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1980-10-23 第93回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月二十三日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 江藤 隆美君   理事 愛野興一郎君 理事 稻村左近四郎君    理事 染谷  誠君 理事 塚原 俊平君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上田 卓三君    理事 鈴切 康雄君 理事 神田  厚君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    大原 一三君       粕谷  茂君    片岡 清一君       川崎 二郎君    木野 晴夫君       倉成  正君    田名部匡省君       田村  元君    竹中 修一君       浜野  剛君    上原 康助君       角屋堅次郎君    渡部 行雄君       市川 雄一君    塩田  晋君       榊  利夫君    中島 武敏君       田島  衞君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         行政管理庁長官         官房審議官   林  伸樹君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         林野庁長官   須藤 徹男君         通商産業大臣官         房審議官    柴田 益男君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君         通商産業省立地         公害局長    松村 克之君         運輸省海運局長 永井  浩君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 永光 洋一君         労働大臣官房審         議官      倉橋 義定君  委員外出席者        法務省人権擁護        局総務課長    末永 秀夫君        外務省国際連合        局企画調整課長  小西 芳三君        大蔵大臣官房審        議官       名本 公洲君        大蔵省関税局監        視課長      田中  史君        厚生省医務局管        理課長      田中 健次君        農林水産省経済        局金融課長    浜口 義曠君        農林水産省農蚕        園芸局総務課長  市川 博昭君        通商産業省生活        産業局紙業課長  佐藤 剛男君        通商産業省生活        産業局文化用品        課長       水野  哲君        運輸省自動車局        業務部長     大久保一男君        建設省都市局街        路課長      松下 勝二君        内閣委員会調査        室長       山口  一君     ————————————— 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     浜野  剛君   宮崎 茂一君     片岡 清一君   小沢 貞孝君     塩田  晋君   河野 洋平君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     宮崎 茂一君   浜野  剛君     粕谷  茂君   塩田  晋君     小沢 貞孝君   田島  衞君     河野 洋平君     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方支分部局整理のための行政管理庁設置法  等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ  き、四国行政監察支局等設置に関し承認を求  めるの件(内閣提出承認第一号)      ————◇—————
  2. 江藤隆美

    江藤委員長 これより会議を開きます。  地方支分部局整理のための行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案及び地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、四国行政監察支局等設置に関し承認を求めるの件の両案件議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 ただいま委員長から御提案になりました議題につきまして、中曽根行政管理庁長官初め御出席のそれぞれの各省関係の皆様に御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  私は、これまで二十二年の間、委員会関係考えてみますと、内閣にもかつて若い時分におったことがございますけれども佐藤内閣当時、私、数年予算委員会におる当時に中曽根さんと論戦を闘わしたこともございますが、主として、ごらんのとおりの顔で、きわめてじみな農政関係の党の責任なんかを持っておりまして、久方ぶりに行政全般という立場から当面の重要な問題である行革質問を申し上げる。しかも、これは一時間の範囲内であるということで、同僚委員の差し繰り等も地元の関係がございましてそれに時間を割いたわけでございます。  私は、中曽根長官党内有数実力者として、また行政に非常に豊かな経験を持っておられる立場から、行管長官につかれたということはまことに人を得たというふうに思うわけでございます。ただ、長官自身事志と反したかどうかということはわかりませんけれども、しかし新しく登場いたしました鈴木内閣の重要な政治課題の柱として内閣自身が掲げております行政改革の問題について、党内有数実力者中曽根さんがつかれる。大変困難な、しかも場合によっては抵抗の多い問題でありますけれども、ぜひがんばっていただきたいというふうに思うわけでございます。  私は、九月十二日に閣議でも長官自身からお話があり、対外的にも出されております「今後の行政改革に関する基本的な考え方」あるいは関連をいたしまして、前長官当時のいわゆる五十五年行政改革といったような問題でそれぞれ資料をいただいたり、さらにまた長官就任以降新しく第二臨調を発足させようというふうなことに関連をいたしまして、従来から苦労をされておりました委員長中曽根さん以外の大槻さん、市川さん、稲葉さん、林さん、宮崎さん、八木さんといったような行政監理委員会委員の九月八日付の「行政改革推進に関する新たな措置について」という形で第二臨調の新設が必要であるというふうなことを含めた御提言も目を通させていただいたわけでございます。  特に前段の「今後の行政改革に関する基本的な考え方」というのは、中曽根長官らしい考え方あるいは苦心の跡が行間ににじみ出ているような感じも持つのでありますけれども、同時に本委員会同僚議員諸君が総体的な立場あるいは提案されておる法案改正問題についていろいろ議論をしておりますが、中曽根さんの御答弁を聞いておりますと、ちょうど名画を見るようなものでございまして、右から見ても自分の方に来ているように見えるし、左に行って見るとまた自分の方に来ているように見えるし、その辺は名画を見るような気持ちでございまして、つまり本当の真意がどこにあるのかまだつかみかねているというのが私の実感でございます。これは皮肉で申し上げているのではございません。  そこで、この基本的な考え方の中で「行政改革は、現下の最大政治課題一つであり、これを誠実に実行して成果を挙げることは、内閣の重大な責務である。」こういう受けとめ方のもとに、中曽根さん自身基本的なこれからの取り組みの考え方を要約して述べられながら、「今後の行政改革検討課題」としては「当面の検討課題」として七項目、「「行政サービス改革」の推進」、「事務・事業の縮減と移譲」これは「法令の廃止整理」、「許認可等の計画的な整理」、「官業の民業への移行および特殊法人の経営の実態等の見直し」というのを含むわけでありますが、それから「中央省庁内の自主的・計画的組織編成推進」、「審議会等廃止整理」、「公務員倫理高揚」、「昭和五十五年行政改革推進」、七番目に「地方公共団体における定員の抑制」といりたような当面の検討課題目的意識的に持ちながらこの処理に当たっていくと同時に、中長期の展望に立って八〇年代以降を展望した新たな行政改革を総合的にどうすべきかという点について第二次の臨時行政調査会設置しよう、こういうことにしておられるわけだと考えております。  いわば、前任者のやってまいりました行革はそれなりに努力されたと思いますけれども、それが大部分そのまま積み残しになっておる。中曽根さんとしてはまずそれを片づけなければならぬ。同時に、新しい考え方も含めて、臨調にすべてをお預けするというわけにいかない。そこで、臨調臨調として二年間の期間でやってもらって、二年間以内でもまとまったものはすぐ受けとめてこれを実践に移していこうということも含めた考え方の中で、行政管理庁長官としてこれから前任者の後を具体的にどうやるかということで、当面の七つの検討課題というものを目的意識に持ちながら推進しようということであろうかと思います。  この中で、これは中曽根さん自身のお言葉として書かれたと思いますが、「今後のあるべき行政に関する哲学体系確立し、」というふうなお言葉があったり、あるいは後の方の臨調設置のところにまいりますと、「行政のあるべき基本理念確立する」といったような言葉が出てまいりましたり、同時に課題の中で、冒頭に「「行政サービス改革」の推進」あるいは五番目のところで「公務員倫理高揚」ということも含めて、それぞれのところで非常に精神面がうたわれておるように思うわけです。文章そのままで言えば、「国民全体の奉仕者としての公務員心構え姿勢を正す」あるいは「公務員心構え執務態度を画期的に刷新」をしていく、「親切」、「清潔」、「能率的な行政」の実現を図る、あるいは「公務員自らあらためてエリを正し、」といったような精神面を非常に強調しておられるように思うのです。  そこで、公務員行政サービスの面でも、あるいは心構えにおいてもそういう方に持っていこうという場合には、上級のエリート官僚であれ一般官僚であれ、公務員の置かれておる条件公務員業務に取り組むいろいろな気持ち、あるいは将来の問題についてどう考えておるかといったような、要するに公務員の置かれている条件なり公務員自身考えておる要求を抜きにして、さあやれ、さあやれと言ってもなかなかできるものではなかろうと思うのです。やはり国民に対しても笑顔を持って親切に接していく。そのためにはとげとげしい職場環境の中からはなかなかそういうものは生まれてこないでしょうし、それと同時にいろいろな悩みや苦労がいわゆる公務員としての身分関係においてもその他いろいろな問題においてもある場合には、なかなか長官の望まれるような方向には行きにくい。要するに公務員が今日の状況の中で、職場の中では何を求め、あるいは仕事の中ではどういうことを考え、また同時に将来の問題としてはどういう希望を持っているのかというふうな広い視野からのそういう心をつかんでいくということを前提にして、なおかつ国民全体の奉仕者としての公務員が尽くせることについて積極的にそれを求めていく、両方タイアップしなければ長官自身の説いておられる精神面というのは、いまにわかにこういうことを非常に強調される長官自身全国各地においでになって、行政サービスの向上の問題についてはその実績まで求めていこう、あるいは国民の声も聞いておこう、そのこと自身第一線に出かけていくことは結構だと私は思いますけれども、私が言っておる職場の民主化問題あるいは公務員基本的諸権利の確立の問題、そういったむしろ高級公務員エリート官僚というよりも一般公務員の心、あるいは行革の場合も、それぞれ問題を提起しておく場合にそれをどう受けとめておるのか、その気持ちは十分取り組むべきものであるのかどうかといったことも十分踏まえてやっていく必要がある。行革問題一つを見ても、将来に非常に怨念を残すような形で問題を推進するわけにはいくまいといったようなことを考えるわけでございまして、長官が特に「今後の行政改革に関する基本的な考え方」の中で、「行政に関する哲学体系」の確立とか「行政のあるべき基本理念」の確立とか、あるいは「公務員心構え」等について精神面を非常に強調されておるわけでありますが、私が申し上げたようなことに関連いたしまして、長官自身基本的な気持ち考え方をお述べ願いたいと思うわけでございます。
  4. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 角屋委員の御激励にまず感謝申し上げる次第でございます。  それから行政基本的な考え方でございますが、いままでここでいろいろ私申し上げましたけれども、一言で申し上げれば、政府政治姿勢行政姿勢をまず正すということ、それから公務員皆さんにその本来の趣旨に基づいて全体の奉仕者としての本分を尽くしていただくようにするということ、そういうことが基本であると思っております。  日本公務員諸君は、外国の公務員諸君と比べてみると決して見劣りはしない。数も必ずしもそう多いわけでもございませんし、またいろいろ政策や行政運営等を見ましても、フランスの公務員制度及び公務員と、日本公務員制度及び公務員優秀性というものは世界でも言われておるところで、私も確信しております。  しかし、時代変化とともに公務員ないしは行政に対する国民の見方あるいは要望も変化してまいります。また、その時代の大きなリズムの変化に対応する措置政府はとっていく必要がございます。日本が経済的な膨張発展期のときにはそれらしいやり方もございましたが、しかしこのような安定成長期になりましたら、その時代にふさわしいやり方をして適応していくということもまた政府仕事でございます。  そういうような調和をとりながら実行していくということが大事でございますが、公務員皆さんに関しましては、やはり人間は皆働きたいという本能があると思いますし、一番満足することは、思い切って自分の能力が発揮できた、思う存分働けたということが人間本能を一番満足させることであるだろうと思いまして、そういうような機会をできるだけつくり上げるということがまた政治の本来の使命であると思います。したがいまして、公務員あるいは行政の各部を見ますと、忙しい、夜も寝ないで一生懸命やっておるところもありますし、中には新聞を見てたばこを吸っているというようなところもなきにしもあらずです。それらはやはり事務の分配あるいは配置あるいは監督の不行き届き、そういう面もあると思いまして、そういう点は本人が納得のいくように是正して全体としてのバランスと能率を発揮させていくことが大事であるだろうと思います。  それで、公務員制度行政制度というものも時代とともに流れていくと思います。最近の世界風潮を見ると、アメリカではフリードマンの考えが非常に伝播されて日本でも喧伝されており、そういうような風潮でいま世界が一応動いている。先進国がそうだと思います。英国にはサッチャー夫人のような態度が出てまいりますし、北欧その他におきましても、イギリス病だ、スウェーデン病だというような批判が出てきております。  では、日本の場合は何が一番正しいか、そういう場合を考えたときに、日本社会経済体制発展段階、そういうような面を見まして、日本はまだ混合経済段階に本質的にあるのだろうと思います。アメリカイギリスのようなストックが充実した社会でもございません。混合経済体制だと思いますけれども、しかし膨張発展期に過大に肥大化し過ぎた点は処理しなければならぬ。それも行き過ぎてはまた日本の本質的なものを損なう危険もある。そういうような意味で、適当なバランス感覚を得たやり方で行き過ぎを直し、足りないところを補完していくという点もまた大事ではないか、そう思いまして、そういうような観点から、これからも行政改革を進めていきたいと考えておる次第でございます。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は、きょう一時間の範囲内で二十数項目ばかり重点的にお聞きしたいというふうに考えておりますので、私がしぼっていく焦点に合わせながらお答えを願うようにお願いいたしたいと思います。  そこで、第二点の問題は、先ほども言いました「今後の行政改革に関する基本的な考え方」の第一項の(1)の中で、「今回の行政改革は、国民全体の奉仕者としての公務員心構え姿勢を正すとともに、複雑肥大化した行政実体に切り込むことを主眼とするものであって、いわゆる機構いじりや器べらしを重点とするものではない。すなわち、」ということで、次にずっと書かれておるわけでありいます。  そこで、先週来議論をしております今回の地方ブロック機関法案関係の問題でありまするけれども、これは前任者のときにつくられたものでありますが、中曽根長官考え方からいけば、今回のこの改革法案というのは、「今後の行政改革に関する基本的な考え方」という点から見て私は少しく矛盾する点があるのではないかという感じを持つわけであります。後ほど営林局等の問題に触れますけれども、そういう感じを率直に持つのであります。  さらに、いま府県単位整理合理化の問題をどうするかということ、これは長官自身就任になってから以降の問題でありますけれども、これについては、長官が「考え方」の中で言っておられますように、単なる機構いじりとかあるいは器減らしとかいうふうな考え方をとらないということで対応されるのかどうかという点もあわせてひとつお答えを願いたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 原則的にはその方針を貫いて仕事実体に切り込む、そういう方針でまいりたいと思っております。ただ、地方審議会とかそういうもので余分なものであると指摘されるものもございますので、そういうものはこの際整理しなければいかぬだろう、そう思います。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 第三番目は、中央省庁再編問題です。言葉の表現が適切であるかどうかわかりませんが、この中央省庁再編問題については、いずれ第二臨調ができれば、第一次臨調のときには予算編成権問題とか、いわばそのままずばりでは必ずしも実践に移されなかった問題あるいは地震対策その他新しい行政需要の問題と関連をして総合的なものをつくるかどうか。何も地震に限りませんけれども、そういったいろいろな問題は中央省庁機構の問題にも関連してくると思いますけれども長官自身は、従来のように行政管理庁あるいは行政監理委員会二者を握って、各省がしり込みするのをぐんぐん押さえ込むようにして中央省庁再編をやろうというのじゃなしに、マネジメントレビュー導入ということで、要するに自主的点検、しかも各省庁ごとに数年で一巡するような形でやりたい。考え方としては、やはり第一線の実務を握っておる責任者、あるいは各省庁マネジメントレビュー導入してやっていくという場合には、各省庁では当然のこととして労働組合自主点検をやる場合に十分意見を言う機会を持つ、またその正当な考え方については各省庁の中でそれが生かされていくということを含んでマネジメントレビューということをなされ、それを全体として各省ごとに数年で一巡をしていこうという考え方であろうかと思うのです。長官自身考えておられる中央省庁再編の問題について、マネジメントレビュー導入という点について、私は必ずしもすとんと胸には落ちないのですけれども、もう少し的確にお答えがあればお聞きしたいと思うのであります。
  8. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 マネジメントレビューというのを考えましたのは、ちょうど石油危機の前に私は通産大臣をやりましたが、通産省は昔の機構のままでございました。そこで、もっと整合性を持った、そして人間も適当に配置がえをやって効率的なものに組みかえたらいい、通産省許認可を大分外しまして、むしろ公務員指導力あるいは人間の力で産業界と話し合って日本産業を繁栄させる、そういう方向に非常に変わってまいりましたので、あのような生活産業局とか基礎産業局とか、あるいは資源エネルギー庁をつくって石油部を独立させたり、そういうことを実はやったわけです。それは、私の考えではやはり石油危機のときにかなり機能したと思っております。  そういう経験を経ましたので、これはほかの省に言われてやったのじゃなくて、内部若手の連中が、もう古い機構ではいかぬ、新しい八〇年代に対応する機構をつくろうということで、内部にそういう機運がありましたので、それに乗ってやったわけであります。そういう機運は、私は運輸省にもあると思いますし、あるいは厚生省やその他の中にもあるだろうと思います。それを誘発させて、若手の一番エネルギーに満ちた、将来を考えている皆さん方考え方をこの際思い切って表に出さして、各自が独自に各省ごとにベストと思う編成がえをやってもらう、そういうことをねらってやりました。たまたま英国を調べさせましたら、マネジメントレビューという法律をつくって八年間に各省全部ローテーションで一回やった、そういう例がございまして、やはりほかの国でもやっているのだなということで、日本もそれをやりたいと考えて実行にかかろうとしているわけでございます。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 長官の方に特に私は触れましたけれども、各省庁自主的点検を行う場合に労働組合意見を言う機会が十分与えられる、それが各省庁の中で案をまとめていく際に生かされる機会というもの、これは行政管理庁が全体的に御指導なさるわけですから、それがやはり基本の中にあるというふうに理解してよろしいですか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 通産省でやりましたときにも、両角事務次官及び官房長組合皆さんとも話し合って、組合の協力のもとにそういう編成がえをやったのでありまして、私は今回のマネジメントレビューにおいても同様に行われるべきものであると考えております。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほど私は、長官自身が御就任以降お出しになった「基本的な考え方」の中で「いわゆる機構いじりや器べらしを重点とするものではない。」そこに今回の前任者法律提案との間に矛盾があるのじゃないかということをお聞きしたわけでありますが、すでに野党の他の党の関係からも、またわが党の同僚議員関係からも具体的に、今回のブロックのそれぞれの省の設置法一部改正の問題については、各方面の角度からの議論が展開されてまいっていることを承知しております。特に私は、冒頭に申し上げましたような関係もございまして、農林省設置法の一部改正にかかわる営林局問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  長官自身も御承知のように、この営林局農林省設置法の一部改正というものがまとまる閣議段階までは、単に私どもばかりではなしに、与党の中でも、やはりこの問題については今回のブロックの中に加えてやるべきでないというずいぶん強い意見があったわけでありまして、たとえば私が従来所属しておりました衆議院の農林水産委員会において、五十五年三月十九日に、いまは引退されましたけれども、私どもの先輩であります芳賀委員が当時の武藤農林水産大臣に対して、この営林局問題が俎上に上っておる、これは今回のそういうものに加えるべきでないということでお尋ねをしました際に、武藤農林水産大臣は、政治生命をかけてでもこの問題についてはがんばるという意味のことを答弁をされ、しかもその答弁のとおり三月二十八日の閣議では、この問題について、次官段階から積み上げてきたものを閣議で強い抵抗を示すような意見を言うということは異例であろうかと思うのですけれども武藤大臣自身がこの問題については強い発言をされ、私どもの承知しているところでは、閣議ではその問題については総務会あるいは政調あるいは当時の農林水産大臣であった中川一郎さん、こういうところにもさらにおろしてみて、そこでということで、今回の提案の経緯の中にそういうものが入っておると承知をしておるのであります。野党の同僚委員の方から、閣議決定と今度出してきた政府提案法律の中では若干違うのではないかという御質問もなされましたけれども、それはそういう経緯の中で文面が閣議考えられた点と書きかえられた点があることは私十分承知しているわけであります。  なぜそういうふうになったかということになりますれば、これは長官自身も御承知のように、この設置法の一部改正の中でも出てまいります国有林野事業改善特別措置法という法律、中川農林水産大臣が当時みずから北海道の五局を一局に統合するという地元問題を取り上げた。われわれはこれに強く反対をしたわけでありますけれども、最終的には北海道の五局を一局に統合する、そしてあとは支局という形になったことは御案内だと思います。すでにブロック機関と言う前に、農林水産省と申しますか、直接該当である林野庁自身が率先して、中川農林大臣が自分の地元の問題を片づけた。非常な抵抗を受けながらこれを片づけた。しかも、その農林省設置法の一部を改正する法律案は、五十三年五月十二日に衆議院本会議、六月七日に参議院本会議を通っていった経緯があります。そして同時に、法案で出てまいります国有林野事業改善特別措置法は同じ五十三年に衆議院は五月十二日、参議院は六月十四日と相符節をしながら通過をしていった経緯があります。  そういう中で国有林野事業改善特別措置法というのは改善計画を当然立てなければならぬわけでありまして、この改善計画についてはすでにつくられておりまして、現在その実施の緒についておるわけであります。国有林野事業改善に関する計画というのは五十三年九月二十二日にできました。これは五十三年から十年間、六十二年までこれをやっていこうということで、とにかくその改善計画の中では、営林局については北海道の五局を一局に統合する。これで改善計画としては他の営林局の問題については触れておりませんし、予定してないことは明確であります。中川農林水産大臣が、自分の大臣当時そういう困難な中で地元の問題でこれをやり切ったその立場から見て、改善計画中は営林局の別途の問題についてはないという意識のもとにこの問題を処理したと思うのです。それだけにやはりこの問題、再び営林局の統合が今回の機会に登場するということについて、当時の責任者としてそれは許せないということでがんばられたという経緯がありますし、またその経緯を踏まえて武藤農林水産大臣自身も異例の閣議段階でこの問題については強い抵抗を示す意見を言われたという経緯があるわけであります。  私が言いたいのは、中曽根長官はかつて同僚議員質問に対して、言葉はそのままであったかどうか知りませんけれども、理に服するというお言葉を言われたように私は答弁の中で記憶しているわけです。道理に服する、道理にひとつ協力してもらいたいという意味も含んでおったと思うのです。  私は時間の関係もありまして細々とは申し上げませんけれども、いままでの経過、しかも改善計画がいま緒についたばかりである、そういう時期にさらに第二弾として、しかも異例のことに他の設置法関係はすべて本文で「六十年三月三十一日までに廃止するものとする。」と明記してあります。三カ所の問題につきましては附則がありますけれども、本来は本則に明記されて、附則がついているものとついてないものがある。ところが、農林水産省設置法の一部改正は第五条の点で、第八項の附則のところでありますけれども、「附則に次の一項を加える。」ということで、文章まで時間の関係上読みませんけれども、御承知のような文章を法案として出しておるわけであります。これは非常に強引なやり方だし、しかも改善計画途中においてこれをあくまでも強行していこうということは非常に道理にかなっていない。この問題については再検討をすべきではないか。  率直な気持ちから言えば、農林水産省設置法を私が取り上げたということで、ここだけにとどめて申し上げますけれども、これは本来、従来の経過と現状から見て修正削除すべきものであるというふうに基本的には考えております。少なくとも従来の経過と道理から見て再検討すべき問題であるというふうに私は思うものでありますが、その辺のところについてまずひとつお答えを願いたい。
  12. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 角屋さんのお説はごもっとものようなところもあると思いますが、国有林野事業特別会計につきましては前からいろいろ批判がありました。そこで、この経営改善の計画を進めて中川農林水産大臣も勇断をふるわれまして、それには非常に敬意を表する次第であります。しかし、その後五十五年行革という事態が出てまいりまして、各省庁ブロック機関については一つずつ負担をしよう、そういうことが政府・与党で決められました。そして与党でも強くそういう議論もございまして、それを受けて宇野長官と武藤大臣がいろいろ折衝なさったようであります。あの二人とも私らの仲間でございますから、そのときの情勢を私よく聞いておりました。二人とも非常に苦心をなさっておられたようであります。その二人の苦心と友情の結果がこういう文章になったのだと記憶しております。それは昭和六十年三月三十一日までに「国有林野事業の改善に関する計画につき必要な検討を加え、その結果に基づいて営林局を統合するために必要な措置を講ずる」この表現はほかのブロック機関整理の表現とは違った表現をしております。すなわち「国有林野事業の改善に関する計画につき必要な検討を加え、その結果に基づいて」「必要な措置を講ずる」そういうことでございますから、やはり国有林野事業の改善に関する計画について必要な検討を加えて、その結果に基づいて措置を講ずる、文字どおりこういうことで処理をすべきものであると考えております。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 行政管理局長の「する」というのと「ものとする」というのは、先般来の答弁関連するわけではございませんけれども、「する」じゃなしにこれは「するものとする」という、私は距離的に遠いものだから長官自身が「する」と答えられたか、最後のところ「するものとする」と言われたか、それはわかりませんけれども、私は「する」というふうにお答えになったと思う。だから文章は記憶で読まれると非常に違うわけで、それはきちっと訂正をしておいてもらいたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 正確に申し上げますと、「措置を講ずるものとする。」そういうことになっております。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 林野庁の長官がおいででありますので、若干従来の経過と関連をしてお答えを願いたいと思うわけでありますが、先ほど申し上げました五十三年九月二十二日国有林野事業の改善に関する計画というのが出されておるわけでありまして、この改善計画を策定する段階、先ほど私が申し上げました設置法関係、特別措置法の関係が通ったのはほぼ同じ時期でありますけれども、この時点では営林局について「組織機構の改善合理化」というところの中に「営林局・営林署の統廃合と内部組織の簡素化」ということで書いてありますが、営林局の点についてはどういうふうに当時改善計画として考えたわけですか。
  16. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 お答えいたします。  国有林野事業の改善に関する計画の「組織機構の改善合理化」、この中で「営林局については、「農林省設置法の一部を改正する法律」により、北海道は、北海道営林局並びに旭川、北見、帯広及び函館の四営林支局で構成することとする。」というふうになっておりまして、ほかの営林局については定めておりません。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほども私が触れましたし、林野庁の長官のいまの御答弁でもありますように、営林局というところについては、改善計画は要するに北海道について、「北海道営林局並びに旭川、北見、帯広及び函館の四営林支局で構成する」「北海道営林局並びに」ということで構成することとする。他はそのままであるというのが十年間の改善計画における農林水産省、特に林野庁自身考え方であった。これは同時に改善計画というのは内閣にかかわることですから、全体としての考え方であったというふうに理解することも可能であります。それがいまの段階各省おつき合い、これは理にかなっているというわけにいかないのです。先ほどの経過から見ても理にかなっていないのだけれども各省おつき合いというのも必ずしも理にかなっていない。強引に他の関係もあって押し切られたというふうにしか言いようがないわけであります。  そこで、たとえば「六十年三月三十一日まで」というふうに書いてありますけれども、林野庁自身が改善計画をこれからやっていく場合にこの問題を少しく考えてみようかというふうな形になるのはとてもとても、いま非常に苦しい国有林野事業の現状の中ではぎりぎりのところで検討ができるかどうかというのが実態ではないかというふうに判断をするわけですけれども、この法案との関連で言えば昭和六十年三月三十一日までにとなっておりますけれども、いま改善計画に専念しておる段階の現状あるいはこれが当分続くという現状の中では、一体どういうふうに考えておられるのですか。
  18. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 先生御指摘のとおり、改善計画はまだ緒についたばかりでございますので、今後この改善計画にのっとりまして鋭意この改善計画を実現するという方向で一生懸命やってまいりたいというふうに考えております。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は特に触れませんでしたけれども営林局の問題だけでしたから取り上げたわけです。長官も御承知のように、北海道の五局を、四局を支局化して札幌営林局ということにした場合に、北海道以外の日本関係について、営林署で九営林署を廃止をするという問題もあわせ行われたわけです。しかも、林野庁自身の今日までの状況を見てまいりますと、単に営林局あるいは九営林署ばかりではなしに、あるいは事業所あるいはまた現場、こういうふうなところでの機構の縮小や統廃合というのは急ピッチで進んでおるわけです。  ちなみに、人という立場から考えてまいりますと、高齢職員への退職勧告というのが理事者側から言われたり、あるいは定期作業員の不採用というような攻撃があったり、また、新規採用については徹底的にこれを抑えていこうという、これは全体の問題なんですけれども、そういった状況の中で、五十一年から昨年の五十四年までの間に、定員内職員で三千二百五十七名減少しておる。また、定員外職員においては四千二百四十一名減少しておる。全体としては実質七千四百九十六名減少という、要するに局をどこか一つ探そうというふうな問題よりも、今日の国有林野事業の現状の中で、第一線労働組合組合員から言えば、そういうことに全面的に協力できるかという抵抗精神ももちろん現実には存在しますけれども、現に人員の問題についてもあるいは事業所等を含めた問題についても具体的に行われておる。しかも、国有林野事業全体としては大変な時期である。その時期に各省のお並びで、しかも、従来の経過から見て理にかなわない営林局一つを探そうということは、これは全く筋の通らぬ話であるし、私どもとしてもこれは了承できない。  また、これは直接自民党の場合も、あるいは林野関係の問題に熱心であった諸君は、この問題についてはわれわれの意見と同じ気持ちで対応してこられたのだろうというふうに思うのです。私は、法律案提案しておる長官自身に、この項目について削除せよと私が言った場合に、長官自身が削除しますとダイレクトにはなかなかいかないと思うのだけれども、私のいま述べておる営林局問題、営林署や事業所等を含めた第一線の労働者問題という実態については十分理解をされたのじゃないかと思う。  そういう立場から見て、私は他の項目については、たとえば海運局の問題は上原委員から触れられたり、他の同僚のわが党の委員からも、福岡やあるいは四国関係の問題等にも触れられたわけでありますので、それには時間の関係上触れませんけれども、とにかくこの問題について言えば、これは理にかなっていない。林野の現況に合わないというふうに私は強く考えておるわけでありまして、再度長官の御答弁を求めたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 林野に携わっておりまする第一線組合皆さんからしますれば耐えがたいことであるように私らも拝察することはできます。しかし、国全体の能率化、簡素化という別の面から見ますと、どこかでそういう仕事を担当していただかなければならぬということで、各省庁につきましてブロック機関一つずつ出していただこう、そういう大方針政府・与党で決めまして、その線で決めた次第でございます。  いろいろ実施上につきましては、慎重に配慮しながらやるべきものと心得ておりますが、いまの角屋先生の御発言は慎んで拝聴いたしますということで御答弁にいたしたいと思います。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 とにかく私ども考え方からいけば、このことに関する限りは削除、修正をすべきものであるという強い意見を持っておりますことを申し上げ、これからの問題について対応の考え方についてはいま終わりましたけれども答弁自身については必ずしも納得しません。非常に重要な問題でありますけれども、他の問題も用意しておりますので、残念ながら次に進ましていただきます。  それで、行政の減量化、そのための一つの重要なファクターとして法令の整理ということを長官自身が挙げておられるわけであります。これは仕事減らしというお気持ちもあって、まず法令関係では、人がいるのだからその関係の法令を整理することによって仕事を減らしていこう、これは一つの取り入れるべき考え方だというふうに思うわけであります。そして現実には行革本部の方では、従来のデータによりますとすでに実効性を喪失して整理を検討する法令が三百二十二件、これは増減があり得るということですが、他にも行政事務の簡素合理化等に伴う規定整理を検討する法令の問題や、あるいは共通的な法律規定整理を検討すべき事項の問題等も含めて、さらに踏み込んでやっていこうという考え方をとっているのではないかと思いますけれども、これを重要なファクターに考えておられます長官自身の法令整理問題について、具体的に少しくお考えを聞きたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 冒頭に申し上げましたように機構いじりはやらない、そういう原則を決めまして実体に切り込むということを考えますと、法令や許認可を縮減するという形になります。そういう点で行政管理庁は前から不要不急であると思われる法令を検索しておりまして、その中で大体三百二十ばかりを機能を失ってやめていい法律としてまず摘出したところでございます。しかし、それだけでは意味がない、やはりいま生きている法令につきましても、さほど重要でない、あるいは今日においては意味を失っている、そういうように思われるものもできるだけ縮減するように、各省庁とも折衝いたしまして縮減の措置に努めたい、そう考えておる次第でございます。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 重点項目を幾つか用意をしておりましたが、時間がそうありませんようでありますけれども長官に再びお伺いをいたします。  十月十三日の参議院予算委員会で、わが党の赤桐さんから、道州制問題ということについて大臣に御答弁を求められた経緯がございます。その答弁について私承知をしておるわけでありますが、これは日本商工会議所の永野会頭とお会いになった際のお話を取り上げて長官自身の御答弁を求めたということであります。御答弁の中で、示唆があったことは新しくできる第二臨調の方に伝えるとだけ述べた、こういう趣旨のことを御答弁になっておるように私は思うのですが、これからの行政改革の問題について、中曽根長官の胸の中に道州制問題というのが去来しているんじゃないかというふうに私は思うのです。これは思い過ごしであればいいのですが、それは行政管理局長が野党質問の中でも、あらかじめ考えておられてか不用意であったかは知らぬけれども、たまたま道州制という問題を口に出されて答弁をされておるわけであります。  それとも関連をして、いわゆる中央地方を通じての行政の再配分といいますか、あるいは中央地方を通じての行政のあり方をどうするかという問題の際に、古い時代に台頭してその構想はほぼ消えた形になっておりますけれども、しかも、これは今日の中央集権的な行政機構の性格の中で地方分権ということが大きく叫ばれる情勢と関連をして、実際には道州制ということになれば、まさに中央集権的な性格の模様がえ、従来よりもより強化されるといった形に進むと私は思うのでありまして、長官自身自分の胸に去来をしたり、これを肯定的な立場から伝えると言われたのかどうか、その辺の真意をお伺いしたいのです。
  24. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 道州制に対する私の考えは全く白紙でございます。新しくできるであろう臨時調査会にその旨をお伝えいたします、そういうふうに申し上げました。  昭和三十二年に、この道州制に関する広域行政の問題について審議会の答申があったように記憶しております。自来この問題は、一つ検討課題としては底流に流れている問題であると思います。最近における交通、通信の発達、新幹線とか航空機の発達、テレックスあるいはコンピューター、そういういろいろな問題から広域圏に行政が広まりつつあることは事実で、町村合併も行われたところです。しかし、いわゆる自治体というものはいかなるものが自治体であるかという憲法上の論争もあると思います。また、行政配分の上から見て、中央と地方でどういうふうに配分したらいいかという問題もあります。あるいは国の出先機関あるいはブロック機関、支分部局が網の目のように全国に広がっておるという実態もいかがであるかという議論もございます。そういうようないろいろな問題点がいま出てきておりまして、そういう問題点はやはり検討すべき課題一つではないかとも考えます。  しかし、いずれにせよ、新しくできます臨時調査会におきましてどういうふうにこれをお取り上げになりますか、調査会の皆さんの自主的な御意見で決められていくべきものであると考えます。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 外務省から官房長がおいでになっておると思いますが、この間同僚の岩垂委員内閣委員長ともども超党派で外地に行かれ、外務省の出先の実態を見られて、これはやはりもっと増員しなければいかぬ、私どもも外国に行ってそういう感を深くするのは共通でありますけれども、私は官房長の御答弁を聞きながら、これから行政改革をやろうというこの際に悪乗りと言ってはちょっと表現が適切であるかどうかは知りませんけれども、少しく答弁が謙虚さを欠いた感を率直に言って持つのであります。もちろん、これは一般的にはそれぞれの省の性格、重要性、そして現状ということで決められるべきものであろうと思いますけれども、同時に私自身のこういう問題と関連しての感じでは、最近の霞が関外交というものが、金大中事件を見てもあるいは最近におきますホルムズ湾の問題に関連する経費負担とかいうようなことで、外務省関係の任務からいってあれは北米局長が答えるべきポストにおるのかどうか知りませんけれども、そのケースによって防衛庁か内閣法制局長官か何かわかりませんが、外務省が外交青書の中で場合によってはあえて犠牲も辞せずというふうな表現の言葉を使っているのを見まして、何か力をバックに置いたような考え方が外交に出てくるのではないか。  私は、本来外交というのは、外交青書の中で基本的な考え方を述べておりますように、後段部分は別として、平和に徹するということで外交をやりたいという冒頭言葉がございますが、これが外交の基本だろうと思うのですね。そして同時に、南北問題であるとかそういう問題に適切に対応するとか、事国際的に大きな問題になるような人権問題については、カーター大統領ではありませんけれども、ことに金大中さんの問題はそもそも日本と結びついた、日本自身の問題と関連する重要な人権問題であります。こういう最近の外務省、これは内閣全体とも関連しますけれども、霞が関から発してくる外交というものを見ておりますと、余り無条件に必要なものをふやすというのもいかがであろうかという感じを私は率直に最近強めておるのであります。そういうことも含めて官房長から御答弁願いたい。
  26. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 外務省の官房長でございます。  外交の役割りというのは平和外交に徹するところから出発する、資源がほとんどない日本ということだけをとりましても、この日本の平和と安全を守るために世界の平和と安全が確保されなければならない、そういう環境をつくるための外交、あるいは日本の事情を正確に理解してもらい日本との友好関係世界じゅうに求めるという外交、それらを簡単に申して平和外交と申すのかと思いますけれども、これを責任を持って果たす、これが外務省の役割りであろう、ただいまの角屋委員の御指摘はそこだと思いますが、その点私どもは全く同じに考えております。私どもが省員の質を高めるとともに、どうしても現在の状況において手不足ということが否めないという事情を訴えまして、その点についての各方面の御理解を得ようとしておりますのは、そのような平和外交推進のための体制ということから発することは御理解いただきたいと思います。  いま後段のところで外務省の発言、霞が関外交について御指摘がございましたけれども、これはたとえば防衛問題につきまして、日本の外交の中で密接不可分な一部であることは否定できません。そういう意味におきまして、防衛に関しての日米間の折衝の状況とか、あるいは国際環境のさまざまな変化、最近のアフガンの例を挙げるまでもなく、そういう変化について国際環境はこのように動いておる、その中には防衛問題と関連するいろいろな要素が絡んでくるということを外務省の立場から質問に答える等をして御説明申し上げる、これはやはり外務省の広い意味での外交を預かる立場からの責任であろうと思うわけでありまして、たとえば予算委員会等におきまして外務省はどう考えるかという御質問が出ますと北米局長が御答弁するという場もそこから出てくるわけであります。きのうもたまたま衆議院の外務委員会で同様趣旨の御質問がありましたときも伊東外務大臣が答弁されたのですが、これは外務省が防衛庁以上に防衛問題についてハッスルしているとか、はしゃいでいるとかいうようなことでは毛頭ないということを外務大臣も申しておるわけでございまして、外務省の任務が最初申し上げましたような平和外交の実施にあるという認識においてはそのとおりに考えておる次第でございます。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 時間がおおむね参っておりますけれども、最後の質問ということで数分お許しを願いたいと思います。たくさん準備してまいりましたけれども、結局あと一点にしぼってお伺いいたします。  第一次臨調の答申の中で、内閣総理大臣といいますか内閣のリーダーシップという問題と関連をして、予算編成権というものの内閣の主導権をきちっとしなければならぬという意味のことが書かれておるわけでありまして、これは大蔵省にとっては、まさに聖域に入り込まれたという重大問題ということで受けとめられたかもしれません。今度新しく第二臨調をつくる場合に、仄聞するところによりますと、そういうことが再び登場してはいかぬというので大蔵省関係でぜひ有力メンバーを送らなければならぬというふうに伝えられる向きもあります。これは質問の本論ではございません。  そこで、こういった問題について、第一次臨調との関連ももちろんありますけれども、これからの内閣の総合調整機能と行政の統一性というものを強めるために、予算編成権という問題について現状を改革するという必要性を中曽根国務大臣としての立場でどう考えておられますか。  そして、大蔵省にお聞きしたいのは、その点についての大蔵省の答弁意見、それと同時に、いま大きく渡辺大蔵大臣が委員会等で発言をし出しております財政再建特別措置法、これは仮称でありますが、そういうものを提出する方向で検討しておるというふうに答弁等を通じて受けとめておるわけでありますが、この場合に、いまどういう考え方でどういうテンポで進もうとしておるのか、その場合に、政府自身がよくやる一律主義というふうなことで補助金で福祉部門とか農林漁業とか中小企業部門、こういったようなある意味では弱い立場の方にしわ寄せが大きく来ては政策上だめでありまして、そういう面については慎重に考えていくという立場でこの検討をしておられるのか、これらの点についてお答えを願って、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず財政再建特別措置法というものにつきましては、どういう内容のものであるか私もまだ知りません。ドイツにおいて行われましたものは勉強して知っております。日本においてどういうことが行われるのか、内容もよく知りませんし、私の所管外のことでもございますから全く白紙の立場でございます。  それから予算編成権の問題につきましては、昔河野行管長官のころからこういう問題がありまして、第一次臨調におきましてもこの問題は論議された重大な問題であります。次にできます臨時調査会で委員がどういうふうにお取り上げになりますか、これも白紙で臨みたいと思っております。
  29. 角屋堅次郎

    角屋委員 大蔵省からは結構です。時間の関係がありますから、以上で終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  30. 江藤隆美

    江藤委員長 渡部行雄君。
  31. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 最初に行政管理庁長官にお伺いいたします。  今度の地方支分部局整理のための行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案の趣旨説明の中にあるように、この行革は、昭和五十五年度以降の行政改革計画を基本として、その一環としてこの機構の簡素化を図る、こういうふうになっております。そこにさらに昭和五十五年九月十二日の「今後の行政改革に関する基本的な考え方」といういまの長官考え方が付加されて、この行政改革が進められるものと思うわけでございます。しかし、文章の中には非常にりっぱな言葉がたくさん出てまいります。たとえば単なる組織いじりではない、あるいは器減らしでもなくて行政の簡素化を図っていくのだ、あるいは「親切」「清潔」「能率」、こういう言葉が出てまいりまして、一見何か夢を与えるように思われますけれども、しかし私は、これは内容には非常に問題があるのではないか、こういうふうに思われてならないわけです。  それはなぜかと申しますと、器減らしではない、あるいは機構いじりではないと言いながら、いままでいろいろと議論がありましたとおり、現実には機構をいじり、あるいは統廃合によって器減らしを進めておる。そして一方においては、住民の強い反対を押し切ったり、または下部第一線の職員の反対を押し切って、相当強硬な姿勢でこの改革を進めてきているというのが現実でございます。こういう中で、しかも行政改革の本来の意味は何かということを考えました場合に、ただ機構を簡素化するというようなことではなしに国民サービスをいかによくしていくか、そしてしかもこの国家統治権の機構というものは、国民から信頼され、そこに働くいわゆる公務員の方々は働きがいがある。そういう一つ職場づくりをしていくのが行政改革基本じゃないだろうかというふうに私は考えるわけでございます。  それからもう一つは、一体これからの日本はどこに重点を置いてどういうふうに将来進んでいくのかという百年の大計を持ったところの一つの先取りの行政機構をつくっていく、こういうことが当然戦略として据えられなければならないのではないだろうかというふうに考えるわけですが、その点について長官のお考えお尋ねしたいと思います。
  32. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 渡部委員のお説に私も同感でございます。
  33. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 同感だと言われましたから、そうすればこれから私がお願いすることについてやっていただけると思いますが、まず、中曽根長官行政改革の思想には哲学がある、こういうようなお話でもありますけれども、私は一体この中で何が哲学なのか、どうもくみ取りにくいわけであります。大体八〇年代以降の行政の展望という中でいろいろ挙げて、結局「国民全体の奉仕者としての公務員心構え姿勢を正すとともに、複雑肥大化した行政実体に切り込むことを主眼とする」「民間の減量経営の努力に呼応して、行政自らもまた、その減量化を図っていかなければならない。」こういうふうなことが書かれているわけです。  そこで、一番問題に思いますのは、複雑肥大化しておるということは前提として認めておられる。複雑肥大化しているということはそれだけ国民のニーズが多様化し増大しておる、それに対して対応する事務量もまた増大しておる、こういうふうに思われるわけです。そして一方においてサービスをよくしよう、親切にということがうたわれておる。だとすれば、この国民のニーズにこたえるため、かつまた国民に親切な事務がスムーズにいくためにはどうあるべきかというふうに考えるのが当然だろうと思います。  しかるに、国民からはぜひここを廃止しないでくれという陳情がどんどん出てきておる、あるいは公務員第一線職員からもそういう陳情が出てきておる。それを踏みつけにして、まるで戦車のキャタピラで押しつぶすようなかっこうでこの行政改革が進められていくということは、まさに矛盾撞着もはなはだしいと私は思うのですが、この点についてはいかがなものでしょうか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 行政管理を行う者としましては、やはり公務員皆さんも親であり、結婚を迎える娘さんを持っておったり、大学に入る子供さんを持っておったりする家庭を抱えている国民でもございます。そういう点につきましてやはり深い考慮をしなければならぬことは当然であると思います。また一方におきましては、鈴木総理も施政方針でお述べになりましたように、「枝葉繁茂し根幹蟠錯せる一大木のごとし」という原敬の言葉を引用されましたが、そういうような性格もあることは最近識者が指摘しているところでもあります。これは日本が高度経済成長で非常に発展するについては、やはりまた非常に功績のあった点もございます。しかし、七十一兆の国債を抱えて、そして日本国民経済を安定成長に持っていくという現下の至上命令も抱えておるということからいたしますと、やはりみんなでがまんし合って合理化すべきところは合理化しなければ国家がもっていかないということも考えなければならぬと思うのであります。  そういう面からいたしますと、やはり税金で運営されておる政府みずからが政治姿勢を正して、民間の中小企業はあの石油危機のときに株を売ったり夜なべをしたり、あるいはいやな首切りまでして生き残りましたけれども、民間がそれだけの苦労をしたということになれば、政府もそれに殉ずるくらいの気持ち苦労しなければ、税金を出している国民皆さんの御納得は得られない。そういうような政治姿勢を正すという面からいたしましても、政府全体を預かるわれわれといたしましては何らかの措置をやらなければならない立場にありますので、行政改革ということになりまして、行政改革ということをやる以上は合理化ということがございますから、どこかでがまんをしていただくということになって、そういう面からまずこの辺が妥当だと思われる政策が策定されたのであると考えております。
  35. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただいま民間を一つの対象に出されましたが、なるほどこの文章を読んでみますと、一見非常に説得力を持っているように思われます。民間が減量経営をして非常に苦労をしたのだから私たち行政関係が減量経営をして対応しなくちゃならない、こういうことでございますが、しかし私は、根本的にこの思想は間違っていると思うのです。というのは、民間企業というのは本来利潤追求が至上命令でありまして、これは当然減量経営という中で労働者の首切りや合理化を進めて、そして史上最高の利潤を得ているじゃありませんか。いま企業の経常収支は五年間に約三倍になっているでしょう。そういうふうにどんどんともうけをふやしてきておる。その陰で労働者が失業し、あるいは低賃金にあえぎながら非常な苦労をしておる。ところが、国の行政機構は一体利潤追求なのか。そうではなくて、これは国民へのサービスを基本とする機構ではないでしょうか。あるいは振り返って考えるならば、権力による統治をもっとスムーズに、そして国民から信頼される権力機構としての存在を考えていくのが行政官の考えることではないでしょうか。そうすると、本来利潤追求と国民サービスという全く相反する問題を基底とし、これを対象にして考えることは私は問題にならないと思うのですよ。これは本当にナンセンスだと思うのです。こういう言い方で国民を幻惑しておるとしか言えません、だから本来統治機構というものは、国民サービスをよりよくしながら国民から信頼される行政機関をつくり上げる。ところが、その行政機関に働く労働者からも反発される。こういうような状態ではどうにもならないのじゃなかろうか。反発すればあとは警察権力で抑えていけばいいじゃないか、これはまさに主客転倒だろうと思うのです。本来ならば、行政という一つの執行のルートを通じて、そこから国民の信頼をかち取るというのが行政機関のあり方だと思います。こういう点一体どうでしょうか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 日本の憲法を読んでみますと、権利は国民に発して、その成果は国民が享受する、これがやはり日本の構造の基本であると思います。国民にはそのために税金を出していただきまして政府というものをつくる。政府国民の信託に基づいて権限を行使して、その成果は国民にお戻ししていく、そういう形が基本でございます。税金を出してくだすっておる国民皆さん基本であり、中心である。そういう面から見まして、国民皆さんの負担をできるだけ軽減して合理化する、これは国を預かる者の責任であり、また公務員皆さんもそういう心構えで公務をおやりいただかなければならぬと思うのです。これが基本だと思います。そういう面からいまの行政機構行政の機能を見まして、常時改善を加えて、国民の御満足のいくようにしていくという営々たる努力をすることはわれわれの責務である。行政改革もそういう一環として行われておるのでございまして、国民がこれを歓迎するかしないかということが第一であって、公務員皆さんはその上に立ってわれわれが立場考えるという考え方になるのではないか、そう思っております。
  37. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 質問をそらして非常に上手に御答弁されますけれども、そういうことは私が述べているとおりであって、私が言っているのは、行政機構改革に民間の減量経営を対比しながら考える、その思想は誤りじゃないか、こういうことを指して言っていることと、それから国民から信頼を受けるためにはもっと公務員のあり方を考えるべきではないか。確かに、なるべく予算をかけないで、そして行政能力が上がる、こういうことは非常に大事なことでございます。しかし反面、公務員というものをどういうふうに考えているかということを私は反問したいわけでございます。  というのは、この行政機構改革を総体としてながめてみると、とどのつまりは人減らしである。公務員を最終的に少なくしていく、こういうことなんです。そうすると、国民のニーズというものは公務員を減らせということなのか。そうではなくて、いわゆるむだな経費を削減して、もっと国民にいいサービスをしなさいというのが国民のニーズだろうと思います。そのためにはりっぱな公務員をつくらなければならない。人づくりというものが非常に重要な要素になってくると思うのです。ところが、いまどんどん事務量がふえ、守備範囲がふえている中で人減らしを進めていったならば、ますますもって公務員は機械のようにこき使われることは必至であります。そういう中でゆとりある人間ができるでしょうか。本当にすばらしい判断力を身につけることができるでしょうか。私は自分経験からしましても、非常に体が疲れているときにはいい考えが全然浮かびません。むしろ簡単な足し算、引き算でさえも違うような事態になる場合もあります。体がいやされておるといい判断が出てきます。そうするにはもっと公務員にゆとりを与えて、そして行政判断あるいは執行能力というものを身につけさせるという人づくりの面をもっと重要視しなければならないのではないでしょうか。親切にせよというけれども、忙しければ親切になんかしていられなくなるのです。これは実際に窓口で事務を取り扱った人ならわかるはずです。いまそういう実態に追い込まれておる事実を長官は見ていただきたい。行脚する行管庁という非常にすばらしいキャッチフレーズがあるのでございますから、もっとそういう第一線で真剣に脂汗を流して働いておる人たちの真相を見きわめていったならば、この非常に冷酷な行革の進め方というものはできないだろうと思うのです。この点ひとつお答え願いたいと思います。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 おっしゃるとおり、公務員皆さんも一生懸命やってくだすっておるのでありまして、われわれもそういうことをよく理解した上で、みんなで仲よく生きがいを感ずるような行政をやっていかなければならぬと思っております。  ただ、一面におきまして国民の側の皆様方の御要望等をくんでみますと、民間会社の経営等と比べてみると政府の方はむだが多い、あるいは暇が多過ぎるじゃないか、こういう厳正な批判もあるわけでありまして、民主主義国家をとる以上は、主権者である国民の声に耳を傾けることが第一義であります。政府はその信託を受けて政府を運用しているわけでございますから、そういう第一義をまず考えて、その上に立って公務員の皆様方ができるだけ生きがいを感じ、使命感を全うできるようにしていくことが私たちの仕事であると感じております。
  39. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間もありませんから前に進みますが、長官国民の声が一番大事だ、そういう思想を私確認して、その上に立って次の点を御質問いたします。  今度新潟海運局が関東海運局に統合されるようになりました。この統合については、地元はもとより新潟海運局の職員一同がすごい反対を唱えているのは御承知のとおりだろうと思います。しかも、新潟海運局というのは日本海に面する唯一の海運局でございます。新潟港は、御承知のようにソ連からの木材輸入等を中心として、今後ますますアジア大陸との密接な関係を持つ重要な港であるわけです。しかも、太平洋に小名浜港ありあるいは相馬港あり、平と新潟間が高速自動車道やあるいは鉄道で結ばれて、これまた重要な一つの経済的な位置を占めておるわけです。そこの新潟海運局を廃止、統合するということになっておるわけですが、これについては、閣議の中でも運輸大臣が、非常に重要であるから何とか残してほしい、こういうような発言までしておるわけですが、これを統合しないで残すお考えがあるかどうか、お伺いいたします。
  40. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 裏日本というと言葉は悪いですが、日本海に面しておる経済圏の中で新潟は非常に重要な機能を果たしておると思います。特に対ソ貿易等々も考えてみますと、今後も重要な港湾であると考えております。しかしながら、日本全体の中で海運局というものをどういうふうにするか、一つ削減しなければならぬ、各省と同じように犠牲を負担していただく、そういうことになりまして、運輸省内部でいろいろ御検討なすって、まずやむを得ない、涙をのんでということでああいう形になったのだと承っております。  なお、実務的には御不便をかけないように実際上いろいろ処理しようということで監理部という形になっておりますので、その点はぜひとも御了解をいただきたいと思う次第でございます。
  41. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 了解するというわけにはまいりませんが、今後、現実には統合しない前と同じように、新潟海運局があった当時と変わらないように、むしろ行政サービスは逆に向上すると私は思いますけれども、この思想から言えばそのように努力するのが当然だと思いますけれども、今後の成り行きを注目したいと思います。  運輸省から来ていただいておりますから、いまの新潟海運局の問題について運輸省はどう考えておるのか、たとえば関東海運局に統合された場合に、いままで新潟海運局で仕事ができたものが、今度は関東海運局まで足を運ばなければできなくなるようなことはないのか、こういう点についてもひとつお伺いしたいと思います。
  42. 永井浩

    ○永井政府委員 基本的には先ほど長官からお答え申しましたように行政サービスの低下をしないということで、ただいま御審議をいただいております法案の附則で、海上運送法を初め実体法令の権限委任の規定改正していただく、それによりまして現在新潟海運局長が行っています職務権限を新しく設けられます新潟の海運監理部長に現在と同じような職務権限を与える、こういうことになるわけでございます。したがいまして、海運局にいらっしゃる事業者の方あるいは国民の方々が横浜までいらっしゃるということはないようにいたす所存でございます。
  43. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 次に、これは外務省にお伺いいたしますが、今度五十六年度の予算要求が非常に少な過ぎるのじゃないかと私は思うのです。しかも、外務省から出された資料で「わが国外交の課題」というところを読んでみますと、まず「国際社会におけるわが国の責任と役割の増大」、中身は時間の関係で省略します。二番目に「平和国家にとっての外交の死活的重要性」ということで、「軍備を持たないわが国が、八〇年代の国際情勢に適確に対応し、国家の安全と利益を守って行くためには、外交に頼る以外に道はない。このため、世界各地の動きについて情報を迅速に収集し、これを適確に分析して正しい判断をする能力を持つことが今後ますます重要になってくる、」そして三番目に「外交事務の多角化と多様化」ということを訴えて予算の要求をしておるようでございます。  しかも、その五十六年度予算要求は三千四百三十八億二千五百万円、これは五十五年度の予算実額二千八百十五億九千七百万円と比べて六百二十二億二千八百万円増、二二・一%増になるわけです。しかし、この内訳というのは、援助費が三四%増、純外交事務費は三・七%増、この三・七%増はインフレというものを考慮すると実質減になっておるわけです。こういう要求をなぜ外務省はしなくてはならないのか。私どもが各在外公館を歩いてみて訴えられることは、何とかこの大使館なり領事館なりそういうところをもっと充実してくれ、そして人員をふやしてくれ、こういう切実な声が出ておるわけであります。外交というものは、特に在外公館というのは国際場裏における日本の玄関口であろうと思うわけです。これが非常に貧弱で、インドよりも劣っているようなかっこうで一体日本の体面が保てるだろうか、私は非常に危惧するものであります。  しかも、外務省の在外公館の予算執行の面を見ますと、予算と定員の問題はもうお粗末で問題にならないわけです。たとえば大使館の員数を主なところで挙げてみますと、在ワシントンでは、イギリスの四百四十二名に対して日本はわずかに七十五名、フランスが二百四十三名、西ドイツが百二名。世界の情報の中心とも言われておるパリにおいては、アメリカの三百八十五名に対して日本はわずかに三十八名、イギリスが百十一名、西ドイツが八十五名、イタリアが五十九名。また一番近い最も大事な中国においては、在北京の大使館員は、アメリカの六十六名に対して日本は四十四名でしかないわけでございます。こういうような姿で一体日本の権威ある外交が行われるだろうか。また中東においてもしかりでございます。イラン、イラクあるいはサウジアラビア等の外交官の人数を見ても問題にならない。こういうような状態で一体資源の確保がスムーズにいくだろうか。  日本のこれからの進むべき道は、日本はどうしても貿易立国でいかなくてはならない。貿易立国でいくためには戦争をしたらおしまいなんです。世界が平和でなければならない。そのためには外交に最も力を注ぐのは当然だろうと思うわけです。しかるに、このような貧弱な外交で一体本当にその大任が果たせるのか。防衛費なんかよりも、私は外務省の予算の方が大事だと思います。自衛隊は戦闘能力を強化するために一生懸命やっているけれども、国際情勢を把握して世界の平和秩序を維持する能力を持つのは外務省じゃないでしょうか。そうした場合にこんな陣容で一体仕事ができると思っているのですか。こういう点についてひとつ外務省の見解をお伺いいたします。
  44. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 ただいま外交体制が不十分ではないかという点について大変厳しい御批判、御指摘をいただきました。日ごろ私どもが痛感して各方面に訴えていることと一致する点が大部分でございまして、その御理解をいただいている点を感謝したいと思います。  私どもも、まさに御指摘のように私どもに与えられた外交の任務の重大さ、神聖さということを自覚して、常に反省を加えているつもりでございます。終戦後ゼロから出発したという点がございまして、その間今日まで歴代の政府あるいは外務当局がそのときどきの最優先課題に取り組んで努力を積み上げてきたことは事実でありますが、現在の時点で見ましても、いま御指摘があったようないろいろな面において大変足らざるところがあることは私ども自身も自覚しているところでございます。  定員の御指摘がございましたが、先回もこの委員会で発言させていただきましたけれども、私どもただ人をふやすということだけにこだわるつもりはございませんで、質の改善ということに努力を払い、また仕事の合理化、機械化、能率化あるいは省力化ということにも努力を払っておりますけれども、いまも一部御指摘がありましたように定員が絶対的に不足しているではないかという点は、各方面の御指摘を待つまでもなく私ども毎日の仕事の中で痛感しておるところでございます。これにつきましては、来年度の要求を達成する努力をいまするとともに、先日もちょっと御披露しましたように昭和六十年までには何とか五千人というような数まではふやしていただきたいということを悲願として努力しているところでございます。  一言つけ加えますと、人材というのは一日にしては成りませんで、現在イラン、イラク等で活動しているアラピスト等は二十年ぐらい前に採用して営々として研修させ教育してきた人間がいま花開いているわけで、そういう意味で定員が増強されればその分将来、恐らく二十一世紀に入るであろうころの外交要員は今日から育成が始められる、そういう意味で私ども長期的に考えなければならないということも自覚して努力をしているつもりでございます。  予算の点につきましては、いままさに御指摘がありましたように外務省予算全体として見ますると相当な高い伸び率でございますけれども、外務省予算の三分の二は経済協力関係の経費でございまして、残りの三分の一が本省、在外を通ずるすべての外交活動、日本人学校の運営もあり、あるいは広報文化活動もあり、そして最も大切と思われます情報の収集活動等すべての経費を外務省予算のうちの三分の一強で賄ってきているわけで、実は私どもの外交実施体制の整備という点だけで考えますと、この部分の予算の伸びがどのぐらい達成できるかということが非常に大きな問題でございまして、その点については財政当局にも強く指摘して、財政当局の理解も得たいと念願しているわけでございます。他方経済協力関係の外務省予算もこれまた伸ばさなければならない。国際的な約束もありまして近年非常に伸びてきておるわけですが、それを伸ばしながらそれ以外の外交実施のための経費の方もあわせて伸ばしていただきたいということで毎年努力しておるわけでございます。  御批判をいただきまして、確かに私どもの努力がまだ足りないという点はなお反省いたしたいと思いまして、今後ともその方面に渾身の力を注ぎたいと考えます。
  45. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間が少しオーバーするようですが、これを最後にいたします。  いま六カ年計画で五千名にするというお話がありましたが、五千名にしたところでイタリアより少ないのですよ、いまの数でも。こんなことでどうなんでしょう。イタリアのGNPは米ドルで二千五百九十九億ドルなんです。日本はそれに比べて九千八百九十六億ドルになっているのです。まさに約三倍の国民総生産がありながら、外交官は現在日本が三千四百八十、イタリアが五千百五十六、こういう数字になっておるわけです。確かにいままで戦後の時代は敗戦によって、しかも貧乏な日本がなかなか拡充できなかったのはわかります。しかし、世界で二番目の経済大国だと言われている今日、このような状態をこれからさらに五年間も積み重ねて六十年までに何とか五千名にしようなんというみみっちい話で、一体国際場裏で本当に働けるのですか。イギリスでは日本の約三倍いるのですよ。そしてイギリスのGNPは日本の三分の一しかないのです。こういう状態を考えたら、私は本当に本気になって平和外交を展開しようとしているのかということが疑問でならないのです。こういう一つの国策というものはどこに重点を置いて——そしてそのためには思い切ってやるというのが行管のあり方じゃないだろうか。これについては外務省並びに行政管理庁長官からひとつ方針をお伺いしたいと思います。どうかひとつ見直してほしい。
  46. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 外務省の諸君の成果を見ますと、費用と効果の対比で見ると、かなり成果を上げているというふうに思います。しかし、日本のほかの官庁も外務省に負けないぐらいみんな一生懸命やって、夜中の一時、二時まで残って政策をつくったりしておるわけでございまして、そういうような苦労においてはほかの官庁も負けないと思っております。しかし、最近の日本の国際的地位等々を考えてみますと、外交陣営を強化するということは大事な政策、重点政策としても考えられますので、行政管理庁も五十五年度においてはたしか七百七十人ぐらいネットで減らすのを外務省は八十人ぐらいふやしておる、そういうように特別な配慮を加えておると思っております。  将来におきましても、外務省の機能が十全に動くように私たちも考慮は加えていかなければならぬ、そう思っております。
  47. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 いま中曽根長官から大変心強い御発言をいただきましたので、今後とも行管当局それから財政当局とも十分御相談しまして努力してまいりたいと思います。  五千人計画というものでは足りないという御指摘は、実は私どもも同じ感じを持っておりますけれども、余り一度にふやすということは人員育成のやり方とかという点からいたしまして必ずしも現実的でないこともございますので、私どもはとりあえず最小限の目標をそこに置いておるわけでございまして、その後さらにそれを増大していって一層充実した体制に持っていきたいという意味での私ども内部の最小限の目標ということで御理解いただければ幸いでございます。
  48. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 以上で終わります。  ありがとうございました。
  49. 江藤隆美

    江藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  50. 江藤隆美

    江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  51. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 中曽根長官にお聞きしたいわけでありますが、不況からの脱出をかけて民間では大企業ほど首切り、合理化が進んでいるところはない、このように思っておるわけでございまして、その結果失業者はふえ、社会の不満は増大している、こう言わざるを得ないわけでございます。私は失業は最大の人権問題だ、このようにとらまえておるところでございます。こういう状態の中で、公務員の削減が行政改革の最大の課題であるかのようにさえ言われておるのは、非常に危険な、いわゆる社会的ねたみだと私は思うわけであります。生活の圧迫から来る不満や社会的緊張が、一昔前には人が注目もしなかった公務員に向けられてきている、こういう状況になっておるわけでございます。社会党は実は行政改革のすべてに反対しているわけじゃないわけでありまして、このような社会的な雰囲気の中ではより慎重に行政改革を進めていかなければならない、このように考えておるわけでございます。特に財政改革あるいは財政再建については、やはり大企業優遇税制を改めるとか、そのほか本当に大企業中心の政治というものを改めていくことによって図っていくべきでありまして、首切りとか合理化、そういう民間企業がやっているような形で政府機関において手荒なことはすべきではない、このように思っておるわけであります。  今回のこの行革法案は、十省庁三十五カ所の地方機関の統廃合を計画しておるわけでありまして、これはブロック機関整理としては戦後初めての大規模なものであろう、このように考えるわけであります。しかし、整理の対象となる機関の選定あるいは統廃合のあり方などについてはきわめて原則があいまいであろう、この三日間の討議を通じて私はそのことを感じたわけでございます。自民党の行財政調査会が示したところの最低一省庁ブロック以上という基準には全く説得力がない、このように思います。本来統廃合の基準というからには、やはり国民の要求に対して要不要を明らかにしなければならないということは当然のことではないか、このように思っておるわけでございまして、そのような手順が全く踏まえられていない、国民の要求や必要な調査すらしていない、こういう現状ではなかろうか。その結果、切りやすいところからあるいは抵抗の少ないところから、力の弱いところが犠牲にされているのではないか、私はそういうふうに考えるわけでございます。財政再建は国の人減らしからという大胆な提起があるわけでありますが、サービス精神の向上ということもまた言われておるわけであります。しかし、いま進められている行政改革においては、この両者は全く両立しない、財政再建もサービスも向上しないじゃないか、このように私は思っておるわけでございます。国民の生活や要求の変化に合わせて役所の仕事や権限を決め直すという手続をとらずに、財政再建からストレートに役所の数減らしに結びつけるのは全く過ちであろう、このように考えるわけでありまして、行政改革を進めるに当たって、少なくとも以下の三点についてはぜひとも確認をしていただきたいし、わが党の代表の質問にも長官はその点については回答されておるわけでございますが、社会党としては最後の質問でございますので、そういう点で以下三点について述べさせていただきたい。  まず一点は、行政サービス行革によって決して低下させないこと、サービス向上に努めること、低下させないだけじゃなしにサービス向上に努めるということは、私は国民の期待しているところではないか、このように考えます。  二番目に、やむを得ず職員の配置転換が行われる場合があるわけでございますが、その場合には、やはり関係する職員団体と事前に協議をして、不当配転などの事態が起こらぬように配慮することがぜひとも必要である、このように思うわけでございます。  三番目には、職員の生活に激変をもたらすような勤務条件の変更はやはり避けなければならぬ、このように考えるわけでありますが、長官のお考えを聞かせていただきたい、このように思います。
  52. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御指摘になりました三点については同感でございまして、そのように配慮いたします。
  53. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 長官にはもう言う必要のないことではございますけれども、先ほど申し上げましたように、やはり行政改革基本はあくまでも国民の要求を反映するものでなければならない、このように考えるわけでありまして、逆に国民にとって不要な部分を整理するという行政改革ならわれわれは賛成であります。ところがどうもそうでないような気がいたすわけでございます。長官ブロック機関整理対象となった十省庁三十五機関について、ここに挙がらなかった部局よりも必要性がないと考えておるのかどうか、その点について長官はあくまで自分責任において十省庁三十五機関を選んだことは正しかった、このように考えておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  54. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 十省庁三十五機関の処理という問題につきましては、心ならずもやらざるを得なかったというのが心境でございます。行政を簡素、効率化して国民の期待にこたえるという大局的観点においては合理的であると思いますが、しかし、一つ一つの問題点を取り上げてみますと、これは問題のあるところもあると思います。しかし、大局的に見まして、そういう処理をせざるを得なかったという点はぜひ御理解願いたいと思うのであります。
  55. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 長官、そのように万全でないというようなことを認められておりますように、やはり切りやすいところから切るあるいは弱いところに押しつける、こういうことになっておるわけで、われわれとして非常に納得できない、このように思っておるわけであります。  特に、次にお聞かせいただきたいわけでありますけれども、八局以上のブロック機関を持つ省庁は全部で十一ある、私はこのように心得ておるわけでございます。しかしそのうちで、今回の整理対象となったのは防衛施設庁を除く十省庁である、こういうことでありまして、一省一局の原則を立てた自民党が防衛施設庁だけを例外としておる結果そうなっておるわけでありまして、行革においても防衛別枠ということが成立しているんじゃないか、私はこのように思うのですけれども、この点についての長官のお考えを聞かしていただきたい、このように思います。
  56. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 防衛施設局を対象としなかった理由でございますけれども、今回の整理編成案の立案に当たりまして、各機関の性格、それからそこでやっております事務内容等について個別に見直しを進めてきたわけです。防衛施設局につきましては、基地の確保と安定的使用という業務の性格から見まして、整理に関する各方面のコンセンサスが今回は得られるに至らなかったというわけでございます。それで防衛施設局を今回は対象から外したというふうに理解しております。
  57. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 そこに強いところには手をつけずに弱いところから手をつけるということが端的にあらわれている、私はこのように思います。私ならまず防衛施設庁から手始めに行革をすべきだ、このように思うわけでありまして、やはり大多数の国民の生活に直結するそういう省庁を切って、防衛施設庁を残しておるということに対して国民は納得しない、このように思うわけであります。そういう点で防衛施設庁については話が煮詰まってないということだけれども、それも対象にして今後考えておるのかどうか、長官からひとつお答えいただきたい、このように思います。
  58. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 防衛施設庁につきましては、いま局長が御答弁申し上げましたように、これを処理するコンセンサスが得られなかったということでございますが、将来につきましては、将来における住民の需要あるいは防衛業務のこれからの推移、そのほかを見まして新たに考えるべき問題であると考えております。
  59. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 時間の関係がありますので、次に進ましていただきます。  法務省の方がお見えのようでございますので、質問いたしますが、行政改革という以上、ただ省庁を減らすあるいは人を減らすというのではなく、国民の利益にかなった積極的な行政の拡充も一方においては考えていかなければならぬ、このように考えるわけでございます。  そこで、法務省の人権擁護行政について質問をさしていただきますが、一昨年同和対策事業特別措置法の三年延長の際、「同和問題に関する事件の増発状況にかんがみ、国民の理解を深めるため、啓発活動の積極的な充実を図ること。」という附帯決議がなされておることは先刻御承知のことだというふうに思うわけであります。しかし、その後も悪質な差別事件は後を絶たないような現状でございます。そういう点で、現在法務省で把握しているところの差別事件の実態について、昨年度一年間の差別事件の件数等についてひとつ御報告をいただきたい、このように思います。
  60. 末永秀夫

    ○末永説明員 お答えいたします。  法務省で扱っております人権擁護の関係につきましては、ただいま先生御指摘のとおり、その中の一つに同和問題がございます。この同和問題につきまして、私ども法務省の人権擁護局の職務の内容といたしまして、人権侵犯事件の調査、処理をいたしております。本年度の統計はございませんが、昨年度五十四年度に法務局におきまして取り扱いました件数は二百十四件でございます。  その特徴という点を申し上げますと、結婚に関するものが最も多いという実情にございます。加えまして就職に関するものあるいは近隣交際に関するもの、学校内におけるものあるいは職場におけるものが主たるものとして挙げることができようかと思います。  なお、御案内のいわゆる部落地名総鑑という事件につきましても、発行は五十年ごろまででございますけれども、その後、私どもの方におきまして鋭意調査いたしました結果、昨年度におきましても地名総鑑が発覚しているという実情にございます。私どもといたしましては、地名総鑑は最も悪質な差別事件というふうに位置づけております。  なお、ただいま申し上げましたのは、法務局が直接取り扱っている件数でございますけれども、人権の擁護は国、地方公共団体を通じての基本的な職務といっていいかと思います。地方公共団体におきましての正確な数は把握いたしておりませんが、最近調査いたしましたところでは、昭和五十四年度におきまして人権に関連する件で地方公共団体におきまして千五百八十九という数のものを取り扱っている、かような状況でございます。
  61. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 表面に出ていない差別事件も入れると実数はその数倍といってもいいのじゃないか、このように思うわけであります。しかし、法務省の報告だけでも大変な件数に上っておるわけでございます。ところが差別事件について法務省が把握しているのは府県、市町村のものも含めて全体の三分の一以下というのは、私は、非常に問題があるのじゃないか、このように思うわけでございます。そういう点で、法務省の人権擁護局の職員はそれで足りておるのかどうか。全国で法務局が五十局ある、そして職員はたったの二百三人である、こういうふうに聞いておるわけでございますが、これを各法務局に平均して分けますと一局で四人になってしまうわけでございまして、これらの職員で部落問題だけじゃなしに人権全般について果たして対処できるのか、こういうふうに言わざるを得ないわけであります。そういう点で人権擁護局の職員の拡充計画があればひとつ示していただきたい、ぜひとも出していただきたい、このように思います。
  62. 末永秀夫

    ○末永説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、現在法務局におきまして人権擁護の職務に専従いたしております人数は全国で二百三名でございます。この二百三名の職員を、全国五十局ございますので、単純に割りますと御指摘のとおりになります。もちろんこれは事件量その他地域の大小によりまして、たとえば東京、大阪というのが多くなることは当然でございますが、そのしわ寄せがまた他の方にいくということになることは事実でございます。私ども人権局といたしましては、ただいま申し上げました二百三名の職員と全国に一万一千三百名おります人権擁護委員、この民間の方々と協力しながら人権擁護の実を上げていくということで努力いたしているところでございます。  なお、私ども昭和五十五年度におきましては二百三名ということでございますけれども、昨今の厳しい事情のもとにあるわけでございますが、数は少ないわけでございますけれども、各方面の御理解をいただきまして、増員ということを図っていただいているという現状にございます。しかしながら、ただいま申し上げました二百三名という数、そして一万一千三百名という人権擁護委員の数、この数をもって十分かと言われれば、昨今の価値観の多様化等によります人権問題の多発状態という傾向から見まして、いまだ不十分であるということは自覚せざるを得ないと思っております。それで、各方面の御理解をいただきながら、増員に今後も努力してまいりたい、かように考えております。
  63. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 人数をふやせばそれでいいのだということを私はいま言っているわけじゃないのです。やはり質の問題も大きな問題があるのじゃないか、このように思っております。  昭和四十年に出されましたところの同和対策審議会の答申でも、「戸籍や登記事務を扱っていた者が人権擁護の職務に配置されるという組織にも不適当なものがある。」こういうふうに述べておるわけであります。いわゆる部落問題とかあるいは人権問題について専門的な教育が十分になされていなければならないわけでありまして、それでもどうやらわかりかけたころにははや他の部署に取ってかわるということがしばしばあるわけでございます。そういう意味では、人権擁護のため専門的に一貫した取り組みを進める体制がぜひとも必要ではないか、このように私は思っておるわけでございまして、特に措置法の強化、改正の一環に触れる問題にもなるかもわかりませんが、そういう意味では、国民は、人権擁護局を独立したいわゆる人権擁護庁というものにつくりかえる必要があるのじゃないか、こういう期待があるわけでございまして、私もそのことを主張したいわけでありますが、そういうことについてどのようにお考えでございましょうか。
  64. 末永秀夫

    ○末永説明員 人権の擁護につきましては、ひとり私ども法務省の人権擁護局というところがなしているわけではございませんで、これは憲法の基本精神でございますので、各行政がすべて基礎にその理念を置いて職務の遂行に当たっている、かように理解しているわけでございます。  ただいま御指摘の同対審の答申にも組織の整備ということがありますことは私も存じております。私どもといたしましては、いかなる方向に整備したらよいかということで、過去におきましていろいろ検討いたしました結果、既存の制度を発展、充実させていくという方向で従来努力してまいったというわけでございます。  ただいま別個の独立した庁という御指摘、これは貴重な御意見と思うわけでございますけれども、これは基本にかかわります問題、そして全機構とのかかわり合いという問題もあろうかと思います。また昨今の事情等から勉強させていただきたい問題だと思っております。さしあたりは、先ほどから申し上げておりますような充実ということに努めているところでございます。
  65. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 わが国は諸外国に比べて大変人権問題が軽んじられている、私はそういうふうに常々申し上げておるわけでございます。  関連して、いわゆる地方に人権擁護委員がおられるわけで、先ほど、全国に一万一千三百人がおる、こういうようなお話があったわけでございますけれども、人権擁護委員の存在すら国民皆さん方で知らぬという方々もおるわけでございまして、総理府の五十三年度の調査で、この制度を知っている人はたったの四〇%、あるいはその地域の人権擁護委員の名前が言えた人は、その中でも二〇%ほどであった。そういう意味では全体の八%というような状況でございまして、私の考えるのには、たとえば厚生省関係で民生委員というのがおられるわけでございますが、この方々は何と十三万人全国におられる。人権擁護委員の方は一万一千三百人、こういうような十分の一以下の実態があるわけでございまして、活動の仕方にもわれわれはいろいろ意見を持っておるわけでございます。たとえば実費弁償費などを見ますと、擁護委員の方は一人当たり一年間で一万四千円、民生委員の方は三万円、この三万円自体も少ないと私は思うのですけれども、せめて人権擁護委員については民生委員並みの待遇を与えることが必要ではないか、このように思っておるわけでございます。特に委員の定数については、法律では二万人まで認められておるわけでありますから、最低まずそこまで穴埋めするというか選出することが一番大事だと思うのですが、その点についてはどのようにお考えですか。
  66. 末永秀夫

    ○末永説明員 御説明申し上げます。  御指摘のとおり、現在人権擁護委員の数は先ほど申し上げましたとおり一万一千三百名でございます。法律におきましては二万人以内というところで委嘱することができるわけでございます。したがいまして、一万一千三百名といいますのはいわゆる予算定員でございます。私どもこの員数をもって十分とはとても思っておりません。たとえば五十四年と五十五年を比較いたしますと、二百名の増員ということのお認めをいただいているわけでございます。今後も増員に努力してまいりたい、かように考えております。  それとともに、ただいま御指摘の実費弁償金、その金額は御指摘のとおりでございますが、一年間一万四千円と余りにも少ないではないかということでございます。基本にはボランティアの精神ということが期待されているわけでございますけれども、それにいたしましても、一万四千円ということには私どもも問題意識を持っております。五十五年度におきましては千円のアップが認められたところでございますけれども、今後もさらに努力してまいりたい、かように考えております。
  67. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 次に移ります。  通産省の方にお聞きしたいわけでありますが、御存じのように部落産業は、第一次石油ショック以後の不況からいまなお立ち直ることができないような状況にあるわけであります。経営の危機あるいは倒産、廃業の憂き目を見ておるわけでありますが、中でも深刻な事態にあるのは皮革業界でありまして、その中でも豚皮の問題について若干質問したい、このように思います。  皮革関連の部落産業は、国内経済の動向に加えて、革及び皮革製品の輸入拡大あるいは発展途上国の追い上げといった国際的圧力の中で深刻な危機を迎えているわけであります。東京の部落産業の重要な役割りを果たしております墨田区の東墨田地区を中心とするところの豚革鞣製業者は、昨年来台湾の業界に海外市場を侵食されておるわけでありまして、豚革鞣製業者は生産量の七割以上を輸出しているわけでありますから、台湾業界との間に豚革一枚三百円ものコスト差があることから海外市場を次から次へと奪われているのが現状であるわけであります。関連業者も含めますと、合計で百二十社が重大な経営危機に見舞われておるわけでありまして、部落産業の振興は、同和行政の重要課題であると言われておるわけでありますが、通産省自身、鞣製業者あるいは原皮業者による豚皮問題懇談会あるいは豚原皮革需給協議会にオブザーバー参加をされておるわけでありますから、業界がこうした状態に見舞われるということは十分予想できたのではなかろうか、このように私は思うわけでありまして、業界の今日の危機的な状況は、部落差別の実情を真剣に見詰めてこなかった通産行政にやはり大きな責任がある、私はこのように考えておるわけでありまして、そういう意味で、豚革鞣製業界に高い国際競争力をつけて、業界の安定を図ることは行政責任ではないか、このように考えておるわけでございます。そういう点で、特に豚革はもともと日本の特産品であったわけであります。今日台湾のそういう業界が急速に追い上げている。皮肉にも豚原皮が日本から大量に台湾に輸出されているからであるわけでございまして、台湾へのそういう豚原皮の輸出量は、四十七年に四万二千枚、五十一年には十八万枚、五十二年には四十九万枚、五十三年度には九十九万枚、五十四年度には百九十万枚、そしてことしは上半期ですでに百五十四万枚に、倍々ゲームで輸出が伸びてきている、こういうような現状があるわけでございます。上半期の百五十四万枚とは、いわゆる同期生産された原皮の二二%、日本が輸出した革の四〇%から五〇%に当たると考えられるわけでありまして、これは大変深刻な問題であろう、このように思います。そういう意味で、豚革問題の懇談会とかあるいは需給協議会においても台湾への原皮輸出問題がすでに三年前から提起されておったわけでございまして、通産の方も、また農林の方もきょうお見えでございますが、オブザーバー参加しておられたわけでございますが、何らか有効な対策がとられるべきであった、このように考えるわけでございまして、これについてやはり責任ある答えをいただきたい。豚原皮の輸出の禁止ないしは規制を直ちに講ずるべきだ、このように考えますが、御意見を聞かしていただきたいと思います。
  68. 水野哲

    ○水野説明員 御説明申し上げます。  先生御質問の豚革業界の現況でございますけれども、先生いま種々御説明ございましたけれども、特にこの六月ぐらいから輸出、生産ともにややベースダウンをしておりまして、このような状況で推移いたしますと、今後の成り行きが大変なことであるということで、私どもも非常に懸念をいたしております。若干数字になりますけれども、実は昨年の豚革業界の生産でございますが、一昨年に比べまして約一八%ぐらいの伸びでございます。輸出も同様に一六%ぐらい伸びておりまして、そんなことで、皮革産業全体が実は昨年から非常にかげりを見せておりますが、そのかげりを見せておる中では、昨年までは状況は比較的まだまだであった。ただ、先ほど御説明ございましたように、この四—六月ぐらいから輸出を中心に落ちが見られておりまして、特に高い輸出価格で輸出できるヨーロッパ向け、こういったところが先生御指摘ありましたように、台湾等の進出によりましてかなり蚕食されつつある、そんな状況でございます。そんな意味で豚革業界、先生御指摘ございましたように、東京という地場を中心といたします非常に重要な産業でございます。そういうことでございますので、私ども従来から特段の重点を傾注いたしておりまして、昨年でございますが、中小企業産地振興法、こういう法律が成立をいたしたわけでございますが、その中でいち早く五十四年の八月に産地法の指定にいたしまして、この東京地区のなめし革業界というものの今後のビジョンを現在検討いたしております。すでに都道府県がつくりますところの産地のビジョンというものはでき上がりまして、これを受けまして、今後組合が振興計画、こういったものをつくって、それに基づいて、需要の振興というのは私一番重要だろうと思いますが、この輸出の振興を含めて需要の振興を図ってまいりたい、こう思っております。  それから、先生の御指摘の一番中心でございますが、そういうことで台湾との競争条件下にありまずので、日本の原皮を輸出規制をしたらどうであるか、こういう御指摘でございますが、この輸出規制の問題につきましては、御指摘のようにすでに数年前から豚原皮の需給懇談会といった形でいろいろ農林省等と協力しながら議論を進めております。  ちょっと長くなりますけれども、最近の状況は原皮の生産が非常に伸びております。昨年の原皮生産に比べましてことしの一−六月で約十数%の伸びでございます。それに対しまして輸出の方は約八%ぐらいの伸びでございまして、果たして輸出規制の問題になるかどうか、その辺を十分業界と今後詰めていきたい。そんなことで、いまやっております需給委員会の場等を通じまして業界のいろいろな状況等を今後とも把握いたしまして、業界の振興に最大限の努力をしてまいりたい、こう思っております。
  69. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 あなたはそういうような悠長なことをおっしゃっておるわけですけれども、業界にとっては死活の問題で、直ちに禁止あるいは大幅な規制、こういうことをやってもらわなければならぬ、こういう状況にあるわけで、私は別途商工委員会などにおきまして大臣からも篤とこの問題について御説明を受けたい、このように思っておるわけであります。  皮革産業が不況に陥っているということは事実でありますけれども、しかし、特に豚革の需要は一方においては高まっているということもこれまた事実であろうと思うし、特に日本の豚革が質的に非常に国際的にすぐれているということ、これもまた事実ではないか、こういうように思っておるわけであります。ただ問題は価格、値段の問題で、相当いま言ったような形でしんどい状況にあるわけでございます。そういう点で、特にこういうものの一つの大きな対策というのですか、抜本対策という意味で価格安定のためのそういうストックポイントの建設を業界は訴えておるわけでありまして、こういうようなことは零細な業者ではできるものではない、私はこういうように思うわけでありまして、供給公社的なものをつくっていく必要がある、このように思うのですけれども、そういう構想自身があるのかないのか、その点一回お聞かせいただきたい、このように思います。
  70. 水野哲

    ○水野説明員 皮革産業は、先生も御案内のとおり原料がコストのかなりの部分を占める産業でございます。そんなことで、原皮の価格の動向が産業の動向を非常に左右する重大な要素でございます。そんなことで、これはピッグスキンの関係だけではございませんが、従来からいろいろと原皮の安定をどう図っていくかという問題についての構想は、いろいろなところでいろいろな議論がございます。特にこのピッグスキンの業界でも、従来からいろいろストックパイルの構想とかいった考え方があるように承っております。ただ、この問題につきましては、ストックをした場合の技術的な問題あるいはコスト的な問題、こういった問題の詰めがなかなか今後とも必要だろう、こういうふうに考えております。
  71. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 時間の関係もありますので、あしたも業界の方とのお話し合いもあるようでございますし、後日また私も発言したいと思いますので、この程度にしたいと思います。  関連いたしまして、再生資源の問題につきまして御質問申し上げたい、このように思うわけであります。特に故紙回収業の問題につきましては、本当にこの仕事の必要性というものは皆認めておるわけでありますが、実際人のいやがる仕事、こういうことになっておるわけでございまして、仕事が過重であるということだけではなしに、非常に収入が不安定で、本当にごく零細な業者が寄り集まってその日その日をしのいでいるという状況でありまして、価格のそういう大幅な変動によって、業者を廃業して生活保護でも受けなければならぬというような方々もおるわけでございます。もしかこういう方々が廃業するということになりますと、それらはすべてごみになるわけで、市町村末端行政は麻痺するような状況になるわけで、こういう故紙回収業者がおられるからこそある程度市町村行政が助かっている、こういうことであるわけでございまして、こういう仕事をしている方々は、特に部落の人たちあるいは在日朝鮮人の方々がたくさん携わっておられるわけでございますし、ここ近年の故紙の価格の急落で大変な苦境に陥っておるわけでありまして、それが差別の再生産ということにもなっておるわけでございます。現在の故紙価格は御存じだと思いますが、新聞で一キロ当たり十二円から十四円という状態であるわけでありまして、ことし三月ころのメーカー渡し価格の三分の一にも低落しているというのが現状でございます。これは第一次石油ショック後の価格大暴落に匹敵する深刻な事態であるわけでございますが、このような故紙業界の状態を通産省はどのように見ておるのか、価格低落の原因はどこにあるのか、それを脱却するにはどうしたらいいか、そういうことについての対策等について御説明いただきたい、このように思います。
  72. 佐藤剛男

    佐藤説明員 お答えさせていただきます。  ただいま上田先生御指摘のとおり、故紙は非常に重要な紙の資源になっておりまして、今日四〇%は新聞故紙であるとかダンボール故紙、雑誌故紙を使って紙製品をつくっているわけでございます。この重要性は今後ともますます高まることこそあれ弱まることはないわけでございまして、長期的な立場からは、この四〇%を恐らく五〇%くらいまで上げなければいけないのじゃないか。今後の海外からのチップ事情であるとかあるいは資源事情を考えますと、そういうような傾向になると思います。その場合に、一番故紙の重要性とともにそれを確保するということは、ただいま先生が御指摘のように、集める機構をいかに維持、安定的に発展させるか、この問題に尽きるわけでございまして、集荷人の方々の生活、そういうふうなもの等、そして製紙メーカーがそれを原料として利用するわけでございますが、そのバランスを持った形で進めていかざるを得ないわけであります。  ただいまの状況は、本年の三月、四月に一応一番高いベースになりまして、それから七月、八月にずっと下がりまして、今日いろいろな施策を立てました結果、現在は価格的に低落がとまっている状況でございます。この乱高下が激しかったといいますのは、やはり石油ショックというものを経まして、いろいろ生産というものも仮需を含んで増大したわけでございます。そういう需要が非常に大きい形で来ましたので故紙が上がっている。そしてまたいわば仮需の調整という形で、現在夏場ということで調整が行われまして、その結果下がり傾向にあったわけでございます。私どもとしましては、新しいシステムということで、民間の製紙メーカーにあるいは直納業者に備蓄というシステムをとることにいたしました。そしてこれを七月、八月に実施いたしまして、さらにこれでも余っているという状況が新聞故紙あたりに見られましたので、財団法人の古紙再生促進センターで備蓄を行った。このような過程で今日下がる傾向はとまりまして、今後紙製品の生産がふえるにつれまして、原料である故紙の需要というものも、消費も増大する。したがって、価格というものも今日の状況を底にしましてなだらかなる安定基調にいくだろう、そういうふうに期待し、日日の行政を行っているところであります。
  73. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 業界の方々は、通産省自身が今回の価格暴落の仕掛け人ではないかとさえ言っているのです。ことしの三月十七日付の経済閣僚会議の文書では、物価対策の一環として故紙価格を抑えようとの政府方針が出されておるようであります。そしてアメリカからの故紙輸入で国内の値上がりを抑え、しかも通産省はメーカー側にも行政指導で操短させ、原料安の製品高という状況をつくり出しておるわけでありまして、通産省とメーカーが一体となって、今回の故紙業界の苦境をつくり出しているのだというのがわれわれの考えでございまして、その証拠に、これだけ故紙価格は下落しておるにもかかわらず、製品価格は一向に下がっていない。新聞紙のように、逆に値上げすらされているという現状があるわけでありまして、この点についてどのように考えておられますか。
  74. 佐藤剛男

    佐藤説明員 ただいま先生から、通産省が製紙メーカー側のサイドにあるやの御指摘がございましたが、私、日ごろの行政で決してそういうことはございませんで、この集荷機構ということの維持の点で全力を挙げております。  確かに紙製品というのは、海外からのチップに大幅に依存しておりまして、これが石油並みの価格で上がり、そしてそれに引きずられて故紙価格が上がってきた、こういうことで非常に乱高という形が出まして、製紙業界自身も原料高というところで非常に苦労してきたわけであります。しかしながら、この乱高、乱低というのはやはり好ましくないわけでございまして、常に安定、どこの価格帯が適当であるかというものは別としまして、私は中位安定ということを申しておるわけですが、そういう安定帯、つまり家庭から故紙を出す人については出しやすい価格、集める人にとっては集めやすい価格、それを原料として使う製紙メーカーにとりましては買いやすい、使いやすい価格という三位一体的な形でうまいぐあいに安定基調を保つということが、私は根底だろうと思っております。  そのような方向で進めてまいっておりまして、紙製品の方はいろいろ原料高、チップ高であるとかあるいは重油高であるとか、そういうふうな形で相当ここ石油ショックを契機に上がったわけでありまして、今日まだ原料高という状況が——約半分を海外に依存している状況でございまして、そういう高という状況が続いているわけでございます。そういう中で故紙価格だけが仮に下がっていくということは好ましくないわけでございます。  そこで、先ほど申し上げました幾つかの手を、民間備蓄という新しいシステム、そういうことでメーカーに二カ月分くらいの在庫を持たせる、そうしてそれについて私ども行政指導として監視する、こういうふうな形態で今日来ておりますので、私はこれをもちまして基調的に安定に推移すると確信しております。
  75. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 故紙業界が非常に深刻な状態にいまあるわけでございまして、そういう状況の中で、大阪で組織しておりますところの大阪府再生資源近代化協議会というものがあることは御存じだと思うのですけれども、この四月から七月まで計四回の交渉があなた方とされておるわけでございまして、話し合いの中で紙業課長は、キロ当たり三十円プラス・マイナス五円をいわゆる中位安定価格として、それを割らぬよう強力に指導する、このように約束されておるようでございますが、現実はこのように大暴落をしておるわけであります。六月の話し合いでは、故紙の値崩れを防ぐために、メーカーと故紙再生促進センターで二万トンの備蓄買い付けを行うという方針も打ち出されたはずであります。この一万トン弱の買い付けで、しかも十七円程度の買い上げ価格で全く約束が守られていない、こういう状況があるわけでありまして、直ちに中位安定価格、すなわちキロ三十円に戻す対策をぜひともとってもらいたい。備蓄の残一万トンをこの価格でぜひとも買うことが必要ではないか、このように考えておるわけでありますが、この点についてどのようにお考えですか。
  76. 佐藤剛男

    佐藤説明員 近代協の方々の意向というものは十分伺っております。私が中位価格という点で一つの希望的な価格ということを申し上げまして、できるだけそういう安定帯に持っていきたいという希望はいまなお持っているわけでございます。今日、新聞故紙が二十三円から二十六円。それからダンボール故紙が二十七円から三十円、こういう推移をいたしておりまして、先ほど申しましたように、いろいろな対策の効が現に、また徐々に出てまいっておりますので、先生のおっしゃられましたような価格帯にいくことを私、期待いたしておりますし、そのような方向になるのではないかと確信いたしておるわけであります。
  77. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 積極的に取り組みをしていただきたいのですが、さらにこういう故紙回収とかあるいは加工業者に対する助成対策という形で、やはり低利な融資、長期な融資というものが必要である。そういう特別対策を考えておるのかどうかということで一点。  それから、再生資源業界の苦況は単に紙だけの問題ではない。たとえば空きかんでも、あるいは空きびんでも皆同じような状態にあるのではないか、このように私は考えておるわけでありまして、せっかく回収しても価値が下がって、あるいは運搬費用その他コストが合わなくなっている、こういう状況があるわけでありまして、たとえばスーパーのニチイがカンペーンと称して行った空きかん回収のこのカンペーンで四十万個の空きかんが集まったそうであるのでありますが、赤字が何と五十万円も出たということであります。これではやがて集める者がいなくなってしまうのではないか、このように思うわけでありまして、民間ベースではとても採算がとれない事態になっておるわけでありますので、そういう点で業界は資源の再利用、廃棄物公害の防止という点で目立たないとはいえきわめて重要な産業であるわけでございますので、そういう点で積極的な国の援助が必要である、このように思いますので、決意のほどを最後に述べていただきたい、このように思います。
  78. 佐藤剛男

    佐藤説明員 お答えさせていただきます。  先ほど申し上げましたように、故紙につきましては底に入って、いわばこれ以下に下がらないという形になったと思います。できればこういう基調をとることによりまして、特別の融資とか、そういうシステムを活用しないでできることを期待いたしておるわけでありまして、私はまたそういう方向に持っていけると確信しておることを先ほど来申し上げているわけでございます。  それから、一般的な中小公庫であるとか国民金融公庫であるとか、そういう中小関係の融資というのは活用の道というのがあるわけでございまして、そういう必要に応じまして、そういう面についての御支援はいたしたいと考えておるわけであります。  それから、第二の紙の点——紙だけではございませんが、につきましては、こういう省エネルギーといいますか、資源の重要性というのは変わらないわけでございまして、これもそういう形で極力私どもは進めてまいるつもりでございます。
  79. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ちょっと脱線したようでございますけれども中曽根行管庁長官に次の問題を質問したいと思います。  わが党の議員からもすでに発言があったところでございますが、新潟の海運局の廃止の問題でございますが、この新潟海運局から新潟海運監理部になるなどの呼称のそういう変更は一応別にいたしまして、その扱いとか権限あるいは業務などのいずれに実質的な改革が加わるのか、わかるようにまず御説明をしていただきたい、このように思います。
  80. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 午前中社会党の皆さんお答えしましたように、実質的には変化がないようにできるだけ措置いたします。
  81. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 いままでの論議の中で、結局実質的な行政改革の実というのですか、あるいはこの法案が通過した後、具体的な問題については省令で決める、こういうようなことであろうというように思うのですけれども、しかし、行政改革と称していわゆる名称など形式的変更だけ当国会で通しておいて、あとは実質的には省令で勝手にもう自分たちの思うがままにやっていく、もしそういうことであるならば、私は国会軽視もはなはだしい、このように思うわけであります。そういう点で、やはりこういう法令を出す以上は、その後は一体どうなるのかということが一番大事なことではないのか、このように私は考えておるわけでございまして、われわれとしては、行政改革に関する附帯決議として、この点についてはある程度明らかにしなければならぬ、このように思っておるわけでございます。  そこで問題になるのは、いわゆる業務サービスの水準の維持向上、職員の処遇、勤務条件に関する権利が守られるかどうか。先ほど冒頭長官は、全般的に行革の点について申されたわけでございますが、やはりはっきり権利が守られるのかどうかという点についてお答えをいただきたい、このように思っておるわけでございます。そういう判断材料が提出されないならわれわれは議論しようがないと思っておりますので、その点について新潟海運局の廃止に関連して長官考え方を明らかにしてもらいたい、このように思います。
  82. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 先生御指摘の新潟海運局の件でございますが、これは新潟海運局ばかりでなく、ブロック機関整理するということは簡素にして能率的な行政改革の一環でございますから、そこに置かれる自後の現地的な事務処理機関、こういうものは当然できるだけ簡素なものにしていただくということになるわけでございます。しかしながら、これもまた先生御指摘のとおり、国民に対する許認可等の問題について国民に御迷惑がかからないように、行政サービスがそういうところで低下しないように最善の処置をとっていく必要があるわけでございます。  それで許認可等の権限につきましては、新潟海運局の場合ですと、できるだけ後に置かれます海運監理部長の方に委譲するということで、国民に対する行政的な負担を起こすことのないように十分措置していきたいというふうに考えているわけでございます。  また、そこに働いております職員の労働条件と申しますか勤務条件等につきましても、当然ながらいろいろと配慮を加えて、いまの条件が激しく変わるというようなことのないように十分考慮していきたいというふうに考えているわけでございます。
  83. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 運輸省の方に聞きますが、いま行管の方はそのようにおっしゃったわけでありますが、そういう点で業務サービスの水準の維持向上あるいは職員の処遇とか勤務条件に関して低下しない、こういうことをわれわれは要望し、その点についてある程度答えをいただいておるわけであります。新潟海運局のこれまでの業務実態と現場の意見を十分尊重してもらいたい、特に労働組合ともじっくりと協議をしていく必要があるんじゃないか、このように思いますが、その点について明確にお答えをいただきたいと思います。
  84. 永井浩

    ○永井政府委員 行政サービス水準の低下を防ぐという点につきましては、先ほど行政管理局長からお答えいたしましたとおり、いわゆる実体法令上運輸大臣の権限を従来の海運局長と同様に海運監理部長に落とせる、こういうことにいたしております。したがいまして、関係事業者あるいは国民の方へのサービスは低下しない、このように考えております。  また、職員の処遇につきましては、局が監理部になることによって不利なことにならないように十分配慮して措置していきたい、このように考えておりますし、職員団体につきましては、従来からその意向を十分承知しておるつもりでございますが、今後とも意思の疎通を図っていきたい、このように考えております。
  85. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 引き続いて関連してお聞きいたしたいわけでありますが、海運行政については旅客の運搬実態に関する監督が全く行き届いていないというのが現状ではないか、こういうように私は思っているわけでございます。  たとえば瀬戸内海を中心に定期航路を持つところの関西汽船の場合は、平常はともかくとして盆とか暮れ、正月などの帰省シーズンの夜行便の船内がどんな状態になっているのか、果たして長官自身も御存じなのかというように疑いたくなるわけでございます。特に二等船室などは歩くすき間もない、通路にまで人があふれて、中では人が折り重なるように寝ている現状を私も見ているわけでございまして、本当に奴隷運搬船みたいだな、こう思われるような非人間的な状況があるわけでございます。こういう状態が法律で許されるのかどうか、客船の定員の範囲内ならばそういう状態でもいいということになるのか、定員に問題があるのではないか、こういうように私は思っておるわけでございまして、恐らく関西汽船もそれは定員内だというふうにおっしゃるのかもしれませんが、私は、そういう定員の決め方に大きな問題があるのじゃないか、ぜひとも見直していただきたい、このように思います。  そういう点で、海運局長なり行政管理庁長官にこういう状況があるということをぜひとも現場を見ていただきたい。こういう状況に置いたままで海運の監督行政を合理化することは、私は何としても納得できない。恐らくこれは関西汽船だけじゃなしに全国的に問題じゃないか、私はこのように考えますので、長官なり運輸当局の御意見を聞かしていただきたい、このよう患います。
  86. 永井浩

    ○永井政府委員 旅客輸送の現状につきまして、確かに先生御指摘のように盆、暮れ等非常に混雑いたしております。従来から臨時便、増便等をこういった季節にはやっておるわけでございます。御承知のように、輸送需要は非常に波動性がございまして、またその振幅も大きいということで、まだ十分な対応ができてないということでございますが、従来から増便その他季節便の増便を行っておりまして、今後ともサービスの改善と安全の確保につきまして関係事業者を指導してまいりたい、このように考えております。
  87. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 まず実態の把握をぜひともしていただいて、それをちゃんと報告していただいて、後日詰めさせていただきたい、私はこのように考えておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  関連して、次に国鉄の方にお聞きいたしたいわけであります。  私の地元の塩川代議士がこのたび運輸大臣になられたわけでございまして、大阪でも非常に期待され、そしてまた大臣もいろいろと積極的な発言をされておるわけでございます。  そこで、特に国鉄の大阪の外環状線の計画推進に関する大臣の発言がしばしばなされておるわけでございます。当然地元として私もこれは高く評価するわけでありまして、またぜひとも早く実現、実行していただきたい、このように思っておるわけであります。現行のいわゆる城東貨物線を複線電化あるいは客車運行して国鉄の外環状線として実現しようという計画でありますが、私も国会でしばしばこの問題を取り上げまして、特に二年前の第八十四通常国会におきまして、国鉄高木総裁からは何を差しおいてもやる、こういう強い決意をいただいたところでございますし、その後も地元の住民とか労働組合の方々とともに国鉄なり運輸省に要請を行っておるところでございます。そういう点で、沿線自治体と国鉄との間で具体的な協議に入るということで技術調査委員会もスタートしてまる二年になるようでございまして、今年度中に大臣への認可の申請、大臣の認可というところまでいけるのかどうか、国鉄なり運輸省の方々の決意を聞かしていただきたい。別途私も塩川大臣にお会いし、また国会でも質問するつもりでございますが、せっかくでございますので、ちょっとお答えいただきたい、このように思います。
  88. 永光洋一

    ○永光政府委員 大阪の外環状線につきましては、大阪の都市圏におきます将来構想として長年地元の懸案事項でございまして、性格といたしましては、大阪の地区における都市交通の問題として大きなウエートを占めておると思います。  御案内のように、昭和四十六年の大阪圏の都市交通審議会におきましても、通勤、通学輸送改善対策としまして新設されるべき路線として取り上げられておりまして、今後地方公共団体と国鉄と関係者間でさらに検討を進めるべきものと現在考えられておりますが、本件は、鉄道の特性分野であります大都市圏の旅客輸送に関するものであるとわれわれも認識しておりまして、地元との協議が整い次第、しかも認可申請があれば積極的にこれに対応することにいたしたい、こういうふうに考えております。
  89. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 この計画の実現に際しては、現在の城東貨物線が地平を走っているということで、東大阪市のいわゆる蛇草から大阪市平野区加美に至る部分をどうしても高架にしなければならないという現状があるわけでございまして、この区間は、現在の貨物線ですら幹線道路との平面交差による踏切で交通渋滞が発生して、事故やあるいは周辺への公害が問題になっておるところであります。したがって、この高架化事業はぜひ建設省の協力をいただいて連続立体交差化事業としていただかなければならぬわけでありまして、来年度において地元東大阪市と大阪市との間で、やはりこの方向で建設省に調査費をお願いしておるところでありますが、運輸省と建設省の方はこの方向で果たして努力してもらえるのかどうか、明確に答えていただきたい、このように思います。
  90. 永光洋一

    ○永光政府委員 いまお話にありました連続立体交差化につきましては、これは有効な土地利用という観点からもあるいは都市交通の安全あるいは円滑化という観点からも、われわれ有効な手段と考えておりまして、連続立体交差につきましては、建設省所管の都市計画事業として実施されておりますので、その方面からお話がありましたらわれわれとしても積極的に対応いたしたい、こういうふうに考えております。
  91. 松下勝二

    ○松下説明員 お答えいたします。  建設省といたしましても、来年度から調査をいたしたいということで予算要求をいたしておるところでございます。
  92. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それに関連して申し上げたいわけでありますが、この大阪の外環状線計画については、地元大阪では特に現在計画中と言われておりますところの新関西国際空港への交通手段としてもっぱら注目されているという側面があるわけでございますし、また運輸省も空港の関連整備事業としてこの計画全体をとらえて位置づけているようにも思える節があるわけでございまして、そうなりますと、これはやはり結局新空港と新大阪などを結ぶいわば空港新幹線というような形になりかねないわけでございますが、そういうことになると、やはり何か沿線の住民の利便が二義的、三義的になってしまう可能性があるのではないか。これは国際新空港の問題以前からの大きな地元の懸案であった、このように思っておるわけでございまして、そういう点で、この大阪市といいますか、都市交通審議会の答申においても特に述べられておるように、非常に大阪は放射線状に発達して、同心円状の鉄軌道に欠けるという大阪地域の都市交通網の欠陥をぜひとも是正しよう、住民のそういう生活交通上の利便を図ろうということが本来の目的であった、このように私は思っておるわけでございますので、そういう観点で物事を考えておるのか、地元の方々は非常に危惧をしておられますので、その点について明確にお答えいただきたい、このように思います。
  93. 永光洋一

    ○永光政府委員 先生がおっしゃいますように、この外環状線につきましては、四十六年の審議会の答申にもありますように、大阪の東部地区、あるいはいま申されましたように放射線の鉄道と連絡するという都市交通機能の一環としての考え方から発足したものでありまして、そういう観点から現在加美地区まで鋭意技術的な調査も進めておりますし、良質な都市交通サービスを提供するためにどうしたらいいかということで検討を進めておるわけでございますので、当然地域住民の方々のことを重点的に考えておるということでございます。現在は新空港の問題がございますので、それとの関連で南の方に延ばす云々の話がございますけれども、われわれとしましては、当然いま先生がおっしゃったようなことで当面は対応いたしたい、こういうふうに考えております。
  94. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 あくまでもやはり周辺地域の沿線住民の利便の向上がこの路線計画の主要な目的でなければならぬ、このように思っておるわけでございます。とするならば、やはり一定の利用客が見込めかつ必要な間隔での停車駅が必ず必要となるわけでありまして、またダイヤの編成や駅の構造等についても、住民本位の立場が貫かれなければならないということは当然のことだろうと思うわけであります。  そこで、財政的理由を盾に新駅をいわゆる請願駅ということで地元に負担させる、全負担を押しつけるというようなことになっては筋が通らない、私はこのように思うわけでありまして、そういう点、この路線計画の目的とか費用負担の考え方などについて、これは後日別の機会に大臣なりに質問したい、このように思っておりますので、その点お聞き及んでいただきたい、このように思います。  次に、関連して、本来の行革からちょっと脱線して申しわけないのでございますけれども、緊急の問題でございますので、ぜひともこういう機会質問させていただくのをお許し願いたい、このように思います。  タクシー関係でございますが、現在新幹線の新大阪駅前には、常時百台、ピーク時には二百台を超えるタクシーが待機しておるわけであります。これらは地下鉄あるいはバスなどと並んで国鉄の旅客輸送を補完する公共輸送の機能を担っておるわけでありますが、特に身体障害者や病弱者、手荷物をたくさん持った人、あるいは地理不案内の人、特に急いでいる人などにとっては欠くことのできない交通手段となっておるわけであります。運輸省もこれまで、これらの業務を担うところのタクシー運転者の利便と福祉に配慮して、これらの待機所に設置するところの移動食堂車などに補助を与えてきておられるわけであります。長いときには一時間近くも待機するこれらのタクシー労働者にとって、車から遠く離れるわけにもいきませんし、便所とか食堂とか休憩所などの手近な設備が不可欠であり、かつ要望も強い、こういうような状況にあるわけであります。  新大阪駅では、すでに昨年から運輸省あるいは国鉄等の協力でバスを改造した移動食堂車が置かれ、運転者に非常に喜ばれておるわけでありますが、大阪駅に関しては、現在駅ターミナル整備計画に基づいて改築整備を大規模に行っておるわけであります。ここで現在タクシー利用者は毎日平均六千人、タクシーが四千台あるわけでございますが、改造の完了で大幅増がさらに予想されるわけであります。ここにも従来の規模を上回るタクシー乗り場並びに運転者のための便所とか食堂とか休憩所などの計画をぜひとも盛り込んでいただく必要があるのじゃないか、このように考えておるわけでございまして、そういう意味運輸省とかあるいは国鉄としては、このような大都市ターミナルにおけるところのタクシー運転車の福利厚生を充実するために、たとえば用地の貸与とか設備の助成などにぜひとも協力してもらいたい、このように考えておるわけでございますが、その点についての当局の考えをただしたい、このように思います。
  95. 大久保一男

    ○大久保説明員 お答えいたします。  安全で快適なタクシーの輸送サービスの確保のためには、タクシー労働者の労働環境の整備を図ることが非常に必要だということは全く同感でございます。このため運輸省では、タクシー業務適正化臨時措置法というものに基づきまして、財団法人大阪タクシー近代化センターというものを設けまして、このセンターがタクシー運転者の休憩、食事等のための共同施設の整備を図ってきております。大阪では現在鳴尾町ほか二カ所に共同休憩所が設置されておりますし、先生御指摘のように、新大阪駅前には移動共同休憩所が設置されております。施設の利用状況を見ますと、固定式の共同休憩所は四十九年から五十年くらいをピークといたしまして、最近では若干減っておるということがございます。それから固定的な共同休憩所の整備には非常にお金もかかりますので、大阪タクシー近代化センターでは、今後はお話にありましたような移動休憩所の設置重点を置いて整備を進めていきたい、こういうふうに考えております。  御指摘の大阪空港あるいは大阪駅の共同施設の設置につきましては、共同休憩所の利用の動向とかその場所において推定される利用者数とかあるいは共同施設を設置することによるタクシー事業者の負担等々といったことを勘案いたしまして、空港当局あるいは国鉄とも十分連絡をとりながら検討する必要がございますので、今後は近代化センターにおいてこれらの観点から検討を進めるように鋭意指導してまいりたいと思います。
  96. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 またこの点についてもさらに詰めていきたい、このように思いますので、次に参ります。  農林省の方にお聞きいたしますが、この夏は非常に冷たい夏といいますか、そういう状況で非常に農作物に対して被害が続出しておるわけでございまして、特に私の地元の大阪の河内地方は河内ブドウということで全国でも特に有名な産地であるわけであります。特に羽曳野とかあるいは柏原、太子町、その山手一帯がブドウ畑になっておるわけであります。今回の低温と長雨によってべと病と呼ばれる病害が発生して大変な打撃を受けておるところであります。八月下旬私も現地へ入りまして調べたところでは、最もひどいところでは例年の八割減という全滅地域もあるわけでありまして、全体でも文字どおり半減の収穫になっておるわけでありまして、被害額もこの地域だけで約十億円にも上るとも言われておるわけであります。栽培を始めた大正初期以来未曽有の被害に農民の方々は唖然としておるような状況があるわけでありまして、農林省の方で把握しているこの地域のブドウ被害状況についてぜひとも報告をしていただきたい、こういうように一点は思います。  それから、被害を掌握したところの大阪府はすでに八月緊急のつなぎ融資資金、限度額五十万円までを実施しておるわけでありますが、被害額と比べてもこの程度の融資ではとうてい話にならない、はしにも棒にもかからないというような現状があるわけでございまして、国としては農業災害補償法あるいは天災融資法などに基づく可能な限りの措置を即時とるべきではないか、このように思っておるわけでございまして、現時点での農林省としてのこれからの被害に対する対策と今後の方針を聞きたい。あわせてすでに九月段階でブドウの被害状況は大勢が判明しておるわけでございまして、天災融資法などの法律の発動は速やかを旨とすべきとされておるわけでありまして、地元市町村と早急に協議を進めて、この地域に対しても一日も早く天災融資法の適用を行われたい、このように要求をいたしたいわけであります。  また、このべと病被害の特殊性は菌が葉を侵し、ブドウの木そのものに打撃を与えるために新芽が出ないなど後年にわたる影響が当然予想されているわけでありまして、ただ、ことしの年越しができればということではなかろう、このように思うわけでございます。被害が来年も再来年にもわたる場合、返済の猶予とかあるいは期間の延長、利子の減免などの特別措置をぜひとも講ずべきだ、このように思いますので、この点についてもお附かせいただきたい。  また、自作農維持資金の手続については、非常に繁雑だという声が農民の間で強いわけでございまして、もっと利用しやすく簡素にする工夫が必要ではないか、このように思います。  以上、申し上げました諸点について手短にお答えをいただきたい、このように思います。
  97. 市川博昭

    市川説明員 最初に被害状況を御報告したいと思います。  先生御指摘のように、本年七月以降の低温等によりまして全国でブドウの栽培面積三万ヘクタールほどございますが、露地栽培を中心にいたしましてべと病等の被害が一万ヘクタールに及んでおります。特に大阪府につきましては、府の報告によりますと被害面積も全体の栽培面積の六割以上、また収穫量も前年に比べますと半作以下である、こういう状況でございます。  そうした被害を受けた農家に対しましては、被害の状況に応じまして、先ほど先生から御指摘をいただきましたように果樹共済の加入農家に対する共済金を早期に支払う。幸い大阪は果樹共済の加入率が全国平均よりもきわだって高いわけでございます。そのほか自作農維持資金でございますとか、また天災融資法が発動された場合には、天災資金による低利融資等農家経営の早期安定を図ってまいりたいと思います。  また、来年以降の果樹生産への影響につきましては、病害枝の除去とか焼却をするほか、当然でございますが、樹勢に応じて剪定等園地の管理等については今後とも適切な技術指導をしてまいりたいと思っております。
  98. 浜口義曠

    ○浜口説明員 先生から天災融資法の発動の時期等につきまして御質問がございましたので、その点についてお答えいたします。  天災融資法の発動の時期でございますが、最近の事例では、たとえば四十六年あるいは五十一年の冷夏のときには十一月二十九日に発動ということでございました。今回の冷害につきましては、特に被害が甚大だということで、農林水産省といたしましては、十月六日現在で被害の調査を実施いたしまして、目下鋭意被害の把握に努めておるところでございます。この結果を踏まえまして、あわせて資金需要の把握を行った上で関係省庁と協議いたしまして、できれば十一月の早い時期に発動できるよう準備を進めておるところでございます。  それから第二点といたしまして、自創資金の手続の問題でございます。  制度資金につきましては、長期低利の資金ということで、適切な貸し付けが行われるということで一定の手続が必要になっておりますが、自創資金につきましては、これまでも早急な融資が行われるように手続の簡素化を図ってまいったところでございます。このたびの災害につきましても、特別の簡素化された様式を定める等のことをいたしまして、現在その融資が早くできるように措置しているところでございます。先生御指摘のとおり、手続の簡素化につきましては、もっと円滑な融資ができるようにということでございましたので、今後運用の改善につきましても指導してまいる所存でございます。  最後に、既貸付金の償還条件の緩和でございますが、この点につきましても、九月二十四日付で経済局長名の通達で既貸付金についての貸し付け条件の緩和措置というようなことにつきまして、関係金融機関に依頼したところでございます。たとえば農林漁業金融公庫につきましては、貸し付けを受けた農業者が個別に御相談に応じていただければ、償還期限の延長とか中間据え置きの設定ということを行うこととしている状態でございます。  以上でございます。
  99. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 次に、通産省に鉱山保安監督局の統廃合の問題について、本来の問題について御質問申し上げたい、このように思います。  鉱山保安行政は、国民の生命や健康、安全に深くかかわっておるわけでございまして、安易に切り捨てられる部門ではない、私はこのように考えておるわけであります。法案に示された大阪、四国の監督部の廃止についてはわれわれは絶対反対である、強く主張したいわけであります。  そこでお聞きいたしますが、大阪、四国の状態について、まず一点は、稼働鉱山数はどれだけあるのか。二番目には、休廃止鉱山数、自治体調査も含めたものをひとつお聞かせいただきたい。それから三番目に、鉱害発生件数が幾らあるのか。それから四番目には、業務の消化率ですね。以上四つに分けて、わかっていることについてすべてひとつ誠意ある報告をしていただきたい、このように思います。
  100. 植田守昭

    ○植田政府委員 実情についてお答えいたします。  まず、稼行鉱山数でございますが、全国で八百七十二、大阪は六十三でございます。  それから、休廃止鉱山でございますが、これはいわゆる精密検査をいたしまして、何らかの措置が必要と認められるものが調査時点で八百九十三ございましたが、その中で大阪が百十八でございます。  それから、鉱害発生件数でございますが、鉱害発生件数というのはなかなか統計上とりにくい状況でございますので、これにかわるものといたしまして、鉱害防止監督検査の対象施設数というのをとってありますが、これは五十四年におきまして全国で六千四百十八、大阪が三百三十でございます。  それから、災害発生件数が全国で三百四件、大阪が二十五件ということになっております。  なお、ただいま業務の消化率というお尋ねでございますが、これはどういう意味合いの御質問かちょっとわからない点があるのでございますが、その点につきましてもう一度御説明を願いたいと思います。
  101. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 それは仕事の量に比べて、労働省がその仕事を十分消化し切れているのか、こういうことです。
  102. 植田守昭

    ○植田政府委員 現在、大阪の監督部は二十四名でやっております。この数字につきましては、全国三百七十七名を、たとえば鉱山数でございますとか災害の発生等々勘案いたしまして、いろいろな指標から配分しているわけでございます。私どもといたしましては、もちろんこの人数は十分に潤沢というふうなことではございませんけれども、幸いにいたしまして、各監督官が一体となって事に当たりまして、何とか保安という重要な使命にはこたえ得ていると考えております。
  103. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 あなたそうおっしゃいますが、現場の方々の意見を聞くと、実際の業務の消化率というんですか、そういうものは六〇%しかできていないんじゃないか。また現在の定員についても、これがもう限度だ、こういう強い意見があるということを十分に頭に置いていただきたい、このように思います。  そこで、中曽根長官、実はこういうものを持参しておるんですけれども、これにあなた記憶ございますか。これは昭和四十八年に通商産業大臣のとき鉱山業者の方に——なかなか達筆で業者の方も非常に喜んで保存しておるようでございますし、また当然労働者の方々も、通産大臣は人命尊重ということをなかなかよく考えてくれているんだなということで、それなりの評価があったということを聞いておるわけでございまして、上田さん、ぜひともひとつ長官にこれを見せて、昔を思い出してもらってください、こういうことでございます。またこれもなかなかりっぱなものでございまして、あなたのことを宣伝するようになってあれなんですけれども、「家で家族が待っているきょうも保安を忘れない」こういうことでございます。いかに保安行政というものに対して長官が理解を持っておったかという、恐らくこれはただに書いたというだけでなしに、そういう精神であったんだろうと私は思いますが、こういう精神はいまだにお持ちであるのかどうか、ひとつ御感想を……。
  104. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昔の下手な字でございますが、拝見いたしまして粛然とした次第であります。いまでもそういう精神を持ち続けてまいりたいと思っております。
  105. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 ところが長官は、大阪、四国の鉱山保安監督部を廃止しようとなされておるわけでございまして、鉱山や休廃鉱を抱える地元の自治体は非常に深刻な不安を抱いておるところであります。大阪管内では兵庫県、滋賀県、福井県の八町村議会で、また四国管内では高知、愛媛県の六地方議会で鉱山保安行政の縮小に反対して拡充を求める意見書が採択されておるところでございます。このような地元の声を尊重して、保安行政はこれまで以上に充実しなければならない、このように思っておるわけでございまして、これまで以上に充実しなければならないにもかかわらず、今回の行革というものは、サービスも含めて保安行政の低下につながるのじゃないか、このように思うのですが、その点どのようにお考えですか、長官ひとつ……。
  106. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 北海道におきます炭鉱事故であるとか、鉱山における鉱害関係とか、そういう問題も心配であります。限られた人員ではございますけれども、その中で全能力を発揮して仕事に十全を期していただきたいと思いますし、仮に機構が多少変わりましても、実質的に仕事に支障を来たさないようにいろいろ配慮をしたいと思います。
  107. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 機構が変わっても仕事はいままで以上に充実していかなければならぬ、こういうことですか。
  108. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 仕事に支障を来さないように今後とも配慮していかなければならぬと思います。
  109. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 支障を起こさないだけでなしに、こういう保安行政というものはもっと充実強化していく、こういう精神でなければならぬ。もういまで十分だとお思いではないでしょう。やはり充実していかなければならぬということでしょう。もう一遍、もう少しはっきりとその点お答えを願いたい。
  110. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 仕事は充実させて人命に不安がないように、また周囲の皆様方に不安をかけないようにしなければならぬと思います。
  111. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 鉱山保安行政の重要性をやはり確認をされた、こういうふうに思うわけでございます。そういう立場から、その仕事の充実に努めるということは当然のことじゃないか、このように思うわけでございます。そういう点で、この鉱務監督官の待遇の改善は私は不可欠ではないか、このように思うわけでございまして、鉱害防止やあるいは災害発生に対する処理は大変な過酷な仕事であるわけでございます。自然の悪条件と闘い、あるいは砒素や水銀などの有害物質を多く扱う非常に危険性も高い仕事であります。またその上きわめて専門的な技術を要求される仕事であろう、このように思うわけでございます。このような仕事に携わる方々に対して通産省はすでに俸給の調整額支給を人事院に要求している、このように聞いておるわけでございますが、これに対する通産省考え方を明らかにしていただき、あわせて人事院の方々はこのことについてどう対処されようとしているのか、明確にお答えいただきたい、このように思います。
  112. 柴田益男

    ○柴田(益)政府委員 御質問の鉱務監督官に対する調整額の問題でございますが、通産省といたしましては、従来から毎年要求しておりますし、五十六年度についても要求しているところでございますが、従来残念ながら実現を見ておりません。今後ともこの実現に十分努力してまいりたい、さように考えております。
  113. 長橋進

    ○長橋政府委員 お答え申し上げます。  俸給の調整額ということになりますと、先刻御承知のことと思いますけれども、説明の順序といたしまして御説明させていただきますと、職務の複雑、困難、それから責任の度、それが高いあるいは勤務時間とか勤務環境、そういったものについて著しい特殊性を持っておるために同じ職務、等級に属する他の官職に比べまして何らかの手当てをすべきだということと、さらにはそういった勤務の特殊性というものが恒常的なものであるということである場合に俸給の一部として支給する給与ということになるわけでございます。端的に申し上げますと、職務の等級、それから号俸ごとに法律で俸給月額が定められておりますけれども、それを実質的に調整するという効果を持っておるところでございます。  鉱山保安監督官の業務の特殊性の中で、やはり著しいものとしましては、坑内におきますいろいろな検査、監督業務であろうと思いますが、これを実際に入坑いたしまして、そういう仕事に従事している人につきまして、頻度という点から見ますと、一月当たり平均いたしまして三日ないし四日ということでございまして、これを鉱山保安監督官全員について見ますと、一月当たり一日ないし二日ということになるわけでございまして、そういう頻度という観点から考えますと、俸給の一部としてこれを評価するかどうか、これが適当かどうかということになりますと、現在のところなかなか適当であるとは考えにくいというふうに判断しておるところでございます。ただ、坑内におきます作業というのは、勤労条件等から見まして肉体的にも大変である、あるいは検査等に手抜かりがございますと思わざる災害につながっていくという危険性もございます。そういう意味から精神的な負担というのは大変だろうと思います。そういう意味から申しまして、現在は特勤手当ということで対処しておるというような状況でございます。
  114. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 通産省は毎年要求されておるわけで、そういう考え方の相違というものはあるかもわからぬが、やはり鉱山に働く労働者の勤務の状態というものをいろいろ勘案して、やはり俸給の調整額というような形で支給することが正しいのではないか、こういうふうにおっしゃっているんだから、人事院も結局いろいろ理屈をつくって、要するにそういう労働者の立場というものを否定しようということにつながるというふうにどうしても理解しがちではないか、このように思いますので、むげにいやこれはこういう性格のものでないんだという形を言うべきではない、私はこのように思います。その点について意見を再度お聞かせいただきたい。  それから、特殊勤務手当についていろいろ問題があるんじゃないか、私はこのように考えておるわけであります。それは支給の条件が不当に厳しい、こういう状況があるわけでございまして、坑内に入ったときに支給される坑内作業手当についても、精錬所の煙突などに登ったときに支給される高所作業手当についても、四時間以上でなければ全額支給されないとか、あるいはそのための年間予算が毎年千四百万円のうち五百万くらいしか出されていない、こういうふうな状況があるわけでございまして、やはりこの条件を緩和させるということが一にも二にも大事じゃないか。そういうことをしないでこっちの方はだめなんだということはどうしても私は納得ができない。  それからもう一つは、現在稼働中の鉱山についてしか適用されていないわけでありますが、全国に数百カ所もあるところの休廃止鉱山にやはり目を向けざるを得なくなっている保安行政の実情に合っていない、こういうふうに思うわけでありまして、休廃止鉱山についても基準を設けて適用すべきである、このように考えておるわけでございます。  そういう点について通産、人事院の方々の御答弁をいただきたい、このように思います。
  115. 柴田益男

    ○柴田(益)政府委員 特殊勤務手当につきましての坑外での手当問題については、現在通産省として要求中でございます。  それから、労働時間に対応する支給の問題につきましては、人事院さんの問題でございますので答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  それから、もう一点の休廃止鉱山に対する特殊勤務手当の問題でございますが、これにつきましては、現在いろいろ運用上御考慮いただいておる、そういうふうに理解をしております。
  116. 長橋進

    ○長橋政府委員 御質問が三点ほどございました。  第一点の俸給の調整額の問題でございますが、俸給の調整額につきましては、昭和四十七年以来、人事院も勧告の際に検討事項ということでいろいろ指摘してございます。昨年の勧告の際に、一応現在の四%の支給方法を三%の定率と定額というかっこうに改めて、きめ細かくやっていこうという第一段階を終わったところでございます。調整額の支給について考えますと、いろいろ鉱山保安監督官以外にも御要望がございます。そういったようなものを含めまして新規に適用することが適当かどうか、それから支給の仕方にしましても、現在のような率でいいのかどうかということも第二段階として検討してまいりたいというふうに考えております。  それから、第二点の勤務時間の長短に応じます支給額の差の話でございますが、やはり大変に厳しい勤務に従事されておりますので、長時間つまり八時間勤務の場合とさらにそれに達しない場合とで若干の差を設けるということが適当ではなかろうかという考えのもとに、現在四時間未満の場合には大体六割程度を支給するということにしております。  それから、第三点目の休廃止鉱山の場合でございますが、現在は休廃止鉱山でございましても、現実にそこで作業いたしました場合には支給するということになっております。
  117. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 次に移ります。  人事院の方にさらに続けて質問しますが、道もない荒れ地や山奥の休廃止鉱山の臨検は違った形の危険性を伴うんじゃないかと思うわけであります。特に七八年に起こった静岡県の堆積場の崩壊事故は、全国に数百あると言われる同様の堆積場の見直しを迫るものとなったと考えておるわけであります。その際に大事なことは、事故防止のためには定期的にボタ山の下にある暗渠に立入検査をしなければならないのではないかと考えるわけであります。しかし、この事件には現行の坑内作業手当すら保証されていない、これでは保安行政が成り立たないと思うわけでありますが、そういう点で早急に特殊勤務手当の支給を検討してもらいたいと思います。この点についてお答えいただきたいと思います。
  118. 長橋進

    ○長橋政府委員 泥澤の下に設けてあります底設暗渠についての検査、監督に従事する職員についても特勤手当を支給してはどうかというお尋ねであろうかと思いますけれども、これは通産省の方からも御要望いただいておりまして、坑内作業手当の適用範囲の拡大ということになるものでございますから、現在支給対象となっております業務との均衡ということも十分考慮しながら、勤務の実態等も精査した上で現在検討しておるところでございます。
  119. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 時間も来ましたので、通産省あるいは人事院の方にはまた別の機会に大臣なり総裁にお聞きする機会をぜひともつくりたいと思っておりますので、そういう答弁についてわれわれとしては非常に不満足であるということを申し述べておきたいと思います。  最後に一点だけ、簡単な問題でございますので、お答えいただきたいと思います。  外務省の方がお見えだと思いますのでお答えいただきたいのですけれども、国際人権規約が昨年九月二十一日に発効いたしたわけでありますが、人権規約のB規約、いわゆる市民的権利に関する規約は、発効から一年以内に国連に報告書を提出するよう義務づけられておるわけでございます。近日正式な日本語訳のナショナルレポートができると聞いておるわけでありますが、ぜひともでき上がり次第私の手元に出していただきたい、そのことを申し上げたいわけであります。簡単に答えていただけますか。
  120. 小西芳三

    ○小西説明員 日本語訳につきましては、来週の初めにはでき上がるというふうに考えております。でき上がり次第、上田先生の方へお届けしたいと思います。
  121. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 どうもありがとうございました。質問を終わります。     〔委員長退席、染谷委員長代理着席〕
  122. 染谷誠

    ○染谷委員長代理 榊利夫君。
  123. 榊利夫

    ○榊委員 しんがりになりましたが、私の方もなるべく簡潔に質問したいと思いますので、政府側もなるべくずばり要を得た御答弁をお願いしたいと思います。  まず初めに、憲法問題で中曽根長官一つだけお伺いしておきたいことがございます。  鈴木総理は憲法問題で、つい一週間前には、総理・総裁の立場を使い分けるのはむずかしい、たから内閣空)傷を理解してほしいということを言っておられたわけでございますけれども、そうかと思いますと、きのう二十二日には、内閣としての憲法尊重と党としての憲法改正努力とは矛盾しないと述べられたそうでございます。中曽根長官は、閣僚として、この鈴木首相のどちらの態度を支持されるのか、お伺いいたします。
  124. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は閣僚として、鈴木総理の御意見の命ずるところに従ってそういうように行動していきたいと思います。
  125. 榊利夫

    ○榊委員 と申しますと、二つおっしゃっているわけです。使い分けるのはむずかしいということと両方矛盾しない、どうもこれは違うのです。どちらの鈴木総理の態度に従ってということでございましょう。
  126. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そのことはぜひ鈴木総理にお尋ね願いたいと思います。
  127. 榊利夫

    ○榊委員 どうもハムレットの心境と見受けましたけれども、それでは一つだけですが、中曽根長官も自主憲法期成議員同盟のメンバーだと伺っております。改憲しないということを方針とする内閣の閣僚が、改憲団体のメンバーであるということは、どこから見ても自家撞着ではないかと思うのです。鈴木総理もこの間、十四日でございましたか、参議院の予算委員会で、連盟の活動いかんでは脱退を慎重に考えてみなければならない、こう答弁されております。中曽根長官自身は、もうそういう点では脱退を検討するつもりはございませんでしょうか。
  128. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 脱退することは考えておりません。日本国憲法にありますように、集会、結社、言論の自由があるのでありまして、結社の自由もあれば言論の自由もあります。これは国民基本的人権であります。私も一国民であり、また一国会議員であり自民党員であり、そして閣僚であるわけであります。したがって、閣僚である間は、閣僚としての分限を守りたいと思いますが、そういう思想、言論の自由という基本的人権にわたる行為によりまして認められた範囲内のことは、やはりそのまま持続しておる。ただし閣僚である間は、これを自律的に規制する、みずから、自分の行為は慎むべきところは慎む、こういうことでいきたいと思います。
  129. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、鈴木総理が言われた連盟の活動いかんでは脱退することも考えてみなくてはいかぬ、これとは違うわけですね。
  130. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は先ほど申し上げたとおり、憲法上の考え方及び政治家としてのあり方という面から申し上げましたとおりでございます。
  131. 榊利夫

    ○榊委員 本題ではありませんので、これ以上は差し控えますけれども、つまり違うということだけはっきりしたというふうに思います。やはりその点は閣内不統一という印象を免れないのですけれども、どうでしょう。
  132. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 鈴木総理の考えに従って行動しておる、そう申し上げているので不統一はないと思います。
  133. 榊利夫

    ○榊委員 本論に入ります。  鈴木総理は所信表明でも、大平行革を着実に実現するということをうたっておられます。中曽根長官も同じ趣旨のことを述べられたと思います。大平行革の出発点というのはそれじゃ一体何だったのだろうか。財政再建問題、明らかにそうでございますが、とともに綱紀の粛正も重要な動機だったと思います。KDD問題あるいは鉄建公団の問題、いわゆる特殊法人、さらに大蔵省や建設省などの政、財、官をつないだ汚職、腐敗の構造といったものが世論の批判を浴びまして、行政規律が言われ、行政改革が強調された、こういう経過がございます。ところが鈴木内閣行革方針からは、これまで今国会始まって今日に至るまでの議論をずっと見ますと、綱紀粛正の問題がどこかに消えていっている。かわりに行革問題では仕事減らしということがあらわれてきておるわけでございますが、綱紀粛正という問題は事実上消えている。これはもう済んだのか、あるいは逆に主題がすりかわってきているのか、こういう疑問を持つのでございますが、いかがでございましょうか。     〔染谷委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 綱紀粛正のものは消えてはいないと思います。特別職の公務員一般職の公務員も、あるいは公社、公団の職員も、一様に綱紀粛正については常住不断に努力しなければならぬと思っております。
  135. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、行革の中でも、内閣としても一層引き続いて綱紀粛正の問題は重要な課題である、そういう認識のもとにある、こう解してよろしゅうございますか。
  136. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 差し支えございません。
  137. 榊利夫

    ○榊委員 そういうことだとするならば、やはり行革基本にそのことを貫いていってもらいたい、こう思うのでございます。行政改革基本というのは、やはり国民主権、国民奉仕、これを貫く、そしてチープガバメントと申しますか、つまり安価で効率的な行政をつくっていくということだろうと思います。その点では、必要以上にふくらんでいるところは減らしていくと同時に、必要な国民奉仕ではうんと仕事をする、こういうことでなければいけないのじゃないかと思うのです。総理も中曽根長官も繰り返して行革基本仕事減らしに置く、こうおっしゃっているわけでありますが、どうもこの点では国民感情に合わない面があるわけであります。私も実際耳にいたしましたけれども、うんと仕事をしてもらわなければいけない内閣が、仕事減らしというのは一体どういうことだろうか、優雅なことをおっしゃる、こういう声もあるわけであります。私自身、いろいろ勉強させていただいたのですが、世界広しといえども仕事減らしの行政改革哲学というようなのは耳にしたことございません。  そこで、お伺いしたいのですけれども国民奉仕ということと仕事減らしの関係はどういうものだろうかということでございます。
  138. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 仕事減らしという言葉は、別の言葉で申し上げますと減量経営、簡素、効率化ということでございまして、費用と効果の面において最小の費用で最大の効果を上げる、そういうことであると思います。したがいまして、人員の配置その他につきましてもできるだけ最小の人員配置で最大の効果を上げる、そういうことで矛盾していることはないと思います。
  139. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、いまの趣旨でまいりますと、仕事を減らすという言葉そのものがちょっと違和感を持つのですね。私、この仕事減らしという政府基本方針はいつからどういうように出てきたのかと思っていろいろ調べさせていただいたのですけれども長官の御意見を伺いたいのですけれども、どうも政府が自主的に考え仕事減らしというものを考えついた、そこに行き着いたというよりも、いまはしなくも減量経営という言葉が言われましたけれども、財界の考えを持ち込んだのじゃないかというふうに感ずるのです。いろいろの経済団体の文章も一応見ましたけれども、どうもそういうことを感ずるのですけれども、その点いかがでしょう。
  140. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 財界の考えが持ち込まれたのではございません。私の考えでやったのであります。前の前の選挙のときに、一般消費税が問題になりましたときに、私は一般消費税は反対であると演説をぶちまして、そしてその前に政府がやることはある。それは、民間の中小企業は石油危機を乗り切ったときにはみんな減量経営をやって、ある者は株を売り、あるいは土地を売り、夜なべをやり、いやな首切りをやり、また親会社へ行ってぺこぺこ頭を下げて手形を延ばしてもらい、そういう苦難の後に生き残った。政府は今回お金がないということですぐ増税に飛びつくことは御政道としていかがなものであるか。やはり中小企業がやったような減量経営を徹底的にやってみて、国有財産も売りなさい、株も売りなさい。あるいは減量経営もやりなさい、そうして一生懸命努力したその姿を国民に認めてもらって、ああもっともだ、そういうことを先にやらなければ御政道として筋が通っていない。そういう演説を一般消費税反対のときにもやり、この前の選挙でもやりまして、その公約を実行してやっておるのであります。
  141. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、実際問題として考えてみますと、いろいろ調べてみますと、経団連や日経連は仕事減らしということを行政問題でしばしば発言されてきている。あるいは減量経営ということで、政府事業の一部について民間に移譲すべきであるとか等々のことが言われているわけであります。私は、行政改革というのは言うまでもなくあくまでも国民本位でやる、民主的に行うということでなければならないと思いますし、いささかでも国民の利益ということから外れるものであるならば、経済界の声であっても、それについては退けるくらいな自主的な態度があってしかるべきだと思うのであります。  ところで、直接政府が関与する必要のない仕事はできるだけ民間に任せる、政府はこういうようにおっしゃっておる。この委員会でも中曽根長官おっしゃいましたけれども、さて、具体的にお聞かせ願いたいのですが、塩だとかアルコールなどが念頭に置かれて民間移譲の問題が言われております。たばこについても民間に引き渡しなさい、こういう要求が出ております。最近のこれらの塩だとかアルコールだとかたばこだとかはどれくらい国庫に納付しているのでしょうか。
  142. 名本公洲

    ○名本説明員 専売公社が国庫に納付しております国庫納付金は五十五年度におきまして約七千五百億程度というふうに心得ております。  なお、アルコール専売が国庫に納付しております金額につきましては、私つまびらかでございませんが、約百億程度ではなかろうかというふうに考えております。
  143. 榊利夫

    ○榊委員 私どもが知っておる限りでも、五十三年度をとってみましてもアルコールで国庫に四十五億入っております。たばこにつきましては実に七千二百二十八億。これはその後ふえておるはずであります。  こういうように見ますと、これはやはり利益の上がる分野なんです。これらの事業は言うまでもなく明治以来国民の税金で育成され、そしてまた今日に至っているものでありまして、それも減量だ、仕事減らしだ、民間移譲だ、こういうことになりますと、行政仕事減らしというものが実際には財界に仕事を差し出す、あるいは仕事を召し上げる、ちょっと極端に言いますと、そういうことにもなるのじゃないか。そうであってはならないと私は思うのでございますけれども、これは長官はどのようにお考えでございましょうか。
  144. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 鈴木内閣は財界を相手に仕事をしているのではなくして、国民の皆様を相手に仕事をしておると確信をしております。
  145. 榊利夫

    ○榊委員 とするならば、あの塩だとかアルコールだとか、国のためにも国庫のためにもそれだけのちゃんとした益が上がっておる。それをあえて民間に移していく。それが仕事減らしの内容だとするならば、国民は納得しない、私はこう思うのです。現にそういう議論があるから私はお尋ねしている。どうでしょう、アルコールとかたばこ、利益の上がっている分野を民間に移譲するおつもりですか。
  146. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 官業と民業との関係でございますけれども国民の皆様方のいろいろな御議論を拝聴し、また第一次臨調のときのいろいろな意見あるいは行政監理委員意見等をいろいろ聞いてみますと、やはりいまの情勢で見ると、官業よりも民業の方が能率がいい、これが一般的に言われていることであります。  民業のメリットという点は、やはり侍の商法じゃなくて前かけをかけた商法である。そういうことが言われて、非常に創意工夫が重んぜられて、職場の改善でも非常に自主的に、いわゆるJK運動というような自主管理運動も積極的に行われる。ところが税金を基礎にしているという場合、あるいは独占的な官業でやるという場合にはどうしても緊張感がなくなって、費用と効果とかあるいは使っているお金に対する利子の観念とか、そういうものがどうしても薄れていってしまう。そういう面でよくない。したがって、たとえばソ連における企業を見ても、あるいは中国における企業の実態を見ても、やはり国営というようなやり方は非常に不能率であるということはみずから自己批判しているとおりであります。日本の場合はどの程度であるか、まだ私は正確に精査をしておりませんが、国民皆さんが大体そういうことを言っておられる。国鉄の運賃一つを見ましても、横浜—東京間を見ますと、京浜急行と国鉄とでは約倍くらいの差があります。倍ではございませんが、倍近い差があります。これはいろいろな理由があると思いますけれども、やはり官業、民業の差というものがある程度そこへ出てきているのではないか。そういうような一般的な見方からいたしましても、これを点検することは政府責任であると考えます。
  147. 榊利夫

    ○榊委員 どうもいまの話を聞いていますと、ちょっと長官そのものがジレンマだと思うのですよ。いまのこの問題は日本の問題で、モスクワや中国の話ではないので、日本の話ですから、それを前提にお願いしたいのですけれども、いまやっているのは国鉄の話でもないのですよ。いまここに私が挙げたのは塩だとかアルコールだとかたばこだとか、こう具体的に言っているわけで、いまの話を聞きますと、中曽根長官のもとにある日本公務員は不能率だ、こういうふうにおしかり受けているように結局はなるのだろうと思うのです。だから民業へと。これは一般論としてもおかしいし、行管庁長官としてはなおさらおかしいと思うのです。  この間ここで、第一日目の審議のときでございましたけれども日本公務員というのは全体としてはよく仕事をやっていると思っておる、こういう答弁だったと思いますけれども、いまの答弁を聞きますと、全然それとは違うのですね。
  148. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は、日本公務員はほかの国の公務員と比べて非常に一生懸命よくやっておる、これはフランスと並んで日本政治が安定しているのは公務員の力によるところが多い、そういうように申し上げたことはいまでも変わっていません。  いま申し上げたのは、行政監理委員会や第一次臨調国民一般が言っている声がそういうことであると御紹介申し上げたわけであります。
  149. 榊利夫

    ○榊委員 私は審議会の御意見を伺っているのではなくて、内閣、大臣にここで立って御答弁願っているのですから、大臣にお聞きしているわけでございます。  それはともかくといたしまして、私はやはりいま述べました、抽象論、一般論ではなくて、実際に黒字である、しかもちゃんと納付が国庫に対しても行われているような分野、これをまず民業へと、こういう考え方というのは逆立ちしているし、国民の納得も得られないし、ましていわんや現場で働いておられる労働者、職員に歓迎はされない、むしろ殴りつけられる思いだろうと思うのです。  そういう点では、一つ、私、これは要望でございます。そういう国民立場、こういう大きな見地から、まかり間違っても財界に仕事を差し出すということにならないように、全局的な立場から行革問題には取り組んでいただきたい。どうもこれは違う方向に進んでいるということでございます。  それで反面、いまの問題とも関連してまいりますけれども、ふくらむ一方の軍事費関係というのは、政府は今度の行革でも手をつけておられません。実際上聖域になっている部分がございます。治安、国防、外交等の行政機能については考察の対象から除く、こういうふうに行管基本問題研究会報告書も述べておりますし、これでは、当のふくらんでいるものを聖域化して、しかし、財政規模はやはりおのずから限界があるわけでございますので、その限界のある財政規模の中では、勢い減らそうとすれば、国民奉仕など必要な部分の仕事減らし、人減らし、こういうことになるのじゃないか。  私は、行政改革というものは、基本哲学といたしましても、単純に仕事減らしとかあるいは非現業の整理といったものであってはいけない、メスを入れるところは入れる、同時に国民奉仕に必要なところは仕事もつけるし人もつける、そういう総合的なものだろう、両面を持つものだろう、こう思うのです。長官もこの点では恐らく御賛成願えると思うのですが、いかがでございましょうか。
  150. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 与えられた範囲内におきまして最大の努力をして、国民の皆様方に適正なサービスをお返しするということは当然のことでございまして、われわれもそのような環境を整備することに努力しなければならぬと思います。
  151. 榊利夫

    ○榊委員 たとえば、一昨日私の同僚の中島議員も質問したところでございますが、特殊法人にメスを入れるという問題、これを見直すということ、財政投融資の使い残しが一兆五千八百億もある事態、これを見直すということ、この点については中曽根長官からも前向きの答弁がございました。日本輸出入銀行の使い残しが昨年度でも三千七百四十億、膨大です。環境衛生金融公庫の使い残しが五百億円、石油公団の使い残しが五百八億円等々であります。そういう点では、この見直しはもう避けられない、当然のことだと思います。  そこで、一言お聞きしたいのですが、見直すということは、直ちに新年度の課題として取り組む、新年度の課題にする、こういう趣旨だと理解してよろしゅうございましょうか。
  152. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 現に特殊法人の見直しをいまわれわれはやっておりまして、この十二月の予算編成までにわれわれでできる最大限の努力はその点についてもやろうと思いますし、また来年度以降、あるいは大きな仕事等につきましては、しかるべき機関にお願いするということになるかもしれません。
  153. 榊利夫

    ○榊委員 しかるべき機関にお願いするということですか。それとも、行管庁そのものとして、中曽根長官としては、これは来年度、新年度、いまからまさにそれが、予算等々問題になっていくわけですけれども、その課題として取り組むということでしょうか。
  154. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 もうすでに行管庁は取り組んでおりまして、特殊法人につきましては、財務諸表も取り寄せて一々点検しているところです。特殊法人の中にはいわゆる公社、公団も入っております。そういう意味ではすでに着手しておりますけれども、その精査の結果によりまして、最終的にどういうふうに処置をするか、いまのところできる限り十二月の予算編成に間に合わして、前に申し上げましたように、たとえば剰余金等につきましては、国債を減らすお金に回してもらえないか等々の処置もできるだけ講じてみたいと思っておりますけれども、しかし、これは新しくできる臨時行政調査会皆さんがどうお考えになるかによって決まると思いますが、いわゆる財投問題と称せられるもの全般について大局的にどう考えていただくかというような問題、つまり官業と民業との関係という点もございますし、能率性という問題もございますし、そういうようないろいろな問題については新しくできる委員皆さん方のお考えによりまして、御検討願うことになるかもしれない、そう申し上げているわけであります。
  155. 榊利夫

    ○榊委員 ひとつ十二月の予算編成に間に合うように、そういう積極的な姿勢で取り組んでいただきたいと思います。  ところが、特殊法人と一概に申しましても、いまのようにメスを振るわなくちゃいけないところもある、違った問題もございます。たとえば、私、これから質問しようと思っております労働福祉事業団の経営する労災病院。私はせんだって視察にも行ってまいりましたが、全国に三十四ございます。東京労災病院も、東京では一つですが、東京にあるわけですけれども、ここの例ですと、許可ベッド数が三百五十床、中型の病院ですが、労働者の医療だとか地域医療では大変貢献をしております。しかし、悩みが多いということでございます、いろいろ病院側からお話を聞きましても、働いている人に聞きましても。一つは、資金不足だ、だから医療その他の設備についても改善が思うようにいかぬという悩みでございます。  それからもう一つは、看護婦さんの問題です。私行ってみて、みんな若いのでびっくりしたのですが、大変若い看護婦さんだけなんです。ところが中堅がいない。あとは婦長さんクラスのベテランです。どうしてそんなに中堅が定着しないかといいますと、看護婦さんですから夜勤が多いわけですね。ところが夜間の保育所がない。だから結婚して子供が生まれると、不本意ながらもやめざるを得なくなる。しかし、夜勤も人事院基準の二・八体制ではない。つまり二人体制月八日じゃなくて、実際は十一日、十二日も夜勤が行われている、これが実情でございます。こういう公的な病院では、逆に財政面での対策を強める必要があると思うのです。看護婦さんもふやすし、あるいは夜勤も少なくするし、夜間の保育所も整備をする、付設をするといったことがやはり積極的に考えられてこそ本当に血も涙もある行政ということになるだろう、こう思うのでありますけれども、担当の労働省はどういうふうにお考えでしょう。
  156. 倉橋義定

    ○倉橋政府委員 お答え申し上げます。  労災病院につきましては、燕労災病院を含めまして、全国で三十五カ所あるわけでございます。この施設の整備につきましては、私ども鋭意努力しておりまして、病院の運営収入によりまして原則として運営しておりますが、設備、施設につきましては、労災特別会計の方から相当額の出損を行いまして、その整備に努めてきております。今後とも私どもICU等の高度の医療の要請に対しまして、これに対応するような設備の充実を図ってまいる考えでおります。  いま御指摘の看護婦の不足という点でございますが、労災病院全体におきましては、看護婦の定員は確保できているわけでございます。ただ、御指摘のように、東京等につきましては非常に若い看護婦が多いということでございますが、これにつきましては、保育所がないという理由だけではございませんで、最近では看護婦さんのUターン現象等も非常にございまして、ある程度年限がたちますと、郷里の労災病院に移りたいというような要請もございます。本人のそういうような希望につきましては、できるだけこたえるような考えに立ちまして、人事の管理をやっております。そういう点から私ども都会におきます看護婦の充員につきましては、看護学校等専門の養成機関を直接設置いたしまして、それにより確保しておりますが、中堅の看護婦の確保につきましても、各労災病院におきまして鋭意努力しております。  なお、保育所の設置等につきましては、労働組合等から要請がありますれば話し合いをいたしまして、できるだけその要請にこたえるように必要な保育施設の確保に努めてまいっておりますが、今後ともそのような努力を続けてまいりたいと思っております。
  157. 榊利夫

    ○榊委員 財投だってあるんで、不必要なところは削らなければいけませんけれども、こういうみんなの命と健康にかかわるようなところは、むしろ優先的に回すということをもう大いにやるべきだろうと思うのです。  ですから、病院につきましても、やはりいま話がありましたように、たとえば付設の夜間の保育所なんかも、あるところはあるわけです。地方だとか、何か神奈川もあるんじゃないですかね。神奈川はあるけれども、東京はないということ、これはもうどこでも大いに全部そういうものが設けられることが望ましいし、ぜひひとつそういう前向きで、気持ちよく働いてもらえるようなそういう職場にするということで御努力をお願いしたい、こう思います。その点についてはあれですね、念を押しますけれども、夜間保育所の問題、これはもう考えるということでいいですね。あるいは考えていますという……。
  158. 倉橋義定

    ○倉橋政府委員 夜間の保育施設を含めまして、看護婦さんのための保育施設につきましては、当該病院の組合等からの御要請があれば十分話し合いまして必要な対応をしてまいりたいと思っております。
  159. 榊利夫

    ○榊委員 次に移ります。  ブロック機関整理の対象になっております四国地方医務局の統廃合の問題、これはこれまでも幾つか質問がございまして、中島議員も触れましたので、私、大きなところは省きますけれども一つだけこの問題での質問ですが、いろいろ調べてみますと、やはり地方医務局というのは、公的な病院や開業医と分担をして地域医療を進めておるという点では大変有益な仕事をされているわけでありますが、同時に患者などの対政府要望の窓口にもなってきているんですね。たとえば給食時間の間隔をもう少し広げて夕食を五時半以後にしてもらいたいとか、あるいは週一回布団の日光乾燥をぜひともやってもらいたいとか、そういう非常にささやかな病人、患者の方々の要求、それをいままで医務局を通じて出しておられる。今度四国医務局がなくなりますと、こういうささやかな要求あるいは要望も広島まで持っていかなければいかぬということになると、これは大変なんですね。これは肉体的にももうできなくなっていく。  そこで、一つだけ質問なんですが、そういう患者の希望だとか要望、これに対しては絶対に仕事を現状よりも後退させない、今後も便宜を図っていく、充実していく、こういうことでお約束していただけるかどうかということです。いかがでしょう。
  160. 田中健次

    田中(健)説明員 地方医務局につきましては、先生御承知のとおり、管内の国立病院あるいは療養所につきまして直接に指導監督をしております中間的な管理機構でございますけれども、いま先生からお話がございましたように、患者さん、特に結核の患者さんあるいはライの患者さん等からの要望いろいろございますけれども、そうした要望につきましても、各施設で承っているほか、地方医務局におきましても年に数回話し合いをしておるところでございます。  いまお話がございましたように、患者さん、病気でございますので、遠隔地に出かけるのはいろいろ医療上から見ても好ましい問題ではございませんので、厚生省といたしましては、四国が支局になった場合でも、従来どおりの患者さんとの対応はできるように支局の権限等についてできるだけの配慮はしたいというふうに考えております。現在五十六年度の予算編成の過程でございますので、関係機関とその点につきましても鋭意検討を行っているところでございまして、極力その点について配慮していきたいと考えております。
  161. 榊利夫

    ○榊委員 大蔵省所管の成田空港の税関の問題でも関連して質問したいのです。  税関というのは、御承知のように脱税はもちろんのこと麻薬や拳銃の持ち込み防止など大変国民の安全に重要な仕事であります。最近いろいろパンの中に拳銃の弾を入れて持ち込もうとしたなんというあれも起こっております。ところが職員の職場状況を見ますと、私も日本の玄関口でこんなことがあるのかと思ってびっくりしたのですが、職員の年間拘束時間三千百八十時間でございます。年間総時間の三六・三%は職場に拘束されておる。その上、月平均六十三時間の残業があります。それから月十日間、つまり三日に一日は二十一時間拘束の当直勤務がある。昼食の時間わずか三十分、夕食の時間もわずか四十五分。たばこを吸う暇があったら仕事につけと言われた、こういう大変あわただしい職場状況。いろいろ聞きますと、職員の皆さんは寝る時間もないとかストレス続きだ、ちょっと気が変になりそうだ、そういうような状況があるようなんでございます。もちろんこれは新しい空港ですから、いろいろ試行錯誤もあると思いますけれども、現状は現状。大蔵省の責任者はこの点では日本の空の玄関口でこういう非人間的な勤務状況があるということを御存じなのかどうなのか、お伺いいたします。
  162. 田中史

    田中(史)説明員 お答えいたします。  いま先生から御質問ございましたように、成田空港税関支署は、密輸の防遏その他の監視、取り締まり業務あるいは通関業務あるいは各種の許可、届け出の受理といったような業務を円滑に遂行いたしますため、交代制の勤務体制をとっているわけでございます。  そこで、この成田空港におきます交代制勤務体制につきましては、最近の激増しております入国者の増大に対応しながら勤務条件の改善を図っていくために、全面的な見直しを昨年七月に行いまして、新しい勤務体制導入したところでございます。  この勤務体制におきまして、先ほど御指摘ありましたように、当直勤務のときにおきましては、最長の拘束時間が二十一時間という勤務があるわけでございます。ただ、この二十一時間の勤務時間の中には、休憩時間あるいは仮眠時間が含まれておりまして、実働の勤務時間が二十一時間になっているというわけではないわけでございます。  そこで、このような実情に対しまして、私どもといたしましては、出入国旅客の増加といった業務量の増加に対処いたしますために、関係当局にこういう実情を御説明いたしまして、その理解を得るべく努力をいたしておりますけれども、一方におきましては、いま申し上げましたような勤務体制の改善のほか、事務の合理化でありますとか監視取り締まり機器の導入でありますとか、事務能率の向上にできるだけ努力を払いまして、これによって業務量の増加に対処していくという方針でいままで臨んできておるわけでございます。
  163. 榊利夫

    ○榊委員 どうもいまの説明を聞きますと、うまくいっているみたいな感じなんですね。去年改められたということも私、聞いております。だけれども、実際に新体制になっても明け休みが少なくなったとか、かえってきつくなったという状況もあると聞いておりますし、成田税関のようなところでは、いわゆる仕事減らしといったことではなくて、必要なところは人をふやすということも含めて、こういう状況というのはぜひ改善してもらいたい、改善すべきだと思うのです。いま数字を言ったところで皆さん本当だろうかと思われると思います。私もそうだ。しかし、現実はそうなんですから、その点については、そういう非人間的な勤務状況を是正して改善していく。少なくともそういう答弁をいただきたいと思うのです。
  164. 田中史

    田中(史)説明員 私どもも職員の声をできるだけ窓口を通じまして聞いておりますけれども、非常にきついという声は必ずしも聞いていないわけでございます。しかしながら、今後もできるだけ先ほど申し上げましたような業務処理の効率化、能率化を図りつつ同時に勤務条件の改善をも図っていきたいというふうに考えております。
  165. 榊利夫

    ○榊委員 聞いていないとすれば、これはまた聞いてもらわなければ困ります。実際に聞いて改善するように努力を願います。  次ですが、通産省関係改革案が出ておりますが、その一つ、名古屋鉱山保安監督部に大阪を統合し、大阪を支部とするということ。それから広島鉱山保安監督部に四国を統合し、四国を支部とすることがございます。  鉱山保安監督部というのは、私もいろいろ勉強させてもらったのですが、鉱山と申しますと、山を連想するのですが、必ずしもそうじゃない。鉱山の落盤とかガス爆発の防止はもちろんですけれども、旧鉱山であるとか廃鉱というのはみんな住んでおる町の下にあるわけです。いつそれが陥没するかわからぬ問題も多々ございます。地表陥没の防止等々、そういう点では労働者一般ということだけじゃなくて、住民の生活と大変かかわっている。ところが実際を見ますと、必要な業務量をこなす上で予算等々から人員不足があるということなんです。大阪の場合を例にとりますと、監督、検査だとか鉱害検査などの年間必要業務量、これは私たちが調査したんじゃなくて局そのものがはじき出したものですけれども、延べにしまして一万百三十四日という数字が出ております。これをこなすためには十人の増員が必要だというのが現地の声なんでございます。一昨日、本委員会通産省の方から統合後も行政需要にはこたえていくという答弁がありましたが、いま申しましたような大阪などの場合には、やはり仕事に見合った増員も考えなければいけないんじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  166. 植田守昭

    ○植田政府委員 ただいまの大阪に関します数字につきましては、私どもは報告を受けておりませんので、それにつきましてはここでコメントすることはできないわけでございますが、各鉱山保安監督部の人員につきましては、いろいろそれぞれの鉱山数とか鉱山労働者数、その他災害の数等々を勘案いたしまして、できるだけ合理的に配置するようにいたしております。そういうことで、私どもといたしましては、もちろんこれでもう十分潤沢であるというふうには考えておりませんけれども、各職員の一体となった努力によりまして、何とか行政需要にこたえていきたいと考えております。従来ともこの保安の問題に対しましては、十分積極的に取り組んできたつもりでございますが、人命にかかわる重要な問題でございますので、今後とも積極的に取り組んでいきたいと考えております。
  167. 榊利夫

    ○榊委員 通産省の方は五十六年度に鉱務管理官の一名増を要求されているのじゃないですか。
  168. 植田守昭

    ○植田政府委員 鉱務監督管理官を要求しております。
  169. 榊利夫

    ○榊委員 現に五十六年度に要求されるくらい必要だ、こういう御認識があるわけであります。しかし、実際問題はそれでは一名足りない。いろいろな問題があります。たとえば堆積場の監視の問題。四国の吉野川上流には別子だとか佐々連だとか白滝といった各銅山の堆積場があります。その総堆積量、実に四百六十万立米、その中に含まれる人体に有害な重金属は膨大な量に上るわけです。だから常識的にもこれはいつも監視する必要がある。そうしないと、四国というのは台風が多いところですし、降雨量も多い。自然の悪条件が重なると非常に深刻な事態が起こりかねない。静岡の例ですけれども、例の持越鉱山の堆積場でシアンが流出して大騒ぎになったことがございます。通産省も恐らくそういう例は多々握っておられるはずであります。実際、その付近の住民からしますと大変心配なんですね。不安なんです。ですから、そういうところは人員も含めて、保安体制が統合問題によって後退するようなことは絶対させない、逆に充実する必要がある、こういう点で約束できるでしょうか。
  170. 植田守昭

    ○植田政府委員 従来から保安の問題につきましては十分取り組んできたつもりでございますが、今後ともその必要性を十分認識いたしまして、積極的に取り組んでいきたい、こういうふうに考えます。
  171. 榊利夫

    ○榊委員 具体的に、たとえば部長権限の委任はどういうふうになりますか。また、官印は従前どおりなのでしょうか、あるいはどうされますか。
  172. 植田守昭

    ○植田政府委員 私どもといたしましては、業務に支障が来されないように、鉱山保安法上の権限につきましては、事務内部委任をいたしまして、支部でできるだけ事が運ぶようにいたしたいと思います。  それから、お尋ねの公印の点につきましても、支部で取り扱いが可能なように措置したいという方向でただいま考えております。
  173. 榊利夫

    ○榊委員 わかりました。  最後に、効率化という問題でお尋ねをいたします。  九州の南北財務局の統合問題です。この問題は、御承知のように昭和三十八年、四十五年、五十三年、三回取りざたされてきております。その場合はすべて南の北への統合が考えられておりました。五十三年の自民党行財政調査会の山中貞則会長試案もそういうふうになっております。財務局が業務対象としております金融機関数の割合が北と南で七対三、証券会社の数がやはり七対三、それから有価証券の報告書の提出会社数が六対四等々でございます。だから、統合するとすれば南とだ、こうなっていたのがある意味合いでは当然と言えたと思うのです。それが今回のブロック機関整理法案では逆転しているわけであります。そこから生まれる不便、不経済は私は大変大きいと思うのです。  たとえば、具体的にお尋ねいたしますけれども、熊本に統合した場合に、合同庁舎を建設したりあるいは災害査定などの主計事務、経済調査事務などで出張する出張旅費その他がかえってふえるのではないでしょうか。その点で補足しますと、ことしの三月、当時の金子北九州財務局長も、統合しても経費節減につながらないということを述べておられます。ここにちゃんと談話の新聞を持ってきております。また利用者や自治体の側から見ましても、財務局で用事を果たすための出費がかえって増大すると思うのです。そうした試算はしておられるでしょうか。その二つ、よろしゅうございますね。一つは出張旅費、合同庁舎等々ふえないか、自治体側からもそういう出費がふえないか、お答えをお願いします。
  174. 名本公洲

    ○名本説明員 お答え申し上げます。  南北両財務局を統合するに当たりまして、先生御指摘のように、管轄範囲が三県及び四県であったものが七県になるわけでございますので、財務局を中心として考えますと、出張旅費というものにつきましては、従来よりも一般的に申しまして多くなるのは事実でございます。しかし、私ども現在考えておりますのは、特に先生先ほど御指摘になりましたが、現在の北九州財務局の管内は金融経済という面で考えますと、九州全体の中で非常にウエートの高いところでございますので、金融、証券事務に関しましては、支局長に財務局長と同じ権限を与えることにいたしておりまして、そのような措置を講じていくことによりまして、財務局二局を統合することによる経費的な不経済ということが起こらないように組織の面でも考えてまいりたいと考えておりますし、また実際の事務を執行していく上におきまして、極力経済に配慮いたしまして、不経済にわたらないように、従来以上に効率的な事務を執行することによりまして、先生御指摘のような問題が出てこないように極力努力してまいらなければならないと考えております。
  175. 榊利夫

    ○榊委員 出てこないようにするということと、いやおうなしふえるということは別なんです。私が紹介した例から見ても、いやおうなしにふえる、不経済になる。  たとえば、お尋ねしますが、九州の国有財産のうち、福岡、長崎、佐賀の北九州が八九%を占めております。地方財務局に付属している国有財産審議会も、今度は熊本に一本化されることになります。そうしますと、八九%を占める三県の県民の要望は大変反映しにくくなる、これは目に見えているのです。そのことが一つ。  もう一つは、これも具体的にお聞かせ願いたいのですが、国有財産の管理処分の権限、たとえば国家公務員の宿舎の維持及び管理の権限はどうなるのですか。
  176. 名本公洲

    ○名本説明員 国有財産につきましては、財務局で所管いたしておりますいわゆる普通財産につきましては、先生御指摘のように、北九州財務局管内の件数が非常に多うございます。しかし、私ども大蔵省におきましては、大蔵省において管理、処分権限を持っております普通財産だけではございませんで、各省庁の持っております一般のいわゆる行政財産と言われるものにつきましても、大蔵大臣は総括大臣といたしまして、その利用等につきまして監査をすることになっております。  それについて申しますと、件数で申しますと、南九州財務局は四千三百件程度、北九州財務局の方が三千八百件程度となっておりまして、若干南九州の方が高いというような実情もあるわけでございます。しかし、現在福岡において行われております事務が全面的に熊本にまいりますと、確かに、たとえば福岡の方は同じ県内にあったものが熊本局になることはもう事実でございます。でございますので、私どもといたしましては、当面福岡に置かれる支局においてできるだけの事務をこなすことを考えてまいりたいと思っておりますが、さらに今後これをどのようにするかという点につきましては、現地の住民の方々あるいは金融機関の方々に対する私ども行政サービスが低下することがないように十分配慮をした体制をこれから考えてまいりたいと考えておるところでございます。
  177. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、これからということであって、たとえばいま出しました国有財産の管理処分の問題とか公務員宿舎の維持等々まだ決めてないということですか。
  178. 名本公洲

    ○名本説明員 今後支局におきます組織、機構をいかがいたしてまいるかということとも絡む問題でございまして、これは五十六年度予算との関係がございます。したがいまして、先ほど申し上げましたような私ども考え方のもとに関係当局と十分折衝をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  179. 榊利夫

    ○榊委員 それでは公認会計士の試験の受付、受験地はどうなりますか。従来は福岡だったのですが、二つにふやしますか、それとも南に持っていきますか。
  180. 名本公洲

    ○名本説明員 公認会計士の試験につきましては、先生ただいま福岡一カ所というふうにおっしゃったのでございますが、私どもは福岡、熊本両方にあると理解いたしております。今後におきましては、出願者の状況等を見まして、二カ所必要と考えられます場合には、従来どおりの体制で臨んでいくことを検討いたしたいと思います。
  181. 榊利夫

    ○榊委員 従来どおり。  そうしますと、証券、金融についての権限はどうなりますか。たとえば金融機関に対する苦情処理の権限、地方債の許可協議、資金運用部地方資金の貸し付け事務の権限、普通財産管理処分事務の権限、こういったものはどうなりますか。一本化されますか。それとも福岡の支局長にゆだねられますか。
  182. 名本公洲

    ○名本説明員 証券、金融につきましては、先ほどもお答え申し上げましたが、今回の法案におきまして、支局長に財務局長と同じ権限を付与する改正をこの法案の中でお願いしてございます。したがいまして、従来と変わりなくやっていけると考えております。  それから、地方債の問題でございますが、地方債につきましては、一件審査になっておりますものは全部中央に上げまして自治省と協議をいたすわけでございますが、それ以外のものにつきましては、財務局、財務部おのおのにおきまして地方公共団体と協議いたしておりますので、これも財務局を統合したことによる影響は出てこないと考えております。  普通財産の管理処分でございますが、これにつきましては規模の非常に大きなものにつきまして財務局で行う、その基準に達しないものにつきましては財務部長権限において処理できるように現在でもなってございます。したがいまして、問題になりますのは、規模の非常に大きいものということに相なります。こういうものにつきましては、当面のサービスという面を考えますと福岡に置くべきではないかと考えますが、そういう規模の処分を要する財産の有無、その程度、そういうものを勘案しながら、さらに今後実際に支局を設置いたしますまでに決定をしてまいりたいと考えております。
  183. 榊利夫

    ○榊委員 あと二、三分お願いします。  いまの支局ですけれども、その支局も結局は「昭和六十年三月三十一日までに廃止するものとする。」となるわけで、これの理解ですけれども、福岡支局はどうなりますか。廃止するということなのか。九州財務局を福岡に移すことを検討するということも、その六十年三月三十一日の時点というのは入るのかどうなのか、そのあたりはどういう判断ですか。
  184. 名本公洲

    ○名本説明員 合併いたしました九州財務局は南九州財務局に置くということに本法案でいたしてございます。したがいまして、福岡財務支局を「六十年三月三十一日までに廃止するものとする。」というのは、その支局について言っておるものでございまして、この法律の条文の書き方からいたしまして、私どもといたしましては、その時点におきます行政サービス、財政需要、そういうものを考えて、いかなる体制が最も適当であるかということをその時点において検討、判断をして、その後の体制を決めてまいりたいと考えておるところでございます。
  185. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、その時点で九州の財務局を福岡に移すということも当然検討されるということですか。そういうことも検討問題に入るわけですね。
  186. 名本公洲

    ○名本説明員 現在御提案を申し上げております法律案考え方は、その時点におきまして福岡に九州財務局本局を移すということは考えていないわけでございます。
  187. 榊利夫

    ○榊委員 行政改革の問題につきまして、特にいまの問題についてはいろいろ現地なんかでも心配や反対の声が強いわけで、いろいろ署名なんかも、聞くところによりますと四十一万の署名がある。私のところにも十三万五千御紹介させていただいたのですが、この問題、過去三回等々そういういきさつがございます。  長官お尋ねしたいのですけれども、こういう場合に、いやしくも情実とかあるいは政治的党略といったものがあってはならないと思うのですが、いかがでしょう。
  188. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうものはございません。
  189. 榊利夫

    ○榊委員 ところが、この統合案につきましてこういう新聞報道があるのです。南が政治力で圧倒しているとか、あるいはさらに選挙の際、当時の宇野行管庁長官が熊本でこういうふうにおっしゃっている。名前は私、控えますが、だれだれさんは東京にあって東奔西走され、熊本はいまこうなんですと訴えられた。そこで政府でも——これは言わぬとまずいのですが、どうも野田さんの言うことが正しい、こういうことになって、竹下さんも熊本に残そうと決断された、こういうふうに演説をされているわけであります。これは六月十日付の東京の新聞に載っております。  長官はこういう報道の事実は知っておられますか。
  190. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうへんぱな考えで宇野長官がやったのではないと確信しております。
  191. 榊利夫

    ○榊委員 だけれども、こういう報道が一つや二つじゃなくて、この関係で新聞にこれだけたくさんあるのです。したがいまして、長官が御存じないとすればあれですが、やはり今回のブロック機関整理法案につきましては、一省一局削減とかあるいは二つの局を形だけ一つにして局と支局にするとか、そういう単なる看板の塗りかえだけならば、これは非科学的で意味がないと思うのですよ。しかも、幾つかの局の統合も、行政の簡素化、効率化とはどうも言えない。逆にかえって複雑化あるいは非能率化といったことがいろいろな点で考えられる。しかも報道されているような疑惑もある。そういう点では、ぜひ中曽根長官としても、無理押しするのじゃなくて再吟味してもらいたい。少なくとも現地と当事者の意見をやはり聞いていただきたい。そういう点の現地調査であるとか公聴会とかいう方法もございます。あるいは国会としても参考人の質疑であるとか証人喚問なんかもやっていいのじゃないか、あるいはやるべきじゃないかと思うのであります。  調査その他については長官その他に御意見を伺い、かつまた委員長においてもどういうふうにお考えなのか、ちょっと聞かしていただければと思います。
  192. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 せっかくのお申し出ではございますが、いままでいろいろ理由を申し述べ、また質疑にお答え申し上げたとおりでございまして、福岡も熊本も重要度においては甲乙ない、そういう中で大局的に見て行政を簡素化する、そういう大使命を受けまして、どちらか一つかということになった場合に、結局は甲乙ないという場合には、歴史の古さということで明治二十九年にできた熊本の方が残された、そういうことではないかと私は思っておるのでございます。事情はぜひ御了察をお願い申し上げる次第です。
  193. 江藤隆美

    江藤委員長 委員会の運営については、各理事皆さん意見をよく参酌して、円満かつ友好に委員会が運営できるように委員長としては措置してまいりたいと思っております。
  194. 榊利夫

    ○榊委員 最後に一言。私はきょういままでずっと質問さしていただきましたけれども、少なくとも多々問題があるということはおわかり願えたと思います。そういう点では、あえて無理押しはしないでもらいたい、こういうことを述べて質問を終わりたいと思います。
  195. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて両案件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  196. 江藤隆美

    江藤委員長 これより両案件を一括して討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、地方支分部局整理のための行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  197. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、四国行政監察支局等設置に関し承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  198. 江藤隆美

    江藤委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。     —————————————
  199. 江藤隆美

    江藤委員長 ただいま議決いたしました地方支分部局整理のための行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案に対し、愛野興一郎君、岩垂寿喜男君、鈴切康雄君、神田厚君、中島武敏君及び田島衞君から附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。愛野興一郎君。
  200. 愛野興一郎

    ○愛野委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブの各派共同提案に係る地方支分部局整理のための行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     地方支分部局整理のための行政管理庁設置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、地方支分部局整理編成を行うに当っては、国民立場に立つた行政サービスの一層の向上に努めるとともに、本法の実施に際しては、行政サービスの低下をきたさないよう配慮し、関係機関に勤務する職員の処遇や勤務条件について適切な配慮を加えること。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じてすでに明らかになっておることと存じます。よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  201. 江藤隆美

    江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  202. 江藤隆美

    江藤委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、行政管理庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。中曽根行政管理庁長官
  203. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ただいまは両案件をそれぞれ御可決、御承認をいただきまして、まことにありがとうございました。  御審議の間におきまして承りました貴重な御意見並びにただいま行われました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、最善の努力をいたしたいと思います。  今後ともよろしくお願いいたします。     —————————————
  204. 江藤隆美

    江藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 江藤隆美

    江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  206. 江藤隆美

    江藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後四時十八分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕