○福間知之君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
日本専売公社法等の一部を
改正する
法律案に反対の意思を表明し、討論を行うものであります。
反対理由の第一は、たばこ専売事業の今日的
状況とその役割りについての認識が不十分なことであります。
専売公社は、
昭和二十四年に公共
企業体として発足して今日に参りましたが、その事業運営は
財政収入の確保にのみ重点が置かれ、公共
企業体としての公共性、公益性についての施策や配慮が十分なされないまま現在に至っていると言えるのであります。すなわち、たばこ益金の追求のみが先行し、高単価
政策の誘導を強めてきた結果、消費者のためのたばこの供給という視点や、消費者サービス、喫煙と健康問題などに対しても十分な対応が行われずに至ったのが今日までの姿勢でありました。
専売経営にあっては、公共
企業体としての公共性や
社会的
責任を十分に配意し、民主的な経営を図ることが何よりも重要であるにもかかわらず、
政府の今回の
改正案にはその認識がきわめて不十分であり、まことに遺憾であります。
第二に、今回の平均二一%という値上げ幅の大きさと実施時期とがいずれもインフレ促進に拍車をかけることであります。
周知のように、
わが国の物価情勢は危険水域に入ったと言っても過言ではありません。本年二月の卸売物価は、年率で三六・一%という狂乱物価当時の水準、すなわち、四十八
年度二二・七%、四十九
年度二三・五%をしのぐ異常な高騰であります。この卸売物価の高騰は消費者物価に波及し始め、二月の東京都区部の消費者物価は、前年同月比七・六%の上昇となっています。新
年度の消費者物価上昇率は、
政府見通しの六・四%をはるかにオーバーして二けた台に乗ることが必至の
状況であります。
物価抑制が今年最大の政治課題と言われながら、今年ほど公共料金値上げがメジロ押しになっている年はないのであります。まさに
政府主導の物価値上げオンパレードにほかなりません。今年に入ってからの消費者米価の値上げを初め、新
年度を迎えるに際しこれらの公共料金の一斉値上げは
国民生活を一段と圧迫し、インフレ促進となることは明らかであります。
政府が物価抑制を真剣に
考えているならば、いまこそ率先して公共料金引き上げを抑えることが先決であります。
政府みずからがインフレマインドをあおるような公共料金の引き上げは断じて容認できません。
反対理由の第三は、製造たばこ定価法の
改正としての定価改定の手続に問題を見るのであります。
すなわち、一・三倍までの定価引き上げを
大蔵大臣の認可に任せるといういわゆる法定制の緩和
措置は、
財政民主主義に反するのであり、たばこの定価は、
財政法第三条、すなわち、国の専売価格は
国会の議決に基いて定めなければならないという
規定によるべきなのであります。しかるに、今回の
措置が実施されれば、
国会審議を抜きにして
行政の裁量権を拡大するいわゆる弾力化条項の発動がなされるのであり、それは
国会軽視、立法権の侵害と言わざるを得ません。価格形成に全く競争原理が働く余地がないたばこ独占事業の専売価格であるだけに、価格決定に当たっては今日まで
国会審議を通じて
国民の理解を求めることとしてきたところであります。
弾力化条項は、同時にまた、たばこ事業が
財政専売に徹するために、
国民の負担を、換言すれば間接税の
増税を、行
政府の
判断いかんによって随意に実施できる道を開くことにもなり、
わが国税制の抜本的
改革が必要とされる今日、このようななし崩し的大衆
増税の
手段を認めるわけにはいかないのであります。
第四の理由は、喫煙と健康問題についての対策がきわめて立ちおくれていることであります。
わが国の喫煙人口は三千五百万人の多くに上っておりますが、それに引きかえ、喫煙と健康問題については、WHOの諸勧告を初め欧米各国の慎重な対応に比較して、
わが国の研究の不備の著しさを
指摘しなければなりません。特に、研究体制の充実強化は言うに及ばず、世界各国における諸情報や研究結果についても、
政府・公社当局が進んで
国民、消費者に公開することが国有
企業としての責務であるはずでありますが、その姿勢はいまなお消極的であることを
指摘せざるを得ないのであります。
反対の第五は、今回の
改正によっても今日のたばこ産業の現状にとっては何ら
改善策とならないということであります。
たばこは、
昭和五十年の大幅値上げ以来その需要は横ばいの
状態にあり、しかも機械化、
合理化は進んでおるのが実態であります。値上げによる需要減退とあわせ、専売労働者の
雇用の不安や、葉たばこ耕作面積も生産調整の強化によってかつての八万ヘクタールから五万ヘクタールに激減し、葉たばこ耕作者の経営不安も一層強まってきているのであります。
最後に、今回の納付金率の法定化が公社の経営
責任を一応明らかにする一方で、紙巻たばこ四四・五%から五六・五%という専売納付金率はきわめて高率の設定であり、この増収分は約二千二百億円と見込まれるのであります。
このように大幅な納付金、たばこ消費税の引き上げは、そこに公社としての公共性が失われ、
国民大衆からの収奪を目的とした
財政専売に終始する公社の姿勢が浮かび上がってくるのであります。
このように見てまいりますと、今回の法
改正は、たばこ産業についての将来展望が全く不明確であり、多くの不安材料を包含していると言えるのであります。
以上、数点にわたり反対理由を申し述べてきましたが、今回提案の専売公社法等の一部を
改正する
法律案を一言で言えば、値上げによる消費者の負担増とインフレの促進、
財政民主主義の後退、たばこ産業
関係者の
雇用不安と経営不安の拡大等々、積極的評価を下せるものは何一つなく、単に
財政収入確保を目的とした内容となっており、
国民の合意を得るのはきわめて困難な
改正内容と断じなければなりません。
わが党はこの
法律案に反対することを重ねて表明し、私の討論を終わります。(
拍手)
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