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政府委員(
石月昭二君) 陸上
公共輸送整備特別会計というものを
運輸省といたしまして昭和五十四年度予算、五十五年度予算の策定に際しまして要求をいたしましたけれ
ども、諸般の情勢でこれができなかったということは事実でございます。私
どもといたしましては、先ほどから
先生の御
指摘がございますような、最近の
エネルギーとか環境とか
交通空間とかというような
制約条件がますます強まっております現実を考慮いたしますと、陸上
公共輸送の維持、
整備を強化する、それで
国民の皆さんに豊かなモビリティーを与え、豊かな社会生活を
確保するということはますます緊急性を増しているというぐあいに考えておるわけでございます。
しかし、現実に自家用
自動車輸送というものが非常に進展いたしまして、現実の都市におきましても
地域におきましても相当な
交通の
シェアを占めているというのもまた事実でございます。しかし、また、自家用
自動車がそれだけ進展したことによりまして、都市におきましては
道路の混雑とかそれから環境問題とか公害問題とかというようなものをいろいろ惹起しておる。
地方におきましても自家用
自動車が非常に便利に使われておりますが、一方そのために自家用
自動車を利用できない老人とか主婦とか子供というような方々が非常にお困りになっておるという点もございます。
したがいまして、都市におきましても大量公共
交通輸送機関というものを
整備する、
地方におきましても必要な公共
輸送機関を維持、
確保するということのためにもぜひ安定した財源が必要である。そういう観点から、今後とも安定した財源の
確保というものにつきましては前向きに取り組んでいきたいと思っておるわけでございますが、以上のような問題を含めまして、長期的に総合的に将来の情勢を展望いたしまして、たとえば自家用
自動車と公共
交通輸送機関との分担
関係をどのように考えたらいいのかというような問題を含めて
運輸政策審議会にただいま諮問いたしておるところでございます。その結果を待ちまして、さらに今後の対策を強化していきたいというぐあいに考えている次第でございます。
それから、先ほど
先生から
お話がございましたイコールフッティング的な問題というものも含めて考えるべきではないかという御
指摘でございますけれ
ども、確かに四十六年度の
総合交通体系に関する
答申の場合におきましては、やはりそういうイコールフッティング的な考えから
国鉄が非常に不利な立場に置かれているんじゃないか。そのために
国鉄というものが
交通市場におきましてだんだん
シェアを失っている結果を招いているという御
議論が盛んにございまして、いろいろ勉強したわけでございますけれ
ども、非常にむずかしい問題で、いわゆるハード論、施設の
資金調達というものについてどれだけ
利用者負担で行われているかという問題、それからいろいろな公共的な負担、たとえば制度的な負担、たとえば
国鉄が
政策等級というようなものを
貨物の運賃においては取り入れている。その結果、農産物とか
国民生活に必要な物資を安くするような制度をとらなきゃならぬとかというような、いろいろな
制約条件がございまして、それから公共割引の問題とか、これらの問題、
ソフトのイコールフッティング論、この両面があろうかと思います。
まず
ソフトのイコールフッティングにつきましては徐々にこの点が改善されている。御
承知のように、先回の運賃改定におきまして、
貨物運賃は一律運賃になりまして等級制は全部廃止されましたし、その他公共負担についても今後の
あり方等について目下
関係省庁で
検討されている状況でございます。そういう形で
ソフト面はだんだんよくなってきた。
ハード面はどうかと申しますと、最近
国鉄の
経営が悪化いたしまして累積赤字が六兆円にも及ぶことは
先生御
承知のとおりでございますが、
国鉄の赤字というものは、そういう
国鉄の背負ったいろいろな歴史的な経緯もございますので、あながちその企業の
経営の面からだけで論じられない面もございますけれ
ども、現在の
利用者負担、総
投資額の中の
利用者負担というようなものを計算いたしたものを、試算でございますけれ
ども、たとえば五十五年度で見てみますと、
国鉄の場合には六五・七%が
利用者負担という形になっております。これに対しまして
航空は五十五年度では九九・五%が
利用者負担になっております。ほとんど
利用者負担で
航空の施設は賄われている。それから
道路は七五・九%という形になっております。それから
港湾が一二・五%という形で
利用者負担が比較的少ないという数字になっておりまして、
利用者負担が
国鉄は非常に多いという形には現状では必ずしも言えない状態になっていることを御報告申し上げます。