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1980-11-26 第93回国会 衆議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月二十六日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 青木 正久君 理事 木村武千代君    理事 熊川 次男君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 大野  潔君    理事 岡田 正勝君       井出一太郎君    上村千一郎君       大西 正男君    太田 誠一君       高村 正彦君    白川 勝彦君       森   清君    小林  進君       武藤 山治君    大橋 敏雄君       草野  威君    塚本 三郎君       安藤  巖君    榊  利夫君       田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         法務政務次官  佐野 嘉吉君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房司         法法制調査部長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 豊島英次郎君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         公安調査庁長官 鎌田 好夫君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         文化庁長官   佐野文一郎君         文化庁次長   別府  哲君  委員外出席者         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         最高裁判所事務         総局人事局長  勝見 嘉美君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十六日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     草野  威君   野間 友一君     榊  利夫君 同日  辞任         補欠選任   草野  威君     大橋 敏雄君   榊  利夫君     野間 友一君     ――――――――――――― 十一月十三日  昭和五十六年度法務省所管保護司関係費増額に  関する請願熊川次男紹介)(第一九七八号)  同(高村正彦紹介)(第一九七九号)  同(粕谷茂紹介)(第一九八〇号)  同(三塚博紹介)(第一九八一号) 同月二十二日  中国よりの帰国者に対する国籍取り扱いに関  する請願小川平二紹介)(第二三七二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十二日  スパイ防止法制定促進に関する陳情書  (第一六八号)  朴元根氏の在留資格付与に関する陳情書  (第一六九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関  する件      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  この際申し上げます。  本委員会に付託になりました請願は七件であります。各請願取り扱いにつきましては、理事会において協議、検討いたしましたが、いずれも採否の決定を保留することになりましたので、さよう御了承願います。  なお、今国会、本委員会に参考送付されました陳情書は、スパイ防止法制定促進に関する陳情書外五件であります。念のため御報告いたします。      ————◇—————
  3. 高鳥修

    高鳥委員長 閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  土井たか子君外六名提出国籍法の一部を改正する法律案  稲葉誠一君外五名提出最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する法律案  稲葉誠一君外五名提出最高裁判所裁判官任命諮問委員会設置法案  稲葉誠一君外五名提出刑事訴訟法の一部を改正する法律案  稲葉誠一君外五名提出、刑法の一部を改正する法律案  稲葉誠一君外五名提出政治亡命者保護法案  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件 並びに  国内治安及び人権擁護に関する件 以上の各案件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 高鳥修

    高鳥委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所勝見人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 高鳥修

    高鳥委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。質疑申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  8. 稲葉誠一

    稲葉委員 奥野さんにお尋ねをするわけですが、奥野さんは、日本憲法占領軍指示でできた、指示に基づいて制定されたんだ、こういうふうにおっしゃっておられるわけですが、社会党が、延長国会でしたか代表が演説したのですが、私ちょっとよく聞き取れなかったのですが、そのときに押しつけ憲法というふうにあなたが言われたということを言ったとかということで大変お怒りのようでしたが、そうすると、その指示に基づいて制定されたということと押しつけ憲法とい歩こととは、具体的にはどういうふうに違うわけなんでしょうか。
  9. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が憲法占領軍指示に基づいて制定されたものであると理解しておりますということを稻葉さんに答えたことがきっかけになったわけであります。自来、押しつけという表現は使ったことはございません。最終的には、その帝国議会の実態についてはいろいろ判断がございますけれども帝国議会で制定されておるわけでございますので、私はあえて押しつけられたという表現を使いませんで、指示に基づいて制定されたものであると理解しております、こう答えておるわけでございます。  私としては、日本国憲法でございますから、いかなる制定経過でありましてもこれを軽侮するような表現は差し控えるべきである、こういう気持ちをずっと持っておるわけでございまして、そういう意味押しつけられたというような表現を使ったことはございませんのに、何回か野党の議員の方が私がそういう表現を使っておるようにおっしゃっております。本会議でまで社会党を代表する方がおっしゃいますものですから大変不愉快な感じを持ったわけでありまして、そういう印象を新聞記者の皆さんと話し合いをしておりますときに申し上げたことがございました。
  10. 稲葉誠一

    稲葉委員 私はあなたのおっしゃる言葉をそのとおり受けて、あなたが押しつけ憲法だという言葉を使ったとは私は一言も言ってないのですが、それはそれとして、そうすると、押しつけ憲法だということになるとそれは憲法尊重擁護義務に反する、ことに尊重義務に反するというふうに大臣は御理解になっているわけでしょうか。
  11. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 反するとまでは言いませんけれども、私たちはやはりそういう姿勢で臨んでいくべきだ、こう考えておるわけでございます。かりそめにも日本国憲法日本人が軽侮するような気持ちでこれを表現することはないようにしていきたい、同時にまた改正論議は活発にしていきたい、両立させていきたい、こういう願いを常に持っているものでございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、具体的に指示とそれから押しつけという言葉言葉は別として内容においてどういうふうに違うと御理解なんでしょうか。
  13. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたび同じような御疑問を持たれておりますので、むしろ率直に私が判断している経過をお話しさせていただいた方がよろしいのじゃないかと思います。  二十年に戦争に負けまして、マッカーサー元帥が幣原首相に対しまして憲法改正を示唆した。それを受けまして松本烝治国務大臣責任者にして内閣憲法問題調査委員会が設置された。そして鋭意憲法改正に取り組んだわけでございましたが、たしか二十一年の二月一日じゃないかと思うのですけれども、毎日新聞がその内容をスクープしたわけであります。それを見てマッカーサー元帥がこれじゃ日本に任せられないということでホイットニー民政局長に対しまして三つの原則を示して、総司令部日本憲法改正案をつくれ、こう命じたわけでございました。それを受けてホイットニー民政局長が、総司令部の中の職員、たしか二十一人じゃなかったかと思うのですがそういう人を集めまして、われわれは一週間で日本国憲法改正草案をつくろう、そしてマッカーサー元帥に差し出す、こういうことで初めてつくられた。そしてでき上がった日本国憲法改正草案マッカーサー承認を得て、マッカーサー草案と呼ばれているものでございますけれども、たしか二月十三日じゃなかったかと思います、麻布の外務大臣公邸ホイットニー民政局長が出向きまして松本烝治国務大臣吉田外務大臣に手渡したわけでございます。そして返答を求めたわけでございました。  しばらく検討をさせてほしい、たしか一週間の期限があったのじゃないか、こう思います。そして閣内で論議をされたわけでございまして、その間に松本烝治国務大臣自分たちがつくっている憲法改正草案、それをぜひ実現したいという御希望もあったのだろうと思います。補充説明まで加えて総司令部に出向いておられるわけでありますけれども、これは一蹴されておるわけでございます。その間で閣議も開かれておりますが、さらに四十八時間の回答期限延長を求めているようでございます。その延長を求めた期間内に幣原首相みずからがマッカーサー元帥に会っておられますし、さらに最終日には松本烝治吉田外務大臣ホイットニー民政局長を訪ねまして、いろいろな具体的な質疑応答を交わしているわけであります。その中で、どうしても変更を許さないという基本的な条文は何カ条かということを聞いているわけであります。それは対してホイットニー民政局長は、全体が基本的な条項だ、こう答えておるわけであります。もちろん日本国民にわかりやすいようにするためには、字句の修正など形式的な点での変更承認されるであろう、こうも答えておるわけでございまして、さらにラウエル陸軍中佐は、一カ条削除する、一章削除する、そういう性格のものではないのだ、一体のものだ、こうも言うておるわけでございます。そういうやりとりの後に、日本側マッカーサー憲法草案に沿って日本国憲法改正案を作成するという閣議決定をして、総司令部に答えているわけでございます。  なお、細かくなりますからあとのことは省略させていただきますが、そういう過程を経てでき上がったものでございますので、私は、占領軍指示に基づいて制定されたものである、こう理解しておりますと答えてまいっておるわけでございます。今日では、これらの事実はすでに書籍等になって公にされておるわけでございますから、学者諸君は十分知っておられることだと思っておるわけでございます。
  14. 稲葉誠一

    稲葉委員 歴史的な証言というかその経過を御説明願ったわけですが、私が聞いておるのは、いま全体のお話を聞きますと、アメリカの方から押しつけられたというのは通俗的な、あなたのおっしゃることから見るとそういう結論が出てくるのじゃないでしょうか。それをお聞きしているわけですよ。
  15. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 日本国憲法として、現に国民がそれを基本にしてあらゆる仕組みを運営しているわけでございますので、なるべく私は軽侮の感を持つような表現は使わない方がいいということで、私が申し上げたことをそうおとりになる方があっても、私はそれは何ら異議を差しはさむ気持ちはありません。ただ、私がそういう表現を使っているということはぜひ許してもらいたい、いまだかつてそういう表現を使ったことはないわけでございますので差し控えてもらいたい、こう希望いたしておるわけでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたがそういうふうなお言葉自分で使われていないということは、私はよく存じています。  ただそこで、たとえば八月二十七日のあなたの答弁を見ましても、「委員会に提案をいたします場合にも、委員会で採決をいたします場合にも、事前に占領軍承認が得られなければできなかったのであります。自主的な活動はできなかったのであります。」こういうふうにありますね。自主的な活動はできなかったというのは、それは単なる指示とは違うのじゃないでしょうか。いわば指示でも非常に強い指示だとか、あるいはいま通俗的な、聞いている人がとるようなとり方をされてもやむを得ないということじゃないでしょうか。ただそれを言うと、あなたとしては問題になる。国務大臣として憲法尊重義務に違反するような言動にとられるから、ただ言わないだけなんだということじゃないんでしょうか。
  17. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 他の人たち押しつけ憲法とおっしゃることについて私は何ら抵抗は感じないのです。しかし私はそういう表現を使いたくない、終始一貫しておるわけでございまして、その私の気持ちを顧みないで、言うたことのない言葉を私が言うているように繰り返し言われることは残念でならないということでございます。
  18. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはよくわかりました。よくわかりましたけれども、あなたの言葉は、そういう言葉は出さないけれども実質的にはあなたとしては同じように考えておられるんだというふうにとられても、それはとる方の自由だ、こういうことでしょう。
  19. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 とる方の自由ではなくて、私の言うていることは正確に私の言うているとおりにおっしゃっていただくことが政治家として正しいんじゃないだろうかな、こう思うわけでございます。自分なりに私の言うていることを解釈して、解釈したとおりに私が言うているということを言われますと、私の真意に反する結果になるんじゃないだろうかな、こう思っておるわけでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉委員 余り同じ議論をしてもあれですが、そうすると、この自主的な活動はできなかったという意味はどういう意味なんでしょうかね、もう少し具体的に御説明願うと。
  21. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 この間、予算委員会主権発言が問題になったわけでございますので、私はあえてそういう言葉は使いませんけれども最高権力占領軍が持っておったわけでございます。したがいまして、本来なら国会は国権の最高機関憲法に書いてあるわけであります。憲法最高機関でありながら、占領軍承認を一々受けながら国会活動が行われておったということを申し上げておるわけでございます。
  22. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで別の議論にちょっと入りたいと思うのですが、あなたのたとえば靖国神社のことに関する質問が、これは最初に参議院で出たわけです。戸塚進也という自民党の方ですか新自由クラブですか、ちょっと私はわかりませんが、社会党から出たのではないですね。それを受けてここで私が聞いたわけですからね。  経過はそういう経過ですから、誤解のないように願いたいのですが、私が聞いていて、私の不勉強かもわかりませんがよくわからないのは、靖国神社宗教法人であるということはあなたは認められて、しかしそれは特殊な、従来歴史的にいろいろな経過があって普通の宗教法人とは違うものだという理解の上に立っていらっしゃるのでしょうか。あるいは、いや普通の宗教法人なんだ、ただ公式礼拝しても二十条三項の宗教的活動には入らないという理解の仕方なんでしょうか。ちょっとそこら辺のところがよくわからないのですよ。
  23. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は根本的に、宗教的礼拝までを憲法が禁止したということについては疑問を持ち続けておるわけでございます。ことに靖国神社につきましては、一般宗教法人と違いまして特定の教義を持っておるわけではない。国家、社会に命をささげた方々が次々に神様として追加されて祭られていく性格のところでございまして、そういう意味合いから私は、公式参拝はいけないのだということをずっと踏襲していることに大変疑問を持っておる、こう申し上げてきたつもりでございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉委員 法制局長官にお聞きしますけれども靖国神社宗教法人である、これは東京都に届けてあるのだから間違いないですね。そうすると、ほかの宗教法人と違うという認識法制局長官は持っておるのですか。
  25. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 靖国神社の歴史とか沿革というものがほかの一般神社とは違っているとか、あるいはそこへお参りをする人が一般神社と違ったような心情お参りをするとか、そういうことは社会的な事象としてはあると思います。また、そうでない人たちもたくさんあると思います。私自身がどちらを持っておるかというのは、私の認識なり心情の個人的な問題としてそれぞれあるわけでございますが、私は法律家として、あくまで靖国神社宗教法人であり、そしていまのような認識とか心情というものが直ちに憲法解釈とか法律解釈決定的な要素になるというふうには思っておりません。     〔委員長退席熊川委員長代理着席
  26. 稲葉誠一

    稲葉委員 そういうことを聞いておるのじゃなくて、だから宗教法人であることは間違いないけれども、いま奥野さんが言うように、ほかの特殊な宗教法人だというふうに私には聞こえたわけです。奥野さんの言われるのはそういう意味ですね。そういうふうに理解してよろしいのでしょうかと聞いておるのですよ。
  27. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 いまお答えしたつもりなんですが、法律上は一般宗教法人と全く違いがないので、ただ、本来的な性格とか心情とかいう点は人によってそれぞれ違うでしょうということだけを申し上げておるわけです。
  28. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、公式参拝という意味がはっきりしないのですよ。これをいただきますと「公務員が公的な資格参拝することを指し」こう言うでしょう。そういうことはあたりまえの話なんで、これではあなた答弁になってないでしょう。ただ抽象的に言ったわけで、具体的にはどういうことを言っておるのですか。
  29. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 先日、稲葉委員の御質問書に対して答弁書でお答えしたとおりでございますけれども神社等への公式参拝というのは閣僚などが公的な資格神社参拝することというふうに私ども定義としては考えております。  しからば具体的に何を言うかということについては、これは結局、憲法で禁止されている宗教的活動に入るかどうかという関連において恐らく問題になると思います。それについてはこの前から申し上げているように、私どもは、公式参拝が果たして宗教的活動に当たるかどうかについては断定はいたしかねるということを申し上げているわけでございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉委員 これはこの前の閣議の後か何かよく知りませんけれども、あなたが言われたのか宮澤さんが言われたのかよくわかりませんが、公式参拝というのは、一つ条件として閣議決定して参拝することだ、またはかアンドかはっきりしないのですか、何か玉ぐし料公費から出すことを言うのだというようなことが新聞紙上に伝えられておったものですから、それで私はお聞きするので、公務員が公的な資格でといったって、結論はそれ以外にないかもわからぬけれども、これでは何が何だかわからないですよ。いま言ったのはどういうことなんですか。アンドなんですかオアなんですか、よくわからないのですが。
  31. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 昭和五十三年十月に参議院内閣委員会で当時の安倍官房長官統一見解というものを発表しております。その中にいま御指摘閣議決定するとか玉ぐし料公費で出すというような文句が述べられているわけです。  ただ、私どもとしては、いま稲葉委員も仰せられましたように、公式参拝とは何かと言えば、公的な資格参拝をすることと言う以外には言いようがないと思います。ただ、いまの玉ぐし料公費で出すとか閣議決定して行くとかいうことは、そういうことをやれば公式参拝をしていませんというような言いわけは立たないでしょう、つまり一つの外形的な標準として、そういうことをやればエキスキューズにはならないだろうという意味でございます。  たとえば、わかりやすい例で申しますと、仮に玉ぐし料を出さないでただで——ただというのはちょっとおかしいですけれども、何も出さないで行ったとしても、公的な資格で行けばそれは公的参拝になるわけでございますから、玉ぐし料を出すことが公式参拝定義だということは言えないと思います。それから閣議決定するというのも一つの方法でしょうし、上司が職務上の命令で行ってこいというような形で行けば、それはやはり同じように公的な資格で行ったものというふうに判断されると思います。したがいまして、いま申し上げた二つの条件は、公式参拝だと見られるようなそういう外形的な一つ判断の基準として申し上げたつもりでございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、官房長官がおいでになったのでお聞きをしたいのですが、この前の議運の中で何かいろいろなやりとりがあったらしくて、最終的に、何かこれは奥野さんの発言関連をしてのことだというふうに聞いているのですけれども、何か内閣統一見解に、奥野さんの発言なり行動なりというかあるいは奥野さんでなくて一般論なのか知らぬけれども、触れるようなことがあったらしかるべき措置をするというふうに言ったということが伝えられていることが一つ。  それから、何か内閣統一見解憲法なり靖国なりあるいはその他について外れているものがあるならば速記録から削除をする、こういうふうにあなたが言われたというふうに伝えられているのですね。これは正確に言うとどういうことをあなたが言われたわけでしょうか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘になりました私の発言でございますが、これは十一月十七日の衆議院の議院運営委員会理事会に出席いたしました際にございました問答でございます。したがいまして、御承知のように理事会でございますので、正式の議事録といったようなものがなく、また御質問あるいは答えも幾らか正式の委員会よりはインフォーマルになっておりますことは御了解いただきたいと思います。  それで、お尋ねの第一点は、いわゆる政府見解について法務大臣同意をしておられるかどうかという点でございました。この点は、あらかじめ法務大臣にも見解をお示しして御同意を得ておりますと申し上げました。  それに関してお尋ね趣旨は、今後この見解から法務大臣がはみ出したときは内閣としてどうするかという御趣旨であった。はみ出したということ、普通で申しますともう少し厳格に定義をしてお答えもいたさなければならないのでございますけれども、まあ理事会でございますので、そこまで申し上げるのも角が立つと考えまして、そういうことは私はどうもないことだろうと考えておりますがと。万々一あったらどうするのか、こういうまたお尋ねでございましたので、はみ出すという言葉をそのまま定義いたしませんまま、もし政府の考え方、見解と違うような行動法務大臣がお出になると、それはその態様にもよることでございますが、それはその態様によりまして私から申し上げなければならぬことがあるかもしれません、しかし、そもそもはみ出す云々ということが明確なことでございませんし、どういう場合を想定していられますのか私もはっきりいたしませんでしたので、しかるべき措置をとらせていただきますと、こう申し上げました。  それからもう一つの問題でございますが、速記録云々ということでございますが、お尋ね趣旨は、憲法押しつけられた云々憲法調査会結論であるというふうにしているが、それは間違いであるから取り消すべきではないのか、こういったようなお尋ねで、これも実は、いつどうしてそのような発言がなされたかということも御質問にもなく、私もそれはお尋ねをいたしませんでした。一般的に私は、もし速記録の中で誤りがありましたら、正すべき点は正さなければならないと政府としては考えておりますと、こう申し上げたようなことでございまして、御指摘の二つの問題とも、漠然と御質問趣旨はわかるわけでございますけれども、具体的に何をどうということは必ずしも明確でなく、したがいまして、そういう場所柄もございまして、私もただいまのような一般的な受け答えを申し上げたわけでございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉委員 その後の方の問題というのは、よくわかりませんが、衆議院の本会議における奥野さんの答弁だと思うのですが、これは議事録ができないわけなんですね。衆議院の本会議で、何かあなたが憲法調査会結論で何とかかんとかと言われているのでしょう。議事録がまだできないわけですよ。その間の経過はちょっと私もよくわからないので、あなたとしてもいろいろお言いになりたいことがあると思うのですが、どういう質問があってどういうお答えをされたのか、あるいはあなたとしての言い分があれば御説明願いたいと思うのですが、いま宮澤さんの言われたことを聞くと、押しつけられたということを理事会でもこっちから言ったというのでしょう。それに対して宮澤さんは別に反駁しないわけだ。反駁すると国会対策上まずかったので反駁しなかったのか、反駁しないから認めたということには直ちにならないけれども。だから、本会議での議事録がもめていてまだできないわけですよ。だから、その間の経過をあなたの口から御説明願いたい、こう思うわけです。
  35. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 衆議院の本会議お尋ねがございまして、私が日本国憲法占領軍指示に基づいて制定されたものであると理解していることの理由などのお尋ねだったと思うのです。  そのときに、私は当たりさわりのない表現がいいんじゃないだろうかなと思いましたので、憲法調査会調査結果、外交文書の公表の結果、そう申しておるのです、こう答えたのです。ところが、聞かれた方が、調査結論と、こう誤って聞かれたようでございました。速記録を調べてみたらそうじゃなくて、調査結果だった。ところが、調査結果をなお結論と受け取られているようでございまして、調査会の結論であれば、押しつけられたとか押しつけられなかったとか三通りの結論になっているのだそうでございます。私はそういう結論一つも頭に置いて答えているわけではないのでありまして、私の答えました中につけ加えて申し上げさせていただきますと、憲法調査会調査結果、外交文書の公表結果から明らかになった事実に基づいて私の判断を申し上げているのです。言葉を簡略にしているものでございますから、何か憲法調査会が三つの結論みたいなものを出している、それを私がとって指示と言っている、こう誤解されているようでございます。私はその結論は何も関係ないのでありまして、憲法調査会も当時アメリカにまで調査会の委員が出かけられまして、いろいろな調査をしておられるわけでございます。そういういろいろな調査結果から明らかになった事実に基づいて、私の判断が先ほど来申し上げていることなんだ、こういう気持ちでございます。それを何か調査会の結論にこだわっておられるようでございまして、結論とは何も関係のないことでございます。明らかになった事実なのでございます。その事実から私が判断しているところを、指示に基づいて制定されたのだ、こう答えてまいっているわけでございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉委員 だけれども、その間もめていてどうも議事録ができないのですよ。(奥野国務大臣「できているのじゃないですか」と呼ぶ)いや、議事録ができていないのじゃないですか、みんなに配付されていないように思いますよ。よくわかりませんが、そういうふうに私は聞いておるのです。できておればその議事録をよく見てみたいと思いますが、そうすると、どうもよくわからない点などもあるのですが、あなたの言われる自主憲法——自主憲法とは言っていないのですね、自主的に憲法を制定するという言葉を使っているわけです。自主憲法というのはだれかが要約して通俗的に使った言葉でしょうね。  そうすると、この答弁にもありますように、自主的な活動ができなかったということからすれば、それは占領軍の単なる指示とは違う、指示以上のものがあったと理解するのが通常ではないでしょうか。
  37. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私も指示というのは穏やかに申し上げているつもりでございまして、それ以上に強い力があった、こう思っております。しかし、先ほど来申し上げたような理由で、私自身は押しつけられた憲法という表現は使いたくない、使ってもいません。
  38. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはわかったのです。非常にくどい言い方で失礼でございますが、押しつけられた憲法ということを言うと、法制局長官、それは憲法尊重の義務に反するということになりますか。憲法を軽侮したことになるという理解でよろしいですか。
  39. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 押しつけられた憲法というのは少なくとも憲法を軽侮しているかのような印象を一般に与えるおそれがあるということで、私どもは従来それが直ちに尊重擁護義務に違反するとまでは言っておりませんが、少なくとも憲法尊重擁護義務を定めた精神に反するものであると考えております。
  40. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、いろいろな議論があるわけですが、これは私はきょう直接通告していなかったのですが、法制局長官にお答え願えると思うのです。この前、海外派兵や安保条約の問題のときに質問したことですが、ちょっとそれは後にしましょう。  官房長官それから法務大臣お尋ねしたいと思うのです。アメリカでレーガン政権が一月二十日に成立する。そのことに絡んで、きょうの新聞にも出ておりましたけれども、たとえば次期の国防長官に擬せられているある人が安保条約のことについてかれこれ言う。安保条約のことについて言うのは当然というか、アメリカとして言うのは別にどうということはありませんけれども、そのことに関連して日本憲法を改正したいとか改正する必要はないとか、こういうようなことを盛んに言っているように新聞などでは伝えられていますね。こういうことはアメリカとしては日本に対する内政干渉ではないか、こう私は思うのですが、官房長官はどういうふうにお考えでございましょうか。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう報道は私も見ましたが、具体的にそれを確認はいたしておりません。少なくともアメリカ政府の意思としてそういうことを言ったのではないだろうというところまではわかっております。したがって、私人としてそういうことを言われたのであるかもしれません。端的に申しましてよけいなお世話である、こう考えております。
  42. 稲葉誠一

    稲葉委員 その点については、法務大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  43. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、日本国の憲法でありますから、日本人が自主的に考えていけばいいと思います。しかし、今日の日本は国際社会で大きな地位を占めておるわけでございますから、国際社会から信頼される日本として言動していかなければならない。  ですから、一々内政干渉などと目くじら立てないで、あらゆる国の国民日本をどう見ているか、どういう言動をしているかということを常に積極的にそれを聞き取る努力をしていかなければならぬのじゃないかな、こう思います。アメリカ政府が干渉的に日本に呼びかけるということは、これは私は拒否しなければならぬと思いますけれども、幅広く世界におけるいろいろな感情、議論、そういうものをくみ取る努力をこれからは積極的にしていかなければならない日本になっているのじゃないかな、一々目くじらを立てるような狭い考え方は避けた方がいいのじゃないかな、こんな気持ちさえ持っておるわけでございます。干渉は積極的に排除して、主体的に自主的に考えていく、それだけの決意を日本国民みんなが持っていけばいいことじゃないか、こう思っております。
  44. 稲葉誠一

    稲葉委員 では法制局長官に聞くのですが、私は前に質問した自衛隊の海外派兵や何かのことに関連して、私自身にもよくわからないのですが、憲法第九条第二項は「國の交戦権は、これを認めない。」こうありますね。これはあるんですが、これができた経過というものについては法務大臣の方がむしろ詳しいのじゃないんでしょうか。いまあなたはずっと歴史的な経過を言われたから、これが入ってきた経過というものをあなたは御存でしょう。まずそれを御説明願ってから次の質問に移りましょうか。  この憲法制定の経過、詳しくずっとお話しになりましたね。まだ言い足りないところがあるとおっしゃっているわけでしょう。「國の交戦権は、これを認めない。」という憲法第九条二項はどうやってできたのかということについても大臣は御存じなんじゃないでしょうか。
  45. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いつか私がお答えしたと思うのですけれども憲法九条をとって自衛隊は違憲だという議論もできるし、自衛隊は合憲だという議論もできます。私たちは自衛隊は合憲だという立場に立っております。そういう意味で交戦権を認めないという言葉も、戦争布告になりますと、近海を航行いたします商船などにつきましても臨検をする権利を交戦国は持っておるわけでありますが、それを認めないというように解釈をしているんだ、こうも申し上げたわけでございました。
  46. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは法制局長官、厳格に言うと、私のあれに出ていますが、だけれども、自衛権というものがあるとすれば、この「交戦権は、これを認めない。」ということは具体的にどういう意味を持つことになるわけですか。
  47. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 結局御質問は、自衛権を認めている前提において交戦権の禁止等がどういう関係に立つかという御質問だろうと思います。  この点につきましては、私どもはずっと前から一つ見解を絶えず申し上げているわけでございますが、結局交戦権というのは、いわゆる戦いを交える権利という意味ではなくて、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であるというふうに解しております。たとえば相手国兵力の殺傷及び破壊とか相手国領土の占領とか、そこにおける占領行政とか中立国船舶の臨検をやるとか敵性船舶の拿捕をやるとか、そういうような権能を含むものであります。  一方、私どもは自衛権というものを認めている立場でございますから、その自衛権の行使そのものとして必要最小限度の実力を行使するということは、当然主権国家としてそれを持っている、したがって、そういうものはいわゆる交戦権の行使とは別のものであるというふうに理解しております。したがいまして私ども理解に従って言えば、相手国領土における占領行政をやるとか中立国の船舶の臨検をやるとか、そういうことはできないわけでありますが、現実に戦闘に伴って、それを自衛行動権と言うかどうかは別として、必要な自衛行動をする権限というものは当然認められているというふうに解しております。
  48. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、自衛権は認める立場に立つと、交戦権はこれを認めないということは書いてあるけれども、それはきわめて限定的にしか意味を持たない、こういうふうな理解の仕方にならざるを得ない、こういうことでしょうか。
  49. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 限定的な意味というわけではございませんで、いわゆる交戦権というのは私どもは全面的に持っていない、その反面、自衛権に基づく実力行使の自衛行動権というものは別に持っている、こういうわけで、結果として、こちらは持ってないがこちらは持っているということで、両方比較しますと、直接戦闘をやって相手方を殺すとか、そういうことを中心として考えれば、そういうものは持っているということになるわけであります。
  50. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、官房長官お時間ですから、最後に一つだけお聞きをしたいのです。それは、いま通告してないのですけれども、金大中氏事件に対する日本政府の今日現在における対応と将来に対する見通しというか、それを含めての対応とかいろいろあると思うのですが、そういう点に対しての官房長官理解というか考え方を御説明願って、時間ですから退席願いたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金大中氏の一身上の問題につきましては、政府としてかねて憂慮と関心を表明をいたしておるところでございますが、せんだって、たまたま韓国の新任の崔慶禄大使が総理大臣にかねてから表敬を希望しておられましたので、総理大臣が表敬を受けられました。で、すでに御承知のように、第一審、第二審で死刑の判決がございまして、大法院の審理に移る段階でございますので、鈴木総理大臣から重ねて総理大臣としての重大な関心と憂慮とを表明され、大使にこれを大統領にお伝えを願いたいということを総理大臣から言われました。大使も、重大なことであるので大統領に報告をするというお答えがございました。  で、私どもとしてこの際配慮しなければならないと考えておりますのは、事は本来的に韓国の中の出来事でございますので、私どもとして内政干渉にわたると受け取られるようなことを申しますと、かえってそれが事態の解決に貢献をしないということになることを心配をいたしておりますので、そういう配慮の範囲内で、しかし隣国のことでございますから重大な関心と憂慮とを持たざるを得ないということを申しておるわけでございます。  御承知のように、韓国の報道機関が鈴木総理が崔慶禄大使に伝えたと称せられるものについて報道をいたしまして、それがわが国にも打ち返されたわけでございますが、私としては、その報道については否定も肯定もできない、政府としては、やはり先ほども申し上げましたような配慮の中で誤解を招かない範囲での憂慮と関心を表明する、それが日本政府としてでき得る最大限である、こう答えております。大法院の公判がこれからどのように進みますのか、それについても十分な情報がございませんし、いわんや結果については全く判断ができないという状況でございますが、第一審、第二審の結果があのように出ておりますので、政府としては事態を憂慮と関心を持って見守っておる、こういう現状でございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、泰道三八という人ですか、この方の関連する選挙違反、これは松本成雄外二名に対する選挙違反ですね、いわゆる冒頭陳述書要旨らしきものを私はいただいたわけです。これは公にいただいたと見てよろしいと思うのですが、その中に第二というところに「本件各犯行状況」というのがあります。一が「リストアップ表を作成した上、私設秘書を通じて各地区の選挙運動員に供与等した公訴事実関係」として「1 前回総選挙における買収金の配布状況」があります。それからこれを受けて「2 今次総選挙における買収金配布の発議」こういうのがございますね。  読んでみますと「前記のように、同五五年五月一七日、」これは前の「被告人らの役割」のところの泰道の家に集まって選挙対策本部の中核となる事務局長として佐藤を指名したとかなんとかというところを受けているのでしょうが、「同五五年五月一七日、泰道宅に被告人三名をはじめとする泰道派主力運動員が参集し、同日午前八時ころから今次総選挙に向けての第一回選挙対策会議を開き、同会議がひとまず終了した時点で、泰道は、被告人三名と市原市担当秘書の高山統を泰道宅二階和室に呼び集めた。そして、同室において、泰道は、今次総選挙で選挙事務所が運用できる資金の総額を五、〇〇〇万円で押さえてもらいたい旨述べるなどしたのち、右高山を退室させ、被告人三名に対し、「前回もナニした例のやつは今回はどうするかネエー」と前回総選挙の際、選挙運動員らに配付した買収金を、今次総選挙においても配布すべきか否かを発議して、被告人三名の意見を求め、同人らもほぼこれに同調し、ここにおいて、(一)前回と同様、今次総選挙でも選挙運動員らに買収金を配付する(二)配付先の選定・金額等、その具体的実行は被告人松本が中心となって行う とする選挙運動員に対する買収金配付についてのおおよその構想が樹てられた。」  こういう冒頭陳述が第一回の松本外の選挙違反のときに検察側から述べられたことは間違いありませんか。
  53. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 その点はそのとおりでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、ここにありますことは、これは言葉も出てますから、恐らくだれかの供述調書からの引用だ、こういうふうに考えられるのですが、何らかの証拠があって冒頭陳述がされたのだ、これは間違いありませんか。
  55. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねにお答えいたします前にお断りしたいと思うのですけれども、本日の新聞にも出ておりましたが、その点は昨日の公判におきまして冒頭陳述の一部の補正をしておるわけでございます。したがいまして、現段階におきましては冒陳は補正されていることを御了承願いたいわけでございます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉委員 そんなことを聞いているのじゃないので、そんな先回りして答える必要はないよ。私は、この冒頭陳述を述べたのですから、そのときには当然これに基づく証拠というものがあったんでしょうと聞いているのです。冒頭陳述というのは、証拠によって証明すべき事実でしょう。証拠がないのに冒頭陳述を書く人はないでしょう。だからこのときには、証拠によって証明すべき事実だから証拠があったんでしょうと聞いているのです。取り消したことは聞いていませんよ。それは後の話、きのうの話だから、そんなことはまた別な話。そう先回りして余り気を使わないで答えてください。
  57. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そのときはというのもちょっといかがかと思いますけれども、十二日でございますか、先ほど御指摘のような冒頭陳述をしたことは事実でございます。したがいまして、その時点で考えますと、検察官側としてはそういう事実を証明し得る証拠を持っているというふうな理解で書いたことは事実ということになるわけでございます。
  58. 稲葉誠一

    稲葉委員 これだけのことをそんな理解で書く人いませんよ。だから、これを読めば、この五月十七日、泰道も入って泰道方の二階の和室でいわゆる買収の共同謀議が成立したというふうに明らかに見えるのじゃないですか。だれが見たって、そういうふうに見えますよ。そう思いませんか。私は、これを見ればそう思いますね。違いますか。
  59. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 この十二日の冒陳の記載をごらんになってどのように御理解になるかということは見られる方の御判断でございますが、このような記載を前提といたしましても、検察官側としては共謀があった、共犯になるというような理解で、そういう趣旨で書いたつもりはなかったということでございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはあなたの苦しい立場はわかります。わかるけれども、「前回もナニした例のやつは今回はどうするかネエー」というのだが、前回というのは、冒陳の前に出ています。去年の十月の選挙でしょう。「選挙運動員らに配付した買収金を、今次総選挙においても配布すべきか否かを発議」したというのじゃないですか。ほかの者はこれに同調したというのじゃないですか。共謀による共同正犯というのは非常に広く解釈しておりますよ。当然そこで成立したと見るのがあたりまえの話じゃないですか。法律の専門家が見れば、だれだってそういうふうに思うのじゃないですか。それをそこまで考えていなかった、そんなばかな話はないですよ。  ここで逃げ道は多少ありますよ。これは多少逃げている。「ほぼこれに同調し」と「ほぼ」と逃げているわけです。「おおよその構想を樹てられた。」こう逃げている。しかし、それは一つの大きな共同謀議における実行段階の問題であって、そこの共謀関係というものは完全に成立していますよ。そういうことでこれを取り消してしまって——私は聞きますけれども、このときには泰道三八という人を調べないでこういう冒頭陳述ができるわけないですね、そうでしょう。泰道三八を調べないでこういう冒頭陳述ができるわけはないでしょう。それはあたりまえの話じゃないですか。
  61. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、この表現が適切かどうかという問題があって、現に補正もなされているわけでございますが、稲葉委員の仰せのように、この表現を見て完全に共謀が成立したというふうに見れるかどうかということにつきましてはなお問題があるのじゃないかと思います。
  62. 稲葉誠一

    稲葉委員 そんなこと聞いているのじゃない。だめよ、あなたはこっちの言うことを答えなければ。大臣、聞いててくださいね。こっちの言うことに答えていないでしょう。大臣は私の言うことに対して率直に答えてくれるけれども、部下は答えない、だめだ。苦しい立場はわかりますよ。ぼくもよくわかるけれども、私は、泰道三八というのを調べた結果この冒頭陳述ができたのか、あるいは調べないでこの冒頭陳述ができたのか、それを聞いているのです。
  63. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 どういう人をどういうふうに調べて捜査をしたかということになりますと、いわばそれは捜査の内容でございますし、またそれが今後公判で明らかになりますればそれはそれでよろしいわけでございますけれども、現時点では、冒陳が行われその補正も行われたというような段階で、まだ証拠調べに入っていないという状況でございますから、だれを調べたかと言うことはどうも適当ではないんじゃないかということでお答えもしなかったわけでございますが、先ほど冒頭にもお尋ねがありましたように、全く何も証拠がなくて書いたかということになりますと、それなりの証拠らしきものというと適当かどうかわかりませんが、それなりの証拠は一応あったというふうに御理解いただいていいと思います。
  64. 稲葉誠一

    稲葉委員 これは千葉一区ですね。これはこの調べの途中というか、今度は次席検事がかわっちゃったね。親崎君が東京高検に来たし、定期の異動かもわからぬが検事正もかわっちゃった。  一体、この事件でこれだけの冒頭陳述ができてこれだけの裏づけがあるならば、泰道三八氏の共謀共犯が全く成立していますよ。あたりまえじゃないですか。だからそれについて逮捕しろということを私は言っているわけじゃないですよ。証拠隠滅のおそれがあれば逮捕せざるを得ないかもわからないし、ただ呼んで聞いて、それでほかの者との間の供述が食い違っているというならばそれはいたし方ないじゃないですか。逮捕の許諾請求をせざるを得ないじゃないですか。そういうことを何もやってないじゃないですか。本人も在宅で調べたのかどうかもさっぱりわからない。聞くところによれば在宅で調べたのかどうかもわからないその書類を出さないと言う。あなた方はあれですか、選挙違反の場合とか——検事のやるのは中心は選挙違反と涜職と会社犯罪ですよ。その他の事件はどうだっていいとは言わないけれども、あとは警察に任せておけばいいのよ。それが検事の仕事なのに検事の仕事を放てきしているじゃないですか。あなた方は国会議員がこわいの。自民党の国会議員、これは自民党に入ったとか入らないとか言っているけれども、本部では入ったと言って千葉県では入らないと言っているのか、よくわからないけれども、こわいのかい、あなた方は。そんなことはないでしょう。  これだけの冒頭陳述ができておって、これを、ほかの三人と供述が違うなら証拠隠滅のおそれがあるとだれだって見られるじゃないですか。逮捕請求するなり、開会中なら院の許諾が要るからというので院の許諾請求をしてもいいし、あるいは在宅で調べてもいいじゃないですか。そういうことを全くやりもしないで初めから放棄してしまって、もう上の方には行かないのだ、国会議員はおっかないから、後がうるさいからそこまでは調べないのだ、こういう態度ですか、検察庁の態度というのは。国会議員というのはそんなに——検事というのは国会議員を逮捕するのに一番喜びを感ずるというとおかしいけれども、人間的なあれを感ずる、それもまずいけれども、そういうのもいるんだけれども、それは別として、このやり方はおかしいよ。なぜ泰道に対して逮捕の請求なりあるいは在宅なりで調べて事件として立件しなかったのですか。これだけ書いてあれば証拠は十分じゃないですか。そんなばかな話はないですよ。これは一体どういうわけなんだ。
  65. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど来お答えしておりますように、稲葉委員お尋ねは、補正前の冒陳に書いてあることが事実であり、またそれを証明するに足る十分な証拠があるという御認識の上に立ってのお尋ねであるわけでございますが、後からということでお尋ねがあるかと思いますが、先ほどもちょっと申しましたように、この十二日の冒陳は、いわばその事実そのものを証明するに足る証拠が十分あるかどうかということを改めて見ますと、やや不足しておるということでございまして、そういうことから補正がなされたということでございますから、客観的には十分な証拠はなかったということになるわけで、そうなりますと、別に自民党員の国会議員であるからこわいからということでやらなかったということではなくて、やはり捜査の結果証拠の積み重ねで十分な証拠が得られなかったという、いわば事務的な判断で処理がなされたということでございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたはいま証拠がやや不足だということを言われましたね。やや不足ならばその証拠を補充したらいいじゃないですか。なぜ証拠を補充する努力をしないのですか。証拠を補充する努力を十分したのだ、だけれどもということなら話は別だけれども、その証拠補充の努力も十分しないでやや不足だなんて、そんなことで話が済むものじゃないですよ。これじゃ検察庁に対する不信感というのは非常に強まってきます。後で富士見病院のことも聞きますけれども、これは実に検察庁に対する不信感の強い事件です。  これだけのことが言われて、五千万円で押さえてくれと言っているのでしょう。それでは千葉県第一区は法定費用は幾らなんですか。七、八百万あるいは千四、五百万でしょう。詳しい話は調べてなければいいですが、そんなものでしょう。そうすると、五千万円なんて法定費用はないでしょう。やや不足なら、どうしてそのやや不足を補って完全な証拠にするための努力をしなかったのですか。したのですか。現実にしたというふうにとれないじゃないですか。したんだけれども足りなかったというなら、具体的にもう少し説明してください。してないですよ。結局こういうのをやると後がうるさいからです。そういうことじゃないですか。こんなことではだめだよ。そうとらざるを得ないでしょう。やや不足というのはどういう点なんですか。どのくらい不足していたんですか。そこら辺のところを詳しく説明してください。
  67. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申しておりますように、これから検察官側の立証が行われるわけでございますので、この時点ではその証拠の内容につきまして詳しく申しかねるわけでございます。  抽象的に申しまして、起訴されている被告人も三名あるわけでございまして、またその他関係者もあるわけでございます。そういう被告人につきまして鋭意取り調べをした中で、そういう点をうかがわせるに足りるような供述を得られたものもありますし、そうでないものもあるということでございまして、そういうことから先ほど申しましたように、全体として見た場合に証拠が不十分と言わざるを得ないということでございます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉委員 やや不足ということは、これに相当する供述は、高山は部屋から出てしまっているんだから、ここにいたのは三人でしょう。その中から得られたというんだからここに書いてあるんでしょう。だから、それを補充していけばいいじゃないですか。やれば幾らでもできるじゃないですか。それをやらないというのは私は理解できないことです。  そこで、買収に配った金は全部で幾らになりますか。
  69. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 正確に覚えておりませんが、一千万ちょっとではなかったかと思います。
  70. 稲葉誠一

    稲葉委員 五千万円で押さえてくれというので一千万円しかわかっていない。あとはどうしたのか。調べたけれどもわからなかったのか、調べなかったのか。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  71. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 この五千万円というのも表現があいまいと言えばあいまいでございまして、そういうことからこの点も補正されているわけでございますが、選挙事務所が運用できる資金ということで、直ちに買収金であるというまでは言っていないわけでございます。それから、仮にそういうことであったといたしましても、証拠上判明できたものは限度があるわけでございますので必ず一致するものでもない、かように思います。
  72. 稲葉誠一

    稲葉委員 それは私もわかります。全部の金が買収資金というわけじゃなくて、選挙事務所で使うものもあるし法定費用に入らないものもありますから、それはわかりますけれども、ここに「五、〇〇〇万円」と書いてあるじゃないですか。「五、〇〇〇万円で押さえてもらいたい」というふうに書いてあるでしょう。この文章から見ると言ったのは泰道でしょう。そう読むのじゃないですか。だれかほかの人が言ったのですか。
  73. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 補正前の冒陳の表現から見る限り御指摘のとおりであろうと思います。
  74. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、泰道が冒陳で言ったとおり五千万円で押さえてくれと言った。そうすると、「前回もナニした例のやつは今回はどうするかネエー」というのは冒陳から見るとだれが言ったのですか。
  75. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 補正前の冒陳の文脈からすれば、主語は泰道ということになろうと思います。
  76. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、運用できる資金の総額を五千万円に押さえてくれ、三人に対して「前回もナニした例のやつは今回はどうするかネェー」と言ったのは泰道でしょう。これだけ言っておって、三人がそれに同調してそれに基づいて資金の配分や何かをやっているのだから、泰道が共犯だということははっきりしているじゃないですか。それをなぜやらないのですか。こういうやり方はいかぬですよ。権力に対して非常に弱いところがある。いかぬですよ。ぼくはそういうことはあれしますよ。どうもそれは納得できぬな。  では、それだけ聞いておいて、あなた方から言いたいのは冒陳から削ったと言いたいのでしょう。それを聞かないと悪いから聞きますけれども、きのう、二十五日ですか、第二回公判で冒陳の一部を削除、訂正しましたね。これはどことどこを削ったのですか。どういうふうにしたのですか。
  77. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、補正前の冒陳では、稲葉委員が仰せのように三名が全く意見が一致したようになっておるわけでございますが、そういうことをうかがわせるような証拠もないわけではないけれども、関係者が全部そのように述べているというわけでもない、まずこういうふうに御理解を賜りたいわけでございます。  それから、いわゆる補正の内容でございますけれども、どういうふうに申し上げたらおわかりやすいかと思いますが、第二の「本件各犯行状況」というのがございまして、一がありまして1とあって「前回総選挙における買収金の配布状況」というのがございます。それから2で「今次総選挙における買収金配布の発議」という項がございます。  まずこの1と2を一次的には削除をいたしまして、2の一部も結果的には生き残る点もあるのですけれども、まず全体を削りまして、それから改めて1、2、3の一部までを一括して、それを新しい一といたしまして「被告人らの本件犯行に至る経緯」という項目に改めているわけでございます。したがいまして、4、5、6が2、3、4というふうに繰り上がったりするわけでございますけれども、そこで補正後の1は、いま申しましたように「被告人らの本件犯行に至る経緯」というふうに題しまして、そこの五行目までは補正前の2の五行分と同じでございまして、つまり「前記のように、同五五年五月一七日、」云々「和室に呼び集めた。」というのが残っておりまして、その後を若干訂正しておりますのは「そして、同室において、泰道は、今次総選挙で選挙事務所が運用する資金をできるだけ節減してもらいたい旨述べた」というふうになりまして、それからやや飛びますが、もとの3の冒頭のところにつながるわけでございまして、そのところに「そこで」という言葉が入ります。「そこで、被告人佐藤及び岸田は、」というふうになりまして、それから「作業に入ったが、」の次に「その際、被告人両名はこれに」という言葉がそこに挿入される、後はもとのままつながる、こういう形に補正をしておるわけでございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると「前回もナニした例のやつは今回はどうするかネエー」というのは削ってしまったわけですね。それはどうして削ったんだ。ちょっとよくわからないな。こういう証拠はあったんでしょう。あったからこそ、こういう言葉が出ているわけですね。これは筆が走ったということあるいは作文だったということなのか。これはどういうことなのですか。
  79. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど来一般的にといいますか抽象的に申しておりましたように、また稲葉委員も仰せになりましたように、冒頭陳述は今後提出すべき証拠によって証明すべき事実というものを記載する性質のものでございます。  したがいまして、補正前に書きました内容も全く何もないということでこういうことができているわけではないわけでございますけれども、この冒陳を十二日にいたしまして、弁護人側からその内容について釈明を求めるという動きがございまして、それで現に二十五日、昨日釈明があったわけでございます。そういう釈明がありまして、改めてこの表現を見直し、またその証拠関係等の見直しをいたしましたところ、冒陳の性格上と申しますか、証拠として証明すべき事実を記載すべき冒陳としてはやや行き過ぎといいますか不適切といいますか、そういうことであろうというような判断に相なったわけでございまして、要するに冒陳としては、これから証拠によって証明すべき事実の表示としてはこの部分は削除するのが適当である、こういう結論になったわけでございます。
  80. 稲葉誠一

    稲葉委員 それは弁護側からは釈明の要求があったのでしょう。これを削除してくれという要求ではないでしょう。
  81. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 たとえば、いまの御指摘の部分ではなくて、前回総選挙における配布状況等の点もございまして、そういう点は撤回する意思はないかというような求釈明になっているわけであります。
  82. 稲葉誠一

    稲葉委員 いやいや、重要なところの五千万円で押さえてもらいたいとか「前回もナニした例のやつは」という、ここの部分について釈明があったのですか撤回の要求があったのですか、どっちなんですか。
  83. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどお読み上げのように「おおよその構想が樹てられた。」とある部分につきまして、これは共謀があったと主張する趣旨であるかどうかということ、それからもし共謀が成立していないという趣旨であれば適切でないので撤回されたい、こういうふうになっておるわけです。
  84. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこらの辺のところをちゃんと説明してもらえば、またあなたの言葉が足りなかったし、ぼくの質問もあれかもわかりませんが、いずれにしても、私は納得できませんね、これは。国民の皆さん方も本当に納得できませんよ。ここまではっきり冒陳に書いていて、しかも冒陳というのは、この当時の次席検事親崎君かな、それから検事正は臼井君か、村上さんにかわっていたかな、どうか知らぬけれども、こういう事件だから次席検事なり検事正の校閲をちゃんと得たんでしょう。それでこの冒陳はできたんでしょう。主任検事ひとりでつくったんじゃないでしょう、冒陳は。ちゃんと判こをもらっているのでしょう、決裁印を。どうですか、その点。
  85. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 部内のことでございますから明確に答えるのはいかがかと思いますけれども、通常の考え方といたしまして、上司の指示を受けておるものと思います。
  86. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや上司の指示じゃないよ、決裁だよ。これはこれだけの事件でここに関連することですからね。当然上司が、次席検事なり検事正も承知をして書いたものですよ。それをいまになって撤回してしまうなんて、そんなばかな話ないですよ。これはどうも私、納得できないし、あなたの言う言葉もやや不足であるとかやや行き過ぎがあるとかなんとか言って、全然この事実が架空であったとは言ってないのでしょう。架空なんですか、これは。架空だとは言ってないでしょう。念を押しますよ、架空だとは言ってないですね。
  87. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 社会的事実としてどうかということになりますと別問題であろうと思いますけれども、刑事事件の訴訟の面から見ますと、証拠によって仮に証明するに足りない、それだけの証拠が必ずしも一十分でないという場合には、証明される事実としてはないということにならざるを得ないんじゃないかと思います。
  88. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや証明される事実がないというならば——ないじゃなくて、おなたのはやや不足だと言うのだから、それを補充するだけの捜査というところに重点を置いて徹底的にやるのが検察庁のやり方じゃないか、こう私は聞いているのだけれども、その点についてどの程度やったのかよくわからないんだ、率直に言うと。これはもう親崎君こっちへ来ているからここへ呼んで聞くわけにいかぬけれども、一遍よく聞いてみたいと思います。とにかく納得できませんな、このやり方については。  それから富士見病院の件についても、あれは結局あの人が保釈になりましたね。保釈になったことは、これは余罪があるからということでそれが却下の条件にはなりませんから、それはそれですけれども、普通の選挙違反だとかあるいは学生の事件などならば、ああいう場合だったら準抗告するでしょう、普通。これは検事は保釈についてどういう意見をつけたの。それで準抗告しなかったのはどういう理由なの。
  89. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ちょっと正確でございませんが、何回か保釈の動きがあってそれを押さえていたということもございますので、この時点で大分長くなったということでしかるべくということで処理したと思います。
  90. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、この富士見病院の事件というものについて、百五十万円の小切手が厚生大臣の部屋で渡されたということ、それからもう  一つの件もありますね、もう一つの百五十万円か、当時の自治大臣か国家公安委員長か、そういうふうなことについても、すべてもう事件はいわゆる打ち上げをしてしまったのですか、捜査は。いま言ったような二人の政治家に対する献金の点についてはもう全然調べないの。調べるという気持ちは全然ない、こういうふうに承ってよろしいのですか。
  91. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 最近、他の委員会だったと思いますが、警察庁の刑事局長がお答えをしていたことが報道にも出ておったと思いますが、そういう当初の医師法違反等とは別な、いわば関連する事件といいますか、そういうことにつきましては、警察当局でなお捜査といいますか検討を続けておるというふうに承知しておるわけでございます。
  92. 稲葉誠一

    稲葉委員 百五十万円以上の金の場合は届け出なければいけないとか、それは政治資金規正法の問題でしょう。だから、こういうふうにいわゆる政治家などに絡んでおる事件というものについては、国民は非常に関心を持っておるわけですから、厳正公平にやるという意味においても、富士見病院の問題も、厚生大臣の問題でももう一人の問題でもやるだけのことをやって、だけれどもこうだった、それで法律的にできなかったならできなかったのだ、こういうのならば国民は納得するかもわかりませんけれども、何もやりもしないで初めからその点はあきらめてしまう。そんな政治資金規正法のことを言っておるのじゃないですよ。職務に関連するかしないかの問題が、特に厚生大臣についてはあるじゃないですか。病院融資の問題なんかでもいろいろあるわけなんだ。監督権の問題もあるし、そういう点について全然と言っていいぐらい政治家に対しては初めからやろうという気がないんじゃないですか。検察庁は政治家に対しては、東京地検特捜部あたりは一生懸命やるけれども、何だかどうもやる気がないんじゃないかなという感じを国民に与えておるんじゃないか。これは非常に残念だと思うのです。  法務大臣、あなたの方で指揮権なんか発動するとかそういうことじゃありませんよ。そういうことじゃなくて、とにかくこういうふうに事政治家関連してきますと、いまの泰道氏の問題なんか当然在宅であれするなりあるいは逮捕請求するなり何なりすべきですよ、これだけの証拠があるのだから。それを補充すべきですよ。そういうことをやらない。百五十万円の小切手問題についても厚生大臣大臣の部屋で受け取られておる。しかも医療機関からだから、それはいろいろな問題があるというふうにも考えられる。職務の権限があるとも考えられる。こういうようなことについても全然と言っていいぐらいノータッチにしてしまう。こういうやり方では国民は検察を信頼しないんじゃないですか。そういうふうになってくるんじゃないかと思う。検察ファッショになるという意味じゃありませんけれども、検察は検察として信頼すべきものであるために、そういう事件についてはもっと積極的に、うまくいかなかった場合に後で復讐されるんじゃないか、うまくいかなかった場合に自分の責任になって飛ばされるんじゃないか、これを考えるわけですよ。だから、どうもそういう点があれなんですね。こういう点についてもっとしっかりやるように、指揮権の発動という意味じゃありませんけれども、部下を法の許す範囲で督励してもらわないと困ると私は思うのです。こういうようなことについて、大臣もしお考えがあれば、一般論としても結構ですけれども、お聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  93. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 検察が国民の信頼を得ていくということは政治の信頼を確保する基本的な条件だ、こう私も思っております。稻葉さんるるお述べになったことを十分胸にとめて、私のなし得る道に最善を尽くしていきたいと思っております。
  94. 稲葉誠一

    稲葉委員 質問を終わりますけれども、きのうの新聞に出ていた東京証券の安喰というのですか、ああいういわゆる仕手戦の問題、あれは率直に言うと専門的で非常にむずかしい。けれども特捜の検事ならばできないわけはないのですから、ああいうものについて、その後どうなったかけさテレビを見なかったのであれですが、これは全力を挙げてやってほしいと思うのです。仮にそのときに政治家が出てきても、恐らく私は出てくると思うのです、あれだけじゃないですよ。政治家の政治資金というのは大企業からの献金じゃないんですよ。仕手戦で株でもうけて資金をかせいでおるのが多いのですよ。だから、こういう問題についていろいろな政治家の名前が出てくると思う。いろいろな方面から圧力は加わると思うのです。それをはねつけて、今度の東京証券金融安喰一派、仕手戦の問題は範囲が非常に広がりますが、特捜部は全精力を傾けて徹底的に究明をしてもらいたい、こういうふうに私は考えるのです。これに対して刑事局長なり法務大臣からお答えを願って、私の質問を終わります。
  95. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 東京証券金融という会社につきまして、詐欺あるいは証券取引法違反の告訴があって東京地検で捜査をしていると言えば捜査をしているわけでございますが、率直なところは、告訴があってまだ基礎的な調査をしておる程度でございまして、実質的な捜査と言ってよいかどうかというような状態であります。  したがいまして、今後どういうふうに相なるかということは、ますますこれからのことでございますので何とも言えませんけれども、先ほどの件につきましても、私は決して政治家絡みであるから手をつけなかったということではないと申したつもりでございます。この件につきましても、仮定論でございますから何とも言えませんけれども、犯罪の認められるものにつきましては当然厳正な態度で臨むべきもの、かように考えております。
  96. 稲葉誠一

    稲葉委員 終わります。
  97. 高鳥修

    高鳥委員長 小林進君。
  98. 小林進

    ○小林(進)委員 いまの稻葉さんの質問を聞いておりまして、ちょっと私の聞き違いであるかもしれませんから、この点ひとつ質問をし直してみたいと思うのであります。  いま稻葉さんは、泰道代議士の選挙違反の冒陳の削除、訂正の問題やら富士見病院やらあるいは証券金融等の問題でなかなか格調の高い御質問があったのでありますが、最後に、どうも政治家が絡むと捜査当局は腰倒れをするような疑点を国民に与えているから、いま少ししっかりするように法務省ですか行政当局で指導せい、監督せい、何かそういう言葉があったように聞いた。これはもしそうであるならば、私はそこにこそ非常に危険があると思うのでございまして、捜査当局は法務大臣を初め法務省、行政とは常に独立して、なるべく独自で歩いてもらわなければならないというのが、私が法務委員を仰せつかって最初からの私の考えです。  ところが、最近はどうもむしろ法務省の指導力が強過ぎて、KDD事件といえ税理士法改正といえ、政治家が絡む問題がみんなあいまいで終わってしまうのは、いわば行政が捜査当局にやみの指揮権発動を行っている証拠ではないか。世間でもそういうふうにとっている。これじゃ困るというのが、私が常に最初から質問している基本的な態度なんだ。先ほどからも私は聞いていて、泰道問題なんかもむしろどこかにまたやみの指揮権発動といいますか圧力といいますか、そういうものがあって、そして検察当局が冒陳を手直ししたり削除したりするような国民に非常な疑惑を持たせる行動をしているのではないか。私はどうもこういう考えがついて回るのであって、私の質問の基本的立場は、なるべく行政から離れて、検事総長以下捜査当局が独自で、しかも正義の立場に立って国民が納得するような毅然とした捜査の態度を続けてもらいたい、これが私の基本的な主張なんです。これを私は強く要望するから、法務大臣初め刑事局長にも、指揮権発動と法務省の人事関係がどうなっているのか。どうもいまの捜査当局、特捜部あたりも法務省の人事権やら行政の力にだんだん圧力をかけられて、捜査当局がみずからの出世欲に絡んで、自分たちの立場を不利にするような、時の政府の意思に反するような政治家の犯罪なんかというものはだんだん手抜きをしたり、あるいは緩慢に処したりしているのではないか。そうなっては世の中はやみになるぞ、こういうことで私は質問をしたのであります。  だから、最後の稲葉質問がどこにあったかわかりませんが、法務大臣や刑事局長、行政当局が検察庁にいま少し圧力を加え指揮権を発動し、干渉権を強めてもっと徹底的にやれというようなことであるならば私はちょっと賛成できませんので、この点を改めてひとつ御所見を承っておきたいのであります。
  99. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 私、拝聴いたしておりまして、稲葉委員もそういう御趣旨で言われたのではない、指揮権発動があってはいかぬからというようなお言葉もたしかあったように思うわけでございまして、要するに検察当局にしっかりせよということ、検察当局に対する激励と申しますか、そういう御趣旨でおっしゃったんだろうと思います。私どもといたしましても、そういう御意見がこの国会の場であったということを検察当局に伝えることはいたしますけれども、それ以上のことはしないというふうに御理解を賜りたいわけでございます。  また、いろいろと先ほど来具体的な事件も挙げて御意見が小林委員からございましたけれども、いろいろな最近の事件におきましては、必ずしも与党議員だけが問題になった事件ばかりでもないわけでございまして、そういうことからいたしましても、検察といたしましては特に与党の議員であるから遠慮するというようなことではないはずでございます。
  100. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、この際国民の側を代表して率直に所見を申し述べさせていただきますが、どうも検察陣営というものは、時の流れと時の政府あるいはあわせて時の検事総長あるいは党の意向によって捜査の動きが変わってくる、残念ながらこういう見方が強いのですね。非常に強いのです。私は質問しているわけじゃないですから、刑事局長あるいは法務大臣どちらからお答えいただいてもいいが、これが強いのです。  それを私は言いたいために明治の初めから古い例を申し上げて、やれ小原法務大臣のときはどうだった、あるいは馬場検事総長のときにはどうだった、あるいは木内次長の場合はどうだった、あるいは岸本次長の場合はどうだったと、歴史をたどりながら私はここでくどい質問をしてきたのでありまするが、最近の検事総長以下検察庁の動き、特捜部の動きも含めて過去のその時代の検察庁のあり方から見ると、どうも政党、政治家に対する捜査陣営独自の毅然たる姿勢が若干失われておるのではないか、こういう見方が強いのですよ。これは抽象論ですからちょっとお答えしづらいかもしれませんが、しかし具体的にそれを言えということになれば、私は幾つかの例を挙げてここで申し述べてもいいと思っておりますが、きょうはその質問ではございませんのでやめますが、どうでしょう、こういう世評に対してそんなことはないという明白な答弁をいただけますか。いかがです。
  101. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 検察官の活動につきまして、いろいろと御心配をいただいてありがたく思っておるわけでございます。  また、小林委員いろいろと御勉強されて昔のいろいろな事例を引用しながらお尋ねを受けるわけでございますが、これまでの委員会でもたしか大臣からもお答えがあったと思いますけれども、昔はそれなりに時代も違うわけでございますし制度の仕組みも違うわけでございますから、そういう前例が仮に適当でないものがあったといたしましても、それが直ちに現在に当てはまるということではないと思いますし、結論から申しまして、いろいろと御心配をいただいておるようでございますけれども、現在の検察当局におきましては、犯罪の疑いの認められるものにつきましては厳正な態度で臨むという態度を堅持しておるわけでございまして、いろいろな政治的配慮によって事を誤るということはないものと確信いたしております。
  102. 小林進

    ○小林(進)委員 これはきょうだけの問題ではありませんで、永久に追及し、国民の側からは監視していかなければならぬ問題でございますので、きょうはこの程度にしてやめておきますが、いずれにいたしましても、最近の検察行政には法務省を中心にする行政官が検察陣営の指導力を握り過ぎている。あなたもやはり法務省育ちの行政官でいらっしゃるかどうかわかりませんけれども、どうも法務省育ちの行政官が捜査当局の首脳を押さえ過ぎている、これがエリートコースの頂点に進んでいく近道だ、そんなことから時の政府、時の行政官に捜査当局が迎合するというか、あるいはおのずからその意向に従うような風潮、この風潮は一般行政庁に通ずる風潮です。一般の行政庁はみんなそうだ、やはり頂点に立つ権力者に迎合していった方が出世しますから。早く局長にもなるしあるいは次官にもなるから、何としてもその最高首脳部に迎合していくという風潮はおのずから出てくるが、検察陣営が、捜査当局がそういう一般の行政庁のような、出世を目的として捜査を従にするようになったんじゃ日本検察行政はやみになる、悪者がだんだん跳梁してくる、悪い者ほどよく眠るような形があるいは政界や財界に出てくる、そうなったら三権分立という国の基本が乱れてしまうから、そういうことにならぬようにという老いの一こくといいますか、その気持ちで一生懸命に質問しているわけでありますから、そういう国民の疑惑をなるべく解くようにどうかひとつ御努力をしていただきたいと思います。  きょう私が質問いたしたいのは、これもしつこくやっておりましたが、まず第一に松野事件であります。松野事件を法務委員会でやることに決まったというふうに私は理解しているのでありますが、何といっても私はこの法務委員会理事じゃない。最近は法務委員会理事を中心にして動いているものですから、どういうふうなコース、これをどう取り扱うように理事会で決まったのかわからないのでありますが、委員長、ここでひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  103. 高鳥修

    高鳥委員長 小林委員にお答え申し上げます。  松野問題の取り扱いについては、理事会において、各党でそれぞれどのような方針で対処をされるか十分御検討いただきたいということを委員長から要請をいたしました、現在そのままの状態でございます。
  104. 小林進

    ○小林(進)委員 そのままとは非常に残念でございますが、この前の理事会も、私は他に用事があってついに会議に参画することができなかったのです。きょうあたりは当然これを扱ってもらえるかと思ったのでありますが、扱われないで非常に残念であります。  そこで、法務大臣に、これはお伺いするのでございますが、ここに私は日商岩井事件の判決の抜粋を持っている。この中には、松野さんが五億のお金を要求されて、その五億のお金をつくるために日商岩井の海部副社長以下経理部長その他関係者が大変苦労されている、その苦労が微に入り細に入り記述をされているわけでございますが、これを見ながら、今度は衆議院の航空機輸入に関する調査特別委員会会議録、これは第八十七回国会でございますが、昭和五十四年五月二十四日午後一時三分開議の松野頼三証人の議事録であります。これには、松野さんがそれぞれの委員質問にお答えになった、この五億円、彼の言葉をもってすれば四、五億円というのでありますが、四、五億円の金の授受に対する彼の宣誓をしての証言が微に入り細に入り述べられているのであります。  これは、両方比べてみれば大変な相違があるということが実に明らかなんであります。日商岩井事件の判決文、これは私どもはやはり正しいと判断をしなくちゃいかぬが、この正しい判決文からながめれば、実に松野さんはよくもでたらめを気楽に言えたと思うくらい、これはでたらめの証言をしていらっしゃる。この問題については法務大臣はどういう御所見をお持ちになっているか、この際お聞かせを願いたいと思うのであります。
  105. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のように日商岩井事件の判決が出ておりますし、片や松野氏の証言の議事録もあるわけでございます。  その間に食い違いがあるというような御指摘も前々からあるわけでございますけれども、そのことが、先ほどもお話しになりましたように、この委員会で扱うかどうかというようなこと自体国会での問題になっておるわけでございますので、そういう段階で法務省の立場からいたしまして、それが違うとか違わぬとかいうことを申し上げるのは適当でない、かように考えております。
  106. 小林進

    ○小林(進)委員 私は法務大臣にお聞きしたのです。刑事局長にお聞きしたわけじゃないのです。法務大臣、いかがでございましょう、御所見を承りたいと思うのでありますが。
  107. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 新聞紙上などでいろいろの答弁などを拝見しているわけでございまして微妙な点があるものでございますので、なかなかいずれだというような話し方はしにくいな、こう思っているわけでございます。いずれにいたしましても、国会でお決めになったことについて法務当局も御協力を申し上げるということじゃないだろうかな、こう思っております。
  108. 小林進

    ○小林(進)委員 そういうかたくなな御答弁でなくて、国民の疑惑や要望に素直にこたえるという姿勢を持っていただくわけにはいかないものでございましょうかね。松野事件をここで再現をして申し述べることもございませんが、いずれにしても松野さんが五億の金を日商岩井からもぎ取るように取られている。その取られた期間が昭和四十三年の春ごろから始まって昭和四十六年の十一月までの間ですね。大体三年六カ月くらいの期間の中にこの五億の金を矢のような催促をしたり高利貸し以上の過酷な攻め方でこれを取り上げられておる。そのために日商岩井の旧社長、新社長ともに肝を冷やすようなせつない思いでこの金を調達されているということが、この判決文の中に明らかに記載されているわけであります。  その後に起きたのが例のロッキード事件の五億問題でございまして、松野事件はいま言ったように四十三年の春から始まって四十六年の秋、ちょうどいまごろの木の葉の散るころ、ようやく不正な金の略奪が最後を告げたという形になっているのでありますが、それが終わった四十七年の九月ころから、それと同時にロッキード事件が起きてきたということでございまして、田中元総理が金銭を授受されたのは、正確な日数は忘れましたけれども四十八年から四十九年でございましょうか、そういう形になっているのですね。  その中で、その田中ロッキード事件はいまも言うように、毎週毎週国民は目をさらのようにしてその公判の行方をながめている、こういう状態で国民の審判の前にさらされているわけでございまして、いまこの事件の行く末、判決に恐らく国民は大変な関心を持たれているわけでございます。きのうの新聞あたりでは、橋本元運輸大臣等が丸紅の伊藤専務から届けられた五百万円の金を受け取ったこともなければ伊藤何がしの顔を見たこともないという全面否定などをおやりになっている。これをまた検察当局がどう受けて、どう反論するのかなどというスリルも伴う問題に国民は興味しんしんたるものを感じている。  その事件を右にしておいて、むしろその本家とも言われる、どうもそれより前に行われた、この同じ五億だ。これは五億と言ったって五億の値打ちが違いますよ、インフレの時代ですから。田中元総理のときの五億とそれから二年なり三年なり前の五億では五億の値打ちが違う。その片一方の五億はいわゆるこのままの形で幕を引かれ——幕を引いたというわけではありません。私どもは幕は引きませんが、捜査当局、検察当局の中では何も問題にならないという事件。しかも、こうやって私が国民に成りかわってその所感を承っても、それは国会がおやりになることで私どもは関与しません、こういうようなつれない御答弁じゃ、これは一体国民に報いる政党の姿勢だと言うことができるでありましょうか。われわれはあらゆる機会、あらゆる場所を利用して、主権者である国民にあらゆる親切でその疑惑にこたえる。片一方は裁判にかけられている、片一方はそのまま何もならない。それが不公平なら不公平、均衡を失しているなら均衡を失している、捜査当局として遺憾なら遺憾、残念なら残念、しかしこれをこういうふうに処置するなら処置する手があります、何かこの国民の疑惑にこたえるような、そういう素直な答弁がはね返ってしかるべきだと私は思うのでございますが、いかがでございましょう、法務大臣。これは事務当局じゃだめです。やはり一国の政治をつかさどる法務大臣法律に基づいて国民の切実なる要望にこたえるという姿勢は政治家たる法務大臣に要望するのが私は当然だと思うし、あなたは答えるにちゅうちょする問題ではないと思う。いかがでございますか。
  109. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 松野問題について私の理解しておりますのは、偽証罪になるかならないかという問題が一つございます。  これはやはり国会における答弁でございますので、国会がどうお取り扱いになるかということで決まってくる問題じゃないか、こう思います。金銭の収受の問題につきましては刑事問題にはならない、政治問題としてどう扱うかということでございますので、これまた検察のかかわる問題ではない、国会でこの政治問題をどうお取り扱いになるかということでございますので、国会がお決めになりましたら、お決めになりました線に従って法務省としては協力したい、こう思います、こうお答えをさせていただいたわけでございました。
  110. 小林進

    ○小林(進)委員 いまの大臣の御答弁によりますれば、何といっても時効が成立をしているし、刑事上の贈収賄になるのかどうかという一つの疑問点もあるが、何か時効の壁に阻まれているからこれは捜査の対象にはならないとおっしゃりたいのでございましょう。これをもし捜査当局が手を染めるとすれば、いまのところは、いまおっしゃるように国会が偽証で告発をしてくれるのを受けて立つ以外にはなかろう、こういうふうに聞いたわけであります。  ところが、いままでの過去の捜査当局の動きを見ておりますと、非常に積極的に、むしろ国会の意思をリードするあるいは国会の意思を土足にけっても、正義のやいばをかざして事件の解明に乗り出されたこともある。その一番端的な例が、私がこの間も御質問申し上げました例の帝人事件、台湾銀行事件。あのときなどは、政府の意向、首相の意向も踏みにじってと言ってはなんでありますけれども、積極的に検察当局、捜査当局が動いて、そして財界や官界の不正を摘発しようとする猛烈な勢いを示された。特にこういうような民主主義の根幹を揺るがすような重大問題であります。私は積極的に出ていったらいいじゃないかと思います。  その一つの具体例として、どうですか、法務大臣としてあるいは検事総長でもいいし検察庁でもいいが、国会側に、判決と国会における松野証言は余りにも矛盾し過ぎているし余りにも差異があり過ぎるから、国民の前にこの問題の真相を明らかにする意味において国会でひとつこれを偽証でお訴えできませんか、検察当局はそういう希望を持っている、そういう意思を持っている、そういう願いを持っているというようなことを表明していただくわけにはいきませんか。それくらい積極性があっていいでしょう。どうですか。検察陣営だって国民に雇われている国民の代表なんですから、国民が挙げてそういう要望を持っているというなら、その国民の希望にこたえる意味において、私どもは時効の壁に阻まれていてできないのだ、できる道は偽証しかないのだから、国会側はどうかひとつこの偽証を取り上げていただいて事件をわれわれの方に回してもらえないか、こういう意思を表明できませんか。いかがですか、法務大臣。それくらいの積極性があってしかるべきじゃないですか。
  111. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど小林さんの哲学を聞かせていただいたわけでございまして、その哲学は、検察は独自に最善を尽くす、その環境を行政当局は守れということだったと拝承いたしておりました。私も、それが大切だな、こう承っておったわけでございます。検察陣はあくまでもみずからの刑事事件追及、これ以上であってもいけないしそれ以下であってもいけない、こう思っておるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして検察陣のなすべき道に最善を尽くす、それ以上飛び出すこともいかがなものか、また、もちろんそれ以下であってはいけない、こう思いますので、そういう姿勢を貫いていきたいと思います。
  112. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこの議論だけを繰り返したってしようがありませんが、いま少し検察陣は政治家の犯罪に対しては、ロッキード事件を境にするとは言いませんけれども、どうも何か一から十まで消極的に事件を避けよう避けよう、時の政府に傷の入るようなことは避けて通ろう、そういう姿勢がちらついて、その一つのあらわれも松野事件ではないかという感じがいたしますから、そういう国民の疑惑を解く意味においても何か積極的な姿勢を示してもらいたいというのが私の願いでございましたが、なかなか私が望んでいるようないい答えがはね返ってまいりません。残念ですが、これはまた法務委員会で立法府独自でひとつ問題を処理するように委員長を中心に——委員長もなかなか気が弱くて、やるのかやらないのかさっぱりわかりませんけれども、これを何とか攻めながら問題を処置していくことにいたしたいと思います。  この問題に関連いたしまして、これは法律問題になりますが、これは法制局長官に私はお尋ねしたいと思うのでありますが、国会には会期不継続という原則があります。この問題に関連しますが、例のロッキード事件であります。このロッキード事件は、御承知のとおり私は当時予算委員会理事もやっておりまして、事件の処理の仕方を私が一番承知をしている。そこで、予算委員会における証言を聞いて偽証の疑いありとして、その会期の中で檜山だとかあるいは伊藤だとかいうような人々を告発をしたわけでありますが、一人小佐野賢治氏だけはその会期中に告発しなかった。体会中に二、三回理事会を開いて告発問題をいろいろ審議をした。その結果次の国会、次の会期で小佐野氏を偽証の疑いで告発をしたわけであります。そのときの委員長は荒舩清十郎氏でありました。はからずもけさの新聞で荒舩先生の御逝去を知った。偉大な先輩を亡くしたという悲しみに私も胸を打たれているのでございますが、その荒舩委員長の手を通じて小佐野氏を告発をいたしました。これがいまでも問題として残っている、会期不継続の原則から見て。前の国会で起きた事件を次の国会で告発の手続をするということは原則に反するのであって成立しないのではないか、こういう議論があるわけであります。これが一点であります。これは今後も起きる問題でありますから、お伺いしておきたい。  いま一つの問題は、予算委員会というのは常置の委員会であります。国会法に基づいて予算委員会というものが国会が開かれるたびに当然に存置をされる委員会だ。いま一つの例は松野氏の場合であります。これもすなわち航空機輸入に関する調査特別委員会、八十七国会の特別委員会における証言の問題、これがその国会中に偽証として告発するに至らない、至らなかったわけでありますが、航空機輸入に関する日商岩井の事件の判決文を見て、野党の中には、さらに偽証は明らかでありまして、どうしても告発すべきであるという意見がある。もし告発するとすれば、いまの国会でありますから二十九日に終わります。これは間に合うか間に合わないか私はわかりませんが、いまの国会で告発するとしても第九十三国会、八十七国会で行われた証言であります。しかも、その航空機特別委員会は新しい国会が開かれるたびに特別に決議をされて委員会が存置をせられる。九十三国会ではついに廃止されている。  こういうふうに、過去には存在をしたが現在ではもう存在をしていない、その特別委員会における過去の証言を偽証として訴えることが一体可能であろうかどうか。法律上、会期不継続の原則から見て可能であろうかどうか。この二つの問題、法制局の御見解を承っておきたいと思うのであります。
  113. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 御指摘の第一の問題は、すでに国会においてそのような取り扱いがされた問題であり、第二の問題は現にそのことについてのいろいろな御検討が行われている問題であると承知いたしますが、確かに法律問題でございますから私どもとしても一般的な関心は無論持っておりますけれども、しかし、御質問の事柄はまさに純粋に国会の運営と申しますか国会の内部でどういうふうな取り扱いをするかという問題でございますから、内閣法制局長官としてお答えをするにはちょっと不適当な問題じゃないかと思います。そういう意味で、大変申しわけありませんが意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  114. 小林進

    ○小林(進)委員 ちょっとおかしいね。私は純粋な法律解釈をあなたに承っている。国会の運営とかあるいは国会対策とか国会の議運でお互いに話し合って妥協しながら問題を処理していく、国会というのはある意味における与野党の妥協の場所ですから、それは国会法の範囲内で幅広く右に解釈したり左に解釈したりする場合がありますが、そういうことであってはいけないから、私は純粋な法律解釈法律専門家をもって任じていただいているあなたにお聞きするのです。  しかもまた、そのあなたに質問するのは、法律解釈というものは、衆議院にも参議院にもやはり法制局というのがあります。そこで聞いてもいいだろうけれども国会の運営に対する基本的な、しかもそういう便宜的にこれは処置せられる問題ではないのです。ないから、それぞれのセクションに本当に権威のある解釈を私は承っておいて、そして、あるいはそれぞれ法律解釈かそのセクションによって意見が統一しないかもしれません。それはしなくたっていい。それは法律の場合にもいろいろな違いが出てくることは解釈上やむを得ないのでありまするから、違いの出てくることを私は恐れるのじゃないけれども、ある統一になればなおさらいい、違ってもいいが、この際内閣法制局としての権威のある解釈を承っておきたい、こういうことであなたにも来ていただいたわけであります。  立法府に関することだから行政府としては関係がないから、それに対して答えることができないなどというのは、法律をもって飯を食う専門家としてはひきょう未練な逃げ方だと思う。そんなことではいけません。解釈できないならば責任をとって法制局長官をやめますと言うならばまだいいけれども法制局長官の絶対的な地位を確保しておきながら、高禄をは=んでおきながらそれは答えられないなどという、そんなことではいけません。きちっとしたお答えをいただきたいと思うのであります。
  115. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 先ほど私、国会の運営にかかわる問題というふうに申し上げたのはちょっと言葉が足りなかったと思います。無論小林委員御承知のこととは思いますが、国会の運営にかかわる法律問題であるということを申し上げたかったわけであります。  現に問題になっているのは議院証言法に基づく偽証の告発権の問題でございますけれども、この告発権についてはもともと立法府に専属しておりますし、それが現在の時点で国会にあるのかどうか、具体的にはまたさらに国会の内部でどのような機関が持っているかという問題が現在論議されているわけで、純粋に国会の内部の権限分配の問題であると思います。それは確かに法律問題としての側面は持っておりますけれども、従来からもそういう問題についてむしろ私ども法律的な見解を申し上げれば逆におしかりを受けるというのが常にそうでありますし、また三権分立ということからいっても、国会にはそれぞれ事務局もありまた法制局があって議員の方々を補佐していらっしゃるわけでございますから、そういうことについて内閣の法制局の見解をこういう公の席上で申し上げることは、私どもはあくまで避けるべきであると今日まで考えておりますし、また今後もそういう考えは貫きたいという気持ちでおります。
  116. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたは、そういうことをおっしゃるならば、公正に法律を解釈しようという最も客観的立場を放棄をして、それは時の政府に隷属して政府の側のための三百代言的だ、いわゆる詭弁学派的なそういうへ理屈をつけるのが法制局長官の任務だ、そういう答弁にも聞こえますよ。  いまのこの解釈は国会だけで終わっている解釈じゃない。これはたしかいまちゃんともう法廷に出て、裁判所でも論じられているはずです。だから、決してこれは一国会だけの問題でもなければ、一内閣だけの問題ではない。いわゆる三権分立の司法の場所でもこれはいま問題視されて、一体裁判官がどうこれを解釈をするかというところまで、たしか問題が持ち込まれているはずであります。  だからそれを、国会がおやりになることだから、私ども政府側としては答弁しないなどということは実にけしからぬ答弁だと私は思う。これは司法、立法、行政三者を全部含めた基本的な問題です。司法も、いまこれは裁判所結論を出しますよ。立法府も結論を出すように、衆議院の法制局長にも私は問題を提起している。それぞれがそれぞれの立場で、やはり権威のある問題として結論を持っていなければならぬ問題です。あなたは立法府とおっしゃるけれども、立法府じゃないのだ、問題は司法へ行っているのです。司法がいま取り扱っている問題です。お答えください。そんなひきょうな形で逃げないでください。
  117. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 お言葉を返すようですが、司法で扱っているというふうにおっしゃいましたけれども、偽証告発権は現在国会に専属していることは明らかでありまして、その行使の仕方をめぐっての意見を申し上げることを差し控えたいということを申し上げているだけであって、別に司法との関係はないように思います。  それからまた、先ほど三百代言というようなお話がございましたけれども、問題は政府とは関係ないわけでございまして、立法府がお決めになることについて私が意見を申し上げることを差し控えたいということでございまして、別に内閣の姿勢とかそういうこととは関係のないように思います。  ちょっと言い過ぎになるかもしれませんが、仮に国会で何らかの御議決をされた場合に、それが国会法に反しているからあれは無効だろうなどというようなことを私が公の席上で言うことを許されるとは私はとうてい思えません。それと同じように、国会法律問題としてお取り扱いに——国会自身の権限の問題ですから、それは国会がお取り扱いになればいいのであって、私がそれをおかしいとかおかしくないとか言うことは、これはちょっと差し出がましいことじゃないかというのが私の気持ちでございます。
  118. 小林進

    ○小林(進)委員 たとえばいま松野頼三という問題を、これは告発することにおいて合法か非合法かという問題、法律上可能であるか不可能であるかということを質問しているんだが、松野さんは無所属だからいいけれども、あるいは人によっては、時の政府を構成している自民党所属の代議士であった、そういうことから時の政府は、やはり自分の党に所属をしたそういう議員をなるべく告発させたくないという意向がある。  その一番いい例は、この前も申し上げましたように、福永一臣などという人が、おれは証人台に立ってみずから証言をしたいと言っている者でも、時の政府は、そういうことを証言に出て証言してもらうと不利になるからといって、政府は福永一臣に圧力をかけて、彼の希望を達成しないで証言台に乗せなかったという問題があるから、その政府が、政府法制局長官であるあなたに働きかけて、あなたにそれを不可能にするような解釈をさせるようなことなきにしもあらず、私はそう考えたから、あえてあなたの神経にさわるような言葉を用いてあなたに言ったわけだ。  同時に、司法の問題に関連しているということはどういう意味かといえば、これは私は新聞やテレビで拝見しているだけで詳しいことはわかりませんが、いま例の小佐野さんの方ではこれは問題を提起している。私の衆議院における告発は会期不継続の原則に反するから、これは成立していないんだ、だからこれは無効なんだということをいま裁判で争っているじゃありませんか。これは争っているのですよ。争っている以上は、それに対してやはり裁判官は一応の結論を出さなければならないんじゃないでしょうか。こうやっていまその無効を提訴している問題を裁判官はどう処置しますか、それをあなたにお聞きしますよ。
  119. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 それは、被告がそれを争う以上、裁判官は当然裁判の範囲内で判決で結論を出すと思いますけれども、それと、いまここで衆議院が偽証告発権をどういうふうに行使されるかという問題について内閣法制局長官に意見を言えということとは性質が違うというふうに申し上げたいと思います。
  120. 小林進

    ○小林(進)委員 私はさっぱりわからない。もし裁判で、この問題は国会の会期不継続の原則だからそのとおりですと小佐野側の主張が通ったとしたら、それは直ちに私どもの今後の行動に影響してくる問題です。われわれは裁判で成立しないようなことをここで論じて、また松野君を告発しようじゃないかあるいは偽証罪でやろうじゃないかというようなことはもはやできなくなりますから、それはここで終わりです。  だから、それはまだ出ていないから、われわれはあらゆるそういう法的機関を通じて、あなたの機関も一つだから、意見を聞いておくことは国会としてはあたりまえなんです。言えないということはないでしょう。言ってくださいよ。われわれの今後の行動に非常に重大な支障を来す問題、影響する問題ですから、私は真剣に聞いているのですよ。
  121. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 何度も同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、裁判官は判決を下すのが義務でございますから、判決を下すだろうと思います。その判決に述べられているところの理論を国会がいろいろ御参考になさることは、それは国会の御判断だと思います。何も裁判官は国会が参考に資するだろうというような意識を持って、目的を持って判決を下すわけではございません。  それと私の立場とは全く違うのでありまして、立法府の権限に属する法律問題について現に問題になっているときに、私がそれがいいとか悪いとか言うことは、行政府としてそういうことは差し控えるべきだということで、裁判でそういう判決が下されるということと、私がここで意見を差し控えたいということを申し上げているというのは、全然性質が違った問題であるというふうに私は考えます。
  122. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、裁判と一緒だと言っているのじゃないのです。そういう裁判の結論が出れば、われわれの行動はもはやそれに従って自後の行動を起こさなければならぬが、まだ問題は解決していないさなかだから、私どもは、あらゆる法律の解釈を公正に持っていく機関にこれを参考として聞きながら、万一のこの法務委員会の運営その他を処理していかなければならない、そのためにあなたからも聞きたい、あなたは法律の解釈を専門にやる人だからあなたに聞いておきたいと言うのです。  答えられぬということはないですよ、あなた。一体政府法制局長官には、政府に関係する法律、この範囲だけは解釈があるし結論も出すが、これは守備範囲外だから、こっちの方は勉強する必要もなければしゃべる必要もなければ手もつけないんだという、そんな法制局長官としてのあなたの守備範囲はいろいろ区別があるのですか。法律と名のつくものならば、立法府の法律であろうと行政府法律であろうと、すべての法律に対して一つの見識と見解を持つというのがあなたの仕事じゃないんですか、そうじゃないんですか。あなたの都合の悪いものはしゃべらぬでいい、そういう守備範囲は一体あるのですか、あなたの守備範囲を聞かせてくださいよ。
  123. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 私は先ほど三権分立の精神及び従来の慣例というように申し上げたわけでございますが、理屈を言えということであれば理屈を申し上げますが、法制局の設置法で法制局の所掌事務が決められております。  それによりますと「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」というのが中心になっているわけです。無論、国会でいろいろ御質問がありましたならば、そのときにいろいろお答えをするのは当然だと思います。ただ、この問題は全く政府に関係のない問題でございます。同じ議院証言法の問題だとか国会法の問題であっても、政府の行為に関係のある問題がございます。そういう場合には無論政府の立場から国会に対する御議論に参加するというか、いろいろ御質問に応じて私どもの意見を申し上げることも許されてしかるべきであり、また当然それは職務だと思います。  しかしこの問題は、全く純粋に国会の議院証言法に基づく偽証告発権をどのような形で行使をするかという問題でございますから、これはもう私どもの権限の外であるということは余りにも明瞭でございます。それは確かに最初に言われましたように、一般的な法律問題であるという立場から見て意見があるかとおっしゃいますけれども、やはりこういう席上ではお答えすべき性質の問題ではないと私は確信いたしております。
  124. 小林進

    ○小林(進)委員 それじゃ質問を変えまして、私は立法府の小林進としてあなたに質問しているが、これが仮に鈴木総理大臣があなたに対して、どうも国会の中で松野喚問の問題が出ているようだが、いわゆる偽証の問題が出ているようだが、松野君とぼくとは国会の同期生で一緒に出てきて当選した、彼を偽証などでやりたくないという気持ちもあるのだがどうだね、会期不継続の原則もあることだし、成立しないのではないかと思うが、君の解釈を聞きたい、こう言われたらどうしますか。あなたは答えなくちゃいけないでしょう。その答えをここで教えてください。
  125. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 そういうことを鈴木総理がお尋ねになることは万々ないと私は確信しております。仮にお尋ねになりましても私はお答えはいたしません。
  126. 小林進

    ○小林(進)委員 これは万々ないなどと、そんなことはあなた言い過ぎですよ。言い過ぎだが、言われても答えないとおっしゃるなら、それはしようがないな。職を辞しても答えないか。辞表を書いても答えないか。決意鉄石のごとしか。それじゃやむを得ないわ。じゃこの問題はここではどうも留保しておくよりしようがないね、それほどの固い意思なら。けれども私は、法制局としては当然そういう解釈があってしかるべきだと思う。どっちの理屈が通るのか、これはひとつきょうのところは留保しておきましょう。けれども、これは常について回る問題ですから、いつでも出てくる問題ですから、また改めて質問することにしましょう。  次には靖国神社参拝、この問題もついて回るのですが、それに関連して私はお伺いしたいのであります。靖国神社というのは宗教法人だと思いますが、これは文化庁長官いらっしゃいますか。
  127. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 靖国神社は、昭和二十七年九月に宗教法人法の規定に基づいて東京都知事から規則の認証を受けて設立された宗教法人でございます。
  128. 小林進

    ○小林(進)委員 現在宗教法人というのは一体日本に幾つくらいあるものでございますか、概算でよろしゅうございます。
  129. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 約十八万でございます。
  130. 小林進

    ○小林(進)委員 宗教法人の成立要件といいましょうか条件といいましょうか資格といいましょうか、それをお伺いいたしたいのであります。
  131. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 宗教法人法第二条に規定がございまして、宗教団体の定義がございます。それによりますと、まず宗教法人において「「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする」団体でございます。そして、その団体であって「礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体」あるいはこのような「団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体」これが宗教団体ということで宗教法人法で規定をされております。これらの団体であって規則の認証を受けたものは宗教法人となることができるわけであります。
  132. 小林進

    ○小林(進)委員 いまお話のあった「「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを、主たる目的とする左に掲げる団体」靖国神社はこの宗教法人法第二条の条件を備えておりますか。
  133. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほども申しましたように、二十七年の九月に規則の認証を受けて宗教法人として設立されたわけであります。もちろんこの神社は明治二年に東京招魂社として創設をされて以来の沿革は持っておりますけれども、現在では宗教法人に言う「宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする」礼拝の施設を備えた神社でございます。宗教法人法の宗教法人たり得るものと考えております。
  134. 小林進

    ○小林(進)委員 そういたしますと、靖国神社は、この宗教法人法の第二条の資格を備えた法人でもあると同時共いまあなたが言った日本で十八万あるもろもろの宗教法人の中のたった一つの存在であることも間違いありませんな、いかがでありますか。
  135. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 宗教法人法上は、靖国神社宗教法人としては他の宗教法人と異なるところはございません。
  136. 小林進

    ○小林(進)委員 異なることがありませんから、十八万ある中の一つにすぎないことも間違いありませんな。
  137. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 十八万ある宗教法人の中の一つでございます。
  138. 小林進

    ○小林(進)委員 一つにしかすぎませんな。  そこでお尋ねしますけれども、この靖国神社の宗教の教義というのは一体何ですか、その儀式行事はどういう儀式の形式をお持ちになっておるのですか、それから靖国神社の信者は一体どういう人たちなんですか、これをお聞かせいただきたい。なお加えて言えば、信者を教化育成する、どういう具体的な教化育成の手段をとっていられるのか、これもひとつお聞かせをいただきたい。
  139. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 靖国神社の場合には嘉永、安政以後、事変、戦争に殉じた人々を祭神としております。そして本殿、拝殿等の礼拝の施設その他の宗教施設を備えております。さらに、いまお尋ねの儀式でございますが、春秋の例大祭を初めといたしまして神道の祭祀を執行いたしております。そして祭神の神徳を広め祭神の遺族その他の崇敬者を教化育成する、こうした宗教活動を主たる目的といたしているわけであります。
  140. 小林進

    ○小林(進)委員 いまもいみじくも言われましたが、この靖国神社という宗教法人は、祭神は戦死した戦没者を、これは祭神というから神様として祭る。それから宗教の儀式は、形式は神道だ。神道の方式をとっている。それからその信者は遺族、こういうふうに資格を備えているわけでございますが、一体宗教法人は十八万あるとおっしゃったが、これは宗教と名のるからには、いまも言うように祭神というものはなくちゃいけない。これは宗教の柱ですからなくちゃいけないな。だから仏教で言えば、真言宗は阿彌陀仏だろうし、法華宗、日蓮宗で言えば妙法蓮華経でしょうし、キリスト教で言えばゴッドですか、そういうものがいわゆる中心になって、そしてそこに儀式、信者あるいは宗教行事の形式が備わって宗教というものは成立する。靖国神社は戦死した人を神様として祭っている。ここで靖国神社は成立をしているわけでありまするか、神というものは絶対的なものですね。だから戦死者は、われわれから見れば戦争に行って国のために倒れた人間なんだけれども靖国神社の宗教で言わせればこれは絶対的なものだ。信仰の中心、宗教の中心になるものが絶対的な権威を持たなければ宗教というものは成り立たない、信仰というものは成り立たない。  文化庁、これはおわかりになりましょうな。だから私は、この話は別に他の宗教に影響するわけじゃないのだが、何宗教を問わず、自分の信ずる宗教の中心たるべきものは神であり仏であり、これがやはり絶対である。真善美をきわめた絶対的なものであるということから宗教は始まり、信仰が始まるわけでありますから、靖国神社に祭られている戦死者は神様として絶対的な真善美を備えた完全無欠なものであるということから、靖国神社教が成立しているわけであります。この点いかがでございましょう。間違いありませんかな。
  141. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 宗教法人靖国神社としては、祭神についてそれをまさに基本に据えて信仰の対象としているというのは御指摘のとおりだと思います。
  142. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこの点を法務大臣にお聞きしたいのですよ。私どもは戦死者を大切にしたい。また、盆暮れにはわれわれの祖先を祭るということと靖国神社宗教法人として戦死をした人を絶対的な神様として信仰の対象として拝んでいることとは全く性格が違うのです。ここを一体法務大臣はどうお考えになっておりますか。  外国へ行けば無名戦士の墓というものがありまするけれども、あれは神様じゃない、絶対的な信仰の対象じゃないのです。それはやはり国のために殉じた、ときには英雄の扱いをするか、犠牲者の扱いをするか、あるいはそれぞれの考えはありましょうけれども、それは祖先を祭るとかいう、国のために倒れた人を祭るとかいう、そういう素直な気持ちで私どもは外国へ行っても無名戦士の墓にお参りをするが、日本でいま扱っている靖国神社教は、これはもう真善美をきわめた、先祖の境地や国のために倒れた人間的境地を離れた神様なんだよ、あなた。信仰の絶対神なんだ。そしてその存在は、いまも言うように、十八万あるわが日本の宗教団体の一つにすぎない。それをあなたは一体どういうふうにお考えになるのか。それを公式に参拝するのにどこに間違いがあるかというふうなことをあなた自身は考えていられるというのでありますけれども、その見解をいま一度承っておきたい、靖国神社性格について。
  143. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私の政治家としての見解をお求めになっているんだ、こう思います。  私はたびたび申し上げておりますように、憲法の二十条の「宗教的活動」は、果たして宗教施設に礼拝することを禁止していると考えなければならぬだろうかと疑問を持っているわけであります。いわんや靖国神社につきましては、国家、社会のために命をささげた方をお祭りしているわけでございまして、そこへ国家、社会の機関が機関として感謝の気持ちをあらわす、お参りする、それを禁止しているということになりますと、靖国神社趣旨が成り立ちにくいんじゃないだろうかな、こういう疑問も持っている、こう申し上げてまいっているわけでございます。
  144. 小林進

    ○小林(進)委員 そこで私は、じゃいま一つあなたに質問をする前提として申し上げたいが、文化庁長官にお伺いしたいが、二十七年に届け出をして宗教法人資格を得られたというんだが、戦前、戦中の靖国神社宗教法人としてその性格を変えた戦後の靖国神社との違いを、ひとつここで私はあなたから御説明をいただきたいと思うのです。同じなら同じでいいです。性格が変わっていないなら変わっていないとおっしゃっても結構です。
  145. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほども申しましたように、靖国神社は明治二年に嘉永六年以降国事に殉じた人々を奉斎、顕彰するために創建された招魂社に由来をいたします。明治十二年に靖国神社と改称されまして、以来終戦まで、正確には昭和二十一年の二月まで別格官幣社として関係法規のもとに運営されてきたものでございます。終戦後は神社制度の改変に伴いまして宗教法人となって、現在宗教法人法のもとで運営されているわけであります。
  146. 小林進

    ○小林(進)委員 その昭和二十一年まで別格官幣社として国が祭られていたときの靖国神社性格というものは、どんなものでございましたか。
  147. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 靖国神社には限りませんけれども、旧憲法のもとにおきましては、神社の祭祀、経営につきましては、特別の法令をもって規定をされておりました。これは神社が建国の大義に基づいて皇祖皇宗の神霊を初めとして国家に功績のあったもろもろの神々を祭祀するために設けられた施設であって、神社は国家の宗祀、祖先の祭りであって、憲法上の宗教ではないという考え方に立っていたからであります。  したがって戦前におきましては、靖国神社に対しましても、その祭祀料については国費が支出されておりますし、神官の任免につきましては国の機関が行うというような、現在の宗教法人法のもとにおける目主的、自律的な運営とは異なった運営が行われていたわけであります。
  148. 小林進

    ○小林(進)委員 それでお伺いしますが、戦中、昭和二十一年までは、いわゆる宗教法人に基づく宗教ではない、国家のために偉勲のある人たちをお祭りをする、いわゆる宗教の上にある、上という言葉はおかしいのでありますが、宗教の上にある法人格といいましょうか宗教格といいましょうか、こういうふうな解釈があった。ともかく戦後から初めて憲法上の宗教団体、他の十八万の宗教団体と並立化された。並立化されて十八万のうちの一つとして独立になったのだが、そこに至る戦時中は、すべての宗教の上に厳然として存在したのではありませんか。いかがです。
  149. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 上下ということについてはお答えをいたしかねますが、憲法上の宗教とは考えられていなかったわけであります。
  150. 小林進

    ○小林(進)委員 憲法上の宗教法人として考えられなかったというのは何と考えたか、いま一遍その点教えてください。
  151. 佐野文一郎

    佐野(文)政府委員 先ほどもお答えを申しましたように、神社というのは、靖国神社に限らず建国の大義に基づき皇祖皇宗の神霊を初め国家に功績のあった諸神を祭祀するために設けられた施設である、すなわち神社は国家の宗祀、祖先の祭りである、こういう見地に立って、宗教とは別個のものであるという考え方がとられていたわけでございます。したがって神社の祭祀、経営につきましては、たとえば官国幣社以下神社祭祀令というような勅令をもって別途に定められていたわけであります。
  152. 小林進

    ○小林(進)委員 私があえて各派の宗教の上に神社が置かれていたということを申し上げるのは、この稲葉委員質問に対して内閣総理大臣鈴木善幸さんが答弁書を寄せられているが、その中の一の三項ですか四項に「神社は、建国の大義に基づき皇祖皇宗の神霊を始めとし国家に功績のあった諸神を祭祀するため国家自ら設営するもので、神社は宗教ではないとして取り扱われていた。なお、神社を保護するため、他の宗教に対する弾圧を行った事例についてはつまびらかでない。」  大変な弾圧をしたのです。この文章はうそです。私は、宗教をあえて上に置いたということを言いたいのはこれなんです。戦中における他宗教に対する弾圧は、実にいままでも凄惨目を覆わしむるものがある。これはだれがお書きになったか知りませんが、法務大臣、このことについてあなたは、もし他の宗教に対する弾圧を行った事例がつまびらかでないなどとなれば、私はこの委員会でこれを了承するわけにいきません。大変な弾圧をした。その事例をここでひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  153. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 この答弁書内閣の責任において差し上げたものでございまして、作成について私どもも若干関与いたしておりますので、ちょっと言葉の使い方だけを申し上げますが、御質問に応じてお答えをしたわけで、神社を保護するため弾圧を行ったという事例をお尋ねになった、そこで、そういう事例についてはつまびらかでないということをお答えしたわけであります。「神社を保護するため」という文句が上にくっついていることに御注意を願いたいと思います。
  154. 小林進

    ○小林(進)委員 それだから、いやでもあなたは三百代言だと言いたくなるのですよ。問わんとする趣旨は、戦時中において神社を国の祭祀とし、国家神道を絶対的なものとして他の宗教をどんなに弾圧したかということを問うておるのであって、「ため」とかそういう言葉の字句にとらわれて質問者は質問しているのではないのですよ。それをあなた方は、そういう言葉じりだけつかまえて問題をごまかしていこうとする。  戦時中においてこの靖国神社がどんなに宗教を弾圧したか。私自身も実に多くの経験を重ねているけれども靖国神社一つの神道という形式で、そして戦死した人を神様にして神道の行事をやっているのだ。戦時中であろうと戦後であろうと宗教儀式をやっていることには変わりはない。だから、他の宗教に言わせれば、自分の信じている宗教は世界一だ、この宗教によって自分も救われる、自分の魂も救われると思うから、その信ずる宗教を絶対視して、そこに信仰の道にいそしんでいる。それが、その上に宗教があるのだから、何宗教であろうと靖国神社は必ずお参りせいと言う。神だなは必ず祭れと言う。祭らなければ非国民だ、みんな憲兵や警察が来てそれを弾圧していったじゃないか。  私はここで、公明党の先生もいらっしゃる、私は公明党じゃありませんけれども、創価学会だってそのとおりですよ。この靖国神社でどんなに弾圧を受けたか。創価学会は戦時中におけるまさに弾圧の歴史です、創価学会だけではありませんけれども。それはキリスト教だってそのとおりだ。自分の信ずる宗教が絶対であると思わなければ信仰なんというものは成立しませんよ。あたりまえでしょう。それはあたりまえの話なんだよ。自分の信ずるものが絶対だ、だから自分の祭っている宗教は、キリスト教はキリストだけ祭る、日蓮宗は日蓮だけ祭る、創価学会は創価学会の御本仏しか祭りません。それが絶対であると信ずるがゆえに身も命もささげるという信仰の道が開けてくる。それを、靖国神社を祭れ、靖国神社お参りせい、靖国神社を神だなに祭れと言っているのです。祭らなければ非国民だ、そうやってみんな弾圧したじゃないですか。創価学会の第一世は牧口さんという人でありますが、これはわが新潟県の私の選挙区の人であります。これが靖国神社で弾圧を受けて死んでいかれましたよ。第二世だって、終戦で負けるまでは、靖国神社を神だなに祭らないといってぶち込まれていたじゃありませんか。そういう惨たんたる歴史がある。  これは宗教の上の宗教なんだ。宗教じゃないということじゃないですよ。宗教の上の宗教だから、キリスト教も門徒宗も日蓮宗も、マホメットであろうとイスラエルであろうと何でもいい、日本人である限りは絶対的に靖国神社お参りしなければいけない。なぜか。それは国のために戦死した人を神様として祭った、この神様はキリスト教よりも日蓮宗よりも仏教よりも阿彌陀様よりも一番偉い絶対的な神様なんだから、この神様にお参りしなければ日本人じゃない、非国民だ、これが戦中における靖国神社の偽らざる姿だったのじゃないですか。  その姿を、それではいけないのだ、絶対的なものではないのだ、並立した十八万の中の一つの宗教にすぎないということで性格を変えられたのが宗教法人化の出どころなんです。その違いを大臣ははっきり覚えてください。どうもあなたの話を聞いていると、国家のために死んだのだ、国のために尽くしたのだ、国家、社会に生命をささげた人だから、日蓮宗であろうとキリスト教であろうと何宗であろうと、これにお参りするのがあたりまえだとあなたは言わんばかりのお話だ。それは、戦中において各宗を弾圧した靖国神社の考えがまだあなたの頭にこびりついているという何よりの証拠だ。それが私は一番あなたの考えの危険なところだと思っているのです。それを改めてもらわなければ問題の解明にならない。どうですか、あなた。ひとつ答えてください。
  155. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 問題は、憲法二十条三項で禁止しております「國及びその機關は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」この規定から、いわゆる公式参拝が許されるか許されないかということだと私は理解しているわけであります。私は、その場合に、宗教施設に対しての公式参拝を禁止しているとは思っていないのだ、どうもそう読めないのだ、特に靖国神社については一層そう考えているのだ、こう申し上げてきているわけであります。私がそういう解釈をしていることにつきましてはいろいろ申し上げてまいりましたけれども、いま小林さんのお話を伺いますと、もっとさかのぼってお答えをした方が私の気持ち理解していただけるのじゃないかなと思いますので、そういう意味でお答えをさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。(小林(進)委員「どうぞ」と呼ぶ)  戦争に負けました昭和二十年の十二月に占領軍の総司令部から国家神道禁止の指令が出たわけであります。いわゆる神道指令と呼ばれるものであります。文化庁長官からもお話ししましたように、当時神社神道は宗教団体法の適用を受けてなかった。宗教団体とは別な扱いがなされておったわけでございます。その禁止を指令されたわけでございます。その中で、神道指令には、官公吏は公の資格において神社参拝してはいけない、こう書いてあるわけです。私は、これが公式参拝はいけないとか議論されるもとじゃないかなと、こういう気がするのであります。官公吏はその資格において神社参拝してはならない、こう示されているわけであります。その趣旨をこう述べているわけであります。宗教を国家から離す趣旨なんだ、すべての宗教を全く同じような法の基礎のもとに置きたいのだ、こういう趣旨だと言っているわけであります。同時にまた、神社神道が国家から離れた暁には他の宗教と同じように法の保護が許容されるのだ、許されるのだ、こううたっているわけであります。  私は、今日では神社神道も国家から離れた存在になっていると思います。したがいまして、あらゆる宗教と同じように法の保護を受け得るものだ、こう理解しているわけでございます。当時、神道指令で官公吏の公の資格における神社参拝を禁止したのでありまして、他の寺院仏閣に対する公の資格の禁止は指令していないのでございます。同時にまた、神社神道が国家から離れた暁には他の宗教と同じような法の保護が許されるのだと言うておるわけであります。  そして二十一年にマッカーサー憲法草案日本側に渡されたわけでありまして、そのときの宗教に関する規定は現在の規定とほとんど変わっていないわけであります。そうなら、私は、官公吏の公の資格における神社参拝は禁止しましたけれども、宗教施設の参拝は禁止していないわけでございますから、神社仏閣に対する公の資格における参拝を禁止したものだとは理解しにくいのでございます。  また宗教家には、偉大な実績、国家、社会に対する功績を上げてきた方がおられます。弘法大師しかり、伝教大師しかり、行基菩薩しかり、みんなそうであります。それらの特別なお祭りの際に、宗教を担当する国の機関が国の機関としてお参りをして感謝のお気持ちをささげる、功績をたたえる、それを憲法は許さないと言わなければならないのだろうか疑問でならないのであります。  同時に二十条の三項には、宗教教育をしてはならないと書いてあります。私たちは学校において、これも国の機関であります、宗教的情操は培ってもらわなければならないと思います。しかし、宗教教育をしてはならないということを字句どおりに読みますとできなくなります。しかし現実には行っております。ということは、宗教教育というのは、特定の宗教を広げるためのそういう教育をしてはいけないのだ、国が特定の宗教を特別な扱いにしてはいけないんだ、こういう趣旨だと理解をしているわけであります。日本において宗教的情操を国民の皆さんに持ってもらう、非常に大切なことじゃないだろうかな、こう私は思うわけでございます。もう一遍、この憲法の条章を日本人としてどう考えるべきか、理解をし直したらいいじゃないか、大いに解釈したらいいじゃないか、そして国の将来を誤らないようにしなければならないじゃないか、国会憲法の問題をみんな自由に論議する、そしてわれわれの憲法としてどう宗教に対して対処しなければならないか考えたらいいじゃないかと私は思うのであります。  特定の宗教を国家護持する、これは問題だと思います。しかし、宗教に対して国の機関が礼拝することを許さないのだ、なぜそう言わなければならないだろうか疑問でならない。いわんや靖国神社については、今日では国家の特別の庇護のもとにはありません。他の宗教団体とおっしゃるように全く同じであります。そこに国家、社会のために命をささげた、その方を祭っているのだ。国の機関が機関として感謝のお気持ちをあらわすために参拝する、それがなぜいけないと言わなければならないだろうか、私は遺族の気持ちになっても、そんなことを言われると耐えがたい気持ちになるのじゃないかと思うのであります。将来の日本国民が、次代を担う日本国民が国家、社会のために命を捨ててくれるだろうか、こんな気持ちまでするわけでございまして、もう一遍虚心に日本憲法をお互い見直したらいいじゃないか、議論し直したらいいじゃないか、そして結論を出そうじゃないか。結論だけ先に出ちゃっているのじゃないだろうか、結論だけが硬直的な対決をしているのじゃないだろうか。議論をした上で、ひとつみんなでよい結論を出そうじゃないでしょうか、これが私の真の気持ちでございます。
  156. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたはまだ、日本が負けたときに占領軍靖国神社参拝を禁止したということに対し非常にこだわっていられるようだけれども、あの戦時中に靖国神社参拝することを強制せられ、弾圧をせられ、それをやらなかったために監獄へぶち込まれて獄死した、そういう人たちが一体何万、何十万いたか、その苦痛を考えた場合には、これは禁止した方が当然なんだ。よく占領軍は言ってくれたと思う。そのわれわれの宗教を弾圧し、この戦争に狂奔し、国のために命をささげる、その教育の資料にして靖国神社というものをどんなに利用したか。  繰り返して言いますと、私も実は日蓮宗なんだ。日蓮宗でありますが、日蓮宗というのは法華経というのが絶対的な信仰の対象ですから、これが絶対に正しいんだから、これを信仰していればこの世もあるいは死んだ後も幸せになるというその教え一本にするのだ。これさえあればいい、他の宗教を信ずる必要はない、祭る必要はないというわけですから、私は日蓮宗になると同時に神だなもなくしちゃった、ほかの仏壇もなくしちゃった。これが弾圧の対象になって非国民扱いを受けた。神だなもなくて、靖国神社といったって、私どもの宗教団体は参拝しないのだ。それは、靖国神社でなく、わが宗教、わが法華経をこの世に祭ることが、靖国神社参拝し、すべての英霊を参拝し、すべての人たちをお慰めし、敬愛することになるのだから、これでいいのだというのが私どもの宗教の教理なんですから、その教理にまっしぐらに進んでいるのを、靖国神社の前に立って頭を下げないのは非国民だということで、それはこの席上でも言えないくらいの私どもは弾圧を受けた。  けれども、私だって戦争にとられたんですよ、ちゃんと国のために働いたんだ、命だけは悪運が強くて長らえてきたけれども、しかし戦争が終わるまで、靖国神社お参りしなかったことだけで非国民の汚名を背中にしょって、たった二つですか、まあ話は別になりますが、いま一つは、私はどうしても美濃部憲法の正しさを捨てるわけにいかなかった。この天皇機関説と靖国神社参拝しないという二つのために非国民のレッテルを張られて、そして戦時中苦難の道を歩いてきたという自分自身の体験もある。だから、戦争が済んで、ああやはりおのれの宗教はよろしい、靖国神社参拝しなくたってよろしいと解放されたときに、本当にどんなに私はほっとして生きがいを感じたか、いまでも当時のことが生々として感ぜられる。  それくらい靖国神社というものは、宗教の上に国が権力で圧力を加えて、そして国民を苦しめて戦争に狂奔せしめたという歴史があるのだから、その日本国民を民主的な国民にするために靖国神社参拝することを禁じたというのは、日本の軍国主義の思想を一掃し、日本を民主主義国家に再建するためには実によき手段をとってもらったと私どもは感謝しておる。そこにあなたと私の考えの相違点がある。  しかし二番目に、あなたは何も靖国神社だけじゃない、ほかの宗教と同じようにこれを扱うという、その考えは私は賛成なんだ。私だってそのとおりだ。しかし私は日蓮宗ですよ。日蓮宗ですから、私は自分の信ずる宗教と本山以外はお参りしないのです。門徒宗だって、それは西本願寺も東本願寺も靖国神社も行きますけれども、わが宗教は、ほかの宗教のいわゆる本山とかそういうところはお参りしないのだ。わがものが一番正しいし、わが宗教を拝むことによってすべてのもろもろを拝んだことになるという一つの原則がありますから拝まないのです。拝まないが、あなたのようにみんなどこも行って平等に拝む、そのどこも平等に扱うために靖国神社も同じ姿勢で、東本願寺も西本願寺も本堂へ行ったらお仏壇を拝むと同じように、靖国神社もその気持ちで拝んだら、そこに公式、非公式などとやかましい論議をしなくてもいいじゃないかというその一点は、私は何かあなたの言われることがわかるような気がします。まあわかるような気がしますが、しかし、時間が来たと催促が来ましたから、私は、この問題はここで結論を出すわけにはいきません。非常に本質的な問題ですから、また改めてひとつ言いますけれども、半分はわからないが、一部分だけあなたのおっしゃったことはわかるということにいたしましてこれで終わりにしますが、いま矯正局長がおいでになっているから、あなたに質問することもあったんだが質問時間がないから一つだけ言っておきますよ、せっかくおいでいただいたのでありまするから。  私は学生のころから、学生のころと言ったって昭和十年の卒業ですから、もう四十五年も昔の話だ。その当時から、日本では監獄などという原始的な言葉がまだ使われている、こういう言葉は刑事政策上からもやめるべきであるということを盛んに教わってきた。ところが、けさ新聞を見たら、いみじくもようやく何か監獄という言葉法律から削除するというふうな法案か何か審議会で答申が出されたように聞いておるのでありますが、この問題も長話をしていたのではいけませんが、それに関連いたしまして、いまの刑法の原則はわからぬ。応報主義が主体になっているのか、教育刑、目的刑が主体で刑事政策が進められているのか。  それに関連いたしまして、いわゆる刑期の問題です。不定期刑というやつは、私ども古い話だから、いまこんなことを言ったら笑われるかもしれませんよ、笑うなら笑ってくださってもいいが、その不定期刑というものが一体どんなぐあいに生かされているのか。その中にも相対的不定期刑とか絶対的不定期刑とかいって、本人の改悛の情あらたかにして社会的適応性ができれば十年の刑期があろうとも一年でも半年でも出してやったらいいじゃないかというのが絶対的な不定期刑主義でしょうけれども、ある程度改悛の情あり社会的適応性ができたらまあ三分の二くらい刑期を終わったら後はまけて出してやってもいいじゃないかというふうな相対的な不定期刑主義とか、いろいろありますが、現在の行刑の実際面を時間がないから簡単に聞かしていただいて、次の質問の素材を私はちょうだいしておきたいと思いますから、どうぞ。
  157. 豊島英次郎

    ○豊島政府委員 刑期の問題でございますが、いわゆる純粋の不定期刑は少年しか現在の法規ではとっておりません。したがいまして一般成人につきましては定期刑なんでございますが、先生の御質問趣旨は仮釈放の運用がどうなっておるかという御指摘だと思いますので、その点についてお答えいたします。  現在の法規上は、有期刑の場合は三分の一刑をつとめますと、あと仮釈の恩典に浴し得る、無期の場合は十年つとめますと仮釈の恩典に浴し得るということにはなっております。実際には三分の一経過で直ちに仮釈という例はほとんどないだろうというふうに思います。さはさりながら、およそ七、八〇%の者は仮釈の恩典に浴しております。刑期の七、八〇%をつとめて仮釈の恩典に浴するのが一番多い数字だろうというふうに考えております。仮釈そのものは地方更生保護委員会が独立した機関として判断いたしておりますので、私ども施設を運営しております者は判断権を持たないわけでございますけれども、ただ仮釈が適当だと思われる受刑者につきましては仮釈放の申請をしてやるということができますので、この面で将来とも社会復帰の可能な受刑者につきましては前向きに対応していきたいというふうに考えております。
  158. 小林進

    ○小林(進)委員 これで質問を終わります。
  159. 高鳥修

    高鳥委員長 午後一時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十七分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  160. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。塚本三郎君。
  161. 塚本三郎

    ○塚本委員 去る九月の三日、元日共幹部でありました伊藤律氏が成田に帰ってまいりました。それに伴いましてさまざまな憶測の記事が新聞報道等を初め週刊誌にいっぱい出ております。しかし事態は、全く憶測の域を脱していないというのが実情でございます。私も伊藤律氏とは個人的には何ら面識はございません。しかし、新聞の写真などで見ておりました伊藤律氏はきわめてスマートな男であり、あるいはまたさまざまなことが記事等で伝わってまいりました。二十九年ぶりで祖国に帰ってまいりました伊藤律氏の姿は、戦前あるいはまた戦後における彼の華々しい活躍をした当時の写真と比べると、見るも無残な姿に変わっております。  報道によりますと、目も十分見えない、耳も十分に聞こえないようであります。言語も不自由で、日本の大使館には筆談でしか話してないというほどの障害に冒されておる。普通の状態で二十九年間中国に生活しておったとはとうてい想像できにくいのであります。あるいはまた、いろいろな記事を読んでみますると、北京の町をほとんど知らないとか中国語も知らないと語っておる記事も出ております。  これらの憶測等から見まして、不法に監禁をされ、査問というリンチを受けたと想像するのが日本人的常識ではないかというふうに判断されますし、あるいはまた、ここに出ております新聞の切り抜き等を見ますると、監獄で日共の査問などと大新聞が堂々と見出しに書いておるような記事等も国民の間に十分行き渡っております。私たちから見るならば、伊藤律氏がどういう生活を送っていたか、マスコミの諸君が取材に行っても今日なお取材ができないという、中国の拘禁状態が日本国内においてもそのままとられておるやの、私はそれは誤解であると思いますけれども、それさえも生んでおるというのがきょうこのごろの姿であります。  時あたかも韓国におきます金大中事件では、外務大臣から総理大臣に至るまで、人権を中心として憂慮を表明されておるのであります。私たちもこれは心配だと思っております。しかし、それと違いがないほどに日本国籍の、そして私たちとは考え方は対立いたしますけれども、かつては一党の大幹部であった彼がその人権を侵されたという心配があるとき、一政治家としても一政党人としても、私たちはこれを放置するわけにはまいらぬ事態ではないかというふうに判断いたします。  そこで、与えられました時間でお尋ねをしてみたいのですが、まずその前に、そういう彼らの行ったことに対しましてこれを公にいたしますると、名誉棄損等の法的な処置等をとられて、事実上問題点が非常に多くなってくる事態も私たちは承知いたしております。  たとえば法務大臣、あなたも御関係があるようでありますが、民社党の「革新」という月刊誌で調べて報道いたしておりますが、これによりますと、九人の国会議員が日本共産党から告訴されておる。リンチ共産党事件に関する演説等を私たちがいたしましたときに、実は名誉棄損という名前で刑事告訴をされております。(発言する者あり)君たち自分でやっておいて知らぬのか。そういうことで私も告訴をされております。したがいまして、その告訴をされておる九人の国会議員については間違いがないか、名前をちょっと教えていただきたいと思います。
  162. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 突然のお尋ねでございますので、正確な資料を持っておりませんので名前等は具体的に申し上げかねますけれども、何人かの政治家の方が告訴をされたことは承知しております。
  163. 塚本三郎

    ○塚本委員 三人の閣僚も今日告訴中だと聞いております。奥野さん、あなたもそれから中山大臣も、そうして中川大臣も告訴されておると聞いておりますが、それは間違いありませんか。
  164. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私の街頭演説を材料にして共産党から告発がなされております。
  165. 塚本三郎

    ○塚本委員 私も刑事告訴をされておりましたけれども、これは不起訴になりました。しかし直ちに民事訴訟に訴えられております。民事訴訟というのは大変なんです。私たちも彼らと対抗するために相当数の弁護士団を擁して闘わなければなりません。私が払った今年一カ年における弁護士料と裁判費用等は数百万円であります。これを何年続けるのかわかりませんが、私はまだ後ろ盾がありますので対抗して名誉を守るだけの努力ができる人間であります。しかし選挙演説等で、かつて有罪であったとか判決を受けておるという事実を形容詞をつけて演説をいたしますと、それでもって次から次へと本院における国会議員だけでも九名の議員さんが告訴をされておる。これは最終的に無罪になったとしても、無罪になるまでに年間数百万円ずつの弁護士料を払ってたえ得るだけの国会議員さんが何人おるでしょうか。  考えてみますと、この手段をとること自身が民主主義の世界における言論の自由の弾圧で、彼らは弾圧という名前で名誉棄損で告訴しておりますが、告訴を連発すること自身がむしろ選挙妨害であり言論自由の妨害に当たりはしませんか。中身よりも、量が多くなれば心理的に対抗できると言ってみたって、弁護士さんの費用だけでもそれは弱気にならざるを得ない。日本共産党の諸君みずからがこういう状態で、こういう事態を見ますと、私は後ろ盾を持っておりますから最後までがんばる自信がありますけれども法務大臣、あなたはどうでしょうか。
  166. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、自民党推薦の候補者と共産党推薦の候補者の争いの選挙でございまして、街頭演説で共産党の性格、そういう意味合いにおいて宮本党首のことを話したわけでございました。翌日直ちに赤旗に、私を告発した、こう書かれておりまして、選挙戦術でおやりになっているのだなと思いました。いまおっしゃいますように、選挙戦術で使うのもよろしいのですけれども、長くそれをやってまいりますと、共産党自身が強弁をしているその性格を印象づけることになって、プラスにはならないのじゃないかなという判断を私としてはいたしたわけでございました。
  167. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、長くやっておれば共産党のプラスにならないという判断を私も持っております。  しかし、刑事の場合はわれわれはそれに対してそんなに対抗する必要はないのですが、民事の場合には一対一でどんどんと裁判が進んでまいりますから、これはたとえば私のように数百万円ずつ毎年かけてたえ得るだろうか。長く続けば共産党の諸君の方が不利益になると判断する。続けるだけの資力と勇気と背後があるのであろうかということを考えてみると、物理的に私はこのこと自身もやばいからやめておこう、こうなってしまうというのが私の判断でございます。  そこで、そのポイントは、共産党はリンチ事件は全くなかった、何もなかったという立場で、リンチ事件があったという立場で物を言う国会議員の選挙演説は違法だと訴えておる、こういう状態だと思うわけでございます。だから私たちは逆に選挙運動のようなときに、ここではっきりしたような問題に、形容詞や副詞がついたからといって、その形容詞や副詞だけをとらえて、そういって刑事告訴だ、あるいはまた民事訴訟の賠償要求や謝罪要求をするというようなこと自身が、私は選挙の自由の妨害になるというふうに思いますが、大臣どうでしょう。
  168. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 民事訴訟の場合には負けた者が訴訟費用を負担するわけでございますけれども、その訴訟費用の中には一般的には弁護士の費用は含まれないわけでございますので、戦術的に民事訴訟に共産党の方が持ち込まれているのかなと思ったりもするのでございますが、実相はよくわかりません。しかし莫大な負担に追い込むという戦術は、私も、刑事事件の告発がいずれも不起訴になってまいってきておりますので、いかがなものだろうかなという疑問は持たざるを得ません。
  169. 塚本三郎

    ○塚本委員 そこで、戦前における宮本顕治氏のリンチ事件については、すでにここではっきりとあったという断定のもとに有罪の判決が下されております。ただ釈放になっておるのは、また別の事件であることは当時の稻葉法務大臣が、まことに奇妙きてれつという表現を本院予算委員会においてなされておりますが、その点は、法務大臣稻葉さんの御答弁と今日の法務大臣とは全然変わっておりませんか。
  170. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 占領軍の命令で政治犯釈放、それは治安維持法違反、しかし一般の傷害罪についてはそれは適用されなかった。したがって、網走刑務所から出られましたときには肺浸潤で刑の執行を停止するという形で出所しておられるようでございます。
  171. 塚本三郎

    ○塚本委員 そこで、これは戦前のことだから、もはや現在の物差しで当てはめていくことには相当の無理があるという見解も私は承知いたしておりますので、その問題をいまここで取り上げるつもりはありません。  しかし、戦後特高警察が廃止されて自由な日本になっても、共産党内で血なまぐさいリンチ事件が多発しており、昭和五十三年、政府答弁、当時安原刑事局長だと記憶いたしておりまするが、裁判の結果リンチ事件があったとして有罪が確定した事件が四つあるというふうに記憶いたしておりますが、その四つの有罪の事件について、事件だけちょっと、もし御記憶があったら、ここで説明していただきたいと思います。
  172. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 大変恐縮でございますが、突然のお尋ねでございまして資料の持ち合わせがございませんので、具体的なことはお答えいたしかねます。
  173. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは件数はどのくらいでしょうか。
  174. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 当時の刑事局長が申し上げましたように四件ということは事実だったと思います。
  175. 塚本三郎

    ○塚本委員 五十三年に四件で、その後なお数件の有罪確定判決があったと一部報道されておりますが、その点いかがでしょうか。
  176. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 正確なことではございませんが、その後はあったということを明確に聞いておりません。
  177. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは、なおいまそういうことで裁判中の事件は他にどれくらい残っておりますか。
  178. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 これも正確なことがお答えできませんで恐縮でございますが、現在裁判係属中のものがあるということもつまびらかにしておりません。
  179. 塚本三郎

    ○塚本委員 これは時間の終わるまでにちょっと問い合わせてもらえますか、大体何件ぐらいが残っておるか。そんな答弁では困ると思うものですから。よろしゅうございますか。  そこで、日本国外における共産党のリンチ事件に関連して、私は政府にお伺いしたい。先ほど申し上げた元日本共産党幹部伊藤律氏の件であります。伊藤律氏は、今年八月中国で拘禁を解かれ、九月三日実に二十九年ぶりで日本に帰ってまいりました。伊藤氏は今年初め中国赤十字当局に身柄を移されるまで北京のどこに拘禁されていたのか説明してもらいたいと思います。
  180. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  伊藤律氏が本年九月帰国したわけでございますけれども、伊藤律氏が北京におり、かつ日本への帰国を強く希望しているということについては、八月末中国側から在北京日本大使館に連絡がございました。日本大使館としては、御本人が北京に在住していること、それから伊藤律氏が帰国を強く希望しているということを確認するために、三回ほど大使館員が伊藤律氏から事情聴取をしております。その間において伊藤律氏は、本年一月中国紅十字会の管理下に置かれて、その当時も中国紅十字会のお世話になっておるということでございました。その以前の状況については、伊藤律氏自身及び中国側も明確な説明をしていないという状況でございます。
  181. 塚本三郎

    ○塚本委員 ちょっと外務省、説明はしていないけれども、あなたの方からは中国当局に対してどういう聞き方をいたしましたか。
  182. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 中国当局からは、伊藤律氏が北京におって日本に対して帰国を強く希望しているということでございましたので、在北京日本大使館が、一般の在留邦人と同じように扱って、本人の確認と御本人の意思の確認という手続をして帰国手続をしたということでございます。
  183. 塚本三郎

    ○塚本委員 一般のというようなあれを中国は明確に答えましたか、外務省。
  184. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  中国側は、伊藤律氏が中国に長く亡命していたという立場をとっておりまして、この点は中国の紅十字会の記者会見でも明らかにされているところでございます。
  185. 塚本三郎

    ○塚本委員 いや、そんなことはわかっているのですよ。どこにということは、北京の中のどこにということを聞いておるのですが、その点聞きましたか。
  186. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 北京のどこということについては照会いたしておりません。
  187. 塚本三郎

    ○塚本委員 伊藤律氏の拘禁は、昭和二十八年、北京に逃げていた当時日共幹部から中国当局に頼んだことによってなされたとする新聞報道がほとんどでありますね。  各紙とも、朝、毎、読とも中国当局にもとの日共幹部の仲間が頼んだという表現になっておりますが、頼まれて拘禁をされたという報道がなされている以上、本当に拘禁されたのか、あるいはまた一般の人と同じように生活をしておったのかということを確認することは、いわゆる日本国籍を持つ者の人権保護の外務省の責任ではないかと思いますが、その点あなたはどうお考えですか。
  188. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 外務省及び北京の日本大使館といたしましては、伊藤律氏が日本に帰国したいという希望を持っておられる、意思がかたいということで、御本人であることの確認と、それから帰国意思の確認ということをした上で帰国手続を進めたということでございます。それまで中国のどこにいたかというような点についても一応照会、事情聴取はいたしましたけれども、御本人から説明はなかったというように承知しております。
  189. 塚本三郎

    ○塚本委員 本人からは言わない、中国からは聞いていないのか、よう聞かないのか、聞く意思がないのか、聞くとうるさくなるのか、この点は後からお聞きしたいと思います。  それでは、拘禁をされたというふうに一斉に報道されておりますが、それも外務省が行ってそうして所在を確かめたり、あるいは伊藤律氏の言動等を伝え聞いての報道だと私は判断いたします。その場合、先ほど申し上げたなぜそのように拘禁されたのか。これは元日共幹部が頼んでなしたというのがいわゆる朝、毎、読各紙等あるいはまたサンケイなどは特に詳しく報道をいたしております。一体こういうことについて、いわゆる拘禁をされておるとか、あるいは朝日のごときは監獄という表現を活字に使っておるはずであります。そういうときに金大中問題に対する人権を憂慮しておる情け深い外務省が、日本国籍を持つ者に対しては、共産党員ならば冷淡であってよろしいとは、立場を異にする民社党員でも許されないと申し上げておきます。どうして拘禁されたのか、もう一遍外務省の意見を聞きたいと思います。
  190. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  先ほど御説明いたしましたように、御本人であることの確認と御本人の意思の確認について、在北京大使館では三回伊藤律氏と直接接触をしているわけでございます。最初が八月二十三日で、大使館員は伊藤律氏であることをほぼ確認して、伊藤律氏の帰国意思を確認いたしました。八月二十六日再び接触いたしまして、帰国手続の説明、事情聴取を行いました。それから八月二十九日でございますけれども、三たび伊藤律氏と接触いたしまして、本人から確認書の提出等を得たわけでございますけれども、この間、御本人のそれまでの過去のことについて事情聴取に努めましたけれども詳しく語りたがらなかったということでございまして、かつ、旅券を伊藤律氏が持ってなかったということでその不所持の理由についても照会いたしましたけれども昭和二十六年九月に出国して中国に渡ったということ以外には多くを語りたがらなかったということでございます。
  191. 塚本三郎

    ○塚本委員 外務省は人間さえおればそれでいいんだというふうな見方で、どのような経緯で二十九年間も拉致されておったとか、どうしてこんな見るも哀れな姿に変わってしまったとか、どこに拘禁されておったとか、新聞がこのように一生懸命報道しておるのにかかわらず、そのような御答弁はいかにも冷たい答弁で、もう一遍言いまするが、日本国籍の伊藤律氏と韓国籍の金大中氏との扱いがいかにも不均衡であることを私は憂慮いたしております。  そこで法務大臣にお聞きしたいと思います。その経過につきまして、ここに「伊藤律と北京・徳田機関」という書物が最近発行されております。元日共幹部で伊藤律氏が拘禁されるまで北京で彼と一緒に仕事をしていた藤井冠次氏が、最近「伊藤律と北京・徳田機関」なる書をあらわし、その六十一ページに次のごとく述べております。すなわち、北京で拘禁されるときの様子を次のごとく述べております。  「ある日、機関に」、機関にというのは、彼らの住まっておるところを当時は共産党の本部と彼らは言っておったようであります。亡命政党のような形のようであります。「機関に帰って一号館に連絡にゆくと、入口に、中共の公安部隊の兵士が二人立哨している。いつからそこに立哨していたのかは知らない。が、いつの間にか、風のように入って来てそこに立った印象であった。奇異に思いながら、さらにゆくと、入口から突然、公安部隊の兵士に両腕を抱えられた律が、」というのは伊藤律ですね。「紙のように蒼白な顔をして姿を現わした。背後には、野坂や西沢の」というのはいまの野坂参三氏、西沢隆二氏です。「顔も見えた。冷静で、事態を先刻承知している顔である。律は私に冷い一瞥をくれたが、無表情に口をつぐんだまま、戸外に待たせてあった黒塗りの公安部隊の乗用車に乗せられ、拉致されていった。」拉致されてと、見ておる本人が、しかも当時彼の部下の共産党員がそう言っておるのです。「律は私にとっても、単に上司という関係以外には疎遠な存在であったが、日常ならば、私に声をかけてよい筈である。私はその蒼白な顔の強ばった無表情に、実に異様な衝撃をうけた。それまで、そんな顔の彼を見たことがなかったからである。さらにいえば、私が正確な日付を覚えていないのに、いまにその場の光景を忘れないのは、それが私の律を見た最後だったからである。」  こういうふうにして、明らかに現場に立ち会った本人が、律が帰ってきたことによってあわてて、九月二十九日発行になっておりますから、あわててそのときの印象を書いておると見まするが、人権を守る法務大臣の立場から、この記事を見てどうお感じですか。
  192. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど塚本さんがおっしゃいましたように、目を悪くしている、耳を悪くしている、中国在住の間ただごとでなかったんだなという印象を深く、気の毒だなという気持ちと一緒に感じたわけでございました。私たちはやはり人権を特に何よりも大切にしていかなければならない。それだけに痛々しい感じを持ったわけでございました。  伊藤律氏が日本に帰ってくるという問題の際に、日本が入国を許可するかしないかというような式の新聞記者の皆さんからの質問を受けましたときに、日本人が日本に帰ってくるのですから何のとがめもいたしませんよ、帰っていただきますよと、こう申し上げたわけでございましたけれども、その後の痛々しい姿を見まして、本当にいまの日本は幸せだなと思いますけれども、同時に伊藤律氏に対して限りない同情を感じた次第でございました。
  193. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣、いまの日本は幸せなんだけれども、私はまだ伊藤律氏は幸せではないと思うのです。いまだマスコミがいわゆる病院へ、まあこの中においでになるかもわかりませんけれども、掃除夫になってみたりあるいはまた日常生活の売り子になって入ろうとしても、全部つまみ出されてしまいました。病院におって、そして彼にどういう状況か聞こうとしても、マスコミが潜入しようとすると、日共党員と言っておりますが、それは恐らく記者も推量だろうと思いますが、いまもそういうことで、あるいは彼の奥様にすり寄ろうとしたら、黒い車に乗せられて彼がどこかへ連れ去られ、奥さん自身もまた連れ去られてしまったと、今月号の「宝石」に上之郷というルポの記者が書いております。いまも日本は幸せなんだけれども、何かしら政府に臭いものにふたをするという態度があったら、これは大臣人権擁護の立場から大変だと思いますから、この点も後で聞いてみたいと思います。  律がいわゆる拘禁されたその夜、細胞会議——というのは、北京における共産党のですよ。「細胞会議で、西沢から、律にはスパイ容疑があるため、身柄を中共機関に預けて査問することになった旨の報告があり、さらに西沢は、これが、細胞とわれわれ幹部とが一体になって律とたたかった勝利の成果であると細胞の奮闘を讃えた」と書いております。日共の幹部が中共に拘禁を頼んだとする新聞記事を裏づけるものだと私は思うのであります。  なお、中国の高官も最近は、当時の日共から頼まれて預かったというふうな発言も実はいたしておりますし、あるいはまた赤旗で野坂参三氏、まあ議長という名前がことさらのようにとってあるから、ちょっとどうしてなのかと思うのですけれども、いわゆる議長であるはずの野坂参三氏が、実は頼んで預かったような表現で、拘禁とかそうじゃないということで、頼んで預かったのだという表現を使っておりますけれども、本人の意思に反して預かったのだという表現になっておって、これは私たちにとってはやはり拘禁をされておるというふうに言うべきではないか。  律はその後中共の公安機関に拘禁されて、これまた藤井氏と一緒に彼の部下として働いておった元日共党員であります西沢の査問を受けた。中共の公安機関に拘禁されて、律が西沢の査問を受けた。「私はいつもの通り、一たん願和園に療養に帰ったが、律の検束から二週間ほど経たある旧、機関から帰還命令」日共の当時の北京本部から帰還命令を受けた。潜入してきておったけれども、もう一遍日本へ帰れというのです。そこで北京における野坂の部屋に呼ばれて、次のような帰国命令を受けたのである。だから事実上、この一切の支配をしておったのは野坂参三氏だと断定しなければなりません。彼はこう言っています。  「律の査問の結果一応の結論が出たので、これを内地の党から発表しなければならない。結論は西沢君がまとめるから、君はそれを暗記してすぐ内地に帰り、志田に報告してもらいたい」志田という日本における幹部に報告してもらいたいと言ったらしいのです。「彼は何をしたのですか?」と私は野坂に聞いた。野坂が答えるのに「彼は君、スパイで、わが党と国際友党との離間をはかっていたんだよ」こういうふうに返答しております。「へえ、信じられないな」と私は言った。だから、すべてこれを指導しておったのは、野坂参三氏と西沢隆二氏の二人が実は中国に頼み、そして彼を査問した、こういうふうに推量すべきではないか、これは現場におった人の記事でありますし、しかもここにも同じこと——私は会ってきた本人からもそのことを本だけでなく確かめてみました。  なお、中国の高官もまた、当時の日共に頼まれたという発言の記事がたくさん新聞に報道されております。これはやはりいわゆる国外における日共のリンチ事件と見るべきではないかというふうに私は判断しておりますが、いかがでしょうか。
  194. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまお話しになりました藤井さんの本でありますとかあるいは野坂参三さんがお話しになったことが赤旗紙上に掲載されたりしておりますので、いろいろな推察はできると思うのでございますけれども、私が不正確なことで申し上げてはいけませんので、事務当局も参っておりますから、事務当局の方でお答えをするようにさせていただきたいと思います。
  195. 鎌田好夫

    ○鎌田政府委員 最初にお断りいたしたいと思いますが、私ども調査したりあるいは情報として入手したこと、これはちょっと発表させていただくことは今後の調査の上で問題がございますので、結局申し上げるのは公表されている資料に基づくことになろうかと思います。その公表されている資料は、いま先生がお読み上げになった藤井冠次氏の著書と野坂参三氏の発表されたものということでございまして、それをどのように評価するかというコメントについては控えさせていただきたいと思います。
  196. 塚本三郎

    ○塚本委員 人権問題がこれほど重大だと言って他国の裁判にさえもいわゆる容喙しようとしておる日本政府にしては、いかにもわが国民に対して冷たいのではないかというふうに思いますが、資料がないということならば、いま言われた前後の関係をつなぎ合わせると私はそう判断することが一番いわゆる穏当ではないかというふうに判断いたしますが、私の判断は間違っておるとお思いでしょうか大臣
  197. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そういう判断も可能だと思います。
  198. 塚本三郎

    ○塚本委員 私は、法務大臣は血の通った塚本三郎とよく似た人権を尊重する人間だというふうに、同じ判断であったことにほっといたしております。  右のごとく、野坂参三氏と西沢隆二氏の二人によって中共に拘禁を依頼した、その上で査問し、スパイとして除名の処置をとったことが述べられております。だから、きちっと除名をしたからということでもって日本へ行って志田に報告して、そして日本におきまして直ちに、約一カ月後ぐらいには除名の決定を発表いたしております。これは北京におけるリンチ事件ではないかというふうに思いますし、それから先ほど御答弁になりましたような野坂参三氏の、われわれもここに周恩来と相談をして機関から離したというふうに出ております。ただ監獄や拘禁や拉致じゃないと言うのですけれども自分が頼んでやったことは、相談に周恩来という名前も彼自身が赤旗にみずから発表をしておられるし、私も査問を一、二回はしたということも彼みずからが語るに落ちております。これは前後をつなぎ合わせてみると、彼自身が西沢隆二氏と一緒になって、そして周恩来を初めとする中国の高官に二十九年間の拘禁を頼んだというふうに判断すべきではないかと私は思うのです。  このような事実関係から見て、また九月六日の朝日新聞だと思いますが、対日関係の任にある中国高官は、元日本共産党政治局員伊藤律氏の帰国問題について、中国は日本共産党から頼まれて伊藤氏を預かったと語っております。同高官は、伊藤律氏の亡命、中国での生活、帰国までの経緯を知り得る立場にあるが、伊藤氏の受け入れに関しては、昭和二十五、六年当時われわれは日本共産党と関係があったので、頼まれれば預かるのがあたりまえの状況だったと語っております。  問題はその預かり方ではないか。伊藤律氏は拘束された場所を監獄と表現いたしております。これは八月二十八日の読売の記事に、いわゆる監獄という表現を使っておるようであります。ここから私は、スマートなやさ男が帰ってきた姿はまさに監獄生活というふうに言うべきだということを最初に申し上げたはずであります。こういう人権問題で大臣が憂慮なさるとするならば、もしこの事実をもう少しつまびらかにする必要があるということは、これは不法拘禁の共謀による共同正犯あるいはまた教唆犯なり共犯なり、そういう罪状が出てくることを想定しなければならぬと私は思うのです。この点はいかがでしょうか。
  199. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 伊藤律氏が日本に帰っておりましても自由に物を言える立場にないように私も推測しておるわけでございまして、彼の身辺、おっしゃいましたように必ずしも好ましい環境でないというように心配をいたしております。
  200. 塚本三郎

    ○塚本委員 法務大臣は、彼の身辺、日本に帰ってきてからでもいわゆる幸せな日本人の姿ではないように、言葉を濁しておいでになるけれども憂慮の御発言がありました。この点警察はどういうふうに判断なさっておいでになるのでしょうか。警察来ておりませんか。
  201. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 警察といたしましては、御承知のとおり、伊藤律氏が中国から帰りました九月三日、本人から事情聴取をいたしております。その際、警察としましては、出管令等の違反事実の捜査という観点から律氏に聞いたわけでございますが、出国の日時は二十六年の九月である。そのほか出国の場所であるとかあるいはどこから出たかという点等含めまして、自余のことについては一切供述がなかたというふうなことで終わっておるわけでございます。  現在、律氏は入院中であると聞いておりますけれども、その後それ以上の進展はなく、また事実上本人の健康状況その他から見まして、いまさらに事情聴取をするというふうな状況ではない、こういうふうな判断でございます。
  202. 塚本三郎

    ○塚本委員 出管、入管のことを私は聞いておるのじゃないのです。先ほどからるる述べておりますように、立ち会った当時の同じ仲間の部下が目撃談を堂々と、昔じゃないんです、帰ってきたその直後にみずから著書を出して世に問うておるという事態を私は見、しかも中国高官が預かったということを言い、あるいはまた、やわらかい言葉だけれども野坂参三氏みずからが預かってもらったようなことを相手の高官の名前までみずから赤旗紙上に発表なさっておられるでしょう。  そうするならば、その結果があのような人権に関する問題だというふうに国民は心配しておるし、そのことをマスコミ陣も心配してあらゆる点を聞こうとしてもそれができない状態で、法務大臣みずから普通の状態とは違う状態だから憂慮しておるような表現があったので、それでは近い時期に健康が回復をしたならば警察は、なぜ拘禁されたか、そしてその状態はどうなっておったかということは聞く段取りをしておるわけですか。これはどこに聞いたらいいでしょうか、警察ですか。
  203. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 いまのところ警察といたしましては、本人の健康状況、そういったものを静かに見守っているというふうなことでございまして、いつどの段階で再び事情を聞くかというようなことの計画は持っておりません。  ただ先生がおっしゃいました、いろいろの人がいろいろ書いております、そういった点については私たちも十分承知しておるわけでございますけれども、何せ関係者も相当古い事件でございますし、また長い期間にわたる問題である、しかもまた場が中国であるといういろいろの面を考えまして、大変真相というものはむずかしいだろうということは何人も想像できるわけでございますが、いまの段階、警察といたしましては何が真実であるかということについては残念ながら承知する手だてがないというふうなことでございます。
  204. 塚本三郎

    ○塚本委員 法務大臣、もしこういう新聞報道やあるいはまた藤井氏の著書等が真実であったとするならば野坂参三氏や——西沢隆二さんはもう故人だと思いますからこれは問題になりませんけれども、不法監禁罪、刑法第二百二十条の行為をしたと判断し、その共謀による共同正犯かあるいは不法監禁罪の教唆かあるいは間接正犯か何らかの刑事的な責任を問われる、調べてみなければわかりませんけれども、調べてそれが事実だとするならば、それらのどれかの刑にはまるというふうに私は判断いたしますが、いかがでしょう。
  205. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 刑法の逮捕監禁罪に当たる行為がございましてそれに対して共犯関係が認められる、そういうような事実関係にございますれば御指摘のとおりであろうと存じます。
  206. 塚本三郎

    ○塚本委員 そんな法律解釈をぼくはここで聞いているわけじゃない。もうちょっとまじめに聞いてくださいよ。  いま申し上げたように、野坂参三氏の赤旗の文章や藤井冠次氏の言っておることや各新聞紙上においていろんな記事が出ておりますが、それらのものを総合して見まするときに大きな食い違いはないのです。とにかく本人の意思に反してやったことだけは野坂参三氏も認めておるのです。私も査問したと言い、頼んで預かってもらったと言っておる。リンチを加えたかどうやったか、上の下くらいの生活だったとかいろいろなことが出ておりますけれども、そのことは別として、本人の意思に反して監禁を長時間にわたってしたという事実があるとするならば、これは刑法二百二十条における不法監禁罪に該当する。あるいは正犯であるか共謀による共同正犯であるか間接犯であるか教唆犯であるか、いろいろと事実によって違うでしょうけれども、野坂参三氏などは何らかそれに当てはまると私は判断しますが、いかがでしょう。
  207. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 私も頭から否定したつもりではございませんで、事実関係が明らかでございませんのでこの席で責任あるお答えができないという趣旨で申したわけであります。
  208. 塚本三郎

    ○塚本委員 そういう事実があれば刑法に当てはまるという確答をいただきました。  さすれば、ああいう見るも無残な姿で帰ってこられた、どうしてそうなったのか国民が不審に思っております。だれがそういうふうにしてやったかということについて記事等が出ております。いま日本と中国とは国交回復が行われておるわけでございますから中国当局に、これは日本国会でも、私の名前を言ってくださって結構です、私はいまの中国の政府当局にも好意を持っておりますし、人権を守るという立場から見たときに、どうしてああいうふうになったのですかと聞いてみる。頼んだというところまではきちっと中国高官も言っておりますから、だれがどうだということでなくとも、人権を守る法務省の立場かあるいは外務省の立場かで中国に聞いてみることが政府としての当然の立場ではないかというふうに思いますが、これはどちらから答えていただきましょうか。
  209. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 中国側については、先ほどお答え申しましたとおり本年一月に中国の紅十字会が身柄を預かった、その後は人道的立場に立って病気治療、帰国手続等の世話をしたということでございます。それ以前の時期に御本人が中国側からどのような取り扱いを受けたかということについては、在北京大使館を通じまして中国側、具体的に申しますと紅十字会あるいは中国外交部でございますが、照会いたしましたけれども、その点は明らかにできないという立場でございまして、その点御本人も同じような立場をとっておるということでございます。
  210. 塚本三郎

    ○塚本委員 この一年間は紅十字会のもとで手厚い看護を受けたということは私は納得するのですが、その前については明らかにできないと中国ははっきり拒否したのですか。その点もう一遍はっきり言ってください。
  211. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 その点につきましては、中国側、具体的に申しますと紅十字会あるいは外交部は明らかにできませんということでございます。拒否という表現が適当かどうかわかりませんけれども、中国側の立場としてはそういうものだというふうに私どもは受け取っております。
  212. 塚本三郎

    ○塚本委員 外務省、中国と国交回復ができておる今日、このままいくことは日中間にもよろしくないと私は思うのです。人権の立場からもう少し事を分けて話したならば、いまの中国ならば、実はこういうふうであったんだよ、あの当時は預かる事情があったんです、いまは必要がなくなったし本人が帰国を希望しておるから人道に基づいて帰してあげた、もう少し親切に問うたならば向こうだって実はこうなんだよということを言ってくれるであろうと想像しております。  紋切り型で、ひどい目に遭わした、どうしてこうなんだという聞き方をすればノーと言うでしょう。日中関係の友好のためにももう少し懇切に聞いてみる。いろいろな新聞等のこんな記事を見ますと、どうしてこうなったのだ、やはりその疑いを明確にする。あるいはまた四人組がどうだとか、あるいは林彪の裁判等出ております。あの当時、残念だったけれどもこうだと言うのならそれもいたし方がないでしょう。あるいは査問に来た、その査問でどういう形になったかということくらいは親切に聞いてみることがいまの政府の立場ではないか。こんなに多く、大々的に週刊誌各誌に毎週のごとく載っておりますときに断られただけでは日中友好の実を汚すという心配を私は持っております。  だから、こういうことを解消していただきたいということで外務省は、もう一度親切に中国当局に好意ある親中国の議員と議会の発言お尋ねするのだというふうにやってもらいたいと思います。外務省いかがでしょう。
  213. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 先ほど来御説明しておりますように、外務省としては、中国側の立場すなわち本年一月以前の取り扱い、事情について中国側に照会いたしました。紋切り型で照会したわけではないと思いますけれども、その点については明らかにできないという立場でございますので、それはそれとして受け取らざるを得ないのではないかというように考えております。  また、御本人についても同じようでございまして、御本人が明らかにしたくないということでございますから、その点、中国側の立場が明らかにできないということを踏まえてさらに中国側に照会するということについてはいかがかと存ずる次第であります。
  214. 塚本三郎

    ○塚本委員 大臣でない君にそんなことを求めても無理であるから、この点は私はもう一遍改めて別の機会にやります。大臣でなければこの判断はできないと思いますから、聞いた方が無理だったと思います。  しかし、警察の方へもう一遍確認をとりますけれども、警察としては、拘禁中からその後のことについて、病状が回復をしたいつかの時点で聞くという意思を持っておるというふうに受けとめていいかどうか御答弁願いたい。
  215. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  いまの件につきましては、伊藤律氏の今後の病状いかん、健康の回復いかん、あるいは最も基本的な問題は伊藤律氏の心理、そういうことを全部話したいという気持ちになるのかどうか、そういうところにかかっていると思います。
  216. 塚本三郎

    ○塚本委員 無理にさせることはできませんので、そういうような状態を注意深く見守ってできるだけ真相を明らかに——彼も話したいであろうというふうに私どもは想像しておりますから、注意深く見守ってほしいと思います。  中国高官の言を日本政府が事実関係の調査をすることについては改めて大臣に聞こうと思いますが、三十七年ごろまで日共幹部が査問に来ていたが、その後来なくなったというふうに伊藤律氏が語ったというふうに新聞報道がなされております。これは八月二十九日の読売であります。あるいは日共が姿を見せなくなった時期は一九六二年、昭和三十七年というふうに記事が出ている。これは九月一日の朝日のようです。あるいは、律氏が陳述しているように査問が三十七年まで続いたとすればというふうに、外務省が伊藤律氏と会ったときに、伝えられるところによると、筆談等で彼は昭和三十七年まで日共が来たということ、査問を受けたということに受け取れるのですが、そういうことを語ったというふうに報道されております。この事実関係、これは恐らく最初は政府以外には会ってないと思うのです。だから、彼の報道、新聞がいいかげんに報道しておるとは思いませんが、いかがですか。
  217. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。  先ほどお答え申しましたとおり、北京の日本大使館を通じて三回伊藤律氏に事情聴取を行っております。その目的は、御本人であることそれから御本人の帰国意思の確認ということでございますけれども、その間若干の事情について聴取しておりますけれども、その内容について明らかにすることはむずかしいということでございます。他方、新聞報道にはかなりの量の記事が書かれているわけでございますけれども、その一つ一つについて確認あるいは否認ということは差し控えさせていただきたい、かように思っております。
  218. 塚本三郎

    ○塚本委員 それでは、律氏は三十七年まで来たということだけは、中身はきょうの段階では聞きませんが、会いに来たということは律氏ははっきり言っておりますね、外務省。
  219. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 事情聴取の具体的内容については、ここで私から申し上げることはできません。非常に申しわけございませんけれども、私がそういう事情聴取の記録を読んだ記憶が定かでございませんのでお答えできないということでございます。
  220. 塚本三郎

    ○塚本委員 逃げちゃいかぬよ。さっき中身は申し上げられませんけれども来たということは語ったということをあなたは言っている。それは違うのですか。もう一遍言ってください。来たことは事実なんですか。各紙がみんな報道しているんだ。日にちまで、出どこまで私は言っているんですから。
  221. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  三十七年云々ということについて新聞記事が出たということは私も記憶しております。しかし、事情聴取の内容について、その記事を含めて肯定するあるいは否定するということは、立場上できないということでございます。
  222. 塚本三郎

    ○塚本委員 まあ立場上できないということは、これはまだ捜査の必要があるからというふうに判断してもいいですか、外務省。
  223. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 お答えいたします。  捜査の問題と申しますよりも、御本人の希望ということでございまして……。
  224. 塚本三郎

    ○塚本委員 わかりました。本人の希望で、語ったけれども公にはできないというふうに私は判断いたします。  これは、日本共産党は昭和三十三年に統一が成って改めて彼の除名を正式に追認をし、発表しておるはずであります。共産党の諸君住われわれの最大の罰は除名だというふうに言い切って、われわれがリンチ殺人事件ととらえたことによって、あり得ないことだといって名誉告訴いたしておりますが、三十七年といえばすでに現在の執行部体制ができ上がっておる状態のもとにおいて、なお三、四年の間、除名をした後からも中国に行って執拗に査問、リンチを加えたという外国版リンチ共産党事件が実証されるということ、われわれが裁判にかけられておる、あるいは大臣も含めて、彼らの体質の問題に一番かかわる問題だ。しかもこのことは、現日本共産党がうそだうそだと言うけれども、現実に現日本共産党の諸君の今日もやっておること自身を裏づける重要な問題になる。大臣御自身の人権の問題もかかっておりますぞ。  私は、この問題を黙っておってくださればいいのだけれども、演説するごとにその会場へテープを持ち込んでいって、そしてこの問題が出るたびに告訴されて、いわゆる刑事の場合はいいけれども、重ねて申し上げますけれども、民事の場合には、相当の裁判費用に、長期にやれば、もちろんたえ得る者は勝つと思いますが、たえ得られない、財政力や精神力のない議員さんたちはどうなっていくのかということが憂慮されます。したがって、わが国の議会制民主主義と言論の自由を守るためにも、大臣、この問題は明らかにすることが必要だ。人権は当然国会議員も、議場だけではなくして、特にわれわれは演説会場等におけるところの発言は最大限に守られなければならぬと思います。その点、この問題はもう少しつまびらかにすることが政府の責任でもあるというふうに判断いたしますが、いかがでしょう。
  225. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 塚本さんのお話、大変重要なお話だと思います。国民の間にいろいろな憶測を生みますことは際限なく広がってまいりますので、そういうことのないように、できる限り明るくしていきたい。そのためにも事実関係も明確であることが大切だと思います。お話をよく踏まえて、機会あるごとにそういう努力はすべきだな、こう思っております。
  226. 塚本三郎

    ○塚本委員 大いに努力を期待したいと思います。  しかも、その当時だけではなくして、改めて繰り返しますけれども、彼が帰ってくるときに、長男の共産党員でない人が跡取りで迎えに行かれると思ったら、れっきとした共産党の党籍を持つ次男がわざわざ行って、すぐ帰ってくるという予告であったけれども何日間か向こうで時間を費やしておる。本人を説得するのに時間がかかったというふうに新聞は想像の記事を書いておることであります。彼は腎臓が悪いのです。それならば、帰ってきたならば腎臓を治すところの、特に近代医学においては透析等の設備のある病院に彼を入れるのが常識とされております。にもかかわらず、昭島病院という共産党の目の届くところで、その病気とは——それは悪いとは言いませんよ。東京にはもっともっと専門の幾つかのりっぱな病院があるし、どこも受け入れてくださるでしょう。それが、そこよりも共産党の目の届くところへ持っていってしまったということ等から周囲の問題等を見てみますると、いまなお彼の人権というものは不十分だと私ども判断いたしますし、新聞の記事を読む限り、読者はあるいは日本国民はすべてそのように見ておると判断するのが常識でございましょう。その点、今日なおと私は重ねて申し上げておきます、彼自身が自由に、にこやかな顔で笑って語れるようなことをするのは不可能ではないはずですね。単なる病状だけで逃げるのはひきょうだと思います。  だから私は、時日を区切って申し上げるつもりはありませんけれども、警察と法務省においては彼の人権をいままず直ちに確保してあげるような最善の努力をしていただくことと、外務省は重ねてその事態を強く憂慮して、間断なく中国当局に好意をもって、その当時はさもありなんと言い、しかも当時におけるところの指導体制が間違っておったこと、四人組及び林彪の問題等も裁判でいま明らかにするという、民主主義体制が相当程度前進をしておりますので、そういう目をもってわれわれも好意的にお尋ねをすることが必要ではないかということを申し上げたいのであります。  そして最後にもう一つは、法務大臣は先ほど憂慮なさったように、われわれの言論の自由はあくまでも守っていかなければなりませんけれども、こういう古い問題だけじゃない。戦後においても行われておりまする日共の国内におけるリンチ事件等あるいはまた国外におけるリンチ事件等もあるということを考えてみまするときに、十分その点を御配慮した行動をとっていただきたいということを希望申し上げて、外務省と警察と法務省の御答弁をいただいて、時間が来ましたので私の質問を終わります。
  227. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたように、いろいろな憶測が次々に生まれてこないようにあとう限り客観的に事実を明らかにする、これは世の中に対する信頼感を国民に持ってもらいますためにも大切なことじゃないかな、こう思います。そういう立場で努力をしていきたいと思います。
  228. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 警察としましてはすべて客観的事実で物を申し上げるという立場でございます。この件につきましても、伊藤律氏が客観的事実を述べられるということを私個人として期待しております。
  229. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 塚本委員の御指摘の点については上司に報告いたしまして検討させていただきます。
  230. 塚本三郎

    ○塚本委員 ありがとうございました。一言だけ警察に。  具体的に向こうから申告がなかったからとかいうことだけで黙っておる問題じゃない。申告できない立場も考慮しつつやるのが人権を守るところの警察や法務省の仕事なんだということを、蛇足でございますけれども、そういう配慮に立って対処していただきたい、希望を申し上げて終わります。
  231. 高鳥修

    高鳥委員長 榊利夫君。
  232. 榊利夫

    ○榊委員 私は、いま塚本委員質問をそこで聞いておりましたけれども、塚本議員は、一九七六年いまから四年前の秋にもやはり予算委員会で同じようなわが党の宮本委員長に対する個人攻撃を含めましてこの問題を取り上げました。私は、少なくともこの国会の場、国権の最高機関の場というものを公党の委員長に対する誹謗の場に変えてはならない、国会みずからを侮辱するものである、こう思うのです。まずそのことで抗議を表明して質問に移ってまいりたいと思います。(発言する者あり)黙って聞きなさい、質問中だ。  まずお尋ねいたします。宮本委員長に対する戦前の治安維持法等被告事件についていま非常に意図的な、ねじ曲げた質問が行われましたけれども、この問題は、御存知のようにすでに法的に決着済みの問題であります。戦前、日本の侵略戦争とそれからさまざまな自由の抑圧に反対をして反戦平和のために闘った、そのことのゆえに多くの日本人が迫害され、天下の悪法と言われた治安維持法のもとで追及、迫害、弾圧をされた。歴史の痛苦であります。そして、わが党の宮本委員長もこの点では不当な逮捕をされて、さまざまな不当な罪名容疑で追及をされた。しかし、その中でもあの戦争中の裁判所でさえ殺人未遂等々といったそういうことをなすりつけることはできなかったのであります。そして治安維持法によって裁かれたのであります。だからこそ政府自身も、政治犯罪のみで裁かれ一般刑事犯については無罪である、こういう見地を戦後とったのでありまして、このことは幾らも文書があります。そして治安維持法の廃止とともに釈放され、そして勅令七百三十号によって復権したこと、これはもう覆すことのできない歴史の真実であります。  私はその点で、この法的に決着済みの問題を三権分立下の国会でいろいろ論議をする、持ち出す、このことは日本国会として許されてはならないことだ。その点については一九七六年五月十二日の法務委員会で当時の寺田最高裁事務総長が、国会で裁判の内容についていろいろ議論するのは行き過ぎである、こういうことを明言されておりますけれども、このことは御存じでしょうか、政府
  233. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 戦前の宮本委員長に対します刑事事件につきましては、これまで当国会におきましてもいろいろと御答弁申し上げているとおりでございまして、治安維持法違反だけでなく、監禁、監禁致死、死体遺棄等の罪名がついた事件であったわけでございます。そして有罪の判決があったわけでございますが、昭和二十二年の五月に至りまして、連合国軍最高司令部の特別の指示によりまして、先ほど御指摘の勅令七百三十号に該当する者と同様に取り扱うという扱いになって、その結果、その時点から将来に向かって刑の言い渡しを受けなかったものとみなされる、その資格を回復するということになったわけでございます。したがいまして、そういう扱いになっておることは事実でございますが、判決の言い渡しがあったという事実は別に消滅しているわけではないわけでございます。
  234. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、いまも明らかになりましたように、戦後、その刑の言い渡しを受けざりしものとみなす、一件落着、そして勅令第七百三十号によって復権したのです。忘れないように、勅令ですぞ。  それから、奥野さんが先ほど御答弁の中で、釈放されたときに肺浸潤その他で刑の執行停止がやられた、こう述べられましたけれども、これは治安維持法廃止に伴って釈放、従来の法が追っつかない、旧来の法令の適用で釈放した形にしないといけないというので、当時の刑務所が病気という便法をとったわけですね。そしてつじつまを合わしたのでしょう。そういうことでありまして、何も正当な理由でなくて釈放されたのではない、このことははっきり申し上げておきたいと由心います。  さらに、選挙の場合での公党間の正々堂々たる論争についてでありますけれども、選挙であろうとどこであろうと人権無視の個人攻撃あるいは人権に対する侵害がなされてならないことは当然でございます。誹謗中傷へそれは許されません。公党の委員長に対してもそうであります。その名誉棄損に当たるものが行われたとき法に訴える、法治国家としてあたりまえのことであります。その場合、容疑を受けた人は法の裁きを受けるべきでありまして、それが選挙妨害であるとかなんとか、それは通用する議論じゃございません。むしろ自省すべきであります、反省すべきであります。告発された以上裁きの場で判断を受ける、政治の場では正々堂々と理論と政策で争っていく、それこそ私は日本の政治は民主的に発展していくと思うのであります。つまり、法という問題、名誉棄損という問題、この点については政府は厳正な立場をとっておられると思いますけれども、一言だけ御答弁をお願いします。
  235. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私がさっき塚本さんに対する答弁の中で、昭和二十年に宮本委員長が網走刑務所を出られたときには肺浸潤で刑の執行を停止するということで出られた、こう申し上げたわけでございます。それは、当時政治犯の釈放を命ぜられたわけでございますが、他の刑法犯があります場合には釈放されない、にもかかわらず釈放するわけでございますので、健康体でございましたけれども肺浸潤、刑の執行停止ということで釈放されたのだ、こう私は承知しているという事実をお答えしたまででございます。  なおまた、選挙演説ごとに共産党が宮本委員長の過去のリンチ傷害致死事件に触れます場合に告発を繰り返しておられる、それが何度も皆不起訴になってきておるわけでございます。不起訴になってきているにもかかわらず、なおかつ告発を続けられるということは、法治国家だから法の裁きを求めて当然じゃないかとおっしゃいましたけれども、私は、それはいささか権利の乱用というものじゃないだろうかなという感じもいたしておりますので、そういう繰り返しということは、やはりそういう繰り返し行為を行っている政党に対する批判に戻ってくるのじゃないでしょうかな、そういう意味合いで私は塚本さんにお答えをしたつもりでございました。
  236. 榊利夫

    ○榊委員 それは法務大臣としての発言なのか個人としての発言なのか。いろいろ重大な問題を含んでいると思いますけれども、それはあなた個人の意見ですな。
  237. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 法務大臣として塚本さんから私にお尋ねになったと思いますので、二十年のことについて私の承知していることをそのとおりお答えをさせていただいたわけでございます。
  238. 榊利夫

    ○榊委員 法務大臣発言には責任を持ってもらわなくちゃいけませんよ、政府を背負っているのですから、公人ですから。一つ二つの裁判の結果があった、その中にはあるいは不起訴処分というのもあるでしょう。しかし、それでもって全体を律することはできないわけであります。現に多くのところで係争中であります。そういう点では法務大臣が、こういうことで告訴しても不起訴処分になると一般化されてもらっては困ります。これは裁判結果に影響を与えることになります。越権ですよ。どうですか。
  239. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほども申し上げましたように、リンチ傷害致死ということに触れた場合にその都度告発が行われるということになりますならば、たび重なる同じ結果を生むことはいかにも乱用ということになりはせぬだろうかなという疑問を私は申し上げているわけでございます。違った事件で告発する、これは大いにやるべきだと思うわけでございまして、権利の主張、当然やってしかるべきでございます。  先ほどお尋ねがございましたのは、何人かの国会議員、何人かの閣僚が告発を受けているというお話でございましたし、またおおよその話は承知しているわけでございますので、それがなお法治国家だから権利の行使をどんどんやっていけばいいじゃないか、こうおっしゃられますと、いささかそれでいいんだろうかなという疑問を私は呈せぜるを得ないわけでございまして、そういう意味合いで疑問を申し上げているわけでございます。
  240. 榊利夫

    ○榊委員 奥野さんは大変疑問という言葉がお好きなんですけれども法務大臣というのはこれは重いのですね。これは検察官だってあなたの指揮下にあるのですから。そういう点では不起訴処分云々なんということはかりそめにも私は言ってもらいたくない、少なくとも国会の場で言ってはいけないことだ、私はそう思います。この事件、あの事件ということでなくて、その点についてやはり、これは最高責任者ですから。そう思いますが、いかがでしょう。一言でいいです。
  241. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 公党の委員長、私は名誉を損なわないようにしたい、この気持ちは持っております。ただ、一般的な問題として私の疑問とするところを申し上げたわけでございまして、具体の事案についてかれこれ申し上げるつもりはございません。
  242. 榊利夫

    ○榊委員 私はやはり、そういう法務大臣の政治姿勢、これは三権分立という立場から見ましても妥当ではない。この点では意見が違うというなら違います。しかし、その点については私はこれからも問題にしていくことがあると、これは留保しておきます。  いずれにいたしましても、この問題については厳正に法的に決着がついているものでありますから、それを不当に持ち出していわゆる傷をつける、人身攻撃をやる、少なくともそういうことはすべからくやめていただきたい、こう思います。そのことはまた法治国家として許されてはならない政治モラルでもある。  そこで、次の問題でありますけれども、伊藤律の問題で質問がございました。これについては政府も中国側も本人も人権問題だとはだれも言っておりません。外国でのリンチとか長期の拘禁とかあるいは拘禁の依頼とか、すべてこれは根拠のないフィクションじゃありませんか。こういうフィクションによる論議というものは、冒頭の言葉に戻りますけれども、国権の最高機関たる国会を結果的に冒涜するものになる、私はこう思います。  当時北京に亡命していた人たちのグループ、これが伊藤の素行上あるいは過去の特高警察のスパイ容疑などを調査するということで住居のあっせんを中国側に頼んだということは、野坂さんのこの文章にもございます。上流の下ぐらいの邸宅であった。真ん中が石畳の中庭で、右の方に二つ三つ部屋がある。料理人、使用人もおった、こういう状態であります。拘禁とかあるいは幽閉とか、そういったものじゃございません。その後いろいろ問題がはっきりして、そのグループから除名をされたということが経過でございまして、そのときは日本共産党が不幸な分裂のときでありまして、亡命グループそれ自体も不正常な機関でありますけれども、その点ではもちろん現在の党の中央委員会とは全く関係ございません。その当時の不正常なグループから政治的に除名された、これがすべてであります。それから先どういうふうに伊藤律が中国で生活をしていたのか、これは当人と中国の主権に属することでございまして、それをとやかく言う立場にはございません。憲法二十二条は、御存じのように居住の自由、移住の自由を認めているわけでありまして、そのことについて何か日本共産党が依頼したなんというのは、まさにこれはフィクションであるということ、したがって不当な誹謗ということになると思うのです。  ちょっと質問いたしますけれども、一人の人間が外国へ亡命をしてそこで生活をするということは、これはあり得ることですね。
  243. 渡辺幸治

    ○渡辺(幸)政府委員 御質問趣旨を正確にわきまえているかどうかわかりませんけれども日本人が外国に政治的理由により長期に滞在したい、現に滞在しているという事例はあろうかと存じます。
  244. 榊利夫

    ○榊委員 伊藤律は亡命生活をしていた。それで最近帰ってきた。わが党とはもちろん何ら関係ございません。それにかこつけて、何か一部の新聞でも報道されたことにひっかけて、リンチ云々みたいなことを言われましたけれども、本人も、リンチとかなんとかそういうことについては何も言っていませんよ。  それから、一九六二年まで日本共産党から査問を受けたなんて、とんでもない作り話です。本人側からも伝え聞いておりますけれども、本人もそれは否定している。根拠もないことをあたかも何かあるかのようにして日本共産党攻撃に結びつける。私はこれほど不見識なことはないと思う。何か理由があるのですか。ないでしょう。政府側だってないでしょう。まさに根拠もなければ理由もない、作り話による国会質問、これがすべてです。しかも、だれだれがこう言ったとか、こういうことも言われましたけれども、文革のときに大騒ぎしてそれを天まで持ち上げたような人たち、そのときの状態でくるくる、中国の言うことはそのまま真に受けてしっぽを振る、こういう人たちが言うのは信用できるかどうかということも、これはまた常識の問題であります。  私は一言申し述べさせていただきたい。このような架空の問題を持ち出しての国会質問というものは自来やめていただきたい。人権問題で言うならば、むしろ他に重大問題があるんじゃないでしょうか。いま命を脅かされている金大中さんの問題もそうです。それにどういう態度をとるか。あるいは民社党支持の労働組合の職場で暴力支配をふるっている問題なんかもやはり一つの人権問題ですよ。富士政治大学では乱闘、武闘訓練までやっているというじゃありませんか。私たちはそういうことじゃなくて、国会というものは正々堂々たる事実に基づく議論の場、また政党間の関係も正々堂々たる政策と理論による国民からの審判を仰ぐ、そういう態度をお互いに堅持してもらいたい、このことを希望するわけでございます。  そこで、本論の質問に移ってまいります。私は、国家機関の基本的なあり方の問題として靖国神社の問題でちょっと質問をしたいと思うのです。かつて国家神道のもとで靖国神社は陸海軍の宗教施設でした。職員は国家から給与を受け取っておりました。いまは違います。戦後靖国神社はいつ普通の宗教法人となったでしょうか。それは神道、仏教、キリスト教のいずれでしょうか。あるいは宗教法人はみずからの届け出によるものでしょうか。この三つを最初に伺います。
  245. 別府哲

    ○別府政府委員 お答え申し上げます。  靖国神社は、昭和二十一年二月宗教法人令の改正に伴う措置として宗教法人となる道を開かれ、所定の手続を経た後宗教法人となったものでございまして、宗教を区分いたす場合には神道系と考えておるものでございます。
  246. 榊利夫

    ○榊委員 いわゆる神社神道の宗教活動といたしましては、キリスト教とか仏教とかと違いまして、対外的な布教というのはほとんどありません。私の神というのはその家系だものだから知っているつもりでありますけれども、そのかわりに人を集めて祭礼をやり、祝詞を上げ、清ばらいをやって礼拝をする、これが神道の宗教活動であります。その礼拝も神道式のやり方、玉ぐしを奉奠してかしわ手を打って、十字を切ることは絶対ありません。つまり、礼拝というのは神道の最大の宗教的活動なんです。そう理解してよろしゅうございますね。
  247. 別府哲

    ○別府政府委員 礼拝を行うとうことは、現在の宗教法人法で言う「儀式行事を行い」その項目に該当するものと考えております。
  248. 榊利夫

    ○榊委員 そこで憲法第二十条は御存じのように信教の自由を規定し、政教分離を規定し、そしていかなる宗教団体も国からの特権を受けてはいけないとか「宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」云々。それから第八十九条も「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため」これを支出してはならない、こうなっております。その点では、これはもうありふれた常識なんですけれども、この政教分離の問題というのは重い歴史を背負った問題であります。特に国家機関が靖国神社にどうかかわるかという問題、これはある意味合いでは何百万の日本人あるいは何百万の宗教者の生活と結びついた問題だと言うことができると思います。  奥野法務大臣は十一月十二日の衆議院法務委員会で、靖国神社は他の宗教団体とは違った性格を持っている、この点で疑問を抱いているんだ、こう言われましたけれども靖国神社の特別な違った性格を挙げるとすれば、法務大臣よく聞いていただきたい、軍の宗教施設として戦争と直結した、それから天皇を尺度に祭神を決めた、こういったことが挙げられるだろうと思うのです。その点でお聞きしたいのですけれども、現在の一宗教法人としてのあり方はもう間違いで、戦前的なあり方が望ましいというふうにお考えなんでしょうか。
  249. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が申し上げていますのは、靖国神社に対する公式参拝、これが憲法二十条三項の「してはならない。」中に入るか入らないかという問題についてでございます。  政府見解としては、それが合憲違憲何とも断じがたいけれども、違憲の疑いがあるので公式参拝はしないんだ、こういうたてまえをとっているわけでございます。したがって、私自身も靖国神社参拝します場合には法務大臣として参拝しているのではない、個人として参拝しているのです、こう答えてまいっているわけであります。しかし、どうもしっくりしないという気持ちを持っておりますということから問題になっているわけでございまして、恐らく政府見解お尋ねになっているのではなくて、私個人の見解お尋ねになっているのだと思うのでございますが、(榊委員「いや、法務大臣として」と呼ぶ)法務大臣としては政府見解、いま申し上げたとおりであります。
  250. 榊利夫

    ○榊委員 私は個人として伺うつもりはございません。すべて法務大臣として一そこは法務大臣答弁席ですから、個人じゃありませんので。  あなたは同じ日に、国の機関ということを挙げて、大臣もある、刑務所もある、国立の学校もある、病院もある、こういうのを挙げて、こういう国の機関として一切靖国神社参拝することを憲法が禁止していると受け取るべきかどうか疑いを持っている、こういうようにおっしゃいました。戦前、戦中靖国神社は国家神道のもとで特別扱いされまして、戦場で死ぬということを美化するのに利用されました。そしてまさに機関として学校ぐるみ、病院ぐるみで、クリスチャンも念仏者も引率して参拝させられました。このことはクリスチャンにとりましては自分の神を裏切れということなんですよ。あるいは日蓮宗の信者にとりましては御本尊を裏切れということなんですよ。そういうことで宗教家が苦しめられた。これは歴史の事実です。信教の自由は否定されていたのです。昭和七年に靖国神社の大祭の際、東京の大学、高専生が宗教上の理由で軍事教官引率の集団参拝を拒否した事件があります。そのときも当時の文部省は、参拝拒否は許されない、こう言った。さらには御存じ特高警察が国家神道にそぐわない大本教だとか創価教育学会だとかキリスト教徒などを次々弾圧した、獄死させた。昭和十年から終戦までの統計だけでも治安維持法違反などで検挙された宗教関係者——宗教関係者だけですが約三千名に上ります。  奥野法相、あなたはそういう痛苦の歴史、これについてどういうふうに思っておられるのでしょうか。当然と思っておられるのでしょうか、あるいは何か反省的なものがあるのでしょうか。
  251. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 昭和二十年に占領軍から国家神道禁止の指令が出ておるわけでございまして、いわゆる神道指令であります。そこで神社に官公吏が公の資格参拝することが禁止になりました。そういう指令は宗教を国家から離す趣旨で言うているんだ、あらゆる宗教を同じ法的基礎のもとに置くために言うているんだ、将来神道が、神社が国家から離れた後においては神社も他の宗教と同じような法の保護を許容される、こううたっておるわけでございます。  そして二十一年にマッカーサー憲法草案日本側に渡されていまの憲法条文ができたわけでございます。自来この神道指令を占領中はずっと守ってきたわけでございますから、今日ではいまいろいろと御指摘になった事態はすっかりなくなっていると思います。また戦前は、神社神道は宗教団体法の適用を受けなかったわけでございまして、むしろどちらかといいますと国教的な性格を持っておったと言えるかもしれません。公費も使いましたし神官も任命いたしましたし、いろいろな指図を国自身がやっておったわけでございますし、終戦直前には内務省に神祇院というものを置きまして、神祇院が神社全体の行政をやっておったわけでございます。  そういう国が関与する事実は今日ではすっかりなくなっているわけでございます。なくなった現在において靖国神社をどう考えるかということは、新しい観点で考えたらいいじゃないか、また憲法条文もそういう前提に立って国民がこれを判断していったらいいじゃないか、こういうことで、いろいろ私なりの考え方を申し上げてまいったものでございます。
  252. 榊利夫

    ○榊委員 まさにあなたが言葉として挙げられておる国家機関はいろいろある。いいですか、病院もある、学校もある、東京大学、国立大学、何々国立病院、これは国の機関です。その機関として靖国に参拝する、こういうことが禁止されていると受け取るべきかどうか疑いを持っている、戦争中のような機関として参拝させたがいいという御認識ですか、そういうように変えていったほうがいいと……。
  253. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そんなことを言っていませんよ。憲法では強制的に参拝させることを禁止しているわけでございます。  そうではなくて、国の機関として参拝することが一切いけないかどうか、これに私は疑問をはさんでおるわけでございまして、靖国神社に限らず神社仏閣につきましても他の寺院につきましても、なぜ、国の機関が参拝する、文部大臣が文部大臣として行事に参拝する、それを禁止しなければならないのか。問題は、特定の宗教に特定な地位を国の権限で与えることは避けなければならない、私はそういうふうに理解をしておるわけでございます。  また最高裁の判断におきましても、宗教を国から離す、それは一切国が宗教にかかわり合いを持ってはいけないという趣旨ではないのだ、こういう判断も下しているわけでございます。同時に、最高裁の判断を申し上げますと、特定の目的を持って宣伝をする、布教をする、そしてその効果が不特定の宗教を援助する、助長する、促進する、そういうような効果を持つものを、あの宗教活動をしてはならないということで禁止しているんだ、こううたっているわけであります。でありますから、最高裁の判断におきましても、いわゆる公式参拝というのでしょうか公務員公務員資格参拝する、それを禁止しているわけのものではないんだという疑問も出てくるわけでございます。
  254. 榊利夫

    ○榊委員 よく聞いていただきたいのです。私は機関としてと言っているのです。機関というのは何も建物じゃないのです。みんな人間が入っているのです。その人間は仏教信者もいればキリスト教徒もいるのです。機関として参拝していいということになりますと、これは全然違うのですね。機関として参拝していい、その中にはキリスト教徒も何でも含まれておる。そうしていいんだという御認識ですか。
  255. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 機関という場合には国もありますし、あるいは内閣総理大臣法務大臣というようなものもございますれば、学校もございますれば刑務所もございますれば、いろいろな機関がございます。機関として参拝することについては違憲とも合憲とも断じがたいので、政府としては個人の資格参拝をするということにしているわけでございまして、私もそれに追随をしているということでございます。
  256. 榊利夫

    ○榊委員 だから政府としては、機関として参拝することは憲法上も疑惑、疑念があるから、疑いがあるから政府はやらない、こうでしょう。そうでございますね。
  257. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 心の問題を、私が神社参拝した場合に個人として参拝したのだとかあるいは法務大臣参拝したのだとか、けじめのつけがたい問題ではございますけれども、いまのような状態でございますので、機関として参拝したのではないのだ、個人として参拝しているのだ、こう申し上げてきているわけでございます。
  258. 榊利夫

    ○榊委員 もう一度念を押しますけれども、教育基本法も第九条で国公立の学校、これは宗教的活動をしてはならない。そして機関としてのそういう宗教的活動を禁止しているのです。教育基本法第九条です。これは明言しております、これは国公立ですから。同じような意味ですよ。  だから、国の機関としては参拝するということはやってはならない。これがいまの立場じゃないでしょうか。政府の立場であり憲法上の認識でしょう。国家の機関としてできるのだ、そうなればこれはまさに国家神道ですよ。そうなりますよ。
  259. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 宗教的活動をしてはならないという解釈が問題になっているのです。それは公務員公務員として参拝することを禁止しているととるのか、そこまでは言ってないよというように理解するのか。津の体育館の地鎮祭で神道行事を行った。最高裁判所は合憲と判断をした。その合憲と判断をした中では、国が宗教にかかわり合いを持つことは一切いけないと言っているのではないですよ、目的、効果から判断すべきですよ、こう言っているわけです。これは参拝を禁止していると私は受けとっていないわけでございます。  たまたま神道指令で、ほかの寺院に参拝を官公吏が公の資格でしてはいけないというようなことは一つも言っていないのですけれども神社に官公吏がその資格参拝をすることはいけない、こういう指令を出したわけです。そういう指令を出したのですけれども、その趣旨は宗教を国から離す趣旨ですよ、あらゆる宗教を同じ法的基礎のもとに置くためですよ、神社が国から離れた暁には他の宗教と同じような保護を許されるのですよ、こう言っているわけであります。そして二十一年にあの憲法ができたわけでございます。宗教に関する規定があるわけであります。しかし占領下ですから、神道指令が二十六年までずっと続いておったわけであります。二十七年に独立したわけでありますから、同時に神社神道というものが国から離れたわけであります。昔の国家神道はなくなっているわけでありますから、新しい角度でわれわれは宗教に対してどう対処するかということを考えたらいいではないか。  教育の場面においても宗教的情操を養っていく、これは非常に大切なことだと思うのです。生徒が神社仏閣に参拝することも当然宗教的情操を養うためには役立つのではないかと思うのです。それが学校として参拝したら憲法違反だ、こんなことになりましたら神社仏閣にも行けない。弘法大師がどういうお方であったやら、伝教大師がどういうお方であったやら、やはりときにはそういう雰囲気に触れることも宗教的情操を養う上には何らか効果があるのではないかなと私は思うのですけれども、少し憲法を過大に解釈していやせぬだろうかなという疑問を持っておるわけであります。しかし、いまたびたび申し上げますような政府見解でありますから、私も法務大臣資格お参りしているのではないのだ、こう言っているわけでございます。
  260. 榊利夫

    ○榊委員 奥野さんはどうも自分でおっしゃっていることがよくわかっていないのじゃないかという気がするのです、率直に言って。  つまり、個人としてでなくて、私が言っているのは機関としてということを言っているのです。機関として国家にはたくさんある。国家が一つの機関ですよ。たくさんの勤め人がいらっしゃる。いろいろな方があるのですよ、宗教信者は。機関として参っていいということになりますと、結局国家神道のような特別視して、そこに個々人の人たちの信教の自由というのを否定することになるのです。それを私は言いたいのです。これは歴史の一つの経験なんです。そこから今日の一宗教法人としての靖国神社のあり方、政教分離、国家の不介入、こういった本当に原則的な意味がある、こういうように思うのです。それで私は、抽象論じゃなくて、実際に戦争中にそういうことをやられた、そのことを踏まえて質問しているのです。  それで、率直に私聞きたいのですけれども、私この前鹿児島へ行ってまいりました。それで鹿児島の大坪白夢さんという、これは元読売新聞の記者をやっていた方なんですが、鹿児島の俳句雑誌で「きりしま」というのがある。そこで奥野法務大臣が鹿児島の特高警察の特高課長をやられていたころですけれども奥野さんの取り調べを受けたといういろいろな事情を私聞きました。決して訴えられました。それで、その特高警察でかつて宗教弾圧だとか言論弾圧をやったということ、これまた歴史の一ページでありますけれども、この点についてあなたは、かつてのそういう特高警察のあり方、やったことについてはどういうふうにいま考えていらっしゃるのか、あるいは大坪さんなどそういう犠牲者に率直に反省といいますか、謝るとかそういう気持ちはおありなのかどうなのか、この点伺いたいのです。
  261. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまお話しになりましたことを赤旗の記事で読みましたし、その後また共産党の方から御質問も受けました。時期を伺ってまいりますと、私が鹿児島で特高課長を七ヵ月やっておりますので、その間に起きた事件のようでございます。私は一人だと思っておりましたが、何か三人おられたようでございまして、私が鹿児島を去りましてから後にその人についての処分もあったようでございます。でございますから、必ずしも事情をつまびらかにはしていないわけでございまして、当時の治安維持法のもとにおける事件であった、こう理解をするだけのことでございます。
  262. 榊利夫

    ○榊委員 これは治安維持法のもとで行われたという、それが是だったのか非だったのか、この点はどういう御認識でしょうか。
  263. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 それは当時の裁判所なり検察機関なりの判断するところだと思います。
  264. 榊利夫

    ○榊委員 奥野さん自身はどういうふうに思っていらっしゃいますか。
  265. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 当然治安維持法がよかったとか悪かったとかという問題があるわけでございますけれども、私はもちろんなかった方がよかったなという気持ちはいたしますけれども、その当時の政治判断で、当時の政治に携わっておった人たちが考えて決めたことだ、こう思っております。
  266. 榊利夫

    ○榊委員 なかった方がよかったこれはもう当然のことでありまして、あれだけの宗教弾圧を生み出した、言論弾圧を生み出した、治安維持法のもとで。やはり国家神道、そのもとに宗教者を従えていったというのも、またそういう時代の政治の所産でもあったわけですから、そういうことはもう繰り返さないということの上で、靖国神社の問題には厳正な態度をとる必要がある、こう思うのです。しかも、靖国神社には東条英機らA級戦犯も祭られております。あなたは、戦犯の行為についての判断はともかくとして、そういう事情を前提として国の機関としての参拝もあっていいのじゃないかというふうにお考えなんでしょうか。
  267. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国家、社会のために命を捨てたその方々を靖国神社にお祭りしているのだ、こう考えておるわけでございまして、国家、社会のために命を捨てた方々に対して感謝の気持ちをささげる、そういう国家、社会の機関があってもしかるべきじゃないかなという疑問を持っておるわけでございまして、だからまた、公的参拝がなくても私人として参拝しているわけでございます。
  268. 榊利夫

    ○榊委員 つまり個人的に、宗教とはかかわりなしにやる方法は幾らもあるわけです。例の千鳥ケ淵もそうですし、それから国が行っている毎年のそれもそうです。  問題は、国としての機関としてということがいま一番の論議になっているわけだし、また宗教者自身一番不安を感じているのもそこでございます。したがって、そういう点は非常に重い中身を持ったものだということでございます。あれだけの日本人犠牲者が出たわけですし、日本人が三百十万死んだというだけではなくて、アジア人だって五千万も六千万も死傷したと言われているのです。そういう点で、東条英機らA級戦犯も祭られている。国のために、こうおっしゃいますけれども、同じ戦争で死んだ人でも祭られていない人もいます。西郷隆盛とか、要するに西南の役で倒れた人は祭られておりません。これはやはり別の角度で排除されたわけです。ところが東条は祭られている。  そこの前に、やはりその機関として云々ということになりますと、多くの宗教者も納得しがたいし、憲法論の問題ももちろんありますけれども、同時に、そういう事態に対して耐えがたい、認めるわけにはいかぬ、一体われわれの過去はどうなるんだ、戦争犠牲者の過去はどうなるんだ、遺家族のあれはどうなるんだ、こういう気持ちが生まれてくるのは私は当然じゃないかと思うのです。だれから、そういう重みを持った問題として、私は奥野法相の言われている機関として云々というところには非常にひっかかるわけであります。その点いかがでございましょう。
  269. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 憲法の二十条三項は「國及びその機関は」という言葉を使っておるわけでございます。同時に、神道指令が出ましたときは、官公吏は公の資格において神社参拝することはまかりならぬ、こう言っておるわけであります。そういうようなところを私は公式参拝というようにこのごろ言われておるんじゃないかなというように思っておるわけでございます。また靖国神社の場合には公式参拝意味があるんじゃないかな、国の機関として、それぞれの機関として参拝することに意味があるんじゃないかな、こう思うわけでございます。  私は、なぜ機関として寺院に参拝することがいけないのだろうかなという疑問もみんなが持っていいんじゃないだろうか、その上でなおかついけないという結論が出るなら、それはそれでいいんじゃないかな、こう思うわけでございます。まあフランクにひとつ議論をしていったらいいじゃないか。国家神道禁止の指令を占領軍が出しまして、そしてそのとおり国家から切り離されたわけであります。現在では他の宗教と神社とは同じ処遇のもとに置かれておる、こう私は思っておるわけでありますから、同じ処遇のもとにおいて国の機関が参拝することを禁止しなければならないかどうかということで議論もしていいんじゃないかな、こうも思っておるところでございます。
  270. 榊利夫

    ○榊委員 そこが問題なんですよ。  国としていいなんということになりましたら、それはもう大問題になりますよ。だって、まさに機関としていいんだという戦前、戦中のあのやり方というものが宗教弾圧を生んだのです。人間から成り立つ機関なんですからその中には——閣内だってそうですよ。クリスチャンの方もおられますよ。恐らくあると思います。病院、学校みんなそうです。まさに信教の自由なんです。多様なんです。それを特定の神社だけ機関として丸ごと、こういうことになりますよ。それは絶対許されません。それを認めるということは、これはもう政教分離の大原則を踏みにじる。これはある意味においては数百年来の既定の原理を破壊するということになるのです。それについて、私いま議論しようと思いません、恐らくもう平行線だから。だけれども、私はそういう重い問題なんだということを言っておきたいのです。  そこで、余り時間がありませんので一つ二つですが、参拝については宗教的活動というよりはどちらかと言えば宗教的行為だということを十二日の法務委員会でおっしゃっておられますけれども、これは先ほど文化庁が答えたこととも違います。参拝、神道式の参拝、これは宗教的活動そのものなんです。これはいかがでしょう。
  271. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私、法務大臣として答えろと言われるなら、憲法問題、宗教問題は私の所管ではございませんから、私はもうお答えをしません、こう申し上げた方がいいのかもしれません。しかし御熱心にお尋ねいただきますし、また議論を交わすことも大事なことでございますので、あえて答えさせていただくわけでございます。  いろいろな解釈があっていいと思うのです。いろいろな解釈があっていいと思うのですが、たとえば憲法二十条三項、国及びその機関は宗教教育をしてはならないと書いてあるのです。しかし、だれも学校が宗教的情操を養うような教育をして悪いとは考えていないと思うのです。同時にまた、いかなる宗教的活動もしてはならないと書いてある。その宗教的活動を、最高裁判所判断は私が先ほど申し上げたようなことを言うておるわけでございまして、国が宗教に一切かかわりを持ってはならないと言うているのじゃありませんよ、こう言っておる。それじゃかかわり合いを持てるものは何かというと、参拝などが入るのじゃありませんでしょうかなという疑問を私は提示しておるわけでございます。  同時に、憲法が保障しているのは信教の自由だと私は思うのです。その自由を国の側から保障するために、国が積極的に特別の宗教を保護するようなことをして実質的に信教の自由を損なってはいけないよという意味で二十条の三項なり八十九条なりの規定が置かれていると思うのです。問題は信教の自由を保障する、それをより強く保障するために国の側が特定の宗教に対して特別な力を与えたりするようなことは避けるべきだ、こう言っておるわけであります。  先ほど来おっしゃっておることは、戦前、国が神社神道に対して特別な地位を与えてきた、国家主義を鼓吹する材料にもなってきた、だから神道指令も出たわけでございますし、またその指令に従って国は神社を切り離したわけでございます。今日ではもう神社神道も他の宗教も、キリスト教であれ仏教であれみんな同じ立場に立つようになっておるじゃないか、それを昔の夢をそのままいまも現実にあるような考え方をとることは穏当でないように私は思っておるものですから、ひとつキリスト教も仏教も神社神道もみんな同じ立場でどうあるべきか、国が一切かかわりを持ってはいかぬのかどうか、参拝することまで禁止しなければならぬのかどうか、これも考えたらどうか、こういう疑問を私は言うておるわけでございます。
  272. 榊利夫

    ○榊委員 奥野さんは法務大臣として余りよけいなことを言わぬ方がいいかもしらぬと言う。本当に言わない方がいいのです。言えば、やはり政府の方針や、あるいはいまもそうです、宗教的活動をどう見るか、文化庁の判断と違うのです。宗教団体の所轄は文化庁でやっております。宗教法人の扱いもそこがやっております。その文化庁が先ほど、神道における宗教活動、いろいろなものがあります、神道式の礼拝もそうですと認めたばかり。しかし法務大臣はそれと違うことを平気でおっしゃるわけです。言わぬ方がいいかもしらぬけれどもと言っておっしゃる。同じ場所で、同じ閣内で、同じ省庁、しかも一方は責任者、これほど違う。こういうのが一体まかり通っていいのだろうか。これが鈴木内閣だろうか。どっちが政府見解を代表しているのだろうか。迷いますよ。  そういう点では、いまの奥野法務大臣のそれは常識に反するだけでなくて、宗教の当該所轄官庁の公式の見解を否定するものです。これは間違いございませんよ。取り消してはいかがでしょうか。
  273. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どういう参拝が儀式であり、どういう参拝が儀式でないのか、いろいろな考え方もありますし、二十条二項に「儀式」という言葉を使っておりますけれども、その二十条の二項がみんな三項の宗教的活動というわけじゃないのだということも最高裁判所判断で言うておるわけであります。儀式だから宗教的活動を禁止しているその禁止の中に入るのだというわけのものではない、目的と効果の両方から考えてみて信教の自由を阻害するような結果を生むものかどうかという判断をしなければならないということになるのだろう、こう思っております。
  274. 榊利夫

    ○榊委員 少なくとも奥野法務大臣宗教的活動についての理解は文化庁の判断とは違うということだけはお認めになりますか。
  275. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は文化庁の見解をつまびらかにしておりません。ただ、いま二人の応答を聞いただけのことでございますから、違うのか同じなのかよくわかりません。
  276. 榊利夫

    ○榊委員 だから私は、奥野さんは自分のおっしゃっていることがどうもわかっておられないのじゃないかという気がしきりにしているのはそこなんです。私は学説の問題で聞いているのじゃないのです。神道に即して私は聞いているのです。だから、違った見解が横行するようないまの鈴木内閣の状態、この点については統一見解を発表したならその統一見解でやはり処すべきだと思うのですよ。  時間が参ったようでありますので、最後に一言だけお尋ねしておきます。憲法制定議会のときに信教の自由の問題も相当論じられまして、当時の田中耕太郎文相も、戦前のことについては実は神社は宗教ではないというふうに言われたけれども実際は非常に宗教的だったのだということを述べておられるし、金森国務相も、国家機関は文字どおり一切の宗教的活動をやってはならないのだということを述べておられるわけであります、読み上げる時間はございませんけれども。これは現憲法を制定したときの所信であり、また正確な理解であったと私は思うのですけれども、その点についてはどういう御感想をお持ちでしょうか。
  277. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 宗教的活動をしてはならないということについては私も全く同じ考え方を持っております。その宗教的活動参拝が入るか入らないかということに疑問を持っておるわけでございまして、そのことは憲法制定の際にも深くは論ぜられていないのでございます。占領軍がくれましたマッカーサー草案が大体そのとおり今日の日本国憲法になっておるわけでございます。
  278. 榊利夫

    ○榊委員 そう言うとまた言わなくてはいけなくなるのですね。論議されなかったとおっしゃいますけれども、いま読み上げたのはまさに論議ですよ、田中耕太郎さんにしたって金森さんにしたって。それではそれは詰まらなかった、こういうことになるのですね。これはひとつ識者の判断にまつことにいたしまして、どういうふうにそれを判断されるか。しかし少なくとも田中さんや金森さんのそれを不十分だったなどと言うのは、常識的に見ましてこれはいろいろ声は出てくるだろうと思うのです。  終わります。
  279. 高鳥修

    高鳥委員長 太田誠一君。
  280. 太田誠一

    ○太田委員 去る十月二十二日にこの委員会におきまして、安川元判事事件に関連する法改正について私は質問をいたしました。それからすでに一カ月以上経過をいたしておりまして、この間さまざまな動きがあったように承っております。  新聞報道によりますと、弾劾裁判所委員会というのがあって、そこで安川元判事事件に関係した法改正案というものが固まりつつあるというふうに言われております。そして、この法務委員会のメンバーでもあります上村先生を初め小委員会のメンバーの先生方が大変意欲的にこの問題に取り組まれているということも伺っております。これらの先生方の努力には大変敬意を表するわけでございます。そしてまた議員が自発的に研究会あるいは勉強会をつくってこの問題を取り上げるということは、本来弾劾裁判所法そのものが議員立法であるということからして当を得たことだというふうに私も考えるわけであります。そうして本来の手続であれば、これから小委員会と言われるこのグループの方々が議院運営委員会にこの法改正案を提出されるというふうな段取りになるかと思いますが、ただ、安川元判事事件に関連した法改正の問題というのはいわゆる裁判行政の延長線上にある問題でありますし、ということは法務委員会の対象としております法務省の仕事の分離することのできない問題であろうかと思いますので、ここで再度取り上げさせていただくわけであります。  同じくこの新聞報道によりますと、小委員会結論というのは最高裁の提出されました案を基本としているというふうに伺っておりますが、最高裁の案というのは、訴追を受けた裁判官については公職選挙法九十条の適用除外を行うということになっております。そしてこの最高裁案に対しまして、新聞報道では自治省も支持をされたというふうにされております。  そこで、この弾劾裁判所委員会というのはあくまでも非公式の会合でございますので、この点につきまして、この場で最高裁及び自治省のお考え方を確認しておきたいと思います。ちょっと見解をお述べいただきたいと思います。
  281. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 前回お尋ねをいただきました際にも申し上げたところでございますが、私どもの立場といたしましては、本来議員立法である裁判官弾劾法の改正でございますので、積極的に改正作業にいわば公式に参加する、参与するという立場にないことをまず御了解いただきたいと存じます。  繰り返しになりまして恐縮でございますが、私どものいわば身内の不祥事からこのように御迷惑をおかけいたしているわけでありますけれども、このたびの安川元簡裁判事の立候補が法の不備であるということであれば、その法の不備を補っていただくことに私どもの立場としては異存のあろうはずがないわけでございます。先ほど申し上げましたように積極的に御意見を申し上げる立場にはないわけでありますけれども、この際私どもなりに考えられる案というものを考えてみようではないかということで考えましたのが、いまおっしゃったいわゆる小委員会に申し上げた考え方でございます。  正確に述べよとおっしゃいますので、一応条文の形で申し上げますと、第十五条第三項の規定により最高裁判所から罷免の訴追をすべきことを求められており、または訴追委員会から罷免の訴追をされている裁判官については、公職選挙法第九十条の規定は適用しないということの内容であります。それで私ども内部で検討いたしました際にも、私どもの考えは立候補の自由を制限することになるわけでありますが、この制限自体に問題がないではないという認識は十分持っているつもりでありますが、この程度の、この程度といいますかこの場合における立候補制限はやむを得ないものであって、許されてしかるべきではないかというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  282. 岩田脩

    ○岩田説明員 私どもの立場と申しますか公職選挙法の立場につきましては、先回お答えを申し上げたところでございます。  ただし、そういう立場ではございますけれども、裁判官弾劾制度というものを形骸化しないためぜひ必要であるという見地から必要最小限度の規制が加えられるということがありましても、これはまたそういう判断を示されます以上はやむを得ないことではないかというように考えております。したがいまして、私どもの立場からどういう案でなければいかぬとかそういうようなことは考えておりません。
  283. 太田誠一

    ○太田委員 いま最高裁そして自治省の方はともに、裁判官というのは言ってみればふだん非常に手厚く保護されているので、このぐらいのことは制限がされることもやむを得ないのではないかというふうなお考えのように私は受け取っておりますけれども、本来、裁判官にしろ公務員にしろあるいは普通の職業についている人にしろ、その職業についているという人格と、それから市民としての、あるいは公民としての、公民権を有する者としての人格というのは両方備えている。裁判官をやめたとしてもあるいは裁判官の資格がなくなったとしても、公民権というものは残っているのだというふうに考えるのが私は自然ではないかと思うわけであります。  たとえて言いますと、これは裁判官として適任でなかったとしても、政治家としては適任であるという人は幾らもおられると思うわけでありまして、たまたま裁判官として適任でなかったから政治家になる機会を最高裁の方から制限をされるというのは、多少問題ではないかというふうな気がするのですけれども、いかがですか。
  284. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 この問題の私どもの考え方の問題点はまさに御指摘のとおりだと思います。  これもまた御質問の中にあったことを逆に繰り返すようで恐縮でございますけれども、私どもの考え方は、憲法で保障された裁判官の地位、その延長線上での訴追制度、弾劾制度というものがあるわけでございます。その間にどうしても物理的な時間を要する、その間の立候補をどういうふうに手当てするか。このたびの安川簡裁判事のように、これはだれが見ても脱法的な行為だというふうに思わざるを得ませんけれども、そういう場合に対する措置として私どものような考え方が、先ほど申し上げましたように、また御指摘のように参政権の自由といいますか参政の自由といいますか、そういうことに対する侵害にならないかということこそ御指摘のとおり問題だと思います。十分その問題を意識しながら、現行の憲法下における身分の保障制度、その延長線上の訴追、弾劾制度ということを総合勘案すれば、結論としては、この程度のことは許されてしかるべきではなかろうかというのが現在私どもの考え方でございます。  繰り返すようでございますが、問題のあることは十分承知しておりますので、しかるべき関係機関で十分御討議いただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  285. 太田誠一

    ○太田委員 これもまた同じようなことですけれども、わが国の政治の歴史の上から言いますと、贈収賄容疑で逮捕されて監獄におられる人がそのまま立候補して当選をするということが、例として過去に何度かあったわけでありますけれども、そのぐらいに市民の、国民の参政権といいますか立候補をする権利というものはわが国の法体系の中でも大変重要なものであり、そしてまた大変基一本的なものであるというふうになっていると思いますが、その点につきまして自治省のお考え方を伺いたいと思います。
  286. 岩田脩

    ○岩田説明員 御指摘のとおりでございまして、現在被選挙権を持ちながら立候補を禁止されているという制約を課せられているグループは、きわめてわずかな限られた範囲でございます。ただ、前段申し上げましたように、この弾劾制度の趣旨という問題がございますので、その点について御判断をお示しいただければ、それに従いたいと思っております。
  287. 太田誠一

    ○太田委員 もう一つ、最高裁の方にお伺いしたいのですけれども、前に、安川判事の事件が起こりましたすぐ後に、簡裁判事の任用に至る年齢の制限を引き上げるというふうな措置がなされました。そしてまた今度の最高裁案というものを見ますと、私は何か、このきわめてまれな安川判事のケースに対しまして、安川元判事の件に関して最高裁が過剰に反応をしているのではないか、現に現場におられる裁判官の一人一人の方々というのはそれぞれ、一部の例外を除いては大変高潔な方々であり、それぞれ意欲を持ってお仕事に取り組んでおられるわけでありますから、年齢制限を引き上げるとかあるいは立候補に対する事実上の制限に結びつくような改正をお考えになるというところは、今回起こった事態に対しまして少し過剰な反応をしている、敏感になり過ぎているのではないかというふうな印象を持っているわけですけれども、いかがでしょうか。
  288. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 前段のいわゆる推薦基準の改正につきまして、またこのたびの、私どもの事務当局限りの案でございますけれども裁判官弾劾法の改正につきまして、ただいま御指摘のような御批判があることは十分承知しております。  ただ前段の事務的な点につきましては、すでにここでもお答え申し上げましたけれども、前からある程度推薦基準の改正を考えるべきではないかというふうに思っておったところでございました。このたびの事件にかんがみ、やはり改正した方がいいということで踏み切ったものでございます。  それから法改正につきましての御批判につきましては、確かにそういう御批判はあると思いますが、私どもといたしましては、できることなら法の穴をふさいでいただきたいということで、及ばずながらと申しますか私どもの考えをいわば公表させていただいたような次第でございまして、決して敏感になり過ぎて云々というような趣旨ではないというふうに考えております。
  289. 太田誠一

    ○太田委員 いま、最高裁の法改正案及び自治省のお考えを伺ったわけでありますけれども、一月前の十月二十二日に私はこの委員会質問を申し上げたときに、あらかじめこういう法改正の方向が出てくるということを恐れまして、訴追を受けた裁判官について九十条の適用除外を行うということは、公務員の基本的な人権である参政権を制限することになり、これは適当ではない、法改正の方向としては、九十条の規定には手を触れずに、訴追を受けている裁判官の身分はその限りにおいて持続するものとみなすというふうに、裁判官の人格を二つに分離する方向でもって検討をすべきだという意見を申し上げたわけであります。  その後、先ほどから話に出しております弾劾裁判所委員会にも法務省案というものが提示されまして、その内容は私が考えておりましたこととほぼ一致しているというふうに理解をしておりますけれども、再度ここで法務省案について確認をさせていただきたいと思います。
  290. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 私どもの考え方は、去る十一月十日に開かれました弾劾裁判所のいわゆる小委員会で申し上げた点でございます。  その内容は、訴追を受けた裁判官並びに最高裁判所から訴追請求を受けた裁判官につきましては公職選挙法の九十条の適用を受ける、したがってまた八十九条の制限は受けないで立候補できるということを前提にいたしまして、そのかわり弾劾手続の上においてはなお裁判官の身分を有するという形で改正が考えられないであろうかという意見を申し述べておる次第でございます。
  291. 太田誠一

    ○太田委員 法務省案がそういうものであるということはそのとおりでありましょうけれども、そうであれば、いま出されております最高裁及び自治省案と法務省案を対比してみた場合、何か一つのことをきっかけにして法改正を考えるというときに、余り不必要なところに影響が及ぶというのはぐあいが悪いのじゃないか、必要最小限度にとどめるべきではないかという一つの考え方があると思います。また法改正によって実質的に権利を制限される、つまり、これはちょっと極論でありますけれども、言ってみれば法改正の被害者が出る、法改正によってこれまで持っていた権利を奪われる人たちがいるという改正の仕方とそういうものはないという改正の仕方では、恐らく私は、必要最小限度に法改正をとどめ、また法改正によって実質的に権利を奪われる人がいない、あるいは権利を奪われるおそれが出る人がいないという改正案の方がすぐれていると思いますけれども、そのことも含めまして法務大臣のこの問題についての御所見を伺いたいと思うわけであります。
  292. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 今度の簡裁判事の行跡は明確でありますけれども、弾劾裁判に付される事例はどういう事例が起こってくるかわかりません。どういう事例が起こってくるかわからないのに、とにかく弾劾裁判の手続がとられればもう立候補できないのだ、衆議院議員であれ参議院議員であれ、いかなる公職の選挙にも立候補できないと言ってしまうのはいかがなものだろうかなという疑問を持っているものでございますから、先ほど枇杷田政府委員から申し上げましたような見解を法務省の見解として訴追委員会の方へ提出しているわけでございます。
  293. 太田誠一

    ○太田委員 訴追委員会の方で小委員会結論を了承されたというふうに伺っております。この後弾劾裁判所の方でもその小委員会結論を了承されるということが仮に生じまして、それが議院運営委員会に法案の形でもって提出されるということになりますと、裁判行政に携わる法務省としてはこの考え方には賛成できないというお立場でありますけれども、一方、法案を改正する作業が一部では進みつつある。  私はこの間の委員会質問の中で、ぜひとも法務省でもってこの問題に積極的に取り組んでいただいて法改正の案を提出されてはどうでしょうかというふうなお話を申し上げましたけれども、法務省としての御意向はわかりましたが、これから具体的に一体どうされるつもりなのか、そこをお伺いしたいと思います。
  294. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 この裁判官弾劾法につきましては、御承知のとおりもともとの成立過程が議員立法でございますし、また憲法の六十四条に基づいて国会の置かれる機関であるというところから国会法と並ぶような性質のものでありますために、政府提案として裁判官弾劾法の改正を持ち出すことは不適当であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。したがいまして、目下のところ政府提案ということは私どもとしては考えておりません。今後、国会内部におきましていろいろ御検討されまして法案という形で御審議をされます際には、もし私どもに御質問があれば、ただいま申し上げましたような点からいろいろな問題についての御意見は十分に申し上げるという考えております。
  295. 太田誠一

    ○太田委員 この間の安川元判事の問題が起こったときに宮澤官房長官は、これは政府の方で考えてもいいんじゃないかというふうな国会答弁がなされたように私は承っておりますので、そういうこともあるのかなと思っていま伺いましたけれども政府提案の形ではやらないということで、それはそれで結構だと思います。  ということは、法務省の側では、国会でもしこういう反対の、一部で制限をやるといういわゆる制限論といいますか公務員の公職選挙法九十条の適用除外という形での制限をやるという立法が行われるかもしれない。それに対して、もちろんそれはいきさつ上行政府の問題ではないから、それは国会の方で対案があれば対案をつくって審議をすればいいではないかというお考えでございますね。
  296. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 そういうことになろうかと思いますが、問題が非常にむずかしいことでございますので、国会内部で十分に御検討の上法案が作成されることを期待しておる次第でございます。
  297. 太田誠一

    ○太田委員 いまの件はわかりました。  先ほどちょっと耳にいたしましたことで最高裁にお伺いしたいのですけれども、安川さんの退職金と年金の取り扱いです。退職金が支払われたというふうなお話をちょっと伺いましたけれども、それは事実と違いますか。
  298. 勝見嘉美

    勝見最高裁判所長官代理者 退職手当の支払いにつきましてはこの委員会におきましても御質問いただいたところでございますが、きょう現在まだ支払い手続に入っておりません。
  299. 太田誠一

    ○太田委員 もちろんこれは先ほど法務省がお答えになったとおりかと思いますけれども、およそ議員立法というのは、法案として出てくるまでの過程が普通役所でつくられるよりもいろいろ困難な情勢にあるという現状があると思うわけでして、こういう機会に裁判官の基本的な人権がひょっとしたら制限をされるというふうな可能性があるときには、裁判行政に携わっている法務省の方では、この問題に限らずぜひとももう少し積極的な態度で臨んでいただきたいというのが私の最後に申し上げたいことでございまして、これで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  300. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて散会いたします。     午後三時五十九分散会