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1980-03-26 第91回国会 参議院 公害及び交通安全対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十六日(水曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     下田 京子君  三月二十六日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     坂元 親男君      二木 謙吾君     増岡 康治君      戸叶  武君    茜ケ久保重光君      瀬谷 英行君     川村 清一君      赤桐  操君     佐藤 三吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小山 一平君     理 事                 秦野  章君                 福島 茂夫君                 坂倉 藤吾君                 阿部 憲一君                 柳澤 錬造君     委 員                 坂元 親男君                 高平 公友君                 中村 禎二君                 原 文兵衛君                 降矢 敬雄君                 増岡 康治君                茜ケ久保重光君                 川村 清一君                 佐藤 三吾君                 上林繁次郎君                 小平 芳平君                 下田 京子君                 山中 郁子君                 前島英三郎君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  土屋 義彦君    政府委員        環境庁長官官房        長        正田 泰央君        環境庁長官官房        会計課長     神戸 芳郎君        環境庁企画調整        局長       金子 太郎君        環境庁企画調整        局環境保健部長  本田  正君        環境庁自然保護        局長       藤森 昭一君        環境庁大気保全        局長       三浦 大助君        環境庁水質保全        局長       馬場 道夫君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        海上保安庁警備        救難部長     野呂  隆君        建設省道路局企        画課長      沓掛 哲男君        会計検査院事務        総局第一局上席        調査官      水越 雅夫君    参考人        日本道路公団理        事        大島 哲男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 小山一平

    委員長小山一平君) ただいまから公害及び交通安全対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十五日、沓脱タケ子君が委員辞任され、その補欠として下田京子君が選任されました。
  3. 小山一平

    委員長小山一平君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会日本道路公団理事大島哲男君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小山一平

    委員長小山一平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  5. 小山一平

    委員長小山一平君) 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、土屋環境庁長官から趣旨説明を聴取いたします。土屋長官
  6. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 公害健康被害補償法の一部を改正する法律案提案理由の御説明をさしていただきます。  ただいま議題となりました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  公害健康被害補償法は、相当範囲にわたる著しい大気汚染または水質の汚濁の影響により健康が損なわれた人々に対して、その迅速かつ公正な保護を図るため、各種補償給付支給等実施することとしております。これらの実施に必要な費用のうち慢性気管支炎等非特異的疾患に係るものにつきましては、大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設等を設置する事業者から徴収する汚染負荷量賦課金を充てるほか、自動車に係る分として、昭和四十九年度から昭和五十四年度までの間におきましては、自動車重量税収入見込み額の一部に相当する金額を充てることとされてまいりましたが、今回、昭和五十五年度から昭和五十七年度までの間の措置を定めるため、この法律案提案した次第であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  今回の法律案は、昭和五十五年度から昭和五十七年度までの間においで、政府は、引き続き、大気汚染の原因である物質を排出する自動車に係る費用負担分として自動車重量税収入見込み額の一部に相当する金額公害健康被害補償協会に対して交付することとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに、御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  7. 小山一平

    委員長小山一平君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 法案審議に入る前に、緊急的なところで少し一、二問質問をお許し願いたいと思います。  新聞報道によりますと、出光タンカー徳山丸スラッジ大量不法投棄事件報道されておるわけであります。大阪の加藤邦彦さんといわれる方の告発で明らかにされつつあるわけですが、この事件の概要、それから通報を受けてからの対処状況、今後の方針について説明をいただきたいと思いますが、これは海上保安庁に。
  9. 野呂隆

    説明員野呂隆君) 徳山丸事件に関しまして御報告いたします。  海上保安庁は、本年の三月二十一日、出光タンカー株式会社所属タンカー徳山丸、十三万六千総トンでございますが、これからのスラッジ海洋投棄に関する情報を入手いたしました。直ちに、海洋汚染及び海上災害防止に関する法律違反事件といたしまして関係保安部署において捜査を開始いたしております。  同船に係る容疑といたしましては、今年の二月二十九日、徳山港におきましてタンククリーニング作業員を乗船させ出港いたしまして、四国沖合いにおいて入渠前のタンククリーニング作業実施いたしました。この際、同船タンクから発生いたしましたスラッジタンククリーニング作業員海洋に投棄したものであります。  捜査状況でございますが、三月二十一日情報入手と同時に捜査に着手いたしまして、現在までに徳山丸、それからタンククリーニングを請け負いました内外産業株式会社神戸支店作業員を手配いたしました山水商事株式会社神戸支店等、四ヵ所の捜索を実施いたしまして証拠品を押収いたしましたほか、徳山丸の検証を実施いたしまして、タンククリーニング作業を指揮いたしました内外産業作業員ほか、徳山丸乗組員等から事情聴取及び取り調べを行うなど、神戸海上保安部中心にいたしまして鋭意捜査を進め、事案の解明に努めております。  今後の対策でございますが、捜査の結果をまってさらに進めたいと思いますけれども、現在のところ、このタンククリーニング作業実施されます高知沖合いに、昨年の十月及び今年の三月に就役いたしましたヘリコプター搭載型巡視船二隻、それからそのほか航空機、巡視船艇等を投入いたしまして、監視取り締まり強化を図ってまいりたいと思います。  なお、タンククリーニングを行う船につきましては、スラッジ陸揚げ量継続調査等をさらに綿密に実施いたしましてこの種事案被害防止に努めたいと、かように思っております。
  10. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 これは推測ということになるんですが、汚染状況から見まして、ただ単に今回の事件だけの問題ではない、他にタンカーにかかわるいわゆる不法投棄の問題というのは類推的に幾つかあるのじゃないかと、こういう判断ができるのですが、その辺の問題は保安庁としてはどうなんでしょう。
  11. 野呂隆

    説明員野呂隆君) この種事案に関しましては、昨年の六月、リベリアのタンカーマイティートレーダーという三万三千トンの船がやはり高知沖タンククリーニング作業実施いたしましてスラッジ不法に投棄し、検挙した事例がございます。それから油を不法に投棄したり不法に排出しておる船舶につきましては、昨年は四百七十七件の検挙をいたしております。  そういうところでございます。
  12. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 その種のケースを見ますと、結局クリーニング専門にやる下請業者採算上の立場から違法を承知の上で不法に投棄する、こういうケースが大体筋道ですね。しかも、そのことについて下請に出している元の方も内々承知をしつつそれについては黙っている、こういうふうに見られる。これは海洋汚染の問題だけではなくて、陸上におきます工場廃棄物処理問題等につきましてもその種のケースというのはきわめて強いですね。親会社は知っていて知らぬふりをしている、下請業者は安く処理を請け負わされるもんだから、採算上どうしても不法にやってしまう、こういう仕組みというものがこれは陸と言わず海と言わずあるわけであります。海上保安の場合は海が中心でありますが、ぜひその辺を今回の事件一つ出発点にしましてもう一度海上汚染に対してきちっとした体制をとってもらわなければいかぬ。いわゆるやって悪いということを承知しつつそれをやる、ここに一番大きな問題があるわけですから。きょうは本論ではありませんからそれ以上追及いたしませんが、海上保安としても担当の庁としてはおたく以外にないんですから、今日までこの委員会でも論議をしてまいりましたが、ぜひともこれの取り締まり強化、同時にそういうことを未然防止する対策、ここまで私は手を広げてもらいたい、こういうことを要望しておきたいと思いますが、環境庁はこの事件に対してどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  13. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) ただいま事実関係につきましては海上保安庁の方から御答弁がございましたが、私といたしましては大変許しがたい行為であり、憤りを感じておるような次第でございます。  今後油による海洋汚染防止を図るためには、油の排出規制が厳正に守られるよう関係者を指導監督するとともに、監視取り締まり体制の一層の強化を図る必要があると考えております。このため、環境庁といたしましては、運輸省等関係省庁に対しまして善処方を強く要請いたしてまいりたいと考えております。
  14. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 ただ、タンカーは今日まできわめて幾つかの問題を提起しておるわけですね。ところが、陸上、あるいはタンカーと陸との間の作業環境等については幾つかの縛りがあるんです。しかし、タンカーそのものについて、具体的に、たとえばどれだけのタンカーにはどういう質のものを積めばどれだけのスラッジが出るのか、こうした関係も含めまして、そしてタンカーに関するいわゆる環境を守っていくための規制手段というのがきわめて緩いわけですね、ないに等しいのであります。その辺を環境庁としてはきちっと制度的に防止していく体制というものをつくり上げる必要があるのじゃないか。そこに環境庁はやはり目を向けなければならぬ。これは瀬戸内の問題もありますし、それから沖合いの問題もあります。内海の話になってまいりますと環境庁はまあまあという話が出てくる。ところが、沖合いの方は私のところは余り知りませんよというのが大体今日までの姿勢じゃないのでしょうか。私はそこに大きな問題点がある、こういうふうに申し上げるのですが、その辺はいかがでしょうか。
  15. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 先生の御指摘のとおりでございます。御案内のとおり、船舶からの油汚泥海洋投棄海洋汚染防止法によりまして禁止されておる次第でございますが、先生の御意見も踏まえて今後運輸省等とも緊密な連絡をとりまして、これらの問題を対処してまいりたいと思います。
  16. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 ぜひ制度的な問題として再検討いただきたいと思います。  次に、これも二十四日の新聞に出ておりますが、環境庁が有燐洗剤追放に踏み切った、そうして関係の各省庁にも要請官房長名でやった、こういう報道がなされておるわけであります。姿勢としては私は一歩前進したというふうにきわめて評価をするところですが、今日まで委員会の中でもこの件については種々論議をしてまいりました。その段階では、環境庁は、燐を絶対なくしてしまうことについては問題があるとか、なかなかそこまで踏み切れないとか言っておったわけでありますが、この決意を固めました客観的な要因というのは一体何でしょうか。環境庁長官決意がきわめて大きく前進したという評価とともに、その辺の客観点要因の変化についてお聞きをしておきたい、こう思います。
  17. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 私は、昨年の暮れに環境庁長官を拝命いたしました直後、富栄養化対策一環といたしまして霞ケ浦並び東京湾を視察いたしまして、残念ながら参りましたときには時期的にアオコだとか赤潮等は見られませんで、いずれ私は日を改めて再度現地を訪問するということを約束して帰ってまいっておるのでございますが、現地等におきまして実情を伺いまして富栄養化対策重要性というものを深く痛感し、また、いろいろ関係団体皆さん方からもこれらについて強い要請等もございましたような次第であります。  近年、湖沼や内湾等閉鎖性水域富栄養化が進み、各種利水障害が生じておりますことは、先生案内のとおりでございます。環境庁といたしましては、富栄養化要因物質一つである燐の削減のため今日まで諸般の施策を行ってまいった次第でございます。  また、地方自治団体におきましても、富栄養化防止観点から燐を含む合成洗剤使用の自粛の措置がとられております。このような状況にかんがみ、私は、一昨日、総合的な富栄養化防止対策一環といたしまして、各省庁に対し、燐を含む合成洗剤使用につき特段の配慮を願いたいという文書をもって通知を申し上げたような次第でございます。そして、環境庁におきましても率先してこれが実施をいたしております。また、私は昨日の閣議におきましても同様の趣旨を申し上げ、閣僚の御協力を要請いたしたような次第でございます。
  18. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 海上保安庁、どうもありがとうございました。  いまお話をいただきましてそれなりの決意等よくわかるのですが、ぜひひとつ実効のある形にまで積極的、具体的に進めていってもらいたいと、こう思うのです。  なお、今日、洗剤工業会では低燐化、無燐化、こういう立場で新しく洗剤開発が進められておる。それはそれでいいのですが、問題は、新たに開発をされておるものについて、従来からも問題になっておりましたが、たとえば皮膚荒れ、湿疹、かぶれ、あるいは発がん性危険性、こうしたものが新たな製品の中にも幾つか出てくるわけであります。環境庁としましては、水問題を中心にしていわゆる有燐洗剤追放と、こういう立場に立っていますが、洗剤の目的、それから使用手段等考えていきますと、ただ単に水問題からの有燐洗剤追放ということじゃなくて、使用する側の安全ということがきわめて大きな課題になるわけでありますから、これはむしろ厚生省かもわかりません、所管からいきますと。かもわかりませんが、環境庁立場からも、私ども前々から言っていますように、すべての商品、使用するものについての安全を確保していく、そのことからの被害を救済していく、未然防止していくという立場がきわめて重要でありますので、ぜひそういう角度からもこの洗剤の問題についてさらに目を広げてもらう、こういう立場をとってもらいたいということを要望しておきたいと思います。  きょうは、これから被害補償法内容について幾つかお聞きをしていくことになりますが、健康被害の問題にいたしましても、公害全般の問題にいたしましても、まず未然防止する、未然防止するためには発生源対策を早く具体的に実行していく、このことが基本になければならぬと、こう思うわけであります。したがって、補償法審議する前提として、いわゆる健康被害未然防止する、こういう点に力点が置かれていかなければならぬ、この施策は一体どうなっているのだろうか、そしてその効果について一体今日環境庁としてはどう把握をしておるのか、ここがきわめて私は軸になると思いますので、その辺の環境庁としての今日まで進めてまいりました未然防止重点施策といいますか、主な施策といいますか、それに伴う効果評価、これは一体どういうことになりましょうか。
  19. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 政策の大きな柱でございますので、私からひとまず御答弁さしていただきたいと思います。  申し上げるまでもなく、今日の環境政策はただ単に公害の防除にととまらず、公害未然防止する、これは環境行政の重要な柱であると、私はかように考えておる次第でございます。このために、環境庁といたしましては、今後各種発生源対策を強力に推進するとともに、実効ある環境影響評価制度の確立を図るためその法制化を実現してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  20. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いままでも論議をし問題になってまいりましたアセスの問題も、公害未然防止、こういう観点からやはり緊急を要するし、その中身が大切だ、これはいままでも再三申し上げてきたことですが、また、延長されました期限も間もなくということなんですが、これはいかがになっていましょうか、アセスの問題は。
  21. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさせていただきます。  自民党と社公民三党との話し合いによりまして自民党の方から内閣に話があり、内閣におきましては官房長官、が中心となりまして関係閣僚会議を三月四日に設置していただきまして、続きまして三月十三日に第一回目の会合を開いていただき、また昨日第二回目の会合を開いていただいたような次第でございます。何と申しましても、率直に申し上げまして、いままでは、犬の遠ぼえと申しましょうか、なかなか各省がテーブルにつかなかったのです。今回は、おかげさまでテーブルにつきまして、十八省庁が真剣にこの問題について取り組んで、いろいろ話し合いがなされております。さようなわけで、初めてのことでございまして、いろいろ閣僚の間にも問題が提起され、論議がなされたのでございますが、官房長官も昨日の閣僚会議で各閣僚要請をいたしておりますが、われわれといたしましても、国会でも総理初め官房長官、私も答弁を申し上げているわけでございますので、三月三十一日までには法案として出せればいいのでございますが大綱だけでも決定をさせていただきたい、こういうことで精力的にいろいろいま関係省庁において話し合いがなされておるような次第であります。
  22. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 きょうはそれ以上つかないでおきます。  ただ、三十一日に大綱だけでもという話になりますと、今国会での成立を期すという姿勢がやはり大分ぼけてしまった、こう言わざるを得ないと思うのですが、ぜひとも内容を充実さして問に合うように最大の、これはまあ命をかけての長官の話ですから、私はそれ以上つかないわけですから、ぜひひとつやってもらいたいと思います。  健康被害補償法制度法制化される以前から産業界費用負担の問題その他を含めて大変反論を展開しておったわけです。そして、法律案が成立しまして実施されましたその直後からこの問題について幾つ見直しを含めた反対キャンペーンが張られてきているのですが、その産業界補償法に対する反対キャンペーン、これの骨組み、彼らの主張、これに対する把握状況なりそれに対する環境庁としての見解、この辺をお聞きしたいと思います。
  23. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げさせていただます。  経団連等補償制度見直しにつきましてパンフレット等々配布して運動を展開いたしておりますことは、私も承知いたしておる次第でございます。その内容につきましては、たとえば、地域指定解除、また曝露要件合理化喫煙患者に対する給付の制限等々が記載されておるような次第でございます。これは経団連のやっておることでございまして、私どもが云々ということは申し上げませんが、環境庁といたしましては、制度主管者といたしまして、今後もやはり健康被害にかかわる被害者の迅速かつ公正な保護を図るため、広く関係方面意見を聞きながら、科学的、合理的な根拠に基づきましていろいろと検討を進めてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  24. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 これも一昨日の毎日新聞報道によりますと、経団連公害健康被害補償制度について基本的にはこれをなくしてしまいたい、こういう立場基本方針を持ってそれを内部文書として明らかにしておるいわゆる「公害健康被害補償法改正問題の今後の取り組み方」、こういう文書が出されておるということが明らかにされておるのですが、環境庁承知をしておるのでしょうか。
  25. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 私は、先ほども先生に御答弁申し上げましたとおり、今後もこの公害健康被害補償法の精神を貫いてまいる所存でございます。御指摘新聞報道の件につきましては、私も新聞を通じ承知いたしておりますが、環境庁といたしましては直接の関係のないことを御理解賜りたいと思います。
  26. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 経団連が別に実施団体でも何でもないんですから、何を言っておったってそれはそれ、環境庁環境庁方針だと、こういう趣旨の御答弁であろうかと思うのですが、少なくともこの公害健康被害補償法観点から言えば、財政負担の問題も含めて、しかも国民一般大衆から見ればやはり加害者集団、こういう立場もあるわけでございまして、そういう状況からいきますと、これは私はきわめて重要な内容を秘めている問題だ、こう思うのです。しかも、今日まで、これまた論議をいたしてまいりましたが、環境庁姿勢の問題として、結局力が強いからどうもそちらの方に揺さぶりをかけられてしまってどんどん姿勢が後退している、こういう状況がございました。今日までの歴史の中にも、たとえばこの法案が成立した直後に環境庁担当官経団連との懇談会に呼ばれて、そこでこの補償法見直しの問題を約束したとかしなかったとか、その当時の報道にもあるわけであります。以来、環境庁自体あるいは中公審自体がこの指定地域解除見直し要件を探ってみるとか、そういう問題にまで発展しているわけでありますから、私はこれはそういう意味合いで他のことであって直接行政にかかわりがないとは言いながら大きく左右される要素を持っておる、こういうふうに指摘せざるを得ない。したがって、今日この問題の審議をするに当たって、時期的に見ましても大変な課題ではないか、こういうふうに言わざるを得ぬのですが、どうでしょうかね、重ねて。
  27. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  先生の御指摘の中で、環境庁の職員が法律が制定されました直後経団連に行っていろいろ話し合いをしたという事実関係につきまして私は存じておりませんが、私といたしましては、毎回繰り返し申し上げておりますように、やはり国民立場に立って環境行政を強力に推進してまいりたいということを重ねて申し上げさしていただきます。
  28. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 事務当局にお聞きをいたしますが、この経団連主張は、要約いたしますと大体三点、これは前々からずっとその筋は踏襲されておると思うのです。  まず一点目は、大気汚染というのはいろいろな規制が行われるようになってそしてだんだん改善されてきておるじゃないか。したがって、環境庁が示しておるいわゆる環境維持のための基準というものが達成されておるのに、指定地域がそのままになってそしてそこの費用分担を特にさせられておるということについて問題があるのじゃないのか。  それからそういうふうな全体としては大気汚染状況がよくなってきておるのに患者数がふえていくということは矛盾があるのじゃないのか。固定発生源をとらえておるけれども、それ以外の要素が強くなってきておるのだから、産業界としての負担の問題はこれまた軽減をすべきじゃないのか。そういう意味からいっても地域指定に矛盾があるのじゃないのか。  さらに三点目の問題としては、この費用負担についてだんだんだんだんと高額になってきている。このままでいくと、患者はふえてくる、その費用負担は年々増加してくる。ことしの場合ですと約八百億ぐらいになるのでしょうか、そういうようなかっこうで年々増加をしてきたのでは、これは産業界の発展のためにきわめてじゃまになるのじゃないのか。  大体この三つがいままで主張をしてきておる産業界主張なんです。これらについてやはり環境庁が的確に答えられる、こういう姿勢が必要だと思うのですが、その辺はいかがなものでしょう。
  29. 本田正

    政府委員(本田正君) 先ほど長官が申し上げましたとおり、私ども制度主管者としていろいろな角度から検討いたしております。その間にいま御指摘経団連等からいろいろな意見があるということも承知いたしております。  ただ、いま三つに分けて御指摘がございましたが、まず地域指定についてどう考えるのかということ、たとえばそういう解除の要望に対してどう考えておるのかという一点目につきましては、やはりこれは法律そのものが指定があれば解除もあり得るという仕組みに実はなっているわけですから、本当の意味で大気汚染が改善され、かつは患者の発生が他の非汚染地域と変わらないというところになれば、これは地域指定解除ということも法律上もあり得るのじゃなかろうかと思っております。ただし、これはあくまでも科学的な根拠というものが必要でございます。ただ、大気の改善があったからといいましても、これは指標が硫黄酸化物でございます。したがいまして、硫黄酸化物だけが下がったからといって大気が改善されたのかどうかということはすこぶる疑問があるわけでございます。そういう観点から地域指定の問題については考えております。  それから二番目の、大気が改善されたのに患者はまだふえているじゃないかという点でございます。これは、公害の四疾病、ぜんそくあるいは慢性気管支炎、そういったものはいわゆる非特異性の疾患であるわけですから、これはどこにでも自然発生率程度は発生するわけでございます。ですから、その非特異性疾患であるということが一つと、それからまた、地域が指定されますと、たとえば四日市みたいに古くから指定があるところ、あるいは最近指定になったところ、そういった指定地域の経過年数によりまして患者の申請状況というものが当然違ってまいるわけでございます。一度にどっと出てまいるわけじゃございませんで、やはり年を追って徐々に出てくるという傾向をたどるがゆえに当然そういった患者さんの申請はあると思うわけです。したがって、大気が改善されたから患者がいるのがおかしいと一こういう説に対しては私はおかしいと存じます。  それから費用負担の点でございます。これは私どもは、お金がかかり過ぎるからどうのという話は実は聞いておらないわけでございます。ただ、むしろ本当に患者さん方を救済するという観点からは、患者のリハビリその他いわゆる保健福祉事業といいますか、そういったことに力を入れるべきじゃないかという御意見は聞いております。したがいまして、これは公害患者というものが一つの割り切りとはいえいるわけでございますから、それにかかる費用というものは当然これはPPPの原則によりまして企業が負担すべきことであるわけでございますから、多寡については私は言えないことじゃないかと存じております。
  30. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 まあ一応の見解が出ているようでありますから、それはそれでぜひその考え方が揺すられないように、曲がっていかないようにきちっとしておいてもらいたいと思います。  なお、つけ加えて言いますと、たとえば幾つかの確かに基準があります。基準がありますが、その基準が生物が生きていける科学的根拠になっているかどうかというと、これは問題があるところですね。いまのppm規制の中で、実際に人間の健康というのが絶対大丈夫という保障はこれまたできないはずであります。そういう状況の中で、今日現に健康が損なわれた人の被害補償をどうやっていくかということについて、それぞれの主張主張で結構でありましょうけれども、少なくともそれを圧力的に大きく行使することについてきわめて問題あり、こういうふうに言わざるを得ない。  なお、今日段階としては、この指定地域は一定の割り切りでありますけれども、私は、その指定地域内におきましても潜在患者あるいは指定地域から外れた隣接地域における類似の症状の問題、こうした観点というのは一体どうなんだろうかということを考えていきますと、きわめてこの制度自体がまだまだ不十分だ、こういうふうに言わざるを得ない。環境庁は、たとえば指定地域内の指定地域にしてからの状況の変化、それから指定地域の周辺地におけるところの状況、こうしたことについて調査をされておるのでしょうか。
  31. 本田正

    政府委員(本田正君) 指定地域にいたしましてからの調査は、現在四十一の指定地域があるわけでございます。全地域について私ども費用でやっているわけじゃございませんが、幾つかの地域については指定地域の追跡調査というのをやっております。患者の動向、それから大気汚染状況等々の追跡調査をやっております。いま御指摘の周辺部はどうかということでございますけれども、これはいわゆる指定地域の指定のための調査というのがございますが、この中公審の答申に発動要件というのが示されておりまして、その大気汚染状況、特にSOxを当然指標にしておるわけでございますが、それの状況が指定要件の中で言います二度以上の程度、つまり〇・〇四から〇・〇五ppm以上の地域であれば、これがこういった指定地域にするための調査の発動をしてよろしいと、こういう御答申をいただいているわけでございます。私どもはそういう観点から当てはめているわけでございますが、現在のところそういう地域がないものですから、現在は予算は計上いたしておりますけれどもいたしておりません。
  32. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 環境庁がこれは中公審にも諮りつついま作業を進めるというふうに聞いているんですが、大体まあ五点ないし六点ぐらいにしぼって検討が進められておるようですが、NOx汚染地域指定要件にするのかどうか、それから曝露要件を見直す必要があるのじゃないか、あるとすればそれは何か、それから地域指定解除要件をやはり明確化すべきじゃないか、それから健康被害の予防、治療のための施策、これについて一体どうあるべきか、自動車にかかわる費用負担のあり方はどうか、こうしたことが検討されているというふうに聞いているのですが、これは事実でしょうか。
  33. 本田正

    政府委員(本田正君) いま、NOxを地域指定要件の中にどう評価するかという問題等を含めて、いま御指摘幾つかの要件につきましては、やはり私ども公害健康被害補償法制度を所管しているわけですから、それの円滑な運用を図るという観点から検討を進めているのは事実でござ います。
  34. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 先ほどお尋ねをしました経団連等が言っている要素と環境庁がいまやっている要素とは全然違うんだと、こういうふうに言い切れますか。
  35. 本田正

    政府委員(本田正君) 申し上げておりますように、いろいろなところからいろいろな意見がございます。たとえばNOxを地域指定要件にというような、主として住民の方々からの意見が多いわけでございます。そういったこともありますし、別に意見をもろに受けてそれに合わせてやっているというわけじゃ決してございません。あくまでもやはり公害健康被害補償法をうまく運用したい。幾つかの先生も御指摘の割り切りに基づいた制度だとおっしゃっていただきましたが、そのとおりでございまして、その割り切りが幾つかあるがゆえになかなかぎくしゃくとして運用しにくい面も現状出ているのは事実でございます。ただそういうふうにうまく運用したい、そういう観点からだけ私どもは検討いたしております。
  36. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 この第一種指定地域の大気汚染、それからその地域以外の全体の大気汚染、この傾向はどうなんですか。
  37. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 全国的な大気汚染状況で申し上げますと、硫黄酸化物につきましてはかなり改善されてきているということでございます。それから窒素酸化物につきましては横ばいでここ数年推移しているということでございます。ただし、五十三年度につきましては五十二年度に比べて大都市の窒素酸化物あるいは硫黄酸化物の環境基準の達成率が悪化しているというのが特徴でございます。
  38. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そういう状況からながめましてこの認定患者は地域指定内ということになるわけですが、患者の数とのかかわりというものはどういうふうにごらんになっておりましょうか。
  39. 本田正

    政府委員(本田正君) 全国四十一の指定地域の中で指定地域なるがゆえに大気の改善というものに努力を地方公共団体も企業もしておりまして下がっております。ただ、先ほど申し上げましたように、患者との関係となりますと、非特異性の疾患であるために一定量の自然発生率、これは明確な数字は現在ございませんけれども、これに見合う分に上載せされた数字というものがあり得るわけです。当然それが減ってこなければおかしいというふうに思うのですけれども、実のところ、各地域ごとに、汚染状況とそれから患者の発生状況、いわゆる認定状況と申した方がよろしいかと存じますが、この間には非常に地域の差がございまして、一律にたとえばSOxが落ちたから患者数が落ちたということは言えないかと思います。非常にばらつきがございます。
  40. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 現に認定患者数で降下傾向にあるのは四日市、それから愛知県ですね、東海市、それから尼崎、統計からいくとそういうことになるのですが、全体のながめからいきますと、特徴的には四日市だけだろうと、こう思うのですね。あとは大体増加傾向にある、こういうことになるわけですが、いまのお話で大体わかるのですが、ずばり申し上げて環境庁としては患者数は多いと見るのでしょうか、少ないと見るのでしょうか。
  41. 本田正

    政府委員(本田正君) なかなかむずかしい御質問でお答えにくいのですが、いま御指摘のように、四日市等は、非常に改善が進んでおるのか、患者数が減っているのは事実でございます。と申しますのは、非特異性の疾患と、それから患者さん方が一度に申請をしないという先ほど申し上げましたような理由幾つかあると思いますが、地域の指定が古いところはまあいわば申請される方方が出尽くしたと申しますか、そういう状況にあるのじゃなかろうか。大体五年たちますと横ばいになると、こういうふうに言われている。ただ、地域指定がその後に行われたようなところですと、やはり五年以内のところもまだあるわけです。したがいまして、いつ地域が指定されたかということに非常に大きくかかってくるわけでございます。一番最後の地域指定は五十三年のたしか六月だったと存じます。少なくとも健康被害補償法ができましてからの患者の増加率の傾向を見てみますと、やはり五十年、五十一年というのは非常に増加しております。そのころは地域指定も行われてきたわけでございます。おいおいと伸び率というものが下がってまいりまして、最近ではたしか一四%ぐらいに落ちていると思います、かつては六十数%あったのが。つまり、非常に患者の増加率というものは横ばいに近づきつつある、増加率が低下しつつあると、こういうふうなことでございます。現在の患者数は約七万五千名でございます。これが御質問の大体どの辺までいくのか、あるいはそれが多いのか少ないのかということになりますと、そういう傾向といいますか、それから地域指定の時期、そういったものを勘案しなくてはなかなか正確に言えないということが一つと、それからいかにせんやはり非特異性の疾病であるためになかなかそういった推計ができかねますので、その辺ひとつお含みおきいただき、御理解賜わりたいと存じます。
  42. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうしますと、たとえばいま話がありましたように、五十三年の六月に東大阪あるいは八尾、この地域指定が行われた。いわゆる地域指定がおくれているところについては、潜在患者が相当数あるだろう、これから認定申請作業が行われてそしてまだふえてくるのじゃないか、こういうことが推定されるわけですね。そうしますと、現在四十一の一種地域指定があるわけですが、その地域指定がさらに拡大していく、また、していかなければ本当の救済にならない、こういうふうに受けとめていいのでしょうか。
  43. 本田正

    政府委員(本田正君) 御指摘の確かに新しいところでは多い。ただ、まあ傾向はそうでございますが、例外もございます。古い地域指定でも患者がふえているというところもございます。私どもは、現在四十一地域と申し上げましたけれども、いまの地域指定要件に合うところが全国にあるかないか、これは非常に大事なことなので毎年チェックをいたしております。ところが、現在の全国の大気汚染状況から見ますと、地域指定要件に合うところがないわけでございます。将来のことはわかりませんけれども、少なくとも現状では地域指定要件を満たすところがないので地域指定が最近行われていないと、こういう状況でございます。もっと積極的に地域指定をすべきじゃないかという御意見だろうと存じますけれども、やはり地域指定というのは中公審で示していただいていますような指定要件に合うかどうかということで判断するわけでございますので、御理解賜わりたいと存じます。
  44. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 理解せいと言われましても、現実問題としては曝露要件その他がなかなかはっきりしない。それから一つは、基準値から見ていって通常評価をしてみて他の指定地域と比較をしたときにそこまでの悪化条件がない。こういう立場からいくと指定地域になりませんね、そうでしょう。ところが、現実問題としてたとえば指定地域ということを考えてみますと、先ほども割り切りというふうに言いましたが、水と空気ですから本来線引きのできない問題ですね。線引きのできないものを地域的に線を引っ張ってそこでの割り切りをしているわけでありますから、その隣接地域のところは濃度が低いか弱いか、そのところも明確でないけれども、まあまあ患者数の発生の仕方だとか、あるいは原因と思われるようないわゆる濃度の測定結果だとか、こうした問題から総合していってみて一定の割り切りをしているわけです。ところが、人間は、指定地域内の人とその隣接地域の人と、同じような症状、同じような条件の健康を損ねた形というものが生まれてくるわけですね。そういう形について、健康被害補償法というのは、一部の人に指定されたところにはぴしっといくけれども、そうでないところについては本来なら一体どうあるべきなのかという観点で常に見直していかないと、私はそこに大きな住民の側から見た不公平というものが存在してくると思うんです。割り切りですから、どこかに救済される者と救済されない者と出てくることはわかるんですがね。少なくとも今日段階この法が出発してまだ日が浅い。先ほども言いますように、追加したところでは五十三年からわずか一年しかたっていないと、こういう状況になってまいりますし、そういう意味合いからいきますと、もっともりとこの指定地域というのは今日の大気状況からいってふえるべきではないのかというこういう発想が環境庁の方にないといけない、私はこういうふうに思うのですが、その辺はいかがでしょう。
  45. 本田正

    政府委員(本田正君) 申し上げましたように、地域指定をするかしないかということは、地域指定の指定要件に合うか合わないかということで判断せざるを得ないわけです。確かに、いまおっしゃるように地域指定というのは割り切りでございまして、その地域指定というところは指定された地域は非常に空気が悪いところがあって、したがってそこの中で発生した非特異性の疾患である疾病はこれは公害病とみなすと、こういう割り切りでございます。一方、外に出ますと、これが空気がきれいであるという割り切りであるわけでございます。したがって、公害患者は出ないと。これは非常に不合理といえば不合理でございますけれども、これが救済法のたくさんある割り切りの中の一つだと存じます。地域指定をしましたところは特にやはり公害患者が出るわけですから、これは大気汚染の改善というものに努力をするわけで、かつての危機的状態を脱しまして非常に大気汚染状況は改善されているわけでございます。したがって、いまのお説になりますと、むしろ開くというよりも狭めていくという、汚染状況は少なくともそういうふうに相なってくるわけでございます。ですから、なかなかその辺むずかしいところだと存じますけれども、要はそういうふうに指定要件というものがある以上、それに合っているかいないかということで判断せざるを得ないと存じております。
  46. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 その大気汚染状況、それから指定要件、これとの関係も大変矛盾があるわけですね、この被害補償法観点からいくとすると。先ほども言っていますように、何でもってやるかと言えば、硫黄酸化物でしょう。そうすると、窒素酸化物の観点から見ると大気汚染状況というのはまだまだ進行している、こうなっておるわけですね。これについての規制も努力はしているものの横ばい、さらには悪化の傾向にある。しかも、最近の複合汚染状況で、都市にいくと、都市型の大気そのものについては非常に悪化の傾向にある、こういう状況になります。ところが、指定地域の観点からいくと、硫黄酸化物ですからいわゆる固定発生源が集中してある、こういうふうなところが対象になりがちになる。明らかな矛盾ですね、そういう意味からいきますと。そういう矛盾点も持ちながら今日の補償制度の問題ですから、改善をしていってそこの地域はよくなっていったんだからそれは指定地域が縮小されるのだという論法は今日の現状からいくと私は現実に照らして全く逆行じゃないのかと、こう言わざるを得ぬのですが、その辺はいかがですかな。
  47. 本田正

    政府委員(本田正君) 改善されたから指定地域を当然縮小すべきだということは、これは私は先生の拡張に対しましてそういうふうに表現したのであって、決して縮小に相努めるのだということじゃないのでおわび申し上げます。  おっしゃるとおり、SOxがいま地域指定の指定要件であるわけでございます。SOxだけでいいのかと、こういう議論は当然あるわけです。大気汚染が進行しているとは私ども思っておりませんが、と申しますのは、SOxは確かに下がってきている、NOxは横ばいだと先ほど大気保全局長もおっしゃった、というようなことで、少なくともSOxが下がった分大気が改善されていると、こういうふうに解してはいるのですけれども、NOxのいろいろな研究等を見てみますと、NOxによる現状程度の汚染ではNOxによる健康被害との関係はわからないと、こういう段階であるわけであります。ですけれども、やはりSOxだけを指定要件の物差しにするということは果たしてどうだろうかということは当然思っております。したがいまして、NOxをどういうふうに指定要件の中で評価すべきか、取り入れるとか取り入れぬのはそれは後にすることですが、どういうふうにNOxを評価したらいいか、少なくとも公害健康被害補償法上どう評価すべきかということは、これは当然私ども検討すべきことだと存じております。
  48. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 確かに、たとえば私の四日市の前の経験からいきましても、硫酸の雨が降ったり、そんなようなことというのはなくなったのですから、そんなことをやっていたら大変なんですからね。そのためにいろいろ今日まで前進を続けてきたのですから、その意味では集中して悪いところがよくなった、これはそのとおりでしょう。しかし、全体からながめていきますと、これはまだまだ大気状況というのは、たとえば人が安心して住んでいける、健康を損なわないでいける、しかも、もともと人間にはきわめて頑健な人もおれば病弱な人もあるわけですから、そういう体の弱いような方々でもあるいは小児でも安心して生きていけるような形にまでやはり追求をせざるを得ない、これが基礎にあるわけですからね。そういう立場からいきますと、今日の指定地域の状況というのはまだまだ不十分じゃないのか、完全な公害健康被害の救済に当たっていない。だから、この法の趣旨から言って、公害健康被害補償が万全にその任務を果たしていけるような立場にまで環境庁としては追求をしていく責任があるのじゃないのか、こういう観点を申し上げておるわけですから、ぜひその辺は踏まえて執行に当たってもらわなければならぬと、こう思うのであります。  そこで、一種地域の対象疾病ですが、大むね慢性気管支炎、それから気管支ぜんそく、ぜんそく性気管支炎、それから肺気腫並びにこれらの続発症、こういうふうになっておるのですが、これも従来から論議をしてまいりましたが、目、鼻、口の被害、これは対象疾患として含めるように検討はされてきたのでしょうか。あるいは、検討されてきたとすれば、それはどういう今日段階での結論をお持ちなのか、またさらに、これからこの目、鼻、のどの被害の問題についてはどういうふうな方向で対処されようとしているのか、この説明をいただきたい。
  49. 本田正

    政府委員(本田正君) 現在の四疾病に限らず、いろいろな症状あるいは疾病が大気汚染関係があるのじゃないかという観点から幾つかの調査をしております。私どもも勉強いたしております。ただ、目とか鼻とか耳とかというところに来る症状というのは、急性症状で一過性のものが非常に多いわけでございます。それからそれの診断をいたします場合に、たとえば指定疾病である気管支ぜんそくとか慢性気管支炎みたいにきちっとしたある程度の診断基準というものも立てにくい状況にあるわけです。それから、いろいろ調査自体にもやり方が非常にむずかしい面がある、定義というものがつかみにくい、しかも一過性、急性であるということからやりにくい、そういった面がございますけれども、検討した結果、現在ではそういうふうに思っております。したがいまして、これを指定疾病に直ちに取り入れるということは非常にむずかしい状況にあるわけでございます。しかしながら、さらに私ども今後そういった調査といいますか、いろいろなところでいろいろな調査がされていることも含めまして、よくまた勉強していく必要があるのじゃなかろうかと、こういうふうに存じております。
  50. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 光化学スモッグ症状のように目がチカチカする、いわゆる一過性のものが多い。これは確かにその面では言えると思う。しかし、それが繰り返し繰り返し行われるとしますと、そのことに起因していわゆる慢性の眼科疾患、鼻の疾患あるいはのど、まあその場合に、先ほどのもとのぜんそく性のもの、こういうふうに変化をしていくところもあるでしょう。しかし、少なくともこれらについてさらに私は早急に結論の出るような方向で熱意を持って検討をやってもらいたいと、こう思うのですが見通しはありますか。
  51. 本田正

    政府委員(本田正君) これは、大気汚染にかかわりますいろいろな症状、あるいは症候群と言った方がいいかもしれませんが、そういったものについては調査し、私ども自身がよく勉強する必要は大いにあると存じております。今後ともできるだけまた検討していきたいと思っております。
  52. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 浮遊粒子状物質の問題に移りますが、これの環境基準の達成状況はどうなっていますか。
  53. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 浮遊粒子状物質につきましての環境基準の達成率と申しますのは、昭和五十三年度におきまして全国に約二百ヵ所の測定局がございますが、環境基準の達成率は二二・四%でございます。
  54. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 五十三年度に二百一局ですね。二百一局中二二・四%、四十五局が達成しているだけであります。それから自動車排ガス測定局が八局ありますね。これは達成率一二・五%、一局だけが達成しておる、こういう形になっていると思うんですね。そうしますと、とりわけ自動車排ガス測定局の達成率は八局中一局というのですから、これはまあ大変悪いというふうに言わざるを得ません。これらの測定結果から見まして、たとえば二百一局の測定局の状況等からいきまして、いわゆる発生源別の汚染に対する寄与度といいますか、この辺は一体どうなんでしょうか。
  55. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 約二百局の全般的な測定結果に対する発生源別の汚染度寄与と申しますか、そういうものはまだ実態が現在までわからない次第でございまして、ただ、自動車の方につきましては、これは沿道に置いてありますので、自動車から排出される黒煙がまずございます。それからブレーキ等によって発生する微粒子がございます。あるいはまたタイヤの摩耗、それから走行に伴って舞い上がります砂じんと申しますか、粉じんと申しますか、そういうものの十ミクロン以下のものはみんなここにひっかかってくるわけでございますが、これらの寄与度につきましてはまだ分析したことがございません。
  56. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 このSSの関係というのは今日まで幾つかの観点論議をしてきているわけですね。したがって、これは目に見えるものも多いわけですから、そうなりますと、大気汚染観点から見てやはりどの程度の影響があるのか、こういうものは当然調査をされるべきだと思うのですが、調査にかかる気持ちはありませんか。
  57. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) この自動車測定局の問題について申しますと、私ども一番重要視しているのは黒煙の問題でございます。この黒煙につきましては当然中にベンツピレンという発がん物質があるという非常に大きな問題があるわけでございますが、これにつきましては、来年度から健康影響調査あるいは排出の実態調査を行うということで、五十五年度予算案の中に四千二百万円を計上してございまして、これはひとつこれから大急ぎでやっていこうと、こういうことでございます。  それからもう一つ申しおくれましたけれども、浮遊粒子状物質環境基準の非常に悪いということにつきましては、当初私どもがこの基準をつくったときに予想もしていなかったような自然現象、がございます。たとえば海の近くで非常にこれが多いということになりますと海塩というような問題、それから東北地方で見られます野焼き、こういうものがどうもいろいろ影響してくるのじゃないだろうかということで、この点につきましては今後とも調査研究を進めていこうということで、こういうものを取り入れますとまた環境基準の見直しという問題も当然起こってまいるわけでございますが、今後私ども積極的にこの点は取り組んでいきたいと考えております。
  58. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そうしますと、その調査の中には当然健康への影響の問題、これらも加わってくると思うのですが、そう理解していいわけですか。
  59. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) とりあえず五十五年度からは、ディーゼル車が増加することに伴いまして当然こういうものがふえてまいりますので、この黒煙の健康影響調査というところから着手をしたいと考えております。
  60. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 大型車、バス、トラック、ディーゼル、これの排出ガス規制について、たとえば今日まで自動車の排出ガスということで規制の年次を設けて一段、二段やってきましたね。それらにかかわる現在の規制の状況、それからこれから強化をしていくというのはまだ方針は出ていないのでしょうか。
  61. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 自動車の排ガス規制につきましては、まず乗用車が五十三年度規制で世界一厳しいNOxの規制をしてございますが、それから昨年告示をいたしまして中量軽量ガソリン車、これは五十六年度規制で始まるわけでございますが、あと重量ガソリン車、ディーゼル車、これはいずれも大きな問題のあるものばかり残されておるわけでございまして、これにつきましてはもうすでに目標値が設定されておりますので、しかもこれは五十年代中に実施すると、こういうことになっておりますけれども、最近の非常に大型車の増加に伴いまして少しでも早くやらなければいかぬじゃないかということで、五十年代中なんということは言わずに、できるだけ二年でも三年でも早くということでいま私ども技術評価を急いでいる段階でございます。
  62. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 技術的にそれが規制ができないと、こういうふうにいまの答弁を聞いていいんですか。
  63. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 目標値につきましては現在の技術評価検討会のまだ結論は出ておりませんけれども、経過を聞いていますと、可能であるというふうに私は理解しております。
  64. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 目標値はいいのですが、そうすると、それを何年にどれだけというふうにきちっとした数字はいま出せないと、こういうことでございますか。
  65. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) これにつきましては第二段階規制の目標値がすでに中公審から御答申をいただいておるわけでございまして、その第二段階規制が実施可能かどうかということでいまいろいろな車種について検討しておるわけですが、この第二段階規制の目標値につきましては、もう一年でも二年でも早く実施することがすでに可能になってきたのではないかというふうに私どもは判断しております。この最終的な結論は、四月で技術評価が終わる予定ですので、それを待ちますと大体いつごろと、こういう目鼻がついてくるだろうと思います。
  66. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 くどいようですが、そうすると、四月の段階には大体数値として明らかになる、年次、数値が明らかになる、こういうことでいいんですか。
  67. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 四月に技術評価が終わった段階で、およそ何年目標と、こういう年度の目標まで明らかにしたいと考えております。
  68. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 総合エネルギー調査会の中間報告によりますと、いわゆるエネルギー転換による石炭の消費量、これは前の委員会で沓脱先生が少しお触れになっておりましたが、昭和七十年には現在の約十倍、九千五百トン計画になりますね。そうしますと、これに伴う窒素酸化物、同時に浮遊粉じん、これらの動向予測、それから粉じん、ばいじん対策、こうしたものは一体どういうことになりますか。
  69. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 御指摘の石炭を利用した場合に、石油に比較しまして一般的に言いまして硫黄酸化物、窒素酸化物、それからばいじん、いずれもその排出量はかなり多くなってくるわけでございますが、たとえば排ガス処理を行わない場合について申し上げますと、石炭や石油の種類あるいはその燃焼条件によってかなり差がございますが、強いて平均的に言えと、こういうことになりますと、石炭は石油に比べまして硫黄酸化物で五倍、それから窒素酸化物で三倍、それからばいじんで二百倍と、こういう数字が出てくるわけでございますが、その見通しでございますが、現在ほぼ実用可能と考えられます最新技術がかなり最近進歩してまいりまして、こういうものを導入した場合、石炭を使いましてもこれらの汚染物質の排出レベルをかなり低下させ得るというふうな見通しは私ども持っております。
  70. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 大変な課題でして、これは技術開発その他と並行して対処されていく、こういう課題になろうと思いますね。しかし、現実問題、今日の科学の進歩状況その他から判断をしてみて、大変なことになることだけは事実です。そうなりますと、今日までの大気についての基準の設定の仕方自体が相当大きく変化しなければならぬ、こういうことになろうと思うんですね。しかも、それと健康に与える評価の問題、こうしたことがきちっと組み合わされていかなければならぬと、こうなりますね。そこで産業界との調和の問題等が取りざたをされてくる一つの要素になるんですが、そうじゃなくて、私はそういうような事態を踏まえるだけに、いわゆる人の健康に重点を置きつつ、そこに規制値の見直し、そうしたものが厳然と行われていかないといかぬのではないか、こういう観点指摘をするのですが、その辺の見解を承っておきたいと、こう思います。
  71. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) これにつきましては、石炭利用に伴います大気環境への影響ということで現在すでにいろいろな資料の整理を始めておるわけでございますが、五十五年度から本格的に調査を実施したいということで、五十五年度の予算案にもかなりな予算額が組まれておるわけでございますが、また、健康に与える影響というお話でございますが、これはもう環境基準は健康保全のために必要な基準でございますので、私ども変えるつもりはございません。ただ、先生指摘のように、いろいろ問題は出てくる、したがって排出基準等はこれから見直しをしていかなければならないのじゃないだろうかと。これにつきましては、今年度からお願いしております予算の中で調査をしながら検討してまいりたいというふうに考えております。
  72. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 大気汚染構造に対するところの変化があっても、いわゆる健康にかかわる基準についてはこれは絶対に緩めていかない、こういう答弁であったというふうに理解していいですね。
  73. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 大気汚染にかかわります環境基準と申しますのは、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準ということで設定されていることでございますから、これは今後とも従来と同じように環境基準の維持達成に向けて必要な施策をやっていくというふうに御理解いただきたいと思います。
  74. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 障害補償費の関係なんですが、これは男女の格差がありますね。どうなっていますか。
  75. 本田正

    政府委員(本田正君) 公害患者に対する補償の中の一つにいま御指摘の障害補償費というのがございます。これはもちろん男女別にそれから年齢階級別に金額が決められておりますので、男女の格差がございます。
  76. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 男女格差はなぜつけているのですか。
  77. 本田正

    政府委員(本田正君) これも実は中公審の御意見によってそのように設定させていただいているわけでございますが、この計算というのは労働省で出しておられる全国の労働者の賃金構造基本統計調査、これによっているわけです。もとはそこによっておりまして、そして四日市裁判の判決、それから各種のたとえば労災等の社会保険の給付水準、そういったものを勘案して、これは先生御存じの八〇%ラインで決まっているわけです。申し上げましたような賃金構造基本統計調査をもとにして、もちろんこの調査報告は前年度の分しかわかりませんので、一定の計算方式によりまして次年度分を推計して出すわけでございます。もとがそういう調査でございますために、これは男女別、それから年齢階級別の表でございます。そういったものを基礎に設定しているわけでございます。
  78. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 そのことに矛盾を感じませんか。
  79. 本田正

    政府委員(本田正君) いわゆるこの制度そのものが民事責任を踏まえまして損害のてん補を行うというこういった制度でございますので、制度の性格上やむを得ないと存じております。
  80. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私はそんなところでやむを得ないといって割り切ってもらう精神状況がおかしいと思う。確かに法のたてまえからいきますと、根拠がないから、一つの統計数字でもってそこから引っ張ってくる、こうしているわけですね。それはわかりますよ。しかし、その統計数字というのは一体何ですか。いま現実にそれぞれ民間を含めまして実際の賃金状態はどうなっているのだろうか、こういうやつの集計でしょう、日本の国全体にまだ男女格差が現実にあるということの証明じゃありませんか。これは憲法に違反していますよ。少なくとも国が制度的に補償しよう、こういう制度の中に採用すべき数字の問題じゃないでしょう。私はそこの姿勢の問題を聞いているのです。いかがですか。
  81. 本田正

    政府委員(本田正君) 民事責任を踏まえて云々と申し上げましたけれども、逸失利益をどう見るかということにこの制度の性格がなっているわけでございます。逸失利益ということになりますと、やはり賃金構造基本統計調査によって男女別年齢階級別の基準を設けざるを得ない、こういうふうに思うわけでございます。
  82. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 男の生活は少しはでだから金がたくさん要る、女の人の生活はつつましいから金は要らない、こういうことなんでしょうかね。私は、少なくとも被害補償という観点からいって、健康が損なわれてそのことによって仕事ができない、療養しなきゃならない、こういうような状況に対するところの補償の問題でなぜ男女格差がつくんですか。しかも、男女平等をうたい、そのことを率先して実行していかなきゃならぬというそういう立場の国の制度の問題としてそのことを公然と認めて、それで矛盾がないという神経自体私はどうかと思うのですが、いかがですか。
  83. 本田正

    政府委員(本田正君) この制度が労働力の喪失をどうてん補していくかという観点から見ているわけでございまして、そうなりますと賃金構造に現状よらざるを得ない。いろいろ労働力の、これは裁判等でも指摘されておりますが、逸失利益といいますか、そういった民事責任を踏まえた損害のてん補を行うという制度であるわけですから、そういうふうに割り切らざるを得ない、こういうようなことでございます。
  84. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 これはくどいようですが割り切れませんよ。割り切れないんです。だから、今日日本の男女の不平等が現実に存在するところのそれを基礎にして集計していったものを数字に当てはめれば、当然これは差別が出るのはあたりまえの話ですね。だから、現実に男女の差別構造の上に今日あるんだから、実損を見ていくというのはその差別の上に立っていいじゃないかと、こういう論法というのは、先ほど言いましたように、少なくとも国という立場行政をやっていこうとする姿勢からいったらきわめて矛盾が多いのじゃないのでしょうか。矛盾が多いけれども、現実その矛盾をどういうふうにやっていくかについて少し考えさしてくれという話ならわからぬでもないんですよ。これは、長官、どうでしょうか。
  85. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げさしていただきます。  先ほど本田部長からるる御答弁申し上げましたとおり、先生ひとつ経緯のあることにつきましては御理解を賜りたいのでございますが、一般論といたしまして格差のあることにつきましては矛盾を感じます。
  86. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 まあ予算の集中審議の中でも女性の権利問題が論議されますから、私はその辺の関連にも譲っておきたいと思いますけれども、そういう矛盾をなくしていくための努力、ぜひ配慮をして取り組んでもらいたいと思います。  次に、公害保健福祉事業なんですが、この主な内容について現況をひとつ説明をいただきたいのですが。
  87. 本田正

    政府委員(本田正君) 保健福祉事業につきましては、大きく分けましてリハビリテーション事業とそれから転地療養事業、それから療養給付の貸し付けと申しますか、そういったもの、それから家庭におきますところの療養指導、そういった大きな項目から成り立っております。
  88. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 一つ予防事業がはずれたようですが……。
  89. 本田正

    政府委員(本田正君) 家庭療養指導事業というものに含めて申し上げたつもりでございまして、失礼いたしました。保健婦等を使いました予防事業というものも実施いたしております。失礼申し上げました。
  90. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 それらの事業を進めるに当たって、患者あるいは住民といいますか、そういう人たちの要求や希望、こうしたものをくみ取る制度的な仕組みというのはあるんでしょうか。
  91. 本田正

    政府委員(本田正君) 制度的なそういった仕組みというのはございません。しかしながら、各自治体がこれは責任を持って行う制度でございまして、これに対して国の方も補助をする、そういう制度でございますけれども、いろいろ意見があるということは承知いたしております。事業を通じまして、たとえば転地療養事業等につきましても、六泊七日でございますか、はちょっと長過ぎる、したがってもっと短期間なら参加できるのだけれども長過ぎるがために参加できないとか、いろいろ意見がある。そういったことは各実施事業、実際に患者さん方を相手にやっているわけでございますから、自治体がそういった機会を通じましていろいろな意見というものを吸収するチャンスはございますが、制度としてあるかと言われますと、制度としてはそういうのは特に設けていないと言わざるを得ないと存じます。
  92. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 実施主体の、大体県ですが、県あるいは市、そういうところへそういう住民の要求なり希望なりというものを常に反映し、その意向を踏まえて実施できるものをしていこう、こういう形は仕組みとしてつくっていく必要があるのじゃないのでしょうか。
  93. 本田正

    政府委員(本田正君) 全県市じゃないと存じますが、いわゆる相談窓口というものを置いているところがございます。御指摘のように、制度といえばもちろんこれが制度になるかと思います。こういったものが全地域に普及するように指導してまいりたいと存じます。
  94. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 これは重大な問題でして、行政の判断で行政の計画に基づて押しつけてやっていく、こういう形じゃなくて、個別には話をしていますが、しかし患者同士は幾つかそのことについての不満を持っているわけです。また、私が住民と言っておりますのは、一つの家族の中で認定患者一人、あと認定されていない人々がおる、こういう家族構成、さらには認定患者のところの付近の認定されていない人々、こういう人たちがおるわけですから、そういう意味ではそれらの人を含めて広く意見を集約しまして、そして健康を回復するために一体どういうようなことがいいんだろうか。これはやはり患者の立場を大いに生かしていきませんと、あるいは患者の家族あるいは友だち等の意見を生かしていきませんと、私は本当の保健福祉事業というものは生まれてこないと思うのです。まだまだ手探りの状況にあろうと思うんです。確かに、先ほど言われましたように、リハビリの問題、あるいは転地療養の問題、あるいは家庭療養具の問題、これは空気清浄器その他が大体代表的なものですね。しかし、そのほかにもいろいろあるんです、健康回復のためには。そうしたものをどこまでが取り入れられるかということは別といたしまして、少なくとも意見を十分に尊重して、そしてそれを具体的実行の中に行政としては入れていくんだと、こういうことを率先して持っていかなきゃならぬと思うのです。ぜひそういうものがそれぞれの指定地域の中で具体的に行われていくように環境庁としては指導をし、そうして地域に合った幾つかの仕組みというのが生まれてくると思うので、そういうものをなるべく制度化して生かしていくという課題を達成していってもらいたいと思うのです。よろしいでしょうか。
  95. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げます。  環境庁国民生活に密着した行政をあずかっておる役所でございますので、先生の御意見も踏まえまして関係都府県に対しましても強く行政指導を行ってまいりたいと思います。
  96. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 最後の問題になりますが、国立水俣病研究センターですね。これはまあ当初の研究センター建設の段階の計画からずいぶん後退してしまいましたね。これはもう前にも私委員会意見を申し上げたことがあるのですが、ことしはこれらについても強化をしていこうと、こういう方針が提起されておるようでありますが、今後どのように水俣病研究センターの中に機能を備えていこうするのか、この辺の考え方をひとつ明らかにしてもらいたい。  それから前々からここに治療体制をあわせて持て、これはもう地元の強い要求だったわけですね。これはいろいろな理由でなかなかその意見が入れられておりません。私どもも、そこにきちっと治療体制を備えるべきじゃないのか、そうしないと住民からそっぽを向かれた研究センターになりますよと。現実にいまそんなところですね。そっぽを向かれている状況です。これでその方針を変えないで幾ら強化していこうと言ったって、私は強化にならないと思うんですがね。その辺はどんなふうにお考えになっているのでしょうか。
  97. 本田正

    政府委員(本田正君) 水俣病研究センターが一昨年の十月発足いたしまして、開所式を去年の夏に行いまして、その間一番大事なことは研究スタッフを確保することであるということで、熊本大学を中心に現在まで努力をいろいろ続けてまいったわけでございますが、なかなか医師の確保というのがむずかしゅうございまして、現状は非常勤の医師一名を臨床部の内科に置くにとどまっております。その他基礎部門では、これも数は少のうございますが、所長を含めまして三名の技術員で基礎研究に着手いたしております。いま御指摘のことは、恐らく、この研究センターは臨床部とそれから基礎研究部、疫学部とあるわけでございますが、臨床部の強化のことをおっしゃっていただいていると存じます。そういうことでスタッフはなかなか集まらずに苦慮いたしておりますけれども、今後とも努力してまいります。ただ、将来これをどういうふうに展開するのかということは、発足して間もないし、スタッフ集めにきゅうきゅうとしておる、こういう現状でございますので、いわば一次計画をどうやって完成し、達成するかという段階でございます。さらに、これがある程度整備されますならば、二次、三次的な進展になろうかと存ずるわけでございます。現状はそういうことでございます。  それから治療体制をどうするのかという御指摘でございます。これは研究センターにおきますところの臨床部というのはあくまでも治療方法の開発研究でございます。神経内科的な疾患でございますので、治療方法というものが非常にむずかしいと言われておりますが、何とかそれは患者のために一刻も早く治療を、完治しないまでも緩解する、よくなるという方法を求めての臨床部であるわけでございます。したがって、入院ベッド等は現在置いておりません。ただ、一般の主治医の御推薦によりまして一日通所と申しますか、リハビリテーションを主にいたしました一日通所施設を持っておるにとどまっているわけでございます。何せスタッフがまだそういう状況でございますので、その部門での機能は働いておりませんけれども、できるだけ早く機能するようにおいおい努力いたしていきたいと考えております。
  98. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 これは、長官ね、一遍現地へ行かれて、研究センターをごらんになって、そしてしかもそこの利用状況、活用状況、それからこのセンターに対する住民の意見、こうしたものをやはりお聞きになって、そうしてきちっとした長期方針を立ててもらいたい、私はこういうふうに思うのです。今日までもここで論議をしましたけれども、しました問題点というのは、どうも環境庁はがんこなのか、そういう意味合いではなかなか受け入れてもらえない。一つの分野があるんでしょうから、わからぬでもないのですが、私はやはりもう少し実態に合った、せっかくのお金を注ぎ込んでやっていくのですから、そのことの方針を貫きつつ、住民の人々からなるほどいい施設をつくってもらったという立場の感想が出るようなものにしないといかぬのじゃないかと思うのです。きょうはもう多くを言いません。ぜひひとつその辺を約束してもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  99. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  先生、ちょっと泣き言を言うみたいで恐縮なんですが、本田部長も、一生懸命、熊本医大へ行ったり、あちらこちら飛び歩いてお医者さんの確保に血眼になって努力はいたしておるのでございますが、なかなかお医者さんの確保ができないというのが実態でございます。今後とも先生の御意見も踏まえて内容の充実に努力をいたしてまいりたいと思います。また、私もいずれ機会を得まして現地も訪問さしていただきたいと考えております。
  100. 小山一平

    委員長小山一平君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  101. 小山一平

    委員長小山一平君) ただいまから公害及び交通安全対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 海上保安庁、来ていらっしゃいますか。−まず最初に海上保安庁にお伺いしますが、先ほどもこの問題はありましたですけれども重ねて御質問申し上げます。  最近の新聞報道によりますと、御承知のように、出光タンカー徳山丸の問題、これがにぎわしておるわけですけれども、この徳山丸がドック入りをするということでもって相生港へ回航する途中に土佐沖で大量の油性スラッジを投棄したと伝えられておりますけれども、現在までに海上保安庁把握した事実関係について御説明願いたいと思いますが。
  103. 野呂隆

    説明員野呂隆君) お答えいたします。  出光タンカー所属のタンカー徳山丸十三万六千総トンでございますが、これが本年の二月二十九日から三月六日までの間高知沖においてタンククリーニングを行いましたが、そのタンククーニングより発生いたしましたスラッジ海洋投棄したという情報海上保安庁は三月二十一日に入手いたしております。海上保安庁といたしましては、直ちに海洋汚染及び海上災害防止に関する法律違反事件といたしまして関係保安部署によって捜査を進めておる状況でございます。現在、捜査は、神戸海上保安部中心といたしまして、徳山、姫路等の海上保安部署が協力いたしまして実施いたしておりまして、去る三月二十四日には徳山丸、それからタンククリーニングを請け負いました内外産業株式会社、それから作業員の配乗を行いました山水商事株式会社等を捜索いたしまして証拠品の押収を行うとともに、徳山丸の検証も実施いたしまして関係者事情聴取及び取り調べを行うなど、事犯の解明に努めております。
  104. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうすると、その取り調べはまだかかったばかりであって余りあなたの方では把握しておらないわけですね。この徳山丸の場合ですけれども、こういった場合、いままでも非常に残念ながらいろいろと前例があるわけですけれども、このようないわゆる油性スラッジの発生量、これは量が多い少ないはいろいろありますが、二十五万トンの船ですから相当量が大量あったと思います、が、一般にどのくらいのスラッジの量というものが出るものかということと、それから今度のような不法投棄でなくて正規の処理方法というものをひとつ簡単に御説明願いたいと思います。
  105. 野呂隆

    説明員野呂隆君) まず、徳山丸について申し上げます。  徳山丸スラッジの発生量については、現在捜査中でありましてまだわかっておりません。徳山丸スラッジ処理方法につきましては、廃油処理業者であります尾道市の神原タンククリーニング株式会社、これに引き渡されまして同社において焼却処分をされております。その処分量は約九十トンというふうになっております。  それから大型タンカーから発生するスラッジの量の推定でございますが、非常に条件が種々ございまして幅があるわけでございますが、昭和五十一年と五十二年の二年間社団法人の日本海難防止協会で実施いたしましたタンカーの廃油発生量に対する調査研究、これの結果によりますと、タンカータンク内に残留するスラッジ量というものは、輸送した油の種類、それからタンクの洗浄条件、これは原油洗浄とか海水による洗浄とかございます。それからタンクの構造、それからタンカーが出渠した後の経過時間などによって左右されまして船ごとに相当大幅に異なっておりますが、十六隻、二十六例の実船調査の結果を申し上げますと、陸揚げスラッジ量は船舶の載貨重量トン数比の〇・〇〇五%から〇・二四%の間と、こういうふうになっております。
  106. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 次にもう一つ伺いますが、この種の違法行為に対する適用法令並びに罰則についてお伺いします。
  107. 野呂隆

    説明員野呂隆君) 罰則について申し上げます。  この種の事犯すなわち油の故意排出の適用法令といたしましては海洋汚染及び海上災害防止に関する法律第四条第一項がございまして、同条に違反いたしますと、その罰則としましては同法の第五十五条第一項第一号によりまして六ヵ月以下の懲役または二十万円以下の罰金に処せられることになっております。また、行為者を使っております法人につきましては、同法第五十九条の両罰規定によりまして三十万円以下の罰金が科されることになっております。
  108. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 最近の船舶からの油の排出規定違反件数についてどのような実態になっているか、簡単にお知らせ願いたい。
  109. 野呂隆

    説明員野呂隆君) 海上保安庁海洋汚染及び海上災害防止に関する法律第四条第一項違反、すなわち船舶からの油の排出の禁止規定違反として送致いたしました件数は、昭和五十二年が四百九十八件、昭和五十三年が五百九十三件、昨年の昭和五十四年は四百七十七件となっております。
  110. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 大分件数は年間通じて多いわけですが、このような違反事件に対して、いわゆる油を含む廃棄物等の海上公害の事犯につきましての取り締まりをさらに強化すべきであると思いまするが、これについて海上保安庁の方では何かこうしたらいいじゃないかとかいろいろな策があったらばお知らせ願いたいと思います。
  111. 野呂隆

    説明員野呂隆君) 今回の徳山丸事件で問題となりましたように、このスラッジの違法投棄など、特に悪質な海洋汚染が行われるおそれの多い入渠前のタンカークリーニング実施するタンカー、これに重点を置きましてスラッジ陸揚げ量の追跡調査、あるいは船舶の立ち入り検査、こういうものを今後とも強化いたしてまいりたいと、こういうふうに考えております。また、これらのタンカーが入渠前にクリーニング実施いたします頻度の高い海域といたしましては四国沖でございますけれども、現在もやっておりますが、航空機並びに巡視船による監視取り締まり体制をさらに強化してまいりたいと、かように考えております。
  112. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 ただいま御指摘のように、ドッグが瀬戸内海に密集しているせいもありまして、大体入渠が瀬戸内海が多いということになりますと、いまの廃棄物の投棄が土佐沖で行われるということになりまして、土佐沖におきます漁業関係その他に非常な公害を及ぼすことになります。それこそ、土佐沖の有名な鯨どころじゃない、一般の魚までもいなくなってしまうというようなことになりまして非常にそれを憂えておりますが、今後とも航空機その他を使って有効な取り締まりをしていただきたい、こうお願いする次第でございます。  なお、これにつきまして実は公害の方の総取り締まりをやっております環境庁長官にちょっとお伺いしますけれども、全国的に不法海洋投棄が相当行われているであろうことは、いまの私と海上保安庁とのやりとりの中でもお察しになったことだと思いますけれども、この海上保安庁による監視取り締まりだけでは不十分であるというように思われるわけでございます。したがって、環境庁は、この廃棄物処理業者に対する監督指導を強化すべきことを直接はできませんから所管の厚生大臣に勧告すべきではないかと思いまするが、この点についての長官の御所見を承りたいと思います。
  113. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げさしていただきます。  先ほども答弁申し上げましたとおり、私は、何といたしましても道義地に落ちたと申しましょうか、許せない事件でございまして、先ほど海上保安庁の方から御答弁なさいまして、事犯について現在捜査中とのことでございますが、徹底的な捜査をお願いしたいということを心から痛感いたしている次第でございます。環境庁設置法第六条に基づく勧告等を行うかどうかを現時点で判断することはできませんが、本件の事情が明らかな時点におきまして運輸省等に対しまして適正な処置を要請してまいりたいと考えております。
  114. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 環境庁設置法第六条三項では、「長官は、環境の保全を図るため特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し環境の保全に関する重要事項について勧告することができる。」となっておりまするけれども、二度とこのような不法投棄が行われないように監視体制等の勧告を海上保安庁長官に対してもなされる用意があるのか、この点もお伺いいたします。
  115. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) ただいま海上保安庁におきまして鋭意調査中の事犯でございますので、調査の結果を見まして考えさしていただきたいと思います。
  116. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 まあくどいようですけれども、いまの環境庁長官の御対策に対しましてはよくわかりましたんですが、環境保全の立場からどのような対応策を講じようとなさるのかということはこれからの対策だと思いまするけれども長官もおっしゃっているように、二度とこのような事故の起きないようにひとつ万全の対応策をお考え願いたい、こう思うわけでございます。よろしくどうぞお願いいたします。  次に、いま問題になっていますアセスメント法案につきまして長官にお伺いしたいと思いますけれども、さきの衆議院予算委員会において総理の答弁の中に予算修正における合意事項として今国会に提出することになっていますが、このアセスメント法案は三月十四日の提出期限までにはついに提出されませんでした。今月中に提出の方向で調整が進められているように承っていますが、最近の調整状況、それから提出の見通しについてのお見込みをおっしゃっていただきたいと思います。
  117. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  さきの予算修正問題の話のときにおける自民党と社公民三党の話し合いの結果、自民党の方から内閣に対しまして御要請があり、その御意向を踏まえて去る三月四日に内閣関係閣僚会議を設置することになりまして、第一回目の会合を三月十三日に開きまして、そしてまた第二回目の会合を昨日開いていただいたような次第でございます。何しろ先生案内のとおり十八省庁関係いたしておりまして、今回は五回目になるわけでございますが、従来はなかなか話し合いに入るまでに至らないで入り口でストップしてしまったようなわけでございますが、今回おかげさまで各省がテーブルに着いて、その内容等についても現在鋭意詰めが行われておるわけでございます。三月十四日までには何とか法律として国会へ出さしていただきたいということで鋭意努力をいたしたのでございますが、各省庁間においていろいろな意見等がございまして今日に至っておるような次第でございますが、昨日の会議におきましても官房長官からできましたならば二十八日ごろまでには何とかひとつ法案に至らないまでも大綱までにはこぎつけたいから、各閣僚の御協力も賜りたいということが発言されておるようなわけでございます。私といたしましても長官の御意向にも沿うように最大限の努力をいたしてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  118. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 もう一つ長官を煩わしたいと思いまするけれども新聞などの報道によりますと、各省庁との折衝によって、対象事業、それから住民参加、条例との関係等におきまして法案内容がかなり後退してきているのではないかというように懸念されるわけでありまするけれども、このアセスメント法案の目的は一体何なのかということを改めてお伺いします。と申しますのは、企業を保護するためのアセスメントなのか、それとも国民の健康あるいは生命を保護することとそれから生活環境を保全するためのアセスメントなのか、長官として基本的なお考えを承りたいと思うわけでございます。
  119. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答え申し上げます。  これからの公害行政は、何と申しましても、ただ単に公害の防除にとどまらず、公害未然防止していく、これが環境行政の重要な課題であると、私はかように確信いたしておる次第でございまして、環境行政課題である人間の健康の保護、そしてまた、生活環境、自然環境の保全、公害未然防止、これに最善の努力をいたしていかなくてはならない。さような意味におきましても、今国会環境影響評価法案を出さしていただきたいと、こういうことで最大限の努力をいたしておるような次第であります。
  120. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 よくわかりました。ひとつ長官の所信またお考えを実現するためにもこの上ぜひ大いに御健闘していただきたいことを心からお祈りする次第でございます。  さて、実は本題の公害健康被害補償法について環境庁の方にお伺いしたいと思いますが、最初にまた長官を煩わしたいと思うのですが、この法律は何のためにできたのか。すなわち、この法ができるまでの間、人間のとうとい生命がどれほど多く失われたか認識されておられるかどうかということでございますが、この法が制定されてから六年経過しておりまするわけですが、当然この制度見直しというものが考えられると思います。要するに、六年の経過においてこの制度自体がいろいろ欠陥もあり不足の面もあると思いまするのでこの制度を当然見直すべきだと思いまするけれども、どのような基本的な姿勢でもってこの制度見直しを行おうとしていらっしゃるか、まずお考えを承りたいと思います。
  121. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  公害健康被害補償制度は、公害影響による健康被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的として創設されましたことは先生案内のとおりでございまして、環境庁といたしましては今後ともその目的に沿って、そしてまた科学的、合理的根拠に基づきまして制度を運営いたしてまいる所存であります。
  122. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 今回のこの法改正は、自動車重量税の引き当て方式を五十七年度まで三年間延長するという時限的措置を行うことが内容でありまするが、中公審答申やそれから衆参委員会の附帯決議においても恒久的な方策を確立することが求められております。すでにこの法施行以来六年が経過しようとしている今日、恒久策を講ずる必要があるのではないかと思いまするが、これについて環境庁ではどのような御検討をなさっていますか、また、どのような方針でこれに取り組もうとしておられるか、お考えを承りたいと思います。
  123. 本田正

    政府委員(本田正君) 自動車重量税から引き当てる方式は、いま御指摘のように、昭和四十九年からずっと続いているわけでございます。これは現状では一つの適切な方法であろう、これによらざるを得ないというところで現在に至っておりますけれども、これに恒久的な方法として汚染者負担の原則を踏まえつつかちっとした方法がないかどうかということを模索し続けております。たとえば重量税から持ってくるのじゃなしに、各保有者、全国に三千五百万台あると聞いておりますけれども、個々の車から何か徴収できないかという方法、あるいは自動車メーカーから徴収する方法、あるいは燃料を基準にいたしまして徴収する方法等、いろいろ検討はいたしておりますけれども、それぞれ欠点がございまして、自動車重量税から引き当てる方式というものが現状では適切であろうという中公審の意見具申、あるいは中公審におきます環境保健部会長の意見、そういったものを踏まえましてさらに三年間延長いただきたいと、こういうふうに思っているわけでございます。
  124. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この問題につきましては、経団連等から補償制度見直し要求が強くなされておりますことは御承知のとおりだと思いますが、一方、各被害者団体等の反対意見も出されているという状況の中でありまして、環境庁としては、いまお伺いすれば、これとした確たる対策とかあるいは見直し作業を具体的に行っているようにも受け取りがたいお話でございますけれども、このような制度全体を見直すというようなことにつきまして、中公審に諮問するというようなこと、そんなふうなことはお考えになっていらっしゃいませんか。
  125. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  経団連等からこの制度合理化等につきましていろいろ御要望のありますることは事実でございます。片やまた、他の団体等からも、たとえばNOxを指定要件に入れろとか、地域を拡大せよとか、いろいろ御意見のあることも事実でございますが、ともあれ、環境庁といたしましては、この制度主管者といたしまして、今後ともこの健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図るため、広く関係方面意見を聞きながら、科学的、合理的根拠に基づきまして検討を進めてまいりたいと考えております。  また、中公審に諮問するのかというお尋ねでございますが、その点につきましては、検討はいたしておりますがいま直ちに中公審に諮問をするというようなことは考えておらないことを申し上げさしていただきます。
  126. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 いま長官もお話しのように、最近経団連はこの補償制度見直しを強く押しておるわけでして、その理由一つとしては、SO2による汚染は各地域で改善されているにもかかわらず認定患者は増加するばかりで、賦課金の負担がふえるのはおかしいと、こういうふうな主張をしているようでございます。そうして、経団連はさらに、指定地域の解除、認定要件を厳しくすべきであるかのような意見も述べているようでありまするが、このような意見に対するお考えはいかがですか。
  127. 本田正

    政府委員(本田正君) 長官も申しましたように、いろいろなところからいろいろな意見が出ております。ただ、私どもといたしましては、公害健康被害補償法を預かっていて、それをできるだけうまく運営したいと、そういう観点からいろいろ検討いたしております。確かに御指摘のように、地域の指定要件がSO2、硫黄酸化物が物差しになっているのも事実です。それに対しましては、やはり窒素酸化物等をどういうふうに組み入れていくか、そのためにどう評価したらいいかというようなことも当然私どもは検討していなければいけないし、また検討いたしております。  それから認定要件を厳しくせよという御意見はちょっとこれはどうかと思いますが、やはり適切な医学的な判断によりまして患者の認定というのは行われるべきでございます。当然そういった医学的判断でありますので、思惑でこれを厳しくするというようなことについては、まあそういう意見じゃないとは存じますけれども、どうかと思うわけでございます。等々、まあいろいろな角度から検討をし、かつはその結果が出ますならばそれを組み入れましてより適正な法の運営ができるという観点を希望しているわけでございます。
  128. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 細かいことに立ち入るかもしれませんけれども、この補償制度見直し作業を進めるという中でもって、すでに環境庁ではぜんそく性気管支炎の認定要件について六歳以上の者は認定の対象としないというような方向で改定作業を進めておられたそうですけれども、その後この改定を見送ることにしたというふうにも聞いておりまするけれども、この問題についての一連の経過を御説明願いたいと思います。
  129. 本田正

    政府委員(本田正君) 経過を含めまして申させていただきます。  現在のぜんそく性気管支炎の認定につきましては、昭和四十七年に私どもの課長通知というものによりまして、それを参考にしながら四十一の認定審査会で認定が進んでいるわけでございます。その四十七年に出しました通知というのは、疾病の範囲を非常に厳しくしぼっていたり、それからもともとぜんそく性気管支炎というのはどうもあいまいな疾病名であって、これは世界じゅうどこにもそういう正規の病名はないと、こういうことから、実は認定審査会の委員先生方の間で、もう少しぜんそく性気管支炎というものを専門家によって検討してほしい、それでないと非常に審査自体がやりにくいという御意見が数年前からござ一いまして、一昨年の十二月にようやく私どもは七人の専門家からなる委員会に検討をお願いしたわけでございます。  その結果が一年たちまして昨年の暮れに出てまいりました。その結果の内容というものはどういうことかといいますと、大きく分けまして、医学的な問題と、それからいま御指摘のありました六歳を境に認定するとかしないとかそういう問題、この二つがあるわけです。この意見につきまして、実はかねてからそういう要望がありました審査会の先生方に実はその意見を聞いてまいったわけでございます。こういう報告書が出たが意見はどうだろうかと、その結果を現在取りまとめつつあるわけです。  大略意見の結果を申し上げてみますと、その報告書に対しまして、医学的な内容につきましてはおおむね賛同を得られております、報告書のとおりで結構だと。しかしながら、六歳問題、六歳未満を認定の対象にするという一項につきましては、これはそれでいいという意見もありました。それからそれでいいのだけれどもその際はよく主治医等にPRをしなさいという意見、あるいは六歳をもっと厳しくすべきだという意見、あるいは六歳以上だってぜんそく性気管支炎というのはあり得るのだから六歳をもっと緩めるべきだという意見等々があったわけでございます。そういった意見を私どもは踏まえまして現在検討を進めているところでございます。
  130. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 最近の大気汚染状況によりますると、SO2についてはかなりの改善が見られているけれども、NO2については大都市部を中心に悪化し、その他の地域でも横ばいの状況にあると、このように言われております。このような状況の中で第一種地域におきまする認定患者は増加している。これはSO2だけでは汚染指標物質として不適当であることを示しておるのではないかと、こう思われますが、最近の大気汚染状況に対する環境庁の判断はどのようになっておりますかお伺いしたいことと、それから汚染指標物質に対する環境庁の見解をお伺いしたいと思います。
  131. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 最近の大気汚染の現状という御質問ですが、窒素酸化物はここ数年横ばい状態で推移しております。それから硫黄酸化物につきましてはかなりな改善が見られております。しかし、大都市を中心としまして、特に東京湾岸、大阪湾岸でございますけれども、大都市を中心に窒素酸化物あるいは硫黄酸化物ともに環境基準の適合率は、五十三年度の実態を見ますと五十二年度に比べて悪化してきている、これが現状でございます。
  132. 本田正

    政府委員(本田正君) 地域指定の際の指標としてSO2、硫黄酸化物をどういうふうに評価し、どういう見解を持っているかというお尋ねでございます。確かに、現在の地域指定要件は、一応SOxを物差しにいたしております。中公審の答申によりますと、NOxとかあるいはほかの浮遊粒子状物質等を含めたSOx、それも側面的に考慮しつつあるSOxであると、こういうふうに示されてはおります。なぜかと申しますと、四十九年の中公審答申をいただいた当時は、NOxの観測値というものは非常に不備であったわけです。ゆくゆくは観測値が整備されたときにはそういった考えも導入すべきであろうというふうなことも示唆されております。したがいまして、私どもは現在はSOxを指標にいたしておりますけれども、SOxが低減されて、それだけをもって大気汚染が改善されたかということにつきましては、これはそうはまいりませんので、窒素酸化物をどのように公害健康被害補償法評価したらよろしいのか、そういったことについて検討をいたしております。SOxだけで未来永劫にこれでよろしいのだという見解は持っておりません。
  133. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この指定地域の問題点として従来から指定されている線引きについては、東京を初めとして各地域とも公害汚染状況に合致していない点があると思いますが、道路や川一つを隔てて救済されるものと救済されないものとが生じております。指定地域の線引きは自然的な汚染状況に合わせてなさるべきではないかと思いまするけれども、これについての環境庁の御見解はいかがですか。
  134. 本田正

    政府委員(本田正君) 指定地域の指定に当たりましては、実はSOxを指標にしたいわゆる等濃度線といいますか、同じ濃度の線をずっと地図の上に落としまして、そしてさらにその地域における患者の発生状況、この二つを基準にして地域指定が行われるわけでございます。地域指定というのは、これは公害健康被害補償法上の幾つかの割り切りのうちの一つでございまして、やはり地域指定をして、その地域指定内におけるところのこの四疾病をいわゆる公害病とみなすのだという、非特異性の疾患ではあるけれどもみなすのだという大きな割り切りがあるわけでございます。したがいまして、地域指定をするということは、過去のいろいろなデータ、過去にもさかのぼりましてのいわゆる高濃度汚染によるところの大気汚染状況というのを見て指定してあるわけでございます。そういう指定の仕方をしておりますので、あるいは刻々変わるかもしれない大気汚染状況に直ちにそれに対処して地域を拡大したり引っ込めたりということは制度上すこぶるむずかしゅございましてできかねております。そういう割り切りがあるということをひとつ御理解賜りたいと存じます。
  135. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 汚染地域の指定を広げるということについて、特別な害がなければ仮に将来それを変更することも差し支えないのじゃないかと思いますが、もう少し容易にそういうことができないものでしょうか。
  136. 本田正

    政府委員(本田正君) 公害健康被害補償法に基づきまして地域指定をいたしますためには、四十九年に中央公害対策審議会から御答申をいただいておりますものに地域の指定要件というのがございます。いわゆる物差しがあるわけでございます。大気汚染状況、これをたとえば一度、二度、三度、四度というふうに、それから患者の発生の状況、これも一、二、三度というふうに程度に応じて分けまして、その組み合わせによって地域を指定することに相なっているわけでございます。したがって、この指定要件に合うか合わないかによってでないと行政的には指定ができないということに相なりますので、そういったことでやらせていただいているのが現状でございます。
  137. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 指定地域につきまして、五十三年の東大阪市それから八尾市の指定を最後にその後は指定されておらず、環境庁方針としては新たな指定は行わないことにしているようでありまするが、指定地域においてはほとんどの地域において毎年認定患者がふえており、また最近の汚染状況は都市部を中心に悪化している状況でもあります。指定地域の増加拡大をすべきではないかと思いますが、これはいろいろといまおっしゃるように係数的な問題があるので簡単にはいかないと思いまするけれども、これについて、汚染状況が都市部を中心に悪化しているというような状況から判断して、やはり指定地域を増加拡大すべきではないかとも思われますが、この辺いかがですか。
  138. 本田正

    政府委員(本田正君) 現在四十一ございます指定地域を環境庁方針としてふやさないのだということでは決してございませんで、全国的に大気汚染状況を見ましたときに、先ほど申し上げました指定要件に合うような汚染の態様がない、こういうふうなことでございます。現状ではそういう指定要件に合うような状況がない、したがって指定はできない、こういうことでございます。  それから汚染が悪化しているという御指摘でございますけれども、指定要件は先ほど申し上げましたSOxが指標で現在やらせていただいているわけでございます。SOxを指標にする限りにおいては非常に大気は改善されているわけです。しかし、それだけをもって大気全体が改善されているかということは問題があろうかと存じますけれども、SOxを指標にしております以上は現状の汚染状況では新たな指定はないというふうに解しております。
  139. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 もう一つ、重ねて指定地域の問題について身近な例を挙げてお尋ねしますけれども、東京都におきましては二十三区内、世田谷、杉並、中野、練馬の四区が指定されていないわけでございます。これは何か住民の想像では区の力が弱いからだとかなんとかということさえも言われている状況ですけれども、これらの区内においても現実におきましては環状七号、環状八号というような主要幹線道路ができまして、この道路の周辺では交通量も非常に増加しております。排ガスによる大気汚染も同時に悪化していますが、これらの残り四区の地域指定についてはどのような判断をしているか、お伺いします。  同時にまた、幹線道路周辺地域に対しては部心的にでも指定すべき必要があるのではないか、このようにも思いまするけれども、あわせて御見解を承りたいと思います。
  140. 本田正

    政府委員(本田正君) 確かに、東京の二十三反の中御指摘のように四区だけ未指定になっております。これは、端的に申し上げますと、先ほど申し上げました指定要件に合わないからということでございます。つまり、SOxを代表指標といたしますところの汚染状況それから患者の発生状況というものの二つが指定の要件になるわけでございますが、それに四区は合わない、こういうことから指定ができないわけでございます。  なお、しからば環七等、自動車沿道だけを部分指定したらどうだという御意見でございますけれども、この沿道をとってみましても、現在のSOxを代表指標とする環境汚染ということに当てはまらないわけでございます。そういう意味から、自動車沿道だけを部分指定するということはそういった指定要件に合わないものですから指定ができないというのが現状でございます。なお、申し上げましたように、自動車が出すのはNOxでございます、どういうふうにNOxを評価すべきかということについては、先ほど申し上げましたように現在私どもで検討いたしておる、こういう段階でございます。
  141. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 第一種地域における指定疾病については、本法においても旧救済法の指定疾病をそのまま引き継ぎ、慢性気管支炎、気管支ぜんそく、ぜんそく性気管支炎、それから肺気腫及びこれらの続発症に限定されたままでありますが、慢性気管支炎と診断されない程度のせきとたん、それから目、耳、鼻等の炎症性疾病または症状、それから肺がん、光化学スモッグによる健康被害等、以上のような点についても追加指定すべきと思いまするけれども環境庁ではこれまでどのような検討をなさっているか、お伺いしたいと思います。
  142. 本田正

    政府委員(本田正君) この制度が発足いたしますときに、いま御指摘のように幾つかの項目について中公審でも御検討いただいておるわけでございます。その時点でも御議論賜った中に、いま御指摘のようないわゆる症候群といいますかあるいは疾病といいますか、そういったものはきわめて急性一過性のものが多いということ、それから診断基準といいますか、やはり病気ということに特定いたしますならばこの病気はどういう症状がそろえばこういう病名だといういわゆる診断基準、そういったものが急性一過性であるためになかなかできづらい。申し上げましたようなそのような状況から、一つの疾病として公害健康被害補償法に取り入れるまでには少なくとも現在至っておりません。いろいろな調査がございます。関係があるのじゃなかろうかと思われる調査もあるし、全くないというような調査もあるわけでございますが、そういったものを私ども今後ともよく追跡し勉強していきたいと存じております。
  143. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 昭和五十三年の衆参両院における附帯決議の中にあります「公害健康被害者に対する補償給付の改善を行うとともに、転地療養事業等の公害保健福祉事業の充実、強化を図ること。」とありますが、補償給付の改善を行うという点についてはどのような改善をなされたのか、また、公害保健福祉事業の充実強化についてはどのように推進をなさってこられたか、これらの点についてお伺いし、同時にまた環境庁の今後の対応策についてお伺いします。
  144. 本田正

    政府委員(本田正君) まず、いろいろな七項目にわたる給付がございます。特に障害補償費、これにつきましても中公審の答申の御意見を尊重しながら実施させていただいておりますけれども、労働省におきますところの賃金構造の統計、それをもとにいたしまして一定の推計を、たとえば春闘におけるところの妥結額、そういった率から一定の計算方式がございまして、それに基づきますところの改善というものをやっております。この障害補償費は、これも御存じのとおり男女別の、それから年齢、階級別の表でございまして、それによりまして月額のお金を出している、そういったものでございますが、年々そういった方式によりまして改善を図っております。  それから公害保健福祉事業でございます。これはいろいろ事業がございまして、リハビリテーションとかあるいはその他幾つかの事業がございますが、これも個々の事業につきまして単価増を図るとか、あるいは今年度におきましては児童に対しますところの一泊、二泊のリハビリテーションの事業を導入いたしたいと思っておりますし、さらには保健婦のリハビリ訓練手法の実地応用研究会というものに要しますところの費用を見させていただく、そういうふうな新規の事業も適宜取り入れながら改善を図っているところでございます。
  145. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 障害補償の標準給付基礎月額は全労働者の平均賃金の八〇%相当とされていますけれども、これを一〇〇%にすべきだとは思いまするけれども、これを改善する余地、お考えはないかどうかということと、また、男女間に先ほどちょっと問題になったようでございますけれども格差がありますが、これはもっと格差を減らすべきじゃないかと、こうも思いまするが、これについての御見解を承ります。
  146. 本田正

    政府委員(本田正君) 労働賃金の確かに八〇%ベースでこれが設定されております。と申しますのは、四日市におきますところの公害裁判、この種の裁判の判決の中に、それから社会保険におきますところのいろいろな制度がございます、労災とかあるいは自動車の損害賠償の裁判とか、そういったもののベースとの実は端的に申しますと中間をとっておるということでございます。と申しますのは、この疾病がやはり非特異性の疾病であるという背景もあるかもしれません。ともあれ、労働賃金はこれは一〇〇%で出てくるわけでございますが、たとえば労災関係では六〇%である、そういったものの中間をとることが適切であろうという中公審の答申に基づいて実は実施をさせていただいているわけでございます。来年度もそのような考えで実施させていただきたいと、かように存じております。  それから男女別の格差があるのも、労働賃金を基準にいたしておりますのでこれはそういう差が出るわけでございます。その辺もまたひとつ御理解をぜひ賜っておきたいと存じます。
  147. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 公害保健福祉事業費の五十五年度予算につきましては、五十四年度三億五千万円、これに比べて六千二百万円ばかり少ない二億八千八百万円、このようになっていますが、何か特別な理由があるのですか。
  148. 本田正

    政府委員(本田正君) 保健福祉事業というのは、対策の中でも非常に大事な、患者さん方によくなってもらうという重要な仕事だということはもう重々実は承知いたして、そのように指導を各県市にいたしているわけでございますが、御指摘のように、実は、この予算の消化率といいますかこれが非常に従来悪うございまして、たとえば五十三年度では三五%であったと、五十四年度ではようやく五〇%に達したと、そういうふうなはなはだ申しわけない状況にあるわけでございます。そういう実施率以外は不用額になるわけです。そういう不用額を毎年実は出してまいったわけでございます。ただ、実績は年々ふえているわけです。実績額といいますとふえているのでございますけれども、どうしても予算がふんだんに消化し切れないという事情を来年度も勘案いたしまして減額せざるを得なかったと、こういう事情を御理解賜りたいと存じます。
  149. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 これも先ほど問題になりましたけれども、例の国立水俣病研究センターですね、これは十三億六千万円の予算を投入して昭和五十三年にオープンしていますけれども、オープン以来、研究スタッフが集まらない、開店休業の状態が続いているわけでございますが、こうした中で本年度予算においても約三億二千万円の予算が計上されておりますけれども、医師それから研究スタッフが集まる見込みがありますかどうかということ、そういう現状と、スタッフが集まらない理由はどんなところにあるか、御説明願いたいと思います。
  150. 本田正

    政府委員(本田正君) 水俣病研究センターにつきましては、一昨年の十月にオープンいたしまして、昨年の七月に開所式をやって現在に至っているわけでございます。ようやく、スタッフといえば、所長、それに基礎研究部門の二人の技術職員、あとは事務職員、それから臨床部におきましては非常勤でございますが医師が一名と、そういう状況で、はなはだ私どもの努力の足りぬということを反省いたしております。何とかこの研究センターがせっかく発足いたしまして機能を発揮するには、何といいましても研究職員の確保ということがもうこれは根幹であるわけです。また、水俣病という特殊性、それから熊本県の水俣に設置されたというそういった特殊性から、私どもは従来も水俣病に関します学問的蓄積がある熊本大学の協力をぜひぜひ得たいということで何度も実は協力方をお願いに参上いたしておりますけれども、昨今来水俣病の研究者というものが非常に数が少ないということもございまして、なかなか職員を十分に確保できないということでまことに申しわけなく残念に思っておりますが、今後ともそういう努力を続けまして、熊本大学だけにしぼらずに、近郊の関係の大学もございますので、そういったところにもお願いをいたすことにいたしておりまして、さらにそういった要員の確保ということにつきまして努力をさせていただきたいと、かように存じております。
  151. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 そうすると、集まらない理由一つは、やはり水俣病に対する、研究しよう、この病気を撲滅しようというようなお医者さんの方あるいはまた医療関係の方が非常に少ないということが原因であって、別に待遇とかあるいはまた場所が云々というようなほかの理由ではないのでございますね。この点どうでしょう。
  152. 本田正

    政府委員(本田正君) これは非常にむずかしいと存じます。幾つかのなかなか来ていただけない理由は、まず第一には、私どもの研究所の発足に当たりまして研究計画というものが明確にできないという欠点もあるかもしれません。と申しますのは、ある意味では研究というのは人にまつわる研究というのもあるわけです。ですから、研究テーマが細目決定できないという、これは表裏をなしているわけでございます、研究者と研究テーマと。そういうことがあって、一体水俣病研究センターは何をやるのだろうという素朴な質問に的確に答えられない。抽象的には水俣病の治療方法の開発であり、あるいはそれに伴う基礎研究、あるいは疫学的な研究ということは言えても、そういうことが明示できないということもございますし、それからやはり研究者の層というものが薄い。これは神経内科の領域に属するわけでございますけれども、神経内科の中の特殊な領域だということから、やはり研究者の全体の層が残念ながら薄いと、こういったこともあるし、あるいは水俣という地域の遠いといいますか、大都市から離れたそういったこともあるかもしれませんが、待遇はこれは国家公務員でございますからそれ並みに処遇をしておるつもりでございますけれども、そういったいろいろななかなか来ていただだけない理由があろうかと思います。おいおい努力させていただきたいと存じます。
  153. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 水俣病研究センターの運営状況については、この二月に会計検査院が立ち入り調査を行ったということを聞いておりますが、検査院は現在の状況をどのように判断しておられるか、また、調査結果が出ているのでありましたならばそれをお知らせ願いたいと思います。
  154. 水越雅夫

    説明員(水越雅夫君) お答えいたします。  今年の二月にこれは五十三年度の通常の検査の中で行った問題でございますが、水俣病研究センターは設立後比較的まだ日が浅いということと、それから研究者が集まらないということによって、先ほど来十三億というお話が出ておりますが、そのような多額に投資した建物やすでに購入した医療機器等が必ずしも有効に活用されていないということについてわれわれも実際に検査をやった立場上認識しておりますが、こういった問題については十分私どもも問題意識を持っております。しかし、研究者の充足については、先ほど来お話のございますように、環境庁においても現在鋭意努力を続けておられる状況でありますし、また、開設後初度調達した医療機器が据えつけられてから一年足らずのことでもありますので、いましばらく推移を見たいと思います。  なお、研究テーマにつきましては、約四件ばかり具体的にいろいろやっておられますが、まあ医学的な基本的な問題等でもあり、その内容についてはまだ解明といいますか、直接われわれがその研究内容までタッチする事項でもございませんので、問題はこれらの研究により従来充足されております医療用器具が有効に早く活用されるということを望んでおりますし、今後ともそういう問題については十分意識して見てまいりたいというふうに思っております。
  155. 阿部憲一

    ○阿部憲一君 この公害健康被害補償法が今後公害被害者立場に立った方向でもって改定作業が行われるように環境庁の一層の御努力を要望したいと思いますが、この点について長官の御決意を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  156. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  先ほど来先生から各般にわたっていろいろ御意見が述べられましたが、水俣病問題を初めといたしまして環境行政の重要な柱でございますので、国民立場に立って真剣にこれらの問題と取り組んでまいりますことをかたくお誓い申し上げる次第であります。
  157. 山中郁子

    ○山中郁子君 けさほど来から議論がありましたけれども、この公害健康被害補償法が制定されたときに、自動車に係る費用負担分についてはとりあえず臨時措置として自動車重量税からの一部引き当てを二年間行う、その間に恒久制度を確立するという約束であったわけですけれども、それが何回かこういう形で進んできて、またとりあえずということで暫定臨時措置提案されているわけですが、この恒久的な費用負担制度の確立というのは、そうすると一体いつになったらできるのか、またいつごろそういうことで考えるのかというふうなことはいかがですか。これは単にその時期の問題じゃなくて、現在のところはこれが適切であるというふうにおっしゃっているのだけれども、その根拠というのは余りにも私は明確でないと思うのですね。けさからのお話を伺っていても、こういう点については、つまり、メーカーに負担させるについてはこういう面がある、あるいは自動車を持っている人に負担させるについてはこういう問題点がある、ガソリンについてはこういう問題点がある、こういうふうにおっしゃって、だからこうなんだと、そうならざるを得ないんだというようなお話として承れるのですけれども、じゃ現在最も適切だという積極的な意味はどこにあるのかということもあわせてちょっと見解を伺わせていただきます。
  158. 本田正

    政府委員(本田正君) この制度が発足いたしましたときに中公審でもいろいろ御議論を賜りまして、そしていま御指摘のような検討をすべきであるということも恒久的な対策について指摘を受けているわけでございます。従来いろいろ検討をやってまいりまして、たとえば個々の保有者から徴収するということになりますと、全国非常に台数が多いということ、徴収事務ということを考えますと、きわめてむずかしいという……
  159. 山中郁子

    ○山中郁子君 それはもうわかっています。
  160. 本田正

    政府委員(本田正君) 失礼しました。  そういったメーカーから取る方法とか、あるいは燃料を基準にする方法、それぞれまた欠点があるわけでございますが、現状この方法によらざるを得ないというのは、私どもも検討いたしましたが、中公審におかれましても昨年末中公審の環境保健部会長から見解をいただいております。そういった中公審においても検討していただきました結果、現状この方法によるのが適切であろう、こういう見解に基づきまして私どもはそれを採用させていただいておると、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  161. 山中郁子

    ○山中郁子君 ほかの方法をみんな考えるけれどもだめだ、だからしようがないからこれしかないんだというおっしゃりようなら、またそれはそれで理解できるのですけれども、現状最も適切であると言うからには、積極的な意義があるということになりますわね。そこのところがどういうことなのかということをまず伺いたい。  あわせて、現状また三年間ということで提案されたわけね。じゃこの次にはおたくの考え方としては恒久的な対策をちゃんと出しますよと、こういうお約束をなさるのかどうか、そこのところを聞かせてください。
  162. 本田正

    政府委員(本田正君) この方法が現状適切であるという意味は、まあやむを得ない、この方法によることが現状では一番よろしいのじゃなかろうかということでございます。  それから三年間たてば何とかその恒久的な方法が出るのかということでございますが、今回三年間をお願いします理由は、自動車重量税の特別措置が三年間延長されたのもございます。それもございますが、まあこういったものを検討するのに少なくともやはり三年は必要じゃなかろうかということで三年をお願いするわけでございまして、ただ、検討した結果が恒久的な対策が何か三年以内に打ち出せるのかと、こう言われましても、いろいろな角度から検討はいたします、そういうことで検討はいたしますけれども、必ずこれにかわる恒久的な対策が出るかどうかは、やはり検討の結果を待たないとできない。鋭意検討はいたすつもりでございます。
  163. 山中郁子

    ○山中郁子君 鋭意検討するとおっしゃっても、いまの御答弁じゃ何を検討するのかさっぱりわからないわけよね、実際問題として。私は、だから、わが党が最初から主張しておりますけれども、原因者の問題について、やれユーザーがどうだとか、ガソリンがどうだとかとおっしゃるけれども、これはもうメーカーだとそこのところがあいまいになっているから、それをおたくが否定しているから、だからそういう矛盾が出てくるんですよということはちょっと指摘をしておきます。  それとの関連ですけれども、じゃどうしてこういうふうに自動車重量税の一部引き当てという形になったのかというその背景が、業界からの大きな要請があって、そして政府がその要求に押されてこういう形の誤った臨時措置ということで逃げ込んだから私はこういう結果がいま問題としてずるずる引き延ばされて、結局解決の方途が立たないままに何回も何回も延伸される、こういう結果になってきていると思うのです。  そこで、その点に関してお伺いするのですけれども、これが結局臨時措置とは言え公費負担というところに落ちついているのです。そして四十八年の五月十八日の閣議にかけられた法案要綱では、「移動発生源からの徴収は別途法定すること」というふうになっているのですけれども、これが結局公費導入ということで自動車重量税の一部引き当てということになったのか、私はここに業界の大きな要望に政府が押されたという経過があると思いますけれども、その点いかがですか。
  164. 本田正

    政府委員(本田正君) 私どもはそういうふうに実はお聞きしておりません。やはりいろいろな方法を模索してこの方法が一番いいという中公審の御答申に基づいて実施してきたわけでございます。おっしゃるようないまの予算の形というものは、国の一般財源ということから予算上の仕組みは、そういうふうに国の一般会計から公害健康被害補償協会に対する交付金という形をとらざるを得ないわけでございますけれども自動車重量税というのは自動車の保有者から徴収するものでございますので、決して汚染者負担の原則といったようなことにも反するものじゃないと、こういうふうに考えております。
  165. 山中郁子

    ○山中郁子君 何回も議論してきたことですからあえて繰り返しませんけれども、いまの御答弁の中の一つだけ指摘をしておきますけれども、利用者、ユーザーは、そういう自動車しか売っていないのだから、しようがなくてそれを使っているわけでしょう。それが汚染原因者ということにならないというのは理屈からしてはっきりしているということを私は重ねて指摘をしておきます。  それで、経団連の「三十年史」にここのところについてこう書いているんですね。中曽根通産大臣の当時です。「中曽根通産大臣は、閣議の席上で「公費負担を事務費などに限っているが、補償費全般に広げてはどうか、法案作成の段階で検討してほしい」と強く要望した。これに対して、三木環境庁長官は、消極的な姿勢を示したが、政府は、この点については、さらに検討を進めることになった。この「要綱」については、産業界の不満も高まっていた。そこで六月一日、電気事業連合会」の「会長」だとか「石油連盟」の「会長」だとか、そういう人たち「が田中首相、三木長官に面会し、公費負担問題に絞って申し入れを行なった。その内容は、PPPの原則に従って、産業界費用を負担することに異論はないが、自然発生患者も存在すること、給付費用の無制限な膨張への歯止めが必要なこと、公害問題解決の行政責任があることなどからみて、公費負担の範囲を拡大してほしいというものであった。こうした申入れに対して、田中首相・三木長官らは再検討の余地があることを示唆したが、六月十五日の閣議で決定された「公害健康被害補償法案」は、その点である程度改善されたものであった。公費負担を拡大しうる余地を残した形で修正を行なったからである。」と、こう述べているんです。これがちゃんと「三十年史」の中に述べられているということは、いま部長が答弁されたそういうことは一切何もありませんでしたと、何も関係ないと私は絶対に言えないと思うのですけれども、いかがですか。
  166. 本田正

    政府委員(本田正君) 私どもはあくまでも中公審の答申の御意見に沿ってやっていることでございまして、実は私その話はいま初めて存じましたが、私どもは中公審の御意見がそうでございますからそれに沿ったということを御理解賜りたいと思います。
  167. 山中郁子

    ○山中郁子君 経団連の「三十年史」にちゃんとそう書いてあります。それをよく読んでくださいね、いままでもそれは問題になっているんだから。そういうふうに言い張られるけれども、実際問題としてそういう方向で重ねていろいろな文書経団連で出ているのです。  あわせて申し上げますと、これは経団連内部文書ですが、田中総理や何かと会ったときの話ですね。「席上、田中総理は公費負担については税制等の措置でやれるのではないか、関係各省の間で事務的に修正案をつくり、非公式に自分のところへ持ってくるよう指示する、」それからまた「三木長官は来年度石油課税を洗い直し合理的なものにする、」こういうことを示唆、「これとの関連で負担の問題も検討したいと述べた。  その結果、去る六月十五日の閣議で決定された法案では公費負担を拡大し得る余地を残した形に修正が行われ、自動車等の賦課方法の問題とあわせて別の法律にゆだねることとし、これを次期通常国会にかけることとなった」と、こういうふうにちゃんと印刷された文書があるんです。田中総理が何を言ったか、三木さんが何を言ったか、その結果こういうことになったんだということを彼らは高く高く評価しているわけですけれども、こういうことがあってもそうした財界、業界からの要望ということと無関係にやったのだということが言えますか。これはぜひ長官に伺いたいと思います。
  168. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  先生指摘の問題は、私も率直に申し上げまして全然存じないことでございます。私は、現在環境庁長官といたしまして、この法の目的である健康被害者の迅速かつ公正な保護を図る、この精神に徹し、そして先ほど来本田部長からもるる御答弁ございましたとおり中公審の答申等もいただき、その線に沿ってこれらの措置がなされたようなわけでございまして、その点はぜひひとつ御理解を賜りたいと思います。
  169. 山中郁子

    ○山中郁子君 こういうものがある以上、それは理解しろと言う方が無理です。先ほどの一番最初に引用しました「三十年史」の中にも、公に出太れている文書で、ちゃんとこういうふうに要請をしたと、行動、アクションを起こしたと。その結果、公費導入、公費部分をふやすということについて余地を残すことができた。最初はそうでなかったわけだから。そのほかに五十一年六月の経団連月報に載った「公害健康被害補償制度問題点」という経団連事務局の報告によってもその経過は明らかに示されているわけです。さらにこういうことで具体的に田中総理が言ったことや三木長官が言ったことまでがリアルに報告されている、そういう文書があるのです。そういうことは、長官、やはりよくお考えになっていただきたい。だから、政府は、業界の圧力、業界の要望で、そしてこの点についてのメーカー負担という一番もっともあるべき姿、あるべき正しい点に目を向けようとしないで、いろいろなことを言いながら、あれもむずかしいこれもむずかしい、当面はやむを得ないからこういう措置をするんだというのをもう二回目、今度三回目ですね、そういうふうにせざるを得ない状況になっているんです。業界との関係においての姿勢を正すということはこの経過を率直に認めるということから出発しなければならないと思いますので、長官の誠意ある姿勢をお伺いいたします。
  170. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 先生、重ねて申し上げさしていただきますが、全く私存じないことでございますが、私は、環境庁長官を拝命いたしました時点におきまして、環境庁は開かれた環境庁である、さようなわけで、たとえば環境庁をお訪ねになられた方々に対しましては、経団連、財界の方々であろうと、あるいはまた各団体の方々であろうと、意見意見として親切に大事に接していただきたいということを職員に対しましても強く厳命をいたし、また、私自身率先してこれを実行してまいっておるような次第でございまして、私は何と申しましても今後も国民立場に立って環境行政を推進してまいります。このことをお誓い申し上げる次第であります。
  171. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、この点については、最後に私は長官に、次の機会で結構でございますけれども、「経済団体連合会三十年史」という本があるんです。いま私が引用したのはそれです。お手元にすぐ入ります。七百六十一ページ、ここに先ほど私が引用した経過が述べられておりますので、そこをぜひお読みになった上で次の機会に御見解を承りたいと思います。  次の問題ですけれども、先ほどの公害健康被害補償法見直し問題が社会問題になっていますけれども、これが環境庁アセス法案を何とかしたい、内容の問題についていろいろ意見があるし、私ども意見を持っていますけれども、そういうことから、これとの取引というか、引きかえでこの見直しを図るということを財界に約束するというようなことがいろいろなデータによって問題になってまいりました。これはとんでもない話なんですけれども、この背景にも執拗な財界の見直しの要求があるわけです。  これは昨年の十二月七日の衆議院の委員会ですけれども、共産党の則武議員が、一連の経団連文書、これもいろいろな文書がいっぱい出ているわけですよね。それで、質問をしているのですが、これに対して、環境庁の金子局長ですか、陳情があればそれはまあよく検討しましょうと、そういうふうにとられるのでは困るんだと、こういう趣旨答弁をしていらっしゃるのですね。だけど、内容的に見れば、そんなものじゃないわけですね。かなりはっきりした要請、要求なんです。こういう点について抗議をしたとか、初めて聞いてびっくりしたとかいう答弁をそのときされていますけれども、私はそんなものじゃないと思いますが、その点についての見解をもう一度初めに伺います。
  172. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさしていただきます。  実は、昨年の暮れからことしにかけまして、経団連、大阪財界等からじきじき私のところヘアセスメント法案に関連いたしましてお見えになったことは事実でございます。そのとき、時期尚早ということで反対立場をとられたのでございますが、私といたしましては、環境影響評価法案を制定することは時代の要請でもございまして、環境公害をただ単に防除するだけではなくいたしましてこれからの環境行政というものは公害未然防止する、これがわが環境庁に課せられた最大の使命であります、さような意味におきまして皆さん方がいかように反対されようともこの態度は私といたしましては貫いてまいりますということを明確に申し上げてまいっておる次第であります。
  173. 山中郁子

    ○山中郁子君 金子さんが、先ほど私が申し上げました衆議院での則武議員の質問に対して、「陳情の趣旨はわかりました、こう言えば早速了解してそのとおりに作業に取りかかる、こういうような表現をされては困る。」とおっしゃっているのですね。だけど、「陳情の趣旨はわかりました、」というようなことではない環境庁と財界とのかかわりがある、強いて言えば密約があるというふうにも疑惑を持たざるを得ない経過です。昭和五十二年度の経団連事業報告の中で、「その後、当会では中公審環境保健部会委員、日本医師会その他法律・医学等の学識経験者等とも意見交換を行いつつ、当会意見趣旨の実現方に努めてきたが、漸く中公審環境保健部会の給付委員会において、当会が主張している地域指定解除、現行曝露要件見直し等の諸問題について検討が行われることになった。」と、こう言っているのですね。  それからさらに、経団連内部文書の中身を見ますと、「古賀環境安全委員長より、公害健康被害補償制度の改正問題についての最近の中央公害対策審議環境保健部会における検討状況について報告があり」云々となっているのですね。だから、明らかにこうした要求に基づいて、環境庁政府見直しの検討を進めてきて、しかもその中身がこの事業報告の中にもあるように具体的な問題になってきているわけですね。そういうことを、陳情があれば承りましたという、趣旨はわかりましたというようなことではないということは、常識的に考えておわかりになるでしょう。長官、どうですか。
  174. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 私の名前が出たことでもございますし、当時私、官房長をいたしておりましてその件に若干かかわり合いもございましたので、説明をさせていただます。  五十二年の経団連文書を私ども読みましたときに、まことにけしからぬ、陳情においでになって、陳情の趣旨はわかったというだけのことなのに、環境庁がそれを理解した上でしかるべき措置をとるかのごとき印象を与える報告を会員に刷って配るというのはけしからぬということで、私から厳重に抗議を申し入れたのを覚えております。それはたしか二回ありまして、二度抗議いたしました。そのときに、経団連といういわば団体屋の立場でいろいろあれもやった、これもやったということを言いたいお気持ちはわからないではないけれども、そこのところは、陳情に行って、陳情の趣旨はわかりましたというだけのことに対して、圧力をかけてどうこうすることができたとか、そういう感じの表現までなさるのはおかしいですよということで、それ以後経団連からは、その種の文書は出なくなっているのではないかというふうに私は感じております。
  175. 山中郁子

    ○山中郁子君 あなたの御答弁は、たまたま経団連は自分のところの戦果を語ることに急な余りにそういうことを書かれちゃ困るとおっしゃるけれども、それは書かれて困るのであって、そういうことがなかったということにはならないんですよ。  それじゃ、さらに申し上げますけれども経団連文書が、地域指定解除など、そういうものの検討、見直しが行われるようになったというふうに報告しているのですね。じゃ、そういうことは一切行っていないし、今後も行うつもりはないと、こういうことになるわけですか。
  176. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 私がお答えを申し上げるのが適当かどうか存じませんが、かねがね私どもの役所の方から御答弁申し上げておりますように、制度主管者としてこの割り切りの上に立った制度について、発足後数年たった時点において絶えず問題点をチェックするというのは当然である、それは経団連が言うとか言わないとかというようなこととは別個の問題だ、こういう趣旨でございます。
  177. 小山一平

    委員長小山一平君) 委員異動について御報告いたします。  本日、久次米健太郎君、二木謙吾君、赤桐操君、瀬谷英行君及び戸叶武君が委員辞任され、その補欠として坂元親男君、増岡康治君、佐藤三吾君、川村清一君及び茜ケ久保重光君が委員に選任されました。     —————————————
  178. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、抗議を二回おやりになったとおっしゃるから、重大な問題ですのできちんとした報告をしていただきたいと思いますが、何回、いつ、何年の何月何日に環境庁のどなたがされたのか。いま金子さんは私がとおっしゃいましたけれども、どなたがどういう責任で経団連のだれに対して行ったのか。それからこの抗議は口頭でおっしゃったものなのか、あるいは文書で出されたものなのか。口頭ならば、電話なのか、それとも、直接会ってそれを話をされたのか。それから経団連の対応。文書ならばその文書内容をお示しいただきたいと思いますけれども、いかがですか。
  179. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 私の記憶では、恐らく口頭で担当部局の方から経団連に申し上げたと思います。相手は恐らく産業部の方だったと思います。
  180. 山中郁子

    ○山中郁子君 いつといつですか。
  181. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 当該書面を私どもが読んだ直後だったと思います。
  182. 山中郁子

    ○山中郁子君 経団連は何と言ったのですか、その抗議に対して。あなた方が納得できるような答弁だったわけですか。つまり、何にもなかったことを捏造いたしました、申しわけありませんでしたと、こういう話だったのですか。
  183. 金子太郎

    政府委員(金子太郎君) 正確には覚えておりませんが、以後注意いたしましょうという趣旨の返事だったと記憶いたしております。
  184. 山中郁子

    ○山中郁子君 長官ね、ほかにもたくさんこういうのがあるんです。つまり、環境庁の言っていることが正しいとすればそういうことは何にもなかったと。何にもないにもかかわらず、彼らはこういうふうに具体的に捏造したわけだわ。そうでしょう。それは環境庁の権威にかかわる問題ですわね。それを以後注意いたしますぐらいなことで済まされるのですか。私は、そこにまた国民の疑惑は生まれるし、環境庁と財界との癒着という問題についてはあなた方が否定できない客観的なデータがそこにあると言わざるを得ないと思います。この点についての長官の見解を伺います。
  185. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 大変貴重な御意見としてお伺いしておきます。
  186. 山中郁子

    ○山中郁子君 一連の制度見直しというこの問題とも関連して、バックデータを得るための調査をそちらで実施されていると思いますけれども、この点について現在どういう調査をどういう項目で行われているのか、それから調査実施主体、予算額、それぞれ説明をいただきたいと思います。
  187. 本田正

    政府委員(本田正君) 制度見直しといいますか、適正な運営を図っていきたいという観点から、いま御指摘のようにいろいろ調査をいたしておりますけれども、たとえば曝露要件をどう設定するか、そのための調査、そういったたぐいの調査はございません。いろいろもっと基礎的な調査でございまして、一、二申し上げてみますと、たとえばNOxの健康影響についてどういった研究報告があるか、いわゆる文献学的調査とでもいいますか、そういったこともやっております。これは国際医学情報センターに二百七十万円でお願いいたしております。それから医学文献調査研究というのを、これも同様に国際医学情報センターに百七十万円でお願いいたしております。これは大気汚染の健康に及ぼす研究の内外の文献というものを収集いたしまして医学的な知見をまとめたいという観点から実施いたしております。  それから指定疾病の医療内容改善研究というものもやっております。これは同様に国際医学情報センターに委託をお願いしておりますが、予算は二百七十万円でございます。  それから大気汚染による健康影響調査の手法に関する研究というものも実施しております。これは五十三年度百七十万円でございます。これは内容を簡単に申し上げてみますと、調査手法の中で従来わが国で使っておりました疫学的調査にBMRCという調査票がございますが、これがどうも調査に当たって日本の現状に合わない部門がある調査票でございます。したがいまして、BMRCのBはイギリスでございますが、現在アメリカの胸部学会と申しますか、ATSと略されておりますが、そちらがつくっております問診票、これに切りかえてそれに基づいてテストしたらどうだろうか、こういう研究でございます。そういったことをやっております。  それからその他リハビリテーション等の調査研究、こういったこともやっておりまして、これはたとえばリハビリの中の水泳訓練の療法の効果というものが特にぜんそく児の場合に有効であるということから、そういった研究もお願いいたしております。それから肺の理学療法のいわゆるプログラミングと申しますか、そういったものもお願いいたしております。いま内訳を申しておりますが、これはリハビリテーション等の調査研究で、予算は七百万円ほどでございます。それからその中の第三番目に、重症患者の集団訓練法の開発、そういったものも行われています。  なお、地域指定につきましては、地域指定の追跡調査というのを行っておりまして、これは全地域じゃございませんけれども健康被害の発生率の把握方法あるいはそれを開発する方法、そういったことに主眼を置いた指定地域の追跡調査というのを各自治体にお願いして実施いたしております。  以上でございます。
  188. 山中郁子

    ○山中郁子君 まあ基礎的なものだという前提のお話なんですけれども、先ほどから問題になっております見直しとの関係でも問題になるわけですけれども、どのくらいの目安でもって考えていらっしゃるのですか。
  189. 本田正

    政府委員(本田正君) 目安をいついつまでにこういった成果を期待して研究するというたぐいじゃございませんで、やはりそういった幾つかの研究なり、あるいは私どもで行っている研究以外の研究というものもたくさんあるわけでございます。そういったことを集積していく必要があろうと思います。ですから、個々の研究につきましていついつまでにどのような結果を出すという目標は持っておりません。できるだけ早く科学的な根拠が得られればと、こういうふうな観点からお願いしているところでございます。
  190. 山中郁子

    ○山中郁子君 ぜんそく性気管支炎の六歳以上の年齢制限導入の問題なんですけれども、これも先ほどお話がございました。それで私は結論的にお伺いをしたいのですけれども、先ほどの御答弁では、いろいろと意見は上がってきた、そしてそれに基づいていま検討しているのだというように承りましたけれども、そこのところをもう一度正確に現在どうなっているのかということをお示しいただきたいと思います。
  191. 本田正

    政府委員(本田正君) ぜんそく性気管支炎につきましては、現在認定の参考になっているのが四十七年に発しました課長通知がもとになっているわけでございます。その通知が非常に不都合だということから、その不都合だという御意見は審査会の委員さん方から出てきた意見でございますが、そういった観点から検討をするということで四十七年の通知の中身を実はどうするかということを検討している、こういう意味でございます。
  192. 山中郁子

    ○山中郁子君 環境庁が各地で実施したブロック別認定審査会での説明会でも、お医者さんの圧倒的多数が反対の意思表示をされています。それから全国の公害患者会もこれに強く反対して説明会の会場を取り囲むというふうなそういう事態も起こってきていることは、環境庁がよく御承知のところだと思います。それでブロック会議担当県、市が意見聴取の結果を取りまとめて環境庁文書で上げることになっているわけですけれども、この点についてはもうすでに上がってきていると思いますが、どうですか。
  193. 本田正

    政府委員(本田正君) 正式な文書でということではなしに、私どもも実はその担当者がブロック会議等にも出ているわけでございます。上げてほしいと思っておりますが、まだそろっておりません。しかし、その会議の様子というものを見、かつはそれをまとめてみますと、その報告書の中身を大きく二つに分けまして医学的な問題があるわけです。  どういうことかと申しますと、もともとぜんそく性気管支炎というのは二歳以下に多い疾病である、二歳以下に呼称してもやむを得ない疾病であるということであります。それからいまの通知は反復性気管支炎だけをぜんそく性気管支炎と言っているのでそれは無理がある、もっと疾病の範囲を広げるべきであるという医学的な御意見、それからさらには年齢が長ずるに従って鑑別診断がしやすい、鑑別診断ができますと適正な医療ができる、医学管理ができるということから、鑑別診断はぜひ進めるべきである、こういった医学的な内容についてはブロック会議におきましてもまずは御異論はなかったわけです。ただ、もう一つの問題である六歳未満の者を認定の対象にするということにつきましては、それでいいんだという意見もあるし、ちょっと厳しいという意見もあったのは事実でございます。その辺をどうするかということを検討中だと、こういうことでございます。
  194. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと、その判断をいつごろのめどでなさるおつもりでいらっしゃるのか、大臣のお考えを伺います。
  195. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) 経緯につきましてはただいま本田部長から御答弁がなされたとおりでございますが、環境庁といたしましてはこれらの意見を慎重に検討いたしまして、できるだけ早い機会に判断を下したい、かように考えております。
  196. 山中郁子

    ○山中郁子君 先ほど紹介いたしましたブロック会議や、それからまたいろいろ問題があるという御意見もあるし、公害患者の方たちはもう大きな反対をしていらっしゃる。当然のこととして、そういう乱暴な切り捨てをすべきではないということは私どもかねてから主張してきたとおりでございますけれども、その点の慎重というのは、やはり患者の立場に立って、環境庁としての当然やらなければならない患者を守るという観点からの行政一つとしてしっかりと押さえていただくことを要求いたします。  次に、きょうの機会でございますので、大気汚染との関係で、東関東自動車道、通称湾岸道路と言っておりますが、この問題につきまして、環境庁並びに建設省、道路公団にもおいでいただきましたので、解明をしたいと思います。  湾岸道路の千葉市の部分の真砂地区が、東関道からずっと湾岸におりてくるということとの関係、あるいは国道十四号線との関係で大きな問題になっているわけです。ここで、現在の国道十四号線に加えて東関東自動車道が上下六車線建設されるということで、私も現地を何回か視察にも行ってまいりましたけれども、大変な工事なわけですね。いま環境問題で住民から大きな要求が当然出ているわけですけれども、この点について、住民の理解と合意を得た上でということを行政としては常におっしゃるわけだけれども、自治会などとの関係はどういうことになっているのか、まず建設省、公団にお伺いをいたします。
  197. 沓掛哲男

    説明員(沓掛哲男君) お答えいたします。  東関東自動車道の千葉市の真砂地区について申し上げますと、真砂地区につきましては、昭和五十年十一月から地元説明会を開始し、各自治会を通じまして理解が得られるよう説明を重ねてきたところでありますが、昭和五十四年一月に地元の方から申請されておりました公害調停が千葉県の公害審査会で受理され、審理が始められております。調停委員会は現在までに十二回行われ環境対策について審理が進められておりますが、アセスメントにおける予測手法がその主な争点となっております。調停における被申請人である国及び日本道路公団は、環境対策について地元の方に理解を得られるよう十分に説明して、早期の解決が図られるよう努力を重ねてまいりたいと思っております。
  198. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 地元の工事は私どもの市川工事事務所というものが担当しておりまして、現地の自治会とは工事に着手する前から事前に何回も説明会を催すなりあるいはまた向こうからの御注文を聞くなり、また資料を提出いたしましてその都度了解を得つつ仕事を進めておる次第でございます。
  199. 山中郁子

    ○山中郁子君 その中の具体的な問題として私はいまはっきりさせたいのですけれども、確認書を一たん交わしたものを自治会が、これは具体的には検見川ガーデンハイツ自治会、検見川アートホームズ、メゾンドール検見川、この三つの自治会が白紙撤回するということを通告していますね。そのことは御承知ですか。
  200. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 知っております。
  201. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしましたら、住民の合意は得られていないわけですね。
  202. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 検見川ガーデンハイツほか二自治会と確認書を交わしましたけれども、これに至りますまでに各自治会とも十回前後の打ち合わせ会、説明会をやりまして、そして建設時の対応策あるいは将来の内容基本的な考え方につきまして合意に達しました。それを文書にしたいという自治会側の要望もございましたので、千葉市の都市局長の立ち会いのもとに確認書を交わしたわけでございます。ただ、その後自治会側から内容の理解に錯誤があった、誤解をしていました、あるいはまた公団の誠意がないではないかというようなことから、確認書の白紙撤回を求めてまいったわけでございます。それにつきましては、なお私どもとしましては誤認の内容をお聞きいたしまして、それに説明を加えるなり、あるいはまた私ども一層協力を得ようということで地元と接触いたしております。そしてまた、公団の事務所長からも白紙撤回につきましての通知書の返事を差し向けております。
  203. 山中郁子

    ○山中郁子君 それを撤回された内容というのは、私はやはり公団に大きな責任があると思います。これは次に明らかにしますけれども内容的には大気汚染とそれから騒音と両方あるわけです。あわせて私は解明していきたいのですけれども、自治会が白紙撤回したというのは、公団の説明が大変故意にこれに起こってくる被害を小さくさせる印象を与えるような説明を最初したんです。詳しく私は聞いてまいりましたけれども、本当にそのとおりなんです。それで、いずれにいたしましても、現状で四十キロの制限速度ということだけれども、実際に四十キロでなんか走っていませんでしょう、現状としては。そうすると、四十キロということで騒音に関する計算式に現状を当てはめると、たとえば住民の方たちは五十五ホンになると。そして現状はもう六十ホンをかなり超えているわけですね。これは千葉市の調査によってもそうなわけです。そういう事態のもとで公団が現実の測定結果として具体的に申し上げますとガーデンハイツの十階でずっととったものがあるのですが、このデータが、東関東自動車道が開通する昭和六十年、といってもその前にもう開通するわけですけれども、六十年のデータに合わせると六十六ホンになって余り差がない、だからその高速道路が開通しても余り騒音がふえないという主張を公団はされていらっしゃるわけなんですね。だけれども、実際問題として現在走っている車は四十キロでなんか走っていないわけでしょう。それを四十キロとして計算することに大きな矛盾が出てきますわね。その点はどうなんですか。
  204. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 現状の騒音が環境基準を超えておるということは、私どもの測定でもそうなっております。東関東自動車道のいま考えております対策は、両側に八メートルの先折れ型の遮音壁をつくる、中央分離帯に五メートルの遮音壁をつくるというのと、それから沿道に築堤あるいは緑地帯を築造していくということで対応を図っておるわけでございます。先生のお尋ねの四十キロと申しますのは、東関東道ではなくて、国道十四号の方であろうと思いますが、それにつきましては現在のところ四十キロという速度で計算をしております。
  205. 山中郁子

    ○山中郁子君 私が申し上げるのは、四十キロでなんか走っていないわけでしょう、現状は。四十キロでなんか走っていないのに、将来東関東自動車道が開通したときに、あなた方は、国道の十四号線は制限速度四十キロ、東関東自動車道は制限速度八十キロ、こういうことで計算をして、そして六十六ホンだから予想データで昭和六十年度といまと余り変わりがないということを言って自治会の人たちに反論していらっしゃるでしょう、あなた方の主張になっているでしょう。だけれども、実際問題として現状は四十キロでなんか走っていないし、六十キロは出していますね、国道十四号線でも。そして、東関東自動車道ができれば八十キロの制限だと言ったって、百キロ以上出しますよね。実情は建設省も道路公団もよく御承知でしょう。八十キロでなんかみんな走っていないでしょう、東名にしたって、中央道にしたって。そういうことが矛盾じゃないかと言っているの。片方将来予測として四十キロ制限、八十キロ制限で走るものとして六十六ホンというふうに出していて、そして実際はそうではないのに、それ以上はならないんだから大丈夫だとあなた方はおっしゃるけれども、住民の人たちの言うとおりだと思うんですよ。それじゃ、政府の責任で、道路公団、建設省の責任で絶対四十キロ以上は出させない、あるいは八十キロ以上は出させないという保証があるのかと言えば、これは常識的に考えてないでしょう。
  206. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 確かに現状では制限速度よりも高いというスピードで走っているのがあると思います。しかしながら、昭和六十年度におきまして、先生六十六ホンとおっしゃいましたけれども、現在私どもの計算では五十六ホンということになっております。それで、現実の数値と走行速度との差はございますけれども、これはまた私どもの交通の規制なりその他の手法でもって下げていきたいと思っております。
  207. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一度言って。
  208. 大島哲男

    参考人大島哲男君) スピードにつきましては交通規制なりあるいは指導によりまして下げていきたいというふうに考えております。
  209. 山中郁子

    ○山中郁子君 あなた方は結局四十キロ制限、八十キロ制限で予測データ出しているのでしょう。やはりそれは矛盾していますでしょう、そういう出し方は。現状に合わせて出すべきじゃないですか。
  210. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 私どもは計算の過程といたしまして一応決められた速度で計算することにしております。
  211. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから、簡単に言えば、将来のデータ、予測される六十年という時期には自動車がどのくらい通るかという予測データがあるわけでしょう。それで、自動車が四十キロ制限のところでは四十キロ制限で走り、八十キロ制限のところでは八十キロ制限で走る、その結果もたらされる騒音が何ホンであるかという数値を出しても、だからそれが六十六ホンで現状と変わらないというふうに出しても、それだったら実際はそうはならないでしょうと言うの。それじゃちっとも解決にならないでしょうと言うの。あなた方が四十キロ以上絶対に出させないという保証がない限りはね。そこの理屈はわかるでしょう。
  212. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 現実のスピードが確かに高いことは事実でございます。だけれども、私どもの計算の手法といたしましては、やはり定めた設計スピードの八十キロあるいは規制スピードの四十キロということで計算をやってきております。
  213. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、環境庁に伺いますけれども、基準というのはそういうものとして出していらっしゃるのですか。そんなはずはないでしょう。実際にそれ以上超えてはならぬというのが基準でしょう。
  214. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 環境基準と申しますのは、人の健康を保護し、また生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準として決めてございます。
  215. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから、望ましい基準というのは、実際の速度とそれから速度制限の速度と違いが出てくるみたいなものであってはならないわけでしょう。実際に走ってそしてそこから出てくる騒音はこの基準が望ましい、目指す、守る、どういう言い方でもいいですよ、そういうものでしょう。
  216. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 私どもといたしましては、環境基準を守っていただくためには、交通規制、あるいは遮音壁を設けるとか、いろいろ手だてをしまして環境基準を守っていただくということになるわけでございます。
  217. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから、遮音壁をつくるとかいろいろしても、なおかついまの建設省の対応では基準を超えるんです。そのことははっきりしているから、だから住民の方たちがそれでは困ると言って、たとえばドームにするとかそういう要求を出しているわけなのね。それについて建設省、道路公団は、口では住民の理解を得るようにこれからも努めますとおっしゃるけれども、そういう大きな隔たりがあって問題があるにもかかわらず、作業をどんどん進めているんですよ。現実に毎日あそこで大工事が行われているの。それをやめた上で十分話し合って、客観的にも住民の人たちも納得できる手だてがとられるという見通しが出て、初めて合意を得たということになるんですね。建設省、そうじゃないですか。
  218. 沓掛哲男

    説明員(沓掛哲男君) いま先生のおっしゃられた規制速度と実際の速度にはいま幾分の差があることは事実かとは思いますが、あくまでも規制速度を守っていただくべきものでございまして、こういう環境上重要なところであれば、交通規制及び取り締まりを含めて総合的に公安委員会等に要請して厳守させていただくように、そういう総合的な対策の中で私たちは環境基準を守るように努力していく。それで先生いま環境基準を超えることが多いようにおっしゃられましたが、たとえば真砂町の地区はそういう一部はございますが、ほとんどの場合において夜間は五十ホン以下になるわけでございます。ほんの一部の高層のところ、五、六階以上の道路に面した一部の区間で数ホンふえるところが出てこようかと思いますが、そういう面については総合的な対策で対応してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  219. 山中郁子

    ○山中郁子君 時間の関係で詳しく申し上げることができないのは残念なんですけれども、わずかあるなんてものじゃないんですよ。それはあなた方の資料だってそうですし、千葉市でとった資料だってそうなんです。それと、いま建設省は総合的に絶対に制限速度を守らせるということで対処する以外にないとおっしゃったけれども、それじゃいまそれができていないのはどういうことなんですか。いま基準を上回っているじゃないですか。あなた方そういう理屈をおっしゃるなら、国道十四号線は国の道なんだからいまやらせなさいよ。それをいまやってごらんなさいよ。そんな理屈を言うものじゃないですよ。
  220. 沓掛哲男

    説明員(沓掛哲男君) 速度制限の方は公安委員会の権限でございまして、私たちも公安委員会にお願いするという立場でございますので、そういう点ではいろいろお願いはしておるわけでございますが……
  221. 山中郁子

    ○山中郁子君 できないじゃないのよ。
  222. 沓掛哲男

    説明員(沓掛哲男君) まあ公安委員会そのものにおいてもいろいろ人その他の関係で十分でないことは現状のようでありますが、こういう公害等でむずかしいところについては重ねてそういう点についてお願いするということをしたいと思っています。
  223. 山中郁子

    ○山中郁子君 無責任なことを言っちゃいけませんよ。この東関道、湾岸道路は建設省の工事でしょう。道路公団がやっているのでしょう。それであなた方いま一生懸命公安にお願いしている。だけれども、実際には守られていないんでしょう。これがたとえば六十年なら六十年に守られるということをあなたの責任でそれじゃ言えるのですか、お願いしていてもなかなかできないものが。
  224. 沓掛哲男

    説明員(沓掛哲男君) それぞれの権限に応じて総合的に環境を守っていく、環境を保全していくということでございまして、速度規制、その取り締まり等は公安委員会の権限に属するものでございますので、そういう方面にはいろいろお願いしてまいりたいということでございます。
  225. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一つ、公団が住民に説明するに当たって、大気汚染関係でも大変いろいろ問題のある説明をしたんです。このことについてはあなた方もその後宣伝のパンフを訂正なすったわね、市議会で問題になって。ここでは〇・〇〇二ppmにしかならぬと、こういうふうに受け取れる説明をしているんです。だから、住民の方は〇・〇〇二ppmだと思ったわけね。そういうふうに誤解したわけです。そうしたら、そうじゃなくて、東関東自動車道による排出分がその分であって、現状に上積みされるわけよね。そういう大きな間違った、間違われることが当然な資料を渡して、そして住民の合意を得たと、こうおっしゃっているわけね。この問題が追及されて、あなた方はまたその部分を取ったですね。とった資料を出し直していますでしょう、このリーフをね。それはそこのところが問題だからということを公団自身が認められたことだと思うのですね。その点はどうですか。その上に立って自治会側、住民側から白紙撤回の要求が出ているのですよ。そのことはちゃんと自治会側の要求の中ではっきりしているわけです。その上に立って誠意を持って対応するということでなければならないと思いますけれども、どうですか。
  226. 大島哲男

    参考人大島哲男君) ただいまの〇・〇〇二ppmという数字でございますけれども、これにつきましては初めから「国道十四号および東関東自動車道による(NO2)濃度の予測」ということで説明してございまして、これにプラスバックグラウンドの数値がございますよということでそういう説明をしております。
  227. 山中郁子

    ○山中郁子君 だけれども、それがこういうふうに誤解をされるようにできていることについて問題になったからつくり直したわけでしょう。ここを取ったわけでしょう。あなた方二度目につくったときにはこれを取りましたね。そこのところを私は指摘しているわけです。それで、問題は、この大気汚染の問題について何にも方策がないでしょう。この前も私現地の事務所でお話を伺ったのですけれども、騒音の方については、やれ防音壁をつくるとか、築堤をするとか、いろいろおっしゃるわけ。そのことはいま申し上げましたような問題があります。だけれども大気汚染については何にも措置をとらない、とりょうがないと、こういうふうにおっしゃっていましたけれども、その点どうなんですか。
  228. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 大気汚染につきましては、現在の排出基準が車につきましてはある程度できておりますが、それに伴いまして現在のNO2の濃度はぎりぎりございますけれども大体限度内に入っております。これがその他の排出基準等もできてまいりまして規制が進みますと、六十年度におきましては限度内に入るという見通しになっております。
  229. 山中郁子

    ○山中郁子君 具体的な数字をそれじゃちょっとおっしゃってください。何の根拠によってそういうことが言えるんですか、限度内に入るということが。
  230. 大島哲男

    参考人大島哲男君) 京葉湾岸道路に起因するものは、道路端で約〇・〇〇五ppm、それから道路端から約七十メーターないし百メーターの付近で約〇・〇〇二ppmを予測しております。これにバックグラウンド濃度といたしましておよそ〇・〇二三ppmを予測しております。これを合わせまして〇・〇二五ppm程度というふうに考えおてるわけであります。
  231. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はここで千葉市が測定したものを持っているんで、これはあなたの方も知っていらっしゃると思うのですけれども、五十三年の十二月四日から二十日までの十七日間のデータなんですよね。この間の平均値は〇・〇五九で、環境基準〇・〇六を超えた日が九日間も十七日中にあるんです、実際に。これは知っていらっしゃるでしょう。千葉市の測定は、稲毛公務員住宅とか幾つかあります。現状でもそうなっているんですよ。現状でもそうなっているところへ、あなた方がおっしゃる〇・〇〇二ppmがふえる。そうしたら、当然基準内におさめられるということはあり得ないでしょう。十七日のうちに九日間もあるんですよ。そして、公団はこういうふうにおっしゃっているの。いま実際の五十四年度の窒素酸化物の排出量とNO2の汚染との関係を言って、四十九年は窒素酸化物の排出量は〇・二三トンだというわけですね。そしてこれが五十三年には〇・一五トンになるし、五十四年には〇・一三トンになるし、六十年には〇・一七トンになるから、いまよりも減るのだからふえないと、こういうふうにおっしゃる。何にも根拠がなくていまよりも減るのだから大丈夫なんだということで住民が納得できるはずがないでしょう。それ以上に信懲性のある計算をなすっているのなら、それをちゃんと示すべきなんです。していないから、要するに総排出量の予測がいまより減ると、こうおっしゃるけれども、いまでさえこういうふうにしてオーバーしている数がたくさん出ているわけでしょう。だったら、現在との対応で言えば、NO2はふえるというふうに判断せざるを得ないですね。それに対して何の手だてもしないままに、これを開通させるためにいま工事を進めている。こういう実態は、やはりもう一度きちんとアセスメントをしなければいけない問題じゃないですか。
  232. 大島哲男

    参考人大島哲男君) アセスメントにつきましては、この一月に作成いたしまして、その調査報告書を千葉県知事の方に提出してございます。現在検討願っておる最中でございます。
  233. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしたら環境庁長官にお尋ねいたしますが、いま千葉県で検討しているという状況なのに、工事はどんどん進んでいるんです。まあこのことだけをとってみてもこういうことでは環境保全ができないことはあたりまえでしょう。どうですか、その点は。
  234. 三浦大助

    政府委員(三浦大助君) 実は、先生指摘の問題は、私ども現地で問題があるというお話は漠然と承っておりましたのですが、この問題の細かいことにつきましては、衆議院の予算委員会の分科会、昨日の衆議院の公環特、ここでいろいろ問題が出てまいりまして、そこで詳しく私ども知ったわけなのでございます。  いま公団の方からも御答弁がございましたように、建設省と道路公団、が実施いたしておりました環境影響調査報告書が一月に千葉県の方に出ておるそうでございます。私の方で千葉県の方とまた連絡をとりまして、ひとつ千葉県の方の考えも固まったところで御相談申し上げようかと、こういうことでおりますが、何せここには先生の御指摘もございましたように稲毛に大気の測定局がございます。これは公務員団地でございますけれども、ここが私どもとしては環境基準の上限すれすれの非常に大変なところであるという認識に立って、これから千葉の方のいろいろ御意見も聞いてまいりたいというふうに考えております。
  235. 山中郁子

    ○山中郁子君 最後に長官にお願いをしたいのですけれども、きのうの衆議院の委員会長官現地にも調査に行くというふうにお約束をなさっていらっしゃいました。ぜひこれはできるだけ早く行っていただきたいと思います。  いまお聞きになってもおわかりいただけますように、そういうふうに問題がたくさんあって、そして環境基準が守られないということがはっきりしているという住民の疑問なり批判なりに、根拠を持った答え方がされていないわけでしょう。少なくとも県に出して検討してもらっているこの時期にどんどん工事だけは進めるということじゃ、結局既成事実をつくるということで、住民の不信感というのはもう頂点に達しているんです。その意味で、政府として建設大臣とも協議をしていただいて、基本的にはその問題がはっきりするまで工事は一時中止すべきだ。そして、十分な合意ということを前提にして解決を図るということを、ぜひとも環境庁長官として建設大臣とも協議をして、視察も踏まえた上での善処を早急に積極的に取り組んでいただきたいと思いますので、そのお約束をお願いいたします。
  236. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) お答えさせていただきます。  私は、交通公害問題は、今日の大きな社会問題であり、また一九八〇年代の環境行政の重要な柱であると、かように考えておるような次第でございます。また、地元のことで大変恐縮でございますが、千葉県同様私の地元埼玉県も自動車の渡り廊下でございまして、関係地域住民は大変迷惑をこうむっておるような次第でございます。そこで、私は、長官になる前からこの問題につきましては深い関心を持ちまして、昨年の暮れに、首都圏と近畿圏を結ぶ東名高速道路の川崎インターチェンジを中心といたしまして、特に大型トラック、ディーゼルカー、これに対しまして物流対策も含めまして視察をいたしまして、これらが典型七公害のうちの三つの公害、騒音、振動、大気汚染等々を占めておる実態を見まして、私は地域住民の皆様方がこれがために大変迷惑を受けておるという実態を深く理解いたしたような次第でございます。環境庁におきましては現在検討会を設けまして鋭意検討しておりますし、また、私といたしましても、この問題をあらゆる角度からひとつ勉強したいということで、環境庁の中に交通問題に関する懇話会というものを設けまして、第一回目の会合を持ち、また来る四月中ごろに二回目の会合を持って、その結論を得て七月ごろをめどに中公審に対しましても諮問をいたしたいと、かように考えておるような次第でございます。  先ほど来の御質疑を拝聴いたしまして、非常に深刻な問題であるということを深く理解いたしました。そこで、いずれ早い機会に現地も視察をさしてもらったり、また千葉県における検討の結果等踏まえて、いろいろ環境庁といたしましても前向きで対処してまいりたいと思います。
  237. 山中郁子

    ○山中郁子君 建設省ともね。
  238. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) はい。
  239. 小山一平

    委員長小山一平君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 小山一平

    委員長小山一平君) 御異議ないと認めます。  山中君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。  この際、本修正案を議題とし、山中君から修正案の趣旨説明を求めます。山中君。
  241. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は日本共産党を代表して、公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する私たちの修正案の提案理由とその概要について御説明いたします。  政府案は、補償費等の一部に充てるため、「自動車重量税の収入見込額の一部に相当する金額公害健康被害補償協会に対して交付する」という四十九年度以来の臨時措置を、五十一年、五十三年に続き三たび三年間延長するというものであります。  日本共産党は、との臨時措置を決めた四十九年、五十一年、五十三年の過去三回の審議におきまして、この自動車重量税収の一部引き当て措置は一般会計から支出される国費でもって補償費を負担することであり、自動車製造企業を免罪し、ユーザーに責任を転嫁するものであることを指摘し、これに強く反対し、修正案を提出いたしました。しかしながら、政府国会における本委員会の附帯決議さえ三たびにわたって無視し、三たびこの臨時措置の延長を行おうとするのはきわめて遺憾であります。  さらに、今回のこの臨時措置の無原則的な延長は、本補償制度の持つ矛盾、すなわち窒素酸化物の排出を根拠に自動車の補償費負担を決めながら、この窒素酸化物を地域指定要件としないという矛盾を長期継続に持ち込むものであります。このため、一方で窒素酸化物を地域指定要件としないことによって多くの公害患者を切り捨てており、他方では自動車からの窒素酸化物の排出を理由にして補償費の二割が自動車重量税から支出され、汚染原因者負担の原則に反し、公害の原因企業を二重に利するものであります。  以上の理由から、本制度発足以来の問題である公害保健福祉事業等にある公費負担の解消を含め、窒素酸化物を地域指定要件とし、公害患者の不当な切り捨てをなくし、また自動車製造企業の補償責任を明確にする修正案を提出する次第であります。  次に、修正案の概要を御説明いたします。  第一は、ばい煙発生施設等の設置者に対する汚染負荷量賦課金の賦課対象物質に、現行の硫黄酸化物とともに新たに窒素酸化物を法定することにより、窒素酸化物が被害発生の原因物質であることを明確にし、これを地域指定要件とすることといたしております。  第二は、補償費等の一部に充てるため、五十五年度、五十六年度、五十七年度の臨時措置として、輸入業者を含む自動車製造業者から賦課金を正当に徴収することとし、その賦課金の額は、自動車の種別、構造、総排気量、汚染物質の排出量等を勘案して政令で定める金額に出荷台数を乗じて算定することといたしております。  第三は、公害保健福祉事業費、地方公共団体の補償給付支給事務費及び公害健康被害補償協会の事務費にある公費負担を全廃し、これを企業負担とすることといたしております。  以上の点を十分御理解いただき、慎重に御審議の上、速やかに可決されるようお願いいたしまして、日本共産党を代表しての修正案の提案理由とその概要の説明を終わります。
  242. 小山一平

    委員長小山一平君) 以上で趣旨説明が終わりました。——別に御発言もないようでありますので、これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別にご発言もないようですから、討論はないものと認め、これより採決に入ります。  まず、山中君提出の修正案を問題に供します。  山中君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  243. 小山一平

    委員長小山一平君) 少数と認めます。よって、山中君提出の修正案は否決されました。  次に、原案全部を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  244. 小山一平

    委員長小山一平君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  坂倉君から発言を求められておりますので、これを許します。坂倉君。
  245. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 私は、ただいま可決されました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党、参議院クラブ、各派共同提案による附帯決議案の提出をいたします。  案文を朗読いたします。    公害健康被害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一、公害による健康その他の被害未然防止するため、発生源対策強化及び環境影響評価制度の確立を図ること。  二、昭和五十八年度以降における費用徴収方法については、汚染の原因者負担の原則にのつとるとともに、発生源の公害防除の努力が十分反映されることを重点においた方策の確立に努めること。  三、幹線道路周辺における環境の改善を図るため、バス・トラック等の自動車に係る窒素酸化物、粒子状物質等の排出ガス及び騒音の規制をさらに一層強化するとともに、総合的な交通公害対策を推進すること。  四、工場等固定発生源から排出される窒素酸化物の規制については、環境基準の達成が困難と思われる地域において総量規制方式の早期実現に努めるとともに、浮遊粒子状物質対策強化すること。  五、最近における都市型複合汚染に対処するため、窒素酸化物等についても健康被害との因果関係を究明し、その結果に基づいて地域指定見直しを行うこと。  六、ぜん息性気管支炎の認定要件については、患者の救済に万全を期する立場で慎重に対処すること。  七、補償給付の改善を行うとともに、公害保健福祉事業の実施については、関係地域住民並びに患者の意見を尊重してその充実強化を図ること。  八、国立水俣病研究センターについては、その機能が十分に発揮されるよう研究者の確保等、早急に体制を整備するとともに、研究成果をふまえて水俣病の治療体制の充実についても検討すること。  九、本制度の対象となつていない騒音、振動等による健康被害及び財産被害についても、その実態の把握に努め、被害者補償制度を早急に確立するよう検討すること。   右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同のほどよろしくお願いいたします。
  246. 小山一平

    委員長小山一平君) ただいま坂倉君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  247. 小山一平

    委員長小山一平君) 全会一致と認めます。よって、坂倉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  この際、土屋環境庁長官に申し上げます。  ただいま公害健康被害補償法の一部を改正する法律案についての附帯決議案が全会一致で本委員会の決議とすることに決定いたしました。この決議は、各会派が慎重に検討した結果決定したものであり、この法案と一体をなすものであります。今日までややもすれば附帯決議が尊重されず、形骸化する傾向にあることにかんがみ、政府はこの決議に対し誠意をもって速やかに善処されるよう特に申し上げておきます。土屋環境庁長官
  248. 土屋義彦

    国務大臣土屋義彦君) ただいまの決議に対しましては、その趣旨を体しまして最大限の努力をいたします。
  249. 小山一平

    委員長小山一平君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 小山一平

    委員長小山一平君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十分散会      —————・—————