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国務大臣(
竹下登君) まず最初の、
一般論としての、ここで
公定歩合論議をすることが非常にむなしい状態になっておる、これは私も、いろいろなそれについての感想は
それなりに持っております。すなわち、
中村さんの時代や私
どもの時代で教わったのは、どちらかといえば、まあ財閥が金融機関を支配しておる時代でありまして、したがって
公定歩合の操作などというのは直ちに投機につながる。したがって、その瞬間までまあうそを言っておってもとがめられないという性格のものであるというような教育体系の中に育ったわけです。今日も、本筋としては私もそのとおりだと思うのであります。
ただ、何としても、いわゆるマスコミの発達とでも申しましょうか、そういうある種の、これは取材は自由でございますけれ
ども、取材競争の激化とでも申しましょうか、そういうものの中に、
政府なり
日銀なりの施策がそれによってリードされておるという
感じを私も持たないわけではありません。しかし、原則的に、
公定歩合というものは
日銀の専権事項としてやはり
認識だけは持っていなきゃならぬ。そこに、ちぐはぐなある種のむなしさというものがあると思います。
したがって、明瞭な
数字というものは恐らくきょうの午後だろうと思うのでございますけれ
ども、
政策委員会において決定されました段階において、今度は
日銀法の第二十一条によって公告をして官報掲載されるということになりますので、このような報告がただいま参りましたというのは、少なくとも私がここにおる限りにおいては、
委員長には申し入れなきゃいかぬことではなかろうかと思っておるところであります。恐らくこの
委員会における本
法案審議中の出来事として、そういうことが予測されるのじゃないかというふうにまず
一つは
考えます。
それから、これまた、したがって
数字の出る前に申し上げる
言葉ではございませんにしても、
一般論として、恐らく通貨当局は
天井感というものをお
考えの上で決定されるであろうと思うわけであります。それが
天井感になるかならぬかという
数字を
前提にしないままの
議論はおかしな
議論でございますけれ
ども、私
どももカーターさんのおとりになった
インフレ対策というものは、ドルがやっぱり基軸通貨でございますから、ドルが安定して
アメリカの
インフレがおさまって、そうして
日本との経済秩序というものも、
インフレがおさまれば自然な形において経済摩擦も少なくなっていくというような
意味で心から期待をいたしておりますものの、私は一方、
アメリカの例のサーチャージみたいな——まあ三%でございます、いま
公定歩合は御案内のように一三%でございますが、このプラスサーチャージみたいな三%というものについて私なりにいろいろ研究していますが、実は私も、はっきりこれはかくかくしかじかなるものだという
説明ができない
一つの背景を申し上げますと、
アメリカのいわゆるバンカーとでも申しましょうか、一万五千ぐらい銀行がありまして、そのうちの六千ぐらいが連銀に加盟しておる。そうして、
アメリカのバンカーというものの伝統的風潮というものは、連銀に金を借りに行った者はバンカーとしての資格がマイナスに問われるという、ある種の伝統みたいなものがあるようでございます。
したがって、貸出残高等を見ますと、
日銀などに比べればはるかに少ないものしか貸し出さない。どっちかと言えば、緊急避難のときに短期間借りるというような性格になっておりますので、確かに量
そのものは大変少ないものであります。
それといま
一つ、
アメリカの場合は、プライムレートが先行してその後
公定歩合が追っかけていくという、
日本とはまるきり逆な仕組みになっております。で、今度三%のサーチャージを
考えられたことも、あるいは私は、ウォール街の
心境として、連銀へ金を借りに行くことはバンカーとしての資格はいかにマイナス要件に働こうとも、やはりこれだけ開きがありますと、一時的に借りて貸せば大変な利ざやをかせぐことができる。したがって、本当のその一時的な緊急避難的なもの以外は、少し長目に借りるようなのは三%のペナルティーみたいなものを取りますよというような性格のものではないかなあというふうに見ておるわけであります。
そこで今度は、それから来ますところのいわゆる金利
関係の問題でございますが、先ほ
ども適当な
言葉ではないとは申しつつ、いわゆる
金利競争のような
感じすらすると。まあ先般も連銀あるいは中央銀行の
総裁の会合がありまして、そのときもやはり共通の
課題として、お互い
金利競争みたいなものは避けたい、しかし、国内の
インフレは抑えなきゃいかぬというところに、相矛盾した共通の
認識というものができたというような報告も受けておるわけであります。ところが一方を見ますと、いわゆるオイルダラーとでも申しましょうか、そういう産油国のドルが必ずしも高金利のところへだけ流入していない。すなわち、非常にだんだん勉強されて、ドイツでありますとか
日本でありますとか、そういうようなところへむしろ選択して流入していっておる。これはいい
意味における
傾向だと思うのであります。
また、そういうことも、ございますので、私は
金利競争そのものが、
日本の金融に対して大変な悪い影響を与えるというふうには思わなくてもいいのじゃないかという
感じを
一つ持っておるところであります。
それから、今度は国債問題をお尋ねになりましたが、国債管理政策というものは、一口に言って、これは国債が多過ぎることがいけないということに尽きると思います。そうして、国債整理基金で三千億円だけは買いオペをするということを発表いたしまして、すでに二千億円というものをオペをしたわけでございますけれ
ども、これは機動的な配慮によって一時的な効果は私はないとは思いません。
ただ、
一つ見てみますと、この三月期は決算期であるということもございましょうが、商いはまたこれは大変に薄い商いです。東京証券取引所では一日にたった一件、二億円というような日もあるわけです。したがって、これが必ずしも実勢を表示しておるものではないなという
印象も受けながら、毎日私
どもは、為替レートが落ちつくと国債が今度は下がっていく、国債が上がると為替レートが今度は少し下がっていくというような状態を見ながら、本当に
予算委員会に出ておりましても、その
数字だけは絶えず
総理の方へ回さなきゃいかぬようなぐらい絶えず変動しておるわけであります。
しかし、国債につきましては、とにかくそれは何としても多過ぎるということが何よりもの理由でございますので、これを減らしていく努力というものはこれはたゆまざる努力としてやっていかなきゃならぬわけでございますけれ
ども、恐らく
中村委員御
指摘のように、きのうちょっと落ちついておりますですね。そういう
意味におきましては、私も
シ団に対して今度五十五年度お願いするものにつきましてもきわめて濃密な打ち合わせをしまして、そして引き受けていただく額を、もとよりいわゆる資金運用部資金で余り大きなものを引き受けるというのもいかがかと思いますものの、やはり
シ団引き受けのある種の限界というようなものも
相談しながら
感じますので、したがって、どうやら私は消化し得るのではないかというふうに思っておるところであります。
いずれにいたしましても、そういう複雑な
環境の中にあって、まさに機動的に弾力的に
運営していかなきゃならぬ数々の問題に、もう刻一刻と対面しておるというのが今日の姿ではなかろうかというふうに、御理解をいただければ幸いであります。