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1980-10-23 第93回国会 衆議院 大蔵委員会金融及び証券に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    小委員会昭和五十五年十月十四日(火曜日) 委員会において、設置することに決した。 十月十四日  本小委員委員長指名で、次のとおり選任さ  た。       大原 一三君    熊川 次男君       笹山 登生君    中村正三郎君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       森田  一君    山崎武三郎君       山本 幸雄君    川口 大助君       佐藤 観樹君    堀  昌雄君       柴田  弘君    竹本 孫一君       簑輪 幸代君    柿澤 弘治君 十月十四日  山崎武三郎君が、委員長指名で、小委員長に  選任された。 ————————————————————— 昭和五十五年十月二十三日(木曜日)     午前十時一分開議  出席小委員    小委員長 山崎武三郎君       大原 一三君    熊川 次男君       笹山 登生君    中村正三郎君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       森田  一君    川口 大助君       佐藤 観樹君    堀  昌雄君       柴田  弘君    竹本 孫一君       正森 成二君    簑輪 幸代君       柿澤 弘治君  出席政府委員         大蔵政務次官  保岡 興治君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君  小委員外出席者         大蔵委員長   綿貫 民輔君         大 蔵 委 員 平林  剛君         大蔵大臣官房審         議官      酒井 健三君         参  考  人         (金融制度調査         会会長)    佐々木 直君         参  考  人         (東京大学経済         学部教授)   館 龍一郎君         参  考  人         (信託協会会長田代  毅君         参  考  人         (全国地方銀行         協会会長)   吉國 二郎君         参  考  人         (日本長期信用         銀行取締役頭         取)      吉村勘兵衞君         参  考  人         (富士銀行取締         役頭取)    松沢 卓二君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君 十月二十三日  小委員簑輪幸代君同日小委員辞任につき、その  補欠として正森成二君が委員長指名で小委員  に選任された。 同日  小委員森成二君同日小委員辞任につき、その  補欠として簑輪幸代君が委員長指名で小委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融及び証券に関する件      ————◇—————
  2. 山崎武三郎

    山崎委員長 これより金融及び証券に関する小委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  このたび当金融及び証券に関する小委員会の小委員長に就任いたしました。  何とぞよろしくお願い申し上げます。      ————◇—————
  3. 山崎武三郎

    山崎委員長 金融及び証券に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として金融制度調査会会長佐々木直君、東京大学経済学部教授館龍一郎君、信託協会会長田代毅君、全国地方銀行協会会長吉國二郎君、日本長期信用銀行取締役頭取吉村勘兵衛君、富士銀行取締役頭取松沢卓二君、以上六名の方々に順次御出席をいただき、御意見を賜ることになっております。  ただいま参考人として金融制度調査会会長佐々木直君が御出席されております。  佐々木参考人には、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  銀行法等改正をめぐる諸問題等につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見の開陳は小委員からの質疑お答えいただく形式で行いたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、佐々木参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  4. 堀昌雄

    ○堀小委員 本日は、佐々木参考人には御多用の中を御出席をいただきましてありがとうございました。  昨年の十二月二十六日、大変押し詰まりました年末に当小委員会お越しをいただきまして、金融制度調査会の基本問題その他について少しお尋ねを申し上げました。その後、金融制度調査会は引き続き中小金融機関その他の問題の御検討を進めておられると思うのでございますけれども、恐らく年内には答申がなされて、銀行法を初め関係金融機関法律改正が次の通常国会に提案される段階にいま参っておると考えております。  それで、この前もここで触れさせていただいたのでありますけれども、今度の金融制度調査会答申の中で、銀行健全性を進めるために必要な幾つかの項目がございますし、あるいは週休二日制に関する問題等も含まれております答申について、現在の国際的な諸情勢から見ても、さらには銀行健全性を確保する意味から見ても、一点を除いておおむね適当な御答申がなされておると考えておるのでありますが、前回も触れましたただ一点だけ、銀行健全性という問題さらにはこれまでの銀行というものに対する政府の対応の仕方と申しますか、そういうものとの関連においていささか疑問に思う問題が依然としてございます。実はこの問題は、十分検討がなされずに安易に法律案となりますことは将来にいろいろな問題を残すおそれがある、こう考えておりまして、きょうは特に金融制度調査会長でございます佐々木参考人お越しをいただいたわけでございます。  そこで、まず最初にお伺いをしたいのは、いまから十年余り前に、現在の澄田日銀総裁が当時銀行局長でおられましたときに金融制度調査会が持たれて、その結果、合併転換法その他の法律が提案をされ、それまでと異なって金融効率化と申しますか、競争原理の導入というような問題が取り上げられた時期がございました。  それで、そのときも実は都市銀行の側からいわゆる銀行デパート化論と申しますか、銀行は何でもやっていいのではないか、もっとかきねを低くしてそういうふうな自由な活動ができるようにしてほしいという御要望を私もたびたび受けたわけでございます。その当時御要望をいただいた方の中で現職では松沢山富士銀行頭取だけが当時からずっと一貫して銀行業務を進めておられみわけで、本日またお越しをいただくわけでありますが、そのときにも私申し上げましたのは、現在の日本銀行制度というのは、分離主義専業主義と申しますか、御承知のように、銀行だけでなく長期信用銀行信託銀行と、銀行のジャンルだけで見ましてもこのようなおのおの特性を持った銀行がございますし、それはいずれもそういう分離主義専業主義という考え方で当時も一貫してきておったわけでありまして、そのかきねを下げるという話について、当時、私はこの分離主義専業主義というものがそれなりの沿革とそれなりの実績を持っておるのであって、そういうものはもう必要がないというような段階になればともかく、現状においてこれを改める必要はない、こういう考え方でこの法律案その他に対処をさせていただいたという経緯があるわけでございます。  それから十年余りたちまして、それでは今日、この分離主義専業主義というものは日本経済にもう合わなくなった、これは見直さなければならないというようなことになっておるかというと、多少そこに弾力的な必要があるかもわかりませんが、基本としてこの分離主義専業主義というものは今日も依然として必要な段階にあるのではないか、こう私は考えているわけでございます。この答申を拝見いたしますと、そこのところが非常にあいまいでございまして、何か分離主義をとっているようであるけれども、また大いに弾力化をして自由にやることが効率的だというような、率直に言いますと、真意は一体何だろうかという点については、実はどうも弾力化自由化ということの方にウエートのかかった答申のような気がいたしてなりません。  そこで、金融制度調査会の報告その他そのものは私ども文書で拝見いたしておりますので、金融制度調査会答申というものが会長のお立場から——公式には会長でございますからその方針に沿っておられるわけでございますが、先般私が小委員会お尋ねをいたしましたときに私はこうお尋ねをしたのでありますけれども、いわゆる銀行バンクディーリングの問題に触れて、   最終的には法律となれば国会の私ども判断にゆだねられるわけでございますけれども、やはりこういういまの不安定な国債の状態を展望しながら考えると、このことは銀行健全性の点についてはマイナスであると私は判断をいたしますが、これは参考人立場は、会長立場ではお答えいただきにくいわけでございますから、ひとつ学識経験者としてはどんなお感じかをお答えいただきたいと思います。   ○佐々木参考人 どうもここは会長学識経験者とぶつかるところでございまして、金融制度調査会では、御承知のとおり答申の中で、窓口販売等につきましては積極的な意見の方が多数を占めております。もちろん、いまお話もございましたように、少数意見として反対もあるわけでございます。また、それぞれの関係業界でいろいろな意見が出ておることも承知いたしておりますので、私としては、この問題は慎重な取り扱いが必要だということを個人立場としては申し上げたいと思います。  こう実はお答えになっておるわけでございます。   そこで、いまの銀行業務あり方分離主義専業主義か、あるいはそれ以外の方法でやるべきかという問題につきまして、やはりここはちょっと会長としてはいかがかと思いますので、学識経験者としての佐々参考人の御意見をひとつ承らせていただきたいと思います。
  5. 佐々木直

    佐々木参考人 学識経験者としての考え方でございますけれども、どうも会長として正式の答申をいたしました今日、ここで個人立場ということでいろいろ申し上げるのはできるだけ差し控えなければならないと思っております。  ただ、ただいま御指摘がございましたように、先般先生からのお尋ねに対して慎重な考慮を要すると申し上げたことは、あのときからすでにそうでございますが、関係者の中の意見が非常に対立しておりまして、それをまとめることがなかなかむずかしい。したがって、あの答申はちょうど、何といいますか二つの道を決定せずに、一方が多く、一方が少ないという区別はしておりますけれども、併記して答申といたした次第でございます。それで、これは行政当局にひとつ調整をしてほしいという言葉が入れてございますが、その後の調整が一向進んでおりません。ということが示しますように、これは非常に微妙な問題と申しますか慎重に取り扱わなければならない、いろいろな意見の対立があるという事態をはっきりあらわしておると思います。  したがいまして、今後この法案が国会に提出されますまでにはその調整がなければ出せないことでございます。そういう意味で、もう日もずいぶん迫ってきておる今日、関係当局でできるだけ早い機会にその話をまとめていただくことを私としては非常に強く期待しておる次第でございます。
  6. 堀昌雄

    ○堀小委員 いまお尋ねをいたしましたのはバンクディーリングの話ではないのです。銀行あり方という意味で、分離主義専業主義というものが今日まで続いておるわけでございますが、私はどうも、今日でも十年前と同じようにこの分離主義専業主義というものは、いまの銀行あり方としては十年間そんなに変化はなかった、ですから、これでいいのではないか、こう考えておりますが、いかがでございましょうかということのお尋ねでございます。
  7. 佐々木直

    佐々木参考人 日本金融制度というのは、いまさら申し上げるまでもなく、現に分離主義と申しますか、普通銀行、それから信託銀行外国為替専門銀行等々、いろいろな専門金融機関がございまして、それが毎日きわめて平穏に活動しておるわけで、現に動いております。それは、ですから、その事態がわれわれのよく見ておる現実でございまして、これをいまどうしてもこう変えなければならないというような特定の必要があって今度の銀行法検討が行われたということではなくて、全体の流れの変化にどういうふうに体を合わせていくかという頭であの検討が行われております。  ただ、いまの分離主義というものが、国際関係、インターナショナルな関係で見ますと、ほかの国では全部いろいろな金融機関が同じような仕事をしておる国が大分でございまして、そこへ日本金融機関が海外に参りますと、そういう向こうのやり方との間にいろいろな差が生じております。そういうようなことが今度日本の国内に影響を持ちまして、その分離主義ということでも、方向としてはだんだんそのかきが少しずつ低くなるのではないかという感じのする事例がだんだんたくさん出てきております。そういうようなことがございますので、いま先生から御指摘のように、答申の中で弾力的といったような言葉があちこちに入っておりますのは、そういう国際関係変化ということからくる影響が非常に大きくなっている、それがなかなか無視できないということのあらわれであるように私ども感じておりました。
  8. 堀昌雄

    ○堀小委員 そこで、もう一つ私、最近大変興味のある話を承ったわけでありますが、一体銀行法というのは何のためにあるかという問題でございますけれどもアメリカでございますと、御承知のようにアメリカ銀行とか保険会社というものは、日本とは違いましてしばしば倒産をいたします。それをアメリカ国民十分承知をして、そうしてみずから、ある意味では自己責任においてこれらの金融機関と対応するということがアメリカ国民のこういうことに対する常識になっている。日本では、この銀行法ができます前のあの昭和銀行倒産以来今日まで、銀行が破産をしたという例は一件もございません。  実は、また前回のことに戻るのでありますが、前回のときに澄田銀行局長預金保険機構というものをひとつつくりたいというお話がございました。私は、現在の日本銀行法は強大な権限を持っておって、免許制によって大蔵大臣のところに監督権が集中をして、さらに厳しい検査権というものを持っていて、これは預金者保護のためには、銀行は軽々にはつぶれないというシステムを確立しているのが実は現在の銀行法だと思っているので、もしあなたがどうしても預金保険機構をつくりたい、これから競争を導入するからもし倒産したものが出たときに、それは預金者保護のために下に網をかけたいとおっしゃるのなら、どうかひとつ検査権監督権を放棄してください、検査権監督権がなくなれば網をかけましょう、検査権監督権を持って、つぶれないということを国民に約束しておるような体制の中で下に網をかけるということは道理にかないません、だめですよと言って私は強く反対をした経緯がございます。最終的には預金保険機構もできましたが、私が申したように、この十数年間各金融機関はここへお金を払い込んでおりますけれども、今日も依然として預金保険機構がその機能を発揮したことは一回もございません。物事の道理にかなわないようなこういう事例は、歴史的な検証の上でもそれは間違っているということを、私は今日皆さんの前でちょっと、別に自慢ではございませんけれども、申し上げたいと思うのでございます。  ですから、そういう意味で、私は今度の金融制度調査会での一つ問題点は、今後の日本金融構造というものが一九九〇年にはどういうふうに変わるのだろうか、西暦二〇〇〇年にはどういうふうになるだろうかというような、一定構造変化に対する見通しその他がまず明示をされて、こういう変化に対応するためにはこういうことが必要だという形で問題が提起をされておるならばともかく、どうも今日的課題というものに終始をいたしておるという感じがいたしてならないのでございます。ですから、参考人最初お話しになりましたように、慎重にこの問題に対処するという点で私も全く同感でございます。  しかし、私は現状を見ておりますと、この問題はどうも結論が出にくいのではないか、こういう私なりの判断でございます。片方は何が何でもこれを法律にしてもらいたいという考え一つございますし、片方は何が何でも反対だということのようでございます。これは非常に開きがございまして、問題の性質上百かゼロかということでいまは動いているようで、どうも中間がないのじゃないか、こんな感じがするのでありますが、私の立場からいたしますと、この答申は実は業務としてこのことを認めたいというスタイルで書かれておると私は判断をいたします。  しかし、私は少なくともこれが業務として書かれるような銀行法改正なら、ない方がいい、こう実は反対しているわけでございまして、その他の点についてはまた別でございますが、この答申そのものが求めておるこの考え方は、少なくとも過去十数年間金融制度の問題を勉強し、さらに今後の見通しを私なりにいろいろな関係者の方にお願いをして、九〇年、二〇〇〇年の金融構造見通しというものを承っておる限りでは、私はどうも必要ないのではないか、特に問題は、ディーリングをやる立場のものはその市場の中で中立性が保たれていなければならないと思うのであります。ディーリングをするものが一定支配力を持ってディーリングをするということであるならば、要するに不特定多数の人が市場で売り買いをするときに、一定のものが、ディーリングをするものの影響力の範囲内でコントロールされるおそれのあるようなものはディーリングをする立場にはあり得ない、市場の本来の機能というものは、そういう意味では中立公正なもとにすべての関係者の出会いが行われ、そこで公正な価格形成が行われるということになるべきではないのか。  ですから、ある雑誌を見ますと、現在銀行全体で九百何名かの役員のうち六百何十人かの役員都市銀行から派遣されているということも大変な企業に対する支配力である、こう私は思います。特に財閥銀行と言われる銀行は、今日私どもがテレビその他を見ておりますと、コマーシャルを出しますのにそういうトラストのようなものがずらっと並んで出て、その中心にこれらの財閥銀行がある。こういうことになりますと、出てまいります企業の下にある関連したものの広さはこれは大変な支配力がある、こう考えるわけでありまして、そういう支配力を持つものが中立的な公正な立場でのディーリングが求められる市場に介入してくるということは市場の公正な価格形成をゆがめるおそれもあるし、このことは将来の日本金融市場にとっては決してプラスではない、こう実は判断をいたします。  前回も私は、将来TB自由化をされてくる時代が参りますればTBに参加をされることについて私はそれほど問題にしておりませんし、そういう金融市場ができれば現在の特利預金であるCDもよりフリーな問題として処理をされるようになるので、TB自由化は大変望ましい、こう考えておるわけでありますが、こういう立場から、要するに市場におけるディーラーは中立的で公正である必要があるかないか、これだけをお答えいただきたいと思うのでございます。
  9. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの問題の御指摘は、先ほどちょっと私が申し上げました銀行法改正につきましての金融制度調査会答申の中で結局未解決で残しました二つ考え方、その考え方のどちらがいいかという判断に非常に大きな影響を持つ点だと思います。したがいまして、私は会長立場としていまの先生の御意見は傾聴いたしましたけれども、それに対してどうであるかということを意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  10. 堀昌雄

    ○堀小委員 お立場がございますので結構でございますが、佐々木参考人日本銀行総裁を含めて日本金融界で長くお仕事をしてこられて、問題は、制度改正というものは関連する金融機関がおおむね全体がプラスになるならプラスマイナスになるならマイナスということが制度改正の本質ではないか、私はこう考えておるのであります。  そこで、実はかつてCDの問題がこの答申の中に触れられておりますが、この答申の中で考えられておったCDのようなもの、参考人意見というのも述べられておりまして、地方銀行代表者CDは望ましいとお話しになっておりました。私は前回も、CD日本ではまだそういう金融市場がないのだからだめです、こう申し上げた。今回もそういうお話がありましたときに、特利になるのならこれは絶対だめですよ、お金がある者だけが高い金利で支払われて、その他の者は一定法律の定めた金利だ、低い金利だというのはだめです。だから、金利が完全に自由化されるということであるならば、私は長年金利自由化論者でございますので、それなり意味がある、こう思いました。しかし、これはマネーポジションのところには大変有効に働くわけでありますけれどもローンポジションのところではいま大変——CDを買う側はプラスだろうと思いますけれども銀行制度として見ますと、銀行という枠組みの中にはマネーポジションローンポジション銀行があるわけでありますから、そこにはおのずからプラスマイナスが顕著に出ておるというのが今日の状況だと思うのでございます。ですから、そういう意味で、お答えをいただく必要はございませんが、この金融制度調査会答申が実行されて、すでにその実体があらわれてきておるものの中にも、私は制度としてはいかがかとかねて思っておったことがやはり私の思ったようなことになっておるということを特に申し添えておきたい、こう思うのでございます。ですから、きょう各種の参考人お越しをいただいておりますのは、この問題が一部特定少数の者のためにだけは有効であるかもしれないけれども、あるいはその他のいろいろな関係金融機関にとっては一体どうなんだろうかということをきょうは各参考人から伺って、制度とはおおむね全体の者がそれで望ましいということが当初だけではなくて結果的にもそうなるであろうという予測のないものについては問題があろう、こう考えておりますので、この点も金融制度調査会の中ではお考えをいただいておきたい、こう考えておるわけでございます。すでに答申がされておるのでありますから、これは将来の問題でございますけれども、私は制度の改革というのはそういう性格のものでなければならぬということを申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  11. 山崎武三郎

  12. 柴田弘

    柴田委員 本日は佐々木参考人にはお忙しいところ、どうもありがとうございました。  昨年の六月には銀行法改正につきまして答申をいただきました。また、現在中小金融機関に対します答申の作成、本当に心から感謝を申し上げたいと思います。  せっかくきょうお越しいただきましたので、いろいろな問題について御質問をしたい、また御意見もちょうだいしたい、このように思っておりましたが、何分、時間の制約がありますので、一点ないし二点について参考人の御意見をちょうだいしたい、このように思っておりますので、よろしくお願いをいたします。  そこで、昨年の六月に答申をいただきました。これを見させていただきまして、この第七章の「銀行資金調達あり方」、このところに郵便貯金問題につきましてるる述べられているわけであります。御案内のように、現在金利二元性という問題があります。これは私が説明するまでもなく会長もよく御承知かと思いますが、最近のこの郵便貯金の激増、たとえば日銀の「経済統計月報」によりましても、昭和四十一年の三月末のいわゆる個人預金残高シェアというのは一五・九%でありました。ところが、本年、昭和五十五年の三月末はこのシェアが二七・五%になっております。一方、民間金融機関の残高シェアでありますが、四十一年の三月末は八四・一%、五十五年三月末は七二・五%、こうなっておるわけでございまして、この郵便貯金の残高が今日三〇%近くにもなっておるこの激増ぶりを勘案してまいりましても、もうすでにこの郵便貯金というのは、いわゆる単なる郵便貯金として他の金融問題あるいは全体的な金融政策の中で切り離して論ずることはできない、このように私は考えておるわけでございますが、ひとつこの辺につきまして、答申にもあるわけでございますが、参考人の御意見をちょうだいをいたしたい、このように思います。よろしくお願いいたします。
  13. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま御指摘がございましたように、特にこの数年におきます郵便貯金の増加の趨勢は非常に目立っておりまして、いままでの資金の流れが大きく変化している点が注目されるわけでございます。金融というものは普通に平穏に過ぎていくことが一番大事だと思うのでありますが、その中で、こういう特殊な資金の流れが起こっておることは歓迎できないことだというふうに私は思っております。  ただ、金融制度調査会といたしましては、御承知のように普通銀行法の改正に取り組んでおりまして、去年の六月に答申をいたした。それで、そのときに郵便貯金の問題は、金利の統一された運営と申しますか、金利政策の統一的な運営の上で、やはり郵便貯金につきましてもそれに同調した動きが期待されるといったようなことから触れられたのでございますが、金融制度調査会大蔵大臣の諮問機関であるという性格から考えまして、郵便貯金の問題に調査会が積極的な発言をすることは、その性格から適当でございませんので、両省あるいはもっと多いいろいろな省庁に関係のある問題でありますから、もう一段高いレベルでの検討の場をつくってほしいということを書いて答申といたした次第でございます。  ですから、問題の重要性につきましては十分認識しておりましたけれども調査会の性格といたしまして、あの程度にとどめざるを得なかったということでございます。
  14. 柴田弘

    柴田委員 そこで、いまお答えをいただきましたが、この答申を見てまいりますと、郵便貯金、そして民間の金融機関の預金の問題につきまして、「別途、総合的な場において検討が行われることが適当である」、こういうふうに論じられているわけでございます。  それで、確かにいまおっしゃいましたように、金融制度調査会、これはそれなり意味があると思いますし、あるいはまた一方、郵政審議会、これもそれなりの意義があると私は思います。  そこで、これは私の個人考えでございますが、ひとつその辺について御意見をいただきたいのですが、この郵政審議会と金融制度調査会がやはりより高い見地の上に立って合同審議会等を開いたらどうであろうか。これはやはりもちろん政府考えるべき問題でありますが、その辺について御意見があったらお聞かせをいただきたいし、また同時に、この総合的な場で検討する、今日の金利二元性というこういった問題あるいは金融制度金融政策全般というものをここでやはり議論をする、そういった立場から総合的な審議機関というものがこの際もう必要になってきておる段階ではないか、私はこのように考えるわけでありますが、その辺のことにつきましても、ひとつ会長、御意見がございましたらお聞かせをいただきたい、このように思います。よろしくお願いいたします。
  15. 佐々木直

    佐々木参考人 先ほど私が申し上げました問題に対する考え方は、いまの先生の御指摘と全く同じでございます。  ただ、その場合に金融制度調査会と郵政審議会の合同委員会を持つのがいいのか、それとも全くそれと離れて、各省庁に関係のある問題についての組織を別途考えるのがいいのか、そこのところはちょっと私にもよくわかりません。しかし、これはぜひ政府の方で適当な組織を考えていただいて、この問題についてもっと高い見地からの検討が行われることを強く希望しておる次第でございます。
  16. 柴田弘

    柴田委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたので、これで終わらしていただきます。
  17. 山崎武三郎

  18. 竹本孫一

    竹本委員 参考人にはきょうは御苦労さまです。佐々木さんには金融制度調査会会長として大変御苦労を願いまして、銀行法改正に関する答申を出された、大変御苦労だったと思って御努力に敬意を払っております。特にその結論も、いま堀先生からも御指摘がありましたような非常に重要な問題はうまく逃げているという面もあるかもしれぬし、また慎重に避けているという配慮もあったと思いまして、その点は残されておりますけれども、ともかくも現段階において、理想を言えば切りがありません、一通りまとまった答申を出していただいたと私は感謝をいたしております。  そこで、まずその後の答申の取り扱いについてでございますが、いま銀行証券とのいろいろ問題もありますし、ごたごたしているようでございますし、いまの国会は臨時の短期間の国会でございますから、次の通常国会においてこれが取り上げられることになると思うのでございますけれども、その取り扱い、その見通し等について、佐々木さんは調査会の会長として特別な関心を持っておられると思うのでございますが、今後の取り扱いあるいは見通し等についてどういうお考えを持っておられるか、感想を一つだけいただきたいと思います。
  19. 佐々木直

    佐々木参考人 銀行法につきましては、大蔵当局の方でいま法制局と連絡の上その法文化が進められておりまして、これは近くでき上がるんじゃないかと思いますが、ただ、先ほどから問題になっております証券銀行との間の問題がまだ行政当局の間での話がついておりません。ですから、国会にその法案を提出いたす前にはこの点についての解決がなければならない、これが私どもとしましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、できるだけ早い解決を期待しておる次第でございます。  それから中小企業金融機関に関する部分につきましては、先般来ずっと審議を進めておりまして、近くその答申をまとめることができると思っております。これは銀行法に比べますと量的にもそう大きなものでもございませんので、これも通常国会までに法案の提出の用意ができるものと考えております。先ほどもお話がございましたように、答申をいたしましたのも去年の六月でございます。ですから、次の通常国会にはぜひ提出して皆様の御審議をいただきたいと強く期待しておる次第でございます。
  20. 竹本孫一

    竹本委員 この問題は五十年の初めごろから提起されてもう五、六年たっておりますから、私もできるだけ早い機会に、次の通常国会ではぜひともまとめてもらいたいものだと祈っているわけでございます。その点は全く同感であります。  そこで第二の問題でありますが、銀行支配力金融寡頭支配と言われるほど強いという面もございますし、本質的にはそうだと思います。ところが、最近はいま問題になっている郵便貯金の方へ預金がどんどん流れておるといったような問題もあります。さらに国債をたくさん抱えて動きがとれなくなるし、評価損をどうするかという深刻な問題もあります。また、証券会社等で何々ファンドというのをどんどん出して預金になるべき庶民の蓄積をそちらへ持っていかれる、したがって銀行の預金に大きな影響があるという問題も考えられまして、一方で非常に強い力を本質的に持っておりながら、当面、一時のような銀行あり方とは様子が変わってきたと思うのです。まあ空洞化と言ったら少し言い過ぎだと思いますけれども、そういう弱い矛盾の面も出てきておる。これを一体銀行としてはどう切り抜けていこうとするのであるか、またどう切り抜けていけばよいのであるか、金融の大先輩として佐々木さんのお考えを一言伺いたいのです。  一方から言えば、郵便貯金がこんなに伸びてきたのも、簡単に言えば庶民金融その他について銀行がぼんやりしておったから、ある意味では虚をつかれたと思うのです。そういう意味で、これからは虚をつかれないように、銀行の現在の力を、強くなり過ぎても困りますが、弱くならないようにどういうふうに切り抜けていくかという問題についてのお考えがあれば、お聞かせを願いたいと思うわけであります。
  21. 佐々木直

    佐々木参考人 いまのような大きな、しかも実際の具体的な問題との関連の考え方につきましては、どうも私、先生の御質問に対して答える資格がございません。  確かに、普通銀行というのは大分長い期間にわたって次第にほかの種類の金融機関の発展にだんだん押されてきているということは事実でございます。しかも、その中で四十年以降発行されました国債の消化についてまたいろいろな荷物を負ってきておりますので、そちらも銀行にとってはなかなかむずかしい問題をなしておると思いますが、ただ、国際的に普通銀行というものがいろいろな変化をしておりますし、したがって、今度の銀行法改正もそういう面で新しい変化に対する対応はできるように考えておると私ども考えております。したがって、結局普通銀行も今後は大いに変わっていかなければならないのではないか、新しい分野へ積極的に発展していく必要があるのではないかというふうに考えておるのでございますが、その具体的内容はここで申し上げるだけの用意はございません。
  22. 竹本孫一

    竹本委員 最後にもう一つだけ、問題は変わりますが、公定歩合の問題です。  佐々木さんはその道の先達でございますから、一言だけお伺いしたいのですが、最近公定歩合を下げるべき条件がだんだんできてきたと私も思いますし、そのこと自体に反対する意思はありません。ただ、最近、選挙後は公定歩合の引き下げというものがいささか政治的に取り上げられ過ぎておる。それが一方においては日銀の独自性を侵すことにもなるでしょうし、公定歩合の引き下げというのは簡単な問題ではないのですから、余り単純に余り政治的にこの問題が取り上げられることには問題がある。たとえば物価に対する影響もあるでしょう。あるいは賃金の問題に対する影響も大きいでしょう。あるいは為替レートに対する響きも出てくるでしょう。そういうような意味でドイツがやっているぐらい慎重に考えるべき問題であるのに、こちらではまあきわめて簡単に、きわめて政治的に大合唱が行われるということについて、いささか不快感を持っておるのですけれども佐々木さんのお考えを承って終わりにいたします。
  23. 佐々木直

    佐々木参考人 私も公定歩合論議にはずいぶん悩まされた方でございますけれども、いま先生が御指摘のように、最近の公定歩合論議はちょっと度が過ぎると思っております。非常に残念なことだと私は日本銀行のOBとして痛感しておる次第でございます。
  24. 竹本孫一

    竹本委員 終わります。
  25. 山崎武三郎

    山崎委員長 正森成二君。
  26. 正森成二

    ○正森小委員 佐々木参考人に伺いたいと思います。  金融制度調査会がいろいろ御努力をなさって答申も出されたわけですが、その中で出ております幾つかの銀行法の骨子のうち、非常に一般の注目を引いているのはディスクロージャーの強化であります。それで大蔵省などがまとめましたものを見ますと、ディスクロージャーは、銀行が社会のニーズを明確に把握するための手段として有益であり、「また、特に、銀行がディスクロージャーにより自らの行動と成果を国民に開示しその判断を受けることは、銀行の自己努力を促進する自己規制策として有効である」、こういうように言われております。  私は特にその後段の部分が非常に大切だと思うのです。しかし、そういう観点から見ますと、現在考えておられるディスクローズというのは非常に不十分で、資金の運用面だけでなしに、貸出先だとか貸付条件だとか持ち株だとか、あるいは人的な問題についてもある程度は開示すべきではないかというようにちまたでは言われているわけですが、佐々木参考人のこの点についてのお考えを承りたいと思います。
  27. 佐々木直

    佐々木参考人 今度の銀行法改正に当たりまして、ディスクロージャーの問題というのは一つの新しい問題点でございまして、調査会の審議のときにも非常に議論が多かった点でございます。しかし、方向につきましては皆さんの間にそう異議はございませんでした。どの程度やるべきかということにつきましては、事が信用の問題でもありますし、ことに個人的なものにかかわってまいります場合には、よほど慎重でなければディスクロージャーのためにかえってマイナスの面が出てまいりますので、その点は慎重にしなければいけないということで、その点につきましてある程度行政当局考えによる体制についての指導というものが必要ではないかということで答申ができております。したがって、具体的にどういうこととどういうことがいいかということはここでいま申し上げかねますけれども、やはりある限界があるものであるということだけは、私はこの際申し上げておかなければならぬのではないかと思っております。
  28. 正森成二

    ○正森小委員 ある意味ではディスクロージャーというのは、たとえば、いままで都市銀行などは消費者や中小企業に対して非常に冷淡な時期があったということで批判を受けているわけで、そうすれば、行政指導として融資比率についても指導を行い、ぴしぴし決めていくか、それでは銀行の自主性がなくなる、そのかわりにディスクローズしてそれを天下に公表するようにすれば、社会的な批判もあっておのずから自主性を保ちながら融資の適正も期待されるということだと思うのです。目的はそれだけではございませんけれども。そうだとすると、ディスクローズの程度というものは相当程度でなければ十分な効力を果たさないのではないかというようにも思われますので、私としてはお聞きしたわけです。  もう一つの点を伺いますと、金融制度調査会委員の中にもいろいろ説をお持ちの委員がおられるようであります。名前は申しませんが、佐々木会長の統制下にあるといったら語弊があるかもしれませんが、同じ委員の中に、この答申の欠点と言って幾つか指摘をしておられる方がおられます。相当ありますが、そのうちの一つだけを申し上げますと、公共性の概念についての批判でありますけれども、こう言っておられるのですね。  これは答申は、「「公共性」という概念が無限定に使われていることである。銀行の自主性を尊重するということを一方でいいながら、融資規制をはじめ各種の行政指導が強化されるおそれがあるように思われる。法律の表現として「銀行業務の公共性に鑑み……」という言葉が入ってくるのは法律のスタイルの問題であるから、とくにこだわる必要はないが、しかし答申全体を通じて繰り返し「公共性」ということがいわれていて、しかもその「公共性」とは何であるかということについてはとくに限定されていない。そういう意味で行政指導が強化される危惧がある。」云々と言っておられるわけであります。こういうように読みますと、恐らくどなたが言われたことかということもおわかりになると思いますが、こういう問題点について佐々木参考人としてどういうように考えておられるのか、具体的に、できるだけ率直な御意見を承りたいと思います。
  29. 佐々木直

    佐々木参考人 公共性の内容につきましては、確かに答申の中でそういう概念規定というものをいたしておりませんから、そういうような批判が出るかと思うのであります。ただ、いまの行政指導の問題は、いままで法律に基づかない行政指導がございまして、そういう行政指導で今後も必要であると考えられたものについては根拠法規をちゃんとはっきりさせるようにという努力を今度の調査会でいたしましたものですから、何か非常に統制が強まったような感じが出てまいりましたけれども、それはあくまでも法律に基づいたやり方以上はしないのだという考え方で問題の検討を進めたという点を御理解いただきたいと思います。
  30. 正森成二

    ○正森小委員 時間になりましたので、もう一問だけ伺って終わらしていただきたいと思います。  都市銀行が特に資金量を上回る、あるいは資金量の大部分を国債に食われてしまうということで、民間向けの貸し出しその他経理内容に非常に重大な影響を受けているということはつとに言われているところであります。それが特に五十七年からは借りかえがさらに激しくなりまして、六十年以降になりますと、それは膨大な量になるということで、借りかえ制度あり方等についても種々懇談会等で論議をされているわけですが、普通銀行あり方あるいは経理内容との関連において、佐々木参考人にこの借りかえ問題と銀行とのかかわりについて、何か御意見がおありでございましたら承って質問を終わらしていただきます。
  31. 佐々木直

    佐々木参考人 借りかえ問題について、特にただいまの時点で意見を申し上げる用意はございませんけれども、ただ、御指摘があったように、国債をあれほど普通銀行が多く所有するという姿は、これはやはり適当ではない。したがって、借りかえの機会その他等においてはその点を十分考慮した扱い方が必要であるというふうに基本的な問題としては考えております。
  32. 正森成二

    ○正森小委員 終わります。
  33. 山崎武三郎

  34. 柿澤弘治

    柿澤委員 佐々木参考人に幾つか御質問をしたいと思います。  ただいま行われております中小企業金融専門機関の制度改正に関する金融制度調査会の審議の経過、それから、先ほどちょっと御説明ありましたけれども、いつまでに仕上げてどうするお考えか、その辺、まず見通し等も伺いたいと思います。
  35. 佐々木直

    佐々木参考人 中小企業専門金融機関の問題につきましては、相互銀行、信用金庫、信用組合、この三つにつきまして審議を進めておりまして、その審議の内容は、一つ銀行法改正に伴って、当然、銀行に近いこれらの中小企業専門機関についても改正を要する、いわゆる並びの問題が一つございます。それからまた、この中小企業専門機関につきましては、その機関側からこういう点について改正が欲しいという要望もございまして、この二つを中心にして進めてまいりまして、大体近く結論が出て総会を開いてまとめるということになります。恐らく年内には答申が提出される、こういうふうに思っております。
  36. 柿澤弘治

    柿澤委員 ただいま銀行法改正との並びの問題点、それから各業界からの要望事項をあわせて審議をしているというお話でございましたが、各業界からの要望事項等でどのくらい答申の中に取り入れられるものがあるのでしょうか。
  37. 佐々木直

    佐々木参考人 中小企業金融専門機関につきましては、貸し出しなどについて普通の銀行にはございませんような最高の枠がはめられております。それは融資対象が中小であるということから、できるだけ広く資金を供給するといったような必要もあり、また余り一カ所にかたまってはいけないという考え方もあります。そういう金額の枠をその時代に合わせてだんだん上げていくという成長に伴う着物のつくり方の訂正、そういうものが主でございます。  それから信用金庫につきましては、外国為替業務を取り扱うかどうかということがいま問題になってきております。
  38. 柿澤弘治

    柿澤委員 中小金融機関の問題については、ひとつ基本的な理念といいますか、その辺について統一した見解があるのかどうか、お伺いをしたいと思うのです。  銀行法改正でも議論になりました銀行のデパート化論ということなんですけれども、いまの金融制度としては専門金融機関をさまざまな形で抱えている、長期信用銀行もございますし、外国為替専門銀行もある、中小専門機関がある。この辺について銀行法の方はどちらかというとかきねを低くするといいますか、相互乗り入れを拡大しているように思うわけですけれども、私はどうも現在の制度で言えば、むしろかきねを再構築した方がいいという趣旨の議論を前からしていたわけですが、いまの銀行法改正案の理念で考えますと、専門金融機関というのは一体生き残る余地があるのかどうか、特に中小企業金融専門機関というものが生き残れる余地があるのか、また必要性があるのかという点については金融制度調査会として統一した見解がおありなんでしょうか、それとも意見が分かれているのでしょうか、この辺は基本的な問題でございますので、会長の御意見をお伺いをしておきたいと思うのです。
  39. 佐々木直

    佐々木参考人 金融制度調査会での審議の過程におきましては、中小企業金融専門機関の必要性というものはほとんど疑うような意見一つも出ませんでした。これは非常に大事なそれぞれの役割りを十分果たしておるという認識で議論が進められておりまして、その点はいままでの専門機関が果たしてきた業績というものは高く評価されておると思いますし、今後もむしろその方向に非常に努力が必要だ、大いに期待すべき問題であるというふうな議論が多かったと思います。ですから、ただいま御指摘のございましたような、役割りを疑うような意見の開陳というのはほとんどなかったと記憶しております。
  40. 柿澤弘治

    柿澤委員 そういう必要性を疑う議論がなかったというお話でございますが、その場合に果たしてそれでは普通銀行が中小企業金融分野にますます乗り出してきている現状の中で生き残れるのか、必要性は疑う余地がないと言いながら、たとえば相互銀行等は上下からはさみ打ちに遭って、相互銀行としてのレーゾンデートルといいますか、そういうものが果たしてあるかどうか、業界の中でも非常に悩んでいらっしゃる。その点から相互の二字をとってほしいという考え方が出てくるわけですけれども、その点で果たして、必要性を疑わないというお考えと、それから相互銀行は相互の名前を残したままで生き残れるとお考えなのかどうか、その辺、理念と現実論、矛盾がないかどうか、お聞きしたいと思います。
  41. 佐々木直

    佐々木参考人 金融機関で中規模あるいは小規模のものが競争の上でどういうハンディキャップがあるかという問題だろうと思うのでございますが、確かに、競争も激しい中でいろいろ苦労があることは事実だと思います。しかし、中小企業専門機関としての道を進んでいくことによって自分の基礎をはっきり伸ばしていく可能性は十分あるというのがわれわれの判断でございまして、今度商号問題がああいうような結末になりましたのも、これはいまの、現状がそれの審議に適当でなかったということでございまして、決定的な問題とは考えたわけではございません。どうもちょっといまの御質問に対して十分なお答えにならないかと思いますが、調査会の席上で中小企業専門機関の危機感と申しますか、それほど強く出たというふうに私考えておりませんので、私の説明がどうも少し甘くなるかもしれませんけれども、私が感じたところはいま申し上げたとおりでございます。
  42. 柿澤弘治

    柿澤委員 最後の質問になるかと思いますけれども、信用金庫、信用組合等についても組合金融という性格がこれからの審議の中でどう取り扱われるか。だんだん薄くなって一般金融機関に近くなってくるんじゃないかと思うのですね。そういう点から考えますと、これも専門金融機関としての性格が希薄になってくる、またそれ以外に生き残る道はないと思うわけですけれども、それにもかかわらず中小企業金融専門機関の必要性というものについて疑う余地がない、そもそも論議する余地がないんだというふうに楽観的に考えてよろしいのでしょうか。信用金庫、信用組合の組合金融としての性格が希薄になってくると思うのですけれども、その点からも普通銀行化というものが必然の道ではないかと思いますけれども、その辺はいかがでしょうか。
  43. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま御指摘の点は確かにありますし、それから今度の改正答申でも組合員以外との取引がある程度緩和されるような考え方が恐らく入ってくると思います。御指摘のような変化の方向はあると思いますが、中小企業専門機関としての存在の意味は十分あると私思いますので、全体の運営にある程度変化が起こりましても、その本筋だけははっきり残るものだと私は考えております。
  44. 柿澤弘治

    柿澤委員 どうもありがとうございました。
  45. 山崎武三郎

    山崎委員長 これにて佐々木参考人に対する質疑は終了いたしました。  佐々木参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
  46. 山崎武三郎

    山崎委員長 ただいま参考人として東京大学経済学部教授館龍一郎君が御出席されております。  館参考人には、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  銀行法等改正をめぐる諸問題等につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  それでは、館参考人に対する質疑に入ります。堀昌雄君。
  47. 堀昌雄

    ○堀小委員 本日は、参考人、お忙しい中をありがとうございました。  本日は、いま金融制度調査会答申をいたしておりまして、次の通常国会に向けて大蔵省としては銀行法改正の問題を詰めておる段階だと思うのでございますが、法律案になってからもちろん議論はできるのでありますが、大変複雑で重要な問題が実はいまございますので、法律案がつくられます以前に、最終的には立法府の私ども判断によって行われることでございますけれども政府が提案をいたします法案ができるだけ望ましい形で提案をされることの方が立法府としても適当ではないか、こう考えましてお越しをいただいたわけでございます。  そこで、私、先生のお書きになったものを幾つか拝見をいたしまして、おおむね先生のお考えに同感な部分が多いわけでございます。特に、先生金融制度調査会のメンバーでもあられますが、同時に証券取引審議会の基本問題委員会でございますかの委員長もなすっていらっしゃいまして、現在一番微妙な問題となっております銀行証券関係の問題について双方の立場を十分御理解をいただいておる学識経験者であられるわけでありますので、特に本日はいま問題になっております銀行ディーリングの問題と窓口販売の問題についてお伺いをいたしたいと思っておるわけでございます。  そこで、それに入ります前に、実は先生も御指摘になっておりますけれども、今度の金融制度調査会答申というものが銀行法改正というごく限られた問題を中心に御論議が進められておりまして、将来的な日本金融構造というのはどういうふうになるかというビジョンに欠けておるという御指摘がされておるわけであります。私も実は先生のその文章を拝見いたします前から、大体現在の銀行法、五十年もそのままになっておりまして、今度の銀行法改正をいたしましても、やはり三年や五年でちょこちょこ変えるということではなくて、恐らく二十年程度は役に立つ法律でなければまずいのじゃないか、そういたしますと、一九九〇年における日本金融構造というのは大体どういうことになるのだろうか、西暦二〇〇〇年の金融構造はどうなるだろうかというようなことがまず先に論議をされて、その一つのビジョンに基づいてそれに対応できる法律考えるということが必要ではないかとかねがね言っておりまして、先生の資料を拝見いたしまして、先生も同じ御指摘をしていらっしゃる点でまことに感銘を受けたわけでございます。  そこで、そういう次元のあり方の中で、今度提起されております問題ではバンクディーリングの問題以外はおおむね今日望ましい問題だ、私はこう考えているのでありますが、この一点に関してだけは、これは非常に銀行というもののあり方についても問題がありますし、そういう債券市場と申しますか、市場としての問題にも非常に関係がある、実はこう考えております。  そこで、先生もいま現在とられておる銀行分離主義専業主義と申しますか、この問題についての論議が詰められないままに問題が処理をされておる点にはどうも自分として問題があるとおっしゃっております。私、実はいまから十年前の金融制度調査会の当時も大蔵委員としてこの問題にタッチをいたしておりまして、当時やはり銀行デパート化論というものが大変強く主張され、同時に上位都銀からはCDを速やかにやってほしいという要請がございました。しかし、私はその当時、分離主義専門主義という形で来ておるこの金融制度というものが、当面十年やそこらでそんな変化を必要としない、だから、私はデパート化論という問題よりもやはりそういう分離、専業の中でより国民のニーズに合うような対応が進められるべきではないだろうか、こういうふうな意見を当時申し述べておったわけでございますが、この十年を振り返ってみまして、私はその当時私が分離主義でいいと言ってまいりましたことを今日もまだ改める必要はない、こういう気持ちでございます。  そこで、先生のお立場からちょっといまの銀行あり方についてひとつお答えがいただければと思います。
  48. 館龍一郎

    ○館参考人 館でございます。  実は大変大きな問題を提起されまして、どういうようにお答えするのがよろしいのか私自身も迷う面がございます。先生も御承知のように、世界の金融の大勢というのを考えてみますと、全体としては戦後の時期あるいは戦前でございますと、大体専業主義といいますか分離主義というのが非常に強かったわけでございますが、その後だんだん金融機関の同質化というのが進んでおりまして、現在の時点で世界各国の情勢をとって考えてみますと、大変な勢いで同質化が進んでいるという状況ではないかと思うのです。  それでは、そういう同質化が大勢として進む中でそれぞれ専門主義を必要としたような基盤が全くなくなったのかと申しますと、必ずしもそうではない。そこで、そういう同質化の中で従来専門主義に基づいて必要とされたそういう資金需要にどういうようにこたえていくシステムをつくっていくかということがやはり最大の問題になっているのではないだろうか。別の言い方をしますと、同質化は効率化という観点から進められている面が多いわけでございますが、そういう効率化と、一方で、いつでもこういう制度考える場合のもう一つの柱になりますフェアネスといいますか、公正、その調和をどこに求めていくかということが現在の最大の問題になっているのではなかろうか、こういうように考えております。
  49. 堀昌雄

    ○堀小委員 私も実は政党の立場は社会党でございますけれども経済については競争原理論でございます。当委員会で一番最初から金利自由化論というものを唱えて今日に至っておるわけでありまして、まさにそういう意味で、何か社会党というのは統制経済、計画経済の党という誤解が一般にございますけれども、当委員会に関してはそういう御理解をいただいておると考えるわけであります。しかし、競争原理もいま先生がおっしゃいましたように、おのずから公正の枠の中でないと、要するに、フライ級のボクシングの選手とヘビー級のボクシングの選手をリングに上げてやらせるなんということは、これはもう公正でないわけでございます。ボクシングでもやはりそこにおのずから体重規制があるという点はそれなりに考慮が必要なことではないか、私はこう考えておりまして、その点ではもう先生の御意見に全く同感なのでございます。  そこで、今度は少し具体的にバンクディーリングの問題についてお尋ねをしたいと思うのでございますが、このバンクディーリングというものに対する正確な定義を置いて議論をいたしませんといろいろ問題があろうかと思うのでございますが、きょうは時間がありませんので、もう簡単に、これは証券取引審議会の「公社債市場当面の諸問題について」という中でバンクディーリングを「当審議会がバンク・ディーラー問題として審議の対象としたのは、銀行等が流通市場における仲介業務として商品有価証券たる国債等を売買することである。」こう書いてございます。これは一番簡単でございますので、とりあえずこういう定義のもとにこの問題を取り上げさしていただきたいと思うのでございますけれども、私は、そういう市場で仲介業務を営む者は少なくとも売買をいたします関係者に対して対等の立場、言うなれば中立的な立場でそういう売買の業務に対してディーラーとしてそこへ入るということが大変重要な要素ではないだろうか。ですから、あるディーラーがその関係者に大変な影響力を持っておる、言うなれば支配力を持っておるような者が介入をいたしますと、価格形成の公正が阻害をされるおそれが十分に起こり得る、実は私はこういう判断を持っておるわけでございます。  ですから、あくまで仲介の業務というものは、何かもめごとが起きましたときにどっちかの肩を持っている者が仲介に入ったのでは公正な処理ができないと同じように、当然両者に対して対等、中立、公正な立場ということがディーラーとしての一つの重要な立場ではないだろうか、こう私は考えておりますが、現在、バンクディーリングを主張しておられます都市銀行は、特にその中で御熱心なのは旧財閥系銀行でございますけれども、その旧財閥系銀行の持っておられます企業支配力というものは、持ち株を通じても、あるいはその持ち株の影響力のさらにその下の影響力においても、あるいは役員派遣の現状においても、特にアメリカなんかと比べてみましても比較にならないほどの実は強力な支配力を持ったものだと思うのであります。そういう強力な支配力を持ったものが市場に参入をしていまの価格形成その他が公正に行われるかという点については、私は大変疑問がある、こう考えておりますが、先生、その点はいかがでございましょうか。
  50. 館龍一郎

    ○館参考人 ただいまの御指摘の点でございますが、ディーラーが価格形成に非常に強い影響を与えるというような場合に、価格形成がゆがめられる可能性があるということは事実でございます。ですから、一番望ましいマーケットというものを考えた場合には、そういうことがない形にいつでもマーケットを規制していくということはこれは公正取引の問題でありまして、公正取引の要件を満たしたマーケットでなければならないというように私も考えております。
  51. 堀昌雄

    ○堀小委員 そこで、いまの問題で私が一つ感じますのは、実は今度この答申がこの問題を資金融通という形の中に取り入れて、あのまま答申を読みますと、これは銀行業務として適当であるというふうに読めるような形に答申がされておるわけでございます。私はいま申し上げたような問題を見ながら、この答申の角度は市場の側から物を見ないで、要するにある特定銀行の側から物を見ているというふうな気がしてなりません。  実は、昨年十二月二十六日に金融小委員会佐々木参考人においでをいただきまして、今日金融制度調査会というもののあり方はこれができたときとは非常に違ってきている、要するに、当時は銀行局だけの問題の処理でよかったと思うのありますが、今日は国債発行に関しての主計局の考え方も当然必要でございますし、理財局も関係がございますし、当然証券局も関係がございます、国際金融局も関係がございます。もうある意味で大蔵省は全省で取り組まなければならない問題になっておるときに、ごく狭い銀行局という範囲だけで、ややもすれば銀行局は銀行立場に立って物を見るという部分でございますから、私はかねてから大蔵省は局あって省なしと、ここでもう何十回と言ってきていることでございますけれども、そういう役所の性格から見まして、まあ森田さんがにやっと笑われたのもおわかりの点だろうと思うのでありますけれども……。ですから、私はやはりこういう問題は銀行の側から物を見るのではなくて、要するに、市場で取引をするそういう側、ある意味では国民の側から市場を見、その市場を見た中からこの問題を見るという角度でこの問題は処理をされませんと、何か行政に任せる行政に任せるということで、銀行局と証券局とで話をしろという話でございますが、私は、理論的にはこれは話がついたらおかしいと思うのでございます、立場がはっきり違うのですから。  公正な立場というのは、私は国会だろうと思うのであります。私どもは、銀行にも証券にも何も特別の関係があるわけではございません、国民を代表しているわけでありますから。まさに国民の側からこれが適切かどうかという判断が最も望まれるにもかかわらず、残念ながら実は両方からこうなる。  しかし、これを読んでみますと、金融制度調査会答申は必要だとかなんとか書いてございますけれども、どういう理由でこれが必要だというふうに説得力を持った部分は何もないのであります。あるいはこれはこのことがすでに銀行の付随業務だから改めて言うことはないという前提があったのかもわかりませんが、私ども第三者が読みますと、何だかこれは全然説得力がない。証券取引審議会の方の「公社債市場当面の諸問題について」の方を読みますと、ここにはきちっとしたロジックが述べられている。そうなりますと、片一方ロジックなし、片一方ロジックありということになれば、私はやはり物事は道理で物が決まるべきだという立場に立っておりますと、証券取引審議会の方がどうもそういう点でははっきりしているのではないか、こう考えるわけでございます。  ですから、そういう意味で、この問題を銀行法業務に書き込むようならば、私はディスクロージャーも賛成でございますし、大口貸し出し規制も賛成でございますし、週休二日も賛成でありますし、数多く賛成なものがございますが、銀行の本質に関するという点では、それらはいずれも次元の低い問題でございます。要するに、銀行業務がいかにあるべきかというのが銀行法の一番の中心でありますから、このようなものが書き込まれるような銀行法ならない方がいい、こうはっきり考えておるわけでございます。  そこで、先生にこういういまのバンクディーリングの問題を銀行法業務に書き込むことが適当かどうかという点についてのお答えをいただきたい。
  52. 館龍一郎

    ○館参考人 いろいろの考え方がございますが、銀行の本来の業務といいますか本質的な業務以外の業務については、本質的な業務を阻害しない限りにおいてはできるだけ自由にしていくということが、将来の日本金融制度の姿を考えたときに望ましい、こういう考え方があり得るわけでございますし、そして、この金融制度調査会答申の底に流れている一つ考え方はそういう考え方ではなかろうかというように私は考えておるわけでございます。  そういうようになりますと、結局、仮に証券業務というようなものをとって考えたときに、それが銀行本来の業務を阻害しない限りにおいては銀行業務として認める、こういう考え方があってもいいはずではないだろうか、こういうように私は考えるわけでございます。  ですから、むしろこの問題を考えてまいります場合に——いま先生の方からは市場の側から考えるという御指摘がございました。確かに、市場の側から考えるという考え方もございます。しかし、その市場はいろいろの経済主体によって構成されているわけでございますから、その経済主体の側から問題を見るということも当然あっていいのではないか、こういうように考えておるわけでございまして、全体として証券業務をどういうように考えるかというのは非常にむずかしい問題でございますが、御承知のように、証取法六十五条の母法になりましたアメリカ銀行法について見た場合、なぜアメリカ銀行法証券業務を一応禁止したかということを考えてみますと、まず第一は、これは証券業務を行うことが預金者に不測の損害を与えるのではないだろうか、そういう預金者保護の観点というのが一つのポイントであったと思うのです。これは非常にリスクが大きいということが一つであったというように考えております。  それからもう一つは、銀行証券業務を全面的に取り扱う場合には、ただでさえいろいろな恩典を享受している銀行証券業務を扱うということが市場支配力の集中を強めることになるのではなかろうかという、そういう懸念があったということですね。  それから三番目には、結局、内部での利害の対立、コンフリクト・オブ・インタレストという問題が証券業務を扱った場合起こり得るのではないだろうか。恐らくこの三つの点が証券業務銀行に行わせた場合の問題点ではないか、こういうことで、御案内のグラス・スティーガル法で証券業務を禁止したということではないか。  ただ同時に、そういう三つの点から証券業務一般を禁止したわけでございますが、公共債についてはこの禁止を解除しているわけです。  なぜ公共債の取り扱いについてその禁止を解除したのかということを考えてみますと、まず、内部利害の対立が公共債の取り扱いを行うことによって生ずるだろうかということを考えてみますと、これは全く起こり得ないわけでございますね。公共債を銀行が扱ったからといって、内部利害の対立が銀行の中で起こる可能性はないということが一つございます。  それから、一番最初に挙げました危険という問題を考えた場合に、国債その他の公共債を扱う場合に生ずる危険は、ほかの事業債を扱う場合に比べてはるかに小さい。もちろん価格が変動するわけですから、全くリスクがないというわけではございませんけれども、しかし、ディフォールトリスクというようなことはないという意味で、この危険は非常に小さいということから、公共債については例外的に証券業務の取り扱いの解除を行ったというのが恐らくグラス・スティーガル法の決めていった基本の精神ではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。  ただ、それでは日本の場合国債の取り扱いをやめてきたのはどこにその理由があったのだろうかということを考えてみますと、これはやはり長期的な観点と短期的な問題といいますか、この二つに分けて考えていかなければならないのではないか、こういうように私は考えておりまして、短期的な、つまり当面の問題として考えたときに、銀行を中心にして非常に強く主張されている点は、これだけ大量の国債が発行されているという状態のもとでは、国債の消化を促進するために、銀行の窓口販売、ひいてはディーリングということを行うのが適当ではないかということで、そういう主張が最近強くなされてきたわけでございますが、しかし、この点については、私は幾つかの問題があると考えております。  一つは、窓口販売を行うことによって果たしてどれだけ国債の消化が促進されるだろうかという問題でございます。私はもちろん、窓口販売を認めれば国債の個人消化が進むであろうということは否定できないと思うのです。それだけ近づきやすくなるわけでございますから、当然個人消化は進むことになるだろうと考えております。個人消化が行われれば、ほかの消化方法と違って通貨の供給量の増大をすぐにはもたらさないという意味でメリットを持っておることも事実だと思います。  ただ、しばしば個人による国債の保有は安定保有であるというように言われておるわけでございますが、長期国債のように資本価値が変動するという性質を持った証券については、個人といえども投機動機に基づいて売ったり買ったりすることは避けられないわけでございますから、一般に言われているほど安定的な保有層であるというようには私は考えておりません。  ですから、窓口販売をしてどこまで利益があるのかということについてはわからない、もちろん全く利益がないというわけではございません。一方、銀行が窓口販売をする場合に、それによってたとえば販売促進のために融資が行われるというようなことがありますと、通貨がふえないというせっかくの効果は実は生じないことになってしまうとか、価格形成にもある影響を与えてくるというような問題があり、さらに先ほどグラス・スティーガル法の際に説明しましたように、市場支配力の集中という点から考えた場合に、やはり現在の段階で見る限りは、銀行証券との力というものをとって考えたときには、証券に比べて銀行の方がまだはるかに強大な力を持っておるという意味から申しまして、いまそういう証券業務を直ちに認めていくことになりますと、市場支配力の集中というようなところで多少の問題が出てくる可能性があるのではないだろうか、そういう観点からも、私はどちらかといいますと、当面の問題といたしましては公共債についてバンクディーリングであるとか窓販について消極的でございます。しかし、これをやや長い目で見たときに、バンクディーリングであるとか窓口販売が果たして全く不適当なものであるかどうかということになりますと、それは必ずしもそう言えないのではないだろうか。確かに、いまは力関係が先ほど申しましたような状態であるといたしましても、急速に証券業の力も増大してきております。さらに言えば、証券業のそれ自身の内部のパフォーマンスは必ずしも全く問題がないというような状態ではございません。やはりいつでも非常に強力な潜在的な参入の可能性を残しておくことによって、もう少し証券業におけるパフォーマンスの向上を図ることができるのではなかろうかと考えておりますから、私は将来、公共債についてバンクディーリングを含めて証券業務を行い得る余地を残しておくことが、長期を見通した法改正考える場合には必要なのではなかろうか、こう考えている次第でございます。
  53. 堀昌雄

    ○堀小委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  54. 山崎武三郎

  55. 柴田弘

    柴田委員 きょうは、館先生にはお忙しいところをどうもありがとうございました。  私は、金融制度調査会におきまして答申があったわけでございますが、先ほども佐々木会長お尋ねをいたしましたが、郵便貯金問題について先生の御意見をお伺いしたいと思います。  御案内のように、日銀の統計を見てまいりましても、今日その個人預金のシェアは三〇%になんなんといたしております。金利二元性の問題あるいは民間経済の活力ということを考えていきました場合に、今日の金融制度あるいは金融政策を考えていく場合には、この郵便貯金は切り離せない問題である、こういうように考えるわけであります。  そこで、ここに至りましてもうそろそろこの郵便貯金問題につきまして決着をつけるときが来たのではないか、このように私は考えるわけでございますが、その辺につきまして何か具体的な処方せんがありますればひとつ先生の御意見をお聞かせいただきたい、このように思います。よろしくお願いをいたします。
  56. 館龍一郎

    ○館参考人 どうも大変むずかしい問題でございまして、さらに、その具体的な処方せんということになりますとますますむずかしくなってまいるわけでございます。  私、郵貯についてはいろいろな問題があるように考えておりますが、いま先生の御指摘にありました金融政策の一元性が失われてしまう可能性という点、これは非常に大きな問題ではないかというように考えておるわけでございます。御承知のように、普通の金融機関あるいは銀行を例にとって考えてみれば、銀行が預金について非常に高い金利をつけるということになりますと、資金コストが上昇するために貸出金利を上げなければならない。ところが、貸し出しの金利を上げれば借り手がいなくなってくるというような形で、おのずから預金金利等についても一定の限度がそこで定まってくることになるわけでございます。郵貯の場合には、民間の金融機関に見られるような自動的な調整作用が働かないわけでございますね。ですから、金融政策等を行っていく場合に、どうしても郵貯についてはほかの金利に直ちに追随する、そういうシステムができませんと、これは金融政策がうまくできないという問題が起こってくるわけでございます。そういう意味で、自動的な調整作用がそこに働かないのだということをやはり正当に認識したそういう現実的な行動と同時に、システムを何らか考えていかなければならないのではなかろうか、こういうように考えております。しかし、それを具体的にどうということは、ちょっと私、いまお答えする準備がございません。
  57. 柴田弘

    柴田委員 では次の問題。  ディスクロージャーの問題、これは銀行の民間金融機関としてディスクロージャーということで答申をされておるようであります。もちろん、この公共性、社会的な責任、これまた当然だと思いますが、その一方において、私の理解に間違いがあればなんでございますが、政府系の金融機関仕事の内容につきましても、やはりディスグロージャーをしっかりとやって、国民の理解というものを求めていくべきではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。そして国民の正確な判断を得る、これが社会的責任あるいは公共性というものではないかと思いますが、政府金融機関のディスクロージャーの問題につきましては、先生のお考えは何かありますればお伺いをしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  58. 館龍一郎

    ○館参考人 金融制度調査会金融制度検討を行いました場合には、実は政府金融機関の問題というのを中に含めないで、もっぱら民間の金融機関を中心に検討を行いましたので、政府金融機関の問題というのは実は取り上げておりません。したがいまして、金融制度調査会答申との関係においてお答えすることはできないわけでございますが、私は幾つかの条件は当然満たされなければならない、たとえばプテイバシーとか、そういうものを侵してはならないという問題はございますが、そういう幾つかの条件があることは事実でございますけれども、それを除いて言えば、何についてもできる限りディスクローズしていくということが望ましいと考えます。したがいまして、政府金融機関の場合には予算とかいろいろな形でディスクローズはされているのではなかろうか。その点非常に明確にはしておりませんので、責任を持ったお答えができませんが、できるだけディスクローズされるのが望ましい、こういうように考えております。
  59. 柴田弘

    柴田委員 それじゃ最後に一点でございますが、日銀法の問題でございます。この改正の問題で御意見があればお伺いしたいのですが、これは現在日銀政策委員会のより一層の独立性の強化あるいは民主化、情報の公開ということで改正したらどうだという意見もあるのであります。その他いろいろな改正についての御意見もあると思います。この辺のことはよく先生承知でございますが、この日銀法の改正という問題についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたい。
  60. 館龍一郎

    ○館参考人 これも答申を離れての私見になるわけでございますが、日本銀行法が御案内のように戦争中の立法でございまして、ドイツのライヒスバンク法をほぼそのまま踏襲するというような形でつくられており、その結果、日本語の文章として見ますと非常に問題のように思われる、そういう印象を与える文言が多いことは否定できない事実でございます。ただ、意外に、英語に訳してみますとそれほどおかしな文章ではなくなるのです。ということは、実体面においてどれだけの問題があるかということを考えてみますと、意外に実体面ではそう大きな問題がないという法律だというように私は考えているわけです。  ただ、御案内のようにそういう日本銀行法で戦後政策委員会が加えられたわけでございますが、日本銀行の独立性を高めていくということはある程度望ましいわけでございますが、私はどちらかと申しますと相対的独立論者と呼ばれている立場でございまして、日本銀行を絶対的に独立な機関として非常に強い権限を与えるというのは適当でない。なぜならば、日本銀行は直接国民に対してその責任をとるというような形にはなってないわけですね。そういう機関が非常に強い独立性を持つということが果たして適当なのかどうかということについては多少の疑問を持っているわけでございます。日本銀行が相対的な独立性の中で実際の政策に当たってどれだけ独自的な判断を発揮し得るかというのは、結局は人の問題であるというように考えております。  さらに申しますと、もし日本銀行がもう少し外に対してみずからの権威を高めたかったならば、それは日本銀行が政策委員会をもう少し大事にしてくればよかった。設立のときから理事会の上に政策委員会ができるということについて非常な抵抗があり、政策委員会の外に対する権威、それから権限を弱めるように弱めるように努めてきたように私などには見えるということが、実は日本銀行がみずからの独立性を、これは相対的な独立性でございますが、弱めてしまったのではなかろうか、こういうように考えております。
  61. 柴田弘

    柴田委員 ありがとうございました。
  62. 山崎武三郎

  63. 竹本孫一

    竹本委員 先ほど来先生のお考えいろいろ承りましてありがとうございます。特にアメリカ銀行法の問題、日本の証取法六十五条二項の問題、ただいまはまた国債等の窓販とか、バンクディーリングの問題について短期長期に分けてのお考え、よく理解できました。  そこで、私、時間もありませんので、一つだけ先生にお伺いしたいのですが、先ほどからも言われておりますように、最近金融自由化効率化ということが非常に叫ばれております。一応大きな流れとして結構だと思いますけれども、政策的な問題として考える場合には、すべて一つの政策を打ち出す場合には一定の前提条件がある、それからすべてのものにはメリットとともにデメリットが必ずある、そのデメリットをどう救済していくかという問題もあわせて考えなければ政策態度としては完全でない、かように思います。  そこで先生にお伺いしたいのは、結論的に簡単で結構ですが、金融自由化あるいは効率化を言われる場合には、いかなる前提条件を想定しておられるのであるか。たとえば、先ほども公正な競争が行われるというようなお話がありました。それからいま日銀法の問題もありましたけれども、私は日銀中立性の問題についても、これまた前提条件があると思うのです。特にわれわれ政治の立場から申しますと、政治のコントロールが日銀総裁の上にも加えられなければならぬ、こう思うのですよ。しかし、それにも前提条件がありまして、政党が本当に国益の上に立って問題を論議し得るだけのマナーが確立しておるということでなければならぬと思うのです。いまのようにスキャンダルばかり多くあったり、あるいは政治的な大合唱の方が先に走ったりする情勢の中で、私は言葉が悪いのですけれども、政党が反省しなければならぬという意味において常に政党性悪説を説いているわけです。そういう政党性悪説を前提にした場合には、いたずらに、日銀中立性とか独立性というものを抑えるという、理論としては正しいのですけれども、これがうまくいくかどうか疑問がある。  それは別としまして、とにかく金融自由化効率化にはいかなる前提条件をお考えになっておるかということが一つ。それからもう一つは、本当の意味自由化効率化をやれば一体どうなるであろうかということを考えた場合に、たとえば地方の中小あるいは弱い立場を持っておる銀行がつぶれる場合もある。日本では銀行がつぶれてはならないという考え方で過保護行政も行われているわけでありますが、とにかく自由化を言う人は銀行もつぶれるのだということを前提にして物を言っているかどうかということが一つ。それからさらに国債の大量発行の問題あるいは大量の借りかえ発行の問題もありますから、そういう問題についても本当の自由化政府としては大変な国債を任していくことがやむを得ない動きでございますが、それに対応ができるのかどうか。それからまた、住宅金融とか中小企業金融とかいう国策金融機関もありますけれども、それらの問題は一体どうなるか。その辺が私として考える簡単に言えばデメリットの面じゃないかと思いますが、それらの問題についてもどういう対応を考えつつ自由化効率化の問題は言われておるのであろうか、その辺についての先生のお考えを承ればありがたいと思います。
  64. 館龍一郎

    ○館参考人 これまた大変むずかしい問題でございますが、自由化、それから競争の促進というのが望ましいといたしましても、それに全く弊害が伴わないわけではございません。普通、教科書的に自由競争を言うときには、すべての経済主体がほぼ同じような競争力を持っておるという前提のもとで議論をしているわけでございますが、そういう条件が満たされるはずもない。そこで実際問題といたしましては、われわれはここでは自由化、それから競争というようなことを言いますが、ワーカブルコンペティション、本当に働き得る競争というのを目指して政策をやっていくということを考えておるわけでございまして、完全な意味での自由競争を行うのが望ましい、こういうことではないということを御理解いただきたいというように思うわけでございます。独禁法あるいは公取法の中で考えられる独禁政策というのは、基本的にはそういうワーカブルコンペティションを目指す政策というように考えておるわけでございまして、金融機関の場合にもやはり同じようにワーカブルコンペティションを実現するのが望ましい、こういうように私は考えておるわけでございます。  そういうワーカブルコンペティションを行うにしても、なおいま先生から御指摘のありましたようないろいろな問題が起こってき得る可能性があるわけでございます。と申しますのは、何といいましてもそれだけ競争を促進すれば、いろいろな意味での弱肉強食的な面が多少生じてくるということは避けられないということがございますし、将来についての不確実性が増大するという面があるということ。為替レートを自由化することによって、いろいろな外のショックに対してはショックアブソーバーとして非常にうまくそういう為替レートの自由化機能しております。しかし、そういう為替の自由化は一方で不確実性を増大しておるというデメリットが生じているというのと同じように、不確実性の増大という問題が起こってき得ると思います。したがって、そういう競争を促進していく場合には、ちょうど預金保険制度の導入のときに問題になりましたように、そういう預金保険制度等の一方でのそういう不確実性に対する対策を同時に考慮しながら政策を行っていき、さらに制度考えていかなければならない、こういうことになろうか、こう考えておる次第でございます。
  65. 竹本孫一

    竹本委員 大変ありがとうございました。  ただ、私どもが心配いたしますのは、ワーカブルコンペティションというかフェアコンペティションと申しますか、これが行われるような情勢であれば満点なんです。ところが、国内の資本主義経済も初期の競争的資本主義から独占的な資本主義の段階に入っておる。国際経済においてもアラブの油の値上げみたいに、必ずしもフェアであるかどうか問題はありますけれども影響力は大きい。こういうような基盤ががらり変わった、というと言い過ぎになるかもしれませんが、大きく動いている。そういう前提というか条件の中でどれだけのフェアコンペティションなりワーカブルコンペティションが期待できるかというところに疑問を持っておるのでございますが、この辺は見解の相違ということにもなると思いますので、この辺で質問を終わります。  ありがとうございました。
  66. 山崎武三郎

    山崎委員長 正森成二君。
  67. 正森成二

    ○正森小委員 館先生にお伺いしたいと思います。  先生が去年お書きになりました論文の中で金融制度調査会答申にお触れになって、「私はこの答申の結論については、反対の部分がないわけではないが、総じて賛成の部分が多い。しかし結論には賛成であっても、論理性というか推論には反対だという部分が多く含まれている。」こういうようにおっしゃいまして、たとえばその一つの例として「答申金融制度全体のあるべき姿についてのビジョンを欠き、都市銀行を中心とした銀行デパート化論を、“同質化”という言葉のもとに漫然と受け入れているところに一つの問題があるということである。」とか、あるいは非常に率直な御意見でございますが、「いつのまにか審議そのものがいわゆる新金融効率化行政をバックアップするための審議会に変質していくという状況を生み出していった。」というようにお述べになっております。  そこで、制度調査会では十分にお述べになれなかった先生のこういうようなビジョンの欠如等についての御意見を短い時間でございますが、率直にお述べいただきたいと思います。
  68. 館龍一郎

    ○館参考人 いまの問題でございますが、私、金融制度調査会の中で概して必要なことは人の顔色を見ないで発言をしてきておりまして、いま御指摘のような点についても全く発言しておらないわけではございません。ですから、たとえば合併とかそういうことの問題につきましても、金融制度調査会の場でも私自身の見解は一応述べております。そのことを同時に文章にも書いたということでございまして、私はその中にも多分書いたと思いますが、エフィシェンシー、効率と同時にフェアネスということが非常に重要であるというふうに考えておりまして、それが、前回答申の場合に効率化行政という点に非常に力点が置かれていまして、その前回金融制度調査会答申を受けて今回もまた効率化の方に非常に力点を置いたような形で答申がなされようとしまして、それは新しいという言葉はつきながら新しい効率化のためにというように書かれておるわけですが、私はどんな制度であっても経済制度である以上、効率化を無視した制度というようなものは意味のない制度であるというように考えているわけです。効率的でない制度というのはむだを含んだ制度ということですから、当然いつでもそれは一つの目標にすべきだ。したがって、今回金融制度調査会において新たに問題を提起するとすれば、従来とかく無視され軽視されがちであった公正ということを非常にはっきりと表に出すというのがいいのではないだろうか。審議の内容でも、ディスクロージャーの問題であるとか大口融資規制の問題であるとか、そういう問題を事実取り上げているのだから、はっきりとそのことを出したらどうかというのが私の一つ考えでございましたので、その点をその文章にあらわしておるということでございます。
  69. 正森成二

    ○正森小委員 大筋では積極面があるというようなお考えのまうでございまして、特にいま先生が御指摘になりました公正を保証する担保というか手段としてディスクロージャーの制度が導入されることになったのはメリットであると言われておるわけです。このディスクロージャーの点については、融資規制という問題を行政的にやってしまうか、あるいは融資自体については各銀行の自主性を尊重しながらディスクロージャーをやることによって世間の批判にさらして、それによっておのずから自主性を尊重しながら融資についても一定の公正な方向づけを行っていくという考えがございまして、先生は、私が後の方で申した自主性を尊重しながら融資に一定の公正の方向を与えていくというお考えに賛成のようにこの論文から読み取らせていただきました。そういたしますと、いま調査会が考えておりますディスクロージャーの範囲というのはいささか狭過ぎるのではなかろうか、もう少し貸出先だとか貸付条件だとか持ち株だとか、あるいは人的な交流のうち必要な部分についてもディスクローズの対象にする方が先生の御持論をより徹底させることになるのではないかと思われる点があるのですが、いかがでございましょうか。
  70. 館龍一郎

    ○館参考人 先ほどもディスクロージャーのことについて申し上げましたが、幾つかの要件はどうしても満たされなければならないと考えておりまして、それを除けばできるだけディスクローズされるのが望ましい、これが基本的な私の考えでございます。  ところで、ここで私がディスクロージャーの方に非常にウエートをかけましたのは、すべての銀行が同じようになることは望ましくないというように考えております。それぞれの立地の場所にもよると思いますし、同じ普通銀行であっても銀行の性格がいろいろ違ってもいい。そこで、一律に融資比率を行政的に指導するというのではなくてディスクロージャーということを主張したわけでございますが、その場合にそこに挙げられているものはいわばディスクロージャーの最低の線、それだけは担保しなければならないという意味でございまして、それから先、個々の銀行が積極的にその業務内容あるいは融資比率等を自主的に発表されるのは望ましいことである、こういうように考えております。
  71. 正森成二

    ○正森小委員 終わります。
  72. 山崎武三郎

  73. 柿澤弘治

    柿澤委員 館先生は私が金融論の手ほどきをいただいた恩師でございますので、先生の御意見を伺いたいと思うのですが、銀行法改正案の基本的な理念というのは、専門金融機関普通銀行との間の同質化というものをある程度肯定をしながらそれに対応するという考え方に立っているように思うのです。私は、その意味で、先ほど堀委員もお述べになっておられましたけれども専門金融機関の役割りというものがまだ残っているんじゃないかというふうに考えておりますし、その点で同質化をそのまま肯定をしてしまうということには批判的な気持ちが強いのですけれども、その点について館先生のお考え、それから現在の銀行法改正案の理念というものを肯定していらっしゃるかどうか、その辺をお伺いをいたしたいと思います。
  74. 館龍一郎

    ○館参考人 ただいまの御質問ですが、私の考えを率直に申し上げますと、同質化を促進せよということではなくて、不必要な規制はなるべく取り除いていったらよかろう、そしてその中でいろいろな競争等を通じてそれぞれが一番得意とするところにウエートをかけるという制度になるというのが、でき上がった姿としてはそういう形になるのが望ましいということでございまして、上から同質化を促進するのが望ましいとは考えておりません。
  75. 柿澤弘治

    柿澤委員 先ほど佐々木会長からもお伺いをしたのですけれども銀行法の作業が終わって、いま中小企業金融専門機関の審議をおやりになっておるわけですが、中小企業金融専門機関というものがいま普通銀行の中小企業に対する分野への進出によって非常に厳しい状況に置かれている。これなども同質化を認めていく現在の銀行法考え方の中で果たして中小企業金融専門機関というものが生き残る余地があるのかどうか、その点一つ矛盾があるような気がするわけですけれども、その点についてはそういうお感じはお持ちになっていらっしゃらないでしょうか。
  76. 館龍一郎

    ○館参考人 中小企業金融専門機関につきましては、御承知のように、従来から金融引き締め期になりますと中小企業金融に対する大銀行の貸し出しが引き締められる、そういう意味で、中小企業に対する金融が限界的に扱われてきた面があったことは否定できない事実だと思います。  それから、さらに地域との密着度というのを考えてみますと、すべての銀行がたとえば都市銀行型の銀行になってしまったときには、たとえば都市銀行のある地方の支店長というのは絶えずかわってしまってその土地のことをよく知らないというような問題が起こってくるわけです。ですから、そういう地域の情報を正確に把握しながら融資を行っていくといった必要性というのは、これは否定できないのじゃないか、こういうように思います。  さっきも長期という言葉を使いましたけれども、今度使う長期はさらに長い長期、うんと長期でございますが、非常な長期をとって考えてみますと、中小企業金融専門機関を置いておくことが果たして中小企業の利益になるのかどうか疑わしい面がなくはないという問題があるわけでございますけれども、しかし、さしあたりの制度というのを考えたときには、中小企業金融専門機関というのを特別に考えてその役割りを認めていく必要があろう、こういうように中小企業金融問題については考えています。
  77. 柿澤弘治

    柿澤委員 いまの御意見、私大変興味を持って聞いたのですけれども、非常に長期とおっしゃって、二十二世紀の話かなという声がありましたけれども、非常に長期という前提を置きながらも、中小企業金融機関の存在というものが中小企業の発展のためにプラスかどうか疑問であるという御意見を述べられたその根拠はどういうことでございましょうか。
  78. 館龍一郎

    ○館参考人 これは中小企業専門金融機関で中小企業だけに金融が限られるというような、融資についての条件を付せられている金融機関をとって考えてみますと、現在の金融環境の中では必ずしも中小企業金融機関の効率が悪いというわけではないのですが、たとえば取り扱う預金が小口預金であるといったような中小企業専門金融機関の性質に依存して、どうしても中小企業業務が限定されている場合には収益が圧迫されるという問題が起こり得るわけですね。そうしますと、そういう金融機関の収益が圧迫されますと、長期的に見れば、どうしても結局金融機関はそういう分野からもっと利益のある分野に出ていくということになりがちなわけですね。そうしますと、結局、せっかく中小企業専門に融資をするような金融機関をつくってやったのに、どんどんその数が減っていってしまえば、何のためにつくったのかわからないということになっていくわけですね。しばしばそういう現象が長期的には起こり得るということを考えるわけでございます。
  79. 柿澤弘治

    柿澤委員 そういう意味で、たとえば相互銀行地方銀行とほぼ同じような業容になってきて同質化している。そうなると、相互の二字をとってほしいということで上に成り上がっていってしまう、それでは困るんだということで、頭を抑えておかなければいけないということになるわけでございますか。
  80. 館龍一郎

    ○館参考人 具体的に相互銀行の問題ということになりますと、私もちょっとお答えしにくいような面もあるわけでございますが、要するに、いま御指摘がありましたように、そういう専門金融機関として業務が制限されていることの結果、金融機関の存立が非常にむずかしいという状態というのは起こり得るわけですね。もし、そうでなければ別に専門金融機関をつくらなくとも、そこへ幾らでも融資されるわけです。ところが、専門金融機関をつくらなければならないということは、それだけのある不利な条件があるということでもあるわけです。したがって、そういうところはやはり存立が非常にむずかしくなってくる可能性がある、すべてがなると言っているわけではございませんけれども。そこで、どうしても一部ずつ転換していくというようなことが起こったり融資量が減ったりという問題が長期的には起こってくるだろう、こういうことを申し上げたいと思います。
  81. 柿澤弘治

    柿澤委員 私は、先ほども申し上げたのですけれども銀行法改正論についても、基本的な理念について必ずしも十分議論されないままに個別の条文の審議に入っているような感じがしますし、中小金融機関の問題についても、その意味では全体の金融制度論、金融制度を支える理念というものの中で専門金融機関というものがどう位置づけられるかという点について十分な議論なしに、たとえば名称の変更が是か非かとか、員外貸し出しの枠を拡大することがいいか悪いかというようなところへ議論がいって、何とかその易しのぎの議論になっているような気がするわけでございますが、その点、先ほど館先生おっしゃいましたように、長期的な理念というもの、長期的なビジョンに立って生き残れる、そしてまさに有効な金融制度というものをつくる方向で御審議をいただきたい、その点を希望として述べて質問を終わりたいと思います。お願いをいたします。
  82. 山崎武三郎

    山崎委員長 これにて館参考人に対する質疑は終了いたしました。  館参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  83. 山崎武三郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま参考人として信託協会会長田代毅君が御出席されております。  田代参考人には、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  銀行法等改正をめぐる諸問題等につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  それでは、田代参考人に対する質疑に入ります。堀昌雄君。
  84. 堀昌雄

    ○堀小委員 本日は御多用の中、田代参考人の御出席どうもありがとうございました。  きょうは、午前中に佐々木金融制度調査会長、さらに金融制度調査会のメンバーでもございますし、あわせて証券取引審議会の基本問題委員長でもございます館東大教授もお見えをいただきまして論議をさしていただいてきたところでございます。私がその両参考人お尋ねをいたしましたことの基本は、そんなにたくさんはございません。  そこで、まず一つは、これまで日本金融制度というのは分離主義専門主義と申しますか、そういう形で今日に至っている。前回金融制度調査会のときも、実は都銀の上位行の皆さんからは銀行のデパート化論というものが強く主張されまして、かきねを低くして競争の自由の範囲を広げてもらいたい、こういう御要望がありましたが、私は当時の状況で、今日まだ日本金融制度としては分離主義専業主義というものが現在の姿であるし、これが近い将来にそういうことが必要な情勢にはならないと思うので従来どおりの方針でいきたい、こういう考えを当時の合併転換法等で述べてまいったわけでございます。  それから約十年たちまして今日の地点に立ってみましても、そのときにそう考えたことはそんなに大きく違ってはいない、こんな感じがいたすわけでございます。しかし、銀行法というのは、これから二十年なりかなり長期の展望のもとにつくられるものでありますから、現状を固定して物を考えようという気持ちは私はないわけでございます。ですから、私なりに一九九〇年の金融構造というのはどんなふうになるだろうか、あるいは西暦二〇〇〇年の金融構造というのはどういうふうになるだろうかというふうなものをいろいろな関係の機関にもお願いをしてちょうだいをしつつあるわけでございますけれども、しかし、どうもまだ十年、二十年のタームではいまの専門金融機関がなくなるというような情勢にはならない、こんなふうに私はいま考えております。信託銀行は、そういう意味では、信託業務を営む銀行ということでは長期信用銀行、外国為替銀行とともにいま申し上げた専門銀行であるというふうに私は考えておりますが、この問題についての銀行法あり方としての分離主義専業主義と申しますか、この問題についてのお考えを承りたいと思います。
  85. 田代毅

    田代参考人 ただいま堀先生から分業の問題でございますかお話ございまして、実は私といたしましては全く同感でございます。と申しますのは、いま先生おっしゃいましたように、われわれ信託銀行というものは、戦前は信託会社としまして、主として長期金融機関という機能とそれから財産管理機能という二つ業務を車の両輪としてスタートしたわけでございますが、戦前の場合は、どちらかと言えば長期金融機関としての色彩の方がウエートが非常に高かった。財産管理機関としての機能は非常に広範囲に持ってはおりましたけれども、社会的ニーズというものがまだそれほど高くなかったということもございましてウエートがそういったことでございましたが、その後、戦後からことに最近に至りますと、いわゆる財産管理業務的なニーズというものが非常に高まってきております。そして一方、長期金融機関としての業務も、御承知のように戦後の高度成長の時代には非常に高うございまして、われわれも貸付信託制度といったようなものもつくらせていただいて、いささか日本経済の発展に寄与させていただいたというふうに思っておりますけれども、その辺の長期金融業務につきましても、最近でこそ多少企業の資金需要というものは、一方で資金調達手段の多様化ということもござますし、あるいは高度成長から安定成長へ移ってきたということもございまして、長期資金の需要の種類というものは変わってきてはおりますが、と申しますのは、公共部門とかあるいは資源エネルギー開発とか、そういった大きな問題を控えておりまして、そちらの方で、あるいはまた住宅関連というふうなもの、そういった資金需要というものは、今度は戦前とはまた違いまして、あるいは戦後の高度成長時代とはまた違って、新しい大きな部門として出てきておりますので、長期金融機関としての機能と申しますか必要性というものも決して急速になくなるものではないというふうに思っております。  したがって、財務管理機能、長期金融機能ともまだその専門性を発揮していく必要性は十分あるのではないか。またそういった社会的ニーズもあるというふうに思っておりますので、それにはそれなりに長年培ってきた専門的知識なり経験なりというものを生かすのがやはり日本経済全般から見まして効率的であろうかというふうに思いますし、先生いまあと十年、二十年くらいは続くだろうとおっしゃってくださいましたが、私は三十年、五十年先もまだわれわれの仕事というものは社会的ニーズの変化に応じて対応していける、またしなくてはならないというふうに思っておりますので、先ほど来先生のお述べになりました御意見に基本的には全く同感でございます。
  86. 堀昌雄

    ○堀小委員 そこで、信託業務の問題についてこの金融制度調査会答申を読んでみますと、どうも一向に、まあ何も書かなかったと同じような程度のことが申しわけ的に書かれているという感じがいたします。  ただ、私もここは今後どういうふうになるのかなというふうな感じがいたしますところが一点だけございます。それは「信託銀行の主要な資金調達手段である貸付信託に関しては、吸収した資金を効率的に運用するために、その運用対象の一層の多様化を図ることについて今後検討が進められる必要があるとともに、収益の分配の方法については、現在、各信託銀行とも一律の配当率によって行われているが、今後、信託制度本来の趣旨を生かし、また適正な競争の導入とその結果の受益者への還元を図るための方策につき積極的に検討が進められる必要がある。」私は、この前の金融制度調査会あるいは法律改正のときに、当時信託協会の会長が住友信託の西村会長でございまして、片方からデパート化論が押し寄せてきますから、そういう特性をさらに活用して、専門業務がなるほどやはり必要だということがわかるようなお骨折りをいただきたい、こうお願いをしておったわけでありますが、税制の関係等もあってなかなか簡単に進まないようであります。  同時に、この貸付信託というのが、名前は貸付信託でございますけれども、現在のように分配が同一ということでは中期預金だと言ってもいいんじゃないだろうか、こういう感じがいたしてなりません。ですから、その点は、私は競争原理論者で、まあ競争原理論者だから強い者がどんどん前へ出ればいいというのじゃないのですが、やはり公正なルールのもとでの一つ競争原理が働くことが私は受益者にとって非常にプラスになるというふうに考えるのでございますが、この問題については信託銀行としては何らかのお考えをお持ちかどうかをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  87. 田代毅

    田代参考人 われわれ信託業界にとりましても非常に重大な関心を持っております点を御指摘いただいたわけでございますが、信託はおっしゃいますとおり、委託者から財産の運用管理をお任せいただいて、そして善管注意義務を持って最善の運用をして、そこから一定の報酬をいただいて残りを受益者に差し上げるというのが、御承知のとおり大原則でございますので、大部分の信託業務につきましてはその原則が貫かれておるわけでございます。これは有価証券の信託あるいは年金の信託、そのほかにも金銭信託以外の金銭の信託とかいろいろございますが、これはあくまでも他人勘定と申しますか、そのままそっくり受益者の方に帰属するということでございますが、いま御指摘のございました貸付信託、それから合同運用の  一般の金銭信託、これも同じことでございますが、これが中期預金と同じようなものじゃないかという御指摘、これは経済的に見ました場合そういう面は確かにございます。ただ一つ大きく違います点は、預金の場合は確定利付、最初から金利をお約束するという形でございますが、信託の場合は変動金利と申しますか、そのときどきの情勢に応じまして最善の運用をいたしまして、そして一定の信託報酬をいただいて残りを差し上げる、したがって、金利水準が変動いたしますと自然に配当率も変わってくる、運用の利回りが変わってまいりますので配当率も変わってくるという点は、預金とは基本的に違っておる点だと思います。しかし、それにいたしましても各信託全部一律じゃないかという御指摘はまさにそのとおりでございます。  ただ、これにつきましては貸付信託発足以来、先生はよく御承知でございますが、当時電力、鉄鋼、海運、石炭といった四つの基幹産業を中心にして日本経済復興のために緊要な産業に対する設備資金の供給をやるように、そこに重点融資をするようにという趣旨で発足いたしまして、したがって各信託銀行ともまあ中立的な立場で結局同じようなところへ御融資するという形で発足してまいりまして、それがずっと伝統的に続いてきておるといったことで、その運用範囲は、その後次第に経済情勢の変動に応じて拡大もされでまいりまして、大分広がってきてはおりますけれども、結局その運用利回りというものがきわめてわずかの誤差しか出てこないということが結果的に起こっておるわけでございます。それで、そういったことから一厘一毛の差で競争するということもあるいは適正な競争ということになるのかもしれませんが、逆に過当競争も招きかねない。これはちょうどいまの一般の預金でございますか、預金金利が最近長期、短期とも相当自由化といいますか弾力化されてまいっておりますが、なかなかその預金金利まで一遍にというわけにはどうもいきにくいというふうな事情がございますのとちょっと似たような点もございまして、中期預金とは根本的に違うと私思っておりますが、御指摘の点はよく承知はいたしておりますので、今後さらに一層工夫をこらしまして——実はこれ、大分前に、いまの貸付信託よりもずっと前、戦後間もなく総合信託という名前で、金銭をお預かりしたものを不動産なり株式なり社債なり貸し金なり、そういったあらゆる金融資産に運用いたしましてその実績をそのまま配当したい、これはもう当然実績配当になるはずなんですが、そういったことを考えまして大分当局にもお願いしたこともあるのですが、やはり税制上のいろいろな問題がございまして実現できなかったわけですけれども、そういった形でしたらこれはいやおうなしに実績配当になってくると思います。そういったようなものが商品化できますかどうか、今後われわれも一生懸命勉強いたしたいと思っております。
  88. 堀昌雄

    ○堀小委員 結論的に言いますと、この答申で書いていることは、ちょっと一厘一毛の競争はこれは意味ありませんけれども、そうすると、現実は余り意味のないことが書いてあるということですね。これを上から下へずっと読んできて、私が多少ぴんときているのはこれかなと思ったのですが、いまのお話のように、確かに中期預金と申したのは、預金で確定利付と思いませんけれども金利が長期金利と変動して動いているものですから、要するに信託運営によってどうこうなるというよりも、長期金利の方から変動が来るというのはやはり預金的な金利の動きと似たようなことで、信託という名の預金だ、中期預金だという感じを持っておりますもので、いまのお話で結構です。  そこで、次にちょっと問題を進めまして、実はきょう伺っておりますのは、今度の銀行法改正の中心的課題で、あとちょっと問題が残されておるバンクディーリングの問題でございます。この点についても二人の参考人に伺ったのですが、一つの大事な物差しとしてディーリングという問題を簡単に定義いたしておきませんと話を進めにくうございますから、証券取引審議会の「公社債市場当面の諸問題について」という報告の中に「当審議会がバンク・ディーラー問題として審議の対象としたのは、銀行等が流通市場における仲介業務として商品有価証券たる国債等を売買することである。」非常に簡単でございますが、はっきりした定義でございます。  そこで、私は二つの問題からこの問題が銀行法業務に書き込まれることは問題があると思っておるわけであります。ところが、この答申の方を見ますと、資金の融通というところでは個人企業と並んで公共に対する資金供給ということで同じ線に並んでいるわけです。小委員会の法案のモデルというのですか、そういうものが出ているのですが、その中では本業ではなくて付随業務ということになっているようでありますけれども、いずれにしても、業務として考えようという考え方がこの答申の中を流れていると思うのでございます。  一つは、私はこの前も、昨年の小委員会で申したのでありますが、短期証券、蔵券のようなものが自由化されて取引されるような場合には、そういう金融機関が参加されてちっとも問題はないけれども、御承知のように原価法、低価法というようなことで実は大変問題になる国債でございます。ここの金融制度調査会の方ではこういう言い方をしているのです。「他方、金融機関の保有する公共債の大宗は全体として安定的に保有されることが望ましく、これに応じ、安定資金の調達について配慮すべきである。また、公共債価格の変動による銀行経理面への影響に配慮する必要があるが、この点に関し、先般、国債価格変動引当金が設けられたことは適切な措置であると考える。」ところが、適切な措置であると考えたものが、実は原価法、低価法の選択にまで及ばなければならなかったということは、少なくともこの答申時点ではこのような国債価格の変動を予想していなかったのではないか。だから、長期国債というものは今後もオーバーイシューが続きますから、そういう価格変動が非常に大きいという一つのことを考えますと、長期債のディーリングが行われることは銀行自身の健全性にも問題があるということが一つあるのです。  もう一つは、ここで出てございますように、市場における仲介業務ということになりますと、この仲介業務をするものは、市場で売買をされる当事者の中にあって中立的な立場、要するに売る人、買う人と対等の立場で対応できるようなものが仲介業として最も望ましい。もし売り買いをなさる方たちに対する支配力影響力を大きく持ったような仲介業ということになりますと、それはある意味では価格の公正な形成を阻害するおそれも出てくるのではないか。ですから、そういう意味では、現在特にこの問題を推進しておられる財閥系上位銀行というのは、実は日本においては格段に企業支配力を持っておられる。ですから、そういう支配力を持った方が市場の中で仲介業務をとられるということは、どうも公正な価格形成市場あり方としても望ましくない、私はこういう気持ちを持っております。  銀行のプロパーの問題として、もう一つ市場における公正な価格形成、開かれた市場の問題、自由な市場の問題という面から望ましくない、こう考えておるのであります。信託業務はかなり広範囲な業務を委託されておりますので、それをどうこうではなくて、普通銀行に対して今度そういう問題が処理されるということは結果的に皆さんの専門業分野にも影響なしとしない、こう考えますので、この点について、答申の流れでございますね、デパート化、同質化論という流れの方を積極的にお考えになるのか、あるいはいま私が申し上げましたように分離専業主義というものを考えていきますと、おのずからそこには業務の問題においても区切りがあっていいのではないか、こういう気持ちでございますので、この問題についてのお答えをひとつ承りたいと思います。
  89. 田代毅

    田代参考人 いま堀先生指摘の二点でございますが、国債がこのように大量に年間十数兆発行されるような状態で、それをどのように円滑に消化していくかということ、これは金融界とか証券界とかそういったかきねの問題とは別に、国民経済的にどういうふうにすれば一番メリットが多いだろうかという観点から考えられるべき問題ではないかと思うのです。したがって、その国債があんなふうに暴落して評価損が大きく出てくる、売却損が出るということは、われわれ銀行としても決して好ましいと思っていないわけで、そのためには、本来は財政の問題、要するに国債の発行をあんなに大きくしなくて済むようにすることがまず先決じゃないかと思うわけでございます。それにいたしましても、実際問題としてはなかなかそう簡単にいかない。そこで、銀行としては引き受けシ団をつくって相当部分をお引き受けしておるという形でございますので、国債の発行条件が適正かどうかということがその場合には一番大きな問題になってくるわけでしょうが、これも国債金利発行条件だけがひとり歩きするわけにまいりませんものですから、実勢どおり頻々と変えるわけにも必ずしもいかないというふうなことで先ほど御指摘のようなことが起こっているわけで、銀行が大量に国債を持っていいのかという点につきましては、決してこのままでいいとは思っておりませんが、やむを得ない面も多々あるのではないか、何とかわれわれとしてもこれを改善していきたいという気持ちでおるわけでございます。  その次にディーリングと申しますか、仲介業務までやるというふうなことにつきましても、これは法律的にはいまの証券取引法第六十五条の例外規定によりましてできるのではないか。国債等につきましては証券業務ができるのではないかと私は思っておりますが、それにつきましても、法律的にも若干疑念があるという御意見もあるようでございますので、銀行法改正に当たりましては、法律的にはできるのだということをはっきりさせていただくことには私は賛成なのでございます。と申しますのは、こういう問題は、国債の問題もここ三年、五年で急速に大きく変わるとは思いませんが、銀行法は十年、二十年あるいは五十年先を見て制定されるべきものだと思います。そういたしますと、従来の銀行は余りにも大ざっぱと申しますか、昭和二年制定でその現状に即さないということも事実でございますが、最近の金融経済あるいは産業界の変遷というのが国内、国外とも非常に激しゅうございます。したがって、金融というものはそれに即応して潤滑油のように機能しなければならないと思っておりますので、法律で余り細かく厳しく規定することも不適当でございますが、ある程度のことは必要であろうという意味で、将来国債問題がどんなふうに変わっていくか、いま国債消化で大変なことになっておりますので、この問題が大きくクローズアップされてきた。従来から本来やろうと思えばできることだったと思うのですけれども、そこで現実問題どうするか。そこに法律問題も絡んで、どうしたらいいかということになっているわけですから、法律問題としてははっきりさせておく。そして実際問題としてはそれではどうすればいいのかということにつきましては、ただいま先生が御指摘になりましたような懸念がもし現実に起こるといたしますれば、私どもそれは大変なことだと思います。  ただ、それが起こるかどうか。いまの一般国民へ国債が消化されていくどういう状態が一番いいのか、あるいは最後の償還対策まで考えましてどんなふうに国民に消化していただいたらいいのか、あるいは市場価格の形成に銀行ディーリング等に参加していった場合にどういう影響を与えるのかといったような点、その他幾つか問題点がございます。これは関係者の間でいろいろ御議論があって必ずしも意見が一致していないというのが現段階で、先ほどおっしゃいましたように、金融制度調査会証券取引審議会でもそれぞれ違ったニュアンスの答申が出ておりまして、行政当局の方がその辺の運営を詰めて、その上で実施するものはする、しないものはしないというふうに決めたらどうだという答申になっておるようでございます。したがって、われわれといたしましても、その辺のところ、確かにいろいろ疑問点を持っております。そしてそれに対して絶対的にこれは正しいという答え、皆さんが完全に納得される答えがなかなか出にくいのじゃないかということも事実だろうと思います。  しかし、先ほど申しましたように、制度としては法律的にはこうだ、実際の運営上はそのときどきの情勢に応じて最適の経済的効果、メリットが出るような運営方法をとっていく。これは行政当局お願いすることでもありますし、またわれわれ業界としてそういったつもりでコンセンサスを固めていくことが必要なのではないかと思っております。
  90. 堀昌雄

    ○堀小委員 終わります。
  91. 山崎武三郎

  92. 柴田弘

    柴田委員 きょうは田代参考人には大変お忙しいところをどうもありがとうございました。  まず最初にお伺いをしたいわけでございますが、いま堀先生からいろいろと信託業務についてのお話がございました。来るべき銀行法改正に関連をして金融制度調査会答申があるわけでありますが、この中での大口信用供与の問題、いわゆる大口融資規制の問題が、いままでは通達という形で指導だったわけですが、今度銀行法改正法律で明文化されるというようなことでございます。この辺の大口融資規制の問題については信託としてはどのようなお考えをお持ちなのか、お聞かせをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  93. 田代毅

    田代参考人 いま御指摘がございました大口融資規制の問題、われわれも非常に重大な関心を持っております。と申しますのは、先生方十分御承知のように、この趣旨は銀行の資産の健全性と申しますか、そういったことと、それからまた資金配分の適正化、その二点から必要なのではないかということでございまして、われわれもその点については全く異論を持っておりません。  それで、実は大口規制の問題につきましてはそういうことでございますが、われわれ信託業界の実情から申しますと、実は信託銀行金融機能としては長期金融機関としての機能が主になっておりまして、その資金源は戦前は金銭信託、戦後は主として貸付信託ということでスタートしておりまして、先ほどちょっと申し上げましたように、基幹産業を中心とした融資をずっと続けてきておりますので、自然に長期貸し出しが多いものですから、回転率も低いというふうなこと、それから先ほども申しました歴史的な経過といったようなこと、それと、信託銀行というのは店舗数が実は非常に少のうございまして、一行四十数カ店ということでございますので、自然お取引先の数も資金量の割りに少ないといったようなことで、一口当たりの貸し出しも多くなる。いろいろな事情がございまして、信託業界といたしましては、一般の銀行と比べまして大口になりやすいということがございます。  それで、昭和四十九年にこの大口規制の行政措置がとられまして約六年近くなりますが、その出発当初からそういった業態別の実情というものは実態に即して考えるべきであろうという金融制度調査会の御答申もあり、大蔵の方の行政指導もそういったことで御承知のように二〇%、三〇%、四〇%といったような率で今日まで来ておるわけでございまして、その後、今度銀行法の中で法制化するということになってまいりましたようで、それにつきましても昨年の金融制度調査会でも大体同様の趣旨の答申が出されているように承知いたしておりますが、私は、あの答申の線に沿ってぜひ法制化を進めていただきたいというふうに思っております。
  94. 柴田弘

    柴田委員 時間がありませんので、あと一点御質問しますので、ひとつ簡潔に御答弁をいただきたいと思います。  官と民の問題、今日の郵便貯金問題に関連をいたしまして果たして官がどこまでの位置づけを持つべきなのか、民としてはどれだけの使命を持っていくべきか、こういう問題でひとつ参考人の御意見をお聞かせいただきたいわけでありますが、今日の郵貯の激増の問題、あるいはまた郵政省が考えております個人年金構想の問題、あるいはまた政府金融機関が貸し出しております、たとえば民間のホテル等にも貸し付けをいたしております。こういった問題があるわけでありますが、信託の立場から見て官と民の業務の位置づけというものは一体基本的にどうあるべきか、私もこれ最近いろいろと考えておるわけでございますが、その辺、何か御意見がありますれば、時間がありませんので簡潔で結構でございますので、御答弁をいただきたいと思います。
  95. 田代毅

    田代参考人 おっしゃるとおり、これは大問題だと思います。これは単に金融界のみならず産業界全般の問題としまして官民のあり方ということは大きな問題でありまして、金融界といたしましても、金融界全体でこの問題を大きく取り上げていただきたい。官民のあり方、これは端的に申し上げまして最近は資金吸収面、運用面ともにどうも官の方が出過ぎているのではないか、大変失礼な申し上げ方になるかもしれませんが、そして民の方が非常に圧迫されかかっておる。そうなりますと、金融政策とかいろいろな面でも大きな支障が出てくる。それからまた、財政という問題から考えても、非常に大きな問題がある。先ほど先生からちょっと具体的にお話がございました郵政の個人年金の問題とか、あるいはグリーンカードの運営をどうするかとか、そういったようなことによりまして現実にわれわれの資金はこの四月以降どんどん流出いたしておりまして、流出といいますか増加がぐっと減少しておりまして、前年同期比ということになりますと、大幅な減少という事態が、これは民間金融機関の各業種ともそういう事態が続いております。こういった状態がどんどん進んでいったのでは、これは単にシェア争いという意味ではなくて、日本の財政問題あるいは金融秩序、金融政策、そういった問題からいきまして根本的に、総合的に検討していただきたい。そのためには何かそういった本当に大きな審議会と申しますか、各方面を集めたそういったもので御検討いただく必要があるんじゃないか。現実に私どもいまの年金問題、グリーンカード問題で非常に困惑いたしております。その辺につきましては、先般来各民間の金融団体、それぞれ先生方、各関係御当局にもいろいろお願い申し上げている次第でございますので、ひとつどうぞよろしくお願いいたします。
  96. 柴田弘

    柴田委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  97. 山崎武三郎

  98. 簑輪幸代

    簑輪委員 お忙しい中をどうも御苦労さまでございます。  早速ですけれども、時間がございませんので、定年延長の問題とか、身体障害者の雇用の問題などについてお伺いしたいというふうに思います。  最初に、高齢化社会への対応ということで定年を延長するという動きも広がっておりますけれども、現在六十歳定年というのが全産業の三六・五%に達している。ところが、金融保険業界では一五・三%という状況であるというふうに報告されておりますが、定年を延長するという問題についてどのようにお考えになっておられるのか、できましたらその計画なども含めて具体的にお答えいただけたらありがたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
  99. 田代毅

    田代参考人 定年延長問題は、おっしゃいますとおり、年齢の高齢化に伴いまして、金融界に限らず全国民と申しますかの問題でありまして、金融界でも重大な関心を持ってこれに取り組んでおるわけでございます。御指摘のとおり、現在のところ金融業界の定年は比較的若いと申しますかということでございますが、最近は都市銀行さんの方でも近く六十歳というようなことで、方法はいろいろあるようでございますが、進めていらっしやるようでございます。  われわれ信託業界といたしましても、その点は全く同様の意見でございますので、当然なるべく早い機会に一応六十歳までは持っていきたいということで準備を進めておるわけでございます。この問題は各企業個別の問題でもありますので、信託業界と申しますより私が社長をいたしております住友信託銀行のことについて申し上げたいと思います。  現在、私どもの方は実は五十五歳定年で非常におくれておりまして申しわけございませんが、ただ、そういった基本的な考えから現在これを六十歳まで延ばすべくいろいろな問題点検討いたしまして、そして組合ともすでにもういろいろと話し合っておる最中でございます。ただ、長年五十五歳で定着しておりましたものですから、いろいろ問題もございます。  しかし、われわれ信託業界といたしましては、中高年の方がどんどんふえていく、そういった方は実際のところは非常に業務の経験も深く、知識もあるということで、先ほどちょっと申し上げました財産管理業務、財務の御相談、そういったことが社会的ニーズが非常に強いものですから、そういった仕事にはむしろそういった経験の深い人に当たっていただく方がお客さまにも満足していただけるんじゃないかというようなこともございまして、一般的な定年延長ということで考えておりますが、それをやります場合にも働きがいのある職場、五十五歳過ぎてからもこれは非常に働きがいがあるという気持ちでやってもらえるようにするにはどうしたらいいかというようなところに重点を置きまして、そして企業でありますので経費がどんどんふえていくということでも困りますので、その辺のところは体系をどういうふうに持っていったらいいか、あるいは事務の効率化、合理化というものを図りながら、企業としてもそれにたえていけるような形を想定いたしまして、いまいろいろと準備はいたしております。ただ、まだここで具体的にこういう形で実施する予定ですというところまでは進んでおりませんので、その点ひとつ御了承願いたいと思います。
  100. 簑輪幸代

    簑輪委員 延長するということになればいろいろな問題もあると思いますけれども、それはぜひ積極的な方向で早期に実現できるように御検討いただきたいと思います。  次に、障害者の雇用問題についてですけれども、御承知のように来年は国際障害者年ということで、障害者の皆さんが社会生活においても、あるいはそれぞれの地域においていろいろな事柄に参加できるようにということが配慮されなければならないわけです。そういう中で全面的な参加と平等というようなことが言われております。そのためにすべての国民が努力をしなければならないというふうに思うわけですが、国際障害者年について政府を初めそれぞれいろいろなところでの努力が必要だと思います。  実は雇用の関係で言いますと、法律で雇用率を民間の場合は一・五%と義務づけられているわけですけれども、民間産業の身障者雇用率は、ことしの十月発表の資料によりますと一・一三%、千人以上を雇用している企業の雇用率はようやく〇・九〇%、それからさらに金融保険業界というところで調べてみますと〇・七一%ということで、民間全体で見ましても約半分程度にとどまっているように見受けられます。これには指導機関である政府にも重大な責任があるというふうに思いますけれども、信託業界におかれましても、これについての積極的改善の御努力をいただきたいというふうに思いますが、田代参考人はいかがお考えでいらっしゃいましょうか。
  101. 田代毅

    田代参考人 身体障害者の方の雇用問題、私どもは大変重要な問題だと認識いたしております。  私どもの会社では、身体障害者雇用促進委員会というものを設けまして、そして担当常務役員をその委員長として、どのようにして雇用率を着実に伸ばしていくかということ、そしてまた働いていただく方に本当に喜んで働いていただけるように、そのためにはどうしたらいいかということをこの委員会が中心になって進めております。  それで、いま先生の御指摘の比率が低いではないか。まことに申しわけないのでございますが、私どもの方の会社のことだけ申し上げますと、ここのところ着実に雇用率は上がっておりまして、最近現在では一・〇一%ということでやっと一%を超えたところでございます。先ほどのお話を伺っておりますと、金融界の中の平均値よりはちょっと高いというふうなことで、ことに千名以上の平均値よりも高いようでございますが、これで決して満足しているわけではございません。早急に法定の一・五%までは持っていきたいという気持ちで臨んでおります。ことに働いていただく方に本当に気持よく、ああよかったという気持ちを持  って働いていただけるようにしたいということで、そういった仕事はどういった仕事が一番いいのかといったようなことも含めまして、単に率だけでなくて、質的な内容の面においても喜んでいただけるようなことを考えたいというふうに思っております。
  102. 簑輪幸代

    簑輪委員 積極的なお話で結構だと思いますけれども、なお一層早期に実現できるようにお願いしたいと思っております。  ところで、信託プロパーの問題としては、先ほども質問にありましたけれども、郵政省の個人年金制度の構想なども出ておりまして、それらに関して民間と政府の役割り分担の問題ということが非帯に大きくクローズアップされてきているわけですが、この点に関して、田代参考人には重ねてで恐縮でございますけれども、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  103. 田代毅

    田代参考人 先ほど柴田先生お答え申しあげましたのと重複いたすかもしれませんが、官業と民業のあり方というものにつきまして、これは実は先生の基本的なお考えとちょっと違うかもしれませんが、自由主義経済の原則のもとでわれわれは経営をいたしておりますものですから、民間の活力を生かして国民経済の発展に寄与すべきである、これは先生も御異論はないだろうと思いますが、その場合に、官業は民間の足らざるところを補っていただくということが資本主義経済の中では原則であってしかるべきじゃないかと基本的に考えております。  そこで、先ほど柴田先生にもお答え申し上げましたように、具体的な問題になりますと資金吸収面あるいは運用面、両面にわたりまして、最近は外からごらんになるとシェア争いというふうにごらんになるかもしれませんけれども、さっき申し上げたようにそういう意味じゃなくて、そういう点も絶無とは申しませんけれども、もっと基本的な問題として民間の活力を生かして経済の活性化を図っていくことが必要なのではないかというふうに思っております。
  104. 簑輪幸代

    簑輪委員 どうもありがとうございました。
  105. 山崎武三郎

    山崎委員長 これにて田代参考人に対する質疑は終了いたしました。  田代参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。     —————————————
  106. 山崎武三郎

    山崎委員長 ただいま参考人として全国地方銀行協会会長吉國二郎君が御出席されております。  吉國参考人には、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  銀行法等改正をめぐる諸問題等につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  それでは、吉國参考人に対する質疑に入ります。堀昌雄君。
  107. 堀昌雄

    ○堀小委員 吉國参考人には、御多用中のところ御出席ありがとうございました。  きょうは、午前中、佐々木金融制度調査会長、館先生とおいでいただきまして、いま信託協会の田代参考人に来ていただいたのでありますが、銀行法改正という問題が直接影響を持ちますのは、皆さんの地方銀行都市銀行が直接関係のある部分だと考えるわけでございます。  そこで、まず金融機関の最近の変化と申しますか、資金量で見ますと、一九五九年には都市銀行シェアは三三%くらいございましたのが、一九七九年には一九%まで下がっている。この差は約一四%くらいございます。地方銀行は一九五九年に十六%でありましたのが一九七九年一四%、減ってはおりますけれども二%くらいしか減っていないということ、だと思うのであります。  そこで、資金量のシェアが減ったら都市銀行の収益面では大変大きな変化が出ているのかといやてちょっと調べてみますと、これは有価証券売却損益調整後の経常利益という条件で計算をしたデータでございます。  都市銀行は、七四年下期に三三・八%というのが、七九年下期に三二・八%、一ポイント下がっておりますけれども、資金量の変化は、とりました時期が二十年で、片方は五年でありますから、問題はちょっと比較しにくいわけですが、しかし、それにしても都市銀行シェアが下がってまいりましたのは最近の方にウエートが高い、古い方はそうでもなかったのではないかと思いますから、資金量のシェアがこういうふうに下がってきているけれども、実は収益の方では余り影響は受け乞いないのであります。地方銀行の方は、七四年下期二九・九が二八・五でございますから、収益の面では一ポイントちょっと下がっておる。しかし、これも余り大した影響はない、こうなるようであります。  私はこのデータを見ながらちょっと感じますのは、資金量では大変減ったように言われておる都市銀行でございますけれども、やはり依然として収益力は相当あるなという感じでございます。実はある機関に、一九九〇年くらいになるとこういう状態はどんなふうになるだろうか、一遍少し試算をしてみてくれないだろうかという要請をいたしてみました。そういたしますと、今度は、それは試算でありますからわかりませんが——もう一つ申し上げておかなければいけないのは、政府金融機関が一九五九年には一七%の資金量シェア、これは一九七九年には二四%の資金量シェアということで、実は資金量のシェアが大変ふえまして、七%ふえているわけです。これはいまの収益の問題と関係ございませんからその問題はありませんが、一九九〇年になりますと、都市銀行はこの一九七九年のところから約十年余りで六%くらい資金量のシニアがふえるのではないだろうか、それから政府金融機関は同じように五%くらいふえるのではないだろうか。そうしますと、都合二%ふえるところが出れば、真ん中にあるところは一一%減るということになりますね。それはどこに行くかということは別問題として、そういう試算ですね。  要するに、これは単なる試算というだけではなくて、一九九〇年代、二〇〇〇年代というものを見通し金融構造というのは一体どうなるだろうかという疑問といいますか、将来の問題を考えてみたいという参考の資料をお願いした一つのデータでございますけれども、しかし、それなり意味がある。時間がございませんから、その背景についていろいろ申し上げませんけれども、述べられておることにはそれなり意味がある。そのことは、やはり金融機関というのはスケールのメリットというものが依然として相当に働くシステムだなという感じが実はいたしておるわけでございます。都市銀行地方銀行、一口に銀行といって銀行法でコンロールを受ける皆さんの中で相当な格差がある。そのことは、都市銀行地方銀行にも格差はございますけれども地方銀行内部においてもまた格差がある、こういうことでございますね。  そうしますと、地方銀行会長としての吉國さんとしては——しかし、その将来展望でそういうふうになってくるときに、その影響を受けるところはどこだろうかと私なりに見ますと、相互銀行が一番影響を受けるんじゃないだろうかと非常に心配をいたします。その次に、地方銀行の下位行もかなり影響を受けることになるのではないだろうか。もちろん、長期銀行なり信託銀行なり信用金庫なりも影響を受けるだろうと思うのでありますが、私は信用金庫というのは、影響は受けるけれども、いま申し上げた相互銀行地方銀行下位行に比べるとわりに安定性が高いのではないかと、まあ私の個人的感覚でございますからそれはわかりませんけれども、そういう感じがいたすわけであります。ですから、今度の銀行法改正というものの考え方の中で効率化という問題が強く求められておりますが、地方銀行立場としては、効率化もさることながら、公正の問題という方に少し比重がかからないと、将来問題が生じてくるのではないだろうか。  一つの例がCDの問題でありますが、この答申にあるCDにいろんなことが書いてございます。いろんなことが書いてございますが、現実にはもうこれだけは法律マターでなしに、実は先行いたしております。このCDの問題はちょっと歴史的な沿革がありますけれども、澄田さんが銀行局長をしておられたときに、金融制度調査会がございまして、都銀上位行から私どもに、ぜひひとつCDをやらせろ、デパート化論でいこう、かきねを下げろ、こういう御要請が強くございましたけれども、私は、アメリカCDというのはああいう発達した金融市場というものを対象に行われておるもので、日本のように金融市場がないところでそんなものができるはずはありません杉、もしやるとすれば特利預金になりますから、それは私どものとるところではございませんと言ってお断りをしたわけですが、今度またこの問題が出てきたわけでございます。  私は、やはりこれは銀行によって、ローンポジションのところとマネーポジションのところでは、同じそういう商品であっても影響が違うだろうしするから問題があると思ったのでありますけれども、大蔵省側の強い要請もあって、私はそのときに、金利が完全に自由化ならば、金利自由化一つの問題として意味があると思います、特利なら絶対困りますよ、それは日本金融制度として、そういう大口なら特利ということは当面だめですよというお話を申し上げたのでありますが、やはり私はこういう制度というのは、特に一つ銀行という枠組みの中でローンポジションマネーポジションがあるという現実の中では、片一方だけ有利に働いたら必ず片一方がマイナスに働くようなものを制度として考えるのは適切でないな、やはり私の考えたことは今日の現実問題として地方銀行にかなりな影響を与えておるという感じがいたすのでございます。こういう問題を含めて、要するに効率化、同質化という問題と公正の問題という問題をどういうふうにお考えになるかをお答えをいただきたいと思います。
  108. 吉國二郎

    吉國参考人 ただいま御質問になりました点は大変むずかしい問題でございまして、仰せのとおり金融制度調査会答申の中では、いわゆる効率化のためにできるだけ金融機関かきねを低くするという考え方が強く打ち出されております。その面から申しますと、確かに、できるだけ効率のいい業務をそれぞれが選択をし得る、したがって自由な範囲を広くする、したがってかきねはだんだん低くなるというのも無理のない考え方であろうかと思います。  ただ、先生の御指摘のとおり、幾つかタイプの違った銀行があり、それが競合しながら強弱の力を持っている場合には、当然それは弱肉強食になるんじゃないかという問題があるわけでございます。  金融制度調査会は、それについてまた一方において専門化ということを盛んに言っているわけでございますけれども、その専門化というのをどういうふうにとらえていくか、それをまた法制上どう扱うかというのはなかなかはっきりしていない。その点が、公正化と申しますか、そういう点ではやや難点があるんじゃないかという御質問になったと思うのでございますが、いま御指摘のありましたように、信用金庫が今後の変化においてわりに影響を受けないで済むんじゃないかという御判断、私もやや似たような判断を持ちますが、これはやはり信用金庫が業務の遂行の上において中小企業の、ことに小さな中小企業に対して非常に密着をしておる、そして、同じ効率化業務が統一化しても、その中でお客との相対関係で自分の業務を維持していく力があるということではないか。その辺に専門化の問題というのはひそんでいるようにも思うわけでございます。  地方銀行でいま非常に問題になっておりますのはやはりその問題ではございますけれども地方銀行考えてみますと、地方銀行の場合は競合関係というのがどこにあるかという点でございますが、私どものような都会に近い地方銀行、これはわりに数は少ないのでございますけれども、これまた都銀とまともに競合しているというのは事実でございます。  ところが、さっき御指摘のありました、小さいと言っては失礼なんですけれども、規模の小さい地方銀行というのはわりに都銀との競合は少ないわけでございまして、これもいろいろ問題はあるのでございますけれども、百年の伝統のおかげで、大体地方の金庫を預かる指定金融機関というものになっております。そしてまた、その地方に集中的に支店を持っておりまして、その地方のいわば金融の中枢機構ということになっておりますので、地方銀行はそういう意味の地方的な特色という専門化を持っているんじゃないかな、そういう面から申しますと、むしろ私どものような都会的な地方銀行が苦しい問題になるのかなというふうには思いますが、そういう点から、いわば法律の問題ではないかもしれませんが、今度銀行法改正において、どっちかと申しますと、ややかきねが低くなるような方向が出された場合でも、それぞれの金融機関がその持っておる特色というものをその中で生かしていく、こういう努力をすることによって、かなり力の違う金融機関相互で両立し得る可能性は相当あるんじゃないか。そういう意味から申しますと、そういう特色を持たない部分が非常に危険であるということは言えるかもしれません。  相互銀行お話が出ましたけれども、相互銀行はもちろん中小企業との結びつきが非常に強い。またそういう意味でノーハウも持っておられると思うので、そういう相互銀行はやはり最後までりっぱにやっていけるんじゃないか。ただ、相互銀行の中には、非常に地域的に広がってしまって、都市銀行と似たような分布をしているところもあるわけです。そういうところはどうなるのかというのは私もわかりませんが、それにしても、いずれもそれぞれの分野で専門性というものを努力して伸ばしていくということは効率化と矛盾しないものじゃないかと思いますので、地方銀行においては特にその点に努力をしていくべきじゃないかというふうに考えております。
  109. 堀昌雄

    ○堀小委員 二つ目のCDの問題をお答えいただきたいのです。
  110. 吉國二郎

    吉國参考人 CDの問題につきましては、これは率直に申し上げまして、地方銀行としてはこれに賛成ではなかったということは事実でございます。  その論拠といたしましては、これは当時、法律的にも整備ができていない、有価証券性を持っていない、したがって、有価証券性を持っていないとすれば、譲渡可能とはいっても、いまの定期預金でも法制的に譲渡不可能ではないのであって、譲渡の際にはいわゆる債権譲渡の手続として同意を得てはしいということを言っておるだけでございますから、その点では実は質的な差はない。ということは、結局において転々流通する有価証券とはなり得ないから一種の特利になるのじゃないか、その点では、預金自由化というもののらち外でもしこれだけ行われるということになると、非常にアンバランスが起きる。それから、日本の短期資金市場というのは金融市場でしがなくて、一般的な短期資金市場がないという状態で、CPだけが一般的な短期市場を形成するというのは非常に危険があるということを根拠にいたしまして、余り賛成じゃない。  ただ、何と申しましても一つ制度改正というのは、必ず得する者と損する者とがあるということはどうしても考えられるわけでございますので、得する方はやりたいであろうし、損する方はやりたくないと言っていたのじゃいつまでも解決はつきません。私どもは最後まで反対いたしましたが、そのかわりに、その弊害が起きないと申しますか、弊害を最小限度にするような規制を求めてきたわけでございます。  しかし、地方銀行としては現在非常にCDについてはこれがプラスに作用しているとも言えない。というのは、おっしゃったとおりで、都市銀行の場合はかなり高いコストにはなりましたけれども、外部負債と振りかえて見れば同じことでございます。地方銀行の場合は、実はいま特殊な事情からローンポジションじゃなくてマネーポジションになっておりますけれども、原則としてローンポジションのところは外部負債というものが要らないわけでございますから、それだけ預金のコストが高くなる結果だけになっておる、それが採算上やや不利になっているという点は、相対的には否定できないことではあるかとは思います。
  111. 堀昌雄

    ○堀小委員 私は、いまのように制度というのは得する者と損する者がある、そういう制度もあると思うのですね。そういうときには大体力の強い者が得をしまして、力の弱いのが損するというのが現実の社会の現状じゃないかと思うのです。そういうことに歯どめをかけることが公正という問題ではないのか、こういうふうに私は公正という問題を考えておるわけでございます。  要するに、競争原理というものは社会の発展のためには必要だ。私はもう当委員会で、昭和四十年、三十年代後期にその問題に触れて今日まで一貫してそういうことなのですが、そこにはおのずからルールがあっていいはずだ。ともかく弱肉強食で、強い者が力で何でも押し通していくということは、私は自由主義という一つの原則で見てもフェアじゃない、こう思うのです。ですから、私は、競争というのは常にイコールフッティングで競争すべきであって、要するに片方が大変な力を持っているのなら、競馬でもそうですけれども、ハンディキャップでちゃんとおもしをつけて調整をするというのが競争原理の基本でございますからね。そういう点で私は、一つCDという問題は、皆さんは賛成でなかったけれども、力の強い方が押し切った、その結果限界資金供給を受けられる側の方は確かによかっただろうと思いますけれども、皆さんの方にはいまのようなことがはね返っておる。  いまちょっと一時マネーポジションとおっしゃっているのは、これは大蔵省に関係があるので、私は地方銀行のせいだと思っておりません。ここらはきょうは理財局も出ておられるから、いま私はいろいろ議論しておる問題の根は、時間がないから言っていないのですけれども、一番もとは大蔵省なのですよ。オーバーイシューになっておるものをどうするかという問題の調整と、もう一つ市場価格による国債の発行という問題と、この二つがきちんとなってない限り、そのしわが寄ったのを制度やその他で、別途の角度でカバーしようというのは本来は無理がある、こう思っておるわけです。  そこで、ちょっとその次の問題として、いま都市銀行の方ではバンクディーリングをぜひやりたい、こういうふうなお話が出ております。そこできょうおのおのの参考人にちょっと伺ってきたのですけれども、このバンクディーリングというのは定義がきちんとならないと非常にまずいのですが、ここに証券取引審議会の方で非常に簡明な定義がございまして、「当審議会がバンク・ディーラー問題として審議の対象としたのは、銀行等が流通市場における仲介業務として商品有価証券たる国債等を売買することである。」これは非常に簡明率直で、これで要を得ている、私はこう思うのであります。  そこで、この流通市場で仲介業務をやるという者は、少なくともその流通市場に参加をする売り方、買い方と仲介業務の者が大体等距離といいますか、対等といいますか、そういう立場で仲介業務をやるのでないと、私は公正な価格形成はできないのじゃないかと思う。まあ早い話が、二人けんかしている、そこへ仲裁に入る、片一方の肩だけ持つ人が入ってきて仲裁と言っても、これは仲裁にならないのでして、要するに、両者から対等、中立であるというところが仲裁の機能だ、こう思いますので、その限りでは、この仲介者、ディーラーというものの性格はあくまでそういう方たちと対等、ということは裏返せば中立性が求められる、こういうふうに私は思うのです。  ところが、都市銀行につきましては、特に上位財閥系銀行というのは大変な企業支配力がある。きょう館先生がグラス・スティーガル法についてお触れになって、三つの問題がこの中にある、こうおっしゃったのですね。一つは、証券業務というものはリスキーだということがあります。もう一つは集中の問題というものがあります。もう一つ、コストの問題というものがある。こういうふうにお触れになったのですが、まさにその集中の問題支配力の問題ですね。これは、私はアメリカ銀行に比べて日本のそういう特に上位旧財閥系銀行というのは大変な支配力がある、こう実は見ているわけです。アメリカではグラス・スティーガル法で持ち株は禁止されていますし、持ち株会社をつくったらまたそれの規制をやる、次々にやる、さらに、支店については州内しか認めないとか、そういう集中排除についてはアメリカはもう、独禁法でもそうですけれども、そういう点非常にはっきりしている国でありますが、日本の場合には独禁法で五%まで持ち株は持てますし、さらに、これは一九八〇年七月十二日の「ダイヤモンド」に出ていたのですけれども、一体、東証一部上場企業銀行がどういう形で役員派遣をしておるかというので、合計九百七十七人出ていますけれども都市銀行から六百四十四人、興銀及び日長銀から百六人、信託銀行五十七人、地方銀行、最低で三十四人であります。まさに地方銀行というのは、そういう意味企業支配という形とは非常に縁の遠い存在。だから、私は地方銀行はそういうディーラー業務を求めておられないと思いますが、もし仮にディーラー業務を認めるとするならば、こういう企業支配力のないところの方は、要するに中立性が高いわけですから、価格の公正な形成にマイナス要因としては働かない。しかし、いま申し上げましたように、都市銀行は六百四十四人、九百七十七人のうちの非常に高い部分は都市銀行からの役員派遣。役員派遣でなくても持ち株はきちっと持つ。そして特にこのごろテレビのコマーシャルを見ておりますと、財閥系が出資者になっておるテレビのあれを見ますと、ずらっとこう名前が出ていますね。基本企業だけでテレビのあれがいっぱいになって、まだ次もう一遍、ぐうっと上から出るぐらい出て、これが中心で、この下にまたずうっと支配関係があるわけですから、まさに私は、どうも都市銀行バンクディーリングをいま求めていられるところは中立性からほど遠いという感じがしますので、そういう観点から見て、流通市場の公正を阻害するおそれが非常にあるのじゃないか、これが一点なんですね。  もう一点は、窓口販売なんですけれども、私がさっき申し上げた、発行量と発行価格が市場価格に見合ってさえおれば、銀行の窓口で売らなくても国債は売れると私は思っているのです。現在の証券界を通じて十分売れる。それは最近の売れている姿を見れば、これは四月−九月、上期で三七%ぐらいのシェアになっているのですから、売れるわけですね。ですから、これは発行条件の問題がウエートが高いんで、何も銀行の方で窓口販売をしたから非常に売れるということにはならない。  もう一つ私が心配しますのは、銀行の場合に、——私は当委員会で長年にわたって歩積み両建て問題というのをずいぶんやらしていただきました。この両建てに国債が使われる可能性というものはかなりあると見ていいんじゃないかと思うのですね。要するに、ひとつ国債を買ってください、貸し出しの要請があったときには、これまでは預金だったのですが、この預金は両建てが禁止になっていますから、国債をひとつ買ってください、そうしたらひとつこれはあれしましょうという話で、国債が両建ての材料になり得る可能性もあるし、ですから、いろいろとそういう問題の上では、やはり公正を確保するということのためにも非常に問題がある、こう私は思っておりますので、この点についてのお考えをひとつ承りたいと思います。
  112. 吉國二郎

    吉國参考人 国債のディーリングの問題につきましては、御承知のとおりで、銀行法改正一つ問題点でもあるかと思います。この金融証券業務を分離をするという考え方は、確かにアメリカ法の考え方でもございますし、大恐慌の教訓から出た一九三三年法、四年法の結果だと思いますし、日本もそれを戦後引き受けたわけでございますが、あいにく銀行法だけあのとき改正しなかったものですから中途半端に残っているというのがいまの姿だと思います。  ただ、ヨーロッパ諸国では御承知のとおりで、証券市場が発達してない点もあるかとは思いますが、むしろ金融機関証券を扱っているという形もございます。そういう意味から申しますと、証券金融というものの分離という問題はそれぞれの国の具体的な証券市場、資金市場あり方というようなことから判断すべきことだと思いますので、いま堀委員が言われたような判断というのがわが国についてあり得るということも考えられるわけでございますが、同時に、現在の証券取引法六十五条というものが金融機関証券業務を禁止しながら、公共債にだけはこれを外しておるという問題、またアメリカでも公共債だけは金融機関が扱っていいようになっているという問題があるわけでございます。これは恐らく公共債につきましては、いわゆるディフォールトというものはありっこないということ、最終的にリスキーではないということとか、それから先ほどおっしゃったような力関係というものが公共債の場合には働き得ないだろうという問題があると思うのでございますが、そういう意味でこれを外したのであろうと思います。  したがって、いまの銀行法では六十五条の第二項の規定をどうやって生かすかということについてかなり論争があるわけで、従来はこれは付随業務であるから六十五条の裏として当然できるのだと解釈をして、国債シンジケートをつくった際に、いわば金融側が遠慮をして窓口販売をやめたんだという解釈が支配的だったわけでございますけれども、どうも最近銀行法で、付随業務でこれを読むことはむずかしいという議論が出てまいりました。そういうことがあり、今後新しく銀行法を、しかも新しい法律の形で書くということになれば、証券業務を付随業務の中に取り込んで漠然と書くということはちょっと許されないだろうと思います。したがって、この六十五条に規定されている第二項の公共債に対する証券業務銀行が遂行するためには、どこかに書かなくちゃならぬという問題がどうしても出てくるだろうと思います。  その場合に、その判断でございますけれども、いま堀先生のおっしゃったような判断も片一方に当然あると思いますし、また片一方には、これだけ多量の国債が発行され、それを金融機関が保有をしておる。その処分について一々証券業というものに委託をしなければならぬというのは、六十五条の二項がある上においてははなはだ迂遠ではないか、直接売買ができてもいいんじゃないか。その公正を維持するためには、いま証券取引につきましては、証券市場においても、また法令的にも非常に多くの公正規則的なものがございます。したがって、銀行もそれに従ってやっていけば公共債に関する限り弊害はないんじゃないかという考え方もあるわけでございます。  そういう意味から申しますと、技術的な話になりますけれども銀行法改正の際に、いま証券取引法の六十五条の二項で銀行が扱えるとしているものを銀行法そのものが自分で扱えなくしてしまうというのも、将来事態が変わってきた場合を考えますと不適当ではないかという感じもいたします。  何しろ銀行法というのは制定されますと五十年も変わらない法律でございますので、この際やっておきませんとどうにもならぬという問題もあると思うのです。ただ、現実にそれを直ちに実施するかどうかということになりますと、いろいろな議論があると思いますし、堀先生が言われるような議論も当然あると思いますし、それから地方銀行の中でもあるいは古いといいますか、昔の非常にシビアな考えを持った頭取さんの中には、たとえ株式でなくても、普通の社債、公社債であっても、かなり浮動する現状では、ああいうものは扱いたくないという方もおられます。そういう点から申しますと、現実にすぐどうするかということについてはさらに議論が必要だと思いますし、これは大蔵省当局に任されている話でございますので、そういう判断が必要だと思いますが、法令の整合的な立場から由しますと、可能性だけは置いておくことが妥当ではないかというのが私の考え方でございます。  その場合にも、きっきおっしゃったように、地方の銀行は能力的にも全部これができるわけではございません。そういう意味から申しますと、付随業務ということでできるところはできるというような形、さらに証券業のいろいろな規制をどういう形かとにかく守らせなければいけないという意味では、認可とかいろいろな方法があるだろうと思いますが、そういうものをあわせ整備をして、法律としては完結したものにしておくのがいいのではないかなというふうに考えております。
  113. 堀昌雄

    ○堀小委員 ありがとうございました。終わります。
  114. 山崎武三郎

  115. 柴田弘

    柴田委員 参考人には大変御苦労さまであります。時間の制約がありますので、一点ないし二点お伺いしてみたいと思います。  銀行法改正に関連をいたしまして、金融制度調査会答申が出ました。この中に「銀行資金調達あり方」とありまして、いわゆる銀行業務の多様化、弾力化に対応しての資金調達手段の多様化、弾力化、こういうことが述べられておるわけでございます。その中で複利預金等の問題について述べられております。  先般私は大蔵委員会銀行局長質問をいたしました。今日の郵貯の急増に対して民間の金融機関、これは商品等の差異の問題がある。この点について銀行局長もやはり郵貯シフトへの一因がそこにあるということを認めておりまして、やはり今後民間の金融機関が、現在検討されておりますところの各種の新種預金構想について、業界内の合意が得られれば、これらについて前向きに認可をしていきたいという意味の発言があったと私は記憶いたしておるわけであります。  そこで、お聞きしたいのですが、お聞きするところによりますと、現在こういったいわゆる告知式の定期預金というような問題が検討されておるということでございますが、そこら辺のお考え方、そしてその見通しというようなものがもしありましたら、この際お聞かせをいただきたい。  それからあわせて、いま中小金融機関の問題が出ました。私は、この新しい預金については中小金融機関はコストアップになってくるのじゃないか、都銀さんと地銀さんまでは大体対抗できるのじゃないかと思うのですが、いわゆる相互あるいは信金、信用組合等々は、やはりこの辺は一つの問題が出てくるのじゃないか、こういうふうに思います。この点、たまたま参考人は大蔵省の事務次官という立場でございましたので、地銀の頭取さん、あるいは会長さんという立場もありましょうが、ひとつより高い見地から御意見をいただければ、このように思います。よろしくお願いいたします。
  116. 吉國二郎

    吉國参考人 金融制度調査会では、最近預金者のニーズが非常に多様化してきている、それに対応するだけの商品を当然そろえるべきだという考え方で、長期性の預金であるとか複利預金であるとかいうことを取り上げまして的確な商品化を図るべきだということを言っておりますし、そういう同じような意味で、先ほど御質問が出ました窓販とかディーリングという問題も取り上げているわけでございます。確かに、銀行の商品が非常に画一化しておって、したがって魅力がなくなったんだ、郵便局の定額貯金というものがそういう意味では非常に有利な商品になっておるというのも事実でございます。  実は、定額貯金というのは、昭和十六年でございましたか設けられたものでございまして、要するに、当時は銀行預金というようなものにふなれな、期日なんというものを余り正確に意識してない、預けたら預けっ放し、必要になれば出しに行くというような人がうまく使えるようにというので考えられた制度だと当時言われておりました。ですから、どちらかと言うと、金利とかあるいは預金についてわりによくわかった人は銀行預金をするんだ、定期預金をする。それで、銀行の方は、そういうことでございますから、定期預金であれば、期日までに解約した場合には約定利息よりはるかに低い解約利息で、それだけの約束違反に対してはペナルティーを課すんだ、これが当時の常識であったわけでございますが、これが戦後になってまいりますと非常に変わってまいりました。ことに預貯金の大衆化という問題になってまいりますと、そういう銀行的な、昔の法制的な考え方というのは余りなじまない。たとえば二年定期で預けておいて一年半で出してしまった。その場合に、一年定期の率より低いペナルティーの利率というのはおかしいじゃないかというのが常識になりつつあるわけでございまして、それがいわゆる流動性と収益性を備えた定額貯金の魅力というものを浮かび上がらせたと言ってもいいんだろうと思います。  ですから、一時は非常に古い型の預金だなんて言われていた定額貯金が最もナウな預金になってしまったということでございまして、非常におかしなことになったと私ども思うのですけれども、それは私どもの認識が古いのかもしれないのでありまして、預金者としてはいつでも出せる、そして出すまでの預けた期間で当然評価されてしかるべき預金というのがあっていいんじゃないかということになるわけで、それがいわゆる複利定期問題ということになったわけでございます。  実は地方銀行でもこの点非常に気にいたしまして、勉強いたしました結果、四十九年からいろいろ検討いたしまして、ちょうど定額貯金のような複利預金というものを考え出したわけでございます。それを都銀との間で調整をいたしまして、都銀、地銀調整案というものをつくってこれを実行しようとしたわけでございますが、あいにく形が定額貯金に非常に似ていたものですから、郵政側からは、これはわれわれの特許権の侵害であるというようなことで、おまえさんの方でそういうものをつくるならいまの定額貯金の利率をよくしてこれに負けない預金をつくるというようになってまいりましたのと、それから、そのときの複利預金は一年ごとに利子を元加するという形での複利預金だったものですから、いまの税制でございますと、三百万円を超えた預金は直ちにマル優にならないわけでございます。もとから利子が課税になってしまいますので、実際に定額貯金と同じものをつくっても、銀行の面で申しますと、十年間置いておくためには最初の預入額は百六十万円ぐらいでないと元加していくためにだめになってしまうわけです。そういう欠陥があるということもございまして、もう少し検討しようじゃないかということで、実はそのまま延びているのが実情でございます。したがいまして、銀行は非常にサボっておるからということをよく言われますけれども、裏側にはそういう話が実はあったわけでございます。  いま私どもが研究いたしておりますし、また都銀とも一緒に練っておる案と申しますのは、ちょっとかっこうが違いまして、元加をしないで、途中は付利をしない、最後に引き出すときに複利計算をやって利子計算をして出す。こうなりますと、元加いたしませんから、最初に三百万円預けておいても、あと利子が積もった分は利子だけの問題ですから課税にならない、こういう案を一つつくりました。  それから、定期であって途中で引き出すという問題につきましては、昔から指定定期預金というのがあって、指定期日を決めておいて、たとえば二年定期でありますけれども、指定期日をたとえば一年七カ月で出すよという約束をしておきますと、これは一年定期の率で利子がつくという制度がございます。それを少し練って考えまして、一カ月前に告知をいたしましたならば、その告知の日に解約したときにはいわゆる解約利率を適用しないで、その直前の一年なら一年の金利を前提にした複利計算をする、こういったドイツでいまやっております告知定期というものの形を取り入れたものを案出したわけでございます。  これでございますと、いまの金利体系を直さずにそのままやっていける。そうすれば、郵便貯金の方もいまの定額貯金の利率を直すという問題も起きないというので、できるのではないかなということでいまいろいろ進めております。この具体的な商品についてはやはり当局の認可が要るわけでございますから、まだいろいろ当局にも検討お願いをしている段階でございます。  私どもは、この形ができますればかなりの対抗商品にはなるのではないかと思っておりますが、その反面に、先ほどおっしゃいました中小金融機関をどうするのだという問題があるのです。その点で私どもは、これについては十年というような預金ではなくて、大体三年というふうに考えております。  と申しますのは、いまの金融機関のポジションでございますと、十年も最高利率が動かないというような商品をつくると低金利時代には大変なことになってしまうわけでございます。郵便局の場合は財投の方で七年間は八%なり八・五%の預託金利をつけてくれますから、幾ら上げても大丈夫だという問題があるのですけれども銀行ではそうはまいりませんので、三年ということを一つの限度にするか、つまり商業金融と申しますか商業銀行の形が中心になっております普通銀行の場合は、長期の固定的な預金というのは本来余りそぐわないものではないかと思いますので、短期であって、しかも引き出し自由的なものという意味で、新種預金はいまのところ三年を限度に考えているわけで、そういう意味では中小金融機関でも努力すればコストアップでまいってしまうということはないのじゃないかと考えているわけでございます。
  117. 柴田弘

    柴田委員 時間が参りましたので、終わります。  ありがとうございました。
  118. 山崎武三郎

  119. 竹本孫一

    竹本委員 どうも御苦労さまです。簡単に三つほどお伺いいたします。  一つは、郵便貯金へのシフトで、地方銀行の場合には、被害という言葉がいいのかどうかわかりませんが、どの程度の被害を受けておられるかということであります。要するに、どの程度シフトが激しく行われているかということについて、大ざっぱで結構ですが、ひとつ伺いたいと思います。
  120. 吉國二郎

    吉國参考人 新聞等で郵便貯金に非常にシフトが起こっておるということが言われておりますし、実際に私ども地方銀行、また都市銀行におきましても最近の預金の伸びが非常に悪くなっております。それに反して、六、七月ごろからもふえておりますが、八月、九月の郵便貯金の伸びが前年度に対して五〇%近いというようなこともございますので、やはりシフトが起こっているのかもしれないという感じは持っております。  具体的に地方銀行で幾らいっているかということはなかなかわからないのですが、たとえば当行の例で申しますと、六、七月の間に銀行から預金小切手で引き出してそれをよそに持っていった、それは交換で回って返ってきたということで調べてみますと、当行の約三分の一くらいの支店の実例でございますけれども、六、七月の間にそういう形で流れ出した預金が約二十億ぐらいございます。現金を引き出して持っていったものもあるわけでございますから、それから推計をいたしますと、当行だけ、神奈川県だけをとっても、この二カ月間にどうも百億くらいの預金がシフトしているのじゃないか。これは本当の推計でございますので何とも申せませんが、かなりの額が現実に移っていることも事実であるということは申せると思います。
  121. 竹本孫一

    竹本委員 そこで郵便局の方へ五十七兆とか、いろいろ伸びていっていますけれども、この間から大蔵大臣、郵政大臣の協定もできたようですけれども、私はその実効性について非常に疑問を持っているのです。だから、五十七兆から六十兆円にさらにというふうにどんどん伸びていく。幾らになるか推定の問題ですけれども、それを別にして、この勢いで郵便貯金がふえていくと、将来の日本金融政策のあり方という問題で重大なる影響が出てくる。日本金融市場一つの別天地というか租界というか、別の世界ができている。  したがって、日銀を初めとして大蔵省の金融政策というものがきわめて実効性の制限されたものになる。これはわが国の将来の金融政策から大変な問題だと思いますが、大蔵省に長くおられた吉國さんとして、日本金融政策のあり方とにらみ合わせてこの流れをどうとらえておられるかという点をひとつ伺いたいと思います。
  122. 吉國二郎

    吉國参考人 先般あるいは新聞等でごらんをいただきましたか、あるいはお手元にもお配りしてあるかと思いますけれども、全銀協並びに金融十一団体でこの問題についていろいろ検討いたしました結果をお送りしてあるかと思うのでございますが、現在の郵便貯金が、銀行個人預金と郵便貯金とを合わせた、つまり個人預貯金の大体三〇%近くに達しているわけでございます。この十年間でざっとシェアが一〇%ぐらい伸びたわけでございますから、この勢いでまいりますと、この十年か二十年のうちには個人預金の半分ぐらいは向こうへ行ってしまうのじゃないかという問題があるわけでございます。  一方におきまして、法人の預金は、法人の資金選択が多様化してまいりましたので、証券化するとかいろいろな形で金融離れしていると言われますので、こうなってまいりますと、普通銀行の持っている与信能力がうんと制限されるという結果になる。しかも一方におきましては、昭和四十年に国債の引き受けシ団をつくりまして国債をシ団で引き受けるということが始まったわけでございますが、初めは国債というのは例外と考えていたわけでございます。それが、この三、四年で大体毎年一般会計の三〇%を超えるというようなことになって、それがいわば惰性的にと申しますか、シンジゲートが大部分引き受けるということになりましたので、いま都市銀行地方銀行ともに公共債の引受額が、年によって違いますけれども、最近は預金増加額の七、八〇%に達するということになっている。したがいまして、新しい貸し付けをするためには国債を処分しなくてはならない。大量に処分をいたしますから、かつて考えられなかったような国債の相場の下落が生じたわけでございます。国債が一年後に三割近くも下落するということは、いわば潜在的なクラウディングアウトが起こっていると考えざるを得ないわけでございます。そういう面がありながら、資金の調達面では次々に圧迫を受けるということになりますと、これはもう金融機関が正常な活動を妨げられることは目に見えているわけであります。  一方、それだけ受信面において優位を持っております郵便貯金の原資というものがそのまま財投になりいろいろの制度金融というものになっていくわけですから、いわば自由な金融分野が次第に狭まってくるということで、いま言われております民間の活力をできるだけ発揮させるために、自由な経済活動を拡大するという一般の傾向に相反したことに着実になっていくんじゃないかということで、私ども、これは非常に重大な問題である。いわば、金融制度調査会でいろいろこの問題を論ぜられてしかるべしと思いますけれども金融制度調査会はあいにく大蔵大臣の諮問機関であるので、郵便貯金については権限がないのだという主張が大変強いのでございます。したがいまして、私どもとしては、この際できる限り早く総合的な公私の金融と申しますか、パブリックセクターとプライベートセクターを両方含んだ金融あり方、資金配分のあり方というものを根本的に考え直す機関をつくっていただいて、ここで早く問題を根本から洗い直していただきたい。戦後いままで、たとえばほとんど資本がゼロに近い状態にあったときの金融の形態がずっと伸びてきて、その間いろいろな変化があったのが十二分にこなし切れずにきているのがいまの制度だと思いますので、これはひとつ国会でも大いに御議論いただきまして改めていただければというふうにも考えますけれども、まじめな意味で、私は、二年かかっても三年かかってもいいので、そういう機関をつくっていただいて根本的な見直しをしないと、恐らく十年後ぐらいには非常に大きな問題になって、もう取り返しのつかないことになるのじゃないかというふうに心配をしているわけでございます。
  123. 竹本孫一

    竹本委員 最後にもう一つ。  いまお話しの、パブリックセクターやプライベートセクターを総合調整した国家的な見地からの政策も考えなければならぬ、まあそれはそのとおりだと思います。しかし、最後に伺いたいのは、先ほど来新種預金の問題、いろいろお話がありました。要するに郵便局がこれだけ伸びたには、ごく最近のものは最近のまた特殊事情もあります。グリーンカードという特別な問題が出てきておりますけれども、そうでなくても郵便貯金がぐんぐん伸びてきましたね。これはやはりそれだけの意味があると思うのです。そういう意味で、銀行自身が銀行あり方について反省をすべき問題も幾つか突きつけられておるのではないか、そういう立場から、いまの預金を集めるにしても複利定期でいくか告知つきでいくかいろいろありましたけれども、とにかくそういう新種預金を新しく対抗商品として開拓するという努力も大いに必要であろうと思いますが、この新種預金は一体いつごろになれば具体的になって対抗力を発揮するのかという点が一つ。  それからもう一つは、新しい大蔵大臣は大変庶民性があっていいと思うのだけれども、この間、私はよく読まなかったけれども、ちょっと新聞の見出しを見ただけですが、銀行のようにこんなに堂々と構えて大理石でつくって入り口もよくわからないし、入れば滑りそうなところへ庶民が寄りつかないのはあたりまえだというようなことを何か言われたらしいのですけれども、これは非常に大事な真理があると思うのですね。要するに、銀行がもう少し庶民に親しまれるような構えにする、そして預金の面も貸し出しの面ももう少し庶民の具体的なニーズに応ずるように考え直す努力が要ると思いますが、その点について一口感想を承って終わりにいたします。
  124. 吉國二郎

    吉國参考人 新種預金につきましては、実は先ほど申し上げましたように、現在御当局に対して説明をしている段階でございまして、その認可がいつになるかちょっとまだ私どもつまびらかにいたしませんが、いまおっしゃいました銀行の反省につきましては、私もそれは非常に強く感じております。  大衆化ということを言い出して長いわけでございますけれども、その大衆化が預金を吸収するということにどちらかというと関心が行き過ぎておって、大衆の預金をする心とか、あるいは銀行を利用するあり方というものに対してもっともっと考えるべき点が多かったと思います。しかし、その反面にいろいろな金融サービスを拡大をいたしまして、給振りとかあるいは自振り、いまたとえばいろいろな主要な支払いについてはあらかじめ銀行に言っておけば、毎月きちんと自振りで自分の知らない間に払ってくれるとか、そういう面で家計とのつながりは非常に深くなっていると思うのでございます。そういう意味の家計に対するサービスというものをより開発し、またそれについて何と申しますか皆様に近寄りやすいような体制をつくっていく、いわば家計と預金というものは裏表であるというような形になっていくのが本当の意味の大衆化であろうと思いますので、その点は私どもも非常に反省もしておりますし、また銀行局におかれましても、最近の店舗について小型店舗とか機械化店舗というものを考えることを可能にするような傾向でございまして、大変いいことじゃないかと思っております。
  125. 竹本孫一

    竹本委員 ありがとうございました。  終わります。
  126. 山崎武三郎

  127. 簑輪幸代

    簑輪委員 お忙しいところどうも御苦労さまでございます。時間が余りありませんので、私は先ほど信託協会の会長さんにもお尋ねしたのですけれども、定年延長の問題とか身障者の雇用の問題についてお尋ねをしたいと思います。  御存じのとおり、すでに高齢化社会への対応ということで定年の延長の問題は非常に大きな要求になってきておりますけれども、現在の六十歳定年というのを全産業で見ますと三六・五%に達しておりますが、金融保険業の業界では一五・三%という非常に低い数値になっていると思うのです。定年延長をするという問題についてどのようにお考えになっておられるのか、またできましたら参考人銀行の例でも構いませんが、具体的な計画などもありましたらお話をいただきたいと思います。
  128. 吉國二郎

    吉國参考人 ただいま御指摘がございましたように、定年延長の問題は私ども非常に重要な問題に考えております。労働組合側ともよく打ち合わせをしながら、この問題については真剣に対処してまいりたいと思っておりますが、地方銀行におきましては大体半数が再雇用制度をとっておりまして、またその中で、再雇用制度をとっておりませんが、すでに六十歳定年あるいは五十七、八歳定年に延長しているところもございます。その意味では、わりに地方銀行はこの点では意識が進んでいるのじゃないかと思います。  当行におきましては、再雇用制度をとりまして六十歳まで再雇用するという制度をとっておりますが、これらはあくまでも過渡的なものでございまして、実際問題といたしまして、この六十歳定年あるいはさらに定年を延長した場合に給与体系をどうするかという問題、いま各方面で非常に検討されている状況でもございますので、とりあえず再雇用制度をとり、その間において各方面の研究を参酌しながら最も理想的な給与体系を執行することによって理想的な定年延長というものを実現したいというのが私どもの率直な気持ちでございます。
  129. 簑輪幸代

    簑輪委員 次に身体障害者の雇用の問題ですけれども、すでに御存知のとおり一九八一年、来年が国際障害者年ということになっておりまして、全面的な社会参加、それぞれの地域においても社会においても障害者が十分な生活ができるようにということで、私どもが、すべて国民が努力をしなければならないというふうに思いますが、吉國参考人におかれましては、国際障害者年というものについてどのようにお考えでいらっしゃいますか、お聞きしたいと思います。
  130. 吉國二郎

    吉國参考人 この身体障害者雇用の問題につきまして、銀行と申しますか金融業界がおくれておるという批判はよく承っております。事実、雇用率は平均すると〇・七%程度と言われておるわけでございます。地方銀行の場合はちょっとそれよりは高いのでございますが、やはり〇・八とかいう程度でございますので、非常に反省すべき点であると思いますし、来年身体障害者年を迎えまして、こういう時期にできるだけ私どもの意識を高めて現在の採用率も高めていきたいというふうに考えておるわけでございます。  実際、私ども銀行では、県の労働部とかあるいは職業安定所等に非常に接近をいたしまして身体障害者の紹介を求めてもおりますし、部内では縁故その他をたどって身体障害者の採用を促進するように各店に掲示をしているとかいうことで努力はいたしておりますが、実際問題といたしまして都会地でなかなか思うように採用ができないというのも実情でございます。一つは、身体障害者手帳というものをもらわない傾向も若干あるわけでございます。ですから、私どもとしては、この身体障害者の認定というのを極秘裏、もちろんプライバシーを守りながらも一定の医者の判定とかいうことでやっていただくようにすれば、実際もっと雇用率も上がるのじゃないかという感じもするので、この点でもう少し何か、厚生省ですか労働省ですかに対しましても少し認定の方法を弾力化すると申しますか具体化してほしいということも要望しているわけでございますが、それはそれといたしまして、できる限りの努力をして法定の最低基準までは雇用率を高めたいというのが本当に私たちの気持ちであると申し上げたいと思います。
  131. 簑輪幸代

    簑輪委員 法定の雇用率一・五%ということになっておりますけれども、いまのお話ですと、努力はしているけれどもなかなか進まない事情というのは障害者の認定の方法に問題があるかのようなお話のように承りましたけれども、それはさておきまして、銀行側の方といたしまして、さらに改善の御努力という方法はまだ十分なされなければならないものではないでしょうか。
  132. 吉國二郎

    吉國参考人 それはもうそのとおりでございまして、私はさっき申し上げたのはでき得ればということでございますが、私どもとしては、先ほど申し上げたようなことで部内でもできるだけ各人が紹介をするようにというようなことも申しておりますし、大体、私どものところはいま〇・九%程度に達しております。
  133. 簑輪幸代

    簑輪委員 ところで、地方銀行というのは地域の金融機関としての中核を占めているわけですけれども地方銀行と一口に言いましても、上位行と下位行との間にはかなりの隔たりがあるようですし、一概には言えない部分もあるかと思いますけれども、特に、地場産業の育成とか、あるいは地方債の引き受け、公営住宅など政策金融への協力という問題それから資金の地元還元ということを拡充する問題など社会的な必要性、要請はかなり大きいものがあると思います。一方では非常に厳しい経営環境と言われておりますけれども、そういう中で地方銀行あり方について参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  134. 吉國二郎

    吉國参考人 地方銀行の定義から申しますと、本来は普通銀行でございますけれども、いわば明治の最初に新しい金融制度を敷こうということで国立銀行条例というものができまして以来、実は地方銀行は一時二千数百もあったわけでございますが、これが合併し、あるいは吸収される、そういう形で現在六十三行ということになっておりますが、戦時中に一県一行主義ということでずいぶん整理をいたしました。したがいまして、いまでは大体原則として県に一行。そしてその県の中の金融の、いわば毎日の金融の動きを、たとえば日銀券が撤布され、また還収されるという形をその地域の銀行が受け持って、いわば経済の血液が金融であるといたしますと、その各地域における鼓動を受け持っておるようなところが地方銀行のいわば責任の基本であると私は思っております。同時に、地域に密着をし、したがって支店等も一つの県に集中してございますから、自然その県内の経済についての責任を大きく持っておりまして、一つは公的な意味では県、市町村の指定金融機関という事務的な点もございますが、同時にその立場から県、市町村の費用の一部を借り入れに頼るときにはそれに対して資金供給をするという立場を持っておりますし、また民間の部門で申しますと、住民に対する住宅金融あるいは大体地方は中小企業が中心になっておりますから、中小企業に対する金融というものに対して全国的な立場銀行とは違った個別の責任を持っていると思います。  そういう意味で申しますと、地方銀行の平均的な数字で申し上げますと、大体資金量のうち六七、八%というのは中小企業金融に充てておりますし、一四、五%が住宅金融を中心にした個人金融に充てておりますし、それから一七、八%というものが公的な金融に充てられておるこういうことになりますので、地方銀行全体を通じますと、いわゆる大企業に対する金融というのはきわめて限られておりまして、大部分は中小企業金融であり、また個人金融であり、公的金融である。これは融資の形態をごらんいただきますと、地方銀行の持っておる責任、またそれをどう果たしているかということがかなり鮮明に出てまいるだろうと思います。
  135. 簑輪幸代

    簑輪委員 どうもありがとうございました。
  136. 山崎武三郎

    山崎委員長 これにて吉國参考人に対する質疑は終了いたしました。  吉國参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。     —————————————
  137. 山崎武三郎

    山崎委員長 ただいま参考人として日本長期信用銀行取締役頭取吉村勘兵衛君が御出席されております。  吉村参考人には、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  銀行法等改正をめぐる諸問題等につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  それでは、吉村参考人に対する質疑に入ります。堀昌雄君。
  138. 堀昌雄

    ○堀小委員 御案内のように、金融制度調査会が昨年答申をいたしましてからかなり時間がたっておりますが、実は大蔵省としては今年の通常国会銀行法改正案を出したいという御希望があったのでありますが、御案内のようにことしは参議院選挙がございまして、当大蔵委員会では三月いっぱいは予算関係法案の審議でいっぱいでございますし、その次に財政特例法という重要な法案を抱えておりますから、とても銀行法改正など論議する時間がないでしょうということで、実は次の通常国会に提案される運びとなっておるようでございまして、いま金融制度調査会では中小企業専門金融機関の問題についてまだ御論議が続いておるようでございますが、銀行法は五十年に一遍の改正ということでもございますし、十分御論議がされたことだと思うのでありますけれども、実は今度の金融制度調査会の報告をずっと細かく拝見をしておりますと、私としてはちょっといかがかと思う点がかなりあるわけでございます。  そこで、長期信用銀行昭和二十七年でございますか、長期信用銀行法ということに基づいて設けられた銀行制度でございまして、まさに昭和二年の銀行法以来の新しい法律に基づいて新たな業務が行われることになったわけでございますが、まさにこれはこれまでの金融制度分離主義専門主義と申しますか、この線に沿ってつくられた銀行だ、こういうふうに考えております。債券発行銀行という都市銀行信託銀行とは大変趣を異にした銀行でありますし、それなりにこの長期信用銀行法は法律の体系がこれまでの銀行法とは異なっております。第一条、目的のところで「この法律は、長期金融の円滑を図るため、長期信用銀行制度を確立し、その業務の公共性にかんがみ、監督の適正を期するとともに、銀行業務の分化により金融制度の整備に資することを目的とする。」明らかにここに「銀行業務の分化」という言葉が実は用いられているわけでございます。その次に第六条では、これは銀行に認められておりませんところの「国債、地方債、社債その他の債券、株式又は出資証券の応募その他の方法による取得。但し」云々、こういうふうに書かれておりますし、地方債または社債その他の債券の募集の受託等、銀行とは著しく趣を異にした業務が規定をされておるわけでございます。  実は今度の金融制度調査会答申を拝見いたしておりますと、朝からずっと各参考人においでいただいた中でいろいろ御論議があったわけでありますけれども前回金融制度調査会のとき以来、都市銀行の方では銀行デパート化論という問題が唱えられるようになりました。かきねを低くして大いに競争自由の原則を拡大したい、たまたま当時の澄田銀行局長が効率主義と申しますか、競争原理の導入という新たな問題を提起されまして、それは合併転換法その他の法律となったのでございます。しかし、そういう効率化ということは、競争促進で競争の分野を広げていく、こういうことになりますと、これは同質化ということになるので、この長期信用銀行法第一条における分化という問題とは逆行するかっこうになる、こうなるのだろうと思うのであります。そこで、私は当時もまだ分離専門方式でいいんじゃないかということを申し上げておりましたが、それから十年、まだ今日も依然として長期信用銀行仕事はある、仕事があるといいますか、そういう業務が必要である、こういう認識に立っておるわけでございます。  そこでまず第一点として、そういう分化ということが目的に書かれておる長期信用銀行としては、この同質化、効率化という問題にどういうふうに対応なさるお考えか、ちょっと承りたいと思います。
  139. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 先ほど御紹介いただきました長期信用銀行の吉村でございます。ひとつよろしくどうぞ。  ただいま堀先生から金融制度の分化あるいは同質化の問題のお話があったのでございますが、私ども銀行は、そういう法律でできております金融機関であります以上、堀先生のお考えと全く同感に感じておりますし、もし後でいろいろございましたら、いまの長期信用銀行の今日的な必要性ということもお話し申し上げたいと存じます。
  140. 堀昌雄

    ○堀小委員 そこで、同質化の問題にあわせて、今度の答申で一般的にここで書かれておりますディスクロージャーの問題であるとか、大口融資規制の問題であるとか、あるいは週休二日制の問題であるとかいうことは、いずれも結構だ、こう思っているのでありますが、ただ一つの問題は、実は資金融通という問題に関連する部分でございます。ここでは「銀行業務あり方」という第二章の部分に「資金供給のあり方」としまして、1が「基本的な考え方」、その(2)が「資金供給において期待される役割」とまいりまして、その次に「公共部門向け資金供給」、「個人向け資金供給」、「企業向け資金供給」、こういうふうに、今日金融機関における個人向けと企業向けというのは、銀行として当然のことでありますけれども、新しく「公共部門向け資金供給」という問題が並列して並べられておるわけでございます。  そこで、この問題は、御案内のようにいま非常に重要な問題になっております銀行バンクディーリングと窓口販売の問題に関連するわけでありまして、ここにこういうふうに書かれているということ、あるいはその後で「銀行法改正の具体的内容に関する小委員会意見」という部分等を見ましても、要するに、今度は新しくどうもバンクディーリングという問題を銀行法業務の中に書き込みたいという考え方がこの答申の中を流れている、こう思うのでございます。     〔小委員長退席、大原(一)小委長代理着席〕  そこで、実は長期信用銀行法ではかなり皆さんの方はそういう取り扱いについて、分化という枠組みの中で認められておる問題である、まさに今度それが銀行法に入るということは、さっき申し上げた同質化という問題がここではっきりクローズアップしてくる、こういうふうに私は理解しておるわけでございますが、その点に関する長期信用銀行側のお考えを承りたいと思います。
  141. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 窓口販売とバンクディーリングの問題でございますが、これは法律上、いまの銀行法と証取法の六十五条の二項、それから長期信用銀行法の六条一項二号、こういう点にかんがみまして、法律的には可能ではないかと思うのでございます。特に長期信用銀行の場合は銀行法制定の全体的な趣旨から考えましても可能じゃないか、こう思うのでございますが、おっしゃいますように、これについては非常に法律的に解釈がいろいろあるわけでございます。それで、銀行法改正というのは五十年ぶりでございますし、これを法律に盛り込むことは妥当なんじゃないか、ただそれを具体的に運営する場合に、これは行政当局の御指導にお任せするわけでありますけれども証券会社あるいは銀行間がよく話し合って了解してやる必要があるんじゃないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  142. 堀昌雄

    ○堀小委員 私が申し上げているのは、証券銀行の話し合いの話じゃないのですよ。長期信用銀行として銀行にこのことを認めることは、いまは長期信用銀行にだけ認められておるいろいろなそういう証券業があるわけでありますけれども、その点では長期信用銀行銀行の間のかきねが下がって同質化が進むのではないだろうか。私は前段では分化をきちんとしていった方がいいのではないか、こう思っているのですが、もし同質化がどんどん進んでいきますと、将来的に長期信用銀行というもののレーゾンデートルはどうなるのかという問題が、すぐは起きないと思いますけれども、やがてそういうふうにしてだんだんと競合部分が広がってくるということになりますと、何と申しましても長期信用銀行というのは店舗数も少ないし、片方は非常に大きな店舗数があるわけでございますし、競争条件としてはなかなか長期信用銀行は大変なんじゃないだろうかな、だから、そういう意味でいまの問題を同質化という面で長期信用銀行はどうお考えになりますかというふうに伺っているので、それがいいか悪いかの話はまた別の問題でございます。
  143. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 非常にお答えがむずかしいのでございまして、御質問の御趣旨、私、当事者といたしましては非常にありがたい御質問だと思うのでございますが、国債の安定消化というのは国民的な問題でもございますし、具体的な実施については行政当局の御指導もございますから、抽象的にこの法律に盛り込むということはやはり妥当なのじゃないかと、私はこう考えておる次第でございます。
  144. 堀昌雄

    ○堀小委員 結構なのです。それはいまのでよろしい。要するに、私が申し上げているように、何もバンクディーリングだけで皆さんの仕事がどうこうなるわけではありませんけれども、私はこのバンクディーリングのような問題というのは入り口だと思っているのですよ。     〔大原(一)小委員長代理退席、森田委員長代理着席〕 やがて次々に証券業務を拡大してくるという条件がきますと、私は長期信用銀行というのは将来的に存在価値が必ずなくなる。だから、問題は入り口で問題を処理しておかないと、ただ何かたてまえ論だけの話は長期信用銀行にとっては、まあ私どもが生きておる時期ではないと思います、その結果がどういうふうに出てくるかは三十年、四十年、五十年という将来の問題だろうと思うのでありますけれども、歴史的にこれを検証してしてみたときには、ああなるほどそのときにそういう論議があったのかということが必ず来る日が来るだろう、私はこういう気持ちなのでございます。しかし、それは長期信用銀行としては法律に書くことは結構ですと、こうおっしゃるならば、それはそれなりのお考えでございますから、これ以上伺う気持ちはございません。  そこで、それではこれを読んでみますと、この答申の中で長期信用銀行に関する部分が実は幾つか、「第2 長期信用銀行」というのでありますけれども、結局この中で見ますと、「現行の自己資本の二〇倍から三〇倍へ引き上げることが適当である」という、要するに債券発行限度の問題だけが答申らしい答申であって、あとはいろいろ書いてありますけれども、別に余り事新しい問題も何もないという感じがいたすわけでございます。     〔森田委員長代理退席、大原(一)小委員長代理着席〕 これからの問題でありますから、二十倍から三十倍にしたからすぐ三十倍の発行ができるわけでもありませんでしょうし、もちろん債券発行の限度はそのときの市場の情勢によるわけでございましょうから、問題はそういうことだと思います。私もこれは別に構わないと思うのですが、そういう意味では、この答申では私はどうもメリットは皆さんの方はここだけ、片一方はかなり将来にわたって長期信用銀行の根底が揺すぶられる問題提起がこの答申の中にあるという問題意識なのでありますが、そういう点だけを申し上げて質問を終わります。
  145. 大原一三

    大原(一)小委員長代理 柴田弘君。
  146. 柴田弘

    柴田委員 どうもきょうは参考人お忙しいところありがとうございました。  銀行法改正に関連して、きょうばいろいろと参考人に来ていただきまして質問させていただくわけでありますが、時間の関係もありますので、二点ほどお伺いをして終わりたいと思います。  長期信用銀行、これは金融制度調査会答申の中にもいろいろな業務が書かれておるわけでございます。そこで、普通銀行との関係でございますが、やはり最近普通銀行も中小企業に対する貸し付けがだんだんふえてきている。ちなみにそういった観点に立ちまして長期信用銀行の中小企業向けの貸し出しも過去調査をしてまいりますと、昭和四十年代は総貸し出しのうち一〇%程度であったわけですが、この五十四年度では三倍近く、二八%に伸びている。  それでお聞きしたいのは、この中小企業への貸し出しの方針ですね、今後どういう観点に立っていかれるかという問題と、それからやはり普通銀行との競合性の問題もあるわけでございます。いわゆる補完的競合性といいますか、これは調査会の答申にもあるわけでありますが、その辺の考え方につきまして御意見をお伺いしたいと思います。よろしく。
  147. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 長期信用銀行の中小企業に対する態度を申しますその前に、御存じでいらっしゃいましょうけれども長期信用銀行は、法律によりまして、主とした貸し付けは設備資金及び長期運転資金とございますように、やはり中小企業に対しても長期の資金を扱うわけでございまして、市中銀行さんがなさっておられますように、手形を割り引いて、金繰りで二、三カ月後にそれが落ちるとかあるいは手形貸し付けでそれをあれにする、こういう形ではございませんで、中小企業のそういう長期資金という観点からお取引しておるという点が違う問題が一つございます。  それから、長期信用銀行は御存じのように店舗が非常に少のうございますから、これを何とか補完いたしませんと地方の中小企業に融資が非常に不便である、こういう点もございまして、根本の中小企業に対する私の見方といたしましては、中小企業というのは日本経済のバイタリティーの源泉であるという認識で力を入れていっておるわけでございますけれども、市中銀行さんと比べますとさっき申し上げましたような制約がございますから、勢いある程度低いということはございます。ただ長期信用銀行といたしましては、地方の中小企業に対する融資につきましては、地方銀行さんでございますとか相互銀行でございますとかあるいは信用金庫に対しまして代理貸しという制度を設けております。これは店舗の補完という意味と、それから御存じでいらっしゃいますが、そういう金融機関でわれわれの金融債を買っていただいているわけですから、地方の資金を吸収するだけでは地方への金融をあれするわけでございますから、それの資金の地方還元という意味も持ちましてそういう制度を設けております。それから、金融債で集めたお金で御融資するということは間接金融と申しますか、そういう形になるわけでございますが、大企業は資格さえ、適格さえありますればみずから社債を出せるわけでございますけれども、中小企業は社債を発行する適格にまだ時間がある、こういう形でございます。この金融債というのは、結局、中小企業あるいは中堅企業も入りますが、そういう社債の出せないような企業に対する集合社債的な観念もあるのじゃないか、私はそういう考えを持っておるわけでございます。そういう意味で、中小企業につきましては今後もその法律の範囲内でできるだけの支援、融資をしていきたい、こういう気持ちでおります。
  148. 柴田弘

    柴田委員 では、もう一点国際業務の関連につきましてお尋ねします。  これは私は長銀の一つの大きな業務であるというふうに思うわけであります。それで今日の国際環境といいますか海外情勢というものを考えていった場合に、この国際業務の環境というのは非常に厳しいものがあるのではないかというふうに思います。たとえば開発途上国の債務の累積の問題あるいは政変によるところの政治リスクの問題等々あると思いますが、しかし長銀として、今後国際的なニーズに合った業務拡大を図っていかなければいけないというふうに思います。今後むずかしい問題も出てくると思いますが、どのような方針のもとにこういった点に対処されるのか、御意見があればお聞かせいただいて質問を終わりたいと思います。
  149. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 お答え申し上げます。  いま先生がおっしゃいましたように、日本経済が今後世界の経済の中に仲間入りをし、生き残っていくには、やはりその中へ入り込んで共存していかなければならないわけでございまして、企業の国際化ということは今後も相当進んでいくのではないか、こう思うわけでございます。また、エネルギー問題につきましても、資源の開発などにつきましても、海外の案件についてやらざるを得ない。私ども銀行と申しますのはそういう中立性のある銀行でございますから、こういう案件につきまして資本取引と申しますか非常に長期のあれを、従来国内でやっておりました案件の審査あるいはオルガナイズの機能をもちましてこういう方面にもいま取り組んでおるわけでございまして、私どもの運用資産の一〇%ぐらいは大体そういうふうになっていっておるわけでございます。  そういうことでございますから、国際業務については今後も積極的に取り組んでまいりたいと存じておるわけでございますが、ただいま先生もちょっとおっしゃいましたように、国際業務と申しますのは非常にリスクというものを考えなければなりません。カントリーリスクとかプロジェクトに対するリスク、資金の調達に対するリスク、こういうものがございますから、そういう点を十分踏まえ、またそういう調査網を充実いたしまして、慎重ながら積極的に取り組んでまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  150. 柴田弘

    柴田委員 どうもありがとうございました。終わります。
  151. 大原一三

    大原(一)小委員長代理 簑輪幸代君。
  152. 簑輪幸代

    簑輪委員 きょうはお忙しいところをどうもありがとうございます。二、三点についてお尋ねしたいと思います。  まず最初に、長期信用銀行あり方についてということですけれども、今日長期信用銀行は国債の大量発行のもとで、資金の調達面では国債と金融債との競合という問題、資金運用面では大企業の設備投資の停滞という問題があって、非常に厳しい環境にあるというふうに言われております。     〔大原(一)小委員長代理退席、小委員長着席〕 そういう中で大変御苦労も多いことと存じますけれども、昨年の金融制度調査会答申では、かきね問題については相互乗り入れということがうたわれております。各金融機関の問題については、単なる利害調整というような立場からだけではなしに、銀行法改正という問題に当たるならば、国民生活向上という観点でそういう問題にどのような役割りを果たしていくかということが非常に重要ではないかと考えるわけです。  それで、先ほど長期信用銀行の今日的必要性について述べたいというお話もございましたので、こういう点等をも踏まえて、参考人長期信用銀行あり方についてどのような構想をお持ちなのかをお尋ねしたいと思います。
  153. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 いまの簑輪先生の御質問について順序を追って御説明申し上げたいと存じます。  第一番に資金の調達面の問題でございますけれども、御存じのように国債が大量に発行されまして、正面から金融債に影響が出てきております。ただ、長期的に見ますと、国債の管理政策がうまく立てられ、流通市場についても整備ができますれば、そう影響はないのじゃないか。と申しますのは、国民金融資産に対する運用の多様化と申しますか、こういうものも非常に出てきておりますし、私ども銀行ができましたのは二十七年の暮れでございますが、その当時は大部分を金融機関に引き受けていただいたわけでございます。ただいまでは金融機関の引き受けと申しますのは三割を割るような状態で、あとは私どもの窓口あるいは証券会社の窓口経由で消化しておりますし、あるいは法人などの消化、機関投資家の消化が出てきておりまして、今後もこういう機関投資家が日本でも伸びてまいりましょうし、それから俗に申しますオイルダラーの円へのシフトという問題もございまして、こういう面からのものも考えられるのじゃないか。長期的には私はそう心配はいたしていないのでございます。  それから、今度は運用面の問題でございますけれども、いまおっしゃいましたような大企業の長期資金需要は、さっき申し上げましたように間接金融から直接金融と申しますか、資金調達が非常に多様化いたしまして、社債を出しあるいは外債を出し、そして自己資本比率を充実していかれるという傾向にございますが、グローバルと申しますか、全般的に資金需要を見渡しますと、今後も企業あるいはプロジェクトに対して安定した資金が必要なのじゃないか。と申しますのは、日本経済で一番問題になりますのはエネルギー問題でございます。それで、エネルギー問題で、少し数字は古うございますけれども、通産省のエネ庁の数字にも出ておりますように、五十年度から六十年度までに金額にしまして約七、八十兆の資金が要るわけでございます。これは原子力から全部入るわけでございますけれども、そういうエネルギー問題、それからエネルギーを日本が海外で開発していく、これは石炭の問題もございますし、」LNGの問題もございます。こういう海外開発に対しての資金需要、またそのエネルギーの見通しからして、日本の産業構造が、ある程度高付加価値化と申しますか、エネルギーを余り使わなくて成り立つような企業に転換していかざるを得ないのではないか。こういった資金でございますとか、日本に残っておりますのは結局技術能力というもので、これの開発が必要なのじゃないか。こういうものでございますとか、省エネルギーあるいは代替エネルギーの問題という形で相当の資金量が見込まれるわけでございます。  それからもう一つ、これは先生方ひとつお考えいただきたいと思うのでございますけれども、景気がちょっと過熱いたしますと、総需要抑制とか需要の方をお考えになる傾向がおありじゃないか、われわれもそうなんでございますが。アメリカがスタグフレーションになりましたのは、結局、企業家のマインドが実物投資に行かずにその他の運用に回りまして、目先の企業収益だけを追ったという問題があるわけでございます。そうしますと、結局生産性が伸び悩みまして、逆に需給にギャップが出てインフレーションの問題が出てくる。でございますから、設備投資というものは安定成長下におきましてもやはり絶対必要なものじゃないか、こう思うのでございますが、そういう面で今後の設備の需要というものは考えられるのじゃないか。  それから、先ほど柴田先生お話がございましたように、海外業務の問題は、この法律ができましたころ、二十七年前といまとは全然違っておりまして、さっき申し上げましたような理由で非常に海外業務がふえてきておる、こういうあれでございます。  それから最後に、国民生活に関連してまあ社会開発と申しますか、そういう厚生的な問題でございますね。これにつきましても、私ども銀行としましては、結局中立的な性格を持っている銀行でございますし、あるいは都市開発でございますとかあるいは宅地開発あるいは住宅公団の関係あるいは宅地公団の関係、こういう方面の委託調査を受けていろいろこちらの調査の御意見を申し上げておりまして、これは非常に懐妊期間が長いものでございますし、あるいは採算の問題から融資として実った残高は少のうございますけれども、そういう面で、長期信用銀行各行でございますけれども、公団なんかからもいろいろ御調査の依頼を受けたり、そういう仕事もやっておるわけでございます。
  154. 簑輪幸代

    簑輪委員 ちょっともう時間がなくなりましたので、あと簡単に。  金融制度調査会参考人意見陳述をなさいました折に、「長期信用銀行の場合には、金融債に発行限度があるため、国債の大量発行下では金融債の発行余力が乏しくなるという事情があり、これが今後の機能遂行の上で制約要因となる懸念があるので、この点に関する対策につき特段の配慮を願いたい」というようなことを述べておられますけれども、これに対する対策についてどうお考えか簡潔にお答えいただきまして、私の質問を終わります。
  155. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 そこに陳述申し上げましたように、民間の資金需要と申しますか、いま申し上げましたような形で今後を見てもらいたい。それから、公的な取引としまして公共債を相当持たなくちゃならない、こういうような資金需要はあるのでございますが、その発行限度の基礎となります自己資本と申しますのが、国債を持ちますと、はっきり申しまして、私ども資金の源泉は金融債でございますので、収益にはマイナス影響を与えているわけでございます。そんな形で自己資本の増加に非常に影響が出てきておりまして、二十倍というのがもう限度に来ているわけなんでございます。それで、金融制度調査会の御意見にございましたように、これを三十倍に伸ばしていただきたいというのが私たちのお願いなんでございますが、別に三十倍にしたからといって、三十倍すぐ発行するわけではございませんし、結局、そういう今後の御需要、公共債を含める需要に対しても対応できるようにひとつお願い申し上げたいというのがお願いの趣旨だったのでございます。
  156. 簑輪幸代

    簑輪委員 どうもありがとうございました。
  157. 山崎武三郎

  158. 柿澤弘治

    柿澤委員 柿澤でございます。吉村参考人、本日はありがとうございます。  すでに各委員から御質問が出ておりますように、長期信用銀行については債券の発行限度の引き上げの問題というのがポイントだろうと思いますが、貸し出しの面で普通銀行貸し出しが長期化をしている。設備投資資金についても、先ほど吉村参考人は今後も省エネルギーその他衰えないというお話をされましたけれども、それでも高度成長期とは違った姿になってきております。その意味では、長期信用銀行の今後のあり方というのは本当に曲がり角に来ている。その点で将来の展望が大変むずかしい時期に来ていると思いますけれども、私どもも長期金融専門機関として長期信用銀行の今後の健全な発展というものをぜひとも期待をしたいと思っております。  先ほどお話がありましたように、都市開発その他長期の社会開発といいますか、そういうものへの融資というものが長期信用銀行としての一つの使命になろうと思いますし、それから海外のさまざまなプロジェクト、これも先ほどお話がありましたように大変リスクの大きい仕事でございますが、それだけに普通銀行のなかなかなし得ない部分についてノーハウを蓄積され、そしてその面で国益にも合った活躍というものが海外で行われることが期待をされるわけでございます。  その二点、ぜひお願いをいたしておきまして、そのためにはやはり健全で安定的な資金調達の道が確保されなければならないわけですから、その点でも債券の発行限度の問題というのが当面の課題になるわけです。先ほどから二十倍ではなかなか苦しいというお話がございましたけれども、現実にすでにそこの限度まで突き当たっているわけでございますか。もし突き当たっているとしたら、どの時期からそうなっているのか、今後の見通しはどうなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  159. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 どうも申しわけございません。それでは御返答申し上げます。  法律によりますと、いまのところは自己資本の二十倍、ただ法律の附則の七項には設立してから五年間は三十倍という現在の法律でございますが、それに準拠いたしまして、自己資本と申しますのは、払い込み資本金と準備金で、この準備金の内容は銀行局長の解釈通牒でいろいろ説明されておるわけです。それを加えまして、これは公表の数字でこの三月の数字でございますが、興業銀行の自己資本が四千億でございます。手前の方の自己資本が三千二百億弱、それから日本債券信用銀行の自己資本が二千二百億でございます。それを二十倍いたしましたのが発行限度でございますが、三月末の発行限度から発行残高を差し引きますと、発行余力は興業銀行が八千百億ぐらい、私どもが四千二百億、債券信用銀行が三千億でございます。  それで当行の場合に限って恐縮でありますが申し上げますと、この五十五年の下期に二割増資を大蔵省の御認可を得てさしていただくわけでございますが、いまの債券発行が、これはそのときの市況によりあるいは資金需要により違いますが、大体月に二千億から二千四、五百億、そのうち償還が、これは年をとるほど多くなってまいるわけでございますが、約千五百から千八百億、月の純増が大体二百億ないし三百億くらい、こういう計算でまいりますと、増資をいたしましても五十七年の上期にはまた限度に達しまして、増資をいたしませんと、来年の一、二月ごろ限界に達する、こういうような情勢でございまして、ひとつよろしく御配慮をいただきたいと思います。
  160. 柿澤弘治

    柿澤委員 最近、市場では金融債を買おうと思ってもなかなか買えないということで品不足になっておるようです。これは大変結構なことでありますけれども、そういう意味では需要はあるわけですから、もっと市場としての発行余力はあるわけなんで、その点はもったいないような気がいたします。ただ、いまのお話ですと五十七年には発行余力がなくなるというお話でございましたけれども、そういう意味では、銀行法改正なりできる限り早急にやらないと長期信用銀行についてひとつ壁に突き当たってしまう、こういう問題が出てくるわけでございますね。もしも銀行法の審議がおくれるような場合には、長期信用銀行法だけでも先にやってほしいというようなそういう希望はあるんですか。
  161. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 非常にありがたい御心配をいただいておりましてあれでございますが、一つのやり方は、国債保有を別枠に考えていただけないかということも行政当局お話し申し上げたことがあるのでございます。これは非常に技術的に問題があるようでございまして、それがむずかしいとなって、先生もおっしゃいますように——私の方は増資いたしますから五十七年までは何とかなるわけでございますが、これは恐らくほかの銀行さんにも同じ問題があると思うのでございますが、もしそういうような御好意がございましたら、銀行法がおくれましても長期信用銀行の方の改正お願い申し上げることができればありがたいと思う次第でございます。
  162. 柿澤弘治

    柿澤委員 いまの御希望は大蔵省当局にもよく伝えておきます。  ただ、債券発行限度を二十倍から三十倍にという答申が出ているわけですけれども、いままで二十倍と抑えていたのを何にも対策を講じないで三十倍になってしまうんだ、法律で決めればそれでいいんだというのも実は若干不思議な感じがするんですね。ある意味では理論的にこの範囲内が健全であるという限度の中で法律というものは規定されていかなければいかない。その意味では二十倍を三十倍に引き上げてよろしいというのはどこかで従来以上の経営の健全性の確保が担保されているというふうに考えなければいけないと思うけれども、その辺について長期信用銀行としての今後の経営のあり方なり、三十倍に引き上げても大丈夫です、安心して買ってください金融債、というキャッチフレーズができるような方策をお持ちなんでしょうか。時間がなくなりましたので、簡単で結構でございます。
  163. 吉村勘兵衞

    ○吉村参考人 発行限度二十倍という問題でございますけれども、これもさしたるあれはありませんし、三十倍というのも、先ほど申し上げましたように法律では長期信用銀行法の附則に出ている問題でございます。ただ、この春でございますか中小企業金融公庫法の改正でこれが三十倍の限度になったそうでございますし、外国の事例を見ましても、たしかドイツの抵当銀行法では四、五十倍の限度があるということでございます。そういう形でございますし、こちらが計算しましたところ、そういうような形でまいりますと、三十倍にしていただけますと増資が三年半に一度くらいの形でやっていけば済むのじゃないか、こういうお願いでございます。  それから健全性の問題でございますけれども、御存じでいらっしゃいましょうが、長期信用銀行法では債権の保全と回収の確実性について特別の配慮をしろ、それで確実な担保を徴求するか、または分割による償還をさせる、あるいは設備資金や長期運転資金以外の長期資金、住宅金融とか消費者金融でございますが、こういう長期資金を出す場合には必ず不動産を取れ、こういう非常に厳格な担保主義で規制されておりますから、金融債の信用の裏づけとなる運用につきましてはそういうような形でギャランティーされているのじゃないかと思うわけでございます。
  164. 柿澤弘治

    柿澤委員 結構です。終わります。
  165. 山崎武三郎

    山崎委員長 これにて吉村参考人に対する質疑は終了いたしました。  吉村参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。     —————————————
  166. 山崎武三郎

    山崎委員長 ただいま参考人として富士銀行取締役頭取松沢卓二君が御出席されております。  松沢参考人には、御多用中のところ本小委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  銀行法等改正をめぐる諸問題等につきまして、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  それでは、松沢参考人に対する質疑に入ります。堀昌雄君。
  167. 堀昌雄

    ○堀小委員 松沢参考人には、各種の行事の中を御出席をいただきまして、本当にありがとうございました。  いまからちょうど十年余り前に澄田銀行局長の当時、御承知のように金融制度調査会が開かれまして効率化行政というものが戦後初めて金融制度の中に導入されることになりました。当時、松沢参考人は富士銀行常務としてこの問題でいろいろと御意見を承った記憶がございます。当時お話を承った方は今日いずれも他の社にお移りになりまして、松沢参考人は富士銀行の頭取としてきょうお越しをいただきまして感無量のものがございます。きょうは皆さんの方で推進をしていらっしゃるバンクディーリングの問題と窓販の問題について——実は金融制度調査会の報告を見ますと、これは恐らく銀行局が現在の法律でも付随業務だというふうな気持ちで見ておりましたせいか、どうしてそれが必要なのか、どういうような利益がもたらされるのか、それがディーリングを行う銀行立場だけでなく市場との関係ではどうだろうかとか、実はいろいろな問題があるのだと思うのでありますけれども、たださらっと書かれておりまして、率直に申しますと、余り説得力のある報告になっていないわけでございます。一方、証券取引審議会の方はたまたま公社債市場の問題を取り扱っておる際にこの問題が出てきたようでございますので、この問題についてかなり詳しく触れられておるわけでございまして、その取り扱いは両者とも行政当局に任せたい、こういうことになっておるわけでございます。  そこで、都市銀行立場としてこのバンクディーリング及び窓販の必要な理由、それを実行することによってどういうメリットと、場合によってはどういうようなデメリットもあるかもしれないというようなことを、御推進をなさっております都市銀行立場からお話を承りたい、かように考えますので、よろしくお願いを申し上げます。
  168. 松沢卓二

    松沢参考人 いまの堀先生の御質問に対しまして、私の考えを述べさせていただきます。  窓販、ディーリングということが前から言われておりますし、また銀行業務証券業務との接点の問題としてこれは相当古くから言われておる問題でございますが、私はまず最初に、都市銀行立場というよりもむしろ国民経済的にこの問題をどう考えたらいいかということの私見を申し述べさせていただきます。  御承知のように、五十年代から大量国債発行が行われまして、私の記憶によりますと、昭和四十年から戦後初めて国債が発行されまして、四十年から四十九年までがたしか約十兆円発行になっております。年率で、年平均一兆円ということでございましたが、五十年代に入りますと五十年から五十四年までの五カ年間で五十兆円発行になっております。年率十兆円。四十年代に比べますと五十年代の前半だけでちょうど約十倍のスピードで国債が発行されておる。こういう大量国債発行時代になります場合に、われわれとしてあるいは国民経済的に考えなければならないことは、大量国債発行をいかにして安定的に消化を図っていくかということがまず第一の問題でございます。  それから第二の問題は、この膨大な国債が円滑に流通して、そして適正な価格が決定されるという流通市場の問題か一番大事な問題ではないか、かように考えるわけでございます。  そして、まず国債の消化をさらに安定的に拡大する方法といたしまして、私どもは、銀行がみずから市場に参与して、そして窓販、ディーリングを行うべきであるということを申し上げているわけでございますが、個人層の消化につきましては、一部の方々の御説によりますと、日本はすでに市中消化の約二〇%を消化しておる。アメリカにおいてもすでに二〇%ぐらい、ヨーロッパでもほぼ同じぐらいだ。そうすると、証券会社は昭和四十年に初めて国債が出まして今日まで十五年間、国債市場の整備拡充に非常に大きな役割りを果たしたことは事実でございます。そして非常に懸命な努力で個人消化を開拓したことも事実でございます。ところが、これだけ大量発行になってまいりますと、一体それだけでいいのかという問題が出てまいります。  なお、個人消化につきましては、ここにちょっと数字があるのでございますが、日本は国債の保有が個人に対して約二〇%、アメリカも二〇%でございます。それから金融機関が六六・五、アメリカでは金融機関は二一・四。それからその他、と申しますのは主として機関投資家でございますが、これが日本では一〇・八に対しましてアメリカは五七・五。こういうことでございまして、国債保有につきまして金融機関が非常に大きなシェアが出ております。  これに対して、もう一つども考えなければなりませんことは、もっぱら日本アメリカを比較して恐縮でございますが、個人金融資産がどうなっているかと申しますと、まず日本の場合には、全体を一〇〇といたしますと、預貯金が六六・三、有価証券が一二・四、その他保険、年金というようなもので二一・三、大体こういうふうになって百分比ができているわけでございます。つまり、日本の場合には個人金融資産のうち有価証券の占める部分が一二・四ということでございます。これはアメリカは逆でございまして、預貯金が日本の六六・三に対しまして三八・八、有価証券日本の一二・四に対しまして三七・八というふうになっておりまして、有価証券に対する個人金融資産の比率というものは非常に高い。その上で発行されている国債の二〇%が——ほぼ日本アメリカも二〇%である。こういうことでございます。これは何を物語るかと申しますと、アメリカの場合には、国債のほかにいろいろな債券、あるいはいろいろな株式を個人が相当持っておるということを物語るものでございます。日本の場合には、御承知のように一般の国民はほとんどが預貯金でございまして、最近のような大量国債発行下におきまして国債が非常に売れるようになった、こういうことでございます。  したがいまして、私ども判断では、まだまだ日本個人層は国債を保有する能力がある。これは、すでに日本個人の所得が非常に増大しておるということもございますし、また個人立場から見ますと、金融資産の多様化ということを最近では皆さん考えておられるということでございますから、十分にまだ安定消化層として個人考えることは可能であるというふうにまず考えるわけでございます。  それからもう一つは、皆様御存じのように、わが国におきましては間接金融の分野が非常に大きくて直接金融の分野が少ない。これももう昔から言われているわけでございまして、やはり日本におきましてはもう少し直接金融の分野をふやしていかなければならぬということもかねてからの課題でございます。そういう観点から申しまして、国民一般に債券の典型的なシンボルであります国債をなじませるということは、今後直接金融の分野を拡大する上において非常に有効である、こういうふうに考えるわけでございます。  それからもう一つこの個人層につきましては、公社債売買回転率——これはどういうことかと申しますと、現在全体で公社債の現存額、これは国債を含め、金融債とか事業債を含めまして全体で百二十八兆ございます。この百二十八兆の公社債が一年間に売買されておりますのが五十四年度で二百二十八兆円ということでございまして、これは公社債売買回転率で申しますと九七・五と非常に高い数字でございまして、公社債が相当頻繁に売買されておるということでございます。ところが、個人層にはまりました公社債現存額は現在、これは国債、金融債、事業債、そういうものでございますが、それは全体で二十五兆ございまして、売買高は五十四年度で二兆二千億、つまり回転率は四・六でございまして、個人がいかに安定層であるかということがはっきりわかります。そういうような理由から、私どもはかねてから、窓販によりまして、都市銀行地方銀行銀行法に言う銀行の店舗が全国で八千店ございますから、これを通じて窓販をやることによりまして個人層にさらに安定消化を図っていくべきではないかということを申し上げているわけでございます。  それからもう一つの問題は流通市場の問題でございます。この流通市場の問題は、これも皆様御承知かと思いますが、国債の大量発行に伴いまして流通市場はどんどん拡大をいたしております。ただ、わが国におきましては証券四社中心でございまして、この証券四社で実に七一%の取り扱いが行われております。なお証券十二社、四社を含めました証券十二社になりますと、それだけで九一%の国債の取り扱いが集中されておるというところに流通市場の問題があるということを私は指摘をいたしたいと思うのでございます。  これはどういうことかと申しますと、これもアメリカと比較して恐縮でございますが、アメリカの場合にはバンクディーラーとノンバンクディーラー、それからその他のブローカーというものがおりまして、これがアメリカの公社債市場の担い手でございますが、バンクディーラーとノンバンクディーラーを合計した取り扱いシェアが二五%にすぎません。その他はもろもろのディーラーが扱っておるわけでございまして、寡占という問題はアメリカではございません。  それからもう一つの問題といたしましては、国債の買いと売りでございますが、わが国の場合は扱い業者が少ないために需給の突合の機会が非常に少ない。これを市場参入者の数をふやすことによりまして売買需給の突合の機会を増大する。こういうことによりまして公社債市場の厚みを増し、深さを増し、適正な価格形成につながっていくということで、私ども銀行がディーラーとしてこの市場にむしろ積極的に参加していくことが公社債市場の育成強化につながる、こういうふうに考えておるわけでございます。  それからなお、御承知のように昭和五十七年ごろからはすでに発行しております中期債の償還期が参るわけでございます。それから六十年以降になりますと、五十年の初頭に発行されました大量国債の十年利付国債の償還が始まるということでございまして、五十七年から新規発行債プラス借りかえ債ということで、国債のボリュームは飛躍的に増大いたします。こういう状況を前にいたしまして、この問題は銀行証券かきね争いとか、あるいは銀行が何とかして失地を回復するとかそういう問題ではございませんで、これだけの大量国債発行が五十七年以降控えておるわけでございますから、むしろ銀行証券が協力してこの大量国債をいかに安定消化を図り、流通市場の整備拡大にみんなが積極的に参与をしていくかというふうに考えなければならないと私ども考えまして、もうすでに十年にわたりまして、この問題はそういう観点から申し上げておるわけでございます。
  169. 堀昌雄

    ○堀小委員 その場合に、窓口で個人に売りまして——個人が富士銀行のどこかの支店で買った。資金の必要があるので売りたい、こういうことが起こると思いますが、証券会社の方へ行って売る場合もあるかもしれませんが、富士銀行で買ったのだから富士銀行で引き取ってくださいという場合には、その価格はどういう価格になるのでございましょうか。
  170. 松沢卓二

    松沢参考人 いま堀先生からお話がございました窓口で売られた国債のアフターケアの問題かと思いますが、これはたとえば富士銀行で十万円国債を買っていった、そのお客様が十年間持つつもりで買ったけれども、急にお金が要るということで、恐らく買った支店に御相談に来るのじゃないかと思います。そのときの方法は、一つは国債担保金融ということで、私は一つ考え方といたしましては、制度金融といたしまして一番利ざやの少ない担保金融というものを制度的に確立しておく、そして国債は御承知のように変動商品でございますから、お客様が現金化したいと思うときにその国債を売るとキャピタルロスが出るかもわからない、そういうときにはお客様が担保金融ということで資金の都合がつくということなのでございます。それから借りるのはいやだというふうにおっしゃったお客様に対しましては、市場の値段で売買をする、こういうことじゃないかと思います。
  171. 堀昌雄

    ○堀小委員 いまの問題は確かに二つあると思います。担保金融は単にいまの窓口の問題だけでなくて、証券金融会社その他を通じて制度金融として拡大をされることがより国債消化に資すると思いますので、その制度は私も大変賛成でございますし、いまの窓販の有無にかかわらず、担保金融が行われれば、現在市中で持っておられる方たちも六・一国債が現在でも八十五円ぐらいの価格というときに、キャピタルロスを覚悟で売られるよりも、ひとつこれで必要な資金を融通してほしいということになることは国債を個人が保有するためにも大変安定的な条件を生みますので、これは検討に値する問題だ、こう思うのであります。  いまのお話で、私、松沢さんと大変意見が一致しておりますのは、証券銀行が相争った形ではなくて、ひとつ共同していまの国債の各種の問題に対応したいというお話は、私は大変結構なことだと思うのであります。  実は日経産業新聞というのが出ておりますが、その十月十七日の一種の囲みみたいなものでありますけれども、これは事実そういうふうにおっしゃったかどうかわかりませんけれども、新聞に出ているんです。「「仮にディーリング(既発債売買業務)が新しい銀行法で認められなかったら金融界は猛然と反発し、証券会社と銀行で構成している国債引き受けシンジケート団からの脱退も辞さない」と語るのは山田春全国銀行協会連合会会長。こんどの通常国会には銀行法の全面改正案が提出される予定。現在、改正案の最後の詰めが進められており、最大の焦点は銀行の周辺業務としてディーリングや窓口販売をはっきり認めるかどうか。金融界の大勢は「証券取引法でも公共債の銀行による売買業務は認められている。そのことを銀行法ではっきりさせるのは当たり前」という意見。山田会長も「こんな当たり前のことが実現しなかったら金融界としてはもうこれ以上、国債の消化には協力できない」という。「国債の年間発行量は徐々に減ったとしても残高はまだまだ増え続ける。国債の消化問題は依然重要な問題。年度前半はグリーンカードをめぐって郵政省と大戦争をしたが、後半は銀行法をめぐり証券界と大きな戦争になるかもしれない。それを避けて通るわけにはいかない」と闘う姿勢十分だ。」こういう囲みが実は出ているわけであります。  これは、銀行会長というお立場もありましょうが、また、三菱銀行の頭取のお立場もあるんだろうと思うのでありますが、ちょっとここで私が二つ気になりますのは、今後の問題でございますけれども、要するに、新しい銀行法で認められなかったら国債引き受けシンジケート団からの脱退も辞さないという問題と、こんなあたりまえなことが実現しなかったら金融界としてはもうこれ以上国債の消化には協力できない。これは事実かどうかわかりません、日経産業新聞に出ているだけですが、ちょっと穏当を欠く御発言ではないかという気がするのであります。ですから、この問題は、いま松沢参考人がおっしゃいましたように、国家、国民の問題でございまして、一業界の問題だと私は考えていないのでございます。ですから、その点は、いま松沢さんのおっしゃったように金融界証券界が相携えて、ひとつ最もよき方法を十分御相談をいただくということが当面必要なのであって、このような大戦争をやって問題の決着がつくようなものではないのではないか、こういう気がいたしておるのでございますが、この点についての参考人の御意見を承りたいと思います。
  172. 松沢卓二

    松沢参考人 いまの御質問お答えいたします。  いまの問題は、私も新聞に書かれたとおりのことを果たして言われたのかどうかもちろん存じませんけれども、非常に重大視しているというふうに私解釈いたします。  御承知かと思いますが、昭和四十年に初めて国債が発行されましたときに私はたまたま全銀協の一般委員長をやっておりまして、戦後初めて国債が出るということで関係者が寄り寄り協議をいたしまして、何とか戦時国債のイメージを払拭して新しい時代の新しい国債で、国民にアピールするような形で国債を発行しようと非常に熱心な関係者の協議が行われました。そのときに、銀行証券の間でもちろんのこといろいろ協議が行われました。そのときも一貫して考えたことは、これだけの新しい国債を発行するのだから、銀行証券の協力なくしては国債発行という問題はうまくいかない。私の記憶によりますと、最初は、たしか福田大蔵大臣で、二千億の国債が発行になったかと思います。このときは証券会社もずいぶんいろいろ考えまして、シ団のメンバーとして一〇%を引き受けるか五%を引き受けるか、まだ売れるか売れないかわからない時代でございましたから、証券の中には慎重論もたくさんございましたし、五%論が非常に多かったというふうに当時聞いておりましたが、結局証券会社は思い切って一〇%のシ団シェアを申し出てまいりました。  当時のシ団の編成は現在のシ団の編成と変わっておりません。それでそのときの考え方は、これまた少し繰り返すようになって恐縮でございますが、銀行法の付随業務として当然国債の窓販、ディーリングができるという考え方が圧倒的に強うございました。しかし、何分にも新しい商品を世に問うわけでございますから、この際は証券に一歩譲って証券に募集取り扱いはお頼みしよう、それでその他のシ団のメンバーは募集取り扱いはしない、こういうことで発足をいたしました。したがいまして、その精神が、五十五年の一番新しい九月の契約書を見ましても十五年前の契約書と全く同じでございまして、まず日本銀行とシ団代表との間に取り交わされます引受契約証書には募集の取り扱い、残額引き受けとはっきり書いてございまして、まず、それのための契約を結ぶ、そしてもう一つは、シ団の内部でシェアを決める、それで本来ならこの二つでよろしいわけでございますが、第三に、覚書をこのシ団の中で取り交わしまして、これは、当局、募集取り扱いは証券だけにお任せするという意味の覚書が現在も残っております。このことが何を物語るかと申しますと、この覚書を取り外してしまいますと、その瞬間から実は募集取り扱いがシ団のメンバーにできるということになるわけでございます。これは、法律の解釈は私は法律家でないからよくわかりません。しかし、少なくともあの当時、十五年前に引受契約を日本銀行と結びましたときは、シ団の中で証券会社の育成強化と申しますか、証券会社の、この国債は何としてもイメージのいい国債として売っていくんだというそういう非常な熱心さということもございまして、むしろそれを妨げるべきでないという意見で自粛をしたというのが真相でございます。その後十五年間経過いたしまして、そっくりそのままの形態でいま国債の発行が行われております。  そういうことでございますから、私は、いろいろな事態が起きても銀行証券の協力というものはあくまでも必要でありまして、この協力なくしてはとても大量の国債発行を円滑に続けていくことはできない、こういう考え方は全然変わっておりません。したがいまして、先ほど先生が御指摘になりました、銀行が自分の主張が入れられなければ場合によっては考えるぞというようなことは、一つのはずみか、それだけ重要な問題だということでございまして、少なくとも銀行側にとりましては、この問題は銀行制度の根幹に触れる問題というふうに考えておるわけでございますし、同時に、国民経済的な視野から見ましても、これから残高が累増するであろう国債を本当に両サイドの協力なくしてはできないという認識はいまでも全然変わっておりません。
  173. 堀昌雄

    ○堀小委員 どうもありがとうございました。
  174. 山崎武三郎

  175. 柴田弘

    柴田委員 きょうは御苦労さまでございます。  時間の制約がありますので、一点ないし二点お尋ねをしていきたいと思います。  まず最初に、公定歩合の再引き下げの問題につきまして金融市場の直接当事者である参考人お尋ねするわけでございますが、御案内のように、この公定歩合の再引き下げという問題が今日的な課題としていまマスコミ等で浮かび上がっておるわけであります。それで、この公定歩合の引き下げの問題は一つはやはり物価の問題に関連してくると思うのであります。  そこで、卸売物価は確かにいま落ちつきを取り戻しているような形になっているかもしれませんが、今後公共料金の値上がり等々あるいはまた生鮮食料品の値上がりあるいは具体的には灯油等の値上がり等を勘案してまいりますと、果たして考えられるような消費者物価の落ちつきというものがあるだろうかということを私は憂慮しているわけであります。こういった点につきまして、いまここで公定歩合を引き下げるということが果たして妥当なのかどうかということ。  それからいま一つは、確かに景気回復の安全弁としての公定歩合の引き下げという問題は考えられますが、今日の金融市場におきまして、果たして今日のこの景気のかげりを回復する、景気回復のための公定歩合の引き下げというものはどの程度一つのポイントを持つものなのか、私はこの点についても疑問を禁じ得ないわけでありますが、どうかそういった点につきまして、今日的な課題になっております公定歩合の再引き下げの問題について参考人の忌憚のない御意見を承りたいと思います。よろしくお願いいたします。
  176. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  ただいまの公定歩合の問題は、私は一都市銀行の頭取でございますので、公定歩合について云々する立場にございませんけれども、私見として述べさせていただきますと、御承知のように、景気はことしの四L六月を屈折点といたしまして確かにスローダウンをいたしております。それから七−九月は発表になっておりませんが、同様、成長率も低い形で経済が進行しておるのではないかというふうに考えます。確かに不況期に入っておるということは確認できるわけでございます。  ただ、物価の方は、先ほど先生からも御指摘がございましたように、卸売物価に関する限りは円高の支援もございまして確かにもう峠を下っておりまして、卸売物価の年間騰貴率というものはこれからだんだんと低くなっていくだろうということであろうかと思います。     〔小委員長退席、中村(正三郎)小委員長代理着席〕 問題はやはり消費者物価でございまして、消費者物価がせんだって八・九というような非常に高い数字が発表になっておりますが、しかし、これもだんだん季節商品というようなものが正常な価格に戻ってまいりますと、消費者物価も恐らく十月ごろから峠を越してくるのではないか。やや楽観的かもわかりませんけれども、物価の問題は卸売物価、消費者物価を含めましてどうやら峠を越しつつある、こういう判断ではないかと思います。  それからもう一つ国際収支でございますけれども、なかんずく経常収支の赤字が五十四年度も大幅な赤字でございましたし、本年度もずっと年初から赤字が続いているのでございますが、この間発表になった九月の数字を新聞で見たのでございますが、経常収支が久しぶりに九億数千万ドルの黒字になったということが発表になっております。つまり、国際収支の改善も徐々ながら進んできておる、これは主として輸出が非常にいいということだろうと思います。それから油の方が、国内の不況ということも影響いたしまして油の引き取り量が比較的少なくなっているということもございまして、輸入の方がそれほどふえなかったということで、輸出がふえて輸入が余りふえなかったということが主として貿易収支、なかんずく経常収支を改善したのではないかと思うのでございますが、いずれにいたしましても、国際収支も改善の方途に向かっておるということでございます。  それからもう一つは、企業の業績でございます。個別企業の業績は、三月期決算は非常によろしゅうございました。九月期決算は若干の減益でございますが、まだ非常に底がたい数字を示しております。ただ、これからこの不況の波をもろに受けますこの下期以降から減益という傾向が恐らくはっきりと出てくるのではないかと思いますけれども、総体的に申しますと、第一次オイルショックに比べまして今度の第二次のオイルショック後の後遺症は浅い。企業が減量経営に努力いたしまして損益分岐点を下げるというようなことを長年にわたって続けた結果、不況抵抗力が強くなっておりますので、この面では個別企業の業績は減益方向に向かうけれども、非常に憂慮すべきような段階にまだなっていないということを申し上げられると思います。  それやこれや考えますことにつけ加えまして、御承知のように、日本企業というものは諸外国に比べますと非常に借り入れの依存率が高いわけでございますから、この減益傾向というものを、若干でも借り入れの依存度の高い企業を景気下支えという意味から支援する一番いい方法は、やはり金利の引き下げでございます。そういうような点から考えますと、もろもろの要素から考えて、公定歩合の引き下げはもうその段階に来つつあるというふうに私は考える次第でございます。
  177. 柴田弘

    柴田委員 この問題につきましては、いろいろと議論のあるところでございます。  時間がありませんので、また機会がありましたらいろいろとお教えをいただきたいと思います。     〔中村(正三郎)小委員長代理退席、小委員長着席〕  最後に一点でございますが、銀行法改正に関連をいたしましての今回の金融制度調査会答申、この銀行法改正につきましてはたしか頭取が協会長のときにいろいろと御意見を述べられたと思います。時間がございませんので恐縮でございますが、簡単で結構でございますから、この答申につきましてこのような点を改正をしていくべきじゃないか、このような点をつけ加えていくべきじゃないかというのがもしありましたら、この席でお答えをいただきたいと思います。
  178. 松沢卓二

    松沢参考人 銀行法全般の問題でございますので、ごくそのうちの私が強調したい部分だけにしぼってお答えさせていただきます。  今度の銀行法は、いろいろな方々の意見を集約しながらつくられたものでございまして、少なくとも金融制度調査会においてはいろいろな活発な意見を踏まえた上で答申が行われました。たまたま私もその委員の一人でございました。全般の中で私どもが非常に気になりますことを二、三申し上げてみたいと思います。  一般に世間では、銀行は非常にがんじがらめの規制を受けているということを言われております。一体、銀行に経営の自主性があるのかとすら批判をされることがございます。事ほどさように銀行に対する足かせ、手かせは非常に多いのでございます。私はかねがね、銀行といえども公共性、社会性は十分に認識しなければなりませんけれども、やはり民間企業でございますから、自己責任原則を中心にいたしまして、市場原理を活用しながら銀行の経営は行われるべきであるという主張を前からいたしております。  今回の銀行法の中には監督規制が強化されるという一面が出ております。それから先ほどお話がございましたディスクロージャーにつきましても、これを法律的に規制をするという考え方が打ち出されております。しかし、果たしてこれが時代の趨勢に一体適合するものかどうかにつきまして、私は疑問を持っております。ディスクロージャーというものは、本来、銀行がみずからの行動を規制する自主的な一つの世間に訴える公示項目であるというふうに考えておりまして、それぞれの銀行がそれぞれの判断で世間に対して自分の銀行はこういう銀行である、自分の銀行についてこういう点がこうであるということをみずからの責任において開示することが適当である、こういうふうに考えております。  その理由は、御承知のように証取法によりまして有価証券届出書というものがある、これもやはりディスクロージャーの一種でありまして、法律的に規制を受けて銀行の内容を開示する義務を負わされているわけでございますから、それでもし法律的にディスクロージャーを決めるのなら、証取法の有価証券届出書をさらに精緻にするとかということによって目的は達せられるわけでございますから、銀行法の中でまたディスクロージャーを法的に規制するということはいかがなものかというふうに私は考えております。
  179. 柴田弘

    柴田委員 時間が参りましたので、その問題もいろいろと議論をしたいと思いますが、また次の機会がありましたらということで終わります。  ありがとうございました。
  180. 山崎武三郎

  181. 竹本孫一

    竹本委員 本日はどうも御苦労さまでございます。私は時間もありませんから、三点だけ申し上げたい。  第一点は要望であります。これは先ほど来、いわゆるかきね論争の次元を超えましで、非常に高い立場国民経済あり方、国債の大量発行や大量借りかえといったような、特に六十年代の大きな問題に対しては、銀行とか証券とかいう立場を超えて、国民経済的見地からも協力をしていかなければならぬという御意見でございました。非常にありがたい御意見であり、ある意味ではまた当然な御意見だと思います。大蔵省にも証券局あり銀行局ありで、これはまた二つの審議会もそれぞれ最後のげたは大蔵省当局に預けておるというような状況だと思います。したがいまして、政府当局がまず総合的、それこそ国家的な見地からうまい結論を出してもらいたいとわれわれも期待をいたしておるわけでございます。  しかし、新聞等を読んでおりますと、証券業界、金融界いろいろ議論がエスカレートしつつあるように思いますが、大蔵省にはそのほかに理財局というのがあるんだ、しかも国債発行というのが現実的に大きな課題になっておるんだ、そのポイントを見失ってはならないという立場で大蔵省には三つの局が関連してあるんだということを私は常に考えておるわけでございますが、たまたま松沢先生の御意見国民的な立場でこの問題に協力をして取り組むということでございますので、ぜひそういう形で、特にこれは業界のレベルにおいても話がまとまるように御協力、御尽力を願いたい、これは要望であります。  それから第二点は、グリーンカードの問題に関連して一口申し上げますが、大蔵大臣と郵政大臣が協定を結びまして、一応法律的文字解釈の上からは私もあれ以上の文章はできないだろうと思うぐらいに煮詰まっておると思うのです。それで、一応そのとおりになれば結構なんですが、問題はその実現性、実効性の問題でございます。先ほど来議論をいたしましたけれども、郵貯があれだけの伸びをするということには伸びるだけの理由があった、銀行の側にも反省すべき点があった、そういう意味で当然伸びるべくして伸びたと私は思いますが、これから先の問題となりますと、この上郵貯が六十兆を超してさらに大きくなりますと、日銀金融コントロールもできなくなるでしょうし、パブリックセクターとプライベートなセクターとの全体的な金融の流れの問題から言いましてもいろいろ問題を含むと思うのですね。そういう意味で、やはりこの辺で郵貯に対しても一つの規制が必要であろう、こう思いますが、たまたまグリーンカードの問題が出まして両大臣の協定ができた。  そこでお伺いしたいのは、その協定の文章を見るとりっぱにできておるのだけれども、五十九年一月一日以降は何とか形が整うと思うのですね。ところが、問題はその前の五十八年末までの郵便貯金の名寄せの問題を考えた場合に、これはどうにもならない、二億四千万からあるということで。将来、償還をするときによく吟味する、こういうわけですね。ところが、よく吟味ができるかということなんです。五十八年末までに名寄せなら名寄せがちゃんとできて、要するに、点検をし吟味をするデータが十分集まっておれば、それはそのときに税務署に通報するなりいろいろやり方があると思うのですね。しかし、極端に言えば、相互通知をするということには郵便局、貯金局ではなっておりますけれども、明確な名寄せができないままに五十九年に入って、それから以後になって振り返って、吟味をして場合によっては税務署にどうとかいうことを言っておりましても、頼るべきデータがないということになるとなかなか文章のとおりにならないので、実効性が非常に疑問ではないかと私は思いますが、その点についてどうお考えになるか、まず伺いたい。
  182. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  いま先生が御指摘になりました経過措置、五十九年一月一日以降の問題は、銀行と郵便局をイコールフッティングにするという考え方でございますが、つまり、それまでの経過措置といたしまして、五十八年の十二月三十一日までに預入されたものについては入り口は自由にするけれども出口で押さえる、こういうことでございます。したがいまして、幸か不幸か五十八年の十二月末までにはまだ時間がございます。そこで、幸いにしてコンピューターシステムというものが非常に発達いたしておりますから、郵貯の体制を、本人確認、限度管理、名寄せ、こういうものをコンピューターシステムを駆使してやれば、いかに膨大な郵貯機構でありましても可能なはずでございます。これは結局やる意思があるかないかによってできるできないが決まる問題だと私ども考えておりまして、郵貯問題についてはいま詳しくは触れませんけれども、郵貯に集まる個人の貯蓄がいま大体三分の一になっております。この傾向を引き延ばしてまいりますと、恐らく数年後には個人貯蓄の二分の一が郵貯に集まるということでございまして、公的機関に国民個人貯蓄が半分以上集まってしまうということはとりもなおさず公共部門の巨大化に結びつきはしないかということを非常に私心配しております。それからまたもう一つは、半分近く、現在は三分の一でございますが、民間金融機関から郵貯にシフトする金額が非常に大きいために、最近では金融市場が非常に枯渇をいたしまして、本来なら、この間八月に公定歩合が下がったわけでございますから、コール市場あるいは手形市場、現先市場あるいはCD市場というようなものがその影響を受けてもっと金利が下がらなければならないはずなのでございますが、現状金利がなかなか下がらない。つまり郵貯に対するシフトの影響が短期金融市場にもうすでに出ておりまして、金利が下方硬直性を帯びてきているということは、私ども、これはやはり金融制度の中で郵貯のあり方考えないと、ただ郵貯対民間金融機関の問題ではございません。これはやはり国民経済の問題でございまして、またこれは郵政省対大蔵省の問題でもないわけでございますから、むしろ国会で十分にこういう点をお考えいただきまして、全体の資金配分が適正に行われるようにお願いをいたしたい、かように思います。
  183. 竹本孫一

    竹本委員 あと簡単で結構でございますが、銀行法関係。  いまの問題も一口申しますと、経過措置の問題ですが、コンピューターシステムで果たしてうまくそれができるか。意思の問題は世論の動きもありますから郵政省も十分考えると思いますが、技術的、事務的にコンピューターシステムが間に合うようにちゃんとできるかという点に私は懸念も持っておりますので申し上げました。  それから最後にディスクローズの問題でございますが、簡単に二つだけの点を伺いたいのです。  一つは、私どもが見たり聞いたりしている範囲では、富士銀行さんがディスクローズの問題については、いまお話のありましたように、非常に自発的にそして最も積極的に、量的にも質的にもむしろ先鞭をつけておられることに敬意を表しておるわけでございますが、事のきっかけ、動機は何であっただろうかということが一つ。簡単で結構です。  それからもう一つは、これを法的に規制するということには松沢参考人非常に疑問を持っておられるようでございます。ところが、私どもから考えますと、みんなに富士銀行さんぐらいにやってもらえば確かに法的規制は要らないし、本来の考え方から言えば、そういう規制がなくても銀行は市民に愛される銀行としてそういうことをずっと積極的にディスクローズしていくことの方が望ましいと思うのです。ところが、銀行の中にもいろいろ数々ありまして、必ずしもそういうことの期待に沿えない。そういうことになれば、やはり新しい金融秩序を考える場合には、今度商法改正でもこの問題が取り上げられるようでございますが、全体として法的規制もやむを得ない。問題はその法的規制がどこまで入っていくかあるいは入っていくべきでないかという常識、政治判断にまつと思うのですが、いかがでございますか。
  184. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  最初に、富士銀行がこのディスクローズを先がけて実施いたしました理由は、たまたま私金融制度調査会でこのディスクローズの問題の一員として審議をいたしておりまして、これはむしろ自分の銀行というものを少しでも公示して、そして株主あるいは預金者あるいはその他一般の方々あるいは学識経験者に、富士銀行というものはどういう銀行かということの開示を率先してやるべきだという考え方に非常に強く傾きまして、そして早く五十三年から実は実施をいたしております。動機はむしろ金融制度調査会でいろいろな方の御意見を拝聴している間に、これは一刻も早くやるべきだという気持ちになって実施したわけでございます。  それからいまのディスクローズを法制化する問題でございますが、これは非常に細部にわたりましてディスクローズのやり方を規制いたしますと、実は銀行の個性と申しますか、あるいはバンクカラーと申しますか、そういうものがディスクローズされるためにかえって非常に同質化する可能性はないか。と申しますのは、たとえば中小企業向けの貸出比率が何%、個人向けの融資が何%、それから何々業種に対する貸し出しが何%というようなことを事細かくやってまいりますと、ディスクローズをいたしますれば、必ずそれに対する批判、それから考え方が当然出てくるわけでございますから、そうすると、ある業種に対して非常に少ないとか、あるいは中小企業に対する貸出比率が高い銀行、低い銀行、いろいろあると思うのでございますが、それに対して個別の批判になかなか答えにくくて、銀行が結局ある意味では余り批判のないような形に融資構成、取引構成を変えていくような危険がないかどうか。実際やってみないとはっきりしたことはわかりませんけれども銀行というものはそれぞれの地域が違いますし、それから取引層というものはみんな違うわけでございます。だから、それぞれ若干の特色があってしかるべしということでございまして、仮にディスクローズの非常に細かな規制をやることによりまして銀行の個性というものが長年にわたって失われていくようなことがあったのでは困る、こういう感じで申し上げているわけでございます。
  185. 竹本孫一

    竹本委員 大変ありがとうございました。  私はいまお話しの旨も十分含めて問題は法的規制のやり方、あり方の問題だと思っておりますが、いろいろ御意見を伺ってありがとうございました。
  186. 山崎武三郎

    山崎委員長 正森成二君。
  187. 正森成二

    ○正森小委員 松沢参考人に他の委員となるべく重複しない問題について短い時間でございますが、伺わしていただきたいと思います。  御承知のように、民間銀行、特に都市銀行は資金量の増加から比べて非常に過酷だと思われる国債引き受けをここ何年間か続けてまいりました。特に昨年はその負担が非常に大きかったと思います。そのために、昨年の九月期、ことしの三月期は国債価格が非常に暴落いたしまして評価損を出さざるを得ない、そのために大蔵省は統一経理基準を変更いたしまして、低価法だけでなしに原価法をとれるようにするということになったように伺っております。都銀十三行のうち真っ二つに割れまして参考人の富士銀行は低価法を歯を食いしばってといいますか、維持されたというように聞いているわけであります。そうしますと、非常に評価損が出ます。これはある意味では銀行に対する追加的な税金であるといっても差し支えのない性質のものであります。  そこで、そういうような厳しい状況であるにもかかわらず国債の借りかえの時期が近づいているわけであります。借りかえについての懇談会等についても提言もいろいろな方面からされているようでありますが、おいでいただきましたこの機会に国債に対する民間銀行、特に都市銀行の態度について、借りかえが五十七年から相当困難な状況になりますし、六十年以降は一層困難であります。そういう問題について住友銀行等から提言もされているようですが、それらも含めて国会に聞いておいてほしいと思われることがございましたら忌憚のない御意見を承りたいと思います。
  188. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  これだけの国債が大量発行されまして、しかも先生が御指摘のように借りかえ債の発行ももう間もなくというところまでまいりますと、これはもう何と申しますか一つ銀行の負担の限界を超えているとかいうよりも、むしろ今後の国債発行のあり方をしっかりしていただきたいと思うわけでございます。  たとえば、いま借りかえ債のお話が出ましたが、借りかえ債につきましては現在のシ団消化分に上乗せいたしましてそのままシ団消化をやろうという考え方一つございます。私どもはそれは反対でございます。それからもう一つは、これからの借りかえ債はむしろ思い切って公募をやったらどうか、公募をやることによりまして、借りかえ債というものの適正価格がはっきり出てまいりましょうし、私はこれから出てくる借りかえ債は公募債中心でいくべきであるという考え方を持っております。  それからなお、国債問題について御質問がございましたので、その考え方をごく簡単に申し述べさせていただきます。  五十四年度が非常に大変な負担だったという先生の御指摘はまさにそのとおりでございまして、都市銀行全体で預金増加額が一〇〇といたしますと、五十四年度の国債引受額が一〇三になっております。ですから、預金増加額以上に国債を引き受けたことになるわけでございます。当然のことながら、それでは貸し出しができません。それからまた、その他の有価証券の取得ができないわけでございますから、当然のことながら国債は都市銀行を中心にいたしまして大量売却が行われるということでございます。  そもそも国債を引き受けますときに、これも先ほどアメリカの例を申し上げまして恐縮でございますが、本来はディーラー部門として幾ら持つか、それからポートフォリオ・インベストメントとして幾ら持つか、つまり投資勘定と商品勘定と申しますか、そういう形で本来は仕分けして持てば非常によろしいわけでございます。そして、投資勘定で持った国債は投資して満期償還まで持つわけでございますから、これはあくまでも原価法、それから商品勘定で持ったものはディーリングを前提として持つわけでございますから、これはむしろ低価法で健全経営を維持する、こういうふうにはっきり分別いたしますと非常にわかりやすいということでございます。昭和四十年から始まりました国債のときにそういう点もいろいろ議論されたのでございますけれども、結局ディーラー部門とか投資部門とかそういうことの分別をはっきりさせないままにどんどん大量発行になってしまいまして、現在のような形になっております。  私どもの経験値をちょっと御参考のために申し上げますと、たとえば国債を一〇〇引き受けるといたしますと、残存する国債は大体四分の一というのがいままでの実績でございます。つまり四分の三は市場に売却しておるということでございますから、これを四分の一がポートフォリオであって四分の三が実はもう売却を前提にしたものだというふうに考えますと、大体数字のつじつまが合うわけでございます。  そういうことでございまして、国債につきましては、大蔵省はもちろんのこと、銀行界におきましても、国債は今後さらに累増していくわけでございますから、どういう形で国債をやったらいいのか。それからもう一つは、元来、銀行が原価法を採用したり低価法を採用したりして、さっきのディスクローズじゃございませんけれども、最終結果である利益がばらばらになるということは、ディスクローズの精神からいきますと非常にわかりにくくなるわけでございます。そういう意味からも、原価法、低価法というものを統一経理基準から外してどちらでもよろしいということにしたことがいいのかどうか、この辺も私ども十分に検討しなければならぬ、かように考えております。
  189. 正森成二

    ○正森小委員 ありがとうございました。  それに関連して、少しお答えにくいかもしれませんが、もう一点伺わせていただきます。  それは最近、松沢さんとは別の銀行でございますが、その経理部長クラスが、借りかえ債が非常に重大な事態になるので、借りかえ債の一部を日銀が引き受けてそれを直ちに市中に公募入札方式で売却をするというのを幾つかの対応の一つとして提唱されているという点があるわけであります。これはもちろん公募入札方式が直ちにできれば比較的問題は少ないわけですけれども、しかし、それにしても一応日銀引き受けとなりますと資金が市中に散布されるわけですから、昭和六年、七年以降の高橋財政のときのあれに近い状態になるわけであります。  それからもう一つ、利益の関係でいいますと、銀行などシ団が直接に引き受けます場合と違って、一たん日銀引き受け方式をとりますと、ある程度日銀が損をかぶって、日銀の国家に対する納付益を減少させることによってシ団の損害を減少するという面も持つわけです。そのことも考えてこういう提案がなされているのではないかというように思うわけですが、こういう考え方について参考人として何らかの御意見がおありでございましたら伺いたいと思います。
  190. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  いまの先生お話は、仮に期間が短いとはいえ日銀信用増加につながる引き受け方法でございますから、現在のような大量国債発行下ではなおさらそういう点はいままで守ってきた原則でございますから、日銀引き受けというものは絶対にやるべきでない、かように考えております。
  191. 正森成二

    ○正森小委員 それでは時間ですから、最後に、来年は国際障害者年でございますが、きのうあたりの新聞を見ますと、障害者の雇用率が大きな企業が余りよろしくないということだそうでございます。もしおわかりでございましたら都銀全体、もしそれがおわかりでございませんでしたら松沢さんの銀行内部でもよろしゅうございますから、昨年に比較して雇用率が幾らになっており、そして今後どのように実際的に改善をなさるおつもりかを伺って質問を終わらせていただきたいと思います。
  192. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  都市銀行全体の数字ははっきりわかりません。ただ、金融、保険、不動産という数字が五十五年六月一日に出ておりまして、これは〇・七一ということになっております。この法定雇用率は御高承のとおり一・五でございまして、これは実は銀行協会におきましても、この身体障害者の雇用促進ということは、社会的責任に関する委員会というのがございまして、これは銀行としても率先して身体障害者の雇用を促進する責任があるということで、それぞれの個別の銀行におきまして鋭意努力しております。たまたま富士銀行の場合には現在一・二五%の雇用率を持っておりまして、幸いにして平均よりも高うございます。私どもは、身体障害者の方々を現実に銀行で採用いたしまして、非常によく働かれます。それから、あるお客様から身体障害者が非常におほめにあずかった事例も幾つかございまして、これは身体障害者に向く仕事を開発すれば、まだまだあるというふうに考えております。
  193. 正森成二

    ○正森小委員 来年は障害者年でございますから、なお一層の努力をお願いして質問を終わりたいと思います。
  194. 山崎武三郎

  195. 柿澤弘治

    柿澤委員 柿澤でございます。松沢参考人には本日はありがとうございます。  各委員からいろいろともうすでに質問が出ておりますが、私は最近の銀行業務の国際化の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  日本経済が急速に国際化をし、日本企業の海外活動が活発化をする。さらに外国企業との提携その他も活発になってきているという中で、日本企業なり経済のバイタリティーと言いますか、それを維持するためには、銀行業務というものの国際化もあわせて推進をしていかなければいけないだろうと思います。その意味で、実は先般も欧米を回りましたときにいろいろと聞いてまいりましたけれども、なかなか活発にやっていらっしゃる。ヨーロッパ等ではユニバーサルバンキングと言いますか、証券銀行の間のかきねが比較的緩やかだということで、日本銀行証券業務に進出をする、日本証券会社がバンクライセンスをとる、それから日本銀行の現地法人が東京へ支店を出して証券業務をやるなどという話も伝わってきておりますし、その点ではすでに国内で問題になっているようなことが海外で現実の課題になっているわけですけれども、その点について今後銀行界としてはどういうふうに対処をしていかれようとしているか、その辺の御意見をお伺いしたいと思います。
  196. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になりましたように、日本の国際化が非常なテンポで発展いたしておりますことは御承知のとおりでございまして、したがいまして、銀行日本経済の国際化に呼応いたしまして、銀行自身も国際化についていま実はいろいろと勉強もし、また国際業務自体も相当拡充をいたしておる次第でございます。  たまたまそういう御質問をいただきましたので、この国際業務を遂行する上に今後問題になる点を一つ二つ申し上げたいのであります。  一つは、御承知のように日本金融市場をやはり相当速いテンポで国際化する必要があるのではないか。これはもう皆様御承知のとおりでございまして、金融というのはとにかくお金に色はございませんので、海外の金融市場というものが日本金融市場にどんどんはね返ってまいります。こういう意味でも、先ほど御指摘がございました公社債市場の拡充強化というようなものも、外国の投資家あるいは外国の政府あるいは法人が日本市場で資金を調達する、こういう問題も今後活発化するわけでございますから、その意味でも日本の資本市場、公社債市場というものが、プライスメカニズムが活発に働いて、そしてそれに参与する人が一人でも二人でも多くなって適正な構成が維持されることが絶対に国際化のための前提条件であるというふうに考えております。  それからもう一つは、日本金融市場の中には御承知のように規制された金利自由化された金利と二重構造がはっきり出ております。このために海外から日本に来ております在日外国銀行であるとか、あるいは企業日本に進出してくる企業、こういうものが戸惑うことがたくさんございます。要するに、金利のメカニズムがある市場では働いているにもかかわらず、ある市場では全然働いていない。こういうことに対しまして実は外国人に若干の不満がございますし、これがまたアメリカやヨーロッパの、日本銀行制度は閉鎖的であるという批判にもつながっているのではないかと思います。  それからもう一つ、先ほど銀行証券が相互乗り入れをやっているという話がございました。私も国内におきましては、先ほどのお話もございましたように証取法がございますから、銀行証券というものは一定の分野というものが守られていかなければならぬと思いますけれども、海外におきましては外国の金融機関がみんな証券銀行を兼営をいたしておりますので、アメリカは別でございますが、そういう現状から見ますと、日本証券会社が銀行業務をやって大いに結構であるし、銀行証券業務をやるのも大いに結構である。また、そういう形をとりませんと、日本銀行が海外に進出いたしましても競争力がなくなってしまう。証券業務はやっていけない、銀行業務はやっていけないということになりますと、兼業いたしております海外の競争相手の外国の銀行にどうしてもひけをとるということになるわけでございますから、少なくとも海外に関する限りはもう現地法人は証券銀行かきねなしということで競争力をつけるように、むしろ今後銀行法を御審議いただきます場合に、ぜひその点を十分に考えていただきたい、かように思います。
  197. 柿澤弘治

    柿澤委員 海外活動の活発化に伴って現地の支店のネットワークと言いますか、現地法人、そういう問題についてもいままでの方針でいいのかどうか、その辺、再検討しなければならない時期に来ているような気がするわけです。量的な問題もさることながら、日本銀行が進出するとどこでも同じところへかたまってしまうというような点も、もう少し何か各行でユニークな配置と言いますか、先ほど頭取がしきりに強調されておりましたように、それぞれの銀行がそれぞれのカラーを持って特色のある海外活動をする、そういうような点について何かの工夫ができないかという気もするわけですけれども、その辺の考え方をお聞かせいただければ幸いでございます。
  198. 松沢卓二

    松沢参考人 お答えいたします。  いまの先生の御意見にはむしろ私も大賛成でございまして、先ほども申し述べましたように、自己責任原則ということから申しますと、銀行はもうからないところに支店や現地法人をつくるはずはないわけでございますから、だから、これはそれぞれの自己原則に基づきましてもっと海外店舗の行政につきましては弾力化すべきである、かように考えておる次第でございます。
  199. 柿澤弘治

    柿澤委員 これで最後になると思いますが、先ほどの多様化といいますか、そういう特色ある海外活動という面では何か工夫がないでしょうか。その意味で、単に店舗をふやしてほしいというだけでなくて、それぞれの銀行が特色ある形で店舗配置をする、そういう点で行政の姿勢を変更してほしいという具体的な要望が出てくればもっとその辺が解決しやすくなるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  200. 松沢卓二

    松沢参考人 お答えいたします。  それぞれの銀行がそれぞれの個性を発揮して海外の店舗網を充実させていくということは、私もそういうふうに持っていかなければならない、かように考えております。  私の口から申し上げるのは恐縮でございますが、日本銀行はそれぞれ百年近い歴史を持っておりますが、銀行の習性と申しますか、非常に横並び意識が強いということがございまして、ややもするとそれぞれ個性を発揮しようと思いながら、結果は大体同じところに店舗が集中してしまう、そういうことが一つあろうかと思います。  それからもう一つは、やはり経済力の集中しているところに店舗を出すわけでございますから、どうしても大体各銀行がねらう拠点が結果的に一致する、そういうこともございまして、いま先生が御指摘ございましたように、各銀行がそれぞれの個性を発揮して、余り重複しないでいろいろなところに店舗ということはわかるのでございますけれども、そういうふうに仮に企図いたしましても、結果的に同じところに集中してしまう、そういうことがあることは否定できない事実でございます。
  201. 柿澤弘治

    柿澤委員 ありがとうございました。
  202. 山崎武三郎

    山崎委員長 これにて松沢参考人に対する質疑は終了いたしした。  松沢参考人には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十二分散会