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1980-05-13 第91回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年五月十三日(火曜日)    午前十時七分開会     —————————————    委員異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      衛藤征士郎君     菅野 儀作君      浅野  拡君     秦野  章君      岩上 二郎君     安孫子藤吉君     久次米健太郎君     大鷹 淑子君      伊江 朝雄君     夏目 忠雄君  四月二十八日     辞任         補欠選任      夏目 忠雄君     二木 謙吾君  五月六日     辞任         補欠選任      亀長 友義君     田原 武雄君  五月七日     辞任         補欠選任      田原 武雄君     亀長 友義君      田中寿美子君     片山 甚市君  五月八日     辞任         補欠選任      亀長 友義君     坂野 重信君      片山 甚市君     田中寿美子君      小野  明君     野口 忠夫君  五月九日     辞任         補欠選任      坂野 重信君     亀長 友義君      野口 忠夫君     小野  明君  五月十二日     辞任         補欠選任      二木 謙吾君     平井 卓志君  五月十三日     辞任         補欠選任      平井 卓志君     坂元 親男君      安孫子藤吉君     浅野  拡君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石破 二朗君     理 事                 稲嶺 一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 浅野  拡君                 大鷹 淑子君                 亀長 友義君                 坂元 親男君                 町村 金五君                 田中寿美子君                 立木  洋君                 藤井 恒男君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  大来佐武郎君    政府委員        外務大臣官房審        議官       三宅 和助君        外務大臣官房審        議官       山田 中正君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中南米局        長        大鷹  正君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君        労働省婦人少年        局長       高橋 久子君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      池田 久克君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○航空業務に関する日本国ニュー・ジーランド  との間の協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○航空業務に関する日本国バングラデシュ人民  共和国との間の協定締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○航空業務に関する日本国フィジーとの間の協  定の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○航空業務に関する日本国スペインとの間の協  定の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○千九百六十九年の船舶トン数測度に関する  国際条約締結について承認を求めるの件(内  閣提出衆議院送付) ○千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名さ  れた国際博覧会に関する条約改正する議定書  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○千九百七十九年の国際天然ゴム協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送  付) ○国際連合工業開発機関憲章締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国フィリピン共和国との間の小包郵便約  定の締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国フィリピン共和国との間の友好通商航  海条約締結について承認を求めるの件(内閣  提出衆議院送付) ○ILO未批准条約等批准促進に関する請願  (第一六八一号外一四六件) ○日本国平和宣言に関する請願(第二八〇二号外  一七件) ○世界恒久平和の確立に関する請願(第三三七五  号外三件) ○継続調査要求に関する件     —————————————
  2. 石破二朗

    委員長石破二朗君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十二日、二木謙吾君が委員辞任され、その補欠として平井卓志君が選任されました。     —————————————
  3. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 航空業務に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国バングラデシュ人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国フィジーとの間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国スペインとの間の協定締結について承認を求めるの件、千九百六十九年の船舶トン数測度に関する国際条約締結について承認を求めるの件、千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名された国際博覧会に関する条約改正する議定書締結について承認を求めるの件、千九百七十九年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件、国際連合工業開発機関憲章締結について承認を求めるの件、日本国フィリピン共和国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件、日本国フィリピン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件、以上十件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。大来外務大臣
  4. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま議題となりました航空業務に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国ニュージーランドとの間の直通航空業務開設に関しましては、昭和四十九年にニュージーランドより協定締結希望が表明されて以来種々の機会話し合いが行われてまいりました。政府といたしましては、近年における同国との経済関係の順調な発展及び同国が大洋州地域における航空路要衝一つであることにかんがみ、協定締結のための交渉に応ずることとし、昨年十一月本件交渉を行いました。この交渉におきまして協定案文について最終的に合意を見ましたので、本年一月、大平総理大臣ニュージーランドを公式訪問いたしました際に、この協定署名が行われました。  この協定は、わが国ニュージーランドとの間の定期航空業務開設することを目的としておりまして、そのための権利相互に許与すること、業務開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めております。また、この協定は、わが国署名した航空協定としては三十二番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定形式内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国友好協力関係強化に資するとともに、両国間を直結する航空路開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って顕著な増大を見せている両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国バングラデシュ人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国バングラデシュ人民共和国との間の直通航空業務開設に関しましては、昭和五十一年七月にバングラデシュ人民共和国より申し入れがあって以来話し合いが行われてまいりました。政府といたしましては、昭和五十二年九月のダッカにおける日航機ハイジャック事件に際し、わが国は、事件解決のため、バングラデシュ人民共和国政府より多大の協力を得たこともあり、また、同国との関係強化必要性にかんがみ、協定締結のための交渉に応ずることとし、昨年七月から十二月にかけて協定締結のための交渉を行いました。この交渉におきまして協定案文について最終的に合意に達しましたので、本年二月、本件協定署名ダッカにおいて行われました。  この協定は、わが国バングラデシュ人民共和国との間の定期航空業務開設することを目的としておりまして、そのための権利相互に許与すること、業務開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、わが国署名した航空協定としては三十三番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定形式内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国友好協力関係強化に資するとともに、両国間を直結する航空路開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って顕著な増大を見せている両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国フィジーとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国フィジーとの間の直通航空業務開設に関しましては、昭和四十九年三月にフィジー政府より航空協定締結についての希望が表明されました。これに対し、政府といたしましては、同国南太平洋島嶼諸国を結ぶ航空路要衝一つであり、特にわが国ニュージーランド(オークランド)との航空路中間地点としての同国重要性にかんがみ、また、経済技術協力分野を中心とした両国関係が着実に発展してきていることを考慮し、右交渉を行うこととし、本年二月東京においてフィジー政府との間で協定締結のための交渉を行いました。その結果、本件協定案文について最終的に合意に達しましたので、本年三月十日スヴァにおいて、わが方大鷹フィジー大使先方ヴァカトラ観光・運輸・民間航空大臣との間で署名を行いました。  この協定は、わが国フィジーとの間の定期航空業務開設することを目的としておりまして、そのための権利相互に許与すること、業務開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、わが国署名した航空協定としては三十四番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定形式内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国友好協力関係強化に資するとともに、両国間を直結する航空路開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って顕著な増大を見せている両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国スペインとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国スペインとの間の直通航空業務開設に関しましては、昭和四十四年以来、スペイン側より希望が表明されてまいりましたが、近年に至り、両国間の貿易投資等経済関係が緊密化し、また、両国間の往来も増加するに及び、政府は、協定締結交渉を行うこととし、昭和五十四年四月以降スペイン政府との間で本件交渉を行ってまいりました。その結果、本年一月協定案文につき最終的合意に達しましたので、本年三月十八日マドリッドにおいて、わが方横田駐スペイン大使先方プーチ外務次官との間で署名を行いました。  この協定は、わが国スペインとの間の定期航空業務開設することを目的としておりまして、そのための権利相互に許与すること、業務開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、わが国署名した航空協定としては三十五番目のものでありまして、わが国が従来締結した多くの航空協定形式内容においてほぼ同様のものであります。  この協定は、両国友好協力関係強化に資するとともに、両国間を直結する航空路開設することによって、拡大しつつある貿易経済関係に伴って顕著な増大を見せている両国間の人的及び物的交流の一層の増進に役立つものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百六十九年の船舶トン数測度に関する国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  船舶トン数は、船舶安全規制適用基準として、また、入港した船舶に対する課税及び手数料徴収基準として用いられております。したがいまして、各国の船舶に対する公正な取り扱いを期するためにトン数測度基準を国際的に統一する必要性については、古くから認識されてまいりました。この条約は、このような認識を背景として、昭和四十四年六月にロンドンにおいて採択されたものであり、締約国が自国の船舶トン数算定に関して用いるべき技術的規則を定めるとともに、条約に従ってトン数算定が行われたことを証明する証書の発給及び証書の互認等について規定しております。  この条約には、本年二月二十日現在、四十一ヵ国が締約国となっておりますが、発効要件は満たされるに至っておりません。  わが国がこの条約締結することは、船舶トン数測度基準の統一に関する国際協力を推進するため、また、証書の互認により船舶の運航上の不便を除去するために有意義であるとともに、海運及び造船の分野において国際的に重要な地位を占めるわが国に対する国際的な期待にこたえるためにもきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名された国際博覧会に関する条約改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この議定書は、国際博覧会の秩序ある開催及び運営を確保する目的をもって作成されました千九百二十八年の国際博覧会条約内容を今日の要請に応ずるように改正し、並びに整合性のある単一の文書を作成するために昭和四十七年十一月三十日にパリで作成されたものであります。この議定書は、現行国際博覧会条約締約国のうち二十九ヵ国が締結した日に効力を生ずることになっておりますが、昭和五十五年三月一日現在二十八ヵ国が締約国となっておりますので、あと一ヵ国の締結をもって発効することになります。  わが国は、昭和四十年に現行条約に加入して以来、現行条約のもとに二回の国際博覧会わが国において開催し、他の締約国において開催されました国際博覧会にも積極的に参加してまいりました。また、今後筑波において特別博覧会開催することが計画されておりますので、わが国がこの議定書締結することは、わが国における今後の国際博覧会開催について博覧会国際事務局及び各締約国の一層の協力を得るためにもきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十九年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和四十八年の石油危機を契機とした一次産品問題に対する国際的な関心の高まりを背景として昭和五十一年に開催された第四回国際連合貿易開発会議におきまして、一次産品価格の安定を目的とした一次産品総合計画が採択されました。  天然ゴムは、一次産品総合計画の対象である十八品目の一つでありまして、同計画のもとで交渉が行われた結果、昭和五十四年十月六日にこの協定が採択された次第であります。この協定は、本年十月一日を発効目標日としております。  この協定は、天然ゴム価格が過度に変動することの回避、天然ゴム輸出による収入の安定、天然ゴム供給確保等目的を達成するために緩衝在庫を設置し、在庫の適切な運用を行うこと等について定めております。  この協定締結により、天然ゴム価格が安定し、加盟輸出国生産継続に必要な刺激を与え、もって、天然ゴム継続的な供給が確保されれば、世界第二位の天然ゴム輸入国たるわが国に対しても大きな利益をもたらすものと考えられます。さらに、この協定は、国際連合貿易開発会議の一次産品総合計画のもとで新規に成立した最初の協定でありまして、わが国がこの協定締結することは、天然ゴム主要生産国たるASEAN諸国わが国との友好関係の維持及び増進に貢献することとなるばかりでなく、広くわが国南北問題一般に対する積極的な協力姿勢を示す上においても重要な意義を有すると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、国際連合工業開発機関憲章締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際連合工業開発機関は、開発途上国工業化促進することを目的として国際連合総会が採択した決議に基づき、国際連合自立的機関として昭和四十二年に設立されました。  昭和五十年に、ペルーの首都リマにおいて国際連合工業開発機関の第二回総会開催されまして、新たな国際経済秩序を確立することを目的として、開発途上国工業化原則を確立し及び工業開発分野における広範な活動促進するための工業開発及び工業協力に関するリマ宣言及び行動計画が採択され、その中で同機関専門機関に昇格させるべきことが定められました。これに従い憲章作成交渉が行われた結果、昭和五十四年四月八日にこの憲章が採択された次第であります。この憲章は、本年二月二十六日現在未発効でありますが、七十六ヵ国が署名を了し、うち七ヵ国が締結しております。  この憲章は、国際連合工業開発機関専門機関に改組し、及びその活動強化することを目的としており、機関目的及び任務、内部機関の権限、予算の原則等国際機関の設立のための事項について定めております。  この憲章締結することは、開発途上国基本的課題である工業開発分野における国際協力に貢献する上で、また、開発途上国に対するわが国経済協力を一層積極的に推進する上で有意義であると認められます。  よって、ここに、この憲章締結について御承認を求める次第であります。  次に、日本国フィリピン共和国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  現行日比小包郵便約定は、昭和三十八年に締結されて現在に至っております。  一方、わが国を含む世界の大多数の国が加入している万国郵便連合連合小包郵便約定にはフィリピン共和国は未加入でありますが、この連合小包郵便約定は、現行日比小包郵便約定締結後、三回にわたり改正されました。このため、日比小包郵便約定連合小包郵便約定との間には、小包郵便物取り扱い等に関して不均衡が生じてきております。  以上の状況にかんがみ、政府といたしましては、昭和四十九年七月に新たな連合小包郵便約定が採択された機会をとらえ、現行日比小包郵便約定の全面的な改正を行い、両約定間の不均衡をなくすこととし、昭和五十年四月フィリピン側に対し予備的協議開始を提案いたしました。その後昭和五十四年十一月から正式に改正交渉を行いました結果、約定最終案文について合意をみるに至りましたので、本年三月二十四日にマニラにおいて、日本側田中比大使フィリピン側タナベ郵政庁長官との間で、この約定署名を行った次第であります。  この約定の主要な改正点は、現行約定を体系的に整理するとともに、継ぎ越し権利を規定したこと、小包航空運送料通関料保管料等の料金の額を万国郵便連合の定める最高限度額に結びつけたこと、取り調べ請求等に対する回答を電信によっても行い得るようにしたこと等でありまして、この改正により、現行日比小包郵便約定連合小包郵便約定との間に従来見られた不均衡をなくし、もって、日比両国間の小包郵便物交換業務の一層の円滑化を図りました。  したがいまして、この約定締結することは、小包郵便分野における日比両国協力関係の一層の増進に資するものと考えられます。  よって、ここに、この約定締結について御承認を求める次第であります。  最後に、日本国フィリピン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国フィリピンとの間には、昭和三十五年に署名された友好通商航海条約がありますが、昭和五十一年六月にフィリピン側より、南北問題を初めとする国際経済の新しい動きを両国間の条約に反映させたいとして、新しい条約締結のための交渉を行いたい旨の申し入れがありました。政府としては、このような新条約締結わが国フィリピンとの間の経済関係の一層の発展に資するものであり、また、両国間の友好協力関係を一層助長するための基礎になるとの考慮からこの申し入れに応ずることとし、昭和五十二年三月以来両国政府間で交渉を行いました。その結果、昭和五十四年五月十日にマニラにおいて、わが方大平総理大臣及び園田外務大臣先方マルコス大統領及びロムロ外務大臣との間で、この条約署名調印が行われた次第であります。  この条約は、本文十七ヵ条及び議定書から成っております。この条約は、通商及び航海分野における広範な事項に関して最恵国待遇を保障すること等について規定しているほか、身体及び財産の保護、輸出入数量制限事前通報貿易の拡大のための協力、科学及び技術に関する知識の交換及び利用の促進のための協力海運発展のための協力海洋汚染規制のための協力等についても定めております。また、この条約は、為替管理輸出入制限、関税その他の事項についての最恵国待遇等に関して、ASEAN域内特恵等適用除外とすることに関する規定を有しております。この条約締結により、両国間の経済交流人的交流等がさらに安定的な基盤の上に促進されるとともに、両国間の友好協力関係を一層助長するための基礎が築かれるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上十件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  6. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 委員異動について御報告いたします。  本日、平井卓志君が委員辞任され、その補欠として坂元親男君が選任されました。     —————————————
  7. 石破二朗

    委員長石破二朗君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 戸叶武

    戸叶武君 大平首相と大来外相とはアメリカの方に飛び、さらにヨーロッパにも行かれたのですが、いま私たちは、中立路線を推進してきたチトー大統領が亡くなってから後の国際情勢の変化に対応しながら、日本の自主外交をどういうふうに進めていかなければならないかということに対して、大平さんなり、大来さんなりが苦悩、模索してしている姿はよくわかるのですが、いま日本の国民と大平さんあるいは大来外相との考え方との間には大きなギャップが生まれつつあると思うのであります。それは、日米首脳会談において、問題の中心課題として防衛の問題なり石油の問題が出たことはわかるのでありますが、その後の新聞報道やテレビの報道を見ても、日本の国内において国会並びに国民に公表されていないような部分がアメリカと大平さんとの間に主題目として具体的に取り扱われたのではないか、これでは自主外交も何もあったものではないという、このギャップが生まれておるのであります。このことがまず今明日、国会の衆参両院における代表質問の中心課題となると思うのでありますが、大平さんを助けながら根回しをし、同伴しながらこの問題の十分な検討をなされてきたであろうと推定される大来外務大臣から、外交の自主性とそれから日本だけで外交、防衛の問題はやれない、外国との国際的な連帯の配慮をも必要であるというそういう中において、具体的には主としてどのようにアメリカの首脳会談に臨んだか、そうしてどのような難問がそこに横たわっていたか、どのような成果があったか、それを簡単にまず承りたいと思います。
  9. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま戸叶委員から御指摘ございました日本の外交の路線につきまして、いろいろ世界情勢の動いておる中でどういう道を選択するか、これは日本の将来にも関する重要な問題であると私どもも常々考えておるわけでございます。従来から対米関係、米国との外交関係では、日本の経済あるいは安全保障がその他全般的な両国の関係から申しまして、外交の中心課題になっておるわけでございます。昨年以来のイラン問題あるいはアフガニスタン問題等の関連で、いろいろと日本のとるべき立場についてのむずかしい問題が出てきておることは御承知のとおりでございますけれども、今回の総理の訪米におきましては、一つには、価値観を共通にするといいますか、議会制民主主義というようなことにつきまして、日本と米国とヨーロッパ諸国との間に共通の連帯があるというような認識も含めまして相互協力についての話し合いをするということ、それから同時に日本側としても、イラン問題等につきまして、これが世界の平和全体に重大な影響を与える問題でもございますので、米国側に対して平和的な手段による解決を求める、そういう申し入れを大平総理からも行ったわけでございます。  防衛の問題につきましては、これは本来、日本国民自身が決める問題でございまして、日本人が国際情勢をどう認識するか、あるいは日本国民の安全を守るという意味で、現在の段階で何をなすべきかということについての判断が中心になるわけでございますが、同時に、日米安保条約によりまして日米との間には共同防衛の関係がございますので、防衛問題についての日米間の話し合いということも重要な意義を持っておると思います。今回の総理と大統領の会談の中では、大統領の発言の中には中期業務見積もりというような具体的な形では出てまいりませんで、日本政府の中にある計画を早目に達成されればアジアの平和と安定に寄与すると思います、という趣旨の発言が大統領からあったわけでございます。それに対して総理大臣の方からは、日本も従来から防衛については努力を重ねてきておるが今後もこの問題を真剣に検討していきたい、それからさらに、アジアの政治、経済の安定はこの地域の安全保障のためにも重要であって、そういう意味でアジア地域に対する経済的な援助等を通じて安定に寄与してきておるんだという趣旨の発言をされたわけでございます。防衛の問題につきましては、いろいろな報道もございますけれども、全般的に見て従来からのアメリカ側の要請は、日本の国内の一般的な考え方、あるいは平和憲法、専守防衛というような枠組みについては理解して、その上に立っての日本に対する希望の表明であると存じます。そういう意味で、たとえば昭和五十一年度の閣議決定、あるいは国防会議の決定の枠組みを変えるものではない、その中での希望の表明という形で行われておると存じますので、この日米の協力関係におきまして、防衛の分野、日本として具体的にどの程度のことをやるかということは、あくまでも日本の政府自体が決めることであり、その点についての基本的な了解は、米国側もしておると考えておるわけでございます。
  10. 戸叶武

    戸叶武君 日本側で当初考えていた経済問題、特に貿易関係のアンバランスの是正の問題よりも、イラン、イラクの問題から急転直下防衛問題に、防衛強化の問題に入ったということはうなずけるのでございますが、それだけにこの受けとめ方が非常に問題だったと思うのであります。  この首脳会談における大平首相のねらいは、やはりアメリカの土を踏むと同時に、防衛問題並びに石油の問題がメキシコ、カナダ等の訪問を通じてもなかなか簡単には片づかない問題であるということをいやというほど知らされたと思うんです。しかし、いま大来さんが問題点を整理して指摘しましたように、総理の訪米によって問題となった点は、第一に、議会民主主義による政治運営を行っているところの日本、米国及び欧州の先進国間には、共通の連帯があるという一つの認識の上に立って、まず日米首脳会談がなされたのだと思います。  第二に、イラン問題について平和的手段による解決を求めるというこの日本側の主張は、かねがねECの動き等もにらみ合わせて、日本が自主的外交を進めるだけでなく、国際的連帯の足がかりとしてEC諸国とも打ち合わせをして、アメリカに軍事的な暴挙をなさせないような私はかなり強い要望もなしたと推定されておるのです。どうも新聞には全部を話ししない、話ししないから新聞側の推定も加わったところに両方のギャップが私は大変あるのじゃないかと思います。  それから、第三に、防衛問題はわが国民が自主的に決める問題だというふうに大来さんはいま言っておりますし、大平さんもそう考えている模様でありますが、最近の自民党におけるタカ派の日米間におけるこの揺すぶりのやり方及び政府におけるところの一貫しない政治姿勢、これは総裁選挙にも絡みついて、タカ派と言われる暴論をも暴論であるというふうに片づけられない惨めさが、そういうこの不安定な状況を醸し出しているのであると思うのでありますが、この問題に対してはもう少しやはり自民党内においても問題を整理し、みずからの主体性をつくり上げ、野党においてもただ批判だけするのでなくて、北方領土の問題などにおきましても、原則として日本の固有の領土をソ連から返還してもらわなければ、次の平和を保障すべき条件を具備しなければ平和条約を結べないという一点において、共産党すらも大体近寄ってまいったのでありますから、こういう問題は社会党あたりも断固たる統一的な見解を持して、そうして国論を一定した方向に最小限度持っていって、その上に立って立場立場の違いをも、注文をもつくべきであると思うのですが、第一に、内閣、自民党がみずからの日本国における自主外交の主体性を確立しないところにいろいろな憶測が生まれるのだと思います。  それから第四の、中期業務見積もりということでなく、カーターさんの言ったのは、日本国の中にあるところの中期防衛計画というものをもっと早期に促進してもらいたいものだという程度のものであったというふうにされておりますが、この受けとめ方は、新聞においても、新聞記者会談における大平さんの発表、向こう側に言ったこと、国内でいままでまだそのことは一片の計画書であって政治議題にはなっていないのだと言ったこととの間に非常なちぐはぐなものがあるのであります。こういうふうにもうろう的な形において、日本の外交、防衛の問題に責任を持つ内閣としていけると思うかどうか。  この問題は後から質問いたしますが、大来さんは、専守防衛という受け身の形でおって、平和憲法の枠内からはみ出すようなことはないというふうに言われておりますが、大平さんなり、あなたにはそういう見解が根本にはあると思うのであります。それだけにいままで防衛庁長官あたりの部内からの突き上げかどうか知らないが、あるいはアメリカにおける軍部の人たち、あるいは前のシュレシンジャーも日本に遊説に来ておりますが、あるいはブレジンスキー、こういう人たちの接触によって思わず出した発言が日本にはね返ってきているものだとも感じられるのですけれども、その辺に一貫した統一ある見解というものを政府が持たなければ、八岐の大蛇的存在であっては国民も安心してこの外交、防衛の問題をいまの政府にはお任せできないし、海外も、日本の政府は何を考え、何をやろうとしているのかわからぬという不信頼を私は醸し出す大きな原因になると思うのでありますが、そこで、まず第一に個条的に質問いたしますが、議会民主主義は基本においてだれも賛成していますが、いまのアメリカの大統領選挙のあり方、日本の次の総理大臣を生む母体ともなりつつある自民党の総裁選挙のあり方、あの金権腐敗、利権と絡みついた不明朗な形、あれが議会民主主義において、これでいいのだというふうに肯定できるかどうか。国民はすでに、アメリカの知識人も日本の知識人もあきれ返って、この腐敗の極をきわめた選挙、並びに政治のあり方に愛想を尽かしているのですが、大平さんはこの第一の質問において、ただ抽象的に議会民主主義と言っても、このように腐って堕落してしまった非能率なこの議会民主主義をこのままでよいか、それともファシストのえさに上げるか、あるいは暴力革命にゆだねるかというような非常な危険なところにまで来ているということに対して、どのような御認識でありますか。
  11. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これ政治制度の問題になりますけれども、議会制民主主義というものには、御指摘のように、いろいろな弱点があるように私も存じます。ただ、まあいろいろな人間がつくり出す政治制度の中で、結局いずれも完全なもの、理想的なものはないわけですが、相対的に欠点が少ないということになりますと、やはり独裁的な政府よりも、投票によって政権の異動が行われる、そういう議会制民主主義の持つ特徴といいますか、強みというものは、いろんな政治、政体が各国において従来から試みられておりますけれども、やはり一番その人間の尊厳ということとも両立する面があるのじゃないか。  もう一つは、やはり言論の自由というものと選挙というものを通じて、いろいろな欠陥が常に公衆の面前に知らされる、そういう過程を通じて自己浄化作用といいますか、社会の軌道修正力といいますか、そういうものが発揮され得るという点、これは独裁的な政治のもとにおいてはなかなかできないことでございますけれども、そういう意味で言論の自由があるということが、一面では欠陥の指摘を常に白日のもとにさらすということで非常に欠陥が目につきやすいわけでございますが、それが行われない政治制度に比べてやはり大きなすぐれた点を持っておるのではないか。  そういうことで、他にかわるよりよい政治制度というものはなかなか考えられないという意味で、やはり議会制民主主義、いろいろな弊害はあるにしても、これを守っていくべきではないか。ことに、非常に経済のおくれた段階では、やはり強力な政府がいるということが必要だという点もございますけれども、ある程度の経済水準に達した国々の政治制度としては、こういう議会制民主主義というものが他の形態に比べればよりすぐれておるのじゃないか——まあ私、これは個人の意見でございますけれども、そう考えておるわけでございます。
  12. 戸叶武

    戸叶武君 これは政治は常に具体的でなければならないのであって、私は、抽象的な意味における議会民主主義の念仏を申そうとしているのではありません。しかしながら、アメリカの世界政策の中において、いままで反共でありさえするならば軍部独裁の、あるいはその種の独裁政治でもよろしいという形において、各国の政治が発展途上国において腐敗してきた現状というものを、アメリカ自身もこれは困ったことだとしてあわてている面が私はあるのじゃないかと思います。  恐らくは韓国においても、今明日のうちに暴発が起きるであろうということは想像されております。いままでの韓国のあり方というものは、北に備えて反共でありさえするならばそれがアメリカ防衛の一環としての存在であるというふうに容認し、それをあおってきた傾きもありますけれども、民心が離れて軍部独裁の政治というものが、長い習慣から、それから脱皮できない状態になったというときには、それに絶望した学生や青年達が暴発していくという例は、イラン、イラクあるいはかつての中国、かつてのソ連においてもドイツにおいても、至るところで起こった現象です。いまイギリスにおいても、一九一四年の第一次世界戦争の前夜を思わせるような不安定状況に世界がたたき込まれているという説すら有力に新聞で取り扱われておるのでありますが、いまからでは遅い、遅いけれどもそれをどうやって、どこから始めていくかという形においては、もっとソ連なりアメリカなり、謙虚な形で現状に対する客観的な観察と認識をしないと、この全体主義的なものはファシズムと共産主義だけではない、自分みずからがファシズムでないと思い込んでいるアメリカにおいても、メジャーや軍需産業が政治を腐敗させ、動かしている現実は、アメリカだけでなく、世界において暴露されておるんです。その抵抗が世界的な一つの油の原産地に火がついておるのでありまして、バルカンの火薬庫から第一次世界戦争が噴き出したのと違って、油の原産地に火がつくという前夜にいまあるのでありまして、そういう点において最も慎重なる行動をなさなければならない責任感を持っていべきはずのアメリカなりソ連の動きに対しては、世界を挙げて、いわゆる力の外交の権謀術策の限界点に来たという不安感と憤りがいま走っていると思うのであります。  ときに、日本はどっちの方に——アメリカについていくよりほかに日本の行き万はない、これも一つの見解ですが、このアメリカなりソ連なりに反省を求めていくという第三国における動き、あるいはシュミットらを初めとするドイツなりフランスなりのECの国々の、それぞれの立場の違いがあるが、動き、そういうものとどういうふうに結びついて、できるだけ戦争の惨禍を避けたいという考え方を具体的にどのように持っているかを、外務大臣だけの見解でよろしゅうございますが、承りたいと思います。
  13. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私もただいま戸叶委員の御指摘のような点についていろいろ考えさせられてまいったわけでございますが、まあいわゆる第一世界といいますか、超大国、その超大国の動きに対する世界の他の部分のいろいろな疑いなり心配というものが存在しておると存じます。それからまあ第三世界という、この貧しい国々の問題、この間にまあ第二世界がというのが、そういうことになるのかどうかわかりませんが、ただいま御指摘のようなヨーロッパ諸国とか日本とか、そういう国々の役割りが今後の世界の平和を維持していく上に重要性を増しつつあるのではないか。第三世界も超大国に対して強い不信の念を持つ一面、いまの中流国と申しますか、ヨーロッパや日本に対しては比較的話し合いが通じる面を持っておるようにも思うわけでございます。  また共産圏の中でも、東欧諸国からもいろいろと日本に訪ねてまいりますけれども、意見を交換しますと、東欧諸国も非常に強く平和を願っておるという立場があるように印象を受けるわけでございまして、これからの一つ世界のあり方として、たとえば日本と西欧、ヨーロッパ諸国との連帯を強化していくことによって不安定な状態をできるだけ防いでいく、世界の平和の維持を進める、それから第三世界に対するより大きな理解を広げていくという行き方が一つ今後の日本の外交の基本的な方向として考えられるのではないか。そういう意味で、私どももこのイラン問題等を契機といたしまして、西独、フランスその他ヨーロッパ諸国との接触を強めてまいる。今回も大平総理が、たまたまチトー大統領の葬式参列の機会をとらえてシュミット西独首相といろいろ懇談をされた、こういうことも一つの行き方であろうかと考えるわけでございます。
  14. 戸叶武

    戸叶武君 外務大臣が挙げられた中の第二のイラン問題については、平和的手段において解決を求める、このことを原則として、恐らくは大平さんもシュミットさんと会って意見を交換して、わが意を得たりという形で帰ってこられたと思いますが、二十一日から二十二日にかけて大来外務大臣もヨーロッパの方に参りますが、そのときの主たる一つ目的はどこに置きますか。
  15. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは、日仏と日英については定期外相会議の時期が来ておりますので、いずれにしても近いうちにやらなければならないという状況がございましたし、それから二十一日、二日とパリにおきましてIEA、国際エネルギー機関の閣僚理事会がございますので、これに出席する。それからドイツとも前から外相間の懇談を持ちたいという先方の要望、当方の希望もございますので、この日仏、日英、日独の外相会議とIEAの閣僚理事会の出席を目的といたしております。ことに先般のルクセンブルクの外相会議及びその後のECサミット会議で、対イランの措置として、五月十七日までに人質解放について顕著な前進が見られない場合には、各国共同してイランに対する経済制裁措置をとるという約束をいたしておりまして、日本もそれと同調するという立場にございますので、具体的にその動きが、ヨーロッパ側でどういう動きになるか、その点についての意見交換もやってまいりたい、こういうことが目的でございます。
  16. 戸叶武

    戸叶武君 大来さんが言われた防衛問題は国民が自主的に決める問題であるが、問題は、日米間においては日米安保条約がすでにあるのだから、この協力関係ということもあるところまで守らなければならない、またカーター大統領が言われたのは、業務見積もりということでなく日本の中における中期計画を早期に早めてもらいたいのだというような先ほどの御答弁でしたが、日米首脳会談の焦点となった防衛力増強の問題について、大平首相は、米側の要請に対し、真剣に検討すると言っただけにすぎないと答えております。しかしながら、一般国民は、新聞報道及びテレビ等を通じて得た情報をもとに、防衛力増強に一歩踏み込んだと受けとめております。これに対してけさNHKより、外務省首脳の見解として、ある程度の防衛力を強めることなしに自主外交は進められないという意見が放送されました。私は国会に出てくる前にこの放送を聞いて、放送はそれだけでありますが、この外務省首脳の見解というものは直接大来外務大臣から承るのが一番妥当だと思いますので、その内容をいま承りたいと思います。
  17. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 防衛問題につきまして、一つの大きな背景といたしましては、この委員会でも申し上げたかとも思いますが、たとえばいまの安保条約ができました二十年前と比べまして、日米経済力の比率は十対一から十対四に変わってきておる。世界経済の中に占める経済力は当時アメリカが三分の一、三〇%強、日本が三%ちょっとというようなことでございましたが、最近ではアメリカが四分の一弱、日本が八%。これは共産圏を含む世界の経済の総生産から見て、そういう相対的な経済力の変化がこの二十年間に起こっておるという事実が一つございます。二十年前にはアメリカが政治的、軍事的、経済的に圧倒的なウエート、比重を世界の中で持っておったわけでございますが、現在でももちろん世界で最強の国であると思いますけれども、相対的に以前に比べればウエートが下がってきておる。それに対して日本の経済力が大幅に大きくなったという現実が一つございます。それから、やはりソ連の軍事力の増強というのが着々と進行してまいりまして、ことに極東地域に大体全軍事力の三分の一が配備されるようになってまいった。また海上兵力の増強が非常に顕著であるというような現実もあるわけでございます。  まあ、そういった状況のもとで、日本国民としての安全を守るという立場を一体どう考えたらいいかということが基本にあるわけでございまして、これは先ほど来申しておりますように、日本国民自体がどう判断するかということにかかってまいると思いますが、基本的には自衛隊によって最小限の自己防衛能力を維持していく、それから核戦力を中心とするような面での抑止力については日米安保条約というものに依存するということで従来参っておるわけでございまして、この点は今後も変わらないと思うのでございますが、最小限の自己防衛能力というものについてはある程度自分で自分を守るという考え方が必要ではないか。余りよその国に自分の国を守ることをべったりと依存しておるという状態では、自主的な外交ということもなかなかむずかしくなるというような面を考えて、ある程度の増強が必要ではないか。この点で、しかし、そうかといって、平和憲法と専守防衛という大きな枠組み、これは日本国民が戦後行った選択でございまして、これはやはりあくまでも守っていくべきだと。長期的な世界の将来を考えれば、やはり全体的な軍縮と相互の信頼関係における国際関係というものを長期的には目指していかなければならないわけでございまして、そういう意味では日本の立場というのは、あすの世界を先取りする面があると私どもは考えておりますので、一面において自分で自分を守る能力をある程度強める、専守防衛の立場からもう少し強めると。たとえばレーダーサイトが全く攻撃に対して無防備であるとか、海上艦艇が空からの攻撃に対してほとんど防衛能力を持たないという状態では、貴重な税金が本当に有効に使われているかどうかという問題もございます。で、それに対して財政上のいろんな制約がございますが、ある程度のことはこれは国民の持つ優先順位の問題、道路をさらによくする部分を多少いまのレーダーサイトの防衛に回すのがいいのか悪いのかというような問題に具体的にはなってくると思うのでございますが、そういう意味で、大枠を崩さない範囲での防衛能力をある程度強めるということが、やはりいろいろな情勢を考えますと、いまの日本に必要になっておるのではないか。自主的な外交的行動についてもそのことが望ましい面があるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  18. 戸叶武

    戸叶武君 日米首脳会談において防衛庁の中期業務見積もりというものがたたき台のような形で出てきたのに対して、それはそういう形でないというのを外務大臣はしさい先ほどから答弁しておりましたが、この防衛庁の当局の先走りか、この機会に軍備を増強しなけりゃチャンスを失うという焦りからか、しきりに中期業務見積もりの内容というものが外にも漏れてきて、大平さんに聞けばそういうものはないと言い、そのものはまだ一片の紙に書かれた試案にすぎないというような答弁で、内容のない押し問答になっておりましたが、事実上中期業務見積もりという表現ではないにしても、五ヵ年の予定のところを四ヵ年に繰り上げてもらいたいとか、防衛費を対国民総生産の一%まで引き上げることに、事実上防衛強化を認めるならば、努力してもらいたいとか、そういう注文にある程度合意を与えたのではないかという節もあるのですが、外務大臣はそれをどのように受けとめておりますか。
  19. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 今回の会談では先ほど申し上げたようなことでございますが、先般三月に私がワシントンに参りまして、ブラウン長官と会談の際には、防衛庁の中期業務見積もりの一年繰り上げ達成はできないであろうかという希望表明があったわけでございます。そういう過去の経緯を考えますと、恐らくアメリカが期待しておりますのは、一年繰り上げ程度のことを日本側にやってほしいという気持ちではないかと思います。これは五年の見積もりでございまして、昭和五十五年から五十九年まで、それを五十八年に達成できるかどうかということであろうかと思います。しかし、この中期業務見積もりというのも毎年レビューをしていくし、三年ごとにはつくり変えていくというようなたてまえのように私どもも聞いておりまして、いま非常に何といいますか、きちっとしたそういう業務見積もりというものになっておるわけでもない見積もりであろうと思いますので、そういう点で防衛庁でもいろいろ内容に検討を加えているということを聞いておるわけでございます。しかし全体のこの姿として考えますと、いまの中期防衛見積もりを実行いたした場合には五年後に防衛支出のGNPに対する比率が現在の〇・九から一%に上がる、つまり防衛支出の比率が対GNPで〇・一、五年間で上がるということを意味するわけでございますが、米側ブラウン長官の要請というのは、それを五年でなくて四年でできないだろうかということでございます。  この点については、いろいろ世間に誤解もあると思うのでございますけれども、全般的に見て、そのことが大きく日本の従来の防衛に対する考え方を切りかえるんだとか、福祉をやめて防衛に回すんだとかいうことにはならないのではないか。GNPも年間の成長だけでも名目で一〇%、実質で四、五%経済が年々拡大しておるわけでもございますし、考え得る上限を選んでみましてもそれほど従来の経済力の配分、政策の優先に大きな変化をもたらすというようなものではないと存じますし、一方におきまして財政は、いま財政再建の計画の中でできるだけ一般会計の拡大を抑えている、その際に防衛費の伸びが他の費目より大きくなる、こういう問題は確かに出てくると思いますけれども、これからのこの予算の編成、財政上の考慮、それから国民のコンセンサス、国際情勢というような判断をもとにして五十六年度の予算編成の過程で一体この防衛費についてどこまで考えるのか、政府の意思決定が次第に行われていくことになるのじゃないか、それがいまの防衛費の横ばいでいくのか、多少ふやすのか、あるいは一年繰り上げ程度までいくのか、その旗の中でどこに落ちつくのかはこれからの予算編成の過程で決まってまいる性質のものだと思いますが、いずれにしてもマクロ経済的に見れば、国民経済全体のバランスに大きな影響を与えるような変更ではないと言えることだろうかと考えるわけでございます。
  20. 戸叶武

    戸叶武君 いま言われたように、大来さんが考えるようなこれからの予算編成の過程において問題が突き詰められるというのならば別ですが、先ほど大来さんがはしなくも正直に漏らしたように、ブラウン長官と大来外相の会談のときにすら中期業務見積もり、それを五年でなく四年に一年繰り上げ上げてくれないかというような話も出たという、こういう既成事実がありますのを見てもわかるように、私は若いころヨーロッパで、外国の方と、西洋の幽霊と日本の幽霊とはどこが違うかという議論をやったことがありましたが、端的に表現すると、日本の幽霊には足がない、西洋の幽霊には足がある。中期業務見積もり、日本では足がないが外国ではすでにその幽霊が足を持って歩いている。あしからずという形じゃないでしょうが。この幽霊問答のような形で、これは国民が知らない間に日本の防衛問題がアメリカの方の長官や外務大臣において議論せられ、大平さんも大分苦悩したでしょうが、筋道としては、大来さんの言うような一つの常識的な見解というものがあるところもわれわれ耳を傾けることができるのであります。  しかしながら、議会民主政治のあり方として、国民主権の国において、国民を代表する国会においても、この中期業務見積もりというものがあるらしいけれども足がない、アメリカに行くとちゃんと足がついている、これでは全く日本の議会政治というものも頼りげないことであって、やはり防衛庁長官あたりがシビリアンコントロールと言いながら、防衛庁における一つの軍部が、簡単に言うと昔の軍部と余り変わらないような発言をしている人が多いんですが、そういう人たち並びに党内における最終的には憲法改正をやらなければだめなんだ——これは大平さんや大来さんとは大分違います。そういう意味において、無理やりやっても具体的事実をつくり上げて、その積み上げの中にアメリカもバックしていることだし、日本を再軍備的な方向へ持っていかなければならぬという遠大なあほうな計画がなされている向きもあるということをわれわれは警戒しなければならないんです。  ファシズムの台頭期というものはいつもそうであって、第二次世界戦争が起きたときにも、第一次世界戦争が起きたときにおいても、その醸し出した雰囲気というものには共通なものがあるのであって、われわれは戦争かデタントかの問題について、戦争によってこれからの世界が救われるとは思ってないのです。アメリカもソ連も思ってないのです。思ってないから適当なところでSALTにおいて妥協はしていこう、核戦争はなるたけ避けようというところまでは来ているが、他の迷惑は余り考えない。最終的にソ連とアメリカが正面衝突することは避けるけれども、自分たちの勢力圏は拡大していって一向差し支えないのじゃないかと、言うがごとく言わざるがごとく、それを実践しているのがいまの米ソの権謀術策におけるところの世界戦略だと思うのです。これはアメリカではソ連が悪いと言い、ソ連ではアメリカが悪いと言い、中東ではいろんな情報が入っているから、この石油の問題で砂漠の中から黄金を掘り出したように、このアラビアの貧困を救い、アラビアの近代化をなさなければならないというふうに大きな希望を持ってみたところが、よくいろんな材料を集めてみると、いままですでにアメリカのメジャーがアメリカの政治家や財閥を動かしてシャーを——しゃあしゃあとしてどこかでまだ生きているが、ああいう連中をほとんど買収して、そして国民を貧困に陥れ、彼らだけがうまいことをやってきたのだからだまされないぞという不信感と猜疑心というものが、このイランにおいても、その他アラブ全体においても、サウジアラビアなんかにおいてでも根底に王制における危険ということを感じながらも、なおかつやはり私は不信感というものが横溢していると思うのであります。この問題は一気に片づけることは困難でしょう。奇跡に等しいでしょう。しかし、この不信感というものは米ソの対立における相互話し合いが十分でないところから来る不信感以上に、最も深刻に私は中東においては根を張っているのだと思うのであります。  そういう点において、外務省のOBの人たちにも相当憂国の志士的な方はありますけれども、ソ連が二個師団を極東にふやしてきた、日本もこれにたえるだけの軍備を整えなければ、かつて連合国がスウェーデン、ノルウェーを抑えたときに、ソ連はそれと衝突しないで、おもむろに北のフィンランドを抑えてそれから次の変化を待ってドイツに対する抵抗をやり、それから後にヤルタ会議を通じて米英の謀略に同調したるがごとくして日本固有の領土も奪った、中国からもあいまいになっていたところの蒙古を奪い取った、こういうところから中ソ論争も出、日本のソ連との間のまずさというのは、いまごろになってからちょいちょい本当のことを漏らしかけてはいるけれども、ルーズベルト、チャーチル、スターリン、あの秘密謀略協定によってゆがめられた外交が今日までアジアにおいて尾を引き、中国も苦しみ、日本も苦しみ、フランスも最後の段階において、連合国の有力な国であるフランスと中国は戦力低下を名としてヤルタ会議からはオミットされ、しかも中国を入れると情報が漏れる危険性があるというので、そういう侮辱を受けながら中国は戦争に利用されただけで得るところはなかった。こういう現実の歴史を、自分に都合よいところだけうまく宣伝しているけれども、世界がみんなわかってしまった。だれも米ソの操るままに戦争に入ったならば、ひどい目に遭うのはおれたちだけであると、考え方は違うけれども、その警戒心はアメリカべったりと思われるようなエジプトにもイスラエルにもある、サウジアラビアにもある。強烈な懐疑心と抵抗がイランにもある、あるいはイラクにもある。イラクの保守派がソ連系と結んでも反米的な抵抗に似たものをやっていることや、いろいろ中東の問題も複雑多岐であるが、真実は何か。これは大国によってほとんど自分に都合のいいような余地が残されておりますけれども、われわれが痛いところを突くのじゃないが、もっとまともに第二次世界戦争後における権謀術策のあの外交政策をソ連なりアメリカなりが徐々にでもいいから反省して解消していかなければ、戦争以上の悲惨な戦いが、ゲリラ的な抵抗によって混乱が、私は中東を中心に置いて韓国でもどこでも噴き上がってくる危険性を感ずるのであります。  どうぞそういう意味において、私は、大来さんやあるいは大平さんが苦悩し、模索し、あるいは遠慮し過ぎてみたり、本当のことはこうだと小さく言ったりする悩みを持っていますが、あのコペルニクス的な転回を世界観において与えたコペルニクスやガリレオの徒が、神聖ローマ帝国の圧迫の中において研究を続けたときには、いつも真実を語って、その後でバット・ノーということを書き連ねれば弾圧を免れたんです。真実はここに書いてあるとおりだが、しかし、それを本当のことを言うと十字架にかけられちゃうから、バット・ノーとしまいの方に小さな文字で書いたということであります。あの世界観ですら、宇宙観ですらアレクサンドリアのアラブの科学者においてその示唆は与えられたものであって、ルネッサンスの独善の中からコペルニクスやガリレオだけが探索したものではないのです。世界の至るところから、素朴であっても真実以外にものを動かすものはないというこの声が、いま音を立てて私は聞こえるような気がします。むしろこっけいで知らないのは本人同士であって、だまされているやつがみんな大体おれたちはだまされているから気をつけろといいながら気をつけているのが現実じゃないかと思うのであります。こういう第一次世界戦争や第二次世界戦争で非常につらい目に遭ったところのドイツなりフランスなりヨーロッパにはいろんな体験があります。アメリカを孤独にさせてはいけない、何をしでかすか危ないから、この辺で慰めておかなけりゃならないという面もあるし、言うべきことは言わなければこれは大変だという考え方もあると思います。  シュミットさんと会って、大平さんは大変わが意を得たりという気持ちでしたでしょうが、その前に華国鋒さんと会って、ソ連をやっつけなけりゃならぬというような強硬論に接して、何かいろんな複雑な世界の動きを私は感じたと思います。中国に迷惑をかけた人々がいま中国に賓客として招かれているような時代です。アメリカの中にも、アメリカを中心として日本と中国とのこの軍事力によってソ連をやっつけなければならぬという力み返った人もおります。それがために意見を異にして国務長官をやめた人もあります。やめてもタカ派だけで固めることができないで、間一髪のところで、電光石火ハト派の国務長官にすりかえたという面もあります。そういう点において非常に私は世界が動いていると思うんです。うなりを発して動いていると思うんです。大平さんは、アメリカ、メキシコ、カナダにおいて失望した面を、ヨーロッパにおいてシュミットさんと話し合ったときに何かを感じたと思います。大平さんも私はより感じていると思います。苦労をしない者には苦労したやつの悩みはわからないのです。  どうぞそういう意味において、単に油の中にだけ埋没することなく、世界を破滅から救うために何をやらなければならないか。アメリカのきげんを取り、ソ連との摩擦を避けるというだけの小細工でなくて、ソ連といえども、アメリカといえども強引なことをやると、世界からあなたたちは孤立してだれからも相手にされないことになりますよという現実を、いま日本とEC及び南北問題で苦悩している後進国との間に大きな世論を形成していくならば、その力の方が——アメリカでもソ連でも全くむちゃくちゃなやつばかりはいないんです。英知を持った人たちがおるのです。その人たちが呼応して、一つの日本外交の持っている不動の思想を堅持することが日本にとっても世界にとっても必要なことであるということを認めてくれると思いますが、大来さん、今度のフランス行きは、一フランスだけでなくヨーロッパの先進国の首脳者との会談も待っておりますけれども、シュミットさんと大平さんの会談以上にそれは成果を期待されているんです。多くを望めないかもしれませんが、私はあえてその成果の大なることを望む者でありまして、この防衛の問題も、外務省、大蔵省もしっかりして、ただ単なる予算編成というだけでなく、国民がこれに、このようなふざけたことをやっていたのでは合意を与えないであろう、このおそれを大平さんだって受けてないはずはない。いま国民は怒っているんです。暴発の寸前にあるんです。これをひとつ大来さんから、簡単でよろしいですが、本当の今度のヨーロッパにおける決意が、この大来さんにとっては非常に大きな私は決意でなければならないと思いますので、そのことをお伺いいたします。
  21. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまお話しいただきましたことを、大体私も同じような筋で考えておりますので、今回参りましてもできるだけ努力してまいりたいと思いますし、今後も継続的なヨーロッパと日本の対話を強めること、第三世界との話し合いを強めることということをやはり日本としては進めるべきことだと考えております。
  22. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただいま戸叶委員より大平さんの訪米その他今回の外遊の問題について、非常にたくさんのことを意見も述べられ、お聞きになりました。どちらかと言えば、大平さんに同情の念を持ちながらの御発言であったような気がいたします。ですけれども、私、やっぱり何点か明らかにしておかなければならないことがあるように思います。  私は、きょうはほかの問題をやりたいと思っておりますので、ごく簡単にお尋ねいたしますけれども、まず大平さんは、カーター大統領から防衛庁の中期業務見積もり計画を早めてくれと言われたのじゃないと、日本の政府部内にある計画を早目に進めてほしいと、そうして大平さんは、そのために真剣になって努力いたしますと答えたのにすぎない、具体的には何も約束をしていないというふうにおっしゃっておりますけれども、これはもうすでに先ほど大来外相からも、三月にブラウン国防長官と会ったときに、中期業務見積もり計画は一年繰り上げてほしいという要望があったということですから、すでにカーター大統領も十分承知していたことだと思います。ですから、日本の政府部内にある計画を早目に進めてほしいと言ったことは、この中期業務見積もり計画の繰り上げ実施ということにほかならなかったと思うのですが、ですから、大来外相は大平総理のそばにいらっしゃって、そのことはそうであったというふうに理解されているのではないでしょうか、いかがですか。
  23. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私ども、大体そういう理解をしております。
  24. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは、ですから新聞記者がすっぱ抜いたとか何とかいうことじゃなくて、それが事実だろうと私は思うのですが、ただ、大平さんはアメリカの上下両院でのスピーチなどで見ましても、国会議員というのは平たく言えばうるさくて、うっかりしたことを言ったら大変だからというような気持ちがあって、言葉は抽象的におっしゃっている。しかし、大平さんのカーターさんへのあいさつとかスピーチは、大変親愛の情がこもっております。そして、やはり日本の防衛庁の中期業務見積もり計画を早目にやりたいという熱意を伝えたと思います。つまり、私たちの受け取る感じでは、アメリカ向けと国内向けとどうも態度が違う、これは、しばしば政府のとる態度でございますけれども、そのように大来外相はおとりにはなりませんでしょうか。
  25. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先ほどお尋ねの点は、つまり、政府内部の計画を早目にというカーター大統領の発言は、ブラウン長官の中業見積もりの一年繰り上げと大体共通しているのではないかという御質問だったと思いますので、私大体そう思いますとお答えしたわけですが、大平総理の答弁というか、発言は、真剣に検討していきたいということで、ただ、米側の記者会見の発表等にも具体的な内容についての約束はなかったということになっております。これは先ほど来申しました、今後の予算の問題、財政上の問題、国内の反応、いろいろな点を考慮して決められていくことだろうと思いますので、たとえば、中業一年繰り上げに賛成したとか、そういうことには発言はなってないと思います。
  26. 田中寿美子

    田中寿美子君 ですから、大平さんとカーター大統領との間は、あうんの呼吸というか、ちゃんとわかっていたということだろうと思うのです。  そこで、私が問題にしたいのは、中期業務見積もり計画というのは、私ども国民にはその全容を知らされていない。閣議でも別にそれの繰り上げ実施などということについてはまだ決定もされていないものと思います。ですから、アメリカの方に、先にブラウン国防長官の手元にそういうものが行っているということはおかしいのじゃないか。つまり、シビリアンコントロールというのは一体どこにあるのか。これは全くおかしいというふうに思いますし、そうやってアメリカ側が一年の繰り上げを望む、それを望んでいるということ自体、それを望むということの意思表示があること自体が内政干渉じゃないかと思いますが、いかがですか。
  27. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この点はやはり日米安保条約がございますので、共同防衛という立場からの防衛当局のいろいろな意見交換が従来からも行われていると承知しているわけでございまして、それからブラウン長官にいたしましてもカーター大統領にいたしましても、その発言の中で、必ず、日本側の事情は了承しているつもりであるし、日本側自体が決めることであるが、われわれの希望としては、という表現になっておりますので、私どもは内政干渉というような受け取り方はしておらないわけでございます。
  28. 田中寿美子

    田中寿美子君 私どもは、アメリカに言われてアメリカに従うという自主性のない態度というのを問題にしているわけです。しかし、けさほど、先ほど戸叶委員も言われましたけれども、外務省自体が防衛力増強の必要を唱え始めた。外務省首脳というのはどの方たちを意味しているのでしょうか。財界が防衛力増強を言っているだけじゃなくて、外務省も自主外交のためにという、大変うまい言い方で防衛庁への援護射撃をし始めた。このことは、大来外務大臣もやっぱり防衛力増強ということが自主外交に絶対に必要だとお考えになるんですか。
  29. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 防衛力増強と一口に申しますけれども、その程度にずいぶん開きがあると思うのでございます。GNPの二%に上げろというようなことになれば、これは大変な、現状から見れば大幅な増強ということになりましょうけれども、現状の〇・九を数年がかりで一%に持っていくという程度の増強であれば、先ほど来いろいろ申しましたように、日本の予算なり、経済全般から見て、そんなに大きな基本的な方向転換ではないという、手直しと言っていい範囲の問題ではないかと考えておるわけでございまして、いろいろ聞きますところでは、先ほどもちょっと申しましたいろいろな点で、いま持っておる防衛のいろいろな装備をもう少し手を加えれば使い物になるといいますか、ちゃんとしたものになるというような面があるように聞いておるものですから、その程度のことはあるいは必要なんじゃないか……
  30. 田中寿美子

    田中寿美子君 済みません、その程度のこととおっしゃいますが、日本のGNPは非常に大きいものでございますから、その一%というのは大変なことだし、それから、いままさに冷戦構造に戻らんとするような状態でソ連側とアメリカのブロックとが対立している、そういうときに、日本の防衛力を増強していくということが自主外交である、日米安保条約を一方に持っておきながらそういうことを言うということは、非常の際には、米軍が極東からペルシャ湾あたりに出ていく、そしてあと、すきができたところは日本が守る、しかし、ペルシャ湾も、インド洋も、そうしてあるいは日本海の方だってみんな続いておりますから、そんな専守防衛というふうに行くという言葉では片づけられない危険をはらんでいる、そういう意味で私は問題だと思うのですが、自主外交のために防衛力増強が必要だという外務省の首脳の考え方に大来外相も賛成なさいますですか。
  31. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 内容の取り方にもよると思うのでございますけれども、先ほどちょっと申しましたように、自分の国を守ることに全面的に外国に依存しているという姿では、場合によると、言いたいことも言えない面も出てくるのじゃないか、そういう意味で、ある程度自分の力で万一の場合に自分の国土を守る力を持っているということは、外交上の発言にも自主性を高める面があるのじゃないかという意味では、そういうふうに考えるわけでございます。
  32. 田中寿美子

    田中寿美子君 防衛論争していますと時間がかかりますので、私はそのことは非常に日本を危なくするものであるというふうに考えているということだけを申し上げておきます。  今回、大平総理はアメリカに次いでメキシコにいらっしゃいましたけれども、先ほど大来外相は、第三世界に対する関心を大いに払わなければいけないというふうなことを言っていらっしゃいますが、メキシコでも、またアメリカとの協調に一生懸命になる余りに、イランやアフガニスタンの問題でも全くアメリカに同調しているわけなんですが、その余りに、第三世界に対する視点が失われているのじゃないかという心配をいたします。メキシコで一日三十万バレルの石油を買いたいという申し入れをしたけれども、断わられた。このことはメキシコという国がどんな国であるかということについての認識が不十分じゃないかと思うのですがね。この問題はどういうふうにお考えでございますか。
  33. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 三十万バレル断わられたというわけではないので、大統領が政治的な決意を持って、善意を持って対処すると共同声明にもうたわれておるわけでございます。ただ、メキシコは石油の増産と輸出について非常に慎重でございまして、単に自分の国の経済が吸収し得る能力以上の石油を輸出して外貨をかせいでも、それはインフレになるだけだ。ですからそういう吸収能力が発展するに従ってそれに応じた輸出を伸ばしていきたい。それから同時に、同じ輸出する場合に、その見返りとしてメキシコが一番に望んでいるもの、つまり経済の近代化、工業化等の促進に効果的な協力を得られるところに油を出していきたいのだろう、そういう基本的な考え方があるわけでございまして、この点は、やはり自分の国の持っている資源を、自国の発展にできるだけ有効に使いたいという途上国に共通する意見の一つのあらわれだと思います。その意味でのメキシコの立場についての理解が不十分だったかどうかということになりますが、大体私どもはその点は理解しておったつもりでおるわけです。
  34. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、三十万バレルを輸入する見込みが将来あるというふうに思っていらっしゃるのかどうかということになるのですが、そういう感触を幾らか持っているというふうにおっしゃるのかどうか。メキシコという国はラテンアメリカの中心でありますし、それからグループ77の中のリーダー格でもあるし、それから新国際経済秩序の中心的なメンバーでもあると思うのですね。ですから、新国際経済秩序が宣言しておりますところの天然資源恒久主権の主張というようなものを非常に強く持っている国であるし、これまで産油国が経験したことから考えても、そうやたらに石油を売り出すべきものではないというふうに考えている、その点で日本の考えは甘かったのではないか、つまり第三世界への配慮というものがもっともっとなければならないというふうに私は考えるわけです。  日本は西側にいつも数えられて、西側であるということを誇りに考えていらっしゃるのかどうか。しばしばアジア諸国へ行けばアジアの一員である、それから国連中心主義であるというのが外交の基本路線である、しかし、対米協調というのが一番最優先するのだと、こういう立場をとっていつも西側に数えられるということについて、大来外相、それは名誉なことだ、喜ぶべきことだというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
  35. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本も、一九六〇年でございましたか、OECDのメンバーになりまして、これは経済的には市場経済のシステム、政治的には議会制度、議会民主主義、所得のある程度高い国という意味で、そういうOECD諸国を西側と言うのならば日本は西側の一員であろうかと思いますし、将来恐らくメキシコもその中に入ってくるのではないか、ブラジルも入ってくるのではないかというふうに予想しておるわけでございますが、特にそれを誇りとしておるというようなことではなくて、政治制度なり経済水準の具体的な客観的な事実としてその仲間に入っているというふうに見てよろしいのじゃないかと思っています。
  36. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、大来外相が第三世界について非常に理解があるということもよく知っております。ですから、今後の日本の外交のあり方については、やっぱり第三世界の問題は十分配慮しなければならないということを御要望申し上げておきます。  大平さんがユーゴに行かれた後、大来外相は残られて、国連のワルトハイム事務総長にお会いになりましたね。イランの問題について何らか解決策についてお話し合いになったのかどうかを伺いたいと思います。
  37. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私実はカナダのオタワに参りまして、総理がバンクーバーに移動される間にニューヨークに抜けてまいって、ワルトハイム国連事務総長と約一時間半朝飯会といいますか、で懇談をしたわけでございますが、イランの問題について従来ワルトハイム総長がみずから現地にも赴いて、いろいろ努力をしておられるということについて、日本の立場からもこれを高く評価しているのだということ、それから今後の問題について国連ではどういうふうに考えておられるかというようなこともいろいろ話し合ったわけでございますが、ワルトハイム事務総長としては、自分の方としては調査委員会もこれは解散してない、現存しておる、それからイラン側との接触、アメリカ側との接触も現在継続しておって、できるだけこの問題の話し合いによる解決の努力を続けていくつもりだということを強く言っておられたわけでございますし、日本としてもそういう方向でできるだけ国連の努力には協力したい、日本の立場も、これはEC諸国との話し合いもしているが、共通してイラン問題の平和的解決を強く求めているのだという趣旨での話し合いをしてまいったわけでございます。
  38. 田中寿美子

    田中寿美子君 五月十七日からイランに対する第二次制裁の段階に入るというふうに言われてきたわけなんですが、その点について日本はEC諸国などとともに第二段階の制裁に入る予定でいらっしゃいますか。そして、入るとしたらどういうことをされるのか、あるいはその前にもっと何かいい解決策を考えて提言でもなさったかどうか。
  39. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 五月十七日は今週の土曜日でございますが、これはこの前のECの外相会議、その後の首脳会議でも決めておるわけでございまして、シグニフィカント・プログレス、ディスティンクト・プログレス、はっきりした前進が人質問題について見られない限りは経済制裁の実施に移るということで、EC諸国もそれぞれ国内的な手続の準備を進めておるようでございます。EC外相会議が十七日にローマで開かれることになりまして、その結果を見なければわからないわけでございますが、現状においては実施に——もしそれまでの間にイランの間で、イランも選挙がちょうどありましたので、この一週間に何かの動きがあるかもしれないという期待もあるわけでございますが、全然動きがなければイランに対する経済措置に踏み切る。その内容は、たしか一月でございましたか、イランに対する経済制裁、国連の安保理事会にかかって、ソ連の拒否権で否決になりました案の内容を基本にするということでございまして、日本も共同歩調をとるという立場をとっておるわけでございます。ただ、十七日即日自動的ということになるかどうか、この点は、十七日から私ヨーロッパに参りまして、よくヨーロッパの主要国との話し合いをその点についてもしてみたいと考えておるわけでございます。
  40. 田中寿美子

    田中寿美子君 前回国連総長が行かれ、そして調査団が入ったりしましたけれども、何もできませんでしたね。今度何か国連から何らかの動きをしようとしているというふうな感触がおありになったでしょうか。
  41. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 具体的な動きということになりますと、調査委員会を存続して、その機が熟すればそれを活用する、例の米側の人質奪還作戦ですか、あれの後にもイラン側との話し合いを続けておるということでございまして、いま機会を見ておる段階であろうかと思います。
  42. 田中寿美子

    田中寿美子君 もうこの問題はやめますけれども、大平さんとの同じときのカーター大統領のスピーチで見ますと、イランのテロリズムと盛んに呼んでいる。しかしイランの人質救出作戦に用いたカーター大統領の作戦というのは、人の国の領土にあんなに入り込んで、しかもたくさんのスパイ団も入れ込んでいたという、ああいうやり方自体も大変暴力的な行為であるということについては、日本も少しはアメリカに対してその辺をなだめてもらわなければいけないというふうに思います。それはもう要望で終わっておきます。  で、余りこれは十も条約がありまして何にも質疑しないというのも余りにひどいので、私はフィリピンとの友好通商航海条約締結の問題で一、二点だけお尋ねします。時間をなるたけ簡単にお願いしたいと思いますが、この友好通商航海条約締結ですね、七七年UNCTADの際に園田さんがマニラで調印してこられたものなんですけれども、これは先日私どもが賛成して批准したガットの東京ラウンドの枠組みの中で十分にあるものというふうに見られますでしょうか。
  43. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) この東京ラウンドにつきましては、昨年の十一月に採択された、異なるかつ一層有利な待遇並びに相互主義及び開発途上国のより十分な参画、ということで、実はガットの締約国団の決定に見られております。したがいましてこのような開発途上国に有利な待遇を与え得るということが決められておりまして、そういう意味におきましては、今回の日比の通商海条約はある意味におきまして南北関係の新しい面を反映しております。したがいまして両者は同趣旨の同じ方向に沿ったものであるということが言えると思います。
  44. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでASEAN諸国に対してのフィリピンの特恵待遇ですね、こういうものは今回の日本とフィリピンの間の友好通商航海条約からは適用除外するということになっておりますね。このことは日本にとって何ら不便はないですか。デメリットはないかどうか。
  45. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 実はこのASEAN特恵につきましては、昨年の一月の二十九日にガットの理事会で承認されております。したがいまして、これはガットの規定と矛盾するものではないということが第一点。それから第二点は、実際の貿易面につきましてはきわめて微々たるものであるという意味からいきまして、被害もないということでございます。
  46. 田中寿美子

    田中寿美子君 それではついでに伺いますが、日比間の貿易ですが、これは現在どういう状況にあって、金額、品目、それからバランスの問題などはどういう状況にありますか。
  47. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 日比貿易につきましてはこのところ順調に推移しておりまして、たとえば日本側の輸出につきましては七七年十一億ドルから昨年七九年には十六億ドルに伸びております。片や日本側の輸入につきましても七七年約九億ドルから昨年には十六億ドル近くに達しております。片や貿易バランスでございますが、常に日本側の出超であったわけでございますが、昨年にはこの出超幅が非常に少なくなっておりまして、五千万ドル近くの日本側の出超ということになっております。  それから第二の御質問の品目でございますが、日本から出しておりますのは主として工業産品でございまして、鉄鋼を中心とする金属製品、人造プラスチックなどの化学製品、それから機械類が中心でございます。片やフィリピンからは銅とか木材、バナナ、砂糖、ココナッツ油、コプラというような一次産品が多うございます。
  48. 田中寿美子

    田中寿美子君 どうもありがとうございました。  それではバングラデシュとの航空業務に関する協定のことを一、二お伺いします。  東京−ダッカ間にバングラデシュとの定期航空路を開くということなんですが、一体これが批准されますといつからどのような形で発足する予定でございますか。
  49. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) バングラデシュとの航空業務につきましては、本件協定発効いたしました上で、国内手続を終了した上でできるだけ早い機会わが国に乗り入れたいというのがバングラデシュ側の希望でございます。バングラデシュ側といたしましては、本件協定上の指定航空企業にはバングラデシュ航空が指定されております。現在のところボーイング707を週一便できるだけ早い機会に就航させたいということで、現在先方では準備中であるということでございます。
  50. 田中寿美子

    田中寿美子君 バングラデシュへ日本からも飛ばせるのかどうか。それから、バングラデシュの航空技術その他安全性、そういったものについて、それから人員のことなどですね。
  51. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 日本からも協定上は飛べる権利を持っておりますが、日本航空としては現在のところ飛ぶ計画は持っていないと承知しております。  それから、技術的に問題であるかどうかということでございますが、この点につきましてはバングラデシュはICAOの加盟国でございまして、ICAOの定めておる航空安全上の諸基準にのって運航しておりますし、また現実にバングラデシュ航空が中東その他の諸地域との間で現在運航して、特に問題を起こしてないということから、私たちとしては技術的ないしは人的な面で特に支障はないのではないかと、こう判断しております。
  52. 田中寿美子

    田中寿美子君 航空機というのは非常にそういう点では慎重を期さなければいけないと思いますが、日本側の方からバングラデシュに対しては経済協力もずいぶんしておりますね、それから無償援助をしておりますわね。日本から無償援助を与える国というのは一人当たりGNPがある程度低い国というふうになっているかと思いますが、バングラデシュはどのくらいで、そして無償援助をどんな形で幾らやっていらっしゃいますか。
  53. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) わが国の無償資金協力につきましては、開発途上国の中でも開発のおくれた国に対して行うことを原則としておるわけでございます。もちろん一人当たりのGNPも一つ基準でございますけれども、先方の要請も勘案いたしまして、具体的な案件がどういう意味を持つか、その国の開発にとりましてどういう意味を持つか、相手国に対する政治的、外交的な配慮等も総合的に勘案いたしまして判断することにしております。現在バングラデシュの一人当たりのGNPにつきましては、一九七八年の世銀統計によりますと約九十ドルでございます。
  54. 田中寿美子

    田中寿美子君 そして日本の無償援助の内容
  55. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) わが国の無償資金協力は一九七一年度から始まっておりますが、昨七九年度末までに総額約三百四十四億円の実績がございます。この分野別につきましては、バングラデシュの食糧不足の解消に資するための食糧及び農業関係の援助が三百四十四億円中の二百二十一億円を占めております。全体の六四%でございます。それ以外にバングラデシュの民生安定等に関連いたしました各種資機材の供与を行っております。
  56. 田中寿美子

    田中寿美子君 ありがとうございました。  もう条約に関してはそれだけにさせていただいて、私きょうが恐らく参議院のこの国会での委員会の最後だと思いますので、本年七月の十四日からコペンハーゲンで開かれます国連婦人十年の中間年世界会議、それに関連しまして、特に国連婦人の十年という運動は、一九七五年に国際婦人年が国連の提唱によって始まり、そしてその後の八五年までの十年間をグローバルな婦人の運動キャンペーンにしているものでございますが、その中間でありますところのことしのコペンハーゲンでの大会では世界じゅうの国連加盟のほとんどの国が来るし、また日本からも政府代表団を相当多数、それから国会からも各党から代表団、顧問団として出席することになっております。この会議では前半の五年間のそれぞれの国での婦人の状況についての評価、それからさらに今後五年間の展望を討議することになっていると思います。その中でも特にハイライトは、私は、七月二十五日と伺っておりますが、その世界会議の席上で婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約、短かく言えば性差別撤廃条約ですが、昨年の暮れに三十四回国連総会で採択されました性差別撤廃条約署名する儀式が行われるというふうに聞いております。いまのところ外務省の方では幾つの国がすでに署名を終えているかということを伺いたいし、そしてこの撤廃条約によりますと二十ヵ国が署名を終えたその後三十日後に発効するということになっておりますね。昨年の暮れの国連総会で採択しましたときには賛成百三十ヵ国、反対ゼロ、棄権十一ということですが、日本も賛成の投票はしているわけです。しかしこの世界会議でのハイライトでありますところの署名のセレモニーでは、日本は指をくわえて見ていなければならない。まだ署名するほどの段階に至っておりませんですね。それで、いま一体幾つの国がすでに署名を終えているかということと、それからコペンハーゲンではどのくらいの国が署名するだろうということについて、外務省で把握していらっしゃいまししたら承りたいと思うのです。
  57. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 各国の署名の状況でございますが、これは現在まだちょっと時期が先でございまして、鋭意調査中ということが実態でございます。それからこの署名は先生も御高承のように一定期間署名を開放するということでございまして、署名が直ちに批准につながるというものではもともとございません。これはまた別途批准という道が必要であるわけでございます。ただ署名がどの程度集まるかということは、これは条約に対する各国の熱意をそんたくする上において材料になるということはこれは御指摘のとおりでございます。わが方といたしましては、集中審議等で田中先生からも種々御質問がございましたわけでございますが、この条約の問題点、これを最近特に回数を増しまして各省と連絡会議を開いておりまして、署名することができるかどうか、署名する以上は、やはり論理的な連関性は必ずしもないわけでございますけれども、将来近く批准するという意思表示をするというふうにみなされるというのが実態でございますから、署名をするかどうかにつきましては、あと残された期間を活用いたしまして検討いたします。
  58. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、まだ署名の可能性も残っているということですか。
  59. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) 可能性ということでございますが、可能性としてはこれは残っておるということでございます。ただ世界会議の一ヵ月前に署名の場合には通報しなきゃならぬということになっておりますから、七月十四日に始まりますので、六月の十四日までに通報しなきゃならぬということで、残された期間は約一月ということでございます。
  60. 田中寿美子

    田中寿美子君 実はそのようなこと、そのほかこの世界会議に出される議題などについて一般の婦人には知らされておりません。私これは性差別撤廃条約の問題で、婦人たちの集会で話してみましても全然知らないことが多いわけで、こういう世界的なキャペーンに関しては婦人運動ももっとしっかりやらなきゃいけませんけれども、もっと外務省の広報を十分にしてほしいと思っております。  それで日本は賛成したわけです。昨年の十二月十八日、賛成を投じたわけですが、その意味は趣旨に一般的に賛成であるということで賛成したというふうに伺っております。しかし、留保する部分があるということを政府の方からも言っていられる。その賛成の投票をしたときに一体どういう留保の仕方の意思表示をなさったのかを伺いたいと思います。
  61. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) この条約は、田中委員も御承知のように、最終段階ではきわめて急いで採択した条約でございまして、各国とも採択時においては賛成投票をしておる国が大多数でございまするけれども、同時にこれをどういうふうに今後扱うべきかという点につきましては各国ともいろいろな考え方があるようでございます。問題点については、集中審議のときに若干申し上げてございますので、本日は省略をさせていただきたいわけでございますが、留保をするかどうかという問題は、留保は恐らくこの条約の趣旨に反する留保はこれはできないわけでございましょうから、反しない程度でどの程度の留保が必要となるかという点につきましては、現在、結論を得ていないという実情でございます。各国がどういう態度をとるかということも、私どもとしては参考になるところでございますので、これもただいま調査しておりまするけれども、まだやや問題点が出そろっておるということには至っておりませんように思います。  それからこの条約に対する広報的な活動についてさらに強化しろというお話があったわけで、まことにごもっともな次第でございまして、最近条約の完全な訳を完成いたしまして、NGOの婦人団体の方々にお分けいたしまして、私の方からも御説明を申し上げ、またNGOの方で研究部会を開いて御討議をされるということでございますので、それには全面的に御協力をいたすつもりでございます。
  62. 田中寿美子

    田中寿美子君 その性差別撤廃条約のPRだけではなくって、世界会議に出される議題などについてみんなにわからせるようにしてほしいし、日本政府がその会議に出すところの報告書ですね、その内容だって、七五年の国際婦人年のとき、私ども何回かその内容について説明を受け議論したものでございましたが、今回は全然知らされておりません。ですから、そういう点がどうも外務省が国連の行事というと握ってしまうという感じがいたしまして、非常にその辺は問題があると思います。  それで、私の聞きましたところによりますと、日本政府代表がこれは賛成のときに手を挙げた後で、その理由の説明のときに、一定の項目については、あるいは条項については留保いたしますということを言われたというふうに聞いております。そこで、項目だけ、何と何と何が留保する部分であるかというのをおっしゃっていただきたいと思います。
  63. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) ただいま御指摘の点でございまするけれども、採択段階においてわが方代表が留保ということを明言したことは私はないと思っております。ただ、十分内容を検討しなきゃいかぬということを申しておるわけでございまして、いまから留保の中身が決まっておるということはございません。ただ、問題点として認識している点はございますので、もしそれが必要でございましたら、ただいま申し上げます。
  64. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあ時間が惜しいですから、それはもうこの前おっしゃっている問題点が幾つかありますので——たとえば労働関係、教育関係、あるいは法務関係、幾つもありますけれども、きょう婦人少年局長に来ていただいておりますので、特に私どもの関心の深い労働関係の問題で、この性差別撤廃条約署名し批准するためには、国内法がこのままではどうもできないという部分が幾つかあるように私は前にも御説明を伺っております。それで、第一部の二条を少し項目別に——つまり、各省がいま一生懸命に話し合いをし、検討していると先ほどおっしゃいました。今後もそういう作業を続けていかれると思います。それで、この条約を批准することができるというふうになるまでには幾らか国内の法改正もしなきゃならないだろう、そういうことがあると思いますが、二条の(e)のところですね、婦人に対する差別を撤廃する政策を行わなけりゃならないということの中の二条の(e)で「個人、組織又は企業による婦人に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。」とあります。これは、現在、婦人労働者のためにありますところの法律と矛盾するところがありますでしょうか。
  65. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) お答えいたします。  先ほど来、国連局長からもお話し申し上げておりますように、この条約につきましては、採択されましてからまだ日も浅いわけでございまして、各条文ごとに、それがわが国の国内法に照らしてわが国の国内法と合致するものであるのか、問題があるものであるのかという個々の条文ごとの詰めはこれからでございますので、この条文について、私はただいまここでこれがわが国の条件を満たしているかどうかということをお答えできませんが、私どもはこれにつきましても国内法に照らして検討をしてまいりたいと、このように考えております。
  66. 田中寿美子

    田中寿美子君 「個人」というのは個人の働く婦人、「組織」というのは労働組合もあるでしょうし、その他の組織、それから「企業による婦人に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。」、ここで先般御説明を外務省当局から伺いましたときに、企業にその差別撤廃を強要することは現行法ではできない、というふうに説明なさいましたけれども、そのようにいまお考えですか。
  67. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) ここで言っております「すべての適当な措置」の中に何が入っているのかというような点につきまして、これから検討していかなければならないということでございます。で、私どもといたしましては、いま企業に対しましては、賃金につきましては差別を禁止するという規定が労働基準法にございます。しかしながら、それ以外の労働条件につきましては法律でその差別を禁止するという条文はございませんで、憲法にある規定で、これが裁判に訴えられて、裁判によって憲法にある公の秩序ということで民法の九十条を援用いたしまして、そこで婦人の差別というものが法に反するというような結論を得ているわけでございます。法的にはこのような仕組みになっておりますが、この「すべての適当な措置」といいます場合に、労働基準法その他特別な法律でもってその差別を禁止するという措置を新たにとることが必要であるのかどうか、その辺のところはこれから十分検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  68. 田中寿美子

    田中寿美子君 後で、十一条の雇用機会の平等のところがありますね。労働基準法研究会報告書にも出ているような男女の雇用における平等法というようなものも、施策としては、措置としては一つ考えられるというふうにお思いになりますでしょうか。
  69. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) 労働基準法研究会報告が一昨年の十一月に出されまして、その中で現在の法制度におきまして差別を直ちに禁止すると、賃金以外の差別を直ちに禁止するという法制度がないと、雇用平等法といったようなものを制定することが必要であるというような御提言を伺っておりまして、私どもはこれは貴重な内容であるというふうに考えているところでございます。現在こういった平等の法制定ということも含めまして、婦人労働法制全般のあり方につきまして三者構成の審議会において審議をしているところでございますので、その結論を待って対処していきたいというふうに考えているところでございます。
  70. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは第四条の一、この中に「男女間の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置を締約国がとることは、この条約に定義する差別とみなしてはならない」云云とありますが、この「暫定的な特別措置」ですね、これを現在の労基法上の保護、これは暫定的な特別措置だと思いますが、そのようにお考えになりますでしょうか。
  71. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) ここにございます「暫定的な特別措置」は、「男女間の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置」ということでございます。これが何を意味しているかということは、先ほど来申し上げておりますように現在検討中でございますが、労働基準法につきましても、労働基準法研究会報告におきまして現在の労働基準法を見直して、大変年数もたっておりますので、婦人にとって本当に必要な保護というものについてどの範囲まで確保するのか、そうしてその中にはすでに解消していいものもあるのではなかろうかというような御提言もいただいておりまして、そういう問題も含めて現在婦人少年問題審議会において検討中でございます。したがいまして、この条文の意味を解釈を詰めていくのと同時に、一方では労働基準法における保護というものを検討しておりますので、この両者の検討と相まって、ここの条文において言っている内容がいかなる内容であり、それがわが国においてはどういう場合に満たされるのかということを検討してまいりたいと、このように考えているところでございます。
  72. 田中寿美子

    田中寿美子君 婦人少年局長、大変用心深くてあれですが、やっぱりこういう国際的な条約を採択するときに、それぞれの原局の意思というのが非常に大事でございます。ですから、いま労働基準法研究会報告書の中に出てきております考え方は、女子の保護を、一般女子保護と特別の母性保護と二つに分けておりますね。そして妊娠、出産に関係しているところの保護以外のものを一般女子保護というふうに呼んで、そしてそれはもういまでは廃止すべきものであるというような趣旨があの報告書には出ているわけです。その方向で押していってもらうと非常に困るので、これはいま審議会にかけて検討中とおっしゃっておりますからもう深くは追いませんけれども、このことについてこの条約署名できるかどうかということについては、非常に大きな責任が労働省にあるということを申し上げておきたいと思います。  それから、あと国籍法とか教育上のことをちょっと抜かしまして十一条の雇用のところですね、これは「雇用機会」という場合に、「雇用に関する選考のための同一の基準の適用を含む。」という意味は、これは採用まで含むというような意味に解釈できますか。
  73. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) 具体的な個別の条項の意味内容はここで確定的なことを申し上げる段階ではございませんが、私どもが通常雇用機会というふうに言っております場合には、採用の場合も含むというふうに解釈しているところでございます。
  74. 田中寿美子

    田中寿美子君 それから、その十一条の(f)のところです。「作業条件に係る健康の保護及び安全(生殖機能の保護を含む。)についての権利」とありますね。この「生殖機能の保護」とはどういうことを意味しているでしょうか。
  75. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) この「生殖機能の保護」と申しました場合には、婦人にかかわらず男性も含めてございますが、特に婦人について申しますと、子供を産むという、こういった機能があるわけでございます。したがいまして、この子供を産むということに関連いたします機能でございまして、その場合に、妊娠と出産のその時点だけではなく、妊娠、出産に関係のあることであればそれは常にやはり保護されるべきものというふうに考えるべきではなかろうかと考えております。
  76. 田中寿美子

    田中寿美子君 原文の方は「ファンクション・オブ・リプロダクション」ですね。生殖機能といえば、私は妊娠して出産するそのときだけではないと思います。いま局長が言われたように、それに関係ある機能全体を指すという意味で広く解釈するべきだろうと思っております。  それからその十一条の2の(a)ですね、(a)のところに「妊娠又は母性休暇を理由とする解雇及び婚姻をしているか否かに基づく差別的解雇を制裁を課して禁止すること。」とありますね。それから、その前の2の初めのところに「締約国は、婚姻又は母性を理由とする婦人に対する差別」、この「母性」というのは「マタニティー」ですね。それから(a)の方の「妊娠又は母性休暇」というのは、ここはやはり「マタニティー・リーブ」になっているわけですね。ですから、日本の労働基準法は産前産後休暇ですね、それより幅広くここに出ているということの意味をどういうふうにおとりになりますか。
  77. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) ここで「母性」、「マタニティー・リーブ」というふうに使われておりますことの意味、内容につきましては、これから検討していく段階でございますので、いまここでそれがわが国の産前産後休業だけを指しているのか、それともそれよりももっと広いものを指しているのかということにつきましては、お答えを差し控えさせていただきます。
  78. 田中寿美子

    田中寿美子君 高橋さんね、少し婦人労働者の立場からできるだけ主張をしてもらいたいと思うわけなんですね。労働基準法のあの翻訳は「リーブ・ビフォア・アンド・アフター…チャイルド・バース」、だけどここはわざわざ「マタニティー・リーブ」となっておりますので、私たちはこれを解釈するときに単に産前産後休暇だけではなくてつわりのときもそうだろうし、それから起こってくるところのいろいろな障害を意味しているというふうに考えたいと思っているわけです。そういう主張をできるだけ労働者の立場に立つ婦人少年局はしていただきたいというふうに思っておりますし、さらに「制裁を課して禁止すること。」と書いてある。だからそこまで厳しく母性というものは人類を継続させる上において大切なものであって、個人のものではない。だから社会国家がこれを守っていかなければならないという立場から幅広く解釈をしていただきたいということを要望いたします。  それで、その(b)のところにも有給の母性休暇、これはいつかも高橋さんと議論したことがあったと思いますけれども、いまの労働基準法は無給でございますね、別に産前産後休暇を有給とも何とも書いていない。しかし、いま世界の大勢が母性というものが果たしている役割りを非常に重要視し、その社会性を重要視しているから、これは有給または社会保障で所得保障をしなければならないというふうになっているわけなんですが、この点などはどのようにお考えですか。
  79. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) この点につきましては、「給料又はこれに準ずる社会的給付を」行ってそういう従前の「先任又は社会的手当の喪失を伴わない母性休暇を導入する」ということでございますので、使用者に給料の支給を義務づけるというものばかりではなく、「又はこれに準ずる社会的給付」という形になっているのではなかろうかというふうに考えております。いずれにいたしましても、先生が言われますように、婦人が子供を産み育てるという場合に、それに対して何らかの形で保障されるというようなことが必要であるというふうには私どもも考えておりますので、こういった条文につきまして今後検討を進めていきたいというふうに考えております。
  80. 田中寿美子

    田中寿美子君 最後にそこの3ですね、「この条に規定する事項に関する保護立法は、科学的及び技術的知識に照らして定期的に検討するものとし、必要に応じて修正し、廃止し又はその適用を拡大する。」、これはもうかねがね議論しているところですから余り詳しく言う必要はありませんけれども、しかし「修正し、廃止し又はその適用を拡大する。」、つまり保護を拡大する部分もあるということですね。それはどのような場合を想定できますか。
  81. 高橋久子

    政府委員(高橋久子君) この保護立法につきましてはここにございますように科学的及び技術的知識に照らして検討していくことが必要であろうと思います。そして婦人について特別に婦人だけを保護するということが必要なものと、婦人だけを保護するのではなくて男性についてもあわせてそういう保護というものは必要であると考えられる部分もあるかと思います。そういった場合には、男性も含めてやはり健康で安全に働けるような形を確保していくというような形に保護というものは行われるべきであるというような意味であろうかと思いますが、こういった適用の拡大ということを私どもは通常そういった意味に受けとめているわけでございます。
  82. 田中寿美子

    田中寿美子君 検討中というのは、それは各省の間でそんなに歯切れのいいことを言ってしまうということは大変だし、それから条約を批准するに当たって非常に周到な注意が必要だということはわかりますけれども、でもぜひいろんな場合を想定してそして一番困る人が守られるという立場をとっていただきたいわけなんです。それでいまの拡大も男性にも適用を拡大していくという場合だけではなくて、新しく重化学工業だとかあるいは放射性のものを扱ったりする者の場合に、もっと手厚い保護が必要であるという場合がずいぶんあると思いますね。ですからそういうことまで含めて拡大していくというふうな意味をここからくみ取っていただいて、国内法をそれに合わせた改正をしていただき、それは実現されるようにしてもらいたいということを私は労働省当局には要望いたしておきたいと思います。  なお、外務省にはこの性差別撤廃条約はやっぱり日本は先進国の中にあってチャンピオンなんですから、各国が署名するときに指をくわえて見ているようなことがないように、できるだけ私は国際人権規約なんかも大分留保しておりますから、留保した上でというのは余り感心しませんが、やっぱりこれを前進的に、これに適合するような国内の制度、法律をつくっていくという立場を進めていただくように、外務省としてはそういう、何といいますかな、激励する立場に立っていただきたいと思います。  最後に、大来外務大臣ね、婦人がこのように全世界的に集まって、これは政府レベルだけではなくて民間レベルの婦人も集まってくる、そしてそこで意見を交換するときに、私は、メキシコ宣言の採択のときに、国連の記事を読みましたところ、第三世界の発言が非常に多くて、非常に政治的過ぎると、シオニズムだとかアパルトヘイトの糾弾がある、人種差別や植民地主義の糾弾がある、だから西側の諸国ですね、メキシコ政府に対する感謝決議の共同提案国にならなかったということが書いてありました。で、日本はやっぱりメキシコの石油も欲しかったかもしれない、共同提案国に辛うじて入っていたらしいと思いますが、やっぱり第三世界の言い分に対して、あんなつまらないことをとか、進んだ国の者が、西側の婦人が本当に平等だけを言っても、非常に虐げられた人たちを犠牲にしていたのでは平等じゃないということについて十分配慮しながら、今後のこういう条約の批准なんかについては率先してそういう第三世界の主張も支持するという立場をとっていただきたいと思いますが、最後に御意見を伺いたいと思います。
  83. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまの点につきましては、やはり日本の立場というのは、先進国の中でも第三世界の問題に対する理解者としての立場をいろいろな面でとっていく必要があると思いますので、国内の法制やら慣行やら、いろいろな問題との調整は必要だろうと思いますけれども、できるだけいま御指摘のような方向で考えたいと思います。
  84. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 午後一時四十五分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      —————・—————    午後一時四十七分開会
  85. 石破二朗

    委員長石破二朗君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、航空業務に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定締結について承認を求めるの件外九件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  86. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 条約案件の審議に入ります前に、今回大平さん、大来さんが訪米されましたその成果と申しますか、話し合い内容と申しますか、そうしたことについて、午前中も若干触れられておったようでございますが、私からも何点かについて確認をさしていただきながら、お尋ねをいたしたいと思います。  ちょうど訪米される前にこの委員会におきまして、いろんな御注文を私申し上げたことを記憶しております。日米間に横たわるさまざまな問題の中で、特にイラン、アフガンの問題が中心課題になるであろう。それに関連する防衛力増強と申しますか、日本における防衛力整備の拡大というものが当然また第二の問題点になるであろう。また第三点は、日米経済摩擦をどう解消していくかということも話題になるであろう。外務大臣もそのことを十分お認めになりながら、多分それが日米間における中心議題になるだろう、こう御答弁をされておられたわけであります。そのほかに、隠れた問題として難民問題をどう扱うかということもいままで時折当委員会においても議論の対象になってきたわけでありますが、アメリカ国民の世論の中には、防衛努力も定かでない日本、そしてこの難民受け入れまで莫大な予算措置をとりながらやらなければならないというこんなばかな話はない、日本も少し一翼を担ってやる必要があるであろうというような、世論が大変厳しいという背景があるのだそうであります。当然政府といたしましてもそうした問題について、今後迫られる対応というものについては十分検討もされてこられておったはずだと思うのです。きょうはそうしたような中心的な、今日的、また、緊迫した課題に視点を置きながら、御質問を申し上げたいと思うわけであります。  そこで、まず総括的に、いま申し上げたような問題点が十分に話し合いがなされたかどうか。そして、完全なそこに、もちろん約束事を含めて結論があったとか、ないとかということは、言うことも早計でございましょう。けれども、何らかの日本政府としてやるべき努力目標というものの上に立って成果があったのかどうか。あるいは恐らく今後のまた対話の中でこれを進めていかなければならない、詰めていくその経過の中で、恐らく日米間におけるこうした問題が何らかの方向へ一つの結論を見出していくであろうと、こういう話し合いになったのか、まず、そうした総括的な点からお答えをいただきたいなと思います。
  87. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御指摘のように、イラン問題、アフガン問題、防衛問題、日米経済摩擦、難民問題、エネルギー問題、こういうことが主要な議論になったわけでございます。時間は正味二時間で、昼食が入っておるわけでございますが、通訳を両方使っておりましたから、ちょうど食事をしながらというタイミングはかなりフルに使われておったように思います。もちろん限られた時間内でございますから、具体的な細かい点まで話を詰めるということは困難だったと思いますけれども、考え方の大筋については、大体両首脳の間で意見の交換ができたのではないかと思います。  イラン問題につきましては、これは朝も申し上げましたように、大平総理からぜひとも平和的な方法によっての解決を考えてもらいたいという申し入れといいますか、意見を述べられたわけでありますが、それに対して大統領側からは、その御意見には同意するが、この点については友好諸国の一層の御協力を期待したいという趣旨の御発言がございました。  今回は、アフガン問題についてはそれほど突っ込んだ話にはなりませんでしたが、防衛問題については、これは新聞紙上等にも出ておりますが、日本政府の中にある計画の早期達成ができれば、アジアの平和と安定に貢献するのではないかと思う、というカーター大統領からの希望表明があったわけでございます。それに対して総理の方から、努力するという答えがありました。  経済摩擦につきましては、自動車問題かなり大統領の方から発言があって、失業問題、失業者が二十万人にも達しそうな状況で、アメリカにとっても重大な問題になっている。しかし、自分は輸入制限はやらないつもりであるという趣旨のことを言っておりました。これは、総理の方からは、いわゆる自動車問題、パッケージとして、いろいろ日本に対する自動車輸入、あるいは部品の輸入、その関税の問題、あるいはアメリカにおける日本自動車の部品生産の問題、いろんな問題が絡んでおりますので、パッケージとしていま事務当局で詰めているので、アスキュー通商代表が日本に来たときにさらに話を詰めてもらいたいと思っておる、というような趣旨の発言があったわけでございます。  電電の問題もありますが、これもアスキュー通商代表あるいはその後の交渉にゆだねるということでございました。  難民につきましては、大統領の方から米国政府は難民救済に約二十億ドルの支出をしておる、その四分の三は東南アジア地域である、という発言がございました。これは現地で出しておる費用はそんなに大きくないと思いますが、インドシナの難民だけでもアメリカは月に一万四千人の受け入れをしておりますので、国内の受け入れ側の費用に相当お金がかかっているのじゃないかと想像されます。日本側からは、UNHCRに対する六千万ドルその他いろいろ合わせますと、インドシナ難民に対して、ことしは約一億ドルぐらいの支出をすることになるということも申したわけでございます。  それからエネルギーについては、これはサミットに向かって一層の節約を図る、それから価格を不当につり上げない、代替エネルギーの開発を促進するというようなことで協調していこう、というような話でございました。  大体主な点は、以上のようなことだと思います。
  88. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大変巧みな御答弁でございまして、一体話がどういうふうに実際詰めたそういう内容であったのか、一時間というきわめて短時間の中で、あれもこれもと要求する方が無理かもしれません。そこで一体今回の話し合い、恐らく合意点に達したものは一つもなかったのではないだろうか。あるいは防衛費をふやす問題にいたしましても、それを含めて、これは昭和五十六年度の予算の仕組みの中で日本の誠意をそこに示そうという考え方をお持ちになっているようでありますけれども、完全な合意とはいかなかったであろう。したがって、今後アメリカとしては、友好国といいますか、同盟国の日本に対する要求というものが、これで一切完了したとは思えないわけであります。今後何を一体日本に求められてくるであろうか。いま申し上げた問題点をさらに具体化する方向で求められてくるのか、あいまいもことしたそういう状況の中でおしまいになるのか、この点はどのように理解をしたらよろしいんでしょうか。
  89. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その点はやっぱり一つには、これからの日本側の対応の仕方にあるかと思います。日本の対応の仕方について相当な努力をしておるということであれば、米国側も別に文句を言うこともないだろうと思います。  それからもう一つは、やっぱり経済の実態、経済面につきましては実態の動き、たとえば日米の貿易のアンバランスがことしの下期にさらに激しくなるというようなことになりますと、またそれに対する反応が出てくると思いますが、現状においては、日米関係はかなり良好な雰囲気であったと言えると思います。ただ非常にアメリカの世論がセンシティブといいますか、敏感になっておりますので、何かがあるとまた大きく振れるという事情もあるわけでございますが、現在、せんだって参りました段階におきましては、かなり友好的なムードが強かったと。特にアメリカが評価しておった点は、イランの石油の高値買いを日本が自制しておるということも一つの要素であったように思います。
  90. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃられた言葉じりをつかまえるわけではございませんけれども、アメリカの出方というものは、今後日本の対応の仕方いかんによるというのが一点、その半面に、大変雰囲気がよかったという半面、これは一見すると何でもないようですけれども、何か矛盾するような感じではあるまいか。非常に友好的であったということは、意地悪く考えますと、日本がある程度の約束事をほのめかした、それに対してアメリカ側として、日本としても相当の努力は払っているという経緯の中で大変友好的な雰囲気であったのか、その辺はいかがなものでございましょうか。
  91. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 現在のアメリカの社会で、やはりイラン人質問題が非常に大きな一般的な関心事になっている状況でございますので、それで、従来、日本は石油が非常に大事なんで、まず石油ということに第一の考慮が向かっているというような考え方、理解の仕方がアメリカに強かったと思うのでございますが、たまたまイランの値上げを日本側が受け入れない、そのためにイランからの対日石油供給は船積みがストップしておるというような事情が、先ほど申しましたように、一つきいておったかと思いますが、具体的な約束は、先ほどからもいろいろございましたけれども、防衛問題について真剣に検討するんだということを総理が発言された、その具体的なコミットメントというか、約束はないのでございますけれども、ある程度前向きの姿勢というものを感じたというような点もあるかと思います。
  92. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 アメリカのやはりこの出方を、ずっと政府の答弁を伺いながら、私なりにこうではないかああではないかというふうに考えているうちに、内政干渉にわたってはいけないという気の配り方の中にも、何とかならないものだろうかという大変強いそういう姿勢がうかがえる。しかも、いま言われたように、すでに伝えられておりますように、ことに国民的な大変な関心事の一つであるこの防衛費の増加という問題につきましては真剣に検討する——恐らく、真剣に検討するなんということについて、大変失礼な言い方ですけれども、禅問答的な、そういう話の仕方というものでカーターにとっては十分に理解ができ得たと認識してよろしいものかどうなのか。その辺、日本人とアメリカ人という体質の違った、発想の違いのそういう話し合いの中で、いま申し上げたようなことで果たして——真剣に努力します、また、何とか御期待に沿います、これは日本人としての常用語でありますけれども、また非常に、これを裏返しにして考えますと、国会の答弁なんかを聞いておりましても、真剣に努力します、ということでやられたためしはないというのが、通常、われわれの常識にもなっている。アメリカとの外交の中でよもやそんなことはあるまいとは思いますけれども、そういう中で日本は、必ず防衛費の増加については努力もするであろうし、防衛力強化の中でも要望する線に大体沿うて、近い将来、中期業務見積もりの一年繰り上げ等々を含めてこれはやるに違いないという、そういう期待感を持ったために大変雰囲気がよかったのかどうなのか、大変くどいようでございますけれども、その辺はやはり明確にわれわれが知っておくということが必要であろうかと存じます。
  93. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 雰囲気と申しましたのは、会議の雰囲気そのもののほかに、アメリカの世論といいますか、そういった一般的な雰囲気について申し上げたつもりではございましたけれども、たとえば今度の総理訪米の少し前にニューヨーク・タイムズが社説で、「サンクス、アンド・オイル、ツー・ジャパン」という論説を掲げたようなこともございまして、「日本に対する感謝と石油を」という表題になるわけですが、そういう受けとめ方が一方にございました。  それから会議の中での話し合いについては、この真剣にということについて、防衛力の問題につきまして大統領から、日本が防衛力増強に努力していることを多としており、また日本の国内的制約は十分理解しているところであるが、今後とも新しい状況に対応するために、政府部内にすでにある計画を早目に達成されるならばアジアの平和と安定のために有益と考えるという、こういう趣旨の発言が大統領の方からあったわけでございまして、先方も、これは一般の言論機関や議会筋はいろいろ、あるいは実業界等ではかなり極端な意見も出ることがありますけれども、米国政府筋としてはこの防衛力問題についての日本側のいろいろな考え方、動きというものをかなり理解していることは事実だろうと思います。そういう条件の中で、日本がある程度前向きに努力するということを評価するという立場だろうかと思います。
  94. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、一つ一つの問題点を今度分離しましてお尋ねをしてまいりたいと思うわけでありますが、まず最初にイランの問題、これは不幸なことに米軍の人質救出作戦というものが、失敗に終わりました。当然イランとしては硬化せざるを得ない、人質の分散ということもすでに行われたやに聞いているわけであります。大変条件としては厳しくなってきているわけであります。もうすでに六ヵ月余りを経過いたしました。カーター大統領を初め、アメリカ国民のいら立ちというものも十分理解はできるわけであります。そういった環境の中で、今回大平さんも平和的な解決をということを強く要請された。当然の主張であろうというふうに思えるわけであります。そこで、今回国連のワルトハイム事務総長にもお会いになった大来さんといたしまして、この長引く人質救出といいますか、人質解放という問題について具体的に、あるいはカーター大統領との間に、あるいはワルトハイム事務総長との間に何らかの提案、そしてその提案を通じて具体的な行動を起こすという、そういう方向への手がかりといいますか、足がかりというものはなかったのでございましょうか。
  95. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これはワルトハイム国連事務総長は仲介の努力を今後も続けると、調査委員会も存続しているし、イラン側、アメリカ側両方とのコミュニケーションを現在も続けているのだということでございまして、これはやっぱり国連の役割りはこの面では大きいと思います。前回はかなりのところまでいったけれども、いろんな情勢でうまくいかなかったということでございますが、イラン側にもこの問題解決をしたいという気持ちは現在もあるようでございまして、この国連を通じての接触からも、そういう印象はワルトハイム総長は得ておるようでございます。  それからもう一つは、やはりEC外相会議の決定と、日本もこれに同調するという形での対イラン措置、これがどういう結果をもたらすかわかりませんけれども、一つの新しいアプローチであるかと思います。  それから以前からホメイニ師が申しておりました、人質解放の問題は選挙によって選ばれた国民議会が決めるべきものである、それは今回その選挙が終わりまして、国民議会が形成される段階になっております。これも何か一つの新しい動きの手がかりになるかもしれない。こういうようなところが、差しあたりの具体的なアプローチになるのではないかと思っております。
  96. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにそれも一つの予測として考えられる問題であろうというふうにも思えるわけでありますが、常に万が一という背水の陣をしいた取り組みというものも一方においては必要であろうと。先ほど報道を聞いておりますと、マスキー国務長官が近くEC諸国を訪ねていろいろ協力要請をする、また一方グロムイコ外相にも会って何らかの話し合いをするということが伝えられております。その訪問についてECの受けとめ方としては恐らく第二次経済措置というものを要請されるであろうと。そうした要請に対しては断わるという方向に大体の空気がいま向いているというような意味の報道がいま、ついさき方なされたわけであります。こうした場合に、従来大来さんとしては、一貫して、ECと同調しながら成り行きを見つめつつ対応をしていきたいと、こういうふうにおっしゃっておられたわけであります。恐らくECにとっても油が必要な国はたくさんあるわけでございますから、第二次経済制裁と申しますか、大変強烈なことをやれば何らかのそこに反発、あるいはまた違った意味の激しい変化というものがイランを中心として起こり得る可能性というものは考えられるであろうと。非常に微妙ないま段階に入ってきたと思います。  一方、手の打ち方を誤りますと、日本としてもとんでもない方向に行かざるを得ないという危機があるわけでありますが、一方アメリカからそういう要請がある。反面要請を受けた方はどうしようかという、まあ非常に踏み込めないという、そういう気持ちがある。果たしてその辺できちっと調和のとれた考え方に立って、共同して人質解放という名目のもとにそうした措置というものがとられた場合に、いろんな混乱も起きることが予想されましょうし、日本としては自主的な解決の方法というものがあるいは独自の立場で求められるというさまざまなことが想定されるわけでありますけれども、いまそうした一つの流れの中で、恐らく政府としては、ECの出方というものを見守りながら同調することが一番好ましい方法であろうというふうに一応の考え方をお持ちなんだろうと思うんですが、これからの情勢変化で先行きこうであろう、ああもしたいという即断はできないにいたしましても、ある程度の基本的そうした方向というものが今回の訪米の成果を踏まえてさらに一歩前進的なあるいは日本としての役割りを果たす上から何らかの措置というものを考えていい時期にきているのではないかというふうに思えてならないわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  97. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いまのマスキー国務長官がヨーロッパを訪問するということについてのニュースは、まだ私も聞いておりませんけれども、その際に第二次制裁措置を要求するだろうということでございますが、これはルクセンブルクの外相会議の決定によりますと、五月十七日まで待って人質解放問題についての顕著な進展が見られないときには、この対イラン経済制裁をEC各国が実施するということで、各国国内法規その他の準備を進めておるようでございます。ですから、EC外相会議の決定は第一次措置、第二次措置とは言っておりませんけれども、一応五月十七日までに何らの進展がない場合には第二段階を考えるというたてまえになっておるわけでございまして、特にこの点についてアメリカのマスキー国務長官がそれをプッシュするというようなことになるのかどうか、あるいはむしろ国務長官としてはヨーロッパ側の考え方をいろいろ意見交換を通じて知るといいますか、そういうことがこの段階では考えられているんじゃないかと想像するわけでございます。御承知のように、リスボン会議のEC外相会議の決定に従いましてECの各大使及び日本の大使がバニサドル大統領に人質問題の申し入れをしたわけで、その各大使が本国に帰って報告し検討した結果、ルクセンブルクの外相会議の決定、その後一週間置いてECサミットの決定というような経過を経てまいりまして、その後イタリアの大使、これはECの議長国でございますので、イタリアのテヘラン駐在の大使が再びゴトブザデ外相及びバニサドル大統領に会ってECサミットの結果、これはEC各国及び日本を代表する資格で面会いたして向こうと接触をとっておるようでございます。いろいろな動きがそういう形で起こりつつあるわけで、たまたま私もIEAの閣僚会議、国際エネルギー機関の閣僚会議が二十一、二十二日にございますので、その前後ヨーロッパに参りまして仏、英、独と外相会議をやることにしておりますので、その過程を通じてヨーロッパの対応の仕方もある程度明らかになってくるかと思っております。
  98. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 訪米前に大変苦慮されていた政府といたしまして、いろんな暗中模索、どうしたらいいのだろうかというそういう状態であったろうと思うんですが、いろんな客観情勢の変化の中で、解決への一つの糸口が見出されるかもしれないという可能性が出てきたのではあるまいか、いま答弁を伺っておりますと、そんなようないま印象を受けたのですが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  99. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは従来の経緯を見ますと、なかなか楽観できない、その最後まで見てみなきゃわからないという点がございますけれども、しかし、これはあくまでも希望を捨てないで努力をしなければならないことだと思いますし、そういう意味の努力は続けられているということを申し上げたわけでございます。
  100. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 当然だろうと思いますし、今後も不断の努力が払われることであろうと。ただ、いま申し上げたように、マスキーはいろんなことを想定した中で、十七日の結論は恐らく出まいと。出た場合は、大変いい方向へ——出方にもよりましょうけれども、まあどんなふうになるか。ただ、いままでの経過の中で、いまおっしゃったように大変むずかしい、予想もつかない、こういう中で、背水の陣をしく一つの試みとして、次の手だてというものをアメリカとしてもとらざるを得ない。そうした行き方の中で、最近伝えられるところによりますと、EC必ずしも足並みがそろっていないのではあるまいか。なるほど利害というものがそれぞれの国別を考えた場合に、相当の違いがございましょう。そうしたばらばらになった場合に、歩調が、足並みが乱れた、あるいは米国に同調する場合、あるいはECが独自の路線をいままでどおりとるという方向に行くのか、あるいはサミット待ちなのか、そのサミットで最終的な協調というものをもう一遍確認をして、イラン問題を初めとする、エネルギーを含めた諸問題の整理をやりながら、一つの方向を見出そうとするのか、その辺の分析も当然おやりになっておられるだろうと私思うのですけれども、その辺はどのようにいま検討されていらっしゃるんでしょうか。
  101. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ECと日本と合わせますと、イランの経済関係でも相当大きなウエートがございますし、また従来からの動きからしますと、イランは二つの超大国に対する反発は非常に激しいけれども、ヨーロッパ諸国及び日本とは、できれば正常な関係を続けたいという考え方も従来からあったように思いますし、いまでもその点はあるのではないかと思うのでございますが、とにかく人質解放が行われない限り、これらの国々もどうにも、友好的な関係を続ける上に重大なそれが障害になっておるということは明らかでございますので、ルクセンブルクの会議の決定が一つのてこになって、解決の糸口になるかどうか、これはこれからの注目を要する点だろうと思います。
  102. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 恐らく、先般も申し上げましたし、中近東局長からも答弁がありましたように、相当イランの国内情勢あるいは経済状態というものが逼迫をしているのではあるまいかというようなことも想像にかたくないわけでありますけれども、そうしたところへ、第二段階の措置として経済制裁が強行されるということが一つの突破口になり得るものかどうなのか。そしてまた、同時に、そうした場合に、今度隣接するイスラム国家、サウジアラビアを初めとするそういう国々に対しての微妙な影響、波動というものがどういうふうに展開していくものなのか。あるいは、同じイスラム国家においても利害の相反する、足並みがそろわないという面もございましょうけれども、いざ窮地に陥れられたときに、イスラム全体が結束をして、アメリカを初めあるいはEC諸国のそういう取り決めに対しての何らかの抵抗、反発というものが起き得る可能性というものは考えられないのかどうなのか、その辺はどういうふうに分析をされていらっしゃいますか。
  103. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いまのような御指摘の点は、もし軍事介入が行われた場合には、周辺諸国の反発は相当激しい可能性がある。ただ、経済制裁についてはそれほどまでいかないのではないかという一応の観測でございます。
  104. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 さてそこでアメリカがECに対しても、日本はもとより、今日まであらゆる角度から要請をしてまいりました、石油を買うなあるいは経済制裁を加えろという問題を初め、場合によっては、軍事行動にも一曹の力を貸してもらいたい等々、さまざまな形で、あるときは非常に強腰に、あるときは弾力的に、そういったことが繰り返し今日まで行われてきた経過があるわけであります。もし、アメリカが孤立した場合、ECはとても、あるいは日本を含めてアメリカと——アメリカの強硬策、いまおっしゃったように、軍事行動、最悪の場合はそれしかございません。やはり、追い詰められていきますと窮鼠ネコをかむというようなことを前にも申し上げましたけれども、もうどうしようもなくなって反発というものがいろんな不測の事態を引き起こすということも想定されるわけでございます。そういったことが今回のカーター大統領との話し合いで平和的な解決をと望みつつも、果たしてアメリカの意向としては、全く軍事力行使ということはないと判断されたのかあるいはその可能性というものはあり得るというふうに受けとめられたのか、その辺はいかがでございましたでしょうか。
  105. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) なかなかそんたくできないことでございますけれども、アメリカの対国内、対イランというような考慮からして、あらゆるオプションを残すという立場が一応考えられるわけでございますけれども、今回の会談でも、大平総理の平和的手段によって解決してほしいという主張に対しまして、大統領側もこれに同意である、ただその際、同盟国あるいは友好国の一層の協力を得たい、という発言があったわけでございまして、EC及び日本のルクセンブルク会議での考え方、これがどういう効果を上げるか、しばらく情勢を見るという段階ではないかと思います。
  106. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、重ねて軍事力行使ということはまず考えられないというふうに判断してよろしゅうございますか。
  107. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは他国のことでございますし、いまのような事情もありますから、断定的なことは申し上げられないと思いますけれども、ある意味では、EC及び日本、アメリカに対する友好国が共同して努力しておるという状況のもとで、米国もある程度慎重な立場をとるのではないかということを考えておるわけでございます。
  108. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 イラン石化の問題について、いろんなこじれた問題、また、原状に回復した問題等等、いろいろ変化があるようでございますけれども、日本がこのままの状態でいった場合を想定いたしますと、相当油が足りなくなるであろうということが近い将来想定されるわけです。そうしたときに、断じて高い油は買わないという基本的な方針は今後も貫いていくおつもりなのかどうなのか。
  109. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは政府としてはその方針を貫く——これはIEAの閣僚会議の申し合わせでもございますし、昨年の東京サミットの申し合わせでもあるわけでございまして、現在石油需給がやや緩んでおる段階で、スポット価格などもある程度低くなっておるというような事情もございますが、この値上げに対しては応じないという方針を政府としては貫いていくことになると思います。
  110. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 イランは、すでにバレル当たり三十五ドルというような要求を突きつけているようでありますが、アメリカ側は、先ほども御答弁の中にありましたように、高い油を買わないでくれと、恐らくEC諸国もそれに同調と。ただそれがどこまで続くか。確かにいま需要供給のバランスというものが緩んでいるかもしれません。からといってこれから半年先、一年先いまのような状態の持続というものが果たして考えられるのであろうかどうなんだろうか。やはり油に頼らざるを得ない、当分の間依存しなければならない日本の国情というものを考えてみた場合に、背に腹は変えられぬというようなことになっても、断じていまおっしゃったとおり高い油は買わないんだという方針には変わりはないでしょうか、重ねて確認をしておきたいと思うのであります。
  111. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) それは一般的にドルのインフレもございますし、OPECの中でも先進諸国の物価に対する一種のスライド方式のような考え方もございますから、ただ、OPECの全般的な価格から外れて高いものは買わないという基本的な方針は続けるべきだと思います。政府としてもこれを続けることになるだろうと思います。
  112. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、防衛力の問題でありますが、午前中の答弁を伺っておりましていかがなものであろうかなという、私、大変大きな疑問を抱いたわけでございます。すでに新聞等においても報道されている、先ほども若干触れられておりましたけれども、答弁の中でも明確に言われたことは、防衛能力というものをやはり持たなければならない、自国のことは自国で守る、ある程度の増強は必要ではないか、憲法の枠組みの中でと、そういう趣旨の御答弁であったろうと私は思うのです。  ただ、これがもしエスカレートしていった場合に一体どうなるんだろう。確かに自分の国は自分の努力でもって守らなきゃならぬということは、それは常識かもしれません。しかし、ふと過去の軍国主義時代の日本ということをやはり身ぶるいするような思いで見詰め直さなきゃならぬというような気がしてならないわけであります。確かにあの当時は、日本は軍国主義という異常な環境の中でそういう方針というものが貫かれていったわけであります。日本の国、日本の繁栄というものはやはり軍備なくしてはとうてい達成できないんだと、短絡的に言えばそういうような一つの考え方が貫かれて、そして悲惨な戦争へという、落ち込んでいかなければならないという軌跡をたどったわけであります。こういったことが——確かに非常にいい言葉なんですよ、自分の国は自分たちの手で守らなければならぬと。そのためにそれだけの、自国を防衛するための能力を当然蓄える必要があるであろう、そうでなければ自主外交の展開ということは考えられないと。しかし、いま時代はやはり大きく変化している。確かに私は否定するわけじゃございません。かねがね申し上げておりますように、米ソ二大陣営が軍拡の方向へいま歩んでいるわけですから、これは紛れもない事実です。そうした中でやはり力を持つものはどうしても強権的な言い分というものになってくるでありましょう。何としてもそれに頭を下げざるを得ないという屈辱的なそういうこともあり得るだろうと私は思うのです。だからそれに対抗し得るような力までレベルアップをあるいは場合によってはせざるを得ないのではないか、過去の日本における立場と同じように。だからその辺の限界というものは一体どの辺に想定したらいいのか。これは専守防衛とか自主防衛なんて言ったって非常にあいまいもことしているというのでしょうかね、非常に抽象的な、とらえようのない、そういうことではないかと思うのです。本当に防衛するのだったら仮想敵国というものを常に考えなくちゃならぬ。そういう仮想敵国を対象にして日本の防衛力というものを築き上げていくという方向に立つのか。そうしたらもうだんだん核兵器まで持たなくちゃならぬだろう、核兵器まではいかなくても、時々刻々開発されている近代兵器、通常兵器、そうしたものをどんどん日本としても独自の立場で開発をする、あるいはアメリカからも買い求めるというようなことがエスカレートしていった場合に、一体どうなるのであろうか。もちろんその一つの歯どめとしては財政というものが問題があるわけでございますから、厳重なチェックを受けなければならぬという面はございましょう。けれども、逐次、なし崩し的にそういう方向へいくならば、これはもう将来のやっぱり軍備増強という方向へ道を開くことになりはしまいかという大変素朴なそういう疑問が出てこざるを得ない。その点はきわめて大丈夫なのかどうなのか。  それで、しばしばGNPの一%ということを言われているのですよね。ところが、いまGNPの一%実際いっているわけです。名目いま二百二十一兆七千二百二十億円ですよ。これの一%ということになると二兆円ちょっとになります。いまたしか二兆二千四百億円が防衛庁の今年度の予算のはずです。これにさらに一兆円を上積みしようというわけでございましょう。それは強力なやっぱり防衛力整備のための予算編成ということになりはしまいか。それを昭和五十六年度に意図しようとする。そういったところからなし崩しに米国の要請にこたえる一環として日本としても対応しよう、こういう考え方になり得るのではないだろうかということを心配するわけです。だから昭和五十七年になった場合にどうなるのか、五十八年になった場合にどうなるのか。また、どんどんどんどんそれが上積みされる。もう中期業務見積もり三年ぐらいでやろうなんていうことじゃなくて、それが二年に縮まったりあるいは一年に縮まるという可能性も出てきはしまいかということを心配するのですがね、その点いかがですか。
  113. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その点は、とにかく日本が軍国主義、ことに戦前のようなことになってはそれこそ大変なことでございまして、これはやはり国民の良識と、戦後三十何年間の日本のいままでの行き方の中からおのずから歯どめがあると私どもは信じておるわけでございます。大きな歯どめは、やっぱり国際的な紛争に軍事力を使わないという決意を憲法の中で表明しておるわけでございまして、防衛力といってもあくまでも日本の領土、領海を攻撃された、武力攻撃をされたときにこれに対する防衛を行うのだ、この大きな枠を外したらこれはいま渋谷委員の御指摘のような危険も出てくるかもしれないと思いますが、この枠を外さないでいく限りはそう無際限にいく性質のものではないように思います。ただ、自国の防衛という意味でも、聞くところによりますと、相当いろいろな点で改善を要する面が残されておる、しかし、それはそんなに防衛費を急激に大きくふやすというようなことではなくて、いまGNPの〇・九ぐらいのものを五年後に一%にするというのがいまの防衛庁の中業見積もりでございますけれども、それに対して米国側の要請はそれを一年繰り上げられないかということでございますが、もしも、この大きな枠を変えないと、またこれを絶対変えるべきでないと思うのでございますが、その中である程度の改善を行う、自己防衛の能力を向上させるということであれば、ただいま御心配のようなとめどもなくということにはならないのではないか。それはやっぱり日本人の良識、世論、国会の御論議というような何重にも歯どめがあることだろうと考えておるわけでございます。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはまことにそのとおりだと私思うのですね。ただ、もっと奥の方に、自主外交の展開にはある程度の軍備力というものを持たなければ、まともな交渉はできないという一つの推測があるのではないだろうか。先ほど御答弁の中に確かに古くなった一例を挙げられましたね。レーダーサイトならレーダーサイト、もっと近代化されたものを各地域に配備する、それにも金がかかる、当然でございましょう。レーダーサイトだけではこれは防衛できませんわね、はっきり申し上げて。それに伴う、あるいはナイキ基地を充実するとか、いろいろ連動したものが考えられるわけです。いま恐らく空と海、これが一番整備を急がれている。これは常識であろうと思うのです、侵略を仮に受けた場合に。スクランブルにしても、一体その基地をどういうところに設定しておいたらいいのか、その場合の一体航空機の保持数はどのくらいあればいいのかというようなことも当然常識的にこれは考えられるわけです。いままで政府一つの微妙な変化を見せながら、防衛力整備というものをいま非常に御熱心に取り組んでいらっしゃる。その辺の防衛能力というもの、これは古くて非常に新しい議論なのですけれども、なかなか結論というものは常に出ないのですよ。ただ、日本の国情というものを考えると、いまおっしゃったとおりです。何段階ものチェックがあるかもしれない。国民世論というものもその背景にある。限られた財政の中でそれをやらなくちゃならぬ。しかし、なし崩しというやつは、一つ一つ崩していくうちにいわゆる軍事力がある程度強化される。その軍事力の強化された背景に立った、その力を持った一つのものが今度あるいはいろんな形でもって日本の将来というものを変化させる。そういうものが、クーデターとは言いませんよ。そういうふうになった場合を考えた場合に、どんどんどんどんそれはなし崩しどころじゃない、もう足元から音を立てて崩れていくような軍備力増強へ。それが自主外交につながっていくのだという、これも短絡じゃいけないと私は思うのですけれども。いま大来さんの頭の中におありになるのは、自主外交の展開というものはやはり軍備力をある程度持たなければ——ある程度というのは一体どの程度なのか、これも非常にむずかしい議論だと私は思うのです。いま想定されていらっしゃることは、レーダーサイトを整備する、その程度のことでいいのかどうなのか。いや違うのだ、やはり通常兵器においても近代化されたものをどんどん導入して、ある一定の戦力として保持することが必要であるとおっしゃるのか。これは核兵器は別ですよ。その辺はどのように判断なさっておいでになるのでしょうか。
  115. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本の安全というのは戦後平和憲法のもとでミニマムの、最小限の自衛力の保持と、それから核戦力を含む大規模な攻撃に対しての抑止力としての日米安保と、それから世界各国、アジア諸国等に対する平和外交の展開と、大体この三つの柱によって日本国民の安全を保障するというのがいままでとられてきた政策だろうと思います。ヨーロッパにおきましては、自国の防衛努力と、それにNATO、あるいは東側ではワルシャワ条約というようなことで、現代の世界では一国だけで防衛を完結させるということはなかなかむずかしい時代であろうかと思いますし、日本の場合もやはりいまの三本柱、自衛隊とそれから日米安保とそれからいまの平和外交、こういう柱を土台にして日本国民の安全を保障するということで将来あるべきだと思うわけでございます。ただその場合に、長期的な見通しとしては、やはり午前中も申しましたけれども、アメリカのいまから二十年ぐらい前の非常にパワフルな、経済力、軍事力、政治力を含めて非常に絶対的な強さを持っていた時代に比べて、相対的に低下してきておるわけでございますし、そういう傾向が将来も続く可能性がある。一方におきまして、ソ連の世界的な軍事力は着実に増強されつつあるし、特に極東においては、急速に増強が行われているという客観的な情勢のもとで、ある程度の日本の安全を確保していく。非常に危険なのは、一種の何といいますか、無言の圧力、これは恐らくホット・ウォーという本当の戦争になることはなかなか将来も起こらない、局地的なものは別といたしまして。ただ、強大な軍事力によって無言の圧力が及ぼされる、それによって周りの国が直接軍事攻撃を受けるわけではないけれども、その意思に従っていかなければならぬというような状況に置かれるということは、一つ危険な可能性でございまして、日本はあくまでも守りに徹するわけでございますから、この守りに徹するという立場がとられている限りは大きく軌道を外れることもないし、それからそう簡単に外からは侵入できないという情勢があればそれは国民の自信につながる。ある程度のものがないと一種の敗北主義が出てくる恐れもあるわけでございまして、そういう意味での最小限の自衛力という立場で考えるべきだと。またそういうものがあることがやはり外交の自主性に対する支えになる。つまり軍事力を背景にした外交というのは日本は絶対にとるべきでないということは以前にも私が申したことがあると思いますが、ただ、自分の防衛力という面についてのある程度の力を持っておることが、そういう意味での受け身の外交と申しますか、そういう意味での自主的な立場を守っていく一つの要件になる。決して外へ出ていくための軍事力ということではなくて、日本自身の安全という意味での立場から考えることだと思っておるわけです。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま総論的なことしか申し上げられない。いずれまた機会を改めてこれをしさいに各論的な問題を通じて、いまお考えになっている日本の自主防衛とは一体何か、どの程度までレベルアップをすることがいわゆる防衛に徹した能力が持てるのかどうなのかということについては、やはり各論を詰めてまいりませんとなかなか結論が出にくい問題であろう。確かにいまおっしゃるとおり、軍事力を背景にした外交というのはこれは恫喝外交です。いままでもしばしばそうした恫喝外交に屈しなければならないという、いやな戦後の日本の外交史があるわけでございます。だからといってすぐそれにむきになってきばをむき出すような、そういう軍事力というものを増強するということは絶対に避けて通らなければならない。確かにその三本柱、これは当然でしょう、いままでの一貫した政府の外交方針でございますので。ただその中でも安保ただ乗り論なんていう、これまたしょっちゅう繰り返し言われてきた問題、そういったところにも何となくひけ目を感ずる。したがって、そんなことを言わせまいとする一つの意図の中に、ある程度のアメリカの意向をくんだ、そういう体制というものをここにつくり上げて、少しでもアメリカとの協調という、足並みを乱さないという方向へ行くことが望ましいだろうというその発想が奥底にあるのではないだろうか。それも事間違えば、とんでもない方に傾斜していくという危険があるということを、きょうはこの程度にこの問題については申し上げたいと思うのであります。  それで今回、かねて問題の最後の日米経済摩擦の問題、難民問題までとても触れる時間がないと思うんですが、これ一括いたしまして、いまアスキュー通商代表との間にしきりに交渉が行われているようでありますが、大変やっぱり、まだ依然として厳しい一面があるようであります。大河原駐米大使が着任後、記者会見の中で言われたように、それは簡単なものじゃないと、これは率直な印象を通しての考え方を披瀝されたんだろうと私は思いますし、私もそのとおりだというふうな受けとめ方をしているわけであります。この問題もきわめてやっかいな問題、難民問題についてもやはり非常にやっかいな問題。今回は残念ながら難民条約の批准ができなかった。特に三宅さんが大変努力をして、何とかこれを形のあるものにということで、大変努力されたことをわれわれも知っているんです。残念ながらその意図が砕かれたと。せっかく国連人権規約に加盟しておきながら、これらの問題が、先進国なんて言えないような、そういう方向へ行くようなことじゃ全くまずい。それはもちろん、厚生省の関係の問題が最後にひっかかったということ、こうしたことも今後やっぱり難民問題を、救済というよりも受け入れという一貫した一つの方針の中で外務省としても十分整理をして、早い機会にこの問題の処理をすることが、アメリカとのバランスをとる上からも適当な措置ではあるまいかというふうに思えてならないわけでありますけれども、今回の日米交渉を踏まえて、それぞれのこれ感触を得られた判断に基づいて、今後こうしようという一つの方向をお持ちになっていらっしゃると思います。この日米経済摩擦の問題、難民問題一括して、ひとつ所信をお述べをいただきたい。最後に条約一つぐらいやっておきませんと申しわけありませんから、条約一つだけ触れますから。
  117. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日米経済関係につきましては、いま自動車と政府調達問題が大きな問題分野でございます。過去十年間ぐらいを振り返ってみますと、最初繊維問題、日米繊維戦争と言われるような経過がございましたし、その後鉄鋼問題、特殊鋼の問題、テレビの問題、いろいろな段階でいろいろな問題が出て、それが曲がりなりにも一つずつ片づけられて、また次の問題が出てくるというのが過去十年ぐらいの経過であったかと思います。これは一つには、やっぱり日本の産業構造が高度化していく。しかも日本のインダストリー、工業の生産性の成長率がアメリカより一般的に高い。その結果、やっぱり日本の工業がいろんな分野で競争力を強めてまいる。役者は交代してまいるけれども、次々に問題が出てくるという意味では、将来恐らく今後も同じようなことが出てまいるんじゃないか。仮に自動車問題が解決いたしましても、次にまた、たとえばICならICというような問題で出てくる。これは日米間の貿易が非常に大きな規模のものになっておりまして、両方の経済が入り組んできておる、それだけ接触面あるいは摩擦面もふえておるという点と、それからやはりそういう相対的な競争力の変化というようなことから出てまいる。結局そういう摩擦が次から次にいろんな形で起こる、経済面の摩擦が起こることはある意味では避けがたいことかとも思うのでございますが、これを余り深刻な外交的な緊張に持っていかないために、一つずつ問題をつぶしていくといいますか、そういう努力を両方で今後も続けていくことよりほかはないのではないかというふうに一応考えるわけでございます。  難民条約につきましては、私どもも大変残念なんでございますけれども、再三、厚生大臣にも申し上げましたし、事務当局もいろいろ折衝してまいりましたんですが、まだ話し合いに至らない。外務省といたしましても、今度の国会、ここまで参りますとなかなか困難でございますけれども、それこそ粘り強く政府内部の話し合いを続けて、できるだけ早い機会に国会にお諮りできるように努力を続けてまいりたいと思います。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回は訪米が中心であったかもしれませんが、本当のねらいはメキシコであったろうと思うんですね。きょうはそのメキシコまで入れなかったです。ただ、今後中南米、特に中進国を中心とした中南米に対するわが国の取り組み方というものはもっともっと積極的であってほしい。それは重い腰を上げてやっと大平さんが行かれた。ポルティーリョと会って油の問題で交渉した。それは簡単にいかないだろうと思います。しかし、いつも私思うんですけれども、メキシコに油が出た、それっと、そのときは手おくれなんです。今度はアルゼンチンに油が出るぞ、昨年ビデラがそのことを言い残していった。それからまた、おっ取り刀で行かざるを得ない。そんな外交というのは私ないと思うんですよね、はっきり申し上げて。しかも、前にも申し上げましたように、中南米というのは、申し上げるまでもなく、日本とは大変長い伝統と歴史の間に結ばれてきた、そういう因果関係があるわけですよ。なれば、もっともっとそういう経済交流、文化交流の上で積極的な取り組みというものが必要であろう。いまイラン、アフガンの方に目が向いております。目が向いておる方になると、そっちの方へ傾斜しちゃう。やはり相対的に中南米もやっぱり必要であろうと思えば、当然こっちにも向けていかなきゃならぬ。そうなっていくと、いまの外務省の機構それ自体また触れざるを得なくなってしまいますので、きょうはこの程度にしておきますけれども、今後の中南米に対する政府としての本気になった積極的な姿勢というものを私は願望したい。その点についての所信を伺っておきたいと思います。
  119. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 今度のメキシコ訪問につきましても、大平総理も感想の一つとして、メキシコというのは非常にダイナミックな国で、今後世界の中の重要な国の一つになる国じゃなかろうか、日本としてもこの国との関係を重視していかなきゃならない。いままでブラジルとの間はかなりいろんな形のつながりがつくられてまいったわけでございますが、たとえばメキシコに対する日本からの投資は、ブラジルに対する日本からの投資の十分の一ぐらいでございますが、人口すでに六千八百万、紀元二〇〇〇年には一億を超えると言われておる国でございますし、資源も豊富、国土も日本の六倍ぐらいある国でございますが、そういう意味で日本とメキシコの関係は単に油ということでなくて、もう少し基本的な関係を強めていかなければならないだろうということを私どもも痛感いたしたわけでございます。メキシコ側も、自分たちはたまたま油というものを持つようになったが、その油の輸出はできるだけ自分たちの願望、つまり経済の近代化、工業化を進める上に有効な協力をしてくれる国に提供したい、そういう意味で油を自分たちの経済発展の目標に役立てたいんだ、その対象になる国は世界に幾つかあるけれども、自分たちも日本はその対象になる国の重要な一つだと考えております、ということをメキシコの大統領も言っておったわけでございまして、基本的には友好関係があると思いますし、今後も発展できる努力をしなきゃいけませんけれども、そういう方向で努力すべきだろうと思っております。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 残念ながら本論に入る前に時間切れになりました。本日はこれで打ちどめにしたいと思います。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 私も先ほど来、いろいろ問題になっている点について重ねてお伺いしたいんですが、きょうの大臣の御答弁を私も注意深く聞いておりました。日米首脳会談で問題になりましたいわゆる防衛力の増強問題ですが、出発される前大平さんが言われていたのは、ああいう中期業務見積もりというものは単なる資料である、だからそれを一々取り上げて云々するというようなことはあり得ない、というふうなことまで言われていたわけですね。そして、いわゆる防衛力の増強等々の問題は、これは自主的に判断すべきことである。ところが、御承知のようなアメリカでの会談の内容を見てみますと、きわめて積極的に受けとめておる。単なる資料にすぎないなどというふうなことは大平さんの口からはアメリカ側に全然伝えてもいないわけですし、自主的に決めますなんというような自主的なんていう言葉は、会談の内容、ステートメントにも一言ももちろん出ていない。そして帰ってこられて八日の日でしたか、衆議院の外務委員会で大来さんが答弁なさってますよね。あのときの答弁と、それからきょうの答弁、一昨日大平さんのお帰りになってからの発言の内容を見てみますと、若干の修正が私始まってきているような気がするんですよ。あの八日の日に大来さんが衆議院の外務委員会で述べられたのは、これは具体的にはどの程度増強するかということは決めていないし、そういう約束はしていない、これはしかし中期業務見積もりを指すものだというふうには考えられる、いままでの経過から見て。しかし、増強の努力は約束してきているんだ、だから来年度の予算においてふやさなければ、これは日米の信頼に響くことになる、ということまで言われているんです。ところが大平さん帰ってこられたら、真剣に検討するとは言ったけれども、一切ふやすなんという努力については、そういう約束はない、われわれは出発する前と何ら変わっていないということでしょう。きょうの話を聞いていますと、午前中の大来さんの答弁では、この防衛力の問題では日本も従来から努力してきているが、真剣に検討していきたいと大平総理は述べましたと。努力というのが、後ろから外れて前に来ているんですよ。いままで努力してきたが、になっているんですよ。私はこれは選挙の前になって、先ほど大来さんは、予算上大幅に変えられるようなものではないというふうなことで、非常にごく過小に見積もるようなお話をされたけれども、国民の防衛力増強に対する関心というのは大変ですよ。だから行く前に言っていったことと、アメリカで言ってきたことと、今度帰ってきてから言ったことと、またくるくる変わってくると一体何が本当なのか。私は、衆議院の外務委員会で大来さんが述べられたのが、ある意味で言えば、まあまあ正直なところをおっしゃったのではないだろうかというような気もしているんですが、本当のところは一体どうなんですか。
  122. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私としてはそんなに変わったつもりはないのでございますけれども……
  123. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私はその点を詳しく聞いているんですから。
  124. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 総理が会談で言われたことは、われわれとしても従来より精いっぱい努力してきたところであるが、今後とも自主的にその努力を続けていくということが一つございますし、今後の問題としては、何をなしていくべきかを真剣に検討していきたいということを言っておるわけで、自主的ということもはっきり言っておりますし、これまで努力してきたが、今後も続けていきたいということを申しておるわけでございまして、私も帰ってまいりまして外務委員会で申し上げたように、本来この問題は自主的に決めることで、日本国民が自国の安全という意味から考えて、もう少し努力していく、また対米関係におきましては、たとえば防衛費が全然ふえないという状態であれば、これはやっぱり多少日米間にひびが入ることになるかもしれない、そういう趣旨を申し上げたと思いますが、その点は別に変わってないつもりでございます。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 では、結局これはどの程度増強するかという度合いについては、もちろん具体的に約束したわけではないけれども、しかし増強するというのは、これは首脳の会談ですからね、ある意味で言えば、約束事と言えるんでしょう、増強するということについては、ふやすということ自身については。
  126. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ふやすふやし方にいろいろあり得るわけでございます。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 それはいろいろ、程度は別として、ふやすということは約束ですよね。
  128. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ふやすというか、真剣に検討していくという総理の発言になっていますけれども、内容はある程度はふやす、しかしどの程度ふやすかということは、国民のコンセンサスもあり、財政上の制約もあり、国際情勢もある、自分たちで決めることですよというたてまえは前から変わってないと思います。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど大臣から、いわゆる予算編成上大変な変更を来すものにはならない程度のものという趣旨のお話がありましたですよね。これは大蔵省から出されている試算を見ますと、一年前倒しをしますと来年度から防衛予算を一五・四%ふやさなければならないというわけですね。けさのテレビを見てみますと、また来年度一兆円国債を減少するということになったら、これは大変なことになる、いろいろな予算をふやしていくということもほとんどできなくなるだろうというふうな話で、大変なことだということも、いわゆる竹下大蔵大臣かなんかの話で、けさのニュースでちらっと私は耳にしたんですが、この一五・四%という数字、これでふやしていきますと、一年前倒しにして二年たつとこれは約三兆円になりましょう。さらにその後二年たつと予算自身が四兆円近くなる。これは大蔵省から出してもらった数字に基づいて私は言っているんですから、何も共産党が計算したわけじゃありません。これは大変な数字なんですよ。これはたいして変更しないような程度なんていうふうな認識というのは私はいかがなものかと思いますし、こういういまの経済状況を踏まえて、いわゆる外交関係で日米関係の信頼を傷つけてはならないという主管の大臣におられる大来外務大臣の立場として、この来年度の予算に対しては、防衛費の増額の問題、基本的にはどういうお考え方をお持ちになるのか。
  130. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは大蔵大臣なり内閣全体の考えるべき問題でございますから、私の一存で申し上げることはむずかしいことでございますが、一五・四%という試算、これは防衛費がいま二兆三千億ぐらいですか、ということはそれの一五%ですから、三千四百億ぐらいになりますかね、プラスするとして。これは来年度のGNPが幾らになりますか、二百七、八十兆円になるというと、これは見積もりにもよりますけれども、〇・一か〇・二ぐらいをプラス、上乗せすることに、増加分としてはですね。三千四、五百というのは、もちろん大変な金でございますけれども、財政力全体から見て、これは私はやっぱり国民の財政支出の中身に対するプライオリティーの考え方、どの面を優先的に考えたらいいかということが基本になると思うのでございまして、たとえば公共事業費に大体GNPの七%ぐらいでしたか、使っておりまして、いまのところ防衛費に〇・九%使っておるわけでございますが、これは午前中ちょっと申し上げましたが、多少道路なり公共施設の改善の分を一部を——きわめて一部だろうと思うのですが、それを緊急な防御の面の質的な改善に向けると、向けるか向けないかという選択の問題になってくる、それがすくに増税につながるとか、すぐにインフレにつながるということは、この程度の規模三千数百億という程度の問題ではそうは言えないんじゃないか、やっぱり予算の内部における選択の問題の中で処理できる程度の規模のものではないかと、私としては考えておるわけです。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 考え方の問題によると思うんですね、やっぱり三千四百億というのが大きいか小さいかというのは。たとえば、これは大来さんは清潔な方だと思いますからそんなことはないだろうと思いますけれども、口をきいて五億円金をもらったとか、四億五千万円ばくちですったとかいうようないろんな話が出ている。そういう人たちから見ればそれは三千四百億なんというのは大した金じゃないかもしれません。だけれども老齢福祉年金が千円上がるか千五百円上がるかということで四苦八苦してその日の生活を送っている人から見るならば、これは大変なことですよ。やっぱりそういうことも、数字の問題、見方については考えておいていただかないと私は困るんではないだろうか。数字が大きいか小さいかというのは、これは相対的なものですからいろんな見方があるだろうと思うんですけれども、この問題でこれ以上やりとりをしようと私思いません。  それで先ほど来も問題になりましたが、この中期業務見積もりについては、いつ、だれが、どういう場所でアメリカ側に提供したんでしょうか。
  132. 池田久克

    説明員(池田久克君) 中期業務見積もりにつきましては、これはあくまでも防衛計画の大綱を受けまして、それをできるだけ着実に長期的な視点で実施していきたいと……
  133. 立木洋

    ○立木洋君 課長さん、それはもうよく知っているの。だから、いつ、だれが、どういう場所でアメリカに渡したかということだけお答えいただきたい。
  134. 池田久克

    説明員(池田久克君) 渡したというのもどうもあれでございますけれども、昨年の八月に、当時の防衛庁長官が訪米いたしました際に、防衛庁として防衛力整備を今後そういう形で進めていきたいという考え方を申し述べました。その際に、これは防衛庁限りの計画であって、閣議レベルで決まったものでもないということを正確に前提にして、われわれの考え方を当時の防衛庁長官が述べたものであります。渡したわけではありません。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 山下防衛庁長官が訪米したのは去年の八月十六日でしたか、中期業務見積もりというのが防衛計画大綱に基づいて七月中に大体作成されただろうと、それで、これはいまお話しあったように、いわゆる前提をつけていらっしゃるけれども、これは閣議でも了解されていない、単なる予算の資料であると、こういうものがいわゆる日本の国会にも提起される前にアメリカ側に資料であるということで提供するというのは、これは外交上、大来さんどういうことになりますか。
  136. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは日米安保条約がございまして、随時、日米両方防衛当局が話し合っておる、その過程の一つだと思います。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 これは話は飛ぶかもしれませんけれどもね、宮永問題というのは大変な問題になりました。これはソ連に渡すとスパイになる、アメリカと話し合いをするとこれは一切問題にはならない、非常に結構なことだということになったということですね、大来さん。
  138. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) まあ結構かどうかわかりませんけれども、日米安保条約というもので共同防衛の関係にございますので、それはやっぱり防衛当局の間で常時密接な連絡がなければならないこと、だろうと思います。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、これは出された後、衆議院の予算委員会でも問題になったとき、中期業務見積もりについて首相知っているのかと言って総理に聞かれたときに、首相は知らなかった。これはわが党の工藤議員が質問したときに、知らなかったですよ。あわててそれは首相が後で検討しますと言ったら、いや、検討する必要のない事項なんですと言って一生懸命メモが回った。首相も十分に内容が知らない、閣議の了解事項でもない、決定事項でももちろんない。単なる防衛庁部内の一資料がどんどんアメリカ側に行くということは、そうしたら日本側としては、アメリカに対しては全部提供し、何でもかんでも、閣議で決定されていなくても、決定される前の資料でも一切合財アメリカに持っていくということで問題はないというふうに理解していいんですね、大臣。私、大臣に聞いているんです、外務省としての。
  140. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) まずちょっと担当の方から……。
  141. 池田久克

    説明員(池田久克君) まず中期業務見積もりにつきましては、先ほど御承知というお話でございましたけれども、すでに閣議、国防会議で決まりました防衛計画の大綱の予定する防衛力の整備をどうやって進めるかというわれわれの見積もりであります。そして、この中期業務見積もりが仮にわれわれが考えているように達成されたとしても、すでに国防会議及び閣議で決定されている防衛計画の大綱の線までまだ達しないわけです。そこで、国防会議運営の考え方としては、大綱が決まりました際に、毎年毎年の予算を決める際に国防会議で決めていけばいいと、こういう制度になっております。  また先ほど、総理詳細御承知ないというお話がございましたが、その時点ではそうだったと思いますけれども、実は……
  142. 立木洋

    ○立木洋君 その時点というのはことしの二月ですよ。
  143. 池田久克

    説明員(池田久克君) 予算を要求いたします際に、われわれとしては国防会議で報告をしております。そしてこれは中業そのものとして報告しているわけではございませんで、五十五年度の予算の際にはこういうことを念頭に置いてわれわれは組んでおりますと、この点については防衛庁長官から国会においてすでに御答弁申し上げたところであります。
  144. 立木洋

    ○立木洋君 大臣にお答えいただく前に、防衛計画大綱というのが決められましたね、どれまでやりますという到達目標が。これはいつまでにどういう段取りでやるかということは決めてないんですよ。そうでしょう。そうしたら、それをどういう段取りで、どういうふうに何年計画でやっていくのかということ自身、これは大切な内容なんですよ。これはきわめていいかげんなものじゃないんですよ。つまり日本の経済のあり方、いろいろな問題を総合的に考えなければならないことでしょう。私は何も賛成して言っているわけじゃないですよ。あなた方がやる場合にしたって、当然それは真剣に検討されなければならない問題なんですよ。防衛計画大綱が決定されていますから、それに準じていつまでにどれだけしますというようなことが、まさにもう何事でもなくて、首相の了解も得なくたって、閣議の了解も得なくたって勝手に決められて結構だと、ましてやそれを事前にアメリカに資料を提供したって問題ないというふうなことに私はならないと思うのですよ。これは日本の国会を軽視するにもほどがあると言われても私は仕方がないだろうと思う。こういう外交をやっていったら、これは大変なことになる。先ほど来、午前中からの討論にも示されているように、だからこういうふうなことじゃ困るということを、私は外務省の大臣である大来さんにぜひとも考え方をはっきりさせていただかないと困ると思うのですがね。
  145. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 一つには外務大臣も国防会議のメンバーでございまして、翌年度の計画については国防会議にかかるわけでございます。それから防衛庁予算も当然細目にわたって国会の審議を受けることでございまして、そういう意味の歯どめはやはりいろいろあると思うのでございますけれども、中期業務見積もりというもの、そのものの扱いについては今後の検討によることではないかと思います。これ自体も私ども聞いておるところでは、毎年手直しをしていくというような性質のものだと聞いておるわけでございます。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 毎年見直しをし、三年ごとに根本的な見直しをするというふうなあれになっているわけですよね。だからこれ自体が絶対的なものではないし、全く不動のものだというふうなものではないということだろうと思うんですが、いま防衛庁の方で行っておる検討というのは、いまいろいろアメリカとの関係がありましたわね。それでこの間の大来外務大臣の話によりますと、この中期業務見積もりも防衛庁自身検討中だと聞いておりますというふうに衆議院の外務委員会でお述べになっておられる。だから私は検討されておることだろうと思うんですが、これは一年前倒しということが検討されているのか、あるいはそうではなくて中業の内容自身が再検討の対象になっているのか、その両方とも検討の対象になっているのか、そこらあたりはどうでしょうか。
  147. 池田久克

    説明員(池田久克君) われわれは防衛計画の大綱で決まりました防衛力の水準をできるだけ早く達成して、防衛は国家の基本でありますから、国民が安心して生活できるような防衛体制をしきたいと考えております。中業も、一年一年の計画だけではなくて、やはりわれわれの整備は時間がかかりますから、できるだけ長期的な展望に立ちたいという願望からきているものであります。  御質問の、どういう作業をしているかということですけれども、われわれはまず第一に、五十五年度、予定どおり防衛力整備ができなかったものがあります。これは事柄の性質上五十六年度以降に何とか措置しなきゃいけないと思います。それから、先ほど申し上げましたように、中業見積もりは、防衛計画の大綱の内数でありますから、なるべく早く達成したいと思っております。中業は年度を決めた計画ではございません。一番最初の初年度だけが予算の形となって出てくるわけでありますが、われわれとしてはできるだけ早くこの計画を達成したいと考えておるところであります。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 課長ね、防衛問題についての論議は意見がこれまた違うから、ここで議論を繰り返そうとは思いませんけれども、C130、あれの十二機購入ということが問題になっているようですね。あの検討はいまどういうふうに進んでいます。
  149. 池田久克

    説明員(池田久克君) 先般防衛庁長官の来年度の計画作成の指針が出されました。その指針によれば、航空自衛隊の輸送力を何とか整備しなきゃいけないと、御承知のようにC1しかございませんので。そしてどういう機種がいいかということについてはまだ決まっておりませんが、いまの段階ではやはりC130が非常に有力な、むしろほかに候補者がないという程度のものに煮詰まってくると思います。しかし、十二機にするとか、来年何機にするとか、そういうことはまだ決まっておりません。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 いわゆる積載量からしても、航空距離というんですか、いろいろの性能の面から見ても、C1では十分ではないという検討があり、一応C130というのが候補に挙がっていると、そういう検討が指示をされたと。で、検討を進めておるという段階ですね。
  151. 池田久克

    説明員(池田久克君) 航空輸送力を充実するという方針が決められました。長官の方針に従って現在具体的な計画を練っております。その際にC130をわれわれ検討していることは事実であります。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 C130というのはこの中業の中には入っていない機種ですね。
  153. 池田久克

    説明員(池田久克君) 中期業務見積もりにつきましては、これはCXという形になっておりまして、当時つくりました段階では機種をどうするかまだはっきり決まっておりませんでした。しかし、CXとして航空輸送力の整備を予定しておったところであります。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 C1では十分ではないという指摘はもちろん中業の中であるわけですが、しかしそれをC130にするというふうな問題点というのは中業の中では全然提起されていない、現在それを何にするかということで、C130を対象としていま検討をしておると。だとするならば、つまり中業で検討された内容以外の正面装備といいますか、これを補強するということも当然対象になっているというと、ただ単なる一年前倒しということだけではないというふうに判断されることになるわけですが、そういうことですか。
  155. 池田久克

    説明員(池田久克君) C130について、機種をまだ決定したわけではございませんけれども、それが検討の対象になっていることはいま申し上げましたが、航空輸送力につきましてはCXとして中業期間内に整備することをあらかじめ予定してはおりました。ですから、C130をわれわれが含めて検討するということは、決して新しいことをやるということを意味するとは思っておりません。
  156. 立木洋

    ○立木洋君 F15ですね、あれは二年前でしたか、二十三機一応予算では計上されて、中業の中ではあと七十七機ということになっていますわね。ところが、これも何か話に聞きますと、合計全体で百二十三機にするという話がいま検討されているかのように私はお聞したのですが、これは事実でしょうか。
  157. 池田久克

    説明員(池田久克君) 中業におきましては、すでに国防会議で決まりました百機のうちの残りの七十七機について計画をしております。ただ、国防会議の決定のときに、防衛庁がその段階で五スコードロン分の百二十三機が欲しいという願望を示した事実はございます。そういう事実をかつて示したことはございます。しかし、中業では国防会議で決まりました残りの七十七機について計画をしているところであります。
  158. 立木洋

    ○立木洋君 だから、中業では七十七機と書いてあるわけですよね。で、要撃戦闘機ですか、あと三十機不足しておるということも述べられてあるわけだけれども、しかしそれは要望、つまり、防衛庁としての考え方としては百二十三機にした方がいいと思っておるということを見解を述べたことがあるということなんですが、いろいろこう見てきますと、これは大体全部アメリカ側から要求された内容とほぼ一致してくるんですよ。それで私はお尋ねしたいのは、そうすると、中業の見直しとかなんとかということが問題になっていますけれども、アメリカから一体何を買ってくれと、これを当然日本としては装備すべきだというふうに要求されているのは一体何々があるんですか。
  159. 池田久克

    説明員(池田久克君) 先ほど先生が、F15の機数の問題につきまして、アメリカ側から要求される数字と合っているというお話でございますけれども、不肖私そういうことを存じ上げておりません。先ほど外務大臣からもお話がありましたが、防衛力整備について一層の努力が望まれたことは事実でありますけれども、ただいま先生が御指摘のように、何を買えとか、これを買えとか、そういうことについて不肖私、存じ上げておりません。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 それはあなたが本当に存じ上げていないのか、それともあなたが知っているんだけれども言わないのか、それは私はここではわかりませんよ。それはわからないけれども、だけど見てみますと、ここに九日明らかになった内容ですがね、これはアメリカ政府の当局者が述べておる、対アジア政策の背景説明で確認したものだが、中身は、日本が敏感に受けとめている問題なので明らかにはできないと言って、防衛力向上の具体的内容にまで立ち入って要求はすでになされているけれども、その内容については述べない、ということが新聞で報道されているわけです。これはあなたが知らないのか、知っておっても言わないのか、それは私はどちらかわからないけれども、それ以上追及する時間がないから言いませんけれども、しかしこういうことがあるということだけ私の方では述べておきたいと思うんですね。  そうしますと、これは大臣、いまお聞きのように、つまりアメリカの見直しというのは、あれでしょう、山下元防衛庁長官が八月に向こうに行ったときに、中業の内容を、文書を渡したのか説明したのかこれはわかりませんよ、だけどいずれにしろ説明はした。しかし、説明したと言ったって、二、三分で説明できる内容じゃないですよ、この中業の内容というのは。大変なものなんですから。こんなふうにしますよというのを簡単な四、五分あたりでぺらぺらしゃべって、ああそうかというようなことでわかるはずがない。それで結局ブラウン国防長官が韓国に行ったときに日本に寄って、そしてあの中業については見直しをしてほしいということがなされたと。そして今度は三月、大来さんが行かれて、一年繰り上げてできないだろうかという話が出されたと。そして今度は総理が行ってこの問題につまりなったという経過があるわけですね。だから、ただ単に、まさに先ほど来問題になってきましたけれども、軍事力を背景にした外交姿勢はとらないということを大来さん繰り返し言われてきた。しかし、防衛力が背景としてなければ、やはり自主的な外交ができないんだ、防衛力と軍事力というのはどれほど違うかというのはわかりませんけれども、しかし、問題はそういうことを背景にした内容になってきているということは、先ほどの大臣の答弁でもはっきりしたわけですよ。しかし、このつまり防衛力の増強自身が、つまり自主的に——自主的にとおっしゃるけれども、事実上アメリカの要請によって日本側が決めた計画すら手直しをしていくということになっていくならば、これは自主的どころかアメリカの要請に基づくいわゆる防衛計画、アメリカの要望にこたえ得るような内容にしなければ、これは信頼に傷がつくというふうなことにどんどん落ち込んでいく。まさに自主性を確立するためではなくて、まさにアメリカ側の要望にのめり込んでいく結果にならざるを得ないということを示すことにはならないだろうか。大臣、いかがでしょうか。
  161. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) まあいろいろ技術的な面もあると思うのでございますけれども、基本的にそれは日本の安全度を増すための対策ということであれば、これはやっぱり日本自身の問題でございます。それは、先ほども申しましたように、日本の安全を、最小限の自衛力と日米安保という国際的な協力によって保持していこうということでございますれば、やはり防衛について、日米間の密接な連絡は必要になりますし、その過程でいろいろなアメリカ側のアドバイスもあり得るわけだと思います。そのことがそのまま従属であるのか、自主的であるかということになれば、やはり日本の立場はあくまで日本の安全を守るという立場からの判断でいくべきだと思いますし、それは技術的な面についていろいろアドバイスを受けることは必ずしも自主性を失うことになるとは思わないわけでございます。
  162. 立木洋

    ○立木洋君 これは幾らお話ししても、大臣、それは見解の相違だということになるかもしれませんけれども、私は、先ほど来指摘した点から言うならば、日本の外交というのは、やっぱり二つの顔があっては私はいけないだろうと思うんですよ。国民向けの顔と外国向けの顔とあるというふうなあり方というのは、私はやっぱり正当ではないだろう。国民に述べるべきことは、やはり外国にも筋を通して述べなければならない。外国との話し合いをしてきたことの内容については、いわゆる国民に隠したり、あるいは歪曲して伝えるというふうなことがあっては私はならないだろうと——一つ気づいたことを率直に述べさしていただきたいんですが、そういうことを一つ感じるのと、それからもう一点は、いまこの防衛力の増強の問題、これは私はやはりアメリカの戦略に基づいてやられている。さっきのC130といいましても、あれは事実上輸送に使われるわけですが、あれは機雷封鎖にも使用されるんですよ。  で、この間、先般私、大臣にお尋ねしたときに、いわゆる海上封鎖の問題が問題にならなかったかと言ったら、そういうことも話のときには出ましたと、三月訪米されたときに言われたわけですが、そういう意味では、C130の導入というのはある意味で私は意味は持っていると思うんですね。だからアメリカの世界戦略に基づくそういう装備、正面装備を増強していくというふうなことと、いわゆる自主性というふうに言われていることとは大いにやっぱり矛盾があるし、問題点があるという点も私は指摘せざるを得ない点なわけです。  それで、もう時間がないから次にはしょらしていただきますが、大臣が向こうにおいでになるときにおっしゃった、当然このアメリカがイランの問題に対して対応する場合に、軍事力を行使するというふうなことだけは何としても避けなければならない、そういうふうに願っている、そのためにいわゆるアメリカを孤立化した状態に置くのではなく、一定の同調をしてそういう事態にいかないようにしなければならないのだという趣旨のことをお話しになったと思うんですね。これは確かに会談の内容、新聞報道等を見ますと、このイランの問題については、平和的な解決を望むということも大平さん二回繰り返し述べておりますが、確かにカーター米大統領も平和的に解決されることが望ましいという回答もなされているわけですが、いわゆる軍事力の行使を絶対に避けるべきだ、そういうことをしては絶対にだめだ、そういうことをするならば日本としては支持ができないというふうな、つまり強い指摘といいますか、いわゆる明確な指摘というのは大臣なされたんでしょうか。
  163. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 平和的な手段による解決ということは、軍事力でない手段による解決になるわけですから、内容的にはそういうふうにとれると思います。
  164. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどの御答弁にもありましたけれども、アメリカがその軍事的な手段を本当に排除しているのかと、一切使わないというふうに感じたのかという点については、そういうすべての手段を、そういう軍事力を行使するということを絶対にしないというふうには感じられないという趣旨のことを大臣さっき言われたし、それから、総理が訪米する前に、カーター米大統領が記者会見をやったときでも、いわゆる今後とも必要な可能なあらゆる手段をとるということを明確に述べているわけですね。これは日本時間の三十日、午前十時に行われたカーターの記者会見ですよ。だとするならば、そういう危険性もあるわけですから、より強くやっぱり指摘する必要があったのではないかと思いますが、どうして指摘をなさらなかったんでしょうか。
  165. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは先ほどの答弁の中でも申しましたが、アメリカ政府としては、対国内、対イラン等の考慮からすると、あらゆるオプションをオープニングしておきたいという立場があるのではないか。しかし、現実にそういうことが起こりそうかと言えば、その可能性は少ないのじゃないかという判断なんでございます。
  166. 立木洋

    ○立木洋君 これがやはり先ほど言われたように、人質の問題の解決というのはなかなか順調にいくというふうには見られませんし、問題が複雑化してくる可能性もあるということになってきて、長引いていけば、アメリカがそういう態度をとっている限り、やっぱりそういう危険性が全くないわけではないと思うんですね。そうした場合には日本としてはどういう態度をとりますか。
  167. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまやっておりますEC諸国と協力して、一面においてイランに人質解放をできるだけ早くするように要請する、それから、国連当局と連絡をとりながら国連の努力の強化促進する、それから、やはり対米関係におきましては、平和的手段解決を絶えず要請していく、これは日本だけじゃございませんで、EC各国がそれぞれ、あるいは共同して要請していく、こういうことで対応していく。私も、この人質問題は無限に続くとは思わないわけです。ある時点で解決することは当然予想されるわけでございまして、いまのような努力の中で解決の道が得られてくるのじゃないかというふうに思っております。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 これはもう時間が来ましたから、まだお尋ねしたいことはたくさんありますけれども、本国会で大臣にお尋ねするのはこれが最後の機会じゃないかと思うので、私はそういう意味では本当に力でなくて、軍事力ではなくて、平和的に解決されるという点での努力のあり方というのをもっと私は、いままで繰り返し申し述べてもきたのでこれ以上言いませんけれども、その点を私は大臣に真剣に考えていただきたいと思うんです。  先ほどのやっぱり中業の問題というのはこれやっぱり重大な問題ですから、大臣も国防会議のメンバーのお一人でもあるわけで、十分に国民の考え方というのもよく踏まえた御判断をしていただくように最後に強く要望しておいて、大臣の所見をお聞きして私の質問を終わります。
  169. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御指摘のように、問題の平和的解決、これは日本が国際的に果たすべき重要な役割りの一つだと考えておりますし、これまでも努力してまいりましたけれども、今後もさらに努力を続けたいと思っております。  中業の問題につきましては、これはいずれ政府全体としてもいろいろ今後の扱い等について検討される問題だろうと思いますので、御意見の点は十分考慮に入れてまいりたいと思います。     —————————————
  170. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 委員異動について御報告いたします。  本日、安孫子藤吉君が委員辞任され、その補欠として浅野拡君が選任されました。     —————————————
  171. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、航空業務に関する日本国とニュー.ジーランドとの間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  172. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、航空業務に関する日本国バングラデシュ人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  173. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、航空業務に関する日本国フィジーとの間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  174. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、航空業務に関する日本国スペインとの間の協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  175. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百六十九年の船舶トン数測度に関する国際条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  176. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百二十八年十一月二十二日にパリ署名された国際博覧会に関する条約改正する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  177. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百七十九年の国際天然ゴム協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  178. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、国際連合工業開発機関憲章締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  179. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国フィリピン共和国との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  180. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国フィリピン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  181. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、十件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  183. 石破二朗

    委員長石破二朗君) これより請願の審査を行います。  第一六八一号ILO未批准条約等批准促進に関する請願外百六十八件を議題といたします。  まず、専門員から説明を聴取いたします。
  184. 山本義彰

    ○専門員(山本義彰君) 今国会中外務委員会に付託されました請願は、お手元の表のとおり全部で百六十九件でございます。  まず、二八八一号は、わが国のILO未批准条約のうち、一〇五号、一一一号等二十の条約を即時に批准すること及びわが国が国際人権規約の批准に際して付した留保及び解釈宣言を直ちに撤回することを要請するものであります。  次に、二八〇二号は、「伝統的な日本精神を改めて認識し、過去のあやまちを反省して、真の世界平和を実現するため努力する」という内容の「日本国平和宣言」を国会で決議されたいというものであります。  最後に、三三七五号は、国連を通じての新しい世界秩序樹立を目指し、「国連を改造強化し、全人類の平和と安全を保障する民主的な平和維持機構への移行の早期実現を期すべきである」という内容の「世界恒久平和の確立に関する決議」を国会でされたいというものであります。  以上でございます。
  185. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 以上で説明は終わりました。  先刻の理事会におきまして協議いたしましたところ、いずれの請願も保留とすることに意見の一致を見ました。  この理事会の協議のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたします。     —————————————
  187. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会      —————・—————