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1980-10-21 第93回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年十月二十一日(火曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 三原 朝雄君 理事 箕輪  登君    理事 前川  旦君 理事 横路 孝弘君    理事 市川 雄一君       後藤田正晴君    塩谷 一夫君       竹中 修一君    玉沢徳一郎君       辻  英雄君    原田昇左右君       堀之内久男君    三塚  博君       石橋 政嗣君    西中  清君       永末 英一君    東中 光雄君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         外 務 大 臣 伊東 正義君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         防衛政務次官  山崎  拓君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         防衛審議官   西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁衛生局長 本田  正君         防衛庁経理局長 吉野  実君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 渡邊 伊助君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  石坂 匡身君         安全保障特別委         員会調査室長代         理       麻生  茂君     ————————————— 委員の異動 十月十五日  辞任         補欠選任   木村 俊夫君     後藤田正晴君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ————◇—————
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  まず、わが国安全保障問題及び防衛政策について、外務大臣及び防衛庁長官から、それぞれ説明を求めます。伊東外務大臣
  3. 伊東正義

    伊東国務大臣 衆議院の安全保障特別委員会が開催されるに当たり、わが国安全保障問題について一言申し上げます。  近年、わが国安全保障問題に対する国民関心はとみに高まってきております。この特別委員会は、このよう国民関心背景に、本年四月、国民総意を代表する国会において、わが国の直面する国際情勢を踏まえて、安保防衛問題に取り組むための委員会として発足を見た次第でございます。  国民の間には、わが国の安全と繁栄国際の平和と安定に密接不可分に結びついており、わが国安全保障分野で自国を守るための努力を行うと同時に、先進民主主義諸国一員としてなすべき外交的役割りを果たしていくことは、わが国自身の安全と繁栄にとりまして不可欠であり、それがひいては国際の平和と安定に寄与することになることについて、ますます認識が深まってきております。そして、このよう努力必要性が、ソ連の世界的な軍事力増強アフガニスタン問題などに見られます最近の国際情勢下で一層高まっていることについても、広く認められているところとなっております。  さらに、今般のイランイラク紛争をめぐる国際情勢展開は、わが国から遠く離れた地域における平和と安定の問題が、わが国国民生活にいかに大きなかかわり合いを持ち得るかにつき、国民のだれしもが改めて痛感する機縁となっております。  この間にあって、わが国安全保障体制基盤とする友好協力のきずなで結ばれている米国は、かねてより中東地域の平和と安定を図り、同地域における海上航行安全等確保するため、アジア西太平洋における米軍事力をも割くことを余儀なくされてきております。  このよう状況において、わが国わが国安全保障をいかに確保していくべきかは、まさに国民の一人一人が自分自身の問題としてとらえ、自主的に取り組んでいくべき国民的な課題であります。わが国の真の安全は、このよう国民各位国際的視野に立って、国民総意に基づく安全保障政策を一貫して進めていくことによってこそ図られるものでございます。先般の訪米において私が米国側に対して強調したのも、まさにこの点にほかなりません。  安全保障問題に関する政府基本的な考え方は、本年四月、この委員会において、大来前外務大臣より御説明申し上げたとおりであります。政府としては、軍事大国にならないという国民の決意に従い、あくまでも憲法の枠内で、また専守防衛、非核三原則堅持という考え方で、国民理解を得つつ、わが国自衛力整備を促進し、日米安保体制の一層円滑で効果的な運用を図るため、わが国としてなし得る努力を着実に積み重ねていく所存であります。同時に、平和国家たるわが国にとって、安全保障の要は外交にありますので、関係方面の御理解を得て、外務省外交実施体制を量、質両面において拡充し、一層活発な外交展開していく考えであります。  以上申し述べましたとおり、本特別委員会発足後の内外の情勢展開は、広く安保防衛問題を取り上げ、自由濶達にして建設的な審議を行う場としてのこの特別委員会の意義を一段と高めておるわけであります。この特別委員会が、坂田委員長を初め委員各位の高い識見と豊かな経験に基づく審議を通じ、わが国安全保障問題に対する国民各位理解認識を深め、国民のコンセンサスに基づいた安全保障確保していく上で、一層重要な役割りを果たしていくことを強く期待する次第であります。
  4. 坂田道太

  5. 大村襄治

    大村国務大臣 坂田委員長を初め、委員各位におかれましては、平素安全保障問題について熱心に取り組まれ、高い識見と豊富な経験に基づく貴重な御意見をお示しいただいておりますことは感謝にたえないところであります。また、先般は、陸・海・空自衛隊の各部隊を御視察いただき、自衛隊に対する御理解を深めていただきまして、厚くお礼を申し上げます。  本日は、せっかくの機会でありますので、国際軍事情勢及びわが国防衛政策に関する私の所信の一端を申し述べさせていただきます。  まず、最近における国際軍事情勢についてでありますが、東西間における対立と協調という関係は、その基本において変わらないものの、ソ連長期にわたる一貫した軍事力増強、とりわけ昨年末のソ連アフガニスタンへの軍事介入によって、東西間では不信感が深まっております。  米国は、総合的な国力では依然としてソ連に対し優位に立っており、また、信頼するに足る多くの同盟国を持っている強みはありますが、ソ連は、一九六〇年代以降における大幅な軍事力増強によって、地上兵力における従来からの優位に加え、いまや核戦力、海・空軍力等分野においても米国に迫りつつあり、米国の優位は、かつてのように圧倒的なものではなくなっていると見られます。  このようソ連世界的規模軍事力増強は、わが国周辺においても例外ではなく、極東ソ連軍の質、量両面にわたる増強と、これに伴う行動活発化には顕著なものがあります。地上軍及び太平洋艦隊増強は言うまでもなく、SS20中距離ミサイル及びバックファイア爆撃機の配備による戦域核戦力の大幅な増強も見られるところであります。加えて、まことに遺憾なことながら、わが国固有の領土である北方領土にまで師団規模に及ぶ地上軍部隊を配備し、基地建設を続けている状況であります。  このほか、昨年の中越紛争を契機にベトナムの海・空軍基地使用を開始し、いまやこれを常時使用する状態に至っていると思われます。このことはソ連艦隊西太平洋インド洋へのプレゼンス能力を飛躍的に向上させるものであり、有事におけるわが国海上交通路の安全にも大きな影響を及ぼす可能性があります。  これらに示される極東ソ連軍増強行動活発化は、わが国の安全に対する潜在的脅威の増大と受けとめざるを得ないものであります。  他方、中東方面におきましては、ソ連アフガニスタンへの軍事介入イランにおける米大使館員人質事件等に加え、今般イランイラク間に武力衝突が発生したことによって、情勢は一層流動化の度を加えており、わが国としても、重大な関心を抱かざるを得ないものであります。すでに、米国は、昨年十一月以降、二個空母機動部隊インド洋周辺に継続して派遣しております。これは、北東アジア軍事バランス影響を与えるおそれがありましょうが、わが国を含む西側諸国は、この地域石油資源に大きく依存しており、その確保と安定した輸送のためには、必要不可欠な措置考えられます。  西側諸国は、以上述べましたようソ連軍事力増強に対応して、すでに一昨年NATO首脳会議において長期防衛計画の合意、防衛費実質年三%の増加等の決定を行うなど、それぞれ困難な政治、経済情勢下にありながら防衛努力の強化を図っているところであります。中でも米国は、みずから国防支出の持続的な実質増に着手するとともに、西ヨーロッパ日本等同盟国に対し、より一層の防衛努力を強く期待している状況にあります。  このよう国際環境の中にあって、わが国はみずから適切な規模防衛力整備するとともに、米国との安全保障体制によって、みずからの安全を確保することといたしております。  わが国防衛力整備につきましては、政府昭和五十一年十月「防衛計画大綱」を国防会議及び閣議において決定し、昭和五十二年度以降、この大綱に従い、質的に充実向上した防衛力整備具体的実施を進めてきているところであります。  防衛庁は、この大綱に基づく防衛力整備計画的に進めるため、部内資料として昭和五十五年度から五十九年度までの陸・海・空各自衛隊主要事業等を見積った中期業務見積もりを作成いたしておりますが、最近のわが国をめぐる国際情勢が厳しさを増しつつあることにもかんがみ、これをできるだけ早期達成するとの考え方のもとに、昭和五十六年度概算要求を行っているところであります。  本年度の防衛白書においても御説明いたしておりますように、わが国防衛力の現状は、規模的にもいまだ「防衛計画大綱」の水準に達していないのみならず、装備老朽化、抗たん性不足即応態勢の不備、継戦能力不足等種々の問題があるところであり、私としては可及的速やかにこれらの是正を図り、バランスのとれた質の高い防衛力整備しなければならないと考えている次第であります。  もとより、精強な自衛隊を育成するためには、装備近代化のみならず、それを駆使し得る士気旺盛な良質かつ練度の高い隊員の存在が不可欠であることは言うまでもありません。このため、私は、今後とも良質隊員確保のためのきめ細かい施策に配意するとともに、規律の振粛及び教育訓練の充実に努力してまいる所存であります。  また、防衛力整備に当たっては、研究開発の推進についても従来以上に配慮していかなければならないと考えております。  次に、日米安全保障体制についてでありますが、申すまでもなく、わが国安全保障の基調を日米安全保障条約に置いていることから、同条約の円滑な運用態勢整備を図るべく、平素から不断の努力を払う必要があると考えております。このため防衛庁は、一昨年まとめられました「日米防衛協力のための指針」に基づき、共同作戦計画情報交換後方支援等についての各種研究在日米軍当局との間で鋭意進めているところであります。  日米防衛協力のあり方についてこのよう指針が作成され、この指針に基づいて所要の研究が行われることは、同条約の有する抑止効果を高め、もってわが国の安全及び極東の平和と安全を一層効果的に維持することにつながるものと確信いたしております。  また、政府は従来から、在日米軍駐留を真に実効のあるものとして維持するため、在日米軍駐留経費の負担について、地位協定の枠内においてできる限りの努力を行うとともに、自衛隊活動在日米軍駐留基盤をなす防衛施設安定的使用を図るため、周辺地域生活環境整備事業など各種施策を進めてきているところであります。私は、わが国防衛にとってきわめて重要なこれらの努力を今後とも鋭意続けてまいる所存であります。  以上、防衛政策等に関する私の所信を申し述べましたが、坂田委員長初め委員各位の一層の御指導と御鞭撻を切にお願い申し上げる次第でございます。
  6. 坂田道太

    坂田委員長 以上で説明は終わりました。
  7. 坂田道太

    坂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。有馬元治君。
  8. 有馬元治

    有馬委員 最初防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、最近、鈴木総理も、それからまた、本日の長官所信表明の中にも「質の高い防衛力整備」する、自衛力整備する、こういう言葉が再再出てくるのでございます。私は何となくわかるのでございますが、この意味するところ、考え方、どういう内容のものか、もう少し具体的に御説明を願いたいと思います。
  9. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  「質の高い防衛力」とは、諸外国技術的水準に対応した装備を保持し、防衛上必要な各種の機能、抗たん性継戦能力等を備えた練度と士気の高い防衛力だと考えております。
  10. 有馬元治

    有馬委員 これは質の問題でございますから、なかなか議論しにくいのでございますが、五十一年に策定されました「防衛計画大綱」、現在この線に沿って努力をされておるわけでございますけれども、この大綱を、こういう考え方によりますと修正しなければならぬ、見直さなければならぬ、こういうことに相なるのか、あるいはこの大綱の枠内で、現在財政面から財政再建という非常に大きな制約が出てきておる今日でございますから、さらにこれを質の高いという考え方優先順位をしぼって重点的に考え直すのか、その辺が私はこの言葉だけではちょっとわかりにくいのでございますが、どういうふうにお考えですか。
  11. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  いま有馬委員がお述べになりましたとおり、私どもは、昭和五十一年度に策定されました「防衛計画大綱」に従いまして防衛力整備に努めているところでございますが、まだこの大綱が定める防衛力水準には到達しておらない、まだ十分実現しておらないのでございます。したがいまして、私どもは、大綱水準をできるだけ速やかに達成を図ることが現在の一番大きな課題ではないか、さよう考えておりまして、いま直ちに大綱自身を改めるということは考えておらない次第でございます。
  12. 有馬元治

    有馬委員 この大綱が現在の防衛努力下敷きになっておることは、これはもう天下周知の事実でございますが、昨年策定されました中業、いわゆる中期業務見積もり、私も山下長官のもとでこの計画策定に当たった一員でございますが、これが非常にアメリカ筋にも反映しておりますし、現実の下敷きとしては、この大綱よりも中業考え方に沿って防衛計画を、防衛力整備をしておるのだと思います。  そこで、世間では何か大綱を踏み外して中業がひとり歩きをしておるような印象なきにしもあらず、私は、内容をよく知っておりますから、その誤りであることはよく存じ上げておりますけれども、この大綱中業との計画面にあらわれておる違いといいますか、これは正面装備だけの比較をいたしましてもはっきり出ておる。大綱を下回ったものが中業である、こういう状態でございますので、この点はひとつ防衛局長からこの際はっきりと、正面装備について中業大綱はどう違っておるのか、大綱をどう下回っておるのか、この点の要点だけひとつ説明を願いたいと思います。
  13. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘よう中業を、いまの五三中業を完成いたしましても、防衛計画大綱別表の定める水準にはまだ到達しないということは、先ほど長官からもお答え申し上げたとおりでございますが、具体的に申し上げますと、一番顕著な例でいきますと、航空自衛隊作戦用航空機がございます。大綱別表では約四百三十機と書いてございますけれども中業を達しましても三百二十機程度にとどまるのではないか。それから海上自衛隊作戦用航空機につきましても同様でございまして、大綱では約二百二十機と書いてあると思いますが、百八十機程度にとどまります。そういう作戦用航空機の画で、空につきましても海につきましても、数字の面で大分下回らざるを得ない。あと、たとえば護衛艦六十隻と書いてございますが、これが私ども中業ができましても若干下回る、五十八隻程度になるかと思いますが、若干下回るとか、あるいは潜水艦が十六隻と書いてございますけれども、これが十四隻程度にとどまる見込みであります。数字的に言いますと、そういうような点が主な点でございます。
  14. 有馬元治

    有馬委員 そうしますと、いま現在、中業下敷きにして概算要求その他をしておると思いますが、この中業最初の五年計画、すなわち五十九年度で計画達成を見込んでおったと思いますけれども、これをわれわれ党の公約でも公約しておりますが、早期達成しろ、初めは党内では、アフガン侵攻以来国際情勢が非常に変わったのだから根本的に見直せという議論が非常に強かったのでございますけれども、なかなか一朝一夕に大幅な計画増強はできない、しかも大綱に達するまでまだまだ努力しなければならぬ、こういうことがあって、原則的には大綱を前提としながら党の公約をまとめた経緯がございます。この公約長官もよく御存じだと思います。しかも、これはことしの同時選挙国民に約束をした公約でございますから、この考え方が党の考え方でもあり、また公約をしておる点から言いますと、これを実行に移す、何らちゅうちょすることなく移していくということが今日の防衛力増強基本的な考え方だと私は思うのでございます。  そこで、仮に中業を一年前倒しをした場合に、計画がずり上がってくるわけでございますが、そうしますと最後の一年間が早まってくる。その間に、いま説明がございました大綱との違い、下回っておる点、艦艇において二隻、潜水艦において二隻、航空機においては、航空自衛隊作戦用航空機が九十機、さらに海上自衛隊作戦用航空機が約四十機下回っておる。これは最後の一年間を考えますと、計画達成が十分できる、こういう見込みで現在進んでおるのかどうか、この点を御説明願いたいと思います。
  15. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えします。  有馬委員がお述べになりました自由民主党の公約の点は、私もよく承知しているところでございます。そこで、わが国をめぐる最近の国際情勢等にかんがみまして、五十六年度の概算要求におきまして、防衛計画早期達成、また防衛計画の枠内における中期業務見積もり早期実現を目指しまして、概算要求を作成し提出した次第でございます。  ところが、委員よく御存じのとおり、現在進めております中期業務見積もりは五十五年度から五十九年度の五年間の見積もりでございまして、毎年のあれはないわけでございます。できるだけ早期達成いたしたいということで努力しているわけでございまして、五十六年度の概算要求が実現いたしましても、五十七年度以降の予算措置等が進まないと早期繰り上げということが実現できないわけでございまして、将来も引き続き努力してまいりたい、さよう考えているわけでございます。  なお、中期業務見積もりは三年ごとに変えることにいたしているわけでございまして、五十三年に策定いたしましたので、次は五十六年、その際にもそういった情勢を念頭に置いて検討してまいりたいと私ども考えている次第でございます。
  16. 有馬元治

    有馬委員 もう一つ角度を変えてお尋ねしたいと思いますが、この防衛計画あるいは中業について、アメリカ側からのいろいろな要請が過去にあったと思います。それをめぐって、どうもわが国防衛計画並びに防衛力整備についてアメリカ要請があってこれをやっているのだ、外圧によるのだ、こういうような一部誤った見方が出てきておる、これは非常に私は残念なことだと思うのです。現在防衛庁がやっておる防衛計画整備については、大綱背景があり、また自民党が党の公約として選挙で掲げて闘った、そして国民の大方の方々の納得を得た公約でございますから、これは基本的に、アメリカから言われたとかアメリカからの圧力があったとか、こういうことを言われる筋合いではないと思います。私は非常にこの点心配なのです。私自身経過をよく知っておる。しかし、そういうふうな誤解があるものですから、実は昨日外務省事務当局に、いままでの日米交渉といいますか会談というか、この経過を全部書いて持ってこい、ずっと経過事務官が詳細に忠実に持ってまいりました。このどこを見ても、アメリカからの圧力で今日の防衛計画が進んでいるのではない。  なるほど着実・顕著な整備をしろ、こういうような一般的な要請があったことはございます。しかし、着実には増強するけれども顕著にはできないということは、このいままでの経過からある程度読み取れるわけなのです。しかも最初は、着実・顕著とは何だ、膨大な要求が出るのじゃないか、こういうことをわれわれも一時期心配したことがございます。しかし、大綱があり、中業をせっかく策定した今日でございますから、これを下敷きにして日本側のペースでわが国防衛整備すべきである、党内にもいろいろな意見がございましたけれども、これを取りまとめて公約にした経緯がございますので、決してアメリカに言われて今日の防衛力整備しているのじゃない、この点だけは、一々いつ幾日だれと会ってどういうやりとりがあったということをここで私が紹介するまでもなく、これはひとつ誤解はあらゆる機会に解いていただきたい。  一国の防衛という問題が、外国圧力なり内政干渉によって左右されるということは、独立国の体面に背くわけでございますから、絶対そういうことはあってはならない、こういうことをひとつ十分肝に銘じて、自信を持って防衛力整備を進めていただきたい。この点についての長官の御所信を聞かせていただきたいと思います。
  17. 大村襄治

    大村国務大臣 日米安保体制を堅持しながら、自主的にわが国防衛力整備することがわが国防衛基本方針でございます。  最近、アメリカ側から日本防衛力整備についていろいろな要請があったことは事実でございますが、委員指摘のとおり、わが国防衛は、国民の国を守る気概を中心として、わが国自主的判断に基づいて行うべきことはもとより当然でございまして、私たちとしましてはその精神に立脚してこれから取り組んでまいりたいと考えています。
  18. 有馬元治

    有馬委員 次に、国際情勢分析といいますか、わが国をめぐる軍事情勢分析についてお尋ねしてみたいと思いますが、今日のソ連極東における軍備増強あるいは北方四島における軍備増強、さらには太平洋艦隊行動ぶり、こういうのを見ておりまして、ことしの白書でも、それから先ほどの長官のごあいさつの中でも、ようやくソ連軍備増強とその活動ぶり、これがわが国の安全にとって潜在的な脅威であり、この脅威が増大しつつある、こういう言葉判断をしておるのでございますが、これは私も昨年、五十四年度の防衛白書を作成いたしました場合に、今日におけるソ連軍備増強ぶりについては十分その兆しは見えておったのでございますけれども、やはり脅威という言葉を使うまでには至っていなかった。たしか、わが国防衛にとって重要な関心事項だというような表現でお茶を濁しておったと思います。それが白書においても、また長官のあいさつにおいても脅威という言葉が使われてきておる、これは確かに現状を冷静に判断した結果だと思います。そして、この「潜在的脅威」という言葉は昨年の春すでに国会において、元の防衛庁長官山下長官が北方四島の軍備増強ぶりと関連して「潜在的脅威」であるということはすでに言い切っておる。しかし、私どももその後の情勢分析をいろいろ考えてみますと、「潜在的脅威」というのは一体何だ、脅威に二種類あるという印象がある。潜在的か顕在的かといういろいろな言い方があるのだろうと思いますけれども、しかしやはり脅威脅威で、潜在的も顕在的もないのだ、これははっきりと割り切った方がいいのじゃないか。現に、私どもがつくったこの自民党の公約でもはっきりと脅威だと割り切っておるわけなんです。そういう点についての御認識が、政府は慎重の上にも慎重を重ねておるのでしょうが、しかし国際情勢はそんなに甘くない、厳しいという現実をもう少しはっきり国民に訴えるには、やはり脅威は無条件に脅威であると割り切ったらいかがでしょうか。
  19. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えを申し上げます。  わが国をめぐる国際情勢が厳しさを増しつつあるということは委員指摘のとおりでございます。ところで、お尋ねの「脅威」の言葉でございますが、これまた先生よく御存じのとおり、脅威には二つの大きな要素があると一般に言われております。その一つが「能力」であり、もう一つが「意図」である、ほかにもあるかもしれませんが、主な点としましてはこの二つが言われておるわけでございます。  北方領土へのソ連軍の展開あるいはバックファイア、原潜の大幅な増強、ミンスクの極東派遣等の一連の事情からいたしまして、能力が高まっていることは事実として認めざるを得ないわけであります。一方の意図の点につきましては、必ずしもまだはっきりしておらないわけでございます。  そういった点からいたしますると、顕在的な意味の脅威ということはまだ申すまでには至らないのではないか、さよう判断しておりまして、そういう意味におきまして「潜在的脅威」であるということを前長官の時代から国会で申し上げておるように私は承知しておる次第でございます。
  20. 有馬元治

    有馬委員 ここは私が潜在的を取り除けと言っても、政府は直ちには取り除かないだろうと思います。しかし、昨年からことしの情勢の移り変わりをよく考えていただきたい。私も昨年防衛白書を手がけ、中業に参画してみて非常に情勢認識が甘い、昨年の防衛白書では、バックファイアの存在はヨーロッパ正面に八十機ほど整備されておるようだ、極東に配備されておるのかされてないのか、そこははっきりしない。せいぜい岡崎参事官が、極東に配備されたと見てもおかしくない、非常に回りくどい言い方をして、私もその説明を聞いた一員でございますけれども、おかしくないとは何だ、現実にあるならバックファイアの性能を知っておる者ならこれは脅威でなくて何だ、それはなかなか時間の推移ということを考えないと、いきなりどぎつい話になるというわけにもいかぬとは思いますけれども、やはり脅威脅威として見なければいかぬ。  私はこの夏、三原先生、坂田先生相ともどもに、日米の二十周年記念の安保セミナーに出たわけでございますが、アメリカの専門家、特に元の海軍長官をしておったミッテンドルフ、いまどこかの銀行の総裁をしておる方でございますが、この人の見方なんかは、もうこれからの日米安保条約、これからの二十年というものはまさにバックファイアの時代だ、こう割り切っているわけなんです。後からまたバックファイアの性能、これに対する防御の仕方がむずかしいという点は専門家の政府委員からお答え願いたいと思いますけれども、そういうふうに割り切っておる極東情勢でございます。そしてミッテンドルフは、日本海上自衛隊は大丈夫か、バックファイアの攻撃に対してどう防御するんだ、これを私に問われまして、私は本当に答えるすべがなかった。とらの子の自衛隊でしょう、これがバックファイアのミサイルによって一発で壊滅するというような事態は想像したくもないんだけれども、やはり軍事専門家の見方をするならばそういう見方をしておるわけでございます。これほどやはり深刻な問題でございますから、バックファイアといい、SS20といい、これはやはり真剣に受けとめて日本防衛ということを考えなければならない時代になっておる、こういうことはよく御認識を願いたいと思うのでございます。  そこで、これから先の防衛計画防衛力整備、将来の整備をどうするか、これをめぐっていろいろと議論がなされておるようでございます。長官がちょっと発言をすると、すぐこれは大綱の見直しというようなことで新聞に大見出しで出ますけれども、私はこれは少し仰々し過ぎると思う。防衛というものはそう一朝一夕にできるわけじゃない。やはり五年十年という先を見て積み上げていかなければ、急に増強するということはできない。ソ連の海軍力の整備にしましても、やはりあのフルシチョフ時代のキューバの屈辱的な撤退があって、これを反省して、二十年の歳月をかけて今日の太平洋艦隊をつくっているわけです。一朝一夕にできるわけではないんで、そこに飛躍はないという確信を私は持っている。だから日々増強していかなければならぬ。一遍に十年、五年の空白を埋めるということはできないのです。したがって、今日の中業なり「防衛計画大綱」というものの見通しがついた暁には、やはり新しい世界の情勢極東情勢をよく見きわめて、新しい防衛計画をつくらなければならぬ。これは時間の問題だと思います。それをとらえて防衛計画の見直しだとかなんとか騒ぐのはおかしいです。基盤防衛力構想と言われる現在の防衛計画大綱の中にも、新しい事態が起こったならば、情勢が変化したならば早目に手を打てということを書いてあるじゃないですか。これはもう当然のことなんです。防衛というのは、相手があっての防衛なんですから。情勢の変化に対応していけないよう防衛計画では、初めから話にならない。しかし、そう簡単に方向転換はできない。長官も海軍で、連合艦隊のあり方をよく知っておられると思います。なかなか方向転換は艦隊を組んだときにはできない。そういう大きな計画でございますから、しかも積み上がった計画で、そこにははね上がりも飛躍もない、こういう性質のものでございますから、やはり今日、中業早期達成よう、それをやりながら、次の新しい計画はどうあるべきであるか、これは絶えず研究しておかなければならない大事な課題だと思います。いまの計画が遂行された後において、さあどうしようか、こういうことでは、計画の準備期間も要りますので、いたずらにむだな空白を生ずるだけでございます。今日の計画ですら、いまの事態に合わないものは手直しをやったらいい、思い切って手直しをやっていったらいい、そういうことをやらないと、いつまでも固定的な観念にとらわれておったのでは、世界情勢の変化に対応できない。これでは防衛にならない。  そういう意味で、長官もときどき言葉じりをとらえられてふうふう言っておるようでございますけれども、そんなことに余り一喜一憂する必要はない。ちゃんとやるべきことはきちっと一歩一歩やる、自主的にやる、これをひとつ基本姿勢にして防衛計画考え、また遂行していただきたいと希望を申し上げておきたいと思います。——何か所信があればお聞かせ願いたいと思います。
  21. 大村襄治

    大村国務大臣 委員指摘の問題につきましては、国際情勢の変化を慎重に見守りながら、防衛庁といたしましてもしっかり勉強してまいりたいと考えておるわけでございます。  また、御指摘のバックファイアの極東の配備の問題につきましても、重要な関心を持っているところでございまして、そういった新しい情勢に対しましては、自衛隊の情報探知能力を高めるとともに、警戒能力も高めなければならない、さよう考えておるわけでございます。  SS20の極東配備につきましても同様でございます。また、そういった新しい情勢につきまして日米間の連絡を密にするということも重要ではないかと考えておるわけでございます。五十六年度の概算要求におきましても、自衛艦の対空能力の向上ということに重点を注いでおりますのも、そういった考え方の一環に属するものと私、考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、現在におきましてはすきのない防衛力を目指しております。大綱の速やかな達成を目指して努力しているという次第でございます。
  22. 有馬元治

    有馬委員 次に、外務大臣に二、三お尋ねしてみたいと思います。  最近安保防衛論議が非常に高まってきておる、国民関心安保防衛問題に相当出てきておるという傾向、これはお互い非常に好ましい傾向ではないかと思います。これは結構なことでございますけれども、ただ最近「軍事大国」こういう言葉が新聞等にもよく出てまいります。また「右傾化」の傾向というようなことを盛んに書き立てておりますが、私は、これらの記事を見ておりまして、非常に飛躍、短絡があるという感じがしてならないのでございます。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕 たとえば戦闘機の掩体をつくる、あるいは弾丸といいますか弾薬の備蓄が足りない、それから戦闘機にサイドワインダーを装備するとか、あるいは水上艦艇に機雷、魚雷を実装する、こういう問題をとらえて、これが「右傾化」であるとかあるいは「軍事大国」につながるとか、いろいろな短絡的な表現記事が多いのでございますが、私どもはこれらのことは本当に軍事常識といいますか、常識の範囲で当然やっておらなければならない事柄ばかりであると思うのでございます。こういうことをとらえて軍事大国化の傾向があるというような言い方は、これまた国民判断を非常に誤らせるゆえんではないか、こういう感じがしてならないのでございます。  そもそも「軍事大国」という言葉は、いつからどうやって使われてき出したのかよくわかりませんけれども、私は五十二年当時に福田総理にくっついてASEAN諸国を歴訪したことがございますが、そのときの最後の福田さんの演説、いわゆるマニラ・ドクトリンと言われておる演説でございますが、その中に「経済大国にはなっても軍事大国にはならない」と言って胸を張ったその場を見ておりますので、なかなかいいことを言うなと思って聞いておったのでございます。それ以来、経済大国、軍事大国、いろいろ大国、大国というごろ合わせではないですけれども、よく出てくる言葉でございます。ただ、これはやはり使い方を誤ると大変大きな判断の違いになってまいりますので、こういうことが実態と遊離して議論されるということは非常に嘆かわしいことではないかと思います。  そこで、こういったことがどうして出てくるのか、常識がないから出てくるという言い方もありましょうが、意図的に出している場合もあるだろうと思います。しかしその基本は、やはりわが国防衛に対する基本的な姿勢というものを絶えず政府、われわれが国民に呼びかけておらないから、混同した使い方あるいは誤った先入観というものが出てくるのじゃないか、こういう感じがしてならないのでございますが、ひとつ外務大臣からこの点の御所感を承らせていただきたいと思います。
  23. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま、最近の傾向が右傾化しているとか軍事大国というような批判があるけれども、どういうふうに考えるかということでございますが、先生おっしゃったように、私も全然そんなふうには考えていないのでございまして、防衛力整備充実ということは、日本人が自主的な問題として、最小限の抑止力を整備するにはどうしたらいいかということで、国際情勢を踏まえながら努力をしているということでございまして、軍事大国とか右傾化ということとはおよそ次元の違うものじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。  先般ソ連のグロムイコ外相と会いましたときに、実は軍事大国、軍国主義の話が出たのでございます。グロムイコ外相が日本を非難して、軍国主義、軍事大国という中に一つは安保条約が入っておる、一つは日本と中国が非常に友好親善を重ねているということで、相当の時間を費やして日本と中国との関係を述べておりました。あるいは、NATOと日本は非常に接近を図っているというようなことを例に挙げまして、実は議論が出たわけでございます。私はそのとき、外国ではそんなことを、日本の軍国主義だ、軍事大国だという批判をするときにそういうことを言うのかなと、まことに不思議に思ったのでございます。  終戦後から、日本アメリカとの関係は、安保条約をもとにして、日米友好というのは外交の基軸なんです、防衛の基軸なんだということを言い、中国との関係は、日中は日中、日ソは日ソで、何も日中が一緒になってソ連と対抗するとか、そんなことを考えているのじゃない、中国に対しては軍事的な協力は一切日本はしない、ただ近代化を助けるという経済的な協力あるいは文化の面の交流とか、そういうことをしているのであって、それはまことにいわれなき批判だ、非難だ、またNATOとの問題は、日本はECと経済的にも政治的にも理念を一緒にしているので、ECとは経済面、政治面で緊密な連絡をとっている、何もNATOと日本が緊密にどうこうということはないんだということをグロムイコさんに言ったわけでございまして、いま先生のおっしゃった軍国主義、軍事大国というような非難は、いまの日本がとっている防衛力整備充実ということとは次元の違う問題だというふうに私は思っているわけでございます。  日本は、先生御承知のように憲法もございますし、軍事大国なんということは考えもしない。外交も平和外交に徹するということで、資源のない日本でございますから、自由主義陣営の一員として協力していく、それを基本にしまして、日米関係基本にしまして、どの地域でも、どういう政権、政体でも協力していこうという平和外交をやっておることは御承知のとおりでございますし、憲法でも専守防衛ということで、個別的自衛権しか持たない、集団的自衛権は持たないということでやっておるわけでございます。あるいは御承知の非核三原則というものも、これは唯一の被爆国家として核兵器は持たないということで、核兵器拡散防止条約にも入り、非核三原則もとっておるということでございますし、日米安保というものがあるから、これが抑止力になって日本のいままでの安全も保たれるということでございますので、私は、日米安保というものは、そういう意味で日本防衛にとってこれこそ基本の大きな原則だと思っております。  また、自衛隊がありましてもシビリアンコントロールであることは間違いない、政治が軍事に優位しているという立場でもございます。  アメリカとの話が先ほど先生からございましたが、私がアメリカに行きましたときにも、防衛力の充実につきましていろいろな期待表明がありました。これは事実でございますが、私はアメリカのどの人に会ったときにも、これはまず日本がどういうふうにするかということを自主的に考えることであり、もう一つは、財政の問題もいろいろあるし、国民的なコンセンサスがないと防衛力の充実ということもできないんだ、あくまで自主的に、あるいは国民的なコンセンサスに基づいてやっていくんだということを常に主張してまいったのでございます。  そういういろいろな理由から申し上げまして、先生がおっしゃった軍事大国という非難あるいは右傾化、右傾化という意味が私はよくわからぬのでございます、どれが右で、どれが左で、どれが真ん中というのは、人によって違うと思うのでございますのでむずかしいのでございますが、いま御質問にあったことと日本がいまやっておることとはおよそ次元の違うことじゃないか、私はそういうふうに考えております。
  24. 有馬元治

    有馬委員 私が軍事大国化の問題を提起したのは、そのこと自体よりも、これからの国会における防衛論議というものは、いままでのような憲法論議、これも大事だと思います。またGNP対比、国際比較論ということも大事なことだと思いますけれども、やはりこれだけではわが国防衛にならない、もっと防衛の中身についてどうすればいいんだということをお互いに語り合っていくのがこの安保特の一つの使命ではないかと思うのです。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で、私どもも、どうやったらいいんだということになって問い直されますとなかなか明快な結論は出てこない。政府側も恐らくそうだと思います。だからやはり、与党の意見もあるし、野党の考え方も中身についてよく聞いてみたらいい、これが防衛を進める上で一番大事なことではないか、中身についての議論をもっとしっかりやろうじゃないか、こういう気持ちをかねがね持っておるわけでございまして、そういう意味で、法匪的な議論も必要でございますけれども、そればかりではいかぬという意味で引き合いに出したのでございます。  中身の問題になりますと、やはりもっと的確に、政府側がどういう内容防衛計画考えておるのか、遂行しつつあるのか、どこに問題があるのか、どこで悩んでいるのか、そういう点を率直に語り合ったらいいと私は思うのです。そういう点で、この中身の議論をしますといろいろ果てしないのでございますけれども基本的な態度としてはそういう気持ちがいたすのでございます。  そこでひとつ、最近に起こった問題かもしれませんが、民社党の大内氏の短SAMに対する性能論議、これは欠陥であるという御指摘の御意見がございました。私は、こういう問題こそこういう場で討議したらいいと思うのです。これから三千億もかかる買い物でございますし、国産技術として初めて開発された、長年かかった成果でございましょうけれども、やはりそこは、ああいう問題を提起された以上は、こういう国会の場で、国民にわかりやすく、そういう欠陥もあるけれどもこういう長所もある、そういう点を比較考量して短SAMを採用したんだというようなことを、もっとはっきりと国民にわかるように論議をすべきだと思います。そういう点で私は非常にいい質問だったと思うのです。これからもそういう受けとめ方をして、防衛の中身、これを国民にわかりやすくさらけ出す、これがやはり防衛力を強化する本当の基盤ではないか、こういう感じすらいたしますので、まあ、あの問題のそれ方といいますか、問題をすりかえたというような非難まで出てくる、あのような形は、それは確かに内部の機密が漏れたという見方もできましょうが、それはまた、後で反省事項として部内でひそかにやっておればいいので、ああいうことが出て、国会の場で堂々と議論するということが一番大事なことではないか。日本側が幾ら隠し立てをしましても、世界にはみんなしり抜けになっているのです。われわれの軍事知識よりも、世界じゅうの専門家の知識の方が上なんです。もっともっと啓蒙的な意味もあってこういう場で議論すべきではなかったか。まだこれからも議論をする機会があると思いますが、そういう基本的な態度でひとつ臨んでいただきたい。
  25. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいま短SAMの点につきまして、有馬委員から御発言がございました。この問題につきましては、予算委員会で大内委員から御発言がございまして、性能並びに価格の点につきましては、詳しく防衛庁考え方をそのときは御説明を申し上げる時間がなかったという点は、まことに残念に思っておる次第でございます。したがいまして、当委員会等におきまして、性能あるいは価格等の問題につきまして御審議いただきます時間を与えていただきますれば、私どもとしましてはまことにありがたいと思う次第でございます。(「いまやれよ、いい機会だから」と呼ぶ者あり)そういう気持ちを持っておりますので、ひとつ適当な機会をなるべく速やかに与えていただきますよう希望いたす次第でございます。  なお、文書の扱いにつきましては、防衛庁の文書がどういう形で渡っているか、当庁といたしましても調査をする必要がございますので、現在調査中でございまして、調査の結果がわかれば、なるべく速やかに御報告申し上げたいと考えておる次第でございます。
  26. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 短SAMについての御質問でございますので、大内委員から質問されました幾つかの点について、お答え申し上げたいと思っております。  大内委員は、第一に、短SAMについては全天候性がないのではないか、それが欠点ではないか、こういう点を申されております。  短SAMというのは、空中ロックオン方式と申しまして、電波によって敵機の大体の位置というものを捕捉いたしまして、そちらに向かってそのミサイルを撃ち出しまして、しかる後に、ある距離まで到達いたしますと、ジェット機の熱源にその赤外線センサーがロックオンいたします。ロックオンといいますのは、簡単に言いますと目を開くとでも言いますか、赤外線に感知いたしましてそちらの方に追尾する、こういう方式でございます。したがいまして、非常に熱線を吸収するような、極端に密雲があるとか、そういったよう状況のもとでは、若干その感知能力が落ちるという点は確かにございます。  しかしながら、この赤外線ホーミングという方式は、いまお話にも出てまいりましたサイドワインダーその他、多くの各国で使っておりますところのミサイルにおいて使われておる方式でございまして、それ自体として非常にすぐれた方式であるということもございますし、それから、日本の天候等におきまして短SAMが実際に効果を減ずるような、そういった天候状況というのはきわめて少のうございます。パーセンテージにいたしましてもごく少ないパーセンテージでございます。この辺につきましては若干秘密がございますので申し上げられませんけれども、ごくわずかであるということでございます。  それから、実際の実験データで申し上げましても、実際に雲の中で撃った場合におきましても四発中三発当たっておる、こういう実験データもございますし、その他からいたしまして、全天候性が欠けておるという点につきましては、欠けているのではなくて、若干、全天候性におきましてやや足りない点があるというふうに申し上げた方が正確だと思います。  しかしながら、これは総合的に見なければいけないという問題でございまして、短SAMと比較されますところの電波ホーミングの場合には、相手の飛行機からするところのジャミング、すなわち電波妨害に対してきわめて弱うございます。短SAMの場合には、これは赤外線ホーミングでございますから、電波による妨害というのは、全くこれには感知しないということでございまして、赤外線ホーミングにつきましては全く何らの妨害もきかない、大変な特色を有しておる、こういう点がございます。  その次に大内先生が質問されました点は、白煙の問題でございます。短SAMというのは撃ち出したときから白煙の航跡を引くではないか、したがって、敵機がこれを発見いたしますと、これを簡単に回避できるではないかということを申されたと思っております。  確かに短SAMにつきましては白煙を引くことは事実でございますけれども、サイドワインダーもそうでございますし、スパローもそうでございます。ナイキ、ホークその他、それからソ連製の多くのミサイルもそうでございますけれども、ミサイルが白煙を引くような推薬を用いているという例は非常に多うございます。なぜそうなりますかというと、白煙を引くような推薬を用いた方が推力が強いという事実がございますために、推力が強い推薬を使うために白煙を引くということでございまして、短SAMを開発する段階におきましても、無煙の推薬とそれから白煙を生ずる推薬というものを比較いたしまして、その結果、白煙を引くけれども推力の強い推薬が使われた方がはるかに命中性能が高い、そういうよう判断をいたしまして、白煙を引くところの推薬を使ったという事実がございます。  なお、白煙を引いた場合にそれを回避することができるかどうかということでございますけれども、まず第一に、白煙を認めてから敵機が回避をするというまでには相当の時間がかかるわけでございます。十何秒かかるということは実験例で言われておりますけれども、相当な時間がかかりますために、敵機の方が攻撃態勢にあるといった場合には、白煙を認めてもそれから完全な待避行動をとるあるいは回避行動をとるということがきわめて不可能である、こういう判断をしております。  それから価格の問題についてですが、大内先生がたしかローランドのことを申されまして、ローランドについては十五億円とかいうふうに言われたかと思います。  これにつきましては議事録等を見まして正確なことを申し上げないといけない点でございますが、記憶で申し上げておりますのでもし間違っておりましたら申しわけないわけでございますが、価格につきましても国産の短SAMと比べましてほとんど変わりがない、一割程度国産の方が高いんだというふうに私は考えております。なおまた、その価格につきましては、アメリカ等の議会にアメリカの改良型のローランドの価格につきまして資料を提出しておりますけれども、それとの価格で比較する限りにおきましては、むしろ国産短SAMの方が安いという結果が出ております。  それから、自爆の問題があったかと思います。  自爆作用が短SAMの場合ないではないか、ローランドの場合自爆作用があるということでございますけれども、実際問題といたしまして、短SAMというのは低空から来ます敵機に対しますところの武器でございますので、短SAMのありますような場所まで敵機が到達する前にわが方の飛行機が対処する、それからナイキとかホークとかそういった足の長いミサイルがこれに対処するということでございまして、短SAMというのは基地防空をするあるいは師団の中枢的なところを守るということでございますので、そういった短SAMのあります上で敵、味方の飛行機が入り乱れて交戦するというような場合は、きわめて少ないのではないかというふうに考えられますし、また仮にそういう場合があったところで、諸外国ともそういった場合には一般的にはミサイルを撃たない、実際撃てない、こういうことだというふうに考えております。  また、ローランドの場合には電波ホーミングでございますので、電波ホーミングのミサイルの場合には一般的に自爆装置をつけざるを得ない、こういう技術上の特性を有しております。短SAMの場合には、撃ちましてから一定の時間がたちますとおのずから自爆いたしますので、それが自由に飛んでいって味方の飛行機にぶつかるというようなことについては、そういう問題はないと思っております。  それに加えまして、短SAMの場合には、敵機を捕捉する距離がローランドに比べまして二倍ございます。したがいまして、非常に早い段階で敵、味方ということについて識別する能力を持っております。したがいまして、味方の飛行機を間違って撃つという可能性についてはきわめて少ない、こういう事実もございます。  それから最後に、射場についてもちょっと御質問があったかと記憶しておりますけれども、国内の訓練射場につきましては、各種の見地からいま詳細な検討を行っておりまして、必要となる時期までにはこの整備を図りたいというふうに考えております。  なお、もう一点つけ加えさせていただきますと、価格の問題につきましてちょっと補足させていただきますと、価格等につきましては、長期にわたりますところの整備それから補給といったことを考えました場合には、輸入によりますよりも国産による方が多くの場合に非常に有利である、こういった点もございます。  以上が大内先生の御質問に対しますところの回答でございますけれども、国産短SAMの場合には赤外線ホーミングでございますために、一回撃った場合にはそれを撃ち放してしまう、いわゆるファイア・アンド・フォーゲットと言っておりますけれども、撃ち放し特性というのを持っております。ローランドの場合には電波ホーミングでございますので、それが当たるまでの間、射手が全部実際にそれを電波的に追っていかなければいけないということで、レーダーはその一発のミサイルのために使われてしまうということで、当たるまで非常に時間がかかる。こちらの方、相手の該位を探知した場合にはあとは撃ち放しができるということで、連射が可能になるということでございまして、その点は非常に短時間の間に多くのミサイルを撃つことができるということでございます。  そういったような諸点をいろいろ比較考量いたしました結果といたしまして、日本の場合には国産短SAMの方が経費効果的により有効な武器体系であろうということで、採用したような次第でございます。
  27. 有馬元治

    有馬委員 大変満点答案をお聞きしたわけですが、問題は、民社党の大内先生の御質問ですから、やはり相手を納得させるという努力をしなければいかぬと思いますよ。その点ひとつ、私は一例として挙げただけでございますから、基本的な姿勢としてはそういうことでぜひ防衛論議を十分展開していただきたい。私どももその中から教えられることがたくさんあるのですよ。そういうことで御了解をいただきたいと思います。
  28. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまの短SAMの件につきましては、今後引き続き大内委員の御納得のいただきますように一生懸命努力してまいりたいと考えております。
  29. 坂田道太

    坂田委員長 塩田防衛局長より、先ほどの答弁に関しまして発言を求められておりますので、これを許します。塩田防衛局長
  30. 塩田章

    塩田政府委員 大変恐縮でございますが、先ほど私が中期業務見積もりの完成時と大綱との差について申し上げました際に、航空自衛隊作戦用航空機約三百二十機になるというふうに申し上げましたが、約三百五十機というふうに訂正させていただきたいと思います。大変恐縮でございました。
  31. 有馬元治

    有馬委員 次に、イランイラクの紛争に関連いたしまして、ホルムズ海峡の安全航行の問題をお尋ねしたいと思います。  日本の輸入石油量の七割がこの海峡を通っておる。これは輸入石油量というと全量に等しいわけでございますから、この海峡が通航不能になるということになればこれは大変な問題でございます。私も意地悪い質問をしようかと思って、昨日でしたか、通産省の事務官を呼んで、もし三カ月とまったらどういう事態になるんだ、それに対してどういう手を講ずるんだ、こういうことを質問しようと思うがどうかと言ったら、いや、とてもそれは、そういう質問をせぬでくださいという顔つきであったものですから、私はここではあえてやりません。しかしこれはもう本当に深刻な事態であり、それこそまさにわが国安全保障の大問題なんでございますから、事務官がそういう顔をしたのも無理はないと思います。われわれ政治家は、それでもなおかつ最悪の事態を考えて対処をしていかなければならぬ、これが国民の期待に報いるゆえんでもございますから、その点のこれからの事態の推移並びに今後の対処の仕方について、これからお尋ねをしてみたいと思います。  そこで最初に、防衛庁政府委員で結構でございますから、現在一番新しい時点でのペルシャ湾、アラビア海、インド洋、こういうところに展開しておる東西の艦艇の状況、さらにAWACSがどういう配備の状況になっておるか、そしてこれらが、当然のことながら戦争の拡大を防いでおるんだろうと思いますけれども、一体どういう活動と機能を果たしておるのか、この点について政府委員からお答えをいただきたいと思います。
  32. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 インド洋におきます東西艦艇の現在の展開状況でございますけれどもソ連側は戦闘艦艇十二隻、支援艦艇十七隻、約三十隻を展開しております。それから西側は米国、英国、フランス、オーストラリア、これは総計いたしまして空母三隻、これは艦載機約百九十機でございます。その他の戦闘艦艇三十一隻、支援艦艇十八隻を含む五十二隻を同海域に展開しております。特にアメリカの艦隊はペルシャ湾の湾口付近に展開しているようでございまして、両者の勢力から申しますと、西側が圧倒的に強いようでございます。  なお、AWACSはE3Aがサウジアラビアに展開しておるようでございます。その機能はもっぱら湾岸地域におきます航空機活動を監視するということでございますけれども、もっと具体的に申し上げますと、ペルシャ湾をはさみまして航空戦闘が行われる、あるいは湾岸の産油地帯に航空攻撃が行われる、あるいは何らかの海峡の通航の妨害行動がとられる、それを事前に察知いたしまして、湾岸地区にございます西側の航空力によってこれを守るというための態勢であるというふうに承知しております。
  33. 有馬元治

    有馬委員 西側はアメリカを初めイギリス、フランス、オーストラリア、四カ国の水上艦艇が約六十隻近くこの海域におるということはわかりましたが、いまのAWACSの機能と関連いたしまして、これは見方によれば非常に重要な機能を果たしておるのではないか、これは作戦ですから当然のことだと私は思いますけれども。したがって、現在この四カ国の艦艇が六十隻近く張りついておるということは、もうすでにAWACS情報を中心とした合同艦隊的な性格になっておるんじゃないか。こういう点が、私はなって悪いとは言わないのですよ、どういう実態になっているんだろうか。これは各国それぞれ主権があり、指揮権がばらばらであるのがたてまえでございますから、その艦隊の機能がどういう機能になっておるか、こういう点が心配というか気になるのでございますが、その点がもしおわかりであればお答え願いたいと思います。
  34. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 合同艦隊という表現でございますけれども、いまのところは、湾津の危機的な状態及び米国の意向に沿いまして、英国、フランス、オーストラリア、それぞれが自発的と申しますか、みずからの海上交通路安全の確保も含めまして、それぞれ通常よりも若干多い兵力を展開しているというふうに考えられます。フランスにつきましては通常よりも多いと言えるかどうか、ちょっとその辺は確言を申し上げられません。  それでAWACSでございますけれども、いまNATOそのものがE3Aを導入しております。これは長期計画でございまして、E3Aを中心といたします総合的なコマンド・アンド・コントロールの改善を図っておりますので、NATOが場合によっては共同して行動する場合はAWACSは十分共同で利用する可能性もある、そういうふうに考えられます。ただ、現時点におきましてAWACSを中心とするいわゆる連合艦隊のようなものができているという段階には達していない、そういうふうに考えております。
  35. 有馬元治

    有馬委員 このAWACSの配備というのは世界じゅうが非常に重大な関心を持っておると思いますが、イランの側からはこれの退去を求めているというふうな情報もあるんですが、それはどういうことになっておりますか。
  36. 村田良平

    ○村田政府委員 イランは従来放送等を通じまして、アメリカがAWACS機をサウジに配備したことを非難いたしておりましたが、さらに去る十七日にラジャイ首相が安保理に出席いたしました後の記者会見におきまして、例の人質問題との関連において再びこの問題を取り上げまして、もしも米国がこのAWACS機を撤去するならば人質問題の解決に資するであろうという発言をいたしております。
  37. 有馬元治

    有馬委員 次に、世間で言われておるホルムズ海峡の封鎖の問題、これについての見解を聞かしていただきたいと思います。  この海峡、四十キロ幅だと聞いておりますが、機雷封鎖というのはそう簡単にできるわけでもない、ましてイランの現状から言いますならば果たしてできるだろうかという感じがいたすわけでございますが、海軍当局は場合によっては封鎖をするというようなことも言っておるようでございます。  そこで、これは防衛庁からお答えいただければいいと思うのですが、現在のイランの海軍力からいってこの海峡の封鎖の能力があるのかどうか、お尋ねいたします。
  38. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 イランの海軍能力に関しましては、イランは駆逐艦及び護衛艦それぞれ数隻程度の艦隊を持っております。これに対しましてアメリカは、ホルムズ海峡の通航は断固守るという姿勢を非常に強く持っておりますので、水上艦艇をもってする場合はイランにはとうてい海上封鎖能力はないと思います。  残るのは機雷敷設能力でございまして、機雷敷設というのは非常に種々の種類、種々の作戦行動もございまして、いわゆる完全に海峡封鎖ができるように敷設する能力、これは最大の能力でございますし、あるいは心理的作戦といたしまして少数のものをばらまく、そういう非常に多岐にわたる問題でございますので断定的には申し上げられないのでございますけれども、いままでイランに対する武器は主としてアメリカが提供しておりましたが、そのアメリカが提供した武器、それから現在までイランの艦艇、航空機の持っております能力から考えますと、機雷敷設能力そのものは持っていないという判断になります。ただ、これも、米国以外からそれを獲得するということも可能でございますし、それからいま持っております艦艇、航空機に若干の修理、改善を加えて能力を持たせるということも不可能ではございません。その程度のものでございまして、絶対的にあり得ないということは断定できないのでございますけれどもイランの機雷敷設能力はきわめて限られたものであろうということは申し上げられると思います。
  39. 有馬元治

    有馬委員 もし機雷敷設あるいはその他の方法でこの海峡の通航が不可能になる、あるいは不自由になる、こういう事態が起こった場合に、掃海能力というのは相当程度持っておるのかどうか、その点についての説明をお願いします。
  40. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 御指摘の問題でございますけれども、確かに米国は従来掃海能力は大して持っておりません。むしろ、米国の海軍特殊の事情から申し上げまして、列国に比べまして掃海能力はかなり低いと考えられております。しかし、にもかかわらず、大型ヘリコプターなどを使います限定的な掃海能力は持っておりまして、大型ヘリコプターは現地に行っておりますかどうかわれわれ確認しておりませんけれども、海兵隊の舟艇には積載している可能性は十分ございますし、またイランの封鎖能力がきわめて限られたものであるという前提に立てば、その程度のものを排除する能力は持っていると考えております。
  41. 有馬元治

    有馬委員 掃海の問題と関連して、一昨日でしたか昨日でしたかの新聞に、掃海機器を日本から送るような記事が出ておりました。確かに日本海上自衛隊は、戦後の発生の歴史から考えても、掃海能力はあるいは米軍よりもまさっているのかもしれないわけでございますが、この掃海機器の投入ということは一体どういう話なのか、それに対してどういう見解を持っているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  42. 塩田章

    塩田政府委員 私どもも新聞記事を見ただけでございまして、現実にそういう話は全然参っておりませんので、どういうふうな対応をするかまだ検討しておりませんけれども、いまの自衛隊の立場からいたしまして、そういうことは大変むずかしいのじゃないかと考えております。
  43. 有馬元治

    有馬委員 次に、共同パトロール構想について外務大臣にお尋ねしたいと思いますが、ホルムズ海峡の航行の安全ということと関連していろいろな対処の仕方があると思いますが、いわゆる共同パトロール構想というものが出てまいっておりますけれども、これは正式に相談があってのことなのか、そしてまた、この構想に日本も何らかの形で協力できるのか、そういう点について外務大臣の見解をお尋ねいたします。
  44. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまのアメリカ、英、仏、豪州、ニュージーランド等々の軍艦による共同パトロールのことがよく御質問に出るのでございますが、計画をされているということは聞いておりますが、それが実現されたということはまだ私どもも承知してないわけでございまして、日本側としましては全然そのことにつきまして協議は受けておりません。ただ、計画が実現されてないということは知っておりますが、協議は受けておらない。日本がそういう場合に軍事的な協力、向こうへ行って、いまお話しのような掃海艇の問題でございますとか、そういう軍事的な協力ができないということはアメリカ側も十分知っている、理解しているというふうに考えておりますが、いまのところは、具体的な問題としてそういう問題については協議は受けてないというのが実情でございます。
  45. 有馬元治

    有馬委員 この共同パトロール構想というのは、私は決して回避すべき構想ではない。わが国の石油の七割がこの海峡を通っておるし、そして海峡の通航の安全を確保しなければならないというのは、日本を初め、ヨーロッパ、アメリカ各国が関連している問題でございます。各国共同でやるという考え方は決して間違ってない。ただ、外務大臣もおっしゃったように、日本には平和憲法があって、そこまで船を出したり自衛隊を派遣するわけにいかない、これはよくわかるのです。しかし、考え方としては、やはり共同でこの通航の安全を確保しなければならないという考え方、その考え方は私はけしからぬと言うわけにはいかない。  そこで、もしそういう構想が出て、相談があり、しかも、自衛隊の派遣という憲法でできない相談を持ちかけられたときにはいざ知らず、共同で責任を分かち合うという立場から言うならば、たとえば費用の分担というよう考え方が出てきた場合に、これは私は憲法違反ではないと思いますが、これはまだ話が出てこない前の仮定の話でございますから大変答えにくいとは思いますけれども、経費の分担という考え方が憲法に抵触するのかしないのか。実際にやる、やらぬは二の次といたしまして、その点はやはりふだんから検討しておく必要があると思います。政府部内でこの点の相談もされていると思いますが、憲法上可能であるのかどうか、やる、やらぬは別の問題でございますが、その辺の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  46. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いまの問題は本当に仮定の問題でございまして、協議自体受けてないという段階でございますから、現実の問題としてお答えするということじゃないのでございますが、私は政治的に見て、恐らく一部負担してくれというようなみみっちい話はないだろうと思っておりますが、いまのところ、協議がない段階でいろいろ仮定を置いて申し上げるのは失礼でございますから申し上げませんが、いまの純法律的な問題としてどうかというお話でございますから、これは政府委員の方からお答え申し上げます。
  47. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど来大臣及び政府委員から累次答弁しておりますように、全く仮定の問題ということで答えさせていただきます。  先般の外務委員会で同じような質問が出まして、外務大臣の方から、本件の問題点については政府部内で詰めているというお答えをいたしておりますが、その後政府部内で詰めました結果、憲法で禁じられている集団的自衛権の行使というのは、たとえば日本がよその国のために実力を持ってそこに赴いて援助をするということでございまして、現在、巷間伝えられている共同パトロールのために費用を出すということについては、集団的自衛権には抵触しないということが一般的に言えるのではないかと思います。  しかし、繰り返しになりますけれども、現在のところ、アメリカ側からのそういう要請もございませんし、またどういう形態で費用の負担というものが将来起きてくるかどうか、やはりその時点で改めて検討してみる必要があるかと思います。
  48. 有馬元治

    有馬委員 私は、いまの政府委員の見解で、憲法上の問題は理解できるのでございます。  そこで、私は、こういう場合の費用分担ということは、やはり世界的な責任の分担といいますか役割り分担という考え方から出てきておるのだと思います。したがって、単に経済援助あるいは政府間援助というような形で、そもそも金で解決するという問題ではないのですね。防衛は命を張ってやっているわけですから、金で換算されるしろものではもともとない。したがって、広い意味の総合的な安全保障というのには外交がある、外交の手段としては経済援助があり、あるいは政府間援助がある、こういうことがよく言われるのですけれども、やはりもう一つ、本当に世界の平和、安全を確保するために日本がどういう役割りを演じなければならないか、これはもちろん憲法の枠内の問題でございますけれども、いま言ったような経費負担、これは当然負担すべき責任があるのだ、こういう考え方をこれからとっていかないと、日本は経済的にもうけるばかりで何ら世界の安全、平和については寄与しない、こういう非難につながりますので、こういう問題はもっと真剣に考えていくべきじゃないか。これから起こってくる、想像ができる問題でございますので、この点はひとつ政府もよく今後検討しておいていただきたいと思うわけでございます。  そこでもう一つ、海峡を離れて、日本までのシーレーンを考えてみたいと思いますが、このシーレーンを考える場合に非常に大きな脅威がのしかかっておるわけでございます。これは空からと海からと、海といっても主として潜水艦だと思いますが、この両面からシーレーンに対しては大きな脅威がのしかかってきておる、私どもはそう判断しておるのでございます。  それと関連いたしまして、防衛庁政府委員にお尋ねいたしますが、今日、先ほどから話が出ておるバックファイアあるいはSS20、こういうものを考えたときに、その射程の圏内にどういうぐあいにこのシーレーンがかぶさっておるのか。  そしてまた、ソ連空軍基地、またベトナムにおけるソ連空軍基地、海軍基地、さらにはアフガンにおいて最近建設中のソ連空軍基地、これがどういうふうに整備されておるのか、この状況をひとつ説明していただきたいと思います。
  49. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 インド洋、南シナ海を通りますいわゆる石油ルートに対するソ連の妨害能力という御質問でございますが、これはここ数年間確かにはなはだしく増大しております。  御質問は主として空軍でございますけれども、まず海軍の方から申し上げますと、やはりその理由は、最近数年間におきます目覚ましいソ連太平洋艦隊増強がございます。三年間で約二十七万トン増加しておりまして、使用水上艦艇が非常にふえております。現にインド洋展開しておりますイワン・ロゴフであるとか、南シナ海におきますミンスクであるとか、またそれに随伴しておりますカラ級の巡洋艦でありますとか、これは全部過去二、三年間において増強された艦艇でございます。  しかも、ソ連は、従来外洋におきまして補給するための港湾を欠くという非常な制約を持っていたのでございますけれども、最近カムラン湾、ダナンをかなり自由に使用できるようになってまいりました。アデン、マッサワ、ソコトラあるいは泊地も頻繁に利用するようになっておりました。ここ数年間におきまして、海洋におきますソ連の海上輸送妨害能力というものは飛躍的に増加したというふうに考えられます。  空でございますけれども、確かにバックファイアは最大行動半径が五千七百キロございます。五千七百キロと申しますと、イルクーツクあたりを基地といたしましてシンガポールを大体カバーできるぐらい、それから西側から申しますと、キエフぐらいを基地といたしますとアラビア半島、それからアフリカの角あたりを全部カバーできるぐらい、そのくらい非常に広範な行動半径を持っております。そして、数百キロ遠方から撃てるミサイルを持っておりまして、それによって艦艇攻撃、これは非常に正確な艦艇攻撃ができる。これはまさに御指摘のとおり、現在、極東とかこのあたりにバックファイアが行動しているのは視認されておりませんので、これは恐らく近い将来の問題でございますけれども、これが近い将来活動するような準備ができた場合は、大変な海上交通路に対する脅威になると存じます。  現在、バックファイアを使っていることは確認されておりませんけれども、確かにこれがカムラン湾、ダナンに付属する飛行場であるとか、あるいはアフガニスタンにおけるシンダンドであるとか、それからもっと南部のカンダハール近辺の飛行場であるとかを使うようになった場合は、南半球の相当な部分を含めまして、西太平洋インド洋を含めまして、全体におけるソ連の介入能力、海上交通に対する妨害能力、これは飛躍的に増大するものというふうに考えられます。
  50. 有馬元治

    有馬委員 現状においては、もし仮にソ連がこのインド洋、アラビア海の海域に攻撃をするという場合には、やはりヨーロッパ正面のバックファイアがたとえばタシケント経由で直接インド洋に出てくる、こういうのが距離的には近いのだろうと思うのです。したがって、現在極東に配備されておるバックファイアがもし出かけるとすれば、南シナ海、ベトナムを中継基地としてこういう方面に出かけてくるのではないか。これは現在も日本列島を、内側と外側から絶えず出かけておるようでございますが、最近のこのダナンあるいはカムラン湾、主としてダナンの方に航空基地はあるのかもしれませんが、定期便的にウラジオ方面から出ておるソ連航空機の動静というのはどういうことになっているのか、それがまたベトナムにおける空軍基地、航空基地の整備状況とも関連しているのだと思いますが、その点の実情を御説明願いたいと思います。
  51. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 カムラン湾、ダナン付近の飛行場でございますけれども、当初、これは中越戦争後、ソ連のTU95ベア、これが時折訪問するという程度でございましたけれども、昨年ぐらいからその頻度が増加いたしました。それで、南シナ海周辺におきますソ連の偵察能力の向上にかなり貢献しているものと考えられます。特にその偵察の対象は米軍の艦艇であるというふうに考えております。  他方、御指摘の民間航空、と申しましても要するに旅客機でございますけれども、これはIL62という飛行機でございまして、これも本年からほぼ定期便のよう極東からダナンの方向に飛行しております。その積み荷の内容は確認はできませんけれども、主として軍事的要員あるいは顧問、そのようなものを輸送しているのではないか、そういうふうに考えております。
  52. 有馬元治

    有馬委員 そこで、日本のタンカーあるいは貨物船、日本国籍の船舶というのが公海で攻撃を受ける、あるいは公海上における航行の安全を確保しなければならぬという場合には、これはどの国がそれをやるわけですか。
  53. 塩田章

    塩田政府委員 御承知のように、わが国自衛隊は、わが国周辺海域においてといいますか、自衛権の発動として認められる最低限度の行動をとることが許されておるということでございまして、また実際の海上自衛隊整備目標といたしましても、周辺海域における海上作戦並びに航路帯を設けた場合には約一千海里程度というようなことで整備いたしておりまして、いまお話しの公海の場合にどうかということでございますが、法律的に申せば、わが国の自衛行動わが国の領海にとどまるわけではございませんので、自衛行動の許される範囲といたしましては公海に及ぶということでございますが、いま申し上げましたようわが国の海上自衛力整備の目標等からいたしまして、そんなに遠くの方まで行く能力もございませんし、実際、現在「防衛計画大綱」にいたしましてもあるいは日米ガイドラインに基づく研究にいたしましても、わが国周辺における海上作戦あるいは船舶護衛作戦を行うということになっておりまして、それ以上のことにつきましてはやはり米軍に期待せざるを得ないというのが現状でございます。
  54. 有馬元治

    有馬委員 日本国籍の船舶は、地球上どこにおっても、考え方としてはやはり日本が、わが国が守ってやらなきゃ、よその国が守るというのは筋違いでしょう。そこははっきりしているわけですね。  そこで、いまの説明を聞いていると、自衛隊の能力が限度があるので、なかなかインド洋まで出かけるわけにはいかない、これは能力の限界の問題だと思います。  そこで、考え方として、あくまで公海における日本船舶の安全保障の問題は、これはやはり日本自衛力で守らないと、よその国にお願いばかりしておれない、このたてまえははっきりしておいていただきたい。  そこで、もう一つ気になるのは、米軍にお願いするという最後言葉があったけれども、米軍に簡単にお願いできますか。
  55. 塩田章

    塩田政府委員 たてまえとして日本の船は日本が守るべきではないか、よくわかるわけでございますけれども、それでは理論的に、世界じゅうの公海の日本の船をすべて守るだけの海上防衛力を持つのかということになりますと、これはやはり、現在の憲法の自衛権の行使の範囲内というようなことから考えまして、これは大変に問題がございまして、先ほど申し上げましたように、現在の整備目標といたしましては、周辺数百海里あるいは航路帯で一千海里ぐらいをめどに整備しておるということを申し上げたわけでございます。  なお、米軍に簡単に頼めるかどうかということも、これは大変むずかしい問題だと思いますけれども、先ほど私がちょっと申し上げました、現在日米の間の共同作戦計画を協議研究いたしておりますが、その際の基本的な考え方といたしましては、おととしのガイドラインにもございますように、日本海上自衛隊日本の周辺における作戦について主としてこれに当たる、それ以上のところは米軍が主として当たる、あるいは機動打撃力等の日本海上自衛隊の及ばない機能についても米軍に依存する、こういう基本的な考え方で現在研究を進めておるわけであります。
  56. 有馬元治

    有馬委員 そこのところは私は大事なところだと思うのです。日米安保条約をごらんになりますと、やはりこの日本の領土、領空、領海、これに対する直接攻撃、この攻撃に対する共同の対処行動として、日米が共同して防衛に当たるというのが基本的な考え方でしょう。したがって、はるかかなたのインド洋の公海上における日本船舶の安全に対しては、そう簡単に米軍にお願いすると言っても、そこは何の根拠でお願いするのか、ただ好意的に頼むよというわけにはいかないでしょう、そこのところはどう考えるのですか。
  57. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの、アメリカの好意にすがると申しますか好意を頼んで、日本海上自衛隊の能力の及ばない公海上で日本船舶が何か攻撃を受けるとか危殆に瀕するというようなときに、アメリカに依頼をして守ってもらうということ自体は、別に法律上の根拠というものは必要でございませんのでございまして、アメリカがその要請にこたえて日本船舶を保護してくれればそれで済む問題でございます。もちろん日本が権利として要求することはこれはできない問題でございまして、この問題はつまり、先ほど先生もおっしゃいましたように、安保条約との関連において権利として要求するような問題ではないというふうに考える次第でございます。
  58. 塩田章

    塩田政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、先生の御指摘のとおり、日本に侵略行為があった場合の共同対処作戦についていま研究をしておるということでございますから、御指摘よう日本に対する侵略行為があったのかどうか、全然及ばない公海のはるか遠いところで、日本の船舶が危険にさらされているという状態をいまの日米共同対処行動の対象になるよう日本に対する侵略行為と見るかどうかは、これは別問題でございまして、いま私が申し上げましたのは、日本に侵略行動があった場合の日米対処作戦行動について、先ほど言ったよう考え方から研究をしておるというふうに申し上げたわけでございます。
  59. 有馬元治

    有馬委員 そこのところが私ははっきりさせたいところで、当然はっきりしているはずなんだ。しかし、どうもアメリカに好意的に助けてもらうという考え方、これはどうも日米安保条約があるからその延長線で考えていけるのだというような気分が間々ある。これはいま両政府委員の答弁で明快なわけでございますけれども、私はそこは違うのだ、安保条約で共同対処する範囲というものは決まっている、公海上におけるわが方の船舶の防衛というものは本来わが国でやらなければならぬことなんだ、好意によって助けてもらうような場合もあるだろうと思いますが、これはあくまで好意なのです。それに甘えているから甘えの防衛になってくる。ここのところはやはりきちっとしてかからなければ、わが国の存立に関係するシーレーンでしょう。それは北からの脅威も大事ですが、それと並んでこれも大事なんだ、こういう認識がさっぱりない。そして、わが方がやるべきことなんだ、それを実際上やれないから、能力がないからそこまで手が届かないので残念です、こう言わざるを得ないはずでしょう。  したがって、さっきの海峡封鎖の問題にしても、共同パトロールの考え方にしても、これからもう一つお尋ねするシーレーンの何といいますかフィンドレー提案にしても、そのわれわれの考え方基本が間違っている。われわれの考え方というか、何とか好意的にやってもらえるものだという。そうじゃないのです。こっちがやらなければならぬことなんです。だから責任分担という考え方を出したらどうですか。わが方では残念ながらその能力もないし、また一緒に集団自衛行動もできないし、だからわが国としてはできることはこのことですという考え方は、私はやはりとらなければ、いつまでたっても甘えの構造で日本が世界に向かってやっていけるという考え方は、私は間違いじゃないかと思いますので、その点もう一遍ひとつお答え願いたいと思います。
  60. 塩田章

    塩田政府委員 先生のおっしゃるそのたてまえといいますか、日本の船は日本が守るのだという御趣旨なりお気持ちなりはよくわかるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、現実の問題といたしまして、私どもは、海上自衛隊の能力の整備の目標といたしましても、そういう遠いところまで行けるようなものは考えておりませんし、また、先ほど申し上げましたように、世界のどこであれ防衛ができるだけの自衛力を持つことが、いまの体制の中で許されるかどうかというような問題もあわせて考えなければなりませんので、私どもといたしましては、周辺数百海里あるいは海上航路帯を設けた場合には一千海里という、これは一応コンセンサスをいただいているのじゃないかと思っておりますが、そういう範囲でいま防衛力整備を図っておるということで、それ以上のところにつきましてわが方から防衛に行くというようなことは考えておりませんわけでございます。
  61. 有馬元治

    有馬委員 わが国の近海といいますか周辺というか、この程度については、多少領海をはみ出しても手の届く範囲だからわが自衛隊で船舶を守ります、この辺はコンセンサスができておると言うけれども、それしか守れないと言うからやむを得ず認めているだけでしょう。やはり考え方としては、地球の最果てに行こうとどこへ行こうと、守ってくれるのはやはり日本しかないんですよ。そこのところはきちっと考え方をはっきりしておかないと、ただ何となく御好意に甘えて、アメリカにお願いします、こういうことではやはり防衛基本がなってないという感じがいたしますが、これはこの程度にいたしておきたいと思います。  そこでもう一つ、時間がありませんので最後の質問といたしたいと思いますが、アメリカでいろいろな海上交通の安全のための防衛策が打ち上げられておりますが、その中の一つにフィンドレー提案というのがありますが、これも私ども断片的に新聞記事その他で話を聞いているだけで、恐らく政府に正式な相談があったわけでもなし、またアメリカ議会においても結論を出した問題ではないと思いますが、しかしこういう考え方は絶えず注目しておかなければならないと思いますので、このフィンドレー提案についてその概要と、現在どういうふうな扱いになっておるか、その点政府委員で結構でございますからお答えいただきたいと思います。
  62. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 フィンドレー下院議員が最初に提案しておりますのは、東南アジアの海上の安全確保のためにいろいろな構想を打ち上げております。それで、現在の段階はまだ下院で審議中でございます。  ただ、最近になりまして、イランイラク紛争の関連で、これを中東の方にも推し広げていこうというような動きが議会の中にあるようでございます。これに対してアメリカの海軍当局は、フィンドレーの構想は一般的には支持している、しかしやはり、具体的に指揮系統とかいろいろな問題があるので、そういう具体的な中身についてはまだアメリカ政府として検討の段階に至ってない、こういうことを発表しております。
  63. 有馬元治

    有馬委員 そういう段階だと思います。ただ、私がフィンドレー提案の説明を求めたり、先ほど共同パトロール構想についていろいろな角度からお尋ねしたのも、結局、日本防衛という場合に、日本本土に対する直接攻撃、侵略、これに対する防衛、これは第一義的なものであることは間違いない、しかしそれにも劣らず大事なことは、シーレーンの安全確保の問題だと思うのですよ。  冒頭に申しましたように、七割の石油がとまったらもうどうしていいかわからないというのが現状でしょう。アメリカあたりであれば、ちゃんとこうなればこうなるという予測がつく。日本では一〇〇%輸入に依存している石油です。この上に日本の経済が成り立っておる、生活が成り立っておる。のみならず、財政だって石油に絡む収入というのはたくさんあるでしょう。恐らく三兆円ぐらいあると思いますよ、全部計算しますと。石油が入らなくなったら、財政だって成り立ちっこない。何もかにも御破算になる大事な問題だ。その場合にやはり、国土に対する攻撃、侵略と同じように、シーレーンの安全確保というものをもっともっと重大視していかなければ、わが国防衛にならない。これは防衛基本にさかのぼって、何を守るのかという根本の問題にもぶつかる大事なことでございますから、私は、シーレーンの問題は、いろいろ新聞記事に構想が出る、そうすると翌日は、いや、それはもうあれですからやる気はありません、というような答えを軽々に出しておる。世界じゅうがどうやってシーレーンの安全を守ろうかということで四苦八苦しているわけですから、私どももやはりまじめにこれには取り組んでいかなければならない。そういう姿勢がなければ、これはもうあなた任せの防衛と言われても仕方がない。これではやはり、独立国家として世界に何を寄与するか。外交の口先だけでは、世界は納得しないと思います。  そういう点をよく考えていただきたいし、また、あえて仮定の問題ではありますけれども、憲法上の差しさわりがあるかないかということは、やはりわれわれが現在物事を考える場合の出発点でございますから、それを検討した上で、憲法が許される範囲であるならば、世界の平和と安全に役立ち、わが国の安全に役立つことは積極的にやっていく、この姿勢が私は大事ではないかと思いまして、あえて質問したわけでございます。
  64. 大村襄治

    大村国務大臣 シーレーンについて貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことに感銘深く拝聴いたした次第でございます。  御指摘の憲法上の問題も含めまして真剣に検討させていただきたいと思うわけでございます。  実際問題といたしまして、広大なシーレーンをわが国自衛力だけで守るということは、なかなか容易でないと考える次第でございます。友好諸国との協力を考え、また御指摘の費用の分担の問題等につきましても、外務大臣とも御相談いたしまして、広い角度から真剣に検討させていただきたいと考える次第でございます。
  65. 有馬元治

    有馬委員 どうもありがとうございました。
  66. 坂田道太

    坂田委員長 午後二時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  67. 坂田道太

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、大村防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。大村防衛庁長官
  68. 大村襄治

    大村国務大臣 午前中の有馬先生の御質問に対するお答えの最後のところで、シーレーンの防衛の問題につき、憲法上の問題を含めて検討しますという趣旨のお答えをいたしましたが、これは憲法そのものを検討する趣旨ではなく、憲法の範囲内で検討するという趣旨でございますので、言葉が若干不足であったことをおわびするとともに、このよう理解していただきたいと思います。
  69. 坂田道太

    坂田委員長 質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  70. 横路孝弘

    ○横路委員 奥野法務大臣の自主憲法制定あるいは九条を中心とした改憲の発言以来、どうもさまざまな改憲の動きと議論が起きてきておりまして、そんな中でいまの防衛庁長官の答弁の訂正もあったと思うのですが、中には自主憲法、核武装論まで主張する人が出てくるような様子なわけです。  そこで私は、きょうはまず初めに、最近のいろいろな世論調査、戦後の世論調査が一貫して示しているのは、憲法そのものは国民の中に定着しているということだと思うのです。同時に、外務大臣にお尋ねしたいのは、国際連合を中心とした国際社会の中において、日本の憲法というのはどう受けとめられているのかということであります。憲法の平和主義、そして、そのことをわが国外交基本としてきたということは、国際連合の加盟各国とも十分に承知しているのではないか。その意味では、すでに国際的にも憲法の平和主義というのは定着しているというように言えるのではないかと私は思いますが、外務大臣の御見解はいかがでしょうか。
  71. 伊東正義

    伊東国務大臣 憲法の平和主義の問題でございますが、国際連合の中におきまして、日本の憲法というのが特殊な体系を持った憲法であるということは、大方の国が認識をしていることは確かでございます。ただ、ときどき平和維持の問題、平和活動自衛隊が派遣できないかとか、そういういろいろな要望のあることもまた確かでございますが、いままで戦後三十五年、日本は平和主義ということでやってきたということは高く評価されるというふうに思っております。
  72. 横路孝弘

    ○横路委員 きょうの本会議でも法務大臣の御答弁があったわけですが、十月十五日の法務委員会で奥野法務大臣は、憲法の前文に触れて、つまりわが国は「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を維持しようと決意した。」という前文に触れて、自主憲法制定の際には自分の国は自分で守るというような趣旨に変えたらいいじゃないかというニュアンスの御発言をされたようでありますが、憲法の平和主義ということは、何も憲法の九条ばかりではなくて、憲法の前文と九条を含めていわば憲法の原則の一つをなしているというように私は考えるわけですが、法制局は来ておられますか。
  73. 味村治

    ○味村政府委員 御指摘ように、平和主義は憲法の前文及び憲法の第九条にあらわれていると存じます。
  74. 横路孝弘

    ○横路委員 戦後の日本外交が国連中心主義あるいは全方位外交ということで、ある意味で言うと経済を外交の一つの武器にしてきて、平和憲法のもとで軍事力というものを外交の武器にはしない、そこを拒否する、軍事的な役割りを拒否する、あるいは放棄してきたということだったのではないかと思うのです。そしてそのことは、国内において、憲法の規定の解釈やあるいは現実の自衛隊の姿というものは別にして、少なくともこれまで、武力を国際紛争の解決の手段にしない、あるいは戦力を持たないということが、日本軍事力の増大というものをある意味で言うと一貫して抑制してきた。その結果が、アジアにおいて軍事的な対立と緊張を極端に激化させなかったという結果をもたらしているのではないだろうか。仮に日本が、ヨーロッパのNATOとワルシャワ条約機構のよう関係ように、相当量のいわば軍事力の対峙を引き起こす政策というもの、それは日本軍事力をもっともっと増強をしていればそういう結果になったと思うのですが、それは他のアジアの諸国、特に中国やソビエトの政策に大きな影響を与えて、中ソ関係そのものも今日とは違った形になっていたでしょうし、中国の対外政策そのものの変化にもわが国のいままでの政策というものが影響を与えてきていると思う。そんな意味では、平和外交の原則そのものがアジアの冷戦構造を変化させて、多様化を促進するということで一定の役割りを果たしてきたというように私は考えるのですけれども、そういういわば戦後の日本の平和憲法に基づいた外交展開というものが、アジアの中で果たしてきた役割りについて、これは外務大臣に伺いたい。
  75. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生おっしゃったように、日本の憲法は平和主義をとっているわけでございまして、御承知のような個別自衛権しかない、集団自衛権は持たない、専守防衛だ、平和外交をひとつ一生懸命やろうというような態度でいままでやってきたということが、アジアにおきまして一つの大きな平和の柱になってきただろうということは、私も認識しているところでございます。
  76. 横路孝弘

    ○横路委員 本年六月のアメリカの上院外交委員会の東南アジア太平洋問題小委員会のグレン委員長考え方といいますか分析を見ても、「日本の攻撃的軍備を放棄するという政策が、かつての日本の敵国に対し、日本が技術的経済的に強大になっても必ずしも軍事的野心につながらないということを証明した。このため、日本と近隣諸国の間には相互に有益な経済的政治的関係が発達してきた。特に、日本のこうした軽軍備は、中国の西側に対する門戸開放を促し、最近の日中関係や米中関係の改善に役立った。また、ソ連との関係においても大きな紛争を防いだ」ことになるのではないだろうか、ということをアメリカ外交委員会の中でも指摘をする人がおるわけですが、これも前に私が指摘した点と同じだと思いますけれども、こういうアメリカ側の見方についてはどういうぐあいにお考えですか。
  77. 伊東正義

    伊東国務大臣 それは、アメリカのだれがどう言ったかは不勉強でまことに申しわけございませんが、いま私が申し上げたように、日本が個別自衛権だけだ、専守防衛で自分の国を守るということでやっておるんだ、軍事大国にならぬというのは歴代の総理も言ってこられたところでございまして、そういうことがアジアの平和と安定に一つの大きな役割りを果たしてきたということにつきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、私は、だれがどう言おうということは別といたしまして、客観的な事実は一つであろうというふうに見ております。
  78. 横路孝弘

    ○横路委員 いまの上院外交委員会のものですね、これはちょっとまた後でお尋ねしますが、最近の憲法改正議論というのが、そんな意味で戦後の三十数年間、国民の中の定着並びに国際的にもある意味で言うと定着をしているものを、何かやはり一気に大きく変えていくという意味では、国際的にも影響が大きいんじゃないかと思うので、ちょっとしつこいようですけれども、少しこの点に関して質問を続けさせていただきたいと思うのです。  戦後の日本の国連総会における外務大臣やあるいは総理大臣の演説というものをずっとピックアップして見てみますと、大体平和憲法を紹介しているんですね。平和憲法を紹介をし、それから原爆を受けたということを訴え、そこから非核三原則を導き出すというようなことでの主張というものを、国際社会に向かっては言ってきているわけです。  最近のものをピックアップしてみても、昭和四十二年の三木外務大臣昭和四十四年の愛知外務大臣、四十五年の佐藤総理大臣、四十六年の愛知外務大臣、五十一年の小坂外務大臣という演説はいずれもそうでありますが、特にそういう演説の中でその点を際立たせた演説が私は二つあるんじゃないかと思います。  一つは、きょう午前中にも紹介ございましたが、福田総理大臣、当時の総理がマニラで行ったいわゆる福田ドクトリンと言われているものと、国連の軍縮総会における当時の園田外務大臣のあの演説だと思うのです。  ちょっとその辺を紹介をしながら御意見を承りたいと思うのですが、福田総理大臣の演説はこんな演説です。   過去の歴史をみれば、経済的な大国は、常に  同時に軍事的な大国でもありました。しかし、  我が国は、諸国民の公正と信義に信頼してその  安全と生存を保持しようという歴史上かつて例  をみない理想を掲げ、軍事大国への道は選ばな  いことを決意いたしました。そして、核兵器を  つくる経済的、技術的能力を持ちながらも、か  かる兵器を持つことをあえて拒否しているので  あります。   これは、史上類例を見ない実験への挑戦であ  ります。同時に人口稠密で資源に乏しく、海外  諸国との交流と協調を必要とする我が国にとつ  てはこれ以外の選択はありえないのでありま  す。私は、このよう日本の選択こそはアジア  の地域、ひいては世界全体の基本的な利益にも  資するものであると信じます。我が国が、近隣  のいずれの国に対しても軍事的にはもちろん  のこと、その他いかなる形であれ、他国を脅か  すような存在ではなく、その持てる力を専ら国  の内外における平和的な建設と繁栄のために向  けようと志す国柄であること——われわれは、  このよう日本の在り方こそが世界における安  定勢力として世界の平和、安定及び発展に貢献  しうる道であると確信いたします。これは大変評判のよかった演説であります。いわゆるマニラ・ドクトリンと言われているこの基本的な立場というのは、日本の憲法の精神そのものでありますし、わざわざ福田さんは、この演説の中で憲法の前文ですね、奥野さんが変えたいとおっしゃったその憲法の前文のところを引用しながら、歴史上かつて例を見ない理想を掲げている、しかしながら、われわれは実験をするんだという主張をなさっているわけであります。これは私は、やはりアジア諸国に大変大きな感銘を与えたということだと思うのですね。この基調そのものは私は変えるべきじゃないし、外務省の方針としても変わっていないと確信をしておるのですけれども外務大臣いかがでしょうか。
  79. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  先ほどからお答えしたように、私は、日本の平和外交軍事大国にならぬ、自衛権だけは認められて、専守防衛であるというのはもう基本でございまして、福田総理がマニラでおっしゃったということは、私はもう基本的には変わっておらぬ、こういうふうに考えております。
  80. 横路孝弘

    ○横路委員 その考えをとれば、こういう考え方ですね。周辺の諸国に脅威を与えなければそれはむしろ抑止力にならないのだという議論というのは前にもあったわけですが、その考え方自身を明確に否定しているものだと思いますが、いかがでしょうか。
  81. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘の点は金丸元長官のおっしゃった点を御指摘のことだと思いますが、その御趣旨は、わが国自衛隊は決して他国に脅威を与えるという意味ではなくて、わが国がみずからを守るに足る自衛力でなければいけない、そういう意味で強い自衛力でなければいけないということをおっしゃったと私どもは了解しておるわけでございます。
  82. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、金丸さんの具体的な発言を言っているのではなくて、その金丸さんの発言に代表されるよう意見というものがあるでしょう。抑止力というものは何か、それは周辺の諸国家に脅威を与えなければ抑止力にならないのだという、しかし日本がとっている方針は違いますね。違うのです。日本はそういう考え方をとってないのです。福田さんは、そのことをもあわせて表現しているわけです。福田さんが言っていることはそういうことだと思うのです。そのことをお尋ねしているのです。別にむずかしいことを聞いているのじゃなくて、日本がいままでとってきたのはそういう考え方だと思いますよ。違いますか。
  83. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど私は専守防衛ということを言ったわけでございますが、これは他国に脅威を与えるということじゃなくて、侮られない程度のものだというふうに言った方がいいかと思います。いま脅威論が出たわけでございますが、私は他国に侮られるようなものであってはいかぬということは言える、他国に脅威を与えるというものであってはならぬというふうに言った方が、私の言う意味の専守防衛には合っているのじゃないか、こう思うわけでございます。
  84. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり福田さんは、憲法の前文と憲法の精神を紹介して、近隣のいずれの国に対しても、軍事的にはもちろんのこと、その他いかなる形であれ他国を脅かすような存在にはならないのだということを言っているわけです。そこのところが、これはマニラのスピーチですけれども説得力があるのです。つまり日本という国に対する評価についてですね。だから、いろいろな議論の中で抑止、つまり自衛隊自衛力がどのくらい持てるかという議論の中に、相手に脅威を与えなければ抑止力にならないじゃないかという議論があるのは事実です。しかしそれを日本はとらないということをここで御確認していただければいいので、よろしいですかそういう趣旨で、外務大臣
  85. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま私、専守防衛で国を守るということを言ったわけでございますが、これはやはり他国に脅威を与えるということじゃなくて、いま言いましたように他国からは侮られない、毅然として侮られないものは持っているというのが、専守防衛の根本思想だと私は思っております。
  86. 横路孝弘

    ○横路委員 アジアの諸国が中国を含めて日本軍事大国にならないだろうと考えているとするならば、それは多分その憲法九条と、それから憲法の前文と、そして福田さんのこんな発言にあらわれている日本の姿勢というものを見ているから、日本についての心配をしていないということだと思うのです。つまりそのことが、経済交流を深めていっても日本から軍事的支配を受ける心配はないのだろうということになっているのじゃありませんか。そうでしょう。
  87. 伊東正義

    伊東国務大臣 さっきから申し上げますように、集団自衛権というものはない、ですから海外に武力行使のようなことはあり得ないということを私は言っているわけでございまして、そういうことがやはり、アジアの国々に日本はいわゆる軍事大国にならぬのだということを認識させているわけでございまして、それがアジアの平和には大きな役割りをしている、つながっておるというふうに私は考える、そういう点は同じでございます。
  88. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、ASEAN諸国の安全保障、いろいろな問題が最近出ているかと思いますが、しかし、そのASEANの安全保障に対するわれわれの側の最大の貢献は何かといえば、したがって、それは明確に、軍事的な分野でなくて経済的な分野であると言えると思うのですね。よろしいですね。
  89. 伊東正義

    伊東国務大臣 アジアに対して日本の寄与ということになりますと、日本日米安保体制のもとで日本防衛し守れるということで、他国からの武力介入とかはそういうものの抑止力で安全を保っているわけでございまして、これは、それ以上に出まして、ASEANに武力でどうするというようなことは全然考えてないわけでございますから、アジアの安定ということにつきまして日米安保が大きな役割りをなしているということは確かでございますが、日本としては、今度はそこから出まして、それをもとにしてアジアの安定、それはASEANの安定にもつながること、それは経済の問題であり政治の問題であり、そういうことで、ひとつASEANの平和安定を保っていこうというのが日本考え方でございます。
  90. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっとASEANの問題に関連して、福田さんのマニラ演説の中では、ASEAN諸国の強靱性強化ということと、インドシナ諸国との間の相互理解に基づく関係の醸成ということを言っておるわけですが、最近の外務大臣の国連における演説等は、カンボジア問題の解決のために、たとえば国際会議の提唱であるとか、非武装平和地帯の設定というような国連における発言があるわけですが、ASEAN諸国を回られて、その辺のところをどういうような、つまり外交としてどう展開されているのか。いずれにしても、東南アジアの安定ということは大変わが国にとっても大事な問題でありますが、いままでのこの提起がどうなっているのか、今後の見通しを含めてひとつ伺いたいと思います。
  91. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生おっしゃったことは、インドシナ半島の安定のために国際会議をやったらどうかと言ったじゃないか、あるいは非武装地帯の問題を言ったがどうか、こういうことでございますが、福田総理が行かれた後に起きた現象としまして、ベトナムのカンボジアに対する軍事介入ということがあり、それがタイまでことしは越境するというようなことが新しく出てきたわけでございます。  それで、私は、東南アジアを回りまして、ASEANの人々の意見も聞き、日本に対する政治的な役割り、経済的な役割りのほかに、政治的な役割りも果たしてもらいたいというような強い要望も実はあったわけでございまして、これは国連でも、ベトナム軍のカンボジアからの即時撤兵ということを言っておりますし、私は現地に行って言いましたことは、一つは非武装地帯を言ったのでございます。これは直接には、インドシナの安定ということにつながるということよりも、配給される難民に対する物資が果たして末端まで正確に渡っているだろうか、どうもそうでないように思われることがある、それで非武装地帯をつくって、そこではひとつお互いが武力行使はしないという前提のもとに、配給される食糧でございますとか、いろいろな難民に対する物資を公平に確実に末端までいくよう地域をひとつつくる必要があるのではないかということで、まず非武装地域の設定ということを言ったわけでございます。  それから、政治的な国際会議の問題でございますが、これはベトナム、カンボジアが当事国であり、難民が出ているということでは、タイへカンボジアの難民がたくさん出たわけでございますが、ベトナム、カンボジア、タイだけでなくて、マレーシアでありますとかシンガポールとか、ASEANの諸国、あるいはもっと広めればそれに影響力を持つ国々がひとつ集まって、何とか平和裏に話し合いで解決をしていくということでなければ、インドシナ半島の平和は来ないのじゃないかという見地で、私は国際会議を提唱し、国連でも提唱したのでございますが、ASEANでも同じ考えで、いま国連に決議案を出している。国際会議を開いて、何とか話し合いでインドシナ半島の平和解決というものを見出そうということをいま努力しておるところでございまして、なかなかこれは一朝一夕にあしたすぐにというわけにいかぬ問題でございますが、私どもは、何とか国連の決議に基づいてそれを実現するように、私どもも国連の場で主張もするし、ASEANの人々ともよく話し、できればベトナムも話し合いに応じてくれるようにというようなことで働きかけるとか、広い面からこの問題と取り組んでいく必要があるのではないか、日本はまたアジアにあってそういうことをひとつやれるような地位にもあるのではないかということを考えまして、提唱したわけでございます。
  92. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり日本は経済大国になった、経済力にふさわしい国際社会における責任を果たしてないじゃないかという議論が最近展開されているわけですが、私はまさにいまのそういう問題ですね。軍事的には憲法があるわけですから、何と言ったって、やはり政治的な責任をではどうやって果たしていくのかということだと思うのです。それはやはり、日本が特に東南アジアにおいてそういう政治的なイニシアチブをとるということは、私は十分可能だと思うのですね。それは何かと言うと、さっきから繰り返し話しているような、憲法というものの背景をみんなが知っておればこそ、私はそのイニシアチブというものを発揮することができるのではないかと思うのです。  いまちょっと御答弁になりましたが、ASEAN諸国を回られまして提起され、国際連合の場所でもそういう提起をされておりますが、やはり日本のイニシアチブのもとに具体的に実現しようと思えば、問題はやはり、ベトナムであるとかあるいは場合によってはベトナムの背後にいるソビエトというような問題にもなってくるだろうと思うのですね。したがって、いわば、そういう国際会議を開く環境をつくるための努力を本当に外務省がおやりになるのかどうか。いまベトナムとも話し合うことも必要だとおっしゃられたけれども、そのことも含めて本当に努力されるということならば、私はまさにそのことは、日本国際社会の中で政治的な責任を果たすという姿勢をしっかりと東西両陣営の諸国に示すことになるだろうと思うのです。いかがでしょうか。
  93. 伊東正義

    伊東国務大臣 どこがやったら一番その目的に合うかという問題だと思います。私は国連に行って、ワルトハイム事務総長とも実はこの問題を話したわけでございます。そして、国際会議を開くということであれば、国連が仲立ちするのが私は一番権威があるというか、そして関係国に集まってもらうというのが一番いいのではないか、事務総長がひとつもっと努力してもらいたい、日本はもちろん喜んで協力するという話を事務総長と実は話してきたわけでございます。  事務総長の仲立ちで、先般タイの外相とベトナムの外相の会談が国連であったわけでございますが、まだその中からは国際会議をやろうということ、すぐにやろうという結論は出ておりませんが、私は、日本も国連とよく協力してそういうことを実際やっていくということの努力をしていきたい。代表権の問題はこの間で片づいたわけでございますが、私はこれからがインドシナ半島の平和にとっては本当の正念場だというふうに考えております。
  94. 横路孝弘

    ○横路委員 アメリカにしても、中国にしても、ソビエトにしても、これはなかなかあそこでもって発言し、行動して、そのことが周辺の諸国間に理解をさせるというようなイニシアチブというものはやはりとれないと思います。それをもしやるとしたら、日本がしっかりした方針を持って、国連と協力されるのも結構であります、大いにやっていただきたいと思います。  その福田さんの演説と、もう一つ園田さんの演説を、これもちょっと長いのですが、御紹介をいたしたいというように思います。五十三年の国連の軍縮特別総会の意見です。   わが国は、世界各国の理解と協力の下に、第二次大戦の荒廃から立直り、今や、世界有数の経済力を保持するに至りました。過去の歴史をみれば、経済的な大国は、常に軍事的な大国でもありました。しかしながら、わが国は、かかる道を歩むごとなく、その経済力をもつて、国際社会の安定と繁栄に貢献する努力を続けてきたのであります。   日本国憲法は、「日本国民は恒久の平和を念願し、……平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ことを宣明し、「国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段として、永久にこれを放棄する」ことを規定しております。  人類の先覚者としての誇り高き憲法の精神に立脚して、わが国は、他国に脅威を与えるよう軍事大国にならないことをその基本政策の一つとし、国際協調をその外交政策の前提としております。   わが国がこのような世界史上例の少ない実験にのりだす途を選択した背景には、第二次大戦の体験を通じて日本国民の一人一人の心に深く根ざした「二度とこのような戦争があってはならない」という決意があります。そして、この決意は、戦後三十余年を経た今日、日本国民の間に深く定着しており、将来にわたってわが国が、これに反するよう行動をとることは断じてありません。   日本国民の恒久平和に対する強い願望と平和 に徹するという固い決意は、国連憲章が世界各国に求めていることと正に同一であります。わが国は、今後の国際社会における国家の活動の新しいあり方の先覚者たるべく、平和に徹し、国際協調を基本とする外交努力を一層強化していくことを決意しております。こう述べて、非核三原則それから核軍縮の提起をされた。もう一つは武器輸出三原則、つまり武器の輸出を慎むという、先進工業国の間ではきわめて例外的な、独自の政策を堅持しているということを国連の場で訴えて、通常兵器の移転の問題を提起をしています。武器輸出輸入の問題、これを制限していこう、やめていこうという提起をし、結論としては、全面軍縮の達成こそ必要だということを主張しているわけです。全面軍縮というのは何かと言えば、完全な非武装状態ということですね。そして、そのかわりに国連の何らかの形の安全保障システムでやっていこう、こういうことだろうと思うのです。  いまのお話、いまの演説、これもなかなか評判のよかった演説であります。この全面軍縮の達成ということこそ、日本の憲法が目標としている、あるいは理想としている、そしてまた、全面軍縮というものはわが国外交の方向性を指し示しているものだというよう考えていいと思うのですけれども、いかがでしょうか。このいまの園田さんの演説を含めてお答えをいただきたいと思います。
  95. 伊東正義

    伊東国務大臣 園田外相の演説というのは、恐らく軍縮の特別総会の演説だと思います。憲法の前文を引かれ、九条を引かれ、三原則から完全軍縮ということまで言われ、非常に格調高い演説だと私もいま思います。  しかし、完全軍縮というのは理想であって、どこにあるか、はるかかなたかどうかそれはわかりませんが、理想の問題であって、そういう理想に人類全部ができれば向かっていくということは、私もそれは否定はしない。そういう時代があったら本当に争いというものがなくなるわけですから、あるいは場合によっては国家の存在なんというものも変わってくるかもしれないというようなことでございますから、遠い理想としては私はわかるわけでございます。  ただ、現実の問題としていろいろ考えた場合に、軍縮の問題でもみな各国の安全保障ということを前提にして軍縮を考えていると思うのです。そんな安全保障考えないで軍縮を考えている国はないんだろうと思うわけでございますから、その国その国の安全保障という範囲の中で軍縮を考えていく。しかし、その基本は、いま先生のおっしゃいました憲法の前文でありあるいは九条であり、それから非核三原則が出ている、あるいは武器の輸出禁止の三原則も出ているというようなことは、私はそのとおりだろうというふうに思うわけでございます。
  96. 横路孝弘

    ○横路委員 軍縮の問題、これは後で少し時間をかけて議論しますが、ちょっとわれわれが考えている以上に、国連の軍縮討議というのはいろいろな分野について行われているんですね。その努力というものが具体的に成果を上げているかと言えば、それは微々たる成果でしかないかもしれませんが、ほぼ全般的な問題について議論をして、やはり目標は全面軍縮だということなんです。  これは一九六〇年の初め、米ソでマクロイ、ゾーリンという両国連代表によって、米ソの軍縮についての共同声明というのが出ているんですね。これは一九六〇年です。ちょうど当時の平和共存を背景としたものだと思いますが、これは米ソの共同声明ですよ。米ソの合意でもって、中身は何かと言ったら、完全軍縮達成のプログラムの幾つかの原則を決めているわけなんです。だから、それはずっと遠い先の将来だと言っていま現実から目をそらすのではなくて、現実を踏まえた上で到達する目標はやはり全面軍縮なんだ、これは国際社会の中でも国連軍縮総会のいわゆる採択された最終文書の中でも、その方向性というものは明確に出しているわけですね。だから私は、国会の中のたとえば安全保障の議論にしても、ともかく憲法というのはわが国基本的な体制を決めているわけですから、これは憲法九条、前文というものをながめれば、全面軍縮というものがこの憲法の目指すところであることははっきりしているわけです。ただ、現実の社会があって、この社会の中で一定のバランスがあって、今日の国と国との関係が現実のものとして存在しているとするならば、あとはそこから先に向かってどうやっていくかという問題になるわけですね。その方法はいろいろ主張があると思いますよ。それは一方的軍縮だという議論や主張もあるわけです。イギリス労働党が今度核についての一方的軍縮という方針を決めましたけれどもね。あるいはバランスをとりながら軍縮していこう、これが大体大勢だろうと思うのです。そうすると、それに向けてわが国が具体的にやろうとすればやれる問題はたくさんあるわけで、それをきょうは少し議論したいと思うのですが、方向としては、つまり日本の憲法が目指している方向性というものと国連憲章並びに軍縮総会の決議というものは全く一致している。やはりわれわれ人類社会の将来的展望としては全面軍縮なんだということでは、みんな国連憲章も日本国憲法も現実の国連における軍縮総会の決議もその方向では一致しているのではありませんか。私はそう考えるのですが、いかがでしょう。
  97. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど申し上げましたように、理想として、完全軍縮というのは人間の理想だと思います。それは私も否定しません。
  98. 横路孝弘

    ○横路委員 それで最後にちょっと確認をしておきますが、私は、ことしIPUの秋の総会が東ベルリンでありまして、そこで多分セネガルの代表だったと思うのですが、日本の憲法の平和主義、前文、九条そのほかを含めて、たとえば武器の問題などについて、先進国の中でたとえば武器を輸出していない国は日本だけだ、それは日本のそういう精神に基づいているというような演説を聞いて、かなり国際連合の社会の中にも、さっき言った平和主義をもう一歩進めて、わが国がとっている非核三原則あるいはわが国がとっている武器輸出三原則といいますか、先進工業国の中で武器を輸出していない唯一の国だということ、こういうようなことも含めて、わが国の憲法というものは国際社会の中で定着しているのではないかという感じを受けるわけですけれども、皆さん方の演説を聞いていますと、前文、九条の紹介、非核三原則それからこの武器の問題というのは、繰り返し繰り返し、いままで軍縮のジュネーブの会議や国連の中で主張されているわけです。私はそういう全体的なものもすでに定着している、国際社会の中でわが国の立場は理解されているというよう考えますが、いかがでしょうか。
  99. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほど国連において大方の国が理解をしている、評価しているということを申し上げたのでございまして、中には別な議論もあることは確かでございますが、いままでの三十五年という日本の歩みはいまおっしゃった平和主義でやってきたんだ、そういう国なんだということが大方の国に理解をされているということは間違いございません。
  100. 横路孝弘

    ○横路委員 アメリカの議会の公聴会などの記録をちょっと拝見させていただきますと、きょうもちょっと午前中議論のありました、たとえば中東石油地帯の安全のために、西欧、日本米国が混成軍をつくるという可能性なんというのが公聴会の中で議論されているわけです。そうすると、それはどうかというような質問に対して、アメリカの行政当局者が、それはだめだ、日本には憲法があるからだめなのですという説明をしているわけです。だから、むしろ私は、日本の国会の中よりも、アメリカの行政当局者の方が日本の憲法の理解はあるのじゃないかというように、こんな記録を見て思うわけです。  日本の憲法がアメリカのいわば日本に対する軍事拡大要請の一定の歯どめに今日までなってきたということも、これは現実だと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  101. 伊東正義

    伊東国務大臣 ことしカーター大統領に大平総理が会ったとき、いろいろ防衛の話が出たわけでございますが、その前提にも「日本にいろいろな制約があることはよく知っているが」というようなことを大統領が言っているわけでございます。制約ということは、先生がいま言われたようなことが制約だということを向こうもやはり知っておるということだと思います。そう言いながらいろいろな話が出ているというのが現実だというわけでございます。
  102. 横路孝弘

    ○横路委員 それで、最近の核武装論ですね、こんなものにやはりヨーロッパあたりでも関心があるのですね。一体自主憲法、核武装論なんというものが本当に国民の中でどの程度支持されているのかという質問を私たち受けることがあるわけです。いま園田さんの発言によれば、憲法というのは国民の中に定着をしておって、将来にわたってわが国がこれに反するよう行動をとることは断じてないのだ、という発言をしてきているわけですね。  そこで、今日の自主憲法論から核武装論まで含めた議論というものは、これまでの外交によって築かれた日本の対外イメージというものを失うことになりはしないかという心配を私はするわけです。それは東南アジアの受けとめ方の中にも、ある雑誌によると、日本はいまや過去の防衛政策の基礎をなした心地よいフィクションを捨て去ろうとしている、「日本刀を研ぐ」なんという見出しがついた記事が出たり、軍事力増強した日本に、東南アジアは見えざる日本の野心について疑い深くなるだろうといったようなコメントというのがずいぶん出てくるわけです。  現に、先ほどちょっと引用しましたアメリカ上院の外交委員会の中でもこういう見方を紹介して、こうなっては困るという意思表示があるわけです。日本が近代的な工業生産力をより多く軍事面に振り向ける可能性はある、軍事面で自立しようとする見方も一部出ている、日本自衛力の強化から一歩踏み出して攻撃的戦力を保持しようとする可能性もある、仮に日本が通常兵器の分野で攻撃的能力を保持することになれば、同時にこれが核兵器の保有につながる可能性もないわけではない、もし日本が軍事の大幅増強に踏み切れば、そんな意味で周辺諸国間に脅威を与え安定を崩すだろう、特に海軍の大幅な強化はソビエトにとっても脅威ととられると同時に、中国も警戒を深めるだろうというよう意見というものが、いろいろな前提なり何なりございますが、出てきているということ全体を見て、やはりいままで築いてきた対外的なイメージと基本的な方針というものは変わらぬようにわれわれは努力していかなければいけないのじゃないか。それは国内で憲法改正を議論するのも自由と言えば自由ですけれども、やはり国際的な影響というものを私たち考えなければならないのじゃないかというように私は思うのですが、外務大臣、対外的なイメージを損なうのじゃないか、あるいは築き上げてきたものを失うのじゃないかというような心配についてはどうお考えでしょうか。
  103. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの憲法改正論を言うことが、いままで築いてきた日本の平和主義の姿を損なうじゃないかということを心配するということをおっしゃったのでございますが、私、憲法改正論の内容は一々聞いておりませんから、人によっていろいろ意見があるだろうと私は思います。  私自身は改憲論をとらぬものですから、余りよく一人一人の言っておられることを吟味して聞いているわけではないのですが、いま憲法改正論を議論すること自体によって、日本の姿勢、いままでの平和主義の姿勢を変えるじゃないかという心配が起きないかという先生の御質問でございますが、私が外国を歩いた限りは、あなたのところはいま憲法改正論が出ているのじゃないか、何かこうするのじゃないかということを、東南アジアとかアメリカを回って聞いたことはございません。ですから、絶対にないとは言いませんが、そこまでまだ憲法論が具体的に内容になっていないわけでございますから、私はそういう心配はいまはないのじゃないか、こう思います。私の歩いた範囲ではそうでございます。
  104. 横路孝弘

    ○横路委員 私が言っているのは一般的憲法改正論じゃなくて、核武装論を含めたいわゆる自主的軍事体制の強化といったような議論がやはり影響をしているのじゃないかというように私は思うのです。  そこで、そういういままでの日本の戦後の外交基本を踏まえて、外務省の方針は一体どうなのかという心配が若干あるものですから、お尋ねしたいと思うのです。  外交青書を五十二年から五十三年、五十四年、五十五年と見てみますと、五十二年、五十三年までは憲法の紹介をこの中にしているんですね。「わが外交基本課題」というところで憲法を紹介し、特に軍縮の必要性というのがそこで強調されているわけです。五十四年の外交青書からは憲法が落ちまして、まだ軍縮は入っているのですが、五十五年の外交青書になると憲法も軍縮も落ちてしまうわけですね。これはかなり意図的にやられたことなのか、偶然こうなったのか。多分書き手の意識とか頭の中にはいろいろな点があったのじゃないかと思いますが、外務省は従来のこの基本的な姿勢をここで大きく転換したのか、そうじゃなくて、従来からの基本的な姿勢、つまり憲法に基づく平和外交、いままで国連で皆さんが主張してきた点、さらにそれに基づいて軍縮がやはり大きな課題なのだという点、こういう点はどうなんですか、私は変えるべきじゃないというように思うのですが、いかがですか。
  105. 伊東正義

    伊東国務大臣 詳細は、あるいは私の言ったことに補足することがありましたら政府委員から申し上げますが、私はいままでの外交方針は変える必要はないというふうに思っております。ただ去年の秋というか冬から、イランの問題とか、アフガニスタンに対するソ連軍事介入があったという国際的な環境の変化はございました。それに応じて若干世界の平和を守るためにやりましたことはございますが、基本的にはいままでの外交方針と私は変わってない、また変えるべきじゃないというふうに考えます。
  106. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、外交青書と、それから外務省がことしの夏でしたか、研究の結果と称して発表した「八〇年代の安全保障について」というものがありますね。あの中について少しお尋ねしたいのですが、あの認識なんですが、西側の一員ということを大変強調されているのがあの特徴だと思うのです。問題はその西側の一員として何をやるかということですね。  私、読んでみると、要するにグローバルな軍事バランスという点が大変強調されているわけです。そのグローバルな軍事バランスというのは、結局米ソを中心とした戦後の軍事戦略そのものなわけですね。いままで日本は、そういう観点から西側の一員として行動したということは多分なかったのじゃないかと思うのです。つまり、グローバルな軍事バランスという中で西側陣営の一員として位置づける、そしてその責任を果たしていくのだということは、これは軍事的な責任分担も行おうということなんですか。私はもちろんそうじゃないと思うのですけれども、そこはどうお考えになりましょうか。
  107. 伊東正義

    伊東国務大臣 こういうふうに考えていただけばいいのじゃないかと思うのです。基本的には東西の、東西というのはソ連アメリカが中軸になった東西関係の枠組みというものが基本にあることは、これは私はずっと間違いない事実だと思うわけでございます。そういう枠組みの中にあって、日本は西側の、いわゆる自由主義陣営の一員としてできることをやっていくんだ、そのできることとは何だと言えば、憲法とかその他の法律、あるいは非核三原則でございますとか、武器の輸出禁止の三原則でございますとか、いろいろあるわけでございます。そういうものの範囲内でできることで、西側の自由主義陣営の一人としてやっていくというふうにお考えを願うべきで、軍事力でどういう機能を果たすということではないと私は思うのです。  例を挙げれば、たとえばトルコでございますとか、パキスタンとか、タイとか、そういうところに相当の経済援助をしたということは、西側として、そういう地域がいま軍事介入のそばで非常な負担をもって難民の世話をしている問題でございますとか、そういうことがある。そういうところに経済援助をするとかいうような、一つの例でございますが、そういうことで西側の一員として働いていくという意味で、軍事的なバランス論の中で、軍事力で協力していくということでは、憲法の許された外に飛び出すというようなことになってはいかぬわけでございますので、先ほど言った専守防衛という中で日本防衛力は充実していくというようなことを考えていくということだと思うわけでございます。
  108. 横路孝弘

    ○横路委員 ただ、外交青書、防衛白書、それから外務省の中の検討というものをずっと読んでみますと、やはりグローバルな軍事バランスという点が大変強調されて、その軍事バランスの中における西側の責任ということを言っているわけですね。そして、NATOとともに、グローバルな観点から自衛力増強を図る必要性というものが何か言われてきているように私は受けとめているんです。  そこで、ちょっとこれは防衛庁の方にお尋ねしたいのですが、問題は、ずっとこの間議論されている基盤防衛力構想ですね。この基盤防衛力構想について、防衛白書の五十二年度版を見ると、基盤防衛力構想では脅威の量だけを考え防衛力の量を算定するのじゃないんだということを明確にしているわけですね。どうも防衛庁長官の答弁はその辺のところがあいまいで、行ったり来たりしているように私は思うのです。「限定的かつ小規模な侵略」に対応するんだ、こういうことを原則にしているわけです。この原則は変わってないんでしょう。
  109. 大村襄治

    大村国務大臣 私どもは「防衛計画大綱」の線に従って防衛力の充実に努めているところでございますので、ただいまお尋ねの点は変わってないと考えております。
  110. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、グローバルな観点からソビエトの脅威を出し、潜在的脅威が強化されたから、その脅威を念頭に置いて対応することを考えているという今度の予算委員会の答弁というのは、いま皆さんがとっておられる方針からいうと必ずしも正確ではないですね。
  111. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの「防衛計画大綱」の文章を引用されまして、脅威の量のみに云々という点を言われたわけでございますが、量だけではなくて、まとまったすきのない防衛力をやっていくというのが大綱のあれでございます。  私が申し上げておりますのは、最近の極東におけるソ連軍の増強潜在的脅威と受けとめ、これを念頭に置いて防衛力の充実に至っておるわけでございますと申し上げておるわけでございまして、量のみを念頭に置くものではないということでございますが、量を無視するということでもないのが防衛大綱考え方であるというふうに理解いたしておるわけでございます。
  112. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、日本の場合は侵略対応というものを一応想定して、それは「限定的かつ小規模な浸略」なんだというように、こちらの対応も一応区切ってというか限ってというか、そして防衛力整備をしていこうということなんでしょう。そうですね。そうするとそれは、脅威の量がふえたからその量に対応するというものじゃないはずなんです。  皆さんの方は、この五十二年度防衛白書の中で、前提となる国際情勢についても、基本となるポイントについて挙げておられるのですよ。たとえば、安保体制が有効に維持されているだろうか、米ソ両国は核戦争またはそれに発展するおそれのある大規模な武力紛争を回避しようとするであろうということが一体どうなったか、中ソ関係がどうなったか、米中関係がどうなったか、朝鮮半島はどうだろうかということなんですね。この情勢そのものは特に何も変わっている状況というものはないわけでしょう、皆さん方がここで決めるに当たって認識したこの国際情勢というのは。  いま私が言った五つの点において、皆さん方は一定の判断をされて、想定をされて、その想定に対処しようということで整備をやっている、こういう理屈になっているわけですね。そうすると、皆さんの方でいままで指摘された、たとえばベトナムをソビエト軍が使うようになったとか、SS20だとかバックファイアだとかいうものは、この情勢の変化にはならないでしょう。この情勢の変化ですよ、つまり防衛白書の五十二年度防衛白書で言っている情勢変化にはならないでしょう。どうですか、長官基本的な問題ですから長官に……。
  113. 大村襄治

    大村国務大臣 政府委員にお答えさせます。
  114. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 「防衛計画大綱」の設定された当時に、解説といたしましてそういう趣旨の文書が付属されたことはございます。ただ現在はその文書は付属されておらないのでございます。閣議で採択されました文書は「防衛計画大綱」だけでございます。
  115. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、そういう形式的なことじゃなくて、あなたはともかく、「日本防衛」と印刷した中に情勢分析として「分析の視点」を書かれている。私はなかなかこの視点は視点として正しいものだと思うのですよ。だから私が聞いているのは、ともかくこの視点で見る限りは、情勢は変わっていないでしょうということで、この視点から分析すればの話です。
  116. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 その付属文書でございますけれども、たしか「例えば」として例示的にその項目を挙げてあると存じております。そして、その後の事態の変化は、その中の例示に予想されていない事態の変化でございます。
  117. 横路孝弘

    ○横路委員 その例示というのはどういう意味なのか知りませんが、要するに「日本防衛」という、この防衛白書の中にそのことはちゃんとあなた本文に書かれているのですよ。何も例示としてやられているわけじゃ決してないわけです。これは私の持っているのは、そこからコピーして別に抜き出しているだけで、このままのことがこの文章の中にありますから、念のために言っておきます。  それで、もう一つちょっと指摘しておきたいと思うのですが、たとえば七〇年の最初白書のときに、武力紛争の要因をずっと挙げていますね。戦争というのは抑止力が弱いから起きるのかと言えば必ずしもそうじゃない、やはり戦争の要因なり、紛争の原因があるから、という答えの方がむしろ正確だろうと思うのです。その武力紛争の要因として、民族主義であるとか幾つか挙げているわけです。そして、このときの結論は、直接侵略の危険性よりはむしろ間接侵略の危険性の方が高いという、あの結論になっていたんじゃないかと思うのです。核戦争の問題を提起して、それからたしか分析の三番目ぐらいにそれが入っておったんじゃないかというように思うのです。これだってそんなにいま変わっていないでしょう。つまり武力紛争の要因というものはここに挙げているようなものじゃないのですか。
  118. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 ただいま御引用されました例示でございますけれども、恐らく同じ文章と思いますが、明らかに「例えば次のような諸点」という例示になっております。ですから、これがすべてというわけでもなく、これが動けばどうということでもございません。  それから、いまおっしゃいました、確かに全体といたしまして大規模な全面衝突は起こりにくくなっている、ただ局地的紛争は抑止されていない、そういう趣旨が書いてございますけれども、これは、いずれにいたしましても、必ず起こらないとか、片方のみ起こる、そういう性質のものではございません。全体としてバランスをとって国際情勢説明したものでございます。
  119. 横路孝弘

    ○横路委員 それはもちろんあなた、仮定と想定をやれば幾らでもできるわけで、それに全部対処しようなんということでは、とてもじゃないけれどもできる話じゃないから、だから認識を限定し、想定も限定してやっているわけでしょう。防衛白書にしても外交青書にしても、それは周囲の状況は変わりますよ、変わるけれども、方針が余りくるくる変わるようでは困るわけです。基本認識そのものはやはり変わってないなら変わってないということで、それは記述しているかしてないかという点はありますよ、あるけれども、物の考え方そのものは変わってないわけでしょう。  たとえば武力紛争の要因なら要因というのは何か、そうすると、日本を取り巻く状況の中で直接侵略、間接侵略といえば、ここでは直接侵略よりは間接侵略の危険性の方が大きいという分析をしているわけですね。たとえばアフガニスタンの問題だって、アフガンにああいう政権ができたということがやはり一つの侵略を誘因しているわけですね。だからある意味で言うと、ここの分析がそれに該当するのかもしれません。だから、ことしの外交青書も防衛白書もその辺のところが何か一遍に、従来ずっと認識として積み重ねてきたものが大きく飛躍してしまって、これはいままでのものをみんな整理したのか、外務大臣は整理してない、方針を変えてないとおっしゃるからそれでよろしいが、防衛庁の方はこれはどうなんですか。整理してないのでしょう。やはり従来の方針の延長にあるのでしょう。
  120. 大村襄治

    大村国務大臣 ことしの防衛白書でございますが、とれまでと比較してみますと、国際情勢分析では中東の問題につきまして新たな章を設けたという点が特色でございますが、いろいろな変化はございましょうが、大筋においてはそう変わってないものと私は考えております。
  121. 横路孝弘

    ○横路委員 外務省、NATOとともに、いわばグローバルな観点から日本自衛力増強しなければいかぬという考え方というのは、やはりとるべき考えじゃないんじゃないですか。ここら辺のところはどうですか。外務省としてはどうお考えになっておりますか。大綱基本的な立場からいうと、それはやはりかなり矛盾してくる。そんな意味では、この間の議論は外務省はちょっとやはり全体的に火をつけ過ぎた、外務省少しやり過ぎたのじゃないかという気が私はするのですがね。
  122. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほどから青書の御質問でございますが、憲法が抜けているんじゃないかとか御批判いただいているのですが、私は楽観主義かもしれませんが、定着しているからもういいじゃないか、こういう考え方で私は理解しております。何も考え方を変えるとかいうことは全然ないわけでございます。  恐らく、いろいろな分析をした中で非軍事的な面、これは外交上の努力、それとバランスをとって、軍事的な抑止の面で防衛の問題を書いておるのだろうと思うわけでございます。  その中の分析で、アメリカの力というものが、先ほど基本的な枠組みは、米ソという二つを頂点とした東西の枠組みという基本は変わっておらぬ、こういうことを申し上げたのでございますが、アメリカの力というものが前よりは落ちておるという認識の上に立って、そして米ソという枠組みを考える場合には、自由主義陣営の国々がある程度の責任分担をすべきであるということが考え基本にあって、そして日本は専守防衛で自分を守るということであるが、アメリカの力が前よりは落ちているということを前提にして、日本としてはある程度防衛力増強を図っていかなければならぬということを書いたと私は思うわけでございます。NATOのことを書いたとすれば、それは西側の陣営の有力なヨーロッパの国々がやはりアメリカの力の落ちたことをある程度補わなければならぬということを書いたのだろうと思いまして、これは何も軍事力によってどうしようという考えは毛頭ないわけでございます。  基本的には米ソの枠組みというその上に立っての議論でございますが、日本外交方針としては、先ほどから申し上げますように、軍事大国にならぬ、平和外交で何としてもやっていくんだという基本的な考え方は全然変えておりません。
  123. 横路孝弘

    ○横路委員 アメリカからの日本に対する要請なんですが、日本軍事力をどういうぐあいに考えているのですか。アメリカのあれを見ると、やはり補完勢力というような位置づけなんですかね。これは最近、たとえばF15とかP3CとかE2Cというのを見ると、どうもそういう位置づけがかなり強くなってきているのじゃないか。そこはどうですか。
  124. 塩田章

    塩田政府委員 アメリカから見て、日本防衛力アメリカの補完勢力というふうに考えておるとはちょっと考えられないわけでございます。われわれの方が、日本が侵略を受けた場合に、先ほど先生もおっしゃいました「限定的かつ小規模の侵略」に対しては自分で排除するけれども、それ以上はアメリカとの共同によって排除するということを言っておるわけでございまして、アメリカの方から見て日本を補完的に見ておるということではないと思います。
  125. 横路孝弘

    ○横路委員 きょうはこれから後ちょっと軍縮の議論をするので、そこの議論をする時間がないのですが、たとえば三海峡閉鎖とか対潜哨戒能力を高めるということが日本の安全にとってどういう意味を持つのかということは、考えていくとこれはなかなかむずかしい問題なんですね。しかしこれは、たとえばアメリカの対ソ戦略の中で考えるとわりと簡単に位置づけられる問題なわけです。いまの御答弁だと、つまりアメリカの側はそう考えていないということでしたが、その辺はこの次に議論したいと思うのですけれども、西側の一員ということで、憲法上の歯どめを乗り越えて、軍事的にも米国やNATOと運命共同体的な関係にのめり込んでいくのではないかということが大きな心配なわけです。ひとつそんなことにならぬようにしていかなければいかぬと思うのですが。  それから対外経済政策研究グループ、大平さんの例の政策研究会ですか、総合安全保障研究グループとか幾つかのグループがあって、報告書が出ていますね。その報告書の中に「対外経済政策研究グループ報告書」というのがあるのです。その中を見ますと「国際協力にあたっては、直接的な軍事協力は早急に拡大せず、軍事以外の経済・外交・文化・科学・技術等の協調面で、他国よりも積極的な貢献を行う。」そうして「われわれは、GNPに対する軍事支出の比率を現在以上高めるよりは、援助増大・技術協力・市場開放・その他平和的手段で貢献出来る分野に、日本は格段の努力をそそぐべきだ」ということが、たしか大平さんがあれされたグループの一つだと思うのですが、そういう結論なわけです。  私は、繰り返しの議論になって恐縮なんですが、西側の一員ということで軍事的な運命共同体ということではなくて、いままさに研究グループが指摘しているような観点に立った努力が必要だと思いますが、いかがでございますか。
  126. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまお読みになりましたのは、亡くなりました大平総理が九つの研究会をつくりまして、いろいろな方に集まってもらって勉強されたものの一つでございます。  その中でも、安全保障の方では、GNPの一%ではなくてもう少し、侮られない防衛力整備するには一%以上にすべきだという議論を出されたところもあり、いま先生のおっしゃったような議論を出されたところもあるわけで、考え方はいろいろでございますが、私どもとしては、日本が紛争、戦争に巻き込まれるというようなことは絶対に避けるということで、平和外交努力をするわけでございますので、それは今後も国の大方針として、平和外交を貫いていくということをやってまいります。
  127. 横路孝弘

    ○横路委員 軍縮の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  軍縮管理と軍縮という問題は、わが国ような平和憲法を持っている立場から言えば、他の国以上に重要な安全保障政策の一環をなすものだと私、思います。  軍縮の議論というのは従来日本の国内で十二分に行われていたかどうか、私たち自身振り返ってみても、国際連合におけるいろいろな議論に比べてきわめて不十分だったのではないだろうかと思うのです。先ほどお話ししたように、バランスをとりながら軍縮を進めるか、一方的軍縮をするか、その中もいろいろございますけれども、これから若干の時間、国際連合における軍縮がどういうぐあいに議論されてきているのかということと、あわせてヨーロッパの軍縮のシステム、そして日本を中心とするアジアのシステムをどうやってつくっていったらいいのかというような点について議論をしたいと思います。  軍縮が重要な安全保障政策の一環をなすものだ、特にわが国の場合そうだという点についてはどのようにお考えになっていますか。
  128. 伊東正義

    伊東国務大臣 軍縮の問題は、日本の憲法の前文あるいは九条というような精神からしていけば、これが軍縮を支える哲学だと私は見ております。でございますので、日本としましては、この軍縮の問題には、先ほど園田大臣の演説を引いて御質問がありましたが、その態度はまさに日本の態度だろうと思うわけでございます。  ただ、現実の問題として、軍縮というのは軍縮だけが歩けるというものじゃなくて、その国々の安全保障、どうやったら安全保障が保たれるのだろうということの中の軍縮として私は考えていかれるのが現実の問題だと思いますし、先ほど先生がおっしゃったバランスというようなことを考えながら軍縮を考えていくのが現実の取り組み方だと思っております。
  129. 横路孝弘

    ○横路委員 しかし、現実は軍備拡大は大変なものですね。先ごろアメリカの軍縮局の報告を見ると、ことしはどうも五千億ドルを超えるのじゃないか。百兆円以上ということになりますね。核兵器は五万個を超えて、広島型はストックホルムの平和研究所の発表だと百三十万発以上じゃないか、アメリカで百万発以上破壊力を持っていると言われているわけですし、ある雑誌によると、核戦争の勃発の危険性が強まっている、核戦争が始まるのが午前零時とすれば、一九八〇年から八四年の前半は大体七分ぐらい前で、これはどういう根拠なのかわかりませんが、八五年から九〇年は五分前ぐらいなんです。九〇年代になるとそれが一分前になるというような話で、話を聞いているうちは笑って聞けるわけですが、これが現実のものになったら大変なわけです。そして今日、軍事支出の拡大は一体安全保障の度合いを高めているのかというと、どうもそうじゃないわけですね。  そこで、今日の軍拡と核のオーバーキルの状態をどんなぐあいに受けとめておられるのか、外務大臣いかがですか。
  130. 伊東正義

    伊東国務大臣 核軍縮というのが軍縮の一番大きな柱になることは、私どもそういう考えでおるわけでございまして、スイスの軍縮委員会等でも常に日本はそのことを主張している。で、まだできないのでございますが、包括的な核実験の禁止、地下はいまできるということで禁止されておらぬわけでございますが、こういうものを禁止していく。あるいは核兵器の拡散防止条約に入っておりますので、核兵器保有国に対して核軍縮はどうしても必要だということを日本としては主張するとか、あらゆる機会をとらえていま主張をしているところでございますが、私はまず、包括的な核実験の禁止ということがなるべく早く実現していくというようなことで、一歩一歩、検証の段階というのは非常にむずかしいのでなかなか合意が得られないのでございますが、どうやって検証するか、おれのところだけやってもだめじゃないかということが常に前提になりますので、むずかしい問題がありますが、そうしたものから一つ一つ実現していくということで、いま主張し努力をしているところでございます。
  131. 横路孝弘

    ○横路委員 軍縮といいますか、実質的には残念ながら軍縮よりは軍備管理というよう状況でしかないわけですが、核軍縮に最優先が与えられているわけですね。  そこで、若干概要をつかむために個別の問題について少しお尋ねしたいのですが、戦略核の問題があって、これは米ソでSALTIIの問題、それから核不拡散、NPT体制と言われるものが一つあって、これはジュネーブで再検討会議がこの間開かれたばかりですね。それから、いま御答弁のありました包括的核実験の禁止という問題があるわけですが、この戦略核、SALTIIはアメリカ選挙待ちなんですが、レーガン候補の政策を見ていますと、このSALTは米国の国益にかなっていないという主張をされているようですね。つまり、レーガンにかわった場合、軍縮等を含めてあるいは中国政策を含めて、大分アメリカの政策は変わりそうです。この辺のところはどういうぐあいにお考えですか。
  132. 伊東正義

    伊東国務大臣 この間私、アメリカへ行きましたとき、ブラウン長官に会いまして、SALTIIの批准の問題をいろいろ話したのでございますが、もしもいまの政権が選挙後続けば、何とかしてこの批准に持っていきたいのだということをブラウン長官が言っておりました。私どもも、せっかくですから、なるべく早く批准を希望するわけでございますが、いま先生おっしゃったいろいろな核の問題で、いま始まっておりますのは、米ソで戦域核交渉をスイスでやっておるわけでございまして、そういう努力もされておるわけでございます。  レーガン候補がどう言ったという問題でございますが、これはまだ公の大統領ではありませんので、台湾の問題とかいろんなことを言っておられるようでございますが、私、副大統領候補と言われるブッシュさんにこの間会ったときは、力の平和ということをわりあい強調しておりましたよ。どうもカーター政権はソ連との関係で弱かったんじゃないかという意味のことを言っておりまして、力の平和ということを言っていたことが非常に特徴的だったなという感じがしますが、それとて、公の副大統領の意見ではないわけですから、はっきりあれこれいま言うことはないわけでございます。  私、一番心配しましたのは、日本に対して何か防衛上の問題とかその他でいろいろな意見があるのかということを聞いたのでございますが、それは特にない、いろいろな問題は事前に十分協議してやっていく、いま以上にどうこうするということは日本に対して期待してないというようなことを言いましたのが、私は特徴的な点としていまでも頭に残っておるわけでございますが、レーガン氏がなった場合にどうなるかということにつきましてはまだわからぬことでございますので、いまちょっとここでこれ以上申し上げるのは遠慮させていただきます。
  133. 横路孝弘

    ○横路委員 対外的に公表している政策からいうと、いま言ったように、どうも力の政策がかなり前面に出てきて、軍縮は後退するんじゃないかなという心配をわれわれはしておるわけですが。  もう一つジュネーブの方ですね、この再検討会議、これについて、核防体制は後退したんじゃないかという議論、意見もあるようですけれども外務省の方では、何か出しているものを見たら、わりあいと評価しているようですね。これはどうなんですか、今度のジュネーブの会議については。
  134. 伊東正義

    伊東国務大臣 国連局長がいま来ておりますので、詳細は国連局長から御報告申し上げます。
  135. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 再検討会議の評価でございますが、結果的には最終文書を採択いたしませんで、五年後に第三回のレビュー会議をやるということを合意したにとどまった点は不十分であったという評価もございますが、同時に、核不拡散体制の条約を全くいじらないでこれを存続せしめるという合意が継続いたしておりますることと、それから脱退の国も出ていないということは、基本的に核不拡散体制が堅持されたということでございますので、これは評価すべき点であろうかと思っております。
  136. 横路孝弘

    ○横路委員 その包括的核実験の禁止についてはどうなんですか。わりと八〇年代早くにうまくいくんじゃないかという見通しもあるようですけれども、その可能性はかなりあるのですか。
  137. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 包括核実験の方の交渉は、ジュネーブの軍縮委員会に交渉国から報告書がすでに出ておるわけでございます。ただ、これはあくまで中間の報告書でございまして、交渉が妥結しているという意味ではございません。交渉が妥結いたしました後で軍縮委員会に舞台が移るということでございますので、これについて予測を申し上げますと不正確になるといけませんので、余り大胆なことは申し上げられないと思いまするけれども、相当煮詰まってきておるものと理解しております。
  138. 横路孝弘

    ○横路委員 いずれにしても核の状態というのは、偶発戦争の危険性だって、事故がたびたび起きているところを見るとあるわけです。  そこで、アメリカの最近の核戦略、大統領指令五十九号ということについてちょっとお尋ねしたいのですが、対ソ限定核戦争の新ドクトリンだと言われているのですが、マクナマラ時代の確証破壊、それからニクソン政権下の十分性戦略、シュレジンジャーになってからの目標原則の修正、ブラウン長官の相殺戦略、こういうようなずっとアメリカの核戦略の変化の中で、今度の大統領指令五十九号というのはどういうぐあいに位置づけられるのか、日本としてどう見ているのか。
  139. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 PD五十九号の内容というのは全体としてはまだ秘密になっておりますのですけれども、八月二十日ごろの大統領及びブラウン長官のスピーチによりまして、おおよその内容は明らかになっています。  その要点は、いわゆる確証破壊戦略というようなものがございまして、これは相互に壊滅的な打撃を与えるということでもって、核のいわゆる手詰まり、核抑止が成立していたという事態に対しまして、最近ソ連のICBMの命中精度が非常に高くなってまいりまして、それ以外の戦略もあり得るという情勢認識の上に立ちまして、また他方、SS20などの戦域核がヨーロッパに非常に大量に配備されまして、いまなお続けて配備されておる、そういうすべての情報を踏まえまして、従来のように確証破壊に重点を置くということではなしに、あらゆる形における、あらゆる水準における核戦略、それに対応できるような能力を備えておく、それが新しいアメリカの核戦略、いわゆる相殺戦略の主な内容であると思っております。
  140. 横路孝弘

    ○横路委員 そうするとどうなんですか、従来の、従来のと言っても、確証破壊からずっと変わってきた、シュレジンジャー、ブラウン長官の相殺戦略ということの中で位置づけられる、いろいろな新聞なんかの解説によると、限定核戦争の可能性がむしろ高まった、強まったという議論がありますね。それのところはどうなんですか。
  141. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 アメリカの戦略というものはずっと経緯がございまして、ダレスの大量破壊からマクナマラの柔軟反応戦略、それにまたマクナマラがつくりました確証破壊戦略、その後にあるいはカウンターフォースであるとかターゲッティングであるとか、現在はカウンターベーリング、つまり相殺戦略というところまで来ているのでございますが、これはある意味では戦略論、大きな流れを反映している面もあるのでございますけれども、ある意味では一種のそのときどきの政権のスローガン、と申し上げたら言い過ぎでございますけれども、一つの政策の呼び名でございます。実際は、いついかなる段階におきましても、アメリカは大体あらゆるレベルにおける核戦力というものをいつも保持し、そのすべてにおいてなるべくソ連に負けをとらないようにしてきたということは事実でございます。  ただ、今回は、ソ連のICBMの命中精度が非常に強くなってきたということと、それからSS20の配備ということが一つの理由となりまして、やはりこれはあらゆるレベルのものを持たなければならないという面に重点が置かれているわけでございます。限定核戦争の可能性がふえた、あるいは新聞によりますとアメリカによる核の最初使用可能性がふえたということが書いてございますけれどもアメリカは、どういう場合には核を使用しないとかあるいは最初に核を使用しないとかいうことは、従来決して言わないことになっております。というのは、これは使うという意味ではございませんで、むしろどんな場合にも使うかもしれないということ自体が抑止力になっている、そういう基本的な考え方でございます。別に、今回の相殺戦略そのものが限定核戦争の危険を高めたという性質のものではございません。
  142. 横路孝弘

    ○横路委員 核抑止力という場合に、報復力が先制攻撃の意図を抑止できるのだというものとして議論されてきたと思うのですが、最近NATOの中でも、米ソの核能力がお互いに相手に対してせん滅的な打撃を与える能力を持っている今日、米国は、もし米国が自分の国のそういうせん滅を覚悟して、欧州のために核の引き金を引くことが一体あるのだろうかという議論がありますね。そこでNATOなどで議論されている、つまり相手が小規模核攻撃といいますか、小規模と言ったって小規模ではないのだけれども、まあ核で来た場合にはそれに対応する核をということで、パーシングIIとか、それから巡航ミサイルというものの配備が決められたということだろうと思うのですが。  そこで法制局来てますね。従来自衛力の範囲の問題として議論されてきておるわけですが、この核兵器についてはどういうぐあいにお考えですか。たとえばパーシングII型とか巡航ミサイルとか、これはもっぱら性能上他国に対するせん滅的破壊ということに従来の解釈で言えば該当して、私はだめだということになると思うのですが、いかがですか。
  143. 味村治

    ○味村政府委員 政府は従来から、自衛のために必要な最小限度の実力は保持することを憲法九条二項が禁じているものではないという解釈をとっているわけでございまして、これは通常兵器でございましょうと核兵器でございましょうと同じであるというように解釈をいたしているわけでございます。  ただ、現在は、いわゆる非核三原則という国是があり、また原子力基本法、核不拡散条約に入っておりますから、一切の核兵器の保有はできないということに相なっているわけでございます。  御質問の巡航ミサイルその他がその自衛のために必要な最小限度の実力の中に入るのかどうかということは、これは非常に技術的な問題でございまして、実は私どもそれについての知識を十分に持ち合わせておりませんので、そのような具体的なことにつきましては防衛庁の方で御答弁をいただきたいと存じます。
  144. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっと防衛庁の方に、これも防衛白書の変遷の中で、保持を禁止されている兵器というのがずっと七〇年以来若干例示されていますね。七〇年白書には長距離爆撃機あるいは攻撃用空母、ICBM。七六年には中距離弾道弾も出てきていますね、IRBMというのが出されてきている。その記述は、七〇年は他国に侵略的な脅威を与えるものはだめだ。七六年になると他国に攻撃的な脅威を与えるものはだめだ。ことしになりますと、いわゆる法制局のいままでの高辻さん以来の答弁の、他国の国土にせん滅的破壊のためにのみ云々というような記述になってきているわけです。まあこれは記述は変わっているけれども、結局変わりはないのでしょう。防衛白書のいままでの記述というのは、どちらかというと歴代防衛庁長官が国会で答弁した表現を用い、それからことしの記述は法制局が従来用いてきた記述を用いたというように私の方は理解をして、従来からの長距離弾道弾ICBM、IRBMあるいは攻撃用空母を含めて、こういうのはやはり保持を禁止されている兵器だというように私の方は解釈をしたいと思うのですが、それでよろしいですか。
  145. 塩田章

    塩田政府委員 御指摘ように従来いろいろな表現をしたことがございますけれども、趣旨は別に変わるわけでございませんで、他国の国土に壊滅的打撃を与えるということしの白書の表現も、特に従前の白書の表現と内容的に変えたつもりで使っておるわけではございません。
  146. 横路孝弘

    ○横路委員 例示もだから従来のものでいいのでしょう。特にときどき落ちたりあらわれたりするのがありますが、それは余り意味がないというよう理解してよろしいですね。
  147. 塩田章

    塩田政府委員 これもいろいろおっしゃいますように、あらわれたり消えたりしておる面がございますが、はっきり疑問なく挙げられる例示として、ICBMとか長距離爆撃機というようなことを言っておるわけでございます。それ以外にも、いまおっしゃいましたようなIRBMとか、そういうものは当然含まれるわけでございます。
  148. 横路孝弘

    ○横路委員 攻撃型空母も、挙げられなかったけれども、これはいままでの白書の中で挙げてありますよ。いいんですね。  その核の抑止力というのも、これもやはり考えていくとよくわからないものの一つなわけです。つまり欧州のようなこういう議論というのはたとえば日本に当てはめた場合どうなるかということを考えれば、一体われわれが期待している核抑止力というのは何かということになるわけですね。欧州の議論をそのまま日本に当てはめればですよ、そうなるでしょう。違いますか。
  149. 塩田章

    塩田政府委員 欧州の場合というのは、例の先ほどからお話しの戦域核のことをおっしゃっておられると思いますが、私どもの場合は、核の抑止力につきましてはアメリカの抑止力にまつということになっておりまして、それ以上別段検討もいたしておりません状況でございます。
  150. 横路孝弘

    ○横路委員 それはもちろん日本の憲法の立場から言えば当然なわけです。ただ、核の抑止力というものに依存するということを突き詰めていろいろ考えていくと、つまり問題がたくさんあって、実は余り当てにできない体制なんだということだと思うのです。そこら辺のところは、核抑止力というものをどう考えるかという、やはり議論として理論的にも詰めていかなければ問題じゃないかというように私は思うのですね。  そこで、国連ではそういう全体的な核軍縮、戦略核、それから核不拡散、核拡散防止の問題ですね、それから包括的核実験の禁止、軍縮の問題という問題と、それから最近非常に大きく議論されておるのが、非核地帯の設置ということとインド洋平和地帯の構想という問題ですね。ちょっとこれについて概略、たとえばラテンアメリカについては条約もでき上がっております。それからあと中東地域、アフリカ、南アについては決議が成立をしておりますね。インド洋平和地帯についてもそうなわけです。概略、この内容日本の立場というものについて御説明をいただきたいと思います。
  151. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えいたします。  非核地帯につきましては、御指摘ように国連でも幾多の決議が通っておるわけでございますが、アジアの各地域の非核地帯の問題につきましては、われわれの考え方は大体三点が充足されます場合に、これは他の地域でも同じでございまするけれども、非核地帯設定の条件が満たされると考えておるわけでございます。  ごく簡単に申し上げまして、核兵器国を含む関係諸国のすべての同意がある、特に当該域内諸国のイニシアチブを基礎とすること、第二に当該地域のみならず、世界全体の平和と安全に悪影響が及ばないこと、査察、検証を含む適切な補助措置を伴うこと、公海における航行の自由を含む国際法の諸原則に合致したものであること、こういった基礎条件が充足される必要があると考えておりまして、北東アジアにおきましては、かかる条件がいまだ整っていないという考え方でございます。  インド洋の平和地帯の問題は、先生も御高承のようにスリランカの発想によるものでございますが、インド洋と申しましてもこの範囲が問題でございまして、これをきわめて広くとります場合には、アメリカのディエゴ・ガルシアの基地であるとか、あるいは南イエメンのソ連の基地であるとか、そういったものを撤去するという問題も出てまいるわけでございまして、そういった意味で、この非軍事化ということに当然米ソ二大国の思惑が絡んでまいるということでございます。そういった見地から、このインド洋の範囲の問題、それから軍事活動をどの程度規制すべきかということをどの程度決めるかという問題がございますので、この点については近くまた会議が行われることになっておりますけれども、非常に早期に妥結する見込みがいまあるかどうかと申し上げますと、この点についてはやや慎重に考えていくべきではないかと考えております。
  152. 横路孝弘

    ○横路委員 その北東アジアのものはまだ質問してないんで、後で聞きますが、日本は要するにこれは全部賛成しているのでしょう。この南アジア、中東、アフリカなどの非核地帯については国連で賛成、インド洋の平和地帯についても賛成ということで、積極的にこれを推し進めていくというのは、これは国会の決議でもありますから、そういう態度だと思うのですが、いかがですか。
  153. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 仰せのとおりでございます。
  154. 横路孝弘

    ○横路委員 それでその核軍縮について、先ほど一番最初に、外務大臣は、日本は平和憲法という哲学を持っているというお話があったのですが、やはり日本の立場というものは、世界の中で特に強く主張し得る憲法とか、非核三原則、あるいはNPTに加盟しているということもそうでしょう、それで、やはり将来的な、核にかわる安全保障が、国際的に受け入れられる何らかの体制というものが考えられなければいけないのではないか。この果てしない核の軍拡というものはどこにたどりつくかということですね。お金をかけて能力が向上しても向上しても、ここでいいという限度がないわけでしょう。結局はいまやっているのはまだ軍備管理、核管理ですね。これを軍縮に本当に向けていくというわれわれの理論と哲学をやはり持たなければいけないと思うのですね。その核抑止ということで、たとえば偶発戦争の危険性が高まっているというような問題だとか、あるいはもうすでに核と言ってもオーバーキルの状態にあって、地上の人類一人当たり、TNT換算で約十五トン、NATOとワルシャワ諸国と合わせた人口の一人当たり六十トンにもなる、あるいはいま南の国からは資源のむだ遣いであるという、つまり資源の立場からの議論などが展開されてきているわけですね。したがって、私は、外務省防衛庁も、軍拡ばかりでなくて、軍縮の目的に向かって理論的な整理などをやるべきであるし、その目標に向かって努力を重ねるべきであると思う。  外務省には軍縮課というのが国連局の中にあるようですが、防衛庁はどうもどこでやっているのか、やっているところがあるのかないのかよくわからぬのですが、いずれにせよ、その安全保障体系の中でやはり軍縮というものは大変大きな意味を持っているのだと思うのです。いかがでしょうか。
  155. 伊東正義

    伊東国務大臣 先ほどから申し上げましたように、軍縮というのは、やはりその国々の安全保障体制の中で軍縮を考えていくというのが、当然現実の問題としては私はそうだと思います。  それで核軍縮につきまして、先生おっしゃったように、日本の立場というのは唯一の被爆国でもあるし、もっと主張してもいいじゃないか、主張すべき立場にあるんじゃないかということをおっしゃったのは、私はそれは強くそのとおりだと思いまして、この間実はインド、パキスタンへ参りましたときも、もうあそこはいろいろ言われているのでございますが、核兵器不拡散条約に入るべきだとガンジー首相にも話し、ハク大統領にも実は私は主張したのでございますが、なかなか、相手が入るのであればというようないろいろなむずかしい問題があるわけでございますが、確かに日本としてはこれは主張できる立場だということはよくわかりますので、機会を見つけまして先生のおっしゃったような面で努力をしてまいります。  また、私の方は国連局に軍縮課というのはあります。あるいはスイスにも代表が行っているわけでございますが、こうした問題について国連の中で、やはりこれは国連が一番その場所だと私は思うのです、国連の場所でもっとこの面にも力を入れてもらう。八二年がまた特別総会の年でございますので、これのために、その前に何とかいまの包括的な核実験禁止とかそういうものが実現しているようにという最善の努力をしてまいるつもりでございます。
  156. 横路孝弘

    ○横路委員 あと国連の中で議論されているのは、通常兵器の移転の制限の問題と軍事費の削減という問題です。特に通常兵器の移転の制限というようなものについては、やはり日本の代表がむしろ率先して言い出して、日本のつまり武器を輸出しないという立場から、武器の輸出国に対する、あるいは輸出、輸入の実態の調査というようなことを含めた主張をしているわけですが、あわせて通常兵器移転の制限の現状と、将来どうかという展望、それから軍事費の削減という問題、これも議論されて、その軍事費については一定の何か標準報告制度というものをつくって、これは何かいま防衛庁の方で報告することになっているのじゃないですか。これは防衛庁の方でお答えいただきたいと思いますが、この二つ、現状と展望について伺いたい。
  157. 伊東正義

    伊東国務大臣 通常兵器の移転の禁止の問題ですが、いま局長から現状を申し上げます。ただ、これは、自国の安全保障という面からいって、非同盟その他からなかなか賛成を得られなくて、現在はなかなか進捗はしてないというのが現状でございますが、いろいろ詳しいことは国連局長から申し上げます。
  158. 大村襄治

    大村国務大臣 国連で軍事予算の報告についていろいろ研究されているようですが、その様子につきましては政府委員から御説明させます。
  159. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えをいたします。  通常兵器の移転の問題でございますが、大臣から御答弁ございましたように、これについては非同盟諸国が相当慎重でございまして、その理由はやはり核軍縮の優先発想でございまして、核軍縮をまずやってほしい、その過程におきまして、通常兵器の国際移転というものについては慎重に対処してほしいという声が強く出ておりますので、わが国の主張もこれにある程度影響されざるを得ないという点がございます。  それから、軍事費の削減の方は、安保理の常任理事国の軍事費削減というようなことから始まってまいりまして、そのためには、公平を期する意味において正確なデータをつかまなければいかぬということになっておりまして、これの把握についての方法論その他においていろいろな議論があるというふうに承知しております。
  160. 塩田章

    塩田政府委員 いまも国連局長の方からちょっと触れましたが、国連におきまして近年、統一的な基準のもとに軍事費というものを公開すべきではないかという機運が出ておりまして、いろいろな研究をされておるというふうに聞いております。  具体的には、一九七八年の総会におきまして、専門家から成りますアドホックパネルができまして、とりあえず軍事費の標準についての報告表の試行を行うという決議が採択されまして、一九七九年九月に事務総長から、全国連加盟国に対しましてこの試行へ参加するようにという勧誘があったわけでありますが、結局十四カ国が参加してその試行が行われたようであります。  いま申し上げました標準費の報告制度につきましては、その本格的な実施という方向に向かって総会が近くしかるべき措置をとる、そうして勧告を行う予定であるというふうに聞いております。
  161. 横路孝弘

    ○横路委員 日本政府の方は、何か防衛庁の方で調べて、数字をはじいて報告することになっているのじゃないのですか。違いますか。
  162. 塩田章

    塩田政府委員 いま申し上げました十四カ国が試行を行ったわけでございますが、日本はこれに参加いたしませんでした。
  163. 横路孝弘

    ○横路委員 外務大臣、それはどういうことなのか。いろいろな制度があり、予算制度というのはそれぞれ国によって違いますから、何を軍事費に含めるかというのはむずかしいことだと思うのですが、いずれにしても、軍事費を削減しようということのために、各国それぞれどれだけ軍事予算を使っているか明らかにしよう、軍事予算の範囲はこういうことだという範囲を決めるために、いろいろいま試行錯誤が行われているわけですね。ぜひ日本もそういう問題には率先してひとつ参加をしていただきたい。防衛庁が何か報告をすることになっているというように私は聞いておりましたけれども、違うのですね。
  164. 塩田章

    塩田政府委員 いま申し上げましたように、試行に参加しなかったものですから、実際にまだ報告を行っておりません。先ほど申し上げましたように、総会で勧告として取り上げられた場合にはこれに参加する方向で検討すべきではないか、こういうふうに思っております。
  165. 横路孝弘

    ○横路委員 ちょっと時間がなくなったのですが、軍縮の問題というのはわれわれが考えているよりもいろいろ議論されてきているわけです。議論ばかりじゃないかという意見もございますが、いずれにしても、軍事費の負担がそれぞれ世界のすべての国にとって大きな負担になってきている。これはソビエトにとってだってそうだろうと思うのですね。  そういういわば軍縮のシステムというのは、たとえばヨーロッパではできているわけです。あれは一九七五年ですか、欧州安全保障協力会議というものができまして、その再検討会議がことし十一月ですかマドリードで行われる。それから、戦域核については米ソの話し合いが、これは西ドイツのシュミット首相が放送したことがきっかけでできている。それから、通常兵器については中部欧州相互兵力軍備削減交渉、MRFAと言っておるのですか、これも行われておりまして、去年NATOの方からソビエト軍三万、アメリカ軍一万三千の削減提案があって、ことしはソビエトの方からソビエト軍二万、米軍一万三千の提案があるわけです。これも一体どのぐらいの軍隊がいるのかということをめぐって議論があるようですが、いずれにしても通常兵力、それから核の問題、それからすべての国が参加して、安全保障そのほか含めて、経済的、文化的な問題を含めて話し合うというシステムがヨーロッパではできているわけです。これはもちろんNATOとワルシャワという形ではっきり対峙しているということもあるのですが、私は日本でも考えれば幾つか考えることはできるのじゃないかというように思うのです。  その一つは、たとえばヘルシンキ宣言の中で信頼醸成措置といいますか、お互いの信頼感、誤解や不信をなくそうということで、たとえばNATOの軍事演習は事前に通告して、ワルシャワの方からも人が見るとかというようないろいろな措置が、この欧州安全保障協力会議の中で行われているわけです。たとえば日本の周辺の軍事行動、偵察だとか訓練だとか演習だとかいうような場合の海空域の制限をするとか、相互に通報するシステムのようなものを考えるということは可能なことじゃないか。一遍にすべてと言わなくても、ひとつまずそういうようなところから何らかの、日本北東アジアの中で軍備を拡大することばかり考えるのではなくて、もうちょっとお互いの信頼関係を強めていく、そしてやはり軍縮の土台をつくっていく努力というものをやるべきじゃないだろうか。そのことの方が、飛行機や艦艇にミサイルを積むことよりも、むしろ海域なり何なりの制限とか、そういう演習だとか、偵察だとか、訓練だとかいうことについて、いまヨーロッパでやっているようなものを取り入れるということも軍縮の第一歩じゃないかというふうに考えますけれども、突然の話かもしれませんが、いかがお考えですか。
  166. 伊東正義

    伊東国務大臣 あるいは防衛庁の方からも補足してもらうかもしれませんが、私から先にお答えいたします。  先生いまおっしゃったように、その地域でそういうことが行われるということは、その地域の国国の信頼感というものがまずなければ、これはそれが土台だろうというふうに私は思うわけでございます。  例として挙げられたワルシャワ機構、NATO機構、前からいろいろな機構があり、それぞれ戦いがあって、終わって、その間に信頼感とかいろいろなものが出てきたヨーロッパの地域と、北東アジアの国々をいま考えてみた場合に、果たしてそういう話し合いができる信頼感の基礎が急にできるかどうかということを考えますと、軍縮の管理といいますか軍備の管理といいますか、そういうことを話し合えるだけの信頼感あるいは環境というものが、まだ基本的な問題が備わっていないのじゃないかというふうに私は思うわけでございまして、先生の御意見もわからぬことじゃない、将来はそうありたいものだと思いますが、まだいまの段階ではこれはなかなか無理だ、国々を頭に浮かべて考えてみましてもそういう気がしますので、将来の問題としてはわかりますが、いまのところはちょっと無理じゃないかなというのが私の考えでございます。
  167. 横路孝弘

    ○横路委員 あと、たとえば朝鮮半島の軍備管理の問題であるとか、それから社会党が提唱している北東アジアの非核地帯の設置とか、これはオーストラリアとニュージーランドの労働党と話をして、それから何か、最近の話によりますと北朝鮮の方とも話をするということになっているわけですが、そういうアジア状況を安定させるための努力というのを、外務省もそれから防衛庁だってやらないといけないと思うのですよ。防衛庁どうですか。
  168. 塩田章

    塩田政府委員 先ほど先生からお話のございました、たとえば演習なんかする場合に、お互いにどこの演習場を使うというような通報をし合うといった問題につきましては、現在国連で信頼性の醸成に関する専門家会議がございまして、防衛庁もこれに出席しております。
  169. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、つまり外務大臣が言うよう可能性がないということではなくて、国連の内部にはいろいろなのがあるわけですから、それをきちんと位置づけるということが大事だと思うのですよ。安全保障政策の中に位置づけて、そして努力をするということが必要ではないかと思うのです。  もう時間になりましたので、最後に、安保課というのはアメリカ局の中にありますね。日米安保というのはアメリカ局ということなのでしょうな。軍縮ということになりますと国連局の中にありますね。そしてヨーロッパの軍縮の話を聞こうと思ったら、西欧一課の話になるわけです。問題は、日本というのはアジアの中のこの地域にあるわけですが、しかし考えてみると、ここではなくて、担当はほかのところにいろいろばらばらにされているという感じがするわけです。しかしながら、軍縮の問題というのは大変重要な問題ですし、各国ともどもアメリカ軍備管理軍縮庁というのがあって二百数十人のメンバーがいるようですね。イギリス、西ドイツ、スウェーデン、それぞれ軍縮担当の人間がしっかりおって二、三十人のスタッフでやっておるようです。日本の場合は、軍縮課になったのがつい最近のことで、人数も大分少ないようですね。  私は最後に、これは外務省の応援演説になるのですが、もうちょっと軍縮の体制をしっかりとるという意味では、人員もきちっとつけるべきではないかと思うのです。外務大臣どうですか。本来、国連の中の一部活動というよりは、軍縮というのはもうちょっと日本にとって大事な位置づけをしてしかるべきだと思うのです。
  170. 伊東正義

    伊東国務大臣 激励のお言葉をいただいてありがとうございました。行政管理庁の長官おられるかなと思って、こう見たわけでございますが。私どもとしましても、確かに外交体制の整備というものはもっともっとやらなければいかぬ、こういうふうに思っておるわけでございますが、その中でいま先生おっしゃった軍縮というような話は、確かにいろいろな取り組み方がどちらかというとおくれているのではないかという考えも私はするわけでございまして、日本がこの問題ともっともっと取り組むように、われわれの中でも工夫しまして、ひとつ一生懸命この問題と取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  171. 横路孝弘

    ○横路委員 それで、行政管理庁来ていただいていますね。来年度の要求も出ているようであります。これに金がかかるというのは、投資効果としても大変高いものがあるのではないか。防衛庁の方の定員を削ってということは言いませんから、予算をともかく来年度に向けて、軍縮の関係、ジュネーブだとか国連だとか、国際会議も大変たくさんございますし、わずかの人間で苦労されておるようでございますから、行政管理庁も、政府の方針もありますが、ひとつ十分考えていただきたいと思います。
  172. 石坂匡身

    ○石坂説明員 軍縮課の定員につきまして配慮をすべきであるという御指摘でございまして、外務省からは、軍縮課の増員を含めまして、かなりの数の増員要求が出てまいっております。私ども、これから年末までかけまして十分外務省と詰めてまいらねばならないと存じておりますが、ただ、何せ財政再建という大きな問題を抱えました中でございますので、そういう事情を十分踏まえながら外務省とよく検討させていただきたいと思います。
  173. 横路孝弘

    ○横路委員 終わります。
  174. 坂田道太

    坂田委員長 市川雄一君。     〔委員長退席、三原委員長代理着席〕
  175. 市川雄一

    ○市川委員 憲法改正問題など防衛論議が非常ににぎやかに行われておりますが、どうも、ずうっと予算委員会等の議論を通して伺っておりまして、非常に財政事情が厳しい。この財政事情の厳しい中で、いまなぜ防衛力増強あるいは防衛費の増額なのかという説明が、非常に説得力を欠いているのではないのか、こういうふうに私は思うのです。  亡くなられた大平首相は、国会の答弁におきまして、いまの財政事情で防衛力増強するとしたら、増税かあるいは福祉予算の削減か公共事業費の削減、この三つのうちどれか一つをとらなければ防衛費の増額はできない、こういうことを言っておりました。もう御承知のことかと思います。  そういう非常に財政事情が一方では厳しいという中で、この自衛隊の問題にしても、安保条約の問題にしても、一国の安全保障という問題、これは国民的な合意というものが私は非常に大事だと思うのです。したがって、これを性急にやろうとしますと、国民が納得しない、よくわからない、こういうことになると思うのです。  そういう立場から、いま防衛庁なり、最近とみに外務省防衛庁以上にときどき防衛力増強に御熱心な発言をなさっているやにお見受けするのですが、率直に、なぜ、いま、財政事情の厳しい中で、国民的なコンセンサスというものを前提に考えて、この九・七%の概算要求における特別枠要求ということにあらわれた防衛費増額なのか、これをまずお答えを防衛庁長官外務大臣、両方からいただきたいと思います。
  176. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  財政事情が厳しいということはよく承知しております。しかしながら、わが国をめぐる最近の国際情勢は、極東ソ連軍の著しい増強等厳しさを増しているところでありますので、防衛庁といたしましては「防衛計画大綱」に定める防衛力水準をなるべく早く達成する必要があると考えまして、そのために必要な経費を要求して、必要最小限度の要求をこの際行っておるというふうに考えている次第でございます。
  177. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまのお話でございますが、日本防衛基本というのは、日米安保体制ということでございます。そして、有事の際には共通の危機に対してアメリカと共同で対処しようということでやっているわけでございますが、そういうことにつきまして、アメリカ側も非常な関心を持ち、期待表明がいろいろあるというのがいまの現状でございます。  日米安保というのが基本の体制でございますので、アメリカ日本といつでも喜んで共通の危機に対処しようというよう考え方を持つという体制を、日本の中でもこれは当然につくっておかなければならぬわけでございます。これは日本自身の問題として日本考えなければならぬ問題でございますが、そういう中で、アメリカの力も前よりは落ちてきたということがございます。あるいはアフガニスタンに対するソ連軍事介入という問題もございます。北方領土に対する軍備の充実という問題もございます。いろいろむずかしい国際環境が出てきているという中で、日本としては安保体制を円滑に運用するにはどうすべきかということで、みずからの問題として防衛の問題を考えていくという必要がどうしてもあるということで、われわれは考えておるわけでございまして、いま先生から、防衛庁よりも前に外務省が熱心だというお話がございましたが、そういうわけじゃないので、一緒に、日本としてどうやったらいまのよう日米安保体制を円滑に運営できるんだということを考えているというのが現状でございます。
  178. 市川雄一

    ○市川委員 もう一つ議論の前提としてお聞きしたいのですが、米ソが非常に軍拡ムードの国際情勢になっていると思うのです。そういう中で、防衛白書ソ連潜在的脅威というものを非常に強調される、あるいはことしの春の国会以来、ソ連脅威というものが非常に前面に出てきているわけです。そういう状況の中で、財政事情は厳しいのだけれども防衛予算だけは九・七%の特別扱いをするのだ、こういうことになりますと、これは国民の側から見ていますと、一体日本はこれからどういう考え防衛力増強していくのか、歯どめがないのか、こういうやはり歯どめに対する、歯どめなき世界の軍拡路線に巻き込まれていくのではないのかという不安を強く持つと思うのです。  そういう立場から、まず防衛力の限界、言ってみれば憲法の枠内での自衛力の範囲あるいは自衛権の範囲ということでございますが、この防衛力の限界ということについて、憲法上あるいは予算面、装備自衛隊の任務規定あるいは国民的コンセンサスが得られる程度という、そういういろいろな側面があると思いますが、基本的に防衛庁並びに外務省はこの問題についてはどういう御見解を持っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  179. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えを申し上げます。  わが国は、現在、昭和五十一年に国防会議及び閣議で決定されました「防衛計画大綱」に基づき、質的向上を主眼として防衛力整備を進めているところでありますが、防衛力整備の実施に当たっては、各年度の防衛関係経費が当面GNPの一%を超えないことをめどとしてこれを行うこととしております。  また、現在進めている防衛力整備は憲法上許される自衛の範囲内でありまして、専守防衛に基づき、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものではないことにつきましては、広範な国民理解をいただいているものと考えております。  いずれにいたしましても、防衛力整備につきましては、国会、内閣等を通じて文民統制が確保されておりますので、軍事大国になるおそれは全くないと考えておるわけでございます。今後とも国民のコンセンサスを得ながら、「防衛計画大綱」に従い、防衛力整備を行ってまいる所存でございます。
  180. 伊東正義

    伊東国務大臣 自衛力の限界の問題でございますが、いま防衛庁長官がおっしゃったように、これは憲法上の問題で自衛力の許す最小必要限度、こういうことになっておるわけでございまして、これはそのときの軍事技術の水準とかあるいは国際情勢とか、いろいろな相対的なものですね、抽象的な表現でございますが。それで、私もこの間アメリカに行きましたときに、上院議員とこの話で大分やり合いをやったのでございますが、防衛というのは先生おっしゃるよう国民的な了解、コンセンサスがなければこれはどうしてもいかぬ、それと自主的に判断する、この二つだけは私は常に言ったのでございますが、いま国民的コンセンサスと言えば、いろいろ数字で出ているのは、五十一年の閣議で大綱を決めるときに、防衛費をGNPの一%にとどむるものとするということを閣議決定したものがございますので、アメリカの上院議員にも、閣議でこういう決定をしている、それが最高と言えばいまの最高でなかろうかということを私は話したのでございます。予算になれば国会で御審議をいただくわけでございますので、必ず国民の皆さんの合意を得てということでこれはやってまいりたいというふうに思っております。
  181. 市川雄一

    ○市川委員 そこで、最初にまず外務大臣にお伺いしたいのですが、いまなぜ防衛力増強かということに対して、御答弁として、一つはアメリカの力が落ちている、こういうことをおっしゃいました。日米安保条約の有効な運営のために、日本としてもアメリカ安保条約を有効に運営するに足る努力をしておかなければならないんだという意味のことをおっしゃっていましたが、これはいまなぜということにはお答えになっていないのじゃないかというふうに思うのですね。というのは、私が申し上げた質問は、ほかの予算は七・五で概算要求を抑えておきながら、防衛予算だけ九・七という特別扱いした理由にはなっていないと思うのですね。  先ほどの御答弁の中で、西側の一員として軍事的な役割り考えてないんだという意味のことをおっしゃっていましたけれども、しかし、結局、そう言いながら、一方では米国の力が落ちたからということはおっしゃっているわけですよ。米国の力が落ちたからということは、やはり東西軍事バランスの中での米国の力が落ちたという意味だろうと思うのですね。東西軍事バランスの中での米国の力が落ちたから、西側の一員として日本はその東西軍事バランスの回復、軍事的な回復のための役割りを果たすんだ、こういうふうになると思うのですが、そういうお考えですか。
  182. 伊東正義

    伊東国務大臣 日本がほかへ出て行ってどうしようなんという考えは全然ないので、日本日本をまず守るだけの、外国から侮られないだけの防衛力は持とうということでいまやっておるわけでございまして、これは先生のお考えでございますと、何か日本軍事力で西側に寄与するんじゃないかというような御質問でございましたが、そういう意味じゃなくて、結局日本を守っていくんだ、西側の陣営の一人として日本日本を守るのに、外国脅威を与えないけれども、侮られないだけのものを日米安保体制の中でやっていくにはどうなんだということでございまして、何もこれは、他国のことじゃなくて自国の日本のことでございますので、そこを自主的に考えていくということを言ったわけでございます。  西側の陣営の中の一員だということはまさにそうでございまして、世界の平和を守るためには、アフガニスタン侵入なんということは高い代償がつくんですよということで、西側の一員として対ソ経済措置考えるとかいうようなことをやり、あるいはパキスタン、タイにはいままで以上の経済援助をするとかいうようなことを実はやっておるわけでございます。  防衛の問題は、あくまで自分で自分の国を守るには安保体制の中でどうしたらいいかという判断のもとにやっているということでございまして、先ほど防衛庁長官がおっしゃった、防衛大綱その他も決めてはあるが、その充足がおくれているということで、それはどうしてもいま、自衛隊装備の問題でございますとかいろいろおくれているものがあるので、この際どうしてもこれを充実するということを考えているのだ、防衛大綱の一日も早い実現を考えていくのだということを言っておられるわけでございまして、軍事力を持って西側に協力して、どこかに武力行使のようなことを前提にした派兵の問題でございますとか、そういうようなことは一切考えていない。平和外交であることは本当に間違いないのでございます。
  183. 大村襄治

    大村国務大臣 ただいまの市川委員の御発言の中に、今度の概算要求防衛庁の予算だけが別扱いだというお話がございました。私ども防衛庁だけが別扱いではないと考えている次第でございます。この点は大蔵省から言っていただければよろしいわけでございますが、七月末に概算の閣議決定を行いましたときの文章を見ますると、「年金の平年度化あるいは対外援助費、そういったものは七・五%の一般枠によりがたいと思われるので、その枠によらないこともできる。ただその場合、一〇%のあれを超えることができない。」その一環としまして、「国際条約に基づく債務負担行為等の歳出化」というのが挙げられておりまして、それに防衛庁の予算が該当する、こういう経緯もあったということを御参考に申し上げておきたいと思います。
  184. 市川雄一

    ○市川委員 それでは、いまの問題はまた後で関連しますので。  外務大臣、カーター・大平会談で、顕著にして着実な増強あるいは政府部内にある計画早期達成という要請があった。顕著にして着実な増強、これはたしか予算委員会で、外務大臣は、着実しか約束していない、顕著は約束してこない、こういう趣旨のことをおっしゃったように伺っておるのですが、その点はどうですか。
  185. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま約束ということをおっしゃいましたが、私は約束は何もしていないのです。意見を述べただけでございまして、約束等は一切申しておりません。  亡くなった大平総理は、カーターさんにお会いしたとき、カーターさんが、政府部内にある計画、これはそういう抽象的な言葉であったのですが、政府部内にある計画を早く達成してもらうということは、アジアの平和にも世界の平和にも役立つというような意味のことを、大平総理に期待を表明した。で、大平総理は、いろいろアメリカ日本の制約があることを理解してもらっているとか、日本防衛の充実について高く評価してもらっているというようなことには、理解を示してもらってありがとうと言いながら、防衛の問題につきましては真剣に取り組むということを言ったのでございまして、大平総理はそういう言葉で言ったわけでございます。  顕著にして着実というのは、ブラウン国防長官があちこちで言われ、私もこの間ブラウンさんに会いましたときに、そういう言葉が出たことは確かでございます。ただ、その場合に私が言いましたのは、防衛というものは日本が自主的に考えるのだ、国民のコンセンサスというものが要るのだ、財政の問題その他でなかなか大変なんだから、国民からわかってもらわなければ困るのだと。日本としては、日米安保もあるのだから、着実に防衛力を充実していくということは、これは日本としては考えていくんだというよう意見を言ったわけでございまして、着実にふやすと約束したとかどうとかいうことは一切ございません。これは来年の予算でこれからやることで、その上で国会で御承認を得ることでございますから、その前にいろいろなものを外国と約束するというようなことはこれはできないわけでございまして、そういう意味で、私は意見を述べただけだということでございます。
  186. 市川雄一

    ○市川委員 予算委員会の議事録ですと、外務大臣は同じ趣旨のような質問に対して「顕著にということでございますが、私は一回も顕著ということを約束したことはございません、」こういう約束というお言葉をお使いになっていらっしゃるのです。それで、着実に日本として自主的に考えていくんだということを言ってきたんだということをおっしゃっていますが、この概算要求九・七というのは顕著じゃないのですか。着実の方に入るのですか。外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  187. 伊東正義

    伊東国務大臣 九・七の感じを言えということでございますが、私ども九・七が顕著であるか着実であるかということを何も言ったわけじゃございませんが、先生からあえてどうだ、こう言われれば、顕著というときに、中期業務計画の前倒しの問題とかいろいろ出たわけでございます。そういうことについては、私は日本としては着実にこれをふやしていくことをやっていくというのが日本防衛に対する取り組み方だ、こういうことを言ったわけでございますから、それから類推すれば、それが非常に顕著なものであるというふうには解してないということでございます。
  188. 市川雄一

    ○市川委員 まだ足らないということですか。アメリカの対日要求の、着実にして顕著あるいは顕著にして着実という要求に対しては、まだ十分こたえていないというふうにおっしゃるわけですか。
  189. 伊東正義

    伊東国務大臣 アメリカは私に対しましては数字は一切言いませんでした。九・七が低いから十何%にしたらどうだとか、そういう意味の期待表明は一回もなかったのです。抽象論だけでございましたので、私は、九・七ということで防衛庁要求されたそれが、いまの財政から見れば、日本としては——人件費は伸びは入っておらなかったはずでございますが、そういうものを別にすれば、日本としては、いまの段階では、これが認められた精いっぱいの要求なんだというふうに考えておりまして、アメリカがそれに対して右だ、左だとは私はまだ言ってもらいたくない。これからの予算でやる問題でございますので、予算を見てから批判はしてくださいということをアメリカにはいつでも言っております。
  190. 市川雄一

    ○市川委員 要するに、なぜこんなことを聞くかというと、外相がまた今回の訪米でブラウン国防長官ですかお会いしたときに、新しい長期的、継続的努力ということを言われたと思うのですね。顕著にして着実というのが大平・カーター会談で出て、今回の外務大臣の訪米では長期的、継続的努力ということが出ておる。いまの御答弁ですと、九・七%特別枠なんというのは特別枠ではないとか、あるいは顕著だとは思っていないということになりますと、アメリカとしては、そういう新しい長期的、継続的な要求をこれから、あるいは防衛力増強要求してくる示唆的な発言だと私は思うのです。これに対して、ただ西側の一員としての役割りを果たすんだとかいうことだけではなくて、やはり日本の憲法というものあるいは自主性というものですね、今回の防衛論議も結局自主的だ自主的だとおっしゃっていますが、先ほど午前中の質問でも、何かアメリカ圧力でというようなことじゃないのだという趣旨の質問もありましたけれども、しかし、大半の方はそういうふうには受け取っておりませんでして、カーター・大平会談で顕著にして着実な要求というのが出て、そこへアフガンの問題が先に起きていて、ソ連脅威論があって、防衛力増強というのが一挙にぐっと浮上してきた、というふうに理解するのが国民の大半だろうと私は思うのです。そういう意味で、何か国民にはっきり、自主的なら自主的で、日本として脅威があるなら、それは備えなければならないと思うのですよ、本当に脅威があるなら。こういう脅威がありますので、こういう判断をして、こういうふうにしたいという形で出てこないで、いつも防衛問題というのは、何かアメリカからぽんと出てくる、ほかの理屈をつけて出てくる。したがって、長期的、継続的というこの新しい要求とも受け取れることについて、外務大臣として、いま、米国の意図をどんなふうに受け取って帰ってこられて、どんなふうに対処されよう考えていらっしゃるのか。
  191. 伊東正義

    伊東国務大臣 長期的、継続的というよう言葉が出たのは、ブラウンさんと私が会ったときでございます。そのときの感じは、それをブラウンさんが特に力を入れて言ったわけでもなかったのでございますが、防衛費というものは、やはり長期的な見通しで、少し長い展望で見なければいかぬものだというふうに私は思っております。「防衛計画大綱」も防衛庁でこれからお進めになると思うのですが、これは一年で達成するというものじゃなくて、やはり長期で、何年かかかってやられるものでございますし、業務見積もりも何年かの年次計画ができておるのだろうと私は思うわけでございまして、ことしだけでこれはいいんだというようなものじゃないと私は思うのです。防衛計画の性質上、防衛費の性質上、やはり中期か長期かの展望を持ってやるのは当然だ。ですから、向こうが言いました言葉を私は特に異にも感じない。顕著というようなことを言われますと異に感ずる、そんなことはと、こういう気がしましたけれども、継続してということは、防衛費のたてまえ上、長い目で展望すれば当然のことじゃないかな、何も新しいことを言ったんじゃないんだという感じを私は実は受けておるわけでございます。
  192. 市川雄一

    ○市川委員 そうじゃなくて、会談の前提に、同じ顕著にして着実な要求ということがあって、なお長期的、継続的という言葉が出てきたのじゃありませんか。これはセットになっているのじゃありませんか。ですから、私たちが危惧するのは、顕著な努力長期的、継続的にという要求というふうに思っておるのですが、その点はどうですか。顕著とは思っていらっしゃらないのですか。
  193. 伊東正義

    伊東国務大臣 顕著を数字であらわすとどうなるかということが定義がないものですから抽象論でやっておるわけでございますが、日本流で考えると、顕著といえば倍になったとか、そういうような感じを受けるわけでございますけれども、そんなことはとてもできませんよ、国民的コンセンサスを得られませんよということで、私は、そういうことじゃなくて着実に考えていくんだということを言ったわけでございまして、防衛計画自身として見れば、着実にやっていくということは今年で終わりということでなくて、「防衛計画大綱」がございますから、その計画に沿ってやっていく、それが継続的なものだというふうに私は考えております。
  194. 市川雄一

    ○市川委員 問題を変えて御質問しますが、防衛庁長官米国から、いま申し上げましたような、外務大臣ははっきりお答えにならないのですけれども、顕著にして着実な防衛努力長期的、継続的にという、実際そういうニュアンスの要求が出ている。一方では、いまの憲法に欠陥があるという憲法論争がある。こういう中で、先ほども申し上げましたが、何かいま政府が、防衛力の限界というか、歯どめになっておるものを順番に外していこうという感じを受けるわけですね。  大村長官が、自民党の夏季研修会ですか、そこで「防衛計画大綱」見直し発言というふうに新聞では報道されたわけですが、これは真意を確かめているとちょっと時間がかかりますので、そういう前提で、先ほど同僚委員からも質問がありましたが、大綱を支えている考え方基盤防衛力構想、これは、脅威対応という考え方ではなくて、どちらかと言うと平和時における最低限の防衛力のめどを示した、あるいは「平時において十分な警戒態勢をとりうるとともに、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処」し得るものを目標とするのだ、こういうふうに書いてあるわけですね。それから五十一年の防衛白書には、「いわば平和時の防衛力ともいうべきものであって、特定の差し迫った侵略の脅威に対抗するというよりも、全体として均衡のとれた隙のないものであることが必要である。」こう言っておるわけです。しかも、基盤防衛力の構想を発表されたときに、委員長をやっていらっしゃる坂田防衛庁長官は、特定の差し迫った侵略の脅威に対応する、そういう脅威に対応するという考え方じゃないんだ、そういう趣旨のことをはっきり記者会見で述べていらっしゃるわけです。そういうことを前提にいたしますと、先日の予算委員会における防衛庁長官の、ソ連潜在的脅威を念頭に置いてこれからは防衛努力をやっていきますという御発言は、やはり「防衛計画大綱」を実質的にお変えになったのじゃないのか、こういうふうに思えるのですが、その点はどうですか。
  195. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、現在「防衛計画大綱」を変える考えは全く持っておりません。  なお、大綱の線に達しない面が多々ございますので、その線に到達することを現下の最上課題として取り組んでいる次第でございます。ただいまお尋ねの諸点についてもそのまま受けとめているわけでございます。  また、脅威云々のお話がございましたが、五十二年の白書の中には、脅威を前提としない防衛ということはないということもはっきり書いているわけでございます。ただ、大綱策定の際には、脅威の量のみにこだわらずに限定的最小限の防衛力整備していく、一方においては日米安保体制を堅持していく、これを補っていく、そういう大前提があるわけでございまして、そういった点は基本的に何ら変わっていないと私は受けとめているわけでございます。
  196. 市川雄一

    ○市川委員 もちろん防衛力整備に当たって全く脅威を念頭に置かない、そういうのはナンセンスだと思うのですよ。一応の脅威を念頭に置いてやる、しかし、脅威が変化したから対応する、こういうものではありませんという意味だと思うのですよ。基盤防衛力構想というのはそうですね。脅威を全然念頭に置いてないというのはおかしな話で、脅威は念頭に置いているが、脅威が変わったからこっちの防衛力増強ぐあいも変えるんだという考え方には立っておりません、こういう趣旨だと思うのです。  ところが、今年度の防衛費増額についての考え方は、ソ連潜在的脅威が増したから、だから中期業務見積もりの前倒し早期達成が必要なんだ、こういうことなんです。ということになりますと、結局は脅威に対応して防衛力増強を図る、したがって基盤防衛力構想の大綱水準を速やかに達成したいということで、大綱水準は、言ってみればつまみ食いというか、それは早くやりたい、だけれども、それを支えている考え方脅威対応ではないということは、逆に言うと、骨抜きにして脅威対応型に変えていく、これは事実上の、言ってみれば基盤防衛構想の放棄、「防衛計画大綱」の事実上の変更じゃありませんか。
  197. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  現在進めております中期業務見積もりは「防衛計画大綱」の範囲内で見積もったものでございます。具体的には五十五年度から五十九年度の、毎年度の予算編成等の参考にするために決めております五年間の見積もりでございます。年度別は決めておりません。  また、この中期業務見積もり達成されましても、防衛計画大綱別表の線まで届かないというのも事実でございます。     〔三原委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、先ほど来申し上げておりますように、諸般の国際情勢の変化等に伴いまして「防衛計画大綱」そのものを早く達成したい。それに伴いまして、中期業務見積もりの促進をできるだけ図りたいということで、五十六年度の概算要求をつくった次第でございますので、基本的には「防衛計画大綱」を改めるとか、無視するとか、そういうことは毛頭考えておらないわけでございます。
  198. 市川雄一

    ○市川委員 私が申し上げているのは、大綱水準を無視しているということを言っているのではなくて、大綱を支えている基盤防衛構想を骨抜きにして事実上変えた、こういうことを申し上げているわけでして、防衛庁長官が自民党の研修会で発言されたその真意の説明として、一九八五年ごろ国際情勢が厳しくなるように言われている。なぜ一九八五年に厳しくなるのかわかりませんが、この一九八五年というのは、考えてみますと、いまの中期業務見積もり早期達成ということで一年前倒しということで見ますと、一九八四年が五十九年ですから、八四年が一年もし前倒しということになれば八三年、八五年というとちょうどその二年後ですね。中業ができて、大綱に足らざる部分もできて、ちょうど手をつけようかという時期が八五年、こういうことも考えますと、何か基盤防衛構想がいまの防衛庁にとって非常に窮屈な束縛になっている、こういうことですか。しかも、今年度のこの防衛白書には基盤防衛構想というのは全然うたっていない、削除されている。ほかの説明があるからということはわかるのですが、やはり何か自主的に変えようというお考えがあるのじゃないですか。
  199. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  研修会で、八五年ごろは国際情勢が一層厳しくなるという説があるが、このままでよいかということを、研修に来た党員の方から私にお尋ねがあったわけです。私は、講演の中では、防衛計画は現在変える考えはございませんということをはっきり申し上げておる。それに関連してさきの御質問があったわけで、そのときになるとどういう情勢になるか、率直に言ってわからない、そういう趣旨であるいは見直す必要が出てくるかもしれない、そういうお話をしたわけでございまして、私といたしましては、現在これを考え考えは持っておらない次第でございます。
  200. 市川雄一

    ○市川委員 先ほど、同僚委員の質問にもございましたが、基盤防衛力構想で前提にしている国際情勢、その前提にしておる国際情勢は当分の間大きく変化しないことを前提としている、この情勢の大きな変化とは何かということは例示的に述べたのだというふうにおっしゃっておりましたが、確かに例示的にたとえばというので、ア、イ、ウ、エ、オと、五つのポイントが書かれておりますが、これはあくまでも例示的に述べたものであって、これがすべてではないというふうにさっきおっしゃられた。すべてでないこの五項目の例示的に述べたものに該当しない情勢が起きたのだ、その情勢は、恐らくおっしゃりたいのは極東におけるソ連軍の軍事的増強、こういうことだろうと思うのです。この五項目だけが見直しのすべての条件じゃない、ことに書いてないこともある、その書いてないことが起きえのだ、こうおっしゃっておりましたが、その書いてないことが起きた、そのソ連軍の潜在的脅威というのは、当分の間大きく変化しない場合、これに該当するのですか、しないのですか。その辺はどういう判断をお持ちなんですか。
  201. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 先ほども説明いたしましたけれども、それは解説でございまして、「防衛計画大綱」そのものではございません。大綱は閣議決定がございましたので、これはわれわれ忠実に守っているわけでございますけれども、それはその時期にそういう解説があったというわけでございまして、これは大体、五年前の情勢について例示的に項目を挙げているわけでございます。したがいまして、別に閣議決定もされておりません解説の条件がたとえ変わったからといって、自動的に「防衛計画大綱」を変えさせる、そういう力を持っておるものでもございませんし、また逆に申しますと、それが変わらないから変えてはいけない、そういう性質のものでもございません。  いずれにいたしましても、いま長官がおっしゃったとおりに、大綱を変えるかどうかということは、大綱未達の段階では考えないということでございますので、現在の情勢をそれに加えて、元来そういう性質のものでございますから、それについてとやかく、大きな変化であったとか、そういうことは言っても余り意味のないことと存じますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  202. 市川雄一

    ○市川委員 ことしの白書じゃありませんが、五十四年までは白書防衛庁は責任を持って書いていらっしゃるわけですよ。それでは、それは全然責任がないという意味になるわけですね。白書に書いてあることなんかは責任が持てぬということですよね。  時間が来ていますから、本当はデタント等から対ソ脅威の問題をもっと深く論じたかったのですが、結局この日本の対ソ抑止力とは何か、こういうことになると思うのです。極東におけるソ連軍の軍事力増強された、バックファイアが配備された、SS20が配備されたということをずっとこれからやっていきますと、では、日米安保条約下における対ソ抑止力というのは一体何なんだろうか、それについて明快なお答えを防衛庁なり外務省は括りているのかということが一つです。  それから、ソ連は御承知のように超核兵器国です。超核兵器国に対する抑止力というのは、これは核武装しかないんですよ、理論的には。しかし、その核武装の方は、アメリカは、いかぬ、おれがやるから、日米安保条約で核のかさはちゃんと持つんだ、これもちょっとあやふやで、私のお聞きしたいところだったのですが、やるからと、そうすると、その日米安保条約下での対ソ抑止力というもの、日本考えている、防衛庁考えている対ソ抑止力というのは、一体どこまでいけば有効なのか。こう言うと、恐らくこの大綱の線を可及的速やかにと、判で押したようにお答えになるわけです。それでは全然お答えにならない。やはり先ほども外務大臣がおっしゃった、防衛というのは長期的に考えなければいけないのだということ、大綱の線を可及的速やかにというのは長期的じゃない、当面のことしか言っていないわけですから、そうなりますと、極東におけるソ連軍事力増強ということを防衛力増強の理由にするなら、米ソのデタントで核不戦下における安保条約というのは一体何なんだ、その安保条約のもとにおける日本の対ソ抑止力というのはどの程度のものが有効なのか、どの程度のものだと考えているのか、その歯どめは一体何なのか、これを同時にあわせて、国民の前に明らかにする責任が政府にあると私は思う。それをお伺いしたいのです。そうでないと、この基盤防衛構想というのは、一応平和時における防衛力の限界をめどとして示したものということになっている。これをいま明らかに外そうとしているわけですよ、いまの答弁から見てみますと。大綱だけは閣議決定だ、それを支えた考え方は違うんだという形で避けようとしていらっしゃる。明らかにはしごを外しているわけです。いかがですか、お答えいただきたい。
  203. 大村襄治

    大村国務大臣 最近極東ソ連軍の顕著な増強が行われておりますことは、たびたび申し上げておりますとおり、わが国安全保障にとって潜在的脅威の増大であると考えております。防衛庁としては、かかる情勢を念頭に置きつつ「防衛計画大綱」に定める防衛力水準を可及的速やかに達成すべく、防衛努力を行っていきたいと考えておる次第でございます。  なお付言いたしますれば、大綱に書いてありますように、限定的、小規模に対応できる実力を培っておけば、いざというときに円滑に遂行できるということも、大綱にはっきりうたっているわけでございます。大綱の線を早く到達して憂いなきを期してまいりたいというのが私どもの趣旨でございます。
  204. 塩田章

    塩田政府委員 ただいま大臣からお答えいたしたわけでございますが、補足をさせていただきますが、先生のおっしゃいます対ソ抑止力というのは何かということになりますと、結局、日本防衛体制というものは、かねてから申し上げておりますように、日米安保わが国自体の自主的な防衛力、この二本の柱ということになろうかと思います。二本の柱が何といいますか、強固に結び合っておって初めて抑止力になる。そのうちの日本側防衛力というものにつきましては、いま大臣からお答えいたしましたように、大綱の線に速やかに達するよう努力をしておるということで、いま整備を進めておるわけでございますが、同時に、日米安保という大きな柱がございまして、それが有効にいつでも作用できる体制、これはやはり外交を含めていろんな努力が要ると思いますけれども、そういうことの二本の柱を守っていくことによって対ソ抑止になるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  205. 市川雄一

    ○市川委員 それじゃ質問を変えますが、いわゆる基盤防衛構想、五十一年に閣議決定されて大綱をつくられた、これはソ連脅威に備えた対ソ抑止力という発想があるのですか、ないのですか、端的にあるかないか、長官どうですか。
  206. 塩田章

    塩田政府委員 いま先生が対ソ抑止力という御質問であったものですから、日米安保自衛力との合わさったもので対ソ抑止力になる、こう私もお答えいたしましたが、いま御指摘ように、五十一年の防衛計画大綱は、特定の国を対象にした計画でないことは申し上げるまでもないわけでございます。
  207. 市川雄一

    ○市川委員 ですから自己矛盾なんですよ。特定の国を脅威とした構想ではありません、こう書いてあるのですよ。最近はソ連脅威を理由にして防衛力増強、これは矛盾なんです。要するに、防衛構想を明らかに変えようとしておるのですよ。  部分核停条約、核拡散防止条約によって、米ソの間に核戦争を起こしたら自国の壊滅的打撃なしには相手を屈服させることはできない、こういう認識から部分核停条約、核拡散防止条約が生まれてきた、したがって、核不戦というものをこの二つの条約によって約束したと私は思うのですね。約束し合った。したがって核不戦ということは、核戦争の引き金になるような通常戦争もお互いにやめようということだと思います。そうなってきますと、安保条約がある、その中で何かいまソ連がすぐ日本を攻めてきそうなことをおっしゃっていますが、しかしそういう前提で考えますと、ソ連安保条約下の日本を攻撃するというのは、限定的、小規模侵略だなんという、そんなしろものではないのじゃないかと私は思うのですよ。これは相当覚悟して米ソ戦、あるいは核が飛んでくるかもわからないという覚悟をして日本を攻撃しなかったら、とてもじゃないがそんな安易な判断は恐らくできないだろうと私は思うのです。ですから、そういう前提で物を考えますと、極東軍事力の配備は、バックファイアがこうなったから、SS20がこうなったから、北方領土に軍事基地をつくったからというだけで、しかも防衛庁外務省の発表しておる東西軍事バランス認識では、昔はちょっとおかしなことをおっしゃっておりましたが、最近は、八〇年代を通して米国のいまの努力が持ち続けられれば、圧倒的優位でないにしても、恐らく米国軍事バランスの優位は持ち続けるであろうという分析も一方ではなさっておるわけでしょう。そういう中で、なぜアメリカの強い要求から対ソ脅威に備えなければならないのか、何かこの辺の説得力を非常に欠いていると思うのですね、説明が。ソ連のどういう脅威に備えようとしているのか、私たちにはよくわからないのです。どうですか、それは。
  208. 大村襄治

    大村国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁といたしましては、最近におけるソ連軍の極東における増強につきましては、潜在的脅威というふうに受けとめておるわけでございます。顕在的な脅威だということは一言も申したことはございません。しかし、潜在的脅威であるということは否定できない事実であると思うわけです。その状態を念頭に置きながら、そしてまた、「防衛計画大綱」の策定の大筋については変わりはないということは、先ほどの他の委員の御質問に対して答えたとおりでございます。そこで「防衛計画大綱」を早目に実現するということに努力をいたしておるということでございまして、顕在的な脅威という意味の脅威を前提として措置を講ずる、こういうことではございませんので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  209. 市川雄一

    ○市川委員 本当はデタントの認識からこの議論をやりたいと思っていたのですが、またいずれ内閣委員会もあることですからそこで改めてやらしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  210. 坂田道太

    坂田委員長 次回は、来る二十七日月曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十八分散会