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1980-10-17 第93回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月十七日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 関谷 勝嗣君    理事 楢橋  進君 理事 宮崎 茂一君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 中村 正雄君       阿部 文男君    木部 佳昭君       佐藤 文生君    近岡理一郎君       永田 亮一君    浜野  剛君       林  大幹君    古屋  亨君       三塚  博君    箕輪  登君       水野  清君    山村新治郎君       井岡 大治君    久保 三郎君       小林 恒人君    関  晴正君       浅井 美幸君    小渕 正義君       三浦  久君    四ツ谷光子君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君  委員外出席者         自治省財政局指         導課長     木村  仁君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     山口 茂夫君         日本国有鉄道常         務理事     吉武 秀夫君         日本国有鉄道常         務理事     加賀山朝雄君         日本国有鉄道常         務理事     吉井  浩君         日本国有鉄道常         務理事     半谷 哲夫君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ――――――――――――― 十月十六日  東北新幹線鉄道建設促進及び国鉄在来線の整  備に関する陳情書  (第五〇号)  地方空港整備促進に関する陳情書  (第五一号)  四国の国鉄線整備に関する陳情書  (第五二号)  国鉄赤字ローカル線の存続及び新線建設促進  に関する陳情書  (第五  三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案内閣  提出、第九十二回国会閣法第一号)      ――――◇―――――
  2. 小此木彦三郎

    小此木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅井美幸君。
  3. 浅井美幸

    浅井委員 私は、この国有鉄道経営再建促進特別措置法案に関して質問をいたしたいと思います。  まず最初に、総裁にお伺いしたいのでございますけれども、この法案提出の目的は、国鉄経営再建ということにあるのですが、本法案がもし成立しても、果たして経営再建が可能かという、きわめて疑問な点が多いということであります。経営健全化は、国鉄自身経営改善努力がまず不可欠な問題だろうと思いますが、経営改善のための努力として、国鉄総裁はこれから何をやろうとしておるのか、まず、総裁に伺っておきたいと思います。
  4. 高木文雄

    高木説明員 ただいま御指摘のとおり、経営の立て直しということにつきましては、まず何よりも国鉄自体努力ということが重要であると考えております。  まず、私どもといたしましては、現在、全体としての経営収支がうまくない一つの理由としては、やはり一つの見方として、経営の中身を見てみますと、人件費率が非常に高いという問題がございます。もともとサービス業でございますから、どうしても人件費率は高くなるわけでございますけれども、昔黒字であった時代を比べました場合、あるいは比較的順調な経営をやっておられる私鉄の経営等と比較してみました場合に、やはり人件費率が非常に高いということが顕著に出てまいるわけでございまして、それを考えますと、何とかして経営体質を変えるに当たって、新しい時代にふさわしいような、労働集約型産業ではありますけれども、その中においてもなるべく少ない人手で同じだけの仕事をするように努力をしていくということが重要であろうかと考えております。  しかし、そういう努力をいたしたといたしましても、私どもの手に負えない面がございます。その手に負えない面の一つは、過去において大変巨額な赤字を出しました。その赤字を借入金でつないでおるわけでございますけれども、これを今後の経営によって自力だけで回収することは不可能ではないかと思います。  そこで、その面につきましては、いわゆる過去債務のたな上げというような形式を通じて御援助いただきたいと考えておりますし、これから発生いたします問題としましては、大変な異常な人員構成に関連いたしまして、ここ十年ぐらいの間急激に退職金支払いが毎年ふえるということ、また年金負担がふえるという問題がございますが、これもまた今後の経営努力によって補いをつけるということができませんので、この部分についてもぜひひとつ何らかの形で御援助いただきたいというふうに考えております。  われわれ自身努力と、そういう手の届かない部分について御援助いただくことによって、何とか六十年には、東北新幹線開業に伴う新しく発生しますものを別といたしますならば、つまり現在の体制経営についてでありますならば、単年度について収支均衡できるという確信を持っておるわけでございます。
  5. 浅井美幸

    浅井委員 この国鉄再建ということについて過去いろいろのことがやられてまいりました。十数年来再建再建ということでやってまいりましたが、いままた総裁のお話にもございましたように、いわゆる昭和六十年度になって財政再建ができるのではなくて、その六十年度においてもやはり退職金やあるいは年金、あるいはまた東北新幹線赤字会計等を除いてということであります。それを除いても私はなかなか単年度収支均衡というのはむずかしいのではないかと思っております。  この厳しい状況の中で、大臣にお伺いしたいのですけれども、五十四年十二月二十九日の閣議了解国鉄再建について、によれば、「六十年度までに国鉄健全経営基盤確立するとともに、可及的速やかに収支均衡実現を図る。」こういうふうにうたわれておりますけれども、いまお答えがございましたように、いわゆる新幹線赤字やあるいはまた年金退職金の大きな課題を含まないで健全経営基盤と果たして言えるかどうか、この点について、非常に厳しい状況にあるということからお答えをいただきたいと思います。
  6. 山地進

    山地政府委員 ただいま国鉄総裁から御答弁がありましたように、国鉄経営の中には非常に臨時的な負担を高く強いられているものがございます。これは退職金支払い合理化を進めれば進めるほど国鉄経営を圧迫する、将来はそれが平準化して少なくなるという要因もございます。  それから、年金問題につきましては、国鉄が過去のいろいろな問題から過重な負担をいましているわけでございますけれども、この問題についても共済年金の全体の問題として政府が取り組むということになっておりますので、これにつきましても国鉄経営努力以外の要素というものを非常に強く持っているわけでございます。  したがいまして、六十年度までの国鉄財政を考える場合に、退職金問題あるいは年金問題というのは、国鉄体質を、いってみれば経営判断をするのにいい方に向かっておるのかどうかということを見る場合は、平準化したものをその経費の中に入れて考えるべきである、かように考えているわけでございます。  それから、上越東北収支の問題につきましては、開始当時はなかなか収支が償いませんが、長い目で見れば収支が償う。当初の累積の赤字を消しても後では利益が出るということが私どもの推定でございますので、われわれが再建基盤確立するという六十年度を見る場合に、そういったちょうど上越東北が一番悪い時代、これは後には改善されるということでございますので、これらを除いて国鉄体質改善ができたかどうかということの一つ目安といいますか、そういうものにしたいと考えておるわけでございまして、そのようなものを除いた体質が改善されれば、今後国鉄経営は健全な方へ向かい、収支均衡が可及的速やかにできるような状態になる、かように考えておるわけでございます。
  7. 浅井美幸

    浅井委員 国鉄経営再建ということについて、いまその赤字になる要因人件費、あれは国鉄赤字の中の非常な要素を持っているということで、これを何とかしなければならぬ、定員を削減しよう、三十五万人体制ということでこれから六十年度までに努力をするということであります。その人件費を減らすために退職をさせたら退職金の問題が出てくる、その退職金の問題にさらには年金の問題が出てくる、こういう数多くの問題がいままで言われている中で、これを抱えたままで財政再建、これは企業努力ではこの体質というものはどうにも解決できないので、こういうものは切り捨てて、そして国鉄経営というのは、いまの人件費退職金年金新幹線建設という赤字要因を切り捨てた残りのものだけで、そしてまた赤字線だと言われている地方線を切り捨てた、そういうものだけでの国鉄再建ということを考えているのですか。その点、もう一遍はりきりとお答え願いたいと思います。
  8. 高木文雄

    高木説明員 まず、非常に重要なことは、毎年毎年の仕事について赤字を生まないということにすることが重要だと思っております。過去においていろいろな赤字の借り入れをいたしましたので、その利子をどうするかというような問題もございますが、しかし、そうした過去の問題はちょっと別にいたしまして、単年度で何とか収支を償うということが、この際一番大事なことだと思っております。  それで、先ほどちょっと説明が十分でございませんでしたけれども年金退職金は別にしてと申しましたけれども、その年金退職金全部を別にするわけではなくて、普通の経営の場合に常識的に必要になるであろうところの年金負担退職金負担は当然その年その年の計算上の問題として収支償うようにしていかなければならぬわけでございますが、異常な年金負担がございます、また異常な退職金負担がございますので、その異常部分は別に考えていただきたいということでございます。そうして、収支が単年度をとりました場合に償っていくようになりますれば、そこに初めて将来健全な企業として経営していける基盤ができるというふうに考えておるわけでございまして、私どもは、ただし、そういう異常な部分については御援助願わないとやっていかれませんということでございます。
  9. 浅井美幸

    浅井委員 この閣議了解の表現について私は非常にあいまいなものがあると思うのです。「昭和六十年度までに国鉄健全経営基盤確立するとともに、可及的速やかに収支均衡実現を図る。」これは六十年度までに経営基盤確立するということだけなのか、それとも六十年度までに収支均衡を図ろうということなのか、この点大臣に確認したいわけです。
  10. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 お尋ねになっております経営基盤確立、これにつきましては、私たちの認識ではとにかく鋭意、一般純損益でございますか、要するに国鉄の事業に関しての収入支出均衡を図る、運賃収入とそれからその営業に必要といたします支出との均衡を図っていく、そしてよく言われます、食管会計で言いますと販売逆ざやというのがございますが、そういうことのないようにするということが一つ目標でございまして、収支均衡して真に再建確立したということは、先ほど総裁等が言っておりますように、いわば異常退職に伴うところの退職金なりあるいは年金に伴う資金の拠出、そういうようなものも含みました、あらゆるものを含んだ収支均衡、これは六十年末にはなかなか実はむずかしいのではないか、ましてや東北新幹線問題等も計上してまいらなければなりませんしいたしますと、完全な収支均衡というのはとにかく経営基盤確立した後、そしてその後速やかにやっていくということでございまして、経営基盤確立ということと、それから収支均衡というのには若干の時間的なずれがある。けれども収支均衡基盤確立後できるだけ早く図っていく、このように認識いたしております。
  11. 浅井美幸

    浅井委員 経営基盤確立収支均衡には若干のずれがある、正直な御答弁だろうと思います。そうでなければならないと私も思いますが、どのくらいのずれがありますか。
  12. 山地進

    山地政府委員 ただいま大臣の申し上げたとおり、今回の再建では基盤確立というところまでは私どもとして見通し努力しているわけでございますが、収支均衡、本来ならば収支均衡もいつまでにと具体的に申し上げなければいけないはずなんでございますが、それらにつきましては、とにかく基盤確立という以後、努力して収支均衡に持っていこうということでございまして、なかなかいつまでにということについては私どもとしても現在はそこまでは見通していないということでございます。
  13. 浅井美幸

    浅井委員 この経営基盤確立ということと収支均衡ということの時間的なずれ、これはこれから何年かということについていま私は詰めたいわけでありますけれども、そのことについてはわからないという御答弁なんで、これはやむを得ないわけでありますが、可及的速やかに収支均衡実現を図る、こういうことを言われていながらずるずるとこれからも将来この赤字体制というか、収支均衡のしない国鉄を抱えて進まなければならぬということであります。  総裁に伺いたいのですけれども、六十年度収支均衡が図れなかったら、一体いわゆる収支均衡になる目途、いつごろまでに収支均衡を図りたい、あるいはまた努力したい——きょう冒頭にお聞きしたその質問の趣旨は、国鉄としてその経営努力あるいはまた企業努力、そういうものを真剣にやる、いまや親方日の丸ということで、赤字になっても常に助成金やあるいは補助金という形で国がめんどうを見てくれる、そういう甘えは許されないという厳しい状況の中にあるわけです。いま可及的速やかに収支均衡を図るという可及的速やかというのは、一体何年を目途に可及的速やかに均衡を図るのか、お答えを願いたいと思います。
  14. 高木文雄

    高木説明員 いろいろな要素がございますが、非常に大きなファクターになりますのは、年金の問題と東北上越新幹線開業に伴う赤字の問題と、それから残念ながら現在から六十年までの間に毎年赤字がどうしても出ますのでその赤字処理の問題、三つございます。  で、東北上越新幹線の場合には、いまの見通しでは開業後十年前後で償却費利息負担を含めまして、かつ在来線、と申しますのは、東北線なり上越線なりを総合的に見まして、現在の東海道山陽新幹線のように単年度では黒字に転じていくようになると思うわけでございます。したがいまして、東北上越新幹線部分からくるいわゆる完全な意味での収支均衡が可能になるのは、どうしてもやはり十年近い日時がかかるということになろうかと思います。  次に、年金の問題につきましては、これはまたいずれお尋ねございましょうが、そのときに申し上げますけれども、現在のところでは、私どもはとても独立の年金会計ではやっていかれない。と申しますのは、いまの見通し昭和六十年代ぐらいではすでに掛金を掛ける従業員の数とそれから給付を受ける、言ってみれば先輩の数とが、掛ける方の人が少なくなって、もらう方の人が多くなるという事態になりますので、これはとうてい年金として成り立たないわけでございます。そこで、企業別年金システムになっておりますのを改めていただいて、そして他の類似制度を持っておりますところの年金制度と一緒に考えていただきたいということをお願いしておるわけでございますが、これは年金システムをどう直すかということは、現在の社会保障制度、さらには財政の上において非常に大きな問題でございまして、私どもだけの都合でそう簡単にそういう制度改正をやることはなかなかむずかしい問題があろうと思います。しかし、私どもとしてはどうしてもそれを解決していただかないことには先の見通しがつかないわけでございまして、まだ六十年代で収支均衡ができませんと言っておりますうちの年金に関する部分につきましては、これはひたすら政府にお願いをして、制度的に改めていただくか、あるいは財政的にめんどう見ていただくかをお願いしなければならぬと思います。そのお取り組みをいつまでに立てていただくかということは、私の方ではなくて政府サイドで御検討願うことでございますので、私どもの方としましては、いつまでにということは、その制度確立いたしますときに初めて見当がつくわけでございまして、現段階ではちょっと、そう一年、二年で新しい制度に切りかわるということも困難でございましょうから、その見通しを申し上げるのはいささか早いのでございます。  それから、これから六十年までの間にも若干ずつ減ってはまいりますけれども、毎年赤字が出るのをどうするかということにつきましても、大変申し上げにくいことでございますけれども、私どもとしてはやはりこれは六十年までの間にしかるべく過去債務処理ということをもう一度お願いしなければならない。現在お願いしております法律では、今日までに発生しました赤字についての過去債務処理をお願いしておるわけでございますが、今後六十年までの間にだんだん減ってはまいりますが、やはり生じますと単年度赤字の始末をつけていただく必要があるわけでございまして、これも六十年代末におきまして何とか御処理願うように、財政的な御処理をお願いせざるを得ないだろうと見通しておるわけでございます。  以上のような点が主要な点でございまして、その他の点につきましては、若干公共負担の問題とかありますけれども、金額的にもいま申しました三つの問題が非常に大きな問題でございますので、それぞれの三つの問題について、ただいま申し上げましたような形での御処理——東北新幹線の問題は私どもの問題でございますが、その他の二点についての御処理がつけていただけるという時点において、初めて、そのいつになったら均衡するかという見通しがはっきりするということでございます。
  15. 浅井美幸

    浅井委員 そうすると、経営基盤確立は何とか六十年度に確保したい、確立する目標を置きたい。しかしながら、収支均衡というのは、年金の問題があり、あるいはまた赤字の問題があり、そしてまた新幹線の収益も十年ぐらいたったならば何とか東北新幹線やあるいは上越新幹線黒字になるであろう。これもまた希望的観測でありまして、東海道新幹線山陽新幹線のように黒字になるとは、これは保証のできない問題であって、希望的観測のような状況の中での収支均衡ということなんです。  大臣にお伺いしたいのですけれども、いま可及的速やかというのは、私は十年以上かかるように思いますけれども経営基盤確立ということを目標にしております。しかしながら、それがこれから昭和六十年が目標経営基盤確立であり、七十年以降に収支均衡ということになるような御返事でありますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  16. 高木文雄

    高木説明員 しつこいようでございますが、年金の問題と過去債務の問題については、どうも国鉄の力では何ともなりません。東北上越新幹線営業の問題でございますけれども、これは在来線というものと新幹線というものは、およそ経営的に見ますと全く異なる体質を持っております。東海道新幹線東海道在来線を比べてみましても、新幹線の方は初期投資が非常に大きいわけでございます。したがって、償却利子負担が非常に大きいわけでございますが、毎年の運営のためのコストあるいはその中の特にメンテナンスのためのコストは非常に少ないわけでございます。  したがいまして、時間の経過によりまして減価償却が進んでまいりますと、減価償却負担も減ってまいりますので、明らかに開業当初においては大変大きな減価償却負担がかぶりますから、どうしても赤字になりますけれども、現在は定率法減価償却いたしております関係もありまして、時間の経過とともに減価償却負担も減ってまいりますし、そしてメンテナンスのための経費負担が時間がたちましてもわりあいにふえないということになりますので、東北新幹線上越新幹線の問題に関する限りは、私は先行き確実に黒字といいますか、均衡のある状態にまでは持っていけるというふうに考えておるわけでございます。  その点は、大変霧の中のようにお受け取りかもしれませんけれども在来線経費あり方新幹線経費あり方の違いということをお考えいただきますならば、決してそう悲観的なものでない、あるいは見通しのはっきりしない霧の中の問題ではないということだけつけ加えさせていただきたいと存じます。
  17. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 浅井先生の一番心配しておられるのは経営基盤確立と言って、それは六十年でできるであろう。けれども、やはり依然として大きい資金が必要となるのではないか、それを非常に心配しておられると思う。そして、せっかく経営基盤確立しても、収支均衡がとれないでまた悪化してくるのではないか、そういう御心配も込められておるように私はいま聞いております。それは私たちも実は非常に心配しておるところでございますけれども、しかし何としても、国鉄母体といいましょうか。これをきちっと立て直して健全なものにする、それがやはり先決であろうと思いまして、その目標をとりあえず六十年ということに設定しております。それをやりましても、そのほかに新幹線からくるところの新規開業に伴うものは若干ございましょうし、あるいは年金退職金の問題もございましょうけれども、しかし母体がしっかりしてまいりましたら企業全体として回復してくるのは案外早いのではないか。そこで、十年というめどを一応の目安のように言っておりますけれども、これはやはり努力次第によって、あるいはまた国の助成あり方によっては案外早くということも考えなければならぬと思いますので、とにかく可及的速やかにということはわれわれの一つ努力目標として課せられたものである、こう受けとめておるのでございます。
  18. 浅井美幸

    浅井委員 確かに膨大な赤字を抱え、財政再建と一口で言っても、いろいろな体質的な問題がございますので困難な問題を国鉄自身として抱えている、私はこのように思っております。国鉄再建計画が十数年前から言われて久しいわけでありますが、そのたびにその計画が挫折し、計画を変更しなければならないような状況に追い込まれてきているわけであります。いまここで新たな再建計画というものを立てるに当たって、私は、抜本的な再建計画というものを確立する意味において、あらゆる角度からお伺いしたいと思っております。  そこで、六十年度財政基盤確立ということを言っておりますけれども、これもまた非常に怪しい要素がたくさんございます。ですから、いま新しい法案が通って、これから国鉄が新しい出発をしたとしても、国鉄が抱えている年金問題や退職金の問題というものが国鉄再建のまた大きなガンになってくることは明らかに見えているわけであります。ですから、いま大臣母体確立というか、母体の健全というものを図るという御決意でございますけれども、それにはいろいろな障害がございます。  そこで、私は、年金という問題についてお伺いしたいわけですけれども年金負担額というものは来年度以降一体どのようになってくるのか、具体的に総裁にまずお伺いしたいのであります。
  19. 吉井浩

    吉井説明員 お答えいたします。  国鉄から国鉄共済組合に入れておりますいわゆる国鉄側負担金額でございますが、昭和五十四年度は二千八百六十億の実績になっております。それで、明年度以降の問題につきましては、ちょうど共済組合自体の収支計画の見直し時期になっておりまして、現在、収支計画策定審議会と申します総裁の諮問機関におきまして鋭意検討をいたしておりますので、明確な収支計画は出ておりませんけれども、大体先ほど来お話のございます退職者数の増加等々によりまして、六十年ごろには給付額は約倍増するであろうということでございます。したがいまして、国鉄からの年金負担額もおおむね現在の倍、六千億円近い額になるのではないか、そのような試算をいたしております。
  20. 浅井美幸

    浅井委員 大臣、先ほど総裁から、年金問題については政府で何とかしてもらわなければなかなか財政再建ということにはなりません、収支均衡もおぼつかないことでございますので何とかしてもらいたいということですけれども政府は一体この年金問題についてどのようにこれから対処されるのか、非常に問題だと思います。退職金の問題だとか年金の問題についてはやはり速やかに、今年じゅうに対策を組まなきゃならぬと私は思いますけれども、これに対してどのように対処されるのか、まずお考えを伺いたいと思います。
  21. 山地進

    山地政府委員 昨年の十二月末の閣議了解におきまして、国鉄共済年金問題につきましては関係各省間でこれを検討してその対策をつくるということになっているわけでございます。この年金問題、先ほど来総裁から申し上げておりますように、非常に根の深い問題、わが国の社会保障全体にかかわる問題でございますので、現在、大蔵省に共済年金制度基本問題研究会というのをつくりまして、運輸省も入り、これらについて抜本的な方策というものを検討しているわけでございますが、若干の時間というものが私どもとしては必要であろう、若干と申しますのは、今年度内に結論を出すというのはなかなかむずかしいのではないだろうか、かように考えておるわけでございます。
  22. 浅井美幸

    浅井委員 今年じゅうにその答えを出すのがむずかしいというお話でございますけれども、それでは一体いつまでにその答えを出すのか、お伺いしたいと思います。社会保障の一端として厚生省にも相談しているのかどうか、その辺もお答え願いたいと思います。
  23. 山地進

    山地政府委員 ただいま申し上げました大蔵省の共済年金制度研究会の方には厚生省の方もオブザーバーという形で参加をしておられるように聞いております。
  24. 浅井美幸

    浅井委員 こういうふうにやり方が非常に遅い。明らかにそういう課題があり問題があり、解決しなければならぬということがわかっていながら、去年の十二月に閣議で決まってもう約十カ月、その十カ月たってもこれがまだ実施されない、あるいはその基本的な構想も決まらない、こういうところに問題があろうと私は思います。国鉄の方ではこれは大きな課題であるということで政府にお願いをしておる。先ほど来総裁は、いわゆる経営努力の外の問題であって、何とか政府でやってもらいたい。こういうことがわかっていながら一年近くたってもこれが解決されていない。こういうことがこれから年々大きな災いになるというか、問題が大きくなって、将来これが禍根になるというおそれは十分あるわけです。  大臣、このことについて、国鉄年金問題について一体運輸省としてはどのように取り組まれるのか、もう一遍大臣の決意を伺いたいと思います。
  25. 山地進

    山地政府委員 実情について補足的な説明をさらにさせていただきます。  この共済年金制度基本問題研究会というのは五十五年六月に設置されまして、文部、農林、運輸、自治等、共済関係の各省がメンバーになっていまして、現在まで四回開催をされております。こういった研究会の目標としていつごろまでにということでございますが、一応の目途といたしましては、二年くらいをかけてこの問題について掘り下げた研究をしたい、こういうことでございます。  そこで、一体研究している間にどういうことになるか。先生のおっしゃるように国鉄財政を圧迫するということ、問題がどんどん深くなるのじゃないかというお話でございますが、私どもの方といたしましては、今年度の予算に、私どもが考えている国鉄年金異常部分、この部分については利子補給を予算上要求しております。この利子補給を要求しておりますのは、この異常部分経営を圧迫する、つまり借入金でこれを補った場合に利子負担が起こる、その利子負担を国が助成すれば経営を圧迫しない、こういうような考え方から、臨時的に、根本的な解決ができるまでの間、利子を補給してこの問題に対処したい、かようなことで予算を要求しているところでございます。
  26. 浅井美幸

    浅井委員 異常部分という考え方、こういう問題はあろうと私は思いますけれども、適正部分異常部分の区別は一体どういうところにあるのですか。もう一遍御説明ください。
  27. 山地進

    山地政府委員 異常部分、いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、現在国鉄の成熟度、成熟度と申しますのは、御承知のとおり、現在の職員百人に何人の受給者かという比率でございまして、いま百人に対して八十人の受給者がいる、これはつまり成熟度が八〇%と言っているわけでございます。国家公務員と三公社の合計の成熟度は四一%でございますので、この差を私ども異常部分と考えて、この部分について利子助成する、こういうふうな考え方でやっておるわけでございます。
  28. 浅井美幸

    浅井委員 異常部分利子だけでしょうか。
  29. 山地進

    山地政府委員 いま申し上げましたとおり、異常部分支払いということを仮に借入金でやったとすればその利子負担が起こるということで、言ってみれば、利子負担をすれば経営上の圧迫がない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  30. 浅井美幸

    浅井委員 その辺の考え方が、私とあなたとちょっと違うのですけれども。この異常部分という考え方、平均四〇%が国鉄の場合は八〇%の成熟度になっておる、普通の諸官庁よりも大きな負担になっているという問題がありながら、その異常部分負担経営を圧迫しないという考え方、ここに運輸省の考え方に一つ問題があると私は思います。異常部分についての負担政府がやるというのならば、この年金問題、これからゆっくり二年間かけてやっても結構ですけれども、明らかに現在負担がふえているということは、国鉄経営に大きな圧迫になっているという一つの証拠ではないかと私は思います。それを、これからいつまでにという年金についての対策が明確になっていない、これは今日の運輸省に大きな問題があると私は思いますが、この点についてお答えを願いたいと思います。
  31. 山地進

    山地政府委員 異常部分がある、何が異常部分かということも含めまして、あるいはその異常部分というのを一体だれが負担したらいいのかということも含めまして、抜本的な解決策を考えているわけです。これは国鉄共済年金あり方、いまは共済年金国鉄国鉄、専売は専売、電電は電電、あるいは国家公務員は国家公務員と、別々の共済になっているわけでございますが、こういったことでいいのかどうか、こういうことで、その負担は一体だれがしたらいいのか、国の負担する部分と職員の負担する部分企業体の負担する部分というのはどういうあり方がいいのか、非常に複雑な問題がございます。片方では厚生年金等との比較の問題もありましょうし、先ほど総裁が申し上げましたとおり、わが国の社会保障制度全般の問題もございます。  そういった中で、現在私どもとしては臨時的に国鉄のこの共済問題に対応する。いまの異常部分について、直ちにその部分を払うということは、確かに国鉄にとっては非常にありがたい話だと思うわけでございますけれども、そういったものをだれが負担するのかということも決めないで払うわけにもいきません。したがって、この解決策が出るまでの間は少なくとも経営の圧迫を避けるということにとどめるということで、臨時的、暫定的な措置として考えているわけでございます。
  32. 浅井美幸

    浅井委員 国鉄赤字要因というのは幾つかあるわけです。財政圧迫の要因になっている年金問題あるいは設備投資、あるいは設備が古くなってきた、その補修をやらなければならない、こういうことが数多くあるわけですが、まず工事経費の問題だって、私はこれは大きな問題だろうと思います。工事経費もほとんど借入金に依存しております。五十四年度の借入金は、一兆三千億円、これに対する支払い利子は五千五百七十億円、こうした借金投資を改めない限り財政再建は不可能である。現状では、六十年度には累積債務は約二十兆円、支払い利子は約七千億から八千億円になる、こういうことが予想されているわけです。こういう工事費についても国の助成というものを全面的にやれ、こういうのがわが党の主張なんです。  そういう中において、いま年金問題についても異常な部分が確かにある。それをだれが持つかというのは非常に問題であって、国が全部めんどうを見ることはできない、それをいま研究しておりますと言いながら、この異常部分というのはこれから年々ふくれ上がってくる。悲鳴を上げております。こういうことは、私は国鉄を全面的に擁護するわけではありませんけれども国鉄なら国鉄の責任、政府なら政府の責任というものをもっと明確にしなければならぬと思います。異常な事態というのは速やかに解決することこそ行政だと私は思います。そういう異常な部分を放置したまま、これから財政再建をいたします、あるいは経営基盤確立します、言葉の羅列だけは確かにりっぱなことは並んでいるのですけれども、こういうことについての運輸省の取り組み方、政府の取り組み方というのが、私は非常に問題があると思います。  そこで、今国会におけるこの財政再建ということの一番の焦点は、赤字になっている部分を切り捨てる、赤字体質というものを何とかなくさなければならぬということで、地方交通線対策、人間を減らす、この二つが大きな柱になっておりますので、私はその地方交通線問題に話を移したいと思います。  地方交通線対策というのは、特定地方交通線はバスに転換あるいはまた将来廃止、そういう目的でこれを考えているわけでありますけれども、地域の住民や関係自治体にとってきわめて重大な関心のある問題だと言われております。この審議を行う上で重要な特定地方交通線の線区名に関する資料がいまだに提出されておりません。これは前国会においても、この委員会で何回か、線区名は政令で決めるというあいまいなままでこの法案の審議を行っているということは非常に問題だということで指摘をされ、この対象線区、切り捨てられる、あるいはバスに転換されるものを明確にしてもらいたいという要求がなされておりますけれども、運輸省あるいはまた国鉄総裁は、この委員会にその対象線区を、十分な審議をするために出される用意があるかどうか、御答弁願いたいと思います。
  33. 山地進

    山地政府委員 この問題、前国会からいろいろ申し上げておりますように、具体的な線区名というのは政令が決まってから決まる、国鉄が選定するということにいまの法律でなっているわけでございますが、私どもの方の政令についての考え方というのは、またその骨格ということについてはいろいろ御説明をしているわけでございます。  そこで、政令というのは一体どうやってつくるのかということでございますが、国会における審議、あるいは各省と協議の上決めるわけでございまして、その政令が決まらないと線区が出てこないという関係にございますので、線区名というのはどういうところがなるであろうかというような見当は恐らくつくんだろうと思うのでございますが、線区名というものを確定しない時点において私どもは出すのは差し控えたい、かように考えておるわけでございます。
  34. 浅井美幸

    浅井委員 国鉄の側はどうでしょうか。
  35. 高木文雄

    高木説明員 ただいまの運輸省の御答弁のとおりでございまして、現在の段階では決まっていないわけでございますから、お出しするのは適当でないんではないかというふうに考えております。
  36. 浅井美幸

    浅井委員 これまでに労働組合やマスコミ、そういうところで一応発表になって出ている部分がございます。この政令というもので決めていきたいということでありますけれども、この対象になる地域というのは非常に問題が多い、そういうことで法律にする以上は具体的な線区がわからなければ審議というものに非常にこれは支障があるということで問題になっておりますけれども委員長、前国会においてもこれが問題になっておりますけれども、線区名を明確にされないわけですけれども、地方交通線対策、こういうものは廃止されるか、あるいはバスに転換されるかということについてはその地域の住民というものには非常に問題が多うございますが、その交通線を明確にしないまま本法を審議せよというお話でございますけれども、非常にこれは問題が多いと思います。  委員長においてこれを提出されるように計らっていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  37. 小此木彦三郎

    小此木委員長 浅井委員の申し入れにつきましては、後日理事会で協議することにいたします。
  38. 浅井美幸

    浅井委員 特定地方交通線の選定基準、先ほど政令云々というふうに答弁されておりますけれども、その基準がきわめてあいまいになっているのです。委員長におきましては、先ほど私が申し上げました理事会協議につきましては前向きに御検討願いたいと思います。  前回この法案が審議になったときに、地崎前運輸大臣は北海道が地元であったからかどうか知りませんけれども、北海道の特定地方交通線については特別な基準で考える、このように言われております。これはどうにも納得のできない御答弁でありまして、選定基準を政令でどのようにするのか、明確に示していただきたいと思います。
  39. 山地進

    山地政府委員 特定地方交通線あるいは地方交通線等の選定基準につきましては政令で定めるわけでございますが、政令で定める際には国会におけるいろいろの御議論も踏まえまして、また関係各省といろいろ協議をしなければいけません、政令でございますから。その結果できるものでございますので、私としては公正妥当なものをつくるということでまいりたいと考えております。
  40. 浅井美幸

    浅井委員 それは答弁にならないのであって、どういうものを政令の基準で定めるかということがわからなければ私たちは審議ができないのです。審議の過程においていろいろの議論があった、それを参考にしてこれから政令を定めますというあいまいなものについての審議は私たちはできないと思いますが、委員長、お願いします。
  41. 山地進

    山地政府委員 政令の基準といいますか、運輸省の考え方というのは、御質問に応じまして私どもの考えということを従来申し上げているわけでございます。特定地方交通線、従来私ども申し上げておりますのは輸送密度が四千人未満の地方交通線でございまして、それの中でバス輸送の転換が困難なものにつきましてはこれを除いて考える。そのバス輸送の困難なものとしては、ラッシュ時に非常に多くの人が乗るような路線、あるいは積雪、豪雪のために道路が冬季閉ざされるような路線、あるいは並行道路がないような路線、こういったものは特定地方交通線から除いて考えたい、こういうふうなことを従来から申し上げているわけでございます。
  42. 浅井美幸

    浅井委員 バス輸送の方が適切な路線、あるいはまた国鉄として維持する路線、こういうわけで地方交通線が約九千キロ。この地方交通線というのは、輸送量一日一キロ当たり八千人以下の路線だ、こういうことに決めて四千キロと五千キロとあらあら決めているじゃないですか。その決めている対象がまたわからないというのではなかなか審議が進まないと私は思います。審議のしようがないのです。バス輸送の方が適切な路線約五千キロ、この五千キロの内訳は一体どうなっているのか。バス輸送の方が適切な路線が約五千キロといういわゆるこの積算の根拠というのは一体どこなのか。あるいはまた国鉄として維持する路線で、いま局長が答弁したように、一日一キロ当たりが四千人以上の路線バス転換が困難な路線、ラッシュ時の輸送需要が大きい路線、こういうのを約四千キロだ、こういうふうに数字が出ているこの約四千キロの積算の根拠、どことどことどこを足してこういうふうになったのか、具体的に示してください。
  43. 山地進

    山地政府委員 先ほど来申し上げているように、政令が確定しないとどの路線ということがわからないわけでございますが、たとえて申しますと、並行道路があるという路線は、具体的に並行道路の全部を調べてみなければわからないわけでございますし、積雪の状態についてもよく調査してみなければわからない。そこで私どもの現在持っている過去のデータなり何なりで概算してみると四千キロ、輸送密度が四千人以下のところは五千キロくらいあるということで概算をしたものでございまして、何か非常に明確な基準をもって計算を積み上げたというふうなものではございません。ある種の仮定を用いて見てみれば大体これくらいであろうという数字でございます。
  44. 浅井美幸

    浅井委員 あいまいなままで積み上げた数字が四千キロだとか五千キロだとかというふうに出てくるということは私はちょっとわからないのです。  大臣、おかわりになったのでお伺いしたいのですけれども、塩川大臣の前の地崎運輸大臣は、この特定地方交通線の選定基準については北海道は特別な基準で考える、こういう答弁をなさっているのです。確かに北海道はこの対象線区が多いはずです。塩川運輸大臣は大阪なんですが、北海道について特別な選定基準を設ける考えはございますか、どうですか。
  45. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 国鉄は、御承知のように、日本全土にわたります鉄道網を敷いております。したがいまして、国鉄があらゆることを判断いたしますときに地域の特性を考慮しなければならぬかもわかりませんけれども、しかしながら、あくまでも政策としてやる場合には、やはり全国統一の規格で考えざるを得ないと私は思っております。  でございますから、この基準につきましても、いろいろとその地域の特性はよくわかりますけれども、一応法案として御審議いただく場合には一定の統一した基準というものによらざるを得ないのでございまして、北海道であるから、近畿であるからとか、あるいは東京であるからという地域ごとでの基準というものは定めにくいと思っておりますので、現在はそういうことは考えておりまん。
  46. 浅井美幸

    浅井委員 私はそうあるべきだと思いますが、しかし前回の審議のときにそういう答えが出てくるというように非常に基準があいまいだ。政令で決める、政令で決める、その政令はどういうものなのかと言えば、それは御審議を通じて皆さん方の御意見をしんしゃくして、これから各省間で打ち合わせをして決めるという。このあいまいなまま、対象線区もわからない、積算の基準もない、そういうものを私たちはここで審議をするのですか。ここで法律をこのまま結構ですといってつくるのですか。私たちは国民の、主権者の代表としてやってきて国会におって、国民の皆様方にどう報告をしたらいいのですか。これからまた公聴会が行われ、地方公聴会も行われて、そういう赤字線の対象になるであろうというところを視察にも参ります。そのときに、その辺の住民の人たちに、ここはなるかならないか私はわかりません、そういう答えを私たちはしなければならないわけですか。バス輸送の方が適切な路線でしょうか、それとも一キロ当たり四千人以上の路線でしょうか、こういろいろな話を聞かなければならない。維持してもらいたいのか廃止してもらいたいのか、そういうことを一々聞いて、こっちは明確な基準も持たないでそういう地方に視察に行かなければならないということであります。  私は、この地方交通線対策というものについて四千キロだとか五千キロだとかいう数字が出てくる以上は、やはりその対象がなければ四千キロだとか五千キロだとかという数字は出てこないように思いますけれども、もう一遍お伺いしますが、大臣、地方交通線約九千キロ、輸送量一日一キロ当たり八千人以下の路線、そして国鉄として維持する路線約四千キロ、バス輸送の方が適切な路線約五千キロ、これをいまその対象になる線区が決まらないまま私たちに審議をしろと言っているわけですけれども、これは決めないまま政令にゆだねるということで、そういう法律の出し方でいいのでしょうか。
  47. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 政令でその基準を明記して、それをやはり審議の対象にしていただかなければならぬと思うのでございますが、政令そのものがいろいろな文言等でございまして、実は政令案というところまできっちり決まっておらない状況でございます。しかしながら、政令の基本となりますその骨格は私たちで大体決めておるのでございまして、その取り扱いにつきましては、実は委員会の要請が委員長からございました段階で提示申し上げたいということを言っておるのでございまして、この件につきましては御趣旨の提出の準備もわれわれはいたしてはおりますけれども、先ほど鉄監局長の言っておりますように、政令として提出し得る段階にはまだ至っておらないので、その点は御了解いただきたいと思うのであります。
  48. 浅井美幸

    浅井委員 私はちょっと理解しかねるわけですけれども日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案というものの中身、一体どういうことになるのかと言えば、地方交通線の赤字というものを何とかなくしたい、そういうことで地方交通線をぶった切っていく、簡単に言えばそれをなくしていく、そして廃止をする、あるいはバス輸送に転換をする、そういうことがこの法律の一つの大きな柱であるわけです。その柱になるものがわからないというのですから、対象がどれだかわからない、政令で決める、その政令の中身はわからないというのでは、私は非常に問題が多いと思います。  この点はこれからのこの委員会の審議におきまして委員長、これを取り計らっていただいて、いま大臣からも答弁がございましたが、明確にこの政令の骨格、基準、これをやはりこの法案の採決までにまとめていただきたいし、提出を願い、われわれがそれに対して賛成だとか反対だとかという態度がはっきりできるようにしてもらいたいと思います。中身がよくわからないものを審議する矛盾というものを私ちは非常に不可解に思います。  そこで、特定運賃について伺いますけれども、一昨日の審議におきまして特定運賃の五割増しという総裁から答弁が出たように承っておりますけれども、特定運賃は全国一律と考えていいのか、赤字係数の大きい線区ほど割り高にするという採算性を前提とした割り高運賃を設定するところはないのか、お伺いしたいと思います。
  49. 高木文雄

    高木説明員 従来から今日まで引き続いて国鉄の運賃は全国一律である。国鉄というものが公共的使命を持っておるということもございましょうし、これまで比較的経営状態がよくて、いわば都市部の方で黒字になっております部分で地方の方の赤字部分を全体として埋めるといいますか、総合調整機能みたいなものを国鉄自身がやってきたという過程から一律であったわけでございます。  ところが、当委員会においてもしばしば御指摘をいただいておりますように、都市部において私鉄と国鉄との運賃格差がだんだん顕著になってまいりまして、国鉄の方が高いという現象が出てまいりました。それから地方では、逆に国鉄の方が大変安いという現象になってまいりました。どうしてそうなったかといいますと、国鉄の方は一律でありますが、私鉄の運賃の立て方は企業別に経営状況をごらんになって、そして適否を決めるということになりますから、したがってお客さんの多い地域については相対的に低目に決まることになってきますし、お客さんの少ない地域においては相対的に高目にならざるを得ない。私どもは一律で、そして私鉄の場合はそれぞれ企業別ということになると、どうもそうならざるを得ないわけでございます。  そこで、こういう状態のままでいつまでも持っていっていいのかということについてはだんだん疑問が出てきているわけでございますが、さりとて私どものように全国を見回して仕事をすべきところにつきましては、個別個別に、地域別にあるいは線区別に物を考えるということも適当でなかろうということになるわけでございまして、何か一律運賃から違う形態に移行したいという気持ちは持っておりまして、そういう気持ちを背景にして今回の特別運賃というシステムを採用させていただきたいということを反映して、運輸省の方でもそういうことを前提にした特別運賃システムというものを今回の法案の中に織り込んでいただいたわけでございます。  その場合に、たとえば全国を二本立てにするとか三本立てにするとか、あるいはまたさらに細かく線区別にするとかいうことについてはいろいろ問題があるわけでございます。やはり何と申しましても、国鉄は、独占的性格を失っておりますけれども、公共的役割りは果たしていかなければならぬということでございますから、各私鉄のように企業別的感覚、したがって私どもの方で言いますと、線区別感覚でそれに徹するというわけにはまいらぬのではないか。全国一律ではどうもぐあいが悪いけれども、さりとて私鉄と同じような厳密なコスト主義というのでもぐあいが悪いのではないかというふうに考えているわけでございまして、当面考えておりますところでは、やはり現段階では地方交通線全体について一本立てというぐらいのところが、長い間続いてきた一律運賃制度からの移行の段階においては適当ではなかろうかという考えを持っておるわけでございます。  ただし、その辺につきましては、運賃の問題についての専門家の方々の御意見もいろいろ分かれておりますし、また地域地域のお考えがどういうふうであるかということもまだ十分くみ取っておりませんので、現段階で私が申しておりますのは、今日までに国鉄の中で研究しましたところは、まあまあきわめて簡素なものでなければならぬであろうということで申し上げているわけでございます。
  50. 浅井美幸

    浅井委員 この特定運賃というのは過疎対策とは非常に逆行するということなんですね。安い運賃でサービスがいいということが望まれているのに、高い運賃でサービスが低下する、こういう経済原則に反するようなことがこれからしばしばこの特定運賃ということで出てくるわけですけれども、具体的に、たとえば根室線、こういうのは地方交通線の対象と私は思いますけれども、この線区で赤字係数の大きくなる現状なんですけれども国鉄総裁の言う特別運賃五割増しで根室線なんか済むのですか。それとももっと倍ぐらいになるのですか。平均的な五割増しだと私は思いますけれども、その辺はどうでしょうか。
  51. 高木文雄

    高木説明員 先ほど来申して、おりますように、それぞれの線区別に特別運賃を立てるという考え方を私どもの勉強の段階ではとっておりませんものですから、いまお示しの線区についてどういう運賃になるか、どういう運賃になるようなことを考えているかということは現段階ではお答えできないわけでございますが、たまたま根室線という御指摘がございましたからその根室線について申しますと、根室線は、先ほど来御議論にありました政令でどうなるかということはございますけれども、大体現段階ではむしろ幹線の方に入る線区ではないかというふうに考えておりますので、根室線について申し上げますことは特にいかがかと存じます。
  52. 浅井美幸

    浅井委員 特定運賃、ほほ五割増しだろうという返事で、まだ線区別に細かい計算をしたことがないというわけですけれども、これは大ざっぱな返事だったわけでしょうけれども、五割増しというのもどういうところを基準にしてお出しになった数字かわかりませんが、バスに転換した場合にもやはりこの割り高運賃の問題は出てまいります。  割り高運賃の例としては、これまでに廃止された路線を見ても非常に高額になっているところがございます。この地方交通線対策室の資料で見ますると、東北線の白河から水郡線の磐城棚倉の間、これを鉄道をやめて国鉄バスを運行いたしました。いままで普通運賃が二百五十円のところが国鉄バスでは四百三十円、一・七二倍です。通勤定期の運賃が一カ月七千五百円だったのが一万八千八百三十円、二・五倍です。通学定期は高校生で一カ月三千百三十円でしたが、国鉄バスになって九千七百六十円。こういうふうに出ております。さらに、松川−川俣高校前というこの運賃比較が出ておりますけれども、これも国鉄バスです。同じくいままでの川俣線の場合は、鉄道の場合、普通運賃が二百十円、バスに切りかわって四百五十円、二・一四倍です。通勤定期運賃は一カ月で六千三百円が二万二百五十円にバスになって上がっております。三・二一倍です。通学の定期運賃は高校生の一カ月が三千二百十円であった料金が、国鉄バスになって一万五千四百八十円、四・八二倍にもなっています。  こういうふうに地元負担といいますか、地域住民の生活を大きく圧迫をしておりますけれども、この辺についての転換というものは、簡単に転換、転換ということが言われておりますけれども、この地域住民の生活を圧迫する点についてはどのように考えておられるのですか。一遍、運輸大臣お答え願いたいと思います。
  53. 高木文雄

    高木説明員 ただいまお示しがありました白棚線あるいは川俣線では、白棚線の場合には国鉄専用バスになっておりますので、民間のバスがそのすぐ隣を走っておりますが、民間のバスに比べますといまの白棚線のバスの運賃は安いということになっております。鉄道の運賃と民間バスの運賃との中間でいま専用バスを走らしております。  そこで、いまおっしゃいましたように、民間バスもしくは国鉄バスあるいは専用バスというものに切りかえてまいりますと、どうしても水準としては相当高くなります。ただ、単純に運賃と運賃を比較していろいろ考えるのは適当でないわけでございまして、この白棚線につきましても川俣線につきましても運行回数が、つまり走りますフリクエンシーが、鉄道の時代とバスに切りかわりましてからでは全く様相を異にしておるわけでございまして、たとえば通勤なり通学の時間帯に走ります列車回数とバスの回数ではさま変わりをいたしております。また、バスでございますから駅間距離は非常に短くなっておるわけでございまして、いまここに資料を持ち合わせておりませんけれども、バスストップの数と旧来ありました鉄道の駅の数とはちょっと比較にならないかっこうになっております。そういう意味で、サービスの内容は変わっておるわけでございますから、果たしてその差があることが著しく非難されるべきものかどうかという点については、必ずしも運賃差だけで議論をしていただくことは適当ではないと私は考えております。ただ、現実の問題として、不便であっても安い方がいいではないかという問題はどうしても出てくるわけでございます。  そこで、きわめて数少ない例しかございませんけれども、従来の例に徴しますと、そういう切りかえの時点におきましては何らかの緩和措置というものを一定期間に限って考えるというようなことが行われてきたわけでございまして、今回の法制の仕組みにおきまして、従来と違いまして協議会制度というものをつくっていただいて、そして協議会でいろいろ議論をするということは、そうした影響等を頭に置いて、そこで地元の皆さんとよくお話し合いをいたし、いろいろな御希望なり御意見なりを承った上でないとそういう切りかえを行うべきでないという考え方から出ているわけでございますので、もし、この法律を通していただけました場合の実際のやり方といたしましては、その地域の方々に及ぼす御迷惑をどう対処したらいいかということについて協議会で御相談をいたすということになろうと思います。
  54. 浅井美幸

    浅井委員 いま私は一つ気がかりなことがございましたのですけれども、バスになってとまる停留所がふえたから割り高になってもこれはやむを得ないという発想がございましたけれども、通勤定期等が三倍にも四・八二倍、約五倍近くになってもそれで地域の人たちの生活を圧迫しないという考え方はやめてもらいたいと思います。地域住民の皆さん方によりよく便利になって、そして運賃が安いということがサービスの増高といいますか、サービスがふえるということであって、いままで何も地域の住民の人たちが求めてバスにしてくれというわけではないのです。日本国有鉄道というのが、輸送状況の変化によってこういう赤字路線は切らなければならぬという国の政策において赤字線対策をしようというわけであって、地域の人たちは置いておいてもらって何ら差し支えないわけなんです。それを国の政策においてバスに転換する、あるいは廃止するというのに、その人たち負担がふえた、それは便利になっているでしょうというふうな論理の展開というのはやめてもらいたいと私は思うのです。国鉄経営努力あるいは企業努力、国の施策が適正であればそういうことをやらなくても済む場合もございます。したがいまして、その辺のいまのお答えについては私は納得しない点もございますが、まだ幾つかお聞きしたい問題がございますのでそれに移りたいと思いますが、いずれにせよこの法律につきましては数多くの問題がございます。これから政令で定めるという運輸省の考え方でありますけれども、それらも含めまして、いまの問題等も含めて、特定運賃の負担やあるいはまたバスに転換した場合についての負担、そういうものを地域住民の立場に立ってよくお考えいただきたいということを特に要望しておきます。  そこで、基本的な総合交通政策のことでお聞きしておきたいと思いますけれども、運輸省にありますところの運輸審議会において総合交通政策を検討中だと聞いておりますけれども、その検討状況はどうなっているのか、その中で鉄道、とりわけ国鉄の位置づけをどうしようと考えているのか、この辺について明らかにしていただきたいと思います。過去数次にわたって国鉄再建計画が策定され、それに合わせて国の総合交通政策の観点よりなる配慮がその都度うたわれておりますけれども、それがどれだけ今日まで実施されたのか。何回もの国鉄再建の失敗の大きな原因の一つにその具体的な実現がなかったことが挙げられると思いますけれども、その点はどういうようになっておりますか、大臣お答え願いたいと思います。
  55. 石月昭二

    石月政府委員 お答え申し上げます。  総合交通体系につきましては、昭和四十六年に運輸政策審議会から答申をいただいておりまして、そのほかにも同年の十二月に臨時総合交通問題閣僚協議会で決定いたきました総合交通体系についての決定がございます。これにしたがいまして従来運輸政策を推進してまいったわけでございますが、当時出されましたときは高度成長時代でございましたが、その後経済も安定成長に移行いたしまして、経済、社会両面にわたりましていろいろ変化が出てまいりました。それから、御承知のようにエネルギー問題、交通空間の問題、公害問題といったような制約条件もいろいろふえてまいりましたし、そういう経済、社会諸情勢の変化を踏まえまして、今年の四月一日に運輸政策審議会に対しまして、長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向についてという諮問を現在いたしておりまして、鋭意御審議をいただいているところでございます。  現在の審議状況は、運輸政策審議会に四つの部会を設けまして、具体的には企画部会、これはそういう将来の交通政策についての制約条件等につきましていろいろ御審議をいただくところでございます。それから幹線部会、地域交通部会、物流部会の四つの部会におきまして御審議をいただいているところでございまして、明春ごろには御審議の結論をいただけるものと期待しているところでございます。
  56. 浅井美幸

    浅井委員 国鉄は適合分野として都市間の旅客輸送や大都市圏の旅客輸送、大量定型貨物輸送を考えている。国土の均衡のある発展やエネルギー問題の重要性を考えると、総合交通政策などという議論を待つまでもなく鉄道の役割りは非常に重大だと思います。国家の将来を考えるならば、国として特に国民の要求の強い大都市圏についての鉄道整備にもっと力を入れるべきであると思います。しかしながら、昨年の閣議了解によれば国鉄の投資を現状程度に抑えるという課題が出ております。財政再建を迫られている国鉄なんですけれども、こういう点についての配慮というものが必要だと私は思います。たとえば大都市通勤対策投資の推移を見ますると、昭和四十六年は地上設備で大体四百九十六億、設備投資の大体一四%から一五%これがだんだん減ってまいりまして一〇%以下になっております。昭和五十三年、五十四年をずっと見てまいりまして、東京付近と大阪付近、この十年間、東京付近の通勤対策の設備投資は四千七百億ですか、大阪は九百四十二億、東京の四千七百億に比べて五分の一の九百四十二億ですけれども大臣、あなたも大阪なんですが、これについてどう考えられますか。
  57. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 御指摘がありましたように、国鉄がここ数年の間、いわゆる国土の均衡ある交通整備ということから、新幹線投資に重点が置かれてまいりました。これはこれなりに時代的な背景がございますし、また国土全般から見ましたら必要な投資であったことは当然でございます。そこで、いま鉄道の特性を生かす、その一つの大きい柱として、大都市圏内における交通網の整備でございますか、これはこれから真剣にやっていかなければならぬ重大な課題でございます。  ところで、財政再建の途上にある、国の財政状況から申して、現在投資しております新幹線投資が、昭和五十八年度ごろ、その辺を中心といたしまして、既定の計画をしております工事はほぼ終わってまいります。そういたしますと、財政再建に阻害をすることなくして、現在投資しております国鉄の投資額に余剰が出てまいりますので、その余力を大都市圏なりあるいは地域におきます主要な交通網の整備に投資していくべきだと思うております。  先ほど東京地域と関西地域の比較がございまして、確かにその傾向は数字の上で出てまいっております。が、しかし一方におきまして、関西地域におきましては、私鉄の発達が、いままでは都市圏内における交通として相当の役割りを果たしてまいりました。しかし、現状を見ます場合には、その地域の発展の盲点が非常に出てきておりますし、そういう点を国鉄の輸送によって埋めていくことが国鉄の持つ公共性であろうと思うております。したがいまして、今後は、ただ単に関西だけに限りませんが、そういう私鉄なりあるいは自治体のやっております公共交通機関の整備で及ばないようなところであって、しかも都市圏交通として非常に重要な地域等の線区につきましては、国鉄が積極的に投資をしていきたいと思うております。その対象の一つといたしまして関西地域が投資の重点に考えられるということは言えると思うのであります。
  58. 浅井美幸

    浅井委員 財源問題がこれにかかわる問題ですけれども、五十四年度、五十五年度の概算要求の中において、運輸省は陸上特別会計、こういう構想を掲げたことがございますけれども、それは現在どうなっていますか。
  59. 石月昭二

    石月政府委員 運輸省といたしましては、公共交通の維持整備を図ることを目的といたしまして、五十四年度、五十五年度の両予算の要求に際しまして、陸上公共交通特会を要求したわけでございますけれども、これは諸般の情勢で実現に至らなかったわけでございます。私どもといたしましては、最近のエネルギー問題とか交通空間の問題とか環境問題というようなものがだんだん強まってまいっておりますので、こういう状況を考慮いたします一方、また現実には、たとえば自家用車の普及ということで、都市地域におきましては道路の混雑、それから公害問題というものが発生しておりますし、また地方におきましても、自家用車を持てない人たちの交通のモービリティーが非常に低下してきている。さらには、自家用車がふえた結果、公共交通機関の経営が悪化しているというような実態を踏まえまして、こういう諸問題を解決するために、安定した財源を確保する必要がますます強まっているという認識をいたしているわけでございます。  現在、先ほど申し上げましたように、こういう実態をも含めまして、八〇年代の長期的、総合的な交通政策の基本方向につきまして、運輸政策審議会に諮問いたしておりますので、これらの点も含めた行財政措置のあり方ということにつきまして、運輸政策審議会の答申をいただいた上で、さらにこの実現のために努力してまいりたいというぐあいに考えている次第でございます。
  60. 浅井美幸

    浅井委員 私は、運輸政策審議会の答申が速やかに出されることを望んでおきます。  次の問題に移りますが、国鉄の新駅の建設、駅舎改修に伴う問題で、この新駅の建設と自治体の負担ということについてお伺いしたいと思います。  去る六月の十日に、新横須賀線の西大井駅の建設について、その建設資金を自治体が負担することは、地方財政再建促進特別措置法の二十四条二項に違反するとの東京地裁の判決が出されました。これについて、今回の品川区の出資は期成同盟を経由した形で行おうとしたものですけれども、このような形での出資は、地方財政再建促進特別措置法に違反すると判断しておられるのかどうか、法制局と自治省にお伺いしたいと思います。
  61. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 お尋ねの点は、地方公共団体が寄付金を支出します直接の相手方が国や公社等でございませんで、何らかの組織を経由しましての間接的な支出であります場合に、そのような寄付金等の支出と地方財政再建促進特別措置法との関係いかんということだと存じますが、そのような寄付金等の支出につきましては、経由いたします組織等の実態等から見まして、地方公共団体による直接の支出と同一視されるべきものかどうかという点がポイントになろうかと存じております。  ただ、御指摘の品川区のケースにつきましては、何分にも現在高裁によって係争中でございますので、当局としましての具体的な意見というものは差し控えさせていただきたいと存じます。
  62. 木村仁

    ○木村説明員 お尋ねの品川区の事件につきましては、現在、品川区が東京高等裁判所に控訴中で、なお係争中でございますので、第一審判決の論評は慎まさしていただきたいと思いますが、自治省といたしましては、従来、期成同盟会等を設置して、これを通して国鉄負担をいたしますことは脱法的行為になるおそれがあるので、慎むように指導いたしております。
  63. 浅井美幸

    浅井委員 それでは、自治省にお伺いしたいのですけれども、慎むようにということなんですけれども、いままでにも、現在まで国鉄の駅の建設、そういうことにかなりの件数が、自治体が負担してつくられたものもあると私は思いますけれども、これらも遵法的には地財再建法に違反しているものと考えているのですか、自治省の見解を伺いたいと思います。
  64. 木村仁

    ○木村説明員 自治省の承認、自治大臣の承認を得ずして直接国鉄負担いたしますことは違法でございますが、これまでのところ、私どもは、直接地方公共団体が承認なく国鉄に駅舎等の建設についての負担をしたということは聞いておりません。また、先ほど申し上げましたように、期成同盟会を通じてやりますものにつきましても、これは脱法的行為になるおそれがあるから厳に行わないように指導いたしております。そのほか具体的に負担をいたしましたものにつきましては、承認を得た事例はございます。
  65. 浅井美幸

    浅井委員 総裁が、十月六日に記者会見の席上で、赤字解消のための増収試案として駅の区間を短縮して駅をつくって通勤客を集めるというように記者会見で述べておられますけれども、新駅の自治体負担が法律的に違反ということになりますと、財政難のこの折から駅の建設が非常に促進しにくいことになると思いますけれども、よく私どもが地元で聞きますのは、駅をもう少し改修してもらいたい、あるいはまたここに駅をつくってもらいたい、そういう住民の要求が非常に強まっております。あるいは強いところがございます。それは自治体としても、これについて非常に乗り気になります。この法の壁がこれから障害になって駅の建設等に問題が出てくるおそれがありますけれども、この点について、国鉄として対応策はどのように考えられますか。いまこの品川の問題は裁判中でありますからということで、法制局の方につきましては、違法だとか合法だとかということで明確なお答えはなかったわけでございますけれども、この問題について国鉄としてはこれからどのように取り組もうとしておられるのか、この問題にかかわる自治体の負担ということと関連してお答え願いたいと思います。
  66. 高木文雄

    高木説明員 従来は、在来線につきましては、駅舎をつくるということについての御要請がありました場合に、現実には駅舎をつくりまして多少お客さんが乗ってこられるということになりましても、その駅舎建築費と見合って経営計算をしてみますと、私どもの採算という点からいいますと引き合わない場合がほとんどでございましたから、そこで従来は、いわゆる請願駅という特殊な形のもの、ということは地元で御負担いただいたもの以外は、私の方でやるということはしないというたてまえをとってきておるわけでございます。その場合に、地元の方でどなたがどういう形で負担されるかということについては、いろいろな形があるわけでございまして、先般問題になりました西大井駅の場合のように、実質的に自治体自身負担になるということであれば、これは現行法のたてまえからいって適当でないということが言えると思うのですけれども、必ずしも自治体自身負担でなしに、たとえば土地区画整理組合というようなシステムをうまく使うとか、あるいは民間デベロッパーに負担をしてもらうとか、あるいは開発利益を一つの財源というふうに考える仕組みを考えるとか、いろいろな方法はあり得ると思うわけでございまして、私どもとしましては、必要なものについてしかるべき方に負担していただくというのであれば、もう少し手法をいろいろ工夫して、私どもも地元の方々に対していろいろ知恵を出してやっていくということが望ましいのではないかと考えております。  ただ、先般の新聞で、国鉄自身負担をして、そして新駅をつくることもあり得べしというふうに私が述べたように伝えられておりますが、ちょうどいい機会でございますので申し上げさせていただきますが、私はそうは申していないわけでございます。いろいろな工夫の余地があり得るということを申し上げたわけでありまして、今後とも、いまの経営状態からいたしますと、採算のとれない駅を国鉄負担でつくるということは全く考えていないわけでございまして、現状においては、いま申しましたような、もう少しいろいろ知恵の出し合いがあるのじゃないかという意味で申し上げたことをつけ加えさせていただきます。
  67. 浅井美幸

    浅井委員 運輸大臣、こういう問題もございますので、新駅というのは、期成同盟だとかあるいはまた、いま言った土地区画整理組合だとかいう、この請願の駅でも負担の仕方をいろいろと工夫をして出してもいるのでしょうけれども、まず国鉄の駅をつくるのに、請願があるときの負担が地方自治体も負担できないという状況の中でございますので、新しい駅をつくるときの助成というものを運輸省としても一遍考えていただければと思いますが、この点はどうでしょうか。
  68. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 この新駅の設置というのは、いわばいままで開発をされておらなかったようなところが、その地域の事情によりまして急激に開発される、あるいは駅をつくることを目標にして開発をするといういろいろなケースがございましょう。しかし、私は、地方財政再建法の精神は生かさなければならぬと思うのですけれども、だからといって地方と国鉄がそういつまでもぎりぎりとした話で、お互い法律だけで解決しようというような考え方では世の中はうまくいかないように思うのであります。期成同盟を結成されて、要望がございますのは、やはり全部その市長さんなり議長さんなりが中心となって、いわば自治体の意思を込めてきておられるように思います。ですから、その地方にとりましては、同時に大きい政治問題でもあると思う。それをこなすのに、ただ単にこれを、国鉄の責任だけでというわけにもいかないと私は思います。国鉄がもうかっておって、そのような投資がどんどんできるようなときは、これは当然国鉄の責任でやったらいい、当然であろうと思うのですが、現在のような状況でございますから、国鉄努力するが、地方自治体も努力してもらいたい。あるいは地方自治体というよりも、地元が努力してもらいたい。特にそういう新駅ができまして、それによりまして開発利益が当然浮かび上がってまいりますし、これは地方財政にも固定資産税の増額等でいい結果になってくると私は思っております。ですから、その地方財政再建の法の精神を尊重してわれわれもいたしますが、その点は、お互いが円満に話し合う方法を講ずべきだ、それは何とか制度的にできないだろうかというお尋ねでございます。それにつきましては、私たちも今後研究し、勉強して、関係省庁との間でそういうぎすぎすしたことではないようにうまくやっていけるような道を考えていきたいと思うておりますので、また国会の方におきましてもひとつ御支援を賜りたいと思う次第です。
  69. 浅井美幸

    浅井委員 いまの運輸大臣の御答弁に私も賛成でございます。ですから、この自治省の方の考え方、これを考え直してもらいたいと私も思いますので、運輸省と自治省とよく話し合っていただいて、これからそのようなぎすぎすした考え方のないように、スムーズにいくようにしてもらいたいと思います。  次に、国鉄の関連事業のことについてひとつお伺いしたいと思います。  この関連事業につきまして、ミディショップというような考え方でいままでやってきたところがあり、これからまた企業努力ということで、何か収入をということでがんばっておられるそうでありますけれども、この関連事業収入のことについての全体の考え方についてまずお伺いしたいと思います。
  70. 山口茂夫

    ○山口説明員 いまお話のありましたミディショップ、これに類する物を売る場所あるいは軽飲食を提供する場所等は、全国で売店の小さなものを含めまして六千店ほどございます。そのうちお話のありましたミディショップと称するものは一店の面積が三百平米以上のものということでございまして、これは現在まだ二十店ほどしかございません。それから、駅ビル等がございまして、大きなものを含めますと、三百平米以上のいま開業中のものは約百五十店ございます。  今後の計画でございますが、出資の駅ビルを含めまして、三百平米以上のやや大型のものは毎年大体二十ないし三十のテンポで進めたいと思っております。それから、小型の五十平米前後のもの、これは大体百五十ぐらい毎年つくっていきたい、かように考えております。
  71. 浅井美幸

    浅井委員 いま国鉄全体として、関連事業でどのくらいの収入になっていますか。
  72. 山口茂夫

    ○山口説明員 五十四年度の決算で五百十一億ございます。
  73. 浅井美幸

    浅井委員 これを五十五年、五十六年、六十年度までに大体どのくらいまでにいわゆる関連事業で収入を図ろうとしているのですか。
  74. 山口茂夫

    ○山口説明員 個々の施策については目下積み上げ中でございますが、最終目標としまして、昭和六十年度には千億の台に乗せたいと考えております。
  75. 浅井美幸

    浅井委員 この関連事業でいろいろなことをおやりになるわけでございますけれども、いまの御説明のミディショップ等の新規店舗の開発、これに伴う地域の店舗や商店街とのトラブル、こういうものが将来出てくるのじゃないかと思いますし、まだ既設の店舗との間で何かいままで摩擦がなかったか。民業圧迫だというような声が出てきて、それがこれから関連事業を行っていく上において支障が起こらないようにしてもらいたいと私は思いますが、この関連事業の収入の増大とともに、あわせて国鉄の持つ公共性というものも重視してもらいたいし、新規店舗の開設に対する明確な基準はやはり設けておいてもらいたいと思います。パイプラインだとかということでかつて国鉄が一生懸命力を入れた事業もございました。関連事業において収入を図るという考え方は私は決して反対ではございませんが、民業圧迫ということでその地方の人たちとのトラブルあるいはまた商売人とのトラブル、そういうものがこれから大きくなってくるのじゃないかという心配も持っておりますが、その辺のことについてどのような対策をとられるのか、またとっておられるのか、お伺いしたいと思います。
  76. 山口茂夫

    ○山口説明員 大型の店舗、それから駅ビル等を建設いたします場合には、計画をつくりますと地元の商工会議所あるいは関係の商店会等に事前に御相談をいたしております。そういう大筋の了解を得ましてから実施に移すというたてまえをとっておりますので、お話しのようなトラブルと言えますか、トラブルというよりはむしろ御説明をして御注文を承って、その線に沿って実施に移していくといった方が適切ではないかと思います。今後とも地元との協調ということを第一義に考えまして仕事を進めたいと思っております。
  77. 浅井美幸

    浅井委員 その辺は私は老婆心として申し上げておきたいと思います。  時間が参りましたので、最後に要望といいますか、申し上げておきたいと思いますが、国鉄の増収努力企業努力といいますか、もっともっときめの細かい乗客に対するサービスというものが必要だろうと思います。私ども国鉄をしばしば利用させてもらっておるわけでありますけれども、そのときに感ずることは、たとえば地震が起こって新幹線がストップをした、その乗客に対する適切な事故の状況の放送ということについては、私が考えておるよりももっと悪い。たとえば航空機の飛行場においての乗客に対するアナウンス、あるいは事故の状況の報告等はわりあい的確になされますけれども新幹線の事故におきましては、車内においての事故の状況あるいはその事故の回復の時間、そういうものが適切に行われないというのが現状であります。国鉄というのはやはり国営ということが、官民ということから分ければ、官業といいますか、お上がやっているというような考え方がいまだに残っておるのではないかと私はしばしば思うわけでございます。原因はいろいろあると思いますけれども、もっと国鉄の利用者の声を吸い上げる機関といいますか、そういう意見を聞いて業務の運営に反映するように、国民に開かれた国鉄にすることが必要と私は思うわけでございます。これからこの法案の審議が進むわけでございますけれども財政再建という非常に重要な課題とともに、現実の運営の中においての国鉄は国民のための足ということから、さらに努力、さらにサービス、そういうものについてなお一層の御努力を要請をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  78. 小此木彦三郎

    小此木委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後二時三十二分開議
  79. 小此木彦三郎

    小此木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村正雄君。
  80. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 私は、議題となっております日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案の内容よりも、国鉄再建する基礎的な問題基盤の問題について、運輸大臣なり国鉄総裁にお伺いいたしたいと思います。  従来、財政再建という名目のもとに数次の再建計画が出されましたが、いままでは財政再建という結果についての計画であって、したがって、国の助成ということと運賃の値上げが中心になっておったわけであります。ところが、今回は結果でありまする財政のつじつまを合わすというだけでなく、経営自体の総合的な再建計画でありまして、この点、国鉄体質自体に触れたものでありまして、いままでの数次にわたりまする財政再建計画とは内容が異なっておるという点は評価いたしたいと考えております。  ただ、端的に言って、財政再建だけでありましたならば予算措置だけをとれば解決をするわけで、もちろん国の税金の投入でありますから、国民がどう考えておるかという政治的な問題は別でありますが、少なくとも政府が方針を決定し、予算措置をすれば、それで合うわけであります。したがって、やはり今度の国鉄再建というものの中心課題は、何といっても国鉄自体体質の改善と経営努力というものがその中心であろうと思います。したがって、そのためには国鉄自体の問題が一番大きなかなめになると思うわけであります。したがって、従来の計画がたびたび失敗いたしております原因、たとえば財政再建について、国は決められた助成なり補助はすべてやっております。予算措置も講じております。にもかかわらず、数次にわたりまする再建計画が失敗に終わったということは、これは国鉄自体企業努力を怠ったと言って私は過言ではないと思います。もちろん経済情勢の変化等いろいろ要素はありますけれども、いままでの再建計画が失敗に終わった中心的な問題は、私は、国鉄企業努力を怠ったという一言に尽きると申し上げても過言でないと思います。  したがって、再建策の基盤といいますか、基礎といいますか、その中心課題というものは、国鉄体質改善と、再建に対しまする総裁以下四十数万の職員の熱意とこれに取り組む姿勢にあると私は考えております。したがって、運輸大臣国鉄総裁からまず所見を伺いたいと思います。
  81. 高木文雄

    高木説明員 まさにただいま御指摘いただきましたように、国鉄体質をきちっとするということは基本であると考えております。特に第一次オイルショック以後、民間の企業の場合には、営々として減量経営を進められたわけでございますけれども、残念ながら私どもの方はまだそれができてないというところに、ごく最近、数年の間に非常に経営体質が悪くなった原因があるというふうに考えております。  本来、大変労働集約的な産業でございますので、製造業のように設備を新しくすることによって経費負担を軽減していくということはできにくいわけでございますけれども、それにいたしましても、新しい体制というものに切りかえてまいりたいと思うわけでございます。貨物につきましては昭和四十五年あるいは六年をピークとして、また旅客につきましては五十年、五十一年をピークとしてお客さんが減ってきておるという実態がございますので、このことはかなり全職場に響いてきております。このままではとてもやっていかれなくなるのではないかという感じが、大変遅いのでありますけれども、徐々にではありますけれども、各現場にもだんだんそういうことがうつりつつございます。したがいまして、この際、私どもは今回の案でお示しいたしておりますところのわれわれの企業努力と申しますか、自助と申しますか、それを具体的にはいまよりも約二割少ない人手でもって同じぐらいの仕事をやっていくというところを旗印といたしまして取り組んでまいる覚悟でおるわけでございまして、まだまだ現場の末端末端まではその気分が伝わってきておるとは申し上げかねますけれども、徐々にではありますが、そうした状況というものは一人一人の職員の心に刻まれつつあると思いますので、これを何とか一日も早く全国の職場に及ぼしていくことによって、いわば目の色が変わってきたということに早くなりますようにして、今回の計画の達成に努めたいと考えております。
  82. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 中村先生仰せのように、国鉄再建はただ単に物の面の再建だけではない、確かにそう思いますが、過去におきます再建案は、いわばそういうハードの面のみに重点を置かれてきて、ソフトの面についての再建策に対する実績は確かに薄かったと思うております。それには何といたしましても、この際、現在御審議いただいております再建案をできるだけ早く成立させていただいて、これを一つのよりどころにいたしまして、やはり気持ちの上からも本当に労使一体となって再建に取り組んでいく、こういう気分を醸成していくべきだと私たちは思っております。
  83. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 提案理由の説明によりますと、六十年度で大体収支とんとんに持っていく基盤をつくりたい、こういう説明であり、法案の内容もそれを目標にしていろいろと方針を決められております。ただ、先ほど浅井君の質問にもありましたように、国鉄再建、六十年度目途収支均衡をとるということでありますが、それには国鉄自体のなし得る仕事の限界と、政府がしなければならない問題と二つあると思います。したがって、六十年度国鉄がなし得る均衡という分野と、いまこの再建法案の段階ではまだ固まっておらない政府自身がやらなければならない問題もあると思います。  したがって、これは国鉄総裁にお伺いしたいわけでありますが、六十年度収支均衡国鉄努力だけで保つという経営の範囲、限界、これをひとつ承りたいと思います。
  84. 高木文雄

    高木説明員 いろいろな角度から御説明できると思いますけれども、一番端的には、現在収入を一〇〇といたしまして人件費率が七〇をちょっと超える状態になっておるわけでございますが、先ほども説明いたしましたように、昭和三十九年赤字になります以前の状態は、ほぼ収入人件費の割合は五割ぐらいであったわけでございますし、また現在経営的に成り立っております私鉄の場合を見ましてもほぼそのぐらいの水準でございます。それが、現在、収入に対して人件費が非常に多い理由は何かということを考えてみますと、一つは、もう少しいろいろ工夫をして人手のかからない経営にしていかなければならない。端的には、三十五万人でやるようにしてはどうかというのが一つでございますが、仮に三十五万人になることができたといたしましても、なおなかなか人件費率が減らない。それを尋ねてみますと、他の企業では見られない年金負担あるいは退職金負担ということがあるわけでございまして、これはすべて過去におきますいろいろな問題から起こってくるものでございますので、これを現在のお客さんに負担していただく、すなわち、それをも含めて運賃水準を上げることは至難のことでございます。  そこで、年金あるいは退職金等につきまして、先ほど来の御審議の過程でも御説明いたしましたように、どうかひとつお願いをして、政府の方でいろいろ配慮していただきたい。それをやることによりまして、少ない人でやっていくこと、それから年金なり退職金なりのきわめて異常なものについて制度的にあるいは予算的にめんどうを見ていただくことによりまして、大体昭和六十年の時点におきまして収入人件費率を五割ぐらいのところへ持っていけるのではないかと考えております。そうすれば、まず第一次的に一応の体質は整うということでございますので、きわめて大ざっぱな言い方でございますけれども一つの指標としてはそこらあたりをねらいにして、立て直しの第一次というか、基盤をつくるという意味を、数字的といいますか、指標的に申しますと、そういう点に置いてやりたいというのが私どもの案でございます。
  85. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 私は、戦後国鉄の復興から今日まで三十数年、国鉄の運営自体を政治という場から見てまいりましたが、その中で特筆すべきことがありましたのは、石田さんが総裁のときに、国鉄経営について国がやはり助成をしなければいけない、公共負担の分については国が助成しなければいけないということを石田総裁の信念としてたびたび政府なり国会に訴えられて、そのときに初めて国鉄経営といいますか、再建といいますか、それに国が助成の第一歩を踏み出したわけで、この功績は私は大いにたたえなければならないと思います。ただ、それと同時に、国が何とかめんどうを見なくてはならない、こういうことの強い要請をされる間、国鉄がこのようになったのは政府が悪いからだ、国がめんどうを見ないからだ、国会の責任だということを、国の助成を引き出すためにたびたび石田総裁はおっしゃいました。そういう結果から、国の助成に踏み切った効果はありますけれども、それと同時に、石田総裁のそういう考え方が国鉄の役員なり職員の中に浸透いたしまして、すべて国の責任、政府の責任ということで、親方日の丸の考え方と相まって、自己の努力をしなかった責任を国や政治になすりつけるような、転嫁するような風潮が残っておることは私は否定できないと思います。少なくともいまの国鉄の現状は、民間の企業であればとうに破産している企業であります。そこに働く役員なり職員すべての人が、このままでいけば国鉄がつぶれるのではないか、自分の職場がなくなるのではないか、自分の生活がどうなるかという危機感というものは、理屈の上ではわかっておっても、はだには感じておらないというのが実態ではないかと思います。民間の企業であれば、そのような危機感が役員から従業員に至るまであって、民間の企業再建いたしているわけですが、国鉄総裁以下、去年入った職員に至るまで、国鉄が危機にあるということが理屈の上ではわかっておっても、最後は国が何とかしてくれるだろうという考え方がいまなお残っておりますから、危機感というものをはだに感じてはいないと私は思いますが、これに対しまして運輸大臣はどのように見ておられるか、御所見を承りたいと思います。
  86. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 おっしゃるような零囲気が企業の中に流れておるということは私は否定いたしません。しかし、私が最近見ておりますのに、やはりだんだんと国鉄再建を図らなければ国鉄企業体としての存立すら危うくなってきておるという意識は燃えてきつつあるように思うのであります。それは具体的な面から申しまして、たとえば昨年、本年と見ます場合に、いろいろな人件費あるいは燃料の高騰という悪条件の中ではございましたけれども、たとえば営業損益に関しましては少し改善されてきたような気配が見えております。そういう点を見まして、今日この状態に至るまでには長い年月がかかってきておるのでございますから、私は、何かのきっかけに先ほど来おっしゃっている意識転換を図るべきだと思うのです。それをすることによって本当に財政上、そしてまた法制上の改正と相まちまして、国鉄再建できるものと私は信じております。
  87. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 私は、国鉄企業というものは日本経済の根幹であって、国鉄自体が万一とまることがあれば日本経済は混乱する、このように信じ、認識いたしてまいったわけです。ところが、先年のいわゆるスト権ストによって一週間以上国鉄がとまった。各地方地方におきまするトラブルはありましたけれども、日本経済の根幹はこれによって何ら影響はされておりません。私は、自分の認識が誤っておったということを実際の姿から感知したわけです。したがって、国有鉄道は独占事業ではなくて、自動車や船や飛行機と競争する競争企業である。いままでの国鉄が日本の経済において占めまする要素の重大なことはもちろんではありますけれども、すでに独占企業でなくなった。民間の私鉄やバス企業と同じように競争企業になってきたということを認識し、その点に立脚して再建をしなくてはならないと思います。したがって、国鉄の持ちまする公共性の問題については政府、国が責任を持つとすれば、これから企業再建するとなれば、国鉄のこれからの経営はいわゆる企業性に立脚した経営でなければ再建できない、私はかように考えますが、これに対しまする大臣総裁の見解を承りたいと思います。
  88. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 仰せのとおりでございまして、公共性、これはやはり依然として高いものがあると私は思いますが、まさに独占的な企業ではなくなってまいりました。しかし、一面において、公共性と独占性が、ややもするとそこにいままでの惰性と申しましょうか習慣と申しましょうか、沿線住民の方もそれを期待しておられるし、また国鉄関係にある者もそういう意識なきにしもあらずと思うのであります。現在、その公共性の部分につきましては役所といたしましても十分責任を持っていかなければなりませんが、企業としての国鉄、これは鉄道の特性に立脚した経営に戻すべきだと私は思っておるのでございます。その意味におきましても、今回御審議いただいておる再建法がその根幹に触れるものであるということをひとつ御認識いただきまして御審議賜りたいと思う次第です。
  89. 高木文雄

    高木説明員 私どもも、お示しのように、独占性が失われてきて、したがって競争場裏における輸送機関としての仕事の進め方をしていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。  たとえば、先般ダイヤの改正をいたしましたけれども、ダイヤの改正に当たりましても、競争という点から言って私どもがなかなか対抗できない地域におきましては、ある程度それに即して、むしろ列車編成を減らすということをいたします反面、われわれに多くを求められております都市におきますところの通勤輸送といったようなことにつきましては、全体が減る中におきましても若干でも輸送力をつけていくというようなことを中心に、旅客について申しますればいたしましたし、貨物につきましても、なるべく少しでも早く目的地へ到達するようなダイヤ編成をつくると同時に、数量の少ない地域におきましては、いままで三個列車で運んでおりましたものを二個列車にするというようなことを通じて、需要動向を十分見ながらダイヤの組み直しを行ったわけでございますが、その他の面におきましても、そういう競争ということを頭に置きながら運営に取り組んでいくような空気の醸成に努力をいたしておる次第でございます。増収を図るということでいろいろと新しい企画商品を売り出すとかいうことをいたしておりますけれども、これらにつきましても、決して私どもあるいは本社だけではできないことなんでございますが、幸いに、幾らか現場現場におきましてもそういうものに取り組むような空気が出てきているわけでございますが、何とか競争の意識というものを定着させ、広げていくということが喫緊のことではないかというふうに考えております。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕
  90. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 たとえば倒産に瀕しておりまする民間の企業再建しようという民間の実態を見ますると、第一に、人員の整理をやる、不急業務の切り捨てをやる、あるいは遊休資産の売却をやるということで、身軽になる、減量経営に徹するということをやって、それから合理化企業運営の態率化、言いかえますると企業全体としての生産性を向上させるということに企業が一体となって取り組んでまいって、第一次、第二次の石油ショックをそれぞれの企業が乗り切ってまいったわけでございます。  今回の再建法案の内容なり説明を聞いておりますと、合理化あるいは減量経営、いろいろな面についての具体策として、人員の面においては三十五万人体制ということをうたっております。しかし、これは民間の再建の場合の人員削減とは本質的に異なっておって、いわゆる定員を減らすというだけでありまして、民間の企業に比べますると、血を流さずして再建できるという恵まれた企業だと言わなければなりません。したがって、私は、国鉄自体再建に取り組むとすれば、やはり役員だけが再建に取り組むという段階であってはとても再建できない。少なくとも民間に比べれば恵まれた条件において再建するわけでありますので、企業合理化の徹底だけは総裁以下全職員が一丸となってやらなければならない、私はかように考えますが、総裁の御所見を伺いたいと思います。
  91. 高木文雄

    高木説明員 全く同じ考えを持っております。  それで、今回の場合でも、この十年間に約二十万人近い人がたまたま定年というようなところに来るということでございますので、そういう関係で、いわゆる血の出る整理ということをしないでも何とかやっていける、後補充を相当程度に抑制することによって三十五万人体制がつくれるということは、ある意味では非常に恵まれた条件でありますけれども、ある意味ではこの機会をおいてはスムーズな減量経営ができにくいわけでございまして、長い間人員構成が非常に異常な状態になっているということで悩んでおったわけでございますが、逆にこの機会に、大ぜいの人がやめる機会をとらまえまして少ない人で仕事をすることの可能である体制をつくりまして、それによって減量経営実現いたしたいと考えております。  ただ一青お断りしておかなくちゃなりませんのは、何しろ安全という問題が絡んでおるものでございますから製造業の場合とはまたいろいろ事情が違うわけでございまして、一方において減量経営を行いながらなおかつ間違いのない運行ということを持続していかなければならないわけでございまして、その点については職員の一人一人がいま立てておりますところの減量経営意味というものを理解してくれないと、肝心のところでまずい事態が起こるということがあってはいけないわけでございますので、一方において減量経営を勇敢に取り進めてまいりますけれども、同時に、そうしたことの趣旨を徹底し、教育を十分やりながら進めてまいりたいというふうに考えております。
  92. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 後で人事管理の面についてお尋ねするときに具体的なことは譲りたいとは思いますが、ただ総裁以下四十数万の職員というものは、総裁の考え方、総裁の指令によって動く一つの業務体でございます。したがって、法案によりますると、いまおっしゃいましたように、合理化を図って何とか国鉄収支均衡に持っていきたい、こういうことで政府が提案いたしているわけでありますが、私たちの目に映るものは、政府なり国鉄の役員、これはこの法案は理解されていると思いますが、しかし四十数万の職員が合理化をやるということについて果たして理解いたしておるかどうか。形の上ではありますけれども合理化反対ということが国鉄の中に非常に浸透いたしておるということだけは否定できない事実であろうと思います。したがって、新聞その他で国鉄再建が出ますときに、一般の国民は果たして国鉄合理化をやって再建できるかどうか、まゆつばものだ、このように一般の国民は見ておると思います。その他、私が具体的に申し上げるまでもなく、総裁以下御承知でございますが、国鉄の内部のことが新聞に出るたびに、政府の言っている、国鉄当局の言っている国鉄合理化して再建するというタイトルと、実際に映りまする国鉄内部の諸問題とが相反していることは御承知のとおりでございます。  したがって、私は一つだけ総裁にお願いしておきたいと思うわけでありますが、少なくともいろいろな職員間の事情はありましょうとも、四十数万の職員が一丸となって徹底的な合理化をやり、国民の税金のむだ遣いをすることをやらない、この再建に一丸となって取り組むような姿勢を一日も早く完成するということについて、私は総裁としての確約をお願いいたしたいと思うわけであります。
  93. 高木文雄

    高木説明員 これまたまさに御指摘のとおりでございまして、いまの国鉄経営の実情なり、それから立て直しについての私の考えております方策なりを、どのようにして一人一人の職員の自分の考えの中に打ち込んでいくかというのが、これをお約束どおりできますかどうかの境目だというふうに思っております。  遺憾ながら、最近の状況を見ましてもまだまだそういうふうに映っていないという御指摘でございますけれども、一例をとりますと、この十月の  一日からダイヤ改正を行ったわけでございますけれども、このダイヤ改正というのは、全体としての輸送力を落とすということに関連いたしまして、やはり一万人弱の人が少なくて済むというような内容のものであったわけでございますが、やはり職場で人が減るということは、従来の観念からいたしますと職員にとってはなかなか耐えがたいところもあると思うんですが、そして、そのゆえにいろいろ反対といったような意思表示をした横断幕がありましたり、大変見苦しいこともあったわけでございますけれども、結果といたしましては、過去の例に徴しますればまずまず平穏裏にこの計画を取り進めることができたわけでございまして、この一事だけでは御納得賜れないとは思いますけれども、そういうふうに少しずつ変わってきているということについては御理解を賜りたい。そして、なお今後何万という大変多い数の要員減の計画を進めていくわけでございますが、その間におきましては、それぞれの職場でいろいろと労働条件等が変わってまいるわけでございますので、それらについて職員が納得した上でそういう新しい体制の切りかえを進めていきますように、いろいろな意味での教育を徹底してまいりたいというふうに考えております。
  94. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 一つ具体的にお聞きしたいと思うのです。  この法案は継続審議になってこの国会で審議いたしているわけでありますが、いわゆる国鉄再建計画の第一年度は本五十五年度であろうと思います。したがって、先般おっしゃいました三十五万人体制を六十年度にやる、この考えについて、ひとつ三十五万人にする年次計画はお持ちだろうと思いますので、要点だけでいいですからお知らせ願いたいと思います。
  95. 高木文雄

    高木説明員 現在、各管理局別にどういうふうに減らすか——減らすというよりも、少ない人数でやっていけるようにするか、あるいは運転なら運転、保線なら保線、電気保守なら電気保守、部門別にどういうふうにして減らしていくかという部門別なり地域別なりの計画の積み上げをいたしておるところでございます。まずこれは作業中でございます。  五十五年度には約一万八千人ぐらいの要員の減を考えておりますが、一面におきまして、東北新幹線上越新幹線開業のための職員養成を行わなければなりません。東北新幹線上越新幹線開業いたしました場合に新たに必要となります職員数が大体九千人ぐらいというふうに考えておりますので、その他いろいろございますけれども、五十五年度におきましては、その新たに必要となります者をのみ込みました上で一万一千人の要員減を実施いたしたいということで取り進めております。  その全目標のうちの大体半分強を、五十五年の十月のダイヤ改正の際にいろいろの組みかえによりまして職員の数を少なくする計画に沿った要員削減を行うことができたわけでございますけれども、なお本年の下期の半年の間にさらにざっと七、八千人の要員減を伴いますところの作業の組みかえをこれから実施してまいるところでございます。  ところで、まず五十六年度についてどういう計画にいたしますかは、これはどうしても五十六年度の予算編成のあります本年の末までには大体の計画をお示しをしなければ予算編成との関連もあっていかぬのではないかと思っております。  それから、五十七年から六十年までの年次割りをどうするかということにつきましては、この法律を通していただきました上でいわゆる経営改善計画というものを提出することになっておりますから、この経営改善計画の中でそうした要員の減の問題につきましてもあらましお示しすることになると思いますが、現段階では、地域別あるいは職種別の計画をいま管理局なり現場なりでつくりまして、それを本社の方に集めてきて、またそれでは不十分だということで差し戻しというようなことの作業を繰り返し繰り返しやっている最中でございますので、五十七年、八年、九年、六十年にどういう年次割りになるかということは、まだ明確にお示しすることができない現状でございます。  なお、この要員減というのは、ただ人を減らすというわけではないわけでございまして、貨車、客車を走らせますことについていろいろシステムを変えることが伴ってまいります。信号のシステムでありますとか、貨車の、運びます場合のいろいろなヤードの作業の切りかえでございますとか、そういう問題が伴ってまいりますので、若干の投資、設備の切りかえが必要でございまして、その設備の切りかえの進行に伴いまして人手を減らし得るということもございますので、そういう面もありまして、現段階ではまだ年次別の数字を確定するまでには至っていない現状でございます。
  96. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 具体的な数字が六十年度までできておるとは考えられません。ただ、五十五年度の第一年度計画は、ことしの予算編成の際にされておると思います。一番大きな定員の削減できる作業というものはダイヤ改正であろうと思います。したがって、十月のダイヤ改正で一応の計画実現を図っておるし、また以後、本年度の末までにそれぞれどのような作業をやって定員の削減をやるかという具体策はあると思いますが、下期の問題は別にして、十月のダイヤ改正で、皆さん方が計画されました要員の削減はできたかどうか、それをお聞きいたしたいと思います。
  97. 高木文雄

    高木説明員 ただいまおっしゃいました数字は集計中でございまして、今月いっぱいで結果が上がってくると思いますが、各管理局ごとに、どこまでできたかということを個別に大ざっぱな感触として確かめましたところでは、九五%ぐらいまでは計画に対してできたと申しております。また、おくれております分も、二カ月おくれなり三カ月おくれの間には、設備的なものに絡んだ問題等がありまして、おくれたものもありますけれども、二、三カ月の間にはできますという報告を受けておりますので、ほぼ目標を完遂できたということで御報告申し上げることができると思います。
  98. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 そうしますと、あと下半期が残っておりますが、第一年度一つ計画はほぼ達成できると理解して差し支えございませんか。ひとつ重ねて総裁にお伺いします。
  99. 高木文雄

    高木説明員 ただいまのところ、まだあと半年の仕事が残っておりますけれども、現在の進行状況では、目標の一万一千人減らすということを達成できると確信をいたしておる次第でございます。
  100. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 次に、国鉄の運営といいますか、作業といいますか、それの効率化の問題についてひとつお伺いいたしたいと思います。  これは率直に言って、国鉄の現場におきまする作業の効率という面になりますと、いろいろな制約はありましょうけれども、たとえば民間企業とは比較にならないほど効率は低いと思います。ただ、民間企業もそれぞれ企業の内容が違いますが、同じ輸送業務をやっておりまする私鉄、これを基準にとって国鉄の現場におきまする作業状況と比較いたしましても、国鉄の方は非常に能率が低いと見ておりますが、総裁はどのようにお考えになりますか。
  101. 高木文雄

    高木説明員 なかなか仕事の内容が違いますので、比較はむずかしいわけではございますが、たしか五十二年度でございましたか、あるいは五十三年度でございましたかの監査委員会の監査報告の中で、私鉄と国鉄とのある種の比較の数字の御指摘がございました。それらによりますと、国鉄の方が低いということが出ておるわけでございまして、これは監査委員会がやられたわけでございますから、かなり大局的なつかみ方でそういう指摘があったわけでございますが、その後それぞれの部門につきまして、私鉄との比較をそれぞれの担当のところが自分のところでやっておりまして、そして、それを一つのメルクマールにして私どもの方の効率改善をしなければならないということに取り組んでおります。今回、少ない人で同じだけのサービスをやるようにしようという、いわゆる三十五万人体制計画を取り進めていきます場合にも、その私鉄との比較というのが非常に有力なる材料になっておるわけでございまして、なかなか私鉄どおりにはいきませんけれども、私鉄の水準に近づけるということは、今回の要員削減案の中で重要な要素になっております。
  102. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 国鉄という一つ企業を運営するとなりますと、何といっても企業全体としての生産性を上げるということは、これは企業であれば当然でございます。したがって、合理化、近代化も必要でありますが、特に企業全体の効率ということになりますと、企業全体の生産性を上げなければならない。これはもう理屈抜きの当然なことだと思います。したがって、私は、今後国鉄企業全体として生産性を上げるのについて総裁はどのような方策をお持ちか、お伺いいたしたいと思います。
  103. 高木文雄

    高木説明員 幾つかの部面があると思うのでございますが、現在一つ大きなポイントといたしましては、輸送力と実際の輸送量の乖離が出てきておるわけでございまして、貨物については、五十三年十月と今年十月のダイヤ改正によりまして、この輸送力と輸送量の乖離をかなり縮小することができたと思っておりますが、旅客輸送については少しおくれて五十年ごろから輸送量が減ってきておりますので、今回も多少はそれに合わせることをいたしましたけれども、まだまだ不十分であったと思っております。  それから、もう一つの角度は、非常に季節波動が多い、あるいはまた、いろいろな形での仕事の波動が多いわけでございまして、波動のどういう部分に合わせて本来の職員配置をとっておくかということになりますと、従来の考え方で言えば、どうしても一番仕事量の多い時期にもなおかつ需要にこたえ得るように職員配置をするというようなことであったわけでございますけれども、それでは今度は逆にロスがたくさん出てまいりますので、一部の仕事は、民間の請負仕事といいますか、そういうことにお願いする面をもう少しいまよりもふやすことによって、波動対応のための人の配置というものをもう少し少なくて済ますというようなことを考えなければならないというふうに考えております。  そのほか、もろもろの保守の体制につきまして、本来保守というものは、たとえば線路保守で申しますと、列車の合間合間にしか仕事ができないということがありますために、なかなかうまく効率が上がってこない。また、私鉄の場合と違いまして、ほとんどの線区、特に主要線区では夜間も貨物列車が走っておりますために保守の時間がとれないというような問題があります。そこへ持ってきて、昔と違いまして非常に大型の機械で保守をしなければならなくなってまいりましたものですから、しばしば職員の働きが悪いという御指摘がありますけれども、また私どもそれを認めておりますけれども、それじゃ働き度を上げようと思っても、なかなか間合いがとれないというようなことのために能率が上がらないということになっておりますので、保守の方式と申しますか、やり方と申しますか、いずれにしても昔のように人力によって保守していくというのはもう無理でございまして、機械力によってやらざるを得ないと思いますけれども、その機械力によってやる場合にどういうふうな作業仕組みにしたらより能率が上がるかということの研究がまだ十分でないわけでございまして、そうした面においてもなお工夫をこらして、同じ機械を使うにしましても機械の稼働時間数が上がりますようなもろもろの仕組みというものを考えたいと思っております。  それから、全般的にやはり教育が十分でない点が非常に目立つわけでございまして、ある面では技術教育も少し足りなかった面もございます。技術教育につきましてはここ二、三年相当精力的にやっておりますので、そういうことを通じて職員の技能力を上げるということによって効率化を一段と進めることがようやく緒につき始めたということでございます。残念ながら営業関係と申しますか、駅の仕事についてまだひとつ教育その他が十分徹底しておりませんので、どうもサービスが悪いとか態度が悪いとか、応答の言葉遣いなり姿勢が悪いとかいうことをいろいろ言われておりますが、そういうことにつきましても、もう少し教育の徹底に、大変おくればせでございますけれども、力をこれから入れてまいりたい。  まだほかにもございますが、いま申しましたようなことをいろいろ組み合わせすることによりまして、人数を減らしましても十分輸送力を保っていけるような形がとれるのではないかと思っておるわけでございます。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕
  104. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 次に、減量経営ということに関連いたしまして、いままでもそれぞれ国鉄としてはやってこられておりますけれども国鉄の現在直接やっております部門のうちで、民間に移行することが能率も上がり、経費の削減になるという部門は相当あると思うのです。施設であるとかあるいは修理の部面、電気の部面、あるいは工場の部門等について、現在国鉄が直接やらなければならないという必要のないような部門も相当あるわけで、民間に移行することが相当国鉄再建に資する面があると思います。特に、これからこの法案の中心でありまするいわゆる地方線、特にそのうちで指定される特定地方交通線、こういうところについては、いわゆる修理その他の部門については民間に移行するということによって、相当な赤字の幅を狭めることができるのではないか。たとえば保線の作業一つ例にとってみましても、現在の国鉄の職員、五十五歳ないし五十八歳で国鉄の職場を離れるわけで、いままでそういう部門を担当いたしておった人が職場を離れる。そういう人たちを使って民間でそういう修理部門を担当するということになれば、国鉄という大企業の中におきまする能率と民間の企業がやりまする能率とでは大きな開きのあることは、もう総裁以下御承知のとおりです。したがって、そういう民間に移行できる部門については、私は積極的に勇断を持って移行しなければならないと思いますが、これについて総裁どうお考えか、ひとつ所見をお聞かせいただきたいと思います。
  105. 吉井浩

    吉井説明員 先生御指摘のとおりでございまして、国鉄はこれまでも、御承知のように、たとえば市中に技術力がある、あるいはまた先ほど総裁申しました波動性の高い業務でございますとか、あるいはその他部外能力を活用することによって経済的な効果も得られるという部門についての外注能力の活用ということに努めてまいったわけでありますが、先ほど来もお話しのように、これから三十五万体制を進めてまいるという過程におきましては、さらにこの度合いを強めていく必要もあろう。また、ただいまお話ございましたように、これから大量退職時代でございまして、技術力を十分に備えた人たち退職してまいります。その人たちの技術力もやはり業務委託という形で何とか活用いたしたいというふうに考えておりまして、もちろんこれは保安その他の問題、当然ございまして、それらを無視するわけではございませんけれども、そういった技術力の活用によりまして部外の——部外と申しましても、やはり国鉄でそういう業務を経験した人たち、こういうふうなことも十分に勘案いたしまして、これからさらに従来の考え方を深め、また飛躍してまいりました業務委託ということを考えてまいりたい、このように考えております。
  106. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 次に、国鉄の人事管理の面について基本的な問題で一、二お尋ねしたいと思います。  今度の国鉄再建については、この法律のもとでいろいろと具体的な施策を立てられてそれを遂行するわけでありますが、それができるかできないか、成果が上がるかどうかということはすべて人の面にかかっておるわけでございます。したがって、極端な言い方かもわかりませんが、国鉄再建できるかどうかは人事管理ということが一番大きなウエートを占めてまいると思います。したがって、一番大事なことは、総裁の考えておられますことが現場第一線の責任者でありまする現場長にそのまま伝わるという体制がつくられなければ、私は国鉄の業務は円満に推進できないと思います。そういう体制が現在つくられておるとは私は遺憾ながら考えられません。したがって、そういう一体化の体制を今後どのようにしてつくるか、基本的な問題について運輸大臣なり総裁の御所見を承りたいと思います。
  107. 高木文雄

    高木説明員 戦前からごく最近といいますか、戦後にかけまして、国鉄体制がきわめてしっかりしたものであったということをよく言われるわけでございますが、その基本はどこにあったかといいますと、いま御指摘のように、現場長あるいはそれを支える助役といったような人たちが非常に十分の訓練を受け、また相当の経験を持ち、かつ国鉄に対する忠誠心といいますか、そういうものを持っておったことによるところが多いと思います。ところが、残念ながらここ数年ないし十数年の間、そうした諸君が自信を持って現場でいろいろ若い諸君の指導に当たっていくという迫力ある指導性というものがどうもだんだんと欠如をしてきておるということが、今日の非常に大きな問題であるというふうに考えております。  特に一つは、大量に年配の諸君がやめていくということになりますと、また技能、技術という面においても空白ができる危険がある。十分に次のゼネレーションの人に引き継いでいけないという問題が心配されておるところでありまして、私ども、なかなかそういう機会ございませんけれども、時折現場へ参りましたときにそうした声をどこからも聞くわけでございますので、いま言われましたことが非常に大事なことだということを痛感をいたしておりますし、単にそう受けとめておるだけでなくて、それに対する対策をどういうふうにしてとったらいいかということは非常に苦慮いたしておるわけでございますけれども、どうも今日までのところ、私もうすでに四年余りこの仕事をやらしていただいておりますが、私自身満足のいくような体制になってきてないわけでございます。幸い全体の空気が、まだおしかりを受けるような状態ではありますけれども、全員の気持ちが、なかなかこれは大変なことになってきた、お家の大事だというような空気が、若い人を含めて少しずつではありますが、浸透し始めてまいりましたので、まさにこれを機会に現場の管理者、現場長なりあるいはそれを支える助役諸君に現状をもう一段と理解をしてもらい、そして、より士気を高めることにいま力を入れるべき時期がまさに来たというふうに感じておるわけでございまして、そのために具体的にどういう場をつくり、どういう方法を通じてそれをやるかということについてはあれこれ考えているところでございますが、それがうまくいくかどうかということが、つまり別の表現によりますと、よく心の再建というようなことを言われるわけでございますが、この心の再建がこの数カ年の間にうまく達成できるかどうかがきわめて大事なところでございまして、同じ三十五万といいましても、その諸君の気合いが入ってくるかどうかということでないと、同じ数でも能率は上がったり下がったりということになりますので、その点については一番大事なことであると思いますと同時に、また現実的にはなかなか非常に、それが言うべくして行われがたい点でありますので、私も繰り返し繰り返しそういう面を、何といいますか、叱咤激励してまいりたい、何とか体制をすかっとしたものにいたしたいというふうに思っております。
  108. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 私は、総裁の熱意と努力を特に期待いたしたいと思います。ただ、本社なりあるいは管理局、それぞれの責任の地位にある人は別にして、一番大事なものは現場の第一線を預かる責任者であろうと私は思いますが、ただこれは何といっても定年に近い方が多いわけでございます。したがって、これは人間の本能としてもうあと二年たったら定年だ、三年たったら定年だということになればやはり人間の弱い面が出て、自分の在職中できるだけ問題を起こさずに過ごしたいというのは人間の弱点でございます。ただ、いまの国鉄の置かれておる立場は、国鉄をやめたらあとは年金あるいはその他のことで余生の第二の人生に入れるといままでは考えておりましたけれども、先ほどからもお話のありましたように、年金財政というものが、他の公社あるいは他の年金会計に比べて国鉄は非常に悪化いたしておる、成熟度の面から見ましても六十年度になれば恐らく現職の人が少なくて年金受給者が多くなる。これはもちろん政府の責任、国の政治の責任で何とか打開しなくてはなりませんけれども、少なくともいまそういう点があるわけでありますから、残されました二年、三年の在職期間でも、自分の将来にわたる生活の問題としてでも国鉄再建ということについて懸命な努力をするように教育すべきではないか、このように私は考えておるわけでございます。  ただ、私は一つだけいままでの国鉄の運営について不思議に思っている点があるわけでございます。これは総裁でも役員でも結構ですからひとつ御答弁願いたいと思いますのは、御承知の国鉄というところは争議行為は禁止されておりますが、いままでずっと年間行事のように労働組合が争議をやってまいりました。これに対しまして国鉄当局は、労働関係法による処分は別でありますが、日本国有鉄道法という法律によって職務違反ということで処罰をされております。これは当然であるかもわかりません。ところが、私が不思議に思いますのは、たとえば総裁以下現場第一線の責任者でありまする現場長も職務を遂行しなければならない重大な責務が日鉄法において課せられているわけでございます。それを怠っているわけでございます。これに対しまして何ら処罰されておらない。違法行為をやったというだけで組合員である職員は処分されておりますけれども、この職務を放棄しておる管理者も相当おったわけでございますが、これに対して何ら処罰されておらない。私は片手落ちだといつも考えておったわけでございますが、この間の事情をひとつ私にわかるように御説明願いたいと思います。
  109. 吉井浩

    吉井説明員 確かに先生御指摘のように、遺憾ながら過去において違法の争議が行われておりました。これに対する参加者の問題は別として、管理者は一体どうなのか、その責任はどうなのかという御質問でございます。  私どもの理解といたしまして、総裁以下私どもも、また現場の管理者に至るまで、やはり日ごろからこのような違法行為というものはあるべきではないということを十分に職員に徹底をさせてまいる、その努力が十分でなかったという点は反省をいたしますけれども、決してそのような違法を容認するという態度ではなかったというふうに信じておるわけでございます。したがいまして、そのような違法行為を防ごうと努力した、しかしながら、結果的には防ぐことができなかったという責任を処罰処分という形で問うことはいかがかというふうに実は思っておる次第でございまして、この点については、力の足らざる点は大いに反省をいたしまして、ただいま総裁も申しましたように、私どももまた現場の管理者の一人一人に至るまで、今後の国鉄再建のためには大いに腹を据えてまいるということではございますけれども、ただいま先生のお尋ねの件につきましてはそのような考えで、処分という形での対応はいかがかというふうに存ずる次第でございます。
  110. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 そういうことも含めて、私は現場長なり管理職の再教育あるいは一般職員の再教育が必要だと思いますが、現在、国鉄のいわゆる教育機関、各地に学園がございますが、しかし私の見るところによると、役員の方は御承知と思いますけれども、学園におきまする教育が形式的に流れておる。三月なら三月の研修期間中だけ学園に入っておればいい、そういう形式に流れておることが相当あると思いますし、また学園におきまする講師等についてもやはりそういう面が幾多見られておるわけでありますが、こういう点について現状を総裁以下役員は認識されておるかどうか。また、この再教育を実質的な教育の向上になるようにおやりになるお考えがあるか、どのような手段をお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  111. 高木文雄

    高木説明員 当事者は一生懸命やっておると思いますけれども、私も学園についてはまだまだ直さなければいけない点が多々あると思っております。中でもいま問題は、学園の先生となるべき人になかなか第一級の人を得られないような風潮というものが長い間あるわけでございまして、毎年の人事異動、大体学園の先生は二年ないし三年くらいで交代していくわけでございますので、学園の先生にだれを充てるかということについては各局とも最高幹部といいますか、局長自身が十分その人事について目を通して、学園で教育の場に当たる人は、だれが見ても第一級の人が当たるようになってきたということにしなければいけないということを全国の局長会議のような機会を通じて指図をいたしております。時折回ってみて、このごろどうだといって聞きますと、少しずつはそういう空気といいますか、そういう心構えのもとに学園に関する人事の異動が行われるようになってきていると思います。多少局別、学園別にアンバランスがありますけれども、平均的には少しずつよくなってきているように思います。  その次の問題は、教育の内容の問題でございますが、まさにこの点は大事なことでございまして、マンネリズムに陥ってはならぬということでございますが、最近学校を回ってみましてやや意を強うしておりますのは、もろもろの設備を強化することによって技能教育を高める、特に現物機械なり、何なりを教室に持ち込んで、そして実践教育をやるということを通じて、受ける方の諸君、このごろの若手の諸君は、何といいますか、口で講義をしてもだめなんで、現物をいじることを通じて教育をしなければだめだということがはっきりしてきておりますので、乏しい予算の中ではありますけれども、学園のそういう教育設備を整えることによって技能教育面についてはいささか新しい芽が出てきたかなと思っております。ただ、それは技術職員関係の教育についてはそういう面が少しずつ出てきているわけでございますが、まだその他の面について教育手法といったようなことについての工夫が十分でないというようなことが感じられますので、最近そういうことについて改めて少し担当者に取り組むように命じているところでございまして、私も、学園というものを重視して物を考えるという諸先輩がとられた御方針というものがいま必ずしも十分生きてないという点は、もう一遍新しい血をつぎ込まなければいけないというふうなつもりで取り組んでいるところでございます。
  112. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 学園の問題について具体的な事例を話をして質問するということははばかりますので、私は省略いたします。恐らく理事の方たちは学園がどんなものか、どういう点に弊害があるか十分御承知だと思いますが、私は、国鉄再建基盤が人であれば、やはり再教育ということは非常に大切だと思いますので、学園の今後の運営、教育内容の充実こついて十分御留意願いたいと思います。  次に、法案一つの大きな部分であります地方線の問題につきましてお尋ねいたしたいと思いますが、その前に、運輸省が地方線だと考えられておりますのは概算でしょうが九千キロ、あるいは特定地方線に指定しようと考えております概算の四千キロですか五千キロですか、そこにおきます赤字は、昨年度でも一昨年度でも結構ですけれども、一体どうなっておるか。また、その線区におります職員の定数は合計幾らか、数字をちょっとお知らせ願いたいと思います。
  113. 加賀山朝雄

    ○加賀山説明員 お答え申し上げます。  新しい区分によります線区というものはまだ定かでないわけでございまして、私ども五十一年におきまして地方交通線と幹線系の区分を違う基準でやって、これを毎年区分経理として表示をいたしておりますが、それによります地方交通線というのは大体九千二百キロになっておりますけれども、これの赤字は、昨年度助成前の数字で申し上げますと約三千百億になっております。これらの線区に配置しております要員は、大体四万人でございます。  それからなお、特定地方交通線に該当すると思われる線区についてはどうかという御質問でございますが、これもきょう午前中の御議論の中にも出ておりましたように、確定できないわけでございます。現在の私どものやっております区分経理によります地方交通線の比較的低い方、このところから約四千キロぐらいというところを選んでまいりますと、大体赤字額が九百億、要員が約一万人という形になっております。
  114. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 法案の第八条に書いてあります地方交通線の定義からいきますと、今後の努力によればこの地方線赤字あるいは地方線の範囲というものが変わってくるように考えられるわけでございますが、たとえば法律の条文を見てまいりますと、「その運営の改善のための適切な措置を講じたとしてもなお収支均衡を確保することが困難である」、こういうふうに定義の一つの条件として書かれております。したがって、いまおっしゃいました特定地方線赤字が約九百億、そこに働いております職員の定数が約一万、地方線と言われます約九千キロの全体で生じます赤字が三千百億、従業員の定数が約四万人、こう言われておりますが、やはりこの線区については、幹線と違って相当合理化なりあるいは民間に移行ということができ得る条件を備えておると思います。  その一つの提案として、私は特に特定地方線に指定しなくてはならないような線区あるいはその他の地方線におきましても、いままでもやられておりますけれどもいわゆる駅員の無配置、駅員のいない駅を徹底化する、そして業務の委託を徹底するということにすれば、たとえば四万人のうちの半分を無配置駅にすれば二万人という定員の削減ができるわけでございまして、したがって私は地方線におきまする駅員の無配置、これを徹底するということが一つの大きな経費削減なり合理化の要点になると思いますが、これに対しまして総裁でも理事でも結構でございますが、どのようなお考えか、承りたいと思います。
  115. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 地方交通線の駅の無人なり委託なりという、それそのものの資料は持っておりませんが、全体的に申し上げますと現在約五千三百駅ぐらいございますが、そのうちで人のいないいわゆる停留場化された駅が千八百三十でございまして、全体的に見ますと三五%ぐらいになっております。そのほかに約五百弱の委託駅がございまして、そういったものを織りまぜると大体四割強ぐらいのところが職員のいない駅ということになります。  この停留場化につきましては、過去十年間で約九百二十ぐらい行っておりまして、そういういま申し上げたような数字になっておるわけでありますが、これを線で見て都会とそうでないところを比べますと、三五%というのもかなり少ないところと多いところとあると思います。  そこで、今後につきましても、たとえば単線につきましてのCTC化であるとか道路の整備であるとか、そういったようなことも織りまぜましていろいろ検討もしておりますが、さらに今後とも努力をしていきたいというふうに考えております。
  116. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 この法案が成立した暁において特定地方交通線というのは別な形になるかもわかりませんが、残されました四、五千キロのいわゆる地方線と言われます線区の合理化ということは徹底しなくてはならぬと思います。したがって、残されました地方交通線の無人化ということと業務の委託、また先ほど私言いましたように、たとえば線路の修理等については、列車の運行状況から考えて幹線と違って非常にやりやすい地区だと思います。こういうところについての民間委託ということを徹底的に考えますると、現在の段階で年間三千億近い赤字というのも相当縮小されるのではないかと思います。したがって、私は第一義的に今後の赤字の縮小について力を注いでもらいたいと思います点は、こういう点であろうと思います。そういうことを努力することによって、地域住民が不安に思っております問題の特定地方交通線の存廃の問題も緩和されるのではないか。これは国鉄全体から見れば、現在これだけやろうと考えておるのを下げることもできるのではないか。すべて地方線の切り離しという発想は、やはり赤字ということが原因であれば、三千百億といえば全体の赤字からすれば結局二割五分か三割にしか相当しないわけでございます。したがって、住民等の利害あるいは感情、そういうものから考えて、合理化して残すということも考えられる。そういう努力について、これから皆さん方に何とかやっていただきたい、これは私の希望でございます。  それから、運輸大臣にお尋ねいたしたいわけでございますが、法案が成立して具体的にどの線区が特定地方交通線になるかわかりません。したがって、この点についてやはり地方自治体等を含めて住民との協議機関を設けて二年のうちにいろいろ協議する、こうなっておりますけれども、私は、一つの歯どめとして、たとえば鉄道がなくなっても住民の交通という面についてはいままでと変わらないという線が一つの歯どめにならなければならないと思います。なくなることによって地方住民が非常な不便をこうむるということでは困ると思います。たとえば、バスの問題にしてもあるいはその他の地方鉄道にしても、少なくともいままでと比べて住民が不便にならないというのが一つの歯どめにならなくてはならないと私は思います。この点は恐らく運輸大臣も十分お考えだと思いますが、それともう一つ、二年という一つの枠を設けて協議するわけですけれども、今後どれだけの線が指定になるか具体的にはわかりませんが、ただ、もしこの法案が成立しておやりになる場合に、政治的な配慮といいますか、一番住民が心配しているのは、あの大臣が出ておるから何とかうちは残った、代議士が出ておるから何とか残った、こういうような政治的な属人的配慮によって左右することだけは絶対にやってもらいたくない。この点について、私は塩川さんの所見を特にお聞きしたいと思います。
  117. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 一番最初にお尋ねの問題でございますけれども、おっしゃるように、確かに交通の主体というものが田舎へ行きますほど国鉄に依存しておることはもう事実でございます。そこで、昔、鉄道省であった時分はまさに国の責任でその鉄道を維持しなければならぬことでございました。ところが、最近そういう地方に行きましても、交通手段はいろいろございます。それだけに国鉄がいかに経営努力をいたしましても採算に乗らない。ところが、国鉄全体といたしましていま一番の課題は財政再建でございますが、それをやるためにはやはり国鉄の責任の分野と行政で責任を持つ分野というものを明確にしなければならぬ時期に来ておると思います。したがって、いま問われておりますところの特定地方交通線はいわば行政の責任において交通を維持していくということをやらなければならぬ、これは当然でございます。ですから、二年の協議の間で国鉄の責任は免除してやってもらいたい、これをわれわれはお願いしておるわけなんです。だからといって、その地域の交通が不安を起こしてはいけませんので、最後にはやはり国と地方とで責任を持って住民に不安をかけないように、代替交通機関なり、あるいは別の機関をつくって鉄道を運営するというようなことをやらなければいかぬだろう。この法案の中に流れております特定地方交通線の考え方というのは、国鉄の責任を免除していただいて、そのかわりに国が協議会等を通じまして必ず責任を果たしていくということを言っておるわけでございますので、その点はひとつ御理解していただきたいと思うのです。ただ問題は、それをどうして協議し、決めていくかというこの運用の問題があると思うのです。これに対しましてはわれわれも誠心誠意努めてまいりますが、これは単に運輸省と国鉄だけの問題ではなくして政府全体として取り組んでもらいたい。したがいまして、私は、この法案を成立さしていただいたら、それを一つの機会にいたしましていわば内閣の中にこの特定地方交通線を協議する何かの対策協議会か、そういうようなものはぜひ設置してもらいたい、政府の責任において、これはやはり地方自治体と共同責任でやっていくという体制をとっていきたい、こう思うておる次第でございますし、これは私は懸命の努力をいたしたいと実は思うておるのであります。  二番目の問題でございますけれども、確かに国鉄というものは日本全土に交通網を持っております。しかも、この路線が公共性が非常に強い路線でございまして、これが国鉄が何らかの与件で恣意的に動いたというようなことになりましたら、これは国鉄が今後いかなる政策を、あるいは対策をとっていこうといたしましてももうそこで国鉄のいわば威信、信頼を失ってしまうであろう、こう思います。でございますから、基準というものは明確に守っていきたいと思うておるのでございますが、その基準につきまして、定まった基準で物理的にあるいは自然環境等いろいろ考えましてどうしてもむずかしいところについては、やはり何らかの一般の客観的な理解が得られる方法をもって決めていくべきだ、こう思うておりまして、お尋ねの属人的関係においてこれが左右されるというようなことは絶対にないように努めてまいります。
  118. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 いま運輸大臣の御答弁で、今後特定線として指定されまする線区については国鉄としての責任を解除して、その線区についての交通は国と地方自治体で負うんだ、こうはっきりと言われておりますが、この点はこの法案をお出しになりました政府の方針と考えて間違いございませんか、確認いたします。
  119. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 私は就任以来この問題に取り組んでおりますが、私の就任前からこの法案は国会に提出された経緯がございます。その経緯等を見ましても当然内閣としての責任ある法案でございますので、そのように受けとめていただいて結構だと思うております。
  120. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 一応私の質問はこれで打ち切ります。  ありがとうございました。
  121. 小此木彦三郎

  122. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 まず第一に、この法案の第二条にございます収支均衡の問題について御質問をさせていただきたいと思います。  私の質問に先立ちまして委員長にちょっとお願いがあるんでございますけれども、今度の法案の審査に当たりまして、運輸省並びに国鉄に種々の資料の提供をお願いをしましたところ、大変御協力をいただいた点は評価をさしていただきますけれども、非常に提出の期日が遅うございます。昨日の四時前でないと資料が届かない。そういうことでは十分に審議をさせていただくわけにはまいりません。今度の重要法案については非常に審議促進ということを考えておられるようでございますけれども、このような資料の提出状況では、審議促進というよりもむしろ私たちの審議を妨げていらっしゃるのではないかというふうな感じさえするわけでございます。今後とも資料の提出については可及的速やかにお願いをしたい。  委員長からよろしくお願いをいたします。
  123. 小此木彦三郎

    小此木委員長 資料の提出について四ツ谷委員の申し出に協力いたします。
  124. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、まず収支均衡なんですけれども、午前中同僚委員が質問をされました問題について少し追及をさせていただきたい点が出てまいりましたので、再度それと関連をして聞かせていただきたいと思います。  第二条に「昭和六十年度までにその経営の健全性を確保するための基盤確立し、引き続き、速やかにその事業の収支均衡の回復を図ることに置くものとする。」こういう条文があるわけでございますが、この収支均衡の回復をどこいら辺に目標を置いているのか、こういう御質問があったと思うのですけれども、それに対しまして鉄監局長の方からは可及的速やかにできるようにする、こういうふうな御答弁があったと思います。ところが、大臣の御答弁では努力目標として考えている、こういうふうに御答弁があったわけでございます。  そこで、大臣にお聞きしたいのですが、一般的に、これは国鉄再建法案に関係なく、努力目標というのはどういう場合に使われる言葉でしょうか。
  125. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 可及的速やかということを努力目標にいたしましてできるだけ早くする、その努力をいたしたいということでございます。
  126. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいまの御答弁でははりきりとしないのです。と申しますのは、あの運賃法の法定制の緩和、これが法案として提案をされましたときには、期限を一応累積赤字の解消までとの関係ということで、努力目標と考えているというふうな答弁では非常に食い違ってくるわけなんです。法定制の緩和につきましては期限と条件をはっきりとつけて、そして法定制の撤廃ではなく緩和なんだというふうに法定制の緩和のときに法案が提案をされているわけなんです。  そういたしますと いま可及的速やかにということを努力目標にしたいという大臣の御答弁では、できるだけ早くしたいということを努力目標にするというのでは、可及的速やかにできるようにするという答弁を打ち消していることになるのですよ。努力目標なんというのは非常にあいまいもことしたものであって、こういうふうなことではこの収支均衡を一体いつまでかかっておやりになるのか、非常にあいまいでございます。大臣のきちっとした答弁をお願いをしたいと思います。
  127. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 収支均衡を可及的速やかにというその中身につきまして、これが十年なのか、つまり経営基盤確立して以降十年なのか、あるいはまたこれが五年でできるのか、あるいはまたこれが十三年、十四年かかるのかということ等につきましては、先ほどの答弁でも各関係者が言っておりますように、きっちりと何年ということの言明はできない、こう言っておるわけであります。そういたしますと、可及的速やかに、できるだけ早くやるということを目標にわれわれは努力しなければ、これ以外仕方がない、こういうふうに私は思っております。
  128. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 もちろん可及的速やかにという答弁でも、こんなことで本当に収支均衡が図れるのか、そういうことについては私たちは非常に疑問に考えているところです。ただし、努力目標というふうなあいまいもことした答えをその上に重ねられているというところに今度の再建法案について国鉄も運輸省も確固たる自信がない、そういうことをあらわしている、私はそのように考えるわけです。  さてその次は、これも午前中の質問に関連をしてお尋ねをしたいことでございますが、いわゆる構造的欠損の対策について総裁と鉄監局長との御答弁の中身でございます。いわゆる上越新幹線東北新幹線の問題、年金の問題、それから退職金の問題、この三つについてはお二人とも同じ内容の答弁をされたというふうに私は解釈をしております。退職金は将来なくなる、しかし、それでは利子補給をする、年金政府で検討していく、こういうふうに局長の方もお答えになっております。総裁も大体その辺は同じようにお答えになっております。  しかし、総裁の御答弁の中で、再度の過去債務処理をお願いしたい、こういう御答弁がございました。総裁がいわゆる構造的欠損の中で自力回収が不可能である、こういうふうにお答えになった部分ですね。この内容は経営努力に運賃負担も入っている、こういう意味でしょうか。総裁にお聞きをしたいと思います。
  129. 高木文雄

    高木説明員 私がちょっとお尋ねをとり違えているかもしれませんけれども、この再建に当たりましては毎年大体消費者物価上昇程度の運賃改定はやらしていただくということを考えておるわけでございますが、これは政府にお願いするということよりはわれわれの経営一つとして考えていることでございまして、これもその一つ、つまりわれわれの経営努力一つとして考えているのかと言われましたならば、そのとおりでございますというお答えになるかと思います。
  130. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 再度お尋ねいたします。  総裁は午前中、再度の過去債務処理をお願いしたいとおっしゃったんですが、それはだれにお願いをなさるつもりなんですか。再度の過去債務処理は一般損失で発生する赤字相当分も含まれているのでしょうか。
  131. 高木文雄

    高木説明員 この計画では六十年の段階ではどうにか収支均衡いたします。ただし、年金退職金とは別でございます。そうなりますと、五十五年から六十年までの問にその経過期間におきましてはどうしても赤字が出てまいります。その赤字をもう一度、いまこの法案で五十四年度までの分のたな上げをお願いしているわけでございますが、もう一度六十年までの段階でたな上げをお願いいたしませんと、それからまた生まれてくる金利の問題というのが出ますので、それを政府にお願いをするというふうに私どもは前提として考えておるわけでございます。
  132. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 総裁のおっしゃる意味はよくわかりました。鉄監局長と総裁と午前中の答弁の内容がちょっと違うようなんですが、別に結構なんです、お立場が違いますから。運輸省と国鉄ですから立場が違うのですけれども国鉄の立場はよくわかりました。  それでは、食い違っている部分につきまして少し納得のいかない点がございます。鉄監局長から、違うところで結構です、はっきりと御答弁を願いたいと思います。
  133. 山地進

    山地政府委員 午前中、私はたな上げ処置を今後するかどうかということについてはお答えはしてなかったと思うのでございますが、いまの国鉄総裁のおっしゃるようなたな上げ処置についてどう考えるかということでございますれば、国民の貴重な税金を使ってたな上げするわけでございますので、国鉄再建の今後の動向、国鉄経営改善努力というようなことを、あるいは国の財政状態もあろうかと思いますが、そういったものを総合的に勘案して、今後慎重に検討しなければいけない問題である、かように考えます。
  134. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、もう一度収支均衡の問題についてお聞きをしたいと思います。  結局、速やかにその事業の収支均衡の回復を図るということで、国鉄の基本構想案の昭和六十年度の試算によりますと、そうした特定損益を除いて五百億円の黒字を計上する、こういうふうな試算を出していらっしゃいますね。経営基盤確立ということを財政面から見ますと、いまお話がございましたが、再度確認をさしていただきたいのです。一般損益で収支均衡を図る、こういう理解でよろしいのでしょうか。いかがですか。
  135. 高木文雄

    高木説明員 私どもの基本構想の考え方では、いまお示しのように、六十年度では一般損益では均衡が図られる、ただしその場合に、現在二千数百億円の補助金をいろいろな形で損益勘定にいただいておりますが、その程度の助成金を継続していただくということを前提にして、その段階でどうにかこうにか黒になるというふうに考えております。
  136. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 どうにかこうにか黒字になるというふうに考えている、こういうふうにおっしゃったのですけれども、新聞報道によりますと、これは八月二十二日と八月二十日、両方とも毎日新聞なんですが、「妙案なく、脱線寸前の国鉄再建」「値上げも焼け石に水」「応援議員も“赤字1兆円予算”にタメ息」という見出しがございます。来年度の概算要求を運輸省が自民党の交通部会に諮って正式にお決めになった。「なにしろその中身は「四月から一〇%近い運賃値上げをした上、国から七千八百億円の助成金をもらっても、なお一兆八百億円の赤字が出ます」という“赤字タレ流し予算”。予算要求段階から赤字が一兆円を超えたのは「親方日の丸」の国鉄としても初めてのこととあって、国鉄応援団のセンセイ方もため息をつくばかり」、こうなっています。国鉄応援団の与党の先生方が質問をなさらないのは、私は大変不思議だと思うのでございますけれども、その問題はその問題といたしまして、このようにどの新聞も、再建法案を一生懸命にやる、やると言っているけれども、初年度からこういうふうに収支均衡が乱れてしまったのでは、本当にできるんだろうか、こういうふうなことを書いているわけです。  このような状況で、先ほど総裁は、五百億円の黒字に何とか持っていきたい、こういうふうにおっしゃったわけでございますが、こういうふうなことで達成ができるのかどうか、きわめて私たちはその点を疑問に思っているわけなんですけれども、この計画案を作成されました当時、五十四年の七月ですね、この当時は、運賃値上げを何%と見込んでこの計画案をお出しになりましたのでしょうか。
  137. 加賀山朝雄

    ○加賀山説明員 目標を立てる段階におきます一つの試算をしたわけでございまして、その計算過程におきましては、大体当時の物価上昇率政府見込みの五・四%という形を考えておりました。
  138. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 当時、大体物価上昇程度ということで、五・四%というふうにいまお答えがございました。ところが、この間の委員会でも、この国鉄の運賃の値上げの問題が論議をされまして、一〇%ぎりぎりのところ、九・七か九・九、こういうふうなお話も出てまいったところでございます。いわば当初から計画が大幅に変わってきた。こういうことで計画の見込みの数字が達成できるのでしょうか。数字の見直しが必要だと私は思うのでございますけれども、いかがでしょうか。
  139. 高木文雄

    高木説明員 六十年度にぎりぎり収支均衡できるという案を計算いたしましたときの諸元の前提は、その案をつくりましたのは昨年の七月でございますので、五十四年度の予算を前提にして、五十五年度、五十六年度、五十七年度というのをいろんな形で見通したわけでございます。五十五年度予算は、大体五十四年度の予算からいろいろ私ども見通しました線の上で組まれました。したがって、五十五年度の予算を編成されました段階では、大体前の年の七月に立てました考え方というもののレールの上に乗っている状態であったわけでございます。  ところが、非常に困った問題が出てまいりましたのは、五十五年、本年の四月一日から電気料金が上がってまいりました。しかも、この上がる率は大変大きなもので、五〇%をちょっと超えるようなものでございます。それから、ことしの一月からこの春にかけまして、いわば円安現象が出てまいりました。円安現象に伴うもろもろの物価の上昇率というものが、かなり高いものになってまいりました。したがって、五十四年の七月の段階でいろいろ予測として立てました数値に比べまして、卸売物価も消費者物価も上がるという形になったわけでございます。  ところで、私どもの方がこの春にお願いをいたしました運賃改定率は、計画で立てました五・四よりも低いものでございまして、四・五くらいを前提にして立てたわけでございます。したがって、五十五年に関する限りは、運賃改定率は物価上昇率よりも低いもので見込みました。一方、経費の方は非常に高い率で上がってきたということで、五十五年度、ただいま進行中の年度の実行見込みでは、いまの予算案で考えておりますよりは、いささか経営結果がよくない。率直に申しまして赤字がふえるという、非常に困った状態で現在進行をいたしております。  そこで、そうした現状を前提にして、五十六年度の予算要求につきまして、運輸省の御指導のもとにいろいろ計算をしたりしているわけでございますが、いま申しましたような電気料金あるいは燃料費の改定、あるいは諸材料等購入資材の物価の水準というものはかなり高いものになってきております。したがって、その五十五年度の実行見込みの上に立って、今度五十六年度の予算を編成をする、概算要求のお願いをするということになりますと、五十六年度の見込みとしては、五十四年の七月の段階で考えておりました水準に比べますと、かなり経営成績が落ち込むというふうに考えております。その数字で約一兆七百億ないし一兆八百億というような単年度赤字を前提としたような概算要求になっております。ただ、これはあくまで概算要求の段階の問題でございますので、今後いろいろな点を詰めていかなければなりません。  幸いにいたしまして、その後油の値段の上昇率はとまっております。したがって、この夏の概算要求の段階で考えておりましたときより比べますと、いささか安定をしてきたなと思っておりますけれども、それにしましても、五十四年の七月の段階で考えておりました五十五年の状態あるいは五十六年度状態は、計画の頭の方の年度のところで非常にそごがきそうだということで、率直に言って心配をいたしております。  そういう状態のもとで今度六十年度見通しましたときに果たして五十四年の七月の段階で見込みました六十年度状態に持っていけるかどうかということについては大変心配でありますので、ごく最近にいろいろ計算を念査してみておりますけれども、まだ非常に不確定要素がありますのでしかとはお答えいたしがたいのでありますが、当時考えておりました以上にさらに切り詰めの努力をいたす必要があると考えております。当時と申しますのは、五十四年の七月の段階で考えておりましたよりはさらに各経費その他の面について相当、血の出るような思いで圧縮、節約を考えなければいけないと思っております。しかし、それをいたしました上で六十年度には何とかぎりぎり収支均衡するような決心で計画を立て、それに取り組んでいきたいというふうに現段階でも考えております。
  140. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 総裁が大変御苦労していらっしゃるのは私もよくわかるのでございますけれども、いま総裁がいろいろおっしゃったファクターが出てくると、まず第一に、運賃値上げで増収を図ったつもりが、結局は客離れが起こって計画どおりにいかない。それから、電力料金も、これはわが党など大いに反対しましたけれども政府・自民党さんのもとでこれがいってしまった。こういうことで、いろいろと悪いファクターが入ってくるわけですよ。ところが、こういうふうなファクターがありながら何とか持っていきたい、こういうふうにおっしゃるのですが、実は昭和六十年度までの累積欠損対策、こういうものの試算を出していただきたい、こういうふうにお願いしましたところが、返ってきましたその資料というのは一体どんな資料かといいますと、五十四年十二月二十九日の閣議了解の文章が書いてあるだけで、私たちが要求しておりますのは、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年、六十年までどういう計算でどういうふうにしていくのかということを明らかにしてほしい、こういうことには答えていないわけなのです。答えられないのでしょうか。いま総裁はいろいろとおっしゃいましたけれども、いま私たちが大事なこの法案を審議するに当たって一番大事なのは、六十年までに収支均衡が図れなくても、経営基盤の健全なものが確立できるのかどうかというのは、これは国民にとって最大の関心事です。今度、五十四年度の運賃の値上げ、物価上昇よりも下げたとおっしゃったけれども、来年の運賃の問題については一〇%ぎりぎりだ、こういうふうな話にまでなってきています。本当にこれで再建ができるのかどうか。初年度で崩れているような状況で国民は納得しないわけでございます。これは責任を持って六十年度のこの試算、本当にやり直すかどうか、ここではっきりとお答え願いたい。いまいろいろ勘案をしているとおっしゃったけれども、いま審議をしている最中なのですよ。審議をしている最中にそういうふうな数字もきっちり出てこない。いろいろなファクターがあると総裁みずからおっしゃっていながら、そういうふうなものが明らかにされないということでこの重要な法案が審議できると思われますか。どうですか。お答え願います。
  141. 高木文雄

    高木説明員 大変きついおしかりでございますけれども、油の値段も一月ごとに動いております、円の相場も毎月のように変わっておるわけでございます。そういうことで、長期計画を立てますときには一応ある前提を置いて計算するわけでございますが、途中の過程ではもろもろのものが動くわけでございます。そこで、私どもとしましては、こういう長期計画でございますから、いろいろな状態を織り込んで計画数値をお示しして、運賃その他についても御理解を得なければいけないわけでございますが、いま出しておりますのは何しろ概算要求でございますので、ことしの暮れにどういう形で予算が決まりますか、運賃改定等についても、それをお認めいただけますか、あるいはもっと強く上げろと言われますか、いろいろな問題がございます。そういう過程においてしょっちゅう計算を動かしているということもいかがかと思われますので、私の腹づもりといたしましては来年度、五十六年度の予算が決まりました段階でいろいろなファクターを一応そこで押さえまして、そこで昨年七月の計画を直すべきものがあれば直す、それでなお収支均衡ができるかどうかもう一遍確認の計算をやってみるということにいたしたいというのが、現段階の私の考え方でございます。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕
  142. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 では、いまの総裁のお言葉をそのまま聞いたとしまして、ことしの暮れまでに計画案を出し直す、こういうふうに受け取ってよろしいのでしょうか。いかがですか。
  143. 高木文雄

    高木説明員 常識的には、予算が決まりますのは十二月の暮れいっぱいいっぱいでございますので、来年の春開かれます国会までには当然間に合わさなければいけない、また、そのときには間に合わすに足るだけの一応の数字、もろもろのものを予想した数字が決まるということでございますので、その数字に基づいて再計算をしてみたいと考えております。
  144. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 では、大臣にお聞きしたいのですが、いま総裁がそういうふうにお答えになりました。国鉄を監督しておられる運輸省として、本来ならばこの審議をやっているときにわれわれ議員に対して新しい計画案を示すべきだ、私はそのように思うわけなんです。朝のいわば特定地方交通線の政令にしましても、詳しいものは何にも出してこない。それから、切り捨て路線も明確にしない。そして、初年度から崩れているこうした計算上の試算の問題についても、暮れまで待ってほしい。一体何のためにこの審議を開いているのですか。一体何をもってこの審議をしようというのか、非常に不明確です。大事なところをみんな抜かして、ここにある印刷物だけで審議をしようというのは国民を愚弄していると思うのです。大臣はどのようにお考えですか。
  145. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 総裁が先ほど答弁しておりますように、概算要求を出して、これから十二月になると思われますが、そこで予算の詰め、やはり予算編成に際し、来年度、五十六年度の最後の詰めをしなければならぬのでございまして、そういうことを言っておるのでございますが、したがいまして、それまではあくまでも概算要求としての段階での議論ではなかろうかと思うのでございます。私たちも何も赤字がふえるというようなことは望んでもおらないのでございますが、しかし、その試算をとりました時点におきます状況というものと、それからまた予算を編成いたします時点における状況とは、これは若干いろいろな要件が変わってまいりますので、そのことを慎重に取り扱っておると私は思うのであります。  それと、資料につきましては、私が先日も申し上げましたように、当委員会において御協議賜れば、いわば政令案の骨子となる、基準となるもの、考え方、これについてはもうすでに取りまとめいたしておりますので御理解いただきたいと思うのです。
  146. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 総裁の御答弁といい、大臣の御答弁といい、私たち委員が要求をしているものに答えていない、国民が要求しているものに答えていない、こういうことになるのです。これをお出しになるまで、実は待っていたいくらいです。どうですか、はっきりなさい。
  147. 高木文雄

    高木説明員 おっしゃる意味はわかりますけれども、しかし、いま五十六年度にどうなるか、その場合に燃料費をどう見るか、あるいはもろもろの人件費をどう見るか、そして、それに関連して運賃収入の上げ幅をどのぐらい具体的にお願いするか、概算要求でなしに具体的にお願いするかということは、いろいろ部内で、部内と申しますのは政府部内でも御議論いただかなければならぬわけでございますし、それから、たとえば油の値段とかなんとかいうものは、各省予算を通じて共通の水準というもので大体査定を受けるというようなことになってまいります。したがいまして、いま五十六年度の概算要求として出しておる私どもの油の購入費単価というものが、具体的にそのとおりで予算が決まるというわけではないわけでございますので、各省それぞればらばらにそれぞれの油についての要求を出しておりますけれども、それを何らかの形で統一的な価格査定というものがあるわけでございますので、そういう政府としての確定的な数字、もちろん消費者物価や卸売物価の来年見込みというようなものについても、そういう作業がいろいろございます。それが出ましたときに計算しますということが権威あるものになるのではないかと考えるわけでございまして、現在、概算要求で出しておる数字を前提にしていろいろ再計算をするということは、どうもいろいろな意味で私どもとしては適当でないのではないかと思うわけで、決してその資料をお出しすることを強いて避けているという意味ではないのですけれども、一応の確信ある数字というものを、どれを使ったらいいのかということがはっきりしないわけでございますので、そういう状態にあることを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  148. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 これ以上言いましても、いま出てくるわけではありませんので、ここでこの質問を打ち切って次に進みたいと思いますけれども、国民が、再建が本当にできるかどうかわからないような、このようなあやふやな計画のもとにいまこの審議が行われているということについて、非常に重大な問題だと考えていると思います。いま総裁やあるいは大臣お答えになりましたように、できるだけ早く試算を出していただきまして、国民の疑問に明快に答えていただきますように強く御要望いたしまして、次の問題に移らしていただきます。  次は、運賃の問題について続けてお聞きをしたいと思うのです。  国鉄のいわゆる法定制緩和、これが実施されましてから毎年運賃が上がってきております。四回目の値上がり、また来年も値上げを考えておられる。ところが、これで増収分を図るはずが、国鉄の乗客離れ、これは総裁も運輸省も認めていらっしゃるところだと思うのですけれども、この状況についてどのように深刻に受けとめておられるのか、総裁大臣にお考えを聞かせていただきたいと思います。
  149. 高木文雄

    高木説明員 私ども、何とか運賃を上げないで済ましたいということを念願をいたしておることは事実でございますが、しかし、現在とてもコストを償っていないという状況のもとにおいては、よく一般で行われておりますように、二年に一回のローテーションというようなことはやっておれない、現に赤字があるわけでございます。しかも、改定と申しましても赤字を一挙に消すような改定はとてもできないわけでございますので、せめて赤字幅が増大しないようにという程度の改定をやらしていただいておるわけでございますので、それがたとえば一年おくれになるというようなことになると、また赤字をつなぐための借り入れをしなければならぬ。赤字をつなぐための借り入れ、たとえば新しく設備投資をするための借り入れということであれば、将来においてまたその回収ができるわけでございますけれども赤字をつなぐための借り入れということになりますと、ますます体質を悪くいたすことになりますので、私どもは、まことに残念ながら、こういう経営状態から脱するまでは、二年に一回の改定というような、望ましいというか、少しでもましな姿に持っていく余裕がないということで、毎年改定をお願いしているわけでございます。  そこで、改定の結果どうなるかということですけれども、これは競争企業、先ほど申しましたような独占企業ではなくて、競争企業である関係上、競争相手のもろもろの機関の運賃水準であるとか、あるいは自家用車の場合にはガソリンその他自動車償却費その他の負担の変化であるとかいうものとの関連上、私どもが他に比べて速いスピードで運賃改定をいたしましたのでは、これはお客さんが減ってくるということは当然の理でございますので、その点については相当気をつけながらやっておるつもりでございます。  ところで、最近に至りまして、昭和五十年ぐらいを基準にいたしまして、いまお示しのように、毎年かなり改定を行ってまいりましたから、昭和五十年基準にいたしまして二〇〇%、つまり倍をちょっと切る程度にかなり速いスピードで運賃改定を行ってまいりましたので、他の競争機関の運賃水準と比べまして、単に競争という面から見ましただけでも、なかなかきつい条件になってきております。したがいまして、それで結果として上げはいたしましても、逆にお客さんが減る程度が大きくて収入が減ってしまうということでは何にもならぬわけでございますから、どの程度に上げさせていただいたらいいかということについては非常に心配をしながらというか、苦しい思いをしながら改定作業を続けてきたわけでございますが、今後ともそれらについては十分配意しながら、つまりお客さんが急激に減ってはいけませんわけでございますので、そういう点は十分考慮しながら、また同時に、負担の方についても考慮しながらでなければ改定をしてはいけないという考え方でおるわけでございます。さりとて、全然上げずにおきなさいという御意見がいろいろございますけれども、とてもそうもまいらぬという、大変苦しいところに追い込まれておるということを御承知いただきたいと存じます。
  150. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 この件に関しましては、高木総裁が十分に答弁いたしておりますが、私も、いま高木総裁答弁を聞いておりまして、全く同じ意見であります。
  151. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 大変御苦労しておられるのはよくわかりますけれども、しかし払う身になりますと、国鉄はずいぶん高い、こういうことになるのですけれども国鉄が監査でお出しになりました資料を見ましても、私鉄と比べても大変高い。これは午前中に総裁もおっしゃっておりました。たとえば大阪−三ノ宮間、国鉄は三百二十円。それで梅田−三ノ宮間、阪急を使いますと百八十円。私は大阪ですので大阪の例をとらしていただきますが、私鉄の方が非常に安い、大変格差がある、こういうことなのですけれども、それじゃ日本の国鉄の運賃が国際的に見て、航空運賃と比較をしたら大体どのような状況にあるのかというのをお答え願いたいと思うのですけれども、よその外国と比べても、と言ってもたくさんありますので、フランス、ドイツ、日本、このぐらいで、航空運賃とそれから国鉄運賃、これを見て、国際的に日本の国鉄運賃はどのような割合を占めているか、お答えを頭いたいと思います。
  152. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 諸外国との比較でございますが、諸外国の航空とおっしゃったように聞こえたので、すが、ちょっと航空と比較するというわけにもいきませんので、諸外国の鉄道と日本の鉄道ということで……
  153. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 諸外国のじゃないんですよ。諸外国の鉄道運賃との比較じゃなくて、航空運賃と国鉄の運賃の比較、これを国際的に見た場合に日本の状況はどうなのかということをお聞きしているわけです。どうですか。
  154. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 ちょっと質問意味を聞きに行ってよろしゅうございますか。
  155. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 どうぞ。  速記をとめて。     〔速記中止〕
  156. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 速記を始めて。
  157. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 昨日、通告をしておいたのですけれども、どうもうまく伝わっていないようでございますので、私の方でこれを見せさせていただきます。フランスとドイツと日本の鉄道運賃と航空運賃の比較をしているわけなのですけれども、フランスもドイツも、やはり航空機は航空機なりにそれ相当の値段を取っている。国鉄は比較をすると安いわけです。ところが、日本の場合、この上の赤いのが国鉄、グリーン車になるわけですが、それでこれが普通になるわけです、一般車になるわけですけれども、下が航空運賃です。こういうふうに国際比較で見ましても、日本の国鉄が航空運賃に比べても割り高になっている、私鉄に比べても割り高になっている。結局、国鉄の運賃が住民のふところを大変圧迫しておる、こういうことなのです。  そこで、国鉄にお伺いをしたいのですけれども、大変古い資料で申しわけございませんけれども、「一九七五 国鉄の実情を訴える 日本国有鉄道」、国鉄がお出しになった本でございます。この九十九ページに「物価と運賃」というのがあるのですよ。読んでますと時間がかかりますのでざっと言いますと、五年前の七五年当時、物価は九百三十倍に上昇している。ところが、国鉄運賃は物価の上がり方の三割、三百二十七倍、貨物運賃は二百九十五倍、旅客運賃が三百二十七倍、こういうふうに書いておられまして、非常に国鉄の運賃は物価指数に比べて安いということが、七五年に国鉄がお出しになりました本にございます。  国鉄がこういう本をお出しになって、内容をこういうふうに書いたということをお認めいただけますでしょうか。恐れ入りますが、総裁、御答弁を簡略にお願いいたします。
  158. 高木文雄

    高木説明員 そのとおりでございます。
  159. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいま国鉄総裁の方からそのとおりだとはっきりおっしゃいました。大体、当時国鉄運賃が高いか安いかを判断する基準として、物価指数と運賃の推移とを比べてお出しになった。これは間違いないということなのですけれども、それではどうなのかということを私はグラフにあらわしてみました。  これは皆さんにも見ていただきたいし、委員の皆さん方にも見ていただきたいのですよ。この下は物価指数です。上は普通運賃、通学定期、普通運賃、こういうふうに色分けにしてございます。これは一目で見たら、下が物価ですから、物価はずいぶん上がりましたね。どうです。これもお認めいただけますね。これも政府がお出しになった資料をもとにしてつくったものでございますから、共産党がつくったものではございませんので、よろしゅうございますか、これは物価指数ですよ。  いまグラフでお見せしましたように、七五年当時から物価指数に比べてずいぶん国鉄の運賃が上がった、これはもうグラフで見て非常によくわかっていただけると思うのです。国鉄の三段論法でいっても国鉄の運賃は高い、こういうふうにお思いになりませんか。総裁の御答弁はちょっと長うございますので、簡略にお願いします。
  160. 高木文雄

    高木説明員 物価との比較についてはいろいろな議論がございます。私どもが前に出しました書類での議論は、戦前、昭和九年−十一年基準で見た場合でございまして、その点で申しますと、国鉄運賃は非常に安いということを当時主張いたしておりますが、現在でも安いと思っております。しかし、世の中は構造が変わってくるわけでございますから、昭和九年−十一年基準で物を議論したのではだめではないかという議論もまたあるわけでございまして、たとえば最近、十年前とか十五年前の物価水準と比べてまいりますと国鉄の運賃の上昇率が高いということになるわけで、この議論はいつの時点を基準にするかによっていろいろな議論になってまいると思います。
  161. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いまの御答弁を家庭の奥さん方が聞きましても納得を絶対にしないと思います。私も主婦といたしましていまの答弁を聞きましたら、総裁、よくそんなことをおっしゃいますねと。これは物価指数よりも高くなっているのははっきりしているのですからね。これでいまのようなことをおっしゃられると、毎日財布のひもを預っている家庭の主婦が、国鉄は何ということを考えているんだというふうに言わざるを得ないと思うのです。国鉄の運賃が他の交通機関に比べても非常に割り高であるというのは、先ほどの私鉄の場合あるいは航空運賃と比べても割り高だということになっている。物価指数よりもはるかに高くなっているのは数字があらわしているじゃありませんか。その問題についてそういうふうにおっしゃいますと、それは国民の皆さん方が、そういうふうな考え方で国鉄は考えているのか、こういうふうになるわけです。  先ほどこれ以上運賃を上げるなという御意見もあるようですがというふうにおっしゃっておりますけれども、経済企画庁が、これもちょっと古い話になりますけれども、古い話なので、総裁はいつの時点においてというふうなことになるのかもわかりませんが、四十年十二月に物価問題懇談会というふうなのを開いておられます。そこのところに「非常に国鉄の将来の旅客運賃水準に大変な影響を持ってくるだろう」、こういうふうなことに注意しなければならないのだというふうなことを指摘しているわけなんです。  この間NHKの教育テレビで、ごらんになった方もあると思いますが、「国鉄ダイヤをしかる」という放映がございましたが、その中でもスウェーデンの例を阪本さんという方が引いておられました。スウェーデンが一九七二年からいわゆる独算制をとったために毎年運賃を上げる、そしてローカル線の五分の一を廃止した、それでもなお赤字がふえ続ける。そういう中で、一九七八年に政府が方針を変更して、サービスに徹底するんだ、運賃値上げはやらないということで値下げをやった。そうしたら客が逃げたか。そうじやなかった。あたりまえです。安くなったら逃げるはずがないのです。四〇%の一般客が返ってきた、それから家族連れの旅行客が二五%返ってきた、こういうふうな御報告がございました。また、国鉄労働組合も運賃は値下げをするべきだ、こういうふうな方針を出しておられます。  こういうふうな諸般の情勢から考えて、値下げをしなさいというのは酷かもわかりませんけれども、値上げをしないでこのまま凍結なさるお考えはございませんか。国民は非常に喜ぶと思いますけれども、いかがですか。
  162. 高木文雄

    高木説明員 私どもももしそうさせていただければ大変ありがたいわけでございますけれども、現在のように六千億、七千億という巨額の金を毎年財政側に出してもらっておりますし、それでもなおかつ八千億の赤字が残って国民の後代負担になっておるという現状からいたしますと、やはり少しでも経営収支の改善を図るということを、利用者負担と税負担との関連の問題になってくるわけでございまして、結局はどなたかに負担をしていただかなければならぬという点から言いますと、そういうことができれば非常にうれしいわけといいますか、スウェーデンの状況の話を聞いて私ども大変うらやましく思っておりますけれども、それを日本に適用することはちょっと無理ではないかというふうにいまのところ考えております。
  163. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 国鉄の運賃の値上げはもう国民の負担力を超えている、これは客離れでそれをあらわしていると思うのです。物価面から考えましても、大体国鉄がどんどん上がる、公共料金の値上げの推進力を国鉄が買って出ている。他の物価にも非常に大きな影響を与えています。これはやはり国鉄あるいは運輸省、政府・自民党が、これまで国鉄運営をやってこられたその誤りの象徴だ、私はこのように思うわけでございます。値下げができればうれしいのだがと総裁はおっしゃいましたけれども、少なくとも値上げをしないで凍結をされるように強く要望して、次の質問に移りたいと思います。  さて、この間の衆議院の予算委員会でも問題になりました大蔵省が発表されましたゼロリストの問題についてお聞きをしたいと思うわけでございます。  このゼロリストによりますと、運輸省ではこういうふうに発表されましたね。前年度比の伸びがゼロになった場合には国鉄運賃の値上げ一五%必要だ、こういう御発表をしておられますが、その発表されました根拠ですね。どういうところから一五%値上げというのが出てきたのですか。
  164. 山地進

    山地政府委員 今回の「「伸びゼロ」とした場合の問題点」というところにございますように、私どもの方で予算を要求しております額が昨年度と同じになりますと、約九百億の助成が少なくなるわけでございます。この助成を、収支の改善が、収支を悪くする方へ持っていけば、それはそれでもいいわけなのかもしれませんが、同じような収支、一兆七百八十九億に抑えようといたしますと、どこかで経費の節減をするなり増収を図らなければいけない。そこで、増収の方へ持っていきますと、二千百億が約三千億になる。三千億というのは実収でございますから、名目の方で直すと、これは幾らになるかというのはむずかしい話なのですが、約一五%くらいの値上げというものが必要であろう、かようなわけで数字を出したわけでございます。
  165. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そういたしますと、一五%値上げという数字で発表された、それはどこの責任で発表されたのですか。大蔵省の責任ですか、それとも運輸省の責任ですか、どちらでございますか。
  166. 山地進

    山地政府委員 大蔵省の発表文のどこかに書いてあったように思うのでございますが、「当省より要請し、整理したが、所管省庁の意見としては、いずれも伸びをゼロに抑えることには問題が多いとしている。」——失礼しました。もう少し前にございました。「なお、所管省庁の説明の作成にあっては、意見にわたる部分はこれを省略し、できるだけ客観的事実の叙述にとどめるよう当省より要請し、」といたしましたので、大蔵省の方からいろいろ要請がありまして、私どもの方がそういうゼロという場合の問題をここに掲げたわけでございます。したがって、文筆はだれかということになると、私は財政当局だろうと思いますけれども
  167. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そういたしますと、この赤字が幾らになるという発表かあるいは運賃を何%にするという発表、このどちらにするかという判断は一体どこがするのですか。どこが判断をして発表されたのですか。大蔵省からこれは値上げ率で発表しろというふうに示唆をしてきたわけですか。どうなんでしょう。
  168. 山地進

    山地政府委員 この提出資料の中に、五十六年度要求における国鉄収支見込みがさらに九百億悪化することとなる、したがって、この値上げやなんかをしなければ九百億悪化しますよ。この赤字増の解消を運賃改定による増収に求めれば、五十六年度一五%引き上げることが必要となる。両方書いてございまして、これを上げなければ九百億だけ収支が悪化しますよ。悪化をしないように仮にしようと思えば一五%と、二つ書き分けてございます。
  169. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 大蔵省はこの発表の問題についてはみずから著作権がない。これは各省庁に表現を任せた、こういうふうになっているのですけれども、この一五%の値上げ、実際こんなものはできないわけですね。どうですか。
  170. 山地進

    山地政府委員 これを作成いたしましたのは前提を置いて計算をしたということでございまして、値上げの意思決定をしたとか、そういうようなことではございません。
  171. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ゼロリストにつきましては、これは別に運輸省だけに責任があるのじゃなくて、予算委員会でも問題になりましたし、与党の自民党の皆さん方からもずいぶん御意見が出たようでございます。こういうふうなものを発表されたこと自身非常に意図的だ、こういうふうに思いますけれども、しかし運輸省も、結局一五%もの値上げはできないのにこういうものを発表された。これは、こういうものを出されますと、赤字を出した責任が本当に国鉄にあり、それを監督してきた運輸省にあるということを糊塗してしまって、赤字の原因はまるで国民にある、そういうことを意図的にあらわしている。なぜ、こういうものが出てきたときに、大蔵省に、こんなものは発表できないというふうに返すことができなかったのかどうか。非常に意図的だと思うのです。こういうものが出されますと、今度の運賃値上げ一〇%ぎりぎりのところにということになりますと、去年の伸び率よりゼロであれば一五%も値上げをするところ、一〇%以内に抑えられるのか、国民に何となく意図的にこういうことを振りまいておられるような感じがするわけでございます。こういうふうなやり方は国民に非常に大きな衝撃を与えた、こういう点で問題がある、このように思いますので、この点は十分に御留意を願いたい、このように思います。  それでは、時間が大分迫ってまいりましたので、次の問題に移ります。次は通学定期の問題に移らしていただきます。  通学定期、通勤定期、特に大都市圏で多いわけですけれども、私鉄との比較をしますと、通勤にしろ通学にしろ住民の負担の程度に非常に著しい格差がございます。これは国鉄の監査報告を見ましても、新宿−八王子間の通学定期が四千四百三十円、京王電鉄の通学定期が千八百円、一カ月定期です。それから、大阪−三ノ宮が四千百二十円、通学定期一カ月、国鉄です。阪急では同じところが千九百八十円、こういうふうに非常に差があるわけでございます。これを、非常に差があるのに国鉄の通学定期の割引率なり通勤定期の割引率を四〇%または六〇%まで引き下げると、ますますその差はひどくなってくる、こういうふうに思うのですけれども、これでも割引率の引き下げ、これをやられるおつもりでしょうか。
  172. 高木文雄

    高木説明員 これは通学の問題だけじゃなくて、全般として都会地におきましては私どもの方が高い。そして、地方に参りますと極度にまた私どもの方が安い。なぜかと言えば、私の方は全国一律でございますし、私鉄さんの方はみんな企業別であるというところから出ているわけでございます。そういうふうにして割引率が大きくなってまいりますと、つまりそれがやはり全体としての経営収支の赤につながってまいりますと、それはそのままで済むわけでなくて、どこかで負担していただかなければならぬ。それは他の利用者かあるいは納税者かということになりますので、現在の私どもの考え方では、学生さんの通学定期は、いまのバランス論からいえば、割引率が高過ぎるというふうに考えているわけで、その意味で今後も是正を続けてまいりたいというふうに考えております。
  173. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 定期割引の是正の主流になっている主張は、コストから見た場合四〇%の割引が適切である、こういうことが主張になっていると思うのですけれども国鉄の定期利用の大半は大都市圏の方々が占めておられます。そこにおける定期運賃の水準、つまり利用者の負担額から見ますと、私鉄と国鉄とが同じ四〇%でも運賃の差とほぼ同じぐらいコストが違うと思うのです。同じ四〇%という数字だけで、利用者の負担割合程度を決めるというのは、少し問題があるのではないか  と思うのですが、その点いかがでしょうか。
  174. 高木文雄

    高木説明員 通学定期の割引率は、いまのところは全国一率でいくしか仕方がないのではないかと思うのでございます。学生さんというのは大都市にもたくさんおられますけれども、地方でも国鉄利用者はかなり多いわけでございまして、それを大都市だけ多少負担を軽くする、それをどうやってあとのつじつまを合わせるかというか、しりをどこへ持ち込むかといううまい方法がないように思いますので、いまのところは学生さんの割引につきましても都市と地方と同じ率ということにならざるを得ないのではないかと思うわけでございますが、なお御質問の御趣旨よくわかりませんので、少し勉強してみたいと思います。
  175. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私が申しましたのは、私鉄と国鉄と、その原価について非常に差があるのではないか、その差があるのに同じように割引率を考えてはおかしいのではないか、負担が非常に違ってくるではないかというふうに言っているわけです。コストの中身についての問題です。
  176. 山地進

    山地政府委員 御質問の趣旨は、国鉄と私鉄とは原価が違う、したがって割引率も違うのではないか、こういう御趣旨のようにお聞きしたわけでございますが、割引率というのは普通旅客に対してどれだけ割り引くかということでございますので、国鉄なら国鉄の普通の人と定期を持っている人の比率をどれぐらいにするか、私鉄だったら私鉄の中で普通旅客の人と定期の人とをどういう比率にするかということでございますので、経営形態によって若干、普通の人と定期の人との受け持つ負担額といいますか、負担割合というのは多少違うかもしれませんけれども国鉄だから私鉄だからというほどの違いはないのではないかというふうに私は思っております。
  177. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 確かに国鉄と私鉄とは経営形態が違うのです。そのとおりなのですけれども、私鉄には約七〇%を占めるような貨物赤字もないと思うのです。それから、特定人件費というふうなものもないと思います。それから、たな上げをしなければならないような過去債務もないと思うのですけれども、こういうふうな原価まで通学定期の利用者に負担をさせているのではないでしょうか。どうですか。
  178. 高木文雄

    高木説明員 いや、それはちょっと違うので、過去債務についていろいろ政府で御心配いただいたり、それから年金退職金についていろいろ御心配いただきましても、なおいまのところは五千億ぐらいの赤字になるわけでございますので、確かにそれは、その分は赤字のまま残っているわけでございますから、どうも年金部分とかなんかをそこに、原価の方にぶち込んでいるということにはならないのではないかというふうに思います。
  179. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そうすると、通学定期並びに通勤定期の原価の中には、いまおっしゃった、私が申しましたようなものは、原価の中には含まれていない、それを除外してコストとして原価として考えていると、再度ちょっと念を押したいのですが、そうなっておりますか。
  180. 高木文雄

    高木説明員 非常に不思議なふうにお思いかもしれませんけれども、私のところ、全然バランスがとれてないわけでございますから、したがってコストに見合うだけいただいてないわけでございますので、ちょっとそこの部分をどう御説明したらいいかわかりませんが、いまの通学に限らず、一般の方につきましてもコストだけはいただいてないわけでございますので、そこのところはどう御説明したらいいかわかりませんが、その分が持ち込まれているというふうに解するか、あるいはそれは別建てにしてもまだコストに合ってないということから考えれば、それはいまの計算には入ってないということになろうかと思います。
  181. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 五十三年度の鉄道客貨別経営成績表から見ますと、五十三年度旅客収入が一兆九千六百五億、そして収入不足が二千五百八十八億円、こういうふうになっているのですけれども、五十三年度で計算をしてみますと、一三%の割引でよいのではないか、こういうふうに思うのですけれども、どうでしょうか。  そして、その五十三年度の原価には、今年度たな上げをされたという、運賃負担から外す過去債務の一部まで入っているのではないですか。どうですか。
  182. 山地進

    山地政府委員 まことに恐縮でございますけれども、御質問の趣旨が正確に理解できませんでしたので、もう一度御説明いただきましたらありがたいと思います。
  183. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 五十三年度の鉄道客貨別経営成績、これに基づきまして計算をしますと、旅客収入が一兆九千六百五億円、それから収入不足が二千五百八十八億、これで計算をいたしますと〇・一三二になりまして、一三・二%ぐらいの定期の割引でいいんじゃないか、こういうことに私たちの計算でなるわけでございます。  そして、五十三年度のその原価の中には、今年度たな上げをした、運賃負担から外す過去債務の一部までついているんではないですか、こういうことをお聞きしているわけなんです。
  184. 高木文雄

    高木説明員 ちょっと御趣旨がわかりませんが、いまおっしゃったように、旅客だけ見ましても赤字なんでございます。したがいまして、これを収支とんとんにするためには、逆に収入をもっと上げなきゃいけないわけでございますので、このことから何か、これは定期とかなんかということに関係なく全部のお客さんの収入でございますから、それと学生定期の割引率とがどういう関連を持ってくるのか、どういう計算で一三%という数字が出るのか、ちょっといま私には理解をいたしかねるわけでございます。  それから、たな上げの問題は、毎年毎年それをたな上げていただけば一つの方法なんでございますが、いまのところはそうはまいりませんので、何年度かをためて、どうにも収拾すべからざる事態になったときにたな上げをお願いをいたしておりますので、五十三年度自体としてはたな上げ問題は働いてないわけでございますから、これは単年度でございますから、したがって、たな上げ論というのとこれとどういうふうに結びつけてお考えか、全部見ていただければ解決するのですけれども、見ていただけてないものですから何年かをまとめてたな上げということになっているので、たな上げ論の関係でここが変わってくるという御理解については、私どもちょっと賛成いたしかねます。
  185. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いずれにしましても、通勤定期並びに通学定期の割引率、この住民の負担、利用者の負担を高くしよう、これは国鉄赤字だからその分をぜひ補っていただきたい、こういう御趣旨で通学定期あるいは通勤定期の割引率の見直しの御検討をされると思うのですけれども、いずれにいたしましても、大都市部で非常に私鉄との格差もある、そして負担が大きくなっている、こういうふうな問題から、検討する際には、国鉄の運賃水準、非常に高いと思うのですけれども国鉄の運賃水準、利用者の負担程度を前提にするというか、よく考えていただいて、これ以上通勤者や通学者の負担にならないようにぜひ考えていただきたい、このように思うわけなんです。  と申しますのは、通学定期などを使う学生にとりましては、国鉄を使わなくては通えないという方もたくさんあるわけでございます。取れるところから取る、逃げようのない人から取る、そういうような弱い者いじめの国鉄では困るわけなんです。これはただ単に通学定期を使っている学生だとかそれを負担している父母の問題ということじゃなくて、国鉄再建に当たって国民が国鉄をどのように考えるか、その一つのバロメーターになるのじゃないかと思うのです。まだこれでも通学定期の割引率について負担をふやすような見直しをするのかどうか、この辺は大いにかかっていると思うのでございますけれども、その辺勘案をして検討していただけるかどうか、大臣から御答弁を願いたいと思います。
  186. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 国鉄財政的に再建を図ろうと非常に悩んでおるところでございまして、事情が許せばそれは国民に帰属するように、割引率をもっと高めるということもできると思うのですけれども、現状においてはなかなかむずかしい状態でございます。  先ほど来聞いておりましたら、午前中御質問された先生は、定期が安いから国鉄を残しておけ、こうおっしゃる御意見もございましたし、都会におきましては定期が高いという御説もございますし、ここらが国鉄として将来どのように整合性をとっていくかという一つのテーマでもあると思うております。おっしゃいます御趣旨はわれわれも十分に理解できるものでございますが、しかしながら現状におきましてはなかなか御要望に沿いがたい状況にあるんだという、この実情もひとつまた御理解していただきたいと思います。
  187. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 できる限り国民の負担にならないように、それを考えていただいて、経営の内容その他についてよく勘案をして検討していただきたい、このことを再度申し入れまして、次の問題に移らせていただきたいと思います。  次は、方角を少し変えまして隅田川のセメント基地の問題について若干お尋ねをしたいと思うのです。  隅田川のセメント基地におきます収支の内容についてお聞きをしたいのですけれども、セメントをためておくためのサイロの維持管理の費用、それからセメントを積みおろしする装置がつけられておりますが、その使用、維持管理にかかわる費用、これらにかかっている費用の総額、国鉄負担となっている額、荷主等から徴収している金額、おのおのどうなっておりますか。
  188. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 隅田川のセメント基地でございますが、これは昭和四十年から動いておりまして、その昭和四十年ごろというのはちょうどセメントが袋詰めで送られていた時代から徐々にバラ輸送に切りかえられていったときでありまして、そのバラ輸送に切りかえることによって流通改善にもなるし、かたがた国鉄の方も基地の集約であるとかあるいは列車による代替輸送というようなメリットがございますものですから、そこで隅田川の方に着の基地をつくろうということでできたわけでございますが、その際、国鉄で積みおろしということでありますと、普通は貨物の方も自分でつくるわけでありますけれども、こういったバラ輸送の際に、民間の資金を活用するというようなことも兼ねまして実はこれをセメントのメーカーの方につくっていただきまして、国鉄の方が受贈施設としてこれを申し受けまして、現在は国鉄の所有になっておるというような形であります。  そこで、これは設備を国鉄が無償で譲り受けたわけでありまして、その設備、サイロの維持管理は国鉄が行っておりますが、費用は荷主から実費を徴収しております。そういうようなことで、この積みおろしの使用料は二千三百万円で一トン当たりの使用料は五十四円というふうになっております。それから、運賃としては約五億二千万円であります。
  189. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 その積みおろし装置の費用の算定基準、それから内訳、どういうふうに配分をしているのか、それをお聞かせ願いたいのですけれども
  190. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 積みおろし装置の使用料金は総体で二千二百五十五万八千円でありまして、取り扱いのトン数は四十二万三千トンでありますので、一トン当たり五十四円ということになります。
  191. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そんなことは聞いてないのですよ。その内訳、何と何とがその中に含まれているのか、そういうことを聞いているわけです。
  192. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 修繕費と動力費であります。
  193. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私がお尋ねしたのは、このサイロの維持管理費用だとかあるいはセメントの積みおろし装置の使用、維持管理費等、収支の内容について、入ってくる方はどうだ、出ていく方はどうだ、これを数字的に明らかにしていただきたい、このように思っているわけですけれども、少し時間がございませんので、その点はまた後ほどはっきりと資料をいただきたいと思うのですけれども、いま積みおろし装置の費用は一トン当たり五十四円、そして維持修理費と動力費、こういうふうにおっしゃいましたですね。  ところで、私が四月ごろにこのサイロを見に参りましたときも一トン当たり五十四円、こういうお話があったわけでございますが、先ほど来非常に国鉄経営がしんどい、こういうふうなことが言われております。解散前の国会のこの委員会でも加藤議員が御質問をされました。そのときに、一生懸命に委員会でみんなやっているのに、電力料金が上がってまた赤字が出るということを総裁がおっしゃったということで、みんなが一生懸命やっているのにけしからぬではないかというふうに大変おしかりになったのを私大変記憶の中にとどめているのでございますが、その後高木総裁は、この電力料金の値上げ等については今後とも営業努力でカバーをしていきたい、こういうふうにおっしゃったわけでございますが、それ以来、東京電力は五六%以上の値上げをしたわけですが、その電力料金の値上げについては、動力費と言っておりますか、徴収をされたのでしょうかどうでしょうか、いかがですか。
  194. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 この電力料金につきましては、前年度の料金でやるというルールに従ってやっております。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕
  195. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 前年度の料金でやるということになっているとおっしゃいますが、国民の方は、いつから値上がりというとすぐその何月何日から値上げ料金を払うわけなんです。いま非常に国鉄経営がしんどい、総裁は、この電力料金の値上げ等についても営業努力でカバーをしていきたい、こういうふうにおっしゃっているにもかかわらず、その辺これはまさに大名商法というよりも、国民がこれを聞いたらまた怒るわけです。なぜ電力料金の値上げ分を国民と同じように上がったときからすぐ徴収をしないのか。どうですか、徴収をされるようにされますか、いかがでしょうか。
  196. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 ちょっと説明が正確ではなかったのですが、ただいまのところ概算で取っておりますものですから、その前年度の額で取っておりますが、精算をいたしまして、その差額は徴収するということになります。
  197. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、精算をした段階で電力料金の問題についてこういうふうに徴収をしたということをはっきりと、先ほど内容についても非常にずさんな御報告だと思うのです。本来ならば収支の問題についてはもっときめ細かく御報告を  いただいてしかるべきだと思うのですけれども、その御報告は国民が納得いくようにしていただけるでしょうか。  それともう一つは、こういう問題はここの隅田川のセメント基地だけではないと思うのです。全国にこういうところがたくさんあります。そういう問題についてもきちんと報告をされるかどうか。これは私が前回質問をいたしました場合に、むだ遣いの問題については、総裁がきちっとむだ遣いの問題についても調査をして努力をしたい、  こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、いまだに私たちの目の前には、このような点についてはこういうふうに改善をしたとか、こういうことをやったということは御報告はないわけでございます。そういう問題も含めて、ちゃんと御報告がいただけるのかどうか、それを御答弁願います。
  198. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 精算をいたしまして、受け取った段階で御報告いたします。
  199. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、サイロの問題についてお聞きをしたいのですが、これは国鉄がサイロを所有をしている、こういうふうに先ほど御説明がございました。ところが、サイロで保管をしているセメントの保管料、また留置料というのでしょうか、どれだけ徴収しておられるのでしょうか。
  200. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 これは無償で使用させております。
  201. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 なぜ無償になるのでしょうか。
  202. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 この設備は、メーカーの方でつくりまして国鉄が受贈しておりますので、国鉄の財産でございます。このサイロは積みおろし機能ということで、本来でしたらホームのようなものですから国鉄でつくって荷主さんの用に供するというものでありますが、この積みおろし設備というものについて、このサイロを使っておりますので、われわれとしては無償で使わせておるということでございます。
  203. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いまこの積みおろしサイロは積みおろし機能だ、ホームのようなものだ、こういう御答弁があったのですが、これは国民が見ましてセメントのサイロはホームと一緒だ、こう言っても納得はしないと思いますけれども、ここに国鉄からいただきました資料の中に、「タンク、サイロ等保管用施設」になっているのですよ。「タンク、サイロ等」、ホームと同じ施設にはなっていないのです。国鉄のものになっているというふうにおっしゃいますけれども国鉄がセメント商売をしていらっしゃるわけじゃなし、セメント会社のセメントを国鉄のいわば財産のところにためて積みおろしをやっているわけでしょう。普通、仮に私の所有しているところの物は余りただで使わさぬと思うのですよ、こういうものは。保管料をお取りにならないというところに問題がある。営業努力だの企業努力とおっしゃるなら、先ほどから定期代はもっと見直したいとか、また運賃を上げたい、こういうふうにおっしゃっているのだけれども、どうして国民が見ても納得のできるようなところから取ろうとなさらないのか、その点私は非常に疑問に思うのですが、適正な料金をお取りになるべきだ、このように思いまして、次の問題に移ります。  このセメント基地前の国鉄用地に常時夜間もセメント運搬用のトラックが駐車しています。土地の使用料等は徴収しておりますか。
  204. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 先ほどのサイロの使用料でございますが、これは物資別基地として設備をいたしましたものにつきましては、現在設備を受託してわれわれの方が持っておるような形なんですが、この場合には確かにかなりの日数を保管しておるということで保管と積みおろしということの二つの機能があるので、その場合には大体二分の一という標準で取っておりますが、隅田川の場合には、大都市で非常に回転が速いという計画ですから、積みおろしですから、その保管機能がないということで無償、そういうことで申し上げたわけです。  それから、いまのトラックの場合には、大体早朝とか深夜、そういうようなときに積みおろしをしたりそういうものをやりますものですから、業者の方でその場所を固有に車庫として使っておるわけじゃないということで、これも無償でやっております。
  205. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 確かにいまおっしゃったように、早朝とか夜間とかに積みおろしをやっている、だから車庫じゃない、確かにそうなんですね。ここで車が常時二十八台ないし三十五、六台、私が参りましたときも駐車をしておりました。しかし、これは昼間の時間に、しかも長期的に国鉄の土地が占有されているのに国鉄は料金を取らないでもよいという規則がおありなんですか。どうでしょう。これも常識から考えて、朝と夜は動いている、だから車庫じゃないんだ、昼は三十台とまっていようが何台とまっていようがただでいいんです、国鉄の土地をただでお貸しします、こういうふうな規定でもあるのかどうか。
  206. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 個々の会社は別のところに駐車の設備を持っておりまして、この構内でやる場合には、むしろ作業の都合上いるとか、そういうことでやっておるものですから、駐車という目的とはちょっと違うので、これは取っておりません。
  207. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それではお聞きいたしますが、自転車置き場問題がございます。私の地元にも自転車置き場が欲しいという御要求がたくさんございます。国鉄の土地をぜひ自転車置き場として使わせてほしいと自治体からも要望がございます。ことしのあれは七月の末だったと思いますが、片町線の星田駅の自転車置き場の問題について国鉄の本社にお願いに参りましたところ、これは貸していただけるのですけれども、無償でお貸ししたいところだけれども国鉄営業状態がよくございませんので有料でございますということで、大体お金を取られているのですよ。自転車置き場はお金を取っている。自転車置き場というのは駐車場でもないし、車庫でもないと思うのです。ところが、これだけの広大な土地を、トラックが三十五、六台着くことができるのですから相当広い土地なんですよ、それを国鉄が、作業するのに必要だからといって使用料を取らなくてもいい。この辺は国民が聞いたら納得はしない、こういうふうに思うのですけれども、こういうふうなところにも、これはぜひ国鉄側が反省をしていただかなければなりません。私たちはよく大企業のことを申しますけれども、大企業のことというよりも、国民が見て、だれから見ても納得のいくようなことをやっていただかないと、自治体が自転車置き場を貸してほしいというときには有償だ、けれども企業が作業するんだということで三十数台の自動車が常にとまっているところからはお金を取らない。先ほどのサイロの問題もそうです。納得がまいりません。こういう問題をきっちりと国民に納得のいくように、取らないなら取らないで、なぜ取らないのか、国民にわかるように、しかし私としましては、国鉄財政がしんどい、しんどいとおっしゃるなら、こういうものからこそはっきりと適正な料金を取るように改善をされるべきだ、こういうふうに思うのですが、いかがでございますか。これは総裁にお聞きしたいと思います。
  208. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 トラックの駐車の場合でも、駐車が目的で駐車場として貸す場合には、それはもちろんお金をいただくわけなんですが、これは駐車が目的というよりか作業が目的なものですから、私が申し上げたように取っておらないわけでございます。
  209. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 総裁、この問題、私は再度総裁にお聞きしたいのです。作業が終わっても車はそのままそこにとまっているのですよ。作業のためにとおっしゃったけれども、早朝と夜間、作業されるわけでしょう。作業しないときはとまっているのですよ。よそへ持っていってとめているのじゃないのですよ。だから、いまおっしゃったのは詭弁だと思うのですけれども、本当に経営状態を改善しようと思われるなら、か弱い国民からお金を取ることを考えないで、こういうふうなことについて、国民が納得がいくような改善をして、適正な料金を取るように見直される必要がある、私はそのように思うのですけれども総裁いかがですか。
  210. 高木文雄

    高木説明員 大変細かい実情の御指摘がありましたが、私、ちょっと隅田川の実態をよく承知しておりません。また、他の貨物駅についてどういうことになっておるのかも、その点はっきり承知しておりませんので、それはひとつぜひ勉強さしていただきたいと思います。
  211. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ぜひ総裁もそういうところをよく点検をしていただきまして、国民の納得のいくような経営方針をお出しいただくように再度御要望いたしまして、次の問題に移りたいと思います。  ところで、今度の再建法案では、大量定型貨物輸送、これが国鉄三つの重点方針の一つだと、こういうふうに出しておられますけれども、そのとおりでございますか。
  212. 山地進

    山地政府委員 そのとおりでございます。
  213. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ちょっと写真を総裁並びに鉄監局長、大臣にお見せしたいと思うのですが、よろしゅうございますか。
  214. 小此木彦三郎

    小此木委員長 はい。
  215. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ごらんいただきましたでしょうか。——そうしたら、恐れ入ります、私の手元へお返しください。  ただいま大臣並びに総裁、そして局長に見ていただきましたこの写真でございますが、ちょっとお聞きしたいのですが、これは一体国鉄ではどういうふうに呼ばれている車両なんでしょうか。
  216. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 クの五〇〇〇形式と言っております。
  217. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そういうふうに専門的にお答えにならないで、みんなが聞いてなるほどとわかる言葉でおっしゃってください。どうも恐れ入ります。
  218. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 自動車を運ぶ車という意味で車運車と言っております。
  219. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 これは東小金井の駅に置かれている、いま吉武常務がおっしゃいました車運車の写真でございます。この東小金井の駅の問題につきまして少し御質問をさせていただきたい、このように思っております。  東小金井の駅、これは昭和四十年四月五日に開業をしておられるわけでございますけれども、ここで車運車が使われておった、こういうことはあると思うのですけれども、いま見ていただきましたこの車運車、これは放置されてさびついているわけなんです。この車運車の状況が東小金井でどういう状況になったのか、東小金井の状況について簡単に御説明を願いたいと思います。
  220. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 この車運車につきましては、だんだん年を追ってふえてまいりましたが、昭和五十年代に入りましてかなり需要が落ちまして、その結果、留置しておる車両がかなりあるわけでございます。その一部の七両が東小金井に留置をされておるという状況でございます。
  221. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 だんだんと需要が減ってきて、七両がこのように東小金井に留置をされてさびついている、こういうわけですね。  この一番下の写真、これは何のための線路でしょうか。
  222. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 この線は留置線でございます。
  223. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 何の留置線ですか。
  224. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 特にどの車を留置しなければいけないということはないのですが、貨物駅でプールする設備でありますので、そのときの波動とか、そういうものによって留置をするための線というのはどこでも持っておるわけでありまして、その一つでございます。
  225. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 これは吉武常務が東小金井の駅に行っていらっしゃらないからそういうふうにお答えになったのかもわかりませんけれども、これは車運車のための専用の引き込み線になっているわけですね。これが、写真を見たらわかりますが、さびついております。こういうふうに、せっかくの車運車が七両とも放置されてさびついている。それから、車運車のためにつくられた引き込み線も——引き入れ線というのですか、これもさびついてそのままになっている。こういう状況がございます。  これにつきまして、ちょっと時間がありませんのではしょらしていただきますが、現在、車運車の保有台数、それから稼働状況はどうなっておりますか。
  226. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 昭和五十四年度末で九百三十二両でございまして、稼働しておる貨車は約四百四十両でございます。
  227. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いま御説明がございましたが、昭和四十五年に貨車保有数九百二台、五十四年九百三十二台、そして、そのうち私有専用車がないというのですから、これは全部国鉄のものだ、こういうことがわかります。それから、基地数が四十五年には二十九だったのが、いま十七。そして、専用列車本数が昭和四十五年には二十八本だったのが、いま十本。非常に減っている、こういうことなんですね。だから、いわゆる車運車がいまは使われなくなってきた、こういうことをあらわしていると思うのです。  それで、この小金井の駅におきましても、私どもの調査によりますと、車運車のための引き込み線もつくった。それから、車の運び込みが多いのでモータープールも確保するのに非常に苦労した。こういうふうに自動車を運ぶために至れり尽くせりのことを国鉄もおやりになったということがわかっているのですが、どうしてこのように至れり尽くせりに国鉄がおやりになったのに、車運車がさびついたり使用されないで放置されたままになったのでしょうか。その経緯について簡単にお答え願いたいと思います。
  228. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 自動車の生産がどんどんふえてきたわけなんですが、当時、トラックで乗用車が送られておるというような実態がありまして、これを何とか国鉄の方に持ってきたいということで始めたわけなんですが、その後大体四十八年ぐらいまでは、車もふやしましたが、需要もちゃんとついてきておったということで、その後五十年代に入りまして、いろいろな原因はありますが、輸送の不安定性とかあるいは料金の問題もあると思いますが、そういうことでだんだん減ってきまして、ここ数年はいま申し上げましたような、大体四百四、五十台というようなところで推移をしておる。したがいまして、その残ったものにつきましては留置をかけておるというようなことになっております。
  229. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いま御説明がございました。  で、ここの駅に調査に行きましたときも、ここにあった一日平均二十両ないし二十五両最盛時は使われておった車運車を本社の命令で新座に移した、こういうふうなことになっておるそうですが、現地の御説明では、日産のいわゆる車輸送の計画が変わったのでせっかくこんなに設備をつくったのに使われなくなった、こういうふうな話も聞いてきているわけでございます。結局、自動車会社の都合でといいますか、物流対策の変更で国鉄の輸送が振り回された。せっかく国鉄さんは一生懸命に計画を立ててがんばられたのだけれども、物流輸送に振り回された、そういう結果ではないでしょうか。いかがですか。
  230. 高木文雄

    高木説明員 この車運車の問題は、私どもとしては実は大問題でございます。と申しますのは、新しくつくられました車両を鉄道で運んだらいかがでしょうかということでメーカーといろいろお話をして、そうしましょうということで、かなり会社側にも理解をしてもらって、車運車をたくさんつくりましたし、そういう基地をつくったわけでございますが、そして一時は九百台が全部動いておったわけでございます。ところが、その後、はなはだわれわれの方がまずいわけなんでございますけれども、御存じのように、貨物輸送が非常に不安定になりまして、なかなかダイヤのとおり動かないという事態が起こってまいりまして、そこで企業としても非常に負担だというお話だったのですけれども、各企業側で自分でトラックで運ぶということで、どんどんまたトラックで運ぶための設備を進めたわけで、いわば一種の二重投資のようなかっこうになりました。  最近また、私自身も主要メーカーにお願いをして、うちの方も安定輸送ができるようになりましたので、うちで運んでいただきたいということを会社のトップにもお願いをしておるわけでございますけれども、会社としてはすでにトラックをつくりましたし、そしてトラックの運転手さんその他要員もおりますので、いまさらうちの方になかなか戻すことはできないということで、ごく最近はある程度戻していただきましたけれども、先方は先方ですでにそういうシステムができてしまったものですから、なかなか戻すに戻せないというような実態になっております。  そこで、われわれとしましては、まだ走れる車だものですから、車運車のうち休みになっておりますものを部分的に、下の構造はそのまま使うことにしまして、上の構造を壊しまして別のものに使うことにいたしたいということで、いま技術面の研究をさせております。まだちょっといろいろ使い勝手についてどういうふうに転用したらいいかということについて結論を得ておりませんが、まだ十分耐用年数のあるものでございますから、ただつぶしてしまうというわけにもいきませんし、それはもったいないことでありますので、いま全国で休んでおります四百台余りのものについて改造を進めまして、ほかの方に転用いたしたいというふうに考えております。  この問題は、いろいろ物流の変化を来して、また安定輸送が崩れたためにお客さんを放してしまったということで起こっている問題は幾つかございますけれども、その中のかなり典型的な問題でございまして、大変お恥ずかしいわけで、これはせっかくのものでございますから、転活用を図ることにいたしたいというふうに思っております。実は小金井だけでなくて、全国的にかなりの多数の車両がそうした形で休んでおりますので、これを使うことについて考えたい。また、車両基地の方、車の上げおろしをいたしますための車両基地の中にももうすでに不用といいますか、うまく使えないものが出てきておりますので、これについては土地の処分をするか、あるいは別の開発でこの土地を使うか考えたいという状況でございます。  これははなはだぶざまなことでございまして、私どもとしても、私自身も承知しておりますし、そういう取り組みをいたしております。
  231. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいま総裁の方から、ぜひこの車運車の問題については活用を考えたい、こういう御答弁がございまして、私は少し安心をいたしました。いままでなかなかいい御答弁が出ませんでしたが、この問題はいい御答弁が出て、これはやはり国民に大いに言うべきだ、こういう努力もしておられるということは国民に明らかにしたい、こういうふうに思うわけですけれども、しかし、これは車運車のことだけ私がここで追及しているのではなくて、とにかく国鉄がいままでよかれとお思いになって一生懸命に努力をされたことが、大企業の都合で国鉄経営方針が振り回されてくる、こういうことが方々に出ているわけなんですね。大量定型貨物の輸送を国鉄の重要な課題の一つにされているわけなんですけれども、この辺で本当に国鉄の方針というのか、国鉄経営というものをはっきりと打ち立てないことには、またぞろ、こういうふうに車運車がたくさんさびついている、そしてこれが使われない、こういうふうなことでは非常に大きな問題が残るというふうに思うわけでございます。  国鉄首都圏交通体制調査会、こういうふうな場で国鉄の問題についての提言をされているわけです。磯村先生を初め約八名の方が提言をされております。その中でも、国鉄がいままでいわゆる大企業のための物流計画に非常に協力をしてきた、その問題についてはよほど慎重にしないことにはこれが国鉄経営を圧迫することになる、こういうことをここでも指摘されているわけでございます。大企業の物流の経費節減、効率化を最大の目的として政府国鉄の貨物輸送対策がずっと続いていく限り国鉄経営が圧迫をされる。そして国民の貴重な財産がこのように使われずに放置される、こういうふうなことが起こってくると思うのです。  そういう点で、国鉄の本来持っている機能を発揮していただく、これは大切なことでございますけれども、大企業本位の貨物体系づくりというふうなものにだけ国鉄が重点を置くということでは、またこの車運車と同じような運命になりかねない、こういうことを指摘させていただきたい、このように思います。  じゃ、最後にお聞きしたいのですが、大企業の貨物の運び方についての御質問をさせていただきます。  物資別専用列車、専用線発着貨物は、運輸料金がかからず、荷主にとって運賃負担が著しく低くなっていると思うのですが、両端に通運料金がかかる場合と、両端に専用線があって通運料金がかからない場合、東京から大都市までの百キロメートルと三百五十キロ、運賃の差はどれだけになるのでしょうか。それから、区域トラック運賃と通運料金なしの鉄道運賃との比較はどうなっているでしょうか。
  232. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 百キロの場合の集配つきの鉄道輸送の場合には四千三百六十円でございます。それから、三百五十キロの場合には六千二百五十八円で、おのおの十キロの集配がつくということでございます。それから、トラックの場合には、百キロで三千二百八十一円、三百五十キロの場合が六千六百八十四円でございます。
  233. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいまの御回答ですけれども、両端に通運料金がある場合、それから通運料金がない場合、そしてトラックと、この三つなんですけれども
  234. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 百キロメートルの場合の国鉄運賃は千六百四十五円、三百五十キロメートルの場合には三千五百四十三円でございます。
  235. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いずれにいたしましても、通運料金のかからない、両端に専用線を持っている国鉄貨物の運賃が、いわゆる鉄道の特性を発揮できるところでは非常に安上がりだ、こういうことになるわけですが、小回りのきくトラックの便利さが発揮しにくいセメント、石油あるいは飼料等の大量貨物まで、それほど大きな赤字を抱えながらトラック運賃よりもはるかに低い運賃に抑えられているのはどういうことなんでしょうか。
  236. 吉武秀夫

    ○吉武説明員 国鉄の運賃とトラックの運賃を、決められた運賃だけで比べるということはなかなかむずかしいわけであります。鉄道の場合には積みおろし、集配が伴うのが通常であるのと、トラックの場合にはそのままドア・ツー・ドアでいくということ、それから実勢運賃が実際にどうなっておるのかという個々の問題がございまして、その辺を勘案いたしまして競争力が損なわれないようにしながら貨物を誘致してくるというようなことでやっておるわけでございます。ですから、表定の場合の国鉄運賃とトラック運賃そのものだけの比較ではちょっといかないのじゃないかと思います。
  237. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私が申し上げたいのは、セメント、石油、化学薬品、飼料等、こういうふうなものを運ぶ場合には小回りのきくトラックの便利さ、こういうものが発揮しにくい、国鉄を使った方がはるかに大量に運ぶことができる。だから、国鉄は比較的これに利用されやすいわけなんですね。企業国鉄を使いやすい。こういうお客さんは国鉄から逃げないわけなんです、この方がいいから。ところが、これほどの大きな赤字を抱えながら、トラック運賃よりもはるかに低い運賃で抑えられている、こういうふうなところにやはり国鉄経営の大きな問題点がある、私はこのように思うわけなんです。もう少し適正な、無法に高いものを取れと私たちは言っているわけではございません、適正に運賃を取るように、こういうことを申し上げて、もう時間が参りましたので質問を終わりたい、このように思うわけですけれども、最後に一言申し上げたいと思います。  まだまだ質問をしたいことがたくさん残っているのですけれども、二時間という時間の限定がございます。たくさん残っております、それほどこの国鉄再建法案は非常に大きな問題点を抱えています。大臣と同じように私も大阪でございますが、大阪には廃止対象になるローカル線がございません。しかし、私は九州も北海道も方々のローカル線を見てまいりました。近畿の近くで言いますと滋賀県の信楽線がございます。これは昭和十八年に、当時の戦争のために戦争に協力をしろということでレールがはがされた。昭和二十二年になって、戦後国鉄がもう一度信楽線を引くということで地域の方々が山の木を二万数千本も切り、そして、みずから信楽線を引くことに協力をされた。その都度その都度、国の方針がかわるたびに国鉄が引かれたりはがされたり、そのたびに住民が困らされる。国鉄がなくなったら嫁の来手もない、町のイメージダウンにもつながる、町の生活の根本にかかわる。そして、非常に熱心な努力で、一日の乗車密度を上げようと、私たちが信楽線に乗ると町長さんが駅までお迎えに来られるわけです。それほどの努力をしていらっしゃるわけです。本来ならば国鉄が、人がたくさん乗っていただくようにしなければならない努力を、しなくてもいい方の住民が努力をする。この辺に国鉄をいかに皆さん方が考えていらっしゃるか。国鉄の皆さん方を初め運輸省の皆さん方もどのように国鉄を考えているのか。国民の方が、もっともっと国鉄は国民のものだというふうに考えているにもかかわらず、皆さん方御自身の方が、国鉄を国民のものだというふうに考えていないというところに今度の法案は大きな問題があると思います。  まだ質問がたくさんございますけれども、これは後日、三浦議員の質問に移さしていただきます。  どうもありがとうございました。
  238. 小此木彦三郎

    小此木委員長 中馬弘毅君。
  239. 中馬弘毅

    ○中馬委員 もう何回かこの国鉄再建計画というのは出されて、その都度目標は達成されていないわけです。またまたこういうことで出てきているわけでございますけれども、それこそオオカミ少年じゃございませんが、また達成は無理だろうというのが大方の見方になっているのです。だから、今度こそはということでこちらもあえて取り組み、質問もしているわけでございますけれども、いままで目標が達成されなかった原因が何にあるのか、大臣はどのように御認識なさっておりますか。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  240. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 それはいろいろと理由、原因はあると思いまして、それを一々列挙しておりましたら、答弁も長くなってまいりまして、御迷惑かけてはいかぬと思いますので、簡単に申しましたら、やはり一つは、国鉄は公共性であるという理由、もちろん公共性でなければなりませんが、それがために採算を無視した路線の営業もやらざるを得ないし、また建設もしていかなければならない。これは国土の均衡ある発展という使命を持っておるのでございますから、一面から言いましたら当然でございましょうが、一方から見ますと非常に企業性を追求されるようになっておりますし、そういう点におきますところの問題が、ここに悩みとして出てきておることが一つございます。  それからもう一つは、国鉄は、自分自身企業努力のみでは達成できないような条件も一部にございます。これは企業であるならば企業の裁断で、人事にいたしましても資金にいたしましてもできるのでございますが、現在このような赤字状態になってまいりますと、企業自体ではいかんともしがたい制約がある、これが悪循環を生みまして、今日のような事態になってきておるということもございますし、それだけに親方日の丸的な気持ちがあるということも事実でございまして、先ほど御質問の中にございました自動車の輸送につきましても、企業といろいろ相談しておるのでございましょうが、国鉄の運行に対する信頼性を取り返さない限り、やはり荷主の方としても荷を安心して渡さないだろう、ここらに根本的な問題がございまして、国鉄再建の中でやはり一番大事な問題として見なければなりませんのは、国鉄全体が意識転換を図り、それに取り組んでいく、片  一方においては政府政府なりに努力もする、そして地元におきましては、国鉄の責任と行政の責任ということに対し御理解もしていただきたい、こういうことが再建の道ではないかと思います。
  241. 中馬弘毅

    ○中馬委員 確かにいままでいろいろな原因は挙げられております。需要の見込みが違っただとかモータリゼーションだとか、原油、資材の高騰だとか、あるいは先ほどおっしゃいましたような不採算路線の運行義務があるだとか、あるいは運賃の法定制、これは緩和されましたけれども、こういったもろもろのことがあるのですけれども、たとえばいまの公共性の問題にしても、程度の差はあれ、私鉄にしても電力にしてもあるわけで、一番やはり問題なのは管理体制じゃないかと思うのですね。いまもちょっと大臣のお話にもありました本当の企業経営としての管理を、当局が本当に認識してやっているかどうかというところに大きな問題があろうかと思うのです。  今回の再建計画でも、たとえば人員削減につきましては三十五万人体制を六十年度にやる、こう言っているのですね。しかし、それは前のときにも同じことの話を私は聞いているのです。これは五十二年四月の経営改善計画では、三年間に一万五千人削減の計画です、こういうことだったですね。では、いま五十五年ですから、ちょうど三年間たちましたから見てみますと、一万五千人減らすと言っていたのが、三年間に八千四百人しか減っていない。それは生首を切るのではなくて退職者の補充を制限すればそれで十分いけるんだという前の御答弁でしたけれども、それを従来と同じような形でちゃんと新規採用はされておる。だから、計画はそのように一万五千とおっしゃっても、達成はいまのようなことで半分も達成されてないというようなことになるわけですね。ですから、今回の五年間に七万人減らす、ということは三十五万人体制に持っていくということにしても、これが本当に現場から積み上がったものかどうかということを私は疑念を持っているのです。ただ数合わせで、机の上で、三十五万人にしたら何とか採算に乗るだろうということから話が始まっているのじゃなかろうか。それは私は経営じゃないと思うのですね。それぞれの部門におりて、現場長やらあるいは課長に、あなたのところの仕事も見直して、八人使っているのなら七人で何とかやれないか、よし、そこは七人でいきましょう、そうして積み上がったものであるならば実現の可能性が非常に高いと思うのです。しかし、この五年間で七万人減らすというのも、まあことしどの程度減らされているのか知りませんが、そういうような積み上げが果たしてなされているのかどうか、そして、その実効性はどうなのか、ここのところを御答弁をお願いしたいと思います。
  242. 高木文雄

    高木説明員 いま、一万五千人が達成されてないとおっしゃいますけれども、私どもの方のあれでは五十五年度までで一万五千人と言っていたわけでございますので、本年度一万一千人を縮減する作業がどんどん進んでおりますから、その点は、あのときに立てました一万五千人は十分目標を達成したということが言えるとわれわれは考えております。  第二に、これからの問題でございますが、これからの七万五千人というのは、東北上越新幹線開業を含めてでございますので、それを別にしますと八万五千人という非常に大量の数になります。  そこで、その計画につきましては、先ほども他の委員の御質問お答えいたしましたが、一つは、地域別に具体的にどれだけの能率を上げ得るかという作業を各管理局ごとにいま進めておるところでございます。まだ確定はいたしておりません。なお作業を進めておるところでございます。  それから同時に、たとえば保守作業ではどういうふうにやっていくか、あるいはまた運転なり営業なりの面についてはどうやっていくかということについて、いろいろ仕事の仕組みを変えなければならないということで、仕事別にもいまいろいろ詰めておるところでございまして、内部資料でございますけれども、だんだんと作業が深度化が進んでおりますので、いずれこの法律に基づきます経営計画においては明らかにさせていただくつもりでございますが、大変苦しいわけではございますけれども、いまの作業の進行状況では、ほぼ目標を達成し得る見当ができつつあるということでございます。  率直に申しまして、今回の七万五千人とか八万五千人とかいう数字は、運輸省あるいは国会、他の政府のお役所からの要請があって立てた計画というよりは、私ども自身がこういう目標でこれから経営をやろうということで、本社あるいは役員だけでなくて全体として、地方機関も含めましてそういう腹づもりでやっておりますので、まさに最後の再建計画だという意気込みでやっておりますので、そういうペーパープランに終わらないということについては、従来とは違った中身のあるものとしていずれお示しできるという確信を持っておるわけでございます。
  243. 中馬弘毅

    ○中馬委員 御意欲は本当にとうとしとするのですけれども、逆に内部に不安を起こしている面もあるのじゃないかと思うのです。私も三年ほど前に質問もいたしましたからきょうは細かい事例までは挙げませんけれども、内部管理体制の中で職員のやる気というのがやはり経営にとっては非常に大事なのですね。それが国鉄では、御存じのように、職場によっては昼食は十一時半くらいからもう始まるだとか、あるいは時間内に入浴をするだとか、あるいは空超勤の問題やポカ休の問題なんかも三年前と大して変わってないことはいろんな国鉄関係の方々に聞いても現実なんですから、そしてその方々が、またそれを管理者が注意をしないといったことで、幾ら一生懸命まじめに働いても一緒じゃないかということになってしまうのですね。このような内部管理体制をしっかりしないと、幾らこのように一つ計画をおつくりになっても、それは国鉄従業員がその気にならないわけですから達成はとうてい無理だと思うわけでもございます。  内部管理体制について今後はどのようにお取り組みになるか、ひとつお願いしたいと思います。
  244. 高木文雄

    高木説明員 ただいまどうも内部の体制が改善されていないという御指摘でございますけれども、何分全国にいろんな現場がございます。そして、現場の管理者の指導力にもいろいろ差異がございます。したがって、全国的に見て一斉に体制が非常にそろってきたということではございませんけれども、しかし、ここ数年の間にかなり多くの職場において改善を見たというふうに私は考えております。たとえば、先ほど昼休みの食事のお話に触れた御発言がございましたけれども、五十二年、五十三年、五十四年というふうに比べてみますと、全国で保守の職場でいたしましたもろもろの作業の量はかなり顕著に逐年改善されてきております。ただ、非常に残念なことには、一部の職場においてはまだ十分ぴしっとした職場になっていないということは事実でございまして、これを改善するにはどうしたらいいかということにつきましては、まずもって重要なことは、いわゆる現場長を初めとした現場管理者の足腰がしっかりしてくることが大事なことでございます。現状ではそれが立て直ってきつつあるところと、まだもう一つ進まないところとあるわけでございます。立て直ってきたのはそれなりにやはり相当いろいろ努力をし、現場管理者に元気が出ますように後ろに控えております管理局が十分の管理監督をやった職場については立て直りつつあるわけでございまして、そうした経験からいたしますと、現場長を初めとした現場管理者の足腰をきちっと整えていくような教育を進めてまいりますことと、もう一つは、職員全体がいまの国鉄経営状態をよく理解をする、承知をする、自分たち自身がしっかりしなければだめだという空気をつくっていくということではないかということで、そういう姿勢で取り組んでいるわけでございまして、今回のこの計画というものはかなり末端にまで浸透し始めておりますので、御心配いただくのはありがたいわけでございますが、何といいますか、決して計画倒れに終わるようななまはんかのものではないということを申し上げたいと存じます。
  245. 中馬弘毅

    ○中馬委員 そうすると、この計画国鉄の末端の従業員の方々まで認識して取り組まないとだめだと思うのですね。いま下の方に浸透しておるとおっしゃっておりますけれども、逆に、聞いてみますと、これが不安を起こしている面もあるのです。三十五万人体制になると自分たちのこの職場はなくなってしまうのじゃなかろうかとか、あるいは年金がもうもらえなくなるのじゃなかろうかとか、そういった正しい情報ではなくて、一つのおぼろげながらだけの情報ということでかえって不安を起こしている面がある。そういうことではなくて、本当に下から積み上げた計画になるならば、自分のところでは一人減るけれども、われわれががんばれば国鉄は立ち直るのだというやる気になってくるわけですから、末端までのこの計画に対する取り組みあるいは情報の正しい伝達といったことをお願いしたいと思っております。  少し法案の中身の方に入らしていただきますが、特定地方交通線の選び方なんですね。バス転換が困難か否かといったようなことはかなり客観的な判断にもなろうかと思うのです。乗客数の密度が幾らだというのは数字で出てきますけれども、バス転換が困難か否かといったようなことはかなり人為的な、恣意的な判断が場合によっては入ってくるわけですね。ここをやるのであればやはり客観的に何らかの基準ではっきりさせた方がいいでしょうし、恣意的、場合によっては政治的にならぬように注意していただきたいと思うのですが、そのところはいかがですか。
  246. 山地進

    山地政府委員 従来からこの場で申し上げておりますのは三つございまして、最混雑時に千人以上の人が動く、これをバスに入れますと非常に混雑するということで、そういうものについては、片道千人ということはバス転換がかなりむずかしいかな、それからもう一つは、代替輸送道路が未整備である、つまりバスにかえようと思っても道路がない、この問題がございます。それからもう一つは、積雪で道路が十日以上とまるというようなものについてはやはりバスに転換することは困難だということで、先生のおっしゃるように基準というものをできるだけ厳密にして、人為的な操作ができないような形で運用していきたい、かように考えております。
  247. 中馬弘毅

    ○中馬委員 この判断は、どこが直接にはやる形になるわけですか。
  248. 山地進

    山地政府委員 いまの法律案では基準が、政令ができますと、その政令に基づきまして国鉄が、この線はこれに該当するといって運輸大臣のところへ申請に来るわけでございます。承認を求めに来るわけです。と同時に、それを知事に通告いたしますから、知事の方からそれはちょっと判断がおかしいのじゃないかという御意見があれば運輸大臣の方にお申し出があるということで、この運用につきましては客観的な判断が下されるものと私どもは考えております。
  249. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それから、対策協議会の構成メンバーのうち、国の関係行政機関というのは具体的にはどこの省庁を指しますか。
  250. 山地進

    山地政府委員 国の行政機関といたしましては陸運局、それから地方建設局、それから管区警察局及び北海道では北海道開発局、それから関係地方行政機関としては、その特定地方交通線の駅が所在する都道府県及び市町村等の地方公共団体、それから関係都道府県警察並びに国鉄、こういうふうなことになるかと思います。
  251. 中馬弘毅

    ○中馬委員 この協議会が開かれる前に、先ほど言いました特定地方交通線の選定を国鉄がやるわけですね。そうしますと、その後で疑義が出てきた場合はどうなるのですか。
  252. 山地進

    山地政府委員 特定地方交通線自体の選定はまずは国鉄に、自分で運行している線でございますからその判断ということは非常にしやすいわけでございます。ただ、その判断が政令の基準と合っていたかどうかということについては、先ほど申し上げたとおり、地方公共団体が自分のところの線についてその判断は違うのじゃないか、恐らくは特定地方交通線にならないのじゃないかという目でまずはごらんになるわけでございます。これはかなり厳しい目だと思います。それから運輸大臣の承認、これだけの三つのスクリーンがあるので、その判断が間違えることはないというふうに私どもは考えているわけでございます。
  253. 中馬弘毅

    ○中馬委員 だから、その判断のところで相当に国の関係行政機関や地方自治体がいろいろな疑義をつけてきた場合に、特定地方交通線というのがだんだん数が減ってくるのじゃなかろうかと思うのですが、どうですか。
  254. 山地進

    山地政府委員 政令の基準の書き方にもちろんよるわけでございますけれども、いまのような三つのものを基本にいたしましてつくるわけでございますので、その適用について恣意的な運営ができるということは私どもとしては考えられないというふうに思います。
  255. 中馬弘毅

    ○中馬委員 だから、協議と指定が結局は少し逆のような形になりはしないかという気がするんですね。先に協議をきちっと決めた方が実際は実効があるのじゃなかろうかという気がしますし、国鉄が決める段階は国鉄しか判断するあれはないわけですから、国鉄は、こう言っちゃおかしいですけれども、ある程度政治力や他省庁には弱いですから、それがおりてしまった場合に、協議会自体が開かれるまでにかなり特定地方交通線が消えてしまう可能性があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  256. 山地進

    山地政府委員 いまの御質問は、協議会のメンバーの人たちの判断と、それから国鉄、知事、運輸大臣の判断に食い違いが起こる場合があるかもしれない、こういうお話だと思うのでございますけれども、知事がこれを考える場合というのは地元の関係市町村の意見というのを当然くみ上げて意見をお申し出いただけると思うのでございます。といいますのは、協議会のメンバーで一番この問題に関心が深い方々の意見というのは知事の意見に集約されてくると思いますので、協議会の場の選定についての御判断、協議会というのは選定された後の対策を協議するためにつくってあるわけでございますけれども、その方々がもしこの選定はおかしいのじゃないかというような御判断を持ち得るとすれば、恐らくそれは知事の意見としてすでに出されているはずだ、かように私どもは理解するわけでございます。
  257. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ですから、協議会は一応公表された形で、世間の目の前でやる形になるわけですね。したがって、そこではもちろん反対の意見も出てきましょうし、いや、やはり廃止すべきだという意見も出てこよう。しかし、それをその場で、全体をにらんで国鉄が最終的に、いや、これはどうしても廃止させていただきますと言っても納得される面があろうかと思うのですね。しかし、いま言ったような形で先に国鉄が特定地方交通線を選定するというときにはかなり裏でいろいろな圧力がかかったりしてきて、結局は協議会に持っていくまでにつぶれてしまいはしないかという気がするのですが、いかがですか。
  258. 山地進

    山地政府委員 先ほど来大臣からも御答弁申し上げたとおり、政令自体については公正妥当なもの、客観的なものをつくっていく。それからまた、別の御質問お答えいたしましたように、政治的な配慮というようなことについては配慮しないように十分考えてやるという御答弁がございましたので、私どもとしてもそういうことで厳正な基準づくり、厳正な運用、こういうふうなことで特定地方交通線の選定をやりたい、かように考えております。
  259. 中馬弘毅

    ○中馬委員 これはそういうことでやるのであれば、そのようにはっきりと妥当な線で勇気を持ってやっていただきたいという督励の意味で言っているのですから、そう御理解いただきたいのです。  少し具体的にその状況を追ってやっていこうと思うのですけれども、対策協議会は個々に知事が反対だとか賛成だとかを申し出たりするのじゃなくてみんなでやるわけですから、ただ議論だけじゃなくて調査研究的な意味も含めていろいろな話が出てくると思うのですね。そこで、協議会の後やはりこれは存続した方がいいじゃないかというような結論になった場合に、その路線を特定地方交通線から除外することがあるのですか。
  260. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 この法の精神から言いまして、趣旨から申しまして、一応国鉄は冷厳な基準でもって地方線並びに特定線というものを選定するわけでございますから、それを協議会の意見いかんによってその指定から取り消したりあるいはまたそれに追加するとかいうような、できるだけそういう判断基準を入れないように運営しなければならぬ、こういう趣旨で法案は組まれております。
  261. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ですから、先ほど言っているような意味で、できるだけしないというのじゃなくて、これは絶対しないということをはっきりしなかったらおかしなことになりますよ。
  262. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 もちろんそのとおりでございます。
  263. 中馬弘毅

    ○中馬委員 今度は数字の問題になりますけれども、特定指定以後にその前提の数字が違ってくる場合があるわけですね。輸送密度が向上したりあるいは収支が改善したりということも全くないとは言えないと思うのです。その協議をする中で、いやわれわれ自治体もがんばってみんな国鉄に乗るように運動しようじゃないかといったような話になってきて、実際にまたその数字自体も改善されてきた、こういった場合にはどうされますか。解除されますか。
  264. 山地進

    山地政府委員 これはどういう基準で特定地方交通線を選ぶかという基準と関係があろうかと思うわけでございます。四千人という特定地方交通線を決めるのに、輸送密度が四千人以下という四千人の数字が違ってくる場合の話になるわけでございますが、四千人という数字をどうやって選ぶのか、いつのときをつかまえてやるのかということが一つ問題があるわけでございまして、これについては過去三年の平均でやるとかいろいろな考え方を私どもでも考えております。  その際に、以前に御答弁申し上げましたとおり、その数字が将来どういうふうに変わるかということについて、非常に明確な御計画があってふえる場合には、その三千人が五千人になるかもしれないというようなものについては、事前に私どもとしてもその数字に入れて考えたい。当然知事から、あの線は特定地方交通線へ選定されているけれどもこういう計画があって近くそういうものができれば輸送密度がふえる、こういうような御判断もいただけるかと思うわけでございまして、したがいまして特定地方交通線の選定に当たっては将来も見越したものということで私どもとしては選定をいたすわけでございます。したがって、近い将来、私どもの考えている数字というのが大幅に変わるということはないとは思うのでございますけれども、これは法律の施行後の実情に合わせてどういうふうに見直しをしたらいいかということは検討しなければならないかもしれませんが、現在は見直しをすぐやるということは考えておりません。
  265. 中馬弘毅

    ○中馬委員 これはまた同様ですけれども、逆の意味で指定されていない地方交通線がその後こういったようなあれをずっと推し進めている中で輸送密度が低下してきた。そういった場合に新たに追加指定はするわけですか。
  266. 山地進

    山地政府委員 これはいま申し上げましたとおり、将来の需要見込みというものももちろんあるわけでございますけれども一つには、まずどういう基準で選ぶか。過去三年の平均という、言ってみればそういう特定地方交通線というものをある程度固定的に考えて運用していきたい、かように考えておりますので、追加ということについても現在は考えておりません。
  267. 中馬弘毅

    ○中馬委員 そのことをはっきりさせておいた方が、これははっきり申しまして、国鉄のそういう本当の枝葉末端のところを切っていこうという案でございますから、そこがあいまいになると結局また計画したものが実現できなかったということになるので、それならそれで方針をはっきりしてやっていただきたいと思うのです。私たち国鉄というのは、これは党の一つの方針でもございますけれども、民営の方がいいんじゃないか、民間の活力、それに任せた方がいいんじゃないかということを主張しているものでもございますので、その一つのきっかけになると思って、これに対して私たちは積極的にやるべしという態度なんですけれども、それをあいまいな形でやられたら何にもなりませんし、民間にどれを渡していいのか、民間もどれを引き受けていいのか、第三セクターをつくっていいのかというふうなことも迷うわけでございますから、そこははっきりさせておいていただきたいと思うわけでございます。
  268. 塩川正十郎

    塩川国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、先ほど山地局長も言っておりますように、基準というものを一回決めたらそれは完全に守っていきたい。しかしながら、いろいろな将来の発展を見込めるとか、あるいはいろいろな条件の変更が起こってくる、また、あなた自身おっしゃいましたように、あるいは減ってくるかもわからぬ。基準を適用する場合にそれを考慮に入れるということになってまいりましたら、そこには非常な不公平も起こってくる。ですから、もし、そういうものが真にやむを得ず、現に客観的な条件がきちっとこれは整っておるということ以外はできるものではございません。そういうことを明確にしないと信頼の問題にかかわるし、この法の根本が崩れてしまうということで非常に心配をいたしておりますが、仰せのとおり運用すべきだと思っております。
  269. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いま大臣がおっしゃいましたように、むしろそういう形で地域が挙げて収支をよくしていこうじゃないかといった動きにでもなってくれば、それこそ第三セクターが積極的に取り組めるわけですし、また引き受けようとする民鉄の業者にしたところで引き受けやすくなるわけですから、それは厳正にやっていただきたいと思います。  その民営移管のこともここに書いてあるわけですが、地方交通線の貸し付けまたは譲渡についてという中で、無償でというのと無償でないと読めるのとが二つあるのですね。五十四年一月の地方交通線問題小委員会の答申では「無償で譲渡し、又は貸し付け」となっておりますけれども、法律案では「無償」というのが抜けておるのですが、これはどう解釈したらいいのですか。
  270. 山地進

    山地政府委員 譲渡という言葉は有償、無償を含む言葉だろうと思うわけでございますが、いかなるものを無償でするかということについては政令で定めたい、特定地方交通線については無償で譲渡するというふうに決めてまいりたい、かように考えております。
  271. 中馬弘毅

    ○中馬委員 これは特定だけじゃなくて、地方交通線全般について、引き受けるものがあれば無償でやるということですか。
  272. 山地進

    山地政府委員 そこが考え方の問題になるわけでございまして、四千人以上のところというのは商売として成立する可能性があるわけでございますので、私どもは特定地方交通線は無償で地元の方でお引き受けいただくならば第三セクターで非常にうまくやっていただきたい。そのためには無償でします。ただし、四千人以上というのはバスよりも鉄道の方がコストが安い。それから、運営方法によっては企業としてやり得る可能性があるという意味から無償ということでは考えないということで、先ほど申しましたように、特定地方交通線が無償というふうに政令では決めていきたい、かように考えております。
  273. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ということは、一応四千人の線が無償か有償かの分かれ目になると理解していいわけですか。  それから、貸し付けまたは譲渡の範囲ですけれども、具体的に、もちろん政令ではっきり決められるのでしょうけれども、一応いまのお考えではどこまでを指すのか。線路はもちろんでしょうけれども線路敷の路肩まで、あるいは駅舎はもちろんでしょうけれどもその駅に隣接した用地はどうなの趣あるいは資材置き場はどうなのか、あるいは従業員の宿舎はどうなのか、こういったところはどうお考えですか。
  274. 山地進

    山地政府委員 譲渡の対象となる施設といたしましては、線路、橋梁、トンネル、駅舎、ホーム、通信機器等の、その営業線を運営する上に直接必要となる施設というものを予定しております。それに従って、宿舎とかいろいろな用地があるものについては無償の対象とはしないということでございます。
  275. 中馬弘毅

    ○中馬委員 国鉄はいままでは余り積極的でなかったのですけれども、鉄道線路の駅の近くというのは一等地なんです。ですから、ある程度事業家であれば、田舎であれば駅の前に小さなスーパーマーケットでもつくって、それも付帯事業にするかもしれませんし、そういったことで一つの事業経営のメリットが出てくると思うのです。その辺のことを考えた場合には、ただ運輸事業にしか使えないところしか渡さないというのであればまたそういうメリットも出てこないのじゃないですか。
  276. 山地進

    山地政府委員 いまの私の方の答弁は無償譲渡の範囲ということでございまして、もちろんその関連する土地を第三セクターなり何なりが有効に利用されるという意味でお買い上げいただくという場合には有償の譲渡ということを考えて、言ってみれば不用資産の処分ということで非常にありがたい方向で考えていきたいと思います。
  277. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それから、それと関連したことなんですが、譲渡された場合のことなんですが、地方税法の改正もここに載っておりまして、税の減免措置がとられることになっております。これはそこではどう読んでも無償譲渡の場合にだけ適用されるようになるのですけれども、これはおかしいんじゃないですか。
  278. 山地進

    山地政府委員 私どもの考えとしても、無償譲渡の部分について、言ってみればその部分経営をりっぱにやっていただきたいとお願いするわけでございますので、無償譲渡の分については税法上の特例を考える、あと有償のものについては、これは普通の企業であれば有効に利用できる土地でございましたり何かでございますのでその対象にしない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  279. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ということは、先ほどの初めの方に戻るのですけれども、地方交通線を極力第三セクターなり民間の方にというお考えじゃないんですか。無償の、あの本当にバスに転換しようという点だけの話なんですか、国鉄が放そうとしておられるのは。
  280. 山地進

    山地政府委員 先ほどから申し上げておるように、特定地方交通線だけを無償譲渡の対象にしているということでございまして、四千人以上のところは企業としても有償で受けられても営業ができるであろうから、もちろんその譲り受けを希望される場合にはお譲りするということは一つの考え方だと思いますけれども、その場合は有償でいきたい、かように考えておるわけでございます。
  281. 中馬弘毅

    ○中馬委員 有償、無償の話にこだわるわけじゃないんですけれども、その考え方なんですね。ですから、もう今後は国鉄はいま言った幹線だけに特化して、地方交通線はできることならばそういう奇特な人も含めて民間なり第三セクターに任して、そちらで一つの交通体系をつくっていきたいというお考えじゃないんですか。
  282. 山地進

    山地政府委員 この法律の八条に書いてございますように、八千人から四千人というところは収支相償わないという意味からは、国鉄経営から離れてほかでやっていただければ、国鉄経営上にはプラスになるということはあるわけでございます。しかし、国鉄から離れるというところまでは非常に結構なんだけれども、では離れるときに有償か無償かということについては、やはり私どもとしては四千人を限界にして、差があってもいいんじゃないだろうか。いまの法律では、国鉄等の線路を売ることが禁止されているわけでございますけれども、私どもとしては、地方交通線は譲ってもいいのじゃないか、そこまでは先生のお考えと一致しているわけでございます。ただ違うのは、有償か無償か、どうせ譲っちゃった方がいいんだったら、無償の方がいいじゃないかと先生お考えになるわけでございますけれども、私どもの方は、四千人以上のところは有償、四千人以下は無償、こういうふうにやった方がいいだろう、こういうふうに考えているわけでございます。
  283. 中馬弘毅

    ○中馬委員 無償がいいと言っているのではなくて、もちろん有償で引受手があれば有償でやっていただいてもいいのですね。しかし、地方税の減免ということになってくると、かなり要素は一緒だと思うのです、引き受けた第三セクターなり民間業者というのは。当分の間はいろいろな恩典措置がついているわけですから、それは同じじゃなかろうか。そこの地方税法のところで、無償のところだけに何か恩典をさらにつける必要があるのかどうか。
  284. 山地進

    山地政府委員 地方税法の特典を考える場合に、無償にする方が、ある種の政策を遂行するのに有効である、インセンティブがつくというような意味からの問題と、それから相互の比較といいますか、税法の適用上、ほかから見て公平か不公平かというような問題と二つあろうかと思うのでございますが、まあこれは税務当局ともいろいろ御相談をして決めたわけでございますが、そのときの私どもの判断といたしましては、やはり四千人以上のものについてはほかの企業、横並びの企業と申しますか、そういうものの関係と、それからいまの国鉄再建のために譲るというそのインセンティブと両方考えた場合に、やはり四千人というものの上と下とでは差がついてもやむを得ないんじゃないだろうかということで、こういったような法律になっておるわけでございます。
  285. 中馬弘毅

    ○中馬委員 では、次に移りますが、運賃、料金の制度についてでございます。  地方交通線に係る特別運賃制度については、先ほど総裁の方も大体五割ぐらいというようなことをおっしゃっておりましたが、その時期の問題なんです。これはいわゆる特定地方交通線が廃止になる、バスにかわっていく、そのころからほかの交通線についても値段を上げていくのか、あるいはこの法律が公布されたその日からそのことの検討に入って実施に移していくのか。時期の問題はいかがですか。
  286. 高木文雄

    高木説明員 地方交通線の赤字をどういうふうにするかということについて、幾つかのことを考えているわけでございますが、一つは、やはり特別地交線のように、非常にお客さんが少ない、エネルギー的に見てもバスの方が有効であるというところについては、協議の上ではございますけれども、原則としてバスに切りかえさせていただくというのが一つでございます。  それから、残される線区につきましては、一つは、やはり徹底的に私ども企業経営合理化を図りまして、現在でもかなり無人駅とか委託駅とかいうことで経費を節することに努めておりますけれども、まだ一段と工夫をするならば、経費を落とせる部分もあると思いますので、この経費を減らすためにいろいろ工夫をすることが一つでございます。  しかし、それでもなお地交線の赤字というものは残念ながらまだ相当残るわけでございますので、やはり残る地域について、いまの全国均一運賃と同じでいいかどうかということになりますと、一方においてやめなければならないところもあるわけでございますから、そしてコストとの開きが大変大きいわけでございますから、そういう地域については運賃を特別にさしていただくということにしてはどうかというのがこの考え方でございます。  それで、先日私が御答弁いたしましたことと関連して、ただいまも五割というお話がございましたけれども、この特別運賃をどの程度の水準にいたしたらいいのかということについてはいろいろ議論があるわけでございまして、現在の中小の私鉄の運賃水準——中小の私鉄というのは主として地方にあるわけでございますが、中小私鉄の運賃水準と私どもの運賃水準と比べてみますと、平均で議論しました場合に、と申しますのは、私どもの方は統一運賃ですけれども、中小私鉄というのは地域ごと、線区ごとに違うわけでございますが、それの平均で見ますと、倍ちょっと開いております。中小の私鉄は、かなりいろいろ経営合理化に努められて、それでもなおかつそういう状態でございますので、それより私の方が高いというのではおかしいわけでございますから、アッパーリミットは倍というくらいのところが一つの基準かなと思うわけですけれども、そう急に一遍にできないわけでございますので、先般来申しておりますように、いま見通し得る期間内におきましては、地区によっても違いましょうけれども、五割増しくらいのところかなという感じで、いま漠と考えておるところでございます。  そこで、それをいつの時期からにするのかという問題については、これはなかなか微妙といいますか、むずかしい問題でございまして、いまこの法律をお許しいただきますならば、いろいろ各方面に御迷惑をかげながら、特別地交線問題もあるわけでございますから、そういうこととのバランスから言えば、あるいは早い時期から上げて、しかし上げ幅はそう大きくしない、一遍に上げるというわけではない、経過的に上げていくということがよろしいのではないかというふうな考え方もあります。  それから、いろいろと地交線問題等があるほかに、運賃問題としても非常にむずかしい問題があります。たとえば、先般来お話がございますように、都市部におきましては私鉄より私の方が高いということの関係もありまして、その調整を何か考えられないのかという御指摘もあります。また、主として通勤でございますけれども、定期の割引率を修正せざるを得ないんではないかという問題もあります。  そうしたこととのかみ合わせもあり、かつ他の運賃、たとえば現在で申しますと、概算要求では、来年度二千百億ということでお願いいたしておりますが、それが予算の過程あるいはその他の過程を通じてどういうことになるかわかりませんけれども、他のフィールドの運賃水準をどうするかということとも関連してくるわけでございまして、現在の段階で、この法律が通りました上で明年からというところまでは、まだなかなかむずかしいのではないか。その辺は、もう少しよく研究してみなければむずかしい。という意味は、明年からはできないとか、やるべきではないとかいう意味ではなくて、いまここで明年からやらしていただきますと申し上げるのには、少しわれわれの方の勉強が不十分である。内部ではいろいろ研究しております。内部ではいろいろ研究しておりますが、これもなかなか、長年続いてまいりました全国統一運賃というものについて、二段階運賃なり三段階運賃にするということは、運賃制度論としては非常に抜本的といいますか、革命的といいますか、そういう変化でございますので、いろんな角度からの研究をいたさせていただきたいと思いますので、果たしてそういう早い時期までに研究を完了するかどうかは現在のところでははっきり申し上げられないということでございます。
  287. 中馬弘毅

    ○中馬委員 国鉄運賃法は、この間のあれで法定制を緩和したわけですけれども、それは「当分の間」ということになっておって、運輸大臣の認可を受けて国鉄が定める賃率または運賃による、こうなっておるわけですが、この「当分の間」、これは繰越欠損金が五十四年度末の特定債務未償還元金の合計額を超えない範囲ということなのですが、今回の再建計画ではその「当分の間」という時期をいっと予定されておりますか。
  288. 山地進

    山地政府委員 今回の法律改正におきましては、追加された繰越欠損、たな上げした額がなくなるまでというふうに書いてあるわけでございます。
  289. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それが何年後かということを言っているのです。経営改善されるわけでしょう。それが「当分の間」、そこの……(「二十一世紀だ」と呼ぶ者あり)
  290. 山地進

    山地政府委員 これはきょう午前中からいろいろ御議論いただいておりますように、可及的速やかに収支均衡を図るということでこの繰越欠損の解消にも努めなければならないわけでございますが、収支均衡ということ自体大変むずかしいことでございますので、この繰越欠損がなくなるということは、できるだけ早いことが望ましいわけでございますが、いつごろになるかということについては、私どもとしてはできるだけ早く努力するという以外にお答えできないかと思います。
  291. 中馬弘毅

    ○中馬委員 その言を信じて、再建見通しが立った時点では特別運賃を廃止してまた運賃を法定制に戻すのですか。
  292. 山地進

    山地政府委員 法律のいまの考え方は、累積欠損が、いまのたな上げの額が解消した場合にはもとに戻る、本則に戻るというふうなことであの法律を改正していただいて、私どもとしては現在その改正後の法律のもとで運賃の改正ということをやっているわけでございますが、その規定どおりに運用されるものだろうと思います。
  293. 中馬弘毅

    ○中馬委員 非常におかしなことになるわけですね。「当分の間」ということで収支均衡した時点にまたもとの——せっかくこうしていろいろ配慮しながら、線区別の運賃のことを考えたりあるいは特別運賃を考えておる、そして、それが改善されたらまたもとのもくあみの運賃法定制に戻るというのがいまの法律のたてまえになっておるのですね。だから、こんなごまかしのようなことじゃなくて、この際、国鉄運賃法を新たに改正したらどうですか。
  294. 山地進

    山地政府委員 国鉄収支が改善するということが現在の私どもの最大限の目標でございまして、それが達成した暁にどういうふうなことを考えたらいいかというのは私どもとしては大変楽しい計画でございますが、やはりその時点になってから考えた方がいい問題であろうかと思っております。
  295. 中馬弘毅

    ○中馬委員 とにかく「当分の間」という事態が、先ほど出てましたように、二十一世紀か二十二世紀かわからないようなときのことでもございますから、こういう法律の一つのスタイルで言いましても、「当分の間」でこういうことを続けていくのは、少しおかしいのじゃないかと思うのです。そして、むしろはっきりと国鉄運賃法そのものを一遍抜本的に見直して改めたらどうかということなんです。そのときに、先ほどから問題になっております遠距離逓減制の問題なんかも含めて見直した方がいいのじゃないか。これは私の私見にも及びますが、そう思うのです。そして、むしろ遠距離逓増制の方がいまの時代では妥当ではないかと思うのです。その方が理屈的にも合うのではなかろうか。近距離の通勤客あるいは買い物客が気軽に乗れる、それは安い運賃で、そして、ある程度長期のことも含めての長い旅行といったようなときには高くてしかるべきだと思うのです。そして逆に言えば、遠くの方は飛行機と競合の問題があるからという話も前にございましたけれども、いまはもう遠距離を飛行機と国鉄が競合する、競争するような時代じゃないですね。三分の上の値段にしたところで、ここから北海道まで汽車に乗る人はまあないですね。そういったことからするならば、遠距離逓減制というあの一つ国鉄運賃法の精神自体がもう時代おくれになっているわけですから、むしろそれを逓増制といったような形に改めて、むしろ遠距離はゆっくりしたデラックスなムードでのサロンカーでも走らして少し高い値段でも取るといった方が、今度の幹線を主体とした国鉄経営にも大いに寄与するのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  296. 高木文雄

    高木説明員 この遠距離逓減というのは、あらゆる交通機関の場合に多く採用されておる制度ではないかと思います。それはやはり発着にかなりコストがかかるということもあって、そのコストとの関係からもそういう体系ができてきているのではないかと思うわけでございます。いまおっしゃる特別な長距離のものについてデラックスな車を走らすとかなんとかいうことでお考えであるとしますならば、それはやはりいまのシステムでは料金の方の問題ではないか。現在、寝台料金という制度がございましたり、あるいは新幹線特別料金というような制度がございますから、どちらかと言えば料金の立て方によって考えるべきではないかなという感じがいたします。  反面、いまお触れになっております点は買い物客というようなお話がございましたが、近距離において私鉄と比べて私どもの方が高い地域がたくさんございますから、それを何か考えたらどうかというお気持ちも含まっておるかと思いますが、その点につきましては、これはなかなかむずかしいのですけれども、都市における私鉄と国鉄の料金のあり方をどうしたらいいのかということは別途研究しなければならないことではございますけれども、そのことのために運賃システムを遠距離逓増制にするということは、私どもの頭の中では大変なじみにくい考え方だなという感じで承った次第でございます。
  297. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いや、なじみにくいとおっしゃいますけれども、現実にそういう形にもう時代がなってきているのじゃないですか。コストが遠距離の方が安くてしかるべきだという話、これは国鉄の切符がなかなかとれなくて、どの列車も走らせれば全部満員になっていっておった場合には分母が一緒ですからいいのですけれども、現在のように遠距離、ここから北海道まであるいは鹿児島まで乗る方は非常に少ないのですね。がらがらで走っているわけです。そうしますと、分母が少ないわけですから、線路敷だとかそういう固定費を割ることの分母の方の人数が少ないわけですから、これは高くなるのがあたりまえです。理論的におかしくないです。
  298. 高木文雄

    高木説明員 実はその問題は大変複雑でございます。日本の場合には、東海道ベルトで申しますと、当然のこととして真ん中の部分がお客様の層が厚い。北の方、北海道方あるいは九州方ということになると、どうしてもお客の層が薄くなるわけでございます。そうした場合に、北海道方あるいは九州方の場合にはお客さんの数が少ないわけだから、ある意味から言えばコストが高くなっておるじゃないか。分母が小さくなるからコストがふえるじゃないかということは御指摘のとおりだと思うのです。ですから、そういう意味コストが上がっているならそこは高くしたらどうかということがあるかもしれませんが、それはまた日本のこういう特殊な事情から出てきておるわけでございまして、それを賃率の立て方に織り込んで、そして逓増制でやるというのはなかなかむずかしいのではないか。たとえば太平洋ベルトに沿います新幹線ができます盛岡から博多までの間についてどういう運賃体系にするかというようなことを考えました場合に、そういうふうにかなり全体としてお客さんの多い地区についても距離が延びれば高くなるというシステムは、どうもこれはなじみにくいのじゃないかという感じがいたします。
  299. 中馬弘毅

    ○中馬委員 そういったことも含めて御検討いただくとして、次の問題に移ります。  国鉄の土地の利用と絡んだ問題なのですが、これだけの累積赤字を抱えて、バランスシート上も非常に大変な状況なんですけれども、しかし、それがかえって国鉄の管理者やあるいは全般の従業員にまでも、何か暗いイメージを与えてしまっているのじゃなかろうか、むしろこの際すっきりさせて再出発した方がいいのじゃなかろうかという意味質問するわけですが、国鉄の土地、これが再評価されたのは三十年でしたけれども、この資料をもらいますと、現在の土地、建仮も含めて、これはどうですか、六億七千三百九十万平米ですか、そして、それが簿価では六千三百七十六億にしかなっていないわけですね。これを平均しますと千円以下というようなことになるのですけれども、これの再評価をすればどの程度の再評価益が出てまいりますか。
  300. 半谷哲夫

    ○半谷説明員 ただいま先生がおっしゃられました数字は現在の簿価でございますが、実はこの再評価の仕方が非常にむずかしくなります。といいますのは、土地を手に入れた時期がずいぶん違っておりまして、簡単に現在時点の価格に直すということができませんので、現在やっておりません。したがいまして、現在私どもの方でつかんでおりますのは、建設仮勘定などに上っております価格は、購入した時点の価格でございますけれども、それ以前の再評価時点、これはたしか三十年ころだったと思いますが、その原簿価格そのままにしている状況でございます。
  301. 中馬弘毅

    ○中馬委員 これもつかんでおられなければ仕方ないですが、これは普通の事業経営者であれば自分のところの含み資産が幾らあるかというのはちゃんとつかんでおるのが当然なんですよ。  それで、たとえばの話で、汐留の駅、梅田の駅のあの貨物ヤードの方ですね、これはいろいろな意味で今後その用途をなくして、都市再開発の一つに利用していくという話は、大体総裁もそのようなことをおっしゃっておりますから、一応それを前提にして言うならば、あそこの汐留の駅では、これは五万八千坪で、簿価が坪いま一万円ぐらいになっていますね。それから、梅田駅が八万五千坪ございますが、これも坪八千五百円ぐらいでございます。そうすると、これこそいまにすれば百倍にしたって売れるようなことでございますから、百倍以上ですか、あの辺の土地は百万円では買えませんね。そういうようなことで再評価するならば、相当の益が出てくると思うのです。その再評価益で繰越欠損をこの際消して、バランスシート上、これは全く帳簿上だけの問題ですけれども、これはすっきりさせて再出発されたらどうですか。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕
  302. 加賀山朝雄

    ○加賀山説明員 先生御指摘の、その再評価益で帳簿上の繰越欠損を消せばということ、確かに今回の債務たな上げに際しましても、過去の再評価積立金を一部取り崩しましてそういうことをやりまして、残りをたな上げにしていただいたという形になっております。ただ、今後新しいものの再評価をいたしました段階で再評価をいたしますと、確かに帳簿上はよくなりますが、一方、減価償却費がふえ、あるいは市町村納付金なり固定資産税がふえるという形で、逆に赤字がふえていくという要素もはらんでまいりますので、その辺どう扱うかということは大変むずかしい問題であります。  現在の段階では、再評価の問題は技術的にも大変むずかしい問題もございますので、検討していないという実情でございます。
  303. 中馬弘毅

    ○中馬委員 土地だけですから、別に減価償却がふえたり減ったりはしないはずなのです。そのことも含めて、さらに一歩を進めて言うならば、経営上の資産保有の必要性の薄い土地だとか、あるいは先ほどの梅田や汐留のように、近い将来鉄道事業の用に供する必要がなくなるといったような土地を国に売却移管——国が買ってくれるかどうか、大蔵省が買ってくれるかどうかわかりませんけれども、どうせあれだけの金を向こうから引き出しているわけですから、それとの相殺勘定のような形でこれをすっきりさせた方が、あるいは利子や孫利子負担だ、あれだというようなことを計算せずにも済みますし、償還金の負担も大幅に軽減されるわけですから、そういう資産売却による経営改善、これは私の方に売るといいますか、民間に払い下げるということは、私は主張いたしません。土地はやはり公有化すべきだと私は思っていますから、そういうことであれば、ただ国の方が買い上げるという形になりますけれども、どうせそれだけのものは、いま累積として国鉄に貸しているわけですから、それとの相殺勘定のような形で、いま言ったような資産売却による経営改善を図られるお考えはございませんか。
  304. 高木文雄

    高木説明員 具体的な例で申しますと、汐留なり梅田なりにつきましては、何とか東京都なり大阪市なりにもお役に立つような形で再開発を考えたいということで、いま内々作業はいたしておるところでございます。これはその作業のいかんによっては、場合によって、私どもの方でそれを活用することになるか、あるいは公共団体にお願いをして買っていただくかというようなことが将来出てくる可能性は全くないわけではないと思っております。それにいたしましても、しかし汐留につきましても梅田につきましても、どういう使い方をするかということについて、非常に各方面からいろいろの意見があるわけでございますし、両方とも都内に残された非常に貴重な土地でございますので、これをどう有効活用するかということの方をもう少し詰めなければならないので、これを売りますというようなところまではなかなか結論づけられていないわけでございます。別途、たとえば東京駅の前、丸ビルとの間、丸の内側でございますが、あそこのスペースは実は私どもの所有地でございまして、東京駅前の広場として、あるいは道路として使われておるわけでございまして、私どもも地下部分等相当使ってはおりますが、地表部分は道路その他として東京都に使ってもらっているわけですが、これは実は無償になっておるわけであります。そこで、そうしたものについて何らかの形で地方公共団体で引き取っていただく。利用勝手が、道路等でなかなか悪いわけでございますので、どういう価格評価になるかは別といたしまして、地方公共団体で買っていただくという方法がないものだろうか。これは全国的に、かなり駅前に土地があったりいたしますので、そして、それが現に道路といったようなものに使われております。しかも、それは無償になっておりますということがありますので、そういうことができないものだろうかというようなことについて、時折各方面に御相談するわけでございますけれども、どうも現在、地方公共団体も決して財政状態はよくないわけでございますし、仮にお話しのように、国の方に引き取ってもらいたいということを申し出るといたしましても、いまその土地を買うための金というものはなかなか出しにくいということで、全然問題にならないということではないわけなのですけれども、時折相談は持ちかけるわけなのですけれども、なかなか実現の可能性がない状態のままで経過をいたしておるということでございます。
  305. 中馬弘毅

    ○中馬委員 とうてい返せそうもないような負債を抱えて、それがおもしになって気分的にもすっきりしないよりも、この際すっきりさせた形で再出発していただきたいという願いを込めて、そのような御提言をしたような次第でもございます。  土地の有効利用のことにつきましてはいろいろなことが考えられるのですけれども、老朽の宿舎がかなりあるのですね。それをもう少し有効に利用したらどうかと思っているのです。いまたとえば三十年以上たった木造の宿舎、これが二万一千五百ぐらいあるのですかね。しかし、それも、私の近くにもそういうものがあるのですけれども、人が入っていないケースが多いのですね。入居率がどのぐらいになっていますか。
  306. 半谷哲夫

    ○半谷説明員 ただいま私どもが持っております木造宿舎の総数、これは約二万六千戸でございます。先ほど先生のお話の数字は、経年三十年以上というようなお話でございますが、すべて含めますと二万六千戸でございまして、現在このうちで使われていない、要するに空き家になっている状態のものが二千六百戸、したがいまして入居率としては約九〇%で、約一〇%がいま空きになっているという状況であります。  それで、この空きになっている理由でありますが、この中には老朽化いたしましてこの中に住むにはもう適当な状態ではない、住むには少し無理があるという状況になって、建てかえるためにあけているというところもありますし、また出入りの関係がありまして、現在一時的にあいているというものもあるわけでございます。そのものを合わせまして約一〇%というのが現状でございます。
  307. 中馬弘毅

    ○中馬委員 山間僻地の中のそういう宿舎はもちろん必要でしょうけれども、都市部においての老朽木造宿舎あたりは、それこそ取り壊してげたばきの住宅にしてもいいし、また住宅公団に渡してもいい。何か方法があるのじゃないですか。
  308. 半谷哲夫

    ○半谷説明員 ただいま先生御指摘のありました木造宿舎等の効率的な使い方といいますか、非常に古い、住むには環境として決してよくないような状況になっているものを建て直して、しかも、その際に土地を使う面においても非常に効率的に、また宿舎を建てる場所にいたしましても、現在あります土地の使い方をいろいろ検討いたしまして、宿舎にするのが最もいいのか、あるいはその他に転用し、あるいは関連事業あるいは売却ということも出てくるかと思いますけれども、そういうことに使った方がいいのか、総合判断して宿舎計画を立てていかなければいけないという御指摘だと思いますが、私ども現在、いま申し上げましたような線に沿いまして、宿舎の整理統合を実施している状況でございます。  ただ、私どもの特状といたしまして、日夜列車を動かしているという職員の勤務の状況からいいまして、やはりある地域に居住させなければいけないということもございますし、また最近のように近代化、合理化、これに伴いまして職員の異動というものを全国的にやるというような状況にもございますし、また東北新幹線などで各地から建設技術者を集めるというようなこともございます。こういうようなことがありまして、私どもの方が宿舎を用意するという必要がどうしても出てくるわけでございます。  また、特に東京とか大阪というような都会地になりますと、若年職員が自分の住まいをみずからの力で手に入れるというのは非常に困難な状況でございますので、そういう職員に対しては、やはり国鉄側として職員用の宿舎を配置する必要があるということで、現在宿舎を用意しているわけでございます。  ただ、いま御指摘のように、宿舎の現在のあり方についてはいろいろ御指摘を受ける点もございますので、いま本社の中にも宿舎対策のプロジェクトチームをつくりまして、宿舎の計画をまとめ上げると同時に、この用地の高度利用ということについても、最大限の効果を上げるように努力しているところでございます。
  309. 中馬弘毅

    ○中馬委員 高架下のことについては、私、前にも質問したのですが、その後余り進展をしていないようなので、もう一度お尋ねさせてもらいますが、その高架下をもう少し、民間鉄道がやっているように店舗にしたり、しゃれた町並みにしたり、あるいはモータープールが非常に需要が高いわけで、モータープールに貸してくれというところがあるのですが、実際にはほとんど貸していないですね。あいたままで金網を張っておられる。何かそこを貸すのに都合が悪い点があるのですか。それとも、ただそこまで手が回らないのだとおっしゃるのか。高架下の利用についていかがですか。
  310. 半谷哲夫

    ○半谷説明員 高架下の国鉄の利用方につきましては、大分以前からいろいろ御批判がございまして、その使い方、活用方について現在まで逐次改善してきたわけでございますけれども、いま先生御指摘のように、現在なお十分に使われていないという点があるわけでございますが、これらにつきましては、いま私どもとしては極力開発し、有効に使うようにということでやっているわけでございます。  それで、五十五年三月時点における高架下の開発面積は百一万二千平米でございまして、この高架下の使用料として国鉄収入として立てておりますものが年間約三十三億円になっている状況でございます。これは一年前の五十四年三月末時点と比較いたしますと約九万平米の増、使用料にいたしまして七億円の増になっているという状況でございます。  なお、今後高架下の使用につきましては、現在間接管理方式というものを主として導入いたしております。これは国鉄職員が直接高架下を一件ごとに契約事務を行うというのは余りにも繁雑でありますし、従来そういうような方式でやってきたためにいろいろトラブルも起きたということでございますので、この高架下を管理する、国鉄の意思を十分に通せる会社を設立いたしまして、そこにこの管理をさせ、そこが高架下を使うといういわゆるテナントと申しますか、使用者を募集いたしまして、積極的に開発するという手法をとっているわけでございます。
  311. 高木文雄

    高木説明員 多少補足させていただきたいと思うのですが、私もどうも高架下の活用法がうまくいっていない、皆さんからも御注意を受けますし、現に私自身の目に触れる場所もたくさんございますし、もう少し高架下の活用を早いテンポで進めていかなければならぬのじゃないかと思っておりますが、ただいま御報告申し上げましたように、この一年間で約一割活用の方の面積がふえております。それから、金額で一年間で二割ふえております。その数字が物語りますものは、率直に言って、どうも思うように広がらない、活用がうまく進まないという印象はございますけれども、そういう数字を見てみますと、最近はかなり一生懸命やり始めてきておるというふうに見ております。  間接管理方式という説明をいたしておりましたけれども、これもだんだんなれてきております。恐らくこの点については、従来に比べれば速いテンポでこの管理活用方が進んでいくものと思っておりますので、もうしばらく御猶予いただきたいというふうに考えます。
  312. 中馬弘毅

    ○中馬委員 積極的にお進め願いたいと思うのです。これはただ高架下を有効に利用したらいいじゃないかという以上に、都市の中を貫通している一つの大きな構造物なんですから、それが何か薄汚かったり、資材置き場みたいになっているのじゃなくて、本当に町の中に溶け込んだ、しゃれた町並みがつくれるのです。そういうデベロッパー的な発想でお取り組み願いたいという気がいたしております。  それから、大都市圏の旅客輸送が今後国鉄一つの大きな使命になってくるわけですが、そのときに空港との連係の問題があるのです。新千歳ですか、千歳空港のあの駅は非常に評判がいいようでございます。この間大臣にもお話ししましたように、これからは新幹線で延ばすよりもむしろ空港を整備して、その空港からそれぞれのところに気軽に行けるような交通線を整備した方がいいのじゃなかろうか。そういう意味からも、千歳の場合には趣旨に沿っていると思うのです。あと伊丹の問題、あるいは羽田はモノレールがございますが、関西新空港の問題、こういった空港と国鉄との連係の問題、どのようにお考えでございましょうか。
  313. 高木文雄

    高木説明員 千歳につきましては、おかげさまで、開業後の経過を見ておりますと、かなりお客様に御利用いただけるような状態になっておると思います。  ただ、あの場合には、飛行場とレールとが全く近接してありましたので、そこへ駅をつくるだけで、そして余り多くの金をかけないで、橋をかけるということだけでそういうことを考えることができるようになったわけでございますが、いま改めて空港と鉄道との間に線路をつくりまして、そうして乗っていただくようにするのに、いまのところ余り適当な場所が頭に浮かんでこないわけでございます。しかし、基本的な発想法としては、まさに地方空港はかなりお客様が利用される状態になってきましたから、適当な場所があれば千歳の方式というものをどこかで考えられないものかという御提案については、私どももそのような感じを持っております。ただ、いまのところ、現実の鉄道と現実の空港との間で、ここでやったらどうかというところは考えついていないということでございます。
  314. 中馬弘毅

    ○中馬委員 それから、都市の中の、この間ちょっと出ておりました通勤新駅といいますか、わりあい近距離でも駅舎をつくっていくというやつですね、これの御方針、何かはっきりしたものはもう出ているわけでございますか。
  315. 高木文雄

    高木説明員 国鉄といたしましては、これからの仕事は何かというときに、大都市における通勤サービスということが非常にウエートが高いわけでございます。それを考えますと、在来線で駅間距離が長いところについて駅をつくったらどうかということは十分考えなければいけないことではないか。最近のように大都市通勤についての御期待も多くなってきましたし、われわれとしてもそこに使命を持つというのであれば、新たな駅をつくるということについて従来よりは積極的な取り組みをすべきではないのかなという感じを私は持っておるわけでございます。  従来どうあったかと申しますと、原則としては、新駅をつくりますについてはいわゆる請願駅ということで国鉄としては費用負担はいたしませんということでやっておったわけでございます。これも一つの考え方であるわけでございますけれども、何かそこに一つの新しい展開があってもいいんではないかということを考えておるわけでございまして、いまそうしたことについて、今後の問題としては何か考える必要があるのではないかというふうに考えておりますが、従来そういう請願駅についてはそれぞれ関係者あるいは地元の御負担でということで今日まで参りましたものですから、従来の関係もありまして、にわかにそれを変えるというのもどうか。また、駅はつくりたいが、さりとて大概の場合には、つくりましてもそうすぐにはお客さんがふえるわけでもないわけでございますので、なかなかうちの現在の設備投資の金の枠の問題と、そういうものをつくりました場合の採算との関係を言いまして、気持ちとしてはそうした気持ちを持っておりましても、直ちにそれに取り組むということについてはちゅうちょされる点があるわけでございまして、まあこの間新聞にいろいろ書かれたわけでございますが、そういう気持ちはありますけれども、いますぐにということまではちょっとなかなか踏み切れないということで、むしろこれから勉強を始めようかというぐらいの段階と御理解いただきたいと思います。
  316. 中馬弘毅

    ○中馬委員 細かい問題をやっていると切りがございませんので、きょうはこの程度で終わらしていただきますが、問題が非常に大きゅうございます。しかし、先ほど言いましたように、国鉄がここで新たな意欲を持って取り組んでいこうとされているときですから、それこそ変なところで妥協するのではなくて、しっかりやっていただきたいと思っております。よろしくお願いします。
  317. 小此木彦三郎

    小此木委員長 次回は、来る二十一日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十七分散会