運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-11-14 第93回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月十四日(金曜日)    午後一時開会     —————————————    委員異動  十一月十三日     辞任         補欠選任      小西 博行君     三治 重信君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         太田 淳夫君     理 事                 後藤 正夫君                 林  寛子君                 八百板 正君                 塩出 啓典君     委 員                 岩上 二郎君                 長田 裕二君                 片山 正英君                 上條 勝久君                 源田  実君                 鈴木 正一君                 鍋島 直紹君                 長谷川 信君                 松前 達郎君                 吉田 正雄君                 佐藤 昭夫君                 三治 重信君                 山田  勇君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      下邨 昭三君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    参考人        東京大学名誉教        授        小野  周君        東京商船大学教        授        竹村 数男君        下北地方労働組        合会議事務局長  木下千代治君        氷川商事株式会        社取締役会長   黒川 正典君        日本原子力研究        所労働組合中央        執行委員長    角田 道生君        全国造船重機械        労働組合連合会        副中央執行委員        長        藤井久米雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、小西博行君が委員を辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。     —————————————
  3. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、本案について参考人方々から御意見を聴取することといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には御多忙中のところ、貴重なお時間をお割きくださり、当委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。  本日は、ただいま議題といたします法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、当委員会における審査の参考にいたしたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは議事の進め方について申し上げます。  お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。  これより参考人方々から御意見を承ります。  まず、小野参考人にお願いいたします。
  4. 小野周

    参考人小野周君) 私、いま御紹介にあずかりました小野でございます。  ただいまから、日本原子力船開発事業団法の一部を改正する法律案について、私の意見を申し上げたいと思います。  私の意見といたしましては、わが国原子力船開発ということが、これはこの資料にもございますように、昭和三十八年に日本原子力船開発事業団ができまして、かなり前のことでございます。それで、その後、いまに至るまでまだいろいろ補修をしなければならないというふうな状態になっていると。こういう原子力船現状を考えたときに、今後こういう開発事業団ができたときにどういうことをするかということがまず問題になると思います。事業団法の一部を改正する法律案を見ますと、研究ということがかなり大きなウエートを持ってきておる。これは一つには、原子力船というものが「むつ」の段階ではまだ十分実用的なものになっていなくて、今後いろいろやはり研究をしていかなきゃならないという趣旨であろうかと思いますが、目的の中に研究というのがかなり大きく入っておりますが、私はこの点についてはそのとおりだと思うんです。ただ、やはり問題は、私の意見を申しますと、「むつ」というのはかなり旧式の原子炉を使っていままで開発をしてきたと。こういう原子力船というものに非常にとらわれまして、ここで開発を続けていくことがいいかどうかという点が、私としては非常に疑問に思うわけです。  これは皆様よく御存じのことでございますが、「むつ」が放射線漏れを起こしましたのは昭和四十九年かと思いますが、このときに私は「科学」という雑誌に「むつ」のことを書いたわけですが、「むつ」の中性子線ストリーミングで漏れたということが、「むつ」にとっての唯一の問題点ではなくて、恐らくいろいろな問題がまだ存しているであろうということを書いたことがございます。私は、いまでもそう思っておりますが、実はやはり改修の過程でかなりいろいろな問題が生じてきた。かなりいろいろな問題というのは、これもまだ全部は出てないと思います。原子力船開発事業団の方は原子力船むつ」の安全性点検補修工事内容説明資料というのがございまして、それから科学技術庁の方は、原子力船むつ」の安全性点検補修工事についてというのがあるわけです。  そこで、いろいろな点の点検補修ということでありますが、私の見たところの感じから申しますと、この点検補修というのは「むつ」の原子炉について気づかれたことでなくて、いままで多くの原子力発電所その他においていろいろ生じた問題が取り入れられているのであろうというふうに考えるわけです。  たとえて申しますと、非常に簡単な例でございますが、その他の補修工事というのがございまして、その中に安全上重要な推力計装ケーブルには難燃塗料を塗布すると書いてありますが、これはほかのところも同じようなことございますが、これは昭和五十年であろうかと思いますが、アメリカTVAのブラウンズフェリーの原子力発電所火事がありまして、それがちょうどこの計装ケーブルがろうそくの火から燃え移って大火事になって、もう少しで炉心溶融までいく事故を起こしたということがありますが、その後、原子炉について、こういう計装ケーブルが燃えるということは非常に危険であるということがわかったわけでございまして、これを恐らく反映されているのであろうというふうに見るわけです。  それから、水質の問題にいたしましても、たとえばいままで燐酸ソーダ注入をしていたのを改めて、ヒドラジン注入をするというふうなことがありますが、これも「むつ」の点検じゃなくて、実は美浜原子力発電所蒸気発生器細管の損傷がありましたが、私はその原因がはっきりわかっているかいないか、ちょっとまだ疑問はあるんですが、しかし、科学技術庁等ではこれは水質安定のために二次冷却水の中に燐酸ソーダを入れて水質管理を行っていたので、それが原因であるという判断をされたのでヒドラジンにかえると、大体こういうことであります。  それから、やはりこの前のスリーマイルアイランド原子炉事故のときに問題になりましたことが幾つか反映されておりまして、それは水素の濃度、それから圧力の測定、これはちょうどスリーマイルアイランド事故で、圧力計加圧系水位計と両方の目盛りが一致するときに作動するようにしないと危険であるというふうなことがありましたので、やはりそれがそのまま取り入れられているというふうに、いままで多くの原子炉事故で起こりましたことが、ほぼそのまま取り入れられている。もちろんそういう教訓がありましたから、取り入れることが私は悪いということを申しているわけじゃないんですが、しかし、「むつ自身点検というよりも、大体この数年来の世界あるいは日本における原子炉の種々のトラブルあるいは事故というものをもとにいたしまして、それでこういう改修をした。だから、ある意味から言えばあたりまえのことなんですけれども、多くのところを見ますと、大体そういうことに尽きているんじゃないかという気もいたします。  たとえば、これ私びっくりしたんですが、配電盤の問題なんかにしても、配電盤を別にするというのがどっかに書いてあったかと存じますが、これはコモン・モード・フェイリュアというものをなくなすためには、ぜひ必要であることは、もう前から言われていたんですけれども、そういうふうな点も必ずしもいままでよくやられていたとは限らない。だから、逆に言いますと、大変原船団の方には失礼かもしれませんけれども、あれは洋上ストリーミングがありまして、本当の運転をしなかったからよかったようなもので、もしそのまま運転していれば、燐酸ソーダを使っていれば、やっぱり同じように細管の腐食が起こったし、それからここにありますように、二次系の給水がとまったときに、いままで手動で動かすようになっていた。これは御存じのように、スリーマイルアイランド事故では、二次の給水がとまったので、補助給水ポンプが自動的に動いたけれども、弁が締まっていたために蒸気発生器がからになったというふうなことは知られておりますけれども、いままではそれは手動でしか作動されていなかったと思いますから、洋上で何か起こったらやはりどういうことになったかわからぬと思うので、そういう意味では、むしろ非常に初期の段階欠陥が見つかったということが、結果としては大事に至らなかったんじゃないかと思うわけです。そういう意味で私は、少なくとも改修前の「むつ」は全く欠陥原子力船であったと思いますし、現在の「むつ」はこれだけ改修すればいいかというと、決して私はこれだけ改修したんで完全になるとは思えない。というのは、先ほど申しましたように、大体において「むつ自身点検というよりは、他の原子炉事故もとにして改修されたわけですから、船特有のいろいろな問題は恐らく、私にはわかりませんけれどもあるだろうと思います。ですから、やはり総点検なり補修というものが、そういう形でされるのではこれは非常に困る。  それでは改めて「むつ」をここでもっと総合的に点検するために研究体制をつくったらどうかという問題もあろうかと思います。しかしながら、私が先ほど申しましたように、すでに「むつ」の設計から始まりまして十数年を経過しておりまして、こういうものをいまいろいろこう薬張りをしたりなんかしていって、本当に役に立つものができるであろうかということが考えられるわけです。ですから、これはいままで非常に多額経費を投じたから、やはり何とかしなきゃいけないという議論はございますが、これは非常に考えどころでありまして、多額経費を投じたから、ますます多額経費を投じて、結局あと五年か十年たって、まあ五年ぐらいたってこれがどうなるかわからぬとなったり、あるいは動かないとなってみたり、仮に何とか動いてみたということになって、どれだけの技術的、学問的な意義があるであろうかということは、私自身はかなり疑問とせざるを得ないわけです。  それで、原子力船が要るか要らないかというような問題もあるんですが、いまの「むつ」のいろいろなケアをしていくような原子力船事業団というもの、あるいはその延長で研究を含めるというのが果たしていいかどうかという点は、その点からいって非常に疑問だと思います。ですから、この事業団法を改正いたしまして、これは前提としてはかなり多額の、新聞その他によりますと三十億円と言われておりますが、それだけ多額費用をさらに投じてこれを改修していく、これだけに研究を集中するのが原子力船問題の解決にとっていいかどうかというようなことも、これも非常に大きな疑問であると私は思います。私は、むしろ研究ということから言えば、原子力船というようなものをつくったときにどういうメリットがあるか、どういうふうに使われるか、それからどういう問題点原子力船にあるか、そういうことも本来なら研究をされてしかるべきであると思います。  それからもう一つ申したいのは、当然そういうふうな上に立って、もし原子力船をつくるということであれば、一歩退きまして、初めから舶用の原子炉はどうしたらいいかという問題から出発をされるのがいいんではないか。いまここで多額の金を、恐らくいろいろと問題があろうかと思われますものにさらにつぎ込んでいくということが、本当に国民の税金を使うという立場に立っていいかどうかということは、私自身はかなり疑問だと思うわけです。これはもちろんいろいろなお考えがあるかと思いますが、私はそう思います。  それで、私は大体「むつ」の使命というのは、一応終わったんじゃないかという見方ができるわけです。というのは、やはり「むつ」というものにいろいろなトラブルがあったり、こういう問題がたくさん出てきたわけですけれども、これによって非常にたくさんの教訓を得られたと。特に原子力船の問題については動かなくてもやはり教訓を得られたことは事実だと思うんです。ですから、原子力船むつ」を継続して、補修して動かそうという方向に行くという立場で、日本原子力船開発事業団法の一部が改正されるということについては、私は賛成をいたしません。いたしかねると思います。  以上、いろいろ述べましたが、これをもちまして私の説明といたしたいと思います。
  5. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) どうもありがとうございました。  次に、竹村参考人にお願いいたします。
  6. 竹村数男

    参考人竹村数男君) ただいま御指名いただきました東京商船大学竹村でございます。大学では原子力船工学講座に所属しておりまして、主として原子力機関の理論、構造、配置、特性、そういったようなものを教授、研究しております。また、昨年原子力委員会に設置されました原子力船研究開発専門部会の一員として、その討議に参加さしていただきました。そういう状況にありますので、私は本日は原子力船研究開発必要性とその進め方について二、三申し述べたいと思います。  原子力船研究開発必要性は、第一には原子力船経済性がよくなって在来船に打ちかつようになり、原子力船時代が来るだろうと、そういうようなときにも、わが国海運造船業が維持強化され、そしてわが国経済社会に対して持つ意義を果たすごとができる、そういうところが大きなところだろうと思います。  もう一つは、近年のエネルギー事情によりまして、外航船エネルギー源を多様化しておくことが国民生活安定維持のために大変望ましいと考えるからであります。  後者につきまして、原子力船は一度燃料を装荷いたしますと、二年ないし四年は補給なしに運航を続けることができるという、燃料備蓄性といいますか、そういう特性を持ったもので、それに着目したものでございます。あるいは御承知かと思いますけれども、四十八年のオイルショックのときに、日本船は油がもらえずに外国の港で立ち往生したことがございます。二十一世紀に向けて燃料油事情が厳しくなるという状況では、やはりナショナルセキュリティーの問題からして、この第二の点はますます重要になると私は考えます。必ずしも多様化しておくといういまのナショナルセキュリティーの問題は、原子力船在来船に経済的にすぐれているということには限りませんので、このような原子力船が出現したとしても、原子力船時代が来たというふうには言えないかと思います。  それでは、前者の方に関連しまして、原子力船経済性についてもうちょっと述べさしていただきますと、現在燃料油の値段は一トン三万八千円ぐらいです。タービン機関を装備している船は大体一時間一馬力を出すのに七円五十銭ぐらいかかることになります。一方原子力船核燃料費は、同じく一時間一馬力出すのに大体二円程度ではないかと思います。一時間一馬力当たりで五円五十銭ほど原子力船の方が有利となるわけです。したがって馬力が大きくなり、航続時間が長ければ長い船ほど燃料費の差額が多くなって有利になると、こういうことになります。ここ十年間ぐらいの間に建造された最も馬力の大きい船、これはアメリカシーランド社の十二万馬力、三十三ノットのコンテナ船でございます。この程度の船になりますと、日本から欧州直行で片道で約三億円ぐらい、年間三ないし四航海といたしますと、大体二十億円ぐらいの燃費の節約になるんではないかと思います。ところが、一方十二万馬力コンテナ船級になりますというと、原子力船価格昭和五十二、三年ごろの計算でございますが、約三百二、三十億円ぐらいかかるのに対して、在来船は大体半分ぐらいの百六十億円程度と、こういうふうになっておりますから、仮に金利が八%としますと、最初の年には十三億円ぐらい原子力船は利息の支払いがふえるということになります。荷物を運ぶためにはその他にたくさんのコストが必要です。たとえば保険費も必要でありますし、燃料交換費用あるいは廃棄物処理費用、それから廃船処理費用、それから港の費用乗組員費用等いろいろございますですが、そういうものを総体的に考えましても、十二万馬力級では原子力船在来船よりかなり経済的に有利という結果は計算で出ています。この計算手法によりますと、現在の燃料油価格原子力船在来船と競合できるという馬力は、大体六万五千から七万ぐらいということになります。この程度の船は現在存在しております。燃料油価格が一トン十万円と、いま三万八千円ですから、それの二・七倍弱ぐらいであるとしますと、これが三万馬力ぐらいまで競合点が下がってまいります。一年間に一〇%ずつ燃料油価格がほかの物価のエスカレーション率よりも高いといたしますと、七年間で二倍になります。したがって、二・七倍というのは八、九年ということであろうかと思います。まあ船には限りませんでしょうが、輸送機関というのはやはり安くて早く、確実に物を運ぶということがモットーでしょうから、どこかの国でそのような船を走らせますと、よその国もそれに追従することを余儀なくされる。そうでないとあの厳しい国際海運場裏では全部敗退するということになります。燃料油高騰によって、そういう状況の素地がますます到来しつつあるように思えるわけなんです。原子力船研究開発を大いにやっていくべきだと、こういうふうに思っております。  次に、原子力船実用化時代に備えて、それではその研究開発をどういうふうに進めるかという点について申し述べたいと思います。大筋としては、まず実用化時代というものをいつごろどういう姿であるかということを最初に設定しなきゃいけない。その後、その目標に対して必要な技術開発、これを一貫した理念体制で着実に進めると、こういうことになろうかと思います。その実用化時代というのは、十二万馬力級の船が少々出でくるというようなことではなくて、現在各国の海運が原料とか素材、そういうものを輸送するのにたくさん走らせております三万馬力程度というようなところが多いのですから、三ないし五万馬力程度の船、これが船隊を組んで走るときというふうに想定するのがいいのではないかというふうに思っております。  先ほど述べましたように、燃料油価格が現在の二・七倍であれば、三万馬力程度でも在来船に競合するという計算結果でありますので、現在のように燃料油高騰が続けば、二十一世紀に入ると三ないし五万馬力船でも在来船に十分競合可能、こういうふうに予想されます。したがって、実用化時代というのは、三ないし五万馬力原子力船が少なからず存在する二十一世紀の初め、こういうふうに設定するのが適当というふうに思っております。  この目標に対しまして、研究開発でございますが、まずやはり日本技術現状、そして船特有の問題を見なきゃならぬ。船特有の問題といいますのは、船長は、どんな船の使い方でも許されなければならないという理念で操船しているわけであります。こういう使い方をしてもらっては原子炉の性格上困りますというようなことでは困る。そのことから、原子炉プラントといいますか、そういうものの特性は一切ブラックボックスがあっては困ると、全部手の内にわかっていなければ困る。これはとりもなおさず自主開発であるということに尽きるのであります。  そうしますと、御承知のように、日本原子力船技術現状アメリカその他の国々に比較しましてかなりおくれております。これらの国ではもうすでに原子力船を実際に走らせて、海上でのデータを蓄積しておるわけであります。早くこの域に達しませんと、後から申し上げますけれども、二十一世紀といっても時間はないわけであります。したがって、現在改修が進められております「むつ」は、わが国として先進国技術レベルに追いつくのに何としても活用は欠かせないものであります。特に「むつ」は国産技術設計、建造していますので、すみからすみまで確かにわかっているはずであります。これを運航してその経験を得るということは非常に貴重であって、今後の研究開発に寄与するところは非常に大きいと思っております。たとえばどういうことをやるのかといいますと、原子炉中性子変動といいますか、そういうものは出力の変動だけではなくて、波による船の動揺でも変わってきます。そういうものは陸上ではとれないことでありまして、それをやはり実践によって、自分たちがこういうふうに中性子変動するでありましょうという、そういう計算、コードと、それをとったデータとを引き合わせて、われわれの計算手法は、この点はよかったけれどもここはやはりちょっとオーバーエスティメイトであったとかというふうなことに使っていけるのではないか。したがいまして、できるだけ早く「むつ」を実験航海に走らせてもらうことが望ましいと思います。しかし、「むつ」は経済性に力点を置いてつくられたものじゃないことは皆様もよく御承知だと思います。たとえば熱効率本大体二〇%ぐらいしかありません。陸上原子力発電所は三〇%をオーバーしている。ウラン一トン当たり平均燃焼度も「むつ」では五千五百三十メガワットデーと。それに対して、たとえば美浜炉あたり、あるいは陸上発電所全部そうですが、二万メガワットデーをオーバーしている。大変な効率の悪い船であることは事実でございます。しかし、それだけ安全余裕はとってあると逆に言えるかと思います。ですから、単に燃料油の値上がりを待つばかりでなくて、実用化時代に向けての研究開発には、コストの中で最も大きな部分を占める原子炉プラント、これをより軽く、そして小型に、熱効率のいいものというようなものに、経済性に富んだものにするということが中心になるんではないかと思います。もちろん安全性信頼性前提としなければならぬことは事実であります。船のプラント動揺とか振動とかあるいは波によるスランミング——衝撃陸上炉と比較して格段の厳しい環境になっている。しかも大幅に激しい負荷変動が同時に課せられるというようなことでありますので、安全性信頼性というのは大前提でなければならぬと思います。この意味では、これからの原子力船開発研究安全研究が別途十分に進められなければならない、こういうふうに思います。  現在、船の原子炉として幾つかの型式がありますけれども、わが国としてまだどんなタイプがいいんだというようなものは決まっておりません。これをこれから早急に決めて、日本としてこういうタイプ自主開発をやろうというふうに、まず設計の評価研究をスタートして、そして先進国から技術導入をするものはして、ただし、ブラックボックスはなくすということで肝心なところは日本でやっておこうと、とにかく先進国との格差は少ないもので五年、多いものでは十年ぐらいありますので、第一着手としてできるだけ早く新しいタイプの、どういうタイプになりますか、三ないし五万馬力のものに向けての研究開発をスタートさせる方がいいと思っております。  最適な舶用炉プラントがそこで設定されましたら、多分開発が進むにつれていろんな機器、装置を陸上で揺すってみたり、あるいは振動をかけてみたり、負荷変動をしてみたりということがやられると思いますけれども、陸上発電炉の建設にタッチした技術者の意見によるまでもなく、やはりそういうものを個々単体で実験をやったから、それで組み立ててすぐにプラントはオーケーだというふうには技術者の良心としてはならないわけです。そこで、やはりそういうものをぜひ組み立てて運転してみる必要がある。特に「むつ」では経験のなかったもの、あるいは陸上炉で経験のないような技術が入ってくる可能性が十分にありますので、こういう舶用原型炉というようなものは次のステップではないかと思います。  まあこういうようなことをやっていますというと、十年ぐらいはすぐに過ぎてしまいますので、大体原型炉をやるということになりますと、設計始めて、評価始めて運転までは七、八年というのが常識であります。その後に実用炉を着手していくということになりますというと、二十一世紀というのの出現はあんまり開発スケジュールに余裕があるとは言えないと思います。そういう意味におきまして「むつ」の利用を一日も早くできるようにして、そして次の開発ステップに進めるような方向でお考えいただければありがたいと思います。  以上でございます。どうもありがとうございました。
  7. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) どうもありがとうございました。  次に、木下参考人にお願いいたします。
  8. 木下千代治

    参考人木下千代治君) ただいま御紹介をされましたが、私は青森県から参りまして、しかも「むつ原子力船の母港もあるという、こういう点でかなり私もこの問題については関心を持ってまいりました木下でございます。  いま二人の参考人の方からもいろいろ報告されましたけれども、私はやはり日本の原子力行政、これを考えてみるときに、非常に行政自体の姿勢というものに疑問を持つのであります。  まず、それは端的に申し上げまして、約束事についてはやはり守るという、こういう構えがなければならないだろうということであります。密室の状態の中で物事が運ばれておるのではないかというふうに考えます。そのことを端的に表現しますと、「むつ原子力船の四者協定というものが今日まで何ら守られておらない。こういう大きな問題点があるわけであります。私どもも先般事業団に参りまして交渉した際には、四者協定について一部のものについては許認可の取り消しはしているけれども、全体的にはまだ母港というものが生きておると、こういう話も承りました。しかし、先般の国会における鈴木総理さんの話を聞きますと、四者協定については守られて母港については効力がないんだと、こういう趣旨の話もしておいでになりまして、この二つの意見を見た場合に、どちらが正しいのかということを考えてみても、非常にこれは大きな問題があるのではないか。いわば住民、国民をだましているようなそういう感じがしてならないのであります。  青森県民は一日も早く四者協定については守ってもらいたい、母港については撤去してもらいたい、こういう念願でこれはいっぱいであります。そういう一つの観点から考えてみても、なぜ陸奥湾というあの大湊港というものが適地なのかどうかということを、やはりもう少しわれわれは考えてみなければならないと思っております。政府の側からいけば最適地、しかし地元の住民から言うならばこれはきわめて問題があると、こう言う。確かに大湊港というのは非常に湾内でありまして、海も非常に静かでありまして、そういう点では船を置くには一面適地のように見えるけれども、しかし、水産業という問題にやはりもっとメスを入れる必要があるんじゃないか。陸奥湾の中における水産高というものは四万八千トン以上あります。その陸奥湾の中にできておる漁業組合、その水産高がそこの町に経済的な影響を持つということについても、これはかなり大きいのであります。たとえば三千トンぐらいの水揚げをしますと、七億四千万という金がそういう一つの経済の問題に結びつくということです。陸奥湾というのはホタテの生産地でありまして、これはもう百億生産、こういうすばらしいところまでただいま伸びておるし、その他の魚の問題につきましても、非常にいまつくる漁業というものに力を入れております。そうして一つ一つの行動というものがいま成功の状況にある。こういう状況の中で、危険な船をそこに置かなければならないという一つの判断でありますが、青森県の漁業組合におきましても、従来は一定の条件の中で譲歩したわけでありますけれども、県民の意見も聞かないで一たん強行出港して、放射線漏れを起こした船に対する措置については、一応受け入れるということが前提でありましたが、これは何も経済的なメリット、そのことをもって自分たちが利益を上げるという発想での措置ではなかったわけであります。したがって、いま漁業協同組合員がこぞって反対をしているのは、漁業協同組合の中にも対策会議というものをつくりまして、この対策会議の第三条の目的を見ましても、陸奥湾沿岸漁民、住民生活基盤を守るため、原子力船大湊母港に反対することを目的とすると、こういうことを盛っているわけであります。この陸奥湾というのは、一たん放射能が漏れますと海流等の問題からいってなかなかそれを除去することはできません。ですから、そういう一つの失敗があるとするならば、せっかくの漁獲高、生産局というものに長い間力をかけてきたものが水のあわになってしまう、こういう考えから反対をしているんでありまして、いまも原子力船研究をして、そして商船云々、在来船云云ということも言われておりますけれども、そういう一つの観点から考えてみても、働いておる漁民の船そのものに利益があるのかどうかということを考えてみましても、そんなに利益というものにはなってないんじゃないか。問題はやはり廃棄物ですね、そういった問題を将来どうするのかということを真剣に考えてもらいたいと思います。これまでの政府の答弁だと、まず外洋投棄はしないとこう言っているでしょう。そうしますと海にも捨てられない、陸についてもこれは当然捨てる場所がない。そういう一つの環境の中で、どうしてこういうものに対しての研究、造船というものをしなきゃならないのかということを考えますと、私は反対の立場をとるわけであります。  いま漁民の例を引きますと、イカの生産についてもかなり遠洋に進出しています。しかし、遠洋に進出しているわりあいに水揚げ高についてはそう多いものがありません。沿岸で小さい船をつくって操業しているようなところが、大きな収穫高を上げているわけです。これはイカの量からいきましても六千万円、このぐらいの生産高を小さい船が上げているわけであります。大型船は確かにニュージーランドとかカナダとか、そういうところに何日間も行って操業してくるのはいいけれども、しかしそのわりあいに借金が多くて、とてもじゃないが倒産寸前であるというような船主の数も非常に多いんです。としますと、船そのものの研究が向上してみても、漁師自体とるものがなければ非常に問題があるんでありまして、私はやはり何百億円というそういう膨大な金があるとするならば、もっと沿岸漁業振興に金を使って、そして近いところで操業して水揚げ高を上げるというような政治の方向にやっぱり持っていく必要があるんじゃないか、こういうようなことを考えるわけであります。きのうですか、おとといですか、新聞にも出ましたように、原子力船が放射能を漏らした一つ原因は企業のミスであると、こういうことまで言っているのでありまして、そういう点では信頼をおくことができないし、私は非常に危険が伴うものではないだろうかと、このように考えます。  それから母港の問題につきましても、非常に約束というものが守られないまま現状に至っていますが、もしそれが母港という条件下にないものであれば、ないにもかかわらず廃棄物の貯蔵とか未使用の燃料棒というものを置くとか、そういうようなことを平然としてやっているんでありまして、そういう一つの例からしても、県民感情というものは必ずしも政府当局が言うようなものにはなってないというふうに考えます。原船の造船、そして造船をして海運の発達を図ると、こういう趣旨で事業団法の問題が出てきていますけれども、原船造船で海運の発達というものは果たしてあるのかということを考えますと、この問題に対しても反対の立場をしなければならないんじゃないかと、このように考えています。  どうかそういう観点に立ちまして、諸先生方においても十分と検討してもらいたいということを申し上げたいと思います。
  9. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) どうもありがとうございました。  次に、黒川参考人にお願いいたします。
  10. 黒川正典

    参考人(黒川正典君) 私、ただいま御紹介いただきました黒川でございます。経歴を簡単に申し上げますと、ここには氷川商事会長となっておりますが、大学で船舶工学科を修習いたしまして、直ちに日本郵船に入りまして、昨年まで在籍しておりました。主として工務関係を担当いたしたわけでございます。  原子力船関係につきましては、現在原子力産業会議原子力船懇談会の小委員会、これの副委員長を務めておりますけれども、主として技術的な面よりも、むしろ原子力船のあり方は一体どうあるべきかといったような検討の場でお手伝いをさせていただいております。したがいまして、ここでは時間の関係もございますので、主として原子力船開発必要性とか、原子力船に対する関係業界の現状と姿勢、「むつ」を含めますこれからの原子力船開発、さらには官民の役割りといったようなものにつきまして重点的に述べさせていただきたいと思います。  最初原子力船の特徴というものを申し上げるべきでございますが、これは先ほど竹村参考人からお話ございましたので省略さしていただきます。  原子力船必要性につきましては、これは産業界にとりまして、まず原子力商船の意義というものがオイルショックを境にいたしまして、その前後で大きく変わっております。すなわち、オイルショック前の高経済成長の最も進んだ時期におきましては、海運界におきましてもコンテナ船は非常に超高速化していく、さらにタンカーとか専用船といったようなものは大型化していく、そのテンポが非常に違うございまして、これによりまして必然的に馬力も大きくなってくる。コンテナ船で例を申し上げますと昭和四十六年、わが国で欧州航路用として建造いたしました三万五千トン型のコンテナ船では八万馬力で二十六ノットという性能を持っておりますし、翌年の四十七年には先ほど竹村参考人からお話ございました米国のシーランド社のSL17というシリーズ物でございますが、これは十二万馬力で三十三ノットというのを建造いたしまして、このうち欧州コンテナ船で例を申し上げますと八万馬力ですが、日本と欧州の間は約一万二千六百海里ございます。これを途中寄港しないで真っすぐ行くといたしますと、二十六ノットで二十日間かかりまして、その間、燃料はマイジンを含めますと九千トンという量を持って出帆しなくちゃいけないということになるわけでございます。この量は戦前のオイルタンカーが大体一万三千トンというのが標準型であったということを考えますと、いかに多くのバンカーが必要であったかということがおわかりになると思います。しかし、このような超高速化の競争を続けました結果、油だきとする限りは、もう実際上商船としての限界に来たのだということで、その壁を破るためには原子力船が浮かび上がってきたというのが実情でございます。ところが、オイルショック以降は御承知のように、重油の価格が当時一挙に三ないし四倍になりまして、それまでスピード競争をしておりましたのが急速に冷却いたしまして、その後今日まで引き続き重油高のために、現在ではボンド油でキロリットル当たり約二百ドル、邦貨換算いたしまして約四万二千円になっております。したがいまして、今日ではこの油高のためにコンテナ船ばかりでなくて、タンカーや専用船につきましても、ただいま減速航海というのが常識化しつつございます。このように船舶におきましても、直接に燃料消費量を節約すると同時に、当然エネルギーの多様化により重油の節約を図るということが叫ばれてまいりまして、その一環といたしまして、改めて原子力船がクローズアップしてきたというのが実情でございます。したがいまして、このようにオイルショック前は主として高速のために必要だからということであったんですが、その後は油の節約というふうに変わってきたわけでございます。したがいまして、コンテナ船の非常に高速なのは数が知れておりますんで、もし油の総量を節約するということにいたしますと、コンテナ船だけじゃございませんで、できる限りの船について原子力化するということが望ましいわけでございまして、海運立場から申しますと、一万馬力程度からと、欲を言えばそういうことでございますか、これではちょっと低出力過ぎまして無理であろうということなので、さしあたり開発が可能であろう、それから何とか将来採算がとれるだろう、しかも比較的需要の多いと思われます中馬力程度、具体的に申しますと約三万馬力、これは先ほど竹村参考人と同じでございますが、この程度以上のものを対象といたしまして、原子力船に転換するということをねらったわけでございます。ここでわれわれ船舶が原子力船の対象になるんだというふうに思っておりますが、一方では対象にはならないんだという意見もあるのも事実でございまして、この点で正直なところ、いままで民間の関係業界においても十分なコンセンサスが得られてなかったということが、原子力船必要性を説く上での決め手を欠く一因になっておったかと思います。  そこで、ここで改めていま一度原点に戻りまして、船舶用として考えられるいろいろの燃料がございますが、この中からエネルギーを中心にして見たときの船舶の位置づけは一体どうあるべきかということを見きわめる必要があろうかと思います。御承知のように、石油というのは大切なエネルギー資源であると同時に、石油化学の原料といたしまして、われわれにとってなくてはならない生活物資の原料でもございます。  そこで、この限りある石油というものは、石油でなければならないという分野に重点的に使用して、エネルギー源といたしましては、可能な限り他の代替エネルギーに転換するというのが必要かと思います。これは現在世間でよく言われているところでございますが、そこで、将来のエネルギー利用の分野を私なりに展望いたしてみますと、いずれも常識的なことでございますが、まず自動車とか航空機あるいは漁船とか小型船と、こういうものは比較的に出力も低うございまして、また軽いということ、さらには移動性の強いというようないろいろな条件ございます。どうしても石油系の燃料が本命でございまして、たとえ代替エネルギーを使うといたしましても、石炭液化による油を使うとか、自動車ならば電気自動車に転換するというのがせいぜいかと思います。一方また、発電所のように陸上で十分な敷地が確保できますところでは、原子力発電あるいは石炭火力というのが常識になるかと思います。  これに対しまして、大型の船舶は一体どうなるかと申しますと、機動力を十分発揮させるという上からは、世界各地で自由に入手できます油だけにするのが一番でございまして、また使っても非常に重宝だというような経済性もあるというようなことから、やはり船は飛行機や小型船並みに引き続いて油だけで通すべきであると、あるいは代替エネルギーを使う場合としても、石炭だけで進むべきじゃないだろうかという意見も一応はうなずけないわけでもございません。しかし、将来石油がだんだん不自由になってくるということは、これは必至でございます。けさほどの新聞によりますと、サウジが十四万バレル日本にふやしてくれたと、いろいろニュースございますが、ずっといままでのやつを展望してみますと、毎日毎日は一喜一憂するという事情ございますが、長い間の展望を見ますと油のなくなる、あるいは非常に少なくなるということは、私は必至だろうというふうに考えております。  現在、船舶用に使われております燃料は、油にいたしまして約二千数百万キロリットルになっております。これは民生用の化学製品の原料に使いますナフサ、これが約三千万キロリットルになるかと思いますが、ほぼその量に相当いたしますし、日本で輸入いたします原油の約一割になっております。したがいまして、この量というのは非常にばかにならないものでございますので、この中から少しでも他の代替エネルギーに転換するというようなことを考えますと、それは石炭もございましょうけれども、やはり原子力船というものを、この特徴を考えますと、将来大型船では十分これを対象にしなければいけないし、またなり得るものじゃないかというふうに考えております。  現在、原子力船の対抗馬に見られます石炭だき船では、これはいろいろ具体的な話ございますが、その炭有地が非常に偏っておると、現在豪州の船は成約になっておるようでございますが、これは豪州の内航船でございまして、豪州の東海岸と西海岸を走るという石炭の産地の間を走る船でございます。どこでもとれるというわけにもいきませんし、また石炭ですと御承知のように非常にかさがかさばります。あるいは灰とかSOX、NOXといったような処理も非常に厄介だというようなこと、さらには石炭と申しましても、これは油の前は化学薬品の製品の原料でございまして、やはり化石燃料といたしましてはこういう方面にも将来は使わなくちゃいけない。そうなりますと、燃やすほか使い道のないという核燃料、これを使いました原子力船というのは、将来のあるべき大きな指針かというふうに考えております。  しからば、原子力船に対します関係業界の現状あるいは姿勢はどういうものかということを申し上げますと、現在産業界にありましては、原子力産業界の中に、昭和四十三年以来原子力船懇談会というのを設けまして、これが中心になりまして取りまとめを行っております。そしてその都度意見書として提出されております。このメンバーの中で特に関係の深いと思われます海運と造船の業界の原子力船に対する取り組み方につきましては、概して次のようであるかと思います。  海運界は原子力船の需要をつくり出すという立場にあるわけでございます。ただ、先ほど申し上げた大量のエネルギーを消費するものとしての使命感から、将来エネルギーの多様化のために、いずれは原子力船に取り組まざるを得ないということは観念的にはわかっておりますが、現状では原子力船がいまだに経済性の高い炉が、いわゆる決定版になるようなものは開発されてないとか、いろいろむずかしい問題もある。したがいまして、航行上の諸制約その他いろいろ問題ございますが、そういうようなことでいま直ちに必要はないんだけれども、将来必ずそういう時代がくるから、必要になったときにはいつでも建造できる体制だけは整えておいてほしいというのが大方の意見でございます。  造船業界といたしましては、これは受け身となりまして、やはり需要があるかどうかによってずいぶん影響するところでございますが、ただいまのところどの程度の需要があるかという見きわめが十分立たないというので、さしあたっては将来に備えて技術者の温存、確保とかというようなことはしておりますが、ただいまのところ、将来のニーズを先取りして自主的に積極的に開発しようという動きはないように見られております。  いずれにいたしましても、水面上はこのようなことでありますけれども、具体的には私ども郵船といたしましても「むつ」には乗組員を派遣しておりますし、造船所もいろいろ事業団その他に派遣するといったようなことで陰になりひなたになりして御協力はしているわけでございます。  このように原子力船の将来はエネルギー、特に石油事情の動向によりまして著しく左右されますので、将来とも的確な見通しがつけがたいので、いま一歩どうも煮え切らないというふうにお考えかと思いますが、これではいけないというので、現在原子力産業会議の先ほど申し上げました原子力船懇談会の中に、原子力船開発目標に対する検討会、ちょっと長い委員会の名称でございますが、明年末ごろ結論を出すということで発足しております。先般発足してまだ作業途中でございますので、現在どうなっているかということはわかりませんが、先ほど申し上げました将来の見通しその他につきましては、ここにありますような開発目標に対する検討会ということなんで、その成果を期待しておるわけでございます。  大分長くなりましたけれども、急いで申し上げます。  そこで、次に開発関係でございますが、開発の緊急性、これはもうOPEC、特に中東産油国の情勢が非常に不安定である。あした何が起こっても不思議でないんだという時代になっております。当然これにエネルギーを依存する日本といたしましては代替エネルギー、そのうちの大宗をなします原子力船というものは、一刻も早く開発しなくてはいけないんじゃないかということ。それから原子力船と簡単に申し上げましても、これには相当長期間要します。また、莫大なお金あるいは人手もかかることなので、いま直ちにやる必要があるんじゃないかというふうに考えております。  次に、自主開発必要性でございますが、これは私どもの先輩でもよくそういう人がいるんですけれども、原子力船を在来のディーゼルエンジンと同じように考えまして、必要なら外国から技術導入してくればいいじゃないか、あるいは直接炉を買ってきたっていいじゃないかというような明治時代の感覚で申される人もあるわけでございますが、わが国は御承知のように、独自のセーフティークライテリア、デザインクライテリア、まあ安全基準と申しますかというのを持っておりますので、外国からのお仕着せですと、先ほど竹村先生のおっしゃったように、どうも基礎的技術基盤を確保して安定性を持たなくちゃいけないということに欠けるんじゃないかということなので、自主開発をする必要があると思います。  それから、次に「むつ」の活用でございますが、これも結論としては大いに使うべしということでございます。と申しますのは、船舶はその特性といたしまして、空気と液体という相異なる流体の間を走るというどこにもない宿命がございます。このために波という厄介なものがございまして、これがいろいろいたずらをするわけでございます。具体的には動揺とかあるいは振動、スランミング、表をぱんとやるやつですが、これには当然ショックが伴いますが、こういったような力が、しかも同時にかかってくる。重なってきて複雑な運動を与える。当然それによって船体にもいろいろな力が加わってまいるわけでございますが、これによって原子炉にもいろいろ複雑な影響を与える。こういうような複雑な力は陸上では再現いたせません。やるとしましても非常に困難でございます。こういうことで、どうしても実船実験というのは必要であるというふうに考えております。これは原子力船ばかりじゃなくて、現在でも造船が経験工学だと言われるぐらいでございますので、しょっちゅう実船実験をやっております。また、このようないろいろ頻繁な負荷変動があるというようなものもございますし、さらにまた動かしてみなきゃわからないという、ハードばかりじゃなくてソフトのいろいろな面もございますので、やはり船上で経験しかつ解明する必要のある問題は幾つかあるんだと思います。  私、原子力船開発事業団の方にもかねがねから非常に不満を持っておりましたんですが、大体あの事業団は「むつ」で終わりだと、それからできた後も二年ですか、慣熟運転やって必要なデータ取れば事足れりといったようなことで、とんでもない。何のために「むつ」をつくったんだ。これは実用化する間のみぞを埋めるものじゃないだろうか。だからそれで事足れりというんじゃなくて、原子力というのはまだ決定版がなくて日進月歩だ。進歩の過程で実船実験の必要なのがしばしば出てくる。したがって、それを繰り返し繰り返し利用してやる試験船である。そういうふうに使わなきゃうそじゃないかと申すんですが、法律というのはなかなかむずかしいもので、「むつ」でおしまいだということでございますが、今後新しい法律に改正になりましたら、極力そういう意味で「むつ」を活用していただきたい。船上じゃなきゃできないものがありますので、活用していただきたいというふうに思っているわけでございます。オット・ハーンでも一次、二次と炉心をかえております。こういう例があるわけでございます。  以上、るると長く申し上げましたが、そこで、当面考えられます開発課題といたしましては、さしあたって「むつ」を何が何でも所期のとおり生かす。それから、まだ「むつ」は経済性を二義的に扱っておりますので、やはり経済性の高い改良されました炉、これの開発、これはぜひ進めていただかなくちゃいけない。小型軽量、経済性の高いというやつでございます。  こういったことが中心になりましょうが、ここで特にお願いいたしておきますのは、先ほど申し上げましたように、主な海運会社は現在「むつ」に乗組員を派遣しております。そういうこともございまして、安全性というのに対しまして地域の住民の方、これはもちろんでございますが、それ以上にわれわれは本船に乗っている乗組員の安全というものはずいぶん気にしております。したがいまして、原子力船に対する不信感というのがいろいろあると思いますが、これを払拭するようにじっくりじみちな努力を続けていただきたいというふうに思っております。  最後に、開発に当たっての官民の役割りでございますが、これは政府主導型にしていただきたいというふうに考えております。その理由は、何せこれはもうコマーシャルベースの問題じゃなくて、エネルギー問題という大きな国家的要請がある問題である。それから、これには先ほど来申し上げました相当の期間とお金と人手がかかるということで、とても民間では手に負えないということ、これが主な理由でございます。  大変長くなりましたけれども、終わらせていただきます。
  11. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) どうもありがとうございました。  次に、角田参考人にお願いいたします。
  12. 角田道生

    参考人(角田道生君) 日本原子力研究所労働組合の角田と申します。現在中央執行委員会の委員長をやっております。私たちの労働組合は原子力船問題、特に放射線漏れ事故が起こりましてから以降の動きということに人ごとではない関心を払ってまいりました。今回の原船事業団法改正の審議に当たりましても、いまお手元にお届けいたしましたうちに入っております資料一の申し入れを、衆議院の科学技術委員会の各党委員に十月にお届けして、問題の本質に触れた検討をお願いしたところです。また、私たちも加入しておりまして、そのほかの労働組合として理化学研究所、宇宙開発事業団、動力炉・核燃料開発事業団、それから日本科学技術情報センター、こういう組合で構成しております科学産業労働組合協議会、略称科労協と申しますが、この科労協でも今回の法改正には問題点が多いということで、同じお届けしました資料の二と表に書いてございますような質問状を科技庁長官あてに出しております。また、この科労協では、各科学関係の労働組合集まりまして、十一月四日に原船問題での緊急討論集会というのを開いております。  今回の法改正の文書を見ますと、開発事業団研究開発事業団に改めて、五年後にそれを他の原子力関係機関に統合するとされているわけですけれども、そうなりますと、論理的にはこれは原研との統合以外に考えられないというふうに思いますし、そうなりますと、私たち自身研究計画あるいは原研の運営に直接かかわる問題が、また新しく生まれてきたというふうに受けとめております。本日は、原船団の原研への統合を考えた場合に、具体的に幾つか起こりそうな問題ということを含めまして、原研の中で、研究者の間で、あるいは先ほど申しました科労協の討論会などで出されました問題点幾つかを御報告させていただきたいと思います。  まず第一に、原船団問題の処理の仕方に科学技術の論理が貫かれていないということをしばしば感じるということがございます。たとえば、今回の法改正の根拠の一つともなっていると思いますけれども、原子力委員会の本年四月十一日付の「原子力船研究開発進め方について」という決定がございます。ここでは、以下のような考え方で今後の原子力船研究開発を進めよということで、四項目が述べられているわけです。その第一項目では、原子力船の本格的実用化の時期は、これまで考えていたよりも遠のいている。二十一世紀を展望するような見地で取り組む必要があるという点が述べられておりまして、それから第二項ではこれを受けまして、「むつ」に引き続き民間主導の経済的商船というこれまでの開発テンポを改めるということで、すぐれた舶用炉の開発を中心とする長期の研究開発計画を進めよというふうになっているわけです。ここまでは私どもも非常に納得はできるんです。ところがそこから先の、そこまでの現状分析の部分から、今度結論の第三項、第四項というところで、第三項では「むつ」の活用、第四項では原子力船開発体制、この部分になりますとどうしても論理的に一貫していない、結びつかないというふうに考えざるを得ません。  また、同じようなことでちょうど五十年の五月に大山委員会報告が出されました。そしてこの委員会報告を受ける形で、その翌月の六月に原子力委員会が今度の事故問題に関連した最初の見解を発表したわけです。大山委員会の報告では、事業団体制に伴う政策上の問題点、組織上の問題点技術上の問題点、契約についての問題点というふうに分けまして、欠陥を詳細に指摘しているわけですけれども、この原子力委員会の見解になりますと、それをさらっと触れて、主要な政策決定としては「むつ開発計画は継続するという結論になっているわけです。何か率直に申しますと木に竹を接いだといいますか、科学の論理に政治的処理を無理につなげていくというようなことが、原子力船問題にはどうもつきまとっているというような実感を持つわけでございます。これが原研との統合を媒介にしまして、原子力研究全般に波及するということになりはしないかということを、まず危惧するわけです。事業団体制もとでも主要ポストが出向者に占められている、系統的な自主技術の蓄積ができない、受注会社とのなれ合いが生じやすいなど、大山委員会の指摘は具体的でありますけれども、事故後六年の今日でも、基本的には原船事業団の中で解決されていない問題がたくさん残されているというのが実態でなかろうかという気がするわけです。  それから第二に、原研への統合と直接に関連する問題点でございますけれども、「むつ」に今後支出する予算というのが四百億円を超しそうだというようなことを衆議院の討議の資料などを拝見しますと伺っております。原研では数年前から短期目標として原子炉安全性研究、それから中期目標として多目的高温ガス炉の開発、長期目標として核融合という計画が示されております。これら巨大プロジェクトに偏在する研究計画自体には、私たち労働組合は批判を持っておりますけれども、それはとにかくとしまして、たとえば原子炉開発というところで、多目的高温ガス炉の開発というのにつけられている予算は、本年度三十八億円です。原研の五つの研究炉の運転維持予算が三十億ちょっとということです。こういうところに五百億円を——これは単年度ではございませんけれども、超す「むつ」というプロジェクトをくっつけていくということは、原子力研究、原研の研究計画全体がさま変わりをもたらされてくるということになることはおわかりいただけると思うわけです。そういうときには、少なくとも研究現場の討論というのを積み重ね、理事の長期計画の検討ということもあわせて、原船事業団をどうするかという際に深い検討がなければいけない。実態は私たちはこの問題について全然提案も受けておりませんし、検討もやれないという実態でございます。  それからこのほか定係港の問題というのもあります。先ほど申しましたことし四月の原子力委員会の決定で、残されている最も重要な課題は定係港の確定であるというふうに述べられております。定係港問題のいろんな経過を見ますと、これからも簡単にはいかぬだろうという気がするんですが、私たち率直に危惧を感じますのは、結局原研と統合、定係港を東海にというような話がこれは生まれるかもしらぬあるいは原研職員の手によって難航している地元住民との決着をつけるなんていうふうな話が出てきて、そういうことが安易に行われますと、私長崎、青森の住民の方々がお怒りになるのはもっともだと思うことが大変多いわけです。こういうふうな定係港問題をめぐって原研、動燃の既存施設までが東海にいられなくなるというような問題に拡大発展しやしないかという危惧さえ抱くことがあるということを、一言申しておきたいと思います。  それから第三に、「むつ」の活用論というのがございますけれども、私は実船の経験はもちろん必要ですけれども、この「むつ」でということを二十一世紀を展望して考えますと、ジェット機関を開発するのにプロペラ飛行機を使おうというのに似たような議論になっているような気がちょっとします。率直に言いますと、恐らくいまこれから新しく舶用炉を開発しようとなると、大方の技術意見の収斂は「むつ」とはいわば別型炉と言ってもいいような炉ということを志向することになるとも思うわけです。  こういうふうな中で、この「むつ」を維持するのに岸壁につなげておく係船料だけで今後二十一億円かかるというふうな話を聞くわけです。そうしまして、一方では船舶技術研究所の原子力船研究開発の予算というのが、過去二十三年間の累績で十数億にしかなっていない。こういう問題は非常に研究者にむなしい気持ちをさせると思うんです。ですから、本当に独創的な舶用炉をわが国研究開発していくんだ、そういうまじめな研究者をエンカレッジするためには、「むつ」にとらわれたやり方ということから、一遍解放した展望を示していただきたいというふうに考えます。  第四に、安全性の問題です。「むつ」の型が相対的に、原子力船の今後の本命と言われるものに比べるとやや古いということは、安全性の問題にも直結をそれぞれしていく面がございます。スリーマイルアイランド事故で小口径破断の重要性が再認識されてきておりますけれども、たとえば「むつ」の炉は最近の発電炉に比べますと、緊急炉心冷却系というのは、率直に言って手薄だと思いますし、蓄圧注水系というのもついていないというふうに聞いております。特に問題なのは、原子力船事故の実際のデータに基づく研究がやられていないという問題があるわけです。私たちが確認できるだけでも、原子力船の大事故というのが潜水艦スレッシャー号というのが、わりあいに近海で乗員もろとも沈没する、スコーピオンというのが沖合いの方で沈没するという事故がございます。あるいはことし沖繩近海でソ連の原子力潜水艦が事故を起こしている。こういう事故の情報、データというのが皆無と言っていいほどわれわれには与えられていない。したがって、それを参考とした安全性の向上ということが自前のわが国の中では非常に行われにくいという状況を考えていただきたいと思います。陸上原子炉につきましてはたとえば軍事用の原子炉でありましても、イギリスのウインズケールのプルトニウム生産炉の事故、あるいはアメリカの陸軍のSL1という炉の事故、これらの事故についてはかなりデータも出ております。論文も出ております。これらをもとにした検討で、わが国の防災計画にも反映させるという道が一応は可能になっております。しかし、原子力船についてはその道がはっきり言って、すべて軍事機密ということでないということを考えますと、わが国でみずからの手で陸上での綿密な安全性研究データの入手ということが不可欠だろうということを考えます。特に「むつ」の改修にしましても、核燃料を封印したままで修理改修して、洋上で試験を行うということにいままでの経過からなっていくんでしょうけれども、私はこういったやり方は科学の常道に外れた不安全行為だというふうに考えざるを得ません。  最後に、それでもなお「むつ」の改修運転を急ぐということを感じまして、一体これはなぜだろうと、この疑問が最後に残ります。これには関係者のメンツとかあるいは国威発揚のためといった科学以外の動機も働いているかと思うんですが、私はこういうリスクを重ねていきますと軍事利用、特に原子力潜水艦開発でその回収を図ろうとする動きに行きつきはしないかということを心配するものです。この心配には技術的な根拠があると思います。特に原子力船の最大のネックである経済性安全性ということを一応度外視して、その技術的な性能を最高に発揮させようと考えますと、私は推進用原子炉というのは、原子力潜水艦にぴったりであるというふうに考えます。特に酸素が要らずに長期間隠密行動がとれる、高出力で造波抵抗がない、高速巡航ができる。こういうふうなことで、兵器としての舶用炉の実用性というのは、原子力潜水艦では一応現段階で達しているという議論があり得ると思うんです。アメリカのブルッキングズ研究所が十一月九日に発表しました核武装と米国の外交政策というレポートが報じられておりますけれども、このレポートの結論部分で、日本が核武装を選択するとすれば、原子力潜水艦発射ミサイルが最も有効な道という分析評価をしております。私は、技術的な面で見ればそういうことになろうかと思います。  ですから、最近政府部内でも核武装それ自体は憲法違反とは言えないというような解釈が強まっているというふうなことを耳にしたり、あるいは原子力潜水艦それ自体は核兵器ではないというような話を聞きますと、非常に不安が起こるわけです。どうか原子力船開発に関係する研究者と国民の不安を除くために、核武装のはっきりした否定と、それから持たず、つくらず、持ち込ませずという非核三原則の法制化を、このためにもぜひお願いしたいということを最後に申し上げたいと思います。
  13. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) どうもありがとうございました。  次に、藤井参考人にお願いいたします。
  14. 藤井久米雄

    参考人藤井久米雄君) ただいま御紹介いただきました造船重機労連本部副委員長の藤井でございます。  御承知のように、造船重機労連は同盟の傘下の組織でございまして、原子力問題につきましては、原子力の平和利用は積極的に進めるべきである。そのための技術開発はもっともっと本腰を入れてやるべきだという基本的な立場をとっております。同時に造船重機労連といたしましては、いま問題になっております原子力実験船の「むつ」をわれわれの組合員の手で建造をしてまいりました。不幸なことに「むつ」が実験段階でいろんなトラブルを起こして、いま佐世保重工で修復のための工事が進められておるわけでありますが、私どもの組合員もいま大ぜい九州の果ての佐世保で完全な修復のために作業を続けております。そういうわれわれの組合員の率直な気持ちから言いましても、またわれわれの立場から言いましても、この原子力実験船の「むつ」は早く完全修復をして、そして将来のわが国の原子力商船の本格的な活動のために、大いなる実験の成果を上げてもらいたい、こういう使命感を持ってそれぞれいま懸命に働いておる、このことをまず御理解願っておきたいと思います。したがいまして、多くの科学技術者なりあるいは政府当局におきましては、このようなまじめな組合員なりあるいは国民の期待を裏切らないように、完全なる検討を今時ともひとつお願い申し上げておきたいと思います。  昭和五十年のニューヨークで開催されました原子力商船に関する国民会議がございましたが、ここで欧米先進国原子力船の実用化の見通しについて、経済性の実証あるいは市場の開設あるいは外国港における受け入れなど、未解決な点がたくさん残されているけれども、原子力商船時代はほぼ共通して一九八〇年代後半に到来するものと当時予測をいたしました。この予測は今日では若干後退しておるように見えますし、先ほどからいろいろ言われておりますように、二十一世紀を目指してということが最も妥当かもわかりませんけれども、しかしながら、資源エネルギーの現状を見ますと、近い将来原子力商船の時代が必ず訪れるものと私どもは判断をいたしております。特に、資源を持たないわが海洋国日本としては、原子力実験船「むつ」の完成は必要欠かせない問題であるというふうに認識をいたしております。  さて、今日までの「むつ」の状況を見ますと、製作上の欠陥あるいは国民的コンセンサスなどの面において、政府の場当たり的な面が非常に多く目立ったように思うわけであります。このことが多くの国民から誤解を生み、信頼性をなくし、結果的に原子力船開発の道をむずかしくしておるというふうに私は思います。この点は政府当局並びに関係者は大いにひとつ反省をしてもらいたいというふうに思うわけであります。しかし、ナショナルプロジェクトとして出発した原子力船開発は、「むつ」の完成によって新たな段階へ発展するものと確信しております。したがって、一層の国民のコンセンサスを得るための努力が何よりも必要であるとともに、このために信頼のおける安全性をまず確立をしていただきたいというふうに思います。  今回の日本原子力船開発事業団法の一部改正は、このような認識のもとに今日まで原子力船問題にかかわってこられましたそれぞれの立場の人の意見を取り入れて、技術的な面あるいは安全性、機構、そして運営などの強化をねらいとし、より国の責任を明確にしながら、万全を期していこうとする姿勢のもとに提出されておるものというふうに私は理解をしております。  以上のような前提に立ちまして、次のことを強く、この機会に申し上げておきたいというふうに思います。  一つは、すでにそれぞれの参考人方々から言われておることでございますが、原子力基本法の三原則であります自主、民主、公開の原則を徹底していただきたい。自主技術開発につきまして、その必要性はもう竹村さんなり黒川さんの方からるる述べておられますので、省略いたしますけれども、原子力に対する正しい知識を国民に理解してもらう、認識してもらうために、当局は大いに努力をすべきであろうというふうに、二つ目は考えるわけであります。そしてまた三つ目は、安全にかかわる問題を初めとして、国民の前に原子力開発についてのすべての点での公開を積極的に行っていただきたい。そして国民とともに開発していくという姿勢をひとつ示していただきたいというふうに思うわけであります。  次に、原子力船研究開発は相当長期で、しかも多額費用が必要であります。したがって、これを民間の自主的な研究開発に期待することは当然無理があります。国家的な要請に基づく事業であります。そうでありますがゆえに、国がやはり中心となって推進すべきだというふうに考えるわけであります。特に原子力船はすぐれた技術に裏打ちされて開発されるものでありますが、技術はやはり積み重ねであります。そういう技術について、日本のいま科学技術者は、世界的にもかなりの水準を走っておるというふうに私ども認識しております。したがって、その面よりもむしろ安全面に手抜かりがないのかどうか、そこが非常に不安であります。安全面での強化、すなわち安全規制体制というものを確立をし、強化をしていただきたい。そして安全基準なりについて厳重にひとつチェックをし、そして検討をしてもらいたいというふうに思います。  三つ目は、研究開発には何といいましてもすぐれた人材と資金と、そしてそれらを有効に生かすための機構なり運営が大事であります。今日のような事業団方式では、企業からの応援とかあるいは出向、一時派遣等で賄っておるようでありますけれども、これでは優秀な人材が得られませんし、定着いたしません。やはりこれだけむずかしい原子力船開発でありますから、人材がまず必要でありますし、人材の定着化、腰を据えて研究に取り組んでいくという、そういう環境づくりがやはり必要だというふうに思っております。したがいまして、そのためには、国立またはそれに準ずるような権威のある原子力総合研究機関をひとつ設置していただきまして、長期にわたる研究開発に応じられるような体制を早急につくっていただきたいというふうに思うわけであります。  最後に、当面する問題といたしまして、「むつ改修工事が佐世保重工の工場で行われておるわけでありますけれども、完成を急ぐ余り、原子力船の「むつ」の安全性はもちろんのこと、作業上の安全性についても、ミスがあってはなりません。十分なる監視、そして確認をし、二度と再び漂流することがないような、十分なる対応を考えていただきたいというふうに思います。  以上、非常に簡単でございますけれども、私の参考意見とさせていただきます。
  15. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) どうもありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  16. 林寛子

    ○林寛子君 まず、参考人皆様方がお忙しい中をこうして当委員会においでいただきまして、貴重な御意見をちょうだいいたしまして、大変ありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと思います。  時間がございませんので、私、まさに素人でございますし、大変失礼な質問もあるかもしれませんが、私としても一般の家庭の主婦の立場として気になることもございますので、それもお教えいただければと思います。自由民主党の林寛子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  まず、いろんな御意見がございましたのですけれども、要約して、時間のある限りでございますので、竹村参考人にお伺いしたいのですけれども、先ほどシーランド社の十二万馬力の船をこうすればこうなると、一時間に一馬力出すのに七円五十銭、原子力船なら二円、大体五円というような大変原子力船が格安で、しかも実益があるというようなデータ参考意見の中で伺わしていただいて、大変原子力船の重みというものを感じた一人でございますけれども、このほかに諸外国で実際にどれくらいの船が現在研究され、あるいは運航経験がデータとしてあるかを簡単に伺わしていただけますでしょうか。
  17. 竹村数男

    参考人竹村数男君) 林先生にお答えいたします。  いまの原子力船という言葉は、多分原子力艦船の艦の方ではないと思います。そういう意味でお答えいたします。一番早くできました船はソ連のレーニン号、砕氷船でございます。その次にできましたのが、アメリカのサバンナ号でございます。その次にできましたのが、西ドイツのオット・ハーン号。その次がソ連のアルクチカ号、アルクチカ号は砕氷船。それからその次に完成したのが、ソ連の砕氷船のシビーリ号、その後完成を待っているのが「むつ」ということになります。その程度でございます。
  18. 林寛子

    ○林寛子君 それでは、実際にいまお伺いしましたように各国、たとえばアメリカ、ソ連、西ドイツ、しかもソ連のレーニン号は、第一号としてかなり前にすでに試験ができているということですけれども、それらの諸外国の原子力船技術と、現状わが国原子力船技術の面での評価のされ方、たとえば一番の問題点はどこにあるとお考えなのか、一言ではむずかしいでしょうけれども、簡単に教えていただきたいと思います。
  19. 竹村数男

    参考人竹村数男君) サバンナ号と日本の「むつ」とはほとんど同じでございます。性能も先ほど申し上げましたように熱効率は二〇%程度、それからオット・ハーン号も先ほど申し上げましたような熱効率は二〇%、ほとんど性能的には同じ。ただ、オット・ハーン号の第二次炉心という、新しく燃料を取りかえた原子炉では、熱効率はぐんと高くなっておりますし、ウランの一トン当たりの燃焼度も約一・五倍近くにいっていたかと思います。そういう点で、オット・ハーン号については「むつ」の原子炉とは型式が違いますんですけれども、経済性データを取り得たものではなかったかというふうに思っております。
  20. 林寛子

    ○林寛子君 それからもう一つ大事なことなんですけれども、私ども家庭の主婦、国民の多くの皆さんもまだ記憶に新しいと思いますけれども、石油ショックのときに家庭の中で皆さん方がいろんな生活上の不便を感じて、買いあさりと言うと大変言葉は悪いですけれども、生活必需品を買いだめしたりという主婦が多かったわけですけれども、同じようにたとえばいわゆる原料ですね、原子力を利用するにはどうしたってウラン資源がなければいけないわけですけれども、これも日本はやっぱり海外に頼っているという現状で、だんだん世界じゅうでそういう開発あるいは運航面が広くなれば、ウランにおいても石油危機の二の舞になるのではないかという見通しが私たち素人にはわかりませんが、いまの時点でウランの研究がしていけるだけの確保、これは先生の御研究の中から第二の石油ショックにならないという保証があるのかどうか、ちょっと御意見参考に伺わしてください。
  21. 竹村数男

    参考人竹村数男君) お答えいたしますが、そこまでは専門にやっておりませんので、答えがあるいは的を射ないかと思いますが、いま船及び陸上発電炉で使われております燃料というのは、燃えているのはそのうちの数%、あとの九十数%の燃料は燃えないまま残っておるということになります。これを再処理という工程をとりましてもう一回使おうということにする、つまり核燃料のサイクルをすれば、計算もしたことございませんけれども、石油あるいは石炭、そういったものに相当するだけのエネルギーがあるんではないかと。日本海運、造船関係ではまだ外国でのウラン資源の確保というような仕事、作業といいますか、それには多分携わっていないと思います。船で使います核燃料というのは、発電炉に比較しましてたかだか十分の一あるいは場合によると百分の一というようなものでございますが、船に関してはそれほどの心配はないんではないかと思っております。
  22. 林寛子

    ○林寛子君 それからもう一つ、先ほども原子力船むつ」は旧式で、すでにいまさらお金をつぎ込んで開発しても意義はないんではないか、無意味なんではないかという参考人の御意見があったんですけれども、これに関して私もどうしても気になるといいますか、せっかくいままで研究してきて、しかも、意味がないとおっしゃるところの問題になっております「むつ」の原子炉を、船体から取り外して陸上研究したらいいじゃないかというような御意見も中にはございました。けれども、竹村参考人にお伺いしたいんですけれども、本当にその「むつ」の原子炉を船体から取り外して陸揚げしまして、陸上で専用炉の研究が実際に行われて、確実なデータがとれるのであろうか。さっき黒川参考人は声を大にして絶対にそれはできないと、陸上ではその研究はできないという御意見があったんですけれども、いまさら「むつ」にお金を入れて研究してもむだだという御意見と、いやそうではない、「むつ」の原子炉だけを陸上に揚げても波上研究ができるんだという、二つの問題を時間の関係で一緒にしてしまったんですけれども、竹村参考人の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  23. 竹村数男

    参考人竹村数男君) ただいまの林先生の御質問ですが、まず一つ意味があるかということですが、先ほども申し上げましたように、古いとかなんとか言われましても、ある物理現象に対しての取り組み方、それに対する答えというようなものに関しては、科学というのはそんなに差はあるわけじゃないというふうに思います。したがいまして、「むつ」を運航して得られたデータというのは、やっぱり自分たち設計して、こうであろうと推測した結果とどのように合致するか、あるいはオーバーしたのか、そういうことが次のステップに対して非常に有効だということであります。炉型が違うとか古いとかということは、基本的に余り問題にはならないというふうに思います。  それからもう一つの御質問ですが、陸上に揚げるというのはちょっと考えられないことで、あるいはどこか岸壁か何かにくっつけて揺すったらということなのかなと思いますけれども、船長は、たとえば台風が来ますと避難しますけれども、それは風に船首を立てて踟ちゅういたします。その踟ちゅう中は物すごい動揺を静めるわけですから、そういうときに非常にいろんな船、出力の使い方をいたします。そういう場合も含めてやはりデータがとれないと、次のステップには何にもならないというふうに思います。まあ、陸上固定は全く考えられないことじゃないかと思います。    〔委員長退席、理事後藤正夫君着席〕
  24. 林寛子

    ○林寛子君 それからもう一つ竹村参考人にお伺いしておきたいんですけれども、私、昨夜もテレビを見ておりまして、大変世の中の発展といいますか、貢献度といいますか、いままで見られなかった土星の表面をボイジャーがとらえて、日本のテレビで見られるというようなことで、改めて科学の進歩というものに敬意を表したんですけれども、たとえば日本の場合ですけれども、私ども東大の宇宙航空研究所が打ち上げておりますロケットでも、多くの貢献をしてくれているし、私たちのいわゆる生活の中での通信だとかあるいは気象観測だとかあるいは環境監視、資源探査、そういうもので大きな影響を私たちの生活の中に及ぼしてくれているわけですけれども、残念ながらあの打ち上げのロケットでも何度も失敗するわけですね。そのたびに私ども素人ですけれども、ああもったいないな、早くこれを何とか成功できるように、打ち上げるたびに成功できるようにできないんだろうかという、素人でテレビを拝見して失敗すると、ああ残念だと思うんですけれども、ロケットが失敗したときに部品が外国のものを使っているからだという説も私たち素人で聞きました。  そういう意味で、今度の原子力船開発に先ほど竹村参考人がおっしゃいましたように、日本よりすぐれた海外の研究過程のものを取り入れて、国産ではなくて技術をそのまま外国から導入していった方が手っ取り早いじゃないかという御意見もあるようなんでございます。そういう意味で、私はロケットの例を挙げましたが、外国のものを借りて研究すれば、失敗したときにロケットのようにそれをあけちゃいけないというような規定があるからだんだん開発がおくれていく。    〔理事後藤正夫君退席、委員長着席〕 そういう意味では、原子力船むつ」に関してはまさに国内で研究できて、しかも失敗があればどこが原因かということを外国にお伺いを立てないでできるという意味では大変すばらしいと、日本国民としてもっと誇りを持って、失敗したことは堂々と研究する、失敗をなくするための研究なんだからという意味で、私は大変前向きにとっている。また皆さんの努力に敬意を表しているんですけれども、そういう意味で、外国製品を安易に技術導入した方がいいという御意見に対して、私そういう意見持っているんですけれども、国産品で開発していくということでの先生のお考えはどの程度なのか、ちょっと伺わしていただきたいと思います。
  25. 竹村数男

    参考人竹村数男君) お答えいたします。  先ほども私の陳述の中に申し上げたかと思うんですけれども、船というのは非常な厳しい環境の中で、しかも外からの援助がない孤立移動体というところが一番の特徴なんです。そういうものにこういう使い方をされては困るというような何か制限がつくようだったら、それは船にはならないと思いますので、先生のおっしゃられるとおり、やはり国産ですみからすみまでわかるというようなものであってほしいと思います。
  26. 林寛子

    ○林寛子君 それから、黒川参考人にお伺いしたいのですけれども、たとえば現在すでに世界的に、先ほどもお話にございましたように、軍事利用の面は別として、平和利用の原子力船の実用化の動きがかなり進んでいるということになっているんですけれども、残念ながら日本ではまだ実用化の面が先が見えないという現状だろうと思うんですけれども、海運界のお立場として、先ほどお話をお伺いしました竹村参考人のお話の中で、大体設計から少なくとも七、八年はかかるんだから、いまからやっても二十一世紀やっと実用化という参考意見があったんですけれども、いまは実用化はないけれども、もっと実用化を促進するべきだという私は意見を持っているんですけれども、その辺海運界からの御意見を伺わしていただきたい。
  27. 黒川正典

    参考人(黒川正典君) 林先生にお答えいたします。  大変見通しのむずかしい問題でございますが、これお答えになるかどうかわかりませんけれども、海運界と申しますのは、技術革新に対しまして自分の手で開発していこうというのではなくて、たとえば飛行機会社とかあるいは自動車、運輸会社もそうなんですが、そういう開発されたものを製品として買いますときに、開発費を上積みにした価格で買う、これは国際的にそういうような風習になっております。したがいまして、海運業界各企業の中にそういう開発研究施設もございませんし、余りそういう人材もおらないといったような立場にございます。したがいまして、ニーズとしては将来はそうなるんだから必要だというのはよくわかるわけでございます。したがいまして、船主協会の理事会等で原子力船をどうするかというふうな話を持ち出しますと、いずれそういうことは時間の問題なんだと、だから大いにやれと言うんだけれども、自分たちでは限度があるというようなことで、先ほどちょっと申し上げましたように、とにかく必要なときにはできるという体制にだけはしてほしいというのが本音でございます。  そこで、それではいまなぜ具体的にもっと動かないのかということなんでございますが、一つは先ほどちらっと申し上げましたまだ経済性と申しますか、そういう決定版が炉としてのそれはないのだということと、これは多分に「むつ」でおじけをふるったこともあるわけでございますが、やはり私どもは理想といたしまして、原子力船であっても在来船と同じような航行ができる、それを一つ理想として掲げてございます。もちろん現在でも大型タンカー等におきましては、いろいろ港によりあるいは水路によって航行の制約を受けておりますが、こういうものは当然やむを得ないと。ただ、日本の港へ入れないとか外国の港に入れないというところがございますと、ちょっとぐあいが悪いというようなことで、そういうところがまだ体制ができていない。  それから何と申しましても、観念的にはそういうふうに必要だということでございますけれども、きょう現在はやはり目先のことが忙しいのだ。最近大分不況から脱したというようなことがございますけれども、どうもそういうことで目先のことにあれしますので、ちょっと長期的にはなかなかおみこしが上がらないというのが実情かと思います。お答えになるかどうかわかりませんけれども、そういうことでございます。
  28. 林寛子

    ○林寛子君 あと最後一つでお時間でございますので、簡単にお答えいただきたいと思います。  先ほど黒川参考人が、今後の原子力開発の国と民間の役割りについて政府主導型でいってくださいという御要望、もちろんごもっともだと思いますので、簡単にこれから見通しとして国と民間の役割りの分担についてどういうお考えをお持ちなのか、それを最後に質問を終わりたいと思いますので、どうぞよろしく。
  29. 黒川正典

    参考人(黒川正典君) お答え申し上げます。  私ども海運にしても造船にしても、従来の延長でございますと、これは自分でできるというふうに考えておりますが、相当画期的なことであるということで、先ほど申し上げました一番条件としましては期間がかかる、お金がかかる。それはそれぞれ人間が要るんだ、必要なんだという条件がございますけれども、まず金銭的にはなかなか莫大なお金がかかるということなんで、ちょっといまの体力と相談いたしますと、なかなか積極的にはという点がないでもございません。それから、そういう意味で金銭的には相当程度国に主導していただくというふうに考えております。ただ、あんまりまた人材をお手伝いするというと、定着しないということにひっかかると思いますが、私どもはできることでございましたら勤労奉仕は十分いたさなきゃいけないというふうに考えております。お答えになるかどうかわかりませんが、以上でございます。
  30. 林寛子

    ○林寛子君 ありがとうございました。
  31. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 参考人の皆さん大変御苦労さまでございました。社会党の吉田正雄でございます。いままで各参考人のお話をお聞きいたしまして、私も本当に参考になりました。  そこで、最初小野先生にお尋ねをいたしますが、この「むつ」問題につきましては大山委員会報告、俗にいう大山報告で指摘をされておりますように、基本的には今日までの日本の原子力行政そのものに大きな問題点があるということを指摘をしておるわけです。私も、今日までの日本の原子力行政を見ますと、とにかく秘密主義、それから安全性軽視、特に私は専門家を集めてつくられております各種の安全審査会なり専門部会、こういうものが社会的にきわめて権威あるかのごとく言われておりながら、実はその審査の内容というものがきわめておざなりであった、形式的であったと、そのことは今日までの多くの原発事故や故障、さらには「むつ」の放射線漏れを見てもこれは明らかなわけです。そういう点で私は、その安全性の問題、さらには長期的展望の欠如、これは各参考人の中でもいろいろお話が出たと思うのですが、まさに長期的な展望が欠けておった、その都度主義であった、あるいは無責任体制であった。事故や故障やいろんな問題が起きても、まず行政の場で責任がとられたということは一回も聞いてないわけです。また、それが明らかにされたということもいままではないわけですね。そういう点で、私はこの法案の問題を考える場合に、明確に分けて考えなきゃいけないと思うんですね、二つに。  一つは、いろいろ竹村参考人なり黒川参考人あるいは藤井参考人からもありましたように、エネルギー事情を考えて、あるいは経済性を考えて、将来に向けて研究開発をしなきゃならぬという一般論ですね。それなりにわからぬわけではないんです。経済性についてはいろいろ疑問がありますし、原子力の経済性というのは、むしろ在来のエネルギー源よりも高くつくんじゃないかという意見の方が最近は強くなってきておることは、各参考人御存じだろうと思うんですけれども、もう一つは、その一般論とは別に現実にいま提起をされておりますこの原子力船むつ」、とりわけその原子炉ですね、これについてはもうすでに多くの学者からきわめて旧式である、欠陥炉であるという指摘がされておるわけですね。しかも、大山委員会でもありましたように、まず設計そのものにミスがあるということははっきり指摘をしておるわけです。いままでの委員会の論議の中でも、まず一体設計そのものがどうだったのか、基本設計がどうか、詳細設計がどうか、メーカしの製作そのものに問題点があったのか、いろいろ論議をされてきたんですね。  先般の委員会審議では、基本設計には問題なかったというふうなことが言われたんですが、実はこの契約仕様書というものをきょういただいた。その中の設計条件、言われてきた基本設計という部分だろうと思うんですが、これを見ますと、この基本設計と称する仕様書そのものがきわめて抽象的であって、メーカーの責任に帰すべき部分もありますが、基本設計そのもの、仕様書そのものにもやはり問題があるのではないかという仕様書の内容ではないかというふうに思っているわけです。きょう資料いただいて説明を少し聞いただけですから、詳しいことはまだよくわかりませんが、一見したところではきわめて不明確な点があるわけです。  一例として申し上げますというと、「一次遮蔽設計条件」の中で「中性子に関しては格納容器内の機器および構造物が過度に放射化することのないように一次蔽遮からの漏洩量を制限します。」と。単に「漏洩量を制限します。」ということしか書いてないわけですね。一体どこまで制限するのかという基準というものが示されていなければ、詳細設計上何を基準にして設計するのか。まさに詳細設計をやる人の主体的判断によってそれが行われているということになるんでして、私は基本設計にもやはり問題があるんではないかというふうに思っております。しかし、この問題は抜きにしまして、そういうことで私はお伺いいたしたいと思いますのは、もうすでにこの炉が旧式であり欠陥炉であると。放射線漏れというのは単にそのふたを大きなもの、厚いものをただかぶせるというだけの今回は修理であるわけですね、放射線漏れについては。  そういう点で、私はこういうものにこれだけ多額の金をかけて、果たして研究開発に値する今回の修理であるのかどうなのか、その点をまず最初にお伺いいたしたいと思うんです。
  32. 小野周

    参考人小野周君) お答えいたします。  私が申しましたのは、これは旧式である、特にこれは一九七二年の舶用機関学会誌に、これを担当されました藤永一さんが実はこの計画は次の点で断念したと。たとえば「燃料被覆管をステンレス鋼よりジルカロイ」にしたかったと。それから、十字形制御棒をロッドクラスターの形にしたかったと。それから先ほども出ましたけれども、核熱特性を当時の陸上炉に近づけたいというふうなことを考えたけれども、まあそれはできなかったと。そのときの話なんですが、これは一つの例なんですが、いまこういう原子炉はすでに制御棒は全部陸上炉ではロッドクラスター方式になっておりますが、こういうふうな状態なんであると。これだけではなかったと思うんですが、こういうもので計画をされまして、あの段階で予定どおりにできれば、恐らくそれなりの実験はできたと思うんですけれども、いままたこれを動かしてやるということをしなきゃならないかというと、それも非常に簡単にできればいいんですけれども、実際は先ほど私が申しましたように、炉が欠陥炉というよりも、システムにたくさんいろんな点が見つかりまして、さらにシステムの中で非常用炉心装置の中の蓄圧系がついてないというふうな問題もあって、そういうものをこのまま使って実験をしていくことに、非常にたくさんの問題があるわけです。そういう問題があるにもかかわらず、こういうものを使って研究開発していくことが、果たして意味があるかどうかは私は非常に疑問だと思っているわけです。  それで、先ほどから私申しましたけれども、これを陸上に揚げていまの原子炉を動かすようなことはできませんから、これはやっぱり断念した方がむしろいいんじゃないかという意見です。むしろ開発を考えるならば、やはり相当大きなシンクタンクのようなもの、造船業界などすべてを含めまして、本当に原子力船開発が必要かどうかということを相当徹底的に研究することからまず始めて、その次に、炉の設計をやったらいいということに仮になりましたら炉の設計をして、それを陸上で運転して、陸上特性を調べた上で船に乗せて特徴を調べないと、初めから船で揺れているので特性を調べるというのは、これは私たち物理学では普通とらない方法なんです。ですから、やはりそういう筋道を立てた方法でまず必要かどうかと。  それから、先ほど竹村参考人からちょっと言われましたけれども、実際ウランの資源というのは、これはいまの軽水炉を使っている限りは非常に限られているわけです。もちろんそう言うとまた船ならば大したことないと言われるんですけれども、その問題は別として、そういうことだと思います。ですから、私はそういうウラン資源の問題、石油資源の問題、それからまたセキュリティーの問題として、燃料がなくなったときに船がどうなるかという問題を総合的に考えて、原子力船でいくべきであると考える人もあれば、外国から輸入するというような意見もあるし、そういう利害得失を全部考えるところから実は作業を始めて、先ほどの手順をとるべきではないかというふうに考えております。ですから、いまこのまま続けることについては私は反対です。
  33. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 時間の関係もありますので、余り技術的なことをお尋ねできないのは残念ですけれども、もう一点だけ技術的な面でお尋ねをいたしたいと思いますのは、例の緊急炉心冷却装置の改良で、低圧注水系の改良ということで、非常用注水ポンプのパイプを従来の約二倍の口径にするということなんですが、それは電動弁のところまでの太さであって、炉心に入っているパイプそのものは従来と変わりがないということであるわけですね。そういたしますと、若干は炉心への注水量はふえるかもわかりませんけれども、二倍の口径からその前の半分の口径のところ、その電動弁に大きな力、無理がかかるんじゃないか。また、そういうところから故障、事故というものが起きてくるんじゃないかという点を私は非常に心配いたしますし、また、そのことを指摘をしている学者もあるわけですね。  それともう一つは、燃料棒の被覆がステンレスになっているわけですね。最近は経済性だとかいろんな言い方がありますけれども、ジルコニウムにだんだん変わってきている。軽水炉では今日ステンレスを使っているということはもうないわけですね。原子力船の場合、一体どちらの方が望ましいのか。まだわずか五隻や六隻の原子力船状況では、あくまでも実験研究段階を出ていないということですから、早急に結論を出すことは困難かとも思われますけれども、この燃料棒の被覆管の問題についてはどのようにお考えになっているのか。事業団が現地の説明会で言っているところによりますと、一次冷却水がなくなっちゃって、空だきの状況になったとき、ステンレスの持つ温度というのは、千三百五十度Cくらいまでは大丈夫だというふうな説明も行っているんですけれども、こういう点でも厳密な実験というものを行わないと、大丈夫だというふうなことはなかなか言えないんじゃないかというふうに思っているわけです。  それと最後に、これからの原子力行政というものはどうあるべきかという基本的な面で、もし参考人に何か御見解がございましたら一言お聞かせ願いたいと思います。
  34. 小野周

    参考人小野周君) それじゃお答えいたします。  初めの弁のところで管の太さが変わっているということは、私の図の見方が悪いのかもしれませんけれども、このまま見ますとどうもそういうふうに見えるのです。ところで、弁のところで壊れるかどうかはわかりませんけれども、全体としてはその太くした効果というのはかなり減殺をされるんではないかと、もしそうであればですね、と思います。  それからステンレスの件については、ステンレスの性質についていろいろわからない点はあるんですが、実は先ほど私が申し上げましたように藤永一氏の書かれているのによりますと、実は意識的にステンレスにしたんじゃなくて、実はジルカロイにしたがったんだけれどもしなかったというふうになっていて、ステンレスを意識的に使われたのではどうもなかったように私は見受けるわけです。それから、ジルカロイという合金は軽水炉の場合に非常に詳しく調べられておりまして、たとえばどのくらい水蒸気あったらどのくらい反応するかという非常に詳しいデータがあるんですけれども、ステンレスについてはそれほど詳しいデータは私はよく存じません。ですから、これはオット・ハーンの場合はあとジルカロイに変えたと私記憶しておりますが、そういうこともありますので、必ずしもステンレスがいいということは何も言えないと思うんです。  それから、これからの原子力行政につきましては、きょうこの場でそういうことをお聞きになられるということは考えてなかったんですが、私前に、これは原子力基本法の改正のときに申し上げたことで、やはり基本的には原子力委員会を行政委員会にする、たとえば国家行政組織法第三条による行政委員会にして十分な権限を持たせるというのが、私は基本的には一番大事なことじゃないかと思います。
  35. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 ありがとうございました。  次に、竹村参考人にちょっとお尋ねをいたしたいんですが、先ほど経済性の問題については石油と比較をして、従来船と比較をして非常に経済性にすぐれているんじゃないかというふうなことがございましたけれども、これは私はそう軽々に判断できないんじゃないかと思うんですね。といいますのは、研究開発段階経費というものが、日本の原子力発電の場合にはほとんど国家予算によって多額の金がつぎ込まれてきておるということがありますし、いまの原子力船むつ」に関しては民間からの出資というのはきわめて少額であって、ほとんど、が国家予算をつぎ込んでおるわけですね。性能についても先ほどサバンナ号とほとんど同じじゃないかとおっしゃったんですけれども、同じであるか同じでないかというのは、これ実験やってみたら途端に放射線漏れを起こしておるということで実験のしようもない。逆に言うならばそういうことなんでして、欠陥炉だということで、またいま多額の金をつぎ込んで大改修をせざるを得ないという実情であるわけですね。総点検「今度は改修というふうなことで、次から次へと改修の部分がふえてきておるという状況であるわけですね。そういう点で、私は仮に「むつ」の今度の修復がうまくいったとしても、「むつ」の実験研究から経済性に一体すぐれておるのかどうかという、結論を言うならば「むつ」に関しては、これはあくまでもマイナスだと、これ、だけの多額の金をつぎ込んだわけですが、元は取れないということははっきりしているわけですよ。そういう点で、経済性の問題についてはもう少し検討しないと軽々には言えないんじゃないか。ただ一つの船の例だけでもって、経済性がすぐれているという判断は速断に過ぎるんじゃないかというふうに思いますし、それから燃料についても、大体従来の割合でいくならば軽水炉わずか八億キロワット分の四十年分ぐらいしかない。ただこれは経済性、一ポンド五十ドルにするのかどうするのかという経済性によって違ってまいりますから、その辺もなかなか現状では定かな計算が出ていないということですが、ただおっしゃった核燃料サイクルという点では、再処理についてはもうアメリカでも中止をいたしております、軍用を別にしましてね。商業用ではもう現在ストップをされている。それからラアーグでも事故が起きた、ウィンズケールでも事故が起きて、とても再処理なんというのはやれないんじゃないかと、西ドイツでもちょうどその論議が行われているときにTMI事故が起きて、西ドイツの再処理施設というものについても、首相が断固反対するというふうなことで、西ドイツでもだめというふうなことで、いま再処理についてINFCEで一応の結論らしきものか出ておりますけれども、再処理による経費というものを考えたり、あるいはさらに軽水炉の場合にはプルトニウム使用というふうなことも考えられて、高速増殖炉というふうなことも出てきておりますけれども、高速増殖炉についてもいまそれが定かにやれるという見通しはまだ全然立っていない。あくまでもこれは研究段階だということなんですね。そう考えますというと、再処理によってウラン燃料というのはよく理論的には七十倍ふえるとかなんとか言われていますけれども、それも単なる計算上の話であって、そんなに簡単なものではないというふうに思っているわけです。そういう点で経済性の面と、いま再処理云々というふうなこともおっしゃっておるんですが、いま私が申し上げたような観点から、核燃料の見通しをもう少し詳しくお聞きしたいんです。
  36. 竹村数男

    参考人竹村数男君) お答えいたします。  吉田先生の方がむしろ私よりも核燃料のことに関してはお詳しいんではないかと思うくらいでございますけれども、原子力船経済性を先ほど申し上げましたのは、要するに一つ説明的な資料として申し上げた。それですから、原子力船研究開発を二十一世紀に三万馬力ですぐにやれというような、そういうトーンということではないわけです。いまの核燃料事情、つまり、再処理まで考えない核燃料事情のもとで、原子力船核燃料費が二円程度になるだろうということでありまして、そういうデータを使っての計算結果は、先ほども申し上げましたように六万五千から七万馬力ぐらいだったら、ほとんどのコストを含めてとんとんであろう。ただ、まだコストといいましても非常に不確かさなものも多々あるわけでございますので、とんとんになったからそれっというわけにはいきません。たとえば廃棄物処理の、先ほどどなたか参考人がおっしゃられましたけれども、そういう問題にしても、あるいはわれわれがパラメトリックに見込んだ二倍、三倍がかかるのかもしれません。そういうようなことで、現状経済性については明るいという見通しですけれども、それが透き通って明るいというわけではないということで、核燃料のサイクルといいますか、再処理の費用の一応見込んで核燃料費二円ぐらいというのは出してございますけれども、エネルギー事情といいますか、どのくらい全体的にあるかという話になりますと、ちょっと私は専門でございませんのでお答えできません。
  37. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 もう一点だけお尋ねをしたいと思うんですが、いままで私の知る限りでは日本で再処理の経費、それから廃炉ですね、とりわけ高レベル廃棄物の処理、処分、それからほとんど半永久的に、たとえばプルトニウム等を管理をしていくということは、これは人類にとって不可能だろうと思うんですが、それはとにかくとして、この経費について日本では私は厳密に計算された例を余り聞いていないんですよ。そこまで考えますと、たとえば「むつ」の場合も、一馬力一時間当たり二円というふうな計算は、廃船になった場合の廃炉の処分であるとか、それから出てきた廃棄物も、低レベルから高レベル廃棄物の処理、処分、管理、こういうものをここでは余り厳密に計算をされていないんじゃないか。二円という根拠は、ただ二円としかお聞きをしていないので、根拠がわからないんですが、少なくとも日本では原発に関してそういう厳密な計算が行われていないんですね。資料を請求してもそういうものはない、はっきり言ってないんです。そういう点で、私は二円の根拠というのを、たとえとしては二円と七円五十銭という話で、非常に「むつ」の方が安く上がるように聞こえるんですが、私はそうじゃなくて、実際は建造費用から何からいろんなこと考えていったら大変な金になっちゃって、在来船の何倍もかかるんじゃないかと言うんですが、二円の根拠の中にはそういう廃船、廃炉、廃棄物処分、処理の費用も含まれておるんでしょうか。どうなんでしょうか。
  38. 竹村数男

    参考人竹村数男君) 吉田先生にお答えいたします。  その計算には廃炉の費用も含まれております。大体建造費の十数%を見込んでおります。それは非常に詳細な計算という一応筋は通っております。千MWDの原子力発電所の廃炉のアメリカ資料、そういうものを引き直したという程度にすぎませんけれども、アメリカで現在廃炉のコストは、楽観的に見積もると建設費の五%ぐらいから、悲観的に見ると二五%ぐらい、こういうふうに出ている資料がございます。大体その真ん中辺をいっていることになるかと思います。われわれは、やはり原子力船経済性を考える場合には、当然設計建造から、走って終わりまでの一生の間のコストを見なければいけないと思っております。そういうできるだけ得られる情報を入れて、一応二円という数字は出したつもりではございます。
  39. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 藤井参考人にお尋ねをいたしたいと思うんですが、実は私ども原子力発電所安全性を考える場合、メーカーの段階では実は放射能の危険性というのは全然ないわけです。ですから、メーカーの皆さんとか電力会社の幹部が、東京の管理事務所におってやっているときには、もう安全性の問題なんというのは考慮の外なんですね。ところが、一たん事故だの定期検査ということになりますと、つくったメーカーの皆さんが行って、あの潜水服を着せられまして、初めて放射能というのは大変なものなんだなということで愕然とされるんですよ、率直に言って。そういうことで、案外現場の実態を御存じない方が一番安全性を強調されるんですよ。特に事故や故障が起きなくても、原子力発電所の場合には、日常的に出てくる放射能あるいは定期検査等で、従業員の受ける放射線量そのものが、一年間でもここ二、三年は一万数千人レムというスリーマイルアイランド原発の何倍分も受けているという非常に大変ないま事態になっているんですね。そういう点で、電機労連の皆さんとか造船重機の皆さん方は盛んに安全性のことをおっしゃっておりました。私は前にも電機労連の皆さんともお会いしたんですけれども、電機労連の皆さんのおっしゃっている安全性というのは、科学技術庁が言っているのと同じことの繰り返ししかおっしゃってなくて、ああ実情は余り御存じないんじゃないかなあという印象を受けたんです。私は、いま世界的に原子力の経済性ということは余り言わなくなってきたと思うんですね。そういう点で、私は経済性云々よりも、より危険なものとして、いま原子力の抱えている安全性が、人類の生存にとって深刻に問われておるというふうに思うので、今度は産業界の立場、そこに働く労働者の立場としては、単に景気だとかいうだけの問題でなくて、そこの安全性をもう一歩掘り下げた放射能のそういう問題について、もう少し検討が行われるべきじゃないか。そこからまた雇用とかそういう問題も改めて問い直されてくるというふうに思うんですが、その辺についての御見解をお聞きをしたいと思います。
  40. 藤井久米雄

    参考人藤井久米雄君) 確かに原子力問題を扱う場合には安全性、それが一番問題だというふうに思います。われわれメーカー側ですから、陸上の原子力発電を実際に設置に行くわけでありますが、最初は確かにああいう異様なかっこうをするものですから愕然とすると思いますね。これは感情としてそうだと思いますけれども、そこに従事する場合、事前に、さらに中間であれ、あるいはいろんな機会を通じて、放射能あるいは放射線に対する認識、危険度、そういうものを徹底的に教育をし、そうしてその仕事に従事をしていくようにしております。  実際に私ども定期的にそういうところに参りまして、どれだけの量のものが出ておるのかチェックをいたしております。また、そういう点について行政面での指導を強化してもらうために電機労連、電力労連、造船重機労連の三つの組合で原子力問題研究委員会を持ちまして、政府当局にいろいろとその都度提言をしてきております。特に一応基準では五レムということになっておりますが、もっと低減するようにということ、そして吉田先生言われましたように、だんだん年数がたってくると放射能のいわゆる全体的な総量が上がってまいりますから、特にその点については留意をしなければならないという、いまその点が一つ問題点であることには違いないと思います。私どもは技術的な問題について直接いろいろ解明していく能力はございません。結局、政府なりあるいは財団法人ですか、いろんな研究機関、あるいは先生方の研究の結果、そういうものを参考に判断をしていくしかない。それからもう一つは、実際に決められた基準どおり実施されておるかどうか現地へ行ってチェックをする、ここのところは特に厳重にやっておるつもりでございます。  以上です。
  41. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 竹村先生にはもういいかと思ったんですが、いまひょっと思い出しました。先生先ほど安全審査委員会ですか、何かの委員もちょっとおやりになっておった話もあったんじゃないかと思うんですが、それはとにかくといたしまして、今度の「むつ改修の内容をずっと見ますと、来年の十月までに全部終わることになっているわけですよ。あと一年後なんですね。一年後にあれだけ重要な、大変な内容を持った改修工事というものが、私はちょっと実現できないんじゃないか、期限内には無理なんじゃないかというふうに思っておるんですが、竹村先生の見通しは、技術的にそれは可能だというふうにお考えになっているんでしょうか。
  42. 竹村数男

    参考人竹村数男君) お答えいたしますが、何とおっしゃられましたか、私が申し上げたのは原子力委員会原子力船研究開発専門部会の一員ということで、去年の二月からことしの五月までという期間でございます。「むつ」のいまのお尋ねの件とは全然違う種類のものでございます。ちょっとそういう意味ではお答えができないような気もいたしますんですけれども、やはり開発事業団としてはそれが使命でしょうから、一生懸命やって期限内に何とかしようと、こうしているのだろうと思います。
  43. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 それじゃ最後です。  木下参考人にお尋ねをしたいんですが、私どもこの原子力船改修工事の内容をずっと見てまいりますと、つい先般までは第一期工事までしかわからなくて、第二期工事というのが急速につくられて、まさにこれは机上でつくられて、ぱっと出てきたんですが、来年の十月までの完成は非常に無理だろうと。もしこれを来年十月まで完成させるとなったら、また手抜き工事、無理な工事、大変な工事になっちゃって、再度また事故を起こす危険性というものが非常に私は強まったんじゃないかと心配をしておるのです。藤井参考人もおいでになりますから、その辺聞いておいていただきたいと思うんですが、四者協定によれば新定係港ということになっているんですが、いまのところは新定係港と言わずに定係港、母港というのは相変わらず大湊であるということなんです。だから、改修が終わるとまた大湊に戻っていくということになるんですが、私は先ほどの参考人意見では地元としては挙げて反対だということを聞いているんですが、私はそういうふうに見通しておるわけです。そういう点で、地元としてはもし仮に新定係港が期限までに見つからない——期限とっくに過ぎているんですけれども、改修が終わってまたむつへ戻るというふうな事態になったら大変だろうと思うんですが、それについての何か御見解か御意見あったら一言でいいんですが、お聞かせ願いたいと思います。
  44. 木下千代治

    参考人木下千代治君) お答えを申し上げます。  いま先生も申されるように、修理が完成をしないままにむつにやってくるということに対しては、これは二回目の欠陥ということになりますので、そういう点ではやはり漁民、県民を含めて相当な反対行動が起こるんじゃないかと思っています。特にさっきも言っているように、陸奥湾というのは潮の流れがぐるぐる回っているような状態でございますので、そういうところに、しかも未完成なものがまたやってきて、洋上でも湾内でもそういう実験が行われるということは大変な問題である。漁民というのは漁業生産が生活の基盤である、こういうような観点ですから、かなりなやはり抵抗が出てくるんじゃないかと、こう思っています。
  45. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 どうもありがとうございました。
  46. 八百板正

    ○八百板正君 社会党の八百板正と申します。きょうはどうもありがとうございます。  時間がございませんから、ほんの電話で一通話ぐらいのお尋ねをいたしますから、これはお答えを含めて一通話ぐらいという、どうも三十八分までにという御指示でございますから。  そこで問題は、大変結構だといっても、国民から拒まれているという点がやっぱり大きい問題だと思うんです。そういう意味で一般の国民的感覚で、ははあなるほどそうかなと、こういうふうにならないとぐあいが悪いんで、私どもの立場も専門じゃございませんから、聞かれた場合にあんな法律通したが何だと、こう言われた場合にいやこうだと、こういうふうに言える程度のことがわかっていないと困るんでありまして、そういう意味でまず第一に小野先生にお伺いしたいんですが、こんな旧式な船直したって役に立たないというふうな意味で御発言ございましたが、たとえばこういうぼろ船でも直せばこんな点は役に立つとか、あるいはこんな点は経験として生かせるとかいうふうな点ですね、これは役に立つがこれは役に立たないというふうな点、一口で言える言葉がございましたらちょっとお教えください。
  47. 小野周

    参考人小野周君) それがわかるようでしたら余り問題ないと私は思うんですが、わからぬところが一番問題だと。  それからもう一つ言いますと、これ非常にすんなり補修をして試験ができるという状況であれば、もうちょっと考え方違うと思いますけれども、たくさんのトラブルを乗り越えてまでやってみるということは、これはむしろ私はむだじゃないかというふうに思っているわけでございます。よろしゅうございますか。
  48. 八百板正

    ○八百板正君 ちょっと私もそのまま、また受け売りできるだけの理解ができないんですが、何分にも一通話の中ですから、また次の機会にお願いします。  それでは、角田先生にちょっとお伺いしたいんですが、何か船の係船料、ショバ代、まあショバ代という言葉おかしいかもしれないけれども、場所代ですね、直す場所代よりも何年にわたる研究費の方が少ないという御指摘ありましたが、これはそのとおりだとすると、私も本当に考えさせられるショックな数字でございます。これは大いに身にしみてよく考えてみたいと思います。  そこで、いろいろ原子炉の炉型が古いとか新しいとかということはともかくとして、そこには新旧かかわりなしに、物理現象とか科学的に何か共通したものがあるというふうなお話もございましたが、やがて一緒になるかならぬかわかりませんけれども、とにかく共通のものを追求しているという立場でございますから、角田先生の方では点検補修あるいは作業の安全とか、いろんな点についてたとえば人をやったり、連携をしたり、どの程度の密度で連携をしていますか。これをちょっと教えていただきたいんです。
  49. 角田道生

    参考人(角田道生君) 炉の点検の方は動き方によっても違いますけれども、たとえば一年に一遍定期検査をやるというふうなことがあります。ただ、いまの問題に関連しまして、ちょっと話がそれるように見えますけれども、たとえば古いということで言いますと、ちょうど「むつ」の炉を建設しておりました当時、私ども原研の唯一の軽水炉ですけれども、動力試験炉というのの大改造計画に着工いたしまして、ほぼ「むつ」と同じ時期に建設を始めました。これがことし廃炉ということで、これは軽水炉としてはやや時代おくれになっておりますが、廃炉にするということが決まり、廃炉プロジェクトに入っております。この廃炉に要する費用が、その原子炉の建設費よりも大きい費用、だという形でいま予算を組んでおります。  それからもう一点ですけれども、私はある程度事故が起こるのはやむを得ないというふうに試験段階では割り切った考え方でいきませんとだめだろうというふうに実は思います。ただ、今度このような経過で「むつ」がもう一遍洋上試験で事故を起こしますと、これは漂流するのが「むつ」だけじゃなくて、核融合を含む原子力開発全体がこれは行きどまってしまうことがあるということで、本当に考えていただきたいということなんです。と申しますのは、この前ストリーミングが起こりました青森沖の実験、あの実験で事故が起こったとき、それのデータを測定する、中性子の測定をする、それに手当てをする要員が一人も乗っていないんです。テストをやるのにそういう要員を乗っけていないで、乗っけていたのは新聞記者がたくさんいたと。やはり国威発揚というような政治的デモンストレーションにこれが利用されていて、試験研究に必要な人間を連れていない。原研からもヘリコプターであそこまで飛ばしたわけです。こういう姿勢がありますと、本当に日本の原子力研究全体が漂流していくというような問題がありますので、私は安全性のかぎはそこだと思います。試験のときには多少の事故はあるんだと、事故があるということを前提にした取り組みということを真剣に考えなくちゃいけないというふうに思います。
  50. 八百板正

    ○八百板正君 ちょっと聞き方が悪かったものだから、私の聞きたい点とちょっと離れましたが、私の聞きたいのは、佐世保で現にいまやっているわけですから、それに対してどれだけ技術的な連携を、あっちは企業に任せてあるんですけれども、研究している問題は非常に共通した問題ですから、そこに人をやったり相談をしたり、あちらから来てもらったり、そういうふうな連携というものかどの程度にあるか。また同時に、あの補修改修についてどの程度の関心を持っておられるか。何やっているんだか知らないというわけじゃないのだから、どの程度にかかわり合いを持っておられるかということを、ちょっとお聞きしたかったわけです。ちょっと二往復になると時間を食うんですが……。
  51. 角田道生

    参考人(角田道生君) 原研から出向という形で原船団にかなりの人間が行っております。ただし、その人間がどういう仕事をやっているかということについては、原研の研究計画とは必ずしも密接な結びつきがないというのが実情だと思います。  それからもう一つ、今回の問題の重要な点とよく言われております遮蔽の問題につきましては、原研がそういう遮蔽の実験をする実験用の原子炉を持っているということもあって、本来ならばもっと協力しなくちゃいけないんだと思うんですが、何せ遮蔽の研究スタッフが、原研では二人しかいないんです。これは本当はふやそうと思っているけれども、二人しかいなくて、ほかの研究室の間借りで、ここの経常費がほとんどゼロです。よその部屋から少しあれをもらって細々と計算、計画などをやっていると、こういう状況ですので、遮蔽の問題に関しては貢献しようにも貢献できない。本人は貢献したいと思っていると思います。  以上です。
  52. 八百板正

    ○八百板正君 木下先生、ちょっとお伺いしたいんですが、本来ならこちらから出向いて港を見ないことには話にならないわけでありますが、来ていただいてどうも相済みません。  一体、あそこが一番いいとねらわれたといいますか、これはどういう理由だと現地の素朴な人は思っておりますか。あそこは蝦夷の国だから適当にやれるだろうなんという形で乗り込んで来られたと思っていますか。それとももっと高邁な期待をかけられて来ていると思いますか。現地の人はどんなふうに思っているんでしょうか、これ一点。  それからもう一つは、いまのところどこでも受け入れてくれるところがなさそうだから、やっぱりあそこに戻るほかないという考えがあって、説得すれば聞いてくれるだろうという話を、われわれちょいちょい耳にするんです、役所筋から。そうすると魚関係、ホタテガイ関係は食べ物ですから、ちょっとでもそんなのがあると不利益ですから、みんな反対するのは決まっていると言ってもいいと思うんですが、ほかに誘致するという意見とか歓迎するという意見がどんなとこから出てくる可能性がありますか。その辺のところをちょっと教えていただきたい。これは素朴な二つの点です。
  53. 木下千代治

    参考人木下千代治君) お答え申し上げます。  まず陸奥湾が最適地と、こういう政府の判断は、多分第一は、非常に波が静かで湾内であるということだと思います。それから言葉をかえて言いますと、放射能が漏れてもよその海に流れない。したがって最適地、こういう判断は政府の側の底流にあるだろう、こう思います。したがって、そうだとすれば大変な問題ですから、まるで陸奥湾が掃きだめになるような協定が取り結ばれるかどうかについて漁民の皆さんは非常に自覚を持っておる、こういうことであります。  それからもう一つは、軍事利用から言いまして確かにあすこに海上自衛隊もありますが、原子力船化していった場合、海峡封鎖ということに対しては津軽海峡は最も短距離で適するという、そういう一つのものがあって、私はかなりな意欲を政府当局は持っているんじゃないか、こう判断します。  しかし、住民の側からすれば下北というところは、経済的にも確かに恵まれない状態でありまして、ビートの栽培とか砂鉄の問題とか、そういう工場誘致があったけれども、次から次へとそれが失敗をした。そういう一つの弱点をついて母港の問題が当初あったわけでありまして、そういうものを持っていると町の発展があるという判断がやはり先に立ったんじゃないか。したがって、いまは大体商工会、店屋さんの皆さんが非常にそういう点では積極的でありまして、母港をつくって船がいますと、商店も繁盛すると、こう考えるのがそういう層でありますが、しかし、逆に母港があって船がおったときの状態を見た場合に、そんなにむつ市にメリットがあったかと言うと、私はやはりないと思う。逆にむつ市の原子力を監視をする市自体の人件費、そういったものを含めますと、税金の見返りもありますが、最終的には市の持ち出しが多い、こういう現状もありまして、船がおっても必ずしもメリットがあって裕福なものになるというものでは私はないと、こう思っております。
  54. 八百板正

    ○八百板正君 どうもありがとうございました。
  55. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 公明党の塩出啓典でございます。本日は参考人の皆さんには大変示唆に富んだお話を聞かしていただきまして心から感謝をする次第でございます。  そこで、小野参考人にお尋ねをしたいと思います。原子力商船実用化の時代が果たして来るかどうか、いつごろ来るか。このあたりがわれわれの一番知りたいところでございますが、政府の資料、きょうの参考人のお話を聞いてもなかなかつかめない。この判断を誤るということは、国民の血税を研究費にどの程度注入していくか、こういうことにも大きな関係があるわけでありますが、率直に言って、小野参考人として原子力船実用化の時代は来るとお考えか、いつごろ来るか。そして原子力船研究は、やはり続けていく必要はあるとお考えか、この点はどうでしょうか。
  56. 小野周

    参考人小野周君) 最初原子力船の時代がいつごろ来るかというお尋ねですけれども、私はいますぐにいつごろということはわからないんですが、ただ、私は二十世紀の間には来ないと思います。それは私だけじゃなくて、先ほどの皆様のお考えもそうなんですが、ただ、二十一世紀になって技術的にどういう問題があるかということと、やはり二十一世紀になりますともっとむずかしい問題もいろいろありますので、二十一世紀一つの可能性として、原子力をエネルギー源として考える、研究をするということが必要だと、私の個人の意見では思っておりますけれども、いつから来るかということは私にはわかりませんし、また来ないかもしれない。ただ、それについてできるだけ多くのデータを集めて、先ほど申しましたように、原子力船が必要だとする人と、それから原子力船には反対だという人で何人か集まって、声の大きい方が勝ちだというふうな形で決着するのは非常によくない。だから、そういう検討をするなら、もっと大がかりな検討をするべきじゃないかということを私は申し上げたいと思っております。
  57. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、竹村参考人にお尋ねします。  竹村参考人また黒川参考人、ともに原子力船研究開発専門部会のメンバーとしていろいろ御努力いただいてこういうレポート、原子力船研究開発専門部会報告書、これを拝見をさしていただいたわけであります。私は、確かにこの原子力船開発事業団が発足した当時は、昭和四十年の前ですから油の価格も大体一バレル二ドル程度であったと思うんですね。そして四十八年の油ショック以来、あの前後から急速に原油も高騰して、いまではその当時から比べれば二十倍近くになっておる。そういう点から考えれば、いまさっきお話のありましたような原子力船の優位性から考えれば、昭和四十年代に予測したよりももっと早くこなければならない。ところが、それが大きく遠のいてきておるわけですね。しかも、このレポートを読みましても、油の価格が一・五倍あるいは三倍、これはほかの価格に相対してそれだけになった場合に「原子力船の方が在来船に比べて経済的に有利になる可能性が強い」、非常にぼくら読んだ感じでは弱い感じなんですね。先ほど竹村参考人も明るいと、明るいけれどもずっと先の方まで明るいんじゃない、何かちょっとそのあたりまで明るいというような、そういう点から考えて、原子力船もここまで「むつ」もできておると、ここで見通しがないといえば、いままでの責任はどうなるか。そういう点からかなり無理をして、原子力商船の実用化の時代は二十一世紀には来る可能性があるということですが、そういう点の突っ込みが非常に浅いんじゃないかと。いまここで私たちが「むつ」をどうするか、こういう一つの判断を下さなければならないにしてはちょっと論拠が不十分だな、本当にそういう自信があるのかなという、そういう感しがするんですけれども、率直に言ってどうですか。この研究会のメンバーに参加した立場で率直な御意見を承りたいと思います。
  58. 竹村数男

    参考人竹村数男君) 塩出先生にお答えいたします。  私は単に、在来船原子力船コスト計算やって、片方が一円で原子力船が〇・九円だと、そういうようなときではまだ明るい、けれども透明ではないというふうに申し上げます。大体技術的な判断というのはファクター二だと思いますんで、そうしますと半分ぐらいになれば間違いないというふうに言えると思います。先ほどの三万馬力程度は二十一世紀の初めごろには大丈夫だろうというのは、その半分ぐらいに近くなっているという見通しを立てたわけであります。ですから、当然六万とか七万とかあるいは十万馬力のでかいものは半分以下のコストで運航できるというパラメトリックなスタディーが出ております。あれにタッチした一人としては十分可能性があるというふうに思っております。
  59. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから黒川参考人にお尋ねしたいわけですけれども、私はもうちょっと造船業界にしても海運業界にしても、本当に将来に原子力商船の実用化の時代が来るという確信があるんであるならば、もっと真剣に取り組んでもいいんじゃないか。先ほどから勤労奉仕には出しますというお話であったわけですけれども、やはり企業にとってそういう将来を見通してそこに研究投資をしていくと、これはやっぱり企業、たとえば造船業界、海運業界とすれば非常にぼくは大事な問題じゃないかと思うんですね。けれども、私たちが感ずるのは、どうもそこまで金をつぎ込んでやる危険はちょっと負担はできない。まあ来るかもしれぬから、ひとつそういう研究は国でやってくれと、国でやるといっても、国の研究費も国民の税金ですから、いいかげんに使うわけにはいかないわけなんですね。そういう点から考えて、私は造船業界にしても海運業界にしても熱意というか、原子力船開発というのは母港の問題にしてもいろいろ問題があるわけですけれども、そういうものを本当に克服して、やっぱり日本の造船界の将来のためにはぜひやっていかなくちゃいけないと、こういう熱意があるのかどうか、ぼくは余り熱意がないんじゃないか、そういう気持ちがしてならないんですけれども、その点は黒川参考人は造船業界ではございませんけれども、海運業界と密接なる造船業界も含めて御意見を承っておきたいと思います。
  60. 黒川正典

    参考人(黒川正典君) お答え申し上げます。  いまの御質問はもうしばしば受けまして、いつもしかられるところでございますが、先ほど申し上げましたように別な海運立場からいたしますと、先ほど申し上げましたように、特に原子力船だからお金を出し渋っているとか、そういうのじゃなくて、一般の研究開発に対してはなかなかお金を出さないと、これは先ほどちょっと申し上げましたように、海運の性格がそういうところにあると、これがもう先生からおしかりを受けるごもっともなところなんでございますが、これは体質なんでございます。  それから造船業界でございますが、これはメーカーという立場で当然やられると思うんですけれども、ちょっと私立ち入ったあれがよくわかりませんので、詳しいことは申し上げかねると思いますが、いずれにいたしましても、やはりそういうもとは体力ということで、造船業界も最近ようやく立ち直ってはきているということなんですが、やはり体力との相談でというふうに聞いているわけでございます。ですから、先生のおしかりのとおり、まさに私もそのとおりだと思うんでございますが、いろいろちょっと体質と申しますか、そういうことがございます。ただそうかといって、余りお役には立たないかもしれないんですけれども、できるだけのことはとにかくやろうじゃないかということは皆さんおっしゃっておられるようでございます。非常に歯切れの悪いお答えで申しわけございませんけれども、実態はそういうことになっておるわけでございます。
  61. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私はそういう点で造船業界あるいは海運業界にしても、原子力商船の将来の見通しについては本当に真剣に考えていただいて、そうしていろんな意見も述べて、やっぱり判断を誤っちゃいけないと思うんですね。研究費を出せと言うんなら、これはお金がないと出せないわけで、研究費出さなくてももうちょっと精神的にも熱意のある姿勢を示してもらいたい。きょうは別に黒川参考人、そういう業界の代表ではないわけですけれども、そういう気持ちを私は述べたいと思います。  それから、次に木下参考人にお尋ねしたいわけでありますが、本当に原子力船開発を進めていく上においてはどうしても母港が非常に大事である。そういう点から、これは私の個人的な見解でありますが、政府があらゆる点で選んだのが大湊港であったわけでありまして、その大湊港を途中でさっさと放棄するような原子力船事業団あるいは政府の姿勢では話にならぬと、そういう考えを実は持っておるわけであります。先ほどから確かに国の原子力行政の不信と申しますか、四者協定も守ろうとしない、そういう原子力行政の不信というものは私はわかるんですけれども、本当にそういうことができるかどうかは別としても、もう一回出直して、原子力行政の姿勢を改め、そしていまさっきのお話では、漁業の皆さんに対する影響、これは日本じゅうどこへ行っても漁業やってないとこはないわけで、原子力発電所にしても、やっぱりそういう問題解決していかなければいけない。  で、私は、たとえば風評によって魚価が低落をする。こういうときには政府なりあるいは原子力船事業団が責任を持って補償していく。そういうような点を確立するとか、そういうようなことをしていくならば、大湊港を母港として地域の人が認める可能性はあるのかどうか。むつ市民あるいは青森県民の皆さんも、あの四十九年当時に比べれば、アンケート調査の結果では、むつを母港にしてもいいじゃないかと、こういうアンケート調査の結果も私拝見をして、そういう上からお尋ねするわけなんですが、そういう点の御見解、率直な御意見承りたいと思います。
  62. 木下千代治

    参考人木下千代治君) お答え申し上げます。  母港が確かに一たんはできたわけでございますけれども、これは政府の協定では撤去をすると、こういう一つの過程があるわけですが、この過程の中におきましてもこれは私の記憶違いかどうかわかりませんけれども、強行出港をする前に、二階堂さんと関係当局が外洋に移転をするというような当初メモらしきものがある、そういう話も聞いておるわけです。ですから、当初から漁民の判断というのは、強行する以前というのは、さっきも言っているようにある一定の条件の中で妥協したわけでありますけれども、しかしそれが非常に危険であると、もっと時間をかけて研究しなさいと、こういう一つの声を無視して強行出港したわけですから、そういう点では非常に不満が根強いものが、まずあるということが前提であります。  それからもう一つは、さっきも言っているように単に魚価が——せっかく海をつくってきたわけですから、母港を貸して放射能でも漏れた場合にはその補償と、そういう政府の補償がないから反対をしているんだというようなものじゃないわけです。いわば強行出港する前の漁民の判断、そして現状の漁民の判断、このことに関しては質的に非常に違っているものがあるんです。ですから、さっきも言っているように、むつ沿岸の単協が結束をして、これは十六単協ぐらいあるわけですが、原子力船むつ」対策会議という会則までつくって、やはり陸奥湾を守るために、しかもそれが生活基盤を守るんだということに反対の理由を置いていることからしても、風評によって魚価が下がるから、その辺のところで調整すればというような、そういう政府が甘い判断だと、また、漁業上とかその他の大きなものに発展するだろうということでありますので、私の判断は従来の漁民の考えと、今日置かれている漁民の考えというは質的に変わっている。そしてみずからあの陸奥湾沿岸の漁業振興に力を入れたいと、こういうやはり発想が私はあると思うんです。私も常に陸奥湾の海の価値を高めようということを主張してまいっている一人でありますけれども、漁業水産の場所としてはそれこそ最適地でありまして、栽培漁業にしても、そういったものをうんとつくって生産を高めるということについては、かなり最適地である。したがって、原子力船にかける金があるとするならば、そういう金をその方向に使用するとすれば、非常に漁業振興というのはあり得ると、こういう判断に立っております。
  63. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから角田参考人にお尋ねしたいわけでありますが、実は今回の法案は原子力船事業団研究開発事業団と名称を変え、そして五年後には科学技術庁所管の研究機関と合併をすると、これはまあ日本原子力研究所であろうと、あるいは動燃かもしれない、そういうことが言われておるわけで、そういうことがはっきりしないままに見切り発車をしようとしておるわけですね。私たち公明党はこの法案に実は賛成なんですけれども、賛成はしたけれども五年たったらまた行く先がないと、そこでごたごたして、ちょうど四者協定みたいに、二年半後にはむつ港を出ますと言って出発したけれども結局出れないと、こういうことであればこれは原子力行政をさらに漂流させることになって、私も非常にそういう点を憂慮しているわけでありますが、ところが、先ほどのお話では労働組合に全然話がなかったと。恐らくどっちと一緒になるかわからないから科学技術庁も相談しなかったのかもしれないと思うんですが、そこでもし日本原子力研究所と合併する場合、合併するということが決まった場合ですね、いろいろ問題があるのかどうか。先ほどの角田参考人のお話では、研究費のアンバランスの問題ですね、「むつ」の係船料が一年間で二十一億で、船舶研究所のほかの研究費がそれよりも非常に少ないと。そういう点は、私は今後の研究費の配分の問題等についてはこれは話し合いもし、また研究者の皆さんに本当にファイトのわくような配分の方法はあると思うんですけれども、それ以外に非常に大きな障害はあるのかどうか。今後話し合いによって、この法案が目指す方向を、いわゆる合併という問題については、話し合いによっては労働組合としては、研究者の皆さんとしては賛成できるのかどうか。その点どうなんでしょうか。
  64. 角田道生

    参考人(角田道生君) お答えいたします。  私、先ほどちょっと申しましたんですけれども、原子力船開発事業団という名前を研究開発事業団と改めるということは、いままでの性格を完全に変えていくんだというお話を聞いたわけです。で、原子力関係のあれとしては動力炉・核燃料事業団ございますけれども、これは研究開発事業団というよりも開発事業団になっておるわけです。そうなりますと、やはりこれは論理の必然としては研究機関である原研にというふうに理解しておったわけですけれども、その際に問題点幾つか先ほどかなり日常的な問題も含めて申しましたけれども、一つございますのが、原研が軽水炉ですね、たとえば先ほど申しました多目的炉と申しますのは、製鉄などの多目的意義を含めた高温ガス炉になっているわけです。軽水炉そのものについては、先ほど申しましたように、JPDR2というプロジェクトをやめまして廃炉にすると言ったのをもって、軽水動力炉の研究というのは手を引く形になっているわけです。  実は私どもはいまの原発の実情を見ておりますと、労働組合にいまいる現場の研究者は、軽水炉の安全性の問題もっともっとやる必要があると、そのために安全性試験炉のようなものを新たに設けてもいいぐらいだというふうなことがあったんですが、数年前にもう軽水炉の問題は終わったと、次の時代だというふうなことで、そういうふうな大きな研究計画のポイントをどこに持っていって、それぞれ非常に多いスペクトラムを持っている研究分野の人々を結集して一つの成果を上げていくかという議論がかなりあるわけです。  そこへこの軽水炉であり舶用炉というのがすとんと入ってくるということは、これは研究所全体の研究計画が一部分ふえることだけではない議論がやっぱり要るという実情があります。特にそのことが恐らく原研の上層部の方もかなり寝耳に水であって、ましてそれに近い周辺のところで研究しているいわゆる研究現場の第一線の研究者の方では、全く新聞報道になって初めて知ると、こういう形で来ておりますから、この問題本当に御指摘のように何か先に構想が上がっちゃって、確たる成算がないのに約束ができちゃうということがありますと、空約束というふうなことで空転していくということは、たびたびこの原船問題でもあったような気がするんです。ですから、そういうことのないように関係機関の意見を十分に聞いていただきたいというのが私たちの願いですし、その関係機関の中には原研、動燃団だけでなくて、船舶技術研究所がかなりの蓄積を持っておるわけです。この蓄積というのは、私は炉ができ上がったというよりも、すぐれた研究者がどれだけ育っているかということが一番大事な蓄積ですから、そういう意味では船舶技研の意見を同時にやっぱり聞く必要があるだろうというふうな気がしますし、そういうことで考えますと、もう少し広くこの舶用炉の安全性ということにいろんな形でつながってくる研究者はたくさんいると思うんです。ですから、日本学術会議等も含めて、こういう衆知を集める場をつくっていただきたいと思う点では、小野先生の御主張にも私は全く同感いたしております。
  65. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういういろいろ話し合いなり各界の意見を総合していくということは私も当然だと思いますし、そういうように科学技術庁なりにもわれわれは要望していきたいと思うんですが、ひとつぜひ話し合いにも応じて、わが党はこの案に賛成でございますので、四年先、五年先に合併ができないことになりますと、これは非常に責任になりますので、そういう点はぜひ前向きに御協力をいただきたいことを強く要望しておきます。  最後に、藤井参考人にお尋ねをしますが、日本の造船業界は世界の造船の約半分を占めて、技術的にも私はトップを行っておるんじゃないかと思うんですが、そういう意味で、もしこれから原子力商船の実用化が来るというのであれば、本当にそれだけの先行投資もしてやっていかなければ、日本の造船業界のこれまでの実績というものがだんだんおくれていくと、そういう感じがするわけですが、そういう意味で、これは先ほどの質問と同じようなことですけれども、原子力商船の実用化というものに対して、働く皆さんとしてはどういう考えを持っておるのか。もっと原子力商船の研究に力を入れるべきであるとお考えであるのか、その点をお伺いして終わります。
  66. 藤井久米雄

    参考人藤井久米雄君) 塩出先生にお答えいたします。  造船に働く者の考え方としては、今日造船がここまで世界のトップ技術をマスターをして、一流の造船国としてやってきたということはかなり先行投資、つまり先行投資ということは、その分だけわれわれ上げる賃金もしんぼうした部分もあると思いますね。しかし、それは大きな目で見てあるいは長い目で見て、それが結局はわれわれの労働条件なり雇用を拡大するものだと、こういう認識に立っております。先ほどから経済性の問題について、造船業界あるいは海運業界少し消極的じゃないだろうかという御指摘ございましたけれども、本来原子力船の問題については、そういう商業ベースで考えるんじゃなくて、まだいまは国家の資源エネルギーをこれからどうしていくのかと、新しいいわゆるエネルギー問題に対して国としてどういうふうにかかわっていくのか。それに対して海運なり造船なりが、それぞれの持っておるノーハウなりあるいは資力をどの程度提供できるのか、こういう段階じゃないだろうかと、そういうふうに考えますと、まだ確かに私企業で原子力船の問題についてそう大幅な投資ということは、やはり無理なような気がいたします。しかし、考え方として政府の行政機構がきちっとして、政府自身一つのポリシーを持って、それぞれのノーハウなり資力を結集して、そして開拓、開発をしていこうじゃないか、こういう体制になることについては賛成ですし、われわれも早くそういう体制をつくっていただきたい。そしてわれわれ組合としても、早く原子力船の実用化に向けて大いに努力をしていきたい、協力をしていきたい、こういう考え方でございます。
  67. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ありがとうございました。
  68. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 共産党の佐藤でございます。ちょっと委員会を出たり入ったりしておりましたけれども、御存じのように国会会期末で、会期延長問題が登場していまして、議院運営委員会が断続的に開かれて、ちょっと私そちらにも出席をしておりました関係で失礼しましたことをおわびをしておきます。  まず小野先生にお尋ねをいたしますが、冒頭の各参考人方々意見陳述の中で、角田参考人が「むつ開発がしゃにむに進められるのは、軍事上原子力潜水艦開発につながるのではないかという危惧を持っているというふうにおっしゃったわけですが、私もその点の危惧を持っていますが、この点についての先生の御意見、先生御専門の研究を通して、平和利用と軍事利用との何か技術上の境界のようなものがあるのか、そういった点での御意見ございましたら、まずお伺いしたいと思います。
  69. 小野周

    参考人小野周君) ただいまの問題ですが、これは先ほどからもいろいろお話が出ていますが、一番大きな問題は、原子力推進というのは潜水艦に非常に適しているということはもうだれが見ても間違いないことで、先ほどからいろいろ経済性のお話出ましたけれども、どうも説得性がないように私思うんですけれども、経済性を無視してやるとすれば、すべてのものは軍事利用につながるというのは、普通考えられるわけです。私が危惧を持っているというよりも、原子力潜水艦が核兵器であるかどうかということにつきましては実は問題があるんですけれども、私が去年の軍縮特別総会なんかのいろいろな話を聞きますと、原子力潜水艦も一応核兵器と考えている人がかなり多いように思うんですが、そういう意味では、もし日本がいまの状態よりももう少し軍備に傾いていくと、やはり潜水艦をつくると、そのときに舶用炉の技術がある程度あればやりやすいと、こういう公式は当然存在していると思うんです。ただ、そういうふうな態度をとられるかどうかというのは、これは政治の問題ですし、私は個人的にはいろいろ現在の政治の問題については意見ございますけれども、それはちょっと私の専門でございませんから申し上げませんけれども、そういう場合には原子力潜水艦をつくる方向に非常に簡単に移行し得るんじゃないか、そういうことを申したいと思います。
  70. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 竹村参考人にお尋ねをいたしますが、「むつ」は国産技術で建造したのだから、今後とも原子力船開発自主開発でやっていくことが必要だというふうにおっしゃったと思いますが、これは仮定の話ですが、もしいわゆる「むつ」というものがなかったならば、今日軽水炉は旧式だということでいろいろ議論があると思うんですが、国産技術としてどういう炉型が原子力船開発に最も適しているというふうにお考えでございますか。
  71. 竹村数男

    参考人竹村数男君) 佐藤先生にお答えいたします。  詳しく検討したわけではございませんけれども、現在、世界じゅうに舶用炉として名前のある炉型は三つございます。「むつ」と同じような分離型というのと、オット・ハーンに乗せられたような一体型と称するもの、それからフランスが開発しておるわれわれは半一体型と言いますが、「むつ」の一次系のパイプを非常に短くして、原子炉蒸気発生器をつなげたそういうタイプのもの、その三つだろうと思いますが、そういう中で小型軽量というような点から見ますと、やはり一体型というようなものが有利ではないかと思います。それから検討は深くしてないんで、こういうことを言うのはあるいは差し支えあるのかもしれませんけれども、TMI事故のような状況を考えますと、蒸気発生器に水がよけいあるかないかがあのときかなり効いておりますので、そういう意味では一体型は蒸気発生器にはほとんど水はないと、パイプだけなものですから。そういうことでその動特性をコントロールする技術がむずかしくなるんではないか。そういう意味では「むつ」型の方が非常に安定であるというふうに思っております。  それからオット・ハーンのような一体型のものは原子炉の中の圧力が非常に低い、非常にというかどちらかというと低いわけです、八十何キロ。「むつ」の方は百二十何キロ、こういうふうなかっこう。そういう意味では、つくるのは圧力の高い方が何となく気にはなる。でもオット・ハーン型では、原子炉の中でぶくぶくぶくぶく蒸気を発生させておりますので、船の動揺によってあわがつぶれたり多く出たりします。そういう意味では動特性上オット・ハーンの方が非常にむずかしいということがあります。オット・ハーンはそういう点無事に何もなく一生を終えようとしておりますけれども、いろいろなことを思いますと、原子炉本体と蒸気発生器、それから一次系のポンプともう一つ加圧器、この四つの位置をどういうふうに組み合わせるかというのが舶用炉の一番ポイントでございます。一長一短はありますけれども、小型軽量化ということをポイントに置きますというと、「むつタイプよりは一体型とか半一体型というような方向に目が向くんではないか。どちらかと言うと、そちらの方で動特性面を十分にコントロールできれば、有利さが出てくるんではないかというふうに思います。
  72. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 木下参考人にお尋ねをします。  今日まで各地の原発設置をめぐって、いわゆる住民の反対を抑えるために札束戦術など、そういううわさが絶えなかったことが間々起こっているわけですけれども、今回の青森へのむつ再母港化、これをめぐって住民の運動を抑えるような何かの動きが出ていないかどうか、そういう点はどうでしょうか。
  73. 木下千代治

    参考人木下千代治君) お答えいたします。  今度の再母港化の問題に対する札束問題というのは、私は余り知りません。そういう点で、さっきも言っているように、漁民にしても補償を取るなんという、そういう発想はない、こういうことでございます。
  74. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 角田参考人にお尋ねをいたします。  一つは、例のスリーマイルアイランド事故教訓から見て、「むつ」にかかわる防災対策、そうした点で何か御意見があればお聞かせを願いたいことが一つと、二つ目は、原子力の平和利用に関する研究については、原子力基本法にも明確に定めています自主、民主、公開の原則が必要だということで、たびたび今日まで言われてきているわけですけれども、あなたが属しておられます日本原子力研究所の現状に照らして、労働組合の議論の中で何か問題になっていることがあればお聞かせをいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事後藤正夫君着席〕
  75. 角田道生

    参考人(角田道生君) 安全性に触れながら、先ほど防災の問題ちょっと触れませんでしたけれども、私は組合の委員長をやっておりますけれど、専攻は地球物理でありまして、原研では放射性物質による環境の被曝問題というようなことをずっと仕事にしております。ことしの六月に原子力安全委員会の防災対策専門部会が原子力施設周辺の防災対策についてという一つのガイドですけれどもまとめておりますが、この防災対策に一応アメリカのスリーマイルの教訓をいろいろ生かすということは検討されていたんです。しかし、これはやはり船の問題になりますと、幾つか新しい問題が出ておりまして、この防災対策でもカバーし切れていないんではないかというふうに思う点がございます。  一つは、船がその船としてのいわば実用性を考えますと、当然大きな商港に商船ですから入港しなくちゃいけない。日本で言えば横浜とか神戸というようなところに入港するということ考えますと、実はそこに初めてわが国最初の大都市の動力炉立地という問題が発生していくということになるわけです。そういう際の防災対策という問題がこれに絡んでくるというふうな点が一つ大きくあります。  それからもう一つ、海外のそういう受け入れ国の防災対策ということとの関連が、将来海外に船を回す際に、やっぱり国民間の信頼の関係ということを含めまして、これに絡んでくるという問題が、一つ問題意識としては必要じゃないかと思うんです。  もう一つは、先ほど申しました専門部会のガイドですと、防災に関しての放出態様ということで、事故のときにどんなふうな放出が起こるかということを一応分析しているわけです。その場合に、液体状の放射性物質の周辺環境への重大な流出は、まず考えられないということを述べて、それを前提にして考えるんですけれども、    〔理事後藤正夫君退席、委員長着席〕 船の場合に、その船が何らかの形で沈没するとかいうふうなことになりますと、陸上定置の原子炉では普通考えられないような海洋環境の汚染問題ということに関連した問題がそこで考えられねばならない。これがやっぱり十分考えられていない現状だと思います。  それからもう一つは、同じレポートの防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲というチャプターがありますけれども、ここで一応の目安として半径八ないし十キロと。この半径決めたことについてはずいぶん議論もありまして、私はちょっと別な意見持っておりますけれども、仮にこの十キロメーターというところを充実すべき重点地域というふうに考えますと、たとえば日本の港、日本の地形を考えますと、この十キロというのはかなりシビアな制限になっております。たとえば陸奥湾の場合ですと、陸奥湾の陸地に沿って十キロでコンパスでずっとなぞっていきますと、真ん中にはんのちょっと残るぐらいでほとんど埋まってしまうわけですね。それから陸奥湾口の海峡の距離が十キロございませんし、東京湾の場合でも湾口の距離が十キロありませんから、真ん中通っていくと五キロ・五キロというところに人口地帯があるわけです。これに対しては、一応原船団などで事故対策をやるときに、そういういろんな問題を避けるために、事故が起こってからタグボートあるいは補助エンジンで船を人口のいるところから遠ざけるんだという考え方を、これは机の上ではとろうとしているわけです。ところが、実際に事故が起こってそういうのを引っ張っていくタグボートと、それから乗組員の被曝と、事故が拡大しているときに船からおりられないという状況が当然起こるという問題が一つあります。  それからもう一つは、じゃあどこまで引っ張っていけば一応隔離できるかということで、十キロを目安にして考えますと、先ほど申しましたように陸奥湾から出ていっちゃって、完全に湾外に出なくちゃならぬ。横浜ですと、とにかく太平洋の方に東京湾の入り口を通って出切らなくちゃならないというようなことなどを考慮すると、タグボートで引っ張って原子炉を人口居住区域から離すという問題が現実的かということが問題になりますし、特に事前想定で安全評価をやると、あるいは避難対策を決めるというふうなときに、余りにも変動的な要素が多過ぎるというようなことがありますので、実は大きな研究課題がこういうふうな点でも残っておって、舶用炉を研究すると同時に、環境問題というごとの研究課題をじっくりと進めていかないと、実用化時代の直前に何かやり始めても間に合わないというような問題があると思うんです。  それから三原則の問題では、最近は特に公開の原則ということが、これまでもしばしば技術的なノーハウの問題、企業機密というふうな問題に関連しまして、原子力の中でも問題になっているわけですけれども、公開の点では労働組合の中でも問題になってきている点が最近だんだんふえております。  時間がございませんので事例を二つだけ申しますけれども、一点は核物質防護ということで、核ジャックなどに原子炉施設が乗っ取られるということから、国民をどう守るかという種類の問題が出てきたり、それに今度はアメリカの核政策として日本でつくられた特殊核物質、つまり原爆の材料が低開発国などに流れていって、そこで原爆になっちまうというのをどう防ぐかというような問題に関連しまして、非常に出入管理その他の、たとえばそういう原子力施設の開示制限というふうな形で、公開の制限がかなり入ってきております。これと平和利用三原則の自主、民生、公開の原則をどう考えるかということが非常に重大な問題ですけれども、私どもの労働組合でいま起こっておりますのは、外敵から防衛するということはほとんど実効がなくて、労働組合員が日常監視するというところにのみ実効があるような措置がとられつつあるところを非常に大きな問題として危惧しております。私は、原子力施設を本当に守ろうと思ったら私たち組合員自身が体を張って、一番よく熟知しておりますから守るという、そこに訴えて、その力を組織しなければ守り切れないというふうに思っておりますけれども、事態は反対の方向に行っているという点が一つ。  それからもう一つは、電源特会というのがございまして、電源三法にくる特別会計予算で研究を受注いたしますと、これは電源のスポンサーである電力業界の方からきたのか、通産省からきているのか、科技庁からきているのか知りませんけれども、その事業が終わるまで、数年間たっても論文発表ができないという事件がいま起こっているわけです。今度は実験データが日米研究協力というのがありますから、アメリカにはそのまま生データに近いレポートが行っちゃうわけです。行っちゃってアメリカで先に発表されちゃうわけですね。これは非常に研究者がくやしい思いをしているんですけれども、電源特会ということで発表できない。研究成果を学会でもとれないというようなものが外国に行って、そのレファレンスもなしに、日本でやった研究だというあれもなしに、それを使われてしまうというようなことも出ている。この種の問題は、ぜひ国会のような場で本当に考えていただきたい、国益とそれから研究者の著作権みたいなものですから、研究成果というのは。そういうものが本当に守られるようにしていただきたいというふうに思います。
  76. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わります。
  77. 三治重信

    三治重信君 本日はどうもお忙しいところありがとうございました。大分、各方面において質疑が行われましたので、ごく簡単に二、三の点についてお伺いします。  まず最初に、藤井参考人にお尋ねしますが、いま現に佐世保重工の方で「むつ」の修理が行われておるということで、先ほどの同僚議員の質問の中に、藤井さんへの質問じゃなかったんですけれども、いまの「むつ」の修理計画からいくというと、当初予定された工程で来年中に終わらすのは非常に無理じゃないかというお話があった。そういうことについては、労働組合はどの程度いま関心をお持ちになっておりますか。御存じであったら、また御意見があったら、その点についてお知らせ願いたい。
  78. 藤井久米雄

    参考人藤井久米雄君) 非常にむずかしい問題で、この種の発言をいたしますと、いろんな受けとめられ方をしまして、いろんな立場でまたそれが議論されへそしていろいろ問題を起こすと、こういう懸念がございますので、私どもここのところは正直申し上げまして、科学技術庁とそれから坪内系側とのいろんないきさつの中で、期限がどんどん過ぎながら工事にかかれないという点について、非常に危惧をいたしておりました。  この機会に少し申し上げますと、たまたま佐世保の労使の紛争が起こりまして、一部ではこの紛争の結果工事がおくれておるというような誤った認識をお持ちの方もおるようでございますけれども、労使紛争はこの「むつ」に関しては一切影響はございません。むしろ、労働組合としては期限内に完璧なものにしなければいけないということで、考え方としては早く労使紛争を外して、それだけでも改修工事に取り組むべきだと、こんな考え方を持っておりましたけれども、坪内系の方が政府との関係で一切工事にかからせなかった、仕事につかせなかった、これが実態であります。  現実のいまの工事進捗状況を私どもなりに気にはしておるわけでありますけれども、期限内に完全に消化し得ると、修復でき得るという目鼻はいまのところまだ立っておりません。しかし、私どもの立場なり希望としては、全力を挙げてやはり期限内に完工したいものだというふうに思っておるわけでありますが、冒頭申し上げましたし、吉田先生の方からも御指摘ございましたけれども、完工を急ぐ余り手抜き工事になったり、あるいは全体に工事が雑になるというようなことがもしあるとするならば、それこそ大変なことでございますので、そこのところも厳重に私どもなりにチェック、監視をしながら、基本的には期限内に完工したい。しかし、そこのところいまできるかどうか、非常に一方では危惧しておりますし、われわれとしてここで確かなことを申し上げるだけの材料はまだ持っておりません。  以上です。
  79. 三治重信

    三治重信君 次に、角田参考人にお尋ねしますが、きょう直接参考人の陳述された中にはなかったんですけれども、この資料の中にちょっと出ている。前の事故との関連で、われわれ聞いているのについて、ちょっと確認しておきたい。常識として覚えたいためにちょっと御質問するのですが、これだと「むつ」が出て行って二%の原子力の動力を動かしただけで放射線が漏れたと。われわれ聞いているのだと普通あれは放射能と、放射能は危険だけれども、放射線は大したことはないんだと、それをマスコミがえらい騒いでああいうことになったんだけれども、本来は大したことはないんだというのが、ぼくたち今日まで聞いているところなんです。それでこれを見ると、原子炉二%動かしただけで、出力をやっただけでもう放射線が出たんだと、こういうような書き方、あるいは読み方がちょっとまずいかもしれませんが、専門家から見られて、もしも「むつ」の原子力が二%じゃなくてずっと正常までいった場合には、放射線ばかりじゃなくて、放射能まで相当漏れるような危険性のものであったのかどうか。これは個人的な見解でも結構ですが、ひとつ御見解をお願いします。  それからいろいろ資料の中で、法案からあらゆる問題について、労働組合と原子力事業団の幹部あるいは政府との話し合いがないんだと。これはいろいろの組合の関心事について、意見は違うにしても事前に全然話がないということは、あらゆる立場でお互いに理解ができるやつも、かえって阻害になるということで、今後とも政府、事業団に対して注意していきたいと思うんですけれども、私も役人出身なんだけれども、一般に官庁関係の組合、いろいろ言っても一たん言い出した説を変えないんで困るんだ、全然変えないから話にならぬのだ、だから結局言わない、何か言われてくると当たらずさわらずのことを言っておくと、こういうようなのが経験としてあり、またいまでも伝え聞いておるわけなんですが、ことに原子力関係というのは、よほど専門家でないと本当のことはわからぬわけなんだが、組合の方に話し合いがないということについては、われわれの方も今後やはり政府や事業団の方に注意をしていかなくちゃいかぬと思うんですが、組合の方もそういう専門的なことについては、お互いに十分なことはいかぬにしても、了解をできるようなまたお互いに弾力的な態度、これ団交じゃないんだから、そういう態度をひとつ要望したいと思うんですけれども、そういう点については聞きに行っても話しに行っても、それは全然おまえたちと話すことじゃないんだというような態度なんですかどうですか。
  80. 角田道生

    参考人(角田道生君) お答えいたします。  第一点の方の洋上試験で何が起こったのかということですけれども、確かに出たのは放射性物質が飛散したんではなくて、放射線のうちの特に中性子線というのが、うねうねくねりながら炉の中から漏れ出したと、ストリーミングという現象で呼んでおりますけれども、そういうことがありまして、問題はその量もフルパワーにそのまましちゃったらかなり大きくなって、比例するかどうかにまた議論が分かれると思いますけれども、かなり大きな量になったということがあるんですが、こういうことがその前のたとえば設計段階とかそういうときに全然気がつき得なかったのか、あるいはその程度のものは多少方々から漏れるだろうと、その漏れるやつを見ることによって炉の構造をもう一遍見てやろうということに、この洋上試験の試験項目の一つがあったのかどうなのか。その辺の位置づけが全然はっきりしないで、私先ほど事故と申しましたが、小事故その他が新しい経験としての試験開発段階ではあるものだということを、みんな住民の方に本当にやるんだったら正直に言うしかないと私は思っているんです、それやりながら、こんなふうにやりますと。しかし、それではあれ説明つかないと思いますのは、先ほど申しましたように、そういういろんなトラブルが起こると、そういうことを見ることがあの実験航海意義であると、そうするとそういう人が乗っていてやらなくちゃいけないんだけれども、そのデータをとって十分に科学的な解析をするメンバーがないだけでなくて、そこをとりあえず防ぐという道具もないし、人もいないという状況があったわけです。ですから、くつ下に何かを詰めてこうやるとか、パラフィンもなかったというような状況で漂流を続けたわけですから、本当に研究としての取り組みとしては私ども研究者含めて上から下までやっぱりどっかおかしいんじゃないか、どっかで妥協があったんだというふうに感じざるを得ない。今度の「むつ」処理にもはっきり言わせていただきますと、そういう大きな政治妥協があって、その後始末ということが何か科学者の方に諮問されている感じもちょっとするという点で、安全の問題についても大丈夫かという不安が残っているわけです。  それから後の方の問題で申しますと、これ実は先ほど申しましたように、私たちの労働組合の中でも科労協、動燃団とかうちとか宇宙とかいう組合で、シンポジウムという形でわからない問題、議論がある問題は率直に話し合うことが一番大事だと、討論集会をやったわけです。ついこの間です。討論集会でもやっぱりいろいろ出てきまして、あんな「むつ」なんか早く撃沈でもしちゃってあれしないとだめだというのから、かぎはどうやってうまく持っていくかということだという意見等いろいろありました。その討論に私たちは組合が違いますけれども、船舶技研の労働組合に来てもらおうという形で、どんどん討論の輪は、私たちなりにできる範囲、つまり労働組合という形では広げていっております。ただ、その科労協が今度科技庁に質問状を出した。お手元に差し上げましたような質問状を持っていきましたら、山崎君という議長が、調査官にこんなことは答える筋合いではないというようなことで玄関払いなんです。話しする機会が持てない状況であるということで、私ども何も団交で云々じゃなくて、いろんなことあるんですけれども、たとえば、原研の中でも団体交渉とは別に、理事と懇談会形式で労働組合幹部がこういう問題も含めて、原研の研究機関をどうするかということを話し合いたいと何度も言っているんですけれども、もう三月間言い続けているんですけれども、まだ応じてもらえない実情もございますので、ひとつその辺がほぐれるように御協力をお願いしたいと思います。
  81. 山田勇

    ○山田勇君 私が最後の質疑者になると思います。大変長時間御苦労さまでございます。あとわずかな時間でございますので、よろしくお願いをいたします。  まず、小野参考人にお尋ねをいたします。時間も迫ってまいりましたんで、端的にひとつ御答弁いただければ幸いでございます。この事故というのは、技術的に見られまして初歩的な事故でございましょうか。
  82. 小野周

    参考人小野周君) ただいまのこの事故というのは、洋上試験の事故でございますか。
  83. 山田勇

    ○山田勇君 そうでございます。
  84. 小野周

    参考人小野周君) これは私は物理学者でして、中性子のことは非常によく知っておりますが、後から聞きますとどうしてうねうね曲がって、光だと真っすぐしか行かないんですけれども、どうして中性子がうねうね曲がって出るということに気がつかなかったかと、これは私だけじゃなくて、すべての物理学者が唖然としている。それで、私は初歩的なミスであったということを申しました。
  85. 山田勇

    ○山田勇君 いま、中性子とかサイエンス的な言葉であれなんですが、一応放射線を浴びた場合、浴びたといいますか被害を受けた場合、どのような人体に障害が出てまいるんでしょうか。
  86. 小野周

    参考人小野周君) これは中性子線がどのくらいかということでございますけれども、もちろん中性子線がたくさん出ますと、人体は被害を受けるわけです。先ほど放射能とか放射線とか言われましたけれども、電離放射線と言われているものですと、これはある一定量以上になりますと——これは広島か長崎の原爆のときに中性子もやはり影響があったということでございますけれども、先ほどの角田参考人の御意見のように、二%のところで出た程度ではそれほど大きな影響、全然影響なかったかどうかということになるとわかりませんけれども、それほど大きな影響はなかったであろうとわれわれ考えております。
  87. 山田勇

    ○山田勇君 角田参考人にお尋ねいたします。  研究をなさっておりますと、自分が被曝を受けるといいますか、そういう危険性は多分にぼくは研究段階でもあろうかと思います。その中で角田参考人は、研究に危険はつきものであるということをおっしゃられました。ぼくはこれは何でもないような言葉なんですか、研究をなさっている角田さん、研究員全員が命をかけて一つ研究をなさっているという言葉になろうかと思います。まして、そういう毎日危険な作業をなさり、研究をなさっているわりに、こういう書類を資料として見せていただきましたが、経済的にも余り恵まれてないようなことが書かれてあるんですが、お差し支えなければどのぐらいの予算でどういう形の研究をやるのかというのをちょっと、簡単で結構ですからお知らせ願いたいと思います。
  88. 角田道生

    参考人(角田道生君) お答えいたします。  初めの方のお言葉で、研究者というのは危険を覚悟してということありましたけれども、私はこれはちょっと別な意味で、危険を覚悟せよということを言いたかったんではないと。事放射線に関しましては、私自身その仕事が非常に有意義だし、またおもしろいということで放射線浴びると、浴びてもやろうと思う場合も、私が結婚して子供をつくらないという信念がない限りは、それは日本国民の中に一人が一浴びるのと十人が〇・一浴びるのと同じような効果でもって入っていきますから、これはすべて悪い方向にしかいかないという要素がありますから、研究者は本当に自戒して自分の被曝を防ぐということを本当に考える人間にならないと、まじめな研究者とは言えないというふうに思います。  それから後の方の問題ですけれども、たとえば、私どもの例で申しますと大きな施設、たとえば「むつ」をつくる、でき上がっちゃった「むつ」ですから、捨てるわけにもいかないから、それをつないでおくというような大きな仕事になりますと金がつくんですが、実際の仕事というのは、そういう道具を使いながら頭で考えていって、次のあれをまとめていく仕事になるわけで、頭脳労働になるわけです。その際に、たとえば大型のプロジェクトをやりまして大きな施設をつくると予算つくんですけれども、先ほど申しましたように、それをつくっていろんな実験をしてその成果を世に問い、ほかの人と議論をして次のステップに生かしていくための討論をする、つまり、そのために学会に出張するなんということがあるわけです。こういう研究学会に出張するための予算が、私の属しております研究部では、これは何と年間一人平均しますと八千二、三百円です。東京に一遍来るとなくなってしまう。それでたとえば四国で学会、シンポジウムがあるということになりますと、友達のやつをみんな借りるわけです。あなたの来年の分を貸してくれと、あなたの再来年の分を貸してくれと、こうやってかき集めて行くようにしないと、自費で行くといっても、自費で行くというのは就業規則にないから年休をとって行けという話になってきたりするわけです。そういうのが実態ですし、それからもう一つは人当研究費というのがあります。プロジェクトについたんじゃなくて、大学なんかで講座費という形でつくのと似ているもんですけれども、そういう共通費という形、私たちの部では十数万円というような枠の中でそれを分けている。これは特定のものじゃなくていろんなものに使えるというもので、予算はそういうものであることなどを、ちょっと御報告しておきたいと思います。
  89. 山田勇

    ○山田勇君 まあいま原子力の問題についていろいろと研究をなさっておるんでしょうが、将来船舶に対する燃料として、原子力以外に考えられるものはございませんでしょうか。たとえばいま航空機燃料ですと水素というようなこと、非常にアメリカなんかでは研究されております。日本の中でも、後で黒川参考人にもちょっとお聞きしたいと思うんですが、新交通システムとも言われておりますリニアモーターなんかですと、日本航空、運輸省、日立というふうに、民間レベルの中でも非常に研究をなさりながら成果を上げていっていると。そういう中で原子力以外に船舶の燃料ということは、角田参考人お考えになられませんでしょうか。
  90. 角田道生

    参考人(角田道生君) それには本当に確信ある答え私できません、研究しておらないものですから。ただ最近は、石油の代替が即原子力ということではなくて、石炭専焼の船ということが少なくとも国際会議などで議論をされているということなどは聞いておりますけれども、詳しくは私はわかりません。
  91. 山田勇

    ○山田勇君 黒川参考人にお尋ねをいたします。  時間がございませんので端的にお尋ねいたしますが、まあ政府主導型であってほしいという願望といいますか、よく私たちもわかる面もあるのですが、塩出委員がおっしゃったように、やはりぼくは企業努力というもの、か欠如しているように、やや参考人の御意見の中でうかがわれるわけです。まあ経済性ばっかりが先行してしまっている。オイルショック以前は船のスピード化を図り、オイルショック後はそういうふうなエネルギーの問題へ当然移行されていったのはよくわかるのですが、何かそういう経済性だけの追求で、安全性とかそういうものはぼくはちょっと欠けているように思いますし、政府にいいものだけはつくらして、後はまた民間レベルでノーハウだけいただこうというような、大変言葉は悪いかもわかりませんが、虫のいい要求のようにも思われます。だから船舶、造船についても、できる限りの利子補給だとか、不況構造業種としてのいろいろな政府なりの努力はしておりますが、民間レベルの中でできるもの、やっぱりこれは商船ですから、利益につながって結構だと思うのです。そのためには幾ばくかの先行投資というものをやらなければいけない。それを一切何もやらないで、政府だけに任しておいて、いいところだけもらって、また大型船つくって運航しようというふうに、まあ私は端的に、単純な人間ですから思われるのですが、その点。
  92. 黒川正典

    参考人(黒川正典君) 山田先生にお答え申し上げます。  先ほどから申し上げておるのですが、実はこれはくどいようでございますが、海運と造船と二つございまして、まあ全然やらないというわけじゃございませんで、先ほどちょっと申し上げましたように、オイルショック以前は、とにかく言ってみれば各国で高速化競争をやっていたということで、もう好むと好まざるとにかかわらず、それに勝ち抜くためには一つ目標として原子力にいかなくちゃいけないのじゃないかというのがございまして、これは数年前でございますが、日本とドイツで共同研究いたしたようでございます。これは当面八万馬力の現在極東と欧州に行っておりますコンテナ船、これをお手本にとりまして、両方でやろうじゃないかということをやったわけでございますが、これは民間ベースでももちろんございますし、日本側で参加いたしましたのは、海運会社は日本郵船と大阪商船三井、それから造船所は三菱重工、石川島播磨、それから日立造船その他原子力産業会議とか参加していただいたんですが、こういうのはやはりただじゃできませんので、お互いにお金を出し合ってやるということでございました。これはどちらかといいますと、しりに火がついたということなんで、その時点は本当にまじめに原子力船でなきゃもういけないんじゃないかというふうに考えておりましたので、やったわけでございます。  それから一方、造船所サイドといたしましても、これはいろいろ各社ごとに、たとえば日立造船はインターアトムと協力して、提携してやっているとか、いろいろやっておられました。ただ、オイルショック以後でございますが、これはちょっと混乱いたしましたということなどと、それから一たんしりに火が——ちょっと言葉が悪くて失礼いたしますが、しりに火がついたのが消えちゃったというような形で、逆にエネルギー問題というふうになったものですから、それと非常な混乱と不況に陥ったということでございましたので、むしろこれはもうエネルギー問題であるというようなことから、政府の主導型にしていただきたいというふうに変わったようでございます。これは海運ももちろんそうでございますが、造船業界といたしましても、需要がそういうふうになりますので、当然その心構えもそういうふうになったと。非常に漠然としたお答えでございますが、そういうことでございます。  ですから、先ほど来いろいろお話ありましたように、確かに私自身も民間として余り国におんぶばかりしてはいけないというふうには考えておるのでございますが、なかなかどうも……。
  93. 山田勇

    ○山田勇君 藤井参考人にお尋ねいたします。  ぼく、藤井さんが先ほど十五分間の中で述べられました情報の公開ということ、全く同意見でございます。それでなければいけないと思います。もうすでにたてまえの政治ではなく、本音の政治をやっていく。危険なればこそ情報をもっと公開していく、危険だから政府はこういう形で安全性を図るんだという逆な方法をしないといけない。ぼくは国民のサイエンスの意識というのはだんだん上がっていると思うんです。科学漫画、これは御承知のようにばかにならぬですよ。手塚さんと先日も対談したんですが、かなり原子力の専門的な遮蔽だとかそういう用語を使ったりして、非常に科学の知識というのはぼくは上がっていると思うんです。それなればこそよけいそういうふうに、これはこう危険だけどこうして守るんだとか危険を摘出するんだとかいうふうなことをやっていかない限り、ぼくはだめだと思います。だから前回ぼくもちょっと委員会途中で失礼したんですが、契約書にしても新聞に書かれているとおり、開発途上であればこそいろんな問題、要素が多いことをお互いに認識するということですから、何にも隠すことないんですよ。お互いにこうしてこうしたんだけど、こういう事故もあり得るだろうということですから、こういうものを隠して出さないから、よけいわれわれも疑惑に思うし国民も疑惑に思う。こんなもの商売上ですから、三菱だって一銭ももうけなしでやるわけないんだから、商法なんだから結構なんですよ。だからどんどんこういう契約書出した、それは一つ一つ揚げ足取っていけば、問題あるかもわかりませんが、公開をしていくということです。こういう形で発注しました、それでもしこういう危険があった場合はこういう形でまた作業します、こういうことをしますということを、どんどんぼくは国民に知らしていった方がいいと思いますんで、藤井参考人のおっしゃられたことにぼくは全く同感でございます。これはもうお答えなくても結構です。  最後の質疑ですが、木下参考人、私はむつへ二回行きました。これは市長選挙で手伝いに行きまして、むつ港も見てまいりました。その中で先ほど言ったように、潮流が回流しているからという漁民の知恵でホタテガイをあれだけ養殖をなさったわけです。これは漁民の生活権にかかわる問題としてあれだけ育成して、日本のホタテガイの生産一位というところまでこぎつけたところへ、原子力船むつ」が入ってくるということになれば、これは当然漁民の反対はあろうかと思います。その中で約束を政府が守っていくなら、組合としてもそういう「むつ」を再母港として受け入れる姿勢がありますか。仮に政府が四つなり五つの約束を完全に履行していくという、本当に約束を守るということが仮にあれば、どうですか。これは仮とあえて申し上げておきますのは、長官のお話聞くと、もう何か約束をすべて守っていくようなことをおっしゃるんですが、なかなか政治的なあれがあります。いま言ったように商店街の一部はどういうんですか、歓迎だという風潮も出てくるという、これはもう蜃気楼みたいな経済繁栄ですが、そんなことより漁民全体の繁栄、地元、地場産業を育成する方がだれでもいいということはよくわかるんですがね。もし約束を政府が守るということになれば「むつ」の再母港受け入れますか。その点、忌憚のない本当の、たてまえでない本音でひとつお答えいただきたいと思います。
  94. 木下千代治

    参考人木下千代治君) お答えいたします。  約束ということはやっぱり母港撤去ですからね、母港撤去を約束をしてもらわなければ、これは母港撤去がよくて、あとの条件を積み上げればいいんだというような論理にはならない。あくまでも約束事は母港撤去ということですから、母港を撤去させて、そして公害のないところで海の生産をするというようなのがやっぱり偽らざる心情ではないかと思います。
  95. 山田勇

    ○山田勇君 最後です。大変愚問でございました。何といいましても、われわれ人間というのは無秩序にやはり自然を破壊してまいりました。今度科学という名において自然を破壊しないことを私は参考人の全員の皆さんに、釈迦に説法で申しわけございませんが、今後ともそういう姿勢で業務に御精勤いただきますよう、心より皆さんの健康を祈りまして、質疑を終わります。ありがとうございました。
  96. 太田淳夫

    委員長太田淳夫君) 他に御発言もなければ、参考人方々に対する質疑はこれにて終了いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、長時間にわたり、当委員会のために貴重な御意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五分散会