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1980-11-06 第93回国会 参議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月六日(木曜日)    午前十時十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         黒柳  明君     理 事                 伊江 朝雄君                 山崎 竜男君                目黒今朝次郎君                 桑名 義治君     委 員                 江島  淳君                 大木  浩君                 梶原  清君                 木村 睦男君                 高平 公友君                 安田 隆明君                 山本 富雄君                 青木 薪次君                 瀬谷 英行君                 広田 幸一君                 小笠原貞子君                 柳澤 錬造君                 田  英夫君    衆議院議員        修正案提出者   加藤 六月君    国務大臣        運 輸 大 臣  塩川正十郎君        自 治 大 臣  石破 二朗君    政府委員        経済企画庁総合        計画局審議官兼        物価局審議官   戸田 博愛君        大蔵省主計局次        長        矢崎 新二君        運輸大臣官房総        務審議官     石月 昭二君        運輸省鉄道監督        局長       山地  進君        気象庁長官    増澤讓太郎君        自治大臣官房審        議官       矢野浩一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        自治大臣官房地        域政策課長    藤原 良一君        自治省財政局調        整室長      井下登喜男君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本国有鉄道常        務理事      吉武 秀夫君        日本国有鉄道常        務理事      藤田 義人君        日本国有鉄道常        務理事      加賀山朝雄君        日本国有鉄道常        務理事      吉井  浩君        日本国有鉄道常        務理事      半谷 哲夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案(第九  十二回国会内閣提出、第九十三回国会衆議院送  付) ○委員派遣承認要求に関する件 ○公聴会開会承認要求に関する件     —————————————
  2. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから運輸委員会開会いたします。  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案議題といたします。  まず、本案趣旨説明並び衆議院における修正部分説明を順次聴取いたします。塩川運輸大臣
  3. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) ただいま議題となりました日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案提案理由につきまして御説明申し上げます。  国鉄は、これまでわが国基幹的交通機関としての機能を果たしてまいりましたが、その累積赤字昭和五十四年度末において六兆円を超え、このままに推移すれば将来巨額な国民負担となることは明らかであり、わが国交通体系における国鉄の枢要な機能を今後とも維持させるためにも、国鉄経営再建が緊急の国民的課題となってまいりました。  このため、政府といたしましては、昨年十二月日本国有鉄道再建についての閣議了解を行い、国民及び利用者の深い理解と協力のもとに、国鉄再建を図るため、国及び国鉄が当面緊急に実施すべき対策を決定したところであります。  この閣議了解におきましては、国鉄は、地方交通線対策を含む経営重点化減量化業務運営全般効率化、機構、組織の簡素化等の推進によって昭和六十年度に職員三十五万人体制を実現することを中心とする徹底した経営改善実施することとするとともに、国は、このような国鉄自身経営改善努力前提として、国鉄経営努力のみでは解決しがたいいわゆる構造的問題を中心債務のたな上げ等所要の行財政上の措置を講ずることとしており、このような国及び国鉄対策を総合的に実施することにより昭和六十年度までに国鉄健全経営基盤を確立し、可及的速やかに収支均衡の実現を図ることといたしております。  本法律案は、この閣議了解考え方に基づいて、国鉄再建促進するためにとるべき特別の措置を定めるものであります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、この法律趣旨は、わが国における基幹的交通機関である国鉄経営再建促進するためにとるべき特別の措置を定めることとするもので、国鉄経営再建目標を、昭和六十年度までにその経営健全性確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業収支均衡の回復を図ることに置くこととするとともに、その目標を達成するための国鉄及び国の責務を明らかにしております。  第二に、国鉄経営再建のための措置の確実な実施を期するため、国鉄経営改善計画を作成させ、毎事業年度その実施状況を検討させることとするとともに、その経営再建促進に関する監査を充実するため、国鉄監査委員会委員を一人増員することとしております。  第三に、国鉄鉄道営業線のうち地方交通線に関しては、関係行政機関等による特定地方交通線対策協議会を組織し、特定地方交通線廃止する場合に必要となる輸送確保について協議させることとすること、及び地方交通線貸し付け及び譲渡の道を開くこととすること等地域における輸送確保に配慮しつつ、バスまたは地方鉄道へ転換するための措置を講ずることとするとともに、地方交通線運賃設定に当たり物価安定等に配意しつつ収支改善のために特別の配慮を払うこととするほか、日本鉄道建設公団業務として、地方鉄道新線建設を行うことができることとする等の措置を定めております。  第四に、国鉄に対する援助措置の強化を図るため、昭和五十四年度末の債務のうち五兆五百九十九億円の債務についてたな上げを行うとともに、たな上げされた債務に係る償還資金の無利子貸し付け及び利子補給を行うことができることとするほか、地方交通線に係る補助の規定を設ける等国財政措置に関する規定整備することとしております。  第五に、以上の措置実施するために必要な関係法律規定整備を行うこととしております。  以上がこの法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
  4. 黒柳明

  5. 加藤六月

    衆議院議員加藤六月君) 日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案に対する衆議院修正部分につきまして、御説明申し上げます。  修正部分の第一は、特定債務等選定基準日昭和五十五年三月三十一日となっておりましたのを、この法律の施行の日に改めるとともに、これに伴う所要修正を行ったものであります。  第二は、特定債務に係る利子補給遡及適用等について、所要経過措置を設けたものであります。  以上をもって修正部分説明を終わります。
  6. 黒柳明

    委員長黒柳明君) この際、委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る八日及び九日、仙台市及び福岡市において現地の意見聴取等を行うため、委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員決定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  9. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 次に、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、来る十二日に公聴会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  12. 黒柳明

    委員長黒柳明君) これより本案に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 青木薪次

    青木薪次君 私は、運輸大臣とそして自治大臣質問をいたしたいと思っておりますが、自治大臣出席を要請したわけでありますが、地方行政委員会が開かれているというようなことで、審議官出席を願っております。  国鉄経営は、今日急激に悪化をしておることは御案内のとおりです。昭和三十九年に赤字に転化いたしましてから毎年赤字となって、昭和五十四年度の累積赤字は六兆円を突破することになったのであります。その原因については、経済社会情勢の変化に伴って輸送構造が変化した、また、これに対応することができない今日の国鉄体制があるわけでありまするけれども、数次にわたる私たち参議院におきましても衆議院と歩調を合わせて附帯決議を行うと同時に、その一日も早い再建について努力をいたしてきたところでありまするけれども、このことに対して有効に対応できなかった点がむしろ悔やまれておると思うのであります。  そういう点から、政府は、昨年の十二月の二十九日に閣議了解事項中心といたしまして、昭和六十年までに徹底した合理化、そして速やかに収支均衡を図るのだということでございますけれども、この点につきまして、今日、この国鉄再建法案をもって不退転の決意を持っているのだというように言われているわけでありますが、その内容を見てまいりますると、すでに御案内のように地方ローカル線の切り捨てという、まさに国民に犠牲を求める姿勢以外にないと私は思うのであります。  そこで、国鉄経営再建という、この内容のそのものの焦点は地方交通線であって、国鉄から地方交通線廃止または分離していくということに重点を置かれるにいたしましても、国鉄バス輸送を適当とする、あるいはまた廃止を適当とするというような関係等について運輸大臣承認を受けて、それを関係自治体に通知をして、そうして廃止後の交通機関についてはバスまたは第三セクターによって運営をしていくという考え方であるように伺っております。  しかるならば、昨日のわが党の広田委員質問に対して運輸大臣は、協議会で十分検討します、それから地域特性に合った方法で経営するようにいたします、地方自治体負担にならないように措置します、こういうふうにきのうあなたは答弁されたのです。それから自治大臣は、多大な負担地方負担することは困難である、これは終止形で区切っております。それから地方公共団体は正当な要求を国に要望すると言っております。現実廃止したものを、廃止したという意見はまだ聞いていないが、これは見切り発車はいけない、したがって、そういう立場に立つならば、今日第三セクターといっても第二のミニ国鉄になるだろう、国民の足を守るという立場に立って国の責任措置すべきだ、こういうことなんです。  そうすると、これは再建法の提案された趣旨と正反対、百八十度違った答弁をしているわけです。ですから、あなたもこちら側の方で、向かって左側の方でずいぶん面映ゆいかっこうをして笑っておられました。それから自治大臣も、この方針とは違う答弁をされたものですから非常に途中で詰まったような口調でありましたけれども、さすがは自治大臣でありますから、明確にこのことを、あなたの答弁とは違う答弁をされたのです。そこで答弁が違うのじゃないかと言おうと思ったんだけれども、ここに広田委員がいますけれども、それは時間的な問題があるからあしたひとつ運輸委員会でこのことについては詰めようじゃないかということで私たちは回りで相談いたしまして、いまあなたにこのことについて質問をし、しかも自治省に対して質問をすると、こういうくだりになったわけでありますけれども、明確な御答弁をお願いしたいと思うんであります。
  14. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 自治大臣と私の答弁の間に若干の相違があるという御質問でございますが、私は、それぞれ所管しております大臣立場ということもございまして、それはやっぱり役所の意見として代表されておる意見だと思うんですけれども、しかし、基本的に申しまして、この国鉄再建の一つの重要な対策として、地方交通線対策並びに特に特定地方交通線あり方について根本的な改革を実施するということにつきましては、政府部内これは原則として統一しておる意見でございます。ただし、それを個々のケース、実施していきます場合にそれぞれの立場から見まして意見のあることはこれは当然でございますが、それらは今後政府部内におきまして、官房長官中心といたしまして、特定地方交通線対策についてお互いが意見の交換をし、とりまとめていく手はずをいたしておるところでございまして、そこでそういう不安のないようにわれわれ努めてまいりたいと、こう思うております。  私たちの言っておりますのは、要するに、いままで国鉄というのは、いわば以前から引き継がれてまいりました鉄道省的な考え方がどうしても地方に残っておることは当然でございまして、しかしながら、一方、国鉄公共性と同時に独立採算制という経済性も付与されてきておるのでございます。今日、この国鉄が十二兆円の負債を抱え六兆円の累積赤字を持つというような事態になりました場合に、これを何とか救済しなければならない、そのためには、鉄道としての特性を発揮しがたい地域について、この鉄道あり方を見直すということはこれは当然であろうと思うのでございまして、そういうところからこの特定地方交通線考え方が出てきたものでございますが、それにつきましては、要するに最近のモータリゼーション等いろいろ勘案いたしますと、地域の足の確保ということについてはいろんな多様性があっていいのではないか、そういうことからこの特定地方交通線あり方をわれわれは提案しておるのでございます。  しかしながら、いままで交通機関といえばほとんど運輸省がやっておって、特に国鉄がやっておって、地方自治体余り関係がないんだというような感じを地域の方々が持っておられたことも私は事実だと思うんですが、しかし、今日地方交通というものをどうするかということは、やはり国も地方自治体一体となって考えるべき時期だと思うんです。そこで、自治大臣のおっしゃっているのは、そういう考えには賛成であるけれども、これから具体的な負担であるとかなんとかいうことがどのように解決していくかということがまだ明確に提示されておらないし、また協議が決まっておらないから、これはいわば慎重に取り扱っていくべき問題だという、こういう意味を申し上げられたものであろうと私は思うておりますが、そのことにつきましては、今後自治省中心といたしまして、私たち建設省その他省庁等も相集まりまして必ず地域交通あり方について新しい対策を打ち出していきたいと、こう思うております。
  15. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) ただいま御審議をいただいております国鉄再建法案は、自治省といたしましても、国鉄再建重要性という観点から、政府の一員といたしましてこれを了解いたしまして提出の運びになったものでございます。  ただ、特定地方交通線は、鉄道経営専門としておられます国鉄によってもなかなか採算がとれないという現況から見まして、仮にこれを第三セクター方式により経営を行う場合にもやはり赤字を生ずるおそれが多分にございます。その場合、地方公共団体負担が転嫁される危険性が大きいということから、昨日の本会議での自治大臣答弁にはそのような点をおもんばかりまして、この点については慎重でなければならないという考え方を述べたものでございまして、政府答弁として決して食い違いはないと考えておるところでございます。
  16. 青木薪次

    青木薪次君 大臣答弁を聞いておりましても、いまの矢野自治省審議官答弁を聞きましても、ここだけ乗り切りゃいいんだというような三百代言的な発言は許せませんよ。  それなら聞きますけれども、じゃ、第二のミニ国鉄になるということはどういうことなんですか。おそれなんて言いませんよ。第二のミニ国鉄になりますと言いましたよ。それから、多大な負担地方にかけることは困難だと言いましたよ。いいですか。それから、地方公共団体はこの問題について支出も明確に国に要求していくんだと、こういうことも言いました。現実廃止するというようなことについてはまだ聞いちゃいない。したがって、このことについては国民の足を守るんだという立場に立って国の責任措置するんだと。国の責任ということはイコール地方自治体負担するということについて同義語と解釈していいんですか。審議官、ちょっと答弁してください。
  17. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 大臣が申し上げましたことは、先ほどお答え申し上げましたように、特定地方交通線、これはいろいろ経営のやり方はあると思いますけれども、それによりましてはやはり赤字が大きくなると、これはいままでの状況から見てもそういうことが推察されるということからそのような懸念を申し上げたわけでございまして、したがいまして、協議会でいろいろ協議をしていくわけでございますけれども、地方団体としても十分慎重に検討しなきゃならぬのだと、まあ、こういうことを申し上げたわけでございます。  また、財源という問題でございますが、御承知のように、地方団体が現在の分担をしております行政を執行するにつきましてはそれに対応した現在の財源配分があるわけでございます。したがいまして、そういった現在の財源配分前提とする限り、そういったいままで国において行われてきたものを地方において負担するということがきわめて困難だと、こういうことを申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、具体の問題につきましてはさらに関係省庁ともいろいろ協議をしながら、やはり住民の足を確保するという観点から対応をしていかなきゃならない、こういうことを大臣としては申し上げたものであると考えております。
  18. 青木薪次

    青木薪次君 私の質問に答えていないんですよ。  私は、あなた方がここの答弁で、この委員会を一時逃れで糊塗しようと思ってもこれは許しませんよ、何回も何回もやってきたんだから、昭和四十四年以降ずうっとあらゆる、それこそ、出ては引っ込め出ては引っ込め、夜店のバナナのたたき売りじゃあるまいし、そうこの問題二度、三度……、最後の機会だと皆さんも言っているんだから。結局は第三セクターや民間に委託する、特にこの場合第三セクターなんだけれども、このことについて、運輸大臣はさっき答弁されたようなことを言った。しかし、あなたは石破自治大臣を代弁していま言っているつもりでいるけれども、これは百八十度違ったことを言っている。それで、あなたは同じだなんということを言ったら、そのことは会議録に載っているんだから、それはうそ言わせませんということになるんだけれども、問題は、国鉄経営しても赤字になるんだと。そこで、地方の足を確保するために主に第三セクター経営するということについてあなたはわかったと、こう言ったんだけれども、わかっちゃいないんです。  あのときにはこう言ったけれども、いろいろ検討した結果こうなりましたというと、またもともと、宙に迷ってしまって、迷惑するのは地方住民だということになるんで、これは後で詰めていく話なんだけれども、その点について多大な負担地方で困難。困難なんでしょう、やれるんですか、いま。困難なんでしょう。だから自治大臣はああいう発言しているんだから。地方公共団体としては正当な要求を国にぶつけたいと、こう言っているんだよ。これもそうなんでしょう。  それから現実廃止したという意見はまだ聞いちゃいない。もちろん成案もできていないのはあたりまえなんだけれども、見切り発車はいけない。これは二年で見切り発車と言っている。いいですか。それから国民の足を守ることは国の責任だと。地方自治体責任とは言われませんでしたよ。国の責任だということを言ったんです。このことをあなた確認しますか、それじゃ。どうなんですか。
  19. 矢野浩一郎

    政府委員矢野浩一郎君) 大臣が申し上げましたことは、特定地方交通線につきまして地方団体が多大の財政負担をするということは、現在の地方財政状況から見ても、また現在の財源配分の仕組みから申しましてもそういうことは困難であるということを申し上げたわけでございます。したがいまして第三セクター非常に大きな赤字が出ると、こういうことがはっきりしておるような場合に地方団体としてこれを負担することは困難であると申し上げますのは、これは自治大臣立場といたしましてはそのように申し上げざるを得ないところでございます。  また、地域住民の足を確保するということは、これは地方公共団体の長としても当然地域住民の声を代表して協議会等においてそのような考え方を申し上げていくということになるわけでございます。そういう意味で、国に対していろいろ要求をしていくというような答弁を申し上げたものと存じます。明治以来国鉄地域の重要な足になってまいったと、これを国鉄再建観点から今回の法案におきまして特定地方交通線に関する今後のあり方を決めるという点につきましては、これはこの法案提出しております国の立場としても地域住民の足を確保する観点からそれなりのやっぱり責任がある。  ただ、具体の中身につきましては、これは今後も具体政令等内容も決まってまいりますし、また個々特定地方交通線どう対処していくかということについては、これは協議会等でまたいろいろ地方団体も加わりまして協議をしていくと、こういうことになるものと考えております。
  20. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 青木先生の御心配されるのも自治大臣発言の中で慎重に対処すべきだと言っておるのも、私はもうこれは十分理解できるんです。  それは先ほども申しましたように、いままでは交通というものはいわば国なり国鉄地方交通をやっているのだ、責任者なんだと、こういうことでずっとやってまいりました。それはもう当然その政策はずっと引き継がれてきておるんです。しかしながら今日の国鉄状況を見、あるいはまたその地域におきまして道路整備とか飛行場とか空港とかというのが整備されてまいりましたら、相当事情はその当時から、過去から見まして変わってきておりますから、ここでやっぱり地域の自主的な交通体系というものはどうあるべきかということを考えるべき時期であると。これはもう御質問していただいておる先生だって、これは私は同じだろうと思うんです。いつまでも地域交通全部国でやっておれと、そうはおっしゃらないと思うんです。  だからこそ、最近におきましても地方陸上交通審議会も発足させて地方交通というものを考えようということになってきたんです。けれども、現在それじゃその地方交通を維持拡大していくのに、これは地方自治体だけでできるかといったらまだできない状況であります。これは私も財源的に見ても非常にむずかしいだろうと思うんです。ですからこの際に、先ほども申しておりますように政府部内で一体となって、運輸省運輸省だ、自治省自治省立場だと、こんなことを言っておったら地域の特に地方交通というものの整備がはかどりませんから、この際、政府部内にそういう地方交通あり方というものについてお互い各省庁が忌憚なく協議を進めていって一つの結論を見出していくべきだ。その場合には地方負担に対してもどのように配慮するかということを当然考えなきゃならぬ問題でございますしいたしますので、この問題は将来にわれわれの政府において責任持ってこの対応策を考えると、こういうことを申し上げておるのでございまして、その点をひとつ御理解していただきたいと思うのであります。
  21. 青木薪次

    青木薪次君 矢野審議官の言ったように財政的には困難である。困難であるとすれば、たとえば起債の枠を大量に大蔵省としても認めるとかあるいはまた特別交付税をこの面だけで出すとかということが前に立たないとあなたの答弁の裏打ちにはならぬということをぼくは言っているわけです。  それから第二のミニ国鉄になりますということを言ったということは、これは幾ら主管の運輸大臣が声をからして答弁をしておっても、この問題については私たちは了解することはできないし、それじゃその赤字ローカル線を切って捨てたということだけに終わってしまって、もうそれこそべんべん草が生えてしまって、線路も赤さびになってしまって乗る人もない。じゃ一体、後どうするんだ。切り落とされた地方交通線一体後はだれが運営してくれるんだ。結果として炭鉱の廃坑のように、それこそ行ってみたら駅舎もクモの巣が張っておった。ホームも崩れておったということが落ちだと言うんですよ。これでは法案を通すための答弁技術としてはわかるけれど、それじゃわれわれとしては国民に対して申しわけないんで、この点について、これだけ明確に自治大臣答弁されたんで、いまの運輸大臣答弁されたものとは全然百八十度違うんで、この点をひとつ明確にしてもらうために、あなたも責任者なんだから、政府委員なんだから、運輸省と詰めてもらって、改めて両省の答弁をひとつ統一したものを聞きたい。このために委員長、若干の休憩をお願いしたいんですが、重大な問題ですから。
  22. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  23. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 速記を起こしてください。
  24. 青木薪次

    青木薪次君 自治大臣がいま衆議院に行っているようでありますので、自治大臣運輸大臣協議をされて、午後の再開の冒頭で文書でもって統一見解を出してもらう。そして両大臣出席してもらう。ゆうべから私はこの重要性を考えて自治大臣に連絡をとっておった。ところが、衆議院地方行政委員会が開かれているということだったのでやむを得ないので、その次の政府委員に出てもらうということで矢野審議官に出てもらったわけですから、文書で統一見解を出してもらう。非常にこの再建法案のこれがかなめですから、これが納得できなければ、答弁が食い違っておったのでは午後の冒頭の質問に入れないということでありますので、そういう立場に立って、ひとつこの問題については午後の冒頭まで預けたいと思います。  委員長いいですか。
  25. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 運輸省自治省、よろしゅうございますね。
  26. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 午後までには自治大臣協議をする、そして、その結果を文書にまとめて統一見解として提出いたします。
  27. 青木薪次

    青木薪次君 この法案の第二条に、「昭和六十年度までにその経営健全性確保するための基盤を確立し、引き続き、速やかにその事業収支均衡の回復を図る」ということを書いてあるんでありますが、「基盤の確立」と「収支均衡の回復」とは一体どう違うんですか。  それから、経営再建と財政再建との違いについて、説明大臣国鉄総裁にお願いいたしたい、こう思います。
  28. 山地進

    政府委員(山地進君) いまの第二条に書いてございます経営基盤の確立ということと、それから収支均衡、この点でございますが、従来、国鉄再建をしてまいりました過程において、収支均衡ということを非常に第一義的に取り上げてまいったわけでございます。  今回の五十四年の十二月の閣議了解は、実は五十二年の十二月の閣議了解に基づいてつくったわけでございますが、今回の再建対策につきましては、政府としても非常に慎重にこれを取り運びまして、五十二年の閣議了解において五十三、五十四年、二年間かかりまして国鉄再建策を対策を講ずるということでございましたので、五十二年以降、政府国鉄におきましてこの再建対策を練った結果、国鉄再建の基本構想というのが五十四年七月に出たわけでございますが、これは国鉄が自主的に国鉄再建を考えたわけでございます。  この考え方というのは、六十年度までに上越、東北の新幹線部分あるいは年金と退職金の異常部分というものを除いて考えてみた場合に、国鉄収支というのは均衡する、五百億ばかりの黒字が出るという一つの試算というのが出たわけでございます。この状態と六十年度の状態といいますのは、いま申し上げましたとおり東北、上越の一時的な開業に至る赤字、それから年金と退職金という異常部分の赤字というものを入れますと、これは収支均衡しないわけでございます。  そこで私どもとしては、そういった異常部分を除いて経営の体質というものを考えた場合、国鉄が非常に健全な方向に向かっているということでございます。この体質をもってすれば、経営を改善して収支均衡に向かうことができるという考え方から、ここにございますように、健全経営基盤の確立ということでそれを表現したわけでございます。その後、改善された体質をもって収支均衡に向かう、これを可及的速やかにやるということで、目標年次といたしましては六十年度に基盤の確立ということで、若干いままでの計画から見ますれば緩やかかもしれませんけれども、体質改善をしてその基盤の上に立って収支均衡を速やかに実現する、こういうふうな考え方で第二条にそれを書いたわけでございます。  それからもう一つ、財政と経営という言葉で、従来財政再建ということで、収支ということに重点を置いて財政を考えたわけでございますが、経営というのはむしろその財政の裏側といいますか、財政を生み出す体質と申しますか、そういったことで私どもとしては今回の再建計画はむしろ経営重点化あるいは投資、そういった全般的なことを考えまして、むしろ経営再建と、こういうふうに表現したわけでございます。
  29. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ただいまの運輸省からの御答弁ですべて尽きておるわけでございますが、そのもとになります考え方として一つ申しますと、昨年の七月に私どもの中で基本構想案というものを取りまとめたわけでございますが、その基本構想案は、従来の何度も立てられました計画とはやや趣を異にいたしておりまして、年金の問題と退職金の問題、そしてちょうど六十年前後に開業いたします東北、上越新幹線の問題を考えますと、六十年時点ではとうてい収支均衡まではいかないということでございます。  ただ、その問題を除外しまして、そういう一種の構造的部分とそれから時たまたまその前後に開業いたします東北新幹線の部分を別にして、大変虫のいい考え方かもしれませんが別にして考えさしていただきますれば、六十年時点ではとにかくその他の部分については経営ができる状態になる。また新しく赤字が生まれてくるということではなくて、いまの点を除けばバランスがとれたものになっていくという見通しになりましたので、そういうことで基本構想案というものを取りまとめて運輸大臣にお出しをいたしました。  それを一つの有力な材料として閣議了解が行われ、この法律が組み立てられていったわけでございまして、その意味で私どもは、私どもが作成し提出いたしました基本構想案における考え方、大きなものとしては年金あるいは退職金の問題、そして東北、上越新幹線の開業初期における赤字の問題を除いてということは、その他の部分においてはまあまあやっていかれるということで計画ができましたので、そのことを経営健全性確保するための基盤というふうに表現していただいているものというふうに理解をいたしております。
  30. 青木薪次

    青木薪次君 総裁にお伺いいたしたいと思いますけれども、国鉄再建対策、私が冒頭申し上げたように、昭和四十四年以降ずうっと雨後のタケノコのように実は出てきたわけでありますが、それが短期間でことごとく終わっているわけであります。そのことについて、どうしてそう早く計画が失敗しているのか、その点をひとつ項目的に、これらが原因だったということを聞かしてもらいたい。
  31. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) まず一つは、収入の見通しが甘いということが言えると思います。当時のこれまで立てられました計画におきます収入の見通しというのは、経済が全体として伸びていくというのに応じて私どもの仕事もふえていくという前提であったわけでございますが、現実には道路あるいは飛行場その他の整備が進みました関係で日本の経済は広がっていきましたし、それから輸送需要も拡大していきましたけれども、国鉄のお客さん、あるいは貨物のボリュームというものは日本の経済の伸びと並行した形では拡大いたしませんで、せいぜい絶対量が少しずつはふえましたが、シェアは落ちていった。シェアも落ちないで伸びるものという前提で多くの収入計画が立てられておったところが一つの問題でございます。  第二は経費の面でございますけれども、経費も長期経済計画の中で予定されておりましたような人件費、物件費の伸びを前提として計画を立ててまいりましたけれども、高度成長時代でございました関係もありまして、物価の上昇率あるいは人件費の上昇率は計画を上回ったわけでございました。その意味で経費面でも計画と実行は一致しなかったということはあると存じます。  それから、国鉄赤字が非常に大きくなりましたのは第一次オイルショック以後でございます。このオイルショックの影響を民間の企業の場合にはいろいろな方法で大変努力が重ねられて吸収をされたわけでございますけれども、四十八年以降今日まで、国鉄としてもかなりの努力はしたのではございますが、とてもオイルショックの影響をのみ込むというようなところまでは行き得なかったということがあると存じます。  さらに問題は、国鉄の体質の問題でございまして、残念ながら私どもの至らざるところでございますけれども、国鉄の体質そのものがもう一つきちっとしてないということのために、まあよく親方日の丸といいますか、そういうふうに評価されますが、そういう面があったということであろうかと思います。  それから最後に、いままでの計画で、これは政府に対して私どもとして大変率直に申し上げて不満を持っておったわけでございますけれども、私どもががんばればできるフィールドと、幾らがんばってもどうにもならぬフィールドとの境目がはっきりしていなかったということでございます。今回、大変甘えた案と言われるかも存じませんがと先ほども申しましたけれども、年金の問題とか退職金の問題とかというもの、それから東北、上越新幹線の開業に伴う開業後十年間ぐらいの赤字というようなものは、幾らがんばってもがんばりようがない部分でございますので、そうしたがんばりようのない部分は別にして、その他の部分でここまではわれわれの力でいたしますということを明らかにいたしたわけでございますが、その点は従来の計画とはかなり性格が変わっておるということを申し上げることができるかと存じます。
  32. 青木薪次

    青木薪次君 従来の再建計画がうまくいかなかったのに、今回はうまくいきます、こう言っている。その点について総裁、そのいまあなたのおっしゃったようなことを、この期間中に完全にカバーできるという確信のもとに提案しているんですか。
  33. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) この計画をこの考え方のとおり実現するのにはいろいろと困難があることは事実でございます。決して必ずこうなりますということはなかなか申し上げられないわけでございます。  その中の一つは、やはり私どもが考えておりますのは、昭和六十年時点で、収入を一〇〇として大体人件費割合が五〇%ぐらいにとどまるように、そういう減量経営と申しますか、態率経営と申しますか、それを考えておるわけでございまして、いわゆる三十五万人という職員数でいまの規模の仕事をやっていこうというのはそういう意味でございますが、率直に申しまして、この三十五万人体制というものを六十年までで全部整えますためには、労使間の真剣なる取り組みがどうしても必要なわけでございまして、    〔委員長退席、理事桑名義治君着席〕 私は、これはぜひやらなければこの計画が崩れるわけでございますので、三十五万人でうちの仕事をやっていきますということをお約束をいたしますと同時に、これを実現する覚悟でございますけれども、その実施の過程においては相当骨の折れる仕事だというふうに考えております。  それからもう一点は、私どもの手の届かない部分については政府にお願いをいたすということでございますが、長期の財政計画というものは、従来の日本の政府考え方ではお約束をしていただくわけにいかないわけでございますので、私どもとしてはそうした構造的赤字の処理について、政府の方でめんどうを見ていただけるということを強く期待をいたしておるわけでございますけれども、その点はどうしても政府でお考えいただきませんと、われわれでは及ばないということでございます。  その二点を前提といたしますれば、従来の計画に比べまして、収入の面におきましても経費の面におきましても、かなり詰めた作業をいたしたものでございますので、従来のように途中で挫折するということにはならないで、お約束のとおりに実現できるということを申し上げられるかと存じます。
  34. 青木薪次

    青木薪次君 東北新幹線並びに上越新幹線に伴う損益について聞きたいんですけれども、赤字は当面どれくらい見込まれるんですか。
  35. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 東北、上越の新幹線の地域というのはかなりお客様の多い地帯でございます。したがいまして、本来の素質といたしましては十分経営採算が成り立つという考えを持つております。しかし、新幹線というものは在来線と違いまして初期投資が非常に大きいわけでございます。反面、これを運行しメンテナンスをしていくところの経常経費は比較的少なくて済むわけでございます。  そういう関係から、初期投資が多いという性格から、どうしても開業後相当期間は、その初期投資部分の償却なり金利負担なりのためのコストがかかりますので、いまの見当では十年ぐらいいたしませんと、在来線と新幹線合わせまして、たとえば東北線あるいは上越線の在来線というものと今度の上越、東北の新幹線と合わせまして収支均衡がとれるのが、まず十年ぐらい先になるのではないかと思うわけでございます。  そこで、その後は逆に黒字になってまいるわけでございますけれども、不幸にして、ちょうど私どもがこの経営の立て直しをしよう、経営健全性確保するための基盤を確立し、速やかに事業収支均衡の回復を図ろうとしようとするその期間に、東北、上越関係で赤字が発生してくるということでございます。  ちなみに、金額につきましては、まだ、運賃水準をどうするかとか、あるいはまた運行回数をどうするかということが決まってまいりませんので、収入見通しが立ちませんので、なかなか明快に申し上げられませんが、ごく大ざっぱに申し上げて、まず最初の年、開業初年度には三千億ぐらいの赤字になるかな、そして十年後にはそれがまあゼロになるかな——その間、だんだんそれが減っていくということでございますけれども、その赤字負担というものの経過年中の処理をどうするかというのは、やはり非常に大きな問題でございます。
  36. 青木薪次

    青木薪次君 新幹線開業に伴う初年度三千億円の赤字ということで、償却には十年間ぐらいかかる、こういうお話です。赤字額を計算に入れますと、昭和六十年度には、それを年金とか退職金を除いて計算するんだ、そして収支均衡を図るんだ、これが経営再建である、先ほど山地鉄監局長のお話にもあったわけでありますが、これでは本当の意味収支均衡じゃないんですよね。その点について運輸大臣どうお考えになりますか。
  37. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ちょっとすいません。  言ってみれば、年金、退職金の問題というのは実は過去の問題であるわけでございます。六十年の時点で切りまして、そのときの平常な退職金、平常な年金、そして毎年の人件費、物件費を含めたところでは均衡できるというふうに考えているわけでございまして、その点はやはりある意味では、終戦後非常に大ぜいの方をお迎えをした、そして同時に、直後に大量の、いわゆる六十七万というような大量の人がおりましたのが一挙に十何万減ったわけでございますけれども、そのときの人の減らし方としては、よく事情を御存じのように、若い人といいますか、入って間もない人から減らしたということで、非常に先に入った人がだんごのような人員構成になったわけでございます。  これはある意味では国鉄経営が、やり方がまずかったかと言えるかもしれませんけれども、あのような荒廃した状態のもとにおいて、そして非常に雇用条件がよくなかった時点においてああいう対策がとられたのは、国鉄だけでの問題でなしに、国全体の問題としてある部分をお引き受けしたという歴史であると思いますので、その点は別に考えていただくことはできませんかしらというのが基本構想案の考え方でございますので、それは厳密な意味においては収支均衡とも言えないかもしれませんし、健全な経営基盤確立というようなことには当たらないかもしれませんが、そういう一定の条件をお認め願えればということで……。
  38. 青木薪次

    青木薪次君 総裁、それはわかったから、年金、退職金はわかったから、三千億円の方の東北新幹線の開業の問題で、当初赤字についてどうですか、大臣
  39. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) いま提案しておりますこの法案考え方から申しますと、要するに、御質問の東北、上越新幹線、これが新しく加わってまた経営を悪化しないかということ、この御懸念は私もよくわかるんですけれども、しかし、これは先ほど国鉄総裁が言っておりました当初の償却と金利負担がばかっとかかってくるものでございますから、これもあわせて一挙に昭和六十年までに経営基盤を確立するような、いわば営業損失をゼロにするというようなそういうことはなかなかむずかしい。ですから、とりあえず東北と上越を除いて、従来からやっております国鉄の営業全般について昭和六十年で収支をとんとんにする、これがねらいでございまして、とにかく、米価で申しましたら販売逆ざやというのがございますが、そういう状況にいま国鉄はなっておるわけでございますが、それをとりあえず収支均衡とれるところまで、売り上げと経費とがとんとんになるところへ持っていくことにしましたら、そこで国鉄は力がついてくると思うのであります。  いま状況を申しますと、運輸収入より上回って経費が出ておるというところに問題がございますので、それだけは何とか改めたいと、こういうのが今度の法案のねらいでございまして、これは先ほど申しました三十五万人体制中心とした経営改善の計画で推進することによって達成できる目標でございますしいたしますので、これだけは何とかいたしたい。そうすれば六十年以降、収入支出が均衡とってまいりますと、後は力がついてまいりますので、それによって内部からの赤字解消と同時に、政治的な配慮によるところの対策、これを講じまして国鉄全体の収支計算を改善していくという、こういうねらいを持っておるものであるということを御承知いただきたいと思います。
  40. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄総裁にお伺いしたいと思うんでありますが、ことしの四月に、五十五年度の決算は石油代や電気料が物すごく上がったために、予算よりも千五百億ぐらい赤字が出るんじゃないか、余分に赤字が出るんじゃないかということを記者会見の席上で総裁は発言しているんでありまするけれども、この点について、果たしてこのことで再建できるのかどうかという点について聞きたいんでありますが、特に動力費や燃料費はこれからもまた上がるんでありますけれども、その点についてはいかがですか。
  41. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 五十五年度の予算と実行との間に大きなギャップが出るということは、一つは五十五年度予算は私どもの予算だけでなくて他の公社もそうでございますし、一般会計もそうでございますが、電気代のアップが、油の方は上がりましたけれども、それが電気料金にどうはね返ってくるかということが、昨年の予算編成時点でわからないからということで電気料金のアップが織り込まれておりません。四月から電気料金が上がりました。その増加分が、国鉄は非常に大きな電気量を消費している一つの企業でございますので、大変影響が大きくて、現在のところで約五百五十億円ぐらい予算よりも電気代がふえると思っております。それからディーゼル機関車等が消費いたします流動燃料でございますけれども、この方は相当部分予算の段階で昨年よりは上がるということを織り込んであったんですけれども、昨年の十月、十一月、十二月ごろからのOPECの攻勢によって上がりましたことと、円安になってきたことによって燃料が上がってきたものが、予算で見込んだのでは見込み切れませんで、約四百五十億ぐらい予算よりも超過する見込みでございます。  その他といたしましては、仲裁裁定をこのたび実施していただきましたけれども、それに伴う人件費の増、それから四月にやめた人の数が見込みよりも非常に多かったということによる特定退職金の増といったようなことがございまして、大体六百億から七百億ぐらいふえます。そういたしますと、以上合わせますと、千五百億をちょっと超える程度の経費増があるわけでございます。それをいまあらゆる方法でこの経費節約に努力をいたしておりますけれども、やはり全部なかなか飲み込み切れませんで、予算に比べますと、まだ、いま数字を詰めておりますけれども、春の段階で申しました千五百億ぐらいのショート、不足というものがなかなか縮まらぬということでございまして、いま五十五年度の実行につきまして非常に苦慮いたしておるところでございます。
  42. 青木薪次

    青木薪次君 総体的にいまも総裁が言われましたのですけれども、人件費ということを盛んに言っておられるのでありますけれども、その点は大根切るように四十二万四千人を三十五万人にすればいいんだ、それだけ人件費が浮くんだと。人件費の占める率を全体の予算の五〇%に持っていくのだということは、算術計算でできても、ローカル線に働く人たちはそれなりに相当やっぱり苦労してがんばってきたわけですし、がんばっているわけですよ。このことをそう軽々にやはり物事を判断してはいけないと私は思います。  そこで、国鉄再建に向けてそのような思い切った合理化というものが企業努力と銘打って行われていくわけでありますけれども、当初終戦後、南満州鉄道とか北支とか朝鮮鉄道とか、華中、華北、こういうところからどっと復員されてきた人たち、この人たちを、社会不安を起こしてはいけないということで、閣議の決定によって国鉄にひとつ入りなさいと、国鉄はこれを受け入れなさいということになったわけですね。そういうことが戦中戦後を通じて四十万人あるわけですよ。そういうものを含めて、先ほど総裁の言った六十七万人にふくれ上がった時期があるんでありますけれども、切りよく私は昭和二十三年と四年でそのときの職員の数を調べてまいりますると六十一万人あったわけです。  六十一方人の職員が存在したときの輸送量が千二十億人トンキロあったわけでありまして、職員一人当たりが十六万五千人トンキロであったのであります。昭和五十四年、昨年では輸送量が二千四百七億人トンキロとなって、要員は四十二万四千人ということになるわけでありまして、そして職員一人当たりが五十六万八千ということになっているわけでありまして、まさに四倍以上という生産性となっていると思うんであります。経営再建が確立されるという昭和六十年度の資料を見てまいりますると、輸送量が二千四百五十億人トンキロとなって、いわゆる三十五万人体制ということになりますと七十万人トンキロということが一人当たりの仕事量になるわけでありまして、昭和二十四年ぐらいから比べてまいりますると、四・二四倍の労働生産性ということになるわけです。  この企業努力ということは、これはまさに企業奉仕の精神ということだというように代名詞のように実は言われているわけでありまするけれども、これらの関係等について、相当労働組合としっかり話し合って、ただ大根切ればいいんだ一もちろんこれを避けて通るなんということをわれわれ言っているんじゃないんだ。やはりぬくもりのある、しかも国鉄再建という問題等について、仕事量はふえて人は七万四千人も減るなんということは、これは、ゆうべも大きなデモがありました。このデモの内容を見てまいりますると、そう言っちゃなんですけれども、この十分の一にも足らないというような場合であっても、それはもう各省関係で行政改革に向けてものすごいデモンストレーションが行われている。ところが国鉄は、その十倍の七万四千人をこれから昭和六十年までに五年間で減らしていくなんということは並み大抵のことじゃないというように実は考えるわけでありますけれども、この点について、運輸大臣と総裁はどう考えるかお伺いいたしたいと思うんであります。
  43. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 御指摘のように、三十五万人といういまよりも約二割少ない人手でいまと同じだけの仕事をやっていくというのは相当困難な仕事であるというふうに考えております。  それでは、それはただ頭の中に描いたようなものかどうかということでございますけれども、率直に申しまして三十五万人という数を出しましたときにはいろいろいわゆる積み上げ計算をやって出したものではないのでございまして、三十五万人という数でやるとすれば、先ほどもちょっと触れましたように、収入を一〇〇として人件費割合が五〇ちょっと超えるぐらいのところでいくという経営体質になります。戦前からずっと黒字でございまして、三十九年に赤字になったわけですけれども、三十九年直前の収入と人件費の関係がどうなっているかということを見てみますと、やはり大体五〇ぐらいでございました。それから、現在の大手私鉄が配当を生みながら経営をしておられますけれども、その場合の人件費比率が五〇ぐらいでございますので、その辺のところに持っていけば何とか体質的に競争力のあるものといいますか、力を持ったものになるということで三十五万人という数を決めたわけでございます。  そこで、七万四千人の数を減らさなきゃならぬわけでございますが、これをどういう方法でどうやって減らすかということはいままさに作業中でございまして、なかなか困難であるということは、まだその作業が完結をいたしておりません。地域別にどういうふうにするのか、あるいは各仕事のやり方をどういうふうに変えていくのかということをいま細かく積み上げて、何とかそれでやれるところの計画ができるだろうというふうにいま考えております。この計画がまとまりましたならば、そのことについてとっくりと労使間で相談をいたしたい。何といってもいろんな意味においてやはり労働条件も実際上変わるわけでございますし、労働密度もどうしても結果的には負担が重くなるわけでございますから、それらについて職員諸君がひとつそれでやっていくんだという意気込みを持ってもらいませんと、また計画を変えただけということになりますから、労使間の話を詰めてまいりたいと思っております。  ただ、先ほどお触れになりました数字でございますが、一人当たり五十六万八千人トンキロ、それを七十万人トンキロにするということは大変な能率アップになるわけでございますけれども、この数字は過去におきましてはもう少し能率のよかった時代があるわけでございまして、昭和四十七、八年には六十一万人トンキロというとこまで能率が上がったことがございます。その後なぜ能率が下がったかというと、貨物が減りお客さんが減りましたのでそこで能率が下がったわけでございますので、過去の実績から言いましても、五年後に七十万人トンキロへ持っていくということはマクロ的な計算の上では可能な数字だというふうに考えております。しかし、おっしゃるように、いかに紙の上に書いてみても意味がないわけでございますので、これはどこでどういうふうにして能率を上げていくかということについては、労使の間でよく詰めて議論した上で実行計画を立てたいというふうに考えております。
  44. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 人員の問題につきましては、これは国鉄の側におきまして、先ほども総裁が言っておりますように、内部で煮詰め、そしてその実行は労使協議の上で進めていきたいと言っておりまして、今度のいわゆる再建法案の骨子の一つは実はこの問題でもあるわけでございます。  経営改善計画の一番の骨子となりますのは、この人員の配置の問題であろうと思うております。つきましては、七万数千名の要員が削減されるということ、これは国鉄自身努力でもやっぱり達成をされることと私は信じております。おっしゃるように、確かに国鉄は過去においてもその一人当たりの生産性の向上は努力してまいりましたが、率直に申しまして他の競争相手、すなわち自動車であるとかあるいは民鉄、そういう部門と比べますとまだこれを高めていく余地は私はあると信じております。それはただ単にペーパーの上だけではなくして、やはり一人一人の作業環境をよくし、その効率をよくしていくことと相まって私はやっていけると思うておりますので、これはこの改善計画を実施するについて国鉄にこれを強く要請しておるところであります。
  45. 青木薪次

    青木薪次君 大蔵省の主計局次長見えてますか。——私は投資の関係を中心として聞いてまいりたいと思っているんでありますが、まず、運輸大臣にお伺いいたします。  いま非常に交通空間が狭くなってきております、特に大都市を中心として。しかも、このために自動車が非常に渋滞している。それから、交通事故が激発をいたしている。それから、交通空間が狭くなってきているということと並行いたしまして、正比例して、排気ガス等が大量に排出されて大気汚染が非常にふえてきているわけであります。深刻であります。エネルギー問題が今日さらに将来とも問われてくると思うんでありますが、これらの関係を見てまいりますると、国鉄の役割りというものがこれから非常に大きくなってきている。私どもが乗っておりましても、お客さんがこのごろふえてきていることが目立っております。そういう点について、ますます国鉄の役割りが大きくなってきたと思うんでありますけれども、運輸大臣はどうお考えになりますか。
  46. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) まさにおっしゃるようにエネルギー事情がこのように変わってまいりまして、第一資源が有限である、そういう時代になりますと、これを効率的に使うのには自動車よりは鉄道がまさる、これはもう当然のことでございまして、国鉄が今回再建をいたしますについてのいわば基本的な方向といたしましては、鉄道がいわば都市内における主要な交通機関としての活路を開いていくべきであるし、またその任務を負うていくべきであるというのが一つの目標にもなっているわけであります。    〔理事桑名義治君退席、委員長着席〕 今後都市内におきます交通のその担い手は国鉄に持っていきたいと私たちもそう思うておりまして、それのための投資というものはこれからも積極的にやらなきゃならぬことは当然でございます。
  47. 青木薪次

    青木薪次君 私はいま大臣のおっしゃった投資の関係について、そういう議論を踏まえつつ公共投資額について見てまいりまするとね、昭和三十年から五十三年までの公共投資額を比べてみて、道路はそれまでの段階で約八十三倍ある。飛行場は七十倍、港湾が五十倍、国鉄が二十倍ですからね、非常に投資が少ないということが言えると思うんです。特に投資のこのまた額が違うと同時に、内容が違ってんです。内容は、昨年約一兆六百億円の投資額の中で、東北新幹線に三千八百七十五億円投入されている。整備新幹線のアセスメントに二十五億円とすればですね、その他に在来線関係を中心として六千七百億円ということになってくるわけです。このうちから車両費等に一千億円また引かれるんです。それから、車両工場やその他宿舎関係なんかを入れてまいりますると、約五千億円が全国の幹線または亜幹線、ローカル線に投資されたということに実はなると思うんであります。  したがって、戦争中から酷使してきた諸施設、特に鉄橋とかトンネルとか路盤を含めてね、非常に危険な状態にあるところが多いと思うんでありますけれども、この点について運輸省はどうお考えになっておられますか。
  48. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 本年度投資額を見ましたらまさにおっしゃるとおりでございます。そこで、これからの運輸省並びに国鉄協議しておりますのは、おおよそ五十八年ごろをピークにいたしまして新幹線投資というものが一応は完成してまいりますので、その分投資のペースを落とすことなくやっていくといたしますならば、約四千億円近くの新幹線投資というものがそういう在来線投資並びに都市内におきます、大都市圏におきます交通機関の投資、そういうふうなものに積極的に振り向けていきたいということでございます。
  49. 青木薪次

    青木薪次君 約三千億円と理解いたしておりますけれども、上越新幹線の分も含めて、いま大臣の言ったことを確認してよろしゅうございますか。
  50. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 上越新幹線は鉄建公団分でございますが、これも鉄道投資の一環としてわれわれはやはり将来において考えていきたいと思うておりますが、しかしこれは資金の質が違いますので、財政当局等とも十分協議しなければならぬ問題だと思うております。
  51. 青木薪次

    青木薪次君 再建考え方では、経営に与える資本費の影響を配慮して、再建の期間中は投資を現状程度に抑制するとしているんでありますけれども、国土の均衡ある発展とかエネルギー対策の上から見ても、鉄道交通機関としての重要性は今後ますます高まってくるということについては、大臣先ほどの御所見のとおりであります。したがって、私は単年度の収支均衡のために投資を抑えるということは、近代化社会の中で将来禍根を残すことになるんじゃないか、こういうように思うんでありますけれども、ここで主計局次長にその点をお伺いいたしたい、こう思います。
  52. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 国鉄の投資の問題につきましては、国鉄の果たすべき役割りに応じて必要な投資は確保していかなければならないという点は確かにそのとおりかと思います。ただ、一つの問題は、ただいま先生のお話の中にもございましたように、国鉄の設備投資につきましては、借入金依存による投資に伴います資本費の増加というものが経営の圧迫要因になっているというのもこれまた現実の姿でございまして、そういった点を踏まえまして、昨年末の閣議了解におきましても、「工事規模については、極力これを圧縮することとし、当面、現状程度の規模に抑制する。」という方針が定められているわけでございます。したがいまして、財政当局といたしましては、今後の工事費の規模につきましては運輸省ともよく御相談しながら、ただいま申し上げました閣議了解の方針に沿うように適切に対処をしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  53. 青木薪次

    青木薪次君 工事規模は今後とも一兆円程度に抑えるということになりますと、施設の老朽化がどんどん進行する。そして物価がどんどん上がるということになってまいりますると、国鉄重要性はどんどん高まってくるだろう。そうすると、そこに非常にアンバランスが生じてまいると思うのでありますので、そういう点における公共投資、国鉄の役割りというものを考えて、実質的な工事の規模の縮小にならない方法というものを考えるべきであると思うのでありますけれども、その点についてはいかがですか。
  54. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 現在の全体の投資規模が、お示しになりましたように一兆六百億でございますが、これはいろいろのとり方にもよるのですけれども、老朽取りかえにどのぐらい使っているかということになりますと、大体ちょっといま正確な数字を記憶しておりませんが、二千億ぐらいであったと思います。車両を別にしまして、施設の関係でいろいろ改善その他に充てている金額が二千億弱であったかと思います。そのオーダーを見ていただいて、そして今度、いま東北新幹線の方に使っております年額が四千億である。これを在来線の方の老朽取りかえとそれから通勤対策とに重点を置いて回していくということになりますれば、私はいまの程度の規模に抑えるとしましても、かなりの程度いまの老朽施設取りかえにつきましてもまた通勤対策につきましても、いまよりは前進した姿になし得るものというふうに考えております。
  55. 青木薪次

    青木薪次君 「道路・国鉄の投資の推移」について、企画庁から資料をもらったわけでありますけれども、道路が五十四年度投資で五兆三千四百十四億円、それから国鉄が一兆八千四百八十四億円中、東北、上越新幹線が入っているんです。これで七千億円。それから一般に六千億円というものがこの中に含まれているわけですね。そういたしますと、通勤対策とか都市圏の交通、大都市間の大量旅客輸送、その他これからの国鉄の役割りというのを考えてみた場合に、この辺では非常に少な過ぎるのじゃないかということを一般の皆さんからも相当、運輸機関別の投資の割合等についていろいろ指摘されております。  グラフでまいりますると、道路が六五・五%、地下鉄が五・六%、国鉄と鉄建公団で二〇・一%、航空が二・二%で港湾が六・七%と実はなっているのでありますから、この点を考えてまいりまして、日本の国鉄の道路投資が舗装率九五%以上に実は上がってきているわけでありますから、その点から考えてみて、道路がよくなったということは非常に結構なことでありますけれども、やはりそこに交通機関別の投資の整合性というものがなければならないというように考えておりますんでありますけれども、その点についてどう考えますか。
  56. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 道路は、確かに投資が非常な進捗をいたしました。これは、道路は御承知のように特別財源を持っておりまして、それが道路の建設に相当寄与しておることは当然でございますが、と申しまして、国鉄におきましても従来から大きい赤字であった中におきましても必要な投資は進めてきたのでございますが、私は、今後の国鉄の投資も国鉄特性を生かすためにはやっぱり積極的に投資しなければならぬ、その考え方先生ともう全く同じであります。  そのためにも、まず第一に国鉄がそれだけの借入金をやっていっても耐え得る力をやっぱりつくっていかなきゃならぬのでございまして、公共事業であるから全部公共負担でやれというわけにもまいりませんし、その案分というものは将来検討しなきゃならぬ問題ではございましょうが、やはり国鉄経営の中からその経費を生み出していくという基本的な考え方というものを堅持すべきだと思うております。  ですから、その意味においても体質を改善していくということが一つ。それともう一つ、おっしゃるように道路と鉄道との均衡をやっぱりとっていく必要があると思うておりまして、これは将来政府の中におきましても、鉄道投資と道路投資の均衡というものを財源の面からもやはり検討すべき時期に来ておるということを私は認識しております。
  57. 青木薪次

    青木薪次君 それで、私は地震対策について、私も先日まで実は災害対策特別委員長やらしてもらったんでありますけれども、地震の恐ろしさというものについて大変感じている一人です。特に私は静岡県の出身でありますから、今日特にそのことを考えるのでありますが、今日ほど都市の人口と交通機関が過密化している時期はないと思うのであります。しかも、複雑な都市機能を有しておりまして、ここに国鉄や私鉄や道路や地下鉄等の交通機関が網の目のように実はくぐっているわけであります。石油やガスなどがここにたくさん使用されておりますので、関東大震災のように震度六、四百ガルといったような大地震が来たら、従来の惨禍よりも比較にならないほど物すごい形でその被害が襲来するだろうと思っているのでありますが、今日、特に交通機関は、新幹線に示されるように大量高速の時代でありますから、それだけにまた被害が大きいと思うのでありますけれども、この点について、大臣どうお考えになりますか。
  58. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) やはり私ども心配いたしておりますのは、東海道新幹線でございます。在来線の方にも問題はありますけれども、東海道新幹線は非常にスピードが速いだけに、非常なる地震のときに耐え得ないというようなことが起こったらとんでもないことになりますので、非常に気にいたしておるわけでございます。もちろん東海道新幹線の構造物は、つくりますときには当時の基準に従って十分耐震設計、地震に耐え得るという意味での耐震設計がなされております。およそ震度六ぐらいのところまででありますれば十分耐え得るということになっております。  しかし、最近はむしろそれ以上の大規模な地震に対して対応しなければならないという時代でありますので、このような地震が発生いたしました場合の構造物の被害をあらかじめ予防するための対策をとらなければならないということで、主として現在東海道新幹線、なかんずく神奈川県の西から愛知県の東に至る部分につきまして、地震に耐え得る力を強化するということで補強の研究を進めますと同時に、その補強方法の研究が進むに従いまして具体的な実施に取りかかり始めておるところでございます。
  59. 青木薪次

    青木薪次君 気象庁にお伺いしたいと思うのでありますけれども、大規模地震の起きる可能性、たとえば前兆現象とかというものについてどういうようにとらえていますか。
  60. 増澤讓太郎

    政府委員増澤讓太郎君) お答え申し上げます。  現在の地震学の統一的な見解によりますと、第一番目に、東海沖には地震発生の空白区域が存在しておりますこと、それから第二番目に、東海沖では歴史的に見まして大地震が約百年ないし二百年ごとに発生しておりますが、安政元年、一八五四年でございますけれども、それ以来百二十年間は発生していないこと、それから三番目に、明治以来駿河湾沿いの地盤は沈下する一方で内陸側は隆起する傾向を示しております。また水平方向にも変動が続いております。こういうことなどから、地震を発生させるひずみエネルギーが蓄積されているというふうに考えております。このようなことから、将来地震発生の可能性は大変高いものと判断いたしております。
  61. 青木薪次

    青木薪次君 主計局次長にお伺いいたしたいと思いますけれども、大規模地震対策特別措置法ができて、それから静岡県を中心といたしまして東海六県に財政特例法が成立したわけです。約五千億円という特別な措置地方財政を含めて今回決定したわけでありますけれども、その六割が実は静岡県に充てられているという、いま気象庁長官発言を裏打ちされたもので、財政措置がまことに少ないけれどもなったわけでありますが、国鉄には何にもないのです。したがって、この点についてはどうお考えになっていますか。
  62. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 率直に申しまして、いまお示しの法律ができます段階で私ども国土庁なりあるいは財政当局なりといろいろ議論をいたしたわけでございますが、現在の法律のたてまえでは、私どもの方に特別に何か財源措置をしていただくという主張を非常にしにくい状況にございまして、まあしかし物事は地震に関連する安全の問題でございますので、私どもは先ほどの一兆六百億の投資の中で、非常にきつい、苦しいのでございますけれども、その中から回して地震対策をやっていくということで現在は取り組んでおるところでございます。
  63. 青木薪次

    青木薪次君 総裁は、あなた昔は大蔵事務次官か何かで、いま国鉄総裁なんだから、ぼくは主計局次長に聞いているんだから、横から答弁しないでもらいたいと思うのでありますが、主計局次長、この点について、いま総裁がいみじくも言われた、いま現在ある工事費の中でそのうちの一部を今度は流用して、知ってますよ、私も、地元ですから。掛川で前の満水の隧道にパイルを打ち込んでこれを素手で結んだりなんかしてやっておりますけれども、非常にヘドロ地帯なんかを走っております。特に富士地区それから遠州地区なんかは基盤が動いているのですから、ヘドロ地帯で。そういうようなところは、これは大変な事態になると思うのでありますけれども、この点については財政当局としても、地震対策についてやはり特別な配慮をすべきだと思うのでありますけれども、いかがですか。
  64. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 国鉄の投資の具体的な配分をどうするかということにつきましては、これは事柄の重要性、必要性、そういったものを総合判断いたしまして重点的な配分をされることになるのではないかというふうに私ども理解をしておりまして、したがいまして、現在の工事規模の中でそういった地震対策というものの必要性のあるものにつきましては、そういった重点的な配分ということで対処していただくのではないかというふうに理解をしておるわけでございます。
  65. 青木薪次

    青木薪次君 五十六年度にそういった意味で地震対策重点的に考えられる、こういうように私は理解いたします。  そこで、国鉄は警戒宣言が発せられたときに最寄りの駅まで安全な速度で運転して停車すると言っているのだけれども、私どもの地震地域の静岡駅とか浜松駅とか富士駅、三島駅、沼津駅、あるいはまた熱海駅といったようなところに対しては、何千人、何万人という人が恐らくここに集中すると思うのです。ここには避難地も広場もないのです。駅前広場はありますけれども、これはそういう用には達しないと思います。そこで、旅客を収容する広場もないということになれば車両の中に閉じ込めてしまう。閉じ込めてしまうと、ここにパニックが起こるというようなことで大変な事態になると思うのでありますけれども、どういうようにこのことを受けとめていらっしゃるかお伺いいたしたい。
  66. 藤田義人

    説明員(藤田義人君) 先生御心配のように、新幹線の場合一列車が非常な単位の旅客を運んでいるだけに、この面についての旅客のパニックが起きないようにいろいろと情報を伝えるなり、また旅客全体を掌握する、そういうことで努力していくように考えております。  なお、駅前の問題なり車両の問題等ございますが、やはりニュースを旅客にいろいろと伝えていくということが一つにはパニックを防止することになると思います。やはり情報がわからないということが非常にそういう面での不安感をあおっていく。幸いにして先生御存じのように新幹線にはそういう情報系がいろいろと整備されておりますので、そういう面についての活用を図り、旅客に十分な情報を伝えていきたい。今回訓練のときでもそういうことをこの九月の一日実施いたしております。  なお、自治体の方との関係、そういう駅前広場ないし近くに避難場所がある場合等についても、いろいろと地元自治体との連絡をよくとりながら、そういう点についての対処方を進めていきたいということで現在作業を進めております。
  67. 青木薪次

    青木薪次君 急迫した地震は隣の駅に到着する前にがたがたっとくるわけですよ。今日では震度六じゃなくて、仙台でも調べてみたら震度七があるのですね。今度のアルジェリアの地震は直下型で震度七なんですよ。こういうことになりますと、これは盛り土が崩れ、駅舎なんかについても崩壊する危険性がある、列車は転覆する危険性があるということになるのでありますけれども、隣の駅まで到着する前に、警戒宣言が発せられてからですよ、大地震がやってくるという想定をしたことはありますか。
  68. 藤田義人

    説明員(藤田義人君) 私どもの方の大規模地震対策としての、いま先生がおっしゃいました警戒宣言という内容につきましては、マグニチュード八以上がその警戒宣言が発令後数時間ないし数日以内に発生する、また、きつく申しますと、一つには発令後二、三時間以内または二、三日以内というようなことで、当然われわれとしても、人命尊重、旅客の安全を第一に考えておりますので、そういう面をも想定し、しかし線路上にいろいろと危険個所がございます。たとえば熱海の駅などは山崩れが発生するということであそこでは列車をとめないように考えておりますが、そのように、場所場所によって危険個所もございます。いわゆる原則として最寄りの駅にとめるということ、それなども時間的な問題も考えいわゆる安全なるところにとめるということで、それぞれ細かく今後とも指導していきたい。  ですから、いま先生の御質問に対しては、十分、すぐに発生することを念頭に置きながら旅客の人命を尊重した手配ということ、そのように考えておるということでございます。
  69. 青木薪次

    青木薪次君 中断します。
  70. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 午前の審議はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  71. 黒柳明

    委員長黒柳明君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案議題といたします。  この際、塩川運輸大臣から発言を求められております。これを許します。塩川運輸大臣
  72. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 午前中青木委員から要請がございました運輸省並びに自治省協議いたしました結果といたしまして、統一見解を申し上げたいと存じます。  御審議をお願いしております法案は、国鉄再建重要性から関係各省庁了承の上提出されたものであります。ただ、特定地方交通線の第三セクターによる鉄道輸送への転換については、現状から見て、第三セクターにより経営する場合でも赤字が生ずるおそれがあるので、地方公共団体が第三セクターに参加することについては、その財政負担を慎重に検討した上対処しなければならない。  以上のとおりでございます。
  73. 黒柳明

    委員長黒柳明君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  74. 青木薪次

    青木薪次君 原案より補強されて、考えるとあるのを、ならないということで、両大臣が確約をいたしましたので、この点についてはそういう方向で、赤字だからまたどっかへやるとか、それをさすらいの旅に出た放浪児のようにさせないようにしなければいけないということについては、もうこれは言をまたないところでありますけれども、自治大臣、その方向でよろしゅうございますか。
  75. 石破二朗

    国務大臣石破二朗君) おおむね御指摘のとおりであります。
  76. 青木薪次

    青木薪次君 おおむねということは、概してとかほぼとか大体三分の一ぐらいに値引きした回答だと思うのでありますけれども、いま塩川運輸大臣の読まれた方針についてあなたは了承しますか。
  77. 石破二朗

    国務大臣石破二朗君) 塩川運輸大臣が両省の統一見解としてお述べになりましたことにつきましては、毛頭異存がありません。
  78. 青木薪次

    青木薪次君 わかりました。そのようにお願いいたします。  そこで、私は国鉄にお伺いいたしたいと思うんでありますが、東海地震の発生のときに想定される地盤動に対して、新幹線、東海道線の橋梁、トンネル、盛り上等の耐震性についてはどうなっているか、お伺いいたしたいと思います。
  79. 半谷哲夫

    説明員(半谷哲夫君) 東海道新幹線の構造物でございますけれども、これにつきましては当然耐震設計というものがなされております。したがいまして、通常の地震というのもおかしいんでありますが、普通の地震では耐えられる。震度階で申し上げますと震度六——震度六というのはガルで申し上げますと二百ガルから四百ガルということになっておりますが、四百ガルぐらいの震度に対しましては十分耐え得るという設計になっております。  それから在来の東海道本線でありますけれども、これは建設以来相当の歴史を経てきておりまして、この間に何回かの地震、関東大震災というような地震の経験も経てきておりまして、そのたびに構造物に支障があり欠陥が出た等があるわけでございますけれども、そのたびにその弱点個所を補強してきております。それからまた、老朽構造物を取りかえるという時期の来たものが大分ございまして、これは順次取りかえておるわけでありますけれども、その場合にも耐震設計というものには十分配慮しているわけでございます。  したがいまして、震度六程度の地震に対しては十分耐え得るという自信を持っているわけでありますけれども、今回予想されておりますのは震度階でいいますと七以上の大規模な地震ということになっておりますので、となりますと、いまの構造物ではある程度の被害が予想されるということでございます。特に、その被害の予想されるものといたしまして、この強化地域内の全長二百二十キロでございますけれども、その中に軟弱地盤と言われるいわゆる表面の地盤の非常にやわらかい層が約二十キロにわたってございます。その二十キロの上にあります盛り土構造、土を盛りましてフォーメーションを構築している構造がやはり地震に対しては、一番全体をながめた場合の弱点と言えるんではないかということで、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、その軟弱地盤上の盛り土に対する強化策というものを現在積極的に進めているわけでございます。  それから橋梁等につきましては、やはり揺すられることによりまして橋げたが落ちるというのが一番大きな被害を生ずるわけでありますので、そういった橋梁が落ちないような手だて、これをいま鋭意進めるということにして実施中でございます。
  80. 青木薪次

    青木薪次君 一番心配なのはやはり新幹線と東海道本線です。私の住んでいる静岡県におきましては、先ほど気象庁長官の言われましたように震度六、四百ガルぐらいの強大な地震が襲ってくる可能性が随所に前兆現象として起こっている。これは私たちも確認を実はいたしているところでありますが、そのところで実は冒頭申し上げましたようなヘドロ個所というのがあるんでありますけれども、これらの点についてどのような補強をされておられるのか、お伺いいたしたい。
  81. 半谷哲夫

    説明員(半谷哲夫君) 耐震設計と私ども申しておりますけれども、地震に耐えられる構造物にするということにつきましては、いろいろ勉強してきたわけでございますが、それと同時に、現在あります構造物そのものに対しまして、現在時点でどのような地震に対する強化策を行うかということになりますと、これは技術的にもなかなかむずかしい問題があるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては大分前から部外の学識経験者に入っていただきまして研究委員会というようなものをつくりまして、そして現在ある構造物に対しましてあるいはまた現在の構造物が乗っております地盤状態等を考慮いたしまして、どのような強化方法が最も効果あるかという研究を続けてきております。  すべての成果が出そろったわけでありませんけれども、現在までにその成果が大分出てきておりまして、いま先生御指摘の軟弱地盤上の盛り土に対する対策というものもこういった研究委員会で検討された結果をいま実際に採用しているという状況でありまして、主として行っておりますのはシートパイルというスチールでできました矢板を連続して打ちまして、これを盛り土をはさみ込むような形で左右両側に連続して打ちまして、これをスチールのタイで結び合わせるということで、これによりまして地震が参りましたときに線路を支えております盛り土が液状に近いような状況で崩れる、崩落を起こすというものを防ぐことができるということで実施しているものであります。
  82. 青木薪次

    青木薪次君 どれくらいの金がかかるんですか。
  83. 半谷哲夫

    説明員(半谷哲夫君) 詳細な計算が現在なされてはおりませんけれども、私ども新幹線、在来線の東海道線含めまして、いまの盛り土対策あるいは橋梁の関係、その他トンネルの補強等含めまして、非常に概算でありますが一千億ぐらいかかるかと思っております。
  84. 青木薪次

    青木薪次君 この地震対策に一千億かかるとすれば、これは午前中の議論にありましたように、国鉄の投資額に占める割合というものは非常に大きくなってくると思うんですね。私は、地方自治体並びに国の出先機関という関係については、これはもう国で措置する、あるいはまた市町村の場合においては、国の特別交付税とそして起債で賄うということになると思うんでありますけれども、これらの点について、非常に不つり合いな関係が実は出てくると思うんでありますけれども、どこをとってみても、公共企業体であろうと国の出先機関であろうと、市町村であろうと、これはもういわゆる国の関係する施設であることに間違いないんであります。この点は午前中も大蔵省の主計局次長と話をしたわけでありますけれども、大臣はその点についてどういうようにお考えになりますか。
  85. 山地進

    政府委員(山地進君) 先生の御指摘のとおり多額の金を要する工事であるわけでございますが、この工事というのは国鉄のみでございませんで、私鉄もその他の交通機関もそれぞれこういった工事に相応の費用を使っているわけでございまして、この費用を一体だれが負担するのが一番公平なのかということが最後の決め手になろうかと思います。  そこで、国鉄並びに私鉄も含めてでございますけれども、やはりこういったものを静岡のいまの特定の強化地域ということではございますけれども、やはり全般的な災害というものを負担するのは、やはり最終的には利用者にも負担いただかざるを得ないのじゃないだろうかと、かように考えておりまして、特段のこの件のための費用ということについては考えていないわけでございます。ただ全般的な工事費の補助金というのがございますので、そちらの枠内には入るということでこの問題に対処しているわけでございます。
  86. 青木薪次

    青木薪次君 私は、地震対策その他についてはいささか突っ込んでいろいろ議論をしてまいりました。財政特例法の成立についてもいろいろ努力いたしました。その結果、いま山地鉄監局長の議論から展開するならば、たとえば国鉄を、大規模地震が襲来したときにどういうような位置づけをするのか、そのときの役割りというような点からいろいろ議論されたように聞いているわけであります。しかもこの中で、自治大臣に聞けばよかったのでありますけれども、たとえば学校、公立学校ですね、これらの関係についてもこれは法律事項として、そのほか病院や診療所やその他についても法律事項として今度は財政措置がなされ、その財政措置はたとえば二分の一については四分の三にするとか何とかというようなものも含めて、かさ上げを含めて措置されているように実はなっているわけであります。  そこで午前中に私が申し上げたのは、警戒宣言が発せられたときに、最寄りの駅まで三十キロないし四十キロの安全速度で行くと。その間に地震が襲来したときはどうするか。あるいはまた二、三時間後から、二、三日後までの期間における警戒宣言の場合においてはその危険地域を脱するとかいろいろあると思うのでありますけれども、いま聞くところによれば、それらの関係を含めて国鉄に対する地震対策の役割りといったようなものについてもいろいろ考えているようでありますけれども、いま局長のおっしゃったような議論でいきますと、私鉄と国鉄を一緒にするということについては、これはやっぱり国民立場から見ればわかるんだけれども、議論の飛躍があるんじゃないかというように考えるんですけれども、それらの点についてどう思いますか。
  87. 山地進

    政府委員(山地進君) 私鉄、国鉄同様に考えるのはどうかという御指摘は、恐らく私鉄と違って国鉄の場合に公共性が高いという御見地からかと思うんでございますけれども、公共性の問題もちろんございますけれども、現にいまの交通機関の費用というのは、投資の場合も含めましてだれが持つのがいいのかというのが、先ほど来御議論がございました空港にしても道路にしても、それぞれの費用の負担というのは受益者負担というのが、全部じゃない場合でも大部分であるわけでございます。そういった見地から申しますと、私鉄の場合もこれは会社の経営ということを通じて運賃で利用者負担している。国鉄の場合には私鉄と比べればこれも場合によっては短所にもなるわけでございますけれども、全国的な規模で運賃というものを収受しているから、静岡県の一部については言ってみれば全国の国鉄の運賃で負担するという考え方になろうかと思うわけでございまして、私鉄と国鉄とでこういった施設整備について特段の考え方の違いということはないのではないだろうかというふうに考えております。
  88. 青木薪次

    青木薪次君 私は受益者負担という考え方は、ある意味で筋が通っていると思います。しかし、これはたとえばいま静岡県ということを出しておりますけれども、静岡も神奈川も山梨も岐阜も愛知も、東海六県が対象でありまして、これに対する五千億という予算措置がこれがとられるわけでありまして、ですから、これは一般の交付税とは別に国から、全部じゃないにいたしましても相当部分が持たれるということになりますと、これは受益者負担という考え方とは若干やはりニュアンスの相違がある。広い意味では国民が租税で負担するということになるでしょうけれども、運賃で地震のためにこれだけ取るなんということはこれはできないわけでありますから、それらの点について、その事業体の置かれている性格や位置づけにおいて国で措置するということがなければ、ほかの方の費目を流用して、いま一千億という話を聞いたわけでありますから、その点について運輸省答弁はちょっと筋が違っているのじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  89. 山地進

    政府委員(山地進君) 今回の地震は、日本の場合でも予知とか広がりとかあるいは予想の規模とか考えられる中ではきわめて異例に属するかと思うんでございますけれども、一般的な災害あるいは災害が起こるための予防措置の安全、そういった意味では、こういった交通機関運営に当たりましては、いつでもある程度の危険というものを未然に防備するための余裕といいますか、そういうものというのは常に持っているのがやはり交通機関の安全性に対する責任ではないんだろうかと思うんでございます。  そこで、じゃ東海の地震だけはそういった安全性の、言ってみれば余分なものというふうになぜ見なきゃならないのかというところが、若干頭の体操みたいになって申しわけございませんけれども、そういうところでは、私どもとしてはやはり交通機関が持っている安全性の自分の責任の範囲内ではないんだろうかと、かように考えるわけでございまして、先生のおっしゃる今回の六県にわたる対策というのがいままでのそういった交通施設に対する予備といいますか、そういうものから見れば非常に手厚くかつ適切なものだと思うわけでございますけれども、今後ともそういうものについて、何が別になるのかという議論が非常にむずかしいのではないだろうか。そこでこういったものについては、従来の投資の枠内で優先度というものはもちろんあるわけでございますけれども賄っていくと、それで利用者負担していくというのがやはり原則とならざるを得ないんじゃないだろうか、かように考えているわけでございます。
  90. 青木薪次

    青木薪次君 安全性を保障するというものについては事業主体となるところの経営者がやるのが当然のことですよ。そうじゃなくて、何のために大規模地震対策特別措置法ができたのか、それから何のために財政の特別措置法律によってつくったのか。単なる一般的な交付税じゃないわけですよ。そこにいまあなたの答弁は、そのことを全然考えないで一般的答弁をしているところに議論のすれ違いがあるということを、局長あなたはお考えになっていただかなきゃ困ると思うんです。ですから、それらのことについて、政府は今回の国鉄の大規模地震対策に対して特段の財政上の配慮をすべきであろうと考えるわけでありますけれども、大臣いかがですか。
  91. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先ほど山地鉄監局長が申しております考え方が、要するに国鉄運輸省の基本的な考え方でございます。  そこで、どうしても国鉄負担でそういう危険排除のための措置ができないということが明確になりました場合には、また、これは運輸省といたしましても、財政当局と協議をするということに相なろうと思うんでございますが、いまのところは国鉄自身努力によりまして、安全を確保するために投資もいたしておりますので、当分の間はこのまま見守っていきたいと思うております。
  92. 青木薪次

    青木薪次君 この点は、私が冒頭から言っているように、戦前、戦中を通じて相当、あの戦争遂行のために諸施設を酷使をしてきた、もう飽和点に達しているということを私は知っているわけです。ですから、国並びに地方自治体の管轄する道路、橋梁、河川、トンネルその他、いまどんどん直されている。そのときに、ぽつんと国鉄はそのままに置かれている。こういうことでいいだろうかということを考えたときに、大臣先ほどおっしゃっているように、それらの点については同じように考えている。同じように考えるために、今日の予算の関係から無理だということが、当分このまま続けるということじゃなくて、最近のうちに検討した結果、そういうことで何とか対処の方法があろうということであるならば、私はやはり財政当局と相談をして、前向きにこの対策実施するということにすべきであると考えますけれども、この私のきわめて妥当性のある質問だと思うんですけれども、いかがですか。
  93. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 御意見は本当に十分承っておきます。先ほども申しておりましたように、目下のところは国鉄努力でやっておりますので、いずれそういうことではとてもじゃない、かなわないというような事態に相なってまいりました際には、協議をいたすことにいたします。
  94. 青木薪次

    青木薪次君 時間がありませんので、またこの次の運輸委員会で詰めていきたいと思っておりますが、したがって、その次の質問に移りたいと思います。  いま運輸省は、運輸政策審議会に、四十六年十二月に決定されました総合交通体系についての見直しを諮問中であるわけでありますが、諮問内容とか審議会審議状況等をひとつ簡潔に説明していただきたいと思います。
  95. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 運輸省といたしましては、本年の四月一日に、長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向についてという諮問を運輸政策審議会にいたしたわけでございます。御承知のように、四十六年の答申以来、ほぼ十年近くたちまして、この答申は、ちょうど高度成長の時代に出されたわけでございますが、その後、世の中は安定成長に変わりましたし、またその間、輸送需要の伸びというような問題につきましても、安定成長になりまして、若干変化が見えておる。そのほかに、産業構造が大分高度化いたしまして、第三次産業がふえてきているとか、また、交通空間、公害の問題というようなものが四十六年の答申時代よりもより一層厳しい情勢になっております。  また、当時想像してなかったエネルギー問題というような問題も出てまいりましたし、その他各面にわたる社会経済的な情勢の変化も出ておりますので、八〇年代の安定成長期を迎えて、交通政策あり方はどのようにあるべきだという形で、四十六年の答申について見直しをしたいということで諮問申し上げているわけでございます。現在、四つの部会を設けまして、一つは企画部会、一つは幹線部会、一つは地域交通部会、一つは物流部会、四部会のもとで精力的に審議を行っているところでございます。
  96. 青木薪次

    青木薪次君 いっその答申は発表になる予定ですか。
  97. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 四十六年の答申の場合から推測いたしますと、その当時約一年間の審議期間を要しております。御承知のように不確実性の時代でございまして、いろいろエネルギー問題、その他各般の問題が非常に不確定要素が多いときでございますので、極力審議を急ぐといたしましても、やはり前回同様一年程度の期間は必要ではないかと考えておる次第でございます。
  98. 青木薪次

    青木薪次君 四十六年の総合交通体系が決定されてからもう十年近くになります。わが国交通をめぐる環境は、いま審議官もおっしゃったように、相当変化しておりまして、岡田教授が中心となって、経済企画庁の総合交通研究会の四十九年の中間発表を待つまでもなく、何としてもこの際、ひとつ早急に答申をまとめていくべきだというように思うのです。しかもエネルギー環境、交通空間の制約条件は、いまのお話にあったように非常に厳しくなってきておるし、最近は省エネルギーの見地から、わが国交通体系の全面的な見直しが求められていると思うのであります。この点、運政審の見直し作業の中でどのように重点的に取り扱っているか、ひとつ、これまた簡潔に説明を願いたいと思います。
  99. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 先ほども申し上げましたように、まあ交通空間、公害の問題、それからエネルギー問題というような状況が、非常に四十六年のときから見ますと強い制約条件となっておる点が一つございます。それからいま一つは、やはり安定成長に移りまして、全体のパイが小さくなったと申しますか、その辺でより効率的な交通体系をつくらなければならぬという要請が強くなっていると考えておるわけであります。  運政審で今後問題を議論していく場合に、これらの制約条件をどのように評価するかということで、現在運政審の企画部会の中で、これらの制約条件を論議する場を設けておりまして、この場で議論されました制約条件、たとえばエネルギーの問題を一つの例として取り上げますと、運政審の答申は大体六十五年を目標としておりますので、六十五年時点には、石油エネルギーにつきましてはどの程度が獲得できるか、それについて、油種別にどのようになるであろうかと、そうすると、そういうものに対する需要はどうなるであろうかというような点を細かく検討いたしまして、それを前提といたしまして各部会で議論しているという状況でございます。
  100. 青木薪次

    青木薪次君 全面的に見直すということになりますと、大量輸送機関として燃料効率が非常によい国鉄あり方を見直す必要があるんじゃないかというように考えております。  で、現在、運政審で行われているこの総合交通体系の見直し作業の中で、国鉄のこの大量輸送機関としての位置づけをどうするのかということと、今回の再建法で「基幹的交通機関」というように言っているのですから、そういう立場国鉄をどのように見ているか、説明願いたいと思います。
  101. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 私ども将来の総合交通体系あり方につきましては、従来から、四十六年の答申以来、基本的には交通機関間の競争と利用者の選択というものを前提として交通体系が形成されるということは、大筋において間違いない、今後も変わらぬ事実であろうというぐあいに認識しておるわけであります。しかし現実には交通市場というようなものはいろんな制約条件がございまして、必ずしもそういう原理だけで物事は処理できない。したがいまして、たとえばエネルギーの節約という要請がある場合に、エネルギーの節約という要請を踏まえて需要をどのように誘導していくかというようなことは、どうしてもやらなければならぬ局面が出てこようかと思います。  そういう問題について、今後具体的にどういう誘導政策があるかというようなことは、運輸政策審議会でいろいろ議論していただくことでございまして、先生おっしゃいます国鉄の位置づけがどのようになるか、基幹的交通機関としてどうするかというような話は、これから運輸政策審議会の議論の中で決めていくことでございますが、従来から申しておりますように、国鉄の役割りといたしましては、都市間の基幹的な輸送、それから大都市等の大量高速輸送、それから物流におきまして貨物の大量定形輸送という従来言われているような線から大筋は変わらないというぐあいに考えております。
  102. 青木薪次

    青木薪次君 従来から変わらないということでありますけれども、競争原理を活用しつつ各交通機関の分担関係を想定して交通需要を調整する、そして誘導していくんだということが必要だといま言っているわけですけれども、競争原理尊重の立場をとっているけれども、地方交通市場はまさに競争原理が働く余地がないくらい非競争的市場となっている。したがって、ミニマムとして公共輸送をいかに確保するかが緊急の政策課題になっているというように思うんでありますけれども、この点どう考えますか。
  103. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) ただいま概括で一般論として申し述べましたけれども、先生御指摘のように、地域のたとえば過疎地域交通というような問題につきましては、いわゆる市場原理というような形ではなかなか輸送サービスの提供ができない状態になっておるわけでございます。したがいまして、このような場合にはやはり政策として、シビルミニマムとしてどれだけ維持するかということを政策的に考えていかなければならぬ、そういうことで、従来からたとえば過疎バスの問題であるとか離島航路の補助であるとかというような形でこのような地域交通政策的維持を図ってきたところでございます。  また、今般私どもといたしましては、地域交通重要性地域における公共交通の危機的な状態を考えまして、今後各県ごとに陸上交通審議会の場において地域交通の将来のあり方というようなこともあわせて勉強してまいり、地域交通の充実に努めたいというぐあいに考えているところでございます。
  104. 青木薪次

    青木薪次君 したがって、いま問題となっております国鉄地方ローカル線問題も、ミニマムの公共輸送機関として政策的にどう位置づけていくかということが私は重点として取り上げられなければならぬと思っているんです。ですから、今後総合交通体系を進めていく上で、競争原理の働く市場と働かない市場を選別しまして、そして個々に適した政策を樹立する、こういう考え方が必要じゃないか、政策担当行政官庁として。私はそのように考えているんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  105. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 先生御指摘のように、ただいま申し上げました過疎地における地域交通というような問題、それからたとえば空間的制約がございまして、利用者が先行するからといって必ずしも自動車で通勤ができないということからもおわかりのように、大都市交通の問題、このような問題につきましては、やはり市場原理ということではなかなか処理し切れない問題であろうかと思っております。  御指摘の国鉄地方交通線がミニマムの交通機関であるかどうかという問題につきましては、これは輸送量の現状から見まして、やはりバスの方が国民経済的に見ても効果的であるというぐあいな計算結果が出ているわけでございまして、そういう意味ではちょっとその先生の御趣旨は私ども理解しかねるわけでございますが、いずれにいたしましても市場原理というようなものでオールオーバーに決める筋のものではない。たとえば物流というような世界につきましては、比較的市場原理というものになじみやすい分野だと思いますけれども、御指摘の過疎交通、大都市交通というようなものにつきましては、政策的な誘導というものを強化していかなきゃならぬというぐあいに考えている次第でございます。
  106. 青木薪次

    青木薪次君 総合交通政策を進める場合において、異種の交通機関ですね、この公共投資の配分の問題、午前中にちょっと道路との関係を言ったんですけれども、この配分の問題をやはり真剣に考えなきゃならぬ点があるんじゃないか。むしろこれは経済企画庁の立場においてもその点は特に必要だと実は思っているんですけれども、現在政府実施している新経済社会七カ年計画、五十四年から六十年、この公共投資の規模が、二百四十兆円を財政需要と絡めて二百兆円に圧縮する、そしてそういう作業を進めていると言われているんですけれども、道路とか鉄道とか港湾とかあるいはまた航空の投資配分を変えていく要因というものがなきゃならぬと私は考えているんですけれども、今後のエネルギー事情を考えて、道路の投資規模は極力抑えて鉄道の投資規模をふやすべき時期にきたと、こう思うんですけれども、この点はいかがに考えますか。
  107. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) いろいろ異なる交通機関間の投資配分をどのようにすべきかという問題につきましては、私が今後どうすべきかという問題につきましてはちょっとお答えする立場ではないかと思いますけれども、現在経済社会七カ年計画で交通投資の量を、たとえば鉄道につきましては二百四十兆の中で十七兆七千億でございますか決めておるわけでございますが、これを決めるに当たりましては、やはり社会資本の整備というのは長期的に見て整合性を持たなきゃならぬという観点に立ちまして投資量を決めておるわけでございます。  それからいま一つは、やはりその社会資本の整備というものが民間活動との相対的なバランスを保持しなきゃならぬ、また国民生活に必要な社会資本サービスを充実しなきゃならぬというような基本理念に基づきまして各交通機関間の必要の施設整備量を出し、総体として効率的なネットワークが形成されるような形でこの経済社会七カ年計画の投資量は決めたわけでございます。したがいまして、基本的にはこの七カ年計画の投資量で望ましい姿ができるものであるというぐあいに私ども理解しているわけでございます。  しかし、国鉄について申しますと、御承知のような国鉄経営問題等もございまして、投資は国鉄の体力ができ上がるまでしばらくの間少し控え目でいくというような形になっておりますので、若干そういう意味で控え目になっておるというぐあいに理解しております。したがいまして、投資の配分につきましては、その中で特に要請の強い都市交通というような問題に優先的に投資していくという形でこの投資が進められるというぐあいに理解しているわけでございます。
  108. 青木薪次

    青木薪次君 言われるように、交通関係の公共投資は、道路、鉄道、港湾、航空と全くばらばらに行われているんですよ。私はもうこの五、六年、投資間の整合性がなきやならぬと、また輸送の結節点というやつをしっかりつくれと、そういうことを積み重ねて全体と部分の調整をしていけば、これは運輸省の指導のもとに投資間の整合性が確保されていくんだということをばかの一つ覚えのように言ってきた。交通投資は異種交通施設間の接続や連絡に重点を置いて進めるという立場に立つわけですけれども、鉄道と港湾、道路と鉄道、空港と鉄道というようなものについては、接続や連絡にどのような対策運輸省としてとってきたのか、この点をお聞きしたい。
  109. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) ただいま先生御指摘のように、異種交通機関の結節点と申しますか、たとえばターミナル、港湾というようなこの結節点というところは、これこそ交通の改善のためのまさに戦略的なポイントでございまして、お説のようにそういう点を強化するということが交通全体、体系としての交通を非常に効率的ならしめるゆえんだと思っておるわけでございます。したがいまして、そのような考え方に基づきまして、従来からも、たとえば鉄道の例で申し上げますと、これは釈迦に説法でございますけれども、フレートライナーというような形で鉄道と自動車の共同一貫輸送を推進する。それから海運につきましても、たとえばフェリーと、フェリー埠頭というようなものを急速に整備いたしまして、やはり自動車と海運という形で海上で雑貨輸送をやる。それからコンテナ、内航コンテナというような問題につきましても輸送量がまとまるところでは、たとえば北海道とか九州というようなところでは行われているような形でございまして、そういう形でいわゆる異種交通機関を知恵と工夫でうまく結びつけるということを今後とも進めていかなければなりませんし、その面で結節点を強化していかなきゃならぬというぐあいに考えておるわけでございます。  なお、そのほかに長期的な問題といたしましては、やはり余り物流量を発生しないような産業立地ということを国全体としては考えていかなきゃならぬ。また共同一貫輸送より前にドア・ツー・ドアで、たとえば鉄道の専用線でもって港から工場の中へ入るというような輸送がなお望ましいというぐあいに考えておる次第でございます。
  110. 青木薪次

    青木薪次君 かつて運輸委員会でポートアイランドを見学しました。ここも輸送の結節点ということをいろいろ考えた諸設備がありました。大阪南港も調べました。ここもまだ満足じゃないけれども、やはりいま審議官の言ったように外航コンテナと国鉄を結ぶというようなことについてもっと考慮すべき点があると見てまいりました。最近、国鉄が千歳駅から北海道各地に特急を走らせておりますね。これは航空と鉄道を結びつけるということで営業成績がよくなっているという新聞を見ました。貨物についても、いま言ったように港湾との接続をよくして鉄道の貨物量の増加を図るべきだと思うんですけれども、この点どんな方針で臨んでいるか、国鉄総裁にお伺いいたしたいと思います。
  111. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 一般論といたしましては、いま御指摘がございますように、港へ鉄道を入れるといいますか、鉄道と港の関係を密接にする方が私どもとしても物流上もよろしいし、また経営上もよろしいということが言えるわけでございます。しかしながら、いま御指摘の大阪の南港につきましても神戸につきましても、決してこれは放置してあるわけではなくて、計画の段階からいろいろわれわれのレールを港へ入れたらどうだろうかという研究をいたしたのでございますけれども、御存じのように全体として日本の工業立地条件が変わってまいりまして、内陸部の工場がむしろ港の方へ張りつくというようなことがあるものですから、港ができましても、今度港から私どもが貨物を受け取ってそれを内陸部へ運ぶというような需要は、戦前あるいは戦争直後の時代と比べますと少し減ってきておるのでございまして、具体的に計画を立ててみますと、どうもうちの投資効率からいって十分引き合うということは言えないということで、率直に申しまして最近十年なり十五年なりの間、港へレールを入れるということは余り積極的にいたしておりません。  で、こうした態度がいいか悪いかについては、いまの御指摘のように問題があるわけではございますけれども、個々のプロジェクトごとに当たってみますとどうも余り少なくとも採算的にうまくないということで、率直に申しまして現在のところはやや私どもの態度は消極的な取り組みということになっているのが事実でございます。
  112. 青木薪次

    青木薪次君 私がいま申し上げてまいりましたのは、運輸省は相当いま言ったように海運から港湾から私鉄から航空から、それこそ国鉄から私鉄、すべての分野にわたってものすごく広い交通関係のまさにオールマイティーの省だと思うんです。ところが、それぞれの局は、省が独立しているように各局があるんだけれども、局があって局がないというような状態だと思うんです。まさにマンモス化されている。したがって、これらの各局はそれぞれ関係業界と結びついて許認可の関係やその他でもって全く別の対応をしているということがあって、局があって局がないということを言う人もありますけれども、私もそう思う。ですから、そういう点から、三年前に田村運輸大臣が総合交通政策局というのをつくると、こう言ったんですよ。ところが、やっぱりこれだけ広いマンモス化された各局の役人の皆さんに反対されてついに実現できなかった。  しかし、塩川運輸大臣も政治力があるし、田村さんもあったんだけれども、この人たちにおいてもなかなか困難だというくらいになるならば、私は、今日せめても官房審議官が、優秀な審議官がいま担当しているんだから、もっとしっかりやってもらいたいという気持ちはあるけれども、決して満足すべき状態にあるとは言えないと思うんです。ですから、そういう意味で、この政策を担当して各局の連絡調整に当たっていくというために、思い切って機構改革をやるということが、これが総合交通政策部門を強化する運輸省の最大の役割りになっているということについて、これは与野党を通じてだれしも異論がないところだと思うんですけれども、大臣この点についてどうお考えになりますか。
  113. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 仰せのとおり私も総合的な交通政策の必要を痛感いたしております。  そこで、それは機構を改革しなければできないのかということになりましたら、それはそれなりの効果は十分にあろうと思うのでございますが、とりあえずは官房審議官のところでこの交通総合対策を担当せしめておるのでございますけれども、いずれ私はこれはエネルギーの事情あるいはまた運輸行政全般にいま持っております権限が行政改革との関係でどのように推移していくかということ等も、これも見定めなければならぬと思いますし、そういうこれから運輸省を取り巻きますところの条件、環境というものが、やはり時代の進展とともに変わってくると思うのでございますが、そういうことを十分見定めて考えてまいりたいと思うております。  おっしゃいます総合政策の推進ということは、これはまさに時代が要請してきておる政策ではないかと思っております。
  114. 青木薪次

    青木薪次君 昭和五十二年十二月に閣議了解となりました日本国有鉄道再建の基本方針についてという中に「総合交通政策の推進」という項があるんです。またこのもとに総合運賃政策を立てなきゃならぬという時期に来ていると思うんであります。たとえば「トラック対策の強化など総合交通政策上の具体的な施策を講ずる。」と書かれているわけでございますけれども、これもなかなか今日うまくいっていないということなんですけれども、総合運賃制度の導入について、適正な競争条件を維持する上からも私は必要じゃないかと思うんですけれども、国鉄の運賃制度の中で具体的にどのようにこういう点を考慮しているのか、措置されているのかという点についてお伺いいたしたいと思います。
  115. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) たくさん問題を抱えております。その一つは、都市部におきまして特に顕著でありますのは、私鉄と国鉄との運賃の関係でございますけれども、少なくとも大阪なり東京なりにおいては、現状は国鉄の方が高い、私鉄の方が安いという現象が出てきております。これをどう調整すべきかという問題は非常にむずかしい問題で、いま直ちにこういう方法がありますということを申し上げられるような材料を持ち合わせていないわけでございますけれども、いずれにしても、極端な場合には、運賃水準が国鉄が倍、私鉄の方は半分というようなことになってまいりましたので、これについて何か大いに勉強してみる必要があるのではないかというふうに考えておりますが、いまのところ、私もちょっと具体的に名案というものが、あるいは方向というものが見出せないで弱っておるというところでございます。  次の問題は、逆に農村部といいますか、地方におきまして、国鉄と中小私鉄あるいはバスとの関係を見ますと、これまた極端に国鉄の方が安くて民営企業の方が高いということになっておるわけでございます。これはそういうふうな現象が、都市部と地方部で相反するような現象が出てきている理由はどこにあるかと言いますと、やはり基本的には国鉄の場合には全国一律運賃をとってプール計算みたいな形になっておりますし、それから私鉄、私バスの場合には、各企業体ごとのコストを中心とした立て方になっておりますし、また、あるいはバスのように標準的な経営費、コストを中心にして、地域ごとにバランスするというような形をとられておる、そうしたその立て方の違いからいろんな意味でのアンバランスが出てきておるわけでございまして、このことにつきましては大変むずかしい問題でございますけれども、どうもいまのままではいかぬので、何らか工夫を要するのではないかというふうに考えております。  ただ、私もどうも知恵がありませんで、具体的にそれじゃどうしたらいいのかということになりますと、まだちょっとここで御説明いたせるような案を持ち合わせていないという状況でございますので、問題の意識は持っておりますけれども、具体的にどうしたらいいかということについてはなかなかむずかしい問題であるというふうに考えておるわけでございます。  それから、飛行機との関係につきましても、やはりもう少し相互に何か研究し合う必要があるとは思っておりますが、問題の意識を持っているだけで、まだ対案というところまでは至っておらないというのが現状でございます。
  116. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄運賃法の一条2項は、運賃や料金の基本的原則を掲げているんでありますけれども、この原則では他の輸送機関との競争関係を考慮した総合運賃制度を導入する余地というものは全くないんですね。いま総裁の言った全国一律ということでありますから、そういう意味では、ローカル線は国鉄は非常に安い、それから都市圏に来ると非常に高いという点については、いまいろいろ言われているわけでありますけれども、他の交通機関との競争関係なんかを考慮しながら運賃を決定するような法律的な裏づけというものをこの際考えるべき時期に来たんじゃないかということで、もう隣りにいる交通機関は勝手にやる、国鉄国鉄で勝手にやるということなんですね。ここに私は調べてあるんでありますけれども、たとえば国鉄、民鉄、国内航空、内航海運、自動車、バス、トラック等がいろいろありまして、地方の海運局長が許可することもあれば、地方の陸運局長がやる場合、それから運輸審議会で許可することもある。そのほか運輸省の各局で許可する場合というようなことで、全くもって運賃体系はばらばらなんです。  ですからこの点について、従来のような全く高度成長で、おまえのところはしっかりやれ、おまえのところもがんばれ、競争しろということだけで言えない条件というものは、私が先ほど申し上げたとおりの状態になっているわけでありますから、この辺でひとつ運輸省としてはやはり指導の統一を目指してやらないと、またまた交通機関が木に竹を接いだような形で、競争条件ないにもかかわらず競争する、お客や荷物を取りっこするというようなことになってしまって、政策的な裏づけというものがないし、行政が裏づけがないということになったんでは、これは全く国民としても大変迷惑だというように考えているんですけれども、この辺で法律的裏づけを考えるべき時期に来たんじゃないかと思うんですけれども、大臣いかがお考えですか。
  117. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 各種交通機関ごとに運賃の決め方がばらばらであるという御指摘でございますけれども、運賃の決め方といたしましては、適正な能率的な経営のもとにおけるコストと適正な利潤というものを保障する形で運賃を決めるという形で全部統一してございます。したがいまして、各運賃の基準といたしまして、法律の書き方としましては、法律のできた時期その他によりまして若干精粗はございますけれども、基本的には原価主義に基づく適切な利潤、それから差別待遇を禁止するというような点が基本になっておりまして、各交通機関ごとにおいて運賃の決定基準はそう大きな差はあると認識しておりません。  ただ、現実的に大きな企業もあれば地域的な小さな企業もあるということでございますので、運賃の査定基準では、たとえば私鉄のような大きな資本集約的なものにつきましてはレートベースで原価を決める、それから小さな企業につきましては費用の積み上げ方式で決めるというような形で、各企業の実態に応じて一番望ましい運賃の決め方というものを事務的に模索して適切な運賃を決めるという形でやっておるわけでございます。したがいまして、運賃がばらばらできわめておかしいというお話でございますけれども、そのようなことは私どもは一般論といたしましてはないというぐあいに考えております。  しかしながら、交通市場というものが非常に競争的になりまして、ただいま国鉄総裁からお話がございましたように、私鉄と国鉄の間に大きな差が出るというようなことは決して望ましいことじゃございません。したがいまして、私どもといたしましては、基本原則としては原価主義に基づくものではございますけれども、原価主義の範囲内で、競争的な関係にある機関につきましては、できるだけ制度の整合性というようなものを図りながらそれを是正していきたいという考え方でおる次第でございます。
  118. 青木薪次

    青木薪次君 十月二十八日の朝日新聞に——実は新聞読んだんです。総裁、全く正直に言っていると思っている。いま石月審議官のようなことを言っていたんじゃ、いつまでたってもよくならないですよ。あなたもう少し反省しなければいけない。あなたがそんなことを言っていたら、総務担当の審議官がそんな人ごとみたいなことを言っちゃよくならないんだから、よくひとつ聞いてもらいたい、総裁の言葉を。   「運輸省というところは鉄道、海運、自動車、バスなどを監督している局がてんでバラバラに運賃を決めている。いろいろな交通機関の運賃を調整しなければならない時代になっているのに、運輸省は何もしていない」——高木国鉄総裁が二十七日の記者会見で、こういって運輸行政をあけすけに批判した。これは当然なことを言ったんです。  これだけでは足りないと思ったのか、さらに「同じ鉄道を監督している局でも、国鉄と私鉄の部長が運賃を認可するときに全然話をしていない。非常に困る」と憤まんやるかたないといった口ぶり。  いま国会で審議している国鉄再建法案が通過したあと、国鉄はローカル線の運賃を都市部を走っている幹線に比べて高くし、二本立てにすることにしている。どのくらい高くするかが問題だが、総裁は「頭が痛いんだよ。来年四月から大蔵省は上げろというだろうが、乗客数が落ちているときに簡単に値上げはできない。それにほかの交通機関とのからみもあるし……」と言いかけたところで運輸省批判が飛び出したもの。だと、こういうことなんです。したがって、この点について総裁こういうことを言ったことはありますか。
  119. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 記者会見といいますか、懇談でございますけれども、そういうことを申しております。たとえばいまの私の方が全国一本であると、そしてよそさんは皆それぞれ企業別であるというシステムはこれは当然原則的にはそうならざるを得ないと思いますけれども、しかしその間においても調整があってほしいというふうに日ごろから考えておりますので、そのことを申したのを多少おもしろく書かれたということでございますが、私が申しておることは事実でございます。
  120. 青木薪次

    青木薪次君 大臣、総合運賃制度というものについて、いわゆるある意味での競争的な運賃になっても私はいいと思うんです。ところが、片方の方は倍に上げる、それから片方の方はそのまま据え置くんだというような形だけでは問題が解決しないと思うんです。  私はこの間ヨーロッパへ行ってきたんでありますけれども、ヨーロッパの航空運賃の比較をいろいろ調べてまいりました。その中におきまして、たとえば、私は予算委員会でも、あなたにも質問したし鈴木善幸総理にも質問したんだけれども、やはり分担関係を明確にするような議論も必要だし、あるいはまたその点で、東京−大阪間なんというものは、これは何も新幹線があるんだから新幹線へ乗せるような誘導政策をやればいい。私は釧路へもこの間行ってきたんだけれども、釧路の関係等についてはやはり航空を主体としてそこからネットワークをつくっていくというようなことが必要じゃないかというようなことを言ったら、総理もあなたもうなずいていらっしゃったんだけれども、この点で、日本とイギリスとフランスとドイツの関係を見てまいりますると、まさに航空運賃と、こういう東海道筋のようなラッシュのところでは、そういう意味で短距離を競争しているというようなことは余り思わしくないんじゃないか。ここにある意味の一つのガイドラインが必要だと思うんだけれども、その点は運賃制度になぞらえてどういうように考えていらっしゃるのかお伺いいたしたい。
  121. 石月昭二

    政府委員石月昭二君) 先ほどからの、総合運賃政策はどのようにあるべきかということは私どももかねがね腐心しているところでございまして、やはり運賃の目的は、一つはかかったコストを十分に回収するという問題と、いま一つはその運賃の機能を通じまして資源の適切なる配分ができるという二つの要件を満足させる必要がどうしてもあるんではないか、そういうことからいきますと、なかなか原価主義という問題は離れられないと、しかしながらそうは言っても、原価主義の範囲内でなおかつ新幹線なら新幹線の特性が生かせるような運賃制度という形でやはり考えていかなきゃならぬ、そういう意味での整合性、遠距離の逓減性のあり方とかいうものについて従来から苦心しているわけでございます。  したがいまして、今後先生御指摘のような運賃格差の問題というのはいろんな多面的な原因がございまして、たとえば国鉄について申し上げれば、一つは全国一律制の問題であるとか、いま一つは、先般来議論になっております構造的欠損というような、年金とか退職金とか、国鉄の特殊な職員構造からくる経過的な、歴史的な俯瞰というような運賃論とは離れた要因というようなものもございますし、そういう各般の要素がございますから、運賃政策だけでなかなか運賃の格差というものの是正というのはできないということではございますけれども、これはやはり制度面の整合性、そういう意味では国鉄の全国一律制というものが基本的にはやはり市場が競争化した中で維持することがむずかしくなっているという点にあるのだろうと思いますので、やはり長期的には国鉄の全国一律制というものもだんだん見直していただきまして、お互いにそこを歩み寄るというような形でより整合性のとれた運賃体系というものを考えなければいかぬと思っているわけでございます。  それから、先ほど先生からお話ございました航空運賃の問題でございますけれども、これは御承知のようにやはり二百キロぐらいまでは自動車が一番先行される。二百キロから七百キロぐらいまでは鉄道が非常に先行されると、それから以後は航空だというような結果がわれわれいろいろ調査しましても出ておるわけでございます。したがって、できるだけそういう方向に誘導するというようなことを運賃政策としてもとるべきだと私ども考えておるわけでございます。先般、去る三月でございますか、航空運賃を五年ぶりに改定いたしたわけでございますが、そのときには若干五年間の間ゆがんでおりました航空の運賃体系というものを見直しまして、近距離についてはコストに見合って高く上げたというような形で、結果的には国鉄にもプラスになっている。  それから、去る四月の国鉄運賃の改正に際しましても、やはり従来の二地帯制を三地帯制に分けまして、三百キロ、六百キロというような国鉄特性が発揮できる分野についてよりきめの細かい配慮をしたというような形で、徐々ではありますが私どもとしても努力をしている次第でございます。
  122. 青木薪次

    青木薪次君 私どもの理想はやはり交通のネットワークをつくる、そのために徐々に実績を積み上げていく。そのためには一番困難な課題ではあると思います。私の申し上げたのは困難な課題ではあると思いますけれども、やはり避けて通れないということを考えつつ今回の国鉄再建法案を審議しているときに、こういう問題について議論することはまことに時宜を得た機会であるというように私は考えましたので、あえて政策的な問題またそれに基づく総合運賃体系というものをひとつ運輸省に提起いたしまして、これからそういう問題について大きく、従前以上に、いま審議官前向きの答弁されたんですけれども、そういう方向で議論をなさるようにお願いいたしたい、こう思うのであります。  それから、共済組合の関係、時間がだんだん切迫しておりますのでちょっと触れておきたいと思うのでありますけれども、監査報告書も見ました。収支が悪化している国鉄共済組合の実情というものについては非常に問題があると思います。国鉄共済組合の年金体制がこんなに深刻な事態を迎えたことはどういうところにあるのか、それから現状と将来の見通しについて、簡潔にお答えをいただきたい。
  123. 吉井浩

    説明員(吉井浩君) 年金財政悪化の原因でございますが、端的に申し上げればこれは成熟度が非常に高い。成熟度は、現在年金を受けております受給者を年金を掛けております組合員の数で割ったものでございます。この成熟度がなぜ非常に高いかという原因といたしましては、これまた幾つか考えられるわけでございますが、一つはやはり戦中戦後、国策遂行により生じました用員構成のひずみがございます。それから、全般といたしまして職員数が減ってきておる。また、将来さらに三十五万体制ということになってまいりますので、掛け金を納める母体が小さくなる。それから第三番目といたしまして他の企業、公務員等と比べまして国鉄の年金受給の資格を得る人いわゆるペンションラインに達する人が多い、さらには年金制度の発足が早かったために現在の年金受給者の数が非常に多い、こういった事情が現在の成熟度が高いということにつながっておるわけでございまして、これがやはり年金財政悪化の原因の主たるものであろうというふうに思います。  また、もう一つの御質問の現状と将来の見通しでございますが、現状を申し上げますと、五十四年度の最近の決算でございますが、共済組合の収入といたしましては職員が納めます掛金、それから国鉄負担をしております負担金、追加費等々含めまして三千七百五十七億の収入に対しまして、支払いました年金額は三千八百三十億、したがいまして、七十三億円の年金としての単年度赤字でございます。五十五年度につきましても、同じく百四億の赤字予算を計上する、こういう状況でございます。反面、職員の掛金もそういう意味で高くなっておりまして、現在千分の六十一・五と、これは公務員並びに他公社に比べまして二、三割方高い掛金という状況でございます。  それから将来の見通しでございますが、五十六年度以降はちょうど年金財政の再計算期に当たっておりまして、現在部外の権威の方々に収支計画策定審議会というところで検討いただいておるわけでありますが、きわめて概算を申し上げまして、やはり六十年ごろまでには受給額はほぼ倍増するだろう。したがいまして、年金のまた成熟度も昭和六十年には三十五万体制の絡みもございまして二四%、こういう実は年金としては非常に成り立ちがたい数字になるわけでございまして、そういった意味では非常に大きな問題を抱えておるという見通しでございます。
  124. 青木薪次

    青木薪次君 成熟度が高くなるとなぜこの年金財政に重い負担を強いることになるのかという点について、現に郵政とか専売、国鉄は悪い方の御三家ということを言われているんですけれども、その点についてどう考えていますか。
  125. 吉井浩

    説明員(吉井浩君) 本来の年金経理から申しますと、これは積立金方式ということでございまして、本人たちが在職中に納めました掛金で年金を賄うという体制になっておりますので、そのような事態でありますれば、成熟度のいかんは必ずしも悪化にはつながらないということでございますが、現実の経済の中におきましてはやはり物価の変動がございます。したがいまして、それに見合った年金の改定が必要となってくるということでございます。したがって、過去に掛けました掛金では将来受給する年金を賄い得ないということで、数年置きに年金の再計算をいたしまして、その後の年金の支給水準に見合った掛金の改定はいたすわけでございます。どうしても一足おくれになっていくということのために年金財政に負担が増高いたしまして、これが成熟度が非常に高い場合、つまり年金受給者の数が非常に総体的に多いという場合には非常に大きな負担になり、年金財政悪化の原因になるということでございます。
  126. 青木薪次

    青木薪次君 インフレが一番年金財政悪化の罪人のように見えるんですけれども、インフレがなければ年金財政は健全性を保つことができるのかどうなのか、運輸省に聞いてみたい。
  127. 山地進

    政府委員(山地進君) 国鉄の年金のみならず、インフレというのがすべての年金の最大の問題であろうかと思います。この年金の掛け率というのは保険数理というようなことに基づきましていろいろ計算しているわけでございますけれども、それらの中でもインフレというようなものがなければかなり低位かつ画一だと思うのでございますけれども、現在までに国鉄の年金財政について、従来いろいろと専門家に御依頼して計算してもらうわけでございますけれども、五十二年度で何で三百億も赤字が出たのかといいますと、やはりこれはそういったインフレというような要因が大きかったんだろうと、かように考えております。
  128. 青木薪次

    青木薪次君 インフレが罪人だ、ある特定の年金制度がこれ並み外れて高い成熟度になると、加入者や事業主が物すごい負担になってくる。この年金制度のたてまえというものは最も社会的公正を確保しなきゃならぬ制度だと思うんでありまするけれども、こういう点から大変問題があると思うんでありまするけれども、運輸省はどう考えておりますか。
  129. 山地進

    政府委員(山地進君) いまのようなインフレの問題というのは年金だけの問題でございませんで、一般的な経済政策の問題になろうかと思うのでございます。国鉄の年金財政の問題だけを考えますと、やはり国鉄の特有の歴史というものが生み出したものであると考えています。
  130. 青木薪次

    青木薪次君 インフレというものは、いまおっしゃったように年金だけじゃございませんけれども、特に年金の関係等についてはすぐさまこのことが数字として出てくるものですから、非常に問題が多いと思うんです。で、こうした不合理をなくしてそうして費用負担の格差をなくすということについての対策についてはどういう方法があるかお聞かせいただきたい
  131. 山地進

    政府委員(山地進君) 一般的な形でこういった経済社会におきまして、インフレを含む中の年金問題、私の答弁する範囲を超えていると思うんでございますけれども、政府の中にいろいろと年金の検討をする機関がございまして、そこらでいろいろと御研究いただいているわけでございますが、事国鉄の年金財政に関しましては、今回の閣議了解に基づきまして、大蔵省で国鉄の共済を中心にいたしまして今後のあり方というものを現在検討中でございまして、この検討には二年ばかりの年月がかかるのではないだろうかと、かように考えております。
  132. 青木薪次

    青木薪次君 いま政府で大蔵省を中心にして研究が進んでいるということをお聞きいたしましたけれども、大体どのような問題を論議しているのか、大体その結論がいつになるのか、その点について聞いておかないと、非常に深刻な状態にあるから、その点をひとつ急いで聞く必要があると思いますのでお聞きいたしたいと思います。
  133. 山地進

    政府委員(山地進君) ただいま申し上げましたとおり、この年金研究会は今井先生を初めとして各省、大蔵、文部、農林、運輸、自治、共済の関係者が参加しておるわけでございますが、主要な研究事項といたしましては、職域年金制度としての共済年金のあり方、他の公的年金制度との整合性及び調整、それから三番目といたしましては国鉄共済問題を含む当面の対策ということでございまして、この共済制度全般、国家公務員共済あるいは地方の共済、あるいは国鉄の公企体の共済、みんな共済でございますけれども、それぞれ歴史も違いますし、若干制度的な違いもある。それからもう一つは官民格差の問題というのもあるわけでございまして、そういった問題との整合性を保ちながら、国鉄の年金問題の当面の課題というものをどう処理していくかというようなことを御研究いただいているわけでございます。
  134. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄の財政再建と銘打って、合理化とか省力化を進めれば進めるほど年金財政は苦しくなってくるということなんですね。先ほど国鉄説明によりましても、昭和六十年に三十五万人で、そのときの年金受給者が四十万人だと、そして成熟度が一一四と言いましたね、一一四という形で加入者のいわゆる掛金を納める人をふやせない、職員をふやせないんですから、この点から年金財政はますます苦しくなってくる。三十五万人体制を進めるならば、この年金問題については、政府としても責任ある対策を進めなければならない羽目に陥ってきたという点について、特に職員をなくしていく、減らしていく、年金財政をひとつ強化する、こういうことは全く相反する事態になってくるわけでありますけれども、もう相当窮迫しておりましてなかなか考えている余裕がないくらい切迫しているんだけれども、この点を国としてどう考えているかお伺いいたしたいと思います。
  135. 山地進

    政府委員(山地進君) お説のとおりに、合理化といいますか、職員の縮減が行われますとそれだけ年金の財政というのはより悪くなるということでございますので、今回の国鉄再建についての閣議了解の中には、この国鉄の年金問題について政府で検討する、つまり運輸省で検討するというのではございませんで政府で検討するということにいたしておるわけでございます。このために先ほど申し上げましたとおり、大蔵省においてこの年金の特別の研究会というのをつくって、二年かかるわけでございますけれども、その研究をするということでございます。  ところで、その国鉄の年金対策、現在でも巨額の国鉄負担が行われているわけでございまして、片方で国鉄の共済年金財政が悪化する、と同時に、この年金負担というのが国鉄の財政を圧迫すると、こういう二つの面があるわけでございますので、これに対する対策としてはいかなるものがあるだろうか。これは一つはこの負担というものを何か除去するという方法が考えられるわけでございまするけれども、この年金問題というのは国鉄共済だけではございません、ほかの年金にもすべて波及する問題でございますので、国鉄年金だけを特別の対策を講ずるというのは大変むずかしい話であると思います。  そこで、この年金の研究会では、国鉄の年金のあり方一体どうするのかということで御研究いただいているわけでございまして、当面はその年金の抜本的な対策ができるまでの間、運輸省といたしましては今回の予算要求において、その検討ができるまでの臨時的な措置として、異常と思われる年金部分について、利子分について予算を要求をし、国鉄財政負担を圧迫するということのないような措置を現在予算上要求しているということでございます。
  136. 青木薪次

    青木薪次君 国鉄の共済組合の制度は明治四十年に勅令でつくられたわけですね。そして職員の中でいわゆる官吏という人々については恩給制度が適用されておった。それからそれ以外の職員、雇傭人については老後保障の制度は全く存在しなかったので、不規則業務の関係や業務災害も多い中で、職員が後顧の憂いなく仕事をしてもらうために、生活保障のことも考えてそしてこの共済組合というものができてきた。この国鉄の共済制度というのは、わが国の中で最も社会保障制度の先駆者だと、こう言われてきたんです。ですから、一本にするということで昭和三十一年ですか、公共企業体職員等共済組合法として一本化されてきたんだけれども、いま山地局長のおっしゃったように、それぞれの歴史というものがあって掛金を納めてきた、あるいはまた期待権も既得権もあったというようなことから、これを一緒にするについてもなかなか困難があったけれどもこれをまあ一緒にすることができた。  ところが、その後職員の掛金負担は、現在でも他の共済組合に比べて三割も高いんですよ。そしてこの掛金の引き上げによるところの収支の改善には限度があるわけですから、法で定められた年金であるだけに、赤字分についてはこれはもう国が負担すべきだ。特に戦後、先ほどお話のあったように、南満州鉄道や華中や華北、あるいはまた朝鮮鉄道から何十万人という人が引き揚げてきて、それを全部国鉄で雇えと、こう言われた。そして七十六万人にふえた。それがもうすでに退職し、またこれからまだ退職する運命にある。そうすると、それらの人に対して退職金を払わなきゃならぬ、年金も払わなきゃならぬということになれば、この点は相当国が負担するというのは私は当然だと思うんですけれども、この点について、大臣、いかが考えますか。
  137. 山地進

    政府委員(山地進君) 年金のきわめて原則的な部分だと思うのでございます。と申しますのは、まずはある一定部分というのを組合員とそれから企業主である者とが負担してそれでこの年金制度というのができているわけでございまして、それについて国鉄の場合には、追加費用というような形で過去のものについては国鉄負担しているわけでございますが、年金財政そのものは、そういった追加負担の問題と、それから職員と企業主である国鉄が掛けて、両方で出し合っているということでやっているわけでございまして、そういった原則が、そのいまおっしゃるようなことで、国がどこかで持つべきじゃないのかという議論を受け入れられるようなものかどうかというところが非常にむずかしい問題でございまして、やはり国鉄の場合に、現在のような共済年金が非常に財政上共済自体が苦しくなっているということについては、基本的にはやはりパイが小さかったかどうか。  つまり大きな中ですとそれを吸収できるわけでございますが、人数が少なくなればなるほど非常にいろんな負担というのがむずかしくなるわけでございまして、ほかの年金でも、船員の保険の問題につきましても、これもやはり人数、加入者が少ないわけでございまして、そういった例は非常に多うございますので、国鉄だけについていまのような御説、非常に国鉄の年金自体といたしましては歴史的にそういう事実があるわけでございますけれども、これをどういうふうに解決していくのかというのはやはりほかの制度とあわせて考えなければいけないのではないか。その点についてはいまも研究しているわけでございます。
  138. 青木薪次

    青木薪次君 山地局長、非常に冷たい議論をあなた展開しているんだけれども、国鉄では外地の別に関係のないような人を雇う必要なかったんですよ。ところが当時の閣議の決定で、社会不安でルンペンばかりつくっちゃ困るからひとつ何とかして雇えと、しかし困るという議論を私は知っているんです。そういう人たち国鉄を退職した。最近の機会に退職した。またこれからすぐ退職しなきゃならないというときに差しかかったわけです。そのことが財政を圧迫しているんですよ。そのことについて——年金はあなたに言われるまでもなく本人と事業者が負担しているということはよくわかっていますよ。それだけにまた高い掛金を掛けてきて、そしてそれをもらうことになるわけです。それを困難にしているのはインフレが困難にしているわけです。だから、インフレは共済組合だけじゃないとか、やはり共済組合というものは本人と事業者が負担すべきものだなんて、そんなあなた、三歳の子供に言うような答弁をこの国会で言うべきじゃないと思う。したがって、そういうことから国としてどう考えるかということを聞いている。だからあなたでなくて、大臣にひとつ聞きたい。
  139. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 山地局長の言っておりますのは、何も冷たいというそんなことで言っているのじゃなくて、いわゆるその仕組みを申しておりまして、ですから、財政的な欠陥、原資が不足してきておるわけなんでございます。その原資の不足をどうして補うかというのは、先ほど局長の言っておりますように、ただ国鉄の問題だけとしてはいま扱えない。ほかに電電もございますし専売もございますし、いずれは国家公務員、地方公務員というふうに、年金の成熟度が高まってまいりますとそうなってくると。そこでいまその年金のあり方の基本的な問題を研究してもらうし、同時に当面する国鉄の問題もこの研究会で勉強しておる最中なんです。  そこで、それらの最終的な答案が出てくるまでの間は、国鉄財政の圧迫にならぬように金利を補給するとかいうことをして当面それでつないでいかざるを得ないと。で、いずれは年金の大蔵省におきます研究会、これが定まってまいりますと、社会保障審議会であるとかいろんな所要の手続を経てやっていくんでありましょう。そのときには、私は国の財政も関与してくる、当然そういうふうな経過はたどると思うんですけれども、目下のところはそういうことでやっておるんだ、こういう説明をしておるのでございまして、年金をないがしろに考えておるというようなそんなことではないということは御承知いただきたいんです。
  140. 青木薪次

    青木薪次君 最後に、職員がこれから七万四千人も減らされる、それから皆さん遊んでいると思うかもわからないけれども、とんでもない話で、合理化で毎日毎日ものすごい数が減らされている、それも甘んじて受けていかなきゃならぬということを労使ともにその点を真剣になっていま考えている時期だ。しかし共済組合の関係もこれもものすごい、三割も同じように掛けてきたところよりも負担をしているんですよ。したがってそういう問題について、やはり相当緊急性があるということを私も知っているからその点を言ったんであって、いまさら山地局長から講義を聞くようなつもりで質問しているわけじゃないわけだから、局長いいですか、そういう点を私は言っているんだから、ひとつ真剣になって考えてもらいたいということを要望いたしまして、私の質問をとりあえず終わります。
  141. 大木浩

    ○大木浩君 国鉄再建法案について若干の御質問をさせていただきます。  当委員会こうやってながめますと、国鉄なり運輸省なりのOBの方が与野党通じて大変たくさんおられまして、大変専門的な立場からいろいろと鋭い御質問が行われているわけでございますけれども、私はむしろごく普通の国民の一人として、平生国鉄を利用させていただいておる利用者立場、あるいはささやかながら税金を払っておりますタックスペイヤーの立場から御質問をいたしますので、ひとつ素人にもわかるようなお答えをいただきたいと思います。  現在審議中の法案でございますが、昨日あるいは本日の大臣趣旨説明にもございましたように、「わが国交通体系における国鉄の枢要な機能を今後とも維持させるためにも、国鉄経営再建が緊急の国民的課題となっております」というお話でございます。しかし、それにもかかわらず国鉄経営努力のみでは解決しがたいいわゆる構造的な問題がある、こういう点に本問題の最もむずかしい点があるんだろうと思います。言うなれば国鉄スワローズという野球のチームがございまして、選手は一生懸命努力をしているんですけれども、だんだん負けが込んできて、ひとつ何とか再建対策を立てなきゃいかぬ、監督なりコーチなり何とかしてくれ、あるいはフロントの方でもっとよく打てるホームランバッターでも連れてこい、あるいはトレードでもう少し戦力を強化してくれ、こういうようなお話かと思います。  したがいまして、今後とも国鉄労使双方に経営合理化を目指して最大限の努力を求めるということは当然でございますけれども、やはり現在最も大切なことはオーナーと申しますか、チーム全体、日本政府全体で、つまり運輸省だけではございませんで、やはりこれは財政当局やあるいは先般来お話にございます地方自治体との接触の場におられる自治省等々も含めて政府全体が一致団結して国鉄再建に取り組む、こういう姿勢がぜひとも必要であると存ずるわけでございます。  この点に関しましては、先ほどから若干の御質問もありましたけれども、一体これからこういった大事な問題について政府部内で意見の統一あるいはいろいろと御協議をなさるわけでございますが、午前中の大臣のお話でも、たとえば官房長官あたりがまとめ役になって随時やればいいというふうなお話でございましたけれども、そういうことで足りるのでございますかどうか、今後のひとつ政府部内の意見の調整というふうなものについての体制ないしはその見通しにつきまして、お話しいただきたいと思います。
  142. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 仰せのようにこの法案が成立いたしましたら直ちに地方交通線、特に特定地方交通線対策につきまして政令を定めていかなきゃなりません。この政令を定めますに際しましては、ただ単に政令だけではなくして、今後の地方交通あり方そのものにも重要なかかわり合いを持ってきておりますので、とりあえずは内閣に官房長官中心といたしまして各省庁、すなわち運輸省、大蔵省、自治省、それに建設省に通産省、農林省あるいは国土庁とございましょう、こういう関係省庁の間で意見を統一していく必要があると思うておるんです。  午前中にも申しましたように、従来は国鉄再建というのはいわば国鉄の財政をどう救うかということを中心に行われた再建でございまして、でございますから、国鉄の営業路線のあり方そのものにメスが入ったということはなかったわけでございますが、今回は営業の根幹に触れてまいります営業路線そのものにこれが入ってきておることでございまして、それだけにいままで山間僻地と言ったら語弊ございますけれども、要するに人口の少ない地域にも鉄道が敷かれてこれが運営しておりましたけれども、これらは鉄道でなければならぬというわけでもない、他に代替機関もあるであろうし、またここに鉄道を敷いておるということは、国民経済的に見ても果たしてそれが妥当なのかどうかということ、これも検討していただく必要がある。また、それを鉄道でやるといたしましても、果たしてそれが日本国有鉄道公社でなければならぬのかということも問題であろうと思います。  そういう点を見定めまして特定地方交通線の指定をし、廃止をする、代替をやるということでございますが、そういたしますと、それはまさにその地域住民の方々にとりましては大変な影響がございますだけに、この際地域のいわば地方自治体も国も関係省庁協力してとりあえずその地域交通だけは維持したい、つまり、足の確保はいたしたい、そういうことをこれから政府全体がチームを組んでやっていこう、こういう考えでございます。ですから、これは単に国鉄特定地方交通線廃止もしくは転換だけの問題ではなくして、そういう地域交通の中の一環としてもこの特定地方交通線の今後の処置を決めていきたい、こう思うております。でございますから、あくまでももういまや政府一体となった体制の中でこの地方交通線対策を進めていくということでございます。
  143. 大木浩

    ○大木浩君 今回の再建計画の一つの柱と申しますか、これは国鉄昭和六十年までに三十五万人体制実施するということかと存じます。当今人を雇ってこれを首を切るというふうなことは非常にむずかしい御時世でございますし、あるいは人員縮小ということもむずかしい時代でございます。そういうときに、何万人もの縮小計画を立てられてこれを実施されようというのは大変勇気のあることでありまして、敬意を表する次第でございますけれども、具体的に三十五万人体制実施をされる計画につきまして、午前中の高木総裁のお話でございますと、必ずしも細かい積み上げ計算をしたというわけではないというお話ではござますけれども、やはり何かどういう分野で大体どういうことを考えておられるのかということはある程度の計画があると思いますので、ひとつお示し願いたい。  同時に、そういった体制実施しても国鉄本来の任務でございます安全交通とかあるいは必要なサービスをちゃんと供与するとか、そういう点については遺憾がないというふうに了解してよろしいか、お答えをいただきたいと思います。
  144. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 三十五万人という数でいまと同じだけの仕事をやっていくというためにはどうしたらいいかということについては、先ほど申し上げましたように、当初この数を打ち出しますにつきましては必ずしも積み上げをいたしたわけではないわけでございますけれども、しかし現実にこれを実施いたしますにはやはりどういうフィールドでどのぐらいの人でやるか、またどういう地域ではどういうやり方をするかということを積み上げなければ現実化しないわけでございますので、いまその現実化の作業をいたしておるところでございますが、今日の段階でまだどのフィールドで何人というところまでは、このようにして七万四千人少ない数でいたしますという内容を御説明するところまでは至っておりません。  ただ、大体の考え方としましては、やはり一つは機械化等によりますところの省力化でございます。前々から、駅で切符を売ります場合に自動券売機というようなものをだんだんと導入をいたしまして、それによって出札口で人手で切符を売っていくというようなことを機械にかえていくということをやってまいりましたけれども、まだまだこれを進度化していく可能性というのは十分あると考えております。それから、たとえば保守のフィールドにおきましても、戦前はつるはしを使って突き固めをやっておったわけでございますが、それが機械化してタイタンパーを使うというような時代になってまいりましたが、最近ではかなり大型のタイタンパーを使いまして機械力によって路盤固めをやっているということが、まあ数年前からやっておりますが、ほぼ全国的に一斉に実施する見込みがつきましたので、機械の導入によってそれを解決していくことも考えております。  それから、第二のスタイルといたしましては、直営でやっております仕事を外部の民間の会社にお願いをして請負といいますか、委託といいますか、そういうかっこうでやっていくということでございます。現在でも車両の清掃でありますとか、あるいは車内のいろいろな簡易なる整理といいますか、そういう仕事については非常に多くの部分を外部に委託をしてきておるわけでございますけれども、今後は車両の修理のフィールドあるいはまた保守の場合のレールの取りかえといったような問題、そういうところにつきましても、どうもある地域にある職種の人が固定的に張りついて仕事をするよりも、民間の会社のように、移動性を持った体制で臨む方が効率的であるということは否定できませんので、結局それは直営でやりましても外部に委託をいたしましても、人手が減った分だけすっぽり経費が減るわけじゃなくて、外部へ委託をすればまた請負費なり委託費なりかかりますけれども、しかし全体的な効率としてはやはりその方がよろしいということが考えられますので、そういう形で進めるというものもあろうかと思います。  それから、現在信号システムその他が十分整備されておりませんために、信号整理のために人が置かれているというような部分が相当ございます。御存じのように、新幹線のようなスタイルをとりますと、そういう部分に人手を置かなくても済むというわけでございまして、新幹線ほどの信号システムまではもっていきませんでも、現行よりはもう少し信号システムを変えることによりまして能率的な運営ができるというような面もあるわけでございます。  また、その他いろいろと各般にわたりまして、二種類の職種の人がやっている仕事を一種類の職種でやっていくというようなことであるとか、それから過去においても運転士の諸君で、一つの車に運転士さんが二人乗っておるというのを一人にするというようなことをやってきましたけれども、まだそれでもいろいろな設備その他の関係でいまでも二人乗務になっているところはかなりの地域でございますので、これを施設を整備することによって一人乗務に持っていくというようなことも考えております。そういうことでありますので、いまのサービスがやはり多少落ちるということはあるわけでございますけれども、何とかそのサービスが落ちるということを最小限にとどめるようにしながら、特に安全に関しては絶対に御心配をかけないようにしながら、少ない人でいまと同じ程度の仕事をやっていくということを進めてまいりたいというような内容で、そのことを具体的に個々の職場ごとに、また個々地域ごとにそれをいまどうやればそれだけ少ない人になり得るかということを細々と詰めておるというのが現状でございます。
  145. 大木浩

    ○大木浩君 今回の法案のもう一つの柱と申しますか、特定地方交通線の整理と申しますか、整備と申しますか、あるいは場合によっては廃止というようなこともあるわけでございますけれども、その過程においていろいろと地方公共団体との折衝も必要でございましょうし、また地方公共団体自体の努力というものもやはり、きょうの午前中のお話で財政的に非常に負担があっては困るというような御意見も出ておりますけれども、財政的な負担はともかくといたしまして、人とその折衝あるいは働きかけ、説明というようなものもあるわけだと思いますけれども、その点につきましてはこれは国民的課題と言っているわけですから、政府全体で、特に折衝の大きな任に当たられます自治省あたりからもひとつぜひとも前向きのお考えを伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  146. 井下登喜男

    説明員井下登喜男君) 特定地方交通線廃止するに当たりましては、法案では路線ごとに特定地交線対策協議会を設けまして、代替輸送機関の確保について関係者が集まりまして十分協議をするということになっているわけでございます。地方公共団体地域住民の足の確保という観点ではやはり責任があるわけでございますから、そういった意味地方団体も十分に真剣に検討をするものだというふうに考えております。ただ、これは先ほどの両省の統一見解でも出ておりますけれども、採算の現況から見ました場合には、やはり第三セクターというような方式で経営が行われる場合にありましては赤字を生ずるおそれが多分にあるわけでございます。それが地方団体負担を転嫁されてはこれは困るわけでございまして、したがって自治省としては、地方団体が第三セクターに加わることについてはやはり慎重でなければならないというふうに考えております。  先ほど申しましたように、特定地方交通線廃止後の住民の足の確保という見地から、バス転換等の円滑化を図るために、当然のことながら地方公共団体もできる範囲内で協力をすることはこれはやぶさかでないものというふうに考えているわけでございますが、現行の国と地方の間の事務配分なり財源配分なりというものを考えました場合に、やはりそこにはおのずから限度もあるということはひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。いずれにいたしましても、地方団体も御趣旨のような線に沿いまして十分協力すべき点は協力するというふうに考えております。
  147. 大木浩

    ○大木浩君 地方交通線対策というのもいろいろあるわけで、お考えになっているわけでございますが、その一つとして特別運賃制度というようなものもお考えになっておるということで、すでに衆議院の方の御議論でもいろいろ問題が出ているようでございますけれども、私、素人でよくわかりませんけれども、運賃制度というものについて従来から国鉄で片っ方に全国統一的な運賃というのが一つ考えとしてある。他方、考え方としては、原価主義と申しますか、原価をある程度反映したようなものを考えるということで、どうも議論を見ておりますと、何かその中間に、どこかに合わしたようなところがあるらしいのでございますけれども、どういうお考えなのか。必ずしも私、従来からの議論を聞いておりましてもよくわかりませんので、多少御説明いただきたいと思います。
  148. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 先ほど議論されておりました総合運賃という考え方、その中には、何かあらゆる交通機関の運賃をバランスをとるために統一的な基準で決めたらどうだろうと、こういう考え方が総合運賃体系というこの言葉の中に含まれておるように思うのでございますが、大体わが国は自由競争社会といいましょうか、そういう制度の上に立っての経済活動をやっておるわけでございますので、運輸機関も自由競争の中で発展をしてまいらなきゃならぬのは当然でございますが、そういう観点から見ましたら、それぞれの特性を生かした交通機関のその特性によるところの運賃というもの、これがやっぱり基礎になるわけでございまして、その運賃を運輸省として指導監督していきます場合には、どうしても原価ということに重点を置かざるを得ないということでございまして、したがって、国鉄の運賃を決めるに際しましても、やはりそこに原価主義を貫くべきであると、こう思うておるのであります。  ところで、この原価をそのまま原価で各線ごとに適用いたしましたならば、それはもう大変な相違が出てまいりますので、そこで全国統一運賃というのを国鉄はとっておるわけでございますが、しかし、最近におきます国鉄の運用状況等を見てまいりますと、ある程度そういう地方線におけるコストというものが、いわば幹線におきますコストと相当な開きが出てまいりましたので、そこで地方線並びに特定地方交通線等については若干の負担をしてもらえないだろうか、こういう考え方がこの法案に流れておるということであります。
  149. 大木浩

    ○大木浩君 大体のお考えはただいまの御説明で尽きておると思いますが、各地域の実情に応じて、弾力的にその運賃が決定されるということをひとつぜひとも御検討いただきたいと思う次第でございます。  次に、昭和五十四年十二月二十九日の閣議了解、これは今度の法案のもとといいますか、思想が全部入っているのだろうと思いますけれども、この閣議了解で、国鉄に対する行財政上の措置として運輸政策上の配慮云々ということが言われております。これは、政府といたしまして、総合交通政策といったものを策定するに当たって、国鉄の長所、短所といったようなものを十分配慮していろいろと考えようと、こういうお考えだと思いますけれども、午前中の質疑の間にも、多少お考えが出ておったようでございますけれども、たとえば国鉄の場合には、都市内の交通について非常に強いというような点も御指摘があったと思いますけれども、そういった点を含めまして、どういったところを中心にして運輸政策上の配慮というものを実際に実現していかれるか、国鉄かあるいは運輸省でございますか、ひとつ伺いたいと思います。
  150. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 総合交通政策というのは、やっぱりあくまでもその交通機関特性を生かしていく、そのためにはどのようなインセンティブを与えていくか、そして国の設備投資というものをそれにどうマッチさしていくかということを組み合わしていくのが総合交通政策の主眼でございます。  そういう観点から見ますと、鉄道という特性、これに目をつけてこれに今後の国鉄の活路を開いていく、こういうことにならざるを得ないと思うのです。それにはどういうことが実際の任務としてあるか。一つは、都市間の交通、これは今後の省エネルギー政策上から見ましてもやっぱり鉄道負担すべき使命であろうと思うのでありまして、ですから、まず第一に都市間の交通、これは国鉄の任務として当然しょっていかなければならぬ。それから、大都市圏内におきます総合交通、都市圏内におきます交通でございますが、これの投資につきましても、現在大都市間におきますあらゆるところに間隙がございます。その間隙を埋めていくのには民営の鉄道あるいは公営の鉄道等では負担し切れないようなところがございますので、そういうところについては将来の都市の開発とあわせて当然国鉄責任においてこれを担当していくということでございますし、そしてもう一つは、貨物輸送等についてでございますが、できるだけ定形化し、そしてそれを効率よく運んでいく、長距離輸送国鉄で担当する、こういう大きく分けまして三つの実際の任務というものをこれから国鉄がしょっていこう、こういうことでございます。  私は、国の総合交通政策の中で、どの交通機関を見ましても先ほど申しましたような特性に合うのはやはり国鉄しかない、こう思いますし、国鉄の現在の経営基盤をきちっと確立して母体をしっかりしたものにいたしますならば、将来においてこの任務を十分にしょっていってくれるし、その意味においてもやはり依然として国鉄は国の基幹的な交通機関であるという自信を持って現在の再建対策を進めておるものであります。
  151. 大木浩

    ○大木浩君 運輸大臣から詳細な御説明をいただいたわけでございますけれども、国鉄の方としては何か特に補足していただくことがございますればひとつ。
  152. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) ただいま運輸大臣の方からお答えいただきましたとおりでございまして、私どもといたしましては、やはり新しい時代に対応した鉄道あり方というものがこれからの経営中心になるものと考えております。すでに国鉄の旅客におきますシェア二五%、貨物一〇%という姿は、かつて鉄道が独占であった時代とは大きく変わってきております。また、地域の事情あるいはいろいろな交通機関の事情も変わってきておりますので、そういう中におきまして、むしろ鉄道鉄道らしい分野におきましてきわめて効率的、能率的な輸送をやっていくということがこれからの役割りの中心になるものだろうと考えております。ただ、また、いろいろ地域その他のために恒久的な足としてやはり鉄道でなければならぬという分野につきましては、これは当然のことながら鉄道としても国の助成もやはりお願いしながら維持していくという必要があろうと考えます。
  153. 大木浩

    ○大木浩君 現在、目先のさしあたって昭和六十年までの計画についていまいろいろ論議しておるわけでございますけれども、やはり国の交通とか国鉄そのものにつきましても、昭和六十年を超えてのいろいろ問題点があるわけでございます。総合的な交通政策という面から見ましても、先般来いろいろと御指摘がございますように、エネルギー政策の面からもあるいは安全な交通確保といった面からも、いろいろと国鉄が将来に向かって伸びなければならないという面も多々あると存じます。そういう意味におきましては、むしろ国鉄の公共輸送機関としての重要性というものは一層増加するのであろう、このように存ずるわけでござます。今般の国鉄再建計画では、たまたま国鉄の投資は現在程度に抑制するというのが一つのお考えであるように存じますけれども、やはり昭和六十年を超えた国鉄経営の安定、さらに発展、それからさらにまた長期的な何といいますか総合的な交通政策というものもぜひひとつお考えいただきたい。  何と申しましてもこれ戦後三十五年、日本の国鉄というものは非常に重要な使命を果たしてきたわけでございますし、これは余談にわたりますけれども、私たまたまつい最近まで外務官僚をしておりましたけれども、最近の日本のPR誌上に必ず国鉄の新幹線が載っておるわけです。やはりこれは日本の何と申しますか科学技術、文化の一つの象徴でございまして、ぜひとも国鉄がますます発展していただきたいということを願うわけでございまして、今後の国鉄の発展についても、やはり必要な投資というものは行っていくということにつきまして、ひとつ大臣なり国鉄総裁からのお考えを伺いまして私の質問を終わらしていただきます。
  154. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 仰せのように国鉄の投資というものはこれからますます重要になってくる、多々ますます弁ず、これは当然でございますが、しかし現在のような国鉄の財政体質では投資の余力がないわけでございまして、それを何とかして立て直したいというのが念願でございます。とはいえ、当面やはり将来に向かっての必要な投資をしていかなきゃなりませんので、現在程度の設備投資を崩すようなことはいたしませんし、後退するようなことはない。また、いま新幹線に投資しておりますのが年間約四千億円近くございますが、これが昭和五十八年ごろをピークにいたしましてこの投資も終わってまいります。その分はこれからの本当に国鉄特性に生かす、先ほど申しました都市圏内の輸送であるとか、あるいは在来線のスピードアップ、安全の確保、こういうようなところに精力的につぎ込んでいきたい。体質が改善いたしましたら、現在程度の投資よりもさらに以上の投資が可能になってまいりますので、もちろん積極的にそういう分野にも努力していく覚悟であります。
  155. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ただいま大臣からお答えいただきました考え方は、私どもが持っております考え方と全く同じでございます。で、今後の問題としましては、いままではどっちかというと自動車に追っかけられるといいますか、自動車に追い抜かれるという形がとられてまいりましたが、最近都市を中心にして、必ずしも東京、大阪に限らず地方の都市におきましても、道路事情が限界があるということで、通勤輸送等についてはやはり鉄道がもう少し前に出るべきだという声が高まってきておる、そのことがつまり鉄道特性というものをお認めいただいていることだと思いますので、そうした点を中心に、今後いまよりはもう少しハイスピードでの投資というものをそういう地点に置いていきたいというふうに考えているわけでございます。
  156. 広田幸一

    広田幸一君 私は質問をする最初に、昨日の本会議でも言ったんですけれども、国鉄を真に再建をさせるためには国鉄が公共的な使命というものを堅持しながらできるだけの経営努力をやっていくということと、それから国鉄の手の届かないところに対する構造欠損部門に対して国が的確な助成を行う、それから国民の理解と協力はできる、この三位一体になって初めて真の国鉄再建ができるんだということを私は強調しました。それで総理の方からも答弁があったんですけれども、大臣からはそれの答弁を求めなかったので、主管大臣として、私が言っておりますことについてどういうふうにお考えになりますか、まずその点を最初にお伺いして質問に入りたいと思います。
  157. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 広田先生のおっしゃるのは三点でございまして、まず公共性を堅持した企業努力をする、これは当然われわれもいま法案の中にも盛り込まれておりますように、公共性を維持しながら国鉄再建を図る、これは当然でございますので、私たち公共性を忘れてただ単に採算のみで事業再建しようという考えではございませんので、その点は認識を同一にしていただきたいと思うのであります。  それから構造的欠損に対する国の助成ということでございますが、いままでしばしば国は国鉄累積赤字を肩がわりするとかいう措置をしてまいりましたし、また国鉄の投資に対しましても国はそれなりの応分の補助もしてまいりました。これは民営には見られない補助をしばしばやってきております。したがって今回の再建法案の中にもございますように、国の助成というものが明確にうたってございますので、これは確実に助成を獲得することでございます。  それから国民の理解と協力を得られるということ、これは当然でございまして、私はこのためにも、いま国鉄の管理者といわずあるいは職員といわず本当に一丸となって燃ゆるような気持ちでやっぱり再建に取り組んでもらいたい。で、いまこの不況下にありましては、各民間企業は血みどろになって生産性の向上なりあるいは合理化ということをやっておる際でございます。その努力の姿に対しやはり国民が協力もし理解もすることだと思うのであります。最近におきましては私ども見ておりますのは、この十月のダイヤ改正にも見られますがごとく、いま一体となってやはり国鉄再建に取り組まなきゃならぬという機運が徐々に私は芽生えてきておるように思いますが、これをこの再建の軌道に乗せる原動力にしていってもらいたいということを念願しております。そのためには私たち地方交通線等について御迷惑をかけるところも多々出てまいりますけれども、それに対しましては、政府は全力を挙げて総合力を発揮して、その地域の足の確保をすることによって国鉄の現在とっております特定地方交通線対策、これを理解してもらうということを努めたいと思うておるのであります。
  158. 広田幸一

    広田幸一君 わかりました。  そこで、これは局長の方から答弁をいただいていいんですが、この法案を出すに当たって国民に理解してもらうためのそういうPRというか説明、そういったものがどこまでなされてあるのか。私はこの間衆議院運輸委員会の中央公聴会に傍聴さしていただきまして、ある市長の方から、こういう法案が出るに至ってほとんど説明を聞いてない、世に言われる九十線の対象路線の人たちはただ新聞で見る程度である、国鉄があるいは政府がどういうふうに考えておるのかただ模索する程度であって、しかも非常な不安を持っておる、こういう声があったのを私は聞いたんですが、そういえばほんに何もそういったPRがなされてないままにこういうふうになっておる。ですから今日、特に地方交通線の問題について、全国的に該当県等ではかなり厳しい批判と不安があって、最近は毎日のように国会に押しかけておるよう状況ですが、その辺の努力というものが私は足りなかったではないか、こういうふうに思いますが、どういう形でそうしたPR、説明地域においてなされてきたか、この点をお聞かせいただきたい。
  159. 山地進

    政府委員(山地進君) 先生の御指摘のように、私ども今日この法案を出すまで、地方にこういった地方交通線対策をやりますよということを個々にといいますか、説明会をするというようなことは確かにございませんでした。ただ、私どもの今回の出しました政策というのは、これは昭和五十二年の国鉄再建の基本方針、それからそれの基礎になります八十二国会の運輸委員会の方でいただきました国鉄再建の基本方向というようなものを土台にして、それから五十四年の国鉄再建の基本構想案というような段階を経まして今日まで来ているわけでございまして、これらのものはそれ相応の新聞の紙面を占めてきたと私は思うわけでございます。  今回の国鉄再建という命題につきましては、一般的に国民の関心というのは非常に高い。どういう手段をとるかということについては、それぞれいろいろなお考えはあろうかと思うんでございますけれども、そういった関心の問題でございますし、またこの地方交通線だけを取り上げてみますれば、これも四十四年といいますか、国鉄赤字になってから長い歴史を持っている問題だと思うわけでございます。そういったことで、私どもも法案を出すに当たってむしろそういった理解をしていただく、個々に理解をしていただくということと同時に、国会の中でまず御審議いただいて、それについての理解を深めていただきたい、むしろ国会の中で洗いざらい議論していただきたいということが私どもの方の希望といいますか、お願いでございまして、普通の法案ですとこういうことでやりますということでございますけれども、むしろ私どもとしては国会でこういうことについてひとつお考えをお聞かせいただきたいという立場でこれを申し上げているわけでございます。  そういう意味から言いますと、PRというような点から見れば御不満かもしれませんけれども、私どもとしてはむしろこういう問題について御判断を示していただきたいという考えでこれを出しているわけで、そういう意味ではまことに言葉としてはおかしゅうございますけれども、こういう機会が非常に私どもとしてはPRの場であると、かように考えているわけでございます。
  160. 広田幸一

    広田幸一君 局長、それは苦しい答弁ですよ。私がきのうも言ったのは、この法律が非常に強権性が強い。この法律が決まったならば、政令で基準を決めてどこの線はもう廃止しますと、こういうふうなことを決めることになっているわけでしょう。だから、国民の皆さんがこの法律は大変だと、こういうふうに言っておるわけですからね。済んだことだからこれ以上言わないけれども、それはやっぱり問題なんですよ。  そこで、入っていきますが、まあ時間の関係もありますから、青木委員の方からもいろいろ言ったんですけれども、累積赤字が六兆円で長期負債が十一兆円あるわけですね。それで、累積赤字の六兆円とそれから長期負債の十一兆円ですか、この中身を大まかにちょっと説明していただけませんか。
  161. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 御承知のように、昭和三十九年に赤字を生じましてから過去十五年間に累積したものでございまして、これをいろいろな形で分析いたしますのは大変むずかしいわけでございます。ただ、全体的に幾つかの原因があろうと考えております。  まず第一は、やはり何と申しましてもいろいろな社会構造の変化、あるいは輸送構造の変化が急激に進展をいたしまして、国鉄の全体的な客貨にわたりますシェアが低下をしてきた、そのためにやはり収入が伸び悩んだということが一つ挙げられます。  また、そうした輸送構造が大きく変化した中におきまして、一方におきましてオイルショックその他いろいろな予想以上の経費の増加というものが起こったということと、そういうような事態に対しまして国鉄自体のそういう変化に対します対応というものが必ずしも十分に行い得なかったというような問題があろうかと思います。  また、現在はすでに運賃法が通過いたしまして、運賃の改定というものはかなり弾力的に行えるようになってまいりましたが、それまでの間かなり運賃というものが抑えられてきた、あるいは低位に物価対策等の見地からも抑えられたというようなこと、あるいはいろいろな公共負担というようなものが過去から続いて負担をしてまいったというような収入面の問題もございます。  また、最近に至りまして非常に大きな要素になってまいりましたのは、先ほど来も議論になっております職員の年齢構成のひずみからまいります退職金、年金の負担がここのところ急激に増大をしてきているという点もございます。これらの原因がいわゆる損益上の赤字負担となりまして、それに対します累積の赤字の原因になっているわけでございますが、さらにこの間におきましていろいろ設備の普及あるいは新しい輸送に対応いたします投資等につきまして、これをいわゆる自己資金の捻出というものがいま申し上げましたような状況の中でなかなかできないという形で、むしろ大半を借入金によったというようなことによりましてこれが利子負担になり、あるいは負債の累積になっているというようなことが原因として挙げられるものと考えております。
  162. 広田幸一

    広田幸一君 私の聞きたいことは、累積赤字というのと長期負債というものの中身の性格的なものなんですね。大まかに言って累積赤字というのは営業的な欠損が大半ではないか、違っておったら言ってもらいたい。それから長期負債というのは新幹線をつくる、いろいろ施設設備をするための借入金、そういうものが主体になっておるように思うんですが、そこで、さっき大臣にも言いましたように、国鉄がどうにもならない、国鉄の手ではどうにも手が届かないという構造的な欠損部門ですね。そういうものの性格から考えますと、この長期負債の中にも累積赤字として入れるべき性格のものがあるんではないかと、こういうように思うわけですね。ですからその点がどういう点を基準にして累積赤字とし、長期負債になっておるかですね。その辺の区分の仕方というものを聞きたいわけです。
  163. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 長期負債の方はすべてこれは外部から借りた借金でございまして、これらの借金はただいま申し上げましたようにいわゆる損益上の赤字を補てんする借金と設備投資のための借金と両方あるわけでございます。したがいまして、現在五十五年度で約九兆でございますが、これはいわゆる特別勘定の分を除きました数字でございますので、特別勘定の分を入れますると約十二兆になろうと思います。したがいましてそのうち約六兆がいわゆる損益勘定から出た赤字のために借り入れた借金でございます。ただ、損益勘定の赤字の中に、損益勘定には減価償却費というものがございますから、それは内部留保がもしも不健全ならばそういう関係で資本費の方に回るべき性格のものであるというふうに言えると思います。
  164. 広田幸一

    広田幸一君 質問の仕方が悪いかもしれませんが、今度、五十一年と今度の法案によってたな上げされるわけですね。そのたな上げされるものには長期負債的な、長期負債の中にあるいろいろな施設設備等の借入金というようなものはほとんど入ってないわけでしょう、累積赤字の中に。ですから私は、たとえば新幹線をつくるために何兆円の金がかかるという、それはいわゆる国として政策として国鉄がやっているわけですからね。そういうものについてもやはり累積赤字としてというか、たな上げの対象にすべきではないか。こういうふうに思うわけですけれども、いや、それは間違いであると、こういうことなのか、あるいは国の方の財源にも限界があるからできないということなのか、それはどうあるべきだと、いわゆる構造欠陥として見るべきであるかどうかと、そういう点です。
  165. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) どういうふうに御説明したらいいかちょっとわかりませんけれども、負債が全体で約十二兆ございます。で、その十二兆の負債のうちで約半分五兆七、八千から六兆ぐらいのものは何のために借りた金かというと、いま御指摘のように設備をつくるために借りた金でございます。で、その設備をつくるために借りた金というのは、まあ本来であればそれはそれが稼働し始めましたならばお客さんの方から運賃という形でいただいて、そして償却していくべきものであるかと存じます。したがって、それはたてまえとしてはその負債のうちの投資に見合う分はいずれの日か解決されなければならない。収入によってそれを償却していかなければならない性格のものであるわけでございますので、その負債のうちでその分を除きました、いわば赤字に見合う借り入れという分をたな上げをしていただくということを考えておるわけでございます。  したがって、たな上げは今回お願いできますれば前回の分と合わせて約五兆円になるわけでございますけれども、六兆円の赤字のうちで五兆円はそういう形でとにかく一応たな上げということで処理をしていただく。そこで一兆円差額が出てまいりますけれども、その一兆円の部分——累積赤字六兆円と、それからたな上げ五兆円との間で一兆円の差があるわけでございますが、この一兆円の部分は再評価積立金の取り崩しということで一応帳簿上の処理がされるという関係になるというふうに私どもは考えております。  そこで問題は、その約十二兆円の負債のうちの資産に見合う六兆円の部分につきましては、これはいわば収支均衡して、そして運賃をいただくことを通じて償却が進んでいかなければならない。ところが、現状ではその償却すら十分できない、こういうことになっておるわけでございまして、しかし、これは非常に長期的に見ればいずれの日にかは解決できるはずのものと思っております。  ただ、当面非常に急ぎますのは、まず経営赤字が出ないようにする。償却は十分できませんでもこれは借り入れをしなくても済みますけれども、償却と関係ない赤字部分というのは、これは借り入れで賄いますと赤字がまた利子を生むという結果になりますので、その部分だけはとにかくたな上げをさしていただく、まあ言ってみれば最小限度の処置としてそういうふうに考えているわけでございまして、負債と累積赤字とたな上げとの関係をいまの説明の仕方で御理解いただきましたかどうかわかりませんが、私どもの頭の中はそういう気持ちで組み立てられておるわけでございます。
  166. 広田幸一

    広田幸一君 総裁、私は国鉄の側というわけじゃありませんが、いろんな設備をして金を借りておるわけですから、いまおっしゃった十二兆円の中の半分がそういうふうになっておるということでしょう。そういうものも国の方から援助をしてもらった方がいいじゃないか、すべきではないかというふうに私は思っておるわけです。その点局長どうですか。いやそうではないということですか。    〔委員長退席、理事桑名義治君着席〕
  167. 山地進

    政府委員(山地進君) いま総裁が言われたのと私の理解は同じだと思うんでございますけれども、償却前赤字、これは問題ないですね。これは要するに償却前赤字が出たときに国鉄は返せないから、借入金しちゃうから、五年間なら五年間ずっと借入金がたまるから、この累積赤字分に見合う借金をどこかからしでいる、こういうことになりますから、その分についてはある借金が残っているなと、これはおわかりいただけるわけですね。  それからもう一つは、設備投資やなんかした場合でも、一つは赤字が出てくるものの中に償却費というのが出てきます。償却費についても、この部分については赤字になるわけです。償却費は何かといいますと、これは本来だったら償却費で返すんですね。普通の企業でしたら償却費で返すわけです。その原資がないということです。ですから、設備投資で今度は償却した金をまた借りてくるわけですね。そうすると、またその借金がずっとたまりますですね。ですから、ある種の減価償却ができない限りは、累積赤字の中に借金の返済分も入ってくる。つまり設備投資のその部分についてはたな上げの対象になる、こうお考えになった方がわかりやすいんじゃないか。それじゃなければ、つまり赤字にならない分については返せるわけですわね、今度は、設備投資について。そういうような関係だと私どもは理解をしておるわけでございます。
  168. 広田幸一

    広田幸一君 構造欠損について、一つの定義といいますかな、そういうものがありますか。申し合わせ事項があるでしょう。
  169. 山地進

    政府委員(山地進君) 構造的欠損につきましては、今回の五十四年の十二月の閣議了解におきまして国の「公的助成等」というところに、「国鉄経営努力のみでは解決し難いいわゆる構造的問題等」ということで、累積赤字と年金の問題と退職手当の問題と地方線と、それから国鉄地方バス、それから公共負担、それから設備投資のうちの社会的要請に基づく企業採算を超えるものと、ここに列挙されているわけで、まあ構造的欠損の広い定義としては国鉄経営努力のみでは解決しがたいもの、その例として、例といいますか列挙してございますのがいま申し上げたものになるわけでございます。これを地方交通線ということだけを取り上げてみましても、これは経営努力のみでは解決できないという関係で助成の対象にしているというふうにお考えいただきたいと思います。
  170. 広田幸一

    広田幸一君 閣議決定は七項目ですね。このうちで実際は確認をされておるということは、この七項目については国の方もめんどう見ると、こういうことですね。それでいまの一つは累積の欠損の分でこれ過去債務としてたな上げをするということですね。  それから共済年金のことは先ほど青木委員も言ってましたが、これはいまだ結論が出ていないということですね。それで、私は共済年金については、さっき局長もおっしゃって青木さんも言っておったんですが、他の年金制度との調整をいまやっておると、そういうことでしょう。違いますか。共済年金は他の年金制度等をいま研究会等でやっておるけれども、相手もあることだからなかなか結論が出ないということでしょう。この問題について、私は、いつごろ結論が出るかということをまずお聞きしたいと思うんです。
  171. 山地進

    政府委員(山地進君) 先ほど答弁いたしましたとおり、二年間ぐらいはかかるだろうということで、いま大蔵省の中で鋭意検討しているわけでございまして、先ほど申し上げたとおり職域年金の問題とか、それから各種年金との整合性の問題とか、国鉄年金の独自の問題とか、そういうような形で研究を進めておるわけでございます。
  172. 広田幸一

    広田幸一君 二年間ぐらいしたら結論が出ると、それまでは、共済年金は五十六年度ごろはもう赤字になるわけでしょう、五十五年ごろ赤字になるわけですね。年金の会計はそういうふうになっているのと違いますか。共済年金の会計の実態をちょっと知らしてください。
  173. 吉井浩

    説明員(吉井浩君) 先ほど青木委員の御質問にお答えいたしましたように、五十四年度、五十五年度と、単年度共済年金財政赤字を計上しています。ただ五十六年度、これは大体原則といたしましては五年に一度財政を見通しまして、今後五年間どれだけ職員から掛金を徴すべきであるか、あるいは事業主はどれだけの負担をすべきであるか、こういう計算をいたしまして、それに基づきまして自後の五年間を処理いたします。したがいまして、その計算をいたしますときには、今後五年間を赤字を出さない、こういう前提で計算をいたすのが原則でございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、今度五十六年度が新しいそういう財政の計算をする年になっておりますので、ただいま五十六年度以降どのような掛金率、どのような事業者側の負担ということで計算をいたしておるわけでございます。六十年を見通しますと、先ほど申しましたように、掛金を掛ける職員に対しまして年金受給者が一一四%、こういう莫大な数字になりますので、これを赤字なしに組み立てるということは非常に困難でございます。  したがいまして、現在いたしております作業は、五年間が原則でございますが、今後二年なり三年なり、その間を何とか事業者側の負担と組合員の掛金ということで賄えるような案を策定できないか、それ以降の問題につきましては、先ほど来お話ございますように、抜本的な共済組合対策といたしまして、私ども先般、総裁の諮問機関でございますが、国鉄の中で、国鉄年金財政を安定させるにはどうしたらよかろうかと、こういうことで一つの研究会を設けまして御審議いただきました中では、国全体のもちろん年金財政の問題もございますけれども、当面は国鉄あるいは他の二公社、国家公務員、こういった公的グループが一緒になってその中で一つの共済財政というものを立てる方法があるのではないか、こういう御答申もいただいたわけでございまして、ただいま、先ほど鉄監局長から御説明がございました大蔵省に設けられました研究会の中でも、それをも一つのたたき台として御検討をいただいておる、こういう状況でございます。
  174. 広田幸一

    広田幸一君 その研究会で、結論を後二年ぐらいしたら出したいということなんですけれども、それまで——現在の赤字のために組合員の掛金も他に比べて高いという現状でしょう。ですからそのことは私は不合理ではないかと。言えばこれは政策的にこういうふうにしわ寄せが来ておるわけですから、その分については金利を見るとか何らかの方法で国が助成をしていくべきではないかと、そういう思想を持っておるわけですよ。その点どうですか。
  175. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 年金のシステム、大変複雑でございますのでおわかりにくいかと思いますけれども、先ほど担当常務が御説明いたしましたように、年金会計の方は五十四年、五十五年に少し赤が出ます。その赤が出た分は結果的には積立金が減るというかっこうでとりあえず五十一−五十五は渡ることになります。そこで、来年度、五十六年度どうするかということでございますけれども、五十六年度は従来からの約束によります掛金率あるいは経営者側といいますか雇い主側の負担金額を改定すべき年に当たっております。そこで、今後の何年間かの収支見通しを立てまして、従業員の掛金率と、それからそれに見合うところの雇い主側、私どもの負担率の改定を行うわけでございます。  で、普通ですとそれによって、まあ国鉄会計はちょっと別にしまして、年金会計自体はそれで回転していくような、回転をしなきゃいかぬわけでございますが、いまお触れになりましたように、現実に従業員の掛金率は日本のどの世界を見渡してもそういう率はないほどの高い率になっておりますので、理論的にはかくあるべしという率が出ましても、これを従業員に持たし得るかどうかというのは相当問題があるわけでございまして、これは当然従業員サイドとしてはそんな高い掛金率はとてもたまりませんよという問題もありますし、私どもの方から見ましてもなかなかそんなに重い掛金率では困るだろうなという問題があるわけでございますが、しかしいまの全体の情勢から言いますと、長期の対策を立てていただくにはどうしても、大変むずかしい仕事でございますから、先ほどのお話のようにどうしても二年はかかるよということを言われた場合に、もっと早くできるでしょうということをなかなか言える状態でないものでございますから、当面の問題としましては、非常につらいんですけれども、やはりその掛金率なり当局側の負担率なりを変更することによって泳いでいかなければならぬというふうに考えております。  いずれにしましても、そういうふうにして掛金率あるいは当局側の負担率が上がっていきますと、今度は国鉄会計の方の負担がふえてきますので、これをどうするかということなんですが、それはいまの私どものお願いとしては、その二年間の根本研究があり、そしてそれに基づいていずれ法律改正などがあって根本的な解決がつくまでの間は、その年金のための国鉄サイドの負担分の異常なる部分についてはせめて利子だけ補給していただいて、その異常なる部分のための借入金がまた次に赤字利子を生んでいくということにならないようにお願いできないかというのが五十六年度の予算要求になっておるわけでございます。  で、こちらの年金会計の方の問題は、いまでも普通の世の中の従業員よりは非常に多くの負担を従業員に強いることになっておりますし、当局側といいますか経営者サイドとしても、民間の会社その他、あるいは国家公務員、あるいはまた電電公社、専売公社と比べても、当局側の負担も異常にまた高くなっておるのでございますけれども、どうもこの方はちょっとここ一、二年の間、根本問題が片づくまでは歯を食いしばってがんばっている以外にないのではないかというのが現状でございます。
  176. 広田幸一

    広田幸一君 あのね総裁、それをさっきから言っておりますように国鉄の構造欠陥によるいわゆる負担であると、こういうふうに理解していいかどうかという問題ね。それならばせめて政府の方が利子でも見てやるということは間違いなのかどうか、こういうことを言っているわけですよ。
  177. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私どもはやはりその部分は、異常なる人員構成、あるいはまた現職の職員が戦後引き続いて数を減らしてまいりましたこと、数を減らすということは、掛金を掛ける人が減ってもらう方の人がふえるということだものですから、そういうことから出たものでありますから、これはひとつやはり構造的なものだということで理解をしていただいて、政府の方にお願いをいたしたいというのがわれわれの姿勢でございます。
  178. 広田幸一

    広田幸一君 じゃ局長、答弁
  179. 山地進

    政府委員(山地進君) この先ほど申し上げました閣議了解の文言をちょっと言いますと、以下のものは「次の事項を中心に行財政上の措置を講ずる」、構造的問題として。「年令構成の歪みから生ずる国鉄の年金問題の重要性にかんがみ、関係省庁において抜本的な共済年金対策について検討を進め、早急に結論を得ることとし、」、次でございますが、「これに基づき所要措置を講ずる。」と、こう書いてございまして、まず検討しているから、構造的欠損かどうかという検討をしているんじゃなくて、どんなふうにやったらいいかということを検討しているわけでございますので、結論が出ない間は金額的にどんな措置をしたらいいのかはわからぬということで、簡単にお答えすれば、構造的問題と考えている、ただどういうふうにやったらいいのかということについて目下検討していると、こういうことでございます。
  180. 広田幸一

    広田幸一君 局長、それはいつそういうふうにはっきりするんですか。これは閣議決定でありますけれども、いまあなた読んだんですけれども、国鉄側、職員の側から言うと高いんですからね、どこよりも。世界でも一番高いと言われておるんですから、少なくともそれぐらい見てやるという、それが私は政府責任ではないか。やっぱり明確にすると。国鉄も一生懸命に経営を改善をするために努力すると、それから構造部門については的確な補助をすると、そういうふうに言っておるわけでしょう。それは大臣はそういうふうにしますとこうおっしゃったんだから。どうなんですか。
  181. 山地進

    政府委員(山地進君) いまの御質問の中に、どうもさっき私ども冷たいということで申しわけございませんが、私どもとしてもこの問題は国鉄の中の非常に大事な問題、特に働いている方々にとって一番大事な問題であるという認識で各方面に当たっておるわけでございまして、どうも私の説明が冷たいと言われたのでは大変悲しくなるわけでございます。  ところで、この中に書いてございますことと先生の御質問とちょっと二つ違いがあるところは、まず共済が赤字になると、この赤字をどうするのかといいますと、いま積立金はたしか四千億あるわけです、共済には。ですから、その積立金の取り崩しと。これはまた住宅の貸し付けとかいろんな貸し付けに使われていることは事実でございますけれども、共済の中でこの二年間どう泳ぐかということと、それからもう一つ、この国鉄の財政に与える影響、さっき総裁が申し上げた財政に与える影響、これが国鉄の構造的問題と申し上げているんです。共済の赤字というのは、これは共済というのは国鉄と別の問題なんです。国鉄の問題というのは、国鉄が企業者として負担をしている、それが国鉄経営を圧迫すると、これが構造的問題だと私ども申し上げているわけです。その点をひとつ分けて御議論いただけたらと思います。
  182. 広田幸一

    広田幸一君 それではね、まだ私理解できませんよ。それで、退職金の問題についてやっぱり同じようなことがぼく言えると思うんです。異常退職金は五十三年度から見てるわけでしょう。これの五十三年から私の調べでは五十三、五十四、五十五で三百四十億出してますね、政府がね。それでどういう基準でこの異常人員に対するお金がどれだけ要るか、それに対してどういうふうな比率しで出しておるかと、これをちょっと詳しく説明してください。    〔理事桑名義治君退席、委員長着席〕
  183. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 普通の民間の企業の場合、特に大企業の場合には普通の年に退職給与引当金というのを引き当てる、そしてそれが法人税の課税上特例があるということになっているわけでございますが、国鉄の場合には、発足以来退職給与引き当てをいたしておりません。これは私どもとしては退職給与引き当てを前々からお願いしているわけなんでございますけれども、そうお願いしているうちに今度はどんどんそれを別にしても赤字になりましたので、うちとしても引き当てができなくなってしまったわけでございます。そこで最近の事情は、たとえば四十万人、人がおりますと、平均の勤務年限が仮に三十年だというふうにいたしますと、平均的にもし人がやめるということになりますと、年に一万二、三千人の人がやめるということであれば平均的なものになります。ところが、現在はそれを超えて一万八千人とか一万九千人とかいう人が年にやめますので、その平均的な人数と、それから現実にやめる人の人数との差を異常分と称しまして、その異常分に要する、その人数に要するところの現実に払いました退職金額、その部分を異常の退職金と、こう考えまして、そうして、これ、実際は借り入れで泳いでいることになりますので、その借り入れのための金利を補助をしてもらっていると、これは五十三年度からですか、五十三年度から始めた制度としてその金利分を財政の方で見てもらうことにしたわけでございます。大体一万二千人ぐらいでございます。平均的なものを一万二千人と見まして、それを超える人数分について金利を見てもらっている、こういうかっこうでございます。
  184. 広田幸一

    広田幸一君 ざっと、五十三年から始まっておるわけですからね、これを六十年までに一応のめどというものを置くとして、その間の大体その異常退職金というものはどのぐらいあるかですね。
  185. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 五十三年度からのちょっと通算をいたしたことはございませんが、五十三年度にこの異常分が七百六十八億ございまして、五十四年度は約九百三十六億でございました。で、五十五年度の予算ではこれ千五百四十九億という数字で見ております。で、大ざっぱに申しまして約六十年度はこれは三千億ぐらいになろうかという感じでございます。したがいまして、それを通算いたしますとちょっといまここで積算をしたあれを持っておりませんが、大体そんな感じで六十年ごろまでに三千億ぐらいまでふえていくと、六十一、二年ぐらいがピークでその姿は終わって、それ以降は平準、あるいはそれ以下になっていくという形で推移をしていくと思います。
  186. 広田幸一

    広田幸一君 そうしますと、いま五十三年から三年間払われておる金が三百何ぼだったかな、ですから、六十年までになると、その利子を見る金額はどのようになるかと。いまおっしゃった三千億ですから、そのうちから引いた、たとえば一千億になれば、二千億というものはその財源はどこから求めるかと、そういうふうな計算は……。
  187. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 先ほど総裁が申し上げましたように、異常退職金の分につきましては内部留保もなければ内部資金にないわけでございますから、その分はどうしても借り入れでいかなきゃならぬ。したがって、その借り入れた分の利子を補助をしていただくというシステムを現在やっておるわけでございます。ですから、先ほど申し上げましたのは六十年度にやはり異常分だけで三千億ぐらいの退職金があるだろうと、その分に対しましてそれは借りまして、それに対する利子補給をその年あるいは過年度にさかのぼった利子を引き続いていただくという形になるわけでございます。
  188. 広田幸一

    広田幸一君 それは金利ですからね、元金というものについてはこれは構造ということになりませんか。
  189. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 大変常識では考えられないような人員構成になっていまして、六十三年ぐらいになりますと逆に平年度の、さっき申しました一万二千人あるいは一万二千五百人という平年度のやめるはずの平均的な人数が今度は一万人とか九千人とか八千人とかいうふうに減ってくるわけでございます。したがって、たしか六十二年だか三年だかだったと思いますが、それから後は平年度であればやめるはずの人数よりも、今度やめる人が逆に減ってきますものですから、六十二年度以降の今度会計の方はそれだけ平均的なものよりも負担が減ってきますので、その以降で、何といいますか、退職給与引当金の逆引き当てみたいなかっこうになっているのですけれども、その分を今度は逆に崩していくと、たまっている分を逆に崩していくということが可能になりますものですから、元本の方はまあ構造的と言えないんじゃないかというふうに考えております。  何といいますか、六十年度に収支均衡いたしますと、約五百億円の黒字が出ますという御説明を基本構想案でいたしておりますが、その計算上は除外をしております。つまり特別なものというふうに考えております。しかし、その部分の元本について政府から補助金をもらうべきかどうかと、政府に助けてもらうべきかどうかという点については、それは構造的という概念でなしに、六十二年か三年ぐらいから毎年少しずつそれが減っていくということで、自力で埋めていけるという考えでございますから、そういう意味では構造的とは考えてないわけでございます。
  190. 広田幸一

    広田幸一君 そうですかな。ただ、六十年の二年、三年そういうふうに逆に黒字というか健全になるということですけれども、その間というのはやはり何千億かというものは国鉄の負債になっておるわけですから、その時点まではやはり考えると構造というふうに言えないでしょうか。
  191. 山地進

    政府委員(山地進君) 退職金の異常部分だけの特別勘定というのをお考えいただくとわりと簡単だと思うんです。いま三百億ぐらい借金していますね、残高が三千二百五十三億ぐらいになっておると思うんです。そうしますと、その金利を払ってもらっている間は国鉄はただで借りているようなものです、それは。それがずっとだんだん多くなりますわね、六十年になると五千億とか六千億になってくる。もっとたくさんになるかもしれません。それでも金利を政府が払ってくれている間はただで借りているわけです。そうすると、どんどん高くなるんですけれども、いま総裁の言った六十二年以降になるとその山がどんどん崩れてくる。なおかつ、でもただで借りている間は何も国鉄は痛くもかゆくもないと言うと申しわけございませんけれども、そんなに問題ではないと。そういう意味では、国鉄経営上の構造的欠損は金利が構造的欠損であると、こういうふうにわれわれは考えるわけです。
  192. 広田幸一

    広田幸一君 そういうふうに理解しましょう。  次は公共負担の問題ですね。これもいつも論議になるところですが、これの見通しはどうですか。
  193. 山地進

    政府委員(山地進君) これも昨年の十二月の閣議了解で各省で検討するということで、これも一政府の問題、政府全体の問題として取り上げているわけでございまして、文部、厚生、それから大蔵、それから総理府と私どもの方で集まりまして検討をしているわけでございます。そこで、この学生の定期の問題あるいは身障者の問題にしましても非常に長い歴史のある問題でございますし、また関係各省、それを政策官庁が持てということについては、やっぱり現実にいま非常に国家財政が厳しい折から、各省の予算の割り振りの問題に絡むものでございますので、非常にそれがネックになりまして、かなり関係各省とも国鉄の現状並びにそういった学生の定期のあり方そのものについては御理解を示していただいていると思うんでございますが、今年度の予算の折衝までに間に合うということはなかなか断言できないような状況でございます。
  194. 広田幸一

    広田幸一君 これの現在まで国鉄負担をしておる総金額は幾らになりますか。
  195. 吉武秀夫

    説明員(吉武秀夫君) この運賃上の公共負担額を通学定期割引とそれから身体障害者、戦傷病者関係というふうに考えまして、それらの項目の二十四年から五十四年までの三十年間で七千百四十一億でございます。
  196. 広田幸一

    広田幸一君 総裁、これはなかなか結論がまだ出ぬですがね。いま局長おっしゃったですが、これは何とかしてもらわなきゃならぬじゃないですか。でも利子ぐらいは何とか見てもらわなきゃならない。この点のひとつ行動としての理解を。
  197. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いまの七千百四十一億の中で五十年までの分が四千九百七十四億ございます。昭和二十四年公社が発足いたしましてから五十年までの分が四千九百七十四億ございます。この四千九百七十四億は昭和五十年末でたな上げをしていただきました二兆五千億の中を構成していることになります。五十年末で赤字を一遍たな上げしていただきました。そのたな上げした、そんなに何で赤字が出たかという中にこの分も入ってしまっているわけでございますので、この分は一応たな上げをしてもらっておるわけでございます。  そこで、問題はたな上げした部分については将来どうするかということについては、これは棒引きにしてもらったわけじゃなくて、国鉄としては特別勘定ではありますけれども債務として残っております。したがって、これは処理がついたと言えるのかついたと言えないのか、その中間みたいな関係にあるわけでございます。それから、いままでの七千百四十一億と四千九百七十四億の差額が二千億余りあるわけでございますが、この二千億余りは今度たな上げしていただきます約二兆五千億のまた一部を構成していることになるわけでございます。  したがいまして、公共負担を持ってもらえてないということは、その年度その年度の赤字としては補助してもらえないものですから残っちまうんですけれども、だんごにして全体の赤字をたな上げてもらうものですから、ある意味ではそういう意味で中間的には助けていただいたといいますか、助成をしてもらったといいますか、過去債務のたな上げということをやることを通じて公共負担の分もとりあえず少なくともその利子はかかってこないように処理をしていただいている、こういうかっとうになります。  こういう構造的赤字問題の処理の問題というのは、ぜひ私どもとしてはいろいろ毎年度毎年度の問題として処理をしていただきたいわけでございますけど、いままで処理をしていただけなかった分はどういう始末になっているかというと、今度の法律でお願いしておりますような形で、過去債務のたな上げということで結局はある程度の処理ができている。どういう意味で処理ができてないかというと、それは棒引きにしてもらったわけじゃなくて、いずれは返さなければならないという性格が残っていると。ただ、利子は見てもらってますから、その借入分がまた順番に赤字を生んでいくということにはなっていない、その元本部分だけが残っていると、こういう関係になっているわけでございます。
  198. 広田幸一

    広田幸一君 そこでね、たな上げたな上げと言っているけれども、いつかはいま総裁がおっしゃったように返さなけりゃならぬわけでしょう。それでね、五十年度の末と五十四年度の末で今度五兆五百億ですか、たな上げするわけですね。これの償還計画といいますかね、償還原資、これはどういうふうになってますか。
  199. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) これは政府とのお約束では運輸収入外の収入、つまり雑収入ということになりますか、特に関連事業等をどんどん拡大することによって得られる収入によってお返しをすると。つまり、この分が運賃にははね返らないと。これを返すための原資を得るためにさらにまたその後運賃を上げなければならぬというふうには考えてないわけでございまして、いわゆるサイドワークといいますか、そういう仕事から得られる金でもってお返しをするというたてまえになっております。  それ一体そんなもの返せるのかということについて、非常に常識的には疑問をお持ちだと思いますけど、このたな上げというのは大変ありがたいことに、インフレの経済下においては時間の経過とともに、金利さえ持ってもらいますと、比較的軽い負担になっていきますので、関連事業収入の伸びがどれだけあるかということにもよりますけど、決して不可能なことではない。たな上げのメリットというのは、普通のときにはそんなに大きくないんでございますけれど、インフレ時代にはそういった意味でのメリットがありますので、決して返済不能のものであるというふうには考えておりません。
  200. 広田幸一

    広田幸一君 その全部が終わります完済ですね、その年はいつごろですか。昭和何年ですか。
  201. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 五年据え置きの二十年という形になってまいりますので、通算で約二十五年先になるわけでございます。
  202. 広田幸一

    広田幸一君 昭和何年になります。
  203. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 九十五年ごろになると思います。
  204. 山地進

    政府委員(山地進君) いまの御答弁は、最初の金を返すのに五年据え置き二十年でございますが、毎年発生する今度償還金について無利子貸し付けをするということなんですね。したがって、五年たちますと現在のたな上げの一部返すわけですけれども、その返す金について無利子貸し付けをやるわけです。これが二十年かかるわけですから、二十五年と二十年で四十五年かかるわけです、全部返すのに。そういうことになりますと、いまから四十五年足しますと昭和百年でございますか、非常に手厚い保護であるとは考えております。
  205. 広田幸一

    広田幸一君 いまの総裁おっしゃったまだ三十年も四十年も先ですが、当面真剣な問題として雑収入で返済をするということですね。それは事業収入等なんですがね、どういうものが想定されるんですか。
  206. 加賀山朝雄

    説明員加賀山朝雄君) 関連事業収入といたしまして、昭和五十四年度におきます実績は約五百十一億円でございます。その主なものは、いわゆる旅客構内の売店とかあるいは食堂あるいは列車食堂等、いわゆる構内営業と私ども言っておりますが、それが大体百八十六億円、それから駅ビル等でございますが、いわゆる構内公衆営業、そういった施設でやっておりますのが約六十七億円、それから広告収入、駅頭その他でいろんな広告をやっておりますのが百二十三億円、それから用地等の貸し付けといったことで九十一億円、さらに駅前の自動車駐車場とかその他もろもろの関係で約四十四億円というような形でございまして、主にそういう内容になっておりまして、今後そういったいろいろな駅ビルの開発あるいは構内営業的な、構内におきます中小店舗の開発あるいは新規の広告媒体の開発あるいはいわゆる資産の駅舎跡地ですか、そういうところの高度利用とかあるいは高架下の利用とか、そういった事柄で増収を図ってまいりたいというふうに考えております。
  207. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ちょっと補足させていただきます。  五十四年度現在で五百十一億円という御説明をいたしましたが、これは現時点では、国鉄の収入としてもしこれがない場合と比較いたしますとこれだけ赤字が少なくなっているという形になります。そして、いま御説明しましたように、五年据え置きでございますから、返す必要がありませんから、昭和六十年まではこの種のものは借金の返済原資に、たな上げ分の返済原資に充てるんでなくて、毎年毎年の収支に充当されます。そうして、六十年以降といいますか、据え置き期間が終わって返す事態になりますと、この関連事業収入の一部がそちらに充てられるということになろうかと思います。そういう意味で、ちょっと先ほど説明ですと不十分でございまして、その種の運輸収入以外のものをすべてたな上げ債務の返済に充てるような表現のお答えをいたしましたけれども、そうではなくて、この関連事業収入といいますか、雑収入といいますか、そういうものの一部が返済に回ると、こういうことで御理解いただきたいと存じます。
  208. 広田幸一

    広田幸一君 構造部門について細かく質問をしたんですけれども、結局私は、こうして六兆円の累積赤字が出る、十二兆円の長期負債が出るというのは、よく言われる国鉄政府の方にもたれかかる、また政府国鉄の方に任せるという、そういう責任区分がはっきりしてなかったというところに私は問題があると思うんですよ。ですから、ここまではもう国鉄がやりなさいと、あとの分は国が見ますという、そういう点を明確にしていないところに今日の、親方日の丸と言うのはあれですけれども、私はやっぱりそういうところがあると思うんですよ。  ですから、私はそういった政府の側として、金の問題もあろうけれどもこの際きちっと整理をして責任を明確にすると、そういう意味で、私はこの際、いままであったような問題を、すぐできぬにしてもそのような考え方でこれからきちっとこういった構造部門についてもはっきりすべきだと、こういうふうに考えますが、大臣どうでしょう。
  209. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 仰せのとおりであります。
  210. 広田幸一

    広田幸一君 そういうふうにひとつ努力してください。  青木委員の方からも言ったんですが、六十年までに経営収支均衡を図るということですが、この収支均衡を図るという、その収支均衡というのはどういうふうな状態を言うのですかね。
  211. 山地進

    政府委員(山地進君) おっしゃる意味は、法律の中に書いてある収支均衡基盤の確立の後の話だと思うんでございますが、前の御質問でございましたように、収支均衡という場合に、国鉄が構造的問題を抱えておりますので、当然助成抜きで収支均衡ということまでは考えておりません。国の持つべきものということが当然助成金として入ってくる、これが満額かどうかということはもちろん御議論あろうかと思いますけれども、政府として持つべきものは持った後の国鉄収支均衡するということでございまして、その場合に、先ほど来議論のございました年金とかそういったものも一切含めて収支均衡するということが当然のことだろうと思います。
  212. 広田幸一

    広田幸一君 そういうものが整理されるという前提なんですね。  そこで、三十五万人体制の問題についてさっきも話があったと思うんですが、さっき総裁だったですかね、人件費を、いわゆる赤字にならない三十九年以前の状態は五〇%であったと、そういう人件費を五〇%にするように体制をつくるのが三十五万人体制だとおっしゃったんですね。そういうことですね。私が心配をしますのは、確かに民間の企業であったならばそれでもいいと思うんですよ。そればそうだろうと思うんですが、さっきから私が言っておりますように、公共的な使命があるわけですからね。そうすると、均衡で人件費を五〇ということになると、赤字部門をとにかく切ってしまう、黒字部門だけは補強して伸ばしていってしまうということになるわけですね。そうなってくると公共性というものは忘れられてしまうと、こういうことになるんですが、その点どうですかな。三十五万人体制はどういう状態か。
  213. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 公共性というのをどこまで考えるか。私どもは普通の私企業と違います。そういう意味で公共的役割りを担っているということで考えております。  ただ、公共的役割りを担っておるというがゆえに採算性を全く忘れるということはできない。特に飛行機が発達し、自動車が発達してきますと、われわれ輸送業とはいえ、これ非常に競争関係に立ってまいりますから、そういう意味採算ということも従来よりはより強くウエートを置いて考えていかなければならないというふうに思います。それをより強くウエートを置いて考えるようになりますと、公共性ということについての配慮は多少とも後退をしていくような感じになることは否定できない。でありますから、たとえばいま特定地交線等につきまして、これはバスにかえさせていただきたいとお願いいたしますのも、ある意味ではその陰において公共性の退却といいますか、公共性が薄れるといいますか、その部分についてはより採算性の方を強く見ていくという姿勢であるということは事実でございます。  しかし、たとえば私鉄の場合でありますと、非常に多くの私鉄さんはもうすでに貨物輸送は全部やめてしまうというようなことをやっておられるわけでございますし、私どもとしましても、現在貨物輸送が非常に負担になっている、経営の面で負担になっていることは事実なんでございますけれども、これはやはり生活物資とかあるいは肥料とか米とかというものを運んでいる役割りから言いますと、これ貨物を輸送することは引き合わないからといってやめるということはできないわけでございまして、そういう意味では採算性のゆえに公共性を全く犠牲にしてしまうということは考えてないわけでございます。  また、よく引く例でございますけれども、私鉄の方は黒字で国鉄赤字だとか、あるいは私鉄の方が安くて国鉄の方が高いとかいうようなことが都市近郊で起こっておりますけれども、一つにはそれはやはり私鉄よりも朝早くから汽車を走らせておりますし、夜遅くまで走らせております。それはお客が少ないんで本当はもっと朝をおくらし最終を早くした方が採算的にはいいことはわかっておりますけれども、しかし、国鉄の通勤電車が朝早くから夜遅くまで走っているというのは、これはやはり非常に重要な役割りだと思っておりますので、そういう意味では公共性ということが後退しないように歯を食いしばってがんばっていくつもりであります。  しかし、率直に申しまして、従来よりはどうしても採算にウエートを置いて考えますと、公共的な面というのは多少とも後退することは否定できないわけでございまして、今後この再建計画を立てるときにそこをどう考えたらよろしいかと。たとえば自動券売機で切符を売るようになりますと、目の悪い方だとかお年寄りだとかなれない人は窓口で買った方が機械で買うよりもサービスがいいというふうにお感じになる方が多いわけでございますから、機械に切りかえるということ一つとりましても、やはり多少ともサービスが後退するというかっこうになるわけでございます。しかしそこは、どこまでならばお許しいただけるかということを考えながら、そして人手を減らし得ることによる能率の向上を考えながら、公共性採算性の接点を見つけてやってまいりたいというふうに考えます。  そこで、その場合の三十五万人との関連で申しますと、それは中には三十五万人では甘いじゃないか、もっと、三十万人でやれないのか、二十五万人でやれないのかというお話も出てくるわけでございますが、そんな一挙にそういうことをいたしましては、とても公共性といいますか、そういう点が維持できませんので、公共性の後退をある程度はお認めいただきながら、ぎりぎりのところが三十五万人くらいではないかということで決断をいたしておるということでございます。
  214. 広田幸一

    広田幸一君 大分詳しく言われたからよく、よくというわけじゃないですけど、大体はわかったですけどね。国鉄再建基本構想の中に人件費五〇%というのが載っているわけですね。私も素人で余りよくわからぬ面もあるんですが、そういう戦後の状態というものは国鉄がいわゆる独占しとったわけです。ところが、さっきからもいろいろありますように、モータリゼーション、自動車が走るというようなことで収入が減ってきたわけですね。ですから、そういうときに考えておる五〇%といまの考える五〇%とは非常に客観的にも主体的にも条件が違ってきておると思うんですが、そちらの方を、さっきからも論議がありましたように、総合交通体系の中で国鉄一体どうあるべきか、そういうようなことを並行してやらないと、三十五万人体制は、人件費を当時のような五〇%にするということになると、私は公共性が多少薄れるようなことがあるかもしれないがという総裁のおっしゃる意味はわかるんですよ、わかるけれども、やっぱりそういうところの関連を考えながらやらないと私は問題が起きてくると、こういうふうに思うんですよ。
  215. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 先ほど二つの例を挙げたわけでございまして、ある意味では非常に乱暴な経済指標からの達観でございます、三十五万、五〇%というのは非常に乱暴な達観でございますが、国鉄赤字になります前の、直前の三十五、六年、三十七、八年の状態がまあ五〇%ぐらいであったということと、もう一つは現在の大手私鉄の状況が、つまり輸送業、同じ鉄道業である私鉄の状況がやはり人件費対収入の割合が五〇%弱になっているということから考えまして、その両方から考えまして五〇%なり三十五万人なりという数を考え出したわけでございまして、その意味では確かに当時とはいろいろもろもろの事情が違っておりますけれども、そしてまた私鉄との比較だけでは大変ラフな判断でございますけれども、しかしいまのところしかるべき指標が見つかりませんでしたから、その二つを参考にしながら五〇%ということを見当にし、目標にいたしたわけでございます。  そこで問題点は、それへ持って行きますためには、現在よりも七万四千人少ない人手でやっていかなきゃならぬわけでございますが、それを運転の方はどうするかと、線路の保守はどうするか、駅頭で切符を売る人手はどういうふうに減らすかということを詰めていったものが三十五万人になるよというところまでこぎつけませんと、本当の意味の計画にならないわけでございまして、それはある意味では労働密度が上がるとか、あるいは労働条件が悪くなるとかいうことも考えられないわけではないわけですから、その点を私どもよりも現に現場で働いている人たちとよく相談しながら、それでいけるからということを詰めた上で初めて計画が成り立つというふうに考えております。
  216. 広田幸一

    広田幸一君 それから、問題の特定地方交通線の、六十年までに言われておる九十線、約九十線がバスに転換をした場合は、大体六十年で、いろんなこともあるわけですけれども、三十五万人体制もあるわけですけれども、五百億の黒字になるという計算になっておるわけですね。この点、九十線を——九十線としましよう、政府はなかなかこれ発表しないのですけれども。九十線とした場合に、どれだけ国鉄としてメリットがあるのか、そういう点を教えてもらいたいですね。
  217. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 現在いわゆる地方交通線と申しておりますのは約九千キロでございますが、九千キロの経営状態は、大ざっぱな数字で申します。収入が千億弱で経費が四千億、したがって赤字が三千億と、そしてその赤字三千億のうちで、地方交通線の補助金をいただいておりますから、この補助金を抜いた分が毎年の私どもの八千億とか九千億とかの赤字の部分を形成しているわけでございます。  そこで、それは九千キロの話でございまして、今度のいわゆる特定地交線の部分についてどういう数字になるかと申しますと、さっきの四千億、収入が千億で三千億赤字と申しました三千億のうち、いま九十線とおっしゃいましたが、何線かは別として大ざっぱな見当で約その数字が九百億ぐらいでございます。助成前のそれだけの線区での赤字が九百億ぐらいでございます。
  218. 広田幸一

    広田幸一君 現在ですね。
  219. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 現在。それはバスにかわった場合にどのくらいに減るかということでございますけれども、一つにはいろいろな試算もやってみておりますが、私の方で国鉄バス経営している関係がありまして、国鉄バスの方での原価等で計算してみますと、大体のところいまの九百億の赤字が二割ぐらいに減るんではないかと、つまり九百億が二百億弱ぐらいのところまで減るんじゃないか。逆に言いますと七百億ぐらい赤が減ると、九百億のところで二百億ぐらいの黒はやっぱり残るというぐらいの感じでいま概算をいたしております。
  220. 広田幸一

    広田幸一君 自治省に伺いますが、自治省としても、この法案を出すときに、この九十の線をバスに転換をした場合には、特にそういった沿線地域地方自治体の財政事情は非常に悪い、しかも過疎地域が多いと、そういう関係もあって、国鉄からバスに転換をすることによって、経済的にも文化的にも教育的にも、国民生活の福祉の面からいっても、有形無形のかなりデメがあると、こういうふうに私は思うんですよね。ですから、自治省としてはこういう法案を出すときにそのようなことをどこまで検討しておられるか、その点お答え願いたい。
  221. 藤原良一

    説明員(藤原良一君) 法案の際はまだ、現在でもそうですが、具体的に廃止路線が何線になるか特定しておりませんので、明確な調査はできていないわけですけれども、もし廃止後代替施設が補充されないということになりますと、やはり地域住民の生活上非常に大きいデメリットがあると思いますが、しかしそういうデメリットがないように極力廃止後の足の確保については今後努力していこうということで対処してまいりたいと考えておりますので、そういうことで御理解いただきたいと思います。
  222. 広田幸一

    広田幸一君 きのうも本会議で言ったんだけれども、福祉の問題でも教育の問題でも、それから地場産業がそういう鉄道がなくなることによってこれが非常におくれるとか、いろんな問題があるわけですよね。そういう自治体の実態がどうなるかというような見通しをやっぱりこういう法案が出るときには自治省としては当然研究しておかなきゃならぬことじゃないでしょうかな。私があるそういった予想される沿線に行きましたところが、ある町では大変なことになるというので、もしもこの国鉄バスに転換になった場合はどうなるだろうかというようなことを細かく調査をして、もうあと一カ月ぐらいしたらこの町全体がどれだけの後進状態になるか、後進地域になるかというようなことを調べておったですよ。そういう実態は自治省として今日まで調べずにおったということはおかしいと思うんですが、今後どういうふうにしようと思われますか。
  223. 藤原良一

    説明員(藤原良一君) 特別にいままで系統立った調査しておりませんが、ただ、各地方公共団体から多数の意見等いただいております。その中で、地域の実情あるいは地域産業に及ぼす影響、住民生活に及ぼす影響等るる述べられておりまして、そういう意見は一応把握させていただいておるわけです。今後、具体的な選定基準を運輸省の方と協議してまいりたいと思っておりますが、その際にできるだけそういう地域の実情、将来性等反映できるように十分相談してまいりたいと考えておる次第です。
  224. 広田幸一

    広田幸一君 大臣にお尋ねをしますけれども、午前中青木委員の方から指摘をして、私の答弁に対する、大臣自治大臣との食い違いの問題については先ほど見解の表明があったからあれでいいんですけれども、やはり私は、いま言ったような問題が政府として真剣に考えられないと、これからの法律が通ったからといって簡単にいかないと思うんですよ。そういう点については、きのう、きょうと、大臣も十分に御承知になっておると思いますから、それをさらに追及するという気持ちはありませんが、ひとつそういう点は将来も十分留意してやってもらわないといけないと思います。  この間の委員会で私も言ったんですが、新幹線の五線の問題ですが、きのうも総理大臣閣議了解事項であるからこれはやるということをおっしゃったんです。本当にいま政府として新幹線整備五線はやる気持ちがあるのかどうかですね。もう一遍ここで確認をしておきたいと思いますし、その閣議決定というのはいつのことですか、これは。
  225. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 閣議決定は五十三年にいたしました。総理が言っておりますのは、決定をしましたからやるという方針は残っておりますと、こういう意味でございまして、方針は残っておるが、それではいつから、どこからということはおっしゃっておりませんで、しかもそれには財源対策と、簡単に言いましてフィージビリティーというものが伴ってくると、こう言っておるのでございまして、そういう点を御承知いただきたいと思うのであります。
  226. 広田幸一

    広田幸一君 私、問題になっておる特定地方交通線の選別基準の問題についてここで質問をしたいと思うんですが、基準は政令で決めるということなんですが、私は、基準というのは政令で決めずに法律で決めるべきものであると、こういうふうに思っておりますが、大臣いかがですか。
  227. 山地進

    政府委員(山地進君) 今回法律におきまして「政令で」ということで、基本的な政令の委任の関係は八条に書いてございますように幹線網、これ幹線網をまず除きますよと。幹線網というのは何かということについてもこれは政令に委任してあるわけでございますね。八条の一項でございますか、これ見ますと、「幹線鉄道網を形成する営業線として政令で定める」、これは、幹線網というのは何かということについて、細部については政令に委任してあるわけです。  それからもう一つ、地方交通線は何かということについて、「その運営の改善のための適切な措置を講じたとしてもなお収支均衡確保することが困難」、こういう考え方で、それは地方交通線なんだということで、これを、基準を政令で定めるというふうに委任してあるのが二番目の委任でございます。  それからもう一つ三番目に、第二項で「鉄道による輸送に代えて一般乗合旅客自動車運送事業による輸送を行うことが適当であるものとして政令で定める基準に該当する」と、こういうことで、この幹線と、それから収支均衡がむずかしいと、それからバスに転換する方が適切であると。それは何だろうかということについて政令でひとつ書いたらどうかというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。  これはもともと現在の法秩序といいますか、全体の法律の中では、日本国有鉄道法で廃止というのは運輸大臣の認可を受けて国鉄ができるわけでございます。したがって、それらについては個々に申請をして運輸大臣がそれを決めていくというのもいままでの法体系の中ではあったわけでございますが、今回私どもとしてはこれだけの閣議決定を経て、しかも非常に政治的な大きな問題でございますので、それらについて一応方針というものをここに法律でお諮りして、それでその細部については政令で決めていきたいと、かように考えて政令で基準と、こういうふうに考えたわけでございます。
  228. 広田幸一

    広田幸一君 問題になっておるいわゆる特定地方交通線の約九十線の問題が一番問題になっておるわけですね。これは地方住民にとっては生活路線であり、非常に問題の線ですね。それを政令でもって、政府の判断によって政令で決めるということは住民として耐えられないと、こういうことなんですね。それほど重要な問題ですから、これは法律でもってきちっとやるべきであるというわれわれの主張はそう間違っていないと思うんですがね、どうですか。
  229. 山地進

    政府委員(山地進君) いまも若干申し上げましたとおり、この地方交通線の問題は、もう十何年われわれの前で非常に問題になっております。それから私どもの部内におきましても、先ほどちょっと触れましたように運輸政策審議会の小委員会で、これも一年にわたりましてローカル線対策の小委員会というのをつくりましてそこで議論をしてきたわけでございます。  そこで、一体こういった地方交通線対策というものをどうやってやっていくのか、私どもはむしろ先ほどちょっと触れましたように、こういう国会で大筋についてひとつ御議論をいただいて、その御議論も踏まえて政令ということで基準をつくっていこう、その大筋の議論として、ここに書いたような政令の委任の規定というのに収支均衡とかあるいは幹線網とかあるいはバス転換という表現でそれをお示ししているわけでございまして、さらにそれについて運輸省としてどんなふうに考えているんだと、こういう法案を出すについて各省としてはどんなふうな関係でやっているのかということにつきましては、その都度いろいろ御説明しているわけでございますが、衆議院運輸委員会におきましてはその基準、政令を出せと、こういうことでございましたけれども、これは運輸省が各省に、運輸省としてはこの法律をつくるに当たってどんな考え方でやっているんだということで、各省が合意したというわけではございませんけれども、各省にこれまでいろいろお示しをしたものについて取りまとめたものを衆議院運輸委員会にお配りしてございます。  資料として、差し支えなければ当委員会でもお配りさせていただけたらと思うわけでございますが、その基準案の中身というのは、これも先生方御承知だと思いますけれども、幹線網とは何かということ、それから収支均衡がむつかしいというのはどんな路線だ、それからもう一つはバスに転換するのはどんな路線だということで、主として輸送密度を一つの判断材料にしながらこれを考えているわけでございます。もし詳細お許しいただければその基準については御説明をいたさしていただきたいと思います。
  230. 広田幸一

    広田幸一君 衆議院運輸委員会で、いま局長がおっしゃったように出されておるわけですね。これは私、察するのに、運輸省は原案の原案だと言っておられるけど、これは大臣答弁の中でこれはもう骨格であると、これは曲げることはできないということをはっきりおっしゃっておるわけですよね。そういうことでしょう。ですから、いま局長の方ではこれは各省庁の意見を聞いて成案をつくるんだとおっしゃっているけど、こういうものが出たことによって各省庁の意見をいろいろ聞くと、そこまでに至っていないと。きょう午前中のああいった自治大臣との問題もあるわけですわね。ですから、私どもは基準はすでに出されたものであると、こういうふうに判断をしたいのですね、これは。ところが、この間の衆議院委員会においては、法案ができてから基準を出すということですけどね。その辺の食い違いがすっきりしないんですね。どうですか。
  231. 山地進

    政府委員(山地進君) この衆議院に出しました政令の基準案でございますね、これにつきましては、各省にいろいろいままでも随時御説明をしてきたわけです。それについて、それならもういいぞと言っているところもございますし、いやそれはちょっとまだだめだよと、これは最後法律が通るか通らないかわからないんだから、通ってからゆっくりやろうというところもございます。  そこで私どもとして、それじゃこういったものを国会の御審議を経ない前に政令案として政府で取りまとめてくるというのもなかなかむつかしいものでございますので、従来の関係各省とのこれまでの議論といいますか、協議を踏まえまして、運輸省として取りまとめた案と、こういうふうにしか私どもとしては申し上げられないわけでございます。御存じのとおり、政令としてかっちり固めてくるためには閣議まで経なきゃいけませんので、そこまではとても至らないので、関係各省にいろいろ私どもから御相談をしている、ただしそれについて御了承を得てない、しかし運輸省としては今後もこういうことで話を進めたい、こういうことでまとめた案がこの案でございます。
  232. 広田幸一

    広田幸一君 法案にちょっと入っていきますけどね、八条の四項ですね、それから十条を見ましても、政令で決めたって別に差し支えないと言いますけれども、政令で決めてしまったら、住民を代表する知事等の意見は聞くことはありますよ。聞くことはあるけれども、最終的には決めてしまうということでしょう。だから、そういう非常に重要な問題は事前に出してもらわないと、われわれ協議の仕方がないんじゃないかと、こう言っているわけですよ。
  233. 山地進

    政府委員(山地進君) いまの政令の基準は、ここに書いてございますような委任の仕方、委任としては収支均衡がむつかしいという考え方がいいかどうか、あるいはバスに転換することが適切であるという路線をバスに転換するのがいいかどうかということがまず基本的にあるわけでございますね。それが一体それじゃどんなものをするんだと、私どものは収支均衡ということは、これは私鉄の現在の経営状況、実績というものと、国鉄経営合理化をした結果、どこまでいくだろうかというような試算から、一日輸送密度八千人というのが収支均衡ということではないだろうか。  それからもう一つ、バスの方はバスのコスト、それから国鉄のコストというものを比較して、四千人を超えますと、鉄道の方が同じ赤字が出ても赤字が少ない。四千人以下ですと今度は同じ赤字でも国鉄赤字が大きい。こういうことから、これも輸送密度から考えてバスに転換するのは各路線をはかって四千人、輸送密度四千人以下の場合はこれはバスにかえていくのがいいじゃないか、こういうことで八千人、四千人というようなことをお示ししているんで、私どもとしてはその基準ということは、大筋については政府の方に御委任いただいてこれで進みたいと、かように考えておるわけです。
  234. 広田幸一

    広田幸一君 バスに転換するとか第三セクターにするとかというようなことはそれは後のことであって、法律が通ってしまったら基準を決めて、そして国鉄がこれは特定地方交通線であるというふうに認定をして、大臣に申請をして決めて都道府県知事に出すわけでしょう。その間にその知事なら知事の意見を聞いて、そしてそれを決定をする場合の参考にすればいいんだけれども、もう国鉄が決めてしまって通知をするわけでしょう知事に。そこに問題がある。そこに不安があるわけですよ。  ですから基準というものを最初に出して、できれば、できればというのはおかしいんですが、本当は言われているところの約九十線というものもわれわれの審議の対象に出してもらわなきゃいけないと思うんですよ、法案をつくる前にね。だから、そのことはまだはっきりしないからわからないというのは、どうもこれは逃げだと思うんですよ、もうはっきりしておるんだから。だからそこの住民たちが心配をして政府に押しかけてくるわけだから。審議をする前にそういうものを正直に出すべきだと思うんですよ。私は仮にここで多数によってこれが可決されても、絶対に大変な事態が起きると思いますよ。ですからそういう意味で、やっぱりわれわれの審議の前に基準と、そして言われておる九十の線をここへ出してくると、素直に出してきたらいいじゃないですか、そのものを。そういうふうなかっこうで私は審議をしてもらわないと審議の仕方がないと思いますよ。
  235. 山地進

    政府委員(山地進君) 私どもが何かわざと隠しているということではございませんで、むしろこういったことについて国会の方で大いに御議論いただいて、それでその大筋で一体どうなんだというような御議論を十分踏まえまして政令をつくっていきたい。たとえば私どもいろんな御議論をしている中で、今回の地交線対策は全体的に見ますともう鉄道特性を失っていて、かつ、これだけ道路が発達しているんだから、道路があればバスに転換するということが、その地域交通状態としても十分合理性があるじゃないかというようなところについてバスにしようじゃないかと、まず大筋でこういう御議論もいただいておりますし、私どももそう思って効率的な輸送体系は何だということを御議論しているわけで、そのことを法律の表現といたしましてはバスに転換することが適切な路線と。  そこで、私どもの方の政令、私どもの考えの基準では、ハスに転換するのは四千人だということも申し上げておりますし、本会議において大臣からもそういったことを変えるつもりはございませんと申し上げておるわけでございますし、それからバスに転換することは困難だということがあれば、それはバスに転換することが適切な路線とは言えませんから、並行道路がないもの、あるいは積雪が十日間続くもの、あるいは一時間当たり混雑時に千人を超えるようなところはバスに転換することは適切でないと。私どもは非常に常識的なことを申し上げて御判断を仰いでおりますので、その結果どの線がどうなるということについては、むしろこういうところの御議論と、それから政令でまた関係各省といろいろ御相談した結果決まるわけでございますので、予測的にどこの線ということについては申し上げないという段階でございまして、まあ実際に御利用になっている皆さんから見ればどれがなるかということについて御不満もあり御不安であろうと私どもも思います。しかし、そのことを、ここを外しますよというような段階に至っておりませんので、私どもとしてはそれを申し上げないということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  236. 広田幸一

    広田幸一君 局長、じゃあ、この線はバスにした方がいい、いやそうではない、第三セクターだ、あるいは並行線が通っておると、こういうふうな話をするんだと言うけれども、どこでやるんですか、それは。法案が通ってしまったら、いまの法律内容では、政令で決めてしまって、何々線、もうあんたのところは特定地方交通線ですよというふうに通知を出すわけでしょう。それから協議会を持って、協議会の中で、バスにするか民鉄にするか、もういよいよいけなければ二年たったら国鉄バスを走らせるということなんでしょう。局長のおっしゃること、正直にこの法律を見ましてそういうふうにとれませんよ。そういうふうになればいいんですよ。そういうふうになればいいんですよ。いいですか。法律が通って、それから国鉄がこれはやっぱり特定交通線だというふうに判断をするという場合に、知事来てくれと、どう思うかと。そうか、その意見ならそうしましようというならいいけど、そういうふうになっていないでしょう。だからこの法律は強権性が強いと私は言っているわけですよ。その点どうですか。私の言っていることが違っておれば言ってくださいよ。
  237. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 広田さんの御心配よくわかるんですけれども、国鉄承認書を出してくる、そのときに、私、運輸大臣のところへ都道府県知事が意見を申し出てくるわけであります。ところで、いま心配しておられる、もう法律で決まって全部しゃくし定規でやられちまうじゃないかと、こうおっしゃいます。これを裏からもう少し考えてみますと、たとえばそういう一定の基準でそれを処理しなければ、逆に言いまして知事の意見を聞いてそれから決めるということになってまいったと、まあこういうぐあいに逆の場合を考えて、広田さんのおっしゃるように考えてみた場合どうなるかといいましたら、今度はもう知事は一線も廃止できぬようになる。みんな残しておけと。それぞれ理由があるんです、それは今日まで。生活がそこに根づいておるんですからそれは大変なことだと私は思うんです。そうすると知事は、県会は、もう政治生命をかけて反対だと、こうくるのは当然だろうと思うんです。これではやっぱり整理はついていかない。  といって、それじゃこちらが強権的であるかといいましたら、そうではなくして、まあその地域における交通あり方が心配なんだと、こういうことが意見書で出てくると思うんです。その意見については協議会で十分に生かしていくようにいたしましょうと、こういうことで、しかもその意見の中には、いま特定地方交通線の中で三つの特例を考えておりますわね、御承知のように。この三つの中に本当に該当するのかしないのかというところが非常に微妙なところも実はなきにしもあらずなんですね。こういうことが、やっぱり政令と実際のその適用線というものとの間にも若干の解釈というものはありましょう。けれども、積雪が十日なんだというのと、いや一週間だというのと、いや二週間あるじゃないかというのとは違う。そういうところはやっぱり厳正に調査もしなきゃならぬだろうと思いますし、そういうこの三つの特性について、われわれも知事が意見を申し出てきたものはその意見はやっぱり聞くべきだと、こう思うんですよ。  しかし、基準をこれを何とかしろという意見であるとか、あるいは、もう代替交通機関がちゃんとある、それにこれを残すんだといういろんな地域特性を訴えられた意見というものにつきましては、これは一々聞いておりましたらなかなかできない。私は最初から申し上げておりますように、国鉄責任は免除してやってほしいということなんです、こういう特定地方交通線に。けれども、国なり地方自治体が一致協力して、将来の足、この不安のないようには全力を挙げます、これには政府一体となってやらなきゃなりませんと、こういうことを言っておるものでございますから、その点はひとつかみ分けていただきたいと、こう思うんです。
  238. 広田幸一

    広田幸一君 大臣大臣立場でおっしゃっておるんですよ。ところが地方住民というのは、昨日も言ったんですけれども、いろんな問題があるわけですね。それから私もさっき言ったんですけれども、言えば全体の十分の一が赤字でしょう。だからそこの住民の人たちは、赤字の路線というものは自分たちの生活線だから最大協力をしてやっておるんですよ、創意工夫をこらして。そういう立場のやはり住民というものも考えてやらなければ、そこに公共性があると思うんですね。ですから、大臣はとにかく赤字をなくするためにやらなきやならぬという国鉄総裁の立場というものの上に立ってお考えになっておるわけです。そのことは全然否定するわけじゃないんですよ。それからいまおっしゃったように、知事はどこの知事だってみんな反対するだろうと。そういうこともわからぬでもないと思うんです。しかし私は、もう法律が通ったら政令で決めてしまうという前に、それじゃもっと知事を入れて話し合いをするという場を考えてみたらどうですか。ないでしょう、いまのところは。
  239. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) 政令作成の段階で当然、知事の意見個々の知事の意見というものはこれは聴取するわけにはまいりませんが、自治省とは十分に私そこは協議いたしたいと思うております。
  240. 広田幸一

    広田幸一君 私はね、大臣、まあ国鉄総裁の気持ちもわかりますけれども、これは財政当局からも圧力かかるから総裁も苦しいと思うんですけれども、もう少し地方住民の——国鉄のサイドだけで余り考え過ぎると思うんですよ。そういう点をやっぱり考えてもらうとすれば、地方の知事だって反対反対ってそんな無軌道なことは言わないと思うんですよ。ですからそういう知事も交えて十分に話し合いをするという機会を、きちっと基準を決めて、国鉄側のサイドで決めるわけでしょう、これは国鉄のサイドですから。国鉄側は赤字になるものはできるだけ切りたいわけですから、そういうサイドで大臣に出すわけですから、その大臣のときの判断で大局的に判断をするという、そういうものにならないと私はいけないと思うんですよ。それがいわゆる一方的であり強権的だと言っているんですよ。
  241. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) まあ反論するようでえらい恐縮でございますけれども、私の独断的な判断でそれをやりますとかえって実は困るんです。ですから一定の基準を政令で、その基準でやらしてもらいたいと。で、その政令を、基準はこれは私のところで出しております原則はあくまでも維持いたしますが、それを適用するについては自治省と文言等について十分に相談をすると、こう言っておるわけでございますから、その点はひとつ、何も国鉄の側に立ってのみで考えておるというものではないということを御承知いただきたい。  それと、これは、まさに国鉄の側から見ましたら九百億足らずの赤字じゃないか、こうおっしゃいます。けれども、これは国民経済の面から見ましたら、エネルギーの効率というようなそういう点から見ましたら、あるいはまた、地域交通の利便という点から考えたら、私は十分検討すべき問題があるだろうと思うんです。たとえば私のところなんかに陳情に参りますところでは、地方交通線がなくなったら、そのかわりにバスを何ぼでも、たとえば一時間に一台は確実にバスを出してくれるかとか、そういう要求も実はあるわけなんです。鉄道であるならば二時間半か三時間に一本しかない。しかしバスで一時間置きに出してくれるのやったらそれでもいいなという御意見のあるところもありますし、その地域地域によりましていろいろの対応がこれから考えられると思うんでございます。  で、御心配されておる、まあ強権的に一律にぱあんとやってしまうのとちゃうやろかと、これはわれわれはできるだけそういうことのないように、政令を決める際にはきちっと政府部内で相談をいたしまして、政府としてのこれからの地方交通線の後の対応策が大事でございますから、そのためにもちゃんと政府内で合意を取りつけるようにいたしますから、国鉄だけのことではないということもひとつ考えていただきたいと思います。
  242. 広田幸一

    広田幸一君 私はまだ納得できません。重要な問題ですからね。大臣、耳に入っておると思うんですけれども、陳情に来る。で、与党の先生のところに行く。まあとにかく法律は通せ、いいぐあいにするからと、こういうことがどんどん耳に入ってくるんですが、そういうような問題できわめて弾力性があるというふうに理解していいんですか。
  243. 塩川正十郎

    国務大臣塩川正十郎君) いや、それははなはだ困る。でございますから、先ほども御質問にございましたように、運輸大臣のところでそこはある程度実情わきまえて判断しろとおっしゃったことに対しまして、私はそれは困ると、こう言っておる。要するに、こういうことはあくまでも公平厳正にやらなけりゃこれは大変な不公平が起こってまいります。国鉄は日本全国に営業路線を張っておるんでございますから、ここの線はこうする、ここの線はちょっと甘く見る、ここはきつくする、そういうことをやったらこれは大変なことになります。政令の適用につきましてはそれはもう厳正に適用いたします。
  244. 広田幸一

    広田幸一君 大臣はそれこそ真剣に御答弁なさっておると思いますけれども、いろんな客観的な情勢を見まして、やっぱり私は心配であります。  ちょうど時間も来ましたから、もう一遍次の機会に譲って、きょうは終わりたいと思います。
  245. 黒柳明

    委員長黒柳明君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時四分散会      —————・—————