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1980-04-18 第91回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月十八日(金曜日)    午前十時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 浅野  拡君                 細川 護煕君                 矢追 秀彦君                 中村 利次君     委 員                 岩動 道行君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 塚田十一郎君                 片岡 勝治君                 丸谷 金保君                 多田 省吾君                 佐藤 昭夫君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   遠藤  要君        大蔵大臣官房審        議官       宮本 保孝君        大蔵省主計局次        長        吉野 良彦君        大蔵省主税局長  高橋  元君        大蔵省理財局長  渡辺 喜一君        大蔵省理財局次        長        垣水 孝一君        大蔵省証券局長  吉本  宏君        大蔵省銀行局長  米里  恕君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    参考人        全国銀行協会連        合会会長     関  正彦君        公社債引受協会        会長       村田 宗忠君        成蹊大学教授   肥後 和夫君        日本銀行副総裁  澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十五年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————    〔理事細川護熙君委員長席に着く〕
  2. 細川護煕

    理事細川護熙君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  本日は、世耕委員長が都合により出席ができませんので、私、理事細川でございますが、かわりまして会議の主宰をさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。  昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、全国銀行協会連合会会長関正彦君、公社債引受協会会長村田宗忠君、成蹊大学教授肥後和夫君、以上三名の方々参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙のところ本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  皆様から忌憚のない御意見を承りまして、今後の本案審査参考にいたしたいと存じております。  これより、参考人方々に順次御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進行上、お一人十分程度でお述べをいただきまして、参考人方々の御意見陳述が全部終わりました後に、委員の質疑にお答えいただくという方法で進めてまいりたいと思いますので、御協力をお願い申し上げます。  それでは、まず関参考人からお願い申し上げます。
  3. 関正彦

    参考人関正彦君) ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会会長を承っております関でございます。  本日は、昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案に関しまして私ども意見を申し述べよというようなことでございますので、その御趣旨に従い以下陳述をいたします。  私どもは従来、国債引受消化につきましては、財政執行原資調達に協力するという立場から懸命の努力を尽くしてまいりましたが、しかしながら、昨今の金利上昇環境のもとにあり、かつまた、年来の大量の国債発行の累積の結果とも申すべきか、国債相場が急落といった事態に直面をいたしまして、いまやきわめて深刻な影響をこうむっております。したがいまして、国債に関する問題の全般につきましても、私ども意見あるいは要望にわたる事柄を申し述べさせていただきたいと、このことをお許しいただきます。  まず最初に、わが国経済の現状というものを見ますと、景気は底がたい動きを見せておりますが、一方、物価の先行きは一般と警戒を要する状況でございます。申すまでもなく、現在の物価騰貴は、原油を初めとする海外一次産品の価格上昇によるところがきわめて大きいのでございますけれども、こうした海外要因国内波及を最小限にとどめることが、国民経済的に絶対不可欠なことでございまして、そのために総需要を適切に管理する、このことが当面の重要な課題であると存ずるのでございますが、日本銀行におかれましては、金融政策の面におきまして、昨年四月以来今日まで公定歩合を五回にわたって引き上げられるなど、厳しい引き締め措置をとられております。  申すまでもないことながら、政策運営に当たりましては、最も留意すべきことは財政政策金融政策、これが整合性を持ちまして機動的に、弾力的に運営されること、このことが大切かと思います。この点、政府におかれましては、去る三月十九日に総合的な物価対策を決定されました。このことにつきましては私どもも大いに評価できると存ずるのでございますが、今後これらの政策が着実に実行に移されまして、所期の目的ができるだけ速やかに達成される、これを期待をいたしております。  わが国経済の当面の課題、当面の施策につきまして一応の意見を申し上げましたけれども、この中でまた、なかんずく最も重要と考えますことは、何をおいても財政再建を図ること、これであろうかと存ずるのでございます。財政政策が、昭和四十八年秋の第一次石油危機以降におきまして国内民間需要の極端な落ち込みを下支えをし、景気回復牽引車たる役割りを果たしてきたことは、これは粉れもない事実でございます。それはそれといたしまして評価すべきではございますが、しかしながら、一方におきましてこの間に財源不足が生じ、財政収支に不均衡が生じましたことも、まことにやむを得なかったことと考えられるのでございますけれども民間経済自律成長力を回復したと見られる今日、財政再建に対する国民経済的要請は、まことに緊急かつ重大であるかと思うのでございます。  ここで思い起こしますことは、昭和五十一年度予算審議の際、同年二月九日の、これは衆議院でございますが、予算委員会公聴会におきまして、当時の全銀協会長板倉氏が公述人として次のように申し上げたことがございます。  今後景気が順調に回復し、需給ギャップが縮小し、税収も回復する兆しが見えた場合には、遅滞なく優先的に国債減額を実施するといった配慮に加え、国債発行規模をも今後の景気動向需給状況から見て適正な規模勇断をもって減額をすることが肝要である、このように申したことがございます。  いまここに、この発言の裏にある意味を考えますと、財政収支の大幅な不均衡が今後とも長期的に続くようなことになれば、財政インフレーションは必至となり、民間資金の調達困難の事態、いわゆるクラウディングアウトの現実化など、国民経済に多大の弊害を与えるおそれが大であると言わざるを得ない、この問題がこれに提起されたと考えざるを得ないのであります。  私どもは、経済の各分野におきまして均衡のとれた安定成長を実現するためには、財政再建こそが必要不可欠であるという認識を強く保持して対処すべきかと存じます。現下は、まさにその勇断をもって国債発行額を大幅に縮小、縮減するべきときと存じます。この点に関し、すでに国会並びに官民すべてが国債減額についての関心を日増しに深めておられること、これを見ますと、私ども年来の主張が理解されつつあると心強く感じております。  以上、申し述べました観点から見まして五十五年度予算を見ますと、まず一般会計歳出におきましては、公共事業関係費をきわめて低い伸び一・七%にとどめられる一方、エネルギー対策など緊要な施策については重点配分が図られておりまして、また、歳入面を見ましても、国債発行額が五十四年度当初の予算に比べまして一兆円減額されておるなど、財政健全化方向に踏み出されたことは、当局の御苦心一方ならぬものがあったというふうに拝察いたしますけれども、さらに竿頭一歩を進める努力財政執行の過程においてぜひとも払われたい、このように存じます。  ただいま当委員会で審議されております昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案が五十五年度予算表裏一体をなしまして、これを財源的に裏づけるものでございますので、まことにこの措置はやむを得ないとは存じますが、七兆四千八百五十億という多額特例国債発行は、五十四年度の落ちつきが当初の八兆円を下回りまして、御努力により七兆円を切るという見込みと伺っております。昨年の発行額を超える既往最高に上る、このことは異例の事態であると申さざるを得ないのであります。特例国債発行はあくまで当面の緊急的措置でありまして、可及的速やかに圧縮、解消を図るべきものと存ずるのでございます。  さらに、長期的な観点から見ますと、特例国債解消はもちろん、建設国債につきましてもこれを極力圧縮し、財政健全化を図ることが必須のことと考えます。このためには行政機構簡素化など、行財政面の改革にも手を及ぼし、一層推進されることを強く望む次第でございますが、    〔理事細川護熙君退席理事浅野拡君着席〕 私ども立場から申し上げますと、大量の国債発行現実に私ども民間金融機関経営をいかに圧迫しているかにつきまして、すでに十分御理解をいただいているところではございますが、一応ここで具体的に申し上げたいと存じます。  都市銀行を例にとりますと、資金の面から見まして五十四年度の場合、実質預金増加額の実に一・二倍という多額資金国債消化に引き当てております。したがいまして、その他の仕事、公共債引き受け、企業、個人に対する資金供給のためには、すでに保有しておりました保有債券の売却あるいは外部負債を取り入れて、ようやく資金を捻出するという異常な状況に追い込まれておるのが実情でございます。  また、収益の面から見ましても、国債相場が下落しておりますために、巨額償却損あるいは含み損の包含のやむなきに至っております。従来のわれわれの経営から見ますと、非常に苦しい決算という状況に立っておるわけでございまして、私ども金融機関にとりましては、国債の重圧は増大をしております。経営の根幹にも及ぶ影響を与えているというふうに、私どもは考えておったのでございます。このまま推移しますれば、国債引き受け消化にも支障を来す事態、このようなことも考えなきゃならぬのじゃないかという気持ちまでいたしております。これを打開するための方策を含めまして、御要望を申し上げます。  第一に、前年同様、たとえ年度の途中にありましても、財政事情が許す限り、極力国債減額に努めていただきたい、このように考えます。五十五年度におきましても、五十四年度とほぼ同額の国債民間消化される予定になっておりますが、    〔理事浅野拡君退席理事細川護熙君着席〕 仮に年度途中において税の増収あるいは支出不用、節減による余裕を生じましたときは、ぜひこれを優先的に民間引受国債減額に振り向けていただきたいのでございます。また、資金運用部による引き受けにつきましても、現在の予定では二兆五千億円と承っておりますが、これでは五十四年度実績をも下回るということに相なります。これをぜひ拡大いたしまして、民間引受負担を軽減していただきたいと存じます。  第二に、国債発行条件弾力化、いわゆる市場実勢重視姿勢をぜひとも堅持していただきたい、かように存じます。この点につきましては、すでに五十三年度中期国債発行公募礼制を導入するなど、当局におかれましては御努力をいただいているところでごございますけれども、その五十四年度におきます実績を見ますと、当初の予定額に及ばない状況でございまして、また、期間十年の長期国債の方につきましても、発行条件改定は五十四年度が四月、八月、三月の三回、五十五年度におきましてはこの四月に行われたわけでございますけれども、その後の市場動向相場推移等を見ますときに、必ずしも十分な改定であったとは言い切れないというふうな感じを現在私は持っておりますが、この点につきましてはぜひとも御配慮を煩わしたい、このように存じます。  また、市場原理尊重姿勢というのが引受側の期待するほどになかなかいきません背景には、当局国債費負担の増あるいは既往長短金利関係など、こういうことについての配慮が動いたかと思うのでございますが、国債費増高を防ぐことは絶対に必要でございます。しかし、それは国債発行減額によってこそ実現するものでございます。さらに、これだけの発行量巨額になった現在、現在の長短金利並びぐあいなどにつきましても、ぜひ新しい目で見直していただきたい。そのような時期、そのような事態を迎えているのではないかと私は存ずるのでございます。  今後におきましては、ぜひこのような面につきましても十分の御配慮をいただきまして、公募入礼の拡充であるとか、金利機能を活用した発行体制、これを強化していただきたいのでございます。  第三でございますが、これは流通市場整備の問題でございまして、大量の国債を円滑に消化してまいりますには、何よりも市場での取引価格、これが需給実勢を反映して適正に決定されることが必要であろうかと存じます。そのためには国債保有層多様化し、市場拡大を図るとともに、金融機関保有国債流動化を一層推進していくことが肝要であることは論をまたないところであろうと思います。  さて最後に、国債の最大の引き受け手であります私ども民間金融機関資金吸収力の面につきましても、ぜひ御配慮をいただきたい。従来以上に私ども努力を重ねるわけでございますけれども、今年度減額方向への国債発行に関する転換の努力は認められるのではございますが、なお相当の額の国債発行がある程度継続されざるを得ないというふうに考えますとき、私どもといたしましては減額もさることながら、資金吸収力をも強化いたしまして、その政策運営に協力するということを考えます。極力その安定的な消化にも努力するわけでございますが、やはり資金吸収面の向上をも図らなければなりません。  そのためには、ぜひ税制面におきましてもいろいろな金融資産の間の権衡を不公平のないように図ること、または、新しく調達手段を開発するなどというような工夫をも重ねまして資金吸収力の増強を図ること、これまた私どもに与えられた一つの責務であろうかと存じますので、この点につきましても御配慮をいただきたいと思います。  以上、申し述べました点につきまして、今後その具体的な実現を図るため、国会先生方におかれましても、ぜひとも御関心を深められ御配慮を賜りたいと、かように念じておりますことを申し上げまして、私の陳述を終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。
  4. 細川護煕

    理事細川護熙君) ありがとうございました。  それでは次に、村田参考人にお願いをいたします。
  5. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 公社債引受協会村田でございます。  本日は、昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案につきまして意見を述べよということでございますので、証券界立場から若干の所見を申し述べさせていただきたいと存じます。  さて、私から申し上げるまでもなく、わが国経済はきわめて厳しい状況に直面いたしております。生産や設備投資は底がたい拡大基調を続けておりますものの、このところ物価の騰勢が一段と加速されますし、その一方、国際収支は大幅な赤字に転じまして、円相場につきましても、いまだ安定を見ない状況にございます。  こうした情勢を念頭に置きながら、過日成立を見ました昭和五十五年度予算を拝見いたしますと、経済自律的拡大基調の維持に配慮されながらも、歳出規模拡大を極力抑制されることによりまして、国債発行額を前年度当初比一兆円減額されておりますなど、私どもといたしましても大筋として、現下情勢に適合した妥当なものと受けとめている次第でございます。したがいまして、この予算表裏一体をなしておりますところの特例法案につきましても、これまたやむを得ないものと考える次第でございます。  ただ、ここで申し上げたいことは、何しろ国債残高がすでに五十兆円を超えるというふうになっておりますし、かつ公定歩合が九%という高金利情勢下にございまして、公社債市場はかなり軟弱な地合いを続けております。こうしたところに、新たな大量発行をこなしていくということは、なかなかこれは容易なことではないということでございます。こうしたことから申しまして、今後、年度途中におきましても、歳入歳出等状況を見まして、可能な限り発行額、とりわけ市中消化額の削減を行われますように、特に強くお願い申し上げる次第でございます。  次に、私ども証券界が担当いたしておりますところの国債個人消化についてでございます。最近の状況を御報告いたしますとともに、せっかくの機会でございますので、二、三の御要望を申し上げて、委員先生方に御理解を賜りたいと、かように存ずる次第でございます。  五十四年度中の証券会社国債取り扱い額は、長期国債割引国債中期国債を合わせまして一兆八千四十億円、市中公募額に対します比率は一六・五%となりましてございます。このうち長期国債だけについて見ますと、一兆九百五十億円、一一・四%でございますが、これは前年度に比べますと、金額、比率ともそれぞれ相当大幅な落ち込みでございます。率直に申し上げて、国債個人消化は昨年度中大変困難であったと、こう申さざるを得ない次第でございます。  この理由につきましては、昨年度中に何しろ内外を通じる金融情勢変化がございまして、それを反映して、流通相場がほぼ一貫して軟化基調をたどりました。それに対しまして、数次にわたり発行条件の引き上げが実施されましたが、いわゆる乖離現象がかなりの期間続いたということが、これが基本的な背景でございます。  証券界といたしましては、できる限りの努力を払って個人消化に取り組んでまいりましたが、何しろ金利先高のムードが根強い、ただいま申し上げましたような募集環境の悪化にはとうてい抗し切れずに、結果として、大幅な落ち込みを余儀なくされた次第でございます。五十五年度は、こうした厳しい環境の中で、引き続き大量発行が行われるわけでございますから、私ども努力はもちろんのことでございますが、発行当局におかれましても、新しい発想や姿勢をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  こうした観点から、以下二、三の要望を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず第一は、発行条件流通市場実勢に即して設定し、投資家にとって魅力のある金融資産としての質を維持していただきたいということでございます。四月債から発行条件改定が行われましたが、今後とも市場実勢尊重ということに一層の御配慮を賜りますように、お願い申し上げる次第でございます。  これは一例としてでございますが、いろいろ財政事情発行方式等に多少事情の違いがございますものの、西独におきましては、今般、十年物の国債十一億マルクを一〇%のクーポンレート発行したそうでございますが、この一月には、十二年物の連邦鉄道債が、八%のクーポンレート発行されております。僅々三カ月の間に、市場実勢動きに即応いたしまして、一挙に二%ものレートアップを行ったこの弾力的な発行姿勢は、やはりこれは他山の石と申せるのではなかろうかと、かように存じておる次第でございます。  また、入札方式発行されております中期国債につきましては、昨年度市中消化実績は当初計画の半分以下という不振でございました。これは、長期中期金利が接近するなどという市場情勢変化を反映したものと思われますけれども中期国債公募入札は、市場状況に応じた弾力的な国債発行国債の種類の多様化という観点から申しまして、望ましい発行方法一つでありますので、五十五年度におきましては、市場状況に応じまして、弾力的な姿勢でこれを拡大していくという方針をもって臨まれますように、お願い申し上げたいと存じます。  さらに、昨年度消化に最も苦しみましたのは、証券界だけで引き受けております割引国債でございました。消化が特に難渋しました理由は、たとえば、税引後利回りにおきまして、五年の割引国債が一年の割引金融債とほとんど変わらないというきわめて商品魅力に欠けると申しますか、そういう発行条件の設定が行われていたことに上るものだと、かように存じております。国債多様化という趣旨で誕生いたしましたせっかくの割引国債でございますので、この趣旨が生かされますように、この際、十分にセーラビリティーを持たしたものにしていただきますとともに、証券界販売体制を確立するために、発行方法などにつきましても、実情に即した改善を図られますように、お願い申し上げたいと存じます。  第二に申し上げたいことは、公社債流通市場の担い手としての証券会社ディーラー金融拡充整備ということでございます。御高承のとおり、証券会社には、公社債ディーラーとして、債券の円滑な流通と公正な価格形成に当たっておりますが、こうしたディーラー機能を適正に発揮してまいりますためには、一定量商品在庫を保有することが必要でございまして、いわゆるディーラー金融が欠かせないわけでございます。今日、公社債流通市場におきましての売買高は、年間約二百兆円を上回る巨大な規模に達しておりますが、これからも年々相当高いテンポで拡大を続けることに違いないと、かように存じております。  こうした売買高拡大に伴いまして、ディーラー金融所要額も今後ますます増大することが見込まれる次第でございます。公社債の円滑な売買価格形成に果たしますディーラー金融役割り重要性につきまして、十分な御理解を賜りますよう、お願い申し上げる次第でございます。  最後に申し上げたいことは、国債個人消化意義と、それを担当しております証券界立場について御理解を賜りたいということでございます。私は、個人消化というものは、国債の、公募債としての基本であり、いわば公募債としての顔であると、そういうふうに考えておるんでございますが、こうした意味合いにおきまして、個人消化の促進につきましては、さらに一段とその意義尊重されるべきであると、かように考えております。こうした見地から申しますと、いわゆるマル特の枠の拡大など税制面における取り扱いにつきましても、それにふさわしい優遇措置がとられるようにお願い申し上げたいと、かように存じております。  証券会社は、国債引受シ団のメンバーとして個人消化を担当しているわけでございまして、一般投資家に販売することが引き受け目的でございます。したがいまして、発行条件というものが実勢に即しているかどうかということが、個人消化にとりましてはきわめて重要なことでございます。  現在、ターニングポイントに立っております個人消化をこれを再構築してまいりますのには、しっかりした足場を固めることが何よりも必要であり、発行条件実勢化ということがそのためのかぎでありますことを、重ねて訴えたいと存ずる次第でございます。  以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  6. 細川護煕

    理事細川護熙君) ありがとうございました。  次に、肥後参考人にお願い申し上げます。
  7. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) 私は、五十五年度特例公債発行の問題について意見を申し上げるに当たりまして、その前提となります五十五年度予算についての一応の私なりの評価をし、その上に立って、なお幾つかの問題点を指摘したいと存じます。  まず、五十五年度の国の予算でございますが、一般会計予算規模四十二兆五千八百八十八億円、五十四年度当初に比べて一〇・三%増になっております。財政投融資計画十八兆千七百九十九億円、同じく前年度当初に比べまして八%増でございます。いずれも、この二十年来かつてなかった低い伸び率に抑えられております。また、一般会計歳出のうち、地方交付税と国債費を除きます一般会計歳出は、前年度当初予算一般会計歳出の伸びは一三・九%でございましたが、本年度はこれが五・一%と半分以下の伸びにとどまっております。制度上、義務的に支出しなければならない経費のうち代表的な地方交付税と国債費を除きますと、かなり諸経費について節減の努力がなされた結果、このようなことになったのであろうと思われるわけでございます。  他方、税収面では、私見によりますと、避けて通ることができないはずの一般的な負担増の問題は見送りになりまして、給与所得控除の見直し、退職給与引当金繰り入れ率の適正化等の部分的な税制改正に伴い、税法上の増収が一般会計で初年度約三千五百億円、このほか特別会計で初年度約八百三十億円の増収が図られたわけでございますが、景気回復に助けられまして、一般会計におきましては約三兆五千億円の自然増収を見込むことができました。その結果、増税込みで約五兆円の税収の増加を計上することができたわけでございます。  以上、歳出、税収両面の要因に伴いまして、公債発行予定額は、前年度当初予定額十五兆二千七百億円に比べまして一兆円を減額し十四兆二千七百億円、うち建設公債六兆七千八百五十億円、特例公債七兆四千八百五十億円が計上されることになりました。国債発行量を減額する予算が編成できたという点では、これまでにない成果であると言うべきかもしれません。これに伴いまして、公債依存度も、五十四年度当初の三九・六%から本年度は三三・五%へ低下いたしましたし、特例公債依存度も前年度当初の二七・一%から二二%に、五%も低下を見ております。  しかし、五十五年度予算におきます以上のような努力にもかかわらず、財政再建という視点から見ますと、まだ五十九年度までに特例公債依存から脱却できるというめどがついたとは言えないように思われるわけでございます。また、仮に五十九年度に、これからの非常な努力によりまして、再建の当面の目標が達成されたといたしましても、六十年度以降に始まります国債償還の本格化を考えますと、財政の硬面化は極度に進行するもののように思われます。その理由は次のとおりでございます。  まず、五十九年度までに特例公債依存を脱却するという財政再建の当面の目標の達成につきまして、そのめどはまだついていないのではないかというふうに痛感される次第でございます。確かに年度当初に国債発行予定額を一兆円減額できたことは、一応の成果としなければならないでしょうが、これは約四兆六千億円の税の自然増収を見込むことができたおかげでありまして、歳出と税収入の間にあります構造的な不均衡は、依然としてきわめて大きいと言わざるを得ません。  高度成長時代を一応三十年度から四十五年度までとりまして、それから石油危機後の四十九年から五十四年の間と、この両期間を比較してみますと、名目GNPが、高度成長時代の一五・一%の平均の伸びから一〇・八%に低下しております。税収の伸びは一五・九%から六・九%に、半分以下に低下しております。ところが、歳出の方は、依然としてこの両期間とも一五%増ということになっているわけでございます。つまり、歳出石油危機後におきましても、高度成長時代と変わらない伸びを続けておりますのに、税収の伸びは、石油危機後は高度成長時代の半分以下に落ち込んでいる。  この不均衡をどうしたら是正できるかということについて、個人の家計を例にとりますと、収入をふやすよう従来にも増して努力する一方で、生活程度を落ち込んだ収入に見合うよう切り詰めなければならないのは当然のことではないかと思うのでございます。そうしなければ、生活費に充てるために借金をしなければならなくなってしまう。国の財政につきましても、収入をふやすことは現在まだ正面から取り上げられていない状況でございますし、支出を切り詰める努力も、まだきわめて不十分ではないかと思われる次第でございます。  税の自然増収約四兆六千億円のうち、公債減額に充てられましたのはわずか一兆円で、残りは支出増加に充てられました。しかし、五十五年度はともかくとして、五十六年度以降に同じような税の自然増収を見込むことができるかということになりますと、現在の石油危機下における世界的な経済の停滞とわが国の本年秋以降の動向を考え合わせますならば、現段階で楽観的な期待に基づいた長期見通しを持つということは、国民に与える国政の影響から考えまして、十分に責任を果たすことになるかどうか疑問であると思うのでございます。  次に、国際的な規模で現在金利水準に革命的とも言うべき変化が生じております。金利を名目金利物価上昇率を上乗せをして考えるというようなことは、これはまさに石油危機後に生じた重大な事態であろうかと思うのでございます。そうなりますと、高金利をつけなければ国際の円滑な発行が進まないというおそれが非常に出てまいりました。  お二方の参考人からもすでに御指摘があったわけでございますが、昨年以来五次にわたる公定歩合の引き上げが行われたわけでございますし、本年度に入りましても、すでに二回公定歩合の引き上げがありました。投機的な心理に早目に水をかけるということと、それから国際収支の悪化に対して、当面できるだけの措置を講じるという二つの観点から言いまして、この措置は当然の適切なやむを得ない措置であったと思うのでございますし、また、この高金利状態は、日本の国内だけではどうにもならないような国際的な要因によって生じている面もあるわけでございますが、一方では、このことによりまして国際価格の暴落が生じ、金利の天井感が出てくるまでは、常に国際の消化難に当面せざるを得ないと思うのでございます。  と同時に、またこの高金利は、いろいろな経路を通じまして、国債費国債金利負担を急激に増加させるおそれがあります。これが、もう一つの問題でございます。  それから第三番目に、五十年度以降発行しました特例公債の償還は現金償還を行うという方針に基づいておりますので、六十年度以降、五十年度から発行した特例公債の償還が急増する事態をわれわれは迎えなければならないわけでございます。元利を合わせて、償還費はきわめて巨額のものになると予想されるわけでございます。  さきに発表されました大蔵省の一応の仮定的な計算に基づきましても、たとえば六十五年度の元利償還費は、現行金利のもとで五十九年度特例公債発行がゼロになったと仮定いたしましても、五十五年度国債費五兆三千億の四倍以上の巨額に達することが予想されているわけでございますが、仮に、きわめて重大な事態でございますけれども、五十九年度までに特例公債依存が解消できないような事態が生じ、しかも現在の高金利影響国債費が将来とも増加するということになりますと、この国債費の増加はさらに巨額のものになり、財政にきわめて重大な負担を及ぼすのではないかということをおそれる次第でございます。  以上のようなことを考えますと、一応五十五年度特例公債発行は、諸般の事情からきわめてやむを得ない措置であったといたしましても、やはりこれはきわめて将来に重大な問題を残しているということを認識しなければなりません。  そのような理由から、仮にこの七兆円余の特例公債発行を一応予定しておりましても、年度途中でできるだけやはりこれを減額する努力が払われなければならないと思うのでございます。特に現在は、諸般の情勢からきわめてインフレの危険が増大しているわけでございまして、このインフレの危険に対する対応を金融政策だけに比重をかけて行うということにつきましては、国の経済の発展の源でありますところの設備投貧に及ぼす影響等も考えますと、やはり問題である。やはり財政再建にできるだけの努力をすることが将来の経済の発展、国民の生活の向上に寄与することになるのではないか。  そのような意味から、五十五年度予算における財政再建課題は、五十六年度以降に大きな問題を、宿題を残したままになっていると思う次第でございます。  この事態を直視されまして、財政収支の構造的な不均衡解消に、長期的な視野から掘り下げた御検討をお願いしたいと感じる次第でございます。  以上でございます。
  8. 細川護煕

    理事細川護熙君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見陳述は終了いたしました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 どうも大変お三方とも御苦労さまでございました。  貴重な御意見を承りまして、われわれも大変参考になるのでございますが、特にお三方それぞれにお伺いいたしたいのでございますけれど、本年度の当初予算で一兆円公債発行を減らしたということについては、大変妥当であったとか、非常に大きな成果だというふうに、表現は違いますけれど、お三方ともそれぞれにこのことについては評価をしていらっしゃるようでございます。  にもかかわらず、国債がこう暴落してきた。というのは、一兆円くらい減らしたことでは実際は足りなかったのじゃないかという気がするんですが、お話を承っている限りでは、大変このことを評価しておられるというので、そこら辺のギャップについて、ちょっとわかりかねるので、順次ひとつ御意見をいただきたいと思います。
  10. 関正彦

    参考人関正彦君) お答えを申し上げます。  ただいまの丸谷先生の御指摘というのは、私どももその問題につきましては非常に悩むわけでございます。確かに私の冒頭陳述をいたしましたとおり、とにかく方向国債減額に踏み出されたということ、これは評価するんですけれども、量的になかなかこれでは足りないんじゃないかという気持ちをそこに持っておるわけでございます。  ただ、国債の暴落の問題は、肥後先生も御指摘になりましたように、世界的な高金利環境というのもこれは一つの原因でございます。ただし、そこにやはり五十兆に上る国債という大きな金融資産がわれわれの金融経済の中に存在しているということ、しかも、それがいろいろな発行条件あるいは銘柄がございまして、それぞれにそれぞれの相場というのが出ておりまして、ごらんのとおり、下がり方も非常に区々でございます。ただ、やはり金利が非常に上昇したということは、この段階におきましては、国債発行量の多いことの環境の中で非常に強くきいていると言わざるを得ないと私は思います。お答えといたします。
  11. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) ただいま関参考人からもお話がございましたけれども、私ども同様に、一兆円減額というのが量的に国債の価格をある程度下げないで済むようにできる、そうは存じませんのですが、しかし、初めて減額に踏み切られたということをひとつ評価したい、かような意味で申し上げました次第でございます。  にもかかわらず、暴落しているじゃないかという丸谷先生の御指摘でございます。関参考人も申されましたように、背景は何と申しましても世界的な高金利状態、しかもそれが天井感が伴ってこない。まだ上がるんではあるまいか、まだ上がるんではあるまいかという先高見込みの状況下でございます。勢い、これは世界各国ともそうでございますけれども、下がるのが市場としましては当然の一つの成り行き。まして、わが国の場合におきましては、先ほども申し上げましたように、御承知のように国債発行残高が五十兆円にもなっておりまして、やはりそれだけの残高がございますと、そういう場合に売り圧力と申しますか、そういうふうなものが相当大きい圧力を持っておるわけでございます。  それから、手近な話でございますけれども、逐次公定歩合も引き上がっていくという金利上昇過程の中でございますので、早い話申し上げますと、募集中に公定歩合の引き上げが発表される。そうすると今度は、この次には国債金利も上がるじゃないか、それじゃ、いま買っちゃ損だ、これはやめておこうと言って、せっかく申し込みがあったものがキャンセルになるというふうなことも、早い話ございますわけで、そういうことで減額とは必ずしも歩調を一にしないで市場においては下げてまいる、かような状況であろうかと存じます。  昨今その辺の様子もちょっと変わり目を見せているようには存じますけれども、まあこれも慎重に推移を見きわめませんと何とも申せないことでございます。  さようなことでございます。
  12. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) いままで国債がふえていたのが減ったと、その一兆円減らす予算を組むのにいろいろ大変な努力があったという一応の事情を知っておりますので、一応敬意を表しまして、一応評価できると申しましたが、あの前後の、終わりまでの中では、きわめてやはり不十分なものであるというふうな含みで申し上げたつもりでございます。
  13. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 お三方の中では、肥後先生が一番アクセントの強い言葉で、一兆円の減額は大変な成果だと、こう最初おっしゃったものですから、私もびっくりしたんです。何といいますか、村田参考人の方は妥当だというふうなことで、だんだんお三方のオクターブが次々こう上がってくるものですから、これはえらいことになったなというふうに思っておりましたら、最後で皆さんが、落ちは全部こう、年度途中でも見直して発行額は圧締すべきだというふうなところに最後の結論が来たので、そうすると、最初のおっしゃられたのはたてまえで、最後のところでおっしゃられたのが本音だなというふうに実はお聞きしていたんですが、そのようにお聞きしてよろしゅうございましょうね。  それで、関参考人にお伺いいたしますが、資金運用部が二兆五千億という、伸び率からいうとむしろ前年対比減っているというふうなことで、いわゆる一般金融機関を圧迫するような資金状況の中で、もう少しここいら辺にウエートをかけるべきでないかというふうなお話でございました。ただ、今度税制の改正がありまして、マル優の制度というのは厳しくなりますわね。これらが郵貯その他に及ぼす影響というふうなものについて、金融界の方ではどのように一般的に受けとめておりますか。
  14. 関正彦

    参考人関正彦君) お答えをいたします。  まず、後の方の御質問でなく、資金運用部の問題をちょっと申し上げます。  資金運用部の実態というのは、これは皆様御存じだと思いますが、資産、負債、公表されておりますものを見ますと、たしか去年の十二月か、あるいはことしの一月ぐらいまでの数字が出ております。資産で申しましても負債で申しましても、八十三兆円という大変大きな存在でございます。その八十三兆円の中で、国債の保有額はたしか十三兆円ぐらいだったと思います。一方、その保有をするための裏づけの金というのは、もう皆様御存じのとおりで、何と申しましても郵便貯金のお金が非常に大きゅうございます。次いで簡易保険、その他政府の方の資金の調達の部分が占めておりますが、そういうバランスから申しまして、郵便貯金と申しますのは、私どもの中では一種のこれは貯蓄国債というふうな感じを実はぬぐえないわけでございまして、これは本来そういう性格はずっと持っておるはずでございます。  ただ、昭和四十年までは国債発行というのはございませんでしたから、そういう意味では資金運用部資金というのは別の方向に振り向けられたことは、私はそれもまた意味があったと。しかし、この十五年の間にこれだけの国債が増発されてまいりますと、やはりそのような意味合いをもつと強めていただきたいという気持ちが強いわけでございまして、そういう意味から申しますと、ただいまの総体の中の国債へ投入する部分は、いかにもどうも比率としては低いのではないだろうかという気持ちがぬぐえないわけでございます。  また、国債以外の方に投入しておられます部分もずいぶんあるわけでございまして、これはある程度回転をしておるわけでございますから、毎年毎年その資産がふえて、資産といいますか、専門的に言えば負債がふえてまいりますと、これを資産の方へ回すわけでございますが、その限界的に振り向けていく比率を、年々やはり国債の方の比率を上げていただきたいという気持ちがわれわれ民間では非常に強い。これが資金運用部に対する私どもの感じでございますが、何を申しましても、このような膨大なものでございます。それから内容について、膨大なだけに、十分知悉いたしましてこれを申し上げるというような実はわれわれ立場でございませんので、この辺がちょっと一つの問題かなと思っております。  さて、後の方の問題でございますね。今度のこのいわゆる税制の改正につきまして、私どもやはり民間金融機関、これはあえて全銀協だけでございませんで、九団体二公庫でございましたか、いろいろと行政当局あるいは国会の先生の皆様方にも御要望申し上げておる点がございますが、これは何と申しましても民・官の金融資産、それから民間金融資産の相互の間の不公平と申しますか不均衡と申しますか、取り扱いの点につきましても、やはり公平な扱いをしていただきたい。特に、ただいま、ふだんから申しております郵便貯金の方のお扱いと、私ども民間のマル優という取り扱いとにつきまして、マル優と申しますのは、これはまあ皆様あるいは御存じかもしれませんけれども、マル優取り扱いの規程というのは一冊の本になっております。それを一生懸命忠実に守っておるというのが民間の実態でございます。  ところが、それに対する郵便貯金の方のいろいろな御規定というのは、どうも私ども余りよく存じませんけれども、規定としては確かに郵便貯金法にはございますけれども、それを実施する規程がどのようになっておるのか、まあこの辺は詳細なる規程があるのかもしれませんが、この辺もひとつぜひとも確かめていただきたい気持ちが濃厚でございますし、特に所得税法改正の過程におきましての移行措置一つの大きなアンバランスがございますので、これは本店で申し上げるようなことでないかもしれませんが、これに対しては非常な関心を持っておりまして、あの所得税法の改正は、われわれとしては心残りな点がたくさんございます。
  15. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 昨日も私、大蔵大臣に質問いたしましたのですが、いまのお答えを聞いておりまして、結局、郵貯だけでも大体五十兆ですか、ほとんど都市銀行全体と同じくらいの預金量を持っておりますわね。これが国債に回るより、財投を通じて政府金融機関等が貸し出しをするといった方に相当大きく流れておる。この流れを逆にして、国債を運用部の方でもってもう少し持つことによって、金融機関の現在占めておる貸し出しの資金量がもう少し緩くなれば、流れは逆になるけれど、むしろ弾力的な、特に小さい企業なんかに対するめんどう見が素早く行われるんじゃないかと、こういう意味の私、昨日質問をしておったんですが、いまのお話を聞いておりますと、そういうことについては、そういうお考えが下敷きにある御答弁だというふうに理解してよろしゅうございますか。
  16. 関正彦

    参考人関正彦君) いまの御質問の意味は、私いま拝聴しまして感じましたことを申し上げまして、そのとおりだというふうにはなかなかちょっと言い切れないということでございます。  まず、郵便貯金と、これは地方銀行は入っておりませんで都市銀行でございますね、これの数字は、まあ辛うじてわれわれはまだ郵便貯金よりは金額は大きくなります、これはまあちょっと細かい数字は別といたしまして。  いまの資金の流れを根本的に一挙に変えていくということは、先ほど私も申しましたとおり、国債発行をされない過程における資金運用部の機能を一挙に全部たたき切ってしまっていいものであるとは思っておりません。そういう意味では、全部切りかえてしまってというふうには考えておりませんが、シェアバランスを少しずつ振りかえていっていただく努力を、ぜひお願いしたいということでございます。
  17. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 私も、一気にという意味で申し上げたのじゃないんです。  次に、村田参考人にお伺いいたしたいと思いますが、特に、個人消化というふうなことが公募債の基本だということに立って、市場実勢尊重するような国債発行ということを強調されておられたようでございますが、その中で、中期国債ファンドというのが最近住友信託さんを中心にして新たな制度として出てまいりましたね。これらの実際の実施をした状況、あるいはお客さんの受けというのはいかがでございましょうか、ちょっとお聞かせ願いたいんですが。
  18. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) ただいま丸谷先生にお尋ねいただきました中期国債ファンドの問題でございます。  これを実施いたしました動機と申しますのは、国債多様化の線に沿いまして中期債が発行されまして、そうしてこれが公募入札制で行われておる次第でございます。個人にこれを向けていきますのが、販売体制と申しますか、なかなかむずかしい点も実はあるんでございます、販売技術上。  そういうことで、中期国債の受けざらが必要であるという事情がございまして、それを、どういうふうな一つの態様に整えまして、そうしてより販売しやすいような体制に持っていったらいいかということから、従来、御承知のように、社債投資信託というのがございますけれども、社投、社投と申しておりますが、これの一つの延長線におきまして、中期国債を主として対象といたしますところのそういったファンドを投資信託といたしましてつくりまして、幸いにいたしまして非常に堅実な歩調で、大量ではございませんが、大体月百億程度の伸び率で、現在で残高はたかが知れておるのでございますけれども、三百億ぐらいでございましたかしら、その程度の残高になっておりますが、これは着実に伸びてまいる、かように存じております。
  19. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは、多少、何といいますか、現在の金融市場の中ではいろいろ反対の意見もございましょうけれど、新しい一つの、ただいま御説明のありましたような市況、それから買いやすい個人消費への道を開く方法としては評価できるというふうにお考えでございますね。
  20. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) さように考えております。
  21. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、これは大変つかぬことをお伺いするんですが、これはお答えいただけるかどうかわからないんですが、五十五年三月の中期決算の状況の中で、主要証券会社の税引き利益の予想が、野村証券さんが他の十幾つの証券の総和よりも大きく利益が出そうな状況だという、何といいますか、秘密といいますか、何があったんでしょうか。ほかとどうしてこんなに違うのでしょうか。
  22. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) どうも先生弱りましたな。  まあ、それほど、十一社全部とまではいかないだろうと思いますけれども、しかし五十四年度は、この三月決算でございますが、やはり落ち込んではおります、これまでと比較いたしますと。相対的な関係から申しますと、かなりな、ランキングづけをするといたしますればなると思いますけれども、何でそうなったかと申されますと、まあ、よう勉強しておると言う以外にはないかと思います。お答えにはならぬかもしれませんけれども、そういうことでございます。
  23. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 非常に証券業界は悪い悪いという中で、多少落ち込んでおっても、数字は申し上げませんけれど、落ち込みの率も少ないようですし、不思議な気がしておるんですが、しかし、全体として、証券業界自体が国債の重圧の中で評価損を出しておるということについては理解できるんです。  最後に、肥後参考人にお伺いいたしたいと思います。  国債残高が非常に多くなっているというふうなことだけでなくて、特にいまの状況は、外圧といいますか、石油の外圧による日本経済全体の落ち込みの反映だというようなお話のように伺いましたが、そのように理解してよろしゅうございましょうか。
  24. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) 一応、石油危機以降の経済基調の転換によって、税収の伸びが基調的に半分以下に下がっている、歳出は前と変わらない増加率でふえている、結果として収入の不足が生じて国債がふえているわけですが、そのような基本的な財政の構造的な不均衡というものは解消しているとは思えません。そういう意味で、一応敬意を表しまして一兆円を評価いたしましたけれども、問題は非常に深刻であるというふうに申し上げたかったわけでございます。
  25. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大体税の伸び率が一五%から六%に落ちていると、そのとおりだと思うんですが、歳出の面で相当まだ検討する点があると。これはいろいろあるんですが、ずばり言って、たとえば、私昨日もこれは指摘いたしたんですが、特にはなはだしいのは十兆円を超える医療費、こういうようなところに思い切ってメスを入れるというふうなことも、歳出の検討という御指摘の中には大きなウエートを占めておると考えてよろしゅうございますか。
  26. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) もうとにかく、あらゆる面で問題が山積しているのではないかと思っているのでございます。
  27. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 あらゆる面になりますと、ポイントをしぼって思い切った療治がなかなか歳出予算ではできないものなので、ポイントをしぼればどれとどれだというふうなことになると、いろいろ何ぼか挙がってきますけれど、その問題はあれですから……。  それで最後に、非常に革命的な方向として、名目金利物価上昇分を上乗せするというふうな金利の体系が世界的に生まれつつあると。これをもうちょっと詳しく御説明いただけませんでしょうか。
  28. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) まあ、考えますれば、特にアメリカを中心にしてこういう事態が起こっていると思うんでございますが、一応名目金利で金を借りてもたとえば三カ月後あるいは一年後に物価がそれ以上に上昇する。そうしますと、投機的な動機から申しましても、いまの金利で買っておいても後になれば結局安かったということになるわけでございますし、特に投機的に物を手当てする向きにつきましては、たとえば安い金利で借りていて、これを後で処分することでインフレ利得を生ずるというようなことでございますから、インフレに金融面から対処しようということになりますと、このインフレが一九六〇年代の後半以降恒常的になっております過程で、どうしても実質金利と名目金利というものを分けて物価上昇分を上乗せしなければ、実質的な金利水準というものは維持できないというようなふうな考え方になってきたのだと思うんでございます。  アメリカ、あるいはイギリスでそういうことで公定歩合が一三%になり、プライムレートが二〇%前後になった。最近ちょっと反落の傾向が出てきたということでございますが、イギリスでもやはり似たような状況が進んでいる。そして、アメリカがそういうふうに高金利になりますと、そのほかの、アメリカの政治的な安全度等をあわせまして、どうもお金がみんなアメリカの方に流れていって、円なりマルクなりがどんどん割り安になってくる。日本について言いますと、そのようなふうに円安が進行してまいりますと、石油の値上がりの影響がさらにそれによって加重されるわけでございますし、そういう面からいきまして、日本の金利水準もどうしてもそのアメリカの動きに連動せざるを得ないような面があるわけでございますが、そういうような海外要因を国内のインフレ要因に転嫁させないためにも、突き詰めてだんだんいきますと、やはり財政再建を急がなくちゃならないんじゃなかろうか、そういうような感じが非常に痛切にされるわけでございます。
  29. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうしますと、結局、たとえばアメリカの高金利というふうなことをおっしゃったんであって、制度的にこういうふうな物価上昇分を名目金利に上乗せするというふうな、制度としての何かができ上がってきているということではないんでございますね。
  30. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) そうでございます。
  31. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 じゃ、結構でございます。
  32. 多田省吾

    ○多田省吾君 参考人方々には御多忙のところ、本日は貴重な御意見をお聞かせいただきまして大変ありがとうございました。  私は、まず関参考人に三、三お尋ねしたいと思います。  関社長には、昭和五十四年度昭和五十五年度、毎年十四兆円前後の大量国債発行のときに全国銀行協会連合会会長という大事な立場で御苦労されたわけでございますが、五十五年度発行予定国債十四兆二千七百億円のうちシ団引き受けは九兆七千七百億、公募入札二兆円、合計で十一兆七千七百億円、こういう巨額国債消化見通しについてお伺いしたいと思います。  関参考人には、新聞紙上で拝見しますと、資金運用部の引受額が二兆円ないし二兆五千億円というのでは余りにも少ない。三兆、四兆の余裕があるんじゃないかというお考えをお述べになったこともあるやに聞いておりますが、私は資金運用部の引受増大に対しては疑問も持っておりますが、関参考人はどのようにお考えか。  また、この大量国債消化見通しに対しまして、国債多様化等ともおっしゃっておりますけれども、大蔵省当局は、十年利付国債のほかにも五年割引国債あるいは公募入札の四年利付国債、三年利付国債、二年利付国債というようなものも考えているようでありますが、その他に何かお考えがあるのかどうか、その辺もあわせてお尋ねしたいと思います。  それから第二番目には、毎年お尋ねするのですが、こういう状況のもとにおいては意義がちょっと失われていると思いますけれども、しかし、もう一度お尋ねしておきますが、市中消化促進の意味から、いわゆる銀行の窓口販売についての御見解をお伺いしたいと思います。  この二点、お伺いします。
  33. 関正彦

    参考人関正彦君) お答えを逆に、窓口販売の方からさしていただきたいと思います。  窓口販売の問題は、実はこれは御存じのとおりでございまして、金融制度調査会という政府の審議機関がございます。その場におきまして、ある程度そこで結論と申しますか、そういうものが出ておるわけでございまして、私どももその審議には参加しておるわけでございまして、ここで改めてこの窓口販売ということにつきまして別の見解を持っておるわけでございませんので、大変申しわけございませんが、あの方向をわれわれは期待し、また、これはもう個人意見かもしれません。いろんな方がいろんなことをおっしゃっていますけれども、戦前からの法体系を考えてみましても、法律的には私は可能であるという考えはいま変わらないわけでございまして、これが実現されれば、必ずやこの国債問題あるいは国民の金融資産多様化というものについての寄与というのは十分意味があるのではないかと、かように思っております。  それでは、初めの方の御質問に戻ります。  これは大変に毎年毎年、ここのところ二年ばかりは、多額国債消化について限度に来たというような言葉まで使っておるわけでございます。非常にむずかしゅうございます。果たせるかな昨年の場合は、先ほどの私の陳述でも申し上げましたとおり、特に都市銀行の場合を見ますと、調達した資金よりも国債の引受額の方が多いというような事態がとうとう出てしまいました。これは長続きのする話ではございませんので、何とかこの面につきましての打開策を苦慮しているわけでございますが、その中に、先ほど私が申しました、やはり資金運用部資金の活用というものをさらに一段とひとつお図り願いたい、調達の範囲の中で消化できる部分が、御余裕があるように存じます。  ただ、私自身、何兆円余裕があるのかということにつきましては、あのときも申しましたけれども、その内容についての詳しいデータを知らないというのが前提でございまして、ただ腰だめ的に申せば、先ほど申しました八十三兆円というものの中からシェア的に出してきますと、そのくらいのゆとりは出るのではなかろうかというこれは推測の議論でございます。しかし、必ずひとつこの部分につきましては御増額が願いたいという気持ちは変わりません。  多様化の問題でございますが、これは昨年のやはり五月でございましたか、国債発行に関する懇談会というのが財政当局において初めてでございましたが、御開催になりまして、その席でいわゆる七項目対策というのが出ておりまして、その中にいろいろと多様化についてのまた御意向も出ております。ただ、残念ながら、その中に示されました多様化も、なかなかその後の進行状況におきましては具体化に至らないもの、たとえば私募債的なものであるとか、あるいは短期債、中期債のいろんなバラエティーにつきまして、これはなかなか進んでおりません。しかし、これは引き続き、先ほどの丸谷先生の御質問にございましたけれども中期債ファンドなどという新しい手法まで民間で考えておるわけでございまして、これには私は多少意見はございますけれども消化についての工夫をしながら、それにミートした国債多様化というのは、今後も引き続きやらなきゃならぬと思いまして、ここで一つだけ、やはり新たなというか、多様化と申しますのとはちょっと違うのかもしれませんが、わが国の国債の量が多額に上りますときに大体いつでも登場してくるのが、国際環境が許せば外債という問題でございます。  これは、やはりオイルショック以来の膨大なる所得移転というものが、日本から産油国の方へ行っておるわけでございますから、そういうものとうらはらに考えましたときには、オイルマネーの還流という問題も絡め、そして日本の財政事情民間資金状況というものを絡めましたときは、この問題はやはり真剣に討議すべき問題であって、現実に新聞報道を拝見いたしますと、政府筋におきましても非常な御努力をなさっているように承っておりますけれども、私の方で申し上げますれば、既発債を消化するのでなくて、新発債を外債に振り向けていただくことが何よりも必要なことではないだろうか、かように存じております。
  34. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、村田参考人にお尋ねしたいと思います。  同じような質問になりますが、国債消化に絡めまして、証券会社の中にはいろいろな事故が相次いだりして大変苦労されているわけでございます。今年度も、資金運用部引き受け二兆五千億円を除きますと、十一兆七千七百億円の国債公社債市場消化する予定になっておりますけれども、その消化能力については、村田参考人はどのようにお考えでございますか。先ほども関参考人からもお答えいただきましたけれども国債発行多様化とか、あるいは私募債の問題とかも含めまして、その対策が、お考えがおありでございましたらお聞かせいただきたいと思うんです。  それから二番目には、公募入札方式というものは、市場のメカニズムに従って発行されるという面で非常にすぐれてはおりますが、いろいろ問題もあろうかと存じます。村田参考人公募入札方式に対する御見解を承りたいと思います。  その二点、お伺いします。
  35. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) お答え申し上げます。  まず最初の御質問の、五十五年度消化見通しはどうかというお尋ねでございますが、この消化見通しということの前に、消化見通しのいかんにかかわりませず、先ほどからもいろいろお話のございましたように、やはり年度中におきましても発行額そのものを、先ほど資金運用部のお話もございましたけれども、極力減額するという方向努力を御当局にやはりお願いしなければならぬ。この線が基本的に大切なことであると、このように存じます。  この消化につきましては、私ども個人消化立場から申し上げますと、やはり何と申ましても一番大切なことは、条件が実勢化されておると。市場実勢に即応した条件で、必ずしも金利体系というものに余りこだわらないで、機に応じて市場実勢に合わしたリーズナブルな発行条件をもって発行をするということが何をおいても大切であろうと、こういうふうに存じます。それに多様化の線で中期国債公募入札もございますし、また、割引国債というものもございますが、冒頭でも申し上げましたように、この多様化されたものが実際に効果をもっと発揮し得るように運営することは十分可能であろうと、このように存じます。  割引国債について、冒頭にもっと商品性をつけるようにしていただきたいと、このようなお願いを申し上げましたけれども、これ一つとってみましても、もしそれに商品性をもう少しつけていただくならば、もっとこれはできるはずでございます。また、中期債の公募入札でございますが、年限の多様化はもっと進める余地もございましょうけれども、何にいたしましても、市場状況をよく見ながらその市場状況にマッチしたようなタイミング、条件において発行されるならば、十分これは余地がまだあると、このように存じます。  それから、何と申しましても、投資家が投資対象としてこれはいいんだと、国債のクレディビリティーそのものについては微動だもいたしませんけれども、やはり絶えず投資家立場配慮されているというふうなイメージを投資家が持つということが、非常に大切なことであろうかと存じます。そういうふうなものがあれば、個人消化というものはまだ進んでいくと。  それから、環境でございますけれども市場環境ということが非常に大きなファクターになるわけでございます。これまでは非常に何と申しますか、アゲインストの、逆風の中で募集をしているような状況でございましたが、これも恐らくこういった高金利の状態がいつまでも続くものでもございますまいし、アメリカにおきましても、昨今ちょっと状況変化して、やや金利の天井感というものも生まれてきかけている兆しは見えるようでございまして、アメリカの市場とかなり金利の連動性がございますので、それありましてかどうですか、やはり国内におきましても若干募集環境に、まあ金利の天井感とまではまだ申せないかもしれませんけれども、そういった兆しが見えるような感じがいたしております。  市場においてもさようでございまして、これは安易に楽観するわけにはまいりません。環境変化というものを、やはり推移というものを十分に見定めなければ、軽々には考えられませんと思いますけれども発行をなるべく抑えていくという、減額ということと、それから、先ほど申しましたような、実勢化していって魅力ある商品にしていく、投資対象としていくということと、それからさらに、環境変化という、この三位一体となりますならば、この消化というものは、見通しというものが相当確かなものになってくるんではあるまいかと、かように存じます。  それから、第二のお尋ねの点の、公募入札をどう思うかという御質問でございますが、これは入札制というものは、御高承のとおりに、実勢をそのままに反映するところに非常に大きな私は効果があると思っておるんでございます。その意味におきまして、昨年、この中期債の公募入札に踏み切られましたことは非常に英断であろうかと、かように存じておる次第でございます。それだけに、そういった市場実勢がそのまま入札としてあらわれますだけに、その発行のタイミングというものがかなり機動的に行われないといけないであろう。機動的に行われますならば、相当これは効果を発揮するのではあるまいか。市場状況を絶えずにらみながらやっていただくというふうにしますと、これは本当にその効果をさらにさらに発揮していく余地があるんではないかと、このように存じます。  以上、申し上げました。
  36. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、肥後参考人に二、三お尋ねしたいと思います。  まず第一に、肥後先生は、最初に、本年度は税の自然増収が三兆五千億円あるいはそのほか不公平税制の是正等によって、合わせて四兆六千億の自然増収があったのに、一兆円のみの減額にとどまったということは残念だというふうなお考えをお述べになりました。それから、六十年度以降のいわゆる国債償還が始まりますと、非常なこれは重大な局面、インフレ危険増大というような大変な事態になるということもおっしゃったわけでございますが、本年度以降において、やはりこれからの自然増収というものが非常に望み薄だというお考えもお述べになったわけでございます。特例公債あるいは建設公債におきましても、公債を五十九年度に至らずともその前にもその依存を脱却したいというお考えですが、それにはどういう財政政策をとったらよろしいのか、まあ大綱でございますが、御意見がございましたらお願いしたいと思います。  それから第二番目には、財政審の報告では、いわゆるクラウディングアウトが現実の問題であると指摘しておりますが、政府の方ではまだクラウディングアウトには至っていないと、こう言っております。財政の専門家であられるお立場から、どの時点でクラウディングアウトが生じたと判断すべきなのか、その辺をひとつ御教示いただきたいと思います。  それからもう一つですが、最近、国債をサウジアラビア初め産油国に売却するということが言われれておりますが、この問題は、私はどうもオイルダラーの還流とか円安防止に役立つという現象面のみの論議に終わっているようでございますけれども、今日のように国債大量発行されている中で、国債を外国に売るということについて基本的に先生はどうお考えなのか。  この三点をお伺いしておきます。
  37. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) 特例公債依存度をなるべく早く脱却するためにどういうような財政政策が考えられるか。    〔理事細川護熙君退席理事浅野拡君着席〕 それから第二点としまして、クラウディングアウトがどの時点で発生したと考えられるか。第三点としまして、産油国に国債を売るということをどういうふうに思うかという三点の御質問があったわけでございますが、第二点と第三点を先に申し上げまして、それから最後に一番大きな問題に触れてみたいと思います。  どの時点でクラウディングアウトが生じたと思うかということでございますが、私は、国債発行価格を割りまして大幅に値下がりをした段階ということであれば、やはり昨年の五、六月ごろからもうすでにその現象は起きている。これは当然、一昨年の秋から民間景気の回復が進行してきたということと連動すると思うんでございますけれども、したがいまして、現在国債価格が、たとえば六・一国債で八十円を割ったというような事態が生じて、国債消化に非常に民間でも、あるいは財政当局でも苦慮していられるという事態は、これはクラウディングアウトではないかと思っております。  それから、国債の産油国に対する売却につきまして、国債を外国に売るということは一体これをどういうふうに思うかということでございますが、現在、当面インフレをどうしても防止しなければならない。特に、石油の値上がりによるところの国内の物価騰貴へのはね返りをできるだけ抑えなくちゃならない。そのためにも、円安を防止するためにできるだけの努力をする必要があるということで、結局、オイルダラーの取り込みということが考えられたのであろうと思うんでございますが、一たん国内で発行したものを外国に売るという点でどういう問題が生じるかという点につきまして、私必ずしも詰めておりませんけれども、大筋として考えられますのは、これは一種の外債発行みたいに考えることはできないか。  外債発行ということであれば、国際収支が悪化した時点で日本はしばしば戦前におきましても外債を発行しているわけでございまして、これが将来非常に流動化しまして、国際収支の不安定要因になるというような危険も将来は生じるかもしれませんが、現状では、一応円安防止のためのいろいろなとるべき手段の一つとして評価していいのではなかろうかと私は考えます。  それから、最後に第三点としまして、赤字国債をできるだけ解消を早めるためにどのような財政政策があるかということでございます。  先ほどのお話の中でちょっと私の意見について修正さしていただきたいんでございますが、一応税法上の増税が一般会計で三千五百億、それからエネルギー関係で約八百億、それから景気回復に伴う自然増収が約四兆六千億、それで全体として税収約五兆円の増加を見込むことができた。その中で一兆円を国債減額に充てたのは、これはやむを得ないにしても、非常に不十分であるというふうな御意見を申し上げたわけでございますが、このような国債大量発行の基調となっております財政体質としましては、先ほども申し上げましたように、やはり歳出と歳入の構造的な不均衡解消していないということが大問題であろうかと思うんでございます。  したがいまして、たとえば五十五年度中にできるだけ現在の特例公債あるいは国債全体の発行額減額を図るにつきましては、たとえば公共事業費等について、とにかく当面民間景気もよろしいわけでございますし、五十四年度までの公共事業費の規模がきわめて大きかったということに着目しますならば、かなり繰り延べる余地もあるのではないか。繰り延べる余地がありますならば、たとえば前半とにかく契約率を引き下げて様子を見ながら、可能な限り、これは予算との関連の問題もありますが、公共事業費等の削減を図るべきではなかろうか。あるいは、何と申しましても、大きいものとしましては三K問題があるわけでございまして、こういうようなものの体質改善を早急に図るべきではなかろうかと思うわけでございます。    〔理事浅野拡君退席理事細川護熙君着席〕  ただ、支出が高度成長時代と変わらない、相変わらず一五%平均の伸びを示しているのをどういうふうにして収入に見合う伸びにするかということは、これは歳出全般の見直しにかかってまいりまして、最終的には、国の責任で行うべき仕事というのは一体どういうものであるかというような哲学の問題にまで絡んできますので容易ではないと思うのですけれども、もうそういう意味では、歳出面では補助金の整理あるいは行政機構の改革というだけにとどまりませんで、さらに踏み込んだ切り込みを歳出の各面について検討しなければならないのではないかと思います。  最後は、先ほども申しましたように、一つは、収入に見合って生活程度を切り詰めることが必要でございますけれども、もう一つは、どうしても支出しなければならない経費については収入の増加を図らなければならない、こういう点で、一般消費税の導入が見送られたということはありますし、それについて国民がむだな経費が多いじゃないか、これを削るのが先じゃないかという厳しい批判をしているということも事実でございますが、そういう意味では、できるだけのむだを省く努力をし、あるいは不公平税制の解消を図りました上で、どうしてもこれだけの費出は必要だということになりましたら、それに見合う適正な負担増について国民に問題を問いかける勇気も必要であるのではないか。  この点で、五十五年度一兆円の減額は問題の始まりであって、非常に構造的な不均衡解消というのは大変な深刻な問題を五十六年度以降に残しているのではないか、そういうふうに感じているわけでございます。
  38. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 きょうは御苦労さまでございます。  最初に、関参考人に二つほどお尋ねをいたします。  一つは、銀行経営は最近国債の大量の抱え込みでいろいろ問題が出ている、困難があるということに先ほど来触れられておるわけでありますけれども、その実情について、特に大手と中小でかなりアンバランスが生まれているのではないかというふうに思うのですが、その点についてはどのように見ておられるかという問題です。  もう一つ、先ほど来会長は、資金運用部引き受け拡大のことに触れられておりますけれども、今後このような大増発が続いていけば、日銀の引き受け、または日銀の買い取り、そういう方向へ発展をするという危惧を持つわけでありますけれども、この点での御見解をお尋ねをいたしたいと思います。
  39. 関正彦

    参考人関正彦君) 第一の問題でございますが、銀行経営の内容につきまして中小のアンバランスはないかということでございます。形式的に申しまして、全銀協の会長の場合のカバレージは地方銀行さんまででございまして、相互銀行さんなどの問題もあるということになりますとなかなかそのお答えがしにくい、データがないわけでございますけれども、それをあえて申し上げさせていただきたいと思います。  大手の場合の対応の仕方というのは、御存じのとおり、決算における一番の問題点でございます保有国債の評価の方法、これが今度の三月期におきまして選択制になりまして、従来の低価法が、原価法も許すということになりました。ちょうど半分ずつに分かれてしまったというようなことでございますが、それぞれの経営の中でこれは判断されることでございまして、どちらがいいとか悪いとかいうことは、私はここで申し上げる立場ではございませんが、とにかく保有国債相場が大変に下がったために、やはり従来と違ったことをやらなければならなくなったということだけは事実でございまして、これは受けとめ方が違う、方法が違うということでございますが、それぞれの資金ポジションあるいは将来の見通しがこれは入っておることだと思いますが、これが地方銀行さんといいますと、どうしても規模がわれわれより小さくなるわけでございます。そちらの方のお受けとめ方もなかなかこれも区々でございましたが、多数はどうも原価法という方をおとりになっている。  原価法が苦しくて低価法が楽だというふうには私は思いませんですけれども、原価法の場合でございますと、確かに国債相場というものに一喜一憂しなくてもいい。ただし、言葉が適当でないかもしれませんけれども、含み損は残るという対応でございますね。これがやはり相当広がってしまったということは、分布状況から見ますと、なかなか地方銀行さんも大変だったのではないかなという感じがいたします。また、これは相互銀行さんの場合も同じようなことでございまして、対応には大変御苦労なさった。  ただ、これが御質問の範囲になるか、銀行であるというふうにおっしゃったのでございますが、金融機関として考えますと、信用金庫さんなんかは非常に強い姿勢で低価法を堅持しておられます。ただ、これは引き受けられます国債、保有される国債の残高が、比較的業容に対してあるいは相対的にはまだ荷が軽かったのではないか、それでたえ得る状態だった、こういうふうに思いますので、一律に大が楽で中がそのくらいで小が苦しいかということになりますと、引受団の中の保有国債の配分シェアということも裏面の条件になっておる。これは御質問に対しまして直接的なお答えにならないと思いますけれども、そういう非常に複雑な状況があるということを申し上げます。  第二の、資金運用部の問題でございますが、これは先ほども私いろいろ申し上げましたけれども国債はどう考えてもインフレの原因になるような国債では相ならぬという立場を堅持して今後進めていくべきでありまして、資金運用部を動員するということは、その範囲内にあくまでとどめるべきでありまして、これは別途、インフレの率が一体どのくらいになっておるのかというふうな現在、非常に日本銀行におかれましてはマネーサプライというもののコントロールには万全の体制をもって臨んでおられますが、あれを踏み外さない範囲で国債諮問題は処理しなければいかぬ、これは私かたくそういうふうに存じております。  したがいまして、資金運用部の増額ということを申し上げる理由は、運用対象をインフレのことを考えながら配分していく意味において、まだ配分を国債引き受けに振り向け得る余地があるというふうに私は考えておりますので、あえてこのことを申し上げておきたいと思います。  日銀のいわゆる買い取りであるとか日銀の引き受けというような事態に万一踏み込むようなことがありますると、悔いを千載に残すというふうなことになるかと思います。これは絶対に日本のいわゆる金融だけではなくて、経済あるいはもう全国民が一致いたしまして、そのようなことにならないように対処するまさにいまがその時期であろうかというふうに思っております。
  40. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 村田さんにお尋ねをしますが、国債相場の暴落が金融、証券の関係にも大きな困難をもたらすわけでありますけれども、特に中小の金融証券関係にとってどういう影響が出てくると観測をなさっておるのか、お尋ねしたいと思います。
  41. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 暴落の影響は、これは金融機関全体にあるわけでございますけれども、特に中小という御質問でございます。  国債引き受けのシェアから見ますと、中小の引き受けシェアというのは、かなり小さい引き受けシェアになっております。過般も新聞紙上に出ましたような問題もございまして、ちょっと調べたことがございますのですけれども、それから来る問題ではなかったということでございますし、その引き受けのシェアから来る圧力というものは、そんなに中小の場合に大きくない。ただ、やはり流通市場の問題がございますので、その間の手持ちというふうなこともございますし、そういったふうなものから来ます影響というものはございますが、これはその会社会社の方針によって非常に違いがございますので一概に申せませんが、若干、中にはかなり影響度があるというものもございます。が、それによってどうこうという、企業の存立が危うくなるという程度のなにはまだ耳にいたしておりませんというふうなことでございます。
  42. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 最後に、肥後先生に二つお尋ねをいたしたいと思います。  一つは、財政審などもその報告で、国債発行についての歯どめの幾つかの指標のようなものをあの報告の中でも出しておるかと思うんですけれども、先生の先ほど来のお話の中で、いずれにしても、国債の増発を抑え縮減を急いで図らなくちゃならぬという立場からいろいろおっしゃっているわけですけれども、この国債を抑え縮減を図っていくのに、何を指標にして計画的に進めるか、何か御見解があればひとつお伺いしたいと思います。  それからもう一つは、五十三年度予算財政再建には非常にほど遠い感じがするという、私もその結論の部分は同感でありますけれども、したがって、どういう角度から税財政の抜本的な見直しをやっていくかということで、先ほどの御答弁の中でも、たとえば公共事業の見直しの問題だとか等々いろいろ触れられておりますけれども、そうした点でお尋ねをしたいと思いますのは、一つは、先生が国民に何がしかの税負担を求めるその問題についても、一定の決断というか英断というか、ちょっと私の聞き取り間違いであったかもしれませんけれども、そういう御発言があったわけですけれども、それに先立って、今日この史上空前の増益を上げておるということで、世上もいろいろ報道されております大企業に対する課税の問題を、今日的位置づけとしてどのようにお考えになるかということ。  それからもう一つ、昨今非常にやかましい議論になっております防衛費問題、たとえばGNP一%を目指す云々というここの議論があるわけですけれども、いわば不要不急の経費を削るという角度から言って、防衛費をふやすという問題について、一体国民的に見てどういう判断をすべきなのか。  以上、お尋ねをいたしておきます。
  43. 細川護煕

    理事細川護熙君) ちょっとその前に肥後参考人にお願いを申し上げますが、あとの時間の関係もございますので、できる限り簡潔に、恐縮でございますがお願い申し上げます。
  44. 肥後和夫

    参考人肥後和夫君) まず、財政再建の指標をどういうふうに考えるかということでございますが、いろんな要素を財政審の報告でも取り上げておりますけれども、結局、一番簡明であるという点では、当面やはり公債依存度ではないかというふうに考えるわけでございまして、そういう意味で、公債依存度を、やはり理想としては現在の状況よりも大幅に下げるということが必要であると思っております。  それから第二点の、大企業課税の位置づけでございますが、税制調査会で前に、国際比較から見まして二%前後の負担増の余地があるというふうな報告をしております。大企業課税につきましては、これは景気の問題もあり、雇用の問題もあり、すべて大企業だけに税金を負担させればそれで済むというわけのものでは私は必ずしもないと思いますが、五十五年度につきましては退職給与引当金の繰入率の適正化等によりまして、かなりの増収が期待できたわけでございますけれども、国の税制、地方の税制を通じて、企業課税についてももう少し景気動向ともにらみ合わせながらなお余地があるのではないか。  しかし、かと申しまして、最終的に企業課税は結局価格に転嫁されまして、一般の国民に間接税となって負担されるような面もありますので、民主主義の本来のたてまえから言えば、やはり直接税にも目を向ける、国のサービスと国民の負担とをはかりにかけて、国民が一応納得して払う税金をいつまでも回避するということもできないのではないか、両方の適当なバランスが必要であろうと私は思っております。  防衛費につきましては、私はまだこの問題について掘り下げて勉強をしておりませんが、財政再建の非常に困難な過程でもありまして、一応簡単に防衛費がすぐ引き上げられる、それだけの財政余力があるというものでもないと思っておりますが、これについては最終的に国民の防衛に関するコンセンサスに基づいて、そのあり方、まあアメリカとの関係もありますけれども、最終的には国民がどういうふうに考えるか、これを基準にして適正なあり方が今後の宿題として残されているのではないかと私は思っております。
  45. 中村利次

    ○中村利次君 大変どうもお三方の参考意見、ありがとうございました。  関参考人村田参考人は、銀行と証券というお立場の違いはございましても、大変大量な国債発行及び消化についての御努力を賜った立場からでの御意見を承りましたし、肥後参考人からは、専門家としてのいろいろな立場からの御意見を伺いました。ともに財政及び特例債についての基本的な御意見でございまして、その限りでは、もう全く私どももおっしゃるとおり、そのとおりに考えるわけでございまして、その限りでは特別に質問することはございません。  御意見をむしろ拳々服膺して、行政府も立法府もその実現に努力をしていくべきであると存じますが、何せわが国を取り巻く経済環境というものは、残念ながらどうも悪化の一途をたどっておるようでございまして、やや落ちつきかげんであるといいましても、円相場はまだ二百五十円に近いところでございます。まあいろんな事情はございましょう。これは余りにもどうも安過ぎるというあれもございますけれども、私は日本が油に決定的に弱いという、こういうものが、もう当面二年や三年でこれを解消することはできないわけでありますから、これは将来課題としてどう解決をしていくのか。これは国民的課題でしょうが、やっぱり円が強くなるという保証はなかなかむずかしい。  いまの相場は安過ぎるという点では、まあ私もそう思います。あるいは村田参考人から御指摘になりました、アメリカのプライムレートが幾らか下がりぎみであるという、天井感が出たようでございますけれども、日本の公社債市場においては、なかなかどうもこの天井感というのがいまだしであるという御意見も伺いました。あるいは村田参考人からは、国際収支の改善の決定的課題として、オイルマネーの取り込み等を考えていくというよりも実現をしていかなければならないだろうという御意見も伺いまして、全くそのとおりだと考えます。  油に決定的に弱くて、そして経常収支の改善ができないということになりますと、国債金利高騰の問題を含めまして、日本の経済あるいは財政再建というのは、本当にこれは日暮れて道遠しの感があると思います。そういう環境の中で仮に十四兆二千七百億という国債消化をしようとしますと、私は、これはよくここでも議論するんですけれども、ニーズに合ったいろんな発行条件を、それは確かにその必要があるし、その知恵のしぼり方では消化もかなりこれは可能になってくると思いますけれども、抜本的な問題は解決をしないわけです。  そこで、時間も終わりますから、これはお三方に伺いますと時間をはるかに超過してしまいますから、まことに恐縮ですけれども、真ん中の村田参考人に、国際収支の見通しですね、それから原油問題だとかいろんなそういう根本にあるものを経済界的な立場からお伺いをしたいんですけれども、時間もなくなりましたから、国際収支の見通し等につきまして、これはもう大変な課題だと思いますが、いかがでしょう。もう原油価格はこのまま上がらないでも、いまの準備高では三月分そこそこぐらいの油代しかないわけですね。大変心配ですけれども、どういうお見通しをお持ちでございましょうか。
  46. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) どうも素人にはなかなかむずかしいお尋ねでございます。  国際収支の点でのお尋ねがございましたが、貿易収支について見ますと、この五十五年の四−六につきましては、大体とんとんじゃないだろうかというふうな予想がされております。それから経常収支も、五十六年の一−三月あたりで、ある程度均衡がとれてくるんじゃあるまいかというふうな見通しもされておりますが、ただいまのお尋ねの国際収支という面に関連いたしまして、まあそう簡単に楽観するわけにもまいるまいと思うのでございますが、先ほどオイルマネーのお話もございましたようでございますが、私は、問題はこの点にかなりのかぎがあるのではあるまいかと、かように私見としては存じております。  現在で申しますと、オイルマネーというのがかなり流れてきているのはいるんです。昨今で、この半年ぐらいで、約四千億ぐらいヨーロッパから私どもの方に、証券市場の方に、市場経由で来ております金がそのぐらいございますが、その半分ぐらいのものがいわゆるオイルマネーではあるまいかと存じております。  まあ、そういった局部的な問題としてよりも、むしろオイルマネーの問題というものは、国際的に、国際金融といたしまして、ドルの偏在現象でございますか、これが極端に偏在しているという現象でございまして、これが国際経済にも私は非常に大きな課題であろうかと思っておりますんですが、そういう意味合いからいきましたら、このドルの偏在現象を解決していくということが国際経済としての基本的な課題であり、したがいまして、その一環であります日本にとっても重要な一つ課題であると、こういうことが申せるかと思います。  最近の動向によりますと、日本の円が対ドル六十円ぐらいになってきますと、相当OPECカントリーから、国債にせよ何にせよ、円市場への注文が控えているような感じも受けております。そういう傾向は徐々に出ております。そういう面で、この辺が一つのこれからのかぎになってくるんではあるまいかと、かように存じております。  大変ふつつかなお答えでございますけれども
  47. 野末陳平

    ○野末陳平君 先生方意見を聞きますと、非常にこの財政再建とそれに関係してくる国債の問題は、困難というか大変深刻だなあと思っているんですが、とりあえず抜本的な問題、個人消化ども含めて消化が非常にむずかしいと思いますから、個人消化のことで一、二お聞きしたいんです。  国債魅力ある商品にすれば、確かに個人消化が促進されるだろうと思うんですが、余り魅力がありますと、今度は逆にほかの商品に与える影響もまた大きいだろうと思うわけですね。ですから、ぼくなど仮に、今度八・八八の十年物を主力にして出していかざるを得ないのかどうか、その辺知りませんが、もしこれを主力にするならば金利負担が大変になりますから、そんなばかなことをしないで中、短期に主力を置いていくように本当はやった方が当然いいと思うんですよ、金の面も考えて。  しかし、仮に二年とか三年とかそういうような国債がかなりいい条件で出てくると仮にすれば、もうほかの商品はアウトじゃないかと思ったりして、バランスがとれるのかどうか、魅力ある商品にすればするほどバランスがとれなくなって、また別の問題が起きるんじゃないかというふうに考えるんですが、その点、関参考人はどういうふうにお考えですか。
  48. 関正彦

    参考人関正彦君) 大変厳しい御指摘でございまして、これは戦前あたりも、銀行預金と国債のレートというのは国債の方が魅力のあった場合がしばしばございます。そういう点で、何か一挙に魅力があると、金利差があるからといって一挙に流れてしまうものではどうも金融市場というのはないような経験をわれわれ持っておるわけでございます。  ただ、これは最近の実情というのは、国債というのは大変証券会社の皆さん御熱心で販売努力をなさっていらっしゃいまして、インフォメーションと申しますか、非常に情報がよく大衆の皆さんにわかっておりまして、戦前の場合はそれはどうであったか私も余りはっきりいたしませんけれども、確かに魅力ある商品は他の魅力のない商品を押し出してしまう懸念というのは、全くないとは申し上げられないと思います。  したがいまして、私どもといたしまして、先ほどの冒頭で申し上げました中に、われわれの資金吸収力というものを補強しながら、この国債の引受努力を重ねるという面にそういう気持ちをちょっと持っておるわけでございまして、何と申しましても十年の国債でございますから、やはり一年、二年、三年というような時期で持ち切れれば結構でございますけれども、このような価格変動がありました場合には、必要の生じたときにそれじゃ処分したときには利回りがよかったかもしれないけれども、キャピタルロスが出ちゃったという、そういうやはり考慮がどうしても個人の方にも自分の金融資産のいわゆる配分ということをお考えになる。そこに多様化という問題が出てきておるというふうに、私は感じております。
  49. 野末陳平

    ○野末陳平君 今度は村田参考人にお聞きしますけれども、先ほど、いまの魅力ある商品の一つの性格になるでしょうが、特別マル優の拡大のことをちょっとお触れになりましたけれども、これもまあそうなれば確かに促進されるだろうと思います。思いますけれども、いまのマル優と郵貯の枠など全部ひっくるめましても、この国債を売るために特別マル優の枠を仮に五百万とか、あるいは六百万まで拡大するようなことになりますと、かなりのお金を持った人たちへのまた優遇ということにもなりまして、ぼくは邪道じゃないかと思っているのですね。  だから、去年のこの特例債のときの質問でも、そういうことはよくないというふうに大蔵当局には言ってみたんですが、どんなもんでしょう。やはり売るためには、あるいは売る立場としては当然お望みになるとは思いますけれども、それを強行ということでもないが、それをどうしても売るために必要なんだといってマル優の枠を拡大しちゃった場合、やはり結果的には何か売らんかなで、ぼくは余りおもしろくないと思うんですね。いいことじゃないと思うんですが、どうでしょうか。
  50. 村田宗忠

    参考人村田宗忠君) 野末先生のいまお尋ねの国債の特優の問題でございますけれども、御指摘のような点もございますかとも思いますけれども、私ども思いますのに、この間ちょっと見ました数字でございますけれども、いまの公的年金で安心しておれるかという質問に対して、公的年金だけでは老後の生活に対して安心しておれない、私的年金と申しますか、自分の貯蓄でそれをカバーしていかなきゃならない、補完していかなきゃならないということのアンケート調査が出ておりまして、六三%の答えが公的年金では安心できない、こういう答えであったように記憶いたしております。  そういたしてみますと、これは一つの角度にすぎませんけれども一つの角度として公的年金を急に引き上げていくということが困難であるといたしますならば、片っ方でいわば私的年金といたしましてその場合に国債が対象となる場合が非常に多うございます。特に退職金などは、非常に国債への投資の比率が多うございます。そうすると、そういったふうなものがある程度公的年金の足りないところを補っていると、こういう補完的な機能を持っているといたしますならば、これに対しまして公的年金を引き上げるわけにはいかないとするならば、特優の枠を拡大するということによって私的年金というものをカバーしていくというふうなことが考えられるんではあるまいかと。  税の公平論につきましては私よくわからないのでございますけれども、その公平論も少し、何と申しますか、幅を広げて考えてまいりますならば、公平が不公平の場合もありましょうし、不公平が公平の場合もございましょうし、その辺につきましてそういったふうなこともございまして、それからもう一つは、直接に所得が税引きとそれから非課税と、この差もございますけれども、募集という販売面から見ますと、この枠の拡大によりまして何が変わってくるかと申しますと、募集対象が広くなってくるわけでございます。  で、所得の層が変わってまいりますから、そうすると、片っ方で金持ち優遇じゃないかということもあるかもしれませんけれども、しかし、退職金ということを考えてみましても、大方の退職金の金額と、それから特優、マル優の枠の金額とこれを対比してみますと、必ずしも過大であると、どうもそんなふうな感じもいたしませんので、両面からこの点はひとつぜひとも御検討を賜りたいと、かように存じております。
  51. 細川護煕

    理事細川護熙君) 参考人方々には、本日は長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。重ねて厚く御礼を申し上げます。  午後二時まで休憩いたします。    午後零時二十分休憩      —————・—————    午後二時一分開会    〔理事細川護熙君委員長席に着く〕
  52. 細川護煕

    理事細川護熙君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案審査のため、本日の委員会日本銀行副総裁澄田智君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 細川護煕

    理事細川護熙君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  54. 細川護煕

    理事細川護熙君) 昭和五十五年度公債発行特例に関する法律案を議題とし、昨日に引き続き多田君の質疑を行います。
  55. 多田省吾

    ○多田省吾君 澄田副総裁には、御多忙のところ大変ありがとうございます。  二、三御質問をさしていただきます。  初めに、昨日チェース・マンハッタン銀行が、大手では初めてプライムレートを二〇%から一九・七五%と〇・二五%引き下げ、対円相場も一時一ドル二百四十七円九十銭まで下落し、アメリカの高金利景気後退本番入りとともに天井を打ったようでありますけれども、そこでお伺いいたしますが、第一に、アメリカを初め欧州主要国の金利は天井を打ったと見てよろしいのかどうか。  第二に、高金利から正常な状態にやや戻り始めたとすれば、その背景として、オイルマネーが順調に還流を始めたと見てよろしいのかどうか。  第三番目に、天井感が出始めたといたしますと、わが国の公定歩合も何らかの変化があるのかどうか。  第四番目に、むずかしい問題ですが、為替相場動きをどのように予測しておられるか。  以上、お伺いいたします。
  56. 澄田智

    参考人(澄田智君) ただいまお尋ねのありましたまず第一点でございますが、いまおっしゃられましたように、昨日、アメリカの大手銀行の一つでありますチェース・マンハッタン銀行が、プライムレートを二〇%から一九・七五%へと引き下げをいたしました。その前から小さい銀行の引き下げは見られたわけでありますが、大手で初めて引き下げたということでございます。プライムレートのみならず、そのほかの各種短期金利も実は復活祭明けの先週の初めから下がっておりまして、三月末のピーク時に比べますと大体二%前後下がってきております。それに加えて大手のプライムレートも下がったと、こういうことで、若干アメリカの金融情勢には変化があらわれている、こういうふうにうかがわれるわけであります。    〔理事細川護熙君退席理事浅野拡君着席〕  この点につきましては、ニューヨークの金融筋等では、最近相次いで発表されましたアメリカの経済指標、三月の経済指標等に景気の鈍化を示す数字が多くなってきている、こういうようなところが影響していると、こういうふうに見ているようでございます。まあしかし、アメリカのインフレの圧力は引き続き根強いわけでありますので、このまま金利が下がっていくかどうか、先行きは必ずしも楽観を許さない面もあると思いますけれども、しかし、先般の米政府の総合インフレ対策の効果等もあって、逐次インフレ傾向の鎮静が期待できると、そういうことで、高金利もどうやらこの辺で峠を越してきているのではないか、こういう観測になるわけであります。  お尋ねは、ヨーロッパの金利はどうかということもございましたが、ヨーロッパの方は、従来ヨーロッパ自体のインフレ問題もございますが、アメリカの高金利影響を受け、そして自国通貨の為替価値の維持等のために高金利政策をとっているという面が強かったわけでありまして、そういう点からまいりますと、ヨーロッパもアメリカの金利情勢影響を受けて、ここらで天井であると、こういうことも期待できるわけでございますが、ただ、個々の国によりましては、必ずしもそれだけでなくて、国内の経済情勢によって金利政策を動かさなければならないという面も十分あるわけでございまして、一概にヨーロッパ全体が金利が今後低下をしていくと、こういうふうに予想することも必ずしもできないと、こういういうような感じもいたします。    〔理事浅野拡君退席理事細川護熙君着席〕  第二点でございますが、これはオイルマネーが順調に還流しているというふうに見てよろしいかと、こういうお尋ねでございますが、この点につきましては、必ずしも金利だけの問題とも言えないわけでありまして、それぞれの国のインフレの問題、それから何よりも国際経済情勢あるいは国際政治情勢というようなものの先行きのこともございますし、予想することは困難な面もございますが、申し上げられますことは、アメリカの高金利で、一度ヨーロッパに行ったオイルマネーなどもさらにヨーロッパからアメリカにシフトをしていると、こういうような現象もございまして、そういうようなところでヨーロッパの通貨価値等にも影響を与えて、ドル高それからヨーロッパ通貨が安くなると、こういう現象が見られておったわけでありますが、その辺もドイツ・マルクの動き、あるいはスイス・フランの動き等を見てみましても、逐次是正をされて、それぞれのヨーロッパ通貨も堅調になってきていると、こういうことがございまして、こういうことは全体としてのオイルマネーの動きに対してはいい影響を与えるという面が強いのではないかと、かように考えるわけでございます。  それから三点目のお尋ねの、わが国の公定歩合でございますが、二月、三月引き続きまして公定歩合を引き上げましたが、そして、それとともに金融引き締め措置を強化したわけでございますが、これは今後に予想されるインフレ圧力等を踏まえまして、今後にも備えて財政の抑制的運営や個別の物価対策等の総合対策と相まって、今後物価の鎮静への環境を確保していくということを目的としていたしたことは御承知のところでございます。私どもとしては、こうした政策運営が所期の効果を上げるということによって物価安定への手がかりができていく。そして、それが金融情勢金利に反映していくということになることを期待をしておるわけでございます。しかし、当面は、この四月から電力料金、ガス料金等の引き上げもございます。そして、ことしになって引き上げられました高値原油がさらに四月には入ってくると、こういう情勢もございますので、当面の卸売物価情勢等はきわめて厳しいものがあるわけでありまして、こういう情勢においてすでにとられました金融引き締め措置の効果の浸透、発揮ということに全力を傾注していく、そういう段階であると思っております。  海外の高金利が仮にこれで峠を越したというような感じが出てまいりますれば、それはやはりそれなりにわが国の円の価値にも影響を与え、御承知のように円もこのところここ数日堅調になってきておりますが、こういうことは物価の面においても好影響をもたらすわけでありまして、そういうところから、今後のわが国の金融政策にも、その前提となる物価の鎮静という効果を通じて影響が出てくるということを期待をしている次第でございます。  四点目は、今後の円の相場でございますが、いま申し上げましたような円の最近の情勢は、一時明らかに行き過ぎとも思われる一ドル二百六十円台というようなこともございましたが、先週の半ば以来、四月八日を底といたしましてそれから堅調に転じてきているわけでありまして、これは今後の内外の情勢、特にアメリカの先ほど申し上げましたような金融及び経済情勢というようなものの影響はございますが、しかし、今後のわが国の物価あるいは国際収支というような、そういういわゆるファンダメンタルズと言っております基本的条件、そういうものの反映という面も強いわけでございまして、そういうようなところから、今後のわが国の円の相場の先行きというものは、やはり十分警戒をしていかなければならないというところであると思います。ことにイラン情勢の展開というようなものもございまして、楽観はできないと存じますが、しかし、現在の状態は、一時行き過ぎであった状態が是正をされて、ヨーロッパの通貨等と同じように、円についても堅調な地合いの中に行くことを期待をしているものでございます。
  57. 多田省吾

    ○多田省吾君 次にお伺いしたいのは、昨年春の第一次公定歩合改定から第五次改定までの引き上げ幅は、公定歩合あるいは短期プライムレートが五・五%でございますけれども、預貯金の利上げは一、二年定期性で三・二五%と、大きく差がついております。これは、国債大量発行のもとにおける国債費増加を防ぎ、また、巨額国債の評価損に悩む銀行の収益圧迫を避ける、あるいは国債長期債との金利差がなくなることによって起こるであろう国債消化の混乱を避ける、こういったいろいろなことからの配慮と思いますけれども、硬直化した金利体系のひずみと、このような国債大量発行のひずみが、庶民生活にもろにしわ寄せされたことも事実でございます。  一方、大口向けのCDは、市中金利上昇に合わせて三カ月物でも一〇%を超え、いよいよ庶民と不公平格差は高まる一方でございます。物価高騰の折から実質金利は目減りとなってきておりますし、このままではアメリカの例に見るまでもなく貯蓄率が下がる、あるいは買い急ぎに走ってインフレが加速するということにもなりかねません。そこで、国民生活を守るためにも、このような目減りに対して何らかの対策が必要と思いますけれども、副総裁の御見解をお伺いしたいと思います。
  58. 澄田智

    参考人(澄田智君) 申すまでもなく、各種金利公定歩合も、あるいは預貯金金利、あるいは国債その他の債券金利等は、これはそれぞれ異なった性格を持っております。全般の中でお互いに影響し合うという面のあることは当然でございますが、金融経済情勢全般の動きの中で、それぞれその性格に応じて決定されてきているものでございまして、これはいままでの金利上昇過程においてもそうでございましたが、必ずしも同じ幅で連動するということでないことは、御承知のところでございます。  ただいまのお話の点でございますが、全体の経済金融情勢の中で金利が今回も引き上げられたわけでございますが、これは今後の経済推移等も十分考えて、いまおっしゃられた実質金利の問題も考えていかなければならないと、こういうことであろうと思います。  言うまでもなく、きわめて短期なものと、一年とか、あるいは二年とかいうような預貯金はこれまた違うわけでございまして、そういう性格というものを踏まえて考えなければならない問題であると思います。これは、現在は幸いにして、まだ国民生活に一番直結をしております消費者物価につきましては、卸売物価は輸入物価影響で非常に上昇しておりますが、消費者物価におきましてはまだ落ちついて、まあ若干いろいろ上昇しておりますし、さらにその卸売物価上昇影響を受ける、そういう問題があって、今後厳重に注視していかなければならないことは当然でございますが、現在までの時点におきましては鎮静、なお落ちついているということは申し上げられるわけでございまして、今後が大切でございまして、今後におきましては消費者物価上昇を極力抑制する、ホームメードインフレを厳に抑えまして、そうして消費者物価上昇の原因を取り除くということが本筋であると思います。  預金者の利益ということを考えましても、最も重要な点は、消費者物価の安定ということにある、政府施策もそのための施策が強力にとられているわけでございますし、日本銀行立場においても、それに呼応いたしまして、金融面においてやはりそういう目的のために努力を傾けていかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  59. 多田省吾

    ○多田省吾君 消費者物価の点はわかりますけれども、私は、庶民生活を守るための預貯金金利の大きな目減りということに対してもやはりお考えになっていただきたい、このように思うわけでございます。  次に、日銀が行っております買いオペレーションは、本来、日銀の業務である成長通貨供給からは逸脱していると私は思います。現在、長期国債の日銀引き受け財政法第五条で禁止されておりますが、ただし書きでは抜け穴があります。また、日銀法第二十二条二項で国債引き受けを認めております。安易な日銀引き受けが実施されますと、財政インフレの進行から生産は急低下し、物価高を招き、悪性インフレになることは避けられないと思います。その意味で、日銀引き受けの歯どめとして財政法第五条のただし書きの改正を行った方がよろしい、また行うべきであると考えますけれども、御見解を伺いたいと思います。
  60. 澄田智

    参考人(澄田智君) 日本銀行が安易に国債引き受けをする、そういたしますと、それが通貨の増発に直結いたしまして大きなインフレの原因になるという、そういう点につきましては、ただいま御指摘の御意見と全く私どもも同じでございまして、その点はこれは絶対にあってはならないことと、かように考えている次第でございます。  日銀が行ってきております買いオペは、これはあくまでも必要な通貨を経済に供給するという見地から国債を買い入れる、それも、しかも発行後一年を経過した国債を市中から買い入れる、こういうことでやっている次第でございます。  財政法五条のただし書きの日銀引き受けは、これは国会の議決を経た金額の範囲内でという条件がついていることは御承知のとおりでございまして、それは、ただいま申し上げましたような通貨の増発に直結し、それがマネーサプライの増加を通じてインフレの原因となる、そういった国債引き受けというようなものは、これはこの五条のただし書きにおいては全然そういう引き受けはこの中に入っていない、考えられていないところである、そういうふうに信じておりますし、事実そういうふうに従来運用されてきております。  この五条のただし書きにおいて、国会の議決を経た金額の範囲内で行われる引き受けと申しますのは、これは本年の特別会計予算の総則にもございますように、日銀が保有をしている国債の、借りかえのための国債引き受け、これについては国会の議決を経てそうして引き受ける。これは借りかえでございますので、日銀が保有している国債が借りかえられるわけでありますので、通貨の増発というものとは無関係なものでございます。通貨との関係においては、全く中立的なものでございます。そういう範囲内においてこれが認められている、そういう運用が行われている次第でございます。  そういうことを考えますと、厳重な条件をつけて、そうして通貨の直接の増発には絶対につながらないような範囲において、そういう条件で引き受けを行うということは、これはやはりそのときの経済情勢金融情勢において、国債が満期になりましたときに借りかえが行われるというようなときに、これは日銀に引き受けの道を封ずるということはいかがなものか、かように考えているわけでありまして、そういう意味で、このただし書きはきわめて限定された運用をされている限りにおいては弊害がない、むしろ望ましい規定であると思います。日銀法の規定も、いわば日銀としてそういうことができる、そういう限定的な場合には国債引き受けができる、こういう日銀の側からの機能を規定した規定であると承知をいたしております。
  61. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから最後に、先ほども物価問題に触れていただきましたが、今後の物価の見通しについてお伺いいたします。  現在の状況から見ますと、卸売物価のピークは四月から六月、そして消費者物価のピークは七月から九月と予測されておりますが、日銀はどのようにこの物価の見通しについて予測されておられますか。
  62. 澄田智

    参考人(澄田智君) 先ほど四月の情勢を申し上げましたが、四月は、卸売物価におきましても、あるいは消費者物価も、いずれも相当上昇ということは避けられない、そういう情勢であると思います。しかし、卸売物価におきましては、早ければ五月以降、四月にいろいろそういう影響が出た後、新しい外からの要因等がない限りにおいては、そこで上昇のピークというようなものが過ぎて、後は上界幅は縮小をしていくと、そういう限りにおいて四月ないし四−六月の間には頭を打つと、私どもそういうふうな状態であると予想しておりますし、ぜひまたそうしなければならない。しかも、それはできるだけ早くそういう状態にしなければならない、こういうふうに考えております。  消費者物価の方でございますが、これはどうしても卸売物価影響が消費者物価に及ぶという面においてもずれがございます。したがいまして、四月以降、なお上昇幅はある程度大きいという状態も予想しなければならないわけでございます。しかも、消費者物価の場合には、昨年の同時期は非常に安定をしておりましたために、対前年度ということになりますと、四月を過ぎましても対前年度上昇幅はやや大きいと、こういうことも覚悟しなければならないのではないか、かように思うわけでありますが、しかしいずれにいたしましても、若干のずれをもって四−六月以降、消費者物価におきましても逐次鎮静をしていく、また、そういうことのために政策を傾注していかなければならないと、かように考える次第でございます。
  63. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、副総裁、ありがとうございました。  大蔵省当局にお尋ねいたします。  財政審の提言でも、現在の大量発行のもとでは市中消化の原則を維持するということが言われておりますけれども、大蔵省はこの市中消化の原則というものをどのように考えているか。  またもう一つは、個人消化に関して伺いますけれども、五十三年度、五十四年度発行国債で、個人消化はどのくらいの比率になっているか、この二点をまずお伺いします。
  64. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) まず、私の方からお尋ねの第一点の市中消化の原則について御説明さしていただきたいと存じます。  申し上げるまでもなく、財政法に市中消化の原則が定められているわけでございます。先ほど日銀副総裁からも御答弁がございましたけれども日本銀行による引き受けを禁止していることの裏といたしまして、これがいわゆる市中消化の原則というふうに言われているものでございます。その精神も、これも先ほどお話しございましたように、日本銀行国債引き受けることによりまして通貨の膨張を招く、そのことによるインフレを避けるために、このような市中消化の原則が財政法にも明記をされているというふうに理解をいたしております。  したがいまして、私どもは、どのような場合にもやはりこの財政法に定められました市中消化の原則というものは厳守していかなければならないものであるというふうに考えております。
  65. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 個人消化状況でございますが、五十四年度個人消化額、いま私ども手元にある数字を申し上げますと、シ団の引受総額が九兆九千百二十二億円でございますが、そのうち一四・二%、一兆四千七十三億円が個人消化額でございます。五十三年度をちなみに見てみますと、シ団引受総額九兆四千九百四億円に対しまして個人消化額は二兆七百六十四億円でございまして、個人消化比率は二一・九%ということになっております。
  66. 多田省吾

    ○多田省吾君 個人消化が、昭和五十四年度は五十三年度に比べて、比率においても、また絶対量においても大変落ち込んでいるわけでございます。これもやはり一つの大変国債消化の危機的状況だと、このように思います。大蔵省では、最近の雑誌、週刊誌あるいは新聞等で新しい国債のポスターをよく出しておられますけれども国債に対する国民の認識というものは、一言で言いますと非常にわかりにくいというのが現状と言えると思います。国債の広報活動というものをもう少し質的に充実させるとかということも、やはり個人消化を図る面で大変大事だとは思いますが、この個人消化を進めるに当たって大蔵省の基本的な見解及びこれから昭和五十五年度の具体的な方法が何かおありでしたら、ひとつお伺いしたいと思います。
  67. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 個人消化につきましては、これは何と言っても国債消化一つの大きな柱でございます。国債は、本来国民の貯蓄をもって消化されてしかるべきものでございますので、私どもといたしましても、この大量発行が始まった五十年度以降、特に個人消化には力を入れてまいったつもりでございます。たとえば税制上国債につきまして特別の免税枠を設けるというふうなことでございますとか、あるいは国債の銘柄、種類を多様化いたしまして、国民のニーズにできるだけ合うような工夫をするというようなことをやってまいっておるわけでございます。  ただいま御指摘のありました広報活動につきましても、これを積極的にやってまいっているわけでございまして、一方、この販売に当たります証券会社に対しましても、販売努力についての協力をお願いをしてきているわけであります。幸い国債に対する関心というものもだんだん広がって高まってまいっておりまして、五十三年度までは逐年非常に個人消化が進んだわけでございますが、たまたま五十四年度につきましては経済金融情勢というものが逆風が吹いてまいりまして、結果としては先ほど申し上げましたように、実績は五十三年度に比べて落ち込むというふうな結果になったわけでございます。これはもっぱら経済金融情勢によるわけでございまして、これからまたこの金融情勢の再転換といいますか、新たな屈折点というふうな感じも出てまいっておるわけでございますので、五十五年度につきましては一層これに力を入れてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  68. 多田省吾

    ○多田省吾君 個人消化を促進させる点で、従来から銀行のいわゆる窓口販売の問題が提起されているわけでございます。昨年、一昨年あたりのある時期におきましては、相当これが進むのではないかと思われた時期もございましたけれども、現状は相変わらずただ検討中ということで進んでおりません。この個人消化を促進させるための銀行の窓口販売の点に関しまして、現況と今後の見通しにつきまして、大蔵省の御見解を聞いておきたいと思います。
  69. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 国債の窓口販売の問題につきましては、たびたび当委員会におきましても御指摘を受けまして、御答弁を申し上げたことはございますが、金融機関、金融行政のサイドからの検討は主として金融制度調査会を中心に行われてまいったわけでございます。これにつきましては、すでに同調査会からの答申もいただいておりまして、まあ少数意見もございますけれども、全般的には、窓口販売について積極的に考えたらどうかという感じの答申をいただいておるわけでございます。  ただ、一方、証券取引審議会におきましても、取引市場の育成と証券取引のあり方というふうな観点からの検討が同時に行われておったわけでございまして、こちらの方につきましても、やはりこれは答申というよりは考え方の提示をいただいておるわけでございます。こちらの方は取引所のあり方、証券取引のあり方というふうな観点から、やや慎重なトーンのお考えをいただいておるわけでございまして、いずれにいたしましても、本件は単に国債の販路の拡大というふうな観点にとどまらず、金融機関のあり方あるいは金融の今後の姿をどういうふうに持っていくべきかというふうなこと、あるいはまた、証券取引についての市場の育成について基本的にどう考えていくかというふうな各般の問題が非常に絡む広範な問題点を含んでおることでございますので、大蔵省当局においてひとつ早急にその辺全体を勘案した検討を進めてもらいたいと、こういうふうなことに相なっておるわけでございます。  その後、鋭意関係各局におきまして検討を進めておるというのが、現在の段階でございます。
  70. 多田省吾

    ○多田省吾君 現在、資金運用部資金による国債保有は最も新しい資料でどの程度になっておりますか。また、そのほかの日銀保有あるいは市中銀行保有あるいは個人保有、できれば昭和五十四年度末の各国債保有の現況について、数字を教えていただきたいと思います。
  71. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 資金運用部の保有しております長期国債の金額は、二月末日現在で十二兆五千九百八十一億ということに相なっております。  それから、金融機関等の保有でございますが、この三月末の決算数字はまだ出ておりません。前期、五十四年九月期末現在におきましての保有状況を申し上げますと、市中金融機関の保有が二十二兆六千二百六十四億円、それから当時の資金運用部の保有が九兆六千億円、それから日銀保有が五兆六千四百五十五億円ということになっておりまして、それ以外、つまり個人とか法人、その他の保有しております金額が十二兆十三億円ということになりまして、全体合計が四十九兆八千七百五十二億円という数字になっております。
  72. 多田省吾

    ○多田省吾君 銀行筋では国債引き受けが非常に困難でございますので、資金運用部資金でもっと保有するようにという要望が強いのでございますが、私はやはりこれも非常に問題があると思います。昭和五十五年度は二兆五千億円引き受け予定されているようでございます。しかし、いま数字を聞きましても、昭和五十四年九月期で資金運用部の保有が九兆六千億であったのが五十五年の二月末、わずか五カ月で十二兆六千億まで、すなわち一挙に三兆円も五カ月で増加しておるということもございます。  ですから、私は、資金運用部資金による国債保有はその運営においては十分慎重を期すべきでありますし、その歯どめといたしまして国債保有増加額を原資増加額の一定割合に限定するとか、あるいは市中の実勢から乖離した条件での引き受けを行わないとか、いろいろ制度的裏づけを最低でも確保する必要があると思いますが、見解を伺いたいと思います。
  73. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 資金運用部国債引き受けにつきましては、ただ運用部の資金があるからどんどん引き受けるというふうなことではございませんで、いろいろな制約があるわけでございます。  まず第一に、運用部資金というのはかなり受動的に集まってくる資金でございますから、いろいろな政策目的に沿って必要だから原資をふやすというふうな自由はなかなかきかない性格の資金でございます。そういう意味で、資金面からの制約がある。それから同時に、これは財政投融資の大宗を占める資金源でございますので、財政投融資に対する配慮資金需要と、こういうものも当然あるわけでございます。  一方、国債につきましては、こういう大量発行でございまして、市中の引受能力という面からの配慮、できるだけ市中の引き受けを適正な規模に抑えていく、そして円滑な市中消化を図っていくと、こういう面からの配慮も当然必要でございまして、そういうもろもろの要因を総合的に考えまして運用部の引き受けを決めていくと、こういうことでございます。  いま御提案のありますような、たとえば資金運用部の原資の増加額の一定割合に限って国債引き受けに充当していくと、こういうふうな考え方も一つの考え方ではございますが、いま申し上げましたように、資金運用部資金というのは、これは財政投融資の大宗をなしておる資金でございまして、そのときの経済情勢、金融事情と、こういうふうなものを総合的に勘案して、国債のために幾らこの運用部資金を充当できるかということを判断していかなければならないわけでございまして、常に一定割合を国債引き受けに充てるというふうなことは、なかなかこれはむずかしいのではなかろうかと思うわけでございます。  それから、運用部が国債引き受けます場合の国債の条件につきましては、これは市中と同一の条件ということが原則でございまして、従来とも運用部の引き受けにつきましては、常に市中引き受けと同一条件で引き受けてまいっておるわけでございます。
  74. 多田省吾

    ○多田省吾君 午前中に行われた三参考人、銀行、証券会社、学者、この三人の方も、結局は国債減額ということをどうしても優先的に、また強力にやっていただきたいという要望があったわけでございます。これはもうだれしもそう思います。  昭和五十四年度の自然増収は、補正予算で見込んだ額よりも二月まででも三千億円ぐらい上回っておりますが、五十四年度の自然増収の見込みはどうなのか。  それからもう一つは、昭和五十四年度の未発行分の国債五千七百八十億円は、きのうも発行しないということをおっしゃっておりますが、その点はっきりお示しいただきたいと思います。
  75. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 五十四年度の未発行額が五千七百八十億円あるわけでございます。これにつきましては、決算の状況を見ながら対処してまいりたいと考えておるわけでございます。現在まだどの程度税収が補正後の税収見積もりをオーバーするのか、あるいは歳出面の不用がどういう状況になるのか数字が確定いたしておりませんので、現在の段階で五千七百八十億は発行しないと言い切るわけにはまいらないわけでございますが、国債発行する立場から申しますと、何とかこれを発行しないで済ませたいという期待をいたしておるのが現状でございます。
  76. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 今年度の自然増収についてのお尋ねでございますが、二月末の税収を見ておりますと、補正後予算、これは全体で二十三兆三千九百六十億円を予定いたしておりますが、これの補正後の税収が前年度実績十九兆九千五百二十五億でございます。これに対して一七・三%伸びておりますのを約一・五%上回りまして、一一八・八%というところでございます。  たびたび申し上げておりますように、税収の動向が全体として補正予算における見込みどおりに推移してきて、二月、いま申し上げたような数字に来ておるわけでございますが、したがいまして、本年度の税収が補正後予算額を下回ることはない、これは前にも申し上げたとおりでございます。  三月の税収は、いままだ数字が判明いたしておりませんけれども、その中で大体半分は申告所得税の税収を予定いたしております。確定申告の結果をいま集計中でございますけれども、土地の譲渡所得税、これが一番見込みがたい要素でございますけれども、これがかなり順調な様子というふうに私どもは見ております。三月分の税収は、二月一カ月をとりますと、前年同月比一九%伸びたわけでございますが、三月分だけを取り出しますと、二月の一九%よりも高い対前年度の伸び率になるかという考え方であります。  ただ、本年度の税収を最終的に動向を決めますのは三月決算の大法人でございます。昨年度の税収実績では約一兆九千億円弱でございました。これが本年の三月末、五月にどのくらいの大きさの数字で申告されるかということによりまして、本年度の自然増収の大きさが決まるわけでございますので、先ほども申し上げましたように、下回ることはないと申し上げましたけれど、どのくらいの大きさの自然増収が発生するかということにつきましては、いまの段階でお答えするだけの知識がないわけでございます。
  77. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、昭和五十五年度減額でございますが、現在のような異常な国債発行のもとでは、何よりも発行総額を減額することが最も肝要であると思います。昨日も八千億円考えているような話もありましたのでお聞きしましたら、それはまだ決定してないということで、そう御答弁あるのはやむを得ないと思いますけれども、大蔵大臣としては昭和五十五年度内の国債発行減額につきましては、どのような覚悟で臨んでおられるか。
  78. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは、にわかにいまの段階で申し上げる状態にはない、見通しが立たないという状態でございます。と申しますのも、追加財政需要や税収動向がどうなっていくかということが、それこそ予算を成立さしていただいた直後でございますので、これをはかり知ることができないという情勢でございます。したがって、ただ基本的な精神といたしましては、可能な場合には国債発行額減額を優先的に行うという、いままでの基本的な態度は貫きたいというふうに思っておるところであります。  なお、きのうも八千億云々というお言葉がございましたが、現実そうした数字を想定したものではございませんが、強いて八千億ということを私も聞いたことがございます一つの機会は、一兆二千二百億の補正で五十四年度の分を減らしたと、そしていま委員御指摘のように、仮にもしこの五千七百八十億というものが発行しないで済んだとすれば、それを足してみると一兆八千億になる、だからことしは少なくとも、一兆円減額したのだから、去年に比べればなおあと八千億減額をしなければ五十四年度に対してパラレルにならぬじゃないかと、こういうような議論があったことだけは私も聞いておりますが、それは私どもの想定した数字ではございません。
  79. 多田省吾

    ○多田省吾君 それは、いま大蔵大臣おっしゃったように、最優先でやはり国債減額を図っていただきたい、このように要望いたします。  大蔵大臣にもう一点お尋ねしたいのは、日銀副総裁にも要望したのですが、昨年春の第一次公定歩合改定から本年三月の第五次公定歩合改定まで公定歩合は五・五%、プライムレートも五・五%上がっておりますけれども、国民の預貯金金利は一年定期でも二年定期でも三・二五%しか上がっておりません。その間の乖離が二・二五%あるわけでございますが、私はこの国民の預貯金金利の目減りということに対しまして、やはり大蔵省としては庶民を泣かせるのじゃなくて何らかの対策を考えるべきだ、このように思います。このような乖離は、大蔵省として政策目的のためにとられたんだとは思いますけれども、やはりその乖離は余りにも大きいと思うんです。その点どう考えますか。
  80. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 本来、御案内のように、慣行上マル公の引き上げは短期プライムレートに連動しておるということになっておりますが、いわゆる預貯金金利ということになりますと、それは必ずしも連動すべきものではなく、言ってみれば金融市場全体の各種金利バランス、特に長期経済財政、金融事情等を考えながら決めるべきものでございますので、必ずしもこれが連動するものではないということは、御理解がいただけるところであろうと思うのであります。むしろ預金の目減りということになりますと、消費者物価の値上がりと、そうしてまた、預金金利のあり方についての議論がよくなされるところでありますが、これとて、それそのものが金利体系を形成する大きなファクターに必ずしもなるものではない、やはり中長期経済事情全体を考えまして決めるべきものであると思いますが、何分にも急激なマル公の引き上げでございましたので、そういう御議論が出るという環境は、私にも理解できないところではございません。
  81. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、最後に、銀行経理における国債の評価方法、いままでの低価法から、原価法または低価法のいずれかを選択し得るという選択法に変わったわけでございます。これは、五十四年九月期決算で都市銀行十三行の国債評価損は二千四十五億円に上る、このまま放置しますと五十五年三月期決算では五千億円に上る国債評価損になるだろうというようなことで、こういう措置を戦前の例にならってとられたものと思います。しかし、はっきり申しますと、このように原価法をとったことによって、国債が値下がりしても大丈夫だというので買い入れを押しつけられるような結果にもなりかねないと思いますし、また、これで根本的に解決したわけでもございません。ある場合にはスワッピングというような問題も起こっておりますし、また低価法、原価法をとった銀行もまちまちでございます。この措置は暫定的なものか、あるいは恒常的なものか、お伺いしておきたいと思います。
  82. 米里恕

    政府委員(米里恕君) 国債を初めとする上場有価証券の評価法につきまして、昨年の暮れに通達を出しまして、従来の低価法を、低価法と原価法の選択ということにしたわけでございます。この措置は、本来きわめて会計処理的な問題でございまして、それ以上の意味を持った措置ではございませんが、会計処理的に見まして、結局、そのときの企業財産というものをその時点で換価した場合の価値は幾らだというふうな考え方から評価をするいわば財産法的な考え方と、それから期間損益的な点を重視いたしまして損益法の立場で評価を考えるというような立場と。二つあろうかと思います。  御承知のように、商法は、かつては時価以下主義ということでございましたが、昭和三十七年に改正になりまして原則原価法、例外低価法というふうに変わりまして、一般の企業はすべてそれに基づいてやっておる、こういう問題でございまして、きわめて評価の技術的な会計学的な処理の問題でございますので、こういった問題は、一度評価方法を選択いたしましたら、それはやはり長期にわたって続けなければならない、いわゆる継続性の原則というものを守らなければならないということでもございますので、制度自体としては暫定的なものとは考えておりません。
  83. 中村利次

    ○中村利次君 午前中も本法案に関して参考人お三方の御意見を承ったわけでありますけれども、大変に参考になりました。  お三方ともに、公債発行額を前年度当初予算上りも一兆円減額をしたという点については評価できる、あるいはインフレ要因となるような公債発行は断じていけない、あるいはまた、年度内に何とかして発行減額努力をしてほしいという、まことにごもっともな御意見を伺ったわけでありまして、私ども全く同感であったわけであります。それから先の御意見なり議論というものが本当は本物になってくると思うのですけれども、そこまでのところでは、これは政府といえども、私どもといえども、あるいは国民といえども、みんな同じ意見だと思うのです。  私が、この特例債の法案の質疑についてどうも意欲がわきませんのは、大蔵大臣、どうも議論がかみ合いませんね。提案理由の説明の中にも「昭和五十五年度予算編成に当たりましては、公債発行額を前年度当初予算よりも一兆円減額して財政再建の第一歩を踏み出すとともに、国民生活の安定と着実な経済発展のための基盤強化を図ることを基本といたしました。」、決してこれはうそじゃない、そのとおりですけれども、私どもがこれを聞きますと、まことに白々しい感じでありますし、大臣が提案理由の説明としてこのことをおっしゃる場合にも、私は、気合いを入れておっしゃるその気合いがなかなか入らないと思います。  というのは、ここに書いてあるように、確かに前年度当初予算よりも一兆円減額ですけれども、実質的には五十四年の公債発行は十四兆二千七百億円になっているわけでありますし、そしてこの間から大臣もおっしゃっていらっしゃいますように、発行残高の五千七百八十億も、これは再来月までのあれでしょうけれども、恐らく発行されないことになると思うのです。そうなると、実際の発行額は、減額をされない限りは五十五年度が史上最高になるわけなのです。ところが、こういうことを大臣も提案理由の説明でおっしゃり、私どももそれを聞いてむなしい思いをしながらそれを中心にして議論をすると、さっぱりこれはかみ合わないわけであります。質問するのがもう何だか白けちゃって、ばかげているような気分になってしまうわけでして、政府としては提案理由の説明を中心として御答弁にならざるを得ない。私は、それはあたりまえだと思うのです。違った御答弁をなさることになればとんでもないことだと思うのですが、ですから、気合いが入らないのですよ。  そこで、私どもが心配をしますのは、これは政府にお世辞を使ってもいいのですけれども景気対策に財政主導型のいろいろな手をお打ちになった。私どもが想像した以上に、景気の回復は底がたいと言われております。そして、五十四年度の税収はかなり予想を上回った伸びがあったわけでありまして、政府は、対策よろしきを得てそうなったのだとおっしゃるでしょうし、また、そのことによって国債発行額を減らすことが可能になったわけです。それで、国債消化状況というのはもうまことに深刻でありますから、景気の回復による税収の伸びによってある意味では救われたということも言えると思うのです。  ところが、実質的に昭和五十四年度発行額を上回って十四兆二千七百億、その中の七兆四千八百五十億が特例債である。ところが、ことしの、五十五年度の税収の伸びは五十四年度ほど期待ができるのかどうか。インフレ懸念が大変に強くて、短期決戦と言いながらインフレ対策にかなりの力を注がなきゃならぬということになりますと、景気のかげりがもうすでにうわさをされておるわけでありますけれども、そういう意味で、これもなかなか御答弁をいただいてもかみ合わない御答弁にならざるを得ないと思うんですが、いかがでしょう、景気の見通し等を含めて、昭和五十五年度国債発行額がどれほど十四兆二千七百億を下回るような、昭和五十四年度に近づき、あるいはそれを下回るようなそういう判断、なかなかこれは大蔵大臣もお答えしにくいと思いますけれども、私は決して言葉じりはとりませんから、ひとつ存分に、御自由に御判断を承りたいと思います。
  84. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは広般にわたる御意見を交えての御質問でございますが、確かに公債発行特例に関する法律案の提案理由の説明に当たりましては、公債発行額を前年度当初予算より一兆円減額して財政再建の一歩を踏み出した、こういう言葉を使わせていただいております。私どもも、予算というものはやはり当初ベースで比較すべきものであるという考え方の上に立ちまして、とにかく財政再建の一歩を踏み出したという、その四つの柱というものの中に、理財局長のかつての言葉にもございましたごとく、まず初めに一兆円の減額ありきと、こういう姿勢でこれを打ち出したわけでございます。そして次は、歳出の伸び率を五・一%にしたということ、そして、税制面の見直しをしたということと、これは直ちに財政にはつながってまいりませんものの、行政改革への一歩を踏み出した。この四つの柱をもって、財政再建第一歩を踏み出したあかしというふうに理解をいたしておるところであります。  しかしながら、いま委員御指摘のように、すでに五十四年度の補正予算で一兆二千二百億円減らしたのじゃないか、したがって、やはりそれはあくまでも史上最高ということではないかと、御指摘のとおりであります。そしてまた、自然増収等々が仮にもし見込まれたといたしますならば、五千七百八十億円というものが仮に発行しないで済んだと仮定いたしますならば、まさに両方もって言えば八千億ほど五十四年度の方が少ない、こういうことになるわけでございますので、だからこれはあくまでも当初ベースのものであって、現実問題としては史上最高の発行額予定しているではないか、これは否定できない冷厳なる数字の事実であると私も思うのであります。  したがいまして、基本的に考えてみますと、やはりこれはきょうの参考人先生方も皆おっしゃったと思いますし、国債管理政策の第一条はまず何かと、すなわち発行額が多過ぎる、こういうことである、こういう指摘を受けておることも事実であります。したがって、その消化に対してもいろいろな工夫をしたり、いま大蔵省挙げてこれに取り組まなければならないほどの重要な課題となっておることも事実でございます。したがって、そのことについて景気が今日底がたいというのは、政府施策もよかったという表現をいただきましたが、確かに私どもも心の底には、積極財政を推進することによりましてそれなりの政府施策も効果があったと思いますが、それ以上に私は、民間のむしろ労使の協調した経営観念というものが、自然増収というものを生み出した大きな要因になったというふうに評価をいたしておるところであります。  そこで、五十五年度というものを見ますと、いままず当面物価であるということで、いろいろな金融財政両面から物価に対する積極施策を行っておりまして、総理の言葉をかりますならば、この四−六が勝負である、あるいは正念場である、あるいはこの四月−六月というものに何とかして乱気流を切り抜けなければならぬ、おおよそ三つぐらいの言葉をお使いになっております。私もそう思います。そこで、物価が安定することによって、初めていわゆる生産財も資本材もすべてが安定した中に、やはり底がたい景気の基調というものも下期においても継続することが可能になる、その大前提であるということは、私どもも認識をひとしくしておるところであります。  そこで、御心配の景気のかげりが多少出たではないか、昨日も財務局長会議がございまして、各地方それぞれの財務局長からそれぞれのローカルの立場からする景気動向等についての御報告がありました。それのまとめた御報告をお聞かせいただいてみましても、確かにまだ底がたい景気というものは感じられる、しかし、あるいは限られた業種とでも申しましょうか、そういうところに倒産が金額ベースでも、また数量ベースでもふえてきておるということが、かげりの一つとして考えられなければならぬと、こういう大要して報告があるわけであります。そうすると、下期に対する懸念というものが私も委員と同じように全くないわけではありません。  したがって、何が何でもこの四−六に物価の安定を目指しての、年度間を通じれば六・四ということになりますが、当面は六・四以上になると思います、数字から言いまして当然のことといたしまして。そこで、何としても乱気流を脱した安定基調の上に立って、その後に仮にもし大変なかげりが出たとしますならば、それこそ財政の弾力的運用等々によってこれに対応していくならば、私はなだらかな成長というものが全く期待できないことはないであろうと、日本人の労使の卓越した経営観念あるいは能力そのもの等からいたしまして。  今日の数字を見ても、なるほど消費者物価はドイツが五・五でありまして、わが方は二月は八%になっておりますが、他の先進国は全部二けた、なかんずく二〇%近い二けた、そういう状態を見たならば、この日本人の卓越した能力と労使のすぐれた経営慣行等によって、私はそれに金融財政が弾力的に機能を発揮していったならば、なだらかながら安定基調というものの成長は望み得るではなかろうか、大要してそのような考え方を持っております。
  85. 中村利次

    ○中村利次君 大変にごりっぱな御答弁をいただきました。特に労使の評価につきましては、これは本当に私は民間の労使というのは大したもんだと思います。これは日本の労働運動というのは不幸にして分裂をしておりまして、総評だ、同盟だ、中立労連だと言っておりますが、私は民間については、総評も中立労連も同盟も全く労使の努力というのは、こんなことを言うとしかられるかもしれませんけれども、大した差異はないと思う。やっぱりオイルショックによって深刻な不況、雇用不安になれば、減量経営と称して労使が出血をしながら歯を食いしばってがんばって、それが日本の経済立ち直りの私は基調になっていると思う。  ところが、まあ行政改革なんていうのは民社党の一枚看板みたいなものですけれども、よく比較に出される、いま公労委なんかもこれは大変に苦労をされているようですけれども、比較してごらんなさいよ。よく言われる新宿と八王子は、国電の中央線と京王帝都が全く並行をしてキロ数もほとんど同じ、料金はどうかと言えば、京王が二百十円、国鉄は四百四十円。二百十円対四百四十円ですよ、この四月二十日から。倍以上だ。私は、よくおこがましくも国有鉄道と言えると思う、国民の足と。その国鉄は、かつては日本国民の誇りだった。  全くこれじゃ、やっぱり政府に行革を求める、親方日の丸に対する労使の正常化を求める国民の声というのは、私は当然だと思う。それができないから、失礼な話だけれども——特例債は、そういうものが正常化してもいまの状態で特例債をすべて出さなくてもいいとは思いませんけれども、不公正の是正だとか何とかかんとか言われて、ダブるびんたで国民はひどい目に遭いながら、そして政治を論ずるなんていうのは、全くむなしいと思いますよ。  これは、この特例債には直接の関係がある問題ではございませんからやめますけれども、私はいまの大臣の御答弁でしみじみそのことを骨身に徹して痛感していますよ。これは何とか政府としてがんばってくださいよ。大蔵省の所管ではないにしても、政府の連帯責任であることには間違いないわけですからね。  ところで、この景気のかげり問題等で、私は大蔵大臣から大臣としてはわりと正直なお答えをいただいたと思いますけれども、日本商法のやっぱり性悪というのは、ある意味ではこれは私はやむを得ないと思う。商法に、すべてが正直で善でというものを求めるのは無理と思いますけれども、アメリカとイラン関係がきわめて過熱をして、日本はその中に立って大変むずかしい状態にある。当初、アメリカがイランからの原油の輸入をキャンセルしたときに、日本がイラン原油を買いあさって国際的なひんしゅくを買ったようでありますけれども、今度はアメリカが日本あるいはヨーロッパの友好国に対して、イランに対する経済制裁あるいは政治的な制裁というものを非常に強く求めておる。日本も、どうもやっぱりこれを無視するわけにはいかぬようである。  そうなると、今度はイランの報復的な原油——これは五百二十万バレル・パー・デーあるいは五百三十万とか六百万とかいろいろな説があるようでありますけれども、とにかく日本の総輸入量の一〇%以上、一一%前後ぐらいのものになるわけでありますから、これが本当に入らなくなったら大変である。そういうのを当て込んでいるんじゃないですか。石油の需給バランスの上では、この五十五年度は落ちついてOPECの値上げ要因にはなりそうにないという状況にあったときに、そういうアメリカ・イラン、日本・イランの関係をもう先取りしたのかどうか知らないけれども、日本がもうスポット市場になりふり構わず介入をしてスポット価格が強向きになったと。いまそういうことをやっておる。日本の政府はこれに対して、どうも現状では野放しのようであります。  こういうのは、いまですら五百五、六十億ドルから六百億ドルぐらいの原油代を年間支払わなければならない。五十五年度はそれ以上になりそうである。それはもう円安や不況の原因になる心配が多分にあるのに、すでにそういう動きが始まっておる。こういう点、どうお考えになりますか、大蔵大臣。
  86. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) イラン問題というのがいま大変重要な問題であるという認識は、政府もひとしくするところであります。したがいまして、毎日、総理が中心になられまして通産大臣、経済企画庁長官、内閣官房長官、そして私と、このイラン問題についての会議を重ねております。これにつきましては、現状においてはいわゆる正確なる情報の収集と、大ざっぱに言えばそういう段階ではなかろうかと思います。しかし、政府といたしまして、いろいろな事態というものを予測しながら、もろもろの対応策というようなものをそれぞれの所管において検討、議論をしておることもこれは事実であります。  イラン問題につきましては、やはりこの人質といういわば国際法上からも許しがたい行為ということについては、EC諸国も日本も、また多くの西側諸国がこれは認めておるところであります。しかし、これがいわゆる経済制裁の形でカーターさんの——きょうの報告を聞きますと、食糧、医療品等は含まれていないようでございますけれども、さらに強い制裁措置というようなものが発表されたと。それに対する対応策をどうしていくか。私どもEC諸国と同一歩調でもって、先般和田大使がバニサドル大統領にお会いをいたしまして、この人質問題についてのいろいろな要請なり意見なりを申し述べたようでございます。それに対するバニサドル大統領の御発言等については、私どもも内容を詳しくいたしておらないところでございますけれども、精いっぱいその努力は引き続きやっていかなければならない、それがすべての解決のまず原点であるという考え方に立って、引き続きそうした行為は行っていかなければならないとしておるところであります。  そとで、一方、今度はそうなりますと、商社の方のおっしゃること、あるいは評論家の方のおっしゃること、いろんなまた、ある種の揣摩憶測をも含めた議論が出てくるわけであります。それに対しては、いかにしてわれわれは冷静に対応していくかということが基本的な考え方であろうと思うのでございます。ただ、このスポット買い等を野方図にやることによって世界のひんしゅくを買うというような事態は、これは業界に対しても厳重に注意を発しておられるようでございます。が、現実問題と化した場合の、このイランからの石油供給が全くとだえるというような事態は予測されます事態でありますものの、まずはそれがないような措置をいかにして打っていくかというところに、いま当局でもそれぞれ腐心をしておられるところであるというふうに、私は理解をいたしておるのであります。  これは仮定でございますけれども、石油供給、需給のバランスというのは、御案内のように、五十四年は確かにとれております。したがって、ある意味において供給過剰とまで言われる状態であるとすれば、まさにOPECの値上げ要因というものも非常に減殺されてくるものであるという認識も持っておりましたが、わが国がいわば体質的に石油に弱いということに対する心配は、これはここでいま、かくかくしかじかなる対応策がありますなどと言えるほど私にも自信がございませんし、所管の官庁の責任者でもございませんが、そのような事態がまず避けて通られる方法というものも模索していかなければならない課題であろうというふうに考えまして、いま友好諸国とも協議をしつつ、そうした原点の問題の解決にいまだ努力を積み重ねておるという状態であります。  ただ私も、非常にわかりにくいことがありますのは、御案内のように、イラン問題が再燃いたしました当初は、よくドルは危機に強く円はデタントに強い、こう言われるのでございますけれども、まあそうでもなく、一時的には円安傾向を見ましたものの、これは別の意味におけるいわゆる金利の天井感というような点が特にアメリカに出たということでございましょうか、その後は昨日の引け値から見ましても二百四十七円八十銭、ロンドンが二百四十七円九十三銭、ニューヨークの終わり値が二百四十九円、きょうの午前の前場の終わり値が二百四十八円九十銭でございますから、きのうに比べますと一円ほど円安になっておりますけれども、これそのものを見ると、まだ比較的安定した為替レートが続いておるという印象も受けるわけでございます。  それらの諸般の問題を総合して、重ねて申し上げますようですが、まずは原点の始末をしていかなければならぬということと、そして諸般の情報を収集しながら、実に真剣にこの問題に対応していく。これらが回避されることによって、また、ことしの経済の先行きにも明かりが見えるわけでございますので、そうした鞭撻の声を体しながら真剣に、毎度会議ばかりやっているのじゃないか、一向結論めいたものがないじゃないかというような批判にも耐えながら、誠心誠意対応策についての検討を続けていっておる今日段階であるというふうに、御理解をいただければ幸いであります。
  87. 中村利次

    ○中村利次君 それはもう素直に理解をいたします。恐らくことしこの五十五年度の十四兆二千七百億の国債消化というものは、もう大変だと思うんです。発行条件等についても、いろんな知恵をしぼられることだろうと思いますが、これは確かにそれなりの知恵をしぼられた効果はあると思いますよ。思いますけれども、本質的にはやっぱりこのままでいきますと、未消化の可能性、発行できなくなるという可能性が多分に私はあるんではないかと思いますし、そして、その前提となるのがやっぱりインフレなり、あるいは景気に対するかげりなり、それからもう決定的なのは、いま私も質問を申し上げ、大臣の御答弁もいただきました、この油を中心とするアメリカとイランの関係がどんなことになりますか。  私は、そういうことがあってはならないと思いますけれども、何といっても、イランが国際法を無視して、アメリカの大使館を占拠をして館員を捕虜にするという、まことに理不尽きわまるやり方に端を発して、それに対して国連はもちろん、日本もけしからぬというのはこれはあたりまえな話であります。  ところが、そのけしからぬことに基づいて行動をすれば、とにかく日本はイランから原油が入ってこなくなれば一発でまいってしまうわけでありますから、その場合には、もう円レートなんというのはまさにこれはどうにも問題にならない。財政再建はもう議論をする対象にすらならないということになりますし、また、そういうものを見越して、先取りをしてスポット市場なんかになりふり構わない買いあさりをやるということになりますと、そのこと自体もこれはやっぱり円安の要因になることは間違いないわけでありまして、きわめてむずかしいこれらの課題に対して、私は、大蔵大臣もやっぱり関係閣僚の一人として、特にこれは大蔵大臣は有力なメンバーであるはずでありますから、そういう財政再建国債にかかわるいろいろな問題がすべてそういうところに原因があるという点について、ひとつ関係閣僚の中のリーダーにおなりになって、大臣もおっしゃいました正確な情報をまずとることによって対応を誤らないような、そういう御努力をお願いをしたいと思います。  そこで、これはもう最後に、これはささいな問題でもございましょうけれども、原油の値上がりに絡んで大分準備高も激減をしたようでありますけれども、いまどれくらいですか、百八十億ドルぐらいあるんですか。そして、それの大体の見通し等について、これはもう簡単で結構でございますから、お伺いをして、私の質問を終わります。
  88. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 三月末の外貨準備高は百八十五億ドルになっております。  ただ、この外貨準備高の問題につきましてはいろいろな議論のあるところでございまして、昭和三十九年でございましたか、たしか二十億ドル程度の、そのときは経済規模も違いますけれども、私が内閣官房副長官になったときでありまして、佐藤総理がどう思われたのか、外貨準備高を少なくとも三十億ドルぐらい持ちたい、こういうようなことが総理大臣の所信表明に書けないかと、こういうような御指示がございました。で、学者の方にお集りいただきまして、ずいぶん議論いたしました。が、要はそれぞれの国の経済の信用というものだから、したがって、外貨準備高はゼロでもいいという議論も確かに学説の一つとしてはございます。しかし、やはり三カ月分ぐらいは持っておるべきじゃないかと、こういう議論もございます。いろいろの議論もございますけれども、私は私なりに、適当な外貨準備高は確保しておくべきものであるというふうに思っております。  ただ、いまそのイラン問題という問題を外に置いて物を考えてみますと、実際問題、この日本にはいわば信用がございますので、いろいろな意味におけるオイルマネーのリサイクリング等も一方で行いつつも、さしむき代金決済に困るという状態ではないということは言えると思うのでございます。それが今日の外貨準備高に対する私どもの認識ではなかろうかと。今後その外貨準備高ということも一つありますが、基本的には世界全体のオイルマネーのリサイクリングの問題、あるいは日本という先進国の一つのオイルマネーのリサイクリングの問題等は、大いに関心を持っていなければならない課題であるというふうに考えております。
  89. 細川護煕

    理事細川護熙君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  90. 細川護煕

    理事細川護熙君) 速記を起こして。
  91. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まず、国債発行額減額をめぐる問題について幾つかの角度からお尋ねをいたしたいと思いますが、わが党は、今年度予算案審議の際にも、また当委員会において私も、国債政府の当初案、これをさらに一兆円程度、合わせて二兆円ぐらいの国債発行減額をやるべきではないかということを主張してまいりまして、そうした立場から、年度内においてもでき得る限り不要不急経費を削減をする問題を提起をしてまいりました。  事態は、その後、角度はいろいろな角度があろうかと思いますけれども、大蔵大臣としても閣議に問題の提起をして、予算執行の一部留保を提言をされておるということが報道をされておりますけれども、一体どの程度の規模予算見直しをやるのか。新聞では、たとえば国債費の利子補給あるいは国際機関への出資の増、公務員給与の負担金の増、老齢福祉年金、災害対策等々ということを挙げておりますけれども、こういったような報道がどの程度事実かということも含めまして、支出の面でたとえばどの程度ふえるのか、それに伴ってどの程度の執行留保の見直しをやるのか、現時点での構想があれば、まずお聞きをしたいと思います。
  92. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 新聞等でも報じられているところがございますが、ただいま先生御指摘になりましたように、去る四月十五日に大蔵大臣から閣議で御発言がございまして、五十五年度予算の執行をめぐります環境の厳しさについてまず大臣から訴えられたわけでございます。  そのポイントは、まず五十五年度歳出の面を考えますと、これも委員御高承のとおり、すでに金利の引き上げが何回か行われてもございます。これが多かれ少なかれ国債費影響をする。それからまた、いわゆる円安傾向に関連をいたしまして、外貨に関連をする経費がふえるというような要因も予測されるわけでございます。それからまた、予算審議の過程で与野党四党間で合意をしていただきました福祉年金の引き上げ等々の要因もございます。これらの要因は、おおむね現時点におきまして計数的に、たとえば金利の引き上げによる国債費の不足が最終的にどの程度になるかというような計数的な見通しはなかなか立てられないわけでございますが、いずれにせよ、事柄の性質から言いまして、かなり大きな金額になることも十分考えておかなければならないということでございます。  それからまた、一方、歳入の方でございますが、これも先ほど来御議論がございましたが、現時点におきましては、予算で見込んでおります税収以上の税収を期待をするということはこれはむずかしいと、こういう事情にあるわけでございます。そこで、これは今後のいわゆる追加財政需要の出方にもよるわけでございますけれども、仮に財源が不足をするというようなことに万が一なりました場合にも、これを公債の増発で賄うというようなことは、極力公債発行を減らしていくという財政再建の基本的な方向にも逆行するわけでございますので、これは政府としてとうていとるべき道ではない。こういう事情が、五十五年度のこれからの執行をめぐる背景として一般的に私どもは厳しいものとして受けとめているわけでございます。  そこで、お尋ねの、しからばそれに備えて五十五年度予算の中身について一部執行を保留するというような措置を考えるそうだが、具体的にどういう経費を対象にし、かつまた、どの程度の金額をこれによって浮かそうとしているのかというのがお尋ねのポイントであったわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、現時点におきましては、まだ追加財政需要が本当にどの程度になるのかというようなこともなかなか把握できていない状況でもございますので、これぐらいの金額を浮かしたいという計数的な金額のめどというようなものもまだ現に立てておりませんし、立ちがたい状況にございます。  それからまた、しからばどのような経費を対象にして留保をやっていくのかという点でございますけれども、これも先日の大臣の御発言を受けまして、これから関係省庁と経費の内容、性質等いろいろ議論をして詰めていこうというような矢先でございまして、もちろん、まだどのような経費を対象にして留保をしていくのかという具体的な方針が全然決まっていないというのが現状でございます。
  93. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 結局、年度中途で増額措置を講じなくちゃならぬ支出の項目が幾つか予想される。予備費だけでは回りそうにないということが一つ言われておる。片一方、税の自然増収も余り期待しがたい。そういう状況で、もちろんこれ以上国債をふやすということは極力避けたいと、しかし、国債年度内に減額をするということについてもなかなか困難があると、こういうお話かと思うのですけれども、前回も申し上げておったんですけれども、確かに当初予算対比で見れば国債を一兆円減額をした、減になっているということではありますけれども、五十四年度補正と対比をして見た場合には、何ら差し引き減ということには数字的にはなっていないわけですね。  いまの話の税の自然増収も期しがたい、年度国債減額をやる、縮減をやるということについてもなかなか困難があるということになると、結果、三月末数字で前年度対比でいけばかえって国債はふえたと、こういう結果が残るであろうということでは、午前中も各参考人が来られまして、こもごも、もっと思い切った措置がとられるべきではなかったかというのが、大体共通した意見でなかったかと思うのですが、こういう一体状況のままで推移していいのかというふうにこれはだれしも思う問題だと思うのです、そこで必要になってくるのが、もっと予算の見直しをして、不要不急経費は思い切って留保をするという問題をいまこそ大胆に考えないと、予想される支出増の財源をつくり出すこともできない。年度末対比での昨年と比べて国債がかえってふえたというこういう姿は、何としてでも避けるという状況をつくる。そのためには、思い切った執行留保を不要不急のものについてはやるという、この大胆な見地がいるのじゃないかというふうに思うんですが、大臣どうでしょうか。
  94. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) そのお説は、私どもも異論をはさむものではございません。それで基本的にいま主計局次長からもお話し申し上げましたように、当面の財政運営についての私の閣議発言というものが了承されたわけでございます。これは、とにかくこの上半期における公共事業の契約率を六〇%程度にとどめて、当面、物価対策に重点を置いた運営を図ることを、つい先日決めてもらいました。しかし、ここで予算が通った、そのまさに四日に予算を成立さしていただいた四月十五日に、このいわゆる執行を留保する等の具体的措置を講ずる必要がありますので、とにかく協議に窓を開いてもらいたいと、こういう主張をいたしまして、閣議の了解をいただいたわけであります。  したがって、確かに私は今年度予算の従来と非常に違う点というのは、このやや正確な数字としてわかりますのは、予算の実質合意に基づくところの福祉年金等の支出増というようなものは二百五十億円、こういうようなのはやや正確につかめる数字でございますが、この二度にわたる公定歩合の引き上げ、そして引き続きの、総体的に見れば、円安傾向というようなものからの支出は確かにその歳出需要増ということになるわけでございますので、ただ幾らになるかということは、いまも申しましたように、特に金利でありますとか為替レートの問題というのは絶えず変動するものでございますだけに、明治以来、予算審議中に公定歩合を二回操作をしたということに対する影響というのは当然出てまいりますので、やはり早目にこの留保に対する対応、協議をするために各省に窓口を開いてもらったということが現実でございますので、これから、結果から言えばサマーレビューになると思います。大体が庁費等も三年間据え置きというようなことで抑えに抑えたものでございますだけに、四党合意の中でも三百億円程度はサマーレビューで節減もしろと、こういうことも言われております。  そういうことに対しても、ぎりぎり節約、合理化した予算ではありましても、そうしたものへの協議も続けていかなければなりませんし、また、一般経費にいたしましても、これも昭和三十一年以来の低い伸び率の中で抑えたものでございますけれども、その中でもさらに洗い直しをしていこう、こういうことが了解されて窓口が開かれ協議に入り得る体制になったと。一度だけ昭和五十年にこういうことを閣議了解をいただきまして、そして洗い直し作業に入りまして、そのときは七月に大筋の協議ができまして、そしてそれが正確な数字になったのは、またそれからたしか一月ぐらい後だったと思うのでありますが、今度は少しでもそれも早目にやるような形で各省との協力をいただいて、いまそれの作業にまさに入らんとしておるという状態でございます。
  95. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 原則的というか、一般的には、先ほど私が申し上げましたようなそういう角度から、本年度予算についても思い切った見直しをしていく必要にいま迫られているんだということを大臣としても申されておるわけでありますけれども、そこで、今年度予算の見直しの問題と、勢い五十六年度予算編成の作業と相絡み、連続をして作業としては進んでいくことになろうかと思うんですけれども、そこで幾つかの視点についてお尋ねをしたいと思うんであります。  まず一つは、いまも大臣も言われた、どうやって財政の見直しをやり財政再建を図っていくかということでの閣議における大蔵大臣の発言の、物価安定を基本としつっというような表現を使われましたが、その言葉にもあらわれておりますように、国民生活を守りつつどうやって財政再建を図っていくかというのが基本に据えられる問題だと思うんですが、例の昨年の暮れの、前回もお尋ねしましたけれども、もう一遍お尋ねをしますけれども、大蔵大臣と文部、厚生大臣との間の例の覚書ですね。大蔵大臣が自分から言い出したのだといえばそういうことになるでしょうねというふうに言われましたけれども、あの中で盛られている福祉の切り捨て、文教予算の切り捨て、こういう方向予算の見直しをやるというのは、私は本末転倒だと思うのです。  それで、あの覚書は、いわば白紙に戻してもっと全面的な角度から、どうやって今日の不要不急経費の留保削減をやるか、どこを削って財政再建を図っていくか、どこに新たなる収入増を求めるかという、どうしても全面的な角度からの検討をやってもらう必要がある。去年の暮れが、あれが一つのこれからの見直し作業の出発点になるというようなことには断じてならないようにというふうに思うのですが、この点どうでしょう。
  96. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 社会保障制度の見直しに関する覚書でございます。これは予算編成に際しまして十分議論をいたしたところでありますが、特に財政制度審議会等からの御指摘もございまして、児童手当制度、老人保健医療制度、そして所得制限、大ざっぱに言うと三つの柱を昭和五十六年度に所要の制度改正の実施を図るというような、五十六年度というようなことをめどとして、お互いの今後の姿勢というものをこれによってお互いにみずからに言い聞かしたと、こういうことでございます。これは、最終的な予算折衝の際に、政府部内では私と厚生大臣と内閣官房長官が署名をいたしたものでございます。  したがいまして、これは私は予算編成の過程におきましても、あなたの党はもとより、各党の重点要望事項等についてかなり突っ込んだお話し合いをしたと思います。プリンシプルのとても合わない問題、それはございます。そのときに、私どもといたしましては、いわゆる文教とか社会保障とかいうものも決して聖域であってはならぬという物の考え方に対しまして、不確実性の時代、不透明の時代と言われる八〇年代において、ただ一つ確実なのは老齢化社会ができてくる、こういうことでございますだけに、特に所得制限等についてお互い真剣に話し合いをしようではないかという姿勢で対応してきたわけであります。これは、それこそ佐藤さんの考え方のいかんは別といたしまして、私はある種の国民のコンセンサスというものは得られるものではないかという感じがいたしております。  したがって、覚書に基づくようなものも、今後の五十六年予算編成等に当たって全く初めから除外すべきものではなくて、やはり十分このことも念頭に置いて財政再建をも考慮しつつ対応していかなきゃならぬ課題であるというふうな認識の上に立っております。
  97. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろ聞き方によってはどうにでも聞けるような答弁をなさっていますけれども、大蔵大臣は当然もうこれで相当日数大臣をなさってきた、予算委員会でのいろんな各党の質問にも応答されてきた、こういう上から、五十五年度予算執行をめぐる問題はもちろんのこと、五十六年度予算編成の大筋の大臣としての構想のようなものは私はあるのじゃないかと思うんです。そういう場合に、いま問題にしております昨年の覚書に基づく福祉予算の見直しというか、言うならば削減ですね、これはあくまでやるという大臣としては考えを持って臨んでいくんだということですか。  私は、あの時点ではああいう覚書はつくられたにせよ、あの程度の問題をいじるという程度で、いま国の財政は解決ができるというようななまやさしい事態ではない、もっと全面的な角度からの思い切った検討が必要になっておる、こういう現在の局面なんだから、ああいう覚書というものは白紙に戻して、もう一遍すべての角度からの全面的な洗い直しと検討が必要じゃないかということを言っているんですけれども、この二つの方向のどっちなんでしょう。
  98. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これはまさに正確に書かれてありまして、特に「社会保障施策の所得制限全般についても、所要の見直しを進め、昭和五十六年度において、その適正化を図る。」、これが基本的に一つあるわけです。何回か議論の中に、私どもはそういうお互いの認識というものを覚書として残したわけでございますから、これは五十五年度の見直しの中にも、それはもとより、こういう精神は私の頭から去るものではございませんし、五十六年度にはこれに対する関係審議会に諮問するというような問題も具体的にはございますけれども、こういう基本的な物の考え方はやっぱり去るべきものではない。  ただ、これだけがいわゆる財政再建の対象であるという考え方は、もちろんこれはとりません。全般にわたって、それこそ工夫をしてつくられました本院における財政再建決議案なんというのは、まことに工夫がしてありまして、ことしは、五十五年はとにかく特別な税目による増税、増収ということをしないで、歳出の削減というもので組んだと、しかし、今後は歳入歳出両面にわたって国民各階各層の意見を聞いて財政再建に当たれと、こういう御決議をいただいておるわけでありますから、それはまさに総合的な観点から、それらのことは当然考えられなければならない。そして、この問題も、もとよりわれわれの認識を離れるものではないと。だからしたがって、佐藤さんとこうして毎度問答しておりましても、この覚書を白紙撤回する考え方は全くございません。
  99. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣はそういう形で言い放っておられますけれども、たとえば昨年の年末の段階、寒い冬のこの木枯らしが吹く中で、お年寄りたちがわざわざ座り込みもやりデモもやる、そういう中で、せめて老後の楽しみにということで、ああいう中から、各党もそれは当然だろうということで、五十五年度から打ち切りをやるということは避けるべきだという問題として五十五年度について継続ということになったこのいきさつを、もう一遍ぜひとも思い起こしていただく必要があると思うんですよ。  それと、財政上の問題で言えば、あえてそんなところにメスを向けなくとも、もっと解決できる分野というのは大いにあり得るんじゃないかということで、次の問題にそれならば話を向けたいと思うんです。  昨今、大きく議論になっております防衛費の問題、これも私、三月二十八日の当委員会で総理にお尋ねをいたしました。あのとき大臣も同席をされておりましたので、総理がどういう答弁をなさったかということはよく御記憶のことと存じますけれども、あの三月二十八日が経過をいたしまして、その後ますます日本の防衛費を増額せよというアメリカ側からの要請というものが高まってきている。一方、日本の国内でも、たとえば防衛庁、外務省筋、ここらからはこれに半ば呼応するような形で防衛費の増額の問題についてのいろんな発言やら動きが新聞にも報道されておるという状況になっているわけですけれども財政を最も責任を負っておられる大蔵大臣としてこの防衛費問題について、しからば、片一方福祉、文教予算は見直し、見直しと言われるけれども、防衛予算の見直し問題についてはどのように考えられますか。
  100. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これも、やはりこれは国防会議・閣議決定といたしておりますところの基本方針というものがまず存在するわけであります。それは一つは、昭和三十二年五月二十日でありまして、「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」そして、その次は昭和五十一年十月二十九日でありまして、「質的な充実向上に配意しつつこれらを維持することを基本とし、その具体的実施に際しては、そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、次の諸点に留意してこれを行う」。そして、その次が同年十一月五日の国防会議・閣議決定であって、「当面、各年度の防衛関係経費の総額が当該年度の国民総生産の百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うものとする。」、こういう一連の基本方針というものに沿って、まさにそのときどきの経済財政事情を勘案いたしまして、国の他の施策とのいわゆる調和を図りながら行うということが私は基本的な考え方であるべきであると今日も考えております。
  101. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いま大臣が申されましたずっと一連の防衛費に関する方針上の経過、経緯ですね、これをお尋ねをしておるわけでない。いま新たに大蔵大臣としても閣議に発議をなさって、予算の見直し、五十六年度に向けてのひとつ全面的な角度からの財政再建方策、こういうものも考えるべき時期に来たということを発議をなさっている今日ただいまのこの時点において、しかし、片一方ではアメリカから、それから日本の幾つかの省庁からこれに呼応する防衛費をふやそうという動きが出ている、こういう状況のもとで大臣としてはどうお考えになるのかと。福祉とか文教とか、こういうところを切り捨てるところだけにアクセントが置かれてこの話が出ている。防衛費の問題は一体どうするのですかということで私はお尋ねしているわけです。  しかも、この間の三月二十八日の総理に対する私の質問の中で、御記憶と思いますけれども、昨年の暮れの読売新聞の世論調査も引用をしながら、あの世論調査では、いま一番最も削るべきものは何かということの第一位の高率で出ているのが防衛費を削るべきではないかという世論調査も出ていますということも引用をしつつ総理にお尋ねをしたら、総理は、防衛費といえども聖域ではありませんと、削るべきものがあれば削るということもこの検討の俎上に上せるべきだという答弁をなさったと思うんですけれども、そういったことを踏まえて、閣議で発議をなさっておる大臣は防衛費問題について今日時点どう考えておられるか、ここをお尋ねしている。
  102. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) わかりました。これは基本的には財政再建を進めるに当たりまして、防衛関係費を含め歳出予算全体についての厳しい見直しを行っていかなければならないことは言うまでもないことでございますので、特定の経費を聖域とする、そういう考え方はこれはございません。
  103. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 防衛費といえども特別の聖域とは考えていない、他の経費と同じように、必要な見直しをすべき問題は見直しをするという同列の問題だということで御答弁をされたわけでありますけれども、当然そういった角度から言って、いま全体として予算を緊縮をしよう、圧縮をしようと、こういう状況にありますから、GNP対比一%を目指すと、こういう論に大蔵大臣としては同調をなさるわけではありませんね。
  104. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 事実上、決め方といたしましても、これは百分の一に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うという抑制的な表現になっておるわけでありますので、これがまさに目標であるという物の考え方はとっておりません。
  105. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、防衛費の削減問題を必要な場合にはひとつ取り上げていく、他の諸問題との同列の見地においてということでありますけれども、早い話がP3Cにしたって、あるいはF14、いろいろなアメリカから購入をする軍用機、大ざっぱに言って一機百億円とも言われている、この一機購入を見送るだけでもかなりの額が出ると、こういう状況もお互いの念頭に置いた上で防衛費を削減をすれば、いま国民が何としてもこれは削らないでくれということで切望をしておる福祉予算を削るということを避けることもできるし、あるいは国債年度内縮減に一歩踏み出すという可能な道がここから開けてくるのじゃないかというふうに思うんですけれども、具体的にこれをどういうふうに作業としてやるかという問題じゃない、考え方の問題としてその点については大臣はどうお考えになりますか。
  106. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 防衛費、なかんずく装備というようなものになりますと、これは非常に専門的な知識も必要でございます。そして、したがって、今日まで防衛費に対して不要不急のものを計上しておったというわれわれには認識はありません。ただ、何が不要であり何が不急であるとかいう問題は、お互いの立つプリンシプルの中で異なった見方が出てくることもこれはあり得ると思います。  したがって、私どもは、やはり防衛費というものは基本的に先ほど来の筋に沿って計上されるべきものであって、そしてこの装備が不要不急というような点につきましては、あるいは佐藤さんと私と考えの分かれるところもそれはあるであろうというふうに考えております。
  107. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は、その軍用機の購入問題というのは一例として挙げたわけですけれども、とにかく防衛費というのは総額においてかなりの比重を占めているわけですね。ここについての見直しをやっていけば、新しい財源をかなりそこに見出すことができる、そういう問題として財政再建の衝に当たっておられる大蔵大臣として、そういった角度でのこれからの検討をやるという問題もひとつ念頭に置かれる必要があるんじゃないかということで申し上げておるわけで、果たして防衛費の中のここの部分が専門的にどうだ、技術的にどうだということでのいま議論を質問としてやっているわけじゃありません。予算全体の財政再建を進めていく上でかなり予算上大きな比重を占めておるこの防衛費問題について、一遍必要なものについては見直しをして、新たな財源をつくり、国民に還元するものは還元をする、国債を減らす部分に回す部分というものは回すと、こういう角度の検討課題としてこれをぜひとも大臣としては取り上げていただく必要があるのじゃないかという、こういう角度の質問です。
  108. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私は、防衛費であれ何であれ、すべてが初めから例外の、いわば聖域という言葉でございましょうか、これは例外として扱うと、こういう考え方はとらないということは言えると思います。
  109. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この議論だけやっておるわけにはまいりませんのでもう繰り返しませんけれども、ぜひるる申し上げたそういう方向で、これから五十五年度予算の留保、見直し、五十六年度予算編成作業に入られるわけですけれども、繰り返しその点を強調をしておきたいというふうに思うのです。  次は、国債発行の歯どめについて幾つかお尋ねをいたしたいと思いますけれども、今年度予算における国債発行は昨年度当初比で一兆円減十四兆二千七百億円ということで、さっきも言いました当初比では一兆円減らしたということでも、補正と比べれば減ってないという点で非常に大きな国民の批判の目がこの点に向いているのだということでありますけれども財政審の報告の中で、国債発行の歯どめの指標として幾つかの提言を行っておると思うのですけれども、いよいよこれから作業を進めていかれる政府として、何を指標に国債の年々縮減を図るという方針ですか。
  110. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) ただいま御指摘がございました財政制度審議会でのいろいろな御議論の報告という形で私どもも承知をしているわけでございますが、この財政制度審議会での御議論は、どちらかと言えばやや長期的な、財政運営長期的な角度からの公債発行の歯どめについての御議論が中心であったように思います。  そういう角度から、御指摘になりましたように、たとえば公債依存度でございますとか、あるいは予算に占めます国債費公債費の比率でございますとか、あるいはそれぞれのGNPに対します公債残高の比率でございますとか、幾つかの係数的な指標についても御議論があったわけでございますが、これも委員御承知のとおりかと存じますが、それぞれの係数的な指標は、いずれにせよ単独では決定的な指標にはなりがたいと、やはりそれぞれの持つ指標の意味合いを念頭に置いて財政運営をやっていくべきである、ただ、どちらかと言えば、一番公債依存度というのがわかりやすく簡明でもあるから、考えていく場合には、この公債依存度というものが一つの中心的な指標になるのではないかというような御報告であったと理解をしているわけでございます。  ただ、当面の問題として私ども考えますと、御承知のように、すでに公債依存度といたしましては三〇%を超える状況にあるわけでございます。財政制度審議会の御報告では、この公債依存度につきましては、できるだけ建設公債も含めて低目に抑えていく、できれば一けた台にしていくことが長期的には望ましいというふうに御報告なさっているわけでございますが、ともかく現時点におきましては三〇%を超える依存度の状況でもございますし、しかも法律的にも臨時特例措置としていわゆる特例公債を年々お願いをせざるを得ない状況でございますので、当面の問題といたしましては、私ども公債依存度というものよりも、やはりまず特例公債からできるだけ早く脱却をしていく、できるだけ早く特例公債をゼロにしていく、そういうことを当面の目標として公債問題を考えていくべきではないかというふうに考えているわけでございます。
  111. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 その財政審の報告もいろいろ御説明をされながら、当面は政府としては特例公債をゼロにするというのを一番の指標に置いて、総合的な角度からの施策を進めていくのだという御答弁であったかと思うんですけれども公債依存度、これも計画的に、できるだけ早く財政審が提起をしておる一けた台、ここへ持っていくという、この努力もこれは当然のことなさるわけですね。
  112. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 長期的な財政のあるべき姿としては、私どももこの財政制度審議会の御報告の趣旨を体して運営をしていかなければならないというふうに考えております。
  113. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 長期的に長期的にと、こうまくら言葉がつくからずいぶん気になるわけですけれども、ことしが公債依存度三三・五%、かつて福田さんが総理の時期、これは本会議場でも、また大蔵委員会にも御出席をなさって、もう三〇%というのが限界だというふうにいろいろ言われておった時期があるんです。ところが、あの議論というのは、いつの間にか政府関係者の中ではもう弊覆のごとく捨て去られて、三〇%を超えておったって、それはもう困ったことという言葉は使いながらも、そんなことでどうこう大議論しなくちゃならぬほどのことじゃないと言わんばかりのニュアンスの最近の発言になっているような感がするんです。  それで、どうですか、たとえば三〇%へいつまでに持っていこうということを考えられますか。
  114. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) これも申し上げるまでもないことでございますが、私ども特例公債から脱却をすることを当面の目標とすると先ほども申し上げましたが、もちろんのこと、いわゆる四条公債も含めまして、公債全体としてできるだけ圧縮をしていくという方向をやはり基本的にはとるべきであると考えておりますし、五十五年度予算を組みます場合にも、そういう考え方で臨んだつもりでございます。  しかしながら、いま御指摘のように、たとえばいつまでに公債依存度を何%にするというふうに係数的に目標を立てますことはきわめてむずかしゅうございます。御承知のように、予算といいますものは、やはりその年々の経済情勢を展望し、かつまた歳出の内容、それからまた税収その他の歳入の動向、これらをすべて総合的に検討いたしまして組んでまいる性質のものでございますから、公債依存度だけを取り上げて、係数的にいつまでに何%というような取り上げ方をすることは、予算というものの性格にもなかなかなじまない点もございますし、実際問題として非常にむずかしいというふうにお答えをせざるを得ないと思います。
  115. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 経済財政運営がむずかしいんだと言えば、それはむずかしいと思うんですけれども、しかし大目標として掲げられておる、いまの異常な国債依存の状況の解決を図らなくちゃならぬということは口では絶えず言われておるが、やっぱりそれを具体的にあらわしていく姿として、特例公債だけゼロにしてみたところで、片一方の公債がますますふえていったら、これはもう全くもとのもくあみだということは、これはもう言うまでもないことだから、全体としてどう抑えるのか、特例公債はもちろんのことという、ここの計画的な追求がなければ、責任を持った政府としての政策追求というふうには言えないというのは、これはもう自明の問題じゃないかと思うんですね。しかし、そこはなかなかいまここでは言えませんということですね。  だから、もう一つお尋ねしますけれども、来年度——これは何も遠い先のことではないから、ある程度のことを頭に描いてこれからのいろんな作業をなされていくと思うんですけれども、来年度国債の額においても、それから依存度においても今年度よりはこれをできる限り抑え込むんだという、この立場は確認できますか。
  116. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 公債発行額を極力圧縮をしていくというのが、私どもの基本的な構えでございます。したがいまして、当然のことながら、五十六年度予算を組みます場合にも、極力公債発行額を圧縮をしていくという姿勢で臨むべきものであるというふうに考えております。
  117. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それで、念のために聞いているんですけれども、額においても、依存度においても下げるということですかと聞いているんです。
  118. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) いろいろ歳出全般についての見直しをし、かつまた、歳入の面につきましても見直しを進めた上で、できれば公債依存度につきましても五十五年度よりも下げていくというふうな方向で進んでまいりたい、かように考えます。
  119. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それじゃ次に、減債方法にかかわっていろいろお尋ねをいたしたいと思いますけれども、現在の国債整理基金への償還財源の繰り入れの方式は、いわゆる定率繰り入れ、例の百分の一・六という、それから剰余金の繰り入れ——財政法六条に基づく剰余金の二分の一以上というこの剰余金繰り入れ、それから必要に応じて一般会計から繰り入れる予算繰り入れという三つの方式が考えられておるわけですけれども、問題は、最近の財源不足状況で、剰余金から繰り入れるとか、予算から繰り入れるという、これはなかなか至難な問題だというふうに想像されると思うんですけれども、この三つの方式について、今後政府として、まず全体としてどういう角度からこの三つの方式を追求をされるのか、何かの見通しを持っておられれば、まずお尋ねしたいと思います。
  120. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) ただいま御指摘がございました現在の償還財源の積み立ての仕組みと申しますか、減債の仕組みでございますが、これは御高承のように、四十年度からいわゆる建設公債を本格的に発行し始めた際に、財政制度審議会にもたしか一年余りかかって御審議をいただいた結果を踏まえまして確立をされた仕組みでございます。その後、この仕組みをつくりましたときには必ずしも想定されていなかったいわゆる特例公債が五十年度から発行されるようになったわけでございますが、そういういわば事情変化も踏まえまして、その時点で改めて私ども財政制度審議会にも特例公債発行下における減債制度の仕組みについてどう考えるべきかというような点も御論議をいただいたわけでございますが、財政制度審議会の御意見は、現在の総合的な減債制度によって特例公債についても対処をしていくことが可能であるし、かつまた、それが適当であろうというような御報告をいただきました。  したがいまして、私どもは五十年度特例公債発行以来、先ほど委員が御指摘になりましたような、いわゆる三本柱の総合減債制度によりまして、特例公債の償還財源問題についても対処をしていくということで臨んでまいっておるわけでございます。  ただ、この特例公債という問題に絡みまして、実はこの問題につきましてはいろいろな御意見がございます。これは昨年暮れの財政制度審議会の御報告にも書かれているわけでございますが、一方では、ともかく臨時異例な特例公債をできるかけ減らしていくべき状況のもとにおいて、片一方で特例公債発行しながら片一方で百分の一・六というような積み立てを行うのはおかしいのではないか、そういうような積み立てを行う余裕があるのならば、むしろその分だけ特例公債発行そのものを減らすべきではないかというような御意見が一方にはあるわけでございます。ところが、また一方には、ちょうど反対と申しますか、それにしても特例公債を含めて公債の償還財源をやはり確保していくという仕組みはきわめて重要であるから、特例公債発行下においても、この総合減債制度は基本的には守っていくべきだというような御意見もあるわけでございます。  で、昨年暮れの財政制度審議会の御報告によりますと、そういうふうにいろいろの意見があるけれども、総合的にやはり考えれば、現在の総合的な減債制度の仕組みを維持していくことが適当であろうというのが、財政審としての一応の御結論であったわけでございまして、私どもはこの財政制度審議会の御報告の趣旨を今後も生かしていくべきではないかというふうに考えております。
  121. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 この衆議院予算委員会に提出されました国債整理基金の資金繰り状況試算というものがありますが、そこでも、将来巨額予算繰り入れが必要だとはしていますけれども、しかし、それはとうていむずかしい問題だというふうに言われておるわけですけれども、いわば今後の一番の方法としては、定率繰り入れに頼らざるを得ないというところが実情じゃないかと思うんです。特例債についていっても、四条債の資産の効用発揮年数六十年を基礎として百分の一・六ずつの繰り入れと同じようになっています。で、期限到来時に借りかえなしで全額償還しなければならないというそれにどう対応するか、以前、私質問をしたんですけれども財政難の折から借金を返すために借金まですると、こういう考えは持たないという答弁があったんですが、この基本的立場は今後貫くわけですか。
  122. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 御質問の御趣旨は、特例公債の現金償還が本格的に始まりますのは六十年度以降でございますが、この特例公債の償還のために償還財源を確保するために再び特例公債に依存をするというようなことは考えてはいないのであろうなという御趣旨かと存じますが、私どもはそのような事態にならないように努力をすべきものでございますし、そのためにも五十九年度までに特例公債からぜひとも脱却をしたいというふうに考えているわけでございます。
  123. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 願望としてはそういう願望を持っておられると、その願望を実現しようと思えば、しからば六十年以降のこの時点において、予算繰り入れがやり得るというこういう事態が展望できるということがあってこそいまの言い方が実現性を持つわけですね。果たしてそういうことは展望できるんですか。
  124. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 先生がお示しになりました国債整理基金の資金繰りについての仮定計算、これを予算委員会に提出いたしました際にもるる御説明をいたしている次第でございますが、何分にも六十年度以降の予算繰り入れ、その金額がこの仮定計算のとおりになるかどうかは別にいたしまして、六十年度以降の予算の中でこのような巨額予算繰り入れが果たして可能かということになりますと、私どもはまず六十年度以降の歳出、それから歳入、なかんずく歳入の中の基幹的な科目でございます税収等につきまして、六十年度以降の見通しが立ちませんと、そのような予算繰り入れが可能かどうかというような検証はできないわけでございます。  申し上げるまでもなく、そういう六十年度以降の歳出や歳入の姿というようなものは、六十年度以降の経済全体の姿と切り離しては考えられないわけでございます。したがいまして、この資料を御提出いたしました際にも申し上げておりますように、六十年度以降どのような仕組みでこの予算繰り入れを可能にするのか、あるいは果たして可能であるのかというような検証は、現実問題としてできないわけでございます。  しかしながら、私どもは、いずれにせよ六十年度以降かなり大きな予算繰り入れが必要になるであろうというような予想は、この仮定計算からもある程度読み取れるわけでございますので、これもたびたび御説明申し上げておりますように、特例公債から脱却した後に各年度負担の平準化を考慮しながら、どういった予算繰り入れの仕組みを考えていったらいいか、その点について、特例公債を脱却した後に直ちに実施できるようにいまから検討を続けていくというふうな態度で臨んでいるわけでございます。
  125. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 国債を減らす指標をどこに置くのかと聞けば、特例公債をできるだけ早く脱却するというのが第一ですと、こういうわけなんです。ところが、いよいよ六十年から大幅な償還が始まってくるというこの時期に、特例公債をまた新たに発行するということはありませんねと、こう聞けば、願望としてはそう思っていますと、こう言いながら、それにかわる財政繰り入れ、これについても見通しはいまのところは立ちませんということで、こうなると、また新たなる特例公債発行が起こるのじゃないか、こういう不安が依然としてつきまとうということになってくるわけですね。  そこで、私思うんですけれども、いまの悪循環を解決していくために、もちろん一つには収入、支出の全面的な見直しをやって、不要不急経費を大幅に削るというこの問題ももちろん必要なことだと思うんですけれども、減債制度について新たな検討をやる必要があるのじゃないか。たとえば、特例債の繰り入れ率百分の一・六というこの率自身を高率のものに改めるという問題についてはどうなのか。この四条債の繰り入れについて、これを経営部門にしわ寄せをするのじゃなくて、投資部門の税収、たとえば自動車関係税、こういうものをもって充てるという方法はどうなのか。  投資部門の税収を一般財源化して、特例債の発行を減らすのに鋭意つぎ込んでいくという問題とか、四条債の繰り入れは投資部門の経費として処理する、こういう幾つかの、もっとひとつメスを入れる方向での解決方法、これをぜひ検討の俎上に上せるべきじゃないかというふうに思うんですが、そういうことは検討を開始をされておりますか。
  126. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) ただいま御例示になりました四条公債にかかる国債費は、いわゆる投資部門の対象として考えるべきではないかというお話でございますが、これも申し上げるまでもなく、四条公債であれ特例公債であれ、その償還に要しまする償還費、それからまた利払い費、これはいかなる意味におきましても、後の年度に見合いのいわば資産を残すものではないわけでございます。そういう意味におきまして、私どもは四条公債であれ特例公債であれ、およそ国債費なるものを投資部門のらち内で考えるということは適当ではないというふうに考えております。  それから、百分の一・六の見直しについてどう考えるかというお尋ねもございましたが、先ほども申し上げましたように、現在の総合的な減債制度といいますのは、もちろん基本的には建設公債の六十年を念頭に置いて百分の一・六という数字がつくられているわけではありますけれども、この定率繰り入れのほかに予算繰り入れ、あるいは剰余金繰り入れという仕組みも同時にございます。したがいまして、私どもはいまの減債制度といいますのは、個々の公債のいわば銘柄ごとのひもつき的に償還財源を確保するというような仕組みとしては考えていないわけでございまして、すべての公債をこの総合的な減債制度によって償還をしていくという仕組みのものとして考えているわけでございますので、百分の一・六というものを変える考えは当面ございません。
  127. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 全部そういうノーという回答をなさっていますけれども、しからばいまのいつまで続くぬかるみぞというようなこういう国債の悪循環状況を、一体どうやって解決をしていく方策が立つのかという積極提起というのはないという状況になっていると思うのですね。  私がさっき提起をしていました一つですけれども、たとえば自動車関係税、大臣、この自動車関係税の本年度の税収が一兆五千六百三十億予定をされている。これをもし一般財源化しますと、特例債の発行約七兆五千億、これを五兆九千億に減らすことができるという、こういう解決方策があるのじゃないかということを、いままでもいろんな機会に私どもも申し上げてきておったと思うのです。この自動車関係税のあり方については、税調としても答申の中で検討が必要ではないかということで提起をしている問題でありますし、先ほどからるる申し上げております減債制度のあり方、債務軽減の方式の新たなひとつ今日時点での見直しをやる、それとの関連において、自動車関係税の一般財源化の問題について、一遍十分検討を加えていただく必要があるのじゃないかというふうに思いますが、どうでしょう。
  128. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 確かに揮発油税その他の道路特定財源に充てられております自動車関係税と申しますか、その使途を見直しをして一般財源に充てたらどうだということについて、五十二年、五十四年、いずれの年末におきましても税制調査会で御議論がありました。しかし、ただいま仰せのありますような国債の償還財源としてそれを特定せよという御議論はいま初めて承ったわけでございますが、いずれにいたしましても、たとえば道路でございましたら道路歳出というものを削減することが可能でありませんければ、それは特例公債が減りますけれども、それだけ四条公債がふえるという関係にあるわけであります。  そのほかに、なお国債整理財源、償還財源としてそれを特定いたしますれば、さらにその部分他の公債をもって賄わなければならないという関係になります。税収がふえるか歳出が減るか、いずれかそのしっかりした基礎の上に立ちませんと、いま仰せのありますように、特定の税をもって公債の償還財源といたしました場合でも、なおかつ新しい国債が累積をしていくという問題は残るというふうに承知をいたします。  ただいまのお話は貴重な御意見として承って、またこの国会が済みました後で税制調査会にはお伝えをいたしますけれども、従来まで道路特定財源を一般財源化する問題として議論されましたものは、その使途はたとえば代替エネルギー対策に充てたらどうであろうかというようなこと、そういうことであったということをつけ加えさせていただきます。
  129. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いまの御答弁は、自動車関係税、目的税としてそれの使われ道が主として道路建設を初めいわばそういう大型公共事業的なもの、ここに使われていく、だからこれを下手にいじったら大変なことが起こるということから、できるだけそれはいじらぬでおこうという発想かと思いますけれども、やはりいままでのそういう施策の発想の転換をやりませんと、いまの深刻な財政危機というのは私は打開できないと思うのです。  そういう意味で、税制調査会も答申の中で触れている、いろいろ各党の代表が、たとえばこんなことをしたらどうかということで提言をする問題について、やはり政府としてはよく虚心に耳を傾けて、検討すべきものは俎上にのせるという、こういう方向でぜひやってもらいたいというふうに思うんですが、そういう今後の方向についての大臣の所信を最後にお尋ねをして、終わりにします。
  130. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 確かにいまも主税局長からお答え申し上げましたように、「現在、道路特定財源とされている揮発油税等について、その使途を見直し、代替エネルギー対策等にも充てるべきではないかとの意見があり、これに対しては、道路整備状況等を考慮すれば、これらの税の使途の見直しについては慎重であるべきであるとする意見もあり、この問題については、今後、さらに検討することとした。」ということで、検討されるわけでございます。  私は、国債の償還財源に揮発油税等を特定しろという議論は、実は私もいま初めて聞いた議論です。したがって、やはりそれが著しく奇想天外なものでない限り、それなりのことを素直に税制調査会へまとめて報告すべき課題であるというふうには、理解をさしていただいております。
  131. 細川護煕

    理事細川護熙君) 本案の質疑は本日はこの程度にとどめます。  次回は、二十二日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会