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1980-03-31 第91回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月三十一日(月曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    分科担当委員の異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      勝又 武一君     瀬谷 英行君      吉田 正雄君     丸谷 金保君      塩出 啓典君     渋谷 邦彦君      渋谷 邦彦君     馬場  富君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     主 査         桧垣徳太郎君     副主査         山本 富雄君     分科担当委員                 井上 吉夫君                 北  修二君                 林  ゆう君                 八木 一郎君                 瀬谷 英行君                 丸谷 金保君                 吉田 正雄君                 渋谷 邦彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  大来佐武郎君    政府委員        防衛庁長官官房        防衛審議官    友藤 一隆君        防衛庁防衛局長  原   徹君        外務大臣官房会        計課長      松田 慶文君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君        外務省条約局長  伊達 宗起君        文化庁次長    別府  哲君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      池田 久克君        外務大臣官房審        議官       矢田部厚彦君        外務省情報文化        局外務参事官   平岡 千之君        農林水産省農蚕        園芸局繭糸課長  松岡  将君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十五年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十五年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十五年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和五十五年度総予算中、外務省所管を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。吉田正雄君。
  3. 吉田正雄

    吉田正雄君 大臣お尋ねいたしますが、先般大臣訪米をされまして、ブラウン国防長官との間にいろんな話が行われたと思いますけれども、その中でも特にこれは歴代首相なり外務大臣が渡米の際の恒例的なものだと思うんですけれども日本防衛努力に対するアメリカ側からの強い要請が常に出されておるわけですし、今回も、これは新聞報道によってしか私ども知っておらないわけですけれども、相当強い国防努力強化要請があったというふうに承知をいたしておるわけですけれども、特に中期業務見積もりに対して一カ年繰り上げてやるべきじゃないかという要求が出たというのは本当なのかどうか、この会談内容について概略お聞かせ願いたいと思います。
  4. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま吉田委員からの御質問がございましたブラウン国防長官との話でございますが、先方から最近の国際情勢等についてある程度話がございまして、アメリカとしてもこの三月十五日インフレ対策をとることになったが、財政相当緊縮、圧迫、支出を切り下げる。しかし、国防関係は従来方針どおり五%実質増加を続けていくつもりだと、そういう状況のもとにもあるので日本側防衛についてのさらに一層の努力を払ってほしいと。私の方はまた従来日本政策のとっておる基本的な政策の方向がありますので、そういう基本的な線を外すということはできないということは申しました。ブラウン長官から、いま御指摘のとおり、自分たちはこの中期防衛見積もりというのを大体承知しているのだが、自分たちの希望として言えば、一年程度繰り上げて達成することができないだろうか、そういった趣旨の発言がございまして、まあ私の方からは、この防衛について着実な努力をするということは言えるけれども、従来言われておるように、着実かつ顕著な防衛努力強化ということは、いま申したような基本的な条件からいってむずかしいと思う、なおこの問題は本来政府全体、特に防衛庁自身の問題でもあるので、帰国していまのお話趣旨総理大臣なり防衛庁長官に伝えますと、大体そういうことでございました。
  5. 吉田正雄

    吉田正雄君 防衛庁の方にお尋ねしますけれどもアメリカとのこの外相会談内容についてその後お話をお聞きになって、防衛庁として、このアメリカ側要求真意ですね、真意をどのように受けとめておいでになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  6. 池田久克

    説明員池田久克君) ただいま外務大臣からお話がございました内容につきましては、外務省の方からわれわれ伺っております。  われわれの防衛努力に対する基本的な考え方は、すでに「国防基本方針」で決まっておりますように、「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」という基本方針にのっとっておりますが、これについても米側は十分承知していることと思いまして、われわれとしては着実に中期業務計画を進め、そして防衛計画の大綱で予想する防衛力の整備に努めて早期に達したいと考えております。
  7. 吉田正雄

    吉田正雄君 防衛庁にもうちょっとお尋ねしますけれども外相訪米されるに先立って、よく言われる根回し的な意味での今度は防衛庁に対する事前の何かそういう打診とか、そのようなことがアメリカ側からなされたんですか、どうなんですか。
  8. 池田久克

    説明員池田久克君) われわれは米側との間ではすでにガイドラインの作業等を進めておりまして、またそれ以外にも日ごろから連携をとっているところでございますが、外務大臣訪米されるに当たりまして、特別にそれについて対応したというようなことはございません。
  9. 吉田正雄

    吉田正雄君 外務大臣お尋ねしますけれども、五月にまた首相訪米をされるというふうな日程が報導されておるんですけれどもアメリカ側からの強いこのような防衛努力への要請があるわけですけれども、御承知のように日本憲法というのは平和憲法であるわけですから、そういう点で従来日本外交というのがいわゆる全方位外交路線というもので展開をされてきたと思うんですね。しかし、最近のアフガンであるとか中近東をめぐる国際情勢緊張であるとか、あるいはこれをもとにしての米ソあるいは中ソ等緊張関係というものも非常に強まっておるんじゃないかというふうに思いますが、このアメリカ防衛努力に対する強い要請と、日本の従来からの外交基本政策とのかかわり合いというものを一体どのように調整されていくのか、その辺のお考えをお聞かせ願いたいと思うんです。
  10. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまの全方位外交ということでございますが、私なりに解釈をいたしますと、日本はそもそも平和憲法を持ち、さらに経済的には非常に資源小国で、大部分基礎的資源を輸入に依存しなければならない、防衛力としては最低限のものを持つという形で戦後の日本の国のあり方を選択してまいったわけでございまして、これは、この大きな筋は変えることはできないし、また変えるべきでもないというふうに考えております。そういう意味では世界じゅうのあらゆる国とできるだけ友好関係を持つべきだと存じますが、同時にやはりこの友好関係に多少濃淡があるということも現実の世界である程度避けがたい面がございます。ただ、少なくとも世界のどこの国ともシリアスな深刻な敵対関係にならない、敵対関係を持たないという意味では全方位外交ということも言えるかと思うわけでございます。そういう基本的な日本の戦後のあり方につきましては、ブラウン国防長官等もよく理解をしておるわけでございまして、私ども日本はあくまでも専守防衛という立場防衛のことを考えていくわけである、その枠を踏み出ることはできないのだということははっきり申したわけでございますが、ブラウン長官も、そのことは自分たちもよくわかっているので、日本自身日本の安全を守るという意味で、先ほど出ましたような多少防衛力をさらに強めるという余地があると自分たち考えておりますという話でございました。
  11. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは、けさの新聞ですか、きのうの新聞報道ですか、ちょっと覚えておりませんが、首相訪米は、カーター大統領とは一回しか会わないんだと、共同声明発表等予定をしてないとか、いろんなことが新聞報道ですがあるわけですね。あれをちょっと私たち読んでみますと、あの報道の限りにおいては、大平総理はそれでは何の目的訪米をされるのか。とにかく臣下の礼を尽くすために何か訪米をするというふうな国民は印象を受けるんじゃないかという感じがしてならないわけです。したがって、五月の首相訪米の真の目的というのは一体どこにあるのか、また、これは外交問題が中心になるのか経済問題が中心になるのか、あるいは防衛問題が中心になるのか、首相訪米までのアメリカ側との交渉はどこが主体となって進められるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  12. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御指摘新聞記事、私ちょっと見損ないましたのですけれども、目下、外交ルートを通じてメキシコとアメリカとカナダの各国政府にそれぞれ予定の打ち合わせをしておる段階でございます。訪米目的、そういう三国の訪問も同時にやるということでございまして、参勤交代というようなことではございませんで、これはこういう複雑になります世界情勢のもとで各国首脳がしばしば会うということは近年ほとんど一般的になってきておりますし、西独のシュミット首相もこの一年間に三回ワシントンを訪問しておるように私も記憶いたしておりますが、カーター大統領も去年の六月に日本に来ておりますし、いわゆる実質的に平等なパートナーシップに日米関係はだんだんなりつつあるように感じておるわけでございまして、この世界情勢あるいは日米間の大きな問題について絶えずパイプを通じておくということは個々の問題についてのトラブルを避けていく上にもきわめて必要ではないか。そういう意味で、首脳同士会談が比較的気軽に行われるといいますか、相互の意思疎通を図るという意味でも非常に意味のあることだと存ずるわけでございます。
  13. 吉田正雄

    吉田正雄君 私は、やはり今度の訪米、今度のというのは首相のですね、訪米というのは非常に大きな意味を持っているんじゃないかと思うんです。それは大臣承知のように、こういう国際情勢下でありますし、防衛問題、さらには日米経済問題あるいはエネルギー問題等、非常に多くのしかも広範にわたる深刻な課題というものを抱えておるわけですから、そういう点ではいま大臣から説明がありましたように、各国首脳が胸襟を開いて十分に情勢についての意見を交換するということは私はきわめて重要だと思うんです。しかし同時に、非常に厳しいだけに選択を誤るとこれまた大変なことになるんじゃないかという感じがするわけですし、とりわけ私は今度の予定される訪米ではどうしても防衛問題というのが非常に大きなウエートを占めてくるんじゃないかという感じがするわけです。その辺はどうなんですか。
  14. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 一つには、六月にサミット会議がベネチアで開かれますので、それを踏まえて一体どういう問題を議論するかというような点も話し合いになってまいるのじゃないか。それとの関連での世界情勢も出てまいる、防衛問題とか日米経済関係の問題も恐らく話題に上るであろうと思いますが、先ほど私から申しましたように、先般もワシントンに参りましてブラウン長官ともいろいろ話し合ったわけでございますし、大体において日米双方相手側考え方については相当わかっておると存じます。今回の総理訪米を通じて何か重大な決定がされるという性質のものではないと私ども考えております。防衛問題も日本国内のコンセンサスなり、予算財政経済情勢なり、いろいろなものが勘案されてまいると思いますし、防衛当局考え方というのもいろいろございましょうし、むしろ具体的には五十六年度の予算編成という過程を通じて日本がこの問題についてどういう対処をしていくかということが国内でもいろいろ検討されていくということに多分なるのではないか。そういう意味で、今度の総理訪米が、防衛問題について特に大きな方針の変更とか重要な決定とかいう問題にはならないだろうと私としては推測いたしておるわけでございます。
  15. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、INFCEの問題についてお尋ねをいたしますが、例の核燃料サイクルをめぐってINFCEでは二年有余にわたってこの問題についての討議が行われてきて、つい先般一応の結論を出したということを承知いたしておるわけですけれども、このINFCE結論内容外務省はどのようにとらえているのか。つまり、日本側の主張が通って再処理というものが認められたんだというふうに考えおいでになるのか、そういう各国自主性というものを尊重するということはうたっておりながらも、日米原子力協定との関係やあるいはカーターの核不拡散方針との関係、さらには従来のたとえば東海の再処理工場の再開をめぐってのいろんないきさつもあったわけですので、そういう点で今回のINFCE結論日米間の関係、さらには今後の展開というものを外務省なりにどのようにつかんでおるのか、お聞かせ願いたいと思うんです。
  16. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) INFCEの問題、もともと技術的な検討ということでございまして、交渉という性質のものではございませんで、いまお尋ねの件の内容については矢田部審議官の方から答弁させたいと思います。
  17. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) ただいま外務大臣がお答え申し上げましたように、INFCE技術的検討でございまして、INFCEに参加した政府がその結論に拘束されるという性質のものではございません。したがいまして、日米協定の話が出ましたけれども日米協定の改定に当たりましては、私どもといたしましては、INFCE結論のうちわれわれの立場を強めるものであると考えられるような点につきましては、十分にそれを交渉に反映させてまいりたいというふうに思ってはおるわけでございます。  INFCE結論外務省として全体的にどのようにとらえておるかという御質問でございますが、私どもといたしましては、再処理にいたしましても、濃縮にいたしましても、日本核燃料サイクルの樹立のために障害になるような結論は何ら出ていないし、かえって日本政策にとっては有利な方向づけが行われているというふうに受けとめておる次第でございます。
  18. 吉田正雄

    吉田正雄君 もうちょっと突っ込んでお尋ねをいたしたいと思うんですけれども、実は昨年の例のスリーマイルアイランドの原発事故の直後訪米をしたわけですが、その際大変外務省にお世話になりましたけれども、その際アメリカ側担当者議会筋関係者にも会ってまいったんですけれども、そのときは議会の間でも、再処理等をめぐっては、原子力の導入というのはアメリカ日本に対して行ったんだからいまさら認めないというのはどうもおかしいので、むしろ積極的に認めるべきだと。ただ、再処理については、たとえばアメリカの監視の目の届くような範囲内においてという、ヨーロッパに一カ所とかアジアに一カ所とかそういうことで設けることには賛成だという意見と、非常に慎重に進めるべきである、特にカーターの核不拡散関係日本に対しても余り再処理には積極的に賛成できないというふうな意見があって、私は必ずしもアメリカカーター政権内部あるいは議会内においても、日本のとりわけ民営の第二再処理工場の設置については意見が統一されてないんじゃないかというふうに思うんです。  そこで、今度のINFCEの――これは政府をもちろん拘束しないということはわかりますが、一定のこういう結論が出たわけですから、そういう点でアメリカ政府にこれがどのように影響を及ぼしていくのか。外務省としてはすでにこの三月一日に発足した日本原燃サービス工場建設というものが一体スムーズにいくというふうにお考えなのか、アメリカ側態度がいまの第二次再処理工場についてはどうなのかという点についてお聞かせ願いたいと思います。
  19. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) ただいま先生の御指摘のとおり、米国内にもいろいろな意見の差があることばそのとおりであろうかと存じます。比較的穏健な核不拡散政策を主張する向きと、そうでない厳格な政策を主張する向きとあることも事実でございますし、また、それが非常に流動的であるということもまた事実ではないかと存じます。ただ、米国政府が対外的に宣明しております政策というものは、やはりINFCE発足前のカーター新核不拡散政策基本になっておることは事実でございまして、したがいまして、その政策に関する限り、再処理を行うということについては、確かに米国政府としてはINFCE結論とは関係なく相当慎重な態度で臨んでいるということはこれまた事実であろうかと存じます。  ただ、先ほど申し上げましたように、INFCE結論は再処理を否定するという考え方をエンドースはしておらないと存じます。と申しますのは、いろいろなフュエルサイクルがあるけれどもアメリカが主張するような使い捨てフュエルサイクルというものが核不拡散上最も有利であるというようなことば結論づけられないということをINFCE報告の中では申しております。したがいまして、そういう点は私どもとしましては今後アメリカ交渉をしていくに当たっては有利な材料として使っていけるのではないかと考えておるわけでございます。ただ、具体的に第二次再処理工場の問題というような点についてこれからアメリカと実際に話をする場合に、アメリカがどういうことを言ってくるのかもわかりませんし、現段階で予測することは困難でございますが、繰り返して申し上げますと、われわれといたしましては、INFCE結論をわれわれなりに今後の日米交渉に有利に使っていきたいと思っておりますし、それがまたできるのではないかと思っておるわけでございます。
  20. 吉田正雄

    吉田正雄君 もう一点だけ。この核燃料サイクル関連をして、使用済み廃棄物貯蔵をめぐってミクロネシアの島であるとかいろいろなところに共同管理でもって廃棄物を保管しようじゃないかというふうなことがいろいろ報道されているんですけれども、この信憑性といいますか、あるいは計画というものは一体どこまで具体的に進んでおるのか、もし御存じでしたらお聞かせ願いたいと思います。
  21. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 原子力発電を進めますと、当然のことながら使用済み燃料というものが出てくるわけでございます。ただいま問題になりましたINFCE報告書でも、使用済み燃料が今後今世紀の間に大量に発生する、しかも再処理の方の能力は限定されておりますから、たしか今後二〇〇〇年までに発生する使用済み燃料のうち四分の三程度は当分貯蔵されざるを得ないであろうということがINFCE報告の中にも出ております。したがいまして、再処理をするかしないかという問題はさておきまして、使用済み燃料の少なくとも中間貯蔵という問題は世界的に存在するわけでございますので、実は国際原子力機関の中におきましても、使用済み燃料中間貯蔵の問題をどうするかということを協議するためのワーキンググループもすでに発足しているような次第でございます。  新聞にときどき報道されます日米間の問題でございますが、これは同じような発想からアメリカが、太平洋地域において出てまいります使用済み燃料中間貯蔵するための施設をどこかの地点につくるということのフィージビリティーを検討しようではないかということをわが国に提案してまいっておりまして、その提案を受けるべきか否かにつきましては目下両当局間で詳細を検討しておる段階であると、こういうことでございます。
  22. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、外務省機能強化についてお尋ねをしたいと思うんですが、外務省機能といったらいいんですか、外交能力といったらいいんですか、とりわけ情報収集等については非常に弱いんじゃないか。民間の出先の情報に頼っておるということを私どもしばしば聞かされておるわけです。  きょうもこの予算説明を見ますと、在外公館等に配置をされる職員の数というものが、これは千九百二十二名というふうになっておると思うのですが、これは諸外国外務省と比較をして、日本在外公館職員の数あるいはいろんな機構なり総合的な能力というものを比較した場合には、日本外務省というのはどの程度に位置しているんですか。
  23. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御指摘のような点、いろいろ従来からも言われておりますが、私も外務大臣になりましてからちょうど五カ月ぐらいで、いろいろまた中から外務省の活動状況見てきておるわけでございますが、確かに人員等につきましては、いまの人員が三千四百名、大体半分が本省、半分が海外というような割合でございまして、この数字は諸外国に比べて非常に少ないことば事実でございます。インドが四千六百五十二人、イタリアが五千三百四十三人、これは一九七六年でしたか、それに比べて日本が三千四百人で、またアメリカが一万四千人ぐらいおりますし、相対的に外交のスタッフの数が非常に低い。ただ、質的にはかなり高いものがあると私は感じておるわけでございますが、情報につきまして、経済外交重点のときでございますと、商社とかあるいはジェトロとかいろいろ経済関係で直接仕事、商売に結びついたことで情報を取っている。それに比べて外務省情報がおくれるということは、あるいは詳細をつかんでいないというようなことがあると思いますが、やはり政治とか外交とか防衛とか、こういう問題になりますと外務省情報が一番確かなんじゃないかと。  私も毎日海外公館からの電報に目を通しておりますけれども、その点ではかなりの線をいっておるように思うわけでございますけれども、しかし、これだけ複雑化しておる世界情勢のもとで的確に情報をつかんでいくということについては、数ばかりではいきませんけれども、さらに一層努力すべきじゃないかということを私も感じておるわけでございます。
  24. 吉田正雄

    吉田正雄君 二十八日の閣議では行政改革という従来の方針に沿った一定機構改革というものも行われるわけですが、私は不必要な部分を切っていくというのはこれは当然だと思うんですけれども、私自身従来の外務省のいわゆる在外活動というものを私なりに見ておって、どうも歯がゆい面があったり、必ずしも十分じゃないということで、その後ちょっとお聞きしたところ、ただいまもお話がありましたように職員の数も非常に少ないんじゃないか。それからこの予算のとおりであるとすると、たとえば在外公館において必要な一切の工作費というものが総額で二十七億円ということになりますと、これは非常に私は少ないんじゃないかという感じもするわけです。  実は、私は先般来話題になっておりますKDDの問題にいたしましてもいろんな見方があると思いますが、海外に出張する人たち、あるいはこれは国会議員も含めて、海外旅行をされて外務省のいろんな接待を受けるわけですけれども、この外務省接待に、これは私ここで率直に言いますけれども、昨年アメリカへ参った際、サンフランシスコ、それからワシントンの大使館の皆さんと夕食をともにしたときに、KDDの現地の出張所長といったらいいんですか、そういう皆さんも陪席をさせてほしいということで同席されたんですね。そのときは、まあ同じ海外であって同じ日本人ということで、出先の外務省の皆さんと出先の商社の皆さんあるいは会社の皆さんが一緒に食事をするということは、そう私はどうというふうには感じなかったわけですね。  ところが、今度のKDD事件というものを見ますというと、これはやはり私一人のあれは大したことはないと思ったんですが、新聞報道ではもうずいぶん大した内容もあるようですので、こういうことになってまいりますと、これは本来は外務省が負担すべきものをKDDに負担をさせておったというふうなこういう事実というものがあるのかどうなのかですね。新聞ではそこまでのことは書いてないわけですけれども、そういう点でこの予算を見ますと、これではちょっとそういうことがかえって出てくるんじゃないかという感じがするんですね。率直に言って、KDDの事件を契機にして、そういう部分が全然私はなかったとは言い切れないんじゃないかと思うんですが、この点いかがなんですか。
  25. 松田慶文

    政府委員(松田慶文君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおり、在外公館情報収集その他の交際を含めましての諸活動の経費は、交際費四億何がし、報償費二十六億何がしというのは先生御指摘のとおりでございまして、これを百六十余の在外公館で年間を通じまして使わせていただいておるわけであります。  この額がそもそも外交活動を十分かつ必要に行うのに賄い得るだけの金額かどうかという点は多多御議論があろうかと思いますが、私どもは国会の御承認を得てちょうだいしたこの金額で現にやっておりますし、いろいろと工夫し合理化を図ってさせていただいているつもりでございます。  日本からのいろいろなお客様と御懇談申し上げる経費もその一部でありますけれども、私どもは広い意味での外交活動の一環として各位のお話を承り、また現状を御説明する機会の一つとして、そういうふうに内外の各位との懇談の場を在外においてもつくっているわけでございますが、日本からのお客様のすべての経費を外務省が持つというのはやはり筋違いでございまして、外交活動を行うために御説明申し上げる、お話し申し上げるという限度においてさせていただいております。  したがって、当該お客様のその他の御活動の部分でいろいろな方と御接触になるのは、もとよりそれは当然おありであろうかと思いまして、KDDの問題に対する御言及がございましたけれども、私どもは一般的には東京からの指示に基づいてそれぞれの日本からの来訪者を御滞在期間に応じて御懇談申し上げる、一定の限度内で仕事をさせていただいておりますので、それ以外の部分につきまして仮にいろいろなことがございましたとしても、とりあえずは外務省の直接の仕事の枠外であるというふうに理解しております。結局、私どもは幅広い活動を内外においてさせていただいておりますが、そのための経費は予算をそれぞれの定めに従って適正に執行しているということを申し上げたいと存ずるわけであります。
  26. 吉田正雄

    吉田正雄君 大臣、最後に要望しておきますけれども、私はただいまの会計課長の答弁はこれは優等生答弁でして必ずしも実態にそぐわないんじゃないかというふうに思っておるわけです。必要なものは必要ですし、むだはこれは省いていくべきだと思うんです。しかし、海外商社の厄介にならなければ本来必要な外交活動が十分できないというふうなことであっては、私はそこにまた商社との癒着ができたりあるいは防衛機密のこの前の問題ではありませんけれども、おかしなことになったんでは私は大変じゃないかというふうに思うわけです。そういう点で、とかく言われてきた、どうも外務省のそういう点での機能というものが弱いんじゃないかという、こういうことにならないようこれは財政面も含めて外相からぜひ努力をしていただきたいというふうに思っております。
  27. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまのお話外務省関係の者といたしましても非常に心強く存ずるわけでございますが、もちろんむだがないように国民の税金でございますのでできるだけ有効にこれを活用しなければまいりませんが、やはりけじめをはっきりして外務省出先自体がやるべきことを他の援助に仰ぐとかそういうことがないように、またこの予算上にもお願いしなければならないわけでございますが、しかし、現実当面の問題としては予算の枠で可能な限度をやっていくということであると存じます。日本のような国が将来世界の中で生きていくために、やはり外交というものが日本人の生活とか安全を守るために重大な役割りを果たしていかなければならないと存ずるわけでございまして、そういう役割りを果たしていく上に最低限の必要な財政上の措置も今後お願いしてまいるべきだろうと考えておるわけでございます。
  28. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) 以上をもって吉田君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  29. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) この際、分科担当委員の異動について御報告いたします。  本日、勝又武一君、吉田正雄君及び塩出啓典君が分科担当委員を辞任され、その補欠として瀬谷英行君、丸谷金保君及び渋谷邦彦君が分科担当委員に選任されました。     ―――――――――――――
  30. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) 次に、八木一郎君の質疑を行います。八木一郎君。
  31. 八木一郎

    ○八木一郎君 私は、昨年この当委員会分科会で若干の質問をしたのでありますが、その当時私は、激動の八〇年の前途は予断を許さない、近い将来にわが国の防衛増強をすべしという世論が沸き起こり、当然そういう時代が来る、こういうことを予想をし、見通しを立てまして、これに先立って外務行政の中で文化国際交流というような面で一はだ脱いでやってもらうかっこうの課題がある、こういう提言をしたのであります。時代は私の思ったよりも早くこういう世界的な情勢の変化が出てまいりまして、一層輝く日本は文化国家であって、本来はあの大東亜戦争という忌まわしい時点を除けば長い二千年、三千年を通して全く文化的な平和文化国家であるという誇りを持って世界に誇示し、臨んでしかるべきである、こういう信念に変わりはないのでありますので、きょうはそういう意味で貴重な時間ですが二、三お尋ねをして、外務省政府の見解を明らかにしていただきたい、こう思うわけでございます。  いろいろ問題はありますけれども、まずさしあたりは、本日本会議質問の中で、社会党でしたか、国防防衛増強というような大問題は国民に問うてその賛否を明らかにした上で政府の施策としてやるべきじゃないかという、よく聞いていませんでしたけれども、といったような質問が出ました。これが最近新聞紙上に見られるような国を守るのか憲法を守るのか、憲法を守っておりゃ国は守れるのかという反論が、きょう私は材料を持ってきませんが、二、三日前の読売新聞の読者の声の中に大きく出ておりましたが、そういう感じを持つと思うんです。一国の存立の基本が、国家として存立する以上は当然その政府は国を守る責任がある、その責任を果たすということについて私は憲法にまで触れてやるならばそれははっきりする。憲法に触れずに国防関係防衛増強費の問題を国民に問うてからだなんという認識は、少なくも私の認識とはえらい格段の差があるわけであります。そういう点を明快にしていただきたいのでありますが、今国会で衆参両院がアフガン侵攻のソ連軍撤退、それと北方領土問題の解決促進の二つの決議をいたしました。もっともこれに賛成しないで棄権をした共産党もおりましたが、これを除く全会一致の決議になっておりますが、このような決議二つに対して政府はどのような外交展開をしようとしておるか、また、してきておるかという点を本音で伺いたいわけです。ざっくばらんに気持ちを伺いたい。  私は、ソ連が昨年来わが国固有の北方領土に着着と軍備、基地を増強してきた、これを整備しておる。色丹まで具体的になってきたというようなこととか、極東艦隊が日に日に増強を図り、日本海をわが物顔にしてペルシャ湾岸などへの侵入を図っているという現実を目の当たりにして、これは私の見解としては、ソ連が世界戦略としていよいよ軍事攻勢に出てきたのかなということを判断したのであります。しかし、だからといってアメリカとか関係国が直ちに武力には武力をもって対処する、そういうことは賢明ではない、こういうふうに思いますし、わが国がいま国是としております専守防衛は一層徹底した専守防衛体制というものを確立せにゃいかぬ、こういうふうに思うわけでございますが、二、三日前に新聞で見たのですけれども、来日中のアペル西独国防相もいま私の言ったようなふうに受けとれる経済的に外交的な方策で侵攻を抑える必要がある、こういうふうに述べ、アメリカとは若干立場を異にするかのような印象を受けたのでありまするが、その辺もどういうことなのか。あるいは北京で鄧小平副首相は読売訪中団に対して強硬な対ソ姿勢を何か言明しておるようでもあります。大平さんは総理として五月訪米に先立って、先ほどの質問にも出ておりましたように、いわゆる根回し的なことを何かしておるかのような印象が新聞紙上に見えますけれども、これはこういう席で防衛外交政策というものに対するきちんとした政府外務省の姿勢を明快にしていただきたいような気がいたしますので、以上のような点に触れて、二つの国会決議に対してどのような姿勢で対応し、また外交展開をするというお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  32. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先般の国会の二つの決議につきましては、近いうちに機会を見まして、外交チャンネルを通じてソ連側に伝達する予定にいたしておるわけでございます。  全般的な情勢につきましては、ただいま八木委員からいろいろお話ございまして、この情勢下におきましてやはり専守防衛という立場に立ちて自国を守る力をある程度強めていくということは、これはいま置かれておる日本の状況から見まして必要なことだろうと考えるわけでございます。先ほど吉田委員からの御質問もございましたが、日本防衛というのはその枠を出るべきではない、専守防衛の枠を出るべきではないわけでございますが、その枠内においてできることをある程度しておくということは一つの備えとして、また万が一にも起こり得べき危険に対する抑止力ということにもなるのではないかと。日本の国民の安全を図るということは、一方において自衛隊と専守防衛という立場にのっとりました自衛隊の力、もう一つは日米安保条約という枠組みにおきまして、核戦力を含む大きな抑止力として危険を未然に防止する、それを通じて日本人の安全を守るという方針がとられてきておるわけでございますし、それから第三には、世界各国と平和的な外交展開することによって、日本各国から恐れを持たれ警戒される国ではなくして、建設と平和のために国際関係に処していく、貢献していくという国だということのイメージといいますか、そういう信用がつくられていくということを通じて、これがまた日本国民の安全を守る道にもなってまいるのではないか、大体いまのような基本的な方向で今後も対処していくことになるのではないかというふうに存ずるわけでございます。
  33. 八木一郎

    ○八木一郎君 時間もありませんので残念ですけれども、私が防衛増強の必要をぱりっとしてもらいたいという希望を込めてこの質問をしておりますのは、専守防衛ということについて戦術戦略の権威であるわが党の源田実国防部会長を中心にいろいろ検討会を開いて検討しておるんですけれども、先生は六千年の世界の戦争の歴史をずっと研究して、参議院に来て十八年いろいろやってきたけれども、在来抱いていた防衛思想は一大転換をしなきゃならぬというふうに、哲学的にはそういうことを言わざると得ないと、こう言うんですね。何事かと思って聞きますと、従来は防衛に関する戦術戦略のすべては、攻撃は最大の防御なり、つまり攻めることだと、戦はしかけていくことだと、それが結局は防御の手段だと。私らも志願兵一年の者ですけれども、戦争へ三遍も行ってたたき上げられて、そういうふうに思っておるわけです。  ところが、あの研究経過を詳しく御報告することができないのが残念ですけれども、これはヨーロッパ型のやっぱり戦術戦略であった。調べてみるとそうでないということを非常にたくさんな例を挙げて説明をしてくださって、なるほどと。それで、防御は最大の攻撃だと、つまり防ぐということについて万全を期することが攻撃だと、こわくてやってこられない、そういう姿にするのが国防の真髄だと、はっきり事例を挙げて、ナポレオンの戦争がどうの、ジンギスカンがどうの、こういうのを挙げて説明してくれておるんですね。なるほどと私も思いまして、安保体制をもとにして、来る外敵は待ち伏せをしておくが、空からでも海からでも、陸にでも来たら、とうてい行く気にはなれないようなやっぱり備えが必要だと。そんなことをしたら大変な金が要るだろうと言いますと、先生のお話では、そんなに金は要るものではない、どうしてですかと言うと、人よりも十年進んだ科学技術の粋を結集して、そういうところに集中していけるような体制をつくる、こういうことをおっしゃるのでありまして、まさにいま外務大臣のおっしゃった平和愛好の日本である、平和を愛する、私のあと言わんとする文化国家であるというのと同じように、こういう意味の表と裏である。  こういうことを思いまして、この際国際情勢の的確な判断、把握によって、いまわれわれが、先ほど本会議質問が出たほどに国防の問題について真剣な国内の一致した見解に達していないという状況があるとすれば、一層政府こそがその全責任を持って、明快に防御は最大の攻撃であるというこういう信念に徹して、外交防衛を一体になって体当たりで臨めるようなそういう姿勢が望ましいと思うんですが、大臣いかがお考えですか。これを聞きまして私この問題は終わります。
  34. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私も源田先生からお話を承ったことがございますが、確かに備えあれば憂えなしといいますか、ことに日本のこの平和憲法のもとで日本が万一外から侵略を受ける場合には、その入ってくる、侵略する側が重大な打撃、損害を受ける、だから日本を攻めることはむだだと、コスト・ベネフィットに合わないというような判断を持つことは、やはり日本の安全を守る意味での重要な方向ではないかと存じます。まあ防衛が最大の攻撃だというとちょっと――防衛が最大の安全保障だというのがあるいは適切なのかもしれませんが、いずれにしても攻撃はやらないんだということは、日本としては徹底的に将来もそういう方針でいくべきだろうと思いますが、ただいま八木委員からのお説、大きな筋としては私もそのとおりだと考えております。
  35. 八木一郎

    ○八木一郎君 まあ攻撃という言葉は、しかけるというふうにやっぱり既成観念がありますが、受け身で受けて立つが、来た者をやっけるのはそれはたくましい攻撃精神がなけりゃやっつけられないと、こう言うんですね。それで攻撃という言葉を使っておるんですけれども、こちらからしかけるということは間違いだと、これは全く戦術戦略的に見て、歴史的な事実から見て間違いであると、それならば一層自信を持ってそういう体制を確立することにいろいろと専門的な知恵をしぼって邁進したいという希望を申し上げておきます。  次に、きょうの前段で申し上げましたように、文化振興に関する発言を私が昨年ここでさせていただいたこと以後、わが党は特別委員会あるいは文化交流委員会で会議を重ね検討をいたしまして、その結果を文書で申し入れの形をとっておりますが、これを受けた外務省の受けとめ方、そしてお考え方を承りたいと思います。
  36. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先日、国会議員から国会の中で署名をいただきまして、早速事務当局にも検討を命じておるわけでございますので、これは前回園田外務大臣のときにもお話があったようでございますので、現状につきまして外務省政府委員の方から御回答させたいと思います。
  37. 平岡千之

    説明員(平岡千之君) お答えいたします。  ちょうど一年前、八木先生から、日本の生糸の滞貨等の存在を踏まえて、何らかこういう関係のことで文化交流の振興に役立てないかという貴重な御指示をいただきまして、その後私どもの具体的に検討した件は、ハーグにございますところの平和宮、この平和宮の中にかかっております絹織物でございまして、七十年前に日本政府が寄贈したものでございます。これは七十年をけみしまして非常に傷んでおるということは事実でございます。この問題につきましては、その後八木先生からも御指示ございまして検討いたしました。また、私どもの文化一課におる係官も見てまいりましたし、この件につきまして生糸を管轄しておりますところの農水産省とも協議したわけでございます。この織物を補修いたしますことは、まず技術的に補修が非常に困難であるということがわかりまして、仮にこれを買いかえるといたしました場合に、その見積もりをただしましたところ、四億円を上回る四億三千万とも、場合によって、これは物価が上昇しますから、大ざっぱに言って四億五千万ぐらいかかるのではないかというふうに言われているわけでございます。  この織物を取りかえてよりりっぱなものにすることは、まず非常に日本の現代の絹織工芸の水準の高さを示すことになるわけでございまして輸出振興の効果も期待されるわけでございますが、それと同時に文化交流的な面もある。すなわち、日本の現代芸術を外国に見せる、こういう効果も期待されるわけでございますので、私どもといたしましてもこういうものにつきまして応分の協力を検討したいというふうに考えておるわけでございます。ただ、何分にも非常に巨額のものでございますので、これの取りかえにつきまして一つの大きな財源、また募金をするとすれば、その募金の大きな運動というものが盛り上がります場合におきまして私どもとしては応分の協力をいたしたいと、このような立場をとらしていただいているわけでございます。
  38. 八木一郎

    ○八木一郎君 予算を見ますと、この七ページですが、「第七 情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費」というのを見ますと、なるほどこの中に数億の経費を、しかも七十年の歴史を経てきた文化遺産をオランダの国際裁判所の本拠であるハーグの地に飾っておきたい、これが文化日本の広告だという意味なら安いものだと思って提言したんですが、外務省の持つ予算から言えばなかなか苦心が存する事情はわかりますけれども、私が特に強い主張をもってお願いをしておりますのは、国際情勢がこのように逼迫しないうちに、日本はなるほど歴史と伝統に輝く文化平和国家であるという証拠を世界に誇示したいというそういう気持ちが先立ったものですから、どうしても五十六年度のこの予算要求の時点を前に、五十六年度から着手すると、何年かは知りませんが、着手する。これの関係省庁は文部省文化庁、そして農水省、通産省、また法務省、いろいろありますけれども、どうしても性格上外務省外務省でも最初は法規課でやっておって、性格上情報文化局の方だといって持ち回りになってから、これは持ち回って逃げ回っておるようなかっこうだと思っておったんですが、そうでなく、事の必要性を深く御理解いただいて、ぜひ新五十六年度から着手していくという決意を承ることができれば、きょうわずかな時間で質問に立ったのもそのためでございますが、文化庁からもきょうは来ていらっしゃる、農水省は見えているんですか――文化庁、農水省の側から、本問題は前回も申し上げておりますが、協力する気持ちを具体的にお述べいただくことができればお述べいただきたいと思います。
  39. 別府哲

    政府委員(別府哲君) 文化庁といたしましては、この問題について外務省から技術的な面での協力を求められていることでもございますので、十分連絡をとりまして協力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  40. 松岡将

    説明員(松岡将君) 本件につきましては、昨年の夏外務省からも御相談いただきまして、われわれといたしましては、現在、日本蚕糸事業団がわが国の蚕糸業の振興対策の一環といたしまして絹の需要増進事業に対しましても助成事業をやっている、こういう関係があるわけでございますが、われわれといたしましては、本件につきまして関係機関で予算化措置がなされるとともに推進態勢なり推進母体というものが整備されるということでございますれば、日本蚕糸事業団よりの具体的な御協力の方法について検討さしていただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  41. 八木一郎

    ○八木一郎君 外務大臣
  42. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま種々答弁がございましたが、私の方でもその実現についての検討を十分やってまいりたいと思います。政府予算財源が御承知のようにかなり窮屈な状況になってきておりますので、また外務省予算は御承知のように全体としては枠がわりあい小さい、その中で主計局からもいろいろ増加の枠をはめられるというような状況もございますものですから、少し他の方面から相当な財源があってそれに御協力を申し上げるという形になると実現がやりやすくなる面もあるかと存じます。御趣旨につきまして今後も十分検討を進めてまいりたいと思います。
  43. 八木一郎

    ○八木一郎君 周りを見回しておるような状態で一年延びてしまった。前回はやっぱり人のふんどしで相撲をとれるほどに早のみ込みで園田外務大臣は受け取って、いま農水省の御答弁もあったように、農水省独自でもやりたい意図はある、しかし、仕事が外交防衛、文化の国際交流の仕事である限りはやっぱり外務省がもとは一応切ってくれなきゃいかぬ、こういうことで延びてきたわけですから、ぜひとも五十六年度からともあれ着手していく、そういう少なくも外務大臣としてのかたい決意だけは表明をいただいて、私の時間終わらしてもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  44. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまの農林関係方面等からの相当強力な御支援をいただけるというような状況のもとでは、お世話は当然外務省でやる必要があるのかと思いますけれども、そういうことでぜひ考えさしていただきたいと思います。
  45. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) 以上をもって八木一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬谷英行君の質疑を行います。瀬谷英行君。
  46. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最初にお伺いしたいことでありますが、過般行われました環太平洋合同演習、リムパック80でありますが、この目的とその内容について、外務省を通じて参加の要請があったのはいつごろなのか。そして、外務省としてはこの内容をよく承知の上で防衛庁と連絡をして、結果的には日本の海上自衛隊が参加するということになったのかどうか。その辺の経緯について、まずお伺いをしたいと思います。
  47. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) リムパックの件は、実は外交ルートを通じての話はございませんで、昨年三月米側から防衛庁の方に話が最初にございまして、防衛庁から外務省に対しての打診があったという経緯でございます。
  48. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 外交ルートを通じないで防衛庁に直接アメリカの海軍から話があったというようなことは穏やかでないと思うんですね。これは日本外務省として追認をするというような形のものであってはならないと思うんでありますが、外務省としては、それではそのリムパックの目的なり内容については全然承知していないということになりますか。
  49. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) お答えいたします。  外務省としては、防衛庁の方からこのリムパック参加について御相談がございまして、その御説明を受けて、外務省としての意見もお出しし、また関係省庁と防衛庁意見を調整されまして、そして今回のリムパック参加になったということでございまして、外務省として、この防衛庁の理解してのリムパック参加については、その後異存がないというのが、関係省庁間の何回かの会合で外務省の意向として、防衛庁に対して表明してございます。
  50. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その内容目的はどういうことだったんですか。
  51. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) リムパック80は、従来、二年に大体一回アメリカの海軍が主宰いたしまして、ハワイ沖において主として対潜その他海上自衛隊にかかわる練度の向上を行うという訓練でございまして、今回のリムパックについても同様な内容であるというふうに承知しております。
  52. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 このリムパックは取材等も十分に行われなかった、内容想定も明らかでないというふうに言われているんでありますが、外務省は中身がどんなものであるか承知しないで、外交ルートを通じないで行われたこの種の演習に対して、無条件でこれを承認をするということをこれからもやるつもりなんでしょうか、どうなんでしょう。
  53. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 今回の防衛庁のリムパック80に対する参加については、いま申し上げましたように大体二年に一回行われます訓練でございますので、前回あるいは前々回の訓練の内容については、防衛庁その他からの資料を通じて私たちも承知しております。  さらに、特に重大な点は、今回の訓練が集団的自衛権の行使であるかどうかという点かと思いますけれども、その点につきましても、防衛庁側の説明も受けましたし、また防衛庁側がアメリカ側といろいろ話をしているということで、今回の訓練というものはまさに練度の向上といいますか技術の向上ということでございまして集団的自衛権とは関係ないということで、外務省として異存ないということで外務省としての意見を申し述べたことでございまして、将来、八二年においてどういうふうになるかということは将来の問題でございますし、あるいはその際のチャンネルの問題については、今回の経験もございますので、またそのときになって防衛庁とも協議しながら考えていきたいと思います。
  54. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 二年に一回だろうと三年に一回だろうと、この演習の内容というのはアメリカの海軍が中心になっているわけです。しかも、日本の海上自衛隊というのは、米国の航空母艦の護衛の任務に当たるようなことをやっているわけです。言いかえればアメリカ海軍の用心棒的役割りをこの演習では果たしているというふうにしか見られないんでありますが、そのようにはお考えになりませんか、外務大臣
  55. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 経緯はいま政府委員からも申し上げたとおりでございまして、このリムパック、内容についてはむしろ防衛庁から御答弁願った方がよろしいかと思います。
  56. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 外務大臣内容を知らないで、そして外交ルートも通じないで行われるリムパックそのものを追認するというようなことはちょっとおかしいんじゃないかという気がするんです。内容については、それでは外務大臣は何にも知らなかったわけですか。
  57. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この話が最初にございましたころは私、外務大臣でございませんで、十一月に就任以来概要のことを聞いておりましたけれども、その当時外務省及び関係各省が集まって検討した上で、防衛庁に支障ないという返答をしたと聞いておりましたので、あと具体的な内容については、これは防衛庁本来の仕事であると了解いたしておるわけでございます。
  58. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃもう一度お聞きしますが、このリムパックはアメリカ海軍が中心になっているということはお認めになると思うんです、そのアメリカ海軍と合同演習をやると。おまけにカナダだとかニュージーランド、オーストラリアといったような国々まで参加をしていると。これらの国々の参加艦艇は明らかにそれぞれの海軍だろうと思うんです、日本は海上自衛隊だと。すると、日本の海上自衛隊も海軍と同じと、こういう性格を持っていると。つまり、海軍と海上自衛隊は同様であるというふうにお認めになっていらっしゃるのかどうか、その点を伺いたいと思う。
  59. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほど来御答弁いたしておりますように、また、先生が言われるように、確かにこのリムパックを主宰いたしましたのはアメリカでございまして、またアメリカの海軍ということは事実でございますけれども、わが方の海上自衛隊の従来アメリカあるいは第三国との共同訓練というのは、このリムパックだけでなくて、第三国の海軍がわが国を訪問した際、あるいは日本の海上自衛隊が第三国を訪問した際に訓練しておりますので、それによって日本の海上自衛隊の性格が変わってくるというふうには私たちとしては理解しておりません。
  60. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 海上自衛隊の性格が変わってくるというふうに理解しないというのはどういう意味なんでしょうか。海軍じゃないと、こうおっしゃるんですか。
  61. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私も防衛庁でございませんので自衛隊法それ自身に精通しているわけでございませんけれども日本の自衛隊それ自身憲法及び自衛隊法の制約がございますので、その限りでは通常言われます海軍とは違うというふうに考えております。
  62. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 海軍と違うものが、よその海軍と合同演習するということがあり得るんですか。
  63. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ですから、名前が異なる部隊であっても今回の訓練それ自身に参加するのは支障がないであろうというのが防衛庁の判断でございまして、また私たちも、海上自衛隊の練度の向上ということであって、それが何らその他の政治的な目的あるいは集団的自衛権の行使というものにつながらないという前提で、防衛庁考え方にも賛成しているわけでございます。
  64. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 名前が違っていても一内容は同じだと、これはそうするとどろぼうか盗人かというだけの話ですよ。そういうことになるでしょう。名前は違っておっても内容は同じだと、このようにお認めになるわけですね。
  65. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま私の申し上げましたのがそういう誤解をお与えしたとすれば大変申しわけないのでございますけれども、リムパック80に参加することによって日本の海上自衛隊の性格が変わっていくというふうには私たちは理解していなかったということを申し上げただけでございます。
  66. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 海上自衛隊のたてまえがどうあろうと、アメリカの海軍と合同演習をしたということは間違いない。その内容は、たとえば空母コンステレーションを護衛をするような形でもって艦隊運動が行われたというふうにも伝えられておりますが、これは言いかえればアメリカ海軍の用心棒的役割りをこの演習で日本の海上自衛隊が果たしたんだ、このように見られるのではないかということを先ほども質問いたしましたが、その点、ずばり言ってどうでしょう。
  67. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私ども防衛庁から聞いておるところによりますと、練度向上のためのアメリカの海軍との協力といいますか、これは従来からしばしば行なわれてまいったと聞いております。ハワイに日本の海上自衛隊が参りましていろいろな技術的な訓練をアメリカの協力を得てやってきたということを聞いておりますので、その意味ではアメリカの何といいますか先棒を担ぐとかそういう意味ではなくて、日本の海上自衛隊の能力を技術的に向上するためにいろいろなことを習いに行くという性質のものだと私どもは了解しておるわけでございます。
  68. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 外務大臣の話を聞いてみると、この演習、何か消防団が河原へ演習にでも行くような話をしておられるけれども、実際はそんなものじゃないでしょう。海軍の演習でしょう。練度の質的向上を図るということだけなら海上保安庁が参加したっていいわけだし、商船大学の帆船が参加したって同じようなことになるわけですが、そういうものじゃないと思うんですね、これは。明らかにアメリカ海軍の演習に日本の海上自衛隊が参加をしている。ということは、日本の海上自衛隊は海軍という性格を持ってアメリカ海軍との合同演習に参加したというふうにみなさざるを得ないと思うのでありますが、その点はどうなんでしょう。
  69. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その点は先ほど来政府委員から申し上げておるところでございますけれども、今回の場合もあくまでも戦術技量の向上ということが目的である、集団的自衛権という問題にかかわらないということを防衛庁からもアメリカ側に事前によく確かめた上で参加することになったと承知いたしております。ですから、そういった意味では特別に問題にならないというふうに一応外務省としても判断したわけでございます。
  70. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 特別に問題にならないという言い方は、ごまかしだろうと思うんですね。アメリカの海軍が中心になって、ほかの国の海軍と一緒に日本の海上自衛隊が参加をしたということは、明らかに海上自衛隊が海軍という性格を持ってこれに参加をしたということにならざるを得ないし、おまけに集団自衛権の行使とは違うと言うけれども、これだけまとまって艦隊運動が行われている。しかも、その内容についてはシナリオが明らかにされていない。つまり、秘密のうちに行われているということは軍事演習であるというふうに見るのが常識なんです。単なる練度の向上であるというふうに、問題にならないという見方をすることの方がどうかしておるわけですね。しかし、その点はあくまでも政府立場からするとごまかさなければならないから、いまの政府委員のようなおかしな答弁が出てきたんだろうと思いますから、同じことを繰り返してもしようがないからほかの問題についてちょっとお聞きします。  防衛費の増額について米国要請があった、一体何のために何を増額せよということをアメリカが言ってきたのか。これは外務大臣自身が行ってこられたことでもあるし、それからさらにこの防衛費の問題についていろいろと中期業務の見積もりの達成繰り上げといったようなこともございますけれども、これらの点について外務大臣としてはどのようにお考えになっているんでしょうか。
  71. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先般訪米いたしましたときにブラウン国防長官との会談がございまして、その際ブラウン長官から、最近の国際情勢その他を考え日本が自衛力の増強についてより一層の努力――まあ具体的には、着実かつ顕著な防衛努力をしてもらうことを希望するという言い方であったわけでございます。私の方からは、日本の持っております平和憲法、専守防衛というたてまえのこの大枠は崩すことはできない、この基本的な枠の中で日本としても着実な防衛努力は続けていくつもりでございますということを申したわけでございまして、その際に先方から、防衛庁でつくっております中期防衛見積もりについて触れまして、この防衛庁の持っておる計画を一年程度繰り上げることばできないものだろうかという話もございまして、これは本来日本政府全体、特に防衛庁防衛当局考えるべき問題であるから、そういうお話があったことは東京に帰ってそれぞれ総理大臣防衛庁長官にお伝えしますということであったわけでございます。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 何のために何を増額せよということをアメリカ側は言っているのかということなんです。
  73. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この国際情勢として、一つは極東におけるソ連の近年の急速な軍事力の増強、あるいは北方領土における軍事的な施設の開設、それから特に極東におけるソ連の海上兵力といいますか、これが急速かつ大幅に強化されておるそういうような情勢、それからアフガニスタンの情勢をめぐりまして中東における緊張の増大、それからさらにアメリカ国内といたしましては、財政上非常に困難な状況で、インフレ対策のために財政の大幅な緊縮をやる、その中で防衛費は五%実質増加ということを続けることになっておるのであるけれども、そういう情勢があるというような説明がございまして、どういう分野ということになりますと、日本を守るために、日本自身を守るための必要として、特に対潜対空等の防御能力をふやすということが希望される、大体こういう趣旨でございました。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いま大臣が言われた言葉を要約してみると、ソビエトの軍事力に対抗するためである、ソビエトの極東海軍の兵力に対抗するためである、特に対空対潜の装備を強化をすることである、こういうことに尽きるわけです。  そうすると、先ほどのリムパックの問題も、これは考えの中に入っていることは、ソビエトとの戦争ということを考慮に入れた演習であるということになってくるわけだし、そのリムパックで日本の海上自衛隊が果たした役割りはアメリカ艦隊の護衛である。つまり、平たく言うならばアメリカの軍艦の用心棒を日本の海上自衛隊に求めたものであるという結論はごく容易に出てくるわけです。しかも、いまのアメリカ側要請というものを具体的に分析をしてみれば、米ソの対立の中で日本も応分の役割りを果たせ、こういうことになってくるのでありますが、その点は日本自身の問題であって、米ソの問題を日本が肩がわりする義理はない、こういうふうに思われるのでありますが、外務大臣としてはそれらの問題についてはどのように対処されるおつもりなんでしょうか。
  75. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本としては、戦後の日本の行き方として、平和憲法のもとで自衛隊も専守防衛という大きな枠の中でその役割りを考える、この方針は変わってないし、変わるべきでないと思いますが、そういう専守防衛という立場の中で日本側としてできることをやっていくということであろうと存じますし、アメリカ側日本側基本的な条件は十分理解しておると思います。直接の担当のブラウン長官その他の人たちは十分に理解しておると。もちろん新聞あるいは議会筋等にそういう日本の持っております基本的な性格について必ずしも十分な理解を持たないでいろいろ評論をしておるという場合ももちろんございますけれども、しかし、当局者はいまのような日本の事情を十分理解しておると思うわけでございます。  それで、日本の領土、領海が第三国、他の国からの武力攻撃を受けた場合には日米安保条約の第五条が発動いたしまして、日本アメリカが協力して日本の領土あるいは日本国民の防衛に当たるというのがこの日米安保条約でございまして、共同で当たる場合には共同の行動をしなければならない場合が起こり得る。私どもはそういうことが絶対に起こらないことを願っておるわけでございますし、また、この日米安保条約の存在自体が一つの大きな抑止力として働いて、日本が直接武力攻撃を受けるようなことは恐らく起こらないだろうと思うわけでございますけれども、しかし、万一の場合に備えるということであれば、日米間に安保条約の効果的な運営という意味を含めて協力関係を維持していくということは日本国民の安全を守るという意味でも必要なことだろうと考えておるわけでございます。
  76. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ソ連の軍事力とかあるいは北方領土における軍事施設あるいは極東海上兵力の強化ということがアメリカ側から指摘をされたようでありますけれどもアメリカ自身日本の本土に軍事基地を多数持っているわけです。これはソビエトに対抗するために日本の軍事基地というものを利用するようになっているというふうに思われるわけです。したがって、ソ連の極東における海上兵力を強化するといったような問題あるいは北方領土における軍事施設等の問題は、日本に対する侵略の危険性があるというふうに見るのが本当なのか、米ソの間の一つの問題と見るのが本当なのか、どっちなんでしょう。
  77. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日米安保条約に関する限りは、日本外国からの武力攻撃があった場合に共同防衛をするというたてまえでございまして、これは先ほど申しましたように日本に対する外からの武力侵入、武力攻撃を抑止するという意味で重要な働きをいたしておるのだろうと思います。
  78. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 極東海上兵力が強化されているとか北方領土に軍事施設があるとかいうのは、日本に対して防衛費を増額をさせるための一つの口実として用いられているという気がするわけであります。しかし、極東におけるソビエトの軍事力の強化ということは、極東における米軍の軍事力の強化と決して無関係ではないわけです。米軍が強化をすればソビエト軍だって強化をするということになるだろうし、これはお互いにエスカレートしていくということになると思うのであります。  したがって、武力でもってソビエトと対抗をするという意識を持つということはきわめて危険ではないか。やはりアフガニスタンといったような例を見るまでもなく、日本防衛というのは外交に頼らざるを得ないというふうに私は思うわけなんです。その外交努力というものを抜きにして中途半端な武力でもって抑止力になるというふうに判断をすることはきわめて甘いと思うのでありますが、外務大臣はその点アメリカからの要望に対してどのような感覚を持っておられるのか、どのように対処しようとされておるのか、その点もお伺いしたいと思います。
  79. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本に安保条約に基づきまして米軍の基地が置かれておるわけでございますが、最近の極東の情勢アメリカがそういう基地を強化したということは余りなかったわけでございます。御承知のようにニクソン・ドクトリンも出まして、ベトナム戦争中ないし戦後にかけまして、むしろ米国は極東における軍事的な力、プレゼンスを減らしていくという方向がとられておったと思うのでございます。  それに対して、その間、同じ期間にソ連が極東の軍事力を急激に拡大していったということは、これは客観的事実だと思うのでございまして、アメリカが極東における軍事力を強化したからソ連が受け身で極東の軍事力を強化したということではない。ちょうど逆といいますか、アメリカがだんだんそういう力を弱めるといいますか、むしろ軍事的プレゼンスを下げるような状態のもとでソ連の強化が行われた。そういう意味日本自身の安全というものを、特にアフガニスタンの場合のように第三国、これは非同盟という立場でありますけれども、に直接武力介入をするというケースが目の前に起こったわけでもございますし、そういう情勢を踏まえて日本国民の将来にわたる安全を図るという立場から言えば、むしろ防御的な形での最近の動きであろうかと考えるわけでございます。
  80. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 ソビエトが軍事力を強化したから、だから日本防衛予算をふやしなさいというのは、これはアメリカ側の言い分なんですね。それが本当かどうかというのは、のぞいてきたわけじゃないんだからわかりゃしないですよ、これは。ソビエトに言わせれば、そんなことはないと言うかもしれない。だから、どっちの言い分が本当なのか、その点はこれは両方との外交関係がしっかりしていないと本当のことはわからないわけですね。  ただ、日本外交姿勢というのは、特にアメリカに対する外交姿勢というのは、金魚のふんのような役割りを今日まで果たしてきている。アメリカという金魚の後にくっついて回るというだけだったのです。いままではそれでよかったかもしれないし、あるいは、よかったというよりやむを得なかったのかもしれないけれども、事が防衛努力、軍事予算ということになってまいりますと、アメリカの言うとおりにGNPの一%を超えてなおかつ防衛力を増強しようとすれば、日本はそれだけ切り詰められた財政事情の中で国民の福祉面を犠牲にするか教育面を犠牲にするか、いずれにしても日本の国民生活そのものを犠牲にするという形でなければ防衛力強化するということはできないわけなんです。その点は日本国民自身の判断によることであって、アメリカ側がとやかく指図をすべきことではないと思う。その点は今後とも日本政府態度として毅然とした態度をとららなきゃいかぬと思うのでありますが、その点について、外務省がこれは中心になることでありますから、外務大臣としてどのような考え方をお持ちになっているのか、きちんとさせていただきたいと思うのです。
  81. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 第一に、アメリカ側から、GNPの一%を超えて日本防衛支出をふやせということは、いまだ一度も言われたことはございません。もちろん防衛努力をいかにするかということは、日本国民のコンセンサス、それから国際情勢あるいは財政経済の事情、こういうものを踏まえて、日本自身が、日本政府自身が自主的に決めることは当然だと私ども考えておる次第でございます。
  82. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 武力でもって日本を守ろうといったような考え方に立つと、昔はそういう言い方が通用したんでありますけれども、いまの日本立場からすると、武力でソビエトと対抗しようということを考えれば、GNPの一%、二%にしたくらいでは、あるいは三%にしてもこれは追いつかないだろうと思う。かつての日本がソビエトに対して軍事的にかなりの威力を持っていたというのは、満州とソビエトの国境に関東軍という精鋭部隊を配置する、朝鮮にももちろん日本の軍隊が配備されている、千島列島から南樺太に至るまで日本の軍隊が配備されている、いわばシベリア沿海州をはさみ込むような形でもって日本の軍隊が配備をされていたわけです。  ところが、いまそういったような形でもってソビエトに対する抑止力を求めようとしてもそれは無理な話です。幾ら中国がソビエトと仲が悪いからといって中国の領土となっている旧満州領に日本が陸上自衛隊を配備するなどということはできない相談だろうし、朝鮮半島に至ってはなおさらできない相談である。そうなってくると日本列島の中に、たとえば北海道に何個師団、九州に何個師団といったような兵力を配備してみたところで、それがソビエトに対する抑止力といいますか、いわばおどしになるというふうには考えられない。このような事情の中でもしも日本が武力を増強するということになれば、相手に対する口実を与えるだけであって、実際問題としては自己満足にしかすぎないというふうに思われるわけです。  したがって、今後の日本防衛というのは外交努力にどうしても依存せざるを得ないんじゃないかと、こういう気がするのです。外交努力なくして自衛隊の質的あるいは量的な向上によってソビエトに対抗するなどという考え方は、これは身のほど知らずと言わなきゃならぬ。しかし、その点外交努力というのは米ソいずれの国にも偏らないという形でないと迫力を持たないわけでありますけれども、果たしてその点について外務省としてはどのような立場をとって相手を説得するだけの態度を示し得るのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  83. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本の安全ということが一番基本でございますので、別に日本がソ連に対して脅威を与えるというようなことば必要もないし、絶対にやるべきことではないと思うので、むしろ外からの武力攻撃とか、外から仮に日本の国土に上陸してくるというようなことが、万万一ないと私どもは存じますけれども、万一あっても、これは大変引き合わない、外から入ってくる方が非常な損害を受けるというような状態があれば、これは先ほど八木委員からもお話がございましたけれども、それが無言の抑止力になって日本の国民の安全が守れるという意味があるように考えるわけでございまして、それにどのくらいのコストがかかるか、これは防衛庁の専門家の御判断によらなければならないわけでございますけれども、その程度のことが日本経済力なり日本の技術力からいってとうてい不可能なことだとは私ども考えられないわけでございまして、とにかくそういう意味での抑止力といいますかが一つ重要だと思いますし、もう一つは、日米安保条約がございますれば、これは日本に対する攻撃というのは米国に対する攻撃とみなすわけでございまして、そういう日本の基地なり何なりを攻撃する相手は全面的に米国との戦争に入るという覚悟がなければできないわけでございまして、これもやはり大きな抑止力として働いてきておるし、これからも働くのではないかと考えるわけでございます。
  84. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 日本に対する侵略というようなことは万々一ないというふうに自信を持たれるならば、アメリカ要請にこたえて着実かつ顕著に防衛力を増強する努力ということを約束する必要もまたなかろう、こういうふうに思うわけなんです。  GNP一%以上ということは言ってないとおっしゃったけれども、具体的に話が進んでくればGNPの一%を超すのか超さないのかという問題にならざるを得ないと思う。着実にというふうな程度の言い回しであれば、これは言葉の上だけの問題でありますから具体的でありません。しかし、話が具体的に進んでまいりますと、防衛庁よりもまず外務省アメリカとの間の窓口になるのが筋だと思うんでありますから、この窓口になる外務省アメリカ要請をそのままストレートに入れるというようなことになりますと、いやおうなしにGNP一%を超えるという問題も出てこないとも限らないし、また日本財政規模の中でかなり大きな比重を防衛力自体が持って、かつての日本のように軍事力がひとり歩きをするというようなことになったのでは、これはえらいことになるわけです。そういうふうにしないためには、外務省自身が毅然とした態度をとって、アメリカ要請に対しては、こたえられないものはだめだ、ノーと言うだけの識見がなければいかぬと思うのでありますが、その点お伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  85. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御指摘の点、私ども日本自身を守るということが、軍事大国とか、そういう財政上に防衛支出が非常に大きな比重を占めるというようなことは、これは絶対あってはならないというふうに考えるわけでございます。そういう点でも、たとえば着実かつ顕著にという先方の話がございましたけれども、着実にはやらなければならぬかもしれぬけれども、顕著というのは無理ですよということを今回もはっきり申し上げたわけでございまして、自主的にこの問題に対処してまいる、すべては日本国民の安全をどうしていったら一番よく守れるかという根本から考えてこの問題に対処してまいる必要がある。そういうふうに考えておりますので、御趣旨の点も十分考慮していかなければならないと存じております。
  86. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) 以上をもって瀬谷英行君の質疑は終了いたしました。  次に、渋谷邦彦君の質疑を行います。渋谷邦彦君。
  87. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ちょうど四日前の外務委員会におきまして、大来さんの訪米にかかわる諸問題について若干お尋ねを申し上げました。    〔主査退席、林ゆう君着席〕 その中で特に大きな国民的関心事と申し上げれば、いまも若干話題になったようでございますが、日本防衛費の負担についてアメリカ側としては日本に対する期待感というものが非常に大きい。ただ、そのときの御答弁をいまずっと記憶をたどりまして思い起こしているんですけれども日本日本として財政の問題があり、また日本国内世論というものがあり、憲法というものがある、そうした点についての話し合いがなされて十分に理解を示してくれたと、こういうふうに結論的にはお伺いをしたような気がしております。  ところが、あの委員会が終わったその翌々日ですか、ブラウンがまた発言をしているんですね。新聞報道というものについては外務省も時折抵抗を示す場合がおありになるようでございますけれども、一国を代表する高官が声明なり要望、あるいは記者会見を通して談話を発表するということになりますと、相当オーソライズされた内容であろうと私は判断をせざるを得ない。またしも追い打ちをかけるように、防衛努力と申し上げた方がいいのか、あるいは防衛費負担というもののアメリカ要求アメリカ側の期待に日本としては十分こたえられるだろうという、これは願望なのか、あるいは押しつけなのか、その辺の判断というものは非常にむずかしいだろうと私は思うのでありますけれども、せっかく大来さんが向こうへ行かれていろいろと隔意ない話し合いをされたにもかかわらず、なおかつアメリカとしてはそういう希望を捨てないという判断をせざるを得ないわけです。その辺のアメリカ側の気持ちというものが、今回訪米されましたときに十分なされたその話し合いで決着が――決着といいますか、日本の実情というものを十分理解していただくための話し合いがされたのか、まだ若干残されたのか。その辺、私自身としては疑問が出てくるという状況でございますけれども、もう一遍その辺の経過、おわかりになる範囲で結構でございますからお答えをいただきたいと、こう思うわけです。
  88. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま渋谷委員がお話しになりましたそのブラウン発言というのは、たしかアメリカの上院外交委員会での証言であったかと思いますが、私もあれの特に日本に関する部分は原文でも見てみたわけでございますけれども、この前訪米のときのブラウン長官との会談内容と違ったところは余りないというふうに印象を受けたわけでございまして、もちろん日本側に対して、前回も申し上げましたが、着実かつ顕著な防衛努力の増強を希望するということは言っておりますわけでございまして、その希望が基本的にアメリカ側に存在することは事実だと思います。  ただ、ブラウン長官日本憲法その他に関する問題、この間の上院外交委員会の発言でも、日本憲法上の制約というのは自分は心得ているのだということを繰り返しまた発言しておりますけれども……。  ちょっと、いま混線いたしました。これはバンス長官の発言でございまして、ブラウン長官の発言ではございません。ただ同じく米国政府のこの問題についての発言でございます。  私、ワシントンブラウン長官との話し合いの中でも、自分たちはそういう日本憲法上の制約ということもよく承知しておる、それからこの問題は日本国民自身が判断して決めるべきであるということも十分承知しておる、それから専守防衛ということもわかっておるんだ、ただ、専守防衛の枠内でも自本側でもう少しやれることがあるのではないかというのがわれわれの考えだということでございまして、その後私、帰りましてから、特別にまたブラウン長官からそういう趣旨と変わった発言があったということは承知しておらないわけでございます。
  89. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 私も記憶違いで、バンスをブラウンと間違えたのは訂正いたします。  ただ、私、しつこいようでございますけれども、そうした問題が繰り返され、上下両院でもって証人というか参考人としてバンスなりブラウンなりが呼ばれて、なおかつその姿勢を崩さないというその背景にあるのは、アメリカ側としての強い願望なのか、それとも従来しばしば言われてきておりますように、安保ただ乗り論というものをこの際日本としても何とか整理する段階に来ているんだから、当然の要求としてこれは日本にやってもらわなければ困るという強い要求なのか。まずこの二つのうち一つに、どっちかに分かれてくるんじゃないかという感じがいたしますが、その辺は今回大来さん行かれまして、どちらの感触が大変強うございましたか。
  90. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これはブラウン国防長官も言っておりましたが、自分が毎日議会と言論界に繰り返し質問を受けておることは、西欧なり日本なりアメリカの友好国が自己の防衛について同様の努力を払っているのかどうか、そういうことをしょっちゅう聞かれておるのだという話をしておりましたので、国内でいわばただ乗り論的な圧力が相当強いことは十分想像されるわけでございます。しかし、直接の担当の政府首脳部でございますし、結局、具体的には中期防衛見積もりを一年程度繰り上げることは期待できないんだろうかというようなことでございまして、これは日本財政事情その他から見てきわめて困難なことであると思われますのですが、アメリカ側としても、いろいろな日本国内事情を考えて、余り無理な要求をしてもそれは実行不可能だろうというような意向も同時にあるのであろうと。国内の圧力は相当強いけれども、しかし、そういうものを直接日本にぶつけることはかえってプラスにはならないという判断が当局者の気持ちの中にはあるのであろうかという印象も受けたわけでございます。
  91. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 私は、いろんなその議論あるいは発想というものが成り立つんだろうというふうに思うんですけれども、端的に申し上げまして、ソビエトという当面警戒をしなければならない大きな勢力があるということはこれはもう常識でございますね。単なる米国内における世論というものの盛り上がりというものが日本に対する云々ということよりも、自由主義陣営の一翼を担う日本が当然その共同防衛というものに当たらなければならないだろうし、これがまたアメリカの言う、あるいは考えるところの世界戦略の一環に通ずる道ではないだろうかというのが、どう考えてみても私は一つの筋道ではあるまいかというふうに判断をされるわけなんです。その判断が果たして誤りかどうかわかりません、これから五年先、十年先、二十年先たってみませんと。  ともあれ、いま申し上げましたように、上下両院が大変執念深いと申しましょうか、言葉があるいは過ぎるかもしれませんけれども日本における防衛力の増強、防衛努力、あるいはそのための防衛費の負担、しかも忘れたころじゃないんですね、忘れないうちに追い打ちをかけるようにしばしばこれが話題にされる。したがって、そこでバンスもブラウンもそれに対する答弁を率直に開陳をしなければならない。開陳していることは、日本の実情というものを十分理解しつつもということは一応私どもも納得はいたしますよ。しかし、その心のうちにアメリカ政府としてこうしてもらいたいという強い願望なり要求というものがなければ真っ向から否定してよろしいんではないかと私は思うけれども、同じような議論が繰り返し繰り返し続けられて、またぞろ日本は少なくともGNP一%の防衛費負担はできるであろうという期待を込めたそういう答弁をしているというこれ自体がどうもなかなか整理できないんですね。その辺どんなふうに大来さんとしては整理なさっていらっしゃいますか。
  92. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) アメリカ側の希望と申しますか、それと、日本側がやれること、やれないこと、この問題についてはまさに日本国民の自主的な判断というのが非常に大切な問題だろうと思います。単にアメリカ国内にそういう希望なり期待が非常に強いからといって、それじゃ日本もというわけには簡単にいかない問題だと存じます。  日本防衛力が余り大きくなるということに懸念を持つ国々も、たとえば東南アジアの国々を考えましても、何しろ周りはわりあいに貧しい国でございますし、仮にGNPの〇・九%と言いましても、絶対額で言えば百億ドルにもなる防衛支出でございます。そういう点についてはアメリカ国内にも、日本が余り軍事的に強大になることは極東におけるいろんな意味でのバランスを崩し、不安定な要因になる危険もある、こういう逆の見解もあるわけでございまして、この辺のところは日本の主体的な判断で、結局、国民のコンセンサスのもとで判断し行動していかなければならないのじゃないか。  一つむずかしい点は、日本経済力が伸びてまいりまして、鉄鋼とかエレクトロニクスとか、最近は自動車とか、こういうものがアメリカの市場に急速に流れ込んでいく。それと防衛費の負担が軽いということを結びつけて議論するアメリカ人も相当多いわけでございますが、これについては別物だということで先方の納得を得る、根気よく対話のチャンネルを持っていくよりほかにないのではないかというような印象を持っておるわけでございます。    〔主査代理林ゆう君退席、副主査着席〕
  93. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまこの話を詰めようと思っても、日本には日本立場があり、アメリカにはアメリカ考え方がある、恐らくすれ違いみたいな感じを受けるのですね。ただ、日本としてもこのままアメリカ要求をいつまでも断れる状況にあるのかというのが一つ考えられます。  それからもう一つは、いまアメリカがしきりに防衛費の負担をGNP一%あるいは一%以上にしてもらいたいというのは、願望にしても結構でしょう、一体日本に対して兵力の増員を願っているのか、あるいは米軍の現在の軍事基地というものをもっと強化するという方面に日本防衛費負担をかけてくれというのか、あるいは兵器自体に、しきりに防衛庁筋あたりも質的な向上を図っていかなきゃならぬというその面に金をかけてくれというのか。われわれはその専門家じゃございません、軍事専門家じゃありませんけれども、大体常識的に考えますと、その辺に集約することができるのではないだろうか。  たとえば、兵力について考えてみましても、日本のかつて五、六千万の人口ぐらいのときに平時編成が陸軍で十八万五千だったですよ。長い間それは続きました。現在自衛隊の陸上の場合たしか大体十八万五千ぐらいの規模でございましょう。確かにこの日本のこれだけの国土、しかも一億一千万を超えたこの国民を守るためにそれで十分その手当てができるかというと、軍事専門家から見れば、これはもうナンセンスだということになるだろうとぼくは思うのです、兵力の面を考えましても。それから兵器の点を考えましても、なかなか防衛庁の方では、質的な向上を一体どこにポイントを置いてやるのかということについても口を閉ざしてそれは言われません。それは言う必要もないかもしれない。  しかも、そのときには必ず相手があって、それに対応するバランスのとれた力というものを保持しなければ、兵器の数をどんなにたくさん持ってもこれまた何にも役に立たないということになりましょう。あるいは現在沖繩を中心とする米軍基地というものは、果たして現在スクランブルを初めとするいろいろな緊急事態が起こったときの状況というものに沖繩だけで対応できるのかどうなのかといういろいろな問題がまだ疑問として残る。その残った疑問を解消するためには、防衛費というものをもっと増加をして、その辺の手当てというものをもっときめ細かくやってもらいたいというそういう意図があるのか。アメリカ側が主張しているGNP一%上げてくれという意図は一体どこにあるのか。これは一%一%としきりに言われてもう時久しいわけでございますけれども、それが全然明確になっていないわけです、はっきり申し上げて。  その辺を大来さんが訪米されたときに一体どういう話し合いをなされたのか。しかし、それもなおかつ先ほど来の御答弁にありましたように、また先般の外務委員会で御答弁を伺いましたとおり、日本の事情というものはいろんな歯どめがありますので、できないということで納得をしてもらったのか。その辺あるいはもうすでに他の委員会においてこういった発言もなされたであろうと思いますけれども、きょうはそういうことを私自身としては再確認をさしていただきたいということでまたあえてそのことをお尋ねするわけです。
  94. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 防衛の具体的内容につきましては、これは防衛庁の所管の問題でもございますし、今回の会談でもそういう内容に余り立ち入った議論はいたさなかったわけでございますし、米側も今回一%に上げてくれという言い方は全然いたさなかったわけでございます。  全体の問題としては、特に対潜対空能力、その面での自衛力の強化が望ましいということが一つと、それからもし可能であるなら在日駐留米軍の経費の分担をさらに増加してもらえればありがたい、大体この二つに集約できるかと思いますし、内容的な問題――きょうは防衛庁は来ておられるんでしょうか。
  95. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これはまたあしたやりますからいいです、防衛庁は。
  96. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) そうですか。  向こう側は、内容的な問題については、自分たち防衛庁のつくった中期見積もりというものが大体結構なものだと評価しておりますという言い方でございました。
  97. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かに、防衛力整備というものの計画を立て、それを遂行するという当事者は防衛庁だと私は思うんです。   〔副主査退席、主査着席〕 しかし、対アメリカという関係になりますと、外務省が、何といいますか、全然つんぼさじきに置かれているという立場じゃないはずだと私は思うんです。先ほども申し上げたように、バンス国務長官ですらも上下両院に呼び出されて証人喚問を受ける、そしてその中で具体的な日本に対する要求というものはこうあることが望ましいということを言っているわけですね。ですから、外務省というのは立場が違うからそれは全然違うんだというわけには私はまいらぬと思うんです。恐らくこれはもう少しく時間の推移に伴ってあるいはもっと具体的なそういう動きというものが出る可能性が、将来において、ごく近い将来においてあり得るんではないだろうかなという予測が感じられます。  そこで問題は、アメリカがそういうことをしきりにもうずいぶん長いこと、願望なら願望で結構ですよ、示してきましたね、日本に対して。それをさまざまな事情によってできませんと、これをどこまでも突っぱねるだけのことができるのかどうなのかという問題がもう一つひっかかってくるんです。そうでなくても先般来、遠くは繊維問題から始まってスチールの問題もありました。最近では自動車の問題がある。何らかの形で国内世論が凝縮された形が日本に対するいやがらせといいましょうかね、報復とは言いたくないんです、もちろん。報復ではなくしていやがらせ、どう考えてもそういうようなそぶりというもの、言葉をやわらげて申し上げればそういう傾向がアメリカ側にしきりに見られる。それはこの間も私が外務委員会で申し上げたように、アメリカはやはり当面の問題としてソビエトというものを意識する。それは警戒を厳重にしなきゃならぬ、バランスが崩れたらどうなるんだろうかというわれわれが想像する以上の危機感を持っているがゆえに、何としても日本を自由主義の陣営だからその範疇に取り込んで、そして防衛の一翼を担わせよう、それができなければとんでもない話だということになるのは、これは恐らくきわめて純粋なアメリカ国民の感情であろうか。  だからその辺の、いやがらせになるのか報復手段になるのか、日本はどこまで行っても憲法では制約がありますよ、日本財政上これは許しませんよ、国内世論はそういう方向へ向いておりません、したがってごめんこうむりますよということで、どこまでもこれが押し通せるというような御判断をお持ちになっていらっしゃるのかどうなのか。もし持てないとするならば、これは恐らくそんなに持てないと思うのです、アメリカだってしびれ切らすのじゃないかと思うのですね。その場合にどういう一体対応というものが考えられるのか。そうすると防衛費のやっぱり増加を図る以外にないのかなというそこへまた帰着せざるを得ない。この辺はこれはもうすぐ起こってくる私は問題だと思うのです。私からあえてそれは常識めいたことを大来さんに申し上げなくたって十二分に承知をしておられる問題だとぼくは思うんです。しかし、日本もこれは手をこまねいて傍観できないという立場にありますがゆえに、あるいは国民もこれからの展望というものが一体どうなっていくのだろうかということに最大の関心を示している。その場合に政府の一つの方向というものが明らかでないというところに不安感を持たないでもない。こういったことを集約してもう一遍その辺は確認をしておかなければならないのではないかということでいまお尋ねをするわけです。
  98. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは基本的にいま渋谷委員の御提起になった問題は、世界の中における日本の行き方というような根本問題にも関連してくると思うのでございますが、確かにアメリカ国内にある程度のこの問題に関連しいら立ちがございますし、また将来もそれがかなり繰り返し出てくるだろうということは私どもある程度予測いたしておるわけでございます。そうかといって、日本国民、日本政府立場としてのめることとのめないことがある。  一つは、アメリカからの要請ということを別にいたしまして、日本人自体が国際情勢なり日本国民の安全というものをどうとらえ、どう主体的に対応していこうかということがやはり基本になるわけでございまして、その判断の上に立って日本政府の行動というものが決められていくように思うわけでございまして、それはアメリカ側からくる自由諸国に共通する点、これは守るに値する価値であるということは、アメリカあるいは西ヨーロッパ、日本等がそういう価値であるとするなら共同で守るべきではないかという考え方も、当然アメリカ側に御指摘のようにあるように思いますが、その全体の成り行きといたしましては、日本の国民自体の自国の安全についての考え方が今後どういう方向に向いていくのか、他方においてアメリカ国内情勢についての情勢判断、理解というものも必要でございますけれども、この問題については基本的にやはり日本国内の動きを土台にして決めていかなければならない。その限度としてできることは着実にやっていく。その着実にやることを土台にして、アメリカ側にいろいろなイリテーション、いら立ちがあるにしても、それを日本側としても繰り返し繰り返し理解を進めるための努力を続けていくということ、結局それ以外には方法がないように考えておるわけでございます。
  99. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かに、私がこうして申し上げることは、一面から見れば大変簡単なことかもしれません。しかし、事実問題あるいは現実問題を考えてみた場合に大変むずかしい。先般も私申し上げたように、恐らく北方四島というのはソビエトの基地化から要塞化への方向に向かうでしょう。これは時間がかからない。そういった背景というものを考えてみた場合に、アメリカ日米安保体制の枠組みの中で、あるいはグアンタナモ基地と同じような考え方の上に立って、あるいは北海道のどこかの地域にそれに対抗し得るものを考えないでもない。これはあるいは素人の勘ぐりかもしれません。しかし、戦術的に戦略的に考えてみた場合に、先ほどもおっしゃいましたね、備えあれば憂えなし、昔からの日本の古いことわざでございますけれども、確かに備えあれば憂えなしに違いないんですね。力の均衡というものが戦争抑止力だということがまかり通っている今日でございますれば、もう勢いそこにエスカレートせざるを得ない。  したがって、私はあえて軍縮問題を、大変厳しい環境でありましょうけれども、総括質問のときにもそれを取り上げた。言うべくしてなかなか進まないかもしれない。ならばというので今度は逆の方向へ持っていかなくちゃならぬ。これだけ資材や物資が人を殺すためにむだに使われるなんということは、もういかんせん、だれが考えたってこんなばかばかしいことが許されているという現実はきわめて私は遺憾だと思いますが、そんなことをいま言うてみたところでせん方ないわけですから、現実にどう対応するかという問題をもっと真剣に考えなくちゃならぬだろうということであります。  それで、そういう一方においては、ソビエトは南下政策というものを何百年という長い間彼らの方針として、いまでもなおかつ、あるいはきわめて原始的な考え方かもしれません、しかしそれをとり続けている、これは現実ですね。アフガンの問題を見るにつけてもそうでございましょう。そういう中に日本というものが置かれた立場というものは一体現在の防衛力で、それは専守防衛結構だと思いますよ、鎧袖一触という言葉がありますね、一日で日本の国はいまの状況の中ではつぶれてしまうだろうと私は思うんですよ。アメリカ日米安保体制の中で日本が襲われた場合に必ず共同防衛としての責任を果たす、それはそのとおりだと思うんですよ。けれども、過去においてはベトナムの例があります。あれだけの戦力を持っているアメリカが撤退をしなきゃならぬという実態がありますよ。だから、これらをどう一体日本外交としてこれから整理をしていかなきゃならぬのか、これはきわめて重大な問題だということは論をまたないと私は思うんです。  この問題をやっていますと残余の問題ができなくなってしまいますので、関連しながら申し上げていきたいと思うんでありますけれども、いずれにしても、いま大来さん御自身としては、心中いろいろとお考えになっているお気持ちというものはなかなか吐露できない面が私はおありになると思うんです、この間訪米された際において。これはなかなか容易ならぬことだ、果たして今度大平さんが訪米されるときに一体いかが相なるんであろうかという御心配もおありになるんではないかというふうに御推測申し上げます、はっきり申し上げて。相当強烈なことをカーターあたりから私は呼びかけが出てくるんではないだろうか。したがって、その辺をよく最大公約数として日本の現状を踏まえて、できることは、これとこれとこれはできるんだ、これは本当に全くできませんと、あいまいであっては私はいけないと思うんです。その辺がわかったようなわからないような、だれが聞いても何なんだろうなあという、この方が私は不安感を助長することになりはしまいか。大来さん御自身の御答弁というのは日本国じゅうに対する波紋というものが大変大きいだけに私は非常に重要性があると思うんです。その辺をきょうこの問題に対する締めくくりとして、最後にこの問題についての大来さんの所信を伺っておきたいと思うんです。
  100. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本防衛ということについての問題でございますけれども、これはそうもろいといいますか、必ずしもそうでない。とにかく海に囲まれた島国であるということは、いろいろな条件から考えてこの国の安全に非常に大きな力になっている面がございます。それから仮にソ連の問題を考えましても、欧州があり、中東があり、中国があり、一番東の端が極東になっておるわけでございまして、ソ連と日本のGNPはほぼ同じという経済力の規模になっておるわけでございますし、日本の持っておる技術力というのも非常に高いということもございますので、こちらは攻めていく、外へ出る考えは全然ないわけでございまして、もっぱら自分の国を守ればいい、もし万一外からの侵略がある場合に守ればいいということでございますから、そんなに日本国民としてできないような問題では恐らくない。それが抑止力として働くということが日本の安全にとって一番必要だと思いますし、それを超えるような事態が起これば、これは日米安保というものが大きな抑止力として働く。どこの国でも、先ほども出ましたけれども日本にある基地を攻撃するときには、自分たちが原爆を見舞われるという決意を持ってでなければそういうことはできないのじゃないか、全面的な戦争というものを覚悟しなければ日本に大規模な攻撃をかけるということができないという情勢、これはやっぱり一つの大きな抑止力になると思いますし、そういう意味日本の安全を守っていく自衛隊自体の力と、それから先般的な抑止力としての日米安保条約、これをできるだけ効果的なものに維持していく、そして日米安保条約が相互の信頼に基づいて効果的に働き得るということは、日米両国間に、何といいますか、友好的な関係が存在することがやっぱり必要でございますから、先ほど来渋谷先生の言われるいろいろな問題点、その面からも考えてみる必要があると私ども考えております。  そういう情勢全般的なことからいって、アメリカ国内でも極端なことを言う人たちもそれはいろいろいるわけでございますけれども、ある程度日本の事情、世界情勢を深く考えているところでは、日本要求すべきことの限界というものをアメリカ側も相当程度心得ているのではないか。日本の対応がアメリカのそういう余り極端な要求に対してはとうていこたえられるものではありませんけれども、ある程度リーズナブルといいますか、な要請に対しては、これは日本自身の利益のために対処していかなければならない面が多いわけでございまして、そういうことで私としては何とか、日米関係というのはいろいろな局面がこれまでもございましたし、これからもあると思いますけれども、絶えずこれは日米双方努力によって余り厳しい緊張状態、摩擦状態を生み出さないように、何か起こってくればそれを両側で消火活動に努力しながらいまの基本的な経済問題、安全保障問題にかかわっておるわけでございますし、また、これは日本の一方的な利益だけじゃなくて、日本が民主的なデモクラシーの国として、アジアに安定した国として存在することがアメリカ自身にとっても非常に大きなプラスになっておるということは当然のことでございまして、そういう双方の利益のもとに何とかこういう状態で理解、了解が得られる、双方の了解が取りつけられるんじゃないか。  それからもう一方、基本的には世界的な意味でのデタントというものの維持、それを通じて米ソ間の緊張が緩和すれば、その状況のもとにおける日本立場もかなり道が開けるといいますか、やりやすくなりますし、ただ、いまのような情勢で、米ソの対立という問題がございますし、だから基本的にはデタントの線を崩さない。ただ、最近のこの緊張状態にはかなりソ連側の軍事力のビルドアップといいますか、またその軍事力を政治的に使うという行き方、これがかなり緊張の大きな原因になっておる面もあるように思うのでございまして、そういう世界情勢のもとで日本としては日米関係基本的に崩すべきではないと思いますので、いろいろむずかしい局面には遭遇すると思いますけれども、何とかやっていけるのじゃないか。そう言うと楽観的と言われるかもしれませんけれども、また、やっていかなければいけないのじゃないかというふうに考える次第でございます。
  101. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いろいろと御所信を交えた御答弁を伺っておりまして、最後の締めくくりで、きわめて楽観的じゃないか、私も伺っておりまして、せめてそういう気持ちになりたいなといういま印象を受けたわけです、はっきり申し上げて。あるいはこっちの方が深刻になり過ぎているのかどうなのかわかりませんけれども、ともあれ、しかし情勢というものは時々刻々に変化もいたしますし、だれしもが戦争への道を望まないことだけは事実でありますし、またわが党としても日米関係というものを基調にして将来の日本外交展開を図らなければならぬということがこれは基本でございます。ただ、そういう中で、そういうお互いにトラブルが起こるみたいな、そしてまたお互いその基調というものが阻害されるようなことがいろんな点で、やっぱりお互い感情を持っているわけでございますので、いつわれわれが思いがけないところで――戦争なんというのは思いがけないところにもうぱっと突発的に起こるわけでございますから、そのときになってから、ああしまった、どうしようかという、そういうことでは私は間に合わないであろう。  そこで、今日の世界情勢というのは複雑怪奇という別に平沼さんの言葉を引用するわけじゃありませんけれども、この間園田さんが特使として中近東へいらっしゃった。最近いろんな方面に回られた印象を通じての報道が実はなされているわけです。回った印象というものを総括して、それが正しいものである、信頼性に富む報道であるということを前提にして私申し上げたいと思います。  今回、七カ国ですか、八カ国ぐらいのところをお回りになりましたね、サウジアラビアを中心として。ところが、その国々を回ってのまず最初に受ける印象は、ソビエトに対する重大な警戒心であると、こういうふうに実は述べられております。確かにその国々一つ一つを調査をするといいますか、改めて思い直して勉強さしていただきますと、歴史的な経過というものも違いましょうし、現在政権をとっている王制のところもございます。国を支配している中心者の周りには余りにも外国人が多過ぎる。要するに、自国の国民が一人の指導者を助けながら国を統括しているという状況でなさそうであります。いろんな外国人が入っている、エジプト人を初め、あるいはパレスチナ人等々、あるいはパキスタン人、インド人というぐあいに。こういった中で、もちろんいまここで歴史を云々と言うわけにはいきませんけれども、長い歴史の中には、栄枯盛衰といいますか、興亡ただならないものがある。そういう人たちによって時には政府が転覆される、王制が転覆されるということが繰り返されてきた。最近においてまことに象徴的なのが、あれだけ強力な体制を誇ったパーレビ王朝が倒れた。それに対するショックが非常に大きいというものを見逃すわけにいかない。  もう一つは、ソビエトもあれだけの軍事力を持っているわけでございますから、それはどれほど油の埋蔵量があるかわかりません、ソビエトには。しかし、いずれにしても有限な資源である限りにおいては、いつかは枯渇するであろうということは想像にかたくない。そうすると、どこかへ道を求めて油というものを求めざるを得ない。恐らく彼らが考えている一つの大きな魅力ある地域は中近東であろう。これは当然、別に園田さんが行った行かないにかかわらず、われわれはこれもまた常識として判断ができる。そういったぐあいに私たちが想像する以上に恐らく激動しているその状況が今日の中近東であるまいかと思う。  いつだったですか、大平さんの発言を聞いてみますと、中近東はわが国にとっては生命線である。何かどこかでずいぶんいにしえのことがまた復活したような言葉を聞いたことがあるんですけれども、確かにいまわが国にとっては中近東はなくてはならない存在であることは事実。ところが、実際に日本外交を見ておりますと、第九十一国会の冒頭において大平さんの所信表明がされた。今後受動的な外交の対応から主体的な外交展開をしたいと。ぼくは大変感激して、事実このとおりであってもらいたいなと念願をしていた。しかし、事ほどさようにはやはりうまくいってないようであります。  いま、ずっと防衛費の負担をめぐって私いろんなことをまた別な角度からお尋ねをしました。絶えずアメリカの動きというものを気にしながら、それはある意味においては結構だと思うんです。しかし、日本日本として独自の立場で生き行く道を開いていくためには、日本独自の外交展開というものは当然要求され、必要になってくるんではないだろうか。それで、一体中近東においていま日本がなし得るものは、それは技術協力結構、資金供与も結構。それよりももっと政治的な次元において何がなし得るんだろうという問題が、いま中近東においては米ソのこういう第二次の冷戦構造というものがいままたでき上がりつつあろうというそういうさなかにおいて、アメリカも何とか中近東に対しての平和の解決をと願っていても実は全然逆の方向へ向いている。イランの人質問題も依然として解決ができない。恐らくこれからも時間がかかるであろうと思うし、しかもあるいっときは世界の世論が沸き立ちました、人権無視ではないかと。確かにそうでございましょう。しかし、もうなすすべがないわけでしょう。どうすればいいのか。それはシャー自身をイランへ帰したからといってそれで解決できる問題だろうか。そういうことも私は私なりに考えてみた。しかし、それだけでは解決できないもっと根深い問題があるかもしれない、それは米ソという狭間に入った中近東という問題。  そこで、日本として、まだ大変信頼の度合いが強いということを園田さん自身が回った印象としては言われております。その期待感が強い日本としてこれから一体何をなし得るのか。ただ、油だけ欲しいといって今回行ったんではないと、結構だと思いますよ。三木特使が行ったときにもそういうことを言った。あるいは中曽根さんが通産大臣のときもそう言って行った。いかにも表向きはかっこうのいいことを言った。しかし、本当はのどから手が出るように油が欲しい。けれども、また長い間かかって日本中近東という将来展望を考えてみた場合に、それだけでは一切の事の解決は図れないということで、日本としてもしお手伝いができることであるならば、政治的な役割りを通じてあるいはアメリカに対しても仲介の労をとりましょうという、いろんなそういういきさつがあったに違いない。そういういきさつがあった中で日本としては毅然として中近東に対してはこうだと。  また、園田さんが行ったときにもいろんな事情があってアラファトにも会えなかったといういきさつがあるようでありますけれども、あえて勇気ある決断をもってするならば、その道を開くとするならば、それがいい方向へ進むか悪い方向に進むかは別問題としても、もしそれが一つの手がかりになるであろうという判断があるとするならば、当然そういうところにも、いろんな人に会いながら、人脈を通して、日本中近東との関係というものを強靱なものにしていくというところに、また新しい一つの平和への足がかり、手がかりというものができていくんではあるまいか。これは園田さんが帰ってきていろんなところで記者会見や何かをしたその話を総括して、それをまとめていま私の印象を交えて申し上げたわけです。だから、今後誤れば日本中近東に対する外交は大変なことになるんではないかという心配を込めて、大来さんの所信のほどをこの機会にもう一遍改めて伺っておきたい。
  102. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 園田特使が帰ってこられた印象、私も伺いましたし、大体いま渋谷委員のお話しになったところだろうと存じます。  日本の役割りにつきまして、中東諸国に園田特使が行ってこられて、ソ連に対する恐れというものは相当強い、しかし同時にアメリカのプレゼンスというものについてもある程度警戒心がある、特にアメリカ関連して中東の包括的な和平というものについて、いわゆるキャンプデービットでのアメリカ、エジプト、イスラエル三国の話し合いの線ではなかなか中東の包括的和平の実現がむずかしいんじゃないかというような気持ちもあって、そういう点でさらに一段とアメリカも含むいわゆる西側諸国がこの中東問題の基本的な解決により前向きの姿勢をとることが望ましいという共通した考え方、これもアラブ各国によってそれぞれニュアンスがずいぶん違うようでございますから一概には言えないことかと思いますけれども日本は西側諸国の中でも高い技術を持ち、いろいろいままで建設の面でやってきた仕事もかなり各国で評価されておるという、これも私も自分で参ってそういう印象を受けましたけれども、園田特使も同じような印象を受けておられるようでございます。  この地域に対して、歴史的にも政治的にも非常に複雑な地域でございますから、日本だけで余り先走ったことをやろうとしても、場合によるとかえって反発を招くような場合もないとは限らないわけでございますが、いまのように中東和平、包括的和平、これは基本的にはパレスチナの問題、この自決権の問題につながるということだと思いますけれども、この面についての日本側の協力態勢ということは一つの果たし得る役割りじゃないか。これは園田特使も大体その方向のお考えだったと伺っております。さらに詳細な問題になりますといろいろ込み入ったことがあるかと思いますけれども、大筋としては以上のようなことかと了解しております。
  103. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 大来さん、非常に慎重に、ときには遠慮深くお答えになっていらっしゃるんじゃないかという懸念を私持つんです。それは思い切ってやっていただきたいんですよ。日本の将来ということを、恐らく大臣就任のときにもそういう決意を固められて、私は私なりにこうやってみるという余人の知り得ざる御決意がおありになってお引き受けになったと私思うんです。したがって、そのお立場に立って、多少閣議においてそれはトラブルが起ころうと、日本はこうあるべきだという一つの筋を通した、ときにはそういうことの提言を交えて、日本中近東政策を通した日本の将来のあるべき方向というものをお示しになっていただいてもよろしいのではないだろうか、私はこんな感じがいたします。残余のことについては、当該委員会がございますので、その節にまた申し上げたいと思います。  それで、持ち時間もあとわずかになりました。せっかくの予算委員会分科会でございますから、予算に若干でも関連したことを二つばかりまとめて、これは一つは予算に直接関係ないとは言えないかもしれませんが、お尋ねをして締めくくりたいと思います。  一つは、これは先ほどの御答弁を聞かなくても私がしばしば申し上げておることなんであって、大体外務省の年度予算というものはきわめて少ないです。少ないなりの理由もあるでしょう。それでも先ほどどなただったか、情報文化局の方がおっしゃった、これでも何とか一生懸命やっているんですと言って、いじらしいみたいな答弁だった。  そこで、在外公館について、特に発展途上国、非常に危険な状態に置かれている施設が多過ぎる。これは今回の予算の手当てでもって十分賄い得られると判断なさっておられますか。これは大臣直接よりも――関係者来ていますか、きょう、質問を通告してなかったから。
  104. 松田慶文

    政府委員(松田慶文君) 在外公館の施設についての御質問でございます。  在外公館百六十余の施設の内容といたしましては、事務所と公館長の公邸とに分かれるわけでございますが、御案内のとおり、公邸につきましてはおよそ半分が国有化されております。また、事務所についても二六%程度が国有化されておりまして、おかげさまをもちまして順次整備させていただいておりますが、まだいま申し上げましたとおり全体量の過半は借り上げといいますか賃借の物件を利用しておりまして、長期的にはまだまだ整備する必要があることは御指摘のとおりでございます。
  105. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それはわかっている、私の方も。いま私があえて聞きたいと思うことは、その整備もさることながら、特に危険にさらされながら仕事をしているところが多いんです、御存じでしょう。それは防弾ガラスが入っているところはいいんだよ。ところが、防弾ガラスが入っているところは一方通行になっちゃっているんだよ。そっちから入られると逃げ場所がないんだ。百六十何館あるうちどこどこあるか知っていますか。まあそれはいい、いま数のことまで言うのは意地の悪い質問になっちゃうから。私は、せっかく海外を回らさしていただいたときに、これじゃおちおち仕事ができないなと痛感した。これが一つ。  それから円高のときにどうして国有財産を取得しなかったのかという問題なんだ。いまになってはもう遅過ぎるんだ、本当は。円安になったから国有財産買おうなんといったって高いものを買わなくちゃならない。こういう手当ての仕方についてももっと強腰でやってもらいたい。きょうは激励を込めて言いますよ、済みませんけれども。  だから、五十六年度以降については一つ一つ危険の度合いの高いところからもう一遍見直してもらいたい。何もぜいたくをしろということじゃない。在外公館職員が安心して仕事ができる環境をつくってあげていただきたい。日本を代表する顔じゃないの、外交官というのは。それは皆十分おわかりになっていらっしゃると思うんだけれども、いざ予算の獲得になると弱いんだよ。だから、それを要望を込めてぼくはあえて申し上げておきたい。五十六年度からは一つ一つそれを着実に整備を図ってもらいたい。足りないきわめて人数の少ない職員が身をすり減らすような思いで皆仕事をしているんだから、せめて安心感を持ったそういう環境をつくってあげる、大臣そう思いませんか。  時間がないからもう一つまとめて言う。この間――どこの在外公館とは言わない。いろいろ皆さん方から言われたんじゃ、これは言われても大丈夫な問題だとぼくは思うんだけれども、こういう質問があったなんて言われてまたはね返っていっても申しわけないからね。こういう要望があった。私たちは日本人ですと言うんです、当然選挙権があるはずですと。あるわけでしょう。衆参両院の選挙のときどないすれば私たちよろしいんでしょうか、国民としての正当な権利をわれわれ行使できないということはきわめて残念ですと外務省の方から言われました。ところが、これは外務省だけの話じゃないんだな。何百万という人が海外に行っているんです。まだ向こうの市民権を獲得していない日本人である人がたくさんいるわけだ。これをどうするかという問題、ずいぶん古くて新しい問題ですね。これは自治省に先ほど聞いた。自治省でも悩んでいるようです、選挙課の方で。これは当然国民の権利として与えるべきであろう。その場合に、在外公館が選挙の投票所になってその権利を行使させるという方向へ持っていくことも、日本のせっかく国民として与えられた権利を正当に行使するという上から大事な問題ではあるまいか。  この二点に締めくくって、もう時間がありませんから、大来さんに答弁を求めて私の質問を終わります。
  106. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 第一の点については、会計課長から後で簡単に補足させたいと思いますが、やっぱり館員の安全ということは非常に大事なことでございますので、来年度予算というようなときに十分配慮いたさなければならないと存じます。  選挙権の問題につきましては、私もよく外国を歩いておったものですから、いまお話しのような点よく在外の邦人から聞いたこともございます。国によってこの在外投票制度、アメリカその他にもございますので日本外務省もある程度研究してきておると聞いておりますが、その点の問題点、きょうは担当者がおりませんので……。
  107. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それじゃ結構です、また外務委員会で聞きますから。
  108. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) また適当な機会にお答えいたしたいと思いますが、ただいまの点、さらに検討さしていただきたいと思います。
  109. 松田慶文

    政府委員(松田慶文君) 大変激励のお言葉を賜りまして感激しておりますが、御指摘のとおり、数年前の日本赤軍のテロ以来、諸種の形で在外公館に対する危険は増加することはあれ低下することはない現状が続いておりまして、私どもも人的物的に、すなわち警備官の配置、防弾ガラスによる受付の強化を含めてのいろいろな脱出口の整備も加えましての整備をここ両三年やらせていただいておりますが、新年度予算におきましては、人件費関連で一億二千万余、物件費関係で一億三千万余をお認めいただいて、さらに今後とも充実を続けたい、この努力は今後ともますますやらせていただきたいと思っております。
  110. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) 渋谷邦彦君の質疑は以上をもって終了いたしました。  次に、丸谷金保君の質疑を行います。丸谷金保君。
  111. 丸谷金保

    丸谷金保君 外務省在外公館は非常に貧弱だと、私も実はそのことを申し上げようと思っておったんですが、前委員から話がございましたので重複を避けたいと思います。しかし、とにかくもう少し金をかけてきちっと、これだけの経済大国だと言っていながら思い切ったことができないというのは大変残念だと思います。その点はひとつ重ねて要望いたしておきます。これはもうどなたでも行かれた方はみんな痛感すると思います。  それで、きょういま出がけに釧路新聞というのを送ってきておりまして、毎日送ってくるんですが、三月の二十七日号なんです。これを見まして、ちょっと少し視点を変えて御質問してみたい。変えてと言っても、北方問題のことですが、現地に微妙な違いが出てまいりました。いままでは「返せ北方領土」じゃなくて「返れ北方領土」だったんです。すべての政府のキャンペーンの看板から何から全部「返れ」なんです。自動詞だったんですが、今度は「返せ領土の声高く」と、こういう見出しが新聞に初めて出ました。「返せ」と。釧路新聞というのはあの地方では一番影響力の大きい地方紙でございますけれども、こういう微妙な違いが出てきた底にあるのは、アフガンの侵攻というふうなものを中心に特に北海道において国民の気持ちが大きく変わってくる前兆でないか。外務省側としては、いまでも「返れ」なんですか、「返せ」なんですか。
  112. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 現地でのモットーが「返れ北方領土」から「返せ北方領土」になっているということは、私も先般北海道に旅行いたしましたときにそういうことにするのだというお話を承りまして承知しているわけでございますが、確かに「返れ」と申しますと、北方領土がひとりでに返ってくるような印象も与えるわけでございまして、外務省といたしましては、ただいま先生御指摘のとおり、ソ連政府に対しまして北方領土を返せという方向で交渉をいたしている次第でございます。
  113. 丸谷金保

    丸谷金保君 外務省は「返せ」と言う。ところが、北方対策本部長総理府総務長官の小渕恵三さんを中心にしていまでも「返れ」という表現ですね、北方対策本部を中心にしてのキャンペーンは。看板もみんなそうなんです。政府部内でこういうふうな食い違いあっていいんですか。私はそういう点でああ変わったのかなと思ったんです。外務省はもともと「返せ」だ、総理府は「返れ」だ。ちょっとおかしいんじゃないですかね。どう思いますか。
  114. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 外務省といたしましては、ソ連政府と北方領土返還交渉をしているという立場から、ソ連政府に対しましてはあくまでも北方領土を返してくれということを言うのが筋道になるわけでございまして、そういうような方向でソ連政府交渉しているということを申し上げたかったわけでございます。
  115. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣ね、外務省がそういう姿勢であるならやはり総理府も同じような姿勢でないと。だから、日本の国論が統一しているのかというふうになめられるんじゃないですか。いかがでしょうか。
  116. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 国の基本的な問題につきましては、外務省立場が一つこの問題で重要な立場だと思いますが、しかし、全体の国内の問題も含めて判断されるべき問題だろうと思います。私どもとしては、いま武藤局長からお答えしましたように、返せという立場で従来から交渉を続けておるわけでございます。
  117. 丸谷金保

    丸谷金保君 閣内でそういう問題について返せか返れかというふうなことについての意思統一は行われていないんですか。これは首をかしげているけど大変大事なところなんですよ。この問題の基本にかかわる大事な問題だと思うんです。しつこいようですが、重ねてひとつ。
  118. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 閣内で私外務大臣になりましてからそういう議論があった記憶はございません。それ以前にあるいはあったのか、ないのか、それはよくまだわかりませんが。
  119. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは私は返せという外務省の姿勢の方が正しいと思っているんですがね。もう看板でも何でも返れなんです、国が補助金を出して立てたやつがみんな。ただ、ちょっとやっぱし弱いんですよ。弱いというより、何かぴんと来ない。ただ、私たちは北方領土だけ返ればいいとは思っていませんよ。思っていませんけど、その点について現地でこういう微妙な論調が変わってきているということもひとつ踏まえて少なくとも閣議でこうしたものの統一を図っていただかないと、外国からもなめられますし、あるいはまた国民も一体どうなんだということになって、世論の盛り上がりが非常に少なくなると考えますので、一応その点について指摘を申し上げておきます。  その中で、さらに、これは何も国のさっきあった大会のあれではないですけれど、これは新聞の論調ですけれど、「いたずらに米国一辺倒の姿勢を打ち上げることなく、自主独立国としての民族自決の精神をもって全方位外交を貫くことだ。」とあるんです、全方位外交を。どうもしかしこの全方位外交というのは、これを前の方からずっと読んでみますと、一体何なんだと妙な気がするんです。全方位外交という言葉はよく使われますけど、一体全方位外交というのはどういうことなんですか。
  120. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私も、これは私の記憶では福田内閣当時から言われておることだと思いますし、いろいろな内容上の解釈はあるかと存じますが、実は本日も先ほど吉田委員の御質問にございまして、私の解釈としては、日本平和憲法あるいは資源小国、最低限の自衛力というような情勢から考えれば、日本はできるだけ世界じゅうの国と友好的につき合う努力をしていくということが必要だという意味では全方位外交ということは言えると思いますけれども、ただ相手の国によって友好関係の濃淡がどうしてもできるということも現実問題としてあり得る。一つの考え方としては、そういう濃淡はあるけれども、いまのような基本的な戦後の日本の条件から言って、世界じゅうに深刻な敵をつくらないということはあるいは考えていくべき外交方針ではなかろうか。そういう意味を全方位外交と言うなら、そういう考え方もあり得るというふうに考えております。
  121. 丸谷金保

    丸谷金保君 簡単に言いますと、世界じゅうのすべての国と仲よくしていこうと、こういうことですね。
  122. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 簡単に言えばそうですが、濃淡があるということも同時に言えると思います。
  123. 丸谷金保

    丸谷金保君 その濃淡でわからなくなっちゃうんですよね。まあしかしそのことはおいておきまして、微妙に北海道の人の心理状態に影響を及ぼし始めたアフガンの件についてでございますが、このアフガンの侵攻について外務省はいつころの時点で情報をキャッチされたのでございましょうか。
  124. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) ソ連側から正式に通告が参りましたのは昨年の十二月二十八日でございますが、その以前からアフガンに対して当時はソ連の軍事顧問団というような形である程度の人数が入ってきたわけでございますが、それがふえつつあるという情報はある程度はキャッチいたしておりました。
  125. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は、もう十五年ほど前ですが、中央アジアをずっと、コーカサスのこちらから言うと向こう側ですね、あたりまで歩いたことがあるんです。行く先々がほとんど、何といいますか、イスラムの人たちが非常に多いんです、現在もそうだろうと思うのですが。あちらの内部で何が起こっているのか、これは雑誌でちょっとそういう面で触れている人もいますけれど、現地へ入ったという方たちの確たる話でもないんで、外側からなでてみて何があるのかなという感じでございます。  外務省としては、どうなんですか、今度のアフガン侵攻というのは、ソ連にとってはいろんな内部の問題のあるというふうなことを踏まえての衝動的な侵攻なのか、あるいはまた長期の戦略の中からの侵攻かというふうなことについて、どのような判断をお持ちですか。
  126. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) ソ連の意図につきましては、これはもちろん推しはかるより方法はないわけでございまして、ソ連の公式見解は、アフガニスタンに対して外部からの軍事介入、軍事侵略があった、それに対抗するためにアフガニスタンの指導者から要請を受けて、それで限定された兵員をアフガニスタンに送ったというのがソ連の公式説明でございますが、その説明はいろいろソ連・アフガニスタンの善隣友好条約を引いたりいたしておりますけれども、これが必ずしも世界を納得せしめるような説明ではないということは、たとえば先般の国連の緊急総会におきまして百四カ国という多数の国がソ連の行動を批判したということからもはっきりしているわけでございます。  それ以上に、ソ連の内部でどういうことを考えたのかということにつきましては、これはいろいろな人がいろいろなことを言っているわけでございますが、通説と言われておりますところは、恐らく長期的な意図と短期的な意図と両方あったのではなかろうか。長期的な意図といたしましては、ソ連はあくまでもこれを防衛的と言うかどうかについてはいろいろ議論があるところでございますけれども非常に神経過敏なまでに防衛意識が高い、できるだけ自分の国の周りには緩衝地帯と申しますか、自分に敵対するような状況が自分の国と国境を接するようなところにできることは欲していないというようなこと、これがソ連の非常に長期的な考え方の一環をなしているわけでございます。  そこで、アフガニスタンの情勢でございますが、アフガニスタンにおきましては、御承知のとおり革命によりまして親ソ的な政権ができていた。ところが、国内のゲリラ活動が盛んになりまして、その親ソ的な政権が困難に逢着をした。それで、ただいま御指摘もございましたとおり、ソ連の国内にもまた多数の回教徒系の国民がいるわけでございまして、もしそのアフガニスタンの親ソ的な政権が回教革命、回教反政府勢力によって転覆される、それで回教の反ソ連的な政権がアフガニスタンにできるというようなことになりますと、先ほど申し上げましたような長期的観点もさることながら、ソ連の国内における回教徒系の国民に対する影響ということからも恐れられるということでアフガニスタンへの軍事介入というような直接行動に出た。これが短期的にはそういうことではなかろうかということが通説のようでございまして、私どもといたしましてもおおむねそのようなことではなかろうかと判断いたしております。
  127. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは長期戦略か短期的な作戦か、国内事情による。そのことについてはただいまの局長さんのおっしゃるようなことは雑誌に書いてある程度ですね。それはもう長期的でもあり短期的でもあると言えば、これはきわめて簡単なんです。そこで、外務省として、これは長期の戦略体制でこうなんだとか、そういうきちっとした、足して二で割るような答弁でなくて、何かお持ちになっていませんか。そういうものをぴしっと日本政府として示すのがぼくは外務省の仕事だと思うんですがね。いまのような話なら、実際に言ったら何を言っているのかわからないんですよ。
  128. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 外務省といたしまして、この国会のような正式な場で他国の政策の背後にある意図というようなことにつきまして正式の判断を申し上げるということは、やはり差し控えなければならないのじゃなかろうかということで、先ほど申し上げましたような通説のようなことを申し上げたということで御勘弁いただいたわけでございます。
  129. 丸谷金保

    丸谷金保君 外務省としてはきちっといろいろなそれなりのものは考えているけれど、公の場で話をするということになるとなかなかいろんな方面の影響があると。それはわかるんですよ。  そこで、実は私たちいろいろ歩いて見ていて、外務省のお役人さんの転勤が非常に多いということ、特に、何といいますかね、キャリアの組の人たちが非常に多い。これは何とかならないものでしょうかね。とても長期のそれぞれの国の戦略目標とか戦略体制などというものを考える余裕のないくらいどんどこどんどこかわっていく。これらは日本が国際的な情報がおくれる理由であり、同時に外務省に対するとかくのうわさが出るもとでないかと思うんですが、いかがでしょう、大臣ひとつ。
  130. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私も外務省に来ましていろいろ聞いてみますと、大体二年ないし三年でローテーションと言いますか、これは人事の配置で先進国で一期をやるとその次は途上国に行くようにできるだけするとか、同時に日本の本省勤務が必要だとか。現在在外公館が百六十数公館になりまして、戦後急激に独立国もふえてまいったわけでございますし、人の配置に手が足りない、定員も足りないというような状況から、ともすればローテーションが早くなる、あるいは不健康地に余り長期に勤務すると一生健康を害してしまうというような問題がある、いろいろな状況があるようでございます。  しかし、本来なら一つの国にやはり三年ぐらいはいた方がいいのじゃないかという、これは私の印象でございますけれども、できるだけ外務省も定員に多少でも余裕が出てくればそういう方向を考えた方がいいのではないかと感じております。各国の例もいろいろ外務省の官房で調べておりますけれども、非常に長く腰を落ちつける国もあり、比較的短期にローテーションする国もあり、いろいろでございますけれども、しかし御指摘のように余り短いローテーションというのはせっかく人のつながりもできかかって帰ってくるというようなことにもなりかねないので、いろいろないま申しましたような事情はあるようでございますけれども、できるだけ一つの任地に長くいる。何年がいいかわかりませんが、三年ぐらいを一つのめどにして考えるのがいいのではないかと感じております。
  131. 丸谷金保

    丸谷金保君 三年ですか。その国の言葉を覚えているのであればまだ仕事にもなるかと思うんですよ。しかし、その国の事情を知るだけじゃない、いろいろな外交的な儀礼的なこともありますから、英語も一大事でしょうが、特に東南アジアから中近東へかけてその国の言葉のわかるキャリアの外交官が非常に少ないということを痛感するんです。たとえばいま中近東と中央アジアの問題をちょっと触れました。足して二で割る答えが出てまいりましたけれど、一体ウズベク語だとかグルジヤ語、中央アジアの主な言葉でも、外務省は一体何人くらいそういう言葉を覚えている者が向こうの方に行っておりますか。たとえばウズベク語、これは何千万という人が使っている言葉です。
  132. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 私が有権的に申し上げる立場じゃないわけでございますが、ウズベク、グルジヤはたまたま私の担当地域でございますので申し上げますと、私の承知している限り残念ながらただいまのような言葉の専門家はおらないと思います。
  133. 丸谷金保

    丸谷金保君 ロシア語の全く通じない地域なんですよね。英語なんかもちろん通じませんよ。日本の何倍もあるような広大な地域に数千万の人口を擁していますわね。そういう地域の言葉が全く外務省でだれもいない。そういう点についての努力をしなくて、本当に――英語国やフランス語やスペイン語国だったらいいですよ。それ以外にたくさんあるんですから。それで、大臣、一体状況がわかると思いますか、本当に民の心が。
  134. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 外務省にロシア語をやる人はかなりいると思うのですけれども、それからアラビア語も、これもこの五、六年の間に約二倍になりまして、大使、本省の管理職にもアラビア語出身の方が大分ふえてまいりましたが、特殊用語につきましては、これはやっぱり外務省機能上できるだけそういう専門家を養成していかなきゃいけない。同時に外交官としての広い見識を身につけるという両方の要請がございまして、外務省の方としても、専門用語をやった人にできるだけ昇進の機会、道を開く、広い経験も持たせる機会を与えるという努力も近年行われ始めておるようでございますけれども、御指摘のように特殊用語についてさらに強化していく必要はあるように感じております。
  135. 丸谷金保

    丸谷金保君 ロシア語を覚えていても全然だめなんです。私も中央アジアへ参りましたときに、通訳が二人つくというから、おれも大したもんだなと思ったんです。というのは、ロシア語と英語のできる通訳と、ロシア語と現地語のできる通訳と、二人つかないと何も通じないんです。ウズベクもそうですし、それからカザフ共和国なんかもそうです。これは特殊語といっても相当な人々がその言語を使用する。しかも日本と隣の国です。外務省がそれで中近東なり中央アジア情報が入ってくるとぼくは思えないんですよね。それはロシアを通じての情報か、あるいは英語国を通じての情報ではあっても。そこに、今度の中近東の場合でも、イランの革命を見落としたり、そういう出先の大使館が機能を十分に発揮できなかった大きな原因があるのじゃないか。現地人の中に入って行けない。会う人といえば政府高官ばっかり。ひっくり返ったらもうパアでしょう。やはり、そこら辺、もう少し何といいますか、それには三年で交代するなんということではだめなんで、もっとしっかりと根の張った国際的な情報外務省がきっちり握れるような体制をつくらないと日本の将来を誤るのではないか。大臣、いかがですか、その点。ロシア語を話しているからなんてそんなことじゃ全然問題にならないんです、現地に行ってみますと。
  136. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 御指摘のとおりでございますが、最初に申し上げましたように、とにかくいろいろな在外勤務の必要性、人数の必要性と供給とのアンバランスということもございまして、従来、専門用語についてはまだ不十分な点があると存じます。旅行がかなり制限されておるということも聞きまして、そういう言葉の使われるところに公館が一つもないというような制約もあるのではないかと思いますけれども、そういう事務的な問題を越えて御指摘のような点は十分考えていかなければならぬことだと思います。
  137. 丸谷金保

    丸谷金保君 アフガンの裏側で何が起こったのか、こういうことがちっとも入ってこない。言葉もわからない。たとえばウズベクの人がモスクワにも住んでいますわね。しかし、その土地の言葉で話をする手だてを持っていない。これらについては、それがすぐ役に立つとか役に立たないという以前の問題として、私は外務省はもっとそこをしっかりやってもらわないと困ると思うんです。  それでまあその問題は私はアフガン侵攻というふうなものの北海道に微妙に投影されている問題から入ったわけですが、北海道として大変重要な北方領土問題でただいまお話がございました。どんなに考えてみても、私はあれは返せと言うんなら全千島だと思うんですよ。サンフランシスコ条約で日本は千島列島を放棄した。しかし、これは条約締結国に対しては拘束力があるかもしれませんが、ソビエトに対しては何にも拘束力はないんでしょう。法的にはソビエトはサンフランシスコ条約を結んでいないんだから。その国にどうして遠慮しなきゃならないんですか。前回もちょっと聞いたんですが、何としてもわからないんです。
  138. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。  わが国は、先生も御指摘のように、平和条約第二条の(C)項によりまして、千島列島及び南樺太に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄するということを約束したわけでございます。これはこの千島列島の中には当然のことながら北方四島は含まれていないというのが政府立場でございますが、そのほかの島に関しましてはサンフランシスコ平和条約によりましてわが国の領土ではなくなっているということでございまして、このことは客観的な事実として平和条約の非当事国を含めましてどの国から見ましてもそのことは日本が放棄した千島列島がもはや日本国の領土ではないということは同様であると思うわけでございます。ただ、もちろん、先生もおっしゃいましたように、ソ連は平和条約の当事国ではございませんから、この平和条約によってソ連に対していかなる権利も与えているものではないということは条約論としてそのとおりでございます。
  139. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、条約論としてはそのとおりだと言いながら、どうして要求できないんですか、ソ連に対して。
  140. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 前段に私が申し上げましたとおり、わが国が平和条約第二条(C)項によりまして放棄しました千島列島につきましては、放棄したという事実によってすでに日本国の領土ではなくなったという客観的事実があるわけでございまして、これは世界のどの国から見ましてもわが国の領土ではなくなったので、条約の当事国だけに対して領土を放棄したということではなくて、わが国の領土ではなくなったという客観的事実は、これは条約の非当事国も含めて同じことであるということでございます。
  141. 丸谷金保

    丸谷金保君 なぜそんな遠慮した解釈をしなきゃならぬのか、非常に理解に苦しみますけれど、それで、そういう非常にわかりにくいことのために北方領土をめぐっての四島に対しても漁民の間にはいつでもトラブルが起こっておるんです。それは御承知ですわね、この委員会でも幾らも問題になったことだと思います。  それと同じように、韓国との間の竹島、これも私は前に一度取り上げたんですけれど、その後ちっとも解決していないので、重ねてお伺いしたいと思うんです。竹島が日本の固有の領土であるということについては、日本政府の見解は一貫して変わっておりませんですね、いかがですか。
  142. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 変わっておりません。
  143. 丸谷金保

    丸谷金保君 その竹島の現況はどうでございますか、最近における現状は。
  144. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 竹島には遺憾ながら韓国の構築物が建築されておりまして、その状況はこの数年来変わっておりません。
  145. 丸谷金保

    丸谷金保君 防衛庁おいでになっておりますね。――防衛庁の方の竹島に対する認識はいかがですか。
  146. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) 私どもも、再三大臣から御答弁申し上げておりますとおり、竹島の状況につきましては不法占拠であるというふうに考えております。
  147. 丸谷金保

    丸谷金保君 再三この前も前の防衛庁長官ともそれをやったんですけど、適当な答えが出なかったんですけどね。昭和三十六年に、赤城防衛庁長官が、現在のような構築物をつくって占領されておればそれは韓国の侵略であると認めるということを国会で答弁しているんです。それを、外務大臣、そういう侵略の状態、不法占拠の状態、これについて韓国側と定期閣僚会議で何度も要求をしているというふうに聞いておりますけれど、最近の状況はどうなんですか。
  148. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは繰り返し韓国側に提起しておりますので、最近の実情につきましてはアジア局長からお答えいたしたいと思います。
  149. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 例年海上保安庁の巡視船が竹島周辺に参っておりますし、それの調査の結果、例年口頭にてあるいは文書において韓国側に厳重に抗議いたしております。しかしながら、遺憾ながらこの不法占拠の状態というものはその後も変わっていない次第でございます。
  150. 丸谷金保

    丸谷金保君 韓国側は、日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約第二条によって、「大日本帝国と大韓帝国との間で締結されたすべての条約及び協定は、もはや無効であることが確認される。」ということを盾にとって、韓国領土だと言っておりますね。これに対してわが方はどういう主張をしておるんですか。
  151. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 韓国側がこの第二条を盾にとりまして、竹島はしたがって自分のところの領土であるということは、日韓併合のときの協定、取り決めというものがもはや無効であったのだからということに論拠を置いているのだと思いますが、日韓併合のときに竹島が日本国の領土になったのであるかどうかどいうことが問題なのではなくて、竹島はそれ以前から日本の領土であったわけでございまして、韓国側のその論拠というのは根拠がないものと考えるわけでございます。
  152. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、またことしも五月になると漁業の問題が起きてくるんです。去年もその時期には騒ぎましたけれども、またこうちょっと過ぎると一年間何となく終わってしまう。イカ漁船を初め竹島近海に行ってはまた機関銃かなんかで追っ払われて領海内入るなと。日本からも海上保安庁からも行っています、確かにね。去年もそうだった、ことしも行くんでしょう。そこへは近寄らないでくださいというふうにスピーカーで流すだけだというんですね。漁民は非常に怒っているんです、どうなっているんだと。このことについては水産庁へはずいぶん陳情に来ています。何とかする何とかするで水産庁はよく言って、そういうのが地域の新聞にもよく出るんですが、しかし、これは水産庁の問題でなくて、外務省の問題ですわね、この問題を解決するのは。水産庁が向こうの水産庁と話し合っても、これは外交上の問題だから外務省を通じてくれと、これだけの話なんです。大臣、ことしそういうトラブルを起こさないようにということが一つと、あそこに漁業権を持ってやっていた人たちもたくさんいるんです、島に入って。しかもそれを許可しているんですよね。それから自治省ではちゃんとあそこは交付税の算定基準の中にも入れているんです。こういうことについて、韓国になぜソ連には返せと言ったような形での要求をしっかりできないのですか、どういうことなんですか。
  153. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 韓国側が不法占拠しておるという事態に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、これは抗議いたしておりますし、日韓閣僚会議のときに外務大臣は個別会談を持ちまして、もちろん竹島の不法占拠についてこれを厳重に指摘いたしておるわけでございます。この努力は今後も続けられるわけでございますが、先ほど御指摘の漁業の安全操業につきましても韓国側と話を続けておる状況でございます。
  154. 丸谷金保

    丸谷金保君 アフガン侵攻、これは国連憲章違反だというふうなことで国際的な問題にもなり、日本もオリンピックに人を出さないというふうな政府考え方も伝わっておりますね。韓国には閣僚会議のときにはいろいろなカードを持っているわけでしょう、わが方は、経済援助とかいろいろなことの。どうしてそのカードが竹島に使えないんです、大臣
  155. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 確かに、経済協力その他の点で切り札を持っているということであればそのとおりでございますが、何分領土問題ということで、きわめてセンシティブな問題であり、日本と韓国との非常に歴史的にも複雑な関係にかんがみまして、あるいは軟弱外交ということでおしかりを受けるかもしれませんけれども、私どもとしては非常に慎重に韓国に接しているという状況は御指摘のとおりでございます。
  156. 丸谷金保

    丸谷金保君 慎重に、いいんですよ、それは。しかし、ときには慎重にということは何もやらないと同義語によく使われますんで、そのことは、今度は逆に言うと北海道の沿岸漁業に対する韓国漁船の問題、これらも水産庁だけでなくて、本来外務省がやらなきゃならない問題なんですよ。こういうことについて一括して、どうして韓国にだけはえらい遠慮しているのかと北海道の漁民もうかんかんなんですよ。こういうこともくるめて、ひとつ、大臣、しっかりしていただきたいと思います。この点、大臣の決意を聞いて、終わりたいと思います。
  157. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 北海道の韓国漁船の問題も承っておりますし、竹島の問題も承っております。日本外交的な紛争を解決するのにあくまでも平和的手段による、これは非常に暇がかかってもどがゆいところもあるわけでございますけれども、これはやはり日本基本的な姿勢の一つであると思いますので、あくまでも話し合いでいくということで韓国関係の問題も繰り返し繰り返し要求をするということであろうかと存ずるわけでございます。政府としてもいろいろな機会をつかまえてさらに粘り強くといいますか、ある意味では執拗に交渉を続けていくつもりでございます。
  158. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) 以上をもって丸谷金保君の質疑は終了いたしました。  次に、秦豊君の質疑を行います。秦君。
  159. 秦豊

    ○秦豊君 最初に、例の防衛庁中期業務見積もりを踏まえた質問をちょっと行っておきたいと思います。  外務省にまず伺っておきたいのですけれども、私の理解に間違いがなければ、防衛庁が積み上げた中業、これは対米交渉上の配慮をすればオーソライズをした方がいいと、こういう主張のように見受けられるんですよね。このオーソライズというのは具体的にどういう裏づけをすればいいのか、その辺からまず伺っておきたい。
  160. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 中期業務見積もりをオーソライズした方がいいという発言はなかったのではないかと思います。これは記者団の質問に対して何らかの中期的な計画があった方がいいかもしれないという意味のことを申し上げた記憶はございます。
  161. 秦豊

    ○秦豊君 しかし、大臣、中業、あれしかないんですよ、ややまとまったものは。
  162. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 三年ごとに変えることになっておるわけでございます。
  163. 秦豊

    ○秦豊君 変えることになっていましても、もう八年、十年のタームで統合長期見積もり、それをずっとこう演繹しまして中業になっているんだから、対米交渉のある基準にするためにはあれしかないんです。だから、当然、外務省としては、大平さんも行かれるし、それを踏まえなければ仕方がない。踏まえようとしても何か足元の弱い建築工事みたいなもんで、防衛長官が承認しただけで、あれはもう防衛庁内の資料と、こうなっているんですよ。ところが、日米のユニホーム同士はあれを一つの物差しにしている。水準にしているんです。だから、外務省としてはオーソライズした方が交渉のディテールを詰めやすいと考えても、私はそのことを責めているのじゃない。ただ、オーソライズするとおっしゃるからには、たとえば閣議という場を考えていらっしゃるのか、国防会議という場を考えていらっしゃるのか、外務省はなぜそういうことをお考えになったのか、そのことを知りたかった。
  164. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いま御指摘のように、中業というのは防衛庁限りの計画でございますし一本来防衛庁自体がいろいろ検討すべき問題だろうと思います。この問題についてはさらに閣内で意見の交換をやった上でないと、外務省だけの見解というわけにもいかないと考えております。
  165. 秦豊

    ○秦豊君 大臣、じゃ、ぼくたちはいわゆるマスメディアを通じて最近外務省は安保問題に大変アクティブであると。それも大きな所掌の範囲でしょう。だから、これもアクティブであるというあなた方のあり方を私は突き放して見ているわけなのだけれども、対米交渉がいよいよ具体的になる場合に、あなたは行って帰ってこられた。防衛庁長官に伺ったら、訪米する予定はない。きのうの大平談話、金沢においては、あらかじめアメリカ側に意思を通ずる必要はないというふうな意味の発言があった。ところが、一方では、中期業務見積もりについては、必要ならば政府部内における位置づけ、それからぼくらの用語では前倒しと言っている、五年をできれば一年でも早められるかどうかの検討もあってもいいと、こういう金沢談話があったわけです。だから、政府部内では中業がもうひとり歩きを始めつつある、ある一つの基準になっている。アメリカも物差しにしている。ところが、一方では防衛庁はややその点については消極的、オーソライズについては。外務省はやや能動的、こう思ったから伺っているのです。オーソライズして悪いことはぼくはないと思っているのです、大臣。違いますか。
  166. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 総理の見解というのも私もけさの新聞で拝見いたしました。この問題はいろいろ所管の問題もございましょうし、また、そのままのものがそれでいいのかどうかというような問題もありましょうし、よく政府部内で関係当局が話し合い、所管はやはり何といっても中業となるとこれは防衛庁が本来の所管でございますから、その話を詰めた上でないと外務省立場では申し上げにくいということになります。
  167. 秦豊

    ○秦豊君 時期が時期だから非常に慎重になられるのはわかりますけれども、ちょっと物足りませんな。  では、アメリカ局長に伺ってみましょうか。  外務省には中業の受けとめ方として何にも意見がなかったのですか、対米交渉上の配慮として。何にもなかったのですか。
  168. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 今回の大臣訪米については、再三大臣から御説明しておりますように、一般的な意見の交換であって交渉でないということでございますし、それから私たちが出発する前の国会の議論その他を通じて、今回アメリカ側から仮に具体的な要請が出てきてもその場で日本側としてはコミットすることはできない、したがって数字的な面で用意していくわけにもいかないし、また用意できる態勢でないというふうな理解でアメリカに参ったわけでございます。
  169. 秦豊

    ○秦豊君 そんな、あなた、もう二週間ほど前のまるで出しおくれの証文みたいな答弁は全然期待しないのでね。ブラウン氏は大来外相要請をした、慎重な答弁があった、それはもう公になっています。それを言っているのじゃないのです。これからの話を聞いているのだから。しかし、白紙で大来さんは交渉じゃない、あれは日米会談じゃないのだ、意思疎通に行ったのだと、要請は承ったがはね返したと、やわらかく。大平総理となればそうはいかないのだから。そうでしょう。だから、四月末に出発してアメリカ側と接触をする場合に、アメリカ側は、一体日本日米防衛協力という大枠の中で、今後いつ、NATO並みとは言わないまでも、イコールパートナーとして、あるいはフルパートナーとして、いつまでにどの分野をどれほど着実に増強してくれるのかくれないのか、この回答をいま求めているのだから、一応目安がなければだめでしょう。だから、ぼくは、それには一番手っ取り早いのは、中業を政府部内における一定の物差しとして対米交渉の場合あるいは対米会談の場合に基礎資料として位置づけたらどうかというのが私のむしろ考え方だから聞いているのです。ちょっと重ねて答えてください。
  170. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) お答えいたします。  いま先生の御質問が、この前の訪米の際に中業をどういうふうに外務省としては考えていたかということのように私はとったわけでございますが、今後の総理訪米ということであれば、総理訪米に際して防衛問題が出るということは予想されるところでございます。ただし、総理カーター大統領との会談は、その性格及び時間的な関係から、防衛問題について非常に具体的に細かい点までについて突っ込んで話し合いをするということは私たちとしては予想しておりません。むしろ、今後の段取りとしては、日本側で来年度の予算日本側防衛努力を反映させていくということで考えていったらいいのではないかというふうに考えております。
  171. 秦豊

    ○秦豊君 これは三月三十一日の五時前の答弁で非常に慎重なんだが、防衛庁はきょうも原防衛局長中心にして来年の予算要求については早目に頭をしぼって考えよう、これから対米交渉は険しいと。いまの答弁みたいじゃ済まないと思っているから大分会議を積み重ねているわけだ。これからずうっとやっていくのだけれども、では、原さんに、わざわざいらしていただいたのだから。  ぼくの受けとめ方は、外務省の一部に今後の対米交渉、頂点は防衛問題には何か一定の基準が欲しいと。それは防衛庁長官が承認をするローリングバジェットの例の中業、こういうものだけではこれはもう桧町限りだから、日本政府というオーソライズされたものとしては認めがたいと。だから、外務省がそういう一定の基準を欲しがるのは当然かもしれない、所掌として。ところが、客観的に見ると、防衛庁の方はそんなことはむしろ必要ないのじゃないか、いまのままでいいというふうにぼくは受け取っていたのだけれども、違いますか。
  172. 原徹

    政府委員(原徹君) 私どもは、再三申し上げておりますように、防衛計画の大綱が決まりました後中期業務見積もりというものを防衛庁限りの努力目標と申しますかそういうものとしてつくってそれで五十五年度からやっておるわけでございます。そこで、いまの実は外務省お話につきまして、格別外務省の方からそういうお話もございませんので、私どもとしてこれを何と申しますか国防会議決定するとか閣議で決定するとかそういうことを考えているわけではないわけでございます。
  173. 秦豊

    ○秦豊君 これは、本質論から言うと、原さん、あなたの御専門でしょう。つまり、統長――統合長期見積もり、ずっとあれは一種の演繹法でやっていくわけでしょう。その真ん中に中業があるのだけれども。本来は、閣議、国防会議でオーソライズした防衛計画の大綱、これのディテールというか、方向というか具体的なものを裏づけている中業なんだから、ぼくはこれはユニホーム限りにしてはいかぬと思うのだ、本来は。いや内局のすぐれた防衛局長私がおりますよという顔は余り早くされない方がいいと思うのだけれども、やっぱりそれだけでも足りない。ぼくは、これがたとえば毎年の年度業務計画とか年度の防衛、警備等に関する計画、年防ですね、の基礎になっていることは否定されないと思うのだ。そうでしょう。そうだと、ユニホームの原案を承認しているのは防衛庁長官だけというあり方は私はやはりそれでは足りないという見解を持っているからしつこく聞いているのです。本来は、中業も国防会議事項であるというこれは私の認識なんですよ。だから聞いているのです。そうじゃありませんか。
  174. 原徹

    政府委員(原徹君) 私どもはちょっと認識が違うわけでございまして、防衛計画の大綱――いままでの三次防とか四次防は五年間の物の調達計画みたいなものをつくってずっとやってきたわけでございますが、防衛計画の大綱によりまして部隊の規模は一定にこの規模だということを決めたわけでございますので、あとはその更新の際近代化をする、そういうことでございますので、五カ年計画はつくらない、そういう前提に立ったわけでございます。そういう前提のもとでございますから、私どもは単年度の予算ごとでやっていく。ただ、単年度の予算ごとにやっていくにいたしましても、それぞれの幕僚監部が、たとえば護衛艦であれば二十五年の耐用年数だと、それをいつつくるというのは、ある程度自動的には決まります。しかし、空の方はどうだ、陸の方はどうだということを全庁的に何と申しますか思想統一ということをしておく必要はどうしてもある。そういうことで中期業務見積もりをつくったわけでございますが、年度の予算ごとにやっていこうというところは防衛計画の大綱が決まりました以降一貫しているわけでございまして、そういう意味におきまして防衛庁限りの見積もりであってよろしいであろうと、そういうふうに私どもは認識しているわけでございます。
  175. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、こういうふうに角度を変えて聞いてみようかな、原さんには。  きのうの総理の金沢談話は御承知ですね、当然職掌柄。あれは、必要だったら政府部内における中業の位置づけも検討してもよいという含みが一つ――いやいや私のとり方なんだ、それが一つと、それから必要ならば五カ年というのをマイナス一で四カ年ぐらいに短縮というふうなことも含めて検討をしてもいいかもしれないと、こういう含みが初めてちらついた、こぼれたと私は思っておるんだが、あなたの理解はどうなんですか。
  176. 原徹

    政府委員(原徹君) 新聞で読みました限りで、特別御指示もございませんので、詳細のところはわかりませんが、私どもは、国会で、外務大臣訪米する前にも、現在の情勢にかんがみればできるだけ早く防衛計画の大綱の水準、その水準にできるだけ早くしたいと、そういうことをたびたび申し上げておるわけでございまして、そういう見地で、しかも中期業務見積もりは当然のことながら毎年見直すことになっておりますものですから、そういう気持ちでいま見直しを始めたということでございますので、まだ見直しの結果どうなるかというところまでは申し上げられる段階にはございませんわけでございます。
  177. 秦豊

    ○秦豊君 もう中業のことを聞いても余り反応がないようですから、局長会議なら会議にどうぞお帰りくだすって結構です。  外務大臣に伺いますが、じゃ、こんなに漠然としたものをワシントンにひっ提げて持っていって、今度は外相じゃなくて総理が、果たしてブラウンが迫り、バンスが迫り、それからホルブルックが迫り、カーターがにじり寄ろうとするワシントンのあのなかなかの空気の中で、いや、何となく参りましたと、防衛問題については応分の貢献はしますよと、数字は抜きにしてください、テンスもやめましょうと、こんなことで一体切り抜けられるんですか。そんな悠長なものですかね。
  178. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私の手元に昨日の総理の記者会見の発言の趣旨についての資料が参っておりますが、総理の発言された意図は大体次のようなことだということであります。  中業は防衛庁計画として現在それなりにリクワイアメントを満たして、必要を満たしているものであろうが、右を政府として認知していくか否かは来年度予算編成の過程でいろいろ議論される際取り上げられることとなるであろう今後の問題であり、現在これを認知するかどうか答える筋道の話ではないと考えると、これは直接総理の方から参った説明でございますので、従来、私どもも、このいまの問題は来年度予算編成の過程で日本政府態度がだんだん固まっていくのじゃないか。それまでの期間におきましてはまだなかなか日本全体としてのコンセンサスという形もできておらないように思いますし、もう総理訪米も五月の初めといたしますと、それほど期間もない。アメリカ側は一応私が参りましたときに中業一年短縮というような一つの考え方を示しておるわけで、それに対して私の方からは、日本のいろいろな情勢基本的な従来の政策から考えて、短期間に大幅にということはできないと思います、着実な増強ということは考える必要があるかもしれないけれども、短期間に大幅にということはできないと思いますということを申したわけでございまして、それからいまのような要請といいますか、希望の表明と言っておったわけですが、これについては日本政府全体、特に防衛庁の扱う問題であるから、帰ってそれぞれそういうお話があったことは伝えますということで帰ってきたわけでございます。
  179. 秦豊

    ○秦豊君 大臣ね、あなたがいま二つに折られた資料ですね、スタッフから来た、それは確かにストレートで総理が述べたんですよ。会見の常識でぱっぱと早いテンポで質問が飛ぶわけですね。全体として浮かび上がってくると、なるべく言いたくないことを含めて。それが報道になるのだけれども、やはりきのうの金沢談話というのは半歩前に進んでおるんです。中業の位置づけをどうするか、それから期間を含めて必要なら検討もしよう。そこで、アメリカはどうなんですか、ワシントンの空気は。まあ中業を日本政府がどうオーソライズするか、どの期間で、いつ、もっと具体的に、私がちょっと申し上げたように、一体日本は特に北東アジアの共同防衛に関してどの部門をいつごろまでにどの程度の増強をしてくれるのか、切ないまでのアメリカ要請にどうこたえてくれるのかということに対して、大来訪米よりも大平訪米がより具体的で誠意がありと認められれば納得するわけでしょう。
  180. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) それは、総理訪米という比較的限られた時間で、先ほど北米局長も御説明いたしましたが、内容に立ち入った問題は恐らく今回は無理なんじゃないか。基本的には、これは私もたびたびいろいろな機会に申しておるのですけれども、この問題は五十六年度予算編成の過程を踏まえて判断するということが一番実際的なんじゃないか。これはアメリカ側もその予算編成の過程をそれなりに注目するだろうと思いますし、日本国内もその過程において政府としての意思統一が形成されていく、それはどういう形ででき上がるのかわれわれにはいまからわかりませんけれども、そういう性質のものじゃないか。五十五年度についてはすでに予算案ができ、国会でいま御審議を受けている、ある意味では既定に近いことでございますから、いまのようなことがむしろ実際的だろうと存じます。
  181. 秦豊

    ○秦豊君 ちょっと観点を変えましょう。  例の三月二十七日現地時間バンス国務長官のアメリカ上院での証言、これはもうおたくが全文を取られて、安保の範囲拡大を意味したものではないというふうに統一的なお考えをお持ちのようですから聞きません、このことについては。ただ、あの同じ日に同じメディアで報道されたバンス氏とホルブルック氏のちょっとニュアンスが違っていましたね。そこでホルブルック氏の演説について、これは講演なんだけれども、これについて伺いたいと思うんだが、ホルブルック氏がワシントンでの講演で述べていますのは、アメリカ日本防衛費の着実、顕著かつ実質的な増強を求めている、こう述べられているのですけれども、大来外務大臣によれば実質的な増強というのは何を意味するとお思いですか。
  182. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは物価指数……どう言うか、指数はどれを使うかあれとして、物価の上昇分を除いたリアルな増加、インフレによって名目金額はふえますけれども、インフレ部分を除いた増加というのを実質増加と言っておると思います。
  183. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、マンスフィールド駐日大使が、GNPに対するパーセンテージじゃなくて絶対額がアメリカの関心事なんだと、日本防衛努力については。これとはちょっと位相が違いますか。
  184. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) アメリカ防衛努力については、いまのような意味での実質伸び率五%とか、あるいはNATOのヨーロッパ諸国の実質三%の年々の増加を認めるという意味での実質というのはいま申し上げたとおりだと思いますが、マンスフィールド大使が過去十年間ですか、年率八%の伸びがあったというのも、あれは実質の伸びだったと理解しております。
  185. 秦豊

    ○秦豊君 日本の閣僚の中では一番最近のワシントンの空気をはだ身で感じられたのは外務大臣だけですから、だから伺うのですけれども結局ぼくたちもこれもっと知りたいのは、アメリカ日本に求めている防衛努力拡大の具体的な分野、内容段階、時期、こういうふうに具体的に知りたいんだ、ぼくらも国会でこういう論議にあずかっているんだから。私がいまから言うことは全部含まれますから、ちょっと聞いてくださいね。  アメリカ日本に求めている分野、強化を要する分野、海峡封鎖能力、対潜能力の向上、弾薬備蓄のかなり顕著な増加、それから、基地の共同使用の拡大、艦船、航空機の修理能力についての協力ないし貢献、内陸輸送、港湾荷役、軍需貯蔵等に関する一般的な協力、さらに、在韓米軍――年間六億ドルかかっているそうだが、在韓米軍の駐留をも視野の間に置いた日本経済的貢献の拡大、こういうふうなものは全部含まれますか。
  186. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この会談の具体的な内容について、これを公表する自由は持たないのでございますが、いま挙げられたそういうたくさんな項目、具体的な話があったわけではございません。ごく大きなアウトラインとしては、対潜、対空能力の増強とそれから日本における米軍の駐留に関する費用の分担、できれば増加、これが主なものでございました。
  187. 秦豊

    ○秦豊君 ただ、私がせっかくいろんな資料から拾ってきて申し上げているんだけれども、そんなにピントが甘かったり、方向が違っていたりはしないでしょう。含まれているんでしょう、アメリカの期待する内容として。いかがですか。
  188. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) そこまで具体的な話はなかったわけでございますし、これはそういうこととすれば当然両方の防衛当局の話し合う種類の問題だろうと思うのです。
  189. 秦豊

    ○秦豊君 政府というのは、システム上、ある場合には防衛を表に出し、ある場合には外務が先に出る。キャッチボールとぼくは呼んでいるんですがね。だから、アメリカの太平洋軍司令官でも、大来さんに会って桧町は知らずに帰ったり、なかなかアメリカ日本も使い分けをしている。それはまあしばらくそれでいいと思いますがね。だんだんこういう方向があらわになってくると思います。  そこで、さらにこれに関連したことを伺っておきたいのですけれども、大方向としまして、アメリカ日本に対して、日本の安全保障のための駐留米軍であるという大きな前提に立って、したがって、駐留米軍の駐日費用は日本がより負担をすべきである、現在の七・五億ドルを突き破れと、こういう主張に結びついていく。それから日本経済に死活的な意味合いを持つ海上輸送路の安全保障については、第一義的に日本の責任範囲である。それから将来なし得れば日本の安全に緊要な韓国の安全については、日本がより顕著な責任を果たすべきであると、こういう大方向がだんだんワシントンから東京に向かって覆いかぶさってくるのではないかと私は思っているんですよ。外務大臣、どうでしょう。
  190. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 今回の会談の際には、少なくともいま秦委員からの御指摘のようなところまでの話はございませんでした。
  191. 秦豊

    ○秦豊君 そうではなくて、何があったかというようなことは幾ら何万時間あなたに迫りましても、それはもちろん出てくるものではありませせん。ピンポイントも出てこない。そうじゃなくて、大方向としてアメリカ日本に求めているのは、いつごろまでに何をどう増強をしてくれるのか、こういうことについての具体的な合意をいまや求めているわけですよ。ユニホームは七八年の晩秋のころ十月以降からガイドラインに沿って共同作戦――後で伺いますけれども、時間があれば――までやっているんで、全部の横並びにここまでそろえてくれということをいまアメリカ日本要請をしているわけなんで、ぼくのあなたに聞きたいこの部分は大方向を言ったんですよ。だから、どうもその辺のお受けとめ方が違ったのではないかと思います。  それじゃ、これに関連しまして、バンス氏が述べられた欧州やアジア諸国はアメリカの安全保障の権益の周辺部分を決めていなかったとその証言の一部で述べていますけれどもアメリカの言うこの権益の周辺部分というのは、日本中心にしてどの範囲なんでしょうかね。
  192. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) このバンス長官の演説を見ますと、そこの事項は、まず欧州及びアジアにおける同盟はアメリカにとって防衛上の主要な優先事項で長い間あったと。ただし、その周辺においてアメリカの安全がどこまでかかっているかについては明確な定義がないということを述べているのであって、日本の周辺という意味でなくて、要するにアメリカが現実にNATOであるとかあるいは日米安保で持っているそれ自身アメリカにとって非常に安全保障について重要であって、その他の地域についてのアメリカ考え方自身が明確でないということを述べているわけです。
  193. 秦豊

    ○秦豊君 だから、一枚の紙ですから、どっちからでもながめられる、ひっくり返せばいいんだから。アメリカの安全保障の権益の周辺部分というのは北東アジアでしょう。それから海上輸送路、マラッカ海峡、インド洋、中近東、これは全部つながっていくんじゃありませんか。
  194. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) その辺の、ですから、アメリカの安全保障のいわゆるスフィア・オブ・インタレストと申しますか、そういうところがはっきり決まっていなかったということを述べて、たとえばアラビア湾についてアメリカはどういう安全保障上の価値を持っていたか、いままで必ずしも明確な定義を持っていなかったということを言っているわけです。
  195. 秦豊

    ○秦豊君 非常に具体的なことをこれに関連して伺いますが、いま、インド洋に、ローテーションで恐らく三カ月だと思いますけれども、ちょっと間隔を詰めているかもしれません、ストライクコマンドの一部が洋上派遣されていますね。これはマリーンなんですね。これは、だから、ハワイ、それから沖繩、それから洋上というふうにそれこそローテーションを組んでいるわけなんだが、現実に現在インド洋に派遣されているマリーンというのはどこに所属している部隊ですか。
  196. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 現在、千八百名のマリーンを乗せたアメリカの艦船がスビックまで行ったということは私たち承知しておりますけれども、それ以後どこへ展開しているかということについては情報がございません。ただ、スビックに展開する際にアメリカ側の言った説明は、千八百名のマリーンは、マリーン自身はハワイの部隊であり、艦船はアメリカ本土から来た部隊であると、こういう説明です。
  197. 秦豊

    ○秦豊君 それで、これは非常に古典的な議論になるから、あなた方は淺尾さんを初め大臣も全部逃げやすいんですけれども、あなた方の言っている答え方の中で一つの大きな詭弁について、一つだけこういう機会だから申し上げておきたいのは、あなた方は日本からする戦闘作戦行動については事前協議だと。しかし、あれは移動なんだという言い方もあるわけですよ。それから日本に対する重要な配備と迫りますと、いやあれはトランジットだと。いろいろな言葉が全部用意されている、想定問答集に。だから、これはのれんに腕押しの議論なんで、こういう議論をしても普通はなじまない、国会論議に。しかし、ぼくの友人のラロック提督なんかは、そこで非常に高笑いするわけだ。大平さんが外務大臣であったときも日本には核兵器が自由に入っている、横須賀に。核アレルギーの強い日本の横須賀にあした入るのだからといって、波の荒い洋上でピッチング、ローリングのさなかに、しかも、夜、特殊輸送船に危険な弾頭を移送するというようなことはネービーはやらない。一度もやったことはないし、今後幾十年続いてもやるつもりがないと。その場合は、日米両国政府というのはもうすでにトランジットということについての一種の記録されざる合意があるんだから外務大臣に聞いた方が早いんじゃないかと笑っていましたがね。こういうことを聞いても淺尾さんはもう腕をじっと組んでいればいいんだから、答弁などは求めません。  類したことは、やっぱり移動というあなた方の言い方ね。軍の常識というのは、ロング太平洋軍司令官、たとえば一千八百人のマリーンをバンコックに乗っけようがキティーホークに乗っけようが何でもいいけれども、ヘリ空母オキナワに乗っけようが。乗っける場合には、バトルオーダーを下していつまでにどの海面に到着せよ、それで何何と合流せよと、作戦目的、期間、これで移動するんです、編成して。必要な装備を整えて出発するわけですよ。だから、バトルオーダー、訓練の場合もバトルオーダーという言葉をたまに使いますが、そういう常識で動いている軍に対して、あなた方は、いや、単に移動しているんです。どのところの断面をとっても移動ですから、戦闘作戦行動ではないと言う。これは後世の論理学に残るであろう詭弁のパターンです。だから、これは答弁を求めない。むなしいから求めない。一言言っておくんです。これは大来外務大臣、まさにあなた方のすぐれたスタッフはそのような答弁に対する習熟度が一〇〇%に近いんです。うそはどこから漏れてくるか、アメリカから漏れてくるんです。だから、私はこういう議論をしていたら、日米安保体制についてある日突然ここまでレベルを高めたと。後ほど時間があれば、例のガイドラインなんていうのは、あれは日米安保改定と言いたいような重要な変更を大平さんが予備選挙に逆転で勝ったあの日にガイドラインについての安保協議がなされて合意しているんだから、もう二年前からレールは敷かれている。二年前は十年前に連なる、岸・ハーターに連なるというわけで、私はいまの日本の安保問題というのはそういう意味で大変質的な転換点にあると思っているわけですけれども、一つ具体的に大来外務大臣に非常に細かいことを伺って恐縮なんですが、アメリカの意図を知りたいために、あなたは、一月二十一日、二月二十九日、アメリカ太平洋軍ないし第七艦隊のトップとお会いになった記憶はありますか。
  198. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 記憶がございます。
  199. 秦豊

    ○秦豊君 一月二十一日は太平洋軍司令官のロング大将ですか。
  200. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 正確には日付を覚えておりませんが、ロング大将に会った記憶がございます。
  201. 秦豊

    ○秦豊君 二月の末はトロスト第七艦隊司令官じゃなかったですか。
  202. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) それもそのとおりだったと思います。
  203. 秦豊

    ○秦豊君 あとは、今度はあなたが否定する番ですが、ここで非常に具体的な提案をされているんですよ。提案とあなたが受け取っていないかもしれないが、三海峡封鎖問題に関連しまして日本の機雷調整能力という話が出たんですよ。そのときに、アメリカが、これは私の知り得た範囲だから、外務大臣はいやとんでもないとおっしゃる答弁があるかもしれませんが、海峡封鎖に要する機雷というのはぼくらが思っているよりはるかに数が多いんです。これは日本でいま呉その他で機雷を調整する能力は一日に最大三個なんです。そうすると、何年もかかるんですよ、一朝有事の場合は。もう対ソ戦争は終わっているんです、第三次世界大戦はね。アメリカが必要な場合には機雷を提供する用意があるというお話をどうもあなたにされた形跡があるんですよね。そんな具体的なことは全然もうなかったですか。
  204. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その記憶は全くございません。
  205. 秦豊

    ○秦豊君 いつの日かあなたがそれに思い至り想起され記憶がよみがえるであろうと私は思っていますが、とにかくいま日米のユニホーム同士では、宗谷、津軽、対馬三海峡の封鎖を日本の海上自衛隊、部分的に航空自衛隊のみではなし得ないと、こういう認識をアメリカのユニホームは持っている。防衛庁のユニホームもそのことはよく知っている。だから、彼らは、三海峡と言わない。二海峡ないし二・五海峡と言っているんです。対馬海峡は共同防衛、宗谷海峡についてはアメリカが機雷敷設と、こういうふうになりつつあるんですが、それはいいでしょう。  それで、外務省から見た三海峡封鎖問題をちょっと私に述べてみてください。いま、三海峡封鎖問題は、アメリカ海軍ユニホームからする積年の要請であったんです。それはだから訓練もしているんです、実は。宗谷も津軽も訓練しました。一番頻繁にやっているのは対馬です。津軽もやってみた。これはもう年度の訓練でやっていますからね、外務省は御存じなくても。だから、いまや三海峡問題は、衆議院、参議院の防衛論議でずいぶんやったでしょう、ある虚構に基づいて。ぼくは少し変わったことを聞いておいたんだが、封鎖なんて簡単におっしゃいますけれども、これを発想し、準備し、そして実行し、かつそれを維持する。すべての機関を通じてソビエトはそれをいち早く察知するでしょう、あらゆるチャンネルによって、ルートによって。その場合は、三海峡封鎖というようなことに日本政府の意思がコンクリートになろうとする瞬間からソビエトが行うのはリアクションです。対応の措置を当然考える。立場を逆にすれば日本がやりますよ。その場合、一番日本にとって有効であろうというのは、いわゆるブラックメールというか、核のおどしというのはまさにいまのクレムリンはやりたくてしようがない。ブラックメールを浴びせる。したがって、海峡封鎖なんて言うけれども日本の安全保障にとって非常に重要なリアクションといきなり直面をしかねないという行政上の最高の決断、これが海峡封鎖なんですよ。もちろん国際公法なんというのは一朝有事の場合にはこの辺からこの辺の紙くずかごに直行するから、そういうことは言わないけれども。だから、外務省から見た三海峡封鎖作戦とか封鎖問題なんというのは、どういうふうに認識していらっしゃいますか。
  206. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先生のお尋ねが、どうも法的な面でなくて現実的にどういうふうに見るかというお尋ねのようでございますけれども、まあ私も軍事専門家でなく全くの素人でございますので、その点からお答えはできませんけれども、やはりいろいろなオプションの中の一つではあろうかと思いますし、それからいまの核のブラックメールということでございますけれども、同時にその核のブラックメールをやる者それ自身についてもアメリカとの全面的な対決ということをやはり前提にせざるを得ないのじゃないか、それが一つの抑止になっていくのじゃないかという気がいたします。
  207. 秦豊

    ○秦豊君 ちょっと関連しまして、これは時間があればまた別な場でゆっくり伺ってみたい。佐世保という軍港ですけれども、この位置づけは、アメリカ外務省には佐世保の使用問題についてはうの毛ほどの要請も希望もアプローチもないんですか、いまのところは。
  208. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 全くございません。
  209. 秦豊

    ○秦豊君 日米防衛協力のためのいわゆるガイドラインですね、これはもうあなた方の御専門でしょう。七八年の十一月二十七日。これについて国会論議を振り返ってみると、非常に少ないんですよね。ちょうど国内政争がたけなわだったものだから非常に抜けているんだけれども、やっぱり国会は大きく手抜きをしたと思いますね、あのガイドライン問題のときに。いまにして悔やまれますが。現在の安保条約では、日本アメリカ日米が軍事的な共同行動をとるというのは、第五条ですね、言うまでもなく。
  210. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいまの御質問日本が攻撃されたときに日米共同対処をするということであれば、第五条でございます。
  211. 秦豊

    ○秦豊君 ガイドラインではそれが三つのカテゴリーに拡大していますね。それはお認めになりますね。
  212. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 恐らくいま先生の御質問の点が、ガイドラインにある日本に対する武力攻撃がなされるおそれがある場合、あるいはその未然の防止策ということでございますけれども、これは要するに日本に対して武力攻撃が行われる前の段階日米間で共同して研究していくということでございまして、それによって日米が実力をもって対処するということではございません。  なお、その点、念のために申し上げますと、ガイドラインの前提がいろいろございまして、一つには日米安保条約の範囲内で行うということを前段で明言しておるわけでございます。
  213. 秦豊

    ○秦豊君 これは、淺尾さん、あれでしょう、だから侵略の未然防止、武力攻撃のおそれとその現実、日本以外の極東での協力、これが全部入りますね。
  214. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ガイドラインにはそういう三つないし四つの場合に対処する項目が全部載っております。
  215. 秦豊

    ○秦豊君 だから、言いかえれば、角度を変えれば、いまの日米安保条約では、極東という問題は在日米軍が第六条事項として担当していたわけですね。
  216. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) まさに第六条は極東の問題ということでございます。  なお、ガイドラインの六条の問題で想定している場合にも、六条において事態が起きたときに、日本国として、日本国といいますか、広い意味日本国でございますけれども、在日米軍施設の利用その他についていかなる便宜供与ができるかということを研究しているわけでございます。
  217. 秦豊

    ○秦豊君 今度は、第六条の相当事態であっても、日米共同で動くというのがガイドラインの規定でしょう、方向でしょう。米軍任せじゃなくて日米共同でしたね、たしか。
  218. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いまも御答弁いたしましたように、その六条の規定においては、共同と先生言われましたけれども、そういう情勢に応じて日本側として、アメリカ側日本における施設区域を使う際に、いかなる便宜が供与ができるかということを研究しているわけでございます。
  219. 秦豊

    ○秦豊君 その答弁は、問題の解釈としてオーソドックスじゃないですよ、淺尾さん。日米ガイドラインに言う、ぼくの申し上げた三つのカテゴリーの、つまりCの方、第三の方ですね。日本以外での極東の事態に、まさに日米共同で対処するという可能性を探っているのがガイドラインなんだから、それを保障しようとするのが例の作戦想定なんだから、その準備が共同訓練なんだから、そういうことをぼくは言っているわけですよ。だから、いままでは極東事項は米軍だけだった。今度は日米共同で対処し得るようなレールが日米双方のユニホームによって現実に二年前から敷かれているんですねという確認をぼくは求めているわけですよ。
  220. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) そういうことはございません、簡単に御答弁申し上げまして。
  221. 秦豊

    ○秦豊君 では、ガイドラインの三つのカテゴリーと矛盾しますね。
  222. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 矛盾いたしません。
  223. 秦豊

    ○秦豊君 矛盾しないという理由をちょっと論証してください、じゃあ。
  224. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ちょっと長くなりますけれども、各……
  225. 秦豊

    ○秦豊君 日本以外の極東だけに限定してください。
  226. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与えるような場合に考えられる日本の便宜供与のあり方を、日米安保条約、その関連取り決め、これは地位協定でございますけれども、その他日本関係法令の範囲内において一般的に研究しようということでございまして、先生御承知のとおり、日本は、安保六条によって、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために米軍の施設及び区域を提供しておりますけれども、その際にこの指針はそのような米軍に対する日本の便宜供与をも含めて法的枠組みの中での便宜供与をこの際にあらかじめ検討していくということで、新たにこのガイドラインによって日米が共同して武力対処するということは毛頭考えていない……。
  227. 秦豊

    ○秦豊君 ほかのことも聞きたいから、これちょっとはしょりますけれども、淺尾さんね、侵略の未然防止、武力攻撃のおそれとその現実、それでまた日本以外の極東での日米の軍事協力、こういうふうにはっきりユニホームが三つのカテゴリーを踏まえて討議して、それについて日米安保協議会までオーソライズしているんだから、これはあなたの答弁ではとてもかみ合わないの、無理なんですわ。  だから、ことさらにその実態と本旨をあなたがあなたの勝手な解釈でゆがめているとしか私は理解できない。  ただ、三十七分までの間に中東のこともちょっと伺っておきたいから、外務委員会でうちの田あたりと差しかえて入ってみたいし、ほかの場にしたいと思いますが、私どもはずっと七八年から議事録を見ると、このガイドラインの私どもの認識によれば、危険性が非常に国会論議に反映されていない、きな臭さがね。これは野党の怠慢だ。ぼくらもちょうどあのときに内閣委員会離れていたし、とにかくもう一年目に帰ってみたら、もう何だかこれぐらいの議事録しかない、各党の議事録が。このガイドライン問題というのは非常に重要で、もっと国会で煮詰めなきゃいかぬ。  あれは八〇年安保とぼくはネーミングしているんですがね。あれは八〇年安保ですわ。まさに改定交渉なき安保改定ですわ、あれは実質改定。あなた方の言う解釈適用の拡大、土俵を広げるというあなた方のこうかつな手腕によって悪知恵によってガイドラインはいままで広げられてきた、私はそう思っていますが、それはまた別のあれにしましょう。  それで大来外務大臣、ちょっとこのことを一つ二つだけ伺わしてください。  電電問題、電電公社ですね、これはアメリカは本当に求めているのは一体何ですか。  ぼくはわからないんだな。システムの相違とか、交換機本体は無理とさんざん言っているんだけれども、どうもそういうことについての基本的な理解が足りないのか、一体どういうことなんですかね。あるいは開放のシンボルだというのでしゃにむに今後とも押してこようとするのか。しかも、これについて一気に申し上げれば、大平訪米ではとても片がつかぬ、どうするかというと、アスキューアメリカ特別代表が大平さんの後に日本に来る予定があるようだが、その辺がせいぜい妥協の糸口がほぐれ始める段階なんでしょうかね、まとめて伺って恐縮ですが。
  228. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 電電問題は牛場・ストラウスの共同発表で一応の取り決めができておりまして、今年の末までに解決に到着する約束になっておるわけでございますが、いままでに四回ぐらい調達方式をめぐるアメリカ日本の違いの実務者の会議が行われてきまして、かなり実態が双方に明らかになってきておる段階で、まだ交渉というところまで公式に入っておらないわけでございます。先般安川政府代表が参りまして予備的な話し合いを始めた段階でございますからまだ何とも言えないわけで、基本的には日米貿易のアンバランスということが広い意味ではあると思います。今回私が会いましたときにも、アスキュー氏が、今年は場合によると百六十億ドルぐらいアメリカの対日入超になるという見方もある。これは非常に深刻な問題で、日本に対するアメリカの輸出を何としても伸ばしたいのだという一般的な問題がございます。  それから東京ラウンドの取り決めの中の政府調達部面をできるだけ開放していくという国際的な取り決めで、日本政府調達開放分が全般的に低い。電電公社を加えないとどうも大分足りないのじゃないかというような議論があるようでございます。  いずれにしても、一方においてレシプロシティーという日米の調達の相互主義というものが牛場・ストラウス会談の共同発表に言われておるわけでございまして、その辺をめぐって今後日米間にいろいろ話し合いが行われていくことになるのではないかと思っております。
  229. 秦豊

    ○秦豊君 大平さんの場合は、これもワン・オブ・ゼムで大きなワンの一つだと思いますけれども訪米で片がつくわけではない。やっぱりぼくの申し上げたのは、タイミングとしてはアスキュー訪日以後年内にと、年内というのは気の長い話だが、それしか仕方がないということですね。
  230. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) タイミングとしてはそういうことではないかと思いますし、牛場・ストラウスの発表もそうなっておるわけでございます。
  231. 秦豊

    ○秦豊君 それからもう一つだけ経済問題でちょっと自動車のことをまとめて伺いますからお答えを願いたいんですが、自動車はわれわれ日本として取り得る選択が三つある、ないしそのコスビネーション、組み合わせにあると思うんだが、一つは、日本巨大メーカーのアメリカへの工場進出、二つは、日本側からする対米自動車輸出自己規制、三つは、アメリカ産車、米車、アメリカの車の輸入の顕著な増加、防衛問題のまねをすれば顕著な増加と、この三つが私はあり得ると思うんだが、一は、これは大来外相の範囲あるいは佐々木通産相の範囲じゃなくて、メーカーですから、民だから、これはちょっとやめますけれども、これさえ簡単ではないです。スケールメリットがないととてもやっていけない。労働問題もうるさい。だから大変だと思いますが、問題は車の輸出自己規制とか、アメリカの車の輸入の顕著な増加、二と三の組み合わせ以外に現実的な解決の処方はないという私の考え方についてはどういうふうな認識でしょうか。
  232. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いまのお話、もう一つつけ加えれば、アメリカが何らかの立法措置をとってアメリカ側が輸入制限をするという方法があるわけですが、今回訪米の際アスキュー代表とも大使とも話しましたときには、アメリカ政府は輸入制限をやる意思はない、これは大統領の意向でもあるということでございました。それから日本側に自主規制は求めない。アメリカへの工場進出を対米投資を求める。それからいま御指摘のございました日本側アメリカの自動車の輸入増大、これは自動車だけじゃなくて部品の増大も求めたいということでございまして、幾つかの代替的な案といいますかがあるわけでございます。自動車の輸入増加に関連してスタンダード、検査手続等の問題があるわけでございますが、一つは、私も指摘したんですけれどもアメリカの自動車の輸入はできれば日本もふやした方がいいんだけれども、ただ、アメリカの完成自動車はすでに国際商品では余りなくなってきているんじゃないか。昨年でもアメリカは七十万台ぐらいの乗用車を輸出していますけれども、そのうちの五十五万台はカナダに対する輸出で、これは米加間に自動車条約がありまして、一応国内市場と見た方がいい。そうすると、米大陸以外に出ていくのは十五万台、そのうち日本が二万台近く買っているので、必ずしもそう悪いとは言えないわけではないですかという話を私はいたしました。それに対して、確かにそれはアメリカ側努力にも問題があると。将来、これは私の想像ですが、いま本格的に大型車から小型車に切りかえをやっている。このタイミングを誤ったということが今度の問題の一番基礎的な理由だと思いますが、本格的に七、八百億ドル使ってアメリカの自動車業界が大型から中型へ転換する。その後あるいは競争力が出てくるのかもしれない。そういう段階日本も相当アメリカの小型車を輸入するということがあればこれも一つの解決になるかもしれないというふうに、これはまだ余り議論に出ておらないのですけれども、私感じておることの一つでございます。
  233. 秦豊

    ○秦豊君 まだ少し残されているようですから、中近東の問題で確かめておきたいことがあります。  それは、昨年のいつになりますか、昨年クウェートのサバハ国王から日本あての親書が到来した事実があるのかどうか、それを中近東アフリカ局はどのように処理をしたのか、このことをちょっと前提として伺っておきたい、だれあての親書であったのかも含めて。
  234. 千葉一夫

    政府委員(千葉一夫君) 昨年はそういう親書が来たという記憶はございません。
  235. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、クウェートから政府に対して、たとえば数年前に訪問された福田総理の懸案不実行について、そのことについてのリクエストないし親書が来たことはありますか。
  236. 千葉一夫

    政府委員(千葉一夫君) さような親書は来ておりません。
  237. 秦豊

    ○秦豊君 それでは園田特使がクウェートに今度は入れなかったわけですね。なぜ空港でトランジットルームで処遇されたのか、どういうふうに千葉さんはお考えですか。
  238. 千葉一夫

    政府委員(千葉一夫君) ただいまの園田特使がクウェートを通過しましたときに、前もって大平総理大臣の書簡を先方の首脳に送りまして、今回は日程の都合で寄れないからあしからずということを言っております。次に、所在のわが方の大使と先方とで事前に打ち合わせた結果、滞在時間――滞在といいましても飛行機の給油のためのストップアワーでございますし、きわめて短時間でもある、わざわざ向こうの人に出てきてもらうには及ばない、そういうことであったので、こちらからお願いし、また向こうもそれに同意して、ただいまおっしゃいましたように飛行場のトランジットの部屋で過ごしたのみであります。ただし、先方からは担当の外務省職員は出てきております。
  239. 秦豊

    ○秦豊君 千葉さんね、多分そうお答えになるであろうと思った、フライトスケジュールの関係。ところが、クウェートと日本というのは最近あなた方が実感していらっしゃるよりはるかに悪いんですよ。だからDD原油交渉があれほど難航した。原因なくして結果はないですよ。親書のことは全面否定されたが、これは私もさらに調べてみますよ。こういうアプローチがあったはずなんだ。  それで、アラファト議長に園田特使がなぜ会えなかったのか、DD原油の交渉がなぜ難航したのか、クウェートについては単なるフライトスケジュールだけじゃないという総合的な印象をぼくは持っているもんだから一つ二つ聞いたんだけれども、申し上げたいことは、最近村田大使はアブダビでずいぶんじっくりと取り組んでおられて、去年のある時期のPLOと日本のいわゆる雰囲気ね、これといまのはもうほとんど違いますよ。かなりざらついていますよ。たとえばUAEから最近帰ったある経済人の話によると、オタイバ氏は勲一等についてはどう喜んだのか喜ばなかったのかぼくは知らない。けれども、ぼくは去年の五月にオタイバ氏に会ってきて、三、四時間彼の自宅で、まあ石油省にも行ったけれども、じっくり話してきた。彼の石油についての本質的な認識、日本についての認識、これを含めて私なりに解釈すると、日本から帰ってから日本を見る目が、オタイバ氏の目もシビアになっている。あれほど対日に枠を増量したのに日本は一体何をもって報いているのか。いろんな特使が来ていろんな約束をするが、一つ一つ検証してみればどこまで実現できているんだ、リップ・サービスのみではないかというふうな不満を含め、PLO問題全体への後退というふうな受けとめ方をしているんですよ。これは担当の局長に聞いたら、とんでもないという答弁が一番簡単だからそれは御自由ですが、そんな簡単なものじゃありませんよ。だから、ぼくらパレスチナ友好議連は木村俊夫さんとよく話し合いをして、どうもうまくない、何らかの手を打つ必要がありはせぬかということをさえ超党派のメンバーで考えているほど問題がたまっているんです、潜在的に。  そこで、その問題については、PLOに対してはなぜいまのあなた方のありようが精いっぱいなのか、理由がわからない。Uターンしているんじゃありませんか、あなた方。違いますか。
  240. 千葉一夫

    政府委員(千葉一夫君) 先般、園田特使がア首連に寄りましてオタイバさんにも会いましたし、ザイド大統領にも会っておりますが、その際お二人とも異口同音に、日本のPLOとの対話等を含めて大変態度がよろしいとおっしゃっております。そして、この二人だけではなくて、その下の方の人も、別途私どもの大使あるいは大使館員と話してもそのようなことを申しております。また、東京におきましてア首連の大使と私との話でもそういうのが出ております。もとよりわれわれの耳に快いことを言いたいのかもしれません。しかし、これだけ多くのケースがあるということは、向こうも実際そう思っているだろうと思われます。  園田特使がなぜアラファト議長にお会いにならなかったかという御質問に対しましては、初めからそういう計画はございませんし、園田特使も、記者会見で、道で出会ったら自分は逃げるわけにいかないとおっしゃいましたのですが、現地に行かれまして、これは新聞等にも出ておりますので決して秘密でも何でもございませんが、オタイバさんとも話し合った結果、やはりオタイバさんはザイド大統領の肝いりのもとでやっているこの対話を続けた方がよろしいのであると、こういうことで会わないということになった次第でございます。
  241. 秦豊

    ○秦豊君 委員長、最後に一問だけよろしいでしょうか、一問でやめますから。  外務省、このことを一問だけ伺います。全然違った分野ですが、日米関係に絡んで、原子力。太平洋で使用済み核燃料の貯蔵所、あるいは貯蔵庫と言うべきか、貯蔵所、サイトですね、この建設について、ことしの一月末にピカリングアメリカ国務次官補と話し合った事実があるかどうか。あれば、それをめぐるスタディーというのは、一体いつごろからどこで始める予定なのか。それからスタディーの分担金十六万五千ドルと私のメモにはあるけれども、それは合意したのか、交渉が残されているのか。  最後に、これに関連して、その日米の使用済み核燃料のサイトの候補としてはウェーク島がイメージされるのか。つまり、ウェーク島が最も有力なのか。  以上をまとめてお答え願いたい。
  242. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) ピカリング米国国務次官補がことしになりましてから来日したことは事実でございます。一月末であったかどうか、ただいま記憶に定かでございませんが、その際、太平洋におきます使用済み燃料貯蔵の可能性について話し合ったことも事実でございます。この問題は米国がこの貯蔵の可能性についてのフィージビリティー・スタディーを日米で共同でやらないかという提案でございまして、その中身につきましては目下専門家の間で意見の交換を行っておるところでございます。  それから先ほどそのフィージビリティー・スタディーの金額について先生がお挙げになりました数字は、私には全くどういう数字であるか、聞いたことのない数字でございます。
  243. 秦豊

    ○秦豊君 ウェーク島は。
  244. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 米国関係省庁が合同でいままでに予備的な調査をすでにいたしております。その予備的な調査をいたした対象といたしましては、ウェーク島とグアム島とそれからパルマイラ島という、この三つの島でございます。――グアムと申し上げたのは間違いで、ミッドウェーでございます。
  245. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) 以上をもって秦豊君の質疑は終了いたしました。  他に御発言もないようですので、外務省所管に関する質疑はこれをもって終了したものと認めます。     ―――――――――――――
  246. 桧垣徳太郎

    主査桧垣徳太郎君) この際、分科担当委員の異動について御報告いたします。  本日、渋谷邦彦君が分科担当委員を辞任され、その補欠として馬場富君が分科担当委員に選任されました。  明日は午前十時から分科会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十二分散会      ―――――・―――――