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1980-12-12 第93回国会 衆議院 文教委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十二月十二日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 三ツ林弥太郎君    理事 谷川 和穗君 理事 中村喜四郎君    理事 三塚  博君 理事 森  喜朗君    理事 嶋崎  譲君 理事 有島 重武君    理事 和田 耕作君       臼井日出男君    浦野 烋興君       小澤  潔君    狩野 明男君       久保田円次君    高村 正彦君       塩崎  潤君    長谷川 峻君       船田  元君    木島喜兵衞君       中西 績介君    長谷川正三君       湯山  勇君    鍛冶  清君       三浦  隆君    山原健二郎君       小杉  隆君  出席国務大臣         文 部 大 臣 田中 龍夫君  委員外出席者         青少年対策本部         次長      浦山 太郎君         警察庁刑事局保         安部少年課長  石瀬  博君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ————————————— 十一月二十八日  一、日本学校健康会法案内閣提出第二二号)  二、児童生徒急増地域に係る公立の小学校、中   学校及び高等学校施設整備に関する特別   措置法案長谷川正三君外三名提出衆法第   一号)  三、文教行政基本施策に関する件  四、学校教育に関する件  五、社会教育に関する件  六、体育に関する件  七、学術研究及び宗教に関する件  八、国際文化交流に関する件  九、文化財保護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育及び社会教育に関する件(校内暴力問  題等)      ————◇—————
  2. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 これより会議を開きます。  学校教育に関する件及び社会教育に関する件について調査を進めます。  校内暴力問題等について政府当局より発言を求められておりますので、順次これを許します。  まず、文部省初等中等教育局長三角哲生君。
  3. 三角哲生

    三角説明員 本日、校内暴力問題につきまして、いわゆる集中的審議をいただくということでございますので、とりあえず、お手元資料を配付させていただいておりますが、一つは、さきに十一月二十五日付で初等中等教育局長並びに社会教育局長の連名で関係機関に出しました通達の写しでございます。それからもう一つは、児童生徒非行の問題に非常に重要な関係のございます生徒指導充実のために文部省としてとっております各種の施策につきましての一覧をお届けしてございますので、とりあえず、それらの資料に即して御説明を申し上げたいと存じます。  まず、最近に出しました通達でございますが、これは実は、その通達の添付でつけてございますが、二年半ほど前、昭和五十三年の三月に、やはり「児童生徒問題行動防止」ということで通知をいたしておりまして、このような事柄につきましての基本的な対応についての考えは、かなり総合的にこの五十三年の通達で示しておる次第でございます。  しかしながら最近、さらに児童生徒非行増加する傾向にございまして、しかも社会的に問題とされる事件がしばしば発生しておるということでございまして、まことに遺憾な状況でございますので、五十三年の通達を踏まえまして、さらに、この上に乗せて新たな通達をお出しした次第でございます。  内容の概略を御説明申し上げますと、二ページ目の「記」といたしまして順次示しておるわけでございます。  まず第一は、児童生徒学校教育に不適応を生じて問題行動に走ることのないよう、学校教育活動学校として適切に行うために十分な配慮をする必要があるということでございます。  そのためには、児童生徒に対します指導内容を精選し、指導方法改善を図り、児童生徒指導内容についてできるだけこれを十分に理解し、かつ積極的な興味、関心を持って意欲的に取り組むことができるようにするということが大事でございます。また、授業のみならず、学校教育活動のあらゆる機会を通じまして、児童生徒個性能力に応じた指導を行って、そういった個性能力を一層伸ばしていくということを図る必要がございます。  次に、やはり進路指導というものが非常に重要でございますので、これを組織的、計画的に行いますとともに、進路相談を重視いたしまして、生徒が将来に対する自分目的意識を明確に持って、自分自身でできるだけ的確に進路の選択が行えるように指導をしていくということが大事でございます。  第二に、児童生徒に対する理解を深めまして、全教師一体となって生徒指導に取り組むことが必要でございます。  そのために、第一といたしまして、教師児童生徒との接触を密にいたしまして、一人一人についての理解を深めて、教師児童生徒の間、あるいは児童生徒相互間に好ましい人間関係育成されるように努めるということが大事であると述べてございます。  それから次に、やはり一部の教師だけではなくて、全教師生徒指導ということの重要性について一層自覚していただきたい。教師の間で生徒指導に対する取り組み方がまちまちでございますと、児童生徒問題行動に適切に対処することができませんので、全部の教師が協力する体制を整える必要がある。そうして一体となって積極的に生徒指導に取り組むべきでございます。また、児童生徒を観察しておりまして、その行動態度に平常と異なるようなことが見られます場合には、やはり教師は、学級あるいはホームルーム担任学年主任生徒指導主事などとの間の連絡を密にしてもらいまして、適切な指導を行うなど、問題の早期解決を図るようにすることが重要でございます。  さらに、学校生徒指導に当たる方針を明確にいたしまして、児童生徒にこの方針が十分理解されるように努めますとともに、教育の場は、まさに暴力否定ということが最も徹底して貫かれねばならない場でございますから、ささいな暴力行為などにつきましても、これを看過することなく、毅然たる態度をもって生徒指導を進める必要がございます。  それから次に第三点が、学校と他の集団との連絡の問題でございますが、学校は、家庭地域社会関係機関等十分連携をとって取り組むことが必要であるということで、まず第一に、やはり学校は、平素から児童生徒家庭との連絡を密にいたしまして、あらゆる機会を生かして学校指導方針について理解をしてもらう、そういたしまして、生徒の日常の行動についての情報交換に努めるなどいたしまして、学校家庭とが協力して児童生徒育成に努めてまいることが重要でございます。  最後に、学校は、近隣のほかの学校あるいは当該学校地域社会にありますところの関係機関団体などと常に密接な連絡をとりまして、非行の動向でございますとか、それに対する対策について情報交換などを行いまして、児童生徒問題行動把握に努める、そして児童生徒非行防止については、必要に応じてこれらの関係機関との連絡協力のもとに一体となって取り組むことが肝要であるということで、私どもは、都道府県教育委員会等を通じまして、各学校に対して、この問題について十分真剣に取り組んでもらうように、さらに一層の注意を喚起した次第でございます。  次に、生徒指導充実のための全国的な段階における施策について申し上げます。  まず、資料の一でございますが、先ほどの通知にも述べておりますように、根本的には、それぞれの学校教育活動充実そのものが一番大事なことでございます。したがいまして、児童生徒意欲を持って学習に取り組み、充実した学校生活において、全人格的な発達が図られるようにすることが必要である。そして、すでに御承知いただいておると思いますが、新学習指導要領において、次のようなねらいを持ちまして、各学校創意工夫を生かした豊かな教育活動を展開するように求めておるわけでございます。まず第一が、知・徳・体の調和のとれた人間性豊かな児童生徒育成を図る。第二が、教育内容の精選、指導方法改善を行いまして、基礎的、基本的な教育内容がしっかりと児童生徒理解されるようにする。第三が、特別活動部活動を重視するなどいたしまして、全体として充実した学校生活の実現を図る。以上のような目標で進めることにいたしておるわけでございます。  それから、第二に大事なことが教職員資質の問題でございます。このために、全教師生徒指導重要性を認識し、教師生徒間に好ましい人間関係を確立するとともに、問題行動について早期発見早期解決を図ることが重要でございます。  これも御承知いただいていることと存じますが、教職員定数改善校内生徒指導体制の確立を図るということで、それらにあわせて、さらに教職員資質向上に努めておる次第でございます。  具体的には、第一といたしまして、第五次教職員定数改善計画の実施の問題がございます。  第二といたしまして、生徒指導主事設置の問題でございます。生徒指導主事状況は、五十四年度におきまして中学校において約九千百六十九人、学校数一万六百八校に対しまして八六・四%の設置率になってございます。高等学校は五千四十五人、学校数四千八百四十八校に対しまして一〇四・一%の設置率になっている次第でございます。  第三に、生徒指導部生徒指導係などの組織化等校内体制整備ということがございます。  第四が冒頭申し上げました教職員資質向上の問題でございますが、これらのため生徒指導講座、これは中央は三週間、地方の各都道府県レベルでは二週間というプログラムでいたしておりまして、このところ、毎年約七千人程度の参加者を得て実施いたしておる次第でございます。それからカウンセリング技術指導講座、これは一種の指導者養成講座でございまして、中央で三週間、毎年八十人ないし九十人を対象に実施しておるものでございます。  次に、生徒指導資料というものを編集し、配付いたしております。なお、御参考までにこれらの一覧を別添としてお届けしておる次第でございます。これらのうちの一番新しい号でございますが、中学校の第十五集、高等学校の第十集という形で中高の両方を含めて対象といたしました一番新しい冊子につきましては、中学校については八万五千部、高等学校については二万六千部を印刷いたしまして、各現場先生方にお配りいたしてございます。  第三に、生徒指導研究推進校という仕組みを設けまして、中学校につきましては九十校、高等学校につきましては四十二校を指定しまして、二年がかりで取り組みまして、その結果を、さらに全国の学校参考資料として提供するということに御協力いただいてございます。  それから、生徒指導研究推進地域という試みを近年始めました。これは現在十一地区におきまして、一つ学校だけでなくて近隣学校あるいは社会教育団体関係の諸機関、諸団体との連携のもとに、地域としての生徒指導推進につきましての実験的研究を進めていただいておる次第でございます。  第三は、家庭及び地域社会との連携でございますが、先ほども申し上げましたように、学校は、平素から家庭地域社会関係機関等と密接な連絡をとりまして問題行動把握に努める必要がございます。  まず第一点が、家庭との情報交換、これを相努めるように進めておるわけでございます。  第二が警察学校の間には学校警察連絡協議会というものを設ける、そういう指導をいたしておりまして、九十数%の学校でつくられておると思いますが、こういう仕組み、それから児童相談所青少年補導センター等との連携を密にする。最後に、PTA、その他青少年育成関係する民間団体との十分な連携を保ってほしい、そういう指導を従来とも進めてまいってきた次第でございます。  一応御審議に先立ちまして、御参考に供するための御説明をした次第でございます。以上でございます。
  4. 三ツ林弥太郎

  5. 石瀬博

    石瀬説明員 警察庁の方から、校内暴力の現状その他につきまして御説明申し上げたいと思いますが、お手元資料をあらかじめお配りしておりますので、まず、この資料説明から入りたいと思います。  資料の一枚目に「刑法犯少年状況」ということで、戦後数十年間の刑法犯少年状況をグラフで示しておりますけれども、この点線は、主要刑法犯少年補導人員を示したものでございまして、昨年、昭和五十四年は約十四万人の数字を数えております。現在戦後第三のピークなどと言われておるのは、この数字をとらえたものであるわけでございます。また実線につきましては、少年人口千人当たり人口比を示したものでございまして、昨年は千人当たり約十四人の者が検挙、補導されているということで、この人口比史上最高数字でございます。  本年に入りましてからの状況は、次の二に書いてあるわけでございますが、本年一月から六月まで刑法犯少年として検挙、補導されました人員は、七万六千二百七十七名ということでございまして、昨年の同期と比較いたしますと、二一・七%の増加になっております。  特に年齢別に見ますと、十四歳の三一・七%、十五歳の二五・九%という低年齢少年非行が非常に増加いたしておりまして、ここ数年来言われておりました少年非行の低年齢化傾向というのは、ますます顕著になっているという状況でございます。  こういう状況を受けまして、次の「学職別」を見ますと、中学生高校生非行が非常に多くなっておるわけでございまして、中学生高校生による非行だけで全体の七二・一%、こういうことになっております。特に中学生非行につきましては、本年上半期と昨年同期を比較いたしまして二九・二%の増加ということでございます。  「罪種別」を見ますと、表にも書かれてありますように、窃盗の七七・三%というのが最も多うございますが、その中身の主なものは、万引きとか自転車どろぼう等のいわゆる遊び型非行と言われるものでございますけれども、これが依然として多いという従前の傾向に加えまして、本年に入ってからの特に顕著な傾向としましては、粗暴犯凶悪犯が著しくふえてきておるということでございます。この粗暴犯凶悪犯が著しくふえてきておるという背景には、一つには、暴走族による不法事犯が非常に多くなっているということでございます。いま一つは、本日検討議題として上げられております校内暴力事犯が多発しているということが大きな背景になっているのではないかというふうに考えております。  そこで、本題の校内暴力事件状況でございますが、資料の三に本年上半期校内暴力事件発生状況をお示ししてございます。私ども校内暴力事件と申します場合には、教師に対する暴力事件のほかに、生徒間同士暴力事件とかあるいは学校施設損壊事件というようなものを幅広く含むわけでございますが、そういった総数で見ますと、本年上半期で六百五件の発生を見ておるわけでございまして、昨年同期と比較いたしますと、一一・四%の増加ということになっております。中学生高校生の割合を見てみますと、中学生が四百六十三件で全体の七七%、高校生が百四十二件で全体の二三%という数字になっております。  そのうち、特に教師に対する暴力事件というのが今日大きな社会問題になっているわけでございますが、本年上半期で百四十件の発生を見ておりまして、増加率は四八・九%ということでございます。校内暴力事件総数そのものとしては、一一・四%の増加でございますが、教師に対する暴力事件というのは著しくふえているということを御注目いただきたいと思います。  このうち、中学生による事件高校生による事件を見てみますと、中学生による事件が百二十六件で全体の九〇%、高校生による事件が十四件で全体の一〇%、こういうことになっておるわけでございます。  以上が校内暴力事件発生状況でございます。  次に、校内暴力事件の最近における特徴的傾向といったことにつきまして御説明申し上げておきたいと思います。  校内暴力事件、特に教師に対する暴力事件を中心に最近の検挙事例を通してその特徴を挙げてみますと、次のような五つの傾向があろうかというふうに考えています。  第一は、後にも具体的事例で申し上げますが、犯行の手段、方法がきわめて凶暴かつ悪質化しているということでございます。  その二は、校内粗暴グループ背後卒業生の元番長とか暴走族とか地域不良集団といったような校外集団が存在いたしまして、それとの関連において犯行が行われるケースが多いということでございます。  その三は、事件を引き起こす生徒には、学校授業についていけない、私ども、こういう表現を使うのは、余り好まないわけでございますが、いわゆる落ちこぼれ組が多うございまして、また、家庭的にも放任、過保護等の問題のある生徒が目立つということでございます。  その四は、特に教師に対する暴力事件に見られる傾向でございますけれども被害者には生徒指導担当教師生徒指導に熱心な先生が多いということでございまして、このことは、先ほど文部省の方からも御説明がございましたように、生徒指導について教師間の連帯意識が乏しく、学校全体として組織的、一元的な対応がなされていないという一面を物語っているとも考えられるわけでございます。  その五は、地域的には都市部農漁村部等を問わず全国的に発生しておりますことと、季節的には卒業時期等に限らずオールシーズン的に発生しているということでございます。  以上が、私どもが具体的な検挙事例を通じて感じております校内暴力事件の最近の特徴的傾向でございます。  次に、あらかじめ御連絡がございましたので、最近の校内暴力事件で私どもが取り扱ったものの幾つかを御紹介いたしたいと思います。  一つは、東京葛飾区内区立中学校校内暴力事件でございまして、このあらましを申し上げますと、本年五月二十八日午前中に、東京葛飾区内区立奥戸中学というところで、ラジオカセットを取り上げられましたことに腹を立てました生徒十数名が教室職員室教師六名に暴力をふるいまして、学校からの通報を受けた所轄警察署生徒五名を現行犯逮捕したという事件でございます。  事件状況でございますが、この事件は、同日の一時限目の後の休憩時間中に三年生の一人が教室内のコンセントからコードを引きまして、自宅から持ってまいりましたラジオカセットのボリュームを高くしながら音楽を聞いておりましたので、最初これを発見した女性教師が、次いで担任教師生徒指導担当教師等六人が、それぞれやめるように注意したわけでございますが、これを聞き入れなかったために、教師の一人がコードを抜きまして、そのラジオカセットを取り上げて職員室へ持ち帰りましたために、これに腹を立てた当該生徒が、仲間の三年生十数名に呼びかけまして、教室内や職員室に押しかけまして、竹刀でなぐったり頭突きや足げりなどの暴力をふるって教師六人に暴行を加えた、こういうものでございます。この事件につきましては、同日の午前九時五十分ごろに同校教頭から一一〇番の通報がございましたので、所轄本田警察署員現場に出向きまして、特に悪質な生徒五名を現行犯逮捕し、二日後の五月三十日に検察庁に身柄を送致いたしております。また、実行行為に加わった他の八名の生徒につきましても、六月六日に検察庁に書類送致いたしております。  逮捕された生徒状況でございますが、いずれも同校内番長グループリーダーあるいはサブリーダークラスでございまして、傷害とか窃盗などの非行歴が二回ないし七回もある者でございます。  その家庭環境を見てみますと、両親が離婚して母親に育てられているという者が二名ございますし、両親はそろっておりますが、別に異母きょうだいがいるというやや家庭の複雑な者が一名ございます。それから父親はおりますけれども、全く放任でございまして、母親にしつけを任せっ放しという者が二人おるということで、いずれの生徒も、平素における保護者との対話の少なさを訴えております。  次に、その学校関係でございますけれども、全員が勉強がわからない、授業についていけないということを漏らしておりまして、高校進学の希望をそこはかと持ちながらも、自分でどうしていいかわからないという不安感焦燥感を訴えております。  なお、逮捕されました五人の生徒のうちの番長生徒は、一年生のころまでは成績が上位であったそうでございますけれども、どういうわけでか勉強意欲を燃やさなくなりまして、成績が下がってきたわけでございますが、家庭でも学校でも格別の手が打たれないままに、ずるずるとこういう教師の手に負えなくなるまでに非行の深度が深まっていったものでございます。  次に、これらの生徒背後関係を見てみますとこれらの生徒背後卒業生の元番長グループ、これは「荒武者」とか「一寸法師」といった暴走族グループに形を変えているものでございますが、そういった校外不良グループの存在がございまして、その強い影響を受けているということでございます。これらの生徒は、校内番長グループを解散しようと思ったり、あるいはそれから離脱しようと思いましても、先輩の不良グループからのリンチがこわくて、なかなかそれができないという不安を訴えております。  学校側対応でございますけれども、この学校は昨年以来、校内での教師に対する暴力事件とか学校施設損壊事件、さらには他校生徒との対立抗争事件等が相次いでおりまして、警察的な表現で言うならば、いわゆる問題校であるわけでございますが、そういった相次ぐ事件内容から見まして、学校の手に負えない状態になっておりながら、学校の体面とか教育的配慮という名のもとに、できるだけ問題を内部的に処理しようとして、しかし実際には、学校側の適確かつ毅然とした対応が必ずしも十分になされていないまま今回の事件に至ったものというふうに私どもでは理解をいたしております。  今回のこの事件を契機にいたしまして、同校では、五月三十一日にPTA緊急総会等も開催されたようでございます。また、区の教育委員会におきましても、警察連携をとりながら、生徒指導担当教師とか教頭等対策会議等を開催されまして、正常化のための努力を続けておられるわけでございます。  なお、逮捕されました五名の生徒につきましては、三名が保護観察処分に付され、他の二名は不処分という形になっておるわけでございますが、現在、いずれも学校に登校してきておりまして、ときどき授業を休むということがあるようでございますけれども、その後、再非行もなく、表面的にはまじめに勉強に取り組んでおるという状況でございます。  次に、神奈川南足柄市内市立中学校校内暴力事件について御紹介いたしたいと思います。  この事件は、本年九月二十二日の午後に、神奈川南足柄市内市立岡本中学というところで、平素から生徒指導について不満を持つ三年生十八名が、職員室に押しかけまして、教師九名を三階建ての校舎の屋上に連れ出しまして、そこで竹刀とかモップの柄等で殴る、けるの暴行を加えたというもので、警察では、リーダー三名につきまして通常逮捕いたしております。  この事件の端緒は、この事件の起きました約二カ月後の十一月二十一日に、数年前に同校を卒業いたしました無職少年が、同校原付自転車を持ち込みまして、授業中に同校の廊下を走り回したという建造物侵入事件の捜査の過程で明らかになったものでございます。  事件を起こしました十八名の生徒は、平素から学校生徒指導不満を持っていた者でございますが、たまたま同日の六時限目の授業時間中に、生徒の一人がラジオカセットを聞いていたのを教師からとがめられまして、それに憤激しました十八名の生徒が、午後二時ごろに竹刀やモップの柄を持って職員室に押しかけまして、在室していた教師九名を三階建ての校舎の屋上に連れ出しまして、午後七時ごろまで約五時間話し合ったわけでございますが、なかなか生徒が納得せず、とうとう竹刀やモップの柄等暴力行為を加えた、こういうものでございます。  関係生徒十八名のうちリーダー格の三名は、平素から授業妨害、授業放棄を繰り返しておりまして、さらに教師とか他の生徒にも暴力行為を重ねております。保護者の監護にも服するということなく、逃亡、証拠隠滅のおそれもございましたので、逮捕状の発付を得まして、十一月十二日に所轄松田警察署に同行の上、通常逮捕いたしました。十一月十四日に身柄つきで検察庁へ送致いたしております。  また、実行行為に参加した他の五名の生徒につきましても、いずれも書類捜査を遂げまして、十二月一日に検察庁へ書類送致しております。  通常逮捕された三名の生徒は、いずれも中流家庭生徒ではございますが、家庭的には片親などの恵まれない一面がありまして、学校内では番長グループリーダーとして窃盗とか器物損壊、非行歴あるいは不良交友等の補導歴もございまして、保護者の側でも、もう監護の限界を超えている、何とか警察で措置してほしいという強い希望を寄せていたものでございます。  現在、これらの三名の生徒は、いずれも少年鑑別所に入所中でございまして、近く家庭裁判所の審判が行われる予定でございます。  同校では、その後事態はおおむね平穏化しておるということを聞いております。  最後の事例でございますが、これは三重県尾鷲市内の市立中学校校内暴力事件でございます。  この事件は、本年十月二十七日の午後、三重県尾鷲市内の市立尾鷲中学校で、授業をボイコットした三年生に教師が注意いたしましたところ、二十三名の生徒教室職員室に押しかけまして、十一名の教師に傷害、暴行を加えたというものでございまして、警察では、学校側の要請に基づきまして、警察官三十九名が出動いたしまして、事態の収拾に当たっております。  事件状況でございますが、同日の午後一時ごろに、三年一組の生徒十六名が社会科の授業時間になっても教室に入ろうとしなかったために、教師二名が注意いたしましたところ、騒ぎ出しまして、他に七名の生徒が加勢して計二十三名の生徒が、教師に殴る、けるの暴行を加えたものであります。  これらの生徒は、その後授業中の他の二教室にも押しかけていきまして、そこで授業中の教師二人にも暴行を加えた後に、職員室、校長室にも押しかけまして、戸をたたいて押し入ろうとしましたために、これを説得しようとして廊下に出てきました教師七名にも、さらに殴る、けるの暴行を加えた、こういうことでございます。  学校側では、職員室、校長室に避難した教師約十名が、懸命にドアを押さえまして、生徒の侵入を阻止していたわけでございますが、この状況を見守っておりました尾鷲市の教育長外二名が、辛うじて校外に脱出いたしまして、所轄尾鷲警察署へ出動要請を行ってきたものでございます。警察官が学校内に立ち入りまして、事態を収拾しましたのは、事件発生約六時間後の午後七時でございます。  捜査の結果、生徒につきましては、傷害罪で十名、暴行罪で十三名の取り調べを終わりまして、十一月十八日に検察庁へ書類送致をいたしております。  なお、この事件の捜査の過程で、これらの生徒二十三名は、本年五月以降十月二十六日までの間に、窃盗暴行、遺失物横領、器物損壊、無銭飲食、シンナー吸引等、約四十件の非行を犯していたことが明らかになっております。  同校では、本年の六月ごろから「紀州連合」とか「狂気乱舞」といった暴走族まがいの不良グループ四グループが形成されていたわけでございますが、被疑生徒二十三名は、いずれもこれらのグループに所属する者でございます。  今回の事件では、特に平素から生徒指導に熱心な一部の教師がねらい撃ちされていたという一面もうかがわれるわけでございます。  検察庁へ書類送致されました関係生徒二十三名は、その後家庭裁判所に送致されまして、現在、家庭裁判所の調査官が調査中でございますが、いずれも登校いたしておりまして、学校は平穏になっておるということを聞いております。  また教師、父兄、生徒が一緒に校舎を清掃しましたり、生徒が乱暴して壊しました窓ガラス等の修理もするなど、事態は平静化の方向に向かっていると聞いております。  以上で、あらかじめ御連絡を受けました具体的事例説明を終わりまして、最後に、校内暴力事件に対する警察の基本的な姿勢、考え方というものを御説明申し上げておきたいと思います。  校内暴力の問題は、本来、学校当局の適切な生徒指導によりまして、その未然防止の図られることが、私どもとしても、最も望ましいものではないかと考えておりますが、警察といたしましても、人の生命、身体、財産に危害を及ぼす犯罪等に対しましては、当然、法令に基づく制止及び捜査をしなければならない立場にございます。警察としましては、教育現場に大きな混乱と支障を及ぼすこの種事件につきましては、できるだけ徴候の段階でその未然防止を図ることが望ましいと考えておりますので、今後とも、学校当局との連絡を密にしまして、必要な助言あるいは指導を行う等により事件の未然防止を図りますともに、不幸にして事件発生した場合には、できるだけ学校当局とも連絡の上、適確な現場措置と関係生徒の補導措置等を通じて、事件の収拾や再発、拡大の防止を図るべきものと考えております。  以上で警察庁説明を終わります。
  6. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 次に、総理府青少年対策本部次長浦山太郎君。
  7. 浦山太郎

    ○浦山説明員 ただいま文部省及び警察庁の方から、校内暴力の実態あるいは対策等についてお話があったわけでございますが、校内暴力は、暴走族あるいは家庭暴力その他と並びまして、一般的な青少年非行という形で私どもはとらえているわけでございまして、総理府といたしましては、総合調整機関として関係各省と連絡協議をしながら、必要に応じて意見の調整を図ってまいるというような体制で今日までまいっているわけでございます。  お手元に「青少年対策(総理府)」という一枚紙の資料をお配りしてございますので、これに従いまして若干私どもの行っております全般的な対策について御説明をさせていただきたいというように考えております。  最初に「非行防止対策」についてでございますけれども、そこで三点を挙げているわけでございます。  第一の「非行対策関係各省庁会議の開催」、これは大体毎月あるいは二カ月に一回程度の割合で、そこにございます関係省庁——警察庁、法務省、最高検察庁文部省、厚生省、労働省、最高裁判所、こういった省庁との間で連絡会議を開きまして、その都度、全般的な非行対策非行の実態等の話し合いを続けてまいっているという状況でございます。  第二に「「青少年非行からまもる全国強調月間」の実施」ということを、昭和五十四年度、昨年度から毎年七月に行っておるわけでございます。これの趣旨といたしますところは、青少年非行増加にかんがみまして、この強調月間によりまして、関係機関関係団体地域住民等がそれぞれ実施する非行防止のための諸施策及び活動を有機的に連携づけまして、共通の理解と認識のもとにこれらを集中的に実施して、非行防止の徹底を図ろう、こういう趣旨でございます。  主唱は総理府がいたしまして、参加していただくのが、ただいま申し上げたような関係の省庁及び都道府県、市区町村、協力・協賛といたしましては、青少年育成国民会議、全国防犯協会連合会等、諸団体にわたっているわけでございます。  この月間の重点といたしましては、三点ございまして、第一点が国民の非行防止意識の高揚、第二点が青少年非行防止、第三点が青少年を取り巻く社会環境の浄化といったような重点事項を取り上げているわけでございます。  月間の実施事項といたしましては、七点を挙げておりまして、第一点は広報、啓発活動の推進、これは各種広報媒体の活用、あるいは講演会、展示会等の開催、街頭啓発活動の実施といったようなことによりまして、その非行防止の機運を醸成するという趣旨でございます。第二点が家庭教育充実、これは家庭教育における各種の学習活動を積極的に推進するというものでございます。第三点が学校における生徒指導充実。第四点が職場における指導充実。第五点が各種の相談事業の推進、これは関係機関あるいは関係団体等が実施いたします各種相談事業の周知を図るとともに、出張巡回相談等の実施によりまして、これらの相談事業の促進を図るという趣旨のものでございます。第六点が補導活動の充実及び強化ということで、地域の実情に即した補導活動を計画的に実施するとともに、必要に応じまして、家庭学校、職場等の協力も得て、非行青少年早期発見と保護の適正を図るという趣旨であります。第七点が住民の地域活動の促進ということでございます。  さらに、お手元資料の「非行防止対策」の第三点には、「少年補導センターでの非行防止活動の推進」ということを掲げております。これは、ただいま申し上げました、特に「青少年非行からまもる全国強調月間」の行事を中心といたしまして、年間にわたって活動を行っているものでございますが、現在、市を中心といたしまして、全国に五百七十五カ所の少年補導センターがございまして、約七万四千人の少年補導委員が、これに所属して活動をしておるわけでございます。  主たる内容といたしましては、街頭補導あるいは環境浄化活動といったような点でございまして、環境浄化活動につきましては、映画館のポスターでございますとか、ポルノ自動販売機等の業者あるいは場所の提供者に対しまして、自粛を促したり、あるいは不適当な場合には撤去方を申し入れるといったような運動を展開しておるというのが現状でございます。  このような非行防止対策は、当面のいわば臨床的な対策になるわけでございますけれども、これをさらに基本的に考えますならば、やはり前向きに青少年の健全育成を図っていかなければならないといったような観点から、その次にございますように、青少年の健全育成対策を実施しておるわけでございます。  第一点は「「全国青少年健全育成強調月間」の実施」、これは昭和五十三年度、おととしから毎年十一月にこのような強調の月間を実施してまいっておるわけでございまして、趣旨とするところは、青少年がみずからの役割りと責任を自覚し、広い視野と豊かな情操を養い、心身ともに健やかに成長するということを目指すということでございまして、主唱は、総理府と社団法人青少年育成国民会議ということで、協力は、先ほどの非行関係の省庁のほか科学技術庁、最高検察庁、農林水産省、運輸省、労働省等を加えまして、さらに青少年育成都道府県会議あるいは青少年育成市町村民会議青少年関係団体等が、これに協力をして実施しているということでございます。  実施の重点といたしましては、三点ございまして、第一点は、青少年の社会参加活動の推進ということで、青少年家庭学校、職場などの日常のあらゆる場で個人としてあるいは仲間と共同して社会参加活動を率先して行うように進めていくという趣旨のものでございます。  第二点は、地域における青少年育成活動の促進ということでございまして、これは日ごろの地域社会における生活の中で、他人の子も注意し指導するなど、わが子と同様に見守る運動でありますとか、先ほどの非行の月間にございましたように、青少年の健全な発育を妨げる有害な地域環境を非除し、好ましい環境に改善する運動などを積極的に実践するという内容でございます。  第三点は、健全な家庭生活の普及促進ということでございまして、これは健全な家庭生活を営めるようにするということは当然のことでございまして、愛情、孝行心、奉仕精神などを養うような家庭生活の充実に努めるように進めるという趣旨のものでございます。  月間の事業といたしましては、たとえば青少年の保護育成の巡回活動、いわゆるキャラバン隊を組織いたしましてPRをして歩くということでございますとか、あるいは少年の主張の全国大会を開くとか、あるいは善行青少年の表彰をするといったような内容のものでございます。  この点は、お配りをいたしております資料の第二点に「少年の主張大会等による青少年の自立心の養成及び青少年育成大会による青少年健全育成の研究・討議・発表」といったようなことであらわされておりまして、ことしは十一月二十三、四日の連休を利用いたしまして、明治神宮会館でこのような全国大会を開催したところでございまして、そのほか各県、市町村におきましても、これに応じた活動がなされているということでございます。  そこの第三点にございます「青少年の社会参加実践活動事業による青少年の社会連帯意識の醸成と社会参加活動の促進」ということにつきましても、やはり一の「青少年の健全育成強調月間」等を中心にいたしまして、いろいろな活動をいたしておるということでございまして、県によりましては、かなり多くの県が家庭の日を設けまして、家庭の健全化を図る。あるいはそこで「社会参加実践活動」と言っておりますのは、地域の清掃事業をいたしますとか老人ホームを慰問いたしますとかあるいは花壇づくりだとか植樹等の活動をいたすとかといったような内容で社会参加活動をいたしていくという内容でございます。以上、若干の活動について御説明をいたしました。     —————————————
  8. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 これより質疑に入ります。浦野烋興君。
  9. 浦野烋興

    ○浦野委員 ただいま各省庁から説明をいただきまして、少年非行、とりわけ校内暴力につきましては、おおむね理解をすることができたわけです。とりわけ警察庁からの具体的事例を承りまして、まさに心寒からしめる事態だということを非常に強く認識した次第であります。  私なりに思いますのは、一九八〇年代、戦後構築されてまいったところのすべての枠組み、制度、こういうものが今日崩壊をしてしまって、新しい時代に向けて新しいものを何か模索していかなければならぬ、こういう転換の時代である、このように思うわけであります。また当然ながら、教育の面においても、このような気持ち、転換ということを考えていかなければならぬと思うわけであります。校内暴力なんというこうした新しい事態に対しまして、やはり適確な対応策というものを講じていかなければならぬ、このことは当然のことであります。本来、神聖な場所であるべき学校内で生徒同士の暴力ざた、ましてや教える立場にある先生が教えられる側にある生徒によって殴打されるなんということは、もってのほかであり、以前にはとうてい考えられなかったことである、このように思うわけであります。  すでに説明があったわけでありますが、こういうような事態が発生したその社会的要因、それは社会の変化とか家庭の問題というようなことが当然考えられるわけでありますけれども、所管の文部省は、その点についてよく分析をされておられると思いますが、まして警察庁、総理府は、どのような社会的要因によってどのような発生がなされておるか、また対応策等につきましても報告があったわけでありますが、改めてお尋ねするまでもないと思いますけれども、その対応策をるる述べられたわけでありますが、その実施の覚悟、これについて改めてひとつ承りたい、かように思います。
  10. 三角哲生

    三角説明員 校内暴力事件発生する原因と対応策でございますが、原因は、まあいろいろな事件が出ておりますが、やはりそれぞれにつきまして、いわば内在的原因並びに外部的な原因というようなものがいろいろありまして、それらの幾つかが相互に絡み合っているというような状況であろうと思います。  したがいまして、一概に割り切って考えにくい面がございますが、やはり一般的に申しますれば、生徒自身の性格面におきまして、粗暴性でございますとかあるいは何らかの原因で持っております不平不満、これに対してこれをどういうぐあいに処理していくかということについて自分で律し切れなくなるという意味合いでの忍耐力のなさと申しますか、いわば資質の上での問題がございます。  それからもう一つは、これは主として家庭の面になるかと存じますが、いわゆる過保護あるいは子供の生活に対する無関心といいますかそういったような親の養育態度の問題、さらには社会一般の風潮といたしまして、いろいろな意味で非常に豊かになってまいりまして、享楽的な面を強調するような状況もございますし、あるいは自分だけが無事平穏であればいいということで、時折見られます暴力的な現象を見逃して見て見ぬふりをするといったような風潮、そういったものも背景になっているかと存じますし、さらには、先ほども申し上げましたが、学校での学業を中心とする生活に十分適応できない、あるいは交友関係で必ずしも円滑な状況の中に置かれていない、そういったことから欲求不満が、ある事柄をきっかけに爆発するということで暴力事件発生するものと思われます。  さらには、先ほど警察庁の方からの御説明にもございましたように、学校外の外部的な集団あるいは存在とのつながりからいろいろな影響を受けるという意味の一種の背後状況的な関係一つの原因となっておるというふうに見られるわけでございます。  これに対する対応策は、やはり個々の事件につきましての原因が、それぞれ状況を異にしておるわけでございますので、対応も、そういった原因をしっかり見きわめて、その状況に即した対策をとる必要があると存じますが、これまた一般的に申しますれば、先ほども説明したところでございますが、やはりまず、こういう事件が起こらないような、浦野委員も申されましたように、学校は、そもそもは神聖な場と申しますか、教師生徒が愛情なり尊敬なりあるいはお互いの信頼関係、本来、これを最も発揮すべきそういう場所でございますから、こうした事件が起こりませんような、平素から、いわば丈夫な体質を養っておくということが必要でございますので、どういたしましても、教育のサイドとしては、それぞれの学校充実した教育活動を展開して、個々の生徒学校生活が豊かでおもしろいものになるように努める必要があると思っております。  その基本前提として先ほど申し上げましたが、教師生徒の間にやはり好ましい人間関係というものを育成していかなければならない。そして学校全体として、やはり校長を中心に打って一丸となって生徒指導に取り組むということが大事だと思っておる次第でございまして、その具体的なこれを支示するいろいろな施策としましては、先ほども申し上げました教育課程の問題あるいは教員配置の問題あるいは教師資質向上の問題あるいはいろいろな意味での実験的研究活動を進める、それから地域社会及び関係機関さらには根本的には家庭そのものと丹念に根気よく連絡をとり、協力し合うということであると思っております。
  11. 石瀬博

    石瀬説明員 校内暴力事件が最近どうしてこんなにふえてきたのかということでございますけれども、ただいま文部省の方から御指摘がございましたように、少年非行一般が最近非常にふえておるわけでございまして、その要因背景として指摘されております少年自身の自律心とかこらえ性のなさというようなことが一つあると私は思います。そのほかに、少年自身の問題じゃなくして、少年を取り巻く環境の問題として、これも御指摘がありました家庭における教育機能の低下といった問題とか、あるいは地域社会における非行抑止機能の低下といった問題、それから少年を取り巻く有害環境のはんらん、こういったような問題があろうかと思いますけれども、特に校内暴力事件そのものがなぜこんなにふえているかということにつきまして、私ども、具体的に取り扱いました事例を通じまして感じられる点を三点申し上げたいと思います。  その一つは、校内暴力に対する学校側対応の問題が一つあるのではないかというふうに考えております。校内暴力につきまして、その初期の段階からすべての教師が共通の理解と協力のもとに毅然とした対応をしていただけなかったり、あるいはまた学校内のことは教師の手で解決しようという教育的配慮というものは十分理解できるわけでございますが、それが結果的に裏目に出て、暴力を誘発し、あるいは助長させている一面もあるのではないかということを、私ども、具体的な検挙事例を通じて感じております。  その二つは、校内暴力を起こす生徒側の問題でございますけれども、受験競争が激化する中で学校授業についていけない、先ほど不適当な言葉だと言いながらも申し上げました、いわゆる落ちこぼれ組というものが増加いたしておりまして、自分の将来に希望や目標を持てないまま欲求不満や自己顕示のはけ口として校内暴力に訴える、こういうものが二つには非常にあるのじゃないかというふうに私は考えております。  さらにその三つには、最近における暴走族の問題に見るまでもなく、社会の一部に暴力的な風潮とかあるいは社会的なルールとか権威というものを軽視する、あるいはこれらに反抗するといった一般的傾向が、一般社会にもあるいは学校の中にもあるのではないか、それが校内暴力を助長し、誘発させる何らかの一因になっているのじゃないかというふうに私ども具体的な取り扱い事例を通じて感じております。  以上でございます。
  12. 浦野烋興

    ○浦野委員 時間がありませんので、総理府の御答弁も、文部省あるいは警察庁からいま言われたこととおおむね同じことであろうと推察をいたしますので、他の私の質問を続けさせていただきます。  文部省からは、先般、こうした事態に備えまして、教育委員会等通達をなされながら、この通達の徹底がどうも図られていない。これは今回の通達のみならず、これまでの幾多の事例に対しても、いろいろな施策が行われていたけれども、十分な対応教育委員会あるいは学校内部において行われていない。この辺に文部省自体の大変な悩みがあろうと思うわけであります。これは一文部省のみならず、関係省庁初めまさに国が挙げて取り組んでいかなければならぬ、このようなことをまた強く感ずるわけであります。  何と言いましても、やはり一番子供の身近におるところの教師、この教師教育いかんによって、生徒教育は大きく左右され、決定されると言っても過言ではないと思います。先般、人材の確保というようないろいろな施策がありましたが、その中で教師資質向上ということに対してもっともっと力を入れていかなければならぬのじゃないか、このように考えます。この点、文部省から手短にひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  13. 三角哲生

    三角説明員 通達の趣旨の徹底につきましては、あらゆる機会をとらえて相努めたいと思っております。  それから、資質向上につきましては、やはり生徒指導ということを中心に進めてまいることが肝要かと思いまして、生徒指導を担当する教員に対します生徒指導講座、あるいは生徒指導資料の作成等に引き続き力を入れてまいりたいと思っておりますが、この点につきましては、最近起こっております状況をできるだけ的確に把握いたしまして、その講座等の内容につきましても、改善を図ってまいりたいと思っております。さらに、生徒指導研究推進校と研究推進地域、これの活用を従来より一層意識して、一つの実践的な研究活動の充実に努めてまいりたいというふうに思っております。
  14. 浦野烋興

    ○浦野委員 いろいろと努力をされておられる、そのことはよくわかります。人確法というような法律が先年制定されまして、質の高い先生の確保を図っておられる、あるいは研修等をおやりになっておるということはよくわかるわけでありますが、何にいたしましても、これは学校自体がしっかりがんばっていかなければならぬし、子供を預かるところの教師、これが本当に父親としての、あるいは母親として姉としての、あるいは兄としての気持ちを持って、自信と誇りあるいは情熱を傾けて教育に携わる、このことが最も肝要であろうと思うわけであります。  そうした中で、こういう大変な事態が起こっておるわけでありますけれども、これのみならず、教育の面におきましては、まさに一刻の猶予もならぬ、こういう事態というふうに私は思っております。こうした事態に対して、教育のあり方、ひいては児童生徒教育に重大な影響を与えるのではないかと懸念されるところがありますので、この点についてちょっとお尋ねをいたします。  先回の国会で、国家公務員の週休二日制、これが成立を見ております。このことは、いずれ、地方公務員についても準じて行われていくであろうと思うわけでありますが、当然ながら、国の奉仕者である国家公務員でありますから、いわゆる公の職務を遂行するに支障ない限りは、これは当然権利として認められるでありましょう。その中にありまして、この重大なまさに一刻の猶予もならぬ教育の場において、学校先生方のこの週休二日制、これをどのように文部省は考えておられるのか。  一部においては四週五休といいますか、土曜日に学校先生が休暇をとる、こんなような議論がなされておると聞いております。そのことにつきまして、学校先生というものは、本当に粉骨砕身、国民の中でもみずからの仕事に誇りを持ってやっていただかなければならぬわけであります。大変な御苦労を煩わすわけでありますが、国民の教育に対する意向、親が子供の教育というものに期待しておる面で、先生に対する週休二日制の導入、実施というようなことにつきまして、文部省はどのようなお考えに立っておられるのか、これをしっかりとお答え願いたい。
  15. 三角哲生

    三角説明員 先ごろ国家公務員のいわゆる給与法が成立いたしまして、基本的には四週五休という形で週休二日制の入り口、取っかかりに入る、言ってみますれば、そういったような制度が立てられたわけでございます。ただ、これはあくまで仕事の量は減らさない、従来の仕事の量に対して配置されておりまする人員はふやさない、そういう前提で取っかかりに入る、こういうことでございます。  したがいまして、文部省といたしましては、これをまず本来は国立の学校についてどういうぐあいに対応していくかということを考えているわけでございます。ただ前提が、いま申しましたようなことでありますし、さらには非常に重要な学校教育にかかわることでございますので、事柄は教育の中身をどういうぐあいに充実して考えていくかということを基本に置いて、そこから出発して物事を考えなければいけないというふうに思っている次第でございます。  そこで、国立の付属学校の教員の週休二日制につきましては、昨年八月に人事院から、研修教育部門においては、夏冬等の時期またはその他の比較的休みやすい日時に休む方法等について考慮する必要があるという旨の勧告が出されておりますし、また、この人事院勧告前の昭和五十二年度に実施いたしました試行の結果を見ましても、いわゆる四週五休方式では実施が困難でございまして、それと、ただいま浦野委員も仰せになりました学校教育に寄せる国民の期待や意向、こういったことが非常に大事でございます。  それから、学校教育の実情やあるべき姿など諸般の事情にかんがみまして、私どもといたしましては、人事院勧告の趣旨に沿いまして、夏冬等の休業日の期間における——生徒の休業日でございますが、この休業日の期間内における適切な日に勤務を要しない時間を指定するという方式、これは改正後の一般職の職員の給与に関する法律附則第十三項を適用することになりますが、この方式で実施いたしたいと実は考えておる次第でございます。  また、ただいまの御質疑にございました公立学校の教員の問題でございますが、文部省といたしましては、これはやはり国立の付属学校と同様に、夏冬等の休業日の期間を活用する方式で週休二日制を実施することが適切であると考えておりまして、この問題につきましては、すでに都道府県教育長協議会におきましても、同様の方向で検討がなされておるわけでございますが、その検討結果を踏まえまして、必要に応じて今後、都道府県に対して指導を行いたいと考えております。  なお、ちょっとつけ加えさせていただきますが、この問題につきまして、たとえば土曜日に「道徳」でございますとかあるいは「特別活動」でございますとか、そういった学校の活動を集中するなどしまして、各学校教育課程の現状に変更を加えるということによりまして、教員につきましても、四週五休方式を実施すべきであるという意見が一部に出されておるということは承知しております。しかし、そういった意見のように、四週五休方式で実施するために各学校のこれまでやっております教育課程の現状に変更を加えるといたしますと、たとえば土曜日に「道徳」でございますとかあるいは「学級指導」や「ホームルーム」など、そういった活動を集中させるということになりますと、土曜日以外の学校生活が現在と変わった形、状況によりますれば、ゆとりの非常に乏しい状態になりますことも考えられまして、いずれにしましても、児童生徒に新たな学習上の負担を課して、望ましい教育課程の編成実施の観点からは問題が非常に多いと考えております。  また、最近特に、本日の議題にございますこととも、まさに最も関連がございます生徒指導等の面、これの特に一層の充実が必要とされておるわけでございますが、これには各教員の密接な連絡提携が十分でなければならない、そういった前提がございますが、そこのところが不十分になるという問題が生ずるのではないかと思っておる次第でございます。  冒頭に申し上げましたように、教員の週休二日制の実施方法、今回のあれはまず取っかかっていくという形でございますが、取っかかっていく場合にも、私どもとしては、教員の立場からだけではなくて、むしろ児童生徒に対する教育課程のあり方を配慮することが基本でございまして、その上で物事を考えていかなければならないということでございます。したがいまして、この取っかかりをするという現状におきましては、夏冬等の休業日の期間を活用する方式により実施することが適切であるというふうに考えておる次第でございます。
  16. 浦野烋興

    ○浦野委員 時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきますが、ただいまの四週五休制の導入といいますか、実施するかしないか、こういうことにつきましては、慎重に慎重を重ねて行っていただきたいと思います。  最後に、もう一つ質問したかったのですけれども、時間がありませんので、私の希望だけをちょっと述べさせていただきます。  教育こそが、資源の少ないわが国を支える根幹である、このことは言うまでもないことであろうと思います。この教育が危機に瀕しておるわけでございます。物質文明を高めるための高度な科学教育あるいは文化向上のための頭脳の開発、こういうことも大切であろうと思いますが、やはり人間としての基本、基礎であるところの日本人としての自覚、日本人の持っているところのゆかしさ、謙虚さ、あるいは友情、愛情、尊敬の念、奉仕の精神、こういうようなことをもしっかりと身につける、これが今日の教育において最も大切なものであろうと私は思います。「健全なる精神は健全なる身体に宿る」、こう言われているのでありますが、忍耐力の強い体をつくり上げる、それもまた重要課題であろうと思います。  冒頭に申し上げましたように、大きな転換期にある今日、教育もまた転換のときを迎えているのではないかと思います。見解をお伺いする時間がありませんが、こうした私の希望をとらえていただきまして、十分なる検討を加えていただきたいと思います。希望を申し上げて私の質問を終わります。
  17. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 中西積介君。
  18. 中西績介

    ○中西(績)委員 今回のこの問題について、それぞれ文部省あるいは警察庁、総理府の方から、対策等についての説明がございましたけれども、おおよそこれを見てまいりますと、病気に対する治療を中心にした方策なりを中心に据えたようなことにしかなっていません。  何と申しましても、予防をどうするかということがまず第一でありますから、その点から考えますと、資料を見てみますと、たとえば少年の刑法犯の人員について昭和十五年以降五十四年まで挙げてみますと、大変特徴のある数字が出ています。特に昭和十七年から十九年、ここに大変多発しています。さらにまた戦後になりまして、戦前あるいは戦中の状況とあわせてみましても、戦後になるとさらにこれが増発するわけでありますけれども、特に特徴的なのが二十六年、ここで一挙に十三万三千六百五十六という件数になっています。それから以降ずっと落ちます。そして再び十九万という大台になってくるのが三十八年から四十年にかけてであります。そして四十四、五年ごろずっと落ちてまいりますけれども、示された表にありますように、五十四年に再び十四万三千という数になってまいります。  したがって、人口比で見てみてもわかりますように、この傾向は大変顕著なものがあります。たとえば三十九年ごろになりますと、一五・一という比率になりますし、そしていま再び一四・五という比率になっておる。こういう事態を見てみますと、これと暴力行為なり何なりは、後もずっと数値がありますが、これは申し上げる時間がございませんけれども、大体正比例して出てきておるということが言えると思います。  そういたしますと、なぜこのような事態が多発するのか。これは波打って必ずこういう状況になっておるということを見た場合に、この点の原因が何であるかということの分析なしにいまいろいろなことを言ってみてもしようがないと私は思うのです。正確な対応はできないと思うのです。  なぜこのような事態が出てきておるのかという分析を果たして文部省あるいは総理府、警察庁やっていますか。
  19. 三角哲生

    三角説明員 私どもといたしましては、十万とか数万とかいう件数の数字が何を意味するかということですが、これについては、非常に的確な分析をすることはむずかしい問題であると思っております。(「簡単に」と呼ぶ者あり)非常に複雑な人間の心理、性格、行動、そのことが中心になっておりますところへ、いろいろな意味の社会的な状況なり現象等も複合しておることでございますから、これを科学分析するような意味で調査、分析するということは、事柄の性質から申しまして簡単ではないと思っております。  ただ、ただいま御指摘のように、その期間を見ますると、確かに十四、五年ぐらいのところでカーブがピークと申しますか波がございます。こういったことについては、やはり根底に何かがあろうかと思います。それにつきましては、やはり個々の事例を研究いたしますと同時に、責任の立場にある市町村の教育委員会あるいはこれを統括、指導いたします県の教育委員会等とも連絡をとりまして、できるだけ見きわめられますものは見きわめてまいりたいと思っております。  一つ言われますのは、戦後非常に混乱した社会状況がありました。それが何らかの世代の交代の周期と絡み合って出ておることがあるのではないかというような見方もあるようでございますが、私どもとしては、もう少し慎重に状況を研究調査してまいりたいと思っております。
  20. 石瀬博

    石瀬説明員 非常にむずかしいお尋ねでございますが、簡単にという御要望でございますので申し上げますが、昭和二十六年というのは、戦後の混乱期でございまして、国内の経済情勢も非常に厳しい中で少年犯罪が多発した時期であると理解いたしております。  また昭和三十九年は、第二のピークとわれわれは言っておるわけでございますが、東京オリンピックの年でございまして、高度経済成長がいろいろな形で少年非行の上にも悪い影響を及ぼした時期ではないかと考えております。  それから最近、五十四年でございますけれども、高度経済成長のひずみというのがいろいろな形で吹き出してきているのではないか。物質的には非常に豊かな面があるけれども、心の面では非常に貧困な面があるというようなことも言われるわけでありますか、そういうこともあるのではないかと考えております。  ただ、御指摘のありました校内暴力問題につきましては、昔もありましたけれども、最近特に顕著にふえておるわけでございまして、そういったことを考えてみますと、どうも二十六年あるいは三十九年の時代と同じようにこの五十四年、五十五年を考えるべきではなくして、最近の受験競争の問題とか進学の問題、そういったいろいろな問題が最近特に顕著に校内暴力の問題に反映しているのではないかと考えております。
  21. 浦山太郎

    ○浦山説明員 ただいま両省庁の方から御答弁申し上げましたこととさほど異なった考え方は持っておらないわけでございますが、先ほど警察庁の方から最初の説明の際に、それぞれのピークの特徴といたしまして、昭和二十六年当時は戦後の貧困と混乱による非行である、あるいは三十九年当時の第二のピークの時期におきましては、経済成長期における物質的な豊かさ、あるいはそれによってもたらされた社会的格差といったようなものが問題になっておる、あるいは現在の非行につきましては、生活の豊かさ、主体性の欠如によるいわゆる遊び型の非行ということが特徴づけられるというようなことが言われているわけでございます。なぜそういうことが言われているかにつきましては、さらに十分研究する必要があろうかと考えておりますけれども、大体その辺が一つのメルクマールと申しますか特徴で、原因を探る手がかりになるのではないかと考えております。
  22. 中西績介

    ○中西(績)委員 私がお聞きしたかったのは、いま警察庁あるいは総理府の方が答えられましたように、何と申しましても、社会の反映がこういう非行題等に顕著に出てきておると私は見たいわけです。そういうことになってまいりますと、きょう、こうしてお聞きをするに当たって、それぞれ示されておる内容が、戦後のこういう具体的なものがあるにもかかわらず、その部分をどう直していくかという事柄が施策的には何もとられておらないというところに問題があるのではないかと私は思うのです。ですから、文部省の答弁のように、非常に不明確な答弁しか返ってこない、こういうことになってくるのではないかと思うのです。  この点からいたしますと、たとえば戦後の混乱ということでありますけれども、これは当てつけみたいになりますけれども、何か事があるときに必ずこういう事態になっているのです。たとえば戦後の二十五、六年というのは朝鮮戦争ですね。それから、その次の三十八、九年ごろというのはベトナムの戦争です。そして、いままた再びいろいろの論議が大変な方向に向けてやられておるこの実態というのは、私は見落としてはならないのじゃないかと思うのです。結局、社会のいろいろな反映、何を指すかというと、先ほど言われましたように、心にすき間風が吹くという状況のときに、初めてこういうものが多発するという現象は当然なんですね。  私は、戦争とのかかわりを強く申し上げるつもりはありませんけれども、いずれにしましても、そのような社会的な反映がここに出ておるということを強く指摘したいし、そういう中でどうしていくかということを考えないと、先ほど文部省の言われているようなことを聞いていますと——通達が確かにここに資料として二つ来ています。五十三年三月七日の通達であり、それから五十五年十一月二十五日の通達です。そして、いま改めて生徒指導充実のための施策というものがここに示されていますが、しかし、これはもういままで言い尽くされた通り一遍のことです。  なぜ私がそういうことを申し上げるかというと、一番の問題は、現在でもそうなんだけれども自分の行為に責任を持たないという事態が起こったときに、必ずそういうものが起こってくるのです。小さく言えば、たとえば自動車に一家全部乗っていて、おやじさん、あるいは母親が空きかんを平気で投げ捨てるというのです。ところが、子供はそれを投げちゃいかぬと言ったというのです。そうしたら、おやじさんとおふくろさんが何と言ったかというと、いや、それは構わぬ、人もやっているじゃないか、こう言ったというのです。今度は大きくなってまいりますと、結局、すべて物で解決をする、金で解決をする、こういうかっこうになっているのです。いまそうでしょう。われわれ国会の中でもそうじゃないですか。そうして平気でそういう人たちが大きな顔をして渡り歩くことができるのですからね、いまの社会というのは。そのように人間性豊かな人間を大事にするということが抜けているんですよ。それが大きく欠落をするときになってくると、初めてこういう問題はさらに拡大をしてくる。そうじゃないですか。  私、年代的なこれを見てまいりますと、戦後の大変な反省期、それを戦争という事態の中で再び前と同じような事態に持っていこうとした、それは人間性というものから考えますと、全く相反することなんですね。ですから、こういう事態がその中にはあるのではないかと私は思うのです。  そういう面からの対策というものは出されないのか。あるいはそういう分析なり何なりは、先ほど文部省言いましたけれども、科学的にびっしりとしたものが出されて、すべての国民がこれに対応していくというそういう体制がなければだめだと私は思うのです。政治家はもちろんであります。官公庁の諸君ももちろんでありましょう。  ですから、そういう面での対応がどうなのかということ、その点について具体的に何かお持ちになったのか、あるいは討論されたのか、この点についてどうでしょう。
  23. 三角哲生

    三角説明員 ただいま御指摘のように、補導された児童生徒の人数が多い時期に一方におきまして朝鮮戦争その他の国際的な状況があったということは御指摘のとおりでございますが、そして、そういう状況のときに社会全体がどうであったかということもあるわけでございますが、私としては、その辺の連関につきましては必ずしも明確ではない、ただ十分に、ただいまのような見方というものも考えながら検討していかなければいけないとは思っております。  それから、私どもいろいろいたしておりますが、教育課程の改定を初めとします、あるいは生徒指導内容充実等を中心といたします施策を、決して私どもは通り一遍のつもりでやっておるのではないのでございます。やはり教育という場面では、基本的な基礎的な取り組みということをしっかりやるということが大事なんでございまして、それはいろいろな事象に応じて必要なバリエーションと申しますか、それに即した動きというものは必要でございますけれども、やはり基本を充実していくということで、これは私どもは通り一遍とは考えておらないのでございます。  確かに、ただいま御指摘のように、自分の行為に責任を持たないというような事態は、それがやはり児童生徒に非常に重要な影響を及ぼしますし、人間を大事にすることが肝要であるということは、まさに御指摘のとおりでございますし、それから人間のようないわば非常に高貴なものを秘めていることによって成り立っておる存在の行動を物や金で支配するということも、これは嘆かわしい風潮であるということも事実であろうと思います。  学校教育では、したがいまして自分自分の行為に責任を持つというようなしつけということは非常に重要でございます。確かに、昭和二十六年代のころの非常に混乱した戦後の社会の状況では、社会全般も、あるいは教育現場におきましても、そういった面について十分な対応をしなかったのではないかということが言われておりますし、そのころ非常にしつけの上で大事な幼少期を過ごした人たちが、たとえば教員になった場合に、先ほど御指摘のように親が空きかんを捨てるというようなことで教員としてもそういう不注意がないかどうか、そういうことが非常に問題でございます。  私どもは、やはりそういう意味で、教育界全体が資質向上に努め、自粛自戒をしていくことが必要であると思っております。人間を大事にするということも、先ほど御紹介いたしました生徒指導資料のいろいろなところで、そういったことも繰り返してございますが、何は置いても、やはり教育の場では、一人一人の生徒の人格の価値を尊重する、そして個性の伸長を図るということでございますが、あわせて同時に、社会的資質や社会的行動の水準を高めていくということを基本にいたしておりまして、そういったことも、先ほどお配りいたしました生徒指導資料のいろいろな冊子の中でも基本といたしまして、指導充実の方途の展開を行っておる次第でございます。
  24. 中西績介

    ○中西(績)委員 通り一遍にやっていない、基本を重視しておると言うのですけれども、先ほど私が申し上げたのは、これを見ましても、あなたが出されたものは、そのときそのときの事象によって云々、そういうことはやらないということを言っていますけれども、出されたのは、そういうものが出てから出したのですよ、五十三年にしましても五十五年にしましても。問題があったからこの通達を出したわけです。そうでしょう。  だから問題は、私が言っておるのは、そういう通達を出したから出さないからということではなくて、一番大事なことは、いま問題になっておるようなこういう事態になってくるその原因が解明されずして——ここにあなたが示されておるような、たとえば、これは三角さんのあれですよね、これによって、一が二項目、二が三項目、三が二項目示されてますね。そして出されている別添えの資料警察庁資料です。警察庁資料であっても私はよろしいと思うのです。しかし少なくとも、そういうものが本当に分析されて、その中でどう対応していくかという施策がそのときなくて、いつも後追いみたいにして出されてくるのです。そうではないと、こう言っていますけれども、ところが実際はそうなんだ。  ですから、こういうところを考え合わせてまいりますと、しかも前回のもの、今回のものを見ましても、中身は大体同じです、しかし一番大事なところが抜けているのじゃないかと私は思うのです。何かと申しますと、先ほど言うように、物ですべてを解決するということになっているでしょう。たとえば家庭において考えていただきますと、問題の出ているところではどうなっているかということを見ますと、ほとんどが物で解決するというかっこうになっているわけです。物さえ与えておけばということになっている。それではいけないわけなんです。  では、教育効果を高めるためには何をしたらいいかということを考えなければならないが、そのときには学校教育社会教育いろいろあるでしょう、そうした場合に学校教育で、たとえばこの前私が質問したときに、一クラスの生徒が四十五人もいた日には、あるいはそれ以上いた日には、見た場合に全然自分の目の中に一括して入らぬのじゃないか、指導するときには、それより数を少なくしなければならぬじゃないかと言ったところが、前の文部大臣は、いや、それは訓練すればできるのだという言い方をするのです。自分はアイスホッケーをやっていて、パスをするときにこちらを見ていても、あっちから来るのが見えるから、やればできるのだというような答弁があった。そういうようなことで物事を処理してきた経過、積み重ねが、いまこうなっているんですよ。ですから、教育環境をどう整備するかという根本的なことが抜けていくのです。こういう点あたりが、いまこそ問い直されてきているのではないか。少なくともそういう点を私たちがどうするかということを、いまここで十分対応できなければ私はだめだと思います。  特に暴力生徒、これは後で聞きますけれども、いまいろいろ暴力をふるっている生徒の中で一番大きな問題は、なぜそうなっていくのかということを聞くと、中学生ですが、目立ちたいからだということを言っている。ですから、結局目立つための一つ行動として、校内において教師を殴らぬことには番長になれぬというあれがあるのです。ところが今度は、学校内におけるそういう暴力はどういうふうになっていくかというと、家庭でいままでは子供さんに対していろいろ注意したり、あるいは温かい中でのしつけがあったと思うのですが、そういうものがだんだんなくなる。とすれば、そういうものがなかったとすれば、結果的には学校でいろいろ指摘をする、そうすると、先ほども報告があったように、指導する教師に対して暴力がふるわれていくという結果になっていますね。これもそのとおりでしょう。ところが今度、家庭の中においての暴力はどうなっているかというと逆なんです。暴力をふるう生徒たちが言っているのは、みんな親に対してはそれはしないと言うのです。それは親子の関係があるからだとか親はこわいとか、こう言っているのです。ところが、家庭の中で暴力をふるう人は、学校の中では今度はほとんど目立たない人です。それは先ほどから説明しているように、何かというと、進学等で悩みが多かったり不安があったりいろいろする人たちです。ほとんど学校で目立たぬ連中が、家でいろいろ注意されたりあるいは抑圧されたりすると、それが今度ははね返ってくる、暴力となってあらわれてくる、こういう結果になっているのです。  ですから私は、少なくともそういう問題が本当にわかるための手だてというのはどうしたらいいのか、ここいらが全然——この「方針」にあっては、生徒と語り合えと言うけれども、じゃ、そういう時間があるのかどうか。たとえば小学校から考えていってみましても、小学校でのいまの授業形態というもの、いままで持っている授業内容、そして四十五人学級の中でそういうのができるのかどうか。そういうことを、いま私、一つしか取り上げませんが、あるいは今度中学におきまして、本当にみんなで教師集団対応できるような組織になっているか、なっていません。先輩の言うことを余り聞いちゃいかぬとか、日教組に入っちゃいかぬよとか、こういうことが全部先行しているのです。そこでは教師集団がまとまる体制にはなっていないのです、みんなつばつけられて入ってくるのだから。しかも、今度は若い教師たちはどうかといったら、いまの受験体制の中で育てられ、エリート的なもので育てられてきているわけでしょう。それがいま、たとえば中学校で言うなら、授業がわからないという人たちに対応できる体制になっているのかどうか。高等学校で言うなら、職業学校における、本当に広域的な学区制の中でふるわれ、選別されてきた生徒たちに対応できる教師に果たしてなり得るか。一緒に話をしようじゃないかと言っても逃げて回るような教師たちがいるのですから。それはなぜか。先輩に近づくなとかいろいろ言っているわけです。  そういう縦管理だけが強まっていっている体制の中で、本当にそういうものが、心温まる豊かなものが教師の間においても醸成できるのですか。私はできないと思うのです。環境そのものが全体的になっていないと私は思うのです。だから、そういう点との相関性なり問題を、一つだけ挙げましたけれども、果たして文部省なりは考えておられるかどうか。  それから、総理府の場合には、そういう点で今度は社会教育とのかかわりの中、それと学校教育のかかわりとの中で、文部省の所轄ではありますけれども、総括的にやられる、そういう点が果たして考えられておられるのかどうか。  私、時間がありませんから、まだ細かい点は挙げればたくさんありますが、しかし、そういう点、基本的な面がどうも欠け落ちて、事象に対しての通達なり何なりが出ていく、出てくるものは、何年たっても同じものが出てくる、これでは私はできないと思っています。この点についてどうでしょう。
  25. 三角哲生

    三角説明員 簡単に申し上げます。  御指摘のいろいろな問題の原因は、やはりぜひ解明されるべき事柄でございます。解明されずして通達を出してもという仰せでございますが、私は、やはり事件につきましては、個々にその原因を十分に解明していくべきであると思っておりますし、そうして、その後の対策指導等は、そういった結果を踏まえてさらに進めてまいらなければならないというふうに考えておる次第でございます。  それから、物ですべてを解決することは問題であるということは、御指摘のとおりでございます。私どもとしては、もう少し精神面並びに物質面で、ただ不平不満を言いつのってがまんすることを知らないということはいかがかと思うので、やはり物に対しても一つの禁欲ということが価値あることである、そのことによって精神の安定ももたらされるというような中味が、教育の流れの底の方にあってもよろしいのではないか、何でも不平不満はよそへ持っていって要求をするということでは、やはり円満な人生は完成できないというふうに考える次第でございます。ただ、もちろん逆に無気力に何にでも迎合するということは、これは左に対しても右に対してもよくないことであると考えておる次第でございます。  それから、四十五人の問題でございますが、これは先ほど御指摘の、一つのピークでございます昭和三十六年、三十七年ごろは、ここでは中学校を例にとって申しますと、教員一人当たり生徒数は二十九・八人とかそういう三十人に近い数字でございましたが、その後の国会を含めての御努力によりまして、ただいまでは中学校は教員一人当たり生徒数は約二十人ということまで持ってきておるわけでございますし、それから経済成長が悪い影響を及ぼすということもありますが、その成長の波に乗りまして、施設設備の整備にも努めてまいったわけでございます。なお、四十五人というのは、それは確かに一人対四十五人というのは大ぜいの人数であると存じますが、先生方は年間を通じて児童生徒と接触をしていただいておるわけでございますし、児童生徒を十分に理解し、観察をしていただくということが大事であると思っております。  それから、目立ちたいから暴力をやるということも事実であると思います。しかし、私どもは、教育の基本としては、教育の場は——社会にはいろいろな意味での闘争の場もございます。闘争と申しましても、腕力的闘争だけではございませんから、そういう闘争の場もございますが、教育の場におきましては、人を精神的にもあるいは肉体的にも傷つけるということは、その相手が傷つく以上に傷つけた人間が結果的には傷つくものであるということを理解させる、そういう教育を展開していくことが必要であろうと思うのでございます。  それから、学校という組織は、一般の企業でございますとかあるいは官庁でございますとか、そういう組織と比べまして非常に縦社会でない、縦の関係でない社会であろうと私は思っておる次第でございます。しかし、そういう場でも一つの共通の目的を実現するための同志的な結合集団であらなければならないのでございますから、校長を中心に、たとえて申しますれば、ラグビーのチームのように結束し、連係プレーをよくして、すべての教育活動の展開を充実し、実施していただきたい場所であると私は考えておる次第でございます。
  26. 浦山太郎

    ○浦山説明員 先ほど御指摘がございましたように、こういった校内暴力を含みます非行全般につきましては、社会全体とかなり大きなかかわりがあるのではないか、こういう御指摘でございまして、その点は、私どもといたしましても、従来からそのような考え方に立ちまして、家庭学校のみならず社会全般について、十分に地域活動その他考えていかなければならないというような考え方で、最初に御説明申し上げましたような社会参加の実践活動その他の健全育成対策というのをとってまいったわけでございます。  なお、これでもって十分かという段になりますれば、御指摘のように、それで十分でありますれば、このような事態も起こらない、少なくとも多発してくるという現象はないのではないかということがあると存じますので、さらに今後とも、よく原因を究明し、また、どういう対策をとればいいか、関係省庁とも十分協議をしてまいりたいというように考えます。
  27. 中西績介

    ○中西(績)委員 文部大臣、先ほど文部省の答弁がございましたけれども、私が聞いたことに対する答弁とは遠く離れた、文部省が勝手に物を申しているというようなかっこうなんですよ。だから、内容的には何を言っているか、私たちは全然わからないのです。本当にそういうように考えておられるかどうかということを私は大変疑うのです。  そこで問題は、私は、一番最初に少年刑法犯の人員を年度別にずっと見た場合に、こうして多発しているということを見た場合に、ただ単に縦系列に締めていっても、それはだめですよということを言っているのです。その一番いい例は、昭和十七年から十八年、十九年ごろに、あれほど戦争に向けてということで国家総動員令をかけてやったけれども、そのときが戦前、戦中において一番多いですね。これはなぜか、そのことの原因が解明されていないのじゃないですかとぼくは言っている。あるいは昭和二十六年、確かに戦後のすさび、混乱あるでしょう、しかし、そのことはどうなのかということの分析がなされていない。先ほども出てまいりましたように、また総理府なり警察庁が言っておりますように、三十九年ごろからになりますと物だけが栄えてくる、しかし、その間に心の豊かさがだんだんなくなってくるという現象が、物質的な豊かさはあったけれども、問題があったということが指摘されています。さらにまた五十四年度あたりになってくると、それがさらに出てきて、むしろ文部省よりも警察庁の方の分析が私は当たっているのじゃないかと思うのだけれども、たとえば受験競争だとかこういう問題等を受けてどう対応していくかということが問題になっている。警察庁あたりはそのことをはっきり言っているのです。  このことを考え合わせてまいりますと、あるいは総理府の方だって、遊びの問題等からしてどうだといういわゆる社会教育面をどうしていくかという問題等からずっといきますと、大体のあれが出てきよると思うのですが、その根幹に触れて問題指摘をし、それに対応する施策というものが明らかにされておらない、私が今回質問するにあたって文部省なりいろいろなところからいただいた資料を見てみても、そのことが出てきてないと私は言いたいのです。  ですから、この点からいたしまして、文部大臣、これから後大変重要だし、特に学校における暴力というのは、ここ数年来一番多く発生していると言っていますね、その場合に、先ほど私がちょっと申し上げましたように、本当に学校の中でそういう子たちがどういうあれを持っておるのか、甘えの構造なのか何なのかということを、もう一度ちゃんと分析をし直して、それに対応するものを出していかなければならぬと思う。締めるだけででき上がらないということはもうはっきりしている、いままでのデータからしましても。そこをどう打開していくかということを考えなければならないのです。  ですから、これは早急に立てなければなりませんから、いままでのような通り一遍ということに対して、私は怒っているわけですから——通り一遍と言うことをやめてもよろしいですよ。こういう通達だけでなしにもう少し真剣に考えていただけるかどうか答えていただきたい。
  28. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいま先生のおっしゃったとおりでございます。このグラフのピークのあれも、これを分析してよって来る結果が今日の現象になっている、その過程の精密な研究を必要とすると思っております。さらに、それを踏まえて、これから一体文教政策をどうしなければならないか、過去の問題の分析の上に今後の文教政策を立てたい、かように考えておる次第でございます。
  29. 中西績介

    ○中西(績)委員 終わります。
  30. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 鍛冶清君。
  31. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 限られた時間でございますので、最初に大臣にお尋ねをいたします。  先ほどからいろいろ御報告をお聞きいたしましたし、いろいろな方から御質問がありましたが、そういうものを集約し、さらには、いろいろの現状をごらんになりまして、大臣といたしまして、こういう非行問題、また校内暴力の問題が特に目立ってきているわけですが、こういうものが起こってくる原因というものはどういうところにあるというふうにお考えになっているのか。また、あらゆる階層の方々には、善意の中から暴力をなくそう、非行をなくそうという中から、いろいろ皆さん努力をしておるが、それが大変食い違ってきておるような感じがいたしますが、そういう最近の現状に対しまして、対策としては、私は、短期的な対策と長期的な対策と二つの面から考えていかないと、この問題の解決というものは非常にむずかしいのではないかというふうにも考えておりますが、そういった点についての御見解を、まず最初、大臣にお尋ねいたします。
  32. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、そのよって来るいろいろな経過、また分析をすることによっての原因の究明ということがございますが、いま時点におきまして、将来どういうことが一番反省されなければならないかということでございますけれども、やはり愛情といいますか、親は親としての、母としての、父としての子供に対する愛情、また教師生徒に対する愛情、そういうことを基本に、さらにまた親は親らしい権威を持たなきゃならない、教師教師としての十分な責任感と威信を持たなきゃならない、総じて秩序というものが前提になって初めてりっぱな青少年教育ができるのだ、私は、こういうふうに考えております。
  33. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いまの質問に対しまして、初中局長からで結構ですが、御見解を補足して承りたいと思います。
  34. 三角哲生

    三角説明員 先ほど来も申し上げましたが、やはりこういうことが非常に多発しておるという、一時期に比べますと大変異常な状況でございますので、やはり常に学校教育内容充実していく、その基本に立ちまして、そして教員が、何と申しましても教育現場の最前線でございますから、私どもは、一人一人の先生方が油断をせずに真剣に児童生徒指導に取り組んでいただくようにお願いしたいと思うわけでございます。  これに対しまして、市町村段階の教育委員会あるいは都道府県教育委員会、さらには全国的な視野からの施策を考えていかなければならない私ども文部省、これらが一致協力いたしまして、できるだけ事柄に即しまして必要な行政上並びに財政上の措置について検討し、対応していかなければならないと思っております。  基本的な考え方は、先ほど大臣が申されたとおりでございます。
  35. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 どうも余りはっきりしないのですが、原因の方は原因の方で私なりに多くの方にお会いしていろいろ御意見を承ったのを集約して申し上げてみたいのですが、この対策については、時間がないからむしろ私の方から押しつけ的に短期的対策とか長期的対策というふうに申し上げたのでありますけれども、こういういろいろ個々に突発してくることに対する対応、これは短期的に必要になってくるであろうと思いますが、しかし、起こってくる現象の断面だけを見ても、この問題の解決にはならないだろう、大変深い問題であり、むしろこの校内暴力非行の問題というものは、いまの教育自体の根底からのあり方の問い返しを迫られるぐらいの重大な問題ではないだろうか。また社会自体の責任等も当然あると思いますが、そういう中で短期的に対策というものが必要であろうし、それから長期的な対策としていろいろな施策を明確に打ち出していく必要があるし、その指針なりを文部省が、もう一つ、今度の第二次通達をより超えて明確にお示しになる必要があるのではないかと思いますが、こういう考え方に対してはいかがでしょうか、初中局長にお尋ねいたします。
  36. 三角哲生

    三角説明員 個々の事件に関します対策は、やはりこういう事件が生じますれば、当該学校はもとより、父兄の協力も得、あるいは先ほど来御説明のございましたような非常に重大な事柄になりますれば、当然に所轄の警察関係とも十分密接な協力をとりまして、まずはいわば対症的に、病気で申しますれば当該病気を治していくということに取り組むわけでございます。さらには、治した後、いかにまた元気を回復していくかということも大事なわけでございますから、それについては、やはり個々の事件ごとに真剣な取り組みをするということであろうかと思います。これに対して都道府県教育委員会なりあるいは文部省として、必要な場合には、それは実地に調査をするということもありましょうし、その調査に基づいて他の事例等の参考材料などもそろえて指導助言をしていくということも大事であると思いますが、まずは、やはり当該の現場におきますいろいろな関係者の協力による対応ということが、基本的に大切なことであるという考え方は変わらないのでございます。
  37. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 まだ明確でない点ばかりのような気がいたしますが、こういう長期的対策、短期的対策というような形で私の方から申し上げたのですが、警察、総理府の方では、こういうことについて御意見をお持ちでしたらお聞かせ願いたいと思います。
  38. 石瀬博

    石瀬説明員 警察少年非行とか校内暴力対応する対応の仕方というのは、非行少年の補導を通じて青少年の健全な育成に資する、こういう立場でやっておりますので、どうも健全育成そのものを最初から目的とした長期的対策というものは、ちょっと私どもの役所の性格からなじまないものがあろうかと思っております。  ただ、その非行防止の面につきましても、現場で生起しております事件の処理そのものといったような対症療法的な策だけではなくして、やはりわれわれの関係しておるいろいろなボランティアの方々とかあるいは関係機関団体との連携をとりました上での長期的な非行防止施策というものを、これまでも総理府その他の関係省庁とも連絡をとりながらやってまいりましたし、今後とも、そういう方向でやっていく必要があろうというふうに考えるわけでございます。
  39. 浦山太郎

    ○浦山説明員 私どもといたしましては、先ほど来お答えを申し上げておりますように、それぞれの省庁におきましての対策と申しますか施策等の調整を図る、こういう責務を担っておるわけでございますが、そういった面を十分に活用しながら、今後とも、各省庁と相談しながらやってまいりたい、このように考えております。
  40. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 抽象的にしか話が出てこないのはやむを得ないのかもわかりませんけれども、どうも私どももはっきりしない点がございます。  私、先ほど申し上げましたように、原因というものはどういうところにあるかということの究明は非常にむずかしいような気がいたしますけれども、そういうのに対応する中で、これは最初に申し上げたように、各ところに問題、責任があるような気がいたします。しかし、それは皆善意から出て、何とかしようという中でやっていることが、結果的には余りうまく機能していない、こういうところにどうも原因があるようです。  そういう意味合いから、私がずいぶん多くの方々、教育関係者やそれ以外の方々にもいろいろお尋ねをし、お話をした中で集約をしてみまして、非行とか暴行等が続発するのは、次のようなことがあるのではないかということも言われておりました。これはあくまでも善意から出たことが、結果的にマイナスになっているというような形で申し上げますし、それを非難するという意味ではございませんが、ここらあたりが考える余地があるだろうというふうな気もいたしますが、これについてのお考えを大臣にもお答え願うし、初中局長にもお答え願いたいと思います。  一つは、受験戦争という中で子供同士が、昔は遊び仲間であったものが、最近は競争相手になってきた、こういうようなことに原因があるのではないかというようなことがありました。  また親の方も、学校を信頼してはいるのだけれども、わが子のことになってくると、これを不必要に、まあ結果的な話ですが、どうも学校に干渉をしてみたり、要求があったり、また監視したりという、結果的に見ると、その善意が逆に対立的な立場の集団になってくる。だから、何か事が起こると、すぐ責任を学校に持っていく、どこへ行くというような形があり過ぎるのではないかというふうなことが言われておりました。  さらには、先ほどもちょっと出ておりましたが、教師集団の不必要な対立によるチームワークの欠如というものが、問題の原因の一つには入るのではないか。これも教師の皆さんは、子供をよくしようという立場でやっていらっしゃるのですから、悪意は全くないと思いますけれども、各自の主張が強過ぎるがゆえに、そういうまとまりというものを欠いて、むしろ子供に対する対応がどうも逆の立場が出てきているというふうにもとれるわけですが、そういう御意見が相当多くありました。  また、マンネリ教師勉強不足ということもあるのではないか、こういうことも言われておりましたし、それから社会的のいろいろな堕落と言うと、大変言い過ぎかもわかりませんが、非常に爛熟した中での子供に対する悪影響を及ぼすようないろいろなものが最近強くなってきて、子供も侵犯をされてきているのではないだろうか。  それから、いわゆる都市化が進んだりする中で、戦後、無関心な人か多くなった、他人に対しては本当によくしようという気持ちの人が少なくなってきたようである。  それから、いろいろ事件が起こりますと、新聞、テレビ等で報道をされるわけだけれども、これも悪い点ばかりが報道されることによって後の立ち直りが大変になる。それから、いろいろな意味でのマイナス面というものがあるのではないか。むしろよい点の報道というものも大いにやってもらうという中で、よりよく機能していくのじゃないだろうか、こういう御意見も多数の方から出ておりました。  そのほかにも、子供自体の問題もあるようでありますけれども、いま挙げたような問題について大臣はどういうふうなお考えでしょうか、お伺いいたします。
  41. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 今日、公表になりました内閣の青少年問題に対する白書がございます。非常によく問題の諸点を究明し、分析されて、りっぱな白書だと存じます。  いま起こっております社会現象としての青少年問題、これは御案内のとおり、単一の原因によってこうなっておるのではありません。いろいろな原因が、今日の青少年非行という問題で代表されて言われておるのでございまして、いま先生が御指摘になりました幾つかの点でございますが、いずれもみんなおっしゃるとおりでございます。そういうことが複合し、そして今日の現象になっておると思います。それを踏まえまして、今後の家庭教育あるいは学校教育あるいは社会教育、その中において総合的にこれをいい方向に導いていかなければならない、かように考えております。
  42. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは私が申し上げた短期的対策の中、まあ長期にも入るかもわかりませんが、先ほど文部省でいろいろと通達の御説明なり充実のための施策なりの御説明をいただいた中に——時間がないのでしぼって御質問申し上げますが、生徒指導主事設置ということで、数の御報告もいただきましたが、中学の場合は約一万六千校あって、約九千名強の人員配置である、こういうことなんですが、現場でいろいろと話し合いをし、お尋ねしておりますと、いまの状況の中では少なくとも一校に一人はこれは必要であろう、それも専任です。要するに、授業担当ではなくて専任の生徒指導主事というものが必要だ、そうしないと対応がし切れない、それでも厳しいぐらいだという意見がありますが、この点についての対応は、五十三年の通達の中でも生徒指導主事ということを触れられておるわけですけれども、それからもう足かけ三年ぐらいたつのですが、一校一人という充足が中学の場合やられてないという数字が出ておりますが、この点についてのお考えはいかがでしょう。
  43. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 この際、答弁者に申し上げますが、答弁は簡明にお願いをいたします。
  44. 三角哲生

    三角説明員 ただいま中学校につきましては、いわゆる標準法による措置としては、十八学級以上の中学校におきまして専任の生徒指導担当教員一名ということでございます。公立中学校で申しますと、二千八百八十五校というのが現状でございます。これまでも努力をしてまいりましたが、今後、私どもとしては、この点につきましては、鍛冶委員の御指摘を踏まえて十分検討してまいりたいと存じますし、また、未設置校等につきましても、できるだけ設置を進める必要がある、それから専任がかなわない場合でも、授業時間等の割り振り等を十分に考えた上での学校運営上の種々の工夫なり知恵なりをいたして、しっかりした体制にしていただきたいというふうに思う次第でございます。
  45. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはもう時間がありませんので、御要望を申し上げておきます。こういう問題は、あらゆるものに優先して予算措置をなさり、速やかに配置をする中で対応すべきだと思いますので、この点を御要望申し上げておきます。  さらに、この通達の中で進路指導を重視するというお話が出ております。ところが、現場学校では進路指導というものは、これも時間がないから結論的な話でお尋ねしますが、小学校の場合は担任の先生がいて、担当が主としてやるような形だと思いますが、特に進路になりますと、中学というのがやはり一番問題になるわけですけれども、これが担任の先生はあっても生徒と触れる機会がきわめてない、こういう中で進路指導というものが、事がいろいろ起こる中でどろなわ式にやられている、こういうようなことの嘆きが現場で実は出ておるわけなんです。  特にこの問題は本当に頭が痛い。校長以下全員で頭を抱えている学校がずいぶんある。真剣に考えれば考えるほど、これは大変なんです。特に進路指導は、受験戦争に勝ち抜いて高校、大学にどんどん行ける子供さん方はまだまだいいわけですが、先ほどからちょっと出ておりました落ちこぼれと申しますか、表現はいいか悪いかわかりませんが、よく言われているそういう子供さん方が非行に走る傾向が強いわけでありますけれども、こういう人たちに対する進路指導というものに対して、こういうふうにしたらこうなるのだという展望が、いまの時点でわれわれも展望を開いて指導するような事実というものは何もないのだ、できないのだというようなことで大変嘆いているわけです。  こういう状況の中で、進路指導というものが要するに継続的になされなければならないものが、短絡的に、しかもその場その場の対応、しかも非行の人たちには明確な指針を示しての進路指導、相談は全くない、こういうような状況にあるようでありますが、こういうものについては、具体的に文部省でどういうふうにお進めになるつもりか、これをひとつ簡潔にお答え願いたい。
  46. 三角哲生

    三角説明員 進路指導は、やはり生徒指導、特に中学校高等学校生徒指導の中の重要な問題でございますので、先ほど申し上げましたようないろいろな講座あるいは生徒指導の実践の研究指定校等の研究でも真剣に取り組んで、それが各学校に及ぶようにということを願っておるわけでございます。  やはり何と申しましても、青年期の中心的課題としては、いまおっしゃいました職業の選択を含めましての進路指導と、それから国家社会の形成者として必要な、公民となるための必要な資質をつけていくということでございますので、その二つを含めました進路指導というものは、私どもは、今後とも、これを非常に重視して取り組んでまいりたいと思っております。
  47. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この問題も、もう時間がなくなりましたので、細かい話はやめますが、とにかくこれもひとつ体制づくりをはっきりやっていただき、こういう通達を出す以上は、出したから文部省に責任がないというお考えは全くないと思いますのて、これは確信をして——うなづいていらっしゃいますので、そうだと思いますが、後のフォローをやってはっきりしながら、明確に現場でこの対応をやれるような、そういうものの体制づくりをぜひやっていただきたい、これは要望です。  時間が過ぎましたが、少しだけいただきまして、警察庁の方にお伺いいたしますが、番長というのが大変問題になっているようであります。これは文部省の方でも把握されていれば、この点についてはどちらでも結構ですが、番長とか番長グループというのは、大体一校当たりどれくらいのグループがあるのか、ちょっと変な話になりましたが、お尋ねします。
  48. 石瀬博

    石瀬説明員 私ども事件を通じまして、番長グループとか校内不良グループ把握することが多うございますので、全国的にそういうものがどれだけあるというふうな実態はつかんでおりません。学校によってまちまちでございまして、一つのグループが比較的大集団で構成されている例もございますれば、先ほど御紹介いたしました尾鷲の事例のように、校内に四つのグループが構成されているというような例もございまして、まちまちでございます。
  49. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは確かにおっしゃるとおりのようでありまして、大体一つかないし三つくらいの中でいるというようなことですが、そこらあたりの対応が端的にしっかりしてくると、ずいぶん変わりが出てくるのではないかという気がいたしますが、こういう対応に対しても、文部省の方にもこれは要望として申し上げたいと思います。  そしてもう一つ、一番問題は心の問題だと思います。これは大臣もちょっとお触れになったようでありますが、この問題は、いま一番忘れられているし、今度の通達の中にも、それは明確に触れられていないようです。前回のには若干あるようですが、そういうものは具体的にどうするのかということがあるのですが、いろいろ聞いてみましたら、いまの中学生は、特に、いろいろなおしゃべりはするけれども自分の本心を本当に表現するというのがきわめて下手だ、その本心を聞いてくれる人が、家庭にもいないし、学校先生にもいないという場合が多いし、そういう人たちが聞かれていないということから、要するに、いろいろなことがあったときに、注意をされたとかしたということよりも、自分を構ってくれないというようなことから、どうも非行化に走り、暴力に走るというふうにも思われるわけでありますが、そういう点について、警察庁の方でお調べになった中でのあれをお聞きしたいということと、そういう事を起こした番長グループ、いわゆるどうにもならぬという子供さんは、お調べになったときに、本当に本人が本心を見せるような態度で取り調べに応じておるのでしょうか、そこらあたりのことも、ニュアンスをちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  50. 石瀬博

    石瀬説明員 先ほど御紹介いたしました東京葛飾区内の奥戸中学校の場合につきましては、五人の生徒を現行犯逮捕したわけでございますけれども、その取り調べの状況を私ども警視庁の方から聞きますと、これまで親も教師も本当に自分たちをしかってくれなかった、本当に厳しい態度警察が物事の善悪というものを取り調べの過程ではっきり言ってくれたので、本当に目の覚めるような思いがしたというようなことを言っております。任意で取り調べましたときには、いろいろうそをついたりするような場合があるわけでございますが、強制捜査によりまして逮捕いたしまして、刑事が情理を尽くしまして話せば、彼らもやはり人の子でございまして、非常によくわかってくれるわけでございます。本当に親との触れ合い、あるいはまた教師との心の触れ合いというものが非常に少ない中で、少々の悪いことをしても本当にしかってくれる人がいなかったということを述懐しているということを現場の刑事から聞いております。
  51. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いみじくも出ましたが、いまのお答えの中で、私もなるほどと思ったのですが、大学を卒業して企業に就職した人たちの状況を聞いてみましたら、会社側の方では、これは大きな会社ではございませんが、新しく入ってきた子供さんたちは余りにも物を知らないと言うのです。学校時代に教えられていないと言うのです。したがって、道徳的なものを含めて、いわゆるしつけ的なものを本気になって注意すると、いまおっしゃったように、目が覚めるような気持ちで、ああ、そういう考え方もあったのですかというような対応がいま非常に多いのだそうです。  そういう意味で、私は、いまの義務教育の一番根本だと思いますが、そこらあたりの小学校中学校教育の中で「道徳」の時間も設けられておる、ところが、これはいろいろ聞いてみますと、時間がないから私の方から申し上げますが、これが本当に機能していない。むしろいろいろな事件の手当てだけに追い回されて、これが活用されていないし、ないしはこれが本気になって教えられている形跡は見られない。大体週一時間ぐらいあるようですが、どうも活用されていないのじゃないかという感じがいたしております。そこらあたりの取り組む姿勢というものも、これは文部省の中でもっと真剣にお取り組みをいただく必要があるのではないか。  さらに最近は、遊ぶ仲間がいなくなったせいかもわかりませんが、殴る人、殴られる人が明確に分かれてきているそうでございます。殴る方はとことんまで殴る、殴られるのは殴られっ放し、そうしてその殴り方を知らないというのです。要するに子供時代からの遊びの中で、けんかをしたりいろいろなことをする中で、餓鬼大将的な者がおる中で育ってくるという雰囲気がなくなってきている。さっき申し上げたように、いわゆる競争相手として友だちを見るという面が強くなっておるという中から、殴り方を知らないで、殴ってみると大変なことに、人の命をなくすることまでわからずに平気でやるというものもどうも根底にあるようです。  そういったいろいろなことを含めて、時間が過ぎましたので、これで終わらせていただきまして、また機会があれば、これは時間をかけて、本当に本気になって、話し合いの中で立て直さなければならぬ問題でございますから、やりたいと思いますが、最後に大臣から、お答えを願って、私の質問を終わらせていただきます。
  52. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ありがとうございました。非常によくお調べになっていただいておりますことを厚くお礼を申し上げます。
  53. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 和田耕作君。
  54. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 先ほど来政府委員から、とりわけ警察庁の政府委員から、少年のいわゆる学内暴力についての生々しい御報告を受けました。これはいろいろなマスコミの報道によりますと、氷山の一角という言葉がそのままマスコミにも載っておるのでございまして、先ほどの御報告は、特に東京周辺の非常に顕著な例、あるいは三重県の尾鷲の例もありましたけれども、私は思うのですが、文部省としては、この問題を詳細に把握する必要がある。その場合に、こういう非行が多発している学校と、逆にないかあるいは非常に少ない学校についても調べる必要がある。このことを私は強く感ずる次第であります。  というのは、ごく最近、一週間ほど前でございますけれども東京都下の人口急増地帯の千人ぐらいの生徒数を持つ中学校、埼玉県の、これも人口急増地帯の生徒数約千人ぐらいの中学校を現地に視察をする機会がありました。私、多分人口急増地帯等ではかなりこういう問題が多いだろうという予測を持っておったのですけれども、その校長さんに聞いてみますと、ほとんどないということをおっしゃった。ないというのは、これは非常に小さなものは恐らく無視しておるのだろうと思うのですけれども、顕著な例はほとんどない、こういうお答えがありました。そのときに校長が言うのは、新しい学校では校長以下の先生方意欲に燃えていると言うのです。新しい学校をつくる、校風をつくるための意欲に燃えておるのだ、したがって、校長以下が一団になった空気があるので、こういう問題が起こる余地はありません、こういう答えでございました。私は、これは非常に大事な問題だと思います。  そして文部省が整理なさった三つの項目、第一に、生徒非行の温床になっておる落ちこぼれの問題ですね、その次の、つまり学校先生が一丸になった指導の欠除という問題、最後は、各警察その他関係機関家庭の協力の問題の三つに整理なさっておられるけれども、私は、真剣にこの問題と取り組んでおるいろいろな報道にも目を通しましたが、大体これはよく集約されておると思います。問題の焦点は、教育の場での落ちこぼれという問題に対して正しく指導するということと、問題が起こった場合に、学校がしっかり一団になってこれに対して対処するということと、そして学校だけではとても手に余る、あるいは子供の日常を知るために家庭あるいは警察その他の機関連絡をとる、この三つの問題をきちんとやれば、これらの問題のかなりの部分が対策として解決できるのじゃないか、私はそのとおりだと思います。ただ、この問題の対策の仕方にいろいろ問題がありはしないかと思うので、これから若干御質問をしたいのであります。  ある有力な新聞社のごく最近、一週間以内の報告なんですけれども、私は、これを読んでみまして、非常に驚きの気持ちもあったのですが、ちょっと読んでみますと、こういう記事があるのです。「関東地方のベテランの先生は「最近、生徒がさっぱりつかめなくなった」と打ち明けた。受け持っているのは「非主要科目」。」、つまり進学と関係がわりあい少ない科目のことだと思いますが、「つまり、高校入試には関係ない科目である。「時間厳守、チャイム着席」が、学校の月間目標になっているが、始業時、半分以上が着席していることはまずない。パラパラ教室に戻って来るのを待って、「起立」までは、こぎつけた。「礼」になるとウワーッと大合唱が起こる。一つの班をどなりつけていると、他の班が騒ぎ、なかなか収拾がつかない。目を離したすきに教材を盗まれ、二度と出てこない。」等々の記事ですね。  これは、この報道によりますと、多かれ少なかれあるような印象を私は受けたのです。つまり校内暴力の問題は、先ほど何人かの委員からお話がありましたけれども、確かに政治の乱れがあり、あるいは社会の乱れがあり、あるいは家庭の乱れが影響していることは事実です。しかし、校内暴力の問題は、やはり学校内の問題です。学校の主役は先生です。校長以下の先生です。したがって、こういう問題が起こった場合には、主役である先生が本気になって反省をしてみるということが、それだけで問題が解決するとは申しておりませんが、やはり中心になることだと私は考えております。そういう意味でいまの例を申し上げたのです。  つまり、先ほど警察庁の御報告にもあったとおり、ラジオカセットをかけた、これをとめた、そこで暴力が起きた、この問題と同じことじゃないですか。「起立、礼」と言うときに、またわっと起こる、授業を妨害する、仮にそのときに先生がとめておれば、大小のああいう事件が起こってくる、こういうことなんですね。  やはり学校内での教育の仕方ということを、もっと本気になって先生も反省をしなければならないし、社会も、そして監督の官庁は、特にこういう問題について注意をしなければならない。あたりまえのことだと私は思うのです。原因を他に転嫁してはいけません。そういう問題について、もっと素直に考えてみる必要があると私、思います。  そこで、学校が一丸になって対処するという、そういう大事な問題を解決するためにどうしたらいいのか。校長先生は、こういうときに、やはり法律で決められておるような主役になるべきです。校長先生あるいは教頭さんが、そういう問題の親になって解決する姿勢のあるところには、こういう問題は起こっていないことが非常に多い。  先ほどの人口急増地帯の例で申し上げましたが、こういう問題について、文部省は、通達は出しておりますけれども、現実にもっと具体的にはどういうことを指導なさろうとしておるのか。校長の人選について、教頭の人選について、あるいは教頭さんがいないところでは、もっと教頭さんを選任して、教頭さんがもっと全校的に目を配られるようなことをするためにはどうしたらいいのか、そういう問題について、具体的な指示をしなければならないのじゃないかと私、思うのです。その点について、ひとつ文部省のお考えをお聞きしたい。
  55. 三角哲生

    三角説明員 ただいま和田委員御指摘のように、学校という一つの組織にありまして、校長がいろいろな意味で責任者であり、指導者としての立場からの見識と能力を発揮していただかなければならないことは、そのとおりでございます。     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕  こういう状況になりまして、特に文部省指導したということではございませんけれども、私どもとしては、やはりそれぞれの教育委員会が、その管内の学校がいろいろあるわけでございますが、その学校状況あるいは地域状況、それらを十分に総合的に勘案をいたしまして、校長はもとより教頭等も含めまして、それぞれの学校運営の能力等を十分に考えて適確な人事配置をし、必要に応じてまたその異動等についても考えていくということが肝要であるというふうに思っておる次第でございます。
  56. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題を中心にして全国の教育長を集められて、そして懇談をしたという例はありますか。
  57. 三角哲生

    三角説明員 全国の教育長の会合は、自主的な会合と、それから文部大臣が招集いたします会合がございまして、一番最近の状況では、たしかこの夏にいたしたかと存じますが、その際も、児童生徒非行防止の問題は議題に取り上げた次第でございますが、さらに、なお年明け等におきまして、そういう機会がありました場合には、私どもとしては、この問題を重点的に議題として扱ってまいりたいというふうに思っております。
  58. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大臣、校内暴力の問題は、これは考えようによりますと、いまの日本の政治の最も重要な課題であり、しかも、その責任は文部省、文部大臣にもある。ところが、こういう問題が起こって、もう半年も世の中で騒いでいるでしょう。しかし、こういう通達を出しても、結局、学校任せにするしか仕方がない、学校自体はこの問題をうまく処理する体制にない。ですから、こういうときに、なぜこの問題を主題にした教育会議を開いて懇談をする機会をつくらないのですか、私は不思議でならない。大臣、いかがですか。
  59. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 まことにそのとおりでございまして、私どもも、この非行の問題が起こりましてから、気持ちの上では非常に焦っておる次第でございますけれども、しかしながら御案内のとおりに、学校行政というものが、直接現場との間には学校長あるいは学校を通し、あるいはまた教育委員会を通しましての現行の姿でございます。のみならず、非行青少年の問題がだんだんと社会的にも多発するようになりましてから、特に通達を出すばかりでなく、通達だけでは一片の紙切れにすぎないので、あくまでもこれを実際に現場まで浸透させなければならないという責任を十分痛感いたしております。  同時にまた、この問題は、ただいま申し上げたような現象として学校に出ておる現実の問題、これはわれわれ文部省の責任のもとに処理しなければならない学校行政の問題であります。  同時にまた、そのよって来る問題、私が就任以来特に強調いたしております家庭教育の問題あるいは社会教育の問題、これも広義に申すならば文教政策の問題でもございます。そういう点を浸透させ、あるいはまた総合的に施策を進めることによって解決しなければならぬと考えますが、同時に、さらにこの問題は、秩序という一つ体制の問題でもあります。学校内における校長を中心とした秩序の問題、あるいは家庭における両親を中心とした家庭内の秩序の問題、さらに、その秩序の前提にある真剣な人生に対する愛情の問題というもの、これが基本でございます。そういうふうな広い面さえも配慮しながら、特に現象として起こっております直接の学校行政の問題については、さらに特段の意を払ってまいりたい、かように考えております。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いろいろのこの問題についての報道を見ますと、先生生徒との信頼関係がなくなっているという問題がある。昔からそうだと思いますけれども、なぜそういう状態が起こるのかということも、正面から考えてみる必要がありはしないかと思います。  たとえば子供の服装あるいは頭の髪、そういうようなものは各学校まちまちのようでありますけれども、やはり民主的な教育は子供の意見を聞かなければならないということで、子供の意見はどうかということを聞く学校があちらこちらに多い。これはこれで結構だと思いますけれども、しかし、義務教育の場で、学校の管理運営等に関して子供の意見を聞くというようなことは、これは明らかに従たるものです。そういうことで決めてはいけません。やはり教育の場は、校長以下の先生方が、あるいは直接の管理者、監督者の教育委員会で、この問題について正しい一つの結論を出していく必要がある。  これは、その関係先生に聞いたのですけれども、いま私立の中学校ではほとんど制服だと言うのです。制服の学校では比較的少ないと言うのです。たまにいろいろなことがあるでしょうが、日常にある暴力に近いような問題は非常に少ない。そういう場では、子供を教えてもらう、しつけてもらう、そういう存在として、そういう意識をはっきり持たせるということが大事なことだと私は思う。だから、子供が髪をぼうぼうと伸ばす、そして怪しげな服装をしたりなどということをやらしてはいけない。そういう問題をこういう非行が手に余るような状態になったときに一度検討してみたらどうか。強制はできないでしょう。できないでしょうけれども、そういうような問題を教育委員会全般の一つの考え方として検討してみたらどうだろうか。余り子供の人気をとるような雰囲気を義務教育の段階でつくっちゃいけませんよ。もっと先生指導性を持って、熱心に自分が子供を教えておるのだという確信を持つ、そういう熱意さえあれば、子供は決して反感を持たないと私は思います。こういう問題を一度考えてみたらどうだろうかと私は思う。  これは一つ参考の御要望として申し上げておくのですけれども、特に先生に申し上げたいことがある。実は私、こういう機会学校の校長さんの代表とかあるいは教師の代表にぜひ来てもらいたいと思っておったのです。きょうこれだけではいかぬので、次の機会にこういうものをぜひ持ちたいと思うけれども先生に虚心に考えてもらいたいと思うことがある。教育基本法第六条「法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」、全体の奉仕者としての教員という立場、これはよく議論になる問題ですけれども、組合運動というものと全体の奉仕者である教師という立場を、この際、真剣にひとつ考え直してもらう必要がありはしないか。全体の奉仕者としての先生は、それらしい姿勢で生徒に向かっていく必要がありはしないだろうか。組合運動と全体の奉仕者としての先生というものを全面的に混同さすというところに、私は、生徒なり社会が、先生に信用できないような間違った誤解を持つのじゃないか。  こういう問題も、この校内暴力の問題が余りにも重大な問題であればあるほど、そして学校における一番の責任者、中心、親は先生であるという自覚に立てば、先生教育基本法の中における地位等を考えれば、当然、私は、その問題を考えてみる必要がありはしないか、そういうふうに思うのですが、大臣、いかがでしょう。
  61. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 お説のとおりでございます。
  62. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 終わります。
  63. 三ツ林弥太郎

  64. 山原健二郎

    ○山原委員 戦後第三回目の非行の多発という状態を迎えましたが、戦前は、先ほどもお話がありましたように、昭和十七年に非行が多発しておるという事態が起こっております。十七年と言えば、学徒動員があったときですね。教育の面で言えば、いわゆる軍国主義教育、国防教育、こういうものが高揚した時期です。そして生徒は丸坊主、制服はきちんと着せられるという状態、そしてまた先生方は、労働組合なんか全くつくれない、つくれば逮捕、投獄されるという時代において、どうしてあれだけの、警察庁の調べによっても非行が多発したのかという問題を考えてみますと、この問題については、先ほどもお話がありましたように、非行の問題の背景に政治経済の問題があるということは、これは当然、分析する必要があると私は思っております。  そういう意味で、きょうこの問題について集中審議をしておるわけですけれども、一面的な見方ではだめだと思うのです。現在の非行の状態というのはどこで起こるかわからない。非常に広範囲な地域で起こる。かつては一局部的な地域で起こる、あるいは一つ学校で起こる、いわゆる問題校というところで起こったわけですが、いまではそういう状態じゃない。それはどこから来ておるのかという深い分析というものは、当然、教育行政の面からしなければならぬと私は思っております。だから、少し学校だけを見た、一面的な立場だけで、組合があるからどうだ、こうだというような問題じゃないと思うのです。それは後で申し上げますが……。  最初に、文部大臣に伺いたいのですが、十一月十一日の閣議で校内暴力の問題が出まして、文部大臣は、いまのところ、校内暴力については決め手がないのだということを発言されたと新聞に出ております。これは事実かどうか、伺っておきたいのであります。
  65. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 現場での実権的な能力を持っていない文部省といたしましては、この非行の問題に対して、たとえば非行少年を訓戒するとかどうこうとかいうような直接の行動をとり得ない、これは御理解がいただけると思います。
  66. 山原健二郎

    ○山原委員 「非行についての総力戦だ」という言葉も言われておりますように、ずいぶんたくさんの教師あるいは父母、それから評論を見ましても、マスコミでも、先日もNHKの朝の討論会においても論議されておりますが、本当にこれは皆必死になってこの原因の究明をしまして、どうすれば解決できるかというたくさんの世論が起こっているわけですね。それに対して実際に文部省としても、そういう消極的な姿勢ではなくて、数多くの経験も出てきていますから、そういった問題をくみ上げていく、そして問題の解決に当たっていく。文部省通達とかあるいは文部省が強圧的な命令を出して解決できる問題ではありませんから、そういう意味では、文部省が事態の把握を十分する必要がある。また同時に、文部大臣としても、この解決のためにいろいろの面があると思うのです。たとえば条件整備の問題があります。条件整備の面では、四十人学級の問題もあると思いますし、戦後文部省が進めてきましたところの管理体制の強化、そういうものが裏目に出ておるという問題なども当然検討して、積極的な気持ちを持つ必要があるということを、まず最初に申し上げておきたいのです。  二番目に、警察庁の方にお伺いしますが、最近の校内暴力にあらわれております、先ほども御報告がありましたけれども暴力団それから右翼団体、この介入について伺っておきたいのです。  たとえば最近の新聞を見ますと、暴力団大日本国粋会幹部と暴走族、「極悪」という暴走族ですが、その関係が出ております。恐喝事件ですね。それから暴力団住吉連合、これは竹の子族に影響を与えて、監禁してやくざ教育を行っておるという事例が出ています。稲川会が、組員が中学生を無理やりに献血をさせておる、そして手帳を持っているというようなことも出ております。さらに最近、問題になっておりますビニール本の問題ですが、女子高校生をモデルにしまして、常時三十人ぐらい置いておくというようなことも出ております。そして、それから抜け出そうとすれば、裸の写真を近所にばらまいて抜け出すことができないようなことをしておる。こういったこと、これは大変な事態だと思う。  警察がやるべき仕事としては、こういう子供たちあるいは教育の場にこういう暴力団や右翼団体が介入することに対して断ち切ることだ、そう思うのですが、この点について説明をいただきたいと思います。また、どういう手を打っておられるか、伺っておきたいのであります。
  67. 石瀬博

    石瀬説明員 校内暴力地域不良グループあるいは暴走族との関連につきましては、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、実は暴力団の関連している事例も、私たちは承知しているわけでございまして、本年十月六日、神奈川県の横須賀市内の武山中学で起きました教師に対する暴力事件につきましては、その背後暴力団の稲川会横須賀一家桜井組準構成員というものがあるということで、暴力団と校内暴力のかかわりというものも、われわれは重大な関心を持っているわけでございます。  暴走族につきましても同じようなことがございます。暴走族暴力団の手下になっている、あるいはまた暴走族が育って暴力団に入っていくというようなことがございまして、私ども校内暴力につきましても、暴走族の問題につきましても、暴力団との関連につきましては、重大な関心を持ちながら取り締まりを進めている状況でございます。  なお、右翼団体との関係につきましては、ちょっと校内暴力につきまして、いまのところ、そういうような事例があるということは承知いたしておりません。
  68. 山原健二郎

    ○山原委員 これは一つは、最近、子供たちが単なる集団暴力するということでなくて、やはりバックがあるのだ、暴走族を通じて背景にこわい者がおるのだぞという一つの示威行為、そういうものからも校内暴力発生をしておる事実が私どもはあると思っています。いまおっしゃったとおりです。  それから、右翼団体の場合にしましても、現実に、この間新宿で起こりましたのは、新聞にも出ておりましたが、そういうふうにこういう非行少年あるいは暴走族を取り込んでいくという事態が起こっておりますし、かつて私も、文教委員会で取り上げましたが、子供たちの中には、やはり憂国烈士であるとか忠君愛国であるとかあるいは前はハーケンクロイツのナチスの旗を掲げて走っておったのが、最近では、大体日の丸に統一されている。おれたちも理屈はあるのだというようなことから、自分たちの反抗行為を正当化するというような動きも出てきておる。恐らく子供たち自身が考えたものではないかもしれませんが、そういうふうに、こういう組織の介入によって組織化されつつあるということは、十分警戒をしておく必要があると思います。そのことを指摘しておきたいのです。  その次に、恐らく先ほど警察庁の方からもお話がありました例だと思いますが、本年度、日教組の教研集会が私の県で行われたわけでございますが、そのレポートを見ますと、この非行問題に取り組んだたくさんの事例が出ております。  たとえば江戸川区の小岩第四中学校、これはもう区議会でたびたび問題になりますし、マスコミにも取り上げられ、教員の中にまで、もはやこれは学校ではないよと言われるような事態が起こっているわけです。  先ほどもお話がありましたけれども、たとえば三学期になりますと、三年生はベルが鳴っても、半分教室の中へ入ってこないというようなことですね。そして番長グループがおりまして、抗争に明け暮れるというような事態が起こっております。これを見ましても、もう本当にこれは大変な事態ですね。それに対してどうするかということで、非行対策教師たちが取り組んでおるわけです。その中で、いろいろな教訓が出てくるわけです。  一つ学校の例だけではありませんけれども、たとえばこれが教師の仕事かと思われるようなことまでやらなくちゃならぬ。ある女の子が家出をする。家出をしたが、恐らくいつかは家へ帰ってくるだろう。家へ行ってみると、家には親がかせぎに出ておりまして、九時になっても十時になっても帰ってきません。それをじっとしんぼうして待たなくちゃならぬ。親はもう、家出したって捜すなんという気力はなくとも、教師はほうるわけにはいかないわけです。なぜなら、その子供が放浪しておる間に、ばたばた一段と非行性を体につけて帰ってくる。そして教室の中に入ってきたときには、もはやまたその周辺が授業できるような静かな状態ではなくなってしまう。他の子供たちに対する授業を正当に行うためにも、この子供を何とか救い上げなくちゃならぬ。場合によっては、家庭教育の考え方を変えなくちゃならぬ。こういう努力が続けられているのです。すさまじいものです。まるで体当たりのような努力が続けられているわけです。  そうすると、今度は四月の始業式の行われるときには、卒業した番長グループあるいは校内生徒と一緒になってこれをぶち壊すということが入ってくる。そうしますと、その晩に、卒業した番長の親分に会いに行って、夜の夜中に説得活動をする。殴られたら殴り返す、そういう決意で行かなければならぬ。そして、やっとその場では説得をして帰ってくる。翌日学校へ来てみると、校内生徒たちが今度は始業式を何とか壊そうとしてたむろしている。そういう中で始業式がどういうふうにとり行われるかというような苦労をしながら説得をし、そして始業式がついに、その場合には無事に行われていく。こういうような経過を皆々たどっているわけです。  尾鷲の場合だって、私は、警察力を導入したことに対しては批判を持っています。けれども、あそこの先生方はいままでいろいろな努力をしている。それが裏目に出たり失敗したりしている。でも、こんな状態の中で、尾鷲の場合に、今度暴れた三年生は、一年生のときに暴れているのです。そのときにきちんと始末をようつけなかったということも反省している。  こういうふうに次々起こってくると対応が間に合わない。やったことが失敗だったとかあるいは暗中模索であったとか、あのときにもつとしっかり毅然として子供たちに教育をやっておったら、こういうことにならなかったであろうとかいうような反省は起こるけれども、しかし、それは教師を責めるわけにはいかぬと思う。  いま先生方は、ずいぶん反省をしておられ、尾鷲の中学校のこれからの発展に恐らく大変な努力をされておると思いますが、そういうことがあっちでもこっちでも行われているのです。これをどう文部省が本当に吸い上げていくか、ここのところに文部省が単なる官製的な講習会あるいは青少年対策委員会——これも結構ですよ。だから、文部省の出しておられる方針に対して、私は、これがいけないなどということを言っておりません。けれども、たとえばきら星のごとく偉い方が集まって、学校先生が出て、そこで話がされる場合には、どうしても本音が出ない。一番の苦しいところが出てこない。そうすると、やはり形式的に終わってしまう。  そういう中で、たとえば江戸川区の場合には、教師集団が必死になって非行対策特別委員会設置し、この特別委員会は、自分学校の問題だけを解決するのではなくて、困難な状態に置かれておる学校の問題についても話し合いをして、それをどう解決するかという方針を出している。こうして一つ一つ非行の芽を断ち切っていくという努力が、いまなされているわけです。  私は、そういう点では、この報告書を見まして、これは日教組の教研集会に出された報告書ですが、本音が出ていると思います。そして、この中で一定の成果が上がっています。全く無成果ではありません。  大体、教師というのには二つの面があるのです。一つは管理主義です。厳罰主義です。たとえば、びんたと正座をさすこと、この一本やりの考えを持った教師もおります。いや、そうではだめだ、もっと実践を通じて子供たちの心に触れ合う、そういう教育でなければだめだ、この二つの路線というのは、いつでも昔からあるのです。これが教師の世界です。  でもその中で、その一方だけではだめだ、また子供たちの心をつかむというようなことで子供たちを甘やかしてはだめだという声もある。では、その子供たちの心を本当に教育的な立場でつかむ、これが本当にできておったのかどうか。甘やかしでなくて、間違いに対しては毅然としてその過ちを許さないという姿勢と同時に、非行を起こす子供たちの中には、必ず胸の中にいろいろな苦悩があります。むしろ甘えもあるのです。それを引き出して、その子供たちを本当に納得させていくこの厳しさと愛情、これを結びつけるものが教育なんです。  そういう意味で、いまたくさんの努力がされておるこれらの事例や、あるいは経験や教訓を本当にいまくみ上げていくということ。そればかりじゃありません。評論家もずいぶんたくさん書かれております。マスコミも冷静な立場で幾つかの問題を取り上げています。これらを総合的に見ながら、これからの対策を立てていくならば、私は、展望は出てくると思っています。  いま最近、この問題について多くの方々にお会いしますと、これからまだまだ起こるだろう、そして、これをなくするようなことに対しては、もう希望もないというような考え方も出てきますけれども、これを解決する道はここだと私は思っているのです。  これらの実践や教訓というものをしっかりと見詰めまして、それを全国に広げていく。その中には警察との協力もあります。また父母との協力もあります。それから、さっき出ました校長さんを中心にして、学校全体が打って一丸となって、教師集団として心を合わせて一歩も引かないぞという決意、そして同時に、非行一つの原因になっているところの教科についていけない、いわゆる落ちこぼれを起こさせないぞという江北中学校の例がございますけれども、とにかく割り算も掛け算も足し算も引き算もできない。数学の時間に一時間しんぼうするのがやっとなんです。それが三年間しんぼうさせられたら、子供だってしんぼうの限界が来ます。そういう問題について、じゃあ、この足し算を、引き算を、割り算を、掛け算を、このときまでにこの子供に身につけさせようとするこの努力というものは大変なものです。そういうことをやりながら、江北中学校の場合は、この問題を解決して、九月になりましたときに、いつも八月の夏休みに警察非行児が次から次へ補導されるような事態がなくなったという報告がなされております。  その次の問題は、子供たちに自治の力をつけるということ。子供たちが、たとえば運動会にしましても、あるいは文化祭にしましても、音楽会にしましても、文集をつくることにしましても、生き生きと自分たちがそれに参加をしていく、そのことが本当に行われた場合に、子供たちは、本当に喜びに満ちて、そして番長グループさえも、たとえばスポーツの試合には応援団をやる、あるいはスポーツを何とかして勝とうとする、こういう気持ちが出てきたときに、非行の問題は、全面的にではないでしょうけれども解決されていく道が出てくるわけです。  これをいま、教育行政が本当に探求をして、そういう点で努力をしておる教師たちを支援し、励ましていく、このことが私は必要だと思うのです。  ところが、文部省のやっていることは、ただ単に、日教組の教研集会については休暇をとって行けとか、あるいはいろいろな妨害をする、あるいは所によっては会場を貸さないとか、こういういびつな姿じゃなくて、もっと非行に対する総力戦の立場でこういうものに対しても援助をしていくという、この非行問題についてのあらゆる見解については文部省把握をして、これを激励していくという、こういう立場をとるならば、私は、この非行の問題の解決は決して不可能ではないと思っております。  同時に、文部省がやることは、この条件整備の問題です。早に管理体制の強化——勤評たってそうでしょう。こんな、子供の家へ行って夜遅くまで父母を説得する、勤評のどこにひっかかるのですか。そんなみみっちいものじゃなくなっているわけですね。だから、そういう勤評とか主任制とかいうようなことを次々と打ってきましたけれども、決してこれがプラスの面になってあらわれていない、むしろマイナスの面になってあらわれている側面もあるということを、文部省は反省すべきだと私は思うのです。  こういう見解を持っておりますが、文部大臣の意見と、そして三角局長の見解を伺っておきたいのです。
  69. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 いろいろ非行問題に関しまして御苦心をいただいておる建設的な御意見に対しまして、ありがとうございました。
  70. 三角哲生

    三角説明員 私どもといたしましても、昨今の一連のいろいろな事柄から、やはりくみ取るべきものをくみ取っていく努力はしなければならないと思っております。いろいろな事例によって得られました経験、これを、やはり各都道府県教育委員会の協力も得まして、くみ上げていく努力をいたしたいと思っております。  それから、先ほど来の御質問の関連もございますが、やはり学校内で必要な規律を確保していかなければなりません。学校という一つ集団、あらゆる集団には一つの規則というものが必要でございまして、その規則に従う。個々の人間、個々の構成員のその人一人の利益だけを主張して混乱をするというのは、一つの規律ある集団にならないわけでございます。そういうことでございますので、学校内にも規則、規律が必要でございまして、これについては児童生徒も十分に理解して、みずからのものとしてその規則、規律を守っていくということが必要でございます。  あわせまして、いま御指摘のような学校行事の場合に、子供たちがいろいろと希望や考えを出して、そして子供たちが生き生きとしてこれに参加していくということも、これは先生にもかなりの指導力があわせて必要かと存じますが、望ましいことかと存じます。  日教組の活動は、日教組として自主的な活動をおやりになっておるわけでございますが、その場合にも、私どもとしては、一つの社会的な仕組みのもとでの活動でございますから、現在の法律なりあるいは各都道府県教育委員会の決めます勤務上の諸種の手続、これはきちんとやっていただいて、先生自身がやはりそういう社会の決まりの中で行動をしていただくということが、生徒に対する指導の上でも必要で、肝要なことであるというふうに思っておる次第でございます。  もちろん、たくさんの先生方が、生徒指導のために粉骨砕身してくださって、場合によりましては、夜遅くまでやっていただく、あるいは非行に走る子供たちの中には、家庭の機能が非常に不十分である、あるいは状況を見ますと、家庭がいわゆる欠損家庭である場合もありましょうし、そうでない場合も家庭としての十分な働きをしていない場合に、私どもとしては、現場先生方が根気よく家庭に対して連絡をし、かつ協力を求めていくことが必要であると思っておりますので、そういった御努力は、私どもとしては、非常に高く評価いたしますし、とうといことであるというふうに思う次第でございます。
  71. 山原健二郎

    ○山原委員 時間が参りましたので、これでおきますけれども、秩序というようなことをだれも否定しているわけではないのです。たとえば、いま申しました荒れに荒れておった学校で、先生方自分たちの教師としての権威というものと、教師が子供たちの信頼を受けるという問題、これは単純にはいかぬわけですよね。でも、この二つを統一的に生かしていくという、これが教師の本当の姿だと私は思っています。しかし、そこまでに到達しない先生もおるでしょう、しかし、それに向かって努力をするということは大事だと思うのです。  同時に、ここへ掲げておる、たとえばこの中学校の四目標というのは、実に簡単です。一つは「時間を守ろう」、登校、チャイム着席、委員会などの時間を守る。二つ目は「しっかり授業を受けよう」、おしゃべりをしないとか忘れ物をしないとかいうこと。三番目は「責任を果たそう」、そして四番目は「公共物を大切にしよう」、これを守らそう、単純なことです。でも、この問題について本当に守らそうとするならば、これは、その学校を構成する職員が、本当に気持ちの上でも結束をしなければできない。ある先生はルーズに許すとかいうようなことになってくると、これはまた崩れてしまいますから、その点では一緒になって、校長も含めてやろうじゃないか、ここから出発しようじゃないかというようなさまざまな努力が続けられているわけです。  しかも、それはほとんど日教組の先生方でしょう。しかし、そんなことはいま問題じゃないですよ。日教組へ入っているとか入っていないとかいうよりも、もっと事態は重大で、そしてその中で、組合員の先生方が、こういう問題については一歩も引かないぞというようなことでこの報告書は書かれているわけです。これは一遍読んでごらんになったらいいと思うのです。  そのことを私は申し上げておるわけでございますから、非行問題、校内暴力の問題については、こんな問題が起こった、さあ警察を導入して一発でつぶしてしまえというような性急な考え方も間違いだと思います。そういう点から考えまして、むずかしいようには見えますけれども非行校内暴力を排除する、なくする、これは決して学校教育の場では困難なことではございません。  そして同時に、それを万全なものにするためには、文部省教育行政の条件整備をしっかりと行っていくことだと思います。そしてまた、家庭の破壊なんというのは、いまなまやさしいものではないわけです。私も昨日聞きましたが、跡取りのだんなさんが来まして、そのだんなさんが娘を犯す、その妹が家出する。この家出した中学生の妹を、帰ったら犯されるかもしれないという不届きなおやじが、義理の父がおるのですね、そこで、その子供を守るためにどうするか、この子供を連れて先生が走り回っているわけです。都の民生局へも行く、あるいは児童相談所へも行く。しかし、そこでは一週間以上は泊められないと言われる。困って、先生は、妹がおるから自分の家へ泊まらせて、そして問題の解決に努力していく。こんなことまでやっているのです。これが教師の仕事の範疇の中へ入るのかどうかわからぬ。もっとそんなことができるように先生の数の配置をしてもらいたいという希望はあるでしょう。四十人学級にしてもらいたいという希望はあるでしょう。しかし、それまで待てないから、私たちは、教師の仕事の中には入らないかもしれぬけれども、やれるだけのことはやるのだというような努力も行われておるということですね。  そこらあたりに対して文部省が深く考慮をしていく必要があると思います。そのことを申し上げておるのですから、文部大臣も御理解をいただきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  72. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 小杉隆君。
  73. 小杉隆

    ○小杉委員 すでにたくさんの質問が出ましたし、私も、すでにこの問題については去る十月二十二日の当委員会で質問をいたしておりますので、時間もかなり制約されておりますから、ごく要点だけの質問にとどめたいと思います。  きょうは、警察庁から少年非行状況資料をいただきました。私は、学校現場では、こうして警察把握できた、外にあらわれた問題のほかに、警察のところまでいかない部分で非常に問題が多発していると思うのです。たとえば登校拒否とか授業拒否、あるいは極端な場合には生徒が自殺をするというようなケースも頻発をしておるというふうに聞いておりますけれども、こうした外にあらわれてこない、データに載ってこない学校現場一つの実態というものについて文部省調査をしたことがあるのかどうか、あったらその内容を教えていただきたいのです。
  74. 三角哲生

    三角説明員 ただいま御指摘のような調査はいたしておりません。しばらく前に子供たちの自殺が大変問題になりましたときに、そのことに関連しての調査はいたしたことがございますが、登校拒否等を含めました一般の状況調査をしておらないのでございます。  学校におきましていろいろな問題が起こるわけでございますが、問題が小さなうちにこれに取り組んで対処して解決をしていく場合もありますし、それから、かなり重大な状況になるという場合もあります。したがいまして、そのとらまえ方というものも、学校現場の活動というのが非常にダイナミックなわけでございますので、たとえばこれを件数といったようなことで果たしてとらまえられるかどうか、あるいは、とらまえてどういったそれの活用方法があるかというようなこと等も、私どもは若干考えておるわけでございます。  したがいまして、今後の課題といたしまして、私どもは、そういう件数的な把握ではございませんで、何かやはり非常に重要な、本日御指摘のような事件につきましての分析、あるいは報道面に載りませんでしたけれども学校が非常にしっかりした取り組みをして解決に至り、かつ、それが他の学校にも非常に参考になるような資料、そういったものがありますれば、それらを、全都道府県教育委員会の協力でひとつくみ上げていくことができないかなということを検討したいと思っておるわけでございます。
  75. 小杉隆

    ○小杉委員 最近、教室の外の廊下をオートバイで乗り回すとか、それから、さっき指摘がありましたように、ベルが鳴ってもなかなか席に着かなくて授業が即座に始められないとか、学校現場で大変苦労されているところが多いわけなんですね。そういうものは警察庁の統計にも出てきませんし、あるいは都道府県や市町村の教育委員会からの報告にも当然入ってこない。しかし、文部省としては、やはりそうした学校現場の生々しい実態というものを、ただ単にマスコミに報道された、突出した部分だけをとらえるだけではなくて、そこまで出てこなくても、潜在的にいろいろな問題点をはらんでいるところを、やはり摘出をして対策を考えていくという姿勢が必要だと私は思うのです。  そこで、私は、いま局長が言われたように、学校の中で大変苦労しながら先生方が協力をして未然に防いだケースとか、あるいは教育委員会が一丸となって問題になりそうなところを防いだとか、そういうケースもやはり徹底的に調べてみる必要があるのじゃないかということを感じます。そして同時に、今度のようないろいろな表にあらわれた事件についても、ケーススタディーというものを、私は、もっと徹底的にやってみる必要があるのじゃないかと思うのです。  私は、九月の二十九日でしたか、板橋区立の志村三中で起こった事件、こうしたもののアフターケアというものを調べてみました。そうしますと、まず第一に、担任の先生学校から、その問題を起こしたお子さんの家庭を訪問しております。それから二番目に、その騒ぎを起こした中心人物の親を呼んでいろいろと事情を聞いたりしております。そして三番目に、職員会議を開いて、生徒にわかる授業をしようじゃないか、もっと工夫をして子供を学校授業がおもしろくなるように引きつけようじゃないかというような相談をしております。それから四番目に、学校全体が歩調を合わせて指導をしようというようなことを相談しております。そして最後に、担任の先生学年主任先生が、問題を起こした子供たちを呼んでいろいろ指導しているということでございます。  私は、一つ事件が起こって対応する方策としては、大体いま申し上げたようなことではないかと思うのですが、しかし、ただ単に事件が起こって親を呼んだり子供を呼んだり、職員会議を開いて、そして、その場の対症療法的な対策はそこではできるかもしれませんけれども、しかし、それではやはりその事件はその学校の中だけの、その地域だけの問題で終わってしまう。これだけいま頻発をしている問題なんですから、やはり文部省は、いろいろなそうした実際に起こったケースをもっと徹底的に追跡調査をして、そして問題の根源というものがどこにあるのか、今度の文部省の出された通達は、二年前のものよりは確かに一歩前進したところがございます、それは認めますけれども、もっと踏み込んだ対応策というものがやはり出てくるべきじゃないかというふうに思うのですけれども、そういう事件が起こった場合に、どういう対応といいますか、やっておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  76. 三角哲生

    三角説明員 私どもといたしましては、必要があります場合には、都道府県教育委員会を通じまして事情を調査し、状況把握に努め、必要な指導助言をしなければいけないと思っておりまして、事例によりまして、そのような手だてを講じております。  それから、問題によりましては、都道府県教育委員会並びに関係の方々に文部省へ来ていただきましたり、あるいは必要に応じてこちらからも県の方に出向きまして、そこで状況についてお聞きをし、私どもとしてのいろいろな施策、考え方の基礎としての必要な情報資料、それは把握していかなければならないというふうに思いまして、若干そのようなこともいたしておる次第でございますが、今後も、できるだけ的確に実態の認識を図っていかなければなりませんし、さらに私は、県の指導担当部課長等とも十分に相談をしたいと思っておりますが、ただいま小杉委員御指摘のような一つの追跡調査的なことについても考えてみたいというふうに思っておる次第でございます。
  77. 小杉隆

    ○小杉委員 先ほど、警察庁の方から学校対応に問題があるという指摘がされましたが、学校先生の中だけで、学校の体面を考えたり教育的配慮をして自分たちだけでおさめようとして、結果的に抑え切れなくて事件になってしまったというような場合、山原さんのように警察力に頼ってはいかぬという話もありますけれども、やはり事と場合、タイミングによっては、そういう力もかりなければならないケースも多々出てくると思うのです。  先ほどから、学校といろいろな機関との連携ということを強調しておられますけれども、具体的に警察庁の方にお伺いしたいのですが、学校現場警察との連絡というのは、日ごろどういうことをやっておられるのか。それから、こうした事件が起こった場合の対応はどのようなことをされているのか。今後、こういった事件が起こった場合の学校側対応に対して何か注文があるかどうか。そういった点についてお答えをいただきたいと思います。
  78. 石瀬博

    石瀬説明員 先ほども校内暴力事件に対する警察の基本的な考え方について申し上げましたように、この種の問題については、本来、学校内の適切な生徒指導によって未然防止が図られるという基本的な考え方をわれわれとしては持っておるわけでございますが、先ほど来いろいろ御指摘もありましたように、学校内で非行が多発しておる、その場その場で教師の方が毅然とした対応をされていないということが、校内暴力を助長させ、誘発させる一つの大きな原因になっているということを、われわれとしては実感として感じておるわけでございます。  先ほど御紹介いたしました東京葛飾区内の奥戸中学の事件にいたしましても、実は昨年の十月十九日に同じように教師に対する暴力事件発生しておりまして、警察の方が何回も何回も学校の方へ説得して、被害届を出しでほしいというようなお願いもするわけですけれども教師の方々の反対に遭いまして、被害届が出ないために事件として処理できない、こういうこともございます。また本年の二月八日には、同じように教師に対する暴力事件発生したわけでございますが、職員会議を開いて、被害届を出すかどうかなかなか結論が出ないままにずるずるしておりますので、警察の方でも校長に強力な説得をいたしまして、約一カ月後にようやく被害届を出してもらって事件として処理した、こういうようなことでございまして、校内で手に余るような事態が生じている場合には、警察に対する御連絡、御協力をぜひにお願いしたいというふうに考えております。  それから、校内暴力事件、特に教師に対する事件を見ておりますと、こういう大きな事件というのは、ある日突如として発生するということじゃなくして、平素の粗暴的な行動というのか校内に芽生えてきまして、たとえば便所の窓ガラスを何十枚も一遍に割るとか、体育館のガラスを全部一遍に割ってしまう、あるいはまた二、三の生徒に非常に手荒な物の言い方、態度をとるということが必ず前兆としてあるわけです。そういった時点でできるだけ警察の方へ御連絡いただければ、警察としては最初から校内に飛び込むということではもちろんございませんで、少年処遇の専門的な立場にありますだけに、いろいろなアドバイスとか助言というものができると思いますので、そういったことも参考にしながら、学校側として適切な対応をしていただければ、非常にありがたいというふうに考えております。  事件発生した場合の措置につきましては、これは警察として当然、法令に基づいて事件の制圧あるいは捜査を遂げるという職責がございますので、学校の方と十分な連絡をとりながら、しかし、学校教育現場であるという特性を十分に考慮しながら、慎重の上にもかつ毅然とした態度で臨んでおるということでございます。  なお、学校警察との平素連絡ということでございましたけれども、各警察署単位で、先ほど文部省の方から御説明もございましたように、学校警察連絡協議会というようなものがございまして、これを一カ月に一回とか二カ月に一回とか、そのときどきの状況に応じて情報交換とか非行防止対策についての打ち合わせ等を行っておるという状況でございます。
  79. 小杉隆

    ○小杉委員 私も、二、三、いろいろ教育委員会とか学校現場を調べてまいりましたけれども、実際に事件が起こってから警察に頼むのではなくて、いま警察庁からの発言にもありましたように、何か不穏な動きがあったり、あるいはその学校生徒が町でいろいろ非行的な行動を繰り返すといった場合に、警察がむしろ学校側に、こういうことがありますよ、こういう傾向が最近出てきていますよというような連絡をし、また逆に学校側が、最近うちの学校生徒で何か外でいろいろ問題がないかどうかということを盛んに連絡をとり合っている地域あるいは学校では、問題が全部未然に防がれているわけですね。  ですから、やはり学校警察との連携というか連絡というのは、確かに、月に一回ぐらいずつ学校警察連絡協議会というのが行われているのでしょうけれども学校によってあるいはその地域教育委員会の考え方によって、何か警察アレルギーみたいなものがあって、連絡すらしないというようなことがあるわけですけれども、一応こういう各機関、これは警察に限りません、児童相談所とか青少年補導センター、福祉事務所、少年鑑別所、いろいろな関係機関があるわけですから、さっき私が冒頭に調査の必要性を強調したのは、そこにあるわけですが、いままでのいろいろなデータ、いままでどういうふうにして未然に防いだかというようなケーススタディーをもっと徹底してやってほしいということですけれども文部省として、特に警察に対する対応などについて、そういった点でもうちょっと踏み込んだ指導というのか情報提供というのか、そういうことはいままでなされたことがあるのかどうか。  関係機関との関係は、何かさらっと最後に書いてありますけれども、もう少し実態を調べられて、いろいろいままで成功したケースとか失敗したケースを全部調べ上げて、そういう関係機関との連携をもう少しきめ細かに、各教育委員会なり学校現場文部省がいままで集約した情報を提供するというような姿勢が必要だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  80. 三角哲生

    三角説明員 この非行の問題あるいは特に校内暴力の問題につきまして、まずは学校自分自身でその集団としての健康を守っていくということの努力が最大必要なわけでございますが、ただいま御指摘のように、状況によりまして、関係機関団体、もちろん警察を含めまして、それらとの連携なりあるいはそれらの協力を求めていくということが必要になってくることが間々あるわけでございます。  それで、文部省といたしましては、本年の三月に、先ほど御説明もいたしました「生徒指導資料」の一番新しいものでございますが、「生徒指導上の問題についての対策」という題で、約百ページ余りの資料を出してございますが、この中で百三ページに「関係機関・諸団体との連携」というふうにして取り上げまして、ここでいろいろな問題を何十項目か挙げてあるわけですが、その一項目として「学校警察との連携は、平素からどのような方針で進めていけばよいか。」といたしまして、まず第一に「学校警察の相互の立場や機能の理解」ということを挙げておりますが、その次に「具体的な連携方法」ということで述べております。ここで「学校は、いわゆる警察ざたになることをきらい、生徒非行問題などについて警察連絡することに消極的になることが多い。しかし、警察は、生徒問題行動については、早期情報を得やすい立場にあり、罰を目的とした活動ではなく、保護育成の立場にあるので、両者の緊密な連絡が是非とも必要なわけである。」というようなことを冒頭述べまして、やはり生徒は通学の途中で、場合によりましては被害者になる場合もあるわけでございますし、それから、いろいろな盛り場等含めまして、外での生活もあるわけでございますし、それから、先ほど来御指摘の外部の集団から影響を受けたり、つながりを持たされたりする場合もあるわけでございますので、そういう場合に、やはり学校だけでは対処し切れないという場合について、必要な指導事項を示しております。  具体の連携の方策としては、先ほども説明のありました「学校警察連絡協議会への参加」、それから警察でやっていただいております少年相談という機能の活用、それから、これまた先ほど御指摘ありましたが、「学校非行を発見した場合の連絡」の問題、それから、子供によりましては、警察の補導について、継続した補導をやっていただく方が好ましいというような場合もありましょうから、その場合には、学校警察の粘り強い連絡指導の協力が必要でございます。さらには、警察などから講師を派遣していただきまして、特に女の生徒のためには夏休みにおいていろいろな意味の被害を受けないように防止する、あるいは男女交際の問題あるいはシンナー等の問題、あるいは交通事故防止の問題等がございますし、それから、自転車やバイクの乗り方というようなことも、警察からいろいろと協力をしていただく事柄でございます。さらには、いまもちょっと申し上げましたが、「交通警察との連絡」もございまして、それらのことにつきまして述べておりまして、私どもは、中学校高等学校におきましては、この指導資料に基づく指導を徹底してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  81. 小杉隆

    ○小杉委員 もう時間がなくなりましたから、最後に一点申し上げます。  先ほども和田委員から御指摘がありましたが、今度の通達の中での一つ特徴は、生徒指導の面で教師一体となって積極的に行うという点でございます。従来から生徒指導というのは、学級の担任の先生とか学年主任とか生徒指導主事という方が中心で行ってこられたわけですけれども、やはりいろいろ非行少年の手記などを読んでみますと、自分たちが校舎を汚しても、それを先生が掃除するだけで何にもやらないとか、先生の前で堂々と漫画を読んでいても、ちらっと見ただけで注意もしないというようなことで、先生の中で、先ほども答弁の中にありましたけれども、必ずしも生徒指導についての共通の認識というか共通の理解というのがない。厳しい先生は非常に厳しく注意するけれども、そうでない先生は全然見ても見ないふりをするというようなちぐはぐな生徒指導というものが、やはりこういった芽を醸成しているというふうに思うわけなんです。  そこで私は、むしろそういう生徒指導主事とか学年主任とか学級の担任の先生は、もうほっといても生徒指導のことに関しては非常に熱心に取り組んでおられるわけですから、問題は、それ以外の、ただ単に教科だけを専門に教えている先生方、そういう先生方にもっとそういった生徒指導上の認識を持っていただくということが大切だと思うのです。  そこで、すべての教師にそういう生徒指導上の一つの自覚、認識というものを持っていただくという意味で、私は、この前、昭和四十年から十五年間隠れたベストセラーとしての「生徒指導の手びき」というのを、むしろ教科書無償と同時に全先生に配って、そういう自覚を持っていただく、先生方現場で非常に模索しているわけですから、そういった手も考えてみるべきじゃないかということを、先日の委員会でも指摘をしたわけでございます。  もちろん、この通達に書いてありますような教師資質向上とか学内外の研修ということも必要ですけれども、やはり全職員がそうした自覚を持っていただくと同時に、それから一つ学校の単位としてのチームワークといいますか、学校長を中心とした共通の一つの意思統一、そうしたものが私は必要だと思うのです。そういう通達も、もちろんこれは大変いいところをついておりますけれども、それが実際に行われていないところにいまの原因があるわけですから、そういった実態をもっと徹底をするような指導文部省はすべきだと私は思います。  文部大臣は、先ほどから、大体教師の愛情と学校内の秩序ということを言われております。基本的にはそうかもしれませんけれども、しかし、それでカバーし切れないからこそ、こういう問題が起こっているわけですから、やはりシステムとして一応文部省としてもその対応策というものを、ただ単に個人個人の愛情に任せるのではなくて、そういう一つの仕組みというものを考えていっていただきたいということを要望するわけでございます。  そこで、先日の閣議でも、鯨岡環境庁長官が言い出しっぺになって、いろいろこの問題が取り上げられたようですけれども、今後、文部大臣としてどういう対応をこうした問題にやっていかれるのか、主管の大臣の立場としてお答えをいただきたいと思います。
  82. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 いろいろと問題の波及、進展とともに、国民的にもこの問題が非常に重大な問題であるということが、しんから認識されてまいったということは、私は、不幸中の一つの幸いであったと思います。この非常な不幸ではありますが、これを災いを転じて福とするように全力を挙げてこの問題と取り組んでまいります。どうぞよろしく御協力をお願いいたします。
  83. 小杉隆

    ○小杉委員 終わります。
  84. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 午後二時三十分に再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  85. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。湯山勇君。
  86. 湯山勇

    ○湯山委員 いま起こっている学校内暴力というのは、われわれ教育関係のある者にとりましては非常に重大な問題で、かつて、こういったような事態というものは、私の経験あるいは過去のいろいろなものを調べても、まずなかったと思います。  そこで、この問題は、そう安易に受けとめるべきものではないということは、御指摘のあったとおりですが、それにいたしましても、どうもけさからの御答弁や何か聞いていまして、非常に不満に思いますことは、文部省の方がむしろ警察的であって、警察庁の方がむしろ学校主義的で、何かその辺食い違いがあるのじゃないかという感じがしてなりません。  そこで大臣も、たまたま、表現は別といたしましても、通達で事ができると思ったら、それは間違いで、通達は一片の紙にすぎないという、お気持ちのよくわかる表現をなさいました。私もそう思います。前回の通達が出たときに、諸澤局長に私は、こんなような通達ではだめですということを指摘して、委員会で取り上げたことがありました。このたびまた出ておりますが、局長、これは本当に有効だとお思いになりますか。
  87. 三角哲生

    三角説明員 私どもとしては、先ほどから御説明申し上げましたような通達をお出ししまして、これを、それぞれの教育現場で受けとめていただきたいと思っておりますし、そういう意味で、通達自体の文字そのものが有効、無効というのは申し上げにくいことでございますけれども現場でこの通達に基づきまして、適切な対処をしていただきますれば、非常に有効なのではないかというふうに考える次第でございます。
  88. 湯山勇

    ○湯山委員 警察庁の御説明の中に、尾鷲でしたか他の学校も含めてですか、生徒指導に熱心な人が暴力対象になっているということがございましたね、局長は、これはどうお思いになりますか。
  89. 三角哲生

    三角説明員 個々のケースで判断しなければならないと思いますが、熱心な先生がいわば一種の反撃の対象になるという事例があるわけでございますけれども、その熱心にやるやり方とか、あるいはその前後の事情とか、いろいろ絡み合っていると思いますが、場合によりましては、逆に非常に甘やかしている先生が対教師暴力対象になる場合もございましょうし、いろいろ複雑な要素があるのではないかと思います。
  90. 湯山勇

    ○湯山委員 ちょっと御答弁がわかりにくいのですけれども、それはそれとして、警察庁の御説明の中に、非行生徒であっても、本当に警察官が誠心誠意当たったならば、それによって、いままでこういうふうに言われたことはないというので改唆して、よくなってきた生徒もあるというような御説明がありましたが、そうでしたね、警察庁
  91. 石瀬博

    石瀬説明員 先ほど御説明したとおり、そのとおりでございます。
  92. 湯山勇

    ○湯山委員 そうすると局長、あなたは、いまの言葉をしっかり聞いてくれないと、この通達は何の役にも立たないわけです。一体生徒指導に当たっておるそういう先生というのが、果たしていまのようにやっておるかどうかということの検討、反省というものがなければ、ただ教育委員会に言った、あるいは校長を通じてというようなことだけでは、絶対これはなくなりません。  私がここで申し上げたいのは、全校一体になって、これも警察庁の御指摘の中に、すべての教師が毅然とした態度で、しかも一致して当ることが必要だ、通達には書いてありますけれども、そのために文部省としてはどうされますか。いまの学校は、全校職員が一致して、こういう問題に全力を挙げて取り組むという体制にはなっておりません。残念ながらなっていない。それはどういうことかと言いますと、校内にこういう事件発生したときに、その対応も協議しますけれども、校長さんや教頭さん、それから生徒指導の主任は、それがマスコミに漏れることを一番恐れています。現にここ数日来あるいはきのうぐらいですか、私の郷里である松山の某中学校で、マンモス学校ですが、全校生徒に、非行生徒を無記名で名前を投票させて、それによって指導参考にしようということをとって新聞に出たこと、局長御存じですか。
  93. 三角哲生

    三角説明員 新聞で見ております。
  94. 湯山勇

    ○湯山委員 これは校長さんが自分方針としてやったことなんですが、これはいいと思いますか悪いと思いますか。
  95. 三角哲生

    三角説明員 全体の学校状況をまだ承知しておりませんので、その事柄だけとらえてここで評価をすることは差し控えたいと思いますが、一種の密告を奨励するようなこと、そのことは、私は、これは教育の場に限らず、余りほめられたことじゃないというふうに思います。
  96. 湯山勇

    ○湯山委員 県の教育委員会も、県議会の答弁では、いまの局長と同じような答弁をしています。しかし私は、それで済ませる問題じゃないと思うのです。なぜそんなことをしなければならないか。いま学校は、管理体制が強化されてきたために、どちらかと言えば分業組織になっている。このことと直接関係なくても、営繕係というのがあれば、ほかの先生学校のといが壊れている、渡り廊下が壊れている、気がついても言わない、あれは営繕の仕事だ、生徒指導の問題は、これはとにかくその主任の責任である、だから、クラス担任の先生が独自に何かしようと思っても、それはできないのです。学級担任がやろうと思えば、学年主任の了解を得なければならない。それで生徒指導に関して何かやろうと思えば、今度はその主任の了解を得なければならない。管理体制はきちっとしていますけれども、それには軽重があって、生徒指導主任というのは、廊下や運動場をぶらぶら歩いて何かないだろうか、たばこを吸っているのはいないだろうかというようにパトロールしているし、それから、また何か見つけたら主任は学校の規則に照らして処分します。だから、そういう点ではこわがられている。決して温かい、心のこもった指導などというものは、そこではできないのです。  そこで、こんなので手当をもらってこんな仕事をするのはいやだというので、市の名前は言いませんけれども、そこでは生徒指導主任を返上する、場合によっては市が廃止するということまで検討しています。こういうことを局長はおわかりでしょうか。
  97. 三角哲生

    三角説明員 よくわかりません。
  98. 湯山勇

    ○湯山委員 そうだと思います。だから、主任というのは他の先生にきらわれます。あの先生に見つかったら大変ぞ、自分だけで済ましたいけれども、あなたのところはもっと生徒に厳しくやらなければどうこうだ、あんたのところのだれはどうだったというので、主任に先生たちはしかられる。生徒にもきらわれる。それで一体どうしてチームができますか。  この辺のいまとっている管理体制そのものに欠陥はないとお考えでしょうか。局長、いかがでしょう。
  99. 三角哲生

    三角説明員 大きい学校も小さい学校もありますが、児童生徒を含めますと、一つの大きな多人数の集団でございますが、その学校の中の教職員というのは一つの組織でございます。でございますから、いろいろな学校の業務につきまして、一種の分担関係というものが組織として必要かつ有益である場合があろうかと存じます。  先ほど例として挙げられました、たとえば施設の修理の問題なら修理の問題、そういったような一種の学校施設設備の管理面というようなことについて分担をするということはあり得ることでございまして、そういうことが有効に機能すれば、それは学校全体の運営を非常に円滑にしていくということになろうかと思います。  主任の制度につきましても、いろいろな意味で校務分掌の仕組みを整えるということでございまして、ただ、それも事によっては主任任せにするとか、あるいは事柄によってはいろいろと連絡をよくしてやらなければなりませんから、それは主任に連絡するということが必要でございますが、すべてのことを主任が掌握して了解しなければやれないということでもないかと思いまして、これは制度の問題だけでなくて運営、運用の問題が出てくるかと存じます。  私どもとしては、主任等の役割りの充実によりまして、学校における教育活動が一層活発になることを期待しておるわけで、そういうことで設けました制度でございまして、これが学校という一つのチームワークの妨げになるということは、むしろ逆のお話であって、考えられないことだと思っております。
  100. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣にお伺いいたします。  いまの局長の答弁を聞いておりますと、何かわけがわからないのですが、いいと思ったら、大臣、多少の無理はあっても、この問題に関しては、ひとつ従来のメンツやいろんなことにこだわらないで実施するという御決意が大臣にはおありでしょうか。
  101. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 十二分にあるわけでございますけれども、ただいま先生が御指摘になりましたように、それを実践いたすということになりますと、なかなか簡単にはやれないということもよくおわかりのとおりでございます。それを存じておりますればこそ、実はいろいろと方々からの御意見に対しまして、私の答えが歯切れの悪いものにならざるを得ないことも、また御理解いただきたいと思います。
  102. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣、一般論としてこれだけ大きな教育の重大問題、そのためには何をおいても必要だと思うことはやるという御決意がおありになるかどうかだけですから、そうだとおっしゃっていただければいいわけです。
  103. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 そのとおりでございます。
  104. 湯山勇

    ○湯山委員 局長にお尋ねします。  あなたは、プロレスのあった翌日、小学校で骨折あるいは骨の脱臼とか、そういう事故が多いというのをお聞きになったことはないですか。
  105. 三角哲生

    三角説明員 いまお聞きいたしました。
  106. 湯山勇

    ○湯山委員 ありましたか。
  107. 三角哲生

    三角説明員 いまお聞きいたしました。
  108. 湯山勇

    ○湯山委員 こういうことを言いますと、あなたは、どこかが勝手に言うのだろうと思いますから、名前を言います。私の県じゃありません、よその県ですが、高松市の亀阜小学校、そこでそういうことを発表しています。だから、小学校でもそういう徴候というのがあるわけですから、いまの校内暴力というものが突如として出てきたものじゃありません。そういうものをずっと見ているのはだれか、学校の中でそういう子供の動き、子供の変化というのを本当に見ているのはだれだと局長はお考えになりますか。
  109. 三角哲生

    三角説明員 もちろん教員でございます。
  110. 湯山勇

    ○湯山委員 教員と言ったって、校長もあるし、教頭もあるし、主任もあるし、担任もあります。どれですか。
  111. 三角哲生

    三角説明員 小学校では、もちろんクラス担任の先生中学校でございますと、やはり学級担任といいますか、そういう立場にある先生、あるいは教科担当の先生であっても、非常に持ち時間の多い先生ども含めてよいかと存じます。
  112. 湯山勇

    ○湯山委員 幾らか私の意見と合ってまいりました。いままで全然合っていないのです。  そうすると、一番大事なのは校長じゃないでしょう。一番大事なのは校長じゃありませんね、どうですか。
  113. 三角哲生

    三角説明員 大事、大事でないというふうにとれますかどうか、その点は私、先生の立論の源にあるものがちょっとわかりませんので申し上げかねますが、先ほど例に挙げましたような立場の先生は、これは直接子供と対面しておる立場でございますし、校長の場合には、担任の先生と比べますと、直接個々の児童生徒と対面することは非常に少ない。もちろん、そういうチャンスもあってしかるべきであるし、努力もしていただきたいのですが、これはやはりほかのそういう担任の先生たちと校長との間柄がむしろ主であって、そういう意味では、児童生徒との関係は間接的になる場合が多かろうというふうに理解いたします。
  114. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで、いまこれも警察庁の方のお話の中にあったように、警察連絡をとるのに、あるいは警察が入り込もうというのに、校長さんの説得にずいぶんかかった、気持ちはわかります。学校の校長としてそうされたくないという気持ちはわかりますけれども、とにかくいま校長さんとかそのあたりの人というのは、やはりメンツが先に立つことが多いのです。それよりは担任の先生がこういうこともあるのだが、これはどうでしょうかということを、直接警察連絡をとり合うという体制の方がいま軽視されている、私はそのように感じます。  そこで、それと関連して、今度こういう問題をきょう委員会でやるというものですから、私、ずいぶん方々歩いてきました。こういう例もあるのです。父親が酒酔い運転で自分もけがするし、相手もけがさせた。それが父親が悪いように新聞には出た。先生は、その息子のところへ授業中か何かに行って、お父さん大変だったな、心配ないかと声をかけてやった。それから後も、おやじがそんなになったら困るだろうと思って、何遍か声をかけた。ところが、その生徒は、たまたま番長で、それまではなかなか厄介だったのが、今度はほかの生徒が騒ぐと、それがおさめ役に回った。おい黙っておれ、静かに聞けという抑え役に今度は回った。そういう例もあるのです。  このほかにも、それと似たような例が幾つかありますけれども、その子供の生活、家庭、それを本当に知ってやって、そこから励ましなり、あるいは先生もうちのことを心配しているのだ、おまえさんのことも心配しているのだというような、そういう先生でなければ、いまの非行を本当に教育で正していくことはできないと私は思う。  そうなりますと、家庭訪問などということは、非常に大事なことで、これも聞いた話ですから、どこまでどうか、学校で聞いた話ですが、田舎のお豆腐屋の子供、それも始末の悪い子供だそうです。そこで先生が、おまえは朝早く起きて豆腐の手伝いをするかと言ったら、すると言ったそうです。それで先生が、朝早くから手伝いをしたら、学校へ来て授業を受けていても眠たいだろうというような声をかけて、そして、そういうようなことを何か話したのでしょう。その子も、朝が早いですから、来てもやはり眠たい、うつらうつらしておる、一向に勉強をまともにしなかった、邪魔になっていかぬ、それが、それだけのことでぱたっと直ったということも言っておりました。ただ、いま田舎で朝早くから豆腐をつくるというのは、そんなのは本当にたくさんあるのかなという疑問がありますけれども、これは先生の話でした。  つまり、いまの家庭訪問などというのは、四月中あるいは五月の初めまでに生徒のうちを全部回れというので、一軒のうちに五分か十分くらいずつでずっと何日かかけて回るという家庭訪問ですけれども、やはり一人一人の子供の家庭の状態、生活の状態、親の仕事、そういうものを、先生が本当に理解して、指導していけば、まだまだ指導できる。校内暴力なんというものは、あるいは場合によったら、その番長みたいなのがとめる役に回るという体制にさえできる余地のあるのが学校教育じゃないでしょうか。  そうすると、さっき局長は、夏休みというようなときは、子供も家庭で生活している、そういうときに、一人の子供のうちに三時間なり四時間なり、場合によったら一晩そこに行って話し合う、そういうことがなければ、何のための家庭訪問か、何のための担任かわからぬことになるのじゃないでしょうか。そこで今度、夏の休みというのは、子供が本当の家庭生活をしておるときですから、そういうときに、おざなりでない家庭訪問をやれば、十日や二十日かかったってできないと思いますけれども、とにかくそういったことが欠けている。ただ通達でそうやって、とにかく手当をもらっている主任が見つけたら処分する。主任に報告したい、相談したいけれども、あれは学校でたばこを吸っておったというのを言ったら、主任は、それは処分だ、こう出てくる。警察でもそう言っていますよ。学校に言うと、すぐ処分するから学校にはめったに言えない。これは警察庁の方、そういうことをお聞きになったことはありませんか。
  115. 石瀬博

    石瀬説明員 確かに、そういうことは、すべての学校ではございませんけれども、そういう傾向学校にあるということは承知いたしておりまして、先ほどお話もございましたように、むしろ警察学校的な、教育的な配慮をしながら、これは学校通報すべきかすべきでないか、通報する場合には、これは処分のために通報するのではなくして、学校生徒指導に反映してもらうために通報するのだという趣旨をよく伝えた上で通報するように配意いたしておるところでございます。
  116. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣、いまのあなたのところの局長と警察庁のとお聞きになって、どうお思いになりますか。本当に逆だとお思いになりませんか。どうぞ大臣……。
  117. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 非行少年の問題をこうやって議論いたしましても、私の言う言葉もそうですし、答弁もそうですし、御質問もそうなんですが、どうもぴったりしない。これは非行少年とか、それから、またいろいろなむずかしい懲戒や、その他の問題のお話をいただくに当たって、やはり使う言葉を坊やという言葉を使ったら一番ぴったり説明がつくのじゃないか。坊やという日本語の言葉には、やはり愛情も含まれていますし、それからまた、その非行少年なるものが、成人した、物を言ってもわからないような存在じゃないのだし、それからまた、その少年なるものが、そんなに悪のかたまりみたいなものじゃなくて子供なんですからね、だから結局、坊やのしつけ、坊やの学校にあるあり方、また、その坊やをどうしたらよく補導できるか、そういう場合に、その坊やの将来を失わしめるような、履歴の上に傷をつけてはいけないという愛情が、この補導には潜在的になくてはいけない。質疑の中に、非行少年という言葉をお使いにならないで、坊やという言葉を一遍使ってお話をいただいたらぴったりくるのじゃないか、そういうふうな気がいたします。
  118. 湯山勇

    ○湯山委員 いま大臣のおっしゃった坊やは、確かに、いま落ちこぼれとかいろいろおっしゃいましたけれども学校へ来てすかっと胸のすくようなことはないのです。ほとんど気の晴れることがない。注目を浴びるというようなことはないわけですね。坊やだから、そういうことが欲しいのです。だから、野球の試合のとき、バッターボックスにでも立ってみんなから注目される、それはやはりその本人の理解につながる。そういうことが、いま学校の中ではありません。先生もとにかく勉強勉強で、そういうことをしてくれない。何かといえば取り締まり。坊やじゃなくて、もっと何か悪いことしやせぬかというようなのが、大体生徒指導になっておるわけですね。やはりここを改めていかぬといかぬ。  そのためには、いまのような管理体制じゃなくて、現場の一人一人の先生家庭の子供をよく知るというような教育体制を検討しないといかぬと思うのです。文部省、それをひとつぜひやってもらいたい。そうしませんと、私をして言わしむれば、いまの先生方は、確かに狭い意味の職務には忠実です。勤務の評定をされるし、ああ自分はこの係だ、それには非常に忠実です。しかし、いま一たん社会へ出ていって、たとえば子供たちのいろいろな外でやっている活動、それに出ていって先生が何かするとか、あるいはボーイスカウトならボーイスカウトへ先生も参加するとか、そういうことはありません。そういうことを熱心にやる人は勤務評定はよくならない。項目を見てください、そんなのはないのです。  だから本当は、子供たちの周囲の生活が知りたい、どういうところで遊んでおるか、親はどんな仕事をしておるか、知りたいと思っても、そういうところへ首を出すということは勤務評定がよくならない。それよりも、決められたその中できちっと職務に忠実にやっておる人が勤務評定がいいわけです。  だから、さっき総理府の青少年のお話がありましたが、学校の現職の先生、自発的に全部参加しますか。いかがですか、お調べになっていませんか。
  119. 浦山太郎

    ○浦山説明員 具体的な数字は調べておりませんけれども、全員が参加するということはないであろうと思います。
  120. 湯山勇

    ○湯山委員 これは少年補導センターとかいろいろなところで私も聞いてまいりました。しかし、学校をやめた、校長さんをやめたりした人は参加することがある、けれども、現職の先生が参加することはほとんどありませんということです。  こうなると、いませっかくそういうふうにやっても、いまのように決められた公務にだけは忠実ですけれども、そういった面に先生は出ていく余裕もありません、出てもいかない。これで果たしてできるであろうかということも心配なんです。  私は、この問題については、学校の側、それから生徒の側、親の問題、それから社会の問題、いろいろあると思う。きょうは、社会の問題とか親の問題などもいろいろ聞いてみましたが、局長は御存じかもしれませんが、どれかの統計に、親の八三%はどうしていいかわからないというお答えを出しておる、そういう統計をごらんになったことはありませんか。
  121. 三角哲生

    三角説明員 いろいろな統計が出ますので、その都度目にいたしておりますが、ちょっと湯山委員の御指摘のそれそのものについて、はっきりした記憶はございません。
  122. 湯山勇

    ○湯山委員 私も、ふだんでしたら資料を取って質問するのですけれども、ともかくきょうは、ゆうべ遅くに来たものですから、その資料が何の資料かというのを取っておりませんけれども、いま親も戸惑っておるわけです。戸惑っておる親はどこに頼るか。局長は、どこに頼るとお感じになりますか。
  123. 三角哲生

    三角説明員 やはり学校と相談をなさるなり、自分でもいろいろ考えなければいけないことでございます。それから、いろいろ参考の本などもよく出ておりますので、そういうのを読んだりしている事例は、私の周囲にもございます。
  124. 湯山勇

    ○湯山委員 ですから、やはり学校はその親の悩みも受けとめてやらなければいかぬのです。警察へ行く親はありませんけれども学校先生なら相談するのですから、そのことをやはり文部大臣もお考えになってお当たりにならないといかぬわけでございます。総理府が幾らおやりになっても、警察がどんなに教育的な配慮をされても、やはり親は受け持ちの先生です。そうすると、その先生が本当に子供をよく知って、適切なアドバイスができて、徴候が少しおかしいと、これは非行化じゃないかと気をつけてやるということが、いまこそ大事なんです。  今度はいろいろなところへ当たって聞いてみました。暴力団めいたのにも聞いてみましたら、彼らは目をつけて、あれは入る、入れようと目をつけたら、そういう連中の言うことだからどこまでかわかりませんが、まず逃さない。あれは番長に仕立てようと思って着眼したら、ほとんど狂いなくできる。それは家庭の状態とか、ふだんの本人の状態とかをよく知って、そして、あれならというので目をつけてつながりをつけるというと、まず逃さないということです。  これは真偽のほどは別ですが、そう言っておりました。そんなにわかるかと言ったら、わかる、女の子でも、ちょっと見ただけで、あれはどう、男でもどうだというのは、おおよそ彼らには見当がつくようです。第三者にそういう見当がつくのに、受け持ちの先生にその見当がつかないというのは、情けないことじゃないかということも言えるわけですね。全部が全部ではありますまいが、いまの暴力団の言うことは。しかし、そういうことです。  そこで私は、またいずれ、この問題は大きい問題ですから、改めて委員会でいろいろ意見も述べたいと思いますが、ただしかし、きょうのこの委員会に関する限り、文部省は何をしますというのが、具体的に一つも出ていないのです。これは大変残念なことです。いろいろ御答弁になるけれども、ああでもない、こうでもない、ただ教育委員会連絡するとか校長を中心にやってもらうということだけではなくて、そのために文部省は何をやる、たとえば生徒指導主任というのは、そういうことなら一遍検討してみるということをやるのか、夏休みには全校の全生徒のうちに、担任の先生が、そんなにおざなりではなくて、子供のうちに行ってみて、家族が何名でなんということを書くために行くのではなくて、本当にそのうちの生活、環境を知るために家庭訪問をやれというようなことをここで言えませんか。そういう約束はできませんか。もしそれができれば、私は、きょうこれだけの委員会を開いた意義があると思うのですけれども、いままでのところ、それが何もないので、その点では非常に不満です。  なお、社会の面に出ていくのにしても、よし、じゃ文部省通達をして、あるいは警察のいろんな催し、それから警察への連絡のとり方も、決していまのような処分ではなくて、警察が安心して学校へ子供のことを言ってもらえるようにしなさい、それから総理府のいろんな行事、市や何かの青少年センターの行事には現職の先生も参加しなさい、そのためにこの夏休みを使いなさいといったような指導ができませんか。もしそういうことをやってもらえば、私は、もう質問をこれで終わって、次にまた、今度はその他の社会問題、生徒自身の問題、これについていろいろお尋ねしたいと思うのですが、短い時間ですので、ひとつきっぱりした、いまのような問題についての御答弁、御決意を、もうよくおわかりですから、坊やたちのために大臣からひとつ願います。
  125. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 冒頭申し上げたように、警察の治安関係の方あるいはまたその他の特定の任務を持った方であるならば、その坊やの行動のある点について焦点を合わせて行政の権力的な措置がつき得ると思うのです。文部省は、その坊やの行動の朝から晩までといいますか、いろんな、お父さんとお母さんの関係とかあるいは先生との関係とか坊やの全部の問題について責任を持たなければならない省でございますから、そう一つのフォーカスを決めて、これについてぱきっとした言葉の出ない方が当然なのではないか。しかし何はともあれ、坊やはまだ子供だということを認識しなければいけないことと、坊やの一生を誤らしめないという愛情がなければならないし、それから、またお母さん、父兄との関係先生との関係、いろんな問題が、今後もまたその坊やには起こってくるだろうと思います。しかし、それにしましても、本当にその坊やがかわいいということを前提に置いて、今後、文部省は一層がんばってまいりますが、その坊やを憎むような行動は断じてしてはいけないものである、あくまでも愛という、かわいいということを前提に置いて、お母さんたち、お父さんたち、あるいはまた先生方、先輩方、その坊やの将来をどうかよく見ていただきたい、こういうふうな気がいたします。
  126. 湯山勇

    ○湯山委員 時間が参りましたから、最後になりますけれども、きょうは、いまの大臣の御答弁を別にして言えば、生徒指導主事学校に置くよりは、現職の警官に学校に一人ずつおってもらった方がどうもよくなりそうな印象を受けないとも限らないのですが、そうじゃないのです。そうじゃないことを、いま申し上げておるのです。  それで、私が申し上げたのは、いま生徒指導主任——主事というよりも主任は非常に苦しんでいる、ですから、それを中心にして全校一致した、いまのような体制はとりにくい状態にあるシステム、これの検討を願う、これが一つです。それから、せっかくこういうことをやった夏休みなんだから、これは文部省がおっしゃったように、全部は掌握できないけれども、それをできるのは担任の先生ですから、担任の先生はおざなりじゃない家庭訪問をやれ、やるように指導する、これは大臣、できますね。そういう二つのことだけでも、ここで御確認願えれば、この委員会は非常に意義があったと私は思うのです。いかがでしょうか。
  127. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 よくわかりました。  それで、具体的なケースにつきましては、適切な措置をとらせます。どうかひとつ、その坊やにりっぱな新年を迎えてもらうことをわれわれはこいねがって、お答えといたします。
  128. 湯山勇

    ○湯山委員 それじゃ、これで終わります。
  129. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 有島重武君。
  130. 有島重武

    ○有島委員 先ほど来、いろいろな御議論が出ておりまして、私は、補足的にちょっとだけ時間をいただいているのですが、どうも結論的に私、考えておりますのは、いろいろな諸施策がとられております、教育でございますから、特に学校教育でございますから、学校先生が一番御苦労なさっておられる、親御さんも大変苦労しておられる、そういうことでございますけれども、その中でもって行政というものは一体何ができるかということでございますね。その坊や、これは文部省だけの坊やではございませんが、その坊やに行政という立場で一体何ができるのだろうか、そういうことでいまいろいろなお話をしておるわけですね。  それで、文部省のなされたことは、この通達も出していただいたわけでございますが、いままでいろいろ御質問がありましたけれども、この通達、これは確かに結構な文言が並んでおります。そこで、これについて承りたいのですが、これは結構には違いないのだけれども、そのとおり学校の方でもこれを実施していきたい、確かにそのように努力はしていらっしゃるのですけれども、なかなかできない。なぜできないだろうかということを、ちょっと考えてあげてもいいのじゃないだろうかと思うのです。  それで、ここで今年の十一月二十五日にお出しになったこの文書だけで拝見いたしますと、1の(1)というところに「児童生徒に対する指導内容を精選し、」云々となっている。先生もいままで精選を一生懸命しようとしているんですよ。ところが、現実に五教科というのがございますね、これは一生懸命みんなやる。それから先ほども例がございましたように、これ以外のものになりますと、中学三年になりますと、ばかにするというわけじゃないけれども、やっていられないわけですね。それで、それの極端な形があらわれるということもあろうかと思います。  この指導内容を子供たちにもう一遍精選するということは、これはやはり受験体制というところにずっと収斂していく、現実にはそうなっております。それを避ける手があるか。精選するということは、精選すればするほど、むごい競争というものができてくる。むごい競争ということは、そこから落ちこぼれの子供も出てくる。そういうようなことに、これは裏目に働いている点があるのではないだろうか。これはどうやったら避けられるだろうかというような点について、大臣、何かお考えがおありですか。
  131. 三角哲生

    三角説明員 指導内容の精選ということは、もちろん五教科も含めまして、やはり基礎的、基本的な事項を、各教科にわたりまして、しっかりと理解をしてもらうように進めたいということで、いま有島委員御指摘のように裏目に出るということは、もしそういうことがあれば、それは私どものねらっておりますところが大変曲がってきておるということになるわけで、五教科以外に、もちろん美術でありますとか音楽でございますとか、そういう科目についても、しっかりとした先生方によって学習指導要領に基づきます充実した授業をやってもらう、そういうことで学校全体のバランスのとれた教育活動というものをやってもらいたいというのが本旨でございます。
  132. 有島重武

    ○有島委員 これは一種の能率主義というようなものがございまして、精選する目標が英語の単語なら二千語覚えたければ二千語覚える、覚えたものは全部書ける、こういうようなことが学校教育の中のいわゆる精選、能率化ということで、これを押しつけられる。現実の生活というものは、二千語使えるということは、一万語ぐらいは聞いてわかるということなんですよ。むだがうんとあって、その中でこれだけは、ということがあるわけです。精選しようとすればするほど、何だか狭くなってぎこちなくなって、それでゆとりがあるとか何とか言いながら、実は現場では裏目に出ているということが、これは教師の側からも疑念として上がっているわけです。だけれども、何となくそれが、文部省が言われていることはもっともみたいです。  次に、進路指導ですね。(2)の「組織的、計画的に進路指導を行う」、この進路指導というのは、坊やの将来について、人間として成熟していくという進路指導学校でいまなされるかどうかなんです。いまやられている進路指導は、大臣もお聞きで御承知でしょう。おまえは何点だからこの学校は無理だ、ここは有利だ、これが進路指導になっているのではないですか。本当の人生の上の進路指導というものを、では、教師はやらなくていいと思っているか。だれもそんなこと、思ってないわけですよ。どうにか、本当に人間的な成長のために指導をしたいと思っているわけです。思っているにもかかわらず、やっていることは、おまえの点数はこうだ。これは一体どういうわけだ。一体どうしたらこれを解決できるだろうか。大臣、お考えがありますか。
  133. 三角哲生

    三角説明員 生活指導の中で進路指導が非常に重要であるというふうに申し上げまして、そして、その進路指導の中には、ただいま御指摘のようないわゆる進学指導というか、これも入るわけでございますが、基本は、やはり私から申し上げるまでもなく、できるだけその一人、一人の生徒個性なり能力なりを十分に把握いたしまして、そして、その子供たちの進学なりあるいは就職なりについて、子供たちが自分自身自分の行き先について認識し、かつ判断できるような支えをしてやる、こういうことが基本でございますので、私は、教育現場でできるだけそういう意味合いでの温かい子供に対する指導というものに力を集中していただきたいと思っておるのでございます。
  134. 有島重武

    ○有島委員 大臣、局長もそう思っているわけですね。校長さんもそう思っています。現場先生はなおそう思っているわけです。子供たちもそれを望んでいる。しかし、できないのです。現実にはそうなってないのですよ。みんなそう思っているが、それはできないのです。それを阻んでいるのは一体何であろうかということ、これは究明しなければならないわけですね。  それから次の「児童生徒との接触を密にし、」、これは家庭訪問なんかの御苦心談がございました。それで、その生徒さんの本当のよさというか取り柄というのはどんな子供でもあるわけでしょう。ところが、現実にそれを評価できるというのは、やはり五教科の中の点数という形でしか評価してもらえないわけですね。先生は心ならずも、この子供はこの点はこんなによくなってきている、あるいはクラスの中でもこの子はこういった点では非常に特徴があっていい子なんだ、創造力があるのだということがあっても、そういうことは指導要録には載らないわけですね。そういうような狭められた評価しかできないようなシステムの中に追い込んでいるのは一体だれだろうか。これもいままで、教師の方々からも相当声が上がっていることだろうと思うのです。  ですから、局長の言い方をしますと、私たちもそう思っておりますと言ったことは十分あれしておいてください、ただし報告をとるのは、この点とこの点ということになるのです。文部省もこの点だけは報告をとりますよということになりますと、今度上級学校も大体それにならうから、どんなに運動が上手であっても、あるいはちょっとした統率力があったり、あるいはちょっと義侠心があるようなそういったよさがあっても、学校の五教科の点数はそれほど芳しくない、あるいはついていかれないというような悩みがあるんですね。  その坊やなら坊やを本当に励ましてあげる。そしてその年代でございますから、やはり成長にでこぼこというのがありますが、数学の上で大変おくれておっても社会の点では大変進んでおるとか、あるいは国語は非常に得意だ、こういういろいろな子供がいるけれども、そのでこぼこが大体そろっていくのは十六、七歳ということでございましょう。中学のうちに全部粒をそろえて、それでもって高校に送り込むということにいまのシステムはなっているわけですから、そういうシステムの中で教師の方も苦労しておる。苦労していろいろいい点を探して伸ばしてあげよう、それが評価できない。これを何か評価できるようなシステムというものは行政が考えてもいいことじゃないかと私は訴えたいわけです。大臣、どう思いますか。
  135. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 先ほどの教育指導要領の問題でありますとか、あるいはまた進路指導の問題でありますとか、非常にむずかしい問題であるし、その坊やの将来、運命を決めてしまう重大な問題が、この進路指導には入っておると私は思うのであります。  人の性格には、ある点では非常に劣っておっても非常にずば抜けた才能を持っておる子供もいるわけです。ですから、私は、進路指導というものは大変重大であると思うのでありますけれども、いまの世の中の非常に数の多い中から精選していかなければならない優勝劣敗の社会様相というものは、とかく一つの採点とか試験成績とかいうものだけに優劣ができ、また学校の選択、将来の希望も達成できるか達成できないかというようなことになる、そういう非常にむずかしいことは、いま先生のお話のとおりでありまして、文部省といたしましても、局長もあるいはまた学校も担任の先生も、かわいい坊やのことでありますから、一生懸命には考えていただいておるのでありますが、制度上の問題でなかなかむずかしいということもよく理解できます。それならばどうしたらいいだろうかという問題について、ひとつ御一緒に考えていただきとうございます。
  136. 有島重武

    ○有島委員 時間がございませんから、結論的に申し上げますけれども教育の中に管理運営をしていかなければならない、学校教育の中には確かにそういった面が柱としてなければいけません。ただ指導の実践面といいますか、あるいは愛情の面といいますか、そういった面もあるでしょう。しかし、その中で文部省が下手に熱心にやり出せばやり出すほど指導管理というようなことの方が強くなってくるわけですね。それが、いま一生懸命にこういった通達を出しているということも、実は自分自分の足を縛りながら駆け出そうとするとか、あるいは自転車のブレーキをかたく握りながら走れ走れと言うような、そういうようなことになっておるのではないか。ですから、私は、指導要録のこの一つでも研究指導をしていただきたい、これはいかがですか、いいですか。  いま、坊や、坊やとおっしゃった、私も半ば賛成、半ば反対なのも、いままでの大臣なら大臣、まあ、われわれの持っている価値観といいますか、一つこういう価値がある、その範囲内でいまの子供たちは未完成品だ、こういう考えでやっても、ちょっとこれははみ出す部分があるのじゃなかろうかと私は思っているわけなんです。私たちも、明治の方々から見れば、大正の連中は腰が弱くてしっかりしていない、こういうことになりやすい。われわれから見ると、いまの若い者はあれで大丈夫なのかということがありますけれども、逆に、おやじどもよくもあれできたなというように見える面もあるわけでありまして、自分の価値観の内にあるのだというだけの、いわば見下しているような感じでは済まないような気がする。それがいままでの指導要録というものは、確かに、家庭教育なんかでは近所づき合いもあった、餓鬼大将もいた、いろいろなものがあった、そのいろいろの中でこの要素、この要素だけを押さえておればよかったろう、こういう時代にでき上がったものが、いま時代が、社会情勢がいろいろ変わっております。客観情勢いろいろございますね。これではちょっと子供たちの本当の実態を見ていく上に、これは最小必要限度を持ったものでも限度が小さ過ぎる、もう少し広げなければならぬというようなこともありますでしょうし、さらにもっと精選しなければならぬという面もありますでしょうし、そういうようなことも、これはもう一つお考えいただかないと、やはり災いを転じて福となすというのはむずかしいのじゃないか、これも一言だけつけ加えさせていただきます。
  137. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 三浦隆君。
  138. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 まず私は、大臣の答弁の仕方は大変まずいと思っております。というのは、言葉の端々にかわいい坊やと言うのは、大体不謹慎だろうと思います。少なくとも教員をひっぱたきつけたり、友だちをひっぱたきつけた加害者なんです。中学三年を主として高校生、そして大人でさえもわれわれは欠陥多い存在であって、いわば未完成品です。現実に悪いことをしたのです。悪いことをしたときに悪いということを教えてやることの方が、本当に子供のためを思っているのであって、甘やかしていることは、決して子供にとってプラスではない。少なくともかわいい坊やなんと言うのはナンセンスだ。こんな姿勢がある限り、この校内暴力の問題は解決しないだろう、こう考えております。  それから、よく自主性の尊重だとか警察の介入反対、こんなものは原則的にはあたりまえのことなんです。だけれども、いま言ったように子供たちは未完成だし、学内の自治も不十分ですから、そういうところから現実の問題として校内暴力事件が起こってきているわけです。先生であれ、校長であれ、手をつけられぬから、ここに警察が介入せざるを得ないというのが現実に出ているわけです。むしろ教育現場の教員か十分な教育を——本人の無能もある、無責任さがある、同時に、文部省を頂点とする考え方の甘さがある、そうしたことが校内暴力につながっている、こう私は思います。  教育の場で、たとえば神奈川県で最近十一月、十月に起こったので、先ほど警察当局からもお話ありましたけれども、横須賀武山中学校あるいは川崎市立桜本中学校、南足柄岡本中学校、こうしたものが次々と、いわゆる番長グループに率いられながら大変な暴力事件を起こした。警察が入っているわけです。しかし、こうした簡単な学内でのけんか騒ぎではなくて、警察のお世話になるぐらいの大変ひどい校内暴力事件というものは、急に起こったものではないのです。  たとえば、武山事件暴力団稲川一家の子分みたいになって、そして加害事件を起こした中三の生徒は、たとえば調査によりましても、中学二年生の一学期のときに、すでに遅刻が大変に多い、学習意欲がない、授業中に奇声を発するなどの行為があった。そしてまた、二学期になると、欠席が多い、バイクの無免許運転で補導されるというふうなことがある。そして三学期になると、頭髪のパーマ、着色したりして問題となる。あるいは一時的に家出をする、外泊をする、金銭のおどし取りをする。と同時に、卒業生非行グループとの活動を強める。あるいは三年の一学期になると、ますます勝手気ままな行動が目に余るようになってくる。他校との暴力事件などがある。そうしたことの結果としてひどい暴力事件を起こして、そして警察が逮捕に踏み切っているわけであります。  この子供が二年の一学期から目に余る行為をしておって、それに対して学校が何をしておったのですか。何にもしないで急に警察の厄介になっておるのです。この事件警察の厄介になったのは仕方がない、自業自得だと私は思っておりますけれども、ここには教育そのものが欠落している、そういうふうに思います。  そこでもう一度、義務教育というものに対して考えていただきたいのです。憲法二十六条で、あるいは教育基本法の四条で、学校教育法の二十二条で、さらに民法八百二十条で、そうした義務教育を課して、今日の財政の大変ただごとでない赤字の中においても多額な金を投資しているのです。親としては義務でもって子供を預けているわけです、小学、中学に。預かった以上は、責任を持ってやるのが校長であり教員ではないですか。あるいはそれを任命する立場にある教育委員会、大きく管理しているところの文部省じゃないですか。現実にお配りいただいた事件だけ見ても、昭和五十五年でも四千二百三十八人という多くの人間が補導されているのです。義務教育を任されておりながら、満足な教育ができないから、こういう数が起こっているのです。まずもって文部省から反省すべきだ。文部大臣から始まって全部反省すべきだ。少なくとも校長も教員も反省すべきだ。みんなが社会が悪い、どうだこうだと責任回避するようなことは、決して子供にとってはプラスにならない、まず最初にそのことを指摘したい、こう考えております。  そこで、お尋ねしたいのですが、まず教育現場にいる先生の気持ちにもなってもらいたい。自分が子供にひっぱたかれて、かわいい子供なんて言っていられない。昔の子供に比べて、はっきり言うと柄がでかいのです。大学でも同じような事例があった。子供だからというふうな甘やかしは決してよくない。行き着くところは、浅間山荘事件のようなとんでもないことになってくる。そうなってから批判する前に、なぜもっと本当に子供たちの側に立とうとしないか、私はきわめて疑問です。  そこで、まず具対的な提案としては、校内の掲示を徹底してもらいたい。生徒指導として個々的に呼んで言うのはいいけれども、それよりも校長名なりで、遅刻してはいけない、先ほどだれかも言っていましたけれども授業中は授業をまじめに聞け、当然のことははっきりと掲示してほしい。それをしなかったら具体的にどういう処分をするぞ、それもはっきりしてもらいたい。子供たちに、やっていいことと悪いことというもののけじめをつけさせるべきだ。確かに、いまの子供たちは、自分で大それたことをしながら、警察でもって逮捕されて急に悪かったと気がつく手合いもいる。しかし、気がついて反省して間に合う手合いぐらいならいいけれども、けがさせたり殺した後で反省されたって、はっきり言って間に合わない。  だから、そこへ来る前に、少々の問題であろうと、いまの武山の問題で言えば、最初のときに遅刻が多いとかいうことが出てきているわけですから、そのころに、この子供に対して、そんなに遅刻してはいかぬぞというふうなことをなぜもっと言わぬのか。少なくとも個々の先生方だけじゃなくて、学校全体として校内掲示板その他をもって周知徹底さすべきだと思いますが、この点についてはいかがですか。
  139. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 ただいまの私に対しまするお言葉は、非常に厳しいものがあると同時に、学校の管理運営という面で、特に戦後三十年間、非常に弛緩したものがあったということは私も認めます。また、教職員としての社会的な立場と責任というものを、われわれはしっかりと自覚すると同時に、文部省といたしましては、その面については強く指導しなければならないものがある、かように思います。  それから、いまの暴力の子供たちに対しましては、これはその罪を憎むという点においては、決してそれを甘やかしたり寛容に扱ってはいけない。私が申しましたのは、その人の将来にまで全部真っ暗くして、かえってその処罰というものが、その後の履歴に残り、あるいはまた、その後の社会生活に悪をさらに拡大し、輪を広げていくというようなことがないように、私どもは、教育者として配慮したいものだということを申したわけでございます。  同時にまた、かえって警察の方々の方が本当に体当たりで真剣に話せばわかってもらえる、そうして、むしろいままでしつけが足りないということに対して、子供たちがこのごろは家庭の中でも、自分のおやじのしつけが足りないからこんなおれみたいなものになったのだというようなことを言う者もあるということを聞いておりますが、いまの厳しいしつけ、あるいはまた厳正な秩序、教育という問題に対しては、全く同感でございます。
  140. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 子供の将来を考えるのは、最初に言ったように当然のことだということなんです。  そこでまず、教育そのものが欠けていはしないかと私が言いたかったのは、たとえば中学一年に入ったときの子供たちは、生きがいを持っていると答えるのが大変多い。それが中二、中三となるに従って、現実に生きがいを失っていくのです。あるいは中学一年に入ったときは、みんなが学校の規則を守ろうと思っているのです。二年、三年になって急速にそれがなくなってくるのです。なぜなんでしょう。本来ならば、教育の力をもって生きがいのない人間にも生きがいを燃やせるように、あるいはふしだらな人間にもふしだらでないような人間へと、教育の力をもってよくしていくべきことじゃないか。それが学校に入ることによってだんだん悪くなっちゃうのだ、これでは親としては不安で学校に子供を預けられない。  そこで、公立は危ないからというので、まだ私学の方がましかもしらぬ、まさにばかばかしい高い金を出して、親からすれば保険を掛けたつもりで入れざるを得ない、こうしているのも現実にあるのだということをひとつ御認識いただきたいと思うのです。  同時に、調査していただきたいのは、青少年白書で、単に生きがいが中一より中二、中三が減った、そういうことではなくて、なぜ生きがいが減ったか、それもありますね。逆に、どうしたら生きがいを燃やすことになるのだろうか、子供たちがどうやったら生きがいを持ってくれるのだろうか、あるいはどうやったら校内暴力学校からなくせるのだろうか、それこそ動員して子供たちの見解をぜひ聞いていただきたい、こう思うのです。  そのほかにも大変問題があると思うのですけれども、一言だけ言いたいのは、前回の文教委員会で言いましたけれども、一番教育で欠けているのは、たとえば小学校一年から一学期、二学期と積み重ねて、六年になって卒業するはずです。ところが文部省は、小学校一年の子が七年半ぶりに登校した、七年半も学校に来ない、その子供をにわかに六年に上げて、そして卒業させているのです。教育を何にも受けてない者が、なぜ六年になって卒業することができるのか。私は、この文部省解釈はきわめておかしい、こう考えております。  それからもう一つ授業にしょっちゅう遅刻する子供がいる、あるいは授業中に中で騒いでどうしようもない、ほかの子供たちに乱暴を加える、しかも、それの懲戒処分としては、外に立っていろと言うことができない。もちろん教員がその生徒をひっぱたくことができない。いわゆる学校教育法に言うところの体罰に触れる、これが文部省見解であります。一生懸命みんながまじめに勉強している。教員も一生懸命です。そのとき、ふだん全然学校へ来ない暴力団の配下みたいなチンピラの学生が、たまさか学校へ入ってきて傍若無人の振る舞いをした。教員として見るにたえない。もう思わずつかつかと行ってひっぱたこうと思ったら、ひっぱたいてみろ、違法だぞと言われて、その教員がすごすごと引き下がっておるのです。  私は、現実に聞いたわけです。もし、したらどうなるか。刑法の罪を受けなきゃならぬ、違法ならばですよ。民法の損害賠償の行為も受けなきゃならぬ。行政上の処分も受けなきゃならぬ。教員としてまじめであればあるほど無気力になってしまうじゃないか。こういうふうな文部省見解は、私は一日も早くなくすべきだ、これでは現場の教員がかわいそう過ぎるし、同じまじめに勉強しようとする子供たちに対して教育効果が出ない、速やかに改めていただきたいと思うのですが、大臣、これに対してどうお考えでしょうか。
  141. 三角哲生

    三角説明員 文部省解釈はおかしいというお話でございますが、学校での指導におきまして体罰はあってはならないという立場でございます。ただ、個々の具体的な状況でただいま三浦委員御指摘のような非常に異常なケースになりました場合に、その悪いことをしている子供に対する制止の仕方でございますとか、あるいはその子がかかってきた場合に、これに対してどう対応するかということは、その場、その場で、やはり基本的には、教育者という立場を踏まえながらなすべきことがあろうかと存じますが、それは私どもの言っております体罰とはまた別のことでございまして、おっしゃいますように、先生よりも大きいような体の者がかかってまいりました場合には、先生としても、その先生の持っておる能力に応じた適切な対応の仕方をすることによりまして——むしろそういう事柄が、現場先生を無気力にするような状況につながるということであってはならないのでありまして、それはその現実の対応でございます。  ただ、子供に対する賞罰の、賞もありますし、罰もありますが、その罰で体罰ということは、私どもは、禁ぜられるべきことであるというふうに思っておるのであります。
  142. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまのような質問には、もっと検討して、法改正が必要であれば必要であると、検討するぐらいのことは言うことが必要じゃないの、問題が個々のケースでいろいろあるのだから。
  143. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 現場先生の立場になってもらいたいのです、はっきり言って。いいですか、現実に授業を妨害して騒いでおるんですよ。うるさい、授業がある、けしからぬからおまえ外へ出ていけとなぜ言っちゃいかぬのですか。それも肉体的苦痛を与えるからだめだ、これはほめる行為をやっているんじゃないですよ。その子供のやっている行為がいいか悪いかを教えてやるのが教育だと思うのです。それと同時に、そういうふうにしてもまだ来ているからいいかもしれませんが、来なくても、これまた卒業しちゃうんですよ、義務教育というものは。私はおかしいと思う。教育を受けもしないのになぜ卒業できるのですか。できない者にはできるように念入りに時間をかけて教えるとか、場合によっては落第制も考えるとか、何もしない者がまた高校へ上がってくると、高校の先生だってそんな者には教えようがないじゃないか。義務教育に多額の金をかけている以上は、もっと教育の中身がばっちりと入るような教育へと変えていただきたい、そういうふうに私は心からお願いいたします。  それから、いま言った文部省の懲戒に対する解釈も、現場の教員に即応するようにして、解釈のあり方を変えていただきたいと要望して終わります。
  144. 田中龍夫

    ○田中(龍)国務大臣 いろいろと大変貴重なお話をありがとうございました。文部省といたしましても、お言葉を十分体しまして、今後教育の任に当たりたい、かように考えております。
  145. 山原健二郎

    ○山原委員 私もけさからずっと論議してきて、各委員の間の意見の違いもありますし、また、この問題の見方の違いもあると思うのです。でも最後に、文部大臣が坊やという言葉で表現された、意味は違うと思いますけれども、これでこの委員会が終わられると、ちょっと困るという感じがしておるのです。確かに十五歳、十六歳、十七歳という年齢でございますから、坊や性は残っております。だから、先生の目を引きつけたいという幼い気持ちもあるのです。また最近では、紙の飛行機にライターの火をつけてぱっと先生にほうる、先生がしかると殴りかかっていく、こういう中にも幼さというものも残っておると思うのです。でも戦時中は幼いからといっても、中学一年生ではや予科練にとられたのですから大人扱いをしたのです。だから、そういうかわいい坊やだという感じだけで見てはならないものを子供たちはいま持っている。たとえば組織されているような面もあるわけです。あるいは売春行為をやっておる女の子供だっているわけですから、先生がその子供たちの非行を治そうとする場合には、これは本当に全く体当たりなんです。かわいらしいなんというような状態じゃなくて、幼さをどうやって引き出すか、悩みをどう引き出すかというような勝負になっているわけです。そこにも厳しさというものをそらすような言葉は適切ではないのじゃないかというふうに思います。  そして子供なりに十五歳、十六歳に対しては、学校教育の面でも先生方ももっと感動的な教育をやるとか——感動的な教育を毎時間やれるわけではありません。しかし、一学期に一遍は子供たちに感動を与えるというような教育も行われていいのです。数学をやっておる先生が数学ばかり教えたら無味乾燥かもしれません。その間に先生の体験が話され、その体験が子供には永久に頭に残るというようなものだってあるわけです。ここのところの教育の観点からも、この問題に取り組む姿勢を考えますと、単に坊やという——大臣の言われた意味がわからぬわけでもありませんけれども、もっと厳しい現実にいま現場は直面しておるということで出発してほしいというお願いを申し上げまして終わります。
  146. 湯山勇

    ○湯山委員 いまの問題に関連して、それは積み上げだというのは、当然だと思うのですけれども教育というのはそうじゃなくて「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」というのが、やはり教育愛でなければならぬと思うので、このことだけ申し上げておきます。
  147. 三ツ林弥太郎

    三ツ林委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十八分散会