、簡単に。
  446. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ソ連の船とアメリカの船とで、アメリカの方が厳しくなっているではないかという御趣旨の御質問だと思うのでございますけれども、無害通航と認めておりましたときには、アメリカの艦船も、核を持っていても、単なる通過は無害通航だから事前協議の対象とならない。これは、日米間において安保条約というものがあり、事前協議制度というものがあるからそういうことになっておったわけでございまして、その間、ソ連ないしはほかの外国艦船が核を積んで日本の領海を通っておりましても、これは無害通航として許容されていた、むしろ、許容されていたというよりも、認められていたということでございます。  そこで、現在の状況はどうかと言えば、日米間には事前協議制度がございますから、アメリカが核を持ち込むような際には、日本の事前協議にかかるということでございますが、わが国は一般国際法上無害通航ではないというふうな立場をとっているわけでございますから、沿岸国であるわが国立場としてとった核の通航は無害通航ではないということについては、もはや一般国際法上の無害通航権を行使することはできない。したがって、アメリカ以外の他の艦船が核を積んで通る場合には、これは日本国に対して通過の許可を、当然ながら求めてくるべきものである。その場合に……(楢崎委員「海洋法会議で通ってないよ、まだそんなことは」と呼ぶ)いや、それは先生は、軍艦の通航に関する一般国際法上の事前通告制度というものと、いま私が申し上げかけました、核の持ち込みについての通過許可というものとを混同していらっしゃるのじゃないかと思うのでございますけれども……(楢崎委員「冗談じゃないですよ」と呼ぶ)通過許可は求めてこなければいかぬ。もしもそれを求めないで通過しているのだとしたら、それは一般国際法上の義務違反であるということでございます。
  447. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理、どうですか。ソ連と外交交渉を通じて、これは困るということをやっぱりはっきりやるべきだ。総理の答弁を求めます。
  448. 奥田敬和

    奥田委員長 楢崎委員に申し上げます。  総理の日程もあり、他会派との申し合わせもございます。  これにて質疑を……(楢崎委員「いや、ちょっと待ってくださいよ、総理の答弁が残っているじゃないですか」と呼ぶ)
  449. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ひとつ勉強させていただきます。
  450. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて質疑を終わります。  以上で本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後八時十八分散会