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1980-10-15 第93回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十五年九月二十九日)(月 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の とおりである。    委員長 奥田 敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石井  一君    石原慎太郎君       太田 誠一君    木村 俊夫君       北村 義和君    栗原 祐幸君       小坂善太郎君    坂本三十次君       竹内 黎一君    竹下  登君       中山 正暉君    古井 喜實君       井上  泉君    勝間田清一君       河上 民雄君    田邊  誠君       大久保直彦君    林  保夫君       金子 満広君    中路 雅弘君       田川 誠一君 ————————————————————— 昭和五十五年十月十五日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 奥田敬和君    理事 青木 正久君 理事 稲垣 実男君    理事 川田 正則君 理事 松本 十郎君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       石井  一君    石原慎太郎君       太田 誠一君    北村 義和君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       坂本三十次君    竹内 黎一君       井上  泉君    勝間田清一君       河上 民雄君    林  保夫君       金子 満広君    中路 雅弘君       田川 誠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君  出席政府委員         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         外務政務次官  愛知 和男君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房審         議官      山田 中正君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中南米局         長       大鷹  正君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用第一課長   坪井 文龍君         防衛施設庁総務         部施設調査官  岩見 秀男君         防衛施設庁施設         部首席連絡調整         官       千秋  健君         外務省大臣官房         領事移住部長  塚本 政雄君         運輸省航空局管         制保安部長   武田  昭君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ————————————— 委員の異動 十月二日  辞任         補欠選任   竹下  登君     佐藤 一郎君     ————————————— 十月九日  千九百八十年の食糧援助規約の締結について承  認を求めるの件(条約第一号) 同月十三日  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約批准等に関する請願福島譲二君紹  介)(第七号)  ILO未批准条約等批准促進に関する請願(  上坂昇紹介)(第二一号)  同外二件(日野市朗紹介)(第二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、わが国外交政策の樹立に資するため、関係方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青木正久君。
  5. 青木正久

    青木委員 イランイラク戦争でございますけれども、膠着状態でなかなか見通しがつけにくい。この戦争日本から遠く離れているので関係ないようですけれども、両方とも産油国でございますので、非常に影響は大きいと思います。すでに予算委員会でたびたび取り上げられておりますけれども、アメリカソ連介入しておりませんけれども、最近では第三国を通じまして、イランイラク双方に補給が行われているとも言われております。私は、ちょうどイラクが一九七五年の条約を破棄した日にバグダッドにいたわけでございますけれども、その感触ではまさに十二月八日の情勢でございますし、イラクとしても相当綿密に、かつ細心な計画のもとに戦争を始めたような気がいたします。  それで、イラクイラン戦争現状とその見通しについてお伺いしたいと思います。
  6. 伊東正義

    伊東国務大臣 イランイラク戦闘行為が始まりましたとき、ちょうど私も国連に行っていたのでございますが、グロムイコ外相に会う予定がありましたので、ソ連がここに介入をすれば世界の平和にとって大きな脅威になるので介入はすべきではないということですぐに要請しましたら、ソ連もああいう事態になることは全然予想していなかったということを言いまして、介入する意思はない、それは新聞に発表してもらっても結構だということでございましたので、すぐにその旨もマスキー国務長官にも伝えまして、アメリカにも、介入すべきでないということをニューヨークで言ったことがございます。  イランイラク紛争が拡大して第三国に及ぶ、あるいはホルムズ海峡の航行の安全が脅かされるというようなことになりましたら、私は本当に世界の平和にとって大きな脅威となるというふうに思うわけでございまして、イランイラク紛争が両当事者間だけで第三国には波及しない、何とか一日も早く平和裏話し合いがついて解決するようにということを希望しているわけでございまして、イランイラクにも何回もその旨日本の意向も伝え、あるいはホルムズ海峡の安全ということに日本は重大な関心を持っているのだというようなことも伝えておるのでございますが、先生承知のように、なかなかその紛争の根が歴史的にも長いことがございますし、いま国連理事会あるいはイスラム国家を代表しましてパキスタンのハク大統領が両国に行くというようなことがございましたが、まだその調停といいますか話し合いもうまくいかぬということで、最初空軍同士の空爆から始まりまして、イランの南方で陸上の戦闘も行われているというようなことで、イランももう結束を固めておりますので、イラクが考えましたように短時日にこれをおさめるということもなかなかむずかしい情勢にあるということで、戦線が膠着しておりますことは先生承知のとおりでございます。われわれとしても一日も早い平和的な話し合いによる解決ということを期待しまして、つい最近もイランイラク両方に自制を求めるということを行ったのでございますが、まだいまのところ解決の曙光が見えないというのが現状でございます。
  7. 青木正久

    青木委員 戦争の問題と含めまして油の問題がありますので、アラブ地域に対する日本外交というものは非常に重要性を増してきたと思います。日本アラブ外交、ここ数年来非常に改善はされております。しかしながら、ほかの地域に対する外交あるいは他の先進国アラブ諸国に対する外交に比べますと、まだまだ不十分ではないか。たとえば第一の問題といたしまして、言葉の問題を私痛感するわけでございます。アラブの国は二十カ国ですか二十一カ国ですか、この大使館アラビア語をしゃべれる外交官というのは非常に少ない。たとえばサウジアラビアのジェッダの大使館に行きますとアラビア語をしゃべれるのは一人しかいない、山田さんという方ですか。こういう状況ではアラブ外交というのはなかなかスムーズにいかないのではないか。英語あるいはフランス語で十分だという見方もございますけれども、そういう第三国言葉ではやはり西欧的感覚の情報しかとれないんじゃないか。今度のイランイラク戦争も果たして事前に外務省に入っていたかどうかという点も疑問に思うわけでございます。  そこでお尋ねしたいのは、いまアラビア語のしゃべれる現地雇いじゃない外交官は、何人、どこにいるか。そして、これからどういう御計画アラビア語をしゃべれる外交官を育成するか、その点についてお伺いしたいと思います。
  8. 伊東正義

    伊東国務大臣 青木先生おっしゃったように、確かにいままで中近東に対する外交の取り組み方といいますか、欧米に比較しましていままでおくれたということは、私も率直に認めていいと思うのでございます。最近、特に油の問題を中心にしまして中近東の平和といいますか非常に問題であり、中近東アラブ諸国との外交問題が非常に重要になってきたということは確かでございまして、アラビア語の話せる人の養成等もいまやっておりますが、今後とも、あの地帯は非常に重要な地帯だということを考えまして、外交体制充実ということには私は積極的に取り組んでまいるつもりでございます。  しゃべれる人が何名、どういうところにいるかということは、いま政府委員からお答え申し上げます。
  9. 柳谷謙介

    柳谷政府委員 アラビストアラビア語がしゃべれるあるいはアラビア事情に明るいという人間養成は、戦後日本アラビア地域との関係が深くなるにつれて外務省としてはほかの地域に比べてかなり重点を置いて養成に努力してきたつもりでございます。  最近につきますと、上級職試験専門職試験と合わせて大体六十数名の採用を行っているわけですけれども、上級二名、専門職二名、四名程度を毎年アラビア語専門ということにいたして研修をさせているわけでございます。研修のやり方は、東京におきまして一年間実務を学びながらアラビア語をさらにブラッシュアップするということをやると同時に、その後現地、大体エジプトあたりにしかるべき研修先を見出しまして三年間アラビア語の勉強に専念させる、その後は本省及び在外公館に配属する、ときには国連その他第三の地点にも配属するということで、育成してまいっておるわけでございます。  現在の時点で数字をとりますと、アラビストと総称できます専門家は五十四名、上級職職員が二十三名、専門職職員が三十一名でございまして、このうち在外勤務者が三十八名、本省勤務者が十六名ということになっております。五十数名おりますけれども、アラビア地域公館に配属いたしますと一館当たり一、二名というようなところも遺憾ながら出てしまうわけでございまして、今後外交要員充実が図られるに従いまして底辺を広げて、研修生の数も毎年四人をふやす、これは十年、二十年先のことになりますけれども、要員の拡充は今後とも大きな課題だと心得ております。
  10. 青木正久

    青木委員 では、いまアラブの国に必ず一人は  いるんですか。アラブの国というのは二十カ国ですか二十一カ国ですかあれですけれども、最低一人はおりますか。
  11. 柳谷謙介

    柳谷政府委員 現在のアラビスト配置状況でございますけれども、上級職専門職を合わせましてエジプトに十二名、サウジアラビア五名、これは特に多い数でございます。あとのところはシリア、カタールの二名、その他の諸国は一名、現在中近東地域に勤務しているアラビストは合計二十七名でございます。
  12. 青木正久

    青木委員 ことしの外交青書を読みますと、中近東問題につきまして「わが国がこの地域で果たすべき政治的・経済的役割に対し強い期待が表明され、これにこたえ、わが国がこの地域の平和と繁栄のために建設的役割を果たす基盤ができた。」こう書いてありますけれども、この「建設的役割」というのは一体具体的にどういうことか。  中近東というのは政治的に非常にむずかしい地域ですから、経済的接近の方が妥当だと思われるわけでございます。しかしながら、現実的にはそれほど何もやっていないという感じがするわけでございます。一方、アラブの国からは日本に対して非常に接近をしたがっている。  一つの例でございますけれども、私がことし参りましたチュニジアでございますけれども、チュニジアでは大統領総理大臣演説をするたびに日本のことを引用するわけですね。たとえば、一九七九年九月の第十回立憲社会党大会のところでヌイラ総理大臣が、日本人、この奇跡を行った国民はそれぞれの企業内の自己の職場にとどまりながらストライキもしないでがんばっているというようなことを言っていますし、あるいはブルギバ大統領は、これは一九七九年十一月、第十回アラブ首脳会議でしゃべったわけでございますけれども、日本国民は第二次大戦に負け、鉄、石炭または石油のごとき大きな天然資源を保有していないにもかかわらず、最先端の繁栄をするようになりました、日本の本当の豊かさはその人間にある、彼らは技師から労働者まで国の発展のために日夜を分かたずに働いている、こういうことを言っております。日本に対して非常に接近したがっていると思います。  たとえば、そのチュニジアにいたしましても、現地大使から聞いたのですけれども、日本に一番求めているものはモロッコに出しました漁業訓練船というのですか、あれがどうしても欲しいということで、一隻二億円するそうでございますけれども、漁業を指導する人は行っているらしいのですけれども、船がないものでなかなかその実績が上がらない、ぜひとも漁業訓練船をくれないかということを何年来も言っているのじゃないかと思いますけれども、こういうことも日本は応じていない。相手の国がたくさんあるためにそう簡単にはいかないと思いますけれども、こういうことも含めまして、アラブに対する経済援助について大臣の御見解を伺いたいと思います。
  13. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの点でございますが、日本経済援助といいますか、全般的に経済協力技術協力関係を見ますと、東南アジアが大体七〇%ぐらいでございます。それから中東、アフリカ、中南米が一〇%ずつぐらいで、それで一〇〇になるわけでございますが、確かに東南アジアが七〇ということでございますから、そういうことに比較してみますと中近東の一〇というのは比率が低いわけでございます。  これは絶対額との関係もございますが、アラブの中では方針は大体こういうふうに決めております。産油国に対しましては、これは民間の協力ということを主に考える、政府は主として向こうから要望のある技術協力等につきまして考えていく。それから中近東でも非産油国がございますので、こういう国に対しましては資金協力、あわせて技術協力をするというような考え方で実はやっているわけでございますが、今後とも私は政府開発援助資金予算増枠といいますか、こういうことにつきましては積極的に努力をしてまいるつもりでございますし、経済的な援助をできるだけやっていくということは努力したいと思います。  それから政治的な問題でございますが、この二月でしたか園田大使向こうへ行かれまして、あれは石油という問題よりもむしろ中東和平ということについて日本がどういう役割りができるかということをひとつ各国の首脳と会って話してこようということが園田特使が行かれた主たる目的であったわけでございます。  実は私もこの間国連に参りまして、中東和平というのは、あそこは世界の平和にとって一番大きな問題のあるところではないか、キャンプ・デービッドでエジプトイスラエル和平ということは第一歩としてできたけれども、それだけでは足らぬので、それを第一歩にして伸ばしていかなければいかぬじゃないか、それにはパレスチナ人自活権といいますか自治権といいますか、これを中心にしてPLOも認めていく、PLOイスラエル存立を認める、イスラエルPLO存立を認めるということを前提にして、むずかしいことではあるが話し合いをして、中東和平を広げるべきじゃないか、永続的な包括的な和平にすべきじゃないかということを実はアメリカの当局にも、副大統領にもブレジンスキーにもマスキーさんにも、みんなに私は主張してまいりました。イスラエル外相にも会いまして同じことを言いまして、日本国連総会パレスチナの問題についていま私の述べたと同じような意見を言っておりますので、そういうことをやっていかなければイスラエル世界的に孤立をしてしまうことになるので、そこを考えなければいかぬというようなことを向こう外相話し合いをしてきたわけでございます。あの中東地帯和平の問題につきましては、日本は油の問題を中心に非常に日本経済にも関連のあることでございますので、経済的な援助、あわせて政治的な問題で中東和平の中に日本がECとも相談しながらどういった役割りを果たせるかということをひとつ考えていきたいというふうに思っております。
  14. 青木正久

    青木委員 チュニジア漁業訓練船はどうなっていますか。
  15. 梁井新一

    梁井政府委員 先生お尋ねチュニジアに対する漁船の経済協力要請でございますが、実はそれ以外にもたくさんの要請が来ております。ただいま大臣が申し上げましたとおり、わが方の資金の限度もございまして先方の要請どおりに対処できないというのが現状でございますが、この問題につきましてはほかにも優先度を付した案件がたくさんございまして、全部を総合いたしまして現在関係各省間で検討している段階でございます。
  16. 青木正久

    青木委員 ヌイラ首相という人の演説で、日本人と手を握り新しい漁法を学べということを演説しているわけです。ぜひともひとつこれを実現したいただきたいと思います。  最後に一つお伺いします。  例のナヒモフ号帝政ロシアの軍艦から財宝が出てきたことにつきまして、きのうの参議院の予算委員会でも取り上げられたようでありますけれども、これに対してソ連側が権利を確保すると言ってきたそうでございますけれども、この問題は前例が少ないと思いますし、またなかなか判断がむずかしいことはよくわかります。きのうも外務省で何か打ち合わせをされたようでございますけれども、私どもの考えではソ連の言い分はちょっと虫がよ過ぎるのではないか、常識的に考えてみましてこれはソ連のものだと言うのはちょっと常識に外れるのではないかという感じがするわけでございます。結論は出ていないと思いますけれども、大臣に大体の方向についてお伺いしたいと思います。
  17. 伊東正義

    伊東国務大臣 ナヒモフ号の引き揚げの問題、その帰属の問題でございますが、引き揚げ作業をやっている会社も、これがナヒモフ号の船体だということをはっきり突きとめてはいないのでございまして、果たしてそれがナヒモフ号であるかどうかということはまだ最終的な確認はされていないわけでございますが、新聞に出ました直後にソ連大使館から、先生おっしゃったような申し入れがあったわけでございます。ことしで七十五年になりますか、その間は何にもなくて、卒然としてそういう申し入れがあったというのは、私としましても本当に唐突で釈然としないなという感じを持ったことは確かでございます。これが果たしてナヒモフ号であるかどうかという確認をまたちゃんとしなければならぬことも場合によってはあるかもしれませんし、そうした場合にも帰属がどうなんだという問題については、先生おっしゃったように、こういうものの先例も余りなし、条約もどうも適当な条約があるかどうか、国内法でも水難救護法とか若干ありますけれども、どうもこういうものを予想したものではないんじゃないかという気もします。  いまのところ実はまだ結論が出ていないわけでございますが、なるべく早く結論を出すように、新聞に出ましたので国民も大きな関心があると思いますので、なるべく早く結論を出すように努力します。私もまだ結論は聞いていないわけでございますが、国民の皆さんの感情は大体わかりますので、そういうものと余り背反するような結論でないことを私は希望しているわけでございまして、なるべく早く国民感情に合ったような結論をできれば出したいというふうに思っております。
  18. 青木正久

    青木委員 終わります。
  19. 奥田敬和

  20. 高沢寅男

    高沢委員 私は、この外務委員会伊東外務大臣に御質問するのはきょうが初めての機会でありますから、初めに若干日本外交基本姿勢と申しますか、そういう観点でお尋ねをして、それから順次具体的な問題に進んでまいりたい、こう考えます。  外交基本的な姿勢と申しますと、これは福田内閣のときでありますが、全方位外交という立場をとられたわけでありまして、もちろん国によって濃淡のいろいろな差はありましょうけれども、ともかく全方位外交という立場世界のあらゆる国との友好関係を進めるというふうな立場でおやりになった。その後大平内閣になりまして、ことしの五月大平総理が訪米されました。その訪米の会談の中で、日本西側一員としてこれから責任を果たしていくんだという方向をお出しになった、私はこういうふうに理解しております。  現在の鈴木内閣大平内閣の路線を受け継ぐという立場でおられますので、その関連をどういうふうに見ておられるかということになるわけですが、政府のことし発表された外交青書の中にもこういう表現があります。  もはや国際関係わが国にとっての与件と考えられるのではなく、わが国国際社会の有力な一員として作り上げていくべきものに変わつてきたといえよう。わが国は、単に経済面のみならず、広く政治・外交面において、世界の平和と繁栄のため、従来に倍する積極的、建設的な役割を果たさねばならない状況にある。それから、それをさらに受けまして、こういう表現もあります。  責任ある国際社会一員として、激動する国際情勢に対し積極的な外交を実施することは、往々にして厳しい選択に直面し、時に犠牲をも覚悟しなければならない。この試練に立ち向かう根底をなすものは、わが国基本的価値としている自由と民主主義を守るという強い信念であり、この意味で、米国及び西欧諸国をはじめと  する自由主義諸国との連帯協調を更に強化することが必要である。  では、この外交青書の「自由主義諸国との連帯協調」あるいはまた大平総理の言われた、西側一員として責任を果たす、こういう立場は、私の理解では、どうも全方位外交と言われたものとは基本線が違ってきているのではないかという感じがいたしますが、大臣いかがでしょうか。
  21. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま先生外交青書をお読みになっての御質問があったわけでございますが、前々から外交青書では全方位外交という言葉は使ってなかったと思うのでございますが、時の大臣や何かがそう言われたことがあったことを私も予算委員会などで聞いたことを覚えております。全方位外交ということを言われた当時からも外交青書に書いてありますが、基本は、日米安保条約基軸とした日米友好親善がまず日本外交基軸であるということはずっと青書でも言ってきているわけでございまして、その点には全然変わりないわけでございます。変わりないわけでございまして、日米友好ということが日本外交基軸になって、そして経済あるいは政治につきまして理念を同じくするものが協調するということは、ずっと前からもその考え方でやっておるのでございますが、そういうことを基礎にして、各地域で政治形態は異なっても、中国の問題あるいはソ連との問題、そういう地域地域友好協調を図っていくということをずっと外交青書は言ってきているわけでございます。その点は変わってない。ASEANはASEAN、アフリカはアフリカというような地域地域友好協調を図っていくのだ、その基礎は日米友好関係基軸なんだということを言っているわけでございます。  しかし、昨年イランの人質問題が起きた、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入が起きたということがございまして、ことしの一月の大平総理の施政方針演説で、世界の平和、安定を守るためには犠牲もある場合には考えなければいかぬというような演説をしたことは私も記憶にございます。大平総理が言いましたのは、世界の平和、安定を守っていくということはどうしても必要なんだ。そのためには場合によっては日本が犠牲を払わなければならぬということもあるかもしらぬ。しかし、その上に立って自由あるいは民主主義というものを守っていくのだということを言ったのでございまして、現象的に起きましたのは、イランに対する経済の制裁の問題、それからソ連がアフガニスタンに対して軍事介入をしたということに対しまして、アメリカ中心西側が一致して経済措置を考える、人的交流に配慮を払う、あるいはオリンピックのボイコットをするとか、新しい信用供与をしないということを実はやったのは御承知のとおりでございまして、それが一部は日本の犠牲になっても、やはり武力で外国に介入するというようなことをすれば高い代償がつくのだということは、西側陣営の一人としてみんな歩調をとってわかってもらわなければいかぬということをやったわけでございます。外交が特にここは敵対関係を考えるのだとか、ここはどうだということではなくて、それは同じで、基本アメリカとの友好関係基軸、そして自由とか民主主義を守るという西側の側に立って、その一員として、しかしその地域地域では、政体は異なることはあっても、友好協調はなるべく図っていくというのが日本外交でございまして、そういう意味で外交青書でもそう日本外交は変わったわけじゃない、私はこう思っております。ただ、現象をとらえてみますと、やはりそのときに対応してやらなければならぬことがあるということだと私は思っております。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 いま大臣のお答えがありましたが、外交青書よりもさらにそういう考え方が非常にはっきりとあらわれているものとしては、外務省がまとめられた安全保障政策企画委員会の報告というものがあると思うのです。この中の表現を見てみますと、まず、いまの世界情勢の認識が「近年の東西関係はグローバルパワーを目指すソ連の挑戦とこれを受けて立つ米国、西側諸国によるグローバルな対応」、こうなっておる。つまりソ連もグローバルにやってくる。アメリカや西欧側もグローバルにそれに対応しておる、こういう見方。  ところが、アメリカは国力が相対的に低下している。一言で言うならば最近アメリカは弱くなっておるというところから、特に東側に対抗するために同盟国の協力を求めてきておる。日本に求めているのもそれだということになるわけですが、それを受けて「NATO諸国とともにわが国としても広くグローバルな観点から自衛力の増強を図る必要があり、ひいてはこれがわが国の安全の確保につながる」、こういうふうな筋立てになっているのです。  要するに、ここではソ連というもののグローバルなそういう挑戦というものを一つ設定して、それに対抗していく、日本はその中で積極的な役割りを果たす、その役割りには政治、外交のみならず、ここでは軍事の面にまで触れるというような形になっていますが、こうなってくると、ごく常識的に言えば、いまや日本外交にとってソ連は事実上仮想敵になった。仮想敵として位置づけておる、こういう見方ができるんじゃないかと思います。  私は、さっきは全方位外交についてお尋ねしましたが、全方位外交というのは、わかりやすく言えば特定の仮想敵を持たぬ外交、これが全方位外交だと言っていいと思いますが、この外務省の作業された安全保障政策企画委員会の報告によれば、いまや仮想敵を持つ外交日本は行くのだというようなことになるんじゃないか、こう感ぜられるのですが、大臣、それはいかがお考えですか。
  23. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃったのは、研究会がまとめた骨子の中を引いての御質問でございますが、東西関係、東西関係と言われますが、東西関係というのは、米ソの基本的枠組みはずっと変わってないのだと思うのです。その間に冷戦構造がありデタントがあり、いろいろありましたが、その基本的な枠組みというものは変わってないというふうに思うわけでございます。その中で起きてきたことは、日米安保というのはずっと前からあったので、日本はその基本的な枠組みの中でアメリカ日米安保をつくっているということもずっと変わってない、これは同じ状態でございますが、先生のおっしゃったように、若干世界情勢の中に、多元化といいますか多極化といいますか、アメリカが前のように世界の警察をもって任ずるような力がなくなってきたということは確かだと思うわけでございまして、アメリカからいろんな期待表明があることも事実でございます。  それで、基本的な枠組みは変わらぬ、日米安保が基軸であるということも変わらぬという立場に立てば、当然やはり日本日本を守っていくというには、自分の専守防衛でございますが、自衛力も着実に増加していく、必要最小限度のものを増加していくということは、日本国として、独立国として当然やることでなかろうか、私はそう思っているわけでございまして、それが先生おっしゃるような、日本戦争に巻き込まれるというふうなことにはならぬようにすることは、これはまた外交の役目でございますので、その点は十分に注意してまいる。ただ、日本としては、国を守る、防衛ということにつきましては、着実に日本人が自分の国を守るという、自分のこととして考えていくということをやらなければならぬというふうに思っております。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 とにかく外務省の作業された安全保障企画委員会のあれですが、ここでちょっとお尋ねするのですが、これは「第一ラウンドとりまとめ骨子」となっていますが、第二ラウンドというのはどんなふうに進むのか、この機会にちょっとお尋ねしたいと思います。
  25. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまお尋ねでございますが、それは第一次の骨子ということで取りまとめて、今後も研究は続けていきますというように私は報告を聞いておるのでございますが、その後の研究といいますか審議の過程は、いま担当の部長から申し上げます。
  26. 秋山光路

    ○秋山政府委員 お答え申し上げます。  ただいまのところ第一ラウンドが終わりまして、その結果を踏まえて第二ラウンドのプログラムを研究中でございます。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 これはとても答えになっておるようなものではございません。大臣からしきりにそうではないというお答えがあるのですが、これだけはっきりソ連のグローバルな戦略を相手にしてやるんだ、こうなってくれば、これはだれが見てもソ連が相手がこう来るからそれではこっちはこういくぞという対応になってくる。これはもう仮想敵だということにならざるを得ない。しかし、私はもちろん日本外交がそうなってはならぬという立場お尋ねをしているわけです。  そのことでここでなおもう少し進んでお尋ねしたいのですが、最近非常に憲法改正論議というものが出てきておることは御承知のとおりです。それでその憲法改正論議との関係になるのですが、もし仮想敵を持つという立場に立ってくれば、いままでの問題の日米安保条約は、御承知のとおりだれかが日本へ攻撃をしてきたときに、それに対応するのに在日米軍それから日本の自衛隊が共同して戦う、こういう枠組みになっています。この場合の在日米軍の戦闘行動は、アメリカから見ればこれは集団的自衛権の発動、こうなるでしょうし、日本立場からすれば日本の自衛隊は個別的自衛権の発動、こういう組み合わせになっていると思うわけです。それが、先ほど言いましたように今度はグローバルな立場日本西側一員としての役割りを果たすということになってくると、日本も個別的自衛権の枠を越えて集団的自衛権というところまで踏み出していくというようなことになるのじゃないか。論理上私はそうなってくると思うし、これはまた大変なことだと思うのです。  そういう背景の中で最近盛んに自民党で憲法論議が行われておる。鈴木総理は憲法改正はしないと言われる。しかし一方では奥野法務大臣は改正論議は大いにやって結構だ、こう言われる。自民党の憲法調査会はもう改正を目指して改憲の草案までつくろうというふうなことまで申し合わせをされているというような状況なのですが、いま私はこの場で外務大臣、国務大臣であると同時に鈴木内閣の大黒柱という立場におられる有力な政治家として、伊東さんのこういう問題についての御見解をお尋ねをしたいと思うのです。
  28. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生の御質問の中に仮想敵を設けてというお話がございましたが、いまわれわれは仮想敵を設けて自衛隊がやっておるということじゃございません。はっきり仮想敵というのではございませんで、その点は申し上げておきます。  ただ、国会でも答弁しておりますように、アフガニスタンの軍事介入あるいは北方領土の軍備の増強等、潜在的な脅威はあるのだということは国会で政府は言っておりますので、そこまででございまして、それから先の仮想敵とかそういうことはございませんので、これは私どもの考え方を申し上げておきます。  それからもう一つ、憲法改正論議をめぐって、あるいは個別的自衛権を越えて集団的自衛権を考えるようなことがどうも言われておるが私の見解はどうだということでございますが、実は私はあの改憲連盟には入っていないのでございまして、私はそういう考えを従来から憲法改正につきましては持っていないわけでございます。いまの憲法で差し支えないじゃないかという考えで私はあの連盟には入っていないというのが私の立場でございますし、また鈴木内閣も憲法改正はしないということを言っているのでございまして、私は、個別的な自衛権ということで日本はやっていく、専守防衛だということをはっきり申し上げ、集団的な自衛権というようなことを考えた憲法改正は考えておらぬということを申し上げます。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 御自分は憲法を変えるという連盟には入っていないという立場を含めて、いまの憲法で差し支えないではないかというお答えがありましたが、私はそれを評価しつつ、しかし、いまの憲法で差し支えないというよりは、いまの憲法がいいのだというところまで一歩踏み出していただきたい、こういう感じがするわけです。  それは、最近日本経済力の問題が盛んに言われておりますが、戦後三十数年、日本がこれだけの経済成長ができた、あるいはまた経済的な技術的な力を持つようになってきたという背景には、何と言ってもあの憲法の平和主義というものの大きな積極的な役割りがあった、このことは将来にわたって変わることはない、こういうことでありまして、そういう積極的な評価も大いにいただきたい、こう考えるわけでありますが、その上に立って、なおその関係で若干心配の点を二、三お尋ねしたいと思います。  あのイランイラク戦争が起きて、そしてホルムズ海峡の航行の安全確保ということが非常に重要だ、これは当然でございます。そうなってきたわけですが、それを受けて、何か新聞によればアメリカのカーター大統領から日本に対して、ホルムズ海峡の安全確保のために先進国間で何ができるかひとつ相談したい、こういうふうなメッセージが届いたというふうに伝えられております。それに対して宮澤官房長官は、決してアメリカの提案は軍事的な要請ではなかった、また国連安保理事会和平工作と切り離したものではなかった、こういうことも言われたと新聞に出ておりますが、そうすると、このメッセージの内容というのは一体何を日本要請したものであったのか、そしてそれに対しては日本政府としてどういうふうに対応されるのか。この新聞記事によると、外務省の菊地審議官がすでに米側と協議を開始しているというふうなことも書いてあります。したがって、その協議では一体何を協議されているのかというふうなことも含めてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  30. 伊東正義

    伊東国務大臣 憲法の平和主義ということが非常に大切であることは私はよく知っておりますので、私はいまの憲法の平和主義ということを積極的に支持しているという考え方でございます。  それからカーター大統領からのメッセージにつきましては北米局長から詳細申し上げますが、日本に対して、たとえば軍艦をもってパトロールをするというふうなことについて日本も参画してくれとか、どうしてくれということはいままで一回もないのでございます。日本が自衛隊法上もあるいは憲法の解釈上もそういうことはできないということはアメリカは十分承知しておりますので、そういうことはないわけでございます。これは私がアメリカにいたときに話が起こったのでございますが、最初来たときには、船の保険料が非常に高くなる、それで保険料について何か考えることはないかというような話でありまして、それは私がアメリカにいた当時からありました。そういうことを菊地君がいろいろ話をしているということは想像されますが、アメリカから特にパトロールその他について要請があったということは私はいままで一回も聞いたことがないのでございまして、この間のカーターさんのメッセージは、不介入の問題でございますとか、あるいはイランイラクに自制を求めるとか、そういうことだったと思うのでございますが、いまアメリカ局長から詳細御答弁申し上げます。
  31. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 カーター大統領のメッセージは、九月二十五日に外交経路を通じてわが国に参りました。その内容は、現在のイランイラク紛争にかんがみてホルムズ海峡の安全航行の問題が起きる可能性がある。そこで必要ならば先進国、大体これはサミットの参加国でございますが、サミットの参加国からカナダを除いた六カ国で協議をしたい、もし必要であればアメリカ側が国際会議を招集するにやぶさかでない、その中でたとえば保険料の問題等についても協議したいというのが親書の内容でございます。  それを受けまして、菊地審議官がたまたま他用でワシントンにおりましたのでアメリカ側と話をいたしましたけれども、そこでは具体的な話に至っておりませんし、またその後の状況で、ホルムズ海峡の安全通航に関しては、先生承知のとおり現在のところ船が通航できるということで、このアメリカの提案した国際会議、もちろんその前提として必要であればということはアメリカは言っておりますけれども、その可能性は現在の状況で遠のいているというのが実情でございます。
  32. 高沢寅男

    高沢委員 その経過はわかりました。  同じ関係でございますが、外務省のお考えで先ほどの安全保障企画委員会の作業の中で、国連の平和維持活動に対する要員派遣ということも出たり、あるいは最近は世界で何か紛争地域が出たときにそこの邦人の帰国を実現するために自衛隊の機関を派遣するというようなことが出たり、その後者の方は一時そのために自衛隊法の改正まで進めると伝えられたり、あるいは防衛庁長官はそれを否定されたりというような経過はありますが、いずれにせよこれらの問題は、初めは武装しないものが出るんだ、こういう言い方で始まるわけですが、一旦出て、そうしてその紛争地域で何かあったときに、今度は日本の行った機関がそこで何かの戦闘行動をとらなければならぬような事態が発生する、すると今度は武装が必要だとなるというような形で、物事が結局海外への日本の武力の出動というものにつながっていく、こういう点について私たちは非常に大きな不安があるわけです。また、これはそうあってはならぬ。  日本の明治以来の歴史を振り返ってみれば、日本はずいぶん何回も戦争をやっておりますが、これはいずれも日本の軍隊が外へ出ていって戦争をやっておる、こういう形のこういう歴史を繰り返してきておるわけですが、そういうものにつながる危険性というものは、当然国際的にもそういう目で見られるだろうし、またわれわれもそうなってはならぬ、こういう立場で考えます。  この平和維持活動への要員派遣とかあるいは邦人救出のためとかいうようなものであっても、そのための自衛隊の要員派遣というものは私はあってはならぬ、そのために必要な方法は別な手段でやるべきである、別な手段で積極的にやる方法は幾らでもある、こう考えるわけですが、大臣の御見解はいかがですか。
  33. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの邦人救出に関連して非武装の自衛官を派遣したらどうかというような議論が国会でもいろいろ出たことを承知しておりますが、これはいまの自衛隊法上はできないことははっきりしておりますので、そういうことは恐らく防衛庁でも相談したことはないだろうと思います。いま先生のおっしゃった法律論でいけば、それは本当に平和維持の目的だけのものであれば憲法上はできるじゃないかという意味のことを法制局長官が言いまして、それ以外のことは憲法上もできません、ましていまの法律では自衛隊は両方ともできませんという法律論をやったとおりでございまして、先生のおっしゃったように、いまは自衛隊法上できないということははっきりしておりますし、そういう必要があれば何か外交手段か別なものでやるべきだとおっしゃることは私もそのとおりだと思いますので、外務省としてはあらゆる平和的な手段で、邦人救出とか国連に対する協力とか、そういうことは自衛隊あるいは自衛隊員以外のことで考えていくというのが筋だというように思っております。
  34. 高沢寅男

    高沢委員 西側一員ということに関連してちょっと経済のことをお尋ねしておきたいと思います。  日本は各国との経済協力をいろいろやっておりますが、こういう経済協力のやり方も、これは西側に有利になるからやる、これは東側に有利になるようだからしない、西側一員という立場になるとそういう選択が出てくるのじゃないかという感じもするのですが、一体そういう割り切り方が経済協力でできるものかどうか。私の考えでは、経済関係というのは相手にも利益になるが、同時にわが方も利益がある、こういう相互的な利益ということで成り立つわけであります。したがって、そういう経済協力というものは東側、西側というようなことではなくて当然進めるべきであり、その意味においてはこの経済協力こそまさに全方位だ、こうあるべきだと思うのでありますが、この点について大臣の御見解をここでお聞きしておきたいと思います。
  35. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細はまた経済協力局長からお答えを申し上げますが、日本基本的な考え方は、その国の民生安定ということを基本にして主として経済上の援助をやっているというのが現状でございます。  ただ、いまのところは東欧圏とかソ連というところにはやっていない、これは事実やっておりません。  ただ、どっちかと言われて非常に区別のつかないようなところもあるわけでございますが、頭から東側には絶対やらぬとかいうようなやり方でなくて、その国の民生上本当に必要だということを考えてやっているというのが現状でございます。
  36. 梁井新一

    梁井政府委員 ただいまの大臣の御説明を補足して申し上げますと、東欧圏につきましては、ユーゴを別といたしましてDACの規定によりまして、わが方のODA資金を出しましてもODAにカウントされないということになっておりまして、日本のみならずほかのDAC加盟諸国もODAは東欧圏に出しておりません。  ただ、大臣がおっしゃいましたとおり、わが国経済協力基本理念は、開発途上国の経済社会開発に貢献して民生を安定するということにございますので、一般のLDCにつきましては別に政治理念ということと関係なしに援助する姿勢でございます。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 それでは次に、今度は具体的な問題に移りたいと思います。  焦点の一つ、金大中氏の問題について次にお尋ねをいたしたいと思います。  金大中氏の死刑の判決が出た。この判決が一体どういうふうな判決であったかと、外務省としては韓国に対し盛んにそれを求めておられた。それに対して、最近何か要旨が入ったということで外務省から発表されているわけですが、この要旨をどういうルートで入手されたのか、それから判決の本文、正文というものがどうしてもなければいかぬということで、この入手のためには今後どういう努力をされるのか、その点をまず最初にお尋ねいたします。
  38. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  要旨は韓国の外務部を通じて受け取っております。ですから、これは向こうの正式なものだということで受け取っておりますが、私どもは要旨だけでなくて判決文をできれば全部欲しいということを何回も向こう申し入れましたし、今後も外交ルートを通じまして韓国政府に対して判決文の正文をこっちによこしてもらうように続けて向こうに話をしていくつもりでございます。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 その関連になりますが、私もこの要旨を拝見したところでは、金大中氏に対する死刑判決の背景が国家保安法、それは反国家団体との関係というようなことにしぼられてきているわけですが、「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討した」、ここのところを、金大中氏と反国家団体と言われている韓民統との関係の、日本に金大中氏がいたその関係は除外されているんだ、そして韓国に金大中氏がいるときのその関連が問われているんだ、したがって、政治決着の約束に反してはいないんだ、こういう外務省としての見解になっているやに私は受け取るわけですが、韓民統と金大中氏との関係を、日本にいたときのことと韓国にいたときのこととの一体こういう分離が果たしてできるのか。これは法律学者などの意見として公訟事実の同一性、一つの事実のある部分だけ公訴してある部分は公訴しないというようなことは、これはそもそも法律論として成り立たない、ある部分を公訴すれば結局全体として公訴したことにならざるを得ない、こういう法律論があるわけですが、私も同じように考えるわけです。  韓国における金大中氏と韓民統との関係といっても、それは日本においての金大中氏の韓民統との関係という土台があって、その上に初めて成り立つわけでありますから、したがって、その韓国の関係を問うとすれば、結局は、内容的には日本におけるその関係を問うことにならざるを得ない。そうすると、これは政治決着の約束違反だということになってくると私は思いますが、この点はいかがお考えでしょうか。
  40. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの公訴事実の同一性ということですかの御質問でございますが、私どもは向こうの判決の理由書の中ではっきりと「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、」と言って、日本でのことではなくて、「国内で犯した犯罪事実を」ということを言って、向こうがはっきり理由書に書いてきたわけでございますので、われわれとしましては、政治決着に違反はしていないという理解をしているわけでございます。  先生のおっしゃいました公訴事実の同一性の問題は、これは私どものつたない法律解釈でお答え申し上げても間違うといかぬことでございますし、特にこれは韓国の法律問題でございますので、できましたら法務当局からいずれかの機会に明快な御答弁でもした方がいいんじゃないか。私どもは向こうから来ました判決理由書にさっき申し上げたような理由で国内法の証拠でということをはっきり言っておりますので、政治決着に抵触しないんだという解釈をしているということでございます。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 私も法律知識はいたって貧弱な方でございますから、その点は、では公訴事実の同一性ということに関してはまた別なひとつ扱いをいたしてみたいと思います。  そこで私は、もう少し内容上の問題で触れなければならぬと思うのですが、外務省から配付されました金大中氏の起訴状、これは私も今度の質問に向けてもう一度また読み返してみました。恐らく大臣も起訴状をお読みになっていると思うのでありますが、韓民統との関係ということを起訴状について見ますと、日本において金大中氏が一九七三年、つまり韓国へ拉致されたその年の日本において韓民統の結成をしようというようなことでいまの韓民統の幹部の人たちといろいろ接触があった、あるいは相談があったというふうなことがずっと起訴状に書いてあります。そしてその起訴状に、さらに一九七三年の八月初句ころ金大中氏は日本から韓国へ帰国した、こう書いてあるのですが、この帰国したというのが御承知のとおり、まさにKCIAに拉致されたこのことになるわけですが、起訴状ではこれをさらっと「日本から帰国した」、こう書いてあります。  私はこの文章を読みまして、大変皮肉の感にたえなかったわけですが、実際には韓民統が結成されたのは一九七三年の八月十三日ですね、八月の十三日に結成されている。そしてそこで金大中氏はその議長にということにされたわけです。ところが、金大中氏本人は八月の八日に拉致されてもう東京にいなくなったわけです。日本にいなくなったわけです。そのいなくなった後の十三日に、金大中氏本人のいないところで、この人を韓民統の議長にするというようなことになったということは、これは事実の経過もそうであるし、起訴状を読んでみてもまさにそういう経過が起訴状の中に述べられております。  この事実関係はそういうものだということを大臣お認めになると思いますが、いかがでしょう。
  42. 木内昭胤

    ○木内政府委員 高沢委員御指摘のとおり、八月八日に拉致事件が起こりまして、同十三日に結成が行われまして、八月十五日に大会が日比谷で開かれたというふうに承知いたしております。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、その事実は私が申し上げたとおりということですね。  そうしてこの起訴状によれば、八月の十四日に東京にいる韓民統の金錘忠さんという人がソウルへ電話をかけて、そして金大中氏に、あなたは韓民統の議長になりましたよということを報告した、こういうふうなことになっているのです。ところが、この事実関係は、その金鉱忠氏本人に私は会って聞きましたが、自分はそういう電話をしてないということを言っておられるわけで、この点はその立場に立てばこの起訴状の事実が違うということになるわけですが、しかしいずれにせよここら辺の経過がずっと書いてある起訴状部分は、政府がこれは金大中氏に関して背景説明の部分である、これは起訴する部分とは別な、その前文の背景説明の部分であるというようなところに、これらの関係がずっと出てくるということでございます。  この点は、大臣いまうなずいておられますが、ひとつ事実関係がそうだということを御確認願いたいと思います。
  44. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま背景説明というお言葉が出ましたが、それは韓国政府から正式にそういう説明をわれわれはといいますか、向こう大使館が受けたということ、事実はそのとおりでございます。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 それからその次に、今度は一と番号が振ってあって、二と振り、三、四となって、政府はこの一と番号を振ってあるところ以下が具体的な訴因である、こう言われたわけですが、その一の番号を振ってある中で、ここでも今度は韓国における金大中氏と韓民統との関係というふうなことが出ているのですが、私これを読みまして、大臣もお読みになったと思いますが、ここで出てくる金大中氏と韓民統の関係は、金大中氏は、自分はいまこういう立場にあるのでとても韓民統の議長というふうな職務はできない、したがって韓民統の議長はやめたい、やめさせてもらいたい、そういうふうに難民統へ伝えてもらいたいということを自分に会いに来た人に言っておる。これは韓国の統一党の所属の国会議員の金禄永という人にそういうことを言っておる。あるいはまた、金大中氏を尋ねてきた日本の時事通信の記者ナカヌマという人に、そういうことを伝えてもらいたい、こういうふうなことを言っておる。  こういうことなんであって、つまり韓民統との関係というのは、金大中氏が、自分がいない間にその議長にされたようだ、けれども自分はそれはできない、したがって自分を議長から外すように、こういうふうにしてもらいたいということを、自分に会いに来た人に日本の韓民統へ伝えてもらいたいということを繰り返し言っておる。この一以下の起訴状の中に出てくる事実関係というのはそれだけなんです。それ以外はないのです。  こういう内容に立って見れば、この韓民統との関係、反国家団体との関係、その議長、首魁になってけしからん、だから死刑だ、こういう立場は全く成り立たない、私はこう思うわけですが、この点の認識については大臣いかがでしょうか。
  46. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ただいま御指摘のとおり、三月に至りまして引き続き議長の職にとどまるということにはいろいろ問題があるということを関係者に金大中氏が伝えまして、議長の職を引いたということは起訴状からも想像されるわけでございます。高沢委員の御見解は御見解でございますが、私どもとしては韓国の裁判の問題でございまして、この起訴状の訴因以下一のところに韓民統との関連が触れてある。しかしその触れ方が足りない、どうもおかしいというような解釈を申し上げる立場にはないと考えております。
  47. 高沢寅男

    高沢委員 解釈を言う立場にはないと言われますが、これを読めば、金大中氏が韓民統との関係で何々をやったということではなくて、自分がいない間に議長にされたのをやめたい、やめさしてくれ、そう言ってくれ、これしかないということはだれが読んでも明らかです。一体これでなぜ死刑になるのかということです。  さらにもう一つ申し上げたいのは、韓国の大法院が韓民統を反国家団体と指定したのはいつでしょうか。一九七八年ですよ。金大中氏が東京にいた、いろんなことがあったのは七三年です。それから五年もたった後に大法院は韓民統を反国家団体と指定をしたわけですが、そうすると、その以前の事実をその後に指定した物差しに立って公訴する、あるいは死刑の判決をするというようなことは、御承知のとおり、法律ができた場合に、その以前の事実にさかのぼっては遡及できないという当然の常識論からいっても、これは私は全く成り立たぬ、ただひたすら何が何でも金大中氏を殺してやろう、もうこれしかないという起訴であり、また判決であったと私は考えますが、いかがですか。
  48. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国の地方法院が韓民統を反国家団体として規定いたしましたのは七七年の十月でございます。それから大法院においてこれを肯定いたしましたのが御指摘のとおり七八年の六月でございます。
  49. 高沢寅男

    高沢委員 いずれにしても、いま言われたとおり、七七年あるいは七八年、その時点でそれが本当に妥当であるかどうかは別として、とにかく韓民統は反国家団体と指定をされた、その以前の行為なり以前の事実について死刑を問われるというふうなことは断じてあってはならぬことであるし、またあり得べからざることである、こう考えますが、この点は大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  50. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの先生局長のやりとりを伺っていたのでございますが、向こうからよこしましたわれわれが正式なものだとして受け取った判決理由要旨というものは、「被告人が韓民統議長の身分を引続き維持しつつ国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠に依り本件を判断した」、こういう理由書が来ているわけでございます。でございますので、私どもが韓国内のいま先生のおっしゃったことをこうじゃないか、ああじゃないかと言いまして判断がどうということは、私はそこまで言うことは、われわれの立場としては言い過ぎじゃなかろうかと思いまして、いまは金大中氏の身辺について重大な関心がある、憂慮しているという言い方で向こう日本側の意向を伝えているということでございます。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 この問題はただの経過、ただのいきさつでこうなっているんじゃない、御承知のとおり日本の公権力を侵して韓国KCA、公権力が日本から金大中氏を拉致した、そのことから発している事件だということからすれば、当然日本政府として言うべきことは言わなければならぬ、こういうのが私たちの立場でありますが、西ドイツの例も御承知のとおりですよ。西ドイツは、西ドイツから拉致されたあの手伊桑という人なり学生だちを返さなければ経済援助をとめるぞ、断交するぞ、こうやって取り返しておるじゃないですか。少しはそういうものを見習ってはいかがかと思うのです。  質問として次へ進むためにもう一つお尋ねしたいのは、鈴木総理大臣がこういうことを言っておられますね。日韓関係は非常に大事だから韓国との関係を進めていかなければいかぬが、ただ金大中氏の問題が日本が憂慮しておる事態にならないようにしないと、日本で手を差し伸べる場合にそういうことは非常にやりにくくなる、できなくなる。憂慮しておる事態というのは金大中氏が死刑になる事態、こういうことを意味しておると思うのでありますが、私は断じて金大中氏を死刑にさせてはならぬという立場に立つ。しかし逆にそれなら死刑でなくて無期懲役ならいいのか、こういうこともまた出てくると思うのです。無期懲役ならいいのだということもこれまた断じてあってはならぬ、こう私は考えるわけです。あの国のことですから、仮に死刑でなくなって懲役だといっても獄中でいつ何をされるかわからぬという国だと思います。  そうだとすると、この問題の真の解決は原状回復、金大中氏を日本に返す、こういうことでなければ真の解決にはならぬ、こう考えるわけですが、いかがでしょうか。
  52. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生御質問の前提が、公権力が介入して主権の侵害があったということを前提にしての御質問でございますが、政治決着をやりましたときは、公権力が介入していたということがはっきりすれば見直すこともあり得るということであれは政治決着をやったわけで、当時の最高責任者の判断でやったわけでございまして、われわれとしましては公権力の介入はまだ証拠が出てない、主権侵害じゃないという前提で物を考えておるわけでございます。  先生のおっしゃった、原状回復をしなければ解決にならぬということでございますが、私どもはいまは向こうに、身辺について重大関心がある、憂慮しておるということで伝えて、それ以上たとえば何がいかぬとかどうすべしとかいうことは具体的には言ってないというのが現状でございます。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 この問題は何度聞いても同じ答えしか返らぬ、まことに残念であります。  もう一つ、この関係で韓民統の代表の人たちが、結局こうなれば国連に訴えるしかないということで、訴えるために行きたいということについて身分証明が出ない、こういう点があるわけでありますが、この身分証明はそれこそ人道上の立場からも当然出すべきことではないかと私は思いますが、この点は大臣、いかがでしょうか。前向きのお答えをお願いしたいと思います。
  54. 伊東正義

    伊東国務大臣 予算委員会でも社会党の大出先生だったと思いますが、御質問を受けたわけでございます。法務省の方からそのことについて打診といいますか、最近あったことは確かでございます。この問題は私どもは身辺について重大関心を持っておる、憂慮しておるということを向こうに伝えておるわけでございまして、そういうことを頭に置きながら、どうしたらいいのかということで慎重に検討しなければならぬ問題だということで、いまこの問題につきましては慎重な立場をとっておるというのが現状であります。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 慎重に検討中ということでございますので、この点については、何かそういう身分証明は出すなと韓国政府が言ってきておるというようにも聞いておりますが、そうなればまさにこれこそ内政干渉であって、そういう内政干渉に屈しないという政府立場を明らかにするためにも身分証明は出して、難民統の人たちの期待にこたえていただきたい、こう考えます。  時間がありませんので、最後にチリの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  いまピノチェト大統領という人がチリの政権についておるわけでありますが、この人は、もうここで事実関係を申し上げるまでもございませんが、一九七三年、まことに偶然の一致かもしれませんが、金大中氏が日本から拉致されたあの同じ年の九月に、選挙によって成立した合法的なアジェンデ大統領を軍事クーデターによって倒し、かつ殺害する、そしてその後に大統領についたピノチェトという政権であるわけであります。  この政権と日本との関係ということになってくるわけですが、大臣も御承知のとおり、この政権は、毎年の国連総会で繰り返し繰り返しチリにおける人権侵害を非難する決議が圧倒的多数でいつも決議されている政権であるわけです。この政権について伊東大臣の評価をまずお尋ねをしたいと思います。
  56. 伊東正義

    伊東国務大臣 発生的には先生おっしゃったような歴史的な事実があることは知っております。その後、ことしの九月にはたしか国民投票をやって、約七〇%ぐらいの賛成がありましたか、憲法草案を国民に問うとか、いろいろな面で努力をしているということを私ども知っておるわけでございまして、この間国連日本が棄権したことも先生承知のとおりだと思うのでございますが、だんだん努力はしているということを私どもは評価しているわけでございます。  日本としましては、チリは前からの友好国でございますし、時の政府の性格いかんによってどうこうするということじゃなかなかむずかしい問題だということで、この政権のもとのチリとも友好関係をいま続けていることは先生承知のとおりでございます。
  57. 高沢寅男

    高沢委員 私はそれが不可解なのであります。新憲法を今度国民投票で決めたと言われましたが、その新憲法なるものは、要するにいままで七年間軍事独裁大統領としてやってきたピノチェトという人が、これから先、来年からまた八年間自分が大統領でいくことを決めたのが新憲法なんであって、それではこの憲法の中で政党の活動の自由とかあるいは言論、集会、結社の自由とかいうものはどうなったかと言えば、何もないですよ。これで一体何が努力してよくなっていると言えるのか。いま言われた、いままで国連総会の決議に日本はいつも賛成してきました、昨年は棄権に回りました。この変化は一体何の理由でしょうか。それをお聞きしたいと思います。
  58. 大鷹正

    ○大鷹政府委員 高沢先生もおっしゃいましたように、また大臣もいま言われましたように、ピノチェト政権ができる過程におきましてはいろいろな問題があったことは事実でございますけれども、その後、国内の人権問題にいたしましても相当の改善を見ておると私どもは考えております。この点につきましては、先生方の御関心もありますので、私どもも情報の交換等もいろいろな国とやっておりますけれども、われわれだけでなくて多くの国においても、確かにチリの人権問題はよくなっておるという認識が深まっておると思います。  それから、いま新憲法のことをおっしゃいましたけれども、八年間というこれからの軍政は長いということは一般的には言えるかもしれませんが、チリの指導者の人たちは、余りに民政化を急いでそのためにかえって混乱が起こるのは好ましくない、少し時間をかけてしっかりした民政化への道を歩みたいと考えておるようでございます。
  59. 高沢寅男

    高沢委員 とてもただいまの評価はいただくわけにいきません。ほかの国もチリをよくなってきたと見ているようだなんと言われましたが、それこそ、じゃどの国のどこにどういう資料があるかということもお尋ねをしなければいかぬように思います。  あなた方が何でも模範にするアメリカをごらんなさい。アメリカはチリとの国交を断絶しているじゃないですか。アメリカに亡命していたチリの元外務大臣が暗殺された。その暗殺したのはチリの国家情報局とかいう、ちょうどKCIAと同じようなものですね。それがアメリカに亡命していた元外務大臣を暗殺した、こういうことの中でアメリカがチリとの国交を断絶しているということも事実なんです。そういう評価をひとつきちんと踏まえてもらわなければ困ると私は思います。  時間がございませんのでもう一つ最後の御質問は、園田外務大臣、当時の外務大臣ですが、昨年チリを訪問されて、このピノチェト大統領日本へいらっしゃいと招待をされているわけです。私はこの招待は、はっきりと申し上げて取り消すべきである、こう実は考えるわけです。  何かこの背景には、新聞の報道によると、自民党の水産関係議員の働きかけがあったようだとか、あるいはその水産関係議員といえば特に鈴木善幸氏の名前が出てきますが、この鈴木善幸氏はどういうわけかチリの何か最高の勲章ももらっておるというふうなことが事実関係としてあるようですが、私はそういう裏の関係をあれこれせんさくすることはここではいたしませんが、少なくともこういう政権に対して日本政府として招待をしておるということをこの際はっきりと取り消していただきたい、こう私は考えるわけです。ピノチェト大統領のフィリピン訪問がどういう結果になったかということは、これは当然御承知かと思いますが、日本としてもこの際はっきりとした立場をもってこの招待を取り消すということをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  60. 伊東正義

    伊東国務大臣 園田外務大臣当時招待があった、その後フィリピンの問題等が起きたということもそのとおりでございますが、今年度中は恐らく来られることはないというふうにわれわれは考えております。  それで、将来にわたっていまの招請を取り消すかということでございますが、これは、いま日本とチリの友好関係が続いているという前提で一回招待をしたものをまたここで取り消すということは重要な問題でございますので、いまのところはそういうことは考えておりません。
  61. 高沢寅男

    高沢委員 私はその招待をしたこと自体の大きな誤りということから言っているわけであって、したがいまして、かけ違えたボタンは早く直した方がいいということで、取り消した方がいいですよということをもう一回申し上げて、時間が参りました、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  62. 奥田敬和

  63. 土井たか子

    ○土井委員 伊達条約局長、御出席ですね。  局長にまずお尋ねしたいと思うのですが、日本国憲法があるために、外交の行政事務をつかさどる上において何らかの支障、障害というものがいままでにあったのかなかったのか、長い御経験の上に立って、ひとつその点お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  64. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  日本国憲法があるために、私の外務省勤務の間において行政事務をつかさどる上において支障があったかという御質問でございましたが、私の経験から申しまして、日本国憲法があるがために支障になったというようなことはございません。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 国連局長、御出席ですね。同じことをお尋ねしたいと思うのですが、国連における日本外交の行政事務を行う上からいいまして、日本国憲法があるために支障、障害があるのかどうか、またむしろいろいろと国連における日本外交を行う上でやりやすいということが言えるのか、やりにくいということが言えるのか、いかがですか。
  66. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えいたします。  ただいまの条約局長の御答弁と私は全く同感でございますが、国連の憲章上の義務その他を遂行いたします上において、憲法との関連において何らか支障があるかということでございますが、現状においてはそういう支障は感じておりません。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 いまお二方の局長からそういう御答弁をお聞かせいただいたのですが、外務大臣、そこで、先日来国会におきましても、鈴木内閣は確かにいまの憲法を遵守いたしますということを繰り返し繰り返し幾たび聞かされたことかというようなことに現状はなっております。伊東外務大臣にことさら事改めてそういうことを聞くことすら、私は実はおかしいと自分自身で思うくらいの気持ちであります。というのは、伊東外務大臣は、こういうことに対しては毅然とした姿勢でお臨みになっていらっしゃるし、また憲法に対しての御見識というのは閣僚の中でも抜群だというふうに私は認識をいたしてまいっております。したがいまして、そういうことからいたしますと、こういうことを事改めて外務大臣お尋ねするというのもいかがかと思われますが、ただ、いま国連局長は、国連の活動において日本外交を展開する上で日本国憲法が支障、障害になるというふうなことがないということを現状において御認識をされ、そのような御答弁をされました。  かつて、五八年六月に安保理事会の決議で、レバノンの監視団に日本から若干の将校を派遣してもらいたいという要請日本としては拒否いたしまして、そしてただいままでのところは、国連軍あるいは平和維持軍に対して日本が参加をしたという過去の経緯は全くございません。このときには、つまり五八年六月の当時には、当時の国連大使の、絶対に派兵しないというのではどうも筋が立たないというふうな発言がございまして、国内的にはこの発言が大論議を呼んだという経緯もございます。しかし、結局日本としては参加をすることを見合わせたという経緯の中には、やはり憲法第九条の存在、日本国憲法の存在があったということは歴然たる事実でございまして、何人もこのことに対しては否定をすることができないわけであります。  しかし、もう一歩突き進んで考えますと、こういう日本のいままでとってきた姿勢の中で、国連の場において外務省として、なぜ日本としてこういう問題に対して軍隊を参加させること、また軍隊をこういうことに対して協力させることができないかという由来を明確に、きっぱりと言われたということも、いままでずっと調べてみると余りないのです。ただ参加できない、これに対しては協力できないということで来られたということに尽きると思うのですね。  先日来、日本国憲法を遵守するというのが鈴木内閣姿勢だということを国内的にははっきり明確におっしゃっているわけでありまして、いままでの議事録に当たってみますと、憲法と条約といずれが優位するかという論議の中では、法制局長官が、憲法の方が効力が上であるというふうに解しておりますということを幾たびとなく、これまた御答弁の中で明確にされているわけです。  国連の場において、いかがでございましょう、外務大臣日本としては、日本国憲法がこのようにある、このことを遵守していくことが、国連に参加している主権国という立場では、日本にとって、また世界の平和にとって、国連に加盟している一国の責務の上から考えても大切であるということを明確にしていくことが私は非常に大事だと思うのですが、外務大臣とされては、国連の場においてこういうことを明確にする、口先で国内において憲法を遵守する内閣だと言うばかりじゃなく、具体的にこういうことを国連の場において行動で示すということが大切であるというように私は思います。大臣、いかがでございますか。
  68. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま五八年六月の例を挙げられたのでございますが、当時ハマーショルド事務総長からたしか松平大使に対して、自衛官の将校を何名か、十名か何か監視団の中に派遣してもらいたいという要請があったのを、できないと言って断ったということは事実でございます。  先生がおっしゃったように、日本の法律体系からいいまして、これはもうできないことでございまして、そのもとは憲法の、日本は専守防衛、個別的な自衛権ということにあることは御承知のとおりでございますので、私どもも国連協力するという場合には、自衛隊あるいは自衛官ということでなくて、それ以外のシビリアンで協力していく。選挙の監視団にシビリアンが出るとか防衛庁以外のところの人が出るとか、あるいはお医者さんで協力するとか、いろいろな協力の仕方は自衛隊、防止庁以外ですべきだというのが私の考えでございます。  そればかかって憲法、それに基づいた法令から来ているわけでございますので、どういう機会にそういうことを言いますか、日本の憲法というのは世界でも特別な独特の憲法なのだ、そういう体系からいって国連から自衛隊の協力を求められてもできないのだ、日本の憲法というのはそういうものなのだということを、私は適当な機会があればはっきりすることがいいと思います。どういう機会かわかりませんが、機会がありましたらそういうことを申し述べたいと私は思っております。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 それははっきり、いま外務大臣の方からの御答弁にございましたが、いままでは事実上、国連軍に対して日本は参加しなかった、また平和維持軍に対しても、軍という形で日本としてはこれに対する協力はできないという事実があったわけです。しかし、そのよって来るべき根拠と申しますか日本のあり方と申しますか、そういうものに対してもう一歩鮮明にしていくということの努力が少し消極的であったのではなかろうか、そういうふうな感じがいままでの経緯を見ますと感想としてございます。したがいまして、いま大臣がおっしゃるとおり、国連でこういうことを具体的に持ち出すような機会には、ひとつしっかりとそのことを国際的に国連の場を通じて鮮明にしていただくことを望みまして、先の質問に入りたいと思います。それはよろしゅうございますね。  先ほど高沢委員の方からの御質問の中にもございましたが、金大中氏に対する裁判をめぐる問題でございます。  十七日に軍事法廷での死刑判決がございまして、同じく十七日に外務省としては「金大中氏裁判(判決公判)」という公報を北東アジア課から出されております。公報といいますか公に発表された文書がございます。これは簡単ですから、念のためにここで読み上げておきたいと思うのです。   十七日午前十時二十分、在韓日本大使館よりの報告次の通り。   午前十時二分から開廷し、冒頭、金大中氏に死刑の判決が言い渡された。法務士より約二分間にわたり金大中氏に関する判決理由を述べ、その中で、内乱罪で十分死刑に値するものであり、国家保安法第一条(死刑の条項)の罪ははっきりしているが、友好国との関係を考慮し、本条を適用しなくとも死刑に値するとの趣旨を言い渡した由。というのが出されております。  これは韓国側から入手をされた中身でありますか、それとも日本大使館の館員が法廷で傍聴されたメモの中身をこのような形で公表されたわけでございますか、いずれでありますか。
  70. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ただいま土井委員御指摘の部分は、私どもが電話で連絡を受けたものでございまして、大使館員が傍聴したものをもとにして伝えてきたものでございます。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 続きまして、同じ十七日に第二報が出されております。この第二報の中身も、簡単でございますから念のためにここで読んでおきたいと思います。   十七日午前十一時十分、在韓日本大使館の報告次の通り。   一、午前十時二分より開廷し、同十時九分閉廷した。冒頭法務士は、判決理由を次の通り述べた。   被告等に対する公訴事実のすべてを本裁判部は認める。被告らの犯行は、鄭東年らの被疑者尋問調書及び他の証人らの陳述並びに検察による被疑者尋問調書及び種々の証拠により明らかである。被告らの本法廷での陣述においてもその犯行が認められる。本宣告での該当法条文は公訴状に明示の通りである。金大中被告に対する国家保安法の違反については、友邦国との関係によりこれを不問に付するが、金被告が韓民統との提携で反国家的活動を行った事実は種々の証拠により明白である。同被告の断罪は、国内における反国家的活動のみによっても十分に重罰に値する。国家安保が第一であるということは、過般のインドシナ事態によっても明白な事実である。金被告は執権のための野望に目がくらみ、学生及び国民をせん動し暴力による反国家活動によりわが政府の打倒を企図した。このような犯行は、天人ともに許さざるところである。というのがその中身なのです。  同じことをまたお伺いしますが、在韓日本大使館の館員が法廷で傍聴したメモの中身をこのような形で公表されたのか、それとも韓国からこのような中身を入手されて公表されたのか、いずれでございますか。
  72. 木内昭胤

    ○木内政府委員 館員が傍聴して種々記録をとっおりますのを整理いたしまして、電話で連絡してきたものでございます。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 第一報の方には第一報と書いてございませんが、第二報には第二報と書いてございますので便宜的に第一報、第二報と申しますが、第一報の方では、非常に重要な部分で「内乱罪で十分死刑に値するものであり、」と、起訴内容になってない、起訴時点で適用法になってない内乱罪というものをここで持ち出してきている。そして言われたゆえんは、外務省、どこにあるのですか。
  74. 木内昭胤

    ○木内政府委員 死刑の判決が言い渡されましたときの、外務省関心を持たれる方々に対する説明に混乱があったことにつきましては、私どもは大変反省いたしております。  あえて弁解いたすとすれば、裁判というものを傍聴したことのない館員でございます。しかも、それが韓国語であるということから、いろいろ適切なる、十分にこなした報告でなかったということが指摘されると思います。もっと時間をかけて吟味して報告ということであればこのようなことを回避できたかと思いますが、何分国内の関心が非常に高い、そのことから拙速に陥ったということで、反省いたしております。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 これは外務省とされては幾ら反省をされても取り返しのつかない大ミスということになるだろうと私は思うのですね。どれだけずぶの素人であろうと、いよいよ判決のその瞬間に、判決主文に対して一体なぜそういう判決が出たかというのは、これは最大のメルクマール、関心事でなければならない。特は死刑というのは極刑でしょう。なぜ死刑宣告されるかという、なぜという部分については何法によりというところがやっぱりメルクマールですよ。その点、このようにいまおっしゃってるる反省もしておられるようでありますけれども、幾ら反省をしたって、これは取り返しのつかないことをまずやっておられる。  その次に、第二報はちょっと後で申しますが、十月七日に私も外務省から判決理由要旨なるものをいただきました。この判決理由要旨というのは、後に八日にかなりの議員の手元にも配付をされておりますし、新聞紙上にも掲載をされまして、したがって、外務省がこのように公表されているというふうに理解をしている国民が大多数ということをここであえて申し上げたいと思います。  この判決理由要旨なるものは、外務省の韓国大使館員が法廷に入って傍聴されたメモをこのような形で披瀝されているのか、それとも韓国から入手された中身をこのように出されたのか、いかがでありますか。
  76. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国の外務部から承知いたしたものでございます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 局長、よろしゅうございますか、その答弁で。その答弁でいいのですか。私に対するこの文書をいただいたときの説明と大分違ってきています。この判決理由要旨というのは一体どういう中身でつくられているのですか、どういう経緯でつくられているのですかということをお尋ねしたら、韓国の日本大使館員が法廷を傍聴いたしまして、そのときの傍聴のメモに従って用意いたしました要旨でございます、このように言われましたよ、これをいただいたときの説明は。
  78. 木内昭胤

    ○木内政府委員 館員が種々傍聴してメモをとっておりますものを大使館なりに整理いたしまして、しかしそれでは十分適正を期し得ないということで韓国の外務部に確認いたしまして、韓国外務部の申し渡すところの判決理由要旨というものをお手元にお配りした次第でございます。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁は、少し前と違ってまいりましたね、局長。そうすると、もともとの本体は日本側が作成されたのでしょう。それに従って韓国側に問い合わせをした結果このような要旨ができ上がったということじゃないですか、経緯を言えば。韓国側に当日の判決の要旨をいただきたいというふうなことを言われて、向こう側が万事作成したものを日本側にどうぞと言って出した中身じゃないでしょう。どうですか。日本側がまず作成して、韓国側といろいろ打ち合わせして、そして要旨をこういうものにしようと言って出されている中身じゃないですか。明確にしてください、その点。非常に大事ですから。
  80. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国側としましては、お手元にお配りしました判決要旨で間違いないということを十分念を押しておるものでございます。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 答弁になっていません。あくまで日本側が作成した要旨について韓国側に問い合わせをやった結果、これでいこうということでお出しになった要旨ということですね。いかがですか、もう一度。
  82. 木内昭胤

    ○木内政府委員 結果的には先方がよこしたものというふうにお考えいただいて間違いないと思います。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 局長、苦しいですね。結果的、結果的とおっしゃるけれども、私に対しての説明はそうじゃなかったのですよ。したがって、最近は韓国側から入手したという表現に変わってきておるので、私はおやと思っているのです。外務省というのは二枚舌ですか。あくまでも大使館員がこの法廷を傍聴してとったメモに従って作成したということを私は説明として聞かされてきた。最近になって韓国側から入手したということに変わっているので、それならば日本側が作成した文書内容を韓国側に問い合わせをしていこれでいいとお互いが考えをまとめた中身をこのようなかっこうで出したということに、両者を接着剤でひっつけるとなるんじゃなかろうかと私は思って、いまそういう問いかけをしているわけです。これはどうですか。
  84. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ただいまの両者で突き合わせてというくだりは、そういう経緯は全くございません。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 局長、ちょっと素直になってください。こんなことにいたずらに時間をとっていたのでは、大事なことをさらにお尋ねする時間がそれだけそがれてしまいます。これは素直に答えてくださいよ。  これはあくまでも日本側が原文の作成をやった。そして韓国側に対して問い合わせをやって、これでよろしいということで、こういう要旨ができ上がったという経緯ですね。
  86. 木内昭胤

    ○木内政府委員 当初、私どもが持ち寄りましたものを韓国側に見せた経緯があることは事実でございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 やっとお認めになりました。したがって、本文については韓国側から入手したのではなくて、これは十七日の一報も二報も、そしてさらにわれわれの手元に配られているこの判決要旨についても、あくまでも日本外務省側がそれぞれ作成された中身であるということを、私どもは改めてここで理解をして先に進みます。  そうすると、九月十七日に第二報として出されている中身で、「金大中被告に対する国家保安法の違反については、友邦国との関係によりこれを不問に付するが、」とございますが、これは非常に大きな問題だと思います。この点が判決理由要旨を見るとばっさりとなくなっているのです。読み上げられたものについて日本大使館員が中に入りメモしたものを速報として九月十七日に出された中身を、さらに後に削るというふうなことは、どういう意味があってこれを削られているのですか。不問に付すというのはなぜ消されているのですか。
  88. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ただいま土井委員の指摘されたものは当初の、館員が傍聴した限りのものでございます。お配りしましたものは韓国側に確認を求めたものでございまして、実を申し上げますと、韓国側としてはそういうものを日本側に渡したということにしないでくれということを言っておりますので、あえて韓国側から入手したということを申し上げるのをこれまで回避してきたいきさつがございます。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 私がいま質問していることに対するお答えにならない。不問に付すというのがなぜ消されたかというのは、それはどういうことですか。
  90. 木内昭胤

    ○木内政府委員 したがって、私どもとしてはできる限り判決文を入手したいと現在努力いたしておるわけでございます。この途中で館員が傍聴して記録してきたもの、それからお手元にお配りしたもの、これはいずれも要旨ということで、朗読されたものとそのまま一言一句確実に符合しておるというものではないわけでございまして、省略部分がどこにわたっておるか、それを全部突き合わせてみたい。したがいまして、先般来申し上げておりますとおり、判決文そのものをできれば見せてほしいということで、現在韓国の当局にお願いしておる次第でございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 まだそういう段階なんですよね。まだそういう段階であるというのをひとつ確認しておきましょう。  それで、これは外務省がいままでお出しになった文書を総合してみて、何法が適用されて死刑が判決されたのか、さっぱりわからないのです。  改めてこの点についてお尋ねをしますが、外務大臣、この点はどうなんでございますか。
  92. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問でございますが、起訴状に書いてあるもの、その後内乱罪が除かれたということからいけば国家保安法しか死刑になるものはないというふうに私は理解をしますので、この裁判の適用の法文は国家保安法だろうというふうに理解をしておるわけでございます。  先ほどから、これはちょっと別になりますが、第一報で非常に誤解を与えるような発表をしたということにつきましては、重々外務省の手落ちだということを私も認めますので、この点は本当におわびを申し上げます。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 いま、国家保安法であるらしいというふうな趣旨の御答弁でございますが、それは韓国のしかるべきところから日本のしかるべきところに正式にそういうことの連絡がございましたのですか、大臣、どうなんですか。
  94. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私どもとしましては、有権的にそうであるというふうに断言いたしておるわけではございません。ただ、判決理由要旨にも指摘がございますとおり、起訴状に記載されている罪名とそれから適用法条ということから、国家保安法第一条一号のいうところの罪状が金大中氏との関係で、死刑との関係で問題になっておるものと推定いたしておるわけでございます。  この点につきまして非公式に韓国側当局者とも接触いたしておりますが、大体日本側の推定で間違いないというような言質はいただいております。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 正式に韓国側からそういうことに対しての伝達がない、日本側からそのように推定をして韓国側に当たったところ、そういうふうな感触を得ているという。実に大事な問題に対して、これは客観的に見て常識ではとても考えられないいきさつがいろいろあるわけですよ。少なくとも自由主義圏の国であり法治国家である限りは、こういう問題に対して、極刑である死刑を判決するのに対してABCのそのAすら具体的に明らかにされていないことくらい、聞いてあいた口がふさがらないという話はほかにありません。  さて、いままでに判決文についての入手方を外務省としては努力をされているようでありますが、これは非常に困難なようですね。どうなんですか、実情は。
  96. 伊東正義

    伊東国務大臣 このことについては韓国の須之部大使にも何回も言いましたし、実はこっちの駐日韓国大使にも外務省から何回も言っているわけでございまして、今後も次官あるいは私が会って判決文はぜひこっちへもよこしてもらうようにということを引き続き努力をします。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 引き続き努力をしますといま力を込めて大臣はおっしゃっていますが、判決文の入手が非常に困難であるということだけは客観的事実としてだれしもが認めているところです。それで、この困難であるという状況になる前までの時点では、外務省当局の御見解というのは、判決について有権的に解釈できるのは韓国だけだ、日本がこういう問題に対して解釈することは差し控えたいというふうな見解をとり続けてこられているはずなんですが、今回どうも国家保安法であるということの推定、つまりこれは有権的にそういう問題に対してどう判断するかということでなければ推定もできないと思うのです。事こういうことに態度が変転をされたということのいきさつはどういうことなんですか、大臣
  98. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私どもとしましては、韓国の裁判の内容について有権的に解釈できるということはこれまで申し上げておりませんで、その枠内においてあえて想像するとすればこうであるということはいろいろ申し上げてきております。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、そういうことでいろいろ韓国側に問い合わせをおやりになる中で、一つ大変ひっかかる問題がございます。  判決理由要旨というのをいただいた中で、「押収された民族時報、各種宣言文等証第一号から第一二七号の各々の現存を総合してみれば、これを各々認定することができる故、その証明が十分である。」というのは、犯罪事実のことを指して、認定することができるからその証明は十分だということになっているのですが、この証第一号から第一二七号の証拠になるものについては確認されていますか、どうなんですか。
  100. 木内昭胤

    ○木内政府委員 確認しておりません。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 確認をされていないで犯罪事実が日本との政治決着に触れていないということの判定はできないはずなんです。なぜならば、ここに言うところの民族時報というのは日本の国内で発行されている新聞ですよ。証第一号から第一二七号の中で民族時報の何年何月何日号が証拠として取り上げられて問題にされているかということだけでも、日本との間の政治決着に反するか反しないかということを考える場合の大変貴重な、逃がしてはならない大事な日本政府としてのとるべき一つのとり方だと私は思うのです。そういうことに対しても確認をされていないのですか。
  102. 木内昭胤

    ○木内政府委員 証拠について確認しておりませんというふうに申し上げたわけでございますが、民族時報にたとえば金日成主席の写真を前面に掲げて報道しておるというようなもの、実物は見ております。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 局長、あなたがごらんになる、ごらんにならないの問題ではないのです。韓国の軍事法廷でそのことを証拠としているか証拠としていないかという問題なんですよ。そうして、日本との間の政治決着に対してあくまで反しないと外務省は早々とおっしゃっているのだから、そのことに対して反しているか反していないかという確証を持った上でおっしゃらないと責任ある態度とは言えない。そういうことをはっきり証拠品について当たりもしないで、政治決着に反しないと早々とおっしゃっているゆえんは一体どの辺にあるのですか。  外務大臣、これは先ほど来の御答弁を聞いておりますと、判決文全文に当たらないとわからないとおっしゃるのですよ。要旨だけではまだわからない。第一、死刑を判決するところの根拠法についても日本が推論をせざるを得ないような状況下で、どうして政治決着に反しないなんということが早々と言えるのですか。
  104. 伊東正義

    伊東国務大臣 われわれが手にしている向こうの有権的なものというのはこの判決理由要旨なんです。私はそういうふうに考えておりまして、この中の四番目にはっきり向こうで「国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、」ということをわざわざ断ってきているわけであります。それで私どもとしましては、この判決の要旨から見て、これは政治決着に反するものじゃないというふうに理解をしているわけでございます。  ただ、先生のおっしゃるように判決文を見ることがまた最善でございますので、判決文は見せてもらいたいというその努力はこれからも続けてまいるというのがわれわれの考え方でございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 最善でございますのでではないと思うのです。それを見ないとわからないとさっきおっしゃっている部分がある。さらに確認すべき証拠品に対してもそれに当たっておられない。一方的に韓国側が配慮したの、やれそのことに対して考慮したのと言われることに対して、さようでございますかというのが政治決着ですか。それならば、この前の外務委員会でも言ったとおり、それこそ第三次政治決着になりますよと言っているのです。  あの政治決着の内容は、日本及びアメリカに滞在しておりましたときの金大中氏の言動については責任を問わないという中身になっていたのでしょう。日韓間で合意している中身なんです。日本政府が韓国に対して、この政治決着の内容を確認をしながら了解事項に抵触するような事態が生じたときはその履行を相手方に迫るというのは、内政干渉にならない、お互いの約束なんですから。  そういうことからすれば、韓国側がそう言っているからそうなんだというきめつけ方は一体何なんですか。政治決着を履行する日本の側の姿勢とは言えない。これを履行しようとするならば——外務大臣、まだ判決文が出てないのですよ。判決要旨についても、いまおっしゃられたように、外務省としては押さえるべきところを押さえてないのです。政治決着に反しないなどということが果たしてこういう状況の中で言えるのですか。政治決着に反するの反しないのといういままでの外務省のあの一連の発言というのは一切撤回していただきたい。外務大臣、いかがですか。
  106. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま私ども持っております正式なものというのはこの判決要旨でございます。この要旨の中に「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討したところ、」と、こうわざわざ断って、そして「国内で犯した犯罪事実を検察が訴追していることから、国内法上の証拠に依り」と、こう言って、向こうが正式に認めているものがそういうふうに書いてありますので、私どもはこれは政治決着に反しないということを言っているわけでございまして、しかし判決文をもらうことは一番いいことなんだから判決文はよこしてくださいよということを極力向こうに言っているというのが現状でございます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、非常に外務大臣らしくない矛盾したことをおっしゃいますね。確かに「友邦国との外交関係上の考慮のために十分に検討した」、これは当然のことであります。その部分についてはよしとしなければなりません。しかしこのこと自身がいまの政治決着とどう関係するのですか。政治決着について反しているか反してないかは、一方的に韓国が言うことだけがすなわち政治決着の中身を決めているわけではないのですよ。日本側が、反しているか反してないかということに対して確認する責任があるじゃないですか。そのことを一切しないで、向こうさんがこうおっしゃるからそうでございますということくらい日本外交の不在はないですよ。外務大臣、どうです。
  108. 伊東正義

    伊東国務大臣 何遍も同じお答えを申し上げて申しわけないのですけれども、向こうに対しましては裁判の過程で、政治決着がこういうことがあるのだからということを何回も言ったわけでございます。向こうもそのことを頭に置いているからこそ、十分に検討したところこれは国内法上の証拠によりやったのだと、こう言ってきておりますので、いまのところはそれを信ずるということがわれわれの考え方でございますので、先生からの御意見でございますが、私どもいままで述べた見解を取り消すということは考えておらない。申しわけございませんが、そういう見解でございます。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これはさらにここの中の証拠品となっている内容であるとか判決全文であるとか等々についてはあきらめないで相手方に対して要求を続けるということはおやりになるのですね。
  110. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは非常に困難なことかもしれませんが、われわれとしては最後まで努力するつもりでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 あと一問いたします。  防衛庁御出席ですね。韓国の練習艦隊が日本に寄港するのではないかということが問題にされておりますが、こういうことについてすでに防衛庁としては聞き知っておられるのかどうか、そしてそういうお考えを具体的に進めておられるのかどうか、いかがなんですか。
  112. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 韓国の練習艦隊の本邦寄港につきましては、今回韓国側から外務省に本邦に寄港したい旨の打診がなされておりまして、その具体的実施の方法につきましては外務省が検討中であると承知をしております。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、これはひとつ政治家としてお考えいただきたいと思うのです。こういう情勢の中ですよ。日本国民のこういう問題に対しての関心と申しますか注目の仕方と申しますか、いまこういうときに韓国の練習艦隊が日本に訪れる、寄港するということは、私は非常に許すことのできない状況だということを言わざるを得ません。——課長、いいです、横でごそごそしゃべるのは。私は政治家に対して質問しているのですから。  外務大臣、どのようにお考えになりますか。これはぜひとも、いまこういうことを許しちゃならないと思うのです。認めるべきじゃないと思っていますが、いかがですか。
  114. 伊東正義

    伊東国務大臣 そのことにつきましては、いま防衛庁からもお話がありましたが、韓国側にも日本側の意向を伝えて、いまの政治情勢いろいろございますので、先生のおっしゃることもよくわかりますので、そういうことを頭に置いて外務省としては処置してまいりたい、こういうふうに思います。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 質問を終わりますが、ちょっと申し上げたいと思います。  先ほどアジア局長の御答弁の中に、民族時報の中で金日成の写真を載せた記事があることを私も承知しているがというふうな御趣旨の御答弁がございました。本当にごらんになりましたか。金日成主席の写真を載せた民族時報はないようでありますよ。
  116. 木内昭胤

    ○木内政府委員 日付はつまびらかにいたしておりませんが、私はそれを見た記憶がございます。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 では、つまびらかにその日時を教えてください。何月何日号かということをひとつ明確に出していただきます。それは外務委員会の席でおっしゃってくださいよ。
  118. 木内昭胤

    ○木内政府委員 そのようにさせていただきます。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  120. 奥田敬和

    奥田委員長 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十四分休憩      ————◇—————     午後一時十六分開議
  121. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玉城栄一君。
  122. 玉城栄一

    玉城委員 私は、質問に入ります前に、まず一言外務省にお礼を申し上げさせていただきたいと思います。  実は今回、先月の七日から二十七日までの二十一日間、私も当外務委員会のメンバーの一人としてタイ並びにパキスタン、カンボジア難民、そしてまたアフガン難民の実情とその他多くのいろいろな面を視察をさせていただきました。その際、現地外務省大使館、総領事館の方々に大変お世話になりました。この席をかりまして一言厚く御礼を申し上げておきます。大変ありがとうございました。  そこで、この難民の問題について一言お伺いしておきたいわけでありますが、タイのカンボジア難民、それからパキスタンのアフガン難民、その実情は本当に胸の痛む悲惨な状況でありましたし、人道上の立場から一刻も早く何とかしてあげなくてはならないということを強く感じたのは、私一人だけでなく、一行全員そのようなお感じになられたと私は思っておるわけであります。  そこで、大臣も一足先に同じように難民の状況を御視察になっておられるわけでございますが、どうかひとつ思い起こしていただきまして、最初に直接大臣の御感想をお聞かせをいただきたいと思います。
  123. 伊東正義

    伊東国務大臣 私もタイへ行きましてカンボジアの難民と、パキスタンでアフガニスタンの難民のキャンプを訪れたわけであります。  最初はタイで難民を見たのでございますが、キャンプに行って記者の諸君に感想を聞かれましたときに、本当に何といいますか詰まって言葉が出なかったような第一印象を受けたわけでございます。本当に生きるのが精いっぱいといいますか最低生きるだけというような生活でございまして、これは人道上も、難民の問題は国連中心でやっておりますが、同じ人間として、もっともっと世界が難民の問題に関心を向けるべきだというふうに感じたわけでございますし、またそういう人道上の救済、援助ということだけでなくて、やはり難民を出さぬように根源の問題を解決しなければいかぬな、それはやはり、世界じゅうみんな同じだと思うのでございますが、政治に携わる者の役目だなということを私は直感したような次第でございます。
  124. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、私たち一行がタイ、パキスタンの難民の方々の実情を視察した際に、パキスタンのアフガン難民の方々から、医療関係並びに冬場を控えましてトタン板の援助等強く要請を受けたわけであります。そして帰国後、奥田団長から直接大臣にも、また官房長官にもその旨お伝えをし、また私たちの意思としてもその要請を行ったわけでありますが、この問題も含めて、その後どういう措置をとっておられるのか、御説明をしていただきたいと思います。
  125. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  私、パキスタンに行きまして、アフガニスタンの難民を見た直後、外務委員長初め各党の方々が、タイ、パキスタンの難民を御視察になったことを伺い、報告も伺ったわけでございます。  外務省としましては、私帰りましてから、どちらかというと忘れられがちなパキスタンにおりますアフガニスタン難民、ここの人々にもう少しできることがあればということで実は調査団を出しまして、調査団が帰ってまいりまして報告を受けたのでございますが、一つは水の問題で、タイではカンボジア難民のところで地下水の問題を日本協力してやったわけでございますが、パキスタンでもアフガニスタン難民に水の問題を解決してもらいたいということと、いま先生がおっしゃったようにほとんどテント生活でございますので、貧しい家、バラックといいますか、そういうものを建てるにも亜鉛鉄板がないということでございまして、物資では亜鉛鉄板、それからマラリア対策として薬散布機とかそういうものの要望があったということを、先生方の御報告でも聞きましたし、調査団からも報告を受けましたので、いま亜鉛鉄板につきましては遅くとも十二月までには船積みができて向こうに届くように、無償援助でございますが、大体三億円ぐらいをめどにしまして亜鉛鉄板をまず送ろうかということで、大蔵省と交渉中、手配中ということでございます。
  126. 玉城栄一

    玉城委員 この問題の実情につきましては大臣もよく御承知のことであるわけでございますので、特段の御配慮をお願いをしたいわけであります。  そこで、このパキスタンのアフガン難民の実情視察に参りました際に、こっちも大変びっくりしたわけでありますが、あの難民の方々が武器を送ってくれということを強く訴えておられたわけですね。そこで奥田団長は、わが国としてはそういう武器の援助というようなことはできないんだということをきっぱりおっしゃっておられたわけでございます。そこでこの問題に関連しまして、この際伊東外務大臣のお考えを伺っておきたいわけでありますが、最近、武器輸出・禁止三原則ですか、これを取り払おうという空気があるやに感じておるわけでありますが、よもやそういうことはないと私は思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  127. 伊東正義

    伊東国務大臣 一部にそういう声があったりすることは事実でございますが、政府としましては武器輸出三原則のことばあのとおり原則どおり厳格に実施してまいるという方針に変わりございません。
  128. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、これも視察のときにタイのバンコクでシメス国連高等弁務官地域代表に難民問題について実情を承ったりした際に、同席しておられました東南アジア地域調査特別官久野さんから、日本は一刻も早く難民条約を批准してもらいたいという訴えがあったわけであります。  そこで御存じのとおり難民条約がいま代表質問等でも取り上げられておるわけでありますが、この難民条約の批准国は現在何カ国になっておるのか。それともう一点は、先進国と言われておる国のうちまだ批准をしていない国はどこどこなのか。私の承知しておる限りでは日本だけではないかと思うわけでありますが、その点をお答えいただきたいと思います。
  129. 伊東正義

    伊東国務大臣 具体的に何カ国であるか、主にどういう国であるかということにつきましては、政府委員から答弁いたします。
  130. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えいたします。  現在までに八十一カ国が批准を了しておるわけでございまして、先進国といたしましては、御指摘のとおり日本のみということでございます。開発途上国におきましては、ほとんど加入がないという状況でございます。
  131. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、いまお答えのあったとおり、わが国だけが難民条約の批准がされてないという状況にあるわけです。  従来、難民問題につきましては、先ほど大臣の御答弁にありましたとおり、しばしば前向きの御発言があるわけでございます。しかし現実は、国際世論としましては、そんなことを言っても日本は難民条約ですら批准してない国じゃないか。いわゆる難民問題に冷たいんじゃないか、そういう国際世論もあるわけです。したがって、そういうことにつきまして、これまでの当委員会におきましても、園田元、大来前外務大臣も積極的な前向きな発言をしておられました。この機会に伊東外務大臣の難民条約に対するお考え、そしてどのようにこの条約をされようとするのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  132. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生おっしゃったとおり、日本は難民問題について資金的に、経済的な援助というのは世界の中でもそう恥ずかしくないような取り組み方を最近はしておりますし、定住枠をふやすとかいうようなことで難民問題に非常に関心を示しておる。私も国連で難民問題のことは特に言ったのでございますが、先生おっしゃるように難民条約をまだ批准してないというのは現実そのとおりでございます。  それで私としましても、難民問題の残された大きい問題としては条約の批准ということがございますので、何とか通常国会に提出したいものだという努力をしておるところでございますが、先般鈴木総理も本会議で、積極的に自分としても取り組む、関係省庁で調整するように対応するという御答弁があったわけでございまして、私も園田厚生大臣と実は内々話をしておるところでございます。  園田厚生大臣は外務大臣のとき非常に積極的な御意見を述べておられるわけでございますので、私としましても非常な理解者でございますから、御承知のように厚生年金、国民年金、年金の問題が一番の問題でございますので、これは厚生省、そのほかに法務省の難民の認定の問題等がございますが、一番問題は厚生省だと思いますので、留保条件をつけるようなことなしに何とか通常国会には難民条約の批准ができるように国会に提出ができるように最大の努力をしようと思って、いま担当局にも今度は必ず出せるようにということで鞭撻をしているというのが現状でございます。
  133. 玉城栄一

    玉城委員 ただいま厚生省と調整中で留保なしに国会に出したいというお話でございます。私どんなふうに調整が難渋しているかよくわかりませんけれども、そういうことで結局はもうやむを得ない、留保をしてでも批准すべきではないかというような声があって、留保を付した形で国会に出したいというようなことも一部聞きまして、これは大変なことだ、そういうことをされますとこれは国際的な物笑いになるというようなことで、いま大臣がおっしゃいました留保を付さないでそのとおり条約は国会に提案されるんだということを伺いました。そのとおり理解してよろしゅうございますか。
  134. 伊東正義

    伊東国務大臣 いままで非常に長いことかかって解決をしなかった問題でございますのでそれだけむずかしいということがございますから、先のことをぴっしゃりは申せませんけれども、私どもの希望としましては、先ほど申し上げたように留保条件なしに何とかして出したいという努力をいまやっているところでございます。
  135. 玉城栄一

    玉城委員 そのようなことで次期通常国会に提案されるものと了解をいたしておきます。  それでは次に、午前中の質疑にもあったわけでございますけれども、日ソ関係につきまして若干伺っておきたいわけでございます。  わが国の隣国であるソ連わが国との間が現状は決して友好状態であるとは言いがたいような関係にあるということは、両国にとってきわめて不幸なことであると思うわけであります。そこで、過日の代表質問におきまして、わが党の浅井副委員長でありますが日ソ関係の修復の問題について伺った際に、こういう御答弁があったわけであります。日本側が唱えるのは筋が通らない、ソ連が誠意を示すべきだということで、きわめて消極的な姿勢のように感じたわけであります。  そこで、いま申し上げました隣国であるソ連わが国とが友好的な状態とは言いがたいという関係を踏まえて、今後どのような対ソ外交基本的にされようとお考えになっていらっしゃるのか、その点を外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  136. 伊東正義

    伊東国務大臣 ソ連日本にとりまして非常に関係の深い隣国であることは御承知のとおりでございまして、ソ連との間に本当に平和的な友好的な関係が続くということは日本としても望むところでございますし、先般、私ニューヨークでグロムイコ外相と会談しましたときにも、最後は、ひとつ両国で友好親善関係を深められるように努力をしようということで別れたのでございます。  いま先生おっしゃったように、いま日ソの間が冷たい関係にあるということは、私もそのとおりだと思います。これは実はかかって昨年来の北方の領土における軍備の充実の問題でございますとか、あるいはソ連のアフガンに対する軍事介入の問題でございますとか、そういうソ連側から起きました事実によって関係が冷たくなったということでございますので、われわれとしましては、ソ連が本当に善隣友好ということであればもっと話し合いができるような態度をしてもらいたいということを国連でも言い、グロムイコ外相にも私は申したわけでございます。  対ソ関係につきましてはヨーロッパでは、首脳会談がありますとかいろいろあることを私もよく承知しております。ただ日本には、北方の領土問題という特殊な問題がまたある、そこに軍備充実という問題があるというようなことで、ヨーロッパともまた違う問題があるわけでございますので、日本としてはやはり言うべきことはちゃんと言う、筋を通すところは筋を通すということの態度は変えられない。しかしながら、ソ連も、そういう問題があるということを十分知った上で、善隣友好というならばやはり態度をちゃんと改めてもらい、話し合いをする環境をつくってもらいたいというのがわれわれの考えでございます。  ソ連との外交、これは息長く粘り強く、日ソの関係友好親善に向かって私ども進んでまいろうと思うわけでございます。先生承知のように、アフガニスタンの軍事介入の後に、一過性の問題としてはモスクワのオリンピックボイコットがございましたが、高度技術を要する製品、これはココムの場で統一的に考えていこう、あるいは政府の新しい信用供与についてはケース・バイ・ケースで考えていこうというようなことをやっておりますが、このことはしばらく続けてまいろう。従来と変わりはない。ただ、話し合いをする窓口は常に開いておきまして、お互いに日ソ友好親善に努力するという態度で臨んでまいりたいというふいに思うわけでございます。
  137. 玉城栄一

    玉城委員 そこで大臣の御認識をちょっとこの機会に伺っておきたいわけでありますが、これは宮澤官房長官が九月十一日プレスセンターにおいて、鈴木内閣の当面する内政、外交問題の基本的な姿勢ということで、ソ連の指導者の交代、食糧不足、米ソ間の軍事バランスの不均衡化等の理由を挙げて、ソ連はこういった弱味を持っているがゆえに冒険主義に出る危険がないとは言えない、ここ五年ぐらいは警戒することが必要だ、こういう趣旨の講演をなされたわけであります。外務大臣とされても、そういう冒険主義に出る危険がないとは言えない、この五年ぐらいは警戒すべきであるというようなお感じを持っていらっしゃるのか。いかがでしょうか。
  138. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃいましたことは宮澤官房長官が言われたことでございますので、私は事前にそういう連絡をしたとか事後においてもそういう連絡を受けたということはございませんので、それは官房長官の考え方として承っておきますが、私ども外務省としては、ソ連がアフガニスタンでも軍事介入をした、あるいはエチオピアとか南イエメンとか方々で影響力を行使しているとか、いろいろあるということはそれはそれで事実でございましょうし、あるいは北方領土に軍備充実ということも事実だろうと思います。そういう意味で潜在的な脅威だということを国会でも言っていることは確かでございますが、それ以上にわたって、指導者の交代がどうだ何がどうだということは、言ってみれば人のふところに手を突っ込むような話でございますので、私どもは、そういうことは宮澤官房長官の意見としては聞いておきますが、さっき言いましたように、向こう話し合いのできる環境をつくるように努力してもらいたいということを言って、何とか日ソの友好親善をやっていけるような、話し合いのできるような環境をお互いにつくりたい、努力をしようというのが外務省の態度でございます。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  139. 玉城栄一

    玉城委員 外務大臣とされてはそういうふうな考え方を持っていないというように理解をいたします。  それで、おっしゃいます潜在的脅威が存在するということなんでありますが、それだけにやはり平和外交、おっしゃるところの友好的な外交努力というものは双方当然強くなされていくべきだと思うわけであります。当然、おっしゃるような対話の窓口をぴしゃりと閉ざすようなことがあってはならないと思いますし、相手側の誠意を求めるばかりでもこれはいけないと思うわけであります。  そこで、たとえば日ソ外相定期会議だとかあるいは事務レベルの会議等の提案をこちらから、日本側から具体的にやる御意思はあるのかどうか、いかがでしょうか。
  140. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまおっしゃいました具体的な例で、日ソ外相会議とか事務レベル会議という具体的なお話があったわけでございますが、日ソ外相会議を定期的にやっておりましたのは、領土問題を含めました平和条約の締結ということが目的で日ソ外相会議をやったわけでございます。それが切れているわけでございますが、平和条約の締結、これは領土問題が前提になりますので、ソ連側に領土問題を前提にして平和条約を結ぼうじゃないかというような動きがあれば、当然これは受けて立たなければならぬ問題でございますが、いまの環境の中でそういうことをこっちから提唱をするというような考えは、いまのところ私は持っておりません。  この前、向こう外相と会って、おのおの主張を述べたわけでございますが、いま言いました外相会議は実は話題になりませんでした。話題になれば今度は向こうグロムイコ外相日本に来る順番でございますので、そういうことは話題になりませんでした。それから事務レベルの会議につきましても、これは一回こっちでこの前はやったわけでございまして、やるとすれば今度は向こうへ行ってやらなければならぬという順番でございますが、この問題につきましても、日本側からいまの環境のままでやるというには条件がまだ整わないなというふうに見ておりまして、これからどういうふうに日ソ外交と取り組んでいくかということは、われわれ慎重に考えなければいかぬというふうに思っております。
  141. 玉城栄一

    玉城委員 このような冷え切った日ソ関係の環境のままで推移していくということは、先ほど申し上げましたとおり、両国にとって非常に不幸なことであると思いますし、わが国の安全保障の立場から言いましても、最善の、また最大の外交努力をして対話の継続というものをする機会を常に見つける努力をしていただきたい、このように御要望を申し上げる次第であります。  それでは次に、金大中氏の問題につきまして若干お伺いをしておきたいわけでありますが、福田元総理が訪韓されて帰られまして、この問題についてはわが国は静観すべきだというような意味のことを官房長官等にもお伝えになっておられたわけでありますが、そのことを大臣としてはどのように御理解していらっしゃるのですか。
  142. 伊東正義

    伊東国務大臣 福田元総理が訪韓されて帰られましてから、官房長官が会われていろいろ話を聞かれた。総理も聞かれたと思うのでございますが、実は二人でさしでお会いして私が福田さんからいろいろな御意見を聞くという機会はまだないわけでございます。私はいままで国会でも御答弁を何回もしておりましたが、私の答弁したことを変えるとかそういう必要は感じておりません。私は従来どおり、金大中という人の身辺については重大な関心があるし憂慮をしているということを、機会あるごとにいろいろなルートを通じて向こうに伝えるということはやっていこうというふうに考えております。
  143. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、これはわが国との関係で非常に大きな政治問題になっておるわけですが、この最終判決に対して大統領の権限あるいは裁量と申しますか、これはあるのではないかという感じがするわけでありますが、大臣はいかがでしょうか。
  144. 伊東正義

    伊東国務大臣 その点は、韓国の国内事情でございますので、あるとかないとか私どもは本当に一切わからぬというのが実情でございまして、いま先生がおっしゃったことにつきましては、私からとかく申すべきことじゃないというふうに思っております。
  145. 玉城栄一

    玉城委員 この問題につきましては、私はまた次の機会にお伺いをしてまいりたいと思いますけれども、いまの問題では、巷間あるいは報道等でも一部、そのようないわゆる最終判決に対して、大統領が死刑の停止あるいは減刑をされるのではないかというようなことが予想されているわけですね。ですから、そういうこととの絡みで、福田元総理が訪韓された後、日本は余りそういうことで騒ぐ必要はないのではないかというようにおっしゃっているのではないかという感じがするわけですが、大臣はそのようには考えていらっしゃいませんか。
  146. 伊東正義

    伊東国務大臣 私は福田元総理にお会いしておりませんので、福田さんの感触というのは全然わからぬわけでございますから、福田さんがどういう意図をもってどう言われたということは私にはちょっとわからぬわけでございます。
  147. 玉城栄一

    玉城委員 以上で終わります。
  148. 青木正久

    青木委員長代理 渡辺朗君。
  149. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 先ほどからいろいろお話を聞いておりまして、アフガニスタン難民について、冬場を迎えるのに私ども大変心配しておりましたが、外務大臣に先般申し上げましたところ、早速早い対応を示していただきまして感謝にたえないところであります。まず御礼申し上げます。  さて、私は、イランイラク紛争について幾つか質問をさせていただき、御見解を聞かしていただきたいと思います。  去る十三日でございましたか、外務省ではイランイラク両国に対してホルムズ海峡の安全航行に関する申し入れを行っておられます。そこでお聞きしたいのでありますが、この時期にわが国が両国に対してこうした申し入れをされたねらいはどこにあったのか。事態の何らかの変化がホルムズ海峡をめぐってあったのかどうか、外務大臣、どのようにお考えでございますか。
  150. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問でございますが、ホルムズ海峡の航行の安全について、何か突然にといいますか事情の変わることがあったのかという御質問でございますが、その点は、私どもはそういうことがあったからやったのではないということをまず申し上げます。  わが国としましては、いままでもイランイラク二国に、平和裏に早く戦闘行為をやめて平和を回復するようにということを言っておったのでございますが、世界の動き、また湾岸諸国も、ホルムズ海峡の航行ということについて非常に関心を持って連絡が日本にもある。これは大切になっておる。油の問題を考えれば、ホルムズ海峡の航行安全は本当に重要なんだということを大使館を通していろいろ話があったりもしていることは確かでございます。今度イラクから特使が参るという連絡が来たわけでございます。それで、その前に日本としては、やはり二国の間の話し合いによって、あるいはイスラムの関係でパキスタンが話し合いの中に入っておるのでございますが、一日も早い平和を達成するように、また特にホルムズ海峡の航行については、これは日本は重大な関心を持っているんだということを特使の来る前にも伝えておこうということで、両国にその旨伝えたというのが実情でございます。
  151. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 もう一つお尋ねをしておきたいのですが、ただいまイランイラク紛争戦争がこのような事態を迎えておるとき、また米ソの動向が非常に注目されているときに、最近ソ連、シリアの間できわめて軍事的な色彩の強い友好条約が締結されたわけであります。これによってソ連中東に政治的足場をさらに一歩進めたと受け取っていいのでしょうか。その点、外務大臣はこの事態をどのように把握していらっしゃいますか。
  152. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生おっしゃったシリアとソ連との条約ができたということは、これはかなり重要な意味を持つものだというふうに私は見ております。といいますのは、シリアはイスラエルのそばでございますし、アメリカ中東和平ということでまずイスラエルエジプトのキャンプ・デービッドの関係和平ということをやったわけでございますが、これに対してその隣国のシリアとソ連条約を結んだということは、あのキャンプ・デービッドのアメリカ中東政策に対しましても、その隣に自分と話し合いのできるシリアを持ったということは、一つのいままでよりも大きな変化であるというふうに私は思いますし、またソ連のエチオピアでございますとかあるいは南イエメンとかに対する影響力ということがある。そのほかにシリアに対して大きな影響力を持つようになったということは、今度はシリアからイランの方へまた何か影響力を持つ可能性も出てくるということでございまして、ソ連中東に対しましてある程度の影響力を持つ根拠を一つ持った、そういう意味でこれは中東の問題にとりまして一つのなかなか大きな出来事だというふうに私は認識しております。
  153. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 十月八日付の新聞を拝見しておりましたら、外務省筋として、この戦争は長期化するという見通しを発表しておられます。私の理解するところ、これまではイランイラク戦争あるいは紛争は、外務省においては短期的に終息するのではないかという見通しであったように思います。短期的な見通しから長期化するという見解に変わられたその根拠なり理由なりはどこにございますでしょうか。外務大臣、どのようにお考えでございますか。
  154. 伊東正義

    伊東国務大臣 毎期的と見る人、長期的と見る人、いろいろあるかと思いますが、恐らく短期的という見方をする場合には、イラクが緒戦において、最初の戦闘行為において、比較的イランの南部地帯や何かに入っていった、イランの国内事情から見、あるいは第三国介入しないというようなことからして、短期的に終わるんじゃないかという予想をした面もあったと思うのでございます。  その後の戦闘の状態を見ておりますと、イランは予想外に国内が結束をしておる、そして武器とか弾薬とかいろいろな兵器類も案外早く底をつくんじゃないかというような見通しをされていたのでございますが、イランの国内の結束もなかなかかたい、あるいはそう大きな戦闘ということじゃなくて、小規模の部分的な戦闘状態が続いて膠着しているということから見れば、イスラムの関係でパキスタンのハク大統領が行って話してもなかなかそれぞれが停戦ということには応じない。特に、イラクは早くと言ってもイランの方はなかなか応じない、内部の結束もかたい、また大規模な戦闘でなくて地域的な小さな戦闘が続くということであれば、案外長くこの紛争は続くのではないかというような見通しが最近世界各国でも出てきているということでございまして、そういう見地から両国の紛争は案外長く尾を引くんじゃないかというような見方をいましているというところでございます。
  155. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 先般、本会議でございましたか予算委員会でございましたか、日本石油エネルギーの需給関係、これにつきまして通産大臣は、百十一日分の民間、政府備蓄があるし、取り崩しをすれば大丈夫だという楽観的な見解を述べておられました。これは短期的に終えんするという見通しの上に立ってなのか、いま大臣がおっしゃったように、長期化するという見通しの上に立ってすらそのような楽観論であったのか、私は外務大臣としての御見解をお伺いしたいと思います。     〔青木委員長代理退席、委員長着席〕
  156. 伊東正義

    伊東国務大臣 田中通産大臣が答えましたのは、戦争見通しがどうということは言わなかったように私は思うのでございますが、短期的に見れば、戦闘行為が短期という意味ではなくて、短い期間でとってみれば、先生がおっしゃったように、そう心配する必要はないということを言い、しかし中長期的に見れば、油の問題だけをとってみればそう楽観ばかりはしておられないのです、やはり油の節約の問題でございますとか、供給源をもっと多面化するとか、そういう努力をしなければいけませんということをたしか田中通産大臣が答えたと私は了解しておるのでございます。  私もその点は一緒でございまして、短期的にはいま備蓄が百十日分もあるのでございますし、イランからはもともと一滴も入ってない。イラクからは日本の輸入量の大体八・五くらいのパーセンテージになりますか、入っておったのが入らなくなったのでありますが、短期的には問題ないとしましても、やはり中長期的に見てくれば、これは日本だけじゃない、油の問題は世界じゅうの問題でございますから、相当買い込んでおいた方がいいぞというようなことになってくれば、スポット市場が上がるというようなことも考えられることでございます。いまはIEAの決議で、各国がなるべく平等に備蓄を取り崩して、困るようなことのないようにしようじゃないかというような決議をしたのでございます。それが実行されているいま、問題はないわけでございますが、やはり長い目で考えた場合は、この戦争が、紛争が続くということになりますと、ほかの湾岸諸国がそれに見合う増産を必ずしてくれるとか、その増産した分はイラクから入らなかった国に必ず来るようにするとかということがぴしゃっと行われませんと、油の節約をするとか輸入源をあちこちに求めるとか努力をするということが私は必要だというふうに考えております。
  157. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 国際的な石油備蓄の取り崩しによって急場のところはしのげる。しかしながら、ホルムズ海峡が封鎖された場合、あるいはまた当面の危機としてイラク原油の輸出がストップした場合、そういうときには危機が来るのではないか、これがIEAの立場であったと思います。大臣はIEAの会議にも御出席されるやに聞いておりますが、これらの諸問題についてお話し合いをされ、日本側としてどのような提案をされ、協力を求めていこうとしておられるのか、お考えがありましたら一端をお聞かせください。
  158. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの点でございますが、先般IEAの理事会でいまのような決定をしたわけでございます。これは戦局の推移と関連することでございますが、もしも私がIEAの閣僚会議に出るというような機会が近い機会にありましたら、世界の場で、そういう油の問題につきましては問題が起きないように世界じゆうでグローバルな問題として考えようじゃないかというようなことは必ず提案し、各国の協力を求めるということをやりたいというふうに思っております。
  159. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 戦争の深化あるいは深刻化に伴いまして、イランイラクにおける邦人の生命安全の問題について、外務当局では大変御努力しておられます。これを評価いたしますが、大臣は在留邦人に対して引き揚げをどのように指示されたのでございますか。勧告されましたですか。あるいは引き揚げの命令をお出しになったのでしょうか。どのような対策を講じられましたでしょう。
  160. 伊東正義

    伊東国務大臣 外務省としましては、引き揚げ命令を出すとか勧告をするとかいうことはまだやっておりません。在留邦人の自主的な判断に任せるということで、たとえばイラクでございますと、千数百名の人がもうヨルダンあるいはクェートを通って出たということでございます。イランはまだ国外に出た人はごく少ないのでございますが、私どもは在留邦人の希望によって、出たいという人があれば極力便宜を図るということでやりたいというのを原則にしております。  ただ一点、若干違いますのは、バンダルホメイニにおきますIJPCの七百五十人くらいの人の問題でございますが、ここは爆撃地に非常に近い、陸上の戦闘地域にも近いということでございますので、あそこのそばのキャンプにいることはむしろ危険ではないか、それよりも一時安全な場所に退避した方がいいではないかということは、現地大使の判断でIJPCの人に伝えた、そしてそれが実行に移されているということでございまして、たとえばテヘランに移った人がこれからどうするかということについて、日本政府としてどうしなさいということは、まだ勧告あるいは命令は出してないというのが現状でございます。
  161. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そこら辺なぜ勧告はされないのでしょうか、なぜ命令をされないのでしょうか。助言をし、どっちにするかはあなたの判断ですよという程度のことでは、現地にいる人たちはまことに困ると思うのです。唯一頼るところはやはり外務省の情報でございましょう。そこが判断をしていただけるということが私は大変大きな頼みであろうと思うのですが、なぜそこをはっきりとできないのでしょうか。  先ほどのお話を聞きますと、長期的になっている、それから、もはや紛争ではなくて戦争だというようなことも言われている。  ついでにお尋ねいたしますが、外務大臣はこれを何と呼んでおられますか。イランイラク紛争でございますか、戦争でございますか。外務大臣としてはどのような言葉を使っておられますか、それも聞かしていただきたいのですが、どうですか。  一体全体そういう情勢の中で、邦人の救出の場合に勧告されるのですか、されないのですか。どういう事態が来たらきちっと勧告されるのでしょうか。
  162. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまのは両国間の紛争という言葉を使っております。  それから在留邦人につきましては、イラクの方はもう千数百名も出たということでございますので、ほとんど問題ないわけでございます。いつでもクェート、ヨルダンの方へは話がついて出てくるということでございますので、問題はイランであります。テヘランでは、随時在留邦人の日本人会と連絡し、集まってもらって、そして状態を話し、こういう状態になっているという情報は、大使館から必ず日本人会の集まりを通じまして知らせるということをやっているわけでございます。  それで、イラン側の考え方でございますが、イラン側としましては大量の外国人が一斉に出ていくことにつきまして非常に心配をしているという事実はあるわけでございまして、いろいろな面にそれがあらわれるわけでございます。私どもとしましては、在留邦人に対して情報を伝えまして、これはまだ勧告して全部引き揚げなさいという事態にはなってないという判断をしているわけでございます。  ただ、帰ろうという方には、トルコ経由でございますとかあるいはソ連経由でございますとか、極力できるだけの便宜を図るという態度でいまいるわけでございまして、勧告、命令を出して全部引き揚げなさいというまでには、いままだ事態は至っていないという判断をしているわけでございます。
  163. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ですからお尋ねしたいのは、どのような事態が来たときにその勧告をお出しになるのか。これは外務省として、日本政府として責任を伴うからということが理由で、あいまいなというかはっきりしない態度をとっておられるのでしょうか。あるいはまた、情勢がそこまで深刻でないという判断の上だけでしょうか。
  164. 伊東正義

    伊東国務大臣 そういう命令を出せば責任外務省になるから、責任のことを頭に置いて言わないのだという気持ちは、私には毛頭ございません。まだ全員引き揚げなさいとかいうような事態になっておらぬという判断なものですから、全員引き揚げ命令を出すまでには至っていないのでございますが、空襲の頻度、被害とかあるいは地上戦闘がテヘランに、いまほとんどテヘランにたくさん集まっておるわけでございますが、及ぶか及ばぬかとか、危険の度合いはどの程度かというようなことを、実はいま現地大使に判断を任しておるところでございまして、現地大使からもう全員引き揚げるような状態だというようなことを言ってくれば、私はすぐそれに沿ってやります。責任の問題で云々している問題ではございません。
  165. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そのようにしている間に、イランの方は出国拒否という形にもう至っているのではないでしょうか。そうすると手おくれになるという事態も来るように私は心配いたします。私は、この問題についてはこれ以上時間の関係もありますから申し上げませんが、もうちょっと親切かつ適切なる指示をぜひやっていただきたいし、それをやるという信頼を外務省国民の中に持たれてほしいなと思っておりますので、これは要望しておきます。  ただ、関連しまして、たとえばプラントだとかあるいはいろんな建設事業だとかそういうことで現地に行っておられる人、帰ろうと思っても帰るに帰れない人たちがいるのではなかろうかと心配いたします。それは一方的に帰ってしまえば契約破棄になりますから、工事中断命令がたとえばイランの国の政府側の方から出たということであれば、それを持ち帰るということは可能でしょうけれども、それがないために帰るに帰れない。  外務大臣、たとえばイランに対して、あるいはイラクに対しまして、中断命令を出すように働きかけをしておられますでしょうか、いかがでしょうか。
  166. 伊東正義

    伊東国務大臣 前段の、国民の皆さんに引き揚げについて危惧を持たせるというようなことはあってはいかぬことでございますし、そういうことがないように私は最善の努力をいたします。本当にいつも申し上げるのですが、人命尊重ということを第一に考えなければいかぬことでございますので、この点はひとつ私ども責任を持って努力するということを信頼していただきたいと思うわけでございます。  それからもう一点のことは、実は大使を通じましてこういうことをイラン政府に言っているわけでございまして、多分きょうも東京にいますイラン大使にも呼んで言うはずでございますが、向こう政府が、たとえばIJPCでありますと合弁会社でございます。あるいはいま問題になりました東亜建設の港湾建設に従事した五十名の問題は、向こうの公団の請負の仕事をしているということで、出国についてとかくの問題が出ているということでございますので、私どもは、そういう態度はまさに人質をとって事に当たるような問題で、今後の日本イランとの関係を考えればそういうことはとるべきことじゃないじゃないか、やはり身の危険を感じて帰るということであれば、それは出国拒否とかそういうことを言われることは人道上も容認しがたいということを、実は大使を通じて向こう政府申し入れているということでございまして、極力帰れるような、向こうが無理に引きとめるということにならぬような努力を今後も続けてまいるつもりでございます。  ただ、先生がおっしゃった、工事中断命令を出しなさいとか、そこまで具体的に言っているかどうかは、いま私ここの場ではちょっとわからぬのでございますが、無理に帰さないというようなことは人質をとるに等しいことだということで、日本イラン関係の将来を考えてもそういうことがあってはいかぬということは、やかましく向こう政府にも申し入れているというのが現状でございます。
  167. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その点の御努力をお願いいたしまして、もう一つ関連してお尋ねをしたいと思います。  私はいつも不思議に思うのですが、新聞などを見ましても、在留邦人が無事である、何人救出された、こういうことは報道されますけれども、私の知る限り、イランであろうとイラクであろうと、日本の企業体が向こうに進出して仕事をしている場合に、第三国人、たとえば中国人、韓国人その他の方々がたくさん働いておられるのではあるまいかと思います。そういう人たちの救出は一体どうなっているのだろうかといつも不思議に思い、かつまた大変危惧いたしております。  外務大臣、実態は、イランイラクに限りまして、第三国人で日本企業で働いている人たちはどのぐらいの実数だと把握していらっしゃいますでしょうか。そしてまた、その国を抜け出したいという希望者があった場合に、どのような救出措置をとっておられるのでしょうか。
  168. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は具体的にいま政府委員から申し上げますが、数千名の第三国人の雇用が現実にございます。  それで、原則としては、そういうイランイラク日本の人以外の雇用されている人につきましては、その国の大使館なり政府が第一義的には救出関係を努力するということでございますが、やはり雇用しているのは日本側でございますから、日本人が雇っている者として努力をしていくという第二段の措置もするというようなことでやっているところでございますが、具体的な数字等につきましては政府委員から申し上げます。
  169. 塚本政雄

    ○塚本説明員 お答え申し上げます。  在イラクの邦人企業に雇用されておりました外国人の今日までシリア、ヨルダンあるいはクウェート方面に脱出した数字の当方で承知している数字は、パキスタン人が約七百名、インド人が千名、中国人が約六百名、フィリピン人が二百名、その他バングラデシュ等の方々が百名、合計二千六百名。そのほかにイラクに残留している人が五千名ほどおる。これは十月十四日現在でございます。  御指摘のとおり、雇用者側の脱出が若干急でございましたので、シリアに脱出いたしましたパキスタンの労務者が飛行場で夜を明かさなくてはならぬといったような手違いはございましたけれども、しかしながら、雇用者側としては、航空切符を与えるなり毛布を支給するなり、それから当時九月分の手当なども支給して、わが方の大使館にもその事情がわかりましたものですから、シリアにおいてわが方の大使館が仲介いたしましてパキスタン政府が——並びにカラチにおいても同様なアプローチをいたしまして、カラチから特別便二便がシリアに飛んで、これら所在のパキスタン人は本国に帰った、かような情報に接しております。
  170. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私が知る限り、中国人も五百数十名、これはイラクだけでもおられるようであります。韓国人が数千名やはりおられる。本当にみんなそれで安心しておられるのであろうか。何かいまの報告だけ聞きますと大変安心できるような報告でありますけれども、実態は本当にそうなんでしょうか、もう一遍確かめてみていただきたい。  そうでないと、日本という国は、危機が起こったり心配だなというときには、今回のアルジェリア地震でもそうでありますが、日本人のことばかり日本国内では論じていて、救出だとか救援だとか言っていて、一緒に働いている第三国の人たちに対しては大変冷たいなどということになりましたら、よその国との善隣友好もこれは壊れていくでありましょう。将来平和になって中東で再度仕事をしようというときには、私は大変大きなそごが来るのではあるまいかということを思いますので、そこら辺外務大臣、ぜひひとつきちっと確かめてみていただきたいと思います。その点お願いします。
  171. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま政府委員から申し上げましたように、脱出しました人は約二千六百人、残った人がまだ五千人いる、こういうことでございますから、先生がおっしゃった中国人でございますとか韓国人というのはこの五千人の中にあるのかもしれません。でございますので、先ほど申し上げましたように、第一次的には、中国人であれば中国の大使館、あるいは中国人を雇っている日本側の企業者、これが努力すべきでございますが、それでも及ばぬときには、先生おっしゃったように日本の企業の信頼ということがございますから、日本政府でもそれを手伝うということをやりまして、日本人の生命、財産を考えると同じように、日本人が雇った第三国人の生命、財産の問題につきましてもひとつ日本政府も側面的ながら努力をして、心配ないようにするということにやってまいりたいと思います。
  172. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これは重ねてお願いしておきます。数千人の韓国の人たちに対しても、第一義的にと言いながら、たとえばイランと韓国の間は恐らく外交関係は切れる、こういう事態が来るのではなかろうかと思います。私はけさの新聞を見ましてそれを感じました。北朝鮮がイラン支援でございますか、どっちがどっちであったか私定かに読んでおりませんが、どちらかの国との外交関係は切れるでありましょう。そうすると大変不幸な事態も来るかもわからない。やはりそこら辺は私は、一人の人の人権、たくさんの人の人権、同じように大事だと思いますので、日本政府としては取り組んでいただきたいと思います。  さて、時間が大分たちましたが、どうしても幾つかお聞きしたいと思いますのでお許しをいただきたいと思います。  一つは、このようなイラクイラン、これは戦争ではなくて紛争とおっしゃいました。新聞は全部戦争と書いております。外務省だけは紛争と呼んでおられるようでありますが、これに対して、日本としてどのような平和回復への手を打つのか。外務省筋として伝えられるのは、これは手がないのでイスラム諸国の動きに待つ、頼むしかない、こういうふうな意見がある。あるいはまた検討中ということがあります。外務大臣、確かにむずかしい問題ですけれども、ここで日本外交一つ方向づけも出てくると思います。その重要性を持つ動きであります。いまいろいろ考えておられると思いますが、少なくともその枠組み、つまりどのような枠で日本としては動こうとしておられるのか、聞かせていただきたいのです。  もうちょっと具体的に言いますと、米ソ、ECも含んでの日本の対応を図ろうとしているのか、西側一員として米、EC、日本という形でこれを処理していこうと考えておられるのか。つまりそこにはソ連は排除されているのか排除されていないのか、どういう枠組みでこれから中東問題に対処していこうとされているのか、特にイランイラク紛争解決策についてのお考えを、ございましたら聞かせていただきたい。
  173. 伊東正義

    伊東国務大臣 先生おっしゃったようにこれは非常にむずかしい問題でございまして、前のイスラエルエジプト戦争のようなときには、片方はアメリカが後ろに、片方はソ連が後ろにいるということで、米ソが話し合いをすれば相当具体性を持って停戦ということができるというような事態があったのでございますが、今度はそれがないわけでございます。そういうことはない。第三国介入をしないということで、後ろにいる国が話し合いをしてそれでまとまるという性質のものではございませんので、今後の問題は非常にむずかしい問題だというふうに考えております。  それで、第一弾にやりましたのは、両方ともイスラムの国でございますから、イスラムの国の議長国でありますパキスタンが中に入ることが一番いいじゃないかということで、国連理事会と一緒にパキスタンが動いたのでございますが、それも成功はいまのところはしておらぬということでございます。日本としましては、やはりパキスタンの働きというものはイスラム国家の議長国家として非常に意味を持つのではなかろうかというふうに私は思いまして、実はパキスタン政府にも強くそのことを期待するということを新しく日本からも呼びかけておるところでございます。  そのほかどういう方法でやったらいいかということにつきましては、まだいまのところ、アメリカと交渉するとかソ連と交渉するとかECと交渉するとか、そういう段階には実は至っておりません。ただ、日本としましては、これが一日も早く平和解決ができましてホルムズ海峡の安全航行も確保されるということが大切でございますので、私どもとしては、話し合いのできる国、アメリカでございますとかECの国々とかあるいは湾岸諸国の国々とか、そういう考えを同じくする国といずれかの機会に話し合いをする機会があるかということを考えておりますが、いまの段階ではまだそこまで至っていない、模索をしている、現状はそのとおりでございます。しかし、何らかの方法で日本としましてもこの中東和平の問題には寄与できるようにということで、実は方法等を考えておるというのが現状でございます。
  174. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 委員長、大事なところでございますので、ちょっとだけお時間をお許しいただいて……。  いま模索をしているとおっしゃいましたが、その模索の中には、たとえばこういうことはどうなんでしょう。これは新聞報道でございますけれども、中東のこのような情勢に対しまして、米国から、対ソ経済制裁を強化していく、特にエネルギー関連分野においても規制を強化すべきであるというような意向が日本政府に伝えられたと聞いております。何か申し入れがございましたでしょうか、どうでしょうか。首をひねっておられますからお聞きでなかったのでございましょうが、ないとするならば、そのようなことがあった場合にはどのように対応されますでしょうか。これから中東政策の根本問題の一つになってくるだろうと思います。
  175. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま新聞に出ているがということで御質問でございますが、外務省には全然そういうことは来ておりません。エネルギーの問題で対ソ云々ということはございません。  また、そういうことが来たらどうかということでございますが、私は、そういうことはまだ全然来たこともございませんし、仮定の問題でお答えするのも適当じゃないと思いますので、ひとつその点は御勘弁を願います。
  176. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、来た時点でまたお尋ねをさせていただきますが、では、いままでのところの問題について一つ明らかにしていただきたい点がございます。  私どもも、日本の国としましてイランに対する人質問題への経済制裁を続けてきたわけでございますね。アフガニスタン問題に対しても、同じような態度をとって経済制裁を続けてまいりました。外務大臣、どうでしょうか。たとえばこれはOECDの貿易統計を見ますと、あるいは日本の通関統計を見ましても、一九八〇年度の一月から五月期、対前年の同期と比べてみまして、貿易総量の伸び率は、対ソ貿易を見まして、どうも米国の落ち込みと日本の落ち込みが顕著であって、西ドイツ、フランス、イギリス、イタリアというのは軒並みふえておりますね。そのような数字だけを見た場合に、経済制裁というのは本当に有効だったのかどうなのか、外務大臣どのようにお考えになりますか。
  177. 伊東正義

    伊東国務大臣 対ソ問題で、政府の新しい信用供与はなるべくやらぬ、ケース・バイ・ケースで考えるということをやりましたのは、先生御指摘のとおりでございます。これがどういう働きをしたかという問題でございますが、私どもはソ連のいろいろな動き、たとえばコスイギン首相がある場所で、西側のそういうことは一時的な影響はあるかもしれないがというようなことで演説をしていることもございます。また、これから第十一次の五カ年計画が行われるわけでございますが、これにつきまして、シベリア問題というのは非常に重視をしているということもいろいろな方面から伺っておるのでございますが、これもまだ案ができていないことも確かでございます。私はいろいろな面から考えまして、新しく信用供与をしないということはある程度の効果を上げておるものだというふうに認識をしているわけでございます。いまのところはこの方針は当分続けていくという考え方でございます。
  178. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 当分禁輸措置あるいは経済制裁の措置を続けていく、こういうことを言っておられますが、たとえば当のアメリカにおきましては上院でつい最近穀物の禁輸措置の取りやめが提案され、そして可決されておりますね。このような動きについてはどのようにお考えでございましょうか。
  179. 伊東正義

    伊東国務大臣 私らは対ソ経済措置、こう言っているわけでございまして、実はケース・バイ・ケースでやったものもございますので、制裁という言葉は使っていない、対ソ経済措置と言っております。実はアメリカ先生承知のように八百万トンは毎年やる、それを超えるものについて去年とめたわけでございますが、上院だけではそれをとめない方がいいじゃないかという新しい決議をしたということを最近でございますが聞いたわけでございますけれども、これはまだ上院だけの決議で、アメリカの策としてとられたわけじゃない。この間私がアメリカに行きましたときもアメリカの要路にみんな会ったのでございますが、この措置についてはやめるということはだれからも聞かれず、むしろまだ続けていくべきだというような意見を私も聞いたわけでございまして、それにはヨーロッパもやはりやるならば同じ歩調でやっていかなければいかぬじゃないかというようなことを議論してきたことがございます。  でございますので、いまの上院の決議だけでこの問題をどうするということは私はお答えいたしかねますが、日本としましてはまだ当分対ソ経済措置というものは続けて、ケース・バイ・ケースで政府のベースの信用供与は考えていくという方針でやっていくつもりでございます。
  180. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは時間も食いましたから、最後に一つだけ。  いま対ソ経済措置は続けるということでありますが、経済制裁の中で、たとえば先ほど申し上げましたように足並みが乱れている点がある。そうした場合に西側一員という立場をとられる日本外交といたしましては当然これについて文句も言い、はっきりと言うべきことは言わなければならぬことだと思います。そうでなければおっしゃるように効果は出てまいりません。その気持ちはお持ちでございましょうか。
  181. 伊東正義

    伊東国務大臣 これはばらばらでは効果は出ないということは先生おっしゃるとおりでございますので、その点は先般アメリカに行ったときもアメリカにもその旨を伝え、ドイツの外務大臣と会った場合にもそのことについて議論してきたということでございまして、続けるならば歩調は一にするということでやっていかなければ、これはやった経済措置の意味がなくなるということは先生のおっしゃったとおりだと、私も思っております。
  182. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ありがとうございました。終わります。
  183. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、高沢寅男君から発言の申し出がありますので、これを許します。高沢寅男君。
  184. 高沢寅男

    高沢委員 本日午前中の私の質問の中で金大中氏に対する判決理由要旨の入手ルートについてお尋ねをし、大臣より外交ルートを通じて入手したとのお答えがありました。ところがその後、私の次に質問に立った土井委員とアジア局長との質疑応答の中で、判決理由要旨の内容について日韓両国外務当局の間のやりとりを経て作成され、それが韓国外務部よりわが国外務省へ渡されたとの経過が明らかにされました。この経過は金大中氏に対する死刑判決が日韓の政治決着に反するか反しないかの論議に密接な関連があると私は考えますので、したがいまして、判決理由要旨の入手ルートについての私の質問に対し、右の経過を踏まえてもう一度大臣のお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  185. 伊東正義

    伊東国務大臣 けさお答え申し上げましたことを結論的には繰り返すわけになるのでございますが、九月十七日の判決理由要旨ということで公判を傍聴したわが方の館員のメモではなかなか十分を期せられなかったので、韓国外務部に対しまして確認を求めたものに対しまして、先方よりすでに先生方に御披露しました内容のものを入手したわけでございます。それでなおその内容については先方の確認を求め、その上で外務部よりこれを入手したわけでございますが、公表することについて先方は消極的であったという経緯があることは確かでございますが、私が午前中申し上げましたように、外交ルートを通じてこれを入手したということは私の答弁のとおりでございまして、午前中私が先生に申し上げたような次第でございます。
  186. 高沢寅男

    高沢委員 では、以上で私は終わります。
  187. 奥田敬和

  188. 中路雅弘

    中路委員 限られた時間ですので二、三の具体的な問題を御質問する前に、きょうは最初でありますから伊東外務大臣外交基本姿勢といったものに関連して一、二お尋ねしたいと思います。  八月十八日に発表になりました外交青書や、またその前に公表になりました外務省の安保政策企画委員会の、骨子ですが報告書を見ますと、特にその中でこれまでのこうした関連のものと比べてみますと非常に大きな特徴があるのは、一つは軍事力の増強ということを公然とこうした外交青書の中にも打ち出されているのと、西側同盟の一員という立場を大変強調され、政治、経済だけではなくて軍事のあらゆる面で一体的な同盟化といいますか対米協調を軸にした体制の擁護を中心に置かれているわけですが、その中には時には犠牲を覚悟しなければならないということまで述べられているわけです。青書の十四ページにも出ていますが、時には犠牲を覚悟しなければならないということまで言い切っておられるわけですが、これは端的に言うとアメリカの敵は日本の敵である、こういう立場でこれから臨んでいかれるのか。外務大臣基本的な姿勢について最初にお尋ねしたいと思います。
  189. 伊東正義

    伊東国務大臣 これは私いままでも御答弁申し上げたのでございますが、日米安保条約を基礎にしました日米友好関係ということが日本外交基軸でありますということは、もうずっと前から外交青書にも一貫して流れているところでございます。そういう基軸の上に立ちまして、まず経済問題あるいは政治問題について理念を同じくするヨーロッパの国々とか豪州とかカナダとか、そういう西側一員として日本は行動していくということは変わらないのでございます。しかし、それはそれとしまして、どの地域でも、政治体制の違う国ともやはり友好親善を守っていくということは必要でございまして、先生も御承知のように、中国とはいま子々孫々に至るまでというようなことで友好親善をやっておるわけでございますし、どの地域でも、またどの国とでも友好親善を保っていこうということは変わりないのでございます。  ただ、昨年の暮れからイランの人質の問題でございますとか、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入の問題でございますとか、あるいは北方の四島の領土に対する軍備の強化の問題でございますとか、そういう問題が起きましたので、これに対しましては世界の平和を守っていく、世界の安定を守るという意味からして、西側一員としてやるべきことは当然やらなければいかぬということで、大平総理が国会の施政方針演説でも、ある場合に犠牲をと言いましたのは、経済的にある程度犠牲を忍んでも対ソ経済措置はやるというようなことを頭に置いて言ったのでございます。  でございますので、何も外交方針が急に変わったというようなことではございませんで、先ほどから言いました基本的な問題はそのとおりなんでございます。ただ、世界情勢ソ連等のいろいろな関係が前よりも少し変わってきたということでございまして、こっちが変わったのじゃなくて、私が本会議で、先方で情勢の変わることがあったのじゃないか、こういうことを言ったのはその点でございます。
  190. 中路雅弘

    中路委員 これまでも対米の協調といいますか従属といいますか、こうした外交基本にあることは事実なんですが、国会の答弁等ではしばしば国連中心主義だとか外交だとか、あるいは全方位外交と称してこられたわけですね。いま急に変わったのじゃないというお話ですが、たとえば最近の一般の新聞論調でも、これは毎日新聞の社説ですが、この青書について、いわば全方位外交の廃棄だ、平和外交から安全保障、軍事力重視への転換宣言だと述べている新聞論調もあるわけです。  明らかに日本外交基本姿勢が大きく転換しているということは、日本の一般新聞の論調も述べているわけですが、もう一つこれに関連してお聞きしておきたいのは、これは亡くなった大平総理の私的グループと言われていますが、総合安保研が出した文書の中で、長いから読みませんけれども、要約しますと、この中にたとえばいまの非同盟諸国、いわゆる「南の勢力の台頭」と述べていますけれども、こういうものも西側脅威だということをこの総合安保研は述べています。アメリカ中心の支配体制が崩れるということはまた日本脅威だということも述べているのですが、この点について、最近の開発途上国、非同盟国が特に中心ですが、この国の台頭が脅威だ、こういう分析については外務大臣はいかがお考えですか。
  191. 伊東正義

    伊東国務大臣 おっしゃいました言葉は私よく覚えておりませんが、恐らくその分析は、いままでは米ソの対立というような形だけで物を考えてもよかったかもしれませんが、開発途上国あるいは非同盟あるいは南北問題というような問題がいろいろあって、安全保障を考える場合にはそういうことも頭に入れて考えなければならぬ。たとえば開発途上国が非常に低い発展段階に残ることは、世界の平和ということにとって憂慮すべきことだから、南北問題等についてもやはりそういうところに経済援助をしていくとかいうようなことが広い意味の安全保障につながるという意味で書かれたのではないかというような記憶があるのでございますが、私はそういうことも、南北問題が解決されないで残るとか、世界が不安定な状態になるということは、やはり日本の総合的な安全保障から見れば望ましいことじゃないんだという意味にそれを解釈すべきじゃなかろうかと思うわけでございます。
  192. 中路雅弘

    中路委員 きょうは具体的な問題でこれに関連してお聞きしたのですが、あと一言特にいまのに関連して述べておきたいのは、西側一員として強調されていま進められている伊東外交といいますか外務大臣外交が、私も今度東南アジア委員会一員として回ってきて感じたのですが、カンボジアに対する対応にしても、その立場が逆にその地域の緊張を一層高めていく、あるいはカンボジアで言えばすでに実効的な支配をしているいまの政権に対する国際的な干渉、そういうものにもなってきているということを痛感して帰ってきたのですが、改めてこういう問題はまたお聞きしたいと思います。  相手が変わったんだ、こっちは変わらないんだということは、先ほどお話ししましたように、国内の一般新聞ですらやはり大きな転換なんだということを述べているように、いまの外交青書等にあらわれている外交基本姿勢というものは大変危険なものを含んでいることを指摘しておきたいと思うのです。  この問題と関連して具体問題を一、二お聞きしたいのですが、先ほどからもこの委員会で取り上げられていますイランイラク紛争の問題です。戦況が長期化していく中でこの問題を解決するためには、この戦争を即時停止して双方の話し合いによって紛争の平和的な解決を図るということが何よりも基本だと思います。それとあわせて、大国がこれに介入することはこの紛争解決を一層複雑にするわけですし、この点については大国が絶対干渉してはならないと考えますが、この点について最初に外務大臣の御見解をお聞きしたい。
  193. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  最初に先生おっしゃいました、いま外務省のやっていることが何か軍事大国の方に向いているというような意味の御意見があったわけでございますが、私は実はそんなことは全然考えておりません。日本はいまの憲法からいきましても軍事大国にはならぬ、平和外交に徹するということで私はやっていこうと思うわけでございます。  先生例を挙げてカンボジアの問題を、先ほど回ってきてと言って御意見があったわけでございますが、カンボジアの問題もあるいはアフガニスタンの問題も、これは国連で他国に軍事介入をしてはいかぬということを即時徹底をしろということを決議をしているわけでございます。その国連の決議がそのまま守れるようにすることがやはり世界の平和に寄与することじゃないかという立場で私はやっているわけでございまして、先生の御意見でございますが、その点は、私どもはそんな考えをしていないということだけははっきり申し上げます。  それから、イランイラクの問題につきまして、大国は介入すべきではないとおっしゃったが、そのとおり私も同意見でございまして、二十四日でございましたか、私はグロムイコ外相に朝会ったときも、日ソの問題の前に、このイランイラクの問題にソ連介入すべきじゃないということを真っ先に実は言ったのでございます。そういうことになれば中東で大混乱になる、平和が害されるからということでグロムイコ外相に私は言いましたら、グロムイコ外相も、介入をする意思はない、そのかわりほかの第三国も、これはアメリカを指したのでございますが、介入すべきではないということを新聞に言ってもらって結構だということでございまして、私はすぐにマスキー国務長官にもそのことを連絡したのでございますが、もちろん超大国だけでなくて、第三国介入すべきではない、日本もこれにはいずれにも加担しない、介入はしない、中立を守るということでやっていこうと思うわけでございます。
  194. 中路雅弘

    中路委員 東南アジア問題については改めてまた質問しますが、ポル・ポト政権残党にいつまでも固執されていると、そう遠くない将来に日本外交がますます孤立するということだけは一言言っておきたいと思うのです。  いまの問題と関連して、ホルムズ海峡の安全確保の問題で、アメリカ政府関係諸国に合同監視艦隊の問題について打診、協議、構想について進めているという報道もありますが、これに関連して、先日の参議院の本会議でもわが党の市川議員が質問しているわけですが、わが国は監視行動に参加する立場にないという答弁を総理はされているのです。この参加する立場にないということは、集団自衛権の行使はできないわけですし、海外派兵も当然できないわけですが、憲法上の立場から明確にこうしたものには参加できないということだと思いますが、この点明確にしておいていただきたい。
  195. 伊東正義

    伊東国務大臣 鈴木総理が本会議で、いまおっしゃったように答弁をされたわけでございますので、私どもとしましても、日本の憲法には集団的自衛権というものは解釈上認められていないという立場をとっておりますので、それに反するような行動には日本は出ないということを、総理がそこまで説明されなかったにしても、そういう意味ではっきりあれは言われたわけでございます。
  196. 中路雅弘

    中路委員 もう一つ、私たちの本会議の質問で、こうした軍事行動のために、たとえば費用の分担というような形での要求、こうしたことにも一切応ずべきでないという問題の質問もあったのですが、これには答えていないわけです。いまの御答弁からも当然、こうした憲法にも反する軍事行動、直接それについての費用の分担あるいは協議、こうしたものは断るべきだ、参加すべきでないと思いますが、この点も大臣の明確なお答えをひとついただきたい。
  197. 伊東正義

    伊東国務大臣 集団的な自衛権とか個別的な自衛権という問題は、他国の武力による脅威に対してのときの観念でございまして、いま先生のおっしゃったお金の分担がどうかということにつきましては、まだいまのところは何もそういう相談を受けておりませんから、いまここでそういう仮定の問題につきましてお答えすることはどうかと思いますので、お答えをいたしませんが、お金を負担するかどうかというようなことは、具体的に相談があった場合には、いまの憲法との関係、法律との関係その他を法制局を中心にして十分相談をして考えなければならぬことだ。いま一概に、それはいいとか悪いとか、そういうお答えは私はいたしませんで、具体的にそういうことがあった場合には、法制局その他と十分相談をした上で結論を出すことにしたいと思います。
  198. 中路雅弘

    中路委員 法制局と相談する以前の問題じゃないですか。軍事行動ですね。さっきは、大国の干渉というか政策的にも介入すべきじゃない、しかもこうした合同監視艦隊のような軍事行動には憲法のたてまえから当然参加できないというお話ですから、当然この軍事行動のための費用の分担といった協議には応ずべきでない。これはいまの御答弁の流れからいっても検討される以前の問題で、明確に応ずべきでないと私は思うのですが、明確にできないですか。
  199. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本がそういうところへ自衛官を持っていくとかそういうことは、全然いまの自衛隊法でもできないし、憲法でもできないことは先ほど申し上げたとおりでございまして、費用の問題というのはいま全然出ていない問題で、われわれも協議を受けた問題ではございませんので、そういうものが現実に出てきた場合には、法律的な問題でどうなるかということは、法制局を中心日本としてはよく検討して右なり左なりの結論を出すということだと私は思っております。
  200. 中路雅弘

    中路委員 まだ協議が来ていないということで明確な回答をされていないのですが、これは応ずべきでないし、いまの御答弁でそういう形で明確にされないという点にも私は大変問題があるということを指摘しておきたいと思うわけです。  もう一つ、具体的な問題で、外交姿勢とも関連するのですが、お尋ねしたいと思うのです。  防衛庁来ておられますか。具体問題でお聞きしたいのですが、六月十日に沖繩の那覇空港からスクランブルに出た航空自衛隊F104J機が着陸に失敗して炎上事故を起こしたということについてはよく御存じだと思いますし、県民の非常に大きな衝撃と不安を呼び起こしたわけですが、この事故を起こしたスクランブルに出た航空機は、何を対象にスクランブルをかけたわけですか。この問題について最初に簡潔に御報告をしていただきたい。
  201. 坪井文龍

    ○坪井説明員 お答え申し上げます。  先生から御指摘がございました事故を起こしたF104は、六月十日午前六時二十分に那覇飛行場を緊急発進いたしまして、任務終了後、同七時十七分ごろ帰投して着陸する際に滑走路をオーバーランしまして、機体が滑走路南側の入り江の中の浅瀬で二つに折れまして、そういう状態で炎上しました。航空機以外の物件や基地外に被害は与えておりませんが、パイロットは死亡しております。  スクランブルの対象としたものにつきまして個別に申し上げますことは、部隊運用上の細部にわたることでございますので、一般的には差し控えさせていただきたいのでございますが、あえて当該機についていま申しますと、ソ連のアエロフロートのIL62に対してスクランブルを行ったものでございます。
  202. 中路雅弘

    中路委員 運輸省はお見えになっていますか。いまの六月十日にスクランブルをかけたというソ連のアエロフロートの民間機、これは飛行計画、フライトプランが事前に提出されている航空機ですか、どうですか。
  203. 武田昭

    ○武田説明員 お答え申し上げます。  わが国の航空交通管制部に対しまして、国際固定テレタイプ通信網を通じましてそのソ連航空機の飛行の計画が、六月十日に飛行するという旨の通報がございました。
  204. 中路雅弘

    中路委員 運輸省も確認されているように、この民間機は飛行計画が提出されている航空機でありますし、航空自衛隊の方も、先日、九月十一日に衆議院の内閣委員会で出かけられた委員派遣で、現地の航空自衛隊の幕僚と懇談された際にも、フライトプランを通告してきたソ連の民間機にスクランブルをかけているようだがという質問について、現在ソ連機を相手にスクランブルをやっている、この六月十日の問題だけではなくてこれは常時やっているということを答えているわけですけれども、領空侵犯の場合は自衛隊法の八十四条というものがあるわけですが、領空侵犯以前の場合にスクランブルをかける根拠といいますかその基準、何が基準になっているのですか。
  205. 坪井文龍

    ○坪井説明員 自衛隊は自衛隊法第八十四条によりまして領空侵犯に対する措置をするという任務を与えられております。これに基づきまして、外国の航空機が国際法規または航空法その他の法令に違反してわが国の領域の上空に侵入したときに、当該外国航空機に対する措置について規定しているわけでございますけれども、この規定の目的は、わが国の領空主権に対する侵害を防止しましてわが国の利益を守るということであろうと思います。この場合、航空機は大変高速でございますので、いま申し上げました措置をとる、あるいは適切に実施するためには、航空機がわが国の領空を侵犯する以前において、そのおそれがある場合においてもスクランブルして対処しなければこの目的を達成できないんじゃないか、そういうふうに考えております。したがいまして、領空侵犯のおそれがある場合に、領空侵犯措置をとることに備えまして自衛隊機がスクランブルを実施するということは、自衛隊法八十四条の措置をとるためのその前段の行為として当然許されることであろう、そういうふうに考えております。  さらに、これにつきましての細部の手続につきましては、防衛庁長官の訓令によって定めてある、そういうことでございます。
  206. 中路雅弘

    中路委員 いまの訓令は出していただけますか。もし出せなければ、その訓令の簡単な概要は説明できますか。
  207. 坪井文龍

    ○坪井説明員 お答えいたします。この内訓は領空侵犯の措置に関する内訓ということでございまして、秘密でございます。したがいまして、これまでも国会への提出は差し控えさしていただいておりますが、できる範囲で概要を御説明申し上げております。  この訓令には、自衛隊法の八十四条に基づきましてその手続等を規定しているわけでございます。まず、緊急発進した要撃機が、航空総隊司令官等の指示に従いまして、警戒管制部隊、レーダー部隊の実施する要撃管制によりまして領空侵犯機を捕捉し、その状況確認、それから必要に応じまして行動の監視を行うという、まず確認行為があるかと思います。それから、領空侵犯機を確認した場合には、要撃機はこの領空侵犯機に対しまして最寄りの飛行場への着陸だとかあるいは領域外への退去を警告するという、警告ということが次にございます。次に、領空侵犯機を着陸させる場合には、要撃機は総隊司令官等の指示に基づきまして、その指示する飛行場に誘導する、そういう一連のことになろうかと思います。
  208. 中路雅弘

    中路委員 いまのは領空侵犯機に対する対処でしょう。私が聞いているのは、領空侵犯の以前についても、あなたが言ったおそれがある場合についてスクランブルをかける基準がやはりなければいけないわけですから、それはどういうことなんだと聞いているわけなんです。  ここに「日本の防衛」という防衛庁が出した冊子がありますが、ここでスクランブルについてこう書いてあるのです。スクランブルが指令される場合は、国籍不明機や飛行計画等で照合されない航空機については、領空に接近した場合に、最寄りの要撃戦闘機にスクランブルが指令されるというように書いてあるのです。国籍不明機や飛行計画で照合されない航空機、これについて接近してきた場合にスクランブルをかける指令をするのだと書いてあるのですが、たとえば今度の六月十日の場合は国籍不明機じゃない。ソ連の民間機で、フライトプランが事前に運輸省も確認しているように出されている航空機、しかも領空はまだ侵犯していないわけです。これにスクランブルをかけるというのは何が基準でやられているのかということを聞いている。
  209. 坪井文龍

    ○坪井説明員 お答えいたします。  いまの六月十日のIL62でございますけれども、フライトプランが出ているというお話でございますが、そのフライトプランの性格につきまして私ども正確にあれしておりませんが、民間機につきましてわが国の領域に入るとかあるいは領域を通過するということにつきましてわが国政府がそれを認めているという場合が通常ではなかろうかと思いますが、例のIL62につきましては、要するに日本海から対馬海峡を通りましてずっとベトナムの方へ南下しているわけでございますけれども、その場合に対馬海峡という大変狭いわが国の領域、大変狭いところを通るというようなことがございまして、これは領空侵犯をするおそれが十分ございます。したがいまして、自衛隊法の八十四条の法律の根拠、それからさらにそれに基づく訓令を根拠にしまして自衛隊機がスクランブルをかけて監視をしている、そういうことでございます。
  210. 中路雅弘

    中路委員 防衛庁が出されている「日本の防衛」の中で、スクランブルを指令するのは国籍不明機や飛行計画が照合されない航空機とあるのは、じゃこの基準は変えられたのですか。国籍不明機、飛行計画等で照合されない航空機にスクランブルを指令するというのはこの「日本の防衛」に書かれてありますね。これは基準は変えられたわけですか。対馬海峡を通るのは何でも全部、対馬海峡は狭いから侵犯するおそれがあるから、飛行計画が出されていても民間機であってもスクランブルをかけるということに変わったのですか。
  211. 坪井文龍

    ○坪井説明員 お答えいたします。  ソ連のIL62でございますけれども、わが国の領域に入ることをわが国政府として認めておりません。しかも対馬海峡を通るというあのコースが国際航空路として特に認められているというふうにわれわれ承知しておりませんが、あのようなわが国の領域の大変狭いところを通るということでわれわれスクランブルをやっているわけでございますけれども、現実に去る八月十八日でございますか、領空侵犯をやったという事実がございます。
  212. 中路雅弘

    中路委員 時間が限られていますから私の方で話しますが、私が防衛庁からお聞きしますと、この六月十日が初めてじゃない、三月からベトナム定期便なり飛行機が飛び始めてから全部スクランブルをかけているのだというお話なんですね。  私は外務大臣にお聞きしたいのですが、先ほどの外交姿勢ではありませんが、それからもちろんソ連とも、問題がありますけれども友好善隣でやっていきたいのだ、努力するのだというお話ですね。その場合に、いま一例だけ挙げたのですけれども、こうした形で、この根拠もはっきりしないのですが、防衛庁が出している文書は、国籍不明機や飛行計画が出されていないという、スクランブルを指令するというのは公表されているのはこれしかないのですから。  それがたとえば六月十日の例で言えば、飛行計画も出されている、直接まだ領空侵犯はやっていない、ソ連の民間機だということも確認されているわけですし、時間で言いますとスクランブルの間は一時間あるのです。国籍を確認してそれで帰ってきたんじゃないのですよ。この一時間どうしているのだといったら、スピードも皆違うわけですから、このソ連の航空機の周囲をずっと旋回しているわけですね。しかも、八月からスクランブルをかける航空自衛隊の戦闘機はミサイルを積んでいるわけです。  フライトプランが出されている民間機で、それをミサイルまで積んだ航空機が長時間にわたって、いわば警戒行動というのでしょうが、旋回をやっているということになりますと、しかもそれはソ連の軍用機でもない、民間機なんです。確認をされている。これはやはりソ連を事実上仮想敵国とするような、またこういう数まで織り込んで領空侵犯が幾らあったということでソ連脅威を意図的に拡大していくことにもなりますから、こういうスクランブルは対ソ外交上も非常にまずいのではないかというふうにも私は考えるわけなんですよ。  この点はひとつ外務大臣としても事情も聞いていただいて、こうした飛行計画が出されて、民間機で領空侵犯もまだやっていないという航空機に長時間にわたってスクランブルをやるということは、外交上問題があるというふうにも考えますので、検討していただけませんか。いかがです。
  213. 伊東正義

    伊東国務大臣 私いま初めて聞いたのでございまして、ソ連の民間機に常にそういうことをやっていることじゃないんだろうと思うのですが、事情もよくわかりませんので、これは防衛庁にもよく聞いてみます。いまここで右、左というお答えをするほど知識がありませんので、まことに申しわけございません。よく聞いてみます。
  214. 中路雅弘

    中路委員 限られた時間ですのであれしますが、那覇の航空自衛隊のこの委員会視察のときに懇談した幕僚が、ことしの三月以降ソ連の民間機について全部やっているのだと答えていますから、これはひとつ外務大臣の方も調べていただきたい。私は、こうしたことが拡大されていくと対ソ友好といっても外交的にもまずい問題が起きてくるわけですから、ひとつ検討していただきたい、こうしたスクランブルはやめさせていただきたいというふうに思うわけです。  もう一つは、防衛庁に、先ほどの根拠がはっきりしないのですが、内訓、マル秘だからということで出さないわけですが、スクランブルの根拠については私は何らかの形でひとつ提出してほしいと思うのですが、委員長、いかがですか。
  215. 奥田敬和

    奥田委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  216. 奥田敬和

    奥田委員長 速記を始めて。  中路君。
  217. 中路雅弘

    中路委員 それでは、説明するということですから、ぜひ約束を守っていただきたいと思います。  時間が来ましたが、最後に一問だけ。これは別な問題ですが、ちょっと緊急の問題でもありますのでお聞きしたい。  神奈川県の長洲県知事からも外務大臣と防衛施設庁長官あてに七月二十八日付で強い要請書も出ていますし、関係の相模原市長からもすでに要請文も出ている問題です。米軍基地の座間キャンプでゴルフをやられているわけですが、このゴルフのボールが周辺の学校、中学校から住宅にぼんぼん飛び込んできて、昭和五十年以来ガラスが破壊されるとかいろいろ住民に不安をもたらしていますし、最近、ことしになって一部分だけへいをつくったのですけれども、そのへいのところでまた打ったボールが婦人に当たって大けがをして入院をされ、まだこの問題は全く解決していない。それ以前の若干の期間だけで、住民の人たちが子供が持って行ったのを除いて証拠として押さえているゴルフボールだけでも九十一個あるのです、飛び込んできたゴルフボールが。  それで、簡単に言いますけれども、要請はこのフェンスを、いま十メートルあるのですが、もう少し高くしてほしい。それから、千百メートルあるのですが、百メートルの間しかフェンスをやっていない。危ないところはフェンスをもっと長く延ばしてくれ、いわゆる防護ネットを改善して整備してほしいというのが要求の一つなんです、住民も県知事も。  もう一つは、須田さんという方が大けがをして、約二百万ぐらいの医療費と、それから一カ月以上仕事を休んでますから、この休業補償を含めた補償を要求されているのですが、六月の事故でまだほとんど補償の話も進展していない。病院にももう金がなくてなかなか行けないという状態ですから、経過は省略しますけれども、被害者の補償をひとつ一日も早く解決してほしい、米軍が当然補償をすべき問題ですけれども。  それから先ほどの防護ネットを高くすることと延ばすということ。これは生命の安全の問題ですから早急に決着させて、防護ネットの整備ができない間はゴルフは中止させるという措置をとってほしい。  簡潔に言いますとこれだけの要求ですが、関係者の答弁をお願いしたいと思います。
  218. 千秋健

    ○千秋説明員 お答え申し上げます。  私、まずキャンプ座間のゴルフ場の施設の問題についてだけお答え申し上げますが、このゴルフ場につきましては、ことしの五月、六月にいま先生御指摘のようにそこの外周に沿いますところには約十メートルの、ボールが飛び出さないような防護ネットを米軍の方で設置したわけでございますが、それでもなおボールが外に出るということもありまして、この六月にそういう事故が起きたわけでございます。  そこで、私どもの方では直ちに米側に対策をとるように申し入れておりますが、この事故のあった直後には問題のティーグラウンドを施設の内側に移すとか、プレーヤーに対してここでは外に飛び出すことがあるので注意してプレーするようにという掲示板を設けるとかの措置をとっておるわけでございます。それでもなお米軍の方ではもっと根本的にこれに対して何か検討できないか、対策を講じられないかということで、目下対策を検討中でございます。  そういうことでございますので、私どもとしましてはこの米側の検討の推移を見守りたいというように思っております。
  219. 中路雅弘

    中路委員 これで終わりますが、六月十日の事故の補償の問題、いまお答えがないのですが、これは外務大臣にお願いしたいのですが、後遺症も出ている須田せつ子さんという御婦人の事故なんですよ。本人も訴えられているのですが、この補償について外務大臣あてに要請が行っているのですから、ひとつ外務省も補償の問題について努力してほしいということと、ネットの交渉もいまはまだ返事が来ないというような長いのじゃなくて、少し期限を切って改善の返事を至急もらうということで外務省も努力をしてほしいと思うのですが、お約束できますか。
  220. 岩見秀男

    ○岩見説明員 須田さんの補償の関係でございますけれども、本件は米側と話し合いをしておりまして十八条六項の公務外事案といたしまして処理すべく調整しております。先生いまお話がございましたように補償がおくれているではないかということでございますが、私ども補償の請求を早く出していただくようにお願いしていたわけでございますが、何分にも若干後遺症等お考えになりまして、九月の二十六日に申請が参っております。できるだけ早く適正な補償で処理したい、かように考えております。
  221. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま防衛庁から御答弁がありましたので、答弁ありましたようなことが早く実現するように、あるいは施設のネットの問題とかそういうことを、私からも防衛庁長官の方に御質問あったことを早速伝えておきます。
  222. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 特に補足することはございませんけれども、外務省としてもこの事件は重視しておりまして、事件の直後、米軍側に申し入れてございまして、施設庁との話し合いが円満にいくようにという申し入れをしております。
  223. 中路雅弘

    中路委員 終わります。
  224. 奥田敬和

    奥田委員長 次回は、来る二十二日水曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十二分散会