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1980-10-15 第93回国会 衆議院 運輸委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月十五日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 小此木彦三郎君    理事 加藤 六月君 理事 関谷 勝嗣君    理事 楢橋  進君 理事 宮崎 茂一君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 中村 正雄君       阿部 文男君    木部 佳昭君       佐藤 文生君    近岡理一郎君       永田 亮一君    浜野  剛君       林  大幹君    古屋  亨君       三塚  博君    箕輪  登君       水野  清君    山村新治郎君       久保 三郎君    小林 恒人君       関  晴正君    浅井 美幸君       小渕 正義君    三浦  久君       四ツ谷光子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         運輸大臣官房長 杉浦 喬也君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸大臣官房観         光部長     角田 達郎君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省船員局長 鈴木  登君         運輸省港湾局長 吉村 眞事君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松本  操君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     加賀山朝雄君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案(内閣  提出、第九十二回国会閣法第一号)  陸運に関する件  海運に関する件  航空に関する件  日本国有鉄道経営に関する件      ————◇—————
  2. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 これより会議を開きます。  陸運海運航空日本国有鉄道経営及び観光に関する件等について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小渕正義君。
  3. 小渕正義

    小渕(正)委員 昨日、運輸大臣から運輸行政全般についての所見が発表されたわけでありますが、運輸行政については、非常に多岐にわたって広範囲であります。空、陸、海、当面運輸行政の最大の焦点国鉄再建法案だと思いますけれども、その他航空関係でとってみますと、第四次空港整備問題、特に関西新空港または成田の二期工事問題等、いろいろと大きなプロジェクトがあるわけでありますし、陸運関係でとってみましても、道路運送法の問題一つ取り上げてみましても、昭和二十六年度に制定されたままの現在の実態で果たして妥当なのかどうか、そういったいろいろな問題点がありますけれども、きょうは私は焦点をしぼりまして、海運関係、特に造船産業中心にして関係当局見解を承りたい、かように思う次第であります。  御承知のように、わが国造船産業は、昭和四十九年をピークにいたしまして構造的な不況に陥りまして、深刻な状態昭和五十三年、五十四年、このような経緯をたどってきたわけであります。しかしながら、最近若干の受注面における明るさを取り戻した、こういう状況にありますが、巷間それぞれの中で、造船不況はもう終わったのではないか、そういった見方がかなりいろいろなところで出されているわけでありますが、実態として果たしてそのようなことが言えるのかどうか、このあたりについて運輸省としては、現在の造船産業の置かれている状況についてはどのようなお考えをお持ちなのか、その点をまず第一にお尋ねをいたしたいと思います。
  4. 野口節

    野口政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、わが造船業界は近年大変な不況に見舞われまして、手持ち工事量も年々非常に低下してきたわけでございます。幸いにして、五十三年度をボトムにいたしましてやっと下げどまったという状況になっておりまして、五十四年度は、五十三年度末の手持ち工事量から比べますと、かなり増加しておるという状況でございます。具体的に数字を申し上げますと、五十三年度末の手持ち工事量は五百三十二万トンでございましたが、五十四年度末の手持ち工事量は九百十七万トンということでございまして、現在に至る状況では、ほぼ横ばいに推移しております。  この点、二つの点で評価できると思いますが、一つは、先ほど申し上げましたように、年々減少してきたものがやっと下げどまったということ、それからもう一つは、幸いにしてこの九百十七万総トンという手持ち工事量は、現在工事量が非常に落ち込んでおりますので、現在の工事量に直しますと一年ないし一年半分、これは能力の問題ではございませんで、操業規制がかかっておりますので、その操業量ベースにしてはじきますとそういう数字になるわけでございますが、そういう状況にありますので、一応落ちついて受注活動ができる状況にあるというふうに判断しておるわけでございます。
  5. 小渕正義

    小渕(正)委員 ただいま、現在の置かれておる状況、特に手持ち工事量中心にしたお話がありましたが、そういうただいまの説明で、現在ざっと見て一・五年分の工事量確保されておるということでありますが、そういうことの中で、先ほど私が申し上げましたように、もう造船不況はこれで一応脱出した、そういう見解をお持ちなのかどうか。先ほどお話の中では、現在の一年半の工事量も、操業度規制をやっている中でのこういう状況でございますが、それとの兼ね合いの中でそこらあたりをどのようにお考えなのか。あわせて、非常にむずかしい問題とは思いますけれども、これからの需要予測についても、当局としては大体どのような見方をされておるのか、そこらあたりもでき得ればひとつお示しいただきたい、かように思います。
  6. 野口節

    野口政府委員 造船業不況から脱出したかどうかという判断の問題でございますが、私どもはまだ完全に不況から脱出しているというふうには考えておりません。現在、御承知のように、まだ造船不況カルテルを結んで操業調整を行っておるという段階でございますし、計画造船を初めいろいろ需要創出をお願いしているということで、やっと先ほど申し上げましたような状況確保されておるわけでございますので、五十三年度をボトムにいたしまして手持ち工事量はやや持ち直した、すなわち少し立ち直りかけてきたという段階にあるのではないかというふうに判断しております。  それから、今後の需給動向でございますが、長い目で見ますと、これは五十三年度に海運造船合理化審議会需給見通しを出しておるわけでございますが、いままでの動きを見ておりますと、大体この海運造船合理化審議会が出した需給見通しに近い線で動いております。したがって、こういう形で徐々に回復していくということを考えておりますし、また、そういうふうに期待しておるわけでございます。  ただ、当面の問題といたしまして、いろいろ、たとえばエネルギー問題とかあるいは為替相場の問題とか、依然として造船を取り巻く環境は厳しいものがございますので、なお慎重に対処していく必要があるのではないか、こういうふうに考えております。
  7. 小渕正義

    小渕(正)委員 現在、造船不況カルテル操業度規制をやっているわけであります。そういう中で、大体ただいま説明されたような状況に置かれておるわけであります。したがって、これからの需要予測は非常に困難でありますが、先ほど造船合理化審議会の一応の予測とほぼ同一傾向で進んでおるというお話でございましたが、そういうことから見られて、運輸省当局としては、この操業度規制といいますか、造船不況カルテルというものはこれからも当分の間は持続すべきである、必要であるというふうに判断されるのかどうか。これは非常にむずかしい問題かもしれませんが、そこらあたりについての見解を、でき得ればお聞きしたいと思うわけであります。  特に私の承知する範囲では、本年の一月から六月までわが国造船産業輸出船受注したのは、世界全体の発注量の約八〇%を受注している。これは一現象かもしれませんけれども、そういった状況にありまして、これまた国際的協調体制の中での問題が一つ出てきたのではないかという気もいたすわけでありますが、そういう傾向等を見た場合との兼ね合いの中で、操業度規制といいますか、不況カルテルというものを、いまのわが国の置かれている造船産業としては当分の間これは必要だろう、こういうふうな見解にお立ちなのか。もう少し様子を見ればある程度そこらあたり判断はつくのかどうか。そこは非常にむずかしい面があろうかと思いますが、そういった点についての当局としての見方といいますか、そういうものをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  8. 野口節

    野口政府委員 造船不況カルテルを今後どういうふうに持っていくかということは非常にむずかしい問題でございます。もともと造船不況カルテルそのもの緊急避難措置でございますので、非常に正常な姿としては、早いところこういう不況カルテルのようなものから脱出したいという、またそうすべきだという考え方が一方にあるわけでございます。ただ、一方に、先ほど申し上げましたように、これからの需要回復というのは徐々に回復していくであろう、急激な回復という形にはならないであろうということもございますので、その辺の兼ね合いで今後どうするか決めていくということになろうかと思いますが、基本的にはこれは緊急避難措置ではないかというふうに考えてございます。  それから、ヨーロッパとの摩擦回避というような点でございますが、あるいは御承知かと思いますけれども日本造船業受注というものが瞬間的にかなり大きな割合で得られておりますので、その点に関しましてヨーロッパあたりから、日本はまた世界の市場を席巻するつもりがあるのではないかというようなかなりきつい警告ともいうべきような意見が出されているわけでございますが、われわれの方の考え方といたしましては、造船のような産業におきましては、そういう月々の、あるいは非常に短かい期間の受注を問題にするのはおかしいのであって、むしろもう少し長い目でたとえば手持ち工事量を比較するとか、建造量を年間で比較するというような別な比較の仕方があるのではないか。そういう見方をいたしますと、たとえば手持ち工事量で言いますと、現段階では日本ヨーロッパ諸国とを比較いたしますと、日本よりもヨーロッパ諸国の方がたくさん持っておるというような事情もございますので、その辺をあわせて説明しながら、やはり摩擦回避には努めていかなければいけないのではないか、こういうふうに考えております。
  9. 小渕正義

    小渕(正)委員 次に、現在置かれている状況並びに需要予測についての見解を承ったわけでありますが、御承知のように、何といいますか、骨肉を切ったような中でやっと生き延びてきたのが今日の置かれている造船産業だと思うのであります。そういう中で、ここ二、三年、構造的造船不況対策について、関係当局である運輸省はかなり積極的な取り組みをされたことについては大変敬意を表する次第でありますが、今日までこれらの造船不況対策として運輸省として具体的に取り組んだ中で、実際に実効的にその効果が上がったようなものについて、大まかに主要な点について、ひとつでき得れば状況をお知らせいただきたいと思いますし、あわせて、こういう置かれた現状の中では、なおこれからも引き続きこれらの造船不況対策として具体的なものを推進すべきではないかという気もするわけでありますが、そういうことについての当局見解を承りたい、かように思います。
  10. 野口節

    野口政府委員 造船不況対策につきましては、まず初めに諸先生方に厚く御礼を申し上げたいと思いますが、対策の樹立に当たりまして、迅速にかつ非常に温かい御指導、御援助をいただきまして、おかげさまで、先ほど申し上げましたように、やっと五十三年度あたりボトムにいたしまして、少し立ち直り気配が見えてきたわけでございます。  ところで、御質問の、どういう造船不況対策をとったかということでございますが、大きく分けまして三つほどになろうかと思います。  一つは、非常に過剰になりました造船能力を削減するという対策でございまして、これは安定基本計画というものに基づきまして五千総トン以上の大型造船船台ドック等を約三五%削減するという措置でございますが、これはおかげさまをもちまして昭和五十四年度をもって終了いたしました。実際には約百三十八基ほどありました五千総トン以上の船台を八十八基ほどに減らすという措置をとってございます。これによりまして造船能力は、これは標準貨物船換算トン数というので能力をはかってございますが、九百八十万標準貨物船換算トン数分ありましたものを約六百二十万標準貨物船換算トン数分にまで落とすことができたわけでございます。  それから、第二の措置でございますが、このように設備処理をいたしましてもなお需給に非常に大きなギャップがございましたので、たとえば計画造船を増強していただくとか、あるいは官公庁船大量建造を図っていただくとかというようなことで需要創出をしていただきました。この需要創出は非常に効果がございまして、特に官公庁船の場合は中小造船業に対して非常に大きく役立ったということが言えるかと思います。  それから、第三番目の措置といたしましては、このように需要創出をやってもなおかつ需給ギャップが埋められませんでしたので、五十一年度から実は運輸大臣の勧告ということで操業規制を行っていたわけでございますけれども、その後これを民間不況カルテルというふうに切りかえまして、現在不況カルテルを行って操業量調整を行っている次第でございます。  このようないろいろの対策をとりました結果、先ほど御説明いたしましたように、昭和五十三年度あたりボトムにいたしまして、やっと立ち直り気配が見えてきたというふうな状況になったわけでございます。  それから、今後どういう措置をとっていくかということでございますが、先ほども御説明いたしましたように、当面まだエネルギー問題とかあるいは為替相場の問題とか、いろいろ造船を取り巻く環境、なかなか厳しいものがございますので、需要動向をよく見ながら、たとえば計画造船による国内船受注確保あるいは輸出船確保というようなことをやりながら造船業の安定的な発展を図ってまいりたい、こういうふうに考えてございます。
  11. 小渕正義

    小渕(正)委員 三つに分けてのお話がありましたが、確かに現在の造船不況克服のために、はっきり申し上げまして造船産業では約五万人の人たちが働く職場を離れていったわけでありますし、まさにこれは血のにじむような状況の中で実は今日残っているわけであります。したがって、特に造船産業はそれぞれの地域経済に大きな影響を与えるような総合的なすそ野の広い産業でございますので、そういう点でも、このような能力削減で百三十八基の船台が八十八基に減るような状況ということは、いかに犠牲が必要だったかということになるわけでありますので、ひとつこれからも、特にこの需要創出についての大きな効果として官公需船のいろいろな発注、その他新しく海上保安庁等代替船早期建造とか、いろいろそういうものと取り組まれたと思いますけれども、時間もありませんので要望を申し上げておきますが、こういった点につきましてはこれからもひとつ、そういう不況カルテルを実施するような中でやっとこさ現在の操業度を維持しているような状況ですから、この新しい需要創出をするような、そういったものについては、これからも引き続き積極的な運輸省としての取り組みをぜひお願いしておきたい、かように思う次第であります。  次に、エネルギー対策についてお尋ねいたしますが、いまさら私が申し上げるまでもなく、わが国エネルギー対策については、これは非常に緊急かつ重大な問題であります。そういう中で、運輸省関係でこれも考えてみますならば、そういう新しいわが国エネルギー対策の一環として、たとえば石油にかわるものとして現在計画されておるのでは液化天然ガス、要するにLNG、こういったものを五十三年度約千六百万トン、ところが六十年度にはこれを三千万トンぐらい輸入しよう。これはまさにクリーンエネルギーとして非常に脚光を浴びておるわけでありますし、これは石油に換算しても世界全体で石油埋蔵量の約七割近くあると言われている非常に期待できる新しいエネルギーでありますが、こういうLNG船建造にいたしましても、残念ながらわが国は非常に諸外国に立ちおくれておりまして、やっとこさこのたび第一船がようやくわが国国内造船所において着工されようとしているわけであります。  このようなわが国の将来的なエネルギー対策から考えてみますならば、こういうものにつきましてはもっと政府は積極的にそういったものの技術開発援助といいますか、そういうものの指導、そういうものにもっともっといままで以上のペースで取り組まなければいかぬのじゃないかという気がするのであります。そこらあたりについて、これは私の私見かもしれませんが、どうもいままではどちらかというとそういった点が若干なまぬるかったのじゃないかという気がするわけであります。あわせて、これから石油にかわるものとして石炭というものが非常にクローズアップされておりますか、この石炭についても、御承知のように、新しい石油にかわるエネルギー需給計画の中では大幅に海外炭を輸入しよう、こういう計画がされておるわけでありますが、これらのエネルギー対策の中でその裏打ちとなるべきこういうものを運ぶ船、そういうものが現実にはこういう計画の中では非常に立ちおくれているのではないか、そういう気がするわけであります。  したがいまして、そういった点で、今日まで、これらの新しいわが国エネルギー対策として、そういう運ぶ船に対して、運輸省としては、運ぶ船が中心になるわけでありますが、そういうものについてもっと積極的な姿勢か必要でなかったかと私は思うのであります。  そういう意味で、いま私が申し上げましたような点についてどの程度、またどのようなお考えでこれからこれらの推進を図られようとしておられるのか、そこらあたりについての考え方をひとつお聞きしたいと思います。
  12. 野口節

    野口政府委員 造船業の立場から見てエネルギー問題をとらえた場合には、二つのとらえ方があると思います。  一つは、石油にかわるようなほかのエネルギー資源を運ぶ船舶建造するという意味でございまして、これはただいま先生から御指摘ありましたように、たとえばLPGを運ぶ船あるいはLNGを運ぶ船、さらには石炭を運ぶ船というようなものがこれに当たろうかと思いますが、これはエネルギーの問題ばかりでなく付加価値を高めるという、いままでの大型の比較的工作の簡単な船舶からできるだけ複雑なノーハウをたくさん必要とするような、こういう付加価値の高い船に建造の質を移していくという点からも非常に大切なことだと考えております。そういう意味で、こういうLNG船建造あるいは石炭運搬船建造というようなものの技術開発をこれからも進めてまいりたいと思いますし、業界におきましてもそういう意識が非常に高まっておりまして、建造のための体制を着々と整えているところでございます。  それから、第二の点でございますが、もう一つは、石油そのものを節約するという観点からのエネルギー対策があろうかと思います。これには、たとえば大型コンテナ船あるいは大型タンカーなどに積んでおりますようなタービンというようなものをディーゼルエンジンに変換していくというようなこと、あるいは船舶そのもの推進機関石炭を使っていくというような、そういういろいろな問題がこの中に含まれるかと思いますが、この点につきましても業界においては着々と建造体制を整えておるわけでございますが、私ども技術開発ということでこれを推進してまいりたい、こういうふうに考えております。
  13. 小渕正義

    小渕(正)委員 推進していくことは当然のことでありますが、先ほどからお尋ねいたしておりますのは、そういういろいろな内容について推進するために、運輸省としてはどのような具体的な施策をやっているのか、ここらあたりをお聞きしたいわけであります。そういう意味でひとつ具体的なものがございますならば、ただ考え方だけでなしに、実際にどういう施策を行ってこういうものを促進しているんだ、そういう具体的なものをひとつお示しいただきたい、かように思うわけであります。
  14. 野口節

    野口政府委員 たとえば、もうすでにLPG船のようなものについては実用化されておりますし、またLNG船などにつきましても、確かに先ほど先生の御指摘ありましたように、世界の大勢にややおくれたのではないかというそしりはありますが、現在そういう建造体制を整えておるというところでございます。  これからの問題といたしましては、先ほど申し上げましたたとえば石炭だけの船舶というようなもの、これは石炭を運送する方ではなくて機関石炭を使うというようなことが考えられると思いますが、こういう点につきまして私の方あるいは船舶技術研究所等におきまして、具体的にどういう問題を解決していかなければいけないのか。たとえば灰の問題をどうするのか、あるいは給炭の問題、石炭をどういうふうにボイラーに持っていくかというようなことでございますが、そういう技術的な問題の解明をこれからわれわれとしても積極的に進めていくというような施策を現在とっているところでございます。
  15. 小渕正義

    小渕(正)委員 時間がありませんので次に移りたいと思いますが、ただ一つ、確かにそれぞれ民間ベースでこれらの技術開発といったものに取り組むことは、それなりにまた一つのいい面もあろうかと思いますが、問題は特にこういったLNGの船なんかになりますと、資金的にはかなり大変なお金が要ることになりますし、そういう意味では先ほど言われている主機換装の問題一つとりましても、船主側から見ますならばこれはまたかなり新しい資金が要るわけでありますので、よりそういうものがやりやすいように、そういう意味で資金的ないろいろな対策を立てていただく、そういうものにもっともっと積極的に取り組んでいただくようにお願いいたしまして、とりあえずこの問題は終わりたいと思います。  次にあと一つ、いまのわが国造船産業の中でこれからの問題と一応考えなければいかぬのは、実はこの構造的な造船不況の中で一つ傾向として出ているのが、若い人たちが働く職場として魅力がないということで、若年労働力確保という問題が非常にむずかしくなってきているという現状であります。もちろんそれぞれの置かれている造船企業においてはまださほど深刻化しておりませんけれども、御承知のように、造船産業というのは単なるそれぞれの造船関係だけじゃなしに、それに関連した協力業者との一体の中で造船産業というのは今日の状態をつくり出しているわけでございますから、そういう点で考えてみますならば、そういった協力業者関係においては若い労働力確保が非常に困難である。しかも、賃金もそう大きな魅力がない。働く職場からいってもそういうことで、協力業者関係の中で特に高齢化した人たちだけが中心になって作業を進めるということで、私はこれからの大きな問題だと思います。  そういう点で、そういった造船産業を取り巻いている関連業界人たちは、どちらかというと中小企業中心でありますので、どうしても基盤が弱い、そのためにますますそういう労働力確保が至難である、こういう新しい状態が実はあちこちに発生しているわけでありまして、現在そういう意味協力業者関係全国団体の中でもこれは非常に大きな問題として取り上げられているわけでありますので、そういう点で、これは意見になりましたけれども、これらの角度から船舶局としても問題をとらえていただきまして、これに対する何らかの対策といいますか、そういうものについてお考えいただきたいし、もし何かお考えがありますならばここでお示しいただきたい、かように思うわけであります。私もまだ具体的にこういうことを考えろということまでは申し上げかねますけれども、とにかくこれからのわが国造船産業一つの大きな問題になるのではないか、そういった傾向が出ているということだけを申し上げて、でき得れば御見解があればお聞きしたい、かように思います。
  16. 野口節

    野口政府委員 確かに先生御指摘のように、造船業界は従業員が高齢化してまいりまして、それから若年労働者がなかなか入らないというような状況になってございます。御承知のように、この前の造船不況のときに需要が非常に落ち込んだために造船能力の削減ということを行うと同時に、従業員の協力をいただいて他部門への出向だとかあるいは希望退職の募集というようなことで雇用調整というものを実施せざるを得なかったわけでございます。この結果、ただいま申し上げましたように、若手の特に技能職が相当離職していったというような状況でございます。  それで、こういう状況に対処する方法としては二つの方法があろうかと私ども考えておるわけです。一つは、やはり早急に造船業の体力というものを回復し、しかるべき待遇を供与できるというような状況に早く回復させることが第一の点であろうかと思います。そういう点につきまして先ほど来から御説明いたしましたように、いろいろ今後とも需要確保を図り、工事量確保してそういうことができるような体制を早くつくっていくということが考えられるわけでございます。それから第二の点は、造船業といいますのは、どちらかと申しますと、作業環境が快適でない部門がかなり多いというふうに私ども考えております。高年齢者が就業できるような作業環境あるいは若年労働者が魅力を持つような作業環境というものをこれからつくっていかなければいけないのではないか。そのために省力化とかあるいはそういう作業環境を改善するような形での合理化の投資というようなものをこれから進めていくというようなことをしなければいけないのではないか、そういうふうに考えております。幸いに業界の中でもそういう認識が非常に高まってきておりますので、私どももそれを促進するという方向で支援してまいりたい、こういうふうに考えております。
  17. 小渕正義

    小渕(正)委員 では、次に移ります。  原子力船「むつ」の問題ですが、これは所管からいきますと原子力事業団ですか、それになるんじゃないかと思いますが、船という立場から見ますならばこれもやはり運輸省所管になるわけでありますが、現在、長崎県の佐世保港で修理中でございます。期限内までに修理ができるかどうかということがかなり政治問題化していく傾向に現在あるわけでありますが、私も長崎県民の一人として非常に重大な関心を持っておるわけであります。特に原子力船開発といった角度から見てこの「むつ」の修理は早急に完成させなければいかぬという立場で見ているわけでありますが、運輸省は「むつ」については大体どのような分野ですか、どこまで関与されておるのか。運輸省としては「むつ」の修理一切関係ない、これはすべて原子力事業団ですか、そこが所掌なので一切そういったものはタッチしてないということになっているのかどうか。私は運輸省としても何らかの形でこの「むつ」問題には関与されておるのじゃないかというように思うわけでありますが、そこらあたりの関係について、しかも現在修理をされているわけでありますが、それを含めて運輸省としてどういう状況に置かれているのか、そこらあたりをひとつお聞きしたいと思います。
  18. 野口節

    野口政府委員 原子力船「むつ」の修理に関しましては、やはり主体は日本原子力船開発事業団がやるわけでございますけれども、私どもは科学技術庁と共管で日本原子力船開発事業団を監督し、「むつ」の開発を促進するという立場にあるわけでございますので、科学技術庁と協力しながら「むつ」の修理を促進していくという立場で、たとえば日本原子力船開発事業団が出してきます修理総点検計画というようなものを科学技術庁と共同して早急に検討審議し、これを原子力安全委員会に早く送れるようにするとか、あるいは地元に対する安全性の説明に行くとか、そういうことをやっておるというのが現状でございます。
  19. 小渕正義

    小渕(正)委員 所管官庁として監督的立場にあるというわけですので、これはお願いになりますが、もう現在修理は実際に作業にかかっていますから余りないかもしれませんが、私ども見ておりまして、これがやっと佐世保に入って、それからいろいろないきさつがございましたが、修理に着手できるようになってから、実際佐世保重工との関係で問題が整理されて、ドック係船料その他の話がようやくついてから実際に作業に着手するまでの期間をかなりまた費やしたわけですね。私ども素人から見ますと、何でそんなにもたもたしているかという感じがしたのでありますが、状況を聞きますと、それぞれの監督官庁としての一応のルートがございまして、そういう中で非常に時間的に空費をしたと思いますけれども、そういう意味では、これからはもう余りないかとは思いますが、まだ残された修理期間中、現場から上がっていく、それが原子力事業団へ上がる、それが科学技術庁に上がる、運輸省に来る、何かそこらあたり判断をするのに時間を空費する、一つの例でございますけれども、そういうことがかりそめにもあってはならないと思いますので、非常に差し迫った期間になっておりますから、ぜひそこらあたりは篤と腹を据えて、適確機敏な対応をしていただくように特にお願いしておきたいと思うのであります。  次に、もう時間も参りましたので、最後に一つだけお尋ねいたしますが、実は全日本労働総同盟の交通運輸港湾協議会という交通運輸関係の人たちの集まりの中で、運輸行政に対して関係する側からの意見をいろいろ出しているわけでありますが、塩川運輸大臣あてに八月十二日に、「総合交通政策の確立および立法・制度改正等に関する申入れ」ということで、総合交通政策の問題、その他船員雇用安定資金制度の創設の問題とか道路運送法の問題とか、現在の運輸行政について実際に仕事をしている立場からの問題提起をいろいろしているわけでありますが、これらが運輸省関係で現在どのように受けとめられて、どういう状態に置かれているのか、時間もございませんので主な点だけで結構ですから、それぞれ項目別に御説明できますならば、それを受けた後の運輸省として、いま実際にどのような取り組みをされているか、そこらあたりについての御説明をひとつお願いしたいと思います。
  20. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 申し入れを受けました項目が余りにも広範囲、多岐にわたっておりますし、しかも申し入れの内容を検討いたしますと、確かに時代の転換に即した一つの示唆が含まれておりまして、私たちはこの申し入れをいま各部局ごとで検討いたしておるところでございます。特に、仰せのとおり、現在、七〇年代に技術革新が非常に進んでまいりましたことと、道路を中心といたしまして交通機関のあり方そのものが非常に変革してまいりました。したがって、それらの各交通機関における相互の整合性がまず大事なことであろうと思いますし、また地域交通というのが非常に重要視されなければならぬ時期になってまいりました。そういう観点に立ちまして、仰せの総合交通政策について鋭意勉強をいたしておるところでございます。  それと、国鉄のあり方につきましてもいろいろと示唆がございましたが、これらはいまそれぞれ当局におきまして検討しておるものと相複合するところもございますので、申し入れを受けて、これをなお役所といたしましては検討を続けてまいりたいと思っております。
  21. 小渕正義

    小渕(正)委員 いま大臣から一応受けとめた考え方の御説明がございましたが、各部局でそれぞれ検討を進めておられるということでございますが、それがただ検討という形でなしに少し具体的に、これを見ますとむずかしい問題もございます。いますぐどうだということは言えないかもしれませんが、何か取り組んでおる作業の状況といいますか、受けとめておる状況を各部局ごとに、いまの形であと全然なしなのかどうか、大臣の答弁以外にもうありませんということなのかどうか、あればそこらあたりを関係の部局にお願いしたいと思います。
  22. 石月昭二

    石月政府委員 お答え申し上げます。  総合交通政策の確立に関連いたしまして、大体目標とする年度及びそれに関係する経済、交通の予測数値についてどうお考えになるかというようなことが要望されておりますけれども、それにつきましては、私ども現在、需要予測年度の目標といたしましては六十五年度を目標に総合交通政策のあり方というものを運輸政策審議会において検討しているところでございます。それから、目標年度の経済社会のフレームをどのように考えるかということでございますけれども、これにつきましては、現在までございますたとえば第三次全国総合開発計画であるとか八〇年代の通商産業政策であるとか新経済社会七カ年計画といったような国の計画というようなものを参考にいたしまして経済フレームを設定しているところでございます。需要予測数値が大体どんな形になるかということでございますけれども、これは現在検討しているところでございます。  それから、たくさんございますが、その中でたとえば私的な交通についての基本的な見解はどうか。自家用車についてどう考えるかという御趣旨かと思いますけれども、これにつきましては、私どもは、自家用車というものは非常に機動性に富む交通機関でございまして、公共交通機関ではなかなか満たされない交通需要を満足させる機関であるというぐあいに認識しております。したがいまして、今後とも生活の高度化に対応いたしまして自家用車への欲求がまた非常に高まっていくのではないかと考えているわけでございます。また、現在自家用車の地域交通に占めるシェアと申しますか、そういうものも非常に高くなっておりますので、やはり自家用車というものを無視して交通政策は立てられない。しかし、反面、現在自家用車の普及に伴いまして輸送が減少いたしまして、公共交通機関に対する交通需要が減少いたしまして、その結果公共交通機関経営の維持が困難になっている。特に自家用車を利用できない老人だとか主婦であるとか年少者といった方々の移動性と申しますか、モビリティーが低下しておる事実もございますので、こういうものについてどのように公共交通機関のサービスを充実していくかということが一つの課題であろうかと思います。また、都市地域につきましては、自家用車が集中した結果、空間、環境等の制約の問題がございまして、公害問題とか道路混雑というような状況が発生しておるわけでございますので、これについてより効率性の高い公共交通機関への転換を図っていくことが必要であると考えております。いずれにいたしましても……
  23. 小渕正義

    小渕(正)委員 途中ですが……。よろしゅうございますか。  どうも私の質問の仕方が悪かったのでしょうか、時間がございませんので総合交通についてはもう結構でございますが、ただ項目別に、たとえば船員雇用安定資金制度の創設とか、それぞれ各項目出しておるでしょう。そういうもので作業が何か進められておるか、考え方があればお聞きしたかったわけでありますが、もう時間がございませんのでただ一点に限って、国鉄関係はあとで機会がありますから、船員雇用安定資金制度の創設について、厚生省との関係もございますけれども関係当局としてもしあれば、どうも大変恐れ入りますけれども、そういう形でひとつこの一点だけでも結構ですから、状況を御説明いただきたいと思います。どうも失礼しました。
  24. 鈴木登

    ○鈴木(登)政府委員 船員局関係の御要望でございますけれども、御要望の内容は、御指摘のとおりに、船員保険体系の中に雇用安定資金制度を導入したらどうかという御指摘でございます。  この点につきましては、運輸省におきましても長年の懸案事項でございまして、ただ厚生省と非常に関係がありますので厚生省の方に御要望の趣旨は十分申し伝えましたところ、現在、社会保険審議会の中で検討中でございます。ただ、問題が二つほどございまして、一つは、わずか二十万人の船員保険体系の中でそういうものが採算的に成り立ち得るかどうかという問題。それから第二番目は、千分の三・五の使用者側の負担になるわけでありますけれども、その負担についてやはり労使間での同意、合意ということが必要でございまして、その点が果たして得られ得るかどうかという点についての問題がございます。その二つの問題を現在検討中でございます。  ただ、厚生省とは別に運輸省の方といたしましても、船員中央労働委員会の方で、提案がございましたのでこの二点について現在鋭意検討中でございます。ただ、具体的にその船員雇用安定資金制度の創設にはまだ至っておりませんけれども、私どもといたしましては、たとえば船員雇用促進センターへの助成の強化だとか、あるいは海技大学校での離職船員あるいは雇用船員の再教育の問題とか、あるいは中高年齢層の対策の強化だとかいうような個別的な対策は、御要望の趣旨に沿いまして鋭意実施中でございます。
  25. 小渕正義

    小渕(正)委員 じゃ、これで終わります。
  26. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 三浦久君。
  27. 三浦久

    ○三浦(久)委員 大臣にまず最初にお尋ねをいたしたいと思います。  国鉄の再建法は、昨日の大臣のあいさつの中でも触れられましたように、大変重要な課題であると私ども考えております。私どもも、立場は違いますが、今度の国鉄の再建法では決して国鉄の財政再建はできない、そうしてまたローカル線を廃止するということ、このことは、地域経済に深刻な否定的な影響を及ぼす、そういう意味で重大な関心を持っているわけであります。きょうの午後からこの国鉄再建法についての審議が始まるわけでありますけれども、私は、その審議の前提条件としてまず率直に大臣に御要望申し上げますけれども、まず運輸省で政令の原案をつくっておりますから、この政令の原案をこの委員会に提出なさるようにまず最初にお願いを申し上げたいのです。  御承知のとおりに、この法律というのは政令委任事項が非常に多いのです。そうして、その政令の委任も白紙に近いような形で委任をされておる。ですから、法案だけを見たのでは、さて廃止基準がどうなっているのか、助成措置がどうなっているのか、全然わからないわけです。結局この法案の実質的な審議をやるという場合には、必ずその政令の内容というものが審議の対象にならなければならない、そういう性格を持った法案だと私は思っています。そういう意味で、ぜひ私はこの審議に先立ってこの原案を出してもらいたいのです。  私は大変不愉快な思いを毎日しております。というのは、ここに新聞があります。これは十月十一日の西日本新聞。ここに運輸省が廃止基準案作成、九州、山口ではまず二十一線区が対象である。そして、その運輸省がつくった原案、この内容が、第一条は「幹線鉄道網を形成する営業線の基準」、第二条は「地方交通線の基準」、第三条は「特定地方交通線の基準」とかといって、何かもう原案そのもののような形で報道されているわけですね。国権の最高機関である国会、そして、いま再建法を審議をしているこの委員会にそういう政令の原案が全然示されもしないで、そして報道だけされておる。これはわれわれ国会議員を全く侮辱したものだというふうに考えざるを得ないわけですね。ですから、私はぜひこれを出していただきたい。いままでも確かに何にも隠して出さなかったというのじゃありません。われわれの質問に応じて政令の内容は出ております。出ておりますけれども、それは細切れ的に出ているのですね。そして、われわれが質問したら、その部分に関してだけ中身を明らかにするという形なんです。これでは私は国会議員としての、そしてまた運輸委員会の委員としての審議権を十分に保障しているということにはならないというふうに思います。そういう意味で、まず最初に政府原案の御提出をお願い申し上げたい。
  28. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 おっしゃるように、法案を出す以上は政令の準備も並行してやっておることは当然でございまして、何も国会を軽視しておるわけでも何でもございませんが、政令の骨子は確かにできておるのですけれども、政令案として提出するまでにまだ各省、役所との詰めが若干残っておりまして、そういう点でまだ提出の段階ではないということを申し上げておったわけでございます。     〔委員長退席、関谷委員長代理着席〕 しかしながら、これは一党が要求されて出すというものではなくして、理事会等で御相談していただくならば、私は骨子のことはまとまってきておりますしいたしますので御説明できると思うておるのでございますが、ぜひひとつ理事会で御相談していただければと思うております。  なお、新聞にこう出ておるではないかということでございますが、新聞記者というのは取材活動を非常に熱心にやっておられまして、あっちこっちからいろいろ聞いたりなんかして総合的にやられる。あるいはまた、現に委員会で御質問に答えておるところがあるのですから、それをずっと継ぎ合わせてああいう報道になってきておるのではないかと私は想像いたしております。  いずれにしても、おっしゃるように、法案の審議と政令の基準はどうなのかということ、これは重要なかかわり合いがございますので、私たちは骨子としてまとめてきておる。そして、まだ完全な政令としてはまとまってはおらぬけれども、これはいすれば提出しなければならぬ、鋭意急いでおる段階でございますから、その点も御理解いたしていただきたいと思います。
  29. 三浦久

    ○三浦(久)委員 政令の原案としてまとまっていないとおっしゃるけれども運輸省の原案はもうできておるのですね。  それからまた、取材活動に一生懸命だとおっしゃるけれども、これは一条、二条、三条というふうに報道されておるのですよ。中身がアバウトに報道されているのとは違うのですよ。こんなものが公表されておって、国会で審議しているわれわれのところへそれが出てこないというのは全くけしからぬ話だと私は思っておるのです。  それからまた、理事会で相談しよう、これはわれわれが自主的にやることなのであって、それは大臣からお指図を受ける筋合いのものではない。  そして、私は委員長に御要望申し上げますけれども、ぜひこの委員会にその政令の原案を提案するように運輸省に御指示を願いたいというように思います。
  30. 関谷勝嗣

    ○関谷委員長代理 その件につきましては、理事会で協議をいたしたいと思います。
  31. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それでは、次に移りますけれども、いま地方公共団体、特にこの赤字ローカル線を抱えている自治体の一番大きな関心は、自分の抱えている、関係をしているローカル線が果たして廃止対象線区になるのだろうかどうか、ここに一番大きな関心があります。それで、私はやはり実質的な審議を保障するという観点からこの廃止対象線区の名前を全部公表していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  32. 山地進

    ○山地政府委員 前回もここで御説明したかと思うのでございますが、政令というのは法律ができた後閣議において決定するものでございます。そこで、その政令ができますと、その基準が確定し、路線も確定するということになるわけでございまして、先ほど大臣から申し上げましたのは、運輸省でどういうことを考えているかということについてはまとめて国会の方にお諮りするということはできるのではないだろうかというお話でございます。  そこで、私どもでそういうものを出した場合に、それでは、そういう基準に基づいて路線を計算してみるといいますか当てはめてみたらどうなるかということはできるかと思います。しかし、政令ができた場合の姿と私ども考えておるものと必ず一致するということではございませんので、私ども考えに基づいていま路線を明らかにする場合には実際に廃止する路線と違う場合が起こる、そういうことは好ましくないのではないだろうかということで、私どもの方では路線名を出すことを差し控えさせていただいているということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  33. 三浦久

    ○三浦(久)委員 どうしてあなたたちが考えている路線と現実に廃止になる路線とが食い違うのですか。それはおかしいでしょう。
  34. 山地進

    ○山地政府委員 いま申し上げましたとおり、私どもがいまお出しできるかもしれないその基準案、いま先生がお示しになった新聞等に出ているのは私どもは関知しておりませんけれども、私どもが仮につくったものというものと法律ができた後の政令とは、私どもがつくるのでございますから、一生懸命そちらの方でまとめていくという努力はいたしますけれども、できたものと私どもがいま考えている原案とは必ずしも一致することにはならない、そこが私どもで路線名を出すことを差し控えている理由でございます。
  35. 三浦久

    ○三浦(久)委員 結局、不確定要素があるということでしょう。ただ単に四千人未満とか二千人未満ということだけが基準ではなくて、まだたとえば将来の交通需要予測だとかいろいろなものが入ってくるわけでしょう。ですから、不確定要素があるのですね。だから、結局いま発表しても将来食い違う場合がある、こういうお話ですね。  そうすると、ここに新聞を持ってきておりますけれども、九州総局が九州の百一の自治体に書簡を出しているのです。その書簡は総局長の竹田さんの名前で十月六日付で出されている。これは国鉄の実情はこうこうだからローカル線の廃止に協力してくれということですよ。では、九州のすべての自治体にこれを出したのかというと、この書簡はすべての自治体に出されているのじゃないのです。いわゆる廃止対象線区に関係する自治体にだけ出しているのですよ。こういうことをやっていいのですか。  私はこれは二つ問題点があると思う。  一つは、外部に対して、内部で準備するのじゃないのだから、法案ができた場合のある一定の準備をできるかもしらぬということで内部的な準備をするというならまだ話がわかるけれども、そうじゃなくて、現実に外部に対して、関係自治体に対してよろしくお願いしますというような通知を出しているということ、これは法案の先取りじゃないですか。これは国会の審議権をないがしろにするものだと私は思う。  もう一つの問題は、九州総局が実際にローカル線の廃止対象線区を選定しているということですよ、法律もできていない、政令もできていないのに。こういうことが一体許されるのですか。もうなりふり構わずにローカル線の廃止に突っ走っていると言われても仕方がないだろうと私は思うのですね。  いまの段階でこういう九州総局長の外部に対する働きかけをやることが妥当なのかどうか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  36. 高木文雄

    ○高木説明員 九州総局長が手紙を出したことはおっしゃるとおりでございます。その辺の事情をいろいろ聞きましたのですけれども、昨年の暮れにこの法案を出していただくことを前提とする閣議了解がございました。その閣議了解では、一つの目安といいますか基準として、キロ当たり二千人という数字が出ておるわけでございます。それに関連しまして、九州では関係線区が非常に多い関係もございまして、数多くの市町村からいろいろ御照会が、あるいは書面によりあるいは口頭で、どういう場合はどうなるのか、ああいう場合はどうなるのかというお尋ねが来ております。それで、お尋ねをいただいたまま約半年以上お返事をしないままになっておりますので、これはいかがなものかということで、何らかの回答をしなければなるまいということで、いま御指摘のような手紙を出したようでございます。  これは二つ考えがあると思います。  いま御指摘のように、まさにそのことを国会で審議していただいている際に執行機関がそういう手紙を出すということは事実を先行しょうとしていることであって、特にこれから国会に御審議願うわけでございますから、それに対して先取りというふうになるのではないか、そういう意味で不適当ではないかという面は確かに御指摘の面があると思います。  しかし、事実上の問題として、お手紙をいただいたり電話その他で回答を照会があったということをいつまでもほっておくということも現場としては非常にできにくいということでございますので、一種の礼儀として何らかのお返事をいたすかということになりますと、そこに書いてありますようなことでお返事にかえるという以外に方法がないのではないかという判断で手紙を出したということでございまして、私はある意味では御指摘のような非難を受けるのもまたごもっともだと思いますけれども、一面においてまたそういう世の中の礼儀といいますか、そういう面から見て、何かいつまでも黙っているというわけにもいかないというのも一つ考え方であろうかと思います。  そういう意味で、私も総局長がこういう手紙を出したということについては新聞を見まして知りましたのですけれども、総局長ともいろいろ話しましたが、いまのところは、非難はあるかもしれないけれども、またある意味では一つ措置というか、適正なる方策ではないかというような感じを持っておるわけでございます。
  37. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それは大変詭弁ですよ。言っては失礼ですけれども、では、いままでそういう要望があった、陳情があった、そういうものに国鉄がこういう文書で一々応答したことがありますか。そんなことはいままで一度もないのですよ。そんな親切な国鉄ではないでしょう。法案が審議される直前になってこういうことをやるというのは、いまも国鉄総裁も明瞭に、審議の先取りじゃないか、法案の先取りじゃないかという私の主張を否定できなかったけれども、実際そうですよ。社会的礼儀としてやっているのではないですよ。いままでやったことのない、全く例外中の例外的な措置としてこういう書簡を出しているわけですよ。私は本当のことを言うと、この書簡を撤回してほしいと思う。  それと、もう一つは、いま鉄監局長から御答弁ありましたけれども、いろんな不確定的な要素があってまだ選択できないのだ、私もたとえばバスの代替輸送が可能かどうかと一々道路の状況まで見てないのだ、だからよくわからないのだ、こう言うのでしょう、運輸省は。そうであれば、何で九州総局長のこの竹田さんだけはそういうことがわかるのですか。不思議じゃないですか。こんなことを私は許しちゃいかぬと思うのですよ。そうでしょう。どうしてわかるのですか。竹田さんにわかるのだったら、全国的にわかるはずでしょう。そうしたら、わかるのだったら、私は全部ここに出してほしいと思う。  ですから、竹田さんのやったことを、それは非常に不正確なものなんだという答弁をなさるのか。正確だというのであれば、全部の対象線区を私は公表していただきたいというふうに思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
  38. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 この件につきましては、先ほど国鉄総裁も申しておりますように、九州地域におきまして、現在、国鉄再建で、地方線の代替機関への転換であるとかあるいは地域における自主的な運営であるとか、いろんなうわさがどんどんと出てまいってきておりますし、また、それに対しまして、法案が国会へ正式に提出されたという段階で、各市町村長が、どうなるのだろうということで、陳情あるいはまた意見を申し立てるとかあるいは請願だとか、いろんな手段をもちまして地方自治体からの意見の開陳がございますが、それにこたえたものである、私はそう思うのです。  つきましては、これはいつまでもこういう状態で置いておいてはいかぬのでございまして、それだけに、できるだけ早くひとつこの国鉄再建法案を通していただいて、そして、すきっとしてこの地方自治体と協議ができるように一刻も早くしていただいたら、そのことが地方自治体における対応策が明確にとり得る、私はそう思うておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。
  39. 三浦久

    ○三浦(久)委員 この百一の自治体は、大臣、みんな反対しているのですよ。ローカル線の廃止に反対しているのです。ですから、大臣のおっしゃるように早く成立をしてほしいという要望を受け付けるわけにいかないと私は思うのですね。  それと、もう一つ、この九州総局長の竹田さんの書簡は、国鉄総裁、乗車密度が二千人未満のものはまあ廃止対象になるみたいなことを書いてあって、明瞭には書いてないけれども、二千人以上四千人未満の間の線区、これについては一言も触れてない。ですから、これは大変誤解を与える書簡になっておりますよ。ですから、大変不正確ですね。そういうことを私はちょっと申し述べて、次の質問に移ります。  国鉄運賃の値上げの問題について大臣にお尋ねいたしますけれども、五十六年度の資金概計、これによりますと、まず運賃改定によって二千百億円の収入増を見込んでおります。増収率は七・九%になっているわけですが、しかし名目的な値上げはもっと大きいと思うのですね、実収が七・九%ですから。  ですから、大体どのぐらいの値上げを予定されているのか、まずお尋ねをいたしたいというふうに思います。
  40. 山地進

    ○山地政府委員 値上げを実際に申請するのは国鉄でございますし、それから値上げをどういうふうな形でやるのか、運賃と料金その他いろいろのファクターがございます。したがいまして、実際に値上げを申請するまで国鉄が鋭意検討した結果でなければ、名目的な値上がり率ということは申し上げにくいわけでございます。しかし、長年のこういった予算をつくってまいりました私どもの立場から申し上げますと、二千百億というものを実施するためには、ぎりぎり一けた台の値上げということも可能であろうか、かように考えているわけでございます。
  41. 三浦久

    ○三浦(久)委員 そうすると、まあ一〇%近い値上げだということになりますね。  ここに経済企画庁の「物価レポート’80」というのがあります。この中で、「公共料金の推移」というところがあるのですけれども、そこに、この国鉄運賃というのはウエートが九〇を占めているのですね。一〇〇〇〇のうちの九〇。そうして、これは五十年度と比較しますと五十四年度は二倍に上がっているのです。一九六・九に上がっている。ですから、わずかこの五年間の間に国鉄運賃は倍に上がったということです。ウエートの低いものが倍上がっても余り家計に影響はないけれども、ウエートが九〇というような大変大きい数です。これが倍に上がっているということは家計を大変圧迫していると私は思うのです。ですから、実際に運賃の値上げと乗客数の推移を見てまいりますと、乗客はどんどん減っているでしょう。これは監査報告書でも指摘されている。国鉄の発表でもそうなっておりますね。たとえばどのくらい減っているかといいますと、新幹線、これなんかうんとふえているみたいな錯覚を起こしがちですけれども昭和五十年度と五十四年度を比べてみますと、昭和五十年度を一〇〇とすると五十四年度は七七%に減っているのです。そうしてまた特急、急行、普通列車、こういうものを合計いたしますと、これは四十九年度を一〇〇とすると五十四年度は七六%。ですから、大変大きな乗客の減りようなんですね。これは私、運賃の値上げと重要な因果関係があるというふうに思っております。ですから、これからどんどん上げていくということになりますと、私は乗客離れがもっともっと進んでいくんじゃないかというふうに思います。そして、いま御紹介いたしました「物価レポート」ですけれども、この中でも国鉄については、「運賃改定による収入増にも自ずから限度があり、今後、大幅な収入増は望めない状況にあるといえるでしょう。」こういうように言っているのですね。  そうすると、運賃を上げてもそれに比例して収入はふえないということ、そしてそのことが、いわゆる他の競争交通機関との関係においてますます国鉄の客離れというものを増大させていくということ、そうすると、結局は国鉄の再建というものはできなくなってくる、国鉄自身が国鉄から見放されてしまうということですから、そういう意味で私は、この運賃の値上げというものについては慎重の上にも慎重にやらなければならないというふうに考えておりますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  42. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほど山地鉄監局長が説明いたしましたような経過でございますが、二千百億円というのは、来年度国鉄としてどうしても増収を図らなければならない額を算定いたしますとどうしても二千百億円、こういうことに相なってまいっております。  そこで、この二千百億円を全額運賃の値上げによって増収を図るということになってまいりますと、やはりおっしゃるように相当な値上げになってまいりまして、このことが国鉄離れに拍車をかけるということ、仰せのとおりだと私は心配しております。でございますから、この二千百億円の増収を図るということについて、どの程度まで値上げをし、どの程度までは営業の努力でこれがカバーしていけるのかということ等、これなんかもわれわれが今後やはりもっと正確に判断していかなければならぬ問題だと思うのであります。でございますから、最終的に何%の運賃の値上げにするかということ等につきましては、予算の折衝の中でこれを決定していきたいと思うておる次第でございまして、ただし、二千百億円の増収を図るという目的は何としても私たちとしては達成いたしたい、こう思うております。
  43. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それから次に、私鉄運賃の値上げの問題に移らせていただきます。  毎日新聞の十月の十一日付の報道によりますと、私鉄の大手十四社が電力料金の値上げというものを理由にいたしまして平均二〇%の値上げを来月にも申請をする、そういうことが報道されておるわけであります。  ところが、五十五年の三月、五十四年度の決算になりますが、五十五年の三月期の決算ではこの十四社の収支率の平均というのは一〇〇・四であります。ということは、結局比較的業績はよろしいということになるわけであって、私は現在の段階でこの私鉄運賃の値上げを行う必要性はないというふうに判断をいたしておるわけであります。また、各社を見ますと、非常に業績がアンバランスであります。     〔関谷委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、私は、この申請に対して査定をする場合に、結局各社個別に、そしてまた厳正にその実態を把握して行うべきであるというふうに考えています。  たとえば名鉄の場合でも、今度は赤字だということになっておりますけれども、しかし、この赤字というのは実際の赤字じゃないんですね。計算上の赤字なんですよ。というのは、御承知のとおりに、一社で不動産部門もやる、いろいろな部門もやっておりますけれども、結局鉄道部門以外のところでは大きなもうけを上げますと、その税金、事業税なんかも固定資産の割合でもって鉄道の方におっかぶせてくるわけですね。ですから、よその部門がうんと好況であれば好況であるほど鉄道の経費がうんとたくさん案分されてくる、こういう関係になりますね。そういうことで、この名鉄なんかも一応計算上の赤字になっているけれどもその実態というのは非常に業績はいいと私は見ているんですね。  そういう意味で、ひとつそういうところまで目を光らして厳正公正に利用者の立場というものを十分に考慮して慎重に御判断いただきたいと思いますが、いかがでしょう。大臣にお願いします。
  44. 山地進

    ○山地政府委員 御質問の中で申し述べられておりますように、五十四年度の業績は一〇〇・四でございます。御承知のとおり、電力の値上げがございましたのが五十五年の四月でございますので、五十五年度以降の収支というものについてどう考えるかということが今後の値上げを考える場合に大事な点であろうかと思います。  まだ私どもの方に申請が出ているわけでもございませんので、今後出た場合には、先生のおっしゃるような点については十分配慮しながら厳正に検討してまいりたい、かように考えております。
  45. 三浦久

    ○三浦(久)委員 それから、この運賃の値上げを申請するとき、五十三年の七月に申請がありましたね。そのときには、たとえばこれこれのサービス改善を行います、これこれのサービス改善を行います、これをやるのでこれだけ金が必要なんですから認可してください、こういうふうになっているわけですね。認可自身は条件づきではありませんけれども、しかし、そういうサービスの改善を行えということは値上げの認可をしたとき鉄監局長名で出されているわけですね。  たとえば、ここに私ちょっと五十三年のサンプルを持ってきましたが、これは前の鉄監局長の山上さんが各民鉄の社長あてに出したものなんです。これを読みますと、「今回の運賃改定に際し、貴社の鉄軌道事業の運営に関し各方面より種々の改善方についての指摘があったことに鑑み、特に下記事項について特段の配慮を払い、今後一層運営の改善に努められたい。」そして、一つは通勤混雑の緩和、鉄道の立体交差化等安全の確保の問題、車両の冷房化、こういうサービスの向上をやれということを出されています。ところが、実際見てみますと、そのとおりなっていないんですね。たとえば冷房化の問題にしても、五十四年度中にこうやります、何両やります、達成率何%にいたします、もう数字は細かいこと言いませんけれども、それが、五十四年度の計画が五十五年度、ことしの夏でもまだ達成されていないところがたくさんあるのです。ですから、これから冷房車つくるなんという話はないと思うのですね、これから寒くなるんですから。ですから、ほとんど五十五年度の計画というものも五十五年度中に達成しない、そう見ないといけないと思うのですね。これは、こういうサービスをやるから、それに金がかかるから認可してくれというふうに言ってきているわけでしょう。法律的にはそれが条件にはなってないとは言え、社会的、道義的には民鉄はこれをやる義務があるし、鉄監局長はこれを指導して、その申請のとおりやらせる義務と権利があると私は思うのです。  ところが、実際にどうかというと、余り報告も求めていない。また、サービスの改善方について勧告も出していない。勧告を出すことができますでしょう。そういうこともしていない。そうすると、乗客からとってみると、運賃の値上げだけで、サービスの改善も計画どおりいかないということになれば、何か食い逃げされたような、そういう気持ちになる。そういう状況の中でまた二〇%近い申請が出される。乗客は詐欺に遭ったような感じを持つだろうと思うのです。そういう点で、私は、サービスの改善、安全確保問題等等、民鉄当局が運賃値上げ申請のときに約束したもの、これを確実に実行されるようにひとつ強力な指導をお願い申し上げたいと思いますけれども、大臣、いかがでございましょう。
  46. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 全体計画で見ますならば、五十三年度、五十四年度と、全体の投資額はほぼ申請しております額に達しておるのですが、その中身について若干の相違があったかもわかりません。その分は、たとえば用地の買収のおくれであるとかそういうところから、投資額が、いわば計画をしておるものの中でおくれておるものはあるかもわかりませんが、全体の投資額から見ましたら、ほぼ投資総額は計画どおりしておるように私は聞いております。しかし、いろいろと乗客に約束しておる中で、たとえば複線化工事であるとかというようなものでおくれておるものも若干あるかもわかりません。こういうことは役所といたしましてもできるだけ督励させて、仰せのように、計画どおりサービスの改善を実施させるように今後とも努めてまいります。
  47. 三浦久

    ○三浦(久)委員 これは運輸省からもらった資料ですけれども、見直し計画なんと言っている。運賃の値上げが認可されてから計画を変更してしまう。こんなことを許しておったのではだめだと思うのですよ。申請の当初のときの計画をやはり実行させる。そんな見直し計画なんか認めないということで強くやらないと国民の不信を招くんじゃないかということを私はひとつ御指摘申し上げたいと思うのです。  それからまた、混雑率の問題ですね。混雑率の緩和の問題についても約束しているわけでしょう。ところが、実際にどうかと言えば、五十五年度の設備投資計画によれば、車両の増強、これは百十億円です。前年度比で全体として五十億円減っているわけですね。混雑率というのは前年度並みの一九一%になっている。  ですから、こうした混雑の解消という問題一つ取り上げても、冷房化の問題を取り上げても、計画どおり実施してないというのが実態だと私は思いますので、いま大臣がおっしゃったように、ひとつ完全にこれが実行できるように御指導をお願い申し上げたいと思います。  次に、政治献金の問題について一言お尋ねいたしたいと思いますけれども、この民鉄というのは、たとえば運賃の認可の問題、営業の許可の問題、免許の問題、いろいろ運輸省が監督権限を持っているところなんですね。こういう民鉄から自民党が政治献金をもらうのは差し控えなければならないのじゃないかと私は思います。たとえば、ここにございますが、五十三年度でも自民党が二億七千五百万円をこの大手十四社からもらっていますし、五十四年度も二億五千三百九十万円、これだけのお金をもらっています。ほかの政党ももらっていますけれども、まだ大臣を出していないからここでは公表いたしませんけれども、こういうように大臣を出している自民党自身が、いわゆる自分が許認可の権限を持っているこういう大手私鉄から政治献金をもらうということは差し控えなければならないと私は思うのです。大臣はもちろんのこと、自民党自身も差し控えなければならないと思います。  そういう意味で、私鉄大手十四社に対して、そういう政治献金は持ってくるな、すべきではない、そういう指導運輸大臣としてなさる必要があるのではないかと思いますけれども、大臣の御所見を承りたいと思います。
  48. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私鉄は個々の政治家には政治献金は慎んでおると思っております。自由民主党に対して、あるいは政党に対し、しておるというのも慎んでおると私は思っております。ただ、自由民主党と非常に深い関係にございます国民政治協会に対し、会員としての負担金を持っておられると思っておりまして、その協会が自由民主党に献金しておる、こういう手続でございます。いずれにいたしましても、私鉄も一私企業として経営しておるのでございますが、しかしながら公共性が強いことは、これはもう当然でございます。ですから、献金は私はいいこととは思いませんけれども、しかし、やはり法人として社会的通念に基づいて行動する場合、あるいは社会活動する場合、いろいろなつき合いがあろうと思いますので、そういう協会のつき合いをしておると思うのでございます。だからと言って、運賃の査定に際しましてはそういう費用をいわば経費に見ておるというようなことは絶対ございません。運賃査定に際しましては、そういう費用は全部引いて計算をさせておりますので、それは御心配ないようにしていただきたい。
  49. 三浦久

    ○三浦(久)委員 質問しないことについても丁寧に御答弁がありましたけれども、しかし、政治倫理の確立は鈴木内閣の最重要課題であるということは鈴木総理自身が本会議でも予算委員会でも事あるごとに述べられているわけですね。政治倫理というのは、法律違反をしなければいいということではないと思うのです。職務の公正さについて疑いを持たれるようなことはしない、やはりそういうことを確立するということだと私は思います。そういう意味では、こういう民鉄大手から国民政治協会がもらったんだと言いますけれども、しかしそれは社会的には自民党と同じものだと見られているんですね。そういう意味で、自民党に対する政治献金と同じですよ。ですから、そういう意味では、私は、大臣自身も余り好ましいことではないとおっしゃっているわけですから、これはやはり行政指導で、そういうことをするべきじゃないというふうにしていただきたいと思うのです。  それに、特に政治資金規正法が改正になって五年目で、いま見直しの時期ですね。あの附則の八条では何と書いてあるかと言えば、企業献金から個人献金へ移行するんだ、それで五年後にはそういう方向で見直すんだということになっているわけでしょう。それがいまの時期なんです。ですから、政治資金規正法の問題でも自民党の内部でいろいろと問題がある。逆に今度は大企業の制限枠をもっと大きくしようか、取っ払ってしまおうか、緩和しようかというような逆行するような動きがありますね。私はこれは大変残念なことだと思います。幾ら自民党であっても、そういう必要性というものはある。また、大企業からの政治献金を抑制するということは非常に困難がある。それはわかりますよ。しかし、困難があってもやるんだ、政治倫理の確立のためにやるんだというのがあの五年前の三木内閣の決意だったわけですね。それを結局大企業からの政治献金もそのまま容認をなさるというお立場に立つということは私は残念です。  そういう意味で、私は、運輸大臣が、大臣自身がそういう法律の趣旨にのっとって、大企業献金から個人的な献金に移行するという立場から、この大手私鉄十四社の自民党に対する政治献金、これをやめることを指導するように強く要望いたしまして、時間が参りましたので質問を終わらせていただきたいと思います。
  50. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 中馬弘毅君。
  51. 中馬弘毅

    ○中馬委員 きのう新任の大臣が、所信といいますか、あいさつをされたわけですが、その中で、限られた財源での効率的な投資ということをおっしゃったわけで、これは非常に私たち評価をするわけでございますけれども、その効率的なというところに大事な意味があると思うんですね。効率的といった場合に、いままでは往々にすると供給者の論理といいますか、供給者側の立場での効率的ということがどうも優先しておった。やはり必要なことは、需要者側の論理、ユーザーの立場ということでの効率的でなければならないと思うのですね。これを無視しますと、往々にしてユーザーから大きなしっぺ返しを食らうわけでございまして、これは国鉄がいい例であるわけです。  交通機関をずっと整備していくということは、それだけユーザーに対してのいろいろな選択の幅を広げていくことになるわけで、その選択の幅の中でユーザーはそれぞれ選択するわけです。たとえば、その選択の幅が一番多い一つの例をとりますと、東京と大阪なんですね。その東京と大阪の場合に、これは乗客の場合ですけれども、かなりいろいろな交通機関がございます。飛行機があります。それから新幹線がある。在来線がある。それから乗用車がありますし、それからチャーターバスもありますね。それから国鉄のハイウエーバスもございます。  これをユーザーの立場から、まず費用負担という点で見てみますと、飛行機は現在一万四千百円ですか、それから新幹線が九千九百円、しかしグリーンだと一万三千九百円。それから在来線が、これは特急料金も入れますと八千百円になるわけですね。それからハイウェーバスで七千四百五十円と、こういうことでございます。しかし、チャーターバス、たとえば三十人ぐらいの団体あるいは五十人ぐらいの団体でバス旅行しようとした場合に、チャーターバスだと一日大体十五万円です。高くて十五万円ですね、これはちゃんと添乗員も乗せて。これを五十人で割りますと三千円ぐらいになるわけです。それから乗用車、最近の方はみんなマイカーをお持ちでございます。マイカーを持っておるわけですから、その減価計算の費用は考えなくていいわけで、追加費用ということでガソリン代だけあればいいわけですね、その人の負担ということで考えるならば。そうすると、ガソリン代は大体一万円か一万二千円あったら東京−大阪間は行けるわけです。これも二人も乗れば、あるいは三人乗ればずっと安くなってしまうわけです。そうすると、費用という点だけで考えるならば、これは少しの団体であればチャーターバスをお使いになるでしょうし、あるいは場合によっては、乗用車を持っておれば乗用車で行くということになるわけですね。  今度スピードの点で言いますと、これはやはり飛行機が一番早うございます。それから新幹線がその次、それからバス、乗用車、こういったことになってくるわけですけれども、今度もう少し別の観点から、では、いつでも乗れるかといったような利便性の点で考えますと、乗用車の場合だったら、いつでも、どこからでも乗れるわけですね。それから、団体のバス旅行の場合でも、ちゃんとやれば、集合場所に来てくれて、目的地まで連れていってくれる。非常に便利ですね。新幹線は非常に数が多いですけれども、飛行機の場合だと、いまは少し大型化して便数は減っております。ですから、たとえば二時間ぐらい待たなければならないだとか、あるいは夜は飛ばないといったようなこともあります。それから、在来線はもうほとんど走っておりませんから、これは利便性が悪いということになってまいりますね。  このようなことをずっと並べて考えてまいりますと、費用の点から考えたら確かにバスや乗用車の方に移るのは当然でございますし、あるいはスピードという点からするならば飛行機の方に移ってくる。しかも、今後のことで考えますならば、関西新空港ができ、あるいは成田、羽田が整備されて、もう少し便数でも多くなれば、ますます飛行機の方に移っていくという形になってまいります。そうすると、新幹線というものも、これはやがては閑古鳥が鳴くようなことにならないとも限らないんですね。しかも、運賃が、先ほどの話じゃないけれどもどんどん上がっていくわけですから。そうすると、新幹線すら閑古鳥が鳴くようなことになってこようかと思います。  そのような観点から、今後の一つ日本の交通体系といったものを考えたときに、整備新幹線という話も出ておりますけれども、こういうものが果たして現在の時点で要るのか要らないのか、全くむだな投資になる可能性が出てまいっております。それよりも、新幹線というのは大量、高速に意味があるわけで、むしろ少量、高速度ということだけを考えるならば、これは飛行機の方がいいわけですから、地方の、北海道から九州の端まで、ローカル空港をもっと整備拡充することの方が場合によっては大事かもしらぬわけですね。そして、近距離の大量輸送といった場合には、いまの国鉄のローカル線がそれに適当かどうかは別といたしまして、新種交通を考えてのことをやっていった方がいいんじゃないか。  そのようなことを大臣の方は、今後のかなり長期のレンジで見たときの効率的な投資といった点で考えますと、大臣はどのような御所見をお持ちなのか、ひとつ御見解を承りたいと思います。
  52. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 効率化ということを考えます場合に、ユーザーの面から見た効率化、これも確かに考慮しなければならぬ問題でございますし、また、運輸機関経営者側から見ましても効率をやはり検討しなければならぬ、こう思います。まさに仰せのとおり、私はそれを八〇年代の一番大きい問題だと実は思うておりまして、中馬さんのおっしゃるように、交通機関を選択するファクターというものが非常に多様化してまいりました。それだけにこれからの、まあきざな言葉で言いましたらニーズというものはどういう方向に向いていくかということ、これを正確につかまないと、効率化でやったものがかえって遊休施設になってしまうというおそれなきにしもあらず、それを私は非常に心配いたしております。  お尋ねの整備新幹線の問題でございますが、現在運行しております新幹線そのものは、確かに経営的に見ましてもいまプラスになっておりますし、同時に、地域開発には非常な効果を及ぼしたように私は思うております。しかし、これからの将来を見ました場合に、交通機関がどう変わっていくかということ等の取り合わせも見て考えなければならぬ点は多々あると思います。  そこで、整備五線の問題につきましては、これは第一に建設費が非常に多額にかかりますので、その建設資金の捻出をどうするかということ、財源問題でございますが、これがまず第一の問題でございますことと、それからフィージビリティーと申しましょうか、そういうことが企業的に本当に国民経済から見ていいのかどうか、本当に有効なのかどうかというこの問題もございます。そういう点から判断して決めるべき問題でございまして、私たちはいままず第一に財源問題に全精力を打ち込んで検討しておるというところでございます。
  53. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ということは、その有用性も含めて、採算性も含めて、整備新幹線を一から見直すという御発言と御理解していいわけですか。
  54. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 この整備五線は、建設するという方向は決まっておるのでございまして、それを建設するに必要な資金というものがまず第一に見ていかなければならぬ。その資金を考える中において、この新幹線の活用と、そして、これがどのように地域開発と結びついていくかということをあわせて検討されていくべきものだ、こう思うております。
  55. 中馬弘毅

    ○中馬委員 新幹線が、先ほど私がるる述べましたような形でもうすでに飛行機あるいは地域の高速、小量に取ってかわられてもしかるべきだ、そのようなことで需要者は選択しますよということです。ということは、自動的に採算に乗らないということですから、そういうことも含めて見直すべきだ、新大臣のもとで見直しになった方がいいんじゃないですかということを含めて、逆にお願いをしておきたいと思っております。これは同時に、貨物における鉄道、自動車、内航海運といった問題にもひっかかってまいります。  それから、それに関連したことでございますけれども、やはり新種の交通ということを少しは考えていかなければいけないんじゃないか。新技術の開発、大臣もおっしゃっておりました。従来、国鉄——国鉄といいますか、いわゆる汽車鉄道ですね。これは百年の寿命がございました。しかし、新幹線は技術的に見てもぼくは三十年だと思っております。需要者が選ぶという意味での技術的な意味で三十年だと思いますね。ですから、それの後に来るものが、それはたとえば航空機であるならば低騒音あるいは短距離の離着陸のものであったり、あるいは船であったら高速の何かジェットフォイルのような船であったり、また鉄道であるならば磁気浮上のものであったり、あるいは無人の交通機関であったり、それから自動車であれば無公害あるいは省エネルギーといったような問題も入ってくると思うんですね。  このような一つの新技術を持った交通機関というものを、ただ通産省やあるいは科学技術庁に任しておくのではなくて、運輸省として二十一世紀を展望した交通機関、交通技術といりたものはどうあるべきかということを総合的に研究すべきだと思うのですね。しかし、どうも総合的にそのことがなされておらないように思います。その点についていかがでございますか。
  56. 石月昭二

    石月政府委員 新しい交通機関と申しますか、交通技術の開発というものが交通の進歩にとって非常に重要なことは先生のおっしゃるとおりだと思っております。運輸省におきましても、ただいま先生がおっしゃいましたような新型の輸送機関といたしましては磁気浮上式のリニアモーターカーであるとか、それから新交通システムと申しております無人運転の新型の中量軌道輸送方式であるとか、その他トンネルの断面の少ない小型の地下鉄の問題であるとか、それからライトレールウエービークルと言っておりますけれども、新しい形の街路を走ります電車というような問題等につきまして、いろいろ検討しているところでございます。そのほかに、これに関連いたしまして、交通に関連する省エネの技術開発、たとえば電気自動車であるとか水素エンジンの自動車であるとか、高温ガスタービンの複合機関であるとかというような問題、さらには公害防止の観点から無公害の交通機関というような観点のいろいろな研究等も進めております。  この研究体制につきましては、一つは、運輸省にいろいろございます技術研究所等におきまして基礎的なものについてはやっております。それから、応用技術的な面が非常に必要でございまして、民間の技術力を利用しなければならぬというようなものにつきましては、技術開発に対する補助金を交付してやっているところでございます。  なお、二十一世紀を展望いたしまして、今後どのような技術に重点を置いて開発すべきであるか、さらにはその技術開発体制をどのようにすべきであるかというような点につきましては、運輸技術審議会に諮問をして、これからさらに検討を進めていきたいというぐあいに考えているところでございます。
  57. 中馬弘毅

    ○中馬委員 このようなものも含めて、先ほど申しましたように、新幹線すら、東京、大阪という二つの大きな人口の集積した都市を結ぶのには新幹線というのは大変有用かもしれませんが、たとえば北海道や東北に延ばして採算に乗るとは思っておりませんし、むしろそれよりもローカル空港を整備して、それからいま言った短距離で高速で小量のものを運べるローカル交通機関というものを整備した方がいいんじゃないか、それこそユーザーの立場を考えた効率的な投資になるんじゃないかと思っております。  それから、都市の交通に関して、タクシーの値上げの申請が出てまいっておるようです。これは昨年の九月に一五%値上げして、二年ごとの値上げという慣例を一応破った形になっているわけでございますけれども、大臣はどうお取り扱いになる御所存ですか。
  58. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 主として東京都の業者で申請書が提出されておりますが、まだ全タクシー業者の申請書が出そろっておらないと聞いております。個別の申請のみで処理するということにもまいりませんしいたしますので、業者の申請の出そろった段階におきまして取り扱いを考えたいと思うております。しかし、これはただいま物価問題が非常に重要な政治課題でございますしいたしますので、この申請が出そろいました後におきましては、十分私たちはその物価の面を考慮いたしたい。そうして、業者が言っておりますように、人件費それから燃料費等の高騰もこれまた事実でございますから、そういうようなものを兼ね合わせ、経営実態を十分に審査いたしまして、そして真にやむを得ないものがどの程度のものなのかということを精査をした上で決定いたしたい、こう思うております。
  59. 中馬弘毅

    ○中馬委員 これは十分に慎重にお取り扱いいただきたいと思うのですが、必ずしも絶対値上げをしてはいけないと私は言っているのではなくて、三百八十円必ずしも高くはないと思っております。といいますのは、これは都市バスが百円とか百十円しているわけですから、三人、四人乗ればその方が安くつくようなことでございまして、しかし一方でタクシーを値上げしながら都市バスは市営交通赤字だから便数を減らすといったことになると、利用者はそれこそ踏んだりけったりになるわけですね。ですから、ぼくはタクシーはある意味ではぜいたくな乗り物だと思っておりますから、歩いてもいいし、場合によっては自転車でもいい。自転車に乗る場合に、駅前の自転車置き場は満員でどうしようもない。こういった全体的な一つの枠組みができていないような気がするんですね。ですから、値上げをされるのも一つのあれかもしれませんけれども、そのときにはそのかわりにたとえば深夜のバスをちゃんと確保するだとか、あるいは団地の乗り合いバス、これは前にも私、御質問いたしましたけれども余り整備されておりませんが、乗り合いバスをちゃんと出すとか、そういったユーザーの立場とあわせて考えないと、それこそ都市住民の不満がますます大きくなってくると思うのですが、いかがですか。
  60. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 全く抑せのとおりでございまして、そういう点、われわれも十分に注意を払い、また、その趣旨が徹底するように努力いたしてまいります。
  61. 中馬弘毅

    ○中馬委員 きのう関西新空港の問題につきましては、運輸大臣、大変積極的にお取り組みの様子も聞かしていただきましたが、その中で、実施計画あるいは環境アセスメント、周辺整備といったようなことはお答えがありましたが、運営をどうされるか、これについてきのうは御答弁がなかったので少しお伺いしておきたいと思います。  やはり成田と同じような形で公団をつくって運輸省直轄のような形でやられるのか、あるいはいま関西財界あるいは地方自治体に対しても地元負担ということも運輸省はおっしゃっているようですから、それと絡んであわせて考えるならば、やはりたとえば万博をやったときのような形で、むしろ民間の活力を生かした形での運営にされていく御所存なのか、そのあたり大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  62. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 運営とおっしゃることは事業主体と運営とあわせてのお話だと承っております。これは中馬先生承知の大阪でございますし、大体あの関西地域の事業というのは官民合同でやるのが本当は一番いいのではないか、そういう土地柄に合った民間の活力を使うのには一番いいところではないかと私はかねてから思うております。でございますから、事業主体についてはまだ何にも考えておりませんけれども、これは運輸大臣だけで決定できる問題ではございませんので、財政当局なりあるいは地元あるいは他の関係官庁と協議をしなければならぬと思うておりまして、まだ決定の段階ではございませんし、したがって、まだ私自身は白紙でございますけれども、そういう民間の活力が生かされる方向に考えるべきだ、そう私は思うておるのです。その意味におきましても、ぜひひとつ地元の積極的な協力をいただく意味において地元に負担もお願いいたしたい、こう思うております。
  63. 中馬弘毅

    ○中馬委員 大臣の御所見にこちらも賛同いたしますので、その線で進めていただきたいと思います。  それとあわせて、成田の今後の見通し、関西新空港が、きのうの大臣のお話ですと六十五年でしたか、第一便が飛ぶのが、それと成田がそれまでにちゃんとした、二期工事までの両方の絡み合いの問題、どちらが先になるのか、そこまでに完成させるのかどうかといった問題、それの補完としての羽田あるいは伊丹の問題、それぞれに対応する。大都市にはぼくはどうしても空港は二つ要ると思っておりますけれども、その点のことも踏まえて大臣のお考えを承りたいと思います。
  64. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 成田空港では、御承知のように、まず第一に燃料輸送というもの、これをやはりきちっとしなければなりませんので、現在パイプラインの建設を急いでおるところでございます。これの見通しを早急に立て、そして予定どおりの建設をしてまいりたいと思うておりますが、それと並行いたしまして第二期工事、これはまだ若干の方々の賛同を得られない状態でございますが、極力努めまして第二期工事に御協力いただくように持っていきたい、そして成田空港が所期の機能が発揮できますように鋭意努めてまいりたい、これはやはり日本が国際に向けての顔でございますので、一刻も早く完全な空港として整備されることを私たちは望んでおりますし、そのためにも鋭意努力をいたしておるところでございまして、幸い地元におきましても日々協力していただく体制もできてきておりますので、その機会にできるだけ早くこの完成を急ぎたいと思うております。  それから、伊丹空港についてでございますが、御承知のように、伊丹空港の問題につきましては、関西新国際空港が供用を開始したときに存廃を含めて検討するということになっております。したがいまして、それまで私たちといたしましてはできるだけ伊丹空港の環境整備に十分な努力をしてまいりたいと思うておりまして、なお新空港の建設と並行いたしまして地元の意見等も聞き、先ほど申しました検討を進めていきたいと思うております。
  65. 中馬弘毅

    ○中馬委員 時間がございませんので、あと二点だけお伺いします。  きのうの大臣のごあいさつの中で行政改革に取り組む御姿勢の方が入っておりませんでしたので、その点をお伺いしたいと思います。  特殊法人の統廃合の問題では、外貿埠頭公団の廃止は一応決まっておりますが、これに対する取り組みの仕方、それから鉄建公団についてもこの統廃合の問題が出ておりますけれども、これに対する御所見、それから特殊法人ではなくて、今度は内部機構の方の、何か運輸省としての行政改革に取り組む姿勢あたりをお願いしたいと思います。
  66. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 運輸省所管の特殊法人につきまして、鉄建公団なり外貿埠頭公団に対する政府一つの態度は決定されておりまして、この政府の決定は私たちは忠実に遵守していきたい、こう思うております。  そこで、鉄建公団は、御承知のように、三千数百名の職員がおりますし、しかもこの鉄建公団は、先ほど中馬先生お話の中にあったように、将来の交通機関に対する技術、この技術がなかなか鉄建公団に集約されておるようにも、ここばかりじゃございません、国鉄にも優秀な技術者がおりますし、また運輸省の研究所にも優秀な技術者がたくさんおりますが、鉄建公団には相当な技術者がやはり集結しておるのでございますが、この技術力といいましょうか、この技術の勢力というものは、私は国益の面から見ましてもやはり何らかの面で活用を図りたいと思うております。それはいろいろな方法はございましょうけれども、それをどう活用していくかということはこれからの鉄建公団の整理と、そして新しく生まれ変わっていく方向をつけていくものだと私は思うておるのでございまして、ぜひそういうふうにあってほしいと念願しておるのでございます。  それから、外貿埠頭公団につきましては、これは外貿埠頭公団の権利義務をどこに移管するかということにつきましていま協議を進めておるところでございます。この最終的な決定はまだいたしておりませんけれども、要するに、これを移管するにつきましては、港湾の管理が一元化してうまくいくようにいたしたいということと、同時に、外貿埠頭公団はコンテナの集約を目的としてつくったものでございますから、その業務並びに機能というものが十分に、そして安定して経営ができるような方法を講じていきたい、したがって、それを供用しておりますところの業者もそれなりの長期に立った経営考え、設備もしてまいったことでございますので、そういう船社、いわば業者の意向をも反映し得るような方法を講じて解決いたしたいと思うております。
  67. 中馬弘毅

    ○中馬委員 最後に、運輸省は非常な許認可を持っておるわけでございますが、中には地方自治体に任せていいと思われるものが非常にたくさんあるのですね。バスの停留所を一つ動かすだとか、あるいは駅前のタクシーの配車だとか、そういったことにまですべて運輸省がかむことないのじゃないか。地方の警察なりあるいは自治体で協議して決めたらいいようなことまでも運輸省の認可が要るということについてはわれわれも非常に疑問に思っておるわけでございまして、地方の時代と言われているようなことでもございますから、許認可事務を極力地方に移管するという点について大臣のお考えをお願いいたします。
  68. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 御希望はお聞きいたしますが、しかし、これは一概に簡単に、それはオーケー、よろしゅうおますということはちょっと言えないような状況もございまして、御意見のあることは私たちも尊重いたしていきたいと思います。しかし、業務の性格なり行政の効率等考えますと、一概にはいかないような点もございます。  それで、ついでに申し上げますと、運輸省の所管の許可認可の件数は約二千二百ほどあると承知いたしておりますが、そのうち、安全に関する許可認可権というのが実は八百数件ございまして、これが一番大きいウエートでございます。そういたしますと、運輸機関一つの大きい目的でございます安全の確保という点について、これは相当なウェートを占めておるという点もございます。そういう点も配慮していかなければならぬのでございます。しかし、仰せのように、地方自治体に任して十分なところ、あるいは他の官署に移管しても全国的な行政の責任なり統制というものに支障がないというような点、そういう点につきましては御趣旨を生かしていきたいと思います。
  69. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いまの安全の問題でも、たとえば本当にきめ細かいことはむしろ一番現場に近い地方自治体の方が詳しいわけでございますから、そういう点もそういうところまでわざわざ中央官庁が見なければならないということもないと思うのです。大臣は布施の助役さんもされた地方自治体の経験者でございますので、その辺のことも含めて地方分権の立場での行政を進められることをお願いして、質問を終わります。
  70. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 午後一時から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時十二分開議
  71. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福岡義登君。
  72. 福岡義登

    ○福岡委員 国鉄の再建法案の審議に入るに当たりまして、私ども社会党の立場を明らかにしておきたいと思うのでありますが、現在の国鉄が十兆円を超える長期負債あるいは六兆円を超える累積赤字、こういう国鉄の現状に対しまして重大な関心を持ちますと同時に、何とか再建の道を打ち立てたいという気持ちでいっぱいでございます。国鉄の再建を考える場合に、今日のような状態にどうしてなったのか、過去の反省といいましょうか、現在に至った経過を分析をする必要があろうと思うのであります。それをここで逐一論ずる時間がございませんが、端的に申し上げまして、国鉄が今日のような状態になりましたのは、政府並びに与党の自民党の交通政策がなかったと言っても過言でないのであります。この点につきまして、やはり政府としても反省をしていただかなければならぬということを冒頭に強く申し上げておくところでございます。  国鉄の再建に関しましては、過去何回か再建に対する基本方針でありますとか、あるいは閣議決定であるとか、あるいは閣議了解事項というようなことで、何回かその対策に取り組まれたことはよく承知いたしております。しかし、それでも国鉄の再建が軌道に乗らなかった、なぜかという、そこが問題であります。過去六回、申し上げましたように閣議決定などがされておるのでありまして、今回で七回目なんであります。昭和四十四年以来十年余にわたって国鉄再建が論じられながらも、なぜ再建が軌道に乗らなかったのか、ここが問題だと私は思うのであります。  念のために過去の経緯を申し上げてみますと、昭和四十四年の九月の十二日に閣議決定で日本国有鉄道の財政再建に関する基本方針というのが策定されました。これは昭和五十三年度に償却後の黒字を目標にしたところの計画でございました。ところが、これがうまく軌道に乗らないで、今度は昭和四十七年の一月でございますか、覚書で国鉄財政新再建対策要綱というのが発表されております。これは昭和四十七年ですね。昭和四十七年に覚書を対策要綱として決められておる、これが二回目であります。  三回目は、昭和四十八年の二月二日に閣議了解で日本国有鉄道の財政再建対策について、これは昭和五十七年度に収支均衡を目標にされた計画でございます。  五回目は、五十年の十二月三十一日閣議了解、表題は日本国有鉄道再建対策要綱についてであります。これは昭和五十一年、二年の二カ年間で収支均衡を目標とするというものでございます。  六回目が、五十二年の一月二十日閣議了解、日本国有鉄道の再建対策について、これはおおむね昭和五十四年度に収支均衡を図るということが目標にされて策定されたのであります。  その次が、昨年の十二月二十九日、今回再建法を提案されておる基礎になっておるものなんでありますが、これは日本国有鉄道の再建の基本方針、目標とされておりますのは昭和五十年代に収支均衡を図る。国及び国鉄は五十三年、五十四年度中に所要の対策を確立することを目標にされておるわけであります。今回がこういう法案になっておるわけでございます。昭和六十年までに健全経営の基盤を確立し、引き続き速やかにその事業の収支の均衡の回復を図る、これが昨年十二月二十九日閣議了解とそれで法案になっておるわけであります。  これほどまでに、日本の英知だと私は思うのでありますが、交通関係に関する英知を結集されまして六回に及ぶ計画をそれぞれ立てられた。十年余にわたってその歳月が費やされておるわけであります。にもかかわらず、国鉄の再建が軌道に乗らなかったのは一体なぜかという、ここが問題だと思うのであります。これが解明されなければ幾ら法案をつくりましても国鉄の再建はできないと思うのです。運輸大臣、いかがでございますか。
  73. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 国鉄が赤字に転落いたしましたのは昭和三十九年と聞いております。以来十数年にわたりまして長い間、何とか立て直したいと関係当局並びに国会におきましてもいろいろな御建議をいただき、努力してまいりました。まさに病める巨象という感じがいたすのでございますが、しかし、なぜこうなったのかというお尋ねに対しまして、これが原因であるという単純な原因だけではないと実は私は思うておりまして、いろいろな要因が複合いたしまして今日の事態になってきた。その一つといたしまして道路の発達、空港の整備等が進んでまいりまして、国鉄の輸送に対する、いわば独占的な輸送体制というものがそれによって崩れてまいったということが大きい原因ではなかろうかと私は思うております。そして、それとまた相並行いたしまして、鉄道の特性を失っておるところであっても、なおかつ国鉄の公共的また国家的使命のもとにおいて運営せざるを得なかったことも一つの原因ではなかったかと思うたりいたしております。さらには、過去におきまして労使間にいろいろな問題もございましたし、そういうこと等を踏んまえましたら、まさに総合的に国鉄の再建策を講じていかなければならぬ時期に来ておると思うておるのでございます。私たちは、よって来ったその数多くの原因を一つ一つ丹念にこれから改正の方向に進めてまいりたいと思うております。
  74. 福岡義登

    ○福岡委員 確かにいろいろな要因で国鉄が落ち込んだ、おっしゃるとおりだと思う。マイカーがどんどんと伸びてまいりました、飛行機が発達をいたしました、それは私も否定をいたしませんが、そういう時代に即応した適切な交通政策があれば今日のような状態にはならなかった。国鉄は大丈夫だろうと簡単に物事を考えられまして、適切な対策を講じられなかったところに根本的な問題がある。大臣、ここのところはこの法案を審議するに当たりましてはっきりしておいていただかないと問題の解決にはならぬと思うのであります。  それからもう一つ、労使間の問題もあって、こうおっしゃいました。確かに私もよく承知をいたしております。ただ、申し上げておきたいと思いますのは、国鉄当局に当事者能力が非常に不足しておる。あるときには労使で合意をしたことが実行されない場合だってあるわけであります。もし、もう少し当事者能力を国鉄に与えておれば無用な紛争は回避できた点もたくさんあると思う。この点は後でまた同僚議員が詰めていくと思いますけれども、私がここで申し上げておきたい点は、繰り返しますけれども、具体的なその時代に即応した政策というものがタイミングよく打ち出されていけば国鉄はこうならなかったんだ、それがなかったから今日の国鉄の状態を招いたんだということを申し上げたいのであります。  以下、六回にも及ぶいろいろな対策が立てられながらも国鉄の再建が軌道に乗らなかった、その点を二、三お尋ねをしてみたいと思うのであります。  一つは、国鉄の再建を安易に運賃値上げに頼ってきた、その結果大きな国鉄離れが生じておる、ここに問題があると思うのであります。典型的なのは昭和五十一年度に五〇%の大幅な運賃値上げをされました。運賃が上がればお客が減るだろう、あるいは荷物が減るだろうというようなことから、実際の増収は三六%程度しかないだろうということを見込まれたわけですね。予算案の策定ではそうなっておる。ところが、実績はどうなっておるかといいますと、わずかに二〇%程度の増収でしがなかったのであります。機械的に計算をいたしますと、五〇%運賃を上げたんだから五〇%増収があってしかるべきなんですね。しかし、さすがに政府の方も、国鉄離れがあるだろうということを見込まれまして三六%で予算編成をなさった。ところが、実際には二〇%しか増収にならなかった。それだけお客や荷物が他の輸送機関に逃げた。逃げたというよりも追い出されたと私は思うのであります。それも私はそのはずだと思うのでありますが、当時の運賃をいろいろ比較をしてみますと、東京−大阪間の例で、これは五十一年の十一月、五〇%値上げをしたときの運賃なんでありますが、飛行機は一万四百円、国鉄でグリーン車の方は一万四千三百円、普通車でも八千三百円なんですね。こういう運賃の格差ができたわけであります。当然お客が新幹線から飛行機に逃げていく、そういうふうになってくると思うのであります。  それから都市交通、通勤輸送でございますけれども、通勤輸送の方も非常に私鉄との格差が生じてまいりました。新宿−高尾間、国鉄は五十三・一キロの営業キロでありますが、五百九十円、私鉄の京王は四十四・七キロで運転営業キロは少し短いのですけれども、二百七十円、国鉄の方が倍以上でしょう。もう一つ、大阪と三ノ宮の間に例をとってみますと、国鉄は三十・六キロの営業キロでありますが三百六十円の運賃、並行して走っております阪急は三十二・三キロで国鉄よりは少し営業キロは長いのですけれども百八十円。倍でしょう。  飛行機と新幹線、私鉄と国鉄を比較をするとそういうことになっておるのであります。運賃値上げ政策がいかに間違いであったか、増収を図る基本というのは、運賃よりもたくさん人に利用してもらうということが基本でなければならぬのに、それを追い出すような、しかも五〇%というような予想外、法外な大幅な値上げをした。どう思われますか、運輸大臣
  75. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 運賃の値上げによりまして客離れが起こったということは、これはまさに御指摘のとおりでございますし、また、それによって国鉄と他の私鉄との間に非常な格差が出てまいったことも御指摘のとおりでございます。これは私たちも、決して運賃の値上げというものをただそれによってのみ解決しようとは実は思うてはおりませんが、できるだけ運賃は低目に抑えてということでございますが、しかしながら、どうしても国鉄自身の増収を図るという意味から、それだけの運賃の値上げをせざるを得なかった。普通の私企業でございましたならば、これは一人当たりの運賃収入を上げる、何と申しますか、生産性向上の努力も相まって、その上で運賃というものを決定すべきものでございましたでしょうが、なかなかそうはいかない事情がございました。先ほど先生も御指摘のように、国鉄が当事者だけで決められない条件を持っておりまして、いわば公共機関、しかも超公共機関でございますだけに、経済合理性のみでは解決できないいろいろな要件がございました。そういうことから、結局は運賃率でいわばそろばん合わせをしてきた。そのそろばん合わせが実は合わなかったという現象が今日出てきておることは、もう認めざるを得ない現実であると思うております。
  76. 福岡義登

    ○福岡委員 大幅運賃値上げ案が国会にかかりましたときに、われわれはこういうことになりますよというのを予告をしておるはずであります。ですから、運賃値上げ政策というものを再検討されたらどうですかと言ったのですが、聞き入れられなかった。済んだことですから、それ以上申し上げても意味がないと思いますが、やはり運賃値上げ政策というものにもう限界がある。特に他の輸送機関とのバランスというものは大切である、この点を申し上げて、次に移りたいのです。  もう一つは、国鉄がなぜ再建できなかったかという第二の理由なんでありますが、国鉄の機能が低下をいたしまして、他の輸送機関に比べてサービスも悪くなった。先ほど申し上げましたように、増収の基本というものは国鉄の利用者をふやすことである、決して運賃の値上げではない、こう申し上げたのですが、もう少し国鉄が機能低下しないように、他の輸送機関と大体同じような条件をつくるように努力をしておったならば、運賃の値上げをしなくても、利用者がふえるわけでありますから、増収になっておったと私は思うのであります。  どういう状態になっておるかということをちょっとあれこれ調べてみますと、公共投資の面から考えてみますと、こういう状態になっておるのですよ。  昭和三十年から五十三年度までの公共投資額を比較をしてみますと、道路は大体八十三倍投資をしている。飛行場、空港は七十倍、港湾が五十倍。それで、国鉄は何倍になっておるかということを見ますと、わずかに二十倍でしかないのです。細かい数字は申し上げませんが、結論だけ言うと、公共投資はそういうようになっておるのであります。国鉄の機能を低下させないためには、少なくともこの三倍や四倍の投資はあってしかるべきだったと思うのであります。しかも国鉄の投資は、いわゆる公共投資と言われる言葉の中に、国鉄の場合は車両も車両を検修する工場も宿舎も、そういうものを全部含めて二十倍にしかなってないのです。ところが、道路なんかは道路をつくるだけで、港湾も下部構造だけで、空港も設備は別にして、いわゆる空港の基盤だけ整備することを公共投資で計算されておるわけです。もし、国鉄を他の公共投資と同じような条件に置きかえて比較をすると、恐らく二十倍じゃない、十五、六倍に落ちるのじゃないかと思うのですね。  こういう公共投資の状態が今日の機能低下を来しておる、こう思いますが、大臣どうですか。
  77. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 道路、空港あるいは港湾と鉄道と全くそのままの比較にはならないようにも思うのでございますが、なぜかと申しますと、鉄道は明治開化以来ずっと長年にわたって投資してまいりまして、その集積を持っております。ところが、道路等におきましては、戦後において初めて本格的な道路建設が行われたし、特にモータリゼーションのために集中的に行われた、それが八十数倍という大きい数字になったこと、これはもう事実でございます。  そこで、それでは国鉄の投資は機能低下させない程度にやっておったかと言いましたら、これは私も、先生のおっしゃるように、十分努めておらなかったように思います。投資の額そのものの問題ではなくして、その投資が国鉄の利用者のためにどのように有効に働いたのかというところが問題なのではないかと思うのであります。しかし、過去の投資の前例をずっと見てまいりますと、新幹線等有効に生きておるところもございますが、しかし採算の面から見ていかがかと思われる路線にまでも投資してきておる。それがやはり今日の国鉄の中に抱いておる一つの悩みとして浮かび上がってきておるように思うております。
  78. 福岡義登

    ○福岡委員 国鉄は明治の時代からもう百年以上経過したことは事実なんです。道路は最近になってからだ、こうおっしゃる、その意味もわからぬわけじゃない。ところが、国鉄の実態というのは、戦時中あるいは戦後、あれだけ酷使しておる。戦後の国鉄に対する投資というのは、新幹線が一番大きい投資でしょう。それから、政治路線と言われる、後でも議論しますけれども、どっちみち開通をしてももうけにならぬ、赤字がはっきりしておる、そういうローカルの新線建設というものを中心に投資をしてきたわけであります。戦時中や戦後に酷使をした在来線の機能回復というものは十分なされていないのであります。たとえば線路に例をとりますと、まだ軽量軌道、三十五キロクラスの軌道が物すごくある。貨物列車がときどき競合脱線をする。やはり線路の状態がよくないからである。それから、大臣は案外ローカル線にはお乗りになっていないかもしれませんが、線路が悪いために、あるいは車両が十分でないために時速三十キロ前後の運転しかできない。しかも、都市圏輸送で言えば、通勤輸送の需要は高いけれども一、もう国鉄の能力は限界に来ておる。  申し上げれば際限がございませんが、いままでの公共投資が非常に偏在をしておる。国鉄の機能を低下させるような公共投資しかしていなかった。裏側から言えば、今後国鉄の再建をやる一つは、機能低下をしておるものを向上させる、こういうことが必要だと思うのであります。あわせて、先ほどちょっと言いましたけれども、今日まで国鉄がいろいろな意味で合理化をしてきた。増収対策よりも、業務の切り捨て、サービスの低下と運賃値上げでつじつまを合わそうとされてきた。合理化によってサービスが低下している。たとえば駅の無人化がそうであります。利用度が少ないからといって列車ダイヤを削減をするということもそうです。あるいは車両の改造をやればもう少しよくなるのに、経費を節約をするという理由から手心を加えられておる。私もある程度車両はわかるのでありますけれども、ときどき乗ってみまして、ここにちよっと手を加えれば、この車両は乗り心地がよくなるのになと思うことが再三再四であります。さっき言いましたように、スピードがダウンしておるわけで、職員をどんどん減らすわけでありますからサービスも低下する。例の夜行寝台などは、私どももよく利用さしていただくわけでありますが、一ころのサービスに比べると格段の差であります。前はボーイが乗ってきちっと寝床も延べて、朝は新聞を配って、いろいろサービスをしていた。このごろは最初からだれもいない。こういうように今日まで、一口で言いますと無理な合理化をやってサービスを低下させて、国鉄からお客を追い出しておる。  私鉄と国鉄の乗り心地ですね。新幹線は、これは別格でございますけれども、その他の一般列車の車両で比較をしますと、やはり私鉄の方が乗り心地がいい。それはもう狭軌である、国鉄のレールの幅は狭い、そういうこともあるでしょうが、しかし車両を改造したり、あるいは古くなったものは置きかえるとか、線路が弱っておればそれを取りかえるとか、そういうことをやっていけば私鉄と同じくらいの乗り心地にはなるはずであります。  さっき何回も申し上げておりますように、増収の基本ば利用者をふやすということであるのに、その対策を忘れてサービスを低下させて、逆に利用者を追い出しておる、これが国鉄再建ができなかった第三の理由だと思うのです。  どうお考えでしょうか。根本的に再建への角度が、方向が間違っておるということを私はお尋ねしたいのであります。
  79. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 サービスの低下と機能の低下は、私は相関連しておるものと思います。  確かに、おっしゃるように、私も先日東北線に乗ってまいりましたが、東北線の大宮に至るまでの間、北の方から上野へ帰る途中でございましたが、大変な揺れでございまして、技術屋として経験しておられる先生方から見ると、特に福岡先生から見たら、これは大変な傷みであろうということがおわかりになる。私ら自身でも減耗しておることが直接わかるような状態でございます。そういうところに投資をいたしたい。私は、国鉄が再建をする一つの再建努力目標の中に、そういう一番利用していただいておるお客さんに対する、そういう物の面から、いわゆる設備の面からするところのサービスの提供ということ、これは大いに努めていかなければならないと思うております。それと同時に、国鉄の労使双方が一体となりまして、利用されるお客さんに気持ちのいい国鉄としてのサービスの提供、私はこれも一つの大きい再建の要因になってくるのではないかと思うております。
  80. 福岡義登

    ○福岡委員 お話はわかるのですけれども、いままでやってこられなかったのですね。先ほど来申し上げておりますように、十年余りかかって、六回もいろいろと対策を立てられたけれども、それが実行されておれば問題なかった。もっとも間違った運賃値上げなどは別でありますけれども。五十二年十月二十八日、第八十二回国会の本委員会で国鉄の再建に対して決議か確認か知りませんが、国鉄の基本方向ということでやられております。これをいろいろ読んでみますと、書いてあることが実際に実行されていない。大臣は先ほどおっしゃったようなことを言われますけれども、実際にそれがやられておれば今日の状態はなかったのですね。やられてなかった。今度法案を出されたのですけれども、本当にやる気があるのかどうか、私どもは非常に半信半疑であります。労使が協力をしてやらなければならぬことは、お話を聞いたとおりで、私も同感でございます。しかし、いまのような状態で、あるいは今日までのような状況下で、国鉄の職員はもちろんですが、国鉄を預かっておる総裁以下役員、まあ管理者も、ふるい立って情熱を燃やして国鉄の再建のためにやっていこうという、あるいは社会的な使命感を強く感じて、生きがいを感じて仕事ができるような環境にあったかどうかということなんですね。国鉄は斜陽である、自動車はどんどん伸びていくけれども、国鉄の利用客は減っていく。合理化に次いで合理化である。予算は圧縮される。設備投資はない。一体、交通分野における国鉄の使命というのは何か、国鉄が受け持つべき分野はどこなのかというようなことが明らかにされないで、労使協力してやれと言われましても、情熱はわきませんよ。先ほど来言っておりますように、いろいろ時代が変わってきたことは認める、しかし、それに対応する政策があれば国鉄は今日のような落ち込んだ状態にはなっていないということを申し上げておるのもそこに理由がある。あとでまた逐一触れていきますけれども、この法案の中で国鉄はかくあるのだと確かに文章には書いてある。都市間輸送あるいは大都市圏の輸送、定型大量の貨物の輸送というように書いてはあるけれども、本当にそれが実行できるような施策が伴っておるかというと、いままで十年も伴ってないわけですから、この法案が通ったからといって急激に変わるというようなことは期待できないというのが、正直に申し上げまして私どもの実感なんであります。労使が協力をして、私どももそのことは否定しませんが、職員や経営者が情熱を燃やすような、そういう条件をつくるのが交通政策じゃないですか。どうでしょうか。
  81. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 おっしゃるように、再建へ意欲を燃やすような、そういう面における積極投資、これは再建の一つの大きいかぎになる、私もそう認識しております。先ほども申しましたように、国鉄が以前から計画しておりました新幹線の延長なり、あるいは地方開発のために引いてまいりました新線工事等もここでほぼ一段落つき、あとは整備五線の財源と合わせて建設ということになってまいりますが、そのように国鉄自身が計画してまいりました大きい工事が一段落ついてくる、ここ数年でその時期が来るであろうと思いますが、そういたしますと、いままで投資してまいりました投資額というものをさらに増額し、その分を合わせておっしゃるような、そういう鉄道の特性を発揮する部門に集中的に投資していくことが再建への一つの大きいきっかけになってくる、それはもう私もそのとおり思うております。
  82. 福岡義登

    ○福岡委員 国鉄の投資は、この再建案の基礎になっております去年の閣議の確認は、現在程度、こう書いてある。極力抑えて現行程度を超えないというように書いてあるのですが、これでは機能回復はできないと私は思うのです。くどいようでありますが、何よりも私どもが一番得心できない点は、国鉄の事業分野というのはわかりやすく言えば一体どのくらいあるのか。都市間輸送、大都市圏の輸送、貨物輸送、こういろいろ書いてあるけれども、国鉄の分野はそれによって計算するとどうなるのか。これが国鉄の将来の営業の基盤ですよと得心するものがぴしっと出れば、よしやろう、政府も投資をしてくれるそうだ、それで職員にも情熱がわいてくると思うのですが、残念ながらそれがない。  そこで、その点について少し細かくお尋ねしてみたいのでありますが、日本の交通機関別シェアですね。これは申し上げるまでもなく専門家の皆さんでありますから御承知のところなんでありますが、念のために申し上げますと、陸運統計要覧で拾った数字なんでありますが、国鉄の旅客の関係で言いますと、昭和三十五年に国鉄は五一%だったのです。それがだんだん下降線をたどりまして、昭和五十四年度実績では二五%になっております。約半分ですね、五〇%に落ち込んでおるのであります。民鉄も落ち込みまして、昭和三十五年に二五%であったものが一五%になっておる。これは昭和三十五年に対しまして昭和五十四年の実績は六〇%に落ち込んでおるのであります。バスの方はどうなっておるかといいますと、三十五年に一八%であったのがこれも一四%に落ちておるわけであります。七七%に落ちておる計算になります。乗用車の方はどうかといいますと、三十五年に五%だったのが五十四年には四一%、実に八倍になっておるのであります。飛行機の方も三十五年に一%であったのが五十四年には四%に、約四倍になっておるわけであります。貨物の方も、国鉄が三十五年に三九%であったものが五十四年には一〇%に落ちておるわけであります。恐らく五十五年度も大同小異じゃないかと思います。トラックはどうかといいますと、営業車の方が三十五年に七%だったのが二二%になっておりまして、これは約三倍であります。自家用車の方は三十五年に八%だったのが五十四年には一七%、二倍強になっておるわけであります。内航の方、船の方を御参考までに申し上げますと、三十五年に四五%だったのが五十四年には四九%でありますからわずかにふえている、こういうことになっております。  この推移は、きょうは余り議論しなくてもいいと思うのでありますが、お尋ねしたいのは、申し上げましたような現在の輸送機関別シェアというものがこうなっておる、これは理想形態であるの  かどうか、問題があるとすればどこにあるのか、どうしようとしておるのか、その辺を少し大臣、方針上の問題としてお聞かせいただきたいと思うのであります。
  83. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 統計から出てまいりますシェアは、仰せのとおりでございます。  このように変わってまいりました根本は何かと申しますと、やはりモータリゼーションの進行と、それから産業構造の変化というものも大きい理由であったと思っております。しかし、私は、だからといって国鉄は決して斜陽のものではないと思っております。これからのエネルギー事情を考え、あるいはまた人口のふえてまいりますその分が地方に張りついてまいりました。そういうこれからの日本列島の構造的な変化というもの、そして地域開発というものを見てまいりましていろいろ総合してまいりますと、国鉄がここで再建のきっかけをつかみ、立ち直っていくならば、必ず国の基幹交通機関として生き返ってくる、このシェアも必ず返ってくると、私はそれを信じております。
  84. 福岡義登

    ○福岡委員 そういう一般論ではなくて、国鉄の貨物輸送は現在一〇%のシェアである。旅客については二五%でしかない。エネルギーその他交通関係の制約条件を考えてみると、大体どのくらいのところにはどう見直していかなければならぬかというような具体性のあるお考えを聞かしてもらわないと、将来は伸びていく、決して国鉄は斜陽ではないとおっしゃっても、具体的にどうなるのかということを説明していただかなければ理解できないです。どうですか。
  85. 山地進

    ○山地政府委員 いまのような状態になったのが非常に理想的な姿であるかどうかということでございますけれども、まずは鉄道というものが世界の中でどういうような趨勢をたどってきたのかということを考えてみますと、いまの大臣の答弁にございましたように、モータリゼーションということで、やはりどうしても便宜性という点で近距離というものは自動車にとられてきている、それから遠距離になりますと航空にとられてきているというのが世界的な趨勢であううかと思うわけでございます。  ところで、日本という特殊の地形の中において鉄道というのはどういうような役割りを果たしていくのか、あるいは道路はどういうふうな役割りを果たしていくのかということは、諸外国とは確かに違う点があろうかと思います。太平洋ベルト地帯の稠密な人口の張りついている地帯において新幹線がこれだけ伸びてきた。世界的に斜陽であった旅客輸送というものにおける鉄道の地位の回復というのは新幹線鉄道にあったわけでございまして、やはり鉄道特性に合ったところに鉄道というものがさらに伸びていくということは疑うべくもない事実であろうかと思うわけでございます。  今後のわが国における鉄道、特に国鉄の位置づけにつきましては、今回の法律におきましても基幹的な輸送機関というふうに位置づけをいたしましたのは、都市間における国鉄のシェアというものがいまでも依然として五〇%を占めておるという事実、それから大都市圏における私鉄と相並びまして通勤通学輸送に果たしている国鉄の役割りというものに着目し、さらには先生のおっしゃいました大量定型輸送というものにおいて貨物の輸送ということで鉄道が果たしている役割りに着目いたしますと、この三つの分野においてはぜひ鉄道でやっていくということが必要であろう、こういう認識のもとに、今後その三分野を中心に活力のある企業体というものをつくっていくのが国鉄の再建の道である、かように考えておるわけでございます。
  86. 福岡義登

    ○福岡委員 鉄監局長、そういう抽象的なことを聞いておるのじゃないのですよ。長距離は飛行機である、あるいは自動車がふえた、国鉄の特性がどうだ、そんな抽象論を聞いているのじゃないのですよ。私は具体的に数字を申し上げまして、旅客輸送は二五%で貨物は一〇%だ、エネルギーその他交通関係の制約条件がいろいろある、そういう中で、国鉄再建の基礎となるべき事業分野というのはどのぐらいのことが考えられるのか。それを、細かい数字は別といたしまして、現在のシェアはこうなっていますけれども、五年先、十年先には段階的に事業量はふえていって、少なくともこの程度のシェアは持ってもらうようにやっていきたい、そういう具体性のあるお答えでないと、国鉄の特性がどうだなんて一般論の演説は、聞かなくてもわれわれはわかっているんだ。
  87. 山地進

    ○山地政府委員 今回の再建の案をつくりました中で、国鉄の再建の基本構想案というのを国鉄がつくりまして、私どももそれに参画したわけでございますけれども、その中におきまして、国鉄の旅客輸送というものは、ほぼ現在の横ばいということを考えております。それから、貨物については、やはり四百億トンキロを維持するというのが精いっぱいではなかろうかという見通しのもとに、今回の再建計画を立てております。
  88. 福岡義登

    ○福岡委員 それなら、さっきの御答弁と違うじゃないですか。確かに五十四年の七月二日に国鉄が国鉄再建の基本構想の中で経営指標というものを出しております。鉄監局長がいま答弁されたのはそのことだと思うのですが、それは承知しておるわけであります。横ばいなんですよ。シェアは上がっていきはしない。五十四年度に千九百六十億人キロの輸送をしているのですよ。それを六十年度では二千五十億人キロにするというのですから、わずかな増しかないのですね。貨物に至っては、同じ四百億トンキロ。五十四年の実績が四百億トンキロに対しまして、昭和六十年にも四百億トンキロ、こう書いてある。それなら、国鉄の特性を生かすとかなんとか演説をされるけれども、国鉄の分野というのは横ばいじゃないですか。  私が申し上げておるのは、エネルギー問題やその他交通関係の制約条件がある、もう少し輸送機関別のシェアを政策的に見直していかなきゃならぬじゃないかということを言っているのですね。その中で一体国鉄の役割りはどうなんだということを聞いているのです。都市間輸送であるとか大都市圏輸送であるとか貨物の定型大量とかいろいろ言うけれども、問題は、国鉄の業務量はふえるのか減るのか、その点を明確にしなきゃ職員の情熱が、わけと言ったってわきゃしない。こういうことで日本の交通政策は将来やっていけるとお思いなんでしょうか。答弁になってないよ、こんなものは。前段で言われた大臣の答弁、鉄監局長が前段で述べた答弁と、ここに考えられておる国鉄の経営指標とは一致しないじゃないの。これで国鉄の特性を発揮した将来のシェアはふえていきます、見直されますということが言えますか。
  89. 山地進

    ○山地政府委員 私の申し上げましたのは、三分野において特化して、企業というものの再建を図りたいということは申し上げました。それから、そういった結果、国鉄の輸送量というのは現在の横ばいになる。つまり、国鉄の鉄道特性のある分野について重点的に経営を志向してやるということになりまして、地方交通線等、他の交通機関の方が効率的であるものについては他の機関にやっていただく、国鉄の方がいいものについては国鉄がやっていくということの結果、全体的な輸送量というものは六十年まで横ばいということで考えているわけでございます。
  90. 福岡義登

    ○福岡委員 それは詭弁であって、政策はないということなんですよ。中身は確かにローカル線を他の機関に切りかえて、あるいは都市間輸送をやる。これはいろいろあるでしょうよ。しかし、先ほど来申し上げておりますように、交通関係には幾つか制約条件がある。決定的な最大のものはエネルギーでしょう。エネルギー問題だけを考えても、いまのような交通機関別のシェアでやっていけない条件がある。もう少し省エネの大量輸送機関というものを見直さなければならぬ時代が来る。そうであるのに横ばいであるということは、政策がないということでしょう。先ほども指摘しておるように、今日まで国鉄が再建できなかったというのは、そういう積極的な政策がない、合理的な政策がない。だから、ここまで落ち込んだ。せっかく再建法を提案されておりますけれども、同じことを繰り返す。六遍も失敗しておるわけでしょう、再建計画が。申し上げましたように、政策がないからなんです。この点がはっきりしなければ、国鉄の再建はないですよ。どうでしょうか。
  91. 山地進

    ○山地政府委員 国鉄の現在のシェアの低下というのは、大臣の答弁ございましたように、モータリゼーションということ、あるいは産業構造の変化というようなことが相重なって現在のシェアになってきたわけでございます。  貨物輸送を取り上げてみますと、四十五年に六百億トンキロのものが、現在は四百億トンキロ、これも維持するのが大変むずかしくなってきておる。物で見れば、昔は石炭が非常に多かったわけでございます。現在は三セといいまして石灰石、セメント、石油というようなものが国鉄の貨物の大宗になっているわけでございます。しかし、やはり国内の貨物の遠距離輸送というものは、内航海運の占めるシェアは依然として高いわけでございます。近距離については、トラックがある程度以上シェアを持っている。こういう中で一体国鉄の販売といいますか、シェアというものをどうやって高めていくのか。  これは一つには、ニーズに合ったような輸送機関というものを提供しなければいけない。国鉄の方に誘導する政策はいろいろあろうかと思います。しかし、それは限界がございまして、それをすべて国鉄の方に持ってくるということは非常にむずかしいわけでございます。エネルギーの点から申しまして、長距離のものについては、両端はトラックでやる、きせるの真ん中の部分は国鉄がやるということが非常に理想的な輸送体系であろうかと思いますが、そういったものについて、コンテナ輸送というのは、そういう意味では両端について貨物ということで、複合輸送的な輸送をやっておるわけでございますけれども、大部分の大量定型輸送の貨物に適するものというのは、両端をトラックでやらざるを得ない、そういった輸送条件。  もう一つは、日本産業構造というのが太平洋ベルト地帯に張りついて、内陸部というものに入っていかない。石炭輸送というのは、内陸から外へ出るという意味では鉄道輸送に適したわけでございますけれども、そういった鉄道輸送に適しない産業構造というものが現在現出しているというのがやはり一つの制約条件になっておるということでございます。  ただ、こういうことを申し上げましたのは、国鉄が増収努力をしてなおだめだということではございませんで、もちろん増収努力というものを重ねることによりまして国鉄のシェアを高めるという努力はぜひしなければならないものと考えておるわけでございます。
  92. 福岡義登

    ○福岡委員 重ねてお伺いいたしますが、それでは昭和六十年に、旅客で二千五十億人キロの輸送量がある、貨物の四百億トンキロの輸送量がある、何か積算の根拠あるいは試算をされたものがありますか。
  93. 加賀山朝雄

    ○加賀山説明員 お答え申し上げます。  昨年の七月に再建基本構想案を固めました段階で、一つの再建の目標というようなものを考えました段階におきまして、輸送量の見込みをどうするかということをわれわれが考えました段階に、確かに先生御指摘のとおり、いろいろな政策面の影響によりまして動きが出てくるということがありますが、冒頭に先生から御指摘がございましたように、過去の再建構想というものが大きく狂いました最大の原因は、輸送量の見込みを非常に高目に見込んだということが非常に致命的な問題であったわけでございます。最近の輸送動向をいろいろ考えます段階で、その辺の輸送量の見込みを余り強目に見ることはかえって再建の計画としては危険であるという考え方のもとに、私どもといたしましては、旅客微増、貨物横ばいという考え方をとったわけであります。  ただ、当時におきまして、御承知のとおり、輸送量は貨物あるいは旅客においてもまだ若干低減傾向が続いておる中でございまして、その中で輸送の構造をむしろ国鉄の特性を発揮できる分野に大きく主力を傾ける。国鉄の特性の失われた分野というものはある程度整理をしていくという形におきまして、国鉄自体の輸送形態を鉄道にふさわしい方向に向けていきたい。同時に、そのことは大臣もおっしゃいましたように、産業構造あるいは社会構造の変化というものを踏まえました段階で、当然そういうような形にするのが一番いいのではないかという考え方から若干の数字を見込んだわけでございます。無論、それに対しますわれわれのある程度の意欲というものを織り込みました見込み方で、しかもかた目にという形で想定した数字でございます。
  94. 福岡義登

    ○福岡委員 どうも得心できる答弁でないですね。それは気持ちはわかりますよ。いままでの再建計画で輸送量を高く見過ぎてそれがうまくいかなかった、現在も減少傾向にあるから安全を見て低目に見積もった、そういうお気持ちはわかる。ところが、私が言わんとしておるのは、国鉄の基盤強化をやって、荷物もふえる、人もふえるというような政策が欲しいということを先ほど来言っているのですね。そういうものを前提にして積算をすれば、可能最大限はこのくらいだろう、最悪の場合はこの程度かもしれないという、幅はあるかもしれませんが、何かそこの積算ができるはずだと思うのですよ。恐らく旅客は、いろいろ努力をして年に一%ぐらいふえるだろう、あるいは努力をしたいという程度で、格別の試算は私はないと思うのですね。ありますか。あったら教えてください。
  95. 加賀山朝雄

    ○加賀山説明員 先生御指摘のとおり、いろいろな計数、いわゆる経済モデル的な計算をいたして出した数字ではございませんので、ある程度の意欲を織り込みまして想定をいたしたものでございます。
  96. 福岡義登

    ○福岡委員 さっきも言葉短に私は申し上げたのですが、たとえば貨物ですね、貨物駅の集約をどんどんやった。いまでもまだそういう計画が残っておるところもある。便利が悪くなったものだから、トラックに比べれば運賃も安い、だから国鉄を利用したいのだけれども、貨物駅がなくなったからやむを得ずトラックにかわっていく。国鉄で貨物関係で投資されたのは恐らくコンテナ関係だけじゃないかと思うのですね。もう少し貨物輸送に対する施策が、特に設備投資などが行われておれば、貨物の輸送量はこんなに減ってはいないと思うのです。後でこの点はまた出てくるのでありますが、そこでエネルギー問題をひとつ具体的に考えてみたいと思うのです。  日本の五十三年度の「エネルギー源別・部門別消費割合」という資料を通産省からもらってみたのです。どうなっておるかといいますと、石油の関係では輸送関係が二九%、民生が一五、産業が五六、こうなっている。電力の関係でいいますと、輸送関係は三%、民生が三四、産業が六三ということになっておる。ガスも、わずかではありますが、輸送関係が四%使っていることになっておるわけですよ。  この石油資源が一番問題なのでありますけれども、安定供給ができるかどうか、いままでどおり石油の輸入ができるかどうかは非常に問題があるわけですね。価格の方も、安いときは、昭和四十五年当時は一バレルが一ドル八十セントぐらいだったでしょう。いま幾らになっていますか。もう三十ドル時代でしょう。供給の面、価格の面、不安材料が山積しておるわけですよ。  それで、申し上げましたように、輸送関係に二九%、約三〇%近い石油を消費しておるわけであります。先ほど申し上げました輸送機関別シェアですね、輸送量、自動車を中心にした輸送あるいは航空機の輸送がどこまで可能なのか、こう考えてまいりますと、いや応なしにこの大量輸送機関というものを見直していかなければならぬ事情がここにある。であるのにもかかわらず鉄監局長の答弁である。それでは交通政策というものじゃないでしょう。これは野放しですよ。  しかも、エネルギーの消費効率は国鉄が非常に低い。これは皆さん専門家ですから私から申し上げる必要もないと思うのですが、念のために申し上げてみますと、旅客の関係で国鉄は一人当たり百キロカロリー。これを一といたしますと、バスは一・四倍、乗用車は自家用車が七・五倍、営業車は千二百六十キロカロリーで十二・六倍、航空機は六百九十キロカロリーで六・九倍、エネルギーの消費効率を見ればそういう状態になっておるわけです。  こういうエネルギー事情にあるのに、先ほどの鉄監局長の答弁のようなことで日本の交通政策は今後やっていけるのかどうか、これも予告をしておきたい一つ問題点なんですね。だれが考えてもこういう状態ではやっていけないのです。これは国鉄再建という観点だけではなくて、日本の総合交通政策として考えられなければならぬ基本的な問題なのですよ。そういうものがないじゃないですか。そういうことで日本の交通政策がやっていけるとお思いなのでしょうか、御見解をお伺いしたいところであります。
  97. 山地進

    ○山地政府委員 鉄道が非常にエネルギー効率にすぐれているということについてはお説のとおりでございます。ただ、私どもがいろいろ交通体系を考える場合に、どこでも鉄道がエネルギー上効率性が高いということは言えないわけでございます。たとえて申しますと、地域交通でございますと、二千人未満の密度のところにおきましては、地方でございますのでエネルギー効率がバスの方が高いというようなこともあるわけでございます。そこで、地方の点を除きますと、あとのところにおきましては効率性の悪い輸送機関は結果的には価格的に競争力が落ちてくる、これは恐らく自明の理であろうと思います。そういう点から申しますと、昨年以来の石油値上がりということから昨年の国鉄の貨物輸送が非常によかったわけでございますが、恐らくこれは将来の石油の高価格時代に備えまして荷主が荷物について選別をして鉄道利用の道を開いておいたということが一つの原因であったかと思うわけでございます。そういう点から申しますと、鉄道の利用というのは、価格という面を通じて荷主が選別してくる可能性は高いというふうに思われる点でございます。  旅客輸送におきましても同様でございまして、高速道路の料金が上がる、あるいはガソリンが上がるということでマイカー族の旅行が減る。この減ったものがすぐ鉄道に行くかというと、ことしの傾向を見ますと、全体的な旅客需要の低下という方向で解決されているように私どもは思うわけでございますが、いずれにいたしましても、価格というものを通じまして鉄道に誘導されてくる。それが絶対量の増加に結びつくのか、あるいは全体の量が減ってくるのかということについては今後の問題であろうかと思っております。
  98. 福岡義登

    ○福岡委員 答弁になってないのですよ。いまおっしゃったようなことは聞かなくたってわれわれはわかっているんだよ。将来のことを政策的にどう考えているかということを聞いているのですよ。あなた、何にもないじゃないの。もう少しまじめに、積極的に日本の交通政策を考えなさいよ。いままで失敗したのはそういうことだから失敗したのですよ。あなた、これで再建できると思っていますか。日本の交通政策はこれでやっていけると思っていますか。申し上げましたように、エネルギー関係は消費効率から言いましても、価格の面から言いましても、さらに供給の関係から言いましても、特にイラン、イラクは御承知のような現状でございます。そういう事情の中で省エネ対策が交通政策の基本に座らなければならないのに、それがない。これを外して何が交通政策ですか。
  99. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほど加賀山理事なり山地鉄監局長が言っておりますのは、昭和六十年をめどとした輸送の移動というものを申し上げておりまして、先ほど先生の質問を聞いておりまして、鉄道を愛し、そして、それの再建を願っておる方にとりましては、まさにこの数字を見る限りにおいては一抹の不安を持たれるのは当然だと私は思いますが、しかし、私も先ほど申しましたように、鉄道は決して斜陽じゃなくして大きい飛躍をするときが必ずある、それは仰せのようにエネルギー事情が必ず変わってまいりますから、そういうときにこそ鉄道が大事なときになる。  そこで、いま言っておりますのは昭和六十年という期間、いわば再建の日数から見ましたら、これは比較的短期間ではないか。国鉄の再建というのはこれから十年、十五年かけて体質も改善し、そして施設も変えていかなければならぬ、そういうロングランにわたる再建でなければならぬと私は思うております。したがいまして、先ほど先生の質問の中にございましたように、鉄道の特性を生かすような投資をこれからやるようなときにならなければならぬ。それをやるためには経営基盤の改革ということがいま必要でございまして、それがいま問われておる再建、そして再建へのきっかけをつかみ、それが軌道に乗ってまいりましたときに、その特性に合った、先ほど質問の中にございましたような投資を積極的にすることによって国鉄の貨物なりあるいは旅客における使命というものも変わってくる、そうなければならぬ、それが再建なんだ、私はそう思うのです。その基盤をつくるまでのいわばしばらくの助走期間といいましょうか、離陸していくまでの期間というものが数字にはいまあらわれておらないというのが実情ではないかと思うておるのでございます。答弁の中にもございましたように、過去におきまして需要予測というものを比較的いろいろな諸統計をそのまま素直に織り込んでいって苦い経験をしたこともあって、それを十分に警戒をし、慎重に構えた数字として出た結果であるということが国鉄の方から出てまいりましたし、そういういろいろな点を勘案していただいて御判断いただきたい。運輸省に国鉄再建への政策がないというよりも、そうじゃなくして、そういう基盤をつくっていきたいということがいま当面する最大の政策なんだということでひとつ御理解いただきたいと思います。
  100. 福岡義登

    ○福岡委員 それなら初めから昭和六十年まで、当面のことでございます、この事業量というのは最低線の想定をいたしておりますが、漸次交通政策を明らかにする中で国鉄のシェアは相当ふえていくでしょう、それは次の段階にまたさせてもらいたいと言われるなら話はわかる。そんなことを言いやしないで、国鉄の貨物輸送は四百億トン、横ばいなんだという説明だけしかしない。大臣もおっしゃった六十年までだということだけを考えてみましても、後で時間があれば具体的に触れますが、やろうとすればできることは幾らでもあるのですよ。大量輸送機関を活用する、省エネ対策を進めるという意味でやろうとすれば幾らだってあるわけですよ。後で二、三申し上げますけれども、あしたからでもできることがある。  それはそれとしても、おっしゃるように、この法案は六十年度を目標にしておるのであって、それまでの輸送量はこれこれであるけれども、これを最低にして将来はふえていくと想定をしております、それはどのくらいかということは数字で示されないにしましても、その計画は追って明らかにしたいと思います、初めからそういう答弁なら私だってこんなに声を荒立てなくてもいいのですね。  そこで、具体的にお伺いしますが、鈴木内閣がエネルギー節約をやっていこう、われわれ国会の中も冷房を二十八度でがまんしようじゃないか、各官庁も右へならえ、あるいは民間も協力するようにということで指導されてまいりました。われわれもこれは適切な措置であると思って協力をしてまいりました。  それじゃ塩川運輸大臣、あなたにお伺いいたしますが、交通産業では省エネ対策は具体的にいまどういうことをやろうとしておるのですか。七%節約のこの鈴木内閣の方針に基づいて、交通産業ではどういう省エネ対策をやっておるのですか。具体的に説明してください。
  101. 石月昭二

    石月政府委員 御説明申し上げます。  現在七%の節約という目標に対しましてとっております輸送分野での節減措置でございますが、まず第一番目には、利用率の悪い列車の削減、航空機の冬季の減便、輸送機関の冷暖房の合理的な調節、交通管制システムの省エネルギー化、それから自動車の経済速度、一般道路におきましては四十キロメーター、高速道路におきましては八十キロメーターで走ることの励行、それからマイカー通勤の自粛というようなものが短期的な政策としてとられておるわけでございます。また長期的には、私ども運輸省といたしましては、エネルギー効率のよい大量交通機関、具体的に申し上げまして、地下鉄であるとかバスであるとかというものに需要を誘導するということを心がけておるわけでございます。このために、これらの大量交通機関が利用しやすいように、車両の冷房であるとか乗り継ぎ施設の改善であるとかというような施策を進めるとともに、第二番目には、現在走っております輸送機関の輸送効率を上げるという意味で、たとえば鉄道におきましてはヤードの再編成であるとか貨物駅の集約であるとか、トラックにおきましては共同輸送の推進であるとか帰り荷のあっせんであるとかというようなことを行っておるわけでございます。第三番目には、省エネ技術の開発と申しますか、たとえば車両の軽量化を図るとか、回生ブレーキづきのいわゆるサイリスタチョッパ車を導入するとか、そのほか自動車におきましては車両の小型化を図る、それからエンジンの燃焼効率の改善というような施策を並行的に進めているところでございます。
  102. 福岡義登

    ○福岡委員 お話を聞いておりますと、いろいろ対策は立てていらっしゃる。しかし、今時的なものが相当多い。それから、その他のものでも申しわけ的なものがほとんどなんです。いま説明されたことの結果、どのぐらい節約できるのですか。
  103. 石月昭二

    石月政府委員 ただいま申し上げましたことにつきまして、どれぐらいの量がいつごろまでに節約できるかという量的な把握は残念ながらいたしておりません。
  104. 福岡義登

    ○福岡委員 そうでしょう。その程度しか考えてない。いまのお話は、エネルギー問題を真剣にとらえてない証拠ですよ。  これは、省エネルギー対策にも関係がありますし、それから国鉄の使命とされておる都市間輸送にも関係がある。具体的に一つの例を出して私はお伺いをするのですが、東京−大阪間は都市間輸送の最たるものですね。どういう輸送形態になっておるかということなんです。五十四年度実績で大阪−東京間の輸送人員は、「ひかり」が千八百九十五万五千六十人、千八百万と見ればいいでしょうね、飛行機は三百六十四万一千人、合計すると二千二百五十九万六千人の人を輸送しておることになります。この比率を出してみますと国鉄が八三・九%、飛行機が一六・一%であります。これは合理的な輸送形態になっておるかどうか。省エネ対策に合っておるかどうか。消費エネルギーを比較してみますと、「ひかり」では一人当たり五万キロカロリー、飛行機は実に二十九万キロカロリーを必要とするのです。都市間輸送、省エネ、そういう観点から考えられまして、これは理想的な輸送形態になっておるかどうか。大臣は大阪の御出身でございますが、これはどう思われますか。
  105. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 エネルギーの消費そのものから見まして、これで適正であるかどうか、私はちょっといま科学的な判断はしかねますけれども、おっしゃるところは、航空機を利用するよりももっと鉄道に集中させた方がエネルギー効率からいって適当ではないか、こういう内意が御質問の中に秘められておるように思います。それは私はもうそうあるべきだと実は思います。航空機の利用というものはやはり緊急性の人が利用すべきものである。ところが、やはりこういうことになってまいりましたところに鉄道自身の問題もある。また、総合交通政策の問題もある。これは私はカロリー消費の面から見て、そういう判断が浮かび上がってまいります。
  106. 福岡義登

    ○福岡委員 先ほど大臣が、国鉄に非常に愛着を持っておられる方にとっては耐えられないことだろうというような言葉を使われましたが、私は国鉄に対して感傷的にものを考えているんじゃないのです。本当に国鉄を再建させ、日本の交通政策をりっぱなものにしたいという気持ちなんです。誤解をしてもらいたくない。いまの飛行機の話も、たとえば国鉄自身にある程度問題があるようなことも言われましたが、あるとすれば、先ほど言いましたように、飛行機よりも高い運賃にしたのですからね。どうぞ飛行機、安い方に行ってくださいといってやった。それは国鉄が悪いのではなくて、それをやらせた運輸大臣以下鉄監局長の責任がありますよ。人ごとのように考えてもらっては困る。しかも、過去そうであったとしても、いまからの交通政策を考える観点というのは、都市間輸送は国鉄なんだ、長距離は飛行機だ、これは私どももそう考えているのですよ。それならば、東京−大阪間は都市間輸送の最たるものである。航空機はやめたらいいじゃないか。これが省エネ対策であり、総合交通政策である。これは東京−大阪間だけではないですよ。大阪−福岡間も同じようなことが言えるわけです。新幹線で福岡−大阪間何時間ですか。緊急に急ぐ用事がある人が航空機を使うとおっしゃいますけれども、新幹線は新大阪から東京まで三時間十分でしょう。ところが、飛行機は確かに五十分か一時間足らずで飛べる。しかし、大阪の町の中から飛行場へ行く時間がかかる。交通は渋滞しておる。空港は少なくとも三十分前に行かなければいけない。この間二十分前に行って、航空券を買っておったのだが、これがだめになった。この間、二、三日前に例があった。仕方がないから次の便にもう一遍金を出して、倍の料金でその人が、国会議員ですけれども、飛行機に乗ったんです。そのように飛行場まで行く時間がかかる。羽田に着いてから、たとえば国会なら国会に来るまで時間がかかる。どんなに急いでも、羽田空港から国会まで三十分では来れないですよ。交通でも渋滞しておれば、四十分から、時には一時間見なければ来れないのです。急ぐから飛行機を使うという理由はないのです。所要時間は、むしろ場合によったら飛行機の方が長くかかってしまう。エネルギー、経済性、どういうサイドから考えてみても、東京−大阪間で航空機を飛ばさなければならぬ、利用しなければならぬという理由はないでしょう。直さなければならぬのは、国鉄の料金をもう少し安くしなければならぬ、そういう政策がないということが問題だということを先ほど来言っておるのですよ。  運輸大臣、どうですか、日本の合理的な交通政策を樹立するために、ある意味では国鉄を再建するために、東京−大阪間の飛行機はやめますか、あるいは福岡−大阪間の飛行機はやめますか。どうですか。
  107. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 国鉄を再建するのに、大阪−福岡、そういう飛行機を、航空便を中止してみても、国鉄の再建は図れるものではないと思う。それよりも、飛行機の需要が時代的要請として出てきておる、これも事実でございます。  そこで、先ほど私が申しましたように、いわば総合交通政策の中でそういう需給考えていかなければならぬということと、それともう一つは、いみじくも御指摘されましたように、運賃がそのようになってしまった。鉄道の運賃と航空機の運賃が、いずれが安いかというような判断をしなければならぬという、そういう現実の値段になってしまった。そこが実は問題なんだと思うております。  したがって、国鉄の利用者をふやすために、私たちも何とかその誘導政策をいろんな面から考えておりまして、そして飛行機を利用の方から鉄道にかわっていただけるような、そういう条件をつくりたいと思うて、運賃政策の面なりあるいはサービスの面でいろいろ対策を講じておるところであります。
  108. 福岡義登

    ○福岡委員 おかしいですよ、運輸大臣。私が言っておるのは、国鉄を再建するために飛行機のお客を国鉄へ持ってこいという、それが直接の目的で言っているのじゃないのですよ。国鉄の使命は都市間輸送だということが書いてある。それに合った交通政策になっていないじゃないかという、日本の交通政策上の問題を言っているのです。しかも、説明をしましたように、飛行機を使わなければならないという理由は一つもない。使うべきでないという理由はありますよ。エネルギーの消費効率が高い、時間もそんなに変わらない。これだけの大阪−東京間に航空機の便もあるし、新幹線の便もある。日本の経済力はそこまで高くなったから、それくらいあってもいいじゃないかという議論もあるかもしれませんけれども、言うならばぜいたくですよ、そういうものを二つも持っておるということは。まず第一、国家的に不経済でしょう。これは航空会社の事情もあるでしょうから、私は一遍に東京−大阪間、大阪−福岡間の飛行機を全廃しなさいという暴論は述べませんよ。しかし、少なくとも騒音公害その他で大阪空港は御承知のように問題になって、そこで運輸大臣は新空港建設に御努力をされておるのですが、これは問題はありますがね。そういう当面の騒音公害対策から考えるならば、基本的にはいま申し上げました総合交通政策が基本的な問題なんですけれども、当面は、騒音公害対策として大阪空港の離着陸、発進と着陸ですね、これを少し制限することくらいは考えられるでしょう。たとえば、夜の七時から朝の八時、ここまで寝る人はちょっと朝寝ですが、人が起きるぐらいまでの時間、七時とか八時ごろぐらいまでの間の発着は規制をする、そのぐらいのことはやるべきであるし、根本的には全廃するべきなんですよ。当面どうですか。計算をしてみますと、夜の七時から朝の七時まで、東京から大阪に着くものが四便、福岡から大阪に着くものが二便ある。大阪空港発の方は、東京行きが三便、福岡行きが二便ある。合計すると十一便なんです。これをやめてやれば、あの周辺の人は大変喜びますよ。同時に利用者の方は困らないのですよ。国鉄のグリーン車が飛行機より高いからとおっしゃるのなら、まあわずかですけれどもね、そんなに違わないのだが、グリーン車が高くて困るというのなら、普通車へ乗ってもらってもいい。急ぐからということも理由にならない。さっき言うように、所要時間を計算すると、むしろ飛行機の方が長いのだから。方針は、東京−大阪間、大阪−福岡間は将来全廃をする、しかし当面段階的にという意味で、夜の七時から朝の七時までの発着は認めない、そのぐらいのことはできるはずですよ。また、それをやらなければ交通政策じゃない、こう言っているのですよ。野放しの交通政策だったから、初めに申し上げましたように、国鉄がどんどん落ち込んできて、その結果、交通渋滞する、交通事故は起きる。交通事故のことは後で申し上げますが、どうですか、大阪の発着は、当面午後七時から朝の七時まではやめさせる。これは国策に沿ったりっぱな政策である。迷惑する人はだれもいない、航空会社がちょっと都合が悪いかもしらぬけれども。どうですか、大臣。
  109. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 国鉄再建からえらい航空の方に話がいっておりますが、せっかく御提案していただいたことではございますけれども、実はその時間帯に飛行機が飛び立つというのは、やはりそういうビジネスマン等が日帰りで十分に目的地で仕事を果たして帰る、そういうところに設定されておると思います。そして、そのことが一つの要請としてそういうダイヤが組まれてきておる。いわば、はやりで申します国民的なニーズがそういう都市間においてその時間帯にあるのだ、こういうふうな感じがいたしておるのであります。  それで、先ほど来鉄監局長お話にありましたように、都市間交通の主役はやはり鉄道であります。これはもう何人も否定し得ないことだと思うのです。けれども、その補助機関としての航空機というもの、この経営というものも、やはりそういう特殊な仕事、あるいはそれを利用しなければならぬ人もあるわけでございまして、その点ひとつ御理解していただきたい。  伊丹空港におきまして朝七時から夜の九時まで空港が開設されておりますが、この間におきます周辺の対策といたしまして、これに対する環境対策等を講じまして七時から九時までということをやっておるわけでございまして、その時間内においての発着でございますから、これはひとつ御理解いただきたいと思うのです。
  110. 福岡義登

    ○福岡委員 大臣が航空会社の立場に立って考えられればいまの答弁でもいい。あなたは日本の交通政策を預かられる運輸大臣なんですよ。新幹線の補助として航空機もある程度必要であるとおっしゃるのだけれども、必要じゃないのですよ。ビジネスマンのためにそういう時間帯が設定されたとおっしゃるけれども、日帰りをするには新幹線の方が便利がいいのですよ。さっき言いましたように、所要時間は同じ、もしくは航空機は長いのですから。時間がありませんからこの問題、後にまた譲りますけれども、東北新幹線、上越新幹線がいまやられていますね。近く開業いたしますよ。それじゃ新潟と東京間、仙台と東京間の飛行機と新幹線をどうするのか、これは問題になってきますよ。本当に都市間輸送は国鉄にやらせるんだとおっしゃるんなら、それと同じ競合する飛行機はあらゆる角度から考えてみて取りやめるべきであると強く要請をいたしまして次へ移ります。  交通安全の面から日本の交通政策を考えてみなければならぬ。昭和五十三年の交通事故を申し上げてみますと、道路上の交通事故は死亡者が八千七百八十三人、負傷者は実に五十九万四千百十六人、六十万近い負傷者が出ている。死傷者六十万二千人、これだけの交通事故が発生しているのです。国鉄の死傷者は合計二千三十二人。国鉄の事故の三百倍、道路交通事故が発生しておるということになっている。これは道路もどんどんよくなりましたけれども、道路以上に自動車がふえて交通事故が発生しているのですね。自動車がいかにエネルギーを消費しているかということはさっき申し上げたのですが、エネルギーのみならず交通事故の面からも自動車対策というのは考えていかなければならぬと思う。そのほか排気ガスの問題がある、騒音の問題がある、あるいは振動問題がある、交通渋滞の問題がある、いろいろこの道路交通については問題を抱えておるわけですよ。これを何か考えていかなければならない、対策を講じなければならぬわけですよ。これも直接国鉄再建とは関係ないのですが、日本の交通政策という立場から考えればこのまま放置することはできない。  自動車局長、お見えになっておりますか。あなたの所管でどうですか、自動車輸送というものは現状は好ましい姿であり、将来はどうなっていくかというようなことについて、時間がありませんから短く答えていただきたい。
  111. 飯島篤

    ○飯島政府委員 産業構造が高度化し、国民生活も多様化いたしまして自動車の特性であります機動性、便利性というものが高く評価されてここまでモータリゼーションが進展しているのだろうと考えられます。私どもが今後考えておりますのは、自家用のエネルギー消費に比べまして営業用のエネルギーの消費効率というのは三倍くらいいいわけでございます。したがいまして、トラックについてもあるいは旅客につきましても営業用の車両をできるだけ使ってもらうように施策をいろいろ講じてまいりたいというふうに考えております。
  112. 福岡義登

    ○福岡委員 鉄監局長はどうですか。いまの自動車輸送の状態は鉄道輸送との関係においてどのようにお考えでしょうか。
  113. 山地進

    ○山地政府委員 自動車輸送がすべて鉄道と競合しているというわけではございませんので、現在の自動車輸送と鉄道輸送とのバランスというものを直ちにどうだと言うわけにはいかないと思いますが、安全の高いものにできるだけ誘導的な政策を用いていくということは運輸政策上非常に大事なことである、かように考えております。
  114. 福岡義登

    ○福岡委員 不可能なものまで自動車輸送を鉄道輸送に切りかえるなんということを言っているのじゃないのですよ。たとえば札幌から鹿児島まで二十トン車を運転しておる自動車輸送があるのですよ。これは法外といたしましても、三百キロ以上の貨物輸送、大体自動車は国鉄の三倍輸送しているのです。近距離は当然自動車が受け持つべき分野ですよ。ところが、三百キロを超えて五百キロ、六百キロというような長距離輸送をトラックにゆだねるというのは交通政策上はやはり間違っておる。たとえば路線トラックの免許がある。五百キロ以上は原則としてこれは認めない、これ一つの政策ですよね。しかし、そんなことはなされていない、野放しなんだ。何が交通政策か。一人が乗ってマイカー通勤をする、それは便利はいいです。私も自動車の運転免許を持っているので自動車の味はよく知っています。しかし、国家的に考えていけば、道路の渋滞、高いエネルギーの消費、いろいろなことを考えていくと、いつまでもいまのようなぜいたくなマイカー通勤というのはできない事情にある。マイカー通勤ができなければ大量輸送機関がそれを受け入れるだけの体制をつくらなければいけない。工夫をすれば幾らでもあると思うのです。貨物輸送で言えば、国鉄が輸送したその両端にターミナルをつくって、流通センター的なものをつくってそこにトラックを結びつける、こういうことをやっていけば、いわゆるそれぞれの特性を生かした交通機関をうまく組み合わせていけばうまく流れる、物流もうまくいくようになる、それが交通政策なんですよ。たとえば自転車置き場が最近問題になっております。駅の周辺に自転車置き場を整備してやる。そこまで自転車で来て大量輸送機関に乗って通勤をする、あるいは過疎地帯でバスその他条件が悪いところは駅の周辺に公設の駐車場を整備してやって、そこまでは自家用車で来る、そこから都心に入るときには大量輸送機関を利用してもらう、これも特性を生かしたものをそれぞれ組み合わせるという交通政策なんですよ。  運輸大臣、そういうものを運輸省がやっていますか。先ほど来何遍も言うように野放しじゃないですか。交通政策をもう少し明らかにしてもらいたい、こう思うのですよ。どうでしょうか。
  115. 石月昭二

    石月政府委員 各交通機関にはいろいろの機関特性がある、その機関特性のいいところを組み合わせてより効率的な輸送体系をつくれという先生お話でございますけれども、まことにごもっともな御指摘でございまして、私どもといたしましては、先生承知のように、フレートライナーに見られますように鉄道とトラックの長所を結び合わせた輸送システムであるとか、それから、たとえば鉄道と空港の乗り継ぎを便利にするような施策であるとか、鉄道同士の相互乗り入れの問題であるとか、それから鉄道とバスの乗り継ぎのためのターミナルを整備するとか、そういう形で共同一貫輸送と申しますか、長所同士を組み合わせた輸送につきましては従来からこれを検討し、施策として導入してきたところでございます。また、先ほど来いろいろエネルギー、交通空間、それから公害問題等諸般の制約条件が強まる中で、将来の交通機関の分担関係をどのように考えておるかというお話でございますけれども、私ども従来から、先ほど先生からお話がございましたような交通機関の各特性というものを踏まえまして、それを利用者が選択をする。その選択の結果、国鉄のみならず各交通機関の特性が発揮できるような合理的な交通の分担関係というものが形成されるというのが一般的な考え方だと思っております。しかしながら、先生おっしゃいますようなエネルギーの制約条件とか交通空間というような問題は昨今ますます強まっておりますので、こういう問題をどのように評価し、交通政策の中に組み入れて今後の需要誘導を図るかというようなことについてはただいま運輸政策審議会にお諮りして勉強しておるところでございます。
  116. 福岡義登

    ○福岡委員 与えられました時間があと十分ぐらいしかないのですが、以下一括して答えていただきたいと思うのです。  一つは、交通行政についてであります。交通行政の一元化あるいは交通行政の有効な調整という問題を申し上げたいのですね。運輸省関係で幾つかの審議会があります。たとえば運輸審議会がある、あるいは運輸政策審議会がある、海運造船合理化審議会というのがある、あるいは港湾審議会というのがある、鉄道建設審議会、航空審議会、審議会がたくさんあるわけですよ。その審議会はいずれも運輸大臣が諮問されるんですから、運輸大臣のところで調整をされて行政の一元的なもので運営されておるということは筋道としては理解できる。ところが、実際は、航空審議会は飛行機のことばかりしか考えてない。鉄道審議会は鉄道のことだけしか考えてない。もう少しこの辺の調整というものを考えていただきたいということが一つなんです。  それからもう一つは、経済企画庁の問題なんですが、設置法の七条三号で「運輸に関する基本的な政策」云々というのがある。国土庁の設置法では四条八号に「総合的な交通施設の体系の整備方針に関し、」云々というのがある。建設省は申し上げるまでもなく道路建設を担当しておる。自動車輸送の関係ですね。それから、国土庁は三全総の定住圏構想をいま四十地区を指定いたしましてそれぞれやっているけれども、交通政策との関係がここにもあるわけであります。自治省は広域市町村圏、建設省は広域生活圏というのをやっている。それに住宅関係では大規模ニュータウン建設もある。これはいずれも交通政策は考えているんだけれども、それぞれで考えておって横の調整というのはほとんどなされていない。端的に言うならば、運輸交通政策というものは運輸省にまとめるべきである、こう思うのですけれども、時間がありませんからこの辺でやめますが、運輸交通政策の一元化というものを促進してもらいたいということが一つであります。  それから、これは細かいことですが、一言だけ申し上げておきますと、国鉄の用地、これは財政再建と深い関係があると思うのですが、新幹線関係の側道が二百四万三千七百四十一平米あります。工事費と用地費を合計いたしますと二百億八万八千円。在来線の国道、地方道関係で計算をいたしますと二百八十一万六千七百四十一平米ある。これを時価に換算いたしますとざっと一千億円になる。在来線のものは古いものですから少し余裕を持って考えてもいいと思いますけれども、新幹線関係に、これは用地費の原価と工事費の原価、利子などは計算してないにいたしましても二百億を超えるものがある。これは国鉄が取得をし、国鉄が道路を整備して無料で道路として使わしているわけです。この金を一体どこから回収されるかというと運賃の中から回収されていくわけですよ。国鉄に余裕があるのならそのぐらいのサービスはしてもいいけれども、大赤字を抱えておる国鉄が道路に二百億もの金を、新幹線を建設するにかかわるそういう経費を使うということは問題がある。いかがでございますか。
  117. 高木文雄

    ○高木説明員 私もつまびらかにいたしませんが、現在新幹線をつくりますときには、環境対策との関連もありまして、そこでまたいずれにいたしましても工事用道路がないと建設できないということがございますので、一時土地をお借りしてそれを工事用にして工事を進めるということでなしに、土地を私の方で取得をして、そして工事用道路に使うと同時に、完成後はそれをその地域の方に使っていただくという形式をとるものが最近非常にふえてきております。  その場合に、それを有料といいますと、何らかの方法で市町村ないし地域の方々に御負担願えるということは本当はありがたいことなんですけれども、現実問題といたしましては用地取得のときの交渉の経緯等から見まして、何しろこのすぐ上に非常に高い高架橋が通るんだから道路ぐらいはその地域のために開放といいますか、利用させろというようなお話がありまして、これまた用地交渉の中の一環ということでそういう事柄がふえておるわけでございます。いいか悪いかということについては御指摘のような問題がありますけれども、用地取得の現状から申しますと、その程度の受忍をするといいますか、無償提供申し上げるというようなことは、用地取得のときの条件としてやむを得ない場合が多くなってきているわけでございます。しかし、それが野方図に広がってまいりますと建設費そのものが上がってまいりますのでもちろん十分注意はさしておりますが、現実においてはそういうことがかなり広がりつつあるという現状でございます。
  118. 福岡義登

    ○福岡委員 在来線のものが多いわけですね。新幹線のものはいま総裁がおっしゃったような事情があるにしても、道路法上の道路として使っているのですからね。だから、幾らかそこら辺は条件は考えるといたしましても、これは国鉄だけの問題でなしに政府の問題としてやはり調整される要素が残されていると思うのです。在来線の場合は、これは駅周辺ですから相当地価も高い。幾ら安く見積もっても、田舎の駅へ行きましても駅前となれば十万円以下のところはないでしょう。それを国道であり、主要地方道であり、県道であり、市町村道であるというようなものに認定をされて無料で使わしておるというのは、これは問題があると思うので、御検討をいただきたいと思います。  最後に、再建法案に対して私の見解を明らかにしておきたいと思うのでありますが、まず地方交通線、「政令で定める」、こうなっているのですが、これは理事会で相談することになりましたから政令が出てきたところでいろいろ議論さしていただきたいと思いますが、問題は乗車密度二千人以下を対象にされておるのですけれども、たとえば積寒地帯あるいは他に適当な方法が考えられない地域、将来の開発計画を持っておる地域がいろいろあると思うのです。そういうところは、幾ら二千人未満であっても、機械的にいわゆるバス輸送に切りかえることができない。そういうところを機械的に切って捨てるというのは、これは公共交通政策を忘れた考え方であって、とうてい賛成できない。  それから、幹線対策ですね。確かに国鉄経営の中で地方線が赤字で問題になっておることは事実でございますけれども、しかし収入の面でいうとわずか五%なんです。経費の方でいえば一一%でしかないのです。五十四年度決算を見ましても、地方交通線の赤字は二千三百十二億、幹線系の線区の赤字が五千五百九十八億、幹線系の線区の赤字が実に六八%になっておるわけです。ですから、本当に国鉄の再建を考えるといえば、地方線じゃなくて幹線なんです。その幹線対策が非常に乏しいと思う。ローカル線だけ問題にしまして、一番大切な幹線対策というものがおろそかにされている。そういう問題があります。  それから、昭和六十年の収支均衡が試算されておりますけれども、東北、上越新幹線の損益は含まれていない。推測するところ、三千億円ぐらいの赤字になるだろう。大きい金額ですよ。国鉄再建と非常に重要なかかわりがある。この問題の対策も立てていかなきゃならない。それがこの再建法の中では明らかにされようとしていない、そういう問題かあります。  それから、依然として運賃値上げ政策が再建計画の中で考えられておる。むしろ運賃問題を議論するのであれば、先ほど申し上げました、私鉄の倍以上になっておる都市地域の料金を検討するべきであって、ローカル線の値上げをしても国鉄の再建にそれほど役に立たぬと思うし、あるいは都市地域で言えば、さらにお客を逃がすことになるので、運賃値上げによる再建政策は、これは間違いである。  さらに、構造的欠損の解決をと言っておるけれども、その中身は明らかでない。あるいは公共負担と言うけれども、協議をして解決を急ぐということは言ってあるけれども、これもあいまいな点が非常に多いということなど。さらに、先ほど来論議をしてきました総合交通政策が前提になっていない。そういうことを考えると、われわれはこのまま賛成するわけにはいかない。  そこで、自後の質疑は同僚議員に譲りますけれども国鉄再建法案については再考を強く望んで、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 吉原米治君。
  120. 吉原米治

    ○吉原委員 引き続き国鉄再建法につきまして、同僚議員の後を継ぎまして、主として私はローカル線を中心に質問を行いたいと存じます。と同時に、国鉄の経営のあり方、あるべき姿というものについて、ローカル線に関連をさせながら意見と質問を行います。  最初にお尋ねをしたいのでございますが、これは前国会でもお尋ねをした点でございますが、きょうは若干時間がございますので、突っ込んだ論議をさしていただきたいと思いますのは、この再建法を読んでおりますと、経営の再建あるいは事業収支の均衡、また経営管理の適正化——一体国鉄というのは何だろうか、株式会社なのか、こう疑問を持たざるを得ないほどたくさんの表現が出ております。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕 もう民間会社で使われる表現と全く同じような理解を私はせざるを得ないわけでございます。  そこで、国鉄法の二条に法人格が定義づけられておりますが、この二条の解釈について、もう一度前国会に続いて見解をただしておきたい。特に民法上で定める商事会社ではない、そういう附則的な点もこの二条の中に出てきておる。どういう経緯でこの二条ができておるのか、この解釈について最初にお尋ねをしておきます。
  121. 山地進

    ○山地政府委員 お尋ねの第二条には、「日本国有鉄道は、公法上の法人とする。日本国有鉄道は、民法第三十五条又は商事会社その他の社団に関する商法の規定に定める商事会社ではない。」こういうふうに書いてある点についての御質問でございますが、この規定は、まず国鉄が公法人であるということを明確に書いた規定であろうかと思います。  まず、第一条に書いてございますように、国鉄の業務というのは、「鉄道事業その他一切の事業を経営し、能率的な運営により、これを発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的として、ここに日本国有鉄道を設立する。」というのがございます。法人というのは法律に基づきまして設立されるわけでございますが、国有鉄道は、こういった法律に直接設立の規定がある法人でございます。私法人でなくて公法人であるということが書いてあるわけでございますが、いまの事業収支の点に関連いたしますのはむしろ第一条の規定でございまして、「公共の福祉を増進することを目的として、」と書いてあるのがまさに国鉄の公共性でございます。「能率的な運営により、これを発展せしめ、」と書いてございますのは採算性を言っているわけでございまして、従来からいろいろと御議論を招いております公共性と採算性というものをどういうふうに持っていったらいいんだろうかというのが、国鉄のみならず、公共企業体の問題点であるわけでございますが、こういうような性格を持って国鉄ができておるというふうにわれわれは理解しております。したがいまして、採算性ということから申しますと、国鉄というのは、収支というものについて厳格な考え方を持って臨むべきである、かように考えておるわけでございます。
  122. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、局長にお尋ねをするのでございますが、第一条並びに第二条を考えてみますと、営利を追求する法人でないということだけははっきりしておると思いますね。ところが、独立採算だから採算に合わないローカル線等については、これから後に触れますけれども、切り捨てていこうという発想でこの再建法はつくられておりますが、一体この運輸省なりあるいは国鉄が考えていらっしゃる採算制というのは、国の出し前がゼロになる、そういう収支の均衡を考えていらっしゃるのか。また、そうでないとするならどういうお考え方を持っていらっしゃるのか。ここはいまからの質問に大事なところでございますので、はっきりお答えを願いたい。
  123. 山地進

    ○山地政府委員 いまとなりますと、こういうことを申し上げるのも何となく時代が変わったような感じがいたしますが、日本国有鉄道法の四十一条というところに「利益及び損失の処理等」という規定がございます。国鉄が、この法律ができる前は、利益というのは国庫に納付していたわけでございます。この法律によりまして、私の理解いたしますところでは、利益というものは内部に留保するというような規定ができまして、それだけ国鉄の独立採算制というものが高まってきているのがこの法律でございます。この法律の規定がうまく作用しておりましたのは、御承知のとおり三十九年まででございまして、三十九年以後は赤字が蓄積されてきている、これが繰り越し欠損ということになっているわけなのでございます。  そういう意味から言いますと、国鉄は、いま先生のおっしゃったように、利益を追求する会社ではないということではございますけれども、利益を蓄積し、あるいは損失を繰り越して処理していくということで、経理上明確にその採算制を合わせていくという考え方がこの法律の根底にあろうかと思うわけでございます。  ところで、現在の国鉄の現状から考えて、一体こういったものがどういう意味を持ってくるのかということでございますが、御承知のとおり、今回の予算におきましても七千八百億の助成というものを入れまして、運賃改定を二千百億入れましても一兆円の赤字が出る、こういうような現状になっているわけでございまして、この二千百億については、国民の皆さんあるいは利用される皆さん方の負担増ということにももちろん限界がございます。片方では財政も七千八百億というものを負担することについても、これも非常に限界がある、こういった採算制を合わせることにつきましても、国鉄の合理化と国民の負担と、それから利用者の負担というものをどういうふうに合わせていくかということで、実は採算ではない、負担のバランスということが非常に問題になっているのが現状かと思います。
  124. 吉原米治

    ○吉原委員 採算でなくて不算だという、そういう御発言でございますけれども、一体、先ほど冒頭に質問をしましたことに対するお答えの中で、利益が出たときには内部留保ができる、そういうことになっておるし、あるいは損失の処理につきましても繰り越しをして処理をするという方途もあるんだ、こういうことになりますと、公法上の法人というのは、株式会社と一体どこが違うのだろうか。私は少なくとも利益が出たときには利用者に還元すべきだ、つまりそれは運賃の値下げ等によって還元をする方法もあるでしょうし、いま局長の御答弁を聞いておりますと、一体それでは株式会社とどこが違うのか、こう言わざるを得ないのですが、その点はいかがでございますか。
  125. 山地進

    ○山地政府委員 おっしゃるように、株式会社と違いますのは、利益の配分というような形で特定の出資者にその利益が属さないというような点が非常に違っている点だろうと思います。  ただし、公法人だからといいまして、すべてが非常に違う法律関係が起こるのではございませんで、法人としての契約関係においては、私契約ということは当然行われる。たとえば、乗車切符を販売するというのはまさに私法上の行為かと思うわけでございます。すべてが公法人であるわけではございません。そういうことも考えながら見てみますと、やはり公法人というのは、利益の処分に一番の違いがあるかと私どもは思っております。
  126. 吉原米治

    ○吉原委員 それは株式会社でないのですから株主配当をする必要もない、それは承知の上でお尋ねをしておるのですが、そうなってまいりますと、いま鉄監局長の御答弁でうかがわれることは、国鉄の採算制というのはいま不算だ、こういう御発言もございましたけれども政府の出し前といいますか、政府の負担分、国の負担分というのは一体幾らであるべきかという、いまの、ことし予算要求をなさっていらっしゃる七千八百億がその限界だ、妥当なものだ、日本国有鉄道として日本政府が出す適当な額だ、こう思っていらっしゃるのでございますか。
  127. 山地進

    ○山地政府委員 前々からいろいろ御議論いただいております構造的欠損、国鉄が経営努力をしてもそれをカバーすることができないような問題につきまして、構造的欠損ということでございますが、構造的欠損について前々から議論され、今回の閣議了解、昨年の十二月の閣議了解におきましても、財政助成というものについては構造的欠損に配慮しつつこの助成を考えるということでございます。ただ、構造的欠損が何かということにつきましては、御案内のとおり、年金の問題あるいは公共の負担問題等政府において検討中のものもございます。したがいまして、そのトータルが幾らになるかということについては、現段階において性格的にはわかっておりますけれども数字的にはまだ正確な意味でこれを把握し得ない現状と言ってよろしいかと思います。  ただ、現在におきます財政の負担というのは、七千八百億私ども要求しておりますが、これは昨年に比べて一千億の負担増を政府の方でかぶるということを考えていま要求しているわけでございますけれども、この国鉄に対する助成というのは、年々八百億、九百億、千億近い額で増加しておりまして、対前年比も一〇%というのは、一般会計の伸びの五%から比べますとやはり大幅なものであって、国鉄に対しては、その構造的欠損が幾らであるかということを別にいたしますと、現実的にはかなり高い比率で伸びてきたのが現状だろうと思うわけでございます。必ずしも満足すべき姿ではございませんけれども政府の方の国鉄に対する助成としては相当高く評価していただきたいと思う数字だと私ども考えております。
  128. 吉原米治

    ○吉原委員 七千八百億の国の補助といいますか、その額はかなり高く評価されておるようでございますが、いみじくもいまおっしゃった構造的欠損は七千億や八千億の数字じゃないと私は思うんですよ。ただ、国鉄の採算ということ、そして国鉄の公共性というものを両方考えてみた場合に、いまおっしゃいました公共性を重んずるがゆえに、やはり政府にもそれなりの補助額は出してもらわなければ、いまの政府の補助なしに、国有鉄道が独立採算を貫徹するというようなことはもうできっこない話でございますから、そういう意味で、私は採算制と公共性というものは、確かにいまの制度からいきますとどっちも軽視はできないだろうと思いますが、主としてやはり公法上の法人である限り、どっちにウエートを置くべきかという論議になりますと、何といいましてもやはり公共性を優先すべき法人ではないか。そういうふうに理解をいたしますと、私は、後ほど申し上げますが、構造的欠損と思われるたくさんの問題点がございます。  一つだけここで聞いておきたいのは、仮にいま長期借入金が十兆円を超えております国鉄の単年度赤字が八千数百億、この十兆円を超す長期借入金の使途はどうかと前国会でただしましたら、そのうちの九五%は実は先行投資だ、新幹線を初めとする先行投資に使われておる、運営面についてはほとんど皆無に等しい、ほとんどが先行投資によって新幹線の用地を買う、トンネルをつくる、橋をかける、主としてそういう設備投資であり、工事費であると思うのですね。これに対する、仮に八%の金利だと見ますと、ちょうど国鉄の長期借入金十兆円の金利相当額が実は赤字になっておる、こういうことになるわけでございますから、そうなりますと、本来政府がやるべき分野をきちっと明確にする限り、いま申し上げましたような先行投資等については政府が持つべきものだという理解に立つ限り、十兆円の長期借入金は政府が肩がわりすべきものだ。そうなってまいりますと、それだけでも八千数百億の赤字は解消できるのでございますがね。  この点、運輸大臣政府の立場で、一体いまのような長期借入金の内容と性格、ほとんどが運営費に使ってはいない、国の責任においてやらなければならぬことを国鉄が料金収入の中で賄おうとしておる無理があるから今日の国鉄があるのですから、そういう意味では、なるほど十兆の長期借入金をそういうことに使ってあるのなら政府が肩がわりしようじゃないか、そういうお気持ちになりませんか、どうですか。
  129. 山地進

    ○山地政府委員 この十兆円の残高が大都市圏の交通通勤対策とかあるいは新幹線の建設とか、そういった先行投資に使われているのは先生のおっしゃるとおりでございますけれども、この金が全部金利も償還金もできない金かどうかということとは別だと思うわけでございます。と申しますのは、新幹線でございますれば、金利も払えるし、償還もできる、将来のことは別にいたしまして、現在までつくっておりますものについては、そういったことができる金でございます。  それから、私どもの方の助成の方では工事費補助金というのがございます。これは十年間に三・五%を上回る金利については助成をする。その考え方というのは、三・五%の金利負担は当然国鉄が運賃という形で収受できるという考え方に立っているわけでございます。中には採算割れというのもございます。  それから、大都市につきましては、これについても大都市工事費補助金として別途これは補助金を出して、金利負担ではございません、補助金を出して負担している。金利負担したり工事費そのものを負担したり、いろいろな形でこの借入金の部分については政府が補助をして現在やっておるわけでございまして、これは国鉄が全体的に採算の範囲内で運営できるという考え方に成り立っているわけでございます。ただ、六兆円に上る繰越欠損というものについては、経営を圧迫しますので、これをたな上げにしようということでございまして、長期借入金と繰越欠損というのは、私どもとしてはやはり違うものである、かように考えて処理しているわけでございます。
  130. 吉原米治

    ○吉原委員 私が端的な例で大臣の見解をただしたのですが、いま局長がおっしゃったようなことは数字の上ですでに明らかになっておることでございますからそれは否定をいたしません。そういう説明を求めたのではなくて、十兆という長期の借入金はこういう性格のものでこういう使途でございますよ、したがって、これは国鉄にかぶせるというのではなしに、政府が肩がわりをしてそういう先行投資はやるべきじゃございませんか、そういう意味運輸大臣見解をただしたのですが、大臣いかがでございますか。
  131. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 長期借入金の中に、いわば営業損失からきたところの赤字補てんの借入金とそれから投資をいたしましたことに伴います負担、それの金利、こういうものと交わっておるのでございまして、そこは再建途上にあります国鉄といたしましても計算をやはり区分いたしまして、その区分に応じたいわば赤字補てん額相当というものの政府の肩がわりということは、現在の財政上から申しましても非常に大きい国家への負担であろう、こう思うております。したがって、現在の財政下におきましてはやむを得ない措置ではないかと思うております。
  132. 吉原米治

    ○吉原委員 そうすると大臣、国鉄というのはあくまでも利用する皆さんが払われる料金によって独立採算でいくべきものだという御認識がおありになるのですか。それは今日では求めようとしても求められる話ではないのですよ。本来これは政府がやらなければならぬ仕事なんですよ。それに長期借入金で十兆円を超すような——累積赤字は別ですよ。長期借入金十兆円を超しておるけれども、一体こういう借入金は単なる赤字運営のもとに累積をされた借入金なのかどうなのかという質問を前国会でしましたら、このうちの九五%は実はこうこうでございます、つまり赤字運営のためにできた借入金じゃない、用地買収をする、新幹線をつくる、ほとんどが新線の建設工事費ですよ。しかし、そういうものは政府がみずからやはりやるべきものではございませんか。したがって、十兆の長期借入金は国が負担をしても、借入金に対する不動産というものは片一方にあるわけですから、国の資産として残されたらいいのではないですか。そういう意味で、十兆という長期借入金は国鉄財政の中で大きなウエートを占めているわけだから、それは政府で肩がわりすべきものじゃないか。いまそれを一気にやるとかやらぬとか、大蔵大臣でないから言えないでしょうけれども、性格はそういうものじゃありませんか、こうお尋ねしておるのですよ。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕
  133. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 やはり国鉄も先ほど来議論になっておりますように、公共性と採算制というものを要求されておりまして、その兼ね合いをどこでかということはそのときどきの国民経済のあり方、財政力、国の財政力でございますが、そして国鉄の経営状況というものによって裁断をすべきだと思うのですが、原則といたしまして、というよりもやはり気持ちといたしましては、国鉄の投資に要した費用といえどもこれは経営しておる営業収益の中で返済していくべきものだと思うております。これはなぜか。交通機関の中に国鉄以外にも私鉄もございますし、地下鉄もございますし、またその他の交通機関もございますが、これらはいずれにいたしましても公私の別なく、やはりそれぞれの自助の努力によりましてそういう借入金の返済をいたしておるのでございます。しかし、他の機関と違って国鉄はやはり国の基幹交通機関でございますだけに、先ほども申しましたような六兆に近い債務の肩がわりを政府がいたそうということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  134. 吉原米治

    ○吉原委員 大臣、はっきりお答えになりませんけれども、気持ちの上では私が質問している趣旨はわかっていただいておるのでございますか。長期借入金は十兆円を超しております、中身はこうこうでございます、こういう性格のものは政府みずからが投資をなさってしかるべきものじゃございませんか。ささやかな利用者が払う料金収入の中でこの種のことをやらせるという株式会社方式ではもう成り立たぬ。公共性を守っていく者は一体だれなのかということを考えてみますと、やはり政府がそのくらいのことはやらなければならぬだろうけれども、いまの政府自体の財政ではいかがなものかというくらいの答弁はあってしかるべきだと思うのですよ、十兆円のその性格、内容ははっきりしておるのだから。どうですか。
  135. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 投資のみによって借り入れました額は十兆ではないと思うのです。けれども、いずれにいたしましても巨額の長期借入金が投資のためにございます。それで、もし仰せのように国鉄に全額国が肩がわりするということをいたしましたら、国鉄以外の交通機関を利用しておる国民は、やはりその利用しておる交通機関の投資を国で見ろという議論になってきやせぬだろうか、こういうことも思われます。そういうことに発展してはなりませんし、やはりある程度は交通機関の利用者負担という原則、これは当然貫かれるべきものであろう。その程度はいろいろと問題はございますけれども、そういう原則はやはり貫くべきものであろう。そういう意味から申しましても、国鉄の設備投資に要しました費用は国鉄自身の中で返済していくべきが原則である。しかし、何遍も申しておりますように、この公共性、しかも高度に国民生活に大きい影響を及ぼします基幹交通機関であるだけに、国はできる限りの助成措置を講じて肩がわりしていこう、こういう趣旨でございます。
  136. 吉原米治

    ○吉原委員 他の交通機関からも同じようなというふうな御意見が出ましたけれども、他の交通機関はほとんどが営利を追求するという目的でつくられた企業、だから最初に私は国鉄法の二条の解釈をめぐって見解をお尋ねしたわけでございますが、もともと営利を追求をし、そして出てきた利潤は株主に分配するというふうな目的と意識を持ってスタートしたものではないだけに、私はしつこく大臣の見解をただしたいのであります。  すれ違いの答弁ばかりでございますから、時間がたちますから、これと関連をして、地方交通線がいま国鉄再建法の中で中心的な議題になっております。ここから出てくる欠損額、これは全額国で持つべきだ、こう私は思うのです。つまり住民のニーズにこたえて、またその地域の経済的あるいは人的、物的、いろいろな意味を持つそういう立場から鉄道が敷設をされてきた長い歴史があるわけでございますが、そういう意味では公共性というものを優先的に考えていく場合に、当然そこから出てくる経常欠損、特別にむだなことをして赤字を出すならまた別の話でございますが、まともに事業に携わって、そこから出てくる不採算部分というのは政府が持つべきだと思いますが、これまたいまの長期借入金の話じゃございませんけれども、これも運賃収入の中で持つべきだ、こう思っていらっしゃるのですか。
  137. 山地進

    ○山地政府委員 現在まで地方交通線についての助成は、非常に大ざっぱに言いますと、地方交通線の欠損の半分を国が助成するという形でやっております。今後この法律ができた後の地方交通線の欠損の助成の方法についてはさらに改善をしなければならないと考えております。  現在なぜ半分になっているかということでございますが、一つは、地方交通線対策というものがまだ確定されていない段階であるので二分の一ということになっているわけでございますが、確定されていないで二分の一になっている主たる原因というのは、やはり運営の合理化というのがまだ完全に行われてはいないだろうということが第一でございまして、その他貨物部門につきましてはさらに経済合理性に基づいて運営される可能性があるということからこれも除外しているわけでございまして、そういう意味では全額でございませんで半分だけ助成をしているというのが現状でございます。
  138. 吉原米治

    ○吉原委員 その半分を持つという根拠は何でございますか。
  139. 山地進

    ○山地政府委員 ただいま申し上げましたとおり、地方交通線対策が全般的に確立されていない段階であるので半分持つということでございます。
  140. 吉原米治

    ○吉原委員 地方交通線対策が確立されていないから二分の一だということですが、地方交通線対策がどういう形になったときに、確立されたということになるのでございますか。
  141. 山地進

    ○山地政府委員 これは従来から再建対策についての閣議了解、それから今回の法律で私どもがやっております地方交通線対策というものが確立された場合ということになろうかと思います。
  142. 吉原米治

    ○吉原委員 具体的に。
  143. 山地進

    ○山地政府委員 地方交通線対策が現在の法律に基づきましてスタートするということで、いまの助成の規定等がすべて地方交通線についての助成が書いてあるわけでございますから、この法律が通って再建の一環として地方交通線対策が進捗するということが地方交通線対策の確立かと私どもは思います。
  144. 吉原米治

    ○吉原委員 地方交通線対策調査室の出した資料に基づいてもたくさん書いてございますが、このすべてが充足をされなければ、すべてが実現をされなければこの対策が確立されたことにならない、逆に言いますと確立をされれば一〇〇%補てんだ、こういうことになるのでございますか。
  145. 山地進

    ○山地政府委員 予算の問題でございますので、助成については予算の範囲内でとこの法律でも書いてあるかと思いますが、終局的な目的とその年度における助成金のあり方というのとは、財政の問題がございますので、すぐ全額ということにはなりかねると思いますが、私どもの究極の目的といたしましては、全額助成を考えているわけでございます。
  146. 吉原米治

    ○吉原委員 いま局長は地方交通線対策が確立されたらというお話でございましたけれども、この地方交通線対策にはいろいろございますわな。中でもいまから話します特定地方交通線は、国鉄の経営から切り離すというのが一つの大きな課題になっていますね。それが実現できたら、これまた予算の範囲内でこれが移動するのでございましょうか。政府の予算の範囲と地方交通線対策が確立をされた、こういうのとはちょっと関係がないように思うのですが、いかがでございますか。
  147. 山地進

    ○山地政府委員 先生のおっしゃるように、どんなことをやっても、たとえば特定地方交通線がバスになるといたしますと、その年度におきましては、バス転換の交付金が私ども考えでは一キロメートル三千万円の出費が伴うわけでございますけれども、そういうようなことで、一時的には地方交通線についての対策費がかさむような状態が片方では起ころうかと思います。片方では、国鉄から地方交通線がなくなることによりまして欠損が減ってくるということも起こるわけでございます。その場合には、国鉄の欠損が減ったかわりに転換補償金がふえてくる。これをやはりトータルにどういうふうに予算をつけていくかというのは、これは財政当局との御相談になるわけでございますけれども、私ども考えとしては、国鉄に残るようなものについては全額国庫負担で欠損は補っていきたい。それから、バス転換あるいは第三セクター等に転換するものについては、一キロメートル三千万円の補償、それから転換後の赤字についてはまた補償していきたい、かように考えておるわけでございます。
  148. 吉原米治

    ○吉原委員 そうすると、五年間は転換交付金というふうな形で二重にダブって経費を支出することになるから、五年間は無理だけれども、六年目からはそれでは全額国庫負担ということにしたい、これは鉄監局長の希望意見でございますか。何かそうするという確たるものがあるのでございますか。希望意見ですか。
  149. 山地進

    ○山地政府委員 結論から申しますと、希望意見でございまして、ただ私どもの実現目標としては、地方交通線に残ったもの、国鉄に残ったものについては全額助成をする。それから、転換するものについては運営費補助金として五年間の、第三セクターについては損失の半分を補助したい。そういったことがトータルで年度年度によって違うボリュームになろうかと思うのでございますが、そうすると、経過的にはそれが完全に実現できない場合もあるということで、私の希望と、現実にはすぐそうなる保証はない、こういうことを申し上げたいと思います。
  150. 吉原米治

    ○吉原委員 大体わかったような気になりましたけれども、非常に不明確というか、不確定要素を持ったままの御発言のように理解をいたしておきます。  そこで、同じように国鉄バスの問題がいま地方では大変大きな問題になっております。過疎地帯一帯では、空気を積んで走るようなバスはもうもったいないということで、あちこちで切り捨て、路線廃止が実施をされておりますが、この国鉄バスの運行にかかる経費補助、これは実は私バス以下なんですね。なぜ私バスと国鉄バスとこう差がついておるのでございますか、その根拠をひとつ明らかにしてほしい。
  151. 山地進

    ○山地政府委員 国鉄バス事業のうち、民営、公営バスであれば過疎バス補助の対象となり得る部分というのがあるわけでございますが、そこから生ずる欠損につきましては、民営、公営バス並みの経営努力が行われる、向こうと同じような経営努力が行われるということを前提として、民営、公営バスに対する国のバス補助方式に準じた助成措置というものを講じて国鉄の負担軽減をしているのが現状でございます。
  152. 吉原米治

    ○吉原委員 そうすると、国鉄バスの方は民間並みの経営努力をしてないということでございますか。
  153. 山地進

    ○山地政府委員 御指摘のように、国鉄バスの欠損補助、その部分だけを見ますと、公営あるいは民間バスの助成体系というのは欠損ということに着目をしてやっているわけでございます。国鉄の場合には、その部分の欠損というものももちろんございますけれども、それが経営努力というものを加味したらどうなるかということが一つ経費面でございますし、それからもう一つ、国鉄の職員に対する退職手当とかあるいは赤字の一般的な助成という、経営一般に対する助成というのが別途ある。この二つから、国鉄のバスの欠損助成というのは、いまそれだけを比較いたしますと、公営並びに民営から見ると若干低くなっておるわけでございますが、全体をながめてみますと、大体同じようなものになっている、かように考えているわけでございます。
  154. 吉原米治

    ○吉原委員 そこで、先ほどの地方交通線から出てくる欠損を、地方交通線対策が完結した後には全額国庫負担をしていきたい、このバスの場合も同じことが言えるのでございますか。バスは違いますか。
  155. 山地進

    ○山地政府委員 この地方交通線対策の確立後のバスの助成についてはいま検討中でございまして、いまの過疎バス対策と並んでいる国鉄バス助成でそのまま移行していいものかどうかということについて、いま検討しております。
  156. 吉原米治

    ○吉原委員 検討中ということでございますが、この地方交通線という対策の中には、軌道だけを考えていらっしゃるわけじゃないのでしょう。端的に言いますと、特定地方交通線を廃止してバスに転換しようという、そうすると、先ほど言いましたように、地方交通線対策が実施されたら、そこから出てくる経常欠損は全額国庫で補てんをすべきだ、こうおっしゃったのと同じことになるのじゃございませんか。
  157. 山地進

    ○山地政府委員 あるいは私が先生の御質問について理解が足りなかったかと思いますが、転換のバスのケースが二つあるわけでございます。国鉄がバスで引き受ける場合、それからもう一つは、民営バスが転換後のバス経営を引き受ける場合、二つあろうかと思います。私どもの基本的な考え方は、全額見ていくということでございまして、国鉄バスについては従来の方式で十分かどうか、いま先生の御指摘のようなこともありますので、国鉄バスについては若干検討さしていただきたい、かように申し上げておるわけでございます。
  158. 吉原米治

    ○吉原委員 地方交通線対策という中に国鉄バスも含めた対策であろうと私は認識をしておったのです。いま長期債務の問題あるいは地交線の問題、国鉄自動車の問題、いずれも構造的な欠損と、こう私どもは見ておるのでございますが、そういう意味で一連の関連でここでお尋ねをしておるわけでございます。  もう一回言いますけれども、地方交通線対策ができ上がったら、バスといえども軌道といえども経常欠損は全額国費で補てんをする、こういうお考え方だというふうに理解してよろしゅうございますか。
  159. 山地進

    ○山地政府委員 転換後のバスにつきましては赤字について全額補償していきたい、かように考えております。
  160. 吉原米治

    ○吉原委員 どうも奥歯に物がはさまっているような感じでございますが、転換をしたものについては一〇〇%持つ、既存のものはどうなるのですか。
  161. 山地進

    ○山地政府委員 先ほど来申し上げておりますように、欠損は何か、国鉄バスの欠損は何かという路線別の欠損を考える場合に、一部、管理費部分につきましてあるいは人件費部分について国の助成というものが入る。そうすると、一般の民間のバスに対する助成と国鉄に対する助成というものが完全にバランスがとれている姿というものはやはり考えないといけないという議論があろうかと思うものでございますから、どうも私の答弁が大変不明確で申しわけなかったのですが、そういう意味で、民間のバスについては従来の計算方式も確立しておりますから全額助成いたします、国鉄のバスについては従来の方式もありますけれども、それらを考えて欠損というものについて十分検討いたします、かように申し上げたのですが、それを、どうも私の答弁の仕方が悪かったので申しわけございませんが、そういうふうなことでございます。
  162. 吉原米治

    ○吉原委員 先ほどは全額補てんと、こうおっしゃっておいて、今度は検討しますということでございますか。それじゃ先ほどの答弁は間違いですか。局長、前段には、地方交通線対策ができ上がった後は転換をしたものについては全額持ちます、こうお答えになった。転換したのはわかった。ところが、地域全体に走っておる既存のものはどうなるのか、こう尋ねておるのです。
  163. 山地進

    ○山地政府委員 国鉄の既存のバスと、今度新しく転換後走るバスと、この二つの種類があるわけですね。前の既存のものについては閣議了解におきまして従来の助成を継続するというふうな方針が出ております。それから、いまの法律で、転換後のバスについてはこれは全額補償するということになっておるわけでございますが、その全額というのと既存のというところに若干の違いがあるということでございます。
  164. 吉原米治

    ○吉原委員 どうも不確定要素があるような危惧を持ちますが、時間が経過しますので、構造的欠損のもう一つの課題についてお尋ねをいたします。  国鉄の年金会計への一般会計からの繰り出しをかなりやっておるのでございますが、これらの問題についても、現役で掛金を掛けておる人数と年金を受給する人数と、国鉄の場合は極端なアンバラが出てきておりますが、こういった集中的に出てきておりますアンバランスを国の責任で是正すべきだ。特に戦後、外地におりました国鉄関係の職員が大量に復員をしてきた。それを国鉄の意思にかかわらず、一つの国策として国鉄が吸収したという歴史があるわけでございまして、そういう意味ではこれは全く政府の責任ではないかと思います。こういった年金会計のアンバランスの補てんも国の責任で補てんをすべきだと思いますが、いかがですか。
  165. 山地進

    ○山地政府委員 現在の国鉄共済の状態が非常に悪化しておりまして、成熟度が八二%に達し、五十一、二年ごろには赤字を出し、今後さらに赤字が非常に明確化されているわけでございます。この共済制度の問題を国鉄共済自身で何らかの助成によって解決していくのがいいのか、あるいは制度的に共済制度そのものを抜本的に見直した方がいいのか、二つ考え方があるわけでございますが、御承知のとおり、十二月の閣議了解に基づきまして各省間で共済制度全般につきまして懇談会をつくり、現在検討しておるわけでございます。したがいまして、その結論を待ってから今後の共済制度のあり方について、いかなる助成をしたらいいか考えるべきであろうかと思いますが、今年度はまだ結論が出ていない段階でございますので、予算上、普通の国家公務員と三公社との平均の成熟度というのが四〇%台でございますから、八二%と四〇%ぐらいの差のものにつきましては、その金額について暫定的に金利を補給して国鉄の経営の圧迫にならないようにするという措置を現在予算要求しているわけでございます。
  166. 吉原米治

    ○吉原委員 いま検討中ということでございますが、その検討の方向が、私がいま申し上げました、国鉄の責任というよりもむしろ政府の国策としてそういうことにならざるを得なかった、そういう歴史を考えてみても、やはり政府政府の責任でアンバランスは埋めるべきだ、こういう精神で検討なさっていらっしゃるのですか、それとも別な角度で検討されているのですか。
  167. 山地進

    ○山地政府委員 国鉄が戦後、各地から帰還される方を非常に雇用いたしまして、その後人数が減ってきたというようなことで、こういった国策に沿った雇用政策といいますか、そういった経営を展開したということによる重圧というふうに考えておりまして、これらのものについて国が一体いかなる関与をすべきか、それから企業体としてはいかに関与すべきか、あるいは個人がどういうふうな負担をしたらいいか。現在国鉄職員の負担というのは、ほかから比べて非常に高くなっておるわけでございます。そういったことを全体的に考えていきたい。おっしゃったとおり、そういった国鉄の過去の歴史というものを十分考えてこういった対策を講じている、こういうことでございます。
  168. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、私が申し上げました趣旨を理解をされて、そういう方向で検討されておる、こういうふうに理解をいたします。  次に、かねてから公共割引について、機会あるごとに要請をしておるのでございますか、いまだにこれが実現をされておりません。公共割引の問題は国鉄だけに限りませんけれども、今日の国鉄再建法の中に出てきておりますように、努力をされるように書いてございますが、一体、いままで通学生に対する割引、これは文部省の方に対してどのような折衝をされて、それに対して文部省はどういう態度を示されておるのか。あるいは身障者等に対する割引についても、これは厚生省の所管になりますか、厚生省等はどういう考え方を持っておるのか。国鉄は何々省にこういう問題についてこういう要請をした、ところが相手はこういう態度でございました、交渉なさっていらっしゃるのなら、その経過をお話しを願いたい。
  169. 山地進

    ○山地政府委員 この公共負担の軽減対策、これも昨年十二月の閣議了解で、関係省間で検討するということになっております。文部省、厚生省、大蔵省、私ども、それから内閣も入っておりましたか、そういうメンバーで、過去十回以上にわたりまして意見の交換を重ねておるところでございます。現在まだ結論が出ておりません。御案内のとおり、文部省におきましては、従来の歴史というものから考えて、通学定期はぜひ国鉄で持ってもらいたいという御希望が非常に強いようでございますし、それから厚生省におきましても、福祉政策というのは社会の各部面で持ってもらいたい、こういう基本的なお考えというものをお持ちでございます。  かなりこの問題については各省とも御理解を深めていただいていると私は思うわけでございますが、いまの段階で各省の考えがこうであるということを申し上げるのは、やはりまとめていきたい立場から申しますと、控えさせていただきたいと思います。
  170. 吉原米治

    ○吉原委員 かなり関係各省理解を深めていただいたという感触だ、こういうお答えでございましたが、次年度予算に間に合うのでございますか。
  171. 山地進

    ○山地政府委員 今年度には間に合わないと考えておりますので、今年度は、昨年度におきます国鉄の割引率の是正分に相当するものを国鉄に助成する。つまり、去年の割引率とことしの助成分と合わせると、三%の是正をしたと同じような効果が国鉄に起こるということで、暫定的にそういう処置を予算要求しているわけでございます。
  172. 吉原米治

    ○吉原委員 これも構造的欠損です。いまずっと一連の構造的欠損と思われる課題について数々御質問をしておるわけでございますが、市町村に対する納付金二百四十一億、あるいは公団の借料が三百六億ばかりございます。市町村納付金等々については、国鉄が直接払うということではなくて、これまた政府が特別交付税ででも、そういうきちっと裏づけをする中で交付税で補てんをするという方策も一つあるでしょうし、いずれにしましても、国鉄を再建していくという過程から考えますと、市町村納付金というのは、むしろ政府がその相当額を、特別交付税でもあるいは普通交付税でも結構でございますが、関係市町村におろしていくという配慮がなされてしかるべきじゃないか。  また、鉄建公団に対する借料が年額で約三百億ばかりあるのでございますが、これもよく聞いてみますと、まだ鉄建公団の所有であるけれども無料で国鉄が使っておる路線もあるようでございます。特に都市部中心の部門にこういった借料を払うということに相なっておるようでございますが、やはりこれは無料にするということをこの再建策の中で考えるべきじゃないだろうか、こう思いますが、この納付金と公団借料等について御見解があれば伺っておきたいと思います。
  173. 山地進

    ○山地政府委員 市町村納付金については、長いこと関係省庁間あるいは国と地方との間で、どうあるべきかということについて議論をされてきたものと承知しておりますが、現在の状態におきましては、なかなか市町村納付金について明確な対策というものが確立されておりません。地方交通線の運営費の補助対象である経費の中にはこれが含まれておるわけでございます。  それから、公団借料につきましては、大都市圏の通勤通学輸送にかかわる部分については、借料の三〇%の助成を行っております。これは国鉄の大都市交通設備の整備費に三〇%の助成を行っているということと同じ効果を持つものでございます。先ほど先生のおっしゃられたように、全額国が持っている線以外につきましては、国鉄が自分の費用で経営できるというたてまえから、借料というものについては従来軽減措置ということは行っていないわけでございます。  ただ、これも非常にぐるぐる回った議論になるわけでございますが、市町村納付金とか公団借料というようなものが原因で累積欠損が出ているものについては、過去債務のたな上げということで、金利については国鉄の経営を圧迫しないような形で処理されているということをつけ加えさせていただきます。
  174. 吉原米治

    ○吉原委員 それでは、続いて質問をいたしますが、国鉄の今度の再建法を見てみますと、監査委員を一名増員ということになっておりますね。これは従来は五名以内というふうになっておるのですが、なぜ一名ふやさなければならぬのか、その理由を明らかにしてもらいたいのです。
  175. 山地進

    ○山地政府委員 今回の再建法におきまして、国鉄はまさにその再建のために新たな経営改善計画というものを定めまして諸施策を展開するわけでございますが、これらの改善計画——従来からの改善計画が重要でないと申すわけではございませんが、今回の改善計画というのは今後の国鉄の再建法の実施におきましては非常に重要な計画でございます。この計画の毎年度、毎事業年度における実施状況を明らかにした報告書というものを監査委員会というのは運輸省の方に、意見書を添えて運輸大臣に提出することになっております。このように監査委員会の役目というものがこの法律によりましてますます加重されるというような事態でございます。もちろん業務量の増大ということもございますし、内容が複雑になりかつ高度化しているというふうに私ども思いますので、この際五名を六名にして監査委員会の機能を充実強化したい、かように考えて監査委員会の委員の一名の増員をお願いしているわけでございます。
  176. 吉原米治

    ○吉原委員 ただいまのお答えでは私は納得いかないのですね。普通なら、一つ企業体を再建しようという時期でございましょう。少なくとも国鉄の職員は六十年度を目がけて三十五万人に減らす、そういうことを一方ではおっしゃっておる。監査業務だけがなぜ現行の五名で消化し切れぬのか、その五名の皆さんはそう無能な方ばかりいらっしゃるとは私は思っていない。五名の皆さんの能力をしてはどうしても業務量が増大してかなわぬということならそれなりに理解がいくのですが、いまから国鉄を再建をしようという時期に逆に監査機構というものをふやさなければならぬ要因というのはどうしてもただいまの御答弁では納得いかぬのですが、どうでございますか。
  177. 山地進

    ○山地政府委員 監査機能というものの強化ということにつきましては、従来から国鉄には監査委員会があるわけでございますが、こういうような赤字状態になったときこそ監査機能の強化というのが必要になってくるし、また、いろいろの議論の中には監査委員会を国鉄から独立さしてもっと強化すべきでないかという御議論も一部には私、伺ったこともございます。そういう意味では、この監査委員会というものの機能が、国鉄の経営に対しまして非常に適切な監査を従来してきておりますし、今後もそういう意味ではさらに強化して国鉄の再建に資するように働いていただきたい、かように考えているわけでございます。  それで、毎年出ております監査委員会の報告、ことしの報告におきましても営業的な感覚で経理を区分する等、非常に私どもの啓発される点が多いわけでございまして、監査委員会の機能については大変私どもとしても感謝し、高く評価しているところでございます。
  178. 吉原米治

    ○吉原委員 どうも鉄監局長の御答弁では納得いきません。特に他の公団と比較してなぜ国鉄だけが監査委員を六名にふやさなければならぬのか、他の公団の例からいたしましてもどうも合点がいかない、納得がいきませんが、このことばかりにこだわっておっても時間だけたちますが、納得がいかない。もっと、ああそうかと思われるような御答弁を考えておいていただきたい。  そこで、問題の地方交通線の中の特定地方交通線、これが「政令で定める基準」と、こういうことになっておるのですが、午前中からも話がありますように、この「政令で定める基準」というのは、理事会で各党一致といいますか、各党それぞれから御要請があれば提示するのにやぶさかでないという御答弁がございましたが、ならばこの場でお答えはできるものと思いますが、内容についてお答えできますか。
  179. 山地進

    ○山地政府委員 前国会のいろいろの御質疑の中で、政令案についてひとつ示せというお話がございまして、その概要についてはいろいろと申し上げたわけでございますが、紙に書いて出せ、こういうお話がございました。その際、委員長に一任していただいて、そして理事会で後刻御検討いただくというふうになって、その後、例の解散の問題がございましたものですから今日に至っているわけでございますが、できましたら委員長のお計らいのとおりに私どもとしてはいたしたいというふう考えております。
  180. 吉原米治

    ○吉原委員 いまの御答弁はどうなんですか、いまお答えできぬということなんですか。ちょっといま声が小さくて聞き取りにくかったのですが、いかがですか。
  181. 山地進

    ○山地政府委員 理事会でお諮りをいただいて、その後私どもの方で準備さしていただく、こういうように考えております。
  182. 吉原米治

    ○吉原委員 理事会で協議をなさって、御要請があれば提示するのにはやぶさかでない、いまお答えはできぬ、そんなに政令の中身、基準というのは膨大な資料でございますか。
  183. 山地進

    ○山地政府委員 次回の理事会までに準備するということで、私どもで用意を進めているところでございます。
  184. 吉原米治

    ○吉原委員 そうすると、お尋ねをするのですが、調査室の出した資料の六ページに括弧書きで三つばかりそれらしきものと思われる基準が列記してございますが、これ以外にまだたくさんあるのでございますが、中身は、中心はこの三本だ、こういうふうに理解をしていいのですか。
  185. 山地進

    ○山地政府委員 基準に関する政令は、法律の第八条の第一項と第二項にありますように、一つは、幹線交通網として政令に定めるものを除くということでございますので、幹線交通網に関する政令部分というのがございます。それから、収支が相償わないものというのが第一項にあるわけでございますが、この政令、それからもう一つは、二項の特定地方交通線に関する政令、この三つを合わせて一つの政令に書きたいと私ども考えているところでございまして、ここに書いてございます調査室の方の地方交通線のところというのは、特定地方交通線と地方交通線、この二つでございますから、もう一つ、幹線に関するものを政令として考えなければいけない、かように考えているわけでございます。ここに書いてあるような、非常に大まかに言いますと「地方交通線の基準」というのは、私どもがこの委員会でお答えしていることは、ここに書いてあるようなことは大体お答えしたかと思いますが、現在でもこういうふうに考えている部分が大部分であろうかと思います。
  186. 吉原米治

    ○吉原委員 そこでお尋ねをしたいのですが、「最混雑時の輸送量が一定量以上である路線」あるいは「豪雪のため並行道路が一定期間以上途絶する路線」「並行道路が未整備等の理由によりバス転換が不適当な路線」、このものは、いま政令の中で考えていらっしゃる二千人以下の乗車密度といいますか、特定地方交通線を国鉄の経営から切り離そうという予定路線からは、こういった三つの条件があるものについては除くのだ、文章を読みますとそうなるわけでございますが、一点目の「最混雑時の輸送量が一定量以上である」というこの一定量というのは具体的には何人を考えていらっしゃるのか、あるいは「豪雪のため並行道路が一定期間以上」というその一定期間とは一体何日ぐらいを考えていらっしゃるのか、この二つをとりあえずちょっとお答え願いたい。
  187. 山地進

    ○山地政府委員 前国会におきましても、混雑時の一定量というのは千人、それから豪雪のため車が通れない一定期間につきましては十日を考えておる、かように申し上げたかと思いますが、現在でもかように考えております。
  188. 吉原米治

    ○吉原委員 そこで、千人と十日というのは私も承知の上でお尋ねしておるのですが、この千人という一つの線引きは、たとえば九百八十人の場合はどうなるのか。極端に言いますと、九百九十九人ならどうなるのか。そういう論議だって出てくると思うのですよ。あるいは豪雪のため途絶する期間十日間というのも、八日ならどうなのか、九日ならどうなのか。そういう問題が出てまいりますから、そこら辺は一体幅のある考え方を持っていらっしゃるのかどうなのか。これはもう全然幅がないのだ、こういうふうにお考えなのか、明らかにしてもらいたい。
  189. 山地進

    ○山地政府委員 いまの問題は、まず私どもがどんな考えを持っているかということで、政令に定める基準についての運輸省考え方ということでお示しをしたいと思っているわけでございまして、それが政令として固まった段階で一体どういうふうな運用をされるのかということにつきましてはまた皆様方の御意見をよく伺いながら考えていきたい、かように考えております。
  190. 吉原米治

    ○吉原委員 微妙な答弁ですから、それなりに理解をして次に進みます。  特定地方交通線を廃止するという前提で対策協議会が持たれるわけでございますが、これも前国会で尋ねたつもりでございますけれども、国鉄の経営から外すか外さないか、ここが今度の再建法の中で大きなウエートを占めるわけでございますが、この法案が成立をするということは国鉄の経営から外すということになる。外した後どうするかという相談をする期間が二年間あるというんですね。これは一方では地元の関係、利用者の皆さんの意見を十二分に承って民主的に——民主的にという表現はあなたの方の文章には使ってございませんが、私はそういうふうにかねてから聞いておるんです。国鉄の経営から外すということが決まった後で、さて外した後一体どうするのか、皆さんで一遍話し合いをしようじゃございませんかというのがこの九条なり十条に書いてある精神だと思っておるのです。これは新聞用語でございますが、俗に見切り発車条項と言われておる問題でございますけれども、私はそういうことになるだろうからと思って最初に日本国有鉄道法の二条等について聞いたのです。もうからないから、あるいは不採算だからということで国鉄の経営から外すという考え方は、日本国有鉄道という公共性の非常に高い立場からいって一体こういうことが許されていいのかどうなのか。しかも、沿線の関係者の皆さんとよく協議をしましょう、しかも一カ月や二カ月じゃない、二カ年もかかってひとつ十分論議をしましょう、そして、どっちになろうとも理解と納得の上に一つの物事をやる、そういうのならこれはまたきわめて常識的ですね。だけれども、いまのこの法律の案というのは問答無用ですからね。後始末をどうするかという相談を二カ年かかってやろうというのです。基本的な国鉄の経営で維持運営をしていこう、そう思うのだが、こういう隘路があるけれども、こういう問題があって国鉄も大変だ、沿線の皆さんひとついい知恵はございませんかということで相談をしよう、その期間が二カ年だとおっしゃるならば私は常識的だと思うのです。そうじゃない、きわめて問答無用の一方通行型の法案の中身になっておりますがゆえに、断じて私どもはこの法案は認めるわけにいかぬ、そういう考え方にならざるを得ぬのでございます。  そういう意味で、この九条、十条関係一連の考え方について、国鉄でやるか、どういう方法でやるか。国鉄の方がやめたいという希望意見は当然その協議会の場で出されるでしょう。しかし、関係の住民の皆さんの意向を十二分にくんで、その理解と納得の上に出てきた結論については従っていく、そういう幅のある考え方はお持ちでございませんか。運輸大臣、お答え願います。
  191. 山地進

    ○山地政府委員 冒頭から先生のおっしゃる公共性と採算制、現在までその考えでこの問題を考えなければいけないというふうに私どもも思うわけでございますが、まずはこういった国鉄再建の今回の対策と申しますのは、国鉄の再建というのはやはり重点的に経営をしなければいけない、こういうのが基本に入っているわけでございまして、国鉄の持っている鉄道特性というものを生かしてそういった分野に特化していくということがまず前提になっているわけでございます。  それから、今回の地方交通線対策はその考えに立ちまして地域交通というのは一体どうするのか。これはやはり国民経済的に非常に合理的な経済的な方法でそれを補っていくのが交通体系としても至当であるし、いまの国鉄の再建の方向にも合う、かような考え方から、地方交通線については、特に特定地方交通線についてはバス輸送に転換することが適切である路線というふうな考え方でこの問題に臨んでいるわけでございます。もちろんそういったものの廃止につきまして、廃止も含めて御議論いただくという考え方もあろうかと思いますけれども、私どもとしては国鉄再建、それから片方では効率的な地域交通、この立場から廃止ということをお考えいただきたい、ただ鉄道としてどうしても残すというようなお考えの場合には、地域としてそれをお取り上げになり、かつどういうふうに維持するかということをお考えいただきたい、その場合は政府としても援助をいたしましょう、こういうふうなことで実は廃止を前提にした協議会ということでお願いをしたい、かように考えているわけでございます。また、廃止を含んで協議する場合にはそれなりのいろいろな方法があろうかと思いますけれども、私どもといたしましてはほかの方法ということはなかなか考えにくいということでこういったものを出しているわけでございます。
  192. 吉原米治

    ○吉原委員 今回出されました再建法の中に秘めておりますきわめて高圧的な、強権的なとでもいいますか、民主的な世の中でございますその常識論からいささか逸脱した九条なり十条だろうと私は思わざるを得ません。  そこで、仮にこの法案が原案どおり通過をした場合に、とうとう二カ年も経過した。「特定地方交通線を廃止する場合において、これに代わる輸送を確保するため必要があると認めるときは、」これは運輸大臣が認めるときですね。「必要があると認めるときは、日本国有鉄道が自ら一般乗合旅客自動車」つまりバスで「輸送を行うべきことの指示その他の措置を講ずる」ことができる、こうなっております。ところが、運輸大臣がその必要がないと認めた場合、一体どうなるんですか。これはもう大臣の判断になっておるのですよ。「運輸大臣は、」となっています。「運輸大臣は、日本国有鉄道が特定地方交通線を廃止する場合において、これに代わる輸送を確保するため必要があると認めるときは、」と、こうなっておる。運輸大臣がその必要がないと認めたら、もう何にも残らないということ。  私は、予定される路線の現地視察でかなり歩きました。ところが、その沿線の皆さんがたくさん抗議をしたり反対意見を申されておりましたが、その中で、おれのおじいさんの代に、お上の仕事だからという、あるいはまた線路がつけばおれたちの部落や町もよくなるんだからということで、ただ同様に田畑を供給したというのですが、どうしてもやめるというのなら、もとどおりの田畑にして返してくれと、こういう悲痛な叫びをお年寄りがされておった。もし、そういう段階に——まあこれは原案が通ったという仮定で論議をしておるわけでございますが、そういう事態になったときに、もとどおりの田畑にして返すことが一体できるのかどうなのか、この点について、大臣はどう考えていらっしゃいますか。
  193. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 田畑に復旧して返せという議論は、これは吉原先生、いわば極端にそういうことにもなりかねないぞ、だから十分に協議をして地元の意見を反映するようにしろよ、こういう意味だと私はいま受け取っております。  それで、私は先ほど来、一連の御質問をずっと聞いておりまして、やはり特定地方交通線、これの廃止もしくはこれを廃止した後の代替機関、あるいはこれを他の運営にしたときに、まず第一に赤字の対策はどうするのか、そしてまた本当に廃止してしまってその地方における交通輸送の責任はどうなっていくのだろうかと、この心配が集約されておりますが、これはもう当然のことだと私は思います。ですから、この法案に書いてございます協議会、この協議会のあり方のみで特定交通線の整理というものは、なかなかこれだけでは実際は進まない、私はこう思います。  しからば、どういうことをするのか。要するにここに書いてありますことは、国鉄が負担します限界というものはやはり明確にしてやってもらいたい、しかしながら地方におきますところの交通輸送の責任というものは、やはり国と地方とが十分協議して、いわばなるようにしていかなきゃならぬ、こういう意味が法案の中に通っておる精神でございます。でございますから、先ほどお尋ねの中で、廃止を申請してきたら、大臣はすぐに廃止をするのか、こうおっしゃいますけれども、廃止をするといたしましても、やはりちゃんと代替交通機関を用意することをしなければ運輸大臣としての責任は果たせない、こう思います。  そういうこと等もいろいろございますので、私はこの法案の成立と同時に、できるだけ早い時期に地方陸上交通機関と申しましょうか、それの整備充実というものをどうしていくのかということ、これは従来と違って、地方の交通というものは、単に国の責任だ、あるいは国鉄の責任だというだけではなくして、地方自体もやっぱり自分らの問題として考えていただく、そのためのいろんな措置を国と地方がお互い相談し合いながら講じるようにもしていかなきゃならぬ、私はそう思うております。そういうことをしない限り、地方交通の安全な確保、そして経常的な運転が安心してできるというようなことはなかなか図れない。そういうことをやることによって、これと国鉄の再建というものを並行せしめなければならぬ。しかし、いままではこういう問題が全部国鉄の責任だということで、国鉄が通っておれば、一応これでいいじゃないか。そして、地方自治体にいたしましても、国鉄の経営がいかんであれ、この国鉄、あるものは置いておけ、これではやっぱり国鉄がいま財政上から採算性を要求されておる、合理化を要求されておるときに、なかなか経営がしにくい。ですから、どうしても国鉄が鉄道の特性を失い、また採算上どんなに努力をいたしましても経営ベースに乗らないようなところは、地方あるいは国と地方が相集まって、共同の責任で交通維持を図っていく、こういう考え方でしていただきたい。  要するに、これは国鉄の責任から、いわば地元と国、そして住んでおられる住民の方々の参加したそういう発想の中で処理していきたいということでございますので、どうぞそんなに、法案にこう書いてあるから、それじゃもう切って捨ててしまうのか、そんなことではございません。国鉄の責任というものと運輸省としての責任というものは、私はやっぱり両立して考えていかなきゃならぬ、こう思うております。
  194. 吉原米治

    ○吉原委員 ただいまの大臣のようなお答えなら、私はもう異論はないのでございますが、大変思いやりのある大臣の答弁で、少しは——少しはですよ、少しは安心をしたような感じがいたします。国と地方とが、国鉄問題でひとつ十分話し合いをして、互いに知恵を出し合っていい方法を検討しようじゃないか、こういうきわめて常識的なお答えであったと私は思いますので、どうぞひとつそういう精神で今後もやっていただきたいと存じます。  特に私はいま、もとの田畑にして返してくれという悲痛な叫びを聞いてきたという話をしましたが、同じ地域で無人駅がたくさんあるわけでございますから、無人駅で無札で短距離を乗った場合には、車内で乗車券も買えないうちに目的地の駅におりなければならぬ。もとの田畑にして返してほしいというおじいさんの隣におった人が、いや実はこうこうでございます、無人駅で切符を買うわけにいかぬから、汽車に乗って買おうと思ったら、車掌さんがなかなか回ってこない、とうとうそのうちに目的駅に着いておりなければならぬ、とうとう金を渡そうにも渡すわけにいかぬ、本人は払いたくてかなわぬわけです。過疎地域の正直なお方ですから、金を払おうと思うても払えぬようなことにしておいて、今度線路をやめるというのはおかしいじゃないですか、これは率直な話ですよ。実はそういう現状が国鉄でいま考えていらっしゃる廃止予定路線の中にはあるのです。いま俗に言われております特定地方交通線、いま同僚の福岡議員の方から話もございましたが、線路を充実する、そしてスピードのある列車を走らせる、もっと前向きの施策が欲しいものだ。本線との接続も、住民の皆さん挙げて言っておる、わざわざ本線からこの廃止予定路線の方に乗ろうと思っても乗れないような接続の時間、国鉄というのは利用させないように、させないようにダイヤを組むものでございますかという発言が飛び出しておる。つまり、事ほどさように地方交通線については、いま何か重点的に経営をやらなければならぬというふうな話もございましたけれども、地方交通線に対して余りにも前向きの営業施策がとられてなかった。もうすたれゆくままに、むしろ国鉄再建法が論議される以前から、便利性がどうだとか、そんなことは言ってはおれぬ、昔の軽便鉄道時代の小さなレールでもしようがない、乗り手のないところだからほっておけ、保安施設から何からさびだらけ、そういう放置されたままの状況で、乗らない君たちの方が悪いんじゃないか、こういった考え方は私は逆立ちした論理だと思うのです。これだけのサービスもやっておる、スピードも上げた、にもかかわらず利用者が少ないからというのならまだしも私は話としては理解できるのですが、いままで全然手をかけず、恐らく設備投資だって、さっき長期借入金十兆円の話をしましたけれども、何十年この方地方交通線に対して設備投資がなされたことはない。ほっぽらかしですよ。  そういうことを考えてみるときに、今回の国鉄再建法として打ち出された内容というのは余りにも、そうでなくても過疎に悩んでおる、そういう地域住民に国鉄の不手際を転嫁する以外の何物でもないと思っておるのです。  そういう意味で、いまの無賃乗車の問題は対策があるのかないのか、お答え願いたい。
  195. 加賀山朝雄

    ○加賀山説明員 駅の無人化を進め始めましたのはかなり前になるわけでございますが、そういうローカルの駅でお乗りになるお客様はほとんどが定期のお客様でございまして、普通券のお客様というのは非常に少ないというようなところが多いわけでございます。結局、切符をお買いになるお客様というのはそういう普通券のお客様でございますが、国鉄の現在の財政状況の中でそういうところの各駅に職員を配置しておりますと、その配置している職員の給与すらもなかなか出てこないというような状況の中で、いわゆるバス的な形で国鉄に乗っていただくようなシステムを考えたいということが無人駅の考え方の始まりでございます。したがいまして、車掌から車内で券を買っていただくということを前提にしてスタートしたわけでございますけれども、バスのように入り口が一カ所にかたまっておりまして必ずそこを通るというシステムだと、そういう点はかなりきちっとできるわけでございますが、鉄道の車両は御承知のような姿でございまして、特に両数が長いような列車の場合に先生御指摘のようなケースが起こっておることも聞いております。  これにつきましては私どももいろいろ対策考えたわけでございますけれども、ちょっと現在の段階では打つ手はございませんで、もしもそういう方々の運賃をいただくという形に考えますと、それの何倍かの経費がかかってくるというような状態でございますので、現在の段階では極力車掌でその扱いをやるように指導をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  196. 吉原米治

    ○吉原委員 しかし、現実に三両編成、四両編成の場合に、中に乗っておる車掌さんが検札に回るというのは、利用者の数にもよるし、また取り扱う作業の内容によっても違うのでしょうけれども、余りにも無人化を急いだ余りに皮肉な結果が出ておる。これはひとつしかるべく対策を講じるように考えていただきたい。  最後にひとつ、時間も参りましたから運賃の問題も出ましたところで特別運賃制度の問題についてお尋ねをいたしておきたいと存じます。  いま申し上げました地方交通線、なかんずく特定地方交通線の運賃が、並行して走っております民営の輸送機関より大変料金が割り安になっておる。だから、駅まで行くのはちょっとしんどいけれども、料金は安いし、快適でといいますか、バスと比べて非常にスペースが広いわけでございますから楽だから列車で行こう、こういって数少ない利用者が、バスで行けばもっと早く着くだろうと思われるけれども、病院に行くのにバスよりは列車の方が安いし、安心して行けるということで列車を利用なさっていらっしゃるのが実情なんです。今度はこの再建法ができますと、この地域の線区の料金を上げようという発想でございます。これはせっかく駅まで不便だけれども歩いて汽車に乗った、その努力は、料金が安いからそっちの方に魅力を感じて行くわけでございますから、そこへもってきて料金を上げるということになりますと、同じ料金なら早く便利な自分の家の前から乗れるバスで行こうということになってしまう。  そういう意味で、この特別運賃制度というのは、地方的に見ましても、もう一つは都市的な立場から見ましても、どなたかお話がございましたけれども、私鉄と国鉄との運賃格差が大きい。私鉄の方の定期券ですいておる国鉄列車に乗るという皮肉な現象が都市では出てきておる。そういう意味では、都市部においてはむしろ私鉄との関係、並行して走っておる民営の交通機関と運賃を調整するといいますか、そろえるといいますか、そういう努力はなさるべき必要があると思うし、地方のローカルへ行きますと、いま言いましたように、安いがゆえに、少ない少ないと言われておる利用者もあるということなんです。逆に上げると、もちろん利用者はがた減りに減ってしまう。利用者を追い出す一つの政策になりかねない。  そういう意味で、この特別運賃制度は、再建でなくて、逆に衰退の方向、国鉄離れの方向に乗客を追いやっていく、そういう側面を持っておりますので、この特別運賃制度というものはもう一回ひとつ考え直していただきたい、こう思いますが、大臣並びに鉄監局長、国鉄総裁、それぞれお考え方をお答え願いたい。
  197. 高木文雄

    ○高木説明員 運賃は、できれば上げない方がよろしいわけでございまして、お客様のお立場、物価の問題というようなことをちょっと抜きにいたしまして、私ども経営から言いましても、どうしても現在の運賃水準になってまいりますと、他の輸送機関の運賃水準との関係でなかなかデリケートな状態でございますから、何とか上げないで済ませるものなら済ましたいということでございますが、どうもいまの日本の経済の状態では、残念ながら毎年物価も賃金も若干ずつは上がってまいるわけでございますので、それではますますこの赤字がふえるということは否定できませんし、先ほど来いろいろ各委員から御指摘ありましたように、最近お客様が少なくなっております一因が運賃改定にあることも私どもも否定はいたしませんけれども、しかし、いままでの傾向では、やはり全体としては余り無理をしない程度の運賃の改定をお願いせざるを得ない現状になっておるというのが私ども判断でございます。  そこで、そのときにどういうふうにして運賃を直していったらいいかということについては、明治、大正の時代から今日まで全国を一律に考える、特急料金とか急行料金とかあるいは新幹線料金というようなシステムはありますが、同じ地域であれば原則として一キロ幾らということで同じだということで今日までずっと来たわけでございますけれども、現在の他の輸送機関の運賃の立て方は、全国一律でバスは幾ら、あるいは全国一律で私鉄は幾らということは事実上できません関係もあって、企業別に合理的コストを前提として、運輸省でにらめて認可をなさっているわけでございますので、競争相手の方が高いところあり、低いところありで、当方は全国一本でというのではどうもやりようがない状態になってきたというのが現状でございます。  そこで、いま学者の方々、いろいろな方に伺っておりますが、やはりもう少し地域差を入れるべきではないか。その地域差の基準としては、一つは、当方の地域別のコスト差が参考にされるべきでありましょうし、同時に、他の輸送機関の水準というものが参考にせらるべきではないかという方向に、だんだん皆さんの意見を伺っておりますと、なってきております。そうかといいまして、先ほど来非常に御熱心に御議論がございますように、公共的役割りを持っておるわけでございますから、著しくそのコストのみに頼ってはいけないし、また同時に、他の輸送機関のお値段だけに頼ってもいけない。したがって、現在山手線の場合には、まことに恐縮ですけれども五十円のコストのものを百円で売っておるというような現状になっておりますので、これも何とかしなければいけないし、片一方では千円のところを百円で売っているということになっておりますので、これも何とかしなければならぬが、さりとて原価に合わすわけにもいかず、また他の輸送機関のお値段にぴたり合わすわけにもいかず、どうしたものかということで、少しずつ、全国一律運賃体系から、線区別といいますか、地域別といいますか、そういうものを多少とも入れていったらどうかということで考えておりますのがいまの特別運賃でございます。  その場合に、制度として地方交通線について特別の運賃をとらしていただきたいと言っておりながら、都市部における、まあ割引の方のことが制度上今度の改正案には出ておりませんけれども、この点につきましては、現実にいま関西地区では特定運賃ということで、現行法のもとにおいて他の地区よりは少し低い水準のものもつくり出したりいたしておりますので、現行の運賃法の全体の思想は、割り引く方は適宜割り引け、しかし上は押さえておけという、法律を超えてはならぬというか、認可を超えてはならぬということでございますので、その弾力的な運用に近づくのについて、今回、地方交通線全般につきまして特別運賃制度をつくらしていただいたらどうかというふうに考えておるわけでございます。これはいろいろな角度から大いに考えました結果、いまそこにたどり着いているわけでございまして、現状の地域的な運賃格差というものについて、どうかひとついろいろ御検討、御理解をいただきたいと存じます。
  198. 吉原米治

    ○吉原委員 残り時間がわずかになりましたから急ぎますが、「収支の改善を図るために必要な収入の確保に特に配慮」という文言を使ってある。この特別運賃制度というのは、いま総裁おっしゃったように、線区か地域か、どういう分け方をされるかまだ定かでないようでございますが、収支の改善を図るに必要な収入の確保に特に配慮をして特別運賃を定める、こういうことになりますと、俗っぽい言い方をしますと、運賃を上げるという端的なことになるわけです。これはいまどういう方向で検討なさっていらっしゃるのか。この再建法の中では、まだどうするかということが決まっていないという考え方で御提案なさっていらっしゃるのですか。私もそこら辺まで、時間がありませんでしたのでまだちょっと読んでおりませんけれども考え方がまとまらぬままに提案なさっていらっしゃるのですか。
  199. 高木文雄

    ○高木説明員 先ほども地方交通線に関する補助金の問題につきまして、先生と鉄監局長の間で質疑応答を交わしておられましたが、現在、私どもの方の地方交通線のコストは大体四千億でございます。それで、収入が千億弱でございまして、三千億余り赤字になっておるわけでございます。この三千億余りの赤字をどういうふうにするか、これは全部自分で収支が償うようにはとてもできませんので、やはりこの分については補助をいただかなければいけません。  そこで、大体の考え方といたしましては、四千億のコストのうちで、大体千億ぐらいのものは、今後なおいろいろ経営合理化等をやることによって縮小する努力ができるのではないか。それから数百億の分は、これは地方交通線関連の職員に関して、年金、退職金の特別負担がその四千億の中に入っておりますので、年金なり退職金なりについていろいろ御措置がいただければ、数百億はそこが消えていくわけでございます。それからなお、特別地方交通線について、バスに転換させていただきますならば、仮に全部国鉄バスでもしやるといたしましても、いまの赤字の大体二割ぐらいに減ることができるわけでございまして、問題は、二千人と八千人の間について、先ほど申しましたように、コスト減で千億がらみのものが減らせるかということでございます。  そうしたことをいたしますにつきまして、それでもやはりなお相当赤字が残りますけれども、その赤字を全部助成するのかどうかという御議論が先ほどありましたが、他の地域の方々との関係もあり、その部分については、また全部助成をしてもらうということも、実際問題としてなかなか理屈が通りにくかろうということで、その部分について特別運賃をいただくということにして、いろんな方法でいまの三千億がらみの赤字を減らしていくということにしてはどうかという考え方でございます。しかし、そうは申しましても、いまの特別の地域について運賃をたとえば二倍にするというようなことになりますとこれまた非常に影響が大きいわけでございまして、いま考えておりますのは、数年後において五割ぐらいの水準で考えさせていただけないものかというようなことを漠と考えておりますけれども、しかし、それはまたいまおっしゃるように片一方でお客さんを減らすことになるということもありますので、それらについてはなお慎重に考えなければいけませんし、特に一遍に、急にそういうことをやるということは、私は頭の中では考えておりません。
  200. 吉原米治

    ○吉原委員 そうすると、総裁の考え方は、あくまでも、線区にしたって地域にしたって、その限られた枠の中で少々補助金を期待されていらっしゃるようだけれども、基本的には小さいブロックの中の収支の改善を図ろう、そういう考え方で特別運賃制度というものを考えていらっしゃるということになると私は大変だと思うのです。いみじくもおっしゃった五十円のところを百円取るんだ、もうかるといいますか、非常に収支の均衡がすぐれていい地域、そういう地域から上がってくるものでマイナス分を補っていくという全国的な、国鉄全体というもので考えていくべきであって、小さいブロックを全国でたくさんつくって、そして、その収支の改善をそこからはじいていこうというような形の運賃の設定というものは不都合きわまる考え方だと私は思うのですが、その点いかがですか。
  201. 高木文雄

    ○高木説明員 現在でも新幹線は黒字になっておりますし、山手線初め十線区で黒字になっておるわけでございますが、そこの黒字部分が他の線区の赤字部分を埋めてなお八千億の赤字がある、そのときには六千億円の補助金をいただいてであるという現状でございます。  そこで、今後の考え方は、幹線と地交線と区分をいたしまして、現在、東海道線あるいは山陽線、東北線でもそれぞれ赤字になっておりますし、その金額は大変大きいわけでございますが、これは企業努力をすることによってその赤字を減らしまして、全国で約一万二千キロの分は、赤のところもあり黒のところもあるけれども、全体としてバランスをとるといいますか、自力でやっていける。そして、残りの九千キロの部分については、いろいろ経費も減らしていきますけれども、特別運賃をいただき、補助金を相当たくさんいただいて、これで何とか償う。なお、それでも何ともなりません分が年金と退職金でございますので、これは特別に見ていただく、こういう考え方をいたしておるわけでございます。したがって、先ほど地域という表現をとりましたけれども、それは余り正確でないので、われわれの頭の中にあります特別運賃のシステムは、一万二千キロ以外の部分、大体九千キロぐらいの部分について特別運賃をいただくことにしてはどうかというふうに考えているわけでございます。
  202. 吉原米治

    ○吉原委員 特別運賃制度の問題についても不確定要素を多分に持っていらっしゃる、そういう御答弁でなかなか理解がいくわけにまいりません。  割り当て時間が参りましたので終わりますが、五十四年一月二十四日に出されております運政審の答申でございますか、この「結語」にも書いてございますように、「これまでのローカル線対策が国鉄経営の改善に重点が置かれ、地域住民の足の確保について十分な配慮が足りなかったことが大きな原因である」といみじくも指摘がしてある。もとの田畑にして返せという沿線の利用者の悲痛な叫びもある。そういう意味では、今回提案されました国鉄再建法の中には大きな問題が数々ございますのでとうてい賛成するわけにいかない、もう一度この再建法自体をひとつ見直しをしていただきたい、このことをお願いをして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  203. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長 次回は、明後十七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会