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1981-04-09 第94回国会 衆議院 科学技術委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年四月九日(木曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 中村 弘海君   理事 小沢 一郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 椎名 素夫君 理事 塚原 俊平君    理事 日野 市朗君 理事 八木  昇君    理事 草野  威君 理事 吉田 之久君       伊藤宗一郎君    上草 義輝君       金子 岩三君    佐藤 文生君       斎藤 邦吉君    泰道 三八君       登坂重次郎君    船田  元君       与謝野 馨君    北山 愛郎君       上坂  昇君    田邊  誠君       広瀬 秀吉君    斎藤  実君       和田 一仁君    瀬崎 博義君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     下邨 昭三君         科学技術庁計画         局長      園山 重道君         科学技術庁研究         調整局長    勝谷  保君         科学技術庁振興         局長      宮本 二郎君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君  委員外出席者         通商産業省貿易         局為替金融課長 村井  仁君         参  考  人         (新技術開発事         業団理事長)  武安 義光君         参  考  人         (新技術開発事         業団専務理事) 牧村 信之君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事長)  藤波 恒雄君         参  考  人         (日本原子力研         究所理事)   吉田 節生君         科学技術委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ———————————— 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   佐々木義武君     上草 義輝君   前田 正男君     泰道 三八君   村上  勇君     佐藤 文生君   渡辺 栄一君     船岡  元君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     佐々木義武君   佐藤 文生君     村上  勇君   泰道 三八君     前田 正男君   船田  元君     渡辺 栄一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  新技術開発事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五〇号)      ————◇—————
  2. 中村弘海

    中村委員長 これより会議を開きます。  新技術開発事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として、新技術開発事業団理事長武安義光君及び同専務理事牧村信之君、日本原子力研究所理事長藤波恒雄君及び同理事吉田節生君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村弘海

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 中村弘海

    中村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。日野市朗君。
  5. 日野市朗

    日野委員 いま議題となっております新技術開発事業団法の一部を改正する法律案について、質疑を行います。  まず、この新技術開発事業団法の一部を改正する法律案を私拝見いたしまして、これは、いままでとは非常に異なった観点から科学技術というものに対するアプローチを行っていきたいという方向が出されていることには注目をいたしたいと思います。  それで、この法律案が出るに至った経緯をずっと勉強さしていただいたわけでありますが、「流動研究システムによる革新技術シーズ探索研究推進方策」という、昭和五十六年二月二十七日に出された科学技術会議総合部会報告書レポートがございますが、これを見ていろいろ勉勉をさしていただきました。そこで、私にとってはこの報告書が非常にわかりにくいものであったのであります。まず題名からしてわかりにくい。このシーズというのは一体どのようなものなんでしょうか。ひとつわかりやすく御説明をお願いしたいと思うのです。  私いつも思うのですけれども、これは日本かなり公の文書であります。これはできるだけ日本語を使いたいものだ、私はこう思います。システムという横文字をかなに直したやつがございます。システムはもう大分日本語としてなじんでおりますけれどもシーズというのは一体何だろうなと思って、これだけでかなり頭をひねるわけですね。英語の辞書を引こうにも、じゃどういうスペルなんだろうというところから見なくちゃいかぬ。それに、シーズというと、後の方に芽と書いてあるのですけれども、シードの複数形でそれにSをつけてシーズとしたにしたって、私はこれは種のことじゃないかという感じがするのですね。私の非常につたない、本当にABCがやっと読める程度英語力で判断すると、シーズというのはまさに種でしかないと思うのですが、どういうふうにシーズというものをイメージとしてつかんだらいいのかわかりません。ちょっとわかりやすく説明してください。
  6. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 御説明申し上げます。  ただいま先生のおっしゃいましたとおり、シーズは種という意味でございますが、種という言葉ではなかなかわかりづろうございますので、われわれといたしましては、技術研究開発初期的段階におきます芽というようなものという意味でございますが、芽という言葉は余り日本でもこういう表現はとらぬものでございますので、シーズという表現をとっております。  具体的に申しますと、いろいろ最初非常に幼稚なものからだんだん発展いたしまして、一つ実用技術になるわけでございますが、その発展過程におきます初期的段階のものを呼んでおるわけでございます。それでこれは、また英語が出てきて恐縮でございますが、ニーズと申しますか、特定用途に直結いたしました成熟度の高い技術ではございませんで、このシーズが出ました後、技術的な可能性追求いたしまして、結果として多様な用途にこれがつながっていくような可能性を持ちました、核となるような基本的な技術、これをシーズというぐあいに呼んだおるわけでございます。  私ども通常こういうシーズと言っておりますものを、現にいろいろあります製品の段階で具体的な例を挙げますと、たとえばトランジスタでございます。たしか昭和二十三年ごろだったと思いますが、アメリカのショックレーという人が、金属と非金属中間物のような半導体というものの理論の中から、それが電気を通したり通さなかったりするそういう半導体をくっつけ合わせました一つの小さなものをつくり上げたわけでございます。これを後でトランジスタと命名しておりますが、これが一つシーズである。実際にこれが使われ出しましたのは、昭和三十年代に入りまして、真空管のかわりをするということで、ラジオが非常に小型なものになっていく、それからこれが集積回路発展する、さらに大規模集積回路にこれが発展してくる、こういうことで、今日のようなコンピューターといいますか、エレクトロニクスの世界ができてきた。そういうような発展を見ました場合に、その最初トランジスタなどを一つシーズというぐあいに呼んでおるわけでございます。  もう一つ例を挙げますと、たとえばナイロンなどでございますが、これもアメリカにおきましてカロザースという人物が、非常に高分子の繊維合成方法をいろいろ探索いたしまして、一つ合成物をつくり上げまして、これをナイロンと名づけたわけでございますが、これが糸のように細く、絹よりも強く、今度だんだん用途開発されてまいりまして大量生産技術ができ、あるいは原料も改善される、こういうことで今日いろいろな合成繊維世界ができてきたわけでございます。  そういう一つの、一番きっかけになりました基本的な、核となるような、芽となるような技術、これをシーズと呼んだ次第でございます。
  7. 日野市朗

    日野委員 私の認識では、何か役に立ちそうだというものが見つかる、まさにこれはシーズと呼んでもいい。ここではシーズという言葉を使いましょう、せっかく使ってありますから。ただしこれからは、やっぱりこういうことはきちんとした日本語にして使われるのが適当かと思います。私も、自分でも使わないわけじゃないのですが、たとえばこの委員会なんかでも横文字でぺらぺらとやると、わかっている本人たちはその場の感じ横文字表現することになりましょうけれども、これがたとえば速記録なんかに表現されると、きちんとした意味速記録に定着されることにはならないことが非常に多いように感じます。委員会審議なんかではできるだけ日本語でやるのが私は適当だと思います。私、英語は本当によくわかりませんので、そこのところをひとつそのようにお願いをしておきたいと思うわけであります。  きょうはシーズという言葉を使いますが、私の認識では、何かこういうシーズと言われるようなものを、特に探し出そうとして見つかるものではないのではないかというような感じが実は強くいたしますね。いろいろな本に載っているのでありますが、たとえばペニシリンの発見というのは偶然の所産だと言われているわけですね。フレミング自分培養菌の中でアオカビを見つけた、その周辺には雑菌が育たないというようなところからぴんときて、ペニシリンというところまで行くわけですが、これはフレミングにそれだけの蓄積があったからできたのであって、最初から一生懸命それを探そうとしてできたのではないのだ、こうも言われます。また、よく言われるのは、ニュートンリンゴがほとんど落っこちるのを見て万有引力というようなところまで行くわけですけれども、だれだってリンゴが落ちる、石が落ちる、上から物が落ちてきて自分の頭に当たるなんということはもういろいろ経験しているわけですが、ではだれだってそこから万有引力なんという発想が出てくるかというとそうはまいりません。やはりこれはニュートンなりの、ニュートン程度のと言った方がいいですかな、下地があって初めてこれから普遍的なあるものに思いをいたすことができたわけですが、これは科学技術の面でも同じだと思うのですね。何か一つ現象が目につく、それが何か意味を持ち得るのだということをつかみ取るまでには、かなり基礎的な蓄積研究者になければきちっとつかむことはできないのじゃないか、こういうふうに思うのですね。  そうすると、何かを探索しなさいよと言ってテーマを与えていく、そのことが果たして実効的かどうかということを私は非常に根本的な問題として深刻に考えてみなければならないのではないかというふうに思うのですね。むしろいまの段階でやるべきことは、何か起こった現象を何か意味があるものだというふうにきちんと感じ取るような能力、これはもうまさに基礎的な能力の積み重ねというようなことしかないのでありますが、そういう研究というよりは学習とか、そういったものを強く進める、そして研究者の層を厚くしていく、そういうことの方がより重要ではないかというふうにも思えるのですが、いかがでしょうか。
  8. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 確かに先生のおっしゃいますとおり、シーズと申させていただきますが、漠然とシーズを探せと言われましてもそれは非常に無理ではないかと思っております。ただ、先ほどのトランジスタを初め新しく発展いたしましたこういう技術基礎となるシーズの背景には、すべて長い期間の純粋な学理的な研究がございまして、その中に一つ理論といいますか新しい現象に着目いたしました理論研究が相当広範にございます。そういうのがかなり広範に熟してきた段階で、そこからひとつ新しい特性なり特徴なりを利用いたしました、何か実用可能性を持つようなもののひな形を試行錯誤的につくってやってみる、こういう研究をわれわれは考えておるわけでございます。そういう意味で、先生のおっしゃいますとおり、非常に理論的な純粋な基礎研究の広範な研究の中で出てくるわけでございます。  その中から、そういう研究のプロセスなり何なりの本をいろいろ読みますと、あらかじめ計画されて出てくるものじゃなくて、いろいろそういう試行錯誤の中で非常に意外性のある、いわゆる常識とちょっと違った、その背後に隠されておったような性質といいますか、そういうようなところを発見して新しいものが出てくる、こういう経緯が非常にあるようでございます。したがいまして、今度の研究も、ある意味では途中で目標を随時変えられるような非常に弾力的な研究体制をとるという意味で、新しくそういう体制シーズ探索研究と名づけたわけでございます。したがいまして、理論的な研究は相当に発酵した状態にある、こういう前提のものを取り上げていこう、こういう体制でございます。
  9. 日野市朗

    日野委員 いま私がちょっと問題意識としてお話ししたことというのは、この法律案が通った後ですぐにでもこれは問題となってくることであろうかと思うのです。といいますのは、ではどの分野でどういう探索研究をやっていくのかということがすぐに問題となってまいりますね。もうすでに幾つか、これが通ったならばやろうという研究テーマがあるようでございますけれども、この研究テーマはどれを選択するかということですね。シーズ選択とでもいいますか、これはこの法律案によると審議機関がこれを担当してやっていくことになるようでありますけれども、ただこういう基礎的な部分についてではどれを一体取り上げてやっていくかということは、これは本当に偶然の所産なのかというと、これはそうはまいらないと思いますね。やはりある程度一定基準を持たなければならないだろう。使える技術という形でいまどういうものが必要とされている、そうするとそのためにはどういうシーズ探索していくか、こういうような何か目的意識に導かれないとその選択というのはできないのじゃないですか。漠然と転がっている、また想定されるいろいろな現象の中から全く随意にといいますか、本当にこういうときはアトランダムにという言葉を使うと使いやすいのですけれども、さっきは余り使わないことにしようと言いましたから、こういうときは何という言葉を使ったらいいですか、随意的に選択をしていくということでもこれはうまくはあるまいというふうに思うのです。いかがでしょうか。
  10. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 確かに随意に、でたらめにやるということじゃございませんで、たとえば当庁におきまして航空・電子等技術審議会というのがございますが、そういうところでいろいろ学識経験者が集まりました際に、そこで答申が一つ出ておるのでございますが、今後の新しい技術一つ可能性、そういう可能性みたいなものは一つの予想がつくわけだろうと思いますが、そういう一つのジャンルといたしまして極限技術ということを言っております。たとえば超低温、絶対温度で言えば零度に近いような超低温の場合の金属なり物の性質、あるいは超高温の場合、それから非常に圧力をかけた超高圧の場合、そういうような一つ極限状態におきましては、通常われわれの世界におきます物の性質と違った性質が出てくるわけでございます。そういうところに一つの今後の新しいシーズ可能性があるのではないか、こういうようなことが出ております。  それから、最近よく新聞等に出ております遺伝子工学というような、たとえば遺伝子の中の構造までがだんだんとわかってきておる、そういうところを利用いたしまして、何か新しい技術可能性が出てくるのではないか。  そういうやや漠然とはしておるのでございますが、可能性のありそうなところというものは、学識経験者を集めて議論いたしますと、大体のそういう方向づけだけはできるようでございます。いわばそういう方向づけをした上でいろいろ理論的な研究を尽くして、そういう論文を発表しておられる研究者がいろいろおられるわけでございますが、そういうのを両方から組み合わせまして、一つテーマをしぼり選定していこう、大体こういうような考え方でございます。
  11. 日野市朗

    日野委員 私、特にここのところを問題意識として強く意識せざるを得ないのは、やはり何か一つ問題意識を持って、そしてシーズ探索をやるという結果にならざるを得ないので私申し上げているわけなんです。  あと、この法律案のずっと後でもまた質問することになりますが、ずっと見てまいりますと、この研究に参加する人、それから研究者を出してくる企業などがかなり優遇されるといいますか、利益を得ることができるような位置づけがされているわけでございますね。そうすると、本当にシーズ探索研究だといっておきながら、実はある一つ技術開発のために必要なことが、シーズ探索という名をかりて行われる可能性というのは否定し得ないだろうというふうに思うのですね。場合によっては、それがある特殊な兵器なんかの製作技術のためのシーズ探求になったりするという可能性も私は否定できないというふうに考えざるを得ないのですね。逃げ道としては、これはシーズ探求であってそこまで考えているものではありませんと言うことは可能であります。しかし、現実にどういうシーズ選択をやっていくかということになると、何か目的意識が先にないと全く随意的なシーズ選択ということにならざるを得ないわけで、そうではないのだとするならば、これはやはり一つ目的意識があって、それが特定技術を志向してみたり、場合によっては兵器製造目的、それを志向するものがシーズ探索という名をかりたりする可能性がある。いかがでございましょう。
  12. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 一つ目的意識を持った研究になるのではないか、こういう仰せではございますが、確かに従来政府がいろいろ助成なり、国の研究所でやりました研究につきましても、特定目標を設定いたしまして、たとえば原子力でございますと高速増殖炉とか、何か一つ目標を設定いたしまして、それに必要な部品なり材料なりを研究していく、そういう目標設定型の研究が圧倒的でございます。そういう研究というのは大体応用研究とか開発研究と言われるようなことじゃないかと思うのでございますが、今回のわれわれ考えておりますものは、いわば日本自身として、外国から技術を導入したものじゃなくて、オリジナルなものをやっていこう、こういう発想でございますので、一つの物質とか生命現象とか、そういうものの本質的な特徴などをとらえまして、それから追求していこう、こういう発想でございます。  私ども、これは今後事業団審議会でお決めいただくことではございますが、一つ候補といたしまして、非常に小さな微粒子研究するというテーマを考えておるのでございますが、これにつきましても、物の目方わり表面積が非常に大きなもので、超微粒子になりますと原子の数が数十個くらいの大きさ、こういうことになるようでございますが、こういうことになりますと、目方わり表面積が非常に大きいということで温度が非常に低温で溶ける、その金属性質、物の性質とは違った性質が出てくる、それから原子としての性質が強く出てきて、磁性が出てくるとか、そういう特徴があるわけでございます。  そういう特徴を生かして何かできないか、こういうことをその特徴ごとに小グループをつくらせまして、全体を一人のプロジェクトリーダーが統括いたしましてやらせようということでございます。したがいまして、もちろん研究者自身といたしましてはそこから何か想定いたしますかもしれませんのですが、必ずしもそれにならない、違ったものができる可能性が非常に高い、そういうような追求をしていく、あらかじめ目標を設定しないで追求をしていく、こういう体制をとろうとしておるわけでございます。そういう意味でございますので、いわば個性のある研究者が必要である、個人研究中心にいたしたい、こういう考え方でございます。  そういう意味で、企業にそういう個性のある研究者を出してもらうために一つインセンティブとして、先生がおっしゃいましたように、レポートには特許権の共有問題とかそういうインセンティブを与えておるわけでございます。そういう意味であくまで個人集合体研究である、こういう体制一定期間、五年で全部終わらせようと思っておるわけでございます。いわば特定用途に直接役立つような応用開発、こういう研究はやはり組織体でやる研究が一番効率的であるし、日本技術が大体いままでそうであったと思いますが、そういう研究ではなくて、個人を集めた研究である、こういうぐあいに考えたわけでございます。したがいまして、先生のおっしゃいますような、研究段階におきまして特定用途目的をしぼるということはきわめて困難な段階での研究である、私どもはそのように考えておるわけでございます。
  13. 日野市朗

    日野委員 いや、いまおっしゃるとおりの方向にきちんとこの法律が運用されていくということであれば特に心配はないことでありましょうけれども、要はどのようなテーマを選ぶかなどということを、これは審議機関に諮るにしても、やはり審議機関がきちんとしっかりしておりませんと、ひょっとすると国の方で金をしこたま出して、余りしこたまでもないですけれども金を出して、そして特定の、またはある種の事業者企業に対して利便を図っているというような非難を受けたりすることがあるのではないかというような危惧があります。そういうことがないようにするためには、良識ある審議機関メンバーが必要であろうと思います。この審議機関メンバー選択基準というものはどんなふうになりましょうか。
  14. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生おっしゃいますように、確かにどういうテーマをしぼっていくかということでございますが、これにつきましては、事業団事務局中心になりまして、現在でもいろいろ情報は持っておるのでございますが、広く学識経験者意見それからアンケート調査、こういうものをずっと集めまして、一つ対象分野候補をしぼってまいります。それをもちまして開発審議会意見を聞く、その上でさらに具体的な研究プロジェクトの提案を求めて、それをさらに一つテーマにしぼり込んでいく、そういう過程をとるわけでございます。  それで開発審議会といたしましては、現在十名の開発審議会委員がおるのでございますが、これは従来の業務の事業団委託開発の課題の選定とか、すでにできました特許権企業化についての意見を聞くような仕組みに現在はなっておるわけでございます。  そこで、今度法案を御了解いただきました場合には、これを十五名に増員いたしまして全面的に改組いたしたいと思っておるのでございますが、その方法といたしましては、一つは、技術の動向について長期的総合的観点に立って判断できる方、これが一つグループ、それから第二番目としまして、物理、化学、生物等基礎科学分野についていろいろとすぐれた識見を持っておられる方、それから第三点といたしまして、電子工学機械工学材料工学等のテクノロジーの分野経験をいろいろ持っておられる方、大体この三つの分野方々から選定いたしたい、こういうぐあいに、十五名でございますが考えているわけでございます。それで、この十五名の方々だけで全体を尽くすことは、今日非常に高度に発達いたしました科学技術の中で非常に無理な点もございますので、この下にいろいろと専門委員を入れましてこれを補佐する体制を十分にとっていきたい、このように考えている次第でございます。
  15. 日野市朗

    日野委員 私、従来の新技術開発事業団のやってきた業務内容を考えてみる、それから現在の審議機関メンバーを考えてみますと、でき上がった技術をいかに普及し企業化していくか、工業化していくかということにいままでかなり主眼が置かれた運営がなされてきているわけですね。まさにそれが従来の事業だったわけです。そのことから、基礎的なシーズ探索ということよりは、ややもすればシーズ探索に名をかりた先の方、それからもっと上の段階の方に意識が行く傾向が出ては困ることだろうと思いますので、そこのところは十分に意識しながらやっていただきたいと思うのです。このレポートの中にもありますが、どういうシーズ探索を行うかについては、単に審議機関の中からのいろいろなアイデアの出し合いということばかりではなくて、一般からの提案というようなものも広く受け入れていくというような体制を組むべきではないかと思います。どのようにお考えになりますか。
  16. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生の御説のとおりでございます。一応現段階において考えておりますプロセスを申し上げますと、研究テーマの選定につきまして、事業団はまず、いろいろ学識を有する方、これは開発審議会委員ばかりではございませんで、各方面の方々から直接ヒヤリングをするほか、広く研究者アンケート調査をとる、こういうような広範な調査を行いまして、シーズ探索上有望と考えられる対象分野候補をまず整理いたします。それで、この調査に基づきまして開発審議会にこれを諮りまして、開発審議会といたしまして研究対象分野を幾つか選定していただく、その選定していただいた対象分野につきまして具体的な研究プロジェクトの提案を広く求めたいと考えております。それで、提案がありましたその対象分野に関します具体的なプロジェクトごとに面接調査をする、それから専門家からの意見を聴取する。この段階で、審議会委員のみならず専門委員、そういう方々意見、それから具体的にこういうところに個人として集まっていただけるものかどうか、そういう具体的な条件などもおよそのことは大体この辺で詰めていかないといかぬと思います。そういうことで、それが一つ研究プロジェクトとして可能性を持つものかどうか、こういう点もここで詰めてまいる必要があろうかと思います。そういうぐあいにしぼりました上で再度開発審議会意見を聞く、こういうかっこうでだんだんとしぼり込んでいきたい、こういうように考えている次第でございます。
  17. 日野市朗

    日野委員 いまの御答弁を私としても一応了として、心すべき点は心してやっていただかなければならないと思うのです。私、この法律案を見て考えますのは、いままでの日本技術開発の体質といいますか、利益に結びつかないとなかなかやらぬというような体質があって、基礎的なところがややなおざりにされがちであった。それが国際的にも非難を浴びたり、技術の貿易ではずっとその収支が悪化していくというような傾向として出てきているのです。私一番基礎に据えるべきものは、基礎的な勉強、基礎的な研究、こういったものをきちんとやっていくのが本当は基礎だと思うのです。このようなシーズ探索ということで打ち上げてやられることも、これは応急対策としては必要なんだろうと思いますが、これをやっているから基礎的な部分を少し軽く扱っていいということにはならぬと思いますし、その基礎的な部分をどうするかということは科学技術庁の大きな仕事の一つであろうというふうにも思いますので、そこのところ、基礎的な部分をなおざりにはしないぞということは十分に心してやっていただきたいものだと思います。  それから今度は、このような法律をつくってシーズ探索研究をやるということは結構なんですが、実施主体なんです。従来のこの事業団の業務とこの法律案で考えられている業務は必ずしも余り強い関連性があるというふうには私にはちょっと思えないわけなんです。むしろこういうことをやらせるのであれば、理化学研究所のようなものとか、また場合によっては、まさにこういうことは科技庁が直営でやるべきことではないかというような考えも成り立つであろうと思うのです。これを事業団にやらせようというようになったのはそもそもどういう発想なんでしょう。
  18. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 こういうシーズ探索研究事業団にやらせるということになりました理由といたしましては、このシーズ探索研究は、いままで御説明申し上げましたように、非常に純粋に学問的な理論研究が広範にございまして、それがいろいろ熟してきた過程においてそれが何かの用に立つかというので試行錯誤的にやる研究でございますので、そういうポテンシャルをお持ちになる研究者というものは一カ所にそうたくさんおるわけではございません。各方面にぽつぽつと大体おられるわけでございます。したがいまして、こういう研究者個人として糾合いたしまして、お互いに連絡協調体制をとって、一定期間でそういう試行錯誤的な研究をやっていただく、こういう趣旨でございます。したがいまして、これを新技術開発事業団にやらせました最大の理由は、新技術開発事業団がそういう各方面、まあ各方面と申しましても、具体的に申せば産業界の企業、それから国立試験研究所等の官界、それから大学等の研究の学界でございます。産、官、学と俗に称するわけでございますが、こういうところの人たちをうまくオーガナイスできる機能に着目しておるわけでございます。事業団は従来から委託開発企業化等を通じまして、学界におきます研究者研究成果、国立試験場等の研究の成果、こういうものと、それぞれ企業との関係を結びつける役割りを果たしてまいりました。いわばそういうオーガナイズの機能、それからそういう情報の機能を持っておるわけでございます。シーズ探索研究は、研究計画につきましては総括責任者に責任を負わせまして、事業団はいわば黒子役でございます。そういう舞台装置をつくる黒子役として、新技術開発事業団が一番適当な機能を持っている、こういう考え方でございます。  そういう意味で、国自身がこれをやるということになりますと、まあ国の研究所、公務員という身分を与えるところにこういう各所からの人を持ってくるわけにまいりませんし、逆に今度お金の方をそういう各所の研究者に出すということになりますと、これは一つ研究者個人に対する開発費という資金管理の問題でございますとか、それから委託とか、そういうものが数が非常にふえてきまして、いろいろ研究管理が弾力的に非常にやりにくい、そういう点がございまして、やはり政府機関として一番そういう身分なり資金なりに弾力的な体制を持ち得る特殊法人を利用するのがどうしても一番便利である、そういうふうな結論に至りまして、そういう意味で新技術開発事業団、これを取り上げてまいった次第でございます。
  19. 日野市朗

    日野委員 事業団の現状を見ますと、事業団の職員は、事業団固有の職員というのは非常に数が少なくて、他からいろいろ応援をもらっているというような状況のようですね。現在の職員数なんかでは、この新しい事業を引き受けてやっていくというだけの能力があるのかということになると、ちょっと疑問を感ずるのですが、どうですか。
  20. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 事業団の現在の職員は理事長以下七十名程度でございます。確かに現在の職員はその程度でございますが、一つのそういう情報機能それからオーガナイズする組織機能、こういう点からの人員としてはまあまあという感じではないかと思っております。  それで、今度の業務をやらせるに当たりまして、この程度の人数ではやはり無理であろうかと思っております。この点につきましては、五十七年度におきまして、少しその辺の充実を図ってまいりたいと思っておるのでございますが、各所におります研究者を組織化いたしまして幾つかのグループができるわけでございますが、そういうところに自分自身の職員を張りつけまして、それで資金管理、お世話役をやらせる。それから、中央におきます企画、情報機能の業務につきまして、さらにもう少し基礎研究分野につきましての情報機能を充実させないといかぬ、こういうような問題が出てまいります。五十七年度におきましてその充実を図りたい、このように考えておる次第でございます。
  21. 日野市朗

    日野委員 こういう研究グループをつくって研究を進めるということになりますと、その研究の成果というものに対して、これは一つの財産的な価値を持ってくるわけでございます。たとえば一つ特許権というようなものを持つ。そうすると、それをどのように財産権を享有していくか、財産権の主体といいますか、そういうものはどんなふうに処理されるということになりましょうか。
  22. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 五年程度一定期間集まりまして研究いたしまして、その後解散するわけでございますが、そこにおきます成果といたしましては、これがうまく成功いたしますれば特許権、ただ特許権と申しましても、これは多分に原理特許と申しますか基本特許的なものであろうかと思いますが、こういうものができるわけでございますが、かなり多くの場合は優秀な研究論文ができる、こういうことで終わることも考えておかなくちゃいかぬのではないかと思っております。それで、そういう特許権として実りましたものにつきましては、これは新技術開発事業団と、それからその特許権を発明といいますか成果を上げました研究者個人との共有、こういうかっこうで設定いたしたい、このように考えております。
  23. 日野市朗

    日野委員 ただその場合、事業団が共有者の一員となるということですが、その割合は、共有持ち分ですな、これはどの程度ですか。
  24. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 特許権等の二分の一を事業団、こういうぐあいに考えております。あとの二分の一を研究者、まあこれは一人である場合よりは、多くの場合やっぱりグループであろうと思いますが、その残りの半分をそういう成果を上げた研究者たちで分け合う、こういうことになろうかと考えております。
  25. 日野市朗

    日野委員 その場合、グループで分け合うといっても、そのグループで仕事をする場合、一体どんなふうに分けることになるのでしょうかね。これは私がなり問題じゃないかと思うのですが、そのグループの数で均等に割ってしまうのか、何かランクがつくのか、そこいらはいかがですか。これはちゃんと国の方で基準でも決めて、そしてその研究者たちに押しつけるといいますか、その基準を提供することができるのでしょうか。できる筋合いのものなんでしょうか。
  26. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 二分の一になります。その発明者側の持ち分でございますが、これは大体複数の場合が非常に多いわけでございます。その複数の研究者でどういうぐあいにこれを配分するかという点につきましては、その発明に対する貢献度に応じて各研究者に配分する、こういうことになっておりまして、ABCならABCにどういうぐあいに配分するのか、こういうやり方につきましては、これは現に国の国有特許、研究所おきます国有特許その他におきましても、こういうことは通常頻繁に行われておるわけでございます。もちろん当事者にいろいろの不満足などはあろうかとは思いますけれども、そこはその研究を統括しておる者が中で話し合いまして、通常こういうことは支障なく現実的に処理されておる、こういう非常に多くの実例が現に存しておる、こういうのが実情でございますので、一つプロジェクトリーダーのもとにおきまして現実的な処理ができるのではないか、このように考えております。
  27. 日野市朗

    日野委員 いずれにしても、国の側、つまり事業団ということになりますが、半分の共有持ち分である、あとは研究者。ということは、これは研究者を出してきた企業とかその他の団体なども、これはその研究者を出すことによってその利益をこうむっていくということになるわけなんでして、私は、この国の持ち分が半分であるということはかなり問題じゃないかと思うのですね。金は出しますよ、ただその利益の帰属は半分だけでございますということでは、果たしていかがなものかというふうに思わざるを得ないんですね。特に研究者なんかは企業に帰れば自分で身につけていった多くのものをそこで生かすことになるわけでして、これは国が一生懸命金を使って企業なんかにメリットを帰属させるというような感じがしてならないんですけれども、そういう観点からの検討は行われなかったわけでしょうか。
  28. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 今度の国の事業団でございますが、これは研究者を終身雇用制で自分の固有の研究者とするわけではございませんで、一定期間、五年間をめどに一つの契約期間研究させるものでございます。いわばそういう一定期間研究契約に基づきまして研究させました場合、金を出した方と当該研究者とちょうど半分ずつに分ける、こういうのが大体常識的な内容であり、現にいろいろ理化学研究所その他のところで共同研究の場合にはそういうやり方ではないか、このように考えております。やはりこういう非常に基本的な——いきなりその商品に直結いたしません、商品といいますか実用につなげるためには応用研究開発研究をさらに相当積み上げなければならないようないわば原理的な特許、できたといたしましてもそういうものではないか。五年間での研究でございますので、そういうものではないかと思っておるわけでございます。こういうようなところには優秀な研究者をどうしても出してもらわぬと困る。やはりその人が帰属しております親元機関と申しますか、研究所であったり企業であったりするわけでございますが、そういうところにやはりそれ相応のインセンティブと申しますか魅力を与えませんと、いい研究者がなかなか出てこない。研究者自身もその親元の機関の組織から臨時的に一応身分が離れたような感じもございますので、なかなか組織体の帰属意織の強い日本の社会におきましては、そういう問題がございます。そういう点で、こういうような割合で持たせるのがわれわれとしては一番常識的であり適切ではないか、このように考えた次第でございます。
  29. 日野市朗

    日野委員 これはインセンティブを与えるんだ、こう書いてあるわけで、実はこのインセンティブという言葉も私非常に苦労したことばでございまして、本当はインセンティブとは言わないんですね。実際使うときには、日本語で書くときは普通はヴなんですね。実際話すときはブと言ったら通じないんで、フと言った方がむしろ通じたり、ウと言った方が通じたりする。私もこれはずいぶん辞書を引いて、インセンティブのセはSなのかCなのかなんということも問題になりますので、これもやはりちゃんと適当な日本語を用意してもらいたいというふうには思うのです。  そういう刺激を与えるということで一つのそういうことを考えるのは結構なことだけれども、やはり国として金を出すという以上は、きちんと国としても取るものは取っておかないといかぬと実は思うんです。特にこれは会計処理をする場合、こうやって予算を出してまいります、そうすると金は出すわ、成果がさっぱり上がらないということになると、こういった事業団なんかの会計処理としては欠損金というような形で処理せざるを得ないわけですね。欠損金というのはこのような事業団会計の原則から見れば、そのほかに名前をつけようがないからこういうふうにつけるんだということは意味がわかるのですけれども、ただ、それになれない人には、欠損金という言葉というものは決していい印象を与えるものではないと思うのですが、そういう場合、やはりそれに見合ったこれだけのものがありますよということがわかってないといかぬと思うのですね。特に工業所有権、半分の共有持ち分であっても所持した場合、その評価なんかはどうなさるおつもりですか。
  30. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生申されましたように、特殊法人も現在では一般企業に準じた会計処理を行っております。そういう関係でこういう研究開発費等は実は欠損金が出てまいるわけでございます。そういうかっこうで処理されております。いわばそういう事業団という一つの独立会計原則をやらせるという形では、企業会計をとる以上こういう形を一般的にとってこざるを得ないのではないかと思っております。  その中で、特許権の評価等につきましては、それが現にたとえば一つの金額で売れるとかそういうことがあれば、そこにその分が収益として立ってくるわけでございますけれども、基本的な原理特許でございますし、それはその場になってみないとまだ何とも言えない、こういう状況ではないかと思います。事業団といたしましては、この研究の成果といいますのはそういう原理特許、基本特許みたいなものでございますので、通産省その他いろいろ応用研究なり開発研究の制度等ございますが、そういうところでさらにこれを実用化に向かって仕上げていく、こういう面でのバックアップ体制はとっていく必要があろうか、このように考えております。
  31. 日野市朗

    日野委員 余り時間もなくなってまいりましたので——。  こういう研究の成果が上がってくる、そうすると、これは非常に基礎的な部分でございますから、これをがっちり事業団の中に温めておいたということではこれは全く意味のないことになってしまいますね。私は、この種の研究であればあるほど、研究の成果を公開するというばかりではなくてそのプロセス全体にわたって、研究段階全体にわたってこれを公開していくということが非常に大事なことじゃないかと思うのですね。よく原子力なんかで言いますと、これは研究の成果でありますからその成果だけを言えばいいんですというような態度をとられるわけですが、そういう場合とは根本的にこの場合は違って、すべてをあけっ広げに公開するということが必要だと思います。いかがでしょう。
  32. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生のおっしゃる御説のとおりではないかと思っております。ここでできました成果といたしましては非常に原理的な特許でございます。もちろん特許が取れるまではやはりちゃんと商業機密としてやっていきたいと思いますが、それができました暁にはそれを積極的に公開する。それから、とにかく五年間ですべて終わらせてしまうわけでございますので、そういう特許が取れるものは特許にいたしまして、それを積極的に公開する。それで、それを実用化に向けて何らかのかっこうで、今度は組織体制に基づく研究の方が有効な分野ではないかと実は思いますけれども、そういう分野にできればバックアップしていきますし、それから特許権に至らないいろいろ優秀な学術論文的なもの、こういったものにつきましても、成果発表会というものの開催でそれを積極的に公開していきたいと考えております。むしろそうすることが本件の役割りとして非常に必要なことではないか、このように考えております。
  33. 日野市朗

    日野委員 最後の質問になりますが、プロジェクトリーダーが予算を弾力的に運用しながら研究を進められるようにしたいという意向のようですが、この法律案を見てみますと三十条の二の三項に「事業団は、基礎研究を行うための施設を特に取得することのないよう配意しなければならない。」というものがございますね。これはどうでしょう。プロジェクトリーダーの弾力的な運用ということと矛盾しはしないかと思うのですね。プロジェクトリーダーがこういう施設が欲しい、これがあればもう一歩でできるのだがと言い出した場合も、いやそれはだめだとかたくなに拒んでいくものなのかどうか、ここの読み方だけ教えてください。
  34. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 三十条の二の第三項の「基礎研究を行うための施設」こう言っておりますのは、具体的な研究装置、設備というものは含んでおらないわけでございまして、いわば土地、建物のたぐい、不動産的なものでございます。そういうものを指しておるわけでございます。事業団は、先ほど申しましたように、プロジェクトリーダー研究いたします際のいわば黒子役でございまして、事業団自身が俗に言う固有の施設、固有の研究者を持つ研究所じゃございませんものですから、そういう不動産的な施設は持たない、そういうものはここに集めます研究者の施設を可能な限り利用してまいりたい、こういう発想でございます。ただし、研究装置、設備等は別でございます。これは事業団の資産として購入し、つくり、プロジェクトリーダーの要請に応じて使わせていく、こういう考え方でございます。
  35. 日野市朗

    日野委員 まだ終わらないところもあるのですが、時間が参りましたので、これで終わります。
  36. 中村弘海

    中村委員長 八木昇君。
  37. 八木昇

    ○八木委員 これからお伺いしますことについて、最初に大臣の基本的な認識と、それから局長から具体的な見解をお聞かせ願いたいと思うのでございます。  わが国で生まれる革新技術の比率が他の先進国に比べて非常に低い、独創的なものがない、革新的なものがない、新しいものを生み出す力が弱いというふうに言われておるのでありますけれども、その主たる原因、理由は一体那辺にあるのか。いろいろなことが考えられると思うのでありますけれども、もともと日本人の頭脳、才覚が特に創造性において劣るということなのか、あるいは研究者が他の先進国に比べて少ないというようなことが考えられるのか、あるいは最高の頭脳の持ち主が研究者として必ずしも結集されていないというようなこともあるのか、あるいはこの待遇、処遇あるいは研究環境が悪いというようなことがあるのか、研究費が少な過ぎるとか組織上の問題、研究体制の問題、そういうところに主たる問題があるのか、あるいはそれぞれの組織に終身雇用というような形で研究者が固定化しておる、流動しないというようなところに主たる原因があるのか、そういった点についての認識をまず大臣からお答えいただいて、具体的な見解は局長から伺いたいと思うのです。
  38. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のとおりでございまして、わが国では基礎的な、創造的な、自主的な研究というものが非常におくれておる、むしろ改良型とか改良開発型というようなものが進んで、今日の技術中心をなしておる。  理由は何かということですが、創造性が日本人にないということではない。高度経済成長に支えられて研究開発実用化のものに重点を置いてきたとか、終身雇用制とか、いろいろな仕組みがあるのだろうと思います。しかし、時代はそろそろそんな目先のことだけではなくて、基礎的なそしてまた創造的なものを生み出さなければならない時代になっておるということが概括的に言えるのだろうと思います。  詳細はまた局長から答弁させていただきます。
  39. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 ただいま大臣が答えましたような考え方でございます。基本的には、大臣が申されましたように、戦後国の繁栄を図るために新しい先進的な技術を求めていく、日本特有の終身雇用制で組織研究でこれを取り込みまして、組織的に改良し生産化していく、こういう点に官民ともに関心が集中し、それで今日の経済が繁栄してきたとは思いますが、そういう基本的な考えがありましたがために、先端技術は海外から手っ取り早く導入してくる、こういう傾向でございます。オリジナルな基礎技術は非常に時間がかかりますし、リスクが非常に多うございます。こういうことで時間をかけておったのでは大勢に追いつかないと申しますか、手早く導入してそれの改良を図っていく、こういう意識があったと思います。  それからさらに、俗に言うわが国の縦割り社会でございます、終身雇用制とか年功序列、いわば研究体制がすべて組織型になっておった。そういう組織型は、外国技術を消化いたしまして、それを改良し、発展させる、こういう点におきましては非常に有効に働いたと思います。そういうことで今日まで参ってきた。こういうことで、もとは外国の導入技術シーズでございますが、その製品は本家をしのぐようなものが今日いろいろな面で出てまいっております。そういう点から考えますと、日本人が創造性がないからだとはとうてい思えない。いわば関心がそちらの方に集中しておった。しかもその体制がそれに向いたような形で、いわば個人と申しますか個性ある研究者を生かすような体制については余り関心が向いていなかった、こういうことではないかと考えております。
  40. 八木昇

    ○八木委員 それで、いまお答えいただいたような幾つか改革すべき基本的な課題があると私も思うのでありますけれども、その一つでありますいわゆる縦割りの問題についてであります。  いわゆる産、官、学の縦割りが主に問題となっておるわけでありますけれども、そのそれぞれがまたそれぞれ縦割りということになっておると思うのであります。これは単にわが国だけではないかもわかりませんが、産業界は企業別縦割り、それから大学の場合でも、同じ国立大学であっても大学別縦割りという傾向が特に強いのではないか。そうして私学とのつながりというようなものもまたきわめて薄い。それから官の問題につきましても同様のことが言えると私は思うのでありますけれども、そのことについて質問をいたします前に、わが国のいわば研究投資といいますか、それの各省別の金額、あるいは占めるパーセンテージまでわかればよりいいのですけれども昭和五十五年度についてでも五十六年度についてでもいいですが、どちらかについて説明してくれませんか。
  41. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 お答えいたします。  わが国の科学技術に関する経費は、一般会計と特別会計の中に入っておりまして、一般会計の中では科学技術振興費という予算がございます。そのほかにエネルギー対策費の中で技術振興関係の予算がございます。さらに特別会計から計上されますものに大学、エネルギー関係等のものがございます。これを一括いたしまして昭和五十六年度の経費の総額を申し上げますと、一兆三千九百八十億円でございまして、五十五年度の予算が一兆二千九百二十億円でございますので、五十六年度は八・二%の増ということになっているわけでございまして、先生御存じのように一般歳出の伸びが四・三でございますから、相当大幅に上回る数字を計上して科学技術の振興に意を用いているというデータが出ておるわけでございます。  先生いま御指摘ございました各省どんな状況かということでございますが、いまの全部ひっくるめた予算で申し上げますと、これは五十六年度の予算でございますが、文部省関係が六千八百七十億円、科学技術庁が三千六百三十億円、通産省が千八百三十億円、農林水産省が五百九十億円、厚生省が二百七十億円、運輸省が百二十億円、環境庁が百十億円というように、百億以上の省庁は以上のとおりでございまして、五十一年の科学技術関係予算は七千七百二十億円でございまして、五十六年度の予算をこれに比較いたしますと一八一・一%ということで、八一・一%伸びております。これに対しまして、一般の歳出が五十一年度十八兆八千二百十七億円でございますので、五十六年度はこれに対して一七〇・三ということで七〇・三%の増でございます。  繰り返しますと、一般歳出が一七〇・三になっておりますのに対しまして、科学技術関係予算は一八一・一ということで、一般よりも伸びた数字が投入されているということでございます。
  42. 八木昇

    ○八木委員 最初の与党の方の御質問にあるいはあったかとも思うのですけれども、これは単純に比較はできないのでありましょうが、諸外国、特にアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、そういう国と比べて、国家予算全体の中で占める割合あるいはGNP全体で占める割合等を考える場合に、やはり少ないでしょうか。
  43. 園山重道

    ○園山政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、諸外国との比較、いろいろ統計上の出入り等ございますので詳細はあれでございますが、大まかに申し上げますと、現在昭和五十四年度までの統計が出ておりますけれども、統計の各国そろいます五十三年度あたりで見ますと、民間も入れました国全体の研究投資が、日本は約三兆六千億でございますけれども、一番多いのがアメリカの約十兆円、ソ連の六兆二千億円、この二者に続いておるわけでございます。その後、西ドイツが三兆二千億円、フランス一兆八千億というような数字になっておるわけでございます。したがいまして、全体の規模といたしましてはアメリカ、ソ連に次いで第三位ということでございますけれども、特に問題になりますのが政府の負担割合が非常に低いということでございまして、アメリカ五〇%、西ドイツ四六%、フランス五七・三%といったような数字に対しまして、日本は約二七、八%という数字でございます。いろいろ言われます場合に、これは国防研究費が入っているからだろうということもございますが、これを除きましても、主要国がアメリカの三五%からフランスの四六%という政府負担割合に対しまして、日本はやはり二七%程度ということで低くなっておるわけでございます。また、政府予算全体に占めます科学技術関係の経費も日本は約三・一%程度でございますけれども、諸外国はおおむね上回っておりまして、多いところは四%、五%、こういった関係になっておるところでございます。
  44. 八木昇

    ○八木委員 いま御答弁のように、なお将来へ向かって増強しなければならないと私も思うのであります。しかし、総額として必ずしも低くもないわけであります。私、調べてもらったのですが、各省で重複している科学技術研究というものが特殊研究等について相当あるように思うのでございます。たとえば公害防止についての科学技術研究、これは環境庁、科学技術庁、大蔵、厚生、農水、通産、運輸、郵政、労働、建設、これだけの省庁にまたがっている。研究分野はそれぞれの省の特性に従って多少とも違うのでありましょうけれども、公害防止という点においては同じ研究がこれだけの省庁にまたがって行われておる。あるいはライフサイエンスの中での一例として微生物科学について言いますと、これまた八省庁にまたがっておる。地震予知について言いますと科学技術庁、文部省、通産省、運輸省、建設省。災害防止についてもたくさんの省になっておりまするし、航空宇宙について言いましても科学、通産、運輸。それから金属材料についても科学技術庁でも通産省でもやっておる。無機材料研究についても同様科学技術庁でも通産省でもやっておる。こういうことになっておるわけでございますけれども、これらは何とかならぬものでしょうか。特別研究といいますか、こういうものについてはそれぞれ一本の体制ということにならないものか、その点いかがでございましょうか。
  45. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 ただいまの点でございますが、一例を地震について申し上げますならば、地震の問題はそれぞれの関係の各省が、たとえば私ども科学技術庁の付属機関でございますところの防災センターというのは防災関係を中心に、主としていまやっておりますのは、深井戸を掘って、その深井戸の技術によって新しい地震の予知に貢献する、そのほか、地区を選定してその地区についての特別の地震の挙動について勉強するというようなことをしておりますし、通産省の地質調査所というのは、地質関係を中心にした地震関係の勉強をいたすわけでございまして、それぞれ各省が、もちはもち屋といいますか、それぞれの持ち分に応じて研究をいたしておるところでございます。  ただ、同じ地震を勉強いたしましても、それぞれの機関が持っております専門の知識、技術を駆使してやるわけでございますので、同じ地震でも違うことをいたしておるわけでございます。私ども科学技術庁はこういう面の見積もり調整というのをいたしておりまして、毎年各省が予算要求をいたします前に、自分たちの研究課題を科学技術庁に持ってまいります。科学技術庁は、重複をしておりますものは取り下げさすことにいたしておりまして、そこらの調整は十分いたして大蔵省への提出をいたさせているわけでございまして、この見積もり調整権を背景に、重複をしないといったてまえでございます。先ほどの公害の問題につきましても、関係各省それぞれの得意の分野で公害問題を研究いたしておりますけれども、この調整も先ほど申しました見積もり調整の権限に基づいて調整をいたし、環境庁が一括予算を計上するという形をとっておりますので、見てくれば一見同じことを各省がやっておるようでございますけれども、最も自分たちの得意の分野研究をいたし、その総合調整は科学技術庁の見積もり調整でいたしておる、このようにお考えいただきたいと思います。
  46. 八木昇

    ○八木委員 深く論争するつもりはないのですけれども、現行のこういう体制で調整機能を科学技術庁等がやるということの方がいいというお考えなんでしょうか。それとも、やはりできる限り総合的にやっていった方がいい、できれば一本化するということの方がいいというお考えなんでしょうか。ちょっと私も将来研究したいと思うのですが、確かめておきたいと思うのです。
  47. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 関係各省伝統的なすぐれた技術分野がございますので、主としてその各省の研究に専属の分野につきましては従来どおりいたしていただきまして、最近のような複雑な社会現象に対しましては、関係各省相互に協力をし合ってやらなくてはなりませんので、このような各省固有の分野でなくて総合的にやらなくちゃいかぬ谷間の分野につきましては、私ども先生も御存じと思いますが、特別研究促進調整費で及ばずながらやらしていただいておりましたし、このたびのこれを拡大いたしました科学技術振興費を背景にいたしまして、その総合調整の方向に進んでまいるべきではないかと考えておるわけでございます。  先生御指摘の、研究体制そのものについても勉強するとおっしゃっていらっしゃいますけれども、こういうものにつきましても科学技術会議が勉強いたしまして、どうしたらいいかということを諸外国の先例等も勉強の上、日本に適した方向の指針が将来は出るのではないかと私どもは考えておるわけでございます。
  48. 八木昇

    ○八木委員 私も観念としては、やはり十もの省にまたがって同一目的のものを研究をしておるわけですけれども、そういう事柄についてはいかがか、これはやはり相互に当然密接不可分のものであるし、一体的なものであるというふうに思うのですけれども、それはさておきまして、そこで、いま御答弁の新設された科学技術振興調整費のことについてお伺いをいたします。  いま私が申し上げたような各省にまたがって研究が行われておるそういうような研究課題についてが、従来の促進調整費の場合も、予算が使われておりますのはそういうのが多いのですね。昭和五十四年度の「特別研究促進調整費による研究課題及び経費」という科学技術庁の方から出されておりますところのものを見てみましても、ほとんど私が指摘しましたような特別研究等について出されておるものが非常に多いというように私は見受けたのでありますけれども、これでことしこういうように科学技術振興調整費ということになったんだけれども、そういうことになることによってこれまでの促進調整費と変わる部分はどういう点か。科学技術会議が決定しましたところの「調整費活用の基本方針」というのは、私読みましたけれども、これは抽象的な方針でございまして、具体的にことしからどういうふうに変わるのか、そして新たにどういうことが考えられておるのか、端的に御説明いただきたいと思います。
  49. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 五十五年度まで実施してまいりました特別研究促進調整費でございますが、これは多数部門の協力を要しまして、原則として二つ以上の省庁が協力して行う総合研究というものを中心にいたし、さらに年度途中で起こる予見しがたい事態、たとえばこのたびの豪雪のような場合でございます、そういうものに対してどのように処置するかという緊急研究、そのほか各種研究に共通する基礎的試験研究に対します民間への助成研究、この典型的なものがヌードマウスの開発が行われたわけでございますが、このようなものに投入いたしてまいりまして、一応の成果を上げてまいりましたが、いかんせん予算的にも非常に小規模でございまして、やることも主として国立研究機関を中心にいたし、そして一部民間、一部大学が入るという形でございました。  このたびは、先生すでにお読みだそうでございますが、基本方針が策定されまして、産、学、官の有機的連携の強化を図りながら、複数機関の協力を要する研究開発を進めるわけでございますから、さらに予算につきましても、従来以上に大幅な予算をつけていただきましたし、さらにテーマといたしましても、国際共同研究の推進というものが入っております。さらに、研究評価の充実と研究開発の調査分析という評価、調査等についても、従来以上に厳しく評価をしながら研究を進めていくということで、従来も産、学、官とかいう考え方は背景にはありましたけれども、このたびこのような新時代に対応いたしまして、従来にまさる産、学、官の体制研究評価の体制、調査の体制等々を踏まえての総合調整研究を進めるという御趣旨だと私ども考えておりまして、従来とは体制を一新いたしまして、従来は私どもの私的な専門の先生方の研究委員会テーマ等を決めておりましたけれども、このたびは科学技術会議で基本的な方向を決めていただき、さらに科学技術会議のもとにできるそのような特別の委員会テーマを決めていただく、さらには評価についても科学技術委員会の評価をいただくというような形で、大々的に総合調整を進めていくということになるわけでございます。
  50. 八木昇

    ○八木委員 そうしますというと、具体的に本年新たにかくかくしかじか、こういうものに予算を使うというものはまだ定まっていないわけですね。科学技術会議の討議を待って——そういうことでしょうか。
  51. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先生のおっしゃるとおりでございますが、実質的には、予算が成立いたしましたので、すでに特別研究促進調整費で研究を開始しております継続の事業が幾つかございます。たとえば東京の直下型とか東海の地震とかを解明するための基礎になりますプレートテクトニクスの解明につきましては、すでに五十五年から五年計画で調査研究が始まっておりますので、こういうものにつきましては五十六年度も引き続いていたす必要がございます。さらに東洋医学の研究につきましても、五十五年から約三年間を目安に第一期を進めておりますので、こういうものも引き続いてやる必要がございます。  こういうものにつきましては、こういう計画がございます、したがって継続でやらざるを得ませんということの報告はいたしてあります。したがいまして、こういうものは予算成立と同時に引き続いて急いでやる必要がございますので、やらしていただいてよろしいかどうかということをいま最終的に検討をいただいておるところでございまして、近くそういう継続のものについては進めていいというお答えがいただけるのではないかと私ども期待をいたしているわけでございまして、その他のものにつきましては、新しい検討委員会でヒヤリングをしてテーマを決めていただくということになろうかと思っております。
  52. 八木昇

    ○八木委員 そこで、この新設された振興調整費の中に、本年度五億円もいわゆる流動研究システムの予算が認められたわけでありますけれども、やはりこれを進めていくためには、研究者研究環境、それが一つの大きな問題だと思うのであります。  そこで、五億円で四つのプロジェクトというものを考えてあるようでありますけれども、私ちょっと考えてみたのですけれども、大体一つのプロジェクトが二十五名程度メンバーになるというふうにお聞きをしておるわけですが、一体この人件費というのはどのくらいかかるものでありますか。仮に主要なメンバー五名、それから残り二十名、こう考えた場合に、二十名の方が仮に直接の俸給について年間約五百万円、それは出張旅費とかあるいは福利厚生関係とかいろいろなものを含めますともっと大きくなるかもしれませんが、仮に五百万円として、二十名だとそれで一億円になります。あと五名の人が七百万円なら七百万円平均だと仮にしましても、それで三千数百万円になる、こういうことになりますというとこれは全然問題にならぬじゃないか、一体何をやるんだ、ただ俸給をもらっていて遊んでいるわけじゃないのかもしれませんけれども、それじゃもう全然意気込みからして、スタートから何をやっているのかわけがわからぬということになりはせぬのかというふうに考えたものですから。  そうしますと、五億円四プロジェクトとすれば一プロジェクト平均一億二千五百万円、それは人件費だけで吹っ飛ぶのじゃないですか。
  53. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生のおっしゃいます人件費の問題でございますが、五年間で大体一プロジェクト二十億ないし二十五億程度考えておるのでございますが、人件費は約四割近くにはなるのではないか。プロジェクトによって違いますけれども、そういうぐあいに考えております。  それで、このたびの五十六年度の予算では五億円程度ということで発足いたしたいと思ったのでございますが、これは研究プロジェクトの開始時期を本年十月というぐあいに考えた次第でございます。したがいまして、初年度といたしましては、先生のおっしゃいますように、やはり人間関係を中心にいたしましていろいろプロジェクトの計画を組むとか準備をするとか、そういう関係がやはり中心になってくるのではないか、このように考えております。  法案につきまして御了解いただきましてから、いろいろテーマの下準備をいたしまして、開発審議会に諮りまして、その上で確定し、研究プロジェクトリーダーのほかに、それぞれのグループリーダーも順番に決めてまいります。そういうことになりますと、初年度としてはこの程度でほぼ妥当なものではあるまいか、本格的な研究につきましては五十七年度からと、こういうぐあいに考えておるわけでございます。五十七年度からは格段の努力を払ってまいりたい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  54. 八木昇

    ○八木委員 細かいことをお聞きする時間はないのですけれども、実際十月から来年の三月までといまの御答弁のように考えて、グループリーダーのその間の人件費、それから特定研究員のその間の人件費は大体どのくらいでありますか。その場合に、研究者といってもあっちこっちから集まってくるということになると、住宅やその他の問題も出てくるでしょうし、いろいろな問題が出てくるわけですね。そういうのは別としましても、直接人件費で幾らぐらいになるものですか。
  55. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 一応事業団といたしましての業務開始時期を十月と考えておりますが、具体的な研究の開始時期は一月ぐらいになるのではないか、実はこのように考えております。  それで、プロジェクトリーダーにつきましては、テーマとともにある程度候補は非公式に考えてございますが、現段階でグルーブリーダーまで全部実はまだ確定できる段階じゃございません。したがいまして、具体的にまだ金額を詰め切ったわけではございません。五億程度につきましても、これは科学技術会議で御審議いただかぬと最終的には配分が決まらない金額でございますので詰め切っておるわけではございませんが、参加研究者の給与等の待遇につきましては、派遣元の給与水準、それから研究者能力等勘案して決めるということで、いずれにいたしましても、もとの機関にいる場合よりは不利益があってはならない、大体こういう水準で考えたいと思っております。  したがいまして、全部のプロジェクトが一斉に完全な形で発足するというわけにはまいらぬと思っておりますが、大体今年度はそういう人件費関係がどうしても主になる、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  56. 八木昇

    ○八木委員 これは局長を追及してもせんないことですけれども、当初十億円を要求されたわけですよ。それもやはり四プロジェクトだったわけでしょう。そうしますと、それが半減されたということは厳然たる事実ですね。そうだとするなら、それは少し無理なんじゃないか。だから、初年度は二つぐらいのプロジェクトしか発足できないんじゃないか。やはり発足する以上はきちっとして発足すべきじゃないかという頭があるものですからお聞きをしておるわけなんです。  そこで、そのことについての御見解を承りたいことと、それから、これは大臣に伺いますが、この五億円というのは三十三億五千万円の中からもう動かせないものですか。いまのような点からいきますと、四プロジェクトでスタートするというならば、五億でそういうかっこうだけつけたような、スタートからそれじゃいかぬのじゃないかというふうに私は思うものですから。
  57. 中川一郎

    ○中川国務大臣 大蔵との話し合いの段階では、三十三億の中で五億程度をこれに振り向ける——程度という言葉がついておりまして、若干の調整はあっていいと思っておりますので、御指摘もありますので、前向きに実質スタートできるように調整をいたしたい、こう思っております。
  58. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 ただいま先生おっしゃいましたとおり、当初の予算要求は十億七千万でございました。このときの要求につきましては、新技術開発事業団の出資金として要求しておった次第でございますが、その制度化につきましては、産、官、学の調整問題ということで、科学技術会議でもう一遍意見を練ってもらいたい、こういうことでございましたものですから、実施時期がやはりずれてまいります。当初の案でございますともう四月早々くらいから入らないといけないような、予算関係法案みたいな感じになってまいりますので、そういうことでございますが、科学技術会議で御審議いただきました関係上、業務の実施時期が十月であったのが実は一月というぐあいにずれてまいるわけでございます。そういうことで、今後の計画を考えますと、まあまあ初年度としてはほぼこういうものかなあという気持ちでおります。やはり本格的な業務につきましては、五十七年度から制度ができました段階で改めて練り直してお願い申し上げたい、このように考えておる次第でございます。
  59. 八木昇

    ○八木委員 そこで伺いますが、今度の革新技術シーズを効率的に創出する、そういう目的でもって四つのプロジェクトを発足させるわけでございますけれども、もっと将来は全体的に、応用研究といいますかあるいは先行開発といいますか、そういう面でも産、官、学を横につないだ流動システムでもってやっていくというふうに飛躍拡大をさしていくというお考えがおありなのかどうか。  こういう質問を私がします意図というのは、振興調整費が新設された、あるいは流動システムが発足したといいましても、全体で三十三億五千万円規模の予算でもありますし、それではやはり大きな意義はない。縦割り行政という壁を破り、あるいは総合的な科学技術行政をやはり将来確立していくための一歩としてこれを位置づけて初めて意義があるのではないか、こういうふうに考えるものですから。  一方において科学技術会議の飛躍的な強化拡充と同時に、そういう流動システムによるもっと全体、いわゆるシーズの創出という範囲にとどまらないで、産、官、学を横につないだそういう研究開発ということを推進していくというお考え、いわばこれは従来の日本研究体制の歴史からすれば相当困難な問題ではありましょうが、そのようなお考えがおありかどうか、これは大臣からも答えてくれませんか。
  60. 中川一郎

    ○中川国務大臣 これから科学技術は大いに振興しなければ、これからの世界の中に生き抜いていけないという非常に重要な使命を持っておりますから、だんだん御議論ありましたように、国家投資の割合あるいは全体としての投資比率を高めるということと、もう一つは調整ある研究費のあり方、こういうことが柱となって重要でございます。  そこで、調整費としてことし三十三億五千万で発足いたすわけでありますが、人によっては、従来も科学技術庁は調整をやってきたし、あるいは科学技術会議もやっておるが、本格的にやるなら全部をひとつ科学技術庁にでも計上して、そこで調整したものにして配分すれば非常にいいのじゃないかという高邁な理想を描く人もおりますし、いや、そこまでやらなくても、一兆数千億の四、五%くらい、まあ五百億くらいやったらどうかと言う人もおります。おりますが、なかなかそこまで急にはまいりませんで、とりあえず三十三億五千万円でやってみて、そして実効ある調整ということができていけば、今後ほどこまでいくかわかりませんけれども、さらには増大の方向になろう。大蔵大臣とも、この予算をつけますときに、うまい調整をやればふやすけれども、下手な調整をやったらなくなってしまうぞということでございますので、しっかりしたことをまず三十三億五千万でやっていくというところからスタートし、科学技術会議の皆さんの意向も聞き、あるいはこれと並行して科学技術会議の機能も強化するというようなことを斬新的にやっていきたい、こう思っております。
  61. 八木昇

    ○八木委員 この際、ちょっと聞いておきたいと思うのですが、江崎玲於奈さんが工学アカデミー法案という構想をお持ちになっている。私どもの党にも要請に来られたので、各党にも要請されたと思います。もちろん科学技術庁にも要請がなされたと思うのでありますが、内容を御存じでしょうか。  これは具体的にはもっといろいろと検討しなければならないと当然思われますけれども、この構想というのは、いわゆる科学と技術との境目をつなぐというか、やはりそういう仕事というのが弱い、それでスタッフをそろえて、そういうところに中心を置いた一つの仕事が必要なんじゃないか、しかも、そのメンバーはいわゆる産、官、学をつないだスタッフというものを結集して、そして、やはりそれに一定の国の予算等も与えてやるべきだということのようでございますね。そのことと今度の考え方ということには、類似点といいますか、やはりそういう点がなきにしもあらずというふうにも思うのですけれども、この江崎さんの提案についてどのようにお考えでしょうか。これはどなたからお答えいただくのか適切かわかりませんが……。
  62. 園山重道

    ○園山政府委員 先生御指摘のように、江崎博士が工学革新構想を御提言されていることはよく承知しております。また、直接先生にも何度かお会いいたしましていろいろお話を伺っております。  大体の構想、いま先生御指摘のとおりでございまして、特にその御発想の原点と申しますのは、やはりこの日本で、当初の御質問にもございましたように、なかなか革新的な、創造的な新しいものが出てこない、江崎先生は数少ないノーベル賞受賞者でいらっしゃいますが、そういうノーベル賞クラスの者がなかなか出てこないというところを非常に御心配になりまして、そのためには、先生御指摘のように、この産、学、官を横断的につなぎました第一線の研究者の集まりという中から、一つの、お互いの意思疎通、切磋琢磨の中から新しいものが出てくる。そういう第一線の研究者の評価をやはり、先生はピュアエバリュエーションというような言葉を使っておられますけれども、第一線の仲間で評価するようなシステムが必要なんじゃないかというのが御発想の原点にあるように伺っております。具体的にその目指しておられますところは、ただいま御審議いただいておりますこの創造科学制度と共通でございます。そういう第一線の研究者の集まる場というものが必要ではないかという御発想のように伺っております。  私ども、せっかくのノーベル賞受賞者でいらっしゃいます江崎先生の御発想でございますから、くみ取るべきところはできるだけくみ取り、実現できるところはできるだけ実現したいという基本的な考え方でおりますけれども、御承知のような行政改革のときでございますから、在来の各種の機関との関係、類似性等もございますし、これらにつきましてどのように整理していくべきか、その中からどういうものを実現に向かって努力すべきかということを現在少し研究させていただいておるところでございます。
  63. 八木昇

    ○八木委員 これは私どももまだ検討不十分なんでございますが、この問題については、だんだん時間もなくなりましたので後日に譲るといたしまして、あと一、二点聞いて終わりたいと思うのです。  今度のシステムを発足させるにつきましては、非常に重要なプロジェクトリーダーの人選あるいは研究員の人選等について、そしてまた、実際にそういう優秀な希望する人が来てもらえるかどうかについて、あらかじめある程度見込みはつけておられるんでしょうな。当然そうだと思うのですけれども、それが一点。  それから、今度開発審議会委員の数を五名ふやすということになるわけですが、数を五名ふやすというだけではなくて、内容的にこれまでとどういうふうに変わった観点でその審議会委員が選ばれるのか、その二点をお答えいただきたい。
  64. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 研究者の参加の見通してございますが、現在、候補として御承知のように四つのテーマを考えておるわけでございますが、法律改正につきまして御了解いただきました後、開発審議会の議を経てこれは決めていただくものでございます。したがいまして、現段階におきましては一応非公式に当たったところでございますが、研究者もそれからその研究者の親元機関でも、本件については非常に意欲的でございます。元来、このテーマ自体理論的な研究段階で、そういうポテンシャルを持った研究者ですでに関与しておられた方がかなりおるわけでございます。そういう方々中心でございますので、そういう研究者を抱えておる親元企業も当然そのテーマに関心を持っております。したがいまして、私どもが現在考えておりますテーマにつきましては皆さん意欲的でございまして、特に支障があるとは考えておらない次第でございます。  それから、審議会の人選でございますが、確かに今度法律改正していただきますと五名ふえるのでございますが、私どもとしては、現在の十名も含めまして全面的に改めて見直したい、こういうように考えております。  それで、十五名の方につきましては、当然従来の委託開発課題の選定という業務もございますが、さらに今後のプロジェクトの選定それからリーダーの選定等きわめて基礎研究部門についての新しい判断が要るわけでございます。したがいまして、その中の方々といたしましては一応三つのグループで考えたい、こういうように考えております。そのうちの一つは、技術の動向についてきわめて長期的な総合的な観点に立って判断できる方、ゼネラリストと申しますか、そういう広い視野に立って見ておられる方々グループ、それからもう一つは、物理とか化学とか生物とかそういう基礎科学分野、こういう方面について非常に詳しい専門的な識見を持った学識者のグループ、それから第三番目は、電子工学とか材料工学とかいわばテクノロジーの分野でございます。基礎研究とテクノロジーの分野との橋渡しの問題で、今度の研究はそういう分野でございますので、そういうテクノロジーの分野の方を一つグループと考えまして、大体三つのグループから十五名の方々を選びたいと考えております。もちろんこれで今後のシーズ探索研究の全分野を尽くしたとはとても申せませんので、その下に問題ごとに多くの専門委員を委嘱いたしまして調査の充実、審議の充実を図っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  65. 八木昇

    ○八木委員 あと二点の質問で終わりたいと思うのですが、一つは、これは当然のことだとお答えになると思うのですけれども、今度のプロジェクトの将来上げるであろう成果、そういうものの利用については、平和目的以外には利用しないということであると思うのですけれども、その点はっきりと大臣からでも表明できるでしょうか。もちろん基礎研究でありますから、たとえば今度の研究テーマ一つであります超微粒子研究の場合でも、これが成功すればあるいはロケット材料に利用できるかもわからない。そのロケットは平和目的のみならず軍事的にも使おうと思えば使える、そういうわけだからこのテーマ研究の対象として適切でないなどと言っておるんじゃないのです。そういうことはわかっておるんですけれども、成果は平和目的以外に利用しないという点、大臣からでも明言できますでしょうか。
  66. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御承知のように、この課題は特定目的じゃなくて、基礎科学といいますか、創造科学を探索をする基本的なものであって、軍事目的とかなんとかということじゃ一切ございません、特に軍事目的にこれを利用するためにやるなどということは絶対ないことでございまして、一般的な科学技術の振興ということでやるものであり、じゃそれが何に使われるかということになると、これはまたそのときどきの必要性に応じて判断すべきものであって、そこまでも基礎研究が拘束できるかどうか。気持ちとしては平和利用、平和産業ということでスタートすることは間違いがございません。
  67. 八木昇

    ○八木委員 そこで、この事業団法、今度の改正部分とは関係ございませんけれども、いわゆる秘密条項がございますね、二十条でございますか。ほかもちょっと調べてもらったんですけれども、余りないですね。理化学研究所法にもありますけれども、特にこの法に、そういう秘密を漏らしてはならない、それを漏洩したり盗用した場合には罰金幾らに処すというようなことがうたわれておる趣旨、そういうものを簡潔に説明をしていただきたい。  もちろん、これは基礎的な研究をやる事業団でございますから、研究成果は全部公開すべきものであると私は考えますし、基礎研究である以上、ノーハウなどもないはずだ、こう思いますので全面的に公開さるべきものである、このように考えるのでありますが、二点お答えいただきたい。
  68. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 第二十条の研究業務に関連した秘密の保持義務でございますが、これにつきましては、従来の委託開発業務、これは各企業からの製品特許みたいなのが多いわけでございます。そういうことで、いろいろノーハウやら何やら特許にならぬようなものにつきましても、秘密の開示を受けまして、それであっせんやなんかやっておった次第でございます。いわば、第三者の権利保護という形であったものでございます。  それで、このたびの基礎研究につきまして、今度の流動研究システムと申しますのは、一つグループリーダーのもとにいろいろな組織から人が出てまいります、しかも、これは終身雇用制じゃございませんで、事業団に帰属意識を持つような人たちではございませんで、五年間の契約で研究をして解散するわけでございます。したがいまして、その期間内におきましては、成果ができるまではやはり秘密をちゃんと保持していただく。お互いにライバル企業からの研究者も出てまいります。そういう関係もございまして、そこの研究体制一つのモラルと申しますか、そういう意味で、こういう体制がございませんとやはりいろいろ研究者を出しづらいのじゃないか、こういうぐあいに考えて、この規定は今度の業務につきましても維持することにいたした次第でございます。  しかしながら、先生おっしゃいますように、成果につきましてはむしろ私は積極的に公開していく必要がある、このように考えております。先ほども申しましたように、できましたものは全くの原理特許的なもので、成果といたしましても原理特許的なものでございます。実用化までに応用開発研究を積み重ねていかないといけませんので、そういう意味で積極的に公開をする。権利にならないものにつきましても、これは論文発表、成果発表会、そういうところで発表いたしたいと思っております。  とにかく五年で解散いたしてしまいますので、それ以降は拘束することは考えていないわけでございます。積極的に公開して、実用化に向かって育てていく方をむしろいろいろとバックアップしていく、こういう必要があろうかと考えております。そういうことでございます。
  69. 八木昇

    ○八木委員 終わります。
  70. 中村弘海

    中村委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  71. 中村弘海

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斎藤実君。
  72. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、新技術開発事業団法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいと思います。  最初に、科学技術の総合行政について、特に総合調整機能について伺いたいと思います。  御承知のように、わが国の科学技術行政については、科学技術会議あるいは日本学術会議科学技術庁などの関係機関や、文部省あるいは通産省などの縦割り行政的な面がきわめて強いわけでございます。昭和五十五年度予算では、総額で約一兆四千億円の研究関係予算を見ても、文部省では七千七百億円、科学技術庁では三千三百億円、通産省は一千五百億円、その他の省庁では一千五百億円、こうなっております。各省庁がばらばらの行政を行っていけば、これは研究開発全体から見て、研究が重複したりあるいは限られた予算が効果的に使えなくなるというような弊害も私は考えなければならないと思います。したがって、宇宙開発あるいは海洋開発、防災科学技術などの各省庁間にまたがる研究機関の調整あるいは政府全体の中における各省庁のバランスの調整など、科学技術行政における総合調整機能の強化がきわめて大事だろうと私は思うのです。  そこで、厳しい財政事情のもとで研究投資を効果的に使うためには、科学技術行政の調整機能の強化が必要だということは先ほど申し述べましたが、大臣、これはきわめて重要なことでございますので、ひとつお答えをいただきたいと思うのですが、わが国の科学技術行政機構図を見ましても、二十五省庁で、大学を除きまして八十六の研究機関があるわけです。大臣、これを総合調整をして、その機能を調整しながら最大の効果を上げるということはきわめて重要だろうと私は思うのですね。そういう意味で、この総合機能をどう強化していくのか、どう調整していくのか伺いたいと思うのです。
  73. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のとおり、科学技術の一層の振興を図っていくためには、科学技術行政の総合調整を十分行うことが必要であるということは多くの皆さんからも言われております。従来からも科学技術庁としては、企画、立案、見積もり方針の調整等によって各省庁が要求いたします試験研究費について総合調整に努めてきたところでありまして、今後ともこの機能を十分生かしていかなければなりませんが、さらに一層最高審議機関である科学技術会議の総合調整機能を強化する必要がある、こういう観点からいろいろと議論をした末、やはりまず幾ばくかの調整費を持つ必要がある、こういうところから、御承知のとおり五十六年度の予算で新規のものとして三十三億円計上した、これを核にして科学技術会議も総合調整機能に直接的にタッチしてもらう、こういうことを通じて総合調整へ踏み出した。まだことしは芽でありまして、これからひとつだんだんと科学技術会議等の御意見も聞きながら前向きにやっていきたい、こう思っておるところでございます。
  74. 斎藤実

    斎藤(実)委員 大臣、科学技術振興調整費が本年度から新たに三十三億五千万円計上されました。これで総合調整をするということでございます。確かに総合調整の機能を発揮するということについては、私はこの三十三億五千万円ではまだ少ないと思うのですよね。それで、効果あらしめるために、大臣、来年度はひとつ特段の御努力をいただいて、十分この総合調整機能を発揮できるようにお使いをいただきたいと思うのです。  それから、総合調整は、国の研究投資全体を長期的に総合的に見直して優先順位を明確にしなければならぬと思うのです。適切な予算配分をすることがきわめて大事だ。それで、科学技術閣僚会議、これは主に大臣が中心になってやるのですが、そういう優先順位とか予算の配分とかについて、これは長期的、総合的にどう取り組むかということもあるので、これについてはどうお考えですか。
  75. 園山重道

    ○園山政府委員 先生御指摘のように、財政も厳しい折から国の科学技術関係の支出をどう使っていくかというのは非常に重要な問題でございまして、特に優先順位をつけ重点指向すべしという御意見は非常に各方面にあるわけでございます。現在までのわが国の科学技術の各分野というのは、非常に広い範囲にわたりましてひとしく力を入れて、全般的に非常に成長を遂げてきたということが言えるわけでございますが、科学技術水準も非常に高くなってまいりましたし、世界的に見ましても相当な高い水準になってきた。  一方におきまして、国の財政も非常に厳しい状態にあるということで、この重点指向ということあるいは優先順位ということは今後非常に重要な問題になってくるかと思っております。この辺につきましては科学技術会議におかれてもいろいろと御議論がされておるところでございますけれども、やはり先進国に伍しまして今後どういう分野日本の得意とする科学技術を伸ばしていくかという非常に重要な問題でございますので、なかなか簡単に優先順位あるいは予算の配分比率というものが出ることはむずかしいことではあろうとは思っておりますけれども日本科学技術の現状というものをよく振り返りまして、それから、これからの世界の趨勢というものをよく見きわめまして、その中で日本が得意とする分野、どういう分野に重点を指向すべきかということについては今後非常に研究していかなければいけない、こう思っております。  一方また、いわゆる縦割り分野的なもののほかに、いわゆる基礎研究あるいは応用研究開発研究というような分け方もあるわけでございまして、特に自主技術、革新的な創造的な芽を出していくという意味におきまして、やはり基礎研究に対する力も入れていかなければいけない。そういう意味におきまして、いわゆる基礎、応用、開発というような割り方での重点配分と申しますか、そういったこともあわせて考えていかなければいかぬ、このように思っておるところでございます。
  76. 斎藤実

    斎藤(実)委員 この科学技術研究投資について伺いたいと思うのですが、わが国全体の研究開発投資の水準ですが、官民合わせて現在どういう状態になっているのか、具体的な数字があればお答えいただきたいと思います。
  77. 園山重道

    ○園山政府委員 お答えいたします。  まず国全体の研究開発投資でございますけれども、これは最も新しい五十四年度の数字で申しますと、官民合わせまして約四兆八百億円という数字になっております。これを水準といたしまして各国と比較いたしますと、統計の数字のそろっております五十三年度あたりで比較いたしてみますと、五十三年度では日本の数字は三兆五千七百億でございました。これに対しまして、一番大きい米国が約十兆円、私どもの持っております数字では九兆九千五百五十六億円という数字が出ておりますが、その次がソ連の約六兆円、六兆一千五百四十八億という数字がございます。その次三番目に日本の三兆五千七百億があるわけでございますが、これに続きまして西ドイツが三兆一千五百五十六億円、それから、若干数字は古いのでございますが、その前年度の五十二年度におきましてフランスが一兆八千三百億、それから、イギリスはもっと統計が古いのしかございませんが、昭和五十年度で約一兆四千億というような形になっております。したがいまして、官民合わせました全体の研究開発投資と申しますのは世界で第三位になっておりまして、これは現在、世界全体の研究開発投資の約一割になっておる、こういう状態にございます。  一方、これの政府負担割合と申しますか、公共負担の割合というのが日本は低いということがよく言われておりまして、これは諸外国、たとえば高いところではフランスの五六・七%、米国の五〇%、西ドイツの四六%というようなところに比べまして、日本は二八%という数字が出ております。それから、この数値からいわゆる国防関係の研究費を引きましても、米国が三五・八%、フランスが四六・六%、西ドイツが四二・九%というような数字に対しまして、日本政府公共負担割合が二七・二%ということで、著しく低いということが言われておるわけでございます。  それから、国民所得に対しましてどうかということにつきましては、日本としては科学技術会議におきまして、国民所得の当面二・五%、将来三%を目標にすべしということが言われておりますけれども、比較的伸びました五十四年度の新しい数値でも二・二九%ということでまだ相当な開きがある、こういう状況にあるかと思っております。
  78. 斎藤実

    斎藤(実)委員 研究開発投資の数字についてはわが国が世界の第三番目だ、これは理解できます。しかし、科学技術会議昭和四十六年度の五号答申と昭和五十二年の六号答申においても、対国民所得が当面の目標として二・五%、長期的には三%を目指すということですね。現在は二・二九%ということでございましたが、ぜひこれは今後の問題として、十分にひとつ努力をいただきたいと思うのです。  次に、わが国の研究費の負担割合についてでございますが、昭和五十三年度においては、民間の産業の負担割合が六五%、政府が二八%、一兆四千億、非営利研究機関が〇・四%、大学等は六・四%、海外〇・一%、こうなっているわけでございますが、先進主要諸国と比較をして負担割合の低さが非常にはっきりしているわけですね。昭和五十五年度の政府研究費の負担割合、アメリカは五〇%、イギリスは五二%、西ドイツは四一、フランスは五三。確かに厳しい財政事情の中で政府負担割合をどう取り上げていくかということは、私はきわめて困難なことだろうと思うのですが、このわが国の研究費の負担割合についてどうお考えになっているのか伺いたい。
  79. 園山重道

    ○園山政府委員 先生御指摘のように、先進諸国の中で日本政府負担割合が非常に低いということは御指摘のとおりでございます。これはそれぞれ国情が違いますので、また、その中での政府の役割りというのもいろいろ違っておりますので、一概に数字のみで比較するというわけにいかないかもしれませんけれども、そういう面で申し上げますと、日本の場合は特に民間の活力が中心になって今日の成長を遂げてきた、その背景にこの民間の研究開発投資が非常に活発であったということが、一面非常に歓迎すべき点として評価すべきではないかと思っております。  しかし、これからのことを考えますと、日本科学技術レベルも非常に向上いたしまして、あるいは世界的に見ましても科学技術レベルというものが非常に高くなってきた。そういたしますと、これからの研究開発というのは非常に多額の資金を要する研究が多くなる。核融合などがよく例として言われますが、多くの資金と長い期間が必要である。この辺はやはりどうしても民間に期待するわけにいかない。それから、いわゆる政府がみずからやるべき分野、いろいろ保健関係、環境関係等の分野がございますし、これらはやはり政府がみずから研究を推進しなければならぬだろうということでございます。それからさらに基礎的、先端的な分野になりますと、これはやはり非常にリスクの大きいものでございますから、果たして民間が研究投資をいたしましてそれだけの利潤が上がるかというようなことになりますと、この辺は民間ではなかなか期待できない。しかし国全体の技術水準を上げるということのためには、やはり基礎研究に国が力を入れなければいけないというようなことで、まさにこれからますます国が研究開発について負うべき役割りというのが非常に大きくなってきた時代であるということが考えられるわけでございます。  先生御指摘のように、財政事情非常に厳しい折でございますので、国の投資というものを拡大するのもいろいろ困難があろうかとは思いますけれども、やはり必要性ということでは、将来の日本の国のことを考えますならばできるだけの投資をしなければならない。したがいまして、私どもとしましては研究費の効率的な使用ということを十分考えながら、しかし必要な分野には必要な資金が投じられるように最大の努力をいたしたい、このように考えておるところでございます。
  80. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いま御答弁がございましたように、科学技術基礎研究というものはきわめて大事だという答弁でございますが、私もそのとおりだと思います。五十三年度においては、わが国の基礎研究が一六・六%、応用研究が二五・一%、開発研究五八・四%、こうなっておるわけでございます。それで各国の構成比率を見ますと、西ドイツは二三・九%、フランス二一・一%、イギリス一六・一%、アメリカ一二・八%、こうなっておるわけです。したがって、ぜひともこの基礎研究の比率がアップできるように努力をいただきたいと思うのです。  次に、技術貿易について伺いたいと思うのですが、この技術貿易収支は技術競争力の一つの目安になると思うわけでございまして、昭和五十四年の科学技術要覧によりますと、日本は輸出受け取りが輸入支払いの〇・二七にしかなっていないわけで、大幅な入超になっているわけです。政府はこのことをどのように受けとめておるのか、また技術貿易は収支を含めてどうあるべきかということについて伺いたいと思います。
  81. 園山重道

    ○園山政府委員 先生御指摘のように、五十四年の統計によりまして輸入に対して輸出が〇・二七という数字になっております。これは当然技術レベルが上ってまいりますればこの技術貿易というものがバランスをとり、できれば出超になってくることが望ましいものと思っておるわけでございます。ただ、現在の総理府統計によります数字を分析いたしてみますと、新規契約分というものにつきましては若干黒字になっておるというような段階に来ておるわけでございます。また、当然対先進国よりも発展途上国向けの輸出が多い、ということでございますので、その中身につきまして必ずしも誇れるということではございませんけれども、新規契約につきましては若干黒字の傾向になってきておるということが一つございます。  それから、全体の赤字基調になっております原因につきましても、よく見てみますと、それぞれの技術導入契約等におきまして、いわゆる対価の支払い、ロイアルティー等の支払い条件というのがその技術をもとにいたしまして生産いたしました製品の生産量あるいは販売量に応じて支払うということになっておりますので、わが国の経済が非常に発展いたしまして製造が盛んになるということになりますと、過去において導入しました技術の支払いがどんどんふえていくということがございまして、これも赤字の一因かと思っております。同じような傾向は西ドイツにもございまして、西ドイツも御承知のように現在非常に高い科学技術水準になっておりますけれども、やはり技術貿易におきましては赤字ということになっておるわけでございます。  しかし、御指摘のように、これからのことを考えますと、現在まで、特に戦後、技術を導入いたしまして、これを加工いたしまして輸出するということでここまで成長してきたわけでございますけれども、今後は日本の自主的な技術というものが育ち、それを技術として輸出できるということによりまして、技術貿易の収支がだんだんバランスし、黒字になるということを目指していかなければいかぬ、こう思っておるところでございます。
  82. 斎藤実

    斎藤(実)委員 通産省に伺いますが、総理府統計によりますと、日本技術貿易収支は昭和五十四年度で全産業の総額で〇・六四、輸入超過となっておるわけですね。新規分では一・二三と輸出超過になっているわけです、それで、新規分で黒字に転じたのは昭和四十七年からなんですね。わが国は技術輸入については長い歴史的な経験を持っておるわけでして、各種の政策が整備されているわけです、しかし、技術の輸出は近年に始まったばかりでありまして、技術輸出についてはチェック条件が多くなると思うわけです。政府はどのように対応していくのか。たとえば相手国が先進国か中進国があるいは開発途上国か、西側諸国向けかあるいは東側諾国向けなのか、最先端の技術なのか中間技術か、あるいは軍事転用可能な技術なのかどうか。ほとんどの先進国はいろいろな側面から技術輸出をチェックしておるわけですが、日本はほとんど規制していないのではないかというふうに思うのですが、この点はいかがですか。
  83. 村井仁

    ○村井説明員 御説明申し上げます。  ただいままさに先生御指摘のとおり、技術の輸出につきましてはようやく近年になりまして、新規だけとはいいながら輸入を超えるというような傾向が出てまいりまして、これは先ほど政府委員からも御説明ございましたように、技術輸出の振興につきまして関係者いろいろ営々努力してきたことの成果があらわれつつあり、遠からずと私ども期待しておるわけでございますが、いわば資源のない日本が知恵を売って生きていくということが可能になる一つの曙光かと私ども非常に期待をしておるわけでございます。  技術導入という側面になりますといままで相当厳しい規制をしてまいった、それに対しまして技術輸出の方は余りさほどな規制がない、それは確かに御指摘のとおりでございますが、これは先生御案内のとおり、実はいわゆる対外的な取引というものはあとう限り自由にさせるということが望ましいわけでございまして、とりわけて昨年の十二月一日から外国為替及び外国貿易管理法が全面的に改正されまして、それで原則自由ということをその法の第一条におきましてもはっきり明記したわけでございまして、その中で対外取引の正常な発展を期するために対外取引に対し必要最小限の管理または調整を行う、こういう言い方になっております。  そういたしますと、必要最小限の管理または調整というのはいかなるものか。そこで、先生先ほども御指摘のようにたとえば軍事転用の技術というようなことに相なりますと、これは確かにいろいろな観点から非常に問題でございます。されば、この外為法の改正法の第二十五条でございますが、ここにおきまして、条約等々の国際約束の履行でございますとかあるいは国際的な平和及び安全の維持を図るため必要な限度におきまして技術輸出について所要の調整を行うという規定を設けておりまして、これにつきましては非常に厳重なチェックを私どもの方で実施しておるということでございます。  以上でございます。
  84. 斎藤実

    斎藤(実)委員 次に、法案の中身について伺いたいと思うのです。  今回の改正案の内容については、新技術開発を一層積極的に推進するということで、新技術開発事業団の業務としては、新技術の創製に資すると認められる基礎研究に関する業務を改正しようというわけでございまして、今回の流動研究システムによる革新技術の芽の探索研究を推進するということになっているわけでございますが、新しい研究システムができても有機的に機能するかどうかということが問題として残るだろうと私は思うのです。  そこで、流動研究システムの予算や人員はどのくらいでスタートするのか。昭和五十六年度予算では新規計上された科学技術振興調整費三十三億五千万円のうちどれくらいの予算を充てるのか、これが一点。昨年末の予算要求の段階で十億七千万円の要求をしたのに対して五億円に決定をしたというふうに大臣は答弁されましたが、当初の構想の半分に圧縮されたわけです。これは予算要求のときに、どうしても十億七千万円というものは必要だということでずいぶんがんばったというふうに聞いておりますが、半分になったということで影響が出てくるのじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  85. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 今度の創造科学技術推進制度の規模でございますが、大体一プロジェクト五カ年間で二十五億円程度、人員にいたしまして一プロジェクト平均二十名ぐらいの研究者を考えております。そういうわけで、四プロジェクト五カ年間でトータルいたしますと、大体百億近いものになるわけでございます。人員にして八十名程度、こういうものでございます。  それで、初年度確かに十億七千万要求いたしておったのでございますが、このときの原要求は、新技術開発事業団に直接出資をお願いいたしたいという内容でございました。その後におきまして、創造科学技術推進の制度化につきましては科学技術会議でその調整を、意見を聞いてくれ、こういう話になってまいりまして、ようやく三月上旬に結論をいただいた次第でございます。したがいまして、当初は大体十月から研究が実施できるという予定で考えておったのでございますが、こういう状況になりまして、年明け以降ぐらいの感じでおるわけでございます。そこで若干時日がずれておるという関係もございます。そういうことで、本年度におきましては大体五億円程度でまあまあやっていけるのではないかと思っております。五十七年度から本格的な立ち上がりをやっていきたいというように考えておる次第でございます。
  86. 斎藤実

    斎藤(実)委員 本年度五億円程度で何とかやっていくというわけですね。それはそれで結構ですが、従来は、特別研究促進調整費、特調費と言っておるのですが、各省庁間の研究業務の促進だとか調整を行ってきたわけでございますが、いままでどういうふうに使ってきたのか。たとえば、昭和五十二年度の十八億三千万円をピークに五十三年度では十六億五千万円、五十四年度では十五億円、五十五年度は十三億五千万円ですか、次第にしりすぼみになってきた、これが実態ですね。  そこで、調整費の実施状況を見ますと、五十二年、五十三年、五十四年、五十五年と年度の後半の十月、十一月、十二月、一月、二月、三月に実施されているものがかなり見受けられるわけでございますね。前半は使ってないのですね。この時調費の使い方に問題はなかったのかどうか。突発的な研究は別にしても、各省庁間相互の研究についてはできるだけ早い時期に実施すれば、きわめて効果的に使用されるのではないかと私は思うのですが、この点はどうでしょう。
  87. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先生の御質問、三点あったのではないかと思います。第一は、従来時調費を使っておりました基本的な方向、第二は、五十二年以降減っておるがどうしたのか、第三点は、年度の後半に比較的開始したものがあるけれども問題はなかったか、この三点ではないかと思います。  第一の点でございますけれども、従来の時調費は、各省庁の所管にかかわります研究業務の総合的な推進を図りまして、かつ、その相互間の調整を図るための経費でございます。  柱が三つございまして、第一が、多数部門の協力を要し、原則として二以上の省庁が協力して行う総合研究。たとえば地震が何ゆえ東海、関東地域で起こるかということを、関係各省のそれぞれの地震技術を総合的に集めまして原理を追求していまやっておりますが、そのようなものでございます。第二は、年度当初に予見しがたい事態の発生に対処するための緊急研究でございます。これは、このたびの豪雪に対しまして直ちに緊急研究を発動いたしました。三番目は、その他各種研究に共通する基礎的試験研究等に関する民間への助成研究。これでいままで最も成果を上げましたのはヌードマウスの研究でございまして、高血圧を必ず起こす純粋のヌードマウスを日本開発いたしまして、ノーベル賞に次ぐ栄誉ある賞を得られております。  三十五年から五十五年までに百八十四億の予算を投入いたしましたが、いま申し上げました第一の総合研究に百三十六億、それから緊急研究に三十五億、助成研究に四億、その他事務費等を計上いたしておりまして、それ以外に第一のカテゴリー、第二のカテゴリーそして第三のカテゴリーにも少々ということになっておるわけでございます。  第二の五十年以来の数字でございますが、先生御指摘のとおりに五十年の十六億から減ってまいりまして、五十一年は十四億八千万になりました。五十二年度に十八億三千万とふやしたわけでございますが、これはこのときに地震研究をやれという強い要請が出てまいりましたので、特別の枠を設けましてこの年に十八億三千万とふやしました。しかし、その後は先生御指摘のように一割を毎年減らしてまいったわけでございます。これは大蔵省の査定の原則がございまして、このように一括計上いたします調整費は毎年一割ずつカットするという原則でまいったわけでございます。私どもは、このように重要な調整費がその原則のために切られることはきわめて不本意であるということで、五十五年度は、見てくれは前年の十五億に対して十三・五億と一割の減でございますけれども、大蔵省とも種々検討いたしました結果、実質的には十五億五千万と五千万上回っているわけでございまして、従来の漸減傾向を、微増ではございますが逆に上向かせた経過がございます。これは、かかってこのような総合調整的な各省が一緒にやる研究開発の必要性が認識されたからでございまして、このような背景も踏まえまして、このたびは御存じのとおりの大幅な予算、倍増する予算をつけていただきまして、特調費を発展的に解消しまして科学技術振興調整費として生まれ変わったわけでございます。  最後に、特調費は従来から年度途中に出しているものが多いのではないかということでございます。特調費の実施に当たりましては、毎年度当初に前年度から継続しております継続課題をまず開始させます。そして、新規の研究課題につきましても、総合研究調査会という学識経験者の調査会で検討いたした上で、可能な限り早急に、そのような方針で実施をしてまいりました。しかし、先生もそれはやむを得ないだろうとおっしゃったわけございますけれども、自然災害等の発生に対する緊急研究でございますけれども、これはどのようなものが起こるかわかりませんので、一定の金額を相当余裕を持って留保しておきまして、実際にその金額がその予算を上回らないときにその残額を割り当てる方針をとってきたわけでございます。たとえば五十五年度の例を申し上げますと、継続課題と新規課題と合わせまして二十六課題の合計約十一億円をまず実施いたしております。そして、残りの約二億円を留保しておきました。その後五十六年二月に至りまして、豪雪対策等緊急な研究三課題に七千万を充当いたしまして、残りの一億三千万を各方面から要望の強い総合的な研究四課題に充当したわけでございます。年によりましても、いま申しましたようなことで最初大幅に割り当て、逐次限られた課題を後に割り当てるということでございます。五十五年はそのように一回と二回に分けまして、一回目でほとんどを割り当て、二回目で残額を割り当てた、極端な例で五十三年度を申し上げても、第一回で二十八課題のうちの十八課題を割り当てておりまして、年度末には三課題を割り当てるというような割り当て方をいたしておるわけでございまして、先生御指摘のように必ずしも十分ではございませんでしたけれども、一生懸命やってまいりまして、さらに五十五年度等はそのような御指摘に対しましてもおこたえし得るような実績を示しているのではないかと考えておるわけでございます。  新しい制度につきましては、御指摘の線を十分踏まえまして実施をしてまいりたいと思っております。
  88. 斎藤実

    斎藤(実)委員 特調費の執行については適正かつ効果的な活用を図るということはもう私がいまさら申し上げるまでもないわけですが、科学技術庁の長官は、各分野学識経験者から成る総合研究調査会を開いて意見を聞いてきたわけですね。  そこで、昭和五十六年度からの科学技術振興調整費の具体的運用についてどういう機関で意見を聞くのか伺いたいと思うのですが、ことしの三月九日の科学技術会議においてはこういうふうに言っている。「適当な場を設け事前に広く関係省庁、関係機関等の意見を聴取する。」この「適当な場」というのは一体どういう機関なのですかね。三十三億円の予算が適当に使われては困るし、この「適当な場」というのは一体どういう場ですか、伺いたい。
  89. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 従来の特調費につきましては、先生から御指摘のように、科学技術庁の長官の委嘱を受けました学識経験者によってテーマを選んでまいりました。このたびの科学技術振興調整費につきましても、先生いまおっしゃいましたような基本方針の留意事項のところに書いてあります原則に基づきましていたすわけでございますけれども、この調整費の具体的運用につきましては、現在、といいましてもこの十日ぐらいの間でございますけれども科学技術会議におきまして審議中でございますが、調整費のテーマ選定に当たっては、科学技術会議に産業界、国立試験研究機関、大学等の学識経験者科学技術会議の学識経験議員から成る委員会を設けるということが検討されておりまして、こういう方向での委員会ができることがほぼ見通せるわけでございます。本委員会におきましては、第一線で目下活躍していらっしゃいます研究者たちの意見を十分に聞いてテーマの選定を行うということになっております。従来の特調費以上に権威のある科学技術会議委員会によって行われるということになりますので、御了承いただきたいと思います。
  90. 斎藤実

    斎藤(実)委員 ぜひひとつ優秀なメンバーをそろえて発足していただきたい。要望しておきます。  昭和五十六年度の予算については、科学技術振興調整費三十三億五千万を取り崩しても今度の流動研究システムの予算をふやしてはどうかというふうに私は個人的な考えを持っているのです。これは大臣の持論だというふうに私は伺っているのですが、わが国の科学技術振興ということについてはちゃちな金額ではなくて、三百億とか五百億とかいうふうに飛躍的に金をふやしてわが国の科学技術振興に力を入れなければならぬというふうに、私は雑誌か何かで大臣のあれを見たことがあるのです。これは国家百年の計の上で、これからわが国が生きる道はやはり科学技術の振興だろうと先ほども大臣が答弁しておりましたが、大臣、この科学技術振興調整費を将来大幅にふやすという決意があるのかどうなのか、ひとつ伺いたいと思うのです。
  91. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに私も雑誌か新聞がでそういう発言をしたように思っております。一兆円を超える国の研究費の中で、これを真に総合調整していくのには、科学技術会議が三百億円や五百億円持ってやらなければ真の調整はできないのじゃないかという議論が確かにあるのです。しかし、初年度のことでもありますし、まず少ない金ではあるけれども体制固めをしてみて、本当に実効あるものであるならば、予算は継続性ですから急にはふえなくても、だんだんそういう方向に近づいていくのではないか。ただ、これがまずくて、名前だけは調整費だけれども中身がないということになってくるとこれは先細りをするということで、初年度であることしの三十三億については今後に期待を持てるようないい仕組みで調整できることを期待し、実績でもって相手に評価をしていただいてたくさん予算がつくように、こういう気持ちで取り組んでおります。
  92. 斎藤実

    斎藤(実)委員 ぜひそうお願いしたいと思う。  この流動研究システムの推進に当たりましてはテーマの選定が重要だと思うのですね、純粋基礎研究あるいは探索研究、先行開発、エンジニアリング開発、この四つの中で、この法案は探索研究分野から選ぶことになっているようでございますが、この探索研究の範囲が非常にあいまいだといいますか、わかりにくいのですな。この探索研究の具体的な基準は一体何なのか、将来は研究分野の範囲をどのように広げていくのか伺いたいと思う。
  93. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 今回お願いいたしております法律改正につきましての対象は、先ほど先生申されましたように探索研究というものでございます。  先生の申されました純粋基礎研究、これは全く勉強すること自体の理論研究でございます。それから、上の方から申しますと、先生が最後に申されましたエンジニアリング開発、これは、たとえばもう開発する対象がはっきり決まっておる、いかにこれを早く効率的に開発をしていくかというような内容でございまして、たとえば当庁でございますと特定高速増殖炉とか特定のロケットを開発する、こういったように目標がはっきりしておるものでございます。その下の先行開発というものは、ある程度目標のイメージはございますが、まだはっきりしておりませんわけで、一つ目標をねらっていこうというものでございます。  当方の行っております探索研究と申しますのは、研究目標それ自体を明確にすることができない研究、ちょうど一番下にございます純粋の理論研究理論から現実に何か実用化につながるような端緒となるようなものを試行錯誤的に追求をしていこう、こういう研究でございまして、目標を先ほど申しましたエンジニアリング開発や先行開発のようにイメージとしてはっきり持っていないものなのでございます。いわばそういう分野研究でございまして、これにつきましてはエンジニアリング開発や先行開発と違いまして、組織によりまして研究するということよりは、むしろ個性ある、才能のある個人研究者の創造性といいますか、そういうものに頼る部分が非常に大きいのではないか、このように考えておるわけでございます。  今度の創造科学推進のための流動研究システム、これも個人を集合させる研究として考えておるのもその点でございます。したがいまして、私どもといたしましては、純粋理論研究、ここは現段階においては大学が一番これをやっておるところでございますので、そこから先の個人を集めて行う探索研究をやっていこう、いわば研究目標がはっきり設定できない分野、こういうものを対象として考えていこう、このように考えておるわけでございます。したがいまして、これをさらに先行開発とかエンジニアリング開発まで、こういう個人集合体という形で広げていくということはなかなか無理があろうと思います、むしろ組織体企業開発させるとか国の研究所自身でやる、そういった方が現段階においては向いておるのではあるまいか、このように考えておる次第でございます。
  94. 斎藤実

    斎藤(実)委員 次に、技術移転、研究成果の普及について伺いたいと思うのですが、技術立国を目指していかなければならないわが国にとっては、自主技術技術移転は新しい製品を開発する際の車の両輪だと思うのですね。この技術の移転については、そのレベルによって国家間、あるいは政府研究機関と企業の間、あるいは大学研究機関と企業の間、同業種の企業間、あるいは違った業種の企業間、企業内組織間など、いろいろ分けることができるわけでございますが、この技術移転について、これからどのレベルの技術移転に力を入れていくのか伺いたいと思うのです。  それから二番目に、これは大臣に伺いたいのですが、昭和五十五年五月の科学技術会議振頭部会の「技術移転の推進に関する報告」の中で「技術移転を推進するためには、国として整合のとれた技術移転推進対策を講ずることが必要である。」こういうふうに述べられているわけですが、この技術移転を進めるために具体的に国としてはどういう対策をこれから講じていくのか、これは大臣に伺いたいと思います。
  95. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生最初の御質問でございますが、技術移転、国際間、国内間いろいろあるが、どのような問題に取り組もうとしておるのかという点でございますが、技術移転の問題は、大別いたしまして、国内問題を考えました場合に技術の供給側の問題、それから技術の需要側の問題と二通りに分けられようかと思っております。私ども問題意識といたしまして、技術供給側の問題といたしましては、国有技術、主として国の研究機関あるいは大学の研究成果でございますが、これは基本特許と申しますか、すぐに商品になるという品物でないものが多いという関係もあろうかと思いますが、なかなかこれが民間側に受け入れられていかない、需要と結びつかない点がございます。こういう問題をひとつ何とかしなければいかぬのじゃないか、もう少し民間が利用できるような体制に環境をつくっていく必要があろうかと思っております。  それからもう一つは、技術需要側の問題でございまして、この問題としてはある程度中小企業問題と言えようかと思っております。中小企業技術力、資金力ともに相対的に能力が不足いたしておりまして、基本的に新技術を受け入れる素地に乏しい、ここに中小企業に対して新技術を受け入れられるような条件整備をやる、大体こういうように考えておりまして、供給側としては国有技術の民間への移転、それから需要側として中小企業技術受け入れ体制の整備、この二点につきまして政府として一つの課題として認識をしておる次第でございます。  なお、先生の申されました国際間の技術移転、これにつきましては、技術的な側面だけでなくて、経済環境とか、そこの風土の問題でございますとか、いろいろ複雑な側面がございます。現在、科学技術会議の国際協力分科会、こういうところで検討いただいておるところでございます。この成果が得られ次第、その方向で実現に努力いたしたい、このように考えておる次第でございます。
  96. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のように、科学技術会議から昨年八月「技術移転の推進に関する意見」が内閣総理大臣あてに提出されました。政府としては、同意見に沿いまして新技術開発事業団における新技術のあっせん、委託開発等の拡充強化をしてまいりたいし、もう一つ日本科学技術情報センターにおきまして科学技術情報流通の促進等、技術移転関連施策につきまして強力に推し図っていきたい、こう思っておる次第でございます。
  97. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いま大臣から答弁ございました日本科学技術情報センターでございます。これは技術移転を進めるための共通的な基盤整備の一環として四月六日にスタートしたわけです。大臣もごらんになったと思うのですが、JOISIIのオンラインサービス、これは全国に支所が幾つあるか私もわかりませんけれども、こういうオンラインサービス、地方への技術移転を進めるために全国的に支所をたくさんつくるべきだ、これはきわめて大事だと私は思うのですね。確かに東京とか大阪とか名古屋とか、そういう大都市なら便利ですけれども、全国的に中小都市でもああいうサービスを受けられれば、中小企業に対してよりよい情報の提供になるだろうと私は思うのです。ぜひひとつ全国的に支所を充実強化してもらいたい。これがわが国の科学技術の情報収集なり、あるいは科学技術発展に大きな貢献をするだろうと私は思うのですね。北海道にこれはまだないのです。ひとつ大臣に伺いたいと思うのです。
  98. 中川一郎

    ○中川国務大臣 先般JOISIIの開通式ですかに斎藤委員もおいでいただきまして、本当にりっぱなものができたものだとびっくりいたすほど感心いたしたわけでございます。  現在六カ所の支所を持って全国各地に移転しているわけでございますが、あと四カ所ふやしたいという計画を持っているようでして、そのうち、とりあえずことしから斎藤委員の選挙区札幌に支所が設けられる、こういうことになっておりますので、御趣旨に沿いまして、札幌のみならず、当面は四カ所を目的に広げていきたい、こう思っております。
  99. 斎藤実

    斎藤(実)委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  100. 中村弘海

    中村委員長 和田一仁君。
  101. 和田一仁

    ○和田(一)委員 いろいろ審議の中ではっきりしてまいりましたけれども、基本的なことについて、やはりちょっと伺っておきたいと思います。  先ほどもお話が出ておりましたけれども、わが国における研究体制というものは世界の国に比べても大変程度は高い、そう思っております。特に研究費の総額であるとか研究者の数、こういうものについては、先ほどのお話のようにアメリカ、ソ連に次いで第三位である、そして世界がこうした研究費に投入している総額の約一〇%の費用を日本も投入してやっている、こういうようなお話でございました。  それだけ力が入っているにもかかわらず、わが国では独自のというか、つまり創造性を発揮して、これは新しいものだという革新的な技術がなかなか生まれにくい、全くないというわけではないのでしょうけれども非常に少ない。これは一体どういうところからそういうことになっているのか。従来からそういった研究については、官、民というような区分けをすれば民間が非常に主導的なかっこうでこれを行う。そのためにやはりどうしても目先の利益を追求して先を急ぐ、そして、むしろ自分よりも先行しているものがあればそれを取り入れて早く消化して、さらにそれを改良していいものにして身につけていこう、こういうやり方であったために、みずから生んでいくという独創的な面に欠けているのではないかという気はするのですけれども、そういう点について、従来海外技術の導入そしてそれを改良改善する、こういうことを中心開発を進めてきた、これを今回何とか創造性を発揮するようなものに取り組みたい、こういうことだろうと思います。  従来のように、コピーするのは非常に上手だけれどもオリジナルなものを生み出すというものについて少し弱い、こう言われておりますが、この辺の弱いと言われている原因について、指導的な立場にある科学技術庁として、どんなふうなところにそういう原因があるのか、これがはっきりすれば、そういったものを充足することによって創造的な研究開発が可能になるのではないか、そう思うだけに、その辺についての認識をまずお伺いしたいと思います。
  102. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のとおり、わが国の科学技術の水準は相当進んでおるのですけれども、どちらかというと改良技術が優先しておった。ところが時代がだんだん、外国の基礎的なものもそう入ってきませんし、それだけではいけないという反省が出てまいりまして、やはり創造科学といいますか、基礎科学をやらなければいけない。  では、なぜそうなったのかというと、わが国の技術者が創造性がなかったということではない。先ほどもお話があったように、どちらかというと研究投資は民間が非常に多かった、民間ということになると、どうしても経済効果といいますか、投資効率を上げなければいけない、研究開発という実用化の研究にどうしても重点が置かれがちだ、こういうこともあったでしょうし、それから、雇用制度が終身雇用制になっておるというようなことで縦割りが非常に強い、こういうことが重なって、いままでは創造研究というものが非常に少なかったんだろうと思うのです。  しかし時代は変わってまいりまして、やはり国際的な協調からいっても創造科学ということについてやらなくてはいけないというところから、官、学、民、いままでの縦割りから横の連携をとった、しかも国が中心になってやっていく、こういうことでの創造科学の研究、今度お願いしたのがまさにこの時代の要請にこたえるため、こういうことでございまして、何とぞ御理解、御協力をいただきたいと存じます。
  103. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 ただいまの大臣の答弁のとおりでございます。基本的にはそういうことなんでございますが、私どももう少し立ち入ってこれを研究体制という点から見ますと、従来はやはり外国の技術を導入いたしましてこれを一つの産業化していく、要するに応用開発研究をやりまして一つの製品を育てていって、急速に競争力なり国民の所得を上げていくと申しますか、そういう体制に関心が集中しておったわけでございますが、こういう製品化に直結いたしますような研究といいますと、これは個人研究というよりはむしろ組織の研究であろうと思います。日本は知的能力の平均水準が高い国民であると言われておりますが、こういうものを組織化いたしまして集団的に開発する、たとえば自動車のエンジンの排ガス規制を一番早く乗り切るとか、ああいった組織的な研究で非常に力を持ってきておったと思うわけでございます。しかしながら、製品に直結しないような、私どもが今度考えますような技術的なシーズ、こういうオリジナルな基本的な技術、これは従来外国からの導入技術が多いのでございますが、こういう部分はやはり個性ある研究者個人研究者の創造性といいますか才能と申しますか、こういうものが非常に生きている分野であろうかと思います。こういうような研究者日本にも結構多いというぐあいにわれわれ認識しておるのでございますが、こういう人たちにそういう研究を与えるような場というものが従来は余りにも少なかったのではないか。やはり日本は、大臣も申されましたような縦割り社会でございまして、どうしてもそういう一つの組織の中に組み込まれて研究せざるを得なかった。集団で研究すれば、やはりその組織の目標でございます製品に直結するような研究に進んでいかざるを得ない。こういうようなことで、そういう才能ある個人研究者研究の場というものがやはり乏しかったのではないか、こういうように考えておる次第でございます。
  104. 和田一仁

    ○和田(一)委員 おっしゃるように縦割り社会というのですか、そういう組織の中でみんなやっているわけなんで、研究者にとっても、どうしても自分が所属している組織が持っている考え方方向に縛られてしまって、その組織の枠から飛び出して、研究者個人が持っているオルジナリティーというか、非常に個性的なものをやるという機会がなかった、これはもう確かにそうだろうと思うのですが、それではそれを打ち破って、今度は縦割りでなくやってみよう、こういうことであろうと思います。  そこで、そういう考え方そのものは大変いいと思うのですけれども、果たしてそれに官、学そして産業界が本当に呼応して、それに対応してくれるだろうかという心配がまず出てくるわけですね。従来のこの根深い縦割り社会、組織というものから全然別のものをつくるのではなしに、そういうものを協力させながら横で流動的な研究システムをつくろうというのだから、それらの根回しというか、そういうものは十分できているのかどうか、感触としてその辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  105. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 確かに先生のおっしゃいますとおり、縦割り社会の中で、日本の社会というのは非常に集団に対する帰属意識が強い体制でございまして、その中でそういう才能のある個人研究者を横断的に集めるということはなかなかむずかしい問題点があろうかというぐあいに考えておるわけでございます。そういう前提で、われわれといたしましては、こういう日本の縦割り社会の社会慣行を踏まえたその上でそういう個人研究者を横断的に集める体制はできないかということでいろいろ検討してまいりまして、新技術開発事業団を利用いたします今度の制度に行き着いたわけでございます。  元来、こういう個人研究者中心としたシーズ探索というのは、集団的な組織研究ではちょっと不向きな対象でございますし、こういうところにつきましては大学を中心といたしまして理論研究もかなり広範に行われて、理論的にもすでにかなり成熟したものにつきましては、そういう個性ある研究者企業なり大学なり各方面に少数いろいろおられます。こういうような方はそれなりに相当の研究意欲を持っておられますし、それから企業の方も、今日の事態になりますと、従来のような技術導入だけでやっていくというわけにはとてもいかなくなってきている、こういう大きな反省面がございます。企業の方におきましてもそれなりに基礎研究所をつくるような動きが、先端的な技術を目指しております企業にはここ二、三年来いろいろと出てきております。そういった環境もございまして、企業の方もそういう基礎的な研究について意欲を持ち、非常に関心を示してきております。そういうような状況でございますので、適当な研究テーマとそれにふさわしい実績を持つ研究プロジェクトリーダー、こういう方に計画をさせますれば十分そういう人たちを集めることは可能である、その人たちの持つ制度的な障害をできるだけ除いてやれば横断的に集めることは可能である、このように考えた次第でございます。その制度面の改善ということをどうやって考えるか、これが今回の特殊法人を使いましたこの案の内容だ、こういうぐあいに私ども考えておる次第でございます。
  106. 和田一仁

    ○和田(一)委員 私は、さっき大臣もおっしゃられたように、日本研究者に独創性が全然ないということではないというふうに思っております。ただ、それを発揮する場がなかった。それをいまつくってやろうというのですから、研究者にとっては、これは自分の好きなテーマに取り組めるということで大変意欲的なものを持てるのではないかと思うのです。  ただ問題は、その研究者を抱えている組織、企業だとか研究所だとかあるいは国の機関であるとかいういわゆる組織の方から見ますと、じゃそういうテーマにうちの研究者はどうだと言われた、これを出してやるというときに、シーズ探索というだけに、特に企業なんかにとって、すぐ何かそこにメリットがあるのかないのかということはなかなかわからないだろうと思うのですね。そうなると、研究者はありがたい、自分がやりたいと思うテーマを本気でいままでの枠を跳び越えてやれるのだからいいですが、企業としては、果たしてそれにマッチできるかな、それも、うまくいけば何かあるかもしらぬが、もし成果がゼロのときにはどうなんだ、こういうことも出てくるのではないかと思うのですね。  それは裏を返して言えば、出ていく人間、研究者にとっても、この研究の成果——一つの評価として何かつかんだらいいですよ。成果がゼロだった場合には、ゼロ評価というものは、五年間出向させたけれども何もなかった——五年かどうか知りません、多分五年と聞いているのですが、果たしてそれだけの期間出すだけのメリットを考えてすっと出してくれるかどうか、いわゆる求めているような人を出すか。私は、一番いい研究者がいいプロジェクトリーダーのもとに集まらないとだめだと思うのです。二流の人物を集めても、こういうものは本当に出てこないと思う。この道は苦しいけれどもとにかくがんばってやればどこか向こうへ行き着くのだということがはっきりわかっている研究とは違うと思うのですね。何かわからない、とにかく行ったらアメリカ大陸にたどり着くのか、あるいは一回りしてがけから落っこっちゃうのかわからぬというような、そういう基礎からちょっと出ただけのところをやろうというだけに、やはりプロジェクトチームのリーダーはそのテーマにとって最高の人でなければいかぬし、あの人のもとなら行ってやろうというい集まる研究者もそのリーダー、これなら権威だという人のところに行って意欲的にやる、そういうものでないとこのシーズは出てこない。これは二流の人物を集めてはなかなかうまくいかないと思うのです。そうなると、一流の人間を企業が、それならやってみるかということになるかどうか、その辺はどうでしょう。
  107. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生のおっしゃる御意見、よくわかる次第でございます。こういう横断的に集めます場合に、プロジェクトテーマとリーダーの選定が一番大きな決め手になる問題だろうかと思っております。  テーマにつきましては先ほど来お答えした点もございますが、今後の新しい革新的な技術シーズというのはどういうところにあるだろうか。一つ極限技術というような分野、超低温でございますとか超高温度とか超高圧とか、完全な結晶体であるとか結晶が全くないような物質であるとか、いわば極限的な状況におきます物質の分野などがだれしも念頭に浮かぶわけでございますが、そういう分野で相当の論文を発表し、相当の実績を上げてこられた方々をリーダーとしてまず選定することはきわめて重要だと思っております。企業やその他におります研究者は、そういうリーダーを見て参加意欲を持つかどうか、まずそれが第一点であろうかと思っております。     〔委員長退席、椎名委員長代理着席〕  それから、企業や何かにいます研究者が参加意欲を持ちましても、その企業自身にそれを許容するような体制がないといかぬと思うのでございます。最近の情勢として外国技術の導入はそうままならない。それから、問題といたしまして、物質特許とかそういう基本特許がかなり大きな決め手を持つ場面が出てきております。そういうことで、企業にしてみれば、自分から出した研究者特許権の部分共有者になれば、その共有者の持ち分は承継できるということがございますので、その発明者を通じて自分のところにある程度引っ張ってこれる、こういうような魅力は十分持っておると考えます。そういう所有権に参画できるということで優秀な研究者を出してくれるのではないだろうか。こういう点で、本人とそれからその所属しております企業そのものについても、一つの誘因といいますか、そういうものを考えたわけでございます。そういうことで、候補ではございますが、四つのテーマについて非公式にこの案の実現性という点から私どもいろいろ打診してみておるのでございますが、そういう点で優秀な人がそこに参加される可能性が十分にある、こういう自信を持った次第でございます。その上でこの案をまとめてまいった、こういうことでございます。
  108. 和田一仁

    ○和田(一)委員 見通しとしては大分明るいようですけれども、それでは具体的に、これはもうお聞きになられたかもしれませんけれども研究者が安心して参加できる環境をまずつくってやるということ、それから意欲的に研究に没入できるように、つまり自分が所属しているところから出ていくわけですけれども、そこでの処遇の仕方というものは何かもうきちっと決まっているのですか。四つのテーマ共通のものだと思うのですが、それはテーマによって違うのですか。それとも、テーマを超えてこういうものは同じようにやるんだというふうな基本的な姿勢か。きちっと決まっているものがあればお教えいただきたいと思います。
  109. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 研究者の参加に対する障害を除くという点で、まず、期間を五年というように最初から目標を与えようと思っております。そうでございませんと、余り長くなりますと組織体に帰属意識を持ちます研究者としてはなかなか出にくい点がございます。そういう点が一つ。  それからもう一つは、五年なら五年を限りましてもとの企業なり組織体に戻れるという、復帰を前提として、その身分を持ったままこういう特殊法人の臨時職員の資格を与える、こういうことを原則にいたしております。そういうことでございますので、完全に身分を移していただく方はそれでよろしいのでございますが、五年間だけ留守にしてこっちの身分に移ってしまうということは、日本の場合なかなかむずかしいと思いますので、その身分を残した上でこっちに来るということを考えております。  それから、その組織体自分自身が研究しております研究の場を可能な限り事業団の方で借りてそこで研究させる。これはプロジェクトリーダーのもとのサブリーダーぐらいの方でしたらそこに四、五人集まるということで、そこの研究室を借りるということも十分可能ではないか、そこまでの配慮をいたしたいと思っておるのでございます。そういうようなことを考えております。  それで、給与面等の待遇につきましては、これはいろいろのところからおいでになる研究者でございますので、水準はまちまちであろうかと思っております。基本的には、親元機関で現在持っておられる待遇を下回ることはないようにしたい、このように考えております。ただ、いろいろな機関の方が来られますので待遇はかなりまちまちになりますが、その辺はもう少し具体的な段階に入りました上で、そういう原則のもとで何か少しは優遇するような処遇を考えてみたい、このように考えております。
  110. 和田一仁

    ○和田(一)委員 いま期間は五年というふうにお伺いしたのですが、これは五年ぐらいに区切らないと、長過ぎるとかえって研究者が出にくいという配慮があるようですけれども、こういったシーズ探索するのに四年半かかって、あと半年ではちょっと無理かもしれぬけれども、もう二、三年やらしてくれたら何か芽が出てくるかもしれぬというようなときも、これはやはり五年は五年で打ち切るのか。その辺は、本当に新しいものを創造していこうということであると、きわめて弾力的にこのシステムは運用されないと、余りしゃくし定規にやっていくと、出るものも出てこないというような気がするのです。ですから、五年というのはそういった配慮もあるかもしれないけれども、この期間は果たして五年が本当にいいのかどうか、あるいはもっと弾力的に考えるのだというお考えか、ちょっと伺っておきたい。
  111. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 確かに先生のおっしゃる点は一つの問題点でございます。基礎研究等におきましてはある程度目標期間を置きましても、そこで一定の成果をおさめますと、さらにそこから新しい興味ある研究テーマがわいてくる、個々の研究者から見ますれば、基礎研究というのは大体そういうものではないかと思います。一つの成果が出れば、さらにそれを踏み台にして次々と新しい研究意欲がわいてくるわけでございます。いわばどこでそれをはっきり仕切りをつけるか、こういう問題が一つあろうかと思います。  これは国の研究機関や何か終身雇用制の研究機関の場合でございますと、どこでそれを仕切をつけるかというのは、やはり研究管理の場合の一つの大きな問題点ではないかと思っております。それで、この場合は多くの機関から横断的に集めるという、そういう身分上の問題もございますけれども、新技術開発事業団は研究所ではございませんで、それを組織化する一つの舞台装置をつくる黒子役でございますから、余り長くだらだらするわけにもまいらない点もございます。そういう点で、あらかじめ期間目標をはっきり与えてやって、その中でそういう一つの成果を得ることができるかどうか、それで成果を得ることができる自信のあるようなプロジェクトリーダーを持ってきてプロジェクトを組織させる、大体そういうような方向で、それを原則的に考えていきたいと思っておるわけでございます。  やってみて、その過程で、本当にあと数年で新しいものができるとか、そういうことがはっきり出るような状況がございました場合には、五年で一応仕切りまして、その上で今度は新しい体制でそれをやってもらう。やはり一つの仕切りを与えるということは、基礎研究の場合は非常に重要ではないかと思っております。そういうような考え方で一応原則五年で仕切る、ただ、そのテーマは大きな必要性があれば新しい視点からもまた次に取り上げる、こういうような考え方ではないか、このように思っております。
  112. 和田一仁

    ○和田(一)委員 よくわかりました。一応そういった人を集めてやるのですから、そういった意味での契約や何やらは一つ期間を切って、目安を置いてやるのも結構だし、また、そういう目安があることによって研究のピッチも上がってくるのだろうと思いますけれども、さっき申し上げたように、いまの御答弁にもあるように、原則ではそうだけれども、もう少しというようなときにはもう一回それを切りかえて次のテーマに継続していく、この辺をやはりきちっと、それはそうするのだという一つ方針を出しておいていただきたいと私は思うのです。  そうなりますと、一番問題は、研究者自体が研究するそのものが、いままで組織でこういう技術開発に対応していこうというのと違った意味で非常に独創的ですから、このチームリーダーに与えられる権限というのも相当裁量性がたくさんないといかぬと思うのです。そういう意味では、このプロジェクトチームリーダーの裁量権というものをどういうふうにお考えになっているか。一つには、必要な経費について、約束した経費では足らぬなという場合にはどうするか。それから、集めた人を一応集めてみたけれども人をかえたい、ここの部分ではかえたいというときのそういう人事権はどうするか。そういうことについてのチームリーダーの裁量権については、どんなふうにお考えになっていますか。
  113. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 今度の研究制度につきましては、プロジェクトリーダーというのが非常に重要な役割りを果たす、このように考えております。そういうことで総括責任者という名前で、お願いいたしております法案の中に法的な位置づけもした次第でございます。そういう法的な位置づけのもとに、プロジェクトリーダーにつきましては、研究プロジェクトの総合的な研究計画の作成、それからこの計画を構成いたします個別研究課題、そのサブテーマでございますが、そういった問題、それから個々の研究者の選定、それから第三点として研究の指導、評価、管理等の研究の推進の総括一切、こういうものにつきまして大きな裁量権をこの人たちに与える。もちろん計画や何かにつきましては開発審議会の助言を得ることは当然でございますけれども、まずこの人が全部の指揮者である、こういうかっこうでこのリーダーに裁量権を与えたい、このように考えております。
  114. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そういった場合に、そのリーダーが一つの中でグループをつくりますね。その同じグループの中へAという企業、Bという企業、競争し合う民間の企業のAにもBにもいいのがいるんだというので、その二人をここに持ってきて研究させたいというようなこともあろうかと思うのですが、そういう場合に、その企業の間にあるこういったものの競争関係から出てくるいろいろな問題、そういった調整はなかなかそのリーダーではできないかもしれないけれども、そういう場合には事業団の方がやるわけですか。そういったことについての秘密は守ってやるよとか、たとえばさっきおっしゃったように、研究者がいま現に研究している場をうまく利用して今度のチームはやっていこうというのだから、AはAの企業の中で持っているその研究の場を使いたい、しかしそこへBも一緒に持っていって、この研究者とこの研究者を討論させていいものを生みたいというリーダーの気持ちがあったときに、Aの企業は、Bのやつが来るのじゃ困ると言うと、これは両方だめになっちゃうというようなこともあるのじゃないかと思うのですが、その辺はどうでしょうか。     〔椎名委員長代理退席、委員長着席〕
  115. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 競合企業から派遣されておる研究者がこの一つテーマの中で共存する可能性ということでございますが、確かに先生のおっしゃるような場面もあり得るかというぐあいに私どもも当初懸念しておったのでございますが、実は今度候補になります四テーマにつきましては、ライバルの企業から個人研究者が出てくることになるような感じを私ども持っております。  それで、やはりこれは基礎的レベルの研究でございますものですから、原理特許、基本特許、もちろんこれは取れば競争上非常に有利にはなるのでございますけれども、それから先実際に製品ができますまでは、企業にいたしましてもやはり相当の応用研究なり開発研究を積み上げていかなければいかぬ。取ったこと自体が直ちに勝負になるわけではございませんので、やはり何かそういう基本特許について持ち分参加できるということが一つの魅力ではないかと思いますが、競合企業研究者も十分出てくる、そういう感じを持っております。この辺は、われわれの考えでおる四つの候補テーマだけで必ずそうなると考えるわけにはまいらぬと思いますけれども、一応その辺は当初心配したほどではなかったのではないかというような感じで現在おるところでございます。
  116. 和田一仁

    ○和田(一)委員 テーマが当面四つのプロジェクトでスタートしよう、こういうことですが、それはこの四つが当面一番可能性があるとかあるいは重要度が高いとか、そういう意味で四つのものを選定されたんだろうと思うのですけれども、この四つを選んだ背景にはどれぐらいの問題テーマがあるのでしょうか。
  117. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 このテーマの選定につきましては、新技術開発事業団がこの案をまとめましたのは去年の夏であったわけですが、その前約一年以上にわたりましてだんだんとこういうぐあいにしぼってきたわけでございます。もちろん制度が発足したわけではございませんので、非公式な内容でやってきておるわけでございます。元来、新技術開発事業団の従来の業務が、企業委託開発やあっせん業務でございますものですから、いろいろ国の研究者、大学の研究成果、こういうものについて基本的に相当の情報を実は持っております。それをもとにいたしまして多くのアンケート調査を実はやっておりますが、そういうものをもとにいたしまして、学界、協会等の論文等の文献調査、それから学界、協会の有力メンバーでございますがそういう学識経験者等から逐次ずっとヒヤリングをいたしまして、それでこういうように問題をしぼってきたわけでございます。もちろんこの四つ以外につきまして可能性のあるものはあるわけでございますが、現段階でそれがこういうような横断的に組めるものかどうか、必ずしもめどのつかないものは後回し、こういうことで一応この四つについては十分自信がある、こういうものだけに限った次第でございます。
  118. 和田一仁

    ○和田(一)委員 そうするとこの四つで走り出すわけですけれども、当分五年間ということですが、五年間は四つだけで走っていくのか、それとも来年は来年でまた新しく二つ、三つ積み増しをしていくのか、あるいはもっと積極的に五年目にはもう二十とか三十とか四十とかいうものが走っているのか、その辺はどうなんでしょうか。まあ当面はこれなら横断的にチームが組めるということで、ほかのものでは組めそうもないというならばこれはちょっとやれないだろうとは思いますけれども、この四つが全部成果を上げてくればいいけれども、こういう問題ですから上げ得ないで五年たってしまうということもあるだろう、また当然あってもそれは責められるべきものではないと思いますけれども、その四つをやったけれども半分だめであと二つは何とか芽が出そうだというときに、ほかにもう走っているのがないというのはちょっとさみしいなという気がするので、積み増しがあるのかどうか、どんなものですか。
  119. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 この法案を御了解いただきますと本年度内に発足するわけでございますが、年度内はいろいろ準備もございまして、ようやくしかかった程度でございます。したがいまして、五十七年度はこの四つを円滑に進めていきたい、このように思っております。これに重点を置いていきたいと思っております。その次からは、私どもの当初の計画といたしましては、順次これに大体四つぐらいずつ新しいものを積んでいきたい、このように考えております。したがいまして、ちょうど五年目でございますと、大体二十近いテーマが並んでおるわけでございます。それで毎年毎年、五年前に発足したものが終わっていく、こういうような仕組みで考えたい、このように思っております。  現時点でそれだけ豊富なテーマを十分抱えておるというわけではございません。それは計画でございます。これの研究の新しい枠組みでございますし、先生がいろいろ御質問ございますように、うまくいくのかどうかということで見ておる研究者も非常に多いわけでございます。この制度がうまく発足しますれば、この制度を将来利用したいと思って、研究準備を自分自身で心がけて研究をしていく、そういう方もかなりおるようでございます。そういうことで、将来の計画としてはそういうことを考えておる次第でございます。
  120. 和田一仁

    ○和田(一)委員 この事業団テーマを決められて、それぞれにリーダーを決められていくのは審議会でやられるわけですね。審議会の決定によってテーマが決まり、人も決まっていくわけですけれども一つのラインというか、テーマ研究の中で方向づけがされて、それでだんだんやっているうちに、やはりさっき裁量権がどの辺まであるかということを伺った中にも関係するのですけれども一つ決められたテーマで取り組んでいるうちに、途中でこれよりもこっちの方がというものがもし出た場合、これはすぐ審議会で相談に乗ってもらって、そこからスタートして五年やるというような方向転換が可能なのかどうか。これはそのテーマそのものを否定するのではないけれども、やっているうちに、このテーマの中でこんなものが出てきたということから、そっちを先にやろうかということをリーダーを中心にみんながそのように考えてきたときに、審議会そのものがその独創的な仕事をやる研究者と同じように創造的な弾力的な審議会でなく、こっちが硬直していて、途中での軌道修正もできなくなっていると、これはせっかくのものもだめになることがあるという意味で、審議会のそういう弾力的なものはあるのかどうか、ちょっと伺っておきたい。
  121. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生のおっしゃいますとおり、シーズ探索研究でございますので、予想外のところに新しい技術の種が出てくるわけでございます。むしろ当初予定したものの中で、研究しているうちにすぐれた発想が出たり、研究のそこを変更したりすることがシーズ探索研究では常態ではないかと実は考えておるわけでございます。そういう前提がございますものですから、一つの特殊法人の計画が内部計画の変更で済むような形をとっておるわけでございます。これが委託費やなんかでございますと、その計画が全部資金関係と結びついておりまして、そういう変更がなかなかむずかしい問題がございますが、これは一つ事業団の内部計画の変更でございますものですから、その辺は弾力的にできるような体制がございます。  それで審議会は、当初の研究計画の承認と同時に、年二回くらい考えておるのでございますが、進捗状況を常時報告を受ける体制をつくりたいと考えておりますが、この辺は開発審議会先生方、シーズ探索研究の前提として、そういうことにつきましては当然御理解いただけるもの、私どもはこのように考えております。研究計画の当初、途中の進捗状況、それから済みました後の評価、こういうものを審議会先生方に考えておるのでございますが、そこは十分対処できるのではないか、このように考えております。
  122. 和田一仁

    ○和田(一)委員 それから、研究テーマにもよるんだろうと思いますし、実験の施設というものはこういう研究には余り必要はないのかもしれませんが、やはりある程度研究上の施設というか、そういうものも当然必要になってくると思うのです。この計画では、そういう施設そのものはなるべくつくらずに、すでにあるものを使おう、つまり借りようということのようですけれども、そういった研究施設を借りることについて、これは契約になるのでしょうけれども、どういう契約の仕方をされるのか、これがやはり研究者にとっては大変な問題になるのじゃないかと思うのですね。私は、自由な研究の中からこそ独創的なものが生まれてくると思いますが、そういうときに、非常に四角四面な賃貸契約で、研究施設の活用が十分うまくいかないというようなことになると、これはやはりうまくいかないし、さっき言ったように、競争し合う企業なんかで貸す場合に、非常に限定されたものしか使わせないというようなことがあってもまたやりにくいだろうと思うので、つくらずにというのは、一つは経費の面もあるのでしょうけれども、まず自分でつくらずに利用しようという理由から御説明願いたいと思います。
  123. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 三十条の二の三項でございますが、施設はできるだけ借りると書いてございます。この施設は土地建物のたぐいでございます。研究装置とか設備、これはもう当然こういうシーズ探索研究に非常に必要でございます。装置、設備のたぐいは、資金を十分投入していく必要があろうかと思っております。ただ、土地建物のたぐいにつきましては、五年の研究でございますものですから、これを所有いたしますと、後の管理や何かが問題になってまいりますし、資金の固定化のみならず、いろいろ何といいますか、研究の弾力性を実は失ってくるような面もなしとしない点がございます。したがいまして、土地建物はできるだけ借りようという考え方でございます。  それで、土地建物につきましては、先ほど申し上げましたように、一人一人に研究室をというわけにはまいりません。グループのリーダーくらいの場所に、そこに属する研究者四、五人集まるわけでございますが、そのグループリーダーのやっておる研究室を借りようか、こういう考え方でいま進んでおるわけでございます。  その場合の土地建物の借り方でございますが、これは当然そのグループリーダーの親元機関の所有しております土地建物でございますし、当然、その研究者の参加と同時にその親元との派遣契約なども結ばねばなりません。その際に、その土地建物、それからそれに伴います役務サービス、こういったものを全部借りる契約を結びたいと思っております。  それから、研究者にいろいろそういうサービス問題で迷惑をかけないために、新技術開発事業団の事務職員をそういう研究室には一人ずつ派遣いたしたいと思っております。そういう職員に、そういう研究管理以外のいろいろの事務処理、サービス処理、こういう問題は全部処理させよう、そして研究者につきましてはそういう雑務から免れさせるようにしたい、こういうように考えていろいろ計画を進めておる状況でございます。
  124. 和田一仁

    ○和田(一)委員 土地建物は確かにお話のとおり借りる。そうすると、必要な研究施設は要求があればつくる、こういうふうに私は理解をしたのですが、そうなると、たとえばサイクロトロンが欲しい、使わせてくれということになると、ちょっとこれはこの予算ではとてもできないだろうし、場所も相当きちっとした場所でないといかぬということになるのですが、私は一つの例でそんなことを申し上げましたけれども、そういう非常に高価というか大変な設備を必要とする場合なんかはどうするのですか。やはりこれはつくるのか、借りるのか。
  125. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 いま私が申し上げましたのは、装置、設備は買う、要するに動かせるようなものでございます。それで、土地建物は借りるということでございますが、先生のおっしゃいますように、いわゆる巨大施設、これはほとんどが土地に固着いたしました大施設でございますが、こういうものを必要といたしますような基礎レベルの研究の場合は、やはりそういう巨大施設を所有いたします機関、こういうところと共同研究というかっこうで入ってきてもらう必要があろうかと思っております。五年間の研究でございますので、そういう施設まではこれをもとにしてやることは困難でございますし、むしろそういう巨大施設を所有する機関に共同研究で入ってもらう、そしてそれを利用させてもらう、そういうかっこうでそういう施設につきましては考えたい、このように思っております。
  126. 和田一仁

    ○和田(一)委員 冒頭に大臣の御答弁の中で、創造的な面では十分なものはないけれども、しかし日本研究者、科学者にそういった創造性が欠如しているのではないということでした。私もそのとおりだと思います。しかし、こういう新しい芽を探索するというようなものはやはり基礎がしっかりしてなければいかぬことと同時に、創造性豊かなそういう研究者をたくさん持っているということが基本的になければならぬと思うのですね。  そう考えてまいりますと、いまの日本研究者をつくっている教育制度そのものの中に本当に創造性豊かな教育が行われているのかどうか。何か非常に画一的な一つのレベルまで、平均的なレベルまでの人間はたくさんつくるような制度であるけれども、創造性の豊かな人間をつくるのにはどうも向いていないような気がするのですがね。そういった点も含めて、こういうシステムを考え、成果を上げようというからには、ひとつこれはぜひこの教育についても思いをいたしていただきたい、私はこういうふうに考えておるわけなんで、創造性のある人間が育つような教育がいま行われているかどうか、でないとすればどうしたらいいか、ひとつ大臣のお考えを聞いてみたいと思うのです。
  127. 中川一郎

    ○中川国務大臣 先般も千葉県のサイエンスクラブに行きまして、非常に熱心な子供さん方の創造性豊かなクラブ活動を見まして感激したわけでございます。ところが、残念なことに、小中学校ではかなりそういうことはあるのですけれども、中学の後半の三年生以降あるいは高等学校ということになりますと受験勉強に専心をする、しかも科学とは直接関係のない方向に重点が置かれている、その辺にも問題があるんじゃないかと思いまして、やはりクラブ活動なんというものをもっと徹底してやるというようなことから、受験勉強に追われるよりはそっちの方が好きだわい、こういうようなところからスタートしていかなければならぬのかなとも思っております。同時にまた、今回の創造科学の、しかも流動システムによる研究ということは、そういった創造性について一つの警鐘乱打になるんじゃないか。  高校あるいは大学等においてどうするかということは、これは文部行政でもございまして私の手の及ぶところではありませんけれども、時代がこういうことになってきますので、文部大臣等にも、科学技術関係閣僚連絡会議もございますからひとつ働きかけて、創造性豊かな日本の学者が出てくる素地を一体としてできるように努力をしてみたい、こう思う次第であります。
  128. 和田一仁

    ○和田(一)委員 こういういままでにない新しい流動的な研究システムをやってみようということでございますから、ぜひひとつ成果が上がるように、弾力的な運営が全体でできるように配慮をしていただきたい。せっかくつくった制度そのものがどこかの部分で硬直してしまって、いままでの縦割り社会の中でやってきたのと同じようなことになったのではなかなかこの芽が出てこないという感じがしますし、やるからにはひとついままでにない思い切った独創的な運営、運用の仕方を考えてやって成果を上げていただきたい。  同時に、こういうものだけに、五年やって成果がなかった——成果というか何か芽が出なかった、シーズがなかったといっても、それがゼロという評価でないように、試行錯誤がすなわち大事だというその点を本当によく理解できるように、評価できるようにしていただかないと後が続かないんじゃないか。一回目のテーマにはいいけれども、その後続いてテーマに入る人がいなくなる、そういう点をぜひ考慮していただいて、四つだけでなくさらに積み増しをして、新しい技術開発のためにひとつ成果のある制度にしていただきたい。御要望を申し上げて、終わります。
  129. 中村弘海

    中村委員長 瀬崎博義君。
  130. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 わが国の国民所得に占める研究費総額の割合なんですが、最近の状況を見ておりますと、昭和五十三年で二・一五%、五十二年で二・一二%、五十一年で二・一四%、五十年で二・一一%、四十九年で二・一七%と、大体二・一五%前後を推移しているというのがわが国の状況ではないかと思うのですね。これは科学技術白書で拝見したわけであります。これを先進諸外国に比べてみますと、わが国を下回っているのはフランスぐらいで、あとソ連、西ドイツ、アメリカ、イギリスなどがわが国よりも上位に位している、こういうように見受けるのですね。また国民一人当たりに換算した研究費額について見ても、西ドイツが二千八百十二万円、フランスが二千六百六十八万円、アメリカが二千二百六万円、イギリスが千五百九十八万円、日本が千三百七万円。西ドイツに比較して半分以下、こういうふうな状況と見受けるわけなんですね。  そこで、まず大臣に伺いたいのですが、新たな研究開発システム導入以前の問題として、わが国の全体の研究費そのものの絶対額が低い、こういう現状は否めないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  131. 中川一郎

    ○中川国務大臣 わが国の研究投資がそれほど低いとは思っておりません。ただ、アメリカの二・五%ですか、あるいはソビエト等に比べれば低いということは言えると思います。  私が一番問題にしたいのは、総額ではかなりあるのですが、産業界に比べて国の投資比率が若干低い。三対七と一般的に言われておりますが、この辺は相当力を入れていかなければいかない点であります。それから、中身について改良研究が非常に盛んだが、基礎研究が少ない。この二点に改善を加えていきたいということから、ことしの予算においても、平均が四・三%であるのに対して九・〇%まで伸ばしてもらったこと、もう一つは、御審議いただいております流動研究システムによる創造科学の推進、こういう二本立てで、ことし一年でもって十分とは言いませんけれども、そういう方向づけだけはした、こう思っておるわけでございます。
  132. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま大臣が指摘されたわが国の科学技術研究費の弱点二つ、これは確かにそのとおりだと思うのです。しかし、そのもう一つ前の、わが国全体が投じている研究費総額はそうは劣っていないと言われますけれども、国民一人当たりで直してみれば、科技庁が出している白書自身で、いま申し上げました数字、わが国の場合は国民一人当たり一千三百七万円、あとアメリカが二千二百六万円、フランスが二千六百六十八万円、西ドイツが二千八百十二万円、これはどう見でもやはり総額そのものが低いのではないか。半分程度ですね。これはやはり事実じゃないかと思うのですよ。いかがでしょうか。
  133. 園山重道

    ○園山政府委員 研究費総額につきまして、先ほど大臣から御答弁がございましたように、アメリカ、ソ連に次いで第三位ということでございます。  なお、先生御指摘の国民一人当たりというお話でございますが、先生御指摘の数字は研究者一人当たりの研究費ということでございまして、このことは、研究者の数は日本でも二十八万人ということで相当多い数でございますので、当然一人当たりの研究費というのが多いことが望ましいわけでございますが、一面、研究者の数が相当充実しておるということでもございます。  なお、ちなみに国民一人当たりということで研究開発費、人口で割ってみますと、これは必ずしも高いというわけではございませんけれども日本では五十三年の数字でも約三千二百円ということでございまして、アメリカの四千九百円、西ドイツの五千二百円から見ますと若干低いところにございますけれども先生御指摘の研究者一人当たりという数字のような差ではないと思っておるところでございます。
  134. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 確かに私の表の見間違いではありましたけれども、しかし、研究者一人当たりの研究投資額が先進諸国の大体半分程度、それから国民一人当たりの方の研究費は台が一つ違う、四千円台と三千円台の違いがある。こういうことは否めないと思うのですね。  そこで、科学技術会議昭和四十六年には五号答申を、五十二年には六号答申を出しているわけでありますが、この中で、いずれも研究費の国民所得比達成目標として当面二・五%、長期目標としては三%をうたっているわけですが、先ほど申し上げましたように、大体二・一五%程度を上下しておって、なかなかこの揚げた目標に到達していないわけですね。  こういう中で、特に五十六年度の努力はただいま表明されましたけれども、この間十年近くの間もう一つわりばえがしなかった、この一番大きな原因はどこにあったとお考えですか。
  135. 園山重道

    ○園山政府委員 確かに先生御指摘のように、科学技術会議の答申におきまして、当面二・五%という数字を五号答申のときに示されておるわけでございます。これは、いままでの日本の国民所得に対する研究開発投資総額の比率というものを見てみますと、昭和四十年ごろには一・六%でございまして、これが昭和四十六年に二%を超えたということでございまして、大体この四十六年時点というのが先ほど先生御指摘の五号答申が出た時期でございますけれども、ここまで大体順調にふえてきたわけでございます。その後、御指摘のように二%台から四十九年に二・一%台に上り、その後二・一二ないし一六というような間を上下しておるわけでございます。この点は大変むずかしい問題でございますが、御承知のような石油ショックというようなこともございましたし、なかなかこういった研究開発投資を急速に伸ばすことができなかったかと思うわけでございます。  最近におきまして、特に民間企業におきましてもいよいよこれからの研究開発の重要性ということが非常に認識されておりまして、五十四年度の数字ではこれが二・二九%と、約二・三%に近いところに上がってきております。これは必ずしもこの趨勢で続くとは申し上げられませんけれども、やはり国全体として見ました場合に、相当な意欲は見られるということでございます。  ちなみに、先進諸国を見てみますと、米国は昭和四十年に三・一八%という大きな数字でございましたが、これはずっと漸減いたしておりまして、五十三年度には二・四九%というようなところになっております。フランスあたりも、当初四十年ごろには二・二六%というのがだんだん下がって、いま二%を割っておる。ただ、西ドイツは四十年から四十五年くらいまで非常に伸びまして、現在二・五、六%という高い水準を持っておるところでございます。これは、経済全体の趨勢と、その中におきます研究開発投資意欲というもののあらわれかと思っておるわけでございます。
  136. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど、わが国の研究費支出が低くなってくる要因の二つ、あるいは弱点の二つの一つとして、政府の受け持っている割合の少ないことが挙げられたんですね。これも白書の挙げている数字でありますが、国防研究費を除いた政府負担割合は、フランスが四二・一%、西ドイツが三七・二%、米国が三五・一%、イギリスが三五%に対して、わが国は、これも台が一つ下がって二七・五%、こういう数字なんですね。だから、少々の努力ではなかなか追いつきにくいように思うのですが、ことし格別の努力をされて予算も九%以上伸ばした。こうした場合、では日本の国防研究費を除いた政府負担割合はどの程度に上がると見ているのですか。
  137. 園山重道

    ○園山政府委員 これは正確な数字はやはり二年後ぐらいになりませんと統計として出ませんので、いま明確に申し上げることはできませんけれども、大まかに申し上げまして、先生も御指摘のように、全体に対する国の支出が二七、八%ということでございますので、この中で特段の努力をいたしておるわけでございますが、その伸びが全体にどれだけ寄与するかというのは、余り多くは期待できないと思っております。  むしろこれは、全体の中で国の比率が少ないというそれ自体一つの大きな問題ではございますが、反面、民間企業が非常に意欲的に研究開発投資をしてきた、またそれを維持しているということがあるわけでございまして、戦後の、特にいままでの高度成長を支えてきましたような民間企業研究開発投資というのは、一面非常に評価すべきだと思っております。しかし、これからはやはり国が負担すべき研究開発分野というのが非常にふえてまいりますので、国としては最大限の努力をしなければならないものかと思っておるところでございます。
  138. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そのように国全体としても研究費支出が低い、さらにその中で政府の負担している割合が低い、にもかかわらず、わが国はGNPで見れば非常に大きくこれを伸ばしているわけですね。  この背景として技術の海外依存が常に言われるわけでありますが、こういう海外からの技術導入というわが国の特徴を他の先進諸国と比較した場合、どういうところにあるとお考えなのか、答えていただきたいと思います。
  139. 園山重道

    ○園山政府委員 先ほどもちょっと申し上げたところでございますけれども、特に戦後の高度成長時代ということを考えてみますと、これは戦争の空白ということがございまして、戦後の荒廃の中から立ち直るためには、やはり産業を活性化いたしますために先進国の進んだ技術を導入してまいりまして、これの消化吸収に非常に努めまして、さらに今日日本のお家芸というほどにまでなってまいりました品質管理を初め各般の努力をいたしまして、いい製品にして輸出するということで経済成長を遂げてきたわけでございます。したがいまして、その間における効率というのは非常によかったということが言えるかと思うわけでございます。  しかしながら、今日ここまで日本技術が進んでまいりましたので、いたずらに技術導入に頼るということが許されない段階に来ております。もちろん、世界的にも技術革新が多少停滞ぎみであるということもございますし、また日本技術力、経済力が非常に高くなってまいりましたので、いろいろ技術導入をしようと思ってもそれは制約がつくということは確かでございます。もっと本質的に申し上げるならば、日本としてはむしろここで自分技術をつくり上げ、これをもとにして、いわゆる自主技術中心に産業も立っていかなければならないということで、先生御指摘のように、いままで戦後のある時期におきましては非常に研究開発費が少ないにもかかわらず経済成長を遂げてきた、しかし、今後はその辺が非常に厳しくなるのではなかろうかということで、特に国の役割りも重要になってくるということで、国自体の研究投資の増大について努めなければいけませんし、また民間が研究開発投資ができるようにいろいろな施策を考えていかなければいかぬ、こういうことであるかと思っておるところでございます。
  140. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 言葉の上ではなるほどとうなずけるのですが、初めて科学技術白書が出たときに、どういうことがうたい文句になっていたかといいますと、そのときのタイトルが「外国依存から自主発展へ」こういうことになっていたわけですね。つまり科学技術の自主発展を掲げて四半世紀たったわけでありますが、逆に技術貿易収支額を同じ科技庁の白書で見てみますと、拡大していっている一方なんですね。ここに出ております表でいきますと、昭和四十年から四十二年までが五百億、六百億、七百億の辺の赤字です。それから、四十三年から赤字が一千億を超えてまいりまして、五十年までは大体一千億台の赤字が続きますね。それから、五十一年に赤字が二千億台に上って、今日に至るもずっと二千億を超えたままという状況なんです。ですから、政府のかけ声どおりに果たして今後この技術の海外依存から脱却できるかな、日本政府自身も行政がそうなっていたし、また民間企業の方も、最小限の技術開発研究投資で最大限の利益を上げるというのがしみついているためにどうしても海外依存をする、こういう点では、ただ単に今回のこういう新しい流動研究システムの導入というだけで技術面の貿易収支の何か画期的な変化があらわれるような期待ができるのだろうかという疑問がぬぐい切れないのですが、大臣はどうお思いになりますか。
  141. 中川一郎

    ○中川国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、確かにいままでは外国から輸入した技術を改良しておるということでございます。そうしてまた貿易赤字もあるということも事実ですが、これを詳細に検討すると、最近の、新規においてはかなり黒字になりつつある。過去の支払いが非常に大きいというところもあって、必ずしも数字の上だけでは判断ができない。しかし、御指摘の傾向はございますから、これから思いを新たにして、自主技術をつくり上げて、そして貿易の面でもそんな赤字が出ないように、さらには、これから日本が国際社会に貢献するとすれば技術開発によって貢献をしなければならぬという国際的な責任もありますので、さらに一段とこういうことでやっていきたいと思っているわけでございます。
  142. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この自主技術開発の方針がはっきりといろいろな統計数字にあらわれることも大いに期待したいと思うのです。  それから、先ほど大臣が言われたもう一つのわが国の弱点、つまり基礎研究の割合の低いことですね。この点については確かに流動研究システムの導入もある意味では基礎研究重視のあらわれだとは思いますけれども、それだけでいままでのわが国の傾向が変わるとは思えないのですが、こういう新たなシステムの導入以外に、政府として今年あるいは今後、基礎研究重視のためにとろうとしている対策等をお聞きしたいと思うのです。
  143. 中川一郎

    ○中川国務大臣 詳細は事務当局からまた御説明いたしますが、今度の法律をお願いしている仕組みだけじゃなくて、調整費も三十三億五千万円、これはまだ本当の芽でございまして、これをだんだん大きくして、いままでの縦割りの試験研究から横に並ぶ調整のとれたものによってしっかりした技術もつくっていきたい、あるいは海外との技術協力もやりながらそういったものを生み出していく努力もしていきたい、総合的にやっていきたいと思っているわけでございます。
  144. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 事務当局、補足することがありますか。
  145. 園山重道

    ○園山政府委員 ただいま大臣の申し上げたとおりでございます。私どもも、いろいろな分野にわたりまして、今日日本がこれまでの経済大国になり、しかも技術レベルも非常に上がってきたということで、みずから自主技術をつくって、単に産業のみならず人類に寄与していくための研究開発が重要であるということの意識が一番大事かと思っておるわけでございまして、そういう線に沿って各般の努力をしなければならない、こう思っておるところでございます。
  146. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結果的には、別に事務当局が答えても具体的な案があるというわけではなさそうですね。  そこで、流動研究システムの質問に移りますが、すでに今年度は四テーマを決められているわけでありますが、とりあえず今年度のこの四テーマですね、候補テーマというふうに言っていらっしゃるようですが、事実上はこれで予算を取っているわけだし、これでいかれるんじゃないかと思いますが、これが決められたいきさつについて説明をいただきたいと思います。
  147. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 この四つのテーマにつきましては、この法案を御承認いただきました後、事業団開発審議会において御審議いただく、そういう意味候補と申し上げた次第でございます。  この四つの候補につきましては、そもそも流動研究システムを考えます段階から、一つテーマについて事業団としての情報能力を集めていろいろ検討しておった次第でございます。従来、新技術開発事業団は委託開発ということで産業界、国の試験所、学界等の研究者の有する有望な研究に関します豊富な情報を、そういった経験をもとに持っておりまして、各種の文献、論文をいろいろと調べておりますが、そういう文献の調査、それから研究開発関係機関や現在の開発審議会委員を含みます学識経験者、こういう方々からいろいろヒヤリングいたしまして、こういうシーズの将来有望な分野について情報を得てだんだんとしぼってまいったわけでございます。これらについては、先ほど申し上げましたとおり、新制度発足後、当然開発審議会でもう一遍改めて基本から審議、御検討願う、こういうつもりでおる次第でございます。
  148. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が聞いているのはそういう抽象論ではなくて、現にもう今回は具体的に四つ出てきて、われわれにも説明がされているわけですね、聞けば、いろいろな研究機関等にアンケートを出した、集まってきたテーマは数にして何か数百もあったというふうなことを聞いたわけですね、これは科技庁の説明の中で聞いたわけです。そこからこの四つを選ぶという作業ですが、まだこの法案は通っていませんから、正式に審議会にかけるという手続ではないと思うのですが、では一体それにかわる手続をどういうふうにとったのか、ここを聞いているわけです。
  149. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 まず、先ほど申し上げましたようにいろいろアンケート調査をしておりまして、情報を持っておるわけでございますが、その中から学協会等のいろいろな文献調査、こういうことをいたしましてしぼってきたわけでございますが、その際の考え方といたしましては、理論面におきます研究が相当に進んでおる——
  150. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いや、どういう手続を踏んだかというのを聞いておるのですよ、そういう一般論じゃなくてもっとはっき言えば、だれがどう決めたのかということです。
  151. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 これにつきましては、そういう理論研究が進んでおるとか、それからもう一つは、いろいろ産業界、官界、学界、こういう人たちが総合的に参加できるようなもの、こういうような観点から、この中身を事業団事務当局がしぼりまして、それを当方としてもう一度検討し直して取り上げた、こういう経緯でございます。
  152. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、これは事業団側に伺うわけですが、いまの手続でいきますと、事実工事業団事務当局が選定をして、科学技術庁がこれに承認を与えて、四テーマが事実上できていますね。だからことしは審議会でこれを追認する形にならざるを得ないと思うのですね。プロジェクトリーダーの選定をどうするか、選定基準等はもうすでに他の議員の質問に答えも出ておりますから繰り返しませんが、これもまた、現在はすでにこの四テーマがあるのですから、ほぼ四テーマにふさわしいリーダーが内定をしているのではないかと思うのです。そうすると、これもまた審議会の追認、こうなりますね。問題は、法案が通った後、来年度以降本格的に始動するわけですが、そのときにもこの審議会がそういう追認機関、形式的な審議会になったのでは、この意図するところと大分反してくると思うのです。そんなことには絶対なりません、こういう保証をわれわれに与えていただきたい。これが一点です。  第二は、この審議会メンバーが今度十人から十五人にふえる。現在の十人に五人を加えるのではない、全部をもう一遍任命し直すのだというふうに聞いておりますが、これは理事長が任命して総理大臣の認可を得ることになっていますね。第一義的には理事長が決めるわけですから、理事長としては、どういうふうな顔ぶれを予想されているのか、あるいはどういうメンバーを集めたいとお考えになっているのか、こういう点をお聞きしたいと思うのです。
  153. 武安義光

    武安参考人 研究テーマの次回以降の選定でございますが、現在、案としてあります四テーマにつきましては、先ほど局長からも御答弁がありましたように、事業団の現在持っております情報の中から数をしぼりまして、くみ上げたわけでございます。それで、この制度の発足が認められますと、以後につきましては、さらに広い観点で各界の研究動向に十分な識見を持っておられる有識者からのヒヤリングを広く行いまして、全般的に見ながら情報を集め、そして今後充足されます開発審議会メンバー方々との御意見の交換を重ねながらプロジェクトとして候補を選んでいきたい、こう考えております。  それから、開発審議会メンバーでございますが、これまでの業務は、新技術の選定あるいは成否の認定についての御意見を聞くということで、基礎的な分野の問題もありますけれども、産業技術というような領域にわたる知見が必要でございますので、そういった面の学識をお持ちの産業界の方々にも何人か入っていただいております。今度この制度が発足しますと、開発審議会に新しい御審議をお願いしなければなりません。これにつきましては、仕事自体がかなり基礎的な科学技術に関する領域の御判断をいただく問題が多いということでございますから、そういった領域の方々が相当数さらに加わっていただく必要があろうかと考えております。
  154. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これが将来実用化されるとかされないとか、そういうこととは無関係に、いわゆる技術の芽を見出し育てようという趣旨からいっても、こういう開発審議会委員は、なるべく企業の最高スタッフに属する人が少なくて、できるだけ学問分野で非常に権威のある方々、うんちくのある方々というのが中心の方がいい、こういう意見をわれわれはたくさん聞いておるわけですが、そういう点に留意されて人選を進められる意思があるかどうかということが一つ。  それから、恐らく審議会委員だけでは、いま言われたように常に事務局といろいろ意見交換しながらという複雑な作業は困難なので、またその委員の下に専門委員等のスタッフを設けられるのではないかという気がするのですが、そういうような点はどうお考えですか。  それから三つ目、先ほどちょっとおっしゃっておりましたが、当然これの事務局的な役割りが必要になりますね。何か増員を求めたけれども五十六年度は認められていないというお話なんですが、現在のこの人員の中でやりくりして新たな流動研究システム部門の事務当局を生み出そうというのか、それは本来無理で、新たなスタッフはどうしても事務局としても追加しなければならないのか。この三点を伺いたいと思います。
  155. 武安義光

    武安参考人 先生の御指摘のように、審議会審議に当たりましては、委員以外に各界の専門家の専門委員を相当数お願いして、審議に遺憾なきを期するように考えております。  それで委員メンバーでございますが、現在のメンバーで産業界御出身の方がおられますが、これは企業代表といったようなことでなくて、産業技術開発に長年深い学識経験をお持ちの方という観点個人別に選んでおります。ただ、先ほど申し上げましたように、これからの新しい仕事に関しましては、より基礎的な学識を持たれた方々にお願いすることが多くなるであろうと考えております。  それから、事業団のスタッフ等の問題でございますが、これは今度の予算の調整費の創設が認められますと、調整費からいただくということになるかと思いますけれども、人員等につきましてはもちろんこれまではさしあたり中のやりくり等で基礎的な準備をしてまいりましたが、当然ある程度の増員はできるだけお願いしたいと考えております。
  156. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 このいわゆる科学技術振興調整費ですか、その中でそういう事務当局の方のスタッフもある程度増員したい、いまのお答えはこういう趣旨なんですか。
  157. 武安義光

    武安参考人 これはそう具体的にめどがついているとかそういうことではございませんが、五十六年度予算の中あるいはさらに五十七年度ということでその増加をぜひお願いしたいと思っております。
  158. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この調整費というのは、そういう事務部局の費用に使われるものではなくて、純粋に研究の方に投じられる予算ではないかと思うのですが、その辺はどうなんですか。
  159. 牧村信之

    牧村参考人 先生おっしゃいますように、今度の調整費から法律が認められますとこの研究のための経費を出資していただくわけでございます。原則的には、その調整費の中から事業団プロパーの事務的なことを行う職員をいただくのはきわめてむずかしいかと思っております。しかしながら、先ほども振興局長からお話し申し上げましたが、グループリーダーの下についていろいろなお世話をする方などは当然研究部門として要る人でございますので、私ども事業団の気持ちといたしましては、その程度の方は何とかお金でやれないものだろうかというようなことを、大変むずかしいこととは思っておりますけれども、この法律が認められたならば、科学技術庁の方にお願いしてみたいなというような気持ちを持っておりまして、ただいま理事長がこのようなことを申し上げたことと存じます。  なお、来年度以降につきましては、当然四テーマを発足いたしますと事業もふえてまいりますので、可能な限り、むずかしい事情にはあろうかと思いますけれども、組織の整備、人員の強化等については監督官庁の方にお願いしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  160. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは大臣に伺っておきたいのですけれども、私たちももちろん行政をこういう時期に肥大化させること、あるいはまた補助金あるいは補助金的なものをやたらふやすことは決して正しいと思っていないのですね。昨日共産党の行政改革案を発表した中には、むしろ国土庁の廃止も大胆にうたっているくらいなんです。しかし、事この流動研究システムという全く新しいシステムを導入されますと、最小限度の事務的なお世話をするスタッフが要ることになるわけですね。こういうものについてなかなかむずかしい面が制度上あるので、やはり大臣、このシステムの成功のためにも理解ある今後の努力が必要じゃないかと思うのですが、いまおっしゃっているような内容については科技庁の対応は大丈夫でしょうね。
  161. 中川一郎

    ○中川国務大臣 事業団の職員はいま七十人程度の少ない人でやっております。五十六年度は特にまだ本格的試験に入るわけでもありませんので、五十七年度から人とそれに伴うお金について必要最小限度のものを手当てをするようにしていかなければいかぬと思います。
  162. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは非常に大事な点なんですが、実はこれまでいろいろわが国の研究に携わってきた人々の中で、こういう心配の声があるのですね。流動研究システムというのは産、官、学の研究者が縦割りの壁を越えて集まるというところにこのシステムの非常に特徴がある、それはいいのですが、それがさらに一歩越えて産、官、学、軍、ここまでの共同になってくるとこれは大変だということがあるので、私は念のため伺うのです。こういう制度をつくられた趣旨というのは、あくまでわが国の科学技術の平和的発展の促進に資する、ここに目的がある、こういう点について改めて大臣に確認をしておきたいと思うのです。
  163. 中川一郎

    ○中川国務大臣 今度の流動研究システムは、特定の主要目的というものを設定してやるものではございません。基礎的な科学のシーズ探索するということでございますので、どうかこれが軍事目的だというようなことに直結をされませんように。ややもすれば共産党の皆さんはすぐそちらに御心配になるようでありますが、そういうよろいは一切持っておりません。平和国家建設のために必要な科学研究を行うということに徹底してまいります。
  164. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから、もう一つ大臣に伺っておきたいのですが、科学的なシーズ探索、芽の探索ですから、主として理論研究的なもので論文発表というような形で成果が出てくるのじゃないかというお話でしたね。ですから、これも私どもの杞憂かと思いますが、その研究成果について、当然日本のようなこういう社会では、企業化されるとすればやはりそれだけの力のある企業によって実用化される以外に道がないと思うのです。そのことをわれわれ否定するのじゃないのですが、しかし理論的に近い成果ですから、常に研究成果の公開ということについては努めていただきたい。必要なたとえば学会とかあるいは学術会議、こういうところが求めれば常に研究成果は公開されている、こういう状況は必ずつくっておいていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  165. 中川一郎

    ○中川国務大臣 この点につきましては先ほども担当局長からるる御説明申し上げましたように、秘密は一切ない、研究成果は論文を通じ雑誌を通じ広く国民に公開をして、そしてこれが大きな意味で活用されるようにオープンでやっていきたい、これはもうはっきりいたしております。
  166. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから、先ほども他の議員の方から質問が出ておりましたが、期限を五年間に限っている。ほかの点はきわめて弾力的に取り扱われているのですが、期限だけが五年と非常に明確に区切られている。確かに、めどなしに国の貴重なお金を使ってだらだら研究をしてもらうわけにいきませんけれども、あと半年とか一年とか二年とかあればよりよい成果に結びつくなどいう場合に、文字どおり五年、ここだけかたくななのはどうかと思うのですね。こういう点でも弾力的な運用を期待しておきたいと思うのですが、いかがですか。
  167. 宮本二郎

    宮本(二)政府委員 先生のおっしゃるお気持ち、よくわかります。私ども、やはりまず当初にめどを与えて研究計画を立てさせたいということをはっきりさせたいがために、五年というのを非常に原則的にはっきりさせたいと思っておりますが、進行段階では、先ほど申し上げましたように、開発審議会が毎年毎年進捗状況を判断してまいります。その段階で、先生のおっしゃるような事例も十分あり得るのではないかと思っております。その段階で、十分そういう点についても対処いたしたい、このように思っております。
  168. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この「流動研究システムによる革新技術シーズ探索研究推進方策」という科学技術会議総合部会報告書がありますね。この総合部会の専門委員として、原研理事長の藤波さんも入っていらっしゃるわけですね。  藤波理事長に伺いたいのでありますが、あなた自身はこの流動研究システムにどういう見解をお持ちであるかということ。それから、原研の方の運営に当たる理事長として、新しい、何といいますか、創造科学技術推進、この論議の中から何か学ぶところがあったとしたら、その御見解を聞いておきたいと思うのです。
  169. 藤波恒雄

    藤波参考人 お答えいたします。  ただいまおっしゃるとおり、私も科学技術関係部会の委員といたしまして、いま議題になっております流動研究システムの内容については承知いたしております。これからの日本技術立国でいかなければならないこういう時期に、従来のような外国からの導入科学技術を追いかける形ではいけない、こういうことはもうお説のとおりでございまして、その観点から、私ども原子力研究所日本科学技術推進の一翼を担っておると自覚しておるわけでございますが、その立場におきまして、この画期的な制度がいち早く施行されまして、効果的に機能いたしますことを大変期待し、望んでいるところでございます。
  170. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この新たなシステムは、一つ研究者個人の創造性の尊重にあるように思うのですね。つまり、人中心研究グループを流動的に組織する、ここが非常に強調される。それからもう一つは、研究過程での研究目標を弾力的に変更できる等、研究のやり方については選んだリーダーにお任せする、こういう柔軟な運営。この二点が非常に画期的なところじゃないかと思うのです。  考えてみれば、原研は原子力の平和利用という、事実上科学の最先端部分、特にその安全性面を受け持っているわけです。やはりこれも相当複雑、総合的な科学の分野ですから、こういう理念としては、考え方がどんどん取り入れられないと、新たな研究成果は生みにくい分野ではないかと思っているのです。  これは私が勝手に具体化しただけの話なんですが、こういうものを既存の分野にも全部応用していくとすれば、まず第一に、研究者技術者の自主性と研究の自由を尊重する、まずここが一つ大事なポイントじゃないかと思うのです。  第二には、研究予算をもらう場合に、その申請段階から使い方、あるいはその予算を使ってやる研究方法、こういうものが相当弾力的であることが、やっぱり研究者にとっては望ましい。一たん予算を取るときに、ある一定研究手順を含めて出してしまうと、途中でこの方がいいんだという新たな研究方法が生まれても、また一々変更申請を出したりして非常に厄介だ、事務量も莫大だ、こういうふうな制約が自由な研究発展を束縛するという面が相当強調されますので、そういう点では流動研究システムなどのいいところを取り入れて、原研あたりの研究システムにも応用する必要があるのじゃないかという気がするのです。  三つ目は、この研究者技術者が安心して研究に打ち込める生活条件、研究条件、この支えが必要だろうと思うのですね。金額は多くはないにしても、ある程度まとまった予算をリーダーに与えて、どうぞ御自由にお使いください、安心して研究できるように支えますよ、身分ももとの企業のまま置いておきます、契約の方法は相当弾力的にやります、こういう点が抜本的なわけですから、そういう理念の応用からいえば、研究者技術者のこういう安定した研究条件をつくることが大事だと思うのですね。こういう点で、ひとつ原研あたりでも大いにその理念は学んでいく必要があると思うのですが、いかがでしょう。
  171. 藤波恒雄

    藤波参考人 お答えいたします。  お話のお気持ちはよくわかるわけでございますが、ただ原子力研究所は、先生よく御存じのとおり、その性格からして、事業の大綱というものは、原子力委員会の議を経て定められる国の計画に基づきまして大枠は決まっております。予算もほとんどすべて国家予算でなされているということでございます。もちろん原子力研究所は総合的な研究所でございますので、相当のベーシックな、基礎のところから応用研究まで幅広くやっているわけでございますが、いずれにしてもそういう大枠は設定をされておるわけでございますので、その範囲の中におきましてできるだけ効率的、弾力的運用ということにも心がけてまいっておる次第でございます。  具体的に申し上げますれば、事業計画の大綱や予算の大綱が国で定められましても、その実行計画につきましては、やはり原研の職員の総意を結集をいたしまして具体案を立てて、実施計画といたしておるわけでありますので、その段階におきまして、各部門におきます研究員の創意工夫、知恵というものを取り入れてやっていきたい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  172. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その実行予算を研究員の総意でという方針は、ぜひ徹底をしていただくことを望みたいのでありますが、現実を見ますと、原研の予算と定員の推移なんですが、昭和四十五年から五十五年までの十年間で、まず予算の方は百八億円から七百三十五億円と、約七倍に急増しているのでありますが、定員の方を見ますと二千百五十四人から二千三百七十二人と、一割弱の増加しかない。この点、研究費の急増、定員の横ばいで、非常にアンバランスが日立つわけであります。  じゃ、どうしてこういう伸びの著しい研究費の消化ができるんだろうかという疑問に対して説明のあったのが、つまり業務協力員あるいは外来研究員、協力研究員の名のもとに、所外からたくさん人を入れている、こういうふうに聞くわけであります。これらが、先ほど言われました所員の総意の上に成り立っているのならいいのだけれども、どんどんついてくる研究費の消化のためのいわば臨時緊急の措置としてそういう臨時的措置が講じられている、それがいつの間にか恒常化してきた、こうだとしますと、これは決して適切とは言えないというふうに思うのですが、その辺、理事長としてどのようにお考えか聞いておきたいのです。
  173. 藤波恒雄

    藤波参考人 いまの御指摘のとおり、原子力研究所の予算は近年急角度に増加をしておる、その割りに定員は余りふえておらないではないか——そのとおりでございます。ただ、内容的に分析いたしてみますと、最近の予算の急増は、たとえば核融合研究開発におけるがごとく非常に大型な研究設備の建設に必要な資金が相当なウエートを占めてきているということもございまして、そういう面につきましては、その施設の建設とか大型装置の製造とかということにつきましては産業界への請負発注という形で行える面が相当あるわけでございますので、人員の増加が予算の増加に比例してふえなければやれないということではございませんが、お話のように、確かに人員というものは、原研だけではないと思いますが、全般的に大変厳しく制約されておりますので、大変苦労はいたしております。諸外国の人から言わせても、これだけの陣容でよくこれだけの仕事をこなしておるな、こういう感想が述べられるぐらいでございまして、それだけにわれわれ職員一同工夫をしておるわけでございます。  いまのお話に出ました外来研究員とか業務協力員の問題でございますが、外来研究員と申しますのは、研究所以外の方々がわれわれと共同で研究をするいわゆる共同研究のパートナーとして来る方とか、あるいは原研の仕事を手伝いながらみずからも経験を取得したいという民間の方々を受け入れてやっている、こういうものでございますが、これが百二、三十人おろうかと思います。いまのポイントとして御指摘のあった業務協力員でございますが、これはいまのところまだそれほど大ぜいの人になっておりません。三十人程度かと思います。したがいまして、原研全体の職員に比べれば比率としてはきわめてわずかなものでございます。これを活用している趣旨を申し上げますと、実は特殊な業務、たとえばクレーンの運転員でありますとか、そういったような特殊な業務の人を職員として抱えるよりは、外部の経験者に来てもらった方がいいというようなケースがあったり、あるいは最近のように大型な研究設備の工事等、あるいは期限を限られた大型の試験業務といったようなものにつきましては、原研の正規職員として長期にわたって雇用するよりは、期限をつけて産業界の技術者を受け入れてやる方が非常に適切、能率的でもあり、原研の将来の人事政策上も適切であろう、こういう実質的効果も考えまして運用をいたしておる次第でございます。
  174. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間の関係があるので、できるだけ簡潔な答弁をお願いしたいのです。  理事長には理事長なりの理由があると思うのですが、肝心の原研プロパーの研究員といいますか技術者の方から、こういう外来研究員、業務協力員の導入について行き当たりばったりで決して研究の成果を上げる上でプラスになっていないという批判のあることも事実なんですね。縦割りを打ち破って流動的な研究システムをつくるというのは初めからそういう目的意識的に行われている制度だからいいんだけれども、どんどん予算がつく、人はつかない、やむを得ずというような形の応援体制がいつの間にやら恒常化する、こういうことは私は決してプラスにならないと思うのです。こういう点も、先ほど総意をくんでとおっしゃいましたから、一度総意をくんで成果が上げられるシステムならシステムにされることを希望したいのです。  それから、こういうふうに外から臨時の研究員等を受け入れる一方、逆に原研からまた出向で外へ相当出るのですね。私が調べた範囲ですが、原研から政府関係に出向しているのが五十四年度六人、五十五年度六人、それから特殊法人への出向が五十四年度七十五人、五十五年度七十五人、それから財団法人への出向が五十四年十八人、五十五年十九人、国際機関などその他が五十四年十人、五十五年十人、こういうふうになっているわけなんです。多少の違いはあるかもしれません。研究ですから大いに交流することはいいんだけれども、肝心の原研の方の研究体制といいますか、研究の流れを無視して、お役所の方の都合だけで、いついつ来いといって引っこ抜かれる、こういうことは研究の中断とか後を引き受ける者も大変困難なことがあります。役所には役所側の異動の時期というのはあるでしょうが、研究所には研究所のまた一つ研究プログラムがあるわけですから、そういう点の調整を十分とるということが大事じゃないかと思うのですね。
  175. 藤波恒雄

    藤波参考人 お答えいたします。  原子力研究所の職員で政府その他の機関に出向させておる人数は大体いま御指摘の数字のとおりでございます。こういうように外部の諸機関に対しまして原研に育った人材が活用されるということにつきましては私どもとしては大変結構なことだ、こう思っております。ただ、お話のように、そのために原研自身の研究が妨げられる、うまくいかないということではいけませんが、その点につきましては、当然のことながら内部で十分検討をして適材を出しておる、後の仕事にも差し支えないという考慮を払っておるわけでございます。  これらの出向者は、個人的に見ますと二年ぐらいで交代するケースが多いわけですが、必ず交代を求められますので、実質的にはずっと固定してそれだけの人間が原研から出ているという形にもなりますので、その分の穴埋めは新規採用ということで実は埋めて、また育てておる、こういうことでございます。具体的に申しまして、ことしなどは比較的その数をふやしまして、五十名ぐらいそういうための研究者を採用いたすことにしております。
  176. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間の関係で、JPDRなんですが、もともと九十メガワットの動力炉にする予定だったものが、今日では廃炉技術研究に使うことになりましたね。この間調査に伺ってそのプログラムも見てきました。われわれも廃炉技術研究開発を否定はしないのですが、ただ携わっている研究者の意向として、もともとJPDRIのプランがあった、それが結果的に所期の目的を達成したのかどうか、このことのけじめもつかないうちに、今度はJPDRIIのプロジェクトに移っていく、そして、その結論も、成功なら成功、失敗なら失敗なりにそこから教訓をまとめるということをするのならいいけれども、それもうやむやなまま今度は廃炉技術研究というふうにプロジェクトが変わる、こういう点はやはり携わっている研究員にしてみれば、自分たちのやっている研究開発が果たして成果を生んだのかどうか、そういう点でははなはだ心もとない、そういう意味から、それぞれのプロジェクトについてきちっとしたけじめもつけながら次に進む、そういうふうにしてもらいたいものだというふうに聞いているのですが、いかがですか。ちょっとまだ残っているので簡単にお願いします。
  177. 藤波恒雄

    藤波参考人 お答えいたします。  国会の議事録を拝見いたしますと、前回にもこの問題につきまして原子力局長の方から答弁がなされておるようでございますので、簡単に申し上げますが、JPDRIにつきましては、日本最初の動力炉としていろいろな初期的研究や人材養成に役立ったということでございますし、それから第二期計画につきましては、改造後御承知のようにいろいろなトラブルがございましたが、それはそれなりにそのトラブル自身も軽水炉の国産化技術のレベルアップに種々役立ったところがあるとわれわれは信じております。これからも、廃炉計画ということをいま立案してそれをオーソライズしていただきたいと願っておるわけでございますが、具体的な解体をする前にも、実は非破壊検査等の実証的研究というものをできるだけ実炉を使いまして——実炉というのは、御承知のようにまだ燃焼度はそれほど高くはございませんけれども、少なくとも相当運転をした炉でございます。そういうものを生の試験台としてそういった工学的安全研究といったものにも使って、その上で廃炉に持っていきたい、こんなぐあいに考えている次第でございます。
  178. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ちょっと時間を超えて申しわけないですけれども理事長は就任されて後、労働組合との話し合いには一度も応じられていないようですね。実は私も非常に奇異に思いまして、昨年十二月、石渡原子力局長に申し入れもいたしました。局長もおかしいなということで、よく理事長にその趣旨を伝えて円満な労使関係が進むようにしたい、こういう話だったのです。そのことが伝わっているかどうかということと同時に、研究者技術者が雇用関係に基づいて自主的に労働組合に結集する、これは当然法律で保障されたあたりまえのことをやっているのですね。その組合員たる研究者技術者が広い意味での研究条件について、個人個人とかテーマごととかあるいは室、課ごとではなしに、共通する問題で理事長と話し合い、お互いの理解を深めていこうとするのは当然のことだと思うのですし、立場の相違から生まれてくる対立はあるでしょうが、一面また原子力利用の安全性確立という共通テーマで成果を上げる、ここはまた理事長と組合と一体というところもなければうまくいかないと思うのですね。そういう点は余り固執しないで、労働組合とざっくばらんな話し合いに応じられるように特別に私は要望しておきたいのです。
  179. 中村弘海

    中村委員長 瀬崎君に申し上げますが、約束の時間が来ておりますので、結論を急いでください。
  180. 藤波恒雄

    藤波参考人 お答えいたします。  原子力研究所の運営をやるにつきまして、原研内部の職員の意見をくみ取りながらやっていかなければいかぬ、それを反映しながらやっていかなければいかぬというのは当然でございまして、私もそのように考えております。原研はいま大変しっかりした組織になっておりまして、そういう意見を吸い上げ、あるいはまたそれを浸透させるということにつきましては比較的うまくいっていると実は思っております。研究各室各部の討議や検討の結果が所内会議に吸い上げられ、それが理事会に持ち上げられて、先ほど申し上げましたいろいろな具体計画に反映しておるのでございます。したがいまして、原研のようにこれだけ非常に大きな組織になりますれば、事業の運営方針等につきましてはそういった組織を通じてやるということがいいのではないかと私は考えております。もちろん労働条件の問題等につきましては組合の活動に大いに期待しておるわけでございまして、組合を大いに尊重いたしまして、その専門の担当理事を設け、さらにそれの手足になる部局を整備いたしまして、誠意をもって労働組合との折衝もいたしておるわけでございますので、ひとつその辺は御了承をお願いしたいと思います。
  181. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは大臣に伺って終わりたいと思うのですが、実は全体として自主技術研究開発に力を入れようというわけなんです。その一つとして、研究に携わる人たちの生活の安定、これは欠かせない条件だということは理事長は認めているのですが、その中で原研の場合、定年が現在規程上五十五歳、労使協定で現在五十七歳ということになっているのですが、他の同種の研究機関に比べるとここは低いわけなんです。何とか六十歳にという強い希望が出ておりまして、過去何回か私も質問しておりまして、たとえば宇野長官は、定年延長に向けて渾身の力を込めて財政当局と折衝するという言明があったし、熊谷長官も同趣旨の方針を確認されているのですね。特殊法人の理事クラスになりますと、政府から天下って二、三年してまたかわって、その都度退職金が数千万、こういうふうなことが片方にあるわけです。定年があるようで実質ないような形になるわけですね。それとの関係から見ても、そういう研究者の定年制について延長してほしいというのは非常にもっともじゃないかと私は思うのですが、大臣としても、やはり研究の成果を上げるという側面からも、ひとつ検討いただきたいと思うのです。伺って終わります。
  182. 中川一郎

    ○中川国務大臣 労使がうまくいくことは仕事を進める上に大事なことでございますから、労使間で円満に話ができることを期待いたしております。
  183. 中村弘海

    中村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  184. 中村弘海

    中村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  新技術開発事業団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  185. 中村弘海

    中村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  186. 中村弘海

    中村委員長 この際、本案に対し、椎名素夫君外四名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党の五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者から趣旨の説明を求めます。椎名素夫君。
  187. 椎名素夫

    ○椎名委員 ただいま提案いたしました附帯決議案につきまして、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党の提案者を代表して、その趣旨の御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     新技術開発事業団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、技術革新が国の平和的発展と国民生活の向上に寄与するよう、研究開発投資の拡大と国民的視野に立つ有効な基礎研究開発に努めるとともに、革新技術の源泉となる萌芽の探索と育成が極めて重要であることにかんがみ、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 創造性豊かな優れた研究者を組織の壁を越えて広く結集させるため、大学をはじめとする関係機関の理解と協力を得ることにつき特段の配慮を払うこと。  二 研究の推進に当たっては、研究主題の選定及び総括責任者の人選に適正を期するとともに、研究資金の確保、研究者の処遇、研究環境等について十分配慮すること。  三 研究の成果を広く公開し、中小企業の振興を含め国民経済上有用な技術発展するよう、普及の促進に努めること。 以上でございます。  内容の各項目につきましては、委員会における審査の経過及び案文を通じて趣旨は十分御理解いただけると存じますので、個々の説明は省略させていただきます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  188. 中村弘海

    中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  189. 中村弘海

    中村委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。     —————————————
  190. 中村弘海

    中村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 中村弘海

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  192. 中村弘海

    中村委員長 この際、中川国務大臣から発言を求められておりますので、それを許します。中川国務大臣。
  193. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ただいま新技術開発事業団法の一部を改正する法律案の御可決をいただきまして、まことにありがとうございました。  私といたしましては、ただいま議決をいただきました附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、創造的な科学技術の推進に全力を挙げて取り組んでまいる所存であります。
  194. 中村弘海

    中村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会