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1980-12-17 第93回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十二月十七日(水曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  十一月二十六日     辞任         補欠選任      近藤 忠孝君     安武 洋子君  十一月二十七日     辞任         補欠選任      内藤  健君     梶木 又三君  十一月二十八日     辞任         補欠選任      梶木 又三君     内藤  健君  十二月十六日     辞任         補欠選任      安武 洋子君     下田 京子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野田  哲君     理 事                 井上  孝君                 高橋 圭三君                 降矢 敬雄君                 円山 雅也君                 小山 一平君                 峯山 昭範君     委 員                 石本  茂君                 河本嘉久蔵君                 北  修二君                 塚田十一郎君                 内藤  健君                 仲川 幸男君                 成相 善十君                 福岡日出麿君                 福田 宏一君                 穐山  篤君                 佐藤 三吾君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 柄谷 道一君                 三治 重信君                 森田 重郎君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        文 部 大 臣  田中 龍夫君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       中川 一郎君         —————        会計検査院長   大村 筆雄君        検  査  官  大久保 孟君         —————    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        科学技術庁原子        力局長      石渡 鷹雄君        科学技術庁原子        力安全局長    赤羽 信久君        文部大臣官房人        事課長      齊藤 尚夫君        文部大臣官房会        計課長      植木  浩君        文部省初等中等        教育局長     三角 哲生君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省社会教育        局長       高石 邦男君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文部省管理局長  吉田 壽雄君        資源エネルギー        庁長官官房原子        力産業課長    田辺 俊彦君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電課長   西中真二郎君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全管        理課長      平田辰一郎君        運輸大臣官房技        術安全管理官   戸田 邦司君        労働省労働基準        局安全衛生部計        画課長      山田 正美君        会計検査院事務        総局第一局長   佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第二局長   堤  一清君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和五十二年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十二年度特別会計歳入歳出決算昭和五十二年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十二  年度政府関係機関決算書(第八十七回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和五十二年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第八十七回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十二年度国有財産無償貸付状況計算書  (第八十七回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 野田哲

    委員長野田哲君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日十六日、安武洋子君が委員辞任され、その補欠として下田京子君が選任されました。     —————————————
  3. 野田哲

    委員長野田哲君) この際、会計検査院長大村筆雄君及び検査官大久保孟君から、それぞれ発言を求められておりますので、これを許します。会計検査院長大村筆雄君。
  4. 大村筆雄

    会計検査院長大村筆雄君) このたび会計検査院長を拝命いたしました大村でございます。  現在の大変困難な財政下におきまして、私どもに課せられた任務は大変重大でございますので、全力を挙げまして重責を全うしてまいりたい所存でございます。何とぞよろしく御指導、御鞭撻くざさいますようお願い申し上げます。
  5. 野田哲

  6. 大久保孟

    検査官大久保孟君) このたび検査官に任命されました大久保でございます。  微力ではございますが、誠心誠意努力いたしまして、その職責を全ういたしたいと存じております。何とぞよろしく御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  7. 野田哲

    委員長野田哲君) 次に、昭和五十二年度決算外二件を議題といたします。  本日は、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。     —————————————
  8. 野田哲

    委員長野田哲君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 野田哲

    委員長野田哲君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  10. 野田哲

    委員長野田哲君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 十二月の十日に公表されました五十四年度検査院報告を見ますと、不適正な執行というのが百七十九件、五千七百億、うち不当事項が百五十七件、二百三十億一千四百万と、こういう内容になっておるわけですが、これは全機関の八%ですから、仮にこれを一〇%としましても、五兆七千億に累する不適正事項が推量される、そういうふうに私は見るんですけれども、こういったいわゆる検査内容に、検査院としてやった中でどういう感じを持っておるのか、まず検査院のこの問題に対する御所見、見解を承っておきたいと思います。  同時に、今度の場合には、明日も議論があると思いますが、電電の問題が非常にクローズアップされておりますが、しかし中身を見ますと、各省の不適正、不当な事項の中では、補助金の乱用もこれにまさるとも劣らない、そういう状況にあるというふうに私は思うんです。この点もあわして、どういう御見解なのか承っておきたいというふうに思います。
  12. 堤一清

    説明員堤一清君) 第一点の検査報告不当事項全体の問題でございますが、これは本当はうちの事務総長なんなりにお聞き願った方が一番よろしいかと思いますが、私の考えとしましては、こういう国費の支出に携わる人間が、関係法令に対する認識が十分でないとか、あるいは本省の指導監督に当たる人間の、何といいますか、指導監督が十分でないといったような点に原因があるかと思います。  それから、私の関係の分の文部省補助金でございますが、これにつきましては事業を行う事業主体側におきまして、関係法令に対する認識が十分でない、それから交付する側の方におきましては、交付の際における審査が不十分だと、また指導部局の末端に対する指導監督というものが十分ではないと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで大臣ね、いま検査院の方から文部省関係についての見解もあったわけですが、文部省関係、今回は不当事項が六件、五千八百六十八万ですが、これを五十一年、ごろからずっと見ると、年々額、件ともに増大しておるわけですね。五十一年、二年、五十三年度を見ますと、五十一、二年が大体一千万台、五十三年が三千万、そうして今度が五千万と。国会その他に対するあなたのところの御報告を見ますと、厳に注意し、執行に適正を期すとか、いろいろその都度やっておりながら年々累増しておる。この点、一体どういう大臣としての見解を持っておるのか、聞いておきたいと思うんです。
  14. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 不当事項その他につきまして、会計検査院の御指摘のありました補助事業等、いろいろとわれわれの方といたしましてもその後これを厳しく処理いたしておりますが、担当官から詳細にまたお答えをいたさせます。
  15. 植木浩

    説明員植木浩君) ただいま先生から御指摘ございました文部省関係補助金、これは主として公立文教関係施設補助金についての会計検査院からの不当事項の御指摘でございます。昭和五十一年度は千五百九十六万円ほどございました。それから昭和五十二年度が千二百九万円、昭和五十三年度が三千一万円、昭和五十四年度が五千八百六十八万円となっておるわけでございます。  その内容を見ますと、いろいろとございますけれども、たとえば補助金申請時におきます通学区域、それに基づく学級数の数が、補助金交付の時点におきましては変更になっていたにもかかわらず、そのまま計算をして補助金をもらったということとか、補助資格面積が減っていたにもかかわらず、前の面積でもらっていたというようなものであるとか、あるいは利息の計算を誤ったためによけい補助金をもらったとか、さらには、必ずしもその工事がよくなくて手直しをさせたとか、そういうような点が主な点でございます。  いま先生からございましたが、私どももその都度関係者には厳重な注意を与えたり、さらにまた、私ども自身といたしましても、いろいろな指導徹底ということに十分注意をいたしておるわけでございますが、年々会計検査院から御指摘を受けているという点は大変遺憾に存じておるわけでございます。なお十分この点はさらに法令の問題、あるいは指導徹底の問題、さらには補助金を申請する際のいろいろな計算というものが誤りないようにという点は、さらに十分心を用いて、指導徹底を期してまいりたいと思っておるわけでございます。
  16. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いまあなたがおっしゃった問題だけでなくて、たとえば石川県の場合には、補助対象外補助であるとか、それから三重、兵庫、佐賀の場合には工事の施工不良と、こういった問題も指摘されておるわけですからね。ですから、そういったものに対して、これは今回初めてあったわけじゃない、年々拡大しておるということについて、一体どういうふうな指導というか、適正な指導措置をとっておるのか、なお、それにもかかわらず出ておるのか、そこら辺について当然これは文部省としても、会計検査院から指摘されるまでもなく、国会の中で議論があって来ておることだから、そこら辺について私はいま聞いておるんで、どういう措置をとってきておるのかですね。
  17. 植木浩

    説明員植木浩君) これまでにもこのような補助金超過交付というものがあった事例につきましては、もちろん関係者に対して厳重に注意をいたしておるとともに、私ども自身としてもその指導をさらに徹底をすべく、いろいろと反省をいたしております。  なお、超過交付分につきましては、原則としてその返還をこれまでに命じてきて、事態の是正を図っておるということは申すまでもないことでございます。たとえば、毎年度、都道府県の教育委員会施設関係主管課長会議というものがございますが、こういったところで、補助金等を担当しております事務主管課長会議でございますが、そういう機会をとらえまして、さらに毎年のこういう事例を御紹介したりして、その指導をしておるわけでございます。  また、先ほど会計検査院の方からお話がございましたが、関係法令規定等を十分さらに熟知するようにということで、交付決定の際におきましては、こういった関係法令規定、あるいは交付条件等、こういったものをさらに周知徹底をさせる、そういうようなことを及ばずながら努力はいたしてきておるわけでございます。
  18. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 きょうは時間ございませんから、この補助金問題についてはこの程度にとどめておきますが、ぜひひとつ、教育の場ですからね、こういった問題が次々に起こってこないように、ひとつ大臣としても厳に留意して執行に当たっていただきたいということを私の方から要望しておきたいと思います。  そこで、ちょっとこれもけさの新聞でも報ぜられておったんですが、気にかかりますので、ひとつこれを聞いておきたいと思うんですが、いま五十六年度予算で一つの焦点になっておるのが、教科書無料化に対する有償化という問題がやられておりますが、この問題について、教育費の家庭における圧迫もさることながら、いわゆる憲法にいう義務教育の国の責任というものからいってみても、非常に重大な意味を私は持っておると思うんです。そういう教科書有償化の問題について、いままでの折衝経過を含めて、大臣決意というものを聞いておきたいと思うんです。
  19. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御指摘教科書有償化の問題でございますが、私の方といたしましては、概算要求提出の際から、この問題はあくまでもわれわれの基本方針でございます。このままの無償という問題は態度を変えておりません。なお、主計局その他とのいろいろと事務当局同士折衝におきましても、一貫してこの方針を貫いておりますとともに、またわれわれといたしましては、今後ともにこの方針を継続してまいりたい、かように固く決意をいたしておる次第でございまして、よろしくどうぞ御協力のほどをひとえにお願いします。
  20. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは経過については大体私もそういう、文部省が一貫してそういう態度をとっておることは知っておるんですけれどもね、いよいよいまから一週間か二週間の山場に来ておるわけですから、大臣として職をかけてでもこれはひとつ守り抜くのだ、このくらいの決意を持って臨んでおる、こういうふうに承っていいですか。
  21. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 十二分に決意をいたしております。
  22. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ぜひひとつお願いしておきたいと思います。  そこで、きょうは学校給食現場の問題についてお聞きしておきたいと思いますが、いま学校給食実態がどのような状態になっておるのか、学校別実施校別対象生徒数、また完全給食不完全給食実態、その中で米飯給食実態がどうなっておるのか、センター単独校関係はどうなっておるのか、これについてまずお聞きしたい。
  23. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) お答え申し上げます。  わが国学校給食は、御案内のとおり、児童生徒の心身の健全な発達に資し、かつ国民の食生活の改善に寄与するということを目的といたしまして、学校教育の一環として、義務教育学校において実施されるよう、学校給食法等の制定に基づきまして実施されておるところでございます。  昭和五十四年五月一日現在の学校給食実施状況でございますが、まず、実施学校数は、小学校におきましては二万四千三百十二校、九七・七%の学校実施しております。また中学校にありましては九千二百十校、八五・七%、特殊教育学校におきまして六百十八校、八三・九%、夜間定時制高校におきまして千五十五校、九四・五%、計三万五千百九十五校が学校給食を何らかの形で実施いたしております。  対象児童生徒数は、小学校で千百五十五万人、中学校で四百六万人、特殊教育学校六万五千人、夜間定時制高校十一万六千人という状態でございまして、合計いたしまして千五百八十万人の児童生徒学校給食を受けておるという実態でございます。  次に、学校給食の形態でございますが、いわゆる完全給食の形で実施しております学校が年々着実にふえてきておりまして、昭和五十四年の現状で、小学校は九七・四%の高きに至っております。中学校は十年おくれで発足したというような経緯等もございまして、中学校では現状で五五・七%に達しておりますが、なお中学校完全給食の普及につきまして、鋭意努力を必要とするという状態でございます。  次に、先生指摘米飯給食実施状況でございますが、日本人の食生活を考えた場合、米飯給食導入はある面で当然のことでありましょうし、また、米飯給食導入によりまして、多様な、しかもわが国としての食糧資源等も考慮したふさわしい学校給食の確立ができる長期的な価値もございますので、昭和五十一年から学校給食米飯導入計画的に進めまして、来年度五十六年度に週二回の実施を完了するという計画をいま推進しておるところでございます。この米飯給食につきましては、幸い子供たちには、当然ではございますが、非常に好評でございますし、また関係者の御理解、御協力を得まして、本年五月現在で、完全給食を受ける児童生徒の約八〇%に当たる千百五十万人の小・中学生が米飯給食を受けるに至っております。来年度が完成の一応年次計画を完了するときでございますので、いま未実施の市町村につきまして、私ども県を通して鋭意実施への実現を図っていただくようお願いしておるところでございます。  それから、次に学校給食単独校センター別実態でございますが、調理従事員が現在八万九百三十人おられますが、このうち共同調理場に勤務されている方は二万六千三十八人という実態でございまして、大体全体として学校で見ますと、単独校共同調理場割合につきましては、共同調理場が三六%の実態ではないかと思います。  以上でございます。
  24. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いまの最後の数字は何ですか。この給食調理員比率数字を言っておるんですか。何ですか。
  25. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 調理員の置かれております実数からの比率でございます。
  26. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすると、給食調理員が八万幾らあって、そのうち給食センターに従事しておるのが二万六千三十八ですか。八万何ぼだったですかね。
  27. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 調理従事員の配置されております実態が八万九百三十人でございます。そのうち共同調理場に勤務されている方が二万六千三十八人、その比率は三二%になります。
  28. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、ちょっと違った角度から聞きたいと思うんですが、この給食現場学校、それから調理施設センターもあるんですが、これらに対する労働安全についてはどういう対策を立てておるのか。給食調理員公務災害実態はどうなっておるのか。その原因は何なのか。こういった問題についてまずお聞きしておきたいと思います。
  29. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 学校給食の推進に当たりまして、何よりも労働災害防止は、きわめて基本の問題でございますので、さきに労働安全衛生法等関係に基づきまして、昭和四十八年に学校給食事業における労働災害防止についての通達を出させていただいております。それらの中で、もとより調理従事員方々健康管理及び労働における災害防止への配慮措置指導してまいってきておるところでございます。  現に学校給食調理員の職業病と申しますか、いわゆる公務災害認定を受けた状況でございますが、これにつきましては、五十五年三月地方公務員災害補償基金調査によりますと、学校給食職員公務災害発生状況は、昭和五十三年度におきまして千九百九十件発生しておりまして、これを千人当たり発生件数に直しますと二十五・七件という状態でございます。他の職種との比較をこの基金調査から見ますと、必ずしも全体として高い割合であるとは言い切れないと思いますが、しかし、災害認定を受けた件数が千人当たり二十五・七件ということにつきましては、今後一層給食調理員健康管理等を含めまして、十分な配慮が必要であろうというように感じておるところでございます。
  30. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 学校給食労働安全要綱というのを出されておりますね。これは労働安全法に基づいて出されておるわけですが、この基礎的な、言うなら、たとえば総括安全管理者であるとか、安全委員会であるとか、それから衛生委員会であるとか、もしくは安全管理者であるとか、この基礎的な労働安全に関する体制というものは、いまどういう実態にあるのか。
  31. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 御指摘のとおり、労働安全衛生法によりまして、常時五十人以上の教職員を有する学校におきましては、衛生管理者を置くことになっております。この衛生管理者には、保健体育の教員、養護教諭方々の中から適任者を選任するように指導してきておるところでございます。  また、学校におきましては、安全衛生面配慮につきましては、この労働安全衛生法によるほか、学校保健法がございまして、この学校保健法によりまして、健康診断環境衛生検査施設設備安全点検等を常時、また定期的に計画的に行いまして、児童生徒のみならず、教職員保健安全管理について、万全を期するようにいたしているところでございます。  なお、学校給食における衛生管理面につきましても、給食施設設備器具衛生検査調理員方々健康管理、特に安全な食品の購入、使用等徹底を期するよう、また「学校給食事業における安全衛生管理要綱」あるいは食品検査等指導の手引きを出して、この面の実効を期しておるところでございます。
  32. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 労働省は言うなら労働安全の主管省ですが、学校給食現場労働安全について、どういう実態になっておりますか。
  33. 山田正美

    説明員山田正美君) お答えいたします。  私ども労働安全衛生法に基づきまして、いろんな業種について監督指導というものを行って、労働災害防止に努めておるわけでございますけれども学校給食現場に限って特にその統計的なものはとっておりませんので、余り詳しい実態と申しましょうか、そういう御説明はできないのでまことに恐縮なんですが、先ほどもちょっとお話が出ておりましたけれども学校給食現場では、たとえばカッター等によります切り傷でありますとか、あるいはつまずき、滑り等による転倒でありますとか、あるいは調理作業に伴うやけど、さらには重量物の取り扱いによります腰痛の訴え、そういうようなものが現場に起きているというふうに認識をしておりまして、それで私どもこういうような問題につきましては、これもお話にありました要綱によりまして、監督指導を進めていくというような状態になっております。
  34. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 「学校給食事業における安全衛生管理要綱」というのは労働省が出したんじゃないですか。その中にいろいろ決められておることがやられておるか、やられてないか。これは労働省の所管じゃないんですか、点検するのは。
  35. 山田正美

    説明員山田正美君) 先生指摘のとおり、これは労働省で策定をいたしました要綱ですけれども、私ども行政を推進いたします場合に、いろんな要綱をつくる、あるいはその他いろんな指導方針をつくりまして、監督指導地方労働基準局、あるいは監督署を通じて実施しておるわけですけれども、その際どういうような形で統計的にこれを把握するかというような問題が別途ありまして、先ほどちょっと申し上げて恐縮だったわけですけれども学校給食現場そのものに限って、広く統計的な把握をしているというような実態に現在なっておりませんので、それで非常に歯切れの悪いお答えをさしていただいて恐縮だったと思っております。
  36. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすると、その要綱に基づいてきちっとやるかやらぬかというのは、所管としては、事業者を所管しておる文部省と、そういうふうに理解していいんですか。
  37. 山田正美

    説明員山田正美君) この問題につきましては、申し上げましたように、地方労働基準局あるいは労働基準監督署におきまして、その時点時点における重点対象業種というようなものを決めて、それで監督能力の非常に限られた中で、重点的に監督指導を行っているというようなことになりますので、それぞれの局署の管内における実情に応じて、監督指導実施しているというような状況になっております。
  38. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 よくはっきりわからぬのですけれども、これは文部省に聞きますが、やっぱりあなたのところは所管だから、労働安全衛生要綱に基づいて、きちっと守られておるかどうかを点検し、そして労働者の労働安全を保護していくのはおたくの所管ですね。
  39. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 労働安全そのものの総括的な監督あるいは御指導労働所管であろうと当然に存じますが、たとえばこの労働安全の衛生法の適用に当たりましては、学校という特殊事情から、たとえば産業医の設置につきましては、学校におきましては学校医制度がございますので、その学校医の方に、先生にその職務を行わせれば、特に産業医の選任は不要であるというような取り扱いになっておる次第でございますし、衛生委員会につきましても、学校では保健管理委員会がございますので、これがそれに当たるであろうというような御配慮もいただいております。したがいまして、私ども労働省の方でお決めいただき、御指導いただいております安全衛生管理要綱に基づく安全衛生管理の徹底につきまして、主管課長会議あるいは担当者——先日もございましたか、担当者会議でも、この面の趣旨の十分な徹底及び具体の実効のある展開を指導しておるところでございます。
  40. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 時間がないんですが、労働省にもう一遍聞きますが、安全要綱に言うところのいわゆる事業者ですね、この場合、学校給食現場の場合には、その長の教育委員会が所管にあって安全委員会というものがあり、同時にまた給食センターについては給食センターごとに設定しなきゃならぬと、こういうことになるんじゃないんですか。
  41. 山田正美

    説明員山田正美君) 先生指摘のとおりでございまして、私ども、いわゆる学校給食事業ということで、いまお話しのありました、学校に付設いたします給食場につきましては、一つの教育委員会の管轄下ということで、これを一括してまとめるという考え方をとっておりますし、お話のありました給食センター、これが独立して給食の業務を行っております場合には、それが一つの事業場ということになると思います。
  42. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうしますと、文部省の言う内容は違うじゃないですか。いま言ったように、文部省要綱から見ると、学校単位の給食現場については、教育委員会事業総括責任者で、そこに統括安全管理者を置き、そうしてその中に安全委員会を設置して、また安全管理者を置かなきゃならぬと、こういうのが要綱じゃないんですか。同時にまた、給食センターについては、そこにセンターの所長が事業者になって、そこに産業医も置き、そうして安全管理委員会も置き、管理者も置くと、こういうふうになっておるのが要綱じゃないんですか、どうですか。
  43. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 先ほどお答え申しましたのは、学校に給食施設を自校調理の形で持っているところのことをお答え申しましたが、先生指摘のとおり、共同調理場におきましては、この要綱でそれぞれ給食場ごとに、できる限り安全衛生担当者を指名する。また、百人以上の調理員の方がおられる場合には、安全衛生委員会を設置する。百人未満の場合にありましても、安全または衛生に関する事項について、関係調理員の意見を十分聞く機会を設けて、そのための関係者による委員会の設置等を進めろということになっておりますので、これの実行につきまして、私ども指導をいたしておるところでございます。
  44. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、私はさっき聞いたのは、そういう安全委員会もしくは安全統括管理者、安全委員衛生委員会、産業医そういうものが給食現場全体に、いまあなたがおっしゃった約千五百万人の児童対象とした事業ですね。そうして、八万近い従業員を抱えた事業です。そういう実態の中で、どういうふうにそれらが設置されておるか、何%設置されておるか、その点を聞いておるわけだ。
  45. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) いま私どもその実態につきまして、調査をしたデータを持っておりません。
  46. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、いまお聞きのとおりですけれども、そういういわゆる労働者の一番大事な命にかかわる労働安全の、安全衛生法に基づく要綱がちゃんと提示されておる、四十八年に、いまから七年前に。その実態がどうなっておるかということは知らないと言っておる。大臣、一体どういうふうにこの問題について考えますか。
  47. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) なお多数の学校の、さらにまた給食安全の問題等、末端の問題につきまして、資料等をただいま用意して参っておらないようでございますので、また篤と調査いたしまして、御報告を申し上げます。
  48. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 文部省調査をやってないと言っておるんですよ、いま御回答のように。ところが、その間に私ども調査で、これは全学校調査したわけじゃないですよ、全体から見ると約三分の一程度の学校給食現場調査をやったんですが、それでも小学校で従業員二万二千二百十九人、中学で三千百三十四人、給食センターでは二万六千三百二十六人の人が腰痛症、頸肩腕症、皮膚障害を訴えておるわけです。しかも、その内訳を見ると、全体の比率を見ると、腰痛症で、小学校で四四・七%の人が訴えておる、中学で三六・三%、それから給食センターで三九・六%の従業員が腰痛症を訴えておる。頸肩腕症では小学校で四〇・九%、中学で三八・三%、給食センターで三三・六%の従業員が頸肩腕症候になっておるということで訴えておる。皮膚障害では、小学校で二八・四%、中学で二四%、給食センターで二二・七%の従業員が訴えておる。そういう実態にありながら、いまだに調査をしていない。把握していない。肝心な安全管理者がおるのか、おらぬのか、安全委員会があるのかないのかも全然わかりませんと、こう言っておる。私はこの間、川治の四十五人の亡くなった現場に現地調査に参議院から派遣されて参りましたけれども、あそこでなぜ、発火して二十九分もあるのに、昼火事ですよ、救出できなかったのかとしさいに調査してみますと、一番大きな点は何かというと、一番最も初歩的な、言うならば旅館の防災責任者であるとか、その責任者を置かなければならぬという勧告も受けておる。さらに、それに基づいていわゆる防災訓練をしなければならぬということになっておる。そのことが、その訓練ができてなかったことが四十五人の人命を失っておるわけですね。労働安全衛生の場合に一番大事な点は、まずその安全対策、体制ですね、対策を立てていく体制をどう義務者である事業者の方がつくるか、ここが基本なんです。これは金が要るわけじゃない。わざわざ四十八年に要綱もつくってきておる。しかし、それがやられてないから、こういう症状が起こってきた。いまから調査するで済むと思いますか。どうですか。
  49. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 学校におきましては、保健委員会がございまして、そこには学校医の先生方も入って、教職員の健康上の問題、児童生徒と同様、この面の問題を委員会で処理しておりますから、これはほとんどの学校保健委員会を持っております。ただ、私どもいま、センターにおけるこの面の実態について、申しわけございませんが把握しておらないということでございまして、これは大臣の御答弁のございましたとおり、今後この面につきましての実態の把握に努めてまいりたいと思います。  それから、どういう形でこの健康上の問題を調べていくかという問題でございますが、先ほど、いわゆる職業病につきましては認定がございますので、その認定の上での数字を御報告いたしたわけでございますが、なお、いま御指摘の点についてどのような把握をしていくのか、これにつきましては少し慎重な検討をしてまいりたいと思います。ある面で主観の入る問題でございます。もし、いま先生指摘数字が本当に事実であるとするならば、いまの給食の実態はおかしいではないかという御指摘にも恐らくつながる問題であるということをいま深刻に感じました。したがいまして、この健康上の問題は大事な問題でございますので、その実態の把握につきましては、十分な検討をした上で取り組んでみたいというふうにお答えを申し上げます。
  50. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私の方の自治労が調査をやった内容を見ると、安全衛生委員会が設置してあるのは小学校で二七・七%、中学で一八・九%。ないのが小学校で五八・二%、中学で六三・一%、こういう数字が出ておる。また給食センターは、あるのが一七・五%、ないのが六四・二%、こういう実態が出されておる。給食調理員の休憩室は、小学校で五・八%、中学で四・四%、給食センターで五・九%がない。これも義務づけられていますね。それから専用トイレ、これは小学校が四二・八%、中学校が四〇・三%、給食調理員が二〇・一%ない。シャワー、これは給食場というのは高温多湿ですからシャワーが義務づけられておる。これもないのが小学校が六七%、中学校が五九・七%、給食センターが三七・五%がない、こういう実態で職員の健康管理が守られますか。どうですか。
  51. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 私ども給食施設設備の整備に当たりましては、補助を行っておるわけでございますが、恐らく共同調理場の整備に当たって、調理員の方の休憩室を持たないようなそういうセンターはできてないと思っておりましたが、いま調査によりますと、そういう面のことが御指摘されておりますので、御指摘の点につきましては、さらに私どもも実地あるいは書類での把握をしてまいりたいと思っております。
  52. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、こういう実態になって、調査をいままでやってないというんですが、これは直ちにやりますか。どうですか。
  53. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御指摘のような従事員の健康管理等につきましての非常に貴重な資料を御指摘いただいたわけでありますが、これらにつきましては、早急にこれが徹底を期するように指導してまいります。
  54. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 五十六年度中にはやりますね。早急にというのはそういうことでしょうが。
  55. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 五十六年ですね、それはもちろんいたしたいと存じます。
  56. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで、そういう実態から職業病が多発しておるわけです。時間がございませんからちょっと私の方でかいつまんで申し上げますが、久留米大学医学部の環境衛生学会の先生方、前田助教授を初め、今年五月に、前田先生が五十三回の日本産業衛生学会で、給食調理員の職業病を取り上げておるわけですね。これは御存じだと思うんです。これは福岡の筑後市と田主丸町を中心にセンター学校を調べておるわけですが、その内容は、従業員の四割が医者に通った経験を持っており、そして現にマッサージや、はり、きゅう等に通っておる者がほとんどであったと。原因は、設備の不備なり、それから疲労が慢性的に蓄積して、病状の特徴は頸肩腕症、腰痛の合併症が多いと。早急に本腰を入れて改善をしないと、職業病が広がる危険が強いと、こう学会で発表しておるわけです。  それから岡山大学の医学部の衛生学教室の柳楽先生を初め七人の先生方が、七八年の調査結果として、福岡県下七十二町村五百六十校二十六センター調理員二千百四十三人を対象に行っておる。その内容を見ますと、やはり前田助教授と同じように腰痛症、頸肩腕症の有訴率が、就労後に初めて経験した者、これが単独校で五〇%を超えておる。さっき体育局長お話では、他の職種云々ということがございましたが、産業衛生学会の調査では、建設関係労働者が四五・一%です。それから電気工事関係が三八・七、運転業務員が四四・五%と、こういう数字から見ると異常に高いと言っておる。その中身をもう一つ突っ込んで分析すると、文部省の定数基準を下回っておるところでそういう病状が起こっておるのが六六・二%、自治体の超過負担で職員配置を上回っておる、こういったところが四〇・六%ということで、明らかに定数増と重大な関係を持っておる、こういう立証もされておるわけです。こういったことが次々に関係学会を通じてやられておるわけですけれども、これは恐らく私は文部省が知らないと言うわけじゃないと思う。そのほかに出しておる内容を見ますと、環境測定をやってみると、いずれも高温多湿で、日本産業衛生学会の高温の許容基準を上回っておる。しかも騒音、照度、いわゆる要綱にあるところの騒音、照度その他から対比してみると、これらについてもそれを超えた実態にある、こういう報告がなされておる。ですから環境関係についてはほとんど労働安全要綱を外れて、そしてそれらに対する改善がなされてない、こういう指摘だろうと思うんですが、こういう実態にあるということを文部省自体としてどういうふうに受けとめておるのか、恐らくこの内容については知っておると思いますから聞きたいと思うんです。
  57. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 学校給食労働環境につきましては、高温多湿等、御指摘のような状況がそれなりにあるということを指摘されております。私どもいまその辺の改善につきましては、当然に給食施設設備の改善の施策と同時に、いまの給食場がドライシステム化できないかということを私ども自身感じておりまして、昨年からこのドライシステム化への助成策も一部講じてきておるところでございます。また、なかなか大変なことでございますけれども、できるならば学校食堂の建設を進めるということで、これまたこの面の施策の拡充をいま期しておるところでございまして、調理に当たられる方々労働環境の改善を通しての健康の維持ということに、今後さらに努力をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  58. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたは担当局長でありながら、実態も余りよく知らないようですね、いま御答弁を聞いておると。やっぱり私は給食現場労働者が——たとえば学校の四十人学級であるとか、教育関係についてはおたくは専門でその方面については行き届いておるかもしれませんよ。しかし、この給食という問題については、ほとんどあなたの方はタッチをしてないんじゃないかと私は思うんです。だから、いま言ったような答弁が出てくると思うんですね。私は学校食堂も結構でしょう、しかし、現実に高温多湿の中で、労働安全体制もない中で、七年も八年も十年も蒸し返るような中で働いてきて腰痛症がどんどん起こっておる、頸肩腕症が起こっておる、こういう実態の中でも、なおそういう感覚で対処するということについては許せぬと思うんですよ。もっとやっぱり親身になってこの問題に当たっていかなければならぬし、同時にそれが義務でしょう、おたくの方の。要綱からいっても義務じゃないんですか。だから、そういった意味で、この問題はひとつぜひ大臣言ったように早急に調査して、緊急にひとつ対策を立ててもらいたいというふうに思うんです。  そういう観点から、時間がございませんが、言っておきたいのは、私はこの五月の地方行政委員会の中で、文部省課長を呼んでこの問題で議論をしたんです。そのときに、そういうような実態が出ておるのに、なぜ早急に調査をしないのか、これは一日もゆるがせにできないんだ、給食はきょう議論をしておる間もやっておるわけだから、だから、そこの現場をなぜ調査をして、そして具体的な対策を立てないのか、こういう追求をしたんですが、いや、調査する考えは持っておりません——きょう大臣は早急に調査をする、こういう回答が出たんですが、五十六年度過ぎて五十七年度米飯給食と一諸に調査したいということで終始したんですね。きょうは、これは大臣が訂正しましたから早急にやってもらいたいと思うんです。その根源は何かといいますと、やはり私は給食調理員の定数基準に問題があるんじゃないか、どうしても私はそこに行かざるを得ないんですね。なぜ私はそれを言うかといえば、三十五年に定数基準を定めてもう二十年間放置しておるわけです。基準を。二十年前の給食といまの給食というのは全然違う。加えて米飯給食というものが加わってきておる。大型化してセンター化もしておる。そういう中で、その基準がどうなんだということを二十年間も放置しておる。しかも、私は最も問題だと思うのは、その基準は学校単位の給食についての基準であって、センターの場合には基準がない。配置定数は何名置かなければならぬ、生徒数が何名のときは何名置かなければならぬという基準がない、いままで二十年間、しかも、それをたとえば学校の基準でずっと引き直してみても、もう実態は二倍になっておる。二倍じゃなければ賄い切れない。それでも腰痛症やそういう職業病がどんどん続発しておる。そういうように、これらに働く労働者については、ほとんど責任ある文部省が放置をしておるわけです。調査もやってないんだから。しかも、二十何年前の基準で、それでやっておる。その基準は何かというと、学校単位の給食基準であって、センターは基準がない。こんなばかな状態が放置されておるところに、今日こういう問題が起こっておるわけですよ。それについて直ちに調査して、これに対する救済策をせよということに対して、いや、五十七年度以降じゃなければできませんと、こう言っておったんですね。私はもう本当に責任ある立場の省として、そういうずさんな考え方について怒りを覚えるんです。これは大臣、ひとつ定数基準については変えますか、検討しますか、どうしますか。
  59. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまの非常な貴重な御指摘に対しましては、十分われわれの方で考究いたしたいと存じます。
  60. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、いま初めて聞いたことが多いので、そういう言い方になると思うんですが、しかし、これは緊急を要する問題ですからね、その検討経過を私に逐一報告してくださいよ。私はこの問題はきちっとするまでは絶対にやめませんから、それだけひとつ申し伝えて、時間が来ましたからやめますが、よろしく頼みますよ。
  61. 穐山篤

    ○穐山篤君 科学技術庁にお伺いをしますが、まあ最近いろいろ原発問題について内外で問題が多いわけですが、きょうは廃棄物の問題について明らかにしていただきたいと思います。  最初に、もう御案内のとおり、科学技術庁が中心になりまして、海洋投棄の問題に非常に熱意を示しております。すでに第一次、第二次の調査団といいますか、説明団といいますか、これが派遣をされまして、二次が一応終わったところです。これからもさらに続けることであろうというふうに思いますんで、その意味では中間的でありますが、いままでの調査団の報告を受けて、長官としてどういうふうに受けとめておられるか、まず冒頭その点をお伺いします。
  62. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 本朝来の新聞にも出ておりますように、石油価格が非常に厳しくなってきた。そこで、省エネルギーと代替エネルギーを取り入れていかなければならない情勢は日増しに強くなってきております。その中で原子力平和利用というものは大きな地位を占めまして、避けて通れるものではない。ところが、この原子力発電平和利用で一番の問題は立地の問題でございます。立地の問題と並んで大変なのがこの廃棄物の処理の問題でございます。  そこで、廃棄物については陸上投棄と海上投棄が国際的に認められておるところでありますし、わが国でも両面の処理をしたいということでございますが、特に、海洋投棄については、国際基準に従って、四千メートル以上の深さを持つこと、あるいは火山活動がないこと等々の条件からして、いま予定しております南太平洋地域に投げることが一番よろしいという結論のもとに、御指摘のように関係国に理解を求めてございます。もちろん国内の水産業者にも理解を求めておりますが、一番むずかしいのは南太平洋地域の国々の理解を得ることでありまして、数回四チームに分けて説明というか、理解を得るための努力をしてまいったところでございます。残念ながらまだ理解を得て、よろしいというところには来ておりませんけれども、かなり安全性、あるいは必要性については理解が深まってきたのではないかと思っております。さらに粘り強く理解を得るために努力をして、この海洋投棄の処理ができるというふうに持っていきたいと、こう思っております。
  63. 穐山篤

    ○穐山篤君 いまいろいろの連絡だとか、通信その他のことを総合的にまとめてみますと、いま長官が言われましたようなこともあると思いますけれども基本的には私は二つか三つの問題について、問題が十分に解決していないために問題があるやに見るわけですが、といいますのは、まず第一に、今回の説明団といいますか、調査団もそうでありますが、原子力発電所を持っている、あるいは稼働さしている側の立場が常に主になりまして、まあその種の原子力発電を開発してない、あるいは利用してないそういう地域の人たちの感情というものが無視をされている。常にまあ何といいますかね、つくる方の側が優先をしているというところに、科学的にも、あるいは感情的にも問題が非常に強いというふうにまず第一に伺っているわけです。  それから二つ目は、それほど安全の問題について信頼がおけるならば、そもそも日本の国内で、それも陸地の処分を十分に行った後で、もはやこの種の問題について不安はないと、こういう実証をしてから海洋投棄の話というものは進めるべきじゃないか。なお、その問題に関連をして、どういういきさつ、判断に基づいて陸上処分というのが急速に海洋処分に変化をしてしまったのか、そのいきさつが、太平洋地域あるいはオセアニア地域の人たちは、非常にその点についての危惧を持っているわけですね。そういうことについての経緯なり、判断というものが明確にならないままに、さあどうかどうかと言って押しかけているために問題が非常にこじれていると、こんなふうに私どもとしては受けとめているわけです。  それから三つ目の問題として、まあアメリカにいたしましても、あるいは韓国、その他若干のところで海洋投棄が行われている、過去行われたわけですね。最近控えているところもありますけれども。それの深海におきます追跡調査というものがつまびらかに、あるいは公にされていない。もっとも、その追跡調査というものが、深海であるだけになかなかむずかしいわけですね。ですから、その点はただ単に学問的な見地からの説明に終わっていて、なるほど、これならば安全だと、あるいは過去アメリカでドラムかんを落とした後のものをいろいろ調べてみますと、現地の住民が危惧している幾つかのことが実証されているわけです。そういうことを考えてみますと、まあ私は原発についての個人的な意見はまた別にありますけれども、もっともっと基本的な問題を研究をしなければならぬのではないだろうか、そんなに急ぐべき筋合いの海洋投棄の問題ではないというふうに私は判断をしますけれども、長官、その点いかがでしょう。
  64. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 確かに南太平洋地域の方々の感情として、御指摘のように、第一番目には自分の国でやったものをなぜ人の国に持ってくるのかと、こういうことでございますが、この点も誤解がございまして、決して南太平洋の近くへ持っていったのではなくて、日本からは九百キロの地域、マリアナ諸島からは千二百キロ。言ってみるならば、中間地点よりはむしろ日本に近い地域であるということでございます。  第二番目に、安全ならばなぜ陸上投棄しないのか、日本近海に投げないのかという疑問ですが、これも国際基準がありまして、安全だから陸上に簡単に投げるとか、あるいは近海に投げていいというものじゃありませんで、国際的に投げる場合にはより安全なところにということの基準があるものですから、この点は勝手に日本だけが安全だから投げるというわけにはいかないと、この点も理解してもらわなければならないところでございます。  次に、安全性についてでございますが、アメリカその他の国々が投げて問題になったのは、当時の投げ方は、ドラムかんの中にコンクリートの目張りをして、そこへ汚染されたものをそのまま投げ込んで深海に投入した。ですから、水圧によって壊れることもありますし、また、鉄ですから腐っていくということで、汚染されたものがそのまま海水に接触をすると、こういうことで、かなり害があるのではないかということで騒がれておるわけでありますが、それでも人体に影響を与えたという例は聞いておらないわけでございます。しかし、いま投げ方はそういうことではなくして、汚染されたものを焼却をして、灰にして、その灰をドラムかんの中にコンクリートにまぜ込んで投げるわけですから、水圧によって壊れることはありませんし、また外枠が仮に腐食をしてなくなったとしても、これが海水に出る放射線というものは非常に少ない。専門家の調べによると、この与える影響は、いまお願いしている実験段階では、われわれが日常に受けます一年間に百ミリレム、これの一千万分の一の単位のものでしかない。本格投棄をやりましても、われわれが通常受ける百ミリレムの一万分の一の影響しかないということでございまして、いまの投げ方は、かつて投げて批判があったような投げ方とは違って、安全の上にも安全ということでやっておるわけであり、しかもヨーロッパ諸国では大西洋に十年間も投げて、これが問題にはなっておらないという過去の実績から見ても安全なものであると、こういったことも御説明申し上げ、決しておまえの国だけがかぶれというんじゃない。中間地点、むしろ日本に近い方であるということ、それから安全であるということ。それからもう一つは、安全だからといって、それじゃみだりに近海その他に投げるということは、国際慣習上許されないと、こういった点を理解いただけるように鋭意説明を申し上げて、なるほど言われておるのとは違ったのだなあという感じは持ってきているのではないか。しかし、まだ御指摘の点の納得はいただいておりませんので、さらに粘り強く交渉してまいりたいと思っております。
  65. 穐山篤

    ○穐山篤君 民間を含めて、低レベルの廃棄物をドラムかんに詰めてあるわけですが、数字によりますと、ことしの八月三十一日現在で二十一万二千本というふうに数字は明らかにしてあります。それで、貯蔵のグラウンドですが、これは九万三千六百平米、四十三万七千七百本分の構内ストックがあるというふうに一応数字の上では明らかにされているわけですが、いま大臣お話がありましたけれども、ドラムかんに詰め方の問題ですね。いままでお話を聞いておりますと、ほとんど大部分はコンクリートで攪拌をして凝結をするといいますか、そういうかっこうのものですが、文献によりますとさらにそれをアスファルトに変えていく。そういうことになりますと、現在二十一基あります構内に、当分の間はいわゆる陸上の処分といいますか、貯蔵が可能だと、こういうふうに聞いているわけですが、これからの国内におきます陸上の処分、なかんずく基地内におきます。ヤードの中の貯蔵のあり方といいますか、方法についてはどういうふうに一応展望をされておりますか。
  66. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) 低レベルの放射性廃棄物の処分につきましては、昭和五十一年に当時の原子力委員会が今後の取り組み方を基本方針として出してございます。その要旨としまして、陸上での最終処分、海洋への投棄、この両方を並行して行えということが決められております。海洋投棄につきましては、大臣申し上げましたように、国際基準もでき、またいろんな実験も国内で行いまして、十分な安全性を確認し、現在実行へ向けて努力しているわけでございますが、陸地につきましては個別の場所の条件がございますので、まず、たとえば地下水等との関係をよく調べた上で、完全に安全性が確保できるという基準と処理の技術を確立いたさなければならないわけでございまして、現在のところは理論的な研究、それから実験室的な研究、あわせまして実際の廃鉱山での模擬試験、そういうことを着実に進めておりまして、その成果をまって、さらに具体化へ進めていきたいと思っております。  原子力発電所のサイト内での貯蔵ということになりますと、これは発電所がある限りはその場所が使えるという考え方もございますけれども、発電所に寿命がある限り、最終的にはほかの場所へ最終処分できるという方針が立っていることがぜひ必要でございまして、その意味で海洋と陸地と、両方の検討を進めている次第でございます。
  67. 穐山篤

    ○穐山篤君 もっと具体的な話を私は伺ったわけですが、現在の貯蔵の設備から言うならば、過去発生いたしましたドラムかんが二十万本あるわけですが、その倍の貯蔵ができるストック可能な場所があるわけですね。しかしいろいろ文書を読んでみますと、いろいろな改良をしながら小型にしていく、そういうことを考えてみますと、相当長期にわたって基地内のヤードに全部貯蔵が当分の間は大丈夫だろうというふうに数字の上からは判断ができるわけですが、その点どうでしょうかと、こういうふうに聞いているわけです。
  68. 平田辰一郎

    説明員平田辰一郎君) 敷地の面積先生指摘のとおり、非常に広うございまして、現在存在します二十一の原子炉の敷地全体で約千八百三十二万平米ございます。それに対しまして、保管庫の広さと申しますものは九・四万平米でございます。したがいまして、敷地面積に対する割合で申しますと、平均で申しますが、わずか〇・五%でございます。非常に狭いところでも一・数%というところでございます。ということで、敷地面積の観点から申しますと、先生指摘のとおり、保管能力は十分あると申し上げることができると思います。
  69. 穐山篤

    ○穐山篤君 保管能力があるということはよく理解をしました。  そこで、先ほど長官も陸地処分並びに海洋処分という話をされているわけですが、日本のいまの状況から言うならば、研究の、あるいは調査のことは別にしましても、海洋投棄をしなければならないという具体的な理由というのは少ないですね。あるいはほとんどないと言ってみても差し支えないと思うんですが、現状はどうでしょう。
  70. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) ただいまの答弁にありましたように、いま発電所によって敷地のきつさは違うにしましても、現在すぐ海洋投棄しなければ発電所がとまってしまうという状況ではございません。  しかしながら発電所に、永久にそこへごみを置いておくという形では地元の方も心配でございます。時間をかけて投棄の方針を成り立たせるためには、まず試験投棄から始めて、モニタリング等調査をやって、本投棄に進めていく。その時間的に必要なタイミングに来ていると考えているわけでございます。
  71. 穐山篤

    ○穐山篤君 簡単なやりとりの中で、現実的には海洋投棄をしなければならぬ状況というのはない、まあ政治的な話は別ですよ。具体的な根拠をただしてみると、日本で十分に陸地処分ができる。処分という言い方が適当かどうかは別にしましても、できる。その意味では、海洋投棄の問題について、従来非常に熱意を持って研究をされてきたわけですが、考え方をある程度切りかえる必要があるだろうというふうに私は考えます。  そこで、通産省にお伺いをしますが、最近総合エネルギー調査会の原子力部会で、低レベルの廃棄物の処分について、目下あらゆる角度から審議をされているようですが、この審議会の審議の視点といいますか、態度といいますかね、そういうものについてまずお考えをいただきたい。  それから、一九六〇年代につくりました発電所も二、三ありますし、七〇年代に入りましてからはかなりあります。これは、科学的な数値で調べてみますと、いわゆる原子炉の寿命というのはおおむね三十年前後というふうにお伺いをするわけです。そうしますと、少なくともこれから十年後、遅くともあるいは十五年後には、原子炉について破棄をする、あるいは廃炉にする、そういう問題が必然的に時間的にも出てくるわけですね。これは早急に考えなければ、またたく間に十年という期間は過ぎてしまうと思うんです。そういうものについて、国民がなるほどこれならば心配がないというふうな、まだそれらしきお話というものはほとんど出されていない。しかし、地域住民あるいは周辺の住民、自治体からいたしますと、気になってしようがない話ですね。そういう問題についてあわせて御回答をいただきたいと思うんです。
  72. 田辺俊彦

    説明員(田辺俊彦君) ただいま先生指摘の総合エネルギー調査会原子力部会におきましては、通産大臣がこの調査会の中にあります原子力部会に報告を求めました。原子力政策に関する基本的方向と原子力の位置づけを勉強してほしいということでございます。十月から議論が始まっておりまして、ウランの確保、濃縮、再処理、廃棄物、発電問題といった広範な問題に関して、五つの分科会を設けまして検討をしております。  その中で、廃棄物問題につきましては、特に低レベル放射性廃棄物に関しましては、海洋処分及び陸地処分、この両方につきましてあわせ行うという方針のもとに、それを具体的にどう実施していくか、経済的、技術的なまた問題点の検討等を行っております。  また、高レベルの放射性廃棄物についても、これは将来の問題でございますが、処理処分体制の確立という方向に向けて、専門家の間で技術的、中立的議論がいま闘わされているところでございます。  今後、スケジュールといたしましては、来年の春ごろをめどに中間的な報告を私どもは得られればということで、調査会の方にはお願いしております。
  73. 西中真二郎

    説明員西中真二郎君) 御指摘ございました後半の方の廃炉の問題につきまして御説明申し上げます。  廃炉問題が重要であるということはまことに御指摘のとおりでございまして、私どももその点かなり以前から、かなりの問題意識を持ちまして勉強いたしておるところでございます。御指摘ございましたように、三十年前後たちますと、いずれ廃炉になるということは避けられないわけでございまして、その際やはり何よりも肝心なことは、安全性の確保の上から支障のないような形で対処するということはもとより必要でございますし、それからもう一つは、やはり原子力発電所をつくるわけでございますから、そのサイトを引き続き原子力発電所として有効に利用していくということも、私どもとしては当然考えたいわけでございまして、そういった観点から現在いろいろ勉強いたしておるわけでございます。  これまでにも、先進各国では小規模なものではございますけれども、幾つかの原子炉の廃止後の処理、処分というふうな実績もございまして、かなりの技術の蓄積もあるわけでございます。そういった技術のかなり多くのものは、大容量の原子力発電所にも適用できるんじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、たとえばいろんな方式といたしまして、密閉して管理する方式でございますとか、あるいは遮蔽隔離というふうな方式でございますとか、あるいはすぐ解体してしまうというふうな方式でございますとか、いろんな方式が考えられるわけでございまして、またそういったものの組み合わせも当然あり得るわけでございますけれども、こういった諸問題につきまして、通産省といたしましては、その技術的手法の確立というふうなことにつきまして、十分勉強してまいりたいということで、五十四年度から予算措置を講じまして、廃炉調査委員会というふうな委員会を通産省の中に外部の学識経験者の方に入っていただきまして、現在検討をしておる途中の段階ということでございます。  なお、原子力委員会の方の動きもあろうかと思いますが、その方はあるいは科学技術庁の方からお答えいただいた方が適切かと思います。
  74. 石渡鷹雄

    説明員(石渡鷹雄君) 廃炉問題につきましての重要性につきましては、ただいま通産省の方からお答えしたわけでございますが、原子力委員会といたしましても、まだ十年あるいは十五年先の現実の問題ではございますけれども、いまから廃炉技術の確立を図っていくと、その必要性のために専門部会を設けまして、去る十一月二十八日に専門部会を設置したわけでございますが、原子力発電のサイトの有効利用という観点からの廃炉問題の検討に入ったところでございます。そういう意味で、問題意識を、現実の検討の段階に入ってきたということでございます。  以上、原子力委員関係の廃炉問題の取り組みについて御報告さしていただきました。
  75. 穐山篤

    ○穐山篤君 廃炉の問題あるいは低レベルの廃棄物の処理については、時間の都合で、もっともっとつまびらかにしなければならぬわけですが、できませんので、きょうはその程度で終わっておきたいと思いますが、いずれにしましても、日本の国内でも国外でも、原子力発電所の設置を含めて問題の多いところです。その意味で、慎重を期してもらいたいということを述べておきたいと思います。  次に、文部省関係について、先ほど教科書無償配付について同僚委員から大臣決意をお伺いをしたわけですが、そのことは十分踏まえておきますが、少し具体的なことでお伺いします。  昨年も新聞をにぎわし、世間も心配もしました。今回も同様な問題が起きておりまして、非常に遺憾な事態だというふうに思うんです。  そこで大臣教科書無償をやめたいと、あるいは続けたいということで攻防が行われているわけですが、やめてほしいという方の理由は主として何でしょうか、その点をお伺いします。
  76. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) ただいま攻防というふうに申されたわけでございますが、非公式な話はやっておるわけでございます。ただ、非公式でございますので、理由というのをこういう場で私どもの方から申し述べることが果たして適当かどうかわかりませんけれども、これはまあ一般にも言われておることでもありますので申し上げますが、財政再建ということの非常に至上の課題を実現いたしますために、その再建の間だけ教科書無償というものを、いわゆる非常に所得の低い方に限って行うことにして、その間は財源を財政再建の方に振り向けたいというのが理由であろうというふうに感じ取っております。
  77. 穐山篤

    ○穐山篤君 そこで、五十四年度の総額予算は四百億というふうに聞いているわけですが、従来の例に基づいて五十六年度の予算要求は概算幾ら要求されたんですか。
  78. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 約四百七十六億円でございます。
  79. 穐山篤

    ○穐山篤君 そこでお伺いをするわけですが、法律に基づいて無償化というものが決められているわけですが、それがいまお話がありますように、一部を有償にする、あるいは大部分を有償にする、いろんな方法があるだろうというふうに思うわけですが、しかし来年の小学校中学校生徒教科書は、すでに検定も終わり、採択も終わり、印刷もほぼ完了し、もう出るばかりになっているわけですね。そういう具体的な事実が進行している中で、一部あるいは大部分を有償にしようということになれば、大変なトラブル、デメリットというものが生ずると思うわけですが、大きな問題点というのはどういうところに出るんでしょうか、明らかにしてもらいたい。
  80. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) まだ話がそう詰まっているわけでもございませんので、あくまで仮定の話で考えさしていただきますが、すでに本年度予算におきまして、五十六年度のと申しますか、明年の四月に給与する教科書にかかる経費は措置されておるわけでございます。九〇%を措置されておりまして、教科書によりましては前期用、後期用というのがございまして、ごくわずか後期用の分がございますが、その分については入っておりませんけれども、大部分が措置されておりますので、まああくまで仮でございますが、仮にいま委員問題にされております有償の問題が出ましても、これは私どもとしては五十七年度用の教科書からそういうことになっていくということであろうというふうに思っております。
  81. 穐山篤

    ○穐山篤君 私も技術的に調べていきますと、そういうことにならざるを得ないというふうに思うわけですが、これはせっかく努力をしているところですから大いにがんばってもらわなきゃいけませんが、技術的に、あるいは法的な面からも、あるいは財政的な、図書出版会社に対します財政的な問題、いろいろ考えてみましても、政治的に有償ということを決めても、来年度はできないということになるわけですね。ほとんどできないということになろうと私も思うわけです。そうしますと、率直に申し上げて、この教科書有償化という問題は、昭和五十七年度からというふうに、大蔵省も、文部省も攻防が行われているというふうに理解をしていいんですか。
  82. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) そういう細かい攻防というのはないわけでございますが、穐山委員もお考えになっておられますようなことで私どもも考えておるわけでございまして、したがいまして、あくまで仮定の話でございますが、ただやり方としては、それは今年度の予算についてまた補正をして、今年度措置した予算なり、あるいは教科書会社にすでに支払った分を返させるということも、これは絶対不可能ではございませんけれども、ちょっとそういうことは考えられませんので、まあ委員が申されましたようなふうに、私どもも理解をしておるわけでございます。
  83. 穐山篤

    ○穐山篤君 文部省調査によりましても、直接無償化で国も教育的な基盤を支えているわけですが、しかし、それ以外の家庭の負担というものにつきましても、すでに文部省も発表されておりますように、学校教育費にいたしましても、あるいは家庭教育費にいたしましても、相当父兄の負担は急増をしているわけですね。生活設計の面からいいましても重大な問題になるわけです。したがって、先ほど大臣が、命をかけてもこの無償化については努力するというふうにお答えをいただいておりますので、私どもはそれを注目をしたいと思いますが、もしこの問題が不幸にして心配されるような事態になったとするならば、一言で言えば、子供さんの教科書の有料化は、防衛費の犠牲になったというふうに客観的には言わざるを得ないと思うんですよ。これは子供の教育上重要な問題に発展をするというふうに思いますので、最後に大臣のもう一度ひとつ決意を明らかにしてもらいたい。
  84. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) この問題はたびたび申し上げて失礼でございますけれども、絶対に防がなきゃならないとかたく決意をいたしております。
  85. 穐山篤

    ○穐山篤君 まあいまの問題はぜひがんばっていただきたいと思うんです。  それから次に、私学振興財団にかかわります経常費の補助金の問題について明らかにしてもらいたいと思うんです。  今回も会計検査院指摘があるわけですが、そこで私は、過去昭和四十五年からこの十年間まで検査院がどういう問題を指摘をしたか、あるいはそれに対してどういう措置をしたかについて、一応の検討を加えたわけですが、一言で申し上げますと、検査院検査というのは全部を調べられたわけではありませんので、抽出という意味で見るわけですが、昭和四十五年からこの十年間でおおむね指摘されました事項というのは十億円にわたっておるんです。平均しますと年一億円の不当な金額が支出をされておった。これは国の財産の有効的な活用と、国民の税金の行方を十分に確認する立場からいいますと、少なからず多い私は金額だというふうに思うわけです。  それから二つ目に感じましたのは、当初設立をされました当時は、文部省にいたしましても、振興財団にいたしましても、学校当局にしましても、ふなれがありました。あるいはまあ計算上のミスその他いろいろありました。やむを得ないという部分もあるだろうと思いますが、しかし、依然としてこの十年間同じ種類のものがことごとく指摘をされているわけです。その都度その学校に対します措置は行われたといたしましても、検査院指摘をしました、次にはこういうことがないようにということが、全体に及ぼされていないという結論がいまだに続いているわけです。これは制度上あるいは運用上、基本的な欠陥があるから、こういう問題が私は生じたのではないか、そういう意味では、文部省の監督、指導の責任というのは非常に大きいというふうに思うのです。  以上に照らして、私学に対します補助金の配付の問題につきまして、この十年間の経験に照らして、どういうふうに改善をしていこうとするのか、あるいは指導しようとしていくのか。少なくとも来年以降はこの種問題が指摘をされないようにするためには何が必要なのか。その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  86. 吉田壽雄

    説明員(吉田壽雄君) ただいま御指摘のございましたように、日本私学振興財団が交付いたしております私立大学等経常費補助金につきまして、毎年のように会計検査院から不当事項として御指摘を受けているわけでございますが、このことにつきましてはきわめて遺憾であると私ども深く感じているところでございます。  不当事項として指摘をされている内容をよく見ますと、大きく分けて二種類ございます。一つは、学校法人の経営が大変適正を欠いているというような種類のもの、それからもう一つは、ただいま先生の御指摘の中に具体的にございましたけれども補助金配分の基礎資料等の作成に関しまして、学校法人がきわめて技術的なミスを犯しているというもの、この二つに大きく区分できるわけでございますが、大半は後者のそういう不当指摘事項というふうになっているわけでございます。  この補助金の配分に際しましては、私学振興財団は学校法人からいろいろの調査票、あるいは資料等を提出させているわけでございますけれども、その中にいろいろとこう転記をする際のミスとか、あるいはまた人事異動があった場合の職員について、それを異動の前後の二つの部局にまたがってそれぞれ重複して記入しているとか、そういったようなケース——先ほど初歩的な不注意によるものが多いとおっしゃられましたけれども、そういうケースが多いというふうに私ども把握しているわけでございます。  このことはきわめて遺憾なことでありますので、私ども文部省といたしましては、直接学校法人に対しまして補助金を配付いたしております私学振興財団とともに、不当事項として指摘をいただきました内容につきまして、広く学校法人に周知徹底を図っておりますとともに、また毎年何回も業務説明会、あるいは各種の研修会等を通じまして、学校法人の事務担当者に対しまして、経理事務の適正な処理、あるいは補助金配分に関する基礎資料の作成について、適正に、的確に行うように指導いたしまして、二度とこういうことが繰り返されませんようにということで、私ども強く指導をし、また監督を厳しくしているところでございます。  今後こういうことが、また同じようなそういう不当事項が繰り返されることのないように、私どもとしても深く反省いたしているところでございます。
  87. 穐山篤

    ○穐山篤君 いまお話がありましたけれども、まだ文部省はその監督なり、指導について甘いというふうに私は言わざるを得ないと思うのです。一つ一つを厳密に見てみますと、十分その配付基準の文章を読んでいなかった、あるいは読み違えたと。私は、これは初歩的なミスで、熟練をすれば直ると思うんです。  ところが、最初のこの十年のうちの前半の部分は、作為的な補助金の申請が非常に多いんです。学生数をふくらましてみたり、それから無給の教職員の数をふやしてみたり、作為的なものが非常に多かったわけですね。その後五年間を見てみますと、多少それは減りましたけれども、今度は巧妙な作為をしているわけです。検査院が調べられましたものを見ますと、そういう点がありありと見えるわけですね。  そこで、この種の問題について十分財団と相談をしてもらうことは結構ですけれども、この種の不正事項をなくしていくためには、思い切ってペナルティーなり、何なりというものを加えなければ、もらえばもらい得だと、見つかればしようがない、お返しをしましょうというふうな態度では、本問題の抜本的な解決に私はならないというふうに思うわけです。  その意味では、単に毎回通達を出したぐらいでは、私は直らないというふうに判断をします。そこで、もう少し思い切った改善措置を講ずる必要があると思いますけれども、その点大臣いかがでしょう。
  88. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま御指摘のように、いろいろな事件が起こっておりますことはまことに遺憾でございます。今後ともにさらに学校法人に対しまして、指導を強化する一方におきましては、私立学校振興助成法等の法令にのっとりまして、厳正な態度でこれに臨み、この補助金執行の適正を期してまいりたい、かように考えております。
  89. 穐山篤

    ○穐山篤君 ぜひしっかりやっていただいて、来年の決算委員会では可能な限り皆無にひとつしてもらいたいと思うんです。  次に、教育委員準公選制の問題について伺いますが、御案内のとおり、いま東京都中野区で準公選の問題が具体的に進められております。それに対しまして今月の初め、文部省から東京都の教育委員会を通じまして指導文書なるものを通達をしたわけですが、この中野区の準公選制の実施に対しまして、文部省ではどういう見解でこの指導書を出されたのか、基本的な部分をひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
  90. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 基本だけを申し上げますと、教育委員会委員は、当該公共団体の長が任命するということになっておりまして、その際に、議会の同意を得て任命すると、こういうたてまえでございます。でございますので、いわゆる準公選制のようなことをいたしますということは、この地方公共団体の長の専属的な権限に対しまして、一つの法的な制約を加えるということになりますので、その面から地方教育行政の組織及び運営に関する法律に違反しておるということが第一点でございます。  第二点といたしましては、準公選制のようなことを実施いたしますことは、いま申し上げました同じ法律の趣旨にかんがみまして、教育委員会の政治的中立性の確保の面から、この法律の趣旨に違反するものと解されますので、私どもはただいま御指摘のありましたような指導をいたしたわけでございます。
  91. 穐山篤

    ○穐山篤君 文部省とするならば、法律に照らして違反をしているので、正規な手続をとるべきであると、こういう態度です。それから新聞の論説あるいは論調を見ますと、やや好意的でありまして、政府は準公選制に十分理解を示したならばどうだろうか、これも世論をある意味では代表する御意見だというふうに見ます。  それから現地中野区におきましては、御案内のとおり具体的な事務作業が進められているわけです。いまは、いま私が申し上げましたような三つの状況があるわけです。  そこで、文部省にお伺いしますが、これは法に照らして違法である、こういうふうに言われているわけですが、それならば第三者の判断を求める、そういうふうな何らかの方法を考えられておられるかどうか、その点についてひとつ明らかにしてもらいたい。
  92. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) これは中野区という特別区の事柄でございますので、私どもは当該区を所管いたします東京都の教育委員会とはいろいろと相談をしたりして事を考えていきたいと思っておりますが、いま御指摘のようなそれ以外の第三者に御相談するというようなことは考えておらないのでございます。
  93. 穐山篤

    ○穐山篤君 確認しますが、そうしますと、たとえば法廷で争って本問題について結末をつけるというふうなことはいまは考えてないですね。
  94. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 本件につきまして、文部省のような機関がこれを法廷で争うとなりますと、問題の取り上げ方というものが幾つかあるかとは思いますが、地方公共団体の議会を相手取って、法廷で事柄について事を詰めていくというのは、ちょっと考えられないというふうに私ども認識をいたしておるわけでございます。
  95. 穐山篤

    ○穐山篤君 そうしますと、法廷に問題を持ち出す準備はない。そこでもっぱら東京都の教育委員会と協議をしながら問題の解決に当たりたいと、それが真意だというふうに思うわけですが、すでに今月の十二日に、中野区では立候補の手続などに関します説明会が行われて、それに複数の代表の方々が、立候補されると思われる人、あるいは団体その他の方々がこの説明会に参加をして、区側の考え方あるいは手続、そういうものについて十分に聞いているわけです。中野区はこれを契機にいたしまして、来年、年が明けますと、直ちに事務的な仕事が始まるわけですね。皆さんもすでに確認をされていると思いますけれども、一月の六日には推薦用紙の交付が始まる、あるいは二十一日から二十三日までは立候補届け出の事前審査も行う予定である、以下三名の欠員補充のために具体的に準備作業はどんどんどんどん進んでいるわけです。このことについて文部省は、ある意味で力を持って抑えるといいますか、それはやってはならないというふうなことを考えておったり、あるいは準備をされているのかいないのか、しかと明らかにしてもらいたい。
  96. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 先ほども申し上げましたように、議会の権限というのは公共団体の長が自主的に選定した委員の候補者に対しまして、その者を教育委員に任命することに同意するかどうか、そういう意思決定をする権限にとどまるわけで、それ以上にこの公共団体の長がいかなる方法によって教育委員候補者を選定すべきかという、長の選定権行使の方法についてまで議会が決定する、そういう権限までは及んでおらないのに、こういう条例をつくったわけでございますから、その点で明らかに違法であると、それから先ほど申し上げました法律の規定の中にも、たとえば教育委員の任命に当たって、委員の定数の過半数が同一の政党に所属しないように定めておりまして、委員のうち過半数が同一政党に所属することとなった場合には、一定の委員を罷免することを定めております。また教育委員は政党その他の政治的団体の役員となったり、あるいは積極的に政治運動をすることを禁止しております。区民投票というようなことでございますと、投票勧誘運動とか、そういうことも予定しておるでございましょうし、そのようなことを内容とする投票制度が教育行政の政治的中立性を強く要求しております地方教育行政の組織及び運営に関する法律の予想するところではございませんので、この法律の趣旨に反するものと考えておるわけでございます。そういったことで、私どもはただいま穐山委員指摘のような事実が進んでおるということは、この法治国家のもとにおいてはなはだ遺憾なことであるというふうに考えておる次第でございますし、それから五名で構成する教育委員会のうち三名が十一月の初め以来欠員という状況は、きわめて異常なことでございますし、現在恐らく中野区の予定しているタイミングで補充をするということになりますと、三月の半ばごろまではその欠員のままの状態が続くということが予想されます。明年度教育行政上の予算、その他重要事項を審議すべき教育委員会が、二名の委員で運営されるということはきわめて異常でございますし、そういうことから指導したわけでございます。でございますから、私どもとしては中野区が本来の良識に立ち戻って、私ども、あるいは東京都教育委員会からの指導に沿って、適切に対処してくださらなければ困るというふうに思っておりますが、こういう事実が進行するに応じまして、さらにどのような私どもとして対処をするかということにつきましては、今後の状況、事態の推移を見きわめながら、東京都の教育委員会とも十分に相談、協議の上考えてまいりたいというふうに思っておるのでございます。
  97. 穐山篤

    ○穐山篤君 これが文部省の言うふうに違法であるのか、あるいは区側が言っておりますように適法であるのかというのは、法律学者の間でも論争がまだ現実にあるわけですね。そこで、法律論争は片方置くといたしましても、現実三名の補充をするために、準公選制だけで任命するわけではなくて、最終的にはそれを十分に踏まえ、参考にしながら任命をしていくわけですから、中立性の問題だとか、あるいは政党に所属するしないかのような問題につきましては、十分当事者が配慮をすることになるだろうというふうに思うわけですね。いまの状況でいきますと、おおむね三月上旬には一定の方向が出て、最終的に三月の中旬ごろには、その選ばれた人たちがすべて教育委員になるかどうかは別にいたしましても、最終的に三名の欠員の補充は行われると、こういうふうに見るのが正しいと思うんです。  さて、そこで最後にお伺いしますのは、そういう紛争があることは現実承知をしますけれども、中野区が具体的に準備を進め、区民の了解を得ながらやってまいりまして、最後の三月上旬・中旬段階になりまして、なおこの問題で教育委員が任命ができない、そのために教育委員会の機能が麻痺をしてしまうというふうなことであってはならないと思うんです。そういう意味で私は少なくとも区側がやっておりますいまの準備作業を、十分に文部省側は注意を払っていただくことはいいと思いますけれども、干渉がましいことを行いますと、なお本問題の解決は時期を遷延するだけで問題の解決にはならない、こういうふうに考えます。  そこで最後に大臣、いまから予測はなかなかむずかしいと思いますけれども、適法か、違法かの議論は一つ残っている、世間は非常に同情的である、中野区では具体的な事務が進んでいる、そういう事態を踏まえて、最終的に大臣としてはどういうふうに処理をすれば、円満に本問題について解決ができるかどうか、そのことは深く考えられていると思いますけれども、その点について最終的な御見解をお伺いしたいと思います。
  98. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 本件につきましては、御案内のとおり、あくまでも法に従っていただきたいということを申し上げておきます。
  99. 穐山篤

    ○穐山篤君 その点は見解の違いがありますが、私は最後に三月中旬になりまして、中野区が進めてまいりました事務作業がまたもとに戻ってなおかつ教育委員会の欠員の補充ができないというふうなことがあってはならないというふうに、十分文部省側の慎重なひとつ配慮を最後にお願いをして終わりたいと思います。
  100. 野田哲

    委員長野田哲君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      ——————————    午後一時四分開会
  101. 野田哲

    委員長野田哲君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十二年度決算外二件を議題とし、文部省及び科学技術庁決算についての審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 石本茂

    ○石本茂君 私は、高等学校教育に関しましてお伺いしたいと思うんでございますが、やや以前からでございますが、男女差別が教育の面で行われているんじゃないかという声が、特に関係当事者から出ておったわけでございますが、一体それはどこにあるんだろうかということを、いろいろ見たり聞いたり調べたりしてきたわけでございますが、高等学校教育課程、これは普通科でございますが、その中で、女子生徒のみに家庭科の科目が課せられているではないか。これが、ただいま言われております男女差別につながるんではないかというような声がしばしば出ているわけでございますが、当局のお立場でこれをどのように考えておられますのか、お伺いしたいと思います。
  103. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) ただいま御指摘の、男女がその性の別によって差別されないということは、憲法、さらには教育基本法において規定されておるところでございます。私どもとしては、これらの基本にのっとって、わが国教育が行われておるというふうに思っておるわけでございます。ただ、御指摘がございましたように、高等学校におきまして、家庭一般というものが四単位ございまして、これが女子には必修となっているということで、したがいまして、男女によりまして、その点で取り扱い上の相違がございます。これらは私どもとしては、男女それぞれに応じた一つの教育配慮に基づくものであるということで、これを取り上げて差別というふうには考えていないのでございます。今回の教育課程の改定におきましては、これは三年間にわたります教育課程審議会の御審議とその答申に基づきまして、高等学校の家庭一般につきましては、やはり女子が家庭生活のまあ主たる経営者と申しますか、そういうのがわが国の一般的な状況でございますので、そういった状況にかんがみまして、新しい教育課程におきましても、現行どおり四単位を女子に必修としておりますけれども、男子に対しましては、これを選択して履修する場合があるということを明確にいたしまして、弾力的な取り扱いを認めておるのでございます。もちろん家庭生活というものが、これは男女が協力してこれを営んでいくというものであることは当然でございますが、やはり女性が子供を産みまして、そしてその子供に対して授乳をし、育て上げていくと、こういうことは男性ではできないことでございまして、そういった家庭生活の現実から見まして、特に女子につきましては、小・中学校の基礎の上に、保育、衣食住など、家庭生活を経営していく立場からこれに必要な知識、技術を総合的に履修をしてもらいまして、その能力を伸ばす機会を設けるということが必要であるというふうに考える立場に立っておるわけでございます。  なお、男子につきましては、それぞれの生徒の興味、関心がやはりある場合があろうと存じます。その場合は、適切にこの家庭一般なら家庭一般というものを選択履修してもらえば、これまた結構ではないかというふうに考えておるのでございます。
  104. 石本茂

    ○石本茂君 御意見もよくわかるわけでございますが、特にことしの七月行われました国連婦人十年の世界会議の後でございますが、方々のちまたの声が入ってくるわけでございますが、それによりますと、家庭というものは一番大事な人間の生きていく条件の基本ではないだろうか。それから、その現在高等学校の女子に必須科目とされております四単位の内容についてはつまびらかではございませんけれども、やはり家族とはどういうものか、夫婦とはどういうものか、そして生きていくためには食生活はどうあるべきかというようなことは、当然男子にもこれは基本的な条件ではないだろうか。してみたら、選択科目というんじゃなくて、当然必須科目にしていくべきではないかという意見が非常に強うございまして、まあこういう考えによっては、愚鈍と思われるような質問を試みているわけでございますが、いま私が申しましたように、生きていく基盤であると、家庭というものが、それから食生活その他でございますね。そうした意味におきまして、選択科目であるからそれでよいんではないかというんではなくて、ぜひ必須科目にするべきではないかという意見が非常に多うございますが、この意見についてはどうお考えでございましょうか。
  105. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) ただいまの石本委員指摘のような、やはり男子と申しますか、男性としても、家庭の事柄についての基本的なことをわきまえていなければならない、こういうことがあると存じます。でございますから、やはり小学校中学校等におきましても、そういう観点からの指導内容、方法等を考えておるわけでございますが、高等学校に参りますと、やはりこれは男女という別に限らず、普通科に参ります者もあれば、職業科に参ります者もありましたりして、教育内容というものが若干多様化し、専門化してまいります。そういった中で物事を考えていかなければならないというふうに思うわけでございますが、やはり家庭科のような問題につきましても、日本の社会なり、家庭なりの置かれておる状況なり、これまでの経過なり、それから国民全般の良識ある判断が、一体どういうところを求めているかということを十分に見きわめながら、教育課程の問題については対処していかなければならないと思っています。  もちろん、一部の運動家と言ってはちょっと語弊があるかもしれませんが、主張として、先ほど指摘のような、すべて物事、男女一緒にしろという御意見があることも存じてはおりますけれども、私どもは極力慎重な対応をしていかなければいけないというふうに考えておる次第でございます。
  106. 石本茂

    ○石本茂君 もちろん性の区別、それがいまお話がありましたように、教育面におきましても、多少の相違はあっていいんじゃないかと私も思っている者の一人でございますが、今後、この教科目の見直しをされる場合には、ぜひ普通科におきましても男子生徒が選択じゃなく、必須として学べるような内容等につきましても、御検討を私はぜひちょうだいしたいと思うのでございますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  107. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お話の点はよく心得ております。  私も先週、埼玉県の熊谷の小学校へ参りましたところが、ちょうど男子の小学生が、よく聞いていますと茶さじ一杯のあれを入れて、それに何を加えてというようなことで、家政科の勉強をやっていました。私は、それはそれなりに結構なことと存じますが、やはり男性は男性、女性は女性、人間としての点は何ら変わったことはありませんが、若干のそういう相違点もありますし、その辺は、国家権力によって強制すべきかどうかという点で、若干のまあボランティアと言っちゃおかしいが、自由な意思で家政科の勉強をしてもいいんじゃないかなという気もいたしております。
  108. 石本茂

    ○石本茂君 御趣旨よくわかります。  私は、義務教育の課程で、家庭科というのは、どういいますか、針の運び方とか、食事のつくり方というものは入っておりますようですが、本当のことを言いますと、男の子にそこまでする必要があるのかどうかわかりませんが、私は基本的なもの、特に高等学校になりまして、もしこの家庭科が取り入れられているのならば、夫婦とはどういうものか、家族とはどういうものか、親子はどういうものかというような、その辺から、そして栄養素とはどういうものかというような基本的なものを教えてほしいなと実は願っている一人でございまして、このことは今度の教科課程内容の変更等におきまして、ぜひ御検討いただきたいと思いますので、お願いしておきます。  続きまして、この医師、歯科医師などの教育に関することでございますが、まあ御承知いただいておりますように、医師、歯科医師教育の課程の中で、それこそ非常に重要な必須科目と言われておりますのが人体解剖実習でございます。ところが、近時非常に医科大学等がたくさんふえましたり、あるいはまた社会の情勢などありまして、この実習に必要な遺体でございますが、これが非常に不足してきたと。これを収集するのに非常に困っているんだという声を方々を聞くわけでございますし、先日も解剖学学会の皆様がおいでになりまして、このことの話がございました。この実態はどうなっておりますのか、お伺いいたします。
  109. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 医学教育に欠くことのできない解剖実習用の遺体の確保の問題でございます。  ただいま先生指摘のとおり、最近の社会情勢の変化と申しますか、そういう面と、もう一つは、御指摘のように、医科大学の新設が四十五年以降でございますけれども、大変多くなりまして、そのための必要体数の増加ということがございます。その確保が大変むずかしくなっておるということは御指摘のとおりでございまして、五十四年度の場合、教育上望ましいとされております体数の約七二%を収集しているという状況にとどまっております。  ちなみに、医科大学の入学定員で申しますと、四十四年度は国・公・私立合わせまして四千四十名でございましたものが、その後国立、私立等について医科大学が順次つくられてまいりまして、五十五年度では四千四十人の入学定員が八千百六十人ということで、ほぼ入学定員で申しましても倍増いたしておるわけでございます。  そういうような点もございまして、ただいま申し上げましたように、必ずしも十分な体数が確保されていないというのが現実でございます。
  110. 石本茂

    ○石本茂君 何か、規則でございますか、規定というようなことになりますと、医学部につきましては学生定員の半数以上の献体を持てとか、それから歯学部につきましても、学生定員については一人について〇・二五でございますかの遺体を持てとかという厳しいものがあって、今日の医学教育が伸びてきたんだと思っておりますが、いまお話がありましたように、かなりな不足をしている。これは現在遺体収集ということになりますと、厚生省の所管しております死体解剖保存法というような法律によってのみ賄われているんじゃございませんで、生前、自分の体は死後何々医科大学に献じますというようなものも含めて、何とか七〇%へいっているんじゃないかと思うわけでございますが、そこで、目下民間の篤志団体といいますか、不老会でございますとか、白菊会でございますという会がございまして、そしてこの登録でございますね、献体登録運動を進めておられます。これは実態を聞きますと、大変にこれに参画するという意見が多うございます。しかし、実際亡くなって、それでその遺体を献じてもらいたいと思いますと、遺族がなかなか応じてくれない。ですから、生前には本人は自分の遺体は解剖学に献ずるんだと言っておりましたものが、ほとんど遺族の意思によってこれが賄われないということを言っておられます。何か諸外国のことはわかりませんが、アメリカとか、カナダとか、西ドイツとか、イギリスという先進国では、そういう遺体を確保できる法律ができているというふうにも聞くわけでございますが、これらの団体が現在中心になりまして、献体登録を何とか法制化してもらいたいというので、昨年の十一月でございますか、総理大臣、厚生大臣、文部大臣に勧告書を持ってお願いに上がったそうでございますが、その経過はどうなっておりますでしょうか。
  111. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) お話しのとおり、大変、解剖用の必要な体数を確保するための手だてといたしまして、私どももいろいろと努力はいたしておるわけでございます。何と申しますか、遺体に対する社会的な認識と申しますか、そういうようなものが、やはり外国と日本の場合でも異なるというような事情もございまして、御指摘のように、各大学では篤志家の団体によります献体の啓蒙活動と申しますか、そういうことを通じまして、国民全般に御理解、御協力をいただくように努力をいたしております。そのための予算についても計上いたしておりますけれども、必ずしも十分でないというような点がございます。  いま御指摘の、昨年十一月の日本学術会議が、政府に対しまして、献体登録に関する法制化の促進についてということで勧告をいただいたわけでございます。その勧告の内容は、先生指摘のような献体登録のための法律措置を講ずべきではないかというようなことが述べられておりまして、その趣旨そのものはまことに私どもも結構なことだというぐあいに考えておるわけでございますが、法制化に当たりましての問題点としては、先生も御指摘の、本人の意思と遺族の意思との調和をどう図っていくかとか、あるいはそれによります法律の有効性をどのように確保していくかとか、そういうような問題点についてはなお検討を要する点が残されておりまして、先生指摘の死体解剖保存法は、厚生省所管の法律でございまして、遺族の承諾が前提になっておるわけでございますが、それらの法律措置がどういうような点に問題点があるかというようなことにつきましては、厚生省の関係部局とも私どもの方で事務的には御相談をさせていただいておりますが、まだ法制化というところまではいっていないというのが今日までの経過でございます。
  112. 石本茂

    ○石本茂君 この問題は厚生省ももちろん入っていくんだろうと思いますが、いずれにしても早急に御検討願いまして、そして、やはり遺体が上手に手に入りまして、医学生が十二分の教育が受けられますようにしておもらいできませんことには、私も候補者の一人でございますが、何となしに心細いなと、三人、四人で一つの遺体ということはちょっと考えられないなという、過去のことを考えるからそういうことになるんでございますが、憂慮している一人でございますので、何らかの措置を、やはり法的な根拠がなければ無理だろうと思いますので、これにかかわる法律の促進を一日も早く図って実現さしていただきたいことを、この機会によくお願いしておきたいと思います。大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  113. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 先般も同様の遺体の献体の御質問がございまして、私の方でもお答えいたしたのでございますが、この問題は、やはり医学というものに対する深い理解その他、周知徹底が必要でございますが、何分にも普通の物体と違いまして、人体のことであり、御本人の御意思や、御家族の御理解がないとなかなかむずかしいと存じます。  ただいま局長からお話しのように、需要は非常に増大いたしておりますが、供給はかえってなかなかむずかしくなっておる、こういうふうなことから、先生のおっしゃる御意見もまことによく理解はできますけれども、現実の問題といたしますと、なかなかむずかしい問題が伏在いたしておることを御承知おき願います。
  114. 石本茂

    ○石本茂君 なかなかむずかしい問題であると思いますが、これはやっぱり普通の教育資材と違いますので、一日も早く措置をしていただきたいことをさらに重ねてお願いをしておきます。  三つ目の問題は、学校保健に関することでございまして、現在、学校保健法の定めるところに従って、学校におきます保健の管理でございますとか、あるいは安全管理などが行われているわけでございます。これはみんなが知っているところでございますが、私がお伺いしたいと思いますのは、これらの業務の全部じゃない、部分だと思いますが、受け持って、そして、学校にいる在学生あるいは在学者の健康の保持増進に努めております養護教諭でございます。この養護教諭が、時間がございませんから、大体でよろしゅうございますが、どういうふうなことを主に受け持っているのかということと、それから、学校によりますと、保健主事というのがうたわれておりますが、保健主事と養護教諭との関連などもどういうことになっておりますのかお伺いしたいんです。と言いますのは、私は大昔学校に勤めた者でございますが、全体の保健衛生については教頭の次ぐらいの教師が主事をやりまして、私は校長から直接というんですけれども、その主事のもとにいて仕事をした経験があるんです。そういう意味で私はお伺いしたいわけでございます。
  115. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 先生指摘のとおり、養護教諭の方がいま全国に三万二千八百九十六人おられます。子供たちの心と体の健康の問題がいろいろな意味で御指摘を受けておりますし、その面からも養護教諭先生方の役割りはますます重要になってきておるという背景がございます。その中で現実に養護教諭先生方は、いま先生がお示しされましたとおり、健康診断あるいは健康相談あるいは学校の環境安全の状況についてのその保持のための仕事、そういうようなことがございますし、さらに具体に保健室の運営、あるいは集団の活動の中における救急の事故発生に対する処置等のお仕事があるわけでございますが、それ以外に学校保健情報の把握という大きな問題がございますし、また、具体に保健計画の立案に参画する、あるいはみずから学校行事、あるいは学級指導等のそういう時間におきまして、みずから保健指導に当たるというようなお仕事がございます。また、教師の保健指導に対して、その専門性を生かして、協力をしていくというようなことの面の役割りが大変高まってきているというように承知しておるところでございます。  なお、学校には学校保健主事が置かれまして、この学校保健主事は、学校保健全体についての企画、健康診断等の実施等の問題を調整するわけでございますが、いま学校保健主事は教諭をもって充てるということにいたしております。したがいまして、一般的に養護教諭の方は、いた先生指摘されましたとおり、保健主事とのかかわりを持ちながら、保健計画の立案、実施等に参画しておるという形になろうかと思います。
  116. 石本茂

    ○石本茂君 私ちょっと欲張ったことをここでお願いしたいと思うんですが、養護教諭は、もともと看護婦が学校看護婦ということでやってきて、その後に教育者だというので特別な教育が施行されたわけでございますね。この受けている教育内容などを私は十分承知しておるものでございますが、解剖学とか、生理学をかなりやっておりますし、現在小学校の高学年、特に中学生、高等学校にも一部おると思うんですが——につきましては、私は性教育をだれがどういうふうに受け持っておるのか、これを聞きたいと思うんです。
  117. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 性教育につきましては、まさに人間教育そのものであるという観点に立ちまして、すべての教育活動を通して、この面を実施していくという考え方をとっておるわけでございます。それで、御指摘のとおり、保健体育の教科指導につきましては、保健体育の教師の責任で行っておりますが、その他特別教育活動におきまして、養護教諭の持つ専門性を生かした指導が望ましいということを指導書、あるいは手引きにおいて進めてきておるところでございます。  また、小学校におきます性教育につきましても、初潮指導の問題がございますし、中学校におきましては性の発達への適切な対応という問題があるわけでございまして、これらの点につきましても、種々の問題もございますので、養護教諭方々の専門性を十分生かした教育活動の展開を期待しております。ことし、特に養護教諭方々の専門性を高めていただくということで、新たに千八百万ほどの予算が計上されまして、中央研修またブロックでの専門性を高める講習会を新たにいま展開しておるところでございます。
  118. 石本茂

    ○石本茂君 大変私はありがたいと思っておりますが、いま申されましたように、ぜひこの人たちの持っておりますものを、やはり生徒教育の面にも大いに引き出していただいて、そして効果ある活動ができるようにしていただきたいことをこの機会にお願いしておきたいと思います。  最後に大臣の御意見をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  119. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまのお話まことにごもっともでございまして、正しい性教育というものが正当に行われることによりまして、かえって青少年の非行でありますとか、その他いろいろな社会問題の解決の一助にもなるかと存じます。先生の御趣旨を体しましてまた考えてまいりたいと、かように考えます。
  120. 内藤健

    内藤健君 私は、高校教育のあり方について三点ほどお伺いをいたしたいと思います。  まずその第一点は、近年高校への進学率が急激に上昇を続けておりますが、今後のその見通しについてお伺いをいたしたいと思います。  また第二点は、普通科高校への進学希望が増大しておると、こういうふうに伺っておりますが、普通科課程と職業課程の定員比率がどうなっておるのであろうか。これは過去の推移と現状について御説明をいただきたいと思います。  また三番目には、高等学校における普通科、職業科、そうして定時制別に予算配分の数字がどのようになっておるのか。  あわせて以上三点お伺いしたいと思います。
  121. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 高等学校への進学率のこれから先の見通しでございますが、現在内藤委員御存じのように九四・二%でございます。これはもうかなりな高い数字でございます。そういう現状から先がどうかということの見通しは大変むずかしい問題だと思いますが、かなり高くなっておりますから、今後それほどいままでのように上昇するということはちょっと予想しがたいのでございますが、ただ九四・二というのは、これは全国の平均でございまして、この平均より低い県がまだかなりございまして、そういう県ではなお進学率が高まっていく、そういう状況が出てくるであろうという気がいたしますので、それらが入ってまいりますと、なおこの平均が上がっていくということが予想されますが、それほどこれまでのような上昇ではなかろうというふうに見ておる次第でございます。  それから、普通科と職業科の在学者数の状況でございますが、五十五年度の在学者数の比率で申し上げますと、普通科が全体の六八・二%、職業学科が三一・一%、それからその他というのがございまして、これはごくわずかでございますが、その他の学科が〇・七%という状況でございまして、この比率は、昭和五十年度以降五年間で、普通科の方で五・二%増加いたしまして、その分職業学科の比率が減少してきた、そういう結果になっております。  それから、高等学校に対する国の予算の状況でございますが、これは内藤委員に改めて申し上げるまでもなく、高等学校につきましては、公立はほとんどが都道府県立でございまして、それから、そのほかに私立は学校法人が経営しておりますから、したがいまして、そういった都道府県や学校法人の設置者が経費を負担していただくというのがたてまえでございまして、都道府県に対しましては交付税によって措置をしておりますが、なお国としても、これらの高等学校教育の充実、振興のために、各種の観点から国庫補助を行っておりまして、その総額が約一千億円になっております。この中身の内訳を普通科と職業科で分類するというのは、両方が込みになっておるような経費もございまして、ちょっとただいま手元に正確にこの比率を申し上げる資料を持ち合わせていないのでございます。
  122. 内藤健

    内藤健君 ただいまいろいろお伺いしたわけでございますが、その中で特に普通科の進学が過去五年間に五・二%上昇しておる、それだけ職業科が減ってきておるという御答弁を賜りましたが、こうしたように、やはり普通科の進学希望、これが増大するに伴いまして、相対的に職業科が低下してくると、こういうことになるわけでありますが、高等学校における職業教育にこうしたことが問題はないのであろうか。またもう一点は、今後職業教育というものに、どういうふうに国として対処せられるのかお伺いしたいと思います。
  123. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 先ほど説明申し上げました職業科への進学希望者の比率の減少ということがあるわけでございますが、これは、非常に厳密な分析というのはなかなかむずかしゅうございますが、私どもの見ておりますところでは、これは職業高校自体に内在する原因によるというよりは、むしろ全体が、大学やあるいは短期大学への進学率、これも非常に急な上昇をしてきたわけでございまして、こういったことが、やはり高等学校に上がるときに普通科志望をするという傾向を強めてくる、そういう状況をもたらしたのではないかということがございます。それからまた、そういった事情に対応して、都道府県でもどちらかといえば普通科の方の拡充を図ってまいった。昨今、九ないし十道府県で非常に高校生急増の現象が起きておりますが、そういった急増に対応する方策として、各道府県等はやはりどちらかといえば普通科の学校を増設してまいっておる、そういう事情もあるというふうに見ておるのでございます。ただ私どもとしては、やはりこれだけ大ぜいの——大ぜいのといいますか、たくさんの比率生徒が高等学校に進学するわけでございますので、その能力、適性等も非常に多様になっておりますので、やはりその適性に合った学科なり、学校なり、選んで進学をしていただくということが教育上非常に重要でございますので、私どもとしては、中学生の進路意識、これをやはりその時期時期なりにしっかりと持たせていくような進路指導が大事でございますし、そしてやはり、中学校生徒生徒によりましては、職業高校への理解度を高めるといったような意味の進路指導の充実に努める必要があると思っております。
  124. 内藤健

    内藤健君 ただいまいろいろお伺いしたわけでありますが、実はこの職業課程、特に農業高校でありますが、実は私は、昨年徳島県の監査委員をさしていただいておりました。そして、ある農業高校へ参りましたところが、そこの校長の説明を伺っておりますと、こういう話が出たわけであります。それは、私のところの学校では、生徒各人に実習として何坪か土地を与えて、そうして実地に実習をさしておる、各人がともかく競争意識を持って、非常に成績が上がって、立派な作品ができて、非常に効果があったと思いますと、そして、それを親元へ持って帰って、父兄からも喜んでもらっていますというふうなお話があったわけであります。そこで私が、それでは校長先生、この学校で将来農業を志向する生徒と、それと全然農業に関係のない生徒、この比率はどうなっておるのでしょうか、こういうことを申し上げますと、出てきた答えが、一クラスでその学校でわずか三名弱でございました。私は、この数字を聞きましてびっくりしまして、他の学校も調べてみますと、ひどいところになりますと一クラスで全然ない、ゼロのところもあるわけです。農業志向をする者が。そうして、多いところでも一クラスで五、六名、こういうふうなところでございました。そういうふうな、実際に自分のうちが商業を経営していたり、あるいはサラリーマン家庭の子供さんが、実際田も畑も持たない、そういう家の子供さんが、たとえば学校でつくった大きなカボチャを持って帰ったり、りっぱなナスビを持って帰ったりして、果たして親がどういうふうな感じを持つのであろうか、そのとき私は強く感じたわけでございます。  こういうふうな将来農業に従事しない子供さんたちが、結局は学力的な問題でこうした学校へ入学、通学を余儀なくされておる、こういうふうな例が、ただいま中学の進路指導に適正な進路指導というふうな御答弁もいただきましたが、しかしながら、現実にはこういうふうな問題が非常に多いわけであります。こうしたことは、高校教育の中における職業教育のあり方というものに問題がありはしないか、また、ひいてはわが国の産業振興という問題、これは大きな問題があるのでなかろうか。それと同時に、こうした子供たちに非行も非常に多い、こういうふうなことを聞いておるわけでございますが、こうした私のただいま申し上げた話を文部省としてどのように受けとめ、そして今後こういうふうな問題に対してはどういうふうに対処していこうと、そういうふうなことを伺いたいと思いますので、お願いをいたします。
  125. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) やはりこの職業科の学校は、現在の、あるいは将来における社会なり、経済なりの状況、これとやはり無関係ではあり得ないと思うわけでございまして、ただいま内藤委員おっしゃいましたように、学校の収容定員の決めぐあいによりまして、本来普通科へ行きたかった生徒が、希望するところへ入れないために、不本意ではありながら職業課程の学校に行くということが現実にあるわけでございます。でございますから、これはそういう全体の状況に応じて、学校の設置、廃止を考えていかなければならないことであると思います。状況によりましては、職業課程の学校を廃止して、普通課程の学校に転換を図るといったようなことであろうかと思います。これは、たまたまそういう生徒側の状況だけでなく、産業構造なり、就業構造の変化というようなこととの関連が出てくることであろうかと存じます。そうして、やはりそういう社会経済に対応すると同時に、子供自身がはっきりとした目的意識を持って勉学に励むという形に持っていくことが望ましいわけでございます。  これは文部省としましては、やはり設置者である都道府県のそういった事柄に対する見通し、さらにそれに基づく判断を尊重したいと思っておりますけれども、やはりそういった意味合いでの生徒実態に応じて物事を考えていっていただくということが必要であるというふうに思っておるのでございます。
  126. 内藤健

    内藤健君 ただいまの御答弁の中で一点、こういうふうな傾向がございますので設置、廃止を考えなきゃいかぬ、こういうふうな御答弁ございましたが、これはどの程度それではお考えになるのか、これ一点お尋ねいたします。  それと、私はただいまの御答弁の中で、こうした設置、廃止、こういうふうな問題は各県の判断を尊重しなければならない、これは当然なことでありますが、現状、私がただいま申し上げましたような現状があるわけであります。こういうふうな認識の上に立って私は御答弁賜りたいと思います。もう一度答弁してください。
  127. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) やはり学校の定員をどういうぐあいに決めるかということは、見通せる限り先を見通して考えていかなければならないことでございますので、非常に慎重な判断を要することかと思います。まあ現に生徒数が非常に減っていく傾向があって、先もそれが明らかであるというようなことでございますと、対応はしやすうございますけれども状況をやはりはっきりとつかんでいかなければなりません。たとえば、先ほど来の御質疑の中にも、そういった意味合いがあったかと存じますが、普通科志向ということの傾向は、これまでずっとかなり一般的にありましたんですが、県によりましては、若干職業高校へのUターン現象が起こりかけておるという報告をくれる県もあるのでございます。したがいまして、そういったところを十分慎重に見きわめてやっていく必要がありますので、重複になりますが、やはり都道府県の判断を尊重してまいりたいのでございます。  ただ、職業高校がこれから先どうあるべきかということも一つの問題でございます。農業従事者の数が減るというようなことだけでなくて、逆にサービス業、第三次産業の方が非常にこれから先進——アメリカとかヨーロッパの状況を見ましても、まだそちらの方の就業構造が比率的に上がっていくということが言われておりますし、でございますから、文部省としてはそういう国全体の状況に対応して、職業高校の今後の改善、充実をどう図っていくかという観点からはしかるべく調査もし、研究も進めていかなければならない。こういうふうに思っておる次第でございます。
  128. 内藤健

    内藤健君 そのような中で、実はただいまのやりとりの話を踏まえまして、実は私は徳島県ですが、徳島県は人口八十万少々でございます。このような県でも毎年高等学校生徒の中途退学者が四百名ないし五百名おるわけであります。そうして、その大半がこうした職業高校、しかも、それが一年一学期までにほとんどの人が退学をすると、こういうふうなことを私は聞いておりますが、ひとつ全国的にこのデータがどうなんだろうか、これをお聞かせいただきたいと思います。  それと、結局はこうした形、これは本当にその子供たちが自分の気持ちでは職業学校へ行きたくないんだと、実際に行って、かたいいすに座って、そして理解のできない授業を受ける、こういうふうな考えがあると思うわけです。しかしながら、こうしたことも、やはり高等学校ぐらいは出さにゃという親のみえと申しますか、エゴと申しますか、そういうふうな形の中で現在のこうした現象が起こっているんじゃなかろうかと、かように御説明のとおりでございますが、私もそういうふうに思います。  そこで、先ほども御答弁の中にもございましたが、中学校における進路指導が大切なんだというふうな御答弁もございましたが、そのとおりでございます。しかしながら、現状、現在の中学校における進路指導はどうかと申しますと、これは点数による振り分けが行われておりますことは御承知のとおりでございます。これもただいま御説明がございましたように、一〇〇%に近い入学希望者を全員学校へ入学させたいと、こういうふうな配慮からこういうことが起こってきておるんだろうと思いますが、しかし、これがもしそういうことができなかった場合には、校内においてはもとより、父兄からの強い圧力、非難があるわけでありまして、進学進路不適格の焼印を押されるわけでありますが、こうした圧力によってこのようなことが行われておるということは私も承知しておるわけでありますが、しかし、こうした生徒が非常に多いということであります。したがいまして、こうした問題に対して、中学における進路指導、これが本当に適正な、能力に応じた進路指導がなされなければならないと思うわけでございますが、これもすべて都道府県の方でやられておるので、都道府県の判断を尊重したいというのではなしに、ひとつ、いま県ではいまの現状しかできないわけでありますから、この辺で国がもっともっと力を入れてやるべきでなかろうか、かように思うわけでございますが、文部大臣、いかがなもんでございましょうか。
  129. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまいろいろと御高見を拝聴いたしまして、実はわれわれも、昨日も局長と一緒にその問題話し合っておりました。進路指導という問題は、非常に実はその人の将来を決めてしまうような重要な問題でもありまして、その環境、周囲の状態、いろいろな問題でむずかしいところであろうと存じます。しかしながら、いまお話しのように、非常に高校に対する要望が強かったり、いろんな傾向がございますので、今後ともに勉強してまいりたい、かように考えております。
  130. 内藤健

    内藤健君 大臣の御答弁を伺いましたが、この問題は大臣、大変むずかしい問題であると思います。そうして、むずかしい問題でありながら、また欠かすことのできない重要な問題でもあろうと思います。どうぞひとつ最善を今後尽くされて、ひとつよろしくお願いを申し上げます。  ただ、現在の多くの親たちが、子供を一流の企業と申しますか、大企業やあるいは官公庁へ就職をさせたい、そうしてそのことが短絡的に子供の幸せに直結するんだと、こういうふうな考えを持っておりまして、結局は能力、適性にかかわらず一流校への進学を志向し、そうして無理な受験競争に駆り立てる結果となるわけでありますが、こうしたことが先般の神奈川県で起きた悲劇、またその他にもあるように、いろいろとこうしたことが悲劇を生むわけであります。そうして、一方学校の方といたしましても、これは一部ではございますが、進学校として予備校化され、そうして切り捨て授業が行われておる。こういうふうなことも私は否定できないと思うのでありますが、こういうふうな現状の中で、文部省が戦後四回目の教育課程の改善を図り、知、徳、体の調和のとれた人間性豊かな児童生徒を育成する方針、これは時宜に適したものとして、評価をいたすわけでございますが、しかしながら、いまの現状を見てみまして、いかに文部省学校教育にこうした教育課程の改善を企画いたしましても、このような、現在のような学歴偏重の風潮が存立しておる限り、こうした成果も十分に果たすことができないんでないか、かように危惧を持つものでございます。そういうふうな中で、このような学歴偏重の風潮と、それがもたらす受験競争、こういったものをどのように考え、そうして今後これらに対してどういうふうな対処をしていかれるのか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  131. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) お尋ねの学歴偏重の風潮を是正するというためには、いろんな面で私ども息の長い施策ということで取り組んでいかなければならないと、かように考えております。  大学関係で申しますと、たとえば大学の側におきましても入試の改善につきましても、共通一次というようなことで、入試のあり方についても改善を進めておるところでございますし、また、それぞれの大学につきましても、特色を持った大学というものを育成していく、地方の大学を充実していくというようなことで、学校教育、特に大学の面では、そういうような施策を通じまして、いわゆる全体的な学歴偏重の風潮、社会的な機運を是正していくというようなことで、高等教育全体の弾力化と申しますか、そういう点で努力をいたしておるわけでございます。そのほか、生涯教育というような観点からも、勤労青年や一般社会人が高等教育も受けられやすくするような機会をなるたけ広めていくというようなことで、たとえば大学の夜間学部でございますとか、あるいは通信教育の充実、昼夜開講制というようなことで、広い意味で大学の全体の開放といいますか、公開講座等も充実をしていくというようなことで、大学教育の面では、そういうようなことを通じまして、全体の国民の中に社会の風潮としてございます学歴偏重の是正に努力していくということが必要であろうかと、そういうことで私どもは取り組んでいるわけでございます。
  132. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 高等学校指導要領を新しく用意いたしましたことで御指摘いただきました。私どもは、今度の改定でかなり弾力的な扱いができるように配慮いたしましたわけでございます。それは、先ほど申し上げましたように、九四%もの生徒が入っておるわけでございますから、高等学校の中身もいろいろな意味の多様化を図っていく必要があるという点でございます。  さらには、先ほど指摘のように、かたいいすに座っての座学には向かない子供もおるかと存じます。そういう座学に向かない子供は、やはり適切な進路指導で、たとえば専修学校なら専修学校で、本当に技術を身につけるという方が幸福であるという場合もあろうかと存じます。高等学校へ入ってすぐに中途退学というようなことでは、また大変不幸なことでございます。それからのことを十分に配慮して、教育を進めていく必要があると同時に、今回の指導要領の改定は、すでに各学校で移行の措置実施していただいておりますが、その中では、やはり習熟度別学級編制というようなものも加味いたしまして、多種多様な能力、適性を持った生徒学校の中でいろいろなことに取り組めるように、そうして意欲的な学校生活を送れるようにということを願って、現在各都道府県でも御努力を願っておるところでございます。  それから、先ほど御質問のありましたデータでございますが、実は中途退学そのものを一つ一つつかんだ調査というものはございませんので、したがいまして、御質問に対応するような数字を別の角度からとりたいと思って調べまして、私ども文部省が行っておる学校基本調査によって、昭和五十二年に高等学校にどれだけ入学したか、さらに三年後の五十五年にどれだけ卒業したか、この数字を比較してみますと、全体では四・八%減っております。学科別に見ると、普通科は三・五%の減少であるのに対しまして、職業関係学科の方は七・五%の減少と、こういうことになっておりまして、これから見ますと、職業関係学科の方が減る状況が大きい。ただ、中退だけではなくて、いわゆる留年者などもおりますので、そういった点を一応のみ込んだ上での数値になるわけでございます。
  133. 内藤健

    内藤健君 いろいろ御説明を承りましたので、さらにもう一点お伺いいたしますが、先ほど申しましたように、大企業と申しますか、一流企業、こういった企業が求人をする場合に、学校指定というのが問題になっておりますことは御承知のとおりでございますが、それらの実態がどのようになっておるのか。そうしてまた、文部省としてもこれをなくするように強い指導をすべきであると私は考えるのですが、この辺についてもいかがなものだろうか、お尋ねをしておきます。
  134. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) いわゆる排他的な指定校制の是正につきましては、私ども労働省の御協力もいただきまして、企業側の自粛を要請して進めてきておるわけでございます。具体的な調査といたしましては、五十三年二月でございますが、新規学卒者の採用状況等に関する調査実施いたしまして、これは企業の規模別に事務系、技術系というようなことで分けまして、約二千四百社ぐらいを対象といたしまして、調査をいたしたものがございますが、その数字によりますと、卒業大学によって受け付け制限をする企業というのが昭和五十年は一〇%でありましたものが、五十三年には七・五%ということで、これは事務系でございますが、減少いたしておるわけでございます。また、卒業大学によって受け付け制限をしない企業というのが、五十年が八七・八%でございましたのが、五十三年度には九〇・四%ということで、これらの数字で見ましても、いわゆる指定校制度をとるという企業は順次減少の傾向にあるということは言えるかと思うわけでございます。  さらに、労働省なり、経済団体等にも、私ども、就職に当たりましてのいわゆる排他的な指定校制度はぜひやめていただくように協力を求めてきておりますし、本年度当初でございますが、五十五年四月の初めには、局長名で主要経済団体とか、労働省等に対しましても、採用選考に際しまして、出身大学による差別と、本人の資質能力に関係のないような、形式的理由によって不利益な取り扱いをすることのないように、強く要請をいたしておるわけでございます。  いずれにしましても、私どもは、労働省とも協議をしながら、企業全体に、ただいま申しましたような、いわゆる排他的な指定校制度の廃止といいますか、そういうような点については、先ほどもお尋ねのございました学歴社会の打破という観点からも、ぜひ必要なことであろうと思っておりまして、今後も努力を重ねてまいりたいと、かように考えております。
  135. 内藤健

    内藤健君 どうぞ、ぜひともそのようにひとつ推進をしていただきますようにお願いを申し上げておきます。  次に、私は非行、特に暴力の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  御承知のようにこれは新聞とかテレビをかなりにぎわしているような状況でございますが、中高生による校内外の暴力、これはまことにすさまじい状況にあるわけでございまして、私どももまことに憂慮にたえないところであります。特に、最近問題になっております教師に対する暴力は、まことに目を覆うような状況であると思うのです。そこで、こうした暴力関係実態というのはどういうふうになっておるか、その数字を示していただきたいと思います。
  136. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 警察庁の調査の資料で御説明申し上げます。ただいま御指摘のありました非行あるいは暴力の状況でございますが、昭和五十四年度の数値で見ますと、刑法犯少年で補導されたもの、逮捕されたもの、これらの合計が十四万三千百五十八人ということで、前年の五十三年が十三万六千八百一人でございます。六千三百五十七人の増で、四・六%の増という数値になっておりまして、この中にはいろいろな  凶悪犯粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯、その他ございますが、特徴としては、こういう少年犯罪の一番多いのはやはり窃盗犯でございますが、凶悪犯、粗暴犯等についても、従来と状況は変わらないような数値になっております。  それから、年齢別に見ますと、増が一番多いのは十四歳という低年齢のところでございまして、増率で申し上げますと一四・一%の増と、こういう状況になっておるわけでございます。  それから、学校段階で見ますと、やはり中学校段階が前年に比して一一・八%という増で、いわゆる低年齢化の傾向が出ておるということでございます。  それから、御指摘の校内暴力事件の発生件数でございますが、これが、五十三年が千二百九十二件、五十四年が千二百八件でございますが、高等学校の方で減少しまして、中学校の方で、むしろ前年の八百五十三件に対して、五十四年は八百九十二件ということでふえておると、こういうことでございます。  それから、教師に対する暴力事件につきましても、高校の方は、五十三年が十七件、五十四年が二十一件というような数字でございますが、中学生による事件としては、五十三年が百七十四件、五十四年が二百十一件ということで、これまた中学校で問題が非常に増加しておる、そういう状況でございまして、なお五十五年については、上半期の数値があるわけでございますが、これを見ましても、時間の関係で省略いたしますが、なお増加の傾向が見られまして、大変憂慮すべき事態であるということでございます。
  137. 内藤健

    内藤健君 そこで、こうした増加傾向にある非行問題、これの解消策として、国として今後どういうふうに取り組まれていかれるか、その辺についてもお伺いしておきます。
  138. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 非行のこういった状況に対処しまして、私どもは、やっぱりいろいろな角度、観点から、それぞれの事件について分析をし、判断をし、そして多角的な対応をしていかなければならないということで、やはりこの対処方策はそう簡単ではないというふうに考えるのでございます。  何はともあれ、やはり学校としての対応策は教育的な取り組みでございますので、どういたしましても、これは教える者と教てられる者という存在であるところの教師と生徒、これが十分に、教師がそれぞれの生徒を理解し、把握していくという態勢をとることが基本であると思っております。そういたしまして、先ほど来御質疑のございましたように、学校での勉強なり、あるいは種々の特別活動等、学校生活というものが一人一人の生徒にとって非常に充実したものであるという方向へ持っていくと、そして、個々の学生が意欲的に学校生活を送るという状況を、学校全体が一丸となってつくっていくということが基本的に重要なことであるかと存じます。  もちろん、こういった少年非行なり、あるいは校内暴力の背景といたしましては、家庭の状況でございますとか、あるいは社会の風潮でございますとか、あるいは事件によりましては暴走族その他、いわゆる中学生よりもっと大人である外部の背後関係といったようなものがつながっておるという場合もあろうかと存じますが、学校としては、やはり先ほど申し上げましたことを基本としてやっていただきたい。  私どもとしては、そのためには教職員現場での取り組みのことを申し上げたわけでございますが、生徒指導ということが非常に基本的には重要でございます。生徒指導は、何も非行防止という消極効果だけをねらうものではございませんで、一人一人の子供の個性や、能力を十分に発揮させ、その子供たちの人格を完成させると同時に、その子供たちが大人になる過程において、一つの社会的な意味の資質の向上、公民としての資質の向上、これもねらっていくもんでございますから、積極的なねらいを持っておるものでございますけれど、やはり、それによって非行も防がれていく、こういうものでございますが、そういう意味の生徒指導上の教師の資質の向上を図りたいということで、これは文部省と都道府県とそれぞれが、そういった資質の向上のための研修会、講座等をやっておりますが、これを今後も充実してまいる必要があると思っておりますし、さらには、これまでかなりの冊数の生徒指導資料というものを出しておりまして、これについては、内容はかなり丹念にいろいろなケースケースごとの対応についての考え方等も述べておりますが、これらの生徒指導資料の編集配付といったようなことを、今後も続けてまいりたい。  それから、従来とも生徒指導の研究推進校という仕組みを設けまして、そういった研究の結果をまた全国に参考にしてもらうということをいたしております。  それから、学校だけでなくて、地域ぐるみの研究推進地域というのを一昨年から始めておりますが、これも今後とも充実してやってまいりたいと思っておる次第でございます。  なお、学校全体の、先ほど運営の問題を申し上げましたが、私どもとしましては、ことしから始めました第五次教職員定数改善計画、これをできるだけ円滑に実施して、教員の配置も充実してまいりたいと思っておりますし、それから各県で生徒指導主事、あるいは生徒指導部、生徒指導係の組織化、そういったことについての指導も、より強力に進めていただきたいと思っておる次第でございます。  なお、教育の側からの対応は、学校が中心でございますけれども、やはり、平素から家庭及び地域社会の関係機関との連絡を緊密にとるということによりまして、総合的な対策もあわせて進めていただくということが肝要である、こういうふうに思っている次第でございます。
  139. 内藤健

    内藤健君 非常に長い御答弁をいただきましたが、まことに迫力のない、全くのデスクプラン、こういうふうにしか思えないのであります。  私はいまも生徒指導、そういうふうな取り組み方についていろいろおっしゃっておりましたが、結論といたしまして、こうした問題を解決するためには、生徒だけではこれはもういかぬのは、皆さんもおわかりのとおりでございますが、やはり、家庭、その生徒の家庭の環境を知るということも非常に大切なことでなかろうかと思うわけであります。  いまこうした問題については、それではどうやっておるのかと申しますと、御承知のように、各先生方は自分の生活をなげうって、いま放課後に家庭訪問しておるのが現状であります。そういうふうに、いま非常に非行がふえてき、非行防止が叫ばれておるときだけに、私は国としても、もっともっと、こうした日夜を問わず努力しております先生に報いてやる方策も必要でなかろうかと思うのであります。その意味では、たとえば、一つとして家庭訪問費を国の方で予算化してみる、こういうふうな考え方もあるわけであります。  また、もう一点といたしましては、教育困難校というのが、これは各県少数だろうと思いますが、徳島県にも四、五校ございますが、こういうふうなところへも、わずかな金でございますので、教員の増員をさせてやるとか、具体的なこういうふうなものがなかったら、机の上の計算ではなかなかこれは実施ができないと思うわけでございます。  また、第三点目には、この派遣社会教育主事というんですか、これが七年ほど前からできておりまして、ようやく地域に定着しかかってきておりますが、この予算にいたしましても、従来、国、県各二分の一の負担割合でございましたものが、ことしからですか、五十五年度からですか、国が十分の四、そうして各都道府県が十分の六というふうに、国の方において一歩後退したような感を残念でありますが受けざるを得ないのであります。非行防止と申しますものは、御承知のように、学校そして家庭、地域ぐるみ、これが一体となってやっていくことによって、効果が上がってくると思うのでございます。したがいまして、そのかなめになる派遣社会教育主事、これの国費の増額というふうなものも当然あって私はしかるべきでなかろうかと、かように考えるわけでございますが、以上三点御答弁願いまして、その後でひとつ大臣の御所見も伺いたいと思います。お願いいたします。
  140. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) まず家庭訪問でございますが、これは私から申すまでもなく、きわめて重要なことでございまして、父母と教師の間の理解を深める、家庭の状況を教師が十分に把握して、生徒の置かれておる環境、これをもとにその後の指導を進めるということでございまして、したがいまして、学校では、もちろん父母の方から来てもらうという場合もありますけれども、一般的に家庭訪問を行って、理解を深めておるわけでございますが、教師の本来の業務、学校としての当然なすべきことの中にも入れてしかるべきことであると思っておりまして、ただ、やり方は家庭の事情や、いろいろなその地域の状況で工夫をしてやっていただくわけでございます。教員の勤務については、いろいろこれまでの経緯もございまして、やはりこういった家庭訪問も通常の勤務時間の中でやっていただく。ただ、いろいろ事件が非常なまあ緊急な事件が起こりまして、通常の対応ではなかなかむずかしくなってきた場合には、ただいま内藤委員指摘のような、特別の戦力補給的な策をその地域地域でやっていただくということはあろうかというふうに考えるのでございます。  それから、第二点の教育困難校についての手当ての問題でございますが、これも委員御承知のことでございますが、現在産炭地区でございますとか、同和地区、あるいは簡易宿泊所の密集地区等に所在する学校で、いわゆる教育困難校と言われるものについては、一定の基準を設けまして、教員定数の加配というようなことを実はいたしておるわけでございますが、この校内暴力問題は必ずしも常時特定の地域に起こるということでもございませんし、一たんしかし事件が起こりますれば、総力を挙げて対処するというようなことで、これまでの例では大体後は非常に、そう言ってはなんでございますが、雨降って地固まるなんというたとえを言うのはいけませんかもしれませんが、非常によくなっていくということがございまして、常時教育困難校というふうにそういう学校を指定して、手当てをしていくということが果たしていかがであろうかということで、御指摘でございますので、私ども今後物を考えますときには、注意をして考えさせていただきたいと存じますが、現在のところはやはり生徒指導の充実にそれぞれの学校が努めていただく。  ただ、御参考までに、十八学級以上の中学校、あるいは二十一学級以上の高等学校の教員定数につきましては、生徒指導担当教員の加算ということをやっておるのでございます。
  141. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 先生指摘の派遣社会教育主事の制度は、昭和四十九年から始めまして、社会教育の基盤形成に大きな役割りを果たしたわけでございます。昭和五十五年度の予算編成に当たりまして、国の財政事情が非常に悪化したということから、補助金の整理の一環として、この制度の基本的な見直しということを迫られたわけであります。しかしながら、先生指摘のように、この内容が社会教育の基盤形成に大きな効果を果たしているということから、若干の補助率は落としてでも、この制度自体は維持していきたいということから、十分の五から十分の四の補助率に落として、定員は確保するというような対応をとったわけであります。この制度につきましては、今後とも従来の路線を確保しながら、人数の点については確保してまいりたいと、こう思っている次第でございます。
  142. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 先生の御質問も、現場の非常な悩みをよく御存じであられまして、いろいろと御意見を承った次第であり、また両局長の方からのお答えも、文部省といたしましては考えられるあらゆる努力をいたしておる次第でございます。同時にまたこの問題は、そう簡単に片づくものではないことも御承知のとおりでありまして、今日の学校暴力あるいはまた社会における非行青少年、これはよって来るやはりある一定の期間があるわけでありまして、それをなかなか当面事件が発生したからと申して、これが急に正常なものになってもらいたいけれども、実際には周囲の環境の問題でありますとか、本人の家庭生活の問題でありますとか、あるいは社会的ないろんな問題等々の結集が、こういうところに露呈いたしたと、かように思われます。私も自分が若かりし日のことを思いますと、文部省があのころは思想善導費というものを大変国から出しまして、われわれ学生を生徒主事の人が集めて、ごちそうをしてくれたことを思い出すわけでありますが、なかなかそう一朝一夕思想善導ができなかったことも御承知のとおりであります。  だから、この問題はやっぱり社会的な一つの秩序というものが、私は一番大事なことじゃないか。というのは、先生生徒の間には、やはり上下関係というものがきちんとあって、教える者と教えられる者、また家庭におきましても両親——父母と子供との間には、やはりそこには家庭の秩序というものがなければだめだと、こういうふうに思うんでありまして、そういう点は本当に家庭内におきましても、あるいは社会におきましても、この非行に陥った青少年の方々を取り巻く秩序というものの回復こそ、私は最も前提となるべきものだろう、こういうふうに考えます。  なおまた、この非行が行われました場合に、警察の協力を得てどうこうとか、あるいはまた司直の手によって罰せられるということもやむを得ないことではございますが、この非行青少年なるものが、その人の将来ともに社会に復帰できないような私は罰というものは、よほどこれは慎重に考えなければならないと、かようにも考えております。
  143. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 きょう私は、義務教育課程における教科書の問題と、原子力、核燃料等の安全対策について質問をいたします。  最初に教科書問題から入りますけれども、これも午前中ちょっとお話ございましたが、いよいよ五十六年度予算編成も最終段階に入ってまいりました。そこで、この教科書が五十六年度予算で無償のまま存続するか、それともまた有償化となるか、これはもう大問題であります。  この問題については、ここ何年か、毎年問題になってはきておりますけれども、ことしは財政危機、財政再建、こういう旗印のもとに、この問題は一層深刻に取り上げられて論議されてきております。したがって、今日まで本会議は当然、予算委員会、文教委員会等、機会あるごとに取り上げてきたのも承知をしております。そこで論議が尽くされてきたわけでございますけれども、これは承知しておりますけれども、私はいま申し上げましたように、予算編成の最終段階でもございますし、あえて——特にあえてと申し上げておきますけれども、もう一度この決算委員会教科書有償化は断固反対と、こういう立場に立って質問をしたいと思います。  大臣にお伺いしますけれども、現在叫ばれている財政の危機というのは、昭和四十年代後半、ドルショック、そしてオイルショック、これに対する政府の対応のいわゆる甘さというか、それを初め、その際の総需要抑制政策のタイミングのずれというか、これから招かれたものであると、私はこのように思います。政府の失政であると、このように思うわけでございます。これを再建するのに、実質的には所得税の増税、それから大型消費税の導入、さらに福祉切り捨て、そして今度は教科書有償化を行おうと、こういうふうにしているわけでございます。弱い者の立場にある給与所得者や、自営業者にしわ寄せをするということは、私は全くけしからぬと、このように思うわけです。文部大臣の立場は——あなたもその一人でございますけれども教育という国家の重要課題の最高責任者として、この問題についてどうお考えになるか、最初にお伺いいたします。
  144. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 今日の日本の非常な混乱、あるいは社会的な非行青少年の問題、こういうふうな問題は、帰するところは、戦後三十年間余りにも物にのみこだわって、心の問題を失っておるというところにあると思うんであります。そういう点から申しまして、当面いたしました財政が窮屈だから、その経済の当面の問題を救うために、教育という最も重大な問題にしわを寄せてくるという、その考え方自体が今日の日本の混乱を招いているとさえ思うのでありまして、私はわが国教育史上、むしろ画期的なこの教科書無償配付というふうな問題を、これをさような当面いたしました経済問題で犠牲にしてはならない、あくまでも後世に誇り得る私は教育施策の一つである、この無償問題はさように心得て対処いたします。
  145. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣お答えは私と大体同じ意見のようでございます。私も意を強くいたしました。そういうことで、ここで大声で大臣がんばれと、このように申し上げたいほど、いずれにしても努力をしていただきたい、このように思うわけでございます。  それに関連して、確認をしておきますけれども、この有償化というのは、単に金額の問題だけではなくて、無償で給与した政府の教育に対する姿勢、情熱、いまちょっとお話ございましたけれども、理念というものは厳然として貫き通されていると思いますけれども、まさかこの有償ということで、教育というものを軽視するようなことになったんではないんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、私はかつての無償、この制度が制度化された三十七年のことを思い出しますと、ここに提案理由の説明がございますけれども、これをあえて申し上げさしていただきたいと思いますが、この三十七年二月二十八日、この中で、   教育の目標は、わが国土と民族と文化に対する愛情をつちかい、高い人格と識見を身につけて、国際的にも信頼と敬愛を受けるような国民を育成することにあると思います。世の親に共通する願いも、意識するといなとにかかわらず、このような教育を通じて、わが子が健全に成長し、祖国の繁栄と人類の福祉に貢献してくれるようになることにあると思うのであります。この親の願いにこたえる最も身近な問題の一つとして取り上げるところに、義務教育学校教科書無償とする意義があると信じます。 さらに後の方に、   このたび政府は、義務教育学校教科書無償とするとの方針を確立し、これを宣明することによって、日本国憲法第二十六条に掲げる義務教育無償の理想に向かって具体的に一歩を進めようとするものであります。   このことは、同時に父兄負担の軽減として最も普遍的な効果を持ち、しかも児童生徒が将来の日本をになう国民的自覚を深めることにも、大いに役立つものであると信じます。またこのことはわが国教育史上、画期的なものであって、まさに後世に誇り得る教育施策の一つであると断言してはばかりません。こういう趣旨説明を私は思い出します。そこで、時代の変遷によって、制度が当然変わってくるということは、これはあり得ると思いますけれども、この教科書に関しては私は別問題ではなかろうか。いま大臣からちょっとお話ございましたけれども、この提案理由を私は見ますと、もしこれが有償化になった場合には、悲しくもなるし、本当につらくもなるわけです。こういったことで、先ほど申しましたように、この姿勢、情熱というものは変わってはいないんではないかと思いますけれども、もう一度確認をいたします。
  146. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま再度御質問がございましたが、私の考え方は先ほど申しましたとおりでありまして、ぜひともこの問題に対しまする皆様方の御協力をあわせてひとえにお願いいたします。
  147. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、この無償給与にどの程度の国費、予算がかかるか、対象人数はどのくらいか、五十五年度のをちょっと教えていただけますか。
  148. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 昭和五十五年度予算では、対象人員千七百三十万人の児童生徒に給与する教科書購入費として、四百九億円の予算が計上されております。  昭和五十六年度の予算要求概算要求といたしましては、千七百六十万人、約三十万人の対象人員の増がございますが、この児童生徒に給与する教科書購入費といたしまして、四百七十六億円を要求しておる次第でございます。
  149. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 五十五年度でいまお話あったように四百九億円、五十六年度の予算要求が四百七十六億円、こういうことですね。  この四百九億円の多いとか、少ないとかということを私は論ずるわけではございませんけれども、さきに発表のあった昭和五十四年度決算報告の概要、これでは不当事項だけで二百三十億一千四百四十三万円、こういう数字が出ております。特に掲記を要すると認めた事項の背景となった金額まで含めると、実に七百二十一億四千四百六万円、これだけあるわけです。検査対象個所は四万二千四百、このうちのわずかこれでも八%、三千四百カ所の検査で浮かび上がったのがこの数になるわけです。これ自体でも普通民間会社ならば、これは大変な問題です。倒産するか、信用はもちろん落ちるでしょうし、これは大責任問題です。このような点の反省もなく、切り捨てやすいところにきばをむくというか、そういうところにしわ寄せをすると、こういうことについては、これは承服できないわけです。大臣、こういう点についてはお金の面、また、日本全体の教育という立場を考えて、どういうふうに考えられるか、お伺いしたいと思います。
  150. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) そういうふうなことを思いますだけに、私は物にのみ心のいっております日本の政治というものが、いまこそ反省させられなきゃならないと、かように考えております。
  151. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つつけ加えてお伺いしますけれども、午前中の質疑の中で、穐山委員の方からお話がありましたけれども、その局長の答弁で、教科書はもう来年度のは印刷もされている、それから販売ルートにも乗っていると、そういうことで、五十七年度は仕方がないじゃないかなというような私はニュアンスを受けたわけです。このことについては私はこの予算時期を前にして非常に甘い考え方であると、こうひとつ思いますし、さらにそれを立ち入ってみると、それではそういうことになった場合には、五十七年度からは有償にするというふうにも私は解釈できるんです。これは私の考え方がおかしいかどうかわかりませんけれども、そういうふうに午前中私、伺っておったんですけれども先ほどから大臣の御答弁にもありましたように、教育というのは日本の基であるし、日本の将来を担う子供たちのためのりっぱな教育をしなきゃならない、また、憲法にも保障されている、こういういろいろな点を含めて、五十六年度も当然でございますけれども、五十七年度からもこれをやらないと、無償化を存続すると、こういう確たる意向を持っておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  152. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 午前中は穐山委員からの非常に具体的な御質問でありましたので、私は、まあ仮に考えてみればということで申し上げたわけでございまして、五十六年四月から使用される教科書は、ただいま申されましたように、四月までに児童生徒の手元に持っていかなければならないものでございますから、目下製作中でございます。すでに。そうして、その経費はすでにもう前国会で御審議いただきました本年度予算案の中に大部分計上されておりまして、その一部はすでに現在の教科書の発行制度に基づきまして、前金払いで会社の方へいっております。そういうことでございますから、これは通常の頭、ないしは神経では、五十六年度のをやめにするということは、ちょっと考えられないことでございます。五十七年度につきましては、これはただいま概算要求をしておりまして、そうしてこの暮れにいよいよ最後の予算折衝に入るわけでございますが、これまた午前中御質問ございましたように、財政当局側は国全体の財政再建ということを至上の目標にしておりますから、そこで私ども要求側と、それから財政当局側の非常に困難な財政折衝ということは予想されることでございます。そのことについてお答えを申し上げたわけでございますが、私どもはこれを明年度も、この教科書無償を堅持するという立場で、すでに夏以来概算要求をしておる立場でございますので、私どもの考えは、先ほど大臣が申されましたそういう方針のもとに、大臣を全力を挙げて補佐していかなければならないというところに置いておるわけでございます。
  153. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 しつこいようですけれども、要するに五十六年度無償化の方向へ持っていく、その後もそういう考え方を堅持する、こういうふうに受け取ってよろしいですね。
  154. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 文部省はそういう考えでおります。
  155. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 参考に伺いますが、先進諸国、いわゆる外国では初等学校用の教科書無償制度はどうなっているか、その点についてお伺いします。
  156. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 私どもは、一部発展途上国も含めまして、二十二カ国について調べたのでございます。その中には、インド、スリランカ、フィリピン、韓国、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ブラジル、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイルランド、イギリス、ベルギー、オランダ、西ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、オーストラリア、スイス等が含まれてございますが、この中で有償制をとっておりますのは、インド、ブラジル、アイルランドの三カ国だけでございます。なお、ブラジルは有償制ではございますが、一冊約二十円といったような、非常に安い価格の有償制ということでございます。  それから、欧米諸国のいわゆる先進諸外国では、貸与制というやり方をとっている国が多うございますが、そういう貸与制と、それから給与制と両方を入れまして、ほとんどが無償でございまして、なお、スリランカなども年度から無償貸与制を始めておる、それらも含めまして二十二カ国のうち三カ国でございます。有償制というのが。
  157. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いま答弁にありましたように、アジアにおいても、北米においても、ヨーロッパにおいても、もう大多数の国は無償制度を実施しているわけです。これは単に偶然というか、そういうことでは私はないと思います。いかに教育が大切であるからこれに力を入れているのだ、このように私は解釈をしているわけでございます。  そこで、また有償無償という論議になりますけれども、確かに有償でもいい、有償の方がいいというか、そういう議論もあることも新聞で承知はしております。私いま見ているわけですけれども、読者の意見というのは、もちろん中には有償論もある。しかし、この有償論の根拠となるものは、物を大切にする気持ちを育てるために有償にするとか、それから勉学の意欲を大切にするとかということが、この有償論の裏づけになっています。しかし、この物を大切にするとかどうとかということは、これはもちろん大切ではありますけれども、私から言わせれば、これはいわゆる日本の経済成長によってそういう点の精神的貧困というか、それからきている問題であって、教科書無償であるとか、有償であるとかという問題には、私はそんなにかかわり合いはないんじゃないかなと、このように思います。特に十人のうち、この新聞でいくと大体七人から八人までは無償を主張している。念のために一番最近のある新聞の投書欄でございますけれども、こういうことも投書に載っておりますので、大臣お忙しいでしょうから、読んでおられるかどうかわかりませんけれども、これが真実の声だと、こういうように思いますので、一、二読ましてもらいます。   惨めな思いイヤ 教科書有償化という声に、小学校時代のつらい、惨めな思いが、心をよぎった。   貧乏な家庭で、給食、遠足、教材費、もちろん教科書代などとても払えなかった。教科書の販売日、友達がみな、インクのにおいのプンプンする教科書を大事そうに抱えて帰る姿を見て、子供心に「貧乏なんて本当にいや」と悲しかった。   先生から数日後、みんなの前で手渡される無償の本の冷たかったこと。恥ずかしく、悪いことをしたような、暗い気持ちになったことを、昨日のことのように覚えている。教科書有償が現実になって、万一、あの思いをする子がいたら……。   こういう投書もございます。   もう一つ。   憲法が保障 教科書無償は、単に教科書がタダだということに意義があるのではない。義務教育の国公立学校の授業料が無償なのと同様に、国民の「教育を受ける権利」を経済的に保障し、それによって憲法に規定されている教育の機会均等の理念を実現するという理想と目的があることを忘れてはならない。したがって、財政再建のためとはいえ、短絡的に教科書を有償にすべきでないという気がする。  そのほかたくさんございますけれども、こういうことで投書がまだほかにたくさんございます。  そこで、確かに有償時代もございました。有償時代にはいろいろな、もちろん利点もあったかもしれませんけれども、弊害があったわけです。「義務教育教科書の有償時代における販売方法等について」というのを、私はここに持っておりますけれども、この中を見ると、販売方法は、「学校における出張販売が原則」と、こうなっておりますけれども、ある県によっては、補助の方法として、「学校から現物を子供にこっそり渡した」と。それからある県においては、「他の子の目につかないように渡した。」と。さらにある県においては、「現金を役場から保護者に渡していた。」、「他の生活費に回されて、教科書の購入日に買えない子もいた。」と、こういう記録があります。  そして、子供に対する心理的影響というところで、「受け取る方は、一抹の淋しさがある。」、「購入のときに他の子と一緒に買わないので、周囲に知れてしまい劣等感を与えてしまうことが多かった。」と、ある県においては、「頭のいい子ほど、胸の痛みつらい思いの気持ちがあったようだ。」、「本人の心の負担としては、大変なものがあったと思う。」と、こういうことも記録に残っています。そういうことを考えあわせると、ぜひともこれは無償存続をしていただきたいと、私は申し上げたいわけでございます。  ここで、いろいろ議論の段階でございますけれども、考え方、意見として文部省にお伺いを何点かいたしたいと思いますけれども、仮に低所得家庭への無償給与に限る場合のいわゆる児童生徒への貧困意識の影響はどうなりますか。この点をお伺いします。
  158. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 全く仮に申し上げさせていただきたいと存じますが、学校ではやっぱりいまいろいろと既往の事例について、鶴岡委員がおっしゃいましたことは私どもも承知しておりますが、いろいろ非常に細かい心遣いをして、できるだけ子供の心がさびしく情けなくならないようにやっていかなければなりませんので、そういう方法もいろいろと考えられないことはないと存じますが、しかし、やはり子供というのはなかなか、知らぬ顔をしているようでも、利口でございますし、デリケートでございますから、どうしても心理的な一種の影響というものは残るであろうというふうに考えます。
  159. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つ、無償制度は教育施策でありますけれども、これに所得制限を設けることは、社会保障的施策への後退だと、このように私は思いますけれども、この点はどういうふうに考えますか。
  160. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 現在も、通学用品費、学用品費、修学旅行費等で、準要保護の家庭の児童に対する措置を行っておりますが、それと同じ扱いになるであろうというふうに申せると思います。
  161. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つ、一時的廃止となれば、それ自体教育をどう考えるかが問われることにもなります。まして、その切りかえでの事務等の整理、処理、これが大変であると思いますけれども、この点はどうですか。
  162. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 現行の無償の制度は、実施後すでに十八年を経過いたしておりまして、この制度のもとで教科書の発行、それから全国の山間僻地も含めまして、くまなくすべての学校へ期日までに必ず供給するという、そういう業務のやり方を整備してきておるわけでございますが、やはりこの制度を変えますと、変えた直後には、そういった意味の事務の上において、少なからず混乱を招くことになるのではないかということを予想しております。特に、有償になりますと、教科書学校に供給する取次店では、現在はその代金回収業務というものがないわけでございます。それが出てまいりますから、そのための人員を確保するという問題が生じます。それから、これは仮にの話、また一時停止後再び無償になりますと、今度はその人員をまたどちらかほかへ振り向けていかなければならないというようなことも予想されるわけでございます。
  163. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 最後にもう一点、教科書が高くなるというような、こういうことも考えられますけれども、この点はどうですか。
  164. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 現行の無償の制度では、教科書の製造に要します経費を、先ほどもちょっと申し上げましたが、国が前払いをしておるわけでございます。したがいまして、仮に有償になれば、前払いという制度がなくなりますので、教科書の発行者は、これを一般の金融機関等から融通をしてこなければならないということで、新たに金利の負担がふえます。それから、先ほども申し上げましたような学校で販売をした場合の一人一人の児童生徒からの代金回収のための人員その他、労務にかかる手数料の増加が招かれると思います。こういったこともございまして、仮に有償になれば、定価の増を招くということが当然考えられるわけでございます。  なお、これはつけ加えて申し上げますと、社団法人教科書協会という、教科書発行業者が会員となっておる団体がございますが、そこでの調べでは、これは会社の全体の状況によって、必ずしも同一ではないようでございますが、概算二〇%ないし三〇%の上昇が避けられないのではないかというふうに言っておるようでございます。
  165. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、大臣に最後にお願いします。  いままでいろいろ申し上げましたけれども大臣の意向、文部省の意向はわかったつもりでおります。教科書無償制度を実施して以来十七年になります。もうすっかりこれも定着して、新学期を迎えるに当たって、子供が、どの子供も平等に同じ教科書をもらって、喜ぶ姿というのは、これはもうあたりまえになっております。しかも、教育は次代の後継者育成に欠かせぬ貴重な投資とも言えますし、その役資を惜しんで、有償化を進めようとするということは、これは私は非常に悲しいことだと思います。その投資を惜しんで有償化するという、こういうことは私は時代錯誤じゃないか、このようにも思いますし、またその費用の面も先ほどお話しのように、文教予算のわずか一%、全体の一般会計予算からいけば〇・一%と、こういう額でございます。四百何億というのは、われわれにとっては確かに大変なお金でございますけれども、いろいろな面を考えれば、やはりこれは無償化でもっていくべきではないか。午前中穐山委員の質問に大臣は十二分に決意をしていると、先ほどもこの点については努力をしていくと、こういうお話でございましたけれども大臣、首をかけても、この問題については真剣に考えてもらいたい。これはちょっとオーバーな表現ではあるかもしれませんけれども、決してオーバーな表現ではないと私は思います。首をかけてもこの点については私たちは期待をしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。最後によろしくお願いします。
  166. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) どうぞ諸先生方の、なお一層の御鞭撻と御協力を改めてお願いを申し上げます。
  167. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは次に科学技術庁の方にお伺いいたします。  アメリカのスリーマイル島のあの原発事故の教訓というんですか、これを生かして新しい安全対策は整備されつつあるということは私は承知をしております。きょうはその核燃料の輸送の問題について、さらに十分な安全性が必要であろうということで、その点について若干の質問をさしていただきます。  まずお伺いしたいのは、核燃料及び放射性同位元素の輸入から廃棄に至るまで、この過程の取り扱い等についての安全性の問題でございますけれども、現代の科学技術上並びに人的ミス、こういうことも考えて、絶対に安全であると、こういう表現を用いてよろしいかどうか、可能であるか。
  168. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) 御指摘のように、わが国には核燃料物質、あるいはラジオアイソトープを輸入いたしまして、それを燃料ですと燃やし、かつ最終の廃棄物になるというルートがございます。その燃やす原子炉そのものにつきましても、また御指摘の輸送につきましても、これは普通の物質を扱うとは格段に違います厳重な安全対策を施しております。一例として申し上げますと、輸送のための輸送容器というのは、たとえば陸上の交通事故で相当大きい事故があっても、内容物が外へ飛び出すようなことが絶対ないような試験と、審査をした結果認められたものを用いてございます。そのようなことで、万全の対策を講じているつもりではございますけれども、御指摘のように、またどんな大きい事故があるかということを考えますと、一〇〇%安全と言い切ることはできないかと思いますけれども、一〇〇%に十分近づけるような対策をとってきているところでございます。
  169. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一点ですけれども、日本人は大体年間百ミリレム、午前中長官が言っておられましたけれども、放射線量を受けていると、こういうように聞いておりますが、これは空気や大地等の自然界からのもので防ぎようがないと、こういうことですけれども、この放射線というのは、人体にとって、度を超せば何でもこれは悪いことですけれども、たとえば酒のように適量なら健康に有益である、度を超すと害になるよと、こういうことが言われておりますけれども、これはできれば受けなければいい、受けない方がそれが一番いいと、こういうことになると思いますけれども、この点はどうでございましょうか。
  170. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) 微量の放射線に対します人間の影響ということは、非常に学問的にもたくさんの実験が行われ、たくさんの議論が行われているわけでありますけれども、やはり微量であるだけに影響がすぐ出ないということもありまして、まだ十分な知識には至っていないかと思われます。御指摘のように、自然界におきましては、おおよそでございますけれども、大地から約年間五十ミリレム、宇宙から約三十ミリレム、それから食物から二十ミリレム、合計で百ミリレム程度の自然放射線をだれでも受けているわけでございます。これは避けられないものではございますけれども、じゃそれがプラスになっているのか、マイナスになっているのかということは、なかなかわかりませんで、たとえば、マイナス的な要素として考えますと、地域的なばらつきがずいぶんございまして、関東では年間四十ないし六十、関西では百ミリ近い。では、この約五十ミリの差が、関東に住んでいる人、関西に住んでいる人の間で出るかと申しますと、相当統計的に調べても、たとえば発がん率とか、遺伝的な障害とかいう形ではなかなかつかまえられません。世界的にはもっと差の大きいところがあって、これはやはり調べてるデータ、ずいぶんあるんですけれども、まだ有意な報告がないというような状況でございます。しかし、一般の毒物なんかでは、微量の場合には体の解毒作用等で影響がない、ある量から影響がある、これを閾値と申しておるわけでございますけれども、放射線についても閾値があるという議論もないわけではございませんけれども、できるだけ安全に物を考える、安全サイドに考えるという立場からしまして、閾値はない、わずかなものでも非常にわずかな影響がそれだけにあるという立場で、現在世界的な規制は行われているわけでございます。したがって、国際的な機関でございますICRPというのがございますけれども、被曝線量の限度を決めてはおりますが、一方では被曝線量は合理的に達成できる限り、できるだけ低くしなさいという基本的精神も勧告しておるところでございまして、わが国でもその精神にのっとった運用をしておるところでございます。
  171. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 先ほどの絶対安全ということですけれども、これも常識から考えてないと思いますし、放射線を受けない方がいいということも、これはもうあたりまえだと思いますけれども、いま言ったこの二点を踏まえて、これからますます原発、また医療用のコバルト等々考えると、需要が増大すると思いますけれども、この点についてその見通しはどんなものか、できれば科学技術庁関係もありますし、通産省関係もあると思いますので、両省からお願いしたいと思います。
  172. 石渡鷹雄

    説明員(石渡鷹雄君) お答え申し上げます。  まず、放射性同位元素の需給について御説明申し上げます。  放射性同位元素につきましては、先生ただいま御指摘のように、医療、特にがんの治療、あるいは健康診断に用いられます分野と、それから工業分野で用いられるもの、この大きく分けまして二つの分野の需要があるわけでございます。このうち、放射性同位元素を器械の中に閉じ込めた形で使います。私ども密閉型の放射性同位元素と言っておりますが、この用途について見ますと、まずがんの治療に最近非常に使われてきているわけでございますが、伸びといたしましては、平均的には約四%の毎年の伸びということになっております。がんの治療につきましては、この放射線を当てるという方法のほかに、御承知のように、制がん剤等の開発も進んでおりますので、その伸びは若干鈍化するかとは思われますが、やはり数パーセントの伸びを今後とも続けていくであろうという見通しでございます。  一方、工業用に使われます密封された放射性同位元素につきましては、これはいわゆる非破壊検査という非常に便利な、工業的には非常に有用な検査方法でございますので、これもやはり三ないし四%の伸びで、今後とも伸び続けていくであろう、このように予想されているわけでございます。  この供給につきましては、ほとんどがカナダからの輸入に頼っているわけでございます。これは、日本で製造できないという意味ではございませんが、やはり経済性の問題から、量的に世界的な市場をひとつ相手にいたしまして、カナダが製造販売を行っているという体系になっております。日本での国産は約二%程度ということにとどまっているわけでございます。  なお、この供給体制については、今後とも特に問題は心配要らないというふうに理解をしているところでございます。  一方、放射性同位元素を非密封、俗な言葉で申し上げますと、裸の形で使うということでございますが、これも医療関係と工業関係、二つが大きな需要の分野でございまして、特に健康診断、あるいは病状の診断ということに使われ始めまして、急速な進歩を遂げているわけでございます。そういう急速な進歩を背景といたしまして、需要も毎年三〇%という大幅な伸びを続けてきております。  一方、工業用に使われます非密封の放射性同位元素につきましては、大体横ばいの需要ということでございます。工業用の非密封と申しますのは、大部分が夜光塗料用に使われているわけでございまして、この辺の需要につきましては、大体安定しているということでございます。  先ほど、密封型につきましてはカナダかちの輸入と申し上げましたが、この非密封のものにつきましては、米国あるいは英国からの輸入ということでございますけれども、特に健康診断等に使われます。非常に半減期の短い放射性同位元素につきましては、これは遠くから運んでくるというわけにまいりませんので、国産化が進められているということでございます。  この面につきましての国産化の問題も含めまして、今後の急増する需要に対しましての供給体制ということも特に問題がないという、心配は要らないというふうに判断をしているところでございます。
  173. 田辺俊彦

    説明員(田辺俊彦君) 核燃料についてでございますが、核燃料の需給、需要といいますのは、今後の原子力発電の開発のテンポに依存してまいります。  私ども数字では、昭和六十年に二千八百万キロワット、それから昭和六十五年に五千百万から五千三百万キロワット、これが閣議決定されました供給目標でございます。  この発電のための核燃料と申しますのは、ウラン鉱石と濃縮ウランになってまいります。ウラン鉱石に関しましては、わが国の電力会社は海外の鉱山会社との長期契約、それから自主開発によって、現在十八万ショートトン確保しておりまして、これはちょうど五千万キロワット強の需要に対応する確保量になっておりまして、したがいまして、ウラン鉱石に関しましては、一九九〇年代初頭まで確保されている、ちょうど需給が合致しているということになります。  それからウラン鉱石を今度は濃縮するわけでございますが、実際日本に入ってきますのは、ほとんど濃縮された形で入ってまいります。この濃縮は、アメリカのエネルギー省と、フランスのユーロディフという会社との間で、わが国の電力会社が長期契約を行っておりまして、これもちょうど一九九〇年代初頭の五千万キロワット強に対応する濃縮役務の契約を確保している。それ以降になりますと、またウランに関しましても今後ますます探鉱、開発を進める必要があると思いますし、長期契約を促進する必要があると思います。また、濃縮に関しましては、国産の濃縮工場をつくるということも、一九九〇年代以降の課題になってくるかと思います。
  174. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いずれにしても需要が増大する、特に通産省の方は。そういうふうに考えます。  そこで、安全対策についてお伺いしますけれども、まず核燃料等の輸入でございますが、カナダとか、米国とか、いまいろいろお話がありましたけれども、現在海上を船によって運搬されているようでありますが、航空はないようでございますけれども、安全の確認が書類検査のみで行われていると私は伺っております。輸入国との責任の発生の問題、長期間の海上での航海等の不測の事態もここで考えられるわけです。放射線漏れ、容器の破損、それから船で運ぶわけですから、非常に長期間、長時間になる。こういうことで、水際での安全確認を、係官が立ち会うなど、強化すべきだと思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  175. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) わが国に輸入いたします核燃料物質は、ただいまでは大部分が濃縮ウラン、これは六弗化ウランの形でございますが、それと一部二酸化ウランという形のもので輸入されております。これらをおさめます輸送容器は、国際基準に基づいて作成されました各国の基準、それで、特にわが国に入ります場合には、輸出国の基準とわが国の基準に照らして、審査された輸送容器に入れられて輸送されるわけでございます。この輸送容器はいろいろな確認の実験が行われた後で、理論解析されて安全性が認められ、輸送容器としての国際的な登録がなされたものでございますので、いまのところ、われわれとしては輸送中に大きな事故でもあった場合は別でございますけれども、普通の輸送を経てきたものにつきましては、安全な形がそのまま保たれて輸入されてくると考えておりまして、水際で特にチェックする必要はないかと思っております。
  176. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、水際での安全確認というか、係官が立ち会わないということですか。立ち会わなくてもいいということですか。
  177. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) 現在はそういう考え方で輸入しております。
  178. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは国内の輸送の問題ですけれども、航空もあるし、海上もあるし、陸上もあるし、いずれも放射線取扱主任者、この有資格者が運搬に当たらなければならない義務もない、こういうふうに私聞いておりますけれども、この点はどうなんですか。    〔委員長退席、理事小山一平君着席〕
  179. 戸田邦司

    説明員(戸田邦司君) 放射性物質の輸送につきましては、国際原子力機関の放射性物質安全輸送規則及び原子力委員会の決定に基づきまして、輸送物及び輸送の方法につきまして、厳重なる安全確保のための基準を設けまして、それに従って実施しているというのが現状であります。特に一定量を超えます放射性物質の輸送につきましては、運送する前に、基準に適合しているかどうかということについて確認を行うことになっております。その際、当該輸送物の性状、それから輸送の方法、そういったことに応じまして、必要な場合には専門家を同行させる、そういうことにしております。  それから、場合によりましては、放射線に関する専門家への連絡の方法、それから事故処理体制、そういった準備状況もあわせて確認するというようなことにしております。具体的に申し上げますと、陸上輸送につきましては大量に輸送されますBM型、大量といいますか、    〔理事小山一平君退席、委員長着席〕 一定の量以上に輸送されますBM型の輸送につきましては、第一種の放射線取り扱い主任者免状を有する専門家の同行を義務づけております。それから海上輸送につきましては、現在のところ輸送事業者が限定されておりまして、具体的にはそういう専門家が同乗していることになっておりますが、輸送の確認の際に、そういう専門家が同行するかどうかということを確かめております。それから航空に関しましては、現在のところそういうような一定量以上の輸送を行っているというような実態はございません。なお、そういった一定量以下の輸送につきましては、運送従事者にマニュアルを持たせるというようなことで、万が一のことですが、事故があった場合には、現場で応急の措置を講ずるとともに、科学技術庁、運輸省、その他関係官庁に連絡をとって次の措置を講ずることと、こういうことで現在輸送を行っております。
  180. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そういうやり方でいきますと、核燃料物質等の工場又は事業所の外における運搬に関する規則第十八条というのがありますね。そうすると、同行者があったりなかったり、また、国内の輸送については、大型のBM型の規格のものについては、いわゆる義務があるとか、こういう話を私聞いておりますけれども、この十八条の規則からいくと、たくさんありますけれども、第四項ですか、「核燃料物質による汚染が生じた場合には、速やかに、汚染の広がりの防止及び汚染の除去を行うこと。」、こうなっていますね。それから第五項では、「放射線障害を受けた者、又は受けたおそれのある者がいる場合には、速やかに、その者を救出し、避難させる等緊急の措置を講ずること。」、こういうふうに書いてありますけれども、これは規則であって、運転している人が素人であって、それで資格のある同行者もない、こういう事態になった場合に、じゃだれがこれをやるんですか。
  181. 戸田邦司

    説明員(戸田邦司君) 御質問の件でありますが、ただいまも御説明申し上げましたように、一定量以上で危険性が高いと思われるものについては、資格者が同行して、そういった事故に対応するというようなことを義務づけておるわけであります。それから、そういった一定量未満のものにつきましては、そういう運送従事者にテキストを持たせまして、事故が起こった際にとるべき措置というものを細かく指示しております。その指示に従いまして、事故の態様にも従いまして緊急の措置をとり、また関係各省庁の担当部局に連絡をする、そういうようなことをさしております。
  182. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、先ほど私読みましたこの規則の第四項、第五項、こういう事態が起きた場合にはそれでも間に合うと、こういうふうにあなたたちは思っているわけですね。そうじゃなくて、私が申し上げるのは、最低限この運転者は素人である、こういう事態も起きかねない、量の多い少ないは別問題にして、これは核燃料ですから。そういうことで、私が申し上げたいのは、この除去問題というのはむずかしい問題であるかもしれないけれども、少なくとも最低限同行者を義務づける必要があるんではないかと、こういうふうに思うわけですけれども、この点いかがですか。
  183. 戸田邦司

    説明員(戸田邦司君) 私どもの方としましては、これまでの措置で十分と考えておりましたが、先生の御指摘もございますので、これからそれらの御指摘の点についても検討を進めていきたい、そういうふうに考えております。
  184. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 同じようなことでもう一点ですけれども、輸送容器の登録の件ですが、昨年末で六千二百幾つですか、超えておるようでございますけれども、この登録された容器の損傷、これがあるかないか、どのように検査するのか、法的規制のあり方はどうなっているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  185. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) 輸送容器としましては、内容がまず核燃料物質の原料である二酸化ウランとか、六弗化ウラン、それから燃料の形にしました新燃料の集合体、これらは放射線は幾らもございません。それに対しまして、三番目の種類としまして、原子炉で燃やした使用済み燃料、これは非常に強い放射線を持っているわけでございます。それぞれに応じまして輸送容器を用意し、認めているわけでございますが、その承認に当たりましては、計算上のチェックもございますし、それから、かなり大きい模型での実験を行いまして、これは落下試験とか、加熱試験でございますが行って、そのデータ解析をやった上で、設計の承認を行っておるわけでございます。そして、さらにその設計に従って製作をするときには、検査を行いまして、十分基準どおりにつくられていることを確認した上で登録をしているわけでございます。なお、その後使用に当たりましても、一年間に十回以上使うものにつきましては、十回ごとに一回、あるいは一年に一回の頻度で気密漏洩検査、遮蔽検査等の定期的な検査をやらしております。
  186. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 容器の検査は一年に一度、それから十回使われるたびに一度。  それで、私が聞いている範囲では、その検査をした報告科学技術庁への報告は三年にまとめて一回と、このように聞いておりますけれども、これはこのとおりですか。
  187. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) これらの使用途中におきます検査は、行政指導によります自主検査で行ってもらっておりまして、結果は三年にまとめて報告をしております。
  188. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 一年に一度検査、それから十回に一度検査、こういうことは、なぜそういう数字が出たかと言うと、やはりそれには根拠があると思うんです。これだけの不安があるから、そういう頻度で検査をしていると。それを三年まとめて一遍に科学技術庁の方に報告する、これは言うなれば非常にずさんではなかろうかなと私は思うわけです。大体この運搬の回数ですけれども、五十四年の一月から三月まで、これ合計してみると、核燃料物質輸送の実績となっておりますが、全部で百六十一回です。量は多い少ないはございますけれども。これだけの数ですから、三年に一遍まとめてなんて言わないで、私は毎回やった方がいいんじゃないかと、安全のためにさらに安全ということを期してやっていった方がいいんじゃないかと、このように思いますけれども、この点はいかがですか。
  189. 赤羽信久

    説明員(赤羽信久君) 特に危険性の高い使用済み燃料の輸送に当たりましては、輸送容器に詰め、搬出する段階から各種の形で厳重なチェックを行ってやっております。したがって、輸送容器そのものの点検はもちろんでございますし、詰めた後の状況の安全性についても、これはむしろ毎回確認しているという形でございます。形式的に——形式的と言うのは語弊がございますか、きちんと決めた形で行うのが年に一遍、そしてそれに特に異常がなくてこういう成績でやってきましたというのが、三年に登録更新時にまとめて報告してもらうということでございまして、問題があるときにはその都度報告を受け、対策を講ずるわけでございます。
  190. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 時間が来ましたので、最後に要望だけ。  今後、現在は大きな不測の事態は起きておりませんけれども、長官にお願いしておきたいんですけれども、まだいろいろな面で安全性というところに非常に不安のあるところがあるわけでございますけれども、この点については科学技術庁を初め警察もそうですし、消防もそうですし、連絡協議会というか、打ち合わせ会というか、連携をとりながら、安全強化のためにやっていただきたい、これを望んでおきます。  以上で終わります。
  191. 下田京子

    下田京子君 文部大臣に、国立大学における光熱水費の実質増に伴う財政問題でお尋ねしたいわけですが、大臣も御承知だと思いますけれども、ここ数日前大変寒波が襲いまして、北海道、東北また北陸など、非常に寒い状態でございます。そんな中で、特に大学予算が光熱水費等とのかかわりでどうなっているかという点で、現場はいま大変な状態なんであります。  五十三年暮れ、第二次オイルショックがございまして、特に暖房燃料のA重油の値上げ等というのは、二倍から二・四倍ということで、大変なものでありまして、キロリットル当たりでもって推定しても、当時二万八千五百十六円だったものが、現在では六万八千あるいは六万九千と、こういうふうな状態でございます。それに加えまして、ことしになりまして電気料金の値上げが一・五倍ということでもって、これまた大変な状態でございます。  ところが、大学の教官当たり積算校費というものはどういうことになっているかと言えば、対前年比で五十五年の場合ですと、二%しかアップされていない。こういう実態でもって、もう燃料費がどんどんどんどんかさんでいって、研究費やあるいは日常的な教育、そして人件費等にまで食い込んでいくというような大変重要な事態が出ているわけなんです。  そこで、去る十一月十五日でしたけれども、岩手大学に参りまして、大学当局はもとよりなんですけれども、特に農学部の学部長さんにいろいろとお話伺ってまいりました。時間が限られておりまして、詳しくは申し上げられないんですけれども、もう大変で、光熱水費節約について非常事態だと、学生諸君協力してくれということで、昨年の十二月には、すでに研究室の夜間使用は午後八時以降はだめと、それからまた卒論だとか、そのほかの修論研究も、もう夜間は研究室使用しないでもらいたい、こういうことが出されておるわけです。その上に、ことしの場合ですと、もう例年は十一月の十五日から暖房を入れていたんですけれど、ことしは十二月一日から入れる。しかも、あの寒い中朝二時間、午後二時間、それしかたかないんです。議場はこうして暖かいですけれども、あの岩手でそれは大変な状態であります。そういうことで節約に節約しても、もうどうにもならぬ。さらに、今後の問題としては、これはもう冬休み期間をずっと長くしていくということも考えなければならないということで、深刻な形でいま議論されているんです。  それでも、しかし農学部の燃料費はどういう実態になっているかと申しますと、五十三年、実際千百二十二万円でした。それが五十五年見込み額で二千七百三十一万円、実に二・四倍というふうな状況でございまして、文部省もこういった実態はもう御承知だと思うんですけれども、私はここで特にこういう寒冷地における暖房費といいますか、燃料費、これは人件費等について寒冷地手当が出されておりますから、そういった形で特別手当てがされていると、こう思っているわけなんですけれども、その点はどうなっているか、まずお聞きしたいと思います。
  192. 植木浩

    説明員植木浩君) ただいま先生からお話がございましたように、寒冷地につきましては、特別な燃料費というものが計上されております。五十五年度予算では、これらをまとめますと、十四億七千万円になっておりまして、ただいま物価の高騰、光熱費の高騰、燃料費の高騰という話がございましたが、この十四億七千万円は前年度に比べて二八%の増になっております。  現状は以上でございます。
  193. 下田京子

    下田京子君 寒冷地には特別にそういう形で予算措置をしているということでございますけれども、それじゃ引き上げ額が、あるいは率が、実態に即応しているかどうかという点なんです。この点は大臣にちょっと御答弁いただきたいわけなんですけれども、いま岩手大学の農学部の話を申し上げましたから、ついでに申しますと、五十三年度の場合に、約五百六万円の配分が農学部に国から大学を通じて予算の措置がされました。しかし、実際に実燃料費がどのくらい使われたかといいますと、さっきも申しましたように一千百二十二万円なんです。ことしの見込み額がどのくらいかといいますと、これは二千七百三十一万円とさっきも申し上げましたけれども、それを実際に配分された額と、それから使った額との差額を見ますと、五十三年の場合には約二倍ですね、その差額が六百万ぐらいになっております。五十五年は、見込み額でございますけれども、実に三・五倍、そして金額にしますと約二千万円というかっこうで、もう配分額が七百七十六万五千円なのに、大変な額になっているわけなんですね。ですから、いまそういうことで、手当てをしておるということなんですけれども、もうこの問題については本当に教官当たり積算校費に食い込まれていくというような実態の中で、やはりきちんとした寒冷地配分の燃料費を実態が反映されるようなかっこうでアップしていくということが必要ではないかと思うんですけれども、その点での大臣の御決意を聞きたいと思います。
  194. 植木浩

    説明員植木浩君) ただいま先生から今後の燃料費をその実態に応じて見るべきであると、こういうお話がございました。五十六年度の概算要求におきましては、五三%増ということで、費を要求いたしております。私どももいろいろと実態の把握に努めておりますが、確かに先生指摘のとおり、燃料費等については、大幅な値上がりに基づきまして、かなり各大学、研究機関でお困りでございますので、この点の実情について、いま財政当局にもいろいろとお話をしておるところでございます。
  195. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま先生が御指摘のように、燃料費というのは、余りこう表面立ってぴんとこないものですから、たまたま概算要求のときの資料の中で、大学や研究機関の燃料費がずいぶん高額なんで、こんなに燃料費がかかるのかという、たまたま私が事務当局に反問したことがあるのです。なるほど先生の御指摘のとおり、事務当局におきましても、この燃料費の問題を非常に関心を持って、大蔵当局の方の概算要求には折衝をいたしておるところでございますので、その点は私も同感でございます。
  196. 下田京子

    下田京子君 私は寒冷地配分という問題で、特にその地域の燃料費の問題でいま取り上げましたが、全体的な光熱水費も含めた概算要求で、およそ五〇%しているという話もちょっとあったかに思いますけれども、その点では燃料費も含めて、光熱費全体の改善ということもこれまた大事だと思うんです。すでに他の委員からかつて御指摘もございましたし、そういう点で政府の方も調査されておりまして、たとえば全体的に光熱費全体の予算がどのくらいになっているかという点でお調べになっておると思いますが、大学病院を含めると、五十四年度で実績で四百二十億円と、それから五十五年度見込み額で約六百億円と、その差が百八十億円ということになりますね。病院を除きますと、その差は約百十三億円というふうな話が出ているわけなんですけれども、もちろんこの百十三億円現実のものとして足りないわけですから、検討しますということで、わが党の佐藤議員なんかにもかつて答弁されておるんですが、もういまいろいろと大蔵当局とも折衝されておると思いますけれども、当然これは補正予算で組まれるべき筋合いのものと、こう思うわけなんですが、そういう方向で検討されているかどうかという点と、それからその際に、当然教官当たりの積算校費の上積みというかっこうで折衝されているかどうかという点でお尋ねしたいと思うんです。
  197. 植木浩

    説明員植木浩君) お答え申し上げます。  第一点の五十五年度の全大学の燃料費、光熱水料という点につきましては、ただいま先生数字をおっしゃいましたが、そのとおりでございます。ただこれは、五十四年度につきましては支出の実績でございますが、五十五年度につきましてはこの夏までの支出の実績に基づきまして、今年度いっぱいを一応推測した数字でございますので、若干の変動は今後あろうかと思います。いずれにいたしましても、かなり所要見込み額が大幅に増をいたすという推測でございますので、現在関係当局にもその実情を十分に御理解いただくように鋭意折衝いたしておるところでございます。  それから、教官当たりの積算校費につきまして、光熱水費等を十分勘案して、その充実を図るべきであるという御趣旨の第二の点につきましても、全く同感でございまして、教官当たり積算校費は国立大学におきます教育研究の基幹的な経費でございますので、私どもこれまでにも及ばずながら充実に努めてまいりましたが、今後五十六年度につきましても、さらにその充実に努力をすべく、現在関係当局の方にもいろいろとお話を申し上げているところでございます。
  198. 下田京子

    下田京子君 関係当局に話をしているというのは、つまりは補正予算を組む方向でやっているというふうに理解してよろしいかどうかという点では、大臣に後でまとめてお答えいただきたいわけなんですが、本当に細かな実情を私いろいろお聞きしたんです。東北大学あるいは北海道、それから福島大学なんかも皆さんお聞きしましたが、みんな一様に大変な実態を訴えております。それから、これは国立大学協議会なんかでも御要望されている点で、重々御承知のとおりなんです。  大臣、いろいろ折衝されているということはわかるんですけれども、本当に大変なんですね。たとえば、教官当たり積算校費の組み方にしましても、昭和四十五年を一〇〇とした場合に、どういう状態になっているかといいますと、五十五年度で講座制で一七一ですよね。それから、この間に消費者物価指数の伸び率が二三〇、それから卸売物価指数が二〇九というかっこうで、大変な状態になっているわけなんですけれども、そういう物価の上昇を下回るような予算になっているという実態であります。それだけに、こういった実態をきちんと踏まえて、大臣として補正がきちんと組まれるように、それからまた、これからの予算の要求の考え方として、少なくとも物価の上昇を下回らないという態度で臨んでいただけるかどうか、その点お伺いしたいと思います。
  199. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいまの御要望は篤と伺っておきます。のみならず、本当の学校あるいは研究、その他の文教関係、この光熱の問題は非常に重大な問題でございますから、留意いたします。
  200. 下田京子

    下田京子君 次に、定員外職員の問題についてお尋ねしたいと思うんです。  これは昭和三十六年二月二十八日の定員外職員の常勤化の防止についてという閣議決定以来いろいろと問題になってまいりましたし、そして、そういう問題を指摘する中でもって、資料等もいただいておりますが、ある一定の改善もされてきております。しかし、現実としては、いまどういう状況かといいますと、これも資料を見て驚いたんですけれども、非常勤職員の在職年数だけ見ましても、現在五十五年七月一日調査で、全国で八千二十三人の非常勤職員がいらっしゃるというんですね。ところが、そのうち五年以上勤務されている方が、何と二千五百十人と全体の非常勤職員の中の三一%を占めている、こういう状態なんです。  それで、これも岩手大学の具体的な事例なんですけれども、定員内職員の場合に、三十四歳の女性でもって十六年間勤務されている。行(一)六等級の十号俸で、月給が十六万三千百円という状態に対しまして、定員外職員はどういう状況になっているかといいますと、同じように十六年間勤めておりましても、日給が三千九百十円で、一カ月二十二日間働けたといって計算しても、それでも八万六千ちょっとにしかならない、こういう状態なんです。同じ年数で、同じ仕事をしていて。非常勤職員だというだけの理由でもってこういう実態。これはもう本当に何とも涙の出るようなお話だと思うのです。  こういった話はたくさんあるわけなんです。全然もう時間がなくて話しできないんですけれども、そういう中で特にまた驚いたことに、岩手大学の場合ですね、全体の職員の中で約二割が非常勤職員になっております。いろいろ非常勤職員のあり方というのは、大学によっても若干の差があるし、しかし実際は予算全体が足りないというふうなところからきているし、そういう点で、本来やっぱり置くべきところには恒常的に当然定員化する方向で検討すべきではないかということをまず伺いたいわけなんですが、その点で大臣のひとつ御決意をまず簡単に——事務当局にはその次お聞きしますので、大臣基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  201. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) いまの非常勤職員の問題に対する御意見でございますが、御案内のとおりに、役所というところは、また会社でもそうでありますけれども、任用規程に従った採用の問題と、それに伴います号俸給額の問題で、あらかじめ正規のルールがあるわけであります。そういうふうな中で、たまたま御指摘の非常勤職員が、量的な意味で非常にたまったというふうな問題でございますが、その問題の今後の扱いについては、事務当局からお答えいたします。
  202. 下田京子

    下田京子君 まとめて事務当局にお聞きします。  今後のあり方は事務当局でというお話なんですけれども大臣自体が本当にそういう問題をどうしていくかという点で、再度また最後にでもお聞きしたいと思うのですけれども、私どもいろいろ文部省当局からも御説明いただいたわけなんですよね。それで、いままで日給の頭打ち改善なんかで最近やられたわけで、そういう改善に基づいて、現在協議して承認されたところが、北海道大学あるいは室蘭工大、小樽商科大学など約九大学ある。そのほか現在協議中の大学が、北海道教育大あるいは北里工業大学、東北大学など同じく九大学、合わせて十八大学あるわけですね。そういう大学の中で、できるだけ協議しているところはスムーズに改善していただきたいということが一つと。それから、まだ協議にもなっていないところについては、どのような実態になっているかということで、実態把握しているかどうか。それから、三つ目の問題として、いまお話ししております元来の例なんですけれども、この岩手大学の場合には八等級八号俸で頭打ちになっているんですね。このことについては頭打ち改善で、まあいろいろ御指導されていると思いますけれども、速やかにやっぱり改善方向で指導し、またお話し合いをしていただきたいということについて、まとめて簡単にひとつお願いしたいと思うんです。
  203. 齊藤尚夫

    説明員(齊藤尚夫君) いまお話しの非常勤職員のいわゆる給与の頭打ちの改善につきましては、現在協議を受けております大学の数は全部で十九大学でございます。このうちいまお話しのように、九大学につきましては承認済み、その他の十大学については、いま手続処理中ということでございます。  それからもう一点、実態把握に努めているかというお尋ねでございますが、非常勤職員の任用あるいは給与の決定につきましては、大学自体の権限と責任において実施をする。文部省といたしましてはその基準の設定を行っておるということでございまして、逐一、個々の職員の給与の実態を把握しているわけではございません。ただ、今回の通達に基づきまして、どのように措置をするかという点は、事務的にいろいろと御相談がございますので、ある程度の把握はいたしておるわけでございます。  それから、岩手大学の件につきましては、お話しのように、現在文部省が通達しております七の四というところまでには達しておらないで、いわゆる八の八というところが基準として行われておるという実情は聞いておるわけでございますが、岩手大学につきましては、これまでの非常勤職員の任用の状況が、ただいまお話しございましたように、一般の他の大学に比べて多いというような実態もございますので、これはあくまでも今回の改善は予算の範囲内で行うというたてまえから、漸進的な改善を図ると言っておりますけれども、一般の大学のところまでいかないという実情のようでございます。
  204. 下田京子

    下田京子君 もう時間になりましたが、一問だけ。  大臣に最後にこれはお答えいただきたいと思います。  本当に個別な問題なんですけれども、最終的には予算の範囲内で大学のいろんなお金の使い方ということになります。おっしゃったとおり予算の範囲内というところが問題でございまして、その点ではやっぱり大蔵に、かたい決意で臨んでいただきたいと思うんですが、もう一つは、大臣自身が大臣の考え方で改善できる部分というのがあると思うんです。たとえば諸手当の問題ですね、扶養手当だとか、あるいはそのほかの問題もございますから、そういう点で具体的には、本当に簡単に申し上げますけれども、これは北海道大学の附属演習林に勤務されている方々から特に御要望がございました。ここは約六十人の方が非常勤職員でお勤めになっているんですけれども、もうずっと長いこと行(二)の三の十で頭打ちになってきたんです。今回頭打ち改善ということで、二号俸アップしましたけれども、でも、扶養手当という問題がまた深刻になってきております。そういう点での改善というものをひとつ考えていただきたいということと、それから、どれだけ非常勤の皆さん方が、たとえば一年未満だということで、三月三十一日、一日足りないということで、退職手当だとかあるいは共済金の問題なんか、大変な不利な条件に追いやられているわけなんです。根本的には、やっぱりここに来まして、例の三十六年のいわゆる閣議決定なるものも含めて、新たにもう一度見直しを図るというふうなことが必要な時期になってきているんじゃないか。その点で、ひとつお考えをお聞かせいただきたいし、本当に、いま大臣がおっしゃいましたけれども、同じ職場で、しかも非常に必要だということがはっきりしているにもかかわらず、非常勤であるということについては、大臣がやれる範囲も含めていろいろと努力いただきたいと、こう思うわけです。
  205. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 私も長い間役所勤めをいたして、また人事を扱っておりました関係から、お話しの問題はよく理解をいたします。しかしながら、非常勤職員の処遇の改善の問題につきましては、非常に重要な課題でございますので、今後ともに実現可能な方策を模索してまいりたいと、かように考えております。
  206. 野田哲

    委員長野田哲君) 簡単にやってください。
  207. 下田京子

    下田京子君 はい。大臣、模索しなくても、どうやったらいいかとか、大臣のやれる範囲でやれることもあるんです。だから、模索じゃなくて、やっぱり新たな決意で臨んでいただくということをお願いしておきたいと思います。  以上です。
  208. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、初めに養護教諭の完全配置の問題を中心に質疑いたしたいと思います。  毎年、児童生徒の身体検査が行われております。そしてまた能力測定も時に行われております。ところが、その全体の傾向として、特に戦後の児童生徒の傾向として、非常に肥満児が多くなっているとか、あるいはトラホームが多くなっておる。虫歯が多くなっておる。それから、集団行動の中で貧血が多くなっておる。あるいは骨折が非常に多くなっておる。骨がもろくなっておる。こういうことを聞くのでありますが、これはまあいま大まかに申し上げたんですが、お認め願えますかどうか。
  209. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 先生指摘のように最近の子供たちの身長、体重は年々増加しております。これと関連いたしまして、総合的な体力、運動能力も、スポーツテストの結果では全体としては高まってきている。しかし、部分的に見まして、たとえば背筋力のような、あるいは懸垂、そういう力の強さ、それから体のやわらかさ、立位体前屈と申しますか、体をかがめたりします。その面などの体のやわらかさ、そういう面での衰えがむしろ心配されております。また骨折につきましても、年々骨折の事故がふえております。  そういうような面で、子供の体、また物に耐えていく等の忍耐力、むしろ心の問題と申しますか、体と心の健康の問題は、それなりに憂うべき問題もいろいろ起こってきているというように受けとめております。
  210. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 注文つけておきますが、時間の問題がありますのでね。それで、私が申し上げた点は、お認めになりますか、当たっておりますか、当たっていませんかという、答えはそれだけでいいんです。実情を話してくださいと聞いておりませんから。そのように注文つけておきます。  そうしますと、これに対する具体的な対策もお聞きしたいんですが、これはまた今後に求めたいと思います。  私が次にお尋ねしたいことは、このような実態の中から当然考えられることは、養護教諭の使命の重大性ということであります。いわゆる児童生徒健康管理、それで安全指導の面から、非常に重要な使命を持っておる養護教諭であると私は思っております。それをお認めになりますか。
  211. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 児童生徒健康管理の面から、養護教諭の役割りは重要でございます。
  212. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこで、この重要な使命を持つ養護教諭は、学校が規模が大きいとか小さいとか、あるいは町であるとか、田舎であるとか、僻地であるとか、こういった条件によって、これが差別されるべきものではないと思います。  なぜならば、人間の、特にこの場合には児童生徒の命にかかわること、健康にかかわること、安全にかかわることは、何よりも最優先しなければいけないと私は思っております。これが、予算があるからやる、予算、財政が困難だから当分待つと、こういう形で処理さるべきものではないと私は思っておりますが、この点、大臣いかがでしょうか。
  213. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) そのとおりでございますけれども、やはりそこに定員とか、予算とかいうふうなものの支障があるわけでありまして、それをできる限り充足させていこうと、こういう考えでございます。
  214. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この養護教諭の制度は、学校教育法にうたわれておるわけですね。二十八条に「小学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。ただし、特別の事情のあるときは、教頭又は事務職員を置かないことができる。」云々とあるわけなんですね。この条文、ねばならないと、こううたわれておる。  ところが、「教頭又は事務職員を置かないことができる。」とありますが、この条文には養護教諭は置かないことも考えられるとはうたっておりません。ところが百三条に「小学校及び中学校には、第二十八条の規定(第四十条において準用する場合を含む。)にかかわらず、当分の間、養護教諭は、これを置かないことができる。」と、ここにその規制があるわけなんですね。  そこで、お尋ねしたい。「当分の間」とは、一体何年を言うのでありますか。
  215. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 「当分の間」というのは、規定の意味といたしましては、一つの不確定期限でございますので、いつまでということはないのでございます。いろいろな意味の努力が実りますれば、そのときにはその「当分の間」というのが終わるわけでございます。
  216. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 長過ぎる「当分の間」ということが私の結論なんです。といいますのは、この法ができたのが昭和二十二年三月三十一日でしょう。今日までまさに三十三年九カ月を経ておるんです。その間にわが国の社会情勢、経済情勢、学校状態、すべての情勢が変わってきておるわけであります。にもかかわらずこれに背を向けて、「当分の間」が生きておるがゆえに、これが歯どめになっておるわけなんですね、邪魔になっておるんです。それで私が申し上げたい結論は、この「当分の間」ということを取り去れば、いわゆるこの法を改正すれば、ちゃんと養護教諭の完全配置が可能であると、堂々とまかり通るということなんですが、これに対する大臣の御見解いかがでしょうか。
  217. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 喜屋武委員の問題提起の意味は、よくわかるつもりでございます。ただ私どもの考えは、ちょっと順序が逆になるのでございまして、養護教員がただいまの現在の配置率が約七八%でございますが、これはこれまでいろいろ困難を克服しながら、これまた充実改善に努めてまいったつもりでございます。たとえば、定数法の決まりました三十三年の当時は二四・五%の配置率でございました。それが五年ごとに三〇・六、四〇・三と、こう充実してまいりまして、そしてさらに四十八年には五二・八%、それで現在約七八%とこういうことでございまして、さらに今年から発足しております第五次学級編制及び教職員定数改善計画で、これを完成いたしますと約九八%の設置率になると、こういうふうに踏んでおりまして、ですからそういうふうに実態をやはりつくっていくと、そのことによってこの法律の方も必要がなくなってくると、こういうふうに持っていきたいというふうに思っておるのでございます。
  218. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 名実ともに、私はなくなることによって、それが完全に日の目を見るということになるが、あんたのおっしゃるのは、規制があったとしても事実で空洞化していこうというお気持ちはわかりますが、それならば、もっと前向きで、そのようなものがあっては邪魔になるから、それをもうかくした方がよろしいと、こういう姿勢で取り組んでもらうことが、特に児童生徒に対する、また教育の立場から、私は前向きでこの条文を検討してもらいたいと、こういうことを言いたいんですが、大臣いかがでしょうか。
  219. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 確かに喜屋武先生のおっしゃるとおりでありまして、まあことに学校にはいろいろと疾病あるいはけが、その他いろんな養護教員の必要性は十分にございます。われわれもその理想に向かって、一日も早く完成するように努力いたします。
  220. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、これを改める方向にひとつ最善の御努力を要望いたしておきます。  次に、沖繩の学校給食の問題、まあ沖繩の特殊事情から、沖繩の場合には学校給食用物資等の供給に関する特例、この特例法によって、学校給食が行われてきたわけであります。ところで、その特例法の背景をなすものは、沖繩の特殊事情がすべての面から本土並みになったときに、この特例という枠が外されるということになるわけでありますが、ところが、この特例が五十二年から始まって、三年、四年、五年、六年——五十六年度に、一応段階的な推移があるわけでありますが、五十二年が百分の八十に、そうして以後百分の七十、百分の六十、百分の五十、百分の四十と、五十六年には段階があるわけですね。それが五十六年を限度として、後はその規制を取り去りますというと、一気に本土並みになってしまうと、こういうことになるわけなんです。ところが沖繩の状態というのは、そういう形でこれが取り去られた場合に、打ち切られた場合に非常に困る。全国的にも言えることは、父兄の教育費の負担の過重——きのうのテレビでも全体的に高負担、父兄負担が七%アップするということも報じておりますが、それから沖繩の場合、県民所得が本土の六九%、まだ七割に至らない、それから高等学校進学の率が全国で最下位、最低であります。こういった沖繩の置かれておる特殊事情から、少なくとも名実ともに本土並みになるまでは、この特例の枠を取り去ってはいけない、こう思うんです。そこで結論は、この特例を打ち切らずに、継続すべきであるというのが私の大臣に要望したい点ですが、いかがでしょう。
  221. 柳川覺治

    説明員柳川覺治君) 先生指摘学校給食用物資の供給に関する特別措置につきましては、沖繩復帰後の学校給食の円滑化に資するという趣旨で行ってまいっておりますし、またこの問題は、いま御指摘のとおり、明年度においても継続して講じられることになっております。  その後の取り扱いにつきまして、先生指摘でございますが、今後この問題につきましては沖繩開発庁等と協議をしてまいりまして、学校給食その他の関連とも関連しながら、十分検討してまいりたいと考えております。
  222. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひひとつこのことを継続御検討をお願いいたしたいということは、これは沖繩の特殊事情から、いわゆる振興開発計画の十カ年の期限が、再来年の七月ですか、五十七年度で切れますね。その継続を、いま県民ぐるみで要望しておる。その中にこれも含めて検討しなければいけない重大な問題であるわけなんです。そういう立場からも、ぜひこれは、継続はもう当然だとわれわれとしては思っておるわけですが、そのような姿勢でひとつこの問題も検討してもらうよう、これも大変いま沖繩の父兄が重大関心を持っておる問題でありますので、大臣のひとつ御所見をお願いします。
  223. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 喜屋武さんよく御承知のとおり、私も総理府の総務長官、沖繩の担当をいたしておりました。こういうふうな経過処置としての進駐軍からの給食、あるいはその後の給食状況よく存じておりますので、また担当の事務局とも相談いたしまして善処いたします。
  224. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に三番目に、教科書有償無償の問題について、先ほど来この問題は論ぜられましたので、多くを申し上げませんが、私は、特にこの教科書無償の問題は、本土の場合には昭和三十九年四月から一年生を対象に実現されたいきさつがございますね。ところが、沖繩の場合には、その一年前の昭和三十八年の四月、一年先に、そして一年から六年まで、全学年無償が実現しておるという経過があるわけです。いきさつがあるんです。それだけにこの有償無償の問題は、非常にPTAあるいは協議会を挙げて重大関心を持っておるわけであります。これはもちろん経済的な面、いろいろ財政立て直しの面から、これは打ち出されたかもしれませんが、決してそのような一面的な立場からこの問題は考えてはいけないということは、先ほど来述べられたとおりであります。  そこで、およそ平和、文化国家のバロメーターというのは、いわゆる国民福祉をどれだけ大事にして、どれだけ広げ高めておるかということが、私は、文化国家の、平和国家のバロメーターであると思うんです。その中でも福祉は前進することはあっても、そこまで広げ高めた福祉というのは断じて後退は許されない、あってはいけない、これはもう文化国家の恥であると思うんです。福祉の後退があるということは。  そこで第三点には、特にあすの日本を担う、未来を担う児童生徒の福祉を摘み取るということは、さらにこれは断じて許されないことだと私は思うんです。そういうこともさることながら、あえて財政難云々の立場から、憲法二十六条の精神にのっとって、これが実現されたこのことは間違いありません。その憲法違反までもして、それを有償にするということは、これはもうさらさら断じて許されないことだと私は思うんです。こういった立場からもぜひひとつ、まあ繰り返すようでありますけれども、どんな困難があったとしても、ひとつ大臣を先頭にこの問題を無償の継続、しかも教育のある限りそこまで実現したんだから、ずうっと未来永劫にこの実現したことは後退さしてはいけない、こう私は思いますので、ひとつ最後までこの無償を実現するように、続けさせるようにという、最大のひとつ御奮闘をお願いいたしたいんですが、いかがでしょうか。
  225. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 先ほど来申し上げておるとおりでございまして、よろしく御協力をお願いいたします。
  226. 柄谷道一

    柄谷道一君 本日は、心身障害児の就学前教育特殊教育の拡充について御質問をいたしたいと思います。  大臣御承知のように、明年は国際障害者年を迎えるわけでございます。文部大臣として、特に障害を持つ幼児の教育について、どのような基本的なお考えを持ち、これに対処しようとしておられるのか、まずその見解を明らかにしていただきたいと思います。
  227. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 私も先般千葉県に参りまして、養護学校をこの目で拝見してまいりました。実に、その学校の姿を拝見いたしまして、先生方も本当に誠心誠意一生懸命にお務めになっていらっしゃいますし、また父兄の方々の姿を見ましても、この養護教育の重要性を本当にはだで感じ、また今後なお一層努力しなきゃならぬと、思いを新たにいたした次第でございます。
  228. 柄谷道一

    柄谷道一君 文部省では昨五十四年の十月に、学者、教育行政職員、幼稚園長など十五名で構成する心身障害幼児指導方法等調査研究協力会議をスタートさせまして、どのような心身障害幼児が幼稚園教育対象となり得るか、幼稚園における心身障害幼児の指導方法はどうあるべきか、この二点を解明することを目的として検討が始められたと承知しております。そして、その検討資料を得るために、本年三月、幼稚園における心身障害幼児の実態調査実施されております。  それによりますと、現在障害児を受け入れている幼稚園は四千四百七十二園、比率にいたしますと、三五%もの幼稚園が心身障害幼児を受け入れておる。その数は一万五百十七名に達していると実態調査で明らかにされております。  そこで、大臣にお伺いするわけですが、わが国の幼稚園の三五%が心身障害を持つ幼児を受け入れ、その数が一万人を超えるこの実態について、大臣はどのような受けとめ方をしていらっしゃいますか。
  229. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) ただいま御指摘のとおりの結果を実は持っておるわけでございます。  この調査によりますと、全国の幼稚園の約三割強が障害幼児を受け入れておって、一園当たり平均二・四人という受け入れの結果になってございますが、そしてこの入園につきましては、やはり保護者の希望が非常に強いという場合に、園の方がそれに応じて入園をさせた、あるいはそもそも初めから園の方針としてそういう人も受け入れましょうということでやっておるところもあるようでございますが、また数は少のうございますが、入園後にやはり何らかの障害があるということがわかったというようなこともあるのでございます。  それで、私どもとしては、ただいま御指摘もいただいたわけでございますが、そういう実態も踏まえまして、この一般の幼稚園の保育の対象となり得る心身障害幼児、あるいはそういった心身障害幼児に対してどのような教育内容あるいは方法が望ましいかということを検討を進めたいと思っております。  それから、やっぱり幼稚園と医療機関等の他の機関との連絡のあり方なんということも重要ではないかと思いまして、ただいま御引用いただきました専門家によります協力会議において、調査検討をじっくり進めていただきまして一幼稚園におきますこの心身障害幼児の教育というものが、さらに充実の方向に向かって促進されますように努力をいたしたいと思っております。
  230. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、実態調査を拝見いたしまして、幾つかの問題点がこの実態調査には含まれている。このことを痛感いたしました。  その第一は、共同教育推進のための補助のあり方についてであります。健常幼児の集団の中に障害幼児を入れる、いわゆるこの統合教育につきましては、「障害幼児は刺激を受けたり、行動を模倣することによって、発達が促進される」とか、「健常幼児はいたわり、助け合う心が育ってくる」、こういう意義が説かれておるわけでございますけれども、さきに私が指摘いたしましたように、一万人を超える在籍障害幼児に対し、共同教育推進のための補助対象は、五十五年度わずか千七十人にしかすぎないわけでございます。在籍障害幼児の約一割、私立幼稚園在籍の障害幼児六千二百十人に比べましても約六分の一程度です。この現実に対して、大臣どうお考えでございますか。
  231. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 心身障害児と健常児との共同の教育の問題でありますが、この教育効果という点におきまして、いろいろと研究せられておると存じます。  なお、その場合、心身障害児の状態と、それから父兄の理解と、同時にまたこういう問題がさらに教育効果を高めていくという教育の理想の問題と、いろいろ問題があるところでございますが、調査、研究をいたしましたこれらの答申その他の結果につきましても、われわれは十分に真剣に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  232. 柄谷道一

    柄谷道一君 私の指摘いたしましたのは、もう一万人超えているわけですね。ところが国の補助対象は千七十人にしかすぎないわけです。そこで局長、お伺いしますが、これだけ多くの障害幼児を抱えるようになりながら、千七十人という積算の基礎は一体何なのか。五十五年度予算で単価は三十二万円でございますが、この積算基礎は一体何なのか。そして、いま一園当たり八人以上の障害児を入園させている幼稚園に限定しているわけですね。八名と限定した理由は何なのか。  私に与えられた時間に規制がございますから、簡潔にお答えをいただきたい。
  233. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) この千七十名という人数でございますが、この補助は私立学校振興助成法第九条に基づく補助でございますので、したがいまして、まず都道府県が私立幼稚園の設置者に対して補助を行い、その場合に、その都道府県に対して国庫補助を行うと、そういうシステムでございます。  確かに一万人とかあるいは二千園に対して千七十人と少ないんでございますけれども、都道府県が計画を立てます場合に、やはり同じ心身障害幼児と申しましても、その障害の程度もいろいろでございましょうし、したがいまして、翌年度に何人の補助をやるかというのを都道府県が見込みます、いわば計画数値というものを出してまいりまして、したがいまして、その都道府県が助成を行うことを予定しているこの計画に合わせまして、私どもとしては予算積算をしておりますので、ある程度そういう実態と合わせた措置であるというふうに御説明申し上げさせていただきたいと存じます。  次に、幼児一人当たりの単価五十五年度三十二万円という問題でございますが、これはやはりいまも申し上げましたが、心身に障害を有しているということから、健常児だけを扱っております場合と比較いたしますれば、どういうふうにいたしましても指導教諭の増員、あるいは特別の教材の整備とか、お金がかかるということになってまいるわけでございますが、そのための経常費につきましても、都道府県の実態を見まして、そうしてその都道府県が補助するものの半額というものを措置しておるというような面もございますし、それからもう一つは、養護学校等におきます経費これを養護学校の幼稚部におきます経費を参考にいたしましたりして、両方兼ね合わせて毎年毎年少しずつではございますが、単価の改善を行ってきました結果が三十二万円という数字になっておるのでございます。  それから一園当たり八名ということでただいま措置しておりますが、これはある程度の人数になりました場合に、やはり当該幼稚園、特に私立でございますから、全体の経営上も円滑な運営に支障が生ずるということも考えられますので、一定人数以上の障害幼児を就園させておる場合に特別の配慮をしようということで八人と決めておりますが、なおこの基準は昭和五十二年度に、当時まで十人以上としておりましたものを、若干ではございますが、改善いたしまして、現在八人ということでやらせていただいておりまして、八人ぐらい受け入れてくださる幼稚園に対して、こういった手当てをしようということでやっておるものでございます。
  234. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、せっかく実態調査をやられたわけですね。そして従来われわれが予想しておった以上に幅広く幼稚園が障害幼児を受け入れている、その数は一万人を超えるに至っている、こういう実態が明らかになったわけでございます。したがって、私はこの際、国際障害年を迎えまして、従来の惰性というよりも、改めてこの実態調査に基づいて補助対象が一体どうあるべきか、補助単価がどうあるべきか、一園当たり八名というこの基準についてもどうあるべきか、これらに対してもう根本的な私は見直しを必要とする時期ではないだろうか、それが国際障害年を迎えて文部省として果たすべき一つの責務ではないだろうか、私はそのように感じられて仕方がございません。この点は要望事項として申し上げておきますので、文部省の行われた実態調査でございますから、これに基づいて従来のあり方について根本的なひとつ洗い直しを強く求めておきたいと思います。大臣よろしゅうございますね。  それから第二の問題点は、局長も触れられたわけでございますが、多くの幼稚園側の悩みが、「どう指導してよいかわからない」ということを述べているという事実でございます。実態調査によりますと、障害幼児を受け入れた動機というものにつきまして、最も多いのが「親の強い要請によって」、第二位が「園の方針として」、第三位に、「入園してから障害のあることがわかった」、これが三位ということになっております。これはあらかじめ十分の指導方法を幼稚園側が理解した上で受け入れたものではないということを、これは逆に物語っているんではないだろうかと思うんです。また、受け入れ幼稚園の七二%が何らかの教員研修を行っておりますが、その研修期間はほとんど一ないし三日程度の研修であるということが実態調査でこれも明らかになってきております。  そこで、私はここで問題にしなければならぬのは、文部省協力会議で検討しまして、五十七年三月までに指導方針の作成を終えて現場に参考として提供すると、こういう方針のようでございますけれども、問題は国立大学附属幼稚園の役割りでございます。公立が三六・九%受け入れているわけですね。私立が三三・六%受け入れているわけです。ところが、公・私立でほとんどを占めておりまして、国立の場合は四十七園中わずか二園、全国で四名しか入園させておりません。私は共同教育における障害幼児の指導方法を確立するためには、むしろ国立大学附属幼稚園こそ、率先して障害幼児を受け入れて、指導方法の開発に貢献、寄与すべきである、それが国立幼稚園というものの持つ任務ではないだろうか、こう私は考えます。いかがですか。
  235. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 御指摘のように、この調査によりますと、国立の場合には二園で四名ということで、大変少ない数字になっておりますが、国立大学学部の附属学校というものは、それぞれの大学なり、学部におきます幼児とか児童生徒教育に関する研究に協力するということと、学生の教育実習の実施に当たるということが本来の趣旨でございます。したがいまして、それぞれ附属の幼稚園におきまして、御指摘のいわゆる統合教育にかかわる教育研究を推進するかどうかにつきましては、それぞれ大学なりの教育に関します研究に応じまして、それぞれ個々の大学において自主的に対処すべきものというぐあいに考えるわけでございます。ただ、御指摘のように、現在研究協力会議におきましてこういうことが検討されておるわけでございますので、私ども国立大学の附属幼稚園の関係者等にも十分その検討結果等を密接に連絡をいたしまして対応を考えたいと、かように考えております。
  236. 柄谷道一

    柄谷道一君 これも大臣にちょっと申しておきますけれども、国立大学といったら、大臣の直轄の大学でございます。一万五百十七名の中でわずか四名しか受け入れてないんですよ。私はこれで国立大学のこの障害幼児の教育に対する姿勢が如実にこの実態調査の結果は明らかにさしたと思うんです。いま局長言われたように、国立大学のこの附属幼稚園というものの持つ意味は、率先してこれらの指導方法の確立に対して寄与する、それが重要な意味でございますね。これはそれぞれのところに任せるんではなくて、大臣ももっと強力な指導をこれは行うべきではないだろうか、このように私はこの実態調査の結果痛感したわけでございます。せっかくの努力をお願いしたいんですが、いかがです。
  237. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御要望のお心持ちはよくわかります。なおまた国立なるものが率先垂範しろというお考えもわかりますが、御案内のとおりにここにも先生がお持ちのとおり表がございますが、これは偶然ではないでしょうが、私立、公立、国立おのおの幼児の受け入れ幼稚園の在園児数との間のパーセンテージ、全部一律に一・三%というふうに比率が出ておりますので、きっとこれは逆にその比率を出したんじゃないかと思いますが、しかし、気持ちの上では国がそういう方針のもとに指導的な立場でありたいという先生のお心持ち、またわれわれの願いも同じだろうと思います。
  238. 柄谷道一

    柄谷道一君 第三は重度の障害幼児に対する対策の問題でございます。この実態調査を読みますと、精神発達のおくれている者が三〇%、自閉症の者が二一・八%と、これが最も多数を占めております。そのほか視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病虚弱、言語障害等がこれに続いておるわけでございますけれども、私はこの今回の実態調査つまびらかにされていないのは、障害の度合いが調べられていないということですね。私のこれは推定でございますけれども、恐らく幼稚園に通園できる幼児でございますから、これは身障者の中でもいわゆる軽度の者が多いと、こう考えられるわけでございます。幼稚園にも通園できない重度の障害幼児の就学前教育について、文部省当局としてどのように対処されておるのか、お伺いします。
  239. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 幼稚園で受け入れて教育をするには、やはり困難な重度の心身障害児のためには、文部省所管で申しますれば、やはり特殊教育学校の幼稚部というものによりまして、対応していくということになると存じます。なおそのほかに、これは柄谷委員申すまでもないことかと存じますが、厚生省所管の各種の心身障害幼児の通園施設が設けられておりまして、そういったものも含めまして、多様な教育あるいは療育の場を用意してまいり、それらを逐次充実していくということが必要であろうかと思いまして、私どもとしては関係省庁ともできるだけ密接な連携を持ちながら努力してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  240. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま局長答弁の中にありましたこれは文部省所管の特殊教育学校幼稚部学級の設置の問題でございますけれどもお話ではございますけれども文部省は十年計画を立て、この十年間で推定対象者一万七千六百四十七人の半分を吸収するにたる、千五百学級の設置計画を立てておられます。一体いま達成率どれぐらいですか。また、その達成が遅々として進まない理由は一体那辺にございますか。
  241. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 実は幼稚部学級設置十年計画、ただいま柄谷委員指摘になりました計画を、私どもとしては実は自分自身の計画として持っておったわけでございますが、五十五年度現在聾学校の場合にはおおむね約八九%の達成率、それから盲学級につきましては半分程度でございまして五四%弱でございます。ところが、御指摘のように養護学校については、非常に進捗状況がはかばかしくございませんで、三・七%という状況になっております。これは主にこの期間御承知のように養護学校義務制の準備期間と重なっておりまして、やはり都道府県もこの義務制の方の手当てで非常に手いっぱいになりまして、幼稚部の整備にまで手が回りかねたという実態があったんであろうというふうに見ております。ただ、私どもといたしましては、義務制がおかげさまで昨年から実施されたのでございますので、今後はこの心身障害児の早期教育というきわめて重要な課題について、先ほども御指摘いただきましたが、これはこれとしてまた別の協力会議を設けておりますので、この調査研究も進めながら、問題に取り組んでまいりたいと思っております。
  242. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は三点実態調査の結果を私なりに感じました点を率直に申し上げたわけでございますけれども、私は文部省協力会議を設置して検討を始めたということは、現実に幼稚園に障害幼児がふえてきたというこの実態に引っ張られて腰を上げたと、こう言えるのではないだろうか、いわゆる対策は後追いであって、文部省が必ずしも障害幼児の就学前教育について明確な方針を持っているとはなかなか考えられないわけでございます。また、協力会議事例集的な指導資料の作成を目指していると私は承知いたしておりますが、障害幼児といいますと、障害別、症度別に複雑な絡みを持っております。その指導方針がそういう事例集的なもので十分であるのかどうかという疑問もぬぐい去れません。  また、特殊教育学校幼稚部の設置につきましても、大臣、ただいま局長が申されましたように、その計画は非常におくれております。私は、この際障害者年を迎えまして、文部省として、条件整備を含む障害幼児全般のあり方について、その施策を確立することが緊要なのではないか、しかも、それを行っていく根本は、スタートは、大臣の積極的な姿勢というものが基本になるのではないだろうか、こう考えるわけでございます。大臣としての所信を再度明らかにしていただきたいと存じます。
  243. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) ただいま柄谷委員指摘事例集的な取り組み、これはこれでいたしておりまして、そして、これは部内のことでございますが、それは幼稚園教育課の方で事務をとり進めておりまして、専門家の協力を得てやっております。  もう一つ協力会議を実は持っておりまして、これは特殊教育課の方で事務をとり進めておりまして、これはただいま御指摘の早期教育の政策全般、ちょっと申し上げますと、早期教育現状の把握、それからその必要性、可能性の問題、それから早期教育の形態の問題ですね、それからあわせて特殊教育学校の幼稚部の役割りとその整備の方針、こういったことを検討課題として、いま研究、協議を進めていただいておりまして、私どもはその結果を待って、今後の充実を図ってまいりたいと、こういうふうに思っておる次第でございます。
  244. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) ただいま先生からの御指摘の、国際障害者年を迎えるに当たって、これを契機として、義務制並みの国庫負担並びにその他万般の処理をなすべきであると同時に、また私どももこの一つの国際的な障害者の年を迎えまして、冒頭申し上げたように養護学校の姿を見るにつけましても、気持ちの上で何とかしてこの気の毒な姿から、少しでも、一歩でも二歩でも前進したい、こういう気持ちでいっぱいでございます。
  245. 柄谷道一

    柄谷道一君 義務教育並みの国庫助成策につきましては、質問する前に大臣が述べられましたので、これは質問をやめますけれども、ひとつ大臣として、より積極的な姿勢をもってこの対策に臨んでいただきたいと要望いたしておきます。  次に、いま大臣も千葉を見られたというんですが、養護学校等の特殊教育学校の整備充実の問題でございます。  私も先ごろ東京都立城南養護学校を見てまいりました。六年前にも行ったんでございますけれども、六年前と現在とを比較しますと、非常に特徴的なことは、児童の重度、多様化が著しく進んでおるということでございます。というのは、軽度のものは義務教育学校で収容するとか、いろんな手だてが講ぜられました。一方、義務化になりましたので、いままで底辺におられた方が養護学校に入ってくるようになりました。したがって、重度の方が非常に多いわけですね。この城南養護学校の例をとりますと、脳性麻痺の方が四七%、それから脳性麻痺と精神発達遅滞の重合障害を持つ方が二八%、合わせて実に七五%がもう重度の障害児でございます。しかも、これ百五十名の在籍でございますけれども、そのうち全介護——あらゆるものを介護してやらなければならないという人が、食事については五十五名、排せつについては八十三名、着脱——着物の着脱ですね、これが八十九名、そのような重度生徒が非常に多くなっておる、これが最近の養護学校における一つの大きな特徴ではないだろうか、そういうふうに私は感じてきたわけでございます。  時間の関係で、一々の項目を申し上げませんけれども、こういう事態に伴いまして、全国特殊教育推進連盟、全国持殊学校長会、これは五十六年度予算に関して、こういう実態にかんがみ、その予算措置に対して大臣のところにも要請書が行っておると思います。一つ一つこれはこうする、これはこうすると述べられましたら、これだけで時間がなくなりますので、この要望を受けて、五十六年度予算に関して、大臣として臨まれようとしておるその基本姿勢をお伺いをいたしたい。
  246. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) もちろんできるだけ努力をいたします。
  247. 柄谷道一

    柄谷道一君 特に養護学校に私が参りましたときに、強く要望されましたのは、次の三点でございました。  一つは、高等部、これは任意制のために、重度学級制度が認められていないわけでございます。ところが、高等部に存学する者にも、さきに申し上げましたように、大変重度の障害生徒が多い。  第二には、教員の定数でございますが、これは定数法によりまして、普通校を基準として、学級編制の生徒数を減少さしているわけですね。私はやはり高等部、中等部、小学部といったほかに、重度ないしは重複障害者については生徒何名につき何名の教員といったような、養護学校については、独自の基準を実態に応じて設定すべきではないか、そういう要望があるわけですね。  第三には、さきにも触れましたように、重度の障害者が多いわけですから、このため養護学校というのは教育と医療との合体した運営というものが考えられなければならない。とすると、最低でも整形、神経科のお医者さんが週二回程度は来校してその指導を行う、こういう医療と教育というものが養護学校において合体されるような体制づくりをぜひしてほしい、この三つの強い要望を受けたわけでございます。  これはいま言って直ちにというわけには、もう予算編成も大詰めでございますから、いろいろ問題があろうと思いますけれども、そうした視点で今後文部行政というものをぜひ推進していただきたい、私はそう思うんでございますが、いかがでございますか。
  248. 三角哲生

    説明員(三角哲生君) 高等学校のいわゆる標準法では、従来から特殊教育学校高等部におきます学級編制に当たりまして、いわゆる重複障害学級の規定が設けられておりまして、これは今回の改正におきましても、一学級の生徒数の標準を五人から三人に引き下げまして、実は改善を図ったのでございますが、ただ、東京都につきましては、若干特殊の事情がございまして、高等部に対する入学の希望が年々増加が非常にはなはだしいんでございます。そういったことで、東京都はこれをできるだけ受けとめていくということに全力を挙げてこられたような状況があるというふうに私は理解しております。  それから、次の問題の定数算定におきまして、重度者何名に教員一名といったようなぐあいに、実態に即した配慮を加えるべきであるという御指摘でございますが、特殊教育学校の一学級の児童生徒の数の標準は従来は小・中学部八人、高等部十人、こういうふうに決めておりましたんでございますが、今年度を初年度とする新しい学級編制及び教職員定数改善計画におきまして、これを小・中学部は七人、高等部は九人というぐあいにそれぞれ一名引き下げたところでございます。また、重複障害児学級につきましては、それぞれの実態に即しまして、従来小・中学部及び高等部ともに一学級の児童生徒の数の標準を五人とされていましたものを、先ほど申し上げましたように三人ということにいたしまして、なお教職員定数につきましては、この学級数に一定率を乗じて算定するということになっておるわけでございます。ちなみに重複障害児学級の教職員定数を逆に申し上げますと、小学部の方は児童三人に教員一人強。それから中学部は生徒三人に教員一・五人強。高等部になりますと生徒三人に教員二人というのが大体の全体の平均になっておるわけでございます。  それから、整形外科その他の医師と教育との一つの共同の、何と申しますか、学校におきます運営の問題でございますが、これは申し上げるまでもないことでございますが、学校医は通常、児童生徒健康管理に関しまして、毎学年定期の健康診断に従事しますとともに、必要に応じましてまた臨時の健康診断を行う、そしてその結果に基づいて必要な医療の指示でございますとか、検査でございますとか、あるいはその他児童生徒の発育や健康状態に応じて、適当な保健指導を行うというのが本来業務でございます。  ただ、養護学校におきます児童生徒の健康相談につきましては、一人一人の障害者の程度や、疾病の状態が異なりますので、どこまで学校医という立場の何と申しますか、そういう職掌柄の人が行っていくのが適当であるかということはちょっと一概に申し切れないのでございますが、私どもとしては教育委員会とも連絡をいたしまして、児童生徒の障害等の状況に応じて適切な学校におきます健康管理が行われるようにしてまいりたいのでございます。  なお、これまあ先生御承知のことでございますが、非常に重度の子供の場合には、病院に入っておりまして、そこへ養護学校先生が出かけて行って指導をするという仕組みもあわせてとっておる次第でございます。
  249. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は一度、非常に重度、そして重複障害児がふえておる実態大臣も見られたわけですから、ひとつ局長もつとに実態を把握されて、非常に変化しておりますね、最近。その実態に応じたひとつ対策というものを組んでいただきたい。なお、時間が規制されておるのでございますんで、これは大臣に二つお願いして見解を伺っておきたいと思うんです。  一つは、在校生の障害重度化が進んでおりまして、城南養護学校の場合、現在中一から高三までに在校しておる今後の進路予測は、区立等の社会福祉施設に収容するという者が七〇%、一般就労か援産施設に入り得ると思うのは一七%、在宅——もう家におらざるを得ない、ないしは家事手伝いがせいぜいだという者が一三%と、これは学校当局が推定いたしておりました。そのためにPTA等は社会福祉施設、特に身体障害者療護施設や、通所授産施設の拡充を切実にこれ求めております。これは厚生省所管でございますけれども、私は文部省としても教育しっ放しというんではなくて、やはり厚生省当局と国務大臣として文部大臣も十分に御協議を願って、この卒業生がその後どう進路を選んでいくのか、これに対する施策は一体どうあるべきなのか、これらについては文部、厚生、労働、この三省一体になっての対策の樹立というものについて、ぜひお考えを願いたいというのが一つでございます。  それから第二は、国際障害者年の行動計画のこの原則の中に、国際障害者年は障害者のためだけにあるのではない。障害者を締め出す社会は弱くもろい社会であり、社会を障害者にとって利用しやすくすることは、社会全体にとって利益となるものであるとその原則をうたい、健全者中心の社会は正常でないと、こう述べております。私は、全国で三百五十万人に達するといわれるこの障害者のために「障害者福祉の日」というものを設けまして、全国民の関心、そして障害者に対する対策というものがより喚起され、高揚される、こういうことをぜひ障害者年を契機として制定すべきではないかと、これは総理府所管になることでございますけれども国務大臣としてひとつぜひその実現に御努力を願いたいというのが第二でございます。  なお、その他私立幼稚園の学校法人化問題等について質問をする予定でございましたけれども、時間を守りたいと思いますので、これは改めての機会に質問することとし、二点についての大臣の明確な所見を求めて質問を終わりたいと思います。
  250. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) 御指摘の二点でございますが、卒業後の進路につきましてお話がございました。これはなかなかむずかしい悪条件が累積いたしております障害者に対しまする進路でありまして、非常に今後の職業教育の問題とか、あるいは就労の問題雇用の促進の問題等なかなかむずかしゅうございますが、関係各省庁と密接な連携を図って推進してまいりたいと存じますが、ただいまお話しの中でこの一応の五十五年三月の卒業者に対します養護学校の高等部の卒業者のリストがございます。  三千二百八十一名の方々の中で、これを一〇〇といたして見ましたときに、大学に進学された方が一・六%、五十三人、また職業訓練機関等に入所されました方が一四・九%、四百九十人、また就職者は四三・三%で千四百二十一名、福祉施設、病院の入所者、これが二一・三%で七百名、その他一八・八%、六百十七名と相なっております。  このように、将来の問題に当たりましてもできるだけ社会に出て、そうして幸福な将来を送っていただきたいというのが念願でございます。  また第二の点で、国際障害者年を迎えましたにつきまして、「障害者福祉の日」というようなものを制定されてはというお話につきましても、総理府の方におきまして、今後各方面の意見を聞きまして、適切な日を定める予定であると聞いておりますが、この制定に対しましても全国民の障害者に対しまする深い理解と協力というものがきわめて必要であると、かように考えております。
  251. 野田哲

    委員長野田哲君) 他に発言もないようですから、文部省及び科学技術庁決算についてはこの程度といたします。  次回の委員会は明十八日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会      ——————————