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1980-11-20 第93回国会 参議院 運輸委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月二十日(木曜日)    午前十時三十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         黒柳  明君     理 事                 伊江 朝雄君                 山崎 竜男君                目黒今朝次郎君                 桑名 義治君     委 員                 江島  淳君                 大木  浩君                 梶原  清君                 木村 睦男君                 高平 公友君                 内藤  健君                 安田 隆明君                 山本 富雄君                 青木 薪次君                 瀬谷 英行君                 広田 幸一君                 小笠原貞子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        運 輸 大 臣  塩川正十郎君    政府委員        運輸省鉄道監督        局長       山地  進君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        資源エネルギー        庁石炭部炭地        域振興課長    鈴木 英夫君        自治大臣官房地        域政策課長    藤原 良一君        自治省財政局調        整室長      井下登喜男君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本国有鉄道常        務理事      加賀山朝雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案(第九  十二回国会内閣提出、第九十三回国会衆議院送  付)     —————————————
  2. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最初に大臣にお伺いいたしたいと思うのでありますけれども、この法案でもって国鉄財政再建ができるという前提に立って提案をされていると思うのでありますけれども、いままでの審議の経過を見ますと、この法案には非常に欠陥があるわけです。というのは、具体的な問題が、たとえば地方ローカル線等の問題では具体的な対象が明らかにならないんですね。普通ならば政令というのは取ってつけたようなものなんだ。法律があって、政令は何も一々法案審議の際に細かくやらなくとも、そんなものは政令に任せると、そんなものはになるんですね。ところが、この赤字ローカル線の場合はそんなものはにはならないんです。この政令法律案そのものであり、一番大事なことになっている。ところが、その具体的対象が全然明らかにならないわけですね。明らかにならないまま審議をするから話がどうしても空転をするということになる、抽象的になるということになるんですね。  だから、恐らくこの問題でいろいろと野党から注文が出る、理事会の話も大分もめたようでありますけれども、こういう内容が明らかにならないために理事会でも時間がかかるということになったんじゃないかと思う。そこで、どうなんでしょうね、もう少し具体的にできないものかどうかですね、その点具体的にできるというならば、できるようにした方が関係地域住民にとっては親切じゃないかと思うんでありますが、その点はどうなんでしょうか。
  4. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 御承知のように、国会に提出しております法案は、いわば国会という場で政治的に判断をして決定していただきたいと、その政治決定がありました後これを行政的にどうこなすかということを、これを政令にゆだねていただきたいと、こういうのが筋でお願いしておるわけでございまして、仰せのように、ただしそれはこの法案に限って一本一本の線名が大事なんだと、これはもう当然私たちもそれは認識しておるのでありますけれども、しかし、その線名をずっと書き出してやるということがこの法案一つはなじまないので、それでまあ政令にお願いいたしたいと。そこでその政令が要するに政治的配慮で左右され、影響を受けて根本的な精神が貫かれないということになったら、これはもう大変なことでございますので、そこでわれわれといたしましては、その政令の骨子となる基準だけはきっちりしておきたいというので基準をとにかく明示いたしまして、それで御審議をお願いしておるということでございます。  それではなぜ具体的な線名を一々出してこれないのかと、提示できないのかと申しますと、それにはその基準案のところにも書いてございますような三つの条件がございますことと、それからいわばその三つ基準というのは、どうしても代替交通がとり得られないような状況のところ。で、これはやはり政令をつくりますときに具体的に十分な各省庁間の調整を得なければ、これは運輸省だけで決定ができないということでもございますので、そこで基準を決めまして、この基準に適合するところはほぼ線名で御想像はしていただけるんではないかと。といって、これを公表するということは、いまの段階におきましては余りにもわれわれといたしましては一方的ないわば政令参加になってしまいますので、どうしても各省庁の協議を得た上でその政令の公表をさしていただきたいと、こういうことでございます。  でございますから、審議していただく先生方にしたら、それは私は確かにそういう御疑問が出てくるのはもう当然だと、実は私も議員の一人でございますから当然そう感じるのでございますが、しかし、それを不信感を持っていただいてはいかぬと思いますので、私は再三にわたりまして運輸省が提示している基準というものはあくまでも崩しませんから、ひとつ御了承いただきたいということでお願いしておると、そういうことでございますので、よろしく御了解いただきたいと思います。
  5. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 運輸省自治省統一見解というのがございますけれども、この統一見解というのは具体的にどういうことかということがはっきりわからないわけです。つまり「赤字が生ずるおそれがある」場合には云々ということになっていますね。この統一見解というのは一体どういうことなのか。つまり第三セクター等によって経営する場合でも赤字が生ずるおそれがあるので、地方公共団体が第三セクター参加することについては、その財政負担を慎重に検討した上で対処しろと、こういうことになっているのですけれども、慎重に検討をして対処するということは、具体的にはやるのかやらないのかということなんですね。つまり赤字が生ずるおそれがある場合は地方自治体はさわるなと、ノータッチでいけということなのか、その赤字が出ることを覚悟をして応分の負担をしろという意味なのか、どういうふうに解釈していいんだかわからないです、これじゃ。統一見解というのはわかりやすくするのが統一見解ですから。だんだんこれはわかりにくくなっている。一体これはどういうことなんでしょう。
  6. 山地進

    政府委員山地進君) ここに書いてございますいまの御質問の第一の点は、参加することをしないのかするのかという点に一つ重点があったかと思うのでございますが、これも前段に書いてございますように、赤字が生じるかあるいは生じない場合もあるわけでございまして、そういったことについて地方公共団体として参加をする前によく検討する、検討したら、そこで参加するかどうかを判断するということになるわけでございまして、この文面から、第一義的にはそういう慎重に検討するので参加しないという結論も別に出ているわけではございませんで、地方公共団体がこの第三セクターをつくった場合には当然起こるであろう赤字について、一体どうするのかということについての十分御検討をいただくということが書いてあるわけでございます。
  7. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 だから、わからないと言うんですよね。何もわからないじゃないですか、具体的に。いまの御答弁は字句をそのまま言っただけで、文章を小学生にわかるようにかみ砕いたというだけの話で具体的な内容はわからないです。  自治省からきょう見えていますか。——じゃ、自治省の方に伺いたいと思うんですが、あなたは自治省の代表で出てるんだから、あなたにわからないようなことであってはこの統一見解何もならないですね。  そこで伺いたいと思うんだけれども、この統一見解というのは、この赤字が生ずるおそれがある場合、国鉄がやって赤字が出るものを第三セクターがやって黒字になるということはあり得ない、これはね。これは当然の話です。そこで、ここにわざわざ赤字が生ずるおそれがあるのでというふうに書かなくたって、生ずるおそれがあることはわかっているのです。その場合に、地方公共団体が第三セクター参加することについては、財政負担を慎重に検討した上で対処しろということは、赤字が生ずるおそれがある場合には地方自治体参加をするなということになるのか、させないということになるのか、それでもいいということになるのか、どっちかだろうと思うんですが、それはどっちなんですか。
  8. 井下登喜男

    説明員井下登喜男君) この統一見解の趣旨は、理論上、地方公共団体が第三セクター参加してはならないということをはっきりさせたわけのものではございません。赤字を生ずるおそれが多分にございまして、それが地方団体負担に転嫁されるおそれがあるということで、これはまあそのケース・バイ・ケースによりましてその辺のことを十分慎重に考えた上でやってもらいたい。  と申しますのは、この第三セクター参加するかどうかということは、結局は地方団体の恐らく地方議会等通じましての団体意思決定によって行われるわけでございますから、法律的にこれは絶対だめだということを言ったということではございませんで、したがって慎重に検討した上で対処しなければならないということを言っているわけでございますので、してはならないということをはっきり言ったということではございません。
  9. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 さっぱりわからぬじゃないですか、やっぱり。私は具体的なことを言っているんですよ。これは黒字になることがはっきりしている場合に、参加をするのにちゅうちょする団体はないでしょう。問題は赤字の場合ですよ。赤字になるおそれがある場合に負担を慎重に検討した上で対処しろと言うんですね。赤字になる場合、赤字になることがはっきりしている場合には、赤字になることは覚悟参加をさせるということなのか、赤字になる場合にはやめろということなのか、そっちはどうなんだということを聞いているんですよ。
  10. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) そのことにつきましては私は自治大臣と話をいたしましたので、これは事務当局より私がお答えする方がいいかと思います。  要するに、この「対処しなければならない。」と、この「対処」に瀬谷先生重点を置いておられるように思いますが、確かにその態度決定するという意味で「対処」だと、こう思いますが、この中身はこういうことに解釈していただければと思うんです。第三セクターをどうしてもその地域開発上やっぱり運営しなければならぬ、しかし国鉄は免責してほしいという、その場合でもその地域交通を維持するためには第三セクターでも運用しなければならぬ、そういう事態が出てくる。その場合、地方開発等いろんなものが進んで地方財政にそう大きい赤字負担とならないような場合には、これはその地方自治体積極参加という道もあるであろう、しかし、これを経営することによって相当な赤字が出てくる。その場合に、その赤字はどこで見てくれるのかということが当然地方自治体として問題となってくる。その場合、その赤字対応策というものをよく考えた上で参加するかしないかを決定しなさいと、こういう意味であります。これが一つ。  そして、この文言の裏から見ますと、であるがために第三セクターを、それをつくって推進するとするならば、第三セクターによって起こってくる赤字に対してはやっぱり政府がその対応を講じなければ、地方自治体だってそれに対応しにくいぞということが裏に含まれておると思うのであります。でございますから、この文言からおっしゃったら、確かにこれ何書いてあるのかなという御判断のことは起こってくると思うんでございますが、先ほど申しましたように、地域開発重要性とそれによって起こってくる赤字のバランスを見た上で一つ態度決定しなさいと、こういうことを言っておることが一つ。  それと同時に、やはり第三セクターに対し今後それを推進するとするならば、その第三セクター赤字に対する対策というもの、これまた政府としても考えなければならぬのではないかということ、こういうふうに解釈していただければ、えらい勝手な説明でございますけれども、私と自治大臣との間で話しておりますのはそういう内容でございますので、御披露申し上げた次第です。
  11. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それならば、赤字が出そうな場合には政府がめんどう見るから心配するなと、こういうふうに理解をしてよろしいんですか。
  12. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) いまそれは自治省ではその財源がございませんし、運輸省でもございません。でございますから、それに対応するようなやはり措置というものは、政府全体で取り組んでいかなきゃならぬということを私は申し上げておるわけです。
  13. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は具体的なことを言っているんです。第三セクター参加をするのかしないのか、どっちかだと思うんですよ、これは。赤字はもう恐らく間違いなく出るだろう、その赤字をしょい切れない場合にはやめろと、しょい切れる場合はやれと、こういう意味なのか。政府負担をしてもらうということなのか。要するに、赤字ということは前提に置いて考えなきゃならぬ。その場合に参加をするのかしないのか、地方自治体は。二つに一つしかないでしょう、答えは。起立採決と同じですよ、立てば賛成、座れば反対。中腰というのはないんだから。そうなるというと、これは一体どっちなんだと。その答えは出ないのか出るのか、その点を明らかにしないと地方自治体だって困るんじゃないですか。
  14. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それは、私からやるのかやらないのかということを答弁する問題ではないと思うのでございまして、それは先ほど申しました、どうしてもやっぱりその第三セクターで経営してでも地域交通を維持しなければならぬ。がしかし、赤字は出る。しかし、その赤字はそれほど大きい負担にはならないと考えた場合には、地方自治体参加するでありましょうし、これに対し大変な赤字負担になるということが見込まれるならば、地方自治体参加しないであろうと、こういう性質のものではないかと思います。
  15. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 要するに、統一見解というものを出されたけれども要領を得ないということで、要領を得ない統一見解なんというのは出したって出さなくたって同じなんですよ、これは。これは気休めにもならないんです。要するに、どうしていいかわからないということになっちゃうと思うんですな。  そこで、この法案にはやはりこの種の欠陥が多過ぎるんです。で、私は端的に言うけれども、この法案が通ったからといって国鉄財政再建ができるというふうには考えられないような気がする。なぜかというと、いままで再建計画何回か出ましたね。何回か出ましたけれども、今回の場合だって、いままでの再建計画焼き直しにすぎない。基本的な問題についてはあいまいになっているんですよ、解決されてないんですよ。  たとえば基本的な問題は何かと言えば、大臣この間もおっしゃっていたけれども、もし今回の再建計画でうまくいかないようだったら制度上の問題を考え直さなきゃいかぬということを言われました。その制度上の問題、機構上の問題がやはりこの国有鉄道にはあると思うんですね。  それは何かというと、独立採算制を堅持しろというたてまえになっているんでしょう。独立採算制を堅持するんなら独立採算制を堅持するような機構に、仕組みにしなきゃならぬ。ところが、公共性独立採算制両方とも両立をさせろということなんです。これは実際問題として私は無理だと思うんです。独立採算制公共性両方どうやって両立させることができますか。それができるぐらいなら苦労はないんです。いままでの再建計画だって成功していたんだ。それはできないということがいままではっきりしたんだから、したがっていままでの再建計画焼き直しをここで提案をしたところでうまくいくはずがないという結論になるんじゃないですか、その点どうですか。
  16. 山地進

    政府委員山地進君) いまの御質問、まず国鉄法の第一条にございます国鉄の「目的」というところで、国がやっていた事業を「能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共福祉を増進することを目的」とすると、これが国有鉄道公社をつくった理由になっているわけでございます。  この文言というのをよく読みますと、私の理解では、「能率的な運営により」というのが、これ手段であろうかと思います。それで、「公共福祉を増進する」と、これが目的であるわけでございまして、いまの御質問公共性とそれから独立採算制ということにつきましては、手段目的関係にあるのではないかと思うわけでございます。国鉄公社にしたということの理由には、いわゆる企業、民間の持ついい点というものを入れて、そういうことによって能率的な運営、それで能率的な運営ということを一つの担保する方法として独立採算制ということを導入して、それで公共的な目的を達成する、こういう関係にあるわけでございます。  ところで、それじゃ能率的な運営独立採算制以外にやってたら公共性は達成できたのかといいますと、これはどんな場合でも、たとえば国が持つ場合でも、これは能率的な運営あるいは効率的な投資、いつの場合でも効率的にやるということは第一前提であろうかと思うわけでございまして、したがいまして私は、いまの国有鉄道法というものの一連の制度の中に、たとえば国がやった場合にはないような予算の流用というようなことを自由にできるという点も織り込んでございますし、いま電電で問題になっておりますような剰余金というような形のこともありますけれども、利益の処分ということにつきましては、その年度年度で国に納めるんじゃなくて、これは自分のところで積み立てるというようなこともできるようになっております。そういう意味では非常に自由に考えて行動を起こすということができる制度になっておりまして、その結果として独立採算制ということができているわけでございまして、むしろ私は、独立採算制ということと両立したがために再建ができないのではなくて、やはり国鉄のいまの環境がモータリゼーションその他で変わってきた、そういうものについて対応がおくれたということが、やはり基本的な問題ではないだろうかと、かように考えておるわけでございます。
  17. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 対応がおくれて、じゃあこれから追いつくかどうかと言うんですよ。追いつく見通しがあれば別でありますけれども、モータリゼーションは、これは油がぴったりとまってしまうということにでもなれば別だけれども、そういうような事態にならない限り、モータリゼーションについてこれを抑制するということ、モータリゼーション関係利用者国鉄の方へ持ってくるということを多く期待することは無理だろうという気がいたします。そうすると、この独立採算制ということにこだわるならば、公共性の方を犠牲にしなきゃならぬということになるんですよ、これは。両方というわけにいかないです。たとえば、神様、仏様が大臣、総裁になったって、公共性を維持しながら独立採算制を堅持するなんということはできないと思うんですよ、これは。神様、仏様でできないことが人間様にできるわけがないんです、これは。それを無理やりやろうとするから、いままでの再建計画というのはみな破綻を来したということになるんじゃないですか。  そこで、たとえば法案中身の問題だってそうでしょう。内容を明らかにする度胸がない。こことこことここは廃止しますよ、廃止するならばこういうわけで廃止するんだということをこの法案審議の際に明らかにしなきゃならない、本来ならば。これはほかの政令とは違うんだ。これはやはりこの点を明らかにしないで抽象的な審議をしたって話が空転をするだけです。だから、こういう提案欠陥法案になっちゃうんですね。  三十五万人体制といいますけれども、じゃあ三十五万人に削るけれども、こういうわけでこれだけ削るということははっきりしない。輸送需要対応できるだけの輸送力を確保するために三十五万人で足りるというんならば、そのプランを明示しなきゃならぬ。そうじゃなくて、ともかく人間を三十五万人に減らして人件費を節約をするという前提に立っているわけです。その減らされた人間でもって果たしてどれだけの輸送力を維持できるかということは明らかにならぬでしょう。そうなると、この法案というものはきわめて内容が空疎なものだということになっちゃう。内容はない。言ってみれば生焼けの魚みたいなもの、半煮えの飯みたいなもの、食えたものじゃないと。中身としてはそうなるんじゃないですか。  いままでの論議だって空回りしたのは内容が明らかじゃないからなんです。生なら生でいいんですよ、これはいっそのこと。刺身なら刺身でいいんだけれども。だけれども、焼き魚が生焼けのやつは食えたものじゃないんだ、これは。サンマの生焼けみたいなもので。これ、ちょうど今回の法案欠陥だらけなんですね。三十五万人、内容ははっきりしない、赤字ローカル線廃止対象がはっきりしない。政令基準どうなるんだろうとか、知事意見がどれだけの効力があるか、これだってわからないでしょう。いままでの論議でも知事意見というのはありました。だけれども、この知事意見だってこれが絶対的な力を持つというわけじゃないんですね。第八条だかにありましたよ、知事意見がね。これはどういう効力を持っているんですか。
  18. 山地進

    政府委員山地進君) いま御指摘の第八条第四項の特定地方交通線選定について意見が、知事からお申し出があるということでございまして、これは知事かやはりその地域のことについて非常に精通されておられるので、国鉄選定した場合に、選定政令基準の適用がそうではないという御意見になろうかと思うわけでございまして、この場合には運輸大臣といたしましても、知事のお申し出が適切であるかどうかということについては、十分認可判断の際に検討をさしていただくということでございまして、知事の絶対的な何といいますか、意見について、力があるかどうかということでございますけれども、やはりその知事の御指摘になる事項が私どもとしては非常に重要でございまして、知事の御判断十分参考にさしていただいて大臣認可をいただきたい、かように考えております。
  19. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この間の委員会の際に、やっぱり知事意見という話がどなたかの御質問で出たと思うんですよ。そのときの大臣のお答えとしては、知事意見というものがどういうふうに出たとしても、これをそのまま取り上げるというわけにはいかないという意味の御答弁があったような気がするんですが、その点どうですか。
  20. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 第八条で言いますところの知事意見というのは、要するに選定基準についてその再審査を申し出るとかなんとか、そういう意味意見でございまして、それが陳情で申し出る、ここは将来大いに発展するところでございますから残してもらいたい、あるいは観光地として重要なところでありますから残していただきたいというような陳情であり、あるいはまた知事のいわば主観的な予測度を入れた政治的な申し出である場合は、これは私は知事意見は承っておく程度にしかならないのではないかと。  しかし、先ほども山地局長が言いましたように、選定基準に合わしておかしいじゃないかと、もう一度審査してもらわなければこれはいかぬというような、そういう問題が具体的に出てきておる。しかも、それが客観的な意見として出てきておる。客観性があるという場合には当然これは担当大臣としてその意見は尊重しなけりゃいかぬと、こういうことを申し上げておるわけであります。
  21. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあ、いろいろ言われるけれども、しょせん知事意見というものは聞きおくだけのように受け取れるわけですよ。言ってみれば、打ち首の前に何か言い残すことはないかと、そういうようなものじゃないですか。打ち首の儀は平に御容赦願いますと言った場合に、そうか、それじゃ勘弁してやろうと、そういうわけにはいかないんでしょう。  そうすると、何か言い残すことはないかと言われた程度で、そうすると、知事の方で述べるのはせいぜい辞世の句ぐらいのものでしょう。判断を覆すというところまでいかないでしょう、それは。その点はどうなんでしょう。
  22. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) たとえばこの選定基準の中で、三つ地域についてはやっぱり特別に考慮しなけりゃならぬ、そういうものもございますし、そういう点についての辞世ではなくて客観的な申し出があるといたしますとこれはやっぱり私としても考慮せざるを得ないと思うんです。  それからもう一つは、一日二千人キロあるいは四千人キロというような基準を設けておりますが、その基準に対して異議があって、これが相当客観性のある調査に基づくものであるとするならば、これは当然意見も尊重しなければならぬと思うんです。それからまた、一定量の輸送というこの判断につきましても、これまた、いわば科学的なデータに基づくものであるならばこの意見というものはやっぱり聞くべきではないか、こういうことでございます。
  23. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、大臣の言うのは、それは無実の罪であることがはっきりわかった場合には勘弁をしてやるというようなものなので、それはあたりまえなんです、そんなのは。だけれども、その基準に該当するということになってどうにもならない場合には、知事が何と言おうともこれはしょせんは辞世の句になっちゃうというようなことになる。そうすると、知事意見を述べることができるというのは気休めにすぎないということになっちゃう。これじゃ知事とすればやっぱりおもしろくないんじゃないかなという気がいたします。本当ならばここで何名かの関係知事の方においで願ってその知事さんの意見を聞いてみたいという気がするんですよ、公述人の中には知事さんいらっしゃらなかったけれども。せっかく知事意見を聞くということになっているんだから、辞世の句だけ言わせるんじゃなくて、その前に知事意見というものを、特にローカル線の存廃というのは知事にとっては重要な問題なんですから、それは知事意見というものを、単に、言ってみれば愚痴をこぼすという程度で終わらせてはいけないという気がします。  しかし、この法案内容一つ一つ申し上げるならば、このように条文で書いてはあるけれども何にもならないという点があるんですよね。だから欠陥法案じゃないかというふうに言わざるを得ないんです。それじゃ、たとえば三十五万人体制というのがありますけれども、将来の国鉄ということを考えた場合一体どうなるのかという展望を聞かしてもらいたいと思うんです。  その一つの例として、いま国鉄でもってリニアモーターカーのテストをやってますね。このリニアモーターカーというのは宮崎かどこかでやっておるようでありますけれども、どういう内容のもので、一体将来何を考えてこのテストをやっておられるのかといったようなことについて、一応御説明を承りたいと思うんですが。
  24. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) リニアモーターカーのシステムは、一番大きな点は、車輪とレールとが接触をしてその摩擦力を利用して車両は走っているわけでございますけれども、それを磁石の力を利用することによってレールと車体とが接触しないで、そんなに高い高さではございませんけれども何センチか車両を浮かせる、磁石の反発力によって浮かせるということが一つ。それから、前へ進みますのも磁石の力によりまして、NとSといいますか、南と北といいますか、そういう磁石のプラスとマイナスの反発力を使いまして前へ進めるという考え方でございます。  で、それがどういうメリットがあるかといいますと、やはり摩擦によって走る場合と違いまして、ほんの少しですけれども宙に浮いております関係で、一つはスピードが出せるということでございます。それからさらには、最近の非常に世の中の移り変わりとともに環境問題が重要な問題になってまいりました。騒音、振動といった問題が、速ければ速いほど大きくなってまいりますので、スピードを上げようとしますと振動が高くなり騒音が高くなるということで、御存じのように現在の新幹線についていろいろ各地から批判を受けるということでございますので、これ以上スピードを上げるためにはいままでの方法、車両といいますか、車輪とレールとの間でいろいろな音、振動が出てくる、あるいはまた架線とパンタグラフの間でいろいろ音が出てくるという形のものではどうももっとスピードを上げるというわけにはいきそうもないというところから、そういう摩擦がなくて済む、したがって摩擦から出てくる音を発生しなくてもいける方法としていまのリニアモーターというのが非常にメリットがあるでないかというふうに考えられるわけでございます。  そこで、いまからもうずいぶん前になりますが、最初実験室の中でそういうものをやってみた結果、理論的にはやれるということになりました。そこで今度はもう少し実際的にできるかどうかということで宮崎県に七キロの長さの施設をいたしまして、そしてそこで現実に走らせてみた。ところが計画どおり五百キロを超えるスピードが出ることがわかったわけでございます。しかし、これは先般までは人を乗せないで走らしておったわけでございますが、いろいろ実験のためのデータを集める等のためにも人を乗せなければいけませんし、将来これを現実に使うとすれば、人が乗ってはどういう影響があるかということもいろいろ調べなければいけませんということもありまして、この暮れかあるいは来春になるかわかりませんが、今度人を乗せて、人といってもお客さんではなくて研究者でございますけれども、人を乗せて走らすということをやってみることになっております。  で、今後どういうことに問題があるかといいますと、たとえば、単に一定の区間を行ったり来たりしているだけならばよろしいわけでございますけれども、途中に駅があるということでなければ実用になりませんから、そうすると、とまるためにブレーキをかけるというようなブレーキシステムをどうしたらいいかというような問題もございますし、それから、新幹線でも「こだま」を「ひかり」が追い越すというようなことがございますと途中駅で分岐をしなくちゃならぬわけでございますが、分岐についてはどういうことになっていくかという問題もございます。それから、連結といったようなところが非常にむずかしいわけでございまして、それぞれの車両が浮いて走るわけですけれども、その一の車両と二の車両をつなぐ、そこでそれぞれが自分で浮上力を持ち推力を持って走るわけですけれども、この車とこの車といささかでもスピードが違うということになりますと連結器のところへすごい何といいますか、ショックがくるわけです。その連結システムをどうしたらいいかというような問題がありまして、まだまだ技術的に研究しなければならぬ点がたくさんあるわけでございます。  さらにもう一つ、ちょっと細かいことになりますが、磁石を並べるわけでございますので、その磁石をつくるのにいまのところは大変金がかかるわけでございまして、これを大量生産にすれば安くなるという面もありますけれども、それがどの程度まで安くなるかという問題もございます。それから磁石を、私も技術屋でありませんのでちょっと説明は下手なんですけれども、冷やすという必要がありまして、それがためには、いまのところヘリウムを車に搭載することが必要になってくるわけでございますが、ヘリウムによって冷やすということは世の中で幾らでもいま行われておりますけれども、いずれも固定したところに置いてあるわけでございまして、動く物体にそのヘリウムを積んでそして冷やす。そのときに非常にコンパクトな、つまりスペースが少なくて済むようなヘリウムの箱といいますか入れ物といいますか、そういうものを開発しなきゃならぬというような点もまだ残っておる問題でございます。  この超電導によって物を走らすという研究は、一部はカナダ、一部はドイツで行われておったわけでございますけれども、いまのところかなり大ぜいの学者さんあるいは技術屋さんが日本に見に参りますが、いまのところカナダやドイツでいたしましたものよりははるかに現実性を持った実用の可能性のあるシステムだということを言われておるわけでございまして、私どもとしては最後の鉄道といいますか、そういう意味でこれはぜひ開発を進めてまいりたい。まあ五百キロというのは試験的に出たスピードでございますので、実用的には五百キロまで出すわけではないと思いますけれども、仮に実用的に三百キロで走るといたしますと、東京−大阪間は一時間半ということになりますので、一時間半まで時間短縮が可能でありますれば、東京−大阪間で言えば明らかに飛行機よりはいまのリニアモーターカーの方が便利だ、町の真ん中まで引っ張ってこれますから、その意味で便利だということになろうかと思います。  そうしますと、技術的な未解明の問題を解明できれば、現実的なものとして成り得るものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  25. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 このリニアモーターカーは国鉄で研究をしていると同時に、日本航空でも研究をしているということなんでありますけれども、こういうものは、じゃ日本航空が開発をしたならば、日本航空にこのリニアモーターカーの経営もやらせるという含みを持っているというふうにも聞き取れるわけでありますが、航空会社がこのリニアモーターカーを開発をする、国鉄開発をする、これは両方で競争させるという意図があるのかどうなのか、その点ちょっとお伺いしたいと思うんですが。
  26. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私の方からお答えするのはあるいは適当でないかもしれませんけれども、私どもは日航さんがおやりになっている、いわゆる常電導という言葉を使っておりますが、常電導によるリニアモーターカーと、私どもが研究開発に努力いたしております、超電導という言葉を使っておりますが、それによるリニアモーターカーとはある意味では全く違うものだというふうに考えております。日航さんの場合には、たとえば飛行場へのアクセスというようなことをお考えになる場合、特に、たとえば例を挙げれば羽田と成田をつなぐというようなことをお考えになる場合にはふさわしいものになるんではないかというお考えのようでございますが、われわれはもう少しスピードも速く、したがってまた距離も長いものを考えているわけでございまして、本来、日航さんがお考えになっているものと私どもが考えているものは、いわゆるリニアモーターを使うという意味においては共通でございますが、もともとどこで有効か、どういう場所で有効かと考えますと全く違うものだと、そういうふうに解釈をしておるわけでございまして、将来ともこれを一緒にしてということにはならぬのではなかろうかというふうに考えております。
  27. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日本航空の問題……
  28. 山地進

    政府委員山地進君) 私も日本航空の方のことを担当しておるわけではございませんので定かにはしてない点がございますが、いま総裁の申し上げたように方式が違っておりまして、日本航空の場合には短距離といいますか、そういったことを志向している新しいシステムであり、国鉄の場合には中長距離の方に適しているものであるということで開発されておりまして、全然原理も違うことでございますので、政府としては、私の方の予算としては大体同額の予算を計上してきておるわけでございますが、先生のおっしゃるような非常に何と言いますか、競争原理の導入というような観点から両方並べてやっているというわけではございませんで、たまたま違う動機で違うシステムをいま同じように並行してやっているということでございまして、今後のそれぞれの方式、たとえば日本航空の方はそれをどうやって開発するのか、従来は日本航空が自分の資金の中でやっていたものを新しく形態をつくる、研究の母体というものをつくってやったらどうだというような議論もございまして、今後の進展というのはそういったことに絡んで進んでくるだろうと、かように考えておるわけでございます。
  29. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 このリニアモーターカー、これだけの大がかりな実験をやっている以上は、実用ということを考えないでやっているわけじゃないと思うんです、道楽にしては高過ぎるんですから。そうすると、実用という可能性は一体どうなのか、建設費は一体どうなのか、安全性はどうなのか、採算はどうなのか、それらの点についても検討をされているんじゃないかと思うのでありますが、その点はどうですか。
  30. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 現在の段階では、先ほどもちょっと触れました幾つかの重要なポイントにおいて技術的な問題がなお残っておりますので、そこに精力を集中をいたしております。したがいまして、その実用化ということについてはまだいろいろな計算を詳細にやっておるということではございませんが、いわば達観的な見方として御承知おき願いたいと思いますけれども、リニアモーターカーで当方で走らせます場合の車両の風体といいますか大きさは、大体いまの新幹線と同じぐらいのスペースのものになるであろうというふうに考えられますので、したがって用地あるいはトンネルとか橋梁とかいう部分についての建設費は、そういう基礎部分の建設費は、新幹線の建設費とそれからリニアモーターの建設費はほとんど変わらない。  どこが違うかと言いますと、路盤あるいは路盤のところまでは同じとしましても、その上のレールの部分とか、それから架線を張るとかいうことが要らなくなるわけでございます。それが要らなくなるかわりに磁石をずっと引かなくちゃいけませんので、その磁石を引くためのコストと、それから今度は架線を張ったり何かするためのコストの減等の差し引きがどういうかっこうになるかということでございますけれども、いろいろな見方があります。特に磁石が幾らでできるかということ、大量生産の場合に幾らでできるか、また、その磁石の材質の問題その他いろいろあるようでございますので、いま達観的な数字として考えておりますのでは二割ぐらい新幹線よりも建設費が高くなるのではなかろうか、そのくらいである意味ではとまるのではなかろうか。  今度、運営費でございますけれども、運営費の場合には、一番問題は電力費がよけいかかるということでございます。スピードが上がりますとどうしても電力をよけい食うわけでございますので電力費がよけいかかるということでございます。一方、レールと車輪とが、摩擦力によって走っておる、それから架線とパンダグラフが接触しておるということのために、現在新幹線でも非常に金がかかりますのは、保守費に金がかかるわけでございますが、摩擦ですからレールも摩耗しますし、車輪も摩耗しますし、架線も摩耗しますし、パンダグラフも摩耗するということで、大変いまの新幹線では運転経費はそうかからないんですけれども、保守費には金がかかるというところに問題がありますが、摩擦がなくなりますのでリニアモーターの場合には保守には余り金がかからぬということになります。したがって、保守に金がかからぬことと電力をよけい食うことによる電力費がふえてくるということとの関係のプラスマイナスの問題になりますが、ちょうど建設費が仮に二割よけいかかるということを考えますと、その二割よけいかかる分に伴うところの償却なり利子負担なりがふえてくるわけですが、そのぐらいの部分は運営費がむしろ減るんではなかろうか、電力費が上がりましても先ほどの保守費が余り要らないということとの関係で、プラスマイナスでちょうど建設費がふえるぐらいのところは減るんではなかろうかと、こういう考え方でございます。  問題は、むしろそれの収入がどうなるか。どこでそういう線を引くかということにもよりますけれども、仮に東海道なら東海道で考えた場合に、それだけの建設をして、そして現在、在来線があり、新幹線があり、そしてまたもう一つ線があるということになった場合に、それを、三本の主要線を持つというだけのお客さんがあるかどうかということが一つ問題でございまして、トータルといたしましては、まあ飛行機にいま乗っていらっしゃる方が移ってくるという程度では間に合わないわけでございまして、自動車を御利用になっている方もうちの方を利用してくださるというようなことにならないといけないわけでございます。  それにつきましては今後の交通、その区間、A点からB点までのお客さんがどのぐらいあるか。たとえば、一例を挙げれば、東京−大阪間一時間半といった場合に、どのぐらい乗っていただけるか、そこらあたりが問題でございます。当然それは御利用いただけましょうけれども、今度は逆に新幹線の方のお客が減るわけでございますから、それを総合した場合にうまく採算がとれるかどうかということが非常に問題でございますが、まだそういう市場調査をやるというようなところまでいってないわけでございまして、それよりも技術的な可能性と、先ほど申しました研究室での可能性の問題でなくて、実用的に使っていった場合の可能性ということにいまこれから全力を挙げて研究を集中してまいりたい。  まあ大変いままで多くの金を使わしていただいたわけでございますけれども、これはどこで金がかかっているかというと、やはり実験線をつくるのに、七キロという非常に長いところでございますので、用地を買うとかあるいは構造物をつくるとかということで大変金がかかっておるわけでございますが、今後はいままでに比べますればそれほど大きな金を使わなくても、いままでに比べればでございますけれども、多くの金を使わなくてもいろんな実験ができるということでありますので、大変赤字の際にどうすべきかというのは私もしょっちゅう悩んでおるわけでございますけれども、ここまで来ましたので、かなり可能性の高いものになってまいりましたので、相当力を入れて実験を続けていきたいというふうに考えております。
  31. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 大臣にお伺いしますが、リニアモーターカーというのはかなり実現性の濃いものになってきたという話なんですが、いま総裁の説明を聞きますと、保守費等で新幹線よりは金がかからないんじゃないかと。なるほどそれは架線がなくなれば架線故障というのがなくなるわけですから。いままでちょくちょくあったわけです、新幹線は。そういう点でプラスもあるだろう。人を乗っけてテストをするという段階まで来た。そうなればこれは実用の可能性が出てきたということになるわけですが、新幹線とリニアモーターカーと在来線と高速バスとそうたくさん並べる必要もないだろうという気がするんですよ。そうなれば、新幹線を全部リニアモーターカーにしてしまったっていいんじゃないかという気がいたします。もし、そういう実現の可能性があった場合に、国鉄にリニアモーターカーを運転をさせるというようなことも考えるのかどうか。将来の交通政策としてあながち夢ではないということになれば、当然いまから考えておかなきゃならぬと思うんですが、その点はどうですか。
  32. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) リニアカーのいわばハードな研究、そしてこれを活用するについてのソフトな研究と両面からいろんな方々の研究が進んでおるように聞いております。しかし、先ほど国鉄総裁が申しましたように、これの実用化はまだ相当な先の問題ではなかろうか。特にこれを走らしますときの安全性とアセスメントの問題、こういうものがまだ全く未知の社会として残っております。でございますから、そういうようなものが全部集約されて、要するにリニアモーターカーというフィージビリティーができるようになるまでには相当なまだ年数が必要だと思うのでございまして、運輸省といたしましてはこれを実用的にどう使うかということはまだ当面のところ考えておりません。したがって、まだ目下のところはこれの物理的なあるいは科学的な研究を、国鉄のやっておりますものを運輸省としては非常に興味を持ってこの成り行きを見ておるという状態でございます。
  33. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 じゃ国鉄自体、この技術的な面でちょっとお伺いしたいと思うんでありますけれども、人を乗せてテストをするという次の段階には、これを利用するという方向に一歩踏み込んだ実験になるということになるんじゃないかと思うんでありますが、そうすると、その可能性の問題として一体あとどのくらいの研究あるいは実験を繰り返せば実用のところへ、その決断ができるのか、その点の見通しについてお伺いしたいと思うんです。
  34. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 専門家の間でも、何といいますか、積極論者と消極論者があるのでございます。これはある意味では当然のことでございます。積極論者の場合ではかなり早い期間にできると言っておりますし、片方、いろいろこういう難点がある、ああいう難点があるという問題点を指摘する人たちは、実用までにまだまだ相当時間かかるよという意見を言っておりますので、私もそこの判断はよくつかないんですけれども、いまのおおよその目安としてはやはり相当期間要するんではないかと、まあオーダーとしては十年ぐらいの期間がまだいろいろ要るんじゃないかというぐらいの感じでいま取り組んでいるわけでございまして、ちょっとその決断までの期間はそのぐらいかかるんではないかなというのが多数説と言ってもよろしいんではないかというふうな感じで取り組んでおります。
  35. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 十年といったって、東北新幹線、上越新幹線にしても声を上げてからもう十年たっちゃったわけです。あれだけ手間暇かけるくらいならば、リニアモーターカーに可能性があるんならば、いっそのこと東北、上越新幹線、こういうものでもつくった方がいいんじゃないかなという気もするわけですけれどもね。どっちにしても相当莫大な研究費を使っているということでありますから、手間かかるからやめようというわけにもいかないだろうという気がしますね。これからもそうするとこの問題は、財政的には赤字であるけれども研究の方は積極的に進めていくというふうに理解をしてもよろしいんですか。
  36. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私どもといたしましては、もう一つ実は問題がありますのは、東京−大阪間の旅客流動がどうなるかということでございまして、たとえば建設省あるいは道路公団等におきましては、最近東名、名神の高速道路が非常に込むということで、この対策をどうするかということがぼつぼつ新聞紙上をにぎわすようになってきております。私どもとしましては、東京−大阪間の輸送力がパンクをするという状態になったときに、一体、道路にどのぐらい受け持ってもらうか、鉄道がどのぐらい受け持つかというようなことも研究しなければいけないわけでございます。しかし、安定成長の時代に入りましても、やはり高度成長時代とはスピードには差がありますけれども、やっぱり輸送需要というものは少しずつでもふえていくということでございましょうから、道路にしたらいいか、あるいはいまのようなリニアモーターみたいなものにしたらいいかというようなことも比較しながら、私どもとしては実現に向かって取り組んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  で、もう一つは、いま、東北新幹線大変時間がかかったということでございますけれども、ちょうどその東北、上越新幹線の着工をいたしました時点で環境問題というのが非常に大きな問題になりました。その見通しを誤りましたためにこれ時間がかかったわけでございますけれども、先ほども申しましたように、リニアモーターの利点というのは、振動がない、空気を切る音だけは残りますけれども、摩擦から出てくる音がないということでございますので、環境問題に対しては非常にリニアモーター式というのは強いものでございますから、その意味では、私は、東北、上越の工事のために大変予想外に時間がかかってしまったということの難点は、リニアモーターの場合は比較的それが長所になっておりますので、そういうことも考え合わせながら、実用に向かって進んでまいりたいというふうに考えております。
  37. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、いま総裁の答弁では、実用に向かって進んでいきたいということでありますが、将来の交通政策、新幹線を一体どこまで延ばしていくのかという問題もあります。いま、東北新幹線の場合は盛岡どまりになっているわけですね。ところが、青函トンネルというのはどんどんいま建設が進んでいるわけです。青函トンネルができ上がって、そして新幹線が盛岡どまりになっているということになれば、新幹線は青函トンネルをくぐれないわけなんで、そうすると青函トンネルというのは在来線を通すということになるのか。  そして、在来線を通すということによってスピードアップを図るということなら、そのようにしなければならぬと思うんでありますけれども、青函トンネル自体の経費というものは一体いままでどのくらいかかっているのか。あとどのくらいの年月、あとどのくらいの予算でこのトンネルが完成をするのか。完成をした場合に、このトンネルと連絡をする線区の補強工事は一体どのように行われるのか、そのためにどのくらいの予算がかかるのか。その辺についての一つの見積もりをお聞かせ願いたいと思います。
  38. 山地進

    政府委員山地進君) 青函トンネル、現在両方から掘っておりまして、先進導坑は八六%完成し、残すところは三キロメートル弱となりました。それから、本坑は八五%、四十六キロメートルが完成しております。完成の時期は、現時点ではまだ未確定な要素もございますけれども、先進導坑が五十六年中には貫通しますので、本体工事についても五十八年度には完成をさせたいということで関係者が努力しているところでございます。  それから、いまの投資の、工事経費のことでございますけれども、総工事費は四千六百五十億円を予定しておりまして、五十四年度までの決算額は二千七百八十一億でございます。それから、五十五年度はこのトンネルに要する経費といいますか、投資額といたしましては五百億を予定しております。したがいまして、五十六年度以降の所要額は約千四百億程度になろうかと思います。  それから、この青函トンネルというのは在来線と新幹線とどういうふうな分担といいますか、目的にしているのかということでございますが、この青函トンネルというのは、そもそもは鉄道敷設法に基づく津軽海峡線として四十六年に鉄建公団に対して基本計画の指示を行いまして、ほとんど日をあかずに、同時に新幹線も通る規格とするように通達をしてあるわけでございます。したがいまして、この経緯から申しますと、在来線が主でございまして新幹線が従というような決定の仕方をしているわけでございます。その後、整備五線の北海道新幹線は、ここを通って津軽海峡部分については在来線と併用するという形で決定を見ているわけでございます。  したがって、いまの御質問にございましたように、整備五線というのがおくれている段階ではどうなんだということになりますと、いま御説明したより主としては在来線ということでこの海峡トンネルができたわけでございますので、現在私どもは、今回の予算で約二百億を計上いたしまして、このトンネルの両端にアクセスをつくって、本州側では津軽線の中小国付近、それから北海道側では江差線の木古内付近に取りつけるということを検討しております。これに要する費用は在来線の補強部分、つまり木古内なりあるいは中小国からさらに遠くへ行く、函館、青森の方へ行く線のその部分の補強ということが要るわけでございますから、この改良部分も含めて千六百億円程度を考えております。
  39. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その千六百億というのは、青函トンネルと在来線をつなぐ、たとえば江差線あるいは津軽線の両方の強化の費用ということであって、内容的には、たとえばこの江差線なり津軽線を複線にするとか、電化するとかというような意味を持っているのかどうか、その点もお伺いしたいと思うんです。
  40. 山地進

    政府委員山地進君) 津軽線、江差線の輸送力の増強に対応いたしまして、電化あるいは行き違い施設、有効長の延伸、あるいは一部複線化等が検討されておりまして、これらの在来線の補強にかかわる工事費というのは、仮に中小国あるいは木古内で接続線とした場合には約七百億が見込まれておりまして、これは千六百億の中に入っております。
  41. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、新幹線の方は当面考えないで、在来線を五十八年度の完成した青函トンネルを使って動かすというふうに理解をしてよろしいんですか。
  42. 山地進

    政府委員山地進君) 当面は在来線を通すという意味ではそういうことになりますが、たとえばいまの木古内なり中小国に至る路盤というのは、これは新しくつくる路盤になるわけでございます。したがいまして、この路盤をつくるということになりますと、将来新幹線を通したときにどうなんだということを頭に置かないと、また後で金が要るということになりますので、そこの中小国まであるいは木古内までということについては、新幹線が通るときもそこを通せるというようなことを考えて工事をすべきではないだろうかということで予算をいま要求しておるわけでございまして、したがって、そういう意味では新幹線のことも考えているというふうに言えると思います。
  43. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この青函トンネルの利用価値というのは大変むずかしいような気がするんです。実際問題として、新幹線と在来線と両方チャンポンに走らせるということはできないでしょう、これは。線路の構造から言うと、なるほど片方は広軌で片方は狭軌だから、狭軌の線路をもう一本つくれば狭軌と広軌と併用するということは可能かもしれないけれども、運用上は、新幹線の前に在来線が走ったんじゃ新幹線はスピードを出せないわけですから、そんなことはできないでしょう。時間帯で、じゃ新幹線の時間帯は何時から何時まで、在来線の時間帯は何時から何時までといったような区分をしなきゃならぬということになる。そうすると大変めんどうなことになるわけです。実用の問題としては、在来線と新幹線と併用するということは、きわめて複雑で困難ではないかという気がいたします。  そこで、そういうあえて複雑困難なことを覚悟をして新幹線も通すということになると、これは新幹線自体はどういう構想でもって北海道へ通すことになるのか。それは一体いつ決定をされることになるのか。トンネルだけできて新幹線が後回しあるいは取りやめということになると、これもまたいろいろと問題になりはしないかという気がいたしますが、その点はどうなんですか。
  44. 山地進

    政府委員山地進君) 五十四年度予算におきまして、鉄建公団と国鉄に二十五億ずつ、合計五十億の新幹線の調査費がつきました。これは環境影響評価をするということでついたわけでございます。五十五年度予算にはさらにまた五十億つきまして、これは工事着工のための調査ということで、この場合には非常に地質のむずかしいところ、あるいは軟弱路盤というものを検討する、あるいは経済的な構造を研究する、調査する、あるいは都市部における都市計画等の調整というようなことも研究する、こういうことで五十億ついているわけでございます。その前、五十三年の十月に整備五線の進め方について関係閣僚会議がございまして、このときは法的助成並びに財源措置検討するということが前提で環境影響評価その他を進めるということがあったわけでございます。今回の五十四年、五十五年の予算におきましても、その調査と同時に、もし財源措置決定した場合には工事に着工するという条項がございまして、現在におきましてもそういった工事の調査、着工のための調査をしておりますが、財源がつきましたならばさらに工事を進めることができるようなたてまえになっております。  そこで、一番問題になりますのは財源でございまして、今年度の予算に向けてこの予算、財源措置をどうするかということについてわれわれの間でも検討を進めているわけでございますが、これだけの国の財政状況のもとにおきまして、この財源措置ということにつきましては大変これむずかしい問題でございまして、関係各省において協議をしておる段階でございます。
  45. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この財源の問題等になると、何となく局長の答弁も歯切れが悪くなるんですよ。しかし、新幹線にしても青函トンネルにしても莫大な金がかかること間違いないです、これは。そうかといって、新幹線五十六年度完成だからもう間もなくですな。リニアモーターカーよりもこの青函トンネルの方が現実の問題としては完成が早い、こう思わなければならない。トンネルができた、さてどうするかというわけにいかないでしょう。その場合に、じゃ北海道新幹線、現在宙ぶらりんになっておるけれども、北海道新幹線を建設をするということになると、少なくとも札幌ぐらいまでは通すということになるんじゃないか、あるいは旭川ぐらいまでは通すことになるのじゃないかということになるんですが、この新幹線の問題と青函トンネルの問題は切り離して措置をするつもりなのか。トンネルはトンネルとして、在来線でもってとりあえず、従来の貨物なら貨物を重点的に通すという方式で開業するつもりなのか。トンネルの完成に伴って一体どう措置をされるつもりなのか。その点をお伺いしたいと思います。
  46. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) これは現実問題として解決しなきゃならぬと思うのでございまして、青函トンネルが完成し、いつでも利用可能になりますときに、そのときにとりあえずこれを運輸機関として利用いたしますのには在来線を活用するということに相なろうと思うておりまして、その時点におきましての新幹線による利用ということは、財源の問題なり、あるいはまたその利用度、いろいろかみ合わせた場合には、相当困難ではないか、こう思うております。
  47. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そこで、たとえば現実の問題として青函トンネルができる。在来線を使うということになると、貨物はトンネルをくぐっていくことになるから、連絡船で運ぶ必要がなくなるということになるわけです。連絡船は一体どうするのかという問題が出てきます。お客だけ乗っけて運ぶのか。連絡船と青函トンネルを通過した在来線との所要時間の比較は一体どうなるのか。それはどうですか。
  48. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 現在、連絡船では三時間五十分で運航しております。したがいまして、両端で乗りかえの時間等を考えますと、旅客の場合が、大体片方二十分ぐらいの乗り継ぎと見ますと、大体四時間半が旅客でございます。それから貨物の場合は、もう少しその両端の作業が入りますので、大体六時間ないし七時間ぐらいのところ——これは一番速いフレートライナーみたいな、非常に途中の手のかからないやつで——ではないかと思っています。在来線でトンネルを経由しますと、函館−青森間大体二時間四十分ぐらいというふうに考えておりますので、貨物の場合は三時間ぐらいかかると思いますが、大体旅客の場合ですと、先ほど申し上げました四時間半が大体二時間四十分、大体半分ぐらいになる。貨物の場合も大体六、七時間のものが三時間前後で通れるのではないだろうかというふうに考えております。
  49. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これだけの莫大な青函トンネルに対する投資が行われて、じゃ、その効果というものはどれだけ期待できるのかということ、つまり、収支は一体、開業の暁にはどうなるのか、これによって財政的にどれだけプラスになるのか、その点。それから連絡船そのものを今後一体どう使うのか、そういう問題もあわせてお伺いしたいと思います。
  50. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 鉄道建設公団がおつくりになったものを今度私の方で運営をするということになりますと、私の方では、いわゆる借料を払わなければならないわけなんですけれども、この借料がどうも相当な額になりそうだと、年に五百億円。それから、特に初めのうちは七百億円くらいかかりそうだ。時間の経過とともに償却が進んでいくというような問題もありますので、先々はだんだん減っていくとしましても、そのぐらいのオーダーの経費増というようなことになってくるのではないか。その上に、トンネルで、ございますので、多少とも水が出てくるということがありますから、これを排水をしょっちゅうやらなきゃならぬという経費もかかってくるというようなことを考えまして、一方においてトンネルができましてもそれほど多くのお客を誘発するということは余り期待できないということを考えますと、実は非常に見通しが暗いわけでございます。私どもとしましては、もう少し使い勝手を決めました上でどうするかということを政府にお願いをしなきゃならぬのではないか。どうしてもやはり経営的、毎年の損益という考えから見ますと、プラスの要素にはならなくて、赤字がふえる要素に働くことになろうかということで、まだ運行方を決めておりませんので、その計算も十分できてないのですけれども、なかなかめんどうな問題だというふうに考えております。  それから、船の使い方とレールの使い方をどうするかということでございますけれども、全部船からレールに移してしまうということはどうもちょっと現実的ではないんじゃないか。いまも御説明いたしましたように、船よりもレールの方がスピードが上がりますから、したがって時間を非常に大事にするような貨物についてはこれはトンネルを使った方がいいということは明らかでございますけど、貨物の中では余り時間は問題にならないものもあるわけでございまして、そういうものを考えますと、あんまりたくさん貨物を走らせますと、貨物と旅客ではスピードが違いますから、レールの方の使い勝手が非常に悪くなりますので、特別に早く運ぶ必要があるものはレールを使った方がいいと思いますけど、そうでないものについてはやっぱり従来どおり船を使うということになるのではなかろうか。  御存じのように、現在あすこでは貨客船と貨物専用船、両方ございますけれども、貨客船のウエートは下がってくるでありましょうが、貨物専用船というような感じのもの、あるいはちょっとそれにごくわずかお客さんを乗せるというような形のものとしてどうも残さざるを得ないのではないかなといういま感じになってきておるわけですけど、それはいずれもトンネルの使い勝手の問題とうらはらの問題でございますので、確定的なことを決めて運輸省の方に私どものプランを提出するにはまだちょっとぐあいが悪いというか、煮詰まってないというか、レールの方の使い勝手をもうちょっと詰めてからでないと決めかねるという現状でございます。
  51. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いままでのお話を総合しますと、青函トンネル並びにトンネルに付随する在来線の強化、整備といった費用を全部合わせますと、新幹線を通さなくても六千二百五十億の金がかかることになる。これは、トンネルはできたところから使うわけにはいかないから、全部完成しなきゃ使い物にならぬということになる。在来線だけでも六千二百五十億の投資が終わらないと使えない。新幹線をこれにプラスいたしますと、楽に兆の範囲を超えるだろうと思う。しかも、トンネルを掘っても鉄建公団に借料を払わなきゃならぬ、五百億だ、七百億だ。そうすると、このトンネルができ上がったことによって、国鉄財政に寄与するものは何もないということになるんですよ。国鉄とすれば財政的にはまた一つ大きな重荷をここでしょい込むことになる。こういう重荷をしょわせて、じゃ財政の面で将来どうなるのかということなんです。  先般、私は仙台の地方公聴会に行きました。そのときに、公述人何人かの方が国鉄の累積赤字の問題に触れました。これは企業努力が足りないからではないか、こういうふうな言い方をされましたから、私の方で逆に聞いてみたんです。国鉄の累積赤字というものの中身をしさいに検討すれば、建設費、工事費といったようなものは莫大になっておる。おまけに借金でもって工事をやっておる、利息を払わなきゃならぬ、そういうことになっているんだが、たとえば現在掘っておる青函トンネルあるいはそれに接続しようとする東北新幹線、こういったような工事は一体よけいなことだったと思うのか、悪いことだったと思うのかということを端的にお伺いしたいということでやってみたんですが、悪いという人は一人もいなかった、これは。いけないという人は一人もいないのです、これは。返事に困った人はいたようでありますけれども。中にはこれは全部政府がやるべきであるというふうに答えた人もおりました。要するに、この種の工事の費用を国鉄負担にさらにしょわせるというようなことについては懐疑的な御意見だったように私は拝聴したわけです。  これから将来の国鉄財政を考えてみると、わずかこの青函トンネルと北海道新幹線の問題を取り上げただけで兆の重荷が出てくるわけですね。こういう財政上の負担というものを新しいこの法案によって一切合財きれいさっぱりしょわせないようにするという保証はないでしょう。保証がないとすれば、この法案が通過をすることによって財政上の問題が解決をするというふうには考えられないような気がする。さらに、さっきも私は申し上げたんですが、この法案欠陥法案であるということは、いままで叫ばれながら何ら手をつけていなかった問題の解決ができてない。たとえば、企業努力をしろと言うけれども、国鉄に対する当事者能力の問題で、何か根本的に改まった問題があるかというと、ないでしょう。幾ら企業努力をやれといったって、この間の大臣答弁では、手足を縛られたような状態にある。手足縛っておいて速く走れとかうまく泳げとか言ったって、これまた神様、仏様でもできない。それを人間様がどうやってやりこなせるかと。大臣答弁の中に心意気という話があったのですがね、心意気だけで一体できることなのかどうか、その点はどうなんでしょうね、大臣
  52. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 今回の法案は、昨年の十二月の閣議了解をベースにされたものでございますが、昨年の十二月の閣議了解は、私どもが運輸省に提出をいたしました基本構想案を下敷きにされたものでございます。また、私どもの基本構想案というのは、昭和五十二年十二月の閣議了解をベースにして、一年ないし二年かかって研究しなさいという閣議了解をベースにしております。また、その閣議了解は、この前いわゆる運賃弾力化法案の御審議をいただいた過程で衆参両院で御意見をおまとめいただいたものがベースになっておるわけでございまして、その意味で今回の法律欠陥法案だという御指摘でございますが、もとは実は私どもが出しました基本構想案が欠陥構想案の面があるのでそうなったわけでございますので、私から答弁さしていただきます。  これ、いまの国鉄再建をどうするかというときに、確かに御指摘のように整備五線の問題がどうなっていくか、青函トンネルがどうなっていくかというところまできちりと見通しを立てなければ案ができにくいという、欠陥だとおっしゃいます点はよくわかりますけれども、しかし現時点ではとうてい予測困難でございますしいたします。そうかといって、それが見当のつくまで再建の心組みを待つというわけにもいかぬということで、この基本構想案の考え方は、現在の私どもがやっております仕事を前提として何とか単年度で収支が償うというところへ六十年までにこぎつけようということで組み立てたわけでございます。しかも、その場合には六十年時点では東北、上越新幹線が開業いたしておりましょうが、これは現在やっておりませんものですから、その部分までの要素は織り込んで計算を立てることは無責任になるかと思いまして、この部分を除外をして基本構想案を立てていったわけでございます。  したがいまして、非常に長い目でごらんになり広い目でごらんになれば、私どものつくりました基本構想案というのは欠陥のある基本構想案になっておるわけでございます。しかし、それがわかるまで待っているわけにはいかず、余りにも不確定要素が多いそうした問題を織り込むわけにもいかずということで立てられたものでございまして、本来の理想的な姿という点からいえば不十分かもしれませんが、現時点ではこうした立て方で基本構想案を立てざるを得なかったということに  ついて御理解を得たいと思いますし、その結果、今度の法案についてもいろんな面で問題があるということについては御指摘のとおりでありますけれども、まあこの文言にございますように経営基盤を確立をする、現在あるものについての経営基盤を確立をするということについては、私はそれなりに評価をしていただきたいものと考える次第でございます。
  53. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 何もかも評価をしないわけでは決してないんです。それは必要な措置についてはこれを私は認めてよろしいと思うんですよ。しかし、根本的な問題についてやはり抜けている点が多過ぎるという気がするんです。いままでの再建法案そのものを焼き直しをして、そうして何とか当面を糊塗しようという点がある。三十五万人体制ということだってそうでしょう。具体的にはさっぱりその内容が明らかでない。だけれども、国鉄本来の使命は輸送需要対応できるだけの輸送力を確保するということではなかろうかという気がするんです。この輸送力を確保するために三十五万人でもって十分かどうかということが検討されなきゃならない。三十五万人ならば人件費が節約できるというだけだったならば輸送力の確保の方はこれは後回しになるじゃないですか。いままでの論議は地方ローカル線の問題が主として行われてまいりましたけれども、問題は地方ローカル線だけじゃない。都市を中心とする過密地帯では輸送力が足りないんですよ。  私どもは、国会では地方の方々からローカル線を廃止してもらっては困るという陳情をたくさん受けます。しかし、自分の地元からは毎日毎日通勤地獄でかなわない、この状態をもう少し改善してもらいたい、電車をもう少しふやしてもらいたい、両数をもう少し長くしてもらいたい、こういったような陳情が非常に多いんですよ。それらの地元の人たちの、つまり過密地帯、東京周辺あるいは大阪周辺も同じだろうと思うんでありますけれども、そういう地域では輸送力をふやしてもらいたいというきわめて強い要請がある。しかもその地域黒字線である。赤字線ではないんです。黒字線の利用者をないがしろにして、そして運賃値上げだけはきちんとやる、ずいぶん人をばかにしているじゃないか、こういう利用者の声が出るのももっともだと思うんですね。それらの声に対してどうやってこたえられるんですか。輸送力をふやしてもらいたいという声に対してはしばらく目をつぶってがまんをしてもらう、こういう方針なのか、輸送力の増強という切実な問題に対してはこれはパンク寸前の状態が多々あるわけでありますから、そういう状態に対してはどういうふうに対応するというつもりなのか。この法案が通過をすることによってそれらの過密地帯における利用者の要望に対してどうこたえることができるのかという点もあわせて示していただきたいと思うんであります。
  54. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 基本構想案におきましては、御存じのとおり五十四年度で千九百六十億人キロの旅客輸送量を実績として持っておりますのに対して、六十年度は二千五十億人キロということで、ごくわずか輸送量がふえるということを前提にいたしております。これは一方におきましては、旅客につきましては御存じのとおり昭和五十年をピークにいたしましていまお客が減っておるわけでございまして、一割何がし全体としては減っておるわけでございますけれども、この案では今後横ばいないし微増というふうに考えております。なぜ現象的には毎年お客さんが減っておるのに横ばいないし微増と考えておるかといいますれば、ただいま御指摘のように、主として大都市を中心とする通勤、通学等のお客さんがふえておりますので、一面において傾向的に飛行機との競争、あるいは自動車との競争で減るということがあるといたしましても、いまおっしゃったような面でふえていくであろうということを前提にして、ごくわずかではありますが全体としてはやはり増加するという見込みを立てた次第でございます。  で、具体的にはやはり問題となりますのは東京の周辺と大阪の周辺、さらに最近は福岡なり仙台なり広島なりというところでも通勤輸送量がふえつつあるわけでございますが、それらに対応いたしましては、まあ大変対応が遅いと言っておしかりは受けましょうけれども、それぞれ計画をし実行に入っておるわけでございまして、東京周辺で申しますれば、総武線を強化するという仕事はまだこれから引き続いてやるわけでございますし、それから鉄建公団の方にお願いをいたしておりますけれども、京葉線を新しくつくるということもやっておるわけでございますし、それから、たまたま東北、上越新幹線絡みの問題になりましたけれども、大宮と赤羽の間にもう一本通勤新線をつくるということも考えておるわけでございまして、大都市における輸送力の強化ということは今後におきましても私どもの重要な仕事と考えておるということは閣議了解その他の文言にあらわれておるとおりでございまして、ただ御指摘は、あるいはそれはわかるけれども遅々たる状態ではな  いかということかと思いますが、その点は決して満足の状態であるとは思っておりませんけれども、しかし、そこの点は気配りはしておるということを御承知いただきたいと思います。
  55. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあ時間がお昼過ぎましたから、一応この辺で午前中の質問を終わりたいと思うんでありますけれども、いままでやってきたことの繰り返しをしただけでは国鉄財政再建のために一歩を踏み出すことができないような気がするんですね。たとえばいままでは、地方交通線の赤字というのは四十五年から五十年までは四けたの、たとえば四十五年度ですら一千五十二億の赤字だったんです。ところが、四けたの赤字に対して四十五年から五十年までは助成金はゼロだったわけです。それが五十一年になって初めて百七十二億の助成金というものが組まれるようになった。しかし、そのときはすでに損失額は二千三百億を超えた。十分の一以下だと。つまり四けたの数字の損失に対して三けたの助成額では、これはだれが考えたって引き合わないのは当然なんですね。こういう状態で赤字が累積をしていけば、どなたが総裁になろうと、どなたが大臣になろうと、赤字を解消するなんということは、手品をやったってできないことだ。ところがこういう状態がずるずると続いている。これからもずるずると続いていこうとしている。それでなお財政再建ができるかと言うんです。  この辺はやはり抜本的にメスを入れなきゃならないんじゃないでしょうか。言ってみれば、国鉄財政の問題は手術をしなきゃならない。ところが、手術をしないで、飲み薬と塗り薬とおまじない程度でもって何とか当面を糊塗しようとするから、これは問題が解決しないんじゃないでしょうか。その点、私は、手術をしないでこのまま続けていくという状態であれば、何年か後にやっぱり同じようなお手上げの状態でもって、何年もたたないうちにまた財政再建の新しい方法を何とかしてくださいと言わざるを得なくなるんじゃないかという気がいたしますが、そういう懸念はないのかどうか、この点を大臣にお伺いいたしまして、一応午前の部の私の質問を終わりたいと思います。
  56. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) いま御審議をお願いしておりますこの法案の骨子を実現していきます場合に、私は何とかして六十年には経営の基盤の健全性だけは取り返してもらいたい、また取り返せると思うておるのであります。  お尋ねのように収支の均衡が完全にとれるところまでは、これはなかなか私たちも見通しとしては十分立たないと思うのでございますが、しかし、この国鉄という経営の母体がしっかりしてまいりましたら、そしてまたそれと並行いたしまして国鉄が鉄道の特性に目覚めたそういう設備投資をこれからもやっていこうというのでございますから、それと相まち、そしてまた全従業員が、この際、再建に意欲を持って向かってくれますならば、国鉄の将来というものに対しましてそんなに私は暗いものではないと思うておるのでございます。  でございますから、六十年まではわれわれ必要な助成はこれは当然続けていかなければならぬのでございますが、その六十年時点をもって一応のいろんな経営努力、また政府の助成、それから地域利用者のあり方等を総合的に検討すべき時期、これは六十年にあるであろうと思いますけれども、それまでは現在のこのお願いしております法案の趣旨にのっとりまして、鋭意再建への努力を続けてまいりたいと思うております。
  57. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      —————・—————    午後二時十四分開会
  58. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続きまして日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案審議いたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  59. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 社会党から修正案を提案をされると思っておったんでありますが、この修正案と対比をしながら大臣にもいろいろと質問をすると、こういうふうにしようと思ったんです。ところが、肝心の修正案が出てこない。これはまことにどうも残念なことだと思うんですが、やはりカンフル注射というのは生きているうちに打たなきゃ意味がないんで、臨終を迎えちゃってからカンフル注射を打ったんではこれはどうも効き目がないと思うんですけれども、その辺修正案の取り扱いがいかようになりましたか、お伺いをしたいと思うんでありますが。
  60. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  61. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 速記を起こしてください。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 せっかくの修正案をここで取り上げまして審議対象にできないということはきわめて残念でありますが、いろいろの事情があったようでございますからこれはやむを得ません。  そこで、社会党の修正案、提案をされた意味というのは、単に法案に対してたとえば柱にかんなをかける程度の修正案じゃないんです。柱を取りかえるくらいの修正案。そうなりますと、やはり審議の期間中に私どもとしては審議対象にしたいというふうに考えておりましたのですが、その点大臣にも十分お考えをいただいて、修正案との対照の質疑ができませんけれども御答弁いただきたいと思うんであります。  いま建設中の鉄建公団でいろいろと建設をしている線がありますが、たとえばAB線といったような問題についてこれがどのような状態にあるのか、そしてこのAB線の今後の取り扱いは一体どうなっているのか、それから、中途半端で建設を中止したような場合にはその処置は一体どういうことになるのか、その点についてお伺いをしたいと思うんであります。
  63. 山地進

    政府委員山地進君) AB線、現在計画されておりますのは四十線ばかりあるわけでございますが、これらの線につきましては、この法案におきましては、私鉄が申請してきて、それを継続する場合には建設を継続するということになっております。ところで、現在はまだ法案が通っておりませんが、このAB線の一部を除きまして大部分が四千人以下の特定地方交通線になるわけでございまして、その特定地方交通線になるものにつきましては、でき上がると特定地方交通線になって廃止というようなことになりますので、この法案との整合性を保つ意味で現在それらの特定地方交通線に該当すると思われるものについては建設を、工事費の配分をとめております。  したがいまして、これらの線につきましては現在工事がとまっておるわけでございますが、しかし、この法律において従来の在来線につきましても、もし第三セクター等で引き受けるという場合にはその線を鉄道として維持するということと並びまして、AB線についても第三セクターで引き受けることが確実であると現時点で思われるものがございました場合には工事を再開する、こういうことでことしの予算の百五十億ができており、また来年度予算につきましてもそういうことを見込んで百七十億ということを現在要求しているわけでございます。  したがって、これらの制度、この法律ができました暁にどれぐらい第三セクターで出てくるかということにかかわるわけでございますが、一つの期待といたしましては、かなり工事が進捗しているものにつきましては第三セクターでそれらの建設されたものについて有効な利用が図られることが十分あるというふうに考えているわけでございまして、また不幸にしてそういうことがなく、第三セクターができませんで、したがって工事も行われないという場合には、今後のそういった既存の施設について考えなきゃならないわけでございますけれども、この法律に基づきましては第三セクターの申請というようなことについては別段期限ができておりませんので、今後の推移を見ながらそれらのものを検討してまいりたい、かように考えております。
  64. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄は、AB線等についてぜひ建設建設をしてほしいというふうに要望をした線があるのかどうか。さらに、ぜひ完成をしてほしいと、もし完成をしない場合には中途半端のままではこれ生かしようがないといったような要望を持っている線があるのかどうか。たとえば延長すればつながるけれども、つながらない状態で盲腸線みたいになっているというところははしにも棒にもかからないわけだ、こういった線もあると思うんであります。それらの線を含めて国鉄自体がAB線に対してどういうふうに対応しようとしているのか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  65. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私どもの方は十年以上前から、在来線のうちでお客様の少ないところにつきましてはレールを外さしていただきたいということでいろいろと地元折衝等やるわけでございますが、そのときにいつも問題になりますのは、現にいま走っておる線についてやめたいと言いながら、片っ方では新しくつくるというのでは矛盾ではないかということで、しばしばお願いに出ましても、それをAB線を引き合いに出して、それはとても了承できないということをいつも言われるわけでございますので、かねてからAB線の中でも将来お客様に乗っていただけそうもないところについては、でき得れば工事を進めるということを考え直していただけないかということを言ってきておったわけでございまして、今回の法律で全体の再建のことを考えていただきます際に、AB線についてもいま鉄監局長から御説明がございましたような形で処置をしていただけるということで、むしろ私どもとしては大変仕事がやりやすいという意味で歓迎をしておるということでございます。  ただ、ごく一部、いま御説明にありましたけれども、見込みとして四千人以上のお客さんが乗られるに違いないと思われる線二線について、現在ストップにならずに工事が進行しておりますが、これらの線につきましては、運輸省の御判断のとおりわれわれとしてもつなぐというか、結ぶというか、そういうことをしていただくのは好ましい線ではないかというふうに考えております。
  66. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ここで、国鉄の方は採算の合わないことのわかっている線区をどんどん建設をしてもらって、それを引き受けるということは、財政上の負担をますますふやすということにしかならないと思うんですね。ところが、AB線初め鉄建公団の方はどんどん仕事をしておるわけです。青函トンネルを初めとしてどんどん仕事をしている。  この鉄建公団のあり方についても考えて見なきゃいかぬと思うんでありますけれども、これは国鉄はこしらえた線区を引き受けるだけだ、鉄建公団はつくって、つくった後は国鉄に任してしまう。言ってみれば鉄建公団は子供を産むだけで育てないんですな。全部里子に出してしまう。それを国鉄がみんな引き受けて、貧乏世帯で育っていかなきゃならないと、こういうことになっているわけだ。こういう関係というのは果たしていかがなものかという気がするんですね。この鉄建公団のあり方、これならばむしろいっそのこと政府丸抱えでもってつくらせるかわりに、それらの経営まで責任を持たしちまったらどういうことになるでしょうか。いっそのこと鉄建公団が建設をした、AB線を初めとする建設をした部門については経営まで全部引き受けさせる。そして国鉄からは切り離す。こういうような形にすればまだすっきりするんじゃないかと思うんでありますが、その点大臣どういうふうにお考えになりますか。
  67. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それは鉄道運営の二元化になると思うのでございまして、まず運転系統とか管理系統が非常に複雑になると思います。それと鉄建公団が建設いたしました趣旨は、いわば国鉄だけで鉄道の新線を建設するのには、財政上の制約があって思い切った投資ができないということと、それから技術屋の人数にも限りがある。そこで鉄道の建設は国鉄自身もやるし、それをさらに促進するために鉄建公団をつくって、そこに財政資金を新しく入れてそれで建設を促進していくという、いわば一つ国鉄の役資に十分な財政資金を使うための受けざらとしてつくったということが一つ、それと技術者を集約するということと、そういう目的でございますから、初めからこれは運転をし、営業するということを目的にしてつくった公団ではございませんので、やはり従来の設立の目的に従いまして、現在のような業務分担をすることが正しいと思うております。
  68. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 しかしそうなると、いかにももっともなように聞こえるけれども、建設された鉄道がいずれも非採算線区であるにもかかわらずこれを引き受けなければならないという、国鉄にしてみれば迷惑しごくな話になってくると思うんです。鉄建公団は産みっ放しで育てないんですからね。そこでこういうあり方というのはちょっとおかしいんじゃないかという気がするんですよ。だから、この法案について私も欠陥法案だと最初に指摘をしたんでありますけれども、国鉄がもしも独立採算制を堅持をするという方針をあくまでも貫き通すならば、この辺でもう大手術をしてシステム自体を変えなきゃならないのじゃないか、こういう気がしますよ。  これはたとえばの話でありますけれども、全国一律の運賃は賃率になっています。しかし、今回提案をされた内容は場所によっちゃ変えようというんですよね。その方式をもしとるならば、たとえば北海道と九州と四国と本州とあるいは各ブロック別に鉄道を電力みたいに分けちまって、そしてブロック別の鉄道にしてしまう、こういうような方法をとれば地域ごとに違った賃率をやっても、それは仕方がないということになるんですね。その場合にはどういうことになるかというと、北海道鉄道とか九州鉄道とかいうところと、関東鉄道とか、どういうかっこうになるかわからないけれども、関東鉄道、関西鉄道といったようなところは黒字になって運賃も割り安になる。北海道鉄道、九州鉄道、四国鉄道になるというと運賃が割り高になって配当もないと、こういうへんぱな姿になると思うんです。だけれども、もしあくまでも独算制にこだわれば、そういう形態もとらなければならなくなる。あるいはまた一切の採算に合わない仕事は冷酷に切っていくということもやらなきゃならなくなると思う。  これはローカル線じゃなくて幹線であっても、ここのところは人口密度が希薄である、採算が合わない、そういうところは遠慮なくやめさしてもらう。後のことは後で地方自治体でしかるべく考えてもらうということで切っていく。あるいはまた公共割引も何も一切これはやめるというふうなところまで徹底しないと、独立採算制はこれはだれがやっても維持できまい、こういう気がするんですよ。それでもなおかつ独立採算制を維持をして六十年代までに何とか立て直しをするということが可能だとお考えになるのかどうか、その点をお伺いしたいと思うんです。
  69. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先刻来の瀬谷先生意見を聞いておりましたら、まことに理論明快でございまして、右でなかったら左かはっきりしろと、こういう議論がいままでしばしばございました。おっしゃるように、立てば賛成、座れば反対、真ん中ないんだと、これも確かに私たちも御意見として聞いておるんですが、しかし、公共性独立採算制というものは、そうかみそりでようかん切ったようには私は分けられぬ、議論はできないと思うんです。それはどちらかといえば、公共性に最大のウエートを置かなきゃならぬときもあるであろうし、独立採算にウエートを置かなきゃならぬときもあるだろう。現在まで国鉄公共性一本でやってまいりまして、その経営を維持するために必要な独立採算制ということ、これが先ほど山地鉄監局長言いました手段として独立採算制をとってきたのであります。しかし、今日十二兆円の借金を抱え、そうして六兆円の赤字になってくるとなってまいりましたら、もうこの公共性そのものが維持できなくなってきて、今度は独立採算というところにウエートを置かなきゃならぬという、そういうことになってまいりました。私はそう思っておるんです。  そこで、今度のこのお尋ねのように、独立採算制というものを徹底的にこれを企業の活動として追求していくと、おっしゃるように分割もし、また競争の原理も導入しというようなことで立て直すのがいいかもわかりません。しかし、そこへいくまでにやはり国鉄が全国統一のいわゆる企業体としていわば統一のできた運営をするということ、これをどうしても公共性で守っていきたいとわれわれは思うております。それがためには最大限いわば代替バス、代替交通のバスよりもコストか高くつくようなそういう路線については、これはバスに転換してもらった方がいいんではないかというのが特定地方交通線、こういう考えに結びついておるのでございますから、ですから、全く独立採算制一本でこれからも国鉄やっていくんだという、そういう考えはございませんが、しかし、いまとしては、いわば経済原則をやっぱり貫く上に独立採算制にウエートを置かざるを得ないので、今回の再建案にそういう趣旨を貫いてきたということでございます。
  70. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄の予算の中で、たとえば利子及び債務取扱諸費であるとか、あるいは借入金等返還金であるとか、こういうものがかなり大きな数字になっているということはお認めになると思うんですよ。しかし、国有鉄道という名称に照らしてどうも不自然のような気がするんですね。なぜ一つの請負の仕事みたいに借金でもって線路の建設までやらなきゃならぬかということですね。それならばそれのように独立採算制が維持できるようにしなきゃならない。維持できないようなたとえばAB線、青函トンネルだってそうでありますけれども、もし独立採算制をたてまえとするんだ、赤字出しちゃいけないんだということになれば、青函トンネルであろうとAB線であろうとそんなものは全部引き受けない、お断りすると、こういうことでなければやっていけないでしょう。これはもう青函トンネルができる、あるいは北海道新幹線ができる、AB線は日本国じゅうあっちこっちでどんどんつくっていくと、こういう状態をそのままにしておけば、その負担国鉄に一銭もかからないという保証はないでしょう。やっぱり大なり小なりというよりも大なり大なりでみんな負担がかかっていくようになってるんでしょう。そうすると、累積赤字がけしからぬというふうには言えなくなるんじゃないでしょうか。赤字かふえるのはあたりまえで、赤字が消えたらむしろこれは不思議だと思わなければならぬと思うんです。その点は一体どのようにお考えになるんでしょうか。
  71. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) まさにいままでがそういう状況で、地方開発線という公共性負担して国鉄は経営してまいりました。ですから、どんどん開発される、不採算線ということが当初からわかっておりながら、これは国鉄公共性にウエートを置いた活動としてこれを運営していったわけです。しかし、今日の事態になってきたらもうそれもできないもんですから、AB線の引き受けは勘弁してもらいたいと。これをやるならば第三セクターでやってもらいたいというのが今度の法律で出てきておるのでございまして、いままでとこれからとはそこに大きく政策の転換があるということを御承知いただきたいのであります。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そういうことになると、午前中にもちょっと私は指摘いたしましたけれども、運輸省及び自治省統一見解というのがまたあいまいであるということを指摘しないわけにいかないんですね。何か赤字が出そうな場合には慎重にしろ、とりようによれば赤字が出そうなことはやるなというふうに受け取れるような統一見解が出ているわけです。しかし、特に特定地方交通線の場合には、構造的に赤字にならざるを得ないんですから、だれかが負担しなければならないんです、これは。だれかがどういう形かで負担をしないとやりようがないんじゃないんでしょうか。そうすると、それは地方自治体が持つのか、地方自治体に持たせられないとすれば国鉄が従来どおり持つのか。国鉄が従来どおり持つんだったら赤字の累積はますますひどいことになる。それができないんだということになれば地域住民が負担をするのかということになる。地域住民の負担をそのまま認めるということになると、これは公平の原則から言っておかしいんじゃないかということになる。というと、一体どうしたらいいのかということになるわけですよ。  このいままでこの法案が訴えてきた内容のものは、それらのいろいろな矛盾点についての答えを明確にしていないというふうに言わざるを得ない。つまり、たとえば慎重に検討するとか対処するとかという言葉になっている。具体的にだれが赤字をしょうのか、しょわないのかということはちっとも明確になってない。  さらに、政令にゆだねられているとは言いながら、どこの線区はどういう理由によってこれを廃止しますと、第三セクターにしますといったような方向まで明らかになってない。これでは私どもとしても取り扱いに大変に困るわけだし、そこで根本的に、政府としては、この地方の赤字ローカル線の問題については、これを何らかの形で残すんだというふうに約束をするのか、廃止をするということが原則であってひとつがまんしてほしいということなのか、どちらかやっぱり明らかにしてもらう必要はあるんじゃないでしょうか。それは地域地域によって違うと言うかもしれませんけれども、原則としては残すんだと。いろいろ政令基準等についてもこれから検討するけれども、いろいろな事情があるということだから地域の足だけは確保するんだということを約束をできるのかどうか、最大限ですね、費用の負担は別といたしまして。その点をまずお伺いしたいと思うんです。
  73. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 足の確保については、これはもう政府なり地方自治体一体となってこの足の確保に努力しなければならぬ。これはもう当然でございますし、また、私も再三その件につきましては答弁申し上げておる次第です。今度のこの国鉄の八十二線にわたります特定地方交通線、これにつきましては、要するに国鉄の責任を免除してもらいたい。でございますから、いまのお尋ねに対するお答えとしては、もうこれを明確に申し上げるといたしますならば、もうこの特定地方交通線国鉄からは切り離していただきたい、こういう答えでございます。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そうすると、大臣の御答弁を要約しますと、足の確保は約束をする、しかし国鉄の責任は勘弁してもらう、国鉄の責任の方はあしからず御勘弁願いたい。そうすると、地方自治体の方でひとつ応分の負担を、こういうことになってくるんだとすると、統一見解はちょっと矛盾してくるんじゃないかなという気がするんですけれども、いいですか、統一見解からは、大臣のいまの御答弁でいくと足が出ちゃうんですよ、地方自治体の方に。それはどうなんでしょう。
  75. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 何も国鉄から切ってあしからずということでは実はございませんで、国鉄の責任からは一応切断はいたしますけれども、しかし国は、まず第一に、国鉄に、代替機関、つまり、足の確保ができないということがわかれば、国鉄に代替機関としてバスの運行を私の方から命ずることがあります。これによって足の確保をいたそう、それからまた、地方においてバスを経営されるというならばこれにも助成いたしましょう、それから、第三セクターとして経営を地方で引き受けていただくならば、それに対しまして、そのよって起こってくる赤字の半額は五年間補てんをいたしましょう、こういう、政府政府としての助成をもって足の確保というものに努めたいと、こういうことでございます。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 しかし、地方の問題を解決をするということであれば、地方の方でいろいろとしり込みをしているのは財政上の問題だろうと思うんですよね、端的に言えば。だから、財政上の不安がなければ、地方としてもそんなに及び腰にならないんじゃないかと思うんです。だから、そういうちびちびした助成というものはどこまで信用できるかという不安もあるんじゃないかという気がするんです。だから、いっそのこと、一つの方法とすれば、地方自治体に全部そのローカル線はくれちまう。そして、地方自治体でやってもらう。ただしこの財政的な補助は鉄道ということに限定しないで、その地方自治体自体に、これは運輸大臣の所管とは違ってくるかもしれませんが、地方自治体財政的なゆとりを持たせるような方策を講じさせて、その中で地方自治体が鉄道を存続するのがいいか自動車に切りかえた方がいいのか、モノレールにした方がいいのか、リニアモーターカーというところまでいかないと思いますけれども、何らかの交通手段を考えさせるという、幅を持つような方法を考えてもいいんじゃないか。むしろその方が、いろいろな場合を想定して頭ひねるよりも筋が通るんじゃないかという気がいたしますが、その点はどうでしょうか。
  77. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) まさにおっしゃるとおりにこの法案も提出さしてもらっているつもりなんです。それは、協議会によってそういうことを決めていただきたい。で、まあここで抜けておりますというのは、私は、地方の交通を維持するのに、地方自治体にどういう財政的な配慮をするかということ、これがまだ明確になっておらないんです。この点は確かに地方自治体として不安がある。ですから、自治大臣としても、先ほどお示しいたしました統一見解のように、財政を慎重に考えてやれよと、こう言わざるを得ない。  そこで、たとえばわれわれ運輸省としても、十年前でございますか、過疎バス対策というのをやりました、これは先生御存じのとおり。こういう対策がやはりその地方の第三セクター交通網に対しても当然考えられるべきではないか、私はそう思う。それの協議を、これから政府が責任を持って足の確保ということを、その中心を何に置くかといえば、そういうよって来る赤字に対する補てん対策、これをやっぱり講じてやることが、自治体が足の確保に選択もし、そしてまたそれの努力もしていくことだと、私はそう思っておりまして、この法案政令を作成していく段階におきまして、これはぜひ詰めて議論をしなければならぬし、そしてまた、できるだけ早い時期にこれの対応策も考えなければならないと思うております。でございますから、この第三セクターに対する助成二分の一、これを政府は、運輸省は五カ年間そのめんどうを見さしてもらうと言っておりますのも、その間に何らかの対応策を講じていかなけりゃならぬということと相関連しての政策であると御認識いただければ結構かと思うんであります。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 採算の問題は、結局人口によって大体見当がついちゃうと思うんですよ。人間のいないところは、いかに工夫をしてみたところでこれはどういう交通手段をもってしても採算に合わないようになっているわけです。私どもやはり赤字ローカル線の視察を委員会でやったことがありますけれども、たとえば北海道の某線に行くと、駅のある地域では戸数が二十戸しかない、それで人間が八十人しかいない、隣の駅まで十キロある、そういうところがいっぱいあるんですよ。そういうところは工夫のしようがないと思うんですよ、どう考えてみたって。何を走らせてみたところでこれは採算が合うようになると思えないです。そういうところがあるんですからね。そうすると、そういう地域においても足の確保ということは、地域住民にとっては深刻な問題だと思うんですよ。その場合には、採算を度外視しても何らかの形で交通手段を確保しなきゃならないでしょう。それが、だれが負担をしようともこれはやらざるを得ないというふうに思うんですよ。だから、そういう点では公共性というものを捨ててはいけないという気がいたします。捨ててはいけないということは、逆に言うと三十五万人体制といったような数の枠にこだわったりしてはならない。独立採算制という一つの拘束的な原則にこだわっていたのでは、それは公共性を発揮できないだろうというふうに思うんですね。  そこで、しかしそうは言ってみても、このAB線というのは中途半端でやめるというわけにいかないだろうし、やはりどこかで引き受けなきゃならないということになってくるでしょう。さらに、新幹線についても、東北、上越新幹線はどんどん工事が進んでいるわけです。間もなくこれは大宮から新潟、あるいは盛岡の間は完成をするんではないかというふうに思われるんでありますけれども、こういう東北、上越新幹線の問題は一体どういうふうにするつもりなのか。たとえば収支の見込みはどうなのか。それから、大宮以遠が完成をした場合に一体どうするつもりなのか、東京と大宮との間のアクセスはどうするつもりなのか、これはもう身近な問題だろうというふうに思うんでありますけれども、その点についての構想をお示しいただきたいと思うんです。
  79. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 東北、上越の問題につきましては、これは国鉄の方から答弁いたすと思いますが、その前に瀬谷先生にもひとつ一緒に考えていただきたいと思いますのは、足の確保ということで過疎地帯のお話をされました。私は、昭和四十六年でございましたけれども、ちょうどその時分にこの地方ローカル線の対策というのが出まして、私は北海道をあのときずいぶん歩いてみたんです。そのときに北海道の方々がこういうことを言うんです。たとえば牛乳集めてくれる車、この車に人間乗せてくれたらもっと便利なんだがなと。それが何でバスでないといけないのか。人間乗るのが、何でバスでないといかぬのか。またバスがなければ何で鉄道でなければいかぬのか、それはずいぶん疑問がありました。これは一日二回ぐるぐるぐるぐる牛乳集めるのが各戸を皆回っておるんです。ですから、これは一つは足の確保というのについてはそういうハードの面の設備だけではなくして、ソフトの面の制度面からいろいろなことを考えていくならば、私はそういういわば過疎地帯におきます交通というものはどんな手段をとってでもやっていける。  その場合の負担はどうなるのかということになってまいります。それはやはり地方自治体と国と相談いたしまして、そういうことの財源対策というのはやっぱり責任を持たにゃいかぬのだろうという感じでございまして、そこをいまは鉄道が走っておって、だから鉄道が計数で言いましたら二千幾らというような膨大な赤字路線になってしまってきておる。これを是正するのにいろいろな私たちは制度面からも、これは検討していきたいと、こう思うております。  後の東北、上越につきましては、国鉄からひとつ答弁いたします。
  80. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) まず第一に、東北、上越新幹線が経営的にどうなるかということでございますけれども、私どもは長い目で見れば東北、上越新幹線いずれも経営的になり立つというふうに考えております。現に東海道の場合におきましても、また山陽新幹線におきましても、開業後しばらくは在来線と総合して考えまして赤字であったわけでございますが、その後今日までに至る間におきまして、現在東京から博多まで、全体を通じまして、しかも東海道線、山陽本線の収支も総合的に見ましてやっと黒字になったということから考えまして、ある期間を経過すれば黒字になるというふうに考えております。  そこで、その期間がどのぐらいかということにつきましては、当初はもう少し短かく見ておりましたが、最近は東北あるいは新潟地区におきます道路の整備が非常に進んでおります関係もありまして、計画当時よりは経営状況がうまくいかないということでございますけれども、まあまあ大体十年ぐらいで東北新幹線へ上越新幹線、それから東北線、上越線といったものを総合的に見まして単年度で収支が合ってくるというふうに考えております。特に、新幹線の場合には、在来線に比べますと建設投資額が相対的に大きい、そのかわり運営費は相対的に小さいということになりますので、開業後しばらくの間償却等の負担が相当な額になりますので、開業から十年ぐらいまでの間はどうしても、在来線も含めてでございますけれども、収支が償わないというかっこうになると思います。しかし、冒頭に申しましたように、長い目で見れば十年ぐらいたちました後は十分収支償うような運営ができるのではないかというふうに考えております。  それから、いま開業をいつやるのかと、また開業の形式としてどういうふうな方式がとられるのかということについて、ごく最近新聞紙上等でいろいろ推測報道がなされておるわけでございますが、私どもは、これをどうするかということについて、いま深刻に検討をいたしております。いずれにしましても東北地域あるいは新潟方面の方々も、新幹線ができるということの意味は、スピードが上がりますから速く行けるということもありますが、その場合にもう一つのメリットとしては、鉄道の場合には都心部にステーションがある。飛行場は都心部から離れたところにありますから、そのアクセスに時間がかかるわけでありまして、鉄道は、たとえば仙台にしましても新潟にしましても、また東京の都内におきましても、町の中に駅があるということが非常に大きなメリットであるわけでございますから、したがいまして、それぞれ御利用になる地域の方々の強い希望としては、当然上野なり東京駅なりで開業すべきだということを期待をしておられるわけでございまして、まことにごもっともなことでございます。  それがためには、もし大宮から東京の間が建設にやや時間がかかるというのであればしばらく待ってもいいよという御意見もいろいろ耳にするわけでございまして、そういう強い願望なり念願なりを持っておられることはよく承知をいたしております。しかし、大変巨額の投資をしておるわけでございますので、その巨額の投資をそのまま寝かしておいていいものかどうかということは、理想を言えばもちろん一挙に都心までつなぐということが理想でございましょうけれども、事実問題としてまだ一部、特に大宮と東京の間が用地の問題で難航しておるということでございますので、大宮から新潟まであるいは盛岡までの間の投資したものをそのまま休ましておいていいかどうか、メンテナンスにもまた金がかかるものでございますから、それもあっていま苦慮をいたしておるわけでございます。  それらにつきましても、そう長くいつまでも不安定のままおいておくわけにもまいりませんので、いろいろな角度からいま検討をいたしておるわけでございまして、けさの報道でも伝えられておりますように、一部の地区、県南でなしに県北の地区、埼玉県の県北の地区において一部いわゆる収用法による収用というような強硬的な方法によってでも用地の確保に取り組んでおるわけでございまして、きょうの報道にありませんものにつきましても、まだまだ何カ所か相当問題が残っておるものでございますから、それらを総合して、どうやったら一番早く目的を達せられるであろうかということで、いま私ども自身の手元で、具体的な地域の具体的な権利者の主張その他をにらみ合わせながら、いつどういう形で開業すべきかというふうなことを最終的な判断をするための勉強をいたしております。  同時に、その勉強をいたすと同時に、どういう形の開業にでも対応できるようにということで、たとえば要員を配置を考えるとか、また要員の訓練を行うといったようなことは開業方式、開業時期を決めない現在ではございますけれども、そのための職員が準備されていないからという理由で開業がおくれるとかということになってはいけませんので、現在、要員の手配なり要員の養成なりを開始をいたしております。  そういうものから、外部からごらんになりますと、あるいは大宮から南の方はまだ全く手がついてないわけですから、大宮で開業をするということを国鉄として決めたのではないかという推測が生まれてくるわけでございまして、その推測に基づいていろいろ報道も盛んになされておりますけれども、私どもとしましてはまだその点は白紙でございますし、どっちとも決めておりません。しかし、そうかといっていつまでも白紙状態に置くわけにもいかないわけでございまして、そう遠からざる時期にこれを決断をいたすつもりでおります。でございますから、いまお尋ねの大宮でスタートするのかどうか、そして、大宮と東京との間のアクセスについて何か考えているようだがということでございますが、それは考えてはおります。考えてはおりますけれども、それを、その案を採用することになるかどうかはまだ決め切ってないわけでございまして、その点きょうここでお答え申し上げることはどうかひとつ御勘弁願いたいと思います。
  81. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 当初の計画は東京駅から出発をするということだったようでありますけれども、東京駅から出発をするという構想は断念をして、もし東京を起点とする場合でも上野駅から出発をするということになるのかどうか、その点どうなんですか。
  82. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 最終的には東京駅からスタートするようにいたします。過去におきましては、場合によりますと東海道新幹線と山陽新幹線がスルー運転というようなことも考えた時期もございますが、いろいろな技術的な面もありまして、いまはスルー運転は考えておりません。おりませんが、東北地区から関西地区においでになる方々については、東京駅で乗りかえていただくということを前提にして、スルー運転はしませんが、東京駅で接続できるように考えております。現にそれを前提として一部すでに東京駅でもプラットホームの工事を施工いたしておるわけでございます。また、東京駅と上野駅との間の必要な用地等につきましても、余り無理に急いではおりませんけれども、手当て可能な地区から手当てをいたしておるわけでございまして、上野でとめるということは最終的には考えておりません。しかし、どういう手順でやるかということにつきましては、やはりいきなり東京駅ということは考えられませんので、金の都合もありますし、仕事をどういう手順で進めていくかという都合もありまして、上野駅の開業の方が東京駅での開業よりは相当時期が早い時期にそういう形で行われるようになるというふうに考えております。
  83. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 現在の状況から言うと、たとえば新潟から大宮まで、盛岡から大宮までの間が先に完成をする可能性の方が強いというふうに思います、だれが考えてみても。そうなると、完成はしたけれども上野まで、東京までつながらないからしばらく遊ばしておこうということは常識的には考えられないことですね。そうすると、そこで大宮始発で暫定的に開業するということが、これはだれが考えてみても想像されるところなんです。ただ、そうなった場合に、じゃ大宮と東京の間の連絡が果たしてどういうものかということを考えてみますと、むしろここにこそ問題があるんじゃないかという気がするんですよ。  それは、東北新幹線や上越新幹線を利用した人が、乗りかえなしに東海道新幹線まで接続できるようにしてやりたいという気持ちはわかります。それならば、在来線を何で上野どまりにしておかなきゃならぬかということになるわけです。特に、上野−大宮間というのは東北線と上信越線と併用して使っているので非常に事故の頻度が高いわけです。ついこの間も架線故障がありました。午前中に架線故障があったにもかかわらず、夜遅くまでダイヤがごたごたとなる。通勤客の足が奪われるという事態がありました。私も、午前中の架線故障だから、夜相当遅くなったらもう直っているだろうと思って行ってみたら、とんでもないことで、中間でとめられてひどい目に遭った記憶があるわけです。しかし、こんなことは年がら年じゅうなんですね。  この機会にちょっとお伺いしておきたいんですけれども、架線故障などがあると、ああも長いこと回復に時間を必要とするのか、これは何か技術的に考える余地はないのかどうか、この点をお伺いしたいと思うんですが。
  84. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 架線故障で大変お客様に御迷惑をかけている。まあ事故はやむを得ないとしても、その復旧に非常によけい時間がかかっておるということについては、何しろ東京のような非常に利用客の多いところでございますから、何とか対策をもう少し立てなければいけないということを繰り返し検討いたしておるわけでございますが、なかなかいい結論が出てまいりません。その理由は、どういう事情による故障でありましても、御存じのようにどっかで故障が起こりますと鉄道の場合にはだんごになるわけでございます、車両がだんごになってしまう。  そこで、終点駅の場合には、特に終点駅のポケットがかなりありませんと、どんどん車を入れてきて、そして折り返しという形でありますと車の整理がうまくいかなくなるものですから、したがって一たん事故がありました場合には、たとえば車両を間引くとかということをやりながらだんだん正常運転に戻っていくということでございますが、全国の中で一番いまぐあいが悪くなっておりますのが上野でございまして、東北線、上越線のほかに常磐線も入ってきておりまして、それに比べて車両を置く場所が田端あるいは尾久等にありますけれども、そこが詰まってしまうということのために、入ってくる車そのものを手前のところでむしろ抑留をしなきゃならぬということから非常におくれておるわけでございます。  それで、東北、上越新幹線のメリットは、これが上野なり東京まで参りました場合には、いま一番パイプの詰まっております大宮−上野間の在来線が余裕が出てくるということ。そして、特に最近着工といいますか、事業をお認めいただきました大宮から赤羽までの通勤新線、これを活用することによってそのパイプが楽になるということでございまして、その意味からいきましても、東北、上越の方々の御便宜だけじゃなくて、東京の北側の、上野の北側の方々に対するサービスから言いましても、東北、上越新幹線を早く上野なり東京駅に持ってきたいわけでございまして、根本的な解決方法としては、ただいま御指摘の復旧にえらい時間がかかるじゃないかということについての御指摘の点を抜本的に解決するには、いまのところどうも東北、上越新幹線を早く上野まで持ってくる、東京駅まで持ってくるということ以外にはないのではないか。それまでにも、しかしそれにしても余り時間がかかり過ぎますので、いろいろと研究はさしておりますが、抜本的にはそれ以外にはないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  85. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 上野に問題があるということはわかっておるんですね。わかってるにもかかわらず抜本的解決策を講じようとしないということは、きわめて遺憾だと思うんですよ。たとえば上野を利用する利用者は、千葉県松戸地域、柏地域、それから茨城県、これが常磐線です。それから、東北線関係で言うと栃木県、それから上信越線関係で言うと群馬県、埼玉県。埼玉県の場合は東北、上信越線いずれもということになるんでありますけれども、これだけの県の利用者が東京へ出てくるには上野を関所にしなければならない。東海道線に乗りかえのために、あるいは中央線に乗りかえるためには乗りかえを二回しなければならぬ。関西でたとえてみれば、滋賀県やあるいは岐阜県の人が大阪を経由して兵庫県に行く場合に、乗りかえの必要がないわけですよ。新大阪や大阪で乗りかえなくたって、直通電車がそのまま大阪を中心として行ったり来たりしているわけですね。それに比べると、関東の場合はどういうわけで上野を関所にして二回も三回も乗りかえなければならぬかと、こういう疑問が出てくるわけです。  新幹線を建設をするに当たっても、それらの不便というものが克服をされないでいたずらに新幹線だけを先行させようとすれば、これは地域住民とすれば、日常在来線の不便ということに対する不満がうっせきをしているわけですから、この新幹線の問題に対する理解だってなかなか得られないということになるんじゃないでしょうか。そういう点を考えるべきではないかと思うんですね。もっと在来線の便宜を図る。たとえばいま総裁言われたけれども、新幹線を東京駅でつないでスルー運転をする、できれば。そこまでいかなくとも、東京駅まで直通をさせるという気があるのに、なぜ在来線は東京駅なり新宿駅の方に直通をさせるという手だてを講じられないのか。技術的に不可能ではないと思うんだけれども、実際にはそういう方策が講じられないというのは、技術的に不可能なんじゃなくて親切心がないんじゃないか、こういう気になるんでありますけれども、受け取り方としては。その点はどうなんですか。
  86. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) そういう点の解決の一つとして、御存じのように、大宮から赤羽を経て、そしていま赤羽線と言われております線を使いまして池袋までの線をもう一本つくろうということにいたしたわけでございます。    〔委員長退席、理事桑名義治君着席〕 いま御指摘の点は、実際問題として私どもとしても苦慮をいたしておるわけで、決して放置はしていない、技術的に非常にむずかしさがあるためにおくれぎみにはなっておりますが、放置はしていないわけでございまして、その点は今度の東北、上越新幹線の開業とほぼ時期を同じゅうして、赤羽を経由して池袋まで線を一本入れてこようということは、そういう考え方のあらわれでございますので、大変遅いという御指摘は甘受いたしますけれども、全然やっていないということではないわけでございまして、そういう努力はいままでもしておりますし、また今後もやっていかなければならないというふうに考えておるわけでございまして、その点、一つにはいまの御指摘のような地区、大宮から熊谷にかけて、あるいは宇都宮にかけて、また柏なり松戸なりという地域にかけてのドーナツ現象によるところの居住者の増加、そしてそれによる鉄道利用者の増加が非常に早いということからわれわれが手がおくれたということでございまして、その点は今後のいわゆる大都市におきます通勤対策を考える場合の重点地区ということで考えておりますので、もうしばらく恐縮ですけれどもお待ちいただきたいということでございます。
  87. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 たとえばリニアモーターカー等についても、日本航空と国鉄両方で研究をしている。で、そのリニアモーターカー等はアクセスでもって考えていると、こういう話だったんですね。日本航空がリニアモーターカーを考えるのならば、国鉄が飛行機を考えたっておかしくはないわけですよね。要するに、手段はどうあろうと人なり物を運べばいいんだから。国鉄は鉄道だからといって鉄の道だけで運ばなければならぬというものじゃないでしょう。そうしますと、アクセスの方法だって、たとえば大宮始発ということになって、あとうまい手がないというのなら、大宮と新宿、大宮と東京の間をヘリコプターで連絡するとかなんとかという方法を考えたって悪くはないと思うんですよ。余りけちなこと考えないで、どうせならばそのぐらいのことを考えてもいいんじゃないかなと私は思っているんですがね。発想をもう少し大きく持てないものだろうか、そういう気がするんですよ。  非常に予算の枠の中に閉じこもって、そして利用者の不便というのを何とかしようという気がなくて、増加する利用者をさばくのに常に追われているという状態は情けないと思うんですね。現状は利用者の、要するに輸送の需要に対応できるような輸送力が備わっていないということが端的に指摘できると思います。これをやはりまず何とかするということの方が、新幹線の延長のたとえば東京延長、上野まで大宮から延長するという問題以前に大事なことではないかなという気がするのでありますが、その点はどうなんでしょうか。
  88. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 実は、都市におきます通勤対策が後手後手になっておることは事実でございます。それらにつきましてはかなり早い時期に気がついておったわけでございまして、いわゆる五方面作戦ということが始まりましたのがもう十五年前ぐらいからでございまして、それで、それがその当時考えておりましたようなテンポで進んでおればかなりいまの御批判を受けずに済んだと思うんですけれども、ちょうどその時期が環境問題がやかましくなったということもありまして、五方面作戦の中の一つである東海道線と横須賀線の分離もとうとう本年の十月にやっと開業にこぎつけたということでおわかりいただけますように、計画そのものは私はそれほど手おくれではなかったと思うんですけれども、計画をして、実行に入った段階でそうした面でおくれをとりました。  また、予算面その他につきましても、東海道新幹線が終わりますと、それを岡山までつなぐ、博多までつなぐ、そしてそれが十分完成し切らぬうちに東北、上越新幹線に手をつけたというようなことで、そうした幹線網、大動脈整備の方にいささか力を充てましたものですから、そしてその分が完全別枠で建設費がふえたわけでないものでございますから、在来線の方に圧迫になったわけでございまして、私どもは昭和五十八、九年の段階になりますれば東北新幹線の仕事も終わりますので、そしてこれが、現在全体の設備投資額の四割を占めておる状況でございますので、これが終わりましたならばそこに余力が浮いてくる、その余力をもって大都市圏における通勤対策とそれからもろもろの老朽施設の代替、リプレースメントをいままでよりは相当早いテンポのものにして進めてまいりたいと考えておる次第でございまして、いまのような御批判を受けるのはまことに私どもとして残念でございますけれども、私どもも決してそう怠けておったわけではないわけでございまして、意に反しておくれたという部分もあるということでございます。  おかげさまで環境問題等につきましても大体ある種のルールが確立をしてまいりましたから、これからはごく最近の十年間ぐらいほど物事にもたつくということではなしに対応できるのではないかというふうに考えております。
  89. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 先ほどの総裁の御答弁で、たとえば赤羽線の充実ということもございましたけれども、東京周辺で言うと、たとえば川越線等にいたしましても、輸送力がないために運び切れないという現状があるわけです。これは廃止の対象になるかならないかという地方のローカル線と違いまして、埼玉県の県内等は東京の半分の人口を擁しているわけですから、輸送力がつきさえすれば幾らでも人は運べると、こういう事情にあるわけです。したがって、たとえば赤羽線等の複線電化をして外環状線の役割りを果たさせるというような構想を持ったならば、かなり東京のバイパス路線としての役割りを果たし得るんじゃないかというふうにわれわれ考えますし、さらに赤羽線の問題にいたしましても、池袋どまりというふうなけちなことを考えないで、新宿なり渋谷なりそっちの方まで延ばしてみた方がこれは利用者としては助かるんじゃないか。  第一、赤羽線なんか見てみますと、ほとんど途中の駅で乗りおりする人は一割もいないと思うんです。あらかたが赤羽−池袋間の人です。それで満員になってしまうんです。そういう状況を見ても、この赤羽線というのはあそこで二カ所も乗りかえて多くの人が新宿方面に向かっているわけです。副都心の新宿を結ぶのは東京を結ぶ以上にさらに厄介な状態になっているわけなんだけれども、これは将来池袋でとめておかないでどうしても新宿方面まで延長する、あるいはまた上野どまりを東京駅まで延長するということを考えることの方が、新幹線を東京まで持っていくこと以上にもっと切実な問題ではないか、多くの利用者の要望にこたえることになるのではないかと思うんでありますが、その点はどうでしょうか。
  90. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 各地域でいろいろ御要請がありますし、私どももその御要請にこたえていかなければならぬと思っておるわけですが、その中で、東京におきます通勤対策で問題になっておりますことをいま御指摘になったわけでございまして、赤羽線をもう少し延ばしたらどうだ、これは御存じのように池袋が大変混雑をいたしております関係もありまして、池袋で埼玉県から赤羽を経由して入ってこられたお客さんを池袋のステーションでばらまくということは、これは池袋の混乱を増すことにもなりますので、もう少しそれを工夫したらどうかということの御要請はずいぶん大ぜいの方々から承っております。また、川越線の問題もしばしばそういう御意見は寄せられておりますし、国会におきましてもいろいろな機会にあるいは予算委員会ないしその分科会でありますとか、その他の機会にしばしば私も御質問を受けてお答えをいたしておるわけでございますけれども、いま挙げられました二つの点は、東京の通勤圏における対策として当然課題として考えるべき問題だという認識は持っております。  ただ、計画を立てましても、余り大きな計画を立て過ぎますと、それを実施いたしますまでに非常に時間がかかるということになりますので、手順を追っていかざるを得ないということで、現在は総武線を早く千葉まで拡幅いたしますことと、それから赤羽ではなくて大宮から赤羽経由で池袋までの線と、それから先ほどもちょっと触れました鉄建公団にお願いしております京葉線の問題、これに主眼を置いているわけでございまして、それらの線の仕事があるめどがつきました場合には、いま御指摘のところあるいはまた中央線の三鷹−立川間の増強といったような問題が、いずれもそう遠からざる時期にわれわれが取り組まざるを得ない問題になるのではないかというようなことで内々は考えておるわけでございますが、いまはまだもうちょっと現にやっておりますものの方に集中的に投資をしてまいりたいというふうな考え方でございます。
  91. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 たとえば総武線と横須賀線の連絡もできて千葉と湘南方面との運転もスムーズにできるようになっているわけであります。にもかかわらず、どういうわけか上野どまりの列車の場合はがんとして乗りかえを二回以上強要されるようになっているんですね。これは関東、特に関東でも北関東あるいは茨城、千葉北部といったような利用者にとってはきわめて遺憾な話なんです。いままでこの委員会でも赤字線区の問題がずいぶん論議をされてまいりましたけれども、私がいま指摘をしておりますのは、赤字線区じゃなくて黒字線区の中で、赤字線区の問題も確かにこれは公共性という立場から大事なことでありますけれども、黒字線区でもってたっぷりかせぎを上げている地域の住民に対して不親切きわまることを続けておったのでは、これは今度は金を出す方がますます出さなくなりますよ。せっかくもうけさせている黒字線区の利用者のために、もっともっと親切な配慮をするのがやはりこれも一つ公共的な使命ではないかというふうに考えます。その点、総裁により一層の注文をつけておきたいと思います。  それから最後に大臣に、時間の関係でこの辺で打ち切りたいと思うんでありますけれども、大宮と伊奈の間に新交通システム、モノレールでありますが、年内にも事業免許の申請ということがあるんでありますが、モノレールというのは何か建設省の方にひっかかっておるというような話はまことにおかしな話なんで、モノレールであろうと鉄道であろうと、交通運輸省というふうに一元化をして考えていいんじゃないかという気がするんですけれども、今後モノレールといったようなことは考えられる点が多いんじゃないかと思うんですね。つまり鉄道で運ぶほどのことではない、あるいはまた地域によっては踏切等がない方がいいという場合には、このモノレールみたいな新交通システムはどんどん考えられてしかるべきだと、リニアモーターカーもずいぶん先の話でありますけれども、リニアモーターカーも確かにこれは実用的になったとすれば画期的な交通機関だろうと思うんですけれども、モノレールなんていうのは具体的に手近な交通機関として私は考えていいんじゃないか、やはり運輸省としてこれは一元的に考えていいんじゃないかというふうに思いますが、その点はどうですか。
  92. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) モノレールは軌道式鉄道という考え方がとられておるように思うのでございまして、おっしゃるようにこれはもう運輸省で一元的にやるのが一番望ましいと思うております。そこで、建設省のいわば軌道式考え、これは運輸省と建設省と共管事項になっておりますから、これを改め、運輸省の所管事項として位置づけをいたすように今後も努力してまいります。    〔理事桑名義治君退席、理事目黒今朝次郎君着席〕
  93. 桑名義治

    ○桑名義治君 先日の委員会におきまして、今回の法案の十三条につきまして、国鉄運賃法の第一条の考え方とこれは相反するのではないか、こういうふうに申し上げたわけでございますが、この点について再度御意見を伺っておきたいと思います。
  94. 山地進

    政府委員山地進君) 前回お答え申しましたのは運賃法の四原則の一番最初にございます「公正妥当」ということでございますが、地方交通線につきましては現在その公共性ということで国からの千億を超える助成金が出ておるわけでございます。それから、その千億を超える以前、昔の段階におきましては、地方交通線というのは国鉄の内部の補助という形で地方交通線が維持されていた。これは国鉄の全国一律運賃制ということの中で、つまり一律賃制という制度を通じまして地方交通線の内部補助を実現していたということでございます。    〔理事目黒今朝次郎君退席、委員長着席〕 それが現在のような国鉄全体が赤字になってまいりまして、政府の助成、地方交通線の助成という形で、今度は言ってみれば国鉄を利用されない方々の国民一般の税金という形で一部負担されてきている。それから、それだけでは国鉄地方交通線の赤字を全部は覆い得ないから、したがってその残る部分の赤字については依然として国鉄の内部補助という形でこれを補っていくという形が現在とられているわけでございます。そこで、今後その地方交通線という公共性の高いものにつきましてどうやって維持していくのかということから、その政府の助成とそれから国鉄全般の内部補助と合わせて、その地域の方々、それを利用される方々の運賃負担ということで地方交通線の維持をしていくということは、私どもとしてはこの運賃法の公正妥当という原則からいってそれは公正妥当と言えるのではないかということが第一点。  それから二番目の、原価を償うことということは、私どもの方の五十四年の十二月の閣議了解におきましても路線別運賃という観念の導入を入れておりますが、そういった意味からも路線別に原価というものをある程度見ていくということにはなる。  それから、産業の発展に資するということは、これは国鉄全体が産業の発展に資することでございまして、特別運賃の導入ということにつきましても、すでに地方の地方鉄道は国鉄運賃よりも高い運賃を取っておりますので、これもその点については適合するのじゃないか。  四番目の、物価、賃金の動向のことがございますが、その点につきましては、こういった特別運賃といいますか、国鉄運賃の設定の場合の心構えといいますか、そういうものについて物価とかあるいは賃金というものについて配慮すべきであるということでございますので、特別運賃の設定に当たりましては、今後も物価の動向なりあるいは激変緩和ということに十分配慮しながら上げていきたいと、かように思っておりますので、この点についても運賃法の原則というものは守っていけるのではないかと、かように考えているわけでございます。
  95. 桑名義治

    ○桑名義治君 いまの局長の御答弁の立場というのは、おたくのいわゆる財政上の立場からのお話であって、利用者の立場からのお話ではないわけですね、現実は。利用者の立場からのお話ではないわけです。  なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、端的に言えば、局長のいわゆる公正妥当なものであることというこの項目については、いわゆる地方赤字ローカル線赤字の部分を補てんをしておった、そして運営をしておったんだから、それが今度は利用者の方々からその分は取るんだから、徴収するんだから、だからこれは妥当なんだというような物の言い方でございますが、じゃ現在の国鉄全体の立場から見た場合には、地方ローカル線の赤字の比率というものはどういう比率になるんだろうか。幹線の場合だって大量の赤字を抱えているわけです。ここは放置されて、そしてこの今回の特別ローカル線になっている部分にのみこういう特別な運賃をかけるということは、これはどうしたって使用者の立場から見た場合には公正妥当なものであるという考えにはこれは至らないわけです。  また、この問題につきましては、日本国有鉄道法の第一条の中にもこれははっきり載っているわけですね、「国が国有鉄道事業特別会計をもって経営している鉄道事業その他一切の事業を経営し、能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共福祉を増進することを目的として、」と、こういうふうにはっきり目的をうたっているわけです。そしてそれを受けて国鉄運賃法の総則の第一条にこういうふうにまた目的がうたってある。そういうふうに二重三重と公共性をうたいながら、一部にそういう公共性を破棄してしまう、この論理がどうしても私には理解できないわけです。先ほど大臣質疑の中で、採算制と公共性の両立は至らない。したがって一部では採算制をとるが一部では公共性をとる。じゃ公共性をとる部分はどの部分なんですか、採算制をとる部分はどこの部分なんですか、それをお答え願いたい。
  96. 山地進

    政府委員山地進君) 先ほど来独立採算制に関連して、能率的な運営あるいは独立採算制ということと公共性ということで大臣も申し上げたと思いますが、公共性というのは、いまお読みになった日本国有鉄道法の第一条の部分で申し上げれば「公共福祉を増進する」と、これは目的だと思うんです。それから「能率的な運営により」というのは手段であろうかと思うんです。それで、その「能率的な運営により」ということをどうやってやるかといいますと、それの一つの方法として独立採算制ということで、この日本国有鉄道法にはいわゆる官庁会計の硬直的なやり方から見れば、かなり緩和された方法で国鉄運営ができるようになっているわけです。  そういったことで、国鉄独立採算制ということを通じまして公共的な目的を達成しようというわけでございますが、そこで、じゃ国鉄公共的な目的というのは現在どの程度まで達成されているのか、そのために公共的な目的を達成するのだから、国有鉄道の努力、つまりそれから利用者負担だけでできるのかといいますと、それはできませんで、例の国鉄の経営負担を超えるようなものについては構造的欠損として税金という形で出てくるわけです。その税金が何で出てくるかというと、やはり国鉄公共的な事業をやっているからだと。そこで、その公共的な目的に即して企業負担を超えるものについては政府が助成していく。そこで、一体公共性とそれから独立採算制とそれから国の助成ということで、公共的な目的にひとつポイントをしぼってやっているわけですけれども、現在の状態ではとても公共的な使命というものを達成するのはむずかしくなってきている。つまり赤字が大きくなっていると、そこで、その赤字の大きくなっている部分の一つである地方交通線については、公共性があるのだけれども、ほかの代替手段公共的な目的は達成できるんじゃないかという論理がずっと私どもの流れだと思うんです。  そこで、いまの御質問の運賃を負担するのはどうなんだといいますと、先ほど私が申し上げましたように公共性があって、普通ですと先生おっしゃるように幹線のところでも赤字がある。これは内部補助でやっているわけです。ところがこの幹線については、幹線が赤字だからといって助成というものはなされていないわけです。ところが地方交通線は、幹線と違いまして内部補助のほかに国民の税金というもので補助を受けている。そこで、私は受益者の負担ということについては、ほかから見ればそこは大きくなっても公正妥当ではないだろうかと、かように申し上げているわけでございます。
  97. 桑名義治

    ○桑名義治君 今度は大臣にお尋ねしますが、先ほど大臣は、いま申し上げましたように御答弁の中に、いわゆる採算制と公共性とは両立しない非常にむずかしい面がある。したがって部分的には採算制をとるけれども、公共性をとる場所もある。こういう意味の御答弁をなさったわけですが、端的に言えばどういうところとどういうところというふうにお考えになっていらっしゃるんですか。
  98. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 私は場所によって公共性独立採算制を選択すべきじゃないと思うております。そうじゃなくして、経営全体の方針というものが、場合によっては公共性にうんとウエートを置くときもあれば、場合によっては独立採算制にウエートを置かざるを得ない、現在は独立採算制といいましょうか、経営の基盤を強化するためにはやむを得ず採算ということを重視した政策をとらざるを得ないと、こういうことを言ったわけであります。
  99. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、この公共性の問題と同時に、これは特別運賃の問題と同時に路線の切り捨ての問題にも入ってくるわけですが、憲法第二十五条の「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と、こういう条項があるわけでございますが、この条項との兼ね合いをどういうふうにお考えになりますか。
  100. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それはその権利を有するということは、これは憲法にうたっておりまして、当然政府としてもその努めをいたさなければならぬ、当然のことだと思います。
  101. 桑名義治

    ○桑名義治君 それは政府としての立場からお考えおっしゃっておるわけでございますけれども、この国鉄法国鉄運賃法との一条、お互いに一条でございますが、この「目的」と、それから「総則」の中にあるわけでございますが、この兼ね合いをどういうふうにお考えになるかということをお聞きしておるわけです。全体の枠として政府が守っていくことはあたりまえの話なんです。
  102. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 国鉄運賃法一条に言いますところの公正妥当というのは、何も全国統一してこの運賃はこうでなければなりませんと、そういう趣旨を貫くという趣旨ではないと思うのであります。要するに、すべての国民のすべての方々に不平等な不公平な扱いをしてはいかぬという趣旨でございまして、その与えるべきサービスとそれから与えるべきサービスのコスト、そういうものを公正に扱わなければいかぬという趣旨でございまして、だから全部同一運賃というわけにはいかないと。電話だってそうでございます。電電公社は今日公共性独立採算制をりっぱに果たしております。これはみごとに果たしております。けれども、電話は全部かけるところによって皆違います。これはやはり与えるべきサービスとの対比であろうと、私はそう思うんです。  そういう意味において、これがたとえば九州だけは運賃を高くしてサービスを思いっ切り落とせ、北海道は思いっ切りサービスをよくして運賃を安くしろ、こういう考えで臨んではいかんぞということであって、同じようなサービスで同じような程度の施設提供、そういうものであるならば、それを公正に扱えと、「公正」と書いてございますから。統一とは書いてない。そこをひとつ御検討いただいて、まあまあこれはわれわれも公正にやるように一層努めてまいりますから、どうぞひとつ御認識をしていただきたいと思います。
  103. 桑名義治

    ○桑名義治君 なぜ私はこういうことを言っているかというと、いわゆる憲法の二十五条の中で、その後いま読み上げた上に、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と、こううたっているわけです。そういう立場から考えた場合に、この条文というのは、生活できない人に生活保護を渡せということだけではないはずなんです。地域の生活が、地域の全体が落ち込んでいるところにも政府は温かい手を伸べなければいけませんぞと、そして全国おしなべて平均的な生活をやらせなければいけない、こういう論理だと思うんですよ。それから見ますと、今度のいわゆる廃止路線にしてもあるいはまたこういう割り増し運賃の路線にしましても、その地域の格差というものを考えていただきたい。  たとえば私は産炭地に住んでいますから調べてきましたが、生活保護の場合を考えますと、五十四年の十二月現在、全国のいわゆる保護率は、百人に対して一・二三%、筑豊地区は一〇・四%なんです。猛烈に落ち込んでいるわけですね、生活の状態というものは。それから有効求人倍率を考えましても、全国は〇・七五なんです。筑豊方面は〇・二四、それから財政力指数、これを見ましても全国的平均がいわゆる〇・三六ですね。ところが川崎町、添田、大任、糸田、碓井と、こういうふうに町村があるわけですが、このいずれも〇・一八、〇・一五、〇・一九、〇・一八、〇・一九、財政力指数を見てもいかに市町村が疲弊をしているか、生活保護世帯の率を見ましても全国的の十倍の生活保護を抱えている。こういう状況にあるし、有効求人倍率を見ましても、全国が〇・七五で〇・二四、こういったところに手を差し伸べてこそ初めて公共性というものが浮上してくるんじゃないか。憲法にうたわれている二十五条の精神というものが生かされてくるんじゃないか。  そういうところをむやみやたらに打ち切ってしまうということはその憲法の精神にも外れていると、こういうふうに言わざるを得ないわけです。したがいまして、いわゆる国鉄法の中にも運賃法の中にも公共性というものをうたっているから、その公共性というものをどこに視点を置いて考えるかということが最も大事なことだと、こういうふうな立場から、観点から、私はこの問題の質疑を続けているわけです。どうですか、その点は。
  104. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 筑豊地域がいわば産炭地でございまして、その石炭の需要供給の関係から、その地域が経済的に低下してきておると、これは私たちも承知いたしております。だからと言って、行政水準はちっとも変わっておらないと思うのです。もし行政水準においてそういう差別をするということになると、これは大変な問題でございます。けれども、あるべき行政水準、それはむしろ筑豊地域におきましては産炭地域振興対策とかいうことを講じておると私は思います。  一方、国鉄といたしましては、それはその地域のそういう特殊性ということは認識はいたしますけれども、しかし、国鉄は全国にわたって同じ水準で物を考えなきゃならぬのでございまして、その場合、特定の地域はこうであるから、あるいはこちらの地域は特異な事情であるということを考慮をして政策を図っていくということは、これは国鉄としてはなかなかむずかしいこと。多少の公共機関としてのそれの配慮は当然いたさなければならぬと思います。しかし、今度の法案でお願いしておりますのは、あらゆる全国標準を見まして、水準を見まして、この基準に照らしてこの以下の特定地方交通線に対しては足の確保というものは行政の力でやってもらいたい。企業の力、いわゆる国鉄という企業ではなくして、行政で処理していただきたいということがこの精神です。だから、筑豊地域だけを国鉄が故意に水準を落とそうということを思うてはおりませんし、また、筑豊地域だけでそれでは特異の基準を考えろとおっしゃっても、これは全国的な基準運営しなきゃならぬ国鉄といたしましては多少無理なことではないかと思うのでございます。  ですから、要するに、そういう地域に対しましてのこれからの交通のあり方というものをどうするかということを、これは地方自治体と国とが懸命にやっぱり検討し、その対策を講ずべきだ。われわれといたしましても地域の振興ということは、まずやっぱり地方自治体でございます。憲法に同じくやっぱり国は地方自治体の権限を侵してはいかぬということもございます。ですから、地方自治体がやっぱり中心となって国と地方とが協力した上で地域交通というものを考えていただくべきときに来ていると思うのでございます。それがためには、あらゆる行政機関の協力、たとえば産炭地域振興事業団というのもございますし、そういうものも動員をし考えていかなきゃならぬと思うのであります。
  105. 桑名義治

    ○桑名義治君 これは産炭地の問題、また後でいろいろと論議を進めたいと思っているわけでございますが、これはいまの公平あるいは公共福祉という立場からこの問題をちょっと出したわけでございますが、いまの御答弁の中にまた第三セクターの問題やバス転換の問題が出ましたので、この問題についてもちょっとまたお尋ねをしておかなければならないと、こういうように思うわけでございますが、バス輸送に転換をした場合には、これは経営赤字の場合は五年間の助成をする、それから転換交付金はキロ当たり三千万、それから定期代の補助は一律これやっぱり三千万ですか、一キロ当たり。
  106. 山地進

    政府委員山地進君) 三千万円の中です。
  107. 桑名義治

    ○桑名義治君 三千万の中に入っているの。まあそういうことでございますが、これは政令で決めるんですか。それともどこかの、どういう形で地方自治体には示そうとお考えになっていらっしゃるんですか。
  108. 山地進

    政府委員山地進君) この法律の二十四条にそれらの規定があるわけでございますが、この二十四条にお読みいただきますように、二項に、予算の範囲内において廃止の円滑な実施のために要する費用を補助することができると、それから運営費の補助につきましては、「政令で定めるところにより、その事業の運営に要する費用を補助することができる。」ということでございまして、この三項に言います運営費の補助につきましては政令で定めようと考えています。
  109. 桑名義治

    ○桑名義治君 これ、第二十四条を私は見ているんです。読んでいるんです。しかしこういう細目にわたっては何も出てこないんですよね。したがって、これはどこで決めるんですかと、この金額は。それはどういう経過のもとに決まったんですか。そしてどういう姿でいま地方自治体なりこういった廃止路線の市町村の方々に通知をしたんですか、それと積算の基礎はどこなんですかと、これを聞いているわけです。
  110. 山地進

    政府委員山地進君) ここに書いてございますように、「予算の範囲内において」ということでございますから、基本的には予算で決まってくるわけでございます。それから、現在私どもが三千万円というようなことを申し上げておりますのは、この五十五年度予算におきまして私どもの方で成立している予算が単価三千万円であるということでございます。したがって、これをそれからどうやって決めるかということでございますが、実際のこういうケースが起こりました場合に、転換交付金につきましては補助金交付要綱というので決めていく、その中に書いていくという、したがって大枠については予算で現在は決まっている。個々にどういうふうにそれを支給するかということについては補助金交付要綱で決めていく、こういうことになるわけでございます。
  111. 桑名義治

    ○桑名義治君 なぜ私はこれをわざわざここで持ち出したかといいますと、これ、実は自治省からいただいたんです。自治省としてはこれだけのことは全然わかりませんと言う。そうすると、いまの局長の御答弁自治省のとらえ方がもう違うわけです。というのは、定期代の差額補助一つをとってみても、所要額は乗客数によって大きく異なる。一律三千万というのは不合理ではないかと、一項目から成っている。それからもう一項目として、転換交付金キロ当たり三千万の算出根拠いかんと、これは二段構えで挙がっているわけです。二項目に分けて挙がっている。いまのいわゆる局長の御答弁は、転換交付金の三千万の中に定期代の差額の補助も入っているんだという御答弁なんです。どっちが本当なんですか。
  112. 山地進

    政府委員山地進君) 転換交付金三千万円、これ、現在予算でできているわけでございますが、これをどういうふうに使うかということにつきましては、私どもの分類といいますか、そういうものによれば定期券の差額補助に、それからもう一つは固定費のバスとかあるいは車両というようなものを買う場合がございます。そういった初期投資的なもの、それから地方公共団体の関連施設の整備費というもので道路の補修とかあるいはガードレールとかいろんなことがあろうと思うのですが、あるいはバスストップとかいろんなことがある。そういうものを含めて三千万円ということで計算したわけでございます。
  113. 桑名義治

    ○桑名義治君 全くこれ、ずさんな私は数字だと思いますよ。いままでの恐らく論議の中で、この三千万の転換交付金というのは恐らく委員の方々はこれは投げ渡しであるけれども、バスの差額金はこれまた別だとお思いになっていらっしゃったんじゃなかろうかと思うのです。そして道路の部分として三千万ということになりますと、これはまた大変な見込み違いになるわけです、地方としましては。たとえばこの定期代の差額の補助率三千万、こういうことになっても、いま申し上げましたように、乗客数によってずいぶんと違ってくる。乗客数が非常に多いところはこれは三千万がふっ飛んじまって、何のほかにも使いがいがなくなってしまう。そんな投げ渡しで、ただ単に三千万だけぽんと渡して、地方のこのローカル線は切りますよと、全くずさんきわまりないと思うわけです。不親切きわまりないと私は思わざるを得ない。その点はどういうふうにお考えになっているんですか。
  114. 山地進

    政府委員山地進君) 私どもいままで地方公共団体等と何回か御折衝申し上げているわけでございますが、その場合に、事あるたびに一キロ当たり三千万円の転換補償金を出しますと、その使途はいま私の御説明しましたような定期の差額補助あるいはバスの講入あるいは道路等の固定施設の整備というようなことをごく詳しく御説明しておりましたので、あるいは本委員会では初めてだったかもしれませんけれども、この点については御理解を賜っているはずだと私どもは思っております。
  115. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましてもこの三千万の根拠はありませんよ。この三千万を一律にぱっと交付したとしても、これは物すごくバランスが崩れてしまいます。不公平がまたここで生まれてくる。そう思いませんか。物すごく通学者が多い場合、通勤者が多い場合、これはこの差額がこの三千万でふっ飛んでしまうところがあるかもしれません。そしてまた逆に余るところもあるかもしれません。しかし、いずれにしましても一キロ三千万という事柄は、そういう立場でいろいろな要素で使われた場合には、わずか三千万はこれはどうしようもない金額ですよ。余りにも涙金と言った方がいいんじゃなかろうかというふうに思うわけですがね。そういうふうな用途で、あらゆる用途にこの三千万を使えということなんですか。もう一遍確認しておきますよ。これは問題ですよ。
  116. 山地進

    政府委員山地進君) 一応私どもの考え方といたしまして、従来四十六年から国鉄がこういった転換ということに際しまして補償金、交付金を交付しているわけです。これは国鉄の予算の中で交付しているわけなんですが、それが三百万円であったわけです。そこで私どもの方で現在の地方交通線の旅客の実績というものあるいはバスの講入代とかそういったものを一応当たりまして、それで三千万円ということを決めたわけでございまして、この法文にございますように、円滑に促進するためということでございますので、その使い方等については各路線の個々の特殊事情に応じて、これはその中をどういうふうにお使いになるかということは別に私どもここでとやかく言うつもりはございません。そういう意味で、ある程度これぐらいのことの中で御処理いただけるという数字を私どもとしては計上しているわけでございます。
  117. 桑名義治

    ○桑名義治君 新たに道路をつくる場合だって、一キロ三千万じゃできませんわね。バスを買った場合、これは通勤客が多い場合には大量のバスを買わなきゃならない、こういう状態が生まれてくる場合もある。そういうように地域の実情が全部違うわけですね。その地域の実情を全く無視して一律的にぱっと三千万だけ渡すというところに不合理はないかと言っている。これは積算の基礎をはっきりして多少幅をつくっておかないと必ず問題になりますよ。大臣どうですか。
  118. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それは一線一線細かく何かの基準を設けて計算する、それはやっぱり行き届いた方法だろうと思うんですが、しかし、これは一キロ三千万円という割りで予算を国から運輸省が獲得いたしまして、それをいわば国鉄に渡す。で、その場合、使途につきましてはこれはいろいろそれは地方によって違うだろうと思うんです。で、いまお聞きしておりましたら、定期のお客が物すごいおってそれに三千万円食われてしまうというお説でございますが、そういう地域はあるかもわかりませんが、そんなに乗ってくれるところだったら何もこれ特定交通線として転換する必要ないんです。大体いまこの第一期六十年までやろうというのは一日二千人キロです。ですから、それから計算していただいたら乗客の人数というのは出てくるわけなんです。ですから、そう全部、三千万円が全部それに消えてしまうということには私はならないと、こう思うんです。  で、それが一つと、それからできるだけその線別にやったらどうだとおっしゃいますが、何か基準があって、それによって、その基準で、それこそ沿線の長さによってこれを配分するというのはやっぱり公平だろうと、こう思うんです。ですから、キロ数に応じて配分する金額も違ってくるんですから、だからそこらもひとつ考えていただけないか。  それともう一つ、それじゃあ三千万円が適当なのかどうかということになりましたら、これはまさに議論の尽きないところだと思います。しかし、いろんな計算をいたしまして、国も現在財政困難の最中でございますから、だから国の財政とも勘案し、まあ三千万円というところに落ちついた。その中身につきましては、いろいろな過去におきます経験則から来ておるということでございまして、別にこれとこれとこれとの積み上げということで計算をした結果として三千万円というものがはじき出されてきたものではないと申し上げます。
  119. 桑名義治

    ○桑名義治君 あのね、なぜ私がしつこくこの三千万にまたかみついているかと言いますと、それは全部定期の差額でふっ飛んでしまうことはないかもしれません。だけども、その定期の差額金を補充して、多いところと少ないところが出てくる。それと同時に、全部道路に、多いところは特に道路にこれは大変な今度は荷重がかかるわけでしょう。道路の補修なり道路のいわゆる拡幅なり、いろいろな面で経費がよけいにかさむんです、現実に。いまもう完全に道路がすきっ放しのところはいいですよ。だけどもそうでないところは、現在国鉄の通勤客の多いところは、バスに転換をしたとしても今度は道路が渋滞を来してくることは事実なんです。そうなってくると、そういうところは非常に経費がよけいにかかる。その経費のよけいにかかるところと経費のかからないところの差が非常にアンバランスな状態が生まれてくるということを私、申し上げているわけです。だから、そういうことから考えますと、この三千万というのはもう涙金というふうに考えざるを得ないわけです。  これは多少の幅をつけるわけにはいかないんですか。何か積算の基礎みたいなものをつくって、そして幅を持たせながらそこら辺はやっぱり対応していくのがベターだろうというふうに思うわけですが、どうでしょうか。
  120. 山地進

    政府委員山地進君) 実はこういう三千万円を出すときに、私どもとしても先生のおっしゃるようなことで、これをその使途別に分けてやったらどうだということで議論もいたしました。そういういろんなことをやった場合に、これだけのことをやっていくのに転換される方の方の立場からいって確かに公平という観点の問題はあるわけでございますけれども、最初に幾らになるのかということについて、やはりわかりやすくした方がいいのではないだろうかということで、実は細かい基準もなしにとにかく三千万円でやったらどうだろうかというふうにいったわけでございまして、今後のいろいろ私どもがお話し合いをするについて、一体幾らになるんですかということをいろんな尺度をつくってやりますと、それがうまくいくかなということで、三千万円の一律の方がかえって公平になるんじゃないかということを考えたわけなんでございますけれども、おっしゃるようにいろんなところで問題が起こると思います。  ただ、私ども考えるのに、その非常にお客の多いところというのは、逆に言いますとある程度過疎でも上の方になるかなと思うんです。そうすると、いろんな意味で、それだけ人口の集中しているといいますか、ある程度張りついているところと張りついていないところと、それをまた、お客が少ない、つまり過疎のひどいところには転換補償金は少なくていいということが公平なのかなということもまた片方では考えなきゃいけないんじゃないかということもあります。  それから、この費用の中で、定期差額補助、それからバスの事業の初期投資とか、そういった事業費のほかは、かなり地方公共団体負担の軽減といいますか、負担を助成するというような意味の金がまあ第三カテゴリーには入ってくるわけです。そこのところは地方公共団体の方でも御協力いただければと。まあそれだけ過疎度の低いところは幾らかはその部分が多くなってもいいんじゃないかと。まあいろんなことを考えまして三千万円にしたわけで、全然考えなしにやみくもにというわけではないわけでございますが、むしろいろんな御意見を私どもも頭の中で考えましたし、先生もいろいろお考えいただいているとは思うわけでございますけれども、結果的にはどうも三千万円でやらしていただいた方がいいんじゃないかと  いまでも考えているわけでございます。
  121. 桑名義治

    ○桑名義治君 またここら辺でつかまっていると次に全然進みませんので、次に進みたいと思いますが、もとに戻しまして、国鉄の運賃法の附則では、経費増加分の限度内では国鉄運賃の値上げは国会にかけることなく運輸大臣のいわゆる認可ですでに可能になっているわけでございますが、地方交通線の割り増し運賃については国会のこれは承認はなくて可能となるかどうか、この点について御答弁願いたいと思います。
  122. 山地進

    政府委員山地進君) この運賃も、運賃の集合が国鉄の増収額になると考えておりますので、これは国鉄が、このいまお読みになりました運賃法十条の二の二項で許されている範囲内である場合には、国会の承認にはかかわりなく運輸大臣認可でできるというのが私どもの解釈でございます。
  123. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、この割り増し運賃制度というものをまた考えてみますと、非常に不合理が出てくると思うんですが、この割り増し、六十年までの間に五割増しということでございますけれども、この五割増しが現時点の運賃の五割増しなのか。今後まだ運賃の値上げというものがあり得るわけです。それにプラスまた何割かずうっと掛けていきますとこれは大変な値上げになるわけでございますが、この計算の基礎はどういうふうな形に持っていくつもりでございますか。
  124. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私どもは、地方交通線につきましては大体四千億の経費がかかっております。それで収入が千億ということになっておるわけでございまして、三千億そこに差額がございます。その三千億のうち約千億強、五十五年度予算では地方交通線のための補助金というものをいただいておるわけでございます。したがって、残りは二千億ということになるわけですが、二千億はどう始末がついているのかといいますと、ある部分は幹線の方の黒字がそっちへ回っているということも言えますし、ある意味では赤字のままそれが残って、そしてこの再建期間中も累積赤字という形で六十年まで順番に未処理のまま残っていくというような形になるかと思っております。  そこで、補助金もそういうことで以前と違いまして大変巨額になってきまして、全然鉄道を利用なさらない国民の負担ということが無限にどんどんふえていくというのもいかがかということから特別運賃という考え方が出てまいったわけでございます。しかし、さりとていまの数字から申しますと、それをいまの仮に地方交通線の補助金が大体一千億ベースでその後変わらない、そしてまた、東京、大阪といったような地域で私鉄に比べて国鉄の方が高く、これ倍近い事態にまでなってしまいましたので、内部補助というようなこともなかなかできにくいということを前提に考えますと、いまの千億の収入を三倍、三千億にしなきゃならぬというようなことになってしまうわけでして、これはいかに考えても常識を外れておる。  それから、私鉄の運賃水準のうちの中小私鉄と国鉄の水準をいま比べてみますと、大体国鉄の運賃に対しまして私鉄の運賃は二倍を超えておるわけでございます。これも少しひどい。いま千億という補助金を固定をして、そしてその全部をもしコストだからといって地方交通利用者に御負担願おうとすれば三倍になるし、せめて私鉄並みということで考えるとしても二倍になるというのではどうも余りにも非常識だというようなことから、私は達観的に六十年までこの制度で割り増し運賃という制度を採用させていただくとしても、まあ五割ぐらいまでを目標にして前進的にそれに近づけていくというところが限度ではなかろうかということでございまして、何かよそに根拠を求めようとしますと、五割というような程度じゃなくて三倍とか二倍とかという数字が出てきちゃうわけなんですけれども、それはどうもいかにもぐあいが悪いなというようなことから、それはなぜ倍にしないのかとか六割増しにしないかとか七割増しにしないかとか、あるいは三割増しか四割増しぐらいがよかろうかと、いろんな御議論あろうかと思いますけれども、まだ私どもそこまで詰めたわけじゃなくて、三倍も非常識だ、二倍も非常識だというような感じから五割増しぐらいが限度ではなかろうかと思うわけでございます。  特にただいま御指摘になりましたように、この再建期間中、基本賃率を経費の増加に見合ってということは、五%前後のところで一般賃率も上げざるを得ないという立場に追い込まれておりますことを考えますと、その毎年の一般の賃率の上げ幅とこの特別割り増し分とを掛け合わせますと、先般小笠原委員からの御質問に対してお答えいたしましたような大変高い倍率の数字が出てくるわけでございまして、そういう点を考えまして、今後毎年運賃改定をお願いします際に、いろいろな事情を十分考えながら具体的な割り増しの率をベースにした運賃改定の案をつくりまして運輸大臣にお願いをすることにしたいというふうに考えております。  この問題も、その前にまず、特別運賃という場合に、コストだけで申しますと、収支係数が全部で九千キロで四三〇ぐらいになっているわけですけれども、それはまあ二五〇のところもあれば、三〇〇のところもあり、コストが千円で運賃が百円というようなどころもあるわけでございますし、線区ごとに非常に違うわけでございますけれども、それもどうもいかにもぐあいが悪いということから、現段階では多段階割り増しではなくして、現在の基準運賃に対してこの九千キロ全体について割り増しというか、別建てというか、そういう制度にするということを前提にしてそう考えておるわけでございます。  いずれにいたしましてもこの特別運賃というのは、先般来各委員から御指摘がございますように、明治三十年代に国鉄が私鉄を買収をいたしまして、国有化をどんどん進めてまいりまして以来続けてまいりました均一運賃というものから離脱をするという非常に重要な問題をもっておりますので、この利用者の皆さんにはいろんな意味での、どう申したらよろしゅうございましょうか、アレルギーとでもいいますか、刺激とでもいいますか、まだ全然ふなれのところでございますから、大変御心配いただいておりますように影響が大きいと考えるわけでございますので、五割増しぐらいかなということを、先般来衆議院の段階におきましても、当委員会におきましても、私申しておりますけれども、さて、これを具体的にどういうふうに進めていくかということについては、これはよほど慎重に、またいろんなことを考えながらやっていかなければならないというふうに思っているわけでございます。  まだ何分にもこの運賃問題についての専門家といいますか、交通問題についての専門家といいますか、そういう方の御意見はいろんな形でいろいろ伺いまして、こういう状態であれば一律運賃をやめて二段階ないし三段階ぐらいの方式をとるのはやむを得ぬかということについて、そうした専門家の方々には御相談したことはあるんですけれども、近来新聞の投書等も見ておりますけれども、かなりいろいろな意味での影響があるだろうという御意見が寄せられておりますので、私どももさらにいろんな形でいろんな方の御意見を承った上で最終的な判断をいたさねばならぬというふうに考えておるのが今日の段階でございます。
  125. 桑名義治

    ○桑名義治君 五十六年度も四年連続の運賃改定をやるつもりですか。そういう話がちまたには出ているようでございますが。
  126. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) これはうわさでなくてそういうふうに考えております。と申しますのは、ことしの八月三十一日に運輸省から予算要求書をお出しいただいたわけでございますけれども、そこでは五十五年度に比べまして二千百億円の増収を織り込ませていただいておるわけでございまして、これはそういう数字になりましても、五十六年度の収支見込みは非常に悪い状態になるのではないかと大変心配をいたしております。五十五年度は物価、賃金等の上昇率に比べましてかなり抑え目の五%以下の運賃改定でやらしていただきましたけれども、そこへ非常なコスト増が出てきておりますので、五十五年度はいまの見通しでは非常に悪い決算になるんではないかと思っております。そういうこともありましてどうしても五十五年度にはまことに残念ながら相当大幅な運賃改定をお願いせざるを得ないというふうに考えておる次第でございます。
  127. 桑名義治

    ○桑名義治君 すでに五十六年度も運賃改正をやりたいというお話がございます。こういう状況の中にいきますとますます既定の運賃もどんどんどんどん上がっていく、それにまた五割増し五割増しでいかれるとこれもかなわない。実際に現在の運賃から見た場合にはこれ何倍ぐらいになるかわかりませんけれども、基礎の運賃がどの程度上がるかわからないからこれ積算ができないわけでございますけれども、いずれにしましても、これは五割増の運賃制を導入したところで国鉄赤字の全体から見た場合には非常に微々たるものだと思うんですよ。どうしてもそういう立場から考えると私たちは納得いかないわけでございますけれども、また国民感情としても地域の方々は納得できないと思うんですが、これが国鉄再建一つの柱になっているというふうに考えますと、地元の人は笑止千万だと、こう言っているわけですが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  128. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私どもは運賃について各方面からいろいろ御意見をいただいております。率直に申しまして、最近数年、毎年運賃改定を実施さしていただいておりますので、いわば悪評さくさくというところでございますけれども、しかし、それでもなお補助金をいただきます前では大体一兆四千億という赤字になっておるわけでございまして、一世帯当たり五万円ぐらいずつ御負担を願っているということになります。これは、しかも運賃を、国鉄を御利用いただいている方、いただいていない方に関係なくすべての国民の皆さんから一世帯当たり五万円なり六万円なりというものを出していただいている。これは、現在出していただいている分と後世代にお願いする部分とあるわけでございますが、これはまことに巨額なものであるわけでございますから、どうしても国鉄が今後とも仕事を続けるということを前提にして考えますと、やはり相当程度利用者に持っていただかなきゃならぬと。  いずれにしましても、赤字というのはどっかへ御負担を願わなきゃならぬわけでございまして、赤字の形で残るということは後の世代の国民の皆さんの御負担になることになるわけでございまして、そしてしかもそれは国鉄利用者とは関係のない方を含めて御負担いただくことになるわけでございますから、それには限度があるんではないかというふうに考えますと、やはり運賃改定をやらざるを得ない。  その次に問題となりますのは、大都市といいますか、都市におきます運賃と地方におきます運賃の問題でございまして、たとえば山手線の御利用の方からいいますと、五十円しかかかっていないところでなぜ百円取るんだと、どうして倍取るんだと、こういう問題が起こります。新宿から八王子まで私鉄の京王と私ども国鉄では運賃が倍、半分になっているじゃないかと、こう言われるわけですけれども、これはコストだけから言わしていただければ何もこんなに高い運賃を中央線沿線の方々にお支払いいただく必要はないんで、コストでいけばほとんど京王と同じぐらいの運賃でもやっていかれるわけなんですけれども、全体として赤字だからそこの方に持っていただくということになっておりますが、これはいろんな意味で非常な国鉄離れを起こすわけでございまして、どうしても八王子から新宿までお乗りになるお客は京王線の方の利用者がどんどんふえていくという現状であるわけでございます。  これをいつまでも従来方式で統一運賃、均一運賃でやっていくというのはいかにも能がないではないかということを考えますと、地方の方が怒りを感ぜられるのはわかりますけれども、一方においてまた都市部の方は都市部の方で現在すでに怒りを寄せられておるわけでございますので、その全体をどう調整したらいいかということにつきましては、地方の利用者のお立場の方と、それから都市部におきます利用者のお立場の方と、全く御利用にならない一般納税者の方々との間のバランスかいかにあるべきかということになってくるわけでございますので、地方の方々からいろんな意味でのお怒りの言葉は、あるいは新聞の投書により、あるいは私どもに直接寄せられますところの多種の投書により、また私どもの中の従業員の諸君も、地方におります従業員の諸君はこれは大変だと言っておりますし、都市部におります従業員は、これ以上都市部を上げてその黒字で地方部を埋めるのはそれは無理だと言っておりますし、それぞれ都市と地方とのお立場での御意見でございますので、これをどう調整していくかというのは大変むずかしいんですけれども、やはり、もはや統一運賃は守れないんではないかということで決断をいたしまして、運輸省にお願いをし、こういう法律の形になったわけでございまして、その辺は全体のバランスをどこへ求むべきかということで御判断願いたいと思うわけでございます。
  129. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、地方ではこういうことをよく言われているんです。五割増し運賃が適用されるとますます地方ローカル線は乗り手が少なくなるだろうと、そうすると今度はまた二千人以下ということで打ち切りをねらっているんじゃないかと、こういう憶測がなされているわけです。実際にこれで五割増し、五割増しがずっと続いていきますと、これは高い運賃になりますわ。そうなってくると、やはり回数の少ない国鉄に乗るよりも回数の多いバスに乗れということでまたがたっと乗客が減っていく、こういう現象が生まれることはこれはもうほとんど間違いないだろうというふうに私たちは思うわけでございますが、そういう意図があるというふうにとられてもやむを得ない。これはこういう意図は全くないんですか、どうなんですか。
  130. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) その前に、いまのうちの運賃とバスの運賃とがどういう水準にあるかということでございますけれども、現在、私どもの運賃の大体三倍から五倍というのがバス運賃でございます。特に通学定期の場合には、民間バスの通学定期割引率が私どもの方とは問題にならないぐらい少ないものですから、大体三倍から五倍ぐらいの開きだと思います。したがって、現在たとえば千円と、一カ月なら一カ月で私どもの方が千円というときには、バスは三千円だとか五千円だとかいうことになります。五割上がりましたらどういうことになりますかというと、私どもの方が千五百円で、バスの方は三千円とか五千円とかいうことになるわけでございます。その場合に、大体の場合はしかしバスの方が便利だと。駅がたくさんありますからバスの方が便利だということもありまして、ある意味から言いますと、サービス内容はバスの方がいいということが言えるわけでございますから、千五百円と三千円ないしは五千円という開きでございましてもかなりの程度バスが値打ちがあるというふうに御評価になるかもしれません。  しかし、いわゆる国鉄離れということが起こっておりますのはどこで起こっているかというと、中央線を御利用いただけないで京王線を御利用になる、京浜東北線を御利用にならないで京浜急行を御利用になる、それから小田原までおいでになるのに小田急線を御利用になると。同じような事情は大阪におきましてもっと極端でございまして、阪急、阪神、京阪と並行路線の場合には大変国鉄離れが強く起こっておりますが、そこの運賃はどうかというと、今度は逆に私どもの方が二倍になっておるわけでございますから、離れるというのはどうも残念ながらやむを得ないといいますか、その水準差がそれをもたらしておるわけでございます。  逆に、仮に五割増しにさせていただいても、また、いままで三倍だったところが二倍になると。バスの方が二倍になるというようなところにつきまして、そんなに一種のキャタストローフが起こって私どもの方からお客さんが減るということはこれはあり得ない話ではないかというふうに考えるわけでございます。また、これの対象としていま考えておりますのは、特定地方交通線であるとか、特に二千人未満のところというようなところで考えているわけではないわけでございまして、九千キロ全体について考えているわけでございますので、それによってもろもろの地方交通線についてどんどんお客さんが減っていくということを考えたり、特にいまおっしゃいますように、それをねらってそういうことをやっているんだというようなことはないわけでございます。  それよりも逆に、いまの京王線なり小田急線なり、あるいは阪急、阪神と並行しております私どもの鉄道の運賃を、上げ幅を少しでも抑えることによって、むしろそういうところでの離れ率が少なくなってくれば経営全体としては非常にプラスになるわけでございまして、全国的に私の方は見ざるを得ない、どうやって収入を少しでも上げるかということを考えざるを得ないという観点からいたしますれば、あるいは多少地方交通地域において、割り増し運賃をいただくことになった地域において仮に国鉄離れが進むということが考えられましても、それによってこの都市部の運賃改定率を下げることによってこちらの離れ率が少なくなれば、総体としてはむしろプラスになるわけでございまして、私どもとしてはこの結果寸国鉄全体の収支改善が進まなくなるというふうには考えてない、全体として考えればむしろ収支改善に寄与できるものというふうに考えているわけでございます。
  131. 桑名義治

    ○桑名義治君 結局そういうことでどんどん割り増し運賃の路線が国鉄離れを起こせば、最終的にはまたこれは切られるような状況になってくるおそれが十分にあるわけでございますが、そうなればおたくの方としては経費が落ちていいかもしれませんが、地元の人々にとってはこういう問題がそういうふうに勘ぐりたくなるほどに重要な問題として考えているということを特に申し上げたいわけであります。  次の問題でございますが、学割等のいわゆる公共負担、これを基本的にはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか、また今後どういう方向に持っていかなければならないというふうにお考えになっておられますか、ちょっと伺っておきたい。
  132. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 学割は大変長い歴史を持っております。正確にちょっといま記憶は定かでございませんけれども、明治のころからずっと進んできているわけでございます。そうしてその間、昭和三十九年に至るまでは、国鉄は御存じのとおり常にと言っていいくらい引き続き黒字であったわけでございます。その時点におきましては、私どももいろんな見地から、単に黒字でありましたから、公共的な役割りという面から言いまして、やはり少しでも学生さんの負担を軽くする、それによって家計の負担を軽くするということにお手伝いをしてきたという経過であると思いますし、特に現在とは全く違いまして、鉄道がなければ通学ができない、あるいはまた下宿をせざるを得ないと、こういう状態であったわけでありますから、何らかの関係で御負担を軽減するという役割りもまた国鉄の役割りというふうに観念されてきたと存じます。  しかし、今日のような状態になりますと、つまり赤字の状態になりますと、これは必ずしも私どもの負担によりましてそこまで手を広げる、文教政策なり何なりのところまで手を広げるということはいかがなものであろうかというふうに考えられるわけでございまして、特に現在の、問題がありますのは地方、都市部よりもこの問題は地方の場合の方がお乗りになる学生さんの乗る距離が伸びるものですから、地方の方に問題があるわけでございますけれども、地方で、学生さんで徒歩もしくは自転車あるいはバイク等で通っている学生さんと、それからバスで通っている学生さんと、それからわが国鉄を御利用いただいている学生さんと三種類の学生さんがあるわけなんですけれども、その学生さん相互間でまあ大変いろんな意味での負担の差が出てきているわけでございまして、そうした問題を考えますと、特にバスが現在よりも非常に高い現状であることを考えますと、そこまで私どもが文教政策にお手伝いするということは赤字である以上おかしいじゃないかということから、いまから十年ぐらい前でございましたと思いますが、国鉄の中の諮問委員会等において大変御議論をいただきました、この公共負担国鉄負担すべきではないと。もしそれを安くしなければ文教政策その他の見地からいけないというのであれば、これは文教予算として処理せられるべきものではないかということで意見がまとまりまして、自来私どもとしては約十年ぐらいの間、この負担は勘弁していただきたいということをお願いをし続けてきたことでございます。  衆議院、参議院の委員会におきましても、繰り返し繰り返し、公共負担についてはその政策を担当する、学生さんで言えば文部省の方で考えるべきだということで、しばしば附帯決議その他の形で御意見を賜っておるということもございまして、現段階では何とかこの公共負担という問題、学生さんの特に負担の問題からは解放していただきたいというふうに考えているわけでございます。  運輸省政府でも御心配いただきまして、ことしから関係各省の間で御協議がようやく持たれるようになったわけでございまして、関係各省間の御協議がどういうふうに進行いたしますかわかりませんけれども、私どもとしては、とにかくこの分を、幹線でもあるいは地方交通線でも出てくる負担であるわけでございますけれども、この負担からは解放をしていただきたいというのが切なる願いでございます。
  133. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま国鉄総裁から、学割等の公共負担について、各省との間でどんどん話し合いを煮詰めてもらっている段階だと、こういうお話でございますが、運輸大臣としてはいま現在どういう見通しを持っておられますか、この問題については。
  134. 山地進

    政府委員山地進君) この昨年の閣議了解に基づきまして、関係各省の間で会議がもう数回持たれております。その議論の中で、やはり非常に長い歴史を持っておるものでございますから、文部省あるいは厚生省それぞれのお立場から、できるだけ学生に、あるいは身体障害者に影響ない形でやれないかという御意見がございます。  それからもう一つ、現実の問題といたしまして、これだけ国の財政が厳しいゼロ査定というような予算の中で、まあ言ってみれば各省間の予算要求の移動ということに、政策官庁である文部省の方にそういったものがつくということになるものでございますから、その点から非常に実現について現実の問題としてむずかしい点がある。仮に、かなり私どもとしては各省間、大蔵省、文部省、厚生省、企画庁、その他の方と集まってやっているわけでございますので、御理解は深まっていると思うわけでございますけれども、現実の予算の処理ということになりますと、まだまだちょっと時間がかかるんじゃないかというふうに考えております。
  135. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、地方ローカル線の問題をさらに進めていきたいと思いますが、大臣、九州の産炭地あるいは北海道の産炭地方面に行かれたことございますか。
  136. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 過去において二、三度参りました。
  137. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、まあ福岡の場合は今回の廃止路線というものが産炭地に集中をしているわけでございますので、ここら辺の例を挙げながら少し論議を進めていきたいと思います。  そういった意味で、戦後のエネルギーを供給したのは筑豊方面であった、これはもうだれも否定できないことでございますが、昭和三十年以降のエネルギー消費構造の変化に伴いまして、あるいはまたわが国のエネルギー政策の転換ということで、たくさんの石炭の鉱山が閉山のやむなきに至ったわけでございます。そこで、昭和三十六年の十一月に、いわゆる産炭地域における鉱工業の急速かつ計画的な発展と、それと同時に石炭需要の安定的拡大を図ることを目的といたしまして産炭地域振興臨時措置法というものが生まれてきたわけでございます。それと同時に、昭和三十七年の七月に産炭地域振興事業団法に基づいて産炭地域振興事業団が設立をされて、疲弊したその地域の発展のために国としては政策上寄与をしてきたわけであります。現在は、そういう経過をたどりながら、地域振興整備公団が中心になりまして産炭地の復興にいま手をつけている現状でございます。  当委員会がこの問題を取り扱いまして、冒頭の質問のときに私も申し上げたわけでございますが、今回産炭地域振興対策のあり方についての答申が出されたわけであります。この答申の中身を見てもおわかりになると思いますけれども、たとえばこの答申の中に、「六条市町村を中心とする多くの産炭地域市町村は、今日なお、厳しい雇用失業情勢、全国水準を上回る率の生活保護者の滞留、高年齢層の増大、老朽化した炭鉱住宅街等の問題を抱えている。さらに、これらの地域においては、産業の活動が十分でないなどから所得水準が低く、また、財政事情も困窮しており、いまだ、経済的社会的疲弊の解消という産炭地域振興の目的を十分には達成していない状況にあると認められる。」と、こういうふうに現在の産炭地をこの答申は見ているわけであります。そういうことから、この答申にもございますように、十年間の延長、そしてこの産炭地をさらに復興をさせていこうという、こういう対策が国全体としてとられているわけであります。そのときに、十年間やっと延長をされて、いまから先、工業誘致等もやっていかなければならないと、こういう腹構えにさらになっているわけでございますが、そのときに鉄道の足を切られるということは非常に大きな打撃を受けることは事実であります。  よく言われますが、子供がカエルをもてあそんでいる。子供は遊びとしてカエルの足をもいだり取ってみたりいろいろして喜んでおるかもしれませんけれども、カエルの方としてはこれは大変な問題でございます。そういうことを考えますと、これは何とか産炭地の疲弊を防いでいき、そして従来のような筑豊方面にしていくためにはどうしても鉄道が必要だというのが、この地域に住んでいらっしゃる方々の住民の願いでもあるわけであります。これは、先日から公聴会にも行っておりますし、あるいは現地調査にも参りました。それと同時に、私も党としてこの産炭地域を訪れたわけでございますが、異口同音に言っている事柄は、何とか産炭地の疲弊を助けるために鉄道は残してほしい、実際に石炭が出ているときには鉄道も十二分にもうけたはずだ、損をする、採算ベースに合わなくなったからといって、突如としてこういう法案を出して足切りをやるということはけしからぬ、そして石炭を採掘するために、日本の産業を支えるために、筑豊地方だけでも約一万人の人々が命をなくしているじゃないか、そういった人々に対してでも何とか復興しなければならない、この決意を固めているやさきにこのような状況になったということは非常に嘆かわしいことである、何とかしてほしいということを盛んに申しているわけであります。  過疎地域についても同じようなことが言われているのではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございますが、自治省にお聞きしたいことは、こういった地域を含めてローカル線沿線の自治体はどこも存続を強く要望、希望をしているわけでございますが、自治省としてこういった地域、過疎地域も当然そうでございますが、今後のいわゆる地域の発展のために産業の立地条件等を整備をしながら、そして何とか復興しようとしている計画が組まれている地域にとって、こういった廃止がなされるということ、そして現在運輸省が出しておられる基準というものが果たして適合しているかどうか、あるいはまたどういう協議をしているのか、その点について自治省に伺っておきたいと思います。
  138. 藤原良一

    説明員(藤原良一君) 地方鉄道の中には、すでにモータリゼーションの進展等によりまして鉄道としての特性を発揮することが困難になってきているものも確かにあると思うんです。そういう線につきましては、国鉄再建の一環としましてバス等の代替輸送機関に転換することもやむを得ないと考えております。しかし、この場合におきましても、地域の実情や将来性、産業の動向を十分考慮して対応していただく必要があるんじゃないかと考えております。そういう観点から、やはり地域住民の生活利便を損なったり産業の今後の振興に非常に重大な支障を来すというようなことのないように何とかこの地方交通線問題に対処していく必要があるんじゃないか、そういうふうに考えておりまして、今後そういう姿勢で運輸省の方とも協議してまいりたいと考えております。ただ、選定基準等につきましては内々協議いただいておりますけれども、今後われわれの方としましても検討しまして、まとまりましたら具体的な考え方を申し入れたいと思っております。そういう段階でございます。
  139. 桑名義治

    ○桑名義治君 こういうところにもやっぱり私は問題があると思うんですよ。いま自治省の方から意見を伺ったわけでございますけれども、実は中身が全然わからないというわけですね。中身がわからないことには協議ができないわけです。ところが、先ほどから、前々からこの委員会論議をされているのは、政令中身についてもう少し詳しく明らかにしていただきたい、そうしないと協議の対象にならないじゃないか、一定の数字的な基準は明らかになっても詳細についてわからない、そこら辺にも私は大きな問題があると思うんです。各省の方々に聞いてみましても、さっぱり中身がわからぬ、だから協議のしようがない、暗中模索です、こういう御返事がどうしても返ってくるわけです。だから、そこら辺をはっきりしないままにいわゆる政令をつくり、そして政令の中でぽつっと切られるんではたまったものじゃないと思うんですよ。それで、政令は大体一月、この法案が仮に通ったとすれば一月中に何か政令をつくり上げたいという大臣答弁をいただいておるわけでございますが、そういうふうな方向で急テンポで進んでいくということになれば、本当に地元の住民の声なりあるいは各省の声というものが完全に消化された中で政令ができるということは、どうしても私たちとしては考えられない。その点について、大臣どういうふうにお考えになりますか。
  140. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 産炭地の問題は私は二つあると思うんです。一つは、石炭を現に掘ってそれを運搬しておる現に生きておる炭鉱でございますが、この炭鉱につきましてはこれは貨物が主体でございますから、貨物としての将来の需要をどうするか。いま石炭を掘ってそれを運んでおりまするのは、鉄道は残念ながら四七、八%なんです。あとの五十何%というのは自動車輸送なんです。特に北海道におきましては、大きい炭鉱になるほど鉄道のシェアは低いんです。四二、三%というところがあるんです。あと皆どんどん自動車に、そして鉄道は残せと、こうおっしゃる。それならば全部石炭を鉄道で運んでくれますというんだったら、これまた話は別です。自分らはもうかることはだあっと自動車でやっておいて、あとは足らぬだけは貨車で運べ、これじゃちょっと勝手じゃないかということなんです。私はこういう点は十分に話してみたいと思うんです。ですから、生きている炭鉱はそれでいいです。  しかし、炭鉱の掘り尽くした後のところあるいは採算が合わないところ、産炭地の跡地というのをどうするか。これは私も地方行政に一時関係しておりましたときにも、その地域の整備につきましていろんな意見を聞きますが、なかなかまとまらないんです。なぜまとまらないかといいましたら、土地に関する権利が実に複雑になっておるんです。鉄道の以前の問題なんです、この地域は。ですから、そこを片づけてそして地域の振興をこういうふうにやろうという青写真が出てこないんです。全然出てこない。これがやっぱり先行すべきじゃないか。鉄道だけ残せ残せとおっしゃっても、人口は現実にどんどん減っていくんです。いままで市として発展しておったところが、市の要件を欠いておるところがたくさん出てきておるのは産炭地なんです。私は、こういう地域を何とかせにゃいかぬと思います。  何とかせにゃいかぬけれども、しかしそれにはやっぱりその地域振興というものを青写真をつくり、そして前の産炭地域振興事業団ですか、いま何と言うんですか、地域振興整備公団ですか、これもわざわざ国がつくって振興策を講じようとしておるんですからそれと一体となって考える、その場合、運輸省としてわれわれは交通の責任はあるということでございますから、それは私たちも懸命に協力を申し上げたいと思うのでございまして、鉄道だけ残しておけば地域振興されるんだというものではないということをわれわれは思うております。
  141. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ちょっと一言だけ御説明さしていただきたいと思いますが、産炭地にはずいぶん密にレールが敷かれておるわけでございますけれども、日本全体の平均よりは産炭地域は石炭を運ぶ必要があったので比較的密にレールがあるのでございますが、そのレールはどういうふうに敷かれておるかといいますと、山元から港の方へ向かってレールが敷かれておるわけでございまして、それは要するにこれは貨物輸送をするために主体はそういう意味で敷かれておったわけでございまして、旅客流動ということは余り考えずにどうやったら一番便利に石炭を運び出せるかという形でレールが敷設されております。  そこで、現在のようにもうすでに石炭を掘らなくなった、あるいは掘るにしても非常に微量になったという状態を考えまして、なぜいま大臣おっしゃるように、全部私どものレールを使わないでトラックで運ぶようになってしまったかということは、要するに石炭の流れが変わってしまったわけでございまして、それからまた旅客につきましても、お客さんがそこに乗りましても、大変皆遠回りになりますので大変不便だということで、こういう地域についてはマイカーその他の利用率がうんと高くなってまいりました。産炭地域振興法等でいろいろ御努力になりました結果、道路の整備状況もかなりよくなってきた。その間、私どもの職員はずいぶんいままでも産炭地域関係市町村長にお願いをいたしまして、やめさしていただきたいということについてずいぶんこの十年間やってきたわけでございますが、要はないよりはある方がいいよということで置いといてくれということでございまして、今日まで約十年間、非常に能率の悪い輸送だと思いながら今日まで続けてきたわけでございます。  今回の法律一つの特色といたしましては、いままでは国鉄自身が御相談に上がっていたんですが、これからは国鉄ではなくて政府全体として取り組んでいただくということであり、またもっと地方の方々の御意見を伺うという意味では地方協議会等の制度ができたわけでございまして、どうかそのいまどこをレールが走って何のためにどういう目的でレールが敷設されておって、それがどの程度役に立っているかということをごらんいただきますと、むしろバスの方がよろしいとか、あるいはトラックの方がよろしいとかということが、私どもお願いしていることの合理性はあることを理解していただけるものと思っておるわけでございます。  とにかくないよりある方がいいよというだけではなかなか私どももやっていかれないという窮状でございまして、産炭地がいろんな意味でお困りになっていることはよく存じ上げておりますけれども、それは要するにどういうふうにして交通を維持するか、どういうふうにして貨物輸送を維持するかということについての方法を見つければよろしいのであって、どうしてもバスではいやだと、レールに乗らなきゃだめなんだと、どうしてもトラックはいやだ、レールでなければだめなんだということについてのどうも私ども合理性を十分納得できないわけでございまして、どうかこの問題につきまして、各地域で、産炭地におきましていろいろこの問題が論議されます機会におきましては、鉄道の仕組み、なりわい、レールがどんなふうになっているかということをも含めて御協議いただきまして、一番いい方法に持っていっていただくようにお願いをいたしたい、切にそう考えておる次第でございます。
  142. 桑名義治

    ○桑名義治君 大臣ね、大臣答弁間違っていますよ。というのは、過去のいわゆる産炭地の考え方がいまだに続いている。炭鉱が閉山しまして急激に人口が減ったことは事実です。ところが最近は徐々にふえつつあるという認識がない。それと同時に、いわゆる振興計画を全くこちらの方で努力しても受けようとしないという意味の御答弁がございましたが、ではどのくらいの振興計画が実際になされているかということを国土庁にあるいは通産省あたりにでも結構ですがね、御答弁を願いましょう。  国土庁にお聞きしたいわけですが、昭和三十七年から整備公団が手がけた福岡県下における産炭地域振興事業にかかわる工業団地の進捗状況はどうですか。国土庁来ていませんか。
  143. 鈴木英夫

    説明員(鈴木英夫君) 御説明申し上げます。通産省でございますけれども。  昭和三十七年以降地域振興整備公団が産炭地域、特に福岡県下に造成いたしました工業団地は、現在までのところ完成いたしましたのは五十八団地千十六ヘクタールになっております。そのうち譲渡が済んでおりますのが四十八団地、八百八十七ヘクタールという状況になっております。
  144. 桑名義治

    ○桑名義治君 団地の造成にしましてもこれは地元の協力がなければできないわけです。ところがいま御報告がありましたように、団地は続々とでき上がっていることは事実なんです。そしてまた宮田町におきましては大型の団地が現実にでき上がっている。いまから先どういうふうに企業を誘致しようか、いや日産を誘致するとかいろいろな手がいま打たれつつあるわけです。そういう状況を大臣知らないで、えらいいま痛烈に地元の協力がないような、しかもまた人口も急激にどんどんいまだに減っているような御答弁がございましたけれども、住宅団地にしましても——いまのは工業団地です。住宅団地にしましても、この前山田市でできた住宅団地に申し込みが横浜からも来ている。いまや国の政策から考えた場合には定住圏構想とかいろいろな政策がなされている。ところが、この政策に対しても前回大臣は幻の計画だと言われた。そんな認識の上に立ってこの国鉄の問題を論ずるならば大変な禍根を私は後に残すんじゃないかと思う。これは訂正してもらわなきゃならぬ、大臣のいままでの認識は。どうですか。
  145. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) それは私は工業団地ができておることも知っております。しかし、それが鉄道輸送の面から見ましたらやはり依然として鉄道利用は下がっておるということは現実であります。
  146. 桑名義治

    ○桑名義治君 まずその地域の認識の上に立って、そしていろいろな論議をしてもらいたい。その地域の認識がない上に立って、そして輸送の面だけはこうだと思いますという、どうしてそこから論理が出てくるんですか。地域の実態が完全な把握がなされないままになって、そして鉄道だけの部面だけが特別にぽんとその論理だけが上がってくるということはおかしいと思うんです。私はこんな言葉できょうは言うつもりはなかった。だけれども余りにも否定的な言葉を使われますと、余りにも地域の認識が欠けた御答弁をいただきますと私も言わざるを得ない。  で、さらに石油ショック後の昭和五十年から五十二年度のいわゆる企業誘致状況に比べてこの二、三年の誘致企業の動きはわりに活発になりつつあることは事実なんです。この点について御答弁願いたい。
  147. 鈴木英夫

    説明員(鈴木英夫君) 御説明申し上げます。  産炭地域、特に福岡県を中心にいたしまして産炭地域の企業の進出状況につきましては、先生御指摘のように昭和四十八年の石油ショックを契機にいたしましてそれ以降若干落ち込みが見られました。しかしながらここ二、三年の数字を見ますると、その落ち込みから回復の傾向が見られております。
  148. 桑名義治

    ○桑名義治君 きょう五時まででございますので、もうこれで私の質問は一応終わりますけれども、いずれにしましても、きょう私が申し上げたのは、いわゆる今後のこの運輸省基準案よりも、案の中に今後の経済発展という一つの大きなプログラムが、計画がきちっとできているところは、その二年先、三年先を見込んでやはりこの廃止路線から除外をする基準をつくるべきではないか、こういうことを特に申し上げたいわけであります。  いずれにしましても、時間が来ましたので、これできょうはやめますけれども、改めてこの問題につきましては後日また質疑を続けていきたいと思います。以上で終わります。
  149. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時一分散会