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1980-10-24 第93回国会 衆議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月二十四日(金曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 楢橋  進君    理事 宮崎 茂一君 理事 福岡 義登君    理事 吉原 米治君 理事 西中  清君    理事 中村 正雄君       木部 佳昭君    佐藤 文生君       近岡理一郎君    永田 亮一君       浜野  剛君    林  大幹君       古屋  亨君    三塚  博君       水野  清君    山村新治郎君       井岡 大治君    久保 三郎君       小林 恒人君    浅井 美幸君       小渕 正義君    三浦  久君       四ツ谷光子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         運輸大臣官房長 杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (株式会社明電         舎代表取締役会         長)      関  四郎君         参  考  人         (国学院大学経         済学部教授)  雨宮 義直君         参  考  人         (読売新聞社論         説委員会委員) 村尾 清一君         参  考  人         (桃山学院大学         講師)     高屋 定國君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案(内閣  提出、第九十二回国会閣法第一号)      ————◇—————
  2. 小此木彦三郎

    小此木委員長 これより会議を開きます。  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案を議題といたします。  ただいま委員長手元に、本案に対し、久保三郎君から修正案提出されております。修正案は、お手元に配付してあるとおりでございます。  この際、提出者から趣旨説明を求めます。久保三郎君。
  3. 久保三郎

    久保(三)委員 日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案修正案の御説明を申し上げます。  提案された国鉄経営再建法案は、過去債務のたな上げと経営改善計画についての条項を除けば、地方交通線対策についてであります。しかも、そのために国鉄を現在支えている日本国有鉄道法国有鉄道運賃法鉄道敷設法及び日本鉄道建設公団法をこの特別措置法で改正しようとしており、いずれも地方交通線に関係しており、国鉄経営分野から地方交通線廃止あるいは分離しようとするものであります。  現在、エネルギー問題、環境保全等交通を取り巻く制約条件の中で国鉄の機能をいかにすべきかは重要な課題であり、国鉄経営再建は、この課題にいかに取り組むかが問題であります。しかるに、今回の提案の主たる部分は、地方交通線の切り離しであって、地域交通を分担している国鉄が有無を言わさず撤退しようとするもので、われわれのとらざるところであります。  よって、本法案に対し、次の諸点を修正すべきものとして修正案提出した次第であります。  その一は、特定地方交通線対策についてであります。  原案は、国鉄政令基準に照らし、バス輸送転換することとして特別地方交通線対策協議会協議させ、二年後に結論を得ない場合であっても国鉄代替輸送の手配をして当初の決定どおり当該特定地方交通線廃止することとなっています。この対策は、まさに問答無用、一方的な結論を押しつけるものであります。特別地方交通線として予想される線区は、当該地域交通維持整備に深くかかわりがあり、原案に見るように国鉄経営営業収支だけの観点からのみその存廃を決定し、一片の通告によって廃止することは問題がありますので、広く関係者意見を聞き、特に利用者地域住民生活責任を負うべき地方自治体の長等も加わっている協議会会議において協議を行わせ、その結論を得て処理する必要があります。また、協議が調わないときにおいても、県知事が当該地域交通確保についての意見を出すことによって関係住民の声を反映させようとするものであります。  次に、原案は、地方交通線を他に貸し付けまたは譲渡できる道を開こうとしていますが、地方交通線にかかわる地域交通維持整備は現下の交通問題であり、適切な交通政策の展開が強く要求されているところです。国鉄営業収支と都合だけでその経営から分離するかどうかの前に、当然地域交通維持整備について関係者による検討が必要であります。政府は、最近われわれの主張も入れて地域交通維持整備計画を各都道府県ごと陸上交通審議会の部会を設けて策定することになっており、国鉄地方交通線に限って、当然なことであるこのような手続を省略し、国鉄経営から分離することをすべきではありません。よって、この条項は削除することといたします。  次に、原案によれば、地方交通線によっては、地方交通線運賃収支改善を図るため必要な収入確保に配慮して決めることとしていますが、いうところの運賃は、幹線系に比べ割り高なものを考えての運賃を設定しようとするものであります。地方交通線の実情は、いまより割り高運賃を設定した場合、収支改善が図られるものではなく、むしろ国鉄離れを強要するものとなり、かえって収入悪化を招きかねないと思うのであります。また、これによって利用減を期待し、ひいては営業線国鉄からの分離または廃止を企図するものと言うべきでありましょう。かかる方策国鉄経営再建に相反するものでありますから、この条項を削除することといたします。  また、都市中心とする国鉄運賃はその区間や路線に並行した地方鉄道または軌道の運賃に比べかなり割り高となっております。国鉄利用を妨げているものがあり、資源の最適配分からも公正競争観点からもこれを調整し引き下げるべきもので、かかる措置によって競争力を回復し、国鉄利用を増加させ経営再建に役立てるべきであります。よって、かかる運賃調整条項を新設しようとするものであります。  次に、地方交通線に対する助成の条項についてであります。  原案は、地方交通線運営に要する費用を補助するとなっているが、地方交通線運営地域における国民生活を支えるものであり、かつ、経営には限界がありますから、国鉄責任収支均衡を図ることは困難であり、その運営については、国の政策的責任もありますので、適正な国鉄経営努力がされた場合に生ずる欠損は、国においてその全額を補助することと修正するものであります。  次は、国鉄の新線建設についてであります。  建設後開業したとしても輸送効率が著しく低いことが予想されるものについては、国鉄経営上あるいは地域交通体系整備のため引き続き新線建設を続けようとするものを除いて、その計画を中止すべきであります。原案は、地方鉄道業者の要請によって新線建設を続ける道を開いておりますが、形を変えた政治路線建設であり、とらざるところであるので、これに関係する条項を削除しようとするものです。  最後は、国鉄自主性に関係しての問題です。  原案によれば、国鉄運輸大臣の承認を得て進めている経営改善計画も中途において運輸大臣は変更の指示ができることといたしていますが、過ぎたる干渉であり、国鉄自主性責任を無視したものでありますので、本条項を削除することとするものであります。  以上で説明を終わります。何とぞ慎重御審議の上、御賛成いただきますようお願いいたします。
  4. 小此木彦三郎

    小此木委員長 以上で、趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 小此木彦三郎

    小此木委員長 次に、本案について、参考人からの意見聴取に入ります。  本案審査のため、本日御出席いただきました参考人は、株式会社明電舎代表取締役会長関四郎君、国学院大学経済学部教授雨宮義直君、読売新聞社論説委員会委員村尾清一君、桃山学院大学講師高屋定國君、以上四名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、関参考人雨宮参考人村尾参考人高屋参考人順序で、お一人十五分程度に取りまとめてお述べいただき、次に、委員質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、関参考人にお願いいたします。
  6. 関四郎

    関参考人 関でございます。  私は、今回提出されました日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案について、賛成の立場で以下口述申し上げるものであります。  本論に入ります前に、委員各位にまことに失礼とは存じますが、簡単に自己紹介させていただきたくお許しをお願いいたします。よろしいでしょうか。  私は、昭和七年から三十年間国鉄で、主として電気関係の仕事に従事してまいりましたが、その後、重電メーカー中最も国鉄と縁の薄い株式会社明電舎に三十七年に入り、自来十八年間、経営危機に瀕していた同社の再建に没頭していたため、その後の国鉄の事情について次第に疎くなっておりました。幸い一昨年五月、島秀雄会長の後を受けて日本鉄道技術協会会長に就任いたしまして、主として輸送技術の点からではありますが、国鉄経営の前途の容易ならざる状態にあることを痛感いたすようになりました。就任早々でありますが、早速二カ年計画で、学界を主とし、国一私鉄中堅技術者交通評論家メーカー代表各一名を加えた委員会を組織し、鉄道技術体係総合調査に着手し、先般報告書をまとめて運輸省国鉄提出いたしました。この審議過程において、国鉄経営状況は、私の退職後年を追って悪化の一途をたどり、抜本的対策を勇気を持って断行しない限り、この再建は不可能となるであろうということを痛感いたしました。これがあえて本日参考人として出席し、不明をも顧みず委員各位の温かい御理解を得たいものと熱望する次第でございます。  前置きが大変長くなりましたが、まず第一に、国鉄再建必要性であります。  国鉄は近年その赤字は年々一兆円に近づき、その累積赤字は六兆円にも達し、国の財政に深刻な打撃を与えるようになってまいりました。従来陸上交通機関の最大、最強のものとして、戦後復旧の大任を果たしてきました。私の在任当時の三十五年には、国・私鉄合計国内客貨輸送量の六三%を引き受けていました。その後道路、空港、海運界整備発達に伴い、五十三年度にはついに三〇%を下回るようになりました。それでは、国鉄の役目は先細りで、ついには終局を迎えるべきものかと言えば、決してそうとは考えておりません。  五十三年度の国内輸送量約一兆一千八百億人トンキロの三〇%、三千五百二十億人トンキロを運んだ国・私鉄消費エネルギーは、電力約百三十億キロワット時及び軽油約八十万キロリットルでした。残りの七〇%を引き受けた自動車、内航海運国内航空は約六千二百万キロリットルの石油を消費しました。これらの各種エネルギーを熱量に換算しますと、同じ人トンキロを運ぶために鉄道はその他に比べて約七・五分の一で間に合ったことになります。しかし、これは総体的に見た結果であって、鉄道でも一車に数人しか乗らないような場合には、消費するエネルギー量鉄道以外よりも反対に多くなり、幹線系または大都市圏大量輸送でかせぎ出した分を吐き出した結果が入っていることを知っていなければなりません。  鉄道では単線で約六メートル、複線で約十メートル幅の土地が必要です。自動車では行き違いの必要上最小八メートルは必要ですし、片道二車線、往復四車線高速道路では通常二十二メートルの幅をとります。  御承知のように、日本は世界一人口稠密な国ですが、その上農耕したり、人が住んだり、工場を建てたりすることのできる土地は全国土面積の三三%弱しかなく、その割合はスウェーデンと並んで世界一少ない国であります。国民一人当たり約三百坪の土地当たりますが、その中で食糧をつくり、機械を動かし、住居をつくらなければなりません。騒音公害で騒がれなくても輸送用道路鉄道に使う土地もできるだけ少なくし、一本の道路でもなるべく多く利用しなければなりません。  では、交通事故はどうでしょうか。私ども国鉄にいた三十七年ころまでは、死者百名を超すような大事故鉄道には四、五年に一度は必ずと言ってよいほどあったものでした。五十三年度の輸送旅客数は七十億人で、事故で死んだ人は四百五十四人、一億人につき六・五人まで逐年減少してきております。これは踏切改良信号近代化に加えて、職員努力の成果であると敬意を表しております。一方乗用車は、これはバスは除いておりますが、五十二年度輸送人員百七十八億人に対して死者は七千二百人、一億人当たり三十三・六人で、鉄道の約五倍に当たります。このような利点を持っている鉄道の全廃などはとうてい考えることはできません。したがって、今回の再建案を勇断を持って実行することは絶対必要だと思います。  余り数字ばかり並べて恐縮ですが、鉄道は全廃することはできませんが、国民の税金に寄りかかっていつまでも赤字経営を続けることもまた絶対許すことはできません。私ども鉄道に期待すべきものは何か。前述の諸条件から勘案しても、その特性の最も発揮できる分野、すなわち大都市圏及び都市間の旅客輸送幹線大量集約貨物輸送に対して将来とも大きく期待されます。これらの分野において、国の基幹的輸送機関として安定した良質なサービスを提供することが国鉄に与えられた使命であると信じます。この使命に対して国鉄当局の全知全能を傾注しての必死の努力をこの機会に切にお願いいたします。  しかし、この国鉄に期待される使命を完全に遂行するためには、この分野合理化近代化ももちろん必要ですが、いまや鉄道運営もまた大きなシステムとしてあらゆる技術総合であることを念頭に置いて、広い視野から見直すことが必要です。従来から再建案は幾たびか提出されましたが、具体的な方策について明確に示されなかったように思われます。今回はその点について明確に示していることは全面的に賛意を表する私の気持ちであります。  しかし、この法案実施のため従来より不便を感じ、反対気持ちの方もおいでのことと思いますが、この十数年間の陸上交通は大変革を遂げていることは御承知のとおりと思います。戦後の道路網発達は、小単位のバス輸送が頻繁に走るようになりました。また、マイカーや自転車の交通も、昔の砂利道のことを考えれば大変な変わり方です。大きく日本の将来を考えた見地から、また国の財政破綻を防止するためにも、本法案成立に御協力いただくよう、何とぞ御理解いただきたいと存じます。  最後に、これが実施に当たられる国鉄の幹部並びに職員皆様にぜひお願いしたいことがあります。それは頭の切りかえということです。古い規定でみずからを縛ったり、従来の慣習から抜け出すことを恐れたりすることのないよう、大胆率直に本再建計画を遂行するとともに、合理化に御協力願う方々への深い理解を持って処置されることを希望いたします。また、近代化に伴い、従来いちずに守り続けてきた分野も、新時代に即して自分自身を鍛えていくことが大事です。  私の経験を申し上げてまことに恐縮ですが、昔のモートルの明電はいまやパワトロニクスの明電と名前を変えたばかりでなく、従来モーターなど回転機をつくっていた四千人が千人になり、静止機器をつくっていた二千人が七百人に、そして従来ゼロであった電子機器コンピューター部門が二千人に変わりました。退職ではなく配置転換または関連会社で他業務に移り、新しい分野で自己をみがき、いままで一つのことしか経験のなかったものが多能化し、次の時代に即応すべく張り切って勉強しています。これも財政破綻すれば会社がつぶれるからと思い切って新しい転換を決心したたまものです。  国鉄職員が一体となって、次の新しい時代に存在できる日本国有鉄道に必ず生まれ変わると信じ、私はこの法案成立を大きな期待を持って見守りたいと思います。  終わります。(拍手)
  7. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、雨宮参考人にお願いいたします。
  8. 雨宮義直

    雨宮参考人 国学院大学雨宮です。  きょうは日本国有鉄道再建促進特別措置法案について参考人として意見を述べる機会を与えられましたので、日ごろ私が考えていることを申し上げて参考意見とさせていただきます。  きょうは時間が大変限られておりますので、きわめて一般的、概括的なことしかお話しできないことをあらかじめお断りしておきます。  国鉄再建につきましては、皆様御存じのように、昭和四十年代の中ごろから取り組まれて、過去数回再建案が出されたことは皆様よく御存じのところです。しかも、いずれも失敗に終わったと言っていいかと思うのです。そこで、今回が最後のチャンスという言われ方で出されておるのですが、この法案を拝見しますと、率直に言いましてこれで一体本当に国鉄再建ができるのだろうかと疑問に思わざるを得ません。  国鉄の問題といいますのは、言うまでもなく日本国有鉄道日本交通体系の中でどう位置づけていくのか、こういう課題と深く関係しているわけですけれども、この法案国鉄再建中心地方交通線対策を置いているのであります。法案を見ますと、結局は赤字額の多い地方交通線を整理すれば、昭和六十年度に経営健全性確保することができるという考えに立って国鉄再建を考えている、こう言っていいと思うのですけれども、この考え方に私は疑問を持つわけです。と言いますのは、大変大上段にかぶって恐縮ですけれども日本国有鉄道法第一条を見ますと、これは皆様よく御存じのことですけれども、こう書いてございます。「国が国有鉄道事業特別会計をもつて経営している鉄道事業その他一切の事業経営し、能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共福祉を増進することを目的として、ここに日本国有鉄道を設立する。」こうなっております。  日本国有鉄道というのは、つまり公共福祉を増進することをその目的としている、こうなっておるのであります。このことは、路線赤字であるとか黒字であるとかいうのではなくて、公共福祉、これを言いかえてみますと、国鉄利用している地域住民のニーズとか判断に基づいて国鉄建設が行われなければならないし、廃止も行われなければならない、こういうことだと思うのですね。そこでは地域住民判断が優先されるべきであって、経営収支を優先して、言うところの見切り発車に安易に取り組むべきではないというふうに私は考えます。  また、この法案を拝見しますと、八条に地方交通線特定地方交通線規定があります。これはここで読むまでもないでしょうが、この規定にいずれも「政令で定める基準」という表現がありますし、特定地方交通線にかかわっては「運輸省令で定めるところ」というふうに書いてございます。一体その政令がどうなっているのか、実は私どもに大変不明確なわけです。私が今回参考人として出席するに当たりまして法案関係資料をいただいたわけですが、その資料の中にも政令は入っておりません。新聞に一部報道されておりますから、私もその程度の情報は知っておりますが、一体何が幹線鉄道網で、何が地方交通線で、一体何が特定地方交通線になるのか大変不明確であります。これほど大事な法案が出されておるのですから、法律ができる過程国民の納得のいく政令地方交通線及び特定地方交通線についての明確な政令を出すべきであると私は考えます。さもなければ、きょう出席しております私を初め参考人はもとより、該当する地域住民も、それから議員の皆様方も、この法案について一体どう判断したらいいのかわからないのじゃないか、こう私は考えます。地方交通線問題を中心に据えながら、地方交通線規定が不明確であるというのでは取り組みようがない、こう申し上げておきたいと思います。  次に、地方交通線運賃の問題に入ってみたいと思います。  この法案の十三条に、「地方交通線運賃については、地方交通線収支改善を図るために必要な収入確保に特に配慮して定めるものとする。こう書いてございます。いわゆる地方交通線特別運賃であります。この法案には別に値上げをするとは書いてございませんが、新聞等でニュースをキャッチしますと、国鉄では現行運賃の五割アップ程度を考えているということであります。国有鉄道が従来全国一律賃率をとっていたために多くの矛盾を生じていることは事実であります。都市私鉄に対して大変高い運賃になってしまいましたし、一方地方では逆に国鉄私鉄バスよりも相対的に安い運賃になっているのは事実であります。しかしながら、運賃を値上げすると一般的には国鉄離れが生ずることは当然でございまして、地方交通線においても運賃を特別に値上げすることは現実の公共福祉の理念にも反しますし、ますます国鉄離れを促進しかねない、こう考えるのであります。  きょうは、最初に申し上げましたように、概括的な話をさせていただきますけれども、ここに一つ資料がございます。これは外国の資料なんですが、スウェーデン国有鉄道の総裁がスウェーデン交通通信大臣報告したことしの八月二十五日付の報告であります。これは大変興味深いのですが、御承知の方も多いと思いますが、スウェーデンでは昨会計年度、一九七九年七月から一九八〇年六月にかけての昨会計年度ですけれども、この間に運賃を下げまして、詳細はとても申し上げる時間がないのですけれども、最高で四〇%の値下げをしまして、乗客を二五%ふやして、運賃収入で一〇%の増加を見て収支均衡を図ったという報告がございます。これは英文で書いてあるのですが、ロー・プライス・トライブ・サクセス、つまり低運賃政策が成功したという報告であります。これは運賃を値上げすることだけが経営収支改善ではないということを示す一つの国際的な経験でありますけれども日本国有鉄道もこういう点に多く学ぶ点があるのではないか、こう私は考えるわけです。  先ほど申し上げましたように、国鉄は長い間全国一律賃率をやっております。今後運賃の問題を考える場合には、再建策との関連で言えば、むしろ運賃を値下げしたり、割引政策を導入して利用客をふやすことによって収入をふやす方策を考えるべきではないかと私は考えております。結局、国鉄再建するには鉄道利用してもらうほかないわけです。鉄道利用してもらうということは、鉄道利用する社会的習慣を確立するほかないということですけれども、そのためには運賃割引というのは大変有効な政策であると考えていいと思うのです。一般に鉄道利用客をふやすにはどうしたらいいかと言いますと、言うまでもなく、一つは、サービス改善することですし、一つは、運賃割引ですね。国際的に見てもこれしかないわけです。現行国鉄がこの線でいってないことに私は批判を持っているところなんですけれども、今後の国鉄再建を考えるならば、いま言った方向を当然考えるべきだ、こう考えます。  運賃問題を一般的に言わせていただきますと、どこの国でも利用者負担だけで運賃負担をしているところはないので、公的負担利用者負担があるわけですが、公的負担利用者負担負担区分を明確にするというのが運賃問題に取り組む原点だろうと思うのです。そこで、公共割引と言われるものについて公共負担をすることはもとよりですけれども、この問題はさらに発展させますと、通路費用の公的負担問題をも含めて考えなければならない、こう私は考えております。西ドイツでは鉄道の通路費負担について検討した経緯があるのですが、日本国鉄でもこういう問題について当然取り組むべきではないかと考えております。ただ、冒頭に申し上げましたように、国鉄日本総合交通体系の中でどう位置づけるかということとこの問題は関連しておりますので、ここでは問題点の指摘だけにとどめさせていただきます。  今回の法案地方交通線対策中心国鉄再建を考えているということについての私の考えは以上のとおりですけれども、結局のところ、この法案に最も欠けているのは、先ほど述べました点から言って、公共福祉、つまり公共性の視点だと考えます。法案の中で経営収支改善という言葉が盛んに出てくるわけですけれども地方交通線の問題を経営収支改善という視点から扱いますと、バスへの転換とか第三セクターへの移管とか、廃止の論理が出てきてしまうのは当然だろうと思うのです。地域住民廃止を望まない場合、つまりその地域地方交通線へのニーズがある場合にそれを無視してしまうということは、国鉄の持っている公共性が後退してしまう、こう考えざるを得ないわけです。国鉄へのニーズというのは長年にわたって培われてきたもので、それぞれの地域社会に根づいた公共性のあるものだ、こう私は考えております。トランスポーティーションプアーという言葉があって、交通に関して貧困であるという層を想定しますけれども、つまり公共交通としての鉄道以外に利用する交通手段を持たない層が問題にされるのであります。実は国鉄が持っている公共性といいますのは、このトランスポーティーションプアーというものはもとより、マイカーを持っている者にとっても国鉄が必要であるという意味での公共性を考えるべきじゃないかと私は考えるのであります。  これは一つの比喩でありますが、病院があって病人があるわけですけれども、病院というのは別に病人にだけ必要なものではなくて、健康な者にとっても病院は必要であります。つまり日常活動を保障しているという意味で病院が必要なんでありますけれども国有鉄道が持っている公共性というのはこういう点にあると考えざるを得ないのであります。  こういう発言をしますと、やや心情的になってくるのでありますが、国有鉄道といいますのは、日本ばかりでなくて、ヨーロッパの場合を見ましても、単に経済価値だけでとらえられてはいないのであります。つまり公共性論議と絡んで、国の財政と深く関連してこの問題を考えなければならぬという視点がどうしても出てくるわけです。  そこで、今回の法案を拝見しますと、財政補助に関して一定の規定がなされております。たとえば特定債務の償還に要する長期資金の無利子貸し付けがありますし、利子補給がありますし、償還条件の変更がありますし、地方交通線運営に要する費用補助がありますし、財政上の措置というのも加わっております。これらを見ますと、国の財政による措置があるということがわかって、一定の評価をすることができるのでありますが、これらの財政のかかわり合い方を見ますと、概して後追い的な補助、後追い的な財政措置でありまして、積極的、前向き的な財政補助の規定はないと見られるのであります。公共性の問題や公共福祉の問題を考えるにはどうしても前向きの補助の問題を考えなければならぬ、こう言っていいかと思います。  たとえば、外国の例を挙げて恐縮ですけれども、イギリスにPSO補助というのがございます。つまりパブリック・サービス・オブリゲーションに関する補助、つまり公共サービスの義務に対する鉄道への補助ですけれども、この補助ですと、たとえ赤字であっても公共サービスを維持すべき場合には補助をするということになっております。国有鉄道再建ということを考えるならば、現行サービスを少なくとも維持する、できれば拡大するという方向で考えなければ国鉄再建ということは考えられない、こう私は考えるわけです。そこで、財政の補助条項について私は不満があるということをこの席で申し上げさせていただきたい、こう考えております。  限られた時間で、きわめて一般的、概括的なことしか申し上げられないのですけれども、問題点を申し上げて、私の参考意見とします。  以上です。(拍手)
  9. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、村尾参考人にお願いいたします。
  10. 村尾清一

    村尾参考人 村尾でございます。読売新聞の論説委員をいたしております。  私は、国鉄再建法案条件つきの賛成の立場で申し上げます。  この法案は、一口に言うと五年後の昭和六十年度までに国鉄収支バランスを一応回復するというのがねらいだと思います。累積赤字が六兆円だとか、ことしもまた九千億も赤字が見込まれるとか言われておりますけれども、果たしてその財政再建ができるのかということを言われると、それは神様も答えることができないと思います。国鉄の人は、財政再建ができるかではなくてやらなければいかぬのだということは、たてまえとしては言っているのですけれども、一人一人聞いてみると、やはりかなり不安を持っている。  昭和四十四年から今度で四回目の再建案で、また出たのかと国民は思っているわけですけれども、大体五十一年に五割も上げてから国鉄離れというのがひどくなってきている。それで、そういう値上げはもうできないし、今度の再建案の中では、いつも言われている三本柱の中では、要するに企業努力合理化しかない。国から七千億も、それから五年後には一兆一千億も出してもらうということを前提にしながらの再建案ですけれども、その企業合理化とか努力というのは、言われながらいままでやらなかったけれども、どうしてもやらなければならないのが地方交通線、特に特定の、世間で言う赤字ローカル線の整理です。  その前に、企業合理化というのは、いわゆる三十五万人体制で、ことしの二月で四十二万四千人いたのを六十年度までに三十五万人にする、七万四千人も減らす。どうしてその三十五万人という数字が出てきたのかといいますと、皆さん御存じのように、三十五万人だと人件費の営業費の中に占める割合が、いまの七四%から五四%になる。人件費が五四%ということは、まだ国鉄が黒字基盤だった三十年代のときと同じだ、だから三十五万人にするのだというのが国鉄側の説明だったと思います。ことしは一万一千人定員削減がもうすでに八千人ほど実現しておりますから、これは多分できます。これはよく聞きますと、要するにことしは定年退職者が一万七千人いるのだそうです。しかし、それを全部採らないというわけにいかないので、仕事を続けていくためには新しく採用しますので、それだけ減っていくわけではないわけです。そんなわけで人員の方の合理化も着々と進んでいるわけです。  先ほどちょっと申し上げた今度の骨子である地方交通線の整理というのは、いままで十数年やってきてどうしてもだめだったのは、やはり地方の方の反対が非常に大きかったからなんですね。それは皆さん御存じですけれども、野党側の主張なさっているところを拝見しますと、どのローカル線を廃止するのか、それを一律に政令で決めるのは白紙委任をすることになるし、その政令の内容もわかってないじゃないかというのが多かったと思います。確かにそういう疑問がありましたので、何か政令案の骨子みたいなものがちょっと出てきているようですが、地方交通をどうするかというのをそんな国鉄の採算の立場からだけではなくて、地域交通とか産業とか、そういうものをどうするかという立場から論じなければいかぬという議論があります。だから、一歩進んで、協議会などでも、地域交通をどうするのかということを決定する権限を運輸大臣ではなくて地方公共団体の首長の知事にやらしたらどうかという意見も出てきておりますけれども、そうすると、いままでの運輸省の権限というのは全く崩れてしまうのは当然ですけれども、現実的にそれができるかどうかというところにいま一つの問題があると思います。  それから、特定運賃ですが、地域差によってローカル線なんかではあちこちでやっているのが普通ですけれども、一律運賃でなくて線区によって運賃が違っている。これはもうからぬところのローカル線は上げる。それなら、東京のような大都市の国電のようにもうかっているところは下げたらどうだという意見もあります。これはやはり道理で、非常に賛成者があって、国鉄としてもちょっと痛いところですけれども、ただ、いままでとしては、独立採算制というと、もうかっているところの金をもうからない地方へ回して、それで賄ってきたわけです。しかし、それが国鉄離れによってもうできなくなってきているというのが現状であるわけです。だから、もうその国鉄の体質全部を見直してやらなければいけないときに来ていると思います。これをこのままほったらかしておきますと、その赤字というのは雪だるまみたいにふくれて、かえって、後でどんと国民の税金の世話にならなければ本当につぶれてしまうというような事態になると思います。  それから、地方新聞なんかのマスコミの意見を見ますと、総論賛成なんですね。国鉄再建というのはやはり必要なことでへそのために赤字線の整理も望ましいことではないがやむを得ない、ただし、自分のところだけは特殊事情があるのだ、たとえば北海道、たとえば九州、自分のところだけは何とかならないかというのが本音なんですね。いわゆる公共性を強調したらどうしてもそうなるわけです。赤字だろうが何だろうが、とにかく公共性の立場からは赤字ローカル線でも何とかしてくれないかというわけです。ところが、それが国鉄としてはもう限度にきてやれないというわけです。それで、高木総裁なんかが、公共企業体に一種の企業精神といいますか、そういうものの導入はどうしても必要だ、公共企業体というとどうしても親方日の丸、赤字が出れば税金でしりぬぐいしてもらえばいい、そういう観念についなって、赤字になるとすぐ運賃値上げというように短絡しがちなわけですけれども、そうしないためにはどうしても企業精神というものを導入しなければいかぬということを前から言っているわけですが、その公共性とそれからその企業性の矛盾というのがあるわけで、そのバランスをとりながら再建していくわけですから、非常な名人芸が要るわけです。  その大きな歴史から見ると、国鉄というのが日本にできてから一世紀、百五年たっていて、日本交通幹線の主なものを占めていたのが、新幹線のできた三十九年から赤字に転じて、それから四十八年の石油ショックでまた打撃を受けて、それで五十一年のときに五割上げたら国鉄離れが来てしまった。それで、もうにっちもさっちもいかない、このままではすでに破産状態ということになっているわけですから、私たちも正直に申しますと、国鉄というものは公共性があるのだから、ローカル線なんかで余りひどいローカル線でなければ、国から応分の助成を受けてしかるべくやってくれればいいじゃないか、それぐらいの感じでいたのですけれども、そうしたら国鉄の方では、もうローカル線などは赤字経営だから利用者の要求にこたえられぬ、もうやめさせてもらうということを言い出したわけです。そこまで来ているのか。確かに国鉄の人の目の色も変わってきているのです。  そうすると、そんなにあれするならというのでいろいろ聞いてみたのですけれども、今度の再建法案は三十五万人体制にするということで、これも甘いと言う人はいるのでしょうけれども、しかし、これも着々と進んでいる。それから、ローカル線も一律に政令で一日に一キロ二千人以下のところは全部切ってしまうというのじゃなくて、いろいろ例外を設けているのです。たとえば、朝夕のラッシュの大きいところは特定ローカル線でも残す。それからあと、なだれ地域、十日間ぐらい通えないような一種のなだれ地域があるのですけれども、そういう雪深いところも残す。それから、並行した道路のないところも残す。そういうふうにして残していけば相当残るとぼくは思うのです。  だから、この程度のカットといいますか、全然やめてしまうのじゃなくて、いわゆるバス転換したり、それから第三セクター、いわゆる自治体が企業と一緒になって経営する、自治体は、御承知のように、国鉄に直接出資することができないですから。あるいは、ある野心的な企業家がいて、自分がやりたいという人がいればその人にやらせる。幾らでも方法がありますので、国鉄職員も非常に大変な事態になっているんだということを、いま労組の人たちもようやく意識してきておりますので、労使が協力してもっともっと合理化、減量を進めるという条件つきでこれに賛成いたします。(拍手)
  11. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  次に、高屋参考人にお願いいたします。
  12. 高屋定國

    高屋参考人 高屋でございます。  今回の国鉄再建法案につきまして意見を述べよということでございますので、簡単にこの機会をもちまして私のふだん考えていますことを述べさせていただき、先生方の法案審議参考になればと思って参った次第でございます。  今度の法案が出ました機会国鉄というものを根本的に見直す、これは見るいい機会じゃないかと思うわけであります。と申しますのは、運輸交通というのは本来やはりこれは経済活動でございます。経済活動といえばそこに経済の原則を貫徹しなければならないものだ、私はそう思うのです。しかし、それがいろいろな関係によって、いま問題の中心になっておりますのは、いわゆる地方ローカル線でございますか、それの廃止とか第三セクターに持っていくとかバスにかえるということが中心になっておりますけれども、しかし考えてみましたら、なぜそこに鉄道が置かれたかという歴史を一遍考える必要があるのじゃないか。それはいい面もあれば悪い面もあるでしょうが、その点について簡単に財政的負担でやっていくとかいうことでなくして、財政的負担ということは全国民に対する負担でありますから、そういうことの問題と、それからもう一つは、その責任というものを明確にした上で前に進まなければ国民は納得できないと思います。こういう大きい観点から、いま行き詰まった国鉄再建法案を考えていただきたい、私はそういうふうに思います。  その前提に立って、いろんな問題についてどうするかということを考えなければならない。その場合よく口に出されますのは、公共性とかあるいは全国家的と言われるのですけれども、私はそういう点については余り納得できない。国民の経済活動ばかりじゃなく、あらゆる活動、私はすべてにおいて公共的だと思います。反社会的な活動以外は全部公共的だと思います。こういう複雑な社会においては、それぞれ国民が分業体制の中でいろんなことをやっておるわけです。たとえば町におる八百屋さんも、これは食生活の一部を分担しておられる。これは公共であります。経営規模が大きいからという形において公共性を口にされるのは、私は余り理解できない。こういう観点から今度の問題も考えていただきたいというふうにふだんから考えております。そして、根本的には、経済原則に従うことが資源なき日本の物的あるいは人的資源の配分を公正化するものだ、これをいたずらに人為的にやることは、私は不健全な資源配分になっていくというふうに思います。しかし、具体的にはもうでき上がってしまっている。そこで、この問題が現時点でどうなのかというふうに考えますと、やはり国鉄再建については二点から考えなければいけないと思う。積極的な面と消極的な面です。  積極的な面と申しますのは、やはり運輸交通といたしまして国鉄が持っているネットワークなり情報網なりあるいは不動産なり、いろいろあるわけなんですが、それを現在の社会におけるあらゆる経済活動の中において最大限に利用されておられるかどうか、こういうものを具体的にやっておられるかどうか、私はその点がまだ不十分じゃないかというふうに思います。それから次は、公的負担の問題についてですけれども、たとえば学生の交通割引とかあるいは福祉関係、これは国鉄だけが負担すべきものじゃございません。これは奨学のためならばやはり文部省なりあるいは地方の教育委員会なりその他教育関係が国鉄に対して負担すべきものです。あるいは福祉関係においてもそうです。そういう問題は負担を明確にして、はっきりと分担すべきものは分担する、こういうようにやるべきじゃなかろうか。  それから、消極的な面においては、やはり企業体、経営体としての生産性の問題であります。これが日本の同じような業種、同じような仕事において、現時点において同じような生産性であるか、どうか、こういう問題も厳密に見られる必要があるのじゃないか。私はそれに達してないのじゃないかというふうに感じます。  それから最後に、日本の全運輸交通輸送体系の中で明確に国鉄の分担すべきものはどうであるかということ、これは時代の変化によって変わりますけれども、その位置づけをして、その中でこれだけのものをやるのだというような明確な問題を出すべきである。その中において今度の問題が出されるのであれば私もそう反対しませんけれども、そういう前提がなくして簡単にこれだけが出されてくるということでは賛成しかねるというふうに私は申し上げるわけです。  大ざっぱな点はこうでございますし、また後ほど御質問がございましたらお答えしたいと思いますが、最後に、でき上がったローカル線の問題というのは、私が先ほど一番初めに申し上げましたように、できる問題点は何なのかということまで申し上げますと結論は出てくるのですけれども、しかし、そう簡単に賛成できないのは、一つでき上がってしまうと地域の利害関係者はそれなりの生活関係というものができてしまう。それに対して一片の法案において簡単になされてはまずいのであります。それを実行されるについては、関係者において十分に慎重な配慮の上で物事がなされるべきではなかろうかと考える次第でございます。  簡単でございますけれども、私のこの法案につきましての概略を申し上げて、終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  13. 小此木彦三郎

    小此木委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  14. 小此木彦三郎

    小此木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢橋進君。
  15. 楢橋進

    ○楢橋委員 本日は、参考人各位におかれましては大変貴重な御意見を述べていただきまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  若干の質問を申し上げたいと思うのですが、御存じのとおりに、わが国の交通体系というものが非常に変わってきております。道路交通網が大変整備されまして、またモータリゼーションによって大変な自動車の普及が行われておる。たしかきのう新聞に出ておったと思いますけれども日本自動車生産台数はアメリカ合衆国をも大幅に上回るというような記事を読んだわけであります。また、航空網の方も、ローカル空港を含めまして空港が整備されまして、飛行機の利用客も非常にふえてきておる。そういったことから国鉄利用するお客さんがだんだん減ってきておりまして、今度のいわゆる国鉄再建法というものは、国鉄の減量といいますか、そういった面が非常に強いわけでありますが、角度を変えますと、国鉄再建するためには貨物も含めまして国鉄利用者をふやしまして、そして収入増を図らなければならない。恐らく今度の再建法が成立しますと、売上高といいますか、収入は減るのじゃないだろうかという気がしておるわけでありますが、いま申し上げましたように、国鉄収入をふやすために前向きの面からどのように考えておられるか、これは参考人皆様方にひとつ御意見をお伺いしたいと思います。  まず、関参考人からお願いします。
  16. 関四郎

    関参考人 お答えいたします。  ただいまの収入をふやす方法というようなお話でございますが、私直接その経営の任に当たっておりませんので……。最近、外部から見ておりましても、国鉄鉄道輸送以外のところでもかなり収入の増加を図るような努力をしているように見受けられております。しかしながら、私どもが考えておりますことは、大体日本道路に車が通るようになったのは明治維新以後でありまして、そして長年の間、車交通というものは——鉄道が明治の初めに来たときは非常に大きな驚異であって、鉄道輸送というものに対する国民の期待が非常に大きくなった。これが一つの大きなショックといいますか、そういうことで鉄道に対する過大な期待になっていたのじゃないか。  ヨーロッパの方を見ますと、大体第二次世界大戦が済んだ後では、ヨーロッパ各国とも昔から車用の道路ができておりまして、ドイツなんかはアウトバーンのようなものが戦前からできておりましたし、そういうようなことから、戦後、一九五〇年ぐらいまでの間に、イギリス、フランス、ドイツあたりのような主要国が大体七、八千キロの鉄道を撤去しております。日本では道路が非常に発達してなかったために、鉄道が通るということは地方としては非常に大きな期待を持てることだと思いますが、この辺がヨーロッパと日本の皆さんの考え方の違う点じゃないか。  それで、鉄道本来のものの赤字をそのままにしておいて、ほかで増収を図るとか、また運賃を下げて収入をふやすとかいうことは、現在道路網がヨーロッパと余り違わなくなった、先進国と違わなくなったという時代になりますと、やはり対策としては、先進国の欧州あたりでやっておりました鉄道を必要としないところを撤去するということをもっと勇敢にやるべきだった。  私、実は盛岡の鉄道管理局長をやっておりましたときに、田沢湖線をぜひ通せということを県知事が言っておりまして、それと一緒に、あそこに仙岩峠という峠があるのですが、そこに道路をつくっておりました。だから、道路を通すなら鉄道建設はやめたらどうだと言ったところが、知事いわく、どちらもやるのだ。というのは、道路には負担金があるけれども鉄道は全く国の金でもってやって、おまけに固定資産税が入ってくる。こんなのをやらなくともいいと言ったらおれは落選しちゃう、こういうような話をしたぐらいでありまして、これが日本のいまの体質であるから、そういう体質をここである程度、乱暴かもしれないけれども、ショック療法としてでも、とにかく世の中が変わったのだ、道路網がこれだけ整備されたら鉄道だけによらなくても十分に生活できるのだということをやはり相当強い態度で示すということが大事じゃないか。少しばかりの増収とかなんとかいうことでは、とても国鉄財政は直らない。私はこれを年来確信しておりまして、どうもお答えになっているかどうかわかりませんが、簡単に……。
  17. 雨宮義直

    雨宮参考人 お答えさせていただきます。  考えによっては大変むずかしい問題で、日常活動をやっておられる国鉄当局がお答えすればいいのかと思いますけれども、私がどんな基本的な枠組みでこういう問題を考えているのかということで答えさせていただきます。  このことは、実は私、先ほどの参考意見の中でも織り込んでおいたわけですが、収入増を図る、結局利用者をふやす方策をどう考えるかということがまず先決なわけです。先ほど言いましたように、国際的に見て鉄道利用客をふやすには、交通サービス改善するのと運賃を下げるほかないのですね。交通サービス改善の眼目はスピードアップなのです。これはイギリスでも西ドイツでもそうですけれども、最近インターンティーを導入して大変成功しているのです。実際客がふえているのです。これは実際、統計がありますからごらんになればわかると思いますけれども、大変好評ですし、ふえている。ですから、客をふやすという意味から言えば、交通サービス改善の中でスピードアップというのが大変大きな効果があると思うのです。それからもう一つは、何と言っても運賃だと思うのです。これは最近の国有鉄道運賃は大変高くなりまして、都市では物すごい矛盾があるわけですが、やはり運賃を割り引くという考え方で、先ほども言いましたように、国際的には成功した例もありますし、運賃を下げて増収になって、しかも収支改善したのですから、こういう国際的経験もあるのですから、こういうものの中から、以前のような硬直的な考え方でなくて取り組まれたらいかがだろうかというのが私の考えです。
  18. 村尾清一

    村尾参考人 国鉄収入をふやすためにはどうしたらよいかということは、非常にむずかしいことですけれども、先ほど雨宮先生が言われたように、サービス改善運賃を下げる、それしかないと思うのです。  たとえば、サービス改善というのはどういうことがあるかというと、動労が出してきているのには、たとえば新幹線で貨物を運んだらどうかとか、女性コンパニオンをつくったらどうかとか、それから座席が五列になっているけれども四列にしたらどうかとか、いろいろ細かなことを言っておりますけれども、要するにまだサービス精神において国鉄は足りないところがあるというのがあると思います。だから、サービス改善ということの限度はあると思いますけれども、もっとやはりやるべきだと思います。
  19. 高屋定國

    高屋参考人 収入増と申しますと、やはり先ほど参考人の方がおっしゃったように、サービスの向上というものと、それから地域的に、たとえば東京都内とか近畿とかいうように私鉄と競合して、非常に国鉄の高いところは国鉄離れしておりますから、私は週に一回京都から垂水まで講義に行っておりますが、国鉄で行きますと九百七十円、私鉄で行きますと五百七十円、一時間ちょっとかかりますが、それで片道が四百円違うのです。これでは私鉄へ行きますよ。こういうことはきめ細かい運賃問題というのを考えることが必要だと思う。  二番目は、やはり国鉄が持っている不動産、ネットワーク、あるいは情報網というものを最大限利用して、関連産業をもっと大いにやられたらいいじゃないですか。ホテルとか事務所とか百貨店、何でもいいと思う。私鉄のその点を参考にされたらいいと思う。そして、収入を上げられたらいいと思う。  それからもう一つは、文化の地方誘致分散、これに国鉄も一緒になってやられる、これは都市に集中化した文化を地方に持っていくということは非常にいいことだと思う。国鉄もそれをやられて利用者がふえるということをお考えになられたらどうか、大体そういうふうなことを考えております。
  20. 楢橋進

    ○楢橋委員 雨宮先生、高屋先生から国鉄総合交通政策の中ではっきりした位置づけというものを考えなければならないという御意見があったわけですが、国鉄に対しまして、国の総合政策の中でどのような役割りといいますか、位置づけというものを、非常に問題が大きいですけれども、先ほどそういった意見がございましたので、お聞かせをいただければありがたいと思います。
  21. 雨宮義直

    雨宮参考人 これもまた大変大きな問題ですが、私の考えている枠組みを申し上げますと、国鉄日本交通体系の中でどう位置づけるかという問題を考えますときには、実は鉄道の問題だけを考えておったのではだめでして、交通機関全般にわたる調整が念頭にあるわけです。このことは、日本のいまの行政の中では大変むずかしいこともよく承知しておりますけれども交通手段として日本交通体系の中に入り込んでいるものといいますのは、鉄道がありますし、道路がありますし、航空がありますし、海運があるわけですね。それぞれ基本的な通路として鉄路と空港と港湾と道路を持っているわけですね。この基礎施設について、一体どういう体系を日本交通体系として持とうとするのか、この考え方なしには総合交通体系の問題というのは考えられない、こう考えるわけです。これはここ数年来主張がされているところだと思いますけれども、国の全体的な会計制度の中でこういう問題を考えるような仕組みを考えなければならぬじゃないかというふうに考えるわけです。言葉はどういう言葉を使うにせよ、総合交通特別会計制度というものをつくって、日本の基本的な通路については枠組みをつくっていくような考え方を出していかないと、総合交通体系の中での国鉄の位置づけというのはむずかしかろう、こう考えます。
  22. 高屋定國

    高屋参考人 非常にむずかしいことでございますが、やはり鉄道と申しても、一つは経済性の観点からと、それから二つ目はエネルギーの観点から、二点からこれを推し進めて、航空、船舶、自動車それから鉄道、これをまず考える。これは前提になると思うのですね。それから、今後石油が一バレル五十ドルぐらいになるのじゃないかというように言われております。そういう予測も持ちながら、これらのモータリゼーションというものが一体野放しでいいのかどうかということも考えなければいけないと思う。そういう形において大量輸送型は国鉄に持っていく、鉄道に持ってくる。もっと大きな荷物は船舶でいく、あるいは非常に遠く離れたというところは航空で持っていくというようなことで総合的に見るべきじゃなかろうか、それが大切なこと。一番問題にしなければいけないのはモータリゼーションの問題、野放しでいいかどうか。モータリゼーションの問題はエネルギーの問題とかあるいは石油価格の問題もありますけれども、それ以上に今後道路網の問題というのは、これは直接に自動車を持っておる方にはかかってこないけれども、実際全体として見れば、これ以上ふえますとこれは急速な社会的負担増になる、こういうことも計算しなければいけないということで、いま雨宮参考人がおっしゃったように、各地域と中央において各利害関係者委員会を持ってやるべきじゃなかろうかというふうに考えております。
  23. 楢橋進

    ○楢橋委員 関参考人から若干明電舎の経営の問題に触れられたのですが、非常に長く国鉄におられまして技術の大先輩というふうに伺っておりますが、新幹線が世界最高の技術と言われておりますけれども、それ以降の技術開発というものが、国民の、あるいは利用者の求めるニーズに対応できない。そういったことが経営改善の立ちおくれた一つの原因ではないかというふうにも考えるわけでありますけれども、今後、大先輩であります関参考人が、将来の国鉄技術開発についての可能性についてどういうふうに考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  24. 関四郎

    関参考人 お答えいたします。  ちょうど私も新幹線建設の当時おりましたものですから、開通のときはやめておりましたけれども、この当時の新幹線は当初予算の倍になったというので非常に高くなった。それで約五百キロですが、これが三千八百億かかって非常に高いと言われたのですが、これは車両込みでキロメートル当たり七億でできたわけです。しかも、日本で一番人口密度の高い、しかも人口の四割が東京−大阪問の五百キロにいる。そして、経済発展した生産の四割が五百キロの間に集中しているというところは世界じゅうにないわけでありまして、これが開通したところが、開通した初年度においてすでに三百億の黒字を出して、そしてごく最近まで東海道新幹線だけで一千億以上の黒字を出していた。これは非常に大きな輸送革命であって、当時鉄道斜陽論というのが世界じゅうにありましたけれども、新幹線を見て、世界じゅうの鉄道がこれでもって鉄道はまだ生きていけるのだということであった。これは先ほどスピードとサービスの向上ということをほかの参考人の方もおっしゃいましたが、全くそのとおりであります。  ところが、大阪以西の新幹線を二百十キロを二百六十キロにするということになりましたために建設費が三倍くらいになりまして、いまの東北新幹線はキロメートル当たり大体六十億となっております。そして、しかも人口密度から産業というものが非常に減っているというために、世界一新しい輸送機関であったこの新幹線という方式が、必ずしもいつでもいいものだと限らないということがわかってきたわけであります。恐らく東北新幹線が開通しましたら旧幹線の方には余り乗らなくなるし、これまた大変な大きな赤字になるんじゃないか、私、そう想像いたしております。  しかし、それではそれでいいか。そのためにいま国鉄では、うわさに聞きますと、この新幹線方式をもっと安くやるということについて真剣に、ことに先ほど申しました技術総合体系というような研究をきっかけにしまして、もっと安く新幹線をつくるという方法はないかということの探索と、それからもう一つは、いまモノレールとか磁気浮上式の鉄道とかというようなものが研究されておりますが、これらについては、確かにスピードの速いものは試運転では五百キロ以上も出しましたけれども、しかし、輸送力をそこまで増すということとそのコストの点で、これは私個人の意見でありますが、余り将来性があるとは思われないわけであります。しかし、とにかくこの現在ある幹線系鉄道または新幹線のようなものももっと技術的に検討して、安くて同じ効果を上げるというものを考え出すというのが国鉄に関係した技術者の義務でありますし、必ずそういうところがあって、そこで限度というものが決まってくる、その将来を大体予測した限度というのが今度の幹線系地方線との境目になっておる、こういうふうに私は解釈しております。
  25. 小此木彦三郎

    小此木委員長 次に、久保三郎君。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  26. 久保三郎

    久保(三)委員 社会党の久保です。  参考人の皆さん、本日はお忙しいところをおいでいただきまして、貴重な御意見を拝聴することができまして、大変有意義でありがたくお礼申し上げておきます。  そこで、限られた時間でありますので、全部の参考人方々からお聞きできないかもしれませんが、できるだけ補充した御意見をお願いしたいと思っております。  まず第一に、関参考人にお伺いしたいのでありますが、一つは、いまもお話がありました新しい鉄道建設についてであります。  新線建設について、今度提案されてきたものは鉄道建設公団法の法律の例外規定みたいなものを出してまいりまして、国鉄の新線建設は、御承知のように、敷設法に基づいて国鉄経営を前提にして建設するわけでありますが、その中でも特にAB線と言われるローカル線、そういうものについて、われわれとしてはこの際国鉄再建ばかりじゃなくて、日本交通体系そのものを一遍見直す必要がありはしないかとも考えております。  特に地域交通については、いま提案されておるように、在来線であるローカル線、特に輸送効率の低いローカル線は、基準の決めようにもよりますけれども、一定の基準によって廃止をしていこうというのが大きな問題になっております。そこで、その問題はなるほど問題でありますが、それほどに考えているなら、まず第一に、われわれは、輸送効率が関与しても、法律に予想するような特定地方交通線というものに該当するようなものは改めて建設すべきではないではないかというふうに考えております。  そういうことを前提にすれば、ただいま申し上げたような法律、敷設法あるいは公団法の特例のように地方鉄道業者によって、中身は業者並びに第三セクター、特に第三セクターの問題が多いように思いますけれども、その手によって要請があれば従来どおり建設をします、そして、できたものは貸し付けまたは譲渡、当然いまの国鉄に貸していることと同じ方式で無償で貸し付けることになろうかと思うのですが、われわれとしては、国鉄経営がこういうふうになったし、国鉄特定地方交通線を処分しようというさなかでありますから、政府自体も国鉄のためにそういう路線をつくることにやはり内心じくじたるものがあって、風穴をあけておく、しかし新線建設はやめられないということで、政治路線と一言で言いますが、政治路線を今後も引き続いてつくるためには特例が必要だというので、この法律でそういう条項を設けようとしているのではないかというふうに思うのでありますが、国鉄の新線と言われるいわゆるAB線の建設について関さんはどういうふうにお考えでありますか。これが一つです。  それからもう一つは、いまもお話がありました整備五線の問題がありますが、これまで新幹線をやってまいりましたし、遠からず東北あるいは上越、そういうものができ上がるわけなのでありますが、それにさらに列島改造論で全国ネットワークの一環としてやろうというのが整備五線でありまして、政府はこの建設についていまだに明確な線を出していません。私は、お話しのとおり、もしもこういうものをこのままの体制の中で建設していくとするならば、なるほどお説のように割り安の建設費でよしんばつくったにしても、在来線の維持は困難になるであろう、こういうふうに思っています。私は単に在来線を死守しようとか固守しようということだけでは交通政策は進められませんけれども、やはり判断の問題だと思うのですね。将来の交通体系の中で主要幹線は全部新幹線にするということは、決めようによっては一つの決め方であります。その場合には、在来線の処理はもはやこれは廃線を前提にしなければならぬだろうというふうに私は思うのです。それは極端な考えかもしれませんが、そういうものを何ら議論もせずに列島改造論に見られるような形で整備五線をつくるというのは、私は間違いではないかというふうに思うのです。  それからもう一つは、いま政府・与党の中で議論しているのは、国鉄経営は非常に苦しいから整備五線の建設費はひとつ国鉄の負担にならない金でやろうじゃないかというので、財源調達について検討を加えているようであります。また、国鉄当局、特に総裁は、利息のつかない金ならば結構でございますという答弁もこの席でしたことがあります。非常に不見識だと私どもは思っているわけなんであります。本当に国鉄再建なり日本鉄道のあり方を考えているのかどうか疑いを持つような考えもあるわけでありまして、この辺について国鉄の、しかも技術者の最高までおやりになった関さんから、先ほどの話に続いて整備五線の扱いについてどのようにお考えでありますか、お伺いしたい。  それからもう一つは、整備五線の話は別としても、間もなく開通しますところの東北や上越の新幹線関連して、手前どもはこれに連係して、ビームラインというか、その先ですね、こういうものの改良に重点を置くと同時に、在来線でいま幹線と言われるものでも単線のものが数多くあります。そういうものを一刻も早く複線化して国鉄の機能を十分にやらせる。あるいは電化して効率的なものをつくり出すことが先決ではないかと思うのですが、将来の展望に対して整備五線を優先すべきか、在来の幹線の輸送力増強、近代化を推進することがいいのか。もちろん両方やるという説もあるかもしれませんが、われわれとしては、在来の幹線の輸送力を近代化し、増強するということだと思うのですが、その点についてお伺いしたいと思います。  それから続いて、雨宮参考人にお伺いしたいことは運賃制度についてであります。  御指摘のとおり、今回の提案は、言うならローカル線で値上げをして収支改善を図ろうという、私は先ほど手前ども修正案を提案して説明しましたけれども、これは木によって魚を求めるごときものであって、収支改善どころか、収支はかえって悪くなるだろうと思うし、何かローカル線から現在の利用者を追い出す一つの手段として使うのではないかとさえ思っているわけでありまして、正しいやり方ではない。むしろ御指摘がありましたように、都心部を中心にする並行する地方鉄道軌道に対して国鉄割り高運賃になっている面がありますから、そういうものを調整するのがまず第一に国鉄再建の道ではないかと提言したわけです。しかしながら、基本的には国鉄運賃制度というか、国鉄ばかりじゃなくて交通運輸の運賃料金制度というのは、御案内のとおり、それぞれ事業法によって個別原価主義でやっておりますから、当初の出発はかなり並行でありましたが、いまや全然土台が違ってまいりましたので、そこから出てくるところの運賃料金はかなり格差がある、不均衡があります。  そういうことから言って、総合交通体系を策定しても、運賃制度がいまのように個別原価主義でだけいくというようなことでは、国鉄は御案内のとおり全国にネットワークを持っておりまして、これが一律賃率制、片方はそれぞれの地域で個別原価主義でありますから、当然いまのような時代になりますれば、都会地では割り高になる、ローカルでは安くなるということになろうかと思うので、必ずしも適正な資源配分には通じないのではないかと思うのであります。  そういう意味から言って、運賃料金制度をもう一遍総体的に洗い直し、特に都会地におけるところのような運賃は各個ばらばらの運賃がありますから、やはり運輸連合的なものをつくりながら、そこで共通運賃制度を導入するとかいうのを思い切ってやらぬと、国鉄のためにも地域交通のためにもならぬではないか。だから、百歩譲って手前どもは、そういう運賃制度をもう一遍洗い直して、その中からローカル線の運賃はどうあるべきかを考える時期ではないかと思うのであります。いまや短兵急なローカル線の追い出しのための運賃値上げに反対している理由はそこにあるわけなんですが、雨宮参考人運賃に対する御見解を承りたい。  それから、村尾参考人にお伺いしたいと思います。  野党はこの法案に部分的に反対しています。賛成する部分は、御承知のように、過去債務のたな上げについては、国鉄経営の実態から見て、これは当然やむを得ない措置だと思って賛成であります。しかし、御指摘のように、ローカル線の扱いがあとは中心であります。この扱いは、心情としてはわからぬことではありませんけれども、扱いそのものについてはわれわれは反対である。もう一つは何が反対かというと、御指摘の政令による基準ですね。手前どもは、廃止を前提にしたり、あるいは運賃値上げを前提にしてローカル線をある一定の基準で決めることに反対であります。廃止の前提や運賃値上げに直接通ずる基準であってはならぬと思っているわけなんであります。ただし、ローカル線の中でも、いろいろこれから地域交通の分担の問題あるいは地域交通の発展のために国鉄のローカル線はいかにあるべきか。それからもう一つは、国民大衆の中から大変声が出ております。ローカル線においてもサービスが必ずしも十分ではない、もっと輸送サービス改善することによって利用度は上がるわけではないかというふうにも思うし、また地域住民のためにかなり裨益するところがあるわけであります。ところが、ことさらにローカル線から旅客や荷物を追い出す施策に終始している国鉄経営に対してはかなり厳しい批判があります。そういう意味からいって一つには反対をしているわけであります。しかも、そういう廃止や値上げを前提にする基準でありますから、そういうことであるとするならば、法律事項ではないかとさえわれわれは言っているのです。政令に任せて、役人の手によって勝手な基準を決めさせたんでは困るということさえ言っているのであります。いずれにしても、審議過程でこの基準は最終までにはこの委員会でわれわれはきちっと確認していくつもりであります。  いずれにしても、その基準がどう決まろうとも、大変むずかしい問題。廃止を前提、運賃値上げを前提のことであってはならない。むしろ私どもは、地域交通にどういうふうな役割りをさせるかということは民主的な手法によって協議させることが当然ではないか。なるほど国鉄の心情からいけば、もはやそういう協議をやっても結論はつかないですよという話なんです。結論はつかないかもしれませんね。つかなくても、これは民主的な手法を放棄すべきではないと思うのであります。そういうことの議論の分かれ目が非常にあるわけであります。いずれにしても、そういうことを考えていきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。  それからもう一つ村尾参考人からお話がありました地方の権限の問題であります。  なるほど、御指摘のように、いま直ちに運輸省の権限を地方自治体に譲れと言っても、とてもじゃないが官僚の抵抗に遭って、これはできません。われわれ本委員会も超党派の決議をしたことがあるのですが、これは二年以上たっておりますが、いまだに抵抗してあります。手前どもは、少なくとも地域交通に対する計画やその他を立てるぐらいの責任地方自治体が持つべきだし、責任を持つと同時に、そうすれば財源的にも責任を持つことが当然に出てくると思うのであります。これはなかなかそう簡単にはいかないことは事実でありますから、それを一挙にいま、きょうあすにやろうたって無理でありますから、この法律案の中で、少なくとも最終結論協議会で、結論が出ない場合には県知事の意見を出してもらおうじゃないか、こういうことで修正をお願いしているわけであります。そういうことについていかがでしょうか、お伺いしたいと思うのです。  それから、それは必ずしも廃止をやめさせるというか、そういう前提であって、乗らぬものは廃止だと思うのです。どういうふうにするかは地域の住民の問題と国鉄当局の熱意いかんにかかわると私は思っているわけでありまして、廃止反対だけととられてもこれは困ると思う。いずれにしても、それをどうするかということをオープンにかけていくのがいいのではないかと思うのです。  それからもう一つ村尾参考人にお伺いしたいのは、第三セクターのお話がありまして、なるほど今度の法案には第三セクターということを前提にして書いているものがかなりあります。それは御説のとおり、現行法体系の中では地方自治体は国鉄に対して資金援助はできないということですから、第三セクターならばできるであろうということです。これはやりようだろうと思うのです。そのやりようができないから第三セクターに持っていこうというのは、当局者の言うならば口実ではないかというふうに私は思うのです。これはやろうとすればできるのです。そういうものを放棄して、簡便に、いずれにしてももはや厄介者だからどこかに経営は分離していこうということでありまして、手前どものとらざるところであります。  時間もありませんので、高屋参考人にもお聞きしたいのですが、一応お三人の方からお聞きしたいと思います。  以上です。お願いします。
  27. 関四郎

    関参考人 お答えいたします。  余りたくさん御質問があったものですから忘れまして、全部網羅できるか、大変申しわけないと思います。  実は、今度のこの法案の中に、新線建設をすることを認めるというような条文があるのは、恐らくこれはもう全然やらないと言ってしまっても——たとえですが、私は政府の方から聞いたわけじゃありませんからわかりませんが、たとえば北海道の東苫小牧なんかの開発が非常に進んできて、あそこに線路が要るというようなことが仮に起きたとしたら、これをやらざるを得ない場合も生じ得るのじゃないかということも考えたのではないかと私は考えます。  それで久保先生は、整備幹線はどうか、私は、あれは絶対反対です、これは久保先生と同じですが。あれは先生は、整備幹線をやるために新線建設を認めるという条項が残ったのではないか、そうお考えじゃないかもしれませんけれども、まあ政府から聞いてもおりませんからわかりませんが、むしろ日本が相当に経済成長しておりますから、どこかとんでもないところに、考えてもいなかったところに、新しい大きな、たとえば生産工場ができたというようなところに鉄道が要るという場合を考えて、そういうことの条項ができたのではないかと考えております。これは想像でありまして、お答えになっていないかもしれません。  それから、これは御質問の中になかったかと思いますが、国鉄使命は何かということは、先ほど冒頭陳述で申し上げたので繰り返すまでもございませんが、大都市圏都市間の旅客輸送、それから大量貨物の中長距離輸送というようなところが国鉄の分担すべきところであるということを冒頭に申し上げたわけでございまして、これを進めるためには現在のままでいいかというと、現在の旧幹線であっても、これは相当に手をかけて増強もしなければならないし、できるだけサービスを上げていく。いまのところそういうところをほったらかして、やめるところだけやめるという意味ではないと考えておりますし、また、そうすべきではないと思います。しかし、道路網がこれだけできたときにはやはり従来とは考え方を変えて、鉄道が通っていることを名誉であるとかというように余りこだわらずに、国鉄が自立できるということに対して、手をかしてやるということはぜひ必要じゃないか。これはいままでは政府当局も、何か皆さんの御協力を得るためか、言い方がおとなしく、波風を立てないように言う傾向があったために、どうも期限を切るとかやるとかということがはっきりしなかったけれども、今度はこれをかなり思い切って言っておりますので、これはそういうふうなショックを与えることが、地方の人たちになるほど世の中は変わったんだなということを気をつけさせるためには、多少乱暴な話ではございますが、ぜひ必要なことではないか。納得ずくでやるということはもちろん大事でありますが、これも私は冒頭陳述で、世の中が変わった、国鉄職員の頭も切りかえろと申しましたけれども、やはり国民の皆さん方も頭を切りかえていただきたい、こういうことも含めて申し上げるつもりでございますが、どうぞよろしく……。
  28. 雨宮義直

    雨宮参考人 運賃制度についての御質問だったと思います。私、参考意見の中で総合交通体系ということを発言したわけですけれども、実はこの運賃制度という問題についても総合交通体系というような枠組みの中で当然考えていかなければならない、こういうふうに考えておるわけです。といいますのは、日本運賃制度は、戦後運賃料金の個別原価主義に基づいておったわけですが、これはいわば日本交通政策が競争的な交通政策であったことの一つは基盤だろうと思うのです。こういうことの延長で実はいま問題になっているような国鉄再建問題も問われてくる、こう思うのです。  そこで、今後の運賃制度については、競争的な交通政策の中で競争に任せておくのではなくて、どうしても調整が必要になってくるのだろう、こう考えるわけです。そこで、その調整の手段として総合交通体系とか総合交通政策ということを申し上げるわけですが、これも全国レベルと地域レベルがございまして、全国レベルですと国鉄幹線と航空機との運賃が問題になるでしょうから、これは総合運賃政策とでもいうようなもので調整していくことが必要だろうと思うのです。ここ数年、大変航空機が伸びて国鉄利用が少ないということの背景に運賃水準のアンバランスがあったことは皆さんよく御承知のとおりで、そういう形での資源の利用というのは大変むだでありますから、どうしても全国的なレベルでの調整ということが今後当然必要になってくるだろうと思います。  また、地方レベルでは、おっしゃるように、できれば共通賃率による運賃が形成されれば、これは利用者にとっても大変便利なわけです。世界の都市を見ましても、たとえばドイツですと、ハンブルクとかミュンヘンとかフランクフルトとか、大変便利なんですね。私、フランクフルトへ行きましても、地下鉄に乗って、その券でまたバスへ乗れる。大変便利な都市交通になるわけです。それで、日本のように私鉄国鉄運賃が違う、したがって安い方に客が流れていく、こういうことではなくて、利用者サービスへの需要に応じて交通機関が選択できる、こういうことを考えるには、どうしても共通賃率ということを導入しなければならないでしょうし、日本の現実を踏まえますとなかなかむずかしい課題ではあるわけですけれども、運輸連合的なものを考えていかないと運賃制度のあり方としては今後だめなんではないか、こういうふうに考えております。  以上です。
  29. 村尾清一

    村尾参考人 お答えいたします。  先ほど、廃止を前提に政令でいきなりやめるのは非常に穏当でないやり方じゃないかという御意見でありました。しかし、この場合、どこを廃止するかということを国会で決めるとなりますと、またこれもいろいろ不穏当なことが出てくるので、むしろこれはもう運輸省責任で決めて、いわば非常に暴力的といいますか、ばっさりといいますか、あいくちを突きつける形でやった方がかえっていい面もあるのではないかと思います。ただし、それは非常に地方の実情と合わないときには、その知事さんの意見を入れたらいいというあれですが、それも知事さんは公選ですので、どうしても地元のことがあって、恐らく現実の問題となってきたら、これはやめろということをぼくは言えないと思います。それでも何とか知事の意見を入れるというふうな道、住民とかその代表である知事の意見を非常に反映させる道というのは当然残しておくべきで、政令ができて何人以下だからこれはもう全部廃止してしまえとかバス転換してしまえという体制になるのは、ちょっと行き過ぎのような気がします。  それから、第三セクターにするのは国鉄責任をもう放棄したのではないかというあれですけれども公共団体側としてどうしても自分のところに必要だと思うときには、自分が金を出してどこかの企業と一緒になってやるという制度があってもぼくはいいと思います。国鉄が、どうしても自分はここはやれぬのだ——国鉄も恐らく本当はやりたいのです。もうからぬところでも国が出してくれるならやりたいのですけれども、それがもうやれなくなっているわけですから。
  30. 久保三郎

    久保(三)委員 もう時間でありますから再質問はいたしかねますので失礼をしますが、ただ私の申し上げたことの多少受け取り方が違っておられるようなので一、二申し上げたいと思うのですが、関参考人からのお話で、苫小牧東とかいうような新線建設についてわれわれは否定しているわけではないのです。それは現行の法律の中でも十分に用が足せるであろう、こういうふうに思っているわけなんで、それでも用が足りないときにはその都度お決めになった方が最も適切ではないか。オープンに、前広にそういう受け皿だけをたくさんつくるというのは、どうもわれわれとしては新線建設を慫慂していくのではないかというふうにとりますし、現にそういう動きがあるということでございます。  それから、ショックを与えるというのは、私もショックを与えたいくらいに国鉄の内部はどうかと思うときもあります。全部じゃないが、たくさんの方がおりますし、特に管理者の毅然たる態度がこの際必要なことは関さんと同感です。隗より始めよですから、なかなか始めないでどうして下の者がきちんとなるかという感じもします。そういうことは十分考えていかなければならぬ。  それから、もう一つ村尾さんのお話でありますが、われわれは先ほどから申し上げているように、最初から廃止を前提にした基準をつくってぶっかけていくということはどうもいかがかと思うのでありまして、御案内かもしれませんが、北海道に札沼線という線路があります。これの石狩沼田から新十津川の間は、いつの時代かに線路を外しました。ついこの間、私はそのところを見てきましたが、話に聞くというと、石狩沼田から新十津川間の線路をやめるときに、もっともここはこれに並行して函館本線が走っています。そういうこともありましたが、国鉄当局は地元との折衝を千回ぐらいやったそうです。そういう努力が、今度の法律ができ、政令が出るというとやらぬでも済むということです。大変手っ取り早くできることではありますが、果たしてそういうことでいいのだろうかという疑問を持っておりますので、われわれはいまのようなやり方は困る。  それから、お話にはありませんでしたが、地方交通線、この基準がどう決まるのかわかりませんが、決まりようによっては一万キロになります。国鉄のやや半分の線路は特別運賃をやろう、こういうことなんで、そういうものが一片の基準で決まることについてわれわれはいかがか、こういうふうに思っているわけでありますので、御了解をいただきたいというふうに思います。  以上です。ありがとうございました。
  31. 宮崎茂一

    ○宮崎委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時二十二分開議
  32. 小此木彦三郎

    小此木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人に対する質疑を続行いたします。西中清君。
  33. 西中清

    ○西中委員 本日は、大変御多用中のところ、参考人の皆さんには御苦労さまでございます。  国鉄のこの再建の問題は、国鉄のみならず日本財政の上で非常に重大な問題でございますし、また国民の足としても基幹的な役割りを今日まで果たしてまいったわけでございますが、いずれにしても今回この財政再建ということが焦点で法案提出されておるわけであります。先ほども参考人の皆さんからお話がございましたけれども国鉄は過去四十四年に第一次再建計画を策定して以来、四十八年、五十一年、五十二年、五十四年と数次にわたりまして計画をつくり、その都度修正を行うというような形でまいってきておるわけでございます。それは五十四年の決算にも見られますように、八千二百十八億円の赤字が計上され、繰り越し損失は巨大な額に上がっておるわけでございます。五十五年決算はこのまま推移すれば約一兆円とも言われておるわけでございますが、いずれにしてもこういう姿を見る場合に、再建計画の破綻が続いてきたことを意味していると思います。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕  そこで、本法案提出されておりますけれども法案対策は三十五万人体制であるとか地方ローカル線の切り捨て等の減量経営、さらには過去債務のたな上げ、そして赤字ローカル線対策の推進、こういったことが柱になっております。これ以外に問題なのは、年金の問題、それから借入金依存の投資の推進、さらにまた上越、東北新幹線の開業によりますところの赤字等々、これ以外にも解決しなければならぬ大きな問題が山積をいたしておるわけでございます。  したがいまして、本法案成立をいたしましても国鉄財政再建は不可能ではないか。先ほども参考人から御指摘もございましたけれども、こういう意見は非常に多いし、私もそのように予測をいたしておるわけでございますけれども、四人の参考人の皆さん方からこの点についての御意見をまずお伺いをいたしたいと存ずる次第でございます。  よろしくお願いします。
  34. 関四郎

    関参考人 お答え申し上げます。  非常にむずかしい問題だと思います。しかし、もしも政府当局または国民皆様方のこれだけでもやらせようというバックがなかったら、なおさらこれはできないと思います。しかし、これは不可能でなくて、ぜひとも可能にしなければならない問題だと思います。そういう意味で、可能にしようということで皆様方がバックアップしてくださってやらせていただければ、これは必ずできるものだと思います。技術的に見てこの法案をそういうように私は考えておりまして、それで前から大変不謹慎な言い方ですがショックを与えるということを申し上げたのですが、国会も腹を決めてしっかりやれと言っているのだというところを国鉄の当局その他国民の皆さんに示していただければ必ずできるものだ、また、でかさなければならないものだ、こういうように考えております。
  35. 雨宮義直

    雨宮参考人 大変大きな質問をされまして、どうお答えしていいかちょっと弱っているのですけれども、私としましてはきょう冒頭で述べました私の意見に、いま質問されたことは全部含まれているのではないか、そのように考えております。余り論点が大きくてちょうとお答えしにくうございますので、私の冒頭の意見が回答である、そう言わしていただきます。
  36. 村尾清一

    村尾参考人 この法案が通ると六十年までに一兆円の財政補助があって、それから六千億の退職金及びその年金への補助があれば収支バランスができる、そういうことになっておりますので、これは望みなきにあらずだ、私はそう思っております。
  37. 高屋定國

    高屋参考人 お答えいたします。  大変大きな問題でございますが、冒頭で申し上げましたように、失礼でございますけれども過去の国鉄再建案というものは全部失敗したのです。今度の法案が通ってもそうだろうと思います。もっと根本的な問題があるのじゃないか。それは確かに物質的なものもありますけれども、私は本気にやるという気構えがまだ見えないと思う。たとえば無料パスだとかいろんな優遇措置、これはわずかでしょう。しかし、国民に本当にそういう気持ちを持っているということを見せるために、精神的にもあらゆる優遇措置をやめるというところまでもやられていないし、積極策もまだやっていないという限りにおいては、これでは私はまた失敗を重ねるのではないかというように思います。
  38. 西中清

    ○西中委員 いまもちょっとお話ありましたけれども、内容から申しますと収支のバランスをとるということに焦点がかかっておるわけでございますね。しかし、審議過程でもいまのお話でも、私も同じように思うのですけれども、やはりこの再建のためには、政府ももちろんでありますけれども国鉄当局経営努力というものを間断なく果敢にやらなければならない。それでなければ国民の共有財産としての国鉄、また公共性を持っておる国民の足、こういう立場からいって、単に財政上の援助をするとか、また赤字ローカル線を切り捨てるとか、こういうことも国民の支持、理解がなければできる話じゃないし、また納得しがたい問題だと思います。そういう点で国鉄経営努力が何よりも先行していかなければならない。これが私たちにはまだよく理解できないし、その姿勢が十分見られないというふうに考えているわけでございます。したがいまして、この努力を一体どういうふうにお考えか、そういう点で努力はしているという評価をしている方もいらっしゃるようでございますけれども、これは法案に賛成、反対は別として、国鉄としてはやはりこういうようにすべきだという皆さん方の何かいいお考え、国鉄に対する注文、なるべく具体的な何かありましたならばお聞かせをいただきたい。  全参考人の皆さんにお伺いしたいと思います。
  39. 関四郎

    関参考人 これは繰り返して申しますならば、私も国鉄にいてかなりむずかしい新しい問題をやってきておりましたが、これはやはり最高責任者から幹部がまず本当にそういうところを示すということが非常に大事だと思います。しかし、それをやるためには国会が、国鉄がそう言っているのだから言うとおりやらせてやろう、そして本当にやらなかったら責任をとらせるというような決心をして監視するということをやっていただけばできると思います。私は、過去の在職中の経験から見てできないことではない、こういうふうに確信しております。
  40. 雨宮義直

    雨宮参考人 お答えします。  御質問の趣旨は、収支バランスをとるという面で当局の経営努力について考えはどうかということかと思います。直接お答えになるか、どうかわからないのですけれども、やはり収支バランスをとる努力国鉄の中ですべきだと思うのですね。ただ、こういう言葉があるのですけれども、ヨーロッパの鉄道でも、自立採算には失敗したけれども収支均衡には成功したという評価がヨーロッパの鉄道にはありますね。つまりどういうことかといいますと、自立採算、言うところの独立採算はできっこないのですが、収入の中に助成を含めた分と支出はバランスする、これは成功した。この例が外国の鉄道でも多いですね。こういう中で生き生きとした鉄道の姿が描かれてくるんだろうと思うのです。これを追求するには国鉄の自己責任部分というものを明らかにしていく必要があるので、これを明らかにしないと国鉄としては努力のしようがないと思うのですね。そこで、一体何を助成して何を自己責任部分で追求していくのか、この辺が私としては収支バランスをとるという意味での国鉄当局経営努力だろうと思います。
  41. 村尾清一

    村尾参考人 国鉄の監査委員長の安居さんが、いろいろなほかの要素を洗って国鉄努力だけでやれることをあれすると、五年間で大体二千五百億円回復すると収支がバランスする、年だと五百億だ、それならやれぬことはないだろうということをおっしゃっておりましたけれども、そういう前途に明かりが見えてきている。組合の人たちもいままで何となく斜陽産業で何をやってもどうせだめだというような感じがだんだん少し薄らいできたという感じがします。それだけです。
  42. 高屋定國

    高屋参考人 お答えいたします。  これは午前中私が冒頭に申し上げましたように、積極的と消極的と二つに分けて考えた場合でも、積極的な営業努力というものはまだまだあるんじゃないか。私が申し上げましたように、ある形においては国鉄が持たなくてもいいものまでも負担しているわけですから、そういうものは負担責任の方から持ってくればいい。これは一つの言葉で言えば同じ税金だからという声もあるのですけれども、私はそれは違うと思うのです。明確にはっきりすべきだと思う。あるいは不動産とかネット、いろいろな持っている国鉄の有利な点を最大限に利用することがまだまだあるというふうに思います。  それから二番目、消極的な面においては、企業努力の問題であります。それについてまだまだある。それから、年金の問題、新線の問題。いまこんなに大変なときにまだ赤字になるであろうということが明確な新線をやろうということを聞いたら、これは本当に真剣にやってないということは明白なことです。それからもう一つ、年金の問題一つにしましても、国鉄公共性というならば、そのために税金から補助せいというんなら、国民と同じような年金を考えたらどうですか。たとえば国民年金、厚生年金、共済年金、ばらばらで共済年金はいいと言う。国民立場から見てもこれは承知できない。こういう努力はまだまだあるんじゃないかと私は思います。
  43. 西中清

    ○西中委員 関参考人村尾参考人にお伺いをいたしたいと思います。  今度の法案の中でいろいろ問題はあるわけですけれども、中でも地方交通線対策についてお伺いをしたいと思うのです。今度の審議の中でのいろいろな政府の答弁で出てまいりました問題としては、たとえば地方交通線に現在より割り高運賃、当面五割増しを導入するというお話でございます。それから、バス等に転換する場合の線区に国が鉄道バスとの格差を補助する、しかし補助は五年間に限る、その後はわからない、やらない、こういう形になっております。結局国鉄赤字というものが地域住民なり地方公共団体なりの負担増ということになるわけでございますね。結局地方交通線対策というものは、地方交通サービスが低下する、一方で運賃負担がふえる、こういったことで大変な不安を抱いておるのが現状でございます。何といっても地方交通線は住民の生活に密着した交通手段であることは間違いございませんし、それなりの過去のいろいろな経緯も歴史もあってそれぞれに深い愛着を持っておるわけであります。ですから、この地方交通線対策を進めるに当たっては地域地域の住民の意向というものを十分に反映させることが大事だろうと思うのです。  こういった点について、大変な問題でございますが、どういう御意見をお持ちになっておるか、お伺いをしたいと思います。
  44. 関四郎

    関参考人 お答え申します。  冒頭にも申し上げましたとおり、そういうようなところの撤去とか何かの場所に当たった方々には大変なショックであろうし、迷惑もかかるだろうから、そういう人たちの気持ちを十分に察してやるようにということを私申し上げているわけでございます。ただしかし、法律でどうであるからとかなんとかということをもう考えないでやれというくらいの乱暴なことを申しました。実は三十年に十河総裁が就任されまして、そのときの国鉄の工事経費は五百億でありました。それで、車両が新しくつくれない。そのために輸送に非常に混乱を来したというときに、車両を買う金が五百億では足りないという場合に、十河総裁は、五カ年年賦でもって七分五厘の利子をつけて、車両会社に自分で資金調達さして、それを五カ年間で償還していこうという計画を立てられました。ところが、経理当局は、一年間の国庫債務は許されているけれども、五カ年なんかの長期の国庫債務は憲法違反だという話をされたときに、十河総裁は、憲法違反はおれがやってやるからやれ、これくらいの意気込みでなければ、あのころの、昭和三十年の国鉄は、ちょうど宇高連絡船の沈没したときの長崎さんの後に十河さんが行かれたわけですが、あのときの国鉄だって非常に苦しい状態だった。しかし、そういうふうにトップから、憲法を破ってまで——憲法問題、大変うるさい問題になっていますが、これはまあ一つの修飾語でしょうけれども、憲法違反はおれがやるから、とにかく言ったとおりやれと言って車両を整備されました。そして、そのときに、実は国じゅうの通信線を、裸線を廃止してマイクロウエーブの通信線も、これは借り上げ通信線ということでもってやって、国内の車両と通信を整備したというような例があって、こういうようなトップ、幹部の決心次第だということを申し上げたいわけで、その決心を十分に実行させるように、ひとつ国会から激励していただきたいというのが私の意見でございます。
  45. 村尾清一

    村尾参考人 地交線に対しては、その土地土地の人が特別の感情を持っていると思います。たとえば自分の娘がこの汽車で嫁に行ったとか、これで息子が出征したとか、もう理屈でない、理性を超えたものを持っていると思うのです。だから、そういうものを一定の人数以下の方は廃止するというと、それはもうどうしても反対だというのは無理ないのです。心情的に言えばそうなのはわかっているのですけれども、ただそれを国鉄から言うと、いわゆる大都市でもうけた部分を地方のそれに回していた、できる間はそれをやっていた。ただ、それが限度に来てやれなくなった。そういう立場になった以上、自分の孫が出征したり娘が嫁に行ったこの線をどうしても廃止したくないんだったら、何とかして自分が金を出してでも、国からも千何百億か出してもらっているのですから、その上に自分もそれじゃあと千円余分に出そうとか、そういうふうに考えていただくのもやむを得ないのじゃないか、そういう気がいたします。
  46. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  47. 楢橋進

    ○楢橋委員長代理 小渕正義君。
  48. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 民社党の小渕です。  お忙しい中、参考人の皆さん方、大変御苦労さまでございます。  今回の再建案については、いまさら私が申し上げるまでもなく、参考人の皆さん方は十分御承知の上で御意見を述べられているわけでありますので、あえて端的に御質問申し上げます。  これは高屋参考人から一つのはっきりした御意見が出されておりましたが、要するに、最も根本的に大事な問題として、本気で国鉄当局がやる気構えがまだ見えない、そういう意味のことを一つポイントにして言われておったわけであります。そういう点で考えてみました場合に、本当に国鉄自身が特権的なものをすべて吐き出して、真に裸になって、いまから本当にスタートしよう、そういう形で、そういうふうな感じでこの再建案に取り組んだ姿だというふうに、あとの方、関参考人雨宮参考人村尾参考人、残り三人の方は、こういった姿勢についてはどのようにお考えなのか。もう大体国鉄は今回はやる気があるということでこういう再建案が出たんだというふうにお考えなのか。やはり高屋参考人の言われるように、まだまだ自分たちの側から見た場合においては、ぬくぬくとしたところ、自分たちの特権等についてはさわらないで、そして、まだまだそういう余地があるんじゃないかという角度で物を見られておるのかどうか。そこらあたり、ひとつお三人の方にお尋ねいたしたいと思います。
  49. 関四郎

    関参考人 お答え申します。  これは幾ら言っても水かけ論になると思いますが、私はここで国会の皆さん方も、国鉄本気になってやれという態度を見せるか、まだまだ怪しい、本気じゃないと言うかでもって、やる方の腹構えが違ってくると思います。やはり信頼して、本当にやるかどうかすっかり見てやろうということが一番大事じゃないか。そういう意味で、私、全面的に本法案に賛成だと言ったのは、多少、たとえば二年たったらもう自動的にやめてしまうんだというような、一見乱暴に見えるようなものもありますけれども、そういうものでも通して、とにかく本気にやってみろ、そのかわりおまえの言うとおりやらしてやるからやってみろという激励というか、そういう態度を見せていただくことがこの際大変に大事だと思います。実を言いますと、国鉄再建というのはこれが最後のチャンスじゃないかというふうに考えられますので、私としては端的にそういうことを申し上げております。
  50. 雨宮義直

    雨宮参考人 大変答えにくい質問であるわけです。ただ、私は冒頭に、この再建案では、最後のチャンスとはいえ、国鉄再建できないだろうということは申し上げたわけです。  それは別として、一体本気にやる気があるのかどうか、私はどう見ているか、これはちょっと私の判断を留保さしていただきたいと思います。
  51. 村尾清一

    村尾参考人 実は、国鉄はこれから十年の間に二十万人の人が定年退職をしていくわけです。絶好のチャンスですね。だから、それをどういうふうにして国鉄がやっていくか、それを本気でやるかどうかというのは、私もこれから注目さしていただきたいと思います。
  52. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ありがとうございました。  先ほどから、関参考人の方から絶えず言われておるのですが、ともかく国鉄自身、おまえたちが十分やれるだけやれ、国会は国会として、それについては十分見守って、われわれとしてやるべきものはやるんだぞ、しかし責任を持たせてしっかりやらせるところはやらせろ、簡単に言うとこういう意味でのお話がよくあっておったようであります。いろいろ高屋参考人からの御指摘にもあったのでありますが、国鉄がもっと多角的経営をやったらどうかとか、国鉄の持つ特殊性の優位性、持てる力をフルに生かして経営に当たったらどうかとか、いろいろそういうことが御意見として出されておったわけであります。こういった点は、前々から、お互いいろいろな角度から国鉄の問題を見る場合に言われておるわけでありますが、それがいざとなった場合になかなか取り組めない。その要因は一体何だろうか。  私は、個人的な見解ですが、国有鉄道法という、ともかく何かをやるにしても、法律でがんじがらめになってしまっている。何かやるとしたら、まず法律を改正しなければいかぬ。国鉄自身が本当にその気になってやろうとしても、そういった一つの大枠があるからこそ、いつの間にかああいった体質になってしまっているのじゃないか。私から言わせますならば、国鉄当局自身から、われわれがもう少し自由に何でもやれるような形にしてくれということがどうして出ないのだろうかと、逆にそういう気がするわけであります。  そういう意味で、私、素人ですけれども、国有財産といいますか、国民の共有財産であるという形の中で成り立っている国鉄というのは、やはりそういう発想で考え、そういう発想で物事を見ながら経営をやっていこうということは無理なんでしょうか。皆さん方参考人の方でもし御意見があれば、それぞれお聞かせいただきたいと思います。
  53. 関四郎

    関参考人 端的に申しますと、従来、新しい鉄道を敷くということになりますと、これは鉄道建設審議会にかけて議論されます。そうすると、どこに鉄道を敷くかということがたちまちわかってしまって、その沿線の土地は上がります。これが私鉄のようなところでやる場合には、先に買収しておいてから鉄道を敷く、そういうようなことで不動産でもうけるというようなことができますが、それが国鉄という政府機関として縛られているところのやりにくさだと思います。実を言いますと、そういうことがあっても、最近はステーションデパートとかなんかたくさんつくって、そういうところで、持っている不動産を利用して幾らかでも収入増を図ろうと非常に努力をしているようでありますが、本筋の鉄道でちゃんと経営が成り立っていかなければ、そういうことを幾らやってもこれは幾らの足しにもならない、やらないよりはいいでしょうが、そういうふうに私は考えている。ですから、やはり本筋の鉄道をちゃんと採算のとれるように——こういうふうにやったら採算とれますと言ったら、それじゃやってみろ、そのかわりもしうまくいかなかった場合には責任をとらせるという態度があってやらせてみるということが大事じゃないかと思って先ほどから申し上げておるわけでございます。
  54. 雨宮義直

    雨宮参考人 私から申し上げることは余りないのですけれども、確かに多角経営を考えるべきだという基本線は、私は反対ではありません。ただ、これは従来からの問題で民業との関連があってなかなか容易でない問題であろうことは事実です。そこで、基本としては、国有鉄道というのは交通サービスを生産してそれを販売しているわけですから、本業で成り立つように考えていく中でできるだけ多角経営の方針も考える、これしかないのではなかろうかと考えております。
  55. 村尾清一

    村尾参考人 亡くなった石田総裁が、いろいろな公共負担やそういうものを押しつけられて、女の子が赤ん坊を負わされていろいろな荷物を持たされるようなものだと言っていたし、財界の人も、国鉄というのはがんじがらめに縛られて水の中にほうり込まれて泳げと言われているようなものだと言っている。いろいろな法律の束縛がありますが、この間の弾力法案運賃の値上げを運輸大臣判断だけでできるようになっても、そう勝手に上げられるものではないのですね。幾ら当事者能力があっても国鉄が金がなければしようがないので、そういうことを考えます。
  56. 高屋定國

    高屋参考人 お答え申しますが、ここまで来ました限りにおいてやはり国鉄というやり方、企業形態自身までもある程度考えなければならない段階に来ているのじゃないか。やはりこれは公共性という名によって実は非公共性的なことになっている面もあるのじゃないかという形まで突っ込まなければいけないところまで来ているのではないかということまで考えております。
  57. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 雨宮参考人にお尋ねいたしますが、言われた要旨は、国鉄というのはやはり公共福祉に寄与せねばならぬ、それがまず第一であって、そういう中で、でき得れば運賃政策は、もっと利用しやすいように、運賃を上げるということよりも、いかに安くして大衆により利用されるかという方向で取り組むべきじゃないかというような示唆があったのじゃないかと受けとめておりますが、そういう中で、いままでやっているのはすべてが後追い対策、後追いの処置ばかりやっているじゃないか、もっと積極的な対策というか、そういうものを考えたらどうかということを言われておったと思いますが、それは具体的にどういうことを指すのかということが一つ。  それから私は、今日の国鉄の置かれている現状は、十五年、二十年昔と違って、重点経営といいますか、やはり新幹線一つの大きな特徴、それから大都市圏中心としたああいった都市における一つの役割り、それから中堅の都市間の輸送、それにそれぞれの地方では特に通勤その他の生活線を中心とした地方線、大体こういう四つぐらいに分けられた中でそれぞれ特徴を生かすようにやるべきじゃないかという気がするわけでありますが、そこらあたりについて、従来のようにただ国鉄ということだけですべてにあらゆるものを考えていくということでは、もう現状に合わぬのじゃないかという気がするわけでありますが、そういった考え方は、一体雨宮参考人のあれからいきますならば、そういう整理すること自身がやはり国鉄公共性からいっていかぬ、無理だ、そういうことはいかぬのじゃないかというような御判断なのかどうか、そこらあたりについて御質問いたします。
  58. 雨宮義直

    雨宮参考人 御質問、二点あったかと思うのですけれども、最初、前向きの財政補助とはどういうことかということです。私はきょう冒頭に、公共福祉及び公共性という視点を踏まえて今回の法案について批判をしたわけです。私、実は運賃問題の展望としてはこういう展望を持っているのですけれども国有鉄道福祉の視点を入れて考えますと、言うところの営業路線、つまり営業路線としてやっていける路線と営業路線としてやっていけない路線、これが地方ローカル線になるかと思うのですけれども、分けなければならないだろう、こういうふうに考えているわけです。従来ですと、全国一律賃率の中でもうかったところからもうからないところへ補てんする、内部補助の原理を使っておったわけですが、この内部補助の原理も使いにくくなったわけです。そこで私としては、営業路線についてはかなり競争市場での運賃を考えながら運賃を設定して、割引運賃すら考えるわけです。こういう中でむしろ増収すらできるのじゃないかということを指摘したのは先ほどのとおりです。  ところで、地方ローカル線ですけれども、これを割り高運賃という考え方でやるのではなくて、営業路線に対してはむしろ、言葉は適切でないかもしれませんけれども福祉路線として維持するならば維持せざるを得ないだろう。そうなってきますと、その赤字部分については当然補てんをしなければならないわけです。これは前向きの助成、つまり先ほど私は外国の例を挙げたわけですけれども公共サービス義務として、パブリック・サービス・オブリゲーションとして維持しなければならない路線に対しては、イギリス鉄道でも補助しているように維持していく、こういう政策を考えざるを得ないのじゃないか、こういう点がこの法案の中には見られない、したがって前向きの助成がないのではないか、こう申し上げたわけです。  それから、二番目の御質問は、新幹線鉄道網都市間の鉄道都市内の鉄道地方ローカル線、この四つぐらいに市場が分かれるのではなかろうかという御指摘ですね。これはそのとおりで、私も先ほどインターンティーというような形での高速列車がヨーロッパで成功している例を申し上げましたけれども、やはり鉄道都市間で成功するためには、好むと好まざるとにかかわらず、ある程度のスピードアップによって競争機関に対抗するほかないと思うのです。その意味では、新幹線網や都市鉄道では市場を踏まえた競争が可能だと思うのです。  ところで、問題は地方交通線の問題と思うのですけれども地方交通線については、最初に申し上げた第一点の御質問と関連して、残すとすれば福祉路線として残していかざるを得ない、つまり割り高で残すのではなくて、前向きの形での助成を考えて残す、こういう考えでおります。
  59. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 最後になりますが、関参考人にお尋ねいたします。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕  経歴、御経験からいって、国鉄に勤務され、しかも特に技術畑を歩いてこられた。特に現在はそういった技術関係の会社での責任者になられておるようでありますが、関参考人から見られた場合に、今日までのそういう過去の国鉄での生活経験その他を含めて、いま端的に国鉄でメスを入れなければならないのはどういう部門か。われわれが聞いておる範囲でも、特にいまああいった運行関係においては、かなりいろいろと合理化されながらかなり努力されているけれども、全然メスが入れられていないのが、何といいますか、工機部ですか、国鉄の中では専門的にはどう言うんですかね、ああいう車体の点検整備、いろいろな機械の、そういう何とか工機部というのがあるそうですが、そういうところが民間ベースで考えたらもう考えられないようなスローピッチで関係の仕事がされているような話も聞くわけであります。要するに、そういった一つの独占的な関係、そういうところとか国鉄病院といいますか、年間何十億かしらの赤字を出しているとか、端的に言って、鉄道が走る場合の、どうしても必要でありますけれども、そういう付帯設備部門の中において、わりあい根に近代的なメスが入れられていないのじゃないかということをよく聞くわけでありますが、端的にお聞きいたしますが、いままでの御経験その他からいって、そこらあたりの御見解がありますれば関参考人からお聞かせいただきたい、かように思います。
  60. 関四郎

    関参考人 お答え申し上げます。  いろいろ問題がありますが、二つは、地方交通、これは私に直接の質問じゃなかったですけれども、先ほどございました、地方運賃が安くて中央が犠牲になっているじゃないかというのは、結局何らかの形で国鉄赤字というものは国民の税金でそれは償われているということを考えますと、一地方を便利にするために国民全体の税金の中から賄うということは、やはりそれは一体納得されることであろうかということは、私ども、ひとつ考えておかなければならないことじゃないかと思います。  それからもう一つは、新幹線の問題でありますが、新幹線は、実は東京−大阪間は、これは先ほども申しましたと思いますが、二キロメーター当たり車両込みで七億でできていたものが、現在、東北新幹線なんか六十億かかっている。これはどうしてかと申しますと、大阪から西の方は速度を上げたということと、それからオイルショックの関係や何かでもっていろいろな工事費が上がったということがダブってそういうような工事費になったと思いますが、しかし、そういうような工事費を考えた場合には、当然これは採算に乗るか乗らないかということは、これはそろばんをとればわかることであって、これは東北地方のような人口の少ない、私も東北ですから東北のことを悪く言ってもあれではないと思いますが、お許しいただきたいと思うのですが、私も東北でございますが、それをやはり人口の少ないところ、先ほど申しましたが、東京−大阪間はわずか五百キロのところに日本の全人口の四割が集まっていて、生産高の四割を占めているという世界でまれに見る過密の場所に、ああいうキロメーター七億の新幹線をつくったから大成功をおさめたのであって、これがどこでも通用するというわけにはいかないということから見て、新幹線については、先ほども申し上げましたように、整備幹線については私は非常に反対だということを申し上げたわけであります。しかし、そういうようなことを全部お許しいただけるなら、そしてもう一つは、たとえば東京から博多までの新幹線がありますが、大阪から向こうはほとんど空気を運んで走るようなかっこうだけれども、依然として全部が十六両編成であります。それで私は、大阪から西は八両でいいじゃないか、ところが、あれの分割併合には組合が反対だというようなことがやらない理由になっている。そういうようなことをひとつ、今度は労働組合も大分協力的になったようでありますし、とにかく国鉄当局に組合が反対だということを言わせないように、組合が協力して何でもやってやる、われわれが生まれ変わるために、国鉄がつぶれて年金ももらえないようになったら大変だから一緒に協力するというふうに持っていくように、ひとつ与野党一緒に賛成して、そのかわり十分に監視するというふうにやっていただけるのが大変ありがたいと思います。
  61. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 終わります。
  62. 小此木彦三郎

    小此木委員長 三浦久君。
  63. 三浦久

    ○三浦(久)委員 参考人の皆さん、大変御苦労さんでございます。  私どもも、国鉄財政再建というものはどうしてもやらなければならない課題だというふうに考えています。ただ私は、いま政府が出してきている再建法案、これでは再建ができないというふうに考えているのですけれども、たとえば地方交通線赤字は三〇%なんですね。それで、いま六十年度までに乗車密度二千人未満の特定地方交通線廃止してしまう、バス転換をする、こう言っておりますが、その赤字額というのはわずか九百九十五億円なのです。全体の赤字の一〇%強にしか当たらないわけであります。そうして、赤字の大部分というのは、線区別に言いますと、幹線赤字であります。幹線赤字、たとえば東海道本線の赤字というのは一年間に千二百億円もあります。したがって、全体の七〇%が幹線赤字ということになるわけですね。  それからまた、客貨別損益を見てまいりますと、貨物の赤字というのが大変多うございます。たとえば五十三年度では六千七十六億円あります。全体の赤字は九千億円ですね。その全体の赤字の七〇%が貨物の赤字であります。そしてまた、昭和三十九年度から国鉄赤字になったわけですが、それから五十三年度まで、貨物の赤字は累積どのぐらいあるかというと、四兆円をはるかに超えております。そして、旅客はどうかといいますと、旅客の赤字はそれに比べるとうんと少なくて、七千億円であります。こういう状況を見てまいりますと、やはり貨物の赤字対策、これをしっかりやらないと、私は、この国鉄財政再建はできないというふうに思っているのです。  ところが、政府の出してきた経営指標、これはこの貨物問題について申し上げますと、五十四年度から六十年度まで、毎年毎年貨物の輸送量はふえないのです。四百億トンキロなのです。いまもそうです。六十年度もそうなのです。全然ふえないんですね。そうすると、これは運賃の値上げをしなければ、貨物での収益はふえないということになると思います。ところが、貨物の運賃を上げろ、こう言うと、いや荷離れしちゃってだめだ、国鉄離れしちゃってだめだというので、旅客よりもはるかにアップ率は低いわけですね。そうすると、一体どういうようにして運収を上げていくのかという具体策がないわけです。  それで私は、専門家の皆さん方がいらっしゃいますので、この貨物の赤字対策、これをどういうふうにしたらいいものか、お尋ねを申し上げたいと思うのです。各参考人皆様方にお願いを申し上げたいと思います。
  64. 関四郎

    関参考人 お答え申し上げます。  個々のそういう対策についてのものは、私も立案当局じゃないものですからよくわかりませんが、とにかく戦前と戦後は、日本の産業構造は全く変わっております。たとえば、戦前は、製鉄一つにしてみましても、鉄鉱石も石炭も国内の山から出して、それを海岸へ輸送してやった。だから、鉄道の力を借りなければならなかった。それが戦後は、こういう原料はほとんど海外から来ているから、沿岸にあるそういうような工場には鉄道に頼むものがない。貨物がふえないのは産業構造が変わったから当然の帰結だと思います。国鉄当局がどういうように考えたかわかりませんが、それに対しての対策がおくれたということがあるかもしれませんが、少なくともこのためには貨物で物を送るための操車場の整備とか、そういうようなものも当然含んでくると思います。しかし、とにかくそういうような個々の問題をあげつらっているよりも、むしろ全体的にとにかく黒字に転換するということに全力を注げ、それが経営者の責任だというふうにして、そのかわりおれたちは賛成してやる、こういうふうなやり方でやる方が人の使い方がいいのじゃないか、こういうふうに思っております。  それで、実は貨物の状態がそうであるばかりでなくて、貨物のいろいろな操車場に入っての解結の問題も、操車場を自動化してもなかなか人間を減らすのは組合関係でむずかしいとかなんとか言って、国鉄当局側に組合の反対があれだからできないというようなことを言わせないように、ひとつ組合が大いに積極的に当局者を引っ張っていくような意気込みで合理化を進めていただくのがいいのじゃないか。私が冒頭に国鉄の幹部並びに職員ということでお願い申し上げたのはそういう点でございます。
  65. 雨宮義直

    雨宮参考人 貨物が確かに巨額な赤字を出していることは御指摘のとおりですね。貨物輸送を国鉄がやめてしまえば大変赤字負担がなくなって楽なのでしょうけれども、なかなかそうはいかないところだと思うのです。  私の基本的な考え方を申し上げますと、貨物に関しては貨物固有の経費という考え方がございまして、貨物輸送をする以上どうしてもかかる費用は運賃として負担していくという方向を貫くべきだと思うのですね。  もう一つ、この問題だけで貨物問題は解決しないのでして、つまり貨物輸送市場というのは国有鉄道以外にトラックと内航海運があるわけですけれども、内航海運の問題はさておいて、実は日本の貨物輸送市場をかなり混乱させているのはトラック輸送市場ですね。これは実はトラック労働者の問題が入ってくるわけですけれども、大変トラック労働者が過酷な労働条件の中で物資を運んでいるという中で、実は競争になっていないわけですね。先ほど申し上げましたように、戦後の日本交通政策は競争を原理にして一定の成果を上げましたけれども、競争にならないような競争を実はトラック輸送と鉄道がやっているわけですね。そこで、これは行政の介入が必要なのでしょうけれども、トラック労働者の過酷な労働条件というのは調整していく、こういう中で実は理想的な貨物輸送市場というのはでき上がってくるのだと思うのです。そういう状況の中で、片方では貨物固有の経費を負担しながら、片方で労働市場が制御されていく中で国鉄の貨物輸送というのはよみがえってくるのじゃないか、私はこう考えているわけです。ですから、単に国鉄貨物輸送の問題を鉄道の中の問題だけで考えるのじゃなくて、日本全体の貨物輸送市場という視点で見る必要があるというのが私の考え方でございます。
  66. 村尾清一

    村尾参考人 ヨーロッパでは鉄道というのは大体貨物を運んで、人間は車で運ぶというふうになってきつつありますが、わが国ではまだ鉄道はどっちかというと人が中心になっております。貨物は、昔のように、工場ができたらすぐそこに引き込み線ができてというような時代ではなくて、輸送構造が変わってきてしまいましたので、昔のようにしてもだめなのですが、ただ具体的に言うと、順法闘争のために荷主がいつ着くかわからぬというので、せっかく戻りかけてくるのが逃げたというような例を聞いております。それだけです。
  67. 高屋定國

    高屋参考人 個別的に問題になりますと私もなかなかむずかしいのでございますけれども、貨物については何と申しましても産業構造が変わったということと、トラック問題を並行的に考えた上で考える。ほかの参考人の方もおっしゃいましたように、トラックが実際に公平な競争でない形で出ているとか、しかしながらまた逆に見ますと、トラックというのはある工場の入り口から行くという便利さもあるわけなので、こういう点はよく見てみると、産業構造の転換ということとの関連において考えなければならない。そういうことで、だんだん減るということもある程度やむを得ないだろう。  しかしながら、もう一つは、大きい問題として、トラック輸送がもたらす社会的問題、ことにエネルギーの問題あるいは公害問題、こういう問題をもう少しやれば、もう少し公平な競争問題が出てくるのじゃないかというふうに考えます。  それ以外私はまだ突っ込んでおりませんので、失礼でございますけれども……。
  68. 三浦久

    ○三浦(久)委員 村尾参考人にお尋ねいたします。  このローカル線の廃止の問題と地域開発との関連をどう見るのかというのが大変重要な問題だと私は思っております。ただ一定の基準で、地域の実情というものを全く考慮に入れないでずばずば切ってしまう。富士見産婦人科みたいじゃないかという人もおりましたけれども、たとえば産炭地域振興臨時措置法という法律があります。旧産炭地の振興をこの法律によって行っております。また、北海道開発も法律によって行っているわけですね。そのほか新産都市、そのほかにも国土庁管轄の定住圏構想とか、そういうものもあります。ですから、そういう地域の将来の発展展望、こういうものを考慮に入れた上で、やる場合でも十分にそういうものを考慮に入れなければならないのじゃないかというふうに私は思うのですが、その点については参考人はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  69. 村尾清一

    村尾参考人 そういうあれでは、どの問題でも全部言われるのですけれども、各省の間の連絡というのが十分とれていないために整合性を欠く部分がやはりあると思います。それは御指摘のとおりだと思います。
  70. 三浦久

    ○三浦(久)委員 その一定の基準について、参考人は先ほど雪で十日間以上道路が閉鎖されたとか並行道路がないとか、それからまた混雑時に片道一千人以上乗る場合には例外措置があるのだから十分残るというお話でしたね。ところが、いま道路整備されているからこれではもうほんのわずかしか残らないのです。そういう状況なんですよ。それで、政府はこういう重要な基準まで政府案としては出してきていない。それは自治省とか建設省とか国土庁とか、各省とこの政令案について合意ができていないのです。そういう段階でいましゃにむに審議を進めているというのが実情なのですね。私ども大変けしからぬ話だというふうに思っておるわけなのですけれども、それは私の意見ということにとどめておきます。  それで、関参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、国鉄の場合は利息の負担というのが大変大きいですね、これも御承知のとおりであります。五十四年度でも八千二百五十一億円の利子負担で、一日に二十三億円支払っております。これだけ利息を払うと大概普通の会社だったらやっていけないのじゃないかと私は思うのですけれども、財投からの融資は別といたしまして、大企業や大銀行が持っている鉄道債券、この鉄道債券の残高が現在五兆三千億円あります。一年間にこれだけでも三千億円以上の利息になります。元利合計の償還額を入れますと五千億円をはるかに超えるという膨大な額であります。こういう金利負担、また元金の償還、こういうものを一時ストップするとかいろいろな手当てをしなければ、この資本主義社会の中の企業というものは、破産状態に陥っていればこれを再建するというのは不可能に近いのではないかと私は思うのですね。そういう意味で、こういう膨大な利子負担というものを解消するためには、私はこういう大企業や大銀行が持っている鉄道債券、こういうものをこの債権者たちにやはり利息の支払いを、六十年が再建のめどであれば六十年度までは待ってもらうとか、そういう措置を講ずる必要がある。これはどこの会社でもやっております。鉄道で言えば京成電鉄もいまやっていますね。ですから、国鉄だけ大企業や大銀行に毎日毎日巨額な利息を払い、元金を支払うというようなことは、やはり私は一定の制限を加えるべきじゃないかというふうに思っているのですが、参考人のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
  71. 関四郎

    関参考人 いまの御質問に対しては、私、技術の方はあれですが、国債問題は鉄道債もさることながら、国債が非常に大きくなって国債発行を制限しようというような時代でありまして、非常にむずかしい問題だと思いますので、私の説明の範囲外じゃないかと思いますが、しかし……。
  72. 三浦久

    ○三浦(久)委員 おわかりにならなければ結構です。それから、やはり道路と同じように国鉄がいろいろな設備投資をいたしますね。新幹線をつくっております。また、いろいろな線増をやる、複線化をやる、電化をやる、いろいろな設備投資をいたしておるわけでありますけれども、そういういわゆる鉄道の基礎的な設備、たとえば駅舎であるとか線路であるとか、そういうものは国の負担でやるべきだと私は思うのです。運賃でやるべきじゃない、国の負担でやるべきである。ということは、これをやっていますと、もう大変な利子負担になってしまう、借金だらけになってしまっているわけですね、いまみたいに。新幹線をつくるとか、どこかにまた線をつくるとか、そういうようなことは全部国の政策でやらしているわけですね。ですから、当然国が責任を持ってやる、そして、いわゆる運賃というのはランニングコストを賄う、そういう程度にするべきだというふうに思っているのですけれども、一遍にはできなくても徐々にそういう方向に持っていかなければならぬと思っているのですが、各参考人の皆さんの御意見をお承りいたしたいと思います。
  73. 関四郎

    関参考人 そういうふうにやっていただけば国鉄は大変喜ぶと思いますが、しかし、私はそれで心配いたしますのは、国でやってくれるのだからといって非常に必要以上にぜいたくな金のかかった設備になるというようなことになると、これは総体的に見てやはりマイナスだ。必要にして十分というようなことは、やはり経営上から見て判断していかないと、国にやってもらうんだとなると、最近の、たとえば新線建設鉄道公団にやってもらうときには、国鉄は新しい線ができると人数がふえますから、メンテナンスフリーで無人で保守の要らない設備にしてくれというような注文をつけるものですから、非常にりっぱになりまして、そういう点で、もしも私が国鉄であればそういうことはやはり国にお願いするということはしたくないと私は考えております。
  74. 雨宮義直

    雨宮参考人 冒頭の私の意見陳述の中でいまの御質問に関連した発言をしておきましたので、繰り返すことは必要ないと思うのです。私は、通路費負担を公的負担でする考え方を考えるべきだということを申し上げたわけです。  あのときも申し上げたのですけれども、これは実は日本ばかりじゃなくて、西ドイツで実際に四つのモデルをつくって、実質的に分離した場合はどうなるかという計算をしたことがあるのですね。日本でもやはりこういうことをすべきだと思うのです。そういうことをした上で一体どうなのか、ただ論議しているだけじゃなくて行政当局でこういうモデルをつくって、その結果一体どういうことになるのか、私はやる値打ちがあるというふうに考えております。
  75. 村尾清一

    村尾参考人 戦後の日本でやはり道路に対する投資に比べて鉄道に対する投資は足りなかったと思います。
  76. 高屋定國

    高屋参考人 私は、すぐにはその御意見に賛成しかねるわけです。と申しますのは、一番初め申し上げましたように、輸送とかこういうことは全部経済活動だと思っておりますから、それがあらゆる形において補助され、いろいろなことをやるということは、人工的なことになるということは正しい人的物的資源の配分を曲げることになるというので、私はすぐには賛成しかねます。
  77. 三浦久

    ○三浦(久)委員 ありがとうございました。
  78. 小此木彦三郎

    小此木委員長 中馬弘毅君。
  79. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いま非常に大きな問題になっております三K赤字一つ国鉄であるわけでございますけれども、三Kいずれをとりましても、やはり根本的な制度そのものを改革していかなければ解決にならないと思うのですね。少々の手直しでは根本的な解決にならないと思っております。そういう意味で、今回の国鉄法案、これだけですべて解決されるとはもちろん思ってないわけで、しかし、関参考人がおっしゃっておりましたように、一つの突破口となるということで私は賛成している立場なんでございますけれども国鉄というものが果たしてこういう経営形態でいいのかどうかというのに非常に疑問を感じるわけです。  たとえば、欧米の大きな会社でもそれぞれはディビジョンに分けて、そして、それぞれに社長がおって、そして、それが経営責任を持つ。もし、そこが赤字を出すならばその社長は首になる。こういう形で責任を持って経営を任されているわけですね。しかし、国鉄の場合にはこれが単一の企業体でございまして、事業部にも何にも分かれておらない。まして経営責任があって、失敗した場合の責任といったこともとられないというようなことでございます。  そういうことを考えるときに、国鉄のいまの巨大な経営形態で果たしていいのかどうか、管理体制としてこれでいいのかどうかということに非常に疑問を持っております。その点について、それぞれの参考人の方から御意見をいただきたいと思います。
  80. 関四郎

    関参考人 お答えいたします。  この経営形態については、私どもちょうど三十年ぐらい前に、松永安左衛門の産業計画会議でもって民営分割論ということを大分検討したことがあります。そのとき松永翁は、とにかくいまのままで置いたら国鉄は大赤字になる、松永さんの言ったとおりになっていったわけですが、それは経営責任というものがはっきりしていない。そのときに民営分割論という題目を、私も常任委員に入っていたものですから、国鉄は徹底的な改革が必要であるという題名に変えてもらったのですが、あのときに民営に賛成してやっておいたらよかったかなという感じもするのですが、しかし果たしてどうだったろうか。結局その人が非常に国のためを思って公平なふうにやってくれればいいけれども、それが自分のふところを肥やそうというような人物がもしも総裁に選ばれますと、非常にこれはおかしなことになってしまう。国の名前において非常に変なことになるということを心配しまして、私ども、至らなかったかもしれませんけれども、そういうことがあります。  もう一つは、昔私ども入りましたときは鉄道省に入ったわけでございます。戦後にこれが公共企業体になって分割されまして、しかし、そのときは公共企業体ですから国鉄は国会に呼ばれることがなかったのです。そして、運輸省が全部代弁してというよりも、運輸省が監督官庁であって、全部運輸省の方で国鉄のいましているような答弁をしたわけですが、ちょうど長崎総裁のときだったと思いますが、鉄道会館問題から直接呼び出される習慣がついてしまいまして、それで私ども国鉄にいるときは大分呼び出されたわけでございますが、しかし経営形態としては、完全に官営であるか民営であるか、それともいまの公共企業体であるかという三つのどれを選択するかということかと思いますが、いまのようにとにかく公共企業体の総裁は会社の社長だというようにして、国会の運輸委員会が役員会、ボード・オブ・ディレクターズのあれになってでもその責任を追及するというぐらいに、それですから私は、任せておいて責任を追及すべきだというような、現在を肯定する姿勢なのです。これが現在として一番いい方式であるかどうかということは、私も判断がつきかねますが、一応三つの場合を私経験して、現在公共企業体という状態にある場合には、せっかく経営を任せてやっているのだから、先ほど申しましたが、これが最後のチャンスで、幸いに組合関係も非常によくなってきたように伺っておりますので、この公共企業体のいいところもあるはずですから、こういう機会にひとつ思い切ってやってみろというのが必要ではないか、そういうように私は考えております。
  81. 中馬弘毅

    ○中馬委員 全体のことでお答えいただきましたけれども、民間であってもあるいは国営であってもあるいは公共企業体であっても、いまのように単一で一つ事業経営形態にするのがいいのかどうか、それぞれに分割して、そして管理体制をはっきりする、責任体制をはっきりするという形がとれるのではないかと思うのですが、その点についてもお答え願いたいと思います。
  82. 関四郎

    関参考人 それはどちらでもできると思います。もうコンピューターも発達しておりますので、各境界を通過する人とか貨物とかの運賃計算なども、これは自動的にできるようになるから、そういうことは簡単にできると思います。  しかし、たとえばそこの社長にどういう人になってもらうか。そうすると、これもどうも名前を挙げていいかどうかわかりませんが、九州でいうと、九州電力の相談役をやっておられる瓦林さんは、いま九州の鉄道国鉄の非常勤理事になっておられますが、あの鉄道をそっくりくれると言っても、組合を離して物をもらって新たにやらせるのならできるけれども、いまのままではできないというようなことを、これは余り公開しては困るかもしれませんが、そういう話もしておりますので、実際にやるとなるとなかなかむずかしい問題が出てくるのではないか、こういうように考えております。
  83. 雨宮義直

    雨宮参考人 この法案で問題を解決できないと言われたので、これは私、全く同感であります。問題は経営形態の問題ですね。公社がなぜ存在するのか、私は二つの理由があると考えております。一つは、民間でできないものを公社がやっていくというのが一つです。もう一つは、公社がリードしていくといいますか、その公社が属する産業構造をリードしていくという形での公社の存在形態があると思うのですね。私は、国有鉄道というのは公社の形で存在し得るというふうに実は考えて、けさからの発言をしておるわけですけれども、この法案で解決はできない、じゃ、どうすればいいかという中で、はしょって申し上げますけれども日本全体の交通体系の中で国鉄を位置づけるという話をしたわけですね。そのことは総合交通体系という考え方に密着すると言ったわけですけれども、実は総合交通体系というものをけさほど来の論議で、全国レベルで考えるにしろ地方レベルで考えるにしろ、こういうものを考えるときには、実は中枢的な役割りを果たす交通手段が必要なわけです。国有鉄道というのは、いまいろいろ問題になっているわけですけれども、何といっても日本交通体系の中では、全国レベルにおいても地方レベルにおいても、その輸送量を見ればわかりますけれども中心的な役割りを果たしていると言ってもいいと思うのです。そこで、もし総合交通体系ということを考えるとするならば、国鉄を軸にして考えざるを得ないだろうと思います。そういう立場国鉄というのはあるのだと思います。つまり、いま挙げましたように、民間でできないものを公社でやるのではなくて、公社が産業構造をリードしていくという立場国鉄はあるのだという位置づけで考えております。
  84. 村尾清一

    村尾参考人 分割論と経営形態論とは一つものだと思いますけれど、地域分割して民営にするというのは、理念としては非常にあり得まずけれど、現実としては、たとえば北海道鉄道株式会社とか九州鉄道株式会社というのを引き受ける人は、ぼくはいないと思います。それから、それはあっても、貸す銀行はないと思います。
  85. 高屋定國

    高屋参考人 余り詳しくそこまで突っ込んでおりませんけれども、しかし、現在において、国鉄だけでなくして、公企業というもの自身が考えなきゃならないときにあるのではないか。これは一つの例でございますが、外国の例ですけれども、すべてが公企業になったら社会主義国なんです。社会主義国が非常に生産性が悪い。したがって、これは変えなきゃならぬということは、現在、社会主義国は全部考えております。ソビエトにおいても各企業体ごとに利潤導入をやったり、あるいはユーゴスラビアなんかでは自主管理型として責任において各企業体ごとにやっている。その市場は、いわゆる自由市場、競争の市場形態をとっているということの社会主義国もあるわけです。すなわち公的な形が、ないしそこが、企業努力というものが、これはもう世界じゅうどこにおいても問題になっているわけなんです。  そういう点で、この日本の公企業全体においても考え直さなきゃならない、その一環として国鉄も考えなきゃならないかというふうに私は考えております。
  86. 中馬弘毅

    ○中馬委員 先ほども、九州の国鉄をたとえば分割したとしても労働組合がいまのままであっては引き受けられないというお話が出ましたですけれども、その労働組合のことにも関しまして、国鉄のやる気あるいは経営努力だとかあるいは職員の士気といったような話になってきますと、結局は経営は人だということになってきますね。  その人の問題でございますけれども国鉄にいろんな問題があろうかと思います。人事管理のあり方やあるいは身分制度のあり方、それから、もちろん労働組合のいまの特に国労、動労に対する国民の批判は非常に強うございますけれども、そういったことも含めて、いまの国鉄の特に人事面におけるあり方をどうお考えになっているか。またそして、どうしたらいいかということをお聞かせいただきたいと思います。順番にお願いします。
  87. 関四郎

    関参考人 現在の人事問題といっても、私、中の様子、現在あんまりよくわからないので、それはお答えいたしかねますが、とにかく人間の集団であるところのあれに、やっぱりトップがこうやってみたいということを、それじゃおまえの言うとおりやらせる、そのかわり全責任をとれよというやらせ方が、人を使うのに一番大事なところじゃないかというふうに考えます。それはいまの配置がいいかどうかということは、私の知らないところでございますので、お答えいたしかねます。
  88. 雨宮義直

    雨宮参考人 先ほども同じような御質問があったかと思うのですけれども、つまり本気でやる気があるかないかという御質問だったと思うのです。そのとき私は、その問題に対しては回答を留保すると申し上げたのですけれども、今回も、内部のこの問題については、回答を留保させていただきます。
  89. 村尾清一

    村尾参考人 昔からよく言われているのですけれど、学士という言葉が残っているのはもう国鉄だけだというのですね。ごく少数の国立大学の出身者の人が幹部になる。それじゃなくて人材登用の道を開けとか、それからコンパニオンのような女性を新幹線に使ったり出札係に使ったらどうだという声はあるのですけれど、まだいろんな内部事情があってやれないでいるようです。だから、国鉄にはその人材もいるし、それから、いわゆるこれだけ大きなマンモス企業を大きな過ちもなく毎日毎日動かしているわけですから、相当人材はいるとは思うのですけれども、ただ中に、国鉄だけではなくて日本会社あるいはあらゆる組織の中にある不合理な面はまだまだ残っていると思います。
  90. 高屋定國

    高屋参考人 人事問題について具体的には私も分析しておりませんで詳しくわかりませんが、私も国鉄利用したり私鉄利用したり、いろいろ両方使うことが多いものですから、その感じで申し上げますと、国鉄の方はもう一つ労働規律はきちっとやっているというふうには感じません。
  91. 中馬弘毅

    ○中馬委員 最後に、この法案実施していくに当たって、これはこれだけに限らないのですが、いろいろな場合に政治的な圧力で事が左右されるのが国鉄のいままでの例でもございまして、今回そのようなことが起こるとせっかくのこの法案の意図したところが曲がってしまうわけでございますね。非常に恣意的な形でローカル線が廃止されたり廃止されなかったり、こういうことになってまいります。そういうことを、これは国会の立場として気をつけていかなければならない問題でございますけれども、また、この法案やあるいはこれを施行する立場に立った者としてどういう配慮が必要なのか、参考人の方にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  92. 関四郎

    関参考人 どうもむずかしい御質問でちょっとお答えに窮するわけでございますが、やはりトップの意気込みということを、何回も繰り返し同じことを言ってまた言うのかと言われるかもしれませんけれども、それがこれを成功に導くかどうかの決め手だというふうに私は確信しております。
  93. 雨宮義直

    雨宮参考人 先ほど御質問の冒頭で、この法案では解決できないと言われて、私も同じ意見だと発言させていただいたわけですね。けさ方から私は、この法案では国鉄再建はできないだろう、大変疑問であるということを申し上げているわけです。その延長の中で、一体政治的圧力があった場合にどうかという御質問には答えようがありません。
  94. 村尾清一

    村尾参考人 御質問の趣旨が十分わかりかねますので、返事を保留させていただきます。
  95. 高屋定國

    高屋参考人 私は詳しくわかりませんけれども国鉄の関係当局の方からもっと現状を詳しく、ここまで来ているんだということを国民に知らすということと、それから働いている従業員に対しても、こんな状態だ、それから、いままでの過去にいろいろあったことの責任もどうなんだということを裸になって、一緒になって考えていくという以外に方法がないのじゃないか。それでもうまくいくかどうかわかりませんけれども、まずそれくらいはやらなければいかぬのじゃないかと思います。
  96. 中馬弘毅

    ○中馬委員長 時間、貴重な御意見をありがとうございました。
  97. 小此木彦三郎

    小此木委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、来る二十八日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十四分散会      ————◇—————