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内閣総理大臣(
鈴木善幸君) まず第一に、
国際情勢に対する認識についてお尋ねがございました。
私は、戦後の
国際政治、軍事情勢は、
基本的には
米ソを中心とする東西関係を軸に推移してきたものと
考えておりますが、最近、
ソ連のアフガニスタンに対する
軍事介入等、
国際社会の
基本的秩序を脅かす事態が発生し、インドシナ半島、中東などの
地域でも対立と抗争が続くなど、不安定要因が増大しております。全体として
国際情勢は厳しいものに相なっておりますことは、御承知のとおりでございます。
このような
国際情勢に対し、
わが国としてはあくまでも平和に徹し、軍事大国にならないとの
方針を堅持しながら、
世界の平和と繁栄に貢献する積極的な
平和外交を推進することが重要であると
考えております。
わが国としては、今後とも、米国を初めとする自由主義諸国との連帯を一層強化し、
世界の軍縮への貢献、エネルギー問題の解決、南北関係の
改善など、今日の
国際社会の直面する諸問題の解決に最善の努力を尽くしてまいる所存でございます。
次に、
わが国の対米外交についてであります。
今日の
国際社会は、アフガニスタン問題など
国際社会の秩序自体を危うくするような問題が起こる中で、政治、
経済両面にわたって厳しい情勢に直面しておりますことは、すでに申し述べたとおりであります。
このような
国際環境のもとで、
わが国は、
国際社会の責任ある一員として、
世界の平和と繁栄のために行動していくに当たり、
わが国と政治
経済上の
理念を共有する米国との友好
協力関係を重視しております。また、このような
政府の外交姿勢は、広く
国民の支持を得ておりますことは、ここに申し上げるまでもないところであります。もちろん、
わが国の外交が、
わが国の国益を踏まえた、自主的なものでありますことは、申すまでもございません。
御
指摘の防衛問題につきましては、
政府は、従来より一貫して、
国民のコンセンサスを得つつ、自主的判断に基づいて対処する
考えでありますことは、これまでも私がしばしば申し述べてまいったところであります。
なお、アフガニスタンに対する
ソ連の
軍事介入は、いかなる理由においても正当化できるものではございません。対ソ
経済措置につきましても、このような認識に基づき、
わが国独自の判断により、米国、ヨーロッパ各国との協調のもとに行ってきたものであります。
第三に、
経済運営についてでありますが、今後の
経済成長の上で、
個人消費が重要な役割りを果たすということは、上田議員御
指摘のとおりであります。また、
わが国の
経済成長が、健全な
国際関係を害することのないよう、調和のとれたものでなくてはならないということも、御
指摘のとおりと
考えます。
私は、
わが国経済の現状は、諸外国との比較で見ても、決して悪いものではないと確信をいたしております。むしろ第二次
石油危機後の
経済運営は、成長率でも、物価で見ても、また雇用面でも、
世界で最も上手に
石油危機に対応した国の一つであると確信をいたしております。(
拍手)
今後の
経済運営におきましては、第二次
石油危機に上手な対応を示した
わが国の
経済を、内需や
輸出のバランスをうまくとりながら、将来も安定的、継続的に
発展さしていく、こういうことが大事なことであると思っております。
そのためには、
政府が当面とるべき対策は、先般、九月五日、
経済対策閣僚
会議において公共
事業等の円滑な
執行など八項目の対策を決定しておりますので、これに従って物価と
景気の動向に細心の注意を払いながら、機動的に
経済運営を図ってまいる所存でございます。
最後に、
わが国の
安全保障政策のあり方についてでございます。
政府といたしましては、所信表明で明らかにいたしましたように、
わが国が平和の中で国の繁栄を図っていくためには、今後とも日米
安全保障体制の維持を
基本とし、みずからも節度ある、質の高い自衛力の整備に努力していく所存でございます。(
拍手)
ただ、私は、今日の複雑な
国際情勢と
わが国が置かれておる立場を
考えれば、国の安全を確保するためには、単に防衛的な側面の努力のみで十分であるとは
考えておりません。
経済、外交を含めた広い立場からの施策、すなわち、外交、
経済協力、エネルギー、食糧などに関する諸
政策が、総合的な
安全保障の観点から高いレベルで整合性を持って推進されることが必要でございます。
なお、
わが国が軍事大国になるのではないかとの御懸念でありますが、
わが国は
平和憲法のもと、非核三原則を国是とし、シビリアンコントロールのもとに専守防衛に徹した施策をとっており、近隣諸国に
脅威を与えるような軍事大国になる
考えは毛頭持っておりません。(
拍手)
〔
国務大臣伊東正義君
登壇〕