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1980-03-12 第91回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月十二日(水曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  三月十一日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     内藤  功君      井上  計君     三治 重信君  三月十二日     辞任         補欠選任      上田  稔君     志村 愛子君      竹田 四郎君     吉田 正雄君      三木 忠雄君     馬場  富君      矢原 秀男君     内田 善利君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山内 一郎君     理 事                 亀長 友義君                 下条進一郎君                 桧垣徳太郎君                 安田 隆明君                 栗原 俊夫君                 山崎  昇君                 原田  立君                 沓脱タケ子君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 小澤 太郎君                 金丸 三郎君                 上條 勝久君                 熊谷  弘君                 志村 愛子君                 鈴木 正一君                 田代由紀男君                 玉置 和郎君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 町村 金五君                 宮田  輝君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 大木 正吾君                 勝又 武一君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 松前 達郎君                 森下 昭司君                 安恒 良一君                 吉田 正雄君                 内田 善利君                 中尾 辰義君                 馬場  富君                 渡部 通子君                 小巻 敏雄君                 内藤  功君                 三治 重信君                 秦   豊君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣   大平 正芳君        法 務 大 臣  倉石 忠雄君        外 務 大 臣  大来佐武郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  谷垣 專一君        厚 生 大 臣  野呂 恭一君        農林水産大臣   武藤 嘉文君        通商産業大臣   佐々木義武君        運 輸 大 臣  地崎宇三郎君        郵 政 大 臣  大西 正男君        労 働 大 臣  藤波 孝生君        建 設 大 臣  渡辺 栄一君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      後藤田正晴君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 伊東 正義君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小渕 恵三君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  細田 吉藏君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       正示啓次郎君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       長田 裕二君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  土屋 義彦君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  園田 清充君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        任用局長     斧 誠之助君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局経済部長  伊従  寛君        公正取引委員会        事務局取引部長  劔持 浩裕君        公正取引委員会        事務局審査部長  妹尾  明君        警察庁警備局長  鈴木 貞敏君        行政管理庁長官        官房審議官    中  庄二君        行政管理庁行政        管理局長     加地 夏雄君        行政管理庁行政        監察局長     佐倉  尚君        北海道開発庁総        務監理官     大西 昭一君        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁参事官   佐々 淳行君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁防衛局長  原   徹君        防衛庁人事教育        局長       夏目 晴雄君        防衛庁衛生局長  野津  聖君        防衛庁経理局長  渡邊 伊助君        経済企画庁調整        局長       井川  博君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        環境庁大気保全        局長       三浦 大助君        環境庁水質保全        局長       馬場 道夫君        国土庁長官官房        長        谷村 昭一君        国土庁長官官房        審議官      柴田 啓次君        国土庁土地局長  山岡 一男君        法務大臣官房長  筧  榮一君        法務省民事局長  貞家 克己君        法務省刑事局長  前田  宏君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君        大蔵大臣官房長  松下 康雄君        大蔵省主計局長  田中  敬君        大蔵省主税局長  高橋  元君        大蔵省理財局長  渡辺 喜一君        大蔵省銀行局長  米里  恕君        大蔵省国際金融        局長       加藤 隆司君        国税庁長官    磯邊 律男君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省体育局長  柳川 覺治君        厚生大臣官房長  大和田 潔君        厚生省環境衛生        局長       榊  孝悌君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  山村 勝美君        厚生省薬務局長  山崎  圭君        厚生省社会局長  山下 眞臣君        厚生省年金局長  木暮 保成君        農林水産大臣官        房長       渡邊 五郎君        農林水産大臣官        房予算課長    田中 宏尚君        農林水産省構造        改善局長     杉山 克己君        農林水産省農蚕        園芸局長     二瓶  博君        農林水産省畜産        局長       犬伏 孝治君        農林水産省食品        流通局長     森実 孝郎君        農林水産技術会        議事務局長    川嶋 良一君        通商産業省通商        政策局長     藤原 一郎君        通商産業省貿易        局長       花岡 宗助君        通商産業省立地        公害局長     島田 春樹君        通商産業省基礎        産業局長     大永 勇作君        通商産業省機械        情報産業局長   栗原 昭平君        資源エネルギー        庁長官      森山 信吾君        資源エネルギー        庁公益事業部長  安田 佳三君        中小企業庁長官  左近友三郎君        運輸省海運局長  妹尾 弘人君        運輸省鉄道監督        局長       山地  進君        運輸省自動車局        長        飯島  篤君        運輸省自動車局        整備部長     小林 育夫君        海上保安庁長官  真島  健君        郵政大臣官房電        気通信監理官   寺島 角夫君        郵政大臣官房電        気通信監理官   神保 健二君        郵政省電波監理        局長       平野 正雄君        郵政省人事局長  林  乙也君        労働省労働基準        局長       吉本  実君        労働省労働基準        局安全衛生部長  津澤 健一君        労働省婦人少年        局長       高橋 久子君        労働省職業安定        局長       関  英夫君        建設大臣官房長  丸山 良仁君        建設省計画局長  宮繁  護君        建設省都市局長  升本 達夫君        建設省道路局長  山根  孟君        建設省住宅局長  関口  洋君        自治省行政局公        務員部長     宮尾  盤君        自治省財政局長  土屋 佳照君        消防庁次長    鹿児島重治君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君        日本国有鉄道理        事        半谷 哲夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十五年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十五年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十五年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算、映和五十五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより三治重信君の総括質疑を行います。三治君。
  3. 三治重信

    三治重信君 まず最初に、外交防衛問題について御質問をいたします。  総理は、施政方針演説で、外交問題については、国際関係で主体的なそれへ脱皮したい、それから国際的地位にふさわしい役割りと責任を果たしたい、こういうふうに述べられたわけなんですが、今回のソ連アフガニスタン侵入から考えますと、日本のこの北方領土に対するソ連の基地の設定、それから日本海に非常な海軍力増強が行われていて、日本海じゃなくてソ連海だと言われる、こういう状況のもとに、われわれは日本国土防衛についていま一段と具体的な努力が行われなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、また、それに対して日本のいまの防衛大綱というものが非常に古くさくなっているのじゃないかと、こういうふうに言われておりますが、それに対する総理の御意見
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように、ソ連アフガン侵入でございますとか、北方地域ソ連軍事的な配備が強化されておるということは否めない事実のようでございます。こういう事態に対しまして、わが国防衛安全保障につきまして新たな工夫が要るのではないかというお尋ねでございますが、結論から申しますと、わが国といたしましては、従来から堅持してまいりました外交防衛の基本を崩さずに、それを堅持してまいりますならば、いかなる事態にも対応できるのではないかと考えておるわけでございまして、すなわち、日米安保条約の誠実な実行、わが国防衛力につきましては、防衛力整備大綱に従いまして、国力と国情に応じてその整備を図ってまいるということを着実に進めてまいることによって、今日まで日本の周辺の安全を維持することに成功してきたわけでございまするし、現に世界の波は必ずしも静かじゃございませんけれども日本は安全を確保いたしておるわけでございまして、今後もこの体制で、緊張した姿勢で対処いたしますならばそれができないはずはないと考えておるわけでございまして、われわれは既定の方針を堅持して着実にこれを進めてまいるということで、必要でかつ十分であろうと考えております。
  5. 三治重信

    三治重信君 今回のこのソ連アフガニスタン侵入は、ソ連中東戦略の一環であって、最終的なねらいは、いわゆるペルシャ湾石油の元栓の管理権を握る、こういうことによって西欧や日本への政治的な支配力を強めようと、こういうことが最終的なねらいだと軍事評論家は言っております。またソ連アフガニスタン侵入によって米ソデタント関係が非常に崩れた、しかしながら、アメリカソ連に対する経済制裁ヨーロッパは必ずしも同調しないと、日本ソ連に対する経済制裁に対して非常にあいまいだと、こううわさされておりますが、また、先日永野さんは、シベリア開発経済援助とか協力でなくて、日本貿易上必要なためのシベリア開発だと、こういうふうなことも言っておられますが、政府はこういう情勢に対してどういうふうに対応されていこうとするのか。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) ソ連アフガンに対する軍事介入がどういう意図で行われておるかということ、あなたが御指摘のように、油田地帯あるいはペルシャ湾への接近を意図しておるのではないかという見方も有力にありますことは承知いたしておりますが、いずれにいたしましても、そういうことはソ連にとっても高い代償を伴うものであるということでないと、そういったことを抑止することにはならぬと思うのでございまして、世界各国が、これは自由主義圏であろうと、非同盟圏であろうと、回教圏であろうと、ひとしくこの行動に対しましては強い反対を示しておるわけでございまするし、これに対しまして、ソ連がそういったこの種の行動を戒めていただけるような環境をつくらなきゃいけないのではないかという点につきましてもそれぞれ認識は一致しておると思います。ただ問題は、これに対しましてどういう対応策を講ずるかということにつきましては、その置かれた立場におきましてそれぞれニュアンスの違いがあることはまた当然のことであろうと思うのでございます。わが国といたしましては、対ソ対応措置といたしまして幾つかの問題を抱えておるわけでございます。こういう環境の中におきまして、わが国立場においてできること、できないことをよく勘案いたしまして対処いたしておるわけでございまして、一つにはシベリア開発に伴う信用供与をどうするかという問題でございます。これはすでにやっておりますことと新たに要請を受けていることとがあるわけでございますが、すでにやっておりますることはそのまま継続をいたしておるわけでございますが、新たに要請がありました点につきましては、いろいろの関係をいま勘案いたしまして検討を重ねておるところでございまして、まだ結論は出していないわけでございます。  モスクワ・オリンピックに対する対応の問題は、すでに明らかにいたしておりますように、JOCに答えましたとおりの態度を今日まで堅持いたしておるわけでございます。ヨーロッパアメリカとそれぞれ対応の仕方が若干違うことは置かれた立場からやむを得ないことであろうと思うのでございまして、私ども、いまソ連に対する対応措置としてとっておる措置は間違っていないと存じております。
  7. 三治重信

    三治重信君 総理の御答弁だと、シベリア開発日ソ経済協力も従来やっているやつは続けると、新規なやつについては検討中だと、こういうことで理解をしてよろしゅうございますですね。  ところで、総理が言われる環太平洋連帯構想、この中に、この共同防衛の問題がそういう構想にも入るかどうか。  それから、アメリカから非常に日本に対する防衛力増加を要求されてきていると、わが春日代表衆議院における質問においても、ブラウン米国防長官が来日の際に防衛拡大要請したと、これに答えて外務大臣は、GNP一%にまで持っていくように努力する姿勢で今度の訪米でいろいろ防衛問題を話す、こういうような答弁が行われているように感じておりますが、その点は間違いございませんか。
  8. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 環太平洋構想につきましては、これは政治、軍事の面を含まず、経済文化面における開かれた地域協力という考え方で、従来、政府としても考えてまいっておるわけでございます。  日本防衛力強化につきましては、特に米国で各方面から日本防衛力強化についての要望が出されておることは承知しておるわけでございますが、これに対して日本がどういう対応をいたしてまいるかという点につきましては、さらに政府部内でもいろいろ打ち合わせをいたしてまいる予定でございますが、一%を上回らないという一つめど昭和五十一年の国防会議決定にございまして、これが一つめどになると考えております。一つには、アメリカヨーロッパNATO諸国などの防衛力増強の目標は、GNPに対する比率ではございませんで、実質の毎年の増加率ということをめどにいたしておりますので、こういう点についても検討してみる必要があると考えております。
  9. 三治重信

    三治重信君 五十一年に決められた現在の「防衛計画大綱」、これで、いま政府は変更する考えはないということのようですが、しかし、時代に沿って装備近代化を図ると、こういうふうに言っておられますが、防衛庁長官として、これによっていまの事態、予想される事態に対して装備近代化が実行できるというふうに考えておられますかどうか。
  10. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お答え申し上げます。  ただいま外務大臣からお答えがありましたが、昭和五十一年に決まりました「防衛計画大綱」、それから閣議決定GNPの一%を超えないことをめどとすると、こういう二つのことが大きな枠として定められておるわけでございますが、現在の日本防衛状況というものは、まだ大綱にはかなり距離があるわけでございまして、私どもとしましてはこの大綱の線をなるべく早く実現をすると。それから一%につきましても、御案内のように、昭和五十五年度予算でもGNPの〇・九でございますが、これも〇・一%の距離があるわけでございまして、私どもとしましては、大綱の線にできるだけ早く近づける、またGNP一%の線にできるだけ早く近づけるということで、ただいまのところは対応できると、かように考えておる次第でございます。
  11. 三治重信

    三治重信君 防衛庁長官、私の質問は、そういう金額じゃなくて、その実際の装備近代化が本当に予定どおり進んでいるのかと、こういう中身の問題。
  12. 原徹

    政府委員原徹君) 防衛計画大綱に基づきまして、現在中期業務見積もりというものをつくっておりますが、それによりますと、正面装備に要する費用が五年間で二兆七千ないし二兆八千億になるということでございまして、その中身は、航空機あるいは艦船、そういったものがその二兆七千ないし八千億の六割ぐらいになりますので、かなりの近代化はできるだろうと、そういうふうに思っております。
  13. 三治重信

    三治重信君 一説によると、朝鮮戦争時代の兵器をまだ相当使っているということなんですが、それはどの程度使ってみえますか。
  14. 原徹

    政府委員原徹君) 特に陸上自衛隊の火砲あるいはまあ戦車でも——もう戦車は若干でございますけれども、MAPと申しまして、米軍供与のものを使っておるわけでございます。したがいまして、自衛隊には新しいものもあるのでございますけれども、古いものもかなり多いと、これは事実でございますので、そういうところを新しいものにやはりかえていきませんと装備近代化というのはできない、そういうふうに考えておるわけでございます。航空自衛隊についても、F86Fという戦闘機、まだ、もうしばらくでこれはフェーズアウトいたしますけれども、いまでもそういうのがあるということは事実でございます。
  15. 三治重信

    三治重信君 国際協力は、軍事力を持たない日本として総合安全保障のために非常に必要だということは政府も常々強調されるとおりでございますが、そこで、国際経済協力の問題についてお尋ねいたしますが、総理は、開発途上国については、「受益国意思を尊重しつつ、人づくり農業開発並びにエネルギー問題の解決」、この三つを重点にして国際経済協力をやると、こういうふうに施政方針演説で述べられておりますが、石油産油国についても、開発途上国と言うかどうかは別問題として、こういう国は金を非常に余分に持っている。こういうところの経済協力についてどういうふうなことを考えているのかということと、開発途上国資源開発協力経済協力について、日本とその当該国合弁会社が多く行われて開発されている。しかもこれは開発だから、その効果は長期的に見ないといけないと思う。いま日本のその合弁会社に出るのは民間会社で、自分で銀行から金を借りて、または政府から融資を受けて出しているけれども、こういうふうな後進国国際協力合弁会社をやっている場合には、日本市中銀行なり政府金融機関なりが直接そういう資源開発合弁会社融資をする道を開いてほしいという意見に対して、政府は、こういうことが可能かどうか、やる意思があるかどうか、その二つについてひとつお答えを願いたい。
  16. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 開発途上国に対します経済協力は、相手国意思を尊重して、その国々の民生の向上、経済の発展に資するということが基本的なたてまえでございます。その内容につきましては、特にインフラストラクチュアと申しますか、交通、通信関係あるいは教育等を含めた人づくりの面につきまして援助いたしておるわけでございますけれども産油国はお話ございましたように、お金は持っておるわけでございます。そういう意味では経済援助の必要性はそれほどないわけでございますが、産油国の中にもかなり貧乏な国がございまして、これに対してはやはり経済援助。それから共通して技術の立ちおくれがございますので、技術協力については産油各国とも強く希望しておりまして、特に日本の技術力に対する評価が非常に高い。それから一つの形態は、やはり先ほどお触れになりました民間ベース、先方は政府ベースである場合もあるわけでございますが、合弁の形で協力をいたしてまいる、こういうことになっておるかと存じます。
  17. 三治重信

    三治重信君 次に、物価と財政問題についてお伺いいたしますが、二月の卸売物価は前月より二一・四%上がって、四十九年十一月以来の五カ年三カ月ぶりの二〇%台の値上げ率、こういうふうに物価情勢は大変な危機ラインに達したと、こういうふうに報ぜられておりますが、また政府も第三次総合物価対策を近く打ち出すと、こういう答弁をされておりますが、昨年の物価対策八項目に対して、今度はどういう新規項目あるいはそれの手直し、これを考えておられるのか。
  18. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) お答え申し上げますが、御指摘のように、卸売物価もじり高と申しますか、非常に根強い騰貴の傾向をたどっておるわけでございますので、そこへもってきまして、三治委員御承知のような重要な電気料金、ガス料金のいよいよ査定が結論に近づいておると、こういう時期でございますので、これに対してわれわれは抜かりなく総合的な対策を講じていきたいと、こういうふうに考えております。  まず第一は、電気料金、ガス料金について、昨日でしたか、通産大臣から総理にも中間的な御報告があったようですが、総理からもさらに一段の抑制に努力するようにと、これは原価主義、公平の原則という一つの法律の枠はございますけれども、そういう枠内において物価、国民生活に対する影響を最大限に考慮してできる限り抑制をと、こういう御意向のようでございます。私ども、昨日、通産省からそういう案を——案といいますか、中間的なお考えを伺って、ただいま精力的に事務的にも詰めておる段階でございます。さらに、十八日には参議院の物価等対策特別委員会あるいは商工委員会の合同審査が行われまして、参議院としての意思をいろいろ伺えると、この委員会はもとより、いままでもたびたび貴重な御意見を伺っておるわけですが、それらを全部私どもは貴重な参考といたしまして、最大限度にこの値上げ幅を抑制する、これが一番大事な当面の問題と考えておりますが、これは公共料金全般についての考え方を申し上げたわけであります。  そのほかに、財政金融のそうしたインフレ的傾向に対する歯どめの大きな何といいますか、環境整備していくような、そういう情勢を形づくっていくことが非常に大事でございます。ただいま御審議中の予算、こういうものの実行とか、それから金融政策、これはもう一つ世界的に非常にいまむずかしい段階でございますけれども、金融当局におかれては最善の方途についていろいろ御検討中であろうと存じますので、それらを基盤にいたしまして、これはもう、いま御指摘のように、昨年十一月二十七日決めました八項目から、項目としては新しいものは出ないにいたしましても、しかし、たとえば野菜対策、これもだんだんと効果を上げておりますが、さらに最近の実情に対処してのきめ細かな対策を打ち出していきたいと考えております。さらにまた、通産省所管のいろんな物資につきましても、最近いろいろとまた値上げの動き等がございますから、それらについて、通産省の中には重要な品目についての需給対策協議会というふうなものをつくってくださっておるようでございます。それらにおいて個別の物資について誤りなき対策を講じていただきたい、こういうふうなことを考えております。なお、国際収支、貿易政策、そういうものについても私どもは目を八方に光らして、きめ細かな対策を打ち出したい。せっかくただいま関係省庁の間で打ち合わせ中でございますので、いずれ結論が出ました上お示しを申し上げたいと、かように考えておるわけでございます。
  19. 三治重信

    三治重信君 まだ発表前のかげんか、具体的なことはおっしゃりませんけれども……。  非常にいままで輸入の物資の値上がり、これがまた円安と関連しての国内の卸売物価の値上げの有力な主原因、こういうふうに言われております。そこで、つい最近の、一月末の石油統計速報の発表によりますというと、燃料油全体で前年同月に対して在庫が一二・七%増を記録していると、そして貯蔵タンクが不足で、販売強化に元売会社がスタンドに対して販売圧力をかけて、そして元売とスタンドの内ゲバが行われていると、こういうような報道も一部されておるわけなんですが、したがって、ガソリンも百四、五十円なのが十円ぐらい安くなっていると、軽油も百七円のやつが五円ぐらい安くなっていると、こういうふうに報道されているわけなんですが、この赤字の大きな原因が、ことしの赤字の中で石油だろうと思うんですが、これを、円レートを二百五十円の維持に非常に大蔵大臣と日銀で必死になっておられるわけですが、問題は、これを崩されるのは赤字がふえるかふえないかということにあると思うんですが、石油の輸入を少し自粛する、数量を減らすと、こういうふうなことはできないのですか。
  20. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 私の方といたしましては、年間の石油の供給計画というものを諸般の事情を考慮してつくっておりまして、第四・四半期、ただいまの時点でございますけれども、約七千万キロリッターを輸入するという予定にしておりまして、大体順当にこれはいくと思っております。したがいまして、供給計画にはほぼ予定どおりまいりますので、いままでの備蓄等を取り崩さぬでもやっていけるのじゃないかと思っておりますが、さらばと言って、おっしゃるように、だぶついておるとは考えておりませんので、やはり今後のことも考えまして、従来の方針どおり輸入を進めてまいりたいというふうな考えでございます。
  21. 三治重信

    三治重信君 それでは、今年の貿易赤字が百三十億ドルと言われておりますが、さらにもう五十五年度も石油の値段の値上がりによって百五十億とか言われておるのですが、私はそんなにこの赤字がふえるということは日本経済力からいってないと思うわけなんで、考えられないんですが、国際収支の赤字解消のために——石油の輸入は予定どおりやると、こう言っておるが、百三十億円からのことしの赤字、さらに来年百五十億の赤字と、こう言われておるのに対して、これを抑えなければ、円レートも二百五十円を割ることであるし、物価も上げ増勢になるということになると思うんですが、それに対する通産大臣の御意見
  22. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 私からまずお答えを申し上げて、なお詳しく必要に応じて各大臣に御質問願いたいと思います。  全般の傾向といたしましては、御指摘のように、五十四年度よりは五十五年度の方が貿易の赤字は若干減るというふうにわれわれは見ておるわけです。それは経済成長の中でも、いわゆる対外経済余剰といいますか、輸出が最近、円安がやはり一つの効果を発揮したと申しましょうか、数量的に伸びておることが第一に言えるわけでございます。しかし、これは非常に警戒を要することでありまして、円安によって輸出をどんどん一国に集中的にふやすことは、これはもう三治委員御承知のように、貿易摩擦をますます激化することになります。アメリカにもすでにいろいろの問題があることはもう申し上げるまでもございません。  そこで、そういう通商政策といいますか、これは通産省を中心にいろいろ考えていただいておりまして、特にオイルダラーと言われるふうな、産油国向けの本当に必要な、また、現地のためにもなり、お互いの両国のためになるような経済協力その他のプラント輸出等に大きな努力をしていかなきゃならぬと考えております。そういうふうな努力によりまして、一国集中的ではなく、グローバルな努力を重ねることによって、貿易収支、経常収支、そういう方面からも逐次改善をしていくということが大きな柱になるわけでございます。  その他、先ほどもお触れになったような金利の関係等で、資本収支の流れについても十分警戒をいたしまして、国際収支全般をやはり堅実な方向へ持っていくことが物価政策から言いましても非常に大事な点でございますので、各般の施策をそういう方面に向けて万遺漏なきを期しておると、こういう状況でございます。
  23. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 結論において同じだと思いますけれども、現段階におきましては、輸出は着実な回復をしてございます。輸入面におきましては、一次産品の価格の騰貴の趨勢が大分鈍化してまいりましたこと、並びに製品輸入の伸びも鈍化してまいりまして、今後経常収支は改善の方向に向かうものと期待してございます。
  24. 三治重信

    三治重信君 第五次の公定歩合の引き上げが予想されるとしきりに報道されております。また、第三次総合物価対策の前に公定歩合が引き上げられるのじゃないか、こういうふうに言われておりますが、こういう公定歩合というのは、昔は解散と一緒で、言わないでやるのが花と、こう言われたのが、最近は、非常にあおられているのは余りいいことではないと思いますが、そういうことは、アメリカがどんどん公定歩合を引き上げている、それにヨーロッパ日本が追随すると、こういう形になってあおられているわけなんですが、私は、この金利引き上げ戦争、金利戦争と言われるのに歯どめをかけることを日本としてやらぬと——もうこれだけ大変な赤字国債を抱えている財政事情の日本が金利引き上げ競争をやめる、物価対策と言いながら金利だけで物価がおさまることじゃないのだということについて少し働きかけたらどうかと思うんですが、これに対する御意見
  25. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさにアメリカ主導型とでも申しましょうか、先進国が最近金利引き上げ競争というような印象すら受けるような状態になっておる、これに対して日本がしっかりしてこれの調整に入ったらどうだと、こういう御意見でございますが、金利政策というものは、まさに各国当局が国際面にも配慮しながら、基本的にはそれぞれの国内経済状況に応じて政策運営すべきであるというのが国際的にも一般的な認識であるということは、三治委員御承知のとおりであります。したがって、そういう定義からいたしますと、最近の各国の公定歩合引き上げもまさに国内経済状況に応じての政策運営であると理解いたしますならば、国際的金利競争というようなことではないと、まあ理屈の上ではそうなると思うのであります。  したがいまして、わが国におきましてもこういう考えのもとに、海外金利の動向もさることながら、国内景気、物価の状況を総合的に判断した上で適切な金融政策の運営が図られてきておりまして、また、現状につきましては先般実施された第四次公定歩合引き上げの効果浸透を見守っておるということが原則的な考え方でありますが、けさほどですか、日銀総裁が帰ってくる——まだ着いたかどうかわかりませんけれども、当然いろいろな機会にそういう金利競争的な問題についての意見交換は行われておるではなかろうか、国際的にもですね。そういうことは、私もこれから金利競争という定義づけというのはむずかしいと思うのでございますけれども、弾力的に対応しなきゃならぬ問題であるというふうに思います。  それから、確かに解散と公定歩合の引き上げは、いまのいままでうそをついてもだれからも怒られないというのが原則でございましたが、近ごろ何だかマスコミ主導型みたいな感じになりまして、それは私も余り好ましいことではないと思っております。したがって、私どもといたしましても、その点につきましては、いま御指摘のように、解散と公定歩合はいまのいままでうそをついておっても死刑、まあ死刑になるわけじゃありませんが、とにかく何ら問われるものではないということを絶えず強調をしておるところであります。
  26. 三治重信

    三治重信君 インフレ抑制対策として、財政の部面ではやはり私は公共事業の抑制が第一ではないか。それは裏返せば、自民党政府は過去五年間不況対策として公共事業一本で増強してきた。毎年二割以上上げて、五年間で、五年前からいくと二・四倍の金額になっている。こういうふうに不況対策を公共事業一本でやったわけですから、今度はインフレ対策に対しては公共事業を相当抑制して反応を見るということは非常に重要なことじゃないかと思う。五十四年は五%、五十五年度はもっとやる意思があるのかどうか、またそういうことに協力することができるのか。建設大臣。
  27. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに不況克服の下支えといたしまして公共事業の果たした役割りというのはこれは大きな役割りを果たしたと思うのであります。したがいまして、今度は急激なる総需要抑制に向かうかどうかと、こういうことでありますが、五十四年は、いま御指摘のとおり、五%留保いたしたわけでございます。これは結局留保措置というものは年度内の執行の時期の調整という意味でございますので、仮に解除がなかったといたしますならば、結果的に繰り越されるということになるわけであります。したがって、その場合、五十五年度の執行のまた下支えにこれがなっていくという性格のものであります。  したがって、五十五年度をどうするかということでございますが、事業施行に当たっても、そのときどきの経済情勢に応じた機動的、弾力的な運用を行ってまいる所存でありますが、来年度予算が成立した後において、当面の執行のあり方については、最近の物価動向でございますとか経済情勢を考慮しながら慎重に検討する必要があると考えておりますので、いましばらく情勢の推移を見きわめた上で考えなければならぬ。恐らく三治委員は、公共事業の執行は前倒しでなくして後倒しにすべきであるというような考え方もあろうかと思うのでありますが、非常にこれむずかしいことは、そのときどきの経済情勢に応じて機動的、弾力的に対処するという言葉でもってお答えいたしておりますのは、いま審議中の予算をこういうふうに使うのだということに対して、どの辺まで申し上げるのが適当なものだろうか。私も経済企画庁長官とも御相談しなきゃならぬと思っておりますのは、仮にもし総合物価対策が出た場合、従来は抑制型であるとか、あるいは景気刺激型であるとかいうのは言葉であらわしておるわけですね、予算審議中は。そうして、数字は予算が成立いたしました翌日発表すると、こういうような慣例になっておるんです。しかし、非常に国民に対してドラスティックとでも申しますか、そういう形に総合物価対策を印象づける意味からは、あるいは数字そのものも同時に言うべきものであるかないかというようなことを、いま私自身も実は迷っておりますので、経済企画庁長官等と御協議しながら、仮に総合物価対策の中で公共事業の弾力的、機動的運用についてのことが、経済企画庁からぜひそれを取り入れるべきであるという御指摘の場合、どのような表現にするかということはこれから相談してみようというふうに考えておるところであります。
  28. 渡辺栄一

    国務大臣渡辺栄一君) お答えいたします。  ただいま大蔵大臣からお話がございましたと同じ考え方でございますけれども、私どもは、公共事業は安定的に着実に実施をすべきものであると、コンスタントに実施をするのが好ましいというふうに原則としては考えておりますが、やはり経済政策等に対応していかなきゃならぬという一面も当然私どもとしては配慮をせねばならぬと考えております。  そこで、昭和五十四年度の所管公共事業の執行につきましては、ただいまお話がございましたが、一月十一日の閣議決定に基づきまして、現下の物価動勢にも配慮いたしまして、歳出予算規模の五%を当面留保する措置をいたしておる次第でございます。そこで、五十五年度におきまする所管公共事業の執行方針決定に当たりましては、経済情勢の推移に即応いたしまして機動的に対処していく必要があると考えております。さらにまた、特に物価並びに景気の動向を十分に注視いたしながら関係省庁と緊密な連絡をとりましてその決定を進めてまいりたいと、かように考えております。
  29. 三治重信

    三治重信君 私は、日本経済昭和四十年代から黒字基調の経済に入っていると思っております。第一次石油ショックのときに大きな赤字を出した、これは一年で済んだ。今度は五十四年度で大変な赤字、さらに五十五年度続くと、こういうことが言われているのに対する物価の、インフレ抑制という対策であるわけですから、まず第一に国際収支を早急に均衡を保つような具体的な対策が一つは必要である。そのためにやはりもっと円レートを円安から円高へ持っていくような対策をとる必要があろうと思うんですが、そういう貿易とともに、石油で出した金を、産油国といいますか、金のある非常にもうけた国から日本へ、何とかひとつ株式なり、国債なり、債券なりで投資するように工作をして、そうして総合的な国際収支で円レートが維持できる、もっていけるような緊急対策というものはとれないものかどうか。
  30. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) まさに私どもがやらなきゃならぬ点の大筋を御指摘になったと思います。  国際収支の改善については、まず貿易収支、経常収支、総合収支等について、先ほど申し上げたように、諸外国との協調を基軸にいたしまして、貿易的な摩擦、その他関係国とのいろいろの障害、トラブル、こういうものを起こさないような政策をとることが非常に大事な点でございますが、そういうことに配慮しながら、国際貸借といいますか、国際収支といいますか、そういうものの改善を図ると同時に、オイルマネーのリサイクリングと、これはもう大変な大きな財産の移転であることは総理もたびたびおっしゃっておられるとおりでございますので、日本経済は、私は、実力からいいますと、いま余りにもそれを適正に評価されていないと、いろんな状況からアンダーバリュエーションだというふうに考えておりますので、そういう点について、いろいろわれわれがいわゆるファンダメンタルズを改善すべく努力をいたすことによって信用を高め、また先行きに対する見通しをはっきりと持っていただくことによって、いまのようなリサイクリングの現象もこれは決して起こり得ないものではないという信念のもとに総合的な対策を進めてまいりたいと考えております。
  31. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) きょうのところ、十時十八分でございますが、一応二百四十七円四銭というような状態でございます。  で、昨年来の石油価格の上昇によりまして、わが国の経常収支が赤字をずっと記録しております。中東産油国においては大幅な黒字が生じておる。いわゆる富の移転が行われておるわけでありますが、この資金を株式、債券など安定的な形で導入することが望ましいではないかとおっしゃる御議論は全く同感であります。そうして、幸いにして経済力あるいは信用力とでも申しましょう。これは国際的にも信頼が高いわが国でございますので、中東産油国からの資金もわが国に今日も流入しておるところでありまして、今後ともこの流入が期待されるというふうに私どもは見ております。  そこで、円対策の一環として講じました三月二日の円対策の外為公認銀行の本支店自由円勘定を通ずる海外からの資金取り入れを弾力的に認める、これが一つ。それから次が外国中央銀行等の自由円預金は臨時金利調整法に定める金利最高限度の適用除外とするというような手続、これはもうすでに完了したわけでありますが、こういうことがさらにそれを促進するという効果が私は強く期待されることではないかというふうに感じております。
  32. 三治重信

    三治重信君 そういう措置をとられたわけですから、政府の意向としても相手国にわかるように積極的にひとつ働きかけてほしいと思います。  次に、日本のトヨタ、日産の対米工場進出のことが非常に出されておりますが、これを通産省はただ貿易の摩擦を回避するために出ろ出ろと言うのは、トヨタ、日産にとってみると、一生懸命で検討する中で、早く出ろ出ろと言うのは非常に越権というのですか、迷惑な話だと、こういうふうに思うわけでありますが、アメリカの自動車の事情というものを調べてみると、結局、ビッグスリーの小型車への生産転換がおくれた。そして現在はもうアメリカの小型車の生産に対する需要も四カ月分もたまっている。それからレイオフと言うけれども、これは大型車が売れないために在庫増でレイオフになっておる。しかし、これは日産、トヨタがいまから出て工場をつくってやっても、幾ら早くても三年半ないし四年かかる。いま現在のレイオフに対しては何の効果もないじゃないか。それから米国メーカーも、石油事情から見て非常に小型車転換、需要がもう大きく変わったんだから鋭意転換しようと。これはいまからトヨタ、日産が行って小型車を生産するよりか、アメリカのGM、フォードの方の小型車転換の進め方の方が早い。これは大体二年ないし三年でそういうことになろうと、こういうふうになっている。そこへ日本が行って、三年半ないし四年後に小型車をつくるとなると、アメリカでの小型車の生産が過剰になりはせぬか。こういうようなことも考慮されているようです。それから全部が全部アメリカが、政府が果たして日本の日産、トヨタに工場進出を強く希望しているのかどうか、日米摩擦を避けるために。GMの社長は、この間来たときには、そんなことはないと、うちは何にもそういうことは要請してないと、こういうふうに言っているのですが、通産大臣の御意見を伺いたい。
  33. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 一番最近の情報と申しますか、通産省の天谷審議官アメリカに参りまして広く各方面と接触しまして、先日帰ってまいりましての報告、あれが一番妥当かと思いますので、その報告に基づいてお答え申し上げますけれども、自動車問題は米国内では大変政治的な関心を強めたことは事実でございまして、いまお話のございました、それでは米国政府としてはどういう考えを持っているのかという点でございますけれども、やはり、日本の自動車産業対米進出の促進、これはひとつぜひ進めてもらいたい。二番目は、米国で生産します完成車あるいは部品等の対日輸出の拡大をいろいろな面でひとつ拡大してもらえないか、障害があればその障害を除去してもらいたいという、この二つが根本のようでございます。  じゃ、対米進出の問題というのはどうするかというただいまのお話でございますけれども、これはもちろん対米進出の問題は最終的には日本の各企業自体が判断すべき問題でございますことは論をまちません。しかし、通産省といたしましては、ただいまのお話でございましたけれども、やっぱり米国内の自動車関係の失業者が増大しているということ、あるいは日本車のシェアが御承知のように大変最近急増しております。こういうものが一つの政治的な圧力になりまして、だんだん輸入制限といったような深刻な問題になるということになれば大変でございますので、それを回避する道といたしまして、対米投資を求めるアメリカ側の声に応じていくことが日米関係の上から望ましいものだと考えて、ただいま関係業界と意見の交換を行っておるところでございます。繰り返すようでございますけれども、しかし最終的にはもちろん企業自体の判断にあるものと思っております。
  34. 三治重信

    三治重信君 ひとつそこは、余り企業責任を持たない人が企業に対する価値判断を事前に決断を出すと言って新聞に出すということは好ましいことではないと思うわけなんです。もしも、そういうことで政府の勧奨によって出ると、こういうことになれば、イランの石油化学工場みたいに赤字になってくると、それじゃアメリカ政府が出ろと言ったのだから赤字を補償してくれるかと。赤字をだれが補償するかという問題もよく考えた上で発言をしていただきたいと思います。  次に、国債の消化の問題でございますけれども、第五次引き上げが予想されておる。しかもそれが非常に大幅ではないか。一・五%、そういう情勢に、株式市場は非常に暴落をして、ことに国債取引は麻痺状態であると、こういうふうに報道されております。五十五年度の国債は、国債引受団の引受金額が九兆七千七百億円、公募入札が二兆円、十一兆七千七百億円を民間消化する、こういう計画になっているわけなんですが、このように金利上昇をやっていく場合に、国債の利子を上げるか、あるいは販売価格を下げるかしなければ国債が売れなくなる。こういう問題に対して、私は金利をできる限り上げないようにしないと日本の財政、日本経済がうまくいかぬじゃないか。というのは、これだけの大きな国債を抱えての経済運営ということと、日本はこの国債の消化について、第五次引き上げ後さらにまた金利引き上げというようなことになると大変なことになると思うのですが、国債消化についての自信のほどを示していただきたい。
  35. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先ほど来の三治委員の御意見でもございますので、第五次公定歩合引き上げの予想という前提はないままにお答えをいたします。  五十五年度も五十四年度に引き続きまして環境としてはかなり厳しいものがあるということは御指摘のとおりに私どもも考えております。五十五年度の発行予定額が五十四年度当初に比べて総額で一兆円圧縮されておるということが一つ。そうして民間消化分、いま御指摘のありましたシ団の引き受け及び公募入札も五十四年度当初に比べて二兆円圧縮されておりますので、そういう状況の中で円滑な消化が何とかできるではなかろうかという期待をいたしておるところであります。具体的には、国債の発行に当たりましては、そのときどきの市場の動向、資金需要の繁閑等を十分勘案しながら円滑な消化に努めてまいりたいと、このように考えております。  そこで、公定歩合変更という問題は、これは日銀の所管事項でありますので、引き上げの前提に立った御質問には答えるわけにはまいらないということが前提でありますが、一般論として国債金利につきましてあえて申し上げますならば、国債発行条件はその性質上必ずしも公定歩合に連動するものではないというふうに考えております。したがって、従来からそのときどきの経済金融情勢の基本的姿勢を踏まえながら、市場の基調その他、公社債金利を初め各種金利とのバランス等を勘案して適切に決定したところでありますが、今後とも発行条件の適切な決定というものには十分配慮しながら消化の促進を図っていかなければならないというふうに考えております。
  36. 三治重信

    三治重信君 昨年の選挙で、一般消費税の反対の大合唱のために、この五十五年度の財源として消費税の増税ができないわけなんですが、そのかわりということでもないんでしょうが、この物価高の中に公共料金の非常にたくさん引き上げを予算に組んでおります。たばこ、国鉄、郵便、授業料、米麦、社会保険料と。こういうものが一体政府として総額どれくらい公共料金の値上げの金額になるか。一方、また地方公共団体も同じく財源として公共料金の引き上げを見込んでいると思うんですが、自治大臣がおわかりだったら両者お答え願いたい。
  37. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) ただいまの御質問、金額でと、こういうお話でございますが、一応予算関連について申し上べてみますると、これは予算額というわけではございませんので、ちょっと御質問の御趣旨にぴたり答えるわけではございませんが、一世帯当たり負担増というものを私どもは試算をしておるわけでございます。これを一応申し上げてみたいと思いますが、国鉄、米価、麦価、健保、たばこ、郵便料金、国立学校授業料、これで一世帯当たりの負担は、一万七千九百二十円、約一万八千円ということをお答えをいたしておるわけでございます。  なお、予算関連の公共料金引き上げも相当われわれは予算編成過程で主管庁及び大蔵省当局と真剣に交渉いたしまして、米価を初め、その他国鉄運賃等についても減額に努め、それからまた実施時期の調整に努めた結果、いわゆるCPI、消費者物価への影響度も相当緩和をいたしたわけでございますが、これは〇・八%程度の影響と見込んでおるわけでございます。
  38. 三治重信

    三治重信君 そういう次第で、このインフレ抑制は、政府みずから公共料金も引き上げなくちゃいかぬと、こういう財政事情もこれある。あるいは石油のためにこのほかに電気、ガスも大幅な値上げがある。こういうときになってインフレムードをどうして鎮静するかと、こういうことをやはり当面政府として最も重視してもらいたいと思うわけでございますが、さらにインフレが加速すると、こういうムードの取り消しには、やはり理屈じゃなくて具体的な政策を出していくということに御留意をお願いしたいと思うわけであります。  次に、わが国の租税負担率が非常に低い。大蔵省の資料によると、租税の負担率の国際比較は、五十三年で日本が二一・四%、アメリカが二八・六%、イギリスが三六・九%、西ドイツが三二%、フランスは一年前の五十二年ですが、二九・八%、こういうふうに提供されております。ところが、日本が低いというのに対して、私は一中小企業者から非常にいいことを聞いたと思っているんですが、日本軍事費も社会保障費も先進国のうちでは一番低く、いわゆる租税負担をしていないじゃないか、そして、低いから、赤字財政を埋めるためにもっと増税が当然だと、こう言うけれども、もしも日本政府が本当に自立的な防衛あるいは社会保障を先進国並みにやるとすると、現在の赤字解消のための増税計画と、それをまた上乗せすると今度は世界一の増税国になりゃせぬかと、こういうことを非常に心配しておるわけですが、その点についての見解を大蔵大臣に。
  39. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かにいま御指摘のとおりでございまして、社会保障費で見ますと、日本は二三・一でございますか、それからアメリカが四四・五、イギリスが二五・〇、西ドイツが三九・三、フランスが一九・五と、こういうことになります。一方、防衛費で見ますと、これは日本が五・二、それからアメリカが二三・七、イギリスが一三・四、西ドイツが一八・七、フランスが一七・三と、こういうことになりますので、両方を足しますと、いま御指摘のようなことになるわけであります。したがいまして、個々の問題につきまして、社会保障につきましては他の先進国に比べましてもかなり成熟してきたということが言えると思うのであります。したがって、これの水準を維持あるいは向上していくためには、どうしても国民の皆さん方に新たなる負担をお願いしなければならないということになりますし、その場合に租税負担率の問題がいま御指摘のとおりに出てくるわけであります。  そうして一方、されば、国民の皆さん方の負担をお願いしないで低い水準でがまんしていただくか。だから、負担をしていただいて維持、向上すべきか、あるいは低い状態を甘受していただくか、あるいはその二つを組み合わせた第三の道をとるかということの選択肢というものがこれからの財政運営あるいは国政を預かる者としての大変大きな問題だと思うのであります。したがって、それらのことが結局こういう国会の場等の問答によっておのずから政策体系として今後固められていく問題であるというふうに考えております。
  40. 三治重信

    三治重信君 次に、住宅、宅地の問題に移らしていただきます。  総理は、大都市は再開発によって高層化を住宅についてはやっていくというふうに言われておりますが、鉄骨、鉄筋の溶接について、私は最近非常に該当専門業者から奇なことを聞いております。最近非常に物価が上がって建築費が上がったために、ゼネコンが鉄骨、鉄筋に対する下請に、業者から言わせれば十分な金が払われない。したがって、溶接の手抜きが行われる。手抜きといっても、いわゆる本当の専門家、溶接の技能士の試験を通り、そうして検定に合格した者でない、一人素人みたいなのにやらして手抜きが、安く上げようとしている。もしもこれがコンクリートで固められて分譲住宅になっていくと、建築設計事務所の設計だけは日本は地震の国だから対震構造として設計だけはうまくいっているけれども、肝心の中身の、一番重要な溶接が抜けておれば鉄骨や鉄筋を幾ら入れても、それは地震がくればがたがたになりゃせぬか、非常に心配だと、こういうことですが、こういう問題について、建設省もまた公団なんかも本当に建築の溶接に対する監視監督なり技術指導、こういうものについての管理監督にどの程度の力を……、建築の途中で設計監理という責任者がいるわけなんですが、溶接の専門家がいない、こういうことを聞いているわけですが、その点についてひとつ対策をお聞きをしたい。  もう一つは、個人住宅のいわゆる手抜きで非常にトラブルが起きている。これに対して最近手抜き住宅追放、こういうことで建築士が立ち上がって、全国住宅検査協会というものをつくって、トラブルの中に入って施工者への手直しの依頼とか住宅の部分検査とか、完成までの検査を引き受けてやって大分好評を得ている、こういうことを聞いておりますが、いまや建築士による建築設計事務所というのは全国至るところにたくさんある。その中で、そういう個人住宅のトラブルを解消するためのこういうような意図というものは建設省としてもどの程度の関心を持っているものか、この二つについて。
  41. 渡辺栄一

    国務大臣渡辺栄一君) お答えいたします。  後に、技術的な問題につきましては局長から御説明をさせたいと思います。  ただいまお話しの高層住宅の鉄筋あるいは鉄骨の溶接につきましては、私どもその重要性につきましては十分認識をいたしておるつもりでございますので、建築工事の検査等に当たりましては特に配慮すべき事項を定めまして、その検査等が的確に行われますように指導いたしておるつもりでございます。また、建築士によりまする工事監理につきましても、工事監理基準を定めまして、そして関係団体にその周知方を図りまして安全性の向上に努めておりますが、その具体的な問題につきましては、後ほど局長から説明をさせたいと存じます。  もう一点、個人住宅の問題につきまして、建築士のあり方あるいはまたその検査機能等につきましての御意見でございますが、ただいまお話のございました全国住宅検査協会なるものにつきましては、私ども最近お話を承りましていろいろ調査をいたしておりますので、これも後ほど御説明をいたしたいと思いますが、私どもの基本的な考え方としましては、建築物が適正に建築されるためには、まず設計図書との照合検査、こういうものをしっかりやりまして工事監理が的確に行われるということが大事であると考えております。そのために、まず建築士法におきまして設計、工事監理等を行う専門技術者としての建築士の資格を定める一方で、建築基準法におきまして、百平方メートルを超える木造住宅、そういうような一定の建築物につきましては、建築士でありまする工事監理者を定めなければならないということにいたしております。なおまた、百平方メートルを満たしません、それ以下の木造住宅につきましても、従来から建築確認申請手続を通じまして同様に工事監理者を定めるように指導を実は行っておるところでございますが、今後とも住宅建設におきまするトラブルを極力未然に防止するように、建築主に対しましても専門技術者である建築士に工事監理を適正に委託するように十分指導し啓蒙してまいりたいと思います。  また、建築士に対しましても、いま申し上げましたような百平方メートル以下のような小住宅の設計、工事監理等の業務に積極的に取り組むように指導いたしまして、極力このような問題が起きないように適切に実行できまするように配慮をしてまいりたいと思っておりますが、ただいまのお話の全国住宅検査協会のことにつきましては、局長から説明をさせたいと思います。
  42. 関口洋

    政府委員(関口洋君) 初めに、御指摘のございました溶接の関係につきまして御説明をさせていただきたいと思います。  まず、一般論といたしまして、先生御案内のとおりに、いま鉄骨、鉄筋の高層建築物につきまして建築基準法におきましてあらかじめ計画についての建築確認なり工事完了後の検査、これを行っていることは御案内のとおりでございますが、ただいま御指摘のございました溶接の問題を含めまして、私どもは必要に応じて中間検査なり施工状況の報告を求めるということが非常に重要だと。と申しますのは、溶接はでき上がった後ではなかなかチェックしがたいものでございますから、そういう意味で中間検査なり施工状況の報告を求めることが重要だと、こういう認識に立っております。その場合に、溶接の問題につきまして、建築確認をします特定行政庁が中間検査段階でどういうふうなチェックをしたらいいかという点につきましての統一的な指導方針を定めるという作業に取りかかりまして、その形態は、財団法人の日本建築センターに委託をしましてその検査要領の取りまとめに当たっていただいたわけでございますが、それが五十三年度に完成しましたので、直ちに特定行政庁に配付いたしまして、これに準拠してチェックするように指導しておるところでございます。その場合のチェックポイントは、この中間検査基準でも明らかにしておりますように、鉄骨の工事につきましては部材だとか部位における適切な溶接方法、技術が工事の良否を決定すると言っても過言ではない、こういう認識に立って行っておることを御了承いただきたいと思います。  一方、建築主の方に対する御注意といたしましては、いわゆる建築士による工事監理、これが適切に行われるということがまた必要でございますので、同様に社団法人日本建築士会連合会に委託をいたしまして、建築士の行う工事監理基準、これも作成いたしまして関係団体に配付し、工事監理が適正に行われるということを指導しておるような次第でございます。  第二点の、いわゆる個人住宅のトラブルの解決策として住宅検査協会の事例をお引きになられましたが、これは私ども最近知りまして、詳細なことをただいま大阪府に照会をいたしておりまして、数日しましてから大阪府から改めて事情を聞いてはっきりとした方向を見きわめたいと思いますが、この内容は、いわゆる建築業者と建築士の事務所が合同で検査基準をつくりまして、その基準に合格しますものにつきまして検査合格書を発行する。そのほか、いわゆる施工業者なり建築士事務所の出資、これを担保として施工ミスなどが出た場合の補償金の引き当てに充てるというような仕組みである、かように考えておりますが、いずれにいたしましても詳細を承った上で検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  43. 三治重信

    三治重信君 次に、土地の問題ですが、宅地の供給は区画整理事業が市街化区域内においては最も合理的なまた優良な宅地の供給になっていると思うのですが、現在の区画整理事業は都市計画街路だけしか補助金がつかぬ、事業費には全然つかぬ。ところが、農地の圃場整備には御案内のように四五%の補助で、さらに県がそのあとの五五%について二分の一以上の工事費の負担をやる。ここは、その上、区画整理の地主に対してさらに公共用地、公園や学校用地もただで提供せい、区画整理をやるからには。こういうことだから、そういった区画整理をやると区画整理をやる前よりか土地の価格は二倍ないし二倍半に上がる、これでは土地の供給に対してどうも昔のままのやり方で、この土地の不足に対処することのやり方ではないじゃないか、こう思うわけでございますが、ひとつこの区画整理がもっとやれるように、私は、一つはそういう公共用地の無料供出、減歩、これに対しては地方公共団体が公園とか学校用地に使うんだから、いまではすぐ予算がとれなければ、それは融資で先行投資を少なくともやって減歩を少なくする、公共投資で買い上げて減歩を少なくする。街路事業のあれでも事業費の補助だけで敷地についてはただだ、こういうことなんだから、これも道路の敷地は買えばずいぶん土地の供給価格は安くなるんじゃないか、こういうふうに思って、これをひとつぜひ再検討をしてもらいたい。  それから、いままでいろいろ言われている市街化区域内の農地の住宅用地の転用のやつを政府の資料によって見ても、四十六、七、八年では大都市の三大圏では一万ヘクタール年平均供給されておる。ところが、四十九年から最近の五十三年までは半分に減っている。これではいかに住宅を安く提供しますと言っても、需要が増加する限りにおいて供給が増加しない。ことに農地の転用は半減、こういうことになれば最近のいわゆる宅地価格の急上昇、こういうことになっていくわけであります。これに対する建設大臣の御意見と、国土庁はこういうような土地の供給がなかなか円満に行われていないのを見越して、一つのスペキュレーション的にこの前と同じような価格の値上がりが予想されないか。せっかくつくった国土利用計画法による規制区域の指定条件というものの適用発動ということについて国土庁は具体的に調査をしているのか、地価抑制についてどのような対策がとられているか。
  44. 渡辺栄一

    国務大臣渡辺栄一君) お答えをいたします。  私どももこの土地区画整理事業が宅地供給に非常に大きな役割りを果たしておる、また、非常に重要な政策であるという認識をいたしておるつもりでございます。先生のお話のように私ども感じております。おかげさまで五十三年度から区画整理事業も順次上向いてまいっておりまして、今後とも私ども努力をいたしたいと考えておるところでございます。  御案内のように、土地区画整理事業に対します国の補助は、道路整備緊急措置法によりまして道路整備特別会計から支出をされておるわけでありまして、その内容としましては、地区内の都市計画道路を用地買収方式によりまして整備する費用を限度といたしまして、通常その三分の二を国が出しまして三分の一を地方公共団体が負担をするという形で進めておることは御承知のとおりだと思います。事業の目的、性格、内容の異なる土地改良事業に対しまする補助とは私はやっぱり直接比較するべき立場ではないと思うのでありますが、土地区画整理事業が非常に重要であるという問題、当面宅地供給が非常に急を要しておるというような立場から考えまして、今後とも一層努力をしてまいりたいと考えております。  それからもう一点、先生からお話のございました宅地供給を拡大するために土地区画整理事業を推進する場合に、もっと補助等を拡大したらどうかという御意見でございますが、私ども、土地区画整理事業におきましては、街路等の公共施設の整備改善によりまする事業執行後の宅地の利用価値、こういうものが増加してまいるわけでありますが、その範囲内で公共施設用地等を負担する、いわゆる減歩が行われておるというふうに理解をいたしておりまして、宅地の利用価値の増加が相当見込まれますような場合は、私ども減歩緩和のために公共用地の先買いをする必要は余りないのではないかと思いますけれども、しかし、既成市街地等におきまして土地区画整理事業等で事業施行後の宅地の利用価値の増加が余り見込めないというような場合でありますが、こういうような場合に、しかも比較的公共施設用地が多量に必要であるというような場合には、減歩緩和のために土地の先買いが必要であるという先生の御意見に対しましては、私どももさように考えるわけでございまして、そのような場合には現在もすでに行っておるわけでございまするけれども、今後とも必要に応じまして減価補償金制度というものもございますので、これらを活用いたしまして、公共施設用地を先買いをするという方法等も講じながら努力をしてまいりますが、先生の御意見のように、今後とも宅地供給は重要な課題でございますので、ただいま建設省におきましても、次官を中心といたしましてこれら現制度を含めまして見直しをいたしておりまして、今後とも前向きで一層検討を続けてまいりたいと思います。
  45. 園田清充

    国務大臣(園田清充君) お答えをいたしますが、私に対する質問は二点あったかと思います。  まず国土利用計画法による規制区域の指定をする状況にあるかないかということが一つ。それから指定調査を行っているかどうかという二点でございますが、まず第一点からお答えをいたしますけれども、指定の要件の問題につきましては、議員立法でございますし、同時に、その第十二条の中に土地が投機的に取引が相当広範囲にわたって行われた及び地価が急激に高騰する場合という一つの条件がついておりますが、御指摘のとおり、最近大都市地域の住宅地を中心に地価が強含みの傾向に動いておりますことは御指摘のとおりでございます。これは私どもがいま調査をいたしております段階では、旺盛は宅地の需要に対して供給が追いついていけないということが最大の原因でございまして、立場の趣旨である投機的な動きというのはこの中に見えておりません。  そこで、現状ではいまのところ投機的な土地の取引が行われておるかどうかという、一億総不動産屋と言われた時代の土地投機の抑制ということをねらいとした法のたてまえからいたしますと、現状では残念ながら規制区域の指定ということまでには至らないという見方をいたしております。  そこで、建設大臣からお答えもございましたけれども、問題はどう宅地の供給をふやすかということでございますが、本国会にやはり市街化区域内の農地を宅地に転用するということで供給の増を図ることが一番だ。こう考えておりますので、仮称農住法案というようなことで本国会でひとつ住宅地の供給促進のためにということで御審議をお願いしようということで準備を進めておるわけでございます。  それから第二点の規制区域制度の指定の調査をやっておるかということでございますが、これは地価動向につきましては、御報告申し上げておりますとおり、全国一万七千余りの地点を常時調査をいたしまして、公示価格制度、いわゆる買い手、売り手の双方の立場を離れて、純粋に経済価値という意味から地価の公示制度というものをとっておるわけでございまして、あわせまして四半期ごとには十万以上の人口のところ、都道府県庁の所在地というところから五百五十の地点を抽出をして不動産鑑定士等の鑑定を得てその上昇率というものを出しておるわけでございますし、なお、国土利用計画法の本旨に基づきまして規制区域の指定の事前調査と申しますか、これも二百三十七の地域で行っておりますし、いま御審議を願っております予算につきましては、特別調査地域ということで価格の動向がどもすると投機的に偏らないかというような地点につきましては、二十四の地点を特別調査地域ということで価格抑制のための調査を続けて、地価の抑制ということに最善の努力をさしていただいておるところでございます。
  46. 三治重信

    三治重信君 やはり地価が急激にまた上がるということは、インフレをさらに刺激をすることになります。したがって、供給体制に対しては、私は補助をふやせと言うんじゃなくて、国が使ったり市が使うやつを、普通の市民と同じように、土地を買い上げたらどうか、こういうことでございます。そうすれば減歩が、ずっと見ても二割五分、四分の一ですね、地主はこの区画整理やることによって四分の一土地がなくなる。したがって、それを全部建設省に買い上げろということではない。地価が上がるんだから減歩してもいいという考え方、もう値を上げることを前提にした考え方なんだから、これを上げさせないというためには、それだけのものはやはり買うということが合理的ではないか、こういう考え方でございます。  それから中小企業対策、これはひとつ私はきょうは電気メッキ業についてその中小企業団体の苦悩をひとついまから三点にわたって御質問しますから、関係大臣、ひとつお答え願いたい。  一つは労働省の関係ですが、電気メッキ工場は労働安全衛生法によって作業環境測定をやらなくちゃいかぬ、こういうことで、それを年二回に義務づけられている。しかし、これは何年かたってそれに支障のないところでは年一回にしてもらえないか。それから測定費が各県まちまちだと、これについてもう少しこの検査費を一律にして、またもっと低廉にできないかということでございます。  二番目に、これは厚生省の、いわゆるメッキのスラッジの処分、これを無害化して溶出試験に合格したものについてはこれを有害物質と扱うことなく、そして処分基準は管理型でよいことにしてもらいたい。と申しますのは、このスラッジを危険有害物として、そして廃棄物の危険有害物は、この持ち運びからそれから処理から全部厳重な許可が要すようになっている。ところが、一般の危険有害物——ガソリンとかなんか、これはどこへ運んだって許可も何も要らぬ。何ゆえにこの産業廃棄物の危険有害物だけがちょっと動かすだけで大変な許可が要るのか。それはまあ変なところに捨てられちゃ困るということであるにしても、このメッキ業界に言わせれば、これを無害化してやるのまで厳重な運搬の許可をとるというのはどういうことだ、こういうことでございます。  それから、水質汚濁防止のやつに環境庁が基準を決めて、これも相当厳しい。しかし、さらにこれを各府県で上乗せをしてこの水質汚濁の防止の規制をやっている。CODの規制をやっている。非常に水質を汚濁する電気メッキ業ですから、環境改善のためには必要なことですが、これに対するやつが各県によってまちまちでは非常に業界としてまとまりにくい、もう少し程度を統一化してもらえないか、こういう希望、これはもっともなことであろうかと思うわけなんですが。  それからもう一つ、こういうふうに公害防止のために非常に取り締まりが厳しくなる。いままでの個々の町の中のメッキ業者ではとても対応できぬ。できれば団地化をして、そしてそこで共同でこの水質汚濁防止なんかの施設もつくってやりたいのだけれども、これに対しては相当金がかかるし、また団地化するとさらに厳しい水質基準になっていると、移転するとさらに厳しい水質基準になっていると、これをもう少しやれるならやれるように金も貸してくれたり何かやれぬかと、業界の組合だけではとてもできないやと、何とかこういう問題についてひとつ関係大臣の所見を伺いたい。
  47. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 委員御理解をいただいておりますように、作業環境の測定という仕事は、作業場の状況を常に把握をいたしまして、その状況をより改善をしていくために検査を行う、測定を行うということにいたしておるものでございます。そのためには、やはり作業の環境がどのような状態になっているかということを絶えずつかんでいく必要がありますので、できる限り測定を積み上げるということが大切なことであると思います。しかし、いま御指摘をいただきましたように、事業主等が十分作業環境を整えるために努力を積み上げる、その結果非常に良好な環境になっているということになりました上では、測定の回数などにつきましてはまたいろいろ検討の結果考えていかなければなるまい、このように考えるのでございます。  なお、労働省といたしまして、測定結果の評価基準等につきましては、ただいま専門家によりまして検討を進めておる最中でございますので、その結果を見まして新しいまた対処をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。  なお、測定料金につきましては、いろいろな検査のそれぞれ料金等も参考にしながら、適正な経費を基礎にいたしまして決定をすることになっておるわけでございますが、業務規程の認可の際に特に注意をいたしまして、適正な料金で検査を行うように強く行政指導をしていきたい、このように考えておるところでございます。
  48. 三治重信

    三治重信君 時間の関係でちょっと簡単にお願いします。
  49. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 電気メッキ事業者等の中小企業が水質汚濁に伴いまして、ただいまお話ございました移転する場合、これに対しましては中小企業金融公庫、それから国民金融公庫の融資につきまして、諸条件に関して一般の貸付制度に比較しまして特別な緩和条件で融資制度ができております。  それから電気メッキ業の集団化及び共同公害防止設備の設置につきましては、中小企業振興事業団からの工場等集団化事業に対する貸付制度あるいは共同公害防止事業に対する貸付制度等がございますし、公害防止事業団の公害防止貸付制度もございます。そういうことで救済したいと考えております。
  50. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げます。  メッキ汚泥には、御案内のとおり、シアン、六化クロム化合物といった有害物質が含まれておる場合が多くて、これらを最終処分する場合には、環境上遮断いたしました埋め立て方式により処分をする等、環境保全上十分な措置を行うこととなっておる次第でございます。メッキ汚泥の中の有害物質が回収等によって無害化された場合には、いわゆる先ほど先生御指摘の管理型といたしまして処分することができることとなっておる次第でございます。  それから上乗せの問題でございますが、上乗せ基準は、国が定める一律基準によって水域の環境基準の達成ができない区域につきまして、水域の状況等に即しまして都道府県において定められております。環境庁といたしましては、今後とも適切な運用が図られますように必要な指導を行ってまいります。
  51. 三治重信

    三治重信君 次に、行政改革について一点お伺いしますが、総理は、三万七千人を超える国家公務員を五年間で削減する、こういうふうに述べられておるんですが、これは純減ですか。減らすのは減らすだけなんだと、ふやすのはまた別だと、こういうことか。  それから、補助金の四分の一削減を四年間にやる。しかし、これは補助金をそういうぐあいにやることには法制の整備が非常に必要だと思うんですが、法制の整備はどこでやるのか、大蔵省でやるのか。  それから、六十年度までに国家公務員は定年制をやりたいと言うんですが、自治大臣は、前から地方公共団体には定年制を早く実施するように、いままで自治省は動いてきたわけなんですが、これとの関連で、いま現在国家公務員と同時でいいのか、早く決めたいとやっておられるのか、その点についてお伺いします。
  52. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 定員削減三万七千を純減なのかどうなのかと言うのですが、これはあくまで定員削減でございまして、率直に申し上げまして、純減は他の計算法によらなければならないと考えております。  行政改革は何でもかんでも人を減らしたらいいというのではなくして、やはり必要なところには必要な定員を確保しなくてはならぬと、こういうふうに考えておりますから、過去十二年におきましても、実は減らした定員は十二万八千。しかしながら、片一方において学校あるいは病院、あるいは航空行政、さらには登記所、特に各都道府県には国立の医大を設けたりなんかいたしましたから、さような面で増も当然あるわけで、これが約十二万。したがいまして、純減は八千であったわけでございます。今日、日本の国家公務員の数は、決して私は多いとは考えておりません。しかしながら、やはりあくびをしている面もあるから、あくびをしておる面はやはりいろいろの点において定員を削減しなくてはならぬだろう、こういうことでございますので、今日の定員削減は、それはそれとして進めていく。特に新規需要に関しましては、やはり厳しくこの需要を抑制する。そして総体的には、総定員に関しましては縮減の方向に持っていく、こういうように考えております。  今回の予算査定におきましても、実は初めてでございますが、純減七百七十という成果を得たわけでございまして、昨年は差し引きプラス三千というふうな結果でございましたが、昨年と比較いたしますると、縮減は三千八百ぐらいの縮減をしたというふうに考えております。したがいまして、今後も必要な部面におきましては、これは行政需要によりまして、抑えつつもやはり定員を配置をしなくちゃならぬでございましょう。さようなことで、省庁間の配置転換、明治以来なかったと思いますが、これも今回大平行革では初めての手を染めたわけでございますので、そうしたことによりまして、やはり時代の趨勢あるいは国民のニーズの動向、そうしたものに合ったところの定員管理をやっていきたいと存じます。したがいまして、極力仰せのような線に行ければ結構なんでございますが、定員削減は削減ということでございますので、新規需要ということもございますので、この点に関しましても、われわれといたしましては、極力縮減を図りながら、やはり国民のニーズにはこたえてまいりたい、これが今回の行革の定員管理問題でございます。
  53. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 補助金の整理合理化の問題でありますが、昨年十二月二十九日の行政改革計画の一環といたしまして、五十五年度以降四年間に既定補助金等の件数を少なくとも四分の一を整理するなどを内容とする補助金整理合理化計画を閣議決定いたしまして、この計画にのっとり、整理合理化を推進しているところであります。そこで、五十五年度におきましては、法律補助を含めて鋭意検討を進めたのでありますけれども、結果として法律補助の廃止のように、特に立法を要するものは結果としてはなかったわけであります。これからも引き続いて法律補助も含めて補助金等の整理合理化を推進してまいる所存でありますが、その結果、もし立法措置を要するものがあれば、その時点で所要の措置検討することになろうかと思います。これは四党の申し合わせにも、補助金等についてとにかくサマーレビューを行え、こういうことになっておりますので、その精神も踏まえまして、そういう形で検討するわけであります。この場合、一次的には当該補助の根拠法を所管いたします各省庁において措置を講ずることとなると考えられますけれども、相当程度の本数がまとまるような場合は、あるいはいま委員指摘のように、大蔵省で一括整理法のような立法形式も検討の対象にはなろうと思っております。十年ほど前には全部廃止して、二本ずつまた起こしていったらどうだという議論をしたこともございますけれども、それはなかなかむずかしいことでございましたので、今後の推移の中で一括した方がいいという、かなりまとまった場合はそういうことも当然検討の対象になる、このように考えております。
  54. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 地方公務員の定年制の問題でございますが、御承知のように、昭和三十一年と四十三年二回、三回御提案を申して廃案になった経緯がございます。今回、国家公務員について定年制を設けようということでございますので、もともとこういった問題は公務員の身分保障の基本に関することでございますから、相できることならばこれはやはり同時が望ましいと、こう思いまするので、国家公務員の定年制法案提案と並んで、地方公務員につきましても同じように御審議を願うと、かような考えでおります。
  55. 三治重信

    三治重信君 この行政改革の問題は、やはり仕事はそのままにして人や部局を減らしてもこれは非常にぎくしゃくして効果は出せぬと思うのです。どうしても、どういう仕事を減らしていくかと、需要を整理をするという姿をやらぬと、各役所もなかなか納得しない、そういう点においてひとつ一段の検討をお願いをしたいと思います。  また、話は前の経済問題にちょっと戻って、水田の利用再編対策と農地法の改正の問題について御質問をいたします。  米の過剰問題から水田再編対策で転作が行われておるわけなんです。しかし、この状況を見ておりますと、六十五年には八十万ヘクタールからの水田の余剰を農林省は推定をしている。そういうふうになりますと、これは昔からの水田耕作というものによって立っている農民の非常な打撃になるし、こういうふうなことについて非常に危惧が持たれている。これに対して、どうしてもやはりいまのままの農民、いわゆる経営規模ではだめなんだということをわれわれは再三農林省に要望して、今回初めて、新聞報道によると、農地法を直接改正まで至らぬけれども、農用地利用増進法案としていわゆるバイパス法案という名がつけられているようですけれども、これのいわゆる農地の賃貸によって専業農家をつくろう、こういうことなんですが、ここでひとつ心配になるのが、何と言ってもいまの水田の転用によって四、五万円からの金を地主に渡している、これを人に貸すということになると、耕地面積をふやそうとする専業農家は、それに対してえらい高い地代、いわゆる日本では小作料というわけなんですが、取られることになって、その集積がうまくいかぬじゃないか、こういう問題が心配されるわけなんですけれども、この小作料対策、地代対策というものが決め手になると思うのですが、これに対する御意見をお伺いしたい。
  56. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) いまのお話の中で、最初の八十万ヘクタールでございますが、これは現在日本人が一人当たり一年間に米の消費が大体八十一キロでございますけれども、これが六十五年に六十三キロぐらい、平均六十三キロぐらいとした場合に八十万になるわけでございまして、私どもは一応それで試算を出しましたけれども、いまもう少し米の消費が多ければその減らさなきゃならない面積が少なくなるわけでございますから、その辺のところはもう少し検討をいたしておりますので、これはまだ仮の話でございます。  これだけ一応まず申し上げておきまして、いずれにいたしましても、今後米の消費の拡大に努力をいたしますけれども、やはり漸減傾向というのは否めないであろうと。そういうところで、どうしてもある程度生産調整、水田利用再編対策の中で水田面積を減らしていかなきゃならないと思いますが、いまの御指摘は、私どもが一方でどうしても土地利用型農業の生産性を高めていく、それには中核農家を中心にしてやっていきたい、そのために農用地利用増進事業をいままでもやってまいりましたが、従来は農振法の中でやってまいりましたけれども、地域の拡大その他の問題もございまして、ひとつ今度法律をぜひ出していきたい、こう考えておるわけでございます。そこで、そうした場合に片方で転作奨励金がある。転作奨励金があると、結果的に転作奨励金をもらえるからそういう制度ができてもなかなか農地を出さないのではないかと、こういう御指摘かと思うのでございますが、私どもは、やはりこれから一生懸命農民の皆様方に、現在の日本の農業がやはり国民に御理解をいただくためにもはどうしても生産性を高めていかなきゃいけないんだと、実際二種兼業農家と専業農家あるいは中核農家、こういう方々といろいろ生産性の面で比較をいたしますと、大変な違いがあるわけでございます。逆にまた所得の面からいきましても、農業所得というのは第二種兼業農家は非常に低いわけでございます。先生御承知のとおりで、五十何万しかないわけでございます。そういう点から考えても、私どもはよく理解をしていただいて、確かに御心配の点は私はなきにしもあらずだとは思いますけれども、ひとつその辺のところは十分一つの今後の農業のあり方として国民に理解される形の中で農業の生産性を高めていく、それにはどうしても土地利用型では経営規模の拡大を図らなきゃいけないので、できるだけいろいろと農地委員会あるいは市町村を中心として掘り起こしをする努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  57. 三治重信

    三治重信君 それで一方、日本が食糧の自給率の向上という——四〇%まで下がる、先進国では最高だと、農業の危機だと、こういうふうに言われておるんですが、しかし、米が余って食用の米は生産制限をすると、こういうふうになってくると耕地の利用は何によって有効利用をやるかと、こういうことになってくると私は飼料用穀類をどういうふうにしてつくるかと、こういうことしかないんじゃないかと思うんです。そこで、農協や何かからえさ米の米作をやらせろと、こういうことになっているわけなんですが、それにひとつ最近報道されたのに、米作農民の資金の拠出によってえさ米を——農家に対する奨励金の財源を全農においてプールしてやれば、横流しとか、そういうものも規制できるのじゃないかということが報道されておるわけなんですが、ひとつこういう日本の食糧の自給率、穀類の自給率を高めるというふうになっていくと、もうえさ用の穀類をどういうふうにして有効につくるか、これしかないと思うんですが、麦もそんなにつくることができない、こういうことじゃないかと思うんですが、その点について簡単に御意見をお伺いします。
  58. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 三治君、時間になりました。
  59. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) えさ米の問題につきましては、この間以来大変国会でも論議されておりまして、私もひとつ現地を見せていただいて真剣に取り組んでみたいと考えておりますが、ただ、今日まで言われておりますことは、御承知のとおり、お米をつくるには——現在大体米をつくって二十八万ぐらいと、こう言われているわけです。えさの方はトン当たり三万円でございまして、いまの幾らみんなでプールし合って出し合ってみても、三十八万円と三万円のこのみぞをどう埋めていくかということが非常に大きな私は問題だろうと思います。いま一つ、やはり識別の問題をどうするかというのがまだ議論がなされておる最中でございまして、いずれにいたしましても、私自身もひとつ真剣に取り組んでみたいと思いますし、農政審議会においてもいま議論いただいておりますので、この問題については将来そういう転作作物として転作奨励金の対象にし得るかどうかということも含めてひとつ検討をしてみたいと、こう思っておるわけでございます。
  60. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 以上で三治君の総括質疑は終了いたしました。  午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時開会
  61. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十五年度総予算三案を一括して議題とし、玉置和郎君の総括質疑を行います。玉置君。
  62. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総括は、これ私は、総理、九回目をやるんです、連続して九年目になる。非常にありがたいことだと思いますが、最近の国会論議を聞いておって、本当にこんなことで国がもつのかなという気がいたします。  そこで、ひとつ——ことし七十歳になられたそうですね、おめでとうございます。早速、七十歳になられた、非常に読書力を持っておる総理でございますので、学力テストをいたしますので、これをひとつ読んでください。(資料を手渡す)立ってどうぞ。それは防衛に非常に関係のある地点ですから、どうぞ読んでください。
  63. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 正確に読めるのもございまするが、どのように発音すべきか戸惑うものもございますので、恐縮ですが、玉置君からお教えをいただきたいと思います。
  64. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうすると、外務大臣、あんた読んでみなさい、総理からもらって。
  65. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私も、字では拝見しておりますし、全部北海道の地名であることと存じますが、正確な発音についてはわからないものもございますので、お教え願いたいと存じます。
  66. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 防衛局長。これは非常に大事なことなんです。こんなものでわからぬ——そんなところでカンニングする必要あるかい。カンニングしたらだめだよ、堂々と読みなさい。こんなもの読めなくって防衛なんかできるはずがないんですよ、北海道なんかみな捨てなきゃいかぬ。こんなもの読めないでね、だから私は言うんですよ。読んでみなさい。
  67. 原徹

    政府委員原徹君) これは「しべつ」「ところ」それからこれはちょっと——その次が「えさし」「あっとこ」でございますか、「おといねっぷ」「こんせんげんや」「あっけしわん」「けねべつ」「おしまはんとう」——一つちょっと……。
  68. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 あんたはね……
  69. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 玉置君、立って発言してください。
  70. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 あんたは十点満点のところ八点だ。  これは、総理ね、なぜ私がそういうことを言うかというと、後で——これちょっと上げてください。(図表掲示)ここが枝幸なんです、枝幸。それでこっちがサロベツ原野。こっちが一番最初の標津、これは予想される上陸地点ですよ。これが厚床、ここが厚岸湾、これは日本艦隊が出ていったところ。こういうふうにこれは全部防衛関係のあるところなんです。それを防衛局長があすこでカンニングせなけりゃ読めないというふうな状態の中で日本安全保障があるのかないのかということを言いたい。総理防衛庁が、ユニホームの連中が一言も相談していないから、こういうことになる。外務大臣もこういうことを全然知らない。そして、やれ日米安保がどうだこうだとか、こう言っておる状態の中で本当に北海道の安全があるのかないのかということを言いたい。  もう一つ外務大臣、あなたのところの政府委員の連中に私は通告しておった。いまのいままで私に質問の内容を取りに来たことはない。それで私は怒った。怒ったら、きょう昼飯のときに来た。安保課長が来た。なぜ来ないんだと言ってどなり上げたら、何と言ったと思う、与党の先生だから、こう言った。これが、総理、現状ですよ。与党が一番しっかりしなかったらだめじゃないですか、どう思います。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 仰せのとおりと思います。
  72. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 外務大臣
  73. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 御意見のとおりでございます。
  74. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そこで、このいわゆる国防論議、いわゆる安全保障論議で一つ一つごく簡単に聞いていきますから、簡単に答えてください。  いままで、総理、この国会の論議を見ていますと法律論なんですね。そうして安保条約と行政協定がどうか、その中で米国が違反しておるかどうか、それから政府の責任はと。法律、法規を守らせておけば国の安全保障があるような論議ばっかりです。こういうことでいいのか、軍事は汚いものだとダブー視しておる、そういうことでいいと思いますか。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会におきましては、国会で提起された問題につきまして政府が答える立場にあるわけでございまして、したがいまして、国会の論議自体につきましては、政府と国会におけるやりとりでございますので、そういう観点から評価すべきものと思います。しかし、玉置君が仰せになりまするように、国防論議はそれに尽きるものではないわけでございまして、国の安全を守るための論議は広く深く究明すべき問題であると承知いたしております。
  76. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 二番目に、総理、米軍と自衛隊、これが防衛論議の主たるものですよ。その中で日韓だとか米韓だとかいうことが論議されたことがある。ところが、安全保障というのは、対象国になるその国の兵器、軍事の展開、戦略、そういうもので変わってくるんですね。そういうものはちっとも触れないじゃないですか。そして米国の原潜が来たら大問題になる、エンタープライズが来たら大騒ぎになる。対象国の原潜の動きだとか飛行機の動き、偵察機の動き、こんなものはちっとも論議にならない。このような状態のこの国会をどう思いますか。
  77. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会の論議が、そういう問題の御提起がございませんので、そういうことが主たる論点にはなっていなかったことはあなたの御指摘のとおりだと思うのでございます。しかし、先ほども申しましたように、国会の論議全部が国防論議ではないと思うのでございまして、国防論というもの、安全保障問題というのは政府としてはいろいろな角度から検討しておかなければならぬことだと思いまするし、国会におかれましても、必要を感じられた場合にはそれを提起されるのではないかと思います。
  78. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いままでこういう論議に出くわしたことあるのですか。
  79. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 寡聞にして私はそういう論議を、私の経験の範囲内におきましては余りそういう機会は持ったことはないと思います。
  80. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そこで、あなたの前任者の福田総理のとき、私はここで、この衆参両方の国会論議を通じて聞いておると、私自身の見解だが、国会を開くたびに国力は低下する、ぼくはこう言った。そして福田総理にあなたの見解はと言ったら、会議録にちゃんと載っておりますが、そのことは十分理解できると、こう言っておる。あなたはどう思います。
  81. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会の論議が民主的手続に従いまして活発に展開されておりますことは、民主主議国日本といたしまして当然あるべき姿だと思うのでございまして、そのことがあるがゆえに日本の国力が低下しておると見るのは酷じゃないかと私は思います。
  82. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうしたら聞きますがね、あなたは、去年のここで私の質問に対して——海上輸送の問題で、いわゆる海上有事の際どうするんだと言って突っ込んでいった。あなたは、ここに書いてあるが、これは「閣議にかけるにつきまして」も用意しなきゃいかぬとか、「私自身が政府部内で検討さしていただきまして、あなたの言われる趣旨をもう少し」生かしていきたい、こう答弁していますが、その後何もやってないじゃないですか。やったですか。
  83. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 海上輸送の安全の問題だと思うのでございますが、今日までわが国の海上輸送路に不都合な事態が起こったとは考えていないわけでございまして、今日のわが国安全保障体制というもので日本経済の運営に必要な物資の確保ができておりますることは事実であろうと思うのでございます。いま政府の体制の中でなお強化しなければならないこと、改善しなければならないことはいろいろあろうかと思いますけれども、今日まで大きな過誤はなかったように思いますが、今後とも十分注意をしていかなきゃいかぬと考えております。
  84. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いままで何もなかったからうまくいったんですよ。しかし、政治家というのは常に先見性を持たなきゃならぬことは、あなた了解するでしょう。どういうときにどういうふうにせなければいかぬかということを考えるのが総理じゃないですか。  運輸大臣、済みませんが、あなた入閣して、海洋有事の際に総理からどうせいこうせいという指図があったか答えてください。
  85. 地崎宇三郎

    国務大臣地崎宇三郎君) 海上保安庁の用務は、「法令の海上における励行、海難救助」、「海上における犯罪の予防」、「犯人の捜査」、「逮捕」、「船舶交通に関する規制」、「その他海上の安全の確保」に従事をしているものでございます。有事の際についての御相談はございません。
  86. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 農林大臣、国家有事の際の食糧の問題について相談がありましたか、正直に答えてください。
  87. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) 私ども農林水産省として、いかに国民の食糧を将来とも安定的に確保すべきかということを真剣に検討いたしておるつもりでございますが、私どもの所管でございまして、特に総理から御指示をいただいてやっているわけではございません。
  88. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 だれに聞くかな、厚生大臣でいい。厚生大臣、その後総理から相談があったかどうか。
  89. 野呂恭一

    国務大臣(野呂恭一君) 別に御相談はございませんが、これはもうむしろ私ども防衛庁といろいろ話し合う必要があると考えております。
  90. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理ね、私は去年やかましく執拗に食い下がったわね。それは三木さんのときからこれは始まったんです。三木さんもやりますと言った、福田さんもやりますと言った、あなたもやりますと言った。皆自由民主党の総裁であり総理じゃないですか。三百二十万党員を抱えて何にもしないとはどういうことなんです。
  91. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本安全保障は総合的に考えなければいかぬわけでございまして、外交、内政全体を通じまして保障してまいらなければいかぬわけでございまして、内閣はそのために全力を挙げておるわけでございます。日本の狭義の防衛におきましては、自衛隊整備と並びまして日米安保条約の誠実な実行を通じましてこの任務を果たしておるわけでございまして、さればこそ今日まで大きな過誤なく安全が保障されてきたものと思っておりまして、この体制を崩すことのないようにわれわれ堅持していかなければならぬと思います。不断に最大限の緊張をもって対応していくのが内閣の任務であろうと思いまして、もし足らないところがございますならば十分御注意もいただくし、御鞭撻もいただきたいものと思います。
  92. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 閣議の中で何かこれに対応するというような考えはないですか。
  93. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大きく閣議全体が常時そういう課題にこたえておるものと私は確信しております。
  94. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 海洋有事の際の、少なくとも南方ルートがやられたというときには、油の備蓄はどうするとか、それから船団の組み方はどうするとか、それから退避航路の設定はどうするとか、私はもうしょっちゅう言うておる。一回だってこたえたことないじゃないか。これが自由民主党の政府か。私も自由民主党の党員だけれども、余りにも情けない。そろそろやったらどうか。
  95. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう事態にならぬように万全の措置を講じておるわけでございまして、私といたしましては、そういうことを考えるような事態に立ち至らしていないことを誇りに思っておるわけでございまして、いま日本の海上輸送路に大きな支障が起こった場合にどう対応するかということにつきましては、玉置さん言われるように、対応する措置を具体的に講じていないことも事実でございますか、そういうことにならぬように、外交、内政全体を通じまして周到な配慮をいたしておるつもりでございます。
  96. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、国民は、あなたがそんなことを言ったって、それは逃げの答弁としか思わないんですよ。きのう、ここでわれわれが野菜の話を聞いておって、前にいる閣僚に失礼ですけれども、一回野菜で値踏みをしてみたらどうだと言ったら、大平総理はコンニャクということになったんだ。それほど答弁がまともじゃないんです、あなたは。真正面から組んで答弁すべきです。もうそんな事態じゃないです、世界は。それだけにぼくらが心配しているから言うんです。何もあなたを責めるんじゃないんです、個人的に責めるんじゃない。しかし、日本の国が大変な状態に置かれておるから、これからそういう有事の際には少なくとも一億一千万の日本人の生活というもの、そういうものをどうしていくのだという最低の考え方だけでも閣議で御相談になったらどうですかということをもう数年にわたって言い続けてきておるんですよ、いかがですか。
  97. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういう限界状況をもたらさないように最善を尽くすのが閣議の任務であると心得て、全力を挙げております。
  98. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 世界と比較して、総理、こんなに悠長な国は日本しかないですね、ほかに日本のような国がありますか。  外務大臣、答えてください。こういう安全保障の問題でこれだけのんびりした国はどこにありますか。
  99. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私の記憶の範囲では、コスタリカが軍備を全然持たないという憲法を持っております。
  100. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 まさしくそのとおり。ぼくはコスタリカの大統領就任式に特派大使で行った、それでよくわかる。あすこは軍がない、勲章もない。しかし、向こうの警察は軍以上にしっかりしておるのだ。そして自分の国は現在の警察力できちっと守る。デモを一つやったらデモ隊に対して機関銃を発砲するんだから、自衛隊と全然違うよ、自衛隊なんかとてもようやらぬじゃないか。どうなんだ。
  101. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 制度上の問題で軍を持たないという例としてコスタリカを申し上げたわけでございまして、それ以上のことについて申し上げたわけではございません。
  102. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうすると、ほかの国で日本みたいにこうして他国の「公正と信義に信頼して」——憲法の前文にうたっておる、そういう国はどこかあるの、外務大臣、あったら教えて。
  103. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 私も不勉強でございまして、他国の憲法をそう多く存じているわけではございませんが、日本国憲法にあるような条文と申しますか、ただいま先生が挙げられました言葉が挙がっているものは記憶にございません。
  104. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、問題憲法ですよ、これは。国会論議も憲法です。憲法の論議を国会でやったらすぐ首が飛ぶというそこに原因がある。まともなことを言えないんです。もうそろそろ本音を出さなかったらこれは大変なことになりますよ。どうですか。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 現行憲法を国民は正当な手続を経て選択をいたしたわけでございまして、この憲法の条章に従いまして私ども仕事をしてまいらなけりゃならぬ制約を受けておるわけでございまして、いろいろなこの憲法の制約下におきまして、わが国安全保障について政府と国民は今日まで保障に苦心をしてまいったわけでございます。幸いにいたしまして、今日まで日本並びにその周辺の安全を保障することに成功いたしたと思うのでございます。今後これでやっていけるかどうかという問題は、確かに玉置さんがおっしゃるように、あると思いますけれども、いま与えられた状況のもとにおきまして最善を尽くしてまいるというのがわれわれの任務であろうと心得ております。
  106. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 海上保安庁にお聞きしますが、北方四島周辺海域におけるソ連の危険海域設定状況、いわゆる演習状況、これをちょっと言ってください。
  107. 真島健

    政府委員(真島健君) お答えいたします。  ソ連が放送する無線航行警報によりまして私どもが危険海域を把握しております状況を簡単に申し上げます。  昭和五十二年にはそういう航行警報はございませんでした。五十三年には二回、十日間ぐらい、それから五十四年には十四回、五十日間というような状況でございます。五十五年に入ってからはこういう危険区域のソ連の航行警報は把握しておりません。
  108. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 演習の時間をどういうふうに使っておるかということをあなたたちは把握しているはずですから、ちょっと言ってください。
  109. 真島健

    政府委員(真島健君) 私どもで把握しておりますのは、演習の実施の具体的内容はこれは把握しておりません。把握しておりますのは、たとえば今回は六日と、今回は四日というような日にちの把握だけをしております。
  110. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 時間はやっておるはずですよ、時間、時間。
  111. 真島健

    政府委員(真島健君) 具体的な時間は私いま手元には持っておりませんが、私ども報告を受けておる範囲では、日にち、たとえば六月には一回、一日というふうなところだけでございます。
  112. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理ね、これはこういうことなんです。日中平和友好条約ができたのが五十三年の八月十二日、その前の直前に演習が始まった、六月六日から六月十一日まで。そして日中平和条約が始まってから演習が九月十五日から九月十八日まで四日間、これは払暁作戦です。それから五十四年に入って二月五日から二月十一日まで七日間、これも主に払暁作戦です。それから三月二十七日から三月三十一日まで、これ五日間。これは昼と払暁作戦と組み合わしております。それから五十四年の四月一九日から四月二十五日まで七日間、これも払暁作戦と昼間の作戦と組み合わしています。それに五月二十三日から三十一日まで九日間、これも払暁作戦と昼。それから六月五日から六月八日、これは夜。それから五十四年十一月二十七日から十二月三日、七日間、これは夜と昼と。そして去年の十二月に入りまして、十二月十一日から十二月十九日まで、これは夜と払暁戦ばっかりであります。それから一番最後の十二月二十日から二十三日の四日間、これは払暁作戦です。なぜこういう作戦をやるんですか、これ。こういう問題について防衛当局はどう考えておるのか。特にこの第四次中東戦争の戦訓をどう見るか、防衛当局から答えていただきたい。
  113. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 第四次中東戦争の戦訓につきましては、きわめて専門的な点がございますので政府委員から答弁さしていただきます。
  114. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 一九七三年の第四次中東戦争につきましては、これはエジプト及びシリアの奇襲によりまして、少なくとも緒戦におきましてアラブ側が勝利をおさめたのでございますけれども、その戦訓として一般に言われておりますことは、一つはアラブ側のいわゆる軍事用語で申します欺騙陽動作戦、これが成功した。もう一つアメリカ及びイスラエルの当局者が事態を楽観視したということでございます。欺騙陽動作戦の主な内容につきましては、七三年の中東戦争の前にこれは何回もにわたりまして戦争のときと同じような集結と、それから平常状態への復帰と、これを繰り返して実施しておりまして、実際の戦闘の準備が行われましたときも米国側もイスラエル側もこれは従来から行われておりますルーティーンの演習の一部であろうというふうに考えたという事実がございます。
  115. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これを総理ね、この第四次中東戦争の戦訓というのは、私は非常に大事だと思うから言っておるのです。こういうふうにしてずっと演習するんです。演習だ演習だと思っておるんです。そのうちにやられるんです。これを教えたのが第四次中東戦争のいわゆるサダトがイスラエルをやっつけるあれですよ。それだけに、どうか防衛当局を中心にして第四次中東戦争の戦訓というものをもう一回勉強してほしい。いかがですか。
  116. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 総理の前に私から直接の責任者としてお答えいたしますが、第四次中東戦争だけではありませんけれども、特に第四次中東戦争については、いまおっしゃったような点からも十二分にいろいろな角度からその教訓を学ばなきゃならぬと、こう思っておる次第でございます。
  117. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 防衛当局としては、その案件ばかりじゃなく、あらゆる教訓を十分把握をいたしまして常時検討をしておかなきゃならぬ立場にあると思います。
  118. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 私は、ここに地図を持ってきておりますが、極東ソ連軍のこれは配置図です。これを見て防衛庁としては最近変わっておると思われる点、これを指摘してください。
  119. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 最近という御質問でございますが、過去十数年にわたりまして極東ソ連軍の増強は顕著なものがございます。ただ、地上軍で申しますと、一九六八年までは大体十七個師団十八万人、それが中ソ国境衝突のありました六九年ごろから急速に増強されまして、一九七二年には三十個師団三十万人に達しております。そこで、もちろんこの間の増強は中国を意識したものであろうということはもう十分に想定されるところでございます。この三十個師団三十万人がしばらく安定をしておったのでございますけれども防衛庁として関心を持っておりますのは、七六年ごろからまた新たな増勢を示しておりまして、現在三十四個師団三十五万人と想定されます。特にこの間の増強が太平洋岸に近いあたりに集中しておるのではないかというところが最も関心を持っておるところでございまして、特に昨年から本年にかけまして二個師団増勢というふうに推定を変更しておりますけれども、その二個師団はいずれも極東軍管区所属であるというふうに推定しております。その結果、北方領土における地上軍の派遣、それからミンスクグループの到着によります太平洋艦隊の戦力の大幅な向上、それからその間におきます海軍歩兵の増強、イワン・ロゴフに見られます揚陸能力の強化などを考えますと、近年の極東ソ連軍の増強が必ずしも中国向けとは言い切れないものがあるということも、これはアメリカの国防報告も指摘しておるところでございまして、その点われわれとしては重大な関心を持っております。
  120. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 防衛庁長官ソ連の極東戦略に私はかなりの変化が出てきておると思いますが、その変化の実態をどういうふうにとらえますか。
  121. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) ただいま極東におけるソ連の軍の増強について説明をいたしました。なお、申し上げるまでもございませんが、わが領土である北方四島、そのうちの三島に対してこれまた増強が見られるところでございます。私は、このような状況日本に対する潜在的な脅威が非常に強まっておるというふうに存じておる次第でございます。
  122. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 ぼくは総理ね、外務大臣、あなたもよく注意してもらいたいので言うのだけれども、さっきから立っておる岡崎君、ぼくは非常によく勉強しておると思うのだ。外務省にまれに見る人材だと思っている。いまは防衛庁に行ってますがね。これは外務大臣に聞くか、防衛庁長官に聞くか、総理に聞くか、どちらでもいいですけれどもね。ソ連軍の極東戦略の重心が私はずっとペトロからこっちへ下がってきておると、こう考えておるのですが、どうですか。
  123. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) きわめて専門的な点でございますので、岡崎政府委員から答えさしていただきたいと思います。
  124. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 重心が南に下がっているという御指摘でございますけれども、まず、極東重視の傾向が近年あらわれたことは確かでございまして、特に一九七八年にブレジネフのシベリア極東旅行がございました。それで主に経済的重要性を中心としまして極東の重要性を強調しております。戦略的に申しまして北から南という指摘に必ずしも当たるかどうかは存じませんでございますけれどもソ連のSLBMの能力が向上いたしまして、それで新しいデルタクラスの潜水艦に搭載しておりますミサイルが従来よりは射程が非常に長く伸びておりましたので、北太平洋のペトロのあたりからじゃなくても、もっと南の方からでも米本土を射程におさめ得るということができるようになったという意味では、重点が南下したと申しますよりも、やはりオホーツク海、またオホーツク海南部を含むオホーツク海の戦略的重要性が増加しているということは申し上げられると思います。
  125. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理御存じでないから私から言いたいと思いますが、ソ連の原潜が一番こわがっているのはアメリカの原潜です。ソ連の原潜に対してアメリカの原潜がマン・ツー・マンのようにしてついておるんです。そして大変な挙動に出ようとしたときにアメリカの原潜がこれを撃沈をするという、これがアメリカの基本的な考え方なんです。そこでペトロにおったんじゃこのようにつきまとわれてかなわぬというので、ずっと重心を下げてきたというのもこれも一つの理由。そしていま彼が言ったように、SSN8という、あるいは18という、こういう艦艇搭載のミサイルが射程が伸びたということ、命中率がよくなったということ、そういうこともあるんですね。しかし、それを振り切るためには、このカムチャッカから出てきた千島列島、これをずうっと軍を配置してやってきて残ったのは択促と国後なんだ、これは。そういうふうな戦略というものがあって、さらに対中国戦略のためにこの重心をこっちへ下げてきて、この沿海州を中心に相当な兵力をいま配置しておる。これはビキン、イマン、テチューへ、オリガ、それからここ、それにここ、アナジル、マルコボ、こういうところがこれは防衛庁もつかんでないんですよ。これは私は英国の戦略研究所からとったやつだ。そんな私がとるようなことを何で政府がやれないの、こんなこと。どうなの、総理総理だ、それは。総理ですよ、それは戦略だ、基本戦略だ。
  126. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 防衛庁の方におきましても、可能な限りとるべき材料はとっておると思います。情報は確保しておると思いますけれども、詳細につきましては防衛当局自体からお聞き取りいただきます。
  127. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 いいです、もう、岡崎君。岡崎君、努力しておるからもうそれはあなたの功を認めて答弁要らない。ぼくは総理ね、何にもこんな手柄顔したくないんです。なぜこういうことできないの。外務大臣どうなの。外務省というのは、キャリアがロンドンに行っておって、最近ノンキャリアをようやくとってくれた。大使に。優雅な暮らしばっかりしておって、一体何やっておるの、どうなの。
  128. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまおほめにあずかりました岡崎参事官も、もともと外務省の人間でございまして、私もときどき直接お話を聞いて勉強しております。外務省全体としても、御指摘のような点についていろいろ調査する能力を高めていきつつあるところだと考えております。
  129. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、大事なことなんでもう一回私は言いますがね、このアジア大使会議があったのです。まだ園田さんのときですよ。党本部でやった。そのときにビルマまでの大使が全部来た。それで全部会議やって私も出た。そうしたら各国大使が皆報告する。そうすると、やれ経済関係がどうだ、文化関係がどうだ、視聴覚の幻燈が足らぬ、もっと金くれと。この中でたった一人だけ安全保障戦略について自分の所管する問題について触れたのが大河原当時のオーストラリア大使だけだった。ぼくは聞いてうれしかった。そこでほめた。外交官というのは経済問題なら通産省のアタッシュの方がずっと詳しい、文化交流なら文部省のアタッシュの方がずっと詳しいですよ、総理外交官て何をやるんですか。日本安全保障のためにしっかりした情報をとって現地で分析を加えて確度甲乙丙をつけて報告をして、本国政府の判断の過ちがないようにするのが外交官である。大来さん、それをやっておるの、あんたは経済ばかりだけれども。やっとるというなら聞くよ。
  130. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私は、外交の大きな目的は国民の生活を守るということが一つ、これは経済が中心になりますし、もう一つは国民の安全を守ると、この二つが重要な役割りだと考えております。
  131. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 ここに根本的な間違いがあるんですよ。経済も大事、しかし、もっと大事なのは安全保障ですよ。安全保障の中に経済があるんですよ。そして安全保障の中で一番大事なのは周辺軍事国家の情勢というものをしっかり把握していくことですよ。どうなの。
  132. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この問題につきましては、戦後の日本国民が選びました日本の国の行き方についての選択と関係する問題だと思います。日本は、戦後、各国との間の深刻な摩擦を避ける、そういう形で国の安全を図っていく。究極的な安全については日米安保条約ということで国民の安全を守るという方針でまいったものと考えております。外交もその方針に従って従来行われてきておると私は解釈いたしております。
  133. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 大来さん、もう一回聞くけどね、あなたの話を聞いておったら経済の方が優先で、それでこんな軍事情勢の方はもう少し後に回してもいいんだというようなことに私はとれる。私はとったんだ。どうなの。
  134. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 外交につきましては、お話のございましたように、経済、文化、防衛全般にわたって目を配る必要があると考えておるわけでございます。
  135. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうしたら、ならば聞くがね、対外政策の遂行のために何と何と何が大事であるか。
  136. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 世界各国との経済関係、円満な経済関係、これは特に日本は資源がございませんから、石油なり食糧なりの円滑な供給が進みませんと、日本の国民生活、日本経済は非常に深刻な状態になるわけでございますから、この資源のない国日本世界の各国とできるだけ平和な関係を維持して、そういう国民の生活、生存に欠くべからざるものの供給に障害が来ないように、これはまた外交の大きなねらいと考えます。それから、文化関係、これは広く日本の国を相手に理解させる、あるいは他の国々の問題を日本が理解する。それから日本の直接の安全を守るという防衛の問題、こういうふうに考えております。
  137. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これね、外務大臣、私はこう思うんです。総理、やっぱり対外政策の遂行のためにはまず説得すること、説得力、次は経済力、次はやっぱり軍事的な力の背景、これがないとだめです。そうして説得力の中に人的交流だとか文化の交流とかいうのが入ってくるんです。それが経済中心だけで日本安全保障戦略が立てられるなら立ててみたらいい。安全保障戦略が立てられなかったら、外交戦略なんか立てられるはずないじゃないですか。それをどう思います。
  138. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本安全保障一つには日本国民の自分たちがつくり上げております政治、社会制度に対する自信といいますか、信念、これは守るに値するものだという考え方が国民の全般にあるということが一つだと思いますし、日本の場合には現代の世界におきまして一国だけでの防衛というものに限界があると、そういう点も踏まえまして社会制度、政治組織を共通にします議会主義民主制度の米国との友好関係、その安保条約を通じましてこの日本の安全を確保すると、こういうことになると考えます。
  139. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 あなたの話を聞いておると、こんなんで本当にやれるのかなあという感じがひしひしするんですよね。私、本当にもうこんな失礼なこと言わせたら、だからあんた国民の負託を受けられないんじゃないかと、こう思うんだよ。本当ですよ。ひどい話じゃない。私はこの前ずっと聞いておって、もっと本音を言いなさい、あなた選挙必要ないんだから。本当ですよ。  だから、ぼくはあなたに最後に聞くが、米軍の機能をどのように日本国内で十分に発揮させるかという、そういうことについてあなた配慮したことあるの。
  140. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 基本的に日米安保条約、これに基づきまして米国は有事の際に日本防衛協力するという国家的な義務を負っておるわけでございまして、この日米の間のパイプを円滑にしておくということは日本の安全に必要なことだと考えております。私も防衛の専門家ではございませんが、先ほど北海道の地名を挙げられましたが、あの地名を私記憶しておりますのは「現代」に出ました栗栖論文を読みまして、その論文の中に出ておった地名というふうに考えましたので、ただ、読み方を十分承知しておりませんでした。私はやはり今後、玉置委員も御指摘になりますように、防衛の問題について、外交の中における防衛の問題を従来以上に真剣に取り上げなきゃならないという感じを持っておりまして、外務省といたしましても、そういう意味で防衛庁との意思の交流、その他情報の収集につきましても、そういう面に逐次注意を向けてきておるわけでございます。  ただ、基本的には、総理からの御答弁にもありましたが、総合的に日本国民の安全、たとえばいかに強い武力を持ちましても、外から食糧、石油の供給が止まれば、これは日本経済、国民生活は自滅をいたすわけでございまして、世界的に余りシリアスな敵をつくらないということも大きな意味での日本国民の安全を保障する道だろうというふうに考えております。
  141. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 安全保障の問題とアメリカのこの戦争権限法の問題、後でやります。  そこで、防衛庁長官、こういうソ連の極東軍の最近の戦略の変更、それで重心が南へ下がってきて、日本にもろにこの脅威が降りかかってきておるような軍事情勢についてあなたが認めるか認めないか、もう一回確認して、これはまあこれでひとつ打ち切ります。
  142. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お答えいたします。  先ほども岡崎君からもお答えいたしましたが、私どもとしましてはそのように認めておる次第でございまして、これに対応する私どもいろいろな方策について考えておるところでございます。
  143. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうしたら今度北海道へ入ります。  これをやろうと思ったら、総理ね、私の友人たちね、これやめろやめろと、こう言うんです。特に北海道に選挙区を持った人が。それは大変なことだからやめろと、こう言う。私わかります。去年私やめたんです、これは。しかし、これやめるわけにいかなくなった。それほどに日本一億一千万の国民に警鐘乱打するとともに、友邦国家であるアメリカに対しても、日本の国会でこれだけの議論が出たんだと。アメリカ帰れ、それから安保廃棄——それはいいですよ、これは彼らは彼らでいいんですけれどもね、彼らは責任ないからね。しかし、少なくとも責任を持った政権政党では、こういう議論が国会で堂々とやられたという実績が、あなたが訪米したときにアメリカに対する大変な説得力になるというので私はいまからやるんです。どうですか。
  144. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 十分玉置さんのお気持ちはよくわかりました。十分伺わせていただきたいと思います。(「独演会だ」と呼ぶ者あり)
  145. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これはね、大体私いつも言うんですけれども、これは独演会と言ったけれどもね、国会議員が質問するなんというような不見識なことをやめたらいいんです、これ本当は。国会というのは国家の最高意思の創造をする機関ですから、それが行政府の閣僚に対して、お伺いします、教えてくださいなんとなったら、国会議員やめたらいいんだ。蒙を開くのがあたりまえなんで、これは独演会があたりまえなんだ。つまらぬことを聞いて、もう野党というのは本当につまらぬなと思ってね、やっぱり自由民主党しっかりせにゃいかぬと、わしはこう思っているんだがね。しかし、私だからこれだけ言ったって怒らぬだろう、これ、皆。だれもかかってこない、不思議な存在であると私は思っておるわけです。——まあそこでいいわ。こういう緊張したときには笑いが必要だ。  そこで私は、この自衛隊の現在の配備とソ連軍の侵攻予想図というのは大体こういうふうになってくると思うんです、こういうふうにね。(地図掲示)  そして、この極東ソ連軍はこの北海道全部を占領するというようなことはないと思います。限定占領です。こういうふうに道東、これだけでこれは釧路支庁、根室支庁、こういうところです。これで四十一万人ぐらい。それから、こっちの道北部、これが大体十三万人くらい——十二万九千人、この中に。この道東からしますと、こういう形で入ってくる。それでここが厚床。厚床というのはここに、これが厚床。(写真を示す)厚床というのは、これは戦車がすぐ上がってくるところです。アリゲーター艦だとかボルノクニイ型LST、こういうのがすぐ上がってきて、すぐ展開できるところです。私の方は全部歩いてきたんですよ、これ皆。空中撮影から全部やっておるんです。これはやっぱり二年がかりなんです。それだけに、こういうところに入ってくる。防衛庁はどう考えますか。
  146. 原徹

    政府委員原徹君) いろいろ町で売られている雑誌等にも書かれているようなものでございますけれども、私どもがどこが上陸地点であるというふうなことをこの場でちょっと言うのは差し控えさしていただきたいわけでございます。  一般的に申しまして、上陸地点でございますから、相当の広さのスペースがないと師団単位のものは上がられないと、そういうことでいろいろ考えますと、そういう場所にそういうだけの面積がある場所があると、そういうことは言えるかと思いますが、そういう意味で、どこがどうという点はひとつ差し控えさしていただきたいと思います。
  147. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 防衛局長、あんなこと言いましたけれども、これはもう軍事専門家が——これはもう上陸地点どこでも上陸できるわけじゃないのです。ここだったら、この道東ならここの標津、この厚床。この厚床のこっち側、厚岸湾といいまして、日本艦隊がハワイへ向けて出ていったところですね。だから、こういうふうなところが恐らく襲われるだろうと。それで、ここにちゃんとこういうようなのを持ってくるわけですね。これは厚床の上陸地点です。(写真を示す)それから、これはいいわ。まあそういう標津もありますが、これはいい。  そこで、根室の市のここのところに、さっき総理がよう読まなかったこれがあるのです。温根沼という、これ温根沼と書いてオンネトウと読むのです。これは一本の道路しかないのです。この道路を落とされたら根室は孤立するのです。この温根沼を落とすためには、水晶島からホバークラフトで、片一方五つ、片一方五つ来たら、もうそんなに来ぬでも、三つ来てもいい。この鉄橋落としたら——この鉄橋、これです。(写真を示す)この鉄橋を爆破したらもう根室が孤立するのです。そうすると、これだけのものが人質になる。そういうことを考えたことがありますか。
  148. 原徹

    政府委員原徹君) その根室のそこの地形、そういう橋があるということは承知をいたしております。そこでその橋が落ちたといったときには、まあその住民がいるわけでございますが、そこを取り返すというようなことについてはいろいろ考え方がございますわけで、たとえば南から逆上陸をするとか、あるいは空挺を使うとか、まあそういうことはございますけれども、ともかくその橋というのは大変重要な存在であるという認識は持っております。
  149. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、お聞きのとおりなんです。自衛隊はやっぱり予測しておる。これは当然なんですよ。あたりまえなんだ、こんなものは。与党の諸君なんかこんなこと一回だって考えたことない。のんびりしたものだよ。こんなこと考えぬだって当選してくるんだから、本当に気楽なものだと私は思っているのですがね。やっぱり自民党の少なくとも国会議員ならばこのぐらいのことを考えて、そして温根沼と書いてオンネトウと読むぐらいのことは知っておらなきゃいかぬ。そしてこれがどうしたら守れるのかということを考えないと、いま防衛局長の言うように、予測される地点だということ、これだけでもきょう閣僚が知ったということは、私は日本安全保障のためにいいことだと、こう思っておるのですが、どうですか。
  150. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その地点ばかりでなく、あらゆる国の地点の防衛が大事だと思います。  (発言する者あり)
  151. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そんなこと言うな、野党が言うなと言ったって、私なんか、これは国会で言うことを憲法で保障されて、あなた、新聞にも何も追及されへんじゃないか。せめて国会ぐらいで堂々と自分の所信を言ってどこが悪いか。そんなに文句を言うんだったら野党もやりゃいいんだ、本当だよ。  だからね、こういうふうなことが予測されてこういうふうになってくる。そうしたときに現在のこの正面を守らなきゃならぬ帯広の第五師団で、ソ連の択捉、国後、色丹に展開をしておる一個師団の火力と対抗できるのかどうか、それを答えてもらいたい。
  152. 原徹

    政府委員原徹君) 日本自衛隊の火力一般につきまして、その師団の火力が世界一流、ソ連の師団に比べまして非常に火力の度合いが低いという点は、そのとおりであろうと思います。  ただ、この択捉、国後ということになりますと、そこにある火力には限定されたものはございます。それからまた、いま現在、上陸をするような師団をほとんど持っておらないということもございますが、一般的に申して、日本の師団の火力と一流国家の師団の火力と比べれば相当の差がある、これは事実でございます。
  153. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 どのぐらいの差があるの。
  154. 原徹

    政府委員原徹君) 一般的に申して、二倍ないし三倍の火力を持っております。
  155. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 違う、違う。あなたのとこは三・五と言いよったじゃないか。  いま帯広の第五師団と択捉、国後、色丹に展開しておる自動車化狙撃師団の現在の火力との差は大体三・三倍から三・五倍。これはだれだってそう言うんだよ。国会だから二倍だとか二・五倍だとか、そんなことは言うことはない。本当は三・五倍ぐらいあるんです。だから、そんなんだったら第五師団の火力と、それからソ連の一級自動車化狙撃師団の火力、それを読み上げてください。
  156. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 火力指数の比較の問題は、これは秘密にわたる事項でございますので、御答弁を差し控えさしていただきます。
  157. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 それなら、ぼくの持っておるのはこれは秘密か。
  158. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 一般に推定されております試算は出回っておりますけれども、それにコメントいたしますこと自体機密にわたることでございますので、差し控えさしていただきます。
  159. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これは、ぼくは時間の関係で言いませんが、国民に知らせるべきです。もう私だけでなしに、大体これは軍事専門家なら皆知っておる常識です。そうして、日本の現在の自衛隊の火力というのは周辺で脅威を与えておるソ連の一個師団と日本の一個師団と比べたら三・五倍も四倍も違うという実態を国民に知らせなかったら、国民が本当に自分の国はどうするかという考えが出てこないんじゃないですか。どうですか、総理
  160. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 総理お答えの前に、私からお答えをいたします。  国民の皆さんに一般的にはいろいろ知っていただくことが必要と思います。私ども、劣勢にあるものを強化をしていくということがもちろんこれは何よりも必要でございます。そういうことでございまして、これを直ちにどういう形で発表する方がいいかという問題は、これは対外関係もございますし、いろいろ別途考えるべきものであると、かように存じておる次第でございます。
  161. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 大臣ね、あなたのところ中期計画やりたいんだろう。中期計画をやりたいんなら、少なくとも潜在的脅威だと言われておる周辺の軍事情勢、そのある程度のものを国民に知らせなかったら国民が納得しませんよ、国民の合意が得られませんよ。どうですか。
  162. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) ただいまも申し上げたつもりでございましたが、国民の御理解をいただかなきゃならぬと、こう思っておりますし、特に、国会におきましては、承りますと、安全保障でございますか、防衛でございますか、特別委員会もできるというようなことも承っておるわけでございまして、広く御理解を賜る必要がある、賜らなければならない、かように存じております。どのようなふうにこれをやるかということについては、最も有効なる方法で知っていただくということが必要だと、かように存じております。
  163. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 最も有効って、どうしたらいいの。
  164. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) 私が申し上げましたのは、具体的な数字をどこまで出すかというような点について、いまいろいろございましたので、そういうものをずばり出すということだけではなくて、そういう点についてはいろいろ顧慮しなければならぬ面もありまするので、そういうことはいろんな点を考えながらどの辺まで、また、どういう方法とか、あるいはどういう言い方とか、あるいはどういう絵とか写真もございましょう。いろいろ方法があると思いますので、それらの点について十分ひとつ私ども検討いたしまして、最も有効であると国民の皆さんに御納得いただく、また国会の皆さんにも御納得いただく、こういうことが必要だと、こういうことで申し上げておるわけであります。
  165. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 ぼくは、総理、これはやっぱり国会で国民に知らせるべきだと思っておるんです。今度の開かれた防衛委員会でもいいですがね。国会で国会の代表の中で論議をされて、そして実態というものを知らさなければいかぬ。私は、日本安全保障はこう考えております。総理、まず知ることに三分、知らせることに三分、身構えることに三分、実際の戦闘行為というのは一分でいい。知ること、知らせること、身構えること、これに三分、三分、三分、その知っておることを知らせないで、そうして国民に協力を求めて何がしますか。そんなんだったらまた修正して、予算——老人年金か、一千円ふやせって、こんな甘ったれたこといつまでもやっておって。明治の人はこの実態を知ったら、あなたに一千円よけい上げますと言って修正して持っていったら、どうか日本安全保障のために使ってくれいというのが明治生まれの、大正初めの気骨ある日本人だと、私はこう思っておるんですよ、どうですか。
  166. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 安全保障に対する知識が国民の間に広く深く普及して正しい認識を持っていただくことは、あなたが言われるように、非常に重要だと思います。それが国会の場を通じて行われることが最も望ましいこと、私も賛成でございまして、国会に特別委員会を設置される企てもあるようでございますので、この委員会が十分機能することを私も期待をいたしております。
  167. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 もう一回聞きますけれども、やっぱりそういう場所で、周辺国家の軍事情勢、そして、それぞれの国の装備、それと劣勢な日本の状態の比較、そういうものをやりたいと私たちは願っておりますが、一国の政治の頂点にある総理大臣はいかが考えますか。
  168. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会におきましてそういう論議が深められることに私も賛成いたしますし、期待をいたしております。
  169. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうしたら、この次に、防衛庁長官、この道東、これを終わったから道北を聞きます。  道北は、私の予想では枝幸、ここにオホーツク海から上がってくると思います。こっちがサロベツ原野、枝幸というのはさっき枝の幸と書いて「えさし」と読むんです。ここは稚内、稚内正面、それからサロベツ原野、枝幸、サロベツ原野というのは干拓地をいま農地にしたところです。これは官房長官よく知っておると思いますが、戦車がすぐ上がってくる。こういうのが上がってきて、ここに国道四十号線があるのですが、この四十号線に三つの勢力がそろってここに音威子府という渓谷がある。この音威子府の渓谷の戦いというのは、これは相当なものだと思う。私はいろいろ調査してみて、自衛隊も一生懸命になって音威子府でこの道北の浸透してくる敵に対して抵抗するという、こういう計画を私は漏れ承っておりますが、防衛局長、どう。
  170. 原徹

    政府委員原徹君) 音威子府が非常にその重要な地点であるという認識はもちろん持っております。
  171. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 音威子府が重要だという認識を持っておるなら、こういうオホーツク海、日本海、その稚内正面、こういうふうな方面の侵攻に対して、少なくとも図上演習ぐらいはやったと思うが、どうですか。
  172. 原徹

    政府委員原徹君) 自衛隊というところは有事に際していろいろ研究しておくところでございますから、いろいろの点についていろいろな研究をしていると、そういうことで御理解をいただきたいと思います。
  173. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 特にこの道北の限定占領、こういう問題についてやったことないの。ないと言うなら、私、日にち教えてあげるよ。あるならあるでいい。
  174. 原徹

    政府委員原徹君) 先ほど申しましたように、いろいろな点について研究をしておりますのでございますので、そういう点で御理解をいただきたいと思います。
  175. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうしたら、あるというふうに見ていいんだね。
  176. 原徹

    政府委員原徹君) そういうふうに御理解願っても差し支えないと存じます。
  177. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、そういうことなんですよ、あるんです。なけりゃこれまた不思議なんです。そんなものやらぬような自衛隊だったら解散すりゃいいんです、私がいつも言うように。だから、それをやるのがあたりまえで、一線自衛官というのは本当に苦労していると思うんです。ところが、防衛局長、あなた、この枝幸だとかサロベツだとか、この標津だとか厚床だとか、こういうところへ行ったことある。
  178. 原徹

    政府委員原徹君) 行ったことがございます。
  179. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 何。
  180. 原徹

    政府委員原徹君) もちろん行きました。
  181. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうね。これは私が言ってから行き出したんですよ、本当ですよ。前は行ってなかったんです。全然行ってなかった。だから、国会の論議というのはいかに大事かということなんです。しかも、与党の論議がいかに大事かということなんです。与党がしっかりしなかったら、こんなことになるんですよ。総裁公選も結構ですけれども、これの方がずっと総理、やっぱり大事なんですよ。だから、私は、最近の防衛庁というのは非常に緊張してきていいと思います。特に一線の下士官、兵、これは非常にしっかりしてきた。私は涙ぐましい努力だと思う。  この音威子府の渓谷、これは東西二十キロにわたるんですけどね、これは大変な渓谷です。そこで、ここをこう撃った場合には、どうもやっぱり盲点になる、ここは撃てない。そういう陣地の構築というものについて、もうとうに研究しておる。ところが、その陣地の構築がいまできないんですよ。陣地の構築に少なくとも一カ月も二カ月もかかりますよ。それでなかったら、この強大な力を持ったソ連軍をここで阻止するわけにいかない。これ阻止しなかったら一気に名寄に入って旭川に入ってくるんです。道央に入ってくるんです。なぜできないんですか、総理
  182. 原徹

    政府委員原徹君) まあ、その点いま例の有事法制その他の研究をしているわけでございますが、いまの法制ですと、防衛出動がかかりませんと、いわゆるその土地の収用等のことはできないことになっておりますから、防衛出動が出ればできるのでありますが、それだと若干時間がかかり過ぎるのではないか、間に合わないということもあるのではないかというようなことも考えて、いまそういう点は研究中でございます。
  183. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理ね、いまのような状態ではとてもじゃないが、これはもう、ここは必ずやられる。やられたときに防衛庁では、まず国民の生命を守るということで遅滞行動という、そういう行動に出るということは聞いていますが、総理どうですか、遅滞行動
  184. 原徹

    政府委員原徹君) まあ陸上自衛隊の場合に考えられる方法といたしましては、まず第一はその阻止ということで上陸させないということが一つ。それからまた、それができなければ持久に入るわけでございますが、その持久の一つのやり方は防御するわけですが、それもまたうまくいかないということになると、徐々に下がりながら抵抗していく、それが遅滞ということでございますが、そういろいろなことはまあ考えておりますが、その一つの方法として遅滞ということはあり得るわけでございます。
  185. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 専守防衛というのは、私はこの前もここで、国会でやりましたが、これはやっぱり国民が戦火の前にさらされることですからね、まず国民をその危険から逃すということ、これが第一ですね。それだけに遅滞行動の中にはこの一般市民を退避さすという計画が私は当然だと思うんですが、それは計画されていますか。
  186. 原徹

    政府委員原徹君) まあ、そこになりますと、いわば一種の民間防衛の分野になるわけでございますが、現在の自衛隊法ですと、その自衛隊法の八十六条でございますか、地方団体、県知事あるいは市町村その他に協力要請ということができる規定がございます。したがって、いまの法制でやるとすれば、その法制に従って協力要請で避難の誘導というようなことをお願いせざるを得ないのではないかと思っておりますけれども、いま具体的な計画は持っておりません。
  187. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 きょう、もう自治大臣に聞くまいと思ったんですが、いま聞くとやっぱり聞かなきゃならぬですが、そういう事態のときを予測して、いままで自治大臣、自治省として相談を受けたことありますか。
  188. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 玉置さん御承知のように、現在の防衛庁は防衛出動と治安出動と二つございます。  で、治安出動の場合につきましては、これは十分平素から連絡しなきゃならぬということで、警察と防衛庁との間に協定等を結んでおります。その際の基本的な物の考え方は、直接国民に対する場合には警察が前に立つ、防衛庁は支援後拠をしていただくと、こういうことでございますが、御質問の点は直接侵略という場合でございます。専守防衛でございますから、当然予想せられる事態は国土戦場ということにならざるを得ません。そのときに一体防衛庁と警察とがどういう行動をとるかということについては、少なくとも私が承知している範囲ではその点までは私はできていないように思います。ここらはやはり将来の両省庁で話し合いをして、そういった場合にどうするかと、協力関係を、ここはこれからやらなきゃならぬと思います。  私は、先ほど来玉置先生の御質疑を聞いておりましてね、いま何といいますか一国民の命と財産を守るという、つまり国の安全ということについての非常な憂国の至情からする御質疑と傾聴いたしております。  まあわれわれの責任は、一つはいま言った国民の命と財産を守ること。二番目は、やはり国民すべてに職を与えること、完全雇用。三番目は、やはりオギャーと生まれてから墓場まで要するにあすの生活に心配のないようにするという福祉社会の実現、この三つが私が思う近代国家の責任だと思いますね。  二番目と三番目はまあまあ人並みになってきたように思いますけれども、基本の命と財産を守るということについては私はもう少し研究しなきゃならぬ面があると思いますが、その手段、方法については、これは国論の分かれるところでございますから、そこらは真剣に国会等でも御論議を願うなりしながら、政府には国防会議がございますから——国防会議も、本来国土戦場ということを考えるならば、いままでのように飛行機を買うからどうとか、戦車を買うからどうとかといったようなことだけが国防会議の任務じゃありません。そういうような意味合いにおいてもう少し国防会議自身も検討しなきゃならぬ課題があると思いますけれども、しかし、今日までいろんな制約等もあって実現をしてない。これらについては将来の重要な政党の責任でもあるし、政府の責任でもあろうと、こう考えますが、いずれにいたしましても、警察と防衛庁との関係につきましては、先ほどお答えいたしましたような線で今後検討を進めてまいりたいと、かように考えます。
  189. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 きょうの答弁でぼくは後藤田さんの答弁が一番まともだと思いますよ。国務大臣というのは自分の本音を出さないで、そうして自分がこう言ったら国会でたたかれて、そして総理に首切られるからと、そんなものだったら初めからならぬ方がいい。だから、一日でもいいから本音を言うて、潔く国務大臣を去っていくというのが、これがやっぱり男子の本懐ですよ。私らなることはないけど、やる気もないが、私だったら半日もたぬと思いますが、しかし、私だったら本音を言うね。本音を言わないで、そして空転をしておる不毛の議論ばっかりやっておったら、それこそ議会制民主主義が国民から見放される、私はそういう感じが最近ひしひしとするんですが、総理いかがですか、男子の本懐。
  190. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 職に長くとどまることが芸じゃございませんで、やはりなすべき仕事をちゃんとなしていくのがわれわれの任務であると考えております。
  191. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理ね、ここに私は根室市立の花咲港小学校の児童の作文集というのを持ってきたんです。五十四年のここ、総理、後で渡しますから読んでください。これは五年二組菊地晶子さんが書いたもの。  「私は、「二〇〇カイリ」というのは、ソ連日本で魚のとりあいっこをしているんじゃないかと思います。私は、とてもくだらないことに思えます。時々、「日本総理大臣方は何をしているだろう」と思います。皆、一生けんめい働いているのに何さって感じになる時もあります。」、そして最後のところに、「去年の春に、水産庁の森長官という、水産庁で一番えらい人が、お母さんのところで、ご飯を食べていきました。とてもやさしそうな人でした。今度来た時は、二〇〇カイリのことで、皆が安心できるようにたのんでみたいと思います。」、そして「……できるかな?」と書いて「終わり」となっている。  で、五十三年のやつはこう書いてある。「お父さんの仕事」、四年二組田口満。「二百カイリはなんのためにできたのか。「去年は魚を取りすぎたからここだけ。」と言わないで、どこでもいいから魚をとらせればいいと思います。ぼくはソビエトにもんくをいいたいです。わけは、「ここだけ」と言うからです。ぼくはソビエトがにくいです」と。  これが子供の心境ですよ。うそ偽りない心境です。こういうまだがんぜない児童がこれだけの作文を書いて切々として訴える。その気持ちに対してあなたはどうこたえますか。
  192. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 全能力を挙げて適切に対応して国民の心配がないように持っていかなけりゃならぬと思います。
  193. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 小渕さんね、あなた、きのうここで共産党にがたがたやられておったけれども、あんなの気にしない方がいいよ。国務大臣になるときには、ああいうこともそれはやっぱり気にしないというわけにもいかぬが、何をなすべきかということを考えてしっかりやってもらいたい。  あなたの所管の北方四島は最近ソ連軍事力が強大な展開をしてきた。そこで根室だとか標津だとか、ああいう正面にある自治体は急速に人口が減ってきた。そうして預金が引き出されて本州へ本州へといま移されておる。そういう実態の中で、あなたは所管大臣として、この北方四島のソ連軍事力展開によって大変な生活の影響を受けておる人たちに対していろいろ考えていく、あるいは立法するとかなんとかという方法はないですか。
  194. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 御指摘ありましたように、根室を中心といたしました道東地区が現在経済的にも大変疲弊状態になっておることはまことに残念だと思っております。漁業権の問題とか、二百海里の問題とかが当面その原因となっておりますが、要は、御指摘を待つまでもなく、本来、四島がいまなお返還されておらないというところにその原因のすべてがあることだと思います。しかし、これは外交的手段をもって、相手国のあることでありますので、外務当局を中心にして政府一体で努力をしていかなければなりませんが、御指摘にありましたような地区の経済の振興をいかに図るかということにつきましては、現在北海道といたしましても、この地区を中心にした特別立法というようなことを考えておるようでございます。私、所管をいたしますことは、国民全体がこの北方問題に対して気持ちを一にしてその返還運動を展開するための国民の理解を深めるために私の仕事があるわけでございまして、その地域の振興ということになりますと、それぞれの大臣、所管がございまして、みんな力を合わしてやらなければならないことだと思います。しかし、北方に対しての責任を持つ大臣といたしましては、それぞれの役所とも十分連絡を取り合いまして、その地区を中心にした地域的な開発計画というものができ上がらないかどうか、全力を挙げてその努力をしてみたい、このように考えております。
  195. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理ね、沖繩は返ってきた、いま戦後で返らないのは北方四島です。しかも北方四島に最近巨大なソ連軍が展開し出した。それにおびえておる。私たちの現地調査によりますと、標津の沖に軌道を外れた大砲の弾が落ちた。そうしてこれは何かということで大騒ぎした。それから海上保安庁もほぼつかんでおると思いますが、調査によりますと、原因不明なところで漁船が沈没して人命が失われる。どうも某国のその海の底にある何かだろうということが評判になっておる。しかし、皆口をつぐんで言わない。そういう中で生活をしておる同じ日本人がいまおるのです。そして事あらば本州へ逃げ出そうとしながらも逃げ出せない。そういう人たちのために何か考えていきたい、立法も含めて考えていきたいという総務長官姿勢を私は評価すべきだと思う。総理、どう思いますか。
  196. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) お気持ちはよくわかります。中央、地方とよく相談いたしまして適切な対応の道を発見したいものと思います。
  197. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 もうこれで侵攻を終わりまして、今度はどうしたら勝てるかというやつをやります。それはなぜかと言いますと、ソ連の思惑に乗ったらいかぬのです。ソ連は、こういうふうにして軍事的な力を展開したら日本国民はまいってしまうだろうと思うから、あれはやるのです。そうじゃなしに、日本人はしっかりしておるんだよ、こういう対応もあるんだよということをソ連にしっかり見てもらう、それがまた日米安保に協力する日本の基本的な姿勢であると、私はこう思っておるんです。  そこで、これはここにずっと書いています。通信傍受能力をもっと上げろとか、防空能力を上げろとか、そして航空基地を強化せいとか、海上防衛力増強せいとか、これだけやってもらえばこれはもうソ連といえども絶対近寄れないですよ。これで、防衛庁、あなたのところで計算してもらったが、総額幾らぐらいかかるか。
  198. 原徹

    政府委員原徹君) 先生からお示しのやつを全部試算をいたしますと、四兆五千ないし五兆円でございます。
  199. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これは大体四兆余りあれば——私は四兆も要らぬと思います。こんなの。これはもう最高に見積もってこれだけあったら勝てるというやつですよ。勝てるどころか、ソ連は寄ってこないですよ。ソ連というのは、大体自分たちの勢力が三倍から四倍、五倍ぐらいなかったら入ってこないですからね。それだけにこれだけの防衛をやれば、四兆の金を北日本、東日本の方へ配備すればこれは大丈夫です。こんなことを言うと、あれはタカだ、ワシだとまた言われますけれども、タカだ、ワシだと言われようが、何を言われようが構わぬ。日本の国を守るためにこれだけの四兆の金を投じてでもやっぱりやるべきじゃないですか。どう思いますか。  大蔵大臣、竹下先生ね、私はあなたと一緒に来て、あなたがなるべく早い機会に総理大臣になってほしいと思う。なぜかと言ったら、こういうことを早くやってほしいんだ。失礼ですけれども、いまの大平さんだとか、福田さんだとか、三木さんだとか、田中さんでこんな考えは出てこないですよ、若くなければ。若い世代の気持ちがこういうことをやれるんです。だから、そういう意味であなたが答えてください。
  200. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 防衛力というものが、これが当初国力、国情に応じて、そしていままさに近代化のために一%を超えざる範囲内においてというようなことが決まったことでございますので、いまの場合、私は、国防会議、閣議なりで決まった以上の問題でお答えする立場にはない。がしかし、日本防衛力そのものが国民の理解の上に立って、そして国民が安心するような形になることは、これはだれしもそうありたいと期待しておるところであろうと思います。
  201. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 防衛庁に聞きますが、昭和五十五年から昭和五十九年度の中期業務見積もりを出していますが、これは防衛庁としての庁議決定をされて、そして大体閣議に報告されておる問題ですか。
  202. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お答えいたします。  中期業務見積もりは、昭和五十五年度から五十九年度まで五年間の主として正面装備を中心にした見通しでございまして、防衛庁の庁議として決定をいたし、国防会議には一応御報告をいたしたものでございますが、閣議決定をいたしたものではございません。
  203. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、こういうことを考えれば、私は、この防衛庁の中期業務見積もりなんというのは、これはもう最低の最低の要求だと思うんですよ。遠慮しいしい、国会へ遠慮しながら出した見積もりだと思うんです。これを出すときに恐らく社会党の山崎昇君の顔を浮かべたかどうかわかりませんが、野党の諸君の顔を浮かべてやったものだと思うんです。やっぱり国会ですよ。国会をいつも横にらみしながら要求出せないという、ここに問題があり過ぎるんです。それだけに、この中期業務見積もりについて総理大臣としてこれを推進していくのかいかないのか、これをひとつお聞きしたい。
  204. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中期業務見積もりというのは私まだ拝見いたしておりませんで、これは防衛庁において財政当局と話し合いをする場合の一つの用意として持っておる計画であろうと思っております。私は年々歳々の予算編成に当たりまして防衛費をどのように位づけていくかということを見る立場にあるわけでございまして、その予算要求の中には、あなたの言われる中期見積もりというもののその年度内における実現の方途がその予算にはあらわれておるものと思うのでございまして、その意味を通じて実現を図る方向を考えるべきだと存じております。
  205. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 あっちへ飛びこっちへ飛びで恐縮ですけれども外務大臣ね、日米安保、さっき後でやりましたね、日米安保とアメリカの戦争権限法、この関係ですけれども、これはどうですか。
  206. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 戦争権限法につきましては、これは米国の立法でございますが、大統領と議会の戦争行為に関する関係を規定した法律でございます。ただ、これは他の国の国内の問題としていろいろ論議があったように承知いたしておりまして、日米安保は、これは行政府のみならずアメリカの議会の承認のもとに日米安保条約が締結されておるわけでございまして、ただいまの点につきましては日米安保は本質的に影響を受けないと私どもは解釈いたしております。
  207. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これは総理ね、これの解釈の最高権威は国会図書館の宮脇君なんです。宮脇君の解釈をここに私持ってきています。これは大変な見解の違いで、私は国際電話で向こうの、あなたも知っている法律事務所のセネター・タイディングにも電話で聞きました。そうしたら宮脇君の見解と全く一緒です。法律家としてもそうです。それだから、外務省の日米安保はアメリカの戦争権限法に影響されないというのはとんでもない間違いであって、私は前外務大臣の園田直先生がうまく答えておると思います。上手に逃げていますが、しかし、ある程度本質に触れておる。木で鼻をくくったようないまの大来さんの答弁では承知できない。改めてこれは外務委員会で私やります。そして事の決着をつけた上であなたの判断を仰ぎたい。日米安保があるからといって安心できるような状態ではありません。  この前、岸先生、それから福田前総理——セネター・タイディングが来て私が一席設けたときに、二人を前にしてこの四人で論議をしましたときに、佐藤隆君もおりましたな、二人ともぎゃふんと言ったんです。二人の総理経験者がぎゃふんと言ってしまってどうにも答弁できなかった。ここに日米安保のこれからわれわれが真剣に考えていかなきゃならない本質的な問題を含んでおる。いま有識、心ある日本人は、日米安保があるから日本のどこかが外敵に攻められたらすぐ助けてくれて追い返してくれるんだという、そんな考え方を持っておる者はよほどの人ですよ。そんなものは思ってない。だから、もっと掘り下げた議論が国会でなされるべきだということだけできょうはとめておきます。それはどうなんだ、やるか、やらぬのか。
  208. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私も外交を担当いたしておりまして、日米安保と関連して、日本人自体の自衛努力というものが日米安保の有効な働きにとって重要な要素であるというふうに判断いたしております。
  209. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 こんなのは、いまのは答弁にならぬのですよ。まともに聞いとらぬ証拠だ。だから、あなたがこの問題について外務委員会で私たちとやりとりするかということだけ聞いておるのだ。
  210. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その機会がございましたら、十分いろいろ御意見を承り、私どもの方の考え方も申し述べたいと考えます。
  211. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、あるいはもう読まれたかと思いますが、「文勢春秋」の三月号の百二十五ページに、「私自身も東京で、これと似た方法により、タシケント収容所の捕虜だった時にソ連のエージェントになったT**という人物にうまく接触できた。私は彼の自宅を、選挙のオブザーバーとして訪ねた。T**は、池田勇人との友人関係のために、日本の大蔵省の顧問として働いていた。T**はソ連諜報機関からは、当時、最高の「資産」のひとつとして貴重な情報源とされていた。」、これですね。これラストボロフ事件です。私が、去年ゾルゲ事件やったのはこれなんです。ゾルゲ事件というものに対して、法務省、どういうような、——概要をちょっと話をしてください。
  212. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いわゆるゾルゲ事件でありますが、ゾルゲは当時ソ連のスパイとして日本で活躍をいたしました。あれも裁判に付されて、最終判決で関係者それぞれ処断されておりますけれども、要するに、わが国の機密を握っておる有力者たちと折衝いたしておりまして、かなりのものをもってスパイ活動を成功さしておったと、こういうふうに承っております。
  213. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 もう少し概要を皆さんにわかるように話してください。
  214. 前田宏

    政府委員(前田宏君) いわゆるゾルゲ事件の概要でございますが、その事件は、いわゆるソ連共産党諜報機関に直結いたしました、いわゆる赤色スパイ事件と言われるものでございまして、昭和十六年に検挙をされ、同十八年から十九年にかけまして裁判が行われて判決が確定いたしております。  この事件は、いま大臣が概略をお答えしたところでございますが、ソ連赤軍の諜報機関の指揮統制のもとに、当時の駐日ドイツ大使顧問のゾルゲを中心といたします外国人数名、及び当時の内閣の嘱託でございました尾崎秀実を中心とする日本人約三十名が、昭和九年ごろからわが国の政治、外交経済軍事等各般にわたる機密を探知収集しまして、これを短波無電等によりましてソ連の方に通報し漏らしていたと、こういう内容でございます。  その結果、先ほども大臣が申しましたように、当時の国防保安法あるいは軍機保護法、軍用資源秘密保護法、治安維持法等の違反で刑事事件として捜査、処理が行われまして、起訴がされ、先ほど申しましたゾルゲと尾崎の両名は死刑になり、その他二名の者が無期懲役になり、またそのほか十二名の者が懲役二年から十五年という刑に処せられておる事件でございます。
  215. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 大臣、このゾルゲ事件で一番ポイントになる点、われわれがいまだに忘れてはならぬ、また将来の子孫も忘れてはならぬという日本国の政策の大きな変更、それは何だったですか。
  216. 前田宏

    政府委員(前田宏君) お尋ねに対しまして直接お答えできるかどうかと思いますが、そういういまお尋ねの点につきましては、当時の判決書等では特に触れていなかったように思います。
  217. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうじゃなしにね、日本の軍部が北進南進のこの考え方を持っておって非常に迷っておったときに、ゾルゲがどういう影響を与え、尾崎秀実はどういう影響を与えたかということを聞きたい、大臣。
  218. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 当時言われておりましたのは、当時のわが国の首脳者、政界の首脳者たちが最終的に意を決して北進をしたと、こういうふうに承っております。
  219. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 北進じゃなし、南進です。
  220. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 失礼失礼、南進です。
  221. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 これは総理御存じのように、昔、有名な、著名な事件ですから——著名というか、有名な事件ですから。これは北進の意図を南進の意図に切りかえさすんですね。だから、いまや世界的な評価は、ヒットラーがソ連に侵攻したと、それで百数十万の捕虜をドイツが得たと。あのときに関東軍が一気にソ連に入っておったら現在の共産主義世界はなかったろうという評価がいま世界の共通の評価です。それだけにこれは大変なことなんですね。それにも私は匹敵するのがこのラストボロフ事件だと思っておるのです。  このラストボロフ事件の概要について、これは「文勢春秋」だけではいけませんので、警察庁、刑事局長など答えてください。いまのM何々というところだけでいいです。
  222. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) お答えいたします。  いまおっしゃいました「文藝春秋」三月号、私も読ませていただきまして、その中にありますTというふうな記述についても一応読ませていただいております。
  223. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 そうじゃないのでね、この内閣官房調査室から出ておる、内閣官房調査室の監修したこの中に、そういう私は東京で云々というのを、これは間違いないですか。
  224. 鈴木貞敏

    政府委員鈴木貞敏君) 事実関係は別といたしまして、MとかT、そういう名前で国際情勢資料その他で出ておるのは承知いたしております。ただ、その人物について心当たりはございますけれども、被疑者になっておりません。そういう意味で、具体的な被疑者に取り扱われておらないという意味におきまして、この席で、どういう人であるとか、どういうことであったというようなことについては発言するのを差し控えさせていただきたいと思います。
  225. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 総理、それほど重大な人なんです。それほど重大な人。ここにちゃんとまたあるんですが、京都出身で、大正十四年に京大を卒業すると、大蔵省に入り理財局勤務となった。昭和九年仙台税務署長を最後に満州に渡り、財政部理事官、大連税関長を経て浜江省次長となって終戦を迎えた。ソ連軍の手に抑留されて云々と。で、タシケントでスパイの声明をするんです。そのとき一緒の部屋におった、これは言っておきますが、宏池会の事務局長をやった田村敏雄、私はむしろ先生と言いたい。あの人は非常にりっぱな人だった。私も三回ほど会っていますが、りっぱな人だった。しかし、そのりっぱな人物であったというこの一つの私の認識と、ラストボロフ事件の手先になって、そうしてソ連のスパイであったという事実は、これは今度の証言で明らかです。  そうして、問題はここなんです。恐らく総理はこう言ったらもう記憶によみがえったと思いますが、このラストボロフ事件の供述というのはアメリカでやっていますね。そのときに三輪健児という人ね、あるいは総理覚えておりますか、三輪健児、これは一緒にラーゲルに入れられて、一緒の部屋におった人です。それで田村さんがずいぶん苦しんだ人です。苦しんだことをよく知っている人です。そのまた三輪健児さんの友達の、名前は秘しますが、その人がこの問題でいつでも国会に出ていいと、もう自分は生命は長いことない、この真相についてもし国会が要請するならば自分が出てもいいということを言い出した。それはなぜかといったら、当時総理になられた池田さんに対してその人が注意をした。それで池田さんびっくりした。そうして池田さんがそのときにその人に言ったのは、大平君にも注意をしておいてくれと、こう言った……
  226. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 玉置君、時間が超過しております。簡潔に願います。
  227. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 その記憶ありますか。——私はその記憶をもう問わない。問わないが、この日本の内閣の中枢にソ連のスパイが常に入っておるというこの事実、戦前、戦後を通じて。これをわれわれがしっかりと認識せなきゃならぬのです。その認識についてだけあなたの見解を問うて、そして私の質問を終わりたい。
  228. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 池田さんから私にそういう注意があったことは私は記憶にございません。しかしながら、仰せのように、内閣という権力の中核は内外の諜報網の最も注目しておるところでございますだけに、神経質なまでにその点につきましては注意をしておかなければならぬものと私は心得ております。
  229. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 以上で玉置君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  230. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 次に、森下昭司君の総括質疑を行います。森下君。
  231. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、最近の日米経済摩擦問題これに関連いたしまして、日米の関係についてお尋ねをいたしたいと存じます。  最近、自動車の問題を中心にいたしまして日米経済の摩擦が懸念されているわけであります。七〇年代は、繊維で始まり、カラーテレビ、鉄鋼、漁業、農産物というふうに、個別のいわば局地的な問題として考えられていたわけであります。八〇年代は、個別品目での論争にとどまらず、日米間の経済政策、外交政策、国防政策を含む全面的な問題というようにさま変わりをいたしておるのではないだろうかと思うのでありますが、このいわゆる経済問題についての質的変化について総理の御認識をまず最初にお伺いをいたしたいと存じます。
  232. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日米関係は、同盟国といたしまして安全保障の上におきまして非常に重大な関係を持っておるばかりでなく、経済的な関係におきましても二国間の関係といたしましては史上類例を見ないほどの分量を持った大きな経済取引関係を持っておるわけでございます。その関係は七〇年代でございましょうと八〇年代であろうと変化はないと考えております。ただ、七〇年代に日米間に緊張を呼んだ問題が、たとえば繊維問題のような問題がございましたけれども、緊張を今日呼んでおる問題は繊維ではなくてほかの問題であるというように、そういう変化はございますけれども、基本的に日米関係の性格が変わったものというような受けとめ方は私はいたしておりません。
  233. 森下昭司

    ○森下昭司君 昨年の大平総理大臣の渡米、六月にカーター大統領の来日、いわば日米関係というものは表面上平穏に推移いたしまして通商論議も小康状態だった。ところが最近非常に対日批判が続出をしておる。なぜ急に対日批判が出てきたのか。一つには大統領選挙の影響があるのではないかという消息もございますが、なぜ最近このように批判が出てきたのか。その点について総理の御見解を伺いたいと存じます。
  234. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) おととしは大変日米関係は緊張いたしておりましたが、これは日米の貿易バランス、経常収支のバランスが大きく狂いまして、日本の有利に展開して、アメリカの対日赤字がふえたというようなことが基調にございまして、いろいろ緊張を呼んでおったわけでございまして、そのために中期にわたりまして日本が心がけるべきこと、アメリカが心がけるべきことを整理いたしまして、去年の私の訪米によりまして、この問題は一応解決をいたしまして緊張が緩和された状況にございました。そうして当分、われわれが予想したとおり対米黒字はだんだん減ってまいったわけでございますし、グローバルに申しまして日本の国際収支は逆調を記録いたしましたこともございました。しかし、その中にありましても対米黒字は依然として残っておるわけでございまするし、アメリカが最近におきましていろいろ経済運営の困難さを痛感するにつけまして、対日のこの赤字を無視することもできなくなり、自動車等を中心にいたしまして若干の不満が出てまいっておることは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、こういったことは日米間におきまして過去において何回もございまして、その都度われわれの良識によりまして解決をしてまいったわけでございまして、ただいま取り上げられておる問題につきましても、われわれの懸命な対応でこれを解決してまいらなければならないし、それはできない相談ではないと私は考えております。
  235. 森下昭司

    ○森下昭司君 いま総理が言われましたように、昨年の東京サミット以後アメリカ日本の間における経済問題についての諸懸案については、大変私は改善されてきたのではないかと思う。しかし、それにもかかわらず自動車問題に端を発して再びこの経済摩擦が出てきた。そこにアメリカの対日政策についてというよりも、アメリカ国民の対日批判がどうして強くなってきたのか若干の私は疑問を持たざるを得ないのであります。そこで、昨年の暮れでありますが、ニューヨークにおきまして日本が真珠湾を攻撃いたしました一九四一年と題する、言うならば喜劇タッチではありますが反日的映画が上映されているということを総理は御存じですか。
  236. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 全部を拝見したわけじゃございませんけれども、部分的には拝見しました。
  237. 森下昭司

    ○森下昭司君 御感想はどうでした。
  238. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これが全部がアメリカ国民の対日感触であるということになりますと問題はきわめて深刻だと思いますけれどもアメリカにもいまの日米関係はかつてない良好な状態にあると見ておる人もありまするし、またそうでないと見ておる人もあるわけでございますので、アメリカのコンセンサスがどこにあるかというようなことにつきましては、にわかに論断できないものではないかと考えておりまして、出てきた問題につきましては、先ほど申しましたように、われわれが良識をもってこれを解決してまいる、一つ一つ丹念に解決してまいるということ以外に分別はないのではないかと思っております。
  239. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、いま総理は、日米間の問題は両国の良識に従って解決できるんだということを非常に御強調なさったわけでありますが、五月には訪米をしたいという意向の表明を先般の当委員会でおやりになったんですが、五月訪米の際にこういった自動車問題を中心にして当面の日米関係経済摩擦については十分話し合いの上で解決できると、こういう御自信がおありですか。
  240. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) この問題は、五月訪米の機会を与えられると大変幸せだと思っておりますけれども、そういうことを待つまでもなく、いま三月でございますので、まず三月、四月と丹念に解決に努力いたしまして、私といたしましては、できるだけそういった問題が解決されて、日米の間でもっと中長期にわたりまして理解を深める話し合いをしたいものと思っております。
  241. 森下昭司

    ○森下昭司君 けさのある新聞によりますと、総理が渡米を希望いたしておりまする五月第二週で、アメリカのカーター大統領との会談は、アメリカ側がどうも都合が悪いので非公式ではありまするが、会えない、会談ができないというふうな連絡があったと報道いたしておりますが、その真偽はどうですか。
  242. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま打診中でございまして、そういった見当がついてまいりますならば国会各党の御了解を得なければならぬと思っております。
  243. 森下昭司

    ○森下昭司君 重ねて聞いて非常に申しわけございませんが、仮に、アメリカ側の都合で五月の第二週、日本側は五月四日を希望いたしておるようでありますが、これが実現しなかった場合は訪米は断念なさいますか。
  244. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま打診いたしておりまして何とも言えませんけれども、私は日米首脳の会談の機会を持ち得るのではないかと希望を捨てておりません。
  245. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に、通産大臣に私お尋ねをいたしておきますが、この日米間の自動車問題は、日本側の大幅な輸出超過に伴いまする貿易収支の論争が過去数年間ありたわけでありますが、最近の論調は、先ほど私が申し上げましたように、さま変わりをいたしまして、資本の相互乗り入れや現地生産あるいは雇用問題を絡めました広範な通商論争に変わってきたと理解をいたしておりますが、通産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  246. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 米国内での関係者の間には幅広い意見がございまして、自動車労働者の失業の増大あるいは日本車のシェアの急増の政治的なインパクトを考えるべきであるとの声も多いところから、これが輸入制限等の問題になることをできるだけ回避したい、回避する必要があるというふうに考えてございます。この中で、御指摘のように、輸入制限の動きのみならず、対米投資の促進とか、あるいはアメリカの完成車、部品等の対日輸出の拡大を求める方向等が強くなってきているところから、日本側といたしましても幅広い観点から対応が必要だというふうに考えてございます。
  247. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、いま通産大臣も幅広い議論が行われているということでありますが、この三月七日に開かれましたアメリカの下院歳入委員貿易委員会、いろいろなことで大筋は日本を非難し、輸入制限でありますとか、投資をさせるべきだということで大体空気が一致いたしたと日本に伝えられておりますが、これに対しましてトヨタ、日産というような会社は、そういう意見ばかりではない、いわばこの下院の貿易委員会の議論というものをやや無視と申しまするか、意に介さないというような態度だと伝えられておりますが、こういった態度について、下院のいわゆる貿易委員会の公聴会の議論というものを通産大臣はどう受けとめておいでになるのか。
  248. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 米下院における公聴会におきましては、御指摘のように、輸出抑制を求める意見のほか、対米投資を求めるもの、あるいは輸入抑制に反対するといういろいろの意見が表明されたと承知してございます。通産省といたしましては、米国におけるこれらの種々の意見を、さらには今後出るべき米国の政府意見等を慎重に検討いたしまして適切な対応をやってまいりたいというふうに考えてございます。
  249. 森下昭司

    ○森下昭司君 先般のGMのエステス社長が、自分は日本の工場進出に圧力をかけない、輸入規制も反対だと、こういう記者会見をいたしておりますが、その真意はどういうふうに理解しておいでになりますか。
  250. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) GMのエステス社長が参りましたときに、私ちょうど国会がございまして会う時間がございませんので、矢野事務次官がかわってお会いいたしました。矢野次官からの報告によりますと、GMは従来から自由で公正な貿易を支持してきておりました、GMは売る場所で生産をするという基本方針でございます、日本の企業の対米進出はそれぞれの企業の判断にゆだねらるべきもので、米国における保護主義立法や米国生産を義務づける法案により強制されることは望ましくない。GMはあくまでも工場進出の必要はないと言ったわけではなくて、これはどうも誤解されているようでございますけれども、別に社長が工場進出の必要性はないと言ったのじゃなくて、先ほどるる申し上げましたような趣旨のことでございますと承知しております。
  251. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまお話しの中で、米下院の貿易委員会においては大勢的に先ほど申し上げたような事態になった。GMの社長はまあ結論的にいけば望ましくないということになるといいますると、同じビッグスリーの一つのというよりも一番アメリカで大きな会社の社長がそういうことを言うということは、通産大臣が言うように、アメリカ政府、まあ非公式でありますが、あるいは世論が一致して日本の自動車の投資、それからあるいは日本の自動車の輸入規制、そういったものについて統一された意見ではないというふうに理解していいのかどうか。
  252. 栗原昭平

    政府委員栗原昭平君) ただいまのお尋ねのうち対米投資に関して申し上げますと、これは非公式でございますけれども政府も、それから輸入業者も、それからアメリカの議会関係も、あるいはGMは先ほど大臣からお答えしたような態度でございますし、これについて異議があるというような方はおられないというふうにわれわれは考えております。そういう意味において、ほぼ対米投資を望むという意味においては大体一つの声になっているのではなかろうかというふうに考えております。ただ、輸入規制と申しますか、日本から見れば輸出を抑制するという問題でございますけれども、これにつきましては関係者さまざまの意見があるというふうに私ども聞いております。現にアメリカ政府の中でもこれについてはいろいろの意見があって、まだまとまった意見になっておらないというふうに承知しておりますし、この問題につきましては、いずれ十八日に予定されております公聴会において恐らくアメリカ政府の統一的な見解というものが出るというふうに考えております。
  253. 森下昭司

    ○森下昭司君 輸入規制問題はともかくとして、投資についてはほぼ意見がまとまっているというお答えでありますが、仮にも日本に来たビッグスリーの長である一番大きな規模のGMの社長が望ましくないという記者会見をしたという事実は、私は必ずしもアメリカのいわゆる真意をあらわしていないのではないだろうかというような感じも実はいまの答弁らいたすわけでありますが、ともかくといたしまして、こういう事情の中でトヨタ、日産に対しまして通産省は工場進出を説得するという態度を終始とってきておりますが、説得する自信があるのかどうか、大臣にひとつお伺いいたします。
  254. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) アメリカに進出する最後の決断を下すのはあくまでも政府じゃなくて企業側にあるわけでございますので、私ども意見をそれぞれ交換しているということでございまして、最終的にはトヨタなり関係自動車会社が決めると思います。
  255. 森下昭司

    ○森下昭司君 最終的には企業の責任だと言っておみえになりますが、非常にこれはトヨタ、日産にとっては重大問題だと私は見ているわけであります。そういう問題について説得するいわゆる自信と申しますか、あるいは見通しというものがないにもかかわらず、逆に言うと、アメリカ側は工場が出てくれなければ納得しないという立場にあるときに、担当の通産大臣がそのような、あなた任せ、工場任せ、相手任せという態度では、私はいささかこの問題についての政府の態度があいまいではないかというような印象を避けることができ得ないのでありますが、重ねて見解をお尋ねいたします。
  256. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 期待はしておりますけれども、しかし、政府の強制力でどうするという問題でなくて、あくまでも企業の自主判断で最終的に決定するものだというふうに考えております。
  257. 森下昭司

    ○森下昭司君 ちょっと総理にお尋ねいたします。これは率直に言ってアメリカ政府の非公式な意見も表明されているわけでありまして、工場進出ができなければこの問題に一つのピリオドを打つことができ得ないというのが今日の理解ではないかと思うのであります。仮に今度トヨタ、日産がどういう事情下にあろうとも工場進出を、長期的問題はともかくとして、当面政府要請にもかかわらず断った場合、それはいたし方ないと、こういう理解ですか。
  258. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 日本の自動車メーカーの対米投資の問題でございますが、すでに本田技研におきましてはそのことを実行いたしておるわけでございまするし、日産につきましてもトラックであれば考えてもいいという態度を表明されたというようなことも聞いておるわけでございまして、全部が全部断っておるとは私は聞いておりません。けれども、トヨタにしても日産にいたしましても、小型の乗用車につきましてアメリカに工場進出をするというようなことにつきましては非常に自重されておると聞いておりまして、それは通産大臣が仰せになりますように企業が自主的に決めるべき問題でございまして、政府は強制すべき力もございませんし、そういう立場にもないと存じております。ただ、アメリカにそういう空気が、希望が強いということでございますならば、政府が一応日本のメーカーの意見を聞いてみるということは政府立場でやっていいことだと思いますけれども、そのことを強要するというようなことはもってのほかと私は考えております。
  259. 森下昭司

    ○森下昭司君 非常に私は不満足な答弁だと思うのでありますが、将来の問題といたしまして、先般アメリカの議会でいわゆるジョーンズ報告というものが出されております。それは八〇年代の展望といたしまして、コンピューター関係に照準を当てて、アメリカのただ一つの聖域とは言いませんけれども日本にまさっていると言われておりまするこの部門に仮に日本が今後攻勢をかけた場合は、アメリカの世論というものは自動車以上にもう沸騰するであろうというような可能性を持つことを実は報告いたしているわけであります。大平総理大臣は昨年の二月、日本における外国人記者クラブの昼食会で訪米問題に触れられまして、経済問題が政治問題に転化されるようなことは絶対に避けねばならない、日米間では経済の構造、文化の形態が異なっているので、絶えず問題が起きても不思議ではないなどと語られましたが、この考え方はいまでも変わっておりませんか。
  260. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 変わっておりません。
  261. 森下昭司

    ○森下昭司君 この十日の委員会で総理は、防衛問題と経済摩擦問題の質問に対しまして、情緒的には関連があるというふうに答弁を実はされておるわけでありまして、総理の頭の中には情緒的には経済問題と政治問題とは関係があるので別々に絶対に経済問題を政治問題に転化させるなというような気持ちだけではないというふうに私は理解をいたしておりますが、その点はどうですか。
  262. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私がどう思おうと、この情緒的な問題は両者の間に関連がないとは言えぬと思っておりまするけれども、それはあくまでも情緒的な問題としてとらえなければならぬと。経済の問題は経済の問題として片づけて政治の問題に転化しないように心がけていくのが私の任務であろうと思っております。
  263. 森下昭司

    ○森下昭司君 具体的、現実的に問題ごとにやはり批判し、指摘すべきものがあったら指摘をいたしたいと思うのでありますが、一応私は総理大臣の訪米に関する経済問題はこれにて終わらせていただきます。  それでは、名古屋の新幹線問題の訴訟問題を通じまして若干お尋ねをいたしたいと思います。  この訴訟は、昭和四十九年の三月三十日に名古屋地裁に五百有余名の住民から国鉄を相手取って出された訴訟であります。  内容は、新幹線列車の走行によって発生する騒音、振動を、たとえば騒音は昼間六十五ホン程度に、あるいは早朝、夜間は五十五ホン程度に、振動は毎秒〇・三ミリメートル程度に抑えるべきであるということを主体にいたしておるのでありますが、私は新幹線の公害問題を通じましてこのような訴訟問題に発展をしたことは非常に遺憾なことである、かように実は考えているわけでありますが、このような状態を招いた点について高木国鉄総裁はどのようなお考えを持っているのか、お尋ねいたします。
  264. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 地域の住民の方々に騒音あるいは振動ということで日夜御迷惑を及ぼしておるという点については、まことに申しわけないことと思っております。何分、昭和三十九年に工事が完成し開業いたしたという状況でございますので、当時の技術といたしましてはいろいろ工夫をしたものと想像をいたすわけでございますが、その後、社会一般の環境問題に対する評価も変わってきておりますし、環境基準も定められるようになりましたし、その環境基準に沿うように最大限の努力はいたしてきておりますけれども、いろいろ技術的な問題もあり、また初めての経験でもありまして、まだ十分目的の水準まで達しておりません。また、残念ながら、不本意ながら訴訟ということで受けて立たざるを得なくなったわけでございまして、そういう意味におきましても、いろいろと関係の方々、沿道の方々に対して御迷惑をおかけしているということを非常に申しわけないというふうに思っております。
  265. 森下昭司

    ○森下昭司君 しかし、この新幹線の公害問題が発生いたしましてから今日まで少なくとも十数年を経過いたしているわけであります。その間残念なことに関係住民の再三の要望にもかかわらず歴代国鉄総裁は一度も関係住民にお会いになっていないという事実がございますが、こういう点について、このような行政姿勢が妥当だとお考えかどうか、お尋ねいたします。
  266. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 古いことはよくわかりませんが、私がいまの職をいただきましてからは、残念ながら訴訟で争う、法廷で争うというような事態にすでになっておりましたので、法廷外でお目にかかっていろいろ御相談するというような雰囲気はなくなっておったわけでございます。最近裁判もほぼ終わりに近づきまして、後は判決を待つばかりというのが現状でございます。公式ではございませんが、何かそういう動きがある、おまえ会ってやったらどうだというような話がちらちらと参るわけでございますが、もうあと一月か二月か三月かという間に判決がおりるばかりで、訴訟手続は全部終わっておるという段階でございますので、今日ただいまは余り適当ではないかなと、いま私はそう思っております。
  267. 森下昭司

    ○森下昭司君 これは認識の相違もございますが、この長期的裁判の結果、いわゆる裁判を提起した人々の中でも国鉄側と話し合いを希望している人があると伝えられているわけであります。そういう状況の中におきまして、ただ結審して判決を受ける段階だからこれを避けるべきではないかというようなことは、今日の私は国民との対話を通じ、あるいはむしろ公害を起こした国鉄と被害を受けた住民との間における対話を通じまして、さらに積極的にいわゆる本問題の解決を図るという姿勢が国鉄当局にあっていいのではないか、かようにまた思うわけでありまして、重ねて総裁に、いわゆる将来に向かってどういう態度をおとりになるのか、お尋ねいたします。
  268. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 基本的には関係の方々が私に会いましょうとおっしゃってくださればお会いすること、何も私の方からいわば逃げるというか、忌避するというか、そういうことであってはならないわけでございます。ただ、いまの段階ではまだ正規にぜひこういう形で会おうじゃないかというお申し出があるわけではございませんので、いろいろな方からどんなふうかなという程度にお話を承っていることでございまして、やはり何分残念でありますけれども、法廷で争ってきたという関係もありますので、私は、どうもいまの段階はちょっとまずいのじゃないかというふうに、先ほども申しましたように考えているわけでございますが、基本的にはお会いをしていろいろお話をすることはむしろ結構だというのが基本的なことでございまして、もうしばらく様子を見ながらうまくやってまいりたいというふうに思います。
  269. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、多少認識の違いがあると思いますが、そのことは別にいたしまして、適当な機会にぜひひとつ住民代表と会っていただきたいことを希望いたしておきたいと存じます。  ここで、騒音問題についてお尋ねをいたしますが、これは昭和五十年の七月の二十九日に環境基準が公害対策基本法第九条に基づいて実は告示をされております。その告示をされました中で、当面八十五ホン、八十ホン以上の地域ではいわゆる達成目標期間をそれぞれ定めまして、言うならば防音工事を推進をするということになっているのでありますが、国鉄当局の工事が進捗せず、ために、五十二年八月十日付で環境庁大気保全局長から運輸省鉄道監督局長あてにまことに遺憾であるという趣旨の注意文書が実は出されているわけであります。そこで、現在のいわゆる環境基準に告示された、言うならば達成目標期間内における状況、それから八十五ホン、八十ホンについて当面いつまでにおやりになる計画があるのか、明らかにしていただきたいと存じます。
  270. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 環境庁からお指図を受けました期間までに十分対策を完了することができなかったことは、まことに申しわけありません。ただ、なかなか音の問題というのはややこしいことでございまして、レールと車輪との摩擦から発するものであるとか、あるいは架線とパンタグラフとの摩擦から出るものであるとか、それから風との関係で出るものとか、いろいろあるわけでございますけれども、その相互関係がどうかというようなことの研究に大変時間がかかってしまいました。やっとそれを見つけ出して対策を練ってまいりました。現在全線にわたりまして、平均的騒音値は指図を受けました八十ホン程度にはなりました。これに対する対策は一昨年度末にほぼ完了いたしました。約五百億円の経費を投じまして対策をとったわけでございます。しかし、それをやりましても、なお八十ホン以上の区域が残っております。この防止対策を講じなければなりませんが、その対象の家数は全数で一万五千戸ということになっております。そこで、この一万五千戸についていま対策をとっておるところでございまして、今月末までには一万一千戸の対策が終わります。したがって、あと残りは四千戸分でございますが、四千戸分は、ごく一部の特殊事情のものを除きまして五十五年度中に完了する手順がついたところでございました。お約束のというか、お指図を受けました日にちまでには完了いたしませんで申しわけございませんでしたが、いまのところ、そういうふうに進行をいたしております。
  271. 森下昭司

    ○森下昭司君 それでは、七十五ホンを超えて八十ホン未満とか、七十ホンを超えて七十五ホン未満とか、これらの点についてはどういうふうになっていますか。
  272. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 恐縮ですが、私自身つまびらかでございませんので、担当理事に答弁をいたさせます。
  273. 半谷哲夫

    説明員(半谷哲夫君) 八十ホン対策は、先ほど御説明いたしましたように進めているわけでございますが、八十ホン以下にするということになりますと、いろいろ技術的な面で検討することがたくさんございます。それで、いま東北新幹線の工事の一部できました小山で試験線をつくりまして、総合試験線ということで種々試験を続けております。ここで騒音対策につきましての、いろんな擁壁類等の試作品も入れまして、それに対します効果というものをいま測定をし、その成果をつかみつつあるという状況でございます。この結果を見まして、今後八十ホン以下の対策を考えるということになるわけでございますが、ただいままでのところ八十ホンに音源対策によってするという見込みはつけておりますけれども、これをさらに八十ホンを下回る効果を得るというところまでの確信を得ていないというのが実情でございます。なお、今後研究を続けまして、その成果を反映さしていきたいと考えておりますけれども、どうしてもできない場合には周辺対策ということを考えざるを得ないというふうに考えております。
  274. 森下昭司

    ○森下昭司君 まことに驚きますね。この環境庁の環境基準告示は八十ホン未満から七十五ホンに至る地域については、まず住居密集地域は七年以内、商店街等の商業地域については十年以内という、言うならば目標達成期間を定めているんです。でありまするから、イ区域は五十二年の告示からまいりますれば、少なくとも六十年度末までには完成をしなければなりませんのに、発生源対策で八十ホン以下に下げることは非常に技術的にむずかしい。それから、できなければ防音対策だということになりますと、いつになったらこれできるのですか。
  275. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) ただいま担当常務理事が御説明申し上げましたように、小山に東北新幹線ができますまでの間、設備はできましたが、まだ全体がつながっていないという部分がございますので、ここで現実に車を走らせまして、そしていろいろな設備をいたしてみまして、それぞれがどうなるかやってみたわけでございますが、約一年余りやってみましたが、残念ながら一年以内の研究の結果では、八十ホンから七十五ホンに下げる、あるいはさらにそれを下回るようにするというのは、音を出す原因の方に対する対策だけでは、なかなかどうもうまくいかないという結論になってまいりました。そこで、いま申しておりますように、何とか音を小さくする工夫を最大限にやりました後はやはり皆さんの家屋に対して防音工事をするというふうなことをやらしていただくことで対策をとる以外にない、音のもとで抑えるのには限度があるということになってまいりましたので、いま沿線のお宅の防音工をだんだん進めてまいるというふうにやることによってそういう対策に徐々に入ってまいりたいと思いますが、それにしてもまだ八十ホン対策の方が終わっていないものですから、まず音の大きい方を何とか五十五年度中に九九%まで処理をいたしまして、その間七十五ホン対策の研究もいたしまして、五十六年度ぐらいからぽつぽつ対策が立ちましたならば関係の地域の方とお話をしながら具体的に取り進めてまいりたい。このためには、実は関係市町村の御協力がないといけませんので、市町村の方もなかなかこの仕事では、関係のところでは手間がかかって大変御迷惑をかけております。順を追うてやらしていただきたいというふうに思っております。
  276. 森下昭司

    ○森下昭司君 運輸大臣にお尋ねいたしますが、こういう環境基準告示を無視したような国鉄の態度をどう思われますか。
  277. 地崎宇三郎

    国務大臣地崎宇三郎君) 飛行機でもそうでありますが、新幹線も非常なスピードで走るものでございますから、どうしても音の出ることを完全に防ぐということは技術的に不可能だと思います。したがいまして、地元住民の方々の御理解を得ながら、いま総裁が説明を申し上げましたように、防音対策等を積極的に進めて御納得をいただかなければならないと存じております。
  278. 森下昭司

    ○森下昭司君 いや、その考え方はわかるんですよ。しかし、目標達成期間というものは定められているんです。その目標達成期間内では、いまの国鉄総裁の答弁からは完全にでき得ないということは明確になっているんです。こういう態度をどう思うかと聞いているんです。
  279. 地崎宇三郎

    国務大臣地崎宇三郎君) ただいま総裁から御説明申し上げましたように、誠意をもって東北新幹線の建設場所においていろいろ検討して、できるだけ御期待に沿うように努力しているようでございますので、十分御理解をいただきたいと存じます。
  280. 森下昭司

    ○森下昭司君 環境庁長官にお尋ねいたしますが、せっかく出された環境基準告示は事実上空文化しておる、この事実について長官はどうお考えになりますか。
  281. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げます。  今後も速やかに対策が進められるように国鉄に対しましても強く要請をいたしてまいります。
  282. 森下昭司

    ○森下昭司君 まことに私は心もとない御答弁だと思います。  私は、これは大蔵大臣にお尋ねいたしますが、予算的裏づけについては、十分今後この環境基準告示に見合うように国鉄が防音等の工事を行うについて予算を配慮していただけるかどうか、大臣のひとつ所見を聞きたいと思います。
  283. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは予算の問題につきまして私具体的にどういうことか知りませんので、ここでお答えするわけにはいきませんが、国鉄当局と十分協議をいたします。
  284. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) この種の予算は、私どもが財政投融資その他でお金を借りておりまして、その工事費の中で処理をいたしております。お金がないからおくれているわけではございませんので、ほかの工事を後回しにしましてもこの種のものは最優先にやることにいたしております。大変遅い、ゆっくりやっているようで恐縮でございますが、技術陣は最大限の努力をして今日まで取り組んでまいりました。何しろ初めてのことでございますので、ああも考え、こうも考えしておったわけでございまして、これから決してそんなに遅くなるということなしに取り組んでまいるということをお約束できると思っております。
  285. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、環境基準の中で、実は振動というものが配慮をされていないわけであります。非常にこれは振動が激しくて、大体列車が通るたびに震度二ぐらいのいわゆる振動が伝えられているわけであります。法律の中で、公害基本法は第十条の二項におきまして、振動の点についても公害基本法の中で明記してあります。しかし、残念なことに、九条の環境基準の中に振動についての規定がない。さらに振動規制法の中にも新幹線による振動を対象とする条項がない。私は、これは結果的にまいりますと、法律的に不備があるのではないかと思うのでありますが、環境庁長官のお考えをお尋ねいたしたいと存じます。
  286. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、典型七公害の一つである振動につきましては、公害対策基本法第九条におきまして環境基準を定めるものといたしておらないような次第でございます。  そこで、先ほど来もいろいろお話がございましたとおり、新幹線鉄道の振動につきましては、環境庁設置法第六条第三項の規定に基づきまして昭和五十一年三月、運輸大臣あての勧告において指針を明らかにしているところでございまして、今後ともこれが達成に向けて対策を促進するよう国鉄等に対しまして強く働きかけてまいる所存でございます。
  287. 森下昭司

    ○森下昭司君 私から法律の専門家である皆さんに申し上げる必要はないと思うのでありますが、勧告と環境基準の告示と、これは法律的な非常な違いのあることは言をまちません。私はやはり公害対策基本法の十条で振動というものを明確に、言うならば、いわゆる対象にしておきながらその新幹線振動について規制する法律がないというのは、私は法律の妥当性を欠く問題ではないかと思うのでありまして、早急に法改正を行う必要がある、かように私は考えているのでありますが、総理の御見解をちょっとお伺いしたいと思うんです。
  288. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  振動についての環境基準を設定することにつきましては、対策技術の進歩等の知見の集積を図りつつ、環境基準設定の可能性につきまして今後検討いたしてまいりたいと思います。
  289. 森下昭司

    ○森下昭司君 それで、総裁にひとつ端的にお伺いいたしますが、防音だとか、防振だとか、いろんなことを言っておりますけれども結論は、防ぐ一つの方法といたしましては、先ほども発生源対策で騒音は八十ホン以下にすることは技術的に不可能に近いというお話があったのでありますが、結局スピードをスローダウンする以外に当面の解決方法がないのではないかと思いますが、このスピードのスローダウンについての御見解を伺いたいんです。
  290. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 新幹線のスピードダウンにつきましては、先ほどお触れになりました名古屋の新幹線騒音訴訟におきましてもスピードダウンをすべきだという、それによって六十五ホン程度に下げるべきだということが訴訟の争点になっておるわけでございますが、確かに地域住民のお立場で、さらに音が低い方が好ましい、そうすべきだ、また振動が少ないようにすべきだというのはわかりますが、現在の新幹線はもうすでにできてしまっており、走っておるわけでございまして、今後どういうふうにしていくかということであればいろいろ工夫の余地もないわけではないと思うのでございますけれども、現行の東海道、山陽新幹線はそういう規格でつくってしまいましたものですから、スピードを落とすと言われましても、そうなると東京−大阪間、大変な時間がかかるようになりまして、新幹線そのものの存在の意味がなくなるという関係になるのではないかというふうに考えます。御利用いただく方のお立場と、それからその地域にいらっしゃる方のお立場がまともにこれはぶつかる問題なのでございますが、私どもとしては、もうすでに東京−大阪間三時間十分というのは国民の皆様の間に定着している一つの概念といいますか、そういうものとして新幹線をごらんいただいておりますので、これが四時間も五時間もかかるということではぐあいが悪い。そうかといって、名古屋だけをスピードダウンというわけにもまいらないわけでございます。ほかにも多少程度の差こそあれ、各地域とも御迷惑がかかっておりますので、このスピードダウンについては、私どもは、何とか地域の方に御理解をいただいて、そういうことでなしにできる解決方法を一生懸命とることによってお許しを願いたいというふうに考えているわけでございます。
  291. 森下昭司

    ○森下昭司君 現在東京−新横浜間は事実上二十五キロ間ですが、七十ないし百十キロのスピードで走っているわけであります。  それから昭和五十年五月二十三日、衆議院の公害対策特別委員会で当時の藤井総裁はこの問題に触れまして、「新幹線のスピードダウン、これはいかなる手を打っても騒音が何とかということになれば、これは最後の手であろうと思います」と、スピードダウンの問題について否定しておみえにならないんです。しかも、あなた方小山で研究されても、八十ホン以下に発生源について手を打つことはでき得ないだろうと言っている。とすれば、もうスピードダウン以外にないじゃないですか。この見解をどう思われますか。
  292. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 前段の東京−新横浜間の問題につきましては、カーブが非常に多いものでございますから、現実には騒音問題あるいは振動問題とは別に、設備的に百十キロまでしかスピードを上げられない構造になっておるわけでございます。その他の地域でも多少そういうところがありますが、大部分のところは百五十なり二百十なり出るだけのカーブの構造になっております。  そこで、いま前総裁がそういう御答弁をしておること、私も承知はいたしております。そう御答弁は申したものの、われわれとしてはあくまで何とか別の方法で対処いたしたいということで、先ほど来申しておりますようにかなり大ぜいの技術屋をその問題に投入し、かつまた、かなりお金も投入して対策をとってきましたけれども、残念ながら一〇〇%事ができないということがだんだんわかってきたわけでございまして、さりとてこの際それではスピードを落とすかということになりますと、なかなかやはり現実としてはその地域だけの問題として考えられませんので、他の地域でも同種の問題が内在をいたしておりますので、そうなると、ちょっと新幹線という概念になじまないような所要時間になってまいりますから、私は藤井総裁がそういうことをかつて答弁されたことを承知はいたしておりますが、現段階では新幹線のスピードダウンということは考えるべきでないんではないかと。それよりも、音源対策はだめであるとしましても、いろいろな防振工事をやるとか何かということを通じて、なお努力を続けていくということで御理解を得たいものというふうに考えております。
  293. 森下昭司

    ○森下昭司君 時間がありませんので、また別の機会に譲りたいと思います。私は率直に申し上げまして五分程度のおくれ、これはもう私自身が名古屋 東京間をよく通っておりますけれども、最近の汽車は五分間程度の遅延は常識的になっているというのが現実ではないかと思うんであります。そういうような中で、私はそういう処置をとることが果たして公害問題、人の生命とかいうような問題と関連いたしまして、国鉄が至上命令である、あるいはそういった規格である、あるいは通念に合しないというような考え方だけで果たして妥当かどうか、若干の疑問を持つものであります。私ここに「静かさへの斗い」というパンフレットを持ってきております。その中で一人の方が、父は「静かな所で死にたい」と申しておった。「告別式の時にも枢が振動でゆれ動き、遠くから来てくれた人にも「おじいさんも死んでからもやかましいことだネ……」と云われ、」た。あるいはまた「老人を苦しめる新幹線」、こう言って一日じゅうもう夜遅くまで眠れない。その上保線工事で夜中まで眠れないというような文章がたくさん実はございまして、被害住民の悲惨な私は実情というものが浮き彫りにされていると思うのであります。こういう点でやはり同じような問題がたくさん全国でも出てきておりまするが、何も被害住民は訴訟に持ち込もうなんという気持ちは毛頭なかったのではないだろうか。事前に対話を通じ、あるいは総裁自身がお会いになってひざ詰め談判をするというようなことになりますれば、こういった事態を避け、長期裁判で苦しむというようなことが避け得られたのではないだろうかという感じが率直にいたします。  そこで、最後に総理に、こういった問題についてどうごらんになっているのか、御所見があれば伺いたいと存じます。
  294. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 新幹線の沿線住民の環境保全につきましては、政府として十分配慮していかなければいかぬと考えます。国鉄におきましても、政府の示しました環境基準に沿って最善を尽くすよう指導してまいらなければいかぬと思っております。
  295. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に、大蔵大臣にお伺いいたしますが、大口融資規制の問題についてであります。  最近、伝えられるところによりますと、三井物産に対しまする三井銀行融資は、この規制基準を本年の期限でありまする三月三十一日までに守ることができ得ないというような実情下でありますが、この問題について大蔵省はどう対処なさるのか、お伺いいたします。
  296. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 銀行の大口融資につきましては金融資産の危険分散と資金の広く適正な配分という見地から、かねてからその改善のための指導を行ってきておるわけであります。  大口融資規制の基準を超過している貸し出し先は、本規則実施時期——すなわち四十九年の十二月二十五日であります——に九十九件で六十二社ありましたものが五十四年九月末には三十四件十四社まで解消してきております。着実にその効果が上がってきておると認められるところであります。また、現在五十五年三月三十一日の経過期間終了時まで極力大口融資の解消を図るよう指導してきておるところであります。  お尋ねの三井銀行の三井物産に対する融資につきましては、本規制実施時に自己資本の約八〇%に達しておりましたものが、五十四年九月末現在におきましては約四〇%に低下してきております。しかし、まだ基準が二〇%でございますので、それには達しておりません。同行がさらに努力を傾けまして大口融資の解消を図ることをいま期待しておるところであります。もし経過期間までに解消されないということになりましたら、これは通達違反と、こういうことになるわけであります。そうなると、解消を図った他の銀行との均衡上きわめて遺憾な点が出てまいりますので、いまどうするとは申しませんが、その時点で適切な措置をとってまいりたいと、このように考えております。
  297. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に、公正取引委員長にお尋ねをいたしますが、現在のいわゆる独占的状態の規制につきましては、製造業を中心にいたしまして先般二十六業種から十九業種に変更になったというような点が報告をされておりますが、このいわゆる製造業のみならず、私は非製造業に対しましても、言うならば独占的状態にあるものが多数あるのではないだろうか。つい先日の委員会で委員長は、たとえば流通業におきましてはという前提で十数業種調査をいたしておるというような御答弁があったわけでありますが、それ以外にどういったものがいま公取として調査の対象にしているのか、その点をひとつ具体的にお尋ねいたしたいと存じます。
  298. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 独占的状態に対するガイドラインは、いまお話がございましたように、当初つくりました昭和五十二年の基準におきましては二十六業種を指定をいたしておったわけでございますが、その後念査をいたしまして一昨年の十二月につくりました基準では十九業種になっておるわけでございます。この業種は、いまお話がございましたように、製造業が中心でございまして、これは従来公正取引委員会が一定の期間を置きまして生産の集中度の調査というものを行っておるわけでございまして、これは製造業における市場集中の状況につきましてはかなり情報の蓄積があるわけでございますが、製造業以外の非造業の分野につきましては、残念ながら十分な情報の蓄積がございません。したがいまして、将来の問題として、いま先生から御指摘がございましたように、製造業以外の分野につきましても独占的状態に該当するような業種があるかもしれないと、そういう一つの予感を持っておるわけでございまして、そういう点で従来作業をいたしております生産の集中度の調査の中でも製造業以外の業種につきましても対象の調査はいたしておるわけでございますが、現在実施をいたしております昭和五十二年、五十三年の生産の集中度の調査におきましては、新しく総合広告業、大規模小売業、書籍取り次ぎ業、電子計算機賃貸業、こういうものを加えまして、これの市場における集中度の調査をいたしておるわけでございまして、こういう調査を積み重ねてまいりますことによりまして製造業以外の分野につきましても独占的状態に対する監視の対象が将来生じてまいるというふうに考えておるわけでございます。
  299. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に、図書の再販規制問題につきまして、いま公正取引委員会日本書店組合連合会とで、いわば公正競争規約の話し合いが行われているようでありますが、ただ景品つき販売をどうするかという点について意見の合意を見ていないというふうに聞いておりますが、この点についてはどのような点が問題になっているのか、またいつまでにこれを決めようとなさっているのか、その点をお伺いいたします。
  300. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 書籍の出版問題につきましては一年数カ月間時間をかけまして出版界と折衝いたしてまいったわけでございますが、折衝の結果はほぼ大詰めになりつつあるわけでございますが、いまおっしゃいましたような景品つき販売についての景品の制限の問題について、出版界としては公正競争規約をつくりたいと、こういう御要望があることは承知をいたしておるわけでございます。ただ、問題はその再販契約の是正に関連しての問題でございますから、再販契約と公正競争規約とは本来別個の問題でございます。問題点としましては、この景品の規制を行う、あるいは景品につきまして公正競争規約をつくるということは、実は景品が行き過ぎて過当競争があります場合に、お互いに自主的に景品をつけることについて制限をしようということでございますけれども、書籍の場合は、現在は再販制度でございますから、値引きはもちろんのこと、景品すら全くつけていないというのが実情でございまして、いわば景品の過少の状態に対しましてさらに制約をつけるということの当否の問題もございます。したがいまして、基本的に申しますと、公正競争規約をつくることの妥当性を含めて現在は検討いたしておるところでございまして、まだ規約の内容等につきまして折衝するところまでまいっておりません。ただ、再販契約の是正につきまして、おおむね評価すべき状態になっておるわけでございますから、公正競争規約の設定につきましてもよく相談をしまして、できるだけ出さす方向で考えたいというふうに考えております。
  301. 森下昭司

    ○森下昭司君 四十年代の後半から書店の大型化並びに全国的なチェーン化というものが促進されております。いわゆる大書店が現出をいたしております。現に紀伊国屋は全国主要な都市に少なくとも二十数店の店を持っているわけであります。したがって、先ほど御指摘になりましたように、また、この大手の取り次ぎ業も日販と東販の二つがほとんど握っているというような現状からいたしまして、こういった取り次ぎ大手が大書店に傾斜をするというような傾向が最近顕著に見られるわけでありまして、そうなりますと、中小の小売書店を言うならば守っていくというようなことになりますれば、この間の公取の調査の結果からいたしましても、定価等にいまの再販売制度が何ら影響しているものではないという結論が出ているのでありまして、言うならば法定再販制度としてさらにこの書店の問題については考えていく必要があると思うのでありますが、将来的検討についてどうお考えになっているのか、お尋ねいたします。
  302. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 書籍の取り次ぎ業は、御指摘がございましたように、二大取次店によって相当の分野が占められておるわけでございまして、その結果としまして、いわゆるパターン配本とか、あるいはコンピューター配本というような消費者の需要なり、あるいは書店の希望というものと関係ない配本が行われる傾向があるわけでございまして、この点につきましては流通改善の問題としてさらに将来取り組んでまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  ただ、いまお話がございましたような再販制度と中小書店との経営の問題でございますが、再販制度の当否を考えます場合には、あらゆる角度からこの問題を取り上げる必要があるわけでございまして、おっしゃいますような中小書店の問題も一つの角度ではございますが、最終的には消費者が主権を持つという角度からこの問題は検討すべきであるというふうに考えておるわけでございまして、現時点におきまして法定再販制度をどうするかということにつきまして方針を決めておるわけではございませんが、これは独占禁止法に対する重大な適用除外領域でございますから、これは常に公正取引委員会としては検討を進めるということであるわけでございまして、そういう点から申しまして常在検討の対象にいたしておるところでございます。
  303. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に、厚生大臣に年金問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  この年金制度のあり方につきましては、たとえば三木さんの総理大臣当時に、生涯設計計画でありますとか、その後社会保障制度審議会あるいは年金制度基本構想懇談会、あるいは中期労働政策懇談会などなどにおきましてそれぞれの提言が行われているわけであります。  特に最近、昨年の十月に社会保障制度審議会の建議で「高齢者の就業と社会保険年金」などというものが出されているわけであります。しかし、このいわゆる建議では、六十歳から六十四歳を主体といたしまして稼働人口とみなして再雇用ないし雇用延長なりをとにかく考えるべきであるということを強く主張しているわけであります。これは雇用政策として担うべきことを主張しておみえになるわけでありますが、これは一方的にこれを期待するのみでありまして、事実上こういった提言についてどう御対応をなさるお考え方があるのか、まず厚生大臣の御見解を聞きたいと思います。
  304. 野呂恭一

    国務大臣(野呂恭一君) 御指摘のように、社会保障制度審議会は、高齢者の就業につきまして、「わが国の老齢人口のうち、六十歳〜六十四歳層を主として稼働人口の側に立つと考えるか」あるいは「被扶養人口と考えるかは、将来のわが国経済社会の存立を左右するキイポイント」になるのではないか、こういうふうに述べておるわけでございます。御指摘のように、六十歳から六十五歳の人につきましては、おおむね健康状態は良好であると私も考えます。労働意欲もきわめて旺盛であると言われておるわけでございます。これらの人の多くは職業生活を続けていきたいという希望を持っておると考えるのでございます。  特に、わが国は今後急速な人口の高齢化が進むことが確実に考えられるわけでございます。したがって、高齢者と扶養する者との比率は急速に大きな変化を遂げていくわけでございます。将来の働く世代の負担はそれがために非常に重くなっていくということが予想されるわけでございます。こういうようなことから、今後働く意思と能力のある高齢者に生産の場におきまして御活躍をいただけるような条件を整備することがこれからの高齢化社会の活力を維持するために最も重要な課題であると考えております。
  305. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 関連質疑を許します。安恒良一君。
  306. 安恒良一

    ○安恒良一君 いま先公害問題で政府との間にやりとりがありましたが、私はその関連のスモンの解決問題についてお聞きをしたいと思いますが、御承知のように、昨年の九月十五日にスモンの早期全面解決を目指す確認書が関係者で結ばれました。自来スモン問題は解決の方に向かっていると思いますが、前橋本厚生大臣との間に年内の解決を目指すということが実現できなかった点を遺憾の意を表すると同時に、早急に解決に進めてもらいたいと思います。  そこで、なぜ解決をしてないかというのは二つあるわけでありまして、第一は、いわゆる既判決者四百九十七名の和解がおくれている、第二番目には、いわゆる投薬証明のない方々との和解がおくれている、これが大きい原因であります。  そこで、私はその中の投薬証明のない方の扱いについてお聞きしたいのでありますが、御承知のように、昨年の九月六日の社会労働委員会で、この点について橋本厚生大臣は、投薬証明のない患者についても投薬証明のある患者と金額、時期とも差別することなく平等に救済しますということを私の質問答弁をされました。その方法は東京地裁の判断をもって厚生大臣としての方針を決めたいと言われました。また、現野呂厚生大臣は、本年の二月十八日衆議院予算委員会で、わが党の大原委員質問に対しまして、東京地裁の判断が出ましたならば十二分に尊重いたして国の方針決定したい、こういうふうに答弁をされております。  そこで、その後、今月の七日に東京地方裁判所民事第三十四部は、当事者双方を出頭させまして、第一といたしまして、和解手続において製薬会社が薬物関連性がないとして争って現在まで和解が成立していない百十九名の患者の問題といわゆる投薬証明がない患者の取り扱い問題について裁判所の所見を発表いたしました。私は、この裁判所の所見はスモンの原告、弁護団、さらに私どもが国政の場において追及してまいりました、主張してまいりましたことが認められましたところの当然の内容であるというふうに考えます。  そこでお聞きしたいのでありますが、この東京地裁の所見について国はどのように対処されるのか、厚生大臣の御見解を承りたいと思います。
  307. 野呂恭一

    国務大臣(野呂恭一君) スモン患者の救済につきましては、国は関係の製薬会社とともに大きな責任を持つものでございます。この問題の解決は厚生省にとりましても当面する最大課題の一つであると考えておるわけでございます。御指摘の既判決者につきましては各高等裁判所ごとにその解決に努めておるわけでございます。今後ともこれらの早期決着に向けて精力的に努力を続けてまいる所存でございます。  なお、投薬証明のないスモン患者の取り扱いについてでございますが、厚生省といたしましては従来から御薬会社とともにスモン問題の誠意ある解決を基本姿勢といたしておるのでございます。今回の東京地裁の所見は厚生省のこの基本姿勢にも合致するものと評価をいたしておるのでございます。この裁判所の判断を十二分に尊重いたしまして、速やかに問題の解決に努力いたしてまいりたいと考えております。
  308. 安恒良一

    ○安恒良一君 ただいま厚生大臣から、投薬証明のない者については裁判所の意見を十二分に尊重して解決するという明確な答弁がありました。事財政支出に関しますので、ひとつ大蔵大臣の協力が必要だと思いますから、大蔵大臣の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  309. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 昨日の予算委員会終了後に大蔵省としての方針決定をいたしました。東京地裁の所見につきましては大蔵省も厚生省と同様の評価をしております。したがって、厚生省と相談の上、裁判所の判断を十分に尊重して問題の解決に当たってまいりたい、このように考えております。
  310. 安恒良一

    ○安恒良一君 両大臣の見解が明らかになりましたが、そこで、裁判所の判断が示されました以上、厚生大臣、国はその行政責任を自覚をいたしまして、製薬三社がその所見を受け入れられるように最善の努力を尽くすべきだと考えますが、どのように対処されますか。特に第一項は二十一日までに回答となっておりますので、速やかに厚生大臣のとられる処置についてお考えを聞かしてください。
  311. 野呂恭一

    国務大臣(野呂恭一君) 製薬会社に対しましては従来から国とともに患者救済に当たるように強く要請してきたところでございますが、今般裁判所の判断が示れたわけでございますから、製薬会社もこの判断を十二分に尊重し、国とともに問題の解決に当たるように厚生大臣といたしましても誠心誠意説得に当たる決意でございます。
  312. 安恒良一

    ○安恒良一君 厚生大臣が誠心誠意当たられるそうですが、万が一製薬会社が聞かない場合には製薬会社自体に国会に出てもらうことがあり得ると私は考えますので、よろしくお願いをしたいと思います。  そこで、最後に総理にお聞きをします。スモン患者が発病以来十数年、訴訟開始以来八年、そして去年の確認書ができましてすでに六カ月がたちました。いま厚生大臣、大蔵大臣と私の一問一答の中で全面的な解決の条件はすべて整ったということを総理も御理解をいただいたと思います。  そこで、国の最高責任者としてスモン問題の早期全面的解決のための総理の御決意のほどを伺いたいと思います。
  313. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国といたしましては、これまでもスモン患者の早期救済のために努力をしてまいったわけでございますけれども、今後も誠意を持ってその早期かつ全面的な解決のために努力してまいるつもりです。
  314. 安恒良一

    ○安恒良一君 終わります。
  315. 森下昭司

    ○森下昭司君 それでは分野関係につきまして、せっかくの機会ですから、二、三お尋ねをしておきます。  一つは、最近、法施行以来、最近まで起きました件数の中で、ほとんどが自主的に地域の県知事なり、あるいは市長なりが窓口になって解決をしている。この事例から、まず第一に都道府県知事に調整の権限を委任する考えはないのか。  第二は、言うならば中小企業と大企業の定義の問題、大企業の定義の見直しをする必要がある。具体的には、たとえば豆腐はこれは製造業に入るわけであります。しかし、製造業になれば資本金一億円以内、従業員三百人以内が中小企業の範囲——一体豆腐の業界の実態からいたしまして、五千万、六千万の企業すらないのが私は実態ではないかと思うのであります。したがって、中小企業の定義の仕方について一律に規定することには問題がある。いわば業態、業種ごとに実態に応じていわゆる大企業の定義をすべきだと思うが、この二点について大臣の御見解をお伺いをし、私の質問を終わります。
  316. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 森下君、時間が来ました。
  317. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 分調法の制定の経緯から御説明を申し上げます。  この調査、調整の権限は主務大臣にございますが、実はこれは大企業が広域的に分野の紛争を惹起するような行為を起こすということが多いわけでございますので、そういうことになっております。ただ、この業種、業態に応じて紛争も多様でございます。したがって、調整をやる場合にはその特性に応じた調整をやらなければいけないということがございますので、実は問題が地域に局限した案件につきましては、直ちに都道府県知事に連絡をいたしましてその意見を尊重しながら調整を図っておくというのが現在の姿でございます。ただ、それは立法の過程でございましたが、これを今後どうするかという問題につきましては、われわれといたしましても、常時この法律の見直しといいますか、検討をやっておりますので、その検討の中で考えていきたいと思っております。  それからこの定義の問題でございますが、これについても立法当初いろいろ意見があったようでございます。ただ、大企業と中小企業の事業活動の調整が必要だというのは、やはり両者の間に競争力の格差があるからであろう。そうすると、競争力格差というのをどういうふうに決めるかということがいろいろ議論されたわけでございますが、その結果として、やはり中小企業基本法を初めとした一般的な定義にのっとることが妥当であろうということでこういうふうになっておるわけでございます。こういうことでございますが、こういう点につきまして、先ほどの問題も含めて常時われわれはこの運用についてウォッチをしておりますので、今後もまたこういう問題を検討点といたしまして、今後の法施行を円滑にいくように考えていきたいと考えております。
  318. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 以上で森下君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  319. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 次に、志村愛子君の総括質疑を行います。志村君。(拍手)    〔委員長退席、理事安田隆明君着席〕
  320. 志村愛子

    志村愛子君 総理初め閣僚、そして御出席の皆様方、連日お疲れさまでございます。本当にありがとうございます。  私は、本日は婦人問題、福祉問題北方領土問題、物価問題、教育問題、以上の問題につきまして質問をさせていただきます。  質問に入ります前に、冒頭このお席を拝借いたしまして、まず心から御礼を申し上げたいと思います。それは、私、昨年の三月、予算委員会で婦人のいろいろの立場の起用をお願い申し上げました。早速にお聞き届けくださいまして、婦人大使の起用を初めその他数々の婦人の場の活用をお認めいただきました。大使は御承知の高橋展子さん、デンマークの大使になられたわけでございますが、大変うれしく思っております。また、長年の懸案でございました妻の相続、さらには女子公務員の採用につきましても改善が進んでおられるようでございます。総理初め関係者の皆様の御苦労に心から感謝と御礼を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございました。  さて、御存じのとおり、ことしは国連婦人十年の中間年、折り返し点でございまして、五年前の世界会議に続き、この七月二回目の世界会議がデンマークのコペンハーゲンで開かれる予定になっております。文字どおり男女の平等、婦人の地位の向上などについて改善状況を見直し、後半への取り組みを決めることになっております。わが国でも五十二年から国内行動計画をつくり取り組んできたわけでございますが、今日までどのように改善されておられるのか、まず総務長官から火ぶたを切っていただきたいと存じます。お願いいたします。
  321. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 志村委員にも第一回のメキシコ大会に顧問として御出席をされましたが、御指摘ありましたように、いよいよことしは国連婦人十年の中間年に当たってまいりました。内外とも婦人問題に対しての取り組みが活発になってきておることは大変うれしいことだと存じております。    〔理事安田隆明君退席、委員長着席〕 政府といたしましては、昭和五十二年の一月に十カ年の婦人施策の基本方向といたしまして国内行動計画を策定をいたしまして、今日まで政策決定参加の促進、家業、家庭における妻の働きの評価、雇用における男女平等などの十一項目の前期重点目標を設定いたしまして、当面の課題として婦人のための施策の実現に鋭意取り組んでおるところでございます。御質疑のありましたように、いよいよことしはデンマークで大会も開かれるということでありますので、私どもといたしましては、前期重点目標を現在すべてにわたって見直しておるところでございます。その中で政策決定の場への婦人の参加の拡大などは、これは目標に対して着実に進んでおると思います。残念でございますが、その中で審議会における婦人の占める比率などは残念ですが目標を達成いたしておりませんが、しかし、昨今新聞をにぎわしておりますように、婦人の皆さんが政策決定の場に参加できるように、公務員等で門口でシャットアウトされておったそれぞれの部門に対しましても門戸を開放いたしまして、五十五年度におきましても、御案内のように、国税専門官あるいは皇宮護衛官というようなものにも試験の受験制限等が撤廃されるようなことになってまいりまして、それぞれの部門でこの目標達成のために懸命の努力をいたしておるところでございます。なお、地方公共団体におきましても、婦人行政実施体制の整備、県レベルの独自の行動計画などを策定をいたしまして、国と相協調いたしまして目標達成のために懸命の努力をいたしておるところでございます。
  322. 志村愛子

    志村愛子君 大変御懇篤なる御説明ありがとう存じました。後に改めてまた重ねて御質問させていただくかと存じますが、とりあえず、十一項目の重点目標の中でも婦人の政策決定参加の促進を最重点に取り組んできたと思うわけでございますが、国の審議会に登用されている婦人委員が四千五百三十七人の委員の中でわずか百八十三人、つまり全体の四%というのは少し少な過ぎるのではないかと思うのでございます。女性の職場進出が全労働者の三分の一を占める今日でございますから、前期目標の一〇%登用はせめて必ず達成していただきたいと強く要望するものでございます。また審議会の中に女性の委員を置いていない審議会が半数以上の百八もあるのでございます。が、全審議会に婦人委員を入れるように総務長官から、これまたさらに関係大臣にも長官よろしくお願いを申し上げてください。そしてまた私からもよろしくお願いを申し上げる次第でございます。  次に、人事院総裁にお尋ねいたしますが、女子公務員の採用につきましては、昨年の予算委員会で私が質問した後、相当改善されているようですが、実際の採用状況などを含めて御報告を伺いたいと存じます。また、最近キャリアウーマンが脚光を浴びているようでございますが、本当はノンキャリアウーマンに問題があるのではないでしょうか。たとえば女子公務員の大半は五等級以下にいるわけでございます。役所に入るとコピーとか書類整理とか単純作業ばかり、定年になっても係長にもなれずに終わってしまう。そこで一方、男子はといいますと、同じノンキャリアでも企画立案などにも参加して課長補佐くらいまでにはなれているわけです。これはやはり差別だと思いますが、どんなものでございましょうか。女子公務員の能力開発、重ねて申し上げますが、能力開発、登用にもっと積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがなものでございましょうか。人事院総裁お願いいたします。
  323. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) お答えをいたします。  試験の問題で国家公務員に女性にも門戸を開放をしなさいということは従来からいろいろ承っております。また国会でも大変御鞭撻を受けた結果でもございますが、各省ともいろいろ御相談をいたしました結果、いまお話にもございましたように、大変この点は門戸の開放がなされてきつつあるのではないかというふうに考えております。本年度におきましてもすでに航空管制官の関係でありますとか、あるいは航空保安大学校その他の職種において試験が門戸開放になりまして、実際に受験者も出てきており、また合格者も出ておるという状況になっております。さらに、来年度におきましても引き続きまして、大変むずかしいことでございましたが、国税専門官でございますとか、あるいは皇宮の護衛官等についても女性に門戸を開放して受験の道を開こうということになってきておるのでありまして、そのこと自体は私たちも大変喜ばしい傾向ではないかというふうに思っております。私から申し上げるのもどうかと思いますが、何と申しましてもやっぱり公務の場におきましては男女の平等ということが最もよく実現されている部面ではないだろうかというふうに考えておるわけでございまして、民間でもこの道に沿っての努力はお願いを申し上げたいという感じは持っておりますし、公務の部面においてもこの点においてはなおさらに努力を続けて、完全なやはり能力主義ということで、男女の性別に関係なく能力のある人はりっぱに登用の道を開いていくということに努力をしていくつもりでございます。  それから第二の点でございますが、いまお話にもございましたようにノンキャリアの女性につきましては、その実態というのは、やはりお話しになりましたように、相当上の方にも上がってまいっておりますけれども、なお指定職その他についてはほとんどございませんですし、課長あたりも少ないという現実の姿がございます。実際上は五等級中心で、六等級あたりが多いということは、これも御指摘のとおりだろうと思います。しかし、これにつきましても、別に女性だからといって区別をしているつもりはございませんので、能力のある人はどんどんやっぱりその能力にふさわしい職につけていくということの努力はいたしたいと思っておりますし、この間から私は国会で申し上げておりますように、将来の問題といたしまして、ノンキャリアの方々に公式にやっぱり門戸を開くという意味で、昇任試験と申しますか、そういうものも積極的にひとつ導入していく努力を続けたいと思っております。その場合には、当然女性にも平等の立場で、平等の条件でその道を開いていくと、そういうことは当然でございまして、将来ともその方向に向かっては最大限の努力をしたい、かように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  324. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  報告によりますと、法務省では刑務官と入国管理官、大蔵省では初級税務官——ただいま、ちょっと来年ではという話が出ましたが、初級税務官、郵政省では郵政関係B、こうした職種では、いまなお採用試験から女子が外されておる現状でございます。こうした職種の関係大臣のお考えを承りたいと思うわけでございますが、また防衛大学、防衛医科大学も女子の受験をまだ認めていただいておりません。昨年の予算委員会では検討をお約束してくださったわけでございますが、この方もいかがなものでございましょうか、進展状況をお聞かせいただければと思うものでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  325. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お尋ねの刑務官及び入国警備官は、従来から女子を相当数選考採用してきたのでありますが、刑務官及び入国警備官の採用試験に女子の受験資格を認めることの可否につきまして、いろいろ検討を重ねてまいりました結果、両試験とも所要の準備期間を置きまして、昭和五十六年度から女子に受験資格を認める方向で、現在関係当局の協力を得て作業を進めておるところであります。  なお、入国審査官につきましては、職員の中から任用するものでありまして、お尋ねのような試験制度はありませんけれども、現に相当数の女性の入国審査官が在職いたしております。
  326. 志村愛子

    志村愛子君 いまの管理官と審査官、これは入国管理官と承知しているんでございますが……。
  327. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 入国警備官といっております。
  328. 志村愛子

    志村愛子君 警備官ですか。また私の方も調べておきます。  ありがとうございました。
  329. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 大蔵省の女子職員の採用、昇進についての改善策をまず最初申し述べます。  昭和四十年は採用者数が五十九人でありましたのが、昭和五十年には二百十六人、昭和五十四年には三百一人、すなわち四倍ちょっとと、こういうことになりました。それから役付職員の方の数は、昭和四十年が四百五十三人、五十年で見ますと三千三百六十七人、五十四年で見ますと三千六百三十二人、七倍強、こういうことになっておるわけであります。したがいまして、先ほど来答弁があっておりましたように、最近は中級職の女子職員も採用しておりますが、さらに昭和五十五年度から国税専門官採用試験について女子に門戸開放することとした次第であります。  初級税務官だけは門戸開放されていないではないかと、こういうことでございますが、税務試験により採用する職員は税務の調査、検査、それから滞納処分等の事務に従事させるため、採用後、税務大学校において一年三カ月の研修を受講されることが予定されている職員でございます。この初級税務試験に現在女子の受験を認めておりません理由は、署外での調査、検査、滞納処分等の外部事務でございますので、肉体的に負担が大きいと。時には身体的危険を伴うと——なぐられたりしてもいけませんので、そういうことが一つございます。それからもう一つは、専門的なものでございますので、大体いまのところ女子職員の場合は経験五年で二割、経験十年で四割という人が離職率が高いわけでございますね。したがって、税務の職場というのは勤務がそういう長くいる必要があるという仕事であるということと、それから三番目には、税務職場は転勤が非常に多い、したがって、実際上転勤が困難な場合が多いわけでございますので、それらが理由でまだ門戸開放をしていないわけでございます。したがいまして、この問題につきましては初級税務試験の門戸開放ということにはそのような問題がございますので、もう少し慎重に勉強をさしていただきたいというように考えておるところであります。
  330. 細田吉藏

    国務大臣細田吉藏君) お答えいたします。  防衛大学校並びに防衛医科大学校への女性の入学問題につきましては、昨年の当委員会で先生の御質問に対して、当時の山下防衛庁長官から前向きに検討したいという御答弁を申し上げましたこと、御承知のとおりでございます。現在まで防衛庁としましては真剣に検討いたしておりますが、本年の入学試験には残念ながら間に合いませんでした。  検討でございますが、まず諸外国における士官学校というものの女性の入学状況あるいは教育内容、環境問題、そういう点につきまして、外務省を通じまして資料を収集し、現在この資料の分析、検討をいたしております。また、五十三年度から採用を開始しました女性の医官、現在これは医官、歯科医官を入れまして十名いらっしゃるわけでございます。この方々がいらっしゃるわけでございますから、防衛医科大学はいいじゃないかと、こういうことにつながる可能性があるわけでございまして、こうした医官の方々の勤務状況等の実態を調査しておる今日は状態でございます。  また、従来、婦人教育隊で実施しておりました女性の一般幹部候補生の教育訓練を、本年四月から男子の一般幹部候補生と同様に幹部候補生学校に入れまして、これは同一の期間ほぼ同様の教育訓練を実施することにしております。これもやはり検討の内容の一つでございます。  このようなことでございまして、私ども昨年山下長官の申しました方針をさらに続けまして、先生の御希望されるようなことが前向きで本当に検討されることが必要だと、かように考えて努力したいと思っておる次第でございます。
  331. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとう存じました。  医官が十名おられるからいいのではないかとおっしゃいますが、遺憾に存じます。(笑声)それだけでは終わらないでほしいと思います。  郵政大臣お願いしたいと思います。
  332. 大西正男

    国務大臣大西正男君) お答え申し上げます。  先生御承知のように、郵便局の内務職員につきましては、ただいまもお話がありましたように、AとBがあるわけでございます。そのAの方につきましては、これはもう男女の区別なく採用いたしておるところでございまして、これは五十三年度の調べでございますけれども、男子七百七十一人に対しまして女性千百三十七人でございまして、約六割を女性から採用いたしておるところでございます。ただ、問題は郵政事務Bにあるわけでございますが、これは御承知のように、深夜勤務とか、あるいは交代制などの変則的な勤務を伴っておるわけでございますので、労働基準法上女子を充てることができない、こういうことになっておりまして、したがいまして、Bにつきましては受験資格もない、こういうことになっておるわけでございます。そういう関係でございまして、基準法との直接の関係がございますので、遺憾ながらいま直ちにこれを変えるということはできがたいところでございます。御了解願いたいと思います。
  333. 志村愛子

    志村愛子君 女性に男性と同じ機会を与えるのが男女平等の出発点であると思いますので、ぜひとも御協力をお願いいたしたい。今後よろしくお願いいたします。  先ほども申し上げましたが、勤労婦人は今日著しく増加しておりまして、各分野で広く活躍しておるわけでございますが、個々の職場では依然として男女の不平等が残っており、婦人が不利益をこうむっているといったような声、そしてまた実態、いまなおございますわけですが、一例を挙げますならば、三重県の津地方裁判所が二月に行った判決に見られる鈴鹿市役所の実態がその一例だと思います。一つには、昇任を男子に有利にしていた。二つには、職員研修を男子だけにさせていた。三つには、いろいろの雑役を女子のみに押しつけていた。四つには、結婚すると女性は昇給がストップされた。そして五番目には扶養手当は男子にしか支給されていなかったなどとされていますが、このほかにも退職勧奨年齢で男女の間に差をつけている地方自治体もあると聞いております。国内行動計画を実行するには、地方公共団体や民間の協力が必要でございますが、このような差別が地方自治体にあるとすれば重大なことだと思います。自治大臣には女子地方公務員の実態についてどの程度御認識しておられますか、お伺いしたいと存じますが、よろしくお願いいたします。
  334. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 御承知のとおり、今日の地方公務員法の上では男女の性別で区別を絶対つけてはいけない、昇任等については勤務の実績と能力の実証ということでやらなければならぬという規定になっていることは御案内のとおりでございますが、御質問の津の問題は昇任についての問題であったと思いますが、第一審では市側が敗訴をしたわけでございます。ただ、今日この問題については市側が控訴しておりますから、裁判係属中でございまするので、この問題については私からの意見を差し控えたいと思いますが、一般的にこの問題を見るときには、制度上の問題と運営上の問題と両方が絡んでくるわけですから、制度上で差をつけているというのは私はあり得ないのじゃないかと思います。問題は運用にあると思います。  そこで、全国の実態等も、津の問題等もございますので、私ども調べなきゃならぬ、かように考えておりますが、従来から人事主任官の会議でありますとか、人事担当者の研修等の際には厳しくそういう点の差別をしてはいけない、特殊な職種について身体上の理由によって区別があるのは、これはやむを得ないけれども、単に、合理的な理由がなくて、女性であるというだけでそんなことをしては相ならぬということは指導いたしておりますが、実態は私は御質問のような扱いがやはりあるのではないかなという心配をいたしております。  さらに実態を十分調査をいたしまして、是正すべきところは是正をさせるという処置をいたしたいと、かように考えます。
  335. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  次に、労働大臣に三点お伺いいたしたいと存じます。  まず第一に、民間には男女別に定年を決めている企業や、結婚、妊娠、出産などを退職の条件にしている企業があるようでございます。こうした問題はどのように改善指導をしておられましょうか。第二には、女性は育児に重要な役割りを負っているわけですが、働く婦人が育児と職業生活を調和するには、育児休業制度をもっと民間にも普及させなければならないと思いますが、こうした指導はなされておるのでございましょうか。第三には、雇用における男女の平等をもっと積極的に進める必要があると思いますが、法制化を含めましていかように検討しておられますでしょうか。  どうぞよろしくお願いいたします。
  336. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) いろいろと御指摘をいただきました婦人の労働問題につきましてお答えをいたしたいと思います。  最初に、民間で男女別に定年を決めている企業でありますとか、あるいは結婚や妊娠、出産を理由にして退職の条件にしているといったような企業があることについて、どのように指導しているかという御質問でございます。  御指摘のように、婦人の職場に対する進出が非常に進んでおりまして、しかも、ただ短時間短期的に働いていたというのではなくて、少し長期に職業として働いていくというような御婦人がふえているのも最近の顕著な例でございますが、その中で、御指摘のように、男女別に定年の年齢が定められたり、あるいは女子のみに適用される結婚や妊娠、出産退職制などが各方面で見られるわけでございます。したがいまして、労働省といたしましては、その解消を図っていくことを緊急の課題にして、いま真剣に取り組んでおるところでございます。  当面、五十二年に策定をいたしました改善のための年次計画に基づきまして、合理的な理由なしに定年年齢の男女の差を設ける制度、あるいは、御指摘のように、結婚、出産などによって退職をするといったような仕組みになっておる企業に対しまして、労使双方に強く行政指導をしていくという方針を打ち出しております。また、五十二年度におきましては、婦人少年室を中心にいたしまして、行政指導対象の実態把握を重点的にまず行うということに取り組んでまいりました。その上に立ちまして、五十三年度、五十四年度は、その結果を踏まえまして、それらの中から特に女子の定年年齢が四十歳未満というところに一つの照準を当てまして、その四十歳未満の者でありますとか、それから結婚や出産などを理由に退職をするということになっておることをまず解消するということにいたしまして、強く指導をしてきたところでございます。非常に効果を上げてきておりまして、対象企業の約四割の企業でこれらの区別がなくなってきたというふうに評価をいたしておるわけでございます。五十五年度はさらに女子の定年年齢を引き上げまして、五十五歳未満の男女別の定年制を設けておるところを解消するように一生懸命取り組んでいきたい。段階的に取り組んでこういった事態を解消していくように努力をいたしておるところでございます。  第二問目の育児休業制度の問題でございますが、いろいろこの育児休業制度の普及につきましては先生にもお骨折りをいただいておりまして、私どもも御鞭撻をいただいておることを心から感謝をいたしておるわけでございます。何といいましても、御婦人が職業について働いてまいりますためには育児と両立をさせていくということが非常に大事なことでございます。そこで、労働省といたしましては、育児休業の奨励金制度を設けまして、これを積極的に活用していくということに従来取り組んできておるところでございますが、新たに五十五年度からは育児休業制度普及の指導相談員といった仕組みを設置をいたしまして、さらに積極的にこの制度が普及をしていくように努力をしてまいりたいと、このように存じておるところでございます。  最後に、雇用における男女平等をもっと積極的に進めるべきだ、こういう御指摘でございますが、全くそのとおりでございまして、労働基準法に基づきます同一労働における男女の同一賃金というもの、これはもう法に基づきましてこの原則を徹底をするようにさらに努力をしていく。また、男女別の定年制や結婚退職制等を解消いたしますために、いま御説明をいたしましたような方針で行政指導を強く行っていく。さらに、婦人労働旬間などを中心にいたしまして、広く社会全体に婦人労働のあり方をめぐって認識を新たにしてもらうといったような啓発活動を行っていくということにも重点を置いて進んでまいりたいと思っておるところでございます。  法制化についての御質問がございましたが、男女平等とは何か、いろいろな考え方がございますけれども、そういったことを明らかにしていくガイドラインの検討を進めてまいりますと同時に、さらに積極的に施策を推進をしていく。そして男女平等の制度を法律として制定をしていくかどうかといったようなことにつきましては労働基準法研究会から提言をされておりますので、いろいろと関係の審議会の御審議を踏まえまして、法制化をしていくかどうかといったようなことも含めましてさらに男女平等の理念が徹底をしていくように、各方面の御意見も伺いながら施策を推進をしてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
  337. 志村愛子

    志村愛子君 御懇篤なる御答弁ありがとうございました。  次に、昨年の国連総会で採択されました婦人に対するあらゆる形態の差別を撤廃する条約にはわが国も賛成しているはずでございますが、批准の見通しはどうなっておるわけでございましょうか。外務大臣にお伺いいたしたいと存じます。  また、続いて申し上げますが、婦人大使第一号にもうすでに高橋さんがお決まりですが、第二、第三の大使もお考えいただきたく、これもあわせてお願いしておく次第でございます。
  338. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 第一の御質問につきましては、本条約の趣旨はわが国といたしましても賛成しておるわけでございますけれども、国内のいろいろな法規、現行の法規体制との間の調整がまだ手間取っておりまして、まだこの調整を要しますためにいつ批准できるかということを現在はっきり申し上げられない段階でございます。できるだけ促進いたしたいという考えでございます。  高橋展子さんの件につきましては、各方面いろいろ評価をしていただきまして、外務省としても非常にうれしく存じておるわけでございます。先ほど先生、デンマーク大使に任命されたとおっしゃいましたが、実はまだ国内の形式的手続が残っておりまして、近いうちに正式発令になると思いますが、御本人がデンマークにおいでになりますのは五月の上旬の予定でございまして、ただいま外務省研修所で鋭意デンマーク語の勉強をしておられます。さらに、今後適当な人材を得まして、第二、第三の女性大使があらわれることを私どもも期待いたしております。
  339. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  私は、昨年の予算委員会で、妻の相続分を現行の三分の一から二分の一にふやすように検討をお願いいたしました。これは長年のお願いでございました。女性の高い声でございました。法務省ではそのための民法改正を本国会に提出される予定と伺っておるわけでございます。その内容及び提出の見通しについて法務大臣にお伺いをいたしたいと思います。  また、この民法改正と並行して、税制面でも妻の相続分について非課税枠が拡大されると聞いておりますが、内容と実施時期などについて大蔵大臣にお伺いいたしたいと存じます。お願いいたします。
  340. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) お話の改正法律案の骨子は、第一に、配偶者の相続分を引き上げることでございます。第二に、兄弟姉妹が相続人となるべき場合の代襲相続、これは兄弟姉妹の子、つまりおいとめいに限るということにいたしました。第三に、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をいたしました相続人に対しては、遺産分割の際にその寄与に相当する財産を取得させること、こういうことを考えているわけであります。  この法律案は、近日中に国会に提出いたしたいと準備を進めておる最中でございます。
  341. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。
  342. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 現行の相続税の配偶者の負担軽減措置というものは、同一世代間の財産の移転であるということ等を考慮いたしまして、配偶者と子が相続人である場合の配偶者の法定相続分三分の一までは相続税を課税しないこととするものであります。この制度は、昭和五十年の改正で、民法における相続制度といわば一体のものとして制度化することが社会通念に合致するものと考えて実施されまして、国民の間にも定着してきておるところであります。  そこで、今回、いま法務大臣から概略御説明のありました民法の改正による配偶者の法定相続分の引き上げに伴いまして、相続税についても軌を同じくして措置をするということが社会通念にも合致いたします。かつ国民にとっても大変わかりやすいと考えられるわけでございますから、配偶者が取得した相続財産につきましては、遺産額のうち新しい法定相続分二分の一までは相続税を課税しないこととして、現在法案化の作業を急いでいるところであります。  また、今回の相続税の改正につきましては、ちょうど一昨日の税制調査会でも現行制度の考え方に従い、民法改正とあわせて措置することが適当であるという御判断をすでにいただきました。したがいまして、実施時期ということになりますと、昭和五十六年一月一日から実施することとしたいと、このように考えております。
  343. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  ここで総理にお伺いいたしたいと存じますが、婦人問題についてわが国の現状はお聞き及びのようなわけでございます。改善しなければならないところが多々あると思うのでございますけれども、これから国連婦人十年後半への取り組み、対応について総理のお考えをお伺いしたいと存ずるものでございます。お願いいたします。
  344. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国連婦人十年のちょうど折り返し点にことし当たっておりまして、いままでもいろいろ御披露がございましたように、この過去五年間若干の進展を見ましたことは御同慶にたえませんけれども、まだ数々残された問題があるようでございます。したがって、これまでの事績を踏まえまして、この五年間、向こう五年間の展望をできるだけ明らかにしながら、推進本部といたしましては一段と決意を新たにして対処してまいりたいと思います。
  345. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  これはお答えは結構でございますが、五年後の国連婦人十年の締めくくりの世界会議日本で開くことを皆さん要望しておりますので、これもひとつ御検討をいただければと思うものでございます。  次に、福祉問題について引き続き総理にお尋ねいたしたいと存じますが、来年は、たびたび質問にも出ておりますように、国際障害者年でございます。障害者もすべて国民と同じく個人として尊重され、人間らしい生活を営む権利を保障されているはずでございます。しかし、実際には就学、雇用などあらゆる分野でハンディをつけられ、余り幸せな生活をしていない、むしろ日の当たらないと言った方が現実の姿ではないかと感じておる一人でございます。政府は国際障害者年に対応してどのような理念で臨まれておられますか、総理にお伺いいたしたいと存じます。  さらにまた、具体的施策につきまして、時間がなくなってまいりましたので早々に申し上げたいと思いますが、厚生、労働、文部の各大臣にもこの問題についてお願いしたいと存じます。よろしくどうぞ。まず総理から。
  346. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国際障害者年は、国連という場におきまして全世界が障害者の完全参加と平等という目標に向かって最善の努力をするという決意を表明したものであります。わが国といたしましても、その趣旨に即しまして最善の努力をいたしたいと考えております。  なお、この具体的な推進方策につきましては、目下関係各省庁において検討を行っておるところでございます。  また、障害者の完全参加と平等を実現することは、障害者が社会の通常の一員として社会、経済、文化等の諸活動においてその方向の決定の段階から参加して、かつその発展に貢献することであります。また、そうした社会の発展の結果を教育、雇用、社会保障、文化等の各部面におきまして平等に享受し、同時に平等に責任を負うような社会をつくることであると考えております。  いま申し上げたことが、国際障害者年を迎うるにあたりましての政府の根本理念でございます。
  347. 野呂恭一

    国務大臣(野呂恭一君) まず、平素から心身障害者対策に御熱心に取り組んでいられまする志村委員に対して敬意を表しておきたいと思います。  先ほど総理大臣がお答えになりましたとおり、国際障害者年のテーマは、障害者の完全参加と平等でございまして、これは障害者が家庭や地域におきまして、普通の人と同様に日常生活が営めるような社会を実現するということであると考えておりますが、厚生省といたしましてもこの理念に立ちまして、五十六年の国際障害者年を契機として、いろんな角度に立ってその推進を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。  まず第一に、所得保障対策の充実でございます。障害年金あるいは障害福祉年金など年金制度の充実を初め、特別児童扶養手当あるいは福祉手当などの改善を図っていかなければなりません。  また、今日までとかくおくれがちであったと考えられますが、非常に大事なことは、在宅の障害者福祉対策の充実であろうと考えるのでございます。障害者が家庭や地域で生活できるように、障害者の住みよい町づくりであるとか、あるいは在宅障害者デーサービス事業、あるいはまた心身障害児の療育事業などの充実に努めてまいりたいと考えております。  なお、障害者はそれぞれ障害の状況が違っておりますから、障害別対策を充実することが大変大事なことであると考えます。視覚障害者であるとか、あるいは聴覚障害者あるいは肢体不自由者、あるいは精神薄弱者など、きめ細かなそれぞれの対応を持つことにおきましてニーズにこたえる施策を推進してまいりたいと考えております。  第四は、先ほども国立の身体障害者リハビリテーションが開所されたわけでございます。これは国際的にも遜色のない施設であると考えておりますが、そういったリハビリテーションを中心とする施設の対策の充実をさらに図っていかなければならないと考えております。  先ほど総理大臣からもお答えになりましたが、心身障害者の福祉を確保するためには、単に厚生省所管の福祉施策だけでなくて、教育あるいは雇用、それから一般的な所得保障、さらにまた生活環境改善等、多岐にわたっての心身障害者対策を総合的に進めていかなければなりませんので、この点につきましては、各省庁間と相協力いたしまして、その推進に努力をいたしてまいりたいと思います。  最後に、国際障害者年を機会に、長期的展望に立った施策の要請がなされておるわけであります。関係審議会の御意見等も承りながら、これらの施策の推進に取り組んでまいりたいと考えます。(「簡潔にやれよ。答弁長過ぎる。与党になるとえらい長いじゃないか。八百長やめろよ」と呼ぶ者あり)
  348. 志村愛子

    志村愛子君 御懇篤な御答弁ありがとうございました。
  349. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 簡潔にお答えをいたします。  第一に、身体障害者雇用促進法に基づきます身体障害者雇用率の達成をいたしますために、従来もあらゆる努力をしてきておるところでございます。特に身体障害者の雇用状況の悪い企業につきましては、その計画を作成させ、そしてその計画を実行するように勧告をいたしまして、今後も努力をいたしてまいりたいと思います。  二番目に、重度障害者やあるいは中高年の障害者の方々は非常に雇用がやっぱり条件が悪いということになっておりますので、特にそのための雇用管理給付金を五十四年度から出発をさせまして重点的に取り組んでおるところでございます。  三つ目に、やはり国民各層の御理解をいただくことが大事でございますので、業種別の労使会議などを開催をいたしまして、一層の啓発に努めてまいりたいと思います。  四つ目に、特に来年の国際障害者年に当たりまして、国際身体障害者技能競技大会を開催する段取りを進めておりまして、障害者の方々が自立し、かつ一般的にもその啓蒙をもっと進め、そして国際的な経験も持つということをねらいにいたしましたいい大会にしていきたい、このように考えておる次第でございます。今後とも全力を挙げて取り組んでまいります。
  350. 谷垣專一

    国務大臣(谷垣專一君) お答えをいたします。  来年の国際障害者年の問題につきましては、関係各省と連携をとりまして対処してまいりたいと思いますが、御存じのとおり、すでに昨年から養護教育の義務化を文部省といたしましては実施をいたしておるわけでございます。したがいまして、これの経過等を見て、これを充実していく方向に施策を進めていきたいと考えておりますし、五十五年度におきましても、まあ今日の財政状況でございますが、若干の定数、配置基準の是正をいたすつもりでございます。極力努力をしてまいる所存でございます。
  351. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  答弁が長いなどというお声がありましたが、あすはわが身ということもありますから、先生しんぼうして聞いていただきたいと思います。(「与党ばかりに長い」と呼ぶ者あり)ひがまないでくださいね。これは心身障害者のこと、大事なことなんですよ、先生お元気でぴんぴんしていらっしゃるけど。  心身障害者対策基本法が昭和四十五年にできましてから、もう十年になるわけでございます。しかし、心障者対策はまだ十分でないことはもうすでに申し上げたとおりでございます。障害者対策が九省庁にまたがっているということ、これも私、原因の一つではないかと実は思っているわけでございます。そこで、障害者対策室といった形で総合的機構を総理府に設けてみてはいかがなものか、強力に推進する体制づくりが必要ではないか、こんなことを考えておるものでございますが、内閣官房長官のお考えをお聞かせいただければと思うものでございます。  おぐあいの悪いところ済みません。お待たせいたしました。
  352. 伊東正義

    国務大臣(伊東正義君) お答え申し上げます。  いま先生がおっしゃいました障害者対策として基本的に恒久的な対策室をつくったらどうかというお話でございますが、これはいま中央心身障害者対策協議会というものがございまして、その世話は厚生省がやっておられるという形のものでございますので、これにつきましては基本的な対策室をつくるかどうかというのは、もう少し検討さしていただきたいと思います。  もう一つ、来年心身障害者年になりますので、これはいままで国際婦人年、国際児童年というようなことがございました。こういうことと関連して対策室をつくるかどうかということは、これもいま各省庁と検討しているところでございます。
  353. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  障害者年のためだけではなくて、恒久的なものとして、たとえば国際婦人年のときに設けられました、婦人問題企画担当室というのができまして、非常に活発になっておりますが、こういったようなことで障害者対策室を置くということも、あわせて御検討をお願いしたいと思うものでございます。  次に、障害者の国鉄運賃割引のことでお伺いしたいと思います。現在、障害者が一人で乗車する場合には、距離制限がございまして、百キロを超える旅行でないと割り引きされません。この制限を撤廃するか緩和してほしいという要望が、私のもとに実はたくさん集まっておるのでございます。そしてまた、特急料金につきましても、乗車券と同じく割り引きしてほしいと切なる願いが届いております。  そのほか、障害者に対する有料道路通行料金の割引について、下肢または体幹不自由者が自分自身で車を運転する場合にしか割り引きされないことになっておりますが、障害者が乗っており、その車が障害者自身の車である場合には、社会生活をする上でハンディを乗り越え真剣に生きていくために車を使っていることでございますので、通行料金を割り引きずるようなお気持ちはいかがなものでございましょうか。  国際障害年を形であらわすとするならば、このような施策が行われて当然と思いますが、運輸、建設両大臣にお伺いしたいと思います。
  354. 地崎宇三郎

    国務大臣地崎宇三郎君) 国鉄関係につきましては、御期待に沿えるお答えができないのが大変残念でございます。  国鉄の内容は大変な赤字の状態でございまして、公共負担等の見直しを図らなければならないという状態でございます。昨年の十二月の末の国鉄再建法の閣議了解におきまして、新しく公共負担につきましては関係省庁で検討して適当な解決を図るということになっております。この関係省庁の検討が済みまして、解決の方法が見出されました際に、割引の問題等についても十分配慮いたしたいと、かように考えております。
  355. 渡辺栄一

    国務大臣渡辺栄一君) お答えいたします。  先生のお話の身体障害者に対しまする有料道路通行料金の特別割引措置は、昨年、昭和五十四年の六月から実施をいたしたわけでございます。したがって、まだ半年以上たっておる程度でございますので、今後の実態を十分把握をいたしまして、その手続等を含めまして今後ともこれが定着をしていくように努力をいたしたいと思っておりますが、この制度にいたしましたゆえんのものは、下肢あるいは体幹の障害のある者が、御承知のように、平たん地の運転でございますと非常な苦痛が伴うということで、少しでも早く通行のできる措置は必要であろうという配慮からとった措置でございますので、いまお話しのような介護者に対しましては今回の対象には入れなかったわけでございますけれども、今後の課題といたしまして検討は続けてまいりたいと思います。特に、お話のような障害年を迎えるわけでございますので、今日までも道路関係につきましては御承知のような歩道の段差の解消でありますとか、あるいはブロックを敷いた道路の整備でありますとか、あるいはサービスエリアの便所におきまする障害者用の設置でありますとか、いろいろやってきておりますけれども、今後とも、そういう意味におきましては十分な配慮をいたしてまいりたい、かように考えております。
  356. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございます。  国鉄の実情は、国の財政が火の車でありますし、国鉄の財政の状態もよくわかりますが、とにかく一層また御検討いただきたいと、あわせてお願いしておくものでございます。  次に、北方領土問題についてお尋ねいたします。  最近のこの問題に対するソ連の強圧的態度は目に余るものがございますが、何年、何十年かかりましても、北方領土の祖国復帰は実現しなければならないと思います。そのためには、世論に支えられて、政府が毅然としてこの民族的悲願を要求し続けることだと思います。同時に、戦後世代の方たちに、正しい事実を語り継ぐ責任があると私は考えております。そのために、早くから学校教科書の中にこれを取り上げるよう強く要望してまいりました。一部には改善され、かなり正しく扱われている教科書もございますが、また、これを正しく教える先生もおられますが、一部には教えない先生もおります。文部省ではどのようにこれに対して努力をされておられるのでございましょうか、まず文部大臣にお伺いしたいと存じます。
  357. 谷垣專一

    国務大臣(谷垣專一君) お答えをいたします。  北方領土問題につきましては、小、中、高等学校の社会科におきまして、児童生徒にわが国の領土を正しく理解させるという観点から指導をしてまいっておるわけでございまして、現在使用されております小、中、高等学校の社会科の教科書では、すべて北方領土に関する記述が行われております。これは学年の成熟度に応じまして記述は若干の違いはございますけれども、北方領土を構成する島々の名称、それから北方領土の位置、それから北方領土四島が日本固有の領土であって、日本はソビエトに対してこれの返還を要求しておるが、いまだそれが実現できない。この三つの点は、それぞれの教科書によって若干の差はございますが、その記述は三点におきましては皆統一をした形で出ておる状況でございます。まあ、かなり的確な記事になっておりまして、したがいまして、いままでの北方関係全体の問題も、これに関して教えることのできますように、現地の北海道の教育委員会におきましては、このためのかなりなパンフレットを用意をいたしております。これは教師用のパンフレットでございますが、全国のそれぞれの学校にも、文部省の手によりまして配布をいたしておるわけでございます。  それから、現地の根室市の教育委員会におきましても、小学校、中学校、それぞれ若干の記述は差をつけておりますけれども、教師用のこういうかなりなパンフレットを作成いたしましてやっておる現状でございます。
  358. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  いま文部大臣のお話にありましたように、実は昭和四十九年に私も北海道開発政務次官を拝命いたしました際に調べまして、副読本がつくられておるということも存じておるわけですが、ああしたものがもっと日本じゅうの子供に徹底すべきではないかと、つけ加えさせていただく次第でございます。  実は、教科書問題が出ましたが、こちらに参考書を持ってまいったのでございます。それと申しますのも、この参考書は高校の参考書でございまして、この参考書に出ております地図を見ますと、北方領土の扱いがきわめて不明瞭なんです。どう不明瞭かと申しますと、四島のうち歯舞、色丹は漢字で書かれておりまして、国後、択捉はかたかなで記されているわけなんです。そういう書き方をいたしますと、この二島はまるでソ連領であるかのごとき誤解を与える危険性があるのではないだろうか、こういったことを私自身感じたわけです。参考書でございますから、これを純粋な子供が参考にする場合非常に影響があってはと、こういったことも考えまして、文部省が適切な指導をしてしかるべきではないかと、こう思うわけでございます。しかも、国土地理院の承認を得て複製したと書いてありますだけに、念のためごらんをいただきたいと思います。これをお配りいたしましょうか。ちょっとコピーしてございますので。  また、ごらんいただきますとよくおわかりと思いますが、ついでに申し上げますと、一般に市販されております地図などでも四島の扱いがまちまちだということがわかりました。日本全図とされていながら北方四島が入っていない。このようなことも参考までに申し上げておきたいと存じます。これでは、なかなかに返還は全国民の意識としてやはり希薄な面があると言われても仕方がないのではないだろうか、そんな一面をこんなことから感ずるわけでございます。  最近、現地から伝えられるところによりますと、北海道漁民の弱点などに乗じて北海道各地において政治工作を積極的に進めているようでありますが、北海道及び根室市などでは多年にわたって北方領土に関する正しい世論を啓発するために熱心な努力を続けてきております。これらの啓発運動に国からわずかではありますが援助費が出ていることは私承知しておりますが、この問題は全国民的問題でありますので、地元だけに負担をかけるのではなく、国で特別措置を講ずべきだと思います。総務長官のお考えをお伺いいたしたいと存じますが、実はその前に、その地図をごらんになった御感想、お考えを文部大臣にまず伺ってから、いかがでございましょうか。
  359. 谷垣專一

    国務大臣(谷垣專一君) お答えをいたします。  初めて私拝見をいたしました。御指摘のように、色丹、歯舞が漢字に書いてありますが、国後、択捉がかたかなで書いてありますし、お隣りにウルップ島も同じようにかたかなで書いてあります等、御指摘のようなところがございます。いずれこれはどういう会社でどういうあれか、具体的にお知らせを願いまして、研究をさしてみたいと思います。
  360. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 根室市は戦後いち早く北方領土返還運動を始められまして、今日まで北方領土問題の原点の役割りを担って、厳しい地方財政の中でありますけれども、市長初め市民の協力によりましてその原点としての役割りを今日果たしておるだろうと思います。  そこで、政府といたしましても、当然でございますが、この運動におきます現地の啓発活動の重要性にかんがみまして、昭和五十五年度の予算措置といたしまして北方館の整備のための費用を組みまして、三千万円を超える現地特別啓発費を計上いたしまして、現在パンフレットその他の資料を配布するなど努力をいたしておるところでございますが、地元根室市あるいは国の力と相まち、また北海道にも御協力をいただきまして、この運動は現地だけの問題ではありませんことは御指摘のとおりでございます。広く日本国民すべての課題として、北方領土の問題に取り組めるようにさらに努力をいたしてまいりたいと存じます。
  361. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございます。  次に、最近の物価上昇につきましてお尋ねいたしたいと思います。  私も台所を預かります兼業主婦の一人でございますので、いやというほどこの物価の上昇はわかるのでございます。毎日のように恐らくこの物価問題出ておるわけでございますけれども、自分で買い物に行きますと、その物価の問題、そしてまた、いわゆる流通機構問題、よくわかって大変勉強になると思うのでございますが、とりわけ最近のお野菜が問題になっております。しかし、ちょっと安くなりましたね、実際申し上げて。安くなったと思います。また、お野菜だけではなく、そのほか一部の食料品の値上がり、こういったものがいま問題になっておるわけでございます。  そこで、三点についてお伺いいたしたいのでございますが、第一は野菜の高値、この野菜の高値を東京都区部における二月の値段で発表しております。これを調べてみましたところ、お値段はキャベツが一キログラム四百八十五円、一キログラムと申しますと大体キャベツ一個でございましょう。白菜が一キログラムと申しますと、白菜半分とお思いいただければいいと思いますが、二百五十一円。これは昨年の二月に比べまして五・五倍から五・三倍という異常高値で、レタスも一キログラム九百二十円、三倍近い値上がりをしたわけでございます。三月に入りまして幾分安くはなっておりますものの、どうしてこんなに高いのだろう、やはり台所を預かっておる者には直接響く問題でございますので、当然の問題として調べてみましたところ、ことしの異常気候とか、あるいは台風とか、そういった自然現象といったことが聞かれたわけでございますが、こうした天候など自然現象などに影響をされないような、日ごろから安定した価格と申しましょうか、こうした対策を何とか進めておかねばならないのではないだろうか、それにつきましてはどのような対策を進めておられるかをお伺いしたいと存じます。農林水産大臣、どうぞよろしく。
  362. 武藤嘉文

    国務大臣武藤嘉文君) ただいま御指摘のように、昨年の台風が十月に二回も参りましたことと、やはり長雨によりまして病虫害が発生した、これが大きな原因であることは御指摘のとおりでございます。なかなかこの自然現象というものは私どもどうにも防げないのでございますけれども、その中でも、しかし何とかもう少しならないかといういまの御指摘でございます。そこで、従来はいわゆる需給に見合った生産、出荷、これを計画的に進めるにはどうしても野菜の集団産地、これをひとつ計画的にどんどんどんどん育てていかなきゃいけないということ、それから、いま一つは、野菜の価格安定制度がございますが、この範囲を広げていかなきゃいけない、こういうことをやってまいりましたけれども、今回それに加えて、いわゆる重要野菜需給調整特別事業と、こう申しておりますが、これにつきまして、私ども、できる限り作付の段階で、特にこれは農協に御協力をいただかなきゃなりませんが、農協の指導でできる限り作付の段階で余裕のある作付をしていただいておきまして、万が一少し不作になっても結果的に出荷量が落ちないように、そしてもしうまくでき上がったときは、これはもうその産地で廃棄していただかなきゃやむを得ないわけでございますけれども、そういうことを含めてやっていただこうと。ただ、こういう仕事をやるには農協がしっかりひとつしていただかなきゃならないわけで、きのうあたりも御指摘をいただきましたが、中には農協を通さない、また最初は農協に入っておっても、こういう高値になると農協から外れちゃって直接商人に売るような農家も正直あるわけでございまして、その点は大変遺憾に存じておりまして、なるべくひとつそういうことができるだけ少なくなるように農協にしっかりしていただくことと、農家の方にやはり消費者のことをもっと考えるように、そういう御理解をいただくような努力をひとつ私自身やってまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  363. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  次に、政府は電力、ガス料金について大幅な値上げを間もなく許可すると伝えられておりますが、どの程度の値上げを認めるおつもりでいらっしゃいましょうか。値上げによりまして家計に及ぼす影響はどの程度とお考えになっておられるでしょうか。このように生活に影響の大きい値上げは、やはり国民の理解と協力を得なくてはならないと思いますが、それに対する政府の対処といったものをお聞かせいただきとう存じます。
  364. 佐々木義武

    国務大臣佐々木義武君) 電気、ガス料金の値上げ申請につきましては、公聴会の開催とか、あるいは特別監査等の実施が終わりまして、ただいまその結果を踏まえつつ丹念な査定、審査に入っているところでございます。  お尋ねの値上げ率でございますけれども、まだ作業中でございますから流動的ではございますが、現在の段階で中間的にどのくらいの感じかということでございますれば、御承知のように、電気は六四%の値上げ申請でございますけれども、大体五三から五四%程度、ガスにつきましては五二%の値上げ申請でございますけれども、四六から四七%程度までには査定できるのじゃなかろうかと考えておるわけでございます。冒頭申しましたように、まだ査定の最中でございまして、経済企画庁ともただいま相談をしているというような段階でございます。
  365. 志村愛子

    志村愛子君 第三に、卸売物価は昨年に比べ二一・四%も上がっており、消費者物価も七・六%も上昇しております。二月からお米やお麦、また近くガス、電力、国鉄、航空などの公共料金も軒並み上がろうとしておりますが、政府は、昭和四十七、八年ごろのような狂乱物価にはならない、消費者物価は六・四%に抑えると言っておられますが、いささか見通しが甘いのではないかと私自身思うのでございます。  また、聞くところによりますと、現在の状況昭和三年ごろと同じような状況、大変なインフレを招いたというようなことを言う人もございます。  近々総合的物価対策を講ずるというお話も聞いておるわけでございますが、政府の基本的なお考えをお伺いしたいと思うものでございます。
  366. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) お答え申し上げます。  ただいま通産大臣から申し上げましたのは、きのう通産大臣が総理に中間的に御報告になった状態をお話し申し上げたのでありまして、この委員会を初めといたしまして、十八日には、参議院の物特、それから商工委員会で合同審査をいたすことになっております。政府部内でも、総理からも、さらに一段の努力をしてできるだけ——法律に定めた原価主義とか公平の原則というものを曲げるわけにはまいりませんけれども志村委員指摘のように、この電力、ガスの料金改定は大変な影響がある。どの程度かということは、いま通産大臣お話しのように、料金決定されていませんから申し上げかねますが、とにかく極力政府部内でも詰めておる段階であることをまず申し上げておきます。  それから、予算関連の公共料金を初め、先ほどの野菜の問題、それから一番大きな問題は原油価格が大変上がった、また海外からの輸入原材料も上がっております。そこへ、御案内のように、円の相場が大変安くなっておりまして、そんなようなことから卸売物価が御指摘のように大変上がっておりますが、前回の第一次石油ショックのときと比べて——あのときは卸売物価と消費者物価が大体同じような上がり方をしたわけでございます。しかもインフレムードが大変醸成されておりまして、本当に油に火をつけるような状態でございました。そこでトイレットペーパー騒ぎなどというものが起こったわけでございますが、その点は今回は非常に状態は違っております。  先ほど兼業主婦の立場でとおっしゃられまして大変恐縮でございましたが、本当に消費者の皆さんが非常に冷静な行動をとられた。企業の経営者、労働組合も非常に良識を持って賃上げその他もなだらかにやっている、便乗値上げ等も今日までのところは極力回避される、こんなような御努力がだんだん実りまして、私は今日までのところは卸売物価が消費者物価へ波及しないと、あるいはさせることを極力抑えるという物価政策の基本は一応守られたと見てよろしい。しかし、ここでわれわれは油断はできないわけでございますので、総合物価対策では財政、金融の引き締めの基調を堅持しながら、個別物資について、先ほどお話しの野菜、あるいは重要な生活物資、その他国民経済運営上の大事な資材等につきまして、通産、農林水産省においていろいろ適切な対策を講じていただくことにいたしまして、総合物価対策を強力に展開したい、こういうことでいま準備を進めておるわけでございます。
  367. 志村愛子

    志村愛子君 まあ先進諸国に比べてみますと、食料品、生活の糧となる食べ物、こういうお値段は私はまだ日本は少し高いのではないか、高いものがちょっとあるのではないかと思うものでございますが、層一層またよろしくお願いするものでございます。  次に、教育問題についてお伺いをいたしたいと思います。  早稲田大学の入試問題漏洩事件は、毎日のように質問にも出ておったようでございますが、大変残念なことだと思います。  これは恐らく根深いところに問題があるのではないかと思いますが、基本的にはモラルの問題でありまして、事件の起こった背景の一つには学歴偏重社会があり、もう一つの原因は、入学するのは大変むずかしいけれども、入ってしまえば大して勉強しなくても卒業ができるという、この現在の大学のあり方にあるのではないだろうか。文部省としての事件への対応と大学制度の見直しについて、大臣日ごろいろいろとお考えのようでございますが、特にこの場を拝借して伺いたいと存じます。
  368. 谷垣專一

    国務大臣(谷垣專一君) お答えをいたします。  入学試験の公正というのはどうしても保たなければいけない大変重要な問題でありますのに、ああいうことが起きましたことはまことに遺憾なことだと思います。大学の方とは随時連絡をいたしておりまして、すでに先生の方も新聞で御存じのとおりの実情でございますが、早稲田大学の教授が一名、職員が二名、及びその構内にあります早稲田大学の印刷所の職員が一名、この事件に関与しておる。大学としては、警察当局の捜査とともに、大学自体としても事実の解明に当たる決意であるということも承知をいたしております。  で、十一日の夕刻連絡があったところによりますと、教育学部の教授会は三月十一日の査問委員会の調査結果に基づきまして審議の結果、市原教授を教員任免規則第十七条第四号に該当するものとして解任することを決定いたしました。これは三月十四日開催の理事会に付されることによりまして正式に決定することと思います。それから、商学部教授会の調査委員会は三月十一日までに合格者の答案について詳細な調査を終えて、その結果、次の中間報告をいたしております。特に疑しい者が四人いること、これらの者については別の視点から調査を行うことを考えている、多少問題がある者を含めると全部で十人程度である、こういう状況でございます。何はともあれ、その真相がまずはっきりいたさなければなりませんし、大学自体として強い決意でこれの処理、解決をいたそうとして行動を起こしておりますので、文部省といたしましては、その状況を見守ってまいりたいと考えております。  ここで、先ほど御指摘になりましたように、この機会に入学試験のやり方あるいは大学の管理のあり方、こういうことをもう一回再点検して、そしてその管理に万全を期していかなければならないということは御指摘のとおりだと思いますし、そういうふうに努力をしなければならぬと考えております。  それから、入学試験の問題でございますけれども、確かに先ほど御指摘になりましたような、わが国の大学の入試が、入るときは非常にむずかしい形をとっておるけれども、卒業するのはそのままずっとわりあいやすくいけるという形になっておることは、御指摘、確かに問題があると思います。したがいまして、入学した諸君が在籍をして勉学をしておりますときに十分勉学ができて、入るはやすいが出るのはむずかしいという式の方式も考えていく必要のある点だと思います。ただ、これは従前からそういう特色のあるやり方をやっている学校も絶無ではございませんけれども、今日の教育の現状から見ますと、それを実現いたしますことにはなかなか問題点も数多いと思っております。  それからなお、国公立の大学の入試につきましては、昨年来第一次共通試験をやりました。これは共通試験でございますが、第二次の試験はそれぞれの大学が特色を持って試験をする、この場合には小論文その他のやり方をやる、こういうことで、第一次共通試験のあり方としては、大学の先生方の良識、知恵を結集いたしまして、現在の高等学校のカリキュラムをマスターをしておれば、特に、難問、奇問というような形における問題がないようにして、これで二年やってまいったわけでございます。若干の手続上の粗漏とかミスとかいうものもないではございませんでしたけれども、だんだんとこういう問題に対しましての論議も行われて、ある程度の評価を得ておるように思います。まあこれは国公立の問題でございますが、こういうことを契機といたしまして、私立大学におきましてもそれぞれの入試のあり方につきましても何らかの検討が行われるような機運になればありがたいものである、こういうふうに現在考えておるところでございます。
  369. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。  早大の問題にしろ、毎日のように起こっております事件、その他もろもろの社会悪の根源は、やはり何と言ってもモラルの欠如、人間性の問題だと私は思います。  人づくりこそ国づくりと申しますが、この八〇年代は日本民族の将来を決する大切な年代になると思います。いま私どもの周囲を見回しますと、大切な次の世代の担い手、この赤ちゃんを産み育てることすら手抜きをしている母親も多くなりました。母乳をもって育てない。そしてまた、人格は三歳にして決まると言われるように、最も大切な乳児、幼児、家庭における人づくりのこの時期を、いまの母親がどのように考えているか。そしてまたお互いの命を大切にする、人命尊重といったことも、親と子のはだの触れ合いのこの育児の中からはぐくまれると言われ、そうしたこともかなり忘れられているような世の中のめまぐるしい世代に対応していかなければならないことと同時に、忘れてはならないものは、私たちの世代の古き民族の遺産であり、そして文化、伝統であると思います。そうしたよきものをもう一度しっかり知らしめ、それを大切に守りながら、それ以上のものにして子や孫たちに伝えていかねばならないのが私たちのいまの時代の責任ではないかと思うものでございます。  こういうときに当たりまして、この貴重なお時間、長い間皆様に御協力をいただき、大変ありがたく思うものでございますが、総理初め政府の皆様には、本当に使命感を持ってがんばって国務遂行に当たっていただきたいと心からお願いをし、一言総理のお言葉をちょうだいできますればと思うものでございます。そして私の質問を終わらせていただきたいと思います。お願いいたします。
  370. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大変むずかしい転換期でございまして、非常に情報が過剰でございまするし、環境は喧騒でございまするし、家庭自体も核家族化を見ておるような状況でございまして、その間におきまして健全な次代をどのようにして育成してまいるかということは難事中の難事であろうと思いますけれども、仰せのように、一番大事な民族にとりましての仕事でございますので、政府といたしましても、全力を挙げてこのむつかしい時代を乗り切るために最善を尽くしたいと思いますので、本院におかれましても全幅の御支援と御鞭撻をお願いいたします。
  371. 志村愛子

    志村愛子君 ありがとうございました。長いこと、皆様お疲れさまでございました。これで私の質問を終わらせていただきます。二分余りました。どうもありがとうございます。(拍手)
  372. 山内一郎

    委員長山内一郎君) 以上で志村君の総括質疑は終了いたしました。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。    午後五時三十七分散会