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1980-03-27 第91回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月二十七日(木曜日)    午後二時一分開会     —————————————    委員異動  三月五日     辞任         補欠選任      成相 善十君     長田 裕二君      金井 元彦君     園田 清充君  三月六日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     二木 謙吾君      園田 清充君     大鷹 淑子君  三月十八日     辞任         補欠選任      藤田  進君     松本 英一君      藤井 恒男君     三治 重信君  三月十九日     辞任         補欠選任      松本 英一君     藤田  進君  三月二十一日     辞任         補欠選任      三治 重信君     藤井 恒男君  三月二十四日     辞任         補欠選任      藤田  進君     野田  哲君      小野  明君     案納  勝君  三月二十六日     辞任         補欠選任      案納  勝君     小野  明君      野田  哲君     藤田  進君  三月二十七日     辞任         補欠選任      二木 謙吾君     熊谷  弘君     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 町村 金五君                 小野  明君                 立木  洋君                 藤井 恒男君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  大来佐武郎君    政府委員        防衛施設庁労務        部長       伊藤 参午君        外務大臣官房長  柳谷 謙介君        外務大臣官房領        事移住部長    塚本 政雄君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省経済局次        長        羽澄 光彦君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君        外務省情報文化        局長       天羽 民雄君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛施設庁施設        部首席連絡調整        官        千秋  健君        外務大臣官房調        査企画部外務参        事官       馬淵 晴之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————    〔理事稲嶺一郎委員長席に着く〕
  2. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員長は病気のため、本日委員会に出席できないとのことでございますので、委託を受けまして、私が委員長の職務を行います。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五日、成相善十君及び金井元彦君が委員辞任され、その補欠として長田裕二君及び園田清充君が選任されました。  続いて、去る六日、長田裕二君及び園田清充君が委員辞任され、その補欠として二木謙吾君及び大鷹淑子君が選任されました。  また、本日、二木謙吾君が委員辞任され、その補欠として熊谷弘君が選任されました。     —————————————
  3. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。大来外務大臣
  4. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま議題となりました在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について御説明いたします。  改正の第一は、在外公館設置関係であります。今回新たに設置しようとするのは大使館三、総領事館一の計四館であります。大使館は、いずれも他の国に駐在するわが方大使をして兼轄させるものでありまして、カリブ海にあるセント・ビンセント及びセント・ルシア並びに大洋州のキリバスの三国に設置するものであります。これら三国は、いずれも昨年英国の施政下から独立したものであります。他方、総領事館は、ブラジルクリチバに実際に事務所を開設するものであります。  クリチバは、ブラジルにおける南部経済圏の中心であるパラナ州の州都でありますが、同州には十四万人の在留邦人及び日系人が居住し、有力な日系社会を形成しているのみならず、最近では同州の経済発展に呼応し、わが国よりの企業進出も増加しております。  改正の第二は、現在ペルーにある在リマ領事館総領事館に昇格させるものであります。  改正の第三は、これらの在外公館に勤務する在外職員在勤基本手当の額を定めるものであります。  最後の改正点は、為替相場の変動、物価上昇等を勘案して既設の在外公館に勤務する在外職員在勤基本手当の額を改定するものであります。以上が、この法律案提案理由及びその内容の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  5. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 以上で趣旨説明を終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 戸叶武

    ○戸叶武君 情報化時代と言われているのは、日本外交世界動きを正確にキャッチして、それに対応し得るだけの姿勢を持たなければ外交ができないことを意味するんだと思います。そういう意味において、いままで外交陣充実というものが欠けていた日本において、外務省では長い間その充実を図ってきたのですが、今度出したような予算要求は当然なことであるし、まだ非常に長い間の習性から遠慮している向きもあると思いますが、軍備充実ということにのみ夢中にならないで、戦争への道は絶望への道である、平和共存のデタントヘの道を崩しちゃならないというだけの日本外交の、また国是の基本方針に沿うて、外交陣の整備ということは日本目下急務だと思います。その点において、この提案に対してはまだ足りないと思う点が多々ありますが、これに対しては私たちは一歩一歩手がたく、一つ日本で生きた外交の躍動ができるようなとりでをつくり上げてもらいたいと考えております。  そこで、第一に外務大臣にお願いしたいのは、目下急務は、石油問題から火を噴いたイラン革命ソ連アフガンに対する軍事進出によって世界は大きく揺れております。中東問題と取り組むのに当たっては、非常な慎重な態度で、悔いを後に残すようなことのないような取り組みが必要だと思います。  昨日、きょうあたりの新聞を見ると、大平首相特使で行った園田外務大臣と大来現外務大臣との受けとめ方において、ニュアンスの違いでしょうが、若干違いがあるようにも見受けられるんですが、それはイラン園田さんが飛び込もうとするのに際しても、もう少しやはり中東における複雑多岐動きを正確に把握してから後に行ってもいいのじゃないかという考え方、特に中東における自主的な、アラブ諸国において問題を解決する努力をやりたいという向きもあるし、また中東問題に対して前々から深い関心を持っていたEC諸国においても、特にフランスのジスカールデスタン氏の動きや何かを見ても、日本よりも情報網を持っている国における動きとして参考にしなければならない点も多々あるように私たち欧州議会との懇談に参った者として感じさせられたんですが、大来外務大臣はこの問題に対してどういう点に問題点があるか、その煮詰めた御見解を承りたい。それと同時に、先ほどのアメリカ訪問における応答において、どういう点でアメリカとの間に違いがあったか、誤解があったか、問題点はどこにあったかもこの機会に報告を願いたいと思います。
  7. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまの御質問中東問題についての考え方でございますが、日本にとりまして、中東湾岸地帯日本の主たるエネルギー、石油の大部分、八割までを供給しておるという直接の関係がございますが、同時に中東地域がいま世界で最も問題の多い地域一つであるということも認識しておるわけでございます。中東におきましては、日本技術力経済力等に対する信頼があり、また同じくアジアの一国であるというようなこともしばしば言われるわけでございます。それから中東の問題について、過去に日本余り関係を持ってなかったということを評価する向きもあるわけでございますが、同時に中東事情というのはきわめて複雑をきわめておるということは戸叶委員も御承知のところと存じます。で、これについては、やはりかなり慎重なアプローチが同時に必要である。前向きには、やはり中東の包括的、永続的な平和の建設のために協力するということが日本役割りだろうと思うのでございます。  せんだってワシントンに参りまして、バンス長官とも会談機会がありましたが、中東問題についてのアメリカ考え方としては、キャンプ・デービッドの申し合わせ、つまりまずエジプトイスラエル和平という、こういう方向で進めてまいっておるわけでございますが、キャンプ・デービッドが二国間の講和に終わってしまうことになりますと、他のアラブ諸国が非常に強い反対といいますか、をいたすわけでございまして、すでに御承知のように、エジプト立場はかなり微妙なものがございますが、アメリカ側から見ればこういうキャンプ・デービッドアプローチのほかに適当な選択がない、いろんな意見、いろんな議論、いろんなアプローチがあるけれども、それは事態を混乱させるだけだという立場をとっておるわけでございますし、それからPLOについて、アメリカとしてはPLOが明確にイスラエル国の存立を認める、イスラエルの存続を認めるということを言わない限りアメリカ側としては態度変更が不可能だということを申しておりました。  なお最近、御承知のように国連の投票をめぐって多少問題があったわけでございますが、これは主としてイスラエル占領地域内におけるイスラエル人の定住問題、国連決議はこれに反対する、あるいはすでに定住しておる者の撤退というようなことも含むことでございまして、これをめぐりましてアメリカ表決に、一たん賛成した表決を後で撤回するというようなことがあったわけでございますが、これはアメリカにとっても中東の問題がきわめて扱いにくいいろいろな側面を持っておるということの一つのあらわれかとも存じます。基本的にいま日本にとって中東はきわめて重要な地域でございますし、これの永続的な、総括的な平和に対して、いかに日本が寄与できるかという立場から中東政策を考えていく必要があろうかと思っております。
  8. 戸叶武

    ○戸叶武君 園田元外相がパレスチナ問題は中東恒久和平のかぎではないというふうに述べたことに対して、大来さんがパレスチナ問題は中東問題の重要な課題であるというふうに、それを否定しているわけではないが、もっと幾つかの問題がある、その意味において重要問題はパレスチナ問題だけではないという意味で問題を言われているのかどうか、その辺のことはどういう見解の上に立っての、園田特使発言に対する修正でしょうか。
  9. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 園田特使が帰られまして、私も直接お会いもいたしましたが、この問題、いまのパレスチナ問題について直接御意見をたたいたわけではございませんが、私の判断といたしましては、パレスチナ問題が中東におけるきわめて重要な問題だということはもちろん園田特使も御認識だと考えます。ただ、いろいろ現地を歩かれてパレスチナ問題以外にも相当複雑な問題があの地域にあるということを見てこられたのではないか、そういう意味で、パレスチナの問題が重要でないという意味ではなくて、きわめて重要だが、ほかにも問題があるという意味での御発言だったのではないかと私は受けとめておるわけでございます。
  10. 戸叶武

    ○戸叶武君 パレスチナ問題はそれとして、イランパーレビ国王パナマから離れてエジプトに移られたということは、新しく問題がまたここに提出されたわけであります。いま始まったことでなく、すでにエジプトにおいては国会に対して、古い友情ということを捨てるわけにはいかぬという形で、人道的見地からかと思いますが、パーレビ国王エジプトは迎える用意があるという説得をすでにサダト大統領はやっているのですが、それはそれだけの意味なのでしょうか。それとも、エジプトにおいてはアラブ諸国に大きな影響力を及ぼす律法関係権威者相当おるので、イランにおける指導者たちの中においても法に従ってパーレビ国王を裁くというような見解を発表しているので、そういう形の方法に乗せるために、ワンクッションを置くためにエジプトに向かい、中東自身で、特にアラブ諸国合意の上に立って問題を解決しようとしているのか。それともイランにおける行き過ぎ行為行き過ぎと思い、それを是正しようという意図のもとに行っているのか、そういう情報外務省としてはどのように受けとめておりますか。
  11. 千葉一夫

    政府委員千葉一夫君) ただいま先生がおっしゃったような意味でのきわめて的確なる情報等はございません。
  12. 戸叶武

    ○戸叶武君 的確なる情報はないというのが事実でしょうが、私はエジプトに行って、カイロ大学の総長であって、一院制の議会のもとにおける議長に就任した最高のエジプト知性人といわれる方の御招待も受け、意見の交換も行いました。そういう事態が起きる前ですから、そういうことは私も予測し発言することはできませんけれども、アラブ全体の中において穏健派あるいは急進派、いろんな流れはあると思いますが、その中において、この問題は中東全体と重要な関連があるのであるから、他国の介入よりも中東自体において自主的にこの問題はあるところまで煮詰めて、ある合意に到達しなけりゃならないのじゃないかという意図も、回教圏において先進国的な、いや先進国というよりは近代国家的な体制を整備しつつあるエジプトでは、そういうふうな考え方もその中にはひそんでおるのであって、エジプト自体思いつきでやっているとは思えないのですが、その程度の情報は、いかに正確な情報が入らない外務省といえども、大体は入っていると思います蚕もう少しその点、突っ込んだところをお聞きしたいと思います。
  13. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 後で政府委員からまた補足いたさせますけれども、このパーレビ国王パナマを離れたという方の理由につきましては、現在パナマ国ロヨ大統領日本に参っておりまして、せんだって会談の際にいろいろこの問題についての話も出たわけでございますが、パナマ側としてはパーレビ国王に対して、パナマに引き続きおられた方がいいのではないかということを申したと。一つには、仮にそういうイランからの引き渡し要請があっても、これを決定するのは大統領自分自身権限であるし、もし引き渡せば、場合によると死刑というような問題もある、パナマ死刑を廃棄している国であって、そういうたてまえからいっても引き渡すことはできない、そういうこともパーレビ国王に話してあるのだけれども、今回はどうしても二の国を出たいという要請で、それをパナマ側に引きとめる理由はなかった、権限がなかった、という事情だと申しておりました。  エジプトに行く理由につきましては、これはロヨ大統領の推定であるけれども、パーレビ国王エジプトに親戚を持ち、また前王妃といいますか、王妃エジプト人であったとか、いろいろエジプトに深い縁があるということと、サダト大統領から必要なときには受け入れるという招請が以前からあった。それからもう一つは、アメリカ側医師パナマ手術をすることについて、パナマ側反対がある、医師の間の反対がある。アメリカからはジョーダン特使パナマに参りまして、パナマにやはりパーレビ国王の出国をしない方がいいという意見を伝えたけれども、これもやはり前国王承知しない。エジプトに行けば病院の施設手術施設があるということも一つ理由でなかったのだろうかと、大体私どもの得ておる情報としてはそういうことでございまして、戸叶先生のお尋ねのエジプト側考え方立場ということは正確につかんでおらないわけでございますが、この点、政府委員よりもし何かあればさらにお答えしますが、先ほどのように、正確な情報をつかんでおらないように思います。
  14. 戸叶武

    ○戸叶武君 いまパナマロヨ大統領日本に来ており、きのうもロヨ大統領にお目にかかって、それほど突っ込んだ話はできませんでしたが、お話を聞くと、やはり米国からジョーダン大統領補佐官医師が来て、前国王は脾臓の手術を行うということで、数日前、自分意思で旅行を選んだのだというふうに語っておりますが、やはりパナマとしては、なぜエジプトを選んだのかということについては、むしろ本人の意思、それからアメリカ側からの何らかのサジェストがあったのかどうかは明瞭にしておりませんでした。しかし、この問題は後でわかることでありますが、このパレスチナ問題に命をかけたサダト大統領は、やはりエジプトイスラエル立場は違うけれども、ともに近代国家的な体制を整えつつあるこの二つの国で、宗教やいろんな立場を乗り越えて中東の平和と繁栄を保つためには、現状打開のために具体的な手を打たなければならないということを私は考えているのであって、単なる思いつき冒険政策とは思えない。これはイランやあるいはエジプトにおけるアラブ急進派からの相当反対やデモも計算に入れて、問題はここから問題を打開しなければならない、幾多の問題があるけれども、これを回避しては通れないという、かなり思い詰めたものがあるのじゃないかと思いますが、これはこれ以上しても水かけ論になってしまいますし、また外務省としては正確な情報が入っても、いまこうこうだという不的確——不的確というよりはその情報をこうだというふうに伝えるべき段階ではないと思いますが、中東動きというものについては、フランスあるいはニューデリー、エジプトというような国々は日本以上に情報を持っております。やはりそういうところで相当情報をキャッチして、情報に尾ひれをつけるのでなく、世界史の展開の中においていま中東は何を苦悩し、何を模索し、何を行わんとするかということだけは、やはり見通しを正確に立てないと、予測なしには外交のプログラムは進められないと思うのでありまして、このことが欠けている点に日本外交の非常にいままでの幾多失敗点があるのだと思いますので、いま予算十分——十分と言わないにしても取るに当たっては、この情報を整備し、もっと生きたニュース、それから日本のために、世界のためにプラスになるような正確なニュース、これをやはりとるということが必要であって、いまのソ連なりアメリカなりは力を持っているが、力に任せて権謀術策外交がどれだけ災いをなしているかということは、ソ連なりアメリカが、あのイラン問題でアメリカが前進もできず、アフガンに戦車を並べたソ連世界からの袋だたきに遭って動きがとれない状態を見ればわかるので、第三次世界戦争は、いままでの戦争に対する考え方と違って人類の破滅を意味します。ソ連アメリカが考えているような簡単な形で、中東諸国アメリカなりソ連を歓迎しておりません。特に、イランにおいて、イラクにおいて、沿岸諸国において、アメリカに対する危惧感も非常に強いのであります。  日本新聞——新聞というか外電は、アメリカにコントロールされている面も非常に多いので、正確な情報が必ずしも入っているとは思えない点が多々あると思うのであります。これは新聞が悪いのじゃなくて、どこかにそういうゆがんだ一つ情報修正というものが、権力を持っている政府なり、あるいはアメリカからなされるのであって、やはりあの沿岸諸国アラブ全体からの一般の市民の受けとめている感情というものは、石油が出たけれどもアメリカメジャーのためにいい加減にされ、アメリカメジャーを支えている勢力に翻弄せられてしまって、ニクソンにだまされ、カーターに裏切られたというのが合い言葉になっているのが事実であります。  このアフガンに進出したソ連に対する抵抗と同時に、もうアメリカにだまされないぞ、アメリカソ連自分のことだけを考えて、第二のヤルタ秘密協定のような形で、アフガン及びイラン分割協定までなされているのじゃないかというまでの憶測がなされておるのであります。現に、サンケイ新聞に、アラブの中だけでなく、石油問題で駆けめぐっている田中清玄君のごときは、それを率直に述べておりますが、アラブへ入って私たちも驚いたことは、やはり過去のイギリスに対する不信感バルフォア宣言に対して、あるいはアラビアのロレンスに対して、彼らがアラブを分割して今日の統一なき状態を醸し出したのだという恨みを持っております。  イギリス外交は、きわめて不利な中にあっても、アラブへは足を突っ込まないが、冷静な形でEC諸国を説きめぐって中立化方向方向づけておりますが、これは私はイギリス独特の外交の鍛練からくるものと、先取りと思うのでありますが、それにしても、EC諸国決議でそれを出しましたが、まだまだアラブ諸国の中においては疑心暗鬼の面も私はあると思います。しかしながら、事は急速に、ソ連並びアメリカのいまのような孤立化打開のために私は大きな変化が生まれてくると思うんです。確信しております。  それにもかかわらず、この災難に便乗して軍備の拡大だけをねらっているような行き方が果たして世界に、この国にどれだけの貢献をするかということは、疑問です。世界の潮流に逆行しての動きは、ソ連アメリカ日本たりといえどもむなしき、それは徒労に帰する危険性が多分にあると思うんです。もう少し国の運命を担って立っている外交軍事の問題を担当する人は、今日様ではなく明日への道に一つの希望を託すだけの大所高所の対策を持たなけりゃならぬと思いますが、大来さんにはそれを大きく期待しております。アメリカでは当たりがあなた非常によかったんだが、この問題は後で私の方の国会対策委員長質問でお聞きしてもらうことにしますが、日本がやはりアメリカとのパートナーシップを維持するのは、アメリカの言うなりに振り回されることでなく、ソ連に対しての態度と同じように、ソ連のいまの態度に対してはアメリカよりもより厳しい態度が必要かもしれませんが、やはり世界全体を考えるならば、覇権主義の上に立つと思われるような、自分自身に反省を何一つ持たないで、自分の国の都合のよいように世界を振り回そうとするような行き方は、その国にも世界にも災いをつくり上げることですから、EC諸国以上に日本自主外交を展開して、ソ連に対して苦言を呈すると同時に、アメリカに対しても、回顧録は売れるかもしれないけれども、やったことはろくなことはやらなかったという、キッシンジャーのような悪名を後で残すようなことのないような外交を私は日本外交はとってもらいたいと思うんですが、大来さん、アメリカへ行ってはなかなかわれわれの考え方と違う面も多々あると思いますが、あなた当たりのいい方ですが、どうです。本当にパートナーシップというのはアメリカベースで動くことでなく、アメリカに対してもやはり苦言を呈するだけのみずからの姿勢というものがなければ相手を動かすことはできないと思いますが、どうでしょうか。
  15. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 中東の情勢あるいは南西アジアにつきましては、園田特使が回られまして各国の首脳ともいろいろ意見交換をしてこられたわけでありますが、その結論の一つもやはりあの地域に、あの地域として独自の動きを続けたいと、超大国の抗争の場にされては困るという考え方が強くあることを感じてこられたようであります。  私からも今回ワシントンに参りましたときに、園田特使が見てこられたところ、まあいまのような趣旨がかなりあるわけでございますが、これを率直にバンス長官にも伝えましたし、また書いた物で、その特使の報告の概要を直接バンス長官にも手渡しをいたしました。とにかく中東及び南西アジア地域におきまして、たとえばアフガニスタンの中立構想などにつきましても、できるだけ周辺諸国の自主的な動きを尊重するという立場が必要だと考えるという意見を先方に伝えたわけでございまして、日本と米国、あるいは西欧の間にはやはり政治的な制度について共通なものがございますし、そういう意味での基本的な友好関係を維持する、特にアメリカとの間においては、これはまた日本の将来にとって重要だと思いますので、基本的な関係を崩すということは避けるべきだと思いますが、いま申しましたような具体的な問題についていろいろ日本側としての見方を、今回も先方に申してまいったわけでございます。
  16. 戸叶武

    ○戸叶武君 私はエジプトにおいて、エジプトのすぐれた知性人と言われるターレブ議長からも歓待を受けて、親しく意見を交換した折にも、エジプトの指導者の中においてこういう問題を私に提起してきた方があります。それはエジプトにおいて、ちょうど日本が日露戦争に勝った前後、日本の国威が発揚された時分の明治天皇に匹敵するようなエジプト近代化のために貢献したところのモハメッド・アーリーというすぐれた方があったが、しかし、日本と比較するときに、破壊の道は簡単だが建設への道は困難であるということをしみじみ私たちは感じている。同じく近代化の道をたどったのにもかかわらず、エジプトが六千年の文化道統を持っていると言いながら、国の近代化において日本と比較にならないようなおくれをとったのはどういうところに原因があるのかということを私たちはいま反省し、検討している、政治家戸叶はどういうふうにそれを見るか、という御意見でしたが、私は言うことはないと、エジプト自身の国民の中に、有識者の中において近代国家をつくり上げる道はなかなか困難であるという自己批判が生まれてきたこと自体がすでに近代国家への道を歩む選択をなすモデルをつくり上げる可能性を示しているものじゃないかと思うので、これがエジプトにおいていち早くそういう自己批判が生まれてきたということは、これは大変な収穫ではないかと思う、というふうに答えておきましたが、自分の国さえよければよいというような排他的なショービニズムは排すべきであるが、各民族に所を得せしめるだけの自主独立への道をたどらせて、その苦悩の中から近代国家を自主的につくり上げるという努力、それを世界が包んでやるというだけの思いやり、そういう愛情なしには世界平和共存への基盤は築かれないのじゃないかと思っております。やはり経済恐慌と戦争と暴力革命の苦い経験を持ってそれを乗り切ってきたヨーロッパにおいてはその配慮が私は出てきていると思います。そういう意味においてヨーロッパ、EC諸国と、敗戦において苦い目に遭ってきた日本、再び戦争はしまいという考え方日本だけの考え方でなく、国際連帯の上に立ってこそ初めてそこにそれが成果を得るのだと思うのですが、大平さんはそのような考え方の上に立って私は日本外交を進める方だと思いますが、御見解はいかがでしょうか。
  17. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま大平さんとおっしゃいましたが……
  18. 戸叶武

    ○戸叶武君 大平さんに大来さんから伝達してもらいたいと思ったんですが、途中抜けましてどうも済みませんでした。
  19. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまのような御趣旨、つまり特に開発途上国の近代化への意欲に対して日本がその経験なり技術を提供する、それでそれらの国々の近代化への要求、欲求にこたえるということは日本外交一つの大きな建設的な役割りと私も思っておりますし、この点は総理もその考え方に違いはないと思っております。
  20. 小野明

    小野明君 大臣は先ごろアメリカに行ってこられたわけですが、その際のいろんな新聞報道を読みますというと、アメリカのいろんな方にお会いになってこられた。特にブラウン長官との会談がこれは主であると思うのでありますが、、日本の防衛費につきまして、向こうからの要請は、着実そして顕著な防衛費の増強の要請があったと、こういうふうに伝えられております。それに対しまして、外務大臣は、着実な増強はこれは応ずるけれども、顕著な増強という点についてはこれは応じられないと拒否をされたと、こういうふうに報道されておるわけです。ところが、着実といい、顕著といい、いずれもこれは形容詞でありましてね、一体何を中身で意味をしておるのか、これがよくわからない。しかし、それでは交渉にならないのではないかと思うんですね。そこで、外務大臣が着実な増強には応ずる、顕著な増強はだめだと、こういうふうに言われた。いずれも内容があるのではないかと考えられます。着実な増強には応じていくんだと、こういうふうにオーケーを出した大臣の含み、内容というのは一体どういうことなんでしょうか。
  21. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ブラウン長官からのこの発言は、最近の極東情勢あるいは中東情勢等にかんがみて、日本が防衛力を着実かつ顕著に強化していくことが自分たちの希望である、ということを申したわけでございます。それにつきましては、具体的には今回の場合にそう深く立ち入ったわけでもございませんし、そもそも防衛庁あるいは防衛関係者同士が話し合うべき問題でもございますので、一般的な考え方について今回は意見の交換をしたわけでございます。日本側にはこの問題について、昭和五十一年の国防会議及び閣議決定がございます。一%を超えないことを当面のめどとして防衛力を考えていくというこの閣議の決定がございまして、私どももこの閣議決定なり国防会議の決定というのは、その当時において政府一つ意思決定を行ったことであろうと受け取っておるわけでございます。まあ、そういう意味では当面一%を超えない範囲での防衛力の強化ということであれば、これは当面というのを何年ぐらいの時期に見るかにもよりますけれども、従来の日本政府考え方から外れるものではないと一応了解しておるわけでございまして、そういう意味で、私はこの着実なということについては日本政府も考えていることであるけれども、急速に大幅にということになると、これはできないと思います。そういう意味で、顕著ということは無理だというふうに申し上げたわけでございます。
  22. 小野明

    小野明君 そうしますと、大臣は五十一年の閣議決定である一%以内——ここ数年のうちに一%に持っていくということを示唆されたわけですか。そのブラウン長官とのやりとりの中身がよくわからないんですよ。先般の予算委員会の秦君の質問に対して、防衛庁が中期業務見積もりというものを持っておりますが、まあ内部的なものなんですが、これについても米側の要求があったと、で、ある程度大臣はこれを尊重しなければならぬという答弁をされておるわけです。それから見ると、まあ顕著な要求にこれは私は拒否したのでなくてオーケーをしたのではないかということも感じられるわけなんですね。ブラウン長官とのやりとりの中身というのは一体どういうことだったんでしょうか。
  23. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまのこの中期業務見積もりというものはこれは防衛庁限りの作業としてあるわけでございまして、これは日本政府ないし国防会議で決定したものではないわけでございます。これはこちらから今度の会議でも持ち出さなかったのですけれども、ブラウン長官の方から自分たちはあの中期業務見積もりを評価している、できることならそれをある程度早くできないだろうかということが具体的——これはまあその「着実かつ顕著な」ということの内容になるかと思うのでございますが、私としてはいろいろな日本考え方、世論の動向、国民のコンセンサス、それから終戦以来日本がとってきております日本の基本的な防衛問題に対するコース、考え方という点もある。それから同時にいろいろな国際情勢の変化ということも認識をしておるのであるけれども、そういう立場からいえば着実に防衛努力を進めることは必要だと考えるけれども、顕著というわけにはいかないと、まあ大体そういうことになるわけでございまして、それ以上の内容につきましては、これは前にブラウン長官が中国の帰りに日本に寄りました際、あるいはその前、昨年の十月に日本に参りました際等に防衛当局との話し合いもあったわけでございますが、特に海、空における防衛能力、対潜、対航空機に対する防衛能力を強めてほしいという意向の表明があったわけでございます。  今回も日本としては、いまのような基本的な立場からいって専守防衛、この大きな枠を踏み越えることは絶対できない、そういう点についてもこちらから念を押したわけでございますが、ブラウン長官もその日本の持っておる基本的な立場ということは自分たちも十分理解しているつもりだ、ただ、その専守防衛という基本的な枠の中で日本自身が日本を守るためにまだなすべき余地が残されておるように思う、そういう意味で現下の国際情勢にかんがみて着実かつ顕著な防衛努力というものを希望している、で、もちろんこの問題は日本国民自身が決める問題であるということも自分たちは十分認識しておるので、われわれとしての希望を申し述べるのだ、という大体のやりとりであったわけでございます。
  24. 小野明

    小野明君 そうしますと、いわゆる米側のブラウン長官の顕著な増強というのは防衛庁の中期業務見積もりであると、こういうふうに大臣はお考えで、そしてこれは応ずることができないと、こういうふうにはっきりおっしゃったわけですか。
  25. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) そうではございませんで、中期業務見積もりの、まあ米側の立場としては繰り上げて実行できないかという意味が含まれておったと思います。その「顕著な」ということの中に。で、それは困難だという立場で私は返事をしたわけでございます。
  26. 小野明

    小野明君 そうすると、これは計画は五年だったと思いますよね、繰り上げて実施はできないが、結局中期業務見積もりは米側から要求があった問題については応ぜざるを得ないと、こういう内容になりますというと、これは結局着実な増強にも応じ、あるいは顕著な増強要求にも応じてきたんだと、こういうふうに見ても差し支えないのじゃないですか、応じてこられたのじゃないですか。
  27. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先ほど来申しておりますように、着実だとか顕著だとかいうその判断の問題ございますけれども、中期業務見積もりというのは、これは防衛庁限りのものでございまして、先ほど来申しますように、この点についてどうこうということはまだ私の立場で申し上げるわけにいかない立場で今回も向こうに参っておったわけでございますし、今回の国会のいろいろな御討議の中でも、防衛力の増強についてのいろいろな質疑も行われたわけでございますけれども、私どもとしてはいまのような基本的な立場を守る、この専守防衛という基本的な立場を守り、また日本の財政経済の現状、国際情勢の推移、国民のコンセンサス、こういうものを踏まえて可能な限り進めていくことだろうと、具体的な内容はこれは防衛当局が考えることだという立場をとっておるわけでございまして、この点は今回先方にもはっきり申したことでございまして、向こうの言っておりますこの着実かつ顕著なということについて同意を与えたことには決してならないと私は考えております。
  28. 小野明

    小野明君 いま大臣おっしゃったように、この中期業務見積もりというのは、国防会議あるいは閣議決定を経たものではありませんよね、これはない。ただ単なるこれは内部のものであると。したがって、これについてどうということは大臣は言われなかったかもしれませんが、これは五年計画であるが、この防衛庁の中期見積もりに対してある程度応じなければならぬ、尊重しなければならぬと、こういうふうに大臣は予算委員会で答弁されておるわけですよね。そうしますと、五年では無理だが、こういう内部の計画に対してあるいはアメリカから指摘があった。そうすると、アメリカの意向を尊重するためにはこの中期業務見積もりを何らかの形で実現をしなければならぬ、尊重しなければならぬと言われておるんですが、どういう達成の仕方を大臣考えておられるのですか。
  29. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 中期業務見積もりというこの防衛庁の案におきましては、まあ大体五年後に防衛支出がGNPの一%近くになるというようなことになっておるようでございまして、それは先ほど申し上げましたように、昭和五十一年の国防会議あるいは閣議決定の枠内の考え方でございますので、その当時の防衛に対する政府意思決定、考え方を超えるものではない、そういう意味での一つ政府の方針としての枠内に置かれておるものだというふうに解釈しておるわけでございまして、中期業務見積もりの規模は昭和五十一年の閣議決定の線を逸脱するものではないというふうに従来から考えてきておるわけでございます。
  30. 小野明

    小野明君 そうしますと、このブラウン長官とのやりとりで、大臣は、ここ数年のうちにGNP比一%に持っていくというお約束をされて帰ったわけですね。そしてその内容は中期業務見積もりを含むと、こう解釈してよろしいわけですか。
  31. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 今度は交渉したり、物事を決めたりする目的で行ったわけでございませんで、またその権限も与えられているわけではございませんで、率直な意見の交換ということを目的にしてまいりました。先ほど来申しておりますように、着実な増強は必要だと思うけれども、その具体的な規模とか内容とかについては何ら約束も話し合いもしたわけではないのでございまして、そういう点では、いまおっしゃったようなことではないわけでございます。
  32. 小野明

    小野明君 それはおかしいじゃないですか。いままでの大臣の答弁を聞く限りにおいては、防衛庁の中期業務見積もり、これについてはある程度応ぜざるを得ない、そして五十一年閣議決定の一%に持っていく——閣議決定は一%以内であると、そうすれば着実にも応ずるしあるいはわれわれから言えば顕著な要求にも応じてきたんだと、こういうふうに見られても、大臣、仕方がないのじゃありませんか。
  33. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 着実ということは考慮すべきだけれども、顕著は応じられないということははっきりしているわけでございますので、その辺は誤解をしていただかないようにお願いしたいと思います。
  34. 小野明

    小野明君 いや、その内容は、まあ私としてはいままでの大臣の答弁からいきますと、大臣のお話の中に何が顕著であり、何が着実であるかと、この概念が余りはっきりしませんが、その顕著であるという内容は防衛庁の中期業務見積もりであると、こういうふうに言われた。しかしこれは尊重しなければならぬ。これをここ数年のうちに達成をしても一%以内という閣議決定の範囲内であるということになれば、これは顕著な要求にも応じたと、増強要求にも応じてきたと、こう考えざるを得ない。いや正式な交渉ではない、内輪の交渉であるということになると、これらを踏まえて、総理が五月に訪米されますわね。この際何らかの態度表明をアメリカ側から迫られるのではありませんか。
  35. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 中期業務見積もりが顕著なというふうに先生お考えで、私どもの方は……
  36. 小野明

    小野明君 いや、大臣が言ったのだ。あなたが言ったのだ。
  37. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いや、私はそう申しませんが、中期業務見積もりというのは、これが行われてもGNPの一%を超えることにはならないと、先方がそれをある程度繰り上げてということはできないかという希望を表明したわけですが、それは困難だということでございまして、私の解釈としましては、中期業務見積もりそのものが顕著であるということは、いままでどこでも申したことがございませんし、いまもそう考えてはおらないわけでございます。  それから、総理の訪米につきましては、まだ全部正式な手続きが終わったわけではございませんが、その際に何らか具体的な意思表明になるかということになりますと、どうも私はそうはならないだろうと思っております。具体的にはまだいろいろ来年度の予算の編成過程も今年の末まで続くわけでございますし、昭和五十五年度の予算については目下国会で審議中ということでございますので、総理が今度行かれる場合に、いまの問題について具体的に詰めるということには多分ならないと考えておるわけでございます。
  38. 小野明

    小野明君 非常に私はわかりにくいんですが、大臣は、とにかくアメリカの要求のありました防衛庁の中期業務見積もり、これについては尊重しなければならぬというふうに参議院の予算委員会で答弁をされておるわけですね。だから、それは一体五年計画を何年か縮めていくとか、あるいはどういう達成の仕方をやるのか、こういうのがわからぬわけですよ。これはどういう尊重の仕方をするのかというのがわからない。
  39. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この中期業務計画をアメリカから要求された中期業務計画というふうにおっしゃいましたが、これは日本の防衛庁が自分でつくった業務見積もりでございます。これは日本政府のまだ全体的な意思決定になっていない部内作業でございます。そういう意味では、アメリカからそういう要求をされたというのではなくて、日本の防衛庁自身が立てた業務見積もりでございまして、これは日本の置かれました現状等から考えまして、それから五十一年の閣議決定の線から考えましてもそれほど不当なものではない、そういう意味では尊重をする必要があるんじゃないか。ただ、この点については政府部内の意思決定がされていないわけでございますので、これが政府の計画だということはできないわけでございまして、私としての判断を申し上げたわけで、これは日本自身の、日本の防衛庁が立てた業務見積もりでございまして、アメリカの要求したものではないわけでございます。
  40. 小野明

    小野明君 それはわかっているんです。しかし、これは中期業務見積もりに対してアメリカ側から、ブラウン長官とのやりとりの間では、この実現に努力をしてくれという要求があったんでしょう。
  41. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) アメリカ側はこれを評価しますということと、できれば早くやってほしいと。
  42. 小野明

    小野明君 それについて大臣はこれを尊重しますと、こういう答弁をされたんでしょう。
  43. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私が申しましたのは、いま小野委員も御指摘になりました、たしか秦委員の御質問に対してでございまして、その問題とそれからワシントンで私が申しましたのとは違うわけでございまして、私はこれは防衛庁限りの見積もりであって日本政府の正式にオーソライズした計画ではないんだと、いずれにしてもステディーな増加というものについては考慮しなければならないだろうが、それ以上のことは言えないんだということで、何ら中期業務見積もりということについてコミットしたとか、それを実行すべきであるというような発言をワシントンで私がやったわけではございません。
  44. 小野明

    小野明君 しかし、ブラウン長官はこの防衛庁の内部資料である中期業務見積もりを評価すると、こういうふうに大臣にその意思表示があったわけでしょう。それを受けて、大臣はこれを尊重しなければならぬと、こういうふうに予算委員会で言われておる。まあ私が申し上げたいのは、これはもうわが国自身が決めるべきものですよ。それで、閣議でも国防会議でもまだ決まっていない。しかし、それを大臣に、アメリカが、ブラウン長官が業務見積もりというものを評価すると言われたことは、これをやってくれということでしょう。これはそういうように大臣は公の場で言われておるんですから、まあ私から言わせれば、大臣から言わせれば希望表明、評価すると、こういうことにおっしゃるかもしれぬけれども、これはアメリカは内政干渉じゃないですか。閣議でも決まっていない、国防会議でも決まっていない、そういうものについて評価をすると、じゃあなたはそれを尊重しますと、その米側の意向を尊重しますと、これはアメリカの力をかりて、そうして、この防衛庁の内部資料であるこの中期見通しというものを既成事実化するものじゃないですか。
  45. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは、ただいまおっしゃいましたように、日本政府で決めてないものでございますし、今後日本政府自体が検討すべき問題だと思います。それで、そのいまの中期業務見積もりそのものが、いまそういう性格のものでございますので、これについては今後日本政府自体が内部的に検討すべき性質のものだと思いますので、そのこと自体が内政干渉というような性質のものではないということになるわけだと思います。これはまあ閣内でも御承知のようにいろいろな意見がございますし、今後の検討事項でございまして、そういう点で今回私も何もワシントンでコミットをしてきたわけでございませんから、その点は御了解いただきたいと思います。
  46. 小野明

    小野明君 どうもわかりにくい。私の質問の仕方が悪いのかなと思いますが、大臣の答弁の仕方も、答弁も非常にわかりにくい。防衛庁の中期業務見積もりをアメリカ側は評価するというふうに言われたわけですね、大臣に。それについて大臣は予算委員会でこのアメリカの意向は尊重しなければならないと、こういうふうにおっしゃったですね。おっしゃったんですよ、あなたがおっしゃったことですよ。それじゃこれは一体何ですか。さらに、着実な増強には応じますと、これはオーケーですと、こう言われた。そうすると、この中期業務見積もりはある程度尊重しなければならぬ、これは結びつくんじゃありませんか。
  47. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これはちょっと議事録を見ないと私も正確に申し上げられないのですけれども、私の記憶では、日本と安保条約を結んでおる相手国の米国の置かれた情勢、それから世界全般の情勢からいって、防衛努力について日本がある程度主体的な努力をしてほしいということ自体については、これは無視できないだろうと、しかし中期業務見積もりがどうだこうだとかいうことは、これについて特別に申し上げたわけではございませんで、一般的な防衛努力についての問題について私はお答えしたという記憶でございますが、これは後ほど議事録について私自身も検討してみたいと思いますが、問題は、むしろ基本的な情勢をどう認識するかということが一つあるわけでございます。  アメリカの国内におきましていろんな形でのただ乗り論が出ておることは御承知と思いますけれども、そのただ乗り論がどういう根拠で出ているのか、今回もいろいろな人に会いましたし、また従来もいろいろな人からの意見あるいは書いたものも読んでまいりました。基本的にいって、アメリカ側日本ただ乗り論と申します根拠が幾つかあると思うのですが、一つはこの二十年ぐらいの日本の高度成長という結果、日米の経済力の開きが非常に狭まったと、アメリカのGNPが二兆ドル余り、日本のGNPが一兆ドル近くになりまして、かつての非常に貧乏な日本と非常に豊かなアメリカという形は変わっているわけでございます。
  48. 小野明

    小野明君 そんなことは聞いていませんよ。そんなことは聞いていない。
  49. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただ、そのほかに、今度の三月十五日のアメリカのインフレ対策で財政も大幅に圧縮するけれども、防衛費については四、五%の増大をやるということで、自分たちも非常に苦しい立場に置かれているんだと。で、そのほか極東における急速なソ連軍事力の増強等がある。中東における緊張もある。そういうことで、日本のただ乗り論というのがいろんな形で出てきておるわけでございまして、日本としては、日本国民の生命、財産の安全を守るということにつきまして、一つは最小限の自衛力を持つ、外敵の侵入に対してある程度の反撃ができる能力を持つということと、もう一つは、この日米安保条約による抑止力に依存して日本人の生命、財産、外敵による攻撃を予防すると、これがやはり日本国民の多数の方針だと思いますので、そういう一本の重要な柱であります日米安保が動かない状態になるということは非常に避けなけりゃならない、そのパイプは通るようにしておかなければならないという立場も、いまの安保ただ乗り論と関連してある程度考慮しなければなるまい、というのが基本的な考え方でございます。
  50. 小野明

    小野明君 私が尋ねておりますのは、大臣が予算委員会で答弁をされたその内容を尋ねておるんです。具体的な内容。ところが大臣は、安保ただ乗り論があるので、いわゆる安保条約のもとで、いまおっしゃったのはアメリカ世界戦略に積極的に呼応していかなきゃならぬ、いわば緊急展開部隊構想あり、御承知のようにスイング戦略あり、第七艦隊が中東地域へ出かけていく、これが世界戦略です。ただ乗り論があるので、これらのアメリカ世界戦略に積極的に日本もその防衛の一翼を担わなけりゃならぬと、こういうことをいまお述べになったわけでしょう、そうですか。
  51. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私が申しましたのは、中東日本軍事的に協力するとか、そういうことはいまの平和憲法のもとで絶対にできるはずはございません。また、日本人の意思でもない。結局、もしも万一、日本が外からの侵略を受けるような場合にアメリカが共同して日本を守るという安保条約の基本的な精神になっておるわけでございまして、その点はやはり少なくともいまの政府がとってきておる基本的な方針だろうと考えておるわけでございます。ですから、日本のこういう情勢で非常にはっきり考えておく必要があることは、日本自身の安全ということをやはりこういう世界情勢のもとで考えなきゃいかぬという問題があると思いますと同時に、日本がそういう全般的な態勢の中に巻き込まれないという決意を新たにすることと、両方が大事だろうと私は考えておるわけでございます。
  52. 小野明

    小野明君 私どもがそういうことを考えておらぬじゃないかと、こういうふうにもとられるわけですが、そうではありません。日本がいま自主外交というものを展開しなきゃならぬ。ここで、先ほど大臣はアメリカ世界戦略の中に積極的に入っていくべきだと、これがただ乗り論を消滅させることになるんだというふうなこともおっしゃったが、私、時間が切れましたが、五十二年に福田総理がマニラで軍事大国にはならぬとアジア諸国に向かって言ったわけですよね。じゃ、軍事大国とは一体何を意味するかと、大平内閣もこれは継承しているはずですが、これも問題なんですが、ひとつ国際情勢も緊迫の度を加えておるときですから、アメリカ世界戦略に組み込まれることなく自主外交をこの際ひとつ打ち立ててもらいたい。  先ほどのどうも内部の防衛庁の中期見積もりに対する御答弁は、大来さんとも思えぬ私は御答弁だと、何かとぼけておられるのじゃないかというふうに不満を申し上げて私の質問を終わります。
  53. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまの御意見で、中期業務見積もりについてワシントンで私が何もコミットしたり、それが必要だとかということは絶対に言っておりませんので、その点を御了解願いたい。秦委員の御質問に対して、日本の防衛力の強化についてある程度考慮しなければなるまいということは申したと記憶いたしておりますが、その点はひとつ、ワシントンでそういうことを言ったということは絶対にございませんので、御了解を得たいと思います。
  54. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私も若干、本論に入ります前に今回の訪米に関してお尋ねを申し上げたいと思います。  先ほど来、質疑のやりとりをじっとお伺いしていたのですけれども、率直に申し上げまして大来さん御自身も相当言葉をお選びになりながら慎重な御答弁をされているのではないかという印象を受けたのですけれども、今回の訪米の目的が何であったのか。いま伺ってみますと、意見の交換であるということのようでございました。しかし、意見の交換ということでありますれば、大変大事な国会開会中でございますので、私どもとすればいかがなものであろうかという疑問がやはり出ないではない。まあそれはそれといたしましょう。ただ、私の記憶に残っておりますのは、衆議院の予算委員会または現在行われております参議院の予算委員会等においてのやりとりの中で、政府自身が調整を迫られなければならない問題が幾つか出てきた。そういったことをアメリカの意向も確認をしながら日本考え方というものをよく理解をしてもらうと、こういうことではなかったのかと思うのですが、どうなんでしょうか。
  55. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 確かにいま御指摘のような点、いろいろ日本のこれからの政策、現在の政策を考える上にも、これはアフガン問題、イラン問題、自動車問題、防衛問題、いろんな問題についてやはりできるだけ早い段階で先方の基本的な考え方を直接聞きとると同時に、日本の基本的考え方を先方に伝えることがきわめて重要だというふうに私は考えて参ったわけでございまして、そういう点で国会の方にも御迷惑をおかけしたわけでございますが、金曜と土曜と二日間休みをいただいて最短期間で行って帰ってまいったつもりでございますが、やはりそれなりの成果はあったと考えておるわけでございます。
  56. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 常識的に考えまして、大変短い日程でいらっしゃったわけですので、相当重要性のある問題の討議というものが背景になければいらっしゃる理由、目的というものは成り立たないのではないかと、これが普通考えられる点だろうと思うんです。いまもいろいろと問題の展開がございました。幾つかある問題の中で、とりわけこの防衛費の負担ということについては、アメリカ政府のみならず国内の世論というものがきわめて先鋭化しているという受けとめ方ができるのではないかと。確かにアフガンの問題をめぐって、中近東の情勢の激変あるいは極東地域のソビエトの軍事力の強化というただならない様相の中で、やはり日本としてもその一役を買ってもらわなければというそういう点から、この防衛費の負担増あるいは防衛費をもっとふやして防衛努力をせいと、こういう要求というものがずっと一貫して今日まで続いてきたことは否定できない事実だと思うんですね。今回そうした問題が、あるいはもちろんいまおっしゃったとおり結論は出なかったであろうと思いますけれども、アメリカの国内情勢の反映、そしてまた将来ともにわたって日米という基軸をこのまま持続するという立場を貫く以上は、アメリカ要請というものにも何らかの形でこたえなければならないという、そういう判断が当然動いてくるのではないだろうか。GNP一%ということは、もう長いこと、しきりに言われ続けてまいりました。しかし財源等の問題等々いろんな仕組みの中で、非常に厳しい側面があることも事実であります。そういうことも繰り返し論議されてまいりました。けれども、情勢がやはり情勢でありますために、アメリカの真意というものが、ただ新聞で伝えられるような報道あるいは外務省に出先の公館から入るであろうさまざまな情報というものを分析もし、また的確な判断もされるでありましょうけれども、むしろじかにアメリカ政府の要路者と会って話を詰めた方が早いであろうというようなことで、暗々裏にやはりGNP一%はこれはもう譲らざるを得ない、あるいは可能であれば一%以上の防衛努力をせざるを得ないのではないかというようなやはり気持ちを持って臨まれたのではないかというのが当然——これはぼくらとしても感触でございますから、即断はできません、そういうこともやはり今回の訪米に際しての最大の眼目であったのではないかというふうに思えるんですが、やはりそうではないんですか。
  57. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 非常に率直に申しまして、私、日本の財政状態、国内のコンセンサス、そういう状況から考えまして、なかなかGNP一%に到達すること自体が大変むずかしい問題だろうというふうに考えておるわけでございまして、そういう日本の国内の情勢に対して、アメリカが過大な期待を持たれては困るという気持ちが一つあったことは事実でございます。それから同時に、日本を取り巻く情勢として、日本人自体が主体的に日本の防衛の問題を考えざるを得ない状況になってきておることも事実じゃないか。基本的には先ほどの御質問にもございましたけれども、日本軍事大国になるということはとんでもないことで、ソ連がGNPの一二、三%を軍事力に使い、アメリカが五、六%を使い、西ヨーロッパ諸国が三ないし四%を防衛費に使っておる、その場合日本が一%以下ということでございまして、その一%に到達することもいまの国内の状況から見て、なかなか大変なことだという意味から申しましても、大きく従来のこの日本国民が第二次大戦後に選びました世界の中の生き方と申しますか、そういうものを踏み外すということは、あるべきでもないし、またそういう情勢でもないという基本的な考えで行ったわけでございます。
  58. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほども言葉の上でも大分議論があったわけですね。日本語というのはいろいろな意味に解釈される場合がございます。ただ、アメリカ側がこちらの立場というものを、いまおっしゃったような日本の実情というものを訴えつつ、それでどのように評価されたのか、またその評価の中でも、これからの努力を期待するという評価なのか、その辺が非常にわれわれとしてはつかみにくい話のやりとりであったのではないだろうかと、こう思うんですね。恐らく日本の実情をある程度理解できても、果たしてそれが満足のいく状況であろうかというと、最近のいろんな新聞論調を見るまでもなく、これは恐らく外交辞令としてはあるいはいろんなことを言うかもしれません。あるいはお二人きりで通訳を抜いてお話をされたというようなことも伝えられているようであります。そういった中でどんな話し合いがされたかわかりませんけれども、しかも大来さんお帰りになった直後ですか、これは政府のいま立場じゃございませんので、責任がない人の発言はということになりかねないと私は思うんですが、元国務次官ですかをおやりになった方が、中近東の防衛の一翼を担うために、日本としては航空母艦だとかあるいは軍用機をつくって配備する必要があるのではないかというくらいの発言すらも出されるという背景を考えた場合に、果たしてこちらの立場というものを向こうは、はいわかりましたということで引き下がるというような状況なんでしょうか。
  59. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 御指摘のように、いまのそういう日本に対する要請というものは、かなり広い方面にございまして、政府の直接の担当の人たち日本側の事情について相当な理解を持っておるわけでございますけれども、もっと広い、ジャーナリズムや議会関係になりますと、相当根強い考え方があるように思います。ただいま渋谷委員のおっしゃった軍艦問題、これはジョージ・ボールという元国務次官をやりました人が、空母を二隻日本がつくって、それをアメリカにレンドリース、貸与をしたらどうかというような提案でございましたし、その前にはテキサスインスツルメントの会長が、これはやはり日本が空母をつくってただでアメリカ側に提供したらどうかというような意見も、これは日本の読売のシンポジウムで、昨年の五月ごろでしたが、私もその会議に出ておりました席上で発言がございましたし、今回参りましたときも上院と下院の外交委員会委員長以下委員の方々にお会いしたのでございますけれども、下院の外交委員会委員の一人の方からの質問が、自分たちは、アメリカはGNPの五、六%を防衛に支出している、日本は一%以下だと、それによって浮いた経済力を経済、産業につぎ込んで、自動車の輸出その他の力をつけてわれわれの市場にそういう商品を送り込んでいるのではないか、こういう状態はアンフェア、公正を欠くのではないかというような質問もございました。そういう意味では、なかなかそういった考え方を先方がよく納得するということは簡単ではないと思いますが、日本側としてはできるだけの努力を継続すべきだと思いますし、たとえばいまの下院の外交委員会質問に対しましても、私は防衛費の問題と産業を能率化する問題とは別個の問題だと、防衛の問題は日本自身の選んだ安全に関するチョイスに従っておるわけで、産業の問題はそういう違いよりも、むしろアメリカ日本の貯蓄率の大きな開き——日本は二割以上、二〇%以上、アメリカは五%ぐらいの個人貯蓄率でございますが、そういう貯蓄率が大幅に違う。その結果、産業近代化への投資率も大幅に違う。そういうところに原因を求めるべきだと思うという答弁をしてまいったわけでございますけれども、しかしなかなか簡単には納得しない。今後も納得しない情勢だろうと思います。
  60. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに私もいま御答弁になられたような状況であったろう、また将来も続くであろうと判断せざるを得ないと思うのです。それも一つには対ソについての危機感というものがわれわれが想像する以上に深刻化しているのじゃないか。先ほども具体的に数字を挙げられましたね。ソビエトにおいてはGNpの一五%ですか、アメリカもまたそれに追い打ちをかけるような軍事費の負担というものを考えていかなきゃならぬ。それでも追いつかない。その一環として日本が少しは分担しろ、こういうきわめて機械的な考え方、発想というものが生まれたかどうかわかりませんけれども、そういう状況であろうとぼくは思うのです。  さてそこで、問題は、対ソ関係について、むしろいま第二次冷戦構造の再来ともいうふうに言われているような状況の中で、ますますエスカレートしていった場合に、もうGNP一%どころではない、もうもっともっと苛烈な要求というものが日本に押しつけられるという可能性ですね、これが私は必ず近い将来、いまの状態が続く限りは出てくるのではないかということをきわめて恐れるわけです。どうして逆の努力ができないのだろう。たとえば米ソ間においてもっとデタントへの道を何とか模索しつつその突破口が開けないかというところへどうしてその努力が傾けられないのか。むしろいまは逆の方向へ行っているわけですね。大変ぼくは悲しい現実だと思うんですけれども、現実は現実ですから、アメリカとしても何とか対抗手段としてソビエトに拮抗するだけの軍事力の整備というものを恐らく急いでいるんだろうというふうに思うのですが、その辺の状況については今回訪問をされましたときにどんな印象をお受けになったんでしょうか。まあブラウンだとか、あるいはバンスだとかいろんな方々にお会いになったはずだとぼくは思うんです。その言々句々の中に、恐らくいまアメリカが抱えておる危機感というものは確かにわれわれが想像する以上のものではないだろうか、そんなふうに私は思うわけでございますけれども、大来さんが現実に話し合われた中でその印象はどんなふうにお受けとめになったのでしょうか。
  61. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) アメリカの側といたしましては、ベトナム戦争というものの一つの経験といいますか、これが国内的にも物の考え方にも非常に大きな影響を及ぼして、むしろ国民は内向き、インワード・ルッキング、それから世界全体の安全をポリスするといいますか、というような考え方は大分弱まりまして、またはニクソン・ドクトリンというようなこともございまして国防支出も切り詰める。現に、カーター大統領がこの前の選挙に出てくるときには、自分が大統領になれば軍事費を五十億ドル直ちにカットする、あるいは韓国からの陸上部隊の引き揚げを行う、いろいろそういうことを選挙の当時は言っておったわけでございまして、アメリカ全体としてはこの軍事努力をできるだけ抑える、それでデタントによってソ連との話し合いをつけていくという政策をとろうとしており、まあ去年の初めごろまでは大体その方向で来ておったと思います。SALTIIの条約の批准がまだ行われなかったわけですけれども、そういうことと、それから同時に米ソ二大国がそういうデタントの努力を放棄すれば、これは世界全体が大変なことになるということは両国とも自覚しておるように思います。  現状においてもその点は変わりはないと私は感じてまいったわけでございますが、ただデタントの解釈についてソ連はどうもヨーロッパの問題を中心に考えているらしい。それ以外の場所については機会があれば、場合によれば軍事的な力によっても進出を図ると。わりあい抵抗の少ない、わりあいコストが少なくてベネフィットの多い機会があれば出てくる可能性があるという点についての心配、これはアンゴラとかエチオピアとかいろいろな例があったわけでございますが、これは直接ソ連軍事力が出ないでプロクシーといいますか、代理戦争、兵器と輸送手段を提供してキューバの人たちを送り込む、そういう形で一歩一歩軍事力を背景にした外交政策が行われてきて、アフガニスタンのケースでこれは初めてソ連が直接自国の軍隊を投入して他国に軍事介入をするというケースが起こったわけでございます。  そういうような全体の背景と、過去十年間においてアメリカが防衛支出をカットしている間にソ連側はステディーに軍事力を増強いたしまして、西側NATO諸国、いわゆるワルシャワ条約諸国との間のバランスがかなり崩れてきたと、そういう背景のもとでこれは西側のおくれを取り戻す必要があるということが最近特にアメリカ政府、これは西ヨーロッパ諸国も大体においてその点については共通の考え方をしておると私ども見ておりますが、そういう情勢があると感じております。
  62. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 持ち時間がだんだん経過していきますので、あと三つ四つまとめてお伺いしますので、これは私確認をさしていただきながらお尋ねをしたいと思うんです。  たしかこれは政府としても、統一見解というか、調整を図る必要があるんじゃないかということが伝えられておる問題の中で、先ほどもちょっと質問の中にあったようでございますが、今後どういう緊急事態が起こるかわからないという趨勢であることは、現状認識として私はそのとおりだと思います。その場合に、スイング戦略であるとか緊急展開部隊というような関連の中で、日本の基地の使用あるいは米軍の出動範囲がどうあるべきか、こんな問題が実際に話し合われたかどうかということが一つ。  それから、この事前協議というのが、もうわかったようなわからないような、常にこれは古くて新しい問題だということをぼくは予算委員会の総括でも申し上げましたけれども、同意権もなければ拒否権もないんじゃないかというような、非常にあいまいもことしておりますけれども、これは厳格に運用されるとするならば、いろんな意味で強力な歯どめにもなるであろう。ただ、米軍が移動ということで、それは事前協議の対象にならぬと、これは軍事戦略の上で移動だから事前協議の対象にならぬということはナンセンスな話でございまして、恐らく政府としてもその辺を調整する必要があるんじゃないかという疑問が残ったであろうこの問題についてはどうであったのか。  それから、やはりこれはアメリカの非常に強力な一つ意見としてしばしば提起されてまいりました日米欧の装備の一体化、この問題についてはどう一体アメリカが判断をしているのか。先ほど冒頭に申し上げた問題と若干関連するわけでありますが、特に沖繩海兵隊が展開部隊として編成されるときの扱い方、日本としての対応の仕方はどうあるべきなのかという、これは防衛費GNP一%負担という問題に関連しまして、この辺の調整もたしか迫られたはずだと私は記憶をしておるわけです。その辺の話し合いというものは全くなされませんでしたか。
  63. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私の方からも、日本国会におけるいまの御指摘のような点についての紹介といいますか、問題点を先方にもそのまま伝えたわけでございます。  緊急展開部隊につきましては、一つアメリカソ連の直接の、何といいますか、これは衝突すればそれこそ人類の絶滅というような問題にもつながるわけでございますが、従来、先ほどちょっと申しました第三世界あるいは西ヨーロッパ、ヨーロッパの前線以外のところで、あっちこっちで問題がときどき起こるということに対して、アメリカとしてやはり十分、余り備えがなかったという認識があるようでございまして、その背景に急速展開部隊というような構想が出てきておるように思います。この点の安保との関係については政府委員から申し上げた方がよろしいと思うのでございますが、一つには軍隊の属性と申しますか、日本の基地にいろいろ米軍の艦船も寄港いたします。これを全部日本に張りつける、その一隻一隻の行動についてすべて事前協議の対象にするということは現実問題として困難だと思われますし、実際の運営については、とにかく日米安保によれば、日本が武力攻撃を受けた場合には、米国が日本の国土の防衛に協力するわけでございますから、まあアメリカ人の率直に言えば血を流して日本を守るという約束をしているわけでございますから、この日米の安保条約の運営にはやっぱり基本的な相互信頼関係がなければ、そういうことは約束しても空約束になる。相互信頼の基本の上で運営を考えていかなければならない面があると思います。それで、緊急展開部隊等の場合におきましても、これが重大な日本の安全に影響がある場合には、必ず米側から十分日本側にも協議があるものだと私どもは理解しておるわけでございまして、そういう意味ではそういう問題、展開部隊が直ちに日本アメリカ世界戦略に巻き込むものだということではなくて、むしろ日本の安全をより効果的、有効に守るにはどうすればいいのかという立場から問題を見ていくことが必要なのではないかというふうに考えるわけでございます。
  64. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ全部にお触れにならなかったようですが、また機会がございますので、改めてその問題についてはお尋ねすることにいたしまして、残されたわずかの時間を本論に若干入りたいと思います。いずれにしても、ともあれ、エスカレートするような方向へ向かわないように、十分な歯どめを考えつつ今後の日米交渉に当たっていただきたいということを要望しておきたいと思うんです。  在外の公館の方々が不慮の事故に遭う、こういった場合の補償等については、前回も当委員会で私これを取り上げたことが実はございます。十分ではないのではなかろうか。しかも、それが偶発の事故によった場合、あるいは殉職という場合、それぞれ取り扱いがずいぶん違うようでございます。昨今のように人質事件なんということがあたりまえのようになってくるような、特にまあ発展途上国に見られる状況でありますけれども、まさに命がけと言っても言い過ぎではない。いつ、だれが、どういう時期にということは予測もできないわけであります。起こったら、もう大変なことになると思うんですね。きのうは人の身の上、きょうはわが身ということがあるわけですので、他人事では済まされない。これは外務省の職員の方全員に対して言えることだと思うんです。それだけに、やはり自信を持って仕事をしていただくためには、そういった問題の整備、安心してとにかく——まあ、亡くなること、死ぬことを覚悟して行くわけじゃありませんけれども、万が一そういう事故に遭った場合でも、残された家族の方々に対して十分な補償あるいは名誉というものは十分保持できるという取り扱いというものをもう一遍整理をして考える必要があるのではないかということを私が感じますのは、ラオスにおいて起こった杉江二等書記官の問題があるんです。私は朝日新聞に掲載された中身を見まして、もっと温情味あふるる対応というものができなかったのかなあという印象を受けるわけです。御両親という方も大変りっぱな方です。もし、あれだけの社会的地位の人が運動を起こさなかったならば、あるいは取り上げてももらえないようなことも考えられるのではないかというようなことを考えますと、大変心配でございます。  まず第一点としては、そういう問題について将来、要するに御満足のいくといいましょうか、十分な手当てが考えられるというような方向に向かって現在取り組んでいるのかどうか、その点から伺いましょう。
  65. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 御指摘のとおり、やはりこれは基本的にはそういう事故が起こらないような対策ということがまずなくてはならないわけでございまして、十年ぐらい前の南米におけるような人質事件、それがある程度きっかけになりまして、在外公館、公邸、それから館員の住宅あるいは通勤途上の自動車等も含めまして、いわゆる警備対策と私ども呼んでおりますけれども、これに対してはそれ相応の予算、人員をいただきまして逐次その整備を図ってまいりまして、恐らく十年前と比べるとその点は相当な改善は見たと思いますけれども、他方世上は一層危なくなっているところもありますものですから、これは常に点検を行うなり、あるいは定期的に予防演習を行うなり、あるいは東京からそういう道の専門家を巡回させるなり、常時点検を行いましてそういう事故が起こらないように努力を払っているところでございます。  他方、しかしながら、御指摘のように事故が起こることを完全には防ぎ切れないという宿命もございますので、こういうものに対してはまたそれなりの措置が必要であり、その制度が整備されなければならないことは御指摘のとおりでございます。  現在、戦時あるいは事変、内乱等の異常事態の発生時に生命、身体に対する高度な危険が予測される状況下において外交領事事務に従事して、その結果公務のための災害を受けたというような場合には、通常の公務員の災害補償額に五〇%を加算した特別公務災害補償という制度がございます。先ほど御指摘の杉江臨時代理大使に対しましても、事情を詳細に調べて、その辺が確認されたのを待って、最初は一般の補償をいたしたわけですが、多少時間がかかりましたけれども、その後特別公務災害補償を行ったわけでございます。  杉江事件について申しますと、奥様も亡くなった。その奥様の御両親の心痛は察するに余りありまして、私どもといたしましては、当時の外務省の出先、本省におけるこれに対するできるだけの努力というものは最善を尽くしたと私は信じておりますけれども、御両親のお気持ちからすると物足りないことがあったとおっしゃるお気持ちはお気持ちとして承らなければならないと心がけております。  なお、この杉江君の事件等も一つのきっかけとなりまして、外務省におきましてはこの公務災害補償のほかに最近賞恤金制度というものをつくりまして、いま申しましたような特別な事態において公務の遂行上犠牲になりました者については、その功労の著しい職員には賞恤金を授与するということ、そしてその功績をたたえ他の職員のモラールの維持向上を図るという制度も最近あわせて導入いたした次第でございます。
  66. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにいまおっしゃったように、相当時間がたってから公務災害補償が決まった。御主人の方に対しては一千百万円、奥さんに対しては二十三万円ですよ。これはまあ、とにかく大きな開きがありますな。私は善意に解釈しているんです。それは、現地に行ったときには奥さん自身も日本を代表する外交官夫人としていろんな仕事を、あるいは下積みの仕事、いろんなことをおやりになっていらっしゃるとぼくは思うんです。この二十三万という補償、これはいかがなものでしょうかね。これは何とかできないものですか。
  67. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) 杉江事件について申し上げますと、御夫婦が一緒に凶悪な犯罪の対象になって犠牲になられたということで、その限りにおいては、御本人、夫人ともに同じような尊い犠牲であったということはまことにそのとおりでございまして、外務省といたしましてもこれに対してどのような措置がとれるかということを人事院当局その他と再々協議したわけでございますけれども、現在の制度のもとにおきましては、結局、夫人が公務員でないという基本的な事実がございますので公務災害補償の対象にならなかったということでございますけれども、ただ、在外公館におきましては、夫人の果たす貢献度が大きい、また夫人も同じような危険の中に身を処すということがございますので、今後の立法論として救済措置が何らかの形でとることができないかどうか、実は私どもも真剣に検討している状況でございます。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 公務員じゃないことはわれわれも知っておりますよ。だからといってこれは考えないというんじゃ、どないしますか。そこにも大ぜいの方いらっしゃるけれども、そういう立場になったことを考えれば断腸の思いですよ。人ごとだからいいというわけにはいかないでしょう。日本を代表して仕事をしているその立場を考えると、残酷です。もっとやっぱり、取り組み方は結構ですけども、具体化するような方向へぜひ持っていってもらいたい。これが一つ。もう一つ、あと時間がないから。留守家族の方々に対する手当、奥さんについてはこれはゼロでしょう。たしかぼくの記憶ではゼロのはずですよ。それからもう一つあるんだ。私の知っている、いま外へ出ていますけれども、あるお子さんが高校へ行かなきゃならぬというので、どうしても日本の学校へ通わせなきゃならぬというので奥さんの実家にいま預けて通わしている家族がいらっしゃるんです。たくさんいるんじゃないかと思うんですよ。私は一つの例を挙げただけです。これはもう大変な深刻な問題だと思うんです。こちらに住んでいらっしゃる方は公務員住宅をあてがわれているわけでしょう。御自分のマイホームがある方はいいでしょう、御実家があってでんとした家がおありになる方は。全部が全部そうとはぼくは限らないと思うんです。だから、どうしてもそういう家庭の事情で家族を置かなきゃならぬ場合には、やはり公務員住宅に準ずる住宅をつくって、そして、その住居については安心しながら子供の教育にも当たれるという方途がとれないかどうか。これは幾ら優秀な人だって、足もとから引っ張られて、留守家族のことが常に頭の中から離れないとなったらこれは常識的に考えてもその人の能力は半減しますよ。そういった手の打ち方が外務省さんはずいぶん遅いんじゃないでしょうかね。恐らく、いま三千四百名の職員の方で約半数に近い方が外へ出ておられるはずです。家族同伴で行っていらっしゃる方は余り多くはないはずです。何らかの形で苦労しながらみんな置いておくわけです。教育の問題、きょうはもう触れられませんからこの程度にしておきたいと思うんですが、やはりそこらあたりも十分解決をしてあげる。大平さんの言葉じゃないけども、少数精鋭主義だと、冗談じゃないというんですよ。どんなに能力があったっていまの陣容では限界があります。日本がこれから平和外交を強力に推進するんだ、自主外交を強力に展開するんだと言ったってそれは絵そらごとになっちゃいますよ。やはりそれなりの質量ともに機能というものが十分に発揮できるためにはあえて申し上げる必要は、皆さん方が重々その点は御承知おきをいただいているわけだから、その辺も早急に装備をしながら十分力を発揮できるその体制を今後早急につくるべきではないか、要望を交えて、最後に答弁をいただいておしまいにします。それは大来さんからも所信を述べてくださいよ。
  69. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) ただいま渋谷委員の御指摘の点、まことに私どもも感じている点でございまして、決して努力を怠っているつもりではございませんけれども、完全ではないという点は御指摘のとおりでございます。  簡単に申し上げますと、国家公務員宿舎法によりまして不在者の住宅というものにはどうしても制約がございますので、外務省は長い前から二つのことを努力して実施しておる次第でございます。一つは、在外職員の子弟のための子弟寮の運営でございます。これは市ケ谷にある市ケ谷子弟寮でございますけれども、ここは現在三十三室がございます。定員五十五名ということで、これは土地、建物が国有財産、これを外務省の共済組合が運営しているということでございまして、これは学校に行っている子弟を置いて、夫妻で赴任するときにはここに入れるということで、これは一つの措置でございます。  もう一つは、御存じかと思いますけれども、外務省に互助組織としての外務省精励会というものがございます。これは、戦後外国から引き揚げてきた職員を住まわせる住宅を運営したというところから始まった互助組織でございますけれども、この事業の大きなものの一つとしてこの会員家族に対する宿舎の提供を行っております。現在この持っております宿舎は百十八戸でございまして、現在留守家族を含めてこれを利用しております。なお、一時帰朝とかあるいは病気のために家族の赴任がおくれたり先へ戻ったとかいうようなものもこれに準じまして、この精励会の宿舎を活用するというのが一番大きなやり方になっておるわけでございます。なお、老朽化に対してこれを新設するとかいろんな努力は私どもなりには全力を払っているつもりでございます。
  70. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまのるる御指摘の点は、私どもとしても非常に激励をいただいたということでありがたく存ずるわけでございまして、できるだけそういう努力を外務省としてもやっていくべきだと考えます。  一つ在外子弟の問題で、これはやや私見にわたるかもしれませんのですが、前にもある外国の友人から言われたことがあるのでございますが、日本人は子供を日本に送り返す、なぜ外国の学校に入れて外国の学校を卒業させないのかという質問でございまして、考えてみますとこれだけの国際化時代、せっかく向こうの言葉を覚え身につけた子供たち日本に送り返して、普通の日本人といいますか、普通の教育に戻す場合が多いわけでございますが、何とかこれは役所、会社、その他を含めて、外国の大学を出た、外国の学校を出た日本人をもっと日本の社会で活用するといいますか、重用するといいますか、こういうことをやはり同時にやるべきではないかということも考えるわけでございます。  どうもありがとうございました。
  71. 立木洋

    ○立木洋君 今日の状況の中で、アメリカ側からいわゆる日本の防衛費分担増の問題について、防衛分担増の問題について、矢継ぎ早に要望が出されてきた。先般そういうこともあって外務大臣訪米されてきたわけですが、それらの内容については前回も幾つかお尋ねをいたしました。きょうは時間がないので、その中での問題になっておる一つの点、在日米軍の駐留費分担の問題ですね、この点についてお尋ねをしたいと思うんです。  これは外務大臣が訪米されてからいろいろ日本側の態度について説明をされた点、アメリカ側からは評価をされたというふうに新聞で報道されております。さらに、帰国されてから大平総理の方からこの駐留費の分担についてさらにふやす点を検討できないのか、労務費についてはこれは最大限だというお話ですが、施設等の問題については検討してみろということになられ、さらに先日、外務大臣は細田防衛庁長官と話し合いをされて内容をさらに詰められるという作業が進んでおると思うんですね。それで、この駐留費分担の問題について今後どういうふうな態度で臨んでいかれるのか。いままたその検討がどこらあたりまで来ているのか、その基本的な考え方を最初にお尋ねしておきたいと思うんです。
  72. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは具体的な内容になりますと、防衛庁特に防衛施設庁の問題でございますが、政府委員からこの問題について、もし外務省関係で申し上げることがあれば補足させたいと思います。
  73. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま大臣から御答弁いたしましたように、今後の作業といたしましては、施設庁なり防衛庁自身が施設費あるいは労務費について今後どの程度支払う必要があるかということ、アメリカ側の希望も聞きながらこれをはじいていくということで、やはり通常の予算の要求と同じようなかっこうになっていくように私たちは考えております。
  74. 立木洋

    ○立木洋君 これらの点は、五月の当初大平さんが訪米される、それまで基本的な点は詰めていくというふうな形になるんでしょうか。
  75. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) それまで余り時間もございませんので、余り具体的に煮詰まるというところまではいかないんだろうと思います。恐らく年末までの五十六年度予算編成の過程で問題を詰めるという形になるのではないかと考えております。
  76. 立木洋

    ○立木洋君 私たちは繰り返しこの問題についていままでも議論、質疑してきたわけですけれども、いまの日本の経済財政状況からして、これは自民党の金丸国対委員長のお話じゃございませんけれども、米側の財政事情を思いやるというふうな点から問題が出されてきておる。そして私は、本来この地位協定の二十四条一項で当然米軍が負担すべき内容になっておりながら、これを日本側が肩がわりをして負担をしてやるというようなことが一体どういうふうな考え方から出てきているのか、そのあたりを明確にしていただきたいんです。
  77. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 基本的には先ほどもちょっと触れましたが、日米安保条約の規定に従って、日本が外から武力攻撃を受けたときにはアメリカの軍隊が防衛活動を行うという基本的な事情があるように存じます。それと一般的には、これも先ほど申しましたが、日米の経済力が格段に開いていた時代に比べてかなりな程度経済力も接近してきたという点も基本的にはあるかと考えております。
  78. 立木洋

    ○立木洋君 伊達局長、条約的な解釈もちょっと含めてお尋ねしておきたいんですがね。この地位協定の二十四条の一項に書かれてありますけれども一ここで言うつまり「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」ということですが、この「維持することに伴うすべての経費」というのはどういう経費なんですか。
  79. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 第二十四条一項にただいま立木委員が御指摘になりました条文があります。第一項はつまりアメリカ軍が負担すべきものを書いてあるわけでございますが、二項には日本が負担すべきものが書いてあるわけでございます。それで第一項で「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」というふうに書いてございますが、これは御承知のように、読んでみても大変一般的な規定でございまして、具体的には、この経費、この項目、この項目というふうに分けました場合に、一体、それが日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費であるか、それともそうとは考えられないものであるかというのは、個々の具体的な経費の目に従って両国間で話し合って決めてきているということでございまして、一般論としてこういう項目であると、ずうっと並べて申し上げることは非常に困難なものであると思います。
  80. 立木洋

    ○立木洋君 その点は後でもう少しお尋ねしたいいんですけれども、これはきわめてあいまいで、いままでの対応から見るならばこれは問題点が非常に残っておる点だと思うんですが、昭和五十二年と五十三年に日米合同委員会が、三百八十回合同委員会と四百四回合同委員会が開かれておりますね。その合同委員会における合意、これはこの合意によって日本政府は拘束され、義務を負わなければならなくなるということは当然でしょうね。
  81. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま立木委員御指摘の点は、労務費の分担の合同委員会合意でございますが、御指摘になりました五十三年、五十四年……
  82. 立木洋

    ○立木洋君 五十三年と五十四年と、五十二年と五十三年と両方あります。
  83. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 恐らく労務費について……
  84. 立木洋

    ○立木洋君 労務費もありますし、施設費もあります。
  85. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 労務費については、御承知のとおり、実際上は五十三年度からでございますが、最初は福利関係の経費を日本側が分担し、さらに次年度からは……
  86. 立木洋

    ○立木洋君 淺尾さん短かく、簡潔にひとつ。負担を負うのか負わないのかというだけで結構。
  87. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) もちろん、その合同委員会合意したことは日本政府としては負っております。
  88. 立木洋

    ○立木洋君 そうでしょうね。ここに述べられておりますように、これはいつまで負担を負うということではないわけですから、つまり、五十三年四月一日以降に発生する次の経費を負担を負うということが五十二年の契約であり、さらには五十三年に行われた点で見てみますと、これは五十四年四月一日以降のというふうに書かれてありますから、この義務を負うというここに述べられている諸経費の問題ですね、一々言いませんが、これからずっと日本側が負担をしていくことになるわけですね。
  89. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) そのとおりでございます。
  90. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、五十三年度から五十五年度まで、労務費関係では幾らの負担になりましたか。施設関係では幾らの負担になりましたか。
  91. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) まず、施設関係から申し上げますが、提供施設整備のための経費として行っておりますのは、年度別予算で申し上げますと、昭和五十四年度は、予算額の歳出ベースで百四十億ドル、二千四百万円でございます。それから昭和五十五年度に計上しておりますのが、二百二十六億九千九百万円でございます。それから、労務費につきましての経費は、昭和五十三年度からでございますが、昭和五十三年度が六十一億八千七百万、五十四年度が百三十九億六千四百万で、五十五年度に計上しておりますのが百四十七億二千九百万円でございます。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 労務費関係では百四十七億、それから施設関係では二百二十六億、これは五十五年度ですね。さらに今後、五十六年度、五十七年度というのはどういうふうな規模になるでしょうか、およその見通しは立ちますか。
  93. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 労務経費につきましては、前々からも御答弁ございますように、現行地位協定上の限度ということでございますので、年々のベースアップ等に伴うものによる人件費の増とこれに見合ったものになろうかと思います。  それから施設整備につきましては、具体的には、これから在日米軍との間で具体的な向こうの要望等も受け、それから私どもの方の必要性、可能性といったようなものも合わせて検討した上で行いますので、現在その規模について今後の見通しというものをわが方だけで立てられるというわけには至っておりません。
  94. 立木洋

    ○立木洋君 伊達さん、日本政府アメリカ政府との間で結んだ基本的労務契約がありますよね、あの労務契約の中の第四条の補償という条項に、アメリカ側が、次に定める経費で、日本側はこの契約の実施の結果として負担し、かつ、法律上支払わなければならない経費を日本側に補償するものとする、という第四条補償の条項ですね。日本側が払わなければならない、これはアメリカ側によって補償される。この項目が、ここに十二項目挙げられているのですよ、基本給から。これは今日でも変わりないですか、変更はありますか。
  95. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 私、その労務契約の詳細については存じておりませんので、施設庁の方からお答えいただいた方が適当と思います。
  96. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 先生御存じのように、MLC契約というのは地位協定というものにおける日米間の業務の遂行のためにお互いの間の契約として結んでいるわけでございます。そのために年々更新しながらやっておりますが、御指摘の労務費の経費につきましては、五十二年と五十三年の日米合同委員会の結果としまして、社会保険料からいま言いました十二項目に及ぶ各種の項目というものを持っております。現在の地位協定の解釈上としまして、現在、労務費の負担というものは、合衆国軍隊を維持する経費としての観点から見て、現在のMLC契約に伴うものでもって今後ともずっと引き続き行われるというふうに判断しております。
  97. 立木洋

    ○立木洋君 ではこの十二項目の中で削除された項目が、部分があるわけですね。
  98. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 削除されておりますと……、御承知のように、五十三年四月一日以前には……
  99. 立木洋

    ○立木洋君 変更されている部分があるわけですね。
  100. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 当然のように、五十三年の四月六日、いわゆる二回の日米合同委員会の決定に伴って二段階に分けましてわが方の負担となったものについて書いておりますが……
  101. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっと聞きづらいんですけれども、マイクをちょっと……。
  102. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 在来米側が負担しておりました中で、五十二年の日米合同委員会の決定に伴ってのわが方の負担とした社会保険料等の問題、それから五十三年の協定に伴って新たに給与の一部としての格差給、語学手当といったようなものの負担を行って、そのときそのときにMLC契約に直しておりますが、それによって変更されたという意味では変更されております。
  103. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、その最新のやつは提出していただけますか。
  104. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) MLC契約の内容については、内容と言いますか、第四条の補償の部分のものについては後ほどお手元に差し上げたいと思っております。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 この地位協定の中の十二条の五項に「相互間で別段の合意をする場合を除くほか、」というふうに限定して、「労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」というふうにされているわけですね。  そこでお尋ねしたいんですが、日米間で労働者の権利に関する国内法を適用しないという何らかの合意がありますか。
  106. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 特にございません。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、この基本契約が変更された部分についての、たとえば、社会保険料だとか、その他従業員の福利に関する経費等々の問題については、どういう形でそれが労働者の権利として保障される条項になるわけでしょう。
  108. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 社会保険料、それから各種の任意福利費等もございますが、まず基本的には日本側の法令に基づいて事業主が負担する部分につきまして在来米側が負担して支払っていた、これを、日本政府負担になりましたことによって当然のようにわが庁としましては日本の労働法令に属するもの、あるいは社会保険、保障等に属するものについては、従業員の立場を守るというか、従業員の立場を保障するという意味政府の方から払っておりますので、十分その立場は保障されていると思いますが……。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど、この駐留経費の問題については、今後どういうふうな内容になるか、アメリカ側の要望等も照らし合わせて検討して進めていきたいと、いかなければならないことになるというふうに言われておりますが、在日米軍が、施設あるいは施設整備やなんかについてどういうふうな要望を持っているのか。また内々日本側に伝えられてきている要望というのはどういう要望があるのか、その点はいかがですか。
  110. 千秋健

    説明員(千秋健君) 私ども公式には米側からそういう要請を受けているわけではございませんが、私ども施設委員会の米側代表等から、日ごろ接触している接触を通じまして、現在、米軍の方では住宅、隊舎、環境保全施設等、生活関連施設の整備を強く望んでおるというふうに受け取っております。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 この問題についても、事実上、地位協定の第二条によれば、日本側が提供する「施設及び区域」というのは、「当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。」ということになって、「現存」というふうに限定されているわけですよね。だけど、それがいままでの国会の議論の過程の中で、新しい施設だけでなくて追加施設、あるいはさらにそれに準ずるものというふうな変更がだんだんなされてきて、拡大解釈されてぐるというふうな経過があるわけですけれども、いま出されたのは生活関連の問題だけですが、たとえば滑走路の整備だとか、あるいは弾薬庫を増強したいだとか、あるいはシェルターなんかの問題、そういう要望なんかが来た場合には、これは一体どういうことになるんですか。施設として提供すると、新たな施設であれば日本側が調えて提供するということになるのか、一切それは提供しないということになるのか。
  112. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 従来、政府が新規の施設を提供する場合におきましては、安保条約の目的達成上必要があるかどうかということを考えながら提供しておりまして、一般的に、いま先生が言われましたようなものが地位協定で認められるのかどうかということは、具体的なケースに応じて、当然判断していくということになると思います。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、認めることもあり得るという含みで解釈していいんですか。
  114. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 従来、代替施設については大平答弁というのがございまして、その代替の範囲、規模を超えないということでございます。新規の施設については、新しいところに施設を提供するのも、あるいはすでに提供した施設内に新規の建物を含めていろんなものを提供することについても、これは当該事案に応じて決定するということでございます。
  115. 立木洋

    ○立木洋君 大来外務大臣、最後に、もう時間がありませんから、大臣の御所見をお伺いしたいんですけれども、いまのお話を聞いてみますと、実際には地位協定の二十四条の一項に関する解釈ということは、これは確定されたものではないという伊達局長の、そのときそのときの協議によって決められるもので、どの項目がすべての経費というふうになるかは明確にするわけにはいきませんというお話でしたよね。ところが現実に、かつては改築の問題だとか、そういう費用はアメリカ軍が持ってきたものなんですよ。それから労働者が使用されているわけですから、これは当然米軍の基地を維持していく上に必要と認めて日本人の労働者を使用しているわけですから、だからこれに関する費用というのは、当然その基地を維持していくための必要な経費なんですよね、すべての経費の中に入る。それがだんだんだんだん拡大解釈されてきて、まあ大来さん、今度アメリカに行ってこられて、労務費の関係では、これが大体最大限だというおっしゃり方をして、これは地位協定から考えてみてそういうことになり得るというふうに言われた。ところが、施設費の問題というのは、いまの淺尾さんの話なんかによりますと、いまアメリカ側から出てきている要望というのは、住宅関係が主だというお話であります。その他環境整備等々が主であると言うけれども、私が聞いたのは、いま述べた滑走路だとか、弾薬庫だとかというふうなことの拡充等々についてはどうなるのかと言ったら、それは安保条約の目的から考えてみて、ケース・バイ・ケースで検討することもあり得るということになってきますと、そうすると、施設関係の問題については、新たに提供する——いわゆる現存の施設だけでなくして、新たに提供する追加施設の分、それに準ずるものもということになってきますと、施設関係ではもうほとんど全部日本側が負担することができるというふうな、そういう拡大解釈の道を切り開くことに結果としてはなるんじゃないか。これは私は大変な問題だと思うんですよ。  以上、時間がないのでこれ以上述べませんけれども、その点私ははっきりさしておいていただかないと、いわゆる何がけじめではっきりされるのか、米軍が負担すべき経費というのは一体何なのか、この点を明確にしておかないと、施設関係では全部日本側が負担するというようなことになりかねない。これは大変な、いまのアメリカ側から言われてきているいわゆる防衛費の分担増という問題と絡み合わせて、この点でアメリカ側から点数をかせごうというふうな姿勢にも見られかねない。新聞紙上でもそういうふうに書かれてますから、そこらあたりも含めて、明確な答弁をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  116. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは政府委員から答弁いたしましたように、ケース・バイ・ケースの検討を必要といたしますが、すべてこれは日本政府予算に計上されるわけでございまして、日本政府予算の審議は当国会がおやりになるわけでございまして、そこに大きな歯どめがあると思います。そういう意味で、無制限に何もかも負担するということにはならないと思いますし、また、その前提として財政上の制約ということもあると思いますので、その点は御心配のことはないと思います。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 一言だけ。  そうおっしゃると、私はどうしても一言言わざるを得なくなってくるんでね。それは、国会にかかるということであるかもしれないけれど、先ほど言いましたように、日米合同委員会で決められた合意内容というのは政府が責任を負わなければならない、政府が必ず予算に計上しなければならない内容なんですよ。だから政府自身が、そういう日米合同委員会で約束してきたならば、政府予算として計上する責任を負うということに結果としてなるわけですよ。そして事実上、いままでの予算審議の内容から見たって、一体どういうふうな結果になるかということは明白なんですよ。だからそういうふうな言い方で、事実上歯どめがあるなんていうようなことは、これは私はもってのほかの言い分であって、事実上いままでの経過から見たって、これは政府自身がそういう負担を負うべきではない、勉位協定に関してですね。明確な態度、区分をはっきりしておく必要があると思うので、アメリカが負担すべき内容というのは何なのかということをはっきりしておいてください。もう時間がありませんから、これで終わりますけれども。
  118. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほど来大臣より御答弁申し上げておりますように、地位協定の解釈については、従来ともこれはその地位協定の趣旨に沿うように厳格に解釈しておりますし、合同委員会合意がございましても、個々の、一々のケースについて何がなし得るかどうかというところは、またその後各年度の予算要求その他で出てまいりますので、この点について野方図になるということはあり得ないのじゃないかと思います。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 大変不満ですが、これで終わります。
  120. 藤井恒男

    藤井恒男君 きょうは大変持ち時間が少ないので、一、二の点にしぼってお伺いいたしたいと思います。  大臣、短時間でございましたが、アメリカは御苦労さんでございました。現在、いろんな問題が日米間で存在しておるわけでして、とりわけ経済問題で自動車の問題が大きくクローズアップしているんですが、実は自動車だけじゃなく、現在繊維問題をめぐって大変複雑な動きになっておるわけです。大臣、御承知かと思いますが、内容は、これは私別にお答えいただかなくてもいいんですけど、概要をちょっと御報告して記憶にとどめておいてもらいたいんだけど、日米政府間で繊維貿易問題をこの四月一日からハワイで行うことになっておるわけです。これまで日米間にはMFA、つまり多国間繊維協定というものが結ばれて、日本からアメリカに輸出する繊維品の十七品目について数量規制をしておるんです。この改定を四月一日からやるわけです。このMFAの協定というのは、実は一九七八年の日米繊維交渉の折に、アメリカの方からアメリカの業界のダンピング提訴があるぞという、どっちかといえば恫喝みたいな形でそれをカバーする意味で数量規制をしたという経緯がある。そのようにして、とにもかくにも数量規制をしておるにもかかわらず、このほどアメリカはアクリル糸についてダンピングクロの判定をしたわけです。全くこれはロジックに合わないことでしてね、二国間協定で数量規制をしてその枠内にとどまっておるにかかわらず、ダンピングクロの判定をする、大変困惑しておるところでございますし、さらにこのダンピングクロという適用は米国の新通商法による初のケース、したがって、これがクロとしてそのまま放置されるならば、逐次他の雑貨にこれが及ぶことになると思うのです。私はこれはけしからぬことだと思うし、その内容についてはいずれまた通産省に細かくただしていかなければいけないわけですが、実は一九七〇年から七一年にかけて佐藤内閣の折、当時の田中通産大臣が、例の有名な縄を買って糸を売ったというごとく、日米繊維交渉というのが行われて、屈辱的な一方的な繊維協定というものを結ばされた経緯がある。これは実際の被害は、アメリカの内需に対する日本の比率が三%、だから、およそ実害がないにかかわらず、そういったものを結ばされた経緯がある。その裏は沖繩返還という問題もあったかもわからないが、実際は大統領選挙に絡んでおる。とりわけテキサス初め南部の繊維工業、しかも黒人が多数を占めている、そういった中でレイオフが行われておる。レイオフというのはその企業の採算上の問題からきておるのであって、貿易問題からきておることではない。このレイオフが行われ、テキサス初め南部で黒人が失業する、社会問題を醸す、したがってこれは日本の繊維が悪いんだと、こういうようなことでわずか三%の数量にしかすぎない繊維に対して規制をかける、それはまさに大統領選挙そのものの代償であったと私は思うんです。  今回も自動車の問題については、わが方から予算委員会でも細かく衆参両院でアメリカの主張の非であることを述べたわけですが、これといい、いまのダンピングクロの判定といい、やはりこれは私は大統領選挙が絡んでおると思う。だから、この辺のところは単なる政争の具に日米経済摩擦が供されておる。だから、その辺の真意はよく確かめて、実在、いわゆる実際の被害立証というものを明確に迫らなければいけない。アメリカが主張しておるからこれは黙っておればいいんだということになれば、これまでたびたび大統領選挙の折にまことに不都合な協定を結ばされて、それがずうっと糸を引いておるということになっておるんだから、この辺は、大臣、フレッシュな感覚で、しかも経済に非常に造詣が深いわけでございますから、大平さんとまた一緒においでのようでございますし、頭の中に入れて、十分この措置していただきたい。通産省の所管事項とはいえ、これはMFAの協定等も外務省タッチしておるわけなんだから、その辺についてひとつもし御所見があればお聞きしておきたいと思います。
  121. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いま御指摘のアクリル繊維の問題、私も聞いております。実は今回アスキュー通商代表、ホーマッツ次席ですか、会談の際にも、新通商法の適用に当たっては十分慎重にお願いしたいということを私からも申し入れまして、先方からも日本側に問題がある場合には至急連絡してほしい、自分たちもその運営について十分気をつけていきたいと思っているという答えがあったわけでございます。  繊維の問題、十年ぐらい前に非常に大きく出まして、私も当時アメリカ議会から証言に呼ばれたりしたこともございましたが、当時私感じましたことは、アメリカには日本で言うような産業構造政策がない、結局市場に任して、産業が伸びたり衰退したりする。ところがそれに対して関係者から苦情が出てまいりますと、政府が力を加えることができるのは通商の分野しかないというんで、産業構造政策のかわりに通商面に圧力がかかってくるという点がどうも基本的にあるように当時感じたわけでございますが、この点やっぱり日本のような構造政策を持っているところから見ると、どうもおかしいじゃないかという気がいたしますけれども、これはまた別の国の別の背景から出てきておる事態でございますので、結局双方でできるだけ話し合いをして、どっかに妥協点を見出すより仕方がないということにもなるかと思います。  自動車の問題につきましても、今回いろいろ予備的な議論、これはバンス長官、アスキュー通商代表ともいたしたわけでございますが、アスキュー通商代表は、これは政府の内部で検討した結果日本車の輸入制限は行わない、これは大統領からの指示だということを言っておりました。それから日本に対する輸出の自主規制も求めない、これは安易な解決方法であって、いろいろ弊害を生むおそれがある、基本的にはアメリカの国内の自動車産業の誤りであった、大型車から小型車に切りかえるタイミングを誤ったことがいまのような事態の最大の原因であるので、したがってアメリカの自動車工業が切りかえを早くしっかりやって、競争力のある車をつくるということが基本的だと、ただ日本側には市場を開放してもっと何とかアメリカの車、あるいはせめて部品でももっと買ってもらえないか、それには検査手続その他に、あるいはスタンダード等にまだまだ相当不満がアメリカ側にあるから、できるだけそういう点も改善してほしい、大体そういう話でございまして、さらに日産、トヨタの米国に対する投資をアメリカとしてはぜひ希望していると、それに対して、しかしそのころには、工場ができるころにはもうアメリカのGMその他も相当小型をつくるようになっているだろうし、生産過剰になるようなこともあるんじゃないかということを申したわけでございますが、とにかく日本の自動車工業がアメリカにやってきて仕事をすることはアメリカの自動車工業に活を入れるといいますか、競争にたえていかなければならない、そういう意味で輸入制限をしないかわりにぜひ日本の自動車工業に来てほしいというような話がございまして、私の方からはそういうお考えはわかるけれども、この問題は基本的に経営者が決めるべき問題だと思います。ということで今回は帰ってまいったわけでございますが、なお通産省から引き続き専門家の会議等、今後も米国側と話し合っていくことになっておりますので、まあ大体の今回参りました状況は以上のとおりでございます。
  122. 藤井恒男

    藤井恒男君 私、いまのアクリル、大臣も御存じのようでございますが、まだ業界や通産省の意向を確かめておらないんですが、いずれにしてもITCの判定に不服の場合には三十日以内に米国の関税裁判所に提訴しなければならない。まあ、きわめて期間もタイトな問題なんです。したがって、今後これを実際問題として被害認定の理由が定かじゃない——いま言ったような政治的なバックグラウンドがあるわけですからね、被害認定が定かじゃないから提訴することも不可能、しかしほうっておけばクロだと承認したということになる、そうすれば今後のMFAの延長交渉をどう乗り切っていくのか、大変むずかしい問題になるという状況にありますので、どうぞひとつ外務省、通産省とよく連携をとって間違いのないように措置していただきたいと思います。
  123. 羽澄光彦

    政府委員羽澄光彦君) いま先生のお話のございました点はまことにそのとおり、いま通産とも話をしておりますし、とりあえず事務レベルでは、わが方としてはこういう判定はそのままのむわけにはいかないということを伝えまして、しかし正式にどういう手続きをとるかはよく考えてから向こうに言うというふうに一応手は打ってございますが、要するに、先生おっしゃいましたとおり、わが方としては数量規制をやっているにもかかわらずダンピングが行われたと、しかしながら数量規制をやっておれば例の実質的な被害というものは起こり得ないというのがわが方の立場でございますので、その辺のところをはっきりいたしまして、アメリカ側にも正式な手続をとりたいと考えております。
  124. 藤井恒男

    藤井恒男君 いずれにしても、いま申したように、外務省もお認めのようですが、全くロジックが合わぬわけですからね。ロジックの合わぬことはきちっとこれはやっぱりアメリカにも指摘しなきゃいかぬというふうに思いますので、よろしくお願いします。  それからいま一つ、この外務省から出ております調査企画部の「国際情勢の近況」という十二月二十四日のこのレポート、私、読んでみたわけですが、ここで、昨年の十二月二十四日時点で出されたものでございますが、米ソ関係については「現在のデタント追求路線が継続されるものと考えられる。」、これは明確に書いておる。それからアフガニスタンの問題についても、「当面は現在のような反政府側のゲリラ活動が続くものと見られる。」と。ここにはどこを読んでもソ連からの軍事介入というようなものは全く一言も出ていない。こういった認識、こういうこの国際情勢についてのレポートが出されるということについて、外務大臣、まあ、今度大臣に就任なさって中の人になられたわけでございますが、一体どうしてこういうことになるんだろうということについて率直に御意見を承りたいと思います。いかがですか。
  125. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 内容については政府委員から答弁させたいと思いますが、まあ、この調査企画部の資料は、外務省の全体としての意見というよりも調査企画部の報告でございます。また、ソ連アフガン侵入をその時点で予測したところが世界じゅうどこにあったのか、なかなかいまから見るとなぜそれがわからなかったかということになりますが、非常にむずかしい問題ではあるので、デタントの継続については、先ほど来、私申しましたが、継続している——これはSALTIIの協定に従って米ソできるだけそれを実行し、アメリカ側機会を見て議会の批准を求めるということを最近も言っておりますので、デタントの継続、大きな筋としての継続ということはそう違ってはいないと思いますが、担当の方から補足答弁させます。
  126. 馬淵晴之

    説明員(馬淵晴之君) いま大臣から御説明されたことで大体尽きて、私から特につけ加えることはございませんけれども、まあこれは内部資料でございますけれども、私どもとしましてもできるだけ正確な予測をするように今後とも努力する所存でございます。
  127. 藤井恒男

    藤井恒男君 もう時間がほとんどありませんが、大臣ね、調査企画部の単なる省内関係資料というだけじゃなくて、これは省内の関係各局課と協議してつくっておるわけだから、まあ非公式見解ということではあるが、一応国際情勢に対する外務省が当時把握するエッセンスと見て間違いないと思うので、その辺は私いささか問題があると思うんですよ。  私、別な角度から見れば、やはり外務省の機構、要するに馬淵さんも何年おられたのか、この間外国でお会いしたばかりだけれども、大抵二年ぐらいのローテーションになっておると私思うんです。これがやっぱり問題じゃないだろうか。とりわけ開発途上国なんかの場合には二年ぐらいではなかなか腰を落ちつけた資料を取ることはできない。だから、経済問題なんかになると、むしろジェトロの連中の方がそこにぴしっと腰をおろしておるから大変深いものを持っておる。この辺は機構としてやっぱり考えなきゃいかぬのじゃないだろうか。海外へ出て、私、しょっちゅう在外公館に足を踏み入れて館員の皆さんなんかとお話する中からもそういうものをくみ取るので、この辺も大臣ひとつ新しい感覚で、いままでの惰性じゃなぐ、変化の激しい現在の状況の中で、一度機構を洗い直してみたらいかがなものか。  同時に、もうやめますが、これはもう常々私も耳にし人からも言われることだけれども、この外交官試験制度についても問題があるのじゃないかと。いまの上級、中級あるいは語学研修生という三段階にランクづけされたところの体制というもの、在外公館で少ない人数でもう一体化して在外公館での活動をしなきゃならない、そういった中で、かえってこれが災いになっておるんじゃないだろうかというような気もするので、あわせてこの二つの面を御調査いただいて、斬新な機構づくりに励んでいただきたいと思うのだけれども、いかがでしょう。
  128. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 第一の点につきまして、一つには外務省としては、ジェトロその他ほかの機関もございますし、直接ビジネスに結びついた情勢などあるいは多少そういうところに比べておくれる面もあるかとも思いますが、一つは政治情勢あるいは防衛問題などについてやはりこれは外務省自身が真剣に取り組まなければならない。経済問題の背景にもなりますし、また経済問題もちろん大きな情勢をつかまえていかなければならないと思いますが、非経済的な面における情報ということもこれからますます重要性がふえてまいるかと存じます。  外交官の問題につきましては、これは官房長からお答えしますけれども、できるだけ人材登用の道を開くように検討しようではないかということで内部でも話しておるわけでございますが、なお官房長から補足させたいと思います。
  129. 柳谷謙介

    政府委員(柳谷謙介君) それでは簡単に。  外交基盤の強化というのは、これは私どもの最大の課題でございまして、近年は特に大臣以下真剣に努力してきているつもりでございます。三点ほど申し上げますと、一つは試験制度の改革ということでございまして、やはり今日の外交官というのは、異なる文化と接触したり多様な価値観というものをよく理解する、そういう人材がなくてはならない。いわゆる幅広い理解力ということが要請されておるということでございますので、たとえば採用試験におきましても、知識とか語学に余り偏重することなく、その人の理解力とか判断力とかあるいはたくましさというようなものもより以上に重視した形の、そういうものを評価し得るような形の試験制度ということは、これは上級試験、中級、語研試験と——ただいま専門職試験と呼んでおりますが、それら共通の問題として考えられるところでございますし一また、これらの試験を今後どういうふうに整理統合するのがいいかどうかも含めて目下真剣に検討しているところでございます。  それから第二には、研修制度の強化拡充、これはいろんな研修をやっておりますけれども、なかなか定員が手薄だとなかなか研修する暇がなく在外へ出るということがありますが、最近若干そのための研修期間を見込んだ定員も少しではありますけれどもつけていただいたということで、研修の充実が第二点でございます。  第三が登用制度の問題でございまして、特にやる気のある、真剣に努力している、一生の職業として外交を選んだ職員の中で、特に外交官試験、上級職試験合格者以外の職員につきまして登用制度を数年前から発足いたしまして、これまでに上級職に登用した者十二名、中級職に登用した者、これは初級職とか中途採用者からでございますが、中級職に登用した者四十名という数字がありますほかに、本省、在外の枢要な職にも上級職試験合格者以外からの優秀な者を登用すると。現在の数字をちょっと御披露しますと、本省の管理職に十二名、在外の大使八名、総領事、領事、いわゆる公館長でございますが、二十九名という者を現在登用しておりますが、これは今後も、部外からの人材の活用、登用ということも含めまして、一層の適材適所の配置ということを考えたいというふうに考えております。
  130. 藤井恒男

    藤井恒男君 終わります。
  131. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) ほかに御発言もないようでございますので、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようでございますので、これより直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  132. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 稲嶺一郎

    理事稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後五時四分散会