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1980-11-28 第93回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十一月二十八日(金曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君       石原慎太郎君    太田 誠一君       小坂善太郎君    坂本三十次君       渡辺 省一君    井上  泉君       河上 民雄君    近藤  豊君       林  保夫君    金子 満広君       中路 雅弘君    田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 幸治君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         食糧庁次長   小野 重和君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設取得第一         課長      作原信一郎君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十三日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   小沢 和秋君     中路 雅弘君 同月十八日  辞任         補欠選任   林  保夫君     高橋 高望君 同月二十一日  辞任         補欠選任   高橋 高望君     林  保夫君 同月二十八日  辞任         補欠選任   北村 義和君     渡辺 省一君   渡辺  朗君     近藤  豊君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 省一君     北村 義和君   近藤  豊君     渡辺  朗君 同日  理事渡辺朗君同日委員辞任につき、その補欠と  して渡辺朗君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十一月十二日  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約早期批准に関する請願小林政子君紹  介)(第一七九六号)  日米安全保障条約破棄等に関する請願瀬崎博  義君紹介)(第一七九七号)  金大中救出に関する請願田中伊三次君紹介)  (第一七九八号) 同月十三日  日米安全保障条約破棄等に関する請願瀬崎博  義君紹介)(第一九八二号)  金大中氏問題の再検討に関する請願長谷川正  三君紹介)(第一九八三号)  金大中救出に関する請願阿部昭吾紹介)  (第一九八四号)  同(阿部哉君紹介)(第一九八五号)  同外七件(飛鳥田一雄紹介)(第一九八六号)  同外一件(五十嵐広三紹介)(第一九八七号)  同外一件(井岡大治紹介)(第一九八八号)  同(井上泉紹介)(第一九八九号)  同外一件(井上一成紹介)(第一九九〇号)  同外一件(伊賀定盛紹介)(第一九九一号)  同外一件(池端清一紹介)(第一九九二号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第一九九三号)  同(上田卓三紹介)(第一九九四号)  同(上田哲紹介)(第一九九五号)  同(小川国彦紹介)(第一九九六号)  同外一件(大島弘紹介)(第一九九七号)  同外二件(加藤万吉紹介)(第一九九八号)  同外二件(角屋堅次郎紹介)(第一九九九号)  同(金子みつ紹介)(第二〇〇〇号)  同(菅直人紹介)(第二〇〇一号)  同(木間章紹介)(第二〇〇二号)  同外二件(北山愛郎紹介)(第二〇〇三号)  同外一件(久保三郎紹介)(第二〇〇四号)  同(久保等紹介)(第二〇〇五号)  同外一件(串原義直紹介)(第二〇〇六号)  同外二件(小林進紹介)(第二〇〇七号)  同外一件(小林恒人紹介)(第二〇〇八号)  同(後藤茂紹介)(第二〇〇九号)  同(佐藤敬治紹介)(第二〇一〇号)  同(佐藤誼紹介)(第二〇一一号)  同外五件(清水勇紹介)(第二〇一二号)  同外一件(城地豊司紹介)(第二〇一三号)  同(新村勝雄紹介)(第二〇一四号)  同(新盛辰雄紹介)(第二〇一五号)  同外二件(鈴木強紹介)(第二〇一六号)  同外一件(関晴正紹介)(第二〇一七号)  同(田中恒利紹介)(第二〇一八号)  同外一件(高沢寅男紹介)(第二〇一九号)  同外一件(武部文紹介)(第二〇二〇号)  同(塚田庄平紹介)(第二〇二一号)  同外二件(中村茂紹介)(第二〇二二号)  同(楢崎弥之助紹介)(第二〇二三号)  同(野坂浩賢紹介)(第二〇二四号)  同(長谷川正三紹介)(第二〇二五号)  同(福岡義登紹介)(第二〇二六号)  同(堀昌雄紹介)(第二〇二七号)  同(前川旦紹介)(第二〇二八号)  同(松本幸男紹介)(第二〇二九号)  同(水田稔紹介)(第二〇三〇号)  同(村山喜一紹介)(第二〇三一号)  同(八木昇紹介)(第二〇三二号)  同(矢山有作紹介)(第二〇三三号)  同(山田耻目君紹介)(第二〇三四号)  同(山本幸一紹介)(第二〇三五号)  同外一件(山本政弘紹介)(第二〇三六号)  同(湯山勇紹介)(第二〇三七号)  同(渡部行雄紹介)(第二〇三八号)  同外一件(渡辺三郎紹介)(第二〇三九号)  同外一件(大原亨紹介)(第二〇四〇号) 同月二十一日  金大中救出に関する請願外一件(小川省吾君  紹介)(第二二五七号)  同外二件(勝間田清一紹介)(第二二五八号)  同(川俣健二郎紹介)(第二二五九号)  同(沢田広紹介)(第二二六〇号)  同外一件(嶋崎譲紹介)(第二二六一号)  同(島田琢郎紹介)(第二二六二号)  同(田口一男紹介)(第二二六三号)  同外一件(竹内猛紹介)(第二二六四号)  同(戸田菊雄紹介)(第二二六五号)  同外三件(広瀬秀吉紹介)(第二二六六号)  同(森井忠良紹介)(第二二六七号)  同(山花貞夫紹介)(第二二六八号)  同(米田東吾紹介)(第二二六九号) 同月二十二日  金大中救出に関する請願外二件(伊藤茂君紹  介)(第二三七三号)  同(枝村要作紹介)(第二三七四号)  同(大出俊紹介)(第二三七五号)  同(岡田利春紹介)(第二三七六号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第二三七七号)  同外一件(後藤茂紹介)(第二三七八号)  同(土井たか子紹介)(第二三七九号)  同外一件(永井孝信紹介)(第二三八〇号)  同(馬場昇紹介)(第二三八一号)  同(平林剛紹介)(第二三八二号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第二三八三号)  同(井上普方紹介)(第二三八四号)  同外一件(石橋政嗣君紹介)(第二四七八号)  同外一件(河野洋平紹介)(第二四七九号)  同外二件(田邊誠紹介)(第二四八〇号)  同外一件(藤田高敏紹介)(第二四八一号) 同月二十五日  金大中救出に関する請願上坂昇紹介)(第  二五〇九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十二日  ILO条約第百十一号の早期批准に関する陳情  書(第一七〇号)  ソ連軍アフガニスタン即時撤退に関する陳情  書(第一七一号)  イラン・イラク戦争終結等に関する陳情書  (第一七二号)  婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に関す  る条約早期批准等に関する陳情書外四件  (第一七三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  閉会審査に関する件  国際情勢に関する件  請 願  一 婦人に対するあらゆる形態差別撤廃に    関する条約批准等に関する請願福島譲    二君紹介)(第七号)  二 ILO批准条約等批准促進に関する請    願(上坂昇紹介)(第二一号)  三 同外二件(日野市朗紹介)(第二二号)  四 同(上原康助紹介)(第七六五号)  五 日米安全保障条約破棄等に関する請願(野    口幸一紹介)(第九九六号)  六 金大中氏問題の再検討に関する請願山本    政弘紹介)(第一四六四号)  七 ILO批准条約等批准促進に関する請    願(上原康助紹介)(第一六〇八号)  八 金大中救出に関する請願川口大助君紹    介)(第一七一二号)  九 同(野口幸一紹介)(第一七一三号)  一〇 婦人に対するあらゆる形態差別撤廃     に関する条約早期批准に関する請願     (小林政子紹介)(第一七九六号)  一一 日米安全保障条約破棄等に関する請願     (瀬崎博義紹介)(第一七九七号)  一二 金大中救出に関する請願田中伊三次     君紹介)(第一七九八号)  一三 日米安全保障条約破棄等に関する請願     (瀬崎博義紹介)(第一九八二号)  一四 金大中氏問題の再検討に関する請願(長     谷川正三紹介)(第一九八三号)  一五 金大中救出に関する請願阿部昭吾君     紹介)(第一九八四号)  一六 同(阿部哉君紹介)(第一九八五号)  一七 同外七件(飛鳥田一雄紹介)(第一九八     六号)  一八 同外一件(五十嵐広三紹介)(第一九八     七号)  一九 同外一件(井岡大治紹介)(第一九八八     号)  二〇 同(井上泉紹介)(第一九八九号)  二一 同外一件(井上一成紹介)(第一九九〇     号)  二二 同外一件(伊賀定盛紹介)(第一九九一     号)  二三 同外一件(池端清一紹介)(第一九九二     号)  二四 同(岩垂寿喜男紹介)(第一九九三号)  二五 同(上田卓三紹介)(第一九九四号)  二六 同(上田哲紹介)(第一九九五号)  二七 同(小川国彦紹介)(第一九九六号)  二八 同外一件(大島弘紹介)(第一九九七号)  二九 同外二件(加藤万吉紹介)(第一九九八     号)  三〇 同外二件(角屋堅次郎紹介)(第一九九     九号)  三一 同(金子みつ紹介)(第二〇〇〇号)  三二 同(菅直人紹介)(第二〇〇一号)  三三 同(木間章紹介)(第二〇〇二号)  三四 同外二件(北山愛郎紹介)(第二〇〇三     号)  三五 同外一件(久保三郎紹介)(第二〇〇四     号)  三六 同(久保等紹介)(第二〇〇五号)  三七 同外一件(串原義直紹介)(第二〇〇六     号)  三八 同外二件(小林進紹介)(第二〇〇七号)  三九 同外一件(小林恒人紹介)(第二〇〇八     号)  四〇 同(後藤茂紹介)(第二〇〇九号)  四一 同(佐藤敬治紹介)(第二〇一〇号)  四二 同(佐藤誼紹介)(第二〇一一号)  四三 同外五件(清水勇紹介)(第二〇一二号)  四四 同外一件(城地豊司紹介)(第二〇一三     号)  四五 同(新村勝雄紹介)(第二〇一四号)  四六 同(新盛辰雄紹介)(第二〇一五号)  四七 同外二件(鈴木強紹介)(第二〇一六号)  四八 同外一件(関晴正紹介)(第二〇一七号)  四九 同(田中恒利紹介)(第二〇一八号)  五〇 同外一件(高沢寅男紹介)(第二〇一九     号)  五一 同外一件(武部文紹介)(第二〇二〇号)  五二 同(塚田庄平紹介)(第二〇二一号)  五三 同外二件(中村茂紹介)(第二〇二二号)  五四 同(楢崎弥之助紹介)(第二〇二三号)  五五 同(野坂浩賢紹介)(第二〇二四号)  五六 同(長谷川正三紹介)(第二〇二五号)  五七 同(福岡義登紹介)(第二〇二六号)  五八 同(堀昌雄紹介)(第二〇二七号)  五九 同(前川旦紹介)(第二〇二八号)  六〇 同(松本幸男紹介)(第二〇二九号)  六一 同(水田稔紹介)(第二〇三〇号)  六二 同(村山喜一紹介)(第二〇三一号)  六三 同(八木昇紹介)(第二〇三二号)  六四 同(矢山有作紹介)(第二〇三三号)  六五 同(山田耻目君紹介)(第二〇三四号)  六六 同(山本幸一紹介)(第二〇三五号)  六七 同外一件(山本政弘紹介)(第二〇三六     号)  六八 同(湯山勇紹介)(第二〇三七号)  六九 同(渡部行雄紹介)(第二〇三八号)  七〇 同外一件(渡辺三郎紹介)(第二〇三九     号)  七一 同外一件(大原亨紹介)(第二〇四〇号)  七二 同外一件(小川省吾紹介)(第二二五七     号)  七三 同外二件(勝間田清一紹介)(第二二五     八号)  七四 同(川俣健二郎紹介)(第二二五九号)  七五 同(沢田広紹介)(第二二六〇号)  七六 同外一件(嶋崎譲紹介)(第二二六一号)  七七 同(島田琢郎紹介)(第二二六二号)  七八 同(田口一男紹介)(第二二六三号)  七九 同外一件(竹内猛紹介)(第二二六四号)  八〇 同(戸田菊雄紹介)(第二二六五号)  八一 同外三件(広瀬秀吉紹介)(第二二六六     号)  八二 同(森井忠良紹介)(第二二六七号)  八三 同(山花貞夫紹介)(第二二六八号)  八四 同(米田東吾紹介)(第二二六九号)  八五 同外二件(伊藤茂紹介)(第二三七三号)  八六 同(枝村要作紹介)(第二三七四号)  八七 同(大出俊紹介)(第二三七五号)  八八 同(岡田利春紹介)(第二三七六号)  八九 同外一件(川俣健二郎紹介)(第二三七     七号)  九〇 同外一件(後藤茂紹介)(第二三七八号)  九一 同(土井たか子紹介)(第二三七九号)  九二 同外一件(永井孝信紹介)(第二三八〇     号)  九三 同(馬場昇紹介)(第二三八一号)  九四 同(平林剛紹介)(第二三八二号)  九五 同外一件(山花貞夫紹介)(第二三八三     号)  九六 同(井上普方紹介)(第二三八四号)  九七 同外一件(石橋政嗣君紹介)(第二四七八     号)  九八 同外一件(河野洋平紹介)(第二四七九     号)  九九 同外二件(田邊誠紹介)(第二四八〇号)  一〇〇 同外一件(藤田高敏紹介)(第二四八      一号)  一〇一 同(上坂昇紹介)(第二五〇九号)      ――――◇―――――
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  まず、請願審査を行います。  今国会、本委員会に付託されました請願は百一件であります。  本日の請願日程を一括して議題といたします。  まず、請願審査方法についてお諮りいたします。  各請願の趣旨につきましては、請願文書表等によりましてすでに御承知のことと存じます。また、理事会等におきまして慎重に御検討いただきましたので、この際、各請願についての紹介議員よりの説明等は省略し、直ちに採否の決定をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。採決いたします。  本日の請願日程中、第一及び第一〇の請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました両請願に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕
  6. 奥田敬和

    奥田委員長 御報告いたします。  今会期中、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり八件であります。      ————◇—————
  7. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  9. 奥田敬和

    奥田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  10. 高沢寅男

    高沢委員 私は、きょうは赤坂にあります山王ホテル、ここがいま米軍施設として使われているわけでありますが、この移転に関係する問題について若干の時間お尋ねをいたしたいと思います。  初めに、防衛施設庁お見えになっていますね。では防衛施設庁最初にまずお尋ねをしたいと思います。  この山王ホテル所有者と国との問、具体的には防衛施設庁との間に明け渡し約束ができている、それはことしの十二月二十五日、こういうふうに聞いておりますが、もうその時期は目の前に迫っているわけであります。この明け渡しをするには、しかし、次のかわるべき施設ができてということになると思いますが、それはいまのところはまだめどがついていない、こういう段階で、この山王ホテル所有者と国との明け渡し約束はどうなるのか、最初にそれをまずお尋ねしたいと思います。
  11. 作原信一郎

    作原説明員 お答えいたします。  いまの先生おっしゃいました明け渡し期日、十二月二十五日ということでございますが、和解調書によりますと十二月二十六日を目途として明け渡すように努力するということになってございます。したがいまして、それまでにもうほとんど日にちはないわけでございまして、防衛施設庁といたしましては、代替施設取得計画の遅延から、御案内のように事実上十二月二十六日に明け渡すことが不可能な実態になってございます。  当庁といたしましては、代替施設取得計画を進めるとともに、現施設所有者に対しましてはそれまでの間の明け渡し時期の延期をお願いしているところでございます。
  12. 高沢寅男

    高沢委員 その延期をされるということに対して、相手側山王ホテル所有者の方はどういう対応ですか。
  13. 作原信一郎

    作原説明員 お答えいたします。  所有者の方は、現在明け渡すことができない事実は承知しておりますが、みずから使用したいということで強硬に和解条項の履行を迫っておりますので、それに対して私どもといたしましては、明け渡しの可能なまで暫時お願いしたいということで現在折衝しているところでございます。
  14. 高沢寅男

    高沢委員 時間が限られておりますので、次へ進みます。  そうすると、その代替施設をつくる、それは麻布の方へつくろう、安立電気の会社との話し合いでそちらにそういう施設をつくろうということで進められておりますが、この安立電気防衛施設庁との間の約束はどういう段階になっていますか。ちゃんとした契約が結ばれたのか、口約束ということで進んでいるのか、その現状をまずお尋ねしたいと思います。
  15. 作原信一郎

    作原説明員 お答えいたします。  安立電気株式会社と当庁の関係でございますが、私どもの方から安立電気株式会社に対しまして、安立電気所有地安立電気において代替施設を建設していただきまして、建設されたときに私どもがそれを借りて米軍に提供するということでお願いをし、向こうの了解を得ている、それは口約束でございます。
  16. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、正式な安立電気との契約ができるのは、そういうものがちゃんとでき上がった段階に初めてできる、それができ上がらなければそういう正式な契約にはならぬ、こういうふうに理解していいですね。
  17. 作原信一郎

    作原説明員 文書上のいわゆる契約行為ということになりますと、現実に建物が建って、賃貸借契約の対象になるものができまして、賃貸借契約を結ぶということになります。
  18. 高沢寅男

    高沢委員 これはもう私が言うまでもなく、あなたの方がよく御承知ですが、その麻布地区は非常に静かな高級住宅地であるということがありますし、あるいはこの地区には多くの学校があります。しかも、その学校の大多数は女子の学校である、こういう地区であるし、さらには多くの外国の大使館がたくさんある地区である、あるいはまた、この麻布地区には非常に多くの外国人居住者が住んでおられるというような地区の特性を持っておる。  そして、この地区においていま住民の皆さんから非常に強くそういう米軍施設が来ることに対する反対運動がある、このことはもう私が申し上げるまでもないと思うのですが、その反対運動というものに対して、現在防衛施設庁としてはどういうふうに受けとめて対応されているか、それをひとつ御説明願いたいと思うのです。
  19. 作原信一郎

    作原説明員 確かに山王ホテル施設は、在日米軍軍人軍属及びそれらの家族の宿泊会議等に使用されている施設でありまして、それにかわる同様の機能を持った施設を建設するということでございます。確かに先生のおっしゃったように、地元方々からそういった施設の来ることによる、まあ悪い影響が出るのではないかということで反対運動も起きていることも私ども承知しております。  しかし、私どもといたしましては、これらの施設宿泊会議等に使用される施設でございますので、地元方々あるいは学校関係者が御懸念をしているような事態は生じないというふうに考えておりますが、そういった方々が抱いておられます懸念につきましては、そういった事態が起きないように十分な予防対策を講ずる必要があると思ってはおります。したがいまして、本年初頭の港区長あっせん等を尊重して、そういった内容につきまして今後も関係方々具体策について話し合ってまいりたいというふうに考えております。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 こういう場合にあなた方は、そういう事態が起きないように万全の対策をと、こうよく言われるのですが、ところが実際にもしそういうものが進行していくと起こるわけなんですよ。起こってからさて後になってこんなはずじゃなかったということになると、行政のあなた方の立場も、まず第一にその地区住民人たちが大変なことになるということですから、私はむしろそういう可能性危険性を一〇〇%なしにするには別なやり方が必要になる、こう考えるわけですが、これについては今度はちょっと北米局長お尋ねをしたいと思います。  安保条約の運営に関する日米合同委員会ですね、これは日本側の代表としては北米局長が出られるということになると思うのですが、結局この種の問題というのは安保条約に関連することでありますから、日米合同委員会の問題にも当然なってくる、こういう性格の問題だと思いますが、いま申し上げたように実は非常に重大な事態になっていると私は認識します。  最近その地区にこういう看板が出たそうです。つまり米軍ホテルが来ては困る、こういう人たちが、ステイ・アウェイ・USネービー・ビレット米軍宿舎が来るのは御免だ、米軍宿舎はよそへ行け、こういうような意味の英語看板が立てられておる、こういう状況なんですね。  しかも、その地区に多くのアメリカ人居住者がいますが、その人たち自分たちの子供さんが聖心女子学院に行っておる、聖心インターナショナルに行っておる。もしこのホテルができて、しかも今度はアメリカは海軍が管理するそうですから、そうすると海兵隊とかいうような問題が出てくる。そういうことに対してアメリカ人居住者もみんな署名して、困る、反対だと言っておる、こういう状況が出ているわけであります。これはもう間違いのない事実であります。  そういたしますと、これをなお強行して進めていくということになると、ステイ・アウェイの英語合い言葉がそのうちにヤンキー・ゴー・ホームというような合い言葉にもなる可能性をはらんでいる、私はこう思います。そうなってまいりますと、外務省としては日本とアメリカも含めた外国との友好関係を進めるという大変大きな使命を持った仕事をされておりますが、いま現実に進んでいる事態はその友好関係をむしろ破壊していく、掘り崩していくというような結果を招きつつある、こういう状況だと私は判断します。  そういたしますと、北米局長として外務省の責任ある立場、同時に日米合同委員会の日本の代表としての責任ある立場で、この問題をどういうふうにお考えか。ひとつ局長のお考えを聞きたいと思います。
  21. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 山王の代替施設麻布につくるという件につきましていま施設庁からお話しがあった事情について、私たちも常時施設庁から連絡を受けておりまして、われわれとしてその間になすべきことがあればしたいということで、施設庁とも十分協議しております。  いまの高沢委員御指摘のとおり、まさに施設、区域の利用については地元方々の御理解を得るということが必要でございまして、それなくしては施設、区域の円滑な利用ということができない、かつ御指摘になりましたように、地元あるいはそこに住んでいる外国人の中でもそういう声が起きているということであれば、われわれとしても十分心配をして事態の円満な解決に臨まなければならないということでございますので、引き続き施設庁とこの問題について協議するとともに、さらに必要に応じて、私も合同委員会の代表でございますので、そういう地元の不満も踏まえながら、十分に地元の理解を得られるように、かつ今後そういうことのないように米側としても十分配慮するように、アメリカ側にも注意を喚起するということも考えて、この問題について対処していきたいと思います。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 いまの北米局長のお答え、非常に重大な関心を持っておられる、状況によってはアメリカ側へも注意を喚起する、ここまでのお答えが出たわけですが、私はそのお答えをもう一歩進めていただきたい、こう実は思うわけです。  さっき麻布地区に多くのアメリカ人居住者がおられると言いましたが、その人たち米軍ホテルが来るのは困るという反対の署名をして、アメリカ大使館に対してもそういう反対の申し入れといいますか陳情といいますか、ということをされているというふうに聞いています。当然アメリカ側もこの問題は十分状況を認識している、私はこういうことじゃないかと思います。  さて、その前提に立って考えた場合、私の手元にいま昭和四十六年の五月に当時のアメリカの国会のサイミントン委員会というところで、日本にある米軍の基地、施設の、そういう住民とのいろんなトラブルとか問題を論議した議事録の記録があるのですが、その記録の中では、アメリカの国防次官は、基地に対してそういうふうな問題が周辺の住民との関係で起きたとき、アメリカとしてはどうしても基地施設はその場でなければ困るというように固執する考えはないんだ。それを提供する日本側から、かわりにこういう場所がある、こういうところへというふうなものが出てくれば、アメリカの方としてはそれでいいんだ、こういうふうなことをサイミントン委員会の記録の中でも私は読むことができるわけです。  そういたしますと、いまの麻布につくる問題はまさにそういうケースになってきている、こういうことだと私は思いますから、このことをアメリカ側にも提起して、そしてそういうトラブルの起こる心配のない、もっと適切な場所にということでアメリカ側とお話しになる。それには前提として、日本の政府の方針として、麻布という場所を見直すということについての一つの方針決定をされて、そして見直しをアメリカ側との話し合いでされるというようなことが私は必要じゃなかろうかと思いますが、これは淺尾局長の御見解、さらにはまた、これについて大臣の御見解もお聞きをしたいと思います。
  23. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 代替施設については、長い間いろいろの候補地を検討した結果、いまの麻布というのがほかにかわりのないという土地で施設庁が選定し、現在安立電気と話を進めているということでございますので、地元事態が非常に切迫しているということは十分承知しておりますけれども、いまここでにわかに別の代替地を見つけるなり、あるいは山王ホテルを継続して使ってもらうということを約束することはできないと思いますので、私の職分としては、現在候補に挙がっている土地が将来摩擦が起きないように、先ほど申し上げましたような態度で、アメリカ大使館にそういうような陳情というのが来ていれば、これは何も合同委員会に限らず、アメリカ側と十分に話をしていきたいということでございます。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、もう一つ私から申し上げて、それから大臣の御見解を聞きます。  私は、安立電気との話し合いでこの場所にということでスタートした、これは一つの表現をすれば、適当でない地域につくろうということを決められたということは、最初のボタンがまずかけ違っているということだと思うのですよ。このかけ違ったボタンをさらに次々にかけていって、そして仮に強引にそういう施設ができたとして、そこに来る海兵隊の兵隊とかいうようなことでその地区の子供さんとかあるいは女子学生とか何かのトラブルがあったと考えた場合、恐らく麻布地区住民人たちは——とにかくわれわれ日本人から見ると、白人というのはその人がアメリカ人であるかフランス人であるかドイツ人であるかというのは区別がつかぬです。そうすると、そういう事件が起きますと全部そういう白人は敵に見えてしまうということにもなってまいります。そうすると、さっき言いましたところのヤンキー・ゴー・ホームということにも、この東京の最も中心的な都心部でそういう闘いも起きてくるということにもなっていくと私は思うのです。  これは私は先ほども言いました、いま外務省でも、あるいは日本政府として進めておられる外国との友好関係、そのことは結局ドイツにもぶつかっていく、フランスにもぶつかっていく、イタリアにもぶつかっていくということになっていくと私は思う。というようなことを考えますと、最初のボタンのかけ違いはこの辺で、まだ次のボタンへいってないのですから、ここで最初のボタンというものをきちんと直すということにされるのが適当だと私は思います。  ここですぐ、じゃそれにかわるものはこうだ、こうやれ、こういう手があるということを申し上げる材料は私もありませんが、しかし、みんなでひとつこの問題の最初のボタンのかけ違いを直そうじゃないかということになれば、私はおのずからこれならいいという一つの解決策は出てくる、こう考えるわけですが、そういう立場に立ってこの問題の見直しをひとつしていただきたい、こういうお願いを申し上げて、これについての伊東大臣の御見解を聞かしていただきたいと思います。
  25. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げますが、この問題につきましては、私が実は首を突っ込んで、こうやっているからこうというような意見を言ったりしたことはいままで一回もないわけでありまして、いま施設庁と先生、北米局長と先生のやりとりを伺っていたのでございますが、友好関係ということは大切だということも、これはよくわかります。また、二年間、施設庁はずっと交渉、折衝をやっておられたという積み重ねもあるわけでございますし、いまにわかに、私ここでこうしたいと思いますというお答えをするわけにいきませんが、問題の所在その他をよく聞きまして、どういうふうにしたら一番いいかということは、これは検討することは当然でございますが、施設庁の方々が努力しておられることをまずよく伺ってから相談をしてみたい、こういうふうに思っております。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 私は、いまのそういう私の申し上げた要望を重ねて申し上げて、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  27. 奥田敬和

  28. 土井たか子

    ○土井委員 金大中氏の大法院における審理の見通しは非常に暗いというのが、いま一般の見方であるようでございます。中でも最も深刻なのは、判決はもう死刑ではないか、そうして死刑が確定した後、直ちに処刑されるのではないかという、そういう一般的読みというのが、ここ二、三日大変濃厚になってまいっております。けさほどの二ユースでも、治安当局は金大中氏について、その裁判と刑の執行の見通しを出しておられるようでありますけれども、死刑執行が年内に行われるという可能性がきわめて強くなったということを明らかにされているようであります。  まことにこうなってしまったのではもう取り返しがつきません。こうならないことのために、いま外務省としては最大限の努力をされている、そのはずであると思いますが、大臣、いま外務省としてはどういう努力をされているということになるわけでありますか。
  29. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  裁判の見通しにつきましては、私どもからとやかくこれは言うべきことでないので、どういう見通しになるかということは一切言ったことはございません。ただ一審、二審は御承知のような判決でございますし、大法院というのは書類審査をやるところでございます。一審、二審の経過からすれば案外判決の出るのは早いのかなということを実は考えておりまして、たしかここでもお答えしたことがあると思うのでございますが、時期としては、そういう判決が出る時期も切迫しているのではないかということを、私、申し上げたことがあるのでございます。  外務省としましては、従来外交ルートを通しまして、向こうのソウルの日本の大使から先方に意向を伝え、あるいは駐日韓国の大使に深い憂慮の念を伝えるというような方法でやっております。  その他、できるだけの方法ということで向こうに意向を伝えることをやっているわけでございますが、正規なルート以外にどういうことをやっているかということにつきましては、これは先生、ここで一々、こうやっておりますというようなことを申し上げるのはひとつ差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、できるだけの努力はして、何とか目的が達成するようにということを今後もやってまいるつもりでございます。
  30. 土井たか子

    ○土井委員 できる限りの努力ということを外務省としてはおっしゃる以外におっしゃり方がないのではないかとも思われるわけでありますけれども、先日、二十一日に鈴木総理と崔韓国大使とが会談をされた節、当初の日本の新聞報道によりますと、鈴木総理が重大な関心と憂慮を持っていることを相手方に伝えられたという新聞報道のみでありました。その後、韓国側においては、この節の鈴木総理の発言に対して大変、向こうの報道を通じての国内での批判、反発というものが具体的に起こったというふうなことも、また新聞報道を通じてわれわれは入手をしているわけでありますけれども、この間の事情についてはどういうことなんですか。ひとつ御説明を賜りたいと思います。
  31. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理のところへ崔大使が表敬訪問に来られる、来たいという希望が前からあったわけでございます。それで、こっちへ見えましたから、信任状奉呈が終わってから総理のところへ表敬訪問に行ってないので来たいという話がございましたので、総理もそれではそういう表敬訪問であれば受けようということで日時が設定されたわけでございます。  そのときに外務省からも総理に、いままで崔大使にもあるいは向こうの大使を通じましてもいろいろな日本側の意向を伝えてあります、総理もお会いになる機会があれば、これは総理の口からもひとつ日韓関係の将来の友好関係を維持していくという友人の立場ということで意向を伝えてもらうのは非常にいい機会じゃないかということで、実は外務省からも総理にお願いをしたという経緯はございます。そして総理が崔慶禄大使と話されたわけでございますが、会談は、私ども終わってから聞きましたのは、非常に友好的な雰囲気で終わったということを聞いているわけでございます。  しばらくそのままであったわけでございますが、突然韓国の新聞に報道された。その報道の中身も、若干総理が言われたこととは違ったことが報道をされているということがあったわけでございまして、ちょうど日本の大使がこっちへ来ておりましたので、村岡公使が向こうに呼ばれまして事情を説明してもらいたいというようなことで行きましたときに、村岡公使からも鈴木総理の真意を伝えるということをやったわけでございまして、その後は向こうの韓国政府の外務部の人が、鈴木総理の話は新聞とはニュアンスが違うことだというような説明をしておられるようなことが、日本の新聞に出たわけでございます。  ただ、内容につきましては、鈴木総理と先方の大使との話ということでございますので、ここで私からそれを一々、総理はこういう話をしたということを申し上げるのは差し控えたい、お許しを願いたいと思うのでございますが、私はいつも申し上げておりますように、この結果日韓関係にひびが入るようなことになることを非常に心配しているという気持ちは前と同じでございます。  だれがどういうふうに新聞に言ったかということは、私ども韓国の国内のことでございますのでよくわかりませんが、事情はいま申し上げたような事情でございまして、総理の意向がどうも若干曲げて伝わっているというふうに私どもは考えております。
  32. 土井たか子

    ○土井委員 韓国内の新聞の紙面では、残念ながら少し総理の発言が曲げて伝えられたといういきさつがあったということも、いまの御答弁の中で明確に出ているわけであります。  そういたしますと、一つ一つ崔大使との間での会談の中身についてここでお答えをいただくというわけにはいかないかもしれませんが、大体のところは、もし金大中氏が処刑されるような事態ということにでもなれば日本政府からの対韓協力というものはむずかしくなる、またもう一つは、新聞紙上で伝えられるところによると、野党側から北朝鮮との交流促進を進めるという動きが出てくる可能性がある、こういう趣旨のことを総理としてはお伝えになった、このことは確認をしておいてよろしゅうございますね。
  33. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 御質問でございますが、総理と崔大使との話の内容はひとつ御勘弁を願いたい。  私が前から答弁しておりますのは、もしもそういう事態になると日本の国内で経済協力の問題を初めとしていろいろな意見が出てくるだろう、そうすれば日本と韓国の間の友好関係にひびが入るような心配が出てくるので、そういう事態にならぬように、国内の世論がそういうことになったら大変だというようなことを私はここでお答えをしでいるわけでございまして、その気持ちは私ら日本政府としてはみんな持っているところでございます。  総理と崔大使の話がああいうふうに新聞に出まして、いろいろ両国民の間にまずい感じが出るというようなことをみんなが心配しているわけでございまして、あの問題はひとつもう触れないで、あれを大きくしないで鎮静化して、韓国側の裁判の推移を見ていく。われわれはわれわれの意向をまたひそかに向こうに伝えるということでやっていきたい、あの問題を契機にして非常に感情的な対立とかそういうことが起こらぬように、われわれとしては何とか鎮静化していきたいというような気持ちでおるわけでございます。
  34. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、外務大臣、いまの御答弁でございますが、これを順を追って申し上げますと、私が確認してよろしゅうございますかと言った内容というのは、日本の国内においてはもうすでに政府筋の説明によって新聞紙上で明らかにされているのです。  実は、総理は大使との間でこういうふうな中身の話を持たれて、こちらはその後、新聞紙上では総理自身は重大な関心と憂慮を持っていることを伝えられたという非常に配慮ある報道にとどまっていたにもかかわらず、一部残念ながら、先ほど大臣がお答えになりましたように、韓国側で事実とは違うような報道がなされたことのために、日本側で、政府筋の説明で、実は総理は大使との間でこういうふうな話し合いをされたのであるということを再度中身にわたって説明せざるを得ないようなことになっていたのではないですか。  もし韓国側でこの総理の発言に対して新聞が取り上げ、そして韓国側でいろいろなこれに対する反発を含めての反応がなければ、恐らくは当初の、重大な関心と憂慮を相手方に日本側が伝えたというにとどまったあの記事でとどまっていたと思うのです。しかし、わざわざ政府筋の説明というのが必要になってきたという由来も考えてまいりますと、いま大臣は鎮静化する方向でとおっしゃいますけれども、こちらとしては最大限の配慮をやって事を鎮静しよう、鎮静しようとしても、その効果というものがこちらの予期どおりには出ていないということが、この事実を見ても証明されるのではないでしょうか。  私は総理のこのときに言われていることはごもっともだと思いますよ。そして、政府筋の発表による中身というのはあたりまえのことをおっしゃっている。この総理の発言というのは支持いたします。当然だと思います。中身については別に内政干渉にわたることでもなければ圧力をかけていることでも何でもない、当然のことだというふうに考えております。  そういうことで大臣にお尋ねを進めたいのですが、鎮静化、鎮静化とおっしゃるのですけれども、しかし、こちらの配慮することに対してそれだけの効果がいままでに上がってきたかどうか。いま時期的には非常に重大な時期です。金大中さんの命が危ないというときなんですね。このときに、ただいたずらに静観をするということ、静かに見守るということが本当にわれわれの念願していることが達せられる方策になり得るかどうかというのは、いま私が申し上げたことからして、本当に安心できないと私は思っているのです。  そういう意味を含めて、あの総理の発言は内政干渉に当たらないというふうに私自身は考えていますが、外務大臣としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  35. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理も崔大使に話をされるときは、非常にそこに注意をして話されたということを聞いております。これは本当に日韓の友人関係としてお話しをするのだということ、内政干渉にわたる、そんなことは全然考えているのじゃないのだということをちゃんと言われて、そしていろいろ御意見を向こうに伝えられたということを聞いているわけでございまして、総理のおっしゃったことは、内政干渉とかそういうことは全然考えておられぬ、日韓の友好関係をどうやったら維持できるかという心配を頭に置いて憂慮の念を向こうに伝えられたということでございまして、総理は内政干渉をするとかそういう意思は毛頭持っておられぬ。でございますので、われわれもそう思っております。
  36. 土井たか子

    ○土井委員 どうも憂慮、憂慮とおっしゃる憂慮の中身が違ってきているように私は聞こえてならないのです。当初から外務省が憂慮されている中身というのは、金大中氏の自由であり生命じゃないですか。その問題に対して憂慮というものを今日ただいままで払ってこられているとわれわれは受けとめております。しかし、いまの御発言のニュアンスからにじみ出ている中身というのは、日韓間の関係がいろいろ悪くならないように憂慮する、金大中氏の自由であるとか生命であるとか安全であるとかいう問題よりも、むしろ日韓間のお互いの関係の方が大切なんで、その関係が悪くならないような意味における憂慮というふうに聞こえてならない。  これは私は間違いだと思いますよ。あくまで憂慮の中身というものは、いまこの問題について言うならば金大中氏の安全であり、そして命の問題であり自由の問題でなければならないと私は思うのです。  大臣、その点は確かですね。
  37. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答えしますが、私の言葉が足りぬでそういう誤解を先生に与えたとすれば、まことに申しわけないのでございます。日韓関係が悪くなることと言いましたその原因は金大中氏の身辺にもし万一のことがあればということで、あくまでも金大中氏の身辺ということをもとにして考えておるわけでございまして、深い憂慮の念を持っているということは、金大中氏の身辺についていままで重大関心があり深い憂慮ということを言ったのでございまして、私の言葉が足りませんでしたことはおわびしますが、その結果、またこういうことになるおそれがあるのですよということを言ったわけでございまして、その点は同じでございます。
  38. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、先ほど内政干渉には総理発言は当たらない、これは明確に大臣もお答えになっていらっしゃるわけでありますが、当然のことだと思います。なぜかというと、これは日本の問題だからですよ。日本政府の問題であるからです。政治決着という日本政府も責任がある問題について、今日ただいまの金大中氏問題は政治決着からの延長線上にある問題だという意味において、日本政府自身の問題なんです。  一つお尋ねをいたしますけれども、こういう拉致事件などが起こりました場合に、関係当事国の間ではいろいろこれを取り上げて問題にしていく方策が国際慣例上考えられているはずだと思います。いろいろな例がいままでにございましたが、それに対して取り扱いの上でこれだけは必要最小限度考えなければならないという国際上のいろいろな慣例と申しますか、行き方に対しての慣行と申しますか、こういうものがあるわけでありますが、金大中氏事件直後、あの七三年当時問題にされてきた幾つかのこれに対しての取り扱いの中身について、大体こういうことを原則として満足させていかなければ、必要最小限度の国際慣行からすると、われわれとしたらどうも不本意であるという線があったはずでありますが、これは一体どういうことにこの問題の基本を置いて韓国側との間のいろいろな交渉に当たられたか。その取り扱い方についてこういう問題点、こういう問題点というのを挙げていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  39. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 もし足りませんでしたら詳細は政府委員からお答え申し上げますが、あの当時を振り返ってみまして、主権の侵害があったかどうかということが一番大きい問題じゃないか、こう私は思うわけでございますが、この問題につきましては、政治決着はしましたがまだ捜査は終わってないわけでございまして、だれが犯人だったか、あるいはそれは主権的行為であったのかどうかということに問題があるわけでございますが、この点は捜査当局がまだ捜査をしているということでございまして、あの政治決着をやりました段階では主権の侵害がなかったということで、当時の責任者が高い立場に立って政治決着をつけたわけでございます。  ただ、この政治決着は新しいそういう証拠が出てくれば見直すことがあるということを前提にしました政治決着をやったわけで、捜査当局はまだ残っているというのが現状でございます。あの段階では、いまお答えしましたように、これは主権の侵害、公権力の介入はなかったということで政治決着をした。しかし、だれが犯人であるかというようなことについてはまだ捜査が続いているというのが現状でございます。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 ある一点についてだけいま大臣はお答えになったわけでありますけれども、時間の関係から私申し上げましょう。  当初の日本側のいろいろな主張の中には、大きくしぼりまして大体四点あったというふうにわれわれは理解をいたしております。一つはいまの責任者に対しての処罰の問題、これは大臣がお答えになった中身でありますが。言うまでもなくそれに先立って謝罪がある。それからさらには、再びこういうことを起こさないという将来にわたるところの保障ですね。それから、何と言っても原状回復の問題があった。これは一番大切な問題であるというふうにいまに至っても国民の多くは考えているのです。  当初外務省としてはこのことに対しての主張を続けられたように私どもは理解をいたしておりますけれども、その後突然、あの七三年の十一月、臨時国会前に事を片づけるべきだというふうな本国からの訓令がございまして、急遽政治決着に向けて時間的には非常に急がれたといういきさつがあることを承知いたしておりますが、そのとおりですね。
  41. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 お答え申し上げます。  金大中事件が当時昭和四十八年八月八日発生いたしまして、その間日本の捜査当局を初め鋭意真相の解明に努力したわけでございますけれども、いま大臣からお話がありましたように、韓国側の公権力による介入の事実については、疑いがございましたけれどもそれを認定するに至らなかったということで、当時の日本政府の首脳がいわゆる政治決着、了解というものに達したわけでございます。その期日は四十八年十一月二日ということでございます。
  42. 土井たか子

    ○土井委員 いまのはお答えになっていらっしゃらない御答弁なんですが、わかっていてわざわざそういう御答弁をなすっていらっしゃるのだろうと推測をいたします。  いかがですか、大臣としては、当時の事情についてはつまびらかでないとおっしゃるかもしれませんけれども、しかし、これは当時の外務省としては、原状回復に対しての日本側の主張というものを非常に強力に努力をし続けられた、主張をし続けられたといういきさつがあることを私たちは承知しているのです。そういうことがございましたね。
  43. 渡辺幸治

    渡辺(幸)政府委員 先ほど大臣から御報告がございましたように、韓国側による公権力の介入ということが立証されなかったということで、日本国政府としては金大中氏の原状回復ということを要求し得る立場になかったということかと思います。
  44. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、それは後で言える問題でありまして、当時の交渉段階においては、鋭意交渉されている外務省当事者に対して、ある日突然、十一月の臨時国会前に事を収拾するようにという訓令が出されたといういきさつがあることを関係者から私は聴取しているのです。したがいまして、そういうことからいたしますと、やはり事を非常に急いで収拾せざるを得なかったといういきさつもあるようであります。  原状回復について、主権の侵害があるかないかということが問題になり、侵害がなければこの原状回復ということに対してさらに主張するという根拠がないと言われているのは、それは後で問題になっている理由づけでありまして、当時の交渉段階においては一点やはり日本の政府に対して国民からすればぬぐい去ることのできない疑惑というのは今日に至るまである。この政治決着が実はずっと尾を引いて今日に至って、この政治決着の延長線上にある問題として、ただいま金大中氏自身の命が危ない、こういう状況下にあるというふうに考えなければならないと思うわけであります。  このことからすると、いろいろ日本政府として措置をおとりになるのは、韓国側に対して何ら内政干渉にわたる問題じゃないと思うのです一これは日本政府自身の政治責任ですよ。このことを私たちとしては言わざるを得ない。  そういう気持ちで外務大臣、事に処されるということをおっしゃっていただけますね。よろしゅうございますか。
  45. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先生おっしゃいました原状回復とか謝罪とか保障、処罰、当時いろいろあったと私もこれは考えられます。ただ、政治決着をして、主権の侵害がなかった、公権力の介入がなかったということを前提にしますと、いまのような問題は出てこないということに、その結果からなるわけでございまして、従来そういう考え方を持っておるわけでございます。  それから、いまの、これからの対処方針でございますが、これは政治決着はあったということでございますが、拉致事件ということがあったことも事実でございますから、そういうことを私どもは頭に置きまして、やはり金大中氏の身辺というものについては日本側としては重大な関心があるのだということを私ども申し述べておりますのは、この拉致事件があったればこそということでございますので、そういうことを頭に置きまして、今後とも韓国側にいろいろ日本の考え方を伝える、最後までひとつ努力をしてみようということでございます。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 金大中氏の問題に対しては、あってはならない最悪の状況、しかしながら、現状からするとまことにこのことに対しては不安でならない、大変深刻な状況であります。そういう中であと二点、私は、先日の総理発言に関係をするところでひとつ外務大臣からの御答弁をぜひぜひ聞かせておいていただきたいと思うのです。  一点は、朝鮮民主主義人民共和国との関係であります。この中身というのは、金大中氏事件の問題とは全く別件のことでありまして、これとは関係ない。したがいまして、日本の自主的外交という立場から申し上げますと、全く日本独自の自主的外交という立場で、韓国にとやかく言われる筋合いの問題じゃないと私は思うわけでありますが、外務大臣いかがでございますか。  外務大臣とされては、朝鮮民主主義人民共和国との間でのいろいろな交流というものに対して従前どおりに鋭意できる限りの努力を積み重ねていきたいという御所信のほどを私ども承っておりますけれども、そのことにおいては従来どおり全く変わりはないし、これからもあらゆる努力を払いたいというお気持ちでいらっしゃいますね。
  47. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国との関係は何回もお答えを申し上げまして、経済面、文化面等で交流とか貿易とかということを積み重ねていくという態度につきましては、私は変わりございません。日本政府としては、朝鮮半島全部の平和というものが大切なんだ、それが日本の、アジアの平和、安全に大いに影響のあることだという認識は私は持っている次第でございますので、今後ともこの問題につきましては真剣に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 先日の二十一日に、総理が崔大使との間の会談でお話しになったであろう政府の対韓協力の問題というのは、すでに九月二十二日の夜のNHKテレビで鈴木総理が「総理にきく」という番組の中で述べておられることを再度おっしゃっているにすぎない問題だと私は思っております。  あの「総理にきく」の番組では実に明確に、日韓関係は非常に大事だ、隣国なので経済が一層発展し、国内も安定することを、アジアの平和のためにもこいねがっている、このため技術援助、経済協力などが大事になり、韓国からも要請がある、このような協力関係を続けていくにつけても、金大中氏の問題が日本が憂慮しているような事態にならないようにしないと、日本政府が手を差し伸べるためにも非常に制約を受けるわけだ、そのことははっきり申し上げたいし、韓国政府にもはっきり伝えてあるというふうなことをしっかりと述べておられるわけであります。このことのとおりを再度おっしゃっているにすぎないわけでありまして、当然のことだと私たちは思うわけであります。  そこで、外務大臣、お尋ねをしたいのは、具体的には来年一月に手続を完了する予定にすでになっております外交ルートでの交換公文の詰めが行われております円借款の問題であります。来年度分が百九十億円、問題にされているわけでありますけれども、この対韓円借款の問題も含めて、もしも金大中氏に対しまして取り返しのつかない、刑が執行されるというふうなことになれば、大臣とされては、これ自身を撤回するということも含め見直さざるを得ないということをお考えの中に含めていらっしゃるかどうか、この点いかがでございますか。
  49. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理がテレビでおっしゃったことは、われわれと全然同じ考えでございまして、総理にも常に申し上げておきましたし、外務省としても向こうにそういう意向を伝えるということをやっておりましたので、総理も明快にお答えになったんだろうというふうに思うわけでございます。  私も何遍も言っておりますが、もし金大中氏の身辺に万一のことがあれば、閣僚会議でございますとか、先生のおっしゃいましたようなそういう経済協力の問題でございますとか、いろいろな問題について国内から必ずいろいろな声が出てくるだろう、そういうことになりますと、日韓関係を円満に円滑に友好親善をやっていくということに大きなひびが入るおそれがあるからということを私は何回もお答えをしているわけでございまして、そういう声が出てくるだろうと当然私は予想しております。  そういう際に政府がどういうふうな態度をとるんだということは、裁判の確定もいたしておりません先にこういうことをしますというふうなことはまだ相談もしておりませんし、私がここで申し上げるべき筋合いのものでもないわけでございますが、いま先生のおっしゃったようなこともみんな考えなければならぬ、どうしようかというような問題に入ってくるというふうに私は思っております。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 最後に、これは本当にあってはならないことでありますけれども、もし金大中氏に対して具体的に刑が執行されるということの後、すでに八月段階で外務大臣が国会答弁の中で、もし極刑に金大中氏が処せられるようなことになれば政治決着見直しの声が上がり、日韓関係にひびが入りかねない、こうおっしゃっているわけでありますが、事もうその時点では政治決着の見直しの意味すらないのです、ある意味では。見直しをやってみたって始まらない。政治決着そのものの意味がもう意味としてないということを理解しなければならない。  すでにこういう拉致事件について外国がいままでとってきた例を取り上げて言いますと、非常に残念だけれども国交断絶まで覚悟してやってきたというのが、いままでのいろいろな例を見た場合に、いままでの歴史上われわれとしては指摘することができる数例があるわけであります。事大統領の候補であった人が日本から拉致されたということから始まっている今回のこの問題について、いままでとってきた日本政府の態度というのはまことに煮え切らない態度であり、あいまいであるという国民からのいろいろな批判があり、国民感情としてはこのままでは黙っておれないというところにまで事が来ているということだけは外務大臣に申し上げたいと思う、もうこんなことは先刻大臣は御承知であると思いますけれども。  したがいまして、政治決着見直しの声が上がり、とおっしゃるけれども、見直してみたって始まらないようなその時点においては、非常に深刻な日韓間の問題も、残念だけれども起こるかもしれないということまでも決意の上で事に処していらっしゃるであろうということを私は意に含めて確認させていただいて、終わりたいと思います。  大臣、その点はいかがでございますか。
  51. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 もし最悪のような場合には本当に深刻な問題が日韓関係に起こる可能性はあるということを私も非常に心配しながらこの問題に取り組んでいるということは、先生おっしゃるとおりでございます。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  53. 奥田敬和

    奥田委員長 玉城栄一君。
  54. 玉城栄一

    ○玉城委員 最初に、ただいま土井先生からも御質疑の交わされております金大中氏の問題につきまして、私も一言、大変重要な段階に差し迫っておりますのでお伺いをいたしておきたいと思います。  今回の鈴木総理の発言につきましては、大臣も先ほどの御質疑の中でお答えになっておられますとおり、内政干渉でもなければ、また決して外交的な圧力あるいは脅迫でもないというようなこともおっしゃっておられますし、本当にそのとおりだと思うわけであります。万一そういう事態になりましたらこれは本当に重大な関心をわれわれも持たざるを得ないと思いますし、いまもお話の中にありました経済協力等の問題につきましても当然考え直さざるを得ないというような事態も起こってくると思うわけであります。  そこで、いま非常に憂慮されておりますもし万一の事態ということが発生し、死刑が、そういう行為がなされるというようなことになりますと、日韓関係にとりましてはきわめて不幸な事態が予想される。いまも大臣もおっしゃいましたとおり深刻な事態が予想されるということでありますが、これは日韓関係ばかりでなくて、そういう行為がなされるということになった場合には、私は、韓国自体にとりましても世界の孤児になるおそれなきにしもあらずという感じすらあるわけでございますが、大臣、いかがでしょうか。
  55. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 この金大中事件につきましては、日本が深甚な憂慮の念、重大な関心があるということを伝えておるわけでありますが、西側陣営でもそういう声を韓国側に伝えておるということをわれわれも知っておりますので、もし万一のことが起こりますと、西側陣営の中でもいろいろな日本以外の国からも声が出てくるだろうというようなことは考えられるわけでございます。  ただ、程度問題いろいろあると思うのでございますが、私はその中でやはり日本が一番重大な隣国でございますし、日本との関係が一番心配をされるというつもりでおるわけでございます。
  56. 玉城栄一

    ○玉城委員 御要望にとどめておきますが、そういう時期がせっぱ詰まっておるという事態でありますし、やはり民主主義国家としてきわめて良識的な態度を韓国政府としても示されるように大臣も一層の御努力を要望いたしまして、次の質問に入ります。  きょうの委員会は今臨時国会の最後の国際情勢に関する委員会でございまして、この一年振り返ってみますと大変いろいろなことがございまして、大臣も大変御苦労されたわけでございます。それで、まとめていろいろな点、私もお伺いしたいわけでございます。大臣も御存じのとおり、例のSR71高高度戦略偵察機等の問題についてもまだ質疑を積み残しておりますし、その他お聞きしたいわけでありますが、本日は時間がございませんので、来年、八一年に向かって日本外交の方針という感じで大臣の御所見を伺っておきたいわけであります。  レーガン氏が第四十代アメリカ大統領になられ、八〇年代前半のいろいろな政治をやっていかれるという中において、このことはまたわが国にとっても非常に重要なかかわり合いが出てくるわけであります。レーガン政権のスタッフもまだ決まっていない段階で、いろいろ大臣としてもお答えしにくい点もあろうかと思いますが、ただ力による平和というものをスローガンにレーガン氏が選挙期間中デタントを白眼視し、SALTIIの廃棄というようなことも出ていたようですが、そういうことをもしストレートに政策として遂行していくようなことになりますと、緊張緩和どころか逆に緊張激化というような、こういう心配を非常にされる向きも多々あるわけであります。  そこでまたわが国に対しても当然、日本はアジアの大国だからというふうに防衛力の相応の努力をすべきだということで、相当防衛費の増額を要求することも出てくるのではないかという心配も国民の中に現在あるわけであります。  したがって、外務大臣も来年一月、また鈴木総理も来年五月、訪米の御予定のように伺っておるわけでありますが、やはりお行きになられた場合に、漫然と行かれて押しつけられて帰ってくるということであってはまた大変なことになると思うわけでありまして、やはりわが国の財政の厳しさ等、当然理解を求めるいろいろな考え方を持って臨まれると思うわけでありますが、その点大臣の御所見をお伺いしておきます。
  57. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 来年一月二十日から新しい政権ができるわけでございますが、その前にも向こうの意見も聞ければ聞く、日本側の考え方もはっきり向こうへ伝えて理解をしてもらうということが私は必要だ、こう思うわけでありまして、先般も大来政府代表がアメリカへ行きましたときにも、まあ恐らくスタッフになるのではないか、こう言われておるような人、たとえばシュルツさんとかアレンさんとか、そういう人に会っていろいろ日本の考えも伝え、向こうの話も聞くというようなことをやって帰ってこられたのでございますが、あらゆるルートで日本側の意向も伝え、向こうの意見も聞いていくということは、私はやる必要があると思うわけでございます。  ただ、その場合、向こうの意向を聞くというだけでなくて、先生おっしゃるように日本側としてはやはり平和憲法があるので、そのことからいけば専守防衛なんだ、日本はもっぱら守るということで個別自衛権なんだ、先生のおっしゃったような財政上の問題もある、国民の皆さんのコンセンサスも得なければならぬ、予算等は国会で御承認を得なければならぬわけでございますし、そういう日本の考え方も向こうに理解してもらうようにはっきり日本側として伝えるということが大切なことだというふうに私は考えておるわけでございまして、私は政権誕生後、国会、予算等ございますからいつ行けるかわかりませんが、なるべく早い機会に、総理よりも前に行って、日本側の意向は向こうへ伝えたいというふうに思っておるわけでございます。
  58. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、いま大臣のお答えの中にもございましたレーガン氏の外交顧問であるリチャード・アレン氏、ホワイトハウス入りも伝えられておるわけでありますが、こういう方々の言葉の中にいわゆるフルパートナーというような言葉も出ているわけでありますが、そういうことからしましてフルパートナーという責任、そういうものも要求されてくるのではないか。  そこで、フルパートナーという言葉を大臣としてはどのように認識していらっしゃるのか、お伺いいたします。
  59. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 フルパートナーの言葉の意味そのものをどこまでどういうふうに考えておられるかということは、相手に聞いてみないと私はちょっと的確なところはお答えできないわけでございますが、アメリカ政府としてアジア政策を考える場合に日本を基軸に置いて考えていくのだ、日本にやはりパートナーとして信頼を置いて友好親善をやっていくのだ、アジアでは日本を中心に、基軸にして考えなければいかぬということだと私は思うわけでございます。  その表現が具体的にどういう希望とか期待表明ということになってきますか、そこはまだ具体的にわからぬわけでございますが、いままで私が外務大臣になりましてアメリカといろいろ交渉したときも、日本に対する信頼は非常に高いという感じは痛切に持ったわけでございます。パートナーとしての信頼を失わぬでやっていくということは基本にある大切なことでございますが、具体的にそれがどういう形になりますか、これはこれからの新政権の政策、またそれを日本がどういう態度で受けるかということで決まるわけでございますので、日米関係の信頼関係は本当に大切にしていく、日本の外交も日米安保を中心としてアメリカを基軸として考える、アメリカもまたアジア政策で日本を基軸に置いていくということだろうというふうに私は考えておるわけでございます。
  60. 玉城栄一

    ○玉城委員 フルパートナーといえば責任と義務を完全に分かち合う仲間というような——わが国の立場ということでありますけれども、結局最後は押しつけられてくる。たとえばリンケージ方式等で、日本側の対米輸出の問題についてもどうしろとか、いわゆる防衛費がアメリカ側の期待するどおりのものが出てこないというときにはそういうことも考えられてくる。したがって、これからが政治家伊東大臣の手腕の見せどころではないかと思うわけでありまして、決してそういうことのないように御要望しておきます。  もう一点、対ソ関係の問題につきまして、これも八一年以降のわが国の政治課題の重要な一つの問題になってくると思うわけでありますが一今回日ソ円卓会議が催されまして、その模様等について新聞で拝見する限りにおきましては、ソ連は日米中という三国が共同して何かしようということについて大変大きな不安を持っているやに受け取れるわけであります。わが国としては日米中という形でソ連の封じ込めなんということは当然考えていらっしゃらないと思いますが、そうかといって、北方問題をたな上げにしてわが国がソ連にのめり込んでいくということもまたあってはならないと思うわけであります。しかし、そうかといいまして、現在の日ソ関係というものがこのままでいいということでもないわけであります。  したがって、そういう点を踏まえて、大臣はこれからの対ソ外交をどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
  61. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答えしますが、日ソ関係がこのままでいいとは私も思っておりません。冷たい関係でございますし、この日ソの外交というものを大切にし、できるだけ温かいものにしていくという努力をやらなければならぬということは、そのとおりでございます。そういうつもりで外交、日ソ問題に取り組んでまいるつもりでございます。  ただ、その前提に、先生おっしゃったような領土問題というものがある、そこに軍備の拡充をしているという問題がある、あるいはアフガニスタンの問題があるというようないろんなむずかしい問題がございますので、なかなかストレートに日ソ関係、友好親善が非常に温まるということにいかないところに苦慮をしているわけでございますが、私どもは、言うべきことはやはりちゃんと言い、筋は通して、その上で何とか温かい関係にしていく、いまのような問題を少しでも前進して解決していくように努力する、これはお互いがやるべきだというふうに考えておるわけでございます。  それから、日米中のお話がありましたが、私、この間の経験で、グロムイコ外相と会いましたときに、日米安保のことは余りグロムイコさんも言いませんでした。むしろ日中が非常に友好親善であるということは、これはソ連にとって危険な関係だということを時間を費やして向こうで話が出たのでございまして、私は、それは違う、日本は中国との平和友好関係を続け、近代化を助けていくということはやっている、しかしそれは軍事協力というようなことをやっているんじゃない、日中は日中、そして日ソは日ソ、日米は日米というように、それぞれの二国間の関係はなるべく友好関係をやっていくんだ、米中と一緒になってソ連に敵対するとかソ連を包囲するとか、そんなことは全然考えておりません、それは違うということをグロムイコさんと大分やり合ったことがあります。  先生がおっしゃったとおり、日中は日中で近代化を助け、中国の方をやっていく、日ソは日ソでまた別な観点で平和友好をやっていくということは、これは日本の外交としては原則的な大きな方針でございます。
  62. 玉城栄一

    ○玉城委員 最近ソ連側から、日ソ関係の改善という微妙な動きが感じられるわけであります。そこで、たとえばソ連の方から、日ソ外相会議等を開こうではないか、そういうシグナル等が送られてきた場合、大臣としてはどのようにお考えになりますか。
  63. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先生の御質問も仮定の問題の質問でございますが、外相会議は御承知のように毎年交互に日ソでやることになっておりまして、おととしでございましたか、園田外務大臣が向こうへ行かれまして話をされてきたのでございますが、今度はグロムイコさんが来る番になっていて、まだないわけでございます。  それで、外相会議は、平和条約をつくっていくということで毎年外相会議をやろうじゃないかということになっているわけでございますので、ソ連側が、領土問題、そういうものを含めた平和条約というものの交渉、話し合いということで話し合いがあれば、日本としてはこれは当然それに応じて会談をする、協議をするということだと私は思っております。
  64. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がございませんので、次の質問に移らせていただきます。  これは北米局長さんの方に伺っておきたいのですが、十月の上旬に沖繩の嘉手納空軍基地内で、化学戦争防御訓練というものが大規模に行われたようでございます。地元の新聞に大きく報道されておったわけでありますが、その事実関係をどのように掌握をしておられるか、お伺いいたします。
  65. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 沖繩の新聞にそういうような報道もございましたので、私の方から早速アメリカ側に照会しまして、アメリカ側から今月の二十一日と二十六日に回答が参りまして、そのいわゆる毒ガス訓練については、アメリカ空軍の訓練の基準に基づいて、毎週一回、毒ガス攻撃を受けた状況を想定してアメリカ空軍の要員が、防御装備、恐らくマスクだろうと思いますが、それをつけて任務の遂行能力のテストを実施しているということを、私たちとしては掌握しております。
  66. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、時間がございませんので、大臣にこの件でちょっとお伺いしておきたいわけでありますが、毒ガス訓練ということでそういう訓練が行われて、地元でも新聞に大きく報道されたわけであります。これは地元の県民、住民にとっては非常に敏感に、こんなことが起きたら大変だともう浮き足立つということになるわけであります。  そこで、もしそういうことが起きた場合は、そういう方々は完全に防毒の装備をしているわけですから助かるでしょうけれども、県民サイド、住民サイドは無防備ですから、目の前でそういう訓練が行われているということについて、県民には非常に大きな不安もあり、あるいはまた動揺も出てくるわけですね。  その点大臣としては、こういう訓練というものについてはどのようにお考えになりますか。
  67. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 展開している沖繩にいる部隊が、どこへ行っても最悪の事態に応ぜられるような訓練をしておくというそういう訓練自体は、私は事柄の性質上あり得ることだと思うわけでございますが、毒ガスというのは、国際的にも禁止された条約もございまして、大体の大きな国は入っていることは御承知のとおりでございますので、米軍もそういうものは持ち込んでいないということでございますし、それ自体訓練をしたからどうと言うわけにはいかぬことで、やはりそういう部隊であればそういう最悪の場合を予想して訓練をしておくということもそれはあり得ることだ、こういうふうに思っております。
  68. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、訓練だからそういうことはいいということでは済まされない一つの感情的な問題が出てくるわけですね。これは簡単に言いますと、もしそういうことがあったらわれわれは助かる、しかしおまえらは死んでも構わない、もう死んでしまうよ、そういう感じでこういう訓練は受け取られるわけですね。  ですから、訓練だからやむを得ないということでは、地元にとってはこれは大変重大な問題になるわけですから、そこを私は大臣に伺っているわけです。訓練だからやむを得ないんじゃないか、こういうことでは——ですから、そういうことについては米側に、県民感情をそういうふうに逆なでするような訓練というものは慎んでもらいたいというようなことぐらいは当然日本側として言ってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  69. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 住民の皆さんに必要以上の不安を与えるようなことはなるべく慎むという気持ちはわかります。それはわかりますが、そういう訓練は一切するなということは、施設、区域を提供しているということから言えば、これはなかなか言えないだろうというふうに私は思うわけでございまして、いまの点は、沖繩の県民の感情としてそういう強い感情がありますよという注意をすることは、それは私も向こうの責任者に会いましたときにしますが、一切やめなさいということは、私はなかなか言える性質のものじゃないだろうというふうに思っております。
  70. 玉城栄一

    ○玉城委員 この件を申し上げますと時間がございませんので……。  毒ガス兵器といいますと、これは人類を滅亡に導く大変なもので、そういうことを想定した訓練が目の前で行われて、そして向こうは装備した形でやっている。住民は無防備の状態であるわけですから、そういう心配が出てくるのはあたりまえです。いまおっしゃいましたとおり、よく県民感情については伝えていただきたい、このことを要望いたします。  これは本来でありますと、沖繩にうわさとして広まっておりますのは、沖繩が返還される際にそういう毒ガス兵器というものは撤去されたであろうというふうに思っておったわけですが、そういう訓練が目の前で行われますと、まだまだあるのではないか、そういううわさすら広まっているわけであります。先ほど大臣はないということをおっしゃいました、持ち込んでいないというようなことも御答弁の中にございました。  そこで、この際ちょっとお伺いしておきたいわけでありますが、核兵器につきましては持たず、つくらず、持ち込ませずという非核三原則というものがわが国の国是として確立しているわけであります。そこで、こういう毒ガスについて、わが国は持ちませんか。
  71. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 これは国際的にも禁止されているものでございますし、日本としてもそういうものを持ってどうというようなことは、外務省当局としてはそんなことはないと申し上げていいと思うのでございますが、法律的なことが何かありましたら、いま専門の方かちお答え申し上げます。
  72. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、時間がございませんので、非核三原則のつくらず、持ち込ませずですね、それについて——あと二、三分しかないのです。もう一つ私聞かなければいけない。伊達さんの御答弁は非常に長くて、ですから大臣、局長からお聞きになって結構ですから、毒ガスについて持ち込ませませんか、簡単に。
  73. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  核の持ち込みにつきましては、わが国は非核三原則という政策をとっておりますし、安保条約上は核の持ち込みにつきましては当然のことながら事前協議ということがあるわけでございます。  ただ、毒ガスに関しましては、わが国といたしまして毒ガスについてつくらず、持たず、持ち込ませずというはっきりした政策をいままでとっているわけでもございませんし、かたがたわが国はいろいろなジュネーブの条約でございますとか、その他の議定書等々三つぐらいございますが、そういうところで毒ガスの所持、製造等禁止している条約に入っておりますので、それを守っていけば足りることであろうというふうに考えております。
  74. 玉城栄一

    ○玉城委員 結局、持ち込ませないということで理解していいわけですね。——ジュネーブ条約の話はよくわかったわけです。
  75. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 持ち込むことについて、別に条約上持ち込ませないという約束はいたしておりません。これは核についても同じでございまして、核も核の拡散防止条約というのがございまして、それではつくらない、持たないということは条約約束しているわけでございますが、持ち込ませないということは条約上は何も約束している、法律上の義務ではございません。日本は核を持ち込ませないという非核三原則の原則を採用しているということでございます。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから局長じゃまずいのです。毒ガスについて、持ち込ませませんか。じゃ、持ち込むことは自由で構わないかということなんですよ。  それは、大臣お聞きになっていらっしゃいますか、伊達さんでも、条約上でなくて——自由にどんどん持ち込んで構わないということですか。
  77. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  法律論の面から言いますと、先ほど来申し上げておりますように、持ち込んでも日本側として別にそれは義務違反でもございませんし、持ち込む側から言いましても、それは別に持ち込んではならないということではないと思います。  ただ、当面日米安保関係についての御質問でございますれば、アメリカもこれらの条約には参加しているところでございまして、使用しない、つくらないということを言っているわけでございますから、アメリカが現実に日本に持ち込んでくるというようなことは考えられないということでございます。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 考えられない、したがってわが国も持ち込ませないということ……。  時間がございませんので、一点、伊東外務大臣、その点も含めまして、先日もちょっとお伺いしたわけですが、そういうことで沖繩は安保条約に基づく米軍基地の五三%という巨大な基地が存在しまして、日常いろいろなトラブルが起きておる。そのたびにいろいろな関係者が外務省に日参する。大変な旅費なんですね。そして、現地の那覇の防衛施設局等へ参りますと、今度は外交上の問題だからということではねられるケースも多々あるわけであります。  そこで、この間も大臣の前向きの御答弁をいただきまして、北海道の方では大使の就任もほぼ決定を見たということであります。そこで沖繩についても改めてここで、そういういろいろな問題が過去、現在、なおこれからも予想されるという事態でありますので、大臣いかがでしょうか。
  79. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 沖繩県自身が、県庁の県知事さん以下が、そういう必要があるという御判断で正式に外務省に派遣方要請ということがありましたら、これは積極的に考えます。北海道の方は、実はつい最近派遣要請が参りまして、人選をしまして十二月からとりあえず北海道へ行くということをやったわけでございますが、これはあくまで道庁の要請ということでございますので、その点は沖繩県自体がどう考えられるかということがもとでございますので、その結論によってわれわれは考えたい、こう思っております。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上でございます。
  81. 奥田敬和

    奥田委員長 近藤豊君。
  82. 近藤豊

    近藤(豊)委員 日韓関係の基本問題について御質問いたします。  私は、過去にソウルに一年間外務省から在勤をし、かつつい数日前に、数日間の滞在を終えてソウルから帰ってきたわけですが、いままでこの委員会で展開されたこととはいささか質の違った議論をきょうはしてみたいと思います。  日韓間の過去の歴史を振り返ってみますと、非常に昔から大変密接な関係があるわけですが、同時にその中で、むしろ日本人が半島の人たちを虐げたとか略奪したとか、そういう被害を与えたケースの方が圧倒的に多くて、朝鮮半島の人たちから日本人が被害をこうむったとか攻められたとかいうことは実はほとんどないわけであります。  こういう経緯を見ても、また日韓併合という長い時代があったという事実を考えてみましても、日韓間の外交というものは、あるいは日本と韓国の関係というものは、ほかの外国との関係とは対処の仕方を全く異にしなければいけない、私はこう確信をしております。そして、同時にこれは、私たちのいわば歴史の中からの悲しい遺産あるいは悲しい負債をしょって日韓関係に当たっていかなければいけないわけですから、非常に違った配慮を必要とする。  あるいは別の面で指摘いたしますと、日本の政府が、あるいは日本の要人が圧力をかけたつもりでなくても圧力をかけたととられる、あるいは脅迫をしたつもりはなくても脅迫と受け取られる。干渉するつもりはさらさらないのだけれども、それは干渉と受け取られる。そういう事実を韓国側が悪いのだとか半島の人が悪いのだとかいうことでは、実は解決ができない。先ほど申しましたように、過去の歴史からの悲しい債務の相続をしているのだという認識でこれに対処しなければいけないと思いますが、この点についての外務大臣の認識をまずお伺いしたいと思います。
  83. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 日韓関係につきましては、過去長い間の歴史的な事実がございます。これは先生おっしゃるような歴史的な事実がございますので、この日韓関係については特にそういう点に意を用いてやらなければならぬじゃないかとおっしゃいますこと、私もそれは同感でございます。言葉を慎むとか言動を慎むという、ほかの国以上に神経を使ってやるということは、私もその点は先生と同感でございます。  ただ、その上に立って両方が独立国としての対等な立場でまた外交をやっていくということも必要でございますが、その際いろいろ注意をしなければならないのじゃないかとおっしゃいますことは、よくわかります。
  84. 近藤豊

    近藤(豊)委員 そうしてみますと、私は、金大中氏の問題についての扱い方に当初から大変な疑いを抱いておるわけです。日本の言論機関の大方の報道ぶりにも、私ははなはだ不安とそして不満の念を抱いております。  すなわち、金大中氏の例の拉致事件の問題は別にいたしまして、最近の問題、すなわち彼の命を助けたいという希望が国民の中に強くあり、また金大中氏が死んでいいとか死刑にされていいなんて思っている人は一人もいない。私も全く同じ立場でありますけれども、もし彼の命を助けようとするならば、これは民間の団体とかあるいはプライベートな形でいろいろな人が一つの人道上の配慮として発言をすることはいい。  しかし、政府関係者が発言をすることは、たとえ干渉したり圧力を加えるつもりにならなくても、それは干渉と受け取られ、圧力と受け取られやすい。そういう国情にあるのであるから、政府関係者の発言は即韓国側の政府関係者をしていろいろな配慮をする余地を狭めることになる、私は実はこういう全く逆の考え方をしておるわけですが、この点大臣はいかがでございますか。
  85. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 金大中氏のことは、拉致事件がなければ、こんなにいろいろ苦慮したり、配慮というようなことを言っていることは私はないと思うのですが、やはり日本人はあの拉致事件というものがどうしても頭にあるものでございますから、これは政府としても、その日本の国民の考え方を代表しまして、向こうに日本側の意向を伝えるということをやっているわけでございまして、当然国民が持っている感情を向こうへ伝えるということでございますので、私はこのやり方は間違っているものじゃないというふうに思っております。  ただ、先生のおっしゃるように、いろいろな経緯が過去においてございましたので、その場合に、内政干渉にわたらぬというようにそこは十分に配慮しまして意向を伝えたいということでございまして、私どものやっていることは私は間違いじゃないというふうに考えております。
  86. 近藤豊

    近藤(豊)委員 確かに拉致事件ということがあったのです一そして、その後で二度にわたっての政治決着も行われたわけです。そして、現在はこの金大中氏の問題というものを考えるとき、大臣も先ほど土井委員の質問に対してお答えになっていたように、日本の安全にとって韓国の安全というものは非常に必要なんだ、あるいは南北両朝鮮の間で紛争が起きないということが大切なんだ、もう一歩進んで言いますと、韓国が混乱をして、その混乱に乗じて誤算をした北側が攻め込むというようなこと、あるいは撹乱工作を行うというようなことがあるということも、日本の安全にとっては大変なマイナスであるわけなんです。  そういう憂えを持ってこの問題を見るとき、拉致事件あるいは主権侵害というような問題ともう一つ別に、金大中氏の行方がどうなるかによっては、国際的な孤立とか、あるいは現在経済情勢が悪化している中での民間経済協力の途絶とかいうものが韓国の安全を危なくする。むしろ主権侵害の問題よりも、いまわれわれ自身の安全の問題の方が、この金大中氏の処理とのかかわりでは憂慮される、こう思うわけで、その場合には金大中氏の命が救われるプラスになることをやるのが第一である。  そうしますと、金大中氏の問題について政府関係者がたび重なって発言をするということは、むしろ私はマイナスになっておると信じます。しかし、これは見解の相違があるかもしれません。  しかし、もう一つの総理の発言については、九月二十二日のNHKの録画撮り以来、今回の崔大使の表敬訪問での話し合いのときの言動、これは先ほど大臣の答弁にありましたように、外務省からも進言をして、そういう発言を友人としてきわめて慎重に、そして配慮をしながらおっしゃったということなんです。しかし、冒頭に申し上げましたように、圧力をかけなくとも圧力と受け取られる、あるいは干渉しようと思わなくても干渉と思われるわけですから、この場合の総理の発言はいかに慎重をきわめていても、また総理が慎重をきわめ非常に気を使って発言をされたことは、私は韓国側からも聞きました。しかし、にもかかわらず、総理の発言は即韓国民全体に対する発言であるというふうに考えなければ不測の事態が起きることは、過去の経験からしても明らかであります。  そういう面から、私は、総理の発言、あるいは総理にそういう発言をすることをお勧めになった外務省は軽率であったと思わざるを得ないのでありますが、この点については依然として全く当然であった、先ほども土井委員の御質問に対してそのような趣旨のお答えがありましたけれども、そういうふうに依然として信じておられますか。
  87. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先ほど申しましたように、拉致事件があったということでございまして、金大中氏の生命というものに対して重大な関心を持っておるということは、これはそのとおりでございますので、どうやってそれがこちらの期待するような結果が出るかというやり方の問題でございますが、私も国会で何度もお答えをしたことがございますし、実は表敬訪問があるということを聞きましたので、私は言っているけれども、総理の口から言っていただくのも非常に大切じゃないかと思って、私ども進言をしたことは確かでございまして、私は先生と意見がそこは違って、はなはだ申しわけありませんが、私は間違いじゃなかったというふうに思っておるわけでございます。  ただ、それが妙に間違った、若干間違ったニュアンスで出て誤解が出たということは、私はこれは非常に残念だと思っております。だれがどうということではなくて、非常に残念なことであったと思うのでございますが、総理は、本当に日本は韓国の友人だという立場で、韓国がこれから外交をずっとやっていかれる上に西側ともいろいろ関係があるだろうし、また日本と韓国というのは本当に隣国で、切っても切れぬ地政学的なところに存在するわけでございますし、何とかこの平和友好関係を続けていきたいという総理の、友邦という立場で決して内政干渉ということではないのですよと言いながら、韓国の将来のことも心配され、日本と韓国の関係、西側陣営の一員としての韓国関係ということを念頭に置いて言われたのでございまして、私は進言した一人として、ああいう結果が出たことははなはだ遺憾だと思いますが、総理から話していただいたこと自身は、私は間違っておらなかった、先生と意見が違うのでございますが、そう思っております。  ただし、非常に慎重にしなければならぬということだけはよくわかります。
  88. 近藤豊

    近藤(豊)委員 実は、その最初の新聞発表が出たとき、私はソウルにいたわけなんです。そしてその次の日の各紙の反発がどんどん出ておるのですが、こういう新聞記事は、総理がああした発言をなさらなければ出てこないわけなんです。つまり、常に反日的な動きが起き得る土壌が韓国にあるということを先ほども冒頭に申し上げた。それに火種を提供したのはやはり総理の発言なんです。ですから、大臣も総理もきわめて慎重を期されたことは私も認めますけれども、にもかかわらず、火種を提供されたことは事実であります。これは火種がなければこういう記事も起きなかった。  そこで、この火種がさらにどんどん、いま天道教が、急進的な団体がさらに反日の動きをし、各方面でこれから反日の動きがふえるかもしれません。そして来年の春ごろは、経済環境の悪化と同時にそれが暴動化することすらあるいは予想しなければいけない。それは私は、そうした火種を提供したことについての大変大きな政治責任であると断ぜざるを得ないのです。  これは見解が相違すると言われますから、当然のこととしておやりになった、そしてその結果の政治責任は場合によってはおとりにならなければならない、私はこういうふうに理解をして、この質問の最後の問題に移ります。  こういう状態にあって、これから朝鮮半島の状態は非常に重大になります。そして韓国の経済は、冷害による米の大不作から大変苦しい立場に立たされてまいります。そうしますと、仮に万一不幸な事態が起きた場合、先ほど大臣はいろいろな突き上げが予想されるという趣旨のことをおっしゃいました。経済協力の途絶とかあるいは閣僚会議の中断とかいうことを言われましたが、韓国が、あるいは韓国の国民が必要としているものは、現在やはり経済的な協力なのであります。  そして、その中で特に食糧というものがない場合、これは一番大きな経済不安の要因にもなり、政治的なマイナスになるわけなので、日本に求めてきている百万トンの米の援助というものは、人道的見地からしても、それからわが国の安全保障という見地からしても、どうしても助けてあげるべき性質のものだと私は思います。むしろ金大中問題とは全く無関係に、即座に、いますぐにでもこれは手続をして出してあげなければいけない、こういう性質のものだと思いますが、この米の援助一点にしぼって、まず大臣の感触を伺いたいと思います。
  89. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 日韓関係が悪化するのじゃないかという声が出てくるだろうということを心配するということを私は何回もお答えしているわけでございまして、その中には、先生おっしゃったような経済関係とか閣僚会議の問題とかいろいろなものが出てくるだろう、その場合に政府はどういう態度でそれをやるかということはまだ相談したわけでもございませんので、これは決めていないのです。ただ、そういう声が出てくることを非常に心配しているのだということを私は申し上げたのでございまして、それは誤解ないようにお願いしたいのでございます。金大中氏の身辺が何とか最悪の事態にならぬように努力をしてまいるつもりでございます。  それから米の問題のお話がございました。これはまさに先生のおっしゃるような人道的な問題がございます。米につきましては、先生も御承知だと思うのですけれども、延べ払いの米につきましては、これはアメリカの市場との関係があって、特に韓国や何かにアメリカがうんと出しておりますので、そういう関係がありますから、日本とアメリカで米の輸出については協議をするようになっておりますので、アメリカと協議をしましてこの問題については積極的に考えようかというような私は考えでおりますが、この問題も慎重に取り扱ってまいりたいというふうに思っております。
  90. 近藤豊

    近藤(豊)委員 米の延べ払いがアメリカとの間に問題があることはよく承知しております。この際、百万トンの要望に対して三月ごろまでには十七万五千トンぐらいしか出せないのだということを私は一部から仄聞しておりますが、その理由は集荷等の能力に限りがあるからだということであります。私は、実は集荷等の能力が許す限り延べ払いだけではなくて無償の援助をあげるべきだというふうに考えております。  そこでまず一点、食糧庁の方から、集荷能力というものは三月末日ごろまでに約五十万トンというふうに私は了解しておりますが、間違いありませんか。
  91. 小野重和

    ○小野(重)政府委員 集荷能力というよりはむしろ輸送能力でございます。ただ、この輸送能力がどのぐらいあるかということにつきましては、具体的にどういう年産の米が必要であるとか、あるいは非常に技術的なことになりますけれども、どういう袋であるかとかいろいろな要素が絡んできますので、いま具体的に数字を申し上げられる段階ではありません。現在検討中でございます。
  92. 近藤豊

    近藤(豊)委員 米の無償援助を新たに考えていただきたい。もちろん延べ払いについては最大限の努力をしていただくと同時に、無償援助を含めて韓国側はどうしても百万トンが日本から来ることが必要なんです。その百万トンをできるだけこたえてあげることが、いまの反日運動等を鎮静化させるのに役に立つ、と同時に韓国側の為政者が金大中問題をハンドルするのに、さらに、いま反日運動によって狭められた可能性を広げることになるのです。ですから、これは早急に検討して至急回答を、見通しを出していただきたいと思います。  これは強い要望であります。大臣、ひとつその点についての御協力を表明していただきたい。
  93. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私の聞いておりますのは、今年度内三月までと、それから四月以降、来年度の問題と、韓国からの要請も来年度いっぱいで幾らというようなものが来ているということは聞いているわけでございますが、考えるとすれば、さしあたって今年度内どうするかというようなことから考えていかなければならぬじゃないかというふうに思っております。  その問題も、結論を出すには急いだ問題であるということも私はよく知っておりますので、これは慎重に、といっていつまでもという意味じゃなく慎重に考えてまいりたいと思います。
  94. 近藤豊

    近藤(豊)委員 最後に一点。いまの慎重に考えていただくのは、金大中問題にひっかけてこの問題を検討されるのではなくて、全く無関係に人道上の問題として、あるいは安全保障に直接かかわる援助の問題として考えていただく、こう了解してよろしいですか。
  95. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 食糧庁と、大体どのぐらいで輸送できるかとか、どこにどれだけの出荷能力があるかとかいうことをいまやっているわけで、ただ約束だけして、現実出なければ大変ですから、そういうことを慎重に検討した上で答えを出したい、こういうように思っております。
  96. 近藤豊

    近藤(豊)委員 終わります。
  97. 奥田敬和

    奥田委員長 林保夫君。
  98. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がもう五、六分しかないという話でありますので、端的にひとつお答えをお願いいたしたいと思います。  隣国の韓国の重大事態というような情勢のほかに、実は私、先日、十八日からモスクワで開かれました第二回の日ソ円卓会議に、いわゆる超党派で参加させていただきました。大変白熱した議論が特に第一分科会の国際情勢及び日ソ関係の問題の中で出てまいりまして、一言で言うならば、双方の言いっ放しではあったけれども、充実した討議ができたように実は考えるわけでございます。  いろいろ話したいことはございますが、その中でただ一つ、私ども、出席しているソ連側のメンバーあるいはわれわれ行っている日本側のメンバーも同様だったかと思うのでございますが、向こう側からは、いろいろ三段階にわたる日ソ関係関係確立などを含めましての提議もございました。そしてその中で、向こう側が善隣友好協力条約を交渉の基礎にしようではないかというような話もございましたし、私どもは、アフガン侵略は善隣友好条約が基礎になっているんだから、そんなものはとてもじゃないけれども受けられないと、実は私もはっきりと言い切って帰ってきたような状態であります。  その中で、日本側が提起する条約あるいは協定、そういうものがあれば、これもぜひ検討の対象にしたいという発言が、一人の人でなくて二、三の人から出ておりました。それについては、私自身、五十三年でありますが園田外相がモスクワに行かれたときに、日本側の平和条約案というようなものを出しているというふうに記憶しておりますので、多分クレムリンの金庫の中に入っているのじゃないか、皆さんごらんくださいというところまで言うて帰ってきたわけでございます。  しかし、われわれには当時発表がございませんで、詳細が伝えられておりません。推測はできますけれども、なおどういう内容のものを、いつ、どういう形で出されたかを、この機会に、公表できる範囲で結構でございますから、御説明願いたいと思います。
  99. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先生の御質問の、昭和五十三年の一月に園田外務大臣がモスクワへ行かれまして平和条約交渉の話し合いをされましたときに、向こう側からは先生がいまおっしゃいました善隣友好条約案なるものを出された、それでそういうものを前提にとても話はできぬと言って、一応預かりおけということになっております。  それから日本側からは、平和条約の草案を向こうに園田さんが渡された。これについては向こうも受け取っておるということで、それについて返事が来たわけではないわけでございまして、その内容の詳細についてはいまここで申し上げかねますが、日本の出しました平和条約の草案には、北方の四島の一括返還、領土一括返還ということが基本的な内容になっていますということだけは、これは申し上げて差し支えないと思うのでございます。あと一々は差し控えますが、基本的には領土の一括返還ということがその内容になっているということは間違いございません。
  100. 林保夫

    ○林(保)委員 もう少し詳しく聞きたいのでございますけれども、なおこれが、今日ソ連側の言うような日本側から提起されればという、その条約草案として大臣はなお有効だとお考えでしょうか、これは差し控えなければならぬとお考えでしょうか、その点を承りたいと思います。
  101. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 日本側から出します平和条約の草案は、いま言った原則が入ってなければ、私はそれは案としてはおかしなものだと思いますので、あくまで向こうに手交しました平和条約草案というものは、日本の案だというふうにお受け取りになって結構だと思うわけでございます。向こうからも来ているという、受け取ったということになっていますが、これは先生も言われたように、アフガニスタンとの関係も、平和善隣友好条約があって、その上でああいうことが出ているんだということは確かでございますので、われわれとしてはそういうものを基礎にして交渉するわけにいかぬという基本的な態度は間違いございません。
  102. 林保夫

    ○林(保)委員 では、最後に一言承りたいのでございますが、ソ連側からそういう話し合いが、いまの情勢ではかなりむずかしいと思いますけれども、政府ベースで参りました場合には、リピートする形で、前に出された草案そのままで、やはり交渉の基礎としてお臨みになるのでしょうか、どうでしょうか。と同時にまた、ソ連側は、日本側がそういうものを出さないからいつまでも決着がつかないんだというような印象の話をたびたびしております。  それについて、日本側も出すべきものは出しているんだ、こういうことを政府としては、かなりはっきりとわれわれ国民一般にもやはり知らしていただいて、対等の交渉の場を早くつくるようにしていただかなければならぬと思います。  その点についての大臣の御所感を最後にしっかり承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  103. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私、ニューヨークでグロムイコ外相に会いましたときにも、向こうでは条約案は日本に渡してあるという話でございました。これは先ほど私、善隣友好と友好をつけましたが、善隣協力条約という案でございます。善隣協力条約案ということでございますが、グロムイコさんが日本にもうちゃんと渡してあるのだということでございましたから、私の方もちゃんと園田さんが平和条約の草案を渡してある、それには領土問題がちゃんと書いてあるんだということをグロムイコさんにも話したわけでございまして、ソ連側の善隣協力条約案ということを土台にして話すことは、それはもうできませんよということをはっきり言ったわけでございます。  その点は、これからどういう話し合いになるかは、将来のことでございますからわかりませんが、日本側の態度としてはやはり領土の返還ということを基本的内容とした条約案でなければ話に応ずるわけにはいきませんよということをはっきり申し上げる次第でございます。
  104. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんのでこれで終わりますが、大変大事な問題でございますので、せっかくの御努力をお願いしたいと思います。ソ連側も大変何かこう、雪解けではございませんけれども、打開のチャンスをつかみたいというような意欲が見えておりましたので、御苦労でございますが、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  105. 奥田敬和

  106. 中路雅弘

    中路委員 金大中氏の処刑の可能性というのが非常に強まってきているわけですし、年内にも確定判決が出ると言われていますが、一言一金大中氏の裁判の見通しについてどのように見ておられるか、最初にお聞きしたいと思います。
  107. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 これは韓国の裁判でございまして、韓国の国内問題でございますから、いつごろ大法院の判決が出るかということは、私ども定かにこれはわからないわけでございますが、一、二審の経過から見れば案外早いのではないかなということは考えておりますけれども、大体何月何日ごろだという、そこまではまだはっきりわかっておりません。
  108. 中路雅弘

    中路委員 非常に切迫しているということはお認めになると思いますが、先日鈴木総理と崔大使の会談で、首相が重大な関心と憂慮を表明されたわけですが、韓国の報道機関等は一斉にこれを内政干渉とかあるいは外交脅迫ということでキャンペーンを展開しています。  先ほど外務大臣は、総理は内政干渉の意思はないのだ、なかったのだということをお話をされていますけれども、総理のそういう意図の推察ではなくて、こうした関心、日本の主権と人権侵害にかかわる重要な問題について、総理の今度の発言はまだまだ非常に弱い態度の発言だと私は思いますが、こうした発言については当然のことであり内政干渉でないと思うわけですが、外務大臣から、この総理の発言は内政干渉でないのだということを明確にさせていただきたいと思います。
  109. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 裁判について非常に切迫している感じだろうとおっしゃったのですが、それはそのとおりでございまして、非常に私は切迫した時期じゃないかというふうに思っております。  それから、総理がおっしゃいましたことは、これは本当に総理も注意をされまして、日本は韓国の本当のしんからの友人として日本の意向を伝えるのだ、参考にしてもらいたいという意味のことで言われたのでございまして、これは私ども内政干渉なんてゆめゆめ考えていないというふうに思っております。  あれで強いか弱いかというお話でございましたが、私どもああいうことを言ってもらうのはちょうどいいところじゃないかなと思っておるわけでございます。
  110. 中路雅弘

    中路委員 外務大臣も総理のこの発言はゆめゆめ内政干渉でないという考えをいまおっしゃっていますし、これは確認しておきたいと思うのですが、今度表明されました憂慮と関心、これは外務大臣も含めて、これまで再三再四すでに述べていられることですけれども、いまになってなぜ韓国がこうした内政干渉とかあるいは外交脅迫とかいうキャンペーンを一斉にやるのか、この背景について外務大臣はいかにお考えですか。
  111. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 どういう背景のもとでああいうことが新聞に出たのかということにつきましては、これは私どもいろいろな想像はしますけれども、こう思っていますというようなことはひとつ差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、向こうの、韓国側の新聞報道が正確でなかった、それに基づいてああいういろいろな声が出てきたということだけは確かでございまして、総理は、われわれが言っていますように、こういう意見、こういう意見が出てくるのではないか、そういう場合には心配なんだという意味のことを言われたので、その辺が少し短絡し過ぎたことに出ていますので誤解を与えたというふうに私は思うわけでございまして、どこでどういうことがあったか、どういう動機であったかということは、これはわからぬことが多うございますので、私からは意見を言うことを差し控えさせていただきたいと思います。
  112. 中路雅弘

    中路委員 質問にはお答えされてないわけですけれども、先ほど最初に確認されました、この処刑が非常に切迫している、しかも韓国の方は、全斗煥政権はこの処刑を強行しようという意図がいま非常にはっきりしてきている、韓国の国内対策を含めて、私はこうした意図があるのではないかというふうに考えます。  それでお尋ねしたいのですが、最初に一問お尋ねしますが、これまでも同僚の金子委員もたびたび御質問していましたけれども、死刑判決文の入手の問題ですが、その後どうなっているのか。最近の新聞報道では、須之部大使が語ったということで出ている新聞もありますが、むずかしい情勢で、判決文が存在するかどうかもはっきりしないと須之部大使が語ったと伝えている新聞もありますし、あるいは政府首脳は判決文の入手をほぼ断念したと報道している新聞もあるのですが、この判決文の入手についてその後どうなっているのですか。
  113. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私、切迫していると申しましたのは、判決の出る時期が切迫しているのではないか、こういうことを言ったのでございまして、先生はもう一つ先のことをおっしゃいました。そういうことではなくて、どうも判決が出る時期というのが早いのではないか、切迫しているということを私は申しましたので、そこはひとつ誤解のないようにお願いしたいと思うのでございます。  判決文につきましては、私どもは、実はこっちに来ております須之部大使にも、ひとつ帰ったらまた判決文の手交については向こう側に強く要請してもらいたいということを言っているわけでございまして、私は最後まであきらめないで要請するというつもりでございます。
  114. 中路雅弘

    中路委員 これは公式の外交ルートを通じて要請されている問題です。それが再三にわたっていままで拒否し続けられているということは、私は国際的な外交常識にも反するのではないか、非常に異常なことだと思うのですが、この問題について大臣はいかがお考えですか。
  115. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私ども、判決文と言っておりますのは、裁判がその判決文に書いてあるように、こういうふうに裁判が行われて、こういう法条の適用があるのだということがわかれば、わかることがかえって韓国のためにもいいのではないか。わからぬというようなことがもしあればいろいろな誤解を生ずるおそれがあるので、判決要旨はもらっておいて、私どもは、政治決着に違反はしていないということ等はそれで判断をし、理解をしているのでございますが、それをさらにはっきりするためにということで判決文の要請をしているわけでございますので、私どもとしては、判決文を手渡してもらうことが、これは日本のためということよりも韓国のためにいいのではないかというつもりで言っているわけでございます。
  116. 中路雅弘

    中路委員 いまもおっしゃっていますけれども、日本の側から日韓関係にひびを入れさせるというようなことは毛頭考えられていないわけですし、先日も、十一月五日の当委員会金子議員の質問にも、判決文を手交してもらうということは、日韓関係を考えれば、ぜひそういう立場からも要請しているのだというお話もありますし、金大中氏の死刑判決ということになればそれは日韓の関係に大きなひびが入るということで、憂慮また関心を寄せているということも答弁されているわけですが、このように死刑判決文の入手、あるいは金大中氏がそうした最悪の事態にならないように救出の方途をとるということが、大臣の言っておられる日韓関係にひびが入らないようにするためだとすれば、この判決文の入手についても、あるいは金大中氏の死刑判決というような問題が切迫している中で、救出の方途についても、日本政府として、そのために引き続いてあらゆる方途を使って努力されるというのが当然だと思いますが、いかがですか。
  117. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 そのとおりであります。
  118. 中路雅弘

    中路委員 しかし、これまで軍事裁判にかけられて以来、こうした憂慮や関心を再々表明されている。しかし、この間に一審、二審で死刑判決を言い渡され、いま大法院でこの判決をされる公算が強まってきている。判決文も、いま、さらに努力をするとおっしゃっていますが、いまだに提供を拒否し続けている。これは私は、これまでのこうしたことが何ら実効ある処置になっていないからじゃないかと思うわけです。  これも先般の委員会で、大臣は、時間が切迫しているということはよくわかります、われわれが考えていることの目的を達成する方法、どれがいいかということをいま苦慮しているのだということで、金子議員が提案しました期限を切って判決文を入手するという問題も含めて、どれがいいかということについて考えているのだという御発言もあったわけですが、いまこの事態になって、やはりこれは死刑になってしまえば原状回復も何もないわけですから、この時点でどういう対応策、方法を考えておられるのか、これを実行するというすぐ確定したものでなくても、いろいろの方途を考えているというお話ですから、どうした方法がいまとれるのか、考えておられるのか、それをひとつお話し願いたいと思います。
  119. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 それは前々から各先生から御質問、御要望があるのでございますが、日本政府としてこういうこと、こういうこと、こういうことをやっていますというようなことを申し上げることは、事柄の性質上まだはばかることでございますので、差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。われわれの考えられる最良と思う方法をいろいろやっておるわけでございますが、いまの段階ではそれを言うことはひとつ御勘弁を願いたいと思います。
  120. 中路雅弘

    中路委員 金大中氏問題の当初の八月十二日の参議院内閣委員会で、死刑というようなことが起これば、いろいろ世論の声も出てくるだろうし、いろいろなむずかしい問題が起きてくるのではないか、そして政治決着を見直ししろというような声も起きてくるかもしれない、そういう可能性も出てくるようなほどむずかしい問題だ、日韓関係の間にひびが入るような問題になりかねないので、金大中氏の身辺について、日本として重大な関心があるということもお話しになっていますが、先ほどの質問の中で韓国への経済援助の打ち切りの問題も出ましたけれども、国民の中からこうしたいろいろな声が出てくるということは大臣もおっしゃっているわけですが、そうしますと、こうした最悪の事態を迎えるということになれば、いまおっしゃっているいろいろの声が出てくる。こういう客観的な表現だけではなくて、それではそういう国民の声を政府の処置として考えておられるのかどうか。  先ほど、まだ具体的にお答えになっていませんが、たとえばいままでおっしゃっている、国民の中からこういう声が出てくるということで政治決着の見直しを初めいろいろお話をされていますけれども、こうしたことを政府としてこの声を受けて対応として考えられるということかどうか、お尋ねしたいと思うのです。
  121. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先生お読みになったとおりのことを私は八月の段階でも言ったわけでございまして、いまでもその気持ちは変わっておりません。  ただ、その場合にいろいろな声が、先生がおっしゃった私が言ったこと以上に、いろいろなことが出てくるかもしれません。これはちょっとわからぬのでございますが、しかしそういう声が出た場合に、政府はどう対処するのだということにつきましては、実はまだ政府内部でそういう相談もしたことはございませんので、いまの段階でそういう事態になったらこういうことをします、こういうことをしますということを私の口から申し上げるような時期にまだなっておりませんので、ひとつそれは御勘弁を願います。いろいろなことをやろうとしても非常にむずかしい段階になってくるだろうということだけは考えておりますが、それだから政府はどうするのだということにつきましては、まだいま申し上げる段階にないということでお答えにかえさせていただきます。
  122. 中路雅弘

    中路委員 死刑の判決ということになれば、日韓関係にも大きなひびが入るのだということを大臣も言っておられるわけです。そうしてその中身として、いま発言されたこともたびたび述べておられるわけですけれども、実効ある、その目的を達成するための処置を大臣がとらないまま最悪の事態になっていくということになれば、たとえば死刑執行ということになれば、ここで声が出てくる、原状回復にしても政治決着の見直しにしても、それは全く実行することもできないことになってしまうじゃないですか。  それまで苦慮して事実上静観していくということになれば、最初金大中氏の身辺に非常に関心を持っている、死刑という最悪の事態を迎えないようにしたいということは、結局何もしないでそこまで行ってしまうということになるわけで、私が一番最初お尋ねしたように、いま非常に緊迫した事態だということをお認めになっているとすれば、ここでこれまでの判決文すらまだ入手することができない状態の中で、これは政治決着に触れるかどうかの重要な問題ですから、やはり外務大臣として直接どういう対応策が考えられるかあるいは対処をしていくのかということについて当然具体的なお考えがあってしかるべきだと思うのですが、その中には、私が言いましたいろいろ出てくる国民の声、これは客観的にこういう声があるというのじゃなくて、やはりその声を受けて対応を考えられるというのが日本政府の外務大臣として当然のことだと思うのですが、重ねてもう一度お伺いしたいと思います。
  123. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 静観しているということは何もしないという意味じゃ全然ないわけで、実は総理からも向こうの大使に、十分注意をしながら、内政干渉ではないという日本の意向を伝えるというようなこともやられたわけでありまして、御質問がありましたが、考えられるいろいろな方法で意向を伝えるということは今後もやってまいるつもりでございます。  それから、先生のいまおっしゃった、国民の声が出た場合に外務省はこうするんだということを決めるべきだ、あるいは発表すべきだというお話でございますが、私は、一番の目的は、金大中氏という人の身辺に万一のことがないようにということをすることが一番の目的でございますので、それに一番いい方法はどういうことかということを考えていくことが必要だと思いますので、いまここで、国民の皆さんからいろいろな声が出るだろう、それについては政府はこうする、こうする、こうはしない、これはするとかいうことを言うことが目的を果たす上に果たしていいのかどうかということに非常に疑問がございますので、そういう事態が来ないようにすることがまず第一でございまして、あとはその場で政府はどういう対処の仕方をするかということは、まだいまの段階で相談しそれを発表するということじゃないのだろうというふうに思っております。
  124. 中路雅弘

    中路委員 金大中氏に万一のことがないようにいろいろ方策を考えなければならないということは大臣もお認めになっているわけですから、引き続いてこの問題について全力を尽くして努力をするということをひとつ確認をしていただきたいと思うのです。  私は委員長にこの問題と関連してお願いしたいわけですが、きょうでこの国会の委員会を終わるわけです。これから後、閉会審査の問題は先ほど決めていただいたわけですけれども、先ほどお話しのように非常に逼迫した事態ですから、十二月にもたとえば判決が下るというような事態も起きるわけですから、その際には先ほど確認していただきました閉会中の委員会の開催について委員長の方で取り計らっていただきたい。お話を聞きますと外務大臣は二十日まで外遊だそうですけれども、臨時の外務大臣も置かれることに当然なるわけですから委員会は開けますから、その点はひとつ委員長委員会の開催について取り計らっていかれるようにお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  125. 奥田敬和

    奥田委員長 中路委員御提案の趣旨に沿って閉会審査の件も進めたいと思いますが、この件に関しては委員長に御一任願います。
  126. 中路雅弘

    中路委員 時間なので最後にもう一問で終わります。  別な問題ですが、たしか十二月の初め、三、四、五日ですか、に予定されている日中閣僚会議の問題について、最後に一問まとめて御質問します。  二点ですが、一つは尖閣列島の問題です。共同開発の際に、尖閣列島の日本の領有権を確認した上で、日本、中国あるいはアメリカを含めた共同開発について話し合われるのかどうか。この尖閣列島に関連した問題について一点。  もう一つは、中国がしばしばベトナムの再侵略あるいは恫喝の発言をしていますが、日本としてアジアの平和の観点からもこうしたおどしをやめるように中国に意見を表明すべきじゃないかというふうに思いますが、この二点について外務大臣からまとめて御答弁を願いたいと思います。
  127. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 第一点の、共同開発は尖閣列島の領有権の問題を決めてからやるのかというお話でございますが、日中の共同開発というような問題はいまは議題に入っておりません。でございますから、今度の日中閣僚会議ではそれは出ないというふうに私ども考えております。  それから、もう一点の中国とベトナムの問題でございますが、この問題につきましては、紛争解決というのはこれは平和手段でやるべきだ、武力の行使ということは認むるところでない、これは国連でも決めておりますし、世界の原則ということでございますので、いま中国に特にそれを今度の議題として申し入れるとか、そういうことは何も考えておりません。  ただ、カンボジア問題につきまして、インドシナ半島の平和という問題については当然いろいろ議論が出るだろうと思いますし、われわれも考えを述べるという中で、中国というのはインドシナ半島にとって非常に大きな影響力があるところでございますから、中国に対しまして、インドシナ半島の平和的な解決ができるように話し合いができるような国際会議が開かれるように、日本も努力するけれども、中国の影響力が大きいんだから努力してもらいたいという話し合いは、当然にその中で出てくると思うわけでございます。  でございますので、ラオス、カンボジア、ベトナムと中国の関係とかいろいろなことが話に出ると私は思うのでございますが、先生のおっしゃったことをストレートに議題に上げているということはございません。
  128. 中路雅弘

    中路委員 時間ですので、終わりたいと思います。
  129. 奥田敬和

    奥田委員長 太田誠一君。
  130. 太田誠一

    ○太田委員 時間がありませんので、すぐに質問に入らせていただきます。  金大中事件につきまして韓国側の報道機関がいま日本に対する大変な批判のキャンペーンを行っているわけでありますけれども、これはある意味で勘ぐれば、この際日本からの憂慮表明というものを利用してみずからの国のたがを引き締めるというか、ナショナリズムを刺激していこうという考え方ではないかというふうな気がするわけであります。  そこで、この韓国側の報道が事実と違っているということを政府の側はすでに確認をされているわけでありますけれども、事実と違うということについて韓国側から何か釈明があったかどうかということをまずお聞きしたい。報道について日本側は、報道の内容というものが実際に言ったことと違うということを言っておられるわけでありますけれども、それについて韓国側から何か釈明があったかどうかということをお聞きしたいわけです。
  131. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 おとついでございますか、村岡公使が向こうからの要請で向こうの外務次官と会ったのでございます。そのときに村岡公使が、鈴木総理の真意というものはこういうものですということを向こうに説明をしているわけでございますが、向こう側の外務次官も、あれはどこの場でございましたか発言をして、鈴木総理は新聞に出ているようなことじゃなくて、ニュアンスの違い、日本側で鈴木総理が言われたのは内政干渉とかそういうことをするつもりはないんだし、また、いろいろな声が出てくるだろう、その声が出るとやろうと思ったこともやりづらくなって日韓関係にひびが入るのじゃないか、そういうことを言われたので、政府がそれをやると言ったんじゃないんだという意味のことを向こうの外務次官も発言をしているということが新聞紙上にも出たわけでございまして、その点は向こうの政府当局も当然に理解していることだというふうに思っております。
  132. 太田誠一

    ○太田委員 もう一つ、金大中問題につきまして、国際的に金大中氏が処刑された場合にどういう反応があるか、どういう反発が西側諸国から出てくるかということについて、韓国側が必ずしも正確な情報を持っていないかもしれない、あるいは必ずしも正確な予想をしていないかもしれないというおそれがあるわけであります。国内の治安と国際的な環境というものとどちらを重視するかというのがいまの韓国政府に与えられた一つの選択であると思います。  その中で、たとえば西ドイツ政府では、すでに、もし金大中氏が処刑になった場合には何らかの措置をとるかどうかということを検討中であるというふうなことを聞いております。ECあるいはオーストラリア、カナダなど、すでに金大中氏が処刑されることに対し反対をするアピールをしている各国から、たとえば具体的な経済協力なども含めて大きな反発が起こるということは予想されると思いますが、いかがでしょう。
  133. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  国際的な世論がいろいろ出ておりますことは、先生おっしゃるとおりでございます。私も外国で会った外務大臣から直接聞いたこともございますし、韓国政府にこういうことを伝えてあるというふうなことが日本のその国に駐在している大使から報告があるとか、いろいろ国際世論があることは事実でございまして、それぞれその国から韓国へ伝わっておるというふうに私は思うわけでございます。  でございますので、韓国が当然韓国としての国内事情を考慮して最後は決められるだろうと思うのでございますが、その際に、いま先生のおっしゃった国際世論というものにつきましても、韓国は十分配慮してもらいたいというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  134. 太田誠一

    ○太田委員 日本の総理大臣が正式に憂慮表明をされたということ、韓国側からは当然これは内政干渉だという反発が予想される中で、あえて憂慮表明という一つの手続をとられたということの根拠としまして、どういうものがあるんだろうかということをここで考えるわけであります。  一つは、これが監禁をするとかあるいは流刑にするとか、ソ連とか中国で政治犯がどういうふうに処置をされたかというふうな、ソ連とか中国でさえ政治犯というのが死刑になった例はほとんどないのだ。ブット元大統領の場合というのはありますけれども、世界的にも政治犯が死刑になるという例は大変少ないのだ。死刑だから問題だというふうな憂慮表明をする根拠が一つあるわけであります。  それから金大中氏が日本から拉致されたことがあるから、それが問題なんだというふうな一つの根拠もあります。  それから人権という事柄について、世界各国の政府がとっている態度というものが一つあるわけです。たとえば、これが世界人権宣言というふうなもののかかわり合いで、日本として正当に憂慮表明をしていいというその根拠もあり得ると思うわけであります。  内政干渉という反発が予想される中で、あえて憂慮表明をされた根拠。いま三つ挙げた点について、外務大臣、どうお考えになりますか。
  135. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理から日本側の意向を伝えていただいたという根拠でございますが、私どもはやはり一つは、先生おっしゃった拉致事件というものがございますので、日本の多くの人が金大中氏の身辺について非常に関心を持っている。それが万一のことがあれば、一番親しかるべき日韓関係にひびが入るおそれがあるということを頭に置いて申し上げましたことは、これは当然私も何回もここで申し上げているわけでございますが、先生のおっしゃった国際的世論もあるじゃないか、これは原因は人権の問題とか政治犯の問題などいろいろございましょう。そういう国際世論ということがありますから、孤立するというようなことになりますと、またこれは日韓だけでなくてアジアの平和ということにも関係してくることがございますので、いろいろなことを頭に置いて、総理が韓国の友邦として本当に日本の期待、希望を表明しているということをやられたわけでございまして、先生のおっしゃった内政干渉とかそういうことは毛頭、これは総理考えておやりになったことじゃないということだけははっきり申し上げておきます。
  136. 太田誠一

    ○太田委員 終わります。      ————◇—————
  137. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、理事補欠選任に関する件についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長渡辺朗君を理事に指名いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十六分散会