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吉田正雄君 私は、計画が計画倒れにならないためと、もう一つは基本的に原発に大きく頼るのはむしろ安定供給の面からそれが将来また変更せざるを得ないリスクというものを持っているということから、慎重にその点は
配慮する必要があると思うんですね。当初原発の稼働率というのは七〇%と言われておったわけですね。しかし今日までの
実態を見ますと、ここ五年間を見ましても四〇%台から五〇%台を低迷をしておる。こういう
状況であるわけですね。そういうものがわかっておりながらなおかつ七〇%というふうに計算をすること自体、
実態を無視をしておるものでありますし、それから原子力に対する過大な期待というものを国民に抱かせる、幻想を抱かせるということになると思いますから、その点はやはり
実態をはっきりとつかんだ上での計画でないと、また近々にして計画を直さなきゃならぬという事態を迎えるんじゃないかというふうに思います。もう設備利用率が劣悪なことは皆さん方が一番よく御存じなんですね。
そういうことで、私はきのうの
大臣の所信演説の中で、世界の大きな流れはすでに原発で固まったような演説をされておりますが、私は
大臣、原発についてもう少し、単なる周囲だけの発言に耳を傾けるのでなくて、広く世界の
実態というものを見ていただきたいと思うんですよ。いま
アメリカとヨーロッパ——フランスを除くヨーロッパでは、むしろ原発は中止、廃止、現にあるものは認めても、それは現に稼働しているもののみを認めるのであって、新設の原発は認めないという方向に世界の大勢はむしろ向いておるんですよね。そういう点で、私は
大臣が一体周囲からどういうレクチャーを受けられたのかわかりませんけれ
ども、もう少しひとつ原発の世界の現実の流れというものをはっきりつかんでいただきたいと思うんです。原発はフランスと
日本がまさに
機関車的な役割りを果たしておりますけれ
ども、西独を初めとして必ずしもそうでないという点で、もうちょっと認識を私は新たにしてもらう必要があるんじゃないかというふうに思います。
確かにIEAでは、原発に大きく期待をするということで、各国にもその努力を
要請をしておるようでありますけれ
ども、私はむしろこれは危険な道ではないか。安全性とか放射能の危険性という面とあわせて、エネルギーの安定的な供給、そういう面から見ても、私はこれはもう一回
日本政府として再検討すべきではないかというふうに思っているんです。これは時間がありませんから
大臣答弁は要りません。いずれ改めてこの問題についてはまた論議をする場をぜひ設けていただきたいというふうに思っておるわけです。
そこで、第二点目の大きな問題として、労働者被曝の
実態が非常に深刻になっておるわけです。商業用原子炉の監督官庁というのは
通産省であるわけですから、そういう点で、一次的責任としては科学技術庁、原子力安全
委員会ではなくて、私は
通産省が負うべきものだろうと思っております。この問題については、あす科学技術
対策特別
委員会で改めて
通産省側の細かい内容についてはお尋ねをいたしますし、科技庁の見解もお尋ねをいたしますが、私はきょう
大臣から、この労働者被曝について今後どう
対処するのか、基本的な
考え方だけをお聞かせ願いたいと思うんです。
実態を申し上げますと、実は
通産省や科学技術庁から発表されたこの労働者被曝の
実態を見ましても、七〇年度に労働者被曝の総線量が五百六十一人レムだった。ところが七七年度が八千百二十六人レム。もう十倍以上になっているんですね。十六倍くらいです。七八年度が一万三千二百一人レム、七十九年度が一万一千七百三十一人レムということで、七〇年度から七九年度までのいわゆる累積線量が実に五万三千八百四十四人レムとなっているんです。これは環境外放出した一般公衆の被曝は含んでないんです。本当に原発に働く人たちだけの被曝線量なんですね。この数字がどれだけ大変な数字かというのは、スリーマイルアイランド原発事故によって環境に放出された放射能による被曝線量が三千三百人レムなんですね。あれだけの大事故でも三千三百人レム、これは
アメリカ政府の発表ですが。それに対して五万三千八百四十四人レムというものがいかに恐るべき数字かということは、それだけでもおわかりいただけると思うんです。よく
通産省とか安全
委員会は許容量ということを盛んに言いますけれ
ども、これは率直に言って、放射能には許容量というのはありません。あれは単なる行政当局が一方的に定めた勝手な目安線量にしかすぎないんですね。ここで詳しく申し上げるまでもないと思うんですけれ
ども、もともと原子力の危険性というのは放射能の危険性なんです。したがって、人間とそれを取り巻く生態系というものを放射能からいかに隔絶をし安全に管理をするかということなくしてこの原子力の安全性というのは確保されないわけなんですね。
最近わかってまいりましたのは、エチオニンと放射線との肝臓がん発生に対する相乗作用あるいはウラン微粉末とたばこの煙との呼吸器がん発生に対する相乗作用あるいは乳幼児がんや乳がんに対してわずか微量であっても非常に敏感に反応するそういうグループが存在するということも最近明らかになってきているんですね。これはいろんな論文も出ております。そういうことで放射能の恐ろしさというのは、これだけの許容量を設けたから大丈夫だなんという性質のものでないということがはっきりいたしております。
そういうことで、原発に働く労働者、特に下請労働者にほとんどしわ寄せをされているわけですね。九〇数%というものがほとんど下請労働者なんです。たとえば二・五レム以上の被曝をした労働者が昨年度二百十人おります。そのうち正規職員というのはたったの三人、二百七人というものが全部下請労働者なんですね。大変なことなんです。いま電力会社等の正規職員は早く原発から逃げ出したい、子供はうっかりつくれないというそういう空気が非常に強くて、現に子供もつくらない人も非常に多いんです。
そういう点で、私は細かいことで基準をどうせい、こうせいということでなくて、放射能は浴びないに越したことはないんです。そういう点で現行の基準というものは非常に高いし、ことし三月の予算
委員会で
児玉審議官の方からはできるだけ被曝線量を下げる努力というものを
通産当局としてもやってまいりたいし、電力会社に対する
指導というものをやってまいりたいという答弁もなされておりますけれ
ども、しかし相も変わらず高被曝線量である
実態は変わりがないわけです。そういう点で
大臣として、私はこれはもうできるだけ下げる努力をすべきだと思うんですが、その決意のほどをぜひお聞かせ願いたいと思います。