運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-10-31 第93回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月三十一日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 梶山 静六君 理事 辻  英雄君    理事 原田昇左右君 理事 渡部 恒三君    理事 清水  勇君 理事 北側 義一君       天野 公義君    浦野 烋興君       太田 誠一君    奥田 幹生君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    橋口  隆君       鳩山 邦夫君    林  義郎君       水平 豊彦君    粟山  明君       森   清君    渡辺 秀央君       上田 卓三君    上坂  昇君       城地 豊司君    水田  稔君       渡辺 三郎君    長田 武士君       武田 一夫君    横手 文雄君       小林 政子君    渡辺  貢君       伊藤 公介君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         通商産業政務次         官       野田  毅君         通商産業大臣官         房審議官    柴田 益男君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省立地         公害局長    松村 克之君         通商産業省基礎         産業局長    小松 国男君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省生活         産業局長    若杉 和夫君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         資源エネルギー         庁公益事業部長 石井 賢吾君         中小企業庁長官 児玉 清隆君         中小企業庁次長 佐藤 和宏君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    坂本重太郎君         労働大臣官房統         計情報部雇用統         計課長     三宅 康雄君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         建設大臣官房技         術調査室長   萩原 兼脩君         建設省計画局建         設業課長    北村広太郎君         建設省河川局水         源地対策室長  志水 茂明君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ————————————— 委員の異動 十月二十八日  辞任         補欠選任   小川 平二君     山崎武三郎君   上坂  昇君     中村 重光君 同日  辞任         補欠選任   山崎武三郎君     小川 平二君   中村 重光君     上坂  昇君 同月三十一日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     太田 誠一君   城地 豊司君     上田 卓三君 同日  辞任         補欠選任   太田 誠一君     植竹 繁雄君   上田 卓三君     城地 豊司君     ————————————— 十月二十五日  灯油価格抑制等に関する請願外一件(池端清  一君紹介)(第四〇九号)  同(小林恒人紹介)(第五三六号)  同(島田琢郎紹介)(第五三七号)  灯油価格抑制及び寒冷地特別価格設定等に関す  る請願岩佐恵美紹介)(第五三五号) 同月二十七日  小売大資本の規制及び商店街・市場の振興に関  する請願正森成二君紹介)(第六四七号)  灯油価格抑制及び寒冷地特別価格設定等に関す  る請願外一件(岩佐恵美紹介)(第七四九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻英雄君。
  3. 辻英雄

    ○辻(英)委員 先般の通商産業大臣の本委員会におけるあいさつの中でも、中小企業につきまして、最近の景気かげり中小企業に特に色濃くあらわれておる、また、そのために今後の経済運営に当たっては中小企業経営の安定に万全の配慮を期していきたい、また、中長期的に見まして中小企業をめぐる環境変化対応して、中小企業が活力のあるものとして今後ともわが国経済の発展の基盤となって、健全な成長を遂げていくことが重要であるというように通産大臣自身が述べておられるところであります。  中小企業わが国経済の中において占める地位につきましては、私から申すまでもなく企業数におきましてほとんど大部分、また従業員数で見ましても八割程度という重要な地位を占めておりますが、最近の高度成長から安定成長への移行期の中で、かつまたエネルギー危機の中で、中小企業が大企業との対比においてどのような動向にあるかということにつきまして、中小企業庁はどのように理解をしておられますか、第一にお尋ねをいたしたいと思います。
  4. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  先生御存じのとおり、最近の中小企業は現段階において見ます限り大変自信を深めておりますし、それだけの技術力も持っておりますが、これを大企業中小企業という面で対比をしてまいりますと、客観的に見ましてもいわゆる景気かげりが集中的に中小企業の方に暗い影を落としておるということが一つございます。それから、冷夏の影響等も特に中小企業業種において集中的にひどいものがあるということも事実でございます。さらにまた中長期的に見まして、やはり中小企業の置かれておる環境条件の方が大企業よりもより厳しいということがいろいろな要素、たとえば中小企業雇用面におけるところの構成あるいは給与の面あるいは生産性その他の面におきまして、これを中長期、構造的に見ますとなお相当憂慮すべき、また私ども政策対象として十分頭に置かねばならない問題が伏在をいたしておる、このように考えております。
  5. 辻英雄

    ○辻(英)委員 いろいろな見方があると思いますが、一般にも言われておりますように、中小企業設備が老朽化しておるとか、資本構成が悪化しておるとか、あるいはいまお話しのように労働力の面において相対的に質のよくない労働力中小企業により多く流れ込んでおるというような点は、私はさして改善されていないのではないか、言われるほど中小企業体質がよくなっていないのではないかということを心配をいたしております。  一部の学者の議論の中で、七〇年代の成長の過程において中小企業のある分野が非常に成長し、ある程度近代化もした面をとらえまして、いまや二重構造というのがなくなったんだというようなことを言われる学者もあり、物の本にも書いてございます。これは学者の言うことでございますから、別に学者をわれわれが批判することはないと思うのですが、中小企業庁でお出しになっております「中小企業の再発見 八〇年代の中小企業ビジョン」というパンフレットがあります。これはなかなか労作でありますし、大変いいことも書いてあるのですが、このことの流れの中にただいまちょっと触れましたような、一部の中小企業学者がすでに格差はなくなったんだというようなことを言っておる点とやや近いようなとらえ方をしておる面があるのじゃないか。そのようなものが出ますと、ただいま長官のおっしゃったような、まだまだしなければならないことがたくさんあるという実態について誤解を招くのではないかということを心配いたすわけでございます。  そこで、そういうことについてのお考えを承ります前に、現在の大企業中小企業規模別格差動向がどんなふうになっているのか、どのようにとらえておられるのか、製造業と商業、大ざっぱに御見解を中小企業庁長官に承りたいと思います。
  6. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  格差のとらえ方はいろんな指標がございますし、また見る立場によりまして非常に問題がございますが、私ども一つのよりどころとしてとらえております一例を申し上げますと、たとえば労働生産性格差が大企業中小企業との間でどうなっておるかということでございますが、大企業の場合を一〇〇といたしまして中小企業水準がどの程度かということを格差指数というもので表示をいたしております。これを昭和三十年で見てまいりますと四五・三という水準でございます。これに対しまして、若干古くはございますが一番最近のものとしては五十三年のものがございまして、五十三年における格差指数は大企業一〇〇に対しまして五三・二という水準でございます。  それから売上高の純利益率でございますが、これも一億円以上の大企業と一億円未満の中小企業という非常に単純な分け方で比較いたしまして、四十六年当時は大企業利益率というのは二・七でございましたが中小企業は二・一でございました。それが五十三年は、大企業の方は五十、五十一、五十二年度以降の回復が相当早うございまして二・六という純利益率でございます。これに対しまして中小企業はいまだに一・八ということで、第一次オイルショックの後遺症が依然として強く残っておるということを示しております。  それから資本装備の面では、資本装備率というむずかしい表現を使っておりますけれども、一人当たり有形固定資産水準でこの指標を示しておりますが、これが大企業を一〇〇として見ますと、現在中小企業資本装備率は大体四割前後という水準でございます。  以下、財務構造の面で一例申し上げますと、自己資本比率でございますが、これは五十三年の水準だけ申し上げますと大企業が一六%、これに対しまして中小企業は一三%ということで、依然として資本の面における自己資本格差というものが相当大きゅうございます。  それから賃金の面でございますが、これもいろんなとり方がございますけれども、私ども一つのベースとしてとっております数字によりますと、平均賃金格差が、大企業を一〇〇といたしまして、五十三年で見ますと中小企業の場合は八〇という水準でございます。厳密に言いますと八〇弱でございますけれども。これが昭和三十三年、ちょうど二十二年前でございますが、このときは五七・七ということでございますので、長期構造的には改善されておるけれども依然として格差は残っておるという見方を私どももいたしております。  ついででございますが、いま先生強く御指摘いただきましたように、明るい面だけをとらえては中小企業政策のあり方にひずみが出はしないかという御指摘がございましたけれども、私どももその点は十分自戒しておりまして、中小企業政策審・議会の答申でいただきましたいわゆる八〇年代ビジョンというのは一つ提言でございまして、大変貴重な提言と私ども受けとめてはおりますけれども、具体的な中小企業政策の面という点ではまだ十分配慮すべき点がございますので、その点は今後とも十分留意して展開してまいりたい、このように考えております。
  7. 辻英雄

    ○辻(英)委員 ただいま長官の御指摘のようないろいろな数字がありますが、私がいつも昔から使っておる数字でちょっと申し上げてみますと、製造業従業者一人当たり付加価値の大企業中小企業対比をいたしました格差について見ますと、石油ショックのございました四十八年が五二・七、四十九年が五三・五、五十年が五四・八でありましたが、五十一年は五一・〇、五十二年は五一・三、五十三年が五〇・八という格差のやや長期的な傾向でございまして、格差が縮小したという分野があるということも長官おっしゃるとおりだと思うけれども、全体としてとらえてみますと、必ずしも格差が縮小しているということは数字の面からは出てこないように思います。その意味中小企業白書に「格差問題の推移と現状」につきまして、「大企業対等以上に競争力を発揮する中小企業が多数存在する一方、多くの分野でなお大企業との間で深刻かつ多様な格差が存在し、そのことが総体としての中小企業、大企業間の格差の残存をもたらしている。」こう書かれておりますが、私もおおむねこういうことではなかろうか。その場合必要なことは、これからの中小企業対策考えていきます場合に、大企業との対比において、先ほどお話のありました設備近代化等も進みあるいは技術水準も非常に高いものもある、そういうものについて、またある意味で大企業ほど固定資産の大きさがないためにかえって最近における産業構造の転換に対応力を持っておる、あるいはノーハウ導入等につきましても対応力が速いというような面を持った、この中で言うところの大企業以上、対等程度競争力を持った中小企業ができつつあるということも事実であると私は思う。今後の政策でそういう角度政策を大いに展開していかなければならないと思うのであります。  その場合に、国民のニーズ変化であるとか貿易構造変化であるとかエネルギーコスト上昇であるとかあるいは立地環境問題等々、これからの八〇年代の経済環境社会環境変化対応をしていかなければならない、そういう角度でそういうものの経営の力を増していかなければならぬ、そういうことの対象となる、そういうとらえ方が積極的に必要である中小企業について、この「八〇年代の中小企業ビジョン」というものはそういう角度のものを多くとらえておられるように思いますが、そういう方向のものについて、ごく大づかみに言って中小企業庁としてはどのような施策を講じていかれようとするのか、御所見を承りたいと思います。
  8. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  結論から申し上げますと、同じ中小企業という非常に広い層でございますが、その中には大きく分けましてやはり二つの層がございまして、これは中小企業政策を展開いたします際になかなか画一的にやれない面がある、私どもはこのように考えております。その二つと申しますのは、やはり自分で伸びていくだけの自力回転力を十分持ってあるいはそういう力をつけつつある、ある程度の客観的な条件整備をすれば自力回転力を遺憾なく発揮できるような企業群と、いまだに構造的に見ましてあるいは社会的に見まして社会的格差が大きい、あるいは条件がまだ十分備わっていないために自分の持てる力を発揮できないという層がございます。いわばまだ生業的な段階にございまして、純粋企業的な段階まで脱皮し得ないでいるという層がございます。したがいまして、この二つの層の実態に即した効果的な中小企業政策を展開する必要がある、このように考えておりまして、主として前者の方、いわゆる自力回転力を相当つけておりまして、みずからの技術力も相当持っておる、それからハードの面におきましても新鋭の設備を持っておるもの、それからノーハウの面におきましても相当な対応力を持っておる、そういった中小企業につきましては、その伸びる力の客観的な条件整備といたしまして、たとえて言いますと、省エネルギーという分野におきましては、これまではそういった企業群についての問題点は何かと言いますと、人件費コストが非常に上昇する、それが経営基盤を揺るがすものであり、かつ長期的に見ましても収益構造にも相当問題があるというような企業群でございました。  ところが、第一次のオイルショック以降、人件費もさることながらエネルギーコストがその企業にとっての大きな課題になりまして、収益構造を圧迫しかつ経営基盤を揺るがすものであるというような事態の変化がございまして、こういうものにつきましてはやはり省エネルギー体質というものを身につける必要がございまして、そのための設備投資なり技術開発というものが必要になってまいります。そういうことがこういった企業群についての新しい政策ニーズになってまいっておりますので、こういうものにつきましては特に来年度からは力を入れるわけでございますが、省エネルギーのための技術開発省エネルギーのための設備投資について格段の助成を新しく講ずるということを考えております。  また、政策的に見まして、技術面での一つ支援対策といたしまして、省エネルギー診断バスというようなものを仕立てまして、そして実際の工場に即しまして、省エネルギー課題生産プロセスの面でどこにどういうふうに問題が所在し、これをどう解決していくべきかというカルテまで書きまして、そしてこれに対する一つ処方せんを書いて指導に伴った投資を誘導しよう、そういう政策考えております。  他方、第二のグループにつきまして、一例でございますが申し上げますと、やはり経営指導ということが一番重点になってまいります。いわゆる生業から企業へという段階的な脱皮を早急に図ることによりまして経営基盤の安定を図る必要がございます。こういうものにつきましては指導助成ということを一体として展開する必要がございますので、まず第一に経営指導という面に重点を置いております。経営指導員の質の向上あるいは量的な補完という点におきまして予算面でも重点を置いておりますが、それ以上に、当面する金融という面におきましては経営指導に伴ったマル経資金拡充強化というようなことで、中小企業、特に小規模零細企業基盤強化のための施策という点に重点を置いて予算要求その他を展開しているわけでございます。  いずれにいたしましても、非常に多面的に複雑な構成を持っております中小企業群対象にいたします中小企業政策でございますので、きめの細かい判断ときめの細かい処方せんときめの細かい対策の展開、こういうことで対処をしてまいりたい、このように考えております。
  9. 辻英雄

    ○辻(英)委員 大変総括的に見られた政策体系全般についてのお答えでございましたので、大筋そういうことで大いにがんばってもらいたいと思います。  もう少し今度は中に入りまして御質問したいと思いますが、いわゆる長官の言われる第一のグループに対しての政策の中の、いかにして中小企業省エネルギー対策を具体的に実施をさせていくか。これは御承知のように、日本エネルギーが前年度は石油五%節約、本年七%節約ということになりますと、大企業ばかりでなくて、日本の大部分を占める中小企業の中でどのようなエネルギー節約あるいはその効率使用を進め得るかということは、国家的立場から見ましても非常に重要な問題であるし、ただいま長官の言われたような中小企業収益確保という角度からも圧迫要因を取り除いてやらなければならないと思うわけでございますが、すでに中小企業の一部で努力をされまして、たとえば岡山の繊維産業につきまして、染色工場温排水からの廃熱を回収利用するということで、温排水から熱回収して一日当たり重油約四百リットルを節約するというようなことをやった実例等もあるように思いますし、その他各地区で中小企業自体努力なりあるいは地元の県の指導機関等もそういうことの積極的な努力をしておられるというふうに伺いますが、これは残念ながらごく一部の特殊なところだけでございますが、日本全体としてそういう方向をやりますために、ただいま長官ちょっと診断バスというようなことを言われました。それも一つの案であると思います。そういう点につきまして、これについての隘路というものは、大企業専門的技術屋を抱えておるのと違いまして、中小企業だけでそういう積極的な技術的なあるいは設備的な対応をすることが全体としてむずかしいわけでありますから、この分野における中小企業庁役割りは非常に大きいし、大きくなければならぬと私は考えるわけでございます。そういう熱効率上昇あるいは省エネルギーのための設備なりあるいは技術なりというものについて積極的に指導ができる体制をとっていただいて、その企業に即したきめ細かい指導をしていただく必要がある。いろいろお考えのようでありますから、きょうは細かいことは飛ばしまして、ぜひそういう方向の御努力をお願いしたい。  同時に、これは幾ら技術が開発されましても、長官も触れられましたように、それに対する金の手当てができなければ実現できないわけでございます。いろいろな政府関係資金なりなんなりも、従来とも近代化のために活用されておりますけれども、この分野については普通の政府関係資金で普通の方式でめんどうを見るというだけではなくて、特に国家的要請から見ましても急務でございますので、一般以上の格段の資金的な配慮ができないものだろうかと思っておりますが、それにつきまして長官、どのようなお考えをお持ちでありますか、御所見を伺いたいと思います。
  10. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、極端な言い方をしますとまさしく今後の中小企業の命運を決するといいますか、ある意味では企業の命取りになるようなエネルギーコストをいかにして抑えていくかということでございまして、抑えるための有効な手段といたしましては、省エネルギーということと、それからエネルギーの使い方についてもさることながら、代替エネルギーを導入するというやり方とございますけれども、特に中小企業の場合でいいますと省エネルギーが一番の大きな効果をもたらす方法でございまして、この省エネルギー体質生産プロセスの面でも販売プロセスの面でも早く中小企業が身につけるということが一番肝要だ、このように考えております。  しかもその省エネルギーも二段階ございまして、一つは電気を小まめに消すというようなことで、現在あるがままの姿でこれを実行できる段階と、それから抜本的に生産プロセスあるいは販売プロセスを変えまして、技術開発とかあるいは設備投資媒体としまして思い切った省エネルギー体質構造を実現するという二段階がございますが、現在、第一段階の方は各中小企業はもうやれるだけのことを一応やっておるという判断を私どもはいたしております。第二段階の方の設備改善とかあるいは技術改善等媒体といたしまして抜本的な省エネルギー構造を実現するという点におきましては、大企業の方は相当程度進んでおりますけれども中小企業の方はなかなかその点が思い切って進んでいないという現状にございます。したがいまして、私どもはこの点を政策面から誘導し、これを支援する必要があるということで、特に考えておりますのは、省エネルギーに関する啓蒙指導というところから出発するわけでございますが、手広く啓蒙指導をやりますと同時に、実際の技術開発あるいは設備投資を実現しますための資金的な手当てにつきまして特別の制度を設けようということで、五十六年度におきましては次のような措置を講ずることといたしております。  金融措置につきましては、中小企業金融公庫におきますところの省エネルギー貸付枠というものが現在はございますが、こういったものを特に省エネルギーということに重点を置きまして中小企業金融公庫に独立した項目を創設いたしまして、十分な資金確保を行うということが一つでございます。それから特に高度化対策という面におきましては、省エネルギー共同事業の創設ということで、中小企業の場合、たとえば団地等におきまして個々の中小企業省エネルギー設備構造を持ちましても効果が限界がございますので、全体として組織化をいたしまして、共同事業として省エネルギーのシステムを備えるというようなことが一つございます。それから税制面におきまして既存の省エネルギー税制の拡充を図りますほか、総合エネルギー対策投資促進税制というものを来年度は企画をいたしておりまして、現在、財政当局と折衝中でございますが、これはいわゆる税額控除という非常に思い切った税制措置を講ずることによりまして、中小企業省エネルギー設備投資を抜本的に強化しようという促進剤でございます。これによりまして、相当中小企業省エネルギー投資を誘導できるのではなかろうか、このように考えております。  それから、先ほど先生指摘いただきました省エネルギー診断バスでございますが、これもいまのところ大筋だけ申し上げますと、各県に一台のバスを配置いたしまして、大変多額の装備品を備えたバスでございますが、一台五千万円という装備をいたしました新兵器を備えつけまして、これで各工場に参りまして、ガイガー調査と同じように、どこでどういうエネルギーロスが発生しておるかということを科学的、客観的に分析いたしまして、それをもとにしてこれに対する対応策としてどういった技術、どういった設備投資が必要かという診断のカルテまで書きまして、これを具体的に中小企業者に示すことによりまして具体的な中小企業省エネルギー改善措置の誘導をやっていこう、このように考えております。特に御指摘の、中小企業省エネルギーをやりたいけれども金がないからやれないという点に私ども配慮いたしまして、金融面については特別の措置を講ずることによりましてこの隘路を打開して、中小企業省エネルギー投資ができるように持っていきたいと考えております。
  11. 辻英雄

    ○辻(英)委員 ただいま大変きめの細かい中小企業省エネルギー対策につきましていろいろ御検討をいただいておるようでございますのでやや安心をいたしましたけれども中小企業庁考えただけではこれは絵にかいたもちでございますので、幸い政務次官もお見えになってお聞き取りのようでありますから、大臣にもよくお考えいただきまして、積極的にきめ細かく、勇猛果敢にこういう面の政策を進めていただきたいと考えるわけでございます。  時間がありませんので次に、先ほど来の長官の言葉の第一のグループのうちのもう一つ問題点につきまして御質問申し上げたいと思いますのは、中小企業の海外投資が逐次進みつつあると申しますか、幾らか緒につきつつある。大企業等におきましては、御承知の自動車の輸出量の増大等から現地の方で工場進出を希望されまして、自動車あるいは電子関係等幾らかずつ出ておるように思いますが、中小企業の面におきましても、中小企業が海外投資を行うということは、企業自体の市場開発であるばかりではなくて、後進国等に対するノーハウ指導であるとか雇用機会の拡大であるとか、そういう意味で大変重要な技術協力、経済協力の骨になっていくのではないか、将来そういうふうにしていかなければならないのじゃないか。日本がアメリカとEC市場だけを考えてものをやっていく時代ではない。同時に、そういう発展途上国に対する海外投資というものがその国々の経済の力を上げて生活を上げさせるということは、大きな意味で大事なことであるばかりでなくて、経済的に見ますと、将来における日本の重要な市場であると考えるわけでございますから、そういう両方の意味からも中小企業の海外投資について積極的な姿勢をもって日本全体が臨んでいくべきじゃなかろうか。一時私が調べました例で見ましても、たとえば韓国に対して従来は電線のコイルを巻いて完成品として輸出しておったのが、銅線だけこちらでつくったものを持っていって、コイルの巻きの工程は向こうの工場でやるというようなことが成功しておるように伺っております。また木材等につきましても、南洋材等については、昔は原木で輸出をしてこっちに持ってきましたものが、製材して輸出をしたい、現地における付加価値を高めたいという発展途上国側の全体の空気になっている中で、たとえばシンガポール等に日本の製材工場が進出をしてその要請にこたえておるというようなことも伺っておりますが、いま全体として中小企業の海外投資はどのような動向にありますか、全体の話がわかりませんのでどういう方向であるか、お答えをいただきたいと思います。
  12. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  五十三年度の数字で申し上げますと、現在中小企業の海外投資は千二百十九件という多きに上っております。これは件数で全体の五〇・九%、約半分強というところでございまして、わが国の中小企業に対する資本的な海外進出あるいは技術的な海外進出に対する期待が海外から非常に大きいということを示しておりますと同時に、わが国の事情といたしましても、中小企業側から考えまして日本のマーケットはこれから低成長になっていくということと、それから対外的な貿易摩擦等について十分な配慮をすべきであるというような事情がございまして、このように非常に大きな件数が現在実現をしておるわけでございます。その中には、やはり国内における中小企業の活路を新しいマーケットを求めて開拓していくという面が一つございますと同時に、第二の面といたしまして、原材料の供給不安あるいは現地で生産をしてくれとか、先ほど先生二つの事例で御指摘ございましたように、現地における付加価値をさらに高めてもらいたいといった現地生産化の拡大の要請、そういったものに対応いたしまして事業活動が一層活発に国際化を実現をしておるという面がございます。  全体として申し上げますと以上のようなことでございますが、これを過去の年度と若干比較をいたしてみますと、先ほど申しました五十三年度の水準に対しまして四年前の四十九年度を例にとりますと、中小企業の海外進出案件は六百十八件でございまして、これは三二・四%、全体に占めます比率はその程度でございました。それが急速に伸びてまいりまして現在五〇・九%、このような水準にまで拡大をいたしております。  それから対象地域でございますが、これも従来はわが国の周辺諸国、いわゆる発展途上国が多かったわけでございますけれども、最近の大きな流れ、傾向から申し上げますと、先進国の方に大分事例が出ておりまして、たとえばアメリカ、カナダ、ヨーロッパといった先進地域にも事例が相当数出てきつつあるということが一つございます。  それから業種的に見ましても、大きな流れとして見ますと、かつては繊維その他の雑貨という分野が非常に多かったわけでございますが、これが最近の傾向といたしましては機械等の先進的な産業部門に拡大しつつございまして、大きな流れの変化が起こっておるということも言えようかと思います。
  13. 辻英雄

    ○辻(英)委員 この面につきましても、先ほど省エネルギー政策につきまして述べましたのと同じように、大企業と違いまして独自のマーケットリサーチの力が中小企業の場合には弱いということがございますので、従来からありますジェトロ等を活用しまして、そういう海外における投資対象となるような地域なりあるいは業種なり内容なりについて通産省の方で積極的にマーケットリサーチをされまして、十分中小企業に資料等、情報等が提供されるということが第一の出発点であると思うのでございます。同時に、これに必要な関係各国との交渉というようなこと、あるいは各国における経済機関との交渉等につきましても、やはり政府の積極的な援助がこの分野については必要であるというように思います。それと第三には、その関係の資金につきまして、各種の資金が有効に中小企業にも利用され得るように御配慮をいただかなければならぬ。  以上の三点につきましては、時間もありませんので、中小企業庁当局もよく御了解であろうと思いますから、積極的に進展しますように今後とも格段の努力をお願いしたいということを御要望申し上げまして、この部分はこれで終わりたいと思います。  次に、先ほど来問題のありました付加価値格差なり何なり、全体としての中小企業と大企業との格差がいまなお大きく存在しておる中で、なお体質の弱い、近代化のおくれておる、あるいは設備の面にしましても、あるいは技術の面にしましても、あるいは労働力の面にしましても、また資金面でも弱い分野中小企業に対してどのような政策を従来以上に講じていくのかというととが、非常にこれからの八〇年代の日本経済体質強化のためになくてはならないことだと思います。これにつきましての全体的なお話は先ほどもございましたから、この点だけを御質問したいと思います。  中小企業の中で、非常に海外に対して市場を持っておるとか、遠隔地域、全国的に市場を持っておる中小企業というものがあると思います。産地産業等の中でも相当部分がそういう力を持ち得るものだと思いますが、第一の産地産業につきましては、従来とも産地振興に関する特別な法律を制定されまして、それによりまして産地に対する特別な助成が行われておると思います。八〇年代は地方の時代であるというようなことを言われますが、地域経済を支え、地域社会を支えておる中小企業の育成は今後とも重要な意味を持ちますし、大都会の人間疎外の中からUターン、Jターンというようなことが言われておりますが、自然環境なり地域環境としては、帰りたいけれども、雇用の場がないから帰れないというのが現実であろうと思います。  その中で一つ、産地に対する特別の施策が進められておりますけれども、私の記憶では、五十四年度から特別の補助金が始まって、五十四年度、五年度と二年間やってきておると思いますけれども、たとえば私の知っております、地元だから知っておりますが、博多織について申し上げてみますと、八寸名古屋帯というような先染め織物の帯地の産地でございますが、近年の生活様式の変化、多様化、個性化等に対応しまして、新しい分野の開拓の研究努力をいたしておりますけれども、幸い、産地の特別の振興の新しい予算をいただいて、一年、二年としゃれ袋帯の研究開発であるとか、先染め着尺の試し織りなどをいたしておりますけれども、これは技術的に新しい問題でありますので、なかなか一年やった、二年やったからそれで終わりたという様相ではないと思います。これは私がたまたま知っております博多織だけでなくて、他の地区の産地につきましても、非常に熱心に取り組んでおられるところが多いように聞いておりますけれども、承りますと、これは一産地については二年間やったらもう終わりだというような話も漏れ承っておりますけれども、二年間だけでそういうことが全体としてその産地につきましてできるのかどうか、その実情を踏まえまして、長官の方ではどのようにごらんになっておりますのか、御意見を承りたいと思います。
  14. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  産地対策は、いま先生から御指摘いただきましたように、地方の時代の具体的な中身を構成するような、あるいはその中核になりますようなきわめて重要な問題でございまして、これを起爆力にいたしまして、各地域の内発力を結集して、その地域の全体としての産業発展あるいは地域社会の発展に貢献していくということが期待されるわけでございますので、特に政策面では私ども中小企業政策の一番重要な目玉の一つ考えております。先ほど御指摘ございましたように、産地対策の施行されましたのが昭和五十四年の七月でございまして、現在百六十三の産地を全国的に指定しておりますが、来年度もさらにこれを拡大したい、まずこのように考えております。  それから各産地でもビジョンを策定するという段階と、それから産地の振興を具体的に展開するという段階がございまして、初年度におきましてはどの産地もまずビジョンの策定ということがございますけれども、これはいわゆる将来の発展の構想へ問題点一対処すべき施策を洗い出すわけでございますけれども、具体的には、二年度目以隆具体的な需要開拓とか新商品の開発とかあるいは技術の開発等々を展開する必要がございます。そういった具体的な事業を何年で終了しなければいけないかということがいま政策的には非常に重要なポイントになっておりまして、実はいろいろな見方がございまして、ビジョンの策定までというような助成のあり方ももちろんございますけれども、せっかく産地の振興を行うのに、絵に、かいたもち倒れということになりますと非常に問題でございますので、具体的な振興事業というものが定着して、実際にそれが自力で回転できるようになるまでこれを助成していくというのが中小企業対策として重要ではなかろうか、このように考えております。したがいまして、ことしは二年度目に相当するわけでございますが、二年度におきましても、初年度に引き続きまして、実際の産地振興対策事業の展開のための補助金というものを交付することにいたしております。  それから、来年度がちょうど初年度産地につきましては三年度目に遭遇いたしますけれども、三年度におきましても、やはり二年度だけで単年度事業としては完了しなかったというものが数多く見られますので、その一例としまして先ほど御指摘のような博多帯の問題もございます。そういったものにつきましてはやはり第三年度目の助成というものもぜひ必要である、これをやらなかったために、二年度までの成果が、せっかくやったのにそれが水泡に帰するというようなことになりますと大変問題でございますので、三年度目もこれを助成すべきであるということで、これも中小企業対策費の要求項目の一番重要な問題の一つとして、現在財政当局と折衝をいたしておる段階でございます。
  15. 辻英雄

    ○辻(英)委員 ただいまの点につきましては、長官の方でもよく実情を御承知のようでございますから、長官の言葉に言うところの絵にかいたもちでは困りますが、私の言葉では、仏つくって魂を入れずでは、せっかく二年間の指導と経費が無効になってしまうと思いますので、その点につきまして十分実態に即して、せっかくやりかけたビジョンとその新しい産業技術が烏有に帰さないように御配慮いただきたいということを申し上げまして、この点を終わりたいと思います。  もう一つ、産地産業のようにまとまった同一業種なり同種の業種が集団化しておるところにつきましては、地方の中小企業に対する指導なり援助なりが比較的進んでおる方の分野であると私は思いますが、実は地方という中にはそういう系列に取りまとめのできない中小企業の方がむしろ多いわけでございまして、その方々も近代化なり高度化あるいはいろいろな面で努力をしておられます。これが個別の企業だけではなかなかできませんので、異業種ではあるけれども、私の知っておる名前を挙げる必要はないと思いますけれども中小企業の地域的な集団という形がございまして、最近の中小企業金融についてどうしたら金繰りができるのか、あるいは最近の経済動向変化に対して中小企業がどのように対応すべきかということ等につきましては、お役所の方々に来てもらうとかあるいは学者に来てもらうとか、大変な勉強もいたしておる。同時に、同業種ではないけれども、共同の展示会をやるというようなこともやっております。また、求人の申し込み等につきましても労働関係当局の指導もありまして、同種ではないけれども中小企業団体がまとめて求人の申し込みをするとか、あるいは共同の独身寮をつくるとか、そして共同の管理をするというようなことの努力をしておる集団を幾つか私は存じておりますが、そういうものに対する援助というものもひとつ考えていかなければならないのではないかと思うのであります。  そういうことに入ります一つの前提でございますけれども、そういう産業というのは大体海外とか全国的とかの需要に対する対応じゃなくて、地域内の相互町需要と申しますか、ないしは一般の消費需要に対して対応するという形のものが多い。そういうことになりますと、どうしてもそういうものに対する助成策が本当に実を結びます条件として、地域全体の振興政策という底に流れたものがないとこれは実を結びにくいというように考えるわけでございます。そういう意味では、従来から全国総合開発とかいろいろなことを言われておりますが、日本の中に幾つか陥没した地域があるように思うのであります。一例を申しますと、私どもで存じておりますのはたとえば旧産炭地域、筑豊地域は明治以来日本エネルギーの基本でありました石炭の大部分を産出してまいりましたけれどもエネルギー革命の中で低落をしまして、いまなお非常に地域の経済が弱い、失業者あるいは生活保護者が非常に多い地域でございまして、そういう地域の中にある中小企業というものは非常な努力をしながら苦労をしておるという実態でございます。そういうものに対して、たとえば沖繩では沖繩博をやってそういうエネルギーをつけてある程度成功をした、あるいは名古屋でもまたオリンピックをやるというような話も承っておりますが、この筑豊地域で何かそういう地域全体の浮揚のために、従来の産炭地振興特別措置法を期限延長するというようなことだけでなく、積極的な開発効果をねらったことを地域中小企業政策の基本としてお考えになったらいかがだろうかというようなことを考えておりましたところが、先般田中通産大臣が、エネルギーに対しての国民に対する啓蒙ということが今日非常に重要だ、かつて非常に日本エネルギーのために貢献した旧産炭地でそういう博覧会でもやったらどうだというようなことをどこかで述べられたというふうに伺っておるのです。大変な卓見であろうと思いますが、この点につきましては長官でなくて、幸い政務次官もおられますので御所見を伺いたいし、ぜひこれを御推進願いたいと考えるわけでございます。政務次官からひとつお答えをいただきたい。
  16. 野田毅

    ○野田政府委員 旧産炭地域はかつては日本エネルギーを支えた大事な地域であったわけであります。いま辻委員が御指摘のとおり、現在は大変疲弊をしておりまして、中小企業庁も何とか後ろ向きのやり方だけではなくて、前向きの明るい展望を持った地域の発展計画というものをつくりたい、そういう熱意に燃えておられるということも十分承知いたしておりますし、特に私どもの田中大臣は筑豊の出身でもありますし、それだけにいろいろな情報も耳にして、大変平素から頭を痛めておられたわけでございます。そうした中でいろいろ地元の町長さん方、いろいろな中で、いま御指摘のようなエネルギー博というようなものはどうなのだろうかというような話があったやに私どもも承知をいたしております。ただ、このエネルギー博そのものは、国際博あるいは国内博、いろいろなやり方があろうと思います。国際博については御承知のとおり二年後にアメリカで行われるというようなこともあり、あるいはまた国内博というようなことになりますと、それに対する財政的な支援状況というものが国際博に匹敵するほどのものがあるのかどうか。そうなりますと、今度は地元負担というものも絡んでまいるわけでありまして、いずれにしましてもそういうことをも頭に入れながら、ぜひこういった苦しんでおられる産炭地域の振興策を筑豊地域についても特に何らか考えてみたい、こういう姿勢で臨んでおるわけであります。このことにつきましては特に辻委員も福岡県の御出身でありますし、大変いろいろとお悩みのことだろうと思います。これから寄り寄り御相談申し上げながら、また御指導いただきながら地域の振興計画考えてまいりたい、こういうふうに思うわけでございます。
  17. 辻英雄

    ○辻(英)委員 ただいまの政務次官のせっかくの御答弁でございますので、私の方も言えば必ずしも簡単にできることではないという意味では了解をいたしますけれども、せっかく通産大臣が発言をされまして地元が非常に期待をしておるところでございますので、通産大臣にもぜひその趣旨を十分御伝達をいただきたいということを御要望いたしておきます。  なお、先ほどの本論に戻りまして、そういう産地産業のような同種産業でない中小企業がたくさんに存在しておって、それらが何らかの共同事業、共同の計画を立てながら全体の自己開発をしていこうという雰囲気の中で、産地以外のものは余りめんどうを見れないのだ、商工会だけでいいじゃないか、あるいは商工会議所だけでいいじゃないかということでなく、何か中小企業庁の方にもお考えがあろうと思いますから、長官から一言お答えをいただきたいと思います。
  18. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘のように、産地産業と申しますのは単一業種で独立発展力をある程度持っておりまして、一定の地域に集積をしているものでございますが、そこまではまだ至らないで、その地域のほかの業種と一緒になりましてきわめて地域特性のある産業集積を持つものがございまして、これを私ども地場産業というふうに呼んでおりますが、従来は一業種で相当力のあるものを中心に産地産業対策を講じてまいりましたけれども、来年度以降におきましては、やはりそれだけでは不十分で足りないということで、いわゆる地場産業というものを広くとらえまして、そして異業種間の力の結集によりましてその地域の発展の起動力になっていただく。そのためには条件整備が必要でございますし、先行きの見通しについて全体のコンセンサスづくりというものが必要でございます。  したがいまして、来年度の新政策の検討といたしまして考えています点は三点ございまして、一つは、その地域で異業種間が連携をとりまして、その地域の面的な発展の構図というものをつくるためのビジョン作成費の助成をしようというのが一つでございます。これを地場産業振興ビジョン作成助成というふうに呼んでおります。  それから第二の面といたしましては、ただ考え方をまとめるだけでは不十分でございまして、すでにそこではある構想がございまして、これを実行に移す必要がある、そのためにはそこに存在する各業種間の協力体制を形をもって結集するだけの機能を十分備えたものが必要である、こういうものを地場振興センターというふうに仮に呼んでおりますが、そういうものを構築したいというものにつきましては、これを中小企業事業団の方で集中的に助成をいたしまして、そこを中軸にいたしまして、そこの地場産業全体が地位の向上を図っていく、そして地域社会の抜本的な発展に資するということを考えております。  それからもう一つは、相当地域社会の一般生活とも密着した問題でございますが、工芸コミュニティー構想というのがございまして、これは地場産業というよりも、そこに見にいらっしゃる方々も一緒にろくろを回して、そこでその伝統的な工芸を身につける、あるいはその地場の住民としての社会の人々がその産業人と一緒になってそういった工芸を楽しむといった、工芸コミュニティーというのがございます。こういうものにつきましても、地場産業政策の一環としてそれに必要な助成を講じてまいりたい、これも新しい施策として要求をいたしております。
  19. 辻英雄

    ○辻(英)委員 時間がまいりましたので、最後に一言だけ申し上げまして、後の機会にまた御質問したいと思いますが、いわゆる小規模企業、特に商業等につきましてはまだまだ大企業との格差が非常に大きい、あるいは特に商業などは従来の中小企業近代化指導あるいは助成という面において残念ながら製造業に比べると非常におくれておる。その中で大店舗の進出等がありまして、大店法あるいは商調法によって当座その間の処理をしていますけれども、これは率直に言いまして永久的措置ではなくて、摩擦排除ということに基本があるのであって、その大店舗の進出に対する急激な摩擦を排除している一方、その中で従来の商店の近代化を図っていくことが実は本論でなければならないと私は思うのであります。そういう点につきまして、きょうは時間がありませんから改めて御質問申し上げますけれども、これからの政策の中でそういう問題、特に商店等につきましては、御存じだと思いますが、三十人未満は従来から九時間までいいというようなことで、これはおれのところはだめなんだから永久に九時間だなどという主張をする商店もございまして、取り組み方が大変後ろ向きのように思います。そういう点につきましては、商業の近代化、特に零細企業に対する問題等につきまして一層御尽力をいただきますように御要望だけ申し上げまして、時間でありますので質問を終わります。(拍手)
  20. 野中英二

    野中委員長 水田稔君。
  21. 水田稔

    ○水田委員 私はまず化学産業の中の二、三の問題のある業種について伺いたいと思うのですが、その前に化学産業、これに対する基本的な考え方を政務次官にお伺いしておきたいと思うのです。  化学産業というのは、まさに高度経済成長を鉄鋼、自動車、電機などとともに支えた一つの柱であったわけです。そして、今日鉄鋼なり自動車なり電機というのは国際摩擦が生ずるような、いわゆる国際商品としての地位確保しておる。摩擦の問題はまた別にお伺いしますけれども、化学産業というのは、たとえば今日染料でさえも日本の一番大きな企業が危ないと言われるようなことになってくる、あるいは輸出の大宗を占めておった肥料もだんだん減ってくる、むしろ輸入に脅かされる、あるいは、後で触れますが、燐などはまさに国内の電炉は全部とまってしまう、こういうことになってきたわけであります。特にことしの四月の末以降というのは、エチレンの工場が相当とまっておるような状況です。これは、もちろんいわゆる原油の値上がり、ナフサの大幅な値上がりというものがもう決定的なものなんです。いま、高度経済成長を支えたそういった産業の中で、まさに国際的な競争力を失ってきた産業というのが化学産業であるわけです。  そういう中で、日本のこれからの産業構造の中で、一体、化学産業というのは、こういうことでいいのかどうか。  一つ考えてみれば、化学産業というのはいわゆる技術を導入して、それを改良してスケールアップして、あの高度経済成長の中で大きくなってきたわけです。しかし、その間、いわゆる国の援助というのはほとんどないわけです。自力でやってきた。たとえば自動車なら道路をどんどんつくるということと同時に自動車が国内で非常にふえてぐる。あるいはまた鉄鋼についていえば、港湾等については相当な、もちろん業者の努力もあるけれども、やはり鉱石輸入とか石炭の輸入あるいは荷物の積み出し等についての国の施策というのがそこにあったわけです。化学産業については、まさにそういったものは、いわゆる新しい産業ですから、そういう点では国の援助というものは余りないままに今日まで来た。そしてこれからの将来を考えると、まさにどの部門について見ても大変先は暗いのではないだろうか。かつては新しい品物を開発するのに何十億のオーダーの開発費でやれたわけです。しかしいまはもう何百億というオーダーの金をかげなければ新しい品物というのは開発できない。大変なリスクがあるし、それに耐え得るだけの、四十八年以降の一次、二次のオイルショックによって力が大変弱まってきておる、それだけのものができないというような状況になっておる。  そういうことについて、私、政務次官に、現状をどういうぐあいに認識されて、日本の化学産業について、通産省はこれから一体どうやっていこう、細かいことは結構、後で個々に触れますが、基本的な通産省の考え方についてまず政務次官からお伺いしたい、このように思います。
  22. 野田毅

    ○野田政府委員 いま水田委員指摘のとおり、大変悩みを抱えておるわけでございまして、御専門家ですから、もうすでに問題点を大分御指摘になったわけであります。しかし、いずれにしてもこの化学産業というものは、わが国が今後さらに国際競争に打ちかって、りっぱな経済的なパフォーマンスを達成していくというためには重要な、欠かすことのできない基礎資材産業であるということも確かでありますし、また、これからの需要についても大いに期待ができる分野であると考えておるわけであります。ただ、原料になります石油の大幅な値上がり、あるいは先行きに対する不安という深刻な問題を抱えておったり、あるいはまた、中には電力をたくさん使わなければならぬ、その電力コストが非常に上がっていくという、そういうコストアップ要因というものを抱えていま大変頭を悩ませておるのが実情でございます。  そうした中で私どもも、御承知のとおりこの石油ショック以後それぞれ構造不況対策というようなことで改善計画を立てたりあるいはさらに合理化の努力を推し進めていくなり、こういった努力をしておるわけでありますが、そういったことだけでなくて、将来においてむしろ新しい開発の分野について膨大な金がかかる、しかしながらこれを何とか物にしていかなければ十分これからの社会に対応できない、こういうことを考えて、御指摘のとおりファインケミカルであるとかそういった新規の需要開拓についても国としても力を入れてやってまいりたい、こういう姿勢でおるわけでございます。
  23. 水田稔

    ○水田委員 先ほども申し上げましたように、個個に補助金を出すとかなんとかいう問題じゃなくて、その産業を支える国の施策の中で、いままでの鉄鋼なり自動車の伸びた、それに見合うような、いま最後に次官が言われましたように新しい分野に相当の開発資金がかかる、それはもう耐えられない状態ですから、その点をぜひ積極的に進めていただきたい、こういうことを御要望申し上げておきます。  そこで、この石油の値上がりというのは、化学産業にとっては原料の値上がりでもろにかぶっておるわけです。そこでナフサの直接輸入という問題もあるわけです。これは関税の問題で、いま関税の暫定措置法によって原油が六百四十円に対して百二十五円、こういう措置がとられておるわけであります。これは来年の三月三十一日で一応この措置は切れる、こういうことになるわけです。諸外国では原料で使うナフサについては本当は税金を取らない、そういうことで保護をやっておるわけです。ですから、そういう点で当然通産省としてもお考えはあるのだろうと思うのですが、このナフサに対する関税の問題についてどのようにお考えになっておるか、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  24. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  ナフサの輸入関税問題でございますけれども、これはいま先生お話がございましたように、来年の三月までの暫定措置ということで、一キロリットル当たり百二十五円の軽減税率が適用されているわけでございます。通産省といたしましては、いま先生指摘ございましたように石油化学原料についてはほかの国でも関税とか消費税とか、そういうものは余り課されていないという状況でございますので、今後のわが国の石油化学工業の国際競争力の維持を図っていくためにはどうしても本制度が必要だということで、今後ともこの延長について努力してまいりたいし、また大蔵省の方にもそういう要求をいたしておるところでございます。
  25. 水田稔

    ○水田委員 いま御答弁いただいたように、まさに日本の場合は原料の高騰が決定的な打撃を与えておるわけでありますから、そういう点でできるだけの努力措置をとっていただきたい、このようにお願いしておきます。  次は肥料の問題なんですが、御承知のように肥料というのは国内生産と輸出と両方を生産することによってコストを下げて、国内の供給もある程度の安い肥料を、こういう努力をしてきたわけです。これは、いわゆる開発途上国の追い上げも肥料についてはすでにあるわけです。最近の状況は、国内的に考えてみますと、いわゆる減反というのはまさに肥料の需要を引き下げる効果を与えておる。そして、肥料についてはいままでは輸出だけだったのですが、外国からの輸入という問題もすでに起こるような状態になってきたわけです。肥料というのは、たとえば国内生産だけを守ればいいということではもたないわけですね。国内の肥料の自給さえもできなくなってくる。だから輸出と国内生産とを両方見合いながら国内の肥料の自給ということを考えなければならぬ、そういうものだと思うわけです。  そこで、そういう輸出が落ちてくるあるいは国内の需要が落ちるということの中で、アンモニア、窒素の第一次のいわゆるスクラップ化をやってきて、これが進行中、最後のところがいま一つ残ってほぼ解決のところまでいくのではないか、こういうことになってきたわけですけれども、将来展望、少なくとも国内で肥料をつくって自給するという体制は守っていかなければならぬ。そのためには輸出という問題を無視しては考えられないのではないか。そういう状況がいま非常に変化しつつあるわけですが、そういう点をどういうぐあいに理解し、そうして対応策としてはどういうぐあいにとろうとされておるのか、その考え方をまずお伺いしたいと思うのです。
  26. 小松国男

    ○小松政府委員 先生指摘のように、実はわが国の化学肥料というのは第一次の石油危機で原料値上がりが非常にありましたし、また、燐鉱石などにつきましては輸送費が相当上がるということで非常にコストアップいたしまして、国際競争力という面から見ますと非常にむずかしい状態になってきているわけでございます。  そういうことで、実はさきに特定不況産業安定臨時措置法に基づきましてアンモニア、尿素、それから湿式燐酸製造業、これについては安定基本一計画というものをつくりまして、過剰設備の処理というようなことをいたしまして合理化に努める。さらに技術開発を図るというようなことで国際競争力の強化に努めてきているわけでございます。それ以外にも、実は一方発展途上国の方もかなり肥料については自給が進むということで、現段階では御指摘のように輸出の伸び悩みということで非常に苦しい状況に立っているわけでございます。  こういう状況ではございますけれども、国内の農業に対する基礎資材としての肥料を安定的に供給するという立場で、肥料産業をりっぱに安定させていくということは通産省としても非常に大事だと考えておりまして、そういう意味での安定供給、そのためのコストの引き下げを図ることによって競争力もつけ、必要な輸出も今後していきたいということで考えているわけでございます。  ただ、現段階では国際競争力その他の点についてもかなり問題がございますので、そのためには政府としても必要な助成もせないかぬということで、合理化のための資金その他の面での融資というようなことでの措置も講じているわけでございます。  さらに、肥料の輸出につきましては、発展途上国自身が自給率を向上させておりますけれども、発展途上国の全体の肥料需要というのは今後もさらに伸びていくということでございますし、特に外貨事情の悪い発展途上国につきましては、肥料が必要であるけれども外貨が雇いというようなこともございますので、それにはむしろ発展途上国に対する食糧増産を支援するという立場からの、経済協力という立場からの援助の対象に肥料もいたしておりまして、これは発展途上国への協力という役割りを果たすと同時に、わが国の肥料産業の輸出需要の確保ないしは今後の安定供給の基盤の強化にも役立つということで、そういう総合的な対策を進めて、肥料産業の今後の経営の安定と合理化を図ってまいりたい、かように考えております。
  27. 水田稔

    ○水田委員 いま答弁にもありましたけれども、東南アジアの肥料の需要というのはまだまだ伸びる。肥料の使い方をまだ知らないというような、そういうところはたくさんあるわけで、いまお話のありましたODAの無償援助の問題というのも、実は肥料産業全体で言えば、トータルの生産というのが国内コストにも影響してくるわけですから、そういう点では関係があるわけですが、外務省の方に来ていただいているので後で外務省にお伺いしますが、通産省としては言い方としては確かに輸出の一部、そういう無償援助のものも含めて、それはそのことによって肥料の使い方を覚えてくる、力をつけてくればその国が輸入する、工場をつくるまでは輸入する、こういう形になっていくだろうと思うのです。ところが、ことしはすでに第三・四半期に入っておるのですが、後で外務省にその辺お伺いしますけれども、三百六十六億の予算、これは年々ふやしてもらったのですか、九月末現在で三十四億円の交換公文による約束しかできていないわけですね。これは先ほども申し上げましたように、化学産業全体がこの四月以降仮需が一段落したところでがたっと落ちておるわけですから、そういう点ではこれらを早く進めるということは、化学産業にとっては今日の苦境を切り抜ける一つの大変助かる問題であるわけです。そういう点は通産省としてはどういうぐあいに見られていますか。
  28. 小松国男

    ○小松政府委員 無償援助をできるだけ促進して、今年度の予算についても早目に措置をしたいということで今後とも促進していきたい、かように考えております。
  29. 水田稔

    ○水田委員 外務省、来ていただいていますね。——いまのことなんですが、実は五十五年度の政府開発援助の予算というのは、いま申し上げましたように三百六十六億です。これは一九七七年の百十億から百七十四億、そして昨年が二百七十億、こうふえてきておるわけです。まさにこれは日本経済発展の上からも、またそれらの国々との友好という点でもきわめて有効に働くものなんです。ことしを見てみますと、先ほど言いましたように三百六十六億の予算に対して交換公文ベースでの約束額が九月末で三十四億円です。新聞報道では、最近タイとの間で成約をしたという報道がされておりますが、それにしても有効に使えば一つは国際友好上きわめて有効な予算、そしてまた、先ほど来触れておりますように化学産業、特に肥料業界にとってはこれらを含めて将来展望を切り開いていこうというような予算でありますが、なぜこういうぐあいにことしについては進まないのか、どこに問題があるのか、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  30. 坂本重太郎

    ○坂本説明員 お答えいたします。  ただいま先生の方から御指摘がございましたように、この肥料を含めまして食糧増産等援助費は非常に外交的にも、それからまた相手国政府からも喜ばれておる援助でございます。御案内のように、つい先般日本が安全保障理事会に実に百四十一票という国連史上最高の得票を得て当選したわけでございますが、われわれが行っております食糧援助供与国は一斉に全部日本を支持してくださっておりまして、私どもも非常に外交にこれを使ってまいりたい、こう考えております。  したがって、予算の方も先生指摘のとおり非常にふやしていただいておりまして、今年度につきましては三百六十五億円、そのうち食糧増産等援助費——それ以外にケネディ・ラウンドの食糧援助がございまして、これが大体百二十五億円になっておりますが、この食糧増産等援助費は二百四十億円になっております。このうちで、先ほど先生も御指摘のとおり、いままで使用された分はわずかに三十四億円でございますけれども、今度の十一月七日の閣議で一括閣議決定を求めておりまして、その閣議では大体百五十億円ほどの肥料その他農機具の援助を閣議決定していただくことになっております。  実は、今年度につきましては、食糧増産援助対象国は全部で二十三カ国ございます。そのうちすでに二カ国、タイとマリに援助を実施いたしましたから、残りの国は二十一カ国でございます。今度の十一月でこの二十一のうち十五カ国について閣議決定を求めることになっております。残りの六カ国でございますが、これにつきましては、後ほど申し上げますように非常にいろいろな問題が出ておりまして、まだ先方と交換公文を結ぶ段階に至っておりません。外務省といたしましては、先ほど先生から御指摘がありましたような事情を踏まえまして、できるだけ早くこの交換公文合意に持ち込みたい、こう思っておりますが、たとえば最も重要な国の一つであるパキスタンにつきまして、私ことしの二月に行ってまいりまして、パキスタン政府はぜひ肥料を援助してもらいたい、こういうことで私も約束をしてまいりました。ところが、こちら側からすでに三カ月ほど前に交換公文案を提示しているにもかかわらず、パキスタン側は依然としてまだその合意の返事を寄せてこないわけでございます。実は一昨日もパキスタンどうしておるのだ、早く返事をもらいたいという督促を出しておりますけれども、まだ返事が参りませんので、私みずから、恐らく再来月になると思いますが、十二月の中ごろパキスタンに参りまして、この点も含めて督促してまいりたい、こう思っております。  それで、先生御質問のなぜおくれるかという点でございますけれども、いま言ったパキスタンのケースとか、それからボリビアも実は内乱が起きまして交換公文が合意できません。予算が成立いたしましてからわれわれまずその案件の内容を審査いたします。これは実は大蔵省の予算に計上されておりますので大蔵省とも協議をいたしますが、同時に相手国との交渉をするわけでございます。この交渉が実は難物でございまして、われわれは一応その額を決めますけれども、相手国は肥料がいいとか、肥料でもいろいろな種類がございますし、それから国によっては農機具が欲しい、国によっては農薬が欲しい、こういうようなことを言ってまいりますので、それから正式に交渉をし始めるわけでございます。そういたしますと、どうしても三カ月くらいはその交渉に手間取ってしまう、それからいま申しました交換公文をお互いに提示し合って合意をする、こういう手続が要るものでございますから、どうしても実際の支出までには五カ月、六カ月かかるというのが実情でございますけれども、ただいま先生から御指摘のありましたような問題もございますので、外務省としてはできるだけ早く、しかも執行率を高めるように努力しております。
  31. 水田稔

    ○水田委員 私が聞く前に答えられたんですが、たとえばパキスタンはもう生育期を過ぎておるというようなことなんですね。冒頭言いましたように、すでにもう第三・四半期に入っておる。半年以上経過しておるわけですからね。どこの国はいつの時期に欲しいかということはよくわかると思う。いまの答弁では一方的にパキスタンが返事をせぬ、こういうことなんですけれども、本当に無償援助するなら向こうが一番喜んでもらえる時期に間に合わすように努力をするのが私は外務省の責任ではないか。それからいままでの実績を見ても、ことし第三・四半期になってなおかつ三十四億円というのは、これまでのそういう点での努力が、やはり個別の国々の事情によっての努力が足りなかったのじゃないかというような気がして仕方がないわけです。十一月の七日の閣議で決定されるということですが、それにしてもその時期というのは非常に遅いわけですね。だからもうすでに生育期を過ぎた国もあるだろうと思います。今後はそういうことのないように、それぞれの国が最も適当な時期に受ける、そういうような仕組みで交渉を進めていただきたいと思うのです。  それからもう一つは、昨年、一昨年振り返ってみますと、これはケネディ・ラウンドの食糧援助を含んでの予算ですが、一昨年七八年は百七十四億円の予算に対して交換公文ベースの約束額が百五十四億円、それで実行額が五十六億円ですね。それから昨年七九年は食糧の直接援助も含めて二百七十億円、交換公文による約束額が二百十億円で実行額が百六十八億円、こう下回っておるわけですね。ところが先ほど来話が出ておりますように、わが国の経済発展のためにも、また国際友好を進める上でもきわめて有効な予算ですね。これだけの執行残が出るということは有効に使われてないのではないか。ですから、この例でいけば、ことしもまたこれだけの予算を組んでおるけれども、実際の実行額というのは、いま答弁になった百五十億をプラスしても百八十四億ですからね。また相当の残が残るのではないか。それはなぜそうなるのか。そういうことにならないように努力をしてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  32. 坂本重太郎

    ○坂本説明員 お答えいたします。  ただいまのパキスタンの件につきましては、私も十二月に参りますので、先方となぜおくれたのか篤と話し合いまして、来年からこのような事態が起きないようにわれわれとしては努力してまいりたい、こう思っております。  ただ一点申し上げたいのは、実は無償援助をできるだけ円滑に実施するために一括閣議方式というものをいま採用しておるわけでございます。つまり、一件ずつばらばらにやりますと非常に手間暇がかかりますものですから、一括いたしまして閣議決定を仰ぐわけでございますが、その関係で今度は逆に先生が御指摘の、タイミングよくやれないという問題が一つ出てまいりまして、これはもろ刃の剣になりますけれども、われわれとしましてはやはり各国の特殊事情というものを勘案いたしまして、できるだけ各国の要望に従って実施してまいりたい、こう思っております。  それから、いまの第二の御質問の執行率の点でございますけれども、私いまここに数字を持ってまいりましたが、実は五十二年から食糧増産等援助費をつけていただいておりますけれども、毎年その予算の執行率は増加してまいっております。たとえば昭和五十二年度は無償、KRを含めまして援助が百十億円だったですが、実際に使われた額が六十二億円ということで五六%の執行率でございました。それが五十三年になりますと、食糧増産等援助費が百九十九億円、そのうち実際に使われたのが百二十億円ということで六〇%の執行率になっております。それが昭和五十四年度では予算額が二百八十一億円、実際に使われた額が百八十八億円、執行率が六七%とふえております。このことからいたしましても、私どもとしましてはことしもできるだけ執行率を高めまして、使い残しのないようにしてまいりたい、こう思っておりますが、ちなみに、繰り越された額は翌年全部消化しておりますので、二年の目で見ますと、予算は全部使われておるということになろうかと思います。  ただ一点、先生に御理解いただかなければいかぬ問題は、最近になりまして開発途上国から、日本の肥料は値段が高過ぎるということを言われてまいっております。実は一昨日ですけれども、ケニアからも相当強い不満が出てまいりました。それから先ほどのパキスタンですが、これは国内紙にまで書かれまして、日本の肥料援助は果たして本当の意味での援助であるのかどうかということ、同じようなことがネパール、タイ、インドでも起きておりまして、外務省としましても非常にこの点頭の痛い問題となっております。
  33. 水田稔

    ○水田委員 それでは次に、燐の問題についてお伺いしたいと思います。  ことしの八月に富山の燐化学工業というのが倒産いたしました。これは日本のほとんどの黄燐の精製をやっておりたわけです。もう一つわずかにつくっておるところも最近炉をとめました。まさに黄燐というのは国内ではきょう現在はただの一キログラムも生産してないということになってきたわけです。  燐というのは、もう御承知のように乾式もあれば湿式からいく方法もあります。しかし大変誘導品の多いものなんです。これはなぜこうなったかというのは、まさに電力多消費の産業ですから、もう電力料の値上げをもろにかぶるという産業、そしてそうなると当然外国の電力料の安いところからの燐が日本に入ってくるということから、まさにそういう状態になってきたわけです。これはいま通産省が再建について大変御尽力いただいて、感謝しておるわけですが、ただ将来展望として、この会社は恐らく数日中に会社更生法の適用をされるだろうと予測しておりますけれども、その再建では炉はやはり動かさないわけですから、日本におけるいわゆる黄燐の電炉というのは全くストップという状態になるわけです。  そこでお伺いしたいのは、通産省として、化学産業構造の中で燐という一つの非常にすそ野の広い、誘導品の多い、産業のもとになる黄燐の精製という業種がなくなってしまってもやむを得ないのか、これはもちろんこれからの日本産業構造考えるときに、いわゆる国際分業という考え方もあるかもしれません。あるいはまた、一面から言えばこの業種というのはナショナルセキュリティーという立場から、若干問題があろうとも何としても国内で維持していきたいというようないろんな考え方があるだろうと思うのですが、通産省としてはこの燐の精製という問題についはどういう受けとめ方をしておるのか。  一つは、私どもは雇用という問題から、化学産業はずっと斜陽になっていくものですから、そういう中で大変な雇用問題も起きてきておるわけですから、基本的な考え方をぜひお伺いしたいと思うのです。  ちなみに申し上げますと、たとえばカナダは、御承知のように水力発電ですから一キロワット一円五十銭ぐらいの電力で、アルミにしたって燐にしたってやるわけです。そういう中で燐については政府の援助があるわけですね、それだけ安い電力を使いながら。日本ではまさに電力料がウナギ登りに上がった中でこういう事態が起こっている。そういう中で化学産業の中における燐というものをどういうぐあいに通産省がとらまえて、今後どういうぐあいに対処されるお考えか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  34. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  黄燐の問題でございますけれども、現在では業界自身が大変な事態に追い込まれているわけでございまして、一つは、黄燐の誘導品でございます燐酸の製造プロセス、これが湿式方式に変わりましたために、どうしても黄燐の需要というものが落ちているわけでございます。それからもう一つは、先ほど御指摘がございましたように、製造中のコストの中での電力費というものが非常に高いわけでございますので、これが非常に高くなった。いま両方の面で価格面では国際競争力を失っている。そういうことで現段階では非常に輸入が多くなってきている、そういう状況でございます。  今後この黄燐を国産という形で維持するかどうかというのは、これは非常にむずかしい問題でございますけれども、ある意味では、これは他の誘導品といいますかへ非常にユーザーの協力が要るわけでございまして、ユーザーの協力が得られるかどうか、これが今後黄燐を国内に残し得るかどうかの一つの大きなポイントになるのじゃないかというふうに考えております。  現在の黄燐についてでございますけれども、まず原料になります燐鉱石というのは全部海外より輸入しているわけでございます。そういう意味では、国産ではございますけれども原料は一〇〇%海外に依存しているということが一つございます。  それからもう一つは、世界的に見まして黄燐の製造というのがかなりの地域にわたっておりまして、そういう意味から言いますと供給余力も現段階では十分あるということになります。特定の地域に偏っておりますと、安定供給という面でも非常に心配が出てくるのでございますけれども、現在の世界各国の黄燐の生産状況を見ますと、その輸入についてもそう大きな不安はないということが言えるのじゃないかと思います。  もう一つは、先ほど来申し上げておりますように、輸入品の価格が国内価格に比べて非常に安い、こういう条件が整っておりますので、われわれの方も関連業界に対する協力その他、いろいろお話もしておるわけでございますけれども、なかなか関連業界の協力が得られるかどうか、現段階ではめどが立っていないということでございます。そういうことで、当面燐化学につきましては電炉の再開のめどが立っていないわけでございますけれども、今後とも関連業界との関係その他も考慮しながら、今後のあり方について検討してまいりたい、かように考えております。
  35. 水田稔

    ○水田委員 現状努力されていることはよくわかりますし、私どもも感謝申し上げるのですが、ただ、先ほど申し上げましたように、将来も、いま言ったように安定して外国から入るからなくてもいいという考え方で取り組むのと、少なくとも最小限一つの化学産業の基礎素材として一定量は国内で確保しようという気持ちで通産省が働きかけるのと、違うわけですね。ですからその点だけ、どちらの立場で御努力いただいているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  36. 小松国男

    ○小松政府委員 黄燐の場合には実はそれが使われる誘導品、これがまたいろいろ輸出品であったり、また国内に対する重要な化学品なわけでございますので、そういう意味でそれの国際競争力が非常に大事になるということでございます。そういう状況の中で黄燐の国産を維持するということになりますと、そういう関連の業界が十分納得してくれるということが非常に大事でございますので、その関連業界の意見とかそういうものも十分聴取して、その上で今後のあり方を決めていく方が適当ではないか、かように考えております。
  37. 水田稔

    ○水田委員 これも、次に質問するフェロアロイも含めて電力多消費の産業、それは国内でもうやらなくていいのかどうか、そういう判断を迫られる業種なんです。電力料の問題はむずかしい問題ですから後でまとめて質問したいと思いますので、燐の問題は以上で終わりたいと思います。  次は、アルミの問題なんです。これはもう御承知のように、これまでは産構審の答申に基づいて凍結、廃棄をやってまいりました。三分の一を凍結、廃棄をいたしまして、百十一万トン体制でやっておるけれども、ことしの冷夏によりいわゆるアルミかんとかクーラーの部品が出なかったというようなこと等から、最近になってまたまた十六万七千トンの在庫という状態になってきたわけですね。これはまさに典型的な電力多消費の産業ということになるわけです。  そこで私は、百十一万トン、いま一〇%ぐらいさらに操業停止をやった状態になっておるわけですけれども、基本的にはこの廃棄、凍結の論議のときから、アルミというのはある一定限度は国内でつくるけれども、これから大幅に伸びていく需要を賄うためには実は海外に出ていく、たとえばいまアマゾンの問題が出るか出ぬかで問題になっていますが、アサハンのような自然の滝を利用しての発電ですから、キロワットアワー二円、一円五十銭と言っておったけれども、恐らく二千五百億が四千五百億になったわけですから二円ぐらいにつくのじゃないかと思います。それにしてもこれからの国内の電力料を考えれば、まさにそういうもので海外物を入れてくるということ、そして、それでなおかつ需要が賄えない場合は純然たる外国の商品を輸入していく、こういうことで賄うたてりというものが、少なくとも国内でゼロになれば恐らく外国の言いなりの値段で買わされるということになるのではないか。そういう意味でいわゆる国内での生産百十一万トンということで第一回目の凍結、廃棄をやったと思うのです。私は、アルミのこれからの国内の需要を賄う、物の考え方としてそう考えておるのですが、通産省もそういうように考えられておるのか。いや、電力料が高くなってだめなら国内生産はなくなっても仕方がないというようなお考えなのか。国内のアルミの需要を賄う基本的な考え方をまずお伺いしたいと思うのです。
  38. 小松国男

    ○小松政府委員 先生お話しございましたように、アルミ製錬業につきましては、現在国内生産を百十一万トン体制ということで施策を進めておるわけでございますけれども、御指摘がございましたように重要な基礎資材でございますし、これについては今後ともアルミの国内需要というのは恐らく相当伸びていくというふうに考えておりますので、安定供給の確保という面からも、国内の製錬の維持というのは非常に大事だというふうに考えております。そのために必要な施策としては、現在、国際競争力その他の点で問題がございますので、合理化のための措置についての融資とか、また省エネルギー、それから石油代替エネルギーをいろいろ導入して、国内の製錬についてもコストを下げるための努力をする。そのために必要な税制上、金融上の措置を講ずるとか、またこれは国内製錬業の一つ経営の安定強化にもつながると思いますけれども、海外開発プロジェクトについても助成をしながら、ある程度その確保を図っていく。両者をうまく調整しながら、国内の製錬業については一定規模、特に現在百十一万トン体制ということを考えておりますので、現段階ではその線をぜひ守る方向努力してまいりたい、かように考えております。
  39. 水田稔

    ○水田委員 大体私の見解と同じようなことで安心したのですが、ただ、当面する問題としては、やはり電力料の問題が国内で何とか維持しようとしても問題になるわけです。一般的な買電の問題はまた後で全部まとめて触れますけれども、このアルミの場合はいわゆる百六十四万トン体制のとき自家発が七二%ですから、いま五十三万トンを凍結、廃棄したわけですから、恐らく現在の自家発の率というのは八〇%ぐらいだと思います。これは一キロワットアワー、自家発ですから十六円ないし七円、そこでいまやれるとすれば、新しくやれば石炭でも二十円ぐらいにつくだろうと思うのですが、これは石炭に転換した場合には設備投資がかかりますから、それらを差し引いてもキロワットアワー二円ぐらい下がるのではないか、こういうぐあいに思うわけです。これは、わが国のアルミというのは技術が非常にいいわけですから、アルキャンのいわゆる一円五十銭に対して七円ぐらいならとんとんで勝負ができるというだけの技術を持っておるわけですから、この二円というのは大変大きいと思うのです。これを自家発のいまの石油専焼をいわゆる石炭との混焼、たとえばCOMを使うとかあるいは石炭専焼に変えるとか、そういう点でも、これはわずか半年か一年近くちょっと値が上がってしまっただけで、その前の長期にわたる四十八年以降の不況のあれは会社に大変なダメージを与えておりますから、余力というものがアルミはないわけで、あの当時はアルミ八社の中は、恐らく累積赤字が債務超過に半分以上はなるというような状態だったわけですから、そこからわずかな期間値が元へ戻ったということでは回復しておらぬわけですから、そういう点では石炭転換を考える場合も何らかの助成措置といいますか、誘導策を積極的に通産がとれば、そういう点ではいわゆる会社、企業の自助努力とともに少しでも展望を切り開く、これだけではだめですけれども、そういう点ができるのではないかと思うのですが、石炭転換についての通産の助成といいますか、どうやってそういう援助をしてやろうかというお考えがあるかどうかをお伺いしたいと思うのです。
  40. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、アルミ製錬のエネルギーコストを下げる、これがアルミ産業の今後の競争力といいますか、コスト引き下げを図る一番重要な問題である、かように考えておりまして、現在具体的に会社によってはその辺の計画をしているところも実はございます。  ただ、一般的に申し上げますと、石炭火力への転換ということになりますと、立地の問題とか投資規模の大きさとかいろいろございますので、具体的に実現するプロジェクトがそう多くあるわけではございません。ただ、いずれにしてもこれは重要な問題ですので、これが可能なものについては最大限促進していこうということで、それに必要な措置といたしましては、まずそういう投資を促進いたしますために投資促進税制ということで、相当思い切った税制面での援助を考えますと同時に、必要な資金については開発銀行等を通じて融資をして、何とかそういう意味での助成をしてエネルギーの転換を促進させていきたい、かように考えております。
  41. 水田稔

    ○水田委員 ぜひそういうようにお願いしたいと思うのです。  それからもう一つは、いま在庫が十六万七千トン、生産を抑えておるけれどもまだふえるかもしれないという状況、そして値段ももうぎりぎりのところをまた切ろうとしておるわけです。たしかいまアルミの備蓄は一万トンだろうと思うのです。そこらは備蓄にもう少し在庫を吸収するというようなことで考えられないのかどうか。凍結なり廃棄をやるときの資金というのは、一次関税と二次関税との差額というものをそれへぶち込んでいったということもあるわけですが、いま価格の点で輸入物との差が少ないからそれほどのメリットはないかもしれませんけれども、財源をそういうところへ求めてでも備蓄をもう少し量をふやす、そういう点でもやったらどうだろうか、こう思うわけです。  アルミというのは、本来言えばこれは戦略物資なんですが、わが国は再軍備をどんどん進める国ではありませんから、してはなりませんから、そういう点で言いませんけれども、たとえば将来、民間の航空機等をやるならジュラルミンの素材でもあるわけですから、そういう点では一万トンというのはもう少し思い切った備蓄に踏み切ってもいいのではないか、こういうぐあいに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  42. 小松国男

    ○小松政府委員 現在のアルミの備蓄につきましては、一時買い上げたのですが、それを放出をいたしまして、現在備蓄は実はゼロになっているわけでございます。ただ、先生指摘のように、ここへ来てアルミ地金の在庫がだんだんふえてきておりまして、相当量になる見通しでございます。そういうことになりますと、軽金属の備蓄協会が買い上げる買い上げの要件というのがございますので、これを満たした場合には、現在予算措置もありますので、予算の範囲内でそういう買い上げもこれからは考慮していかなければいけないのじゃないかというふうに考えております。  なお、財源の問題でございますが、一応現在は予算措置でございますので、そういうことで考えておりまして、関税関係の問題は、むしろ現在アルミが構造改善その他の観点から設備廃棄その他をいたしておりますが、そのための必要な資金ということで使用しているのが現状でございます。
  43. 水田稔

    ○水田委員 そこでもう一つ将来の見通しの問題なんですが、これはアルミだけではなくて、いろいろな問題が本当はあるのですが、それはアルミにも具体的に起こってくるわけです。海外投資をやった場合のブーメラン効果というのは、たとえばイランのIJPCが動かぬものですから、石油化学はあそこから入るのがおくれればそれだけ助かるわけですけれども、アルミもいまずっと外国へ出ていって、すでに外国からの引き取りを約束させられておるものがあるわけです。三年前から国内に入って、昨年が十九万トン、ことしが二十五万トンアルミが入っておるわけです。これは海外物という分です。そして五年先には七十万トンになるわけです。どうもこれまでの、さっき言った基本的な考え、国内で百十一万トン、そしてそれでなお足りない分は輸入ということになれば、アルミの需給というのは非常に大変な率で伸びるという見通しだったのですが、五年先に七十万トン入ったときに、一体国内の百十一万トン体制、そういう需給の関係がなるんだろうかどうか。むしろその時点でさらに国内を圧迫するんではないかという心配はないかということも考えられるのですが、その点はいかがですか。どういうふうに見ておられますか。
  44. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  現在アルミの輸入は大体二十万トンぐらいでございますけれども先生指摘のように、恐らく将来、特に昭和六十年ごろの試算で考えますと、七十万トンぐらいの開発輸入が可能になるのではないかと考えております。ただ、国内需要の方も経済成長に伴いまして着実に伸びている業種でございますので、現在の国内需要は年間百八十万トン程度でございますけれども、恐らく昭和六十年には二百四十万程度に達するのではないか、かように考えております。そういう観点から見ますと、仮に七十万トン程度の開発輸入がございましても、国内の百十万トン体制そのものに影響が及ぶことはない、かように考えております。
  45. 水田稔

    ○水田委員 もう一つ、海外進出でたくさんなところへ出ていっておるわけですが、これは皆国内のアルミ各社が資金を借りて金利負担をやっておるわけです。四十八年以降のあの不況の中で、もう全部つぶれるのではないかと心配された当時、将来展望を切り開くための先行投資としてやってきたわけですね。いまの状態というのはまさに余力というものがほとんどない状態なんですね。ですから、海外投資についての資金に対する金利の問題等、何らかの措置をとることができないものかどうか、その点をひとつお伺いしたいと思うのです。
  46. 小松国男

    ○小松政府委員 アルミの開発輸入でございますけれども、現在これにつきましては、特に重要なといいますか、資金の多くかかりますアサハン・プロジェクトとかアマゾン・プロジェクトは、国家プロジェクトということで相当の助成、促進を図っているわけでございます。今後もこういう開発輸入の問題については金融面その他から相当助成をしていきたい、それからさらにその拡充も図っていきたいと考えております。ちなみに、現在では海外開発プロジェクト、一般のプロジェクトにつきましては日本輸出入銀行から必要な資金の融資をしておりまして、これも輸銀の一般の金利よりは若干低い金利を適用しております。それから、特にナショナルプロジェクトにつきましては経済協力基金からの出資とか、それから輸銀の融資についてはさらに低い金利を適用するということで助成を図っておりますし、今後も資金量その他を十分勘案しながら優遇措置についての拡充を検討してまいりたい、かように考えております。
  47. 水田稔

    ○水田委員 アルミに関連して、二次、三次、特に三次製品のサッシの問題について建設省においでいただいておると思うのですが、建設省では、特にセメントが暴騰したときに問題になってやられたんだろうと思いますが、油の価格が大変変動した場合に特約の品目をセメントなど五品目決めておるわけです。これはさっきから論議が出ておりますように、まさに原油の値上りは即電力にはね返ってくる。アルミは電力のかん詰めと言われておるわけですが、原価の半分くらい電力料なんですね。ですから油の変動をそのままもろに受けるわけですね。これは油の価格変動による特約の品目の中に当然入ってしかるべきではないかと思うのですが、入っていないのです。その点いかがですか。
  48. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 お答えいたします。  いわゆる特約条項でございますが、これは、本来の趣旨は公共事業を円滑に執行いたしますことと、それから建設業者の健全な経営の維持を図るために当分の間の措置として設けたものでございまして、御指摘のように石油価格の変動の影響を直接受けますことと、もう一つ条件といたしまして、契約時にあらかじめ確保したりあるいは備蓄、備蓄といいますのは国が政策的にやる備蓄という意味でございませんで、業者がいわゆる蓄え置くという程度の軽い意味の備蓄でございますが、そういうことが資材の性質上困難なものにつきまして設定されたものであるわけでございます。ですから、先生おっしゃいますように、五品目をながめてみますと、アスファルトにしましても、生コンクリートにしましても、契約時点でその契約期間を通じまして全部仕事をやりますものを手元に置いておけない資材にごく限定して五品目やったわけでございます。ですから、石油価格が変動いたしますと価格が変動します資材はほかにもたくさんあるわけでございますが、備蓄不可能という観点から五つにしぼらせていただいたわけでございます。アルミサッシにつきましてはああいう材質のものでございますので、いわゆる業界として品薄なんということを除きますれば、物理的には企業側が努力をすれば確保が可能ではないかという判断から除いておるわけでございます。  以上でございます。
  49. 水田稔

    ○水田委員 どうも納得できません。官公需の建築を考えた場合、これは期間的には一年とか一年半とか、ある程度かかりますね。それで、油の価格による変動というものはきょう現在もないとは言えぬわけですね。まだ起こるわけですね。そうするとそれはセメントであろうとアルミサッシであろうと全く同じなんですね。受注したときにすぐ発注するわけじゃないでしょう。その間に、たとえば工事の進行状態によって、発注した時点では契約の時点とは大変な価格の変動がそこで起こり得るわけですね。それはセメントであろうとアスファルトであろうと全く同じなんです。だからアルミを除外する理由はないといまの答弁では私は思うのです。いかがでしょうか。
  50. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 一つどもは製品の物理的性質に着目しているわけでございます。ですから、たとえばセメントと申しますと、三カ月ぐらいの貯蔵はきくのかもしれませんが、製造業者側におきましてもそれから使用いたしますコントラクターの方におきましても、一年ぐらい継続して使うということになりますとどこにも置いておけないというものでございますし、アスファルトとか生コンになりますともっと寿命が短いわけでございます。それに比べますと、アルミサッシ等はサッシとして置いておくということも一つございましょうし、それから、先ほどございましたアルミの地金のままで、どの契約の段階でということになると多少は議論があるところかと思いますが、いわゆる企業努力をすることで蓄え置きが可能な資材と考えておりますものですから、そこで差をつけたわけでございます。たとえばコンクリートの二次製品も入ってないわけでございますが、全く同じセメントを使うのであれば生コンクリートと同じではないかという議論があるわけでございますが、これもある程度先を見込みまして生産をして蓄え置くことができる、そういう性格に着目いたしまして、特定資材、つまり五品目の中に入れてないわけでございまして、アルミサッシの場合、どちらかといいますとコンクリートの二次製品の方に性格が近いというようなことから区分けをしておるわけでございます。
  51. 水田稔

    ○水田委員 どうしても納得できませんね。たとえば燃料油というのもありますね。燃料油は毎日でもあれは買えるわけですよ。元売りといいますか、大量に使う場合だったら恐らく直接でしょう。間に業者が入っても、実際のタンクというのは直接の石油の精製業者が持っておるものでしょうね。それからアルミサッシの場合も、たとえば一つの大きな学校なら学校を建てるといったら、そんなものを常時持っておる業者というのはおらぬですよ。そのもとにあるわけですよ。流通過程を考えれば全く同じですよ。いまの答弁では、アスファルトや燃料油あるいはセメントとアルミサッシとを区分するという理由にはならぬと私は思うのですが、いかがですか。
  52. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 先ほども申し上げましたように、建設資材の中で、石油の影響を受けまして価格が上昇しますものはほかにもたくさんあるわけでございます。本来公共工事の契約といいますのは請負を前提にしておるわけでございますから、標準契約約款の中にございますスライド条項と、それからインフレ条項とを適用する以外は物価の変動に対して対応する道が普通はないわけでございます。今回は特に、当分の間、特例的にということで設けましたものですから、そのような資材の物理的性格上に目をつけまして区分をしておるわけでございまして、全体の市場メカニズムから大変な議論をいたしますと、これは三月時点で早く決めて、早く発効させるという必要性もあったわけでございます。その辺、全部の資材について全部の方の御納得をいただいた上で発動ということになりますと、あるいは半年たったいまでも動いてなかったかというようなことも考えられるわけでございまして、当分の間の特例的な緊急の措置だったのでそういう差をつけたということだと思います。物理的な性質としては私はやはり違っておると思っておるのでございますけれども、お答えになりましたか……。
  53. 水田稔

    ○水田委員 緊急で大変な論議をやったということは私も知っていますから、これ以上申し上げませんが、恐らくそういうことをやれば、本当に上がったときには、実際にやるのはいわゆる工事の変更契約というようなことをよくやるわけですよ、地方公共団体では。ですから、きょうのところは私はそれで納得したということは申し上げませんが、緊急にやられたということで全部が全部網羅されていない、あるいはほかのものもいろいろなセレクトするのにむずかしいという問題もあるかもしれませんからこれ以上申し上げません。引き続いて検討ぐらいはしていただきたいと思います。  それから、同じく建設省の関係で、これは実際に業者との取引の関係ですが、建設省は、要綱というのですか、中央建設業審議会が出しておる公共工事標準請負契約約款のサンプル、これで大体やりなさいと言うのですが、実際は違うわけですね。アルミサッシの関係を言いますと、実際の条件というのは当社の支払い条件によるという支払いで、どういうふうになっているかといいますと、実態は、ゼネコンが受け取る四〇%の前渡金はサッシを納めても回ってこないわけです。それから、納品が完了しても二〇%は支払いを留保され、翌々月に回される。手形のサイトは、これは中小企業の方でいつも問題になるのですが、サッシ業者というのは中小が多いのですが、百五十日から百八十日、こういうあれがあるのですね。その辺の実態は御承知なんでしょうか。
  54. 北村広太郎

    ○北村説明員 お答え申し上げます。  私どもで調べておりますのは、三年に一度その実態調査、建設業構造基本調査というのが正確な名前でございますが、これによって調べておりまして、昭和五十四年二月実施しましたのが最近のサンプルでございます。これによりますと、手形の期間でございますけれども、九十日未満が一七・六%、それから九十日から百二十日未満が三七・一%、百二十日から百五十日未満が三五・一%、残りの一〇%余りがそれ以上ということになっておるわけでございまして、百二十日未満が五五%近いという実態となっております。それから現金払いの比率でございますけれども、七割以上現金で支払っておりますのは四九・八%、五割から七割未満が一七・〇%でございまして、三分の二が五割以上現金支払いをしている、こういう全体としての姿になっておるわけでございます。  なお、特定建設業者、一千万以上の下請をなす業者でございます。比較的大手と申しますか、元請業者でございますけれども、これにつきましては、ただいま三年計画でその下請代金支払い状況等の調査を行っておりまして、個別的に調査した結果、私どもの方針でございますが、下請業者の保護というようなことでいろいろ要綱等をつくっておるわけでございます。これにそぐわないというような実態がございますれば、個々的にただいま指導を行っておる、かような段階でございます。
  55. 水田稔

    ○水田委員 サッシ業界というのは大小、数がたくさんありまして、その間の競争等がありまして、そういう業界にも問題がないとは言えませんけれども、私どもがつかんだ情報では、いま申し上げたように競争が激しいだけに弱い立場で業者からたたかれて、いま申し上げたような状態が実態としてそこに働いておる人たちから私のところに持ち込まれたものですから、ぜひ建設省も建設省が指導しておるような方向、特に手形が百五十日以上というのがやはりあるわけです。ですから、そういう点ではぜひ指導を厳重にやっていただくように特に要望しておきます、いかがですか。
  56. 北村広太郎

    ○北村説明員 御趣旨のようにアルミサッシ業界からも実態をお聞きいたしまして、必要あらば指導してまいりたい、かように存じます。
  57. 水田稔

    ○水田委員 アルミは終わりまして、フェロアロイの問題を二、三点伺いたいと思うのです。  フェロアロイというのは御承知のように鉄の副原料なんです。これも電力多消費でありまして、やはり同じように、電力が上がりますとコストが高くなって国際競争力が落ちる、そして輸入にやられる、こういうことになるわけです。その中で、フェロシリコンの問題については基本問題の研究会の中間報告に基づいて、国内で大体八〇%はつくり、二〇%は輸入というようなことで、いわゆる過剰設備を廃棄する、あるいは設備の新設をお互いに規制していく、こういう努力をしてきたわけです。ところがきょう現在では三〇%がもうすでに輸入になっておる。それが生産量と価格の点での大変な圧力になっておるわけですから、そういう構造改善の努力をやってみても成り立たない。あるいはまたクロムの問題について、これは業界の調整がつかぬということでまだ構造改善計画もできてないわけですけれども、これらも大体国内で七〇%の生産、輸入が三〇%ということでなら何とかやれるのではないか、こういうことを考えておるようでありますけれども、すでに昨年四五%になっておるわけですから、恐らく四五%から五〇%を超してくると、まさにその業種は成り立たないということになってくるのじゃないだろうか。いま鉄鋼は非常に強いということで経済摩擦の対象になって、いろいろアメリカなどから文句を言われておるわけでありますけれども、こうなりますと、鉄鋼の主たる副原料がまさにつぶれてしまうということになれば、鉄鋼もそう安心しておれない状態になるわけですね。ですから、この点について一体通産省としては——鉄鋼というのはまさに日本の基幹産業ですから、その一部が崩されようとしてきておるわけです。ですから、私、今日の自動車、電機、それぞれの経済摩擦の問題を考えるときに、確かに国際収支が大変な黒字であるという中で、日本が自由貿易の原則を崩すということはなかなかむずかしいだろうと思いますけれども、少なくともこういう基幹産業の鉄鋼というものに決定的な影響を及ぼすフェロアロイの問題については、一つは、少なくともわが国での秩序というものをつくっていく、そして輸入というものについても、限られたものについてはある程度の抵抗をするといいますか、そういう緊急事態としての何らかの措置をとるべきではないだろうか。アメリカはいろいろ独禁法にかけてやるとか、わが国はやられておるわけですから、たとえば値段の点でダンピングの疑いのある輸入品についてはある程度措置をするとか、そういうことは考えられないものか。  それからもう一つは、フェロクロムについてはいわゆる国内の構造改善の体制というのはおくれているわけですから、これは通産省が強力に指導しなければ、業者間の調整というのはほうっておいたのではなかなか進まぬではないか。まさにそういうことをしない間にフェロクロムはつぶれてしまう、こういうことになるのではないかと思うのです。その二点についてお答えをいただきたい、こういうように思います。
  58. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  フェロアロイの現状につきましては先生指摘のとおりでございまして、現在こういう国内環境もございますし、国際的にフェロアロイが割高にになっておるというようなこともございますために輸入が若干増加してまいっておりまして、五十四年度で大体輸入比率が、フェロシリコンでは二七%、この四−六月では三〇%を超すというような状況に実はなってきておるわけでございます。さらに、フェロクロムについてはさらに輸入比率が大きくなっているというのはまさに御指摘のとおりでございます。  フェロシリコンについては、先ほど先生指摘がございましたように、大体二〇%くらいのラインに輸入を抑えることがいいのではないかというコンセンサスが一応できております。私どもも大体その線に沿って、長期的には国内生産と輸入のバランスをとっていくというのが鉄鋼業の原料の安定的な確保という立場から見ても大事ではないか、かように考えておりまして、時々刻々そういう形で、強制的に抑えるわけにはまいりませんけれども、長期的な路線としては大体その線をめどに、今後もいろいろ、鉄鋼業の場合には鉄鋼のユーザー、それからインポーターその他に対しても協力要請しながらフェロシリコンについての国内での安定供給確保を図ってまいりたい、かように考えております。  さらに、そういう形でユーザーの協力を得ながら安定を図るのは当然でございますが、同時に、やはりコストを相当引き下げるという必要もございますので、そういう観点からは今後とも業界に対しましては省エネルギー、省電力、それから新技術の開発、それから必要に応じまして、また可能なところについては地熱とか水力とか、そういう地元の安い電力をできるだけ活用するというようなことができるように、そういう点についても国が積極的に助成をしていくということで、長期的に見まして、フェロアロイについては輸入を適当な比率に抑えられるような形で、国内の産業の安定ないしは鉄鋼に対する安定供給基盤確保ということを図ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それからフェロクロムにつきましても、現在非常にコストアップその他で問題が多いわけでございますので、今後とも業界の合理化、それから関係業界の協力を得ながら業界の体制の整備というのを図ってまいりたいと思っております。
  59. 水田稔

    ○水田委員 もう一つお伺いしました、たとえばと申し上げたのですが、自由貿易の原則ということは崩すわけにはいかないだろうと思うのです。その中でも、鉄鋼という日本の基幹産業の一部がまさに崩されるという場面で、ダンピングの疑いのあるような輸入品については何らかの規制を加える、この点についてお答えがなかったと思うのですが、そういう点もぜひ考えてもらいたい、こう思うのです。
  60. 小松国男

    ○小松政府委員 フェロアロイ全体またはフェロクロムなどにつきましては、確かに輸入品の値段が国内の価格に比べて非常に安いわけでございますけれども、これは日本の場合に先ほど来の電力の価格の上昇とか円高とか、こういうことがございますので、どうしても海外との間には相当大きなコスト差がある。それが輸入品と国内品の価格差ということで出てきているのが現状ではないかというように思います。  ただ、相手国側に、そういう安い価格で入ってくる中には、単なるコストではなくて、ダンピングの疑いがあるかどうかという点でございますけれども、現在、そういう状況についてはどうも十分な調査も、私ども実情については把握いたしておりませんし、また、業界の方からもダンピングの疑いがあるんじゃないかというような話も現在のところは来ておりません。そういう意味では、さしあたりそういう面での措置はできるだけ避けて、ユーザー、インポーターの協力、それから業界の合理化という形で問題の処理を図ってまいりたい、かように考えております。
  61. 水田稔

    ○水田委員 では、鉄鋼という基幹産業に対するまさに輸入品による攻撃ですから、そういう点では事の重要性はお認めいただいて、その上での努力をぜひお願いをしたい、こういうぐあいに思います。  それでは、先ほど来ずっと触れてまいりました問題というのは、たとえばアルミの問題も燐の問題も、フェロアロイの問題、それから、きょうは触れませんでしたが、たとえば苛性ソーダの問題あるいは非鉄金属の問題等、いまの日本の電力多消費産業というのはまさに原油の値上げによる電力料でどうにもならぬという状態になっているわけです。ただ、どれもこれもということは私申し上げませんし、また、電力料というのは国民合意という点から大変むずかしいということもよく知っているわけです。ただし、たとえば日本の国内から鉄鋼産業がなくなる、あるいは化学産業の中で基礎素材である苛性ソーダがなくなる、あるいはアルミが電力料の問題でもうどうにもならない、ゼロになるというような問題では、通産省としては、これからの日本産業構造の中、特に化学産業の中での基礎素材については、これだけは国内でナショナルセキュリティーという点で維持していこうという中では、電力料について仕方がないということではもう済まないのではないか、そういう感じがして仕方がないのです。そこで、電力料の問題は非常にむずかしいと思いますが、そこらも何らかの検討をしてもいいんではないかという気もしないことはないわけです。  それから、たとえば夜間を考えてみると、夜間の割引というのは大口であるわけですけれども、たとえば大型火力なり原発というのは、夜間需要が落ちて落とせばコストが大変高くつくし、効率は非常に悪いという問題もあるわけですから、そういう問題をもう少し思い切って、これこれの業種についてこういう使い方をするについてはというようなことを考えていいんじゃないか。私は、特にいまの電力料の決め方——私どもの党でことしの値上げのときにも計算しました。一体いまの電力料の計算が正しいのかどうか。私どもあの上げ幅は半分でいいというのを、これは電力料値上げの問題のとき論議をずっとしておると思うのですね。そのために電力会社がどうにもならぬということではないと思う。少なくとも日本産業構造の中でこれだけは残そうというものについて何らかのことを考えてもしかるべきところまで来ておるんではないだろうかという気がするわけですが、二つの点ですね、その問題と、いま申し上げました、たとえば夜間電力の問題等について何らかの対策を講ずるお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  62. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 大変基本的な問題の提起を受けたわけでございまして、先生よく御高承のとおり、現在の電気料金はいわゆる原価主義の原則、公平の原則という二つの原則から成り立っているわけでございまして、こういう考え方が成立いたしました過程にはいろいろな物の考え方があったんだろうと思います。そこで、電気というものは、いわゆる産業界にとっても国民生活にとってもきわめてベーシックなものでございますから、できるだけこれを公平な扱いにしていくということも、一つの理念として当然のことではないかということで、長い変遷を経た上でこういった原則ができ上ったのだろうと思います。  そこで、いま御指摘のとおり、また産業界にも一つの流れというのが出てまいると思いますし、単にいま申し上げた二つの原則だけでいつまでも処理をしていいかどうかという問題意識は、率直に言って私どもにもございます。ただ、いま申し上げております公平の原則あるいは原価主義の原則を崩してそういう扱いをするということになりますと、やはりそこに一つの秩序というものが求められておるだけに大変な問題だろうということがございますので、いわゆる需給調整契約という問題を取り上げておるわけでございます。従来これは特約料金と言われたものでございまして、つまり負荷能力の調整という問題から、できるだけ安く電力多消費産業の方にサービスをするという考え方があるわけでございますけれども、先般の三月の電気料金の改定の際にも私たびたび申し上げましたが、こういった従来の特約料金は、産業界と電力会社の間の個別の話し合いによって決められるというのが従来のシステムでございますけれども、いま先生が御指摘のように、国としても少し考えたらどうだというお気持ちも私どももわかりますので、原則としては産業間の話し合いでございますけれども、やはりそこに国の意思を、ある程度サポートしていくという姿勢をそろそろ出した方がいいんじゃないかということで、実はこの三月以降お手伝いをしているということでございまして、原理原則を大きく変えるということじゃございませんが、少しでも電力多消費産業の方に助けになるようなお手伝いはしたい、そういうことを通じていまの問題の解決に一歩でも近づきたい、こういう理念を持っておることを申し上げておきたいと思います。
  63. 水田稔

    ○水田委員 私も一遍に解決つく問題ではないと思っておりまして、問題提起くらいできょうはと思っておりましたので結構です。  最後に、エネルギーの多様化を図っていく中で、中小水力の推進というものを通産省も進めておるわけです。建設省もそういうお考えを出しておるようでありますが、それらを推進する上での問題点を、もう時間がありませんので、通産と建設省おいでいただいていますね、一緒にお伺いしたいと思うのです。  通産省の方では、発電所の発電機の大きさによって五%から一五%の補助金を出すということなんです。ダムの方は建設省が持っておられるのがわりに多いわけです。実際にやる場合には地方の公営企業がこれに取り組むわけであります。そこで問題は、一つは中小の、たとえば千キロワットの発電機をダムに取りつけるのも百万キロワットの大火力をつくる場合も同じだけの手続が要るわけです。こんなに書類が要るわけですね。それは、電力会社というのは専門家を山ほどそろえておるわけですが、地方の公営企業等がやる場合には、人員の点でもあるいはふなれな点で、しょっちゅうやらぬわけですから、大変な手間がかかるわけですね。そういう点が進めようという通産省のお考えに対して実はネックになっておるという点が一つあります。  それからもう一つは、補助金が出ても、実はダムを使う場合に建設省の方が既存のダムについてもアロケーション分を持てというわけですね。そうするとこれは通産省が出した補助金がそのまま建設省へ入ってしまうということになりかねないわけです。実際には建設省も通産省もまさにいまエネルギー問題は大変だということで中小水力を進めよう、こう言っておるわけですが、実際にやるところではそういう点でなかなか進まない。一つは手続の問題、一つはせっかく出た補助金が補助金にならない。ですから一つは建設省の方で、もちろん機能を損なうような使い方はさせないでしょうし、それに取りつけられるあるいは維持のために必要なそういうものの分担をさせることはいいわけですが、そこまで言われるのなら、逆に言えば金を出さなくてもいいのですから、建設省もダム分を補助金を出したつもりでただにしたらいいだろうと思うのです。推進する上にはそういうネックがあると思うのですが、その点、通産省なり建設省ではどういうぐあいに現状考えておられるか、いまの私の見解についてのお答えをいただきたいと思うのです。
  64. 石井賢吾

    ○石井政府委員 先般開催いたしました電源開発調整審議会及びそれに先立ちます幹事会におきましても、建設省、通産省、両省話し合いまして、中小水力の電源開発促進をいかにして手続的に推進するかということを相談いたしたわけでございますが、地元の調整とそれから本省ベースの調整、これを並行的に進めることによってできるだけ手続の推進を図っていこうじゃないかという基本的な合意をいたしておりますので、今後具体的にどういうふうにやっていくか、これから詰めたいというふうに思っております。  それから、第二点のアロケーションの問題でございます。確かに御指摘のようなアロケーションの方法は、通常水力の規模を想定して設定された関係もございますので、小水力の場合に妥当かどうかいろいろ問題がございますが、一方におきまして農業用水あるいは都市用水といったものとの負担の均衡をどうするかという問題、ややこしい問題が残っておるわけでございまして、現在私どもから問題を提起いたしまして、八省庁から成るアロケーション協議会でいませっかく検討中のところでございます。
  65. 志水茂明

    ○志水説明員 建設省といたしましても、発電への参加に伴いますダムの建設費用に対する負担につきましては、水力発電の経済性を適切に評価をいたしまして、そしてダム建設費用の負担割り振りのルールに従いまして合理的な負担を行って積極的に参加できるように、現在国土庁、それから通商産業省初め関係機関と必要な調整を行っておるところでございます。
  66. 水田稔

    ○水田委員 いまの答弁では、やはり他の目的のために金を出しておるものとの均衡ということが主になっていますね。だったら、建設省もこの中小水力を進めるというのであれば、それに対して、その持ち分について金を出さなくて済むわけですから、そういう点を補助ということで出して、建設省が出して建設省へ入れるというのは極端な言い方ですが、そういうことでもやられる方が——実際にいま一番問題になっているのはそこでなかなか進まないということになっているわけですから、一歩進めた論議をぜひやってもらいたいと思うのです。時間がありませんからその点は答弁は要りません。要望として申し上げておきます。  最後に、堆砂の問題について、これも時間の関係で一遍に申し上げます。  一つは、戦前のものでは九〇%という砂がたまって、表流水で発電しておるというものもあるし、昭和三十年代のものでも七〇%、八〇%のものが、まあそれは地形によるわけですけれどもあるわけです。これではダムの効用を果たさなくなってくるわけですから、その機能回復のために、それを取り除くことができれば新しいダムをつくると同じ効果があるわけです。いま佐久間で技術的な検討をやっておるようですが、一つはそういう技術を開発する。  もう一つは、いま川砂というのはほとんどなくなって、海砂を使っておるわけですから、そういう点では建設の材料としては大変役に立つものです。ただ、ダムというのは非常に山の中にありますから、運搬の方法なりあるいはそれがその地域で適当な需要があるかというような問題等がありますけれども一つ技術の問題、ダムというのは、いまできたものは五十年たったらだめなんだろうというようなことで、それをもう一遍再生して活用するという積極的な、この程度たまればこれはのけていくんだ、そういう一つの目安というものをつくって、それを進めていく施策というのが欠けておると思うのですね。その二つについて、これは建設省の方からひとつお答えいただきたいと思うのです。
  67. 志水茂明

    ○志水説明員 ダム堆砂の問題につきましては、先生指摘のとおりいろいろ問題が多うございます。現在ダム堆砂をコンクリート等の骨材として利用いたしますことにつきましては、ダムの所在しております立地条件、それから、ダム堆砂の状況、それから一般的には地域の骨材需給の動向あるいはいまお話しの掘削の工法、それから運搬路の確保あるいはシルト分なんかの残土の処分、こういった問題がございますので、いろいろ検討を行っております。  ただ、天竜川水系などにおきましては非常に堆砂が進んでおるということでございまして、これらにつきましてはきわめて早く貯水池堆砂対策を行わなければならないということで、これらの水系の直轄ダムにつきましては、上流側に貯砂ダム、こういったものを設置し、あるいはしゅんせつを行うなどによりまして堆砂の排除を行っておりまして、すでに骨材への活用等も図っております。  それから、こういったような観点から、昭和五十四年度から建設省では建設省所管のダムにつきまして貯水池保全事業というのを新設いたしまして、現在直轄ダムで四、それから補助ダムで五、計九ダムにつきまして貯砂ダムを上流に設けたりあるいはそこへ入っていく進入路等を設けまして、この堆積土砂の排除とそれから骨材資源への活用を積極的に図っていこうということで進めております。
  68. 水田稔

    ○水田委員 終わります。
  69. 野中英二

    野中委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  70. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  71. 上田卓三

    上田(卓)委員 地方支分部局の整理法案がわれわれの強い反対を押し切った形で衆議院を通過いたしたわけでございます。しかし、十の省庁にまたがる大幅な行政改革案でもあったわけでありまして、議論はまだまだ尽くさなければならなかっただろう、問題点は多く残っておるというように考えるところであります。特に通産省の関係では四国と大阪の鉱山保安監督部の格下げということになるわけでございまして、鉱山保安行政は後退させないというような答弁はなされておるとはいうものの、実際はこの部局の縮小から人員の削減へ進むのではないかというように、非常に心配をいたしておるところでございます。  田中通産大臣は九月二十五日に労働組合との交渉で産炭地は過保護だというふうな暴言をなされておるわけでございまして、九州の産炭地をバックとされる大臣としてはいかがなものだろうかというように考えるわけでございます。まことに軽率な発言だと言わざるを得ないと思うのです。大臣がきょうおられるわけではないので、政務次官がおられるわけでありますが、そういう発言から見ても、さらに通産省の関係でどこかの部局をまた統廃合しようという気があるのかなというニュアンスにもとれるわけでございまして、そういう点で実際そういうようなことを考えているのかどうか、これは非常に大事な問題だと思いますので、まずその点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  72. 野田毅

    ○野田政府委員 大臣が海外出張中でございますので、私かわってお答え申し上げますけれども、大臣の産炭地に関する発言について言及があったわけですが、上田委員御承知のとおり大臣はかつて日本エネルギーを支えた筑豊地域を地盤とする政治家でもありますし、産炭地の現在の置かれております大変悲惨な状況あるいは苦悩というものはだれよりも一番御存じだと思いますし、私自身やはり産炭地域を抱えておる一人として、常にどうやって明るい展望を持ちながら地域振興策を講じていくかという悩みを実は持っておるわけであります。しかし、反面、国会議員の一人として、やはり自分の地元だから優遇するんだというような発想だけでやってしまってもまたぐあいが悪い、むしろ幅広い、国全体の中でどう位置づけていくのか、そういったある種の葛藤があることも事実だろうと思うのです。そういったことで、産炭地域出身の大臣だから何でもできるんじゃないかというような余り過大な期待は困るんだというようなニュアンスの御発言ではなかったろうか、実は私はそう感ずるわけでございます。まずその点を一つ申し上げておきたいと思うのです。  これからの行政改革に関連して、まだまだそういった人員削減だとかあるいは行政機関の整理だとかやっていくんじゃないかというようなお話でございますけれども、私どもとしては少なくとも保安行政に支障を来すことは断じてやってはならぬ、この姿勢だけは崩せないわけでありますし、そうは言いましても、国民全体の中から行政機関の整理だとかあるいは行政改革だとか、公務の非能率に対する厳しい御指摘もございますし、その御批判にもまたこたえていかなければいけない。そういう観点でわれわれも検討しているわけでありますけれども、現在審議されております法案よりもさらに一層突き進んで、もっともっとそういった統廃合を推し進めるというような考え方は私どもとしては現在持っておりません。そのことだけ申し上げておきたいと思います。
  73. 上田卓三

    上田(卓)委員 最初の、産炭地は過保護だということをおっしゃったことは事実であるわけでありまして、それを後から注釈して、これは政務次官が言ったことじゃないんですけれども、こういう意味ではないかというような形で弁護されておるわけですけれども、ここで本人がおらぬ中で話をしてもどうかと思いますが、いずれにしても地元だから特別にするんだという意味でないのだということと、過保護だということとは別のことでございますので、これは別の機会に大臣に直接聞きたい、こういうように思うわけであります。  それと、さらに部局の統廃合を進めるというようなことは考えてないということのようでございますから、ぜひともひとつそのように実行していただきたい、このように思います。  そこで、中曽根行政管理庁長官は、鉱山保安行政は後退させない、強化が必要だ、こういうような意味のことを答弁されておるわけでございますが、通産省も来年度の新政策の中に保安行政の充実を掲げておられるわけでございます。しかし、どのように保安行政を強化するかについては具体的に示されていないのではないか、このように思いますので、その充実の中身について、その方策についてまず明らかにされたい、こういうように思うわけであります。当然保安行政の強化ということの基準というものははっきりしているんじゃないか、このように考えるわけであります。言うまでもなくまず第一には人員の確保であろう、こういうように思いますし、同時に休廃止鉱山も検査が必要なんでございますから、そういう意味では検査を必要とするところの鉱山数が大幅に減ることはないというように考えるわけでございます。特に保安行政のそういう特殊性から見ても、保安監督官の仕事は機械によって置きかえられるというようなものではなかろう、このように考えておるわけでございまして、そういう意味で人員の確保などについて一体どのように考えているのかお聞かせいただきたい、このように思います。
  74. 松村克之

    ○松村政府委員 御答弁いたします。  いま鉱山保安行政の明年度の対策としてどういったことを考えているかというお話でございましたが鉱山保安行政の内容は非常に多岐にわたっておりますが、かいつまんで申し上げますと、第一は保安技術の開発強化ということでございます。これは金属、非金属鉱山あるいは石炭鉱山それぞれについてあるわけでございますが、たとえば通気測定器でございますとか鉱煙測定器といったような機器を開発する、あるいはこれを導入する、また石炭鉱山なり金属鉱山におけるそういった機器の使用を普及させる、あるいはこれらの機器の自動化を図るといったような意味の機器の普及、それから、たとえば石炭技術研究所あるいは保安センターといったようなところにおける研究開発の促進、あるいは炭鉱労働者等の保安訓練といったようなことも大きな目標でございます。また、休廃止鉱山の対策といたしましては、たとえて申しますとこれらの休廃止鉱山の堆積場等の改修でございますとか水質の改善、こういったことに対する予算の確保ということもございます。また、人員のお話がございましたけれども、人員についても必要な人員は常に確保していくということが基本であろうかと思います。こういった点について所要の措置を講じていきたい、このように考えます。
  75. 上田卓三

    上田(卓)委員 私は去る二十三日に内閣委員会でこの問題を質問したわけでありますが、そのときに植田審議官はこのように述べておるわけです。過去休廃止鉱山を含めた鉱山の総数は全国で千七百六十五、そのうち大阪が百八十一、こういう数字が述べられておるわけでございます。そして職員の数、人員につきましては全国で三百七十七名、そのうち大阪が二十四名というような数字が出ておるわけでありますが、鉱山数に対する職員の比率を全国平均並みにすると、大阪は百八十一鉱山があるわけでありますから、それから見ると三十八・七名、三十八名から三十九名が必要になるのじゃなかろうか。鉱山数から比率をはじき出してもそうなるのじゃないか。それが二十四名しかいないということで、非常に少ないと言わざるを得ないわけでございます。それからもう一つは、災害発生件数による比率をはじき出してみますと、全国で災害発生が三百四件あるようでございますが、そのうち大阪が二十五件、こういう災害発生件数から見ると大阪の職員は三十一名おってもいいのではないか、こういうような形になるわけでございまして、そういう意味で大阪での保安監督部の人員は非常に少ないと言わざるを得ない、こういうように思うわけでございまして、保安行政の充実ということを考えた場合、これ以上の人員の削減は許されないし、機会があればさらに増員するということがぜひとも必要だと思うのですが、その点についてはっきりとお答えをいただきたい、このように思います。
  76. 松村克之

    ○松村政府委員 通産省の各組織ごとの定員につきましては、たとえば監督部でございますと、それぞれの監督部の業務の性格等に応じまして行政管理庁等の関係省庁とも協議して定めているわけでございます。監督部各部の定員についてもそういった業務上のいろいろな指標があるわけでございます。いま先生からお話のございましたような、そういったあらゆる指標を勘案して配分しているわけでございまして、各監督局部ともそれぞれ事情があるわけでございますが、大阪鉱山保安監督部の定員が特にほかの監督局部に比べて過少であるというふうには私ども考えていないわけでございます。また、行政需要の変化に応じて必要になってくる定員という点については、これは私どもといたしましても毎年要求を行ってきておりまして、現在のところ大阪の監督部について定員を減らしていくということは考えていないわけでございます。
  77. 上田卓三

    上田(卓)委員 大阪の定員が少ないとは考えていないとおっしゃっても、先ほど私が申し上げたように、全国の鉱山数、そしてそのうちの大阪の鉱山数、また災害発生件数など、それ以外の要素も当然あるとは思いますが、しかし、これも非常に重要な基準じゃないか。鉱山数と災害発生件数というものも非常に大きな基準になるわけでありまして、そういうことから見てもはるかに少ないじゃないか、二十四名では少な過ぎるじゃないか、こういうことでございますので、少ないとは思わないというよりも、本当に強化していかなければならないぐらいな状況であって、いわんや減らさないということだけではなしに機会があればふやす、そういう積極的なお答えをひとつしていただきたいと思います。
  78. 松村克之

    ○松村政府委員 全国に八つ監督局部があるわけでございますが、それらすべて非常に重要な業務をやっているわけでございますけれども、それらとともに、大阪監督部についても今後必要がある場合にはそれなりの増強を考えたい、こういうふうに考えております。
  79. 上田卓三

    上田(卓)委員 次に移ります。  保安監督部長の鉱業権者に対しての権限というのですか、非常に絶大なものがあるのじゃないか、こういうように思っておるわけでございまして、許認可及び停止、変更の権限などもその中に含まれておるわけでございますが、大阪と四国が支部になるわけでございますが、私はそういう意味では権限の委譲というような形になりますと大変な行政のサービスの低下、そういう意味で問題が出てくるのじゃなかろうか、こういうように思っておるわけであります。そういう意味で、保安監督部長の公印を二つ準備して、一つは支部に置いて、支部長にある程度部長と同じ権限を与えて対処できるような、そういうこともする必要があるのじゃないか、こういうように思っておるわけでありますが、これに対して一体どのように考えておられるのか、まずお答えいただきたい、このように思います。
  80. 松村克之

    ○松村政府委員 お答えいたします。  今度四国の監督部が広島の支部になる、あるいは大阪が中部近畿監督部の支部になるといったことでございますけれども、私どもとしては、鉱山保安行政の中には非常にルーチンの部分があるのと同時に、緊急の必要性といったようなこともあるわけであります。これらにつきましては、権限の内部委任でございますとかいろいろ考えまして、行政サービスあるいは保安体制というものが弱化しないように、むしろ広域の監督行政を行うことによってサービスといいますか、保安監督体制を強化するといった方向でやりたいと思っているわけであります。いまお話のございました方向がとれるかどうか、ちょっと私もいまそこまで詰めておりませんけれども、今後検討いたしまして、できる限りその運営をスムーズなものにしていきたい、こういうふうに考えております。
  81. 上田卓三

    上田(卓)委員 この権限の委譲というのですか、ぜひとも同じ権限を支部に与えて、仕事がいままでどおりと変わらないでできるような、そういう状況をぜひともひとつ検討していただきたい、このように思うのですが、それについても内部通達である程度処理する、もしそれを実施する場合そういうような形ではなしに、行政の公開の原則というのですか、そういうことではございませんが、やはりそういう形で内規でもつくって、その点ははっきりとしておく必要があるのじゃなかろうか、こういうように私は思いますので、そういうことも含めてひとつ早急にこれを検討していただいて結論を出していただきたい、このように思いますので、あと一点だけその点について明確に答えてください。
  82. 松村克之

    ○松村政府委員 御趣旨の点につきまして、十分検討したいと思います。
  83. 上田卓三

    上田(卓)委員 それでは次に移ります。  御存じのように、きのうは同和対策事業特別措置法の強化改正、部落解放の基本法成立を掲げて、部落解放同盟やあるいは労働組合やその他学者、文化人と言われる方や、宗教家であるとか、その他全国の自治体から行政の方々もたくさん上京されまして、数カ所で集会を持ち、国会請願あるいは各議員さんにも恐らくきょう午前中あたりはずっと陳情されておったのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございまして、特別措置法が三年延長されたというものの、このままでは再来年の三月に切れてしまうということで、強化延長の問題が大きな問題になっておるわけでありますが、この問題については最後の時点で野田政務次官あたりからも直接お聞かせいただきたい、こういうふうに思うのですが、そういう点で、特にきのうは部落解放同盟ときょうお見えの中小企業庁の佐藤次長さん等とも団体交渉をされておるわけでありまして、その中で佐藤次長は、同和地区産業の振興は同和問題の原点だ、こういうふうに言われておるので、いまおられるから恐らくそのことは肯定されるはずだというふうに思うわけでありますが、そういう点で、ことしの二月の予算委員会でも同和地区の産業の振興について、あるいは実態の把握等について議論がされておるところでございます。特に通産省は、産業の振興調査というような形で、班を編成して同和地区産業の実態把握に努めておられると思うのですが、本当に全国の悲惨な、中小零細企業と言うよりも小零細企業、本当に生業的なものも含めて非常に劣悪な状況に置かれておるわけでありますが、この実態についてどのように把握されておるのか、まずこの点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  84. 佐藤和宏

    ○佐藤(和)政府委員 お答え申し上げます。  同和地区産業につきましては、伝統的かつ小規模な零細企業が大半を占めておりまして、また一定地区内にいわゆる産地を形成しているものが多いわけでございますが、したがって、これら同和地区産業に対する施策を有効かつ適切に実施するには、対象地域の実態を正確に把握するということは必要不可欠であると存じておるわけでございます。このため、総理府を中心として実施いたしましたいわゆる五十年調査の結果を基礎資料として活用するとともに、さらに、通産省といたしましても府県を中心として産業振興調査を実施し、同和地区産業の実態の把握に努めておるところでございます。  なお、産業振興調査につきましては、昭和五十六年度の予算要求におきましては今年度に比べて十一地域ふやし、合計三十七地域といたしまして、全国の同和関係地区を有する三十七都道府県が少なくとも、一地区の調査が実施できるようにしたいと考えておるところでございます。
  85. 上田卓三

    上田(卓)委員 いわゆる零細な生業的な部落産業がいかに劣悪であるかということは、その企業で働いておられる労働者の労働実態がどうであるかということを見ればもうはっきりするのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございまして、特に三年前に部落解放同盟の大阪府連が大阪府下の実態調査をしたわけでございまして、そのデータがあるわけでございますが、特にその中でも社会保険の加入状況についてのデータがありますので、ちょっと御参考までに申し上げたいと思うわけであります。  これは当然従業員数が一人から四人の小規模事業所が対象でございますが、雇用保険については、大阪府下全体で二〇・六%という数字が出ておるわけでありますが、未解放部落では、同和地区ではたったの四・二%しか加入していない、こういう実態があるわけであります。それから労災保険でありますが、これは全体で二九・九%、同和関係で一六・一%、こういうことでございます。それから健康保険でございますが、これは全体で一六%、ところが同和地区では一〇・六%、こういうような状況になっておるわけであります。  また、同府連が昨年の二月から四月まで行ったところの労働災害アンケート調査というのがあるわけでございますが、これでは、部落産業においては、企業主でさえも百人以上の一般の事業所の労働者の約二倍近いそういう労働災害が起こっているということですね。企業主でさえ一般の事業所の百人以上の事業所の労働者に比べて二倍近い労働災害に遭っているということ。また、産業別に見ますと、林業で二・一八倍、それから運送業で四・四倍、製造業で四・五倍、建設業で三・八倍、そういう労働災害の発生率が示されておるわけでありまして、このことをを見ていただいただけでもいわゆる働く条件がさらにもっと劣悪な状況にあるということ。事業主でもそういう状況なのですから、当然そのもとに働く労働者も大変な状況にあるということがわかっていただけると思うのですが、これは大阪だけじゃなしに、他の府県でも民間で調査されたデータがあると思うのですが、そういうものを通産省において十分に把握されておるのかどうか。また、労働省においても、全国的にあなた方の調査でそういう実態が明らかにされているのかどうか、通産、労働にこの点について質問申し上げたい、このように思います。
  86. 岡部晃三

    ○岡部説明員 同和対策対象地域の住民の方々の就業先というものを見ますると、建設業が多い、あるいはまた、いわゆる単純労働、筋肉労働に従事していられる方が多いというところから労働災害が多い、そういう職場、職域に働いておられることが多いわけでございます。  これを数字的に見ますと、先生、ただいま大企連の行いました調査資料に言及されておられますが、これとは事業の分類、対象規模、若干の相違がございますけれども、全国平均の度数率で比較してみますと、たとえば皮革産業を見ますと、度数率は全国平均が三・四一に対しまして同和地区住民の災害発生度数率は五・七六、あるいはまた運輸関係について見ますと、全国平均の度数率が一〇・九一に対しまして同和地区におきましては一五・八四等々の差が見られるところでございます。  このような労働災害の発生状況に対応いたしまして、私ども労働基準行政といたしましては、その災害の絶滅につきましてこれからも鋭意努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  87. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても通産なり労働においては部落の実態の把握が十分なされてない。その調査項目に大きな問題があるのじゃなかろうか。どういう観点からこの部落の実態把握をするのかということが非常に大事じゃないか。そういう意味ではへ、総理府が行りたところの五十年調査というものは特措法の三年延長のどきにも大きな議論になって、残事業自身に非常に大きな問題があるのじゃなかろうかということで、非常にそれは不十分である。また、全国の部落数一つ見ても問題があるということを総理府自身もお認めになっているような状況であります。  そこで、ぜひとも法の三年間の延長の間に部落の実態を把握して、そして「法の総合的改正」ということが三つの附帯決議の中に述べられておるわけでございますので、通産、労働において本格的な実態調査がなされるべきだというふうに思うわけであります。それもばらばらでなされるのじゃなしに、両省が一致して共同でそういう実態の把握に努めることが必要だと思うのですが、その決意なりをお聞かせいただきたい、このように思います。
  88. 野田毅

    ○野田政府委員 御指摘のとおり非常に大事な問題でありますし、現在通産省の方としても先ほど御指摘の総理府の調査以外に、各県にもお願いをしてさらにきめの細かい調査の実施をしておるわけであります。また、実施の方法につきまして、さらにまだまだ不十分であるということであるならば、また上田委員からもいろいろ御指導、御指摘をいただきながらやらせていただきたいと思います。
  89. 上田卓三

    上田(卓)委員 不十分であることはしばしば指摘しておるところでございますので、それを実際にやるのかやらないのか、そこにかかっておるのじゃないか、私はこういうふうに思っております。どっちみち部落問題の本格的な論議というのですか、改正問題につきましては次の通常国会で議論されることだろうし、予算委員会などでも大いに議論されるだろうというふうに思うわけでございますので、通産大臣あるいは野田政務次官あるいは事務次官さんも含めて、通産省の幹部にそれまでにぜひとも部落の現地に入っていただいて、その目で実態を見ていただくということが非常に大事だと思いますので、その点について、大臣は大臣の御都合があると思うのですけれども、そういう意思があるのかどうかお聞かせいただきたい、このように思います。
  90. 野田毅

    ○野田政府委員 現在のところ、御承知のとおりエネルギーの問題あるいは海外貿易摩擦の問題、いろいろなことがございます。国会中でもございますが、できるだけそういう機会をつくりたいと考えております。
  91. 上田卓三

    上田(卓)委員 当然これは大臣にも進言してもらって、ぜひともひとつ次官ともども部落を見ていただきたい、このように思います。  そこで、現在同和地区の経営指導員というのですか、そういう制度があるわけでございますが、今度は業種別のそういう専門員制度がことしから発足しておるようでございますが、やはり業種別のそういう専門的な方々が指導するということは非常にいいことだ。これはわれわれが長年要求してきたことではございますが、しかしながら今度業種別ということになってくるとまた部落問題というものがよくわからないということでは私は困ると思うので、そういう点で従来の同和の経営指導員とペアで、この業種別の専門員も十分部落問題を認識した上での活用が大事だと思うのですが、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  92. 佐藤和宏

    ○佐藤(和)政府委員 ただいま先生が仰せのごとく、小規模事業者が最近の経済環境変化に応じましていろいろ対応していくために、業種別問題でございますとか、あるいは技術問題等につきまして専門的な指導が必要となってまいっているわけでございます。このために昭和五十五年度から都道府県商工会連合会及び都道府県庁所在地の商工会議所に一般経営指導員をバックアップするための専門経営指導員制度を創設したところでございます。先生仰せのように、同和問題につきましては、同和問題に一番堪能な同和地区の同和担当経営指導員と、今度創設いたしました専門指導員とがタイアップいたしまして、専門的な分野経営指導について今後やってまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  93. 上田卓三

    上田(卓)委員 ぜひともそういう方向経営指導に当たってもらいたい、このように思います。  次に、同和の高度化事業でございますが、これは通産省の同和関係の全予算の九六%も占めておる大変な事業であるわけでございますが、その中身たるや本当に部落の小零細な企業には当てはまらないというのですか、本当に部落のごく一部の方々にしか対策がされてない。その中身も相当問題があるということは、これはしばしば団体側との交渉の中でも明らかにされてきたものではないか、こういうように思うわけでございまして、そういうものの不備というのですか、そういう意味では高度化事業も根本的に見直してもらいたい、こういう考え方が非常に強いわけでございます。そういう中から、特に小零細企業向けの工場等の貸与事業、これは非常に大事ではないか。公設リース制度と名づけてもいいと思うのですが、これは部落産業の育成、振興という意味では非常に大事な大きな課題ではないか、私はこういうように考えておりますので、その検討がどの程度進んでおるのかお聞かせいただきたいこのように思います。
  94. 佐藤和宏

    ○佐藤(和)政府委員 高度化事業は通産省の同和対策の主要な施策として、組織化された関係中小企業者を主たる対象として推進してまいっておりまして、この間、現在まで相当な成果を上げてきておると思っておる次第でございます。しかしながら、同和関係事業者の大宗が小規模零細企業者によって占められておりまして、これまでの経験にかんがみますとこういりた小規模零細企業者の組織化というのが当初想定したほど容易でないという実情にかんがみますと、現行の高度化事業制度がこれらの零細企業者にとりて必ずしも利用しやすい制度とは言えないということは、ただいま先生指摘のとおりでございます。このような実情あるいは制度運用の経験に徴しまして、今度五十六年度予算要求におきましには、御指摘工場等貸与事業の創設を中心に必要な制度改正の要求を行っているところでございます。私どもといたしましては、これを本年度の同和関係の私どもの予算の一番中枢に据えまして、実現のため目下鋭意努力を行っているところでございます。
  95. 上田卓三

    上田(卓)委員 ぜひともこれは実現を図ってもらいたい、このように思います。当然これは大蔵省との関係にもかかってくるわけでございまして、私自身もまた団体の方としても別途大蔵省に対して強く要望していきたい、このように思っておりますので、通産省において本腰を入れて、性根を据えてこの問題について取り組んでいただきたい、このように思います。  それでは次に移ります。  先般内閣委員会でも私取り上げたわけでございますが、皮革産業の中の豚皮部門ですね。いわゆる豚革業者が台湾の業界に海外市場を次から次へと奪われているという非常に深刻な問題が起こってきておるわけでございます。そういう意味で、通産省の考え方は最近やや苦しくなってきたというような考え方のようでございますが、われわれとしては非常に問題がある、このように思っておりますので、まず豚革業界についての現状認識をどのようにされているのか、その点から先にお答えいただきたい、このように思います。
  96. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答え申し上げます。  豚革業界は、昨年は生産では約一八%ぐらい、輸出では二八%ぐらい増加したわけなんですけれども、ことしに入りましてから悪くなってきまして、初夏のころから生産、輸出ともダウンしてきておる、しかも価格もダウンしてきておるという状況でございます。したがいまして、このような状況が続きますと、その景況については大変懸念されるところだとわれわれは思っております。したがって、この状況について、われわれとしては十分注視してまいりたいと思っております。  これをめぐる動きとしては、先生先ほどもおっしゃったとおり、国際的に皮革及び皮革製品の需要が停滞しているという事情がございます。当然豚革業界の主要な輸出先であるECも御多聞に漏れず余りよくない。それに加えまして御指摘の台湾との競争がECで行われておる、その他でも行われておるということでございます。それで内需もよくない、かような事態でございます。  そこで、われわれも大変憂慮しておりまして、過日も担当課長を隅田の業者の方のところへ派遣いたしましていろいろ懇談をさせていあるいはおとといは東京都を含みます関係の皮革産業の担当課長会議を設けまして意見交換をやっております。十分認識しておりまして、また今後実情も把握いたしまして対策を検討していきたい、かように考えております。
  97. 上田卓三

    上田(卓)委員 確かにそういう対策会議をやっていただいて、その熱意というものはよくわかるのですけれども、業界あるいはそのもとに働いている労働者の立場から見ると、ちょっとゆっくりしているのじゃないか、本当にどこまで本腰を入れてこの問題の解決に当たろうとしているのかということで、非常に疑問視されておるわけでございます。特に、一九七六年に十八万枚であったところの台湾向けの原皮輸出、これが七九年には百九十万枚、それから、ことしは上半期ですでに百五十四万枚に、非常に大幅な伸びが見られるわけでありまして、これは当然そちらの方で把握されておることだと思うわけであります。  日本の業者がなめしている豚革は月に約八十万枚、そのうち六〇%以上が輸出用になっておるようでございますが、台湾には月三十万から三十五万枚の原皮が日本から輸出されている。これが台湾でなめされて、そして欧州市場その他で日本製の革と競合しているというのが事の本質だろう、こういうふうに思うわけでございます。しかも、日本製よりも一枚三百円もの安きであるということですから、日本の業者にとってもうどうしようもない、壊滅的な打撃を受けているというのが現状であるわけでありまして、やむなく輸出は——生産も輸出も余り減りてないじゃないか、数字的にはそんなに減ってないじゃないかというような見方もあるかもわかりません。確かに数字だけ見るとそういうようなことかもわかりませんが、しかしその中身というものをやはり考えていただかなければならないのではないか。特に在庫が相当積み上げられているという実態があるわけです。  それと同時にコストを割ってくる。確かに輸出はされているが、本当に赤字、出血というのですか、そういうような赤字輸出をしているのだ。こういう状況というものをやはり十分に理解をしていただかぬと、数字だけでは私は問題があるのじゃないか。データだけで見ていただくのじゃなしに、現実にひとつ部落へ入ってそういう工場を見ていただいて、そしてそこの経営者の状況、働く人の状況というものを十分理解をしていただかなければならないのじゃないか、こういうように思いますので、ぜひとも現地へ入って、その目で見ていただくということが何よりも大事だ、このように思いますので、そういう実態調査というものをやはり根本的に洗い直していただきたい、このように思うのですが、どうですか。
  98. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 上田先生おっしゃるとおり、表面数字だけではわからぬことはいろいろあろうかと思います。従来ともわれわれとしては、担当課長をほとんど皮革産業に張りつけておるという状況でございまして、皮革産業も非常に幅が広いものですから、いろいろやらしておりますが、先ほども申しましたように、つい最近も隅田川地区へ派遣いたしまして、いろいろ業者の方とも懇談しあるいは御承知の協議会等の場でもいろいろやっております。  今後ともおっしゃるとおり、できる限り現場派遣いたしまして、数字に出ないところの実態というものをできるだけ認識して、そして実情を把握する、対策を指示する、かように行う所存でございます。
  99. 上田卓三

    上田(卓)委員 ぜひとも緊急にそういう処置をとっていただきたい、このように思います。  そこで、この問題の解決ということになりますればやはり原皮の輸出を直ちに禁止する、こういうことが解決策になるわけでありますが、しかし自由貿易というたてまえもありましょうし、いままでの経過というものもあるだろうというように思うわけであります。そういう点で、やはり何らかの形で実質的な効果が上がるような方法をぜひともとるべきだ、こういうように考えるわけでありまして、たとえば原皮業界によるところの輸出の自主規制というようなこともぜひともひとつ行政の指導によってなされるということも必要ではないか、こういうように思うわけであります。ワシントン条約の批准に伴って輸入動物の自主規制を業者がやるというようなことも現実にあったことを御存じだろうというように思いますので、そういう点で、ぜひとも原皮業界に対するそういう御指導をしていただきたい。  これについて、通産並びに農林省の御見解を聞きたいわけでありますが、時間の関係がありますので、さらにもう一点つけ加えてお答えいただきたい、このように思います。  通産、農林両省がオブザーバー参加しておりますところの豚皮問題懇談会がございますけれども、すでにこの問題が話題になっておると聞いておるわけでございますが、いわゆる豚革業界としては業者によるところの協同組合のようなものを組織して、余剰原皮の買い取り、ストックを行うなどの意見も出ているというふうに考えておるわけでございまして、私は、通産省が本当にその気になって強力な指導をすれば実現するのじゃないか、こういうように考えておりますので、お答えをいただきたいと思います。
  100. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 原皮の台湾向けの輸出問題でございます。いろいろ御要望その他は十分聞いておるところでございますが、先生御承知のとおり、関係するところは原皮の生産者たる養豚業界あるいは原皮商、さらには利用するなめし関係の方方、いろいろ関係するところが多いわけでございます。そういう意味で、何より一番大事なのは両業界といいますか、話し合うという中でいろいろな解決方法を見つけるという努力が一番基本でございますので、そういう検討を鋭意進めさせていただいてきておるわけです。  それで、自主規制の問題でございますけれども、具体的には結局原皮商が行うことになろうかと思います。これもやはり関係業界がたくさんありますから、原皮商の方との話し合いという中でいい結果が生まれるようなことでないとうまくいかないわけでございますが、今後とも、これは所管は原皮商あるいは原皮関係は農林省になりますけれども、われわれ農林省ともいろいろ一緒に出ておりますので、協議いたしまして、できるだけ自粛といいますか、御要望の線に沿うように努力してまいりたいと思います。  それから、ストックパイルの問題でございますが、これも原点はやはり関係業界同士で十分話し合っていくことが原点であろうかと思います。とにかく両業界のコンセンサスがありませんと現実の実行がなかなかむずかしゅうございます。そういう意味で今後とも鋭意両業界の話し合い等を通じまして、われわれの方もその過程を通じましてコンセンサスに努めるとともに、そういう問題を含めて需給関係の改善に一層努力してまいりたい、かように考えております。
  101. 上田卓三

    上田(卓)委員 何をいいましても原皮業者もなめし業者も、片一方が倒れると、お互いに共存共栄という側面がありますし、また片方においていろいろ相手側というようなことにもなるわけでございまして、そういう点で全体の業界の統一というのですか、困ったときにお互いに助け合うというような、そういう関係が非常に大事だと思う。そうだというものの、やはり利害が対立している面がありますから、そういう面で業者の方々に任せるだけでなしに、行政の方の強力な指導というものをぜひともお願い申し上げたい、こういうことでございます。そういう意味で、いまの現状認識をさらに一歩深めて、このまま置いておけば大変なんだという認識のもとで、先ほどお答えいただいた線でさらに御努力をいただきたい。それと同時に、関係省庁と関係団体を入れた対策会議などを設置することが必要だと私は思うのですが、最後にその点について一点だけ明確にお答えいただきたい、このように思います。
  102. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、三年前から両業界の話し合いの場を持ちまして、ただ、ことしからは委員会に改組いたしまして、両業界のほか、通産省、農林省も参加いたしまして話し合いの場を持っておるわけでございます。もう九回やっているわけでございます。当面はそういう場を通じまして業界、関係省庁、十分連絡を密にしてやっていきたい、かように考えております。
  103. 上田卓三

    上田(卓)委員 やはり長期的な問題もありますし、短期的な問題も含めて、いままでやってきたとはいうものの、こういう事態ですから、本当に問題解決のためにその対策会議を設置をして努力をしてもらいたいということを強く要望しておきます。  時間の関係で、もう一つやりたかったのですけれども、やめます。  いままで申し上げてきたように、部落の零細な企業実態は非常に深刻な状況にあるわけでございます。特別措置法がもう一年少しすれば消えてしまう、こういうような現状があるわけでございまして、この三年延長の際の法の総合的改正を含むところの三つの附帯決議をぜひとも政府は実行に移せるような措置をとっていただきたい、このように思いますので、政務次官の方から、特別措置法がさらに国会決議にあるような形で進められるように、また、部落産業の振興のために今後、こんな一年で終わってしまうものじゃなかろう、十年も二十年もかかる息の長い行政でなければならぬ、私はこのように思っておりますので、お答えいただきたいと思います。
  104. 野田毅

    ○野田政府委員 御指摘のとおり通産省の同和対策事業というのは、小規模零細なそういった産業をどうやって近代化させていくかということであるわけでありまして、その実態を見ますとまだまだ相当の期間がかかるような感じがいたします。したがいまして、法律の延長云々ということは、これはまた関係機関で鋭意詰めておりますけれども、そのことは別としても、通産省としてもしっかりと腰を入れてこれからも長期にわたってやっていかなければならぬ、なお相当の期間を要するという気持ちで対処してまいりたいと考えております。
  105. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたので終わります。どうもありがとうございました。
  106. 野中英二

    野中委員長 武田一夫君。
  107. 武田一夫

    ○武田委員 まず最初に、最近の日米あるいは日英の通商摩擦という問題、これは特にマスコミ等をにぎわしておりまして、非常な関心のある問題ではないか、こう思いますので、この問題についてお尋ねいたします。  いろいろ聞くところによりますと、GMが七月から九月の第三・四半期の決算で米企業史上最悪の五億六千七百万ドルの赤字を計上しておる。あるいはまた米政府はITC、いわゆる国際貿易委員会日本車の輸入規制訴訟に関しての問題で十一月十日にクロの判定を下せば、年間百八十万ないし百九十万台の日本車の規制をする方針だとか、また日本とEC間の貿易摩擦に関しましても、この秋口に入って急速に摩擦が表面化している。それで通商協議でも日本製の自動車やらあるいはまたエレクトロニクス製品等の輸出の自粛が要求される等々、こうした諸外国の日本に対する外圧は非常に高まっているような気がしてならないわけでありますが、この外圧という問題に対するわが国の対策、通商政策上重大な問題をはらんでいると思うわけでありますので、この間の実態といいますか、その様子並びに今後の見通しなどをまずお話ししていただければ幸いと思うのでございます。
  108. 真野温

    ○真野政府委員 ただいまの武田委員の御質問でございますが、日米、日・EC、こういう国々を相手にします貿易上の摩擦というお話でございます。これは貿易摩擦という言葉が非常に使われておりますが、考え方として二つあり得ると思います。  一つは、全体の貿易バランスを云々する場合でございまして、この場合につきましていまの日米、日・ECの状況を申し上げますと、日米関係では過去、昨年、一昨年と貿易バランスが日本側の著しい出超であった、昨年あたりから非常にこれが縮小してまいりまして、現在のところ日米間で全体の貿易バランスにつきましてはほぼ落ちついた状況でございまして、これについてアメリカ側から特段の批判、非難等は見当たらない現状でございます。  これに対しまして、ヨーロッパ諸国つまり特にEC諸国との関係でございますが、これにつきましては、昨年、一昨年、日本側の出超が約五十億ドルくらいだったと思いますが、ことしに入りましてややこの出超幅が拡大してまいっておりまして、これは一つにはこの春くらいの日本の円安による輸出ということが多少響いておりますかと思いますが、最近はこれも落ちついてまいりましたので、著しい輸出の増勢というのは全体としては今後はなくなるだろうというふうに私ども考えております。     〔委員長退席、辻(英)委員長代理着席〕  ただ、現在のところ、こういう全体の貿易バランスのほかに、もう一つの側面としまして個々の業種問題等がございますことは先生御承知のとおりでございます。この背景は、どちらかといいますとむしろ相手国の経済全体の不況、失業の増大、こういう社会的、経済的背景がございまして、こういう失業あるいは経済の停滞に伴って影響を受けている産業、この分野から日本の商品の輸入に対していろいろな批判、非難が出ておる、こういう状況であろうかと思います。  ただ、この場合に全体として日米間の問題、日・EC間の場合、いろいろございますが、大きな経済全体としての状況が、向こうのEC、アメリカ、こういうところの不況状態がかなり続いておったということが背景でございまして、この中でもヨーロッパとアメリカは多少違っておりまして、アメリカの方は最近やや景気回復、景気の停滞は底を打った、むしろ不況脱出宣言といいます一か、これからの経済はよくなる、こういうパーセプションが生まれつつあるよう血状況でございますが、他方ヨーロッパの方はまだ全体として経済一の状況が非常に悪い、成長率も悪ければ失業率も高い、こういう状況のもとで若干の特定品目について日本の輸出についての批判が出てくる、それについての社会的、政治的ないろいろな反発が出てきておる、こういうのが大体現状であろうかと思います。
  109. 武田一夫

    ○武田委員 ECの方の問題は特に深刻だと思うのですが、先日も英国の下院議員の一行が参って懇談したときも話の中に出てまいりまして、このまま対日貿易の赤字が減らなければ高まる保護主義の圧力に耐え切れなくなる、こういうことを何度も重ねて力説しておったようでありまして、今後こうした問題というのは特に日本としても関心を大きく持っていかなければならない、こう思うわけでありますが、特に外圧品目の現状を踏まえまして、今後の輸出政策というものをどうしようというふうにお考えになっているか、その点お聞かせ願いたいと思うのであります。
  110. 真野温

    ○真野政府委員 ただいま先生の御質問のこれからの貿易政策、通商政策考え方いかんということでございますが、まず全体を申し上げますと、御承知のように日本は相当量の石油の輸入をいたさなければいかぬ立場でございまして、そういう意味日本石油の輸入を賄うために相当量の輸出をしなければいかぬ、これも日本の命題でございます。ただ、その場合に、御承知のように産油国そのものについては石油の輸入額が巨額であって、どうしても輸出でこれをカバーすることはできない、その分だけほかの地域でかせぐということになろうかと思いますが、こういう状況より、むしろできるだけそういう産油国に対する輸出を今後も拡大していく、これがやはり一番基本ではないかと思います。こういうことによってほかの地域での摩擦を避けるということが基本になろうかと思います。ただ現実問題としまして、ここしばらくの間はどうしても日本の輸出が先進諸国その他の地域に向けられざるを得ない。加うるに、先ほど申し上げましたように、昨今のアメリカ、ヨーロッパの経済状況から見ますと、いろいろな貿易摩擦というのがここしばらく出てくる懸念がございます。  そういう意味で、特に先生指摘でございましたが、ヨーロッパの場合には日本と非常に似た産業構造の国でございますから、お互いに工業製品を輸出入するという関係が基本にならざるを得ないかと思います。そういう意味で、私どもとしてはやはり基本的には両者の関係が工業製品を中心として自由貿易体制を維持するということをもって相互の関係が安定することが一番望ましいかと思います。そういう意味で私どもとしましては、現在の日・ECの貿易のバランス、これの回復のためには日本が輸出を抑えるという考え方よりも、むしろ貿易全体を拡大させる中で均衡させる、端的に申し上げればヨーロッパの日本に対する輸出を拡大していく、日本の輸入を拡大していくという方向が基本的に望ましいかと思います。そういう意味で通産省としましては、いままでも製品輸入の拡大ということについてヨーロッパ諸国等に非常に協力してまいりまして、それによってヨーロッパ製品の市場の拡大を図るということが全体として望ましい方向ではないかと思います。  ただ、そうは言いましても、先ほど申し上げましたような事情がございますから、特定の相手国の産業あるいは失業というものに直接響くような、集中豪雨的と言っておりますけれども、急激な輸出の拡大というのは相手国の政治的、社会的な反発もございますから、ここは節度ある態勢を維持していくということが望ましいかと思います。  さらにもう一つ基本的に言いますと、現在の日本の産業自身が相当競争力を持っておる現状でございますから、むしろヨーロッパの産業を強化していく、そういう意味での産業協力というかっこうで日欧間の、貿易のみならず投資とか技術を含めた交流関係、協力関係を打ち立てるということがこれまた中期的にぜひ私どもが実現していきたいと考えている方向でございます。
  111. 武田一夫

    ○武田委員 アメリカにしましてもEC諸国にしましても、不況からの立ち直りに非常に苦慮している、こういうわけでありますので、わが国としてもこのままこうした輸出偏重といいますか、そういうような行き方というのは続けていくわけにはいかない、そうすると、やはり国内として考えなければならない問題として、内需の喚起という問題が積極的に取り組む問題として一つ考えなければならないのではないか、こう思うわけですが、先日も発表されました企画庁の十月の月例経済報告ですか、やはり相変わらず個人の消費の低迷が続いている、こういうような状態でありますが、こういう中で今後内需の喚起というものをどのように進めていくかという問題について、具体的にお聞かせ願いたいと思うのでございます。
  112. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 やはりわが国の経済を運営をいたします場合には、内需の拡大ということが最大の課題だと考えております。  内需の拡大を考えます場合には、やはり個人消費ということが非常に大きなウエートを占めておりますので、消費活動を活発にしなければなりませんが、残念ながら現在のところ計画どおり伸びておりません。その一つは物価問題にあろうかと思います。消費者物価が比較的高い水準でずっと続いておりましたので実質所得が減っておる、こういう状態ではなかなか消費活動も活発になりません。  そこで、いま政府といたしましては、物価対策をこの春以来最大の課題として取り組んでまいりましたが、現在もやはり最大の課題として取り組みながら、一方において景気対策配慮しておる、こういう両にらみ、双方に対して留意を払いながら経済運営をしていく、いまこういう考え方のもとに経済運営をしておるところでございます。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 次に、石油、特に原油、灯油の問題についてお尋ねいたしますが、二十五日の新聞報道によりますと、フランス石油がイラク原油の供給がとまったための措置として対日供給を削減した、外国に対する削減をしたのですが、とりわけ日本に対する削減をしたという、とりわけというのも気になるのでありますが、そういうことを書いてありましたけれども、そういう中で、いろいろ委員会等での政府の答弁を聞いておりますと、原油、灯油等については不安がない、こういうことでありまして、どうなのかということが国民にとっては心配の種なんでありますが、今後のこのイラン・イラク戦争が長期化していく、そういう中での中東諸国の政治情勢により、メジャーからの対日供給の原油の量と価格にかなり影響が出てくるのではないか。しかもこれから寒くなりますので、これからことしの冬がどういう寒さかというのは、これは予測できませんが、ことしは天候が御承知のとおり冷夏、非常に夏はこのとおりの異常気象だったということを考えると、ことしの冬はひょっとすると物すごい寒さが来るのではないか、こういう場合に対応できるか、そういう今後の見通しというものは非常にわれわれ消費者にとりまして関心事でありますが、その点はいかがなものでございましょうか。
  114. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まずイランとイラクの紛争によりまして、メジャーからの供給がカットされたのではないかという御指摘に対しましてお答えを申し上げたいと思います。  御承知のとおりアメリカ系のメジャーはイラクの油を買っておりませんし、イランの油も買ってないわけでございますから、これは影響が出るわけもございません。そこで、ヨーロッパ系のメジャーがイラク及びもとのイランから買っておりましたので、その辺の影響は多少出てくる可能性はございます。ただ、現段階におきまして、特にどの系統のメジャーからどの輸入精製会社がカットされたかということはまだ判然といたしておりませんので、仮に影響が出るといたしましても今後の問題ということでございまして、そもそも基本的に申し上げますと、メジャーに対する依存度がこのところ大変下がってまいっておりまして、御高承のとおり昨年の初めごろは七〇%近いシェアでメジャーからの供給を受けておったわけでございますけれども、それが現在ではもう五〇%以下、月によりましては四三、四%台ということになっておりますので、相対的にメジャーの地位が下がっておりますから、そう極端に心配することはないのではないか、私どもはこういう気でおります。  それから、ことしの冬の問題につきましては、昨年と一昨年と暖冬が二年続いたわけでございまして、ことしも暖冬が続くかどうかは保証の限りではないということもございますし、ことしは多少寒波が来るのではないかという想定もございまして、石油供給計画灯油生産をやや多目に見込んだところでございます。そこで、夏場から特に灯油生産について私どもも各社にお願いをいたしておりまして、石油供給計画上あるいは灯油の流通上は九月末で六百五十万キロリットルほど備蓄をしておりますと、大体その冬の回転がスムーズにいくという前提に立っておるわけでございますけれども、いま申し上げましたようにあるいは寒波が来る危険性もあるということで、生産の方を大分各社にお願いをいたしまして、九月末で七百十万キロリットルの備蓄を積み上げておりますので、灯油につきましては御心配かけることはまずない、こういうことで現在推移している次第でございます。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 国内の石油製品の価格の面での見通しはどうなっているか、この点について。
  116. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 お答え申し上げます。  国内の石油製品の需要でございますけれども、全般的に非常に落ちついた動きを示しているわけでございます。そういったこともございまして、また先ほど長官からお答え申し上げましたように、たとえば灯油について在庫の積み増しをピッチを上げてしてまいったというようなこともございまして、全般的に国内の石油製品の需給は緩和基調ということで推移をしてまいっております。そういった現在の需給緩和基調を反映いたしまして、石油製品の価格は落ちついた動きを示しております。  たとえば卸売価格で見てみますと、中間三品を初めといたしまして、大体五月をピークにして最近はやや下降ぎみというような形で推移をしてまいっておるわけでございます。また消費物価で見ましても、灯油価格について申し上げますと、これも大体六月をピークにいたしまして、その後やや下落傾向をたどっております。きょう十月の小売物価が発表になるようでございますけれども、十月につきましても東京都区部では従来の灯油のそういった価格の傾向というのは続いておるというような状況でございます。  今後の価格がどうなるかということでございますけれども、これは率直に申しましてドルベースの原油価格がどうなっていくであろうか、あるいは円レートの動きがどうなっていくであろうか、いろいろなファクターが関係してまいります。そういうことでございますけれども、まあ現在の円高基調が継続していくということであれば、こういった円高を背景にいたしまして、もし特別の事情がなければ落ちついた動きで当面推移していくのではないかというふうに思っております。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 価格的には下がってきている、こういうことですが、私もあちこち歩いてみますと、価格の問題、特に灯油ですが、どうも地域によっては値上がりしているという声も聞こえるわけで、データによると下がってきておる、安定しているというのですが、その実態は確かなものかという問題、これは生活感情と多少離れたデータではないかというふうに私も疑いを持つのですけれども、通産省は安定という言葉をよく使うのですが、安定というのは大体どのあたりの価格までを安定と言うか、この問題はいかがでございますか。
  118. 志賀学

    ○志賀(学)政府委員 すでに需要期に入っておりますたとえば私どもの仙台通産局の管内でモニター調査をやっております。それの資料、これは九月までしか実は出ていないわけでございますけれども、やはり先ほど申し上げましたように、たとえば十八リットルの店頭売りの小売価格ということで見てみますと、ことしの六月が千四百八十四円でございました。それがピークでございまして、その後七月が千四百六十五円、八月が千四百四十七円、九月が千四百二十四円ということで、私どももモニター調査ではそういうように六月をピークにして下降傾向をたどっておる、こういう状況でございます。これは総理府の小売物価統計におきましても、これは八月までしか出ておりませんけれども、やはり傾向としては同じではないかと思っております。  どのくらいの価格を安定と見るか、こういうお尋ねでございますが、確かに現在の灯油の価格というのは昨年に比べますとレベルとしては非常に高いわけでございます。これは、産油国側のGSPの引き上げその他によりまして原油価格自身が非常に上がっているわけでございます。それに伴って、日本が輸入いたします原油のCIF価格、これも非常に上がっているわけでございます。そういうことがございまして、レベルとしては非常に高いわけでございますけれども、その中で最近の動向は落ちついた動きを示しておる、こういうことでございます。  確かに灯油と申しますのは非常に複雑な流通経路をたどって消費者の手に渡るわけでございます。あるいは地域的にも非常に需要の特性がございます。たとえば北海道などで見ますと、需要のロットが非常に大きいわけでございます。そういうようなことがございまして、むしろ東京とか大阪とかそういった地域に比べて北海道は非常に安いとか、そういった地域的な需要の特性も影響してまいります。そういうことがございますので、どのくらいの価格が安定価格なのかというお尋ねでございますけれども、なかなか一概には申し上げられないということでございます。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 それでは次の問題に移りますが、非常に寒い異常気象、冷夏あるいはまた長雨の影響で野菜等が非常に値上がりなどして、いろいろと消費者物価の問題についても、政府目標の六・四%はちょっと赤信号ではないかということが政府部内でも心配されているということでございますが、この点どんなものか。  それにもう一つ、政府の中では、少なくとも今年度の春闘賃上げの率でございます六・九%以下に抑える必要があるというふうに、いわゆる六%台に確保したいという考えも持っているようでありますが、この点について現状といいますか見通し、それはどうなのか、お尋ねしたいと思います。
  120. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 最近の物価の動向でございますが、九月の時点で全国の消費者物価につきましては、昨年に比べて八・九%という上昇でございます。この大きな理由は、ただいま御指摘になりましたような異常気象による野菜等の値上がりがこの八、九月非常に大きかったというところによるところが大きいわけでございます。  そこで、本日東京の十月の数字が発表になったわけでございますが、その後の野菜価格の安定等によりまして、東京に関しましては十月の対前年同月比は六・八%ということになっております。九月の東京の上昇率は、全国八・九%に対して八・七%でございましたが、それから見ますと大幅に低下をしてきているという状況でございます。  それから年度間の問題といたしましては、六・四%程度という見通しを立てておるわけでございますが、私どもとしては何とかこれを達成したいということで従来から努力をしてきておりますが、最近の消費者物価につきまして、卸売物価からの波及等も大分鈍化をしてきておりますし、それから野菜等についても、この夏の冷夏に対しましては緊急対策等も講じてきたわけでございますが、さらに一層そういう傾向を確実なものにするということで、昨日、政府の物価担当官会議におきまして当面の物価対策の推進についてというのを決めたわけでございまして、全体十四項目にわたるものでございますけれども、今後ともその対策を積極的に進めて、何とか政府見通しの範囲におさめるように努力をしていきたいと考えているところでございます。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 今後のいわゆる物価動向を占う一つの材料としては、私は、一つは野菜が今後どういうふうな状況でいくかということと、それからもう一つ、やはり十月ピークになる衣料品の価格がどこまで上昇するかというような問題などがその要素になってくるのじゃないかと思うのですが、これはどういうふうにお考えですか。
  122. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 野菜につきましては、十月の野菜価格は、前月に比べて二四・九%下落したわけでございます。その結果といたしまして、昨年の同月に比べて二三・六%のマイナスということになっております。そこで、これからの野菜はいわゆる秋冬野菜でございますが、その主体となりますのはキャベツとか白菜、大根というようなものがその大部分でございますが、これにつきましては農林省の方で早くから、ことしから始めております重要野菜需給調整事業というものの中で作付面積にゆとりを持ってやってもらう、そういうことで、もし非常にたくさんでき過ぎて価格が下落する、暴落するという場合には別途手を打つということで始めた事業がございますが、そういうことで、全体として作付面積が非常に上回るような方向指導をしておりますので、現在の段階では、異常な気象等がなければ供給量は十分確保できるという見通しを持っているわけでございます。  それから衣料の方でございますが、例年秋、冬物衣料が出てまいりますのが九月から十月でございまして、この時期の衣料の価格というのはそのために高いわけでございます。指数の水準としても高く出てまいります。しかし、だんだん月を追いまして、またシーズンが深まるに伴いまして衣料価格というのは下落をしていくという傾向がございます。そういう意味で、例年のそういう傾向をことしもたどっていくのではないか、そのように考えております。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 次に、中小企業景気対策についてお尋ねいたしますが、九月の企業倒産件数は幾らで、そのうち中小企業関係の倒産件数は幾らかということが一つ。それからもう一つは、中小企業についてのみ見た場合の現在の景気動向はどうなのかという問題について、具体的な例を二、三挙げて御説明いただきたいと思うのです。
  124. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  九月の倒産水準中小企業だけでございますが、千六百四件、それから負債金額が二千四百億円でございます。  それから、今後の景況の先行きにつきましては、現在景気かげりというのがございまして、これは先ほどもちょっと御答弁の中にあったようでございますが、個人消費の鈍化傾向は依然として今後も続く可能性がございますし、それから冷夏の影響がかぶさっておりますけれども、冷夏の影響もとりわけ中小企業性業種、小売業も含めましてそういう面に非常に多うございます。八月、九月に直接的な冷夏の影響が顕著でございましたが、十月以降はむしろ間接的な冷夏の影響といいますか、たとえば農作物の被害のために農村の購買力が落ちて、農村関連の物資、それからその地域の小売業といった間接的な影響が後遺症として下期に残っていくのではないか。総じて見ましてやはり景気かげり中小企業に関します限りは尾を引いていくと考えております。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 そこで私は、冷夏の影響がこれからじわじわ出てくるという東北を中心として実態を多少申し上げて、いろいろとこれに対する対応をひとつ御検討願いたいと思うのであります。  十月二十七日の調査によりますと、東北の各県とも異常な冷害でございまして、特に太平洋側、青森、岩手、宮城、福島等、こういう地域が非常に大変な冷害を受けました。農業経済というのはその地域では間違いなく商工業にもろにかぶってくるわけでありまして、これがこれからじわじわ出てくるわけであります。一、二例を申し上げますと、東北農政局の調べで作況が五一だった青森の場合でありますが、小売業、卸売業、製造業合わせて七百三十社を調査いたしまして、昨年の六−八月に比べて売り上げが減少していると答えたものは、製造業では一〇〇%、小売業が八七%、卸売業が六五%です。その落ち込み一〇%以下が二五%、一〇ないし三〇%減が四〇・五%、三〇ないし五〇%が三%、そして五〇%以上減が二一・五%であります。しかも売り上げ以外の影響としては、収益の悪化、在庫増、資金繰りの悪化、代金回収の遅延などを挙げて、約八〇%は今後の売り上げ減があるという報告をしているわけであります。  また、宮城県の場合は青森よりはずっと被害も少なかったわけでありますけれども、六−八月の調査で、千三百二十二業者のうちの七七・五%が冷夏のために売り上げに影響があったとして、売り上げが前年同期比で二〇%以上減ったものが五三・一%。全業種の平均影響度が一九%減となっている。要するにこういうふうに大変な影響がありまして、中でも家庭用機器、呉服、服地、寝具など、あるいはまた農機具等、こうしたもの等への影響もかなり大きかった。青森、宮城の例を申し上げましたが、福島でもあるいは秋田でも同じような傾向がございます。  そこで、こうした影響が今後さらに出てくることは間違いないわけでありますが、こうした地域等に対する対応策はどのようになされているものか、まずその問題をお答えいただきたいと思います。
  126. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  九月五日に総合経済対策の発表がございまして、その中でも特に中小企業につきましては、冷夏の関係もありまして緊急に手を打つ必要があるということで、現実に九月の五日、同日でございますが、各都道府県に対しまして私どもの方から指示を出しまして、一番こういった事態にふさわしい金融助成措置といたしまして中小企業体質強化資金制度というのがございますので、これをきめ細かにかつ機動的に活用するという方向指導いたしております。一つの例でございますが、青森県の場合はやはりこの制度を発動いたしまして、当初八億円という地方産業枠の使用予定でございましたけれども、これを一挙十八億円に拡大をいたしまして、さらに先行きまだ需要が多いということもございまして、あと数十億これに加えていくということによって対処してまいるという報告を受けております。  いま申し上げましたように、各県によりましてそれぞれの濃淡がございますけれども、その実態に即しましてきめの細かい融資が実施されますように指導いたしている段階でございます。何といいましてもこういう冷夏の影響その他につきましてのカンフル注射的なものは金融でございますので、そういった面からやっておるわけでございます。  それから、若干制度的に、間接の影響とは余り関係がございませんが、たとえば夏場に、アイスクリームとか清涼飲料とかあるいは麦茶とかあるいは花むしろといったような、直接打撃を受けた業種がございますので、これにつきましてはやはり信用補完制度上の不況業種の指定の制度がございますので、これによりまして九月十九日に追加指定を行いまして、御存じのように、別枠の信用保証枠を設定するとか、あるいは保証料率の軽減等の直接的な措置を講じておる次第でございます。
  127. 武田一夫

    ○武田委員 この中小企業体質強化資金助成制・度、伺いました。貸付金利がおおむね七・三%から八・三%、貸付限度おおむね一千万から三千万といいます。担保必要、保証人も必要。ない方は保証協会による貸し付けを受けるが、金利は一%上がるであろう。ですから一〇%近くになるかもわからないという話でありますが、大変な影響をもろに受ける企業の皆さん方に対する対応としては、まず金利が非常に高いのではないかと思うのです、しかもそういう条件があるとすれば。それにもう一つ、運転資金が三年ないし五年ですね。三カ月ないし一年据え置き。それから設備資金が五年ないし七年。六カ月ないし一年六カ月の据え置き。三カ月、六カ月という期間自体も問題ではないか。農業の場合は、大体今回の冷害によって回復までは三年は最低かかるだろうと見ているわけですから、そういうところの皆さんとともに生活なさっている企業の皆さんには間違いなくもろに並行してかかってくることは明らかだと私は見ているのですが、それにしてはやはりこういうふうな制度というものは貧弱だというふうに思うのです。これはもう少し実情を踏まえての制度、たとえば金利をもっと下げるとか、農業の場合は大体三%から六・五%というものがありますが、その辺の兼ね合いを十分考えてあげないとこれは相当きついのではないかと思うのですが、この点に対する特段の御配慮はあるのか、あるいはできないのか、その問題を伺いたいと思うのです。
  128. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  いま先生指摘のように、金利の点については残念ながら超低利というわけでございませんで、たとえば中小企業金融公庫等の基準金利の九・一%を考えますと、現在七・三%ないし八・三%でございますからそれほど高くはございませんけれども、おっしゃいますように、農業と比べますと確かに若干高いような感じがしないでもないわけでございますが、これはもともと制度の趣旨からいたしまして、農業の制度とは若干異なりまして、一般中小企業の場合、基準となりますのが九・一%ということもございますし、それから中小企業の場合はあくまでも量的な補完というところがまず第一でございまして、つなぎの金融をどうつけていくかということで量的な配慮をまずする必要がございます。  それから金利の方は、三年ないし五年かかって返すわけでございますか、これもなるべく低い方がもちろんいいわけでございますが、全体の金利体系とのバランスもございまして、そう極端なことはできませんので、現在のところ各県の自主的な決定で相当幅がございますが、七・三ないし八・三というところで決めております。たとえば青森県等の場合の例で申し上げますと、従来ベースで言いますとやはり八%前後でございましたけれども、これを七・六%あるいは七・七%といった低い水準に、今回冷夏の影響が青森県の中小企業にとって非常にショッキングである、これを緩和する措置として、量も先ほど申しましたように抜本的な措置をとりましたが、金利につきましても県当局としてできる限りのものをということで、コンマ数%引き下げておるわけでございます。  この辺は各県の実情にもよりますが、結論から申しますと、農業と同一というわけにはなかなかまいらぬと思います。ただ、各県におきまして、七・三%ぎりぎりのところまでサービスしようとか、何とか工面しようというような御意向がございましたら、私どもとしてもそれは資金配分その他の点におきまして協力は申し上げるつもりでございます。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 時間も少なくなりましたが、これから米の共済が行われまして、いろいろ金を、その他の維持資金等で農家の方々が借りる、それを今度商店の皆さん方に前借りをして買っているものに対して支払うというようなことで、私は、いまの共済から見ましても、維持資金等々の問題を見ましても、しばらく待ってくれや、こういうようなケースが相当出てくるというふうに考えておるわけですが、そういうときにそういうのが重なり、その他いろいろの状況で、今後暮れにいろいろな形で倒産などで苦労なさるような方がうんと出てくるのじゃないかという心配があるものですから、そういう実情をよくつかみながら適切な対応をしていただきたい、このことをお願い申し上げます。  最後に地場産業について詳しくお聞きしようと思ったのですが、これはまた後の機会でお願いすることにして、一つだけお尋ねしたいのは、要するに三全総における定住圏構想というものがはなばなしくスタートしたが、これが線香花火のようでさっぱりうまくいってない、特に工場誘致については。地方にはいまはもう全く来ない、こういう状況です。これが七〇年代の一つの大きな課題として取り上げられて、地域間の格差がこれによって少しずつ縮まってきただけに期待していたけれどもだめだ。最近の新聞でも特にそれが問題に、なっているようでありますが、要するに中央では企業を放さない、来てほしいという地方の要求はもう夢のような話になってしまったわけですが、今後、こうした地方と中央との関係の中における工場の地方分散というものに対して政府としてはどういうふうに調整していって、地方にそうした経済的な力を持たせ、地域間の所得の格差等を縮めていこうという努力をしていくか、この問題を一点だけ最後にお聞きします。
  130. 松村克之

    ○松村政府委員 政府全体の立地対策あるいは国土計画といったようなことについては別な省庁からもおいでになっておるわけでございますので、私の方からは最近の工場の地方立地の問題について現況を申し上げたいと思います。  三全総等にも織り込まれている、いわゆる工業再配置計画に基づいてわれわれは施策を展開してきているわけでございますけれども、この計画では、昭和六十年を目標にして全国のブロック別の工業出荷額のシェアでございますとか、あるいは誘導地域の新増設のシェア等について目標を定めているわけでございます。いま先生からお話ございましたように、計画策定後、経済動向が想定いたしましたよりも若干低目に推移しているといったようなことから、企業の新増設のレベルが下ってきております。したがいまして、いま申し上げました工業再配置の目標値に対する到達のスピードが鈍化しているのは事実でございますけれども、一方、最近に至りましてようやく企業の新増設に対する設備投資の意欲も若干回復してまいっております。たとえば最近の私どもの方で調査したところによりますと、五十五年上期の工場立地動向を見ますと、五十五年上期は五十四年上期に比べて、件数で一・二八倍つまり二八%増、敷地面積にいたしまして一・七六倍、つまり七六%増といったような数字が出ております。一方、これらの設備投資がどういった地域に行われているかという点でございますが、これまでの調査で見る限りは、いわゆる誘導地域、今後工場の設置を誘導していくという地域における工場立地の比率がここ数年ほぼ七〇%台ということでございます。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  132. 辻英雄

    ○辻(英)委員長代理 渡辺貢君。
  133. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 まず、今日の日本経済現状についての基本的な認識の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  先日当委員会におきまして、河本経済企画庁長官は十月十七日の所信表明の中でもこのように言っております。国民の賢明かつ冷静な対応の結果、いままでのところ第二次石油危機の影響が深刻化する事態を避けることができた、国際的にもこれはりっぱな成果として高い評価を受けている、こういうふうな所信表明がございました。また、同時に昭和五十五年度の経済白書を見ますと、随所に、わが国の経済はおおむね良好なパフォーマンスのもとに置かれている、あるいは中小企業の問題についてもそういう指摘が比較的多く出ているわけであります。つまり、いろいろ石油危機など第二次の危機に直面はしているけれども、賢明な国民の力、あるいは今日までの良好なパフォーマンスに支えられて、比較的日本経済は安定をしている、こういうふうなのがほぼ経済企画庁などの御見解だろうかというふうに思うわけであります。とりわけ経済白書は閣議の了解を受けて発表する文書であるというふうに聞いております。そういう点では、政府が発行する今日の日本経済についての共通の認識、共通の土台がこの経済白書の中に展開をされている、こういうふうに私は理解をいたしておりますが、特に、この中で各所に出てきております今日の日本経済を支えているパフォーマンスは何か、こういうきわめて原義的な問題でありますけれども、どういうふうな視点でとらえていらっしゃるのか、その点についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  134. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日本経済は、昭和四十八年の秋に起こりました第一次石油危機で大変大きな被害を受けまして、経済が大混乱に陥りましたが、その後約五年間いろいろな対策を進めました結果、五十三年の秋ごろより順次回復をいたしてまいりました。しかしながら、昨年来イランの動乱を契機といたしまして第二次石油危機が起こったのでございますが、幸いにこの第二次石油危機を比較的軽微な混乱のもとに切り抜けることができておりますのは、一つは、わが国の産業が過去数年の間生産性向上のためのいろいろな合理化努力をいたしまして、それがある程度功を奏しておるということ。それから第二は、省エネルギー対策が相当強力に進んでおるということ。それからまた、労使の関係が現在の経済情勢の認識において一致しておりまして、労使の協力によってこれを回避しようという理解があるということ。それから第四点は、国民の皆さんが第一次オイルショックのときには少しあわてて対応したけれども、そんなことをする必要はない、やはり日本では必要なものは買いたいときに買える、だから高い物は買わないようにしよう、こういう冷静な対応をしていただいておるということ。こういうことによりまして、比較的軽微にその影響は済んでおると思います。  したがいまして、この夏ごろまでは景気も打撃を受けることなく順調に進んでおりましたが、夏ごろからいろいろな要素が加わってまいりまして、景気の状態は必ずしもよくない、問題がある、こういうことから、いま政府の方といたしましては物価に十分配慮をしながら景気が悪くならないようにいろいろ対策を進めておる、これが現状でございます。
  135. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま長官から四点について述べられたわけでありますが、額面としてはそうだというふうに思います。しかし、この中身は大変重大ではないかと思うのです。  たとえば第一点に挙げられた生産性の向上、合理化の努力という問題でありますが、言葉で生産性の向上、合理化の努力と言ってしまえばそれまででありまして、常に企画庁や通産省が強調されている民間の活力を引き出してくるというのは、つまり企業の活力であり、大企業の活力である。そうなれば、こういう活力を引き出してくる上でも当然いわゆる減量経営など合理化は必要である、こういう観点に立たざるを得ないと思うのです。経済白書の中でも特に労働生産性上昇の問題について、石油価格の上昇など、つまりそのコストアップによるインパクトをとりわけ生産性上昇によって吸収することができたと大変高い評価をしているわけであります。  一体その生産性上昇とか減量経営、合理化はどういう問題かということになると、やはりこれは論議もされておりますように、国民の消費生活と大変深い関係があるというふうに見なければならないと思うのです。たとえば昭和五十年度を一〇〇として計算した場合に、労働生産性の伸びは、五十四年度で一四二・八%、大変な伸びを示しております。一方、その結果、賃金コストについては昭和五十四年度に比べて九七・八%、逆に賃金コストは下がっているというのが現実であります。とりわけことしに入って、一月を除いて二月以降六カ月間ほどほとんど実質賃金はマイナスの傾向を示しておりますし、八月についてもマイナス三・五%、こういうふうな状況にあるわけです。つまり、単純に合理化あるいは生産性の向上によってこれができたというだけではなくて、やはりそこで働く労働者がそれだけ生産性を高めるために大変な努力をしているんだ。一方、生産は伸びているけれども賃金コストは下がっている。逆にその結果、消費需要は減退してしまっているという問題について目を向けなければならないというふうに思うわけであります。その点についてどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  136. 田中誠一郎

    ○田中(誠)政府委員 ただいまの御指摘のとおり、実質賃金はことしの二月以降、七月を除きましてマイナスでございます。また、実質所得につきましても同じような傾向が続いておるわけでございます。その結果、実質消費が前年同期比で見ますとマイナスという状況にございますが、これは何分にも物価がこのところ、前年度で見ますと八%程度で推移するという形で、物価上昇の結果実質所得がマイナスになり、また、そういった中で実質消費がマイナスを示しているという状況かと思われます。したがって、消費者のコンフィデンスを回復いたしまして消費を回復するためには、物価の安定を図る必要があるということかと思います。そういった観点に立ちまして、先ほど大臣からも御説明申し上げましたとおり、九月五日に物価、景気両にらみの対策を決定したわけでございます。
  137. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 論議の中でも景気と物価の両にらみというふうな問題が指摘をされて、実質的な消費を拡大していく上でも物価の問題が先決だというお話でございますけれども、たとえば全国の勤労者世帯の実収入に占める非消費支出の部分、つまり所得税や社会保障の個人負担部分、この推移を見ますと、昭和五十年度を約一〇〇とした場合に、昭和五十四年度は一三七・九、つまり実質収入に占める非消費支出の部分がふえているという事実です。これは物価の上昇ではありません。所得税、これは三年間、今年度に入って四年目でありますけれども減税がない。あるいはそれに伴う同様な形での社会保障の自己負担部分の増加というものが、全体としては実質的には五十年に比べてふえている。さらに今年度五十五年度に入りますと、これは一月から八月の統計を平均値にしたわけでありますが、一五〇・六という数字を示しているわけであります。そうなると物価の安定という政策だけではなく、つまり非消費支出の部分が増大するというこの問題に対してどのような対応をしなければならないか、これが一つあろうかと思うのです。とりわけ最近郵貯なんかの増加が非常に激しい。つまり、消費者の皆さんが自己防衛のために、そういう物価の上昇あるいは福祉の低下の中で、あるいは子供の進学のために預貯金をふやす。賃金上昇の倍以上だというふうにも郵貯など預貯金の伸びが高いというふうに報道されているわけでありますが、やはり日本経済考えていく場合に、こうした国民生活の実態がどうなっているか、これは経済白書でも触れてはいると思うのですけれども、やはり経済運営の基本にこの点をきちっと据えていく必要がある。そうなればいわゆる物価調整減税の問題なども検討しなければならないというふうに思うわけでありますが、その点についての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  138. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 経済運営の理想は、国民生活が充実向上することだと思いますが、御指摘のように最近はその点が不十分でありまして、実質所得は減っておる、こういう状態が続いております。     〔辻(英)委員長代理退席、委員長着席〕 一方において生活は複雑になりますし高度化するということでありますから、実質賃金が減らなくても伸びなければ生活は苦しくなる。そこへさらに実質賃金が減っておるということでありますから、これはやはり相当深刻な問題だと私ども考えております。  ただ、しかし、残念ながら財政の事情が御承知のとおりでございますから、所得減税をするということは財政上とてもできる状態ではございませんので、やはり物価を安定させながら景気をよくしていく、その過程において実質国民所得がふえるような、そういう方向経済運営をしていかなければならぬ。現状では私どもも大変申しわけない状態である、このように理解をしております。
  139. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 各大臣の口からは財政再建のために減税は困難だというお話が共通して出てくるわけでありますが、減税だけではなくて実質所得をふやしていく上でも、たとえば賃金のアップを図るなども必要な一つの手段であります。十月二十一日の河本長官のお話の中にもあったと思うのですけれども、大企業の場合には、設備投資をやっていく場合に、ほぼ今日までの蓄積の中で自己資本を中心に新しい設備投資が可能だというふうなお話もございました。そういう点で政府のとるべきそうした減税などの政策とあわせて、とりわけ産業政策賃金問題というのはやはりきわめて重要な一つの柱になってこざるを得ないというふうに考えるわけであります。  そういう点から賃金実態や雇用の現状についてお尋ねをいたしたいと思うのですけれども、これは労働省の統計だと思いますが、昭和四十九年十二月と昨年五十四年十二月を比較してみた場合に、いわゆる大企業と言われている一千人以上の企業、これは金融や証券などを除くいわゆる製造業でありますけれども昭和四十九年十二月には雇用労働者総数が二百五万七千人、ところが昨年、昭和五十四年十二月には百五十八万八千人であります。つまりこの五年間にこれらの一千人以上規模の製造業では四十六万九千人減っている。つまり一人当たりの労働者の賃金が、実質賃金がマイナスであるというだけではなくて、この生産性の伸びの中には現実にはこういう雇用労働者の減少という面があるのだということを労働省の統計で述べているわけでありますが、この点は労働省いかがでしょうか。
  140. 三宅康雄

    ○三宅説明員 ただいま御指摘のあった点でございますが、私どもの毎月勤労統計調査によりますと、製造業における常用労働者は四十九年十二月の七百九十一万一千人から五十四年十二月には七百二十万七千人ということで、七十万四千人、八・九%の減少となっております。なお、これは調査技術上三年に一度サンプルを変えますので、その影響を除去しました常用雇用指数で見ますと、製造業では同じ期間に九・二%の減少となっております。(渡辺(貢)委員「千人以上のは」と呼ぶ)千人以上の先生指摘にあったとおりでございまして、製造業では四十九年十二月の二百五万七千人から百五十八万八千人と、四十六万九千人、二二・八%の減少でございます。これは指数をつくっておりませんので……。
  141. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 労働省の統計でもこういう減少の結果が見られているわけでありますが、その中で、特に日本の基幹産業と言われる鉄鋼業の場合、これも千人以上の場合には同期に二万六千人の減、電気機械器具製造業では六万五千人の減、自動車産業では一万三千人の減、最も高成長を遂げている分野においてもこういう減少が目立っているというのが特徴であります。  それではこうした大企業が労働者を減らしている、あるいは石油価格が上昇している、そういう中で一体採算面ではどうだろうかというふうな問題になりますと、逆に、これは最近の有価証券報告書から抽出して作成したものでありますけれども、鉄鋼の五社を見た場合に、新日鉄、川鉄、鋼管、住友金属、神戸製鋼、この五社を見た場合に、五社だけで従業員数は、昭和五十年三月と五十五年三月期を比べると約二万人減っておりますし、売上高はこの五年間に一兆三千九百五十九億円増加している。しかも経常利益も二千二百四十五億円増加している、こういう数字になっているわけであります。これは鉄鋼業であり、電機の場合にも同じ五社、日立、東芝、三菱、富士、松下、労働者は四万人減り、売り上げは二兆二千億円ふえ、経常利益も二千九十億円。自動車四社の場合には、トヨタ、日産、東洋工業、本田、これは従業員の減少は約千五百人で少ないわけでありますが、売上高は三兆六千億円、経常利益は四千百億円余りふえる、大変な伸びを示しております。  こうなると、一方で物価の抑制が必要だ、そして先ほど長官からお話がありましたように生産性の向上、合理化の努力によってこういうインパクトなども吸収をしていく、あるいは国民の勤勉さ、賢明さという問題があるわけですが、現実には日本の労働者階級がこうして大企業の中で生産性を高めて、しかも身を削りながら、労働者が減っていくわけでありますから、身を削りながらわが国の経済を支えている。つまり今日の日本の産業、日本経済の根幹をこういう労働者によって支えているんだという、つまり最も良好なパフォーマンスというのはここにあるんではないかという点を改めて私は強調いたしたいと思いますが、そういう点で白書やあるいは政府の経済政策の中で、こうした問題をひとつ明確に示しながら展開をしていただきたいというふうに考えますが、そういう点についての御見解を承りたいと思います。
  142. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 第一次石油危機が起こりました後、二、三年の間日本経済は非常に深刻な不況になりました。当時、構造不況業種というまさに破産寸前の状態になりました業種が十五、六もございまして、政府の方ではその構造不況業種に指定されました分野に対しましては格別の救済政策を進めたのでございますが、そこでどういうことをやったかといいますと、一つは過剰設備を廃棄する、時と場合によりますと政府機関がこれを買い上げる、こういうこともしております。いまお話しの鉄鋼業ではそういうことはいたしませんけれども、六十数基ありました高炉が二十数基火を消して、いま四十数基が動いておる、こういう状態でございます。自主的な設備の凍結をした、こういう背景がございます。過剰設備の凍結または廃棄、それをいたしますと当然人も減らさなければなりません。この点は非常に大きな犠牲であったと思います。それから同時に、その間新しい科学技術を取り入れました近代化投資を相当進めてまいりました。これによりまして国際競争力というものが目に見えて拡大していった、このように思います。  その二つによって生産性の向上というものが先ほど申し上げましたように急速に進んで、今回の第二次石油危機を乗り切る力というものができ上がった、このように理解をしておりますが、いまお述べになりましたように、その間たくさんの人が減っておるということ、これはおっしゃるとおりでございます。
  143. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そういう点で、とりわけいまの長官のお話でございますけれども、いろいろの努力があったことは事実だと思いますが、やはり経済の基本を国民に置くというのは政治の前提であるというふうに私は考えておりますし、そういう立場で一層の御努力をいただきたいと思います。  時間もありませんのでこの問題の最後になりますけれども、特に財界の方では経済の危機だ、もっと生産性を高めるようにということでいろいろの手も打っているようですし、同時に再軍備の促進、軍需産業を主張する、あるいは徴兵制の復活を主張するような財界人もいるわけであります。自分のところの労働者の首をどんどん切って、そして労働強化、減量経営をやって膨大な利益を上げて、それでも足りないで今度は軍需生産でやる、そして国民の税金によってさらに軍事費を増大して再軍備だ、こういうことは絶対に私ども許すことはできないと思います。そういう点で、わが国の産業政策を進めていく場合に、経企庁あるいは通産省はとりわけこういう点で勇気を持って対処をしていただきたいということを要望いたしたいと思います。  次に中小企業の問題について二、三お尋ねをいたしたいと思いますが、先ほど来から、すでに中小企業の倒産は九月千六百件を超えているという大変危機的な状況にあるという共通したお話であります。この中小企業の倒産の性格を見ましても、売り上げの不振であるとかあるいは原料高というような問題がそうした調査統計の中ではあらわれているわけであります。わが国の雇用総数の中で、中小企業で働く労働者の総数というのは八一%を占めておりますし、非常に高い水準にもございます。これはヨーロッパ諸国の産業構造日本との根本的な違いの一つであろうかというふうに思うのですが、この中で中小企業庁中小企業の問題については大変力を入れるというお話をたびたびされていらっしゃいます。  そういう点で具体的な問題で二、三お尋ねをいたしたいと思いますが、たとえば自動車にしてもあるいは機械、電機にしても同様でありますけれども、こうした基幹産業の末端ではとりわけ、機械ペットもそうでありますし、自動車のマフラーなどもそうなんですけれども、鋳物製品が非常に多く使われているのが現状であります。約二千七百余りの企業日本にはありますし、ほぼ年間四百万トンから五百万トンぐらいの銑鉄を使用して鋳物製品を生産いたしております。経済政策二つの柱として貿易立国の問題と地域経済政策ということを大変強く主張していらっしゃいましたが、とりわけ鋳物産業の場合は非常に地域性が強い産業であります。ところがこの鋳物産業を見た場合に、たとえばその原材料の銑鉄の値上げは五十年を一〇〇として見た場合に今日一二四・三%の原材料の値上げであります。さらにコークスは一三四・六%の値上げ、しかも一方では銑鉄鋳物の価格というのはわずかこの間に五・二%しか上がっていない、ここでも中小企業は同じように骨身を削るような思いで努力をしているわけでありますが、とりわけこうした中で素材になる銑鉄やあるいはコークスは生産の総額の中の約四〇%前後を占めている。最近もトン当たり三千円の銑鉄の値上げがありましたし、さらに伝えられるところではコークスがトン当たり七千円前後上げられる、こういうことが報道されております。これは地方紙でありますけれども大変重大な関心を呼んでいるわけでありまして、これらの問題について、特に中小企業の問題で、いわゆる金融問題だけではなくてこうした原材料の問題、こういうものに対して結果として値上げがされてしまった、どうも価格の内々の合意があったのではないかという、後追いではなくてすでにそういう問題が起きております。こういう点について現状をつかんでいらっしゃるか、またつかんでいらっしゃたならばどういう手だてが必要なのか。一つは価格の安定抑制の上で、もう一つはユーザーに対するいわゆる製品価格の値上げの問題でありますが、この二つの点についてお答えいただきたいと思います。
  144. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 鋳物業とコークス企業との間で現在価格の値上げ交渉が行われているということは私どもも承知をいたしております。この値上げの問題は、先生御承知のように、やはり企業間の取引の問題でございますので、私どもとして直ちに何らかの措置をとるという立場には現在ないわけでございまして、現在事態の推移をウォッチしておるという段階でございますけれども、私ども原局の立場といたしまして、よく業界とも連絡をとりまして必要な情報の提供なり何なりできることはいたしたい、かように考えておるわけでございます。  なお現在のコークスの状況等につきましては、所管のエネルギー庁の方から答えさせていただきます。
  145. 福川伸次

    ○福川政府委員 ただいまコークスの値上げ問題についてお触れになられましたので簡単に御説明させていただきます。  現在、業界相互間で個別企業ごとにコークスの値上げの交渉が行われているということは私どもも承知をいたしております。現在コークスの主原材料であります原料炭の価格は、最近輸入の原料炭が、特にバンカーオイルなどの値上がりによりまして輸送費が上がっておりまして、過去一年間で約二千円程度上昇いたしております。また国内炭も過去一年間で千六百円程度上昇いたしております。そのほか、コークスの副原材料でございますピッチあるいはオイルコークスなどが石油製品の高騰の影響を受けて相当大幅に値上がりをいたしております。もちろんコークス業界にいたしましてもあるいはまたその需要業界にいたしましても、省エネルギーあるいは合理化等々でそれをできる限り吸収をすべきことは当然でございますが、いまコークス業界がコークスにつきまして需要業界に値上げをお願いしておりますゆえんのものは、ただいま申し上げましたような原材料コスト上昇によるものと考えております。
  146. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 局長からのお話でありますけれども、先日の石油価格の問題でも、価格指導をやってもこれはカルテルに該当するというような判決だったというふうに記憶しておりますが、そういう単純な価格指導ということじゃなくて、全国的に共通している、産地を形成している地場産業でもありますし、しかも大企業の下請の性格が非常に強いそういう産業に対して、どう発展させるかという見地からの大企業製品に対する原料の抑制あるいは納品価格のアップということを私は主張しているわけでありまして、そういう点を含めて要望いたしたいと思います。  それから原料炭やピッチの問題、最近のいろいろな物価統計を見るとそんなには上がってないのですね。ところが、いま出ているのはトン当たり約七千円前後、現在五万五千円前後でありますから十数%です。こういうとんでもない値上げというのは、駆け引きもあるかもわかりませんけれども、ただ推移を見守るというだけの性格ではないだろうというふうに思いますので、その点さらに強力な対策を要望いたしたいと思います。  最後に二つだけお尋ねをしたいのですが、一つ中小企業庁にお尋ねをいたしたいと思います。  田中通産大臣が衆議院の本会議や当委員会でも御説明をされたわけでありますが、中小企業の年末の金融、金繰りの困難さの中で、政府系三機関について約一兆五千億円の融資を行う、こういうお話がございました。中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金合わせると、昭和五十五年度の当初計画では四兆七千九百五十四億円でありますが、現在までに幾らこの中で融資として消化されてきたのか。そして、もう十一月、十二月でありますけれども、さらにどれだけ融資の枠の上積みを進めていくか、この二点について簡単にひとつお答えをいただきたいと思います。
  147. 児玉清隆

    児玉(清)政府委員 お答え申し上げます。  今年度上期の貸付状況でございますが、政府系の中小企業金融三機関におきましては、これは三機関合計でございますが、四兆七千九百五十四億円の資金を全体として確保いたしておりまして、これは対前年度の実績比で申しますと一八・八%の増でございます。五十五年度上期、これは四—九月期でございますが、貸付状況は、これも三機関合計で申し上げますと、対前年度同期実績比で八・一%の増になっております。  それから、年末を控えまして下期の、特に第三・四半期の貸付計画でございますけれども、これは年末の金融繁忙期を控えておりますので、政府系の三機関におきまして、十−十二月期の資金枠といたしまして、先ほど先生指摘のとおりでございますが、三機関合計で対前年度同期実績比を二六%伸ばしまして一兆六千五百二十五億円という資金を現在用意いたしております。  三機関の今年度の上期の貸付実績が、対前年度同期比、先ほど申し上げましたように八・一%増でございますので、年末を控えましても中小企業資金需要の盛り上がりに、少なくとも量的な面では十分対応できるのではないか、このように考えております。
  148. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そういう点では、融資の条件の緩和等も含めてとりわけ御努力をいただきたいと思います。  最後に河本経済企画庁長官にお尋ねをいたしたいと思うのですが、三日ほど前でしたか、新聞の報道によりますと、九月五日決定した総合経済対策の八項目について、二カ月間ほど経過をする、年末を迎える中でフォローアップも必要ではないか、こういうふうなことがちょっと新聞に報道されていたわけでありますが、やられておるとすればその理由など、あるいはどういう方向でやられるか、御決意などもお尋ねをいたしたいと思うのです。  特にこの二カ月間、経済状況としては円も円高の傾向で二百十円前後、この中にはすでに来月早早の公定歩合の一%引き下げも見込んでいるというふうに言われている円高の傾向であります。これが経済状況にも大変さまざまな波紋を呼んでいるのではないか、こういうこともありましょうし、公定歩合を一%あるいは〇・七五になりますか、引き下げた場合のさまざまなアクシデントの問題があろうかと思いますし、冷夏など年末を迎えての影響があろうかと思うのですが、そうした点についての、これは新聞の報道記事ですから確認することはできないと思うのですが、私は必要ではないかというふうに思っておりますが、最後に長官の御見解をお尋ねして質問を終わりたいと思います。
  149. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 九月五日に八項目の対策を決めましたが、その一つは物価対策であります。残る七つは景気対策でございますが、物価対策につきましては昨日物価担当官会議を開きましてさらに強力にきめ細かい物価対策を、先般与野党で決めました五百億円の一部を使って推進していこう、こういうことを中心といたしまして十四項目の対策を決定をいたしました。  そして物価の方は、大勢としては大体安定の方向にいっておると考えておりますが、残る七つの景気対策につきましては、九月五日にこの対策を決めまして以降、冷害も当時考えておりましたよりもさらに深刻な状態になっておるように考えます。また、九月下旬にはイラン・イラク戦争が起こりましていまなお続いており、わが国の経済にもいろんな分野で大きな影響が出ようとしております。それからまた、この八月以降ずっと円高が続いておりまして、これが一体貿易にどのような影響を与えるのか、あるいはまた、現在は相当金利水準も高い状態でございますが、この金利水準が産業界に一体どういう影響を及ぼしておるか、特に中小企業にどういう影響があるのか、そういうことを含めまして、どうも景気分野ではやや心配な問題がたくさんございますので、七項目の景気対策がその後計画どおり進んでおるのかどうか、進んでおるとすれば大変結構でございますが、進んでいないとすれば一体問題はどこにあるのか、計画を決めましてからもう二カ月も立っておりますので、この辺で一回現状を正確に把握したいということで、中間報告をしながら意見を交換したい、こういうことで来月の十一日に関係者の間でそのような会合をすることになっております。
  150. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それで、とりわけ長官は閣僚会議の中でもリーダーシップをとられるというふうに聞いておりますので、ぜひ国民生活の安定と中小企業などの経済の安定的な成長のためにそうしたリーダーシップをとられることを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  151. 野中英二

    野中委員長 次回は、来る十一月七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会