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1980-04-08 第91回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年四月八日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  四月二日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     小野  明君  四月七日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     中村 利次君  四月八日     辞任         補欠選任      二木 謙吾君     岩動 道行君      大鷹 淑子君     浅野  拡君      菅野 儀作君     嶋崎  均君      立木  洋君     下田 京子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石破 二朗君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 嶋崎  均君                 町村 金五君                 小野  明君                 田中寿美子君                 藤田  進君                 立木  洋君                 中村 利次君    国務大臣        外 務 大 臣  大来佐武郎君    政府委員        科学技術庁原子        力安全局次長   宮本 二郎君        外務大臣官房領        事移住部長    塚本 政雄君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省経済協力        局長       梁井 新一君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        科学技術庁原子        力局動力炉開発        課長       塚田 真一君        外務大臣官房審        議官       矢田部厚彦君        外務省経済局外        務参事官     遠藤  実君        農林水産省経済        局国際部国際経        済課長      山崎 皓一君        農林水産省農蚕        園芸局果樹花き        課長       畑中 孝晴君        通商産業省通商        政策局国際経済        部通商関税課長  内村 俊一君        中小企業庁計画        部下請企業課長  横堀 恵一君        運輸省自動車局        整備部公害防止        課長       金田幸二郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○原子力平和的利用における協力のための日本  国政府カナダ政府との間の協定改正する議  定書締結について承認を求めるの件(内閣提  出) ○廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止  に関する条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止  に関する条約紛争解決に関する改正受諾  について承認を求めるの件(内閣提出) ○関税及び貿易に関する一般協定譲許表の変更  に関する第四確認書締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○関税及び貿易に関する一般協定ジュネーブ議  定書(千九百七十九年)の締結について承認を  求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○関税及び貿易に関する一般協定第六条、第十六  条及び第二十三条の解釈及び適用に関する協定  の締結について承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○貿易技術的障害に関する協定締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○民間航空機貿易に関する協定締結について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○政府調達に関する協定締結について承認を求  めるの件(内閣提出衆議院送付) ○関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○関税及び貿易に関する一般協定第七条の実施に  関する協定議定書締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○輸入許可手続に関する協定締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 石破二朗

    委員長石破二朗君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨七日、藤井恒男君が委員辞任され、その補欠として中村利次君が選任されました。  また、本日、大鷹淑子君及び二木謙吾君が委員辞任され、その補欠として浅野拡君及び岩動道行君が選任されました。     —————————————
  3. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 次に、原子力平和的利用における協力のための日本国政府カナダ政府との間の協定改正する議定書締結について承認を求めるの件、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止に関する条約締結について承認を求めるの件、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止に関する条約紛争解決に関する改正受諾について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 昨日、カーター大統領が、イランに対する大変強硬な取り組みの姿勢を明示したようであります。大変残念なことに、イラン人質問題をめぐりまして膠着状態が今日まで続いてきた。われわれといたしましても、一日も早くその解決というものを期待もし、速やかな新しい外交というものが展開されることを望んでいたわけでございましたけれども医療品あるいは食糧を除いて、イランに対する事実上の外交断絶ということが発表されたようであります。この点について、外務省としてどのようにその経過についての報告を受けていらっしゃるか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  5. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この決定は、実は日本時間にいたしますとけさ五時ごろになるわけでございますが、外務省としてはカーター大統領発表全文大使館を通じて入手しております。けさ閣議の前に総理、官房長官とも相談をいたしまして、ただいま閣議のすぐ後、記者団に対して外務大臣談話発表いたしました。これを、簡単なものでございますから読み上げますと、   在イランアメリカ大使館人質問題が、米国がこれまで自制の下にとって来た多大の努力及び国連調査委員会関係諸国等協力にも拘らず、このような事態に立至ったことは残念である。   わが国としては、イランが重大な国際法違反を継続し人質解放見通しがたっていない状況のもとでカーター大統領が今回のような措置をとらざるを得なくなった事情は理解するところである。   わが国としては、今後とも米国及び他の友好諸国と緊密な連絡を保ちつつ人質解放を含めた事態早期解決のために努力して行く所存である。  以上のような記者発表をいたしたわけでございます。
  6. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ひところ、アメリカイラン両国関係において、好転するんではないだろうか、いわゆる学生の手からイラン政府人質を移管するという新しい展開が考えられる可能性が出てきたというようなことが伝えられていたわけでありますが、今回急遽そうした問題が裏目に出たというんでしょうか、予期せざる方向発展をしてしまった。そこに一体何があったのか、当然外務省としてもその辺のいろんな実情というものについては現地からもそれぞれの報告を聞いておられるであろうと思いますし、イラン側がきわめて硬直した姿勢を示さなければならなかった、それに対してアメリカ側が今回のカーター声明に基づく大変強硬な手段を選択をしなければならなかった、その辺のいきさつというものが、第三者的な立場に立つわれわれが見ても非常に不可解な点があるように思えるわけでありますけれども、この点についてはどのように判断をなさっておられますでしょうか。
  7. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 御承知のように、このイランの問題、人質問題につきましては、まあ三転、四転、五転と、その情勢がいままで何度も変転をしてきておるわけでございます。で、先般来情勢が、いま渋谷委員お話ございましたが、いい方に向かいつつあるのではないかという印象世界各国とも受けておったわけでございまして、人質学生の手から政府の手に移すということが実現するのではないかという印象が強かったわけでございます。で、現地からの情報によりましても、バニサドル大統領自体もそういう判断を持っていたように見受けられるのでございますが、昨夜、日本時間の七時でございますか、ホメイニ師発表で、人質学生の手に残すと、国民議会が開かれるまでは現状にとどめるという発表がございまして、恐らく米国政府はそのホメイニ師の裁断といいますか、この発表に対応して今回の措置をとることになったんだろうと推定いたしております。
  8. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま申し上げたように、イラン側がその、大変まあいい方向へ向くんではあるまいかという、イラン側バニサドル大統領を初めゴトブザデ外相あたりもそういう感じでいたようなことが伝えられている。それが急遽、大変硬直したような方向へ向かざるを得なかったという背景があるだろうということがわれわれとしても想像できるわけです。そこに何があったのかということですね。
  9. 千葉一夫

    政府委員千葉一夫君) ただいま委員指摘の点につきましてわれわれも非常なる疑問を抱いているわけでございますが、これは本当の真相はもとよりまだよくわかりません。これはイラン内部においても種々いろいろな説が行われておるというのは、先ほど大使館報告で聞いております。まあ、強いて申しますと、きのうの、先ほど大臣が御答弁申し上げましたホメイニ師事務所発表までは、バニサドル大統領初めイラン政府関係者はわりと楽観しておったと、いい方に出るのではないか、あるいはいい方が続くのではないか、そういうふうな感じであったそうでございます。したがいまして、イラン内部においてもきわめて意外なる展開であったということはここで言えると思います。  そこで、いろんな説がございますので、私どもとしてもこういう国政の御審議なさる場で余りいろんな憶説を述べるわけにまいりませんが、現地で言われているものを二つ三つ御紹介いたしますと、一つパナマから前の国王が出国したことがございますけれども、これによってイラン宗教界の何といいましょうか、猜疑心不信感というのが非常に大きくなったんだという説があるそうでございます。その説の後ろには、イランも含めた関係国の間でいろんな取引が行われておって、それが出国によって少し足をすくわれたといいましょうか、そういったふうなことなんで、猜疑心が非常に強まった、そういう説があるそうでございます。  もう一つの説は、これはほとんど純粋にイランの内政と言ってもいいのではないかと思われますけれどもバニサドル大統領を一方に置き、他方、きわめて保守的な宗教界のバックを受けた政治勢力があることは御存じのとおりでございますが、その他にもいろんな勢力がありますけれども、要するに、これらの勢力の間の一種のバランスというものがこの人質問題をいかに解決していくかということをめぐって揺れ動いているわけです。そこでイラン内部におきましても、あるときはバニサドルの方を推し、あるときは反対の方を推すといったような動き一種の政治的な面からもあるというような説もあるわけでございまして、今回やはりこの問題がもし解決に向かえばバニサドル大統領等を中心とする勢力イランにおいて上手を占める、こういうことになっては困るという配慮があったんだと、そういう説もあるそうでございます。  このほかにも両者絡んだようないろんなものがございますが、とりあえずは現地に流れておる憶説を御紹介するほかない状態で、御了承願いたいと思います。
  10. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そこで問題になりますのは、今回のアメリカイランとの外交断絶によって生じた経済的な報復措置が主体的な意味合いを持つものであろうというふうに思えるわけですが、その際、あるいは日本に対して同調を求めてきはしまいかという憶測が当然考えられると思うんですね。また一方においては、イラン側がもし日本アメリカ同調するようなことがあればということで、油の供給というものについて差しとめるというような、また、それに対応する報復的な措置というものも当然裏返しに考えられるであろう。この辺についてこれからの推移を見ていかなければ、直ちに決断を下すというわけにはいかないにしても、しかし、いま動いているわけですので、当然アメリカ側としても何らかのそういう協調というものを日本に迫ってくる可能性というものは十分考えられはしまいか。まずこの点については、政府として、もしそうしたことが起こった場合にどう対応するのかという問題。
  11. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) カーター大統領発表声明は、いまのお話の点につきましては、われわれは米国が今般とる措置及び今後必要となり得べき追加的措置について同盟友邦諸国と引き続き協議していく——引き続き協議していくという表現になっておるわけでございます。したがって、こういう行動をとれという要求という形にはなっておらないわけでございます。  しかし、ただいま渋谷委員の御指摘のように、協力を求めてくるということも将来予想される可能性があることだと思われますので、その点につきましては先ほど新聞発表の後段にございますように、「わが国としては、今後とも米国及び他の友好諸国と緊密な連絡を保ちつつ人質解放を含めた事態早期解決のために努力して行く所存である。」、そういう立場で対処していくことになるかと思います。
  12. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 昨今のイラン情勢というのは、新聞報道等を通じてしかわれわれはかいま見ることはできないわけでありますけれども、ともあれ、イラン経済情勢というものが非常に緊迫した状態に置かれている。このまま放置されればまた新しい一つ動きというものがイラン国内においても発生する、そういうような余地も十分考えられるであろう。恐らくアメリカ側としてはそういう点をねらいつつ、アメリカ経済協力というものがなければイランの今後の発展というものは望めないんだぞと、それと引きかえに人質を一刻も早く解放せよというような含みのある今回の措置ではなかろうか、という判断もないではないわけでありますけれども、しかし宗教的に一つの信念として固まったイランの今後の方向というものを考えてみた場合に、おいそれとそうしたような従来のそういうかけひき的なやり方では果たして解決のめどがつくんだろうかと大変心配をするのが一つと、シャー自身パナマからエジプトへ移ったという問題もあるでしょうけれども、それよりもむしろ現実的な問題として、現在のイラン経済情勢というものを考えてみた場合、アメリカ側としても非常に大きな効果をそういう経済断交という形でねらったのではあるまいか。この点については外務省としてどのように判断をされておりましょうか。
  13. 千葉一夫

    政府委員千葉一夫君) イラン経済状態は決してよくはないことは、もう委員もちろんよく御存じのとおりでございますが、よくないと言いましても、アメリカはいままで事実上、もう経済断交を実際上しているようなものでございますので、これらがどの程度影響を及ぼしているかという点については諸説紛々でございまして、影響ないはずはございませんが、それほど大きな影響はないのではなかろうかというのが一応の見方のようでございます。ただし、イラン自体の問題、革命後のいろいろな問題等々からくる経済の停滞というものは確かにございますけれども、これは非常に大きな額の石油収入がございますので、これで何とかカバーしてきておる。こういったような点が指摘されております。それから、いろいろな工業製品等はもちろん輸入に仰いでいるわけでございますが、これらはアメリカから来なくなってもあっちこっちほかのところから来ているわけでございますので、当面は余り不自由はしていない、こういうことは言えると思います。したがって、当面は余り影響はないけれども、長い目で見てそれは影響ないはずはない、こう思われるわけでございます。
  14. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうすると、アメリカの今回のカーターの発言は一体どこにねらいがあったのかということになるわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
  15. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) すでに御承知のとおり、アメリカ側としてはイラン人質解放のために国連等を通ずる努力あるいは第三国を通ずる努力を重ねてまいりまして、先ほども御議論がございましたように、一時曙光が見えるような状態でございました。アメリカとしては一貫して人質早期釈放ということで臨んできたわけでございますけれども、四月の前半から今日まで、あるときは事態改善が見られるというような状況でございましたけれども、昨日に至りまして、事態改善について望みが見られなくなった。そこで今回、アメリカとしてはやむを得ず強硬な措置をとらざるを得なくなった。それによってある程度今度はこの新しい政策人質解放が一日も早くもたらされるであろうという期待を込めて措置をとったというふうに見ております。
  16. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 むしろ今回のカーターの提唱というものはイラン側を硬化させることのみに役立つだけであって、少しもその利点というものはないんではないだろうか。これは常識的に判断をいたしましてもそのように私どもは考えられるわけです。硬化すれば硬化するほどこの事態解決というものは長引くでありましょうし、果たして今回のカーターのとった措置というものが解決への手がかりになるのかどうか。むしろ逆の方向へ動いていくのではなかろうか。日本としてやはり一番恐れることは、先ほども大来さんが御答弁なさいましたように、協力を求められる可能性はないではないと。その場合に日本として一体どういう歩調をとるのかという問題がありましょうし、そしてまた、それにイラン側としても日本に対する対応策というものが当然考えられてくる。非常にやりにくいというか、日本としても相当深刻にこれを受けとめざるを得ない新しい事態展開がいまなされているのではないか。したがって、今後日本としてとるべき道は一体何なのか。やはりシャー自身をどうしても引き渡さなければならないという問題も絡めて、日本として解決の方途というものは一体どう考えていったらいいのか。大変むずかしい問題ではあろうかと思いますけれどもカーター日本のみならず西ドイツを含めたヨーロッパにおいても同調を求めようという、そういう考え方があるやに伝えられておるわけであります。そうすると、西側のいわゆる自由主義国家群に対して、イランに対する何らかのそういう経済的措置というものを迫ってくれと。もうせっぱ詰まったやはりアメリカとしての事情からのそういう考え方も当然これからはいろんな形で出てきはしまいか。この点についてはどのように外務省として考えられているのか。また、どうこれからそれに対して出た場合に取り組まなければならないのか。当然いまからその予測したいろんな事態に対応できる考え方というものをまとめる必要があるであろう、こう思うわけです。
  17. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いま御質問の点につきましては、わが国としてはそのイラン重要性にもかんがみまして、同国との友好関係を今後とも維持していきたいというふうに考えておるわけでございまして、そのためには従来にも増して人質早期解放ということが不可欠の条件になってまいります。わが国としてもこの世界国際社会の重要な一員の立場でもございますし、事態推移を見きわめながら粘り強く人質解放イラン側に求める努力、それを含む事態早期解決についての可能な限り努力を払っていくということであろうかと考えます。
  18. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま申し上げたように、きわめて短絡的な言い方かもしれませんけれどもシャー引き渡しがない限りはこの問題の解決はないのではないだろうかという心配が非常にあるわけですね。この点はどういうふうに判断していますか。
  19. 千葉一夫

    政府委員千葉一夫君) お説のとおり、イラン側は公式にはシャー引き渡しというものを非常に強く主張しているわけでございます。これはそのとおりでございますが、しかし、現実問題としてそれは非常にむずかしいということはこれまたよく御理解されておることかと存じます。といいますのは、アメリカの手中にシャーはもはやないわけでございまして、これはエジプトにおるわけでございます。そこで、シャーを引き渡せという話をアメリカに対してしても現実の物理的な支配権というものはないわけでございますので、アメリカとしては手が打てない状況であることはこれはもう常識的に言えるわけでございます。それではエジプトはどうかといいますと、これまたみずからいろんなリスクを冒してまでもシャーを迎え入れておるわけでございますから、サダト大統領としてはそう軽々に引き渡し等ができるとは思えないわけであります。エジプトイランとの関係というのは革命以後余りよくないことは御存じのとおりでございますが、これらを考えてみますと、エジプトの国益からいってもこの点をイランに対して譲るというのもなかなかこれも考えられない、そういうわけで、シャーイランに行くということについての当面の見通しはいま立たない次第でございます。しかし、ではこれができなければどうしてもだめなのかということでございますが、すでにホメイニ事務所からきのう発表がありましたように、イラン国民議会人質についての決定をするのであるということを言っておりますので、この辺でどういうふうないまシャーの問題の絡みが出てくるかは今後われわれとしても注視していかなくちゃならない点かと存ぜられます。
  20. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま国民議会の話も出ましたけれども、果たしてその国民議会なるものがどれだけの決定権を持つものであるか、これも大変疑わしいものがあるのではないだろうか、そのよってでき上がったいろいろな経過というものを考えてみた場合に、果たして国民議会の持ち権能あるいは権力あるいはその運用というものを考えてみた場合に、果たしてその機能というものが十二分に発揮できるような体制の中に置かれているのだろうかという一つの疑問が残る、これは別問題といたしましても。まあシャー自身の問題はもうすでにアメリカの手を離れたといいますけれども、その絡みというものは絶えずやはりアメリカというものがそこに連動しているということを彼らも判断をしておりましょう。どうしてもやはりその問題が解消されない限りはその突破口が開けないのではないだろうかというふうに思えるわけですけれども、それはともかくとして、いま再三申し上げましたように、日本がこれから対応すべき道、かつては高い油を買ったということでアメリカから非難を浴びたそういう経過もあるわけであります。果たしていまそのような高い油を買ってまでも日本の独自の路線を選ぶのか、あるいはアメリカ側から協調を求められた場合にどうしてもそれを避けることができないものとして日本アメリカと一体になって、あるいは何らかの形の経済断交を迫るようなことになるのか、この辺、締めくくってひとつ大来さんの意のあるところをお答えをいただきたい。それが日本のこれからのとるべき進路にもつながるであろうという判断があるからお聞かせをいただきたい。
  21. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いまのような事態につきまして、まず第一に大使館を占領し、大使館員を人質にするということは、国際法上も国際秩序上も絶対認められない、こういう日本政府立場は今後も変わらないと思います。それに従いましてこの人質解放を要求し続けるということが第一でございます。今後の対イラン措置につきまして、アメリカは先般の国連の安保理事会でソ連のビトーによって否決されました経済措置、対イラン経済制裁措置アメリカ自身で独自で採用するということを今度の発表で言っておるわけでございます。これに対して協力を求められた場合の対応策につきましては、この日本自身の国益というものも含めて慎重に対処しなければならない。従来から日本政府立場といたしましては、この問題については他の友好諸国等との連絡をとりながら対応していこうという立場でございまして、この点も、このいまの段階で従来の方針には変わりがない。いずれにしてもこういう新しい事態状況について十分に注意しながら対応していく、非常にむずかしい問題であることは事実でございますが、ただ日本立場として余りに先走った行動をとるということも問題でございますし、それから基本的には人質問題が解決しないということについてはあくまでも日本としては主張を続けていかなきゃならないという立場でございまして、この現実の問題にそういうことで対応していくということになるかと存じます。
  22. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 最後にもう一点確認をしておきたいと思うんですが、一方イラクの国内においてイラン人の一万数千名にわたる人たちの追放が行われていると、こういうことが報道されているわけであります。アフガンに引き続いて新しい緊張状態というものが、イランを含めながらこれがどんなような推移をたどるのか予測もつかないかもしれませんけれども、そういった状況の中であるいは一面考えると、イランというものは非常に追い詰められた形にいま立たされているんではないか。そうすると窮鼠ネコをかむということもありますように、いままでは反ソビエトというような方針をとってきたそのイランというのが、急速にあるいは何らかの展開を示す一環としてソビエトに接近をするというふうなそういうことは予測できないかどうか、その辺あわして新しい緊張が生まれたこの経緯を踏まえて、これはただごとでない状態でありますので、その辺の分析を含めてお答えをいただきたい。
  23. 千葉一夫

    政府委員千葉一夫君) ただいま、委員指摘イラン、イラク関係につきましては、さらにイラン政府の方から在イラクの外交官の総引き上げを指令したといったような報告が入っております。そういうようなことで、まことにアメリカとの緊張、アフガニスタンの問題のほかに、いま御指摘のように一層隣国イラクとの関係が悪くなってきておる、これはまことに憂うべき状態だと私ども見ております。  ただし、これがいかに今後発展していくかという問題になりますと、イラクも、イランとの関係はそういうことでございますけれども、やはりそれなりに一つの連帯感もまだ失われていないと。それはどういうことかといいますと、まずイスラム国家としての連帯感、さらには広く非同盟国としての連帯感、これはまだ失われていないとわれわれには思われます。したがいましてアメリカイランとの関係におきまして、イラク政府人質をとったりなんかするのはよくないということを言っておりますが、しかしアメリカに対して味方するというふうには言っておりませんし、またいろんな点で、たとえばアメリカが制裁を行ったときは、逆にアメリカに対して何か措置をとるであろうということも言っております。そういうことで、イランがいまのような状況に陥っているのにイラクがつけ込んで何かするという、そのアメリカとの関連あるいはソ連との関連を考えての意味では、まだちょっとそこまでいかないのではないかと思われます。ただし御指摘のとおり事態はどんどん変わっていますから、そういうことも可能性としては頭に入れてやっていきたいと思っております。
  24. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 終わります。
  25. 立木洋

    立木洋君 私も本題に入る前に、けさカーター米大統領の発言、これは日本の今後の外交にとっても非常に重要な点でありますので、二、三お尋ねしておきたいと思います。  先ほど大臣発表された談話の中身で、今回とったカーター米大統領のこういう措置といいますか、これは理解できるところであるという内容でございましたけれども、この理解できるところであるという点をもう少し御説明いただきたいのですがね。どういう意味合いなのか、今後のやはり日本がこの問題に対処していく主な点になるだろうと思いますので。
  26. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先ほど読み上げました談話の中で、いま御指摘の点はこういう言い方をしているわけでございます。「わが国としては、イランが重大な国際法違反を継続し人質解放見通しがたっていない状況のもとでカーター大統領が今回のような措置をとらざるを得なくなった事情は理解するところである。」、そう言っておるわけでございます。まあアメリカの国内の事情としても、先般私も訪米いたしましたときに、バンス国務長官が、アメリカ人の忍耐心にも限度があるのだという発言をいたしておったわけでございますが、人質事件以来これだけ長期にわたっておるわけでございまして、そういう点については理解するところであるという趣旨で申しておるわけでございます。
  27. 立木洋

    立木洋君 先ほども問題になりましたように、いろいろと経緯が二転三転しているわけですけれども、いままでこうした事態にまで立ち至った経過の中に、アメリカがとってきた態度ですね、これに果たして問題がなかったんだろうかどうなんだろうか、先ほどの談話の発表内容、経過をずっと見てみますと、今回の措置に至った経緯について理解を示し、イランのとった態度については批判をしておる内容であって、もちろん先ほどイランとの友好関係も何とか維持していきたいという趣旨のお話もございましたけれども、しかしそうであるならば、アメリカのとってきた態度については、日本は何も物を申さないで、ただイランだけがよくないという趣旨のそういう意味での談話の発表なのかどうなのか、そこらあたりを重ねてお尋ねしておきたいんですが。
  28. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) それは最後の後段に言っておりますように、「人質解放を含めた事態早期解決のために努力して行く」と、いずれにしてもこの大使館員を人質にするという事態が解消しておらないわけでございますから、まずその問題が解消してから、いまお話しのような点がさらに問題とされることになるのかもしれませんが、当面はやはりこの人質解放を求めるという立場でいかざるを得ないと考えておるわけでございます。
  29. 立木洋

    立木洋君 私ももちろん人質がいいなんというようには毛頭思っておりませんし、これはやはり重大な問題だと思っております。ただ問題は、こういう事態が起こったやっぱり経緯だとかいう内容も十分踏まえる必要があるだろうと思うんですよね。それで、そうするといまおっしゃった内容から言えば、人質問題が解決つかない限り、アメリカ側が今後とっていくであろういろいろな強硬的な措置には、やっぱり事実上日本政府としては同調していかざるを得ないということになるのかどうなのか、その点はいかがでしょうか。
  30. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その点は先ほども申しましたように、そういう措置日本としては理解するところであると、日本としてどう行動するかは、友好諸国との連絡も十分にとりながら解決促進に努力するという立場でいくよりほかにないと思います。
  31. 立木洋

    立木洋君 かつてモサデグ政権が倒されましてね、これはアメリカの介入があったということは事実上もう認められた経過であるわけですけれども、その後事実上人民の弾圧体制がイランでしかれる。そういう状況アメリカの手助けのもとで進められてきた。今回新しい政権がホメイニ氏のもとでつくられた経過というのがある、いろいろ問題がありますけれども。これから後その人質問題等々が契機にされて、これが話し合いの方向でなくて、やはり力の政策に依拠した形でアメリカがとってきたいわゆる諸装置というのが進められてきたと思うんですよ。たとえて言いますと、中東に対する緊急展開部隊の配置を進めるという問題にしても、あるいは艦隊をペルシャ湾、中東に派遣するというふうな状況や、周辺基地の強化の問題あるいは核兵器も中東等においての使用を辞さないというような強硬発言等々、そういう力によって相手を抑え込もうとするようなこういうことについては、当然やはり好ましいことではないという態度も日本政府はとるべきではないだろうかと思うんですけれども、そういう問題等々含めて、今後アメリカが、極端なことを考えるならば、たとえば武力の行使等々にまで至るような可能性、そういうものが果たしてないかどうなのか、そういう状況見通しについてはいかがでしょう。
  32. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これはまあいまの段階で即断することはちょっと困難だと思います。まあ従来アメリカ政府努力は、そういうことにならないような道で解決したいということでございますし、国連の調査委員会の派遣などもありましたし、米側としても相当な忍耐力で交渉をしてきたということは認められるのではないかと存じます。  今後どういう形でいくかということは、一つイランの今後の対応の仕方、アメリカの国内の世論の動き、いろんな情勢を見ないと判断できないわけでございまして、少なくともいまの段階では平和的手段での解決ということを目指しておるのだろうと思います。
  33. 立木洋

    立木洋君 最後にしたいと思いますけれどもアメリカ側に対していま言われたように平和的な手段で解決努力をしてきたと、一面では忍耐も限りがあるというふうな考え方アメリカにはあるようだということも申されましたけれども、しかし実際に相手にあいくちを突きつけておってさあ話し合いをしようということでは本当の話し合いにならないだろうと私は思うのですね。先ほど申し上げたいろいろな力の政策による対応措置ということで、相手を脅迫しながら進めていくというやり方では私は本当の問題の解決にはならない。だから、予算委員会等々でも中東に対する出動の問題で何回か大臣にお尋ねいたしましたけれども、そういう点はやっぱりけじめをつけた、きちっとした、アメリカならアメリカに対しても申し入れをすると、そういうことについてはわれわれは同調しかねる、日本政府としてはそういうことは反対であるということを明確に——やっぱり正しく平和的に解決していくということを望むのであるならば、そういうこともはっきりとすべきではないかというふうに思いますが、今後のこの問題にとっていく対応措置ともあわせて、そういう問題を明確にアメリカに主張していく御意思があるのかどうなのか、その点をこの問題の最後にお尋ねしておきたいと思うのです。
  34. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 中東の情勢につきましては、イラン問題に引き続きアフガニスタン問題が起こりまして、これは単にアメリカ側イラン問題に対する反応だけでなくて、両者が絡み合うような形に事実上なってきておると思います。  日本としては、再三私も従来から答弁してまいりましたように、日本のたてまえから申しまして、武力的な面での中東における協力ということは問題外でございまして、日本としては日本側の国益を踏まえた対応をしていかなければならない。ただ、現実問題として、あの地域に軍事的緊張が存在しておるということ、その緊張がソ連軍のアフガニスタンに対する軍事介入によって高まったということも否定できないことでございまして、日本としては日本のたてまえで協力するけじめは当然明らかにしなければなりませんし、従来もしてきておるわけでございますが、その前提の上で中東問題の平和的解決を求める。これは日本だけではなくて、多くの国もそういう考え方を持っておるだろうと思いますので、そういう立場をとっていくことになるのではないかと考えます。
  35. 立木洋

    立木洋君 この点については、今後の日本外交政策の基本が問われる問題にもなるわけですから、私は十分に、たてまえと本音とを使い分けるというようなことではなくて、おっしゃることをおっしゃるとおりに十分に実行していただきたいということをこの問題の最後に要望しておきたいと思うのです。  それで、日加原子力協定の問題でお尋ねしたいのですが、この日加原子力協定の中での問題として感じるのは、事前同意権といいますか、事前に同意を求めなければならない範囲が拡大されている点、これは非常に問題だろうと思うのです。そしてまた、同時にこれを前提として結局は濃縮ウランのサービスをアメリカが行うということで、アメリカの同意を得るということに事実上一本化されている。このことから、結局アメリカの対日原子力政策を強めるというふうな結果にならざるを得ないのではないかという点に非常に問題を感じるわけです。この新しく事前同意が必要となったこれらの事項について、どういう理由からこういう問題が提起されてきたというふうに判断しているのか。それに対して日本はこの交渉の経過の中ではどういうふうな態度を表明したのか。その点、最初にお伺いしたい。
  36. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 今回の日加原子力協定改正によりまして、供給国側が持ちます規制権が強化される方向になっておることは、ただいま委員の御指摘のとおりでございます。しかしながら、まず一般論といたしまして、原子力をエネルギー源として使用いたします以上、この原子力は核兵器にも転用が可能なものでございますので、そういうことがないように十分な規制が伴わなければならないということは、これは国際的な常識でもございますし、日本としてもそのような方針を国策としてもとっておるわけでございます。したがいまして、妥当な範囲での供給国の規制権というものが認められるということは、いまや国際的にそういう傾向になっておると申して差し支えなかろうかと存じます。  いま御質問の供給国の事前同意の範囲の拡大でございますが、一、二点申し上げますと、第一は今般の改正によりまして、供給国から供給されました核物質を二〇%以上に濃縮する場合には事前同意を必要とするということになります。この点は、御承知のように、原子炉に通常使われます低濃縮のウランはそのまま核兵器に転用することはできません。高濃縮ウランのみが核兵器に転用することができるわけでございますので、高濃縮ウランをつくる場合には事前の同意を要するということは、これはまあ妥当な規制の範囲と申すことができるかと存じます。  それから、核物質を貯蔵する場合に、これも高濃縮ウラン、プルトニウム等でございますが、貯蔵の事前同意権というものが規定されることになっております。これも同じ趣旨で、平和利用に直ちに使用されないような転用可能な核物質が無用に貯蔵されるということは、ストックパイルがつくられるということは危険なことでございますから、そういうことに対する歯どめというものが設けられることも、これも妥当な規制の範囲であるということが言えるかと存じます。ちなみに、今度の改正では備蓄の場合のみがこの貯蔵の事前同意の対象であるということははっきりいたしてございます。たまたま使用前に何日間か貯蔵されると、そういう場合のことは含まないということがはっきりされておるわけでございます。
  37. 立木洋

    立木洋君 それからもう一点、この協定第八条の2に次のあれを加えるということで、「この協定が廃棄された場合においても、この協定に基づいて入手した設備、施設及び資材並びに特定物質に関し、これらが現存している間又は両当事国政府により別段の合意が行われるまでの間、この協定の第三条、第四条、第六条、第七条及び第七条のAの規定は、なお効力を有する。」と。これは私の知っている範囲内で、協定が破棄されてもなおかつその効力を有するというふうなことがほかの協定などに果たしてあるのかどうなのかという問題が一つ疑問があるのと、それからこういうような破棄された場合でもなおかつ効力を有する条項をこういうふうに設けておくということの意味がどういう意味なのか、その点について御説明願います。
  38. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) この協定で核についての協力が行われる反面、それが平和利用にのみ限られること、軍事利用には転用されてはならないということが合意されるわけでございます。したがいまして、仮にこの協定が失効いたしました後に、核物質は残っておるわけでございますから、その残っておる核物質が協定の廃棄後において軍事転用されるということは、協定の目的に全く相反することになるわけでございます。したがいまして、何らかの事情によって協定が失効するという後においても、残っておる核物質が軍事的に転用されないように確保する手段というものはそのまま効力を有し続けるということも当然であろうかと、必要であろうかと、こういうことでこういう規定文となっておるわけでございます。
  39. 立木洋

    立木洋君 他のこういう協定にはそういうことは同じようにあるんですか、どこかに。
  40. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) カナダが結んでおります原子力協定にはすべてこういう条項が入っておりますし、ほかの協定でもそういう条項が入ることがいま一般的な趨勢となっております。
  41. 立木洋

    立木洋君 これはいまおっしゃったような、軍事利用に転用されないということ、これは全くわれわれも賛成ですし、しかしそのことが口実にされて、いわゆる十分な平和利用が妨げられるというふうなことになると、これはまた問題が起こるわけですよね。これは御承知のように、日米関係においたって、日米関係の信頼関係があるからということで問題が起こらないという事態がいままで、たとえば日米原子力協定の八条C項ですか、の際でも繰り返し日本政府は述べてきたわけですが、しかしこれは一九七七年の四月でしたか、カーターが新原子力政策をとったときに、これはもう大変なショックを日本自身が受けたというふうなことにも見られますように、だからやはりそういう点はきちっと自主性だとかいうものが明確にされないと、これはやっぱり問題がどうしても残りかねないという点があるものですから、あえてその点を私は指摘しておきたいと思うんですね。  それで、これは今度アメリカの態度になるわけですが、カーターが新原子力政策をとって以来、アメリカは核拡散防止法、これは国内法ですが、これを発動させて、国際核燃料公社をつくって、ここからつまり核燃料を供給する、保障するということを引きかえに、一国単位で新たな濃縮再処理施設を認めないというふうな方向を目指してやってきたわけですね。これは先般のINFCEでもいろいろ問題になった点ですが、このアメリカのそういう動向に対しては、現在の時点で日本政府としてはどういうふうにお考えですか。
  42. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) アメリカの新不拡散法にございます国際核燃料公社の問題でございますが、この点につきましてはINFCEの検討の場におきまして、アメリカ側が国際核燃料銀行という考え方を説明したことがございます。しかしながら、その内容を詰めるまでには至っておりません。具体的な詰めにまでは至っておらないのが現状でございます。  それから、アメリカが濃縮及び再処理については慎重な態度をとっておるということも御指摘のとおりでございますが、INFCEの結論におきましては、濃縮につきましても再処理につきましても、経済的にそれをやるだけの妥当な十分な理由がある場合には否定されないという結論になっておるわけでございます。で、INFCEの結論が参加国を拘束することでないことは申し上げるまでもないことでございますが、米国が今後の核不拡散政策実施に当たってこれらの点を十分考慮していくであろうということは、私どもそのように希望いたしておるところでございます。
  43. 立木洋

    立木洋君 いまおっしゃいましたように、INFCEは当然これは政府間のあれではないわけですから、おっしゃるとおりですけれども、このINFCEの結論についてのいろいろな報道等々を見ていますと、アメリカが主張してきたのが後退を示したというふうな報道があるわけですけれども、またいまおっしゃった点からしても、今後こういうふうなINFCEの結論を尊重しつつという趣旨のお話がありましたが、アメリカ側としてはその後の発言でも、ピカリング国務次官補やシャインマン前原子力補佐官などは、すでにアメリカ主導型の原子力協定を二十数カ国と結んでいるので、一九七八年の核不拡散法をてことして今後アメリカ政策を進めていくことができるんだというふうな発言もしておるやに報道では見ているわけです。ですから、今後実際に二国間で話し合いを進めていくということになった場合に、いわゆる決して単純に物事が順調に進むというふうには私は考えられないだろうと、こう思うんですね。  そこでお尋ねしておきたいんですが、つまり第二次の日米再処理交渉、これがINFCEの結論の結果ということになって、四月の末までということになっていますわね、延長されたのが。その後の第二次の日米再処理交渉について、アメリカ側がいまどういう要求をしてきているのか、それに対して日本側がどういうふうな対応をとろうとしているのかということが一つ。  それから、アメリカの核不拡散法に伴う日米原子力協定の改定交渉ですね、この点についてはアメリカ側からどういう要求が出されて、日本政府としてはこの改定交渉にどういう立場で対応しようとしているのか。  もう一つは、使用済み核燃料の国際貯蔵構想ですね、この点についても同様な点、この三点をあわせてお伺いしておきたいんです。
  44. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 第一点の東海再処理施設の運転の問題であるかと存じますが、これは御指摘のように、ただいまの日米間の合意の効力が四月三十日までということになっておりますので、米国政府との間でこの合意を一年間延長する方向でただいま話し合いをいたしておるところでございます。  それから第二の、日米現行原子力協定の改定の問題でございますが、これにつきましては、昨年米国から予備的な協議を行いたいという話がございまして、日米間の事務当局間で予備的な話し合いをいたしました。その後、昨年から本年までを通じまして、具体的な動きはございません。  それから第三点の核燃料貯蔵の構想でございますが、これにつきましても昨年初め米国から、そのような構想が成り立ち得るかどうかということについて共同でフィージビリティー・スタディーをしてみないかという話がございまして、御案内のように使用済み核燃料が野方図に蓄積されるということは、核不拡散政策上決して好ましいことではございませんので、そのような構想が成り立つかどうかについて米側とフィージビリティー・スタディーをやるということ自体は原則として結構であるという立場をとっております。ただいま米側の専門家との間で共同フィージビリティー・スタディーというものの内容につきまして詰めておる段階でございます。したがいまして、まだそれをやるかどうかということが決まったというわけではございません。
  45. 立木洋

    立木洋君 日米原子力協定改定交渉の問題についてもう少しお尋ねしておきたいんですが、先般も私当委員会で申し述べたことがあるわけですけれども先ほど言いました八条のC項ですかね、結局アメリカから濃縮ウランの供給が断たれたならばもうにっちもさっちもいかなくなるというふうな事態に事実上追い込まれるわけですよね。こういうような点についてはきちっとやっぱり自主性が持てるような内容にすべきではないだろうかということも先般申し上げたんですが、こういうことに関してきちっとアメリカ側に申し述べる、主張する、そういうふうな考え方があるのかどうなのかという点と、それからあわせて、先ほど一番最初にお尋ねいたしましたように日加原子力協定でも、つまり事前同意権が拡大されている、規制する内容がですね、等々の問題がアメリカ側から提起されてきて、そういうことが盛り込まれる可能性があるのかどうなのか、そういう点についてお尋ねしたいと思います。
  46. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 将来の日米原子力協定改定交渉におきましては申し上げるまでもないことと存じますが、われわれといたしましては日本原子力平和利用が妨げられることがないように米側と十分協議をいたしたいと考えております。日本の正当な平和利用が行われるということは日本の当然の権利でございますので、これが妨げられることがないということは、当然交渉の眼目であろうかと心得ております。  それから、日加原子力協定につきましても当然そのような方針で交渉をいたしたわけでございまして、この改正で盛り込まれております規制権の強化というのは、先ほど申し上げましたような核拡散の危険が増大しつつある現下の国際情勢のもとではやむを得ない範囲のものであるというふうに判断いたしますし、またわが国の独自の平和利用推進に妨げになるものではないというふうに判断いたしました結果こういう協定に合意いたした次第でございます。
  47. 立木洋

    立木洋君 大臣、ここでちょっとお尋ねしておきたいんですけれども、いま申された妨げるものではないというふうなお考えのようですけれども、これは私は実際はそうではないだろうと思うんですね。先般お尋ねしたとき、そのときは外務大臣は大来さんではございませんでしたけれども日本としては核政策といいますか、原子力政策といいますか、この平和利用ですね、一方では平和利用、これは正しい形で進めていかなければならないわけですから、それと同時にやはり核の不拡散、これは当然核がどんどん核兵器が広がるなんというようなことは当然あってはならないことですから、いままでの考え方で言いますと、現状のもとでもこの原子力の平和利用と核の不拡散という状態が、いわゆる実際上両立し得るという立場に立って日本政府は主張してこられたんだと思うんですよ。  ところが、いままでの経過を見てみますと、今度のINFCE等々の内容を見てみても核拡散の防止ということや技術的なものよりも核武装の意図をなくさせることが何よりも重要な点だというふうなことが指摘をされていますし、問題はやはり核不拡散ということを口実にして、事実上核の、原子力の平和利用、これはもちろんわれわれは安全が前提であり、自主、民主、公開という原則は守らなければならないということは言うまでもありませんけれども、そういうことを前提とした上で平和利用をしていくことを、核の不拡散ということが口実で妨げられていくという事態が存在する。一方では今度核の平和利用だということで、一方では核の拡散が実際には行われるというようなことがカナダから購入したインドなんかの場合の、核実験がやられましたわね、こういうふうなことにも見られるし、ですから、私はこの問題いわゆる原子力の平和利用ということと核の不拡散ということは、本来言うならば核兵器を全面的に禁止するということを最も強力に主張しなければ、本当の意味での原子力の平和利用という道が切り開かれていかないのではないか、常に核の拡散という危険が伴わざるを得ないということが問題になるのではないかと思うのですけれども、こういう問題については大臣はどういうふうな御認識をお持ちでしょうか。
  48. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 一方におきまして核エネルギーが将来の人類のエネルギー供給の一つの重要なソースになっておると、ことに近年の石油情勢などを踏まえまして、核エネルギーの平和的利用というものは将来も続けていかなければならない情勢があると存じます。不拡散の立場というのはアメリカあるいはカナダ等にもございます。これは世界的にもあるわけでございますが、INFCEの議論の過程などを通じてそういう不拡散と平和利用を両立させようという国際的な努力は進められておるように思いますので、日本としてもその方向に従って両立をさせるということが基本的な政策になるかと思います。
  49. 立木洋

    立木洋君 大臣そうおっしゃいますけれどもアメリカが事実上核不拡散ということを主張していますわね、アメリカも強力に。それで一九七七年の新原子力政策ですか、ということも出されてきた。そういう警戒するということは、これはわれわれそういう事実が現実に起こり得る可能性がある点から見るならば、これはもちろんだと思いますけれども、しかし、そのことが現実にアメリカではどんどん核兵器をつくっているわけでしょう。あのプルトニウムにしたって商業用は延期されたといいましても、事実上軍事用については生産されているわけですから。自国では生産して、おって、他国にはそういうことはやらせない、いわゆる核不拡散ということでそれが口実に事実上使われて自国の独占的な地位を強めるような結果にならざるを得ない。こういう問題について当然権利として主張しておる、平和利用の権利ですね、これは核防条約の第四条ですか、でも明確に述べられているわけですから、これが開発途上国などで事実上それが開発する能力があるかどうか、技術水準がそこまでいっているかどうかということは、これは別としても、そういう権利までをも束縛するような状態になるということはこれは私は妥当ではないのではないだろうか。だから、そういう意味で言うならば本当にアメリカ自身核兵器の開発をやめて核兵器をなくす、そして本当に平和利用しかあり得ないという、そういう国際環境にしていくならばこれこそ完全な意味での平和利用の道が切り開かれていくことになるわけで、常に核拡散の、核が拡散される危険性を考えなければならないというふうな状態ではなくなるわけですから、本当の意味での平和利用の道が切り開かれていくだろうと思うんですよ。その点を大臣もう一度どういうふうにお考えになっているのか。
  50. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 核兵器というものは人類の将来にとっても非常に危険なものでございますし、特に、その点につきましては、米ソ二大両国が共同して核兵器使用の廃止の実現に向かう、そういう意味での軍縮の話し合いが具体化していくということは、これは人類の悲願だろうと思います。で、むしろ、将来、人類社会に核兵器が用いられない、つくられないという事態は、現実の世界情勢から見ればいまのところでは理想論でございますけれども、長期的にはそういう方向を目指していくことが正しいのであって、各国がみんな核兵器を生産する権力を持つという方向よりも、むしろ各国がそれを持たなくなるような世界に向かって、これは理想論であっても進んでいく方が正しい行き方ではないかと考えます。
  51. 立木洋

    立木洋君 誤解したらいけないので私述べておきますけれども、核兵器を持つ権利とは私は言ってないんです。核の、つまり原子力の平和利用を完全に行う当然の権利ということは、これは核防条約の第四条でも認められているところですから、このことを私が言っているわけですから、何も、核兵器を持つ国が広がらない方がいいという意味でいま大臣言われたけれども、そういう意味で私が述べたのではないということを述べておきたいのです。  最後に、この原子力政策、核政策というものが私は大変にアメリカに追随しておる、従属しておる状況から、日本のとる政策に基本的にやっぱり矛盾が生まれてきておる。アメリカの事実上核のかさに入っているわけですし、アメリカから濃縮ウランの供給が絶たれたならば大変な事態になるというふうな状況に現実に日本は置かれているわけです。私は、そういう、世界で初めての被爆国である日本として、今度濃縮ウランの生産ができるということになれば、これは日本にとってはそれ以上にこの問題、つまり核兵器をつくらず、持たず、持ち込ませずという立場を強化していく国際的な責任が一層重要になってくるだろうと思うんですね。そういう矛盾した政策、いままで私が述べたような矛盾した政策日本政府がとるのではなく、今日の状況、INFCEの経過も踏まえて、今後の日本政府がとるべき、国連などでもつまり核が保有されてない国に核配備をされるというふうなことに反対する決議に反対するというふうな態度ではなく、また、核の使用禁止、核兵器の使用禁止等々についても積極的に日本政府努力をする。実際には核兵器を世界からなくしていく。また、国内的に言うならば、非核三原則の立場をもっと明確な形で日本政府としては国際的にも表明していく、そういう必要があるのではないかと思うのですが、その点最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  52. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本政府のとっております非核三原則は、これはいろいろな機会に繰り返し明らかにされておるところでございますし、また国際的にも相当程度周知されておると存じますので、これは、今後もこの政策を堅持していくという方向で、日本国民の念願としてはそういう原則が次第に国際的に広がっていくことを望んでいきたい、そういう意味での努力は続けていくべきことだと考えます。
  53. 石破二朗

    委員長石破二朗君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  54. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 速記を始めて。
  55. 中村利次

    中村利次君 ただいま審議中の本院先議の三法案は、これはエネルギーにかかわる案件でございますけれども、きのうからきょうにかけて、イランアメリカ大使館の捕虜の取り扱いをめぐって、アメリカがその対抗措置として強硬手段を打ち出したということで、この問題の発展いかんによっては、これもまたわが国のエネルギー問題にかかわりがありそうな事件が起きているわけです。したがいまして、私は冒頭に、やっぱりちょっとこの問題について質問をしたいと存じますけれどもイランがというのか、イランの一部学生がというのか、いまやこれはイランがこの学生の行動を支持しておるようでありますけれども、国際法を無視して大使館も占拠している、外交官を捕虜にするという、こういうことに対しては、日本国政府はもちろんその行為に対して国連とともにこれを認めないとする強い姿勢をとるのは当然であろうと思います。ですから、そういう限りでは、先ほどの外務大臣声明というか、談話ですかは当然であろうと思いますが、そういう国際法を無視したやり方に対する毅然たる主体性に基づく姿勢と、よって起こる事態に対する対応というのは、これはまた別次元の問題であろうと思うんですが、アメリカはこの問題に対していわゆる経済制裁を中心とする対応策を今度もまたとろうとしておるわけです。これに対して同調なさるのかどうか。そういうことがアメリカから来ることは、これはほぼ予定されるわけでありますけれども同調なさるのかどうか、まず伺いたいと思います。
  56. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先ほど外務大臣談話の中でも申しておりますように、人質の問題をめぐりましてカーター大統領が今回のような措置をとらざるを得なくなった事情は理解するところであるということを申しておるわけでございまして、中村委員のお説のように、この人質解放問題については、日本としてもまた他の国と協力しても繰り返し努力を続けていかなければならない点だと思います。  お尋ねの対策としてのイランに対する経済措置、これは安保理事会で審議をされて、ソ連の拒否権がありまして否決をされた案でございますが、今回のカーター大統領発表ではそれをアメリカはやるんだという言い方をしておるわけでございまして、これに対するわが方の立場としては基本的にやはりイランとの友好関係の維持ということを一方に置いて考えていく必要があると思います。それから、他方において、イラン人質解放が促進されるということもいま申しました趣旨で考えていかなければなりませんし、同時に、友好諸国、特にヨーロッパ諸国等の動きというものも十分に緊密な連絡をとりながら考慮していかなければならないわけでございまして、そういう状況を踏まえながら、もしそういう事態が起こりましたときには対処していくということであろうかと思います。
  57. 中村利次

    中村利次君 いまの外務大臣の御答弁によりましても、日本立場というものは大変にこれはむずかしいと思うんですよ。私がどうしてこういうことをお伺いをするかといいますと、やっぱりあの事件が起きた当時、アメリカは対抗措置としてイランからの石油の輸入をキャンセルをしたんですけれども、そのときに日本は、アメリカの肩がわりというわけでもなかったんでしょうけれどもイランからの石油買いを、これはアメリカはもちろんですけれども、国際的にも非難をされるような形でイランからの石油の輸入をしたんですよね。このことは、いわゆるスポット価格のつり上げにも私はつながっていたと思うのです。その後アメリカ指摘、あるいは国際的ないろんな情勢、いろんな事情がありまして、通産省の商社あるいは石油業界に対するきつい勧告というものを経て、そしてその後の経過というものがあるわけですね。イランからの原油の輸入量というものはこれは現在ただいまでも日本輸入原油の——通産省お見えになっておりますか、あれはどれぐらい、一〇%弱ですか。
  58. 遠藤実

    説明員(遠藤実君) 時期のとり方その他によりまして若干数字は変わってまいりますけれども、大体五十三万バレルばかり直接取引、いわゆるDDで買っておりまして、これは大体一一%に当たります。
  59. 中村利次

    中村利次君 一〇%前後ぐらい、それはいろんなとり方、それからスポット買いのあれなんかも関係をしてきましょうけれども、これはやっぱりもしその原油が入ってこない、あるいはかなりの量を大部分を削減をされるということになりますと、これはもう私は毎々申し上げますけれども日本はエネルギー資源なんてものはこれは全く、少資源、少資源というけれども、無資源ですからね、そうしてこの一億一千六百万の国民をその他の資源もないのが、世界の工業基地としての役割りを正しく果たしながら、現在の生活水準を維持向上をしていかなきゃならぬというわけでありますから、その原動力になるエネルギー、これは原油が不足した場合には、日本の産業から、経済から、国民生活からすべてこれはもう重大なというよりも、決定的な影響を受けることになるわけでありますから、したがってイラン人質の扱いに対するイランの国際法を無視した不当性というものは、これはもう厳しく追及しなきゃいかぬけれどもアメリカがよって起こすいろんな経済制裁、そのことが単純なら私はまだ単純な見方があるでしょうけれどもアメリカにしてもソ連にしても、中東に対する対策というのは、まあ長期的には世界戦略であるという指摘をする向きすらあるぐらい、なかなかこれは単純に受け入れることができない、こういうものもあるようでありますけれども、この点についてもう一回外務大臣ですね、資源外交を含め、それから日本の主体性に基づいて筋を通した外交姿勢、そういう問題がこのアメリカイラン関係ではなかなか両立をさせるのはむずかしい情勢にあることは、先ほど大臣の答弁によっても非常によくわかるんです。そういうものに対して、その非常に困難な課題に対して今後どう取り組もうとされるのか、いま一回改めてお伺いをいたします。
  60. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御指摘のように、日本の置かれている立場はきわめて困難でございまして、世界の他の地域に緊張が余りなければ日本立場は非常にまあ万事やりやすくなるという点で、世界的な緊張が高まれば高まるほど日本立場がむずかしくなるということは御指摘のとおりでございます。したがって、日本としては自国の立場からしても、できるだけ世界における緊張緩和に少しでもそれが役立つような努力はやっていかなきゃならない、これは平和的手段による外交努力が中心になると思いますが。で、まあ御指摘のような点につきまして、やはり基本的に日本国民の国益を守っていくということが外交の大きな役割りでもあると思いますので、まあ率直に申しまして非常に歯切れのいい形での外交というものが困難な場合がしばしば出てまいるかと思うのでございますが、基本的には日本国民の生活と安全を守るという役割りを踏まえて、さらに日本経済力が国際的にも重要な比重を占めるようになってまいりまして、世界全般の問題についても日本の責任といいますか、ないし役割りが増大しておる。したがって、世界的な問題について日本はそれを看過するといいますか、回避することができない面もあると思います。で、これは日本国民の選択の問題でございますけれども、やはり自由な政治制度、言論の自由も含む、政権交代が選挙によって行われると、こういうものをやっぱりこの制度を守っていくという基本的な日本立場もあると思いますし、これに関係してやっぱり国際的な連帯関係も出てくると思いますので、そういう幾つかの立場の上で個々の事態に対処してできる限りいまのこの資源小国としての立場世界平和が日本の国民のために一番望ましい情勢であるという立場、さらに自由な社会制度を持つ国としての立場の間に具体的な対策、対応策を見出していくと、むずかしくてもそういう努力をする以外に道はないと考えるわけでございます。
  61. 中村利次

    中村利次君 大変にむずかしい課題でございますから、外務大臣の御答弁は質問者にとってもきわめて難解なものであるわけであります。しかし、外務大臣はこれはもう国際的にきわめて高名なエコノミストでございますから、そういう大臣個人のいろいろな長所、利点等もわが国外交政策にひとつ大いに生かしていただいて、そして、国益のための外交展開されますよう強く要求をいたします。  なお、ここで私は何も憎まれ口をたたく必要はないとは思いますが、たとえば第一次オイルショックのあの中東紛争のときも、それから今度のイラン問題なんかについても、日本の在外公館の情報収集なんというものはもう全くお粗末なようですね。むしろ商社の方がはるかにまさっておると言われている。これは私どもが海外に出ますと、もうこれはやっぱりむしろ在外公館を批判をするのがお気の毒であるということをしみじみ痛感をしわすね。まあ経済大国と言われ、そいつがどうなのか知らぬけれども、あるいは先進国と言われる日本の在外公館のあの劣勢というか、お粗末というか、海外に出れば全くお互い——これは私は超党派でそう思うているんですよ。もう本当にこれではいかぬと思うんだが、やっぱり日本に帰ってしまうともうほとんど忘れてしまうわけですけれども、私は、行政改革というのはわが党の看板ですから、これは何が何であろうと行政改革の看板は掲げ続けますけれども、しかし、だからといって必要なところへ、国益のために必要な体制の強化をするということに対して、私は外務省がたじろがれる必要は全くないと思う。ひとつ大いにおやりなさいよ。これは憎まれ口みたいな激励みたいなことになりましたが。  そこで、法案の質疑に移りますけれども日本のエネルギー政策は、これは先ほども申し上げましたように、日本はエネルギー無資源国でございますから、したがって、石油の代替エネルギーをどう求めていくか、これもやっぱり超党派的課題でございましょうし、決定的な国民課題でございますから、もう例外なく真剣にこの問題に国会の各政党もあるいは国民有識者も取り組んでおるわけでありますけれども、私はやはりこれはまず今世紀の課題としては、だれが何と言っても石油の代替エネルギーの本命は原子力以外にはあるまいと。私は、風力、潮力あるいは地熱その他のソフトエネルギー、すべてこれはもう積極的にそれらへの資金と技術を投入してでも急がなければならないという立場をとりますけれども、しかしやっぱり現実の問題として、ここ五年、十年、二十年石油にかわるエネルギーは何だと言えば、これは原子力あるいはLNG、石炭の利用をどうしていくかという以外にはこれは考えられませんよ。そうなりますと、やっぱり核燃料にしても、これは日本には無資源といってもいいぐらいでありますから、カナダの厄介にならなきゃならない、アメリカの厄介にならなきゃならない、あるいは豪州の厄介にならなきゃならない。そこで国際的に核不拡散を中心として、特に日加の原子力協定の今度の改定はこれは政府の提案理由の中にもございますように、インドの核爆発の実験に端を発してかなり強い姿勢改正議定書が今度調印をされるに至ったようでありますけれども、これは何も日加だけではなくて、日米あるいは日豪の問題でも同じことが言えると思うんです。ところがわが国では、核の拡散防止については、わが国は非核三原則をもうずっと主張し続け、守り続け、つくらず、持たずまでは、これは間違いなくわが国でできることでありますから守っておる。持ち込ませずが、これがどうなのか。アメリカが沖繩に核を持ち込んでおるとか、岩国に持ち込んでおるとか、いろんな議論があったけれども、これは全く決め手がない。あるいはソ連の原子力潜水艦が核武装をしてわが国の領海を通ったといったって、これはチェックのしようがない。アメリカの核の持ち込みについても立ち入り検査のしようがない。これは私は歴代内閣のあるいは失敗じゃなかったかと思うんですね。日本の主権においてできないことをやります、やりますと言って。しかし、つくらず持たずは、これはもう厳然と守られておると私は確信しております。非核三度則を持っておるわが国に、同じことが強硬にアメリカからもカナダからも、オーストラリアからも求められる、押しつけられる、この点はどういうぐあいにお考えになりますか。何か日本がそういう各国からちっとも信頼されていないというぐあいに考えるべきなのか、あるいはそのほかに何か考えようがあるのか、いかがでしょうか。
  62. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) ただいま先生御指摘のように、わが国の核不拡散政策については、これはわが国政策の根本でございまして、この点は先ほど大臣の御答弁にもありましたように、世界各国にも十分知られておるところであるわけでございます。しかしながら、これはあくまでもわが国政策でございまして、国際社会にある日本といたしましては、ほかの国との関係でその政策が実行されていくということを担保するものは、やはり条約関係ということでございます。そこで、わが国原子力の分野について協力関係に入ろうという国は、やはりわが国から条約上の約束を取りつけようとすることは、これはまたいたし方のないところではないかと存じます。またわが国だけを特別扱いするということは、ほかの国との差別の問題も生じましょうし、実際問題としてなかなかそういうわけにはいかないというのが国際社会の現実ではないかと思います。
  63. 中村利次

    中村利次君 その問題については、もうそれ以上質疑を続けることは差し控えたいと思います。なかなかいまの答弁で尽くせないいろんなものがあると思いますけれども。  そこで、今度の改正議定書、これはあらかじめ外務省からの御説明で非常にわかりよい御説明をいただきましたから、その点について私は何の疑点もないようにも思います。しかし、たとえば日本原子力協定で、たとえば第八条のC項ですね、この共同決定について、私は日本はそれほどこれを、たとえばまあ東海の再処理工場の運転にまで影響すると、きつく考えておらなかったのではないかと、この共同決定の解釈についてはかなり甘い解釈をしていたんではないかと思われる節がありますね、その後のずうっと経過を見ますと。しかしながら、これはまあ大変などうも影響があって、やっと五十一年の十一月からでしたか、五十二年の九月ごろまでの交渉で九十九トンの再処理をするという合意ができて、これが共同決定というんですか、その後再処理工場のトラブル等があって、またいろんなあれがあってまあ一年間延長になったわけでありますけれども、しかし、このことはもういろんなところへ波及をしまして、まだこれは最終的に日本が自由に再処理ができるということにはなっていないわけでありますから、これから原子力の平和利用を進めていくについて、民間の第二再処理工場をつくろうと、こういうことが決まってもうすでに三月一日にサービス会社が発足をしたわけでありますけれども、このことにも影響しかねない原子力協定になっておるということがはっきりしたわけですよね。その八条のC項あたりの共同決定という項目は。だから私は、その後のINFCEが二月の末に最終報告があったわけでありますけれども、このINFCEに対するわが国の取り組み、特にあれは第何分科会でしたか、議長国としての努力に対してはこれは高く評価します。結果してまだいろんな問題があるにしても、西ドイツを初め、ヨーロッパあるいは日本の主張というものは、このINFCEの中ではかなり生かされたわけでありまして、まあ残念だったと思いますのは、このINFCEの最終報告が各国を拘束するものではないということもあるようでありますから、向こうさんに逃げられる可能性もあるわけでありますけれども、しかし、国際的にやはり日本を初めとする再処理なりあるいは原子力の平和利用に対する高速増殖炉の問題を含めて生かされたという点につきましては、私は関係者の皆さんの努力が実ったということで、これはもうそれなりの評価をしなければならないと思っておりますけれども、しかし、こういう日米の原子力協定、あるいは日豪の原子力協定についても、豪州からは改定の強い申し入れというか、圧力というか、そういうものがかかっておる。そして、ここで改正議定書に調印をされた日加の原子力協定、こういうものを総合して、非常に日本立場がだんだん原子力の平和利用をする上について窮屈になってきておるというか、追い込まれてきておるというか、そういうことを感じないわけにはいかないと思うんですけれども、いかがでしょう。
  64. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 一般的に申しまして、一九七四年のインドの平和目的核爆発が象徴いたしますように、核拡散の危険というものが増大しつつあるということは、これは認めざるを得ない客観的な事実であろうかと思います。したがいまして、原子力の平和利用に対する規制と申しますか、制約と申しますか、そういったようなものを強化しなければならないということの認識が深まりつつあること、これも事実であるかと存じます。他方、正当な目的のための原子力平和利用の推進がエネルギー問題の解決のために必要であるということも、これまた一般的に認識されておるところでございまして、でございますからこそINFCEというようなものを通じて、それをいかに両立させるかということに議論が集中いたしたわけでございまして、御指摘のようにその結果はわが国にとって有利な方向で結論が出ております。したがいまして、ただいま御指摘のございました日豪協定あるいは日米協定の改定というような問題もございますけれども、こういう問題は規制の強化という方向だけでなくて、やはり正当な原子力の平和利用を阻害しない範囲での規制をどこの線で妥当に保っていくかということが交渉の焦点になっていくであろうと思います。  そこで、私どもといたしましては、一方において核不拡散に対する国際的な協力に十分参加しつつ、他方においてわが国原子力の開発に障害が生じないように、この二つの目的を同時に達成するということで交渉を続けてまいりたいと、このように存じております。
  65. 中村利次

    中村利次君 INFCE後の課題は、核の不拡散、これはもう核ジャックを含めて、そういう体制づくりに対してどう正しく取り組んでいくのか、あるいは核燃料サイクルをどう確立をしていくのかというようなことが言われておるわけであります。わが国にとりましては、これは両方とも日本のエネルギー政策の死活にかかわるというぐらい重大な問題だと思うんですね。  そこで、こういう問題についても質疑を続けたいと思うんですが、もう時間もだんだんなくなってまいりましたから細かくお尋ねをする時間がないんですけれども、まあとにかくわが国は何としても核燃料サイクルを確立をして、それから、やっぱり日本のいまの原子力の技術というものはアメリカからの導入である。いろいろいままで主張され、提唱されてまいりましたのは、原子力の平和利用技術の自主開発、あるいは共同開発も大いに結構でございましょう。そこで、この日加の原子力協定で、先ほど指摘をいたしました日米の原子力協定の八条のCみたいに、そういう、後になってあいた、しまったというようなことがあっては、これはもう大変な問題でありますから、まあ日本の原子炉というのは、これはもうPWR、BWR、海外からの輸入であります。しかしいますでにもう実証の段階に入っております新型転換炉、ATRは、これは日本の自主技術の開発だということになっております。科学技術庁お見えになっておりますか。どうですか、いまの「ふげん」。一言だけで結構ですよ。
  66. 塚田真一

    説明員(塚田真一君) お答えいたします。  現在先生が御指摘ございました新型転換炉「ふげん」、これはきわめて順調に稼働いたしておりまして、最初の定期検査を現在迎えておるところでございますが、これを間もなく終了いたしましてまた定常運転に入る予定となっております。  以上でございます。
  67. 中村利次

    中村利次君 これは時間があれば法案の関連としてもっと質問をしたいところですけれども、これはわが国の自主開発による原子炉である、こういうことになっておる。  そこで、これは外務省にお尋ねをしましたところが、私はちょっと心配だったのは、同じ重水炉であるということだけではなくて、ひっかけようとすればATRはこれはCANDU炉の——カナダなCANDU炉をわが国に売りたがっているわけでありますから、CANDU炉の技術にかかわりがあるというそういう心配はないのかということだったんですか、いやそういうことはもうカナダも全く言っておらないということでありまして、その憂いは解消されたと思うんですけれども、これはそういうぐあいに受け取ってよろしいですか。
  68. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 全くそのとおりでございます。
  69. 中村利次

    中村利次君 カナダもATRは日本の自主開発技術によるものであるということを認めて、今度の日加原子力協定改正議定書でもそのことについて異論がないということになれば、それ以上のことを何もここで私はお尋ねをする必要はないとは思いますが、何と言ってもこれは核燃料サイクルの確立と、それから原子力の平和利用についての新しい技術の共同開発なりあるいは自主開発なんというものは日本の国策であろうと私思いますから、今後CANDU炉を導入することになるかどうかそれはわかりません。原子力委員会も去年の時点では導入しないということを決定しておりますけれども、これは年々歳々世の中も変わりエネルギー事情も変わっていくわけですから将来どうなるかわかりませんが、私はこれをどうするのが好ましいとか好ましくないとかいうことは全く関係ないことでございますけれども、しかし、たとえば導入の話が行われあるいはいろんな技術、いろんな情報をカナダから日本が入手する、あるいは日本からカナダに出す、お互いがそういう情報なり技術の交換をする、そういう過程でCANDU炉を導入してそのCANDU炉をもとにして、基本にして新しい技術を開発をするということになれば、これはCANDU炉の技術をもとにして新しい技術を開発しても、これはCANDU炉に関連があるということになるわけですからはっきりしている。しかしそうじゃなくて、ATRは日本の自主技術の開発であり、これを五年、十年、二十年ずっとこのままであるというわけにはいかぬ。改良もありましょうし、あるいはATRをもっと改良しながら国際的な役割りを果たしていこうと。こういう技術改革の過程においてやっぱりCANDU炉に関連があるという解釈をカナダ側にされるおそれがないのかどうか。これは、こういう点は微妙なところであり、大事なところでありますので、ひとつ明確なお答えを承りたいと思います。
  70. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) この協定の対象になり得ますものは、カナダから導入されたと本質的に同一のものと両国が指定するものでございます。したがいまして、カナダが一方的に指定する権利は持っておりません。わが国がこれに同意しない限り指定することができませんので、御質問のようなケースは起こり得ないと存じます。
  71. 中村利次

    中村利次君 最後に、時間も終わりましたのでこれでおしまいにいたしますけれども、これは非常に大事なことだけに、やっぱり、日米の原子力協定八条のC項は共同決定ですね、一方的なものではないんです。いまお答えいただきましたのも、両方の、一方的なものではないんだというお答えでございましたが、どうかひとつその点を十二分に生かしていただいて、国益なりあるいは日本原子力の平和利用の推進、技術開発そういうものに支障がないような御努力外交サイドからもひとつ十分果たしていただきますよう要望をして私の質問を終わります。     —————————————
  72. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 委員異動について御報告いたします。  本日、菅野儀作君が委員辞任され、その補欠として嶋崎均君が選任されました。     —————————————
  73. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、原子力平和的利用における協力のための日本国政府カナダ政府との間の協定改正する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  74. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  75. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止に関する条約紛争解決に関する改正受諾について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  76. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、三件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ござさいませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  78. 石破二朗

    委員長石破二朗君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  関税及び貿易に関する一般協定譲許表の変更に関する第四確認書締結について承認を求めるの件外九件を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  79. 戸叶武

    戸叶武君 いま、外務大臣は一番忙しい人になっておるので、ここで今後においてもなかなかちょいちょいお目にかかれないようなことがあるのではないかと思いますが、六月のベネチア・サミットへの道は、この前私が言いましたように、予測できないような険しい道であって、一歩一歩の道行きが大切だと思うのであります。  で、道の話から入りますが、別に道草食うつもりじゃありませんけれども、やはり道というのは人間の生活が営まれて、人間がそこを歩むことによって道はおのずからつくられるものであります。そういう意味において、古代の行政の単位も、道という形において、道という名称において呼ばれた時代もあります。しかし、そういうこの人間生活の上に必要な道の中に道ありで、そこに一定のルールが確立されなけりゃならない、モラルがつくられなけりゃならないという意味合いから、いわゆる原始的な宗教とは異なった形において道義的な面が確立してきたと思うのです。それがやはり私は政治の起こりだと思います。ところが、このごろは無法者時代で、めちゃくちゃであります。めちゃくちゃな世界は、混沌の世界です。ばくち打ちの親方みたいのが国会で暴れてみたり、それを抑えることもできないという無秩序な政党のあり方、ずうずうしいやつがのさばる政治の世界、全くこれは私はわびしい限りであると思います。日本がエコノミックアニマルと呼ばれても本当だから仕方がない面もありますけれども、本当に真剣に外交をやろうとするならば、日本だけのことを考えないで、よその人々の立場をも深く理解して、そういう思いやりのある態度の中に私は平和共存の実践をやらなければ、言葉だけではだれも信用しない時代が到来しているんじゃないかと思います。  これは日本だけでなく、今度のカーターさんの発言を見てもわかりますように、われわれはカーターさんがもう少しがまんして、ああいうがたがた動揺しなくてもいい面があるんじゃないかということを、人ごとながらやっぱり心配しております。大来さんは、もっとこれによってデタントへの方向づけが行われるのじゃないかというふうに期待しておったと言うが、それが万人の常識だと思います。カーターさんのことだけは言えない。ホメイニさんだってあるいはイランの指導者だって相当にやっぱりこの辺でという考え方を持たなかったはずはないのです。それが行けないところに今日の混乱の根の深さを私たちは感ずるのであって、これは今後においても、私は、イランあるいはアフガンの問題は、ベトナム問題の後始末、難民の問題と同じようにこれが尾を引いている問題であって容易でないと思います。しかし、今度サダト・エジプト大統領、ベギン・イスラエル首相がアメリカを訪れて、中東においては一番むずかしい問題の解決への糸口を模索した当事者であるだけに、ここから何が起きるかということは一つ期待を、むずかしい問題であるが、持ってもいいんじゃないかと思います。  大来さんは善意に物を解釈する人であります。私は、裏の裏ばかりをのぞきたがる下賎の徒と違って、よりよき世界をつくり上げようという意欲を失ったときには外交も政治も必要ないと思いますが、アメリカでもこのままではかっこうがつかない、大統領選挙があるので何とか演出をうまくやらなくちゃならないという大統領の取り巻きの焦りもあるのでしょうが、焦れば焦るほど問題は混迷を招くだけの面がありますけれども、この中東問題における一番最初の体を張っての方向づけをやったサダトさんやベギンさんがアメリカを訪ねることによってどういうふうに中東問題なりアメリカ外交なりが変わるのであろうか、そういう予測のつけ方はむずかしいと思いますが、大来外務大臣は何を期待しておりますか。
  80. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) サダト大統領とベギン首相が相次いでアメリカを訪問するわけでございまして、これは、キャンプ・デービッドの話し合いから一年たつ五月二十六日でしたか、までに何らかの成果を上げたいというこのカーター大統領の意向もあるんだろうと思いますが、エジプト側としては、このキャンプ・デービッドの線に、いろいろ他のアラブ諸国から強い批判を受けておるわけでございますけれどもサダト大統領は、こういうアプローチ以外に、いろいろ評論はできてもその具体的なアプローチはないんだという信念で行動しておるように見受けられます。イスラエルの方につきましては、態度がかたいということがございまして、この点は、アメリカもある程度イスラエルを説得するという努力をしようとしておるように見受けられるわけでございます。  まあ、五月二十六日というのは絶対的な期限ではなくて、このあたりでという解釈だというような見方はイスラエル側からも言われておるわけでございますが、目下のところ、それまでに具体的な中東問題についてのいわゆる包括的な和平についての糸口が開けるかどうか、いまの段階で判断することは私どもとしては差し控えたいと考えるわけでございます。
  81. 戸叶武

    戸叶武君 私は幾たびか中近東を訪れたことがありましたが、この間欧州議会に招かれての帰途、地中海沿岸における古い文化を持つエジプトと、かつてのハンニバルの根拠地であったカルタゴを見たいと思って見てまいりましたが、中東におけるエジプトは、一番最初に行ったときは世界経済恐慌が襲ってきた一九二九年の二月でしたからいまよりちょうど五十一年前のことであります。この間に近代国家としての形を不完備ながら整えてきたのは、中東においては私はエジプトとイスラエルだと思います。いろいろの、もろもろの問題に関して宗教上の、あるいは自分たちの国土の境界線の問題、過去の因縁も長い因縁があるので幾多の難問題を持っておりますけれども、この辺の国の指導者が考え方を変えて、いまの世界にどう対処して、将来に対してどういうふうにわれわれは近代国家として建設的な意欲を示していくかという責任ある分岐点にいま立っていると思いますので、忌憚なくいろいろな要人ともひざを突き合わせて話したのですが、やはり歴史の転換期においては見識と勇気と決断が必要であります。それを一応サダトなんかもやった。またベギンも応じた。しかも新しく、イランの前のシャーを亡命先がないのでエジプトでこれを迎えたというところにいろんな難問題をしょい込み過ぎた面はありますけれども、やはり近代国家というものは民主主義的なルールによって物をさばいて片づけていかなけりゃならないということをイランの指導者も説き、そして次の議会が成立することによっていろんな難問題も片づけようというところまでは来ているんですが、そういうものを見通した上で、私は、エジプトはやはり窮鳥ふところに入らば猟師これを撃たずという形で受けとめたのではないかと思いますが、しかし、その考え方と違って、シャーに対する憤り、アメリカのメジャーとアメリカ政府と結んでメジャーは金もうけをし、またシャーは国民の貧困を無視して自分たちだけが財宝を集めた。こういう根の深い憤りが、理性だけでは処理できない感情の爆発となっていまのイランの混迷を招いているんですが、アメリカの方では、簡単に過去のことは過去のこととして、自分は関与したわけじゃないんだからというふうに過去の悪夢を忘れようとしているが、人民は忘れることのできない記憶が感情を形成しておるのであって、ホメイニだとかあるいは大統領だとかに頼っているだけでは問題は解決つかない。この民族の憤りに対してもっと謙虚に対処するだけの考え方がなければ、ただ力を持っているから謝った、だけれども過去のことは過去として、これこれのという形の注文を出して次から次へと自分たちの意見だけを通そうとしても、やはり民族としての深刻な抵抗というものはそのようなものでは消え去らないものがあるんじゃないか。そういうことを、アメリカにも心理学者や国際関係学者、いろんなものがありながらも、やはり私はいま置かれているカーター大統額の立場はむずかしいと思いますが、やはりカーターのブレーンであるところのバンスのように思慮の深いといわれる人と、ブレジンスキー大統領補佐官ようにアメリカと中国と日本を結んで軍事的にソ連を孤立化していこうとたくらんでいる軍部を背景とする強硬派とが同居しながらつくっていく考え方の中には、アメリカでは通用するが諸民族の中では通用しない考え方が私はひそんでいると思います。  そういうことを真っ向から言うと感情を損ねるという面を憂慮してでしょうが、まあ大来さんなんかはアメリカで信用されている人であるから、表現は気をつけなくちゃならないけれども、今度のことを見れば、私が前に言ったように、ソ連に対する軍事的な進出に対する恐怖感というものを、中東諸民族が共通に持って抱いてきたように、やはり庶民の底流の中にはアメリカのメジャーがその国の要路の人たちを買収し、手玉にとって金もうけだけをやってきたことに対する憤りが、私はそう簡単に解決への道をスムーズに開いてくれるとは思えないんです。そういう意味において、これを短期間に大統領選挙を前にうまくやろう、一芝居を打とうなんというアクロバチックな外交においては、私は民心を把握することはできないと思いますが、大来さんは善意の人で、やっぱり両方とももっと考えたあげく、思慮を持つ人もいるんだから、やはり平和裏に問題を解決することを期待し、そしてそれを祈ったと思いますが、すべてが裏目に出てしまった。裏目に出たのは裏目に出るだけの要因があって裏目に出たので、ばくち打ちなんかすぐその裏目まで読むのです、やはりこれも勝負ごとですから。余りきれいごとだけで、表面的にだけ物を見たら、こういう非常な世界の混乱期においては、ソ連が力を持っているから、アメリカが力を持っているからというふうに幾ら力んでも、力めば力むほど裏目に出る場合も多いと思いますが、そういう話まで余りしなかったですか。すべて事は楽観的に、アメリカさんもあれまで、カーター大統領が過去の過ちを謝罪しているのであるから、これでおさまるのだというふうに見ておったんでしょうか。
  82. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) このイランの問題につきましては、お話しのようにいろいろな紆余曲折がございました。ある段階では解決もう一歩というような印象もあったわけでございますが、今後でもまだいろいろな場面が起こり得ると思いますが、この前ワシントンではバンス長官に対して、イランとの友好関係をつないでいくということは全体として必要なんだと思う、日本がそういう役割りを果たすことも西側全体の利益とも一致すると自分らは考えているんだということは申したわけでございます。それに対して最後に、バンス長官はただアメリカ人も忍耐の限度があるからという表現をいたしておったわけでございます。その後御承知のようにいろいろの場面がございましたが、本日のところではかなり対決的な姿になっておるわけでございます。ただ、こういう情勢でまたイラン側にもある程度変化が起こって話し合いの糸口が開けるという可能性もないわけでもないと思いますので、いまの段階で全く悲観的に見なきゃならぬというのは時期的にはやや尚早ではないかと存じますし、また日本としても日本一国でできることの限度はありますけれども、他の国々とも話し合ってイラン問題の平和的な解決にさらに一段努力をすべきではないかというふうに考えておるわけでございます。
  83. 戸叶武

    戸叶武君 大来外務大臣が、いまなかなかむずかしい段階だがすべてを悲観的に絶望的に見るのでなくて、この中から逆にやはり開けてくる場合もあり得るんじゃないかという期待を持っておることは結構だと思います。それでは、その期待の上に立って日本政府としては何をやろうとしているのか、具体的にどういう行動をいましているのか。日本一国だけではやれない、ECの国々なりあるいは中立主義を標榜するところの国々なり、いろいろな人々といろいろな国々と話し合ってこの打開のことをみんなして協力して考えなけりゃならないという、いわゆる穏当な道を選んでいるようでありますが、あなたが言われるように、恐らくはバニサドル大統領ホメイニ師も問題をこの辺で片づけようという考え方には動いていたようですが、全体的にはこの回教徒のアラブの復興、大義を目指していきながらも、やはり学生や何かの若い層の中にはマルクス・レーニン主義的な教育によって武装されている考え方の者もあり、大衆運動としての結びつきにおいてアラブの大義あるいは民族の独立という旗印の中に一応自分を埋めて、そこで運動を起こしているのが事実と思いますけれども、この若いエネルギー、若い者の爆発、憤り、こういうものを無視して問題解決に急いで当たるとえらい破綻を起こす場合もある。  やはり、中国における日本の二十一カ条のイギリス帝国主義的な要求に対して、ベルサイユ講和会議を中心として民族自決主義が中国で高まり、巧みに方向を転じたイギリスよりも、イギリスと協力して、いわゆるその暴発を抑えようとした日本が逆に排日の目標とされて日本はひどい目に遭った経験もあり、その闘いの中から国恥運動なり五・四運動なりの運動が、ヤングチャイナの運動が今日の中国をつくり上げる一つの基礎的な運動となって展開されてきたんですが、中国と必ずしも同じコースじゃないけれども、アラブにはアラブのやっぱり歴史道統なり、いまの時代の波濤から大きな影響を受けているヤングアラブの、あるいはインテリゲンチアの考え方というものが相当深く大衆の基盤に根をおろしているので、一ホメイニ、一大統領というだけを相手に、ホメイニさんであろうが、大統領であろうが、日本人はややもすればそういう人々を過信し、頼り過ぎる傾きがあって、それが楽観論と結びついて裏目の失敗を招くのです。いま多くの人が憂えているのは、日本の出番を焦ることじゃなくて、正確にこの激動、変革の時代における流れを見詰めて、その中において何がいま回答になり得るかというタイミングを外さないで問題解決に当たるのが私は一番大切だと思うんです。そういう意味においては、やはり私は大平さんなりあなたは、いろんなことを言われているけれども、相当慎重な足取りで外交を進めようとしていますが、いまのようなわけのわからない日本の政治体制の中において、そういう外交すらもおぼつかない面があるんじゃないかと思いますが、大丈夫ですか。その辺を聞きたいと思います。
  84. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 御指摘のように、世界情勢は大変むずかしい状況にあると思います。ただ、日本の置かれた立場からしまして、ある程度国民の間に、コンセンサスと申しますか、こういう事態の中に冷静に対処していかなければならないという考え方もできてきておるように思いますので、私どもとしてもどこまで適確に対処していけるかどうかということは余り大きなことも言えないわけでございますけれども日本の置かれた立場と客観的な事態推移をよくとらえながら、一歩一歩、余り大きな過ちをしないように、外交的な対処をしてまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  85. 戸叶武

    戸叶武君 外務省関係外交のエキスパートは、この間、情報文化局長の天羽君もある新聞に書いておりますか、双方が良識をもってお互いに相互理解を深めていく以外に問題解決はないというふうに言い切っておりますが、この点は、ソ連でも、中国でも、情報というものはキャッチしているけれども、基本的な哲学は欠けている。それは相手の立場を理解しないで自分の立場を、考え方を相手に押しつけるという習性から脱皮できない力の外交の習性が身につき過ぎているからではないかと思うんです。日本では八方位外交だといい、等距離外交だといい、一応ちょっと間が抜けたところもあるけれども、間を置いて客観的に事物を観察し事態を把握してそれに対処しようという受け身の外交で、まどろっこしい面があるが、一応思慮が加わっているように思わせる面もあります。それだけに、その刃渡り、綱渡りをしている一国の総理大臣なり外務大臣は、日本の政治体制が必ずしもそこまで成長してきていないときめのそのことも背景にあるのですから容易ならない私はやはり仕事だと思って、これは、与党と野党とを問わず、総理大臣や外務大臣になったら気の毒だなという嘆声も市井人の中から漏れてき出しているのですが、私は、それだけに日本が本当に本物の自主外交をやろうとするならば、デタントかあるいは戦争かの道を選ぶとするならば、戦争によっては破滅以外にないんです。困難な道であるが、戦争への道を急ぐような戸締まり論あるいは安保ただ乗り論なんという安易な物の考え方で卑屈になることよりも、日本のためだけじゃなく、世界のために平和共存の体制をつくり上げる基礎として相互理解を深めて、そうして問題の難問題を解決するんだという取り組みの姿勢がなければ、日本外交というものは私は単なるのぞき屋外交であって、あっちの穴からこっちの穴からのぞきだけをやっているのぞき外交にすぎないと思うんです。いま本当に民族独立の自主独立の精神を具現しようとするならば、外交、防衛の面において、防衛というよりは安保体制の新しい構想でしょうけれども、だれか祖国を愛し祖国を守らざる者ありやです。しかし、それに名をかりて、軍事用の飛行権を貰うのにも片手を挙げたら五億円のコミッションが転がり込む、ばくち場へ行って仲間と一緒にべらぼうな金を使う、失業に苦しんだり飢えたる人々が嘆いているような、まだ社会保障制度も充実していないような日本の体制の中で、こういうふざけた一つの政治体制が、政権を維持するためには、目的のためには手段を選ばずというような権謀術策の外交が、その国において国民に嘆かれているような外交が、外国にも信用されて通じると思ったら大間違いだと思うんです。  いま私はこの中東問題から入りますが、あの軍事費の増加の問題でも、あなたなり、いまの大蔵大臣なり、一応とにかく〇・九%から一%の線を守るんだという構えで、アメリカの要人の圧力に抵抗し続けておりますけれども、何か、大平さんなんか行ったら、こいつも崩されちゃうんじゃないかと。アメリカの恫喝に遭うと一たまりもなく崩れていってしまう雪だるまのようなものじゃないかと。それは国民は不安を感じております。だれか祖国を愛せざる者ありや。祖国を守るために責任を持たないという者ありやでありますけれども日本自体が、戦争によって問題は解決しないんだという信念でもってあれだけの平和憲法をつくり上げても、その憲法がわれわれにおいては時代ずれしてるから直さなくちゃいかぬとか、本気になってそういうことを勝手にしているという状態ですが、問題は、あなたたちもずいぶんつらい目に遭ったと思いますが、アメリカへ行くのは頭が痛いなあ、重いなあと言う。去年の四月にも大平さんは行っているし、ことしの四月にも、外では花が咲いてるというのに、頭を抱えている状態が真実だと思いますが、行きはよいよい帰りはこわいで、一ひねりされて重荷をしょわされて帰ってきて、それで一国の政治家としての責任を果たすことが果たしてできるかどうか。いまの自民党ならばオーケーで合意するかもしれないが、私は、この問題非常に慎重を要すると思いますが、あなたは大平さんの単なる露払いじゃなくて、いわゆる真実を語りながら、日本の国民が、いまの憲法を守り、戦争を避けようという考え方が根深くあるので、アメリカからこうしろああしろという形においては、へそ曲がりも相当いるんだから、逆目に出ることもあるからというぐらいのところまでは言ってくれたと思うんですが、私は、やはり今度のイランの問題を見詰めていながら、ホメイニじゃない、大統領じゃない、民心のいまの動きというものから遊離して、何ぴとといえども、このイランやイラクの問題は片づけられない。ソ連やアメリカのそれぞれの人々は、いろいろな才能を持った人が知恵を出し合ったり、手柄話をするかもしれないが、過ぎ去ってみるならば、いずれもむなしいものにすぎなかった。なぜあのときあんなばかなことをやったという悔恨の情だけが、私は残ると思うんですが、大平さんなり、大来さんは、そういう悔恨の情を後に残さないだけの思慮を持った方だと、私は考えているんですが、大平さん、行っても大丈夫ですか。
  86. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) こういういろいろな国内の情勢、特に第二次大戦後の日本の国内の情勢、政治、社会、経済、それから民心の動向というようなものを無視しての政治もあり得ないと思いますし、その意味から言って、何か特別の問題をしょい込んでくるというような形にはならないといいますか、またなるべきでないと存じておるわけでございます。もちろん全体の世界情勢の中で、日本自身がみずからを守るということで、つまり絶対的に攻撃的な性格を持たない。ただ世界のすべての人たちなり政府なりが日本人と同じような気持ちでいるとはまだ思われない面もありまして、純粋に防衛的な面でやはり日本国民の安全という立場からある程度の努力はしていかなきゃならない。外から言われたからということよりも、日本人自身が日本の安全のためにやらなきゃならないことがあれば、それはやっぱり自主的にやるべきだと思いますし、またそういう努力が結局一種の抑止力として働く面もある。それによって平和が維持ざれ得る、日本人の安全が維持されるという面もあるわけでございますから、私どもは、非常に大事なことは、日本は仮にある程度防衛力を強化するようなことがあっても、それはあくまで防衛に徹すると、一〇〇%防衛のためなんだ、他の国の安全を脅かすという意思は絶対持たない、そういう基本的立場日本人自身が考えるべき問題ではないか。これを外からの圧力でいやいややるというようなことでは、それはまた意味もないことでございましょうし、そういう意味では、できるだけ選択を誤らないように、これは総理も同じだと思いますが、努力してまいりたいと考えるわけでございます。
  87. 戸叶武

    戸叶武君 私は、アメリカ日本とはパートナーシップを深めていくことが必要だと思います。隣の中国も、今後においてもいろんな変転はあると思いますが、アジアにおいて共同の責任を持つ友として、やはりお互いに率直に意見を交換しながら異質なものがあっても、手をとり合っていくことも大切だと思います。しかし、ファシズムの台頭期においていつも私は心配なのは、国のためと言い、国の防衛のためと言い、事実上においては逆に戦争を誘発するきっかけとなっていく場合があるのであって、それが明治憲法においても統帥権だけの問題ではない。特に統帥権の問題における論議は、カイザーと伊藤博文、憲法のことをろくに知らない、一個の明治維新における功臣ではあったが、彼は、やはり日本が富国強兵になっていくのには、ビスマルクが言ったような、われわれは、ドイツに社会民主党があるので、軍事費をいつも削減されてしまうので非常に困っている。あれが政党なんかで議会でできないようにするため、憲法の中に統帥権のようなものを入れないと、ドイツの失敗を招くおそれがあると説かれ、カイザー・ウィルヘルムやビスマルクのような非常に古い形のマキャベリストによって与えられた考え方を、浅薄な伊藤博文が日本に持ってきて、明治憲法をつくってしまった。統帥権というものがあるがゆえに、天皇の名によっての統帥権というものによって、軍事予算を最終的においては、それでも削減したりなんかをする努力はなされたけれども、なかなか困難であった。できたことに対してこれを是正することは、天皇の名によってそれは不可能にまでなってしまったところの超絶対主議的な国家体制をつくったところに日本の軍部跳梁の基盤がつくられたのであって、いま依然として明治憲法によって教養を得てきた官僚の古手や古い時代の一つの学問的な教養しかない者は、近代国家における方向づけというものに対する見識を持たないで、明治憲法のようなものに復帰させた方が日本はいいというような考え方を幾ら言ったって——これはがんこ頭ですからわからないでやっているけれども、こういうふうになったら、たとえば石原莞爾があれだけの東亜連盟主義を持っても、満州国を軍部でつくり上げたということによって、中国大陸に戦火を拡大してはだめだということを言ったって、自分がやってしまった、石原の亜流としてやっぱり満州ができたのだから中国をという形でせきとめることができなかった。あそこに私は日本の大きな悲劇があると思うんですが、いまはとにかく安保ただ乗り論とか、もう戸締まりがよくないとどろぼうが入ったときどうするんだとかという幼稚な議論よりは、積極的な、憲法改正の議論というよりは実績をつくることにおいて、ファシストは懸命に一つの防衛庁のファシストを利用したり、アメリカの軍部と結んだり、アメリカがこう要請しているという形においてしているけれども日本がとにかくいまの憲法を持って、ダレスや何かが考えたような、あるいはアイケルバーガーが朝鮮事変のときに、日本の軍隊を復活させて陸上軍として行動をとらせないと、艦砲射撃と飛行機だけでは戦果は上げることはできないといって、ハワイで有名な演説をやっていますけれども日本が反対したからあのとおりでまだ朝鮮は食いとめたし、日本も今日の発言権を維持する一つの平和外交を堅持することができるし、ベトナムに対してだってわれわれがアメリカの要請のように軍事的な介入をやっておったならば、もう世間からは相手にされなくなってしまう。そういうとにかく国民の中における憂えを憂えとしてわれわれは政治をやってきているのであって、景気のいいラッパ吹いてたまには慰めにばくちでもやっていくというような変な愛国者が続出しているときに、たれか国を愛せざる者ありや、われわれのふるさと、われわれの祖国、おまえたちだけではない、この気持ちを代表して政府がしっかりやらないと、私は取り返しのつかない、軍事費が膨張するならばせきとめることができない、また軍が精鋭化した場合にはそれを何となく使ってみたくなる、そういうところに、日本の近代国家発展の過程においてすばらしい面もあったが、大きな屈辱、取り返しのつかないような無条件降伏をしたのは、それだけの思慮ある政治家が日本になかったということが取り返しのつかない屈辱の歴史をつくったんです。天皇陛下だって泣いて再び戦争はしないと言って誓い、中外に声明したんです。もし憲法改正するなり、日本が再軍備的な方向づけに景気よく行く場合においては、天皇は約束を守らないとして自分から譲位しなければならないでしょう、窮地に追い込まれるでしょう。  私は日本の禍乱は外よりも内からいま芽生えてきているんじゃないかと思っているんです。信念のないやつがどうして人を動かすことができるでしょうか。みずからの実践、平和共存の社会をつくり上げて国際的な連帯を強めることによって共同の責任でわれわれは理想の世界をつくるんだという信念が崩れた人によってどうして理想社会の建設ができるでしょうか。それを考えるならば、私は慎重はいいけれども一つ一つの段階において歴史的な意義を考えながら、その足取りにおいて一個のやはり世界観を樹立し、哲学を持ち、世界の人々も納得するような外交防衛政策展開していくのでなければ、あっちに揺すぶられ、こっちに揺すぶられ、いいかげんな形でもって自分の政府なり地位の安泰を図るというような小粒な政治家によっては私は日本はもうこの激動変革の時代を守れないと思うんです。そういう意味においてこれはいい中東問題は教訓です。ベトナムの問題も教訓です。フランスも失敗し、アメリカも失敗し、ソ連だってあそこへ長い間つぎ込むことはできないです。軍事的な形において世界をコントロールしようという考えも軍部にあるかもしれないが、ソ連という幾多の欠点を持つ国において、ベトナムなり中東なりにおけるいまのような緊張した体制ばかりをやってしまうと、内から私は崩壊に導かれる危険性がロシア自身にもあるということはロシアの政治家も一流の政治家が出てくるならばわからないはずはない。政治はイデオロギーじゃなく具体的な政策を通じて民心がこれにどう対応するかということを忘れては、政治は音を立てて崩壊する時代がいま来ているんです。それを恐れているんです。  そういう意味において私は、いまたとえば外交畑においても異色な大来さんあるいは大蔵官僚の中においても相当な苦労もしてきた大来さんなんかのやる役割りは時流に投ずることよりも、石をもって打たれることがあってもやっぱり民族の将来百年の計を立てて、いまこの瞬間における外交というものを手がたく行わないと、悔いを後に残すようなことがあると取り返しができないと思うのですが、この難民問願、ベトナムの難民問題でも国際的な協力は必要でありますけれども、大変な問題です。中国でも東南アジアの問題の華僑問題に対して柔軟な新しい政策展開を試みようとしているが、インドネシアにおける過去の失敗は取り返すことができないし、また華僑のすぐれた面もあれば、利口過ぎてその国々の住民との間に深いギャップも不信感もあります。そういうものを是正しながら、広東やあるいは福建の人たちが、海外に出ていった人たちを国内体制においてもどうやって温かく迎えて国の近代化に協力を求めるか、また華僑の本質的な改革をやって東南アジアにも貢献しようかというときには華僑と中国本国だけの問題では片づかない、やっぱり日本の技術経済協力あるいは土地の住民の人々の憂えなり意見なりというものを調節しなければ、ヨーロッパのECの国々における先進国同士の国と違った多角的なむずかしい面があると思うんです。  次にこの華僑の問題に入りますけれども、この問題が佳境に入るときには、もう中東の問題よりも東南アジアの問題が一番大きな課題となって登場してくると思うんですが、それに対して通り一遍のいままでのような三番叟ばかりを踏んでいたんでは、日本はどこまで真剣に取り組んでいるのか、その善意はわかっているけれども、その前に東南アジアの住民の苦悩と模索、それを本当に理解してくれるんだろうかという、私ははね返りがあると思うし、田中さんあたりが行ったときでも、バンコクで外へも出られないで、インドネシアにおいても田中帰れという喚声の中に好まざる結果に対する大衆のお迎えを受けたようなぶざまな状態もあったんですが、やはりそういう点で中東の問題が根本的な解決にはなかなか間がありますけれども、中東の問題だけで世界は動いているのではなくて、アジアの発展途上国におけるやはり一つの具体的な対応策というものを立てないと、中東問題以上に、中東問題からも日本は責任を回避することはできませんけれども、足元の問題に対して備えがあるかどうかということが一番心配ですが、それに対して具体的な対策は大来外務大臣はどのようなものを持っておりますか。
  88. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 現状におきましては、イラン、アフガニスタン、中東、まあアフガニスタンとなりますとアジアの一部にもなるわけでございますが、世界の目が集中されておるような状況でございます。しかし、東南アジアにおきましてもいろいろな動きはあるわけでございますが、日本と東南アジア諸国の関係は一ころよりはある程度緊張が緩和している面があるように思われます。楽観してはいけないと思いますけれども一つには余りに急速な経済的進出というものが政治的な反発を引き起こすということで、振り返って見ましても、当時の田中総理の東南アジア訪問の時期は、日本の対東南アジア投資なり貿易が猛烈な勢いで増加していって、それに対して現地の人たちが対応できないというような場面もあったと思います。まあ、幸か不幸か日本の高度成長の時代は大体終わりまして、こういう変化のスピード、対外的な進出のスピードもかなりスローダウンをしているという状況、それから、やはりこの東南アジアの政治的な緊張、特にインドシナ半島における情勢等もありまして、一ころの事態よりも日本と東南アジアの関係改善の跡が見られる、基本的には日本はあくまでも平和的な存在として行くんだということがある程度これらの国々にも理解されつつあるのではないかという気もいたしますし、また、経済には共存的な面があるわけでございますから、一方的な収奪ということじゃなくて、経済交流が相互の利益になる面もある、いろんな点についての先方の考え方、また日本側のやり方にも変化が見られるんじゃないか、そういう点で、現状においては日本とこれらの地域の国々との関係は比較的良好な状態にあるのではないかと思います。しかし、これもそういうことを言って安心をしていると、またどういうことが起こるかわかりませんし、絶えず情勢について十分注目していかなければならないというふうに存じますが、大体のいまの状況としてはそのように考えておるわけでございます。
  89. 戸叶武

    戸叶武君 もう時間がなくなりましたから、最後に大来さんにお願いしたいのは、やはり日本のみずからの主体性を確立するというのには、対外的にやはり承認、信頼を求めていくことが一番手っ取り早いのでありまして、外交、防衛の問題は軽率なことをやると取り返しのつかないものが残るのでありまして、そのことは本当に注意してもらいたい。  乱世における東洋の政治哲学者として私は孫子なりあるいは荘子なりを高く評価するのは、乱世には乱世にふさわしい一つの対処の仕方があるという、リアルな認識の上に立って戦略を立てたり哲学を持っているのでありまして、だから彼らの乱世における哲学はいまだに生きているのでありますが、真理は常に社会科学の中においても具体的でなければならない。観念的なイデオロギーや宗教を利用することは手っ取り早いように見えるが、それを過度に行えばすべてが失敗に終わるのであって、やはりいま多くの民族がさっき大来さんが言ったように冷静を取り戻したのは、破壊は一朝にして成る、革命を絶叫することは楽だが、それよりもやはり具体的に近代国家をつくり上げるという方がはるかに骨が折れるけれども、それを一歩一歩手がたくやらなければならないというところには相当の私は合意が出てきたと思います。それを国際協力、自分の国だけ力むのじゃなくて、国際的な連帯による協力に求めなければならぬというところにECのいまの成功もあるのであります。  いまのシンガポールのリー・クアンユーのところを中国の要人が訪ねて、東南アジアの華僑の人々と同じような感覚で物を言ったときに、われわれは華僑ではありません、われわれは漢民族であるがシンガポール国家における国民というものの基盤の上に立って物を考えていくんですという形でリー・クアンユーに答えられたということでありますが、単なる小さな意味における排他的なショービニズムの国家観、独善主義、そういうものだけでは片づかないところに来ていると思います。リー・クアンユーも一つの見識人です。小なりと言えでも東南アジアにおける都市国家としての理想のモデルをつくろうという形において賢明であります。あの人口が二百二、三十万かその程度でありましょうが、りっぱな一つの都市国家のモデルをつくっております。日本ができないはずはない。できないのは怠慢である。やっぱり勝利は、日本を見よ、ただ単に近代国家としての形が整っただけでなく、よく働き、人間的にも教養を持ち、努力し、環境も整備したという実績を示さないと世界は納得しないと思いますが、そういう意味において、ベネチア・サミットへの道の中において一番むずかしいのは、やはり私たちは道草を食わないで、そうしてひたむきな形で、次の時代をよかれと祈りながらやはり物をつくっていくこと、特に外交面においての基本姿勢を崩さないことだと思いますが、大来さん、このベネチア・サミットへの道において一番むずかしい問題はなんでしょうか。簡単でよろしいです。
  90. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 現在の世界情勢で大きな問題といえば、経済面ではインフレーション、インフレーションの問題というのはいわゆる先進国の社会を非常に大きく揺り動かしている問題でございますが、これにどう対処するか、それからエネルギーの問題も御承知のとおりでございます。  しかし、今回の場合は、やはりイラン、アフガニスタンをめぐる世界情勢ということも当然いろいろな形で話し合いの中に出てまいると思いますが、私どもはやっぱり日本外交なり、外交のみならず日本の役割り、世界における役割りというのはやっぱり平和と建設ということに徹することにあるというふうに信じておるわけでございまして、他の先進諸国ともそういう役割りを果たしていくことについての話し合いも必要なんじゃないかと思いますが、今後の情勢によって何が最大の主題になるか、これはまだ議題が固まっておらない段階でございますけれども、いまのインフレーションとエネルギー、さらにこの世界情勢というようなことが主な議題になるのではないかと想像いたしております。
  91. 戸叶武

    戸叶武君 時間が来ましたから終わります。
  92. 田中寿美子

    田中寿美子君 けさのニュースの第一報で、私どもアメリカイラン断交の問題大変ショッキングだったわけで、けさから各委員ともこの問題を問題にされました。そして、各委員ともやはり日本が自主性を持って、アメリカが、カーター大統領が少しヒステリックになっているんじゃないかという感じがするのに押し流されてはならないというような意見が大部分であったように思います。私もやはり経済的にも日本が自主性をしっかりと持ってほしいと思いますし、政治的にもその判断において自主性を持ってもらいませんと、まさかアメリカが軍事行動に出るところまでなるようなことはないだろうというふうに、いまのところそれを心配しながらそう思っているわけなんですが、けさの第一報というのは、ヨーロッパやアメリカ、夜中の三時ごろですか、私ども日本に伝わったのは。その後各ヨーロッパの諸国やそれからイラン自身がこれにどんな反応をしているかというようなニュースが入りましたでしょうか。もし入りましたら、それ。それから閣議での考え方の御説明はけさ伺いましたが、その後ヨーロッパ各国あるいはイランあるいは東側の国々がどんな反応をしているか、わかりましたらお知らせいただきたいと思います。
  93. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 一つは時差の関係がございまして、イランやっといま朝になって、大使館から電話連絡がございましたけれども、まだイランの反応が十分につかめないと、夜になってしまっていま朝になってきたわけですから。それから、ヨーロッパもちょっとそういう時差の関係があってこれからいろいろな連絡があると存じます、ヨーロッパでは非常にきのうの深夜であったようでございますから。  まあイランは、当面今度のアメリカ発表によって問題解決が促進されるかどうか、ややむしろ硬化する面も予想されるわけでございますが、追っていろいろ情報がまいりますればその段階で御説明したいと思いますが、きょうはいままでのところはまだ余りイラン及びヨーロッパの情勢が入っておりません。
  94. 田中寿美子

    田中寿美子君 先ほど大臣が、戸叶委員に対するお答えの中で、日本の役割りは平和と建設に徹することだというふうにおっしゃいましたが、こういう何か本当にまた冷戦構造に戻っていって、もしかしたらというふうな心配な時期になりました場合に、私はぜひとも日本が、平和憲法を持っている日本が政治的な自主性をちゃんと堅持して、そういう役割りを果たしてほしいということを希望として申し上げておきます。  そして、きょうは、ガットの東京ラウンドのことに私、入るわけですけれども、特に日米間の経済摩擦の問題がもう次々といろいろな形で報道されてきております。私はこの次に主にその問題に入りたいと思いますが、一点だけお尋ねしておきたいのですけれどもアメリカ経済改策に失敗して悪性インフレの状況にある。そうして、いままで表面にあらわれてまいりましたアメリカの議会人、大来外相もお会いになったようですし、それから政府当局の人と外務省当局との話し合いも進んでいるし、今後も進められるようでございますけれども、どうも最近、たとえばアクリル繊維についてはこれはダンピングであるというような判定を貿易調査委員会ですか、がやっているし、それから最近は、自動車の問題でこれもダンピングであるというような言い方で責めてきているし、それからまた、ついにお米までも日本がダンピングしているということで、米穀商の協会の人たちですか、それが通商代表部に提訴しているというような状況になってきていて、何かアメリカが保護貿易主義にむしろ戻りつつあるんだというふうに印象づけたかと思うと、いやそうではない、むしろそれには反対で、保護貿易の主義はいけない、インフレ対策にならないという意見が出ていたりして、アメリカ自身の揺れ動いている状況日本の側も一喜一憂して動かされるような感じがするんですが、その辺をどういうふうにごらんになっていらっしゃいますか。つまりアメリカ貿易に対する態度といいますか、東京ラウンドにちゃんと署名もし、そして、その立場に立ってアメリカは新しい通商協約ですか、をつくっておりますね。それにもかかわらず、むしろ東京ラウンドの精神に反していくような感じがしたり、あるいはダンピング防止法なんかをこうやたらに乱用しているような感じがしたりするのですね。一体どういう立場アメリカは本筋としてとっているんだろう、あるいはいつもいつもこう揺れ動いているか、あるいは政治的な配慮でそうなっているのか、どういうふうに、ごらんになっていらっしゃいますでしょうか。
  95. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 確かにいまのアメリカ政策なり態度には、自由貿易主義をあくまで守っていかなければならないという考え方と、現実に個別産業で他からの競争をまともに受けているような分野で保護主義的な動きがある。これはそれぞれの立場と場面でそういう両面がこうまじり合って出てくるような面があるわけでございまして、アメリカ全体としてどう動いているかということは必ずしも簡単ではないように思います。ただ、このガット、東京ラウンドというようなものはどこかの国が保護主義に陥っていけば世界貿易全体が縮小して、それがまた自分たちの国にマイナスの影響を及ぼしてくると、こういうことを繰り返していれば一九三〇年代の世界不況のような二の舞になるおそれがある。確かに個別産業の立場から言えば、外から強力な競争者が出てくる場合に、自分たちが合理化して競争力をつけるよりも外からの競争をシャットアウトしてもらった方が楽だと、そういう立場での、これはどこの国にもあると思うのでございますが、政府に対して外からの競争をできるだけ抑えてくれと、これは最近のアメリカの鉄鋼業、自動車工業などは従来ずっと自由貿易論者、競争力も強かったという点もあると思いますが、最近特に日本車の進出というようなものを前にして、従来の立場が少し揺らいできて保護論者的な傾向も出ておるのでございますが、個別的な産業なりその労働組合の立場と国全体の政策とはいまのような事情で食い違う場合も起こり得ると思いますが、アメリカ政府の基本的立場は、私どもはやっぱり自由貿易主義の立場に立っておるというふうに考えております。
  96. 田中寿美子

    田中寿美子君 その日米間の経済摩擦の問題は私次回に譲りたいと思いますけれども、きょうは東京ラウンドに関して前回お尋ねいたしました発展途上国側が、特にUNCTADのコレア事務局長が東京ラウンドに対して批判的な報告をしていられると、そのポイントについて御説明をお願いしたわけですが、前回はまだ資料が手元になかったためにお調べくださいまして、私も外務省経済局の担当官の皆様から御説明をいただきましたけれども委員会でお尋ねしたことですのでもう一度委員会で御説明いただきたいと思いますが、三つぐらいポイントが挙げてございました。第一は、発展途上国に対する優遇措置が東京ラウンドでは十分されていないという点、それから第二番目は、その東京ラウンドの交渉結果の承認手続に疑問があるという点。それから第三番目は、途上国をねらい撃ちにした保護貿易措置が今後増していくのではないかという、三つぐらいの点でありましたので、それについてコレア事務局長の言っていることはどういうことなのかという御説明をお願いしたいと思います。
  97. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) コレア事務局長が去る三月に開かれました第二十回の貿易開発理事会に向けて提出いたしました報告を検討をいたしましたところ、先生が御指摘になりましたような三点を含んでおります。  御指摘の第一点でございますが、その中に発展途上国に対する優遇措置が十分でないという点については次のような記述がございます。  すなわち、途上国に対する特別優遇措置を認めたいわゆる授権条項につきましては、途上国に対する特別措置の供与を義務づけていない。次に、内容はすでにもう事実上認められていたものを確認するにとどまっているにすぎない。これに対して、いわゆるその卒業条項と組み合わして考えますとその効果が減殺されている、というようなことを述べております。そのほか各種のコードに記載されております途上国に対する特別措置につきましては、たとえばダンピングの防止協定については、途上国からの輸入品についてダンピングの決定に当たっては、国内価格でなく第三国向け輸出価格を基準とすべきである、というふうに主張をしております。また補助金・相殺措置協定につきましては、農産物の輸出補助金について途上国への特別措置がない、途上国にとっての農業の重要性に配慮がない、というふうに述べております。また途上国にとっての追加的な利益の確保に関しましては、関税交渉の結果は不十分で東京宣言の目的を満たしていない、熱帯産品に関するすべての貿易障害を撤廃すべきである、というような点について述べております。  それから第二にガットでの承認の手続に問題があるんじゃないかという点につきましては、次のように述べられております。  一つは、交渉の成果は貿易交渉委員会による採択の後に確定して、交渉参加国の三分の二が受諾した後に発効するという手続を取るべしということを途上国側から提案したが、これが認められなかった。次に、いろいろな協定貿易交渉委員会で正式に採択されないまま昨年の四月に交渉成果の実質的な内容の確認の文書に添付をされましたと、そういうことを述べております。  それから第三の点でございますが、途上国をねらい撃ちにした保護主義がふえるのではないかという点につきましては、この報告の中には、たとえばセーフガードで合意ができなかったことはMTNのパッケージの重大な欠陥である、セーフガードの問題の本質は保護主義と闘う有効なメカニズムができるか、あるいは途上国の輸出に対する制限的措置の蔓延を許すことになるかという点にある、という記述が見られます。  以上の三点がコレアから貿易開発理事会に出された報告書の中に含まれております。
  98. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま御説明がありましたような点について、ガットの交渉に非常に長く立ち会っていられた日本外務省の皆さんからも、これらの点についてはどういうふうにお考えなのか、妥当な言い分であるというふうにお考えになりますかどうか。
  99. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 先ほどのその三点に沿って私どもの考えていることを説明させていただきますと、最初の途上国に対する優遇措置でございますが、日本としてもこの交渉においてほかの関係国協力しながらできる限り途上国側の要望にこたえるように努力をしてまいりました。ただ、そのような努力にもかかわらず、たとえば関税交渉や熱帯産品の交渉において、農産物ですとかあるいは中小企業の産品等先方の要望に応じがたい分野というものもございまして、途上国の要望のすべてを満たすことができなかったことは事実でございます。しかし、そのコードの中における途上国に対する特別措置の点も含めまして、その交渉の過程におきましては途上国側の要望その他の事情を勘案して出された妥当な結論であるというふうに考えておりまして、したがって、UNCTADの事務局長指摘は必ずしも当を得ていない面があるのではないかと考えます。  それから第二のガットの承認の手続でございますけれども、これは昨年の四月に開催されました貿易交渉委員会において、先ほど申し上げましたような途上国側の提案があったわけでございますけれども、討議の後に議長から交渉の結果を提示するという旨発言があり、それに対して異議を述べる者がなく了承されたという経緯がございます。このような処理の仕方はガットの従来からの慣行に沿うものでございまして、異例のことではないというふうに考えます。さらに昨年の十一月ガット総会において、交渉の成果がガット加盟国全体のコンセンサスということで了承をされておりますので、交渉結果の承認の手続に問題はないというふうに考えます。  第三番目の発展途上国をねらい撃ちにした保護貿易主義がふえるのではないかという点でございますが、この点につきましては先ほど申しましたように、恐らくセーフガードの問題につきまして交渉が成果を上げなかったということであろうと思われるわけでございますけれども、この点につきましてはガットで継続審議をするということに合意ができておりまして、この継続審議の中で各国が合意に達するまでは現在のガットの十九条にございますルールと慣行を遵守するということが確認をされておるわけでございます。また、そのセーフガードの交渉と離れましても、途上国からの輸入に対する先進国の保護的措置につきまして発展途上国はいろいろ危惧を持っておるわけでございますが、昨年の十一月のガットの総会で今後のガットとしての作業計画をつくりましたときに、その一環として途上国からの輸入に対する先進国の保護的措置の検討がガットの貿易開発委員会の重点作業の項目の一つとしてはっきりと明記をされておるわけでございます。この点から見ましても、UNCTADの事務局の書いておりますことは必ずしも当を得たものとは言いがたいものというふうに考えます。  以上でございます。
  100. 田中寿美子

    田中寿美子君 コレア事務局長というのは大変有能な方らしいですね。それで、こういうことを十分承知の上でこれだけの批判を出した意義というのはどういうふうにお考えになるか。これは大臣ね、途上国側は非常に要求が多いと思います。東京ラウンドの今回のこの協定の中身ずっと見ても、随所に途上国への配慮は入っておりますけれども、それでもなお途上国がそのような不安を持っていることについて、少しもこちらとしては非難される筋合いはないという態度を私はとるべきではない、もう少し同情的な態度をとるべきじゃないかなと思うんですけれども、いかがお考えになりますか。
  101. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私もガマニ・コレアという人、二十年来個人的にもつき合ってまいりましてよく知っておるわけでございますし、なかなか頭のいい人物でもございます。いま経済局長からの説明がありましたが、これはUNCTADの会議その他の国連会議でもいろんな形で出てまいりますこの途上国の従来の国際経済秩序に対する批判といいますか、一概に言えば、従来の秩序というのは先進国にとっておのずから利益になるような構造になっていて、貧しい途上国の利益と必ずしも合致しない面があると。自由競争そのものでも場合によると弱者をといいますか、強者にとって利益の場合が多いというような基本的な立場一つあるんだろうと思います。まあ優遇問題、先ほど出ておりましたようなことで、一方におきまして途上国としては自分たちの力のついてきた分野については自由貿易的な方を主張する面もあるわけでございまして、それから他面におきましては自由競争でない行き方、商品協定その他を通じまして競争力の弱い国々にある程度プラスになるような国際的取り決めを要求する、まあいろいろな面がございますが、基本的には世界貿易の秩序というのが必ずしも貧しい国々にとって利益になるという形にはなっていないという気持ち、考え方が一般的にあると思います。それからもう一つは、これは世界貿易全般の見地あるいは貧しい国々の立場からいえば望ましいけれども、先進国側にもやっぱり政治もあり、社会問題もあり、いろいろ国内の問題を無視できない。熱帯産品一つとりましても、バナナを無税にしろというとたとえば日本のリンゴに影響があるというような政治的な面での反対が出てまいったり、あるいはタピオカイモを無税にしようとすればコンニャクが大変なことになるというようなこともございまして、途上国から見たらぜひやってほしい、しかしまあそれを受け入れる先進国の立場からするとそう国内事情もあって簡単にはのめないという問題がいろいろございまして、こういう点についてはやっぱりステップ・バイ・ステップで先進国側も国内をだんだん納得させながら途上国の要請にこたえていかなければならない、そんな点もあるわけでございまして、コレア事務局長がいろいろ不満な点を述べたということは、つまり零点だという意味ではなくて百点取りたいけれどもまあ六十点ぐらいしかない、そういうたとえが適当かどうかわかりませんが、そういう意味の不満であろうというふうにまあ私としては受け取っておるわけでございます。
  102. 田中寿美子

    田中寿美子君 ただいまの大臣の御説明は大変私もよくわかります。それで、私はコレア事務局長がこういう発言をなさったのは、このガットに出ている、参加している国の九十九カ国のうち発展途上国は七十三カ国ですね、そして先進国は二十一カ国で東欧が五カ国と、この七十三カ国の中にもそれぞれただいまおっしゃったように、格差があると思いますし、それからこれに参加していない非常におくれた発展途上国もあると思うんですが、コレア事務局長はそういうおくれた部分をも代表して政治的な配慮からそういう意見を述べる必要を感じられたのであろうというふうに一つは思います。それからいまおっしゃった先進国の中の国内事情、これは日本の場合も私は農作物なんかに関しては国内の第三世界といってもいいような立場にある部分があると思いますので、大変貿易上の取り決めのむずかしさというのはよくわかるんですが、ただたとえば第一番目の発展途上国に対する優遇措置が不十分だということの中に、途上国も含めて総会で合意したではないかという御説明がありましたけれども、その前の委員会の方では必ずしも全員が代表されていない、そこで準備されて、そしてそれが総会にかけられたときに、これは国連のやり方がそうだと思いますけれども、国連で言うコンセンサスというのは意見を発表しないで黙っていれば、黙っている者が非常にたくさんあっても賛成者の数がある程度あれば、これはコンセンサスで通ったというやり方をしますでしょう。ですから総会で合意したということは必ずしもみんなが合意したということにはならないと、何も言わないで黙っていればこれはコンセンサスで通ったという形になるという、こういうこともありますので、やっぱり途上国の代表が出席している会議での先進諸国の配慮というものが手続としてはもっと必要なんじゃないかなというふうに私は思ったわけです。  それから、先ほど農作物のことで、熱帯産品に関しては優先的に配慮してあるということでバナナの例をお引きになりましたけれども、確かに日本国内の農作物とぶつかり合う部分もあったりしますから、日本の場合だって必ずしも全部賛成できないというようなことがあるということは、これは途上国側にもよくわかってもらうようにしなければならないだろうと思いますが、熱帯産品で貿易障害を撤廃してほしいと言っているけれども、産品について特に配慮をしたという産品はどういうものでございますか。
  103. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 熱帯産品につきましては、一九七三年の東京宣言におきまして優先的な交渉分野ということに決定をされましたに伴いまして、ほかの一般の交渉よりも熱帯産品の交渉を先駆けて実施したわけでございます。そうして、すでに日本につきましては三年前の四月から約八十品目につきまして熱帯産品のオファーを実施に移しております。その中にあります主な品目といたしましては、観賞用の熱帯魚、カカオ油、木製の品物、木炭、ナット類、紅茶、香辛料、貴石、半貴石等々がございます。
  104. 田中寿美子

    田中寿美子君 日本の農作物で自由化されては困るという物はどういうふうな物でしょうか。あるいは第一次産品。
  105. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 発展途上国の方から関税引き上げ等の要望がありまして、日本側がこれに応じることができなかった物というものといたしましては、たとえば甘蔗糖、マニオカのでん粉、生鮮のパイナップル、そのほか羊の皮、ハンドバッグ、毛皮、絹糸、ジュートの糸等がございます。
  106. 田中寿美子

    田中寿美子君 大変この辺は微妙な問題を含んでおりますので、今後それぞれ個別な折衝をしなきゃならない問題だろうと思いますが、先進国同士の貿易競争、特に日米間の経済競争のことなんかもありますけれども発展途上国との関係というのは十分今後も配慮していただきたいと思います。  で、時間の都合がありますから、私、関連して日本の海外経済協力のことをちょっとお伺いいたします。アメリカの議員団が見えたときに、その要望の一つ日本はもっと海外経済協力費を増大せよというようなことがあったというふうに私は新聞で読みましたけれどもアメリカにとって日本が海外経済協力をふやせという意味はどういう意味を持っているんですか。
  107. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) せんだってビンガム議員一行、アメリカの下院の議員団の来日の際に、私に対してそういう質問が出たので——これは新聞に出ておったかと思いますが、これは一つには日本は憲法上の規定等もあって防衛費をふやすことは余り容易にはできないことであるということを承知しているので、この開発途上国に対する援助は相当日本経済力をもってすればやってしかるべきではないか、まあ基本的にはそういう考え方です。反面アメリカ経済力は大きいけれども国防費がGNPの五、六%にもなるし、したがって援助の方に割き得る財政上の余力が少ないのだと、大体そういう趣旨だったと思います。
  108. 田中寿美子

    田中寿美子君 それで日本経済協力費ですけれども、海外経済協力費、GNP比、資料いただきまして、非常にまだ低いわけなんですね。今年度で〇・三三九、昨年度が〇・三一一。で、経済社会七カ年計画で〇・七%まで五年間、八五年までに達成したいというふうに明示してあるわけですけれども、〇・七%達成それまでにできる見込みでしょうか。
  109. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) ただいま先生から御指摘のございましたのは経済協力予算とGNPの関係でございますか。
  110. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうです。
  111. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) 先生御指摘のとおり、五十五年度予算におきましては、経済協力予算はGNP比の〇・三四までいっています。ただ、先ほど申し上げましたこの〇・七%という問題につきましては、予算面の問題ではなしに予算を使って現在実際にディスバースが行われている、日本経済協力が現に行われるその量をGNPではかったのがDACで言われておりますGNP比〇・七%までもっていくとか、そういう問題でございます。したがいまして経済協力予算とGNPの関係ではなしに、その予算を現実に使いまして出ていった金額のGNP比を問題にしております。  そこで、実際の経済協力費の伸びの問題でございますけれども、GNPで申し上げますと、私どもにわかっております一番新しい数字が一九七八年の暦年までわかっております。それのGNP比が〇・二三でございまして、昨年すなわち一九七九年の暦年の経済協力の量の対GNP比は現在試算中でございます。近くDACにも報告する予定でございますけれども、この比率がいま一番新しい数値は七八年の〇・二三でございますけれども、これがDAC諸国の平均の〇・三五でございまして、その〇・三五に比べて非常に低いと、したがってなるべく早くこれを伸ばしたいというふうに考えておるわけでございます。
  112. 田中寿美子

    田中寿美子君 三年間に倍増というふうなこと、これは可能性がありますか。
  113. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) 一九八〇年は御承知のとおりODAの倍増を達成すべき年でございます。今般御審議を賜りまして御承認をいただきました経済協力費約八千四百億円でございますが、これをもちまして私どもはODA、すなわち政府開発援助予算の倍増を達成するつもりでおりました。ただ、問題はODAの倍増はドルタームで達成するという目標にしておりますので、もし円の価値が非常に落ちました場合にはこの達成が困難になるという問題も起こってくるわけでございます。ただ、私どもは二百四十円から二百五十円ぐらいの間で円が動いているときにおきましては、ことしの予算を使いましてODAの倍増達成が可能であろうというふうに考えております。
  114. 田中寿美子

    田中寿美子君 昨年大平総理がUNCTADの会議でマニラを訪問なさいましたね、そのときに人づくり援助ということを約束してこられたんですが、それが具体的に政府の援助としてはどういう形で出てきているかを御説明いただきたいんですが。
  115. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) 先生御指摘のとおり、昨年のマニラにおきますUNCTAD総会におきまして、総理が人づくり協力と申しますものを国づくりの基礎として重要であるということをおっしゃったわけでございますけれども、五十四年度、昨年度の予算におきましては私どもASEAN地域が多いわけでございますが、フィリピン、インドネシア、タイ等におきまして、たとえばフィリピンに熱帯医学研究所をつくる。これは無償予算でつくるわけでございますが、これに技術協力のわが方からの専門家の派遣、あるいは先方からの研修員の受け入れという形で熱帯医学研究所をつくることを考えておりますし、さらにインドネシアにおきましては、看護婦の養成施設、それからタイにおきましては、沿岸漁業の養殖センター、青少年の福祉センター、こういったものを五十四年度の予算で実施しております。
  116. 田中寿美子

    田中寿美子君 それらは無償ですか、有償ですか。それから金額は幾らになりますか。
  117. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) この予算は、無償資金協力に計上しております予算と、それから技術協力の予算を技術的にかみ合わせましてやっている経済協力でございます。
  118. 田中寿美子

    田中寿美子君 時間があれですから、私ちょっと飛ばしまして、後発発展途上国に対する援助についてですけれども日本経済大国ですから無償援助をする責任があるかと思いますが、実は昨年秋にニカラグアの五人委員会の一人でありますところのチャモロ夫人が見えたわけなんですが、そのとき私は大来外務大臣にもお目にかからしていただいたわけですが、昨年の七月にニカラグアがソモサ独裁政権を倒して新しい政権をつくりましたときに無償援助をしていられるわけですね。それはたしか二千万円くらいだった。昨年度中に五億円ぐらいの一般無償援助をしている。今後についてはどうだろうかということで、私はニカラグアは後発発展途上国というふうに数えられるのではないかと思いましたんですが、水産無償援助で六十億、去年予算がある。ことしはそれが六十六億ある。それを適用できるのか、できないのか。できないとしたら、どういうスタンダードで後発発展途上国——一番おくれているところだから無償援助をするとかということになるのか、それを説明していただきたいと思います。  それで、なお続けて、時間がありませんから申し上げますけれども、一部の上流階級の人たちはいい生活をしておりますけれども、全体に非常に疲弊している。たん白資源が非常に少ないから、太平洋と大西洋に両方持っておりますので、水産資源の開発ということの技術援助をしてもらうならば非常にありがたいのだということをこのときも申しておりましたし、その後やってきた人を通じてもそういう話が伝えられてきたものですから、果たしてそういう適用を受けられるのかどうか、その辺のことの基準ですね。
  119. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) 水産無償と私どもが言っております無償協力でございますが、この使い方と申しますか、この決定につきましては、ほかの一般無償と同じように、先方政府の要請を待ちましてわが方で検討するというのが通常の手続でございます。もちろん、資金の限度がございますので、先方の要請を全部受けるというわけにいかないわけでございますが、水産無償につきましても同様でございまして、昨年五十四年度予算におきましては約十四件でございますかの水産関係の無償援助を行っております。  どういう援助を行ったかと申しますと、相手国としては、バングラデシュ、パキスタン、タンザニア、スリランカ、タイ国といろいろございますが、大体先方の水産資源の開発に資するような、かつ同時にその国の現地のニーズに適合する形で、たとえば漁船のエンジンを送るとかあるいは修理工具を送る、漁網の製造用の機材を送る、あるいは訓練船を送るという場合もございますし、それから、先ほど申し上げました人、つくり関連でございますが、タイの水産の養殖センターの場合にはセンターの施設を無償援助で贈与しているわけでございます。その他、試験船、訓練船を送ったケースもございます。全部、現地政府からの要請を審査いたしまして、こちらから使節団、ミッションを派遣いたしまして、どういう援助をすれば現地の要請に一番よく適合するかということを確認いたしまして、援助をするという仕組みになっております。
  120. 田中寿美子

    田中寿美子君 無償援助をする場合の相手国の経済状態ですね。水準について、何か規定がございますか。つまり、ここから先、無償援助を与えてもいいという判断ですね。それはどういうふうに……。
  121. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) 先ほど先生がおっしゃいましたとおり、なるべく最貧国と申しますか、ある程度発展を遂げた国ではなしに、なかなか経済開発がうまく進まない国、私ども一応パーキャピタのGNPが五百八十ドルということをめどにしておりますが、必ずしもこのめどにこだわるものではございませんけれども、なるべく日本の無償援助をより貧困な国に執行したいというふうに考えております。
  122. 田中寿美子

    田中寿美子君 その場合、政治的安定度とかなんか、そういうことも考慮に入るわけですか。
  123. 梁井新一

    政府委員(梁井新一君) これは経済協力一般に関連する問題でございますけれども、私ども経済協力をやる目的はやはり民生の安定、それから経済発展ということを主眼にやっておりまして、特定の政権を支持する、そういうことではなしに、やはり民衆のレベルに日本の援助というものの利益が稗益するような形でやりたいというふうに考えております。
  124. 田中寿美子

    田中寿美子君 もう時間が来ましたから次に回しまして、これで終わります。
  125. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 私は東京ラウンドに入る前にアフガニスタンの問題について若干お伺いをいたしたいと思っております。  実は私、去る五日の夕刊を見ましてずいぶんびっくりしたのでございます。その見出しを見まして、「ソ連と駐留条約」、「アフガン居座りを合法化」というのを読んだときに、私は満州国の建設当時のことを思い出したのでございます。私は、満鉄でございまして、その当時満州におりましたので、このアフガンの問題と満州の問題とをすぐ連想して考えたのでございますが、これは次の、われわれ日本のその後の行き方を考えてみますと、私はソビエトの今後の中東における、また南西アジアにおける方向というものが何かわかるような感じがいたすのでございます。  御承知のように、中東でも南西アジアでも、非常にウイークポイントが多い。けさほどから話がありましたように、イラン問題を初め、パレスタイン問題、あるいはソマリア、エチオピア問題、またインド問題、パキスタン問題等、とにかくこのぐらい問題の多いところはないのでございます。こういうところに対して、私はソビエトの戦法というのをいつもよく考えるんですが、戦わずして勝つというのがソビエトの戦法じゃないか。そうなれば、あらゆる弱点を見出して、そこに入り込んでいく。バルチスタンの問題もございますし、あるいはトルコの問題もございましょう。至るところにちょっと押せば簡単に赤い火が燃えるような場所がある。こういう認識のもとに立ったときにわれわれとしてはどういうふうにすべきか、日本としてはどこまでも平和でいかなけりゃならぬ、平和でいかなけりゃならぬ国が何かそこにまた役割りがあるかどうか、こういった問題を考えていますと、非常な危機感に私は襲われるのでございます。これについて、外務大臣は今回のソビエトのアフガニスタン長期駐留に対してどういう見解を持たれ、またこれが今後どういうふうに発展していくか、それから自由陣営が協力を保っておればいいと思いますが、これが足並みがそろわない場合においては危殆に瀕する場合もあろう、そういったもろもろの問題について大臣はどういうふうに考えておるか、まずこれをお伺いいたしたいと存じます。
  126. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) アフガニスタンの情勢につきまして、第一に、なぜアフガニスタンにソ連が武力介入したかという原因、これはいろいろ解釈ございますが、これは防衛的であるのか膨張的であるのかというような議論もあるわけでございますが、確かにソ連の歴史的な背景もありまして、自国の安全ということに非常に神経質なほど関心が強い。それで、その観念を広げてまいりますと、国境を接している国々が大体自国に対して危険な要素にならないということも含めて安全ということを考えているのじゃないかということも想像されるわけでございまして、基本的には自分の国の安全だけれども、しかし周りの国がなるべく都合のいい状態にあってほしいというような動機もあるかと思います。  せんだって、プヤというハンガリーの外相が参りましたときにいろいろ話をしておりましたら、アフガニスタンの場合にはもう二年前に共産政権ができているのでいまさら今度の事件でアメリカその他の国が文句を言うのはおかしいというような説明もいたしておりましたが、ソ連側にはそういった考え方もあるのではないかと思うわけでございます。一たん共産主義の政権になった国が、国内がかなり動揺して、もう一度非共産主義の国に変わるという、そういう事態も起こりかねない。それに対してソ連側が非常に危惧の念を持ったというような事情も碓かにあったようでございますし、また非常に革命的なイスラム勢力が出てまいりまして、これがソ連の国内のイスラム教徒——これは四千万とか五千万とか言いますけれども——に影響するのではないかというような推測もあるわけでございます。確かにそういう意味では短期的には防衛的な意味があったのじゃないか、直接の動機としては考えられるのじゃないかと思われますが、同時に、しかし長期的な観点に立って、中東地帯に対する影響力を強めるということも長期的な政策の中に含まれておったのではないかという面もございます。  それで、見通しということは非常に困難でございまして、どうも各方面の情報から言うとかなり長期にわたらざるを得ないんじゃないか。多少ソ連側の判断も甘かったといいますか、いろいろな面での、アフガニスタン国内の抵抗とか諸外国における反響とかを含めて、やや予想を上回った面もあるんじゃないかという観察がございます。しかし、ソ連の政策、従来の形から言いますと、一度押さえたところから引くということはなかなか考えられないことでございますので、やはり現状としては長期にあそこを押さえて、国内の反対勢力をあくまでも押さえつけていくという形でしばらくいくのではないかと。これは一応の見方でございまして、なかなかこういう問題、正式に私ども立場判断申し上げることはデリケートでございますのですが、まあいろんな見方がある、そのいろんな見方の紹介という意味で答弁させていただきたいと思います。
  127. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 この問題についてはなかなかはっきりできない面もあるとは存じますが、私は四十年前に、まだ飛行機のないときにあの方面——イランからアフガン、パキスタンまでずっと歩いた経験がございますので、それ以来あの地区については相当な興味を持っておるものですから、自分なりに今後どういうふうな発展をするだろうかというふうな考え方を持っているのでございますが、その場合において、いまわが日本において一番大事なのは、こういう時代、環境のもとにおいては次から次にいろんな問題が起きてくる。小さいうちに処置しない場合においてはこれが非常に大きなものにまで発展する可能性を包蔵しておると。その意味で、私はあの方面における外務省の今後の任務というものはきわめて大きいものがあるんじゃないか。  先ほどお話が出たのでございますが、いまのような外務省の対応の仕方において、果たしてこれがうまくやれるかどうかなという疑問を持つものでございます。ああいうように宗教がえらく違いますので、なかなか中に入っていくのはむずかしいのでございますが、ぜひ私要望したいのは、真にイスラムの皆さんから信頼されるような人間を向こうに送ってもらいたい、あるいは移動大使を常駐させてもいいですし、あるいは民間の人もございますし、そういう方、必ずいると思っております。ああいうところの人たちというものはなかなか人を信用しない。だから、絶対にこの人なら言うことを聞くんだという人をぜひ送ってもらいたい。そうすることによって真の情報というものが得られるんじゃないかということを私感じるのでございます。それで、なかなか大臣から余りお答えもないようでございますので、要望いたしまして、東京ラウンドの方に問題を移していきたいと存じます。  政府の方がこの東京ラウンドの問題につきまして、長期にわたってガットの原則とする貿易の自由無差別の原則に沿うて、多くの障害を乗り越えて、石油ショックの場合においても、あるいは保護貿易が起きてくるんじゃないかと、いろんなのがございましたが、ようやく去年十件に及ぶ議定書締結をいたしました。まあ今度いよいよ最後の段階にまで来たということは、私どもこれに関心を持っている者としては非常にうれしく存ずる次第でございます。まあ、ここに盛られた関税の引き下げ、非関税障壁に対する規程及びルールづけは、わが国貿易の将来に私は大きく役に立つんじゃないかと思っております。しかし、日本のような資源の少ない国といたしましては、貿易でもって立っていかなけりゃならないので、これらの今回の東京ラウンンドをして、さらに今後の日本貿易の拡大と安定、そうしてガットの原則に一層接近して、わが日本貿易立国として十分に立っていけるように、また日本がその任務を十分達成していけるようにしたいものだというふうに私は考えております。そして、まあ私、今日まで私どもの仲間でいろいろ話をしてきたのでございますが、この協定は早く通さなくちゃならぬ、今回、多くの諸君とともに、この協定が速やかに承認されるようにというふうに念願をいたしているのでございます。  私は思うのに、長い間かかって承認をされたいろんな協約にいたしましても、あるいは国によってはこれに賛成するところもあるし、あるいはまたマイナスと、不賛成なところもあるんじゃないかと。しかしながら、この貿易というものは数量や金額の問題でございまして、これはまあ損得が明らかになるものでございますから、お互いに計算をして、お互いに妥協点を見出すということは、私はまあ可能であるというふうに感じております。ただ、この問題を私どもが考える場合において、相手に損をさせるということだけを考える、自分だけ得をするということを考える、こういうふうなことではこの協定というものは十分な効果を発揮できない。だから、どこまでも相互に成り立っていくという形においてこの問題の処理に当たるべきじゃないかというふうに思っております。  まあこの協定を見てますと、あるいは大幅に関税を引き下げたものと、また小幅に引き下げたものとがあり、あるいは据え置いたものもあるようでございますが、わが日本といたしましては、あるいは諸外国におきましても同じようであると思うんですが、大幅な引き下げのものは国際競争に耐えられるとか、小幅引き下げのものあるいは据え置きのものはなかなか耐えられないものだと、そういうふうになるんじゃないかと思っています。また、ジュネーブ議定書にありましてもこの点が考慮されまして、輸入によって影響の受けやすい農産品や中小企業産品、その他国内的に構造的な問題を抱えている分野につきましては、下げ幅圧縮あるいは据え置くという考慮がなされまして、その上に関税の引き下げは八年間にわたって行われ、そこに準備と順序がなされるようになっているようでございます。いまのこの非関税分野におきましても、私は公平というものが一番大事じゃないかと。お互いの国々が自分のことだけを考えないでやるということ。しかしながら、傾向といたしましては輸出を増大して輸入を減らすという傾向が出ておりますが、しかし、われわれはこの矛盾を解決する、本当にどちらにも公平を期するということで進まなきゃならないというふうに考える次第でございます。それで、この公平をお互いに求めるためには、一朝一夕によってできるものじゃない。お互い忍耐強く相互に理解をしながら公平の線に沿うてこの問題を推進していくということが大事でございまして、この点につきましては、私は今回のこの協定をまた高く評価するものでございます。  以上のように、まあ私としての見方を申し述べたのでございますが、これから順を追うて御意見を拝聴しながら、また私自身の意見を申し上げてみたいと存ずる次第でございます。  まず農業についてでございますが、食糧の確保は国の基本政策であり、東京ラウンド交渉を行うに当たっても、国内の農業への影響には十分な配慮がなされたものと存ずる次第でございますが、また農産物の関税を下げたりあるいは牛肉、オレンジに見られるように輸入枠の拡大が行われているようでございますが、こうした措置が国内産業に打撃を与えることはないかどうか懸念をいたすものでございます。また、もしそういうことがあるとすれば、この対応策としてはどういうふうにしてとらえておるか、この点についてもお伺いいたしたい。  また、熱帯産品交渉の結果、昭和四十七年四月一日から関税が引き下げられまして、その結果、沖繩産のパインかん詰めが今日非常に苦境に入っております。これは一般的な消費力の低下によるものではなしに、海外からの冷凍パインの輸入増加がその大きな要因になっているのでございますが、すなわち本土のかん詰め業者が海外より冷凍パインを輸入して、これをかん詰めに加工しているからでございます。ことに沖繩のパインは、サトウキビの取れない赤土の傾斜地に、すなわち酸性土壌で栽培されている関係で転作は困難でございまして、これらに対応するためには準備と順序というものが必要でございまして、かつまた公平という立場から考えましても、どうか沖繩のパイン業者に政府としての適切な善処をお願いいたしたいと存ずるのでございます。  これらの点につきまして農林水産省からお考えを承りたいと存じます。
  128. 山崎皓一

    説明員(山崎皓一君) お答えいたします。  農林水産物につきましては、先生が御意見の中でおっしゃられましたように、農業のように特殊なものにつきましては、交渉上特殊な配慮をするということが今回の東京ラウンド交渉の一つの大きなルールになっておりました。具体的に申し上げますと、先生御承知かと思いますが、工業品につきましては原則としてすべての産品につきまして一定の引き下げ率で関税をカットするという方式でございますが、農産物につきましては、リクエスト・オファー方式と申しまして輸出国の関心がありますものにつきまして関税引き下げ等の要求がございまして、それらのうち輸入国として応ずることができるものについてのみ関税の引き下げを行うと、こういうような方向で対応したわけでございます。  したがいまして、私どもいろいろ農産物の輸出国から関税引き下げのリクエストを受けた中で、わが国の農業、農林水産業への影響というものを十分に配慮をいたしましてオファーをいたしました。オファーをいたしましたものにつきましても、できるだけ関税の引き下げ率を小さくする、あるいは国内農業上重要なものにつきましては引き下げのオファーを行わないというような措置をとってきたわけでございます。  それから、一部のものにつきましては、引き下げを行うことはオファーいたしましたが、引き下げを開始する時期を後へずらすというような措置もとっております。  それから牛肉、オレンジの輸入枠拡大等問題ないのかという御質問でございますが、たとえば牛肉につきましては一九八二年に十四万五千トンという輸入枠を見通しておりますが、これは実は昨年度の輸入割り当てに比べましてわずか五百トン程度の差でございまして、今後国内の需要が伸びるということを配慮いたしますれば、十分に吸収可能なものであるというふうに考えております。  またオレンジにつきましても、アメリカは当初少なくとも一部の季節については自由化をするようにという要請があったのを、これを断固断わりまして、国内的に影響の少ない範囲での枠の拡大に応ずるという形で対応したわけでございます。  したがいまして、一般的に申し上げまして、私どもも今回の交渉の結果は農林水産業に重大な影響を与えるというふうには考えておりませんが、万一何か不測の事態が起こりました際につきましては、それぞれ対応策を講じていきたいというふうに考えております。  なお、パイナップルの問題につきましては担当の課長の方からお答えいたします。
  129. 畑中孝晴

    説明員(畑中孝晴君) パイナップルの問題のお答えを申し上げますが、冷凍パインの輸入は、一昨年約三万トン近くまで非常な勢いでふえまして、それがかん詰めに加工されて出回る、それによって沖繩のパイナップルが非常な影響をこうむるというようなことがございましたので、昨年初めから表示の問題、冷凍パインを使っておりますのは「冷凍原料使用」という文字をかん詰めに大きく書かせるというようなことをやりましたり、あるいは業界を指導をして自粛をしてもらうとか、あるいは、一番大きなところが輸出国がタイでございますので、かん詰めに加工して出すようにというようなことでいろいろと折衝をいたしまして、昨年は大体前年より七割ぐらい、前年の七割程度、約二万トン弱に減っております。ことしの一、二月は前年に比べますと約四割ぐらいに減りまして、大分冷凍パインについては輸入量が減ってきておりますが、ただ前々の年からのずれ込みがございますので、冷凍パインのかん詰めそのものの製造量というのはかなり昨年もあったわけでございますが、だんだんこれについては落ちついてくるというふうに考えております。  一方、沖繩のパイナップルというのは大変大事な産業でございますので、私どもも生産面でもいろんな省力化を図ったり、あるいはジュース工場を設置をするのに助成をいたしたり、いろいろなことをやっておりますけれども、これからも沖繩のパインというものをやはり国内で販売をする、優先消化というふうに言っておりますが、そういうことを基本といたしましてグローバルのパイナップルの割り当て、そういったようなものにつきましても十分配慮をして、これからも沖繩のパイン産業というものが安定的に発展をするように努力をしていきたいというふうに考えております。
  130. 山崎皓一

    説明員(山崎皓一君) 先ほど牛肉の輸入割り当て量の中で、輸入数量の見通しの中で、私うっかりして、十四万五千トンと申し上げたような気がしますが、十三万五千トンでございますので、訂正させていただきます。
  131. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 ただいま農産品、まあパイナップルの問題につきまして、この問題について農林水産省の方が非常な関心を持って対策を練っておられる、また、沖繩のパインについても十分な考え方を持って対処しているんだという話を聞きまして心強く感じたのでございますが、どうか農業と、またパイナップル等においても弱い産業でございますので、格段の御配慮を賜るよう、お願いいたす次第でございます。  次にお伺いしたいのは、農業と並んで中小企業への配慮も重要じゃないかと考えるのでございます。  今回の東京ラウンドで、わが中小企業は大きな問題を抱えているのでございますが、この分野に対して打撃をこうむるようなことがないのかどうか、あるとすればどういうところにあるのか、お伺いをしたいと存じます。また、これに対する対策をどういうふうに考えておるか、ひとつ通産省の御意見をお伺いしたいと思います。
  132. 内村俊一

    説明員(内村俊一君) 中小企業の問題につきましては、今度のMTN交渉におきまして、通産省といたしまして非常に大きな関心と努力を払った分野でございます。  関税の引き下げについて申し上げますと、中小企業が主体であり、かつ構造的に非常に大きな問題を抱えております繊維品などにつきましては、おおむね現在の実行税率をそのまま据え置きしておりまして、関税の引き下げは行っておりません。また、その他、程度に応じまして、問題のある中小企業業種につきましては、通常の工業製品の関税引き下げよりも下げ幅をぐっと小さくしております。そういった配慮をしておるわけでございます。  また、関税の引き下げは御承知のとおりことしから八年間にわたりまして徐々に下げられることになっておりますので、影響も少しずつということで大きな打撃はないものと考えています。しかし、万が一何か問題が生じましたならば、現在行っております中小企業の各種施策を総動員いたしまして対処いたす所存でございます。  なお、中小企業庁からも出席しておりますので、一言説明させていただきます。
  133. 横堀恵一

    説明員(横堀恵一君) 中小企業に対する影響につきまして、非関税措置のうち、たとえば政府調達協定関係についてちょっと御説明さしていただきます。  この政府調達協定の適用対象でございますが、実はこれは物品ということに限られておりまして、工事とか役務というようなものは除外されております。それから案件も対象が十五万SDR以上の案件ということに限られております。さらに、予算決算会計令というもので、事業協同組合等に対しまして随意契約をするという制度があるわけでございますが、本協定のもとでも維持するということにいたしまして、そういうこと等によりまして中小企業に対する配慮を行ったところでございます。  私どもといたしましては、このような措置によりまして中小企業への影響というのは相当程度緩和し得るものというふうに考えておりますが、政府といたしましては現在、毎年度、中小企業の官公需の受注の促進ということにつきまして、法律に基づきまして閣議決定を行い、目標を定めてやっておるわけでございますが、こういうような施策を今後とも大いに努力をいたしたいと思っております。
  134. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 中小企業というものは日本社会においては社会の安定のために非常に重要性を持っておるのでございまして、中小企業の崩壊というものは日本社会の崩壊にもあるいはつながるんじゃないかと思われるぐらいに私は思っているのでございます。だから、今後の協定においてはこの点を十分配慮していただきたい。  それから、この機会にひとつお願いをいたしておきたいんですが、チャンスだと思うので関連をしてお願いするわけですが、私、東南アジアの方面とは大分近いので友人が多くありまして、その人たちから、日本の中小企業は非常に優秀だ、自分らにぜひ教えてもらいたいんだというのがございますので、ぜひ通産省におかれましてはその点においても関心を持たれまして、わが国の中小企業の堅実化の問題と同時に、開発途上国の中小企業に対しても十分なる関心を持っていただくように希望いたしておきます。  それから、補助金・相殺措置協定ができたことによりまして、今後国内の補助金政策が大きな制約を受けたり、その結果農業や中小企業に影響を受けるようなことがないかどうか、これについて通産省並びに農林水産省の御意見をお伺いいたしたいと存じます。
  135. 内村俊一

    説明員(内村俊一君) 通産省といたしましては、中小企業の育成については非常に大きな関心を持っておるわけでございます。中小企業の育成は、中小企業構造の高度化、それから事業活動の不利の補正のための施策を講ずるものでございまして、産業構造の高度化、国民経済の均衡ある発展を達成しようとするものでございます。わが国経済政策上及び社会政策上きわめてこの中小企業助成策というのは大事な課題であろうと考えております。  このMTNで御審議いただいております補助金・相殺措置協定におきましても、社会政策上及び経済政策上の目的を達成するために必要な補助金については、これは輸出補助金は除きますけれども、制限する意図を有しないという認識をはっきり示しておりまして、したがいまして、この協定によりまして中小企業育成自体が制約を受けることはないというふうに考えておる次第でございます。
  136. 山崎皓一

    説明員(山崎皓一君) 農業につきましても、現在各種の国内補助金が交付されておりますが、この補助金は新しい補助金・相殺措置協定に加入した結果、何らの影響を受けるものではないというふうにわれわれは理解しております。
  137. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 ただいまの政府の説明によりまして、この補助金条項が全然わが国の中小企業に対して影響がないということを聞きまして大変安心をいたしました。  次に、わが国は環境保護や公衆衛生の推進のために独自の政策を推進しておると思っておりますが、今回の交渉の結果、スタンダード協定ができたことによりまして、たとえば自動車の排気ガス規制とか、農産物検疫の基準など国情に合ったわが国独自の基準が果たして守れるかどうか、私の聞くところによりますと、日本の自動車排気ガスに対する規制は世界で一番厳格であると、その規制に従うと、外国からは車が入らないんだという話も聞くのでございますが、これがいま外国の、アメリカの車を日本に入れろという非常に強い要請もありますし、その間日本のいまの基準というものが将来相当守られていけるかどうか、その点に対して懸念を持つし、またそれができない場合においては、日本アメリカとの間に何か問題が起きるような可能性も生まれてくるんじゃないかという感じもいたすのでございますが、この点については関係官庁と大臣の御答弁をいただきたいと存じます。
  138. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) まず最初に私の方から、今回御承認をお願いしておりますスタンダード協定との関連について御説明をさせていただきたいと思います。まずこのスタンダード協定は各国がそれぞれ決める規格の内容や基準値、それ自体を画一的に縛ろうということを目的とするものではございません。  協定をごらんいただきますと、その前文において生命、健康の保護や環境の保全等のためには必要な措置をとることは妨げられないということを規定をしておるわけでございまして、日本の環境の維持のために自動車の排ガス規制をその状況に合ったものにしておくということは可能なわけでございます。  また、この協定では規格を作成したり、あるいは変更したりする場合にはそれに関連するような国際規格がある場合にはできるだけこれに準拠しろと、これを尊重しろということが書いてございますけれども、この規定につきましても、先ほど申し上げましたような生命とか健康の保護、環境の保全等に必要な場合の例外規定が設けられておるわけでございます。したがって、日本の国情から見まして、必要な保安の基準や環境行政のあり方については日本の独自の判断でこれを取り進めることに支障はございません。
  139. 金田幸二郎

    説明員金田幸二郎君) 自動車の排出ガスの規制の問題でございますけれども、この排ガスの規制につきましては、環境庁の許容限度を告示を受けた形でもって運輸省では実施していくという形になっておるわけでございますけれども、この排出ガス規制というのはわが国の交通公害の防止というものを踏まえた上で最低限必要な基準として定めておるわけでございまして、こういうような性格からいたしまして今後規制の改正といいますか、強化といいますか、こういうものに際しまして、諸外国からいろんな要請なり、意見なりが出てきた場合におきましては、その意見の技術的な妥当性でございますとか、あるいは輸入車の一般的なそういう関連分野におきます技術水準あるいは輸入障害のおそれなどを十分に検討することが必要であるわけでございますけれども、一方におきましては、先ほど申し上げましたように、規制を改正する必要性、背景といったようなものも加味いたしまして、総合的に判断いたしまして、この結果、交通公害対策上必須であるというものにつきましては、やはり外国からの意見にかかわらず確実に実施していくということが必要ではなかろうかと考えております。この場合におきまして、先生の御指摘にもございますように、その国内規制の強化の必要性、その他背景等につきまして、十分その背景であるとか技術的な問題等も説明いたしまして、要らぬ誤解を与えないように、あるいは十分コミュニケーションを通じてそこの問題は対応していきたいというふうに考えております。
  140. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 なかなか時間がどうも足りないようでございますので、抜かしていきたいと存じまするが、いままでもずいぶん各委員の方々から問題提起をされたのでございますが、この際、私としても確認をしておきたいのでございます。  これは政府調達協定の中で電電公社調達の問題がまだ未解決のようでございまするが、日米交渉の現状はどういうふうになっておりますか。また時間が切迫するに従ってわが国の方が一方的に譲歩を迫られるというようなことが生まれるんじゃないか、本件の交渉がどういうふうに進んでおりますか、現状とそれから政府の取り組み姿勢をお伺いいたしたいと存じます。
  141. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 電電公社の調達の問題につきましては、昨年の六月の二日に日米共同発表がございましたが、その共同発表の枠組みと手順に沿って日米間で協議を進めてきております。これまで四回にわたります専門家レベルの協議を行いましたほかに、去る三月の末には安川政府代表も訪米の折にアメリカ側と意見の交換を行ったところでございます。現在までの協議を通じまして日米双方の電気通信事業とその調達の手続について実態はかなりの程度解明をされてきております。  この今後の点でございますが、日米ともに引き続き冷静に話し合いを行い、事務的に決着をつけるという方向で話を進めることで意見が一致いたしております。私どもは本件の解決は早いにこしたことはないと考えておりますけれども、また他方、一定のタイムリミットを設けて交渉をするという考え方は持っておりません。いずれにいたしましても、今後とも米側との交渉に当たりましては、関係省庁及び電電公社と密接に協議をしながら、日米双方にとって納得のいく解決を図るように努めていく所存でございます。
  142. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 この問題はかなりいろんな一般に公開できないような重要な問題も含んでいるというように言われておりますので、ぜひ政府においても時間の関係もあるかもしれないが、十分に慎重にやっていただきたいと存じます。  それから今度の東京ラウンドの方で合意に至らなかった二、三点についてお伺いいたしたいと存じます。  すなわち、セーフガード等やり残した問題が幾つあるのか、またこれは今後どういうふうにこれに対して対応していくのか、これについてお伺いいたしたいと存じます。  また、これがためにこの東京ラウンドの非常に効果的な実施というもののブレーキになるようなことがあるのじゃないかなという感じもいたしますが、これについてもあわせてお伺いしたいと存じます。
  143. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 御指摘のように、東京ラウンドで解決できなかった問題が四つばかりでございます。  その最初はセーフガードでございますが、このセーフガードにつきましては、その選択的な適用の取り扱いをめぐりまして各国の間で意見がまとまらなかったことなど、むずかしい問題があって交渉が完結できなかったわけでございます。この問題の今後の取り扱いにつきましては東京ラウンドの妥結後もこの交渉を継続をすることに合意ができております。その新しい合意ができますまでは、これまでガットが積み上げてきております慣行、ガットの十九条に基づくルールを維持するということが合意をされております。この合意を受けまして、昨年の十一月のガットの総会では新しい委員会をつくりまして交渉を続けること、それから、ことしの六月にその進捗状況報告するということが決定をされております。  残された問題の二番目は穀物の貿易でございます。これはケネディ・ラウンドのときに小麦協定が取り上げられたこともございまして、東京ウランドでもこの穀物の貿易を取り上げたのでございますけれども、実際の交渉は国際小麦理事会の主宰で行ったものでございます。協定の柱の一つである小麦の貿易の規約につきましては、市場及び価格の安定を目的とした国際的な管理による国別に保有する備蓄制度をつくることが討議をされましたけれども、これは全く新しいアプローチであることもありまして、また備蓄の積み増し点となる価格などについても各国の考え方が対立したために妥決に至らなかったものでございます。ただ、この穀物貿易に関するもう一つの柱でございます食糧援助の規約につきましては合意に達しましたので、発展途上国対策もあり、小麦貿易規約と切り離して成立をさせることになりました。  なお小麦の貿易規約については、今月、国際小麦理事会の第二回の特別委員会において交渉再開時期等が検討をされることになっております。  それから第三番目に積み残しとなった案件につきましては、輸出規制というものがございます。貿易を拡大していくという観点から見ますと、輸入面での制限と同じように阻害効果を持つわけでございまして、何らかの輸出規制に関する枠組みを設定するための検討が行われました。しかし、一部の国、特に費源の輸出国においては自国の資源の輸出の拡大を輸入国の市場の開放度合いと結びつけようという考え方が強く、一方輸入国の方ではこのような考え方に反対が強いために妥結に至らなかったものでございます。日本といたしましても納得のいかない内容のまま合意に持ち込むことは好ましくないというふうに判断いたしました。しかし、この問題につきましても、非常に重要な問題でございますので、昨年のガットの総会において、東京ラウンド後のガットの優先的な課題として取り組んでいくことが決定をされております。  最後に四番目の積み残し案件でございますが、不正商品の取り扱いでございます。これは、東京ラウンドの交渉も終盤に入りましたときに、商標権の侵害をした商品を国際的に取り締まろうではないかという考えが出てまいりまして、その取り締まりの強化に関する協定をつくろうという提案が出てまいりました。この目的につきましては大多数の国が賛成したところでございますけれども、ただ実際の取り締まりの方法や手続などの細目については、各国の法制、法律体系が違っておりますことなどもありまして、にわかには共通項が見出し得ないということが明らかになったわけでございます。さらに、先ほど申し上げましたように、この問題は東京ウランドの終盤になって出てまいりましたもので、時間的余裕がなかったこともありまして、東京ラウンドのパッケージからは切り離して話し合いを継続をするということになったわけでございます。  以上のとおり、大きく申しまして四つばかりまとまらなかったものがございますけれども、これらの問題については東京ラウンドの妥結後も話し合いを継続することになっておりますし、東京ラウンドの実施に支障がないようにそれぞれに今後の検討の手順は決められておりますので、わが日本としても今後とも各国とも協調しながら可能なものから解決の策を見出すように努力をしていきたいと考えております。
  144. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 時間がありませんのではしょっていきたいと存じます。  開発途上国の問題でございますが、UNCTADの場合におきましても、開発途上国の問題については非常な重大な関心を持って日本がサミットの場合でも代弁者になってもらえるだろうという期待もございまして、日本に対する期待は大きいのでございますが、今度の東京ラウンドの結論に対して必ずしも賛成はしてない、かなり不満もあるやに伺っております。その点は今後南北問題等と絡みまして、いまのUNCTADも、またこれからOPECの問題も、これはいまの通貨の問題等も含めまして非常に経済の安定に対して重大なる影響を与えるのでございますから、一つ大臣に提言を申し上げるのでございますが、UNCTAD、OPECの代表をわが日本としては今後サミットに参加さして、彼らの考え方をサミットの方において吸い上げていくというふうに考えられないかどうか、これについてもひとつ積極的に政府は臨んでもらいたいというふうに考える次第でございます。大臣の御答弁をお願いします。
  145. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御提案のミットにOPEC及びUNCTAD代表を加えるというお考え、これは、だんだん世界の問題が先進国だけでは片づかない問題もふえてまいりますし、重要なアイデアだと存じますが、ただ、各国がそこまで合意に達するかどうか、いまの段階ではまだむずかしいのではないかということと、数が余りふえますとだんだん形式的になってくるということがあるかと思います。  一つは、この前発表になりましたブラント・コミッションが南側を含めた別のサミットを開くべきだという提案をしておりまして、これが、あるいはいま先進七カ国のサミットと別のものをOPECや途上国を含めて考えるがよろしいかどうかという問題が一つございますのと、それからもう一つは、国連でグローバル・ネゴシエーションという名前のもとに、来年相当この南北間の対話がかなり長期間にわたって広範な問題を取り上げて論議をしようという段取りにもなっておりますので、こういう南北対話あるいはOPECとの対話をいまの先進七カ国のサミットに盛り込むのがいいのか、あるいは別の座敷を考えた方がいいのか、これはやっぱり今後検討すべき問題だと思います。基本的には今後の世界経済の運営ということについて途上国あるいはOPECの意見を積極的に反映さしていくことが望ましいと感じております。
  146. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 この前イスラムの方々と話をしたときにこういうことを言っておりました。日本という国はクリーンハンドなんだと、一番話がしいいのだということで日本に非常な信頼を持っておりました。そういう意味におきまして、いま南北問題、また日本貿易立国でございまして、どうしても自由経済を堅持していかなきゃなりませんので、開発途上国等からの日本に対する信頼がございますし、このいい立場を利用いたしまして、今後とも日本が弱い方の味方になって、彼の意見を吸い上げて、そして相ともに世界の安定のために進むということでもって大いにがんばっていただきたいということをお願いいたしまして、利の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  147. 岩動道行

    岩動道行君 東京ラウンドについては、ただいま稲嶺委員が発言されたのと基本的な意見をともにするのでありますが、特に一九七三年、つまり昭和四十八年にいわゆる東京ラウンドがスタートをしてわずか六、七年の間にこれだけの成果を上げたということは、日本政府当局あるいは関係諸国の自由貿易主義を守っていこう、世界経済の繁栄をもたらそうという精神が旺盛に働いた結果であって、この点政府努力に対しては深く私も敬意を払いたいと思います。ただ、今日、産業経済あるいは政治情勢等、それぞれの当該国の国内事情から、ややもすれば貿易に関しては保護主義がちょいちょい起こってきている。日米の経済摩擦あるいはECとの関係、こういうふうなところからも、私はそういう当該国あるいは当該地域の利害関係が相対立して、そのために東京ラウンドの精神が損われるというようなことがあってはならない。あくまでもやはり自由主義体制のもとで、市場メカニズムの中で世界貿易の拡大を図り、そうしてそれぞれの国の民生の安定と発展を図る、こういう精神が生かされなければならないと思うんですが、最近のそういう経済摩擦等が東京ラウンドの精神を損わないようにしていかなければいけない。外務大臣は最近アメリカにも行かれましたし、近く大平総理も訪米をされるわけですが、その点をしっかりと踏まえてやっていただきたいと思うんですが、これに関する外務大臣のまず御所見を伺っておきたいと思います。
  148. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま岩動委員から御指摘の、保護主義的な風潮が一部の先進国に強まっておることは否定できないことかと存じますけれども、たとえばアメリカの場合を見ましても、鉄鋼とかあるいは武器、自動車とか一部産業に保護主義的な動きが出ておりますけれども政府としてはあくまでも自由貿易の基本を崩したくないという立場をとっておるようでございます。業界のいろいろな個別的な要求が出てくる、それがまた議会の関係影響を与えるというような事実はございますので、必ずしもすっきりした形ではないと思います。ヨーロッパでも同様な問題があるように思いますが、基本的には各国政府としては保護主義に陥れば世界経済全般として非常に困難な状態に陥るということについては強い自覚があると思いますし、また、それだからこそこの七〇年代の非常にいろいろな問題が起こってきた時代にとにかく東京ラウンドが成立したという経緯もあったのではないかと思います。今後もまあある意味では日本は自由貿易主義の旗持ちのような役割りにもなってまいりましたが、できるだけそういう立場を貫いていく必要があると存じております。
  149. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、現在東京ラウンドの協定受諾している状況、さらにまた、発展途上国がなかなかついてさてない状態もあるようでございますが、そこら辺の状態をちょっと外務省から伺っておきたいと思います。
  150. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) 現在までに米国、EC、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、スイス等の主要の先進諸国はほとんどの協定受諾して実施に移しております。批准等の条件つきのものをも含めまして諸協定に署名を行っている先進諸国は、ECの域内九カ国を含めまして二十カ国及びECの委員会でございます。で、発展途上国につきましては、現在までに発展途上国のうちで二十二カ国が交渉の成果に署名等の形で参加の意思を表明をしております。で、この中にはブラジル、韓国、そのほかアルゼンチン、インド、インドネシア、シンガポール、エジプト等、従来とも積極的にガットの活動に参加している途上国のほとんどが含まれております。
  151. 岩動道行

    岩動道行君 そこで、まだ発展途上国などでこれからどんどん入っていただいて、お互いの貿易を拡大していくという必要があると思うんですが、これにまだ受諾をしてない、これから余り気の進まないような国などがあると思うんですが、こういう国々に対しては日本政府としてはどのようにして対応していかれるつもりですか。
  152. 手島れい志

    政府委員手島れい志君) できるだけ多くの国がこの東京ラウンドの妥結に参加してもらうことが望ましいと思うわけでございますけれども、現在のところまだ多くの途上国が交渉成果に署名をしていないのもまた事実でございます。で、その理由を考えてみますと、まあ各国それぞれの理由があるんだろうと思いますけれども一つはいろいろな協定実施ぶりを見きわめたいとか、あるいは受諾をした場合の権利義務のバランスについて時間をかけて検討したいとか、あるいは国内の体制準備に時間を要するとか、そういった理由があるのではないかと思っております。ちなみに途上国側は今回できました諸協定委員会等を、その諸協定に参加していない国、その署名をしない国にもオブザーバーとしての参加のために開放しろということを主張をいたしまして、昨年の十一月のガットの総会でこれが認められたわけでございます。したがって、これはその途上国側がこれらの協定への強い関心を持っているということの証左であろうと思います。つきましては、このようなオブザーバーとしての参加を通じまして協定の内容についてさらに途上国側の理解を進めてもらいたいと思いますし、また、その結果より多くの途上国の参加が期待できるのではないかというふうに考えます。日本としてもこのような協定委員会等の場あるいは通常のガットの場を通じまして、他の関係国とも協調しながら、できるだけ多くの途上国が参加するように働きかけていくつもりでございます。
  153. 岩動道行

    岩動道行君 大いに努力をしていただきたいと思いますが、と同時に先ほど大臣も言われましたが、いろいろなエネルギー事情とか諸般の情勢からどうしても——自国の国益を守るということも大事ですが、と同時にそれが保護貿易主義につながっていく傾向がどうしてもこういうエネルギー事情等を中心として起こってきますので、ぜひ保護貿易主義というようなものをできるだけ抑えながらやっていくように、日本政府は旗頭としてやっていきたいということですから、その精神を大いに発揮していただきたいと思う。もちろん、かといって日本の場合でも農産物等いろいろな国内問題もございましょう。したがってそこら辺は十分に踏まえながら、特に工業製品等については最大限の自由貿易主義を発揮するという精神でこの東京ラウンドを生かしていただきたいということを特に希望をしておきたいと思います。  そこでこの機会に、最近外務省でブラジルに行かれて、いわゆる移住問題についての話し合いを事務レベルでもしてこられたと承っております。昨年の暮れには塚本領事移住部長が日伯混合委員会に出席をされて、そして国際協力事業団の出先の機関といいましょうか、JAMICあるいはJEMIS、これ日本語ではどう言うのかあれなんですが、そういう機関で日本の移住政策がブラジルにおいて推進をされてきている、あるいはその他の中南米諸国においても同様なことが行われておるわけですが、特にブラジルではそういう特殊機関の国内における活動をやめてほしいという要請があって、これを政府受諾をして、その対応策を検討し始めているというふうに聞いておりますが、そこら辺の経過、またそうなった背景について、とりあえずごく簡潔にお話を伺っておきたいと思います。
  154. 塚本政雄

    政府委員(塚本政雄君) お答え申し上げます。  ブラジル移住は、御案内のとおり、わが国移住の最も伝統的な移住先でございまして、すでに七十有余年の歴史を有し、かつアマゾン入植五十周年、それから戦後これは二十七年から始まったと思いますけれども、三十年代には五千人からの移住、全体で一万五千人のうち約五、六千人がブラジル移住をいたしたわけでございまして、現在七十数万のわが方の同胞がブラジルで活躍していることは御承知のとおりでございます。  しかるところ、日本及びブラジル両サイドにおける移住の事情が大きく転換していることも御案内のとおりでございまして、たまたま昨年八月、わが方の園田外務大臣がブラジルに参りましたとき、日伯外相会議がございました。この席において、先方のゲレイロ大臣から、ブラジル側の移住者受け入れ国としての事情も変わったし、日本側もすでに移住者のレギュラリーな送出国でなくなったではありませんかと、したがって、この根幹をなしておりまするところの、昭和三十五年に調印され、三十八年から発効しております日伯移植民協定について、これをひとつ、アウト・オブ・デートになっている点の条項を更改して、アップデーティングにいたしましょうと、こういう申し入れがあったわけでございます。これに対して、わが方の園田外務大臣から、わかりましたと、それではひとつ協定の条項にございます日伯混合委員会の席上これを議論いたしましょう、かたがた、それより先、先ほど指摘のわが方の現地における援護機関及び金融的に援護をするJEMIS、それから一般営農指導その他で援護をしておりますJAMICという二つの国際協力事業団の現地機構についても、これはブラジル国の民法の条項に抵触するので、これをまあ廃止してほしいというブラジル側の意向がかねて伝えられておりましたので、この点も含めましてひとつ混合委員会において早急に検討いたしましょうと、こういう話し合いになった経緯がございます。  そこで、昨年の八月それを受けましたものでございますから、帰りまして事務当局といたしまして、外務省、国際協力事業団等が協議いたしました結果、昨年の十二月に第十二回の日伯混合委員会がブラジリアにおいて開かれまして、私その代表として現在に参り、現地の公使及びJICAの外国部長とともに、ブラジリアにおいてその混合委員会が開催されました。その席上実はブラジル側から、——まあその民法に抵触しているということはわが方としては承知していたのでございますが、その第二項では、そういうふうに日本政府のコントロール下にある、日本政府の息のかかった機関が現地で土地、不動産の取得はぐあい悪いんだという点が指摘されておりましたもので、その点の手直し、つまりJAMICが土地の取得というものをやめて、先方からも高級職員等を入れて、そうしてJAMIC、JEMISに対する先方の、わが方の援護に対しては強くこれを希望もし、かつ高く評価されておったわけでございますので、これを継続したいとかねがね考えておったわけでございます。しかるに、その席上初めて先方は、その民法十一条第二項をクォートいたしまして、JAMIC、JEMISのエグジステンス、その存在そのものがちょっとぐあい悪いんだと、したがってこれをやめてほしいということが初めて正式にオファーされたわけでございます。  先ほど来申しましたとおり、ブラジルはわが国の伝統的な光輝ある移住地でもございますので、これがその他の国に及ぼす影響等をも顧慮し、かつは現地における移住者に対するインパクト及び、国内におきましても諸先生方を初め各都道府県その他各種団体において非常なお力を得ているわけでございますので、これを一気にやめるがごときことがあればかなりのインパクトが起こることも事実でございますので、移住者に対するインパクトその他に対する影響を極力少なくする意味合いにおいて、ぜひその経過期間と申しますか、暫定期間と申しますか、この両機関による援護をもう少し時間をかせげないものであろうかというような対策を持って、実は先々週来私どもの移住課長及びJICAの担当課長現地に派遣いたしまして、その経過期間及び、これが廃止になりますと、現地にすでに投下資本として四十数億のファイナンスが行っておりますし、これの回収及び、現地でいろいろと経営しておりますJICAのそういったような移住地を先方にどういうふうにしてキャリーオーバーするかといったような問題も多々ございますので、それらのテクニカルポインツを十分詰めた上でわが方の対策を講じたいということで、先般来両者を現地に派遣しておりましたのが、このほど帰朝をいたしましたので、その報告を踏まえまして、今後さしあたりこの移住援護がすぱっとやめられるようなことのないように、引き続きこの援護が継続され、しかも先方にいままで出していたものが無事撤退が完了するような、言うなれば円満なる撤退という点について十分留意しつつ本件を進めたいと、かように考えておる次第でございます。
  155. 岩動道行

    岩動道行君 このJAMICというのが移住地の取得あるいはそれを移住者に分譲するという役割りをやっておったし、それからJEMISというのが、農業金融などを行う金融信用株式会社ですか、そういうようなことで設立をされて今日まで機能してきたわけですね。これはとにかくもう全部やめなさいと、わかりました、そのとおりいたしますということを日本政府はもう向こう側には回答しておられるわけですね。
  156. 塚本政雄

    政府委員(塚本政雄君) 先般十二月の十二回の混合委員会においては、先方からそういう提案がありましたので、これはひとつ早急に持ち帰ってわが方の体制を固めた上で正式にお答えいたしましょうと、こういう段取りになっておりますので、第十三回混合委員会をことしの秋口にかけてぜひ東京またはブラジリアにおいて開きましょうというところまでは合意がいっております。そこで、このたび移住課長を派遣した機会に、まあ非公式ではございますけれども、先方の意向もあることでございますので、JAMIC、JEMISはひとつ早期に撤退するということを原則的にアクセプトいたしましょうと、そういう程度のお答えはしております。
  157. 岩動道行

    岩動道行君 そうしますと、後始末をどうするか、そして今後のそういう日本の従来とってきた大きな戦後の国の機関を通しての移住政策というものが非常に大きな軌道修正といいますか、移住政策自体を根本的に見直さなければいけない、そういう重大な問題がここに起こったのではないかというふうに私は考えるわけです。  そこで、ブラジル側は民法の条項を盾にとってやめろと言う、これも筋のあることでしょうから、これはまあやむを得ないかもしれません。しかし、すでに移住をして、そういう農業等にJAMICやJEMISの援助を受けながら仕事をやってきた人たちの不安というものは非常に大きいだろうと思うし、それから今後日本から新たにブラジルに移住しようとする人たちはもうそういう援助もないとするならば、渡航費ぐらいをもらったってどうにもならぬということで移住をしようという意欲が全くなくなってしまうかもしれない。ブラジルという日本の一番大きな移住先、伝統とそしてその中から生まれてきた成功、これが瓦解をしてしまうかもしれない、非常に大きな問題を含んでいると思うんです。  そこで、すでに移住した人たちの不安をどのようにして解消するのか。さらにまた、新しくブラジルに新天地を求めて、そしてブラジルの中においてブラジルの国家社会のために尽くしながらやっていこうという人たちの意気をどのようにして阻害させないで送り込んでいけるのか、こういうことが大変大事だと思うんです。  そこで、具体的な問題はこれから検討されると思うんですが、とりあえずは、伺いますと二年くらいでもうJAMIC、JEMISの看板は下げてしまっていくというような事務的な話し合いも行われたと聞いているんですが、もしそうだとすると、五十五年度の予算もうすでに通りましたから、これはそのまま実行に移されるでしょう。しかし、五十六年度の予算ではすでに撤退のための政策と予算を組んでいかなければいけないでしょう。そして五十七年度からはもう新しい受けざらをつくって、そうして不安をなくし、新しい移住者を元気づけてやっていくという政策がとられなければいけない。そこで、とりあえずそういうものがなくなってしまったならば、なくなっただけでもうそれで済むんじゃなくて、いま言われたように四十何億かの貸し金もありましょう。あるいは土地だって全部処分はされてないでしょう。ですから、そういう土地や何かをまずどこかに引き受けてもらわなければいけない。そしてそれも処分していかなければいけない。一方貸した資金の回収も必要でしょうし、やはり依然としてある程度低利の融資をしてやらなければ農業等はなかなかうまくやっていけない。ことにシラード地帯の開発とか、いろいろ大規模な経済開発行為が要請されているし、それの先駆者として日本の移住者は大いに意欲を燃やしているわけですね。そういう協力事業そのものが崩れていくことになったら大変だろうと思うんです。そういうことから、たとえば土地については既存の信用のあるブラジルでの南伯あるいはコチアといったような組合を活用するとか、あるいは融資については、たとえば南米銀行というような、ブラジル各地に店舗を持っている信用のある、また日本の金融機関もこれには参加をしている、そういう金融機関を活用する、そういったようなことを考えていかなければいけないと思うんですが、しかも金融については非常に金利が高い国ですから、その高い金利でとても農業なんかやっていけるはずないんですから、そこら辺に一工夫も二工夫も必要であるし、日本政府としては、外務省だけががんばってはいけないんであって、やはり財政当局にもその辺は十分に考えてもらわなければいけないと思うんですが、そういう点については、とりあえず現在はどうお考えになっておるか。
  158. 塚本政雄

    政府委員(塚本政雄君) まさに御指摘のとおり、ブラジル移住が大きく曲がり角、これ単にブラジル移住ばかりではなくて他の国についても同じことが言えるわけでございますが、しかしながら、御心配のとおり移住者に対する不安、インパクトを与えることを極力少なくしていこうという点が、まさにわれわれ事務当局といたしまして、ブラジル政府側と交渉を今日まで累次にわたって持ってまいりました一つの大きな理由でございまして、ブラジル政府側も、日本移住者のただいままで孜々営々として築き上げた営農あるいは土地、農業開発についてはこれは高く評価しているわけでございますので、引き続き日本側からのそういう援護あるいは財政的な、金融的な援護は続けてほしいという点は強く言っているわけであります。いけないのは、要するに日本政府の息のかかったそういう強力なパワフルなスタッフとお金を持った機関がブラジルにあるのは困ると言っているわけでございますので、これはただいまお話がございました、たとえば南米銀行あるいはコチアの産業組合と、これはもう紛れもないブラジル政府の法律に基づいた金融機関でありかつ組合でございますので、これらを通じてやるならば、ブラジル側は歓迎するとまで言っているわけでございますので、御指摘のとおり五十五年度はすでに予算がセットしておりますので、これはこのまま流しまして、五十六年度にはその点を手心を加えた修正予算をつくりつつ、その前に十分本邦側の御意向、特にわけて財政当局の意向と十分隔意のない意見を交換いたしまして、財政当局の金の流れ、つまり日本の資金の流れが法律上に抵触することのないように、しかも現地においてわが方の移住者に対して引き続き低利あるいはその点については利子補給だとか、いろんなこれから検討する条項があろうかと思いますけれども、それらを踏まえて十分それらのテクニカルポインツを改善しつつ、今後の先方への最終合意に向けて検討しなくてはならぬことと考えております。
  159. 岩動道行

    岩動道行君 ひとつ十分に対策を練って、そして日本政府として財政面の問題もありましょうから大いにがんばっていただきたいと思いますし、ブラジル側ではやはり日本人の優秀な勤労といいますか、技術、知能、そういったようなものは大いにブラジル国民あるいはブラジル国にとっても私は非常に貴重なものだと思うし、すでに二世、三世、四世とブラジル国内においては高い評価と、そして定着した社会的高い地位も得てきつつあるわけですから、どうかひとつこの措置によって日系人全体の意気が阻喪しないように日本政府としては万全の対策をとっていただきたいと思います。  そこで、ブラジルだけがこういう措置を要請してきたといたしましても、これはブラジルの国産化の問題であるとか、あるいはナショナリズムとか、いろんなことも私は背景にあるのではないかと思うんです。と同時に、その他の周辺の中南米諸国、アルゼンチンとかパラグアイとかボリビアとか、そういう国々でも同じようなやり方でやってきているわけですから、ブラジルでやめたとなるとそういう国にもこれが波及しないかどうか。その辺も十分に注目をして、そしてあわてることなしに体制をいまから検討しておく必要もあるんじゃないかと、かようにも考えるんですが、特に大臣もまた、こういう中南米は単なる貿易だけでなくて、そういう人の移住ということを通して非常に深い関係ができてきておりますから、大臣としてもそこら辺の配慮は十分にしていただきたいと思いますので、あわせて移住部長とそれから大臣からお答えをいただきたいと思います。
  160. 塚本政雄

    政府委員(塚本政雄君) ありがたきお言葉として十分意を体して今後の施策に反映いたしたいと考えております。  なお、本件について現地の移住者の反響でございますが、御心配の点はあろうかと思いますけれども、幸いにしてこれはやっぱりブラジル政府側からオリジネートした、イニシアチブをとったことなので、むしろ早くやったらどうかというような意向もあるやにも伺っておりますし、幸いにしていま御指摘のボリビア、パラグアイあるいはアルゼンチン等——アルゼンチンにおいてはすでに御案内のとおりコルホというような新しい開発施策を持った移住地に対しては、これは特に沖繩の移住者、勤勉と誠実をもって鳴る沖繩県民、沖繩移住者を要望しているといったような新たなる移住者の要請もあるといったような意味合いもございますので、それらの点を踏まえて新しき理念のもとに今後の移住政策、これらの具体的な対策とともに新たなる移住政策の推進といったものを十分配慮してまいりたいと考えております。
  161. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま塚本部長からお答えいたしましたようなことで、いろいろ確かにブラジル側、日本側にも状況の変化がございますし、他方、ブラジルその他中南米諸国一般に日本人の勤労とか技術とか、こういうものに対する評価はますます高くなっておるようにも見受けられますので、現地政府のやっぱりナショナリズム的な動きを無視するわけにはいかないので、何とか双方納得のいく形で今後の対策を進めてまいりたいと存じます。
  162. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 本題に入ります前に、午前の質疑においてお尋ねをいたしましたアメリカイランの国交断絶、政府としての考え方についてお答えをいただいたわけであります。まあ当初、食糧と医療品関係については引き続きアメリカ側イランに対して振り向けるというような若干弾力性のある、そういう状況の中で、今回の多くの世界の人たちが望まない方向へ踏み切った。ところが、昼過ぎのニュースを私聞いておりまして、最も危惧されるようなブラウン国防長官の発言を耳にしたわけであります。今回の措置については軍事行動があり得ると。もうすでに外務省としてはその発言について掌握をされておられると思いますが、詳しい内容についてまずお述べをいただきたい。
  163. 千葉一夫

    政府委員千葉一夫君) まだ公電等が入っておりませんので、われわれ入手しましたAP電について御報告いたします。   ブラウン米国防長官は七日、ロサンゼルスの国際問題評議会で演説、カーター大統領が同日発表したイランに対する新たな制裁措置が直ちに米大使館人質解放につながるかどうかはわからないとしながらも「われわれは他のいかなる選択も排除しない。だが現在、軍事的選択について語ることは適当でない」と言明した。   同長官はさらに、イランがペルシャ湾を閉鎖し、原油供給を妨害したらどうするかとの質問に「(そのような措置には)必ず対抗することになろう。成功は間違いない」と強調した。また、ペルシャ湾地域がソ連の支配下に入れば「米国の同盟国はソ連に経済的に従属することになり、米国の安全保障上の利益が決定的打撃を受けるだろう」と語った。   一方、ソ連がアフガニスタンで化学兵器を使用しているとの一部報道については  云々と、これは省略いたします。
  164. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 まあAP電でございますので、外務省としても公電が入らない限りはという前置きが出てくるであろうと思いますけれども、そうしたブラウン発言の背景を考えますと、場合によると人質を、まあ極端な言い方になるかもしれませんけれども犠牲にしてまでも対抗手段として軍事行動を起こすんだというようなニュアンスのある受けとめ方ができるんではなかろうかというふうに感じられる面があるわけです。相当やはり日本政府として、まあ外務省筋といたしましてもこの情勢分析は急がれなければならないであろう。あるいはイラン側がどういう反応を示すかということについては、午前中の答弁にもまだそういう動きはないということでおしまいになっているわけであります。しかし、もうすでにさまざまな動きというものが出始まっているということは考えられるはずでありますし、ペルシャ湾封鎖というようなこと、当然予測されるであろうということを踏まえた上でそういう質問を投げかけ、ブラウン長官の考え方をただしたのではあるまいか。となりますと、やはりわれわれ予測しまいと思いつつも、危惧の念が依然として去りやらない。こういったときに、一番悪いときに大来さんが訪米されるわけであります。またまたこうした緊迫した事態に伴って、日本の防衛力に対するアメリカ側期待というものがいろんな形になって要請されてくるまた可能性というものが急速に高まりを見せるのであるまいかというようなことも、今回の一連の事件を通しまして、私は私なりにそういう見方をするわけでございますが、大来さんいかがでございましょう。これはもう、あるいは場合によっては猶予できないような、そういうような事態なのかもしれない。
  165. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これからどういう事態になるか、確かにいろいろ予測できない面もあるわけでございますが、ただいまのブラウン長官の発言は、もしイランがペルシャ湾を封鎖したらどうするかという質問に対して、そうすれは対抗する措置アメリカ側としてもとることになるだろうということで、ある意味では逆といいますか、イラン側がそういうことをやったらどうするのかという質問でございますので、このことが直ちに米国側が自分の方からそういう軍事的措置をとるという意味ではここではないと存じます。これもまだ公電に接しておりませんので正確なことはわかりません。ただ、一般的に情勢が緊張してまいった場合にどういうことが起こるか、これは御指摘のように成り行きによってはかなり深刻な事態も予想されないでもない。その際、総理がワシントンに行かれることが最悪のタイミングかあるいはそういう時期だからこそ率直な意見交換が必要なのかもしれないと思いますし、冷静に事態推移をとらえながら、日本として対応していく方法を考えてまいる以外に方法はないのではないかと思っておりますが。
  166. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 国交断絶という思い切った手段に出たアメリカに対してやはり何らかのアクションというものがイラン側から起きないではない。恐らくいま申し上げたように、予測されるそういう仮定の話とは言いながらも、ペルシャ湾封鎖という、そして一つのダメージをまたアメリカ側に与えようというそうしたことは、そういう話題が出るくらいでありますから、その可能性というものは十二分に考えられはしまいか。こうなりますと、やった、それじゃこちらは軍事行動だというふうにさせたくはないわけです、はっきり申し上げて。しかし事態はいまおっしゃられたとおり大変深刻だとは思います。これを日本政府として、いままで十分に事態動きというものを見きわめつつ、あるいはヨーロッパにおける国々とも相談をしつつ——結構だと思うんですよ。結構だと思うんですが、今後思い切った日本外交の方針を貫こうとする大平内閣であるとするならば、主体的な外交展開とおっしゃっているわけですから、聞くことも大事だけれども、また大来さん御自身がいままで一貫しておっしゃってこられた答弁の中でも、独自の外交展開をやはり考えて行く必要があるであろう。ならば何がいまここに対応策として具体的に考えられるのか。当然それは起こってきますね。  私は一つの提案申し上げたいんですよ。これは直ちにその可能性があるかどうかということはわかりません。いまアメリカ側イラン側はトップレベルの会談はできない状況です、はっきり申し上げて。大変悲しいことだと思います。そういった意味においても膠着状態があるいは続くのかもしれません。そこで日本側が、できるかできないかは別問題といたしましても、努力をしてもらいたいというその一つ方向に立って仲介の労がとれないか。アメリカ側が指定する、あるいはイラン側が指定する国において——どこでもいいと思うんです、スイスでも結構、オーストリアでも結構、そうした適当な国において、あるいは事務レベルの段階でも結構でございましょう、外務大臣クラスの段階でも結構だと思うんです。まずそういうところから一つの膠着した状態の突破口が開けないものであろうか。やはり話し合いがとだえている。いろいろな揣摩憶測を通じてああだこうだ、これは恐らく非常に絶望に近いいま方向に進みつつあるのではないかというそういう受けとめ方もできるわけであります。ならば、日本がこれからも平和を維持したいというそういう基本的な方針があるわけでございますから、その平和的な方針に従って何がいまできるか、まず話し合いをさせるということが必要ではないだろうか。それは午前中も私は申し上げました。シャーの問題もあるかもしれない。しかしそれよりもまず、いままでのいきさつというものがいろいろと絡み合って複雑化してそれが突破口が開けない。端的に申し上げれば、そういった状況の中で今日まで時間的な推移があったわけでございます。そうしたいま申し上げたようなことに対していかがなものでございましょうか。
  167. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま非常に貴重な御示唆をいただいたわけでございますが、いろいろな可能性を含めて早急にわれわれとしては検討してみたいと考えております。
  168. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 願わくは、いま恐らく日本のみならず、日本としては特にイランという国は重要な国であるということはもういまさら言うまでもない。それだけに日本にとっても拱手傍観しながら、ただその事態を静観して見守っているわけにいかない。ゆえにそれが平和的な方向へ何とか突破口が開けるその役割りを日本がぜひ果たすべきではないだろうかということを、重ねて、たまたま大平さんが訪米されるその直前でもありますので、いたずらに日本アメリカの軍事行動にゆめゆめ加担するような方向へ向かないように願いたい。  そこで、いま申し上げたことをお含みおきをいただきながら、いろいろまた政府側としてもお考えになるであろうと思うのです。長引かせれば長引かせるほど、もうチャンスを失って対応というものがきわめて困難になる。絶望になる。それが一触即発で戦争への道を開かないとは言い切れないわけです。昼過ぎのブラウン国防長官の発言を正確に——どういう発想のもとにそれを言われたのかはわかりませんけれども、いま少なくとも千葉局長が述べられた外電を通してのこの中身を判断する限りにおいても、やはり危険性というものは相当私は含まれているのではあるまいか。重ねて私はそのことを要望しておきたいと思うのです。いかがでしょう。
  169. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまの御意見をよく承って、私どもとしても早急な検討を行いたいと考えております。
  170. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 大変失礼なことを申し上げて恐縮なんでございますけれども、私がここで発言して答弁をいただくときには、やはり何らかのいまこういうことを考えているという、あるいは示唆でも結構だと思うんですね、そのくらいのところまで、何も早いことだけがすべていいということではないとは思いますよ、しかし急がれなければならない問題については時を移さずやはりもう情勢分析に入り、そして日本として考えなければならない問題は何だというふうに、今後はぜひお願いを申し上げたい。願望を込めていま申し上げます。  それでは本題に入りたいと思うのですが、特に日米関係において、これもこれから大変やっかいなことになるのではないかという心配のある問題もずいぶんございます。それはともかくとして、今回の東京ラウンドにかかわる諸協定についての成案が得られたということは、しかも六年有余にわたって日本政府も鋭意知恵をしぼりながら努力をされたということは私も評価をしたいと思います。全体的な今回のこの協定締結されれば、恐らく全世界の国民の生活水準というものも向上するでありましょうし、ひいては福祉の改善にもつながるであろうという、やはり画期的な協定であろうかというふうに私は認識をしております。同僚議員がもう午後の質疑でいろいろな角度からそれぞれの意見をまじえて議論されているわけでございます。たくさんある中身でございますので、どれ一つをとってみてもきわめて重要なんですね。それをわずかな時間でぱぱっとこう審議をしてしまうというんですから、非常に乱暴と言えば乱暴でございます。ただ、やはりきわめて今回結ばれたその諸協定が、効果ある方向へ運用されるという、これが一番願わしい点ではなかろうかと。で、ケネディ・ラウンドから今回の東京ラウンドに至る経過というものについては非常に前進的な中身を持ったものであるということも知っております。それだけに将来の平和確立の上からも、これがきわめて正確に、公平に運用されるということが非常に大事だろうと。ただし、それぞれの国情の違う国々がこの協定を結んだわけでございますので、それがいま申し上げたような方向へ行くまでは、やっぱり時間的な経過というものも必要になろうかというふうに思います。この辺、いま申し上げた点、将来の展望に立ってどんなふうにお受けとめになっていらっしゃるか、いま私が申し上げたことを踏まえてお答えをいただければありがたいと思います。
  171. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この東京ラウンドの問題につきましては、御承知のように長年の歳月——七カ年も費やして、ようやく妥結に至ったことでもございますし、各国それぞれ国内問題もいろいろ抱えておるわけでございますけれども、とにかく基本的に自由貿易の線を崩すということは各国相互の経済的な不幸を招くということについての強い認識が基本的にはあると思いますので、いまの世界の現実から見ますと、一面いろいろな緊張もございますが、経済的な交流も非常に世界的な規模で行われる時代、交通、通信の発達等を考えましても、ますます国家間の相互依存関係が強まる方向にあると思いますので、この基本的な方向として貿易の自由化を進めていく、貿易障壁を低めていく努力を各国が協力して推進するということは、今後の世界経済的な繁栄、場合によるとまた政治的な摩擦の減少という意味からも必要なことだろうと思うのでございます。もちろんこれだけ世界貿易が大きくなってまいりますと、その個々の貿易をめぐりまして、いろいろな形で摩擦や紛争が起こってくるということは、それだけ接触が多いだけにそうしなければならない点でございますけれども、そういうものを合理的に、冷静に一つのルールをもって解決を見出していく、その過程においては相当激しい議論のやりとりになる場合があっても、相互に合理的な解決に結局到達するということが今後の世界の将来にとって必要だと思いますので、われわれとしてもその方向で東京ラウンドが各国によって誠実に実行されるということを期待いたしますし、また日本自身も他の国々からそういう期待を受けるわけでございまして、この実行に当たっては、いまこような態度で臨むべきだろうと思います。
  172. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回の諸協定をずっと見てみますと、際立った一つの特徴が一つありますね。それは非関税措置の軽減、これはずいぶん日本にとってはいままでこれほど邪魔になったものはなかったわけです、はっきり申し上げて。しかし、これがきわめて前進的に解消というよりも、軽減の方へ向いたという、またその話し合いの合意が得られたということに画期的な、特筆してもいい措置であったろうというふうに思えてならないわけです。いま大来さんが今回の諸協定締結に基づいて、将来展望を踏まえつつ一つのルールというものができ上がったわけですから、これに基づいて、多少の摩擦はあっても、それぞれの話し合いによってこれから道が開けていくであろうと、そのように受けとめたわけでございます。ただ、一つのこうした協定ができて、なれ親しむまではやっぱり忍耐と時間がかかるであろうというふうに思えてならないわけです。その非常に際立った例が先ほど来から議論されております日米の経済摩擦であろうと。ずいぶんこれで日本は深刻な場面にも立たされてきた歴史的な経過もあるわけですね。輸入課徴金なんというものを課せられて、またそういう制度のもとに大変いやな思いをしなければならなかった。過去における日本綿製品協定ですか、最近に至っては自動車の問題、それでごく近いところではテレビの問題もあった。これには日本のダンピングの問題も絡み合っているというようなこともないではなかったということで、お互い輸出する方と輸入する方、それぞれの国情の違いというものは当然あるわけでございますので、自分の国の利益というものを擁護するためには懸命にやはり歯どめをかけなきゃならぬと、そういったことがまた今後も、やはりこういうせっかくの、まあパーフェクトとは言えないにしても、きわめて前進的な制度がつくられたにもかかわらず、これに逆行していくような方向があったのではきわめて残念である。  さあそこで、現在の日米経済摩擦というものがしきりに取りざたされておりますし、自動車を含めて、果たしてどういう方向へ解消するのかというめどすらもまだ一向に立っていないという中で、こうした東京ラウンドというものの意義が十分理解されながら、まあ通商協定も成立を見ているわけですから、当然アメリカなんか率先して旗振ってもらいたいわけですけれども、果たしてどうだろうか。現実問題になりますと、その辺が非常に厳しいものがあるのではないだろうか。この、辺の問題点については、特に日米関係についての貿易、これは貿易の自由化、開放経済というのは、もう今日の一つの大きな世界的な課題でございますし、むしろアメリカあたりがそういった先頭に立って道を開くという役割りを果たしてもらいたいはずなんですけれども、むしろ逆の方向に行っている。日本がおっかなびっくりそれにくっついていかなきゃならない。果たしていいんだろうか。本当にせっかくできた諸協定というものが、われわれの願う方向へできるだけ早い期間にこれが運用され、効果を上げられるであろうか。その点はいかがでございましょう。
  173. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 現在の世界情勢、今後も含めて考えますと、やはりいわゆる十九世紀的な自由経済、自由放任の経済というものはなかなか考えられない。何らかの意味の計画性というものが世界貿易の中にも入ってこざるを得ないのではないかという気もいたすわけでございまして、そういう点から言いますと、やはり経済問題、貿易の相手国の社会的あるいは政治的な面も含めた対応ということ、こちらで安くていいものができれば無制限に出していいかどうかというような問題についても多少の考慮が必要になってくる場合も出てこようかとも思います。いわゆる集中豪雨的な貿易、輸出増進というのは、これはある程度時間をかけてグラデュアル、じわじわと出ていけばそれほど大きな相手国の社会的、政治的問題にならない場合も、集中的に、短期間に出ると非常に大きな問題になる。この辺はしたがって基本的な国際分業の利益あるいは比較生産費といいますか、有利なものを有利な国でつくって、お互いに貿易によって交換する、こういう基本を否定してはいけないと思うのでございますが、やり方については、いまのような余りに社会的なアクションの大きいような場合については、別に考慮も必要になってくるかと存ずるわけでございます。こういう意味で、セーフガードというような、今度は積み残しになりましたけれども、引き続き国際的な場で検討していく、経済的な合理性と、社会的、政治的な、何といいますか、妥当性といいますか、こういうものと両者を踏まえて世界貿易取引というものが行なわれていかざるを得ないということが現実であろいかと思います。
  174. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かにおっしゃるとおりだと思うんですね。先ほど手島さんの答弁の中でも、今回積み残しといいますか、輸入規制についての軽減あるいは解除という問題については詰められなかったというふうに、私は記憶に間違いなければそういうふうに伺ったわけですが、これはやっぱり御指摘のとおり、非常に厄介な問題であろう、集中豪雨的に日本が加工貿易国という、そういう利点を生かしながらやりたい。やればそれだけの利益は上がるでしょう。けれどもやっぱり受け入れ国にしてみれば、国内産業に大変大きなダメージを与えかねないという問題も出てくるでしょう。今度は逆に、日本の場合も同じことが言えるんではないだろうか。これはしばしば問題になってきたのが特に農産物の問題。これは牛場・ストラウス会談のときにもずいぶんもめたいきさつがあるわけですね。で、先ほど農林水産省の国際課長さんも御答弁になっておられたようでございますけれども、牛肉にしても酪農品にしても、これから逐年量的にもふやしていかなければならない。それは消費者の側から見れば、関税は引き下げられる、安い物が入ってくる、大変喜ばしいことには違いないけれども、さて、国内産業というものはそれで十分保護できるのかというもう一つの問題が出てくる。しかもオーストラリアにしてもアメリカにしても、買ってくれ買ってくれと言う、非常に過熱したような状況のもとで、日本が強く決断を迫られるという、ついこの間そういう経過も実はあったわけでございます。この辺が今回のこの貿易の自由化というものをうたいつつも、果たしてその辺のバランスというものがうまいぐあいにとれていくものであろうかどうなのかという点についても、若干の私自身が疑問の点がぬぐい去れないんですよね。きょうはせっかく通産省の方、それから農林水産省の方ですか、お出かけいただいて、細かい点についてもきょう聞きたかったわけですけれども、きょうはもう大変時間も経過しておりますし、大来さん御自身もお疲れになっていらっしゃると思う。五時ごろめどにしてやめますから、きょうは大体総括的なことやります。それで十日の日にもう一遍細かいことに触れていきたい、こう思います。  そういった今度は逆の面があるわけですね。そういう点についても十分いわゆる調整がとれていくものであろうかどうか、大変これは言うべくしてむずかしい問題であろうと思うんですね。先ほども出た発展途上国との問題もかみ合ってこなければならない。非常にこれは理想だと思うんです、この東京ラウンドは。やっぱり理想に近づけていくためには、これからの取り組み方というものが非常に問題になってくる。いま申し上げておることは、日本国内に対するそういういろんな面についての特に農業生産者あるいは中小企業者も入るでありましょう。先ほどもそれに関連する質問もございました。果たして大文夫なんだろうか。売り手の方にしてみれば、もっと買ってくれ、これは事実ありました、オレンジにしても、それから牛肉にしても。だから、牛肉の場合なんかは、もっといい肉をじゃあ日本へ入れてくれれは——ホテル用じゃなくて一般の消費者向けに——あるいは売れるであろうと。もっといい肉を送ってくれ。今度高級肉が入ることになっているようでございます。そうした場合に、だんだんだんだんその要求というものは高まって、その辺はどういうふうにこれ歯どめが効くものなのか。貿易の自由化という問題がある。しかし、国内事情を考えれば、また反対のいろんな問題がある。その辺はどう整理しながらこの東京ラウンドの運用というものをお考えになっていらっしゃるかどうか。
  175. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) まあ具体的な点につきましては、農林省なり政府関係の方からお話し願った方がいいと思いますが、東京ラウンド、一つはそういう貿易上の紛争が起こるときの解決の手続についても決めておるという点がまあ一つの前進だろうと思うのでございまして、これは裁判で言えば判例を積み上げていくような意味で、当然、先ほども申し上げまして、いま御指摘もありましたような輸出国、輸入国のそれぞれの立場からの摩擦がやはりこれからも次から次に起こるんじゃないかと、日米関係でも、そう感じられるわけでございますが、これを冷静に合理的に処理していく双方の努力と、できるだけ客観的なルールに従ってそういう問題を解決していく、感情的な問題にできるだけならないようにしていくということが必要と思いますが、そういう意味にも東京ラウンドのいろいろな意味での手続の規定というのも役立つのではないかと考えるわけでございます。まあ牛肉の点等についてはあるいは農林水産省からお答え願ったらいかがかと思いますが。
  176. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 細目にわたってはまた次回に譲りたいと思いますけれども、ただせっかくお出かけをいただいておりますので、たとえば例を自動車に取り上げましても、日本のトヨタ、日産の工場をアメリカへ——アメリカの国内事情を考えればわからぬわけではないわけですね。雇用の不安という問題もございましょうし、できればそういう失業者対策の一環としてトヨタあるいは日産の企業が進出をしてそれを吸収をしてもらいたい。しかし、一方企業者側にとってみれば、きわめて採算の合わない不合理な方法である。だから、政府レベルで話し合った場合と企業間同士の話し合いというのは、これはずいぶん幅がこう違っているみたいな感じを受けるんですね。  ついこの間アメリカの自動車販売会社の会長という方ですかがおいでになった。もう一人はゼネラル・モータースの社長さんでしたか。やはり自由経済状況の中でこれは企業者同士が話し合って決めるべき問題であって、政治的な介在というものは許されてはならないと、これはまことに正論だと私は思ってその発言内容を見たわけですが、いま通産省あたりはしきりにトヨタ、日産に対して働きかけをして、向こうへ工場を持っていってくれ。これはちょっと行政機関が余りそれにタッチしながらやるということはいかがなものであろうかというところにもまた問題が残ってくる。やはりあくまでも貿易の自由化、拡大というものを考えるならば、企業者ベースに合わせた方針というものを先行させながら、そういう問題の解消に当たるべきが妥当ではなかろうかと。これは一例でございます。私も資料を持っておりますから、これはまた後日にやらさせていただきたいと思っておりますけれども、その点大来さんいかがでしょうか。
  177. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 自動車問題、確かにまだ解決の道は明らかでないのでございますが、通産省関係からもワシントンに出向いて協議が現在行われている段階でございますし、この問題につきましては、アメリカの国内にもいろいろな見解もございます。長期的な日本の産業や企業の発展方向として、完成品だけをつくって外に売り出すということになりますと、相手国の市場でいろいろな抵抗がある。労働組合あるいはその同じ産業界その他の抵抗もあるわけでございまして、その辺で可能な場合には、相手国の事業と提携して相手国で生産するというようなやり方も、将来日本の産業にとって必要になってくる場合が多いと思いますが、この現在の自動車問題につきましては、いろいろ複雑な情勢、採算上の問題等もいろいろあるようでございまして、この問題については、やはり最後的には経営者の判断に任せるのが妥当だと考えております。
  178. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 残余の質問については次会に回します。
  179. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 本日の審査はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会      —————・—————