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1980-01-25 第91回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年一月二十五日(金曜日)     開 会 式  午前十時五十八分 参議院議長衆議院参議院の副議長常任委員長特別委員長、議員、内閣総理大臣その他の国務大臣は、式場に入り、所定の位置に着いた。  午前十一時 天皇陛下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。    〔一同敬礼〕  午前十一時一分 衆議院議長灘尾弘吉君は、式場中央に進み、次の式辞を述べた。    式 辞   天皇陛下の御臨席をいただき、第九十一回国会開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。   現下わが国をめぐる内外の諸情勢はまことにきびしいものがあります。   このときにあたり、われわれは、外に対しては、広く諸外国との友好親善関係を深め、世界平和の確立に寄与するとともに、内においては、財政の再建、社会福祉増進等各般にわたり適切な施策を強力に推進し、もつて国運の隆昌をはかり、ここに迎えた新しい年代を平和と繁栄の実りあるものといたさなければなりません。   本年は、わが国議会開設九十周年の記念すべき年にあたります。われわれは、この際、議会政治の足跡をあらためて顧みるとともに、議会制民主主義の健全な発展に一層の努力を払わなければなりません。   ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。  次いで、天皇陛下から次のおことばを賜った。    おことば   本日、第九十一回国会開会式に臨み、全国民を代表する諸君と親しく一堂に会することは、私の深く喜びとするところであります。   国会が、永年にわたり、世界の平和と我が国の繁栄のため、たゆみない努力を続けていることは、深く多とするところであります。   現下内外の厳しい諸情勢に対処し、国民生活安定向上、諸外国との友好親善維持増進を図るためには、全国民が相協力して、なお一層の努力を重ねることが重要であると思います。   ここに、国会が、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。    〔一同敬礼〕  衆議院議長は、おことば書をお受けした。  午前十一時七分 天皇陛下は、参議院議長の前行で式場を出られた。  次いで、一同式場を出た。    午前十一時八分式を終わる      ─────・───── 昭和五十五年一月二十五日(金曜日)    午後三時十二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二号   昭和五十五年一月二十五日    午後三時開議  第一 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、請暇の件  一、常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  以下 議事日程のとおり      ——————————
  2. 安井謙

    議長安井謙君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  桧垣徳太郎君から海外旅行のため来る二十八日から十五日間、加瀬完君から病気のため三十日間、それぞれ請暇申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安井謙

    議長安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。      ——————————
  4. 安井謙

    議長安井謙君) この際、お諮りいたします。  建設委員長浜本万三君から、常任委員長を辞任いたしたいとの申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 安井謙

    議長安井謙君) 御異議ないと認めます。よって、許可することに決しました。      ——————————
  6. 安井謙

    議長安井謙君) つきましては、この際、欠員となりました建設委員長選挙を行います。
  7. 片岡勝治

    片岡勝治君 建設委員長選挙は、その手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  8. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 私は、ただいまの片岡君の動議に賛成いたします。
  9. 安井謙

    議長安井謙君) 片岡君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 安井謙

    議長安井謙君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、建設委員長大塚喬君を指名いたします。    〔拍手〕      ——————————
  11. 安井謙

    議長安井謙君) 日程第一 国務大臣演説に関する件  内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、正示国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。大平内閣総理大臣。    〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 第九十一回国会が再開されるに当たり、内外の諸情勢についての見解と、これに対処する所信を明らかにいたしたいと存じます。  われわれは、いよいよ一九八〇年代に第一歩を踏み出しました。  この新たな時代の黎明に当たって、内外情勢を展望するとき、われわれは、そこに明暗二つ要素が複雑に絡み合った姿を見出すものであります。  今日の世界におきましては、各国相互間の依存関係が一段と高まる中で、国際社会多元化傾向はいよいよ強まってまいりました。すでに幾つかの地域においては国際的緊張が異常な高まりを見せ、最近では、ソ連アフガニスタンへの軍事介入もありまして、米ソ間のデタントにも微妙な変化が見られます。同時に、通商上の摩擦は増大し、国際通貨にも多くの問題が生じております。エネルギー資源制約も一層緊迫化し、各国経済はおしなべてインフレと失業の双方からの脅威にさらされております。また、発展途上国の目指す経済開発も大きな試練に遭遇いたしております。他方地球社会を一つの共同体としてとらえ、国際協調によりまして、国際社会の直面する困難を打開しようとする動きも見ることができます。いずれにいたしましても、国際社会は複雑な要素が交錯し、一歩その対応を誤れば破局を招来しかねない岐路に立っておると言えましょう。  国内におきましては、経済高度成長によって豊かな生活を実現することができましたが、その成長の後遺症として、公害、資源制約都市過密化など深刻な問題をもたらし、人間関係にもさまざまなひずみが生じております。経済高度成長を支えた条件はすでに過去のものとなり、加うるに、社会高齢化も進み、産業構造生活様式もこれを改めなければならない状況に立ち至っております。中央と地方、政府と民間、労働者使用者などの間を律してまいりました既存の制度や慣行の中には、もはや十分にその機能を果たすことができなくなり、その見直しが要請されているものも少なくありません。しかし、同時に私は、国民の間にこうした課題に進んで取り組もうとする意欲が強まりつつあることを感ずるものであります。こうした活力を新しい時代の開拓に結集することができるかどうかがわれわれの将来を左右することになると申すことができましょう。  今日における人類の課題は、これまでに築き上げてまいりました成果をどうすればこの困難な時代を超えて二十一世紀に引き継ぐことができるかということであります。私は、われわれが二十一世紀においても活力のある生存を確保できるか否かは、まさにこの八〇年代の十年間におけるわれわれの英知と努力にかかっているように思うのであります。  この重大な岐路とも言うべき八〇年代を乗り切るため、わが国内外にわたりまして必要な改革対応が求められております。  われわれは、まず第一に、重大な試練にさらされておる基本的な国際秩序維持するために、わが国国際的地位にふさわしい役割りと責任を積極的に果たさなければなりません。そのため、内外の諸施策を整合的に展開し、国際問題に対する受動的な対応から主体的なそれへ脱皮することが緊要な課題であると考えます。  第二に、技術革新に果敢に挑戦し、新たな環境に適応し得るよう産業構造改革生活様式の転換を大胆に進めなければなりません。これによって石油に依存した体質からの脱却を図ることが当面の急務であると考えます。  第三に、これまでの近代化の精華を踏まえ、民族の伝統と文化を生かした日本型福祉社会建設してまいらなければなりません。そのため、人工と自然の調和潤いのある人間関係創造に努めることが必要であると考えます。  第四に、これらの厳しい試練を克服する基礎的要件として、政治行政が公正かつ清廉で、国民信頼にこたえるものでなければなりません。そのためには、政治の倫理を高め、行政の綱紀を正し、時代変化国民要請に対し適確な展望を示す努力が不可欠であると考えます。  私は、この四つを一九八〇年代の道標として内外施策展開してまいる必要があると考えております。  わが国対外政策基本は、自由主義諸国との連帯関係強化し、これを基盤として全世界友好協調の輪を押し広げていくことにあります。とりわけ、日米安保体制基礎とした米国との揺るぎない相互信頼関係わが国外交基軸でありますことは申すまでもありません。政府といたしましては、これをより確かなものとするよう、政治経済文化を通ずる日米協力増進にたゆみない努力を続けますとともに、西欧諸国を初め自由主義諸国との協力関係を強めてまいる考えであります。  私は、地球上のたれしもが強く平和を希求していると信じております。しかしながら、一部の国が、いまなお、力をもって自国の立場を主張し、世界の平和と安定を脅かしている現実は、まことに遺憾と言わなければなりません。  ソ連アフガニスタンに対する軍事介入は、いかなる理由によっても正当化できないものであります。アフガニスタン国内問題は、同国自身にゆだねられなければなりません。わが国といたしましては、ソ連軍の速やかな撤退を求めるとともに、そのための国連緊急特別総会の決議を強く支持するものであります。  政府といたしましては、この重大な事態解決に資するため、米国との連帯を中軸として、欧州その他の友好諸国との協調のもとに、わが国にふさわしい努力を重ねてまいる考えであります。わが国は、これまでも、国連などにおける活動ソ連との人事交流などの面でその立場を示してまいりましたが、今後とも、事態推移に応じ、内外の世論を考慮しながら、ココムによる輸出規制強化などを含む適切な措置を検討実施してまいる所存であります。そして、それがたとえわが国にとって犠牲を伴うものでありましても、それを避けてはならないと考えております。また、わが国として、他の友好諸国措置を阻害し、あるいはその効果を減殺するようなことはいたさないつもりであることもあわせて明らかにしておきたいと思います。さらに、パキスタンを初め周辺諸国の安定を維持するため、それらの国の要請に応じ欧米諸国協調して経済面での協力を積極的に検討してまいりたいと考えております。  テヘランにおける米大使館占拠事件は、国際社会基本的秩序を脅かす不法行為であり、人質の拘束は人道的にも容認し得ないものであります。私は、人質が一日も早く解放され、この事態が平和的に解決されることを強く希望いたしております。このため、わが国としては、今後とも国連中心とする国際的な努力を積極的に支持してまいるとともに、事態推移に応じまして、人質早期解放を目的とした方途につき、米国を初め欧州などの諸国協調して適切に対処してまいる考えであります。  毎年行われる主要国首脳会議が、世界経済の安定的な運営に大きく役立っておりますことは申すまでもございません。六月にベネチアで予定されておる次回会議におきましては、エネルギー問題を初め国際経済上の諸問題について率直に話し合い世界経済の安定と拡大に向って一層努力してまいる所存であります。  さらに、東京ラウンド交渉成果につきましては、国会の御協力を得まして、所要国内手続を急ぎ、その誠実な実施に努める方針であります。わが国対外取引につきましては、さきにこれを原則自由のたてまえに改める法律改正が成立いたしましたが、その早期実施を目指して所要の準備を進めております。  南北問題は、その解決がますます困難の度を加えつつありますが、国際社会の安定のためにゆるがせにできない喫緊の課題であります。わが国の国際的な役割りを積極的に果たす立場から、開発途上国に対する経済協力は一層充実させていかなければなりません。私は、厳しい財政事情の中にありましても経済協力予算の拡充には特に力を入れてまいりました。そして、その実施に当たりましては、受益国の意思を尊重しつつ、人づくり農業開発並びにエネルギー問題の解決に重点を置いてまいる考えであります。  国家間の平和と友好関係も、人間同士関係と同じく、直接の触れ合いによる相互理解信頼基礎でございます。  私は、昨年十二月上旬に中国を、本年一月中旬に豪州ニュージーランドを訪問してまいりました。中国におきましては、八〇年代における日中関係のあり方を中心に率直かつ有益な意見交換を行いました。わが国としては、日中間平和友好関係が、アジアひいては世界の平和と安定につながるとの立場から、中国経済建設に対し政府借款の供与を行うとともに、文化面における交流を一層深めてまいることにいたしました。  豪州ニュージーランドにおきましては、これら両国とわが国は、相互補完関係にあるパートナーといたしまして、さらに同じ太平洋国家のよき隣人といたしまして、その創造的な協力関係発展させてまいる必要があることにつき意見の一致を見ました。また、太平洋をめぐる地域全体の安定と発展を期するため、環太平洋連帯構想を初め関係諸国間の多角的な協力関係を進めることにつきましても有意義な話し合いを行うことができました。  私は、今後とも、より積極的、より主体的に、世界各国首脳との話し合いを深めてまいる考えであります。  わが国ASEAN諸国との友好協力関係は、現在あらゆる分野で良好であり、今後ともより緊密なものとするよう努めてまいる考えであります。また、わが国は、インドシナ地域における事態を深く憂慮しており、ASEAN諸国とともにこの地域における平和の回復のための努力を続けてまいる考えであります。インドシナ難民の救済につきましては、資金面での協力はもとより、医療救援活動、本邦への定住促進などに一層の努力を払ってまいる考えであります。  わが国は、朝鮮半島の平和の維持緊張の緩和を強く希望し、このための国際的な環境づくり努力を払うとともに、現在韓国において進められておる秩序ある変革への動きを歓迎し、日韓関係をさらに発展させていきたいと考えております。  中東地域につきましては、公正かつ包括的な中東和平が一日も早く実現することを切望いたしております。わが国としても、これら地域諸国との交流を一段と深めますとともに、その国づくりにも協力してまいる所存であります。中南米及びアフリカ地域につきましても、引き続き協力関係を進展させていく考えであります。  ソ連との関係につきましては、すでに触れたソ連アフガニスタンへの軍事介入に加え、北方領土におけるソ連軍軍備増強というきわめて遺憾な事態が生じております。政府といたしましては、かかる事態が速やかに是正され、領土問題を解決して平和条約を締結し、日ソ関係を真の相互理解信頼に基づいて発展させることが可能となることを切望いたす次第であります。  国の安全は、外交防衛内政各般にわたる総合的な施策展開によりまして図られるべきものであります。政府は、平和的な国際環境をつくり上げる外交努力秩序正しい内政充実を図りながら、日米安全保障体制基軸として、自衛のために必要な限度において質の高い防衛力整備に努め、わが国にふさわしい防衛体制確立を図ってまいる方針であります。  昭和四十八年の石油危機に際しまして、わが国は、いずれの国にも劣らないすぐれた対応力を発揮することができました。しかし、今日直面している第二の石油危機は、さらに一段と厳しく、その対応を誤るならば、わ が国経済は救いがたいインフレと不況に襲われ、今日の経済水準維持することすら至難になると思うのであります。  最近の石油価格は、昨年一年間に二倍にも達しました。この値上がりは、国際収支の悪化、円相場の下落、さらには卸売物価の著しい上昇をもたらすばかりでなく、企業経営を圧迫して経済成長を妨げ、雇用維持にも不安を投げかけております。  かかる事態に対処いたしまして、われわれはまず石油消費節約を進めなければなりません。政府は、昨年五%の消費節減国民にお願いいたしましたが、さらにこれを強化するため、先般、諸外国に先がけて七%の節減を進める方針を固め、その具体的措置を決定いたしました。私は、国民各位の御理解と御協力によりまして、所期の目標が実現されることを強く期待いたしております。  二十一世紀を展望するならば、われわれはまた、エネルギー供給構造石油依存型から脱却させる戦略を打ち立てなければなりません。政府は、輸入石油依存度を現在の七五%から十年以内に五〇%程度に引き下げることを目標として、代替エネルギー開発にできる限りの頭脳と資金を傾注してまいる考えであります。原子力につきましては、安全対策強化を図りながら原子力発電推進新型炉開発に努めますとともに、核拡散の防止に協力しながら自主的な核燃料サイクル確立を図ってまいります。同時に、環境保全に配慮しながら、石炭液化、太陽熱、地熱などの新エネルギー開発利用などを進めてまいります。そのため、昭和五十五年度におきましては、エネルギー関連予算について三一%という大幅な伸びを確保いたしますとともに、新エネルギー総合開発機構を設置するなど、その推進体制整備いたしつつあります。  しかし、当分の間、エネルギー源の多くを石油に依存しなければならないわが国といたしましては、まず石油供給確保が緊要であります。政府は、消費国間の国際協調を保ちながら、産油国との相互協力関係推進などにより石油供給源多角化に努めております。石油の備蓄は、昨年末で九十九日分に達し、灯油その他の石油製品につきましても十分な在庫を確保しておりますので、当面、その供給に不安はないものと考えております。  次に、石油価格との関連から、物価について申し上げたいと思います。石油価格上昇は、端的に言って、わが国から産油国に所得が移転することであり、この負担の増大は、経済の各分野で適正に分担してまいらなければならないものであります。私は、企業労働組合を初め全国民がこの点に正しい理解を持たれ、節度のある態度をとられることが肝要であると考えます。もちろん政府といたしましては、石油価格上昇に伴う便乗値上げなどの不当な行為を厳重に監視いたしますとともに、電力、ガスなどの公共料金につきましては、経営に徹底した合理化を求め、その値上げは真にやむを得ない範囲にとどめる考えであります。その他生活関連物資につきましても、その供給確保価格動向の監視、流通機構合理化などの対策推進してまいります。  物価の安定こそは、国民生活の安定の基礎をなすものであります。政府は、景気、雇用維持にも留意しながら、当面、特に物価の安定を重視いたしまして、機動的な経済運営を行ってまいる方針であります。  他方、われわれは、省エネルギーを目指す産業構造改革を積極的に進めなければなりません。エネルギー関連技術を初めとする技術革新を積極的に進め、これを原動力として産業構造高度化推進することが目下の急務であると思います。中小企業につきましても、その特性を生かしつつ、こうした厳しい環境変化対応できるよう、その対策には一層真剣に取り組んでまいる所存であります。  農業につきましては、食糧の安定的な確保が国政の基本であることに思いをいたし、需給事情エネルギー事情などの厳しい環境対応して、八〇年代の農業の進むべき方向を明らかにしながら、生産性の高い近代的農業経営を中核に、食生活動向地域の実態に即して農業生産の再編成を推進し、これを通じて自給力向上を図ってまいります。また、森林資源整備と林業の振興に努めますとともに、二百海里時代に即して、周辺水域内漁業振興漁業外交による遠洋漁場確保に努めてまいります。  私は、文化時代対応した二十一世紀へ向けての国づくりの理念として、田園都市国家構想家庭基盤充実を提唱し、日本型福祉社会建設のための方策を検討してまいりました。今日、平和と自由と豊かさの中で、多くの人々がそれぞれの個性創造力を伸ばし、真の生きがいを求めている姿は、まさに文化時代にふさわしいものであると思います。  二十一世紀へ向けての国づくり基本は、人々の創意と活力が十分に発揮されるようその環境を整えることにあると思います。  私は、田園都市国家構想を進めていくに当たりましては、かかる考え方に立ち、活力に満ち、快適な環境を備えた多様な地域社会の形成を目標として、都市においては、災害からの安定の確保にも配慮しながら緑に満ちた都市づくりを進め、農山漁村におきましては、文化的にも魅力のある村づくり推進いたしたいと考えております。  その具体的展開に当たりましては、それぞれの地域社会特性自発性を尊重しながら、第一に、自然の緑の活用都市田園をつなぐ緑の造成、暮らしの中の緑の再生を図ることにより、自然と人間との調和を期してまいります。第二に、芸術、社会教育、体育など各種の文化施設充実活性化を図り、指導者育成などを通じて、地域における文化活動展開を促進してまいります。第三に、適地技術開発を進め、多彩な地域産業振興を図り、各地域に魅力ある就業機会確保してまいります。なお、沖繩につきましては、特に地場産業育成など振興開発のための施策充実を図ってまいる考えであります。  社会の原点は家庭にあります。私は、この家庭が、みずからの努力と選択によりまして、個性豊かで、落ちつきと思いやりに満ちた場となることを期待いたしております。  家庭基盤充実させるものは、何よりも居住環境改善であります。政府は、地価の安定を図りながら、住宅地域環境質的充実に特に意を用い、とりわけ、大都市においては、その再開発を積極的に進め、高層化や新住宅技術開発活用を図り、住宅規模拡大、三世代向け住宅普及など家族構成に適した住まいの整備充実に努めます。  今日、多くの国民の関心は老後にあります。私は、高齢化社会に備えて、年金及び医療に関する制度整備を進めますとともに、昭和六十年度を目途に六十歳定年を実現し、あわせて高年齢者就業機会拡大を図ってまいります。また、生活ゆとり潤いのあるものにするため、昭和六十年度までに週休二日制の普及などを含めて西欧諸国並み労働時間を目指すとともに、健康の維持増進福祉施設地域開放ボランティア活動などを支援する措置を講じてまいりたいと考えております。さらに、婦人の生活設計多様化対応して、就業条件改善文化活動への参加機会拡大などにも努めるほか、心身障害者母子家庭などにつきましてもきめ細かな配慮をいたす所存であります。  私は、子供は未来への使者であり、文化伝承者であると思います。その健全な成長に資するため、児童福祉施策充実を図りますとともに、ゆとりのある学級編制推進し、教育の諸条件改善して、教育自発性活性化を促したいと思います。また、私は、国民の多くが生涯にわたってみずからを啓発し、それぞれの能力と個性を伸ばそうという最近の傾向を高く評価し、そのための諸条件整備充実には特に力を入れてまいりたいと考えます。  また、二十一世紀に向けて、宇宙、海洋などの新分野研究開発を積極的に進めますとともに、世界各国協力を得まして未来の科学技術に対する社会理解を深める機会をつくることにも努力してまいりたいと考えております。  政治行政が、適切に機能し得る基盤は、申すまでもなく、これらに対する国民信頼であります。  しかるに、このところ、政治行政に対する信頼を損なう事例が相次いで発生いたしました。最近防衛庁において発覚いたしました秘密漏洩事件は、国の安全にもかかわる問題であり、まことに遺憾と言わなければなりません。政府といたしましては、事件の徹底的な解明を急ぎ、綱紀の保持に一層厳しく対処いたしますとともに、かかる不祥事が二度と発生することのないよう再発の防止に全力を挙げてまいる所存であります。また、先般、いわゆる不正経理問題をめぐる一連の事件に関連いたしまして、経理処理の厳正化、勤務体制の適正化、官公庁間の接遇の自粛等の綱紀を正す具体的措置を講じました。政府は、これらの事例を真剣に反省し、綱紀の保持こそあらゆる施政の原点であるとの認識を持ちまして、絶えずみずからを厳しく戒め、行政の規律を正してまいる決意であります。  政治倫理の確立につきましては、すでに明らかにいたしましたとおり、政治資金の明朗化、企業倫理の確立行政における公正の確保、制裁法規の整備強化などを重点に準備と検討を進めております。公正で金のかからない選挙制度の実現につきましても、国会との緊密な連携のもとに、その基本的あり方を初め、選挙運動の規制などについて鋭意検討を行っております。贈収賄罪の刑の引き上げを内容とする刑法の一部を改正する法律案は近く国会に提出いたしますが、その他の関係法規につきましても、成案を得次第国会に提案する方針であります。また、政治家の資産公開、政治家の倫理憲章等につきましては、事の性質上、国会の審議検討にまちたいと考えております。  行政改革につきましては、政府は、国民の強い要請にこたえて、簡素で効率的な政府を目指して不断の努力を続けてまいる決意であります。昭和五十五年度は、その第一歩として、相当規模の改革実施に移すことといたしました。  まず、来年度から向こう五カ年間に、三万七千人を超える国家公務員の定員削減を実施いたしますとともに、行政需要に応じた定員の再配置を進めてまいります。  特殊法人の整理につきましては、今後数年間に十八の法人の統廃合をなし遂げるほか、役員数の一割縮減を進めることといたしました。地方支分部局の整理合理化につきましては、管区行政監察局、財務局、地方貯金局などを含めブロック単位に設置されている機関を対象に再編成を実施すべく三月末を目途に具体案を決定することとし、県単位の出先機関につきましても、六月末までにその整理合理化の計画を決める方針でございます。また、約千二百に上る許認可事項の整理に取り組んでまいりましたが、さらに昭和五十五年度末までに約千五百に上る報告事項などにつきその廃止ないし簡素化を進めてまいります。補助金等につきましては、今後四年間に件数にして少なくともその四分の一を整理する方針で鋭意努力しております。  なお、国家公務員について、退職手当を民間の実態の調査結果に基づきまして改定いたしますとともに、昭和六十年度を目途に定年制を実施するとの方針のもとに鋭意準備を進める考えであります。  財政につきましては、公債に対する過剰依存の体質を改め、八〇年代に向けてその対応力を回復するため、昭和五十五年度の予算編成において、公債発行額を前年度に比べ一兆円減額することといたしました。また、歳出規模は前年度予算に比して一〇・三%の増加、なかんずく一般歳出については五・一%の増加に抑え、最近二十年間で最も低い水準にとどめました。さらに、歳入面においては、新規の増税を避け、企業関係の租税特別措置の整理などにより必要な財源を確保することとし、財政再建の第一歩を踏み出したところであります。政府としては、国民理解を得ながら、今後数年間に財政の再建をなし遂げる決意であります。  また、国と地方自治体との事務の配分の見直しを進めますとともに、地方におきましても、行財政の整理改編を進め、新しい地方の時代対応した真に活力ある行政展開されるよう期待いたしております。  最近、いわゆる情報の公開と管理についての論議が高まっております。政府は、これまでもその改善努力を重ねてまいりましたが、今後とも情報の円滑なる提供と適正な管理を図るため鋭意検討を行い、所要改善措置を講じてまいる所存であります。  七〇年代を振り返ると、われわれは、公害、エネルギー供給の不安、国際摩擦の多発など、数々の大きな試練に遭遇いたしました。幸いにして、わが国は、時代変化に対する国民のたぐいまれな適応力によりまして、これによく耐え、諸外国にも誇り得る成果をおさめることができました。  私は、一九八〇年代に船出するに当たり、この七〇年代に得た自信と教訓を生かしながら、国民との合意の上でわれわれの進路を選択し、揺るぎない社会建設に向かって勇気ある前進を続けることを誓うものでございます。  日本人のすぐれた資質とひたむきな努力こそ、未来を切り開く力であります。いまこそそれを社会に根づかせ、育て上げることによりわれわれの未来を確かなものとし、人類の文化に貢献してまいりたい、これが私の願いであります。  国民各位の御理解と御協力をお願いしてやみません。(拍手)     —————————————
  13. 安井謙

    議長安井謙君) 大来外務大臣。    〔国務大臣大来佐武郎君登壇、拍手
  14. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 第九十一回国会が再開されるに当たり、わが外交基本方針につき所信を申し述べます。  今日われわれは一九八〇年代の関頭に立っております。  七〇年代は、国際関係の安定化への重要な動きが見られましたが、その反面、新たな紛争や緊張も生じました。  日米両国は中国との関係を正常化いたしました。インドシナにおいては長期間にわたる戦火が一たんは静まりながら、また新たな対立と紛争が生まれております。米ソ間では、SALT協定合意に見られるように、緊張緩和の動きも見られましたが、最近に至りアフガニスタン問題を契機として新たな局面を迎えております。中東においても、エジプト・イスラエル間の平和条約が締結されましたが、包括和平への道はなお険しく、イラン情勢も予断を許しません。  また、七一年のドルショック及び七三年の石油危機等を契機として世界経済は大きな構造変化を経験しました。多くの国は長期的不況、インフレ等の困難に直面し、とりわけエネルギー問題が克服すべき最重要課題としてクローズアップされております。  このような七〇年代を踏まえつつ八〇年代を展望すると、世界の平和と経済の安定発展への国際的努力が引き続き行われるでありましょうが、政治経済の両面において幾多の困難が予想され、一九八〇年代は、世界の平和と経済発展にとり、まことに大きな試練時代となりましょう。  この中にあって、わが外交に課せられた使命は、まことに大きくかつ困難なものと言わざるを得ません。  外交は、まず何よりも国民生活と安全を守ることであります。  国民の安全の確保については、節度ある質の高い自衛力と日米安全保障条約とから成る安全保障体制を堅持することが基本であることは言うまでもありません。他方わが国が国際関係で平和に徹することを世界に周知せしめ、身をもって平和外交を実践し、すべての国との友好関係維持発展に努めることが肝要であります。国の安全保障をより広い観点からより総合的に考えた場合、外交の果たすべき役割りにはきわめて重要なものがあると言わねばなりません。  また、エネルギー資源の大部分、その他の主要鉱物資源及び食料の大半を海外に依存しているわが国にとって、自由で多角的な貿易経済関係維持拡大することは国民生活の土台を守る基本的方途であります。そのためには、単に経済的側面だけではなく、政治文化などあらゆる面を考慮した総合的な外交推進することが肝要であります。  わが国は、さらに進んで、世界の平和の維持世界経済繁栄に積極的に貢献することが必要であります。  わが国は、経済力の飛躍的増大を背景に近年国際的比重が高まり、その傾向は八〇年代を通じて強まることが予想されます。世界は、わが国国際社会において、より積極的な政治的、経済的な役割りを果たすことを期待しております。わが国は、すでに七〇年代においても相応の役割りを果たしましたが、八〇年代にはさらにその国際的地位にふさわしい責任と役割りを果たしていかなければなりません。  世界平和の維持については、平和に徹するわが国基本立場を踏まえ、問題を内蔵する世界の諸地域からの不安定要因の除去にこれまで以上に貢献し、世界平和が確保されるような国際環境づくりに積極的に参加していくことが必要であります。  現在、世界経済インフレーションの傾向が強まる中で、成長率の鈍化、厳しい雇用情勢生産性の伸び悩み、国際収支不均衡の拡大解決すべき幾多の問題を抱え、また、最近のエネルギー情勢のため、その先行きは一層厳しくなるものと思われます。わが国は、世界経済の主要な担い手としての自覚と責任を持って、世界経済の抱えるこれらの諸困難に関係国と協調しつつ対処していくとともに、特に、開発途上国経済建設に積極的に貢献することが必要であります。  このように、八〇年代におけるわが外交基本姿勢は、世界の中の日本という視点に立つことでなければなりません。世界の平和と安定あっての日本との考え方に立って、世界の出来事にいままで以上の関心を払い、また責任を持って関与する用意がなければなりません。このような観点から世界の平和の維持経済発展に、より積極的に貢献することは、国際社会における信頼を一層高めていくゆえんであり、また、とりもなおさずわが国民の生活と安全を守ることになるのであります。  私は、このような認識に立ってこれからの外交を進めてまいる決意であり、以下、その具体的な方針について申し述べます。  日米安保体制基礎とした日米友好協力関係維持強化は、引き続きわが国外交の礎であります。  国際社会の一員としてますます大きな責任を担いつつあるわが国が、世界の平和と安定のためにその外交努力強化していく上においては、米国との世界的視野に立った信頼あるパートナーとしての協力関係を一層発展させていくことがきわめて重要であります。  日米経済関係については、今後とも昨年五月の日米共同声明に盛られた諸事項を忠実に実行し、日米経済関係上の諸懸案を着実に解決に導いていくとともに、今後両国が日米経済関係の中期的展望をつくり上げていくことが必要であり、この点、日米経済関係諮問グループの活躍にも期待したいと考えております。  過去十年間にも両国間に摩擦を生じたこともありますが、幸い、両国が基本的利害において一致するという認識によって重大な局面に至ることは避けられております。今後とも、両国友好関係維持について、双方が不断の努力を行うことが必要であります。  アジアは、わが国がその平和と発展に主要な役割りを果たすべき地域であります。  わが国は、アジア全域の平和と安定を目指す外交努力を今後一層強化するとともに、アジア諸国農業、工業の生産拡大雇用の増大、貿易の発展人づくり等に対する協力をさらに進めていく決意であります。  朝鮮半島については、わが国は、同地域の安定と緊張緩和に資するため、関係諸国との意思疎通を深める努力を引き続き払うものであり、かかる考え方をもって実質的な南北対話の再開に向けての国際環境づくりなどに協力する所存であります。  韓国においては、現在、国民融和のための秩序ある変革への努力が進められておりますが、わが国としては、かかる努力が実を結ぶことを期待するとともに、相互の友好協力関係をさらに一層発展させてまいる所存であります。北朝鮮との関係につきましては、今後とも貿易、経済文化等の分野における交流を漸次積み重ねてまいる考えであります。  先般、私は、大平総理大臣に随行し中国を公式訪問いたしました。中国滞在中、日中両国首脳の間で、アジア情勢及び一九八〇年代に向けての日中両国関係のあり方について率直な意見交換が行われました。会談において、わが国は、中国経済建設に対し積極的に協力を行う用意がある旨伝えるとともに、その際、軍事面での協力は行わない、わが国と他のアジア諸国との関係、なかんずくASEAN諸国との伝統的な関係を犠牲にしない、日中関係は排他的なものでなく先進工業諸国との協調のもとに協力するとのわが国方針を伝えるとともに、この点につき中国側の理解を得ました。また、日中両国間の文化交流をより緊密化することに意見の一致を見ました。  私は、先般の訪中で得られた成果を踏まえ、日中平和友好関係の一層の発展のため引き続き努力してまいる所存であります。  東南アジアの安定と発展に着実な成果を上げつつあるASEAN諸国努力を支持しこれに協力することは、わが国アジア外交の重要な柱であります。私は、現在の良好な日本、ASEAN関係基礎とし、これら諸国との友好協力関係の一層の充実に引き続き努力を重ねていく考えであります。  インドシナ難民問題は、人道上及び政治上の重大な問題になっております。  わが国は、この問題の解決のため、国連難民高等弁務官事務所のインドシナ難民救済計画の一九七九年所要経費の半額負担、及びカンボジア難民に対する医療面を含む官民挙げての救援活動を行うとともに、本邦への定住促進等の努力を払っておりますが、今後ともこれらの各分野協力を積み上げていく所存であります。  インドシナ難民問題の根本的解決はこの地域の平和と安定なしには達成できず、このためにはカンボジアに永続的な平和を回復することが必要であります。わが国は、ASEAN諸国とも協調しつつ、関係諸国に働きかけ、平和のための役割りを果たしていく所存であります。  南西アジア地域については、これら諸国との相互理解を一層促進するとともに、その経済開発のためにできる限りの貢献を行っていく決意であります。  中近東地域情勢はイラン及びアフガニスタン等をめぐり緊迫の様相を呈しており、今後の推移は、世界政治経済両面にわたり重大な影響を及ぼすものとして注目を要します。このような情勢にかんがみ、対中近東外交は八〇年代のわが国外交の重点の一つとして推進していくべきものと考えます。  わが国と中近東諸国との関係は、その重要性についての認識の高まりを背景に、近年あらゆる分野において緊密の度を加え、相互依存関係も急速に深まりつつあります。わが国としては、このような状況のもとで、これら諸国との友好協力関係維持増進により、真に歓迎されるわが国のプレゼンスを中近東地域確立していく必要があると考えます。  このためには、わが国としては、中近東諸国国づくり人づくりに貢献するとともに、これら諸国との間に歴史、宗教及び文化の面における相互理解を深めていく必要があります。  さらに、中東和平の実現のために、エジプト・イスラエル平和条約が、公正、永続的かつ包括的和平につながるべきものであるとの立場から、わが国としてもできる限りの協力を行っていく所存であり、従来より行ってきたわが国とPLOとの対話についても引き続き強化していく方針であります。  ソ連アフガニスタンに対する軍事介入は、国際法及び国際正義に反する行為であってきわめて遺憾であり、国際社会の平和と安定のために深い憂慮を表明せざるを得ないものであります。わが国としては、アフガニスタン国民内政不干渉、自決権尊重の原則に基づき、みずからの手で国内問題の解決を図るよう切望いたします。わが国としては、ソ連に強く反省を求め、ソ連軍の速やかな撤退を要求するものであり、さきに国連緊急特別総会で圧倒的多数をもって採択された決議を強く支持するものであります。また、わが国としても、自由と平和を目指す国際社会の一員として、米国を初め欧州その他の友好国との協調のもとにこうしたわが国の姿勢を具体的な形で示す必要があると考えており、かかる観点から日ソ交流のあり方について検討を進めております。  一方、ソ連軍事介入は、周辺諸国に直接の影響を及ぼしており、これら諸国の平和と安定を維持するための国際的な努力が払われるべきであります。この意味で、パキスタンに対し、同政府要請があれば、同国の民生と経済の安定のため、経済協力拡大について、他の関係国とともに積極的に検討したいと考えております。最近、アフガニスタンより多数の婦女子、老人を含む五十万に上る難民がパキスタンに流入しております。わが国は、今般、国連難民高等弁務官よりの呼びかけにこたえ、十億円相当の救援物資を供与することに決定いたしました。  また、わが国としては、今回の事件に対する第三世界諸国、なかんずくイスラム諸国の深刻な認識を理解するものであり、これら諸国への支持を表明するものであります。  私は、テヘランにおける米国大使館占拠、米国外交人質事件がかくも長く続き、いまだ解決を見ていないことを深く憂慮するものであります。  この事件は、外交使節団の不可侵という国際社会基本的秩序に対する重大な脅威を形成するという意味で、わが国の盟邦たる米国のみならず、わが国を含む国際社会全体として放置できない問題であります。また、人質の拘束は人道的にも容認し得ません。  わが国としては、今後とも国連などの国際的努力を積極的に支持していくとともに、事態推移に応じ、人質の早期放解のための方途につき、米国を初め欧州などの諸国協調して適切に対処していく考えであります。  私は、人質が一日も早く解放され、事態が平和的に解決し、イランとわが国との友好のきずなが固められていくことを強く念願するものであります。  EC加盟諸国を初めとする西欧諸国との関係につきましては、一九八〇年代を迎え、世界の平和と繁栄のため、わが国西欧諸国協調して貢献することが望ましく、一段と幅広い協力関係を築いてまいる所存であります。  私は、一月十五日より二十日まで、大平総理大臣に随行して豪州ニュージーランドを訪問してまいりましたが、今回の訪問では、これまでの両国とわが国との友好協力関係を確認し、相互理解を深めることができました。この両国は太平洋地域協力のよきパートナーとして密接な関係にあり、わが国としては、これら両国及び南太平洋の島嶼諸国と、今後とも太平洋地域の平和と繁栄のため、より一層友好協力関係発展させてまいる所存であります。  また、太平洋地域諸国間の多角的な協力関係を進めることについても有意義な話し合いを行い、このような見地から環太平洋連帯構想につき、広範な地域的合意に基づいて、さらに検討を深めることといたしました。  ソ連との関係は、ソ連アフガニスタンへの軍事介入等により、厳しい局面を迎えております。さらに、日ソ間には、北方領土問題が最大の懸案として残されており、特に最近の北方領土におけるソ連軍軍備増強政府としてきわめて重大に受けとめざるを得ません。このため、政府としては、引き続きかかる措置の速やかな撤回を求めるとともに、北方領土問題を解決して平和条約を締結するという一貫した基本方針にのっとり、今後とも粘り強く折衝を進めていく考えであります。  近年とみに関係発展してきている東欧諸国との間には、今後とも相互理解友好関係増進に努めていく所存であります。  中南米諸国についても、政府としては、さきの臨時国会の御承認により実現した中南米局の設置によって、積極的な対中南米外交展開の態勢が名実ともに整ったことを踏まえて、発展性に富むこれら諸国との相互協力基盤をさらに広げ、友好協力関係のきずなを一層強固たるものとするよう心を新たにして努力してまいる所存であります。  ローデシア問題の解決への動きに示されるとおり、アフリカの国々は一様に平和と繁栄への強い願いと意欲とを持っております。こうした願いと意欲に対し今後とも積極的に協力していくことが、アフリカ諸国との友好協力関係を一層強化させる基礎であると私は確信しております。  各国経済の相互依存関係がとみに高まっている今日においては、国際協調強化に努め、関係各国が足並みをそろえて初めて世界経済の抱える諸困難に対処していくことが可能であります。  石油を初めとするエネルギー問題について、現在先進消費国側が果たすべき緊急かつ最も重要な課題は、石油需要の抑制、石油市場安定化のための諸措置と、石炭、天然ガス、原子力等の代替エネルギーの利用拡大及び開発による石油依存度の低減であります。石油の大消費国たるわが国としては、IEAの場を初め、他の主要先進消費国と密接に協力しつつ、責任ある対応をしなければなりません。  一方、わが国にとって必要な石油供給確保することはきわめて重要であり、このため産油国との幅広い友好協力関係を築くことも肝要であります。  同時に、スタグフレーションを克服するためには、東京サミット等で合意された生産性向上研究開発のための投資の促進等、各国経済の体質強化のための経済構造面での諸政策を各国協調して推進していくことが重要でありましょう。  さらに、わが国としては、他の諸国協調して保護主義を抑圧し、開放的貿易体制の一層の推進努力する考えであり、特に本年より実施の第一歩を踏み出す東京ラウンドの諸協定をわが国としても一日も早く実施に移すことが緊要であり、政府としても可及的速やかに受諾し得るよう最善の努力を払う所存であります。  近時、石油価格の高騰により、非産油開発途上国発展にもたらされる悪影響が問題となっておりますが、国際社会は、かかる問題を含め、南北問題全般への積極的な対応を強く迫られております。わが国としても、八〇年代における建設的な南北関係確立を図るため、今後とも南北対話に積極的に参加していく所存であります。  同時に、政府としては、政府開発援助については、本年を最終年とする三年間倍増目標を確実に達成するとともに、その後においても引き続き政府開発援助の質及び量の拡充を図ってまいる決意であります。  政府開発援助の拡充に当たっては、特に、人づくり農業開発代替エネルギーを含むエネルギー開発、インフラストラクチュアの建設などに貢献してまいる考えであります。  また、途上国が多大の関心を有する一次産品問題については、目下進行中の共通基金協定交渉の早期妥結に向け全力を挙げる方針であります。  国連における多数国間外交につきましては、特に、最近のイラン、アフガニスタン等の情勢をも踏まえて、国連がその平和維持機能を一層発揮し得るように、わが国としても創意と工夫をこらして積極的な貢献をしてまいりたいと考えております。  また、政府としては、最優先課題である核軍縮を中心とする軍縮の促進のため引き続き積極的に貢献していく方針であります。  世界諸国間の交流と相互依存関係が深まりつつある今日の地球社会にあっては、文化面での広範かつ頻繁な接触を通じる相互理解信頼の増大の必要性がますます強く認識されております。特に、諸外国との円滑な関係確保に大きく依存しているわが国の場合、積極的な文化交流推進こそ外交の重要な一環であります。したがって、政府としては、文化面での国際交流をさらに一層拡大強化すべく鋭意努力を払っていく決意であります。  以上、当面のわが外交の重要施策につき所信を申し述べました。国際情勢の厳しさとわが国の置かれた地位を考えますと、一九八〇年代は、わが外交にとり、まさに試練の時期と言っても過言ではありません。このような時期を迎えて、外交実施体制の一層の拡充強化を図ることが急務であります。また、外交推進に関し、将来にも増して幅広い国民理解と支援を得ることが肝要であります。そうして初めてわが外交は八〇年代の試練に正面から立ち向かうことができるでありましよう。  ここに国民各位の一層の御理解と御支援をお願いする次第であります。(拍手)     —————————————
  15. 安井謙

    議長安井謙君) 竹下大蔵大臣。    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手
  16. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ここに、昭和五十五年度予算の御審議をお願いするに当たり、当面の財政金融政策につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。  一九八〇年代を迎え、新たな十年への第一歩を踏み出すに当たり、七〇年代を振り返ってみますと、内外ともに、まさに試練の年月でありました。  すなわち、国際通貨体制の動揺をもって幕を開けた七〇年代の世界経済は、七三年の石油危機を契機に、激しいインフレと長期の景気停滞に直面いたしました。さらに、この難局をようやく克服しようとしたやさきに、再び石油情勢の悪化に見舞われ、経済成長率の鈍化とインフレの加速が懸念されるに至っております。  この間、わが国経済も例外ではあり得ず、激動と模索の時代を経験したのであります。  わが国の最近の経済情勢を見ますと、過去数年度にわたる公共投資の大幅な拡大国民の堅実な消費態度、企業経営努力等を背景として、国内民間需要による自律的な景気の拡大基調を確かなものにしてきており、雇用情勢も緩やかながら改善を続けております。このように、わが国経済は、国民のたゆみない努力により、長い不況を乗り越え、先進国の中で最も高い成長と安定した消費者物価維持しており、現在のところ総じて順調に推移していると申してよい状況にあります。  しかしながら、世界経済をめぐる諸情勢は、八 〇年代に入ってもますます不透明さ、不確実さを増し、わが国経済も、景気の先行きには必ずしも予断を許さないものがあり、物価も警戒を要する状況にあります。  さらに、国際収支を見ますと、経常収支が大幅な赤字を記録し、長期資本収支も流出超過傾向にあります。  加えて、財政収支の不均衡は、なお巨額なものとなっており、このまま放置するならば、経済運営上の桎梏となるおそれさえあります。  かかる内外情勢のもとにおける政策運営基本は、需給、物価雇用国際収支財政国民経済の各分野において均衡のとれた新しい社会基盤確立することであると確信しております。  このような認識のもとに、私は、一九八〇年代を充実した時代とすべく、政策運営に万全を期してまいりたいと考えております。具体的には、まず第一に、物価の安定と経済の自律的拡大維持を図っていくことであります。第二は、世界経済発展に積極的に貢献しつつ、国際収支の健全性の保持に努めることであります。第三は、財政対応力を回復するため、一刻も早く財政の再建を図ることであります。  まず第一は、物価の安定と経済の自律的拡大維持を図っていくことであります。  わが国経済を息の長い安定成長軌道に乗せていくためには、インフレ、不況、さらにはスタグフレーション、このいずれをも回避しなければなりません。このため、私としては、物価と景気の両面に細心の注意を払い、適時適切にきめの細かい経済運営を行ってまいる所存であります。  最近の物価動向を見ますと、消費者物価は今のところ比較的安定しているものの、卸売物価は原油を初めとする海外原材料価格の高騰等により相当上昇しており、物価は警戒を要する状況にあります。したがって、当面は、やや物価に重点を置いた政策運営を進めることが適切であると考えております。  このような観点から、政府は、昨年十一月二十七日、物価対策を総合的に推進することを決定したところであります。  金融政策の面におきましては、インフレ心理の醸成を防止することにより、物価上昇速度を極力抑制するため、昨年四月以降、三次にわたる公定歩合の引き上げ等の措置が講ぜられたところでありますが、引き続き通貨供給量についても十分注視し、適切な金融調節を図ってまいることとしております。  また、昭和五十四年度の公共事業等の執行につきましても、経済動向に細心の注意を払いつつ機動的に対処することにより、現下物価動向に配慮することとし、その一部を留保することといたしたところであります。この措置は、物価対策の見地からとられたものではありますが、公共事業等の機動的な執行により、景気の安定的な維持にも資することが期待されるところであります。  第二は、世界経済発展に積極的に貢献しつつ、国際収支の健全性の保持に努めることであります。  国際情勢はきわめて流動的で、石油情勢もさきのOPEC総会の結果に象徴されるように一段と不安定さを増しております。  このような厳しい国際環境の中にあって、わが国国際収支は、石油その他の一次産品価格の大幅な上昇等に伴う輸入額の増大を主因として、経常収支が大幅な赤字を記録し、長期資本収支も流出超過傾向にあります。  国際収支の健全性の保持は国際社会の一員としての責務であり、また、このような状況を放置すれば、ひいてはわが国経済の安定的な成長を阻害することになるおそれもありますので、政府としては、国際的に調和のとれた収支の改善を図るべく、着実な努力を積み重ねてまいる考えであります。  もちろん、このような情勢のときこそ、わが国は、世界経済に大きな影響を及ぼす立場にある国の一つとして、世界経済調和ある発展に積極的に貢献しなければなりません。  世界経済の円滑な発展のためには、まず、通貨の安定が不可欠であります。このためには、各国政府基礎的諸条件改善に努めるとともに、相互に緊密な連絡と協調を保つことにより為替相場の急激な変動を抑制していくことが重要であります。わが国としても、従来にも増して積極的に努力してまいりたいと考えております。  次に、世界貿易拡大のためには、自由貿易体制を維持強化していくことが急務であります。  このような観点から、先般合意に達した東京ラウンド交渉につきましては、その成果実施に移すため所要国内手続を急ぐ方針であります。  また、わが国対外取引を原則自由のたてまえに改める法律改正がさきの臨時国会において成立したところであり、その早期施行に努める所存であります。  さらに、開発途上国経済発展を支援することは、これらの国々の国民生活向上経済発展のためのみならず、世界経済全体の均衡のとれた成長確保するためにもきわめて重要な課題であります。わが国としても、ODA三年倍増、援助条件の一層の改善等、厳しい財政事情の中にあって引き続き経済協力の大幅な拡充強化を図ってまいることとしております。  第三は、わが国財政の再建であります。  国民生活の安定と景気の回復を図るため、過去数カ年にわたり政府が行ってきた積極的財政の結果、わが国財政は、特例公債を含む大量の公債に依存せざるを得ない異常な状況が続いております。今後ともこのような財政赤字を積み重ねるならば、八〇年代の新たな社会経済情勢展開の中で、財政に各種の機能の発揮が期待されることとなっても、これに十分な対応ができません。そればかりか、経済インフレ要因を持ち込むことにより、経済そのものの安定を阻害するおそれさえあります。  わが国経済の安定的な発展を達成するためには、財政の再建は緊急の課題であります。  このような考え方に立ち、昭和五十五年度予算の編成に当たりましては、強い決意のもとに、まず、公債発行額を前年度当初予算よりも一兆円圧縮することとし、財政再建の第一歩を踏み出したところであります。  財政再建のためには、まず、歳出の厳しい見直しが必要であります。昭和五十五年度予算の編成に当たりましては、一般行政経費を極力抑制するとともに、政策的経費についても根底から見直すなど、歳出の節減合理化へ格段の努力をいたしました。  さらに、行政の整理簡素化を積極的に進めるため、特殊法人の統廃合、補助金等の整理合理化等を含む行政改革計画を立案決定したところであります。  また、歳入面におきましても、税負担の公平確保の見地から、租税特別措置について思い切った整理縮減を行うこととし、また、給与所得控除の見直しと退職給与引当金の累積限度額の適正化を図ることといたしております。  しかしながら、財政再建の道は、いまだ緒についたばかりであり、今後においても一層努力することが強く求められるところであります。昭和五十五年度においては、最近のわが国経済の順調な回復を反映して、かなりの規模の税収増加を見込むことができましたが、このようなことを引き続き期待することはとうてい困難であります。したがって、今後におきましては、歳出歳入両面を通じて幅広い角度から財政再建の手だてを考えていく必要があります。  財政の健全化の達成は、まさに財政を支える国民各位の御協力によらざるを得ないのであります。国民各位の御理解を切にお願いする次第であります。  昭和五十五年度予算は、以上申し述べました基本考え方に立って編成いたしました。その大要は次のとおりであります。  第一に、一般会計予算におきましては、経費全般にわたる節減合理化に努め、特に、国債費及び地方交付税交付金以外の一般歳出の増加額を極力圧縮することにより、全体としての歳出規模を厳しく抑制することといたしました。  このため、各省庁の経常事務費を初めとする一般行政経費を極力抑制するとともに、政策的経費についても根底から見直しを行った上、各種施策の優先順位を十分に考慮し、財源の重点的、効率的配分に努めたところであります。また、補助金等については、従来にも増して積極的に廃止、減額等の整理合理化を行うことといたしました。  さらに、国家公務員の定員については、新たに策定された計画により、定員削減を着実に実施するとともに、新規行政需要に対応する増員についても厳に抑制することとし、総数の縮減を図ったところであります。  以上の結果、一般会計予算の規模は、前年度当初予算に比し一〇・三%増の四十二兆五千八百八十八億円となっております。また、このうち一般歳出の規模は、前年度当初予算に対し五・一%増の三十兆七千三百三十二億円となっております。これらの伸び率は、いずれも最近二十年間のうちで最も低いものであります。  第二に、税制の改正につきましては、まず、税負担の公平確保の見地から、利子配当所得等について総合課税に移行するための所要措置を講ずるとともに、企業関係租税特別措置等について大幅な整理合理化を行うこととしております。租税特別措置については、昭和五十一年度以降五年間にわたり、その整理合理化に力を注いできたところでありますが、今回の措置によりおおむねその整理は一段落したと言ってよいものと考えます。  さらに、給与所得控除について、この際、高額な収入部分について控除率を引き下げることとし、また、退職給与引当金について累積限度額の適正化を図ることとしております。  以上のほか、石油代替エネルギー対策の財源に充てるため、電源開発促進税の税率の引き上げ等を行う一方、土地税制について、その基本的枠組みを維持しつつ、住宅地の供給促進等の見地から所要措置を講ずることとしております。  第三に、公債につきましては、さきに申し述べましたように、財政の公債依存体質を改善するため、公債発行予定額を前年度当初予算より一兆円減額することとし、十四兆二千七百億円といたしました。この結果、公債依存度は三三・五%となり、前年度当初予算の三九・六%より六・一ポイント低下いたしております。この公債発行額のうち、建設公債は六兆七千八百五十億円、特例公債は七兆四千八百五十億円を予定しており、特例公債依存度は二二・〇%となっております。  なお、別途、特例公債の発行のための昭和五十五年度の公債の発行の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。  また、このような多額の公債の円滑な消化を図るため、資金運用部資金による引き受け二兆五千億円、公募入札による発行二兆円を予定し、国債引受団による引受予定額を九兆七千七百億円にとどめることとしたところであります。  第四に、財政投融資計画につきましては、厳しい原資事情に顧み、事業規模、貸付規模を抑制しつつ、住宅中小企業金融、エネルギー対策等緊要な施策について資金の重点的配分を行い、国民生活安定向上と福祉の充実に配意することとしております。この結果、財政投融資計画の規模は十八兆一千七百九十九億円となり、前年度当初計画に比べ八・〇%の増加となっております。  第五に、主要な経費について申し述べます。  まず、公共事業関係費につきましては、このところ、景気対策上の観点もあって、主たる財源を公債に依存しつつ、連年大きな伸びを続けてきたところでありますが、昭和五十五年度におきましては、厳しい財源事情にかんがみ、一般公共事業関係費について前年度と同額にとどめることといたしました。  しかしながら、公共事業関係費の内容については、引き続き、住宅、下水道・環境衛生等の生活関連施設の拡充に力を入れるほか、沿岸漁場整備等の推進にも配意しております。  特に、住宅対策については、住宅金融公庫の貸付限度額の引き上げ、住宅宅地関連公共施設整備の一層の推進等、その充実を図ることとしております。  次に、社会保障関係費につきましては、高齢化の進展等に備え、必要な制度改正を進めるとともに、真に緊要な施策について重点的な配慮をいたしております。  まず、厚生年金、国民年金等について、遺族年金等の給付改善を図るとともに、支給開始年齢の段階的引き上げ等年金財政の長期的安定に資するための所要措置を講ずることとしているほか、医療保険についても、社会経済変化に即応し、給付と負担の適正化を図る見地から、健康保険制度の改正を行うこととしております。  また、生活保護基準の引き上げ等を行うとともに、心身障害者対策、老人対策等について意を用いているところであります。  さらに、雇用対策については、中高年齢者等の雇用安定のための諸施策を引き続き実施することとしております。  文教及び科学振興費につきましては、厳しい財政状況との調整を図りつつ、第五次学級編制及び教職員定数改善計画を発足させることとしているほか、緊要度の高い小中学校校舎等の整備、私立学校に対する助成等について特段の配慮をいたしております。  エネルギー対策費につきましては、流動的な国際情勢等にかんがみ、エネルギーの安定供給確保するため特にその充実を図ったところであります。すなわち、長期的なエネルギーの需給見通しを踏まえ、石油の安定的供給確保、省エネルギー対策強化を図るとともに、石油代替エネルギー開発利用を積極的に促進することとしております。  このため、電源開発促進対策特別会計において新たに電源多様化促進対策推進を図るとともに、石炭及び石油対策特別会計を石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計に改め、同特別会計への繰入額を大幅に増額するなどの措置を講じております。  経済協力費につきましては、ODA三年倍増の最終年であることにかんがみ、二国間無償援助及び技術協力予算の大幅な増額を図るとともに、国連難民高等弁務官計画拠出金等、国際機関に対する分担金、拠出金等についても積極的な協力を行うこととしております。  中小企業対策費につきましては、中小企業近代化及び経営力、技術開発力の強化を一層促進するため、各種の施策充実に努めるとともに、政府系中小金融三機関に対する出資の拡充及びこれらの機関による融資規模の拡大を図ることとしております。  以上のほか、総合的な食糧自給力向上と農林水産業の健全な発展を図ることを基本として、引き続き地域農業生産の再編成に必要な経費の充実を図るとともに、林業生産活動の活発化、沿岸漁業の振興等に必要な経費を計上することとしております。なお、食糧管理費につきましては、米麦の政府売り渡し価格の改定、予約限度数量の圧縮等の措置を講ずることとしております。  また、日本国有鉄道の財政再建問題につきましては、昨年末にその基本方針を定めたところでありますが、定員削減等の経営合理化を一層推進するほか、所要の運賃等の改定を見込むこととし、これらとあわせて必要な助成措置を講ずることとしております。  第六に、地方財政対策について申し述べます。  昭和五十五年度の地方財政におきましては、二兆五百五十億円の財源不足が見込まれますが、これに対しては、一般会計からの臨時地方特例交付金、資金運用部資金からの借り入れ及び建設地方債の増発により所要の財源措置を講じ、その運営に支障が生ずることのないよう配慮しております。これらの結果、地方団体に交付される地方交付税交付金の総額は八兆七百七十五億円となっております。  なお、この際、私は、地方公共団体に対し、財政再建に向けて、国と同一の姿勢により、一般行政経費を初め経費全般にわたる節減合理化推進するとともに、財源の重点的かつ効率的配分を行い、節度ある財政運営を図るよう強く要請するものであります。  次に、この機会に、さきに提出いたしました昭和五十四年度補正予算について一言申し述べます。  歳出につきましては、災害復旧等事業費、国家公務員の給与改善費等、当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった事項について措置を講ずることとしております。  これらの歳出追加の総額は一兆三千四百二十一億円となっておりますが、他方、既定経費の節減等により二千七百四十六億円の修正減少を行うこととしておりますので、この補正による歳出総額の追加は一兆六百七十五億円となっております。  歳入につきましては、最近までの収入実績等を勘案し、租税及び印紙収入について一兆九千九十億円の増収を見込むとともに、前年度剰余金五千三百五十七億円の受け入れを行うこととしておりますが、他方、専売納付金の減収等を一千五百七十二億円見込むとともに、公債を一兆二千二百億円減額することとしております。  以上によりまして、昭和五十四年度一般会計補正後予算の総額は、歳入歳出とも当初予算に対し一兆六百七十五億円増加して、三十九兆六千六百七十六億円となります。また、その公債依存度は三五・四%となっております。  以上、予算の大要について御説明いたしました。  われわれは、いま八〇年代の入り口に立っております。  今後においては、これまでのように低廉豊富な資源エネルギーやその他の恵まれた諸条件を前提とした高い成長を求めても、もはやその達成は困難であります。しかし、このことは、物質的な繁栄を追い求めるだけではなく、調和のとれた社会、質的にも充実した社会、そして後代にも誇りを持って引き継げる社会をつくり上げる好機であるとも考えられます。  もとより、その道は決して平坦ではありません。しかしながら、わが国民には歴史の試練を克服してきた実績と自信があります。八〇年代の先行きがいかに不透明かつ不確実であろうとも、細心の注意と大胆な行動で対処し、民間と政府が一体となって当面する障害を一つずつ着実に克服していくならば、必ずや明るい未来が約束されるものと信ずるものであります。  国民各位の御理解と御協力を切にお願いする次第であります。(拍手)     —————————————
  17. 安井謙

    議長安井謙君) 正示国務大臣。    〔国務大臣正示啓次郎君登壇、拍手
  18. 正示啓次郎

    国務大臣(正示啓次郎君) 一九八〇年代への第一歩を踏み出すに当たり、わが国経済の当面する諸情勢と、これに対処する所信を明らかにし、国民各位の御理解と御協力を仰ぎたいと存じます。  顧みますと、一九七〇年代は、世界経済にとって、激しく、厳しい変動の時代でありました。国際通貨における変動相場制の発足や、二度にわたる石油危機の発生など、まさに激動の七〇年代を象徴する大きな出来事が相次いだのであります。  わが国も、こうした世界経済の影響を直接、間接に受け、狂乱と言われた物価騰貴や、戦後最も長い不況を経験いたしました。  このようにわが国経済は大きな試練を受けたのでありますが、反面、そこから貴重な教訓を学び取る機会を得たこともまた事実であります。  一九七〇年代を通じまして、各国経済の間の相互依存は一気に深まりました。  それだけに、不測の外部要因によって経済活動が撹乱されることのないよう、衝撃を巧みに吸収し、弾力的に対応できる経済基盤をつくり上げていく必要性が一層増大しております。それは、同時に、経済の安定的成長をいかにして実現していくかという課題なのであります。堅実な経済運営要請されるゆえんであります。  わが国経済は、実物資産と対外純資産を合わせ、およそ一千兆円に及ぶ国富を基礎として、年々二百兆円を超える国民総生産を生み出している巨大な経済であります。世界全体の総生産に対し、およそ一割を占める経済でもあります。  このように大規模な経済であることにもかんがみまして、性急かつ急激に方向転換を行うのではなく、順次、着実に安定成長路線への定着を図っていくことが肝要であります。  そして、企業政府、さらには家計に至る経済主体が、わが国経済の安定成長への太い大きな流れをみずからの問題として受けとめ、それに対処する正しい姿勢を見出していくことが要請されているのではないかと考えます。  前回の石油危機の後、企業生産性向上を図り、省エネルギー化を進め、減量経営推進し、安定した経営の方向を見出しつつあります。  政府部門においてももとより例外は許されません。不退転の決意のもとに政府行政の簡素化、効率化に最善の努力を尽くすことといたしております。  ここで、私は、安定した成長を念頭に置きつつ、わが国経済の今後のあり方について考えてみたいと存じます。  その第一は、物価の安定を図ることであります。  物価の安定こそは経済運営の成否を決するものであります。最近に至るまでの消費者物価の安定は、堅実な消費活動を支え、今日の経済拡大傾向基礎をなしてまいりました。私は、物価の安定それ自体が国民生活安定の基本条件であること、及び、それが持続的成長を生み出す源であることをここで改めて強調いたしたいと存じます。  第二は、経済各部門における均衡を実現することであります。  雇用、需給、国際収支財政等の経済各面においてそれぞれ均衡を実現していかなければなりません。  第三に、景気が大きく変動するものであってはならないと考えます。  昭和五十一年度以降四年間の実質成長率は、おしなべて年率五ないし六%程度の水準を保ってまいりました。内外の諸条件から見て無理のない成長率のもとに、雇用の安定、産業発展、及び国民生活の着実な向上を実現することが肝要であります。このためにはなだらかな成長維持されなければなりません。  第四に、わが国がその国際的地位にふさわしい責任と役割りを分担する必要性が一段と高まっております。  このため、貿易の安定的拡大を図るとともに、発展途上国に対する経済協力拡大資源・国際金融面などにおける各国間の協調体制の推進に努めていかなければなりません。  特に、経済協力につきましては、本年は政府開発援助三年倍増の目標年次であり、ぜひともこれを達成したいと考えます。  第五は、経済面での安全保障を確保することであります。当面、石油情勢変化から来る各種の衝撃をやわらげながら吸収していくことが焦眉の急務であります。  まず、原油の量の確保でありますが、五十四年度においては、現在までのところ、ほぼ当初計画どおりの量を確保しております。国民生活上重要な灯油も十分な量を確保いたしております。  しかし、国際石油情勢は、依然としてきわめて流動的な様相を呈しております。今後とも、原油の量の確保には万全を期する考えでありますが、それとともに、石油消費節約を大いに推し進めていく必要があります。五十四年度についての五%、千五百万キロリットルの節約目標は、国民各位の御協力により現在までのところかなり順調に達成されつつあります。  このたび、政府は、五十五年度については、節約の度合いをさらに高め、七%、二千万キロリットル以上を目標に据えることとしており、新年早々から「資源エネルギーを大切にする国民運動」を一層強力に推し進めてまいりたいと考えております。  なお、原子力石炭液化など、石油代替エネルギー開発を計画的に推進するとともに、石油供給源多様化にもさらに積極的に取り組んでいかなければなりません。  私は、本年は、省エネルギー化を進め、脱石油社会に向けて、産業構造生活様式を改め、これまでの量的拡大から質的充実へ転換していく新たな出発の年にしなければならないと考えております。  次に、わが国経済の現状、及び昭和五十五年度における経済運営基本的な考え方について申し述べたいと存じます。  最近のわが国経済は、内外の厳しい環境のもとではありましたが、五十二年度以降における公共投資の大幅な拡大による景気浮揚政策がここに実を結び、国民の堅実な消費態度、企業経営努力と相まって景気は国内民間需要を中心に自律的な拡大を続けております。  この結果、五十四年度の実質成長率は六%と、おおむね当初経済見通しどおりになるものと見込まれます。  また、鉱工業の生産、出荷は堅調な増加を示し、企業収益も高い水準を維持しております。雇用情勢もなお厳しいものの緩やかな改善傾向にあります。  しかし、今後の経済動向につきましては、原油価格上昇に伴い実質需要が減少する面も考えていかなければなりませんし、また、アメリカを初めとする世界景気の先行きにも厳しいものがあります。  これからは、五十三年後半から五十四年にかけての拡大基調に比べれば、やや緩やかな上昇局面になっていくものと考えられます。  政府は、五十五年度の名目成長率を九・四%程度、実質成長率を四・八%程度と見込んでおります。この実質成長率の水準は、先進各国の中では最も高く、さきに述べた安定的成長の趣旨にも沿ったものであり、雇用維持に資するものであります。  ここで、物価動向に目を転じたいと存じます。  このところ経常収支が大幅な赤字となっており、また、卸売物価の急激な上昇が続いておりますが、これは、ともに原油を初めとする海外産原材料価格の高騰という共通の要因に根差すものであります。海外産原材料高そのものが卸売物価を引き上げるとともに、経常収支の赤字を拡大し、それが円安をもたらすことによって卸売物価をさらに押し上げるという状況でありました。  他方、消費者物価は、主要先進国中、西ドイツと並び最も安定した推移を示しております。  海外産原材料価格の大幅な上昇や、各国からのインフレーションの波に洗われながらも、わが国では、企業、消費者の冷静な対応に加え、賃金の穏やかな増加や生産性の高い上昇等により、消費者物価は、台風等の影響による野菜価格の高騰が見られるものの、基調としては比較的落ちついた動きを示しております。  しかしながら、卸売物価上昇の影響が漸次消費者物価に及びつつありまして、今後の消費者物価動向は十分警戒を要するものと考えます。卸売物価上昇の影響を最小限にとどめるよう極力努力していく必要があります。  このため、政府は、昨年十一月、八項目にわたる総合的な物価対策を定め、鋭意その実施を図ってまいりました。  まず、五十四年度の今後の公共事業の施行に当たっては、物価動向に配慮し、公共事業等歳出予算現額の五%を当面留保いたしました。国、地方を合わせた事業費ベースでは一兆円を上回る金額であります。  通貨供給量は現在安定した推移を示しておりますが、引き続きその動向を注視し、適切な金融調節を図ってまいらなければなりません。  さらに、石油製品、その他の生活関連物資について安定的供給確保を図るとともに、便乗値上げ等、不当な価格形成の行われることのないよう、需給、価格動向を厳しく調査監視することとしております。  石油製品の価格安定のためには、需要に見合った供給確保を困ることが重要でありますので、石油供給計画を基本として実需に応じた供給確保に努めております。  また、石油消費節約に向けての国民運動も、石油製品の価格安定において重要な役割りを担うものと考えます。  中長期の観点からの物価対策としては、農林水産業中小企業等の低生産性部門や流通機構合理化の促進を行っております。輸入政策、競争政策についても十分努力してまいります。  政府は、各般にわたる物価対策推進し、五十四年度、五十五年度の消費者物価上昇率をそれぞれ、四・七%程度、六・四%程度にとどめるよう最善の努力を傾けてまいりたいと考えております。  言うまでもなく、重要なのは、仮需の動きを封ずるとともに、インフレ期待を未然に防止することであります。  前回の石油危機の際、在庫積み増しや買い急ぎが起こり、それが激しい物価高となってはね返るという苦い経験を味わいましたが、今回は、企業、消費者ともに冷静に対処しているところであります。政府としては、早目早目に時宜を得た物価対策推進してまいる所存であります。  次に、公共料金について申し述べます。  政府は、公共料金については、経営の徹底した合理化を前提とし、物価及び国民生活に及ぼす影響を十分に考慮して、厳正に取り扱う方針で臨んでいるところであります。  五十五年度の予算関連公共料金の改定に当たっては、真にやむを得ないものに限るとともに、その実施時期及び値上げ幅について極力調整いたしました。また、その他の公共料金についても同様、厳正に取り扱う所存であります。  ここで、消費者行政について述べたいと存じます。  国民生活の安定と向上のためには、物価の安定と並んで消費者行政の積極的な展開を図っていくことが肝要であります。政府といたしましては、消費者の意識の一層の向上企業の消費者志向体制の充実を期待するとともに、消費者を取り巻く環境条件推移に的確に対応してまいらなければならないと考えております。このため、各種商品、サービスの安全の徹底、規格・表示の適正化、その他所要施策を積極的に講じてまいります。  以上、五十五年度の経済運営について申し上げましたが、基本的には、石油の価格、需給動向や、世界経済動きを的確に把握しつつ、物価の安定に極力留意して機動的な経済運営を行うことが大切であると考えます。  ところで、市場機構を可能な限り活用していく自由主義経済が最もすぐれた経済の仕組みであることは、改めて申し上げるまでもありません。  自由主義経済の持つ自由、競争、効率、活力といった長所は、これを堅持してまいらなければなりません。  私たちは、これまで、世界の中でも最も高い水準に位する自由、効率等を享受してまいったのであります。  それだけに、わが国経済のこのような長所はあくまでも最大限生かしていく一方、国際経済との協調に努め、経済面での安全保障を確保しつつ、物価とか、成長国際収支などの経済各面で大きく変動することのないよう、堅実に運営していくことが今後の経済運営のかなめであると考えます。  わけても、物価の安定につきましては、世界各国がひとしくインフレーションとの苦しい戦いを強いられている現状にもかんがみまして、いまや国民課題として、政府はもとより、国民一人一人が、冷静に、かつ、全力を挙げて取り組む必要があると考えます。  過去を振り返りますとき、わが国経済は困難に逢着するたびに、じみちな努力を旨として驚異的とも言える適応力を発揮してまいりました。私は、この可能性に全幅の信頼をおくものであります。  石油問題の深刻化を初め、その行く手には容易ならざるものがありますが、堅実、かつ、安定した成長に向けて、いまこそわが国の英知と力を結集していこうではありませんか。  政府は全力を尽くします。  国民各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。(拍手
  19. 安井謙

    議長安井謙君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 安井謙

    議長安井謙君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時四十九分散会      ——————————