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1980-10-16 第93回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月十六日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員氏名     委員長         秦野  章君     理 事         稲嶺 一郎君     理 事         大鷹 淑子君     理 事         松前 達郎君     理 事         宮崎 正義君                 安孫子藤吉君                 中村 啓一君                 中山 太郎君                 永野 嚴雄君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君     —————————————    委員異動  十月十五日     辞任         補欠選任      立木  洋君     上田耕一郎君     —————————————  出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 稲嶺 一郎君                 大鷹 淑子君                 松前 達郎君                 宮崎 正義君     委 員                 安孫子藤吉君                 夏目 忠雄君                 鳩山威一郎君                 細川 護煕君                 町村 金五君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君                 上田耕一郎君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  伊東 正義君    政府委員        内閣法制局第一        部長       味村  治君        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁経理局長  吉野  實君        外務政務次官   愛知 和男君        外務大臣官房外        務参事官     渡辺 幸治君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        総理府北方対策        本部審議官    藤江 弘一君        警察庁刑事局保        安部保安課長   内田 文夫君        北海道開発庁計        画官       滝沢  浩君        外務大臣官房調        査企画部審議官  馬淵 晴之君        外務大臣官房領        事移住部長    塚本 政雄君        文部省初等中等        教育局中学校教        育課長      垂木 祐三君        水産庁海洋漁業        部国際課長    中島  達君        通商産業省機械        情報産業局自動        車課長      横山 太蔵君        資源エネルギー        庁石油部計画課        長        浜岡 平一君        海上保安庁警備        救難部長     福島  弘君    参考人        根 室 市 長  寺嶋伊弉雄君     —————————————   本日の会議に付した案件調査承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (外交基本政策に関する件)  (安全保障及び防衛問題に関する件)  (イランイラク戦争に関する件)  (イランにおける邦人救出に関する件)  (北方領土問題に関する件)  (対ソ連外交に関する件)  (金大中問題に関する件)  (韓国情勢に関する件)  (環太平洋構想に関する件)  (アルジェリアにおける地震被害の救援に関す  る件)  (沈没船ナヒーモフ号所有権に関する件)     —————————————
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十五日、立木洋君が委員を辞任され、その補欠として上田耕一郎君が選任されました。     —————————————
  3. 秦野章

    委員長秦野章君) 次に、調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行うこととし、その旨の調査承認要求書を議長に提出をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 秦野章

    委員長秦野章君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢等に関する調査のため、本日の委員会に、参考人として根室市長寺嶋伊弉雄君出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 秦野章

    委員長秦野章君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 伊東外務大臣に対しては、参議院としてはきょうが最初質問であります。衆議院の外務委員会ではこの間数回質問があったということでありますが、私たちは、この激動する世界波濤の中における外交の道の模索ということはきわめて慎重を要することだし、外務大臣みずからが世界の要所を尋ねて要人と会談し、そうして、構想が固まってから御質問したいと思いましていままでお待ちしておったのであります。  そこで、最初質問は、いま、御承知のとおり、激動、変化の背景には、石油ショック以来グローバルな時代が到来しておって、世界の中における日本というものの認識なしに、日本外交がひとりよがりに動くことのできないような状態になっているのが事実であります。その上に立って、日本外交はこれに対応していかなる姿勢外交を推進すべきか、そのことについてまず伊東外務大臣から基本方針を承りたいと思います。
  10. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 参議院外務委員会出席しますのはきょうが初めてでございまして、少し時間がたったのでございますが、ひとつ誠心誠意日本の国益を守るということで、日本の平和、安定、繁栄ということを期して一生懸命外交に取り組んでまいるつもりでございますが、それには世界の平和、安定ということがこれはもう大前提でございます。そうした考え外交に取り組んでまいりますので、ひとついろいろ御指導、御鞭撻、御協力、また御批判も賜りますように冒頭にお願い申し上げる次第でございます。よろしくお願い申し上げます。  いま戸叶先生からの御質問でございますが、先生おっしゃるように、本当に世界というものが狭くなりまして、太平洋でさえ環太平洋というようなことで将来は内海化するぐらいの考え方で取り組んでいかなければいかぬと思うわけでございまして、確かにもうグローバルな観点からいろいろ考えていかなければいかぬとおっしゃることは先生のおっしゃるとおりでございます。  それで、外交基本としましては、これは従来からそのとおりでございますが、日本外交基軸安保条約をもとにしました日米友好関係というのがこれが基軸だという考え方でございまして、世界の中で政治あるいは経済に対して同じ理念を持った国々協力して自由主義体制あるいは民主主義体制ということを守っていくということが基本でございますが、しかし、これはそれを基本にしまして、その地域地域あるいは国と国、いろいろ事情が違うことがございます。日本でも隣は中国でございますし、ソ連がある。これは政治形態が違う。しかし、そういう国とも友好協調はなるべく保っていこうと努力をする、あるいはアフリカの問題、中南米の問題、ASEANの問題、みんなあるわけでございますが、そういう国々とも協調友好関係を保っていくという努力をして、何としても世界の平和、日本の平和を守っていこうというのが外交基本方針だというふうに考えまして、そういう態度で個々の外交案件と取り組んでいるということでございます。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 伊東さんは国と国との政治形態その他の違いがあっても、おのおのの立場理解し、尊重し、そうして日本の平和ということを進めたいと思うと。もちろん日本外交日米友好関係基軸になっているからというお話でありますが、問題は、日米友好関係基軸になっているということは事実でありましょう。しかしながら、いま日本外交がみずからの主体性を確立して、国際的連帯の上に立つにしても、自主的なみずからの姿勢が確立しない限りは日本外交の本来の姿というものはまだ健全なものにはなり得ないと思うのであります。  そこで、承りますが、あなたは日本平和達成ということを中心に外交を進めていきたいという外務省のいままでの考え方の上にやはり立っていると思いますが、最近はややもすれば何かイラン革命イラン、アフガンとの対立の時代から、何か戦争への危機感ということをむやみやたらにあおって、日本の再軍備体制というか、軍事体制の方向へひん曲げていこうとするかのような意図が、防衛庁だけでなく、防衛庁国防白書なんかを見ても、外務省青書を見ても、随所にそれがあらわれていることが心配でならないのですが、さようなことは余りありませんか。
  12. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように外交は自主的でなけりゃならぬと、これはもう当然なことでございまして、これは何を考える場合にも自主的、まず日本としてどう考えるかということが基本でなけりゃならぬことはおっしゃるとおりでございます。  それで、私、先ほど平和外交ということを申し上げたのでございますが、これは軍事大国にならぬということははっきりしておりますし、平和外交に徹していこうという考え方には全然変わりはございません。先生がいまおっしゃいましたイランあるいはアフガニスタンに対するソ連軍事介入をめぐって、何か軍事面が、防衛面が非常に前に出てて、軍事大国とはおっしゃいませんでしたが、そういうような道を、軍事の道へ歩くんじゃないかという御懸念があったのでございますが、そういうことは私どもは全然考えておりません。いま先生のおっしゃいましたアフガニスタンに対するソ連軍事介入あるいはおっしゃいませんでしたが、カンボジアに対するベトナムの侵入ということも、あれは即時撤兵をしろというようなことは国連の大多数の決議国連がもう決めて決議をしていることでございますし、われわれは国連決議も忠実に守っていくという立場をとっておりますし、イランアフガニスタンの問題をめぐって問題が起きたのは先生承知のとおりでございますが、これは前の大平総理施政演説でも申したことがあるのでございますが、自由という体制民主主義体制を守っていく、それは日米関係基軸にして、ECとか、経済政治問題について志を同じくするものが協力してやっていくんだ、平和の維持のためにやっていくんだと。それにはある程度犠牲があっても、しのんでもやらなけりゃならぬことがあるというようなことを施政方針演説で申し述べたことがあるんですが、イランの問題、アフガニスタンの問題をめぐって経済的な措置を西側陣営として考えたことはございます。それはそのとおりでございまして、いまも実行しているわけでございますが、これは世界の平和、安定を守っていこうというとこから出た一つの方策でございますが、先生のおっしゃるその軍事軍事ということで、軍事大国あるいは防衛ということに非常に傾いていくんじゃないかという御心配の点は、私どもはそういうことを特に考えているわけじゃないと。日本の置かれた立場ということから考えまして、日本防衛というのは専守防衛ということでございますが、日本としてやらなければ、自分の国を守るために必要最小限度やらなければならないことはどういうことだということを考えて実はやっているわけでございまして、それは西側一員としての責任分担の問題も当然ございますし、日本自身防衛ということの必要性もございますし、そういう見地に立って、外交とあわせて広い意味安全保障ということも考えていかなけりゃならぬなということを外交青書も、研究会をやりましたときにもそういう考え方であれを書いているということでございまして、あくまで平和外交軍事大国にならぬということがこれは基本であることは間違いございません。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣は率直に、日本外交日米友好関係基軸としてという基底の上に立って、そうして国連立場を尊重して、国際連帯、特に西側陣営としてなさなければならないものはなすというふうに明言されておりますが、こういう背景の上に現実において立っているにしても、一番大切なのは、アメリカの意向がどうであるか、国連の動きはどうであるかの前に、日本国家基本法としてのいまの憲法の中心的な問題であるところの憲法第九条の問題、さらに昨日は、憲法前文の問題に対して奥野法務大臣は大胆な放言を行っておりますが、ずばり言って、奥野さんは現在の現行憲法を本当に理解しているのでありましょうか。私は、あなたからあえて承るのは、奥野さんのことは奥野さんの方に聞けと言うが、なかなか奥野さんに聞いても今日においては非常に混乱している状態だから、取りとめのない言葉を聞いても意味がないから、冷静な、外交防衛の問題を一体とし、しかも国際連帯背景の上に立つ日本外交というもの、日本みずからの主体的な政治姿勢というものを明確に把握しないで、外交外交ということに走ることもできないと思いますが、奥野さんだけでない、いまの改憲論者は、明治憲法成立過程及び今日の日本憲法成立過程を明確に把握した上での憲法論か、それとも憲法改正をやらなけりゃならないという放言論なのか、それをあなたにしぼってお聞きします。改憲論者は、おおむね現行憲法マッカーサー憲法と称して、マッカーサーから押しつけられたという理解の上に立っておるようでありますが、明治憲法は原文もドイツ文であり、明治十六年八月二十三日にウィルヘルム一世から押しつけられた伊藤博文ビスマルク的憲法であり、それはマッカーサー憲法どころではない。あの天皇神聖化などということは、それまであのような過度な形において日本でも表現されたことはないのであって、ウィルヘルム一世と伊藤博文氏との問答内容も私はあらかじめ承知しておりますけれども、あの統帥権が押しつけられたために、天皇の名によって戦争が推し進められていったがゆえに、無条件降伏のいまだかつて日本になかったような悲劇の原点はそこから発していると思うのでありますが、それに対して伊東さんはどのような御理解を持っておられるんでしょうか。
  14. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外交基本が、自分の国が一体どうなんだという、まず自分の国のことを考えてやるべきだという、自主的に考える、そして、それを世界の、あるいは西側陣営一員あるいはもっと全世界的に考えるべきだというお話は、先生おっしゃったとおりでございまして、私はあらゆる機会に外国の人といろいろ話す、外国から期待表明があったときにも、まず自主的にこれは日本考えるんだと、また国民のコンセンサスというものが必要なんだということを必ず私言っているわけでございまして、その点は先生と同じ考えでございます。  憲法論につきましては、ほかの方々はみんな私は現憲法というものを理解された上で政治家としていろいろ御意見を言っておられるんだと思うのでございまして、ほかの方のことをとやかく私は言いませんが、私は、改憲議員連盟ですか、あれに入っていない一員でございまして、憲法平和主義あるいは民主主義あるいは主権在民というような基本的な問題については、総理も言っておられます。鈴木内閣として憲法改正をする意思はないということをはっきり言っておられるわけでございますから、私は当然そういう考えでおるわけでございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 きのうたまたまエスカレートして奥野さんが憲法前文の問題にまで触れて言ったですが、憲法第九条の戦争放棄憲法前文に流れているところの基本的な精神というものはどこへ出しても恥ずかしくない、あの無条件降伏悲劇の中から生まれた国民的苦悩の結晶によってつくられたものであって、軽々率々にこの前文に対して問題を提示するというやり方は、問題を拡大しようという、憲法改正を強行しようという意図のもとに行っている無責任な言動であり、それに対して総理大臣はあるいは宮澤官房長官はかたくこれを禁じていたはずであるが、一体内閣最高責任者はだれなのか。総理大臣みずからが最高責任を持っているのであって、天皇現行憲法においては民族統合の象徴であるというので、政治的責任地位にはないのであって、国民主権者であります。国民の合意のないところに憲法改正なんかできない。いまの憲法においては、およそ、いかに焦っても合法的手段において憲法改正は不可能に等しい。だから、何か誘発して問題を一気に、ナチスが行ったように、憲法改正の事実をつくり上げようとする意図がきわめて不安感国民に与えておるのに対して、平和の国際的な面において世界信頼をかち得る外務大臣地位にある者が、総理大臣を助けて、不統一な閣内におけるところの出過ぎた態度に対して、一言半句も申し述べることができないようでは、伊東さんというものの地位もきわめて軽いものだと見られてしまうのじゃないかと思いますが、何かこれに対しては特別な発言なり意向を示しておりますか。
  16. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先年がおっしゃった前文の問題は、まあきのうのきょうのことでございますので私は何も申し上げておりませんが、総理はもう何回も鈴木内閣憲法を改正する意思はないということをはっきり言っておられるのでございまして、私はもう総理信頼しているということでございます。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 あなたは信頼しているけれども国民信頼度は軽くなるばかりです。鈴木さんにはのれんに腕押しのようなもので、風が吹けばゆらゆらゆらと揺れるだけで、腰に締まりがないというのが評判です。人はいいかもしれないが。  内閣のキャビネットをつくり上げたイギリスウォルポールでも、結局は内閣責任制を確立したが、長期にわたる二十年間の政権によっていまの自民党のように金権腐敗政治となり、賄賂政治となり、あの大ピットによって、このようなモラルの崩壊した、道義心の失われた内閣というものは存在の意義がない、内からイギリスがこれによって腐食していくというので、ピットのたゆまざる攻撃によって二十年政権はぶっ倒れたのです。ウォルポールイギリス内閣制度確立の元祖とまで言われたけれども国民ピットに加担し、そうしてイギリスにおける責任内閣制というものは形式的なものでなくて——政権移動のルールが確立せずして、一党独裁的な内閣制度によるならば、ウォルポールにおいてもあのような腐敗させてしまったからというので、自来イギリスにおいてはその経験から一党独裁的な長期政権は許されなくなったのであります。  いま、自民党——社会党の方にもそんなのが少しあるようですが、派閥などというのは徒党であって、近代政党のバチルスです。こういう原始的な形態力関係バランスによって、いいかげんな政権たらい回しをやっているというようなやり方が長く続くならば、議会政治の根本をむしばむものであると思いますが、あなたは議会政治のあり方に対してどう考えていますか。
  18. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 非常に高邁な御意見、該博な御意見を承ったのでございますが、承っておりまして、確かに町の政権というものは謙虚で、常に反省的でなけりゃならぬ。中国言葉の戦々恐々というのはそういうときの言葉だと私は思っておりますが、謙虚でなけりゃならぬということは、これはわれわれは常に注意せにゃならぬことだと思うわけでございます。  総理の個人的なことについていろいろ御意見がございましたが、これは私から、言うべきことじゃなくて、国会でお選びになってできた内閣でございますので、われわれとしましては総理を助けて、いまのような態度政治に取り組んでいくということをやらなけりゃいかぬと、それが本当の民主主義だというふうに思うわけでございます。  先生派閥とか政党内部のこととか、いろいろおっしゃいましたが、これは政党内部の話でございますので、これはわれわれが聞いてどうということじゃないわけでございますので、御意見としてこれは承っておくということにしたいと思います。  繰り返して申し上げますが、内閣は謙虚な態度政権というものを預って国のために働くということが民主主義内閣態度だろうというふうに思っております。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 それでは、一転いたしまして、外務省は七月の末に八〇年代の安全保障政策防衛庁は八月初めに五十五年の防衛白書日本防衛」を発表しておりますが、先ほどもちょっと触れておきましたが、外務省安全保障政策に対する考え方は、軍事力なくして平和外交はできないというふうに重大な修正を加えてきたのでしょうか。その辺、われわれが見る限りにおいては、八〇年代の安全保障政策の中にはそういうものがにじみ出ているような感じがするので、いままでの外交質的転換を行おうとしているのかどうか、それを承りたいと思います。
  20. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げます。  先生が御質問になりましたのは「安全保障政策企画委員会第一ラウンドとりまとめ骨子」というものについて御質問になったと思うのでございますが、これは、世界の平和と安定のために外交努力で、平和外交で貢献していこうという役割りは決していままでと変わっているというふうには思っておりません。それは同じだと思うのでございます。ただ、安全保障の問題を考えた場合には、非軍事的な面としまして外交役割りということと、片一方に抑止力としての軍事面の問題と双方を、これは総合的な安全保障の問題としてバランスをとって考えていく必要があるということを言ったのでございまして、決して非軍事面外交努力によって平和を確立していくんだということにつきまして変わっているということはございません。それを軽視しているということもない。従来のことを、私は抑止力としての軍事面の問題もありますということを言ったのでございまして、従来と変わった考え方ではないというふうに考えております。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 それでは、外務大臣は平和を追求していく外交基本方針とは変わりがない、しかしながら抑止力として軍事力バランスということも考えなければならないということを考えているというのでありますが、その内容は、具体的に端的に表現すれば、どういうような表現によってなされているのですか。
  22. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生のおっしゃったのは骨子の中の表現の仕方を御質問でございますか。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 そうです。
  24. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その点につきまして、政府委員から文言につきまして御説明申し上げます。
  25. 馬淵晴之

    説明員(馬淵晴之君) 先生の御質問がありました点でございますけれども、確かにこの二ページ目で一応軍事面での重要性をなおざりにしたりぼかされてはいけないということは書いてございますけれども、その内容は、わが国に関しまして言えば、日米安保体制とそれからわが国自身の防衛力の重要性を意味しているものでございまして、わが国の防御力について言えば、従来から御答弁申し上げておりますとおり、自衛のための必要最小限度の防衛力の保持ということでございまして、このペーパーでも「このような外交努力とともに軍事面で必要最小限の抑止力を整備しておく必要がある。」と書いたとおりでございまして、従来の方針とは変わっていないというのがわれわれの立場でございます。
  26. 戸叶武

    ○戸叶武君 一般の最近の受けとめ方は、自衛のための必要最小の抑止力としての軍備、軍備といいますか、自衛体制ということから少しはみ出してきているような印象、それに焦って、結局憲法第九条の戦争放棄を放棄するというような考え方憲法前文を否定して、いままでの平和憲法と言われる憲法を根底から覆そうとするような考え方に徐々に揺すぶられて、その方向へ流されていくのじゃないかという危機感を多くの人が抱いているのですが、さようなことは外務大臣ないですか。
  27. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 全然そういうことは考えておりません。
  28. 戸叶武

    ○戸叶武君 伊東さんは聡明で慎重な人だから、その言葉はそのまま信用することにいたしましょう。  いま、アメリカのマンスフィールドさんでも、アメリカではこういう動きがある、こういう考え方を持っている者があるというような率直な表現をしているが、あれはあれとしてアメリカの大使としての役割りで忠実に民間にまでパイプを通じていることかもしれませんが、マンスフィールドさんにもこの間言ったのです。あなたの考え方は率直な伝達かもしれないが、日本人の物の考え方の中には、マンスフィールドがこう言っているのだからこうしなければならないのだというふうに、何かマッカーサーに言われたときと同じような、ダレスにひねられたときと同じような事大主義的な、何か権威者に従属しなければ調子がうまくいかないのじゃないかという三味線弾きが多いので、そういうところを十分配慮した上で、日本人は自分たちの発言に対してどういう受けとめ方をするかということも一応配慮して言動をしてもらわないと困る。これはあなたに言うのじゃなくて、恥ずかしいが権威に対しての日本の盲従的な卑屈さ、そういうものをわれわれはみずから戒めなければならないと思うのでついあなたにもそういうことを言うのだが、アメリカ人の物の考え方、率直に物を言う考え方日本人の物の考え方とには若干違いがあるからそういうことを配慮の上で言動を行ってもらいたいと私は忠告したことがありますが、最近の防衛の問題でも、アメリカとの間を往来して、アメリカが別に憲法をこうしようとかああだとかということを押しつけなくても、早合点してやたらに引き受けてきては後でもってなかなかできないというような状態で、苦労をしてそうしていろいろな手段を弄しているからよけい日米間における誤解が増大すると思うのですが、これは伊東さんにおいてはさようなことはないと思いますが、この風潮は因ったものだと思いますがどうなんですか、外務省の方は大丈夫ですか。
  29. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先生のおっしゃったことはよく注意せねばならぬということはよくわかります。それで、防衛の問題についていろいろ意見があることは私も承知しております。先ほども申し上げましたように、日米安保条約というのが基本でございますので、一朝有事の際には共通した危険に対して日米が共同で処理する、それに対応するということになっておりますので、日本側の自分自分の国を守るという防衛の姿についてアメリカがいろいろな関心を持ち期待表明をするということはあると思うのです。これは当然あると思うのでございますが、私もこの間アメリカへ行きまして向こうの要路の人に会っていろいろな意見は聞いたのでございますが、私が一貫して述べたことは、日本日本として自分の国を守るにはどうしたらいいのだというふうに自主的にまず考えることが必要だし、国民のコンセンサスということも必要なのだ、財政の問題もあればいろいろな問題、総合的な問題があるわけでございますから、これは慎重に考え防衛力は着実に取り組んで伸ばしていくということはやる、しかしそれはあくまで自主的に国民のコンセンサスの上でやるのだということを必ずどの場所でも私は言ってまいったわけでございまして、先生おっしゃったように、約束して守らぬということはこれは不信感を増す非常に大きなことでございますので、守れぬような約束は絶対してはいかぬ、そのかわり約束したら絶対守りなさいということを私は部下の人にも省内で言っているわけでございまして、その点は十分注意して取り組んでまいります。
  30. 戸叶武

    ○戸叶武君 ことしの五月、前の外務大臣がアメリカ訪問をしたときに、中期業務見積もりを五年から四年にできるかという質問にぶつかっておりますが、その前に山下前防衛庁長官がアメリカのブラウン国防長官にお目にかかったときに、そのことは大体どこまで煮詰めたか知りませんが、向こうに日本政府を乗り越えて伝わっており、ブラウンさんは去年の十月朝鮮からの帰り、ことしの一月中国からの帰りのときに日本に立ち寄っても、政府側にその問題に対する質問をしているはずであります。押しつけというよりは、日本はどういう考え方でどういう具体的な実行をやっているのかというのを、日本の自主的な考え方を受けとめるために参ったのだと思いますが、そういう動きの中に、何か山下前防衛庁長官の焦りや亡くなった大平さんの苦悩や、そういうものを受けとめて、あなたは今度はアメリカから何を自分自身としては受けとめてまいりましたか。
  31. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私アメリカへ行きまして、副大統領、ブラウン国防長官、マスキー国務長官等に会ってきたわけでございますが、いま先生がおっしゃいました防衛の関係だけについて申し上げますと、上院議員、下院議員の人とも意見の交換をしましたが、特に防衛問題が出ましたのは上院議員それからブラウンさんのところで特に防衛の問題が出たわけでございます。さっき私申し上げましたように、アメリカではこういう期待をしているという話がございました。  それは、一つは日本には非常に大きな制約があることをよく知っている——これは憲法上の制約、自衛隊法上の制約だと思いますが、制約があることをよく知っている、日本防衛努力を一生懸命やっておられる、特に来年の予算要求では九・七というシーリングがございますが、概算要求をしたということも自分たちは評価している、制約は理解し、努力は評価しているという前提の上に立っていまの世界情勢の話が説明があり、中期業務計画について早期に達成するということをアメリカとしては希望するんだという話があったり、九・七%の要求は出たがインフレの見通しはどうかとか、大蔵省というところは、アメリカでも同じで、いつも予算は査定をするんだという話が出たり、いろいろ期待表明があったことは事実でございます。  これに対しまして私は、先ほど御答弁しましたように、日本としましては自主的にまず考えなけりゃならぬことなんだ、国民自分の国を守るということでございますから、まず自主的に考えなけりゃいかぬ、国民が本当にこの問題を理解してくれなければいかぬのでございますから、財政面その他、いろんな面を含めて国民のコンセンサスが必要だということ、それから単に狭い意味防衛だけでなくて、日本は紛争国の周辺、たとえばタイとかパキスタンとか、あるいはトルコ等に大幅の援助を実はやったわけでございます。こういうことも広い意味安全保障ということにとっては私は非常に重要な役割りをなすことなんだから、もっと広くいろいろ考えるべきだというようなことを話してきたのでございまして、ブラウン国防長官も数字的に幾らにしてくれとか、そういうふうな期待表明は具体的なことは一切ありませんでした。抽象論としてあったのでございますが、私もいささかの点も約束をするというようなことはなしに、自主的な問題として着実にふやしていくようにこの防衛問題には取り組んでいくんだ、日本立場として取り組むんだというような説明を防衛の問題についてはして帰ってきたわけでございます。
  32. 戸叶武

    ○戸叶武君 アメリカの駐留軍は西ドイツに二十二万、日本に四万五千からおりますので、これを少なくして負担を軽くしようという考え方があるのは事実ですが、それにはNATOにおける責任体制と同時に、日本においてもみずからの国を守るという責任体制をつくってもらいたいという念願があるのは否めないことでありますが、常識的に見て、日米安保条約に反対の立場をとっている者でもすぐ直ちにこれができるという可能性を信じてやっていないと思うのであります。ただ、長期にわたってこのような形がとられているんでは困るから、原則的にはやはり安保体制というものはやがて解消してもらわなけりゃならないという批判がそこに込められていると思うのであります。  そこで、あなたが駆けめぐっている間にいま一番問題になっているのは——中東及び東南アジアの不安定な状態を安定の方向に導いてもらいたいという悲願はその地域挙げての悲願だと思うので、これに対して軍を動かすようなことがなくて、平和裏に問題解決のために国際的な連常、国連の場あるいはECの国々、先進国諸国とも協力し、発展途上国とも協力して問題を片づけていこうという考え方があなたの考え方かと思うんですが、東南アジアに行ってその問題が、大変むずかしい問題がひそんでいるということをおわかりかと思いますが、その問題点はどこにありますか。
  33. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私、東南アジアへ参りましたときはまだイラン、イラクの紛争が起きてない段階で行ったのでございまして、東南アジアでは問題になっておりましたのはカンボジアの問題、それから南西アジアに行きましたときにアフガンに対するソ連軍事介入の問題をめぐって難民の問題とか、そういう問題が実は出ていたわけでございます。ただ、先生いま中東の和平の問題をおっしゃったのでございますが、パキスタンに参りましたときに、あそこはイスラム国家会議の議長をしている国でございまして、パキスタンが中東和平の問題に非常に関心を持っておりまして、中東和平の問題を考えるときにはパレスチナ人の自決権というものをやっぱり考えていかないと、あそこに恒久的な、包括的な、公正な和平はこないと思うと、そういうことで自分は、パキスタンとしては努力をするんだということを言って、特に強く主張しておったのでございますが、私どもも中東——イラン、イラクの問題は後にしまして、中東全部の和平を考える場合にはやはりいまのようなことが非常に大切なことであると思いまして、国連の総会におきましても、またアメリカ側にもキャンプ・デービッドをもう一歩進めていかなければ永続的な平和は来ないと、日本はそう思うという話もし、イスラエルの外相にも実は国連で個別に会ったわけでございまして、イスラエルの外相にもそのことは実はそうすべきだと、そうでないとイスラエルは世界的に孤立するというおそれもあるよというようなことを言ってきたわけでございまして、中東和平の一番むずかしいところはそのパレスチナ人の問題、PLOの問題ということだと私は思っております。
  34. 戸叶武

    ○戸叶武君 東南アジアの中でも一番難問題とされているベトナムの問題で、日本が一つの態度を決定し、国連の大勢もそれに等しいような決定を見たとはいうものの、ソ連軍事基地を持つことに対すむ警戒心がその中にはひそんでいると思いますが、ベトナム問題の解決は、日本のガンボジアにおけるポル・ポト政権の支持ということだけで、国連が代表権をポル・ポト政権に与えたということだけで問題がさよう簡単には片づかない面があると思いますが、今後の見通しはどうでございますか。
  35. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私もその点は先生と同意見でございます。  日本が、民主カンボジア政府の国連における代表権の維持ということを、ASEANの主張を支持しまして、方々に呼びかけたのでございますが、それはポル・ポト政権が過去にやったことを全部承認するという意味ではなくて、そういう意味ではなくて、他国が軍隊をもって入ってきてそこにかいらい政権をつくったと、それを認めるということは、これはどうしても認められぬ。国連でも即時撤兵ということを言っているわけでございますので、そういう政権は認めるわけにいかぬということで、従来どおり民主カンボジア政府の代表権を維持するということに賛成をしたわけでございますが、先生がおっしゃったように、それだけで問題が解決しないと、私も同じ認識でございます。  これからのインドシナの和平の問題は、この代表権を認められたということを第一歩にしまして、ASEANも決議を出しているわけでございますが、何とか政治的な場をつくって、話し合いを持って平和裏に何とかインドシナの問題を解決し、インドシナが平和に、それが東南アジアの平和、アジアの平和、世界の平和につながることでございますから、これが第一歩で、これから慎重にこの問題を考えていかなけりゃいかぬというのは、先生と同じ考えでございます。
  36. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま、イラン、イラクの戦争状態もアバダン攻防が山場と見られていますが、イラク大統領のフセインも非常な危機感の上に立ってこの戦争をどういうふうにおさめるかということに苦悩していると思いますが、国連ではいち早くこの問題も取り上げて問題解決を急ごうとしている模様でありますけれども、アフガンに対するソ連の出方を見ても、それからアメリカがアラビアンシーの奥に軍艦を送り込もうとしても沿岸諸国は反対、いずれも、アメリカもソ連も正面衝突は避けよう、自分らが好んで戦争を発火さしたんじゃないというような、ほかではいろんな見方があるがいまになっては冷静な受けとめ方をし、エジプト、イスラエルあたりにおいても感情的に熱気をいつでも呼ぶアメリカ大統領選挙が済まなければ、冷静な形においてデタントの方向への方向づけは困難と見て、しばらく様子を見ている模様でありますが、あなたの見通しにおいて、私は第三次世界戦争にまで突入するようなことは断じてないし、ソ連とアメリカが正面衝突するようなことは回避されるであろうし、そういうときにそういうあおりを受けて日本だけがわあわあ騒いで、長期的な見通しをつけないで、平和共存体制のデタント以外に世界を救う道はないという一つの原則が確立しているのにもかかわらず、このわあわあという騒ぎたて方は異常な、ファシストが台頭したときの前夜を思わせるような盲動ぶりであって、きわめて日本国民は冷静さを欠く国民というような、軽佻浮薄な民族のように受けとめられる危険性もありますが、少なくとも、日本外務大臣の位置にあるあなたは、やはり風が吹いて木の葉が騒いでも動かざること山のごとしといった冷徹さを持ってこの難局に対処していこうと思っていると思うのですが、やはり自民党のいまの揺すぶりには揺すられざるを得ないかどうか、その辺をやっぱりいまの総理大臣なんかも相当常識人と思っていたが、不安を感ずるので、一番最短距離にあるあなたから、総理大臣意向を聞くのでなくて、側近者としてのあなたの意向を聞きたいと思いますが、どうですか。
  37. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) イラン、イラクの紛争を契機に、これが先生おっしゃったような大乱になるということは、これは何としても避けにゃならぬことだと私も思います。平和裏に何とかイラン、イラクの間で話し合いがつくようにということを期待しているわけでございます。きょうイラクから特使が着いて、あした私は会うんですけれども、その点は何度も言いましたけれども、ホルムズ海峡の安全航行の問題もあるし、何とか早く、早期に解決するようにということを強く要望するつもりでございますし、実は両方イスラムの国でございますので、パキスタンにもさらに努力してもらうように実は要請も最近したのでございます。安保理も決議をする、国連あるいはイスラムがいま努力をしているわけでございますが、何としても早く平和裏におさめることを、日本としてもできることがあればということでいま検討をいたしているところでございます。  いまの日本の情勢の見方でございますが、先生も戦前ですか、上海におられて、私も同じように上海におりましたので、あのころの様子、いろいろいまでも頭に浮かべることがあるのでございますが、私はそんな情勢では日本はないということをいま確信しておりますが、外務省としてまた外務大臣としてこれは冷静に世界情勢には対処していくという態度で見守って行動をしているというつもりでございます。
  38. 戸叶武

    ○戸叶武君 最後に日ソ関係について承りたいのであります。  外務大臣はきわめて慎重な足取りで、言うべきことは言ってもやはりソ連を真っ正面から敵視するのでなくて、ソ連の出方いかんによっては日本基本原則をゆがめない形ならばこれとも話し合ってもよいというだけの態度を示しているようでありますが、多くの人は、特に左と思われる人、外交に対する経験のない人たちは、ソ連をあたかも仮想敵国のように思っている——自民党内にはそういうことを商売にしている方もありますが、それとは違うニュアンスを持っているようですが、事領土問題は私は日本の固有の領土、これは戦争中のどさくさに権謀術策によって軍事秘密協定、ヤルタ協定によって日本の主権を無視してスターリン、ルーズベルト、チャーチル間において秘密協定はやられたので、戦争中にはかようなことも、いい悪いとを問わず、行われがちなものであって、一九一五年の秘密協定のロンドン協定の名によってイタリアを同盟国から離脱させたのも、これと同じような領土をえさとしての謀略協定があったので、ウッドロー・ウィルソンはベルサイユ講和条約において、他国の領土を奪うというような前提のもとに、次の平和を保障すべき平和条約は締結できないという形でこれを無視した前例もあるのでありまして、アメリカはスターリンにひっかけながら自分責任逃れをやっていますけれども責任を問うのではない、戦時中にはそういうこともありがちなものであるが、ソ連だけに責任をかぶせないで、アメリカ、ソ連、アメリカに同調していったイギリス、三者で結んだ一九四五年二月十一日のヤルタ秘密協定は、三国みずからの責任において適当なときにおいて——適当というよりなるべく早く解消するという宣言を行うことが正しいのであって、その上に立って、安保条約の問題をどうだこうだと言うが、このヤルタ協定において連合国のフランス及び中国が除かれたということ、アメリカ、ソ連イギリスの妥協によって世界を支配しようという、核を持った国、軍事大国において世界を支配しようという野望のもとに屈することはできないというのがドゴールの原爆の開発であり、中国の原爆の開発であって、原爆を持たずにいれば発言権がないからという抵抗がそこにひそんでおったと思うんです。痛いところにさわらないで、吉田さんなんかもそっとこう、何か奉られてサンフランシスコ講和条約に臨んだのですから、まことにこっけいな情勢がそれ以後世界を支配しているのですけれども、そろそろこの第二次世界大戦の後始末はやはりしなきゃならない段階には来ているので、ソ連だけを責めるのでなくて、やはり国際連帯の力によって、次の平和条約は主権を持っている国の領土を、それを無断で、そうして戦時中の軍事密約によって支配することができるというような状態では次の平和を保障すべき平和条約の価値がないと思うんですが、そういう点において、あなたも海軍の軍人としては珍しい人物の津田さんにかわいがられた人物ですから、やはり相当の哲学を持っていると思いますが、どうですか。
  39. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ヤルタ協定のお話でございますが、これは先生承知のように、米英ソ三国首脳が集まっていろいろ決めた中に、千島をソ連にというようなことを決めたのでございますが、この協定はポツダム宣言受諾の際にもそういうものがあったなんということは日本は知らなかったことでございますし、また、この協定には日本は何も当事者でない、何も拘束されることはない、当時の米英ソの首脳が戦争中取り決めたということで、日本から見れば法律的効果も何もないものだというふうに思っておりますので、先生の御意見でございますけれども、北方領土の問題を交渉しますときの当事者というのはやっぱり日ソ両国だと思いますので、米英がそれに同席するとか、あるいはまた別な会議でヤルタ協定の見直しとかいうことは、私は現実の問題としてはこれはむずかしい問題だというふうに考えております。あくまで北方領土については、四島については日本のものだという、固有の日本の領土だという主張、これはアメリカも、平和条約の起草者になったアメリカも支持していることでございますので、そういう国際的な環境を頭に置いて交渉せにゃならぬということは、これはよくわかります。私も、中国はその当時入っておりませんでしたが、そういう国際環境を頭に置きながら、やはり日ソの間でこれは粘り強く交渉していくということが現実の問題だろうと、その点は先生と若干違うのでございますが、私はそう考えております。
  40. 田中寿美子

    田中寿美子君 最初に金大中氏事件に関連した御質問をしたいと思っております。  これまで、金大中氏が一九七三年の八月八日に拉致されて以降、この外務委員会ではもうずうっといろいろとこの問題については政府を追及してきました。今回、金大中氏が韓国の軍法会議で死刑の判決を受けたことに対して、金大中氏の救出のためには大変国内に大衆運動が盛り上がっているわけなんです。この金大中氏が拉致されたことから、その後の扱い全体に関して、やっぱり世界正義民主主義というものが通用しなければいけないという観点からひとつ大衆運動も盛り上がっている。ただ、それだけじゃなくて、日本は深く責任を負っていると思うんですね。拉致事件で金大中氏自身の人権もじゅうりんした。日本の主権も侵された。で、金大中氏の原状回復を求めても、ついにそれができないままでいたことが今回の死刑判決まで続いているわけなんです。ところが、政治決着という形で大変疑惑のある解決を日本政府はしつつある。こういうことに対して私は深い責任日本政府は負わなければならない、こう思っているんです。  そこで一番最初に、金大中氏の死刑判決に対して、その救出のために韓民統の人たちが国連の人権委員会に訴えたいということで、出国と再入国の要請をしておりますが、これまでの、昨日の衆議院の外務委員会での御答弁などでも、これは金大中さんの死刑判決の問題に悪影響があってはいけないので日本政府はこれは許可しない方向であるような発言をしていらっしゃるわけなんですね。私はこの問題がもし政府の発言として何らかした場合に、それが金大中さんに不利に動いてはいけませんからお答えは求めませんけれども、当然のこととして去年、外務委員会で国際人権規約を承認し、そして国会で批准した。あの国際人権規約の十二条には、合法的に国内に滞在している外国人が、領土内から出国することも、また、再入国することも自由であると。つまり、あの人権規約の、B規約の方ですね、この中の権利というのは内外人無差別の権利を保障しているわけなんです。ところが、出入国管理令その他で朝鮮国籍あるいは韓国籍の人々に対して大変厳しい制限をつけている。このことに対してもやっぱり国際人権規約に沿って、これまでの態度を政府は改めなければならないものであるということをまず最初に申し上げ、そして、今回も韓国側が旅券は出さないと、これはもう韓国政府の方針でどうしようもないという場合に、法務省または赤十字社の旅券——渡航証明ですか、それを出すぐらいのことは当然日本政府として、自分たちの主権をここで行使してほしいと、韓国の圧力でどうも決断ができないなんというようなことでは非常に困るということを私は最初に申し上げておきたいと思います。  どうも私は外務当局が、歴代の牛場、園田、大来、それから今度は伊東外務大臣、それぞれどちらかといえば、私はリベラルな大臣でいらしたと、ところが、どうも外務当局がどんどんどんどんタカ派的な方向に進みつつある、その点を私は問題にしておきたいと思います。それは、ですから私の方はこの韓民統の人たちの再入国は許す方向で対処すべきであるということを注文として申し上げて、答弁はここでは要求しないことにいたします。  そこで、金大中氏の死刑判決についてなんですけれども、一体日本政府は何を根拠にしてこれが日韓政治決着に反しないというふうに判断しているのか、ということを明らかにしていただきたいと思います。  で、外務当局は在韓大使館から判決要旨というのを取り寄せた。そして、最初のうちはこれは内乱罪が適用されたんだと、国家保安法の罪というのは適用されていない、国家保安法、つまり、今回の判決でいまでは国家保安法の第一条の第一号ですか、それに該当するということで、韓国側は死刑の判決をしたんだという判決要旨を向こう側が提供した。ところが外務省は、これももうすでに衆議院でも議論されておりましたけれども最初は内乱罪だと、それは在外韓国大使館の職員が二人公判廷に入っていってメモをしてきたと、そのメモによると内乱罪だったと、だからこれは政治決着に違反しないというふうに発表なすった。その後判決要旨を手に入れたかどうか、この辺は私は外務当局から聞きたいと思いますが、手に入れた後になって送ってきているけれども、その判決要旨によって国家保安法第一条第一号、すなわち反国家的な団体への参加と、この条項に当たっているという判断を固めたとか、確認したとかということが発表されているんですね。一体これはどういうことなんですか。つまり、韓国側と日本の出先の大使館との間、その要旨をずっとお互いに説明し合って、ああこれは国家保安法第一条第一号を適用すべきものであるというふうにわが方も判断したということなんですか、韓国側がそう言っているからそのように確認したということなんですか、まず、そのことを伺いたい。その辺が非常に不明朗でよくわからないんですね。これ外務当局、アジア局長から。
  41. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 最初私からちょっとおわびを申し上げますが、先生がおっしゃいました、最初館員が公判廷へ入っておりまして電話をかけてきた、その電話が内乱罪というようなことの電話であったということで、なるべく早く知らせた方がいいというので新聞社に第一報として知らせたと、その後すぐにそれを訂正しまして、内乱罪じゃない、国家保安法だというようなことを第二報で出し、最近向こうから、要旨——後で事務当局、政府委員から説明をしますが、変わってきたのはおかしいじゃないかという先生お話があったわけでございますが、第一報、公判廷にいて聞いた者が間違って電話をかけてきて、それを第一報で出したということは、これは何とも弁解の余地のないことでございまして、そのミスにつきましては、これは私責任者として本当におわびを申し上げる次第でございます。後の点はいま政府委員から御説明を申し上げます。
  42. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 先般明らかにされました金大中氏に対する第一審判決の判決理由要旨につきましては、いま大臣からお話がありましたように、公判を傍聴したわが方大使館員のメモでは十分を期せないということで、韓国外務部に対しましてその内容の確認を求めました。そして先方から入手したものがこの判決理由要旨ということでございます。  先生御指摘のとおり、第一審判決の直後、傍聴していました大使館員からの電話連絡では内乱罪ということで死刑ではないかということで、その旨外務省からも関係者の方、報道関係者の方に明らかにしたわけでございますけれども、この判決理由要旨によれば、公訴状に記載されている各法あるいは条令が適用されるというように判決理由要旨の第三項に書いてございますので、金大中氏に対しては国家保安法、これは判決——告訴状に書いてございまして、国家保安法が適用されていると理解せざるを得ないということでございます。現実問題といたしまして、死刑に相当する罪名と申しますか、適用法令は国家保安法第一条第一号しかないということで、私どもとしては国家保安法が適用されていると判断せざるを得ないということでございます。
  43. 田中寿美子

    田中寿美子君 だからやっぱりそれは推測なんですね。外務当局はそういう推測をしていらっしゃる。そしてそれは韓国側の意思でもあると、そこで確認し合ったということですか。
  44. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 韓国側から確認的に説明を受けておりますのは、「金大中氏に対する判決理由要旨」、この点でございまして、ただいま申しました第三項すなわち「公訴状記載の各該当法条を適用した。」ということで国家保安法が起訴状に記載されておりますので、国家保安法が適用されたんだろうという点が一点、それからさらに、金大中氏に対する部分については、「反国家団体関連部分については、友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、被告人が韓民統議長の身分を引続き維持しつつ国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠に依り本件を判断したことを明らかにする次第である。」と。つまり、金大中氏に対する反国家団体関連部分ということが記載されておりますので、やはり反国家団体を規定している国家保安法が適用されているということが第四項からも明らかであろうということでございます。国家保安法が適用されているということを改めて韓国側から確認を得ているわけではございません。
  45. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまのお話ですと、国家保安法が適用されているというのもこちら側の推測だということになりますね。そして、国家保安法の中で、日本に滞在中の、いわゆる韓民統の議長であったという、そういう行動に関しては問われていないというふうに外務当局が判断される根拠は何なんですか。
  46. 渡辺幸治

    政府委員(渡辺幸治君) 再び「金大中氏に対する判決理由要旨」に即して解釈するわけでございますけれども、この判決理由要旨によりますと、「公訴状記載の公訴事実」に従って判決を下すということでございます。しかるところ、公訴状におきましては、金大中氏の韓民統とのかかわり合いについては、背景説明について一九七八年八月以前の点が記載されており、訴因として一九七八年十二月以降の事実が書かれているということで、かつ金大中氏が韓民統の議長になったのは一九七三年八月十三日か十五日かと思いましたけれども日本を離れてからということでございました。金大中氏が「韓民統議長の身分を引続き維持しつつ」云々ということは、日本を離れてからの事実ということで、その点は韓国側としては整理して扱っているというように判断しております。
  47. 田中寿美子

    田中寿美子君 すべて、こちら側が向こうのやっていることについて判断しているのにすぎないわけですね。日韓関係は友邦国関係だというのであれば、判決要旨じゃなくて判決文も公判の記録も起訴状もみんなきちっと手に入れて、本当にそれが国家保安法違反というふうに問われているのか、そして、政府が考えているように、これはだから日韓政治決着に触れないんだという判断をなさっているのが正しいのかどうか。何か非常に私どもとしてはおかしい。日本側はこれだけ責任のある金大中氏の問題に関して、韓国側の説明をこちらで推測して、そして政治決着に違反しないというふうな言い方をなさる。一体だれが何によってそういう政治決着に触れないというようなことについての有権的な解釈をするのですか、しているのですか。
  48. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) その点、私から申し上げます。  実は、私外務大臣になる前、官房長官時代に、向こうから総理以下みんな、大平総理の合同葬儀のときに来られたときも私話しましたことは、金大中氏という人について日本では特殊な関心を持っておるし、政治決着があり、日本における言動は問わないということになっているんだから、十分その点は配慮をしてもらいたいし、身辺について重大な関心があります。持っていますということをその当時伝え、大来外務大臣も向こうの外務大臣に伝えるということがあったわけでございます。大使からも伝えました。外務大臣になりましてからも、日本の大使に来てもらいましてそのことを話し、何回も実は向こうに伝え、私も日本に来ている大使に伝えるというようなことをした中に、一つは政治決着があるので、日本における言動はこれは問わないということが原則なんだからということを、私、話したのでございます。  それで、いま政府委員からも説明しましたように、起訴状の中でも日本における言動というのは、これは背景説明なんで訴因でないという説明を向こうから何回も聞きましたし、また今度の判決要旨でも「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ」ということをつけまして、「国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠に依り」ということを言っているわけでございまして、前から日本側が言ったことと、向こうに期待を伝えたことと平仄が合っているということがございますので、私どもはこれは日韓関係でつくった政治決着に違反はしないということに解釈しているわけでございまして、どこが判断するかということになりますと、これは日本の政府、韓国の政府双方だというふうに私は思います。
  49. 田中寿美子

    田中寿美子君 法的なその根拠というよりは、政治的に韓国側の考え方日本側の考え方を合わせたという感じがしまして、非常にその点はあいまいです。もっときちっとその点が説明できるようにしていただかなければ困ると思います。  先日、九日、十日、東京で金大中「裁判」調査日本委員会というのを、救出運動をしている人たちがつくっておりまして、国民法廷を開きました。その際に、金大中氏の死刑判決というものは全く不当であるという結論を、国民のまあ模擬裁判ですね、ここで出したわけなんですが、その論拠の中に、日弁連の小池義夫弁護士の議論の中に、韓民統に関する活動について国内——というのは韓国内ですね、韓国内における活動について起訴すること自体政治決着に触れると。なぜなら、裁判において公訴事実の同一性というのがあって、密接に関連し合うところのその事実のうち一部を公訴して、そしてその一連の事実の中から一部だけを公訴するなんてこと、これはもう全く不合理なことである。公訴事実の同一性ということを主張して、そして、これは法律用語で私も初めて見たわけなんですけれども、建物二階論というのがある。一階は日本での韓民統関係の活動、二階は韓国内での韓民統の議長としての活動だというふうに韓国側は言っているけど、一階を外して二階だけの事実を起訴したり、それに基づいて判決を下すということは非常に不当なことであるということを言っているんですがね、その議論を外務当局の方、どういうふうにお思いになりますか。
  50. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 先般も国会におきまして起訴事実の同一性ということを、問題を提起された委員の方がおられますが、私どもすなわち外務当局として、この取り扱いにつきまして、国内である場合には法務省の方の御説明に従うべきであり、また韓国につきましては、これがどういう解釈に基づいて運用されているか有権的に御説明できる立場にないと、かように考えております。
  51. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、この判決について有権的な解釈をするのは韓国側であると、こういうことですか。
  52. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) さようでございます。
  53. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、日本側は、その韓国側の説明に従って政治決着に抵触しないというふうにこちらも判断したということになりますね。なぜこの問題に関して、韓国の言うなりにしか日本側が解釈できないのか、ということは非常に問題であると思います。  で、ただちょっと時間が推移いたしますので、外務大臣ね、衆議院の予算委員会でもあるいは外務委員会でも、まだこれから——要求されているところの起訴状だとか公判記録だとか判決文ですね、要旨じゃなくて——そういうものを要求していて、手に入る可能性があるかのような答弁をしていらっしゃいますけれども、果たしてそれはどうなんですか。その可能性があると、まあ外務当局もそうお思いになっていらっしゃるんですか。そして外務大臣はね、それを見た上で政治決着に抵触しているかしていないかをまだ判断する余地があるようなお言葉がございましたね。いかがですか。
  54. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 判決文の入手につきましては、これは引き続きもう外務省責任者挙げて努力をするつもりでございます。私もまた向こうの大使に会ってその話をしようというふうに思っているわけでございますが、今後も続けてまいります。  手に入るかどうかということにつきましては、これはいま何とも私から申し上げかねるのでございますが、いままでは、いままでのところは向こうの軍法会議の法律とかを理由にしまして、なかなか訴訟関係以外には出さないんだというようなことで厳しい態度だということはもうそのとおりでございます。ただ私は、政治決着をしたことでもあり、政治的な考慮で出してもらいたいということを言うつもりでございます。見通しはいまのところわかりません。  ただ最後に言われた点は、私は、この要旨でもこれは何回もこちらから言っていたことと符合することがございますし、政治決着にこれは違反したものではないという判断を私はいま持っているわけでございます。
  55. 田中寿美子

    田中寿美子君 私ども政治決着そのものには賛成じゃない。政治決着を見直せと、撤回せよという要求をこれまでずっとしてきたわけです。しかしながら、日本の政府と韓国政府の間では政治決着で解決したということにしている、その政治決着にすら抵触しているおそれがあるようなこの判決、あるいはその投獄その他全部ですけれども、そういうことに対して日本側が日韓関係は大変特別の友邦国なんだというふうに考えていられるにもかかわらずそういうものを一切出さないという、これは政府間の非常に問題だと思いますので、さらに強く要求をしていただかなければならないと思います。  それから、福田さんが訪韓しましたですね。そのときの福田さんの訪韓した後の感想について、これは十月四日のサンケイ新聞ですが、それを見たんですけれども、まず全斗煥体制になってから日本の政府は、必ずしも非常に積極的に全斗煥体制といい関係にあるのではないかのように思わせていらっしゃいます。しかし、私は、外務当局の方は先行して友好関係をつくりつつあるようにまあ想像できます。大変外務当局はそういう点が進み過ぎているような感じがする。で、一体これまでの深い日韓の間の経済関係なんかですね、財界がどんな態度をとっているのか。そして福田さんが訪韓したことは、つまり政治的に必ずしもまだ十分全斗煥体制日本政治レベルのパイプが十分通じていないので、パイプをつけに行ったという感じが私どもはいたします。それで福田さん帰ってきてから、金大中の問題については静かに黙っている方がいいと、このインタビューの記事の中には、全斗煥大統領が、あれは裁判なんだから、いまは口出しはできない。しかし裁判後に何がしかの裁量ができる立場に大統領というものはあると、しかし自分の周辺には非常な強硬論があると、それだから、外圧によって自分が手心を加えるというようなことになっては自分も指導できないというような、つまり平たく言えば全斗煥体制の大統領の付近には非常な強い右翼的なタカ派、強硬な軍人たちその他がいると、だから、自分が何がしかの裁量権があって、後に死一等を減ずるというようなことは、仮にしようとしても相当強硬論がいるから、だから必ずしもそういうことはできない。それが日本などの運動の外圧によって自分がやるということになると、自分政治体制が問われるというようなことを言っていられたということは、福田さんのインタビューの記事にあるわけですね。こういうような状況にあるということですね、非常に問題——まあ金大中さん自身が非常に危ないと思いますけれども、福田さんが訪韓されたことは、政治的なパイプを通じる先兵の役割り、まあその前に春日一幸さんも行かれた、金丸さんも行かれていますが、政治的なパイプを通ずるための一つの動きであったというふうに私は解釈できる。だけど、それをどうお考えになるか、そうして財界というのも、日本政府そのものがゴーサインを出さないと、非常に大っぴらにもとのような日韓関係を続けていくことはできないということもあって、大物の福田さんに行ってもらって、やがては日本政府の側からも大物が行って、そうして全斗煥体制とうまくいくようにすると、こういう方向が想像できるのですけれどもね。これ、外務当局はどういうふうにお考えですか。
  56. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 福田元総理の訪韓でございますが、行かれるときは、亡くなりました朴大統領の墓参に行くということを言っておられたことを私も承知しております。お帰りになりましてから、実は私はお二人でさしで会うということをしておりませんので、新聞紙上で拝見するだけでございますので、私はそれについてとやかく申し上げることはできないわけでございますが、外務当局としましては、私もこの参議院のあれは内閣委員会でございましたか、ずうっと前に御答弁したことがあるのですが、外務当局としての考え方は一貫して変わらないと、金大中氏の身辺について重大関心といいますか、憂慮といいますか、そういうことを向こうにその後も伝えるということでやっておるわけでございまして、福田元総理が行かれたから、外務当局の態度が変わるとか変わらぬとか、そういうことはない。私も二人でお会いしてそういうお話を聞いたことはございませんので、前と同じ姿勢でこの問題には取り組むというつもりでございます。
  57. 田中寿美子

    田中寿美子君 福田さんは、だから静かにしておれと、あるいは大統領のところで死一等を減ずることもあるかもしれないが、しかし騒ぐと自分の周辺の強い連中が危ないというような言い方をしていらっしゃるわけなんですがね。  それで鈴木総理は、初めのころは、もし金大中氏が死刑にでもなるようになったら重大な対応をしなければいけないと、日韓経済協力にも影響があり得るというようなことをおっしゃっていたのですが、そのうちに総理の言い方はだんだん変わってきまして、そしてあれは韓国の国内問題だ、だから金大中氏の身の上については重大な関心を持つけれども、韓国の国内問題だというふうに後退してきたから、だから韓国の側で大変鈴木総理はりっぱな発言をするようになったとほめられるようになってきた。どうもそっちの方向へ方向へ、そして何が何でも政治決着に抵触しないという方向にどんな事実が起こっても持っていこうとなさる。私はそれは大変重大な、日韓関係というものは一体どういう関係なのか、非常に疑惑を感じるわけなんですね。おかしくないですか。
  58. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 政治決着自身は、あの当時向こうからも首相が来、こちらの総理と本当に最高レベルで大局に立って政治的な了解といいますか、ああいう決着をやったのでございまして、あれの見直しというような問題は、公権力が介入しているかどうかということがはっきりしたときに見直すこともあり得るということで、捜査当局はずっと捜査を続けているというのが現状でございます。  鈴木総理が一回テレビかなんかでおっしゃったことをいま先生が言っておられるんだと思うのでございますが、外務当局としては、ここで私答弁したことがあるんですが、本当に極刑というようなことがあると日本の国内の世論はいろいろむずかしい世論が出てくるだろう、そうすれば経済問題とかいろんな問題に波及するおそれがある、日韓関係にひびが入るおそれがあるので、私どもは身辺について重大な関心、憂慮していると、そういう本当に友好関係であるべき日韓関係にひびが入ることをおそれるからということを私は国会で答弁したことがあるんですが、その外務当局の考えは一緒でございます。
  59. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま韓国は経済状態非常に悪いですね、マイナス二%の成長、そういう状況の中で日本の財界との関係あるいは日本経済援助を非常に求めていると、だから日韓定期閣僚会議など早くやってほしいというのが向こうの意向だと思いますが、何やら、私見ておりますと、もし金大中さんの死一等減ずるならば日韓定期閣僚会議を開いてやってもいいんではないかと言わぬばかりの、何かバーゲンをしているような感じがいたしますね。そういうことはありませんか。
  60. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私どもはそういうことは考えておりません。いまはあの裁判の推移を重大関心を持って見守っていることと、それから韓国の全斗煥大統領が憲法の草案を出して国民投票に付すると、そしてその憲法に基づいて新しい政府をつくっていくんだという政治のプログラム、改革のプログラムを発表しているわけでございます。でございますので、裁判の成り行きを注視していることとともに、韓国がそういう政治改革を日程どおりやっていくということもこれ非常に韓国の内政上大切なことでございますので、そういうことがうまくずっと行われるのかどうかということも見ているというのが現状でございまして、先生がおっしゃいましたように、どうなったらどうするとか、そういうようなことは一切何も言っておりませんし、その場その場になってどれが正しい日本やり方かということを自主的に私どもは判断をしていこうと思っております。
  61. 田中寿美子

    田中寿美子君 では、日韓定期閣僚会議はいつどういう状況になったら開こうと考えていらっしゃるんですか。
  62. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 具体的にまだいつどういうことになったらということを考えてはおりませんが、いまの情勢ではまだそういうものを開くような環境にないと、政治改革の問題もこれからでございますし、まだそういう環境にないという判断で、いつやるとも、どういう場合にやるともまだ中で相談をしておりません。
  63. 田中寿美子

    田中寿美子君 私はそのようなことがみんな金大中氏の運命にもかけられているような感じがします。時間がありませんから、アメリカのかかわり方なども問題にしたがったんですが、この際金大中氏事件の問題についてはまだ非常に釈然としないものばかりで、日本責任をもっと感じてその救出のためには政府がもっと積極的に動いてほしいということを要望いたしておきます。  イランイラク戦争の関係については戸叶議員がお聞きにもなりましたが、私も、この中東におけるこういうイランとイラクという二つの国の紛争に関連して、あの地域が石油産油地域であって非常に重要な戦略的な場所にあるということから非常に心配しておりますが、いまのところ米ソ両方ともこれにかかわり合ってはいけないという態度を持っているらしい。しかし、それぞれの湾岸諸国の中にはイラクの側につこうとしているものもあり、イランを支援しようとしているものもあって、もしそれが実際にどんどんふくらんでいきますと戦争が拡大する心配もあるという、非常に危ない状況にあると思うんですね。こういうときに日本のとるべき態度というのはイラン、イラク両当国にその意思を伝えたなんという程度のことではない、もっと積極的に動くべきだと思うんですが、一点、アメリカがホルムズ海峡のところに合同艦隊構想をぶち上げた、そういう呼びかけに対して、私は日本は絶対に協力すべきではないと思いますが、外務省は絶対にそれには協力しないという立場をとっていらっしゃいますか。
  64. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) イラン、イラクの問題に第三国が介入すべきじゃないとおっしゃるのはそのとおりで、私も同感でございまして、二十四日グロムイコ外相に会ったときも真っ先に日ソ間の問題の前にソ連は介入すべきじゃないということを言って、すぐその介入しないという回答をアメリカのマスキーにも伝え、アメリカも介入すべきじゃないということを言ったわけでございまして、その考え方はいまでも同じ、湾岸諸国も日本も不介入中立であるべきだという態度をとっております。  それから、ホルムズ海峡の合同パトロールの問題でございますが、まだこれアメリカから一度もそういう協議は受けたことはないわけでございます。アメリカも恐らく日本がそういうところには参加できないと、合同パトロールに日本の自衛艦が行って参加するというようなことはできないだろうということを理解していると思うのでございまして、まだ一度も連絡、協議を受けたことはございません。恐らく言ってこないと思うのでございますが、ありましても、武力行使につながるようなことはこれは日本の自衛隊法はもちろんでございますし、憲法にも関係することでございますから、当然そういうものには参加は、自衛艦を派遣して参加するとか、そういうことはないということを申し上げておきます。
  65. 田中寿美子

    田中寿美子君 アメリカ側から正式に外務省当局にそういう話がちっともなかったのにしては、相当具体的な報道が流されているのは一体これはどういうことかというふうに、すべて今度のイランイラク戦争に関して大変報道は乱れ飛んでおりまして、イスラエル側の報道が出たり、アメリカ側の報道が出たり、西側の報道、どっちもどこまで信頼していいかわからないけれども、この合同艦隊構想については、外務省立場としてはいま大臣がおっしゃったような立場をとっているんだというふうに報道までされているわけなんです。ところが、これは自民党の中の憲法改正のグループ、そこのところの会合ではある学者が、ホルムズ海峡が危険なときにあそこの防衛のために自衛隊を派遣することすらできないようないまの憲法は困るというふうに言って、いかにもいまやソ連があそこのところに動き出すと、それに対してアメリカその他西側防衛していくのに、それに日本も参加もできないようなことではというふうにあおっている、こういう立場をどうお思いになりますか、そういう考え方を。
  66. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いままでアメリカから協議を受けたことはないわけでございまして、協議を受けたのは、きのうもたしか衆議院でお答えしたのでございますが、海上の保険料が高くなるというようなことの話があったことは、これは確かでございます。しかし、いままで協議は、日本がどうしてくれというふうな協議は、これはないわけでございます。何かあれば恐らく通報してくると思うのでございますが、その程度だと私は思いますが、協議はございません。  それで、集団自衛権ということにいま先生の御質問は関係するわけでございますが、武力行使を伴うような、そういう集団自衛権がない日本憲法は、という意見があるということでございましたが、これはまあ人により、政治家によりいろいろ意見のあるところだと思うわけでございますが、日本憲法は個別的な自衛権ということで、専守防衛、国を守っていくんだということの、平和主義ということが基本でございますから、私はそれはそれでいいというふうに考えております。
  67. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまの外務大臣の、その武力行使につながる派兵は憲法違反であると思うという立場ですね。これは武力行使でなければ、あそこにアメリカから提案があったとして、それ以外の、これは報道されたときには、日本憲法があるから武力を派遣することはできないだろう、その場合には経費の負担をさせるべきだというようなことまで出てるんでね。私は、これは外務省当局がその点についてどういう情報をとっていらっしゃるか。そして大臣は武力行使につながる行動はしない、しかしそれは、もし武力行使でなければ、別の形での自衛隊関係の者の派遣ならばよろしいというようなお考えなんですか。
  68. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは憲法論でございますので、法制局から本当は答弁をするのが一番いいと思うんですが、国連の中でもあるいは国連の平和維持活動という中にも全然武力行使ということを考えない、ただ監視団とか、あるいは武力行使を伴う平和維持軍とか、いろんな内容があるわけでございます。それで、武力行使を伴うものは、これは当然憲法でできないわけでございますが、法解釈、憲法解釈からすれば武力行使を伴わない、たとえば自衛隊の医務官が行くとか、何とか、そういうことは、これは憲法上は認められているということは前の高辻法制局長官なんかが御答弁をしているのでございます。その点は一致しているわけでございますが、ただ自衛隊法はそういうことも認めてないということですから、自衛隊法上は、それはできないということが法解釈としては私はそういうことだというふうに思っております。  ただ私は、なるべく平和的にものを解決する、あるいは国連協力もなるべく平和的に協力するということでございまして、政治論とすれば人的に国連協力するということでも、自衛隊以外のシビリアンがナミビアの選挙の監視に出るとか、たとえば自治省の人が行くとか、あるいは通信機材を応援するとか、あるいは厚生省関係のお医者さんが国連の活動に協力するとかいうような、なるべくもうそれは平和的な協力ということが政治的には望ましい、法律解釈論等は一応おきまして、そういう考え方を持っております。
  69. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう時間が少なくなって、私はいまの御発言に関してはもっともっといろいろ議論をしたいんですが、外務大臣みずからお触れになりましたので、国連の平和維持活動というのは私は非常に重要な、国連の設立の一番の大きな目的だと思いますからいいと思うんですけれども、しかし、いまの日本は日米安保条約のもとにあるわけなんです。こういう条約のもとでその海外派兵につながるような行動をするということは、どっちを守るか、だれを守るかということになります。いまの国連を構成している国はもう四分の三が第三世界である。それにもかかわらず日本は、これは鈴木総理大臣西側との協力だけを強調していらっしゃる。伊東外務大臣は就任後間もなくアジア、ASEAN諸国からアラブ諸国まで回っていらっしゃいました。ですから、日本がアジアの一員としての立場を強力に主張しなかったら今後国連の中で果たして日本がどの程度の発言権を持つことができるかという問題がある。国連中心主義ということが本来日本外交の一つの柱だった。ところがいまやアメリカとの協調、自由世界との協調西側同盟といいますか、そういうところに集中されてきてしまっている外交姿勢を私は、外務大臣が盛んにお答えになりますけれども、私は外務当局に非常にそういう志向が強いということについていま指摘だけしておいて、それについては少しまたいつかの機会に討議したいと思います。  したがって、武力行使につながらないならば平和維持活動の一つとしていま外務大臣が挙げられたようなそういうことができるんだというふうにおっしゃったことについて、それならば日本国連の中でどこかに傾いた形、つまり、西側同盟の一員としての強力な立場という形に傾いているんではなくて、公正な中立の立場になったときに私は改めて平和維持活動に参加すべきだというふうに考えております。  そこで、イラン、イラクの今度の紛争はその前から、もう七〇年代後半といいますか、中盤ごろからあの中東の、特に、石油産出国へ世界じゅうの武器輸出というのはものすごいんですね。もうちょっと時間がなくなって、データを説明していただくといいと思うんですけれども、ストックホルム平和問題研究所の発表によりましても、あそこの中東諸国、特にイランはアメリカといい関係にあった時期、通常兵器を、しかも超近代的な通常兵器を大量に買い込んでいると。主として西側から買い込んでいる。ソ連からも買っております。しかしイラクはソ連側からの方がたくさん買い込んでおるし、東側からも買い込んでいると。その他の国々がオイルマネーを持っているから近代兵器をたくさん買い込んで、こんなに武器の輸出が盛んになっていったらこれはどこかで戦争を起こして武器を使わなかったら軍需メーカーは立ち行かない、戦争が起こるべき状況になっていたというふうに私は思うんですね。そこで、今度イラクから——この春ごろからイラン、イラクの間の紛争はすでに起こりつつあって、そしてそのころから日本の財界が武器輸出をということを言い出している。それから、日本への発注がイラクが戦争を始めて間もなく、九月の十七日ごろでしたか、の新聞に大量発注が日本のトヨタとかそれから日産などに来ている。乗用車のみならずトラックとかランドクルーザーとか、いままで年間三、四百台だったものが四千台になった。そして延べにして発注はイラクだけで六万台なんという驚くべき数字の発注があるというようなことは、これは現地に行けば武器に転用できますね。軍用車にすることもできる。そういうような状況になっていることについて政府側はどういう指導をなさったのか。いまイラン、イラク両側が武器を使いながら、もし応援軍が両方についてしまったら戦争が長引くと、そういうときに武器に転用できるような日本の物資を——民間だから知らないというふうに政府はいつも言う。私はそんな態度は許されないと思うんですね。こういうことについての指導をどういうふうになさっているか、通産省の方及び外務省の当局に伺います。
  70. 横山太蔵

    説明員(横山太蔵君) お答え申し上げます。  先生ただいま御質問にございましたように、ことしの、正確に申しますと六月から八月ごろにかけまして、イラクから御指摘のような大量の発注があったことは事実でございまして、さように私どもも聞いております。しかし、これはことしに始まったことではございませんで、イラクは去年からほぼ同様の発注をいたしてまいっておりまして、私どもは、このような発注が特に今回の紛争に関係のあるものだというふうには考えておりません。
  71. 田中寿美子

    田中寿美子君 だから私が申しましたでしょう。その両方の紛争が相当激しくなってきたのはことしの春だ。しかし、その前から、七五年ごろから大量の武器が中東地域の諸国から発注されてきていると。そのこと自体非常に心配なことであるということを私は平和を願う立場から言っているのであって、通産省は、非常に木で鼻をくくったように、そんなものは問題ありません、民間のことだから知りませんというふうにおっしゃる。外務省、それでよろしいんですか。
  72. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生おっしゃることは非常にむずかしい問題だと思います。そこまで政府が何かできるかということですが、政府は、武器三原則というのを、輸出の三原則を決めているわけで、それに基づいて三木総理からまたそれを敷衍するような統一見解が出たわけでございます。あれからいきますと、そこまでやることはなかなかむずかしいということなわけでございまして、恐らく武器輸出三原則の、そこまでさかのぼっていかないと、私はこれは解決しない問題だと、こう思うわけでございまして、いまの状態では、いま通産省から答弁がありましたが、乗用車とかトラックを輸出することが、それが武器三原則に反するかと言われれば、そうじゃないと、こういうのは木で鼻をくくったようにとおっしゃいますけれども、そう言わざるを得ないようなことだと、私はそうだと思うんです。ですから、そこまでやれるかどうかという問題については、これはよっぽど高度の政治判断に立って考えなけりゃならぬ問題だと思いますが、現状ではそこまでに至っておりませんということだけは申し上げておきます。
  73. 田中寿美子

    田中寿美子君 現状では、データによればちゃんとたくさんの物がすでに行っているし、そして発注も来ているというのが事実です。それじゃ、軍用燃料とか石油製品についての注文がイラン、イラク両方から来ているというふうに報道されている事実はどうですか。
  74. 浜岡平一

    説明員(浜岡平一君) 御指摘のように、そういう報道が散見されるわけでございますが、私どもに対しまして石油製品をイランあるいはイラク向けに輸出したいというような具体的な相談は一切参っておりません。  それから念のため、シラミつぶしというわけにはまいりませんが、イラン、イラクとの間で原油あるいは石油製品の取引をやっております重立った企業に当たってみましたけれども、具体的な引き合いを受けているという状況ではございません。
  75. 田中寿美子

    田中寿美子君 それならば、今後のことですが、しかし報道でそういう発注が来ていると、それに対して政府側は交戦している状況のところに軍用燃料を送るとかあるいは石油製品を送るとかいうようなことは慎まなければならないが、戦争が終わって復興期に入ったらよろしいというようなことまで、これはテレビなどでのニュースですら報道されると、こういうことは今度のイラン・イラク紛争に関してのその報道そのものが両側から全く乱れ飛んでおり、またいまのような問題も日本を含めて、そういう報道合戦といいますか、それに巻き込まれているような状況で、外務省が情報をきちっとこういう現地からの状況などについてどうやって把握なさるのか、それは非常に不足していると思う。外務当局いかがですか、どうやってその情報とっていらっしゃるんですか。
  76. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げますが、イラン、イラク、直接的にはそこの大使館からの情報でございますが、湾岸諸国とかもっと広く世界じゅうに出ている大使館から、アメリカとかソ連はもちろんでございますが、イラン、イラクに関するいろんな情報があるわけでございますので、それこそ全世界と言っていい大使館から情報はとって、それを分析、解析するわけですが、その場合は当然民間の商社の人からの情報もございますし、あるいは油の問題でございますと通産省に来ている情報もございますので、そういうものも利用させてもらいながら解析をしているというやり方でやっております。ただ、それが十分であるかどうかという先生の御批判でございますが、なるべく正確なものをつかみたいという努力をやっているところでございます。
  77. 田中寿美子

    田中寿美子君 外務省の情報活動というのは非常に私は不備だというふうに思います。新聞社もいろいろといろいろな情報をつかんで発表しているのだと思いますが、そういうときに政府の情報はこうなんであるということがわかるようにしてもらわないと、やはり私どもはマスコミによる情報によってしかこれは判断の基礎になるものがないわけですね。何か外務省の活動は非常に手おくれである。いまのような体制でよろしいのですか。
  78. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 不十分だと激励をいただいたわけでございますが、毎年、定員の問題でございますとか、特に定員でございますが、公館が百六十四あるうち五十四、三分の一ぐらいは五人以下だということでございます。でございますので、われわれとしましては、これはもう数をふやすだけじゃなく、確かにその人、人の資質をりっぱにする、能力をつけていくということが前提でございますが、毎年、行政改革で定員が減る中で、わずかでございますが、定員増とかということをやりまして、外交体制の充実ということをやっているわけでございますので、どうか先生もその点御理解いただいて、御協力いただきますようにお願いいたします。
  79. 田中寿美子

    田中寿美子君 中東地域というのは非常に重要な地域になって、日本は石油の獲得ができるかできないかばっかり気にしているみたいですけれども、やっぱりあちらにはアラビア語を使うアラブ諸国がたくさんあるわけですから、それができるような大使館の人あるいは外務省関係の者が相当おりませんと、私は情報はもう二番せんじ、三番せんじの情報になってしまうというふうに思いますので、これはもう特別の考え方で急がないとだめだと思います。  以上で私、終わります。
  80. 秦野章

    委員長秦野章君) 午後一時に再開することとして休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時十分開会
  81. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  82. 宮崎正義

    宮崎正義君 私は、きょうは北方領土問題にしぼりまして質問をいたしたいと思います。  先立ちまして、外務大臣が十月の二十五、二十六日に視察に行かれるやの話を報道等で聞いているわけですが、このことについて一言お答えを願いたいと思います。
  83. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま御質問の北方領土視察に根室に行く問題でございますが、先生承知のように、この間国連総会の一般討論演説でも北方領土の問題に触れたわけでございますし、グロムイコ外相にも北方領土の問題、返還の問題、軍備充実は国民の感情を逆なでするようなものだというようなことで話し合いをしてきたわけでございまして、これから日ソ交渉というのは、日ソの友好関係というものはどういうふうにしていくか、非常にむずかしい問題があるわけでございますが、北方領土をこの目で見まして、日ソのこれからの取り組み方のまず第一歩にしようということで視察に参るという予定でございます。
  84. 宮崎正義

    宮崎正義君 そこで、公務大変御多忙の中、根室市長である寺嶋参考人にきょうは来ていただいておりますので、まず最近における情勢といいますか現況といいますか、それらのことを踏まえて御意見等、また要望等がございますようでしたらば伺いたいと思います。
  85. 寺嶋伊弉雄

    参考人寺嶋伊弉雄君) いまの御質問でございますけれども——歯を治療中なんで発音がちょっと不明瞭でございますんですがお許しをいただきたいと思います。  御質問の最近の根室地方の北方領土問題の関連の状況でございますけれども、すでに新聞等でも報道されて御存じだと思いますけれども、昨年の一月の末のソ連軍事基地の報道以来、根室地方の住民はやはり潜在的な脅威を感じておる、週刊誌のように大げさではございませんけれども、心の中には不安がある、そういう状況でございます。特に最近の動きといたしましては、ソ連の警備艇によるところの拿捕の訓練の問題が写真で報道されております。それからまた、一部には水晶島に地下ごうをつくっているんじゃないかと、こういうようなお話もあり、私自身が目撃したのでは、従前はそういう光景はありませんでしたけれども、この六月ごろと記憶しておりますけれども、戦車のような大型の車両が走っていたと、兵隊の数も十人ないし二十人が双眼鏡でながめられたと、こういう状況、そういう光景はいままでございませんでした。そういう意味で根室地方の住民は脅威を感じておるわけであります。  さらにまた、漁船員にいたしましても罰金攻勢が非常に多いというそういうことで、その罰金も支払いを三百万なら三百万と言い渡される。非常に高いということで北海道庁あるいは海上保安庁を通さないで直接色丹島に行って交渉をすると十分の一くらいにまけてもらっている、そういう実例が最近二、三ある。そういうことから、非常に一つの何といいますか、決まりがないと申しましょうか、そういう不安定な要素があるということも一つの要因になっております。  で、引き揚げてきてから三十五年でございますけれども、よくなった人は急速に生活が伸びたけれども、まあ何と申しましょうか生活力といいますか、そういうものがない方はやはり依然として小漁師をしなければならない、こういうふうに非常に格差がついているのが現状の実態でございます。こういうことが言われると思います。で、こういうような状況でしかも三十五年も返らないということになりますというと、漁民にもまた、根室は漁業の町でございますから七割ないし八割が漁業に何らかの形でつながりがあると、そういう状況なものですから、もう三十五年もたって軍事基地ができたということになると、もう当然ソ連は返さないのではないかと、こういう空気がだんだん濃厚になってまいりまして、経済は特にこの二百海里によりまして、いままでの北方海域の漁場というものから全く締め出しを受けてしまって、いわゆるソ連の許可をもらわなければ入漁できない、そういうようなことから非常に水揚げも落ちてきている、これが実態でございまして、五十二年に比較をいたしますと、五十四年、五十五年は約三分の一に水揚げが落ちてきている。したがって、町の経済も非常に不況になってきているというのが現状でございます。それで一部の中には二島返還論というのもございますし、あるいは全く島は返らないからソ連友好を深めて、島よりも魚をとった方がいいじゃないかと、こういう意見も、一部ではございますけれども、出てきているというのが現状でございます。  私は三年ほど前からこういう状態を大変心配いたしまして、政府並びに国会等にも陳情いたしまして、いわゆる北方領土未解決に伴う根室地域経済振興の特別措置を考えてほしいということをかねがねお願い申し上げておるわけでございます。そういう内容と、さらにまた先ほど外務大臣からお話ございましたけれども、現職の総理大臣並びに外務大臣が早い時期に現地を視察をいただきたいと、こういうことをお願い申し上げました。以前宮澤外務大臣、園田外務大臣おいでをいただきましたけれども、退任の間際だったというような結果がございますので、今度は特に伊東外務大臣にお願いいたしまして、就任早々お忙しいとは思いますが、ぜひおいでをいただいて現地の厳しさをはだで感じて外交交渉をしていただきたいと、こういうようなお願いをしてあったわけでございます。今回十月の二十五日、六日にかけておいでをいただくということで大変感謝を申し上げております。また市民も期待を申し上げている次第でございます。  それから次は、学校教育の中にこの北方領土の教育を取り入れていただきたいという問題でございます。これもかねがねお願い申し上げておりますが、いまだに実現できていない。当市では昭和四十八年からお手元に差し上げているような副読本をつくりまして、小学校は四年生以上、中学は全学年について北方領土教育をしていると、こういう実態でございます。それから、北海道庁におきましては教師の手引きというのをつくってやっております。まだ文部省として全国的にこれは取り上げていただけないということでございますけれども、これもぜひ早い時期に実現するように御高配をいただきたいと思います。  それからまた、墓参の問題についても外務省でそれぞれ御高配をいただいておりますけれども、まだ五十一年まで八同実施されましたけれども、その後領土絡みで実現ができていないと、こういう状況でございますが、これはまた大変相手のあることでめんどうがございましょうけれども、ひとつよろしくお願いいたします。  それから次は、北方地域の旧漁業権に対する補償をかねがねからお願い申し上げております。これは昭和二十六年ですか、新漁業法に改正になったときには、行政権の及ばない地域ということで当時補償されていなかったわけでございますが、法的にはいろいろめんどうだというお話を伺っておりますけれども、だとするならば、かわる方法で何らかの措置をしていただきたいものだと、かように考えるわけでございます。それから民間外交で、昭和三十八年から五十一年まで民間協定によりまして貝殻島のコンブを採取しておったわけでございますけれども、これがやはり墓参と同じく領土絡みで中止になったままであります。こういうことでこの地方のコンブ漁業も大変ことしあたりも不漁で、二〇%から二五%の不漁でございます。この貝殻島があれば良質なコンブがとれたと、そういうような状況でございます。  それから六番目には、北方海域における安全操業の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、日本もあの北方海域には二百海里の宣言をしているわけでございます。それからソ連もしていますけれども、実質的にはやっぱり力関係ソ連の一方的な指示に従わなきゃ漁業ができないと、こういう状態でございます。そういう状況でございますので、ぜひそういうことをひとつお願い申し上げたいと思います。  そのほかに、北方領土の日というものを決めて、これを全国一斉にこの運動をすることによって国民世論が大きく盛り上がっていくだろうと、それからまた政府の援助によって北対協において各府県に北方領土返還要求の推進委員というものを設けておりますが、これは全くある意味においてはボランティア活動というふうな状況でございますので、これは正規の職員にして生活が維持されるような状態に置いて専門的に世論喚起に努めるような組織方法をとっていただきたい、このように考えるわけです。  それから先ほど申し上げました根室地域の振興対策の問題ですが、これは項目いろいろございますけれども、これらについても各役所でいろいろと御配慮をいただいておりますので、これらについても政府としてもあるいは党としても実現できるように格別の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  よろしくお願いします。
  86. 宮崎正義

    宮崎正義君 先ほど外務大臣もちょっとお触れになりましたけれども、今回の第三十五回国連総会一般討論演説において大臣がおやりになった——本会議の席上でもこの問題が提起されまして、大臣も答弁をなさっておられますが、この北方領土に関する決議というのは衆参両院で過去五回もやっているわけでありますけれども参議院の方を申し上げますと、第四十回国会三十七年三月十四日、四十八回国会は四十年四月二十八日、七十一回国会は四十八年九月二十五日、八十七国会が五十四年二月二十一日、九十一国会が五十五年三月十九日と、ことしも三月十九日に決議をいたしておりまして、それを踏まえて国連総会でもおやりになったということでありますが、振り返って見ますと、国連で十年前の二十五周年記念の総会で佐藤総理の演説がございました。この辺のところも外務大臣は御存じだと思います。それから七二年には中川国連大使がやはり演説をしておりますが、このときには余り中身には触れていないようでありますが、今回は伊東外務大臣国連で演説をなさった。その中の前後を省略してまことに申しわけありませんですけれども、この内容について質問があるものですから、私の方からいただいたものを、大臣の演説を読ませていただきますと、   例えば、わが国の重要な隣国の一つであって体制の異なるソ連との間に、真の相互理解に基づいた安定的な関係の確立を図ることもわが国外交基本課題であります。不幸にして、ソ連との間には北方領土問題が未解決のため、なお、平和条約の締結をみておりません。また、ソ連が最近わが北方領土において軍事力の配備・強化を行うという極めて遺憾な事態が生じておりますが、日本政府としては、かかる措置は国家間の信頼関係を構築する所以ではないと考えます。かかる立場から、日本政府としては、今後ともこのような事態の速やかなる是正を求めるとともに、平和条約締結のために引続き努力し、もってソ連との間の真の友好関係を維持発展させるべく努力する考えでありますが、同時にソ連側も善隣と友好言葉だけでなく、具体的行動をもって示すことを強く期待するものであります。  こういうふうにはっきりと担当大臣がおっしゃられたことということは大きく評価している一人でありますが、ともあれ翌日のグロムイコ外相とのお話先ほどもちょっと触れたようでございますが、時間等の関係もございますので、要点のところだけおっしゃってわからせていただければ幸いと思います。
  87. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生お読みになりましたのは国連総会での演説の一部でございますが、日本としては世界どの国とも友好関係を結んでいくというのが基本だけれどもという考え方を述べて、しかし重要な隣国のソ連におきましてはまだ領土問題が解決しなくて平和条約が締結できないんだと、またそこに軍備の充実ということがある、はなはだ遺憾だということで、それを解決して平和条約をつくるようにソ連も話し合いをする環境をつくるように態度で、行動で示してもらいたいということを言ったのでございますが、それに対しましてはソ連からは国連では何の反論もございませんでした。次の日、グロムイコ外相と一時間四十分ぐらい会ったのでございますが、私の方からソ連に対しまして、日本ソ連が、日本軍事的な方面に力を入れ、軍国主義化するということをよく言いますので、これに対する反論と、それからアフガニスタンに対する軍事介入につきまして、国連決議もありますので、これは即時撤兵ということで考えてもらいたいということと、それからいま先生のおっしゃいました北方の四島の領土問題、それから軍備をひとつ撤去してもらうということは、これはもう国民の願いであり、総意であると、国会でも何度も決議がありましたり、これは国民の総意であり、北方の領土問題を一番知っているのはグロムイコ外相、あなたでないかと、鳩山総理と共同声明を出されたときにもグロムイコさんは第一次官でございましたか、非常に関係をしておられて、平和条約ができれば歯舞、色丹は引き渡す、あとの問題は二島の問題を含めて今後継続的に協議をするというふうな、あのときの共同声明をやった一人の当事者でございますので、グロムイコさんは一番領土の問題、四島の問題は知っておるんだから、ひとつこれは日本に早期返還をしてもらいたい、もともと固有の領土であり、日本国民の総意だと、それが前提になって平和条約というものを結べるのだ、日本としては隣の、隣国のソ連と安定した、相互理解に基づいた安定した友好関係を結べるというのは、これは日本も希望するところなんだから、その前提の領土問題の解決をしてもらいたいということを日本側の主張としてグロムイコ外相に述べたのが私の第一ラウンドにおける主張でございます。
  88. 宮崎正義

    宮崎正義君 午前中の同僚委員質問の中にもございましたけれども、わが国の外務大臣としての北方領土関係というものは日ソ両国の問題で、これは粘り強くやっていく以外ないという答弁をなさったわけです。  そこで、いまのグロムイコ外相とのお話の中で具体的な問題が話し合われなかったということを非常に残念に思うわけです。そこで外務大臣の演説の中にも「具体的行動をもつて示すことを強く期待するものであります。」ということで結ばれておるのですが、その具体的なことがなされなかったということを残念に思うわけですが、そういう点についてはどうなんでございましょうか。
  89. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 一般演説でも具体的な行動で示してもらいたいということを言い、次の日のグロムイコ外相との個別的な会談でも、それは私は主張したところでございます。何が具体的行動であるかということはいろいろなことが考えられますが、恐らく一つは、北方の四島に対して軍備の充実をしているということについて向こうが別な態度を何かとるか、あるいは領土問題を含んだ平和条約の交渉に入るかとか、いろいろなことがこれは具体的な行動として想像はされるわけでございますが、しかしそういうことにつきましては、次の個別的な会談におきましても具体的には向こうから何の提案もなかったということでございます。
  90. 宮崎正義

    宮崎正義君 いずれにしましても、これは一つにはふだんの働きかけというものが一番基本にならなければならないと思いますし、またもう一つには、冷却状態にある日ソ間の改善努力がどこまでも今後の課題としての不可欠な問題だと思いますが、ともあれ本会議の御答弁の中にもございましたけれども、息長く粘り強くとおっしゃっておられますが、いつまでを息長く粘り強くということなのか、その辺のところを伺いたいわけでありますが、と同時に、息長く粘り強くやっている間に、具体的なものを示せと言っている間に北方四島は、先ほど参考人お話がありましたように軍事基地化しているというふうなことが今日の時点でははっきりしているわけであります。こういうふうなことから考えていきますと、なかなか相手の国のことを考えますと容易じゃないと思いますけれども、やはり五カ年計画とか十カ年計画だとかそういう息の長い話では、島民としては、これは北方領土の関係者あるいは日本全体の漁業関係に携わっている人たちのことを考えれば、そんな長いことは言っておられないと思いますけれども、そういうふうな息長くとか粘り強くとかいうのは、いつの時点ぐらいまでにお考えになっているかということを、むずかしい問題でしょうけれどもお伺いしておきたいと思うんです。
  91. 伊東正義

    ○国務大屋(伊東正義君) いま寺嶋参考人から、根室地区の人々のこの問題に対する考え方あるいはいろんな問題につきまして御要望があったことは、私もそばで聞いておりまして、本当に引き揚げてこられた方々あるいは四島周辺で漁業をやって生活をしておられた北海道の人々の苦労といいますか、よくわかるわけでございます。私も水産庁の長官をしていたことがございますので、二度ほど根室に行ったことがあるわけでございますが、なかなか解決がまだ今日までできないということは、はなはだ私は残念に思っているわけでございます。ただ、いま先生もおっしゃったとおり、これは相手のあることでございますので、大体いつごろというような時間的な日を切って考える性質とはちょっとなじまないような問題でございますので、いま根室でおっしゃいました道東地区の振興特別対策とか、こういうことをあわせてやっていくということで、われわれはやっぱり焦ってはいかぬと思うのでございます。主張すべきことは主張しながら、いろんなむずかしい問題がこれはある、グローバルな問題としてもいろんな問題があるということ、これにも関連をする問題だろうと私は思いますので、日本の主張は絶対曲げないということを基本にしまして、相手に何とかして理解させて、返還ということが実現するようにということを一生懸命努力していこうということで、この間も十年ぶりでございましたが、国連で、日本国民の総意としてこういうことをやっているんだということをあわせてよく知ってもらおうということで主張したというようなことでございます。
  92. 宮崎正義

    宮崎正義君 お話にありましたグロムイコ外相との話で、「ソ連には余分の領土はない」んだと、こんなようなお話も出たということで、それを切り返されて、「領土問題はないというが、これがまさに日ソ関係の障害だ。領土問題を解決して平和条約を締結するのが日本国民、政府の願いだ。」というふうにその問題についてはお話をされておりますが、まさしくいま参考人が述べられたこと一切は、この北方四島問題の日本の固有の領土が帰着してしまえばそういう問題は一切起こらないわけであります。そういうふうなことを考えて、この現地で御苦労なさっている、毎日毎日、瞬間瞬間苦労なさっている四島周辺の方々のことを考えますと、いま大臣が述べられたように、そういう人たちにやさしく手を差し伸べながら粘り強く相手国と交渉していくんだということなんですが、それで、先ほど参考人の方が冒頭に言われたことは、一昨年の秋から国後、択捉に軍事基地を強化していると。昨年秋には色丹基地を新設して、今度は水晶島にヘリポートあるいは格納用としてか通路としてか何かわかりませんけれども、トンネルなどもつくっているのだというような報道もございます。これは私も読売新聞の記事を見まして、御案内のように納沙布岬には七・四キロ、これは砲、弾薬を格納しているものなのかというような、これは読売新聞の本社機の撮影でも確認をしているというような記事が出ておりますが、このことについて外務省としてはどういうふうにとらえられておりますか。
  93. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 外務省は従来ソ連の国境警備隊が配備されているということは前から承知しているのでございますが、地上軍が配備されてその基地化が進められているかどうかというその徴候について、十分に確認されているとはまだ外務省としては実は承知していないわけでございますが、今後とも御指摘のような施設が、新しく地上軍が配備されてあるのか、従来の警備隊のものなのかというような情報収集は、これは十分やっていかなければいかぬと思っておりますが、現在までは、それが基地化が進められているということはまだ確認はされてないというふうに承知しているわけでございます。
  94. 宮崎正義

    宮崎正義君 防衛庁の人は見えてますか。
  95. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) ただいまの外務大臣の御説明と同様でございまして、報道されましたヘリポート——ヘリポートはこれは昨年の夏ごろにわれわれが観察いたしましたところでもございまして、それからトンネルと申すのでございますけれども、トンネルと申しますよりも、何か入口らしいものは見えておりますけれども、その内部がトンネルであるかどうか、それはもとよりわかることでございませんので、未確認でございますが、今後とも怠りなく観察していく所存でございます。
  96. 宮崎正義

    宮崎正義君 参考人お話もありましたけれども、非常に脅威感というものは、いまお答えされたようなものじゃないと思うのですね、それらは。ですから、情報がつかまれてない、確認されてないという防衛庁としての任務といいますか、そういう面においてどうなんですか。
  97. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 水晶島を含めまして最近北方領土におきますソ連軍の動きにつきましては、格別に目立ったものはないのでございますけれども、むしろ過去三年間にわたりまして一個師団規模近い地上軍が北方四島、北海道にかくも近いところに配備されたと、その事実自体は非常に重大なことでございます。それでわが国の防衛上も重大な関心を払わざるを得ないと、そう思っております。むしろ最近の事象と申しますよりも、ここ数年間の事象を総合いたしまして非常に重大なことと受けとめております。
  98. 宮崎正義

    宮崎正義君 要望でございますが、水晶島は最近特にそういうものが顕著になっているということですから、その辺は十二分に理解なさって調査する必要があると思うんですが、その点をつけ加えておきます。そしてきょうは時間があれば北方海域におけるソ連の配備状態だとか、それに対する自衛隊の整備状態だとかそういうものを伺おうと思っておりましたんですが、時間がございませんので、この次の機会にでもまたとらえて質問をしたいと思います。  それから、先ほど参考人の方から教科書の問題で、北方領土と千島列島というものを教科書の中にでも取り入れるようにという強い地元の要請があるわけですけれども、これは今日でさえ長年の歳月がたっております。これからまたどれぐらい続くかわかりません。樺太の第一回の終戦後引き揚げた人たちは八十歳ぐらい七十歳ぐらいの人たちがほとんどであります。いま二世、三世の時代になっております。そうしますと、だんだんと時代が過ぎていくに従って歴史というものがわからなくなってきます。そして日本の固有の領土というものが明確さが薄れてくるというようなきらいがあります。そういうことから考えていきましてもこれは国民の教育上大変必要なことじゃなかろうかと、こう思うわけであります。地元では必死になってその考えを将来に残したい、自分が死んでも次の者がこの問題を解決していくんだという切実な願いでこの副読本をつくったと思うんです。このお手元にあるものを後でごらんいただいて御理解を願いたいと思いますが、文部省及び総理府の考え方を伺っておきたいと思います。
  99. 垂木祐三

    説明員(垂木祐三君) 御説明申し上げます。  小学校、中学校、高等学校の社会科におきまして児童生徒にわが国の領土を正しく理解させるという観点から、北方領土につきましてはこれがわが国固有の領土であるということを適切に指導するようにいたしておるわけでございます。現在使用されております小学校、中学校、高等学校の社会科の教科書ではすべてこの北方領土に関します記述がなされておるわけでございます。特に中学校の社会科の地理的分野におきましては、未解決の領土問題に対しましてわが国が正当に主張している立場に基づきましてその要点を的確に理解させるように指導しておるわけでございます。中学校の社会科の教科書ではすべて北方領土の位置と、それから北方領土を構成する島々の名称、それから北方領土は日本国有の領土でありまして、日本はソビエトに対しましてその返還を求めていく、この三点を理解することができるように教科書の記述がなされておるわけでございます。
  100. 宮崎正義

    宮崎正義君 私も知らないわけじゃありませんけれども、この根室市の教育委員会から出ておりますもの、これとの相対性といいますか、それから比べますとまだ足らないんじゃないかというようなきらいがありますので申し上げているわけですが、その点につきましては将来の課題としてお考えを願いたいと思います。  総理府の方はどうなんですか。
  101. 藤江弘一

    説明員(藤江弘一君) ただいま御指摘ございましたように、学校教育に北方領土問題が組み込まれ、適切に指導されるということは大変重要なことであると私どもも認識いたしております。総理府といたしましては従来から文部省に緊密な御連絡をいたしておりまして、たとえば教科書出版会社の編集担当者に対しまして説明会を行うとか、あるいは北方領土関係の資料を提供するというふうなことで記述内容の充実について協力をお願いいたしておりまして、その結果、先ほど文部省の方から御説明ございましたように各教科書において、どの出版社のものにつきましてもすべてこの問題について触れておるという形になっております。ただ私ども立場から申し上げますと、これは欲を申せば切りがないことではございますが、さらに充実していただくようにこれからもお願いしてまいりたい、かように考えております。
  102. 宮崎正義

    宮崎正義君 先ほどへちょっと戻るんですが、水晶島の大型トンネルが確認できないということにつきまして、これは十月四日の日経新聞ですか、宮澤官房長官が談話を発表されておりますが、このことについてどうなんでしょうか、ソ連に対してこの件では特に外交的申し入れをする考えはないと、このように結んでおられるんですが。前文を略して一番最後のところだけ私は確認しているんですが、この辺はどうなんでございましょうか。先ほどの答弁ではちょっと違うんじゃないかとも思うんですが。
  103. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 官房長官がまだ確認されていない、そういう段階ではソ連に申し入れを行う考えはないという趣旨のことを述べられたんじゃないか、いま新聞を持っておりませんのではっきりわかりませんが、先ほど私申し上げましたのは、いまのところはまだそういう地上軍が配備され、そのための施設だということが確認されているとは私は承知しておりません、しかし、これからさらに情報収集等は行いますということを申し上げたのでございまして、それと私は矛盾はしてないと思うのでございますが、われわれ情報収集しまして、これは防衛庁ともよく相談して収集の方法をやってもらうわけでございますが、その上でそういうことが必要あるかどうかということは申し入れのこれは検討、その段階でわかれば検討したいというふうに思っております。
  104. 宮崎正義

    宮崎正義君 午前中もその情報収集という問題について大分同僚委員の方からイラン、イラクの問題についていろいろ言っておられました。確かにいまお伺いしましてもこの辺の情報というものが非常に大事になっていくんじゃないかということが結局息長く粘り強いというものにも関係してくるんじゃないかと思いますが、この点についていま御答弁がありましたので今後の調査というものを十分にお願いしたいと思います。  それから参考人の方のお話がありました北方海域での拿捕件数、座礁の実態、これらについてお伺いをしたいわけなんですが、時間の関係がございますので後でその資料を委員各位に示していただいて、そして現状を、こういうふうになっているんだというふうに資料を示していただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
  105. 福島弘

    説明員(福島弘君) 承知いたしました。
  106. 宮崎正義

    宮崎正義君 と申し上げますのは、私の手元にあるもので四十六年、四十八年、四十九年、五十一年、この付近の座礁している船の状態——船の名前とか、船長の名前だとかはわかりますけれども、乗組員が不明なところが大分あるわけなんです。その乗組員が生存しているのか生存してないのか、抑留されているのかどうなのか、そういうような点も明確でない点が大分あるわけです。現在抑留をされている船が五百八十九隻、資料によりますと約五百九十となって、現在は十二名の人たちが抑留されているということであります。こういうふうなことものべつ報道をされて、そしてその実情というものをわからせなければならないのじゃないかと思うんです。この点についても的確な御配慮を願いたいと要望しておきます。  それから、農水省、水産庁の方にお伺いします。  先ほど参考人の方が、現在拿捕されている船が罰金が高くなって、直接交渉をするようになってきているという。その罰金の支払いのことについて、これは海上保安庁、あるいは総理府といろんな関係がございますでしょうが、特にまた外務省としても関係が深いと思うんですが、ソ連の言う補償金といいますか、賠償金といいますか、その基準というもののあり方、それをひとつ当事国間で取り決めをしていくような何らかの方法を生み出していただきたいと、こんなふうにも考えるわけです。それと、拿捕されるとか、あるいは領海を侵したとかいうもののもとをただせば、全部わが国の固有の領土であります。そのところで操業される漁民の人、それから漁船、それに対する取り締まり、その指導、監督が十分であればこういう問題は解決をされていくんだと、このようにも思うわけです。そういう点についてあわせてお答え願いたいと思います。
  107. 中島達

    説明員(中島達君) 北方領土周辺におきまして、確かに先生御指摘のとおり、相当な件数に上る不当な拿捕あるいは臨検等が行われていることは事実でございます。こういったまことに不幸な事件をできるだけなくすという観点から、水産庁といたしましても外務省、その他関係の省庁とも十分連絡をとりながら、また漁業者に対してもなるべく危険あるいは無用なトラブルが起こらないように、十分これまで指導してまいってきているところでございます。今後ともこのような十分な指導、あるいは関係省庁との密接な連絡をとりながら、できるだけ不幸な事件がなくなるように十分努めてまいりたいと思っております。
  108. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) ただいま水産庁から御報告がございましたとおりでございまして、外務省といたしましても水産庁と協力をしながら、それぞれの役割りに応じましてこのような事件ができるだけ起こらないように、それからまた不当な拿捕だとか罰金徴収というようなことがございました場合には、外交ルートでもソ連に申し入れるということはいままでもやってまいりましたし、今後ともそういう努力は続けてまいりたいと考えております。
  109. 宮崎正義

    宮崎正義君 そのほか、旧漁業権者の元居住者に対する救済助成措置だとか、あるいは漁業権の回復、安全操業、こういった問題についてだとか、国民的行事としての北方の日、そういうものも制定して国民全部の、全運動としての、固有の領土の返還ということについての運動の日を決めていくような考え方を求めておりますけれども、そういう国民運動等についての考え総理府の方から聞かしてもらいたいと思います。    〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕
  110. 藤江弘一

    説明員(藤江弘一君) 現在北方領土問題に対する国民の関心は、御承知だとは存じますが、着実に盛り上がりを見せておりまして、署名運動につきましても一千七百万人に達しようといたしております。また、都道府県あるいは市町村段階での大会、それから決議等が相次いでなされておりまして、相当の浸透を見ていると言ってよろしいかと思います。ただ全国的に見ますと、まだ関心が十分に高まっているとは言えない地域もございます。  そこで、総理府といたしましては、今後とも新聞、テレビ等の各種の媒体をできるだけ利用してまいるというふうなことであるとか、あるいはパンフレット等についても大量に配付するというようなことで地域住民のすみずみにまで浸透していくような、広範な活動を展開してまいりたいと考えております。また、北方領土を目で見る運動というものを従来やっております。これにつきましても関係地域に施設を張りつけまして、たとえば具体的に申しますと、望郷ラインというふうなものを設定しまして、一人でも多くの国民自分の目で北方領土を確かめてもらうというふうなことを強力に推進いたしたいと考えております。また、全国運動の展開の足がかりといたしましては、地方組織の充実が大変に大切なことであろうかと存じます。  そこで、先ほど根室の市長さんもおっしゃいましたけれども、各都道府県における推進委員の処遇等につきましてもさらに充実させる、また各団体を糾合いたしますところの県民会議の結成につきましても、現在のところまだ十二県しか結成されておりませんけれども、全国にこれを広げてまいるということを早急に取り上げてまいりたいと考えております。  また、ただいまお示しになりました北方領土の日につきましては、これは返還運動要求推進のために大変に有効なことであると私ども認識しておりますので、民間各層の御意見を十分にお聞きしながら、前向きに対処してまいりたいと考えております。
  111. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 寺嶋参考人には大変御多忙のところ御苦労をおかけいたしました。十分意を尽くさなかった点もおありになると私は思うのです。こうした公式の場所で、時間があればもっともっとと私どももそういう期待を実は持っておりました。わずかな御意見の開陳の中で、やはり胸の痛む思いがわれわれとしていたします。地元の根室市を中心とした地域におかれては、今日まで恐らく血のにじむような返還をめぐる運動に取り組んでこられたということは十分われわれも理解をしているつもりでございます。ただ、問題がいろいろとございますことは、いまも外務大臣の御答弁伺うまでもなく、ございます。  せっかくでございますから、もう一点確認を込めて寺嶋さんにお伺いをさしていただきたい。  先般、私ども外務委員会が視察にお邪魔をさしていただきましたときに、地元の方々のもうせつないいろんな御要望を伺いました。申し上げるまでもなく、漁業関係で成り立っている町でございますので、二百海里宣言以後火の消えたような状況である、このまま推移すれば根室全体がどっかへ移動しない限りは生計を立てることはもう困難ではあるまいかと、恐らくいまそういう状態が引き続き私は続いているであろうと思えてならないわけであります。そうした悲痛な訴えと申しますか、何とかこれは解決への糸口を、何かとにかく突破口を開いていかなきゃならぬなと、それは漁業全体の問題という、大所高所に立ったその点の解決というものが図られない限りはこれはとても皆さん方のお気持ちにおこたえできないのではないだろうか。そして、いま拿捕の問題起きました。これはここの当委員会で何回も私この点について触れました。それで、トラブルを起こさないように、とにかく円満解決するような方向で、たまたま罰金を求められた場合でも、きわめてそれが妥当なその罰金の内容であるような方向へその折衝をすべきであろうと、こういう点も指摘をしたことがございました。しかし、いま答弁を聞いている限りにおいては、残念ながら一歩も前進をしてないという印象を非常に強めたわけであります。  そこで、その点はともかくといたしまして、これは政府側の問題でございますから、前段で私申し上げた現在の経済状態から考えられる今後の根室全体の方々の行方というものについてはどんなふうにお受けとめになっていらっしゃるか、せっかくの機会でございますので、お述べをいただければ大変ありがたいというふうに思います。
  112. 寺嶋伊弉雄

    参考人寺嶋伊弉雄君) ただいまの御質問でございますけれども、そういう声は町の中にも頻々としてあるわけです。市ではなく今度は根室村になる、こういう悲壮な考え方もありますけれども、しかしそうなっては困りますので、私先ほども申し上げましたけれども、北方領土の未解決に伴う根室地域の振興対策、そういう特別措置をとっていただきたい。これはいろいろございますけれども、たとえば漁業につきましては沿岸振興のために拠点開発をしていただく。ただ、幸いにいたしまして根室海峡につきましては昨年から、それから太平洋沿岸につきましては本年度から、それぞれ三カ年で拠点開発のための調査をしていただくことになっております。一部着工いたしております。それによって相当額の、数十億の金をかけて漁場を造成をする、コンブを初めウニとか、そういう海産物について、そうすることによっていままでの遠洋漁業が沿岸漁業にかわりますけれども、それなりの生活が維持していけるような水揚げができるであろうと、こういうふうに大体考えております。  また、そういうふうにせざるを得ないということでいま進めておりますけれども、このままの状態になりますというと、先生が御指摘のような状態になっていくという可能性もないわけではありません。水産以外に何もないところでございます。そういうような状況なものですから、ここで申し上げてよろしいかどうかわかりませんけれども、戦後三十五年、いわゆる忍従と苦難の三十五年間だった。ですから、漁民に言わせれば、先ほど申し上げましたようにもう二島返還で、この辺でやってもらわぬと根室はつぶれてしまうじゃないかと、こういう声が出てきているわけです。これは決してイデオロギー的に物を考えているのではなく、純粋な経済問題になってきているわけです。まあ中には元気のいい漁師もおりまして、政府が北方四島は日本の固有の領土というのであれば、われわれが強行すれば自衛艦を持ってきて守るかと、こういう声も漁民の中には、一部ではありますけれども、あります。さらにまた、罰金の問題にいたしましても、いまと同様な考え方で、日本の固有の領土へわれわれ出漁するんだと、それに罰金をかけてくる、じゃあ政府はそれに対応しないのならその罰金は政府が払うべきだ、こういう強硬な意見も、これは一部ですけれども、全部ではございませんけれども、そういう声も出ているというのが現状でございます。
  113. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 大変遠慮をされながら申されていらっしゃる点もあるんではないかということを心配をするわけでありますが、いずれにいたしましても大変息の長い、時間のかかる、忍耐を要求される問題だろうというふうに思います。  で、せっかくいまここにおいでいただいておりますので、政府の考え方をいま私ただしますので、それもお聞き取りをいただいてお帰りをいただければ大変ありがたいと、こう思うわけであります。  いま、このような状態が続く限り、やはりいま市長さんが指摘されたような方向へ行かないという保証は何にもございません。経済的に大変疲弊いたしまして、根室村なんというようなことになりかねないという、それはならないという保証は何にもないわけです。そこで政府側としては、こうした何と申しますか、根室地域というふうに限定した方がいいのかどうなのか、その振興のための特別措置というものを考える必要があるんではないだろうか、こんなふうに思います。これはむしろ総理府の方から最初聞いた方がいいのかな。  もう一つつけ加えて申し上げますと、いままではもうほとんどが漁業を中心とした関連会社だとか企業が中心であったわけでしょう。いわゆる何といいますか、都市基盤の整備というものは非常に立ちおくれているわけですよ。そういったものをやはり現状を踏まえながら、それを並行的に振興のための特別措置というものを、やはり予算をきちっと考えながら対応していくという必要が出てくるんではないだろうかというふうに判断されるわけであります。その点、政府としてどのように考えていらっしゃるか、まず最初総理府の考え方をお伺いいたしまして、それから外務大臣に総括的に御判断をいただいた上で御答弁をいただければ大変ありがたい、こう思います。
  114. 藤江弘一

    説明員(藤江弘一君) ただいまお話がございましたように、現地の厳しい状況につきましては私どもも十分認識しておるつもりでございます。また、この返還運動の推進という立場から申しますと、その拠点、あるいは原点と申しますか、根室について火が消えるということは、この運動にとりまして致命的なことであると考えております。そのような意味におきまして、何らかの措置をとらなければいけないという認識はあるわけでございます。その際に、この行政ベースでどうとらえてまいるか、既存の制度でどう救ってまいるか、あるいは何らかの新しい措置が必要であるかどうかというふうなことにつきましては、関係省庁の十分な御調整が必要でございます。その点につきまして現在、これは後ほどあるいは北海道開発庁の方からお答えになるかと思いますが、開発庁等が中心になりましてもうその準備段階に入っておる次第でございます。
  115. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 開発庁来ておられますか。——その経過についてちょっと説明してください、いま私が申し上げたポイントを通じて。
  116. 滝沢浩

    説明員(滝沢浩君) 二、三年前から根室地域の振興対策について、根室市初め北海道庁からいろいろな要望を受けております。特に、ことしの春以来、今日のような状況でございますので、特段の安定振興対策を講じてほしいということについて、当庁を初め政府関係機関に対して強い要請がありました。この問題にどう対処していくかということは、北海道開発庁としては非常に緊要な課題と考えておりますので、現在、対策の範囲とかそういうことから考えまして、関係省庁広く協力してもらうという必要があるかと思いますので、現在、この問題処理のための体制の整備を検討中でございます。いましばらく時間をかしていただきたいと思います。
  117. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 伊東さん、いまそれぞれの省庁から説明がございました。当然、近くまたお出かけをいただけるということも伺っておりますけれども、そうした点も考慮に入れながら、いまいろいろと苦痛にあえいでいる根室の市民の振興のためにどんなふうに取り組んでいただいたらいいのか。いま開発庁から経過についての説明があったわけです。やはりこれは強力に進めなければならぬだろうというふうに判断されるわけでございますけれども、この点いかがでございましょう。
  118. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま私は道東地区と——根室だけじゃなくて道東地区と、こう言っているのでございますが、実は私今度は行きますのも、一つはこの目で北方四島の視察をすることとともに、道東地区の人々の考え方も聞こうということが一つ目的なんでございますから、いまのお話も当然現場で聞けると思うのでございますが、私が官房長官をしておりました時代に、根室の市長さん初め関係者が来られて、道東地区の振興というものをやってもらわないと、この問題は非常に長く時間がかかっているので、生活もなかなか厳しくなってくるんだ、考えてくれと。で、どの省に行ってもそれはあっちの省じゃこっちの省じゃと言われることがあるので、窓口をどっかに決めてもらいたいということで、実は私官房長官やっているときに来られたのでございます。当時後藤田君が自治大臣で、北海道開発庁の長官を兼ねられるということでやっておりましたときでございますので、後藤田君に言って、やっぱり開発庁じゃないかと、第一線として心配するところは、と言って私窓口を決めたことがございます。そういうことで私は、関係をしたと言えば当時したわけでございますが、外務大臣になってこの問題に取り組んでみますと、やはり相当息長く粘り強くやらねばならぬ問題でございますので、四島返還という問題は、やはりそれと並行してこの道東地区の振興ということは特別な、普通の問題と若干違う性質のものでございますので、私はこの振興対策というのは政府として熱心にやらなけりゃいかぬというふうに考えますので、これは関係の大臣、いま開発庁がやっておられるわけでございますから、長官にも話しますし、また建設とか農林とかあっちこっち関係ありますから、そういう大臣にもひとつお願いをする、外務大臣立場でお願いをするということをやってみようと思います。
  119. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それからもう一点。また拿捕にかかわる罰金請求ということでトラブルが絶えない、そういった背景をもとに、かつて園田前大臣のときに札幌に外務省の駐在員か、出先を置きたいと、直接的には海上保安庁がその衝に当たるであろうと思いますけれども、場合によっては外務省外交折衝によって解決を迫られるというような問題が今後もしばしば起こるだろうと、そういう配慮からの判断であったろうというふうに私はいまは考えておるわけです。  ところが、その後行政改革や何かの波が大変強くなってまいりまして、いつの間にか立ち消えになっちゃったわけですよ。そうした敏速に解決を迫るためには、やはり機動的な役割りというものを果たす上から札幌にそういうようなセクションを設けておく必要も、私は問題解決のためによろしいのではあるまいか、こんなふうに考えているわけでございますけれども伊東さんいかがでございましょうか。
  120. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの点は、札幌にソ連の総領事館もあるということもございますし、なるべく機動的に話し合いをするということが必要だということで、北海道庁からも要望がありまして、ただ行政機構改革の問題もありますので、簡素な姿でということで話し合いをしておるということで、どうも遅くなって恐縮でございますが、いろいろ国内的な事情もあるやに聞いておりますので、その点はいま御要望もございましたので、北海道庁と私また、今度現地に行きまして、そういう話も出ると思いますので、検討してみたいと思います。
  121. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 寺嶋さん、どうもありがとうございました。
  122. 稲嶺一郎

    ○理事(稲嶺一郎君) 参考人の方に一言お礼を申し上げます。  本日は御多忙中、また遠路わざわざ御出席いただき、ありがとうございました。  引き続き質疑を行います。
  123. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 鈴木内閣が発足をいたしましてから、外交方針等についても所信表明に明らかにされた点をわれわれ認識をしております。ただ、中身を拝見いたしまして、ちょっと奇異に感じましたのは、大平前総理の遺志を継承すると標榜されながらも総合安全保障については述べられ、外交的な戦略のもう一つの柱であると言われておりました環太平洋構想が全然抜けちゃっている。それは何か意図的なものがあったのかどうなのか、まずその点から確認をしながらお伺いをさしていただきたいというふうに思います。
  124. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 総理の所信表明演説の中で環太平洋構想に触れてなかったじゃないかと、何か意図的なことがあったのかという御質問でございますが、意図的なことは全然ございません。われわれとしましても、この構想は重要なこれからの二十一世紀に向けての一つの大きな政治哲学でもございますし、この問題は真剣に取り組んでまいる決意でございます。ただ、所信表明の中で、外交演説ですと、当然そういうことは皆触れたのでございますが、全体の構想とかバランスの関係でこの問題が入らず、やはりヨーロッパ関係やなんかも捨てることがあるというようなことがございましたが、これは全体の構想バランスの関係だけの問題でございまして、この点は、環太平洋の連帯構想ということはこれからも外交の大きな問題として取り組んでまいるつもりでございますし、外国でも私、参りまして、方々で意見を聞かれ、賛同の意見、こういうことを注意してくれというようなことを言われまして、世界でも太平洋をめぐる国々が非常に関心を持っているということを改めて認識して帰ってきたような次第でございます。
  125. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 先般、九月十五日から十八日、キャンベラのオーストラリア国立大学で、それを推進する一環としての太平洋委員会というんですか、正式な名称は太平洋協力委員会ですか、が開かれて、いろんな議論がそこで取り交わされたようでございます。ただ、それを集約的に、伝えられるものを整理してみますと、とりわけフィリピンを中心とするASEAN諸国がきわめて消極的である、その辺の考え方というものが一体いかなるものであろうか、果たしてせっかくいま触れられた、大変関心も持ち、強力な推進を一方においては望む声が強いという反面に、北の支配的なそういう影響というものが及ぶということは好ましくない。とりわけフィリピンがその中心となって余り積極的な姿勢を見せなかったというようなことが伝えられておりますけれども、来年早々、鈴木総理がASEAN諸国を訪問されるに当たりまして、その辺は十分整理されているのかどうなのか、また、これをこれからも環太平洋構想というものは、いまの御答弁にも触れておられますけれども、強力に進めていくとするならば、当然そういう隘路というものもこれは解消していかなきゃならぬ。これは当然常識的に判断される点だろうと思いますね。その辺はどのように私ども判断したらよろしゅうございましょうか。
  126. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生おっしゃったように、豪州の国立大学のジョン・クロフォード総長が主催しまして民間のセミナーをやったわけでございます。その中で、太平洋協力委員会というのが、これは政府の機関ではなくて、そういう公式なものではなくて私的なものでございますが、そういう委員会をつくってひとつやるようにすべきだというような設立の勧告が取り上げられたわけでございまして、来年の春までにはそれをつくって、民間ベースでひとついろんなセミナーをやったり、研究をやったりしようという結論が出たわけでございます。その途中で、先生のおっしゃったASEANから何か異論があったんじゃないかと、消極的な意見が出たんじゃないかというお話でございましたが、それは事実でございます。それ私も後で聞いたのでございますが、特に、ニューヨークにいますとき、豪州のピーコック外相と会いましたときに、彼はそのセミナーに出ておったのでございますが、ASEANの諸国が少し消極的なことがあるから、私はその後にASEANの外相と全部会って話をしたのでございますが、日本もその誤解を解いてくれというような話がございました。で、考え方が出ましたのは、一つは、こういうものをつくって南北問題にどういう利益があるんだと、いま南北問題というものが非常に取り上げられているけれども、その問題が薄められてしまうんじゃないか、というような一つ考え方があったことと、もう一つは、ASEANというような一つのかたまりがあって、そして行動しているのに、その上に何かそれにかぶさったような大きいものができればそのASEANというかたまって行動することがこうばらばらにされるとか、そういうおそれはないかと、この大体二点が異論の出た点の主な点でございます。  あとの問題は、この環太平洋構想委員会をつくりましても、これは既存の二国関係とか多国間関係で関係のあるものの補完的なものだと、何もそれをばらばらにするとか、それを弱めるというような、そういうものを考えているわけじゃないから、これはひとつ誤解でございますよということを言いました。私もASEANの外相にみんな言ったわけでございますが、もう一つは、この環太平洋構想というものはいますぐにどうということよりも、もう少し先の長いひとつの私は政治哲学だと、こう言っているのでございますが、そのねらいは、この地域が非常にいろんな、政治問題だけじゃなくて、経済の発展段階、宗教、文化、何をとってみても非常に多様性のある国々でございます。その多様性を持った国々であり、また非常に活力に満ちた国々が多い。その多様性をどういうふうに引っ張り出して、そして、単に太平洋とだけいわぬで、世界の平和、安定に役立たせるというような、非常に大きな構想考え方で、これから具体的にどうやるんだというようなことを決めていくわけでございますが、恐らく経済問題、文化の交流とか、そういうことが中心になろうかと思いますが、その中で何も南北問題を取り上げて、それでいままでやっていた南北問題のエネルギーを薄めてしまうんだと、そんなことは全然考えてない、これはもっと広いものなんだと、文化的なものも含めてでございますので、ASEANの心配されていることはございませんと。特に、今度できる委員会というのは政府べースじゃないわけでございまして、これは民間べースの委員会でございますので、ASEANの心配されるようなことはございませんということで、私はみんなASEANの外相とか副首相とか来ておりましたので説明したわけでございますが、今後やはり注意していかなければならぬなと思いましたのは、やはりこういうことをやる場合にはよく、日本流に言えば根回しでございますか、事前によく了解してもらっておくという努力をやっておきませんと、やっぱり何か誤解を与えるということがあっちゃいかぬと思いまして、日本としても、これは何も、イニシアチブはとったけれども日本がリーダーシップをとってやるものじゃないと、そういうものじゃなく、環太平洋の連帯構想でたくさんの国々がみんな相談してやることなんだからということを話して、そのかわり日本もよく入って一生懸命やるんだけれども、ASEANに対する連絡は十分にするからというようなことでニューヨークで外相にみんなに話してきたところでございまして、私は、今度のできる委員会が民間のベースのものだということであり、ASEANも誤解を解いて気持ちよく協力してもらえるんだというふうに、少し私は楽観主義かもしれませんが、考えているわけでございまして、努力してまいります。
  127. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまおっしゃられた中に、これはあくまでも民間ベースでもって進めていく、それは理解できるところでありますけれども、ただ、構成メンバーの任命だとか、あるいは委嘱をする場合に、これはやはり政府ベースでやらざるを得ないだろう。当然そこには予算措置というものも出てこざるを得ないだろうということになりますと、やはり政府主導型に陥る危険性というものはないかという心配がひとつあります。この点はいかがですか。
  128. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 今度の太平洋協力委員会も、構成は学者、それから産業界、経済界、それから政府の関係者というような構成にしようということになっております。でありますので、当然やはりそういうものを各国がやっていくという場合に、政府からある程度援助がなければできないというような事態が私は出てくる可能性は多分にあると思います。しかし、そうだからといって、これが政府主導の、そうすると政治が真っ正面に出てくるというようなことになってはこれは私はいけないと思いますので、あくまでこれは民間ベースで考えていく、政府は後ろにあって協力をするという形でやっていくことが必要だというふうに考えますが、何しろこれすぐに来年からどうということじゃなくて、セミナーを何回もやったり、文化交流をやったりしながらのうちにだんだん具体的なものにつくり上げていこう、こういうことでございますので、政府が真っ正面に出て政治的な問題で引っ張っていこうというようなことはお互いにこれは気をつける、やるべきじゃないというふうに考えております。
  129. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 もう一点確認をしておきたいと思うんですが、この際、中国とか北朝鮮はどうなるのかという問題が一つと、それからもう一つは、かつて——昨年でしたか、チリに参りましたときに、いまもうおやめになった山下大使からも強く要請されたことがあるんです。中南米は一体どうなるんだと、あそこは太平洋と違うのかと。メキシコなんかも当然入るだろうと思いますね。この辺の扱いは一体どんなふうに考えたらいいのかという問題が一つ残されていると思うんですけれども、それはいかがでございますか。
  130. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) この構想は排他的、閉鎖主義のものじゃないということが前提になっているわけでございますので、当然メキシコとかチリとかいうところが御希望があれば、私は当然に入ってくるところだろうと思っております。  それから、中国と北朝鮮の問題ですが、中国は今度の会議には招聘されてなくて、出なかったわけでございますが、中国がすぐに入るということであると政治的にいろんな問題があるんじゃないかといって、むしろ中国は非常に関心を持っているが、自分の方は今度は入らぬからというようなことだったということでございますので、中国とか北朝鮮の問題ということになってまいりますと、すぐにどうということはございませんが、これから恐らく太平洋協力委員会の中でそういう国についてはどうしようかとかいうような相談が当然持たれるだろうというふうに思っております。
  131. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 きょうはもう限られた時間でありますので、総合安全保障についてはまた別の機会に譲って政府の考え方をお尋ねしてまいりたいというふうに思っております。  次に、対ソ修復という言葉が当たるかどうか私わかりませんけれども、大変冷え切った関係性にいま置かれているのではないかという評価が成り立つであろう。いま激変する国際情勢の中で、外務省がこれからいろんな視点をとらまえながら山積する課題と取り組んで解決を迫られるものがたくさんあると私は思います。その中でやはり際立った問題としては、対ソ問題をこれからどういうふうに展開していったらいいのか。  やはりソビエトとも友好関係にあることが——総合安全保障といった方がいいのかどうかわかりませんけれども、ぼくはその上からも望ましいことではあるまいかと、これもやはり常識論でありましょうけれども、そういう考え方が成り立つであろうというふうに思うわけであります。いろんな問題がございましょう。ありますけれども、何か突破口というものはないのか。  最近、鈴木総理の答弁を伺っておりましても、向こうが態度を改めなきゃこっちがどうしようもないんだみたいな、そういうことでは、これはもうまるで、場合によりますと、まことにけんかを売るみたいな、そういう姿勢ととられないとも限らない。いま誤解を与えない正確な認識と評価に基づいた国交関係というものが非常に望ましいことは当然だろうと私は思うのですが。何かいま伊東外交としてその辺の妙手——妙手と言った方がいいのかな。どんなふうな展望をお持ちになりながら、この問題のこれからの、できれば平和条約締結に至るまでの短期、中期、長期考え方をお持ちになっているか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  132. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ソ連が隣国として非常に重要な国だということは、私はもう先生がおっしゃるとおりだと思います。私、グロムイコさんに会ったときも、マスキー、ブラウン、アメリカの首脳に会いましたときも、世界の平和というのはアメリカとソ連戦争しないことだということを両方に実は言ったのでございまして、米ソ関係、それから日ソ関係なんというものは非常に重要な問題でございます。グロムイコさんと会ったときは、日本中国と非常に仲よくしているのはどうも軍国主義に通ずるんじゃないかなんという意見が出ましたり、本当に極東といいますか、アジアをめぐって非常に重要な問題があるということは、先生がおっしゃるとおりよくわかるわけでございます。それで、ソ連との関係は、私はやっぱり、相互、お互いが理解をして、平和な友好関係が続くということが最も望ましいというのは、先生も恐らくそうだと思うのでございますが、私どもそれを考えておるわけでございます。ただ、その中で、昨年の暮れから御承知のようなイランの問題、アフガニスタンの問題等々が起きてくる。そして、北方領土の軍備拡張の問題が出てくるというようなことがありまして、おっしゃるとおり、冷たい関係にあることだけは、これは確かでございます。何とかこれを打開してと私ども考えるわけでございますが、こんな冷たい関係になったのは、これはかかって先方のいろんな行動から出ていることだけは間違いないのでございまして、それはやっぱりソ連としても十分に認識してもらわなければいかぬということで、グロムイコ外相にも話し、鈴木総理国会で御答弁になっていることでございます。  でございますので、それはまあ原則は私どもは曲げたくない。やはり言うべきことは言い、筋は通すという中で何とかわかってもらって、温かい関係が結べるような環境といいますか、話し合いができる環境をどうしたら一体つくれるのかということを——この前グロムイコさんに会ったのがあれは第一ラウンドだと私は思うわけでございまして、今後、向こうもどういう態度で出てこられるか、また私どもからも、総理が言いますように、こっちから求めてということは、筋を曲げるということは、私はできないと思うんです。それはもうはっきり私もそう思いますが、その中でどういうことでこれを打開していくのかということにつきまして、実は頭を痛めているところでございますが、先生から何か妙手あればとおっしゃったのでございますが、まだ御披露してこれが妙手でございますということにいまなっておりませんので、まことに申しわけございませんが、これはもう真剣にこの対ソ問題というものについて考えてまいります。  世界の環境から言いますと、一つはアフガニスタンの問題がどういうふうに推移するか、あるいは中東のイラン、イラクの問題に関連して何か動きが出てくるか、あるいはアメリカの大統領選挙、そういうことが終わって、何か政策がどういうことがあるかとか、そういうグローバルな中の一つの問題としてやっぱり私は考えていかなければいかぬなというような考えでおるわけでございます。
  133. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 非常に奇異に感ずる一つの現象が実はございまして、確かに、いまお述べになったようないろいろな環境の中で、たとえば西ドイツのシュミットであるとか、あるいはジスカールデスタンあたりがモスクワを訪れまして、じかにブレジネフ書記長と会談をする、その突破口を開くための努力をされている、そういう側面が実はございます。私の記憶に誤りがなければということになるでしょうけれども日本政治家で最近ブレジネフさんにお会いされたというのは、大体、田中元総理以外にないということを聞いておりますし、大使自身もなかなか会えないという環境に置かれている。まずそこらあたりからやっぱり話し合わなければ、いまおっしゃったとおりだと思うんです。そこに、合意なり、いろいろな話というものは突き進んで成果というものをおさめるわけにいかない、当然だろうと私は思います。ただ、グロムイコさんに会うのも結構だろうと思いますよ。コスイギンさんに会うのも結構だろうとぼくは思いますが、やはり、ああした体制の中では最終的に決定権をお持ちになる書記長自身に会って、いろいろな角度から日本立場を訴える場合もねばり強く展開する必要があるんじゃないだろうか。一方において、永野さんとか土光さんが行くと、会うんですね、会えるんですね。この辺は大変おもしろい現象だなというふうに思えるんです。  そこで、そういう点を考えてみた場合に、その辺あたりに一つの手がかりというものがありはしまいか。確かに、いまあれだけの強烈な軍拡の道を歩んでいるソビエトの状況を考えますと、それは、資源にも限度があるわけでございますので、いつまでそういう状況が続くのかということも、これは一般の常識だろうと私は思うんです。かてて加えて、その半面に、資源の確保というものもソビエトとしても私は例外ではないだろう、それに最大の視点を注いでいるのがシベリア開発ではあるまいか。そういう点で、土光さんだとか永野さん、大いに一ころ乗り気であった。そういう点でいろいろな話し合いがなされた。そういうところあたりから、一つの交通整理をしながら、道が開けないものだろうか。あるいは非常に極端な考え方かもしれませんけれども、そういう一つの方法がある。これは外務省で発行している「経済外交」という中で牛場さんを中心にした対談の中でもそういうくだりが出てきます。伊東さんお読みになったかどうか、私わかりませんけれども。なるほどな、同感だと。かねがねそういうことを私も考えておりましたために、やっぱり、だれかがそういう道を開かなければならない、こういう冷却した状態というものは解決をしなければならぬ。解決をするためには、やっぱりいまの状態でいつまでも平行線をたどっていたのでは、これはらちが明かない。どこかでその突破口を開く必要がある。その一番主翼を担うのが私は伊東外交であり、また、外務省自体であろう、そういう考え方もないではないですが、その辺に、いますぐ直ちにそういう問題、私がいま提起したからといって伊東さんがどういうお考え方をお示しになっていただけるかわかりませんけれども、西ドイツだとかフランスあたりでもそういう点が非常に盛んに交流が行われているということを聞いてみますと、やはり決してむだではない。むだではないどころではない、むしろ解決への一つの糸口になるであろう。いかがでございましょう。
  134. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) この間、私、行きましたときにも、ドイツのゲンシャー外務大臣に会って、シュミット首相がブレジネフに会ったときの話、こっちからも質問し、向こうからも聞いたのでございますが、決して、弱いシュミットではなかったんだと。アフガニスタン問題の撤兵ということはどうしても国連決議のようにやれということを強く主張したと。あと、NATOの話をしていましたが、弱いドイツではないという態度で話してきたということをゲンシャー外相が言っていたのでございますが、先生おっしゃいましたブレジネフに向こうはシュミット、ジスカールデスタンさんが会っているではないか、日本政治家は田中総理以来会っていないというお話でございましたが、向こうと日本とで違う一つの大きな点は領土問題が実はあることでございます。それで、これは総理が、たとえばもっと上の格というと総理でございますが、総理がブレジネフに会って領土問題を話さないというわけにはいかぬ。領土問題を話したときにすぐに何か結論が出てくるかどうかという問題もございますし、なかなか、これはジスカールデスタン、シュミットさんの立場日本が置かれた立場と違うことがあるものですから、非常にむずかしい問題がそこにあるんだということはひとつ御認識をお願いしたいのでございます。  ただ、いま永野さんや土光さんはブレジネフに会うんだという話がございましたが、その会うということ自身は、私はいかにソ連がシベリア開発について日本の資金なり技術に関心があるかということの私は一つの証拠だと思うわけでございます。それで、今度の十一次五カ年計画で、ソ連は非常にシベリア開発ということを重視しているということを聞いておるわけでございますが、さっき言いました領土問題を全然別にして、経済問題だけでいけるかといいますと、なかなかここにデリケートな問題があるものですから、私どもシベリア開発につきましては、新しい信用供与についてはケース・バイ・ケースで考えるということで、いまも実は森林の問題とかヤクートの石炭の問題とかには継続の問題として政府ベースの信用供与をやっておるわけでございまして、今後ともその態度は変わらぬわけでございますが、先生のおっしゃったことは私どももそれはこれからいろんなことを考えますときの検討の材料には当然する問題の一つだということはよくわかりますので、いますぐここでこうしますということはまだ申し上げるようなものはございませんけれども、十分頭に置きまして、これは検討して、何とか日ソ関係を永続的に平和友好関係をつないでいくということの必要性というのは十分にわかっておりますし、向こうもわかっておると思うのでございますが、いま第一ラウンドでグロムイコさんに会ってきたばかりでございますので、これからまたどういう仕切りをしようかということで、いま探求をしておるところでございます。
  135. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 この問題だけでも大変な底の深い問題でございますので、きょうのところはこれで一応、残余については留保しておきます。  もう一点別な問題、昨日ですか、報道によりますと、イラン側ではホルムズ海峡の封鎖も辞さないという、その可能性は十二分にあり得るというようなことが伝えられたようです。なるほど、いま大変、終息の方向へ向かわない、むしろ激化するというようなことを非常に心配しているわけでありまして、伊東さんもすでにもうイラン、イラク両国に対して強く要請していることも知っております。しかし、果たしてそういうような状況の中で、彼らも日本のみならずいろんな国々からそういう要請を受けているであろう、しかし背に腹はかえられないということになった場合に、ホルムズ海峡の封鎖というものはあるいはあり得るんではないだろうかという、やはり不測の事態、最悪の状態考えた場合に、日本として果たしてその対応ができるのかどうなのか、その一点だけいまここでお尋ねをしておきたいと思います。
  136. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答えを申し上げます。  これはもう最悪の場合であり、イランがまたそういう場合には世界から孤立をするということになるわけでございまして、私どもの方には公式にまだそういうようなことは何も言ってきておらぬわけでございまして、日本としては最後までホルムズ海峡の航行の安全については実現していくように努力をするつもりでございますが、これは日本だけの国益でございません。アメリカも、自由主義の陣営、たくさんあそこを通って油を買っているというのが現状でございますので、そういう国々と私は協力しまして、よく連絡をとって、そういう事態にならぬように最善の努力をしてまいるというつもりでございます。
  137. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、ちょっと視点を変えて、もうあとわずかな時間で、果たして全部言い切れないであろうということを心配するわけでありますが、今国会において衆参両院を通じ憲法問題が大変大きな議論の焦点になりました。そうした事の成り行きというものを考えますと、やはりその憲法第九条の問題というものがどうしてもわれわれの脳裏から離れない、そういうところの背景があるであろうというふうに判断せざるを得ないわけであります。  で、鈴木総理が今回の所信表明の中で、今後の日本防衛力整備のためにどういう考え方かということについて述べられておりますね。これは従来と余り変わってはいないと思うんですけれども、ただ一つ、言葉上の問題かもしれませんけれども、節度ある質的な向上を図っていきたい、要約すればそういう趣旨のことを述べられております。その節度ある質的な向上、これは昨日も衆議院の決算委員会でございますか、大変議論を呼んだようでございます。この辺、われわれはどういうふうに受けとめたらいいのか。
  138. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 総理が本会議で所信表明されまして、その後また本会議の答弁もあったわけでございますが、その趣旨は、現在わが国は平和憲法のもとに、非核三原則を国是としておりまして、専守防衛に基づきまして、シビリアンコントロールのもとに厳正に行っておるわけでございますが、こういった基本的な考え方に立って、周辺諸国に攻撃的な脅威を与えるものではなくて、しかし侵略に対しては有効に対処していくだけのもの、諸外国の技術的水準の動向に対応し得るもの、そういう意味でまあ節度ある質の高いというふうにおっしゃったわけであります。節度がある質の高いという言葉が具体的に何らかの目標を示した言葉ではもちろんございませんけれども、具体的に言えば、私どもとしましては、いま整備目標としております防衛計画の大綱、この線に従って整備していくということがその具体的なあらわれではないかというふうに考えまして、現在その整備に努めておるわけであります。
  139. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 従来は、いまの答弁に関連いたしまして、攻撃的でないものについては、という一貫したいままでの政府の考え方があったわけでありますが、大分昨日の答弁の内容を伺っておりますと変貌しちゃったんじゃないかというような感じがいたすわけです。いままでは、憲法上保持を許されない兵器というのを、今回、性能上もっぱら他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器、こういうふうに考えていきますとね、果たして専守防衛というものとのかかわり合いの中で、何か、なし崩し的に質的な向上というものを目標を置きながら、——もちろん憲法第九条ではもうすでに昭和五十三年の三月九日において政府の統一見解が出ておりますね、核兵器の保有に対しては、持てないということは記載されていないと、けれども、核防条約だとか、あるいは非核三原則の決議に基づいて政策上それが許されないんだと。こういうずうっと一貫した答弁が貫かれてきてるわけです。けれども、今回そういう答弁を聞いておりますと、いま申し上げたように、それがだんだんだんだん拡大解釈されていきまして、その質的な向上に結びつけるための一環として将来は、あるいは戦術的な核兵器ということになるのか、戦略的な核兵器となるのか、要するに壊滅的な打撃を与えないというものの範囲を越えない限りは核兵器を持てるんだということで傾斜していかないかという心配が出ているんではないだろうか。  これは、外務大臣は後、総括的にその辺のくだりを御答弁いただきたいと思いますが、防衛局長の方からその点を、もう時間がありませんからね、いまわれわれが疑問に思ってることを総括的に、包括的に答弁してください。外務大臣も同様にひとつお願いします。
  140. 塩田章

    政府委員(塩田章君) それでは総括的に申し上げますが、いまのお尋ねの御心配の、まあ、壊滅的打撃を与えるような兵器は持てないという言葉からして、まあいわゆるなし崩し的に範囲を広げているんじゃなかろうかというお尋ねでございますけれども、全くそういうことではございませんで、従前からの政府の答弁、あるいは政府の考え方、全然変わっておりません。その点ははっきり申し上げたいと思います。  ただ、いままでの政府のいろんな段階の答弁の中に、言葉としましては、攻撃的な兵器、他国に対して侵略する兵器あるいは今回のように壊滅的打撃を与える兵器、多少言葉遣いの点でいろいろございましたけれども、他国に壊滅的打撃を与えるという言葉自体も、もう四十四年の質問主意書に対する答弁書から使っておりまして、終始一貫してその点は変わっておらないわけでございます。
  141. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 もう締めくくりに入りますから、もう一点だけ。  そこで、確かにそう言われればそのとおりかもしれません。従来は憲法上あるいは条約上の規制によって、法理論においてはそれはあかぬと、政策上においては云々という、これは常に両方並行した考え方があるわけです。将来において政策の変更というものを考えられはしまいかと。確かに現在の専守防衛、各国の兵器のレベルから考えてみた場合に、一体日本としてはこの状態で果たして十分な対応というものができるのかどうなのか。当然これはいままでのずっとやり方考えてみますと考えられないではないんですね、はっきり申し上げて。これはもう政府の五十三年の答弁書にもその辺のニュアンスを込めた中身が出されているわけですね。そういったような壊滅的ということは一体どうなのか、政策上においては将来全く変更がないと判断してよろしいのか、この二点を最後の締めくくりとして、これはきょうの段階では十分じゃありませんけれども、それを受けて伊東外務大臣から統括してひとつ御答弁をいただければありがたいと思います。
  142. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど申し上げましたように、壊滅的打撃という言葉自体は政府の見解を変えたものでないと、それから、今後の政策の変更があり得るんではないかという点につきましては、非核三原則という政府としての大原則がございますし、それから原子力の平和利用の法律あるいは核拡散防止条約、そういったようなこともございまして、これは私ども政府の確固たる方針であると、こういうふうに考えておるところでございます。
  143. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま防衛庁からお答えしましたように、法律論はいまのとおりでございますし、政策的にこれは変わるかどうかというお話でございますが、総理憲法は変えない、自分内閣で変えないと言っておられることを前提にして考えていけば、いま非核三原則を変えるとかあるいは核兵器拡散防止条約に入っているのをやめるとか、そういう政策の変更は私はないというふうに考えております。いまのままでずっと行くんだと、当分の間は。それは世の中がうんと変わるなどという、何百年先のことまで私はわかりませんけれども、当分そういうことはないんだということでやっていこうという考えでございます。
  144. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 終わります。
  145. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、金大中事件と、それから中期業務見積もりをめぐる日米関係について、質問さしていただきたいと思います。  きょうの午前中のここの審議でも、金大中氏の死刑判決の根拠は国家保安法第一条第一号にあると判断できると。で、渡辺参事官は、離日後も韓民統の議長という身分を維持したということがそれに問われていると判断すると、こう言われまして、外務大臣も、これは政治決着には違反しないと思うということを言われました。そうしますと、金大中氏の死刑判決の根拠は、日本にある韓民統という団体と金大中氏との関係が死刑判決——国家保安法違反となったと、そういうことになりますか。
  146. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 判決理由要旨に記載されておりますことから、国家保安法違反をもって死刑というふうに私どもは推定いたしております。
  147. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、だから、それは韓民統と金大中氏との関係ですか。
  148. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 韓民統と推定されるわけです。
  149. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、韓民統の議長に金大中氏がなるということは日本で発生した関係でしょう。起訴状を見ましても、八月の四日に議長になろうということを決めたということを述べていますし、外務省もこれを背景説明の中だというふうに言っておりますが、政治決着では日本における言動は不問に付するということになっていたはずじゃありませんか。
  150. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 日本における言動についてはこれを不問に付するという了解が政治決着の内容を構成しておることは、御指摘のとおりでございます。私どもは、韓民統と金大中氏との関係というものは、日本から帰国した以降の事実について韓国側当局が問題にしておるものと考えております。    〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕
  151. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまアジア局長日本から帰国と言われましたけれども、みずからの意思で帰国したわけじゃなくて、拉致されていったわけでしょう。午前中も離日以後と言われたけれども、帰国、離日ということが自分意思ならそういう議論も成り立つかもしれぬけれども、政府は公権力と認めないけれども、何らかのある勢力によって日本から不当に拉致されていったわけだから、拉致されていった後も韓民統の議長であったということをもって死刑判決の根拠にするということは、在日中の言動、これを問題にしないという政治決着に違反するじゃありませんか。
  152. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) まず、帰国か拉致かということでございますが、それは拉致ということでもちろん結構でございますけれども、いずれにしましても、金大中氏が韓民統の議長の職にとどまっていたことは事実でございますし、本年の三月になりまして、引き続き議長の職にとどまることはいろいろ個人的な不都合があるので職を辞したいという連絡を韓民統の関係者ととっておられたことは事実と思われるわけでございます。このことは韓民統自身が認めておることと承知いたしております。
  153. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、本年三月どころじゃないですよ。七五年の七月、もう五年前ですよ。五年前金大中は、引き続き韓民統議長でいるのは責任問題があるから解除してくれと依頼したということが起訴状にはっきり書いてありますよ。もう五年も前から、自分は不当に拉致されたんだけれどもやめたいということを言っているわけで、そういう認識でいいんですか。ことしの三月からやめたいと言ったが、本人は五年前からそう言っているんです。
  154. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 私どもは、ことしの三月に議長の職を辞されたというふうに了解いたしております。
  155. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 了解って、これはあなた韓国側じゃないんだから、日本側として本当に政治決着をどう見るかということを見なければいかぬでしょう。そういう立場に立って見ると、起訴状にさえ、本人は五年前からやっぱり問題にされるといけないからというのでやめたいという意思を表示しているんですよ。  じゃ、韓民統が反国家団体ということになったのはいつからですか。
  156. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 一九七七年の、月はちょっと記憶いたしておりませんが、ソウルの地方法院で反国家団体であるというふうに判示されたと承知いたしております。
  157. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これも起訴状に、去る一九七八年六月大法院で韓民統は反国家団体と判示したということがやっぱり述べられていまして、事件が起きてから五年後初めて反国家団体ということが韓国大法院で決まったわけであります。一切法律というのは遡及しないというのがあたりまえでしょう。日本における韓民統との関係、しかも拉致されていってからやめたいという意思表示までしていて、連れていかれてから五年たって反国家団体ということになった、そういうことで、今度はこれを根拠にして死刑判決まで受けているわけでしょう。それをあなた方は政治決着に反しないとあくまで言い張るんですか。判決文も全文まで手に入れないでそういう判断をはっきりとできるんですか。
  158. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 七八年の六月に大法院におきまして、先ほど申し上げましたソウル地方法院の反国家団体としての判示を肯定したという事実は御指摘のとおりでございます。  私どもが入手いたしております起訴状におきましては、一九七八年十二月二十八日、自宅で韓民統常任顧問云々ということで、韓民統との関連におきましては大法院の判示のあった時点以降のものを起訴状で言及されておるというふうに承知いたしております。
  159. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 外務大臣ね、これ一人の人間の命にかかわる問題で、不当に拉致されていって、日本政府が本当に原状回復を要求して、実現していたら金大中さんは日本に戻ってこられたわけで、いまのような状態にならないで済んでいるわけですね。その金大中さんが死刑判決になって殺されるかもしれぬということで、日本でも、国会でもこれだけ大きな問題になっている。ところが、判決の根拠はただ一つ、韓民統の議長という身分を維持してたんだということだっていうんでしょう、国家保安法の一条一号違反というのは。ところが、反国家団体の韓民統というのは、拉致されてから五年たってから反国家団体と言われたわけですよ。それで金大中さん自身は、その身分のことが問題になるかもしれぬというので、——大体議長になることを決めたのは日本にいたときなんですから、八月四日ですからね。しかし、拉致されていってから、あるいはこれが問題にされるかもしれぬというので、五年も前にこれをやめたいとみずから意思表示までしていたという問題でしょう。それを、こういうふうに、これが理由になって死刑判決になろうとしている。それでも政治決着に違反しないと確信を持って外務大臣は断言できるんですか。
  160. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私どもが向こうから正式にもらっているのはこの判決理由要旨というものでございます。これで判断をしているわけでございますが、これが、判決が出る途中において、私も前の大来外務大臣も、私、官房長官の時代から、また外務大臣になりましても、政治決着で日本における行動、言動については責任を問わないということがあるんだから、この点は十分に注意してもらいたい、配慮してもらいたいということを何回も向こうへ実は伝えたわけでございます。  この判決要旨の中には、「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、」ということをつけて、「国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠に依り本件を判断したことを明らかにする次第である。」というような判決要旨の文書を実はもらっているわけで、いま日本が何回も重大関心があると言っていったことについては配慮したということをいって、国内の犯罪事実ということで向こうが判決要旨をこっちへよこしておりますので、私はそのことを勘案しまして、これは政治決着には反するものじゃないという判断をしているわけでございます。  ただ、判決文の全文をもらうということが一番これはいいことでございますので、判決文をひとつ、日韓の政治的な関係もあるんだから判決文をよこしてもらいたいということを向こうに対して今後とも続けていくというのがわれわれの考え方でございます。
  161. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうしますと、じゃ、判決文全文をとり、手に入れて、そしてこれが本当に政治決着に違反するかしないかもその場で最終的に検討するということで受け取っていいですね。
  162. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私どもは、いまこの要旨で、もうこれで政治決着に違反しないということをわれわれは考えているわけでございます。恐らく全文が来ましてもこういう要旨を敷衍したものであろうと思うわけでございまして、それを見て政治決着を、それはどうかということを見ることは当然でございますが、この要旨と変わったものが来るということは想像はしておりませんので、いまの段階ではこれでもう政治決着に違反はしないという結論を出しているというのが現状でございます。
  163. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは大臣、反対ですよ。要旨というのは、現物があってそれを要約するのが要旨なんで、これは短いわけだから、省くわけですからね。要旨が先にあってそれを敷衍したんじゃないんですよね。だから要旨というのは、まとめたわけだから大事な問題があるいは抜けているかもしれないし、全文が来て改めて、——一行一行が問題なんですからね、特に日本関係のところ、その他は韓民統関係のところは。そういうところをちゃんと見て、要旨には盛られていない新しい問題があったらやっぱりこれはもう一度検討し直すというのが当然でしょう。
  164. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 判決を精査することはこれは当然でございますが、私は、要旨というものは判決の主なことが書いてあるというふうに、私は肝心なところはこうこう書いてあると判断しているわけですからいまのようなことを申し上げているわけです。
  165. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは長い本物が来たら、当然だと言われたので、よく見て、改めて政府の態度が正しいのかどうか、政治決着に反してないかどうかをよく見ていただきたい。  それで私は、第一次政治決着の、この金大中氏の扱いについての政治決着そのものがきわめてあいまいな、いいかげんなものだったんじゃないかと思うんですけれども、金大中氏の扱いについての政治決着、これは口頭だというんですけれども、その全文を、全体を御説明願いたいと思います。
  166. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 十一月二日の政治決着の内容につきまして、その了解事項を御説明申し上げますと……
  167. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 金大中氏のところだけでいいです。金東雲その他は結構です。
  168. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) はい。金大中氏に関する部分につきましては、金大中氏の自由、一般市民と同様出国を含めて自由である。日米両国滞在中の言動につきましては責任を問わない。ただし、今後反国家的活動をしないことを条件とする。かようになっておるわけでございます。
  169. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうすると、ただし、今後反国家的活動と、——これはまあ死刑に値するようなものでないにしても、何らかの反国家的活動をやったら日米滞在中の言動についてやっぱり責任を問うということになるんですか。
  170. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) そのとおりでございます。
  171. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だからこれはきわめてあいまいなわけですな。韓民統の問題以外でも韓国内で何らかの反国家的活動をやったら責任を問うのは、これは当然なんだと。そういう政治決着、こういうものをあなた方は結んでしまったわけですね。そうすると……
  172. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの点でございますが、私ども向こうに言いましたのは、やはり日本における言動について責任を問わないということが原則なんでございますから、これはあくまで日本における言動を問わないようにということで、何度も実は向こうに申し入れをし、向こうに意向を伝え、その結果、何回も向こうはそれを配慮をするというような口頭で話があったり、要旨の中にも、友邦との関係を考慮し、ということをわざわざ書いているわけでございまして、私は日本における言動について責任を問われるというようなことのないようにということを向こうに伝えてあるというのが現状でございます。
  173. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ですから、ただし書きがあるわけだから、反国家的活動を韓国でやった場合にはこの限りでないというような政治決着になっているわけだから、今度の判決文で国家保安法第一条第一号違反ということで死刑判決を受けている問題について、判決文全文を取り寄せた際、当然その要旨だけでなく、詳しく精密に、——人間一人の命がかかっているわけで、精密にやっぱり検討するということをきちんと責任を持ってやっていただきたいと思いますが、外務大臣、いかがでしょう。
  174. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 判決文を何とかして手交してもらいたいという努力を今後ともやっていくというのは判決文全文を精査しようという気持ちがあるから言っているわけでございます。今後とも判決文の入手については努力をしていこうということは変わりありません。
  175. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 判決文全文をとった際、全部を読んで、いままでの政府のこういうところでの答弁、国会での答弁が正しかったかどうか、当然新しいものについてもう一度やっぱり見直すと、検討すると、これは当然の態度でしょう。
  176. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 精査するということを申し上げているのは、それを見て全然違っているようなことがあれば、おかしなことでございますから、それはよく調べます。
  177. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは次に、参議院の本会議で、共産党の市川議員が、レイナード発言ですね、アメリカの当時の対韓国部長発言です。この問題について質問いたしました。これは金大中事件以後韓国から日本自民党政治家に集中的に献金工作が行われたという重大な発言だったわけです。これについて鈴木首相は、本人に在米日本大使館を通じて照会したが、同氏は、自分としてはこれ以上かかわりたくない、だれに対しても何も発言するつもりはないと述べたので、改めて照会するつもりはないと、そう答えられました。レイナード氏に大使館員が会われたとき、これ以上のことは、本人はかかわりたくないと言うんだが、これまで毎日新聞、朝日新聞、東京新聞その他にレイナード氏が述べたこと、特に、ことしの七月二十二日に自民党政治家の韓国からの献金ですね、金大中誘拐事件後、政治解決の根回しのために短期間に集中的な形で金が動いたということについては確認したんですか。
  178. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいま御指摘のような事実については全く承知いたしておりません。
  179. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大使館員はいつレイナード氏に会ったんですか。
  180. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 日取りにつきましては調べてお答えした方が適当かと思います。
  181. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ことしか、去年より前か、そのぐらいはわかるでしょう。
  182. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ことしということはまずないと承知いたしております。
  183. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 市川議員が質問したのは、ことしの七月二十二日の毎日新聞の記事について聞いたんですよ。これは、金大中事件がいよいよ大変なことになって死刑にもなりかけているという大変な状況の中で、レイナード氏が金大中事件の政治解決の根回しのために短期間に集中的な形で献金が動いたということを述べたんですから。そのことをことしは会っていないのに首相の答弁はどういうのですか。ことし会ってないんなら、このことについてレイナード氏に当然やっぱり大使館から改めて事情を聞くということをお約束していただきたいと思います。
  184. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいま上田委員の御指摘の、ことしレイナード氏に会った云々ということは、私ども全く承知いたしておりません。いずれにしましても、そういうことがあるのかどうか含めまして調べましてお答えさせていただきたいと思います。
  185. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ぜひ確約をお願いします。実行をお願いします。  このレイナード氏の証言というのは、これは非常に重大な問題なんですね。レイナード氏は、金大中事件が起きて、この第一次政治決着、十一月二日ですね、それを根回しするために韓国から金がうんと流れたということを述べておられるわけですね。で、しかも自民党政治家の名前はですね、これは三年前なんですが、レイナード氏は、CIAの報告を見て、もらった議員の中に田中元首相が含まれているということを、そのとおりだと言って明白に、東京新聞、七七年一月二十八日の夕刊ですけれども、述べている。田中角榮氏というのは当時の首相です。田中角榮氏の名前と、それからやっぱり同じ日に、毎日新聞では、岸信介元首相の名も何度も挙げられているということをもはっきりと述べておられる。それから朝日新聞の夕刊では、韓国から「金を渡した方の人物に大韓航空の趙重勲社長の名前も確かあったと思う。」ということを述べておるわけですね。そうしますと、趙重勲氏から当時の首相の田中角榮氏に金大中事件の根回しのために集中的に金が動いたと、そうレイナード氏が、いろんな発言ですけれども、また日にちも違うけれども、受け取られる、そういう発言を、当時のアメリカ国務省の朝鮮部長責任ある人物がCIAの報告で確認して公然と日本の新聞記者に述べているということなんですね。これは私は大変な問題だと思うんです。  外務大臣伊東さん、おとといロッキード事件の丸紅ルートで公判がありまして、丸紅の檜山、当時の社長ですな、檜山さんを調べた安保という検事さんが五億円問題をいろいろ聞いて、田中さんが「よっしゃ、よっしゃ」と答えたのだということを檜山氏は述べたと。田中総理という人はやはり金で動く人なんだなと思ったと、そう檜山さんは、五億円をお受けしたときに思ったと、そう述べたそうですね。これは調書からは削られたそうですけれども、田中総理という人は金で動く人だということがロッキード事件で明らかになっている。そうすると、第一次政治決着、十一月二日に田中・金鍾泌会談でやられたのだけれども、その政治決着をやるために、レイナード証言のようにどうも陰でかなりの金がやっぱり動いたという疑いさえ生まれている。これはもう大変な問題ですよ。日本の主権、金大中氏の人権にかかわる問題が当時の首相によってもし金で——これ贈収賄になりますからね、大問題なんだが、関心はお持ちですか、こういう事実について。
  186. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私はいま先生が御質問になって初めてそういうことを具体的に言ったという話を聞いたのでございますが、私の知っている限りでは、そういう、いま後ほど具体的に報告すると言いましたから御報告しますが、私の知っている限りでは、日本の大使館のだれかが会って聞いたときは、そういうことは贈収賄一切言わなかったということを聞いているのでございますが、これは記憶に誤りがあるといけませんから、後で具体的に報告するということでございますから、報告いたしますが、私はきのうの裁判の様子が新聞に出てだれがどう言ったとか、いま先生の御質問があったというようなことは、私から論評をする問題じゃございませんので、新聞にそういうことが出たということだけで、私はそれをそのとおりでございますとか、そうでございませんとか、そんなことを言う立場にありませんから、事実は知りませんから言いませんが、そういうことは、いまアメリカで言われたようなことは、私は政治家として信じたくない、そんなことは、私の記憶ではそんなことを言わなかったということ、同氏が言っているということが記憶に残っておるのでございますが、そういうことはあり得べからざることだし、また絶対あっちゃいかぬことだというふうに思っております。
  187. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あり得べからざることを、これまでやっているんですよ、田中さんは。だからそれでいま裁判をやっているわけです。あなたはもちろん聞いていないでしょう。大体レイナードさん、こういう発言を、金大中事件の根回しで金が動いたというのはことしなんですから、田中角榮氏や岸信介氏の名前を挙げたのは三年前ですよ。三年前だけれども、それが金大中氏の政治決着のための根回しだということを明らかにしたのはことしなんですよ。金大中氏の死刑の危険、こういうものが生まれたので、レイナード氏も初めてこの重大事実を述べ始めたんだと思うんですね。  それで外務省先ほど、ことしはまだ会ってないと、これをこれから聞こうというわけですからね、これから聞いてくれるんでしょうレイナードさんに、先ほどのお約束は。
  188. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) レイナード氏の件につきましては全く初耳でございまして、いずれにしましてもそういう事実があるかどうか調べたいと思っております。
  189. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さらに、アメリカにいる在米韓国人の文明子女史、アメリカ名ジュリー・ムーンと言われますけれども、このジュリー・ムーン女史は週刊ポスト七七年三月十八日号に御自分のサイン入りで、いま外務大臣があってならないことと言われたことについて非常に詳細に書かれているわけですよ。朴大統領から趙重勲氏が頼まれて——詳しく書いてあります。小佐野賢治氏を通じて一億円ずつ三回、田中角榮首相に金を渡したと、日本の週刊誌にこういう大変な事実を本名でお書きになっているんです。  それから三年たってレイナード氏が、当時責任ある立場に立った人が趙重勲の名前も出して金大中の政治決着の根回しのために集中的に動いたということを新たに証言されていることを見れば、この文明子女史が書かれたこともあるいは事実かもしれぬという疑惑が当然出てくると思うんです。  警察庁、これらの問題についてこれまで関心を持って調べたことがありますか。
  190. 内田文夫

    説明員(内田文夫君) 御指摘のような報道があったということは私ども承知しておりますが、しかしながら事実関係につきましては必ずしも具体的に把握はいたしておりません。
  191. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり、こんなに大変なことが報道されているのを知っていて、事実関係について把握してないと。つまり調べたことがないわけですね。
  192. 内田文夫

    説明員(内田文夫君) 事実関係につきましては、余りにも内容も具体的な内容ではございませんので、よく把握しておりませんけれども、現時点において非常に抽象的な内容でございますので、これについて捜査をするとか、そういう判断についてはひとつ申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。
  193. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 週刊ポストには、小佐野賢治が趙重勲と会ったのは東京赤坂の料亭「川崎」だとか、それから田中角榮とも会ったのが何月何日だとか、日にちまで詳しく書いてあるんですよ。こういうものが本当に事実かどうか調べられるのが警察なんだから、抽象的なんで調べられないじゃない。詳しく書いてあるので、今後調べますか。
  194. 内田文夫

    説明員(内田文夫君) 事実かどうかという問題、仮に事実といたしましても、古い事案でございまして、多分時効になっているのではないかと思います。
  195. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 古い事件でという、そういう感覚だから困るんです。レイナード氏は、ことしの八月十日のサンデー毎日に寄稿されて、最後にこういうことを言っている。日本は金大中事件の再捜査をすべきだ、日米両国は共同の行動をやっぱりやらなきゃならぬ、ということまで言って、「日本国会で金大中誘拐事件の調査を、ロッキード事件の特別調査の規模に匹敵するフルスケールで、開始すべきだ。」ということまで言われているんですね。レイナード氏はいまもうアメリカ政府のポストにはおられませんけれども、御自分が当時の状況を完全に知っているだけに、いま金大中氏の命が本当に失われかねないという時期で、もういても立ってもいられないと、そういうお気持ちでおられるんだろうと思うんです。だから、日本の新聞記者には会ってこういう事実を次々と述べられ、日本国会はロッキード事件と同じぐらいの規模で金大中事件を再捜査すべきだと、それが国会の任務ではなかろうかということまで言われているわけですね。それに警察庁や外務省がこういう大変な疑惑、私も事実でないことを希望するけれども、こういう次々に報道が出て、当時アメリカの、しかも朝鮮関係の責任者ですから、その方がGIAの報告を全部見て、確信を持って、彼はKCIAの犯行だということをアメリカの上院にもちゃんと出て証言もしている方ですからね。その方がこういうことを言っているのに、何らの関心を持たないというのは私は不当だと思うんですね。時効かどうかはこれからの問題なんで、ひとつ外務大臣もちゃんと関心を持ち、日米関係の大問題、金大中氏の命にかかわる問題なので、きちんとやっていただきたいし、警察庁も真剣にこの問題を調べるということを御答弁いただきたいと思います。
  196. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 政治決着をしました後、公権力が介入しているのかどうかということにつきまして捜査当局が捜査を続けているというのが現状でございまして、この関係の捜査につきましては捜査当局を信頼し、われわれはそれを任しておくと、任せると。何か協力要請があれば、当然協力するというのがわれわれの態度でございます。
  197. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 警察庁いかがですか。
  198. 内田文夫

    説明員(内田文夫君) 先ほど来申し上げておるわけでございますけれども、われわれの方も実際の事実関係というものを具体的に掌握しておりませんので、現時点においてこれが犯罪であるのかどうか、あるいは捜査をするかどうか、あるいはしているかどうかということについての判断を申し上げるのは、ひとつ差し控えさせていただきたいと思います。
  199. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次に、中期業務見積もりの日米関係問題に移ります。  外務大臣、九月十九日のブラウン長官との日米会談ですね、これで例の中期業務見積もりの問題、日本における防衛費の問題がいろいろ出て、先ほど外務大臣もここで当時のことを述べられました。ひとつ、東京新聞の九月二十一日に裏約束があったと、できたようだという解説があるんです。こういうことなんですね。先ほど外務大臣お話の中でも、アメリカが防衛費九・七%のことに触れたときに、インフレによって目減りしないかとか、大蔵省の査定はどうかとかいう話が出たことを話されました。それで、この東京新聞は「査定やインフレによって目減りする場合は来年度の補正予算で在日米軍駐留費負担の上積み」、いわゆる思いやり予算の上積みですな、それをして「埋め合わせるという“裏約束”ができたようだ。」と、こういう記事があるんですけど、こういう事実はまさかないでしょうな。
  200. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 先ほど私、申し述べたことはそのまま正直に向こうとの話し合いがあったことを申し述べたのでございます。九・七%の評価はすると、ただインフレとか大蔵省の査定がないかとかいう話が出たこと、それから在日駐留費用について日本に負担をやってもらっていることに感謝すると。ただ、日本もいろんな制約があるから、これはまあ憲法その他のことだと私は思いますが、制約ということですから。制約があるから、そういう日本立場はよくわかるということの話があって、そして世界軍事情勢の話があり、日本に対しまして顕著で着実な防衛費の増加、来年一年というようなことでなくて、継続して考えてもらいたいということ。それから、いまお話のありました中期業務見積もりについて、繰り上げて達成できないだろうかというような具体的なことの期待表明があったことは事実でございます。ただ、それを、九・七を一〇にしてくれとか、GNP比の一・何ぼにしてくれとかいう話は出なかったことは確かでございます。それに対して私は、自主的に考えなけりゃならぬ問題だ、それから国民のコンセンサスが必要だ、日本はそれだけでなくて、紛争周辺国に経済援助をしている、広い意味のこれは総合安全保障だというようなことを話したのが全部でございまして、実はいま先生がおっしゃったようなことが東京からアメリカにはね返ってきたわけでございます。私が何か来年度の補正予算で足りなくなった分を見るとか、それからもう一つ話に出なかったことで追加要望を何か予算のときにするということがあるそうだがという二つの全然話が出てなかったことがあるんですね。東京からはね返ってきたことがございました。それはもう私は全然そういう話はしておりませんし、向こうからも話はなかったということはこれはもうはっきりいたしております。
  201. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 五月十四日の参議院の本会議で、亡くなられた大平首相がこの問題についていろいろ各党から質問されたとき、中期業務見積もりの繰り上げ達成を約束していないと繰り返し答弁されたんですが、その後新聞を見ますと、アメリカ国務省、国防省両当局は、九・七%増では、これは大平公約を破っているんだという見解を述べたとかいうような記事がいろいろあるんですけれども外務大臣、向こうと、ブラウン長官なんかと話したときに、一年前倒し、中期業務見積もりの一年繰り上げ達成、これは公約じゃないかというような受け取り方をアメリカ側がしていたような事実はないですか。
  202. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私は全然そういう感じは持たなかったし、そんなことは言っておりません。  それで、亡くなった大平総理もカーターさんとお会いしたときに、カーターさんが政府部内の計画を早目に達成することという表現をしたわけでございます。政府部内の計画。それは恐らく中期業務見積もりを頭に置いてカーターさんは言ったかもしれませんが、表現は政府部内の計画を早目にということを言った。それに対しまして、亡くなった大平総理が、いろいろ日本の制約がある問題でございますとか、いろいろのことを述べたところで、防衛問題には真剣に取り組むという表現で言ったのでございまして、一年繰り上げとかそういうふうなことを総理が約束したとか、外務大臣が約束したとか、そういうようなことは一切私はないと、これは総理からも、私、直接聞いておりますし、書いたものにも残っておりますし、総理が約束したということはございません。
  203. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、この中期業務見積もりの一年繰り上げ達成をかなり執拗にアメリカ側が、要求かあるいは外務大臣言われるように期待表明かわかりませんけれども、ずっと言っているわけですね。毎年一五%ふやさなきゃ無理だと、九・七%の枠ではこれじゃだめだということまで述べているんだけれども、私は、まだ閣議了解にもなっていない、国防会議にもかかっていない、防衛庁の内部資料、こういうものに基づいてアメリカがこんなに執拗に言ってくるというのは不思議なんですよ。しかもこれまでの国会答弁だと、去年パンフレットに基づいて大体概略、大体こんなものだということを説明しただけだというんでしょう。パンフレットで概略を聞いただけで一年前倒しがいまの国際情勢から必要だというようなことをアメリカが言うわけはないんですよ。詳細に分析して、アメリカの政策決定プロセスというのは、悪いけれども、どうもわが国よりもプロセスそのものははるかに総合的、体系的なんで、私は、アメリカ側がこういう要求をしてくるのは、単なるパンフレットだけ知っているんじゃないんじゃないかと思うんです。防衛局長、アメリカ側に、いつ何を渡してどういう説明を中業についてされましたか。
  204. 塩田章

    政府委員(塩田章君) お答えいたします。  去年の七月に私ども中期業務見積もりをつくりまして、「中期業務見積りについて」というのを発表いたしました。ここに持っておりますけれども、これが去年の七月でございます。アメリカ側と最初に話が出ましたのは八月の十六日だったと思いますが、ワシントンにおきまして山下——当時の長官と山下・ブラウン会談がありました。その席上で概要を説明いたしました。それは、いま申しました発表文につきまして、これによりまして口頭で説明をいたしておりまして、別段いまおっしゃいましたパンフレットとかそういう何か印刷物を渡したんじゃなくて、これによりまして口頭で説明したということでございます。それから後何回か日米会談、私の方の会談ございまして話題には出ましたけれども、こちらから特段、もう説明済んでおりますので、説明したということはございません。
  205. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 われわれ国会議員にもいまのパンフレットと、これは去年の七月ですわね、それからいろいろ問題になった、ことしの五月に補足資料、これはかなり厚いものですけれども、中業そのものじゃない、この補足資料をいただいた。この二つだけですね、国会議員がいただいたのは。
  206. 塩田章

    政府委員(塩田章君) そのとおりでございます。
  207. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ことしの八月十二日、参議院内閣委員会で矢田部議員の質問に対して塩田局長は、この中期業務見積もりの中にいわゆる事業見積もりと能力見積もりがある、この能力見積もりというのは防衛計画大綱に示す防衛態勢、自衛隊体制を基準にして、現在の防衛力の不備点、改善点に関するいわゆる分析評価を行おうとするもので、事柄の性質上公表は差し控えさしていただきたいと、こう述べておられる。能力見積もり、これはマル秘資料なんですか。
  208. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 能力見積もりは極秘になっております。極秘でございます。
  209. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 極秘ですね。  委員長、資料を配らしていただきたいんですが。資料の配付を許していただきたい。
  210. 秦野章

    委員長秦野章君) はい。    〔資料配付〕
  211. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは、能力見積もりは極秘だということなんですね。ところが、いま資料をお渡ししますけれども、これは奇怪な事実がある。雑誌「正論」の七月号に、アメリカの元国防長官シュレジンジャー——これは去年の七月までカーター政権のエネルギー庁長官で閣僚だった方です。このシュレジンジャー元国防長官が日米安保条約二十周年の記念特別講演をやられている。その抜粋がここにあるんですね。お渡しした資料の二ページ目ですね、二ページ目の右の段に傍線を引っ張ってある個所がございます。  ここにはですね、中業のことについて書いている。これはまだ正式に認められていないと、大蔵省の容認をも得るに至っていないと。ところが、これは十分じゃないと。「中業計画それ自身、日本の軍備計画にとって必須の要素を若干見落としています。それは「戦闘能力・継戦能力」」——これはかぎつきですよ——「の表題のもとに含まれている諸要素で、その中には航空機のシェルター、航空基地の抗堪性の強化、弾薬備蓄の充足、ミサイル、魚雷その他の供給量の増加、さらに補給施設の増大、燃料備蓄の充足などが含まれてい」ると、「これらの戦闘準備措置を確保するには、今後四年間にわたって約三十五億ドル、各会計年度六〜十億ドルの追加支出が必要にな」ると、こういう演説を彼はしているんです。  私どものいただいた資料にも、この「戦闘能力・継戦能力」なんて表題の場所はないです。これは、あなたが極秘資料だと言った能力見積もり、これそのものだと私は思うんだな。そんな去年の七月に簡単なパンフレット——ここにありますがね、何も書いてないですよ、こんな簡単なパンフレットを渡しもしないで、口で山下防衛庁長官がブラウン国防長官に話しただけで、何でシュレジンジャー氏がこういうことを、中業計画それ自身要素を見落としていると——全部知らなければ何が見落とされているかわかるはずないじゃありませんか。中業計画そのものを手に入れて、しかも、極秘資料の「戦闘能力・継戦能力」と表題のあるもの、そこを調べて計算しているんですね。四年間に三十五億ドル要ると、きちんとした数字を見てアメリカ国防省は計算していると、そうとしかとれないじゃありませんか。塩田防衛局長、どう思いますか。
  212. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 中期業務見積もりの中に「戦闘能力・継戦能力」という名前の項目はございませんで、その戦闘能力、継戦能力の言葉はいま申し上げました発表した分の中に入っております。そういう意味では項目はあります。
  213. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どこにありますか。何ページに。
  214. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 九ページにですね。
  215. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 九ページは共通事項というところで、たとえば「継戦能力の向上を図るため、」ということでね、そんな言葉はありやしないです。たった四行じゃないですか。
  216. 塩田章

    政府委員(塩田章君) これしかございません。したがいまして、ここにありますような「戦闘能力・継戦能力」と書いた表題はございません。したがいまして、この書いてあること、特にいまの何億ドルとか、そういうようなことは私ども全然関与しないところであります。
  217. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、なぜこういうことをじゃあシュレジンジャー元国防長官が日米安保条約二十周年記念のセミナーの特別講演で演説できるんですか。見ないでできるわけないでしょう。公的な演説ですよ。渡したんでしょう、防衛庁が。
  218. 塩田章

    政府委員(塩田章君) なぜ演説ができるかは私にはわかりませんが、こういうものはございませんから、渡しておりません。
  219. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、山下防衛庁長官がブラウン国防長官に極秘資料を渡したとまでは思わない。もし渡していたら、宮永さんと同じようにこれはやっぱりあれになるんじゃないですか、一年以下の、国家公務員法守秘義務違反で。防衛庁長官自身が宮永さんと同じように極秘の資料を、しかも日本国会にもまだ出てない、閣議も知らない、総理大臣も知らない、それを渡していたら、これはそういうことになるでしょう。どうですか、もしそういうことがあれば。
  220. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 秘密文書を流せば当然そういうことになりますが、こういう文書はございませんから、その点は大丈夫でございます。
  221. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 文書はございませんと言ったって、あなたが参議院のこの委員会で、私いま読み上げて、皆さん方に資料として渡してあるけれども、能力見積もりがちゃんとあると、業務見積もりの中には、中業の中には。これは公表は差し控えさしていただきたいと、極秘の資料だとさっき答えたばかりじゃないですか。その極秘資料がアメリカに渡っている疑いがあるんです。ガイドライン小委員会がありますね、日米防御協力のガイドラインに基づく小委員会。ここで恐らく陸海空の三幕僚監部が、この中業見積もりというのは、陸海空の三幕僚監部が立案して、そして長官の承認を得たものだというふうにわれわれ説明を聞いているんです。その陸海空の三幕僚監部は、ガイドライン小委員会で日米共同作戦計画その他その他日米制服組が物すごい具体的な計画をつくっていると、そういうことなんでしょう。  それで一つお伺いしますが、たとえば朝日新聞の六月五日、「日米制服組が「共同作戦計画」」。ソ連日本に侵攻してくる場合を想定して、もうほぼ連日会議を開いて、地図と時計をにらみながら詳細な日米共同作戦計画をつくっているということが一面トップで出ました。この記事を見ると、これは大体十月にでき上がると、その後日本以外の極東地域での有事の際の両国共同作戦、朝鮮半島有事の際の共同作戦計画もこれからやると書いてあるんだが、こういうことをガイドライン小委員会でやっているんですか。
  222. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 日米共同の、いまおっしゃいましたガイドラインの委員会でございますが、一昨年の十一月に閣議決定をいただきました後、いまおっしゃいましたように作業に入っておるわけでございますが、御承知のように防衛庁側は統幕事務局を中心にしまして、アメリカ側は在日米軍司令部が中心になりまして、それぞれ陸海空の幕僚監部と在日米軍のカウンターパートである各軍司令部が協力していまやっております。それはおっしゃいますとおりやっております。  で、現在やっておりますのは、日米共同作戦計画の研究を主としてやっておりまして、それに関連をしましたその他の調整機関、あるいは作戦準備体制、情報交換、そういったようなことにつきましては、これもやってはおるわけでございますけれども、まだ余り進んでいないと、こういう状況でございます。
  223. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 新聞報道のような、ソ連が攻めてきた場合の計画とか朝鮮有事の場合の日米共同作戦計画とかやっているんですね。
  224. 塩田章

    政府委員(塩田章君) どこの国ということは書いてありません。どこの国とか、いまのソ連とか北朝鮮とか、そういうことはございません。
  225. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まあ某国でもいい。  やっぱり大変危険なことをやっているんですけれども、そういう共同計画をやる場合に、この新聞報道によりますとね、すごい詳細だというんだな。たとえば日米両国が必要とする魚雷の数の推定から始まり、貯蔵されている魚雷をどんな運搬手段でどの道路を使ってどう集めるかなんということまでやっていると。そうしますと、先ほどあなたが能力見積もりは極秘だと言われたけれども日本の陸海空自衛隊の能力、あなたが述べましたような各自衛隊の体制を基準にして、防衛力の不備点、改善点に関する分析評価、こういう能力見積もりをアメリカ側が知らないで、このガイドライン小委員会でこういう作戦計画その他その他できるわけがないじゃありませんか。このガイドライン小委員を通じても中業計画そのものは渡してないですか。
  226. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いま行っております日米の研究というのは、現在の自衛隊の持っております防衛力、これを前提にしてやっておるわけでありまして、先ほどお話の中業の能力見積もりというのは、中業ができ上がった後の能力評価と現在の能力評価と両方を比較して出したのが中業の方の能力見積もりでございまして、いま作業しておりますのは、現在の自衛隊の持っております防衛力、これをもとにして共同研究をしておると、こういうことでございます。
  227. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 問題はね、私は大変大きいと思う。局長にもう一問しますけれども、たとえば新聞には大きくね、アメリカ側から日本の自衛隊のこういう点が不備だ不備だという詳細な指摘があったという報道もありましたね。あれは事実ですか。
  228. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 新聞で報道されたのは、アメリカのある方が個人的な話をされたのが報道されたようでございますが、そういうことにかかわらず、われわれいろんな形で日米の防衛担当者は話し合いをしておりますから、その席上でいろいろいわゆる雑談的には出ますけれども、いわゆるアメリカとして日本に対してこういう指摘をすると、こういうような形での指摘があったわけではございません。
  229. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 外務大臣見えましたので、もうこれ一問で終わりますが、この中期業務見積もりの計画そのものが、極秘資料という計画そのものがアメリカ側に渡った疑惑は、きょうお配りしたシュレジンジャー元国防長官、去年の七月二十日までカーター内閣のエネルギー長官だったシュレジンジャー氏の演説を見て、物を見なければできない詳細な演説と講演とそれから計算までやっているんですからね、疑惑が非常に強い。外務大臣ね、閣議にも国防会議にも諮られていないそういう中業見積もりが、アメリカ側にやっぱり渡された疑惑がある、しかもアメリカ側がそれに基づいて日本側にいろいろな軍事予算問題でさまざまな要求や期待を表明しているんですから、これは非常に重大問題だ、第一。  二番目に、この中期業務見積もり、アメリカに渡された疑惑のあるそのものが国会に渡されてない。国会に対しては秘密なんですね。そういうことで、しかもそれをアメリカに渡したこともいままで隠していたわけだから、非常に大きな大問題だというように思うんですね。これは外務委員会に資料提出要求しても仕方がありませんけれども日米関係にこういう疑惑があって、その日本のあなたが極秘資料だと言われたものがアメリカ側に渡った疑惑、これは私はきょう事実、その疑惑の証拠を提供したわけだから、日米関係の問題として、外務大臣、シュレジンジャー氏に何が渡っているのか、何の根拠に基づいてこの中期業務計画についてこういう演説ができたのか、日米関係の大きな外交問題なので、ひとつ適切な方法で調査していただきたいということを最後にお願いしたいと思います。
  230. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 中期業務見積もりというのは、これは防衛庁の内部の見積もりでございまして、閣議にもかかってない、何もないですから、これは防衛庁内部の問題でございますので、いまおっしゃったことは、帰ってよく局長から防衛庁長官に言ってもらう、調べてもらうということじゃないかと、委員長、私は思うんですが、いかがでしょうか。
  231. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかしね、日米の外交関係ですよ。日本の極秘資料なるものがどうもアメリカに渡っているらしいと、それが渡ってなければ演説できないものを、シュレジンジャー元——去年まで閣僚だった人が述べているんだから、そうするとこれは日米関係ですよ。日米関係にそういう重大な疑惑が生まれたわけだから。
  232. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま防衛局長から御答弁されましたように、御質問のありましたその秘密の書類そのものが渡っているわけでございませんで、日本防衛力の考え方、それについての説明があっているわけでございまして、日米間には安保条約が結ばれておりまして、有事の際はアメリカ軍が日本防衛に来るということでございますので、日本防衛についてアメリカが関心を持つということは当然のことでございますので、いま上田委員が言われましたような疑惑というようなことはあり得ないんじゃないかと、また問題にすべきことじゃないんではないかというふうに思います。
  233. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 納得できませんね。ちゃんと「表題のもとに」、中業計画それ自身要素を見落としていると。計算すれば四年間で三十五億ドルだと、表題のもとでというのを読んでいるんですよ、文書を。全然納得いきません、そんないいかげんなごまかし答弁では。外務大臣、きちんと答えてください。調べると何で言えないんですか。
  234. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) お答え申し上げます。  いまのやりとりを聞いたのでございますが、外務省が調べるというのは私はどうも筋違いのような、そういうものを見せたか見せないかということは防衛庁のことなんでございますから、私は帰られて防衛庁の長官に局長がどうでしたということを聞かれるのが一番いいんじゃないかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  235. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや見せたら大問題になるんだよ、もし見せたら、極秘資料を。そういう日米関係の問題なので防衛庁自身自分を調べようたって調べられるわけはないし。  問題は、じゃ何でシュレジンジャー氏はこういう演説ができたのかというのをアメリカ側に問い合わせてほしい、それをやっていただけますか、これはできるでしょう。
  236. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 日米関係というのは、先生承知のように日米安保がありますので、いろんな話し合いをしているということはこれは想像されるところでございますが、そのものずばり出たのかどうか、そういうことは私の方はもう一切わからぬわけでございますから、どうしても調べてみろというお話であればそれは調べてみますが、どうも最初から余り適当な御返事ができないんじゃないかなと私は思いますので、そういうことを正直に申し上げたわけでございます。
  237. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これで終わります。とにかく調べるということで御答弁いただきましたので、もう時間も過ぎましたので、ひとつ調べた結果を御報告いただきたいと思います。どうも済みませんでした。
  238. 木島則夫

    木島則夫君 イランで港湾建設に携わっている日本人建設者が出国を希望したのに対してイランが難色を示したことに対して、外務大臣がこれは人道上許しがたいことであるとイラン政府に厳しい姿勢をおとりになったことは、これは私も当然であろうと思います。恐らく、この大臣の御発言は現地で不安を抱いているいわゆる在留日本人に対しても大きな勇気づけを行ったんだろうとこう思うわけでございます。人命第一を尊重すればこれは当然でございます。しかしこれはあくまでうわさでありますけれど、きのうの外務大臣発言が相当に厳しいものであったということで、イラン側が神経をとがらしているといううわさも耳に入っておりますし、またそれが現地でのリアクションとしての投影があるとすればまたこれが不安につながりかねないということであります。きのうの御発言はあれは当然であってイラン側もこれは了承をしてくれるんだという御自信のほどをひとつきょうもう一度きのうの外務委員会に続いてお示しいただきたい。
  239. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまの御質問でございますが、きのう衆議院で答弁したことはそのとおりでございます。何かそれに対して反応ということがあるかないかということを私の方も調べているわけでございますが、まだ何も反応というようなことは聞いておりません。ただ、私言いましたのはやっぱり人道上の問題でございますので、イラン側も何とかこれは理解してわかってもらいたいという願望を込めながら申したのでございまして、気持ちは私はいまも一緒でございますが、イラン側に何としてもこれは納得してもらいたいことだというふうに思っております。
  240. 木島則夫

    木島則夫君 この問題に関連をいたしましてイラン大使に直接申し入れをしていると、ちょうどいまその最中であるというふうにいま伺ったんでありますけれど、この申し入れについての具体的な反応というか、そういうものが起こっているか、もしそれがいまお聞きすることができないのであるならば私の持ち時間の中で具体的な動きがあったらばひとつ報告をしていただきたい。いかがでしょう、これは。
  241. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま外務省の高島次官が大使と会いまして、平和裏にイラクと話し合いをして早く停戦するようにというような問題、在留邦人の保護等について話しているはずでございますが、詳細は担当の者からいま御説明申し上げます。
  242. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) 次官と在京のイランの大使とのお話はきょう午後三時から行われております。したがいまして、そこでの結果はもうしばらく待ちませんと事情はわかりません。  なお第一問に関連いたしまして、これは先生の御指摘の点は例のバンダルアバスという港から東亜建設の五十一名の方が出国する問題と思いますので、この点ちょっと補足的に御説明を申し上げます。  昨日までの段階では東亜建設側のどちらかと言うと一方的な事情を伺っておりまして、先方の了解を取りつけたのでイタリー船に乗って出るんだと、こういう話しっぷりでございましたけれども、昨晩遅く入りました公電によりますと必ずしもそうではなくて、要するに契約上言うところのフォースマジュール条項、免責条項というのがございますが、こういう戦争、天変地変によって起こったときの免責される条項に基づいての先方のコントラクターとは合意されておりません。おりませんままに東亜建設としては昨年の初め、これたしか二月、三月と承知しておりますけれども、例の革命時に先方のこれはパーシャン・ガルフ・シッピング・カンパニー、PGSCと申しますけれども、それとやはり口頭の了解をもって帰ってきたから今回もそれと同様のことでもって帰れるでないかということで、そういう了解のもとにバンダルアバスに五十一名が集結したところ、中央からの指令に基づき港湾局からとめられた、これが現実でございます。したがいまして、その後公電に基づきまして東亜建設ともその点を話し合いまして、ただいま東京並びに現地において、それにもかかわらず至急に、したがってこの免責条項を取りつけて、そして出るならば出る方向にいこう、こういう話し合いになっております。  以上であります。
  243. 木島則夫

    木島則夫君 外務大臣ね、きのうの御発言は、いままで相当慎重に構えていらっした政府、つまり外務省としては、私、相当思い切った御発言であったと思います。それが人道上の立場からというコメントがつくことを条件としましても、相当積極的なそれは御発言であったと思います。ということは、もうそろそろ危険の限界に来ている、それが直接銃弾が飛んでくるとか飛んでこないとかいうこととはまた別個であります。たとえばテヘランに引き揚げる、仕事がない、不安が増大をする、いらいらが高じる、こういうことの限界点に達したというようなことときのうの外務大臣の御発言が結びつくのか。さらに伺いたいことは、外務省としてもし帰国勧告——帰国命令というのはこれは出せないと私伺っております。帰国勧告をする場合があるとしたらどういう状況に立ち至ったときにその帰国勧告をお出しになるのか。早過ぎてもいけないし遅過ぎてもいけないし、これは現地の大使館、大使、非常に御苦労のあるところだということは私も重々察した上でのお尋ねでございます。
  244. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) 御指摘のとおり、この引き揚げ勧告、あるいはそれを一つトーンを落としますと勧奨と申しておりますけれども、このタイミング、一番心配しているところでございます。かつて、先生承知のとおり、サイゴンの陥落時わが方の日航機がせっかくマニラまで行っていながらその救援機は入れないままに帰ってきた、こういうケースがございます。したがいまして、仮想に流れても何でこんなに帰ってきちゃったんだと、それからまた一人でも傷ついたり、入っていかれなかった場合はその責任はどうするんだと、こういうふうなことでございまして、そのタイミングのディシジョン、決定が一番心配しているわけでございますが、ただいままでのところやはり昨日大臣からも克明に御説明申し上げましたとおり、現地の大使の情勢判断というものが最優先すべきものと考えるとともに、所在の西欧各国、これらの国々のやはり対応ぶりも一つの重要な参考になろうかと思います。  ちなみに、今次情勢の転換に伴い、西独は引き揚げ勧奨をしておりますけれども、その他の国々は引き揚げ勧告を正式に発したという情報には接しておりません。なお、わが方といたしましては、昨年のイラン革命時においては最初に引き揚げ勧奨を行いまして、さらに不要不急者、婦女子を含めた引き揚げ勧告をしたことはございます。しかし、今回は以上のような理由、さらにまあ現地の大使の申すのには、特にイランでございますが、日航機も入っていかれないような——つまり、現在陸路はこれかなり開拓しているわけでございますが、引き揚げ手段が確実に掌握されていない現状において、政府が引き揚げ勧告をしても、それじゃどうしてくれるんだと、日航機を送ってくれるのかと、こういう話し合いになって、それができない現状においては、こういった勧告をすることも必ずしも意味が深しとしないので、現状においてはそれをとどまっているという状況でございます。
  245. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 御質問でございますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、現地の大使に実は判断を任して、現地から連絡があればということで判断を任しているわけでございますが、たとえば一つの例で申し上げますと、バンダルホメイニにおりましたIJPCの七百五十名は、大使はシラズへ避難したらどうかという勧告をしたんです。シラズです。爆撃機が飛んでくるには、足が短いからそこまでは大丈夫だというんで、大分東側の方ですわ。ところが、バンダルホメイニのIJPCの人々は、自分らの判断ではシラズよりもテヘランへ行った方が安全と思うと。テヘランに行きたいということで、大使の意見とは違いましたけれども、バンダルホメイニの人々がやっぱり精神的な不安とか、いろいろこれはあるわけでございますので、なるべくその人たちの要望を入れた方がいいじゃないかということで、テヘランに全部集結したということでございまして、テヘランに行きましても、しかしそれは仕事があるわけじゃなし、やはりいろんな問題が、精神的な問題とか、どこの国の人が出ていったとか、いろいろこれからあると思うんです。そういう中で、これをどういう段階で考えるか。きのう私が衆議院で申し上げましたのは、どうも動きが全部足どめをされるというような可能性もあるんじゃないかというようなことを非常に私心配したものですから、あえて国会国民の皆さんにわかってもらうように、家族にもわかってもらうように、やはり日本政府としては人命尊重を第一に考えるんだという意味で、イランの政府にも何とかわかってもらいたい。きょうは高島君が大使にもそれを理解してもらうようにいま会っているというのが現状でございます。
  246. 木島則夫

    木島則夫君 ちょっと確認をさしていただきたい点が一つございます。  より危険問題の多いイランの場合でございますが、イラン政府はその出国禁止命令というのを正式に出したんでしょうか。まだ出してないんですか。
  247. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) その種の正式命令が出たとは聞いておりません。出しておりません。出してないと承知しております。
  248. 木島則夫

    木島則夫君 出してない。
  249. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) はい。
  250. 木島則夫

    木島則夫君 そうですか。
  251. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) 少なくともケース・バイ・ケースに行われておるわけでございます。全体的な意味において、イランから外国人の出国を禁止しているというようなことはございません。現にテヘランから陸路、特にこれはトルコ・ルートでございますが、私たちが承知している限りにおいては百名の方——第一陣として四十五名、その後十何名、それからさらに三十何名で、約百名の方が脱出したと承知しております。
  252. 木島則夫

    木島則夫君 そこで、脱出というか避難コースについてこれは何回もお話し合いに、議論に出ておりますけれど、より詳しく伺いたいのでありますけれど、具体的に外務省は三つのケースをお考えになっているようですね。  一つはテヘランからトルコへ抜けるケース。これにしたって千五百キロもある、バス旅行が主である。二番目がテヘランからカスピ海を抜けてモスクワに行くこのコース。特にこのコースにおいては船便の数が問題であるということが一点。それからテヘランからカラチに抜ける、これもコースとしては理論上考えられるけれど、辺境地区を通るので非常に危険が多いというようなことで、私ども素人が考えても、具体的に考えられるのは、どうでしょうか、テヘランからトルコ、テヘランからカスピ海を抜けてモスクワを目指すこのコースじゃないだろうかと、こういうふうに思いますけれど、この辺は外務省としてより研究が進んでいるのかどうか。
  253. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) まさに日航機がテヘランに着陸できないということで、何とかしてこのルート開拓に現地の大使館及び周辺大使館と連絡をとりまして、ただいま三つとお話でございますが、私の方は四つございます。  その第一は、トルコ。おっしゃるとおりトルコに抜けるわけです。これ小さいのでちょっとおわかりにくいかと思いますけれども、(地図を示す)テヘランから国境を越えてトルコのエルズルムというところへ行って、これからはトルコ側の空路がございますので。しかしおっしゃるとおり、ここは千三百キロほどでございます。しかし、このルートを通って先ほど百名の人が出たと申し上げたわけでございます。途中タブリーズというところが空襲に遭いまして、一時そこが危かったのでございますが、幸いにしてそのルートはいまは通れるようになりました。ですから、ただ大量にここを抜けるということは、バス便をチャーターしていま行っているようでございますが、そういうことでもって三百人、四百人というわけにもいかない。五十人単位ぐらいのバスをチャーターしていく。  第二は、御指摘のとおりここのバンダルエリゼ。これの方が三百キロぐらいの陸路でございまして、そこからカスピ海に入って、これは夜立ちますと翌朝にカスピ海のソ連領に入ります。それからさらに陸路をバクーに抜けて、バクーからモスコーに抜けると、こういう経路がございます。もう一つは、これをぐるっと回りまして、陸路バクーに抜ける汽車便がございます。ところが、御指摘のとおり、汽車便は何か三十席ぐらいしか、一等と申しますか、そういう乗れる席はないというし、このカスピ海を縦断の便は一週に一回だそうでございます。それも百人ぐらいしか乗れない。しかし、これは何とかならぬかということになりますと、三百人ぐらいの臨時船を配備することもできると。こういうのはモスコーサイドからの情報で伝わっております。しかし、必ずしもそれに対してイランは乗ってもいい、そういう船を回航してもいいという話はございませんし、それについてはソ連側の引き揚げ者が何千人その港にたまっているとか何とかというような情報にも接しております。  それから最後に、御指摘のザヒダンというところを通ってカラチに行くわけでございますが、しかしこれは千二百キロもございますし、道路事情もよくわからないし、治安状況もわからないので、この道は少し遠い道だろうと、こういうふうに考えております。したがいまして、現在の状況におきましては、やはりタブリーズ経由でトルコに入る。幸いにしてトルコ側は非常に友好的にこれらを迎え入れておりますし、わが方の大使館員もこれを全面的に協力して迎え入れている。さらにソ連に対しましては、そういう人道上の理由によりまして、かなり早い段階からイランから脱出する人の簡易な査証の発給方をお願いいたしました。これに対しましては名前とかリスト、そういうものを出してくれれば便宜を供与するであろうと、こういうような話し合いになっております。
  254. 木島則夫

    木島則夫君 先ほどもちょっと外務省側からお触れになった点ですけれど、避難とかあるいは出国の作業、手続、こういうものは日本単独でいまやっているようですけれど、私ども素人が考えても、やっぱりもっと外国と一緒に共同してやった方が効率もいいし、安全度も高まるんじゃないかというようなことも考えられます。しかし一方、そういうふうに組織立って大量的に、大規模にやることは、かえって非公式な出国とか、避難を認めているイラン側のそういうプライベートな面をかえって押さえつけることになるかもしれないという意味では、これまた非常に問題点がある。  それから、地元では情報とか通信機とか、いろんなものが不足をして、非常に日本人の現地在留の人たちが不安を感じているというようなことで、日本人会というものをつくっているようですね。その日本人会と大使館との間のコミュニケーションが果たしてうまくいっているかどうか、こういうことも含めてここではひとつ伺っておきたいんだけど、どんなものですか。
  255. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) まさに日本単独ではなかなかむずかしい場面が、たとえば船の問題、このイラク側の国境線に、詳しくはバスラでございますが、そこに日本船が八隻、詳しくは日本籍船は五隻でございますが、そういうものが泊っておりますので、これの共同脱出の問題、それからただいまイラン地区、特にテヘランに集結しました千七百名程度の日本人だけではなかなかむずかしいものでございますから、先ほど申しました西欧諸国とともに共同的にこれをあれという話は、船の方ではむしろそういうことをしても、入っている隻数とかそれから希望条項とが必ずしもミートしない。それから人間の関係においても、日本人なんかが相当多いし、それからほかのイタリー人がそれに次ぐのでございますが、あとの西独とかスイスとか、そういうようなほかの国は相当人数も少のうございますので、なかなか共同に乗っていかないという点が一つ。それから第二点は、まさに先生御指摘のとおり、イラン側がいませっかく絶対に出すなというんじゃなくて、徐々にではあるけれども出国ビザも与えて退避しているときで、この際にそういうようなことはかえってだめであろうという、だからむしろローポスチュア、低姿勢でいくべきであるという、つい二、三日前そういうようなことでもって西欧の外交官との間に合意ができたということで、ただいまのところはそういう共同のあれはしておりません。ただし所在の日本人会では、これはイラン並びにイラクを通じて大使館との間にほとんど連日連夜のごとき情勢報告と、それから避難の手段、それから今後どうするかといったような意味合いの会合は持っていることが毎日のような公電の上に乗って報告されております。
  256. 木島則夫

    木島則夫君 非常に多くの日本人が紛争地域におりまして、戦争の危険を身をもっていま体験をしていると、こういうことでございます。私どもがこの種の問題を扱います場合に、どうしても日本人中心になりがちであって、日本人の安全は大丈夫なのかどうなのかということが優先をしてしまう。これは一概に私は批判はできないことだと思います。無理からないところだとは思いますが。  次に、日系企業に働いている外国人も、外務省からもらった資料によりますと非常に多いんですね。ちなみに、この資料を私いただいておりますので、大臣、十月の十五日現在で調べてもらったんですけれども、非常に多いですね、この日系企業に働いている外国人の数。在イラクの者だけでも、たとえば清水建設がインド人、パキスタン人、フィリピン人、バングラデシュ人、こういう人たちを集めて四千九百六十人雇用をされている。出国をされたのが二千五百三十二人、残留者が二千四百二十八名。それから大成建設というところでは、フィリピン人、中国人、バングラデシュ人、そのほか千百四十二名。で現在までに出国をされた人が三百三十一名、残っている人が八百十一名。もう二、三申し上げると、三井建設がフィリピン、マレーシア、中国、エジプト、そのほかの外国の方々、雇用者数が五百四十六で、出国をされた人はいまのところ全くない。したがって、残留者が五百四十六そのまま残っていると、こういうことでございます。それから小さい、まあ小さいというか中どころのところでもこういった数はやはり相当多うございまして、問題の東亜建設はインド、バングラデシュ、ポーランド、マレーシア、英国人、こういった人たちの総数の雇用が千五百七十二名、ほとんど出国をされておりますけれども、千五百六十二名が出国をした後、十人が残留をしていると。これは十月の十五日現在の調べでございます。在イラクの日系企業に勧めている、働いている外国人の総雇用者数一万六人、現在までに出国をされた者が四千六百五十六名。したがって、在留をしている人が五千三百五十人というようなことで、日本の海外経済協力を初めとする海外の進出によって、いかにこういう方々の支援がなければできないかと、こういう方々に支えられて日本企業が経済協力に一役を買うと、こういう実態を私もまざまざといま知ったわけでありますけれども、そこで問題ですね。この外国人労務者の所在についての責任は、私が調べてみたら、第一義的には大臣、企業が負うんだそうですね。それから第二義的には、これらの外国人が属する国籍、つまり本国政府が第二義的な責任を負うと、こういうことであります。じゃそれで、政府の責任は全くないんだと言えるかどうかというと、私はそうじゃないと思う。今度の紛争に絡んで日系企業の中には、外国の労務者を優先をして退出をさせ、日本人は後になってもいいというような話も聞いておりますけれども、こういう話というのは意外にこっちに伝わってこないわけであります。  そこで、外務大臣の率直なお考えを伺いたいわけでありますけれども日本が海外で経済活動をする、経済協力をしていく上で日本信頼にもつながっていくこの種の問題について、外務大臣どんなふうにお考えになっているか。一義的には確かに企業は責任を負わなきゃならぬ。これはわかる。そして二義的には本人が属している国籍、つまり本国政府であると、こう言ってしまえば、これは理論上はそのとおりかもしれないけれども、果たしてそれでいいのかどうか。そして、こういうものに対応する対応の仕方というものが私は非常に不十分だろうと思う。この辺外務大臣どういうふうに把握をされておるか。
  257. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 責任という言葉は、法的責任とか弁償まで含んでとかいろいろむずかしくなると、ちょっと私はむずかしい問題が出てくると思うのでございますが、企業者がまず第一義的に責任を持って心配してやる、これはもう当然のことだと思いますし、またその人々が所属する本国政府もそれを考えるということも、これ当然だと思いますし、また日本政府も、日本の企業が海外へ行って働くというのは、日本以外の人々を雇用して企業が成り立っていくというわけでございますので、そういう人々のやっぱり人命といいますか、安全といいますか、そういうことについて日本は、日本の方は全然知らないんだと、それはもう企業と本国政府に任して何も知らぬというわけにはこれは私はいかぬと思うんです。やっぱりこれは、二義的か三義的かということは別にして、向こうの本国政府も世話をすると、企業が属する日本政府も——やっぱり無事に戦闘地域から、戦乱の地域から、紛争地域から脱出するということは、やっぱり日本政府も世話をしてあげるということが私はこれは当然だと思うわけでございまして、そういうことはひとつ大使館の方へも連絡を——大使館の方へもすでに連絡はしているそうでございますが、そういう考え方でやってまいります。
  258. 塚本政雄

    説明員(塚本政雄君) ただいまの大臣の御発言で尽きているわけでございますが、なお事務当局側の考え方をちょっと敷衍して御説明申し上げます。  まさに昨日、渡辺先生から同様の御指摘がございました。そのとき私の方で申し上げました数字が必ずしも正確を期し得ませんでしたので、そこで昨夜帰りましてから急遽、大臣の御指示もあり、このようなものをつくって、この数字を精査したわけでございます。  そこで、これに基づきまして、出国者中、先ほど申し上げましたとおり、わが方は、所在のイラク大使館はもちろんのこと、シリア、それからヨルダン、クウェート、それからさらにパキスタン、それからパキスタン人の脱出のためのパキスタン及びフィリピン人の脱出のためのマニラにまで大使館に電報を打ちまして、大体脱出した組でシリアの八百何十名、それからアンマン——ヨルダンに抜けた百数十名のフィリピン人が若干問題が起きたと、こういう報告に接しております。そこで、所在の大使館がいろいろと折衝した結果、パキスタン人につきましてはすでにジャンボ三機を飛ばしまして、ここに書いてございます清水建設の八百八十一名は無事に本国政府に帰ったと、こういう報告に接しております。それから、三井建設のフィリピン人三百十七名についても、最終的な財務負担の問題なんかでまだ残っておりますけれども、フィリピン政府がやっぱり自国民保護という第一義的な目的のために、これまたDC10の飛行機を十月十六日、きょうでございますね、飛ばすということになりましたので、したがいまして現在問題になっていると聞かされている、この二国民は、ほとんど解決したと承知しておりますし、その他のものはそれほどいざこざなくこれらの建設会社の契約上に基づいて、一応切符の手配とか、毛布あるいはその食糧も前広にやるとか、それから給料まで渡してやった、これはきのう実は東亜建設の人に、実はきょう国会でこういうことがあったんだぞというようなことを言ったら、涙を流さんばかりにくやしがりました。いや、われわれはここへ残ってむしろ陣頭指揮してやっているのだ、だからわれわれはこれらの人たちと一緒にいるのであって、自分らが先に帰るような気持ちは毛頭ないのだ、だからこれらの手当ては十分にやっていくから安心してほしいと、こういうふうなことをきのう東亜建設の重役は私に申しておりました。  以上であります。
  259. 木島則夫

    木島則夫君 この辺の対応に抜かりがありますと、詳しくはいま外務省当局からお話はありませんでしたけれど、やっぱり現地に不穏な空気が醸成されましてそれがトラブルに発展をするというようなケースだってこの異常事態のもとでは確かにあり得るわけでありますから、この辺の手当てにつきましては、ひとつ万全を期していただきたい。そういうことに巻き込まれて、邦人がまたあらぬトラブルを倍加をするということになっては、これは本当に大変でありますから、企業としてはいま言った東亜建設の場合なんかは、自分たちに優先して外国人を先に出し、いわゆる避難をさしてやっているのだというようなこともありますけれど、やはり政府がこういうものについては念押しをして、現地の大使館なり何なりにおっしゃっていただかないと、なかなか徹底を欠く問題だと私は思う。で、外務大臣、ひとつもう一度この問題について前向きの姿勢をお示しをいただきたいと思う。
  260. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま木島先生からおっしゃったことは、私も全然同感でございまして、こういう事態になりますと何が起きてくるかわからぬということはよくわかりますから、現地の大使館にもう一度徹底するようにこのことは連絡をします。
  261. 木島則夫

    木島則夫君 いま、当面はイラン、イラクに関心が集中をしているんだけれど、ほかの地域でも紛争が起こりかねない。政情不安定につながるトラブルなど、これからもあっちこっちで起こり得る可能性はあると見なければいけないと思います。この外務委員会でこういう言葉を使うのは不謹慎かもしれないけれど、リスクカントリーという言葉もあるほどですから、これは適当な言葉じゃないと私は自戒を込めていま申し上げているんだけれど、適当な表現の言葉がないものだから、仮に使わしていただく。いかなる事態が起こっても、機敏で敏速な対応が可能のように、外務当局としてはやはりむずかしいとは思うけれど、現地の政情あるいはそれに絡まる情報、協力の問題、体質の問題、事が起こったときの避難の問題、こういうことについてはやはり日本が海外進出、グローバルな立場で地球上に大きく進出をしている現在であればあるほど、私はやっぱり外務省責任であると、こう思うんですね。その辺の情報収集なりそれに基づく判断なり計画なりというものが、どうも私はずさんでならないような気がして心配なんだけれど、外務大臣どうですか、この辺は。
  262. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生がおっしゃったこと百点で大丈夫でございますと私は申し上げません。それはやはり心構えの問題もありましょうしね。そういう問題が起きたときの心構えの問題もありましょう。これは各地域で大使会議をよくやりますから、心構えとして企業者に雇われている人々の安全についてもこういうきょうやりとりがあったようなことは必ず伝えますし、もう一つ広い意味の情報の収集その他につきましては、これは外務省いつも言っているのでございますが、外交体制の強化ということで、いまのままではこれはなかなかいきませんので、質の向上を図るとともにやはり定員その他もどうしても、むずかしい情勢でございますが、ふやして、外交体制の整備をしていく、情報収集なんというのは本当に政策の基本でございましてね。十分これからも心がけて努力してまいりたいと思います。
  263. 木島則夫

    木島則夫君 事が起こるというのは、何も政情不安に絡んだ政治的な問題ばかりじゃなくて、これはやっぱり天災地変にもつながることですね。アルジェリアで地震が起こりました。これに対する政府の対応というものについて、外務大臣どういうふうに思っていらっしゃいますか。
  264. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) すぐに現地の大使館が現場の方へ行きますとか、そして邦人の行方不明の人の問題に当たるとか、いろいろやっているわけでございますが、外国から見まして、アメリカとかフランスとか、あっちの方、向こうにたとえばいろんな物資を持っているとか、そういうところがありますので、非常に敏速に、すぐに毛布を届けるとか、いろんな救援物資を持っていくということは日本より早かったことは確かでございます。日本でも、しかしできるだけ早くということで、閣議決定を経なければならぬわけでございますが、もう前日に大蔵省と話をつけまして、大体三億円ということで救済の援助をするような手続をしまして、あした第一便が——お医者さん、お医者さんは今晩でございますか、あした救援物資、医療関係の物資でございますとか、毛布でございますとか、そういうものを持って出ていくわけでございまして、いままでよりは敏速にやれたのじゃないかと思いますが、しかし、何もそれで私は百点をつけたいなんということじゃちっともないので、やっぱりこういうことがありますれば迅速にいろんな対策が立てられるようにしておく。大蔵省と一々話し合いをして、閣議決定がないといろんなものが決まらぬというのが日本状態でございますので、そういうところはもう少し早く何とかやれぬかなというようなことをいま考えているところでございますが、ひとつ最善の努力をしようというつもりでございます。
  265. 木島則夫

    木島則夫君 確かに差し当たって、いわゆるお金の援助ということもこれは大事なのかもしれませんけれど、外務省がおまとめになった、これは非公式なものでしょうけれど、「安全保障政策企画委員会第一ラウンドとりまとめ骨子」、ここの十七ページにも「世界の平和と安定のための貢献」という項をしつらえて、その中の数字の(3)には、「わが国は国連の平和維持活動に対し、従来の如き財政面における協力にとどまらず、人的貢献の面についても積極的に検討すべきである。国連の平和維持活動への要員の派遣は、平和国家として生存したいというわが国民の願いと決意を示す何よりの方途と思われる。」、こういうふうにきちっとしたためられているわけですね。大変抽象的なんだけれど、もうちょっと敷衍してお話をしていただけますか。どういうお気持ちがこの中に込められているのかということ。  まあこういう外務委員会も、委員長の非常にお指図というか、お計らいによりまして、一々立って委員長、何々君というような改まった雰囲気じゃございません。したがって、内容もひとつ伊東外務大臣、ざっくばらんにお話をしていただきたいというのが私の趣旨であります。外務大臣、この項目は大変抽象的だけど、何か外務省の言いたいことが山ほど後ろに盛られているような私は感じを持つんだけど、この辺率直にひとつ答えていただけませんか。
  266. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私がお答え申し上げて、国連局長がまた恐らくここを直接執筆したんじゃないかと思いますので、国連局長からも御説明申し上げますが、ここに書いてあることは、いままでどちらかというと、日本国連の平和維持と、そういうことについても、財政面でいろいろ、難民の問題でございますとか、あるいは災害の問題でございますとか、そういう財政面の協力ということを主としてやってきたけれども、今後は財政面からの協力とあわせてやっぱり人的な面でも国連の平和維持活動には協力するということをともに一緒に考えていかなけりゃならぬじゃないかというのがこの書いた者の気持ちでございまして、私どもいま考えておりますことは、たとえば難民の援助の救済のために国連難民高等弁務官の方でやっていますのにあわせてあそこに、たとえばタイには大分医療関係やなんかの人が行きまして救援に当たっている、これも国連のところに人的な協力をしていることの一つでございましょうし、特に、難民問題なんというのは、私はこれからうんと力を入れるべき問題だと思っておりますし、あるいは具体的にまだ行われませんけれども、ナミビア、あそこに公正な選挙をやって、いままでのようなことじゃなくナミビアというものを考えていかにゃならぬじゃないかということで、選挙のことがありますが、しかしこれはまだ行われておりませんが、たとえば、国連でそういう選挙の監視に人を出してやる場合に協力を頼まれれば、たとえば自治省の人を出すとか、そういう人的なひとつ応援をするとか、あるいはお医者さんをもっと出してくれとか不健康地の問題等ありましたらお医者さんを出すとか、そういうことをいままでお金ということで中心にやっていましたが、人の面でもひとつ応援をしていこうじゃないかということがここに書かれていることだと私は思いますが、いま国連局長が御説明します。ちょっとお聞きを願います。
  267. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 大臣の御答弁に尽きておりまして私から特に申し上げることもないのでございますが、国連の平和維持活動というのを、直ちに国連軍とか、そういうようなことに結びつける必要は必ずしも必要ございませんで、国連の文字どおりの平和維持活動というものがいろいろあるわけでございます。そういったものに対する人的な貢献ということをまず考えていったらどうかというのがこの趣旨でございます。  ちなみに、大臣のお言葉ではございますが、私が執筆したものではございませんが、しかし、この文章の意味はそういう意味と私は理解しておりまして、典型的には、まさに大臣の言われましたナミビアの選挙監視というようなことは、まさにわが国が第一歩としてこれに選挙監視員を出すとか、そういうことが望まれておる分野であろうと存じております。
  268. 木島則夫

    木島則夫君 松平国連大使も過去に日本国連外交というものはもう金だけではだめなんだ、そういうものはもう限界にきちゃっているんだ、人的要員を、しかも機敏に送り出さなければいけないんだと、こういうことです。それは、送り出すということ自体はいままでもやってらした。難民問題に対してもそうですね。しかし、間髪を入れずということになるとなかなかむずかしい、その辺にやっぱり問題があり、隔靴掻痒の感があるわけですよね。私は、何も自衛隊の医官を即座に現地に送ろうなんということをここで議論しようとは思わないけれど、もしそういうことが行われれば、間髪を入れずして役に立つんではないか。選挙の監視員というのも、これもずいぶん考えた話ですけれど、もうちょっと進んで、外務大臣、こうありたいなあという中に、自衛隊の医官などの派遣はどうなんでしょうか。これは自衛隊法との問題もありますよ、ありますけれど、そういう率直なお気持ちというのは大臣の中にあるのかどうか。
  269. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) これは、自衛隊の医官の派遣ということは本当の武力行使や何か伴わぬものでございますから、憲法上は差し支えない。ただ、自衛隊法でこれはできないということになっているわけで、自衛隊法の問題にも、たとえばいまの武力行使を伴わぬ問題でございますから、その問題は考える問題でございますが、しかし、自衛隊法をこれはいじらにゃならぬということで、自衛隊法をいじってということになりますといろいろまた発展する問題でございますから、私は、お医者さんをひとつという場合には、厚生省関係でお医者さんはたくさんいるわけでございますから、そうシビリアンで考えていくということがまず考えることじゃないかというふうに私は考えます。機動的とおっしゃったことは私もそのとおりなんで、なんて手続がうるさいんだろうなということを実は今度の問題でも、地震の問題でも考えているわけでございまして、これは日本の政府の行政の手続の問題でございますから、その辺のところをどう考えるのか、これからの私は研究課題だろうというふうに思っております。
  270. 木島則夫

    木島則夫君 大臣、たとえばの話ですよ、自衛隊の医官を派遣をするということが戦闘活動につながるというような拡大解釈というのは、私はむしろ常識的でないと思うんですけれどね。さっき大臣は戦闘行動、戦闘活動につながる云々とおっしゃった、それはもっと常識的にお考えになっていいんじゃないでしょうか。
  271. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 私が自衛隊で言いましたのは、武力行使に関係のある、武力行使というものを目的としたとか関連をしたということはこれは憲法上はできません、もうこれははっきりしております。自衛隊法上もできないと。ただ、本当の武力行使につながらない、先生のおっしゃったような平和活動といいますか、衛生の問題とかいうようなことになりますと、これは憲法上の問題じゃなくて、自衛隊法上の問題になってくる。自衛隊法はそれはいまは自衛隊ではできないわけでございます。でございますから、そこまで、自衛隊法までいじらなければならぬという問題が出てくる。私は、自衛隊法をいじるという前に、いじらなくても出せる厚生省関係の民間のお医者さんの問題でございますとか、厚生省にもお医者さんがおられるのでございますから、そういう人をまず派遣するというようなことをまず第一義的にやった方がいいのじゃないかというのが私の考え方だということを申し上げたんです。
  272. 木島則夫

    木島則夫君 別にしつこく伺うわけじゃありませんけれど、いまの大臣のお答えの前半のニュアンスからしますと、戦闘行動を伴うものについては問題があるけれどという、そういう前段のニュアンスを敷衍をしますと、もっと常識的に考えて、やはり自衛隊法をいじらないとだめなんでしょうかね、医官でもお医者さんでも看護婦さんでも。
  273. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) それはもう自衛隊法をいじらぬとだめだということだけははっきりしております。
  274. 木島則夫

    木島則夫君 お気持ちはございますか。
  275. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) ですから、私は、自衛隊法をいじるというようなことになりますとまたいろんな問題もございますから、その前に、同じ目的を達成するなら、自衛隊法をいじらなくても、厚生省関係で、たとえば医官の問題でございますが、派遣できる人があるんじゃないか、それをやるのが第一義的じゃないかということを私は申し上げた。
  276. 木島則夫

    木島則夫君 大変慎重な御発言ですけれど、とにかく事が起こって、やはり機敏に対応をするという、そういう機敏性を持つにはやはりある程度的をしぼった方がいいのではないかという私の立場もいま申し上げたわけでございます。  もう時間がございませんので、ナヒーモフについて一言だけ政府の姿勢を伺っておきたい。  先ほど、北方領土問題に絡んでのこの場での御発言の中にも、ソ連はもう余っている領土はないというふうにはっきりおっしゃっている。そうかと思うと、この十月三日まで七十五年間もたなざらにしておいて急に所有権を主張してきたナヒーモフの問題、何かこう神経を逆なでされた感じを受けたのは日本人大方の偽らざるところであろうと私は思います。こういう金目のものに絡むと、何もソ連だけじゃなくて、尖閣列島周辺で地下資源があるというと、エカフェが地図まで塗りかえる御時世ですから、何もこのことだけを私は感情的に取り上げようとは思っていないんです。  きのうの委員会あたりのお話を聞いていると、ナヒーモフの議論をしようにも、まだ確認ができていませんからというようなお話なんですね。もうプレートも出てきた、積んでいる財貨も出てきた。いまのところはまだ確認できていないんですか。
  277. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 引き揚げ作業をやっております会社からわれわれは聞いておるのでございますが、まだ確認はとれてない、そういう報告でございます。
  278. 木島則夫

    木島則夫君 確認ができていないということを最近政府はおっしゃっておりますね。確認ができていないということは最近おっしゃったんだろうと思います。その前にソビエトがナヒーモフ、そしてその財貨についての所有権を主張してきた、言い張ってきた、このことについての根拠をどんなふうにごらんになりますか。
  279. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 確認がとれていないということは実は最初から外務省は言っていたのでございまして、最近言ったということではこれはございません。新聞には会社がどう言った、こう言ったというようなことは出ておりましたが、外務省最初から確認はとれていない、こう言ったのでございます。  それで、われわれ、ソ連から申し入れを受けましての感じは、七十五年間何も話がなくて、七十五年たったいま急に軍艦は自分の国に管轄権があるんだから、こう言われても、私どもはまことに唐突な話で釈然としないというのが第一印象であり、いまでもそう思っております。
  280. 木島則夫

    木島則夫君 これは確認がとれない段階でナヒーモフをめぐる事実関係がこうであったああであった、その所有権はどうだと、ここで仮定の議論をしても空論になるから私はきょうはいたしません。  しかし、どうですか。外務省としては近いうちにその返答をなさいますか。回答をなさいますか。
  281. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 確認がとれなければ回答しないという意味ではございません。たとえそうであると仮定してもとか、いろいろ言えると思うのですけれども、なるべく早く結論を出して回答をしたい。国民の皆さんも、いつまでも回答しないということでございますと、何をしているんだろうかという国民感情が起こりますし、私は、なるべく早く、しかし、条約とか先例とかいろいろいま聞いているのでございますが、むずかしくて、なかなか急に結論は出ないんだというふうなことも報告は聞いておりますが、私はなるべく早く国民の感情に沿うたような結論を出さなければいかぬじゃないかということを実は中で言っているわけでございます。
  282. 木島則夫

    木島則夫君 それは確認がされていない段階でもということですね。このナ号問題というのは、財宝のみに何かウエートがかかって、関心が多少興味本位的にも扱われているようでございますけれど、これは押し詰めていきますとやっぱり日本の主権にかかわる非常に大事な問題でございますだけに、大臣がいまおっしゃったような、慎重なことは大いに結構、しかし、自主性なり自主というものが疑われるような態度だけはとっていただきたくない。いずれ確認の段階には、私どもも詳細に調べておりますので、そういったことをまた背景にして、この議論も展開をしていきたい、こういうふうに考えております。
  283. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) わかりました。
  284. 木島則夫

    木島則夫君 以上で質問を終わります。
  285. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 一九七三年八月八日、金大中事件が突発いたしまして、それから七年以上もたったわけでございます。この問題につきましては、今国会におきましてもいろいろ議論しておりまするから、余りこれ以上の議論ができがたい点もあると思いますけれども、政府はできる限り率直にお答え願いたいと思うんです。  私はあの事件の当座から、この事件に非常な関心と関係を持ちまして、そして、いまになってみますると、こんなに長く金大中事件がこじれて残るとは本当は思わなかった。いま、政治決着とか、政治解決とか、いろいろ言われますけれども、私は、当時は政治的解決という言葉が用いられていたと思うんです。それで、この政治的解決というものの内容について、私は、当時外務大臣であった大平さんにずいぶん問いただしたことがあります。それは何人かで問いただしたこともありまするし、一人で問いただしたこともありまするけれども、問いただしたことがあるんです。で、大平さんは伊東さんの政治の先輩ですけれども、個人的には非常に親しい友人ですね。その大平さんが、政治的解決というのは、要するに、金大中の身柄を外遊を含めて自由にする。それから、日本その他における、今度の外遊中における言動は韓国政府が問題にしないということが一つですね。これは日本側の方から望むことでしたね。それからもう一つは、韓国の方から望むことで、そのかわり、日韓閣僚会議、こういうようなものを開いて、そうして当時非常にぎくしゃくしていた日韓関係を軌道に乗せる、それが政治的解決である、こういうふうに私は理解していたわけです。ですから、その後、あの事件の起こった年の十二月になりまして、この日韓閣僚会議が開かれるということが決定しました、年末に。しかし、金大中の身柄は一つも自由にならない。こういう状況であったもので、私は、名前も覚えておりますけれども、河野洋平、山口敏夫両氏と一緒に大平さんを訪ねまして、そして、一体どういうことなんだ、金大中の身柄が自由にならない、それだのに日韓閣僚会議が開かれちゃっている。これは、恐らく韓国の方は、閣僚会議だけ取ってしまって、金大中の身柄を自由にするなんということはしないんじゃないか、非常に心配であるということを言いました。それで、いや、とにかく身柄を自由にするように努力もする、こういうことでありまして、そうして私はそのときに聞いたんです。一カ月くらいでこちらの方の条件が一体通るのかということを聞いたら、まあ一カ月というわけにはいかぬだろうけれども、とにかく金大中の身柄を自由にするということは、こちら側の願意を含めて自由にするということはこちら側の条件であるから、これはどうしても実現しなければいかぬ、こういうことだったんですね。  いま日韓両国の間にいろいろな用語が用いられています。この金大中問題の政治決着、それから現在の宮澤官房長官外務大臣としてやったことを外交的決着なんと言っておりますけれども、あのころは政治的解決と言っていたんです。つまり、政治的解決ということは、やかましく言うといろいろむずかしいことがあるけれども、しかし、そういうことは乗り越えて、両国がいま言ったようなことで、まあ妥協ですわね、妥協して、そうして日韓関係を軌道に乗せよう、こういうことだった。日本の方はそれを忠実に実行し、現在実行しているわけですけれども、韓国側は少しも実行しないで現在に至っている。そして、その間に、たとえば、古い選挙違反事件で金大中を収監してみたり、それからまた、今度は全斗煥という人が朴正煕の流れを継ぎまして、そして光州事変なんかを一面において起こしながら、金大中を死刑にする、死刑の宣告をする、こういうことになったわけですね。だから、あなたの政治的な非常に親しい同志である大平さんは全く意外な感じをしてるんじゃないかという気がします。それであなたがこの裁判に対して懸念をずっと表明されてこられた。これはまあ当然であると思いまするけれども、しかし、金大中の死刑になる可能性というものは依然として濃厚であります。  七年たって考えてみると、この問題の処理においては日本外交は弱過ぎたと私は思いますね。これはやっぱり主権に関することだったんですから。主権に関することでなければ、政治的解決なんてことはなかったんですよ、本当言えば。主権に関することだから、日本としては当然、つまり原状回復を要求しなきゃならぬし、それからまた刑事事件ですから、監禁したり、殺人未遂であったりする刑事事件であるから、そういう刑事事件としてもしっかり解決しなきゃならぬ、そういうものであったわけです。そういうことを一応、つまり主権侵害という事実をまあ大目に見て、そうして政治的解決というふうに私はなったというふうに、私だけのこれは解釈じゃありません、大平当時の外務大臣と話し合ってそういうふうに私は理解したわけであります。現在、この政治解決の問題に関連しまして、日本国内における行動が死刑判決理由になっているというようなことも言われておりまするけれども、これは後で詳しくお聞きしますが、大体私がその政治解決をそういうふうに理解したということに対して、外務大臣はどう考えられるか、ちょっと御質問申し上げたいと思います。
  286. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) 宇都宮先生からの御質問大平総理の名前がたびたび出まして御質問になったわけでございますが、宇都宮先生はそういうふうに御了解をなさっているということはそれは宇都宮先生のお考えでございまして、政府側としましては、あの政治決着というものについては、いわゆる主権侵害というのはあの段階ではない、だがまた今後新しい証拠が出てくれば政治決着も見直すことがありますということで、あれは刑事事件としてはずっと捜査を続けているというのが現在の段階でございますので、私どもは主権侵害はない、公権力の介入はないと。ただまだ捜査は続けて、もしそれが出てくれば政治決着を見直すことはありますということがわれわれの態度でございます。  私は、金大中氏の身辺については重大な関心があるということをずっと言い続けてきたのでございまして、外交ルートを通し、あるいはまた全然別なルート等で意向を向こうに伝えるということをやっておるわけでございまして、一審で判決が出たわけでございますが、二審、三審とまだあるということでいまのような考え方を今後とも向こうに伝えていくということでいまの裁判を見守っている、そして、いままでどおりいろんなルートも考えまして意向を伝えていこうというのが私の率直な気持ちでございます。
  287. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 政治解決というのはやっぱり妥協なんですよ、実際言うと。それで、いまあなたがおっしゃったことは、これは妥協した後の情勢が変だものだから、いろいろ御説明になっておると思うんですけれども、しかし、あの金大中事件が起こって、十四日にソウルにあらわれたわけですが、そのはるか前に、ほとんど事件直後にアメリカは、これはKCIAの行為であるということを知っていたに違いないです。これは先ほどレイナードの話なんかも出ましたけれども。私は、そうじゃなきゃ、大体韓国の政府が殺すつもりの者をああやって生かすはずはないんです。それはやっぱりアメリカが相当な圧力を政府にかけた。政府にかけて聞いたということは、政府以外の人間がやったことではないんだ、政府がやったことだから。だから圧力をかけて、そうして十四日に出てきたと、こういうことですね。私どもは、この問題についてはいろいろ知っておるわけですけれども、ウルフという、いまアメリカの下院の外交委員会のアジア・太平洋問題小委の小委員長であります。この人は私に言っていましたけれども、とにかく金大中事件が起こって、自分はたまたまとにかくソウルにいた、すぐ自分は、航空の大佐で、そして余り偉くない時代の当時の朴正煕大統領を非常によく知っていたものだから、だからすぐ朴正煕大統領に会って、そうして金大中を殺しちゃいかぬと、こういうことを言ったと言うんですね。アメリカの外交当局とかCIAとかいうものはそういう情報をすぐキャッチして、そしていろんなルートを通じて金大中の命を救ったということはあると思います。だから、そういうことが直ちに日本の、つまり政府の首脳、当時の法務大臣と言えばそういう関係の政府の首脳です。田中伊三次さんなんかの耳に入って、で、彼は主権侵害であるということを言っているのだと、こう思いますね。ですから主権侵害は明らかなんですよ、本当言いますと。ただ、政治的解決ということになると、余りしゃくし定規なことじゃいけないから、それはそれとして、金大中の身柄を原状回復と同様な状態、つまり外遊を含めた自由、外遊して日本に来れば、これは事実上原状回復ですからね、実際、そういうこと。  それから金大中の日本その他における言動は処罰しない。同時に、日韓関係非常にけしからぬ主権侵害をやったけれども、それこそ政治的な解決で、大目に見て正常化しましょうということだったんですね、本当言いますと。私はそう思いますよ。それは大平さんがはっきりそう言ったわけじゃないけれども、やっぱり何度か話した上でそう思いました。  で、大平さんとしては、やはり原状回復の変形である、外遊を含めた自由、それから日本その他における、外国における政治家としての言動は問題にしないと、そういうふうに私は信じていたのだと思います。ですから私は、伊東さんも御存じと思うけれども、この問題に対しては大平さんは最後まで関心を持っていましたね。  私は、それがいま、原状を回復しろ、主権侵害だということは言いませんけれども、しかし、日本政府がああいう政治的解決をしながら、そしてそのときはすでに金東雲の指紋、これは動かし得ない証拠です。KCIAの一員であり、またそういう資格で駐日韓国大使館にいたわけですから、これは動かし得ない証拠を日本の警察当局はつかんだ、そういうことなんですけれども、しかし結局何か口先でごまかされてしまって、金大中の日本側が要求したことは少しも実現されていない、こういうふうに言わざるを得ませんね。ですから、そういう原点に一応返って考えませんと、この問題は明らかにならぬ。日本の政府の態度もいつまでたってもぐらぐらしているということになると思います。私どもはそういう立場から、もう一度しっかり韓国側と交渉すべきであると思いますよ。  裁判になった、裁判は干渉できない、これはそうでしょう。福田さんの帰ってきたときの言いぐさだとね、全斗煥氏が言っていたというんだ。つまり、あれは裁判だ、裁判だから自分は大統領であっても一指も染められない、まことにりっぱな話である。しかしながら、これは光州事変というきわめて非人間的な方法で韓国の国民に、みずからの国民に韓国の軍隊が銃を向けて非常な残虐な殺し方をして、そして国民を全く逼塞さしておいて、そして行われておる裁判ですからね、だから正当な裁判とは違います。ですから、裁判を含めて、日本と金大中とのいままでの関係から申しますれば、もう少ししっかりした言い方をしても私はいいんじゃないかと思いますね。  今度の裁判そのものについて申し上げますると、幾つかの訴因があります。結局死刑の判決をしたんですけれども、判決文というものは公表できないと、こういうことでありまするけれども、しかし起訴状とかそれからこの判決に対する短い説明書みたいなもの、そういうものによると、これは内乱罪は適用されない、内乱予備罪である。それから反共法は適用されるけれども、しかし死刑に該当する条項ではない。それから、為替管理法なんてのはもちろんこれは死刑にはならない。死刑になるのは国家保安法である。国家保安法はなぜかと言いますると、韓民統という団体が日本にありますね。これは反国家団体である。私は反国家団体であるとは思いませんけれども、反政府団体であったことは明らかです。朴政権に反対もしておるし、現在の全斗煥政権にも反対しておる。それは民主自由主義を韓国に実現しようとしている人たちだから、軍事的独裁に反対しているという意味でこれは反政府団体ではあるけれども、しかし決して反国家団体ではない。まあしかし、これを反国家団体と認定いたしまして、そしてこれを死刑にすると、こういうことなんですけどね。しかしこの韓民統の結成というものは、御承知のとおり金大中がすでに拉致されてから。韓国政府はソウルに拉致されたとは一言も言わない、日本ではもう拉致という言葉をはっきり使っているけれども。ソウルに来たと言っていますけど、ソウルに来てからなんですね、韓民統の議長になりましたのは、そうでしょう。  それから、その後まあ韓民統としても金大中の助命運動とかなんとかをする、これはまああたりまえです。きわめて日本自身が主権侵害という非難がごうごうとするような、それからまた刑事犯罪であるということが明白なような、そういう乱暴な方法で連れていったわけですからね。だから、韓民統の方で金大中の身柄についていろんなことを考えるのはあたりまえだ。しかしながら、身柄はすでにソウルにある。そうして、私は韓民統の人からも聞きましたよ。韓民統の金ショウ……、金鍾泌じゃないですね、金のつり鐘の何とかいう名前だけれどもちょっと忘れましたが、その人が金大中とあの全羅南道の、馬山でしたか、どこだったか、木浦でしたか、あそこのつまり郷里が一緒で、学友であって、そして、金大中に対する見舞い電話を何回かかけたことがある。しかし、金大中の方からは一言もかかってこない。こういう状況でソウルに行ってから反国家活動ができるはずはないです。ですから、この国家保安法をもって死刑に処すということは、これは全く法を無視したものである。  われわれは韓国とも仲よくしたい。特に韓国国民というものはそれこそ日本国民と、まあ中国流の言葉を使えば子々孫々まで仲よくしなきゃいかぬ国民ですよ。ですから、彼らに対する一部の権力者の弾圧に対しては、われわれは非常な憤りを持っているわけでありまするけれども、しかしね、それだからこそ、また、それゆえに、けじめというものははっきりし、主張すべきものははっきりしなきゃ、日韓の末永い友好は阻害される、変な何かとげみたいなものが日韓関係の中に絶えず刺さっていると、こういう状態になるわけですね。  で、私が伺いたいのは、一体その、金大中を死刑にする訴因は何であるかということを伺いたいと思います。
  288. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 私どもが入手いたしております金大中氏に対する判決文要旨から推測いたしまして、国家保安法第一条一号違反ということで死刑が求刑され、その判決が第一審でおりておるというふうに了解いたしております。
  289. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 国家保安法というのはね、第一条が首魁は死刑に処すと、まあこういうことですね。しかし、先ほどから申し上げておるとおりに、つまり、それができたのは、要するに組織ができたのは金大中氏がソウルに拉致されてからですからね、韓国流の表現で言えばソウルに行ってからだからね。ですから、その第一条が適用されるのはまことにおかしい。それでは、韓国に帰ってからそういう、この一条が適用されるような行動は全然できないし、しなかったということは間違いないことですね。そういうにもかかわらず一体第一条が金大中さんに適用されて死刑が宣告されるという、これが国際的な人権の観念からいっても、外務大臣及び総理大臣などがたびたび懸念を表明しているという日韓関係の立場からいっても、そういう判決が許されるかどうか、あなた、ひとつ答えてください。
  290. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいまの宇都宮委員の御指摘、そういう御意見があることは私ども十分承知いたしておるわけでございます。ただし、政府といたしましては、現在、金大中氏の身柄について、大臣からもたびたび御答弁がありますとおり、重大な関心を抱きながらも当面は裁判の進行を見守るほかないというのが現在の私ども立場でございます。
  291. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 まことに典型的な官僚答弁ですね。りっぱと言えばりっぱだが、何ものも生まれない、何ものも生産されない。そんな外交してはだめですよ、あなた。  それで、もうちょっと深く聞きますがね、あなたの方で何と言ったって、死刑ということが、日本の世論及び政府が納得できる理由がなきゃならぬですね、これは。そうでしょう。だから、あなたが判決の全文をよこせということを要求しているのでしょう。
  292. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 御指摘のとおり、判決理由要旨に加えまして、できるならば判決文を入手したいというのが現在の私ども立場でございまして、その実現のために努力いたしておるところでございます。
  293. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 判決全文を入手したい目的は何ですか。
  294. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 金大中氏の政治決着の問題がございまして、その内容としまして、金大中氏の言動というもの、身柄というものに対して、私ども深い関心を抱かざるを得ないわけでございます。かような観点から、これまで韓国の当局と接触をいたしまして、可能な範囲で関心を表明し種々の努力をしておる次第でございます。
  295. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 いや、その判決の全文を入手したい理由は何ですか。簡単でいいんですよ。
  296. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 判決要旨ですでに大筋についてはこれを十分掌握しておりますが、それがしかとそういうものであるということを念のために確認しておいた方が適切であるという判断に立って、判決文の入手について、求めておる次第でございます。
  297. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 つまり、なお不確実要素があるから、全文を見て、そして意見をしっかり決めたいと、こういうことですね。
  298. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 不確実というほどのことはないと思います。判決文要旨をしさいに読めば、韓国側の裁判上の意図というものは十分くめるわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、念には念を入れてということでございます。
  299. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それじゃちょっと道楽みたいだけど、もうそれはしようがない。  それで、あなたは、要するに政治決着といま言われていることは、政治的解決には抵触しないと。抵触するかどうかということは、海外における言動が刑の対象になるかどうか、海外における言動が刑の対象になるとすれば、これは当然政治的解決あるいは政治的決着、こういうものに抵触する、こういうことですね。
  300. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 判決文要旨に示されておりますとおり、韓国側としては友邦国との外交関係上の配慮を尽くしたと言っておるわけでございます。
  301. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そうすると、あなたは、韓国が、韓国政府が、これは一つの外交交渉ですね、意見が多少違うわけなんだから、外交交渉だ。外交交渉というものはやっぱり交渉した上で結論を出さなきゃいかぬけれども、韓国が一方的にこれは政治解決に抵触しないと、こう言うから抵触しないんだと、こういうことですか。
  302. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 重ねて申し上げますが、判決理由要旨によりますと、国内で犯した、すなわち韓国の国内で犯した犯罪事実について検察が訴追しておるということでございますので、滞日中の言動を取り上げているものとは判断されないというのが私ども考えでございます。
  303. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そうすると、ソウルに行ってからの行動が国家保安法違反に問われていると、こういうことですね。
  304. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) さように考えております。
  305. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 国家保安法に抵触している理由というのが、反国家団体である日本にある韓国では何らの活動もできない韓民統の首領であると、こういうことですね。
  306. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 起訴状にございますとおりのことを韓国当局は念頭に置いて訴追しておると、かように考えるわけでございます。
  307. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 余りしかし合理的な説明じゃありませんね、韓国政府の説明は。
  308. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 韓国司法部のあるいは当局の説明が合理的であるかどうか、これは宇都宮委員御自身の御意見があると思いますが、私どもとしてはそれが合理的であるか、はなはだ不合理であるかどうか申し上げる立場にはないと考えております。
  309. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 しかし、あなたが直接なさったかどうかはしらぬけれども、こういう問題ですね、外交的な決着でもいい、解決でもいい、その条件に当たるか当たらぬかということは、やっぱり日本の方が厳しく、韓国の方が甘いのはこれは当然だわね。それで、ただ向こうがいいからいいと言うのでは外交はなきに等しいんじゃないですか。
  310. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 本件、金大中氏に対する裁判は法域を異にしますところの韓国での問題でございまして、しかも司法上の問題でございますので、私どもとして外交上どこまで本件について韓国側と接触できるかどうか、おのずから限界があると考えております。
  311. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 しかし、この金大中事件そのものは、これは韓国の領域外で、たとえば金東雲という、公権力かどうかはしらぬけれども、公権力に属していた人が拉致、監禁、それから殺人未遂という罪を犯しながら連れていったものですね。ですから、あなたこれは向こうの裁判だと言われるけれども、異常事態ですよ、裁判そのもの、光州事変なんというものを背景にして行われている。それで、事件そのもの、金大中に関する限りはこれは日本で起こった事件ですからね。向こうが越境してやった事件ですからね、これは。こういう事件に対しては、やっぱり相当しっかりしないと、これが何度も起こっちゃ困りますわね。どう思いますか。
  312. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 日本で起きた拉致事件であると、宇都宮委員御指摘のとおり、金東雲の指紋というものも、これは見出しておるわけでございます。かような次第によりまして、事件以後、政治決着後も金大中氏の身柄については、政府といたしましても繰り返し重大な関心というものを韓国当局に訴えてきておりますわけでございまして、今度の裁判が起きてからもその事態については何ら変わりないわけでございます。
  313. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 もうこれ以上言ってもしようがないから言いませんけれども、何でもかんでも韓国とは、問題になると、向こうは、日本の主張をちょっと言うと内政干渉だと言いますね、内政干渉だと言う。これは、外交というものは、本当はその国の、場合によっては利益、場合によっては正義、場合によっては国際的な正義、そういうものをやっぱり一国の立場から相手方に言うと、主張するというのが外交ですからね、実際は。そうでなきゃ要らぬだろう、どこか行って酒飲むんならね。これは、そういう一国の利益とかあるいは一国の正義あるいは国際的正義と、人権なんというのは国際的正義である。そういうものを相手方に主張して、そうしてそれをできる限り通すというのが外交じゃないですかね。そういうことをやると主権侵害なんというんじゃ、外交というものは半分は主権侵害になっちゃうね。こっちの道路をもうちょっと向こうにつけろなんということは、これは明らかに内政干渉だけれども、しかし、それこそ先ほどから問題になっている、アメリカが日本に軍備というか、自衛隊の拡充を要求すると、こういうことだって内政干渉になりますね。大体外交というものはそういうものですよね。自分の場合によっては利益、場合によっては自分考え正義、場合によってはもっといろいろ国際的正義など、そういうものの立場から向こうに主張し、納得させるということが外交であって、そういうことによって、むしろそういう率直な外交によって両国民間の本当の友情もできるし、本当の親善もできると。だから、何か日本国民にもわからないようにと、奥歯に物がはさまったようなことを言っておったんじゃ、本当の私は親善はできないと思いますね。外務大臣、どうですか。
  314. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いま先生のおっしゃった国の利益というものを実現する、あるいは国の正義を実現するということ——正義というものは、平和そういうものを全部含んでの話でございますが、そういうものを実現していくと、あるいは二国間の友好親善関係のために何が役立つかということを主張するというようなことが外交の役目であるということは、やらなければならぬことだということは私もよくわかります。でございますので、先生のおっしゃった利益とは何ぞや、あるいは正義とは何ぞや、国際的な平和とか友好親善とは何ぞやというところで、それがよくここの委員会でも御質問がありますが、意見の違うところもあるわけでございますが、しかし、いまおっしゃったようなことを外交がよく考えていかにゃならぬということは、これは私もよくわかりますし、意見を異にするものじゃございません。  いま宇都宮先生の御質問には私直接答えないで、木内局長から答えてもらったのでございますが、どうもおまえの答弁はりっぱな官僚答弁だと、こう言われて、はなはだ、私が答弁しても同じことしかできないので、同じことを言われるのかなと思って実は聞いたのでございますが、外交考え方につきましては、先輩としての貴重な御意見承っておきます。
  315. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 時間がもう大分なくなりましたから、もう一言この問題では伺いますけれども、外務当局は、しばしば韓国の外交当局の言葉をかりて、韓国では判決文を公表しないことが慣例なんだということをあなた方言われるのを聞きましたが、これはどうですか。
  316. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 判決文につきましては、被告あるいは訴訟関係者が費用を支払いまして入手方請求することができるという規定が軍法会議法にございます。しかし、私どもが韓国側に求めた説明によりますと、例外はあるにしても、原則として判決文を第三者に渡さないのが慣例であるという説明を受けておるわけでございます。私どもとしましては、裁判というものが公開である、これは韓国の憲法にもそういう規定がございますので、そういうことも申し述べまた関心をも表明して引き続き入手方努力を続けておるわけでございますが、法律専門家によりますと、裁判の公開というのは、すなわち審理の公開であり、判決のときの公開であるが、必ずしも判決文書あるいはその他の裁判書類の公開につながらないというような説明も受けておる次第でございます。いずれにしましても、先ほど来申し上げておりますとおり、引き続き入手方努力を続けてまいりたいと思っております。
  317. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 けれども、朴正煕大統領を殺害した金部長の裁判の際にはこれは判決文が公表されております。新聞にね。これは韓国の新聞ですけれども、公表されております。(資料を示す)私はこれはよく読めないけれども、判決文が公表されています。ですから、むしろ韓国においても判決文は公表するのがあたりまえであって、公表しないのはおかしいということですね。これはどういうわけか、韓国に日本の大使館があって、いろんな情報をとっておるはずだけれども、もし韓国においてこういう重大判決の判決文が公表されないことがある、あるいはされないのがあたりまえだというのなら、それは在韓国日本大使館の情報活動が非常に偏っておる、こう言わざるを得ないね。パンギョルムンと言うんだ、判決文のことを、韓国語でパンギョルムンと言うんだ。これがパンギョルムンだ。ずいぶんたくさん書いてあるね。やっぱりどうも日本外務省外国外交官というものは国民的な立場から正確な情報をとるということに対して私は少し怠惰ではないかと思うんです。いけませんよ、そんなことじゃ。今後やっぱり国際関係というのは非常に複雑になるし、それで日本国民的な立場というものをしっかり踏まえて、そうして情報というものを正確にとる努力をしないと変なことになっちゃうね。ですから、これは十分ひとつ注意してもらいたいと思いますね。大臣どうですか。
  318. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) おっしゃいましたようになるべく正確な資料、情報を得るということは、これはもう外務省の第一歩でございますので、今後とも一生懸命それは努力します。
  319. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それでは時間がちょうど三十三分です。委員長時間来ましたね。五時三十三分。
  320. 秦野章

    委員長秦野章君) あと二分あるそうです。
  321. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それでは問題を少し変えますけれども、この金大中事件というものの背景にあるものは何かといいますと、やっぱり朝鮮半島の分断、南北の鋭い対立、これがあって、それで北の脅威というものを朴政権以来ある意味じゃ過大に唱え過ぎて、そうして軍備をする、軍部の権威を増す。すでに韓国の軍備というものは、北もこれも国民総生産から言うと大変な軍備をしています。韓国は総予算の三割五分という軍備をしているわけですね。これがどのぐらい経済を圧迫し民政を圧迫しているか、本当はわからないんですよね。それで金大中という人はこれはそういうことじゃいかぬというわけで大統領選挙の際にできる限り緊張を緩和すると、南北相戦って同胞を殺し合うなんということはよろしくないと、そういうことで大統領選挙に出たわけだね。それで相当な不正選挙、朴大統領を当選させるための相当な不正選挙があったにもかかわらず大まかに言えば匹敵するような票をとった、そういう人ですね。これはやっぱり韓国国民の心の底にある、底流にある熱望であるし、また北にもある熱望である。この分断というものを、やっぱり南北分断というものを——日本はあそこをつまり植民地として三十六年間支配したわけですね。最後には創氏なんというつまり無理な日本化を行って神社に参拝さしたりいろいろして、相当いろいろな日本に対する反感というものが残っているわけです。それは南にも北にも残っているのですよ。南にだけ残っているのじゃなくて北にだって残っているわけだ。そういう状態なんですから統一ということはこれは急にはむずかしいだろうけれども、南北の分断の最大の不幸である緊張の激化によって戦争を起こすというようなことは、これはどうしても防がなければいけない。これは日本の民族のいわば道徳的な責任とも言えるし、日本外交の道徳的な責任とも言えます。そういう背景から起こっている事件であるということは十分考えておかなければいけませんね。何か金大中はつまらぬやつだとか変な宣伝が盛んに行われるけれども、金大中はりっぱですよ。今度でも法廷の最終法廷において、とにかく自分が内乱罪に当たるんなら、あの光州の虐殺のはるか前に自分は逮捕されちゃっているんだから何らの責任はないと、責任があるんなら、これは全斗煥自身にあるんだということを言っている。同時に、しかし自分が死ぬことがあっても政治的な復讐だけは自分の志を継ぐ者よしないでくれと、こう言っているんですね。これはまことにりっぱだと。私は、金大中の南北の緊張を緩和するという志が反共法であったり国家保安法であったりするということは、まことに日本の常識のある政治家から見ればこれは意外なことですよ、韓国のそういう考え方は。だから、そういう考え方をとにかく直さして、また北の方にも自分の影響力を行使して、そして南北の緊張が緩和して、戦争がないように努力するということは日本外交の道義的責任であるということと私は思いますが、最後に一言だけひとつ答えてください、伊東外務大臣
  322. 伊東正義

    国務大臣伊東正義君) いまおっしゃいました朝鮮半島全部の平和ということ、これは日本にとりまして非常に重要なものであるということは、私もその点同感でございまして、南北が平和的に話し合いを首脳がするということで始まったわけでございまして、私どもとしましても、あの平和的な話し合いが続けられて、早急とはいきませんが、南と北の間が本当に平和的になることを私も心から期待するわけでございまして、日本としては、朝鮮半島全部の平和ということが日本外交にとって非常に大切だということは同感でございます。
  323. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 どうもありがとうございました。
  324. 秦野章

    委員長秦野章君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時三十八分散会      —————・—————