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政府委員(
枇杷田泰助君) 私
どもが
日弁連側に御相談を申し上げました
最初は、昨年の十二月の十日ごろであったかと思います。その後、
日弁連の事務局との間にも何回も折衝ございましたし、それから
先ほど小坂参考人がお話ありましたように、
司法制度調査会とも何回かお話をしまして、私自身も三回ほど出まして、そこで忌憚のない
意見の交換をいたしたわけでございます。
その点で、まず
最初に
弁護士会側のお
立場としますと、この
値上げによっていわば憲法上認められている
裁判を受ける
権利というものが実質的に
影響を受けることにはならないだろうかというふうな視点から、
弁護士会は主として御判断になったわけでございます。そこで浮かび上がってきた問題が、大きく分けますと三つあるように私
どもは承知いたしました。
一つは、今度の
改正案の中には盛られないことになったわけでございますけれ
ども、
費用法の第四条に規定をしております
価額算定不能のもの、
財産権でないものの訴えの
価額を現在三十五万円とみなしておるわけでございますが、この額を、私
どもから申しますと
価額が何といいますか
据え置きになりますと、実質的に九年前からすると
手数料額そのものが
据え置きになるということは、ほかの訴えとの関係で均衡を失するんじゃないだろうかという観点から、一応
値上げをしたらどうだろうかという
意見を
最初に持っておったわけでございますけれ
ども、それはそういう面ばかりではなくって、
先ほども話が出ましたように、
民事訴訟法の二十二条で事物管轄との関係で三十万円を超えるものとするというふうな規定を基礎にして置いている面がございます。そういう面からいたしますと、これは三十五万円を百十万円に変えるというふうなことは問題があるんじゃないかという点、それからまたその結果三倍に一挙に訴えのところで上がるということは問題ではないかというふうな観点から、
弁護士会で一番強い反対と申しますか、御
意見があったわけでございます。この点につきましては、私
どもいろいろ
考えまして、なるほどおっしゃる面が多分にあるということを理解をいたしましたので、これは今回の
改正には織り込まないということにいたしたわけでございます。結果といたしますと、後の訴えのところの定率のところが少し変わりました結果、五十円だけ上がる、三千三百五十円が三千四百円に上がるという結果にはなりますけれ
ども、事実上
据え置きというふうなことで、これはまあ両者の
意見がいま一致したわけでございます。
それからその次に、
弁護士会の方で問題にされましたのがこの
費用法の中で一番中心をなすものであり、しかも
裁判を受ける
権利という面から一番問題があるのは、訴え提起のときの張る
印紙代であるということでございます。その点が、これは立法の技術的な問題もございますけれ
ども、私
どもが単純に現在の刻みの仕方を三十万、百万という刻みのものを三倍に上げまして、百万、三百万というふうに刻みを上げるということになりますと、一番何といいますか、一般市民の方が
訴訟を起こすような百万円から三百万というふうなところの値
上げ率が一番多くなる、それは問題ではないだろうかと。ですから、もう少し全体均衡がとれるような何か工夫ができないものだろうかというふうな御
意見があったわけでございます。その点を私
どももこれは御相談でこういうやり方もある、ああいうやり方もあるという
意見がお互いの間に出ましたけれ
ども、結局現在の三
段階による逓減方式を四
段階ということにいたしまして、いわば中二階を設けまして、そこで上げ幅の率をなだらかにするという方策をとりまして、その結果一番
値上げ幅の大きい三百万円のところが、三四%増のところが二六%に抑えることができたということでございまして、この関係につきましても
弁護士会側の方では、
先ほどの
参考人の言葉をかりますと
評価していただいたということになろうかと思います。訴えのところをそういうふうにいたしましたことに並びまして、
借地非訟とか
調停のところにつきましても同じように中二階を設けて上げ幅を下げ、なだらかにするという工夫をこらしたわけでございます。
それから最後に、
弁護士会といたしますと、まあある
程度の
値上げはやむを得ないけれ
ども、
定額のところが三倍というのは、いかに九年間置いてもちょっと目立ち過ぎるのではないかという御
意見があったわけでございます。それじゃ、ほかのいろんな指数から一応
説明ができるような範囲でどういうふうな案が
考えられるだろうかということもいろいろ
意見が出ましたけれ
ども、
先ほどのお話のように何といいますか、勘といいますか、で、二倍とか二倍半とかいうふうな御
意見もございましたが、
弁護士会内部でも三倍もやむを得ないじゃないかという御
意見もあるやに承りましたし、余り一挙に上げることが適当ではないにしても、これは訴えの提起のところとは違いまして、手続の中での個々の問題であるとか、あるいはもう
訴訟が終わって白黒ついた後の
強制執行のところであるとかというふうな面が中心でございますので、これは全体の金額といたしますとそれほどな構成比を占めているものでもございませんので、
弁護士会としてはやっぱり高いという印象は最後までお捨てにはなりませんでしたけれ
ども、まあそう半端な数字にするわけにもいかないし、これは
弁護士会としては高いという
意見を述べて、後は何か下げる工夫があればそれを
考えてもらいたいけれ
ども、まああえて強く反対はしないというふうな御理解をいただいたわけでございます。その結果、私
どもいろいろ検討いたしましたけれ
ども、なかなかうまい知恵もございませんし、
影響するところも訴えの提起ほどのことはないということで、実は三倍ということにいたしたわけでございます。
なお、細かな点では、三百円のものを実は三倍にしますと九百円でございますが、丸めて千円にしようかなというふうな計算のしやすさも
考えた面もございますけれ
ども、そういうものはきちんと三倍限りにするというふうな数字もとりまして、全体としてはやむを得ないというような感触で最終的には
弁護士会との
意見の調整が終わったというふうに理解をいたしておる次第でございます。