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1981-07-15 第94回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年七月十五日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 椎名 素夫君 理事 三原 朝雄君    理事 箕輪  登君 理事 前川  旦君    理事 横路 孝弘君 理事 市川 雄一君       後藤田正晴君    塩谷 一夫君       竹中 修一君    玉沢徳一郎君       辻  英雄君    原田昇左右君       三塚  博君    西中  清君       永末 英一君    東中 光雄君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  委員外出席者         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         外務大臣官房審         議官      関  栄次君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         外務大臣官房外         務参事官    中村 順一君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         水産庁海洋漁業         部国際課長   中島  達君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         海上保安庁警備         救難部長    吉野 穆彦君         安全保障特別委         員会調査室長  池田  稔君     ————————————— 六月六日  一、国の安全保障に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。大村防衛庁長官
  3. 大村襄治

    大村国務大臣 私は、六月二十八日から七月三日の間訪米し、ロング太平洋軍司令官ワインバーガー国防ヘイグ国務長官アレン大統領補佐官、タワー、プライス上下両院軍事委員長等会談するとともに、米国各種軍事施設を視察してまいりました。米国国際情勢に対する厳しい認識及びわが国防衛努力に対する強い期待については、ハワイでの事務レベル協議報告等から十分予想していたところではありましたが、今回米側責任者と親しく意見交換をする機会を得、米側期待の強さを改めてはだ身にしみて感じた次第です。  次に、米国における会談の要点を御報告いたします。  まず、国際軍事情勢については、ソ連軍事能力現状の評価と将来の見通しに重点を置いて話し合いましたが、ソ連軍事能力が大幅に増大し、国際情勢が厳しさを増していることに双方意見一致しました。  米側は、レーガン政権のもとで、社会保障等国内施策経費を削減する一方、軍事費を増加させて軍事バランスを回復する政策をとっていることを説明し、米国がこのように並々ならぬ犠牲を払っていることに対して、日本としても真剣な考慮を払ってほしいということを力説しました。  これに対し、わが方より、あらゆる会談機会をとらえて、わが国防衛基本は憲法のもと専守防衛軍事大国にならないこと、政府は現在財政再建行政改革に真剣に取り組んでいること、防衛力整備は他の諸施策とのバランス考慮すべきであり、余り急激に行うとかえってよくない結果となるおそれもあること、また来年度の防衛予算に関し、七・五%はシーリングで査定の対象となることを指摘しつつ、他の諸施策のためのシーリングが原則として伸び率ゼロである中で七・五%のシーリングが設定されたこと、さらにできるだけ早く大綱を達成すべく努力しており、これまでの米側意見については、できるだけ五六中業作成の参考としていきたいなどをるる説明いたしました。  これに対し、米側は、日本国内事情はよく承知していると述べつつも、次の諸点を指摘しました。  第一に、日本防衛力はいまだ小さく、七・五%はインフレを考えれば少な過ぎること。  第二に、昭和五十一年と現在では国際情勢は大きく変化し、防衛計画大綱達成予定の八〇年代末では情勢はさらに厳しくなることを考えてほしい。日本側説明は、日本の不十分な防衛力基本的に変えていくというものではない。日本はもっと組織的、有機的な防衛力を整備する努力が必要であり、これまでに米側が提示した意見は、日本防衛力について日米間の対話を行うための一つの案であると受け取ってほしいこと。  第三に、米国内には、日本は十分な努力をしていないとの認識が広まっているが、日本防衛努力について、米国と同様の認識に立ってコンセンサスをつくる努力をしていることを具体的に米側に示すことが、米国の対日信頼感見地よりぜひとも必要であるということであります。  さらに、米側より、日米間の装備技術交流を推進したい旨を強調し、このような交流活発化は、米国防衛技術の対日輸出を従来どおり円滑に行うという見地からも重要であるとの発言がありました。これに対し、私より、この分野における日本政策現状について説明するとともに、米側の希望は持ち帰り政府部内で検討してみたいと述べておきました。  なお、本件については、関係省庁の間で今後検討を行うこととしております。  また、在日米軍経費分担については、米側は、これまでどおり、日本側のなお一層の努力期待しているものと思います。  そのほか、「日米防衛協力のための指針」に基づく、極東有事事態における米軍に対する便宜供与に関する日米間の研究作業については、今後日米間で調整の上進めることとなりました。  以上のような種々の問題について、日米双方は、今後ともあらゆる機会をとらえて緊密な協議を行い、相互理解を深めるよう努力することが確認されました。  今回の訪米を通じての全般的な所感を申し上げます。  まず、日本防衛力増強問題については、国防省、国務省及びホワイトハウスの間は、意見一致しているとの印象を受けました。今後、米国としては、粘り強く対話を継続していくとの姿勢をとるものと考えられます。特に米国期待しているのは、日本が、米国国内施策の面で犠牲を払いつつ、国防力の回復を図っていることを真剣に受けとめて、厳しさを増す国際軍事情勢考慮に入れつつ、防衛努力をできるだけ多く、できるだけ早く行うことであると思われます。  わが国としては、今後の防衛努力のあり方について、米国との対話協議を継続していくことが必要と思われますが、いずれにいたしましても、私は、今回の訪米を通じ、わが国としては、みずからの国はみずからの手で守るとの基本に立ち、みずからの防衛のために相当の努力を行うことが、日米安保体制信頼性を維持・向上させるとの観点からも、緊急の課題であるとの感を強くした次第であります。  私は、その後引き続き、ヨーロッパに渡り、七月六日、まずベルギーにおいてルンスNATO事務総長を、次いで同日西独アペル国防大臣招待により同大臣を訪問し、ひざを交えて意見交換を行ってまいりました。  それぞれの会談においては、わが国防衛政策基本的考え方及び防衛努力並びにポーランド情勢を含む対ソ認識NATO諸国防衛努力戦域核問題等話題となり、それぞれの問題について率直に意見を交換し、相互理解を深めてまいりました。  また、西独においては、各地の軍事施設を訪れ、同国における各軍の現状についてつぶさに視察してまいりました。  以上で御報告を終わらせていただきます。     —————————————
  4. 坂田道太

    坂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。椎名素夫君。
  5. 椎名素夫

    椎名委員 今回の長官の御訪米は、せんだっての首脳会談に引き続きまして、またその後のハワイでの協議に引き続いて、日本安全保障にとって最も重要な柱となる日米安保体制、その枠組みの中での対話の一環である、また、それを通じてこれからさらに緊密な対話が続けられるということが確認されたという意味で、非常に意義があったものと考えております。また、その後欧州に行かれたわけでありますが、われわれが西側一員として、世界安全保障ということを連帯して考えていかなければいかぬ、その中にあって、最近非常に激変するこの世界情勢の中で、欧州側考え方というものを認識して帰られた、これについても大変に意味のあった御旅行であるというふうに考えております。  しかし、これを通じてわれわれが感じておりますことは、どうも、日米首脳会談の後の共同声明、その中に盛られておりますこの一連の会談に対する期待というものとは幾分のずれがあるのじゃないか、という感じを受けるわけであります。必ずしもそれが円滑に進行していないように考える。  それで、われわれ安全保障特別委員会は、坂田委員長を団長といたしまして、最近、ちょうど長官逆向きヨーロッパからアメリカ旅行してまいりました。会った相手には大村長官のお会いになった顔ぶれとずいぶん重複しているものもある。それを通じていろいろ感じたわけでありますが、いま私が申し上げたように、必ずしもうまく歯車が回っていないというような感じは、たとえばワインバーガー国防長官に会いましたときに、幾分ディスアグリーメントがあると言わざるを得ないというような言葉にもあらわれているかと思います。また、国務省においても同様の感じを受けましたし、あるいはアメリカ議会上下両院軍事委員会との会談の中でも、新聞にも報道されましたが、日本の対応に対して、率直に言えば不満の念を持っているということが表明されたということであります。  冒頭に申し上げましたように、私は、日米安保体制というものが日本安全保障にとって最も基軸となる重要な柱であるというふうに考えておりますので、この幾分のきしみというものも非常に懸念されるところである。どうして、また、いかにしてこういう不一致が起こったのかということを、ここで十分にわれわれとしては考えていかなければいけないというふうに考えるわけであります。  それで、われわれが伺っているところによりますと、日米の間で、あるいは首脳会談あるいは先般のハワイ協議あるいは長官訪米、また、先ごろ行われましたヘイグ国務長官外務大臣との会談、二度にわたってあったわけでありますが、そのたびに世界情勢あるいは対ソ認識については一致をしている、日米間に何ら認識の違いはないというようなことを告げられるわけであります。そこで、この認識の問題、それからその認識がもし一致をしているならば、それにどう西側連帯し、協力して対処していかなければいかぬのかということについて、この二つが、私はこの問題を見るのに非常に重要な点だろうと思います。これをめぐって幾分お尋ねをいたしたいというふうに考えております。  しかし、いま私は日米関係のきしみということを申し上げましたけれども、決して日米関係そのものがわれわれの最終目的でもなし、それだけのためにわれわれがあたふたするということは本末転倒である。われわれが一番念頭に置いておりますのは、わが日本安全保障というものをどういうふうにして全うしていくか、これが一番大きな問題である。そのためにわれわれはどうしなければいかぬかということで、いまから約二十年前に、日米安全保障条約という枠組みの中でその安全を図っていくという選択をしたというふうに考えております。あくまでもその選択は自主的なものであった。そして、われわれはこれから問題を考えていく場合にも、まず日本の国益と繁栄をどうやって守っていくかということを第一義に考えなければいかぬということは、これはあたりまえのことであります。  しかしこの日本の問題、安全保障というのは、単にこの国土を守れるか守れないか、戦争が起こって侵攻が起こったら一体どういうかっこう戦争になるか、ということだけではないように考えます。日本繁栄というのは、日米安保体制枠組みの中で、そしてさらに言えば、西側の、まあはっきり言えば、アメリカ軍事力の非常な優位の中で行われてきたということが言えると思う。そしてその中で、世界じゅうと関係を持ちながらわれわれの現在の繁栄があったということを考えますと、日本にとって有利な住みやすい環境をつくっていくということが、広い意味での安全保障体制でなければいけないというふうに考えるわけであります。  そこで、われわれはまず日本から出発するわけでありますが、せんだって委員派遣米国訪問の途次、アメリカアナポリスにございます海軍兵学校を訪問した。そうしましたら、卒業生で戦没をした人の記念館がありまして、そこに、「われわれの卒業生の中で、彼らの国の理想を守るために物故した人たちのためにささげる。」という文章がありました。私は実はこれを見まして非常に感銘を受けたのですが、アメリカ理想というのは一体どういうものであるか、これはアメリカ国民が決めるわけでありましょうけれども、ああいう言葉をいつでもながめながら、そして、その理想というものを形成していくということも含めて、自分の国の安全保障を図るという一つ考え方が、その言葉に凝縮してあらわれているように考えたわけであります。  日本の国にとってはどうであるか。私どもも、できることならはっきりした形で、日本の国の何を守るのかということについて、必ずしも明確でないこの問題をはっきりさせる必要があるとは思います。しかしこれは、はっきりした形ではありませんが、戦後の世界体制国際関係の中での体制、それから日本がとってきた社会体制というもので享受してきた繁栄を守ることに、国民の中に暗黙の同意がある。そして、共同声明の中でもうたわれておりますように、日米連帯、友好、相互信頼というようなことが両者の間ではっきりと確認をされている。さらに、政府によって何遍も、われわれ西側一員としての自覚を持ち、またその責任を担っていくという表明がある。そこに、われわれの態度がまずはっきりあらわされているように思うわけであります。  実は欧州旅行をしております途次、あるところで、防衛庁から出向しておられる大使館の方が、日程が終わりましてから私のところに押しかけてまいりまして、一体われわれは何を守るのかということについて夜中の二時半まで大激論をやりましたが、こういうことがまだ自衛隊におられる方にも必ずしもはっきりしておらない。私ども西側一員としての態度を自覚し、そして何を守るのかということにまずはっきりした観念を持たない限りは、脅威認識というものも、その先の問題であって、成り立たないのではないかと私は考えるわけであります。  少し長くなりましたけれども、こういうことについての長官の御所見を承りたい。われわれはなぜ西側につき、アメリカ一緒になって世界事態を考えなければいかぬのかということについての御所感を伺いたいと思います。
  6. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま椎名委員から、最近の視察旅行の体験を交えて、各種の御意見が述べられたのでございます。  その中で、まず触れられております対ソ認識の問題でございますが、この問題につきましては、首脳会談共同声明冒頭にはっきりうたわれておりますように、ソ連軍事能力の最近における増大、アフガニスタンへの侵攻、第三世界への行動について、両首脳ともに憂慮の念を示したという点では、認識一致しているわけでございます。私が訪米いたしまして、ワインバーガー国防長官を初め、先方の責任者と対談したときにおきましても、この点は話題になったわけでございますが、首脳会談において一致を見ました認識という点につきましては、いささかも変わりがなかったことを申し上げておきたいと思うわけでございます。  そして、この複雑多岐にわたる国際情勢下においてわが国防衛問題をいかなる観点から対処していくべきか、その点につきましてただいまいろいろ御意見がございましたが、私といたしましては、いかなる国際情勢下にあろうとも、防衛庁といたしましては、国の安全と独立を守り抜くために必要な努力を怠るべきではない。その場合におきましては、御指摘もございましたように、日米安全保障体制枠組みにおいて対処すべきこともまた当然でございます。日米安保体制の円滑なる運営ということを絶えず念頭に置きながら、みずからの手によりみずからの国を守るという精神に立脚して、国情の許す限りできるだけ多くの防衛努力、しかも量だけではなく質の整った、そういった意味防衛力の充実に努力していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  7. 椎名素夫

    椎名委員 いまのお話の中で、日本はできるだけやらなければいかぬということでありますが、との西側一員として日本連帯して協力してやっていくということでありますと、ソ連脅威、あるいは潜在的脅威かもしれませんが、それに対する全体としての対処というものがあるべきである。そして、その中で日本はどれだけのことを受け持つのかということで、われわれがやる仕事の質あるいは量が決まってくるというのが順序だろうと私は考えるわけであります。そういう意味で、ともすれば日本防衛、狭い意味での安全保障防衛という問題は日米という枠組みの中だけで考えられがちである、そしてアメリカはこれだけやってくれと言ったから、それに対して、いやそれはできないとか、これだけはできるとか、こういうようなあたりがどうも強調され過ぎているように思うわけであります。いま少なくとも、アメリカあたり認識というのは、世界全体を一つのシアターと考えて、戦域と考えて、その中に区分された準戦域というものはあっちこっちにある、それ全体をどう扱っていくかということについて、自分もやり、西側諸国にも一緒にやってくれということを言っているのだろうと思うのですが、その際にどうしても、よそで起こることも考えないと、このわれわれの周辺だけのことを言っていると、本当に、われわれがどれだけのミッションを受け持たなければいかぬかということについても、はっきりした認識が出てこないのじゃないかという気がするわけであります。  その際よく言われることですが、アメリカ日本に対してある要請をする、そしてそれに不満を持っている。しかしまた、同様にNATO枠組みの中で西欧諸国にも要請をし、その中でどうも必ずしもすべて一致するわけではないというようなことはよく報道されるわけでありますが、私がいま申し上げましたような意味で、日本としても西側NATOあたり各国がどういうことを考えているかということを少なくとも考えの上では十分にすり合わせていかないと、われわれが分担すべき役割りというものもはっきりしないと思います。  そこで、NATOに行かれてルンス事務総長ともお会いになりましたし、またNATOがワルソーパクト、ワルシャワ条約軍と対峙している西ドイツの国防相とも会って懇談をされたわけでありますが、よく言われております米欧間の不一致とかあるいは一致とかそういうことについて、御報告の中にも簡単にありますけれども、もう少しお話を願えれば幸いだと思います。
  8. 大村襄治

    大村国務大臣 自由と民主主義という観点から、価値観を共有する西側諸国わが国対話をして協力していくという必要性はあるものと私は考えているわけでございます。そういった観点から、訪米を終えました後ヨーロッパに渡りまして、まずNATOルンス事務総長と会って、NATO全体の問題についていろいろ考え方を聞きただしたのであります。その後、西独アペル国防長官、これは招待がございましたので三日間滞在したわけでございますが、終始、私との会談に臨むとともに、部隊視察現地まで同行していただいたわけでございます。  これらの会談を通じて印象を受けました点は、NATO加入諸国におきましては、ソ連軍事能力強化という点につきましてはNATO諸国協議して一致してこれに当たる、特に最近におきましてはSS20戦域核の配備の点が問題になりまして、七九年のNATO共同決議によりまして、これに対応するNATO諸国軍事力強化を具体的に決定し、また同時に、並行して軍備管理に関する交渉を行うということを決定して臨んでいる状況、そしてまた、同じ七九年の決議に基づいて、毎年度実質三%の国防費の増額を行うことを加入国の間で申し合わせをしている。その後の状況についていろいろ聞いたわけでございますが、各国ともインフレなり失業なり非常に厳しい財政経済状況でありますが、おおむねこの実質三%の目標を達成しつつある、こういった状況につきましていろいろこれまでも耳にはしておったわけでございますが、現地責任者の話をつぶさに聞きまして認識を新たにしたところでございます。  先生の御指摘になりましたような自由主義諸国連帯観点におきまして、共同防衛努力を行うと同時に、みずからの防衛努力を果たしていく、そういう共通の認識に立脚しつつ各国のそれぞれの国情に応ずる努力を進めている、そういった状況につきまして認識を新たにして帰ってきたところでございます。
  9. 椎名素夫

    椎名委員 それから、われわれが日本安全保障を考える上においてもう一つ重要な問題は、戦略核戦域核戦術核その他を含める核の問題であると思います。  日米安保体制というのも、結局最終的にはアメリカの核のかさで守られているというのが大体その前提になっている。そこで、ヨーロッパの国々で私ども感じましたことは、今度の戦域核近代化とそれからそれの制限交渉というものに対して非常に大きな議論が巻き起こっていたわけでありますが、われわれとしては、もうできることなら、最終的にはこの核兵器の廃絶というようなことを目指して世界の全員が協力しなければいかぬということは最終目的としてあるわけです。しかしなかなかそこがうまくいかない。SALTIIもそのままたな上げになったようなかっこうになっております。  そこで、最近ユージン・ロストウさんがこの方面の担当者任命をされて、たしか先月の末に議会で証百をやっているはずでありますが、この中で新しいレーガン政権核兵器管理交渉、あるいは核軍縮交渉についての基本的な考え方が幾つか提示をされているというふうに承知しております。その点について、これは外務省になりましょうか、どういうことを言っているのか、御説明をいただきたいと思います。
  10. 関栄次

    関説明員 お答え申し上げます。  ロストウ軍備管理軍縮庁長官は、指名を受けておりましてまだ現在上院本会議での正式の任命の承認を得てはおりませんけれども、ただいま先生おっしゃいましたように、六月二十二日に、個人的な立場から、自分軍縮あるいは軍備管理についての考え方を明らかにいたしております。  そのまず第一点といたしまして、軍備管理協定につきましては国際的武力行使に関するルールとしての国連憲章、特にこれは国連憲章の二条四項でございますが、これには武力の不行使についての義務が書かれているわけでございます。この二条四項が遵守されている状態においてのみ、このような状態強化して紛争の拡大防止に貢献し得るのである、そういう見地から軍備管理協定というものは今後交渉されなければならない、そういうような考え方を明らかにいたしております。  第二点といたしまして、これも個人的な見解と断った上で、トルーマン大統領時代に行われた封じ込め政策を今後同盟国とともに効果的に追求することにより、核時代における生存のためには国際的武力行使に関するルール、いま申し上げました国連憲章二条四項でございますが、この武力行使に関するルールを相互的に関係国が守ることが不可欠である、そういうことをソ連認識させることも可能ではないであろうかというふうに考えているということを明らかにしております。  第三点といたしまして、戦略兵器制限交渉につきましてはSALTII、いわゆる第二回目のSALTでございますが、この条約は批准されるべきではないということのほかに、米政府内で、そういう決定以外はまだ何らの決定も行われていないということ、その再検討のために、今後少なくとも九カ月程度を要するであろうということを明らかにいたしておりまして、今後軍備管理と軍備削減の双方につきまして新しい出発を図るべきであるという見解を述べております。  また第四といたしまして、核軍縮、核軍備の管理政策を再検討するに当たっては、実際に核軍縮についての制約が関係国によって守られているかどうかについての検証あるいはデータ、軍備管理協定の規制対象等個々の諸問題について、今後いろいろ検討していく必要があるというふうな考え方を明らかにいたしております。
  11. 椎名素夫

    椎名委員 実は、いまおっしゃったようにまだ正式には任命されておらぬわけですが、これをちょっと読んでみたのですが、これからいろいろやっていく場合に、もちろん米ソの間でSALTになるのかその先になるのかわかりませんが、基本的には二国間の交渉である、しかしそれをやる場合に同盟国と十分相談しながらやる、こういうふうに言っております。われわれには非核三原則がありまして、とにかくああいう悪い思い出のあるものにはなるべくさわりたくないということで来ているように私は思うのですが、しかし現実には基底として核のかさというものがあって、これはもうアメリカにお任せをして、いいようにやってくださいということで済めばいいのですが、西欧諸国がいま戦域核ということで非常にアメリカと、ニュアンスの置き方の違いかもしれませんけれども、やり合っております。つまり核の政策について積極的に口出しをしている。戦域核と言いますが、どうもその戦域という言葉が私は非常に誤解を生むのじゃないかと思いますけれども、これは動き回れるものでありまして、向こうからこっちにすぐ持ってくることもできる、だから、西欧の中だけでの問題としてわれわれが知らぬ顔しているわけにもいかぬのじゃないか。やはりこれも、交渉をやるとすれば、全世界の中での数合わせなり質合わせなりを交渉していかなければいけないということだろうと思うのです。  そこで、任命されたらば、この人は、重要な決定をするときにはどうしましようかということを同盟諸国と相談すると言っておりますわけで、われわれとしても、さあそれは全然わからぬというわけにもいかないだろうというふうに思うわけであります。そういうことについては、これは防衛庁でお考えになるべきであるのか、あるいは外務省でお考えになるべきことかよくわかりませんけれども、これに対処する御用意はおありになるかどうか、この点について伺いたいというふうに考えます。  核廃絶の問題というのは、いままでもっぱら人道主義的な立場だけで論ぜられるきらいがありますけれども、現実に起こっておりますことを見ると、これはやはり丁々発止とやり合う駆け引きのような面が非常に強い。そこらで相談を受けた場合にわれわれとして一体どういうふうに対処するのか、その点を教えていただければと思う次第であります。
  12. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 SALTの問題は、後から関審議官の方から御説明いたしますけれども、いま戦域核の問題の御提起がございました。戦域核の問題については私たちも非常に関心を持っております。  御指摘のように、もしヨーロッパにおいてだけその数が制限されるということになれば、いま先生が御指摘されたように、それが結局アジアに配備されるのではないかという問題がございます。アメリカの前の政権考え方は、全世界の規模での制限と同時に、ヨーロッパの配備も制限するということでございまして、その間において日本としてアメリカ側からも説明を受けておりますし、日本としても、日本をめぐるアジアの安全保障の上でこの戦域核の配備の問題は非常に関心があるということについては、アメリカ側と再三話をして、あるいはアメリカ側の説明を聞いておるという状況でございまして、今後も恐らく、先方から説明があれば、極東における配備を含めましてどういう状況になるのが望ましいのかということについては、当然防衛庁協議の上、日本側意見というものも必要があれば申し述べる、こういうことになろうかと思います。
  13. 塩田章

    ○塩田説明員 いま基本的な考え方外務省からお答えを申し上げたとおりでございます。  防衛庁の段階に来るような意味での具体的な話はまだあるわけではございませんのですが、基本的な考え方としまして、いま外務省のお答えのとおりに、われわれとしても外務省とよく相談をしながらアメリカ側からの御相談があった場合に対処する必要があるだろう、こういうふうに考えています。
  14. 椎名素夫

    椎名委員 そこで、これは全然わからぬので教えていただきたいのですが、NATO戦域核近代化とそれから交渉、二重決議と言われているものがありますね。そのどっちに重点を置くかということはどうも会う人によって幾分解釈が違うような面があるかと思いますけれども、最も便宜主義的な考え方からいっても、向こうが中距離の運搬手段を配備した、あれはほうっておくと大変なことになる、そこで何とか制限してもらわなければいかぬのだけれども、こっちが手ぶらだと交渉する種もない、だから交渉の種として近代化計画というものを承認したということを言う人もあります。  これはヨーロッパで起こっておることですけれども、極東を考えてみると、われわれは非核三原則でそういうことは一切何も言わぬということになっておりまして、向こう側はバックファイア、SS20を、われわれの日本だけどころか、もっと先まで届くようなところに配備を始めた。ところがこっちは、日本としてはこの問題には何も触れずに黙っているというわけでありまして、そこのところはどうも話の均衡がとれていないような気がするのです。一体ほうっておいていいのかどうかということが私は心配なんですが、そこらはどう考えればよろしいのでしょうか。
  15. 塩田章

    ○塩田説明員 いまもお話の中にございましたように、日本防衛力そのもの、あるいは防衛力整備という観点から核を持たないという、いわゆる非核三原則を堅持しておることは御指摘のとおりでございまして、そういう意味で私ども先生から見てほったらかしてあるといいますか、心配でしょうがないという御趣旨の御発言がございましたが、日本は、日本防衛戦略の中で、核の問題についてはアメリカに依存するということは従前の立場のとおりでございます。具体的といいますか、先ほどのお話のようなアメリカ側からの相談ということにつきましては、外務省からお答えしましたような態度で臨むことになろうと思いますけれども日本自体の核戦略につきましては、アメリカに依存するという従前の態度を少しも変えておらないということでございます。
  16. 椎名素夫

    椎名委員 そうしますと、向こうはそういう話は同盟国と相談すると一応言っておりますけれども、相談すると言っても相談しないこともあるわけでして、そうすると、アメリカ核兵器日本に撃ち込まれるということはよもやあるまいと思いますが、しかしソ連の極東に配備されたものについては中国向けだと言う人もいるし、こっち向けだと言う人もおります。撃とうと思えばこっちへ向ければ当たるところにあるわけでして、それに対して文句を言うようなてこというのは日本には結局何もないということになるのでしょうか。
  17. 塩田章

    ○塩田説明員 いわゆる戦力としての核攻撃を受けた場合に、日本としまして具体的にどういう防衛戦略があるかということになりますと、いま御指摘のように、現在日本に直接核を防衛するための何らかの考え方があるわけでございませんで、先ほど来申し上げておりますように、核抑止力に期待するということでございまして、具体的に日本が核攻撃を受けた場合にどういう対応策があるかということについては、御指摘のとおり現在ないと申し上げる方が正しいのじゃないかと思います。
  18. 椎名素夫

    椎名委員 そうすると、これは日米安保体制の中でアメリカにすっかり任せたということですね。
  19. 大村襄治

    大村国務大臣 SS20等の戦域核の問題がNATO諸国の重大関心事となり、いわゆる二重決議となって問題の処理が進められておりますことは御指摘のとおりでございます。  これがわが国の安全にどういう関係を持つか。最近の情報によれば、一部が極東にも配備されているという確かな情報もあるわけでございまして、無関係であるとはとうてい考えられないわけでございます。これに対処する方法といたしましては、ただいま防衛局長が述べましたとおり、非核三原則を堅持するわが国といたしましては、核の脅威に対してはアメリカの核抑止力に依存することにいたしているわけでございます。  最近の情勢に応じまして、米国としてもいろいろこの問題を検討されているということは聞き及んでいるわけでございますが、いずれにいたしましても、日米関係の信頼関係を高めることがこういったものに対応するためにもきわめて必要ではないか、重要ではないか、私はさように考えておるわけでございます。
  20. 椎名素夫

    椎名委員 わかりました。そういうことでその話はこのくらいにしておきますけれども、少なくとも、われわれはどのくらいの潜在的脅威ですか、そういうようなものが極東あたりにあるのかどうかということについては、やはり知っている方がいいんじゃないかと思うのです。  そこで、どうも最近は時々刻々と、いわゆるデタントの時代にソ連が静かにしているかと思ったら、その間着々と中国国境に配備を終わってそれが飽和をしてきた、一九七五年ごろから極東にも顕著に出てきたし、あるいはアフリカあたりにも動き出したしというようなことだろうと思います。その後は非常なスピードでわれわれの目にもとまるようになっている。  いまのお話で、その実際の対処は任せてしまう、これはそういうことだろうと思うのですけれども、どのぐらいのことになっているのか、極東のソ連軍の配備ということについて教えていただけるだけ教えていただければ幸いであります。
  21. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 最近の極東ソ連軍の状況につきましては、昨年の防衛白書で発表いたしましてからその後もかなりの変化がございますので、最近数字を詰めておりますけれども、現在の時点での数字を申し上げます。  まず地上兵力から申しますと、昨年は中ソ国境全部含めまして四十六個師団、約四十五万人、そういうふうに言っておりましたけれども、現時点では、これは五個師団ふえまして五十一個師団、約四十六万人であろうと考えております。人間が余りふえておりませんのは、これはいわゆる充足率が非常に低い師団でございまして、平時においては人間はふえておりません。ただ、戦時においては非常に急速に充足される性質のものでございます。これが五十一個師団でございますけれども、これは中ソ国境全部を含む数字でございまして、いわゆる極東ソ連軍、極東ソ連軍と申しますのは、極東軍管区、ザバイカル軍管区、モンゴル軍管区、その三つでございますけれども、その三つにつきまして昨年は三十四個師団、三十五万人というふうに申しておりましたけれども、ことしは三十九個師団、三十六万人というふうに改定するつもりです。と申しますのは、増加分の五個師団は全部ザバイカル以東というふうに考えております。ザバイカル以東と申しますと、先ほど申しました三軍管区でございますけれども、そのうち極東軍管区が一番ふえているだろう、それに次いでモンゴル軍管区がふえているのではないか、そういう感じであります。ですから、地上兵力は太平洋方面と中国方面両にらみの状況だろう、さように考えております。  航空兵力は、昨年は二千六十機というふうに推定しておりましたけれども、現時点では二千二百十機というふうに考えております。主たる増加分は戦闘機でございます。戦闘機につきましては問題は数よりも近代化でございまして、ミグ23、ミグ27、SU24あるいはバックファイア、そういう近代的な機種が非常にふえております。これは、先ごろ長官のお伴をしてホノルルあるいはワシントンに参りましたけれども、同じ趣旨の説明がございまして、昨年一年間でふえたソ連の新型機の数だけでもって、太平洋司令部の下にある全戦闘機、戦闘爆撃機の数よりも多い、そういうことを言っております。  それから海上兵力は、昨年は百五十二万トン、約七百八十五隻というふうに御報告しておりましたけれども、現在われわれは約八百隻、百五十八万トン、こういうふうに算定しております。  そのほかミサイルでございますけれども、これは全ソ連の戦略ミサイルの大体約三〇%が極東にございまして、SS20もこれは数十基に達するというふうに考えております。  また、昨年の状況とこの一年間の顕著な動向といたしまして、初めて海軍航空隊に属するバックファイアが沿海地方に配備されました。これがもうすでに作戦化のできる機数に達しておりまして、その後も増加している、さように考えております。
  22. 椎名素夫

    椎名委員 いま数を示していただいて、ずいぶん急激にふえているのにびっくりしているのですが、地上軍は両にらみ、こうおっしゃいましたけれども、空とか海とかというのは、向こうの人に聞いてみなければわからぬのでしょうけれども、大体何が目的でふやしているとお考えでしょうか。
  23. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 この点につきましては、実はホノルルを訪問しましたときに、防衛庁長官からロング太平洋軍司令官に、これはどういうことであろうかという御質問がございまして、これについてはわれわれもいろいろ理論を持っておりますし、それからアメリカも理論を持っておるのでございますけれどもアメリカ考え方では、地上軍は主たる部分が中国向けであると考えてもいいかもしれない、しかし空軍につきましては、中国空軍というのはミグ17、せいぜいミグ21までを主体とした旧式な航空機が多いものでございますから、これに対抗するためとしては、新型機種が非常に多いということでもってこれは必ずしも中国向けとは言えない、もとより海軍兵力については中国向けとは言えない、太平洋方面にもちろん関心があるのではないか、さように言っておりました。
  24. 椎名素夫

    椎名委員 それから、ソ連の海軍力の増強についても最近のところを伺いたいのですが、いま極東に配備されているものについてはお話がありましたけれども、われわれの長い、大事なシーレーンというあたり全体がわれわれにとって問題になるわけでして、そういうことを言い出すと、ほとんど世界じゅうの海域におけるソ連海軍の動向ということは、やはり日本のわれわれの持つべきミッションについて考える場合にも非常に重要なポイントじゃないかと思いますので、最近のソ連の海軍力、たとえばインド洋でどのくらいのアメリカとのバランスがあるのか、その他をお教え願いたいと思います。  また同時に、ソ連というのはあのあたり自分が守るべきシーレーンというのはないわけでありまして、いわゆる大洋艦隊というものを着々と築き上げつつある、ここらあたりの意図については一体どういうふうに考えればいいのか、その解釈もあわせて教えてください。
  25. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 ソ連海軍のグローバルな増強ぶりでございますけれども、これは御存じのとおり過去二十年間非常に増強しておりまして、二十年くらい前は大体アメリカが八百万トン海軍、ソ連が二百万トン海軍と考えておればよかったのでございますけれども、いま大体両方とも五百万トン海軍というふうに考えております。  ただこれは、御指摘のとおり質もずいぶん違います。それから作戦目的、そのための運用、全部違ってまいりますので、一概にいずれの優劣ということはなかなか申しにくい点がございます。外洋におきましては依然として、アメリカが空母機動部隊を有しておりまして、その打撃力あるいは対潜能力等に優位を持っているということは言えるかと思います。  ただバランスというものは一つの力関係でございまして、片方が余り急速にある時期にふえますと従来のバランスが崩れてくる、これは申すまでもございません。その意味でもって、非常な急カーブで上がっているということ自体がかなり重大な問題でございます。  それで、インド洋におきましては現在ソ連が二十五隻ないし三十隻配備しておりまして、アメリカが大体三十隻。これは数の上では大体均衡しておりますけれども、戦闘能力から申しますとアメリカの空母部隊の方がはるかに上でございます。  ただ、実際どういうシナリオがあり得るかということになりますと、今度は逆に、ソ連の南部地域というのは中東地域に地理的に非常に近接しておりまして、陸地からの支援はソ連は非常に強力なものがある、それに対してアメリカは非常に遠くから派遣しなければいけない、そういう問題がございます。  それと、じゃソ連がどうして大幅な建艦計画に乗り出したか、元来ソ連にとって外洋艦隊は必要ではないのではないか、これは御指摘のとおりでございまして、ソ連の最終的な防衛ということになりますとこれは地上戦闘でございます。過去のすべての戦争の例はそうでございまして、二次大戦では潜水艦部隊を拡充いたしましたけれども、これは海上交通妨害ということを意識したものと思っております。現在の大海軍はゴルシュコフ元帥の戦略に従いまして着々と築いたものでございまして、現在われわれが考えておりますのは、平時において各地においてプレゼンスを維持する軍事力をもって政治力の強化に使用する、それからあと細かい話でございますけれどもソ連のSSBNが外洋進出するのを確保する、あるいは西側のSSBNを発見してそれを撃破する、それからソ連本土に対する西側の戦力投入能力を打破する、西側の海上交通路に対する妨害を行う、それから陸上部隊に対する支援を行う、陸地への戦力投入等の任務の遂行を目指している、ただこれはすべてかつての大海軍国が持っていた任務とそう変わりないものでございます。つまりゴルシュコフ自身の構想から申しまして、これは一つ世界的な海軍国となるという構想のもとの建艦であるというふうに考えられます。特に最近キーロフというような巡洋艦が出てまいりまして、これは特に制海権の確保にとってかなり有効な武器であろう、さように考えております。
  26. 塩田章

    ○塩田説明員 いま岡崎参事官からお答えしましたような考え方を私どもとっております。特にソ連の海軍に注目しました場合に、先生の御指摘のように、特にソ連としては守るべきシーレーンもない国でありながら、どうしてああいう大海軍の建設に乗り出しておるかということの判断でございますが、いま岡崎君からの御説明でも、いまの大海軍、ソ連の外洋艦隊の建設ということの目的を挙げれば、結局かつての大海軍国の目的と同じようなものではないかというふうに見ておると申し上げましたが、強いて言えば、日本の旧海軍のようなかつての大海軍国、各国の中で持っておった自国のシーレーンの防衛ということがないということ以外は、やはり同じような形になっておりまして、恐らく同じような目的で建設されておるのであろうというふうに考えておるわけであります。
  27. 椎名素夫

    椎名委員 もう少し日本をめぐる情勢について御質問いたします。  極東で日米で安保の話をしている場合に、どうも日本アメリカしかないような感じを受けることが間々あります。新聞の報道なんかでもどうもそういうような感じがある。しかし考えてみますと、大きかったり小さかったりはするが、いろいろな国々がわれわれの近隣アジアにはたくさんあるわけでありまして、その中でも特に中国というものをどういうふうに考えるかというあたりが大きな問題であろうと思います。  最近ヘイグ国務長官が中国へ行って少し軍事的にもてこ入れをしようかというようなことにとれないでもない動きがございますが、これについてどういうふうに御判断なさるのか、御意見を伺いたいと思いますが、これについても、先ほどの核管理交渉の場合と同じように、アメリカに行きましたときに国務省のホールドリッジ国務次官補と会ったときに、その問題について幾分説明がありました。これは言ってみれば、国交回復十年たっていまだに戦争状態というようなままに凍結されているのは非常に不自然であるから、これを解除するというのが一番大きな意味だというような話もありましたけれども、実際にこれから先中国がどういう兵器体系をアメリカから欲しいかというようなことについて具体的な話になったら、これは同盟諸国と御相談をするということで、ここでもまたわれわれの範囲以外の相談が来そうな気配である。これも、さっきの極東というかアジアにおけるソ連の配備ということを考えて、日ソのバランスということだけじゃないわけでありますから、大変に大きな影響力を持ってくるということじゃないか。こういうことについても、その相談を受けたときに、相談を受けたら考えますということになっているのか、あるいはそういうことを常々アメリカとも御相談をしながら考えておられるというような体制になっておるのか、そのあたりを教えていただけますでしょうか。
  28. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)説明員 お答えいたします。  レーガン政権の中国に対する軍事協力と申しますか、対中武器輸出の政策については、先生御指摘のとおり、先般レーガン政権として最初の閣僚であるヘイグさんが北京に参りまして一つの発表を行ったわけでございますけれども、その帰途マニラの拡大ASEAN外相会議に出席されて、そこで園田大臣会談をし、その際ヘイグ長官から説明がございました。それは、米側としてはこれまで中国をいわば敵国として扱ってきたが、今後は同盟国ではないけれども友好国として扱うという決定を行いました。しかし、具体的内容についてはいまだ何ら決定をしておりませんで、今後中国側からの要請を待って、日本を含む同盟国あるいは米議会と十分協議しながら対処してまいりたいというお話でございました。  具体的に申しまして、中国の劉華清副総参謀長が八月中に訪米するということでございまして、その際に話し合いが行われ、あるいはいわゆるショッピングリストが出されるということではないかと思います。この問題については、公式、非公式に米側から、カーター政権時代から、米国の対中武器輸出については日本を含む同盟国の関心がよくわかるのでいろいろ協議してまいりたいということで、私どもとしても協議は行ってきたわけでございます。  御案内のとおり、カーター政権時代においては対中軍事関係の問題としましては二つ決定がございまして、一つは民間用とそれから戦用の汎用技術の輸出の問題これを認めようではないか、それから補助的装備、ミリタリー・サポート・エクイプメントと申しますけれども、そういう装備についてはケース・バイ・ケースで認めようじゃないかという点が、カーター政権時代から決定があったわけでございます。今度のヘイグ長官の訪中に伴います発表によりましてこれが前進したかどうかということについては必ずしもはっきり申し上げられませんで、先方が申しますとおりケース・バイ・ケースで慎重に処理するということでございます。  米側説明によりますと、従来は中国はソ連、東欧圏と同じように扱ってきたけれども、実際の中国の国際社会における実態を考えて、いわばユーゴあるいはインドと同じような国として扱うということでございます。他方、中国側からどのような要請米側に出されるかということについてはもちろん予断するわけにはいかないわけでございますけれども、中国の現在のかなり厳しい財政状況及び中国の米国の近代装備の受け入れ能力から考えて、非常に大きな取引が直ちに行われるということはないのではなかろうか、かように考えております。
  29. 椎名素夫

    椎名委員 いまのは成り行きの予測をされたわけでありますが、たとえばこういうショッピングリストが出た、あれは同盟国じゃないか、同盟国には十分相談をするということですね。そうしますと、これを売ってもらっちゃ困るというようなことはこっちとしては言えるのでしょうか。
  30. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)説明員 アメリカ側といたしましては、日本とよく相談します、協議いたしますということでございますから、日本がどうしても困るということであれば、当然その意見は尊重されるであろうというように考えております。
  31. 椎名素夫

    椎名委員 それに関連しますけれども、さっき言いましたように、アジアにはたくさん国があって、どうもペルシャ湾からインド洋を通ってマラッカ海峡を通って日本まで、日本の非常にバイタルなシーレーンがある、そこで、アメリカは向こうの方をやるから日本はこっちの方をやってくれればありがたいというようなニュアンスでいま非常に感じられているわけですが、途中にも国がたくさんありますね。あるいはわれわれの近所の国もある。この間、実は、これはいつでしたかね、シンガポールのリー・クアンユー首相が訪米をしてレーガン大統領と会見をしております。この時期は、こちらの首脳会談も終わって、それからいろいろあって伊東外務大臣が辞任した後の時期なんですけれども、例によって非常に雄弁にアジアの全体の戦略について述べているようでありまして、こういうような歯切れのいい話というのはアメリカ人は好きですから相当耳を傾けたのじゃないかというふうに思うわけです。たとえば中国の問題にしても、余り中国を強くすると、アジアに対する発言力をてこにして、非常に政治が上手だから、とられてしまう、そんなことになると、ことにマレーシアだとかインドネシアというのは非常に昔の記憶がありますから心配になって、困る、余りバランスを崩すようなことはやらないでくれ、どうも見ていると、日本が余りぐずぐずしているから——これはリー・クアンユーが言っていることですから私ではありませんけれども、これは当てにならぬので少し中国を使うかというようなことだとすれば、もう少し何かいろんな手段を使って日本にやらせたらどうかねというようなことを言っているようであります。それが大変にアジアの安定にとっても役に立つと、こういうことがわれわれがタッチしないところで年じゅう進行しますと、一生懸命こっちが相当な金を使ってやっていても、アジア政策というものが間接的に、それはもちろんばかにしちやいけませんけれども、しかし、やはり三百万足らずの国の総理大臣が吹き込んだ政策というようなものに左右されるということもあり得るわけであります。  最近全斗煥大統領がやはり東南アジア歴訪をやっておりますが、これは私もよくわかりませんけれども、やはり戦略的な話というものがその中に相当含まれている。せんだってのレーガン・全の間の首脳会談で、アジアの、極東の安全保障というものについては相当意気投合をした節もあるわけでして、われわれがたとえば東南アジア、ASEAN諸国とつき合う場合に、われわれは絶対軍事大国にならないから心配しないでくれ、だからその話は抜きにして経済の話をやりましょう、というようなことだけで推移しておって果たしていいんだろうか。  いろいろな不幸ないきさつで、いまだに日韓の間には正式の意見交換のしっかりした場所というものができていないが、考えてみますと、韓国というのは安全保障上から見ると、少なくともわれわれの議論あるいは新聞報道、評論などのニュアンスから感じる限り、北と対峙する三十八度線の問題としてしかとらえられていないような向きがありますが、考えてみると、資源がなくて、勤勉な人がたくさんいて、一生懸命働いて、輸入をして輸出をしてかせいで、どうやら中進国と言われるようになってきたというような事情を見ると、この国は安全保障の利害から見て、われわれの国とも非常に似ているわけであります。しかし、向こうはお国柄も違ったりいろいろな考え方も違うのでしょうけれども、こういう人があちこちへ出ていって関係者みんなにとって望ましいような安全保障というものをそれなりに協議をし、あるいは同意をしたりというようなことがわれわれが全然知らないところで進行してしまうというのは、どうも余り感心した話じゃないんじゃないか。  われわれの防衛ということで言えば、受け持つべきミッションというものは当然いろいろな制約もあり、またわれわれもその方がいいと思っておりますけれども日本の周辺の問題である、しかしその周辺の問題を決めるためにも、周りの問題についての情勢認識、また、それに基づく日本の周辺を防衛するのにやりやすいような道具立てというようなことについても、われわれは少し口を出さないことには、非常に心ならずもつまらないことに引きずり込まれるということもあるいは考えられるのじゃないかという気がいたしますが、そういう面において、これはお答えがあればお答えをいただきたいと思います。そういう問題に日本がどういうふうに対処をしていくのか、お答えがあればぜひ伺いたいと思いますし、もしもお答えがなければこれはぜひ考えていただかなければいかぬ問題だということを指摘するにとどめたいと思います。もしお答えいただければ大変幸いです。
  32. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)説明員 十分お答えできるかどうか必ずしも自信はございませんけれども、先生御指摘のとおり、アジアの安全について深い関心を持っている国は韓国であり、中国であり、あるいはASEAN諸国ということでございまして、アジアにおいて、特に東南アジアにおいて日本は軍事的役割りを果たし得ないということは、先般の鈴木総理のASEAN訪問の際明らかにされたとおりでございます。  他方、先生御指摘のとおり東南アジア諸国の一部においては中国に対する物の考え方がかなり屈折していることも事実でございまして、たとえばの問題といたしまして、アメリカが中国に対して大規模な軍事的てこ入れをする、そういうことはあり得ないと思いますけれども、そういうようなことが万一起きた場合には、東南アジアの一部の国にとってはかなりこれを脅威するということがあろうということでございます。先生御指摘のシンガポールのリー・クアンユー首相はそういうことをかなり強く心配されているというように承知しております。  韓国の問題につきましては、先生御指摘のとおり、ことしの二月に全斗煥大統領がアメリカを訪問いたしまして、レーガン大統領は、米国は太平洋国家の一員として同地域の平和と安全保障を確保するため努力することを確認した、全斗煥大統領はこれに対して、このような目的のための米国政策に全面的な支持を表明するとともに、米国が国際問題において確固たる指導力を発揮し続けるべきであるとの見解を披瀝したということでございます。  全斗煥大統領はその後ASEANを訪問いたしまして、北東アジアの安定、安全というものと東南アジアの安定、安全というものは密接にかかわり合いがあるんだということを、ASEAN諸国の首脳と語り合ったというように承知しておりまして、アジアの局面と申しますと、ヨーロッパの局面のようにワルシャワ軍とNATO軍の軍事的対峙といういわば二つの要素だけで律し切れない点がございまして、ソ連、中国、アメリカ日本、あるいはそれに介在する分裂国家である朝鮮半島、ASEAN、そのASEANに対峙するインドシナということでございますので、そういう多極的と申しますか多元的な要素の中で、日本の外交をどう進めていくかということについて腐心しているということでございます。  先生御指摘の、日本は軍事的役割りを果たせない、経済協力だけをするという御指摘、そういう面は確かにございますけれども、私どもとしては、たとえばカンボジア問題であるとかあるいは中国とASEANの関係の円滑化というような点で、いわば政治的役割りを今後着実に増大させて、そういうことによってアジアの全体の安定に貢献してまいりたい、そういうように考えております。
  33. 椎名素夫

    椎名委員 いまのお話で大体わかったような気もするのですが、たとえばこの前非常にやかましく報道されたグアム以西、フィリピン以北というような話が出てまいりますが、フィリピン海軍というのもあるのだろうと思うのですね、私はよく知りませんけれども。それから台湾の海軍もあるし中国の海軍もある、そこらあたりがああいう話になるとにわかに消えうせたような印象になってしまいまして、マラッカ海峡を通るあたりにも、そう大したものはないのかもしれませんけれども、インドネシアにも海軍があり、シンガポールはどうでしょうか、そういうものが何か全部なくなってしまうような感じが、もちろん日本がその海軍と一緒になって何かやろうというような話じゃなくても、西側諸国の中で役割りを分担しようというのですから、ほかの人たちがどれだけのことを何をやるのかというあたりがわかりませんと、非常に気持ちが悪い面が私にはあるのですけれども、やるということと別に、どうもさっきからお話を伺っていると、核の問題でもそうでしたし、あるいは中国へのショッピングリストもそうだし、いまのお話も何となしに全部、われわれは少なくとも防衛ということではもう日米だけであとは考えないということにどうもなっているような印象があるんですが、そんなことはないのでしょうか。
  34. 大村襄治

    大村国務大臣 シーレーンの安全確保について沿岸各国との関係についてお尋ねがございましたので、一応防衛庁の立場でお答えしてみたいと思います。  海上交通路の安全確保につきましては、これを軍事力をもって破壊しようとすることに対しては、軍事力をもってその安全を確保することが必要であると一般的に考えております。  しかしながら、実際問題としましては、米国を別とすれば、海上交通路の周辺諸国にとりましては自国及びその周辺における防衛を行うことが精いっぱいでございまして、それ以上のことを期待することは困難であると考えられるわけでございます。  わが国としましては、しばしば申し上げておりますとおり、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合は千海里程度の周辺海域について、自衛隊がそこにおける海上交通の安全を確保することができることを目標として防衛力の整備を行っているところであります。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕 これは、日米間で海域を分担して、その海域にあるすべての船舶を防護するというような意味のいわゆる海域分担を行うというような考えではございません。もっぱら自衛権の範囲内においての整備目標を設けているわけでございます。この周辺海域を超えペルシャ湾に及ぶような広大な海上交通路の安全確保につきましては、一般的に米側に依存することとしているわけでございます。  一方、長い海上交通路における船舶の安全を確保するには、海上交通路の周辺諸国における平和と安定が重要であるということは御指摘のとおりでございます。そのための各国努力期待されるところでありますが、わが国といたしましても、これら諸国に対し経済協力等の外交努力を一層推進すべきものではないか、さように考えている次第でございます。
  35. 椎名素夫

    椎名委員 私が申しておるのは、単にシーレーンだけの問題でなしに、アジア全体のバランスをどういうような方向で考えていくかというようなことについて、日本が何も言わずによその国が自由に言う、そういうようなことが行われると、非常にわれわれにとっても心ならずもつまらないことまで引き受けなければいかぬというような事態が来やしないかということでありまして、その点、ぜひ御研究を願っておきたいというふうに思います。  そこで、大分周りばかりをお尋ねいたしましたけれども、結局いまお尋ねいたしましたような全体について、恐らく日米の間の全世界的な脅威ということに対する認識一致した、こういうことなんだろうと思うのですが、そこで日本が何をやるかという話であります。  せんだってのハワイ協議で、受け取りようによっては非常に大きな要求が出てきた。とてもこれは困るという感じがしないでもない。冒頭に申しましたように、確かに、言ってみますと、われわれは不満であり、しかも国防省だけが独走してこういうことを言ったのではなく、ホワイトハウス、国務省、それから国会においてもみんな同じ意見である、どうも日本のいまの対応は不満である、そのうちの何人かは非常に腹を立てているというようなことを言われている。  そこで、どうも見ておりますと、向こうは、極端に言えば、いまの日本の自衛力というのは非常に役に立たぬじゃないかというようなことを言ったようなことを伺っておりますが、役に立たないものにお金をつぎ込んでも仕方がない、向こうは一体どういうことで役に立たないと言ったのか、あるいはもし役に立たないとすれば、これを役に立つようにする手段についてはどういうふうにお考えになっているのか、その点をまず伺いたいと思います。  言ってみますと、日本の現在の防衛計画というものはデタント時代にできたものであって、少し考え直してもらわなければ困るというような空気が非常に強いようでありますが、それに対して、防衛庁長官のこの御報告にもありますが、日本側からの説明としては、憲法あるいは専守防衛軍事大国にならない、財政問題、それから国民のコンセンサスの問題その他ということで、どうも認識一致したという上に立っての必要な対処ということで向こうは向こうなりの考えを出してきたのだろうと思うのですが、どうも少しすれ違いがあるように思うのです。そこあたりの折り合いをどういうふうにおつけになるおつもりか、その点を伺いたいと思います。
  36. 大村襄治

    大村国務大臣 先生御指摘のとおり、私の今回の訪米における一連の会談におきましても、先方の責任者は口をそろえて、厳しい国際情勢にかんがみ、米国みずから軍事力の持続的増強に着手しているので、同盟関係にあるわが国を含めてそれらの国々に対しても、みずからの地域において応分の負担と努力をするようにということを、強く意見として言われておったわけでございます。  そこで、ソ連の増強並びに第三世界における行動等についての認識はもとより一致しているわけでございますが、それに対応する仕方につきましては、やはりそれぞれの国の立場もあるわけでございまして、私は、わが国としての防衛力の増強に関する考え方を、憲法その他の防衛に関する基本方針、また最近における行革、財政再建等の国内情勢からしまして、現在着手している政府としての進め方について説明をいたしたわけでございまして、先方もその点につきましては十分耳を傾けるところがあったと信じております。  しかしながら、結論といたしましては、できるだけ早く、できるだけ多くの防衛努力をさらにやってほしいという点が先方の意見でございまして、私は、同盟関係にある日米両国としてはさらに対話を継続することによってこの問題の解決に当たりたい、当たるべきであるということを主張しまして、先方もこれに同意を示されたわけでございます。  また、私の訪米に先立つハワイ会談でいろいろなことが出されたということはあるわけでございますが、これはまあ自由な意見交換の場でございますので、いろいろな考え方が出されたといたしましても、これは米側の事務レベルにおける一つの試算ではないかというふうに私ども考えておるわけでございます。ただ、その背景となっている米側の姿勢につきましては、米政府として一致したものがあるのではないかと考えておるわけでございます。そういった背景につきましても、今後の対話機会を通じて確かめながら、わが方として取り入れるべきものがあれば可能な限りこれを取り入れていく努力を今後試みていきたい、さように考えておるわけでございます。  また、自衛隊がいざというときに役に立たぬではないかというようなお話があったというようなことも私、聞き及んでいるわけでございますが、これは私の受けとめた感じでございますが、個々の装備品とかそういったものの比較検討も大切であろうと思うのでございますが、それを総合しての防衛力と申しますか、そういった点につきましてやはりまだ不足している点があるのではないか、そういうことではなかろうかと私は私なりに受けとめておるわけでございます。  その参考となるわけでございますが、西独部隊視察を私は二カ所ほど試みたわけでございます。戦車師団にも参りました。航空基地にも参りました。一つ一つの戦車や航空機につきましては、わが方の現に整備しておるものとそれほど優劣はないという感じを受けたわけでございますが、それぞれの部隊の運用全体という体制、補給から後方から、また航空基地におけるシェルターの問題等を一貫して見ますると、まだまだわが自衛隊の現在の姿においては欠ける点があるのではないか、そういった点にも今後は十分配意していく必要があるのではないか、そういったことを感じました点もつけ加えさせていただきたいと思う次第でございます。
  37. 椎名素夫

    椎名委員 ちょっと戻りますけれどもアメリカの方は、一つ脅威認識というのは、向こうの持つものは当然あるのでしょうが、それに基づいて、同盟国に求めるより先に、自分のところの防衛支出というものを今度の予算で非常にふやしている。まさに軍拡と言ってもいいほどだと思うわけであります。しかもそれが、ほかの政府支出を相当切り詰めてもそういうことをやっておる。こういう行動に出ているということは、やはりそれなりの認識と、それから、これだけのことをやっておかないと大変なことになるという認識に対する対処についてある考えがあり、しかも、それがどうやら議会の承認も得て実施をされるということになっているようでありますが、数はともかくとして、アメリカのこれからやろうという軍備増強の裏に横たわっている認識、あるいはアメリカとしての対処の仕方というものについてはどういうふうにお考えでいらっしゃいましょうか。
  38. 塩田章

    ○塩田説明員 ハワイでの事務レベル協議でも、いまお話しのように、まずアメリカが何をしようとしているかということにつきまして、アメリカ側からるる説明がございました。予算的な数字等はわれわれももちろん承知しておったわけですが、その際にアメリカ側の一番に取り上げておりましたことは、やはり即応態勢といいますか、レディネスということを一番に取り上げておりました。もちろん建艦というようなこと、つまり造船能力といったようなことも挙げておりましたが、一番先に挙げておるのがレディネスでございます。もっと端的に申しますと、弾の備蓄というようなことを非常に強調をしておりました。  それはもちろんアメリカ自身の努力についての説明でございますが、それが同時にまた、先ほど大臣からもお答えいたしましたが、自衛隊に対するアメリカ側の期待表明の中にも、やはり第一番目に、即応性あるいは継戦能力といったような言葉になってあらわれてきておりますが、そういったようなアメリカ側の現在やっておりますアメリカ自身の防衛努力というものを考えます場合に、数字的なことは別にしまして私ども感じますことは、やはり非常に時間を急いでおるという感じを非常に受けるわけであります。  その点につきまして、いわゆる先ほどから対ソ認識一致というようなことがしばしば出ておりますが、対ソ認識についての一致は、われわれもアメリカあるいは西欧諸国もそんなに違わない、一致しておると思うのですけれども、それに対する対応におきまして、アメリカは非常に時間的に急いでおるという感じを、率直に言ってこれは私が受けた印象でございます。  その背景にあるものは何だろうかと言えば、結局、いまの国際情勢認識が、アメリカの場合、非常に時間的に急いでおるという認識が根っこにもちろんあるのだろうと思います。そういう点を、私としては、アメリカ防衛努力説明を聞きまして一番受けた印象でございます。
  39. 椎名素夫

    椎名委員 急ぎ過ぎているという感じですか。
  40. 塩田章

    ○塩田説明員 いま申し上げましたように、認識一致しておるけれども、その対応がやはり国によって違うのではないかという点でございますけれども日本の場合あるいはヨーロッパでもある程度同じような感じじゃないかと思いますけれども、結局そこのところが各国の事情によって受け取り方が違うのではないか。少なくとも完全に一致しておるわけではないのじゃないかという感じがいたします。そこをいま先生は急ぎ過ぎているという感じじゃないかというふうに言われましたが、私どもといたしまして、アメリカの言っていることはもちろんよくわかるわけですけれども、私ども自分自身の問題として、日本の問題として、アメリカのいま申し上げた点につきましては、つまり時間的という点につきましては、どうしてそんなに時間的な切迫感を持っておるのかという点について、多少の、まあ急ぎ過ぎではないかと言ってしまうほどでもないのですけれども、まあそんな感じがしないでもないという感じを受けました。
  41. 椎名素夫

    椎名委員 アメリカ自分の予算の中でやろうといういまお話があったのですが、それをやっていくためにも西欧、日本一緒にやってもらわなければいかぬ。さっき極東の特にソ連の配備のふえ方なんかについてのお話も承ったわけですが、もちろんそういうことを含めて、だからこのぐらいはやってもらわないと困るのだろうということで、先ほど長官は、たとえばハワイでの提案は一つの案であってというふうにおっしゃいましたけれども、そうバナナのたたき売りみたいに、考えもなしに少しぶっかけてやれということじゃないんじゃないかと思うのですね。やはり責任のある協議なんですから。その場合に、私はどうもよくわからないのですけれども、少なくともわれわれが持っている印象では、あれに出てくるショッピングリストを金額で足し合わせてみると、これはとても大変だということで萎縮をしてしまう、それではいけないので、その背後にある認識とそれに対処する必要な能力の見積もりというものが当然あるのだろうと思うのですね。たとえば急ぎ過ぎているかもしれないことはあるかもしれませんが、急ぎ過ぎているとすれば、基本的な認識が同じだとすれば、それに対処するこちら側の見積もりというものがあって、そしてそれを両方すり合わせていくのが対話だろうと私は思うのです。向こうが出したショッピングリストの合計の金額がどうも大き過ぎて、それから話が進まないというような印象幾分受けるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。
  42. 大村襄治

    大村国務大臣 今回の私の訪米の際の先方の首脳部との対談におきましては、具体的な数字の話はほとんど出なかったわけでございます。  私の方は、現在の「防衛計画大綱」に基礎を置いて、その速やかな達成を目指して、次の中業の見積もりの作業に入っている段階であるという状況を主として説明をいたしたわけでございます。  それに対しまして、現在の「防衛計画大綱」は五年前にできたもので、その後の国際情勢の変化もあるのでそのままでは不十分ではないか、そういうふうな意見も先方から出されたわけでございます。  それに対しまして、私といたしましては、大綱の水準にもいまだ相当な隔たりがあるので、これを速やかに達成することが日本国内における実際的に可能な最善の道であると考えて努力を始めたところであるという説明をいたしたわけでございます。  その段階におきまして、別に何をなにとかそういうふうなお話は一切なかったわけでございます。  結論としましては、今後なお対話を継続していこうということに相なったわけでございます。  ハワイ会談状況につきましては、出席しました防衛局長からひとつ補足させていただきたいと思います。
  43. 塩田章

    ○塩田説明員 ハワイでは確かに具体的な話が協議の中で出たわけでございますが、先ほどちょっと触れましたけれども、まとめて申し上げますと、結局四点でございます。  一つは、要するに先ほど言いました即応性という問題、現在の自衛隊は即応性といった点から問題点があるのではないかということ。二番目がいわゆるC3Iといいますか、指揮・統制・通信・情報体制といった点についての指摘でございます。それから三番目が継戦能力、弾薬とか予備兵力とかそういったことを挙げまして、継戦能力の不足の問題。四番目が装備の近代化という問題でございます。  それで、先ほど私がアメリカの言っていることが急ぎ過ぎという感じがしないでもないということを申し上げましたのは、あるいはちょっと誤解を招くかもしれませんので申し上げたいのですが、いまアメリカが四つの点を挙げてアメリカなりの見解をいろいろ示したことについて、実は具体的にその理由、根拠づけ、どういう構想でどういう観点からこれだけのものが要るのじゃないかということをしなければいけないのじゃないかということについての、そういった説明はなかったわけでございます。もちろん大村訪米の際におきましても、もっと時間が少なかったわけでもございますし、そこまで全然触れておりません。そういったような内容をよく聞かないとアメリカの対日期待表明の理由がわかりません。そういうようなことがわからないで、ただ急ぎ過ぎている感じがすると言ったのではアメリカに対して大変失礼かもしれませんので、その点はよく話し合いをしていきたいというふうに訂正をさせていただきたいと思います。訂正といいますか、アメリカが急ぎ過ぎておるという感じがしたということについて、そういった説明がまだ十分でないというようなことが背景にあってそういうことを申し上げたわけであります。  今後私どもは、もちろん「防衛計画大綱」の線に従って、ことしの四月二十八日の国防会議の線に従っていま作業をやっておるわけでございますが、そういった作業をやっていく過程におきまして、あるいはでき上がりました後においてもですが、いまアメリカはどういう考えでどういうことを言っているのか、われわれはこういう考えだというような話し合いは当然していっていいのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  44. 椎名素夫

    椎名委員 根拠づけは何にも言わなかったというのは少し驚きましたけれども、量だけの問題じゃなくて計画の質の問題を向こうは相当言っているのだろうと思うのです。つまり、アメリカ人というのはわりに哲学好きでありますから、こういう環境にあって、その認識の上に立ってつくった計画の根底にある環境が変わってきたときには、それを見直そうじゃないかということを感じていることは私は非常に強く感じたのですが、そこでこの根拠づけというあたりが私は非常に大事だと思うのです。  変わったなら変わったで、それに対応する計画の変更すべき点は変更しなければいかぬ。これはもっぱら質の問題で、量というのは後から出てくる問題であって、そこは今後の対話において十分に詰めていただかなければいかぬ問題だろうというふうに要望をしておきます。  せんだって五六中業で、この大綱水準を達成することを基本にして作業をするということでしたか、そういう御決定をなすったばかりですから、それの中でいろいろ考えていくというのはお立場としてわかりますけれども、しかし私は、いまのショッピングリストの根底にある一つの根拠づけについて、両方が本当に大事な日米安保体制でありますから、率直な対話を続けることはこれからの対話にとって一番大事なことであると考えますので、その点をぜひお願いをしておきたいと思います。  それから、もう時間がありませんのでもう一つだけ申し上げて終わりにいたしますが、向こうがショッピングリストをどんと出してくる、これは向こうなりの一つのミッションを考えて、これをやるにはこれだけのものが要るだろうという話だろうと思うのです。たとえばP3Cを何機、F15を何機というような話だろうと思うのですが、しかしやるべきミッションについての認識一致があった場合、いきなりショッピングリストに結びつくものかどうか、このあたりは私は十分に御研究になる必要があるのじゃないかと思うのです。  余りふざけたたとえを言うといけないかもしれませんけれども、たとえば十キロにわたって三メートル幅で二メートルの深さのみぞを掘ろう、これは非常に必要だという認識一致があった場合に、こっちが三キロ分受け持とう、そうすると、たとえばアメリカあたりだと、ではハーベスターの何とか何とかの穴掘り機械を三台持ってこないとこの三キロの穴は掘れない、というような短絡の仕方ですね。そういうことも私は日米間の防衛の論争の中で大分あるのではないかという気がするのです。ミッションから出てくる必要な能力を持つための手段というものについては、十分に自主的に考えて、なるべく安く上げるというのがわれわれの利益にもかなったことであり、金だけ使えばいいというものではありませんから、その点をあわせて、これからの協議あるいはこれから行われる作業の中で十分に留意なさりながらぜひ進めていただきたい。  最後にもう一度繰り返しますが、冒頭にも申しましたような幾分ディスアグリーメントというようなものは、先ほどから伺っておりますと、日米安保体制というのは相当大事な部分をアメリカにお任せしてあるというかっこうになっているようでありまして、それだけにますます重要である。決してちょっとした不一致というものが大きく拡大しないように、十分の対話を続けられていくように要望をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  45. 大村襄治

    大村国務大臣 日米安保体制の重要性につきましては先生御指摘のとおりでございます。その効率的な運営を図りますためにも、信頼関係が欠くことができない点でございます。  今回の私の訪米協議の際におきましてもその点は十分念頭に置いて対処してまいったつもりでございますが、具体の進め方につきましては、双方の間に相当な相違があるというのも現状としては否めないところでございます。そういった問題を、今後さらに対話の継続の過程において、できるものから解決をしていきたいと考えているわけでございます。  事務レベルの会談で出されましたような、当方としましては試案と考えておりますような事柄につきましても、先生御指摘のように、質の面をも入れまして、背景を明らかにして、わが国防衛基本方針に合致するものについては、そういったものをできるだけ取り入れていくように配意していきたい、そういった心構えで今後のこの問題の対処に当たらしていただきたいと考えている次第でございます。
  46. 椎名素夫

    椎名委員 終わります。
  47. 三原朝雄

    ○三原委員長代理 午後一時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  48. 坂田道太

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  49. 横路孝弘

    ○横路委員 ハワイ会談から長官アメリカにおけるワインバーガー氏との会談、それからその後のNATOを含めて大変問題がたくさんありまして、私も項目が多いのでありますが、できるだけ端的にお答えをいただければというように思います。  初めにお尋ねいたしたいのは、今回の対日防衛要求の背景には、一つは、アメリカの描いているあの一つのシナリオ、いわば危機のシナリオともいうべきものがあろうかと思うのです。ハワイ会談から長官が参加された会談、一連の話し合いの中で、アメリカが今日描いている世界の危機のシナリオというのは一体どういうものだったのですか。
  50. 塩田章

    ○塩田説明員 ソ連のいろんな軍事力増強とか、そういったことについてのブリーフィング等はるるございましたけれども、いま先生の御指摘のシナリオとおっしゃいますのが、具体的にどういう地点でどういうような紛争が発生してというような意味でのシナリオということであれば、別段そういう説明はございませんでした。
  51. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ単なるソビエトの軍事力世界でこれだけ強くなりましたよという話だけじゃなくて、たとえば、そういうソビエトの軍事力というのは、欧州ばかりじゃなくて、中東、アジアなどの幾つかの方面で、同時に作戦を展開できるだけの能力を持つように至ったとか、何かもうちょっと具体的な、単に強くなりました、それに対応しましょうというだけの話じゃないでしょう。つまり、そんな意味では、やはり今日のアメリカの要求の背景にある、アメリカから見た、つまりソビエトの軍事能力がどういうぐあいに具体的にいわゆるアメリカを含めた西側に影響を及ぼしてくるのかというものがやはりあったと思うのです。それを私はシナリオと言っているのですが、いかがですか。
  52. 塩田章

    ○塩田説明員 そういう意味でしたら、まさにいろいろ話がございました。特にハワイ会談ハワイ協議で出たことでございますが、カーター政権からレーガン政権にかわったレーガン政権としての相違点といいますか、前の政権との違いということの中の一つに、従前一カ二分の一戦略と言っておったのを、われわれ新政権ではもうそういうことは考えないということを言っておりました。  その趣旨は、いまお話しございましたように、一カ二分の一戦略といえば、その場合の一というのはNATOである、それから二分の一というのはその他の地区で二分の一程度の紛争と、こういうふうにとられがちであるということからしまして、新政権としてはそういうふうに固定的に一が二分の一と言って、その一がNATOだ、こういうふうに考えることはいまやできない。先生のお話にもございましたように、いまやソ連はグローバルな力を持って、幾つかの正面で同時に作戦し得る能力を持つに至っているんだから、それに対応するという意味において、そういう戦略は、一カ二分の一というような考え方はもうとれないんだというようなことを言っておりましたが、そういうような説明等もございまして、全般的に幾つかの正面で同時に作戦し得る能力を備えるに至っておる、したがって、アメリカを含む西側はそれに対応する考え方をとっていかなければいかぬという意味のことは申しておりました。
  53. 横路孝弘

    ○横路委員 そこが非常に大事なところなわけです。その幾つかの正面として、一体どの辺のところにアメリカの方は一番大きな関心を寄せていたんですか。
  54. 塩田章

    ○塩田説明員 具体的に説明がありましたのは、ハワイの場合、中東と朝鮮半島でございます。もちろん、ですから、といいましてもNATOがもうそういう意味での正面でなくなったという意味ではないと思いますけれども、具体的には中東と朝鮮半島についての説明がございました。
  55. 横路孝弘

    ○横路委員 つまりNATOばかりじゃなくて、場合によってはNATO、中東、あるいはアジア、アジアの場合は朝鮮半島というところにアメリカは大変大きな関心を寄せているという意思表示が皆さんの方にあったということですね。それについて、つまりそういうソビエトの軍事力の評価というもの、それはやっぱり一定の、能力ばかりじゃない、相対的な評価だと思うのですね、アメリカ側の。それについてはどうなんですか、皆さんの方はそれに賛意を表してきたわけですか、そこは違うということで議論になったんですか。
  56. 塩田章

    ○塩田説明員 いま申し上げましたグローバルな戦力としてつかまえるべきである、つかまえるといいますか把握すべきであるという意味においては、特段議論はございません。
  57. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、そのグロバールにつかまえるということだけじゃなくて、中東と、特にアジアに関連して朝鮮半島について大きな関心をアメリカ側が表明したというわけでしょう。  これは大村さんにもお伺いしたいんですが、ロング司令官との会談の中で、とりわけ北朝鮮に顕著な攻撃能力があり、韓国にとっても攻撃的脅威になっているという見解を示されたそうですね。これは従来の日本側の、少なくとも皆さん方が国会で表明されている見解とは違う見解なわけですから、そこは議論されて、日本側の見解もしっかり述べられたんでしょうね。
  58. 塩田章

    ○塩田説明員 朝鮮半島について申し上げますと、北朝鮮の軍備の増強の説明、またそれに対する韓国側の現状といった説明はもちろんあったわけでございますが、その際に、御指摘のように北朝鮮側の増強ぶりはいろいろ指摘しておりましたけれども、同時に、韓国には米軍も駐留しておりますし、全体としての抑止の効果は働いているのだということも説明があったわけでございまして、いわゆるバランスが崩れているというような意味での指摘ではございませんで、その点におきましてはわれわれとも見解が違わないわけであります。
  59. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ、全体の流れから言うと、ともかくソビエトの能力というのは大変ビルドアップされている。一カ二分の一ということじゃなくて、幾つかの地域、ヨーロッパだけじゃなくて中東、アジアにもいわば同時に作戦をできるだけの能力を持っているという関連の中で、朝鮮半島と中東について特に話があったということでしたね。中東については後で御質問をいたしますので、その朝鮮半島のところなんですが、軍事的に能力が高まっているということと、それが直ちにいろいろ対応しなければいけないような脅威を構成しているのかということとは別だという議論が、従来の日本の国会における議論で、皆さん方もそういう見解を表明されていたと思うのですね。したがって、そこのところはしっかりと日本側の見解を長官は述べられたんでしょうな、アメリカ側の見解に対して。
  60. 大村襄治

    大村国務大臣 北朝鮮の軍事力の増強が最近において目覚ましいものがあるということについてはお話が出されたわけでございますが、それと関連いたしまして、在韓米軍の継続によりまして抑止されているというふうな見解も同時に示されているわけでございます。政府といたしましては、北朝鮮の軍事力の増強につきましては、直ちに潜在的脅威と見ることは国益に沿うものではないという趣旨の答弁を昨年の秋の国会で申し上げておりまして、そのとおりでございますが、その後の朝鮮半島の状況を見ますると、レーガン政権になりましてから在韓米軍の継続が決定されたことによって安定が図られている、そういう意味では潜在的脅威に当たらないと考えておるわけでございます。
  61. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ、少なくとも朝鮮半島の説明があったということは、たとえば韓国に対して、自分の方は軍事的に、いまおっしゃっていますように在韓米軍の話が出たのだから、たとえば経済ではもうちょっと日本に負担せよとか、何かそういう話も一緒になって出てきているんじゃないの。それはどうですか。
  62. 大村襄治

    大村国務大臣 私の今回の訪米における協議の際にはそういったお話は出されておりません。
  63. 横路孝弘

    ○横路委員 もう一つ、先ほどの議論とも関連するのですが、同じ大村・ロング会談の中で、ソ連の極東空軍の増強というのは中国を対象としたものではないということで、アメリカから意思表示があったということですね。これが後の議論に関連してくるのですが、そうすると一体どこを対象としているものなのかという場合、アメリカ認識がどうも先ほどはっきりしなかったのですが、アメリカ側は、一つは第七艦隊ですね、やはりアメリカの海軍力に対する一つ脅威を構成しているという認識じゃないかと思うのですけれども、それはいかがですか。
  64. 塩田章

    ○塩田説明員 ソ連の極東における軍備の増強に関連しまして、どちらに向けられたものかということにつきましては、陸にしましても海と空にしましても、必ずしもそれが全部どちらという意味ではございませんで、陸の場合は主として中国であろうという言い方、海軍の場合は逆に中国向けとは必ずしも思えないという言い方で、どちらにしましても、どちらがゼロという意味ではもちろんございません。その意味はおわかりいただけると思いますが、その場合に、それじゃ空の場合に必ずしも中国でないということになると、どこかということにつきましては、具体的にアメリカがどこだと言ったわけではございません。ございませんが、いま先生の御指摘のような意識といいますか、問題というものは当然含んでおるだろうと、これは私も思います。
  65. 横路孝弘

    ○横路委員 含んでいるというか、つまりそういうアメリカ側の発言は、つなげてみますと、かなり日本に対する要求の根底をなしているわけですよ。だから私は、アメリカがどういう国際情勢を皆さんに示したのかということは、大いにつまりアメリカの対日要求、まさにそのものを言っていることだと思うのですね。したがって、いまの大村・ロング会談の中での方向性というものは大変重要なことなわけですね。  そこで、もう少しアメリカの戦略についてお尋ねしていきたいのでありますが、一カ二分の一戦略を放棄して同時多発に対応していこうというアメリカの戦略というもの、これはだんだん明らかにされてきているわけですが、同時多発に対応する内容ですね、これはどうも単にソビエトの侵略を抑止するというだけじゃなくて、むしろその侵略を打ち破っていくというような、かなり積極的な、つまり、同時多発というのは、ソビエトから同時多発にやってくるということよりも、アメリカの方で同時多発にしてしまうんだというような意思の含まれた戦略じゃないかと思うのですけれども、そういうアメリカの最近の戦略変化についてはどういう話だったのでしょうか。
  66. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 御指摘のとおりこの問題は二つの側面がございまして、一つは、ソ連が同時多発攻撃の能力を持つに至った、結局アメリカの戦略もそれの裏返しでございます。それで、これもアメリカが攻撃するというよりも、やはり趣旨は抑止でございまして、ソ連自分の最も有利なところで攻めてくる、もちろん最も有利なところで攻めてくればソ連が優位になるわけでございますけれども、その場合に、ほかの部分でもって安全だというわけではないというような意思を示すことによってソ連が出てくるのを抑止する、そういう考えだというふうに説明しております。
  67. 横路孝弘

    ○横路委員 ジョーンズ統合参謀本部長のことし一月初めの報告の中に「紛争に際してわれわれの戦略というのは敵の弱点に対して力を指向すべきだ。その場合必ずしも攻撃を受けた地点自体に限らず広範にわたる敵の非常な弱点全体に対するものである」ということをジョーンズ報告の中に出されているわけですが、それはその後ワインバーガー国防長官においても、これは四月三日の議会における証言を見ますと、「われわれは、これらの侵略行動に対し、拠点的反応を前提とする防衛戦略を追求するのでなく、むしろソ連の弱点を十分に利用することを可能ならしめるような戦略をとらなければいけない。」、これはやっぱり新しい戦略と呼ぶべき大きな変化があるのじゃないか。いまお話ししたように、同時多発になるというよりも、同時多発にすることによって抑止するということですね。この辺のところは、今度一カ二分の一戦略からの変更ということでちょっとお話があったという防衛庁長官の話だったですけれども、かなり詳しく具体的にあったのですか。
  68. 大村襄治

    大村国務大臣 お尋ねの点につきましては、これまでのような一カ二分の一というような固定した考え方でなく、弾力的に対応していく必要があるという趣旨のことは述べられましたが、いま御指摘のあったような具体的なお話は出されなかったのでございます。
  69. 横路孝弘

    ○横路委員 多分それはハワイ会談でいろいろ議論になっているのでしょう、そう思いますが、最近の新聞の報道によると、アメリカの方で戦略ガイドラインというのを決めて、それによると、戦場を攻撃地点に限定せず、アメリカ軍の欲する場所で反撃する、こういう考え方だというわけですね。つまり、ソ連との軍事衝突というのは、もう一地域に限定されないでいわば世界戦争の形をとる、これが今度のアメリカのシナリオになりつつあるのじゃないですか。対日要求というのも、そういう一つの根底的な考え方があるように思うのですが、いかがですか。
  70. 塩田章

    ○塩田説明員 ハワイでやりましたのも、先ほど岡崎君が触れた程度のことでございまして、それ以上この問題についての説明があったわけではございません。  それで、いま先生が最後に対日要求の根底になっているのではないかということでございますが、このことは、私どもが受けておりますのは、午前中の椎名先生の質問にもお答えしました四つの点を米側指摘しておるわけでございますけれども、これは別にそういったいまの先生の御指摘のような戦略論の転換ということからではなくて、従前から日米安保体制の中で持っておる日本の軍事面での役割り、つまり日本の領域、周辺海空域、航路帯を設けた場合には約一千海里といった、日本の本来のみずからを守ると言っておるものについても十分ではないのではないかという観点からの指摘でございます。
  71. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ、従来の一カ二分の一の考え方というのは、ソビエトとの戦争というのはわりと短期的だという考え方があったと思うのですね、ヨーロッパ戦線についても。ところが最近は、この春ぐらいから、ヨーロッパの戦場シナリオも通常戦争を想定した長期戦というもの、そういうシナリオも少し考えてみようという動きが、レーガン政権になってからずっとあるわけです。そうしますと、今度のたとえば即応能力とか継戦能力ですね、継戦能力などという言葉が出てきたのは多分初めてじゃないかというふうに私は思うのですが、つまり継戦能力というのも、そういうグローバルな米ソ対決の中で、かなり長期にわたる通常戦争というものを想定したアメリカ側の戦略的な認識というものがあって、それで日本に対する即応能力とか、継戦能力というのが優先度として先になって出てきているということじゃないのですか。
  72. 塩田章

    ○塩田説明員 ハワイでの話の中に、いまおっしゃいました今後起こるかもしれない戦争についてその期間をどう見るかという点の話は確かに出ました。その際に、必ずしも短期に終わるものだというふうに固定的に考えるのは問題がある、長期にわたる通常戦争ということも考えなくてはいけないという意味のことは、アメリカ側の見解として言っておりました。そのことと今度日本の自衛隊に対する継戦能力のことが直接結びつくかどうか、それはちょっとわかりませんけれども、そういう見解が示されたことは事実であります。
  73. 横路孝弘

    ○横路委員 アメリカの国防予算を見ても、九〇%がむしろ通常兵器なのですね。ですから、そういう意味では完全にそういう対応に変わりつつある。長期戦というのはかなりの長期戦でしょう。ヨーロッパのシナリオなど、まだまとまっているようではありませんけれども、一カ月や二カ月じゃないのですね。もうちょっと長い長期戦を考えているのですね。その辺のところはどういう議論だったのですか。
  74. 塩田章

    ○塩田説明員 別段日にちが出たわけではございませんので、何日ぐらいとか、あるいは何カ月ぐらいということを考えておるかということをちょっといまここで申し上げる材料はございませんけれども、一カ月や二カ月以上は長いという印象は受けております。
  75. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、そういうアメリカ側のレーガン政権になってからの対ソ認識というものがあり、それから戦略的な変化があるということの中で、今度の大村さんの訪米の中で、幾つかの点の約束がなされてきたのではないかと私は思うのです。  一つは極東有事、つまりガイドラインの問題であります。これから若干ガイドラインの議論をいたします。  つまり、アメリカの方で極東有事の研究をやろうということは、やはり朝鮮半島にその危険というか、あるいは将来何か起こり得るとすれば起こる可能性があるということの認識の表明があって、それを受けた形でこの極東有事の話というのが出てきているのでしょう。
  76. 大村襄治

    大村国務大臣 ガイドラインの関係でお尋ねがございましたので、お答え申し上げます。  ガイドラインに基づく研究作業につきましては、すでに御報告申し上げましたとおり、共同作戦計画の研究はまとまりつつありますが、これに関連するその他の研究はいまのところ余り進んでおりません。ガイドライン第三項で予定されている極東における事態例、「日本の安全に重要な影響を与える場合に日本米軍に対して行う便宜供与のあり方」については、いまだ研究作業に着手しておらないわけでございます。  先般のハワイでの事務レベル協議及び今回の私の訪米における日米協議の結果、この極東有事事態における米軍に対する便宜供与に関する研究作業について、今後日米間で調整の上進めることになった次第でございます。  この研究作業を行う場合のチャネル、メンバー、どのような事態を設想するか、そういった点につきましては、今後日米間で調整してまいりたいと考えております。
  77. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、今度の会談で極東有事という場合の一つのシナリオをお互いにつくっていこうという話になったのは、アメリカ側のアジア、とりわけ朝鮮半島についてのいわば対ソ認識というようなものも背景にされて、今度のような話に進んでいったのでしょう。これは違うのですか。
  78. 塩田章

    ○塩田説明員 その点について申し上げたいのは、アメリカ側がガイドラインに基づく作業に当たりまして、極東有事の場合のガイドライン三項の事態を研究の対象にしたいということは、これはかねてアメリカが申しております。したがいまして、今回われわれが行って、あるいは長官訪米に当たって向こうがいろいろ示した見解から出てきたというよりも、そのこと自体は、もちろん関連はあるのだろうと思いますけれども、もともとアメリカ側の要望であるというふうに私どもは受けとめております。
  79. 横路孝弘

    ○横路委員 そのアメリカのかねてからの要望を、いまの時点で受けとめたということにやはり意味があるわけですね。  そこで、この極東有事の、今度の場合はこういうことはどうなんですか。先ほどのアメリカの戦略ですね、つまりソビエトが出てきたところでたたくというよりも、むしろ弱いところをこちらの方から進んで戦場にしていくのだという考え方アメリカ考え方の中に出てきているわけですね。ヨーロッパからずっと見てみると、相対的にやはりソビエトの弱いところというと、これはアジアになるわけですね、補給の問題だとかそのほかいろいろ考えると。だから、今度の極東有事というのは、そういう意味、ねらいというのはアメリカの方にはないのですか。ソビエトの弱点をむしろアメリカの方からたたくのだという、今度の新しい戦略との関連で、それはどうですか。
  80. 塩田章

    ○塩田説明員 そこはちょっと先生と私、見解が必ずしも一致しません。というのは、ソ連の弱いところがアジアである、極東であるとおっしゃいましたけれども、すでに極東地区におきましてソ連は三分の一ないし四分の一のいろいろな兵力を持っておりますし、増強を続けておりまして、これが必ずしもソ連側にとっての弱点であるかどうか、ちょっと私はそこはにわかに同意しかねます。
  81. 横路孝弘

    ○横路委員 そこのちょっと前に戻りまして、アメリカが言っている、ソビエトの弱いところでむしろたたくのだということですね。中東というのは、あそこへ出てきた場合には、あそこで戦場というのにはなかなかしづらいこともきっとあるのでしょう。そうすると、これはソビエトの軍事的な問題に詳しい人、だれでもいいのですが、アメリカが考えている、ソビエトの弱点をたたく、これはたたくというよりも弱点をむしろ戦場にしていくというのは、どんなようなところを思い描いてやっているのですかね。
  82. 塩田章

    ○塩田説明員 これは、いまの御議論ですと最近突然言い出したようにあれですけれども、もともとどこの国でも、古今東西を問わず、戦争になった場合に相手の弱点をたたくというのは当然のことでございます。当然の、だれでも考えることでございまして、それはアメリカの場合でも、いまの時点で考える場合に、考え方としては当然考えることだと思います。  その場合に、それではどこが弱点かという場合に、どこという対象を考えます場合に、軍事面で考えて軍事力の手薄なところという意味ももちろんありましょうし、それから政治、経済、いろいろな面を考えての弱点というような問題もありましょう。その辺は総合的に見なければならない問題だろうと思いますけれども、いま軍事的に見て手薄なところということになりますと、これは具体的に事態が発生をしました場合に、どれだけの相手方がどれだけの兵力をどこに集中しておるというようなことから判断をしまして、逆に手薄なところはここだというふうに考えるべき問題であって、初めからここは弱点であるというふうに決めてかかる問題ではないのじゃないかというふうに私は思います。
  83. 横路孝弘

    ○横路委員 一般論としておっしゃるとおりだと思いますが、結局その中にアジアというものがどういう位置づけをされているかということが、今度の極東有事ということとのかかわりで大変大きな問題を持ってくるのじゃないかと私は思います。その極東有事の研究の中に、極東有事ということが日本にどういう影響を及ぼすかという問題がもう一つ同時に入ってくるわけですね。そうすると、極東有事がそのまま日本有事になるという場合の共同対処といいますか共同対応といいますか、そういうこともこのガイドラインの極東有事の研究の中に入ってくるのですか。その辺のところの日米間の話はどうなっているのでしょう。
  84. 塩田章

    ○塩田説明員 今度の話でそこまで話をしたわけではございませんけれども、もちろん、ガイドラインそのものからいきまして、御承知のように二項と三項とございます。二項は、日本が攻撃をされた場合ということでございます。日本が攻撃された場合に一つのシナリオを描いていま研究をして、それがやがて終わろうとしているということはかねて申し上げておりますが、そのシナリオの描き方というのは、もちろん無数にあるわけです。ですから、いきなり日本が攻撃されるというシナリオもありましょうし、どこかよその地区で起こって、それが逐次日本に及んでくるという場合もありましょう。いろいろなシナリオがあり得ると思います。それから三項では、極東有事の場合で、必ずしも日本に及んでくる場合を書いてないわけですけれども、極東有事の場合が日本に及んでくるということも、これは考えて、考えられるわけです。  ですから、それはガイドラインの中でどういうシナリオだというふうに限定しておりませんから、要するに日本が攻撃される場合と、極東有事で日本が攻撃されなくて極東の他の地区で紛争がある場合と、二つに分けておるだけでありまして、二項の日本が攻撃される場合というのは、どこから発生して日本に及んでくるかということは必ずしも触れてない。したがって、先生御指摘のように、そういうよその地区から発生して日本に及んでくる場合も当然考えて考えられるわけであります。
  85. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっと念を押しておきますが、この極東有事という場合、一応アメリカの方の関心は朝鮮半島にあるというように考えておいていいですね。
  86. 塩田章

    ○塩田説明員 そういうふうに断定的に結びつけてお答えできる自信はございません。ただ、国際情勢のブリーフィングの中で、朝鮮半島についてのブリーフィングがあったということは先ほど申し上げましたが、いま断定的に短絡してお答えするだけの材料を持っておるわけではございません。
  87. 横路孝弘

    ○横路委員 そこのところはやはり大変問題のところでございまして、つまり極東有事を想定した米軍というものと日本の三自衛隊との任務分担の問題になってくるのじゃないですか。そうすると、従来から皆さんの方で、先ほど海域分担をしないというようなお話がありましたが、そういう意味での責任分担、任務分担ということになりますと、これは集団的自衛権の問題にすぐなってくる、きわめて微妙なところにある問題だと思うのですね。したがって、日本が攻撃された場合の共同対処というのは、ガイドラインの二項の方でやってきた、それに極東有事というものとつなければいいんだという考え方もあるのかもしれませんけれども、やはりいろいろな段階ですね、たとえば一項の方の武力攻撃に際して対処行動する場合、日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合、つまりおそれのある場合の極東有事、それから共同対処という、この三つの項目が実は一つになっていく、それが現実であって、むしろアメリカの方は、日本に対して単独な侵入があるという認識はないのでしょう。大体、皆さんアメリカへ行って、あるいはハワイ会談からずっと、海と空の話はあるけれども、陸の話なんてほとんど出てこぬわけで、着上陸侵攻阻止なんという話はすっかり消えてなくなっていっていますよね。本来自衛隊が対処すべき一番の戦略というのはどこかへ行っちゃって、もっぱら海と空の話と極東有事のガイドラインの話なわけですから、そこのところはやはり大変問題のあるところなわけです。これについてはどのようにお考えなんですか。いわゆる任務分担になるのではないか。
  88. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほどもちょっとお答えをしたのですけれども、今度一連のアメリカ側との話し合いの中で、アメリカは最初に、日本との間のまさに先生のおっしゃる任務分担といいますか、共同声明言葉で言えば役割りの分担について、やはり向こう側の見解を言っているわけです。  その中で日本に対して何を望んでいるかということでございますが、アメリカ日本に対して、まず一つは核のかさを提供します。それから一つは投入部隊を提供します。その投入部隊にはミッドウェーを含む空母機動群、これは横須賀を母港としておるわけですが、そのミッドウェーのほかにも投入部隊を提供する用意があるということを言いまして、日本日本の領域、それから周辺海空域及び航路帯の場合約一千海里程度を日本はみずから防衛してほしい、みずから防衛するだけの防衛努力をしてほしいということを最初にはっきり言いまして、その上に立っての議論をしておるわけです。その上に立って、先ほども申し上げました四つの点を指摘してきた、こういうことでございます。
  89. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、そのガイドラインの中で、極東有事の場合に、米軍と陸海空が任務分担するというようなことはあり得ないというのですか。
  90. 塩田章

    ○塩田説明員 極東有事の場合の日本役割り分担は、施設の提供をしておりますから、その施設の提供の関係にとどまるわけでございまして、自衛隊が共同対処行動をとるということは考えていないわけです。
  91. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっと確認しておきます。従来の国会答弁の確認ですが、たとえば輸送であるとか、捜索であるとか、救助であるとか、米軍の戦闘あるいは偵察、補給というようなものについて、いま私が言ったような輸送、救助、そのほか直接的な関係に立つということはあり得ないという答弁を従来から繰り返してきて、私も委員会で確認しておりますが、その考え方に変わりはないですね。
  92. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 そのとおりでございます。
  93. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ、アメリカ議会の中には、議会の議事録を見てみますと、そういう要望がやはりかなり出てきておりますので、そこは皆さんの方でしっかりとやはり、できないという立場に立って貫いていただきたいというように思うのであります。  それからもう一つ、たとえばガソリンや弾薬などについても、施設を拡大して、いざというときに米軍が使えるようにしてもらいたいというような要求も出てきておるようですね。これも大体、従来の代替し得る規模を超えないという、従来の枠で解釈してよろしいですね。
  94. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 いまの御質問の代替し得るというのは、施設、区域でございまして、いま横路委員の御指摘の弾薬、輸送というのは、これは代替とちょっと関係ないわけでございまして、極東有事の三項でまさにこれから研究しようとするのは、施設、区域の提供を中心にしてアメリカ側と話をしていこう、こういうことであります。
  95. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、中にはたとえば、もうちょっとガソリンだとか、弾薬等の施設についてどうするというような具体的な話になっていくわけですか、この施設区域の提供の内容、便宜供与の内容としては。
  96. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 ちょっとどういう状況か具体的に考えられないわけでございますけれども、在日米軍が日本において施設、区域を維持しているのは、まさに日本の安全と極東の安全と平和ということでございますので、それ以外の目的のために日本アメリカに対して施設、区域を提供することはないということでございます。
  97. 横路孝弘

    ○横路委員 その施設、区域の提供の内容がまさに問題なわけですが、ともかく日本の自衛隊が直接的な関係を持つことはあり得ないということでございますね。  そこで、これの主たる三項の内容になりますと、これはどうなんですか。中心は防衛庁というよりむしろ外務省の方が中心になってやらなくてはいけない内容じゃないのですか、便宜供与のあり方というような問題ですから。自衛隊の基地の共同使用そのほかの便宜供与ということになると、自衛隊もそこにその限度において絡んできますが、あと、その極東有事というような事態が発生してどうするか、あるいはどういう事態を極東有事と認めるのかというような問題になると、これはどうなのですか、むしろ外務省の方でしっかりやらなければいけないことじゃないだろうか。
  98. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 従来から国会で御説明しておりますように、このガイドラインの三項については、外務省だけということでございませんけれども外務省の果たす役割りというのが大きくなってくるわけでございまして、そういう研究が始まるときには外務省はもちろんそれに参加していく、こういう考えでございます。
  99. 横路孝弘

    ○横路委員 それからちょっと確認しておきますが、ガイドラインの二項で言う後方支援というのは、これは六条関係でなくて、全く五条に限定されるわけですね。
  100. 塩田章

    ○塩田説明員 ガイドラインの二項の問題でございますから、御指摘のとおりであります。
  101. 横路孝弘

    ○横路委員 いずれにいたしましても、やはりこの極東有事に対する対応というのは、大変日本にとって大きな意味合いを持っている点でございますので、慎重にひとつ対応していただきたいというように思います。  そこで、アメリカ日本に対する対日要求の内容なんですが、これは新聞等に出ておりまして、初めのうちは新聞も少し数字がばらばらだったのですが、だんだんとまとまってきたところを見ると、この辺のところだろうとわれわれ見ているわけですが、具体的にその内容、特に装備の面においてどういう要求がアメリカ側から来たのか。
  102. 塩田章

    ○塩田説明員 けさほども椎名先生の御質問でお答えいたしましたが、四つの点を指摘しておるわけです。即応性、C3I、それから継戦能力、近代化と、こういうことでございますが、その内容は先ほどもちょっと申し上げましたが、さらに具体的な数字でどういう要求であったかということでございますれば、これはハワイにおける事務レベル協議の性格上公表を差し控えるということにいたしておりますので、御了承をいただきたいと思います。
  103. 横路孝弘

    ○横路委員 そんなこと言ったって、みんな新聞に出ているじゃないですか。これから議論していくのに当たって、アメリカがこう言ってきたというのが、何が差しさわりがあるんですか。だって、これから一体費用はどのぐらいかかるのかとか、いろいろな議論をわれわれはしていかなければいかぬわけでしょう。今度始まる五六中業との関連も出てくるわけですね。だから長官、そんな数字ぐらい、しかもこれは外へもう出ていることでしょう。全くそれが秘密が守られているというのならともかく、それだって、われわれはこの安保の委員会ぐらいには少し提示してもいいと思うぐらいです。ちょっとこれを説明してください。中身はどういうことなのか。どういう内容なのか。
  104. 大村襄治

    大村国務大臣 今回のワシントンにおける一連の協議の席上におきましては、いま御指摘のような数字はほとんど出なかった、たとえばと言って一回ぐらい出た程度でございます。  そこで、ハワイ会談で出された数字がどういう性格のものであるかということでございますが、私ども理解するところによりますと、対話を継続する過程において出された一つの試案とも言うべきものではないか。ただ、それについてはやはり、米側として、担当官一人一人の思いつきということではなさそうでございます、やはり背景があるのではないか。  今後対話の過程において、そういった背景をも確かめながら、別にそれを議題にするということではなく、わが方の防衛計画を進める上で取り入れるものがあればこれを取り入れる、あるいはわが方の基本的な考え方にそぐわないものがあれば取り入れない、これはあくまで自主的判断を加えながら対応していきたいと考えておるわけでございます。  また、私がハワイの事務レベル会談出席者報告を受けました際にも、一枚のまとまった表のようなものがあって、それで提示されたものではないというふうに受けとめているわけでございます。
  105. 横路孝弘

    ○横路委員 そのハワイ会談で出てきた増強案というのは、先ほどの長官報告にもありましたように、これはアメリカで、ペンタゴンだけの考えではなくて、国務省も含めてアメリカとしては一致している考え寿だということで皆さんの方に要求があったのでしょう。違うんですか。
  106. 大村襄治

    大村国務大臣 先ほどの御報告で申し上げましたように、まず国際情勢の問題につきまして米側から説明があり、ソ連軍事能力の著しい増大と、それに対して日米両首脳が深い憂慮を示したという点につきましては意見一致を見たところでございます。  そして、米側といたしましては、異常な努力を払って、他の予算は大幅に削減しながら、国防関係経費を持続的に増額することをすでに実行に移しているのだ、西側の同盟関係の国々に対しましてもそれぞれの立場において一層の防衛努力要請する、こういう要望があったわけでございます。  それに対しまして私の方から、現在わが国が進めつつある防衛力整備の進め方の考え方につきまして説明をしたわけでございます。具体的には、次の中業を作成するに当たりまして、「防衛計画大綱」の水準を達成することを基本的な考え方として作業を開始することについて国防会議の了解を取りつけたところである、そういった状況説明しましたところ、先方から、その点は理解できるけれども、まだ不十分であるので、もっと早くもっと大きくしてほしいという意見がございまして、今後の継続的な話し合いの過程においてこの問題はなお扱っていこうではないか、その点につきましても意見一致を見たところでございます。  経過から申し上げましてそういうことでございまして、一々の数字について向こうから提案があり、こちらから意見を出す、そういうことではなく、大筋の考え方を述べ合って今後継続的に話し合っていこう、こういう経緯でございます。
  107. 横路孝弘

    ○横路委員 その大筋の考え方をただ述べ合ったというのではないんでしょう。さっきの防衛局長の答弁を聞いておったら、数字だけ出てきて、それについての裏づけとなる戦略だとか考え方というのは何もないということだったんじゃないんですか。ただ数字だけ出ているんですよ。どうしようという数字だけが皆さんの方に示されて、その背景となるアメリカの物の見方というものについて、どうしてこんなにP3Cが多いのかとか、どうしてこんなにF15が必要なのかということについての説明はなかったというのでしょう。だから長官、そこをもうちょっと率直に話をしないとだめですな。何を言っているか全然わからぬです。局長、答弁してください。
  108. 塩田章

    ○塩田説明員 いまの質問の前に、いろいろな数字を挙げて具体的な表明があったのは、国防省のみならずアメリカ一致した意見ではないかというお尋ねがあったわけですが、私、そこまで一致しておると申し上げる自信はないのです。  というのは、先ほど大臣からもお答えがありましたように、今回の一連の会談を通じて、アメリカ側が日本に対する基本的な考え方なり、あるいは現在の世界の軍事情勢認識等について、国防省、国務省あるいはホワイトハウス等が一致しているということは申し上げたとおりだと思いますが、いまのお話の自衛隊のどこをどうするというような話まで具体的に一致させてきたのかどうかということになりますと、余りにも技術的な話なものですから、そこまで一致してきたものかどうかはちょっとわかりません。そうかもしれませんし、あるいは国防省だけの考えなのかもわかりませんが、背景は一致してきたと申し上げてよろしいかと思います。  出てきた数字につきましてどういうやりとりをしたかということでございますが、先ほどから私がお答えしましたように、今度全般的な情勢のブリーフィングがあって、その中で自衛隊のいまの四つの点についてのアメリカ側の試案、試みの試算として、向こうはその点ははっきり言っておりましたが、アメリカとして十分詰めたというよりも、一つ対話をしていく上での試みの数字だということを言っておりましたが、そういうものがあったということで、その際に、私が言いましたように、たとえば飛行機が何機という場合に、どういう理由で飛行機がこれだけの数が要ると思うのかということについての説明までは言っておりません。それは今後の話ということになっております。
  109. 横路孝弘

    ○横路委員 説明じゃなくて、どうも皆さんの方でしっかり議論してないような感じですね。アメリカの言い分だけ聞いて帰ってきているような印象が非常に強いのです。  そこで、五六中業の中に、アメリカから今度出された装備等について、アメリカの優先度に従って処理していきたいという見解が示されていますね。そのアメリカ側の要求されたものの中から、アメリカの示したいわば優先度に従っていくんだ。先ほど四つのことを示されたわけですが、具体的に主要装備でいきますと、その優先度というのはどういうことになるのですか。
  110. 塩田章

    ○塩田説明員 いまおっしゃいますアメリカの示した優先度云々という報道なり表現がどういう意味か、私も必ずしもすっきりしてないのですけれども、今回のハワイ会談、あるいはそれを受けた大村訪米を通じましてアメリカ側が言っていることは、いま申し上げました四つのことについて試みの試算を出したということでございますが、その場合にいわゆるプライオリティー、順位をつけてこれから先にやるべきだとか、そういう意味での優先度を何も言っているわけじゃないのです。その四つの事柄が非常に大事じゃないかということを言っているわけでありまして、そういう考え方を、今後のわが方の作業に当たって参考になるものがあればそれを参考にしたいということは申しておりますが、順番をつけて、どれが先でどれが後だというふうな意味での優先順位という示し方をしておるわけではございません。
  111. 横路孝弘

    ○横路委員 防衛庁長官にお尋ねしますが、今度の日米会談を受けて、五六中業の中で会談を踏まえた形で皆さんの方で作業されるわけでしょう。長官としては、どういうものを五六中業の中で処理しなければならないものだというように、今回の会談を受けた上でお考えになっているのですか。
  112. 大村襄治

    大村国務大臣 現在次の中業の作成作業に取りかかっているところでございますが、私といたしましては、ハワイ会談で示されましたような即応性、継戦能力あるいは指揮・通信能力の向上、こういった問題は、もともと防衛庁といたしましても今後充実向上を図らなければならない点であると考えておるわけでございますので、次の中業作成の場合にも配意していかなければならないと考えておるわけでございます。  また、装備の近代化につきまして、対潜能力、防空能力の向上について意見が出されているようでございますが、そういった点につきましてはこれまでも努力していたところであり、今後も一層努力しなければならない。そういう意味で次の中業の作成過程におきましても配意していかなければならない、さように考えている次第でございます。
  113. 横路孝弘

    ○横路委員 P3Cについて数字で言うと、新聞報道だと百二十五機という大変大きな要求が出てきていますね。対潜哨戒については、昭和五十二年に皆さんの方でP3Cを決めるに当たって将来の見通しを含めて一応四十五機、これは総戦力としては多分八十機くらいですか。P3Cに直した戦力として八十機ないし九十機というところを目安にして、しかし経費関係もあるからP2Jそのほかと総合的に運用していくんだということで、当面四十五機という方針を出されましたね。中業の議論の中で、大村長官は、アメリカで、このP3Cをもう少し従来の計画から上回って装備をしていくんだというお考えをお述べになったというように報道されているわけですけれども、この辺の長官の考えはどうなんですか。
  114. 大村襄治

    大村国務大臣 私は、今回の会談の席上におきましては、次の計画をつくるに当たりましては、対潜能力や対空能力の向上には努力したいと申しましたことはありますが、具体的にP3Cをどうするとか、そういうことは一切申しておりません。
  115. 横路孝弘

    ○横路委員 今度の話し合いの中で、一つは、対潜哨戒ばかりじゃなくて、日本の周辺数百海里並びに日本の航路帯というものについての防空態勢といいますか、公海上の空域の防衛という問題が出てきていますね。これについては、例の共同声明が結ばれた後、国会の議論の中で、要するに空域というのは、対潜作戦を行う場合に、それに対潜哨戒機が伴って行動するわけだということを頭に置いて、空域という言葉を使われているという御答弁があったと思うのです。ところが、そこからかなり進んでいるのではないかというように、アメリカの出されてきた数字を見ると考えるわけです。いま長官も対潜並びに対空能力というようにおっしゃられたわけですが、その対空能力というのは、日本の本土防衛ということばかりじゃなくて、そういう海域の上に当たる空域の防衛ということも含んでいるのですか。
  116. 大村襄治

    大村国務大臣 対空、対潜ということになりますと、一応空にかかわる問題と、それから潜水艦対策とに分かれるわけでございますが、実際問題としてはオーバーラップする面もあるわけでございます。  対潜能力の重要な一環として、水上艦艇の対潜能力を高める必要もあるわけでございますが、同時に、空から哨戒するという意味の哨戒機の整備も図る必要があるわけでございます。  また、対空の関係につきましても、航空自衛隊を中心として要撃機等を整備する問題もあると同時に、地上のレーダー施設等を近代化していくという必要もあるわけでございます。  また、対潜警戒に当たる護衛艦等の水上艦艇の対空装備を改善する問題もあるわけでございます。  こういった問題につきましては、現在の中業におきましても防衛庁としてはすでに着手しているわけでございますが、今後、最近の情勢等も念頭に置いて、さらにそういった方に努力を加えていく必要があるのではないか。たとえば、対空ミサイルを装備する水上艦艇をふやす問題でありますとか、最新式の高射機関砲を搭載する問題でありますとか、あるいは電子力の能力を高める問題でありますとか、そういった点もあわせて検討しなければならない、さように考えている次第でございます。
  117. 横路孝弘

    ○横路委員 洋上の防空能力を強化していくということは、一番初めに議論をいたしました、ロング司令官が、ソビエトの極東空軍は一体どこへ向けられているかわからないという発言をし、認識を示されたということとかかわり合いを持つんじゃないでしょうか。つまり、ある意味で言うと、いまになって防空、特に洋上の防空能力を強化するということ、そのためにいま言ったミサイルであるとか航空機であるとかを強化していこうということになりますと、むしろその防衛対象というのは、日本の艦船ということよりも、かなりアメリカの海軍の機動部隊という面も持ってくるんじゃないかと思うのですが、そこのところは戦略的にもかなり詰めた議論をなされた上でいまの長官発言になっているんですか。
  118. 塩田章

    ○塩田説明員 詰めた議論ということではございません。先ほどはP3Cの話が出ましたが、いまは防空戦闘能力ということで申し上げますと、その場合にアメリカが言っている考え方、数字というものが、一千海里まで行くシーレーンの洋上の防空要撃能力ということまで含めて考えているのかどうかということになりますと、先ほど来私が申し上げているように、今度アメリカ側はいろいろなことを言いましたけれども、根拠をまだ示していないわけです。そういうことはよく聞いてみないとわかりませんが、もし仮に含めておるとしましたら、とてもわれわれはそれをできないわけです。戦闘機の能力というのは、行動半径からしておのずから限界もございますから。そういうことはよく聞いてみて、アメリカが数字を出してきたその根拠は一体何だということを確かめてみたいと言っているのは、まさにそういうことも一つの例でございます。ですから、その辺は、いまアメリカの言っていることが直ちに洋上の要撃防空能力の向上ということを言っておるというふうには、私どもはまだ解していないわけです。
  119. 横路孝弘

    ○横路委員 これからだんだんアメリカの持っている戦略と日本考え方、つまり憲法という枠の中である日本の場合は、本土が攻撃された場合に初めて自衛権というのは発動される、自衛隊というのはそのための軍事力だという従来の議論とのずれが、やはりこういうところに出てくるんですね。ここの問題なんかは、日本が本土が攻撃されて初めて自衛権が発動される、そのためのものだというものと、それからグローバルに考えて対応していこうという考え方の違いがこの辺のところに出てきている、長官、そのように思いませんか。
  120. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま私が、海上交通保護のための観点からも防空装備を充実する必要があるということにつきましては、急にいま決まったわけではございません。防衛庁としましては、そういった方針に基づいて整備を進めているところでございます。五十五年の防衛白書をごらんいただきましてもその点はかなり詳細に考え方を記されているところでございます。その方針をさらに進めていこう、こういうことでございます。
  121. 横路孝弘

    ○横路委員 防衛庁の方で、アメリカから示された数字をたとえば実行した場合、どのぐらい経費がかかるかというようなことは試算されていますか。
  122. 塩田章

    ○塩田説明員 全然試算しておりません。  先ほどの先生の御質問でちょっと私からぜひ申し上げておきたいと思うのですが、日本が攻撃を受けて日本防衛する本来の日本防衛の話と、アメリカの戦略に云々という話で、先生のお話を承っておりますと、いわゆるシーレーンの防衛、一千海里の海上防衛というのは何かアメリカの戦略の中の話のように前提にしておられるような気がするのですけれども、私どもはそうじゃなくて、やはりそれは日本防衛のための海上防衛であるということを前提にして考えておるということをぜひ申し上げておきたいと思います。
  123. 横路孝弘

    ○横路委員 そうおっしゃっても、この話は南の方の話ですね。それで海と空でしょう。本来上着陸侵攻を阻止するということならば、それはまたそれなりの、海上自衛隊なら海上自衛隊のそういう装備だとか、戦略だとかいうものがあるわけでしょう。しかし現実にはそんな話は全然出てきていないわけですね。もっぱら対潜ということなわけですし、それから先ほどのシナリオも、日本だけが侵略を受けるということじゃなくて、やはりグローバルな中での同時多発だということですね。つまりそういうものとしてますます日本軍事力というものが考えられていっている。だからアメリカの話はもう海と空に行くわけです。陸の話なんか全然出てこないでしょう。海と空の話にどんどん行くわけです。  そこで、委員長にちょっとお願いしておきたいのですが、この数字ですね。数字というのは、確かにそれに伴っていろいろな戦略なり何なりの考え方を知るのに必要なことなんで、ぜひ防衛庁の方に、どういう形であるかは別にして、その数字の提出を委員会の方にするように要請しておいてくれませんか。
  124. 坂田道太

    坂田委員長 一応委員長からお答えしますけれどもハワイ会談は御承知のようにプロセスの問題で、それは出さないという約束のようでございますから無理じゃないかと思いますが、一応理事会で御相談申し上げたいと思います。
  125. 横路孝弘

    ○横路委員 委員長としての権限を逸脱した個人的な御発言がありましたが、まあ、日本に対する要求が皆さんもびっくりするような数字で出てきたということですね。  次の議論に入りますが、そのアメリカ要請を受けた協力の中で、軍事技術についての協力の話が突然出てきたわけです。これは防衛庁長官も、今度の前の通常国会でいろいろな議論があったのは御存じだと思いますし、それから本会議でもこれは決議をされておりまして、ことしの三月の本会議で「わが国は、日本国憲法の理念である平和国家としての立場をふまえ、武器輸出三原則並びに昭和五十一年政府統一方針に基づいて、武器輸出について慎重に対処してきたところである。しかるに、近時右方針に反した事例を生じたことは遺憾である。よって政府は、武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもつて対処すると共に制度上の改善を含め実効ある措置を講ずべきである。」という決議を行ったばかりなわけですね。これはもちろん十分承知されておったと思うのでありますが、これについて、最初にちょっと通産省の方にお尋ねしたいのですが、この従来の方針というのは変えられたのですか。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  126. 中澤忠義

    ○中澤説明員 先生お尋ねの武器輸出三原則、あるいは五十一年の政府統一見解等の従来の方針を変更したという事実はございません。
  127. 横路孝弘

    ○横路委員 防衛庁、この軍事技術の協力の話が出てきた経過というのはどういう経過になっているのですか。そしてまた、アメリカの方では何をねらっているというか、何を一番考えておるのですか。その辺は具体的に話があったのですか。
  128. 大村襄治

    大村国務大臣 日米間の軍事技術の協力についての経過についてお尋ねがございましたので、私からお答えいたします。  日米間における軍事技術協力につきましては、従来から、日米相互防衛援助協定第一条に基づく資料交換に関する取極、これは昭和三十七年十一月十五日に締結されておりますが、この取極により、日米双方が合意した研究開発項目について、防衛目的のための技術的資料及び情報の交換を行ってきております。このほか、昭和四十年以来、研究者の米軍研究機関等への派遣を行ってきているところであります。  これに加えまして、昨年来、装備、技術担当の局長レベルで行う日米装備技術定期協議が設けられ、昨年九月及び十二月に、それぞれワシントン及び東京で第一回と第二回の会合が開かれ、装備技術情報の交換等が行われてきております。  このように、日米政府間においては従来から軍事技術協力を行ってきているところでございます。  今回の会談におきましても、この交流を今後一層促進してまいりたいというお話が出ましたので、今後協議を交わしていこう、こういうふうな状況でございます。
  129. 横路孝弘

    ○横路委員 これはあれですか、政府の方のたとえば防衛庁の方で持っている技術であるとか、何かこう具体的にアメリカの方から話が出てきているのですか。
  130. 大村襄治

    大村国務大臣 今回の会談では具体的なお話は出さなかったわけでございますが、詳しい経緯につきましては担当の装備局長からお答え申し上げます。
  131. 和田裕

    ○和田説明員 お答え申し上げます。  ただいま長官から申し上げたとおりでございまして、具体的にこういうふうにしたいとかああいうふうにしたいとか、そういうことはございませんで、ただ向こう側が言っておりますのは、これまで、アメリカ側から日本に対しまして、装備技術につきましては非常に寛大にといいますか、気前よく一方的に出してきておった。したがいまして、これからは相互交流といいますか、ツー・ウエー・ストリートと言っておりますけれども、そういったような方向でやっていきたい、そういうような一般論ということでございます。
  132. 横路孝弘

    ○横路委員 これは通産省の方にお尋ねしますが、日本の民間企業で何かそういうような動きがあるのですか。現に民間企業の持っている技術についてアメリカの方と何か提供の話が進んでいるような……。
  133. 豊島格

    ○豊島説明員 お答えいたします。  私どものところに具体的にそのようなことをやりたいという民間企業の意向は伝わっておりません、聞いておりません。
  134. 横路孝弘

    ○横路委員 その民間企業の持っている技術を政府の方で強制することだってできないでしょう。政府が持っている技術ならそれは別にして、できないでしょう。どうなんですかそれは。
  135. 和田裕

    ○和田説明員 確かに、先生おっしゃられますとおり、強制することはできないと思います。何となれば、一種の技術といいますのは通常やはり財産権の対象になるわけでございますので、基本的にはコマーシャルな取引関係になるかと思いますが、ただ、アメリカから日本が技術導入しておりますときには、アメリカ政府の持っております技術につきましては、アメリカ政府日本政府との間の交換公文とかそれに基づきますところの了解覚書で取り決めをして、かつそれに対する対価等を決めて行いますし、それから民間の持っているものにつきましては、政府がいわば影響力を行使いたしまして、それについて提供するように促進するというような約束を結んでいる例はございます。
  136. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり政府の方にそういう強制力がないということになりますと、あと民間の企業が向こうと何か約束をした場合に、今度初めて、先ほど言いました三原則に絡んで通産省がそれをどうするかということになって、しかしこれは三原則がある、こういうことですね。つまり従来の枠組みの中で考えていい問題なんでしょう、今度の問題も。違うんですか。
  137. 中澤忠義

    ○中澤説明員 先生御設問の武器技術輸出の問題でございますけれども、通産省といたしましては、基本的には、米国に対する武器技術輸出につきましても、従来どおり武器輸出三原則及び政府統一方針に準じて対処するという考えでございます。また、今後関係省庁の間で問題が生ずれば共同して研究してまいりたいと思っております。
  138. 横路孝弘

    ○横路委員 何かもう従来の枠組みを外したかのような発言をなさる人がいるから混乱をするわけでありまして、防衛庁長官も、今国会のいろいろな議論の経過は十分御存じでありますね。アメリカに対してはそれはしっかり主張しなかったのですか。
  139. 大村襄治

    大村国務大臣 私は今国会の論議の点はよくわきまえているつもりでございます。今回の会談におきましても、わが方にはこういったような制約があるということも申しております。
  140. 横路孝弘

    ○横路委員 相互防衛援助協定のことをおっしゃる方がいますが、これは一条を見てもアメリカの方だけの援助を想定しているものであって、国内で何か措置をとる場合には、すぐその条約の、これは解釈の問題になるわけですけれども、根拠となる国内の法令がどうしても必要になってくるんだというふうに私は思います。そんな意味では、相互防衛援助協定から直ちに武器輸出三原則とかかわり合いを持たないんだという解釈は、ちょっと無理ではないかということを私は指摘しておきますが、いずれにせよ、通産省の方ではっきりとアメリカについても例外ではないという御発言がございましたので、この問題についてはそれで結構でございます。答弁はいいです、必要ないです。
  141. 三原朝雄

    ○三原委員長代理 発言を求めておりますから……。
  142. 和田裕

    ○和田説明員 私どもは、この間長官がお帰りになりまして閣議で御報告をしたときに、この武器技術輸出につきましては今後関係省庁間で検討をお願いしたいということを申し上げまして、その閣議の席上で了解されたというふうに承知しておりまして、今後、武器輸出三原則とか、統一見解並びに国会でこの三月に採択されましたところの国会の決議その他、条約等の関連をも含めまして慎重に検討したい、そういうふうに考えております。
  143. 横路孝弘

    ○横路委員 その防衛庁の念願と希望はわかっているから答弁の必要はない、こう言ったわけであります。  いずれにせよ、通産省の方は今国会のそういう経過をしっかり踏まえて対処していただきたいということを申し上げておきます。きょう大臣はおられませんが、その旨大臣にも伝えておいていただきたいと思います。——通産省は結構でございます。  今度の日米会談で、結局極東有事のガイドラインと日本に対する軍事力要請、それからいまの軍事技術の提供というような問題が出されてきたわけでありますが、今度の軍事技術の問題にしても、通産省との間で意見をしっかりまとめてやったということではなくて、ぱっと話が出てくると、それはいいという形で、きわめてその場限りでどうも対応しているというきらいが大変強いわけです。  これから残りの時間、少しその基本になっていますソビエト脅威論というものと、それからこれからの対ソ外交について若干お尋ねしていきたいと思うのであります。  その対ソ認識一致したということなんですが、アメリカ側の認識は、一番初めに申し上げたようにソビエトの軍事力強化された、多方面で連関した侵攻が行われ得る可能性があるということですね。しかも、それについてかなり切迫していて時間がないという認識だったと思うわけであります。その認識については、先ほど防衛局長の方から、これは私もお尋ねしようと思っていたのですが、どうも切迫して時間がないという点については認識を異にするという御発言があったように思います。レーガン政権誕生して以来の対ソ政策というものは、いまもうアメリカの中からも、対ソ強硬姿勢だけで政策ではないじゃないか、グロテスクなほど単純化された反ソ行動にすぎないのだという批判も、アメリカ国内からずい分たくさん出てきているわけであります。アメリカ国内のそういう意見というのは、どうも余り日本に報道されていないようなんですが、対ソ認識一致したというところをちょっとお尋ねしたいのです。  先ほどもお話のございました、ロストウという軍縮局の局長として一応ノミネートされている人の議会での証言を見ますと、五〇年代のソビエト封じ込めの再現をしていかなければいけないということを言っておるのですね。こういうソビエト封じ込めという考え方についてはどうお考えなんですか。
  144. 大村襄治

    大村国務大臣 対ソ認識一致したと申し上げましたのは、共同声明にうたわれておりますように、最近におけるソ連軍の著しい軍事力の増大、アフガニスタン侵攻以降第三世界への行動等に対して、ともに憂慮するという点について一致を見ているわけでございます。  また、お尋ねの封じ込め論、これもアメリカの一部にあるようではございますが、それが必ずしも定説になったというふうにも承知しておらないわけでございます。要は、自由主義と民主主義を守ろうとする志を等しくする国がそれぞれの立場において協力していく、そのために必要な防衛努力は進めていかなければならない、私はさように考えておるわけでございます。
  145. 横路孝弘

    ○横路委員 アメリカ政策を見ていますと、対ソ戦略を優先させるということから、かえって混乱を生じさせているという面もあると思うのですね。先ほどちょっと中国への武器供与の問題があったのですけれども、私も二つほどお尋ねしたいのですが、鈴木・レーガン共同声明の三項目に「アジアの平和と安定に対する双方の関心を確認し、中華人民共和国との間で協力関係をそれぞれ引き続き拡大してゆくこと、」というのがありますね。この共同声明を受けて、たとえば対ソ戦略という観点からの中国支援、軍事的にはアメリカがやる、経済的には日本がやるというような任務分担でもしたのかどうか。いまその対ソ認識ということで共同声明を引用されましたからちょっとお尋ねしたいのですが、つまり、日本政府は、今度のアメリカのヘイグ長官発言について事前に了解を与えていたのとは違うのですか。これはどうなっていますか。
  146. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)説明員 お答え申し上げます。  鈴木総理とレーガン大統領との共同声明で、中国に対する日米それぞれの協力が重要であるとうたわれたことは先生御指摘のとおりでございますけれども、これは中国の安定がアジアの安定に非常に深いかかわりがあるという共通の認識から生まれたものでございます。  わが国が中国に対して経済協力を一昨年来続けておりますのは、中国の現代化路線を支援することが中国の安定あるいは中国の外交政策の発展のために寄与するものであるという認識に基づくものでございまして、アメリカといたしましても中国の現代化に協力していきたい。多分、近い将来に、アメリカから中国に対する技術協力あるいは無償援助が実現するのではないかというように思います。  他方、御指摘の、ヘイグ長官が中国に参った際に明らかにいたしました対中武器輸出政策の変更についてでございますけれども、これは午前中椎名委員の御質問にお答えいたしましたとおり、米国といたしましては、米中関係あるいは米国の中国に対する認識の変化を踏まえて、従来、武器輸出の対象国としてはソ連、東欧共産圏と同じようにいわば敵国として扱っていたものを、同盟国ではない、しかし友好国として扱う、インドあるいはユーゴと同じように扱って、ケース・バイ・ケースで慎重に検討していくのであるという立場の変更でございます。  お尋ねの、米国の対中武器輸出政策の変更について事前に日本側に相談があったかということにつきましては、こういう形で変更されるということについては詳細には承知しておりませんでしたけれども米国の対中武器輸出政策については、カーター政権のとき以来政府部内で検討されておりましたし、レーガン政権登場とともに武器輸出政策についても検討されているということは承知しておりまして、これについて日本側として公式、非公式に協議をしてまいったという事実はございます。
  147. 横路孝弘

    ○横路委員 それで、日本基本的な姿勢なんですが、先ほどもどうもそこがはっきりしなかったのですが、結局、従来のソビエトの軍事力増強、特にアジアにおける軍事力増強を見ていますと、やはり中国との関係が大変大きいわけですね。一九六九年の軍事力増強なんというのはまさにそういうわけです。そんな意味では、中国の西側接近、とりわけ今度のようなことになりますと、ソビエトの反応というものが、逆に言いますとアジアの軍備拡大あるいは緊張が激化していく方向に作用するということは、結局は日本にも大変大きなはね返りがあるということですね。だから、対ソ戦略というそのことだけをアメリカアメリカの立場で見ておればいいのかもしれません。日本は、アジアの中の一つの国として考えた場合にそのことを考えざるを得ないわけですね。  これは基本的にはどうなんですか。防衛庁長官にお尋ねしたいと思うのですが、こういう中国の軍事的増強がされるということは日本にとっていいことなんですか、どうなんですか。私は、かえってソビエトの対抗措置を招き、それは日本にもまた一つのプレッシャーになって返ってくるということだと思うのです。その認識はいかがでしょうか。
  148. 大村襄治

    大村国務大臣 米国の対中国武器輸出緩和の問題は、米中二国の問題ではございますが、日本を含めてのアジア諸国の政治的あるいは軍事的安定にもかかわりのある問題でございまして、そういった意味におきましては、防衛庁といたしましても関心を持っているところでございます。  また、外務省からお話がございまして、まだ話し合いが始まったばかりであって、具体化するときには連絡があるやに聞き及んでおりますので、政府としましてはそういった点を踏まえて対処していきたいものだと考えております。  米中間が正常化されていくということはまたある意味で望ましいことでございますが、それと、この緩和の仕方、方法等は、先ほど申し上げましたような面の配意も必要である、両々相まって適切な措置が行われることが望ましいと考えているわけでございます。
  149. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり米中接近ということ、特に軍事的な関係強化されるということですね。しかも武器が供与されるということは、望ましいことなのか、慎重に対処してもらわなければいけないことなのか、それはどうなんですか。
  150. 大村襄治

    大村国務大臣 米中間が正常化される、いままで武器が全面的に禁止されておりましたものを、他の国とのバランス、兼ね合い上、必要な範囲で緩和するという配意も、時と場合によっては必要ではないかと私は思うわけでございますが、これが余り急激な形で行われるということになりますと、先ほど申し上げましたような政治的、軍事的な安定にも影響を持つものと思われますので、そういった点を慎重に配意していくべきもの、さように考えておる次第でございます。
  151. 横路孝弘

    ○横路委員 武器売却の問題というのは、たとえば中東でもずいぶんいろいろな反応といいますか、Aという国にアメリカが武器援助をやりますと、その周辺国家がこれに対して反発をするわけですね。場合によってはその周辺国家がソビエトの方から武器援助をしてもらうというような、つまり、もともと対ソ戦略ということを優先させていく結果どういうことになっているかというと、そのように逆に出ている状況があるわけです。特に日本アメリカと立場がそこでは違うわけですから、そこのところの姿勢は日本にとってこれからきわめて重要な政策になっていかざるを得ないというように私は思うのです。そういう意味で、ケース・バイ・ケースということでございましたが、外務省の方でもひとつ慎重に対応していただきたいと思うのです。いかがですか。
  152. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)説明員 先ほど申し上げましたとおり、ヘイグ長官が園田外務大臣にマニラで伝えた点は、武器輸出の観点から申しまして、中国を敵国ではなくて友好国として扱う、具体的内容についてはいまだ何も決定されていないので、今後ケース・バイ・ケースで検討し、その検討に際しては、日本を含めた同盟国あるいは議会と十分相談しながら対処していくということでございます。  中国とソ連との間では近代化武器装備に関しては非常に大きな隔たりがあるわけでございまして、米国としても中国に対して武器輸出を実現することによって、その近代化兵器の装備の点において、ソ連に対応できるような水準に中国が急速に達するというような見通しは持ってないようでございます。  かつ、中国の方を見ましても、先ほども説明いたしましたけれども、中国の現在の調整政策、財政難ということで、国防予算の削減ということも伝えられておりまして、米国から米国製の武器あるいは武器技術を導入するといたしましても、かなり限られたものになるのではないか、中国の国防政策基本はあくまで自力更生ということになっていくのではないかというように考えております。  中国自身、ただいま申しましたように、近代化装備の点においては対ソ劣位ということははっきりしているわけでございますけれども、中国の国防の責任者は、たとえソ連が中国を侵攻したとしても、中国の東北、華北あるいは北京を侵攻しても、黄河の南には人口の三分の二が残るのである、十年、二十年の戦争が続くんだというような説明をしておりました。  そういう観点から、今度の米国の対中武器輸出政策の切りかえということが起きましても、米国の武器が大量にかつ急速に導入されることはなかろうかというように考えております。
  153. 横路孝弘

    ○横路委員 ASEANの方でもこれについてはきわめて警戒している向きもあるようでございますし、日本としても、これからの情勢に対して大変大きな影響を与えるものでございますから、慎重に対応していただきたいと思うのであります。  さて、対ソ認識一致した、一致したということなわけですが、問題は二つあると思うのですね。ソビエトという国をどういうぐあいに見るのかという場合には、軍事的な側面ばかりじゃなくて、国内的な、経済であるとか社会であるとかあるいは国際的な影響力がどうなっているかというような、やはりトータルな面ですね、それは弱いところも強いところもあるでしょう、そういうようなものを見て、ソビエトの行動というものについてやはり一定の判断をしていく必要があるだろうと思いますし、それから、ソビエトがどう考えようと、問題は、いろいろな戦争というような事態はやはり紛争が前提になっているわけですね。そういう意味で言うと、世界におけるさまざまな紛争というものが何に由来して起きているのかということの分析をしっかりしなければいけない。つまり軍事的なものというのは数字で出てくるわけですが、その数字だけを見たのでは対応というのは簡単にはできないのじゃないかと思うのです。  大村防衛庁長官に伺いますが、対ソ認識一致した、一致したと言うけれども、これは大村さんとしては軍事的な意味でだけ一致した、つまり最近あちこちでもって軍事力を強めている、グローバルな軍事力が強くなっているということだけであって、そういういわば紛争の分析であるとかソビエトという国家についてのトータルな分析というものを行った、あるいは議論したということではないのでしょう。
  154. 大村襄治

    大村国務大臣 対ソ認識の点でございますが、最近におけるソ連軍事能力が陸海空の三面にまたがりまして顕著な増強を示していること、また質の面におきましても非常な進歩を示している、そういった事柄につきましては私ども米側認識を等しくするところでございます。  また、軍事力の数字だけでは判断できない、これはお説のとおりでございます。私どもはかねて申し上げておりますとおり、能力というものは測定できるものでございますが、もう一つの要素であります意図の方は可変的なものでございまして、外側からはなかなか判定しにくい問題でございます。そういった点におきましては、軍事力の判断のほかにそういった面についての研究努力を払わなければいけない、その点は十分承知しているつもりでございます。  しかしながら、アフガニスタンへの侵攻あるいは第三世界への行動等を見ますと、この増強した軍事力を背景にしていろいろ政治的な行動にも出るという証拠が大分挙がってきておりますので、数字だけの問題ではない、その可変性のある意図の問題につきましても注目をし、関心も払っていかなければいけない。また、防衛努力を怠っている地域に対してその軍事力行使する可能性も決して乏しくはないのではないか、そういった点につきましても米側と見解をともにするものでございます。  ただ、対応する措置とか施策につきましては、グローバルな観点から対処する米側と、自衛のための防衛をすることができる日本国との立場の相違からします、その対応の仕方においてそれぞれの国情による相違があるということは、これはまたやむを得ないところではないか、私はさように考えておるわけでございます。
  155. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、アメリカの方は意図も能力も、そんな分けて考えないわけですよ。要するに、どっちかと言えば八〇年代の半ばぐらいにもう危ない、危ないと言っているわけでしょう。ある意味ではそこの違いが、話を聞いているとどうも認識一致しているわけじゃないという気がするのです。  ちょっと外務省にお尋ねしますが、ソビエトという国をどう評価するかというのはいろいろな見方があると思うのですが、たとえば国内の問題を見ても大変たくさんの問題を抱えていると思うわけですね。民族問題にしても経済問題にしても大変だし、新しい世代の中には社会主義に対するロイアルティーもどうもなくなりつつあるのじゃないか。あるいはポーランド化の衝動というのはソビエト社会の中にもあると私は思うわけです。政治指導者も非常に老齢化し固定化して、新しい改革をやるというような状況にはどうもない。というように見ますと、軍事力だけはばんと出ているわけですが、トータルに見ると大変、ある意味で言うと国としてはいろいろな弱さも持った国だというように思うのですね。その持っている弱さというものを私たちがどういうぐあいに見て、どういうぐあいに対応していくのかということも同時に大変大事なことなわけです。弱さというのは、逆に言うと窮鼠ネコをかむみたいなことにもなりかねないわけです。むしろ、うまく弱さというものを外交の中でどういうぐあいに使っていくのかということが大変大事なポイントになるのではないかというように思うのですが、今日の状況というものをどういうぐあいにごらんになっていますか。
  156. 武藤利昭

    ○武藤説明員 ソ連国内問題につきまして、国会の場で政府側からいろいろコメントをするということには差しさわりもあるかと存じますので、詳しく申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございますけれども、横路委員がおっしゃられたようないろいろの問題がソ連にあるということは、いわば一般的な認識としていろいろな方がおっしゃっておられるところということは言えるのではなかろうかと存ずるわけでございます。  したがいまして、ソ連の今後の行動を判断いたします場合に、単に軍事能力のみならず、そのような国内的な種々の要素というものがソ連の判断の中に当然入ってくるわけでございますので、その辺の方にも目を向けるということの必要性、それはおっしゃるとおりであるわけでございますけれども、いまも窮鼠ネコをかむという例をおっしゃいましたとおり、そのような国内情勢ソ連の軍事行動をどちらの方に向けていくかということにつきましては、必ずしも一方向ではないということもあり得るわけでございますので、その辺のところについて軽々にいま申し上げることもこれまたむずかしいと思うところでございますが、いずれにいたしましても、おっしゃいますとおり、ソ連の今後の行動を判断するに当たりましては、種々の状況を総合的に見ていく必要があるという点については全く同感でございます。
  157. 横路孝弘

    ○横路委員 何の答えもされてないわけですね。つまり、日本がどういうぐあいに外国、特に周りの国を認識しているかということは、それは事と次第によっては外交的な問題に発展することだってあり得ますから慎重でなければならないというのはそうでありますが、一方で対ソ脅威、対ソ脅威とこれだけ大きい声で皆さんが声をそろえて言っておられるわけだから、やはり中身をどのように分析しているのかということは、私は本来ならばしっかりと国民に示すべき問題だというように思うのです。どうもアメリカに対してもそうですし、ソビエトに対しても、そんな意味では逆に気がねをしているという面が大変あるように思います。  では、ちょっと視点を変えまして、たとえばある人がこういうことを言っています。ソビエトが着実に成果を上げているということを言っているのは、ワシントンのタカ派とモスクワの宣伝屋だけだということを皮肉っている人がいるわけです。ある意味で言うとそうじゃないかなという気がするのです。第二次大戦後の世界というのは、アメリカも地盤低下著しいけれども、同時にソビエトの方だって、国際社会における地盤低下というのは大変なものがあるわけで、特にアフガニスタン以降は西側におけるデタントの支持者も失ったわけですし、同時に非同盟諸国の中にも、あるいはイスラム諸国の中にも、いろいろな警戒心というのは高まってきているわけです。  そんな意味では、国際的な影響力、この日米共同声明の中にもアフリカと中南米にまでいろいろ触れていますけれども、国際的な影響力というのはソビエトはふえていると思いますか。確かに七〇年代、アフリカで軍事的な条約を結んだという国が幾つかございますが、ソビエトから見て成功したと思うとまたすぐ離れてしまうというようなことの繰り返しじゃないでしょうか。そんな意味で、私はこの十年、二十年というのをトータルに見て、ソビエトの国際社会における影響力というのは決してふえていないというように認識しているのですが、いかがですか。
  158. 武藤利昭

    ○武藤説明員 大変むずかしい御質問でございますが、確かにおっしゃいますとおり、一たんソ連が影響力を確保したと思ったのがまたその後に至って影響力を失うに至ったような例もあるわけでございますが、また片や、別の地域で影響力を増大しているということもあるわけでございまして、この問題は非常に短期的に見てもむずかしいわけでございますが、ある程度二十年ないし三十年のスパンをとってみますと、やはり国際的に申しましてソ連の影響力は増大していると見る方が当たっているのではなかろうかというのが私ども印象でございます。
  159. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっとアフリカを見てみると、一九六五年から七四年の間に援助の五〇%をソビエトに頼っていた国というのは、ギニアとソマリアとマリと赤道ギニアとコンゴという国があるのですね。ところが、これが今日どうなっているかといいますと、ソマリアは御承知のように善隣友好条約を破棄しましたし、ギニア、マリ、赤道ギニアもソビエトの軍事顧問団を追い出してしまったということですね。ですから大変あちらこちらで、ある意味で言うと私はむしろ影響力を失っているのではないか。最近影響力を増大している国というのはではどういう国かと見てみますと、国連でいわゆるLLDC、後発開発途上国として認定されている三十カ国がありますね。一人当たりの国民所得が年間百ドル以下、十五歳以上の国民の八〇%以上が字の読み書きができない、それから国民経済の中で第二次産業の占めるウエートが一〇%以下という大変おくれた国ですね。どちらかと言うと国家としてまだ体をなしていない、部族同士が国家の主導権をめぐって争っているようなところに、片っ方の部族がアメリカから武器をもらえば、片っ方の部族がソビエトから武器の援助を受けるという形での、いわばソビエトの介入が行われているわけで、これは介入というか、やはりそこにソビエトに頼っていこうというグループがそういう国の中にあるから、ソビエトも出ていくということにもなるわけですね。そんな意味では、アフリカにしてもそれから中東にしても、相対的に軍事力をビルドアップするからといって、そこでソビエトの参加、介入がなくなるというような問題ではどうもないような気がするわけで、ソビエトが軍事顧問団を送っている国というのはほとんどこのLLDC国家が多いわけでして、やはり問題は、何か米ソ軍事対決というよりは南北問題のしっかりした解決にあるように、特にアフリカあたりを見ていて思うのですけれども、いかがですか。
  160. 武藤利昭

    ○武藤説明員 南北問題は私の担当ではございませんけれども、経済協力を行います場合にいろいろの配慮があるということは事実でございまして、もちろん人道的な考慮もあるわけでございます。特に貧乏な国に対して援助を増大しなければいけないというのは、そのような人道主義的な側面に基づくということがあるわけでございますけれども、片や経済的な貧困が社会的な不安をもたらす、そこにまた政治的な不安が生ずるという要素が経済援助の中にあるということも、これもまた否定できないところではなかろうかと存ずるわけでございまして、アフリカ諸国に対してたしかわが国といたしましても最近援助を増大する方向にあると承知いたしておりますが、これはもちろんアフリカと日本との間の外交上の配慮ということもあるわけでございましょうけれども、それも、いま申し上げましたような非常に一般的な広い観点からの施策一つということがまた同時に言えると存じます。
  161. 横路孝弘

    ○横路委員 どうもちょっと余りわかっていないのではないか。私の方が主張したい点は、つまり対ソ脅威ということで対ソ戦略を優先させたアメリカの戦略というものが世界各地で行われているわけです。たとえばレーガン政権誕生して以来見てみても、日本に対する軍事力の増強の要請、中国に対するいま言った武器の売却、それから中東に対しては、要するに敵はイスラエルではなくてソビエトだということで、基地の提供、武器の売却を求めているわけですね、パキスタンに対しても多大な武器援助を行う、アフリカではナミビアの独立よりも南ア共和国との関係こそ大事だといって、これはOAUが会議をやってましたが、どうもそことの摩擦をむしろ強めている、中南米ではエルサルバドルに対して軍事援助を行う、これは逆にニカラグアなどをむしろソビエトに追いやるというような結果を招いている。  つまり、対ソ戦略ということだけを前提にしてやってきている外交というものが、むしろ世界に混乱を巻き起こしている側面があることをやはりしっかり見ていかなければいけないと思うのですね。  たとえば中東についても、先ほど中東と韓国だという危機についてのお話があったということですが、中東の危機といっても、ソビエトの問題のほかに、むしろ今日のイラン・イラク戦争のような当事国同士の、中東の国同士の戦争であるとか、イスラエルとアラブという、たとえば今度のイラクに対する爆撃だとか、レバノン危機と言われるような問題があるわけですね。それから国内におけるさまざまな問題というのを抱えている国もたくさんあるわけです。だから、中東における脅威といっても、これはむしろソビエトの脅威というより以上のさまざまな脅威というのがあるわけで、したがって、日本の中東外交というのは全方位外交にならざるを得ないという面があるわけですね。だから、ここら辺のところについても、つまり対ソ脅威一本で認識しているということなのですか。そうじゃないでしょう。そこのところを、アメリカに対して日本の立場というものをしっかり説明すべきじゃないかというように私は思うのですが、中東について、アメリカ側の脅威についての説明というのはどういうものであったのか。中東におけるソビエトの脅威というのは一体どんな形で具体的にあらわれるというようにアメリカは考えているのでしょうか。
  162. 大村襄治

    大村国務大臣 今回の私の訪米における会談におきましては、中東におけるソ連脅威ということについては米側から特にお話がなかったわけでございます。
  163. 塩田章

    ○塩田説明員 ハワイにおきます協議におきまして、先ほど、国際軍事情勢のブリーフィングの中で、中東地区と朝鮮半島についての説明があったということを申し上げましたが、朝鮮半島につきましては先ほどから申し上げましたようにいろいろ具体的に数字を挙げてどういう軍事的状況だということでございましたが、中東につきましては別段そういったような具体的な説明ではなくて、要するに世界における緊張の高い地区の一つであるという意味での説明にとどまっておりまして、具体的に、いまの中東地区における各国の軍事情勢でありますとか、そういうことについての説明があったわけではございません。
  164. 横路孝弘

    ○横路委員 中東というのは、ヘイグ長官がこの春に行って、基地の提供そのほかの話をしたけれども、どうもやはり、対ソ脅威ということよりは対イスラエルというような関係が湾岸諸国にも大変強かったようです。時間がなくなりましたので、細かい中東問題はちょっと省略いたしますが、いずれにしても、対ソ脅威だけでは世界の紛争というものを理解できないというところははっきりしてきているのじゃないかと思うのです。  問題は、これから対ソ外交というものを日本としてどうしていくかということなのですが、最近そんな意味で、アメリカに対抗したわけではもちろんないわけですが、西ドイツのブラント前首相の訪ソとか、イギリスのキャリントン外相とかが、ヨーロッパ戦域核とか、アフガン問題の解決のための努力というものをやっているわけですね。こういう努力というものを政府の方はどういうぐあいに受けとめておられるのか。  それから、国連の総会なども開かれるわけなので、ソビエトとの間の外相会議であるとか、実務的な会議であるとか、日本も外交的な努力というものを全く放棄していくのか、それとも努力されるつもりなのか。  ソ連との対話の窓口を開き交流を進めるべきだという意見もありますし、何か、先日の外務大臣発言を新聞で見ますと、余り米ソ対話を強調し過ぎることは、アメリカの世論に誤解があるからどうもまずいなんというような議論、意見が出てきたようでございますが、ヨーロッパの今日の努力というものを一体どう評価するかということと、日本がこれからどうしていくつもりなのかという点について外務省の方の御見解をお伺いしたい。
  165. 武藤利昭

    ○武藤説明員 西欧の国々、それぞれソ連との間に抱えております問題は国によりまして違うわけでございますが、種々の形の対話を続けまして意思の疎通に努力しているということはおっしゃるとおりでございますし、特に先般のイギリスのキャリントン外相の訪ソにつきましてお話がございましたが、これは御承知のとおり、その直前に、EC首脳会議におきまして採択されました、アフガニスタン問題解決のための国際会議提案をグロムイコ外務大臣説明するために、モスクワに行ったというのが目的だったと承知いたしております。  このキャリントン提案につきましては、残念ながらそのときにソ連側から必ずしも色のいい返事はなかったようでございまして、現実的な提案と思われないというようなコメントがあったようでございますが、必ずしも全面的な拒否とは解しておりませんで、今後ともできるだけそのような努力を続けて、アフガニスタンへの和平の道を開く努力を続けるというECの考え方につきましては、私どもといたしましても同感なわけでございます。  片や日本についてでございますけれども日本といたしましても、現在日ソ関係がむずかしいときにある。むずかしいときにあるだけに、日ソ間において努力しなければならないということは全くそのとおりに考えているわけでございまして、いろいろ実務面での対話というものは継続して行われておりますし、今後とも継続はして対話努力は続けていく。そのような過程におきまして、日ソ間において意思の疎通を図り、ソ連側の理解も得まして何らかの打開をもたらしたいと考えているのが現状でございます。
  166. 横路孝弘

    ○横路委員 対ソ認識について、サミットの場でまたレーガン大統領と鈴木総理大臣が会って再調整を行うということのようですが、共同声明を見てみると、全体としてアフリカ、中南米の果てに至るまで、ある意味で言うと対ソ脅威ということが述べられているわけですね。ただ、中身はどれほど内容として一致しているのかということになりますと、アメリカの外交そのものが、レーガン政権が誕生して今日までの外交はどうも対ソ戦略だけで、あとさまざまな政策をとられた後にむしろ混乱を巻き起こしている要素が大変強くあるわけで、やはり日本としての立場からの主張をしっかりなすべきではないかと思います。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕  最後に、国会が終わってどうもさっぱり進展していないようなんですが、例のサケ・マスの日本海におけるはえなわの切断の問題、すでに二カ月経過しているわけですが、これは一体どんな状況にあるのか。被害額がもう大体出ているはずであります。  日昇丸の方も、国会をやっている間は一生懸命アメリカの方に言っておったようなんですが、国会がなくなった途端に全然進展していない。  これは弁護士の方がいろいろ交渉しているわけですが、不満を漏らしているわけでして、この二つの事件について現状はどうなっているのか、それからこれからの見通しはどうなのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  167. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 まず、はえなわの方から申し上げます。  はえなわの問題につきましては、現在水産庁が中心になりまして被害額について取りまとめをしておりまして、若干の資料の整備等ができているように聞いております。  これは横路委員御承知のとおり、当事者とそれからアメリカ側、もしアメリカ側が与えた損害というのが明らかになればアメリカ側との交渉になるわけでございますが、外務省としても関係各省との協議の場に省員を出しておりますし、補償の点についても、当事者にはなれないわけでございますが、必要な援助はしていきたいというふうに考えております。  次に、日昇丸とジョージ・ワシントン号との事件でございます。  二つの側面がございまして、一つはいまお尋ねになりました補償の問題、補償の問題についてはすでに、日昇丸の弁護士の方と人身損害及び船体の損害について話し合いがあり、その日本側の要求というものがアメリカ側に提出されているというふうに承知しておりますし、その間において私たちも、弁護士の方からのいろいろな御依頼を受けて、アメリカ側に対して側面的な援助はしているわけでございます。  それからアメリカ側の事故の究明の方でございますが、これは御承知のとおり五月の五日でございましたか、ニューヨークにおいてアメリカ側から中間報告が出て、さらに首脳会談でもこの問題が取り上げられ、わが方から、最終報告をできるだけ早く出してほしい、そして国民の納得を得るようにしたいということを言い、先方も、できるだけ最終報告を早く出すようにするということでございます。その後六月の二日のアメリカ側の発表によりますと、最終報告書は、第七艦隊司令官から太平洋艦隊司令長官に対して調査報告が提出され、終局的にはさらに海軍作戦部長あるいは海軍長官にこの報告書が上げられるということになっているわけでございます。国会が終わったからといって私たちがアメリカ側に督促するのをサボっているわけではございませんで、アメリカ側に対しては、せっかく中間報告を出してくれたので最終報告も余り日を置かずに出してくれるように督促をしておりますし、アメリカ側も、在京アメリカ大使館の説明によれば、日本側の督促を待つまでもなく、中間報告それ自体を異例のスピードで出したのであって、やはり最終報告もできるだけ早く出すように本国政府に具申しているということでございます。  現在の時点でその報告書がいつ出るかということをまだここで申し上げるまでに至っていないのは大変残念でございますが、私たちとしても最終報告が速やかに出るということを期待しているわけでございます。
  168. 横路孝弘

    ○横路委員 その原潜事故の方の報告書は、五月二十日のマンスフィールド・園田会談のときにもう何かワシントンに行っているような話だったんじゃないですか。
  169. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 マンスフィールド大使は、太平洋司令長官に出されて、恐らくすでに、あるいは現在その会談をしているときにワシントンの方に行っているかもしれないということだったわけです。その後の発表ではまだ太平洋艦隊司令長官の手にあったということでございます。
  170. 横路孝弘

    ○横路委員 日本海のはえなわの方、これは普通の事件の場合、被害額を確定させるためには、まず加害者と協議しないと被害額の確定というのは確定しないでしょう。どうなんですか。こちらの方の取りまとめは行って、これから加害者の方に出すわけですね。これはどこに出すのですか。これからの段取りはどういう話になるのですか。
  171. 中島達

    ○中島説明員 先生御案内のとおり、被害額につきましては水産庁が中心になりまして先般取りまとめを終わったわけでございます。  今後の過程でございますが、先ほど外務省の北米局長から御説明がありましたとおり、現在若干の被害状況の取りまとめの資料整理の作業が残っておりますので、これを速やかに済ませるとともに、またこれを加害国と見られる外国に対しましてどのように要求を出していくか、こういったものについて、関係の省庁あるいは道県その他、関係者と目下協議中でございます。  したがいまして、この被害額は被害者の側からの取りまとめた数字ということに相なるわけでございまして、これは当然被害者から加害者へ要求していく、そこでその当事者間の折衝によりましてその問題の解決が図られるという性格のものであるというふうに認識しているわけでございます。
  172. 横路孝弘

    ○横路委員 それは外国といったって、どこに出すのですか。
  173. 中島達

    ○中島説明員 目下完全な資料整理が終わっているわけではございませんが、これまで被害者あるいは関係の道県からいろいろ情報を得ていま整理をしている内容から見ますと、被害船によりましてその被害を受けた状況は千差万別でございまして、また加害船と見られる艦船の視認状況につきましても千差万別であるという状況でございますが、艦船の番号を見たという情報の中には、この番号は米国の艦船と見られる番号もございますし、またソ連の艦船と推測される番号もあるわけでございます。したがいまして、加害国と見られる外国といえば、私どもアメリカ及びソ連というふうに思っているわけでございます。
  174. 横路孝弘

    ○横路委員 アメリカ、ソビエトに申し入れてどうするの。アメリカの方からもソビエトの方からもいままで対応は来ているわけでしょう。そうすると、大体見当がつくのは、ソビエトは関係ないと言う、アメリカの方は、自分の方もやったけれども、ソビエトも一緒にやったんじゃないかというようなことになった場合に、この話はどうなってくるのですか。これは金額とすると八千八百万ぐらいですね。しかし、サケ・マスの漁業というのは大変零細なんです。大体七月いっぱいぐらいに決着がついてお金がおりるだろうとみんな思っておったら、これは話がいつになるかさっぱりわからないということですね。  この申し入れをするのは大体どのくらいかかるのですか。そしてそれから後、アメリカ、ソビエトの対応によってどんな話になっていくのですか。
  175. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 アメリカの例をとって一般的に申し上げますと、日昇丸の例がございますので、被害額が確定するとアメリカの海軍、まあ日昇丸の場合は在日米海軍になりましたけれども、この場合に在日米海軍になるかどうかわかりませんが、そこに日本側の請求書を出す、そしてアメリカの法律体系によれば、外国人請求法ということによって行政措置で救えるものがあるわけでございます。これは人身、今回人身はございませんけれども、船体あるいは荷物の場合には、一件百万ドル以下については海軍長官がその裁量で出せる、それを超えるものについては議会の承認を得る、こういうことでございますので、そこで行政救済ができれば行政救済、できない場合に、御納得が当事者間でいかない場合にはアメリカの裁判所に訴える、こういうのが手続でございます。
  176. 横路孝弘

    ○横路委員 これで終わりにしますが、その出す期限だけ答えてください。アメリカ、ソビエトに対していつごろ出すのか。ともかく、これは早急に決着をつけてもらわないと、網を破られた方は、日米の合同演習をやる、それに参加する艦艇とそれを監視するソ連船ということで被害が出ているわけですね。ですから、漁民の人たちには全く責任のないことなんで、どちらかというとやはり合同演習をやった方に責任があるわけですから、ともかく早急に解決するように急いでやっていただきたいと思うのです。  それはいつまでに出すつもりなのか。まだ出してもいないのでしょう。だから、それも早くやってもらいたいと思うのですが、それだけお答えいただいて、終わりにします。
  177. 中島達

    ○中島説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、まだ若干の作業の残っているのと、それから、外国への提示の仕方についての関係者間の協議を終えていない段階でございますので、これを早急に終えまして、速やかに外国へ提示して問題の解決を図りたいと思っているわけでございます。  ただ、先生いま御指摘のいつまでという明確な日にちというものは、そういう作業がまだ残っておりますので、明確に何日までというふうにお答えをいたしかねるわけでございますが、できるだけ早くやりたいと思って鋭意努力をしているわけでございます。
  178. 坂田道太

    坂田委員長 次に、市川雄一君。
  179. 市川雄一

    ○市川委員 今回のハワイにおける事務レベルでの協議から、大村・ワインバーガー会談に至る日米防衛問題をめぐることで、日本としてどういう対処をなさろうとしているのか、こういうことを中心にきょうはお伺いしたいと思います。  午前中からのやりとりをずっと伺っておりまして、新聞にはかなり具体的な数字がいろんな形で出ておるわけですが、長官は、ワインバーガー長官との会談では数字は出なかった、こうおっしゃっているのです。  そこで、まずお尋ねいたしますが、ハワイでの事務レベル協議における、先ほどから対話の一試案として向こうが出してきた、こうおっしゃっておりますが、その中身について、防衛庁としてはどういう受けとめ方をされているのですか。
  180. 塩田章

    ○塩田説明員 中身についてどういう受けとめ方をしておるかというお尋ねでございますが、お尋ねの御趣旨が必ずしもよくわかりませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、アメリカとしては、グローバルな現在の国際軍事情勢の中にあって、アメリカとしての防衛努力をいろいろやっているわけですけれども、それと関連しまして、現在の時点では決してアメリカだけの力で対応できるものではない、ヨーロッパ日本を含めた同盟国の協力が欲しいということを言っておるわけであります。そういう一環としまして、ヨーロッパにもあるいは日本にもいろいろな期待を寄せて表明してきておるということであろうと思います。  その場合に、日本につきましては、先ほど来申し上げておりますように、現在の日本の、みずからの国土の領域あるいは周辺海空域あるいは一千海里程度の海上防衛というようなことにつきまして、現在の自衛隊ではいろいろ欠陥があるのではないかということを、試みの数字としてではありますけれどもアメリカの見解を示してきたということでございまして、私どもはそれはアメリカの見解として聞くべきものは聞いていきたいと思っておりますが、われわれ自身の問題としまして、日本防衛努力をみずからいま行っておりますけれども、その中で、日本の立場を堅持しながら、アメリカのそういったものも意見としては参考に受け入れていってもいいんではないかというふうに考えているわけであります。
  181. 市川雄一

    ○市川委員 ハワイで事務レベルの協議があって、かなり日本の予想を上回る日本防衛力増強についての案が示された。大村長官は十六日の午前の閣議後の記者会見で、研究発表会ではないかと思うほどだ、意外と言えば意外だ、軍事専門家はきつい見方をするものだと思う、こういうことをおっしゃっておるわけですね。相当意外感を強調されている。この時点で外務省から、恐らく国防専門家の立場からの意見だからきついものが出てきたのだろう、しかし恐らくアメリカ国務省レベルではもっと違うのではないかという意見外務省筋から流されて、そういう期待をやや持ちながら大村長官アメリカに行かれた。ところが、アレン大統領補佐官から、日本に対する防衛力増強要求は要するにアメリカ一致した意見だということで、バチっととどめを刺された、こういう経過だったと思うのですね。そういう経過の中で、宮澤官房長官が、無理な注文だ、アメリカ日本では国際情勢認識に多少ずれがあるという発言がそこから出てくるわけですね。  ですから、まず対話一つの試案だ、試案だという、何かアメリカ側から出てきたものを参考にしてくださいという程度で出た程度に下げよう、下げようとなさっていますが、そうではない。どうも流れの中で見ますと、アメリカは相当強い要求を日本にはっきりと出してきている、こう私たちは見ているわけですが、その点について、ただ単に対話の試案程度のものにすぎないのですか。ただ対話していく材料である、そうではないのです。やはりアメリカ側から出ている案はそれ一つしかないのですから、しかもそれが国務省レベルでもアメリカ政府一致した意見なんだ、こういう形で言ってきているわけですから、これは相当有力な日本に対するアメリカとしての防衛力増強要求の案である。有力であって、しかもそれをそのままやってもらいたいと思っているぐらいの強いものではないかと、私はこういうふうに思うのですが、その点はどう認識されていますか。
  182. 大村襄治

    大村国務大臣 ハワイ協議、また今回の私の訪米の一連の会談を通じてのお尋ねでございますが、私は、この日米間の安全保障問題、特に防衛問題についての話し合いというのは、首脳会談共同声明第八項に記されているとおりでして、継続して協議するということが首脳間で合意されておるわけでございます。その一環として事務レベルあるいは大臣レベルの協議期待する、こういうことでございますので、ハワイの事務レベル会談に示されました数字というのも、この継続的協議あるいは間断なき対話の参考としての数字であるというふうに受けとめているわけでございます。また、現にそういったものを総合しての考え方はいまだに示されておらないわけでございますし、私がワシントンへ行きましてからも、責任者の口からは具体的な数字は全くと言うに近いほど出なかったわけでございます。  そういうふうに、日米間の対話を続ける過程において出た数字ではございますが、それならば担当者が勝手に出した数字かと言いますと、これはやはり公式な協議機会でございますので、それなりに背景はあるのではないかというふうに思われるわけでございますので、そういった考え方の問題も含めまして、今後の対話協議機会に確かめながら、わが方の考え方に沿うものにつきましては、現在進めている作業の中にも取り入れる努力をやってまいりたい、さように考えている次第でございます。  なお、念のために申し上げておきたいと思いますが、私、ワシントンにおきましてまずワインバーガー国防長官と約四時間会談し、へーグ国務長官とは約三十分、そしてアレン顧問とは約一時間、会談を持つ機会を得たわけでございます。それぞれの立場あるいは時間の長短等によりまして、会談の内容は必ずしも全く同じというわけではございませんでしたが、私はわが国の——その前に国際情勢認識等についてのお話、これは一致を見たわけでございますが、それに対応する防衛努力につきましては、わが国の現在進めようとしております事柄について考え方説明いたしたのでございますが、それに対しまして、一応は理解できるけれども、決して十分とは言えない、むしろもっと早く、もっと大きくやってほしいという要望がその三人の方からいずれも出たという点は、これは先方の関係責任者の間におのずから一致した見解があったものであるというふうに私も受けとめたわけでございます。  そこで、さらに継続して協議をするようにいたしたいということを私からも申しまして、先方もこれを了承した、こういう経緯でございますので、念のために申し添えておきたいと思います。
  183. 市川雄一

    ○市川委員 限られた時間を有効に使いたいので、もうちょっと、なるべく聞いていることにお答えいただきたいのですが、要するに率直に申し上げまして、官房長官は無理な注文だ、過大だ、こういう受けとめ方を率直に記者会見で述べられたわけですね。防衛庁長官も、意外と言えば意外だ、きつい見方をするものだ、だから防衛庁の予測を相当上回ったものがハワイで数字として出てきた、それは相当過大なものだ、こうやはり思っていらっしゃるわけでしょう。どうですか、長官
  184. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま申し上げましたように、話し合いの過程で参考として出された案としては厳しいものもあるという感じは、当時持ったことは事実でございます。
  185. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、先ほどハワイ会談では即応性、指揮・統制・通信、それから継戦能力、装備の近代化、こういう四項目の要望であった、こういうお話でございましたが、アメリカの方で特に言ってきた優先順位というものはあるのですか。それはどうですか。
  186. 塩田章

    ○塩田説明員 アメリカ説明の仕方からいたしまして、その四つのどれに優先ということはないというふうに私は受けとめております。
  187. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、長官にお伺いしますが、長官が行かれたときは数字が出なかった。当然だと思うのです。ハワイでもう数字を出しているわけですから、同じ数字を出しても意味がないということで、恐らく大枠の話をされたのだろうと思うのですよ。長官のこの報告書の中にもありますが、米側は一貫して「防衛計画大綱」は五十一年ごろできたのだ、したがって、今日と国際情勢が変わったのだということを非常に強調していますね。それが一つ。それからもう一つは、大綱達成のゴールが遅過ぎる、もっと早めろ、この二点を非常に強調しているわけですが、これに対して長官としてはどういうふうに答えたのですか。  国際情勢が「防衛計画大綱」が作成された五十一年ごろと今日では全く状況が変わった、ワインバーガー長官がこう言って、大村長官は、国際情勢については基本的に認識を同じくしている、こういう発言をされていらっしゃるわけですが、ということは、国際情勢は変わった、だから要するにアメリカの言わんとしていることは、もう「防衛計画大綱」ではだめだということを言わんとしているわけでしょう。ところが、日本は「防衛計画大綱」をまず達成するのです、こう言っているのでしょう。ところが、向こうは国際情勢が変わったということを認めるなら「防衛計画大綱」を見直せばいいじゃないか、こういう話がすぐ出てくるわけです。ところが、長官は、状況が変わったということについては、国際情勢については基本的に認識を同じくしていると言っているが、この辺、違いがあるのかないのか。あるいは国際情勢は変わったのだけれどもアメリカの言うように「防衛計画大綱」を見直す必要はないという立場なのか。アメリカは見直せという立場できている。これは見直しません、見直す必要はありませんという形で米側に話をされたのですか。どうですか。
  188. 大村襄治

    大村国務大臣 大綱策定当時の国際情勢と今日との間には非常な変化がある、この点については見解は異にいたしておりません。一致いたしております。  大綱の評価につきましては、先方はすでに古いのではないか、アップ・ツー・デートではない、そういう見方をしているようでございます。  私は、わが国の今日の状況におきまして、憲法、国防に関する基本原則、そしてまた行革、財政再建等の諸状況からいたしますと、いまだ達成されておらない「防衛計画大綱」を達成することが、わが国防衛力の増強に資する最も実際的可能な方策だ、その早期達成について四月の末に国防会議を開いて、これを基本として次の中業の見積もりの作業を始めることを了解を得たばかりである、この目標に向かって進んでまいりたい、また、これが達成できれば、ハワイ会談等で参考に示されましたような事柄についても相当に実現できる可能性もあるのではないかと考えている、という趣旨のことは説明したわけでございます。  それに対しましても、先方は、長い間傾聴はしておったわけでございますが、結論といたしましては、なお一層努力してくれ、こういうことでありましたが、私は、わが方も努力するので今後ひとつ対話を継続していこう、こういうことで先方もこれを了承した、こういう次第でございます。
  189. 市川雄一

    ○市川委員 「防衛計画大綱」というか防衛白書には、何回かこの委員会でも問題になっておりますけれども、いわゆる国際情勢が当分の間大きく変化しないという前提で、基盤的防衛力構想に基づいて「防衛計画大綱」ができた。これは五十一年ですよね、できたのが。そうすると、ことしは五十六年ですから、すでに五年たっているわけでしょう。当分の間大きく変化しない、もし情勢に大きな変化が生じてこの前提が崩れた場合は、当然これに見合って防衛力の拡充強化を行わねばならずと、こう書いてあるのです。恐らくアメリカが言わんとしていることは、計画大綱が前提とした国際情勢は変わった、だから大綱を見直しなさい、こう言っているわけでしょう。防衛庁としてはどうなんですか。国際情勢大綱をつくったときよりは大きく変わったけれども大綱を見直すに足るほどの大きな変化ではない、こう見ているのか。これはどうなんですか。
  190. 大村襄治

    大村国務大臣 大綱基本的考え方につきましては、先生御指摘の点もございますが、国際情勢に策定当時とは大きな変化が生じていることはそのとおりであると思うのでございますけれども大綱に示されております基本的な考え方は、平時において備うべきいわば最低限の考え方であるというふうに私、受け取っておるわけでございまして、そういった意味合いにおきましては直ちにこれを変えるまでの必要は生じてないのではないか、私はそう考えているわけでございます。  なお、これと関連しまして別表もございます。別表についてもまたいろいろ御意見があるということも承知しているわけでございますが、基本的な考え方についてのお尋ねでございますので、以上お答えをしたわけでございます。
  191. 市川雄一

    ○市川委員 そうすると、計画大綱の策定された五十一年ごろと現在では国際情勢は変わった、変わったけれども計画大綱を見直すほどには変わってない、こういう認識だというふうにいまの答弁を受け取りました。  そこでお伺いしますが、どうも最近の防衛庁政府の論議を伺っておりますと、実際は何かちょっと大綱を障害視して実質的に形骸化していこうという感じ印象を受けるのですが、国際情勢は変わったのだけれども、未達成だから、当面のよりどころとして大綱をまず達成するのだという意味での大綱達成なのか、国際情勢は変わったけれども大綱を見直すほどの変化ではなかった、したがって大綱はあくまでもこれからも堅持していくのだ、こういう意味での大綱堅持なのか、どちらなんですか。
  192. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  先ほど申し上げましたように、国際情勢は変わりましても基本的な考え方は変えるまでに至ってない、こういう認識でございます。  また、大綱策定以来、大綱基本的な考え方に沿いまして、これまでの中業等で大綱の目指す点が着々進行中でございます。その成果が上がりつつあるときに、もとから変えるというよりは、むしろこれを既定の方針に従って伸ばしていくことが、わが国防衛力実質的に高める上で寄与するゆえんではないか。  そういう意味で、最近の国際情勢の推移等も念頭に置いて、大綱の水準の早期達成ということをお願いしているところでございます。
  193. 市川雄一

    ○市川委員 対ソ脅威論、先ほどからいろいろ議論がありました。なるべく重複しないように御質問したいと思います。  国際情勢認識では一致した、ソ連脅威でも、ソ連軍事能力が非常に増強されたという点では一致したんだ、しかし、増強されたソ連軍事能力に対してどう対応するかという対応では日米間に違いがあるんだ、こういうふうに説明されていたと思うのです。  また重要なこととして、いままで日本潜在的脅威だ、いわゆる能力と意図であって、能力が高まった、しかし意図は可変的、いつ変わるかわからない、こういう説明をされてきたわけですが、ソ連の意図ということについてハワイ会談で突っ込んだ議論が行われたのですか。  ソ連脅威ソ連の能力については、極東でこういう能力がかなり増大されたとか、いろいろなことの議論が行われたと思うのですけれどもソ連がこれから一九八〇年代半ばに向かってどういう世界戦略に出てくるのかという、そういう意図について、かなり突っ込んだ議論が行われたんじゃないんですか。どうなんですか。ソ連がどんな意図を持っているという議論が行われたんですか。
  194. 塩田章

    ○塩田説明員 軍事的能力の面についての議論でございまして、意図について特段の議論をしたわけではございません。
  195. 市川雄一

    ○市川委員 新聞の報道によりますと、いろんなことが言われておるわけですが、大体共通して言っていることは、欧州、中東、アジアの三正面同時作戦能力をソ連が持つに至った、中東が引き金になる、アメリカがアジアからスイングする、極東が手薄になる、したがって日本は手薄になって、同時多正面ですから、恐らく朝鮮半島から日本ソ連侵攻が考えられる、だから日本防衛力をやってもらいたいんだ、しかもその時期としては八五年が一番危機なんだ、ほぼ各新聞ともそういう話が、米側一つソ連側のシナリオとして出されたというふうに報道されていますが、そういう話し合いは全くなかったのですか。
  196. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほども申し上げましたように、三正面といいますか、多正面で同時に行動を起こし得る能力が出てきたという議論はあったわけでございますけれども、意図についての議論があったわけではございませんで、いまのお話のように、中東でどういう事態が発生するとか、発生するであろうとか、そういった意図に絡んだ議論があったわけではございません。
  197. 市川雄一

    ○市川委員 ソ連脅威論について、日米間で完全に一致しているんですか。どうですか。
  198. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほど来申し上げておりますように、軍事的能力の認識については一致しておるわけであります。
  199. 市川雄一

    ○市川委員 いまのは、軍事能力については一致しているけれども、意図については一致していないという意味ですか。
  200. 塩田章

    ○塩田説明員 意図については議論をしていないわけでございますから、一致しておるとか、していないとかいうことではなくて、先ほど来先生もおっしゃいましたように、軍事的能力についての認識一致しているが、対応がどう対応をとるかということについては、それはそれぞれに国の事情があるだろう、こういうことでございます。
  201. 市川雄一

    ○市川委員 軍事能力についての認識一致した。その次、防衛庁が何遍もおっしゃっているように、能力と意図だ、こう言っているわけでしょう。意図は可変的だ。この意図をどう見るかということによって対応が出てくるわけですよ。意図を話し合わないで、対応は違いますと言うことは、話がおかしいじゃありませんか。意図も話し合ったわけでしょう。違うのですか。  能力の見方は一致した。今度は次に問題になるのは、ソ連がどういう世界戦略でどういうふうに出てくるのか。これは意図でしょう。そうすると、意図の認識が違うと対応の仕方が変わってくるのじゃないですか。どうなんですか。それを意図を全く議論しないで、対応が違います、対応が違いますと言うのは、よく納得できないのですけれども、それはどう思われますか。
  202. 塩田章

    ○塩田説明員 ちょっとそこは先生と私、見解が異なると思います。というのは、意図というのはやはりわかりませんから、わかりませんものを前提にして議論してもあれなので、やはり私どもとしては、軍事的能力というものに着目した判断をせざるを得ないというふうに考えるわけであります。
  203. 市川雄一

    ○市川委員 要するに意図についても議論した、あるいは意図についての一定の考えはある。だけれども、それは言えないということだろうと思うのですよ。意図は全くわからないというのじゃ、これは作戦の立てようがないじゃありませんか。これから計画大綱もヘチマもなくなってしまいますよ。大体こういう意図じゃないかということで、計画大綱だってできたのでしょう。ソ連が単独で、日米安保条約があるから、まさかソ連は米ソ戦は覚悟しないだろう、だから安保条約が働かない程度の攻撃がソ連からなされるのじゃないのか、ということになれば奇襲だ、奇襲的であって、限定的であって、小規模だ、そういうことで大綱が作成されたわけでしょう。だからある程度意図を読んでいるわけでしょう。意図を読んでつくっているのじゃないか。  いまの答弁では全く満足しないのですが、そこで、やはり意図が違うのですよ、意図の読み方が。だから、そういう意味では対ソ認識がかなりかけ離れているのです。それを無理して一致させるから、過大なものを持ってこられたときにノーと言えなくなってしまうのですよ。その辺をもっと日本らしい、独自のソ連の分析というものをしっかりお持ちになって対米交渉をやるべきである、こういうふうに思うのです。  たとえば米側は、ソ連脅威に関して、ソ連の意図についてはわれわれにとってどのくらい時間が残されているのかわからない、かなり切迫感を向こうは持っておるわけでしょう。意図はわかりませんなんてアメリカは言っていませんよ。どのくらい時間が残されているかはわからない、そういう意味では緊急時の対応を日本に迫っているわけですね。日本もそういう、どのくらい時間が残されているかわからないというような、切迫したソ連の意図を感じているのかどうかということです。感じてないのだろうと思うのです。またそれは当然だと思うのです。そういう違いがあるのではありませんか。どうですか。だから、違いは違いとしてはっきり違うのだとおっしゃった方がいいのじゃありませんか。これから過大なものを要求されないで済むのじゃありませんか。その点どうですか。
  204. 塩田章

    ○塩田説明員 いろいろな表現で時間がないといいますか、切迫感を感じているという表現はあったことは事実であります。  それで、けさほども椎名先生の御質問で、私が、アメリカは急ぎ過ぎているような印象を受けるということを言いましたが、アメリカ自身も急いでおるということは言っております。急ぎ過ぎているという私の印象はちょっと取り消さしていただきたいと思いますが、急いでおるということはアメリカ自身も言っております。ですから、それを日本がどう受けとめるかという、先ほど申し上げましたように、軍事的能力についての認識一致している、だが、対応をどうするかという場合に、それは各国においてそれぞれの事情があってしかるべきだろうということでございまして、その点からやはり受けとめるべきことであって、アメリカが切迫感を表明し、アメリカとして急いでおるということの認識、気持ちは、それはそれなりにわかるわけですけれども、だから、日本としてはどう受けとめていくかということは、先ほど長官からお答え申し上げられましたような基本的な姿勢で整備を図っていく、こういうことでございます。
  205. 市川雄一

    ○市川委員 ですから、やはり能力を認識して、意図を予測して、それで対応を考えるというのが当然だと思うのです。それを意図は全くわかりません、考えていませんと言うのは全く納得できないのです。  そこで、対応は別々だ、防衛庁長官大綱水準をまず達成するのだ、だけれども、それじゃ対ソ脅威に対する答えになっていないのじゃないでしょうか。やはり対ソの脅威というものが本当に日本にあるのかということですよ。日本にとってソ連脅威とは一体何かということ、これがはっきり分析されていないと国民は納得しないのじゃありませんか。本当に脅威があるならば、これは備えなければなりませんよ。うその脅威で備えたのじゃこれはかなわない。それを潜在的脅威なんというわからない言葉でごまかしてはいけないと思うのです。ソ連が本当に日本にとって脅威なのか。私も全く脅威でないとは思いませんよ。軍事力というのは、他国を攻撃しあるいは軍事力に物を言わせて自国の政治的意思を通すという意味におきまして、そういう性格を持ったもの、そういう軍事力ソ連においてふえてきたということは一定の脅威だと思う。脅威だと思うけれども、ただ、日本が直ちに、世界国家であるアメリカと同じような対ソ脅威論を唱えて、防衛力を急激に国民的なコンセンサスも破壊するような形でやるべきなのかどうなのか。これは全く違うのじゃないか。そういう意味で、ただ「防衛計画大綱」をまず達成するのですということを唱えているだけでは答えになっていない。先ほどから何回かほかの方も指摘されておりますけれども日本にとっての対ソ脅威というのは一体どういう脅威なんだ、国民にわかりやすく言うべきだと私は思うのです。その点についてどうお考えですか。
  206. 大村襄治

    大村国務大臣 ソ連軍事力が最近非常に増強されているということは否めない事実であると思うわけでございます。また、ソ連としては、増大しました軍事力の相当の部分を極東地域にも配備しているわけでございます。  一方、意図は何であるかにつきましてはいろいろ言われておりますが、意図というのは情勢によって変わるものでございますので、なかなかこれだというふうに断定するわけにはまいらないと思うのでございます。  ただ、ハワイ会談あるいはワシントンにおける会談におきましても、ソ連の極東における軍事力のうち、陸軍は主として中国向けであろうが、海空軍、特に最近の質の改善の点を見ると、全部が中国向けとは思われない、こういうふうな見解も表明されているわけでございまして、日本といたしましても、防衛努力を怠った場合には、軍事力を背景として直接もしくは間接の政治的行為の対象とされる可能性が絶無ではない、さように考える次第でございます。  そこで、わが国として、平時において備うべき最低限と考えられます大綱の水準を早急に達成することが肝要である、と同時に、日米安保条約の有効なる運営を目指して必要な努力をあわせて行うことがわが国防衛を進める上で最も肝要ではないか、そういう考え方に基づきまして、私はワシントンにおける協議にも臨んで、その点を米側にるる説明したところでございます。
  207. 市川雄一

    ○市川委員 もう一つは、日米会談を見ていまして感じることは、「防衛計画大綱」は先ほど申し上げた小規模・限定的侵略、こういう想定ですね。二国間の戦争を想定しているわけですね。単独で特定はしていませんが、恐らくソ連だろうと思いますが、ソ連日本をさっき申し上げたような形でやってくる。  しかし、どうもアメリカが要求している防衛力の中身というのを見ますと、やはり対潜能力あるいは南西、南東航路ですか、シーレーンの面のカバー、その防空能力、したがって日米安保条約があるんだからソ連日本を単独で攻めるなんということはない、むしろ中東で事が起きそうだ、起きた場合にアメリカがスイングする、そうするとそのすきをついてソ連は朝鮮半島から、アメリカの表現をかりればソ連共同した北朝鮮ということを言っておりますが、朝鮮半島から日本に攻撃があるだろう、だからむしろソ連向けのいわゆる北西太平洋でのシーレーン並びに面のカバーをしっかりやってくれ、言ってみれば、アメリカは、米軍と自衛隊をセットにした相互補完としての能力の向上に重点を置いて要求してきているんじゃないかというふうに思うのです。その辺、アメリカの考えていることと日本の考えていることとの間に大きな食い違いがあるとぼくは思うのです。その辺はどうお考えですか。
  208. 大村襄治

    大村国務大臣 この日米の間の日本防衛に関する考え方についてでございますが、これはガイドラインにも記されておりますとおり、日本日本の領域並びに周辺海空域におきまして主として防勢的な防衛措置を講ずる、アメリカはこれを補完し、また攻勢的な面を受け持つということが記されておるわけでございまして、その点はいまに始まったことではないというふうに理解いたしているわけでございます。
  209. 市川雄一

    ○市川委員 官房長官、お忙しいようですから先にお聞きしたいと思います。  官房長官、七月一日の記者会見で非常にいいことをおっしゃっているわけですね。先ほどから申し上げたのですが、ハワイ会談があった、そこで防衛庁長官も意外だと思うような、あるいはきついと思うような案が出された。外務省はある意味では最初たかをくくっていた。あれはまあ防衛専門家の意見だからきついのだ、もっと国務省レベルになればソフトなものになるのだ。ところがその期待はみごとに大村・ワインバーガー会談で裏切られた。あるいはアレン大統領補佐官との会談で、あれはアメリカ政府一致した意見ですよと。もちろんハワイ会談で出されたものそのものを指したのかどうかわかりませんけれども、いずれにしても、ハワイ会談で出た試案に象徴されるようなアメリカ日本に対する期待というものは、単なる国防省のものではありません、政府全体の一致した意見です、こういうことがあった。そこで官房長官は、米側要請は無理な注文だと思う、われわれが最大限努力していることはだれに向かっても恥ずかしくないと言える、これ以上ふやせと言っても無理なことだ、日米間の差は越えがたいとは思っていない、国際情勢の見方、厳しさについては多少の違いがあるかもしれない、対処の仕方では同じスピードを日本に求めても同じように対応はできない、日本がやれることもあるしゃれないこともある、これは国が違うのだから仕方がないことだ、こういう記者会見をなされた。  先ほどから防衛庁関係に伺っておりますと、どうも何か、日米友好というのはアメリカの言うことを全部、余りけちをつけないで聞くことみたいにこちらが錯覚するような御答弁で非常に残念に思うのですが、長官はここである程度日本の意思をおっしゃったと思うのですね。いま現在やはり同じお気持ちでいらっしゃいますか、どうですか。変わりありませんか。
  210. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国防衛につきまして最善の努力を尽くしていることは、私は疑っておりません。しかし、その努力のスピードが必ずしも外国、この場合アメリカから見て満足のいくものでないかもしれない、そういうことは私はあり得ることだと思います。けれども、これはわが国として最善を尽くしている限り、別にわれわれとしてはそのことを恥ずかしく思う必要はない、最善を尽くすことが大事なのであると考えております。  問題は、そのときに私が世界情勢認識、ことにソ連を中心とする自由主義国家群に対する脅威について日米間の認識に差があるかないかということについて、大きくないかもしれないが認識の差があるというふうに解釈されても仕方のないような答え方をいたしております。これはそうとった方が悪いのではなくて、長い問答でありましたが、むしろそういう印象を私の言い方が与えたと思うのでございますが。  そこで改めて申し上げますが、わが国がこのような憲法のもとで三十余年、われわれの日本人独特の平和及び安全保障についての哲学を持っておりますことは御承知のとおりで、これはよそのどの国とも違う。アメリカとも異なっておろうと思います。また、アメリカ世界平和の維持について持っております責任、あるいは責任感というものはわが国とはおのずから違ったものでございます。  さて、そういうことではございますけれども、そのアメリカにしてもわが国にしても、平和のために警戒すべき国はどのような国であるかということについての認識、それは実は異なっておるわけではない、大体の考え方一致しておるわけでございます。それらのことを総合して、認識が多少なりとも、異なるというふうに申しますよりは、むしろ国のあり方、哲学によって対応の仕方に違いはありましょう、こう申した方が誤解を招かない、私はそういうふうにただいま思っておりますので、そういうふうに申し上げさせていただきます。
  211. 市川雄一

    ○市川委員 官房長官は、同時にこの記者会見の中でもおっしゃっておりますが、アメリカが自由国家諸国に持っている責任日本が負うべき責任とでは規模と質が全く違う、こうおっしゃっているわけですが、もちろん私も全く同感なんです。全く違うと思うのですね。ですからこそ対ソ脅威認識にも違いが出てくるでしょうし、あるいは対応の仕方にも違いが出てきてあたりまえだ。ですから、私は、日米友好というものは非常に重要だということはよくわかります。しかし、全く全部向こうの言うとおりだというのは必ずしも友好ではないと思うのです。日本日本の独自の立場というもの、これをはっきり言うべきだと思うのです。防衛庁という立場では言いづらいということは理解できますけれども、官房長官、どうでしょうか。やはり憲法がある、あるいは国民的コンセンサスというものがまだ十分に固まっていない、たとえば大綱の六十二年度達成だってコンセンサスが固まったとは私は思っていない、あるいは福祉と他の諸政策とのバランスというか財政事情という問題がある、こういう中で、どういう必要性があってやるのですかと聞くと、対ソ脅威です、じゃどういう対ソ脅威ですかと聞くと、どうも対ソ脅威がはっきりしない、脅威があるなら備えなければならない、だけれども、どういう脅威があるのだと言うと、ただ軍事能力が増したからというだけの説明しか行われていない。こういう中で性急な防衛力の増強ということは、私は国民のコンセンサスを破っていくものになると思います。壊していくものになると思います。そういう意味で、これから日米間の交渉にあって、認識の違いは違い、日本の立場は立場、もっとはっきり言った方がいいんじゃないですか。どうも何か、会ったときには余り言わないで、後で日本へ帰ってきてから記者会見で物を言うという感じを受けるのですね。そうではなくて、肝心のワシントンに乗り込んだときにもつとはっきり言うべきことを言うという、日本政府の自主的な対応というものを私はしてほしいと思うのですが、こういう点について官房長官の御見解を承りたいと思います。
  212. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 共同声明におきまして日米役割りの分担を約束いたしておるわけでございますが、大事なことは、どの方向からの脅威に対して役割りを分担するかということで基本的な合意がありますれば、その脅威をどのように評定するかというようなことは二義的な意味しかないと私は考えております。つまり脅威の程度というようなものは定量的に申すことが本来できない性格のものでございますから、どういう種類の脅威に対してお互いが役割りを分担するかということの合意があって、そうしてその役割りの分担をわれわれは最善を尽くして行っていくということであれば、現実の政策決定の問題としてはそれで十分ではないかというふうに私は考えます。
  213. 市川雄一

    ○市川委員 もうちょっとお伺いしたいのですが、お時間のようですから結構でございます。どうもありがとうございました。  そこで防衛庁にまた戻りますが、防衛庁が平和・安全保障研究所に委託研究されていますよね。委託研究報告書が出されていますね。先ほどから、計画大綱をつくった当時と今日では国際情勢が変わったのだけれども、計画大綱を見直すほど変わったとは思っていない、あるいは大綱基本的な考え方を変える必要があるとは思っていない、こういう御答弁だったわけですけれども、しかしどうも防衛庁委託研究報告を読んでおりますと、いわゆる日本への侵略想定ですね、日本がどういう侵略を受けるかという想定で、いわゆる「防衛計画大綱」は米ソ戦はまずあり得ないという前提ですね。米ソ戦はない、小規模・限定的、だから小規模で奇襲的で限定的な侵略がなされるであろう、それに独力で対処する力を持つのだ、こういうことでできたもの、言ってみれば自己完結的な、それ自体が意味のある防衛力をつくろうとした考え方だと思うのです。  ところがこの委託研究報告によりますと、そういう想定そのものが非現実的である、ソ連日米安保条約下の日本を単独で奇襲的に来るなんという想定そのものが非現実的である、むしろグローバルな戦争、中東正面で何かがあった、米ソがぶつかる、もちろんすぐ戦略核ということではなくて、戦術核とか戦域核とか、そういう何かグローバルな米ソ戦に巻き込まれる形で、日本米軍基地なり日本が攻撃を受ける可能性の方が非常に現実的である、こういう報告をなさっているわけですよね。  この侵略想定が変わってきますと、それなら意味のある自己完結型の防衛力を持っても、それは持ちたいけれども、時間とお金に限りがあるから、そっちに使うお金をむしろ日米相互補完の方へ向けたらいい、こういう考え方が当然出てくるわけですよね。この報告書では、八〇年代の前半五年間はむしろ日米補完能力の方へ防衛力の整備を進めるべきだ、後半の五年間で自主防衛力の整備に当たるべきだ、こういう報告をしているわけですけれども、要するに、一方では「防衛計画大綱」は堅持していきます、こう言っているのだけれども、どうも当面の目標としてまだ達成してないから堅持します、こう言っている。つまり当面の目標にすぎないのじゃないか、そうするとやはり当面目標という認識しかないのじゃないのか。それともやはりグローバルウォーという設定の方向、日米相互補完の能力の方向へ行こうとしているのか。アメリカの要求もまさにそこにいま来ているわけですよね。こういう点について防衛庁として確固たるお考えがあるのかないのか、承りたいと思います。
  214. 塩田章

    ○塩田説明員 どうも先生のお話を承っておりますと、大綱考え方は自己完結型といいますか、それでいまアメリカが言っておる最近のいろいろの動きはいわゆる相互補完型といいますか、そういうふうに区別して前提に立っておられるように承ったわけですが、もう当然御存じのことでございますけれども大綱におきましても、やはり日米安保条約というもの、日米安保体制というものが日本防衛の根幹であることには変わりないわけであります。日本だけで日本防衛ができる、あるいはすべきであるという考え方ではなくて、日米安保体制とみずからの防衛力とでもって日本を守ろうとしておることについては変わりはないと私は思います。いま先生のおっしゃる相互補完というのは、大綱あるいは従前の日本考え方とは別だ、新しい考え方だというふうには私は思っておらないわけでございます。その場合、大綱考え方はもちろん日米安保体制を基軸にして、そういう意味での相互補完の立場に立っておって、なお平時における日本の持つべき防衛力としてどの程度のものを持っておくべきかという観点からいろいろ記述をし、別表に所要の水準を掲げておる、こういう考え方であります。その点は、当然の御認識と思いますけれども、念のためにまず申し上げさせていただきたい。  したがいまして、いま先生の御指摘の、防衛庁は当面まだ達成していないのだからとりあえず大綱まで達成するのであって、それは当面の目標だという考え方かということでございますが、私どもは、先ほど来長官からもお答え申し上げておりますように、国際情勢の変化ももちろんそれは変化として受けとめております。また、かねてから国会でお答えを申し上げておりますように、国際情勢の変化と国内世論の動向、あるいは経済財政事情、あるいは防衛力整備の達成状況といったようなものを勘案して、将来「防衛力大綱」についての検討をする時期があるかもしれないということはかねてから申し上げておりますが、そのうちのどれか一つといいますか、いまそのうちの第一点の国際情勢は変わった、変わったけれども大綱を変えるほど変わっていない、だから変えないのだ、こういう議論ではなくて、いま申し上げた三つの要素というものは、私どもは総合的に考えるべきものだというふうに思っておりまして、そういう総合的な意味で、いま大綱を変える、あるいは検討し直すというような時期ではない、とりあえず大綱の線に到達することを急いでやるべき段階である、私どもはこのように判断をしておるわけでございますので、そのように御理解をいただきたい。  平和研のレポートを挙げて御指摘があったわけでございますが、具体的にどういうレポートか、いまちょっと私はわかりませんが、恐らくそういう記述があるのだろうと思いますけれども、それはそれで一つの御意見と思いますが、私どもの立場はいま申し上げたような立場でございます。
  215. 市川雄一

    ○市川委員 なぜこういうことを申し上げるかといいますと、私たちもことしの三月アメリカへ行って、ワインバーガー長官やらとお会いしていろいろお話をしたのですけれどもアメリカ人たちと話して感じますことは、どうも日本の立っているスタンスというか立場が何か中途半端ではないのか、そういう印象を受けるわけですよ。今回のアメリカのたとえばハワイ会談での要求、先ほどおっしゃった即応性、指揮・統制・通信、継戦能力、それから装備の近代化、この装備の近代化というものは言ってみれば正面装備ですよ。この四つが、しかもプライオリティー、優先順位なしで出てきた。これはアメリカの言っていることも矛盾していると思いませんか。基地の抗堪性がない、弾薬が不足している、レーダーは古い、防空ミサイルは旧型だ、要するに正面ぴかぴかで後方ぼろぼろだということをさんざん言っておいて、したがって即応力がない、一つのまとまった戦力として有効なものではないと言っているわけです。それをやろうとしているのがまさに「防衛計画大綱」なわけでしょう。やろうとしていたのだけれどもアメリカから余り絶えず要求が激しいので、ついつい正面の方ばかり行ってしまったというのが実情ではないのですか。これまた正面の要求を聞いていると、またアメリカの言う即応性がない、指揮・統制・通信がだめだ、継戦能力がだめだということをずっと続けていくことになりませんか。  だから、そういう意味での日本防衛についての一つの確固たる考え方というか、日本自体の防衛にも何か大穴があるではないかと言われている、それから世界情勢が変わったのだからちょっと手伝ってくれ、補完の方も頼むよと、両方要求されている、その辺に問題があると思うのです。  したがって、五六中業において同じ愚を繰り返すのかどうかということなのです。やはり後方支援なり、そういう基地の抗堪性とか、レーダーサイトの近代化とか、いままで手をつけたくて手がつかなかった、むしろそれをきちっとさせることの方が先決ではないのですか。そういう考え方がはっきり腰が決まっていれば、アメリカに対してもうちょっと物がはっきり言えるのではないか。日本はアジアや世界において軍事的役割りを果たすことはできません、経済において貢献したい、こういう感じで見ますと、どうもスタンスがはっきりしていないし、考え方が中途半端だ、こう思うのです。五六中業作成に当たってその辺をどういう考えなのか、伺いたいと思います。
  216. 大村襄治

    大村国務大臣 五六中業の作業を進めるに当たっての考え方についてのお尋ねでございますが、ただいま先生の御指摘にありました即応能力あるいは継戦能力、抗堪性、こういった点につきましても私どもこれまでも必要性認識しておりまして、現在の五三中業におきましても織り込んでいるわけでございます。ただ、財政事情もございまして、これまでの進捗状況は乏しい、まだ十分ではないわけでございますが、五六中業におきましては一層その点に配意してまいりたいと思うわけでございます。  また、装備の近代化につきましても、これまでの中業におきまして相当数を予定して、これを毎年度の予算に織り込んで実行に着手いたしているわけでございます。それをさらに検討し、また兵器の進歩等の諸情勢も勘案し、できる限り近代化の促進も図ってまいりたい。その場合の数量につきましては、一応大綱の別表に定められているものの範囲内ということになるわけでございますが、質の向上におきましては、次の中業におきましてもできる限り織り込んでまいりたい。  ちょっと欲が多いように聞こえるかもしれませんが、私はやはり継戦能力、抗堪性、即応態勢と装備の近代化と両々相まって、初めて有効な防衛力になるものと確信いたしているわけですから、その間のバランスを図りながら、できる限り推進を図っていきたい、そうすべきである、さように考えているわけでございます。
  217. 市川雄一

    ○市川委員 もう一問、済みませんが。  防衛庁長官、予算が限られているのですから、アメリカにはっきり言ったらどうですか。限られた予算でやるとなると、継戦能力とか後方支援を充実しますと、正面にはそんな金は回せないのです、回したら、あなたがおっしゃるように、またこっちの方がぼろぼろのままですよ。予算がたくさんあるならこれは両方同時にやりましょうと聞けますけれども、そういうこともはっきり申し上げたらいかがでしょうかということを申し上げているわけです。  最後に、時間が来ておりますが、在日米軍の駐留費の問題に関連いたしまして、六月二十九日付の神奈川新聞におきまして、ホノルル二十七日共同通信の電報で、大村防衛庁長官は、五十七年度予算の編成に際して、在日駐留米軍経費日本側分担を施設費の三〇から四〇%増を中心に大幅上積みする方針を固め、二十九日の日米防衛首脳協議米側に提示する。その対象として、神奈川県の米軍池子弾薬庫跡地への米軍用住宅建設がその対象になっている。日米会談でそういう提案をした事実があるのかないのか、それがまず第一点。  それから第二点は、この池子弾薬庫の跡地につきましては、地元で全面返還の強い要求もあるし、ここへ国営大規模公園をつくりたいという要望もあるし、また地元で米軍住宅建設に強い反対がある地域でございます。そういう中で、五十七年度の施設庁の予算の中に、横須賀地区調査工事費五千万、正確にはちょっと欠けるようですが、この費用は池子弾薬庫跡地を想定した費用ではないかと言われておりますが、この費用の趣旨は、そういう特定の地域の調査として充てられているものなのかどうなのか、それが第二点。  第三点は、施設庁として、横須賀地区における米軍住宅の建設について、池子弾薬庫跡地との関連でいま現在どういう考え方でおるのか、これを承りたいと思います。  この三点。
  218. 大村襄治

    大村国務大臣 ワシントンにおける会談におきましては、首脳会談共同声明に記されております駐留米軍の負担の軽減の問題につきましては、一層努力を払いたいということを発言いたしましたが、具体的な問題はその場の話題にならなかった次第でございます。  池子地区の問題につきましては、施設庁長官からお答えさせていただきます。
  219. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)説明員 ただいま長官の方からお答え申し上げましたように、私もお供して行ってまいりまして、帰国してからこの新聞を見たわけでございますけれども、この記事は会談が終わった後の記事じゃございませんで、その前の記事でございます。会談ではこの事案は協議なされなかったということでございます。  それから、五十六年度に五千万円の予算を計上しておりますけれども、これは地形調査とか地質調査とかあるいは環境調査というようなもので、複数の候補地についての調査でございまして、池子というものを特定した調査ではございません。  いずれにせよ、先生よく御存じのように、横須賀地区における米軍の住宅が非常に不足しておるということで、深刻な状況にあることは私どもよく承知しております。いずれにせよ、何らかの対処をしなければならないということは考えておりますけれども、五十七年度以降、現在調査を行っておりますけれども、引き続いて調査を行うことになると思いますけれども、まだ具体的に決定をいたしたという事実はございませんし、今後この問題につきましては、関係方面ともよく連絡をとりまして慎重に対処してまいりたいというふうに考えております。
  220. 坂田道太

    坂田委員長 次に、永末英一君。
  221. 永末英一

    ○永末委員 鈴木内閣になりましてから、鈴木内閣の防衛力整備の方針として、五十一年に制定されました「防衛計画大綱」の水準に達していないから、そこへ達することが目標だ、こういうような話が出まして、きょうの質疑によりましても、大村長官は、「防衛計画大綱」の水準にまず達することが目標だと言われた。その「防衛計画大綱」の水準というのは全くよくわからぬので、それをひとつきょうは明らかにしていただきたいという目的を持ってここへ立ったわけでございます。  それへ入る前に少し伺っておきたいのでありますが、この「防衛計画大綱」は、わが国に直接侵略があった場合にはこれを排除する、しかしその直接侵略というのは、限定的かつ小規模な侵略を予想して、これに対しては、原則として独力で排除する、まあ「したい」の方でしょうな、厳格に言えば。独力で排除が困難なときには「あらゆる方法による強じんな抵抗を継続」すると、こう書いてあるのですが、「あらゆる方法による強じんな抵抗」というものはどういうものであるか、明らかにしていただきたい。
  222. 塩田章

    ○塩田説明員 いまの、侵略の事態がどういう事態であるかによって異なるわけでございますけれども、陸海空自衛隊の全力を挙げて、その侵略の事態に最も適切な対処をしていくということになろうと思います。  「あらゆる方法」と言いましても、非常に抽象的でございますけれども、具体的には、その事態に対処する自衛隊の全力を挙げての対処、抽象的でございますけれども、そういう答えを申し上げたいと思います。
  223. 永末英一

    ○永末委員 自衛隊の持つ力を振りしぼることが「あらゆる方法による」ですね。「強じん」というのは、これは強靱かどうかは相手方が判断するのであって、わが方がそう思っておっても強靱でないかもしれない。  さて、そう理解をいたしまして次に進みますとと、次に、継続をして、米国からの協力によってこれを排除しよう、こういうことですね。  五十一年から行われておりますアメリカとの間の「日米防衛協力のための指針」を御相談になって、五十三年十一月に示された。その中の「侵略を未然に防止するための態勢」という項目で、「米国は、来援し得るその他の兵力を保持する。」という約束ができているわけですね。ですから米国は、わが国が侵略を受けた場合には来援をしてくれるということを日本国民は皆期待をするのでございますが、「その他」というのは、その前に、ミッドウェー等は横須賀を基地としているので、ああいう空母が持つ打撃力あるいは第七艦隊の持つ攻撃力というものがございましょうが、ここで書かれておる「来援し得るその他の兵力」というのはどういうものですか。
  224. 塩田章

    ○塩田説明員 これも具体的事態に応じて考えていくべき問題だと思いますが、たとえばいまのガイドラインに基づく一つの想定を設けて作戦計画の研究をやっておりますが、その場合でございますと、アメリカの陸海空各部隊でございます。
  225. 永末英一

    ○永末委員 先ほど官房長官が来て明言をしておられまして、はなはだどきっとしたのですが、脅威というのは定量的には定め得ない、しかし水準というのは定量的に定めたいからやっているのでございましてと言われたので、またいつか官房長官に聞いてみますが、いまアメリカの陸海空と、こういうお話でございますが、同じこのガイドラインの中に具体的に「日本に対する武力攻撃がなされた場合」とある、その中で、たとえば「陸上作戦」「米陸上部隊は、必要に応じ来援し、」とぴしゃっと書いてあるわけですね。この約束をしておるのでございますから、まあ私どもから言えば、NATOは、米陸上部隊の来援を期待し、すでに西ドイツ等にポンカス、事前集積、海外に資材が集積してあり、これの量もどんどんとふやしておる。二から三へ、それから五、六へふやそう、こういうことである。この米陸上部隊は必要に応じて来援するのですが、大綱は初めから必要を認めておるわけで、限定かつ小規模でないものはできれば必ずアメリカに助けていただきたい、こう言っておるわけでありますので、こういうNATOがやっているようなポンカスはございますか。
  226. 塩田章

    ○塩田説明員 ポンカス部隊そのものは置いてございません。置いてございませんが、いまお話のございましたようにガイドラインに基づくそういう約束がございまして、具体的にどういうケースの場合にどういう部隊が来援するかということを研究し合っているわけでございまして、いまやっております研究の中でも、陸上部隊の来援についての構想は盛り込まれておるわけでございます。
  227. 永末英一

    ○永末委員 アメリカレーガン政権下におきますアメリカの軍部の議会における証言等を読んでみますと、ペルシャ湾、インド洋における情勢に非常に関心を高く持ちまして、緊急展開部隊等もその目標とする土地はペルシャ湾である。したがって、その所管を一体統合太平洋軍にするのやら、NATO軍にするのやら、あるいはその辺の紅海地域司令部にするのやら、新しい統合司令部にするのやら、いろいろな具体的なことまで考えておる。だとしますと、緊急展開部隊というのはあっちへ行くのであって、こっちへ来るのではない。いまお話によりますと「研究しておる」と言うから、何かアメリカ日本に来援するための部隊を用意しているように聞こえますが、用意している部隊が何個師団あるのですか。
  228. 塩田章

    ○塩田説明員 まず、緊急展開部隊というのは、必ずしもどこ向けということではなくて、用意されておるというふうに私ども理解いたしております。ただ、現実の問題としましては、中東地区に重点を置いて考えられていることは事実でございますけれども、元来緊急展開部隊というのは中東に限られるものではないというふうに思います。  それから、いまやっておりますガイドラインに基づく研究で、具体的にどこの陸上部隊をどれだけ計画しておるかということでございますけれども、これはガイドラインに基づく研究の中身そのものになりますので、具体的な部隊あるいはその場所等につきましては控えさせていただきたいと思います。
  229. 永末英一

    ○永末委員 本年三月九日、アメリカ上院でフランク・C・カールッチという国防副長官が証言をしておりますが、そのときにこの緊急展開部隊についての証言だけをしておるのですが、その中にはどこへ行くのかわからぬというようなことは一つも書いてない。すべてペルシャ湾、そのためにはこれだけ金が要り、こうこうしなければならぬ、したがってそれに対する編成それから指揮系統、こういうものをどうするかという証言をしておるのであって、何か、どこへ行くかわからぬと言われと、これが日本に来るような錯覚をわれわれに持たせて、それを予定してわが方が大綱の実施を考えたのでは、私は大変なことになると思う。私どもが心配しておりますのは、ペルシャ湾における事態に連動してわが国戦争状態に巻き込まれることがあり得るということを心配しておる。その場合には、アメリカの第一の関心はペルシャ湾にあるのであって、この北東アジアにはないのである。その場合、一体われわれは何ができるのかということを率直に国民に言わなければ、あなたがアメリカ軍とのガイドラインの相談だから秘密事項で言えないと言うと、あるけれども言えないように思うけれども、私どもが心配しておるのは、ないから言えないのじゃないかということを心配している。  まあしかし、押し合いへし合いしたらかないませんけれども、何日ぐらいでどれぐらいの部隊が来るということをあなた方は予定しておるのですか。
  230. 塩田章

    ○塩田説明員 現在やっております想定に基づいての研究でございますから、いろいろな想定によって、いまおっしゃいましたとこから何日ぐらいかかってどのくらいの規模のものが来るかということは全部変わってくるわけでございますけれども、いまの想定につきましてはもちろんございます。どこからどれだけの部隊がどのくらいかかって来るかということはございますが、これもいま申し上げましたように中身そのものになりますので、内容は差し控えさせていただきたいと思います。
  231. 永末英一

    ○永末委員 国民が聞きたいところでございまして、いろんな本が出ておりますが、それがわからぬでは進みませんですね。  岡崎参事官、あなたから先ほど、去年とことしの極東ソ連軍の増加の御説明を受けまして、よく承りました。つまり極東にソ連が陸海空と展開しておる、しかしその展開の度合いは、ヨーロッパ正面あるいはアフリカ、アラビア、あの辺の自分同盟国、あの辺の正面に比べて増加率は多いですか、少ないですか。
  232. 岡崎久彦

    ○岡崎説明員 結論から申しまして、極東における増加率は他の地域の増加率よりも多くなっております。地上軍につきましては、これはやがて総合的な数字が出てくると思いますけれども、全ソ連の増強の恐らく半ばぐらいがすべて極東であろうと思います。極東と申しましても、先ほど申しましたように極東軍管区と内蒙古軍管区でございますから、これは全ソ連から見ますと現在でどのぐらいになりますか、七分の一か、八分の一ぐらいの地域に約半分が増加しておるということでございますから、増加率は非常に多くなっております。それから、飛行機の近代化の最も早いのは極東でございますけれども、これは逆に申しますと近代化ヨーロッパよりもおくれていたということもございます。
  233. 永末英一

    ○永末委員 その脅威というものの判定の仕方でございますけれども、その地域におけるある一つの国の軍事力が急速に増加をされるということは、その対象となりそうな国にとっては脅威の増大と映るわけですね。したがって、あなたがきょうここで紹介された極東軍にソ連軍事力の増強が著しいということは、私はやはりわが国にとっては警戒すべき一つ事態だと見るのが当然だと思います。アメリカと相談する前に、海と空と陸でどれくらいのソ連軍がかかってくると見てますか。
  234. 塩田章

    ○塩田説明員 これもどういうケースを設けるかによって異なってくるわけでございます。いまやっております研究につきましても、もちろん一定のケースを置きましてどれだけのものが攻撃されてくるということを前提にしておりますけれども、これも中身そのものになりますので公表は控えさせていただきたいと思います。
  235. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、この防衛力問題の一番むずかしいところは、軍事機密にわたるので公には言えない、つまり他国に関することでございますからね。しかし、あなたは、予算を国民にお願いをしてわが国防衛力を整備せねばならぬ。だから、一つのよりどころとして「防衛計画大綱」の水準と、こう言うわけですが、予算を求められる国民の方は、それが一体どういう役に立つのかということを心配するわけですね。それは明らかに相対的な問題であって、レラティブな問題である。つまり加わってくる力に対してこれを排除し得る力があるかどうかということだが、私は、持つべき自衛力は、抑止力なんという妙なものではなくて、排除力を持たなければだめだとわれわれ民社党は考えております。したがって、その排除力というものは、完全にかかってくる相手方の力と関係があるのである。しかし先ほどソ連極東軍全体のことを言われましたが、あんなものが全部動いてくるわけは全然ないので、それはわれわれの外交努力によって、われわれのところにかかってくるものというのは、私はある意味では計算のでき得る量だと思います。それをやはり排除するということがわが国の持つべき自衛力の量を決定するのだろう、こう思っておるわけです。  それで委員長、これはどこかで一遍やりませんと、わからぬ、言えないということばかりではいけませんので、いずれどこかの機会に、委員会で、外に発表できないものはできないとして、やはり検討する必要があると思いますので、意見具申しておきます。
  236. 坂田道太

    坂田委員長 委員長としまして、理事さん方と理事会で相談いたしたいと思います。
  237. 永末英一

    ○永末委員 さて、五十一年に発表されました大綱にはこんなことが書いてあるのですね。国際情勢の分折から始まっていろいろなことを初めの方に言うておりますが、「防衛力現状を見ると、規模的には、その構想において目標とするところとほぼ同水準にあると判断される。」、別表を見てみろというような仕掛けなんですね。だから、規模的にはもう水準に達しておるというのが五十一年における自民党・政府の判断でありました。だから、水準に達するというのはあそこの別表に書かれてある部隊数で終わりだ、こういうことですか。
  238. 塩田章

    ○塩田説明員 大綱を掲げましたときの現状といいますのは、途中で一部しり切れトンボになりましたけれども、四次防計画に基づくものを前提にしましてそれと比較しての表現であったと思いますが、御承知のように四次防計画では、確かに「防衛計画大綱」の別表の線と数字的な比較だけで申し上げますと、大体到達しておるわけです。たとえば陸上自衛隊につきましてはほとんど到達しております。海上自衛隊につきまして一部足らない、地方隊あるいは潜水艦の数が足らないとか飛行機の数が足らないとか、あるいは航空自衛隊につきましては大分足らない面がございますけれども、しかし一応各基幹部隊につきましては、一部の海上自衛隊の部隊を除きまして大体達しておるということでございますので、その点を踏まえてああいう表現になっておるというふうに理解しております。したがいまして、あくまでも数字の上での規模的に見た場合におおむね大綱の水準に達しておる、こういうふうな表現になっているわけでございます。
  239. 永末英一

    ○永末委員 同じ大綱の中に、以後の防衛力整備に当たっては「諸外国の技術的水準の動向に対応し得るよう、質的な充実向上に配意しつつこれらを維持することを基本とし」、こういう文句がある。この「質的」というのは何ですか。
  240. 塩田章

    ○塩田説明員 いま申し上げましたように、数字的にはおおむね大綱の水準に達しておるという前提に立ちまして、しかしながら、質的に見ますと、たとえば陸上自衛隊十二個師団、十二個師団という数はそろっておるということでございますけれども、中身を見た場合に火力の点、機動力の点、いろいろな点で諸外国の水準に比べて劣るものがあるということを認めまして、そういったところを今後充実していく必要があるということを述べたものでございます。いま陸上自衛隊の例を挙げましたが、海上自衛隊、航空自衛隊につきましても同様の趣旨で述べたものと思います。
  241. 永末英一

    ○永末委員 いろいろ問題があるのはその点でございまして、たとえば陸上自衛隊と言われましたが、なるほど十二個師団と書いて、いまも十二個師団である。しかし、質ということになれば、陸上自衛隊については二万数千名の欠員をそのままにしてずっときておる。一体、その欠員のままいくのか、要員充足はするのかしないのか、この方針はどうなんですか。アメリカ側からもこの点はあなた方は指摘をされているはずです。どちらですか。
  242. 塩田章

    ○塩田説明員 たとえば今度のハワイ協議におきましてもアメリカは即応性ということを一番に挙げておりますが、その中で陸上自衛隊につきまして二万五千人の欠員があるのではないかということを指摘をしております。もっとも、そういったアメリカ側の指摘を受けるまでもなく、わが方はよく自覚しておるところでございますけれども、この点につきましては逐次即応態勢を整えていきたいということで、たとえば現在行っております五三中業におきましては、現在の充足率八六%を八九%にまで上げたいという希望を持っております。一挙に九十何%というわけにはまいりませんけれども、そういった希望を持って、計画を持って整備を進めておるところでございます。
  243. 永末英一

    ○永末委員 十八万名、それの欠員を補充するつもりでやるという問題は、予備自衛官をどう使うかということと連動する問題である。陸上自衛隊にとっては重要な問題ですから、それはやはり方針を決めて国民にわかるようにしていただかないと困るのです。しかもこれを充足するとすれば人件費がぽんとはね上がりまして、七・一%どころではなくなる心配もある。そういう問題を含んでいる問題だ。  海上自衛隊で「防衛計画大綱」でいきますと、作戦用航空機約二百二十機、そのときの五十一年度には約二百十機持っておりましたが、その内容と言えばP2VであるとかP2JであるとかS2Fであるとかという、五十五年の現在になりますと、いまやすでに全然なくなったか、もうだめだというように運命づけられたものもおるわけでございまして、したがって「質的」ということは一体どういうことを考えておるのか、それを明確に国民説明をしていただかなければいかぬ。だから何が水準なのか、分量が水準であると言うんだったら、目標が到達しないではなくて、これが規模的にはすでに水準に達しておるという表現が正しい。ところが、あなた方の方は、水準に達してないから新しい予算を、いや五三中業ではできないから五六中業、こう言われる。それが国民にわからない。質というのは一体どういうところが質なんですか。アメリカが持っておるものと同じものをそろえたらよいということですか。
  244. 塩田章

    ○塩田説明員 各国防衛力の中で質をどう評価するかということは、結局大変相対的な問題でございますから、その時点の各国の科学技術、軍事技術の水準といったものから決められることになろうというふうに抽象的にしかお答えができないわけでございます。  たとえばいま御指摘のありました海上自衛隊の航空機について言いますと、大綱では二百二十機、当時の四次防の末では二百十機でございますが、現在は、五十六年度予算、ことしの予算が完成しました場合に約百八十機ということでさらに下回る形になります。しかも中身は、いまお話ございましたけれども、対潜哨戒機について見ましてもまだS2Fという一番古い型が残っております。それからP2Jが主力でございます。P3Cがことしから、現在まだ買ったままでいまアメリカで訓練をしておりますが、そういった段階でございまして、これが四十五機まではすでに御承認をいただいておりますが、逐次整備されていく、こういうことになりまして逐次そういった中身が変わっていく、これが質的な配備の充実ということになるわけでございます。  では、どこが終局点かということになりますと、いまも最初に申し上げましたように、その時点の国際的な軍事情勢、軍事技術の水準といったようなことから客観的に判断せざるを得ないだろうというふうに思うわけであります。
  245. 永末英一

    ○永末委員 あなたが行かれたハワイの事務局段階の会談アメリカ側が一案を示した、先ほどそれについていろいろ問答がございましたが、つまり、P2Jというようなものではなかなか潜水艦をつかまえることができぬというのは、わが坂田委員長防衛庁長官のときに身をもって体験せられたことであると承っておりますが、そうすると、アメリカの出した案というのは要するに皆P3Cにしてしまえ、こういうことを突きつけられているという説明国民にはわかるわけですな。しかし、そんなことはこの「防衛計画大綱」をつくったときにはなかった話ですよね。ところが中が変わっておる。だから、水準と言えばもう初めから国民説明してあって客観的にわかっているんですというようなスタイルをとりながら、中身はどんどん変わってきておる。どこまでやるのかということが問題なんですね。それでこの質問を申し上げているわけです。要するに、対潜哨戒機は全部P3Cにせねばならぬ、こういう御意思ですか。
  246. 塩田章

    ○塩田説明員 アメリカから今度のハワイ協議で出ました話では、別に飛行機の機種を言っておったわけではございません。飛行機の整備すべき数は言っておりましたが、全部何にしろと言ったわけではございません。しかし、P3Cのことを念頭に置いての発言であろうとは思います。それができるかどうかということになりますと、これはこちらの整備計画の今後の進展によるわけでございますが、当面四十五機まではP3Cを整備してよろしいという御承認は私どもいただいております。  あとは今後の五六中業なりの整備計画、いまからつくっていくわけでございますが、それによって決まっていくわけでございまして、いまの時点で何ともまだ申し上げられる段階ではございませんが、私どもの気持ちとしては、二百二十機のうち約百機を固定翼化と考えておりますが、できるだけP3Cにしていただけたら、それは戦力の質的向上という点からはありがたいということは当然考えられるわけでございます。ただ、実際問題としてどういう計画になるか、まだいまのところ申し上げられる段階ではございません。
  247. 永末英一

    ○永末委員 もう一つ、五六中業はいま作業中である。しかし五六中業は、昭和六十年からかかって六十四年まで五年間ということでございます。そうしますとこれは一九八九年になりますな。何年のつもりですか、五六中業というのは。
  248. 大村襄治

    大村国務大臣 五十八年から六十二年でございます。西暦にしますと八七年まで。
  249. 永末英一

    ○永末委員 アメリカの統幕議長のジョーンズという人が、これまた議会報告書を出しております。それがあらゆる資料を駆使して言うておるのは、要するに一九八五年がソ連側がアメリカの持つ軍事力、いやアメリカと同盟を持っておるいわゆる西側兵力を一番抜いておるときであるというグラフばかりつけて、アメリカ国会に言っている。わが方の達成時が八七年とすると、あっちが遅いと言う気持ちもわかるような気がする。われわれの方は要するに大綱水準だ。その辺のやりとりはどんなことをされたんですか。
  250. 大村襄治

    大村国務大臣 八〇年代半ばごろ危機が来るのではないかというような議論がいろいろ出されているようでございますが、最近におけるワインバーガー国防長官発言を調べてみますると、三月四日の発言でございますが、「もしわれわれが最近の国防支出水準を将来も続けるならば、米国は一九八〇年代半ばまでに軍事力ソ連に劣る地位に立つこととなり、これに伴い、米国自身の安全保障西側同盟諸国との結束、またわれわれの利益の世界的規模での保護に重大な悪影響を及ぼすことになろう。」、こういった表現もございまして、必ずしも八五年危機説ということではないわけでございます。これまでのような努力を続けるならば総合的な軍事力ソ連に劣る地位にアメリカが立つことになり、これに伴いまして、米国自身のみならず同盟国との関係でいろいろ悪い影響が出てくることになるであろう、それを防ぐためには、アメリカ自身が国防支出の水準を大幅に増額すると同時に、西側の同盟諸国に対しましても相当の防衛努力要請するというのが、私がワシントンの会談に臨みましたときにワインバーガー国防長官等から発言のあった点でございます。
  251. 永末英一

    ○永末委員 要するにソ連の軍拡がなお続いているわけでございまして、いまアメリカが、レーガン政権になりましてから各同盟国に呼びかけて、一生懸命軍事費のアップをやろうとしておりますけれども、それが軌道に乗ったとしても、ソ連の方に追いつかれるのは八五年以降である。したがって八五年というソ連の側、東側の軍事力の最高のときに、彼らがそれから下がったのではどうにもならぬので、そのときに何か事をするのではないかという見方がある。そういうことはみんなの考えていることであるとするのなら、われわれの方も、八七年終期ということではなくて、それはそれなりに考えなければならぬ問題がある。つまり、けんかが過ぎてから棒が来てもこれはあかんわけでありましてね。  ちょっと陸上自衛隊のことをお聞きしたいのでありますが、「防衛計画大綱」は、機甲師団をつくるということを言って、これを北海道の第七師団でやっていこうというのでやっておられるようでございます。これは五三中業が完成いたしましたときに、一体どういう戦車をこの機甲師団は持っておるのでしょうか。
  252. 塩田章

    ○塩田説明員 第七師団の機甲師団化は五十五年度末に完成をいたしております。現在でも、第七師団につきましては七四式戦車で定数いっぱい全部やっております。  五三中業でできたときにどういう構成であるかということでございます。第七師団は全部七四式でございますが、陸上自衛隊全体で見ました場合に、戦車定数千百三十両になる予定でございますが、約半分が七四式、約半分が六一式、こういう構成になろうかと思います。
  253. 永末英一

    ○永末委員 第七師団はまた、普通科連隊に属する人も全員装甲車で運べることになっておると思いますけれども、わが方が完全に機械化師団と称するものは一個師団ですわな。そうしますと、相手方が小規模かつ限定的で、それより力が弱ければ結構でありますけれども、それ以上の機械化師団を揚げてきますと、これは困るのですな。どないします。
  254. 塩田章

    ○塩田説明員 結局お話のように、どれだけのものが揚がってくるかということにかかってくるわけでございます。現在陸上自衛隊としましては、たった一つの機甲師団を北海道の東千歳に配置しておるわけでございますが、相手方がどういう内容の部隊を揚げてくるかによりましては、御指摘のように対処し切れないという事態も考えられます。そういう場合には、日米共同対処ということにならざるを得ないというふうに思われるわけであります。
  255. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、北海道というところは、戦後あそこに四つの師団が置かれ、そしていまのように最初の機械化師団も置かれておる。そしてあそこは、宗谷海峡、津軽海峡という二つの国際水路を持っておる。しかも、すぐ東側の北方領土には、ここ三年の間に一個師団のソ連の兵力がやってきておるという、まさに緊迫した状況下にあると見ざるを得ません。  その場合に、北海道でまたいろいろなことが行われておるわけですね。もう議会で問題になりましたが、ソ連側の融和政策らしきものが行われておる。そうすると、一つのポイントになっておるに違いない。その場合に、やはり北海道をどうするのか。北海道は、第二次世界大戦の末期に、北半分ソ連の進駐をスターリンが求めたことは歴史的事実でございます。したがって私は、やはりそういう地域に対する実情と、そして、なすべき点があるのなら、それは一個師団だけ七四式戦車と言ったって、一〇五ミリしか積んでないので、相手方が一二〇ミリを持ってきたら、これは何ともならぬ。それならば一体対戦車ミサイルをもっと装備するのかどうか、こういう問題も真剣に考えなければならぬ問題だ。そういう実情を国民説明して、どうしても予算をいただきたいということがあってしかるべきではないか。このままの形では——なるほど北海道にはほかにはない機械化師団を一個師団置いております。それは一応完全に機械化いたしましたという防衛庁責任者国民に対する言いわけは立つかもしらぬけれども、それ以上の軍事力が来れば鎧袖一触になりますね。その辺のお覚悟はいかがですか。
  256. 大村襄治

    大村国務大臣 北海道の防衛力の充実につきましては、防衛庁といたしましてもいろいろ配意しているところでございます。御指摘がありました機械化師団の創設、これも大綱で予定されておったわけでございますが、ことしの三月末に実現を見たところでございます。そして、配置される戦車につきましても、国産の最新鋭の七四戦車を配置したところでございます。最近、私、西独の戦車師団を視察いたしましたが、最近開発されましたレオパルトIIは別といたしまして、これまで西独が使用しておりますIと内容はさほど劣るところはないと考えておるわけでございます。  また、北海道に配置されております自衛隊の充足率につきましても、できるだけこれを高めるようにいたしまして、対策も講じているところでございます。  また、最近、わが国の交通網の整備に伴いまして、広域的な防衛力の機動力を発揮する問題につきましても私どもはいろいろ研究をいたしておりまして、万一北海道に有力な部隊が上陸する、もちろんこれを阻止するための手段は講じなければいけないわけでございますが、かなりの部隊が上陸した場合におきましては、北海道以外の地区からも応援に行けるような陸海空の支援態勢を計画もし、訓練もいたしているところでございます。  また、御指摘のありましたような対戦車ヘリコプターの問題あるいは上陸用舟艇に対する短距離ミサイルの開発、それの実用化、そういった点につきましても着々進めているところでございまして、そういったこれまでの努力がようやく成果を上げようとしているところではないかと考えているわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、大綱の示す水準、質の点を入れると漠としているではないかという御指摘はあったわけでございますが、質の点も含めての水準の達成をこの際なるべく速やかに実現を図ることが、北海道を初め重要な地域における防衛力の充実に直ちに効果のある問題ではないか、そのように考えていま努力しているところでございます。
  257. 永末英一

    ○永末委員 陸上自衛隊で低空域防空用地対空誘導弾部隊、それぞれ配置になりましたけれども、短SAMはここへ入っていないのだと思います。八個高射特科群と書いてありますからね。入っていませんね。
  258. 塩田章

    ○塩田説明員 高射特科群の中には短SAMは入っておりません。
  259. 永末英一

    ○永末委員 そのうちの四群はホーク改良型を使っておる。あとの四群については後継兵器をどうするか考えておられる。これはどういうものを使われるつもりですか。
  260. 塩田章

    ○塩田説明員 改良ホークで四群を整備したわけですが、残りの四群についてどうするか検討中でございますが、当面改良ホークをもう少し進めていきたいという気持ちで現在検討を進めておる、そういう段階でございます。
  261. 永末英一

    ○永末委員 短SAMは配置されますけれども、これは射程から見まして、ホークの方が射程が長いわけです。八群というのはいろいろないきさつでつくられたのでしょうが、大体八群で足りるのですか。
  262. 塩田章

    ○塩田説明員 陸のホーク部隊の場合、大体いわゆる方面隊の単位に考えまして、一応方面隊とともに移動する野戦防空の骨幹といいますか主力といいますか、一方、いまお話の出ました短SAMの方はどちらかといいますと師団単位の師団防空という考え方に陸の場合はなろうかと思いますが、ホークの場合五個方面隊に対しまして八個でございますから、そういう基準からいきますと一応数は足りておるというわけでございますが、もちろんこれをもって防空態勢が十分かと言われますと、それは私ども十分と思っておるわけじゃございませんけれども、「防衛計画大綱」での八群という考え方はそういう考え方であり、それを改良ホークにすることによって、所期の各方面隊単位の防空についての目標は一応達成できるのではないかと考えておるわけであります。
  263. 永末英一

    ○永末委員 航空自衛隊の高空域防空用地対空誘導弾部隊、これが六個高射群。これは、ナイキが全然部品がなくて、新しいのを配置せざるを得なくなっている。それはどうお考えですか。
  264. 塩田章

    ○塩田説明員 ナイキにつきましても、陸のホークと同じように世代交代の時期が来ておりまして、陸と一緒にどういうことをするか考えておるわけでございますが、陸の方はいま申し上げましたように一応改良ホークでしばらくいきたいという気持ちでおりますが、空の方につきましては現在二つの候補、一つアメリカの開発しましたペイトリオットでございますけれども一つ防衛庁の技術本部で考えておりますナイキフェニックスというものでございますが、それらをいまのところ候補として、今後の整備をどうするかということを検討中である、そういう段階でございます。
  265. 永末英一

    ○永末委員 防空力の増強ということは、あなた方が行かれたときにも問題になり、恐らく大村さんも言われたのじゃないかと思いますが、防空能力、これはF15ばかりそろえることじゃなくて、ミサイル力を充実せよということだし、したがって短SAMが開発されたのだと思いますが、大体ホーク八群、ナイキ六群というのは、それはそれなりの理由があってそのときできたのだけれども、あれでわが国の重要地域だと称せられるところの防空が完備しておるとだれも思っていないわけである。それ以後行われたイスラエル・アラブの戦闘や、またそのときにもすでに行われておった北ベトナムの防空態勢等は皆さんよく御存じなのだから、もっとほかの機種、たとえば小人数で撃ち得る対空ミサイル、一人で撃てるものもありますね。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕 そういうものはこういう規模の中に入らぬのですね。
  266. 塩田章

    ○塩田説明員 一人で撃てるものといたしましては、いまのところスティンガーを導入するように今年度予算からお願いしておりますが、いまの御指摘のように、その表には一人で携帯するものは入っておりません。
  267. 永末英一

    ○永末委員 この大綱ができましたときには、アメリカの第七艦隊はわが近海にいたわけでございますが、しかしペルシャ湾の問題が起こりまして以来、第七艦隊の主力というものは、主力というよりほとんど全部があそこを一番の自分の任務地としてやっている。そうなりますと、わが国の海上自衛隊に対するアメリカ側の期待が以前とは変わってくることは当然だと思う。  ところで、この大綱には、対潜水上艦艇約六十隻と書いてあるだけでございまして、何が何だかよくわからぬけれども、しかし、だれが考えても対潜水上艦艇と「潜」がつかなければいかぬのですか。
  268. 塩田章

    ○塩田説明員 当時の「防衛計画大綱」の考え方としまして、先ほど来御指摘のような防衛構想があって、それを受けまして、海上自衛隊の整備としまして対潜水上艦艇約六十隻、こういうふうになっているわけでございますが、従前から、日本の海上自衛隊の整備の目標としまして、対潜水上艦艇ということに重点が置かれてきたことは事実であります。  ただ、それでは、いわゆる水上打撃力が全然なくていいのかということにつきましての反省ももちろんございまして、現在今年度、前年度完成いたしましたDEに一隻ハープーンをつけましたけれども、そういった対水上艦艇用のミサイル装備ということもあわせて考えていかなければいけないというふうには思っております。
  269. 永末英一

    ○永末委員 ソ連の太平洋艦隊の所有している艦種で非常に目につきますのは、一つは機雷敷設ないし掃海の任務を持つ船が充実していること、もう一つは揚陸用の艦艇でございまして、これは他の海域のソ連艦隊に比べて二倍の勢力に当たるものを持っている。象徴的にイワン・ロゴフが、最初にあの型ができたにかかわらずこれを極東に回している。すなわち、掃海をし得る能力を持つ、それから強襲上陸をする舟艇を多く持っている。この二つのことは、わが国にとって一体どういうことを考えさせておると判断されますか。
  270. 塩田章

    ○塩田説明員 まず、各艦種によりまして、その艦種の目的とする作戦というものがある程度想定されるということは当然でございます。ソ連の太平洋艦隊の場合、いま御指摘のような艦種が充実していることは事実そのとおりでございまして、ソ連の太平洋艦隊としましてそういった作戦を重視しておるといいますか、それは十分うかがうことができるわけであります。
  271. 永末英一

    ○永末委員 人ごとみたいに塩田さん言っておるけれども、機雷を敷設されて困るのは、要するにウラジオ方面を根拠地とする艦隊が太平洋に出る場合ですね。そうしますと、明らかに宗谷海峡と津軽海峡、対馬海峡ですから、宗谷海峡が一番ソ連に近いですから、やはりそういう方面が戦闘に入り得る可能性があると見ざるを得ないと思う。そうでなければ、上陸用舟艇をなぜこんなところに持ってくるのでしょうね。まさか中国大陸へ行く、そんなことはないと思いますよ。私はそう考えてくると、先ほど長官が、いや、このごろは交通が発達しておりましてと言うけれども、わが方もまた北海道へ送らねばならない兵力を送る場合に、交通だと言ったって自動車でどんどこ送れるものではないですよ。結局多量の兵力を送ろうとすれば船によらざるを得ない。その船はわが方はまだちょっとしかありませんわね。そうしますと、その船にしたって、それを支援する航空力がなければならぬ、こういうことになるわけだし、そう考えてみますと、そういう目的を持って、たとえば一千海里航路帯護衛なんということを言われたのだろうか。それから、わが国の周辺数百海里、航路帯護衛千海里、そんなことをやる能力は、約六十隻、その半分は千五百トン以下のあのちっぽい船でできますか。どうやってやるんですか。やり方を教えてください。
  272. 塩田章

    ○塩田説明員 御指摘のように、約六十隻の対潜水上艦艇のうち約半分は、地方隊所属のDEを主体としたものでございます。このDEを主体とした艦艇部隊、それに潜水艦なりそれから対機雷船部隊、つまり掃海艇でありますとかそういったものを加えた水上部隊によりまして、わが国の周辺海域、特に重要港湾あるいは重要海峡、こういったところの防備に当たる、こういう構想でございます。  具体的にどういう作戦をとるかということは、もちろんその作戦の態様によりまして一概に言えないわけでございますけれども、そういう構想で現在整備を進めておることは事実でございます。
  273. 永末英一

    ○永末委員 つまり、大綱を考えたときの対潜水上ですから、対潜水艦作戦だけを考えておればよろしいというようなことであった。確かにそれまでは、わが国の海上自衛隊の船というのは、潜水艦作戦用の兵器は積んでおりますがね。しかし、私が先ほど申し上げました、一例でございますけれども、やはりわが国の海上艦艇は対空戦闘もやらなければならないし、対艦戦闘もやらなければならぬ。そのためには、やはり兵器は五インチ砲を一つ積んだり、四十ミリ機関砲を積んでおったって、そんなものではいけませんよ。だから、それならそれなりに、それに対応し得るミサイルをどんどん積むとか、そういうことは考えておられると思いますが、いかがですか。
  274. 塩田章

    ○塩田説明員 先ほども申し上げましたように、五十五年度間にできましたDEにハープーン、対艦ミサイルを初めて積んだわけでございますが、そういうことにもあらわれておりますように、DEにもそういった機能は今後十分考えていくべきではないかというふうに考えておるわけであります。
  275. 永末英一

    ○永末委員 航空自衛隊は要撃戦闘機隊が十個隊、支援戦闘機隊が三個隊でございますが、これは、このごろ防衛白書にも、本来なら十二個隊要撃戦闘機隊が欲しいのだけれども、飛行機が高いものだからとか、最初の支援戦闘機隊は86Fでありましたから、もうただみたいなものですから、支援戦闘機隊を三個つくって、それを利用してというようなことを言っておりました。要撃戦闘機隊をたとえば十二、教育隊を一個にして、要撃戦闘機隊十三個隊にしたら大綱違反ですか。見直しですか。
  276. 塩田章

    ○塩田説明員 現在の大綱ではできないと思います。
  277. 永末英一

    ○永末委員 この要撃戦闘機隊をつくります場合に、これまた財政上の観点で、アメリカ軍の編成用と違って、一番少ない十八機体制でやってきておる。しかし、支援戦闘機隊はそうではないはずですね。支援戦闘機隊はもう少し違う編成をやっているのではないかと思いますが、十八機編成ということは大綱で決めた規模であって、それ以上ふやせないという考えですか、いかがですか。
  278. 塩田章

    ○塩田説明員 大綱自体は総数約四百三十機ということを決めておりまして、また、スコードロンの数を要撃戦闘機隊の場合は十個というふうに決めておりますが、その各スコードロンに何機持つべきかは、必ずしも決めておるわけではございません。  ただ、現在のところ、要撃戦闘機隊の場合十八機を標準編成にしておるということは事実でございますが、それが多少動いたからといって、直ちにそのことが大綱に違反ということではないと思いますけれども、トータルの数字で御指摘のような、先ほど申し上げたような数字になっておるわけでございます。
  279. 永末英一

    ○永末委員 約四百三十ですな。「約」というのは幅があるということですね。  さて、陸上自衛隊発生時の保有弾薬量と、それから十年刻みで、二十五年たっておりますから、いまどうなっておるのですか。弾薬量、何トンですか。
  280. 塩田章

    ○塩田説明員 いま何年に何万トンあったか、ちょっと覚えておりませんので恐縮でございますが、米軍等から供与を受けた当時のトン数から見まして、現在約半分近くになっておるというふうに承知しております。
  281. 永末英一

    ○永末委員 私の調査では半分以下になっている。つまり、これは何も陸上自衛隊に限らず、艦船にいたしましてもやはり一遍戦闘すれば補充せねばならないし、ミサイルだって撃てば、予備がなければそれだけでは使えない鉄のかたまりです、あれはね。飛行機だってそうであって、何ぼいい飛行機を使いましても、乗っておる相手を殺傷するもの、ミサイルを使うかロケットを使うかは別として、それを撃てばそれで用がなくなる。われわれも空中戦で、相手方がかかってきたときに、弾薬があって前さえ向いておれば、爆弾を積んでおっても落とした後ならこわくなかったという経験を持っておりますが、したがって弾薬量というものは何を差しおいてもやらなければならない。これは大綱の分量に関係ありませんな。
  282. 塩田章

    ○塩田説明員 大綱では弾薬の数量は掲げておりません。
  283. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官、これは大綱の分量に関係ない、弾薬量は。まず、五十七年度予算で、いろいろなことがあろうが、やはり弾薬を備蓄するということを第一義に私は考えていただきたい。それをやらないというのなら、ほかにたくさん問題ございますけれども、大体自衛隊は戦争をするつもりかということを疑われる。弾がないときに、われわれの演習は、全弾終了と言ったらそれは演習は終わりになります。しかし実際の戦闘のときには、残弾なし、こうなれば死ぬということなのです、負けるということなのだ。だから、弾薬を、弾薬も各種各様のものがございますが、これはぜひ考えていただきたい。アメリカで、アメリカ設計の二百三ミリりゅう弾砲を日本の陸上自衛隊が使うと言っていると、わざわざまた議会報告しているのですな。アメリカ製の二百三ミリりゅう弾砲を買うのですか。砲っていうのは弾丸の方ですよ。
  284. 塩田章

    ○塩田説明員 御承知のように、五十六年度で六両お願いしておりますが、これは自走二百三ミリであります。これにつきましては、現在牽引の二百三ミリはすでにわが国にございまして、その弾を使えば今度の自走二百三ミリについても撃てるわけでございますけれども、元来射程が全然違いまして、今度購入する自走二百三ミリの方は大変長い射程を持っております。その射程に応じた本来の弾というのは、これはアメリカから買わないとわが国にはないわけでございます。もちろん五十六年度ではございませんけれども、五十七年度にはお願いしたいと思っております。
  285. 永末英一

    ○永末委員 大村さん、これでしまいにしますからね。  アメリカに、なるほど即応性とか継戦能力とか近代化とか、いろいろなことを言われておる。しかし、われわれ日本国民として一番心配するのは、日米協力もよろしいよ、しかし、あらゆる兵器がアメリカ製であり、いま言えば弾丸まで、消耗品である弾丸までアメリカから買わされる。日本人の血の出るような税金でアメリカの会社をもうけさせるようなことだったら、われわれ民社党は、防衛力の整備は言うておりますけれども、これは考えなければならぬ問題だ。だから、私はいろいろなことを申し上げてきましたけれども、こういうことでいま彼らは彼らなりにあわてておるかもしれぬが、われわれもわれわれのやるべきことはさらにぴしゃっとやる、われわれの力でわれわれの飛行機をつくる、われわれの戦車も、あなた、いま七四にすればよろしいと言われたのだから、戦車もつくる、戦車は必要かどうかわかりませんよ。むしろ対戦車ミサイルの方がいいかもしれない。そういうことを国民に訴え、国民の力を総動員してやれる体制をつくる、これが一番の抗たん力だ。  私は、アメリカと相談するのはいいけれども、ふたをあけてみたら何でもかんでもアメリカから買っておった、それじゃ国民は支持しない、そういうような戦力を国民に支持を求めることはできないと思う。ひとつ最後にお答え願いたい。
  286. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま二百三ミリりゅう弾砲を例に引きまして、何でも輸入ではいけないという御指摘があったわけでございます。私もその点は全く同感でございます。  そこで、現在購入いたしております百五十五ミリりゅう弾砲、これは国産の技術開発に基づいて五十年度から始めているわけでございまして、国産技術の優秀な面もできるだけ活用してまいりたいと考えておりますし、ライセンス生産をいたす場合の材料とか部品につきましても、国内で調達できるものは極力これを活用するということにいたしていきたいと考えておるわけでございます。  また、先ほど御指摘のございました弾薬の備蓄をふやすという問題につきましては、防衛庁といたしましては、三年前から努力を再開いたしまして、予算の許す限り増額を図ってきているところでございますが、五十七年度の概算要求に当たりましては、一層この点に配意してまいる所存でございます。
  287. 永末英一

    ○永末委員 御健闘を祈ります。
  288. 三原朝雄

    ○三原委員長代理 次に、東中光雄君。
  289. 東中光雄

    ○東中委員 本論に入る前に、いわゆる日昇丸の当て逃げ問題についてお聞きしたいのですが、鈴木総理がレーガン大統領と首脳会談を終えた後の記者会見で、大統領は早期に調査をして補償なども早急に解決したいと述べた、わが方の海上保安庁の調査、生存者からの聴取などを提供し、それを参考にして日本国民が納得できる最終調査をまとめてほしいと要請した、これに対して大統領も、全くそのとおりで、さらに十分な調査報告ができるよう督励もするし、日本と協力して徹底的な調査をやろうと誠意あふれる姿勢を持ち続けていた、こういう記者会見で発言をされているのですが、中間報告が出た後のこの発言ですけれども、その後、海上保安庁からは、いろいろな疑問点について質問やら調査の問い合わせを外務省を通じてやられたというふうに聞いているのですが、どういう点について照会をして、どういう回答があったのか、最終報告の経過については先ほど北米局長が言われましたけれども、そうでなくて具体的な問題についてどうなっておるか、お伺いしたい。
  290. 吉野穆彦

    ○吉野説明員 海上保安庁といたしましては、アメリカ側から出されました中間報告の中で不明確な点につきまして、米側からより詳細な説明を得たいということで、外務省を通じて米側に照会したわけでございますけれども、この照会した事項につきましては、現在まだ回答を得ておりません。
  291. 東中光雄

    ○東中委員 外務省はどういう交渉をやっておるのですか。
  292. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 海上保安庁からの要望がございまして、それをアメリカ側に取り次いでいるわけでございますが、残念ながらまだいまのところ回答はない。この点を含めて、先ほど申し上げましたように、私たちもただ事態を見守っているということでなくて、できるだけ最終報告を含めて早く回答を寄せてくれるようにということをアメリカ側と話しているわけでございますが、現在の段階ではまだ回答はございません。
  293. 東中光雄

    ○東中委員 これは問題が基本的に違っている問題なんですね。一番最初から、日本側で言っている問題点については中間報告は全く違った事実を答えている。なぜ衝突するに至ったのか。浮上した、衝突の直接の原因というものについては、あの中間報告ではさっぱり答えていない。それについてははなはだ納得できないということは被害者側も言っておりますし、海上保安庁だってそうだと思うのです。それから今度は遭難の事実もなかったというふうな中間報告がある、あるいはP3Cによる調査では見えなかった、これはもう明らかに現場の事実から見て違う。そういうことでありますし、さらに、報告があんなにおくれたのはなぜか。二重にも三重にも問題があるわけですが、そういう基本の問題についてですよ、日本人の生命、財産が損なわれたという状態の事件が現実にアメリカの原子力潜水艦、それもポラリス潜水艦によってやられたという事態が起こっておるのに、それについてこっちから聞いているけれども何にも答えないんだ。中間報告をされたことについて誠意を認める。しかし中身は全く違う。こんなことで、当初は三カ月もかかるかもしれないと向こう側は言ったのですね。それをもっと早くやれとやかましく言うたのですよ。それがすでにもう三カ月を過ぎているのです。これは一体どういうふうに考えておられるのか。防衛庁の姿勢もこれに同調するような姿勢をとっておられるのじゃないかというふうに、これは憶測ですけれども、せざるを得ぬような事態も起こってきていますね。たとえば現場で救護するときにビデオテープを撮っておられたのですね。この事件が起こって私が聞いたときには、録音はしたでしょうと言ったら、それはありますという答えであったですね。ビデオを撮ったならなぜビデオを撮ったと言わないんだ。そのときにもう切実な訴えが出ておったのでしょう。潜水艦が出てきたとかあるいはアメリカの飛行機が飛んでおったとか。そういうことをずっと後になって、人のうわさも七十五日、消えてしまうころになって言うという姿勢は、アメリカのとっている姿勢と共通している面があるように私は思うのです。防衛庁としては米軍に照会もした、しかし、向こうは知っておりながら該当船なしという返事もした、こういう状態があの救援した直後の事態でも起こっていますね。そういう点について防衛庁長官、鈴木・レーガン首脳会談があって、その後防衛庁長官も行かれたわけですから、そこで話になった、この問題について相手方に何か触れられたことがあるのかないのか。そして防衛庁としては、いわゆる同盟関係にある相手のポラリス潜水艦についての態度をどういうふうにいまお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  294. 大村襄治

    大村国務大臣 防衛庁といたしましては、本問題ができるだけ速やかに解決されることを希望しているものでございます。  ただ、今回のワシントンにおける会談の際におきましては、時間の関係もございまして、本問題を特に議題とする、そういうことはなかったわけでございます。
  295. 東中光雄

    ○東中委員 海上保安庁は、防衛庁がせめてビデオテープの存在だけでも知らせてくれればよかったというふうな不快感を表明されたということが報道されているわけですけれども防衛庁側がとったその問題についていまどう考えておられるのか、また防衛庁についてどういうように処置されたか、お伺いしておきたいと思います。
  296. 吉野穆彦

    ○吉野説明員 ビデオテープの件につきましては、五月の十三日だったと思いますが、テレビで放映されまして、それで私ども初めて知ったわけでございます。それで防衛庁の方にお話をしまして、その内容も見せていただきました。
  297. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁としては、なぜ捜査を進めているときにそういうことについて海上保安庁に協力しなかったのか。国会でなぜ答弁をしなかったのか。私たちは知りませんからね、テープがあったと言うから、テープについて聞いたらテープだけに答えられて、ビデオテープは知らぬ顔しておる。どういうことでそういうことになるのですか。
  298. 塩田章

    ○塩田説明員 率直に申し上げまして、ビデオテープの存在を私も知らなかったのですけれども、海上自衛隊に聞いてみましたら、海上自衛隊が行動する場合に、いろいろな事件があった場合に海上自衛隊としてはそういうものを撮影してビデオとして残しておくということはやっております、あの事件だからやったということではなくて、通常やっておりますということで、言うならば通常の業務としてやっておった。録音の方は救助された方々に来てもらってしたものですから、そのことについては直ちに報告をしましたが、ビデオの方については特段報告しなかった、こういうことでございまして、それ以上の特段の理由あるいは特段にわざと報告しないという意図、そういうようなものがあったわけではない。しかし、ともかく後になって考えてみればあのとき直ちに報告すればよかった、その点は申しわけない。こういうような返事でございまして、私どもといたしましても、海上自衛隊に対しまして今後そういうようなことは十分配慮すべきではないか、直ちに報告すべきではないかということは厳重に申しておるわけでございますが、あの件のいきさつについて言えばそういうことでございます。
  299. 東中光雄

    ○東中委員 日本人の生命、財産、それが損なわれておる。もう少しおくれれば死んでいるかもしれない。アメリカ側はそれを見ておって、そしてほっておいたということになれば、これは救難義務がある以上は不作為による殺人罪にもなるわけですね。そういう性質のものでしょう。弁護士が、これは未必の故意による事故だ、そういう性質を持っていると言っています。それがまだ補償問題も解決がつかない。本国から何も言うてこないから回答ができないんだというふうな状態に置かれておるわけでしょう。私は、日本外務省もそれから防衛庁ももっとしゃんとしてもらわないと困る。相手がアメリカだったら向こうから言うことだけを聞いている。何か言うたら、内容がどうであろうと、とにかく中間報告を出された誠意に感謝する。こんなことで一体日本人の人命、財産を守ること、そういう基本の問題さえ失われているのではないかというふうに私は思うわけであります。そういう点で、口だけではなくて実際にこういう問題は解決をつけるべきだ、はっきりと申し上げたいと思います。間違ったことをやれば抗議をすべきです、明らかにうそを言っているのですから。これがほかの国だったらどうしますか。公海だから、外国の主権の及ぶ軍艦だからと言うて向こうの言いなりになっていますか。これがたまたまソ連の潜水艦がこの問題を起こしたと仮に仮定した場合に、公海だからと言ってそういう姿勢をとりますか。私はとらぬだろうと思いますよ。それこそ徹底した反共キャンペーンをやるんじゃないですか。そういう政治的な、イデオロギー的な立場じゃなくて、本当に日本人の生命、財産を守る、それについて真実をはっきりさせる。主権国家として当然のことじゃないですか。私はそのことを強く要望しておきたいと思います。  それで、本論に入りたいのでありますが、いわゆる極東有事の研究問題についてであります。  防衛庁長官が極東有事に関する研究に合意したということでありますが、この合意の内容というのは結局どういうことなんでしょうか、正確にお聞かせ願いたいと思います。
  300. 大村襄治

    大村国務大臣 ガイドラインに基づく研究作業につきましては、共同作戦計画の研究はまとまりつつあるわけでございますが、これに関連するその他の研究は余り進んでおらず、ガイドライン第三項で予定されている極東における事態で、日本の安全に重要な影響を与える場合に、日本米軍に対して行う便宜供与のあり方についての研究作業につきましても、いまだ着手していないところでございます。  今回の訪米におきまして米側から、この極東有事事態における米軍に対する便宜供与に関する研究作業について、特に何らかの提示がなされたわけではございませんが、今後日米間で調整の上、研究作業を進めることになるものと考えているわけでございます。  なお、研究作業を行う場合のチャネル、メンバー、どのような事態を設想するかといったような問題につきましては、今後日米間で調整していきたいと考えておるところであります。
  301. 東中光雄

    ○東中委員 ガイドラインに基づく協議・研究をあらかじめ決めるという項目はずいぶんたくさんありますね。いままでやられたのは、日米共同作戦計画についての研究が案としてすでに総理大臣まで報告されたということをこの前答弁をいただいております。そのほかの分は、そうするとその都度日米防衛首脳会議で、着手しようとかしないとかいうことについて協議をされることになるのですか。今度改めて合意されているのだったら、ほかの部分も皆そういうふうにやっていくということなんでしょうか。それとも、極東有事は特にほかのものをほうっておいてでもやるべきだ、ことさらにいま極東有事についての便宜供与についての協議をやるということの合意をしたという意味なんでしょうか。どうなんでしょう。
  302. 塩田章

    ○塩田説明員 いま長官が答えました共同作戦研究以外のいろいろな項目についての研究は、改めてやるのではなくてすでに始めておるわけです。ただ、それが余り進んでいないということを先般の国会以来ずっと申し上げているわけですが、指揮・調整にしましても、後方支援態勢にしましても、防衛準備の段階区分にしましても、全部共同作戦の計画の研究と一緒に始めたわけです。それがまだ余り進んでいないということを申し上げたので、それは今後とも引き続いてやることですから、改めてやりましょうとかそういうことは要らないわけです。  それで、一番目の共同作戦計画の研究については、一つのシナリオに基づくものはもう終わりに近づいているということでございますので、近くそれが終わりました場合にどういう作業をやりましょうか、こういう話でございまして、それに、ハワイ事務レベル協議のときに極東有事の場合をやろうではないかという話がありまして、それは共同作戦研究の一つのシナリオが終わればいずれ次のシナリオに入っていくわけですから、そういう意味でそれは結構ではないか、ただどういう手続でやるか、どういうメンバーでやるか、そういうことはいまから相談しましょうということになった、こういうことでございます。
  303. 東中光雄

    ○東中委員 五十三年の十二月十五日に防衛庁長官命令でガイドラインに基づく研究・協議、これは統幕会議研究作業をやるようにということを長官の命令として出した。それは閣議に報告したときに、閣議の了解を得て防衛庁長官がやるということになった、こういうことだったですね。その中にはガイドラインの三項は入っていなかったのですか、入っていたのですか。
  304. 塩田章

    ○塩田説明員 入っておりません。
  305. 東中光雄

    ○東中委員 そのときに入っておったのは何ですか。三項を除くということですか。
  306. 塩田章

    ○塩田説明員 そのときに入っておったのは、現在やっておりまして間もなく終わろうとしている共同作戦計画の研究と、そのほか、先ほど先生も申されましたいろいろな項目、後方支援態勢でありますとかいろいろございますが、そういうことでございまして、三項はそのときには入っておりません。
  307. 東中光雄

    ○東中委員 三項もガイドラインでしょう。ガイドライン三項はガイドラインでないというようなばかな理屈はないわけですね。非常におかしげなことを言われるものですね。——それならそう聞きましょう。
  308. 塩田章

    ○塩田説明員 三項も当然ガイドラインです。ただ、どれをやるかということで、そのときには、まだ三項まで行ってない、二項について先にやろうということでございますから、たまたまそのときは三項は入っていなかっただけでございまして、ガイドラインに基づく研究テーマであることには変わりございません。したがって、また今度やろうじゃないか、こういう話が出ておるわけであります。
  309. 東中光雄

    ○東中委員 共同作戦計画の研究というのは一項でしょう。
  310. 塩田章

    ○塩田説明員 二項に基づく研究でございます。二項であります。
  311. 東中光雄

    ○東中委員 二項のどこですか。そんないいかげんなことを言うてもらっては困る。「共同作戦計画についての研究」というのは一項に書いてあるじゃないですか。「侵略を未然に防止するための態勢」の中に入っておるじゃないですか。
  312. 塩田章

    ○塩田説明員 御指摘のように、根拠になっているのは一項でございますけれども事態は二項の事態、つまり安保条約で言いますと五条の事態ということでいまやっておるわけでございます。
  313. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、このガイドラインというのは二項も一項も一緒なんですね。「未然に防止するための態勢」なんて言っているけれども、実は有事体制で、未然に防止する態勢じゃなくて戦争のときそのものの、要するに二項について先にやろうということになっておった。だから、防衛局長の頭からいけば二項でやることになっておって、実際はガイドラインには一項に書いてあることを二項でやっている。三項だけは別だ。これはなるほど別なわけですね。全然別個のことだ。それについてメンバー及びどのような設想をするか、それを日米間で協議をする、こう言われましたが、日米間で協議をする、これは一体どの機関で協議をするのですか。どこで協議をするのですか。
  314. 塩田章

    ○塩田説明員 もし三項の事態をやるということになりますと、これは当然日本側外務省が主体になってまいりますので、そういう意味でも防衛庁だけでできないわけであります。外務省はいままでは少なくとも二項の作業には関与しておりませんので、どういう形で、どういうスタッフをつくって、どういう窓口を開いてやるかというようなこともまだ決まっていない。そういうようなことについてアメリカ側と相談をしてやっていこうということでございまして、いまの事実上の相談の段階、これは統幕事務局に在日米軍と下相談をいまからさせていこうと思いますけれども、それによりまして下相談ができれば、外務省ともよく相談をしながら、といいますよりは外務省が主体になっていただかなければいかぬわけですから、そういうことで、どういう形になるかをいまから決めていく、こういうことでございます。
  315. 東中光雄

    ○東中委員 三項は自衛隊と米軍というふうにはなってないですね。「日米政府」なんですよ。その問題について外務省が主体である。ところが、その外務省はのけておいて、防衛首脳会議で調整をしていく。実際にやるのは在日米軍と統幕事務局だ。要するに制服なんだ。こうしますと、制服の上に防衛庁の内局が載せられて、その上に外務省が載せられる、そういう機構に実際上なっていくわけですね。非常に奇妙なことじゃないですか。このガイドライン自身は、防衛庁長官だけじゃなしに外務大臣も出席して調印しているのですからね。外務省はその点はどういうことになっているのですか。
  316. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 午前中にも御答弁申し上げましたけれども、いわゆる三項、日本以外の有事の場合がガイドラインに規定されておりまして、それを今回といいますか、ハワイ会談においても、アメリカ側が、日本以外の有事の際についての研究をそろそろしていいのではないかという話がございましたし、それから防衛庁長官訪米されたときにもその話があって、原則的にはガイドラインに決まっていることでございますので話をするということでございます。  そのガイドラインに基づく研究をすることについては、防衛庁長官が国防長官会談された際に出た話でございますが、その前のわが方の打ち合わせについては当然外務省も参画しているわけでございまして、その点については、極東有事の際というか、日本以外の有事の際についての研究を開始することについて、外務省としても異存はないわけでございます。  ただ、原則的にそういう研究に着手する時期に来ているということでございますけれども、まだいつ、いかなるチャネルでやるかということについては何ら日米間で決まっておりませんし、それから三項を読んでいただきますと、東中委員の御指摘のとおり、自衛隊の基地の共同使用、これは確かに米軍と自衛隊でできるわけでございますが、それ以外のたとえば施設、区域の使用、追加提供を含めての使用については、やはり外務省が参加していかなければならない問題でございまして、そういうような、いつ、またどういうチャネルでやるかということは、これから考えていく問題でございます。
  317. 東中光雄

    ○東中委員 いま「米軍による自衛隊の基地の共同使用」と、これは基地の再提供の問題というふうに言われたわけですが、そのほかに「その他の便宜供与のあり方に関する研究」、便宜供与という言葉が使われているのですが、その中には補給、運搬、輸送、こういったものが入るのか入らないのか、その点をお伺いしたいのですが、そういうことについてはアメリカ側からは何も出ていませんか。これは自衛隊としてそれに協力するかどうかという問題、それから日本国として「その他の便宜供与」の中にそういうものが入るのか入らないのか、外務省にお聞きしたい。
  318. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 先ほども御答弁いたしましたとおり、まだこの三項に基づいての協議の仕方あるいはどこの場でやるかということが決まっておりません。したがって、アメリカ側から日本側に対してこの三項に基づいて何を要求してくるかという予想もできないわけでございますが、いずれにしても指針に明確に述べてございますように、日本側の協力の範囲内というのは、安保条約、その関連取り決め、さらにその他日本関係法令ということでございますから、そういう条約あるいは日本国内法令によってやるということで、あくまでもここで話すことが何でもできるということでございませんで、そういう制約があるということは、このガイドラインの前文あるいはその他の部分に明記されていることでございます。
  319. 東中光雄

    ○東中委員 朝鮮動乱といいますか、朝鮮戦争は一九五〇年の六月二十五日からありました。その朝鮮戦争下における日本の協力ぶり、これは「日本国有鉄道百年史」というのを私、ちょっと調べてみたんですけれども、ずいぶんひどい協力をさせられているのです。  たとえば「日本国有鉄道百年史」の第十二巻、「特需輸送」というのが四十九ページにありますが、「朝鮮戦争の開始は、大きな衝撃を与えることとなった。すなわち短時間のうちに膨大な兵員・資材を朝鮮に輸送するため、車両・施設ともに最大限の動員が要求された。」云々というのがあります。  同じ十三巻で「朝鮮動乱勃発と同時に連合軍総司令部民間運輸局・第八軍・第三鉄道輸送司令部は、動乱に伴う軍事輸送について国鉄の協力を求めてきた。このため国鉄は、かつて関釜連絡船として使用した船舶の雇い上げ、朝鮮向け兵員・物資の輸送、朝鮮鉄道等に関する資料の提出、物資調達、技術援助、機密保持、輸送に対する警備等必要な措置をとった。」、これは国鉄がそういうふうにやったということであります。  さらに十四巻の七百四十七ページを見ますと、「朝鮮動乱を契機として連合軍から国鉄に対し朝鮮戦災車両に対する修繕の要請があり、高砂工場において集中施工されることになった。」、とにかく半年分の工事量をはるかに上回るものが四カ月の間にやれということで、もう大変だったというようなことが載っています。  こういう要請を極東有事における便宜供与ということで言うてくるか、何を言うてくるかわからぬとおっしゃったけれども、現にこの朝鮮戦争では、日本は被占領国であって、何も関係のない戦争にそういう協力をさせられたわけですから、そういう点については外務省としては、輸送とか、あるいは兵員だけに限らぬですね、運輸あるいは修理、そういうものを負担させられる、そういうガイドラインをあらかじめ決めておくという方向へ入っていくというようなことは断じて許されぬ、そういうことをやれば、まさに安保条約の枠を越して、ガイドラインで枠を越したその枠をさらに今度はあらかじめ決める内容で枠を越していくということになっていきかねないので、そういうことについて外務省としてはどう考えられるか。向こうが言うてきたらどうしますか。
  320. 淺尾新一郎

    ○淺尾説明員 まず第一点の、ガイドラインそれ自身が安保条約の枠を越えているということでございますが、それはガイドラインそれ自身を読んでいただけば、あくまでも安保条約、あるいは関連取り決め、それから日本の法令の中ということが明記してあるわけでございます。さらにそのほか核の点を扱わないとか、あるいは憲法については触れないという、いろいろな制約条項がございます。  それからアメリカが言ってきた場合にどうするかということでございますが、これはまだアメリカが言ってきていない段階でどうこうするということをここで申し上げるのは若干尚早であると思いますが、いずれにしても研究・協議の機関でございまして、そこで研究協議したことは両国の政府を拘束するわけではなくて、改めてそれぞれの政府が判断してどこまでやるかということでございますので、それは具体的内容に即して判断する、こういうことになるかと思います。
  321. 東中光雄

    ○東中委員 そういうことは、輸送や補給やそういったことについては、やらないというのではなくて、具体的判断、具体的に事情に即して判断をするということで、そういうこともあり得るということを事実上認めていることになるわけですが、私はやはり、それ自体が基地の提供ということとは明らかに違うのですから、戦争協力の方向へ持っていくということになりかねない。自衛隊はそれについて、補給とかなんとかということで協力することはあるのですか、そのときの事態に応じて考えるのですか。
  322. 塩田章

    ○塩田説明員 自衛隊として考えられますのは、自衛隊の基地の共同使用のことがいま考えられるわけですが、それ以外のことは考えられません。
  323. 東中光雄

    ○東中委員 補給はどうです。
  324. 塩田章

    ○塩田説明員 それ以外のことは考えられません。
  325. 東中光雄

    ○東中委員 時間がありませんので長官にお伺いしたいのですが、ワインバーガー国防長官はウォール・ストリート・ジャーナル紙で、いわゆる一カ二分の一戦略から二正面戦略に変えることをワインバーガー自身が言っているわけですけれども、いわゆる二正面戦略について、会談でワインバーガー長官から直接大村防衛庁長官説明があったかどうか。あったとすれば、その戦略について向こうはどういうふうに、また防衛庁長官としてどういう見解を持たれておるか、お伺いしたいのです。
  326. 大村襄治

    大村国務大臣 ワインバーガー国防長官との会談におきまして、いま御指摘のありましたような二正面作戦についてのお話が出されたことはございません。
  327. 東中光雄

    ○東中委員 防衛庁長官は、ソ連脅威情報について冷静に評価していく必要がある、これは読売新聞七月六日号で言われているわけですが、これらは五六中業作成に当たっての情勢見積もりに反映されることになるのですか、ならないのですか。
  328. 大村襄治

    大村国務大臣 ソ連軍の軍事能力の増強の点につきましては、今回の会談におきましても米側説明があったわけでございます。また、この点に対する認識一致したわけでございます。  ところでお尋ねの、五六中業に当たってのソ連軍の増強の問題がどういう関係を持つかというお尋ねについてでございますが、私は、五六中業の策定の際に「防衛計画大綱」の水準をなるべく速やかに達成することを基本として作業を開始することについて国防会議の了解を得たところである、こういうわが方の作業の進め方について米側説明したことはあるわけでございます。現在作業を進めているわけでございますが、国際情勢の最近の状況等も念頭に置きながらこの作業を進めたいと考えているわけでございます。
  329. 塩田章

    ○塩田説明員 ちょっと補足して。いま長官がお答え申し上げましたように、国際軍事情勢というのは念頭に置きながら作業するわけでございますが、具体的に申し上げますと、中期業務見積もりをつくります前に統合中期防衛見積もりというものを統幕でつくります。それを受けてやるわけですが、その統合中期防衛見積もりというのはソ連と限りません。要するにその時点における国際軍事情勢についての見積もりを行っているわけであります。それを受けて作業をすることになります。
  330. 東中光雄

    ○東中委員 防衛見積もりができて、それを基礎にして中業をつくっていくという、訓令ではそういうたてまえになっていますね。統合防衛見積もりの方はもう進んでいるのですか。どうなんですか。
  331. 塩田章

    ○塩田説明員 現在作業中でございます。
  332. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、五六中業はまだ作業に入っていないということですね。
  333. 塩田章

    ○塩田説明員 五六中業も作業に入っております。言うなれば、両者並行してやっているわけですが、事柄の性質上、防衛見積もりの方を先に仕上げたいというふうに考えておるわけであります。
  334. 東中光雄

    ○東中委員 先に仕上げたいのじゃなくて、先に仕上げてそれに基づいてやる。五三中業もそうなっていますね。半年ほどおくれているでしょう。統合防衛見積もりの方が先でしょう。ところが、統合防衛見積もりを統幕でやる前に、アメリカとで日米見積もりを先にやっているわけですね。そういう感じを私は受けるわけです。それが日本防衛庁のあり方の基本の問題として、やはり非常に重要な問題があると思うわけです。  宮澤官房長官が六月二十日の記者会見で、防衛増強の優先度のめどを大村防衛庁長官が向こうに行かれたら示すのだというふうな発言をされているのですが、防衛庁長官は優先順位をアメリカに明示されたことがあるのですか、ないのですか。
  335. 大村襄治

    大村国務大臣 私はワシントンにおけるワインバーガー国防長官等との会談におきまして、先ほども触れましたとおり、わが国防衛努力状況、進め方についてるる説明したところでございますが、いま御指摘のあったような優先度に触れるような点につきましては、まだそれ自体決まっておらないわけですから説明したことはございません。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕
  336. 東中光雄

    ○東中委員 ハワイでの事務レベル協議アメリカ側が要求してきた、先ほど来問題になっている問題でありますが、どうも過程の問題というかプロセスの問題であるから向こう側との話し合いで明らかにしないのだと言われているのですが、これは非常におかしいと思うのですね。秘密事項じゃないでしょう。これは本来秘密事項なんですか。それなら今度は、各紙が報道している問題は秘密漏洩になるということなのか。そうじゃないんだ、しかし国会では言わないことになっているんだ。全く国会を頭越しにしてしまうということになるんですね。これでは世間が納得しませんよ。これだけ新聞に出ておって、そしてその新聞は、秘密事項だったら漏洩したということになるわけでしょう。犯罪行為になるわけじゃないですか。日本じゅうの新聞が全部犯罪行為をやっておって、そういうのもおかしなことで、これはもう通用しないことでしょう。国会で言わぬというのはどういうことですか。向こうから言ったことはこういうことだとさっと言えばいいじゃないですか。なぜいかぬのですか。
  337. 塩田章

    ○塩田説明員 こういうことは秘密事項だということよりも、日米関係者が集まってハワイでの事務協議そのものがお互いにフランクに自由な意見交換をしよう、こういう趣旨でそもそもやっておりますから、そこで一々だれがどういうことをしゃべった、幾らであったというようなことを後で公表するということになりますと、いわゆる自由な意見の交換ができないということで、お互いにそれは公表しないことにしようということで話し合いをしているわけです。  ただ、そうは言いましても、どういうことをしたのかということをいろいろ聞かれますので、たとえば先ほど来申し上げております四つの点についての話があったというようなことは申し上げているわけですね。それをさらに、今度は具体的に数字がいろいろ出ているじゃないか、こういうことでありますけれども、これは各社の取材による記事でございます。
  338. 東中光雄

    ○東中委員 そんなことはお聞きせぬでもわかっっています。各紙が取材ないで記事ができるわけないんだから。  問題は、じゃここで、これはある大新聞ですが、ミサイル護衛艦は米側案では七十隻五個群、大綱が六十隻四個群だ。潜水艦は二十五隻、大綱は十六隻だ。対潜哨戒機P3C主体で百二十五機を米側は要求し、大綱の計画は百機だ。それから迎撃戦闘機は十四個飛行隊、F15を主体にして要求した、大綱は十個飛行隊だ。支援戦闘機は六個飛行隊を要求してき、大綱は三個飛行隊だ。長くなりますが、こういうことがちゃんと出ているわけですね。これは取材してやっているんですが、事実に反するんですか。これはアメリカ側が個々に個人的見解を言うたというのと違いますね。それは先ほどの防衛庁長官の答弁でもはっきりしているわけでしょう。シンポジウムで個人的に言っているということじゃなくて、アメリカ側のこの時点におけるそういう要求であったということははっきりしているんだから、こういう具体的に新聞に報道されていることは事実の歪曲であり、でっち上げであるというふうに言われるのか、そういうふうに報道されているんだったら、それは正当な取材によって報道された真実を告げる新聞の結果だということなのか、どっちなんですか。
  339. 塩田章

    ○塩田説明員 アメリカ側の個人的意見ではなくてアメリカ側としての意見だということではございますが、この点も数値についてはさらに検討しよう、しかし、当面いまアメリカが検討したものがこういう数字だ、こういう言い方でございますということは先ほど申し上げたわけです。  個々の新聞の記事について、各社が取材されましたことについて私がコメントすることは控えさしていただきたいと思います。
  340. 東中光雄

    ○東中委員 私は新聞のことについてコメントしてくれと言っているんじゃなくて、新聞でそういう報道をしている。実際に会議でやられたのは、当面計算してみたらこういう数字が出ているのだが、ということをアメリカ側が言うた。その言うた内容はこういう数字であったということは事実なんですか、事実でないんですか。こう聞いているのです。内容について聞いているのですよ。新聞の報道について聞いているんじゃないのです。報道に書かれている内容について聞いているのです。
  341. 塩田章

    ○塩田説明員 そういう報道があることは私も読んで承知しておりますが、その内容については当たっているとか当たっていないとかいうコメントは差し控えさせていただきたいわけであります。
  342. 東中光雄

    ○東中委員 それは答弁拒否ということですか。憲法の六十三条によりますと、政府は国会に出席して答弁しなければならぬという憲法上の義務があるのですよ。秘密だから言えないと言うのだったら、これはわかりますよ。秘密でないのだったら、言うたらいいじゃないですか。これが固定的なアメリカの強い要求であった、そんなことを私は言っているのじゃないのですよ。実際のことを言うてください。新聞で書いておって、日本じゅう、世界じゅう知っておって、そして国会にだけは言わぬ、そんな権威のない安保特別委員会というのはありますか。何がシビリアンコントロールですか。ちゃんと言いなさい。
  343. 塩田章

    ○塩田説明員 答弁拒否ではなくて、いまのような答弁を申し上げているわけであります。  中身をなぜ言わないかということは、先ほど来申し上げておりますように、これは日米のそこに参加した当事者の約束でございます。そういう意味で申し上げたわけでございます。
  344. 東中光雄

    ○東中委員 新聞に出ているのは、どこかが取材して、そこへ出席した人が言うているわけでしょう。約束違反が起こっているわけですか。それで国会だけは一これは本当に国会を「裸の王様」にしてしまうということですよ。国会の権威にかかわる問題だと私は思います。  委員長、そういう点はよっぽど考えてもらわないと、もしシビリアンコントロールだとか何だとかいうことを、私たち本気でそう思っておりませんよ、しかし、あなた方がそう言うのだったら、シビリアンコントロールなんてないことになる。こんなことははっきりすべきだ。あえてこれを拒否されるとすれば、次の質問に答えにくいから拒否されているのだと私は思っております。だって、迎撃戦闘機を四飛行隊、大綱よりもふやすというのでしょう。どこへそれを配備するかということを当然アメリカ側は言わなければおかしいですからね。言わないでは済まされない、子供の遊びじゃあるまいし、それを言わなければいかぬことになる。それをつつかれたら困ることが起こってくる。対潜哨戒機をP3Cを中心にして大綱よりもまだ二十五機ふやす。それじゃシーレーン防衛どころじゃない、シーレーンの防空まで言い出してくる、それに見合うための数字じゃないですか。だからこそ、それに対して先回りして、塩田局長は、先ほど言われた四つの問題点を言うて、根拠づけ、理由の説明はなかったと言っている。こんな根拠づけも説明もなくて数字だけ出すというばかなことは絶対あり得ぬわけですよ。それを聞かなかったとしたらおかしい、ばかにするなということになるわけですよ。だから、これは鈴木・レーガン首脳会談の線に沿った増強要求じゃないですか、配備の要求じゃないですか。そう考えないと、だれも納得しませんよ。その点どうなんです。もうざっくばらんに、向こうはこういう要求をしてきた、日本はそれにもかかわらずこうなったのだというのなら、そう言うてもらったらいいわけです。どうでしょう。
  345. 塩田章

    ○塩田説明員 ざっくばらんに言えということでございますが、ざっくばらんに申し上げますと、その根拠づけ、理由について正真正銘説明がなかったのです。だからこそ私たちは、それはそれでアメリカの言い分がいいかどうかは別として、今後はそれを聞いていきたいと思っています。思っていますが、ハワイ会談でそれはなかった。  それじゃ三日間もおって何をしておったかということですけれども、たくさん議題がございまして、連日やったわけでございますけれども、その問題については説明がなかったということは正真正銘……(発言する者あり)いや、いままで全部正真正銘申し上げておりますが、本当になかったわけでございます。
  346. 東中光雄

    ○東中委員 それがなかったとすれば、この事務レベル協議というのは遊びに行っておったのかということになりますよ。だって、あなた、アメリカの飛行機ばかりですよ、P3CにしましてもF15にしましても。それをよけい買えというセールスをやっていたのですか。セールスマンでも、これを買うたらどういう効用がありますよというぐらいの説明はするのですよ。少なくとも、事務レベル協議といえども局長クラスの人たちが行って、事務次官が行って、両国政府の事務レベルでのトップクラスが行っての話でしょう。しかしその説明はなかった。それで済みますか。私たちはむしろそれに対して重大な疑惑さえ感じますね。  もう時間がありませんのでもう一点だけ聞いておきたいのですが、大綱の達成を八五年をめどにすべきだということをアメリカ側が要求したと伝えられておるのですけれども、そういうことはありますか。
  347. 大村襄治

    大村国務大臣 ワインバーガー国防長官との会談の際に、わが国といたしましては、次の中業を作成するに当たりまして、大綱の水準をなるべく速やかに達成することを基本として作業にかかることになっているということを申したのでございます。それにつきまして先方から、もっと早くしてほしいという意見の開陳があったわけでございますが、その際に八五年云々というようなお話はなかったわけでございます。  ただ、次の中業がいつできるのか、つまり中業の期間から見ますると八〇年代の終わりごろになる、そういった点からいってもっと早くしてほしい、こういうふうな意見はあったわけでございます。
  348. 東中光雄

    ○東中委員 五六中業でいけばそれは終わりごろになるということの説明に対して、もっと早く、こういうことなんですね。五六中業の終わりは八〇年代の終わりごろになる。しかし実際は五六中業が動き出して、それであれは三年ごとに次の中業に入りますから、そうすると、五六中業は八五年で次に改定作業に入っていくわけですね。しかも五六中業では大綱を達成することを基本とするということになっておるから、八五年までに五六中業の中身によっては大綱を達成することに事実上なっていく。五六中業の次は五九中業ですか、それはまた二年先から発効するわけですけれども、しかし、現にそれが発効し出したら前のやつは消えてしまいますね。いまの五三中業は、五六中業ができたらもう来年度からは変わっていくでしょう。そういうことになるのでしょう。そうすると結局アメリカ側が言うておるのと同じことになるのじゃないですか。そういう筋道になるのですが、それじゃそういう話し合いにということで、大体一致しておるなということになったのと違うのですか。
  349. 大村襄治

    大村国務大臣 私は、いま申し上げましたように、次の中業、五六中業の作成の基本的な考え方説明したわけでございます。その次の五九中業ですか、そのことをお話ししたわけでもございませんし、先方としては、そういう点は別に考えてないものと理解しております。(「八七だよ」と呼ぶ者あり)
  350. 東中光雄

    ○東中委員 ちょっと済みません。八七になるのですけれども、その二年前の八五に、三年目にもう次の中業をつくることになるということを私は言っているわけですから、それはだから西暦で言えば、五六中業の先は八五中業になってきておるということを言っているわけですね。そういう点で言うと、向こうの要求に合うように、しかも大綱は五六中業で達成することを基本にするということになっている以上は、五カ年の計画でありながら三年ごとに変えていくから、前倒しが、前倒しと言えるかどうかわからぬが、自由にできるようになっておるから、なかなかこれは伸縮自在にうまいことできておるな、アメリカ要請にちゃんとこたえられるようになっておるというふうに理解せざるを得ぬということを指摘をしておるわけであります。
  351. 大村襄治

    大村国務大臣 現在の中業が、御指摘のように三年ごとの改定ということになっておりますので、ローリングシステムになっていることは先生御指摘のとおりでございます。  しかし、五六の次は五九でございますが、五九が決まりましても動き出すのはそれから二年後でございますので、先方といたしましては、八〇年代半ばぐらいまでに日本防衛力を充実してほしいということが重点でございますので、ちょっと先のことは関係がなかったものというふうに私は理解しておるわけであります。
  352. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。
  353. 坂田道太

    坂田委員長 次に、中馬弘毅君。
  354. 中馬弘毅

    ○中馬委員 防衛庁長官訪米、訪欧についての御報告を受けましたが、正直申しまして非常に失望したというか、内容にしましても非常に大ざっぱでございますし、数字的な詰めも余りできておりませんし、また同時に、この中身がもう少し、これだけ大きな力を持った日本の立場として、日本の主張すべきところがもっと出ていていいんじゃないかという気がしておったのですが、それがほとんどなくて、ただアメリカの大きな声に対する防戦一方の受け身の会談であったんじゃないかということをつくづく感じている次第でございます。  これだけの力になった日本でございますから、一つ世界平和に寄与する方法としましても、この部分の責任自分たちが持とうじゃないか、そのわかりこの部分はあなたたちがやってくださいよ、またこういう面でわれわれは寄与したいというようなことがうたわれて、そしてアメリカもそれに合意して納得したという面が一つでも出てくればまだ納得できるのでございますけれども、余りにも防衛力の増強というもののアメリカの圧力に対して日本が防戦これ一方に努めたきらいがある。しかも、その裏で何か場合によっては約束もさせられたのじゃないかというような印象が余りにも強いことを非常に残念に思うのです。  この間私たちは、安全保障特別委員会の派遣でヨーロッパにも行ってまいりました。西ヨーロッパ諸国態度を見ておりますと、日本と非常に似通ったところがあるんじゃないかと思うのですね。  といいますのは、やはりアメリカがかなりのソ連、東欧を意識した形での軍備拡充競争の中にはまり込んできている。しかし西ヨーロッパとしては、それに対してもちろん大きな配慮をしながらも、ソ連ともちゃんとルートを持ち、アメリカとも両てんびんにかげながら、一つヨーロッパの庭というものを大事に守っていきたいという意識がありありと見えるわけです。そうすることからすれば、日本のいま置かれた立場から言うならば、むしろ西側ヨーロッパ諸国との間の方が関係が近いんじゃなかろうかという気がするのですね。  日本西側一員ということをよく言いますけれども、いまの状況から言いますと、西側一員じゃなくて、むしろアメリカ一員という形になり過ぎていやしないか。防衛庁長官ヨーロッパにも回られて、それぞれNATOの要人とも会談されたことでもございますから、今後西ヨーロッパとの関係西側諸国一員としてどう位置づけていくのか、もう少し緊密な関係を持つ必要があるんじゃなかろうか、それがグローバルな関係での東西の一つ関係になってくるんじゃなかろうか、このような気がするわけでございますが、防衛庁長官の御所見を承りたいと存じます。
  355. 大村襄治

    大村国務大臣 私は米国における会談ヨーロッパに参りまして、NATOの事務総長、西独の国防大臣等と会談いたしまして、ただいま先生が御指摘になりましたような問題につきまして、先方の意見なり考え方を聞いてきた次第でございます。  それによりますると、戦術核の問題につきましては、NATO諸国としましては、SS20等の増強に対応するためには、共同してこれに対抗できるだけの兵力を増強しなければならない、そういう観点から、パーシングIIの導入、また巡航ミサイルの配備等を決定し、各国にこれを割り当てたところでございます。と同時に、軍備管理に関する交渉ソ連に対して行う、また米国にもその点を要望する、こういう決定を行っているわけでございます。  ソ連の著しい対応ぶりに対しまして、みずからの手によって、共同によって増強を図ると同時に、軍備管理交渉を行う、この点に特色があるわけでございまして、その点からいたしますると、わが国といたしましても、安保体制を堅持しながら、みずからの防衛努力はみずからの手によって行わなければならないということを痛感いたしたわけでございます。  また、アメリカにおける会談におきまして、ワインバーガー国防長官等から、ソ連の最近の軍事力の増強ぶりについてるる説明があったわけでございますが、それに対応するアメリカ側の措置といたしましては、ほっておけば総合的な軍事力が逆転するおそれがあり、そのことが世界の政治にいろいろ悪影響を及ぼすおそれもあるので、今回アメリカ政府が決断を下して、みずから国防力の充実、増額を図ったので、同盟諸国のそれぞれの立場における一層の協力を望む、こういう趣旨の説明があったわけでございます。  これは軍事力の増強に着目した発言でございますが、対応する手段としては必ずしも軍事力の増強だけではないというふうに理解いたしているわけでございます。米政府自身、対ソ交渉の窓口は閉ざしていないということは大統領自身もしばしば申しておるところでございますし、欧州も、同時交渉の場合にも、やはり軍備管理交渉の場に着くのはアメリカでございますので、そういった点につきましてなおいろいろな点を考慮されている余地があると思う。何も軍事力だけではない。ただ、ソ連軍事力の著しい増強に対して手をこまねいているわけにはいかない、その一環としてアメリカ自身国防予算の増額を図り、同盟諸国に対して応分の協力を求める、こういう説明があったことを申し上げておきたいと思うのであります。
  356. 中馬弘毅

    ○中馬委員 世界情勢というのは、緊迫しているというよりもむしろ流動化していると考えた方がいいんじゃないかと思うのですね。アメリカの相対的な地位もこのところずっと下がってきたことは御承知のとおりでございます。またソ連の力というのも、見方はいろいろありましょうけれども世界の中における地位としましてはやはり相対的には下がってきている。その中にあって、両国とも場合によっては、ある意味では悪あがきをしている面があるかもしれません。しかしそれであるだけに、日本として、あるいはまたその他の先進諸国として、今後世界戦略、いい意味での世界平和に寄与する戦略として、世界政策としてどのような方策を持っていくかということは、それぞれが持たなければいけない時代になってきたと思うのですね。ただアメリカだけに頼っておったらいい、ソ連に頼っておったらいいという時代じゃなくて、それぞれがそれぞれの責任を持たなければ世界の平和が保たれないというような状況になってきたと思うのです。  そのときに、先ほど言いましたことをもう一度お尋ねしますけれども日本ヨーロッパがどのような形で具体的に結びつきをつくることができるのか。その点についてお考えが全くないのか、あるのか、その点をひとつお伺いをしたいと思います。
  357. 大村襄治

    大村国務大臣 西側の自由主義を守ろうとしている国々とは共通の面もございますので、いろいろ対話を続けることが双方にとって役に立つ面があると思うわけでございます。その場合の方法をどうするか、その点につきましてはまだ具体的なあれはないわけでございますが、いろいろな機会を通じて対話をし、意思の疎通を図る、そして共通の問題について国連の場等を活用できる面があればこれも活用していく、こういうことが一つの進め方ではないかと思っているわけでございます。
  358. 中馬弘毅

    ○中馬委員 アメリカソ連一つ軍備管理の席に着けるにしましても、その力というものは、それらの国が手を結んでそこに申し入れることによって、むしろ席に着くチャンスといいますか、それが強くなると確信いたしておりますので、特に世界のリーダー、アメリカソ連を除くリーダー的な役割りを果たす国々と、より一層の連携と緊密な関係を持たれることを切にお願いする次第でございます。  最近よく言われておりますアメリカ側の主張の中で、八五年のソ連の危機説というのがあるわけですね。これは具体的にアメリカはどういうことの根拠でもって主張しているのか、その辺をひとつ明らかにしていただきたいと思います。そして、これを強調するアメリカの意図が、果たしてただ相手の軍備拡充に本当の脅威感じての意図なのか、また別の意図がありはしないか、その点について長官のお考えを承りたいと思います。
  359. 大村襄治

    大村国務大臣 八五年危機説につきましては、先ほども御質問のありました際に、ワインバーガー国防長官の三月四日の発言を引用したわけでございますが、これは、最近の国防支出水準を将来も続けるならば、米国は一九八〇年代半ばまでに軍事力ソ連に劣る地位に立つこととなり、これに伴い、米国自身の安全保障西側同盟国との結束等に悪影響を及ぼすこととなろう、これが代表的な見解であると思うわけでございます。  要約すれば、何もしないでおったならば軍事力で相対的にソ連に劣る地位になり、そのことが、米国自身のみならず、西側同盟諸国との結束あるいは世界的規模での共通の利益の保護に重大な悪影響を及ぼすおそれがある、そういうことで、アメリカみずからが国防支出の水準を高めることに決意をして、そしてそれを国会の承認を得て実現した、それを受けて、同盟諸国に対するそれぞれの立場における防衛努力の増加を要請しているというのが、会談の席上における国防長官お話の粗筋だったというふうに記憶いたしているわけでございます。
  360. 中馬弘毅

    ○中馬委員 こちらはその会談の表面的な主張のその裏にあるものを、長官が何かお感じになっていないかどうかをお聞きしたようなことでございまして、一つの見方をすれば、先ほど言いますように、アメリカが相対的な世界経済なり社会における地位を落としてきている、そしてそれはあるときは貿易圧力で、あるいは一時は国際金融、ドル・ショックがありましたが、あのような形での金融政策において、あるいはメジャーを動かしての石油ショックという形で、追随する国々との相対的な格差を少しはあけようと、いろいろな意味努力したかと思うのです。しかし、それが結局はその差はなかなか縮まらないどころか、むしろ開いてくる。その中にあって、一つのあがきとして、やはり経済的な問題がその一番大きな要因であって、貿易バランスも含めて、ここで最後の切り札としての武器輸出も含めた世界軍事的な拡充ということに踏み切ったのじゃなかろうかという見方もあるわけです。その点について長官はいかがお考えになりますか。
  361. 大村襄治

    大村国務大臣 私はワインバーガー国防長官ヘイグ国務長官、またアレン顧問、そしてまた両院の軍事委員長、一連の会談を通じまして、アメリカソ連軍事能力の著しい増大という状況からいたしまして、自由社会を守るためには自由主義諸国共同して臨むことが必要である、そのためにはみずからが率先して国防努力を再開することを決意したものであるということは、そのまままともに受けとめてよろしいのではないか。経済不況あるいは失業、インフレ、そういった難問題はアメリカ自身も抱えておりますし、ヨーロッパの国々も同様に抱えているわけでございますが、にもかかわらず、この際国防努力強化するということにつきましては、やはり自由主義社会を守っていくために必要不可欠の方法であるという判断が基礎にあったものと受けとめているわけでございます。
  362. 中馬弘毅

    ○中馬委員 会談の中身について少しお伺いさせていただきます。  七・五%については、これはインフレを考えれば少な過ぎるとアメリカは主張して、長官の方は七・五%はシーリングだから、これに努力するからというお答えであったようでございます。これは来年度予算のことでございますが、その後については何か米側は要求したかどうか。七・五%を来年度すればもうそれでいいということじゃないと思います。来年のその次も七・五%なのか、あるいはその次はもっと頼むぞと言ったのか、そのあたり、少し先のことをお願いしたいと思います。
  363. 大村襄治

    大村国務大臣 私は、五十七年度の概算要求のシーリングとして七・五%の枠が設定されたが、これは今後査定を受ける性格のものでありますけれどもわが国国内の事情からすれば精いっぱいの限度であると考えておるので、その範囲内で、できるだけ来年度の概算要求でよいものができるように最善の努力を尽くす考えであるという説明をいたしたのでございます。  それに対しましてワインバーガー国防長官から、インフレ率を考慮すれば必ずしも十分とは言えない、もっとふやすことができればふやしてもらいたいという趣旨の発言があったわけでございます。  それに対しまして、私は、日本の場合には比較的物価が安定している、アメリカインフレ率は十数%でありますが、わが国の場合におきましては五%台という点、また今後よほどのことが起こらない限りその点に変わりはないものと思われるので、相当な実質成長も期待できるのであるという点も説明いたしたのでございますが、いずれにいたしましても、もっとふやすようにしてほしいという希望的な意見は付されたわけでございます。  五十八年度以降の問題につきましては、私は五六中業の作成に当たりまして、これは五十八年から六十二年の期間に当たるものにつきまして、「防衛計画大綱」の水準を達成することを基本として作業に入ったという点を説明いたしましたところ、「防衛計画大綱」が五十一年、七六年時点の水準のものでございますので、その後の国際情勢の変化からすれば必ずしも今日に適合するものではないのではないか、そういうふうな発言もあったわけでございます。  国際情勢は確かに変化しているとは申しますものの、わが国防衛の、平時におけるいわば最低水準とも言うべきこの水準を達成することによりまして、わが国防衛力現状に比して相当改善を見られるはずであるので、私といたしましては、この水準の達成に努力を尽くしたいということを申し述べ、また、ハワイ会談等で示されました先方の意見につきましても、この作業の策定過程におきまして、背景等もよく聞きました上で、取り入れられるものは取り入れるように努力したい、こういう発言もいたしたわけでございます。  以上が主な経過でございます。
  364. 中馬弘毅

    ○中馬委員 時間がございませんので簡単にお願いしたいと思います。  ヨーロッパは、毎年軍事予算三%増を約束いたしております。日本がこの七・五%増を今後とも約束したのか、あるいはさせられたのか、そういうことはなかったのか、その点についてお答え願います。
  365. 大村襄治

    大村国務大臣 七・五%は、いま申し上げましたとおり五十七年度のシーリングについてのお話をしたわけでございまして、その後のことにつきまして約束をいたしたようなことはございません。
  366. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それから、日米間の装備技術交流の推進をしたい旨向こうから申し入れがあったようでございますけれども、これはわれわれが前から言っておりますように、日本防衛のあり方というのは、ただ旧来の軍備で、その軍備の拡張をするだけではなくて、もう少し近代的な技術を装備した、本当に防衛に重点を置いた装備というのが考えられるのじゃなかろうか。どんな兵器でもそれにはそれぞれ弱点がございます。私たちは非核三原則を守って核を持たないことにしておる。しかし、核の装備にしたところでこれには弱点があるはずで、それにはエレクトロニクスやあるいは電子粒子ビームやレーザーといったものでやったらいいじゃないかということを前にも申し上げたこともございます。そのような宝の山があることをちゃんと向こうの方が先に見つけて、そのことを申し入れてきたということを私もつくづく感じたわけでございますけれども、この内容について、いまさっき余り詳しいお答えがございませんでしたので、どういうことを向こうは要求してきたのか、少し具体的な話があればお願いしたいと思います。
  367. 大村襄治

    大村国務大臣 技術協力の問題につきましては、ハワイにおける事務レベル、またワシントンにおける閣僚レベルの会談を通じまして、米側は、日米間の装備技術交流を推進したい旨を強調し、さらに、このような交流活発化は、米側防衛技術の対日輸出を従来どおり円滑に行うという見地からも必要であるという趣旨の発言があったわけでございます。  日米間の防衛技術交流につきましては、今後相互主義の原則にのっとって拡大していきたいというのが私ども基本的な考え方でございますので、その旨を米側にも伝えたところでありますが、具体的な問題につきましては、わが国が供与し得る技術の中身やまた制約もございます。そういった点につきましては、武器輸出に関する国会決議あるいは日米相互防衛援助協定との絡み等がございますので、先方の話もよく聞いた上で、今後さらにどのような協力が可能か、関係省庁の間で検討する必要があるということを帰国後の閣議でも報告し、その了承を得たところでございます。
  368. 中馬弘毅

    ○中馬委員 新聞の報ずるところによりますと、超しSIだとかあるいはレーザーといったような言葉も出てきておりますけれども、そのようなことは具体的に話があったのですか。
  369. 大村襄治

    大村国務大臣 ワシントンにおける会談におきましてはそういう具体的なお話は出されなかったわけでございます。一般論として技術交流の促進を図ってほしい、こういう話があったわけでございまして、私は、その点を持ち帰りまして関係省庁間で相談をしてみたいという趣旨のことを申し上げたわけでございます。  なお、今後装備局長レベルにおける技術交流協議も行われるわけでございますので、また中身等につきましては先方の意向も確かめて検討してまいりたい、さように考えておるわけでございます。
  370. 中馬弘毅

    ○中馬委員 具体的な中身もなしに相談できないと思うのですが、結構でございます。  それから南北問題についてお聞きいたしますけれども、この発展途上国援助についてアメリカが少し見直しの機運を持ってきている。やはり武器とセットでかなりひもつきでなかったら効果がないという、ばらまき福祉じゃないですけれども、ばらまき援助をしておっても余り効果がないじゃないかということがレーガン政権一つの反省になって、そのような方向で動き始めているようでもございます。  しかし、現実の問題として、例の後進国、発展途上国が国内的に非常に貧しい、そしてそこに非常に不満を持つ人たちが発生してくる、そこにある意味ではっけ込まれるというようなことで、むしろそこから国際紛争の種が起こってくるのじゃないかという気がするわけでございまして、その意味からいきましても、日本がある程度、これだけの国力を持って、そして防衛の軍備的な増強ではなくて、こういう面で、じゃアメリカに肩がわりをしてあげましょうということが言えるのじゃないかと思うのですね。その必要性は非常に高いと思います。その面での肩がわりがわが国役割りでこそあれ、アメリカが言う形での軍備拡張というのは余り好ましくないのじゃないかと私たちは思うわけでございますけれども、その点について、これは外務省の方になりますか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  371. 中村順一

    ○中村説明員 先生いま御指摘の点でございますけれどもレーガン政権が、南北問題につきまして、開発途上国の政治的、社会的な安定というものが西側諸国安全保障にとって非常に重要である、そういう観点から経済協力の問題を考えている、重視しているということは、私どももそういうふうに理解しております。  一方、日本といたしましては、先生御承知のとおり、先般新中期目標というものを表明いたしまして、経済協力の積極的な拡充を図りまして、日本の総合的な安全保障を図りますとともに、世界の平和と安定に貢献するという方針を表明いたしておるわけでございます。  先般鈴木総理が訪米なさいました際にも、鈴木総理から、わが国は「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化してゆく」という表明をなさったわけでございます。そのことが共同声明にも書かれているわけでございます。ただ、具体的にどの地域に援助を強化していくか、援助の具体的な実施につきましては、それぞれの開発途上国と日本との相互依存の度合いとか、あるいは人道的な考慮という観点から、日本の独自の総合的な判断によりまして援助を推進していきたいと考えております。
  372. 中馬弘毅

    ○中馬委員 最後に、これだけアメリカの要求も強くなってきております。しかし、ちょうど人間の体にたとえるならば、非常にひ弱で、自分の身を守るあるいは国を守るという気概もない、それにやたらによろいかぶとを着せて、重いなぎなたを持たせて歩かせるようなもので、そんなことをしたところで、国の安全が守れるものだとは思っておりません。  先ほど言いましたように、たまたま欧州を回りまして民間防衛体制を見てまいりましたけれども、西ドイツの場合、これは非常に強いなと思いましたのは、ただ軍事に備えたという民間防衛ではなくて、災害のときにたとえば瓦れきの山の中から人を救い出すとかの人命救助をする、あるいは破れた土管を修理する、あるいは線路を修復する、こういったことをボランティアも含めた一般の民間の人たちに順次に訓練を施しております。しかもかなり近代的な装備を備えてさせておるわけですね。自警団を少し近代化したと考えた方がいいかもしれませんが、そのようなことがあって初めて本当に国が守れるので、特に日本のように、ただ軍事だけではなくて、台風や地震といった災害のときにもこれは非常に大きく役立つことでございますから、そういうものが前提でなくても、並行でも結構ですけれども、それが同時に軍備とそろっていなかったら、幾ら軍備をそろえたところで国を守れない。いざ戦争となったら、それこそ艦砲射撃一つ国民がみんな暴動を起こしてしまうといったようなのが現状じゃないかと思うのですね。この民間防衛というものについて、国の安全を預かられる防衛庁長官はどのようにお考えか、最後に承りたいと思います。
  373. 大村襄治

    大村国務大臣 民間防衛につきましては、万一武力侵略が生じた場合、国民の生命、財産を守るために必要な手段であり、方法でありまして、ただいま御指摘のありましたように、西欧の国々を見ましても、それぞれの民間防衛の組織なり活動が現に行われているところでございます。わが国におきましてはそういった点につきましてまだ国家施策として取り上げられるに至っておらないことは残念でございますが、防衛庁だけで推進できるものでもございませんので、国民のコンセンサスを得ながら、こういった問題につきましても整備を図っていく必要がある、さように考えておる次第でございます。
  374. 坂田道太

    坂田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十四分散会