運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-10-23 第93回国会 衆議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月二十三日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 関谷 勝嗣君    理事 楢橋  進君 理事 宮崎 茂一君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君       阿部 文男君    木部 佳昭君       佐藤 文生君    近岡理一郎君       永田 亮一君    浜野  剛君       林  大幹君    古屋  亨君       細田 吉藏君    三塚  博君       箕輪  登君    井岡 大治君       久保 三郎君    小林 恒人君       浅井 美幸君    小渕 正義君       三浦  久君    四ツ谷光子君       中馬 弘毅君  出席公述人         経済評論家   小暮 光三君         福岡田川市長 滝井 義高君         東洋電機製造株         式会社社長   土井  厚君         鳥取若桜町長 武田 吉造君         社団法人日本観         光協会理事   田崎乃武雄君         全国消費者団体         連絡会代表幹事 工藤 芳郎君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   佐藤 文生君     細田 吉藏君 同日  辞任         補欠選任   細田 吉藏君     佐藤 文生君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案(内閣  提出、第九十二回国会閣法第一号)      ――――◇―――――
  2. 小此木彦三郎

    小此木委員長 これより会議を開きます。  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案について公聴会を行います。  本日御出席願いました公述人は、経済評論家小暮光三君、福岡田川市長滝井義高君、東洋電機製造株式会社社長土井厚君、鳥取若桜町長武田吉造君、社団法人日本観光協会理事田崎乃武雄君、全国消費者団体連絡会代表幹事工藤芳郎君、以上六名の方々でございます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、本委員会といたしましては、本案について慎重なる審査を続けているところでありますが、この機会を得まして広く皆様方の御意見を拝聴いたしますことは、本委員会審査に資するところ大なるものがあると存じます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  御意見を承る順序は、小暮公述人滝井公述人土井公述人武田公述人田崎公述人工藤公述人順序でお願いすることにいたします。  なお、御意見はお一人十五分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のために申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  それでは、小暮公述人にお願いいたします。
  3. 小暮光三

    小暮公述人 私は、小暮光三でございます。  私は、御審議中の国鉄経営再建促進特別措置法案の一日も早い成立期待しているものでございます。こういう観点から、本日は三つほど申し上げさせていただきたいと思います。  一つは、今回の再建措置法案ができました背景についてでございます。二番目には、再建対策特徴といいますか、注目される点、三番目は、これに関する私の経験を申し上げさせてもらいたいと思います。  そこで、第一点の再建対策の成り立ち、背景というものでございますが、御承知のように、国鉄は四十四年から財政再建に取り組んでまいって、今日ではもうすでに十二年を過ごしております。再建の手がかりとしましては、運賃改定あるいは企業努力、国の助成、こういう三本の柱を使いまして関係各方面におかれましてはそれ相当努力をなさってきたものと見ておりますが、残念ながらその成果については必ずしも期待どおりの結果が得られていないように見られるのであります。  こういうことにつきましてはいろいろの原因がございましょう。一概にこういうことだからこうなったということをきめつけるわけにはいかぬと思うのでありますが、それらの原因の中で、特に注目されますものの一つ運賃改定のずれがあったと私は思うのです。国鉄運賃は、四十四年、最初財政再建計画に取り組みました年に引き上げましてから四十九年の十月まで、実に五年半据え置かれたわけでございます。この間、経済界にはドルショックあるいはオイルショックというような事件もございましたし、あれやこれやで経済そのもの基調高度成長から安定成長に切りかわる波乱の年でございました。こういうことがありましたために、また、国会におかれましても政府におかれましても国鉄運賃を据え置かざるを得ない、こういう事情も十分にあったと思われるのでありますが、運賃料金というものは企業的活動指標であると私は思うのです。この指標が凍結されますというと、企業的活動というものはちょうどかじをなくした船のようになりまして、どこに漂着するかわからぬというような形になりやすいものであります。国鉄の場合も例外ではございませんで、事実そういう形に近い結果が出ております。つまり、この五年半の間に国は懸命に助成金をふやす、そういうような努力をなさいましたけれども、四十五年度と五十年度の実際の実績を比較してみますというと、国鉄経営損失は六倍あるいは累積欠損金も五倍から五・六倍、こういうふうにふえてきたわけであります。  それで、国鉄赤字が出るということは、御承知のように、赤字はそのまま借入金増加に振りかわっていく性質のものであります。借入金がふえれば当然国鉄の払う利子その他の債務費がふえまして、これが人件費等増加と相並行しましてさらに国鉄経営を悪くする、こういう相乗効果を発揮するわけであります。  こういう結果になりまして、政府国会におかれましても、五十一年の秋になりまして、一遍にこのおくれを取り戻そうというお考えであったかどうかは別といたしまして、名目五〇%という大幅な運賃引き上げをいたしました。ところが、経済界は、御承知のように、五十一年度から安定成長経済に移っておりましたので、この大幅な運賃引き上げがかえって逆に国鉄に対する旅客貨物の離反というような、いわゆる国鉄離れという現象が起きてきたわけでございます。  さらに、五十二年の暮れに運賃法弾力化措置がとられましたが、この段階になりますというと、もう運賃料金国鉄財政再建に寄与する効果というものは最初期待したほどのものを上げられない、こういうことがはっきりしましたので、政府は今回の財政再建措置に踏み切ったものと私は見ております。  これを経過的に申せば、五十二年の暮れに閣議でもって国鉄再建基本方針を御了解なさった。この方針を受けて、国鉄は、それから一年半営々検討を重ねた結果、昨年の七月に、国鉄再建基本構想案というものを運輸大臣に提出したわけであります。政府はこれを受けて今回の対策を立てたものでありますが、今回の対策国鉄基本構想案を比べてみますと、ほぼ全面的に国鉄の研究の結果を取り上げて、これでやろうじゃないかという形になっておると私は見ておるのであります。この対策を法律的に裏づけますのが、皆様承知のように、ただいま御審議中の国鉄法案である、こういう経過をたどったと思います。  そこで、今回のこの法案に盛られておりまする特徴といいますか、注目される点は何かという第二の点に移りますが、私は今回の特徴として挙げられるものの第一に、今度こそ国鉄はかなり強くやる気を起こしているなという感じを今度の再建対策全体から受けるのであります。つまり、三本の柱と言ってまいりましたけれども、運賃改定にはもうそれほどの大きな期待はつなげない。そうすると残された道は、国鉄自身企業努力でもってこれを立て直すというふうな方向に行かざるを得ないじゃないか、こういう決心を固めたものと私は見ておるのであります。その方向は何ぞやと言えば、いわゆる経営重点化、業務の省力化あるいは組織運営効率化、こういうような手段を講じてとにかく国鉄を立て直そうという気魂が見えているように私は思います。  しかしながら、国鉄がいかにそういうふうに力んでみましても、現在の国鉄の状況というものを見ますと、国鉄の力だけではどうにもならぬものもあることは皆さん承知のとおりであります。いわゆる構造的問題というもの、この問題については、ぜひひとつ国の施策をお願いしたい、国鉄企業努力に専念するけれども、国におかれてもこの国鉄の構造問題の解決に御尽力いただきたい、こういうのが今度の再建対策の大きな柱であると私は見ておるのです。  それから、第二点の特色といたしましては、今度の対策の中に、国の基幹的交通機関として、国民輸送需要に適合した輸送力の確保を図るのだ、こういうことをはっきり申しております。つまり、最近二十年ぐらいの間を振り返ってみますると、国内の交通事情は、御承知のように、大変変わってきております。港湾も空港もりっぱに整備されておりますし、航空機も船舶も非常に発達しております。道路などは、国道はほぼ一〇〇%、都道府県道でも八〇%ぐらいが舗装されている。自動車も大変普及しておる。こういうふうに交通の設備が発達いたしますと、国民としては、どうしても自分の交通需要に応じて交通機関を選択するということをやるようになります。こういうふうに基礎事情が変わってまいりましたのに、国鉄だけが大正十二年の鉄道敷設法以来の体系をそのまま保持しようということならば、私は、こういう国民輸送需要に適合することはとうていできない、こういうふうに考えます。  今度の再建はそこに目をつけまして、輸送需要のあるところにはそれに適合した輸送能力を確保しようじゃないか、輸送需要の少ないところにはそれにふさわしい輸送機関を整備しようじゃないか、こういうふうに考えておられると思うのであります。これについては、国鉄再建計画がスタートしました四十四年から、国鉄役割りというものは都市間旅客輸送である、あるいは大都市圏旅客輸送である、あるいは大量定型貨物輸送であるということを掲げておりましたけれども、残念ながら具体的には余りその効果が上がっていなかった。今度こそひとっこれをやろうではないかというのが今度の対策の第二番目の特徴ではないか。こういうことをやることは、いわゆる政府に総合交通的な施策をお願いするということにもなりましょう。皆様の御関心の深い地方交通線の問題にも当然触れざるを得ないのであります。  よくマスコミやその他の面で、今度の対策過疎地帯を切り捨てるのであるとか見切り発車であるとか、こういうきつい言葉を使っておりますが、私はこの言葉は必ずしも正確ではないと思うのです。今度の再建対策を見ておりまして、そういう過疎地帯であるから切り捨てるのだ、あるいは見切るのだというような無理な節は一つも読み取れないのであります。つまり、輸送需要が少なくなったところにはその少なくなった輸送需要に適合した輸送機関を配置しようじゃないかというのが、私は今度の再建対策一つのねらいだと思うのであります。この点につきましては、いずれ皆さんの方にも御意見がおありかと思いますが、私はどうも見切りとか切り捨てという点についてはいささか誤解があるのではないか、こういうふうに見ておるものでございます。  これに関連しまして、ちょっと私の経験を申し上げさしてもらいますが、私は新聞社をやめましてから今日まで十数年になります。体が自由になりましたので、ずっと毎月一回ないし二回は地方にお邪魔をしまして、皆さんにお目にかかっておりますが、その経験から見まして、十数年前には、地方に参りますと、雪が降ったために自動車が通れないというようなことがありました。現に私は、弘前大館、秋田に講演の旅行に出ましたときに、弘前でいささかおしゃべりが過ぎまして汽車に乗りおくれました。大館皆さんに悪いからというので自動車で駆けつけようと思いましたら、雪があって路面が凍っていて危ないからやめてほしいというので、結局次の汽車を待ったために大館皆さんに御迷惑をかけたというようなことがございました。  それから四、五年後でありますが、今度は北海道を一回りする講演の日程がございまして出かけたのでありますが、ちょうど小樽から旭川へ行くころから国鉄ダイヤが乱れ始めまして、どうも国鉄ダイヤによったのでは間に合わない。そこで、ひとつ自動車で行こうというので、旭川から富良野、狩勝峠を通りまして、帯広、広尾、釧路と通った経験がございます。ちょうど三月の雪の多いときでございました。しかし、自動車で少しも不自由がなかった。私はそれだけ交通事情がよくなってきているのだと思うのであります。  さらに、ことし参りますと、北海道相当山の中の温泉場に参りましても道路がきちっと整備されておりまして、わずか一軒しかない温泉場でございましたけれども、御主人に聞いてみますと、真冬でもクローズしない、一年じゅう営業ができます、それは路面の除雪をちゃんとやってくださるから、一年じゅう路線バスが通っております、こういうことでございます。こうなりますと、もう雪が多いからだめだ、鉄道でなければだめだというような事情はごく特殊の例になっているのではないか。そのくらいよくなっている。  それから、今度行って特に感じましたのは、北海道道路のいいことであります。真っすぐの道路でもってりっぱな舗装ができております。聞きますると、ここ十年ぐらいの間に国鉄が投資をしました金は千六百億円ぐらいだそうでありますが、開発庁と道庁が空港道路にかけたお金は一兆九千七百七十二億円、ほぼ十二倍半ぐらいの金がかかっている。ですから、道路が非常によくなるのは当然でございましょう。しかし、りっぱになった道路の上を走っている自動車は余り多くないのであります。それから、その道路のわきに国鉄の線路がございますが、自動車で通っている間一遍も国鉄列車を見なかった。ということは、それにふさわしいほどの輸送量がないのじゃないか。輸送需要がないのじゃないか。そういうところにまで道路もよくし、鉄道も置いておくということは、これはよほどお考えいただかなければならないのではないか。  そればかりじゃございません。私はちょっと関心がありましたので、途中ところどころ駅に寄ってみました。駅に寄ってみますと、駅員が多いところで七、八名ぐらいいたと思いますが、この人たちがどうも手持ちぶさたであります。構内の掲示板を見ますと、列車の本数が少ないところでは一日二往復、多いところで五、六本しか通らない、ですから、そこに配置された駅員かなり力が余っている。どうなさっているのだという質問もしてみたのですが、掃除をするとか草木の手入れをする、それぐらいではとても時間がこなし切れない、したがって、仕事に対する熱意というものが上がらない。これじゃ活気がなかなか出てこないのではないか。こういう経験をしみじみしたわけでございます。  以上のようなわけで、私は今度の再建対策ができたいきさつ、それからその特徴などから見ましても、ぜひ今度こそ皆様の御理解のもとに一日も早くこの法案成立させていただきたいことをお願いするわけであります。  もし、この法案がまた過去のように紆余曲折をいたしますと、その不幸は単に国鉄ばかりでなしに、これは国の政治としても相当問題になるのではないか、そういう時期に来ていると思うわけであります。  そういうわけでございますので、ぜひひとつ成立にこぎつけるようにお願いをしたいということを申し上げて、私の公述を終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、滝井公述人にお願いいたします。
  5. 滝井義高

    滝井公述人 日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案について、地方の一市長として、反対の立場から意見を述べさしていただきたいと思います。  まず第一に、この再建特別措置法昭和六十年度までに国鉄再建ができるかどうかということですが、恐らく不可能ではないだろうかということです。現在、国家財政の中で、三K、いわゆる国鉄と米と健康保険という三つ迷路日本政治は入っているわけですが、その中で健康保険というのは、予防的な対策を講すれば医療費は減ると私は確信をいたしております。しかし、勉強すればするほど、米と国鉄迷路から出ることができないというのがいまの客観的情勢ではないかと思うわけです。そういう意味で、この特別措置法では国鉄再建は恐らく六十年度までには不可能ではないか。  それはまず過去の歴史的な経緯をごらんいただきますと、過去四回再建案国鉄はおつくりになったわけです。まず第一次の計画昭和四十四年の九月につくりました。そして十カ年、五十三年には黒字になるという目標を立てたわけですが、これもだめになりました。それから第二次は四十八年の二月、これも十年で、五十七年には収支均衡ができるという目標だったのですが、だめでした。それから第三次が五十年の十二月でございましたか、五十一年、五十二年で収支均衡目標としましたが、これもだめでした。それから四次が五十二年一月、おおむね五十四年に収支均衡を図る。こういうものを四回やりましたが、二年足らずで全部だめになったわけです。そこで、今度第五次の計画を出して、五十四年十二月に閣議了解を得まして、六十年度までに少なくとも国鉄経営を健全化して、収支均衡を図るということになっているわけです。  しかし、これらの五つの計画をずっとごらんいただきますと、柱はいつでも基本的には三本です。すなわち、運賃の値上げと合理化、しかもあるときは五万人、あるときは十一万人、あるときは六万人、あるときは七万四千人というように、必ず合理化、首切りが伴っております。そして、そういうことをやれば国が助成をします。助成は濃淡いろいろありました。しかし、とにかく一貫をしてそういう三つ政策でおやりになってきたわけです。  御存じのように、まず国鉄全体をごらんいただきますと、昭和三十年には、輸送しておるシェアというのは旅客で五五%、貨物で五二%であったのですが、五十四年は旅客二五%、貨物一〇%と減っていっているわけです。現実に東京あるいは県庁所在地乗客その他は増加しておるかというと、決して増加しておりません。減りつつあるわけです。しかも、五十四年度の監査報告をごらんいただきますと、とにかく国鉄の総裁は、トンネルの先が見えた、明るくなった、こうおっしゃっておるのですけれども、どうもそうではないのじゃないか。ずっと五十年ごろからの国鉄赤字は、五十年度は九千百四十七億ぐらいですか、それで五十四年度は八千二百十八億円で、五十三年度に比べたら六百四十九億減っているのですけれども、しかし、五十五年度と五十六年度の状態を一見ますと、もうすでに電気料金が上がり、石油値段が上がる。イラン、イラクの状態によっては、さらにこれは百十一日か二日の貯蔵しかないわけで、ランニングストックしかないわけですから、もうすでに政府自身が、運輸省自身が五十五年の国鉄赤字は八千八百九十九億、五十六年は一兆七百八十九億になります、再建トンネルは、出口が見えるどころじゃない、まさにお先真っ暗だ、こういう客観情勢が明確に出てきておる。しかも、経済は低成長です。乗客がどんどん増加する客観情勢はありません。  それからもう一つは、この地方交通線です。これを今度はいままでと違って法律で本格的に切っていくことになるわけですが、一日一キロ当たり二千人以下のところを切るということなんですけれども、こういうところがどの程度一体赤字の要因になっているかというと、五十二年度で国鉄赤字が八千三百三十九億円の中で二千三百六十四億円、三〇%です。あと七割はいわば幹線と言われるところが赤字なんです。したがって、このローカル線を切り捨てても、幹線のところでどういうようにして黒字を出していくかということが明確でないと、とてもこの案は成功をしないわけです。  それから、そういう赤字線ローカル線を切り捨てるというのに、国鉄は一体ローカル線について創意工夫をこらしてそこに乗客のふえるような方途をやったことがあるかというと、やったことがないわけです。たとえば依然として大きな電車を走らせずに、保線区で使っているようなミニカーを走らせる。タクシーと同じように踏切踏切でとめて、つっつっ、つっつっ行ったら、お客は幾らでもふえてくると思うのです。そういうことをやったらどうだと言うけれども、国鉄はずうたいが大きくてそういうことはできませんと言うわけです。できないから首を切る、あるいは地方線を切ってしまうというようなことでは、これはとてもだめです。  それから同時に、それならば六十年度になったときにどういう形になるかというと、そのときになるほど五百億ぐらいの黒字になるわけですけれども、一方においては莫大な退職金と年金が出てくるわけです。これは御存じのように、国鉄共済組合の中でも最も老齢化傾向の強い職員が多いわけで、したがって、ここだけで六千百億、六十年で出てくるわけです。そして同時に、東北新幹線やら上越新幹線というのが開始されます。これでもう三千億赤字が出るわけです。一方で二千三百億の地方線を切るが、幹線で三千億赤字が出るところを平気でおつくりになるわけです。これはいわば少し分裂的な状態が出ているのじゃないかという感じがするわけです。こういう理由で、この再建特別措置法というのは、六十年に黒字基調になることは不可能である、収支均衡は不可能である、これが基本的な第一の考えです。  それから第二には、非常に根本的な問題を考えなければいかぬのは、国鉄がもし特定の地方交通線を廃止するならば、それは私は国鉄自殺行為であると考えております。  私は産炭地に育ったのですが、昭和三十年代から、御存じのように、石油値段石炭値段より安いというので、エネルギー革命スクラップ・アンド・ビルド政策政府はおとりになりました。しかし、おとりになりまして十年もたたないうちに、あれは間違っておった、石炭を見直さなければならぬ。いわば油の値段石炭より高くなってき始めた。油が入りにくくなってきたわけです。しかも、政府御存じのように省エネルギー政策をとりまして、現在燃料の中の七五%というものが油で占められているのですが、それを昭和六十五年には五〇%に切り下げるわけです。そういういわば省エネルギー政策をとり、同時に、もう一方は、一体石油の運命というのはこれからどの程度あるか。せいぜい深海部の探査その他をやっても長くても三十年ではないかと言われているわけです。あるいはこれはもう少し延びるかもしれませんが、しかしいまのような状態だったら、二十年ぐらいを見ますと、いまのようにモータリゼーションがどんどん進んでいく、石油の税を取り上げて、そして道路をつくっていく、とすると、もし油が入らなくなったときには一体自動車はどうなるのかということです。ここらあたりをもう少し、総合的な交通政策をお立てになるときには十分討議をしていかないと、いまの日本社会は、石油がしみ込み、自動車がしみ込むというような、そういう社会になっておりますけれども、石油自動車が同時になくなったときに、道路というものは長大な道路ができた、しかしそれならば自動車電気にかえ、あるいはガスにかえる、こんなものは非常に効率が悪い、能率が悪いものになる。というと、道路は無用の長物になる。そのときに国鉄は、まさに百年の大計として国鉄が生き上がってこなければならぬ。すなわち、石炭を切り捨てたら、十年したらしまったと見直すと同じように、また石炭と同じ轍を国鉄で繰り返すような感じがしてならないわけです。  そこで、総合的な交通政策を、運輸省は陸海空三つとも持っておるわけですから、国鉄が今日の運命になったというのは、航空機の政策がむちゃくちゃに進み、高速道路がむちゃくちゃに進み、フェリーがむちゃくちゃに進んでいくというところに今日貨物のシェアが一〇%になり、旅客が二五%になっておるわけですから、一つの省でそういう総合的なものを見ながら、計画経済でなくても、少なくとも経済計画交通計画ぐらいは持っておかなければならぬ。それを持っていなかったところに今日の悲劇があると言わざるを得ないわけです。こういう根本論を二番目に提起したい。  それから三番目は、地域開発との関係でございます。さきに私たち過疎地域の市町村長、住民、議会が一体になって国会にお願いをしまして、ことしの四月一日から、旧過疎法が十年の期限の経過が終わりまして、新しい過疎地域の振興法ができたわけです。この過疎法の中で、三条、五条をごらんいただきますと、地方における交通通信体系を整備するということがあるわけです。この地方交通通信体系の中には、それはバスと船だけであって汽車は入らぬという主張がありましたので、私は市長会で、そんなばかなことはない、これを入れるべきだという主張をしまして、それは政府に申しましょうということになったわけです。  その後、この六月から九月ごろにかけて、私たち全国千百十九の過疎自治体は過疎振興計画をつくったわけです。その振興計画をつくるときには、当然鉄道を頭に置きながらつくったわけです。それは、県の過疎振興計画方針に基づいて私たちが具体的な過疎振興計画つくり、それを総理大臣に出して、そして総理大臣は関係大臣と協議をすることになっておるわけですが、私たちについてはそれは何も言ってきておりません。こういう地域における過疎計画と、同じ内閣の中でのこの国鉄特別措置法とはどういう関係があるのか。一方においてはそういう決議をして計画を出して、一方においては今度それを切るというような分裂的な形は困るわけです。  もう一つ例を挙げますと、産炭地域振興臨時措置法です。これは五十六年の十一月十二日に期限が切れますけれども、この期限が切れるものを、いま産炭地域振興審議会でどういうような答申を出すかということを御討議中でございます。やがて、来月の初めぐらいには恐らく答申が出るのじゃないかと思うのです。この場合に、産炭地域をブロック別に振興していくという新しいアイデアが出てきました。そうしますと、ブロック別に審議する場合に、私たちはその地域の経済基盤を非常に大事に見なくちゃならぬわけです。経済基盤の中で一番大事なものは交通ネットワーク、交通網でございます。たとえば内陸部で新しく産業を興そうとすれば、企業を誘致しようとすれば、交通網の整備がなかったら内陸部に来ないわけです。皆さん御存じのように、日本の産業というのは臨海工業地帯に発展をしております。したがって、私たちは当然経済基盤として新しいビジョンを出しなさいと通産省から言われ、県と相談してビジョンを出したときには、たとえばわれわれの筑豊の地帯で言えば、二百一号線とか三百二十二号線とか二百号線という国道とともに国鉄をぴちっと位置づけておるわけです。これは大事な動脈です。そういう国鉄道路網という二本のものがもしここで切られてしまえば、何のために産炭地のビジョンをつくったか、何のために基本計画つくり、実施計画を出したかわからなくなってしまうわけです。こういう点についても非常に大きな矛盾が出てきました。  それからもう一つ、全国的な規模で定住圏構想というのがあるわけです。この定住圏構想は一九八五年には三大都市、東京、大阪、名古屋を中心とする人口は六千四百万人になるわけです。六千四百万人になったら大変だということで、五千五百万に政府は抑えようという方針でございました。そうしますと、九百万人だけは三大都市に集まる人をその田舎にとどめておかなければならないわけです。これが日本社会福祉構想だと政府は説明しているわけです。そうしますと、そういうところに出ていくのは青年ですが、鉄道を全部のけてしまう、一日二千人以下になってしまうということになりますと、青年は田舎に魅力を持ちません。すなわち、過疎が進み、そういう定住圏構想というのは絵にかいたもちに終わってしまうことになります。こういう地域開発との関係についてどうしても納得がいかないわけです。  それから四番目に、ローカル線問題について、実はいままで国鉄はいろいろ答申を出したのですが、国鉄地方交通線問題小委員会のお出しになった「国鉄ローカル線問題について」という、この文書でございます。この最後にすばらしいことを書いているわけです。これまでローカル線対策国鉄経営の改善に重点が置かれ、地域住民の足の確保について十分な配慮が足りなかったことが大きな原因であった、これがうまくいかなかったのは配慮が足らなかった、こういうことです。だから、今後立法や行政上の措置をとるときには地元との連絡調整を十分しなさい、それから同時に、経営状態とか国鉄の持っておる情報というものを全部公開しなさいということを書いてあるのです。こういうことはいままでなかったことですが、今度の小委員皆さん方は非常に民主的なローカル線問題の取り扱いをしていただいているわけです。  国鉄は、いままでこの特別措置法の立法に入る前あるいは立法過程において、われわれ自治体とひざを交えて、現地に来て意見を交換して住民の意見を吸収してこういう立法をやったという事実は何もないわけです。まさに天下り的な、官僚的な、よらしむべし、知らしむべからずという態度でおやりになっているわけです。こういういわば生活ダイヤ国民生活の中に組み込まれておるダイヤはそういう死に方をさせるわけにはまいらぬという形になるわけです。これが四番目です。  それから最後に、ローカル線の切り捨てと教育の問題についてひとつぜひお知りいただきたいのは、私の市郡十六万のところですが、県立の保育短大がございます。ところが、御存じのように、最近は国鉄がどんどん列車を間引いていくわけです。その保育短大というのは県下各地からやってくるわけですが、授業が八時とか九時にはできないのです。国鉄がたまにしか伊田という駅に来ないわけです。九時四十分からです。そして、授業は四時に終わってしまうのです。クラブ活動も何もできないです。教育が成り立たないわけです。  それからもう一つ、もし今度ローカル線で一日一キロ当たり二千人だと、これで、私の市に六つの線があるのですが、二つがまずだめになります。いわば大阪冬の陣です。それから今度は一日一キロ当たり四千人になりますと、あと四つあって、これが全部夏の陣になるわけです。そうしますと、私の地域には国鉄一つもなくなる。そうしますと、十六万の市郡ですが、高等学校が六つあるのです。それは東の方に二つ、それから南の方に一つ、中央部の東と西に一つずつ、中央に一つと、六つあるのです。そこに通学する人は全部国鉄を利用している。高校生は御存じのように十八歳以下ですから、自動車の運転免許は取れません。いわば交通弱者です。こういう交通弱者が利用をしておるものを、単に経済合理主義で切っていくという血も涙もない政策、しかも幹線だけは損であろうと何であろうとやるというならば、田中角榮先生じゃないけれども、いままでの日本経済というのは大企業と大都市が支配をした、これからの日本列島というものは太陽と水と人間が豊かになるものにしなければならぬと日本列島の改造論にお書きになっているのですけれども、まあ改造論少し間違ったところはありましたけれども、根本精神はそうおっしゃっている。したがって、私は、そういう点では一歩下がって、人間が主体ですから、そういう教育の点を考えなければいけない。国鉄にそういう考えは全然ない。  こういう点で、私は、本特別措置法案については、一地方自治体の市長としては納得ができませんということでございます。  以上でございます。(拍手)
  6. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、土井公述人にお願いいたします。
  7. 土井厚

    土井公述人 私は、本法案について全面的に賛成の立場で、以下公述するものでございます。  第一に、国鉄経営再建の必要性でございます。このところ年々八千億円から九千億円にも及ぶ巨額な赤字を発生している国鉄財政の現状にかんがみまして、国民の間には、いわゆる三K赤字の最たるものといたしまして、国鉄再建問題に深い関心が持たれるに至っております。国鉄再建につきましては、すでに数次にわたります再建計画がございましたが、それらがいずれも中途で打ち切られ、成功を見なかったことは御承知のとおりでございます。この結果、昭和五十四年度末で累積赤字は六兆円にも達し、このまま推移するとするならば、将来どうにもならない巨額な国民負担を次の世代にまで残すことになりかねない事態となっております。  一方、国鉄のわが国交通体系の中で果たす役割り考えてみますると、近年、航空機、マイ・カー、トラック等国鉄以外の他の交通機関が急速に発達してまいりまして、輸送市場に占めております国鉄のシェアは低下してきております。しかし、鉄道の特性が最も発揮されます分野、すなわち都市間旅客輸送大都市圏旅客輸送それから幹線における大量定型貨物輸送におきましては、国鉄基幹的交通機関として依然として大きな役割りを果たし、将来においても強い輸送需要が見込まれております。したがいまして、これらの分野につきましては、今後ともわが国の基幹的輸送機関として安定した良質な輸送サービスを提供することが国鉄に課せられた使命であると考えられます。このためには、国鉄経営再建、すなわち収支均衡を回復することが前提条件でございます。今回の法案審議を通じまして再建方向づけが明確になり、一日も早く新しい国鉄再建計画が軌道に乗ることを私は期待する次第でございます。  次に、再建対策について述べさせていただきます。私ども民間で事業の経営に当たっている者といたしましては、経営上の赤字が予測されます場合には、企業の存続をかけまして、全社一丸となって徹底した減量経営、生産性の向上を達成する以外に進むべき道はないのでございます。従来考えられてきた国鉄再建計画は、御承知のように、国鉄自身企業努力、国の援助、利用者の負担すなわち運賃改定、こういう三本柱で収支均衡を図るとされてまいっております。しかしながら、前にも触れましたように、数次にわたる再建計画が中途で挫折したその原因考えてみますると、私は、輸送量や経費の見通しの甘さもございましたが、再建の三本柱の相互関係が余りにも不明確であったと思わざるを得ないわけでございます。  申すまでもなく、国の財政援助は逐年手厚いものとなってきております。国鉄自身経営努力もそれなりの実績が上がっておりますし、また評価できるものでございます。しかしながら、現実の姿を見てまいりますると、これに運賃改定が加わりまして、その年度年度の予算編成の中でいわゆる国の財政との間で綱引き状態となりまして、結果的にはその年々の予算のつじつまを合わせるのが精いっぱいだという感がいたします。  さらに、国鉄が一般の企業と異なっているのは、一方では国鉄の持つ公共性という見地から種々の制約がございまして、国鉄企業努力といっても、一体どこまでをカバーすればいいのかという点が不明確なまま再建が叫ばれてまいりました。また、運賃改定は、従来三本柱の中でやや高いウエートがかかった感がございました。昭和五十一年の五〇%という大幅な改定以来、いわゆる国鉄離れの現象が顕著になりまして、他の交通機関との厳しい競争のもとでは、今後大幅な運賃改定による収支の改善を期待するのは困難な状況に立ち至っていると考えられます。  このような複雑な状況のもとでは、適確な再建の処方せんを見出すことは簡単なことではございません。ただ言えることは、やはり国鉄自身企業努力と国の行政、財政上の支援を大きな柱とせざるを得ないこと、そして、両者の役割りを明確に定めておく必要があるということでございます。  このように考えてまいりますると、昨年の七月に国鉄が策定いたしまして政府に提出した再建基本構想案におきましては、まさに国鉄の抱える問題点を浮き彫りにいたしまして、まず再建のために一番重要と考えられる経営重点化、職員数三十五万人体制への移行という国鉄自身経営努力目標を前面に打ち出し、なお国鉄努力のみではいかんともしがたい構造的問題等の事項について国の援助を要望したものでございます。国の苦しい財政状況のもとで、赤字救済のため国鉄への援助、助成の拡大ということは、税金をさらにつぎ込むことでございまして、国民のコンセンサスを得る必要がございます。それには、まず何よりも国鉄自身の徹底した企業努力によりまして収入の増加、経費の節減を図ることが大前提であると存じます。しかも、この中で、自立経営の分野を明確にいたしまして、伸ばすべきものと縮小すべきものを明らかにした点はまさに画期的なものと言えまして、従来の再建計画と違った新しい再建の構想として、私は全面的に賛意を表するものでございます。幸いに政府においてもこの考えをほぼ認められ、昨年末の閣議了解となりました。これに基づきまして、所要の法的措置が今回の法案に盛り込まれているものと理解しております。  この法案では、再建のため国鉄と国の果たす役割りが明文化されており、必要な措置事項が細部にわたって法律の裏づけがなされている、この点、政府国鉄再建に取り組む熱意に私はまことに心強いものを感ずるものでございます。国鉄再建は、前にも申しましたように、国民にとって緊急を要する課題でありまして、一日も早く国鉄政府が一体となって新しい再建のスタートを切るべきでございまして、この法案が速やかに可決され、実施されることを期待するものでございます。特に、地方交通線対策につきましては、国鉄再建上ぜひとも必要な対策でございまして、国として法律の裏づけをもって対策をとられる点につきましては高く評価するものでございますが、地域と十分な協議がなされまして、円滑に推進されることを願っております。  最後に私が特に申し上げたいことは、この法案成立いたしまして実施された暁には、第一の当事者でございます国鉄としては、さらに労使協力を進められ、再建基本構想案に掲げた各般の企業努力を不退転の決意を持ってやっていただきたいということでございます。中でも、人件費負担の低減に着目した職員三十五万人体制の実現のため、従来はややもすればちゅうちょの見られた減量経営のための施策は、これに国鉄再建の成否がかかっていることを御認識になって、勇気を持って実行する必要があると考えております。政府におかれては、閣議了解及びこの法律に基づきまして、国鉄経営努力の成果を支援するために国のとるべき施策を着実に実行していただきたい。特に、法案の第三条に規定されておりますわが国の交通体系におきます基幹的輸送機関としての国鉄の機能を十二分に発揮できるよう、各般の行政上の措置がとられることを希望しておきます。この場合、かっての国の総合交通政策といたしまして、一般の経済活動同様、交通市場においては、各種交通機関の競争と利用者の自由な選択によりそれぞれの分担関係が決まるという考えが述べられておりますが、その後の省エネルギー、省資源の重要性という事態を御賢察の上、限られた資源や設備を最も有効に活用する見地から、抜本的な見直しをしていただきたい、かように考えておる次第でございます。  以上をもちまして、公述を終わらせていただきます。(拍手)
  8. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、武田公述人にお願いいたします。
  9. 武田吉造

    武田公述人 私は、鳥取県の若桜の町長の武田でございます。国鉄若桜線の継続運行対策協議会の会長もいたしております。  この若桜線の対策協議会は、鳥取県選出の国会議員の先生に全部御参加をいただき、また県議会議員の御参加を得まして、若桜線の継続運行を関係者の皆さんとぜひとも確保いたしたいという立場でつくっておるものでございます。鳥取市を初め、沿線にございます郡家町、船岡町、八東町、そして若桜町、それぞれの市長、町長、議会議長さんをメンバーといたしまして構成をいたしておるところでございます。  この活動をまず最初に申し上げますと、去る五月十四日には、六千七百四十八名の住民の署名簿をもちまして請願書とともに衆議院、参議院に請願を提出をいたしてまいりました。また、八月三日には、鳥取県関係の国会議員の方々、それから県議会の議員の方々の御出席のもとに、関係住民約千名をもちまして国鉄若桜線の継続運行大会を開催いたしたところでございます。  私は、本日の公述人といたしまして、ローカル線を抱える田舎の町長の一人といたしまして、地域における実態を数点の立場からぜひとも皆さん方にお聞きいただきたいというふうに思います。  ところで、国鉄再建の対象となっております輸送密度二千人未満の路線、いわゆる赤字ローカル線は、大体全国で九十路線というふうに言われておりまして、これがバス転換への候補線と言われておるようでございます。  国鉄昭和五十三年度の収支は、御承知のように、八千七百億円の赤字。その中で、申し上げました対象となっております路線の分は八百五十億円でございます。また、昭和五十四年度の決算監査報告によりますと、八千二百億円の経営赤字の中で対象路線の分は八百億円と聞いております。これは、考えてみますと、赤字総額に対する十分の一以下でございます。  私は、国鉄経営内容につまびらかでございませんが、総合的な経営体制づくり、あるいは国鉄本来の使命、役割り考えますと、ローカル線問題は、部分的な視野の中で、国鉄再建という大義名分のもとに、過疎地域、辺地、山村の将来を考えずに、ただ弱者へのしわ寄せ以外の何物でもないのではなかろうかというふうに思っているところでございます。一方においては、多額の経費によります投資で数年後完成運行を予定されております新幹線は、すでに相当額の赤字がいまから考えられ、また、新幹線の整備計画に掲げられております路線につきましても大幅な経営赤字になることを仄聞いたしておるところでございます。  このようなことを耳にしますときに、国鉄再建、とりわけ赤字ローカル線に対する基本的な取り組み姿勢に、われわれ過疎地域、辺地におります者といたしましてはいささか疑問を抱くものでございます。  以下、私は国鉄若桜線の実態を申し上げさせていただきたいと思います。  国鉄若桜線は鳥取市と若桜町を結ぶ二十九・五キロの路線でございますが、これは先輩が大変に長い間苦労をいたしまして昭和五年に開通をし、本年はちょうど五十年を迎える年でございます。その間、鳥取市を初めといたしまして沿線の町村は、国鉄若桜線の恩恵によって大変にあらゆる分野で発展向上を遂げてきております。しかしながら、国の経済成長に伴いまして過疎化の現象が激しく、若桜線におきましては沿線に二つの過疎の町村を抱えております。若桜町は特に過疎化の現象が激しく、昭和三十五年度人口九千六百人から五十年度には七千人弱に減少し、やっと近年に至りまして減少鈍化の兆しがあらわれたところでございます。御承知のように、過疎対策の基本は何といいましても第一に交通機関の整備拡充であろうかと思うわけでございます。特に、国鉄若桜線は鳥取市から若桜町を結ぶ大動脈でございまして、地域発展の動脈として過疎地域において重大な役目を果たすと同時に、若桜線沿線の町村といたしましては、若桜線を考えない地域の総合開発計画は無に等しいと言っても過言ではなかろうというふうに思っておるところでございます。  一つ、教育関係の立場から実態を申し上げさせていただきますと、近年の高等学校進学率は大変に高くなりました。鳥取県でも九七%という高い率になっております。若桜線の沿線では、その中で約千三百人が郡家町にございます県立八頭高等学校へ、あるいは鳥取市にございます高等学校へ若桜線を利用して通学をいたしております。これも国鉄の使命の一つでございます正確な運行時間、それから現時点における通学費の軽微のたまものでございまして、低所得の過疎地域における寄与は大変に大きいものがあると思っております。また、八東町あるいは船岡町におきましては、中学校生徒のうち約半数が若桜線を利用して中学校に通学いたしております。そのために学校の始業時間が列車の到着時間に合わせて決められ、時間割もそれによって組まれているというのが実情でございまして、現在の高等学校、中学校を考える場合に、この若桜線なくして学校の時間が決められない状態でございます。  また、通学費の点でございますが、申し上げてみますと、通学の場合、一カ月の定期が若桜町から郡家町まで国鉄を利用いたしますと三千三百三十円でございます。バスを利用いたしますと一万八十円。通勤の場合でございますと、郡家で六千三百円、バスでございますと一万一千七百六十円、約一・七倍の数字になるわけでございます。特に通学の場合は三倍の高きに上るわけでございます。  また、次に若桜線沿線の立地条件の立場から申し上げさせていただきますと、山陰地方は、御承知のように、日本海と中国山脈の間にございまして、山陰特有の気象条件のもとに、降雨量、降雪量ともに大変に多い地域でございます。特に冬季の十二月から三月の閥は、降雪が続き、平たん地でも二メートル弱の深い雪に閉ざされます。ために、道路交通に多大の障害を与え、また例年交通事故の発生が多く、そのために通勤、通学は国鉄若桜線のみに依存しなければならないのが現実でございます。  また、通勤、通学の現状を申し上げてみますと、若桜発午前六時五十分、同じく八時五分発の利用状況を申し上げますと、定員七百七十九名に対しまして乗客は九百十六名、一一八%の利用でございます。また、鳥取発午前七時三分は、定員二百七十五名に対しまして乗客は三百五十一名、一八%でございます。なお、午後の四時十分、五時四十二分は、定員五百三十四名に対しまして六百五十八人で、実に一三%の高きに上っているのが現在の状況でございます。  近年、御承知のように、国道の整備によりまして乗用車が大変にふえ、自家用車によります通勤者が多くなってまいりました。これは若桜線沿線でも例外ではございません。しかしながら、朝夕の混雑時におきましては、若桜-鳥取間三十一キロでございますが、このうち郡家-鳥取間十キロにおきましては特に混雑が激しく、汽車にて約十五分の距離でございますが、それに要する時間が四十分から五十分を要しております。それがために、途中から汽車を利用する通勤者がだんだんとふえてまいっております。この傾向は、燃料費の高騰とともにますます厳しくなることが考えられるわけでございます。  以上のような若桜線の状況から、われわれ沿線の者といたしましては、何とか利用もふやしていきたいということを絶えず考えておるところでございます。このたびの国鉄法案につきましては、一キロ当たり二千人という一つの線から考えられておるようでございますが、若桜線は千五百七十名で表に載っております。何とか二千名以上の利用、と同時に国鉄若桜線に対する認識を深めていきたいということから、ささいなことではございますが、特に若桜町といたしましては、国鉄利用の対策といたしまして、駅の構内の敷地約千平方メートルを借り入れまして、国鉄利用者の自転車の置き場、約百三十台分でございます、また、遠距離から駅までの自動車利用に対する駐車場、約六十台分でございます、これを約九百万円の工事費と年間六十万円にわたる賃借料をお払いいたしまして、整備をいたしておるところでございます。  なお、いわゆる隗より始めろという言葉もございますが、私の町におきましては、職員の出張につきましては、回数券を利用いたしまして、すべて国鉄を利用しての出張ということを実施いたしているところでございます。  次に、利用者の立場から、国鉄利用に当たっての意見を少し申し上げてみたいと思います。  その一つは、若桜線に関してはスピードのアップでございます。実情をお話し申し上げますと、山間地であるために、カーブとかあるいは勾配の関係でむずかしい事柄もあろうかと思いますが、二十九・五キロを普通で五十七分、遅いものでございますと七十五分といった時間を要しております。  いま一つの点は、列車ダイヤの編成でございます。年々近郊に勤務する人も多くなりました。また、勤務場所が遠くなり、あるいは週休二日制等のことも出てまいりまして、列車を利用する状況に変化が参っております。  したがいまして、利用者の立場から申し上げてみますと、いま申し上げました列車ダイヤをいま少し考えていただくことが利用向上につながると思うわけでございます。スピードのアップ、ダイヤの組みかえ、いわゆる乗りやすい、利用しやすい国鉄考えていただくことがまずは急務ではなかろうかと思っておるところでございます。  最後に、国有鉄道法の第一条を読んでみますと、「国が国有鉄道事業特別会計をもって経営している鉄道事業その他一切の事業を経営し、能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的として、ここに日本国有鉄道を設立する。」と書いてございます。「公共の福祉を増進することを目的として、ここに日本国有鉄道を設立する。」と書いてございます。われわれ辺地あるいは過疎地におきましても、公共の福祉増進を願うものであります。  以上の立場から、私は、この法案に反対をいたしまして、私の公述を終わらしていただきます。(拍手)
  10. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、田崎公述人にお願いいたします。
  11. 田崎乃武雄

    田崎公述人 国鉄財政を立て直すための日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案がいま臨時国会で御審議されております。私は、国民の健全な観光旅行の育成確保を任務といたしております立場の一員といたしまして、今回の法案はぜひ成立させていただきたいとする立場から、意見を申し述べたいと思います。  本法案を是とする理由は次のとおりであります。  まず第一の理由は、わが国が近い将来直面するであろうエネルギー問題と鉄道の有用性を考えてであります。いま、世界最大の石油産地中東で、問題のイラン・イラク戦争が起きております。そのため、イラン、イラクが自由世界に供給してまいりました原油は、現在全面ストップの状態にございます。その量は、自由世界全消費量の一五%に当たると言われております。この二、三日、アメリカに新しい動きが出てきたようでございますけれども、もしもホルムズ海峡が通航不可能というような事態に立ち至りますならば、サウジアラビアやクウェートの油も積み出しが不可能となりまして、全世界の消費量の四割はとまることになるのだそうであります。幸か不幸か、世界は現在いずれも低成長下にあるために、たちまち世界が石油ショックに陥るということがないだけでありまして、備蓄量が百日と少しのわが国といたしましては、実は板子一枚下は地獄と言ってもいいのではないかと思います。  仮にいまそういう戦争がないといたしましても、あと三十年も掘り続ければいずれゼロになることが必定の石油は、航空機がこれを使えば、全く同じ人数、同じ距離を輸送いたしますのに鉄道の七倍、自家用車がこれを使いますならば同じく八倍も消費するというこの恐ろしい輸送方法を、石油に全く弱いわが国が本当にいつまで続けていく気でありましょうか。  私は代替エネルギーのことにもう一つ強くありませんけれども、最近、京都市が通産省の委嘱を受けて電気バスの実用テストをしたのだそうでございますけれども、その結果は、エネルギー関係費が普通バスの七倍かかったと申します。三年後に実用化が公表されましたアメリカの電気自動車も、積載し得る最大の五百キロのバッテリーを搭載しても、そのエネルギーはガソリン五リットル分の能力にしか当たらないとか、日われております。まして廃棄物で問題の原子力その他の実用化などは、二十一世紀に入ってからのことだと聞いております。  現在考えられる代替方式も、このようにコストが非常に高くつくか重量がかさんで非能率的となれば一恐らく航空機も車もそれらを使いこなせないのは自明の理だと思いますけれども、仮に使えるといたしましても、もうすでに空港道路の新設、拡張そのものが住民意識の高揚でもうどうにもならないものであることは、だれもが認めるところであります。わが国の交通政策は、いま本当にまじめに、しかも早急に今後の進むべき道を考え直さなければならない時期に来ていると思うのであります。  ところで、先行きの情勢に敏感な民間企業は現在どう考えているかと申しますと、これは貨物の例でございますけれども、これからの軽油不安に備えましてトラックから他に転換しようとするもの五二%、うち八〇%はすでにその手配を終えているそうでございまして、これから海運へというものが二〇%、海運と鉄道両方使ってというものが三八%、そして残りの四二%はいずれもこれからは鉄道を使って輸送したいというふうに答えております。  わが国には、過去約百年、あまたの犠牲と税金をかけましたレールのネットワーク、これは私どもの父祖の残してくれた遺産とも言えると思いますけれども、きわめて効率のよい輸送機関国鉄がございます。いまこそこれを見直しまして、起死回生のための再建法というカンフル注射を本当に打たなければ、今年度中にも国鉄は企業としての機能を失いまして、土台から崩れ始めるであろうと思います。そんな事態を何とか回避しまして食いとめるのは、現在これを利用いたしております私どもの義務、責任だと思うのであります。私は決して滅び行くものへの郷愁でそんなことを考えているのではございません。国民に本当に有用なものを国家的見地からいま救わなければ、手おくれとなって、この国鉄が二度と機能しなくなると思うのであります。  次に、第二の理由は、いま御審議が進められております本法案は、過去のしがらみと言われます過去債務のたな上げを初めといたしまして、再建に必要な各種の措置を総合的に織り込まれた新しい構想に基づく法案でございます。これまでも問題とされてまいりました地方交通線については、単なる足切りではなくてフレキシブルな対応策が盛り込まれております点、私は評価できると思うからであります。  従来、国鉄再建は、国鉄自身企業努力、国の行政と財政の援助、利用者にも負担してもらう運賃値上げ、この三本の柱で収支均衡を図ろうというものでありました。しかしながら、この方法はこの数年で惨たんたる結果を招来しております。世に言うところの一物一価の法則どころか、国鉄運賃は並行私鉄の倍か倍以上というケースが全国各地に出現いたしまして、私鉄やバスがそばにあるならば国鉄を使うのは非常識というのがいまや常識でございます。グリーン車ならば片道で、普通車を使っても日当その他の付帯経費を合わせて考えますならば、飛行機の方が安くつくというような旅客完全排除型の運賃体系ができ上がっております。私どもが日ごろ問題としております観光客は、汽車賃が高くて足が遠くへ伸ばせません。旅館やホテルの方は客室が一向に埋まらないので、宿泊料金も下げるわけにはいきません。かくしまして、国鉄に頼っておりましたリゾートなどは、まことに救いがたいどろ沼に陥っております。街の灯は細るばかりでございます。私どもといたしましても、業界、会員ともどもいろいろな方法を考えますけれども、出口のないトンネルの中でみんなで右往左往するばかりというのがこの数年の状況でございます。  それが今回の新しい構想では、収支の改善は国鉄自身企業努力と行政、財政の支援というふうに明確に打ち出されておりまして、都市間と大都市圏旅客輸送、そして大量定型貨物輸送は、ストレートに鉄道の持つ特性が生かされますところから、これは国鉄の責任で取り組む。一方、昭和六十年度までに合理化を図って、要員は三十五万人体制に移行する。逆に大量一括輸送になじまない、つまり鉄道鉄道特性を発揮できない分野につきましては、省エネルギー及び地域住民擁護の観点から有効適切な輸送体系の形成を図りまして、あわせて公的助成の道を開いてその解決を図るというものでありますので、まさにこれは先ほど私が申し上げました全世界がいま真剣に取り組まなければならない省資源、省エネルギーという大命題に合致する時宜を得た施策、構想だと思うからであります。  最後に、本法案に賛成いたしますと同時に、この際、国及び国鉄に対しましていささか望みたいことがございます。  その一つは、最近の新開業区間は一応別といたしましても、そもそも国鉄路線のほとんどは、私鉄と違いまして、まず採算を考えて建設したものではなかったはずだと思います。ましてや、農道の奥の方まで舗装されまして、大都市以外では一家に一台以上の車があるというような社会情勢になれば、計算上赤字線が出るのは当然でありまして、それでも国民が、地方地方で申しますならば市町村民ですが、それらの人々が生活路線としてどうしても必要だと判断されるならば、それはまさに橋や道路と同じでございまして、住民サービスという行政の問題として、もっと早くからその維持保全のために措置を講ずべきであったろうと思いますし、これを機会に、今後はもっと声を大にして関係諸機関、そして一般国民に言うべきことは言っていただきまして、本当に幅の広いコンセンサスを常に培っておいてほしいと思います。  また一方、国鉄御当局には、かくもこの問題がもめるその一因は、国鉄に対する不信感が利用者、国民に伏在するからでありまして、本来ならばこの大事なときに利用者である国民が真の味方として後ろについてくれなければならないはずでありますのに、その利用者をオルグする努力がなされていないと申し上げたいと思います。  最近連続して発生いたします各種の運転事故等も、平素運転台でだらしなく漫画を読んでいるような運転士を目撃している利用者からするならば、新聞が書かなくても、同情の余地ないたるみ事故と決めるのは当然でございますし、雲助運転手のように仏頂面でいやいや切符をよこす駅員には、だから国鉄赤字になるのだよといった全く筋違いの批判が出るのも、お金を払う立場からするとごく自然の感情なのであります。  将来に向けて明るい光が望み得ます本法案がぜひ成立することをお願いしながら、これを機会に国鉄経営施策の柱の一つに、国鉄及び職員のイメージアップ、これを追加していただきたいと念じまして、私の公述を終わりたいと思います。(拍手)
  12. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、工藤公述人にお願いいたします。
  13. 工藤芳郎

    工藤公述人 私は、利用者の立場から本法案に反対の意見を述べるものでありますが、同時に、国鉄はぜひとも経営面だけではなくて国民本位の国鉄として再建をしていただきたい、こういう願いを持つものでございます。  今回の経営再建促進特別措置法の骨子は、国鉄職員の削減等、いわゆる三十五万人体制、ローカル線の問題、わけても百六十五線、甲八十八線の廃止、廃止以外のローカル線の割り増し運賃制の導入、この間における毎年一定率の運賃改定の繰り返し、こういうことによって、昭和六十年をめどに一般純損益で収支均衡を達成するという内容を持っておるものでございますが、私は以下の理由によって反対をいたします。  第一は、本法案骨子を見る限り、再建計画は、いわゆる収支均衡自体に目的が置かれておって、国鉄の果たす使命、つまり国鉄を利用する人々の立場が著しく軽視されていはしないかという点が第一点でございます。  第二番目は、仮に本法案どおり今国会で原案が可決されたといたしましても、計画内容の具体的実施がきわめて困難ではないだろうか、つまり収支均衡を達成することが非常にむずかしいのではないかと見られるわけでございます。これは他の公述人の方からも言われましたけれども、過去の事例がら言いますと、昭和四十四年以降、過去四回の再建計画が出されております。その中で、ほぼ実施できたのは運賃値上げだけではなかっただろうかというふうに思っております。  また、今回の計画は六十年までをめどにしておるわけでありますが、六十年以降どうなるのか、その辺も大変心配になるところでございまして、なぜ六十年度というところに切って計画を出されたのかということも非常に疑問でございます。原案にもございますが、現在建設中の東北、上越新幹線等にかかわる新たな赤字発生は必至でございますが、これなども、より長期的に国鉄再建するよう見る必要があるのではないかと思うわけでございます。  そこで、この再建をするについて一番大事なことは何かということでありますが、私は二つの点を基本的な問題として指摘をしたいと思うのです。  一つは、国鉄の公共性を重視する必要があると思います。全国で二万一千キロの営業路線を持ち、年間七十二億人の旅客、一億四千万トンの貨物を輸送する、陸上交通機関としては最大かつ安全性、効率性の高い公共輸送機関であることは言うまでもないところでございまして、法的な根拠といたしましても、「能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的として」というのが日鉄法の一条にあるわけでございます。つまり、公共性のために、私企業のような採算性を犠牲にしても、運賃についても、公正妥当、賃金及び物価の安定に寄与するとして、運賃をできるだけ低く抑えて国民生活を守る、国の経済、文化の発展に寄与するという特性が本来国鉄には与えられておるわけでありますから、本法案は一貫してこの日鉄法の第一条の精神に基づいて貫かれておらなければならないと思うわけでございます。  第二番目は、国鉄がこういった経営破綻ともいうべき事態になったことについての原因を、改めてわれわれ国民はつかむ必要があると思うのです。この辺の原因についての見解が違いますと、対症療法が異なってくるのではないかと思うわけであります。私どもは消費者団体といたしまして、ことしの十一月六日、七日に全国大会を開きますが、毎年こういった議論を国民のサイドからしておるわけでございます。  一つは、国鉄がこういうような事態になった原因の第一は、国鉄というのは、御存じのように、昭和二十四年に戦前の鉄道省から新しい公社として発足をしたわけでありますが、当時の資本金は八十九億であります。特殊の法人としておつくりになった政府は、いわば生みの親でありますけれども、必ずしも育ての親として、特に育ち盛りの時期に、昭和三十年代の後半あたりに、一番育ち盛りでありますから栄養も要る時期でありますから、この時期にもっと政府からの出資を追加するといったような措置がとられるべきではなかっただろうか、昭和四十五年に至るまで、国鉄は創立  以来二十年間政府からの追加出資は行われておりません、民間企業でありますと、当然二十年間も増資をしないという企業はないわけでありますから、こういった点は国鉄経営をしていく場合に非常に困難ではなかっただろうか。同時に、そういう育ち盛りの時期に、御存じのように、高度経済成長政策がとられまして、たとえば東京-大阪間に新幹線が建設をされる。したがいまして、偶然かもしれませんが、昭和三十九年からは償却後の赤字が発生をするわけでありまして、それまで黒字経営だった国鉄が単年度三百億の赤字を出す。これがきっかけとなりまして、以後雪だるま式に赤字がふえていくように思うわけでございます。  それから第二番目の原因は、自動車とか飛行機中心の交通政策がこういった時期から政府によってとられていく。わが国のエネルギー政策石炭から石油に移行していきますが、そういう状況の中で自動車産業や航空機産業に重点を置いた交通政策が進められてくる。逆に言えば、国鉄そのものに対する重点策が行われないというような形で、これまた国鉄は大変ひどい目に遭うわけでございます。最近の五年間を見ましても、高速道路に対しては十九兆五千億の予算がついておりますが、国鉄に対する助成は、多くなったとはいえ、道路予算に比べますと非常に微々たるものであると言わなければなりません。こういったことが国鉄経営を悪化させた基本的な原因であろう。運賃の値上げが時宜にかなわなかったというような御議論もよく聞くところでありますが、私はかように考えるわけでございます。  それでは、国鉄をどのようにして再建していくのかということでありますが、国民国鉄期待する向きは本当に大きいわけでありますので、ぜひとも国鉄政府の責任において再建をしていただきたいと私は思うわけであります。その一つは、競争関係にある交通機関に優位するような施策を積極的に確立させることが重要であると思います。たとえばモータリゼーションの無秩序な拡張に一定の歯どめをかけるとか、省資源、省エネルギーの交通機関として国鉄の特性苗周知宣伝するということは、特殊法人として国鉄は一応独立はしておりますが、政府としてもこれはより積極的に考える必要があるのではないかと思うわけであります。  将来を展望してみますと、原油価格は今日三十ドルと言われておりますが、最近の経済雑誌などによりますと、八五年には六十ドル、九〇年には九十ドル原油が出てくる。こういったような事態を迎えますと、自動車産業そのものは期待することができません。そういう事態の中で、国鉄はいまこの法案にありますような形で地方ローカル線などを一定限度削っていきますと、将来禍根を残すようなことになりはしないかと憂えるものでございます。  また、国鉄再建するために人件費の問題が論じられておりますが、特に戦中戦後、国策上採用された職員の退職金、共済金等につきましては、やはり政府が責任を持つべきではないかと思います。  もう一つは、運賃値上げの問題でありますが、他の競争交通機関に比較いたしますと、特に大都市圏では国鉄が非常に高くなっておることは御存じのとおりでございます。たとえば大都市圏では、大手私鉄と比べますと、普通運賃では国鉄が二倍、通学定期では三倍というふうになっておるわけでありますから、これらの運賃を今後とも上げるということになりますと、一層競争関係に打ちかつことができないわけでありますから、これはやはり思いとどまるべきではないかと思います。  次に、地方ローカル線の廃止の問題でありますが、これは本法案もかなり厳重な手だては講じておると思いますが、基本的には関係住民との十分なコンセンサスが必要であります。  また、廃止外のローカル線についての割り増し運賃の問題でありますが、これは現在、国鉄運賃決定原則であります原価補償主義が今後どうなっていくのかということが問題になると思います。つまり、路線別収支をとっていきますと、いわゆる個別原価主義ということになるわけだ思いますが、そういたしますと、黒字の路線についてはこれを値下げしなければならぬ、論理上そうなるわけでありますが、その辺は政府はどのようにされるのか。この辺は運賃体系上の問題としてわれわれは非常に不安に思っておりますし、本法案を見る限りではそれがはっきりしないということでございます。  次は、先ほども新幹線の例をとりましたけれども、今回の法案こ一貫しているものは、やはり経営の面からの採算性を重視した考え方でございますけれども、現状については採算性を重視する、しかし一方では設備投資などについては必ずしも採算性を重視していない、逆に言えば採算性を無視してでも新線をつくっていくというふうに考えます。これは国鉄に関連する企業との非常に複雑な関係等もございますでしょうが、私たちは、この点では矛盾があるのじゃないか、現状では採算性を重視する、将来については採算性をある程度軽視しても設備投資をやっていく、この点がなかなか納得ができない、こういうふうに思うわけでございます。  以上、基本的な観点から本法案について反対をするということで、意見を述べさせていただきました。(拍手)
  14. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  以上をもちまして、公述人各位の御意見の開陳は終わりました。  午後零時三十分から公聴会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後零時三十三分開議
  15. 小此木彦三郎

    小此木委員長 休憩前に引き続き公聴会を開きます。  これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。  なお、質疑時間は、理事会の申し合わせにより、お一人答弁も含めて二十分以内となっておりますので、よろしくお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  16. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 きょうは公述人皆さん方、遠いところから御苦労さまでございます。午前中貴重な御意見を拝聴いたしまして、二、三、御質問をしたいと思っております。  まず、滝井公述人武田公述人共通の問題でございますので、質問をさせていただきます。  御承知のように、国鉄輸送が戦前から比べますとうんと減ってまいったわけでございます。これは日本の産業構造が変わってきましたし、日本人の所得がふえたということで、時間価値というのが非常に貴重になってまいりました。いままで汽車で行った人が自動車で行く、あるいはまた飛行機で行く、こういうことになるわけでございまして、交通機関の輪廻と申しますか、だんだんと歴史的な変遷をたどってきたわけで、ある程度やむを得ない点もございます。しかし、いろいろとお話を承っておりますと、企業努力が悪いとか、国の助成が足りないとか、あるいはまた運賃の値上げの時期が遅過ぎたとか、いろんな問題があるわけでございますが、しかしながら、いまの時点に立ちまして国鉄財政考えますと、御存じのように、毎年一兆円というような赤字を出しておる。これをどうしたらいいか。私どもだけでなくて国民みんなで考えて、国鉄輸送機関の中におけるシェアは非常に衰えてまいりました。旅客輸送で二五%、貨物輸送で一〇%、そういったようなシェアになってまいりましたけれども、やはりこれから国鉄の前途、国鉄を何とかして再建しなければならぬ、こういうふうに思っているわけでございまして、今回の法律案を出したわけでございます。  そのうちの第一点、財政再建。いままでの相当赤字がございます。そしてまた、いまのような状態を続けますと、毎年毎年巨額な赤字になる。この赤字をどうしたらいいか。  滝井公述人のお話によりますと、今度の計画でも多分再建はできないのじゃないかと非常に批判的なお話でございました。そういった批判は別にいたしまして、それならひとつ財政再建をどうしたらいいか、こういう点につきましてお伺いをいたしたい。  また、武田公述人に対しましては、これは地方の体験に基づく非常に貴重な御意見でございまして感謝いたしておりますが、もし、どういうことをしてくれという全体の問題としての御意見がございましたら、再建に対してどうしたらいいという点をお聞かせ願いたいと思います。  どうぞよろしくお願いいたします。
  17. 滝井義高

    滝井公述人 宮崎先生にお答えいたします。  私たちの時間的な価値観というのが非常に高まりまして、経済よりかむしろ時間が大事だということで、御指摘のように、自動車から航空機へといったわけですけれども、国といたしましては、自動車にしても航空機にしても船にしても鉄道にしても、総合的な政策をこれは当然とらなければならぬわけです。ところが、その総合的政策をとっていないということが一つ大きな問題であろうと思います。それからもう一つは、燃料の面から私たちは効率性をもう一遍、こういう客観的な石油情勢の逼迫の中で考えてみる必要がある。そういう燃料の面とそれから輸送機関の両面からもう一遍国鉄というものを大所高所に立って見直す必要があるというのが基本的な私の立場でございます。  ところが、今度のこの特別措置法というのは、いままで国鉄財政再建と言っておったのが、国鉄経営再建というようにいわばニュアンスが違ってきております。それだけに、国鉄もいろいろ考え直して、ある程度総合的に物を見なければならぬなという考えはあると思います。けれども、いま申しました二つの側面からもう一遍長期の展望に立って考えてみる必要があるであろう。  それからもう一つは、八十八とか九十の地方線を切ることに急でございます。最前も私御指摘を申しましたように、あの小委員会で、地方意見を十分間聞かなければいかぬ、それから国鉄の資料の公開、財政状況というものをこの際明らかにするということをきちっと最後のところにお書きになっておるわけです。そうしますと、これほど日本の地域社会に重大な影響を及ぼす法案をお出しになるのですから、国鉄は、たとえば私の住んでおります筑豊を一体――石炭を掘るときにはあれほど四通八達をした鉄道があるわけですが、石炭がなくなり、人口がだんだんいなくなりますと、利用者が少なくなるのは当然です。それならば筑豊に対して国鉄としてはどういうビジョンを持っているのか、そういう地域における国鉄のビジョンというものを提示して、こういうビジョンのもとにこういうローカル線合理化、切り捨てをやりますということを明らかにする必要があるわけです。そういうことがないわけです。したがって、幹線ばかりが目について、足手まといになる枝を切る。いかなる大河といえども、幾つかのせせらぎが集まって、そしてそれが大河になるわけで、新幹線とか大きな幹線だけが残って、枝葉を切ってしまえばやがて幹が枯れるというこの論理というものが忘れられておるわけです。  したがって、私、いま申しました二点から、もう一遍長期展望に立った見直しをやっていくということになれば地域の住民も恐らく協力するであろう、そういう協力の形をとらないと、みんなに知られ、みんなに親しまれ、みんなが使っておるこの国鉄再建はできない、そういう基本的な考え方でございます。
  18. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 総合的交通政策あるいは燃料問題あるいはまた地域開発の観点から長期的に見直せ、これは私は反対はいたしません。しかし、いまのこの差し迫った、こういったような、いま提言されたような問題はなかなかむずかしい問題で、ここ一年、一カ月、二カ月でできる問題ではございません。したがいまして、いま私が御質問申し上げておりますのは、財政をどうしたらいいのか。いまのような赤字でありますと、一兆円を出るわけでございます。御承知のように、国はいままでずっと三本柱の方策を立ててまいりました。運賃の値上げあるいは国鉄企業努力、国の助成、こういったことでやってまいりましたが、運賃の値上げは部分的にはあるいは可能かもしれませんが、全般的に申し上げますと、運賃値上げをすると需要が減るという段階でございますし、企業努力はもちろん三十五万人体制で国鉄にいろいろと努力していただかなければならないのですが、お話を伺いますと、そうしますととにかく国鉄財政再建のためには国が全部財政的にはめんどう見ろ、こういう結論になるのですか、その辺ひとつ来年度からの一兆円の赤字をどうしたら解消できるかという点をお聞かせ願いたいと思います。
  19. 滝井義高

    滝井公述人 私は、国鉄が他力依存の形をとる限りにおいては国鉄再建はできないと思っております。私たちの産炭地も非常に多くの国の助成を受けて現在生き続けておるわけですが、やはり今後十カ年間というのは、自立的な住民をつくり、みずからの力でみずからのふるさとを再建をしていくという、そういう自立性のないところに社会の発展はありませんから、国鉄も同じだと私は考えております。したがって、いままでの歴史的な過程をごらんいただきますと、今度これを決めなければ国鉄が致命的な打撃を受けて、国鉄が倒産して死んでしまうという情勢は何もないわけです。だから、私は、ここ一、二年じっくり長期的な観点からもう一遍原点に返ってやる必要がある。そういう形が行われていないのです。  とにかく日本交通政策について全般的な総合的な討議をいままでやられたことがあるかというと、調べてみると、そんなものはないわけです。だから、私は、そういう観点で、いま言った燃料政策も大きく変わろうとしておりますし、それからもう道路も大体いまの状態では行き詰まりだと思います。それから、自動車についてもやはり問題が非常にあると思っております。そうしますと、そういう乗り物の客観的な、対米関係その他から見ても非常に行き詰まりがきつつある、それから燃料も行き詰まりがきつつある、道路も問題が出てきておるということになれば、やはりそういう観点からもう一遍洗い直すという意味で、ここ二年ぐらいかけて総合的な討議をする。そして、その中で国鉄が自立的に立っていく。  御存じのように、今度のような形が出ましても、国鉄共済組合なんというものは他のどの共済組合に比べても、もはやどうにもならない状態です。たとえば現在でも国鉄の職員一人が多分〇・七四人ぐらいを賄う形になって、六十年になりますと恐らく一人が一・一か一四ぐらい、一以上賄うわけです。日本が老齢化社会になりましても、御存じのように、まだ七人か八人で一人賄う。これから十年ぐらいしても三人か四人で一人賄うという状態。ところが、国鉄は現実にそうではない。そういうことで、すでに五千六百億円とか六千億円の赤字がそれだけで出てくるわけです。、だから、それを国で全部見れるかというと、私は、いまのような国の財政で、十五兆も国債を出しているという段階で、簡単にいかないのじゃないか。そうすると、国はできるだけ見てもらうが、もう少し総合的な政策の中でそういう赤字をどう吸収するかということは検討してみる必要がある。  ただ、残念ながら、私たちがこの法案を、公述人として出るについていろいろと情報を集めようとしても情報がないわけです。たとえば政令案なんかというのも、本当に新聞で見るだけであって、この法律にはたくさんの政令が、大事なところは全部政令で決められてしまいます。そうしますと、その政令がどういう内容になるかによって違ってくる。たとえばラッシュ時に千人というのを八百か九百に下げると、三つか四つの線がすぐに生きてくるわけです。そういう政令案その他もわからないし、財政実態も十分資料がないということで、しにくいのですけれども、ただ勉強した限りにおいては、最前申しました国鉄と米の問題というのは、すればするほどむずかしい。、だから、もう一遍原点に返って、私はいまのような形をここ一、二年じっくりみんなでやる。そのときにわれわれ地方も加えていただいて、そして地方のビジョンをお互いが討議をしてコンセンサスができ、合意を得た上でやっていただく、こういう形にしていただきたいと思っているわけです。
  20. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 時間がございませんから、私の期待のできるような答弁ではないようでございますけれども、よくわかりました。  いま総合政策という問題が出てまいりましたので、先ほど計画交通とか交通計画というような言葉滝井公述人の口から出ました。御承知のように、私どもはいろいろな輸送機関国民が求める、つまり輸送需要に応じた輸送機関の整備をし、そしてまた廃止していく、これが交通機関に対する基本的な態度だと思っております。ですから、輸送需要のあるところは、これは新幹線でも港でもあるいは空港でもどんどん拡充しなければならぬ。輸送需要のないところはやはりだんだんと減らしていかなければならぬ。これが私は総合交通政策の基本だと思うのでございますが、滝井さんは交通というものを何か計画をしてそのとおりやらせる。たとえば自動車はもう余り乗っちゃいかぬ、これはそういう政策誘導はございます。御存じのように、ガソリン税もうんと高くしたり、重量税をやったりいまやっております。そういうような立場からお考えなのか、ちょっとその辺の御意見をお聞かせ願いたい。計画交通というような言葉がちょっと聞こえましたので、総合的な輸送計画という点について御意見を承りたいと思います。
  21. 滝井義高

    滝井公述人 経済計画的な形をやるという形になると、きわめて社会主義的なニュアンスが出てくるわけです。いま自由主義社会でございますから、したがって、交通需要が非常にふえてきたときに、それをそのまままさに自由に放置をするという形になりますと、現実のように国鉄がどんどんだめになってしまう。重要な国有の機関でございますので、したがって、ある程度そこに資本主義における経済計画と同じように交通計画というものを入れてみたらどうだろう。そうなりますと、たとえば道路というのは、御存じのように、税金をつぎ込んでつくっていくわけです。ところが、公害その他は何も責任は自動車はないわけです。ところが、国鉄御存じのように、国鉄財政の中からレールをつくっていくという、そういう競争状態というものが全く国鉄に不利な状態になっておるわけです。しかし、これは不利にならないような形で競争させるということは、ある程度計画経済でなくて、資本主義の中における計画でできるのではないか、そういう意味でございます。
  22. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 おっしゃるように、いわゆる交通機関のイコールフッティングという問題が数年前にございました。いま道路の建設費の中で、ほとんどガソリン税です。一般の税収から出ておりません。つまり受益者が負担いたしております。国鉄の方がむしろ国の税金を使っているわけでございますから、その点はよく御理解していただきたいと思います。  それから、時間がございませんから工藤公述人にお伺いいたしたいのですが、利用者の立場から本法案に反対ということでございますが、結局はどうしたら財政再建ができるかということについて、御意見がございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  23. 工藤芳郎

    工藤公述人 本法案が、従来の例からいって本当に再建をするという意気込みと可能性を持っておるのかどうかということで、私たちは疑問を持っているわけです。そのためには、国鉄がこういうふうな赤字になった原因に対して分析をしてみることが必要だということを先ほど申し上げたわけでございます。  現状の収支についてどうするかということでございますが、これは競争関係にある企業、たとえば大都市圏であれば私鉄、地方においては自動車といったものに国鉄が本当に競争に打ちかつようにしなければならぬ。一方は私的な企業でありまして、国鉄は公的な企業であります。一方は利潤を対象とするものであり、一方は利潤を対象としない企業でありますから、利潤を対象とするものとそうでないものとを競合させた場合には、利潤を追求するものが勝つことは現在の社会では当然だと思うのです。ですから、国鉄は基本的に採算性は大事にしなければならぬけれども、長い間の蓄積においてこうなった国鉄でありますから、急に現状において収支均衡がとれるとか、それから六十年と言いますけれども、六十年はあと五年でありますから、この段階で簡単に採算がとれるものではない。したがいまして、相当長期な計画において、国鉄経営収支が悪化した現状を顧みつつ、それに対して回復するような措置を幾つかの観点からとっていく必要があるのではないか、何か一つ二つの問題で抜本的に解決するものではないだろう、このように私は考えております。
  24. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 もう時間がございませんので、最後に一つだけ滝井武田公述人にお伺いしたい。  いま地方ローカル線の廃止が非常に問題になっておりまして、私どもも郷里の者から陳情を受けております。あるいは誤解があるのかもしれませんけれども、ある一定以下の非常に採算の悪いところ、国鉄に対する需要がないところ、そしてまたバスにほとんど転換をしているところとかいったところについて廃止しよう、そのためにはすぐ廃止するというわけじゃなくて、公共団体の皆さん方にも協議会に参加して議論をしていただいて、そして二年間ですかの後に第三セクターにするとかバス転換にするということで、決して地方住民の足を切るわけではございませんので、足を、いまの国鉄だけに依存しているものをもっと経済的なほかの方に移していただきまして、そして国鉄赤字をなるべくひとつ少なくするような御協力も願いたい、また、そうすることが交通機関を利用する人々にとりましても一だんだんとバス輸送に転換しているわけでございますから、決して足を切るとかいうことではございませんので、どうかひとつその点を御理解願いまして、地方の発展のために御努力を願いたいと思うわけでございます。  もう時間もございませんが、御意見がございますればどうぞひとつ述べていただきたいと思います。
  25. 滝井義高

    滝井公述人 公述でも申し上げましたように、たとえば、私の故郷は筑豊でございますが、将来筑豊を国鉄としてはどういうようにしたいというビジョンを示していただく必要があるのですが、それがないわけです。そうしますと、一日一キロ当たり二千人、一日一キロ当たり四千人、一日一キロ当たり八千人、こういう三つの段階の算術数字でいきますと、最前御指摘申し上げましたとおり、私の方では四千人になると全部なくなってしまうわけです。したがって、そういうことでは困ります、まずビジョンを示してくださいと言うけれども、お示しがない。  それからもう一つは、たとえばAならAという線が十二キロあるとしますと、その十二キロ、レールをのけてバスにするわけです。そうすると、十二キロのバスにするときには、その路線を当然アスファルトかコンクリートにしなければならぬわけです。その金が一キロ幾らぐらいかかるでしょうかと言ったら、国鉄は大体五、六千万かかると言うわけです。そうしますと、十二キロを鉄道からバスに切りかえますと七億から八億の金がすぐかかってしまうわけです。そうしますと、一体何年で路線ができるでしょうかというと、これは全くわからないわけです。一年でできなければ、その線を利用しておった人は一年間方途がない、こういう問題が出てくるわけです。だから、そういう点ももう少し明らかにしていただかなければならぬし、それだけのお金をかけるならば、最前私が御指摘を申しましたように、アスファルトにするよりかレールのままでミニカーを通した方がいいという形になるわけです。四、五亘万かければりっぱなミニカーができるのじゃないか。そういう何か新しい創意と工夫というもの、ローカル線をつぶそうという場合に非常に弾力的な対応をしていただく、そういう形で話し合いをしよう、協議会をしようということであれば、話し合いに応じ、あるいは国鉄再建のために御協力申し上げるにやぶさかでないわけです。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕 そういうことがかいもくわからずに算術的な数字だけが――これは国鉄が公式に発表したものではありません。新聞その他を見ながらわれわれがそれを写して、いわば群盲象をなでる形で、地方線はこうなるのじゃないかと実は心配をしておる段階でございますが、むしろ国鉄が堂々と、こういう法案を出す段階で同時にここはこうですよという路線に対する公式の見解を出していただく必要があるであろう、そう思っております。
  26. 武田吉造

    武田公述人 先ほどの質問についてでございますが、財政再建の問題でございます。  私は、ローカル線を抱える町として意見を申し上げたわけでございますから、財政再建につながるかどうかよくわかりませんが、財政再建ということを考えますと、ただ出るものを節約するというだけで財政再建ができるかどうか、大いに疑問があろうかと思います。  公述人のだれかからお話がございましたけれども、と同時に、企業努力で、利用する人、収入もふやすということを考えていかなければいけぬではなかろうか、そのことを考えなければぎりぎりになるのは明白なことであろうと私は思います。このたびの法案を見ましても、もちろん企業努力ということで、ローカル線の切り捨てなりあるいは三十五万人体制なり、また国の援助等いろいろございますが、収入をふやす、この点についての国民全部を挙げての努力というものが掲げられていないではなかろうかということを私、思うわけでございます。国鉄は、何といいましても大量の人を正確な時間に運んでいく、これについては飛行機もございましょうし、バスもございましょうが、一番信用しているのは国鉄だろうと私は思っております。  そのようなことから一つの例として申し上げますと、現在走っております、私も時たま使う東海道線の洗面所一つ考えてみましても、現在の家庭生活を考えた場合に、本当に利用できるきれいな洗面所でございましょうか。そこに石けん一つないような状態でございます。輸送業、サービス業を考えた場合に、そのようなこともなくしてほかの企業あるいはほかの輸送業と対抗しようと思っても無理ではなかろうかということを、細かい点かもしれませんが、私、思うわけでございます。そのようなことをみんなかかって努力をする必要があるではなかろうかということを思います。  それから、いま一つといたしましては、私もローカル線立場から、国鉄にも参りまして営業係数の出ております基礎計算を見せていただくことを再三お願いをいたしました。しかしながら、残念ながらまだ収入が幾ら、支出が幾ら、差し引きこうだということだけでございまして、その中身をよく伺っておりません。やはりそのようなものをはっきり国民の前に見せていただきまして、利用者あるいは沿線の者が努力しなければいけない点をはっきりしていただいて、これをわれわれ利用者あるいは存置をお願いしている者といたしましても一生懸命に努力して、しかる後にお互いに話し合いの結果考えるのがいまの政治ではなかろうかということを私、思っております。  以上の二点申し上げまして、果たして財政再建につながるかどうか知りませんが、意見を述べさせていただいた次第でございます。
  27. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 時間がございませんので、終わります。
  28. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 次に、久保三郎君。
  29. 久保三郎

    ○久保(三)委員 社会党の久保でございます。本日は、公述人皆さん大変遠いところからもおいでいただきまして、それぞれ御意見をちょうだいし、われわれとしても大変ありがたい御意見をいただいたというふうに思っております。  そこで、限られた時間でありますので、全部の方にお聞きするのが礼儀上からも当然かもしれませんが、あるいはできないかもしれませんが、あらかじめ御了承ください。  最初に、ずっとお尋ねする事項を申し上げますので、終わりましてから、順次お答えいただければ結構だと思います。  まず、第一に、小暮公述人にお願いしたいのですが、御承知のように、われわれも運賃を値上げして収入を増すということはもはや限界に来たと思っております。運賃法定制緩和というのをさきにやりましたが、そのときには、御指摘のとおり、もはや運賃経営を好転させるということは限界に来、また、運賃を上げることによって経営が悪くなってきたという事実を率直に認めなければいかぬと思うのであります。御承知のように、来年度の予算編成に当たっても、いまそれぞれ内部で折衝しているようでありますが、運賃値上げを考えないでやろうというふうにはなっていないのでありまして、多ければ一割以上の値上げをやろうとしております。これは、単に物価政策とかということだけでなくて、いま申し上げたような観点からわれわれは上げろべきではない、こういうふうに一つ考えているのです。  いま審議中のこの法律案の中にも、御承知のように、ローカル線全体に対して、法律の文言そのものが奇妙きてれつな文言なんでありますが、地方交通線収支の改善を図るために収入の確保について特段の配慮をして運賃を決めろ、いわゆる値上げをしろということなんですね、こういうことを書いてあるのが実は法律案の一つの条項になっています。これは小暮公述人のお話とはずいぶん違う話でありまして、われわれとしては、もちろんこういうやり方は、極端な言い方かもしれませんが、唯一のよりどころにしている国民の足を運賃値上げということで追い出しをくれるという、言うならば陰謀ではないかというふうにさえ思うのであります。それは言葉でありますから、極端な言葉かもしれませんが、そういうふうに思えてなりません。しかも、やり方は、俗な言葉で言うと汚いじゃないかということであります。ローカル線は、御承知のように、いま非公式ながら提示されている基準によりますれば、国鉄の営業線二万一千キロございますね、そのうちの大体半分ぐらい、一万キロなんですね。だから、撤去あるいはバスに転換するものもさることながら、そういう対象にならないものでも、国鉄の大体半分ぐらいの線区は一般の運賃より高くなる、いままでの国会審議の中での国鉄当局の答弁によりますれば、五割増しぐらいをひとつ考えていこうじゃないか、こういう話なんです。これは、恐らくわれわれとしては、法律の文言どおりにならないことは事実だし、かえって収入減、利用減がはなは、だしくなるのではないかと思うのでありまして、その点についての御見解はいかがか、こういうふうに思うのです。  それからもう一つ小暮公述人がおっしゃいました、マスコミ等で言っている見切り発車というのは適切な表現ではないじゃないかというお話なんですが、私どもはやはり見切り発車じゃないかというふうに考えているのでありまして、これは見解の相違と言ったらそうかもしれませんが、法律をお読みになっていておわかりのとおり、一定の基準というのをこれから政令で決めますね。われわれ国会議員としては決めるについては重大な関心を持っていま審議中でありますが、決めた基準で最初からもう廃止、この線はこういう基準によって廃止です、ついては後のバスの転換の方法その他について御相談をいただきたい、二年たっても結論を得なければ国鉄当局が最初の決定どおり廃止はします、こうなる。その他の公述人の方からも御発言があったように、その地域における交通でありますから、それの根幹と言ったら語弊がありますが、そういうものですから、これをいかように処理すべきかというのは、その地域住民や地方自治体あるいは経済団体の経済上あるいは生活上の大きな問題なんですね。だから、そういう関係者のもとで、後の始末を相談するのじゃなくて、この線路をいかにすべきかということを御相談いただくのが手順ではないだろうか。もちろんそこでは、恐らくこの法律案の原案をつくった人は、それはだめだ、みんな残せということに結論がなるかもしらぬから、それじゃもう法律をつくっても全然何にもならぬから、てっぺんからこれは廃止と決めなければだめだ、こういうことなんですね。これが現代に合う思想でしょうか。そうなるだろうという予見でもって国民大衆に押しつけるということは、私は為政者として非礼だと思うのですね。、だから、これは見切り発車で、われわれとしては見切り発車だけはやめたらいいじゃないか、ローカル線の処置は民主的な手法によって決めるのが当然ではないか。地域の問題とか地方の問題というのは、それぞれ皆さんからお話があったとおり大事な点なのですね。だから、国鉄の独断や政府の独断、役人の独断でそういうものを決めるべきではないというふうに私どもは考えているわけなのでありまして、御見解をひとつさらにお漏らしいただければ結構だと思います。  それから、滝井市長さんにお伺いしますが、今度の法律案の中では、ローカル線国鉄経営から分離しようというのがまず第一の大原則です。そこで、分離の方法としては、御指摘がありました特定地方交通線、いわゆる廃線をする、廃止をするという前提に立ったものとそうでないものと二つございまして、そうでないものについては、先ほど申し上げたように、運賃の値上げをやると同時に、国鉄経営から分離して、地方鉄道業者、言うならば民間の企業あるいは第三セクター、そういうものに譲り渡し、貸し付けができるような道を改めて開いているわけです。  そこで、滝井公述人にお伺いしたいのは、特に市町村、自治体に関係ある第三セクター、こういうもので引き受ける、そういうものについてどういうふうにお考えになるか、この点です。  それから次に、土井公述人にお伺いしたいのでありますが、国鉄再建というのは、先ほど来皆さんからもお話があったように、入ってくるもの、収入を積極的に確保するということもあります。それからもう一つは、支出を切っていくというか、切っていくというのは語弊がありますが、歳出を減らす、経営努力、そういうことでいろいろあるわけでありますが、その中で特に、土井公述人電気の機器を製造されている会社をおやりになっていると思うのであります。国鉄に関係あるかどうかは別にして、そういうものをつくっておられる経営者として御意見を承りたいのですが、国鉄には関連会社というのがたくさんあります。国鉄でなければ使わないような品物をつくっている会社がございます。あるいはサービスをする会社もあります。大体において、国鉄は御案内のとおり赤字でありますが、関連の企業は黒字であります。もちろん黒字でなければ倒産でありますから、やっていけませんからあたりまえの話でありますが、黒字だからどうこうではありませんけれども、国鉄のいろいろな物品の調達、工事の請負、そういうものについていま世間では高いじゃないかというふうに言われている。こういうことについて公述人としてはどういうふうにお考えでありますか、お伺いします。  それから次には、若桜の町長さん、先ほどお話がありましたように、いろいろ国鉄に対する御注文もありましたが、これまで国鉄のサービス改善について、ダイヤの編成とか車両の改善とか、そういうものについて現地の国鉄には御要求なさっておりますか。なさっておるとすれば、それを聞いていただける機会がありましたかどうか。聞いていただけないときは、あなたもああそうか、なるほどと納得するような明確な理由がありましたかどうか。大変細かい点でありますが、そういうことをお聞きしたい。  それから、先ほど田崎公述人は、運賃が高いというか、運賃値上げのために客離れ、サービスの問題も含めてでしょうが、それで旅行業者というか観光業者、言うならばホテルやそれらのものも閑古鳥が鳴く始末だ、こういうお話です。国鉄経営を改善するために観光協会のお立場から――いままで国鉄を和用しているわけですからね、メンバーが。そういう立場から経営の改善について提言をなさったことがございますか、あるいは御相談があったことはありますか。それだけお伺いします。  それから次に、工藤公述人でありますが、先ほど御指摘のとおり、われわれはローカル線運賃を値上げするのではなくて、むしろ御指摘のあった大都会中心の並行線の運賃が割り高になっていますから、こういうものについて引き下げるのは当然ではないかというふうな提言もしているわけでありますが、国鉄は御案内のとおり全国一本の賃率でやっております。そうなりますと、地域の運賃というか、地域における交通運賃全体から見れば、地域だけで運行している企業、それは都会地の場合は輸送の成績がよろしゅうございますから、民間の企業は早く言えば運賃は安い。ところが、国鉄は全国一本でありますから、ローカルの方は比較的安くて、それで都会の方が高い、こういう矛盾があるので、それについて、全国一律賃率制と地域運賃の問題について何かあなたの考えていることはございますか。いかがでしょう。  以上です。
  30. 小暮光三

    小暮公述人 お答えいたします。  第一点は、運賃地方と区別することがおかしいじゃないか。最近の問題としましては、同じような現象が電力にございますね。原子力発電の立地地域には電気料金を下げよう、これも同じような、上げるのと下げるのの違いでございますが、これは運賃理論あるいは料金理論から見れば若干矛盾を感じざるを得ない。しかし、現実の政策として電源立地を進めるのだ、あるいは地方交通線合理化をやるためには地元の方にも多少感覚を持っていただきたい、そういう意味でやると私は見ておりますので、そんなにたくさん、二倍にも三倍にも上げるのではないのですから、これはやむを得ないのではないか、こういうふうに見ております。  それから、第二番目の見切り発車の点でございますが、児切りというのは協議会の期限を二年に限ったということで出たと思うのでございます。こういう例は四十七年の廃案の再建対策のときに、あれは五年以内という年限がついていたと思うのです。つまり、地方交通線の整理をする場合には、だらだらやっていたのではいつまでたってもなかなか御了解いただけないという過去の経験もございますので、この二年というのを設定したんだと思うのであります。そのねらいは、何でも構わない、見切ってしまうというのじゃなくて、その二年間に協議会でとっくり相談をし、撤去した後においてはどういう足を確保するかということを決めましてこれを実施していく、こういう手続に法律はなっているように私は読んでおりますので、久保さんとは見解が違うかもしれませんが、見切りという言葉は適切でないんじゃないか、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  31. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 公述人皆様方にお願いいたします。  時間の制約がありますので、御答弁は極力簡略にお願い申し上げます。
  32. 滝井義高

    滝井公述人 久保先生にお答えいたします。  法案に、ローカル線を分離して特定地方線にする、その場合に廃止するものとその他のものがあって、その他のものは運賃を上げて、地方鉄道業者なり第三セクターにやらせる、第三セクターは地方自治体が入る、おまえたちは引き受けられるか、こういうお話でございます。こういう体系自身が非常に問題があるのは、こういう形でやるけれども、たとえば二分の一の補助金を出すとか、転換交付金を一キロについて三千万円やるとか、五年間は地方鉄道業者だったら赤字の二分の一は補助するとか、結局最後には国鉄か国がとにかく金を出すわけです。そういう出す金があれば、その金でこの五年間いまのローカル線を、最前鳥取の町長さんが言われたように、五年間ひとつみんなで寄ってたかって勝負してみようじゃないかという、それは五年でなくて二年でも三年でもいいのです。それだけの金を出してやってくれたらいいのです。いまわれわれ自治体は、第三セクターで引き受けてそんなことをやれる状態ではないわけです。二、三年か五年くらいわずかのお金をもらっても、とてもたえられるような地方財政状態じゃない、こういう国鉄を取り除こうというところの自治体は財政的に非常に苦しいところですから。したがって、そういう点ではむしろ第三セクターに任せる前に、そういう金があるんならば、その金を国鉄が持ってきて、全部集めて話し合って、どうするかということをやっていただく方がいいのじゃないかと思います。
  33. 土井厚

    土井公述人 久保先生の御質問にお答えするのは私は不適格者のような気がするのでございます。と申しますのは、先生のお話で国鉄の関連産業では黒字のところが多いという御指摘がございましたが、実は私のところは長年赤字で悩んでおりまして、最近減量経営をやりましてどうやら黒字になったということでございます。  それで、その経験から申し上げてみたいと思うのでございますけれども、私の方も物品を国鉄に納入をしておるものでございますが、調達の仕方としては、御承知のとおり、競争入札と随意契約とあるわけでございます。競争入札の方は競争で決まりますので一応問題ないと思いますが、随意契約の方は、国鉄では大変に豊富な資料と長年の経験から積算をされて価格の決定をされているように了解しております。一会社の経営者といたしましては、もっと高くしていただきたいものも実はあるわけでございますが、そういうものはなかなか聞いていただけない。それで、私の方でも、相手様は大変な経験と資料を持っていらっしゃいますので、そういう場合には、うちの中をたたくと申しますか、もっとコストダウンができるはずだということでやっておるのでございます。そのコストダウンをやって努力をしてみますと、全部が全部とは申し上げませんけれども、多くの場合にはコストダウンの余地があると申しますか、そういう結果が出ているように私は理解をしておりますので、公正妥当な価格で調達がなされておるというふうに考えております。  サービス業につきましては、私、その方のこと、経験ございませんで詳しくございませんので、答弁を控えさせていただきたいと存じます。
  34. 武田吉造

    武田公述人 先ほどの国鉄に対する要求の件でございますが、特にサービスの点ということについてはとりたてて申し上げてもおりませんし、これについては国鉄自体で考えていかなければならぬことじゃなかろうかと思います。  私の方で要求といいますか、お願いをいたしましたのは、まず第一点といたしまして、時間の組みかえでございます。と申し上げますのは、朝早く出ましてバスとの関係でうまく連結しないということがございます。そういうようなことから、何としても若桜線の時間帯を考えていただけないかということでお願いいたしましたが、バス会社の方がやってくれまして、国鉄の方は聞いていただいておりません。これが第一点でございます。  それから、いま一つといたしましては、所要時間の短縮でございます。ちなみに申し上げますと、公述でも申し上げましたように、二十九・五キロの距離を走るのに一番少ない時間のものが五十一分、長い時間のものは八十分かかっております。同じ汽車が走りながら八十分と五十一分、しかも距離はいま申し上げました二十九・五キロでございます。皆さん方お考えいただいても、これで企業努力がされておるのかどうか。利用しろ利用しろと言っても、使える道理はないと思います。その点についてしばしば国鉄の方には申しておりますが、残念ながらいまだもって直ってないのが実情でございます。  それから、いま一つといたしましては、日中にこのような状態のもとでございますので利用してない、これは私たちも認めております。しかしながら、それが四両、五両も連ねて走っておるわけでございます。これは責任者の話ではございませんが、なぜそのように三両、四両つないでいるのかということを聞きますと、それを若桜線に走らせなくても、どこかのホームかあるいは引き込み線に置かなければいけないのだ、それならむしろ連ねて走っていた方が安上がりだ、このようなむちゃな話も聞いております。果たしてこんなことで――しかも計算をするときには恐らくその分も入っているのではなかろうかと思います。われわれとしては本当にそのような返事しか聞かしていただいていないということでございます。
  35. 田崎乃武雄

    田崎公述人 久保先生からの御質問は、私ども日本観光協会が国鉄のこういう状況に対して経営改善の立場から何か物を言ったことがあるかという御質問だと思いますけれども、私どもとしましては、陳情の形でそういうことを申し上げたことはござしませんが、会員同士の意思の疎通を図る機関誌等で、これ以上運賃値上げをすればますます国鉄経営が苦しくなるという論陣を張ったことがございます。  逆に国鉄から意見を求められたことがあるかということでございますけれども、それはございません。
  36. 工藤芳郎

    工藤公述人 いろいろな交通機関がありますが、運賃体系がそれぞれ違うわけです。たとえばバスの場合でありますと、全国が三十五のブロックに分けられておりまして、標準原価主義がとられておるわけですね。国鉄の場合は全国一律になって賃率で決められておるということで、今回の改正がどういうふうな方向であるか、私はまだ確たることはわかりませんけれども、推測するところによりますと、個別原価主義、つまり路線別運賃ということになるのではないか。個別原価主義ということになりますので、こういう体系をとっている交通機関がほかにはないわけですね。  そうなりますとどういうことが予測されるかといいますと、一つは、運賃の決定原則は法律事項でございます。ですから、これをどのように変更されるのか、法律の改正が必要なんじゃないかと思います。  もう一つは、その結果は体系的に非常に複雑なものになるだろうというふうに思います。また、実情からいっても、どの路線に割り増し運賃をするかということは、採算ベースでいくわけですから非常に流動的なわけでございまして、利用する者からすれば非常に法的安全性が害されるおそれがあるのじゃないかと思います。  なお具体的な事項を存じ上げませんので、以上のように心配をしておるわけでございます。
  37. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間ですから、終わります。  どうもありがとうございました。
  38. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 次に、西中清君。
  39. 西中清

    ○西中委員 きょうは遠路御多忙のところ、大変御苦労さまでございます。いろいろとお伺いをさせていただきまして、皆様方十分御理解の上で御関心を深くしておいでいただいておるということに感銘いたしておりますが、時間もございませんので、おわかりのことということを前提に簡単に御質問さしていただきます。  小暮公述人土井公述人田崎公述人にお伺いをさせていただきます。  先ほどから賛成の立場でお話がございました。それなりの理由もわからないわけではありませんけれども、いろいろ委員会におきまして、また現地調査等その他通しまして、私ども率直に申しまして、今度の国鉄再建構想、六十年度で収支均衡しなければならぬ、こういう基本的な考え方があるわけでありますけれども、先ほどお話がありました運賃改定がもう限度に来ているのじゃないか、それから、これ以外に上越、東北新幹線赤字の問題とか、それからまた年金の問題でございますね、こういったことは別にいたしましても、現状の国鉄経営、または本法律案が成立しました後の国鉄経営が六十年で収支均衡するかどうかというのは、私たちは大変疑問を持っておるわけでございまして、その点可能だというようにお考えなのかどうなのか、率直な御意見をお伺いいたしたいと思います。
  40. 小暮光三

    小暮公述人 お答えします。  可能にしなければいけない、そういう観点のもとに対策がとられたのであって、対策の初めからもうだめなんだということであってはいけないし、私はそうは解釈しておりません。ですから、対策にとられている点を関係各方面においてできるだけ推進していくこととなれば、その描かれた構想に近いものが必ずや出てくるであろう、そういうふうに見ております。
  41. 土井厚

    土井公述人 小暮公述人と同意見でございます。
  42. 田崎乃武雄

    田崎公述人 六十年で均衡するかどうかということでございますけれども、先ほど私が申し上げましたような努力を積み重ねて、やはり六十年度には均衡させなければいけないのだというふうに考えております。
  43. 西中清

    ○西中委員 そこで、先ほど私が私の意見を申し上げましたが、これは非常に困難な話だというように考えておるわけですね。いまも、やるのだということで、何としてでも努力をして収支均衡を図らなければならぬ、そういう立場で見ておるんだというふうなお話でございます。  そこで、赤字経営を打開するためには、この国鉄経営努力、これはいろいろな意見があるわけですね。国鉄職員が働かぬじゃないかとか、または国鉄がいろいろ企画をしている利用者に対するサービスが悪いとか、いろいろな意見がありますが、皆さん方は率直に国鉄当局にもっとこういうふうにしたらどうだという御意見もあるのじゃないかと思うのです。お互い知恵を出し合って、国民の共有財産でございますし、公共性を持つ国民の足でございますから、これは賛成、反対別にして、すべてが何とかしなければならぬという気持ちを持っております。われわれは政治家の立場で物を言っておりますが、皆さん方として、また御経験の深い立場として、私はこういうことをもっと国鉄に要求したい、経営努力としてこういう点が足らぬのじゃないか、何かこういう建設的な御意見があればお伺いをさせていただきたいと思います。
  44. 小暮光三

    小暮公述人 私は、今回の再建対策に盛られた項目は、どれ一つとりましてもそうなまやさしいものとは思っておりません。一口に三十五万人と言いましても、御承知のように、労使の協調、これはなかなか困難であります。こういうものは、困難でありますが、しかしそれを貫かなければならぬ。貫くためには、やはり国会皆様方を初めとし、政府も意のあるところを理解していただいて、押していうていただかなければ困ると思うのです。それをぜひお願いしたい。おれは反対だ、こういうことですと末端にいってばらばらになってしまう。その点よろしくお願いしたいと思います。
  45. 滝井義高

    滝井公述人 お答えいたします。  国鉄というのはいままで、昔は駅長さんというのは地域の社会相当コミュニケーションを持っておったのですが、最近の国鉄というのはそういうものがないわけです。したがって、鉄道の唱歌にあるように、やはり列車というのはわれわれの心のふるさとみたいなものがあるわけです。だから、国鉄をこれから大きく変えようとすれば、国鉄は地域に出てきて、地域の駅長さんを中心に、私の方で言えば門鉄あるいは九州総局ですか、そういうところの首脳部が出てきて、筑豊をどうするのだ、この地区はどうするのだという具体的なビジョンを話し合ってつくって、法案をやるという形にしてもらいたい。いまからでも遅くないという感じでございます。
  46. 土井厚

    土井公述人 国鉄も公共企業体でございますので、その企業的側面を取り上げて申しますれば、経営状況が悪くなってまいりますとどうしても後向きの対策というものがふえてくると存じます。したがいまして、行政当局も国鉄経営幹部も、後向き、後追いの仕事と申しますか、始末をつけることに非常に追われております。追われるというのはある程度やむを得ないことでございますが、そのために積極的施策の方が、二の次になると言うと言い過ぎかもしれませんけれども、やりたくてもなかなか手がつかないという面が出てまいっておると思います。今回の再建の案の中で、三十五万人体制というもの、私はこれは攻めの体制であるというふうに考えておりまして、その点を高く評価しておるものでございまして、ぜひ今後は前向きの対策を進めていくべきであると考えております。
  47. 武田吉造

    武田公述人 先ほど申し上げましたが、何といたしましても利用者がふえるということを考えていきませんとじり貧になることは、幾ら議論をしてもはっきりしていることだというふうに私は思います。  そのようなことから、先ほど国鉄努力ということについて申し上げましたが、なるほど、地方といいますか、それなりの特徴があるところと“いますか、国鉄ができるところではデゴイチを走らすとかあるいは弁慶号がどうだというふうなこともございますが、しかしながら、これは国全体の問題として利用について考えていく必要があるのではなかろうかということを一つ考えます。  それと、いま一つといたしましては、先ほど話もございましたが、私のところも米子鉄道管理局というところの配下にございます。私もたびたび管理局には行っていろいろお願いをするわけでございますが、私の町なりあるいはこの若桜の沿線でいろいろ交通問題に対して検討する場合、残念ながら国鉄の方から出てきていただいておりません。やはり国鉄というのは高いところに座っているのかというふうな感じがするわけでございます。私もあるとき米鉄に参りまして、やはり米子鉄道管理局は山陰における国鉄の管理局なのだから、山陰あるいは鳥取県におけるこれからの交通網というものについてどのようにあるべきかという意見を出されてしかるべきではなかろうか、いたずらに本社からの指令を各自治体に伝達するということであれば米鉄管理局も要らないではなかろうかということを私は言ったことがございます。やはり何としても、本当に国鉄を皆が離れていかないように、時間の正確さ、大量の人が輸送していただける、安全だということについては、いろいろ議論されても国鉄を信頼しているのが国民だと思います。そのようなことから、国鉄とわれわれと一緒になって利用者の増に努力していかなければいけないというふうに思っております。
  48. 田崎乃武雄

    田崎公述人 国鉄経営努力に何か知恵がないかということでございますけれども、私は国鉄当局のスタッフの方々につきましては、大変きめの細かい努力をしていらっしゃると思います。ただ、先ほども申し上げましたように、現場の職員は、大変残念でございますけれども、かなりやる気をなくしておるといいますか、全力を挙げていないということは認めざるを得ないと思います。それはやはりうちの家計はだめなんだよ、だめなんだよと朝から晩まで聞かされる子供みたいなものでございまして、どうせ先行きだめならばがんばる力も出てこないと思います。やはり一人一人の職員に先行き明るい希望を持たせるような体制を組んでやることが、この際一番大事だと思います。
  49. 工藤芳郎

    工藤公述人 国鉄自身の力では今日再建できる状況にはないということが前提でありますが、なお国鉄自身政府に対して大幅な助成を引き続き要求すべきだと思います。  二番目は、これもやはり政府に要求すべきことでありますが、総合交通体系の中で国鉄の特性を生かした政府の誘導策を、国鉄自身努力するとともに、政府にもお願いしなければならぬのではないだろうか。  三番目は、先ほども申し上げましたが、採算のとれない新線建設はしばらく見合わすべきではないだろうか。  四番目は、やはり値上げという手段はしばらく見合わせて、がまんをして、別途収入をふやす方針、つまり利用者のニーズに応じたサービスの改善等を中心に収入面をふやすということの方が、長期的に見た場合には国鉄再建につながるのではないか。  五番目は、職員の一部でありましょうけれども、電車に落書きをしたり、よけいな紙を張ったりする場合がまだまだあります。これは正当な争議権の行使とは似て非なるものであるというふうにわれわれ利用者は考えておりますから、ああいうふうなことは職員の姿勢にもかかわることでありますが、そういうことは自重された方がいいのではないか。  以上です。
  50. 西中清

    ○西中委員 それでは、小暮土井田崎公述人にお伺いいたします。  赤字線対策というものは、国鉄経営再建を図るためにはぜひとも十分考えていかなければならぬ問題でございます。一方で、本法案が仮に成立した場合に、先ほどから、地元からというか、地域からの代表の方が非常に切実なお話をなさっておられます。特別運賃の導入や路線のバス転換、要するに国鉄の廃止ですね、これに伴って地域交通サービスが非常に低下する、こういう危険性の懸念を示されておるわけでございます。そうした地域住民側に立った立場で言いますと、非常に不安が強いことは紛れもない事実でございますね。だから、公共性と採算性という問題、いろいろあると思いますけれども、との赤字線対策を進めるに当たってその対策のあり方、これは地域住民の意見を十分に反映させなければならぬ、こういうように私たちは思うわけでございます。一方では、先ほどのように管理局は余り物を申さない、話し合いに応じてくれない、こういうことでございますね。こういう形でこの法案が進んでいって、地元が大荒れするというようなことがあれば、なおさらまた国鉄にとっては再建の支障になると私は思うのです。本法案では、二年の協議期間という限定もされておるわけですけれども、そういった問題について、地元の住民の立場に立って考えられたときにどうあるべきか、この辺の御意見をお伺いをしたいと思います。
  51. 小暮光三

    小暮公述人 地方交通線の問題は、大きく言えば先ほど公述をしたとおりでございます。ただ、個々の問題について考えますと、今度の対策の中にも協議会というのがありますが、あれをもう少し拡充をしまして、地域の交通はどういう体系がいいのかということを二年の間にとっくり話をして、そして、それでもなお反対というときには別としまして、そういう手続を真剣に進めるべきだと思います。
  52. 土井厚

    土井公述人 地方交通線と言われるものは、少しかたい言葉で言えば利用度の低い公共運送機関ということであろうかと思うのでございますけれども、現在と申しまするか、過去十年、非常に日本交通事情が全体によくなりまして、それを国民が享受しているわけでございます。また、国民も非常に豊かになってきておる。そういう中で、これまであるものが、これまで享受している便益というものがなくなる。その限りではマイナスが生ずるわけでございますが、これが心情的に非常に納得しがたいものがあることは私は否定できないと思います。特に、鉄道の敷設にずいぶん努力をされた方がいられる地域において、そのものをとるということでありますると、大変に困惑をするということもあろうかと存じております。  しかしながら、問題は、包括的に一つのものとして考えないで、個別に各線区ごとに見ていくということがきわめて必要じゃないかと思っております。そしてまた、世代が変わってまいりますとともに、かなりその問題についてはさめた目で見ている人もふえてきているようにも聞いております。そういう点もあわせて考えてみてはどうかと思います。
  53. 田崎乃武雄

    田崎公述人 今度の法案では、地方のいわゆる赤字線をいきなり切ると言っているわけではないわけでして、どう残すかを相談すると言っているわけでございますので、私はその場でいろいろと地元と協議をいたしまして、それでもどうしても必要であるならば、それは企業を離れた措置として考えるべきだというふうに思います。
  54. 西中清

    ○西中委員 ありがとうございました。終わります。
  55. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 次に、四ツ谷光子君。
  56. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 公述人皆さん、大変お忙しいところ、また御遠方のところ、本日は本当に御苦労さまでございます。幾つかの質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。  私、まず初めに、滝井公述人武田公述人のお二人に聞かせていただきたい、このように思います。  いま私たちが審議をしております国鉄再建法案にある地方交通線対策には二つの重大な特徴と問題がある、このように考えております。  一つは、廃止対象にする路線選定の基準を政府が政令で一方的に決定する。廃止を前提としての路線選定である。廃止後どうするかという協議でしかない。二年間の見切り発車条項で一方的に廃止される。これが一点です。  もう一点は、廃止基準が、国鉄路線が地域に果たしている役割りを利用人員の数というふうにきわめて狭く見て決定されてしまう。この二点だと思うのです。ここには、国鉄路線がその地域住民の生活やあるいは経済の発展にどのような役割りを果たしていくかという観点が全く欠落をしている、このように思います。したがって、バス等に転換した方がよい線は廃止するが、しかし、その地域の交通網、交通体系をどう整備して改善していくかというふうなことは全く考えられておりません。国鉄自身が、地域の基幹的交通機関として国鉄線をどのように整備をしていけばよいのか、こういう観点も全くこの法案にはない。ただ国鉄の路線を切ろうということがあるだけでございます。  先ほど滝井市長さんは、今度の法案が出されるに当たっては地域には何の相談もなかった、全く一方的に押しつけてこの法案を通そうとしている、こういうふうにもおっしゃいました。また、武田町長さんは、先ほどのお話の中で、国鉄が地域で果たしている役割り、まず時間が正確である、運賃が安い、それに比べてもしバスにかわるならばその問題が崩れてしまう、しかも降雪地帯等では交通事故の問題等もある、こういうふうなお話でございました。そこで、お二人にお聞きしたいと思いますが、筑豊地区の国鉄ローカル線や若桜線が、法律にあるような、運輸省が政令で考えているような基準で廃止されてしまってよいのかどうか。地域の実情に照らして、このたびの法案皆様方の地域の御実情にこたえているのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  57. 滝井義高

    滝井公述人 お答えをいたします。  基本的には先生のお考えのとおりでございます。したがって、一方的に政令で基準を決めて、そして廃止されるということは非常に困るわけです。  たとえば一番困るのは、この特定地方交通線を次のような場合に除くというのがあるのです。これは新聞で見たのですけれども、地方交通線のうち四千人未満の路線で次のものを除く。ラッシュ一時間当たり千人以上、豪雪のため並行道路が十日間以上途絶、それから三番目が並行道路未整備というのですが、たとえば私の方で糸田線とか添田線というのが一日一キロ当たり二千人以下で、やり玉に上がるわけです。その添田線にしても糸田線にしても、大体遠賀川の上流の彦山川または中元寺川の堤防に沿って道路が通っておるわけです。これは堤防が道路になっておりますから、道路があるわけです。そうしますと、道路が整備されておれば、レールをのけても自動車道はもうつくらなくてもいいことになってしまうのじゃないか。そうなりますと、これは大変なことになるわけです。その場合に、ある程度お金で、転換交付金とかなんとかいうのを三千万円とかなんとかくれるという話があるのですけれども、そういうお金で物が片づけられていってしまう、こういう形では、地域として長い目で見た場合に非常に困るわけです。だから、そういう点を私たちはやはり――変な言い方をしますけれども、法律というのは、政令で法律の中身を充実することもできれば、骨抜きにすることもできるわけです。これは官僚独特のやり方で、御存じのように、政令は閣議決定すればもういいわけです。国会とは無縁なものとは申しません。けれども、なかなか国会の目の届かないところで政令がつくられて実施されていくという問題がある。したがって、私たちの生活ダイヤですから、そういう細かい点を来て話し合いをして、こういう形になるのですよという納得ずくの上でこの処理をしていただかないと、先生の言われたとおり天下りになって、いよいよやる段になったら、ぎすぎすしてかえって法案の所期の目的が達成できない状態になるのではないかということは、前にもどなたかおっしゃったとおり、尾ういう形になると思います。したがって、つぶさに国鉄は手のうちを示してもらわなければならぬ。そういう形になれば、これはある程度軌道に乗りながら、話し合いをし直すところはし直すという形になると思います。ぜひそういう形にしていただきたいと思います。
  58. 武田吉造

    武田公述人 結論から申し上げますと、ただ利用人員だけで廃止対象にされることについては、残念ながら全く反対をいたしたいと思っております。私たちも国鉄赤字を何とか解消しようということにつきましては、若桜線について申し上げますと、公述のときに申し上げましたように、若桜から郡家までが若桜線になっております。駅員がおりますのは若桜駅に一人と郡家駅でございますが、その間においては全部無人になっております。と同時に、御承知の方もあろうかと思いますが、若桜町は全面積が二百・一平方キロございまして、そのうち九四%が山で、材木の産地でございます。そのような地域でありながら、国鉄赤字解消ということから、貨物の取り扱いについても協力をいたしました。現在若桜線で取り扱っておりますのは郡家駅までで、それ以外の駅では一つも扱っておりません。そのようなことから、私たちも赤字の解消につきましてはでき得る限りの協力はいたしてきておるところでございます。しかしながら、最後の方法として、二千人に満たないものを廃止するのだ、バスにするのだ云々ということが出されてくると、われわれといたしましては、何としても若桜線の運行は維持しなければいけないと強く思っておるところでございます。  それから、いま現実の問題として考えます場合に、若桜線は、申し上げましたように、若桜町から郡家まででございます。また、郡家から鳥取までが約十キロあるわけでございます。現在の生活圏から言いますと、東部の鳥取の広域圏は鳥取市を中心といたした十四カ町村で形成をいたしておるわけでございます。といたしますと、経済活動は何としても鳥取市が中心になるわけでございます。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕 若桜線が廃止されて郡家でおろされた場合、現在の状況、特に国道二十九号線の混雑状況からいたしまして、通勤通学者が本当に正確な時間で鳥取まで送り込まれることは絶対にないと私は思っております。そのようなことから、若桜線の存置については、これから大いに運動して、ぜひとも残していただくようにお願いしたいと思っておるところでございます。
  59. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 次に、工藤公述人に三点にわたって御質問させていただきます。  先ほど公述人の方からも国鉄運賃が高いという問題については御指摘がございました。特に大都市圏において私鉄との格差が非常に著しいことは、もうすでに常識のようになっております。  そこで、私は日本国鉄運賃と諸外国、西ドイツ、フランス等におけるそれぞれの鉄道と航空機との運賃比較がどうなっているかを調べてみました。大体五百五十キロ程度のところをそろえてあります。パリーアムステルダム間というふうにそろえてあるのですけれども、フランスの場合には航空機が二等運賃の約二・七倍、ドイツの方では航空機は鉄道二等運賃の二・四倍になっております。ところが、日本の方ではどうなっているかといいますと、航空機運賃鉄道二等運賃の一・四倍ということで、ほぼ同額というふうな驚くような状況でもあります。  それから、物価指数との関係はどうであろうかというのを見てみますと、昭和三十五年を一〇〇とした場合に、物価指数が約三・八倍に五十四年度はなっております。時間がありませんので、初乗りだけの場合を申してみますと、初乗りの場合には三十五年に比べて指数が十倍になっている。その指数で比べてみますと、消費者物価の方は三八三・三、それから国鉄の指数が一〇〇〇というふうになっておりまして、国鉄運賃の上がり方が異常になっている。  こういうふうに国鉄旅客運賃が他の交通機関と比べて非常に割り高になっているというのはだれが見ても明らかだと思うのですけれども、消費者の皆さん方の立場からどのようにお考えになっているのか、それが一点でございます。  もう一点は、定期の割引の問題についてお考えを聞かせていただきたいと思います。  政府国鉄は、公共負担というふうな問題がどうあるべきかというふうなことの対策をなかなか講じずに、一方的に通学定期の割引率を毎年切り下げております。ところが、その定期の割引率の根拠というか、前提となっております輸送コストから見て四〇%が適切だというふうに言っているんですが、利用者はパーセントで負担しているわけじゃなくて、金額で負担をしているわけでございますから、たとえば新宿-八王子間の一カ月の定期が、国鉄は四千四百三十円、私鉄は千八百円ととんでもない差が出てくる、こういうことになると思うのです。  問題は、著しく割り高な国鉄運賃にあることは明らかだと思うのですが、たとえば五十三年度の鉄道客貨別経営成績表を見てみますと、旅客収入が一兆九千六百五億、経費が二兆二千百九十三億、差額が二千五百八十八億ですので、不足分を補おうと思えば一二%ぐらいの値上げで済むはずなんですけれども、この五十三年度の経費の中には今年度たな上げしょうという過去債務も入れています。それから国鉄総裁が昭和六十年度に再たな上げをしてほしいと言っておられる年金や退職金の経費まで入れているわけなんです。三年間連続して割引率の引き下げ、基本運賃の値上げを実施したために、通学定期は、十キロメートルの場合で見ますと千四百五十円から二千六百四十円と実に一・八二倍に上がっているということです。このまま続けていくと、ダブルパンチを受けるわけでございます。  このように、運賃の基礎となる国鉄の輸送コストや経費の内容に重大な問題が含まれている、このように思うのですが、全くこれを考えずに四〇%程度が適切だ、こういうふうなやり方について消費者の立場からどのようにお考えでしょうか。  時間がないようですので、一応この二点で区切らせていただきます。
  60. 工藤芳郎

    工藤公述人 第一点の運賃が高いということでございますが、御指摘のとおりでありまして、東京-新宿間、東京-西船橋、新宿-八王子といろいろ地下鉄や私鉄と比べた表はもうすでに新聞各紙などで御存じのとおりでありますが、利用者から見ますと、国鉄は、たとえば東京の中央線の場合、非常に便利なわけですね。ぜひ乗りたいという希望を持っておるわけですけれども、余りにも高いものですから、結局私鉄の方に流れてしまう。今日の状況から言いますと、私鉄は十一月にも値上げしょうということで、ビールで言いますとサントリーと麒麟みたいなぐあいで、値上げをする必要はないのだけれども値上げするというような形に、麒麟麦酒みたいに私鉄はなりつつあるわけで、非常におかしなことになっていると思うのです。運賃負担が高いというよりも、もう利用しないのですね。ますます客離れが進んでいるということでございます。  それから、定期の割引の問題につきましては、たとえば学生定期などにつきましてはいろいろな通達も出ておりまして、文部大臣、厚生大臣に対して総裁名で出すとか、閣議了解なども昨年出されておるわけですが、こういう受けざらがはっきりしないまま割引率がどんどん高くなるというのですか、低くなるというのですか、どんどん負担が多くなっていくというのが急速度に進んでいっておるということで、学生の皆さん方の生活を聞いてみますと非常に大変だということでございます。おっしゃるように、四〇%というのは何を根拠にしているのか、およそ国鉄運賃の問題については、原価主義が本来原則でありますが、ほとんど原価というものが明らかにされないで、運賃の単年度の収支赤字であるということだけでどんどん値上げがされていっているというような状況で、定期の割引については合理的な根拠がないというままで現状のような推移になっているということは、非常に残念に思っている次第でございます。
  61. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 最後に、田崎公述人にお聞きをしたいと思います。  先ほど公述人のお話の中に、現在の国鉄運賃はお客を完全に離してしまうような運賃体系になっているという御発言があったと思うのです。そのために旅行客が遠くへ行かない、行けないというふうな状況になっているという御指摘があったと思います。ところが、今回の再建法案及び対策では、運賃抑制というふうなことは全くないわけです。一方的に運賃で不足分を補っていくという方針でございますから、この計画案が出されるときに、当初予定は五%の値上げだというふうなことを見込んでおったのが、来年には七・九%になるのじゃないかというふうなことも言われております。過去債務のたな上げ、人件費の圧縮とかを打ち出しておりますけれども、投資資金を依然として借金に頼っている。その金利負担も年々膨張しまして運賃に対する圧迫になっている、こういうふうに思うのですが、こういう状態が続いてまいりますと、公述人のお立場から言いますと、この状況では旅客がますます国鉄から離れていってしまうのではないか、そういうふうな公述人がある程度御批判をされましたような運賃体系を是正することはできないのではないかというふうに思うのですけれども、公述人の御意見を伺いたいと思います。
  62. 田崎乃武雄

    田崎公述人 御指摘のように、私も経営再建のためにこれ以上運賃値上げをすることは国鉄経営再建にとって好ましいことではないと思います。思いますけれども、ただいまここで論議されておりますのは、国鉄経営再建をどうするかという問題でございますので、少なくとも現在の国鉄の経理の仕組みでは、組織自体がこれでは立ち行かなくなる、輸送業務そのものが組織としてできなくなるということを御審議されておるものと私理解しておりますので、運賃値上げ以外のいろいろな施策について、ぜひこれを通されまして、運賃値上げはそれの補助的な措置として最小限度におやりにならなければいけない、そういうふうに思います。
  63. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 どうもありがとうございました。
  64. 小此木彦三郎

    小此木委員長 中馬弘毅君。
  65. 中馬弘毅

    ○中馬委員 どうも御苦労さまでございます。  ずっと貴重な御意見を賜ってきたわけでございますが、小暮公述人もほかの方も御指摘されましたように、何度か再建計画が出てきているわけですが、それはどれ一つとして成果が上がっていないわけですね。また、いろいろな方々から国鉄に対する御不満だとか、あるいはいろいろな提言もございましたけれども、それを実際に国鉄は取り上げてくれないという御不満も述べておられました。  私もずっと運輸の方をタッチしておりまして、幾つかの提言もしてまいりましたけれども、しかし、いつどういう提言をいたしましても、できない理由を説明されるのが国鉄なのですね。お役人はそうかもしれません。こういう方法があるじゃないか、こういう人事管理があるじゃないか、私は民間の経営に少しはタッチしておった者としてかなり具体的な提言もしてまいったわけですけれども、それはこういう法律があるからできないのだとか、こういう労働組合の動きだからできないのだとか、それがほとんどなんですね。ですから、私は、むしろいまの国鉄がこの形、この経営形態で改善されることは、はっきり言いましてあきらめてしまいました。皆さん方もそのお気持ちだと思うのですね。  そうするときに、やはり経営形態を変えなければだめなんじゃなかろうか、むしろ民間に移した方がいいのじゃなかろうかということを最近は感じております。その一つとしてこの法案が出てまいっておるわけで、そういう意味で、たとえば地方交通線の中でも場合によっては第三セクターなり民間に移してやっていったらいいじゃないかということが可能性としてここに出てくるわけですね。そういう意味で評価をしている者の一人なんでございますけれども、もう公営企業というのをそろそろ明治のときと同じように民間に払い下げて、そして、その効率的な経営形態に任せていく時代に入ったのではないかと思っております。さような意味で、民間移管といいますか、国鉄の民営論を私たちは主張いたしておりますが、そのようなことにつきまして、経済評論家立場での小暮公述人の御意見をひとつ承りたいと思います。
  66. 小暮光三

    小暮公述人 お答えします。  私は、国鉄に限って申し上げれば、現在では民間に移すことは実際上も理論上もまずいと思っておるのです。仮に移すとしましても引き受け手がございませんね。私はそう見ておる。そこで、これに民間的能力を上げるようなやり方を加えていく。たとえば、今度の法律を拝見しましても、七つも八つも関連法律がございますね。ああいうふうにがんじがらめに縛っておることをできるだけ軽くしてやる、そして創意工夫を発揮できるような体制にしてやる、このことの方が大事だと思うのです。そういうふうに考えております。
  67. 中馬弘毅

    ○中馬委員 同様な意味で、民間企業を経営しておられる土井公述人にひとつ。  私が言っております意味は、国鉄を全体を一挙に民間に移管してしまえということではなくて、部分部分からでも、民間が引き受けられるところあるいは第三セクターでやれるところは、地域の要望に沿える企業形態に移していった方がいいのじゃないかという意味でございますので、その意味も含めて土井さんにお伺いします。
  68. 土井厚

    土井公述人 国鉄の全体のあり方としましては、大変に基本に触れる非常に重要な問題であると思っております。国鉄全体といたしましては小暮公述人からお話があったこととほぼ同様の意見を持っております。  ただいま先生の方から特にお話がございました地方地方の問題としまして、第三セクターであるとかあるいは従来地方鉄道経営している者がこれを引き受けるということがあれば、それは一つの解決策になるのではないかと思っております。地方線区の実情から考えますると、民間で引き受けるということは非常にむずかしいことではないかと思っております。勢い第三セクターというふうな方法が考えられるのではないかと存じております。
  69. 中馬弘毅

    ○中馬委員 工藤公述人も、利潤を追求するものと利潤の追求を目的としないものを競争させること自体が無理だというような御発言もございました。さような意味で、今回の地方の部分について、自動車もあるわけでございますけれども、場合によっては第三セクターあたりで地域の住民の方々と話し合って引き受けるというその点についてだけの御意見なんですけれども、どういうようにお考えになっておられますか。
  70. 工藤芳郎

    工藤公述人 国鉄の使命というのは、むしろ民間でやれないところをやってきたのがいままでの経緯でございますから、今後地方の部分にいたしましてもやはり国なり国鉄なりが責任を持つという対応は引き続きやるべきじゃないだろうか。第三セクターにいたしましても、内容いかんという点もございましょうけれども、なお慎重に考えて、きょうの御議論全体を通じて伺っておりますと、ローカル線を廃止するのじゃないんだ、必ず何らかの形で代替性を持たせるの、だということでありますれば、一層なおさらでありまして、とにかく国や国鉄が引き続き責任を持つという対応は、地方ローカル線にいけばいくほど今後とも一層必要なんではないだろうか、このように考えます。
  71. 中馬弘毅

    ○中馬委員 武田公述人にお伺いしたいと思います。  お話によりますと、町政を預かって、同時に自転車置き場をつくったり駐車場を整備したり、あ、るいはまた国鉄に乗るように町民の方にPRされたり、非常に御努力をなさっていることを評価したいと思います。  その中で、スピードアップだとかあるいはダイヤの組みかえを国鉄に申し入れてもそれが聞き入れられない、また、いろいろな意味での提言もあるけれども、それが国鉄としてはあのばかでかいずうたいで末端まで届かないんだろうという御意見でありましたけれども、それをむしろ地域の方々だけで――もちろん国からの助成があることは前提でございますけれども、もう少し地域の声の届く範囲に企業形態を置くことの方の意味をどうお考えになりますか。
  72. 武田吉造

    武田公述人 ただいまの問題でございますが、結論的に申し上げますと、やはりローカル線を持っている地域は本当に財政的にも苦しいところでございます。御承知のように、私のところも新過疎法でも指定をされ、公述のときも申し上げましたけれども、隣の八東町も過疎の町村でございます。また、鳥取県も大変に苦しい県でございますし、そのような中でございますので、企業等も至って貧弱な企業というのが現在の鳥取県の状態だと私承知しております。そのようなところから考えました場合に、必要だということは当然住民の方も口をそろえて言っておりますが、それをいわゆる第三セクターとかあるいはほかの企業でということについては、とうていでき得ないのではなかろうかというふうなことを私は思っております。  それと、いま一つといたしましては、あるいは極論かもしれませんが、国有鉄道も、いま少し国有鉄道として過疎地域における鉄道についても日の当たるような形を考えていただけたらという気持ちがするのでございます。
  73. 中馬弘毅

    ○中馬委員 滝井公述人にお伺いいたします。  多両連結ではなくてミニカーを走らせて、踏切のようなところでもとめてお客を拾ったらいいじゃないかという御提言ですけれども、私も同じような主張をいたしておりまして、地域ではそのような運行をするのがむしろローカル鉄道の役目じゃなかろうか、そうすることによってお客はどんどんふえるであろうということは全く同感なんですね。そうするならば、これは先ほど言いましたように、私もいろいろなことを見もし、調べもしてきましたけれども、国鉄にやらしても無理じゃないかという気がしてくるのですよ。ですから、市を預かっておられるわけですので、地方自治体なんで、自治ですから他に治めてもらうのじゃなくて、自分たちでやるという意欲からすれば、たとえば広島カーブが今度優勝しましたけれども、ああいったように地域の人たちみんなが盛り立ててやっていくといった企業形態をつくることの方に、もう一つ考えを及ぼせないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
  74. 滝井義高

    滝井公述人 いま先生の御指摘のように、いろいろな話し合いの中からお互いが納得した上で、住民の合意もできて、最終的な結論がそういう方向がいいという形になったときには、私たちはそれでもいいと思います。  ただ、この法律の形態やその他をごらんいただきますと、そういう形にはならぬわけです。問題はそこです。だから、国鉄当局に対して、あの保線区で使っているようなミニカーを走らせる、そうすると、駅員さんでもこれは簡単に運転ができるわけです。そういう何かやる意欲を労働組合も出すし、国鉄当局もやるという形にした方がいい。私たちのような地方自治体は、産炭地は、失対事業と同和対策で手いっぱいで、とてもいま国鉄経営するなんという実態にないわけです。そうなりますと、そこに職員がふえることになります。そうすると、一人の職員がふえれば、いまは御存じのように、退職金も入れますと大体五百万円ぐらいかかるわけです。自治省はなるべく人をふやすなという形できているわけです。そうしますと、そういうものを抱えれば抱えるほど人件費がかさんで、自治体はますます赤字になる。だから、私は、試行錯誤かもしれませんけれども、第三セクターにやらしたり地方鉄道業者にやらしたりした場合に、その五年間は全額見るとか二分の一見るとか、政令にどうもそういうものがあるようですね。そういうものを、たとえば試みに国鉄で二年間だけは地方線でやってみよう、君たちの言うミニでやってみよう、それで、その間にお互いに話し合いながらよりよき方法が見つけられるのじゃないか、そういう試行錯誤というものがあっていい。そういう試行錯誤をせずに、一挙に何か理想の彼岸を求めていくというところに、今日国鉄の五回目の悲劇が出てくるのではないかという感じを持っております。  ですから、そういう点では私たちも非常に弾力を持っております。やはり地方自治体はイデオロギーではいけませんから、きわめてフレキシブルに弾力を持って、みんなの話し合いの中で最大多数の最大幸福を求める以外にありません。いま身体障害者とか老人が草深い田舎から医者に行くとか、こういう交通弱者しかその線に乗っていないわけです、学生生徒あるいは通勤者。したがって、そういう点ではもう少しゆとりを持って、国鉄がおおらかな気持ちで話し合いのできるような場ができれば、いまのような形の弾力的なものも、最終的に合意ができればできる、こう思っております。なるべく弾力を持って対応していきたいと思います。
  75. 中馬弘毅

    ○中馬委員 前向きの御発言、どうもありがとうございました。そのようにやはり地域との話し合いというのが大事だと思うのですね。その中から、先ほど武田町長さんの方は国鉄に乗る運動を始めておられますし、また、滝井市長さんの方はそのような形で前向きの方策も御検討のようでございます。そのようなことを話し合う場として、法案の意図とは少しずれるかもしれませんけれども、協議会というものが今度発足されるわけです。その中でいま言った、私の場合は経営形態は国鉄というものに必ずしもこだわらぬでいいじゃないか、国鉄が若干タッチするとしても何か方法があるんじゃなかろうかということで、これを評価したいと思うのですけれども、そのような意味で、協議会のあり方、この法案の協議会ということで大体皆さん方御理解いただいていると思いますが、このあり方は、このままでいいとか、いやこういう点は直したらいいといった意見がありましたら、それぞれの方からお伺いしたいと思うのです。まず、小暮公述人から。
  76. 小暮光三

    小暮公述人 お答えします。  私は、形としてはいまの法律に盛られている形でいいと思うのです。問題は運営です。この委員役をなさる国鉄の方とか、これを切り回す方々のやり方いかんによることが非常に大きいと思います。
  77. 滝井義高

    滝井公述人 国鉄当局が政令その他で基準をきちっと決めて、それをあたかも法律と同じような形で迫ってこられますと、弾力が持てないわけです。そこらあたりをもう少し、最前御説明いたしましたように弾力を持てるかどうかということが非常に問題だと思うのです。  たとえば、ラッシュ時に一時間当たり千人以上、こういうように決めますと、じゃ九百九十九人のときはどうなるのか、八百人はどうなるのかという問題が出てくるのです。こういうように千人以上と決めますと、役所はもう政令事項は法律と同じようにやっていくおそれが出てくる。ところが、私たちの自治体というのは、そんなにスイカをびしゃっと真っ二つに割ったようなぐあいにはいかぬわけです、地域のいろいろな実情がありますから。だから、そういう弾力が、一体いまのようなこういう国会公聴会までやる段階で国鉄が持てるのかというと、持てないのじゃないか。だから、私は、そこらあたりをこの法律を出す前にもう少し根回しというか、われわれとのコミュニケーションをしてほしかった。しかも小委員会は、それをおやりなさい、いままでいかなかったのはそれをやってないからいかなかったぞと言っているにもかかわらず、おやりになっていないし、それから国鉄経営状態とか、どの線が一体二千人以下になるのかというのは、国鉄は公式に私たちに出したことはないわけです。全部新聞その他どこからかそういうふわっとしたニュースで一つの表をつくって、私たちは群盲象をなでる形で恐慌を来しているという実態です。だから、そういう点で出発点が少し問題があったという感じがいたします。
  78. 土井厚

    土井公述人 お答えいたします。  法案としてはこれでいいと存じておりますが、今後の具体的運用の面では、あるいは政令に書かれた以上にまた具体的な問題が運用の面では出てくることと存じます。その辺は十分に地元関係者とのコンセンサスを得て、協議の進め方について十分のコンセンサスを得るように努力することが望ましいと存じます。
  79. 武田吉造

    武田公述人 この特別措置法の第八条でございますが、私もこれをいただいてちょっと読んでみたわけでございますが、この中に四項でございますか、「前項の通知を受けた都道府県知事は、当該通知に係る営業線の選定について、運輸大臣に対し、意見を申し出ることができる。」というふうになっております。しかし、そのときには、政令の中がわかりませんので何とも言えませんが、政令ですでに決定をされてから通知を出すようになっているのではなかろうかというふうに思います。私といたしましては、その線の決定をされる時点において、少なくともその地域の県知事の意見は聞いていただきたい。それでこそ初めて、後の協議会は本当に建設的な内容のもとに二カ年間の協議が持たれるのではなかろうかというふうに私は思っております。
  80. 田崎乃武雄

    田崎公述人 究極的には現在の考え方でいいと私も思います。それは当然それぞれの関係する地域地域で実のある相談をすることは大変結構だと思いますけれども、地域エゴがそれを阻害することになってはならないと思います。やはり将来日本交通体系をどうするかという大局的な立場から考えるべきであると思います。
  81. 工藤芳郎

    工藤公述人 御質問は第九条の協議会だと思いますが、これは一つは構成の面でございますが、ここでは「政令で定めるところにより、関係行政機関等の長又はその指名する職員、関係地方公共団体の長又はその指名する職員及び関係都道府県公安委員会の指名する当該都道府県警察の職員」、こういうことになっておるのですが、一つは、やはり利用者の代表といったようなもの――利用者というのは、ここに列記してありますような諸機関に比べますと、情報の収集にいたしましても、こういった法的知識にいたしましても著しく劣る面があるし、また情報の収集なんかについては非常に困難があるわけでありますから、やはり利用者協議会みたいなものをここで育てていってその代表を参画させるということで、慎重にこの構成をやっていただきたい。  なお、審議のあり方について、つまり運営でございますが、民主と公開を基本とした運用をされる必要があるのじゃないか。  以上でございます。
  82. 中馬弘毅

    ○中馬委員 どうも長時間貴重な御意見をお伺いしてありがとうございました。  御苦労さまでした。
  83. 小此木彦三郎

    小此木委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  次回は、明二十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十五分散会