○山原委員 これは
一つは、最近、子供たちが単なる
集団で
暴力するということでなくて、やはりバックがあるのだ、
暴走族を通じて
背景にこわい者がおるのだぞという
一つの示威行為、そういうものからも
校内暴力が
発生をしておる事実が私
どもはあると思っています。いまおっしゃったとおりです。
それから、右翼
団体の場合にしましても、現実に、この間新宿で起こりましたのは、新聞にも出ておりましたが、そういうふうにこういう
非行少年あるいは
暴走族を取り込んでいくという事態が起こっておりますし、かつて私も、文教
委員会で取り上げましたが、子供たちの中には、やはり憂国烈士であるとか忠君愛国であるとかあるいは前はハーケンクロイツのナチスの旗を掲げて走っておったのが、最近では、大体日の丸に統一されている。おれたちも理屈はあるのだというようなことから、
自分たちの反抗行為を正当化するというような動きも出てきておる。恐らく子供たち自身が考えたものではないかもしれませんが、そういうふうに、こういう組織の介入によって組織化されつつあるということは、十分警戒をしておく必要があると思います。そのことを指摘しておきたいのです。
その次に、恐らく先ほど
警察庁の方からもお話がありました例だと思いますが、本年度、日教組の教研集会が私の県で行われたわけでございますが、そのレポートを見ますと、この
非行問題に取り組んだたくさんの事例が出ております。
たとえば江戸川区の小岩第四
中学校、これはもう区議会でたびたび問題になりますし、マスコミにも取り上げられ、教員の中にまで、もはやこれは
学校ではないよと言われるような事態が起こっているわけです。
先ほ
どもお話がありましたけれ
ども、たとえば三学期になりますと、三年生はベルが鳴っても、半分
教室の中へ入ってこないというようなことですね。そして
番長グループがおりまして、抗争に明け暮れるというような事態が起こっております。これを見ましても、もう本当にこれは大変な事態ですね。それに対してどうするかということで、
非行対策に
教師たちが取り組んでおるわけです。その中で、いろいろな教訓が出てくるわけです。
一つの
学校の例だけではありませんけれ
ども、たとえばこれが
教師の仕事かと思われるようなことまでやらなくちゃならぬ。ある女の子が家出をする。家出をしたが、恐らくいつかは家へ帰ってくるだろう。家へ行ってみると、家には親がかせぎに出ておりまして、九時になっても十時になっても帰ってきません。それをじっとしんぼうして待たなくちゃならぬ。親はもう、家出したって捜すなんという気力はなくとも、
教師はほうるわけにはいかないわけです。なぜなら、その子供が放浪しておる間に、ばたばた一段と
非行性を体につけて帰ってくる。そして
教室の中に入ってきたときには、もはやまたその周辺が
授業できるような静かな状態ではなくなってしまう。他の子供たちに対する
授業を正当に行うためにも、この子供を何とか救い上げなくちゃならぬ。場合によっては、
家庭教育の考え方を変えなくちゃならぬ。こういう努力が続けられているのです。すさまじいものです。まるで体
当たりのような努力が続けられているわけです。
そうすると、今度は四月の始業式の行われるときには、卒業した
番長グループあるいは
校内の
生徒と一緒になってこれをぶち壊すということが入ってくる。そうしますと、その晩に、卒業した
番長の親分に会いに行って、夜の夜中に説得活動をする。殴られたら殴り返す、そういう決意で行かなければならぬ。そして、やっとその場では説得をして帰ってくる。翌日
学校へ来てみると、
校内の
生徒たちが今度は始業式を何とか壊そうとしてたむろしている。そういう中で始業式がどういうふうにとり行われるかというような苦労をしながら説得をし、そして始業式がついに、その場合には無事に行われていく。こういうような経過を皆々たどっているわけです。
尾鷲の場合だって、私は、
警察力を導入したことに対しては批判を持っています。けれ
ども、あそこの
先生方はいままでいろいろな努力をしている。それが裏目に出たり失敗したりしている。でも、こんな状態の中で、尾鷲の場合に、今度暴れた三年生は、一年生のときに暴れているのです。そのときにきちんと始末をようつけなかったということも反省している。
こういうふうに次々起こってくると
対応が間に合わない。やったことが失敗だったとかあるいは暗中模索であったとか、あのときにもつとしっかり毅然として子供たちに
教育をやっておったら、こういうことにならなかったであろうとかいうような反省は起こるけれ
ども、しかし、それは
教師を責めるわけにはいかぬと思う。
いま
先生方は、ずいぶん反省をしておられ、尾鷲の
中学校のこれからの発展に恐らく大変な努力をされておると思いますが、そういうことがあっちでもこっちでも行われているのです。これをどう
文部省が本当に吸い上げていくか、ここのところに
文部省が単なる官製的な講習会あるいは
青少年対策委員会——これも結構ですよ。だから、
文部省の出しておられる
方針に対して、私は、これがいけないなどということを言っておりません。けれ
ども、たとえばきら星のごとく偉い方が集まって、
学校の
先生が出て、そこで話がされる場合には、どうしても本音が出ない。一番の苦しいところが出てこない。そうすると、やはり形式的に終わってしまう。
そういう中で、たとえば江戸川区の場合には、
教師集団が必死になって
非行対策特別委員会を
設置し、この
特別委員会は、
自分の
学校の問題だけを
解決するのではなくて、困難な状態に置かれておる
学校の問題についても話し合いをして、それをどう
解決するかという
方針を出している。こうして
一つ一つ非行の芽を断ち切っていくという努力が、いまなされているわけです。
私は、そういう点では、この報告書を見まして、これは日教組の教研集会に出された報告書ですが、本音が出ていると思います。そして、この中で一定の成果が上がっています。全く無成果ではありません。
大体、
教師というのには二つの面があるのです。
一つは管理主義です。厳罰主義です。たとえば、びんたと正座をさすこと、この一本やりの考えを持った
教師もおります。いや、そうではだめだ、もっと実践を通じて子供たちの心に触れ合う、そういう
教育でなければだめだ、この二つの路線というのは、いつでも昔からあるのです。これが
教師の世界です。
でもその中で、その一方だけではだめだ、また子供たちの心をつかむというようなことで子供たちを甘やかしてはだめだという声もある。では、その子供たちの心を本当に
教育的な立場でつかむ、これが本当にできておったのかどうか。甘やかしでなくて、間違いに対しては毅然としてその過ちを許さないという姿勢と同時に、
非行を起こす子供たちの中には、必ず胸の中にいろいろな苦悩があります。むしろ甘えもあるのです。それを引き出して、その子供たちを本当に納得させていくこの厳しさと愛情、これを結びつけるものが
教育なんです。
そういう意味で、いまたくさんの努力がされておるこれらの事例や、あるいは経験や教訓を本当にいまくみ上げていくということ。そればかりじゃありません。評論家もずいぶんたくさん書かれております。マスコミも冷静な立場で幾つかの問題を取り上げています。これらを総合的に見ながら、これからの
対策を立てていくならば、私は、展望は出てくると思っています。
いま最近、この問題について多くの方々にお会いしますと、これからまだまだ起こるだろう、そして、これをなくするようなことに対しては、もう希望もないというような考え方も出てきますけれ
ども、これを
解決する道はここだと私は思っているのです。
これらの実践や教訓というものをしっかりと見詰めまして、それを全国に広げていく。その中には
警察との協力もあります。また父母との協力もあります。それから、さっき出ました校長さんを中心にして、
学校全体が打って一丸となって、
教師集団として心を合わせて一歩も引かないぞという決意、そして同時に、
非行の
一つの原因になっているところの教科についていけない、いわゆる落ちこぼれを起こさせないぞという江北
中学校の例がございますけれ
ども、とにかく割り算も掛け算も足し算も引き算もできない。数学の時間に一時間しんぼうするのがやっとなんです。それが三年間しんぼうさせられたら、子供だってしんぼうの限界が来ます。そういう問題について、じゃあ、この足し算を、引き算を、割り算を、掛け算を、このときまでにこの子供に身につけさせようとするこの努力というものは大変なものです。そういうことをやりながら、江北
中学校の場合は、この問題を
解決して、九月になりましたときに、いつも八月の夏休みに
警察に
非行児が次から次へ補導されるような事態がなくなったという報告がなされております。
その次の問題は、子供たちに自治の力をつけるということ。子供たちが、たとえば運動会にしましても、あるいは文化祭にしましても、音楽会にしましても、文集をつくることにしましても、生き生きと
自分たちがそれに参加をしていく、そのことが本当に行われた場合に、子供たちは、本当に喜びに満ちて、そして
番長グループさえも、たとえばスポーツの試合には応援団をやる、あるいはスポーツを何とかして勝とうとする、こういう気持ちが出てきたときに、
非行の問題は、全面的にではないでしょうけれ
ども、
解決されていく道が出てくるわけです。
これをいま、
教育行政が本当に探求をして、そういう点で努力をしておる
教師たちを支援し、励ましていく、このことが私は必要だと思うのです。
ところが、
文部省のやっていることは、ただ単に、日教組の教研集会については休暇をとって行けとか、あるいはいろいろな妨害をする、あるいは所によっては会場を貸さないとか、こういういびつな姿じゃなくて、もっと
非行に対する総力戦の立場でこういうものに対しても援助をしていくという、この
非行問題についてのあらゆる見解については
文部省も
把握をして、これを激励していくという、こういう立場をとるならば、私は、この
非行の問題の
解決は決して不可能ではないと思っております。
同時に、
文部省がやることは、この条件
整備の問題です。早に管理
体制の強化——勤評たってそうでしょう。こんな、子供の家へ行って夜遅くまで父母を説得する、勤評のどこにひっかかるのですか。そんなみみっちいものじゃなくなっているわけですね。だから、そういう勤評とか主任制とかいうようなことを次々と打ってきましたけれ
ども、決してこれがプラスの面になってあらわれていない、むしろマイナスの面になってあらわれている側面もあるということを、
文部省は反省すべきだと私は思うのです。
こういう見解を持っておりますが、文部大臣の意見と、そして
三角局長の見解を伺っておきたいのです。