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1980-03-04 第91回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月四日(火曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  十二月二十二日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     藤田  進君      橋本  敦君     立木  洋君  二月十九日     辞任         補欠選任      田中寿美子君     森下 昭司君  二月二十日     辞任         補欠選任      森下 昭司君     田中寿美子君  三月三日     辞任         補欠選任      二木 謙吾君     長田 裕二君      大鷹 淑子君     園田 清充君  三月四日     辞任         補欠選任      長田 裕二君     成相 善十君      園田 清充君     金井 元彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石破 二朗君     理 事                 稲嶺 一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 金井 元彦君                 亀長 友義君                 成相 善十君                 小野  明君                 藤田  進君                 立木  洋君                 藤井 恒男君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  大来佐武郎君    政府委員        外務政務次官   松本 十郎君        外務大臣官房長  柳谷 謙介君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省条約局長  伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       賀陽 治憲君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省中南米局        外務参事官    色摩 力夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○日本国ポーランド人民共和国との間の通商及  び航海に関する条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出) ○日本国政府フィンランド共和国政府との間の  文化協定締結について承認を求めるの件(内  閣提出) ○所得に対する租税及びある種の他の租税に関す  る二重課税回避のための日本国ドイツ連邦  共和国との間の協定修正補足する議定書の締  結について承認を求めるの件(内閣提出) ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○千九百七十四年の海上における人命の安全のた  めの国際条約に関する千九百七十八年の議定書  の締結について承認を求めるの件(内閣提出) ○特に水鳥生息地として国際的に重要な湿地に  関する条約締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○南極あざらし保存に関する条約締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出) ○国際情勢等に関する調査  (最近の国際情勢に関する件)  (外務省関係予算に関する件)  (外務省関係提出予定法律案及び条約に関する  件)  (外交基本政策に関する件)  (外務省関係の人員に関する件)  (イラン問題に関する件)  (アフガニスタン問題に関する件)  (ベネチアにおける先進国首脳会議に関する件)  (防衛費に関する件)  (資源問題に関する件)  (ドル問題と国際経済に関する件)  (対米ソ外交に関する件)  (極東の範囲に関する件)  (中東問題に関する件)  (外務大臣の訪米に関する件)  (国際人権問題に関する件)  (金大中事件に関する件)  (南北朝鮮問題に関する件)  (台湾における邦人逮捕に関する件)  (カンボジア難民問題に関する件)  (ミクロネシア協定に関する件)     —————————————
  2. 石破二朗

    委員長石破二朗君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  対馬孝且君及び橋本敦君が委員辞任され、その補欠として藤田進君及び立木洋君が選任されました。  また、昨三日、二木謙吾君及び大鷹淑子君が委員辞任され、その補欠として長田裕二君及び園田清充君が選任されました。  さらに、本日、長田裕二君及び園田清充君が委員辞任され、その補欠として成相善十君及び金井元彦君が選任されました。     —————————————
  3. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事戸叶武君を指名いたします。     —————————————
  5. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 次に、日本国ポーランンド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約締結について承認を求めるの件、日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定修正補足する議定書締結について承認を求めるの件、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件、特に水鳥生息地として国際的に重要な湿地に関する条約締結について承認を求めるの件、南極あざらし保存に関する条約締結について承認を求めるの件、以上七件を便宜一括して議題とし、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。大来外務大臣
  6. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま議題となりました日本国ポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国ポーランド人民共和国との間には、昭和三十四年に締結された通商に関する条約がありますが、昭和五十三年二月にポーランド側より、ポーランドガット加盟両国間の貿易の飛躍的な発展等に伴い、現行条約に比してより広範な事項について規定する新しい通商航海条約締結したい旨の申し入れがありました。政府としては、このような新条約締結両国間の経済交流等の一層の発展に資するところ大であることを考慮してこの申し入れに応ずることとし、昭和五十三年九月及び十月に両国政府間で交渉を行いました結果、条約案文につき最終的合意をみるに至り、昭和五十三年十一月十六日に東京において、わが方園田外務大臣先方ヴジャシュチック閣僚会議副議長との間で、この条約署名調印が行われた次第であります。  この条約は、第八十七国会及び第八十八国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  この条約は、本文二十カ条及び議定書から成っております。この条約は、まず、両国間の貿易発展及び経済関係強化のために協力することを規定しております。次に、関税、租税事業活動等に関する事項についての最恵国待遇輸出入制限についての無差別待遇、身体及び財産保護出訴権についての内国民待遇及び相互主義に基づく最恵国待遇商船出入港等についての内国民待遇及び最恵国待遇等相互に保障しております。また、この条約は、相手国国民を拘禁した場合の領事官への通報義務、その場合の領事官との面会及び通信入港船舶に対する領事官の援助、両国間の輸送及び通信促進仲裁判断承認及び執行、自由交換可能通貨による支払い、合同委員会設置等についても定めております。この条約締結により、わが国ポーランドとの間の経済交流がさらに安定的な基盤の上に一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国フィンランド共和国との間の文化交流促進するためにフィンランド共和国との間に文化協定締結することは、両国間の相互理解友好関係の一層の強化に資するところ大であると考えられましたので、昭和五十二年二月のコルホネン・フィンランド共和国外務大臣の訪日の機会に、鳩山外務大臣コルホネン外務大臣との間でこの協定締結交渉を開始することに意見一致をみました。その後交渉を行いました結果、昭和五十三年十二月二十七日に東京において、園田外務大臣とブロムステッド駐日フィンランド共和国大使との間でこの協定署名を行った次第であります。  この協定は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  この協定内容は、戦後わが国締結した各国との文化協定と同様、文化及び教育の各分野における両国間の交流を奨励することを規定しております。  この協定締結は、両国間の文化交流の一層の促進に資するところ大であると期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定修正補足する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国ドイツ連邦共和国との間には、昭和四十一年四月二十二日に署名された所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための協定締結されていますが、ドイツ連邦共和国昭和四十九年に行った財産税法改正及び昭和五十二年に行った法人税法等改正に伴い、この協定修正補足する必要が生じました。このため、政府は、昭和五十二年十二月以降数次にわたって交渉を行いました結果、昭和五十四年四月十七日に東京において、わが方園田外務大臣ドイツ連邦共和国側ディール駐日大使との間でこの議定書署名を行った次第であります。  この議定書は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  この議定書は、本文八カ条から成り、これによる主な修正補足は次のとおりであります。すなわち、協定一般対象税目として新たにドイツ連邦共和国財産税を加えるとともに、不動産恒久的施設事業用資産の一部をなす動産等を除き、日本居住者ドイツ連邦共和国内に所有する財産については、ドイツ連邦共和国財産税を免除すること、ドイツ連邦共和国居住者である法人日本居住者に支払う配当について、親子関係のある法人の間で支払われる配当の場合には、二五%であった従来の協定上の制限税率を一五%に引き下げること等であります。  この議定書締結によりまして、わが国ドイツ連邦共和国との間の二重課税回避の制度が一層整備され、両国間の経済関係緊密化に資することが期待されます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  海上における人命の安全のための国際条約は、海事関係基本的条約として長い歴史を有するものであります。この条約は、この種の条約として五番目のものであり、現行条約昭和三十五年に作成されて以来の技術進歩を考慮し、規制強化を主たる目的として昭和四十九年十一月にロンドンにおいて作成されたものであります。この条約は、昭和五十四年十二月十日現在米国英国等三十カ国が締約国となっており、本年五月二十五日に発効することとなっております。  この条約は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたか、審議未了となったものであります。  この条約は、航海の安全、特に海上における人命の安全を確保することを目的としており、船舶の構造、設備、積み荷等に関し、各国政府が自国の船舶に対してとらせるべき安全措置について詳細な技術規則を定めるとともに、これらの安全措置の実施を確保するために行う検査及び証書の発給並びに証書互認について規定しております。  わが国かこの条約締結することは、航海安全確保のための国際協力を推進するため、また、検査規準の統一及び証書互認により船舶運航上の不便を除去するために有意義であるとともに、海運及び造船の分野においてわが国が国際的に重要な地位を占めていることを考慮すればきわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  海上における人命の安全のための国際条約は、航海安全確保のため長年大きな役割りを果たしてきました。近年の技術進歩等を織り込んだ千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約は、昭和四十九年に作成されましたが、その後、海洋汚染防止及びタンカー安全性向上必要性が強く認識されるに至ったことを背景として、政府間海事協議機関ロンドンにおいてタンカーの安全及び汚染防止に関する国際会議を開催した結果、昭和五十三年二月にこの議定書が作成されました。この議定書は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  この議定書は、船舶、特にタンカーの安全を増進することを目的として千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約を修正する規定及びこれに追加する規定を定めたものであり、検査強化並びにタンカー操舵装置及び消化装置についての安全要件強化内容としております。  この議定書は、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約目的とする航海の安全の確保を、特にタンカーについて、一層増進するものであり、この議定書締結することは、この分野における国際協力を推進するため、また、この議定書で新たに定められた証書互認による船舶運航の自由を確保するために、きわめて望ましいと考えられます。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、特に水鳥生息地として国際的に重要な湿地に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、特に水鳥生息地として国際的に重要な湿地及びその動植物保全促進することを目的として、昭和四十六年二月にイランのラムサールで開催されました湿地及び水鳥保全に関する国際会議において採択されたものであります。沼沢地湿原干潟を初めとする湿地は、経済上、文化上、科学上及びレクリエーション上大きな価値を有しており、また、そこに生息する水鳥等保護するとの観点からも湿地環境保全必要性関係国の間で認識されるにいたり、この条約として結実したものであります。  この条約は、昭和五十年十二月二十一日に効力を生じ、イランソ連西ドイツ等の二十三カ国が締約国となっております。  この条約は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  この条約は、各締約国が、その領域内にある湿地を指定するとともに、その保全及び適正利用を図り、湿地に生息する動植物、特に水鳥保護促進することを主たる内容としております。  わが国は、自然環境保全促進する政策を推進してきておりますか、わが国がこの条約締結することは、自然環境全般保全に資することとなるだけでなく環境保全分野における国際協力を推進する見地からも望ましいものだと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、南極あざらし保存に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、南極アザラシ保護するとともに、これについて科学的な研究を行い、合理的な利用を図ることを目的として、昭和四十七年二月にロンドンで開催されました南極アザラシ保存に関する会議において採択されたものであります。南極大陸周辺浮氷水域に生息するアザラシはいまだ大規模な商業的猟獲の対象となったことはありませんが、商業的猟獲が開始される前に何らかの措置をとることの必要性関係国の間で認識されるに至り、この条約として結実したものであります。  この条約は、昭和五十三年三月十一日に効力を生じ、米国英国等の八カ国が締約国となっております。  この条約は、第八十七回国会及び第八十八回国会に提出されましたが、審議未了となったものであります。  この条約は、締約国国民または船舶がこの条約規定及び附属書規定される規制措置に従う場合を除くほか、南極アザラシを殺さず、または捕獲しないことを主たる内容としております。  わが国は、この条約の適用される区域でアザラシの商業的猟獲を行っておらず、また、近い将来これを行うことも予想されておりませんが、わが国がこの条約締結することは、南極アザラシ保存のための国際協力を推進する見地から望ましいものと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上七件につき、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  7. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 以上で趣旨説明は終わりました。  七件の条約につきまして、理事会で協議いたしましたところ、いずれの条約も第八十七回国会におきまして本院の審査を終了し、衆議院において審査未了となったものでありますので、本日の委員会において、直ちに採決に入ることに各党の意見一致いたしました。  つきましては、理事会協議のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより直ちに採決に入ります。  まず、日本国ポーランド人民共和国との間の通商及び航海に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  9. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国政府フィンランド共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  10. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税回避のための日本国ドイツ連邦共和国との間の協定修正補足する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  11. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  12. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  13. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、特に水鳥生息地として国際的に重要な湿地に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  14. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、南極あざらし保存に関する条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  15. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、七件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  17. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 次に、国際情勢等に関する調査議題といたします。  まず、大来外務大臣から所信を聴取いたします。大来外務大臣
  18. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私は今国会再開の冒頭の外交演説におきまして、私の外交に対する所信を表明いたしましたが、本日、この外務委員会の席において、再び私の考えを述べる機会を得ましたので、最近の国際情勢動きを踏まえつつ、所感をお話ししてみたいと存じます。  八〇年代は、アフガニスタンに対するソ連軍事介入の勃発の中であわただしく幕をあけ、はや二カ月を経過いたしましたが、その間にあって、八〇年代の国際情勢の厳しさとこれに対応するわが国外交責任の重さを改めて痛感する次第であります。  戦後三十余年にわたるわが国外交を振り返ってみますと、日米安全保障体制のもとでみずからの安全が直接脅かされるような危機にさらされることもなく、また、国際貿易に関するガット体制、及び国際通貨金融面におけるIMF体制という経済面での枠組みに支えられ、わが国は、主としてその国力を経済建設に向け、今日の経済発展を享受することができました。しかしながら、いまや、内外の諸条件は大きく変化いたしました。  たとえばわが国のGNPは、共産圏を含めた世界全体の中に占める割合は、一九五五年には三・五%にすぎなかったものが、一九七七年には八・七%と大きくその比重を高めております。このようにわが国国際的比重の高まりとともに、わが国動きは諸外国の大きな注目を集めるようになり、わが国経済面のみならず、政治外交面においても、その国際的地位にふさわしい責任と役割を果たすことに対する国際社会の期待はますます高まりつつあり、この傾向は八〇年代を通じて一層高まることが予想されます。わが国としては、かかる国際環境を十分認識しつつ、平和国家としての基本的立場に立って、米国との友好協力関係を基軸として、自由主義諸国との連帯を強化し、これを基盤として世界の国々と友好協調関係の輪を推し広げていくとの外交を一層強力に推進する考えであります。とりわけ、平和に徹する国家として、対立、紛争を抱える世界の諸地域からの不安定要因の除去のため、これまで以上に積極的に貢献し、世界平和が一歩でも前進するような国際環境づくりに参加していくことが必要であります。  また、インフレーション、エネルギー情勢等が厳しさを増す中で、わが国としては、世界経済の主要な担い手としての自覚と責任を持って、関係国と協調しつつ、世界経済の運営に積極的に参画していかなければなりません。さらに、わが国経済力と技術力を世界発展、特に、経済困難に悩む開発途上国の発展のために、従来にも増して建設的に役立てていくことが重要であります。  次に、最近の主要な外交上の動きにつき、簡潔に御説明申し上げたいと思います。  わが国米国との関係につきましては、両国関係の一層の発展世界の平和と安定のためにも重要であることは、すでに外交演説でも申し上げました。私は、世界的視野に立った信頼あるパートナーとしての協力関係を一層促進するため、国会の御了承を得て、近く訪米の機会を持ち、米国指導者層と幅広く意見を交換してまいりたいと考えております。巨大な経済力を持つ両国間で、貿易経済上の若干の問題がその時々で生じるのはむしろ当然とも言えることであり、重要なことは、かかる問題が深刻化する前に両国間の緊密な話し合いによって解決へ導き、ひいては世界経済の安定的な発展に貢献していくことであります。そのためには常に米国と緊密なコンタクトを維持、強化していくことが肝要であります。  アフガニスタンについては、ソ連軍の駐留が続くまま緊迫した情勢が続いておりますが、国連緊急特別総会、さらには先般のイスラム外相会議にも見られるように、ソ連軍事介入国家の主権、領土保全、政治的独立を侵犯するものとして、国際世論の厳しい批判を受けております。わが国としても、内政不干渉、民族自決の原則が尊重され、アフガニスタン国民がみずからの手で国内問題の解決を図るよう切望するとともに、引き続きソ連に強く反省を求め、ソ連軍の速やかな撤退を要求してまいる方針であります。  イランにおける米国大使館占拠事件もいまなお解決を見ておりませんが、先般、国際調査委員会が設置されたことは、事態解決のための第一歩として歓迎すべきことと考えており、バニサドル新大統領の選出等イラン国内の新たな要因とあわせ、事態の推移を注意深く見守ってまいりたいと思います。  今般、園田外務大臣が総理特使として中近東諸国及びインド、パキスタンに派遣されましたが、これはソ連軍のアフガニスタン軍事介入後の中東・南西アジア情勢を踏まえ、中東和平問題を含めこれら地域の平和と安定に貢献するためにわが国のなし得る方策を探求することを目指すものであり、今次訪問の成果を心より期待いたしております。  以上、申し述べました以外にも、わが国は解決すべきさまざまな外交課題を抱えておりますが、これに対しても積極的に取り組んでいく所存であります。  外交目的が、国民の生活と安全を守ることにあることは繰り返して申し上げておりますが、政治、経済文化等各般にわたる平和的手段で国の活路を切り開いていかなければならないわが国にとり外交の持つ重要性が八〇年代において一層強まることは申し上げるまでもありません。今後とも、皆様とともに、日本国際社会におけるあり方を考え、最善の努力を尽くす所存でございますので、従来に増して御理解と御支援を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。
  19. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 以上で大来外務大臣所信表明は終わりました。  引き続き、昭和五十五年度外務省関係予算並びに今国会に提出予定の法律案及び条約について順次概要の説明を聴取いたします。松本外務政務次官
  20. 松本十郎

    政府委員(松本十郎君) 昭和五十五年度外務省予算重点事項を御説明いたします。  昭和五十五年度一般会計予算において、外務省予算としては、二千八百五十九億九千百万円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、四百三十八億二千万円の増加となり、一八・一%の伸び率となっております。  次に内容について御説明いたします。  一、昭和五十五年度においては、特に定員の増強と機構の整備を図るとともに、在外職員の勤務条件改善の諸施策を強力に推進し、外務省の責務遂行に遺漏なきを期することといたしました。  外務省定員につきましては、本省及び在外公館の新規増七十八名、他省振替増三十六名、計百十四名の増員となりますが、他方定員削減が三十四名ありますので、純増員としては八十名となります。この結果五十五年度外務省定員は、合計三千四百八十三名となります。  本省の機構整備につきましては、中近東アフリカ局にアフリカ第二課を設置すること、経済局に海洋課を設置することが予定されております。  また、在外公館関係では、ブラジルのクリチバ市に総領事館の設置が予定されており、これが実現いたしますと、わが国の在外公館の実館は百六十四館となります。  このほか、セント・ビンセント、セント・ルシア及びキリバス国に兼館の大使館を設けることとしております。  不健康地勤務条件の改善関係費は、三億七千八百万円であり、前年度予算三億二千九百円円と比較いたしますと、四千九百万円の増加であります。  本経費は、勤務環境の厳しい地に所在する在外公館に勤務する職員の健康管理、福祉厚生施設等の改善を図るためのものであります。  二、次に国際協力の拡充強化に関連する予算の内容を御説明いたします。  南北間の相互依存性がより深まっております今日、政府開発援助、すなわちODAの重要性はますます高まっております。政府としては、ODA三年倍増の方針を実施しておりますが、五十五年はこの中期目標の最終年に当たっていることもあり、ODA事業予算としては、政府全体で八千四百二億円が計上され、その対GNP比も前年度の〇・三一%から、〇・三四%へと上昇しております。  また、ODA事業予算中の贈与予算が増加したことにより、事業規模に占める贈与の割合が五〇・一%となって、わが国が戦後本格的に経済協力を開始して以来、初めて五〇%の水準を超えました。  外務省所管のODA関係予算も積極的拡充が図られており、五十五年度分としては、総額一千九百五十三億三千万円が計上され、五十四年度当初予算と比較いたしますと、三百七十六億五千五百万円の増加となり、二四%の伸び率となります。  特に、二国間無償資金協力は外交の円滑なる推進に重要な役割りを果たしており、その予算は、前年度より百億円増の七百五十億円が計上されております。  技術協力の拡充は、人づくり協力の柱として外務省ODA事業予算要求の最重点事項の一つとして掲げられおりましたが、国際協力事業団の事業費は、前年度に比べて、一五・八%増の五百七十九億二千六百万円が計上されております。特に、海外技術協力事業費は、二〇%増の四百三十三億二百万円へと拡充されております。  なお、国際協力事業団の移住事業関係予算も、対前年度比約二〇%増の三十一億七千三百万円となっております。  国連諸機関に対する出資、拠出については、分担率の増加、円安及びインドシナ難民救済に関する国連諸機関への拠出金の増加等により、前年度に比して五一%増の三百八十九億二千八百万円が計上されました。  三、次に広報、文化活動の推進でございます。  海外広報活動の拡充強化のための経費は、二十六億六千百万円で、これは前年度予算に比し三億二千五百万円の増加でありますが、五十五年度においては、特にワシントンに広報文化センターを設置することとしております。  国際文化交流事業の充実、強化のための経費は四十八億六千七百万円であります。このうち、一般文化事業費につきましては、前年度予算に比し四一%増の七億七千三百万円でありまして、特にASEAN青年のための奨学金につきましては、十年計画の初年度分として百万ドルを計上いたしております。  また、国際交流基金に対しましては、すでに出資済みの四百五十億円に加え、さらに二十五億円の追加出資を行うこととしております。これに伴い同基金の年間事業規模は、三十七億二千百万円となり、前年度予算に対し四%の伸び率となりますが、新たに中国に対する日本語普及特別事業を開始するなど一層その事業内容の充実を図ることとしております。  四、重点事項の第四の柱であります日本人学校の新設を初めとする海外子女教育の充実強化のための関連予算としては、五十三億三千四百万円が計上されております。現在、海外在留邦人の同伴子女で義務教育年齢にある者はおよそ二万四千人に達しており、これらの子女の教育がきわめて切実な問題となっているので、昭和五十五年度においても引き続き海外子女教育の充実強化のための諸施策を推進するものであります。  具体的施策としては、アラブ首長国連邦のドバイ、チェコスロバキアのプラハ、ブラジルのビトリア及びインドネシアのメダンの四都市に全日制日本人学校を新設するほか、台湾の台中にある日本人学校分校を独立校に昇格することとし、この結果全日制日本人学校数は台湾三校を含み、六十七校となります。このほか、教員七十九名の増員を行い、教員の待遇についても必要な改善を行うこととしております。  以上が、外務省の昭和五十五年度予算重点事項の概要であります。
  21. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 次に、伊達条約局長
  22. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 今国会に提出済みでございますか、あるいは提出を予定しておりますか、あるいはさらに提出を検討いたしております外務省関係法律案及び条約につきまして、お手元の資料に基づいて順次概要を御説明申し上げます。  まず法律案は、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、一件でございます。  この法律案による改正の第一は、在外公館の設置関係でございまして、新たに設置する公館は大使館三、総領事館一の計四館でございます。大使館はいずれも他の国に駐在する大使をして兼轄させる兼館でありまして、カリブ海にあるセント・ビンセント及びセント・ルシア並びに大洋州のキリバスの三カ国に設置するものであります。総領事館はブラジルのクリチバに設置するものでありますが、これは実際に事務所を開設し、在外職員を駐在させる実館でございます。  改正点の第二は、既設の在外公館の昇格に関するもので、ペルーの在リマ領事館を総領事館に昇格させるものであります。  改正点の第三は、これら新設または昇格の在外公館に在勤する在外職員の在勤基本手当の額を定めるものであります。  改正点の第四は、最近の為替変動及び物価上昇にかんがみ既設の在外公館に在勤する在外職員の在勤基本手当の額を改定するものでございます。この法律案は、二月六日に提出されまして同日衆議院内閣委員会に付託済みでございます。  次に、条約につき御説明申し上げます。  まず二国間条約でございますが、日ソ及びソ日漁業暫定協定延長議定書二件は、今国会昌頭すでに御承認をいただきました。  日加原子力協定改正議定書でございますが、これはただいま当委員会において採決いただきました日本ポーランド通商航海条約日本・フィンランド文化協定及び日本・ドイツ租税協定修正補足議定書の三件とともに第八十七回国会及び第八十八回国会において審議未了となりましたものの再提出でございまして、現行の日加原子力協定を現状によりよく適合するために改正することを定めております。  次に、日比友好通商航海条約は、昭和三十五年に署名されました現行条約にかえまして、南北問題を初めとする国際経済の新しい動きを勘案し、両国間の通商航海について定めるものでございます。  日本・アルゼンチン文化協定は、わが国がすでに十七カ国と締結いたしております文化協定とほぼ同内容のもので、両国間の文化交流促進を図ろうとするものでございます。  次に、租税条約及び改正議定書か五件ございますが、日本・イタリー、日本・英国の改正議定書二件につきましては、いずれも先方の税制改正に応じ現行の条約に必要な修正を施すものでございます。日本・ハンガリー、日本ポーランド及び日本・フィリピンの租税条約につきましては、わが国がすでに諸外国と締結しております租税条約とほぼ同内容のもので、所得に対する二重課税回避を定めたものでございます。  「日・ソさけ・ます議定書」は、北洋の距岸二百海里水域の外側における本年のサケ・マス漁業について定めるものでございまして、近くソ連交渉を開始する予定のものでございます。  日本・ニュージーランド航空協定及び日本・バングラデシュ航空協定は、それぞれ両国間に直通の航空路線を開設するものであり、また日本・フィリピン小包郵便約定は面国間の小包郵便の取り扱いについて定めるものでございます。  次に、多数国間条約でございますが、まずお手元の資料の第四確認書から政府調達協定までの十件は、ガットの多角的貿易交渉関連のものでございます。昭和四十八年東京宣言によって開始されましたところの関税及び非関税貿易障害の低減を図るいわゆる東京ラウンド交渉の成果を集大成したものでございます。  次に、一九七四年の海上人命安全条約、同条約議定書水鳥温地条約南極あざらし保存条約、この四件はただいま当委員会において御採決いただいたものでございますが、さらに海洋投棄規制条約及び同条約改正の二件がございます。これも第八十七回国会及び第八十八回国会において審議未了となりましたものの再提出でございまして、海洋環境を汚染から保護するための廃棄物等の海洋投棄の規制について定めているものでございます。  万国博覧会条約改正議定書は、現行条約を全面的に改正し、国際博覧会の開催頻度を一層厳しく制限し、また国際博覧会の種類を万国博覧会と特別博覧会の二種類のみとすることを定めており、わが国が計画中の筑波科学技術博覧会は改正条約により規律されることとなる予定であります。  野性動植物取引規制条約及び同条約改正はワシントン条約と通称されているものでございまして、絶滅のおそれのある野性動植物保護のため、その国際取引の規制を定めたものでございます。  菌寄託ブダペスト条約は、微生物の利用に関する特許手続の簡素化を図るものであります。  一九七九年国際天然ゴム協定は、ASEAN諸国の関心品目である天然ゴムの価格安定のため緩衝在庫を設けること等を定めたものであります。  北太平洋おっとせい条約改正議定書は、今年十月に終了する現行条約の延長を図るもので、現在交渉中でございます。  国際連合工業開発機構憲章は、国連の開発途上国に対する工業化の技術援助の機関であるUNIDOを国連の専門機関とするためのものでございます。  一九六九年船舶積量測度条約は、船舶のトン数算定基準を国際的に統一することについて定めているものであります。  提出を予定いたしておりますものは、簡単ではございますが、以上のとおりでございます。  なお、提出を検討中の条約として十八件をお手元の資料に記載いたしておりますが、これらにつきましては対外交渉あるいは国内準備の進展がありました際に提出申し上げる可能性のあるものとして御参考までに掲げたものでございます。  以上でございます。
  23. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 以上で説明は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  24. 戸叶武

    戸叶武君 いま大臣から当面の重要問題に対する所信のほどを承りましたが、大来外務大臣の発言の中において、アメリカとのパートナーシップをさらに揺るぎなきものにするためには国会の協力を得なければならない、そうして当面している貿易その他若干の緊張面があるが、それを打開したいというお話を承り、国民から選ばれた国会の重要性を認識した上で、内閣だけの独走によらず国民の意向をくみ取って、日米関係を新たな角度で強めていかなければならないという見解には、やはりフレッシュなものを感ずるのであります。いままでややもすれば、外交権は政府にあり内閣にあるというような見解で独走に傾き、自民党の内部的な関係だけを固めれば強引に独走してもよいというような考え方が往々にしてあったように私たちは受けとめておるのであります。そうでなく、外交、防衛の問題貿易の問題すべて国の最高機関である国会の協力を求めて前進しようという態度の中に、大平内閣に入った外務大臣のやはり見識と、私は前向きの姿を感じ取ることができるのであります。  そこで外務大臣に、私は、いままでの質問の方式と違って、いまの日本の国是とも言うべきデタントか、戦争への危機を増大させるために協力するかの問題に対して、日本が一貫して平和共存の方向づけをやらなけりゃならない、その先頭に日本外交は立たなけりゃならないという積極的姿勢を具体化するためには、武田節にあるのではないが、「人は石垣、人は城」で、いまの外務省の陣営だけでは、果たして私は、このむずかしい国際情勢のもとに機敏に対応できるかどうかということに対しては疑問があるのであります。  そこできょうは、外務省の予算及び人員等に対して詳細に承りましたが、いま三千四百八十三名の定員を有するということでありますが、この定員は先進国における外務省の他国の定員と比較して、どのくらいな位置づけが行われているか、まず第一にそれを承りたいと思います。
  25. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この具体的な数につきましては政府委員からお答えさせたいと思いますが、大ざっぱな見当から申しますと、三千四、五百名というところはアメリカの四分の一、イギリスの三分の一でございますか、インドやベルギーよりも少ない数でございまして、国際的に比較いたしましてかなり手薄であるということは言えると存じております。
  26. 戸叶武

    戸叶武君 もうすでに戦後長い間外務省の中からも、せめて当時六位であったイタリア程度までも引き上げてもらわなけりゃならないという訴えが外務委員会においてはしばしば訴えられてまいったのであります。にもかかわらず、世界を相手に刻々に激動変化していく情勢を正確にキャッチすると同時に、そこからのパイプによって政府外交の方向づけが行われなけりゃならないという重大な段階に、いまのような陣容において果たして事足りるかどうかということはわかり切った話であります。  この数年間若干の改善はなされましたが、ことしから今後三年間ぐらいの間が世界の勝負どころであります。一国の運命をもここによって決するような場合もないとは限らないのであります。そういう危機感の土に立ってわれわれが対処するときに、この機会に平和共存体制を世界に確立する以外にない、戦争は不可能である、お互いに理解しがたきも理解し合ってデタントの道を歩まなければならない、これ以外に道はないという信念を持って日本外交を推進していくのに、片方においてはアメリカの軍部からこう言われた、アメリカの上院からこう言われた、アメリカにぶつけられてこうだという形で航空機を買い、自衛隊を増強しろ、軍艦を買ってアメリカに貸せというような——言う方の意見は勝手でありますか、それは聞きおくことも必要でありましようが、日本自体が本当にわれわれの憲法のとおり、われわれのいままで積み上げてきた外交の基本線を崩すことなく外交を推進していくという以上は、もう少しふんどしを締めてかからなければ勝負にならないと思うのです。  私が大来さんにあえて言うのは、体を捨てて外交のために、祖国のために殉じようという決意を持って困難な外務大臣の位置をあえて守り抜こうと決意した以上は、このことから問題を片づけていかなけりゃ、隗より始めよで、みずからの土台をしっかり固めなければ、ないそでは振れないであって、何もできなく終わってしまう危険性があると思うのですが、それに対するあなたの決意のほどはどうですか。  いまの三千人程度で果たして間に合うか。大ざっぱに言って、その倍ぐらいの六千人程度の人員がなければ、私は世界からの正確な情報をキャッチすることはできないし、また緊急の事態に、それに対応するだけの機動力を発揮することもできないと思うのであります。受け身の外交から積極的な外交へ転換するということを、大平さんも、前の外務大臣園田さんも、あなたも述べておりますが、言葉だけではどうも証拠にならない、具体的な回答にならない。そこで、具体的にどういう形においてそれをしていくか、その決意のほどを承りたいと思います。
  27. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまお話ございまして、外務省関係の人員の増強につきましては、当委員会からもいろいろ御厚意を賜っておるわけでございますが、この昭和六十年に五千名程度に増強するという計画を外務省としては持っておるわけでございますが、毎年予算の制限もございますし、定員上の制約もございますし、ことに本年は、政府全体としての人員抑制という方針もございますので、私どもの立場としては、きわめて不十分と存じておりますが、できるだけ質的な向上に努めることによりまして補ってまいらざるを得ない。しかし、今後にわたりましても、さらにただいまお話のございましたような御理解をいただければありがたいと思うわけでございます。  外交につきましても、確かに日本外交か、従来は双務的と申しますか、日米とか日中とか日ソとか日韓とかいうような、そういう問題が外交問題の中心を占めておったように思うんでございますが、最近になりますと、イラン問題、アフガニスタン問題等々日本が入らない、日か入っていないけれども、そのことが日本に大きな影響を及ぼし、日本としても外交的な選択をしていかなければならない情勢が顕著になっておるわけでございまして、こういう世界情勢をにらみながら日本の進路を決めていくという点では、従来より以上の外交ないし情報の機能を強化していかなければならないと私ども考えておりますので、今後とも国会からの御支援をいろいろな面でお願いいたしたいと存じます。
  28. 戸叶武

    戸叶武君 その問題は、外務大臣なり政府側に要請するだけでなく、この状態は見ていられないという形において、外務委員会等において、衆参両院の委員長理事あるいは、全員の協議会でも持って、この緊急事態を打開するためにはこれこれが必要だというぐらいを打ち出していかなけりゃこれは推進できないと思うので、改めてこれは、われわれ国会側においても委員長を中心として各党にも呼びかけて、ここでこれをやらないと日本はおくれをとってしまうのだぞという対策を練り上げたいと思いますから、そのことはお答えがなくてもこちらで問題を処理していきたいと考えております。  そこで、私は大来外務大臣にお尋ねしたいのは、最も世界で注目しているのは、いまの石油をめぐってのイラン革命と、このイラン動きがアメリカ側をして、あわただしくアラビア海に軍艦派遣となり、沿岸諸国を驚かし、さらに経済封鎖、食糧封鎖というような矢継ぎ早の戦争一歩前のような危機感があおられ、ソ連は、恐らくは軍部を中心にして強引にアフガンに戦車を並べて繰り出してくるというような状態が醸し出されました。第三次世界戦争は不可能であるということは、ソ連もアメリカの有識者も百も承知の上だと思います。こうやって危機感をあおりながら各国を刺激して、米ソ両国の覇権主義を露骨に打ち出してくるということは、両国とも余りにも傍若無人なやり方であって、ひんしゅくを買っております。アラビア海の沿岸諸国の人たちがアメリカに対して抗議を申し出、アフガンのソ連軍の侵入に対して、アフガン住民が命がけでわれわれの国土をわれわれが守るのだ、撤兵せよという抵抗が生まれてきたのには、住民の意思を無視したソ連もアメリカもいまさらなから私は大きなショックを受けていると思うのであります。  そこで、外務大臣に承りたいのでありますが、欧州共同体会議の外相会議で、二月十九日にこの問題が取り上げられ、チトー大統領は、二月二十日にアフガニスタン中立化の訴えをブレジネフソ連最高会議議長等に送っております。この真相は断片的には新聞に出てきておりますが、アメリカ側からもイギリス側からもフランス側からも、それぞれまちまちな非公式発表がなされておりますが、EC側及びチトーの訴え、それに対する回答、そういうのはどういう内容を持っているのか、それを外務省の情報をもとにしてでよろしいが、われわれは承りたいと思います。
  29. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまのアフガニスタンについての中立化構想と申しますが、この点は、ただいま戸叶委員のお話のございましたように、ECの閣僚会議で、英国のキャリントン外務大臣の提案という形で論議されたようでございますが、EC側ではこれをさらに具体的な提案にまとめてソ連側に申し入れをするということで、準備中と承知いたしております。なお、これに先立って、カナダ政府もこれに近い構想を持っておったようでございまして、その構想は、EC側の今後の動きに任せるということのようでございます。  これに対しまして、アメリカ、ソ連等の反応につきましては、外務省としても極力情報を集めておるわけでございますけれども、アメリカ側については、バンス国務長官等の発言で、中立化構想に興味を持っておるという意向が言われております。ソ連につきましては、反応が必ずしも明瞭でない状況でございまして、先般のブレジネフ演説の中にそのような、ソ連としてもこういう構想に関心があるような表現も一部ございますが、またこれを否定するような情報もございまして、いまだ明瞭でない。また現実にアフガニスタン、におきましては、ソ連の軍事力の増強が現在も行われておるということでございますので、私どもとしても、このアフガン中立問題につきましては大きな関心を抱いておりますけれども、まだ的確な判断を下し得ない状況にございます。日本といたしましても、先ほど先生もお話がございましたように、この米ソの軍事的な対決ということになりましたらそれこそ世界人類の滅亡につながることでございますし、あらゆる可能性、両者の対立の緩和についての可能性を探る、それに何かの形で努力をするということは日本外交としてやらなければならないことだろうと考えますので、このアフガンについての中立化の問題についても重大な関心を抱いておるわけでございます。
  30. 戸叶武

    戸叶武君 中東和平の根本的な解決というのは一朝一夕では簡単にできないだけの深い根があると思いますが、とりあえずアフガンからのソ連の撤兵なり、あるいはイランからの人質の解放なりというものから始められなければならないと思いますが、感情的に米ソ両国考えているよりも深いものが、憎しみが、不信感がソ連に対してもアメリカに対してもいまあらわにあらわれてまいりまして、時か長引くと思わぬ不祥事が起こるようなことがないとも限らない、そのことが心配でならないのであります。私はこの問題に対して、たとえばイギリスの外務大臣のごときが非常に積極的な姿勢を示しているが、アラブにおいて一番いままで信用がないのはイギリスです。イスラエルをつくり上げたバルフォア宣言以来のイギリスの謀略外交、あるいはアラビアのロレンスと言われた人物に対しても、一方の勢力と一方の勢力とを戦わせながら参戦に導いていったところの二重スパイではなかったかというような歴史の裏をいま暴露して書いている書物もあらわれているような次第であって、イギリスは油断がならないという形で、イギリスはアラブには足が踏み込めないような状態になっております。にもかかわらず、そういう過去の権謀術策時代のイギリス帝国主義の先入観を払拭させるために、現段階においてこの難問題に積極的に取り組んでいくイギリス外交の端倪すべからざるものをわれわれは学ばなければならないと思うのであります。  今度は園田さんがイランに足を踏み入れようとしたら、向こうの方で要らぬといって余りいい返事がないようです。これは、やはりイランの方の感情としては、素朴な感情は、われわれは産油国であるが、いままであの悪徳なメジャーが悪徳な王様をだまして一緒に組んで、彼らが金もうけをしてイラン人民を貧乏に陥れたという恨みが骨髄に徹しておるのであります。だからこそ大衆はニクソンにだまされ、ケネディに裏切られたという合い言葉でいま憎悪の炎を燃やして反米的な態度をゆるめないのであります。これはいままでの常識に反する、国際法のルールに反するということは言い得ても、この不信感と憎悪感というものを一朝一夕でぬぐい去ることのできないところに、いままでの帝国主義的な権謀術策というものをおのずから清算しなければならないところへきておるのであります。  ソ連は勝手に自分たちがアフガンの保護者だというふうなつもりでアフガンに軍を入れたが、一体だれが頼んでアフガンに軍を入れたかということに対してはソ連は答えられなかった。日本の共産党の安田代議士のごときも、一体だれに頼まれてソ連はアフガンに兵を出したかということに対してはソ連は明確に答えることができなかった。ソ連をかばうところのフランス共産党は現地に調査団を派遣して、ソ連やアフガンを調べても彼らの行動には間違いがなかったということは言っているが、だれに頼まれてやったかということに対しては答えができなかったのが事実であって、ソ連側では人民の要請にこたえたんだと言うが、これは抽象的な答弁であって、何ら具体的な回答には私はなってないと思うのであります。そこに共産党陣営においてでも、フランス共産党は孤立して、欧州議会の集会におきましてもイタリア、スペイン、日本の共産党まで不当な軍事進出であるということを明快に責めたてたのであります。反共的な人たちは、これを共産党一流の煙幕を張っての謀略だから信じられない、まゆつばだと言っている人もありますが、それは主観的ないろんな見解でありましょうが、いま世界を挙げて共産主義とか社会主義とか資本主義とかいう色分けだけじゃなく、だれが正しいかでなく、何が正しいかという真実を追求しようとする意向というものが私は噴き上がってきていると思うのであります。そういう点において、具体的な実証性的な説明なしには、その国の主観的な見解においては世論を納得させることはできないところまできたと思うのであります。  こういうふうに外交が質的転換を行おうとしているときに、よけい外務省の情報というものは正確を期して、何が事実であったか、いい悪いかは次の課題として、ザインの客観的な観察と認識、正確な事実を事実としてキャッチできるような情報の整備というものが平和外交においては最大の武器であると思うので、先ほども私は単なる外務省の肩を持っての増員問題を論じたのでなくて、今後の外交世界の人々を納得させるだけの材料を具備して物申さなければだれも聞かない。またあの手かと言われることになる。もはや覇権主義的な権謀術策の外交の時代は去った。キッシンジャーの本は売れても、キッシンジャーなどという人の顔を見るのもいやだという人が多くなってしまった。そういうふうに、すでに推理小説的な投機的な外交技術はさようならをしなけりゃならない時代が来ているのであります。  そういうときに日本は新しいタイプの外交官をつくり、新しい外交によって世界の人々の生活の繁栄に方向づけ、平和と安全を守り抜くという微動だにしない姿勢を示さなければ、また日本があの手でやってきたかという形では、華やかに見えてもそれはうつろな外交になってしまう危険性があるので、いま園田君はイランに入ろうとしても入ることができない。それに反して、アメリカからは大来さん来てください、おうきたと言ってオーケーで行かなくちゃならない。また、大平さんいらっしゃい、参勤交代と間違えられては困ると思って大分渋ってはいるが、やはりパートナーとしてアメリカの意向も聞きに行かなけりゃならない。それをやった後で六月のサミットにおいてこの中東問題の解決、エネルギー問題の解決、東西南北の相克を解決しなけりゃならないという世紀的な外交が展開されようとするときに、やたらに方々寄り道して歩いていったのでは、あっちこっちで荷物をしょわされて、イタリアのサミットの会場にたどりついた時分はくたびれちゃって物が言えないという状態になってしまうんじゃないか。  私は、いまここで必要なのは、日本の総理大臣なり外務大臣が腰を据えて、人々に盾突くことはしないが、聞くことは聞いても、言動は慎重に行って、なるほど日本は一国の利害だけでなく世界の明日のために、人類のために、繁栄と平和のために献身しているんだということを、相手がわかってくれようがくれまいが、祈るような気持ちでやらなければ、日本が本当に変わったということを世界は認めてくれないと思うのであります。そういう点において、大来さんは単なるエコノミストではないと、私はそう思う。最初の所信を聞いたときに、これは体をなげうって外交に献身する覚悟で来たんだな、逃げたかったんだろうけれども、逃げるわけにもいかないので外務大臣を引き受けたんだなということを感じ取りました。私は、いま、いろいろな角度から物は見ようがありますが、いまの大平さんでも私は前の園田君でもあなたでも、日本の運命、世界の運命を決するためには人柱になろうというだけの決意ができていると私は思うのです。できなけりゃ、もう総理大臣も外務大臣もやめるべきです。この機会に、日本の本当の悲願というものが世界の人々にしみ通らなければ、日本の明日はないと私は思わなければならないと思うのですが、アメリカに行って、心安さにあなたにはいろいろなことを向こうは言うでしょうが、賢人の中心人物として選ばれた人が一国の外務大臣になったからには、単なる総理大臣の最高諮問機関、日米間における経済摩擦の緩和のブリッジとしての役割り以上に、課せられた使命は、私は重大だと思うのです。  そういう意味において、園田さんが行かなくても、あなたがアメリカからあれほど信用を受けている以上は、アメリカの言うべきことは聞き、日本の言うべきことは、あなたが言ったのなら大抵、日本人としてアメリカが一番わかっている良識者の言だからといって、アメリカのはったり政治家の言うことよりは私は耳を傾けて聞いてくれると思うのであります。どうぞ、大平さんの道は、メキシコ、カナダ、アメリカへの訪問もやむを得ないかもしれませんが、六月の先進国会議においては何を世界日本に期待しているかということを想像してみただけでも、日本政府はそれに対する明快な回答の準備ができているかということを私たちはあえて問いたいのですが、大平さんの大事なその本舞台の方の準備はもう万端整っているのでしょうか。
  31. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いろいろ基本的な、根本的な考え方についてお話しをいただきまして、私もできるだけの努力をいたしてまいりたいと考えるわけでございます。  サミットにつきましては、この年末に第一次的な東京サミットからベネチア・サミットへのバトンタッチの意味での関係国の相談がございましたが、この次のベネチア・サミットについての議題内容について具体的な打ち合わせはまだ行われておりませんで、近いうちに各国からそれぞれ担当の者が出て相談することになっております。まだ何が次の議題の主要なテーマになるか現状では、現段階では明らかでございません。ただ、昨年の東京サミットのようにエネルギーの将来の輸入目標というようなことは今度のサミットの主要な議題にはなるまい、もう少し幅の広い面からの意見交換が行われるであろうと推測いたしておるわけでございます。従来、マクロ経済の問題世界貿易の問題、通貨の問題、南北問題等、それからエネルギー問題を取り上げてまいりましたが、いままで経済サミットということで言われておりますので、やはり主題は経済問題になるかと思いますけれども、いまのような世界情勢でさらに広い問題についての意見交換もあるかと思います。その場合、お話もございましたように、日本の果たすべき国際的役割りというものを踏まえて私どもとしてもいろいろ発言をしてまいらなければならない、というふうに存じておるわけでございます。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 どうもあなたがアメリカへ行くと心安く物が言えるのかどうかしれないが、やはり貿易関係のアンバランスの問題、日本の自動車の洪水のようなアメリカ市場への殺到の問題、あるいはイラン、アフガンの問題をめぐっての日本防衛費増大の要請の問題いろんな難問題が露骨に出されるのかと思いますが、いままで防衛費を〇・九%でとどめようというのが、あなたすらも防衛費を一%へ持っていかなけりゃならないような発言にまで後退したことに対して、私はいまの空気ならば、そういうことを答えなけりゃ、いま自民党内閣の外務大臣は務まらないのかもしれないが、これは一度明確に約束してしまうと抜き差しならない状態に大平さんも追い込まれるのかと思って心配しておりましたら、きょうの新聞に、外務省は「安保政策に新視点」という見出しで「米世界戦略に対応」という形で、いまNATO方式の計算ではGNP比一・五%まで日本防衛費はきているんだということは、いままでへっぴり腰の外務省としてはびっくりするような正直な発表を行っておりますが、ここで国会では恐らくはこの問題をめぐっての論議がなされると思いますけれども、これを発表するまでには外務省としても相当の勇気が私は必要だったと思いますが、この内容はいかなるものなのか、数字だけではわからないそこに何か抵抗がひそんでいるかのようにも見えるんですが、真意はどういうところにあるんでしょうか。
  33. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 防衛費の支出がGNPの〇・九%と、これは日本の予算あるいは財政における防衛費の支出がその規模でございますけれども、従来国際比較におきましては、その取り上げる項目につきまして、日本の予算における、財政における防衛費の項目とNATOの各国の比較の場合に項目の食い違いがございまして、これを修正してNATOベースで日本の防衛関係支出、特にこれは軍人恩給等が日本の場合には一般の予算、防衛費以外の項目に含まれておりますので、これをNATOと同じベースで計算しますとGNPの一・五%程度になるということでございまして、これはまあ従来いろいろな機会に言われてきておるわけでございますが、必ずしも一般に知られていない。特に海外におきまして、アメリカはGNPの五ないし六%を支出しているのに日本は〇・九%というのでは余りにアンバランスではないか、ただ乗りではないかというような言説がしばしば出てまいりますので、アメリカと同じベースで計算すれば下五ということになると、これは事実関係として明らかにしておく必要があるというふうに考えておったことでございます。まあ一・五でも、それはアメリカ、ヨーロッパが、大体西欧諸国が三・五%ないし四%という防衛費の比率から見れば低いと言えるわけでございますけれども、しかし、そういう客観的な数字に基づいた議論が国際的に行われる必要があるということで、特にこの数字、これは別に秘密でございませんので、従来からも一部には出ておる数字でございますので、記者会見の際に申し上げたわけでございます。
  34. 戸叶武

    戸叶武君 いや、これは特に強調したんでなくて、いままで明らかになっていることを述べたまでだというところにかえってこの数字の価値があると思うのであります。しかしながら、いままでの政府並びに国会の論議は〇・九%というところで論戦を展開しておりましたが、そういうようなふうに、事実の認定から、国際的な通念から外れた一つの認定のもとに論議が展開しておったのでは空転に等しいものでありまして、政府国会もその怠慢を笑われなければならないのであります。こういうふうにイデオロギー抜きに国際的な通念を基礎として正確に数字が出るならば、私たちはそれによってでも問題は、私は新しい角度で、新しい角度というんじゃなく、もっとまともな論議が私は国会でもなし得るような新しい慣例が生まれてくると思うのであります。  政治的というのは、あいまいさを含んでの政治的解決というのがこのごろはやっておるのであって、あいまいでたらめに言っていればあれは政治家たということに——政治というのは、東京の現在進行中の黒い霧の裁判を見ても、どこまでが白でどこまでが黒か。いままで裁判の権威者が今度は裁く方じゃなくって弁護士の方へ回って金もうけをやっている。こういう不可思議な国における不可思議な現象がいま政界だけでなく至るところに累積しておりまして、これが私は政治に対する不信とつながっておるとも思うのであります。そういう意味において、このけさの新聞を見て、外務省にもまだやはり骨が残っているなということを感じたのであります。  いま私は、欧州議会に出て非常に教えられた点は、在来の議会政治がややもすれば形式的になり、ひな壇で形式的な論議を行い、採決の数で物を決定していけばいいというようなマンネリ型に陥ったのに対して、これとは逆に、いろんな難問題を全部しぼってきて、思い切ったことをそこで発言してもらい、そうしてそれを参考にしてあくまでも話を煮詰めて、各国の合意を求めることによって問題解決に当たろうとしている新しいタイプの民主的な議事運営というものが出てまいったのであります。  動揺しかけたときのルネ・キャピタンの議会政治の危機の演説に私は感心したことがありますが、人民主権の革命を断行したフランスの政治がいま一番おくれてきてしまったじゃないかと、小党分立によって政権獲得にのみきゅうきゅうとして、何が国のために大切かということも忘れ去ってしまっている、これでは政治ではないという形においてルネ・キャピタンは、あの左の作家であったアンドレ・モーロアとともに、単なる愛国者で相国のためならば死んでよいという、相国の栄誉のためにだけ生き長らえたドゴールをファシズムの方向へ持っていかないで、その政治理論においては感心できないところもあるが、フランスで解決のつかない問題を解決つけるために、インドチャイナにおける植民地、北アにおける植民地、ぐずぐずしてないで帝国主義の落とし子としているような人たちのテロ行為をも封殺して問題解決に当たった。あのことだけの勇気でもフランスの栄誉は私は幾らか取り返された面があると思います。  今度の列国議会同盟に行って、イギリスの保守党の一議員でありますが、永井道雄君も、この人のことを前に会ってびっくりしておりましたが、イギリスがローデシア問題を片づけること、アフリカから白人が政治的に撤退して黒人の手にゆだねること、このことを実現することによってイギリス帝国主義の清算が初めてできたということを世界に証拠立てることができるのであり、それによってのみアフリカはよみがえってくるのであるというようなあいさつをされたのを聞いた。イギリス保守党の中において奇人扱いをされているが、一人の人でもその信念を貫けば、ローデシア問題を前向きに解決づけ、一つの威力を発揮することができるのです。  日本にはいま、保守とか革新だらけじゃなくて、本当に権謀術策とずうずうしいだけで、金の力だけで、権力を握っていれば何でもやれるというようなごろつき政治から日本が解放されなければ、日本はだれもこれは尊敬する者がなくなります。  ドゴールの新しいフランスづくりの中において感心すべき点は、政治家は見識を持って責任をとること、それと同時に官僚は——官僚と言っては怒るかもしりませんが、やはり国家に奉仕すべきところの公吏はエキスパートとして忠実に祖国のために献身し得るような体制をつくること。このステーツマンと新しいタイプの国家に奉仕するエキスパートとの協力のもとにおいて、ギリシャ以来のオリガーキーかデモクラシーかの問題、賢人政治かデモクラシーの政治かの是否を論ずるのでなく、具体的にそこに新しいタイプの政治の姿が生まれてこなけりゃならないという信念のもとに責任ある政治を運営しているようであります。ミッテランに大きな期待をかけた人でも、やはりジスカールデスタンが持っている謙虚な一つの政治に対する理想というものに対しては、主義主張の上で違う点があっても協力を惜しまないし、またいまの婦人の議長がついてもりっぱに役割りを果たしております。  私は、いま議会というものにだけ心を注いでおって、議会政治の中から政権の移動なり理想的な選挙なりが行われなけりゃならないということだけに頭がいっぱいでしたが、ヨーロッパにおけるこの欧州議会の運営を見て、ここから新しい芽が出てきたんだな、世界の中の日本、ヨーロッパの中におけるイギリスなりフランス、ドイツ——国境を越えて国際的連帯の上に立って平和共存と戦争のない世界をつくり上げようという努力が、じみだけれども積み重ねられて、三十年前にシューマンプランが提出されたときに、これは夢物語ではないかと言った人もあるが、夢ではない、その理想が、最もむずかしいとされているところの食糧、農業問題から問題の解決へ入って、いまでは経済封鎖とか食糧封鎖などということは人道上すべきものではないというだけの提言も厳しく私はアメリカにもなされると思うので、いち早くそれを察知して、いまのカーターは経済封鎖を断念したようであります。  どうぞそういうように、大国なるがゆえに、軍事力を持っているがゆえに、力があるがゆえに、資源を持っているがゆえに何でもできるというような時代は去ったのであります。ソ連もアメリカも国際的に孤立したときには、マンモスが永河の中に埋もれたように、生きる力を失っていかざるを得ないのじゃないでしょうか。私はそういう意味において、ソ連にもアメリカにも、その恫喝にも威力にもぶったまげる必要はない。日本だけ孤立するんでなくて、やっぱり世界の人々の苦労を、世界の人々の立場を理解して、それを生かしてやる思いやりの政治が日本から出てこなけりゃどこから出てくるかということを考えてみたならば、日本の持っている役割りというものは非常に重大なんです。あえて私は大来さんや大平さんや園田さんに言いたいのは、国や政党を乗り越えてじゃないといまの世界の危機は救えないと思うんです。このときに、あなたたちの一挙手一投足、言動というものに世界の人々が耳を傾けて聞いているのです。  われわれはECの生意気な官僚にウサギ小屋に住んでいると侮辱されても、それはうれしいことだ。われわれの個人生活は貧しいけれども、われわれの耳はウサギの耳より敏感に世界の訴えを聞く耳を持っているんだということによって、その耳をときどきソ連やアメリカにも貸してやるぐらいな——賃貸しでもいいから、やはり私はゆとりを持ったら、なるほど日本の耳というのはうまくできているなというふうに向こうでびっくり仰天すると思うんですが、どうぞそういうような、外務省で、軍艦や飛行機や経済断交でこけおどかしをせずに、何が真実か、どの道を行くことが世界の明日をかち取ることかを——教えなくてもいい、小さな声でつぶやいても、向こうでは盗聴器を持っていますから聞いてくれると思うんです。どうぞそういう意味において、私は人を選んで物を言っているんです。大来さん、どうせあなたも死ぬんです。死ぬならば、きれいな記録を残して死んでいってください。政治家が本当に率先して、体をなげうっていかなければ国民はふるい立つことはできません。どんなりっぱな飛行機や軍艦を買ってみても、片手——五億円いただいたなんていうのが随所に出てきたならばだれも死ぬ気はなくなってしまいます。アメリカだって大学の中で強硬論やっても、戦場へ行くのを喜ぶ人はだれもいなくなっている。いままでは黒人に麻薬を注射して、ベトナムや何かで使ったかもしれないが、それがためにアメリカの道義はどれだけ荒廃したかもわからない。戦争は悪魔の道です。私は、きれい事によって戦争は飾られていても、けだものより汚い道を歩まなければならないので、地獄の道へ行こうとする者は、手っ取り早く私は死を急ぐのも結構ですが、どうぞそういう意味において、日本日本だけのことの利害で行動しているんじゃないというのは、あなたなんかは国際人だから、アメリカにも世界にもわかってもらうには非常に都合のいい人です。安売りしないで、どうぞどっしりと構えて物申して、一つの、パートナーシップというのは迎合することではない、参勤交代ではない。相手の胸ぐらを取ってでもこの道以外にあなたの生きる道はないし、世界の生きる道もない。パートナーとして日本は余り力にはならないかもしれないが、このことだけは世界の人々の声を代表して物申すというだけの見識が外交の魂です。  政治家の生命は見識であり、政治家の評価はその進退によって決するのです。文明史観と哲学を持たない権謀術策の三流の政治家にその国の運命や世界の運命をゆだねることはできないので、私はいままでアメリカの大統領のブレーンという学者やいろんな人にもお会いしましたが、剣劇もどきの外交はごめんです。新国劇にでも入ってもらえばいいんです。私はもっと高い知性と見識が生まれなければ世界を立て直すことはできないと思うので、それには隗より始めよで院より始めるのには甲斐の武田信玄が言ったように「人は石垣、人は城」、しっかり次の時代をも責任を持てるような陣容を外務省にもつくり上げていただかれんことを私は切にお願いいたします。  それでは、細かい点に入らないと戸叶武、大言壮語だけで終わったなんというのではいけませんから、じみな問題に入りたいと思います。  そこで、問題は、最近問題になっているのは、アメリカで、ヨーロッパで心配しているのはやはりインフレです。エネルギーの問題よりも、イギリスでは石油も出てきましたし、ドイツでは石炭の液化の問題とも取り組んでいますし、フランスでは原子力の活用ということともまじめに取っ組んでおるようでありますが、それぞれそれなりの努力は払われているようですから、いまわれわれがどうこうと言うのではありませんが、第一次世界戦争、第二次世界戦争を食いとめようとしても食いとめることができなかったのは、民衆が窮乏の中に狂乱せざるを得なかったインフレであります。ヒトラーのような、顔を見ただけでも典型的な変質者をあのような形において踊らせたのもやはり大衆の窮乏だと思うのであります。  そこで、いまソ連で恐れているのも私はやはり食糧の問題でありインフレの問題だと思うんです。アメリカでは戦略物資として十年ほど前からすでにエネルギーと食糧の問題に取っ組んでおりますが、いま日本の円の不安定な状況に対して、いままで変動為替相場等の操作を通じて日本はアメリカさんが手助けしなくともスイスやあるいは西ドイツやときにはフランスとも結んで多国籍のドル、アメリカで政府が、これをコントロールすることができないと言う人の力の市場への出動をも食いとめて、円の安定を私はいままでやり抜いてきたと思うのであります。最近になったら風の吹き回しが変わって、今度はアメリカの方で積極的な協力をやるということを言っただけで円が少し安定への方向へ変わってきたようですが、いままではできないと言っていたのを今度はアメリカでできるというふうに変わった風向きの変化は何から起きたのでありましょうか。
  35. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 今回の円相場の問題につきましてはいろいろな原因があると思いますが、何といっても一番大きな原因といたしましては石油の値段が一年間に約二倍に上がりまして、今年におきましては、この五十五年度におきましては大体六百億ドルぐらいの外貨を石油の輸入のために使わなければならない。大体日本の全体の輸入額の半分程度になるかと思いますが、これが一年間に二百億ドル前後の支払いの増加になるわけでございまして、輸出も伸びておりますけれども、貿易の赤字、経常収支の赤字が拡大しておりますので、現実問題としては日本の対外取引でドルが不足して円が余るという形になるわけでございます。  もう一つは、やはりこういう世界情勢のもとでアメリカが食糧の大輸出国でございますし、エネルギーその他の資源についても国内に大きな資源を持っておる。そういう意味でのアメリカ経済について、したがってドルについてのある程度の評価、資源が安全であるというような点を含めた評価があって、ドルが相対的に強くなっておる面もあるように思います。こういうような点で円が弱くなる。さらに言えば、内外の金利差が非常にこれも働いておると思いますが、日本は比較的低金利の経済を維持しておりますし、アメリカは非常な二けたの公定歩合というものにもなっております。いろいろな原因が絡み合ってきて現在円がドルに対し相対的に弱くなってきておる。それが現在のこの相場、円の為替レートの動きの背景にある幾つかの原因ではないかと考えております。
  36. 戸叶武

    戸叶武君 ヨーロッパにおきましては、われわれか想像した以上に、第一次世界戦争の暗い谷間の時代にも、また第二次世界戦争に突入した場合においてもやはりインフレの恐怖感というものは深く刻み込まれているのであって、このインフレを食いとめようという共通の悲願というものは今日においてはドイツ、フランス等を問わず、ヨーロッパ、特にEC加盟の九カ国においては強力な一つの連帯の力となっておるのでありまして、ヨーロッパ自身に通用するところの基準通貨的なものもでき上がったのでありますが、それを国際基準通貨にまでもっていったらどうかという意見があっても、ヨーロッパでそれに応じないのは、アメリカがやる気ならばアメリカはどこの国よりも石油も持っている、食糧も無限の豊富さを持っている、資源か豊かである。その国がもっとまともにドルが国際基準通貨的な役割りを果たさなければならない使命感を認識しなければならないし、それとなれば協力していくという形に変わってきておるのであって、ヨーロッパ自身に思い上がったような態度はどこにも出ていないのでありますが、問題は、貿易の中におけるスムーズな発展を促すのは、一つはやはり通貨の安定であり、一つは関税障壁による保護貿易主義を打ち破っていくことでありますか、世界の大勢はその方向に向かってきておると思うのであります。国際基準通貨としての権威を保つために金から離れ出た段階においてすでにケインズとホワイトとの論戦というものは厳しい論戦かなされたのですか、あなたも御承知のように、戦争に打ちかったアメリカのゆとりのある繁栄を背景として、ドルをもって国際基準通貨のような振る舞いをさせるに至ったのでありますけれども、その後におけるドルの動きというのは明らかに不安定な要因がありまして、どこかで変な操作が行われているという感じはだれにでもわかる。これがアメリカが信用を失った一つの原因ではないかと思いますが、それと同時に、無国籍のドル、ユーロダラーのいたずら、スイスの銀行に隠れてはねらい撃ちをやるやり方、そういうものが裏舞台が全部わかってきている。皮肉になるから言わないまでで、自衛手段でもって西ドイツなりスイスなり日本なりはそれなりの対応策を講じてきたからいままでメジャーやあるいはユーロダラーのいたずらが簡単にできないような、いたずらをやっても効果を上げられないような仕組みを考えたのじゃないかと思うので、もう魔術が効かなくなったので、この辺で変なかたき役的な憎まれ役になるよりはまともに返ろうというところにアメリカも変わってきたのじゃないか、そういうふうに在野政治家だからわれわれは思わざるを得ないのでありますが、本当にそれではアメリカは、世界じゅうを泳いで歩いているところのアメリカの国籍ではない、アメリカではつかまえられないというところのものまでコントロールするだけの能力を政府が具備してきたのでしょうか。どうかその辺は、あなたは余りにも親しいだけに歯に衣を着せないで物を言えないかと思うのですが、歯に衣を着せてもよろしゅうございますが、その辺の消息をわれわれに知らしてもらいたいと思います。
  37. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまある程度相対的にドルが強くなっておるわけでございますか、ただ、基本的にはドルにも高いインフレ率の問題それから生産性が各産業とも余り上がらない、長期的にインフレの問題、生産性の停滞というような問題を抱えておるわけでございまして、一方、日本はまだ経済か相当ダイナミックでございます。一九七三年当時の石油危機を振り返ってみましても、あの当時は日本の卸売物価は一年前に比べて三十数%上がった時期がございましたが、やがてその後、国際収支も大きな赤字になったのでございますが、その後は日本経済が比較的速やかに新しい情勢に対応して、やがて大きな黒字を生み出すようなことになったわけでございまして、まあ現状をもってドルの問題あるいは円の問題を判断することは不十分だと考えております。もし、世界が大きな動乱に向かって動くとなればこれは論外でございますが、再び緊張緩和の時代になれば、日本経済も高い石油に対応して再びバランスを回復するという可能性は十分あるように思いますし、またアメリカにつきましては、やはりいまから二十年ぐらい前には世界のGNPの三分の一を占めておったわけでございますが、いまは四分の一以下に相対的に下がってきておりますし、やはり世界経済世界の通貨制度の維持につきましてはアメリカ独力では困難な時代になっておると思います。結局、ヨーロッパ、日本等の経済力を持った国々との協力によって世界の通貨制度の安定を図る国際協力か必要な時代になってきておると考えております。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 大臣は経済の方のエキスパートでありますが、私は政治でも経済でも今日の段階において非常に急務なのは、発想の転換をやらなければ、いままでのような観念では対処できない面か出てきたのではないかと思うんです。たとえば、経済理論の面におきましても、ケインズ批判か非常にはびこったりしておりますが、ケインズの理論はあの当時の必要に応じて打ち出された完全雇用の学説でございまして、学説だけではなくて、政治の停滞に対する新しい活路を開いたものであります。  私は第一次世界戦争と第二次世界戦争の暗い谷間の時代の世界経済恐慌の時代に、若いときにイギリスでそれを経験しましたが、オールドソーシャリストはこれに対応するだけの政策を持ち合わせなかったのか事実でございます。  「ソーシー、リスト・ムーブメント」を書いたあの輝ける指導者と言われ、第一次世界戦争に真っ向から反対を説いたマクドナルドでも、議会の中で初めて社会主義綱領を示したスノーテンでも、気の毒なことに非常に古いタイプのソーシャリストであって、やはりイギリスの繁栄というものだけを考えて、世界動きに対応する柔軟な姿勢がないところにナショナルレーバーの破綻があったのであって、労働組合の圧力のもとに失業者救済あるいは失業手当、そういうような問題を具体的に積み上げた功績は大きいのでありますが、やっと貧乏長屋で生きることができる程度の失業手当や何かを持ってごろごろしていかなきゃならないということにおいては、イギリス経済に新しい活力はもたらされない、労働者に明日に希望をつなぐことは与えられないときに、そういう方法でなくて、働かんと欲しているのが国民の大多数だが、職がないのだから、これを生産に従事させることによって、全員を雇用することによって新しい活力を生み出さなければならないというニードに応じてのケインズ理論の展開は、理論があって政策が生まれたのでなく、現実の要請と政策が絡みついて発展したものであって、経済学におけるフィジオクラットの重農主義でも、マーカンティリズムでも、いまから学者諸公はいろいろな批判はできるけれども、その時代の要請にこたえたところの私はそれなりの経綸であったと思うのであります。  いま足りないのは、この行き詰まった現実に対して、具体的な回答を持ってこれを打開するという国民的なニードに応ずる一つの政策の躍動がないところに政治の私は停滞があるんじゃないかと思うんです。そういう意味において、経済だけと取っ組んでいたのではこの国はよくならないという信念のもとに、エコノミストとして国際的にも著名であったあなたが政治の世界に入ったのでしょうが、ドイツでも、あの第一次世界戦争からワイマール時代を崩壊に導いたようなときに、社会主義財政学者としてのエーベルトが大統領になり、レーニンすらもカウツキー以上に敬意を表した「金融資本論」のヒルファディングが二回も大蔵大臣になったけれども、ドイツの混乱に対してこれを展開するだけの政治力の躍動を促すことはできなかった。むしろシュトレーゼマンのような——中間的な政党にはおったが、政党のいかんではない、戦争に打ちかった人たちの無法な賠償金の収奪の中にドイツの労働者はあえいでしまって、労働意欲も失ってしまった、産業は荒廃していく、この問題を解決つけなければドイツの復興はあり得ないというシュトレーゼマンの十年余にわたる闘いというものは、心身ともに疲れて彼は死んでいってしまったけれども、ああいう政治家が本物の政治家であって、イデオロギーや理論をもてあそぶことはだれにでもできる。祖国の行き詰まった状態を具体的に打開するために体を投げ打っていく政治家がいま日本には私は非常に必要になったのではないかと思うんです。真理は常に具体的でなければならない。観念的なイデオロギーや宗教の魔術でなくて、常識的な、具体的な提案を通じて政治が国民の合意を求めなければならない、そういう時代に来たんだと思うんです。いま、あとは見識とともに勇気さえあるならば、国民は歓呼の声で私は新しい道を歩むところの準備はできてきていると思うんです。  で、これは私、最近、ことしになってから一番打たれたのは、フィンランドの——きょう可決した条約もありますが、元大臣であり、いまは総理大臣をやめて、外務大臣の経験もありますが、一院制度のもとにおいて外交委員長を務めている四十九歳の社会主義インターのチャンピオンである人物がフィンランドの国会の人々を連れてきて、一時間の会見が二時間となり、二日間にわたって紅茶を飲みながら語り合ったのでありますが、彼の言うのは、私たちはソビエトロシアに隣り合っている。二回も戦争をしかけられて二回も負けて領土を取られた。しかしながら、われわれのふるさと、われわれの祖国を守る者はだれか、われわれ以外にないんじゃないか。国民一致団結するならば、このわれわれのふるさとを守り祖国を守ることができるんだ。いま現実にソ連と比較したときに、国民一人の所得ソ連より上だ。しかもわれわれの生活はソ連人よりも自由である。そうしてわれわれは、イデオロギー的にはソ連に近い人もあるし、ドイツに近い人もあるけれども、われわれの責任で祖国フィンランドを守らなければならぬという点には一致点が見出されて、国民的合意がある限り、国民との話し合いによってスクラムを組んでわれわれのふるさとと祖国を守るというだけの熱意がある限り、何人といえどもこの祖国は脅かすことが今後はできない。われわれはイギリス流の民主的な社会主義を実行しているが、われわれは、われわれの国民的な合意によってわれわれの共同社会を守り抜いていくんだという誇りを持っているという見解を述べられたのを聞いて、ソ連に脅かされながらでもこれだけの理想、これだけの献身を持ってふるさとと祖国を守り抜げる政治家があるということを私は見出して——彼はまだ四十九歳です。われわれよりも若い。しかし、いままで民族が苦悩に苦悩を重ねた結果生み出したところのこの信念というものは、金や物質では買えないとうといものが私はあるということを感じました。  また、今日、ECの直接選挙で選ばれた四百十人の代表者と会い、その十分の一は婦人から選べるようにという形で、しかも、ジスカールデスタンは、ナチスのために痛め抜かれた女性を議長に据えて、そうして何が正しいかということを本当にとことんまでみんなで話し合うようなゆとりのある新しい民主的な運営、ディスカッション、コミュニティーにおけるコミュニケーションというものを求めていく姿を見たときに、おくれた政治と未来をかち取る政治との中にはこうも違いがあるのかなあと思って、日本のことを連想して私は非常に大きな衝撃に打たれました。  やればできるんです。フィンランドのような土地にも、湖があるせいか、戦車はやたらに湖に突っ込むわけにもいかぬでしょうし、問題は天険の山や湖じゃない。人間の持っているところの、平和を愛し、生活に希望を持たせ、国際的連帯の中におけるヒューマニティーの発揮、そういうものは何人も打ち砕くことはできないんです。私はやはり、小さい国だからといって日本はフィンランドのような国を軽視してはならないと感じました。  しかも、彼らの一行があそこの京都の駅に着いたときに、祖国の生んだ作曲家の歌が駅において放送されたということを聞いたのですが、立ちどまって、日本という国は何というわれわれの心を揺すぶるものを持っているんだろう、自分たちは感激を覚えた、と言っております。私たちは、日本人の中においてもあらゆる各層の中に、人々を痛めつけないで、人々の心をくみ取っていこうという精神が庶民の中に根を張ってきたことを考えると、本当に私は日本は今後において世界に貢献し得るだけの準備はもう庶民の中に整ってきたのだ、一番悪者が多いのはわれわれ政治家じゃないかということでざんきにたえないのです。オーケストラが組まれてもコンダクターがいない。じたばたコンダクターでは音楽にならぬ、芸術にならぬ。もっと私はこの議会政治の質を変えなければ日本という国はこの中から、はらわたから腐っていってしまうんじゃないかという危機感をいま私感じながら祖国に帰ってきたのです。しかし外国で、外務省に私はお世辞言うんじゃないが、人手は足りない中で立ちおくれているからというので、中東やフランスなりアフリカにおける大使館の人々は火の玉のようになって、われわれはどんな不幸に見舞われるか知れないけれどもわれわれの孤塁は守っていくという形で勉強している姿を見て、経済的には、待遇的には恵まれなくてもやはり明日に希望を抱きながら、いままでのカクテルパーティーとダンスパーティーの中に埋もれてしまった宮廷外交官のまねごとをした外交官と違って、本物の外交官がこの苦難の中に生まれてきたということを私は痛切に感じて、いまのうちにこの連中を根絶やしてはいけない、この連中に新しい次の時代を担うやつをやはり育ててもらわなくちゃならないということを痛切に感じました。  どうぞ大来さん、今度は——いままではエコノミストであり、日米の財界人との接触が多かったでしょうが、世界をめぐって庶民の中に新しい未来をつくり上げようという息吹がわき上がりつつある日本の語学の才能あるエリートだが、本当に日本人としての魂が入っているかと思うようなよけいな心配をわれわれが危惧の念を持って見ていた外交官の中にも新しいタイプの一つの外交官が生まれかかっているのです。これを凍え死にさしてはいけない。砂漠の中に埋もれさしてはいけない。早く私はいまのうちに、この激動の中をよこぎっていく、間隙の中に、このるつぼの中で私は鍛え直していき、伸ばしていかなければならないと思うんで、いろんな専門家を私は外務省の中にも取り入れて、財界から入れてもいい、エンジニアを入れてもいい、それから学者を入れてもいい、新聞記者を入れてもいい、しかしながら問題はその骨格となるところの外交官の骨組みを崩してしまっては、これはコンクリートをごまかしては塗りで、本当の私はバックボーンは組み立てられないと思うのであります。そういう意味において、外交畑でない世界から外交の重要性というものを認識して入った以上は、この日本外交史の中において大来という人間が来たんで、われわれもおおきたという形で受け取ったが、あの人によって本当に日本外交の中に新しい息吹や新しい土台石がつくり上げられたのだというような気力をやはりつくっていってもらいたい。そのことが、私は、今後における世界の中の日本考えなけりゃ日本の運命を決することのできない宿命の中に歴史は回転してきているんですから、世界の中で育ち、世界の中において日本がこれに貢献していくというこの実感の中に、やはり私はトインビーじゃないが、新しい心の触れ合いの中から、異質なものとの邂逅の中から本当に世界の私は明日が築かれるんだと思います。  そういう意味において、いまは恐らくは外務省はつらい立場にあるんだと私は思いますが、こづき回されながらもとうとうとして自由に迎合してはったりをやっているやつばらには田舎芝居しかできない。田舎芝居では見物人がいつの間にかなくなってしまう。このぶざまな国会の閉会を私は見て、真夜中に国会議事堂を見て、あああ、エジプトのピラミッドよりもひどくなって、これは納骨堂になったんじゃないかというような幻想に襲われたのです。  今度エジプトに行きましたが、私は二十歳の若き日、五十一年前にエジプトを訪ねたときに、軍隊の中に築かれたあのケマル・パシャの影響を受けた青年トルコ党のような秘密結社の少壮軍人から反英闘争を展開するんだということを聞いたことがありますが、あの時分砂漠の上に天にましますアラーの神よと言ってひれ伏して祈りを上げているアラブの人々が、六千年の文化をどうやって取り戻すことができるであろうか。ナイルの川は悠々として流れているが、六千年の歴史は停滞そのものだというふうな感じを受けとめて、アラブの人のまねをして、「アラビアの人にあらねど果てしなき砂漠の上にひれ伏してみし」と言って夕暮れの荘厳にひざまずいたことがありますが、そこから石油が吹き出してきたり、そこから素朴であるけれども新しい民族的な抵抗が粗野な形でも出てきたということを見て、歴史はやはりナイルの川のように生きているんだなあということを感じたのであります。  あのエジプトの議会の——一院制度ですか、議長はカイロ大学の総長であった高い教養人と見識人であります。外務委員長日本に三回も来た知日派であります。その人たちが断言したのは、われわれもアジア人だ、日本はアジアの東でありわれわれはアジアの西に位する、光は東方よりと言うが、われわれはもう一度世界に光を与える時代を築かなけりゃならない。それにしてもエジプトは明治の時代日本が栄えたときに、モハメッド・アリのような名君主を持ったが、それなのに日本が今日のような近代化の道を歩んでいるのに、エジプトが停滞しているということはどこに原因があるのであろうか、ということを最大の課題としていま私たちは研究に入っているという言葉を聞いたときに、私は、一つは喜びだが、日本のいまの本質的な停滞の姿を見たときに、果たして彼らに与えるものがいまの日本にあるかということを反省して戦慄を覚えたのであります。  私は、西欧はルネッサンスを通じて、逆に民族的自覚から石油革命が民族的闘争を生んだ、ルネッサンスの名によって奴隷解放への道はやや開かれたけれども、依然として帝国主義的な奴隷支配の悪習は今日まで続いている。それがいまイギリスの保守党のがんこ者ですらも、イギリスの帝国主義がこれによって終わったということを証拠立てなけりゃならないと言って、公の席で叫ぶ国会議員も出てきているんです。どうぞそういう意味において、もっと日本の中から、みずからをむち打ってみずからの革命を断行し得るような本当の革命家が出なけりゃ、人に革命を命令するのはやすいが、ソクラテスの言ったように、ノー・ザイセルフ——なんじ自身を知ることによってみずからの反省を日本もするならば、ソ連もアメリカもしてくれるかとも思うし、してくれなけりゃ滅びるままでありますが、パートナーである以上は黙っているわけにはいかぬから、やはり率直に物を言って、本当にパートナーシップというのはこういうものだという新しいタイプのパートナーシップを発揮してもらいたいんですが、その準備かできてから——もう大来さんは恐らくは準備は完了だと思いますが、アメリカには、この大来が引き受けたというような形でアメリカを問い詰めてください。アメリカが変われば世界が変わります。ソ連が変われば世界が変わります。しかし、そのアメリカを変え、世界を変える秘術は、原子爆弾で再び日本人だけでなく世界の人を不幸に陥れないようにという祈り続けている日本がここにいるということを認めていただけるだけでも私は大きな貢献となると思うんです。  だから、このベネチアヘの道は遠い、マルコポーロがシルクロードをたどってきたよりも険しい道かもしれない。あと三カ月か四カ月後のこの道を道草を食わずに、もっと日本みずからが、政府国会とともに人民と語り合うつもりで世界の人々の憂えを憂えとして、日本でなくして訴えるところがないというだけの気迫を込めて臨む。へっぴり腰で土俵に上ったんじゃ気合がかからないから相撲にならない。  どうぞそういう意味において、この先進国会議は世界の運命を決めるための私は重要なターニングポイントに立つと思うんです。みんなが日本に言いたいことを全部言ってくると思うんです。それに動ぜずに、弁解するんでなく、反省すべきものは反省し、譲るべきものは譲り、虚心坦懐に物を申していくことの方が手練手管のやり手ばばあのような外交をやってきた人たちに対してはフレッシュな感覚で私は迫ると思うんであります。ですからその期間できるだけ大臣、国会において、国会議員を相手というんでなく、国会を通じて主権者である人民に、国民に浸透するような自分たちの見解を述べてもらい、国民からの要望も受けて、次期総裁とか——あなたは総裁に立候補しないかもしれませんが、次期総裁だとか総理大臣だとかということにばっかり気を配ってきょろきょろしないで、端然として、淡々として私はわが道を行くというだけのこの外交だけは守ってもらいたいと思うのです。  まあきょうは、私は新聞で外務省の発表を見て、何でもないことを発表したにすぎないけれども、何でもないことも国民にはいままでわからないような形であいまいにされていたというところに問題点があったんですけれども、危機に便乗して戦争への道のばかばやしさをやっているのでは、タヌキのばかばやしよりもユーモアもなければ、悲劇でもなければ喜劇でもない、気違いの行列です。そんなファシストのまねごとをやっていくような冒険政策の中に浮き身をやつすんでなく、道はここにあり、まともな道は平凡だ、凡に徹することだ、エリートじゃない、大衆とともに苦悩し、大衆とともに模索し、この中からわれわれは歴史を刻む宝を掘り下げてみるんだ、みせるんだという形において私は日本の新しい国づくりを外交の面からつくり上げていただきたいのであって、進軍ラッパを鳴らすだけでは士気は上がらないのであります。  アメリカ自身でもだんだん変わってきています。ソ連でも変わってきています。あと十年、いまのような思い上がった考え方はもたないです。サハロフを考えるときに私はやはりいつも考えるのはロマン・ロランがあのソ連の文豪、病めるゴーリキーを、革命の作家であったが、できた革命のソ連は必ずしも彼が描いた世界とは違うが、それを口にすることもできない。レーニンの労苦を見るならば、祖国を去って行くとも言えないときに、ロマン・ロランが病める文豪をもっと安らかに休養のできる土地に迎えようとして行ったときに、ゴーリキーは南に去って行ったんです。今日ヨーロッパではサハロフのことを本当に心配しております。一サハロフではない、あれだけの学者で、あれだけ体を張ってソ連の未来、世界のために、自分たちの平和への願い、自由への願いを貫き通す人がヨーロッパの社会にほかにだれがおろうか。この人を殺すことはできない。やはりゴーリキーをロマン・ロランが迎えに行ったように、ヨーロッパの人はサハロフを迎えなけりゃならない。あのままロシアの中、ソ連の中で死なせてはいけない。サハロフは永遠に生かせて、その精神をわれわれも学ばなけりゃならない。ヨーロッパの社会の中にソ連人であるがサハロフのような貫く精神を貫き通し得る者がどこにあるかということを考えるならば、この人を救わなけりゃならないというのは、ヨーロッパにおいては石油の問題よりも何よりも大きな人道的な共感を呼んで、あらしのようにこの救援運動が起きております。  日本からのベトナムの難民の救済も重要であるが、あのような難民をつくり出したアメリカの二回にわたる爆撃、朝鮮に対する軍事的介入、ベトナムに対する軍事的介入、それからいかほどの感謝の念が起きたでしょうか。イギリス帝国主義はいろんなことをやったが、今度やる罪滅ぼしの努力はローデシアの解放と、やはりイラン、イラクの危機を打開しなければならないという、やりづらいことだけれどもそれをあえてやるイギリス外交の中における転換、これがイギリスとしてはむしろ誇りだと思うんです。照れないんです、みずからの反省の上に立って明日のために奉仕しようという考え方が新しいすべてのものの出発点だと思うんです。  どうぞそういう意味において、これから、ヨーロッパにおいては自動車の問題でも、アメリカのようにヒステリカルにはなっておりませんしヨーロッパ自身の知性人の中においては、われわれは日本をいままで侮っていた、チープレーバーによって安い物を売りさばく国と見ていた、あのコットンインダストリーのイギリスにおける長い争議のときにもそう見ていた、しかしいまでは違う、われわれが怠けている間に日本人は臥薪嘗胆して技術をみがき、鉄鋼においても自動車においても、エンジンの問題においてはまだまだいろいろな問題があるにしても、アメリカやヨーロッパに遜色のない、それを凌駕するようなできばえを示してくれたことは、われわれは日本からも学ばなけりゃならないということを感じさせられた、日本のみにいろいろな難癖をつけるんでなく、われわれ自身がこれを機会に反省しなければならないと、ヨーロッパの知識人はそこまで来ているんです。  アメリカだって、私は本当のことを大来さんあたりか述べれば——余り自慢話をやると向こうにいやがられるから、遠慮しいしい本当のことを言えば、やはり私はアメリカの労働界でも、企業でも、富める者が信仰に入ることは大変なことです。乗りつけた大型自動車を乗り捨てにすることはなかなかできないでしょうが、大衆は背に腹は変えられない、省エネルギーで安い自動車、ガソリンのかからない日本の自動車を買うのはあたりまえであって、これを、自動車関係の失業者が多くなったからといって、労働組合のボスが来て日本をおどかしてみても、大衆に高い金でエネルギーをたんと使う自動車を買えと言って保護政策をやってみても、大衆か応じないと思うんです。アメリカの農民に食糧をよそへ売り出しちゃいけないと言っても、食糧を売らなけりゃ食っていけない農民は、それをもとのように積み上げて丘の上に倉庫を建てることにはがえんじなくなると思うんです、やはり自然にさからう者は自然に滅びる、時の流れに順応できない者はみずからが自滅する、これが真理です。  私はそういう意味において、われわれは遠慮しいしい謙虚な態度で真実を述べて訴えて、一週間に二回ぐらい休んでもいいが、怠け癖をつけるんではなくて、むしろ私は、いま衣食住の生活の中で一番日本に欠けているのは、金が余ったなんてでたらめを言っているけど、住宅政策です。リー・クアンユーがシンガポールにおいて勝っている、与党だけで野党なしの成績を上げたのは、スラム街をなくして住宅政策一本にしぼっていったことです。こんなきれいな住宅の中じゃあ淫売はやれない、麻薬は吸えない、やはりわれわれの生活を楽しもう、この根城を中心にして新しい町づくりが始まっている。コミュニティーにおけるコミュニケーションは説教ではだめだ、子供にまで一部屋ずつ与えていくような理想をリー・クアンユーは実現してくれる。スラム街はなくなった、スラムを壊されるときには名残惜しかったが、住んでみればいまのような住宅がいいと。あっという間にあれを、イギリス流の社会主義というよりは香港流の社会主義を漢民族の、華僑と言わずに漢人と言って誇りを捨てずにいる彼らの世界に打ち立てたリー・クアンユー流の住宅政策、これから私は多くのものを学んできたが、昔シンガポールに行ったときのことを回顧して、ああ、シンガポールで南十字星を見たいなと、四回来たがおれ一度も見たことはないがと言ったら、大使館の聡明な気のきいたユーモアに富んだ外交官が、戸叶さん、南十字星を見るためにあなたはどこを見ているんですか。いや、星を見るから天井を見ている。南十字星はヤシの上あたりの低いところに出るんで、大体見えないのが普通なんです、あしたは見せてくれるからというので本気にして待ったら、翌日、絵はがきを持ってきて、これが南十字星で、撮ってやろうと思ったが、出ないので撮れませんでした、と言うんで、なかなか気のきいた、ユーモアに富んだ外交官もあると思いましてびっくりしました。  とにかく、昔荒海を航海したアラビアのフェニキアの人々が、奈良の大仏をつくるためには日本にも来てるんです。その前からも来てるんです。シルクロードだけでなく、星明かりを頼りに南からも、あるいは砂漠を乗り越えてシルクロードからも来てるんです。世界は一つなんです。多元にして一つの世界、そこに私は融和がつくれないはずはない。フランスのでたらめな予言者と称する詐欺師が、一九九九年には世界は滅びるとノストラダムスの予言者が言ったが、私は彼よりも予言者としては位置が上である、絶対に日本の、世界の人々の理性が世界を滅ぼすようなことはないと思う、とナイルの河畔で予言を放とうとしたら、知性豊かなエジプト人が、あのモハメッドが最後の予言者でしたから、モハメッド以外に予言者はないはずだがという話で、これはしまったと思いましたが、あれが救世主かと思ったら、やっぱりヨハネのように予言者だと。うまいことをやはりモハメッドも考えたなと。予言者である以上は、わが後から来る者がメシアなりと言って自分は放言して、予言という形で物を言っても一向責任をとらないでも差し支えないんじゃないかと感じて、なるほど、モハメッドというのは知恵のある最後の予言者、おれはまた、時代が変わったからおれが最後だという予言者になろうという考えを持って、日本の中で一つの政治のはかなさ、いやらしさっていうものを骨の髄まで感じながら、国会の中においても厳しくみずからを律するものがなけりゃならないということを感じて帰ってまいりました。どうぞ大来さんも政治のいやらしさから逃避しないで、予言者どころか救世主になって、日本に活路を開いてもらいたいと思います。  ちょうど時間になりましたので、今度はこれで結びといたします。お祈りを申し上げます。
  39. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 大変いま感銘の深いお話を承りまして、まあ私も私なりにできるだけの努力をしてみたいと思います。やはり日本外交というのは、国民の生活を守り、平和を守るということが使命だと思いますし、対外的にはやはり動乱ではなく平和を、破壊ではなく建設のために働くことが日本外交の使命であり、またそれはあすの世界を先取りするものだというふうに考えておりますので、今後ますますいろいろな面で御声援を賜りたいと思います。どうもありがとうございました。
  40. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 午後一時五十分に再開することとし、休憩いたします。    午前零時五十一分休憩      —————・—————    午後一時五十二分開会    〔理事稲嶺一郎委員長席に着く〕
  41. 稲嶺一郎

    理事(稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  委員長は所用のためおくれて委員会に出席いたしますので、それまでの間委員託を受けまして、私が委員長の職務を行います。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  42. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 本日の委員会国会再開後初めてでございますので、あらかじめ質問通告はいたしておりますけれども、それ以外に触れる場合があるかもしれません。それはあらかじめ御了承いただきたいというふうに思います。  申し上げるまでもございませんが、八〇年代の幕明けは、ソ連軍のアフガニスタン侵攻というまことに衝撃的な憂慮すべき事態のもとで始まったわけであります。こうした問題が今後どのように尾を引いていくのか予測のつかない面も多々あろうかと思いますが、デタントから第二次冷戦という新たなそういう転回をいま見ております激しい動きの中で、日本外交が改めてその真価を問い直されるという事態に当面しているのではないかという判断を実は私自身持っているわけでございます。  こうした一連の動きの中で、従来の言うなれば二大超大国主導型というそうした秩序というものがだんだんやはり崩壊し始めて、新しい秩序、いわゆる平和志向というそうした流れというものがきわめて激しい勢いで世界を取り巻いているんではなかろうかという印象を受けるわけであります。そうした意味を考えましても、多くの世界の平和を志向する人々にとって今回の事件というものは、世界の今後の平和と繁栄を築く上に非常に大きな国際問題になってしまった。さて、今後こうした事態がどういうふうに推移していくものか、外務省はそれなりにいろんな角度からの情報を入手しながら分析をされていることも当然であろうというふうに思います。    〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕  そこで、そうしたような点に立ちまして、今後のアフガンを中心とする一連の中東の動きというものはきわめて微妙であり、予測のつかない面もあろうかとは思いますけれども、どのように動いていくか、まず、そうしたような大勢から外務省の見解を最初に伺っておきたいと思います。
  43. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御質問の点でございますが、世界の情勢はかなり流動的な点がございまして、的確な見通しを立てることは容易でございませんが、ただ、お話しのように、スーパーパワー——超大国の動きに対していろんな形での批判と申しますか、そういう動きも出てまいってきておることはいま御指摘のとおりだと思いますし、全般的に世界の問題についてのディシジョンメーキングといいますか、そういうセンターが拡散していっているといいますか、これは多極化の時代とも言えるかと思うんでございます。それから、ことに第三世界、開発途上国の発言権もだんだん高まってまいりまして、こういう地域については、経済建設経済発展ということ、それから生活水準の向上を求めるという動きも根強いものでございまして、そういう情勢のもとで今後の世界の成り行きを見ていかなければならないと思います。  他面におきまして、米ソの間、過去十年ぐらいの間を振り返ってみますと、一方におきまして、アメリカの方は逐次国防費のGNPに対する比率を下げてまいっております。他方、ソ連の方においてはかなり急速な軍事力の建設が行われてまいったというような事態があることは否定できないように思うわけでございまして、この辺のバランスの取り戻しという立場もアメリカ側にはあるように考えられます。  しかし、最近のアメリカ、ソ連あるいはヨーロッパ等の各国政府の発言内容を見てまいりますと、基本的に米ソの対立が核戦争に近づくというようなことはどうしても避けなきゃならぬと。核戦争の可能性を防くだめに、そういう意味でのデタント——緊張緩和の努力は続けなければいけないということ、これは米ソ両方の指導者が言っておると思いますし、ヨーロッパの主要国もこの点では、その対立が極端まで行かないようにということでの努力をいろいろな形で続けていっておると思います。  他方、これは独ソの首脳会議の後のコミュニケなどに見られますように、アフガニスタンのソ連による武力介入は認められない、できるだけ早い機会に撤退すべきであって、ソ連が平和的にアフガニスタンから撤退できる条件をつくり出すということが各国の努力の一つの大きな目標でなきゃならないということも申しておるわけでございまして、同時に、こういう武力による他国への介入がそういうことをやる国にとって相当コストの高いものにつくんだということを世界の世論、その他関係国の協力によって示すということも、こういう武力介入が次々に将来起こらないために必要だという考え方もいろいろな機会に表明されておると思います。  私どもも判断はむずかしいのですけれども、基本的なこの米ソの直接衝突、核戦争というようなものについては、これは避けるための努力を米ソ両国は今後も継続してまいると思いますし、SALTIIにつきましても、アメリカ側の批准は行われておりませんけれども、実施をしていくという考えが表明されておるわけでございまして、まあしばらくこのアフガンにおけるソ連の出方を見ながら、西側諸国はそれに対応する対策を講じながら事態の改善を待つというようなことでございまして、ソ連がそれに対応する緊張緩和、特にアフガンからの撤退が行われれば、これはまた世界の情勢はかなり緊張緩和の方向に向かっていく可能性もあるように見受けられるわけでございます。  大体、概要はこんなことでございます。
  44. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 かつてハンガリー事件、チェコ事件、われわれの記憶にまだ鮮明に残る問題があるわけです。ああした一連の動きと同じような経過を今回もたどるというふうに判断をされているのか、あるいはいま答弁がございましたように、それぞれの国——それぞれの国といっても特定に挙げるわけにはいかないだろうと思うのでありますけれども、条件づくりというものが成功すればそ連は撤退するだろうというような方向になるのか、その辺はどのようにとらえていらっしゃるのですか。
  45. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 予断をすることは非常に困難でございますけれども、ソ連責任者も状態が安定すればソ連軍を撤退するということをいろいろな機会に言明しておるわけでございます、その可能性は残されておると私どもは考えております。
  46. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに報道によりましても、アメリカの介入が今後なければソビエトとしては十分考慮の余地があるという趣旨の発言がブレジネフ書記長あたりから出されたやに聞いております。しかし、その信慢性をめぐって、果たしてその真意というものはいかなるものであるかということも、これはわれわれにとっては不明確であります。果たしてソ連軍がそういうような条件ができれば直ちに撤退すると考えられるのかどうなのか。防衛庁あたりの観測では、少なくとも五年ぐらいは駐留するのではなかろうかという判断を持っているやに聞いております。それはわかりませんよ、防衛庁の分析ですから。しかし、長期に及ぶであろうという、こういう見通しを持っている。そうした場合に考えられることは、やはり気まずい国際環境というものがいつまでも尾を引くであろうということをわれわれは心配せざるを得ない。そうした場合に日本政府として何が一体ソ連軍撤退を中心とした平和への足がかりというものをつくるための貢献がなし得るのか。そういった点については何かお考えお持ちになっていらっしゃるのでしょうか。
  47. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本外交政策は、できるだけ世界の紛争を平和的手段によって解決する、そのためにできるだけの努力をするということが日本外交のたてまえだと考えておりますので、たとえば米ソ間の対立が余りに極端な形にならないような、それに対する日本の影響力というものも必要な場合には用いる必要があると思いますし、他面におきまして世界の——第三世界と申しますか、広い範囲での発展、建設への欲求が高いわけでございますし、平和を求める声も強いわけでございますので、こういう国々への協力も進めていくということでまいることが必要だと思います。同時に、現在の世界情勢のもとで、やや日本と事情を近くいたしております西欧諸国の動き考え方というものにも日本としては十分な注意を払っていくことが今後の情勢判断をしていく上に必要だろうと考えるわけでございます。
  48. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回せっかく大来さんが訪米される願ってもないチャンスが到来するわけです。あえて私はその意味も含めて、日本としていまこういうことを考えながら強力に推進することはいかがなものであろうかという腹案というものをお持ちになっていらっしゃるんではあるまいか。いわゆる、先ほど条件づくりということをおっしゃった。願うことならばその条件づくりを日本がアメリカに提示をして、そしてアメリカがそういう方向への考え方を向けていくならば、あるいはもっと早い時期に撤兵なり平和への手がかりというものができ上がっていくのではないかという感じを持っておったものでありますので、それをあえていまお尋ねしたのですけれども、私がいまお聞きをしたいという点についてのお答えはいかがなものであろうか。
  49. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 訪米の機会につきましての考え方につきましては、目下検討中でありますけれども、基本的には先ほどお答えしましたような、緊張が危険な段階までいくことはできるだけ避けなければならないということと、やはり第三世界の動向というものを十分に考慮する必要がある、それから西側の国々、特に西欧諸国あるいは日本の立場、考え方というものをアメリカ政府政策の中にできるだけ反映させていく、というようなことが大きな筋ではないかと考えております。
  50. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほどたしか大来さんは、アフガンヘの援助について昨年の末に閣議決定されたものを含めて、合計十二億円中止もしくは延期する旨を表明されたやに聞いておりますけれども、事実でございましょうか。
  51. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは、四億円につきまして実施をしばらく見送るということにいたしましたわけでございますが、十二億円につきましては政府委員から……
  52. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いや、十二億というのは合計十二億ですよ、私の言っているのは。四億はたしか建築資材の四億で、それからほかに八億が政府援助として合計十二億というふうに先ほど紹介されておったことを申し上げたわけなんです。
  53. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま御指摘のとおりでございます。
  54. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはあれですか、制裁措置ともとれない。どのようにわれわれは受けとめたらよろしいんですか。
  55. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 現在のカルマル政権とは外交関係を持たないわけでございまして、そういう状態のもとで援助の実施が事実上できないという立場でございます。
  56. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに考えてみれば新政権のカルマル派でございますか、おっしゃるとおりだとぼくは思うんですけれども、実際に政府が援助しようというのは、先ほどの御答弁の話の中にニュアンスとしてございましたですね。何らかの形で発展途上国に対してはやはり援助の形を今後も続けるということになった場合に、その辺の考慮というものは、やはり日本としては相手が正式に認められた国ではない、せっかく閣議決定はしているけれども、これはやはり延期か中止に持ち込んでいく以外にはないと、こういう判断でよろしいわけでしょうか。
  57. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまのお説のとおりだと思います。
  58. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ソビエト外交というのは大変むずかしいということはこの委員会でもいろんな点を通じて述べられてきておりますし、また政府側の答弁としてもそういう回答があったことを記憶しております。いまずっと申し上げてきたことの経緯を踏まえて、果たして一度手に入れたものは絶対に手放さないといういままでのソ連外交方針というのか、考え方というのか、そういう点を考えますと、非常に膠着状態に陥る危険性というものはあり得るんではないだろうか。先ほどのソ連軍の駐留五年と見た防衛庁の分析等々を考えまして、果たして事態は好転する方向へ行くのか。好転する情勢というものが大変むずかしい。いま述べられたように、西欧側の判断を待った方がいい。  私はいままでいろんな議論の中で、それは見ることは結構だと思うんですね。アメリカの動向を考え、西欧諸国の考え方というものを十分やはりしんしゃくしながら、日本外交の一つの方向をそこに決めていこうと、それは必要な場合があると思うんです。しかし、大平さんの施政方針演説の中にもありました。今後はいままでの消極的な外交を自主的な展開の方向へ切りかえていくんだと。一体、これからは自主的にということは、相当日本独自の外交展開ということを十分に含んだ決意を持ってお述べになったんではないかというふうに思うわけですけれども、絶えずあたりに気を配りながらやらなきゃならぬのか。これからもそういうことを続けなきゃならぬのか。じゃ日本独自の外交というものは一体何なんだ。平和を確かに志向する、あるいは日本はそういう国是かもしれない。そういう立場に立つならば、もっともっと独自の考え方を貫いてアメリカなり西欧側に逆にそれを説得するというような方向というものは考えられないのか。これは長い外務委員会での政府の答弁を伺っておりますと、依然としてその範疇を出ないといううらみが私はあるんではないだろうかということを非常に懸念するわけです。ですから、くどいようですけれども、大来さん御自身が、もうすでに固まったであろういろんな——せっかくの訪米の機会にこの問題はこう日本政府として提言もするんだというようなことをやっぱりお持ちになることが私は必要だろうと思うし、いまこの場所でそれはまだ検討中であるから言えないというならばこれはやむを得ませんけれども、しかし、それにしても、あと二週間後にいらっしゃるわけですからね、青写真ぐらいはもうできていて私は結構ではないかというふうに思うんですが、いかがなものでしょうか。
  59. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 今度の場合にどういう点が議題になるか、これも外交チャンネルを通じて検討中でございますが、一つは全般的な世界情勢、一つは日米間の二国間問題ということになるかと思いますが、いまの御指摘のような点につきまして、日本としても基本的に平和外交といいますか、紛争をできるだけ平和的手段によって、武力的な手段でなくて解決するということが日本の使命だと思いますので、こういう立場から言うべきことは言わなければならないというふうに考えておりますし、同時に武力的な手段によりまして他国に介入することに対して、日本は反対の立場をとるということも言わなければならないことでございます。  そういう点から申しまして、日本各国の模様を見ながらということでは本当の自主外交にならないという御指摘でございますが、私どもはそういう基本を踏まえて情勢に対応した外交を展開する。つまり日本のように資源を世界じゅうに依存し、最小限の自衛力をもって国を立てていかなければならないという基本的な立場からいたしますと、自国でこう考えるということを他国に押しつけるということはもちろんできないわけでございますし、各国の理性に訴えるということになってまいるかと思うのでございますが、外交問題につきまして、日本の置かれた立場も踏まえてみますと、大きな基本的な方針を常に持っていなきゃならない、これは先ほど来申しましたようなことでございますが、同時に具体的な事態の推移について客観的な判断を誤らないようにしていかなければならないということの両者を踏まえていく必要があると思っておるわけでございまして、余りに硬直的な原則にとらわれますと、かえって日本の将来に対して危険な状態を招くことがないとも言えない。そういう立場で、たとえば西欧各国の動向を注意深く観察する、これをわれわれの判断の材料にするということは、やはり日本外交にとって必要なことだろうと考えておるわけでございます。それは必ずしも欧米と同じことをやるという意味ではございません。
  60. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大変失礼な言い方をいたしますと、大変常識的であろうと私思うんです。またそれを、常識というものを逸脱してはならぬということもわきまえているつもりでありますけれども、ただ、いまこういうことをしたいという、それは具体的な問題というものはなかなか出にくいだろうとは思います。ただ、一月十四日、国連総会が開かれた際に、百四カ国という非同盟諸国を含めて撤兵の決議がなされているわけでしょう。しかし、あれからもう一カ月以上たった現在、何らその決議というものが、ただ決議されたということであって、そのときの参加された国々の気持ちというものが裏切られるような方向へこそ向かえ、機能していないということが心配になる。一刻も早く緊張緩和への道というものを、その参加された国々はそれぞれの立場、実情というものの違いこそあれ、願っていることはこれは当然だと思うんですね。そのイニシアチブをだれがとろうとそれは構わないと私は思うのです。しかし、少なくとも自主外交を標榜し、日本独自のそういう外交を展開しようとする決意を表明された日本政府としては何らかのやはりきっかけをつくる必要が私はあろうと思うし、いまおっしゃられた中で、それは外交ですから押しつけだとか何とかということはこれは論外でございます。当然話し合いの中で何とかその努力が一つの解決への方向へ向かう、そういう手段というものが必要になってきはしまいかということを重ね重ねいま申し上げたわけなんです。国連のそうした機能する状態が、国連決議が何ら機能していない。ならば、先ほどちょっと私聞き違えではないだろうと思うのですが、非同盟諸国を含めた第三勢力あたりへ話しかけをしながら新しい一つの撤兵に対するまとまりというものか、足並みをそろえるというのか、やはりそういった一つの動きというものも世界の世論形成の上で私は非常に大きな効果を示していくのではないかと思うのです。それは多分に時間がかかり、また人手もかかることでありましょうけれども、やはり何らかのそういう具体的な手段、方法というものが考えられてもいいんではないかという、そうした点についても何らいまお考えかございませんか。
  61. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいま園田特使が中東及び南西アジアを歴訪して各国指導者と意見を交換しておるということもそういう具体的な努力の一つだと考えますし、私が今月下旬にワシントンに参りますのもそういう努力の一つだと思っております。
  62. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いつまでも手をこまねいていたのでは平和への道しるべはつくれないということになるわけでございますので、十分その面の御決意というものがおありになろうかと思いますが、やはり全世界の人々が希求していることは、一刻も早く事件が円滑にわれわれの願う方向へ解決されることを願っているわけでありますから、日本としても何らかのそこに貢献がなし得るとするならば、それを模索しつつも具体的な行動へぜひ取り組んでいただきたいということを私は重ねて要望したいのでありますが、その辺の御決意のほどをまず確めておきたいと思います。
  63. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私もいま渋谷先生のお説のように、その方向で考えてまいりたいと存じます。
  64. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回のアフガン問題あるいはイラン問題に端を発しまして世界情勢にわかにあわただしくなったわけでございます。そうした関連の中で、すでに衆議院の予算委員会等でも安保問題の取り扱いをめぐりまして大分議論が闘わされたようでございます。恐らく、われわれの推測でございますけれども、今回大来さんが訪米されるに当たりましてどうしても調整をとらなければならない問題に迫られているのではあるまいかと。日米間において調整すべきものがあるためにその問題も含めて行かなければならない、こんなふうに見ているわけでございます。  何と申しましても、やはり伝えられておりますように、アメリカの新世界戦略体制というんでしょうか、あえてその言葉をかりるとするならば、そういう方向へアメリカが主軸になりまして大きく動いていることは、これは否定しがたい事実だろうと思うんですね。したがってこの安保体制というものが変質したのではあるまいか、あるいは将来拡大解釈といいますか、拡大運用ということによってそれがNATOと結びついたり、あるいは日、米、中というようなそういう新しい意味の戦略というものかでき上がっていきはしまいかというおそれ、したがって、それに対抗する手段として、ソビエトはソビエトとして今回のアフガンを初めとして、あるいはアラブ強硬派と言われているリビアだとかあるいはシリアだとかイラクというふうな国々を味方にしながらそれに対抗しようとする。これがいつまでもそういう状態が続いていくならば、事アフガン問題だけではない、もう世界がそうしたような渦中に巻き込まれていきはしまいかという心配すらあるのは、これは当然だと私は思うんです。  その辺の判断と、いま冒頭に申し上げた今回の訪米に当たってその調整をとらなければならないと伝之られておるような問題は一体何があるのか、その点についてお述べをいただきたいというふうに思います。
  65. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先ほど申し上げましたことでございますが、米ソの対立が危険な段階までエスカレートするということは人類の将来を危うくするものでございますし、そういう立場からこのエスカレーションが行き過ぎないようにということは一つの日本の立場であると思います。一つには最近のアメリカの動きとしましては、ソ連が軍事力によってその勢力範囲を拡大していくというものに対する抑止力を強化しなければいけないという立場が基本にはあると考えるわけでございまして、そういう点につきまして、それがまたソ連側の力による政策をさらに加速してまいるということになれば、それは両者の方での力の対決をエスカレートすることになるわけでございまして、西欧諸国や日本役割りは、そのような意味での危険をできるだけ少なくしていくという意味の役割りがあるかと考えます。それから、世界の大多数の国も平和を願っておるということも間違いない事実だと考えますので、その立場を踏まえて日本としては話し合いに臨んでいかなければならないと思っておるわけでございます。
  66. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま御指摘がありましたように、力の対抗といいますか、対決というものがエスカレートしていく、それは事実現実問題としてはエスカレートしていっているんですね、はっきり申し上げて。これはもう防衛庁ならずとも外務省でも十分その点は含んでいらっしゃるはずだと私は思うんです。ですから、はたしてその力のバランスというものが戦争への抑止力、ある意味においてはそれが確かに効果があるかもしれません。しかしまた、それとうらはらに戦争への恐怖というものが常につきまとっていることも事実でございましょう。こうした議論は何十年となく長い間においてやりとりがされてきているのでございますけれども、最近のやはり世界情勢というものは、いまおっしゃったようなむしろ軍事力強化、軍拡への道をひたすら歩んでいる。ソビエトはソビエトで最近極東にSS20あるいはバックファイアを配備している。もう日本は至近距離に入っている等々のことが伝えられているわけであります。これははたして力の均衡によって戦争への抑止力というふうな考え方に受けとめられるだろうか。われわれにしてみれば常に戦争へのおそれというものを常に頭の中に描きつつソ連に対応を迫られる。こうしたことはずっと戦後三十有余年にわたって続いてきております。軍縮への道は一向に開けようとしない。そしてまた、その努力はなさっているのでしょうけれども、その効果が上がらない。  そうなりますと、やはり日本としてはまあ軍事力は非常に弱い、そういう背景がございますので、どうしても米国の核のかさのもとに安保体制の中で生き抜いていくことが平和への一つの道であろう。それはいままで日本外交の基軸をなしてきたわけです。果たしてそういうことがいつまでも一体貫かれていけるものだろうか。いま新たに議論がそこに起こってきたのも、そういう経過の中で新しい情勢を迎えたということに基づいて、いま新たに古いようで新しい議論としていま国会で議論されている、私はそう思うんですけれども、軍拡の道がどんどん大国によって進められている反一面に、軍縮はSALTの交渉も不調に終わる、一体どうすればいいんだというそういう中で、一体日本は何をなさねばならないのか。まあ、これはきょうはいろいろおさらいをするつもりでいま申し上げているんですけれども、日本世界で唯一の核被爆国であると言われながらも、核軍縮、核撤廃へ果たしてどういういままで——相当強烈に、もうやむを得ず民間団体がワシントンまで行って、そして陳情する、こういうことではなしに、もっともっと政府自体か政府間レベルにおいてそういうことの交渉というものが強力に展開されていいんではないだろうか。いろんないま複雑なそういう絡みがある中で、これをよほどうまく交通整理をしていきませんと、ただ、あれよあれよという、その世界の流れに日本が取り残されていく、あるいは埋没していくという、幾らきれいごとを言ってもそれはもう逆行した方向へ行ってしまうという点を大変憂慮するんですけれども、大来さんとしても異常な御決意のもとに外務大臣に就任されたその後を私どもも見ておりますので、その辺も思い切って取り組んでいただきたい課題の一つではあるまいか。  ですから、今回の訪米に際しましても、恐らくそういう絡みというものを十分やはり頭の中に描きながらお話し合いをされるんではないだろうかと。衆議院予算委員会でもずいぶん極東の問題がどうしたとかこうしたとかで伊達さんがずいぶん悪戦苦闘されましたけれども、こういったことはいつでも起こり得るいま危険性があるわけです。条件があるわけですよ。ただ沖繩から展開する部隊が移動だと、それで済まされるでしょうか。こんなわれわれ素人が考えても、現実的に見た場合には移動そのものがもう作戦行動に入るわけでありますので、事前協議の対象にならない、あるいはなっても、それはただ同意せざるを得ない、拒否権が一体あるのかないのかという問題がまたもう一遍問い直されなければならない。昭和三十五年の新安保協定が結ばれたときに、いろんなその問題をめぐって議論が展開されているわけです。だんだんそれは変わってきつつある。そういう中で恐らくその対応を政府としても迫られてきた。その後また、関連する問題としては対米輸出の問題が絡んでくるでしょう。日本としてもできるだけその日米協調という線を崩さずに、また、対米輸出についても損害をこうむらないような方向へ持っていくためにはアメリカの要求をのまなければならない、そういう含みも出てくるんではないだろうか、そういうような絡みの中で恐らく幾つかの問題点を整理されて、端的に言うなれば、いまアメリカで起こっておる対日不満というものを解消するためには、ここで一遍話し合っておく必要があるだろう、そういう結論になりはしまいかということなんでありますけれども、いかがなものでございましょうか。
  67. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いま御指摘のとおりに、いまの段階におきまして、やはりこういう情勢に対処する日本人の考え方というか、日本考え方をやはり十分に申し述べておく必要がある。これはアメリカの判断、アメリカ人の考え方もいろいろあると思いますが、基本的に日米関係というのは日本側もアメリカ側も重要な関係であると考えておると思いますし、また日本人といたしましても議会制民主主義に基づいた自由な社会、こういう体制を維持していくということは大多数の日本人の願望であると思いますし、その議会主義民主制度というのは、やはりアメリカ、西欧と日本は共有しておる制度でございまして、こういう基本的な立場が一面あると考えます。同時に世界情勢に対処する仕方として、日本は力の行き方を用いない、これは平和憲法の土台に立っておるものでございますし、防衛も専守防衛だ、他の国から領土、領海に対して攻撃を受けたときにのみ自衛力というのを発揮できる、発動できるという基本的立場を崩すわけにいかないと、こういう立場をやはり基本にしてアメリカ側にも十分話し合う必要があるんじゃないか、こういうことでございまして、また貿易の問題につきましても、貿易というのは相互依存の関係がございまして、一方的な利益ということではないと私どもは考えておりますので、貿易面、経済面の摩擦についてもできるだけ話し合って双方の理解を深める、これが過度に政治的、外交的な緊張にならないように双方の理解を深める努力というものをやっていく必要があるというふうに存じております。
  68. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 伊達さんもせっかく午前中からおいでになりますので、この際ひとつ大変幅広い見解をお持ちになっているその立場から、もう一遍ここで改めて確認をしておきたい問題があるのですが、米台条約は解消されましたね、アメリカと台湾の条約です。
  69. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 米台条約は昨年の十二月三十一日をもって終了いたしました。
  70. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 すると、極東の解釈はどうなりますか。台湾は入りますか。
  71. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) 安保条約上の極東の解釈は変更はございません。と申しますのは、これは日中国交正常化の際にも問題となった点でございますけれども、日中国交正常化もそれから米中国交正常化というものもいずれも日米安保条約とは関係がなく行われたものでございまして、日米安保条約上の日米両国が共通の関心を有している地域としての極東ということには影響かないという考え方でございます。
  72. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 残余の問題はまた予算委員会の総括に取っておきたいと思いますので、きょうはその程度にしておきます。きょうはそれだけ伺っておきますから。  次に、今回のいま質疑のやりとり、御答弁の中でちょっと触れられておりますけれども、園田特使が一定の任務をお持ちになって、もう間もなくその使命が終わられようとしておるのでありますけれども、いろいろ連絡報告も本省に入っているのではあるまいかというふうに思いますが、成果はどうだったのですか。
  73. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいままでの連絡に基づいて考えてみますと、一つには中東諸国における中東の情勢、特にアフガン以後における中東諸国の考え方に直接触れてこられる。それからまた日本政府の中東問題に対する考え方について相手側に説明をする。さらに経済力、技術力の面で日本の貢献が中東諸国に、それに対する期待が相当強い、単に一方的に石油を供給してもらうというだけではなくて、先方の国の国づくり、特に経済面、技術面というような点で日本が協力する、与え得るものを持っておる、そういうことについての話し合いがいろいろな機会を通じて進められたと存じますし、また一部にはイラクの場合など、直接石油供給についての先方からのコミットメントを得ておるというようなこともございます。  なお、ここに中近ア局長がおりますので、さらに具体的な点がございましたら、政府委員から返答をさせたいと思います。
  74. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど極東の問題に入っちゃったものですから、ちょっとさっき積み残しの問題を忘れてしまいました。逆戻りして大変失礼でございますけれども、いまお答えいただいた問題、ちょっと後でまた関連して触れますけれども、大来さんの今度の訪米に関しましてもう一つ確かめておきたいことは、いろいろこちらで言いたいことがある、理解を深めてもらいたい。それはわかります、これはもう一般論としてもわかります。日本の立場を十分新しい角度に立って認識をしてもらいたい。ただ、逆にアメリカから強い要求が出されることも予測されるのじゃないでしょうか。その点についてはどう受けとめていらっしゃいますか。
  75. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは従来ブラウン国防長官とかその他アメリカ側からの日本に参りました人たちもおりますし、まあ議会筋でもいろいろな要望が出ておるということは承知しておりますが、これに対して日本側として、できることはできるし、できないことはできないわけでございまして、議論を通じてそういう点を明らかにするということが必要だろうと思っておるわけでございます。
  76. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 たとえば具体的に、午前中の質疑にもちょっとございました防衛費の分担の割合を引き上げてくれと、GNP〇・九%云々という問題。ただそれはNATOとの関連において、軍人恩給というものが向こうには入っているけれども日本には入ってないというその食い違い。そういう点も説明しなければならない、その理解も求めなければならない。しかしもうアメリカにおいては、当然それは予知していることでございまして、それ以上のことをさらに望んでいるのではあるまいかという一つの問題。  たとえばいまのソビエトの海軍力から見ると、第七艦隊を主力にした太平洋艦隊というものは、非常に艦船の隻数やなんかから比較をすると、大分劣っている、しかもNATOの方の防衛にも時においては当たらなければならない、いろいろなそういう作戦上の問題があるようであります。そうすると、やっぱりその足りないところを何とか日本海上自衛隊なり航空自衛隊なりでそれを補完してもらいたいという問題が一つ。それからやはり対ソというものを常に意識するといういままでのアメリカの一貫した外交方針を考えてみた場合、いつでも対応できる体制にするためには、たとえば沖繩を中心とする基地をもっと強化する必要があるのではないだろうか等々の新しい問題。それはブラウンの発言だとかバロー発言なんかもそれを含んだ発言だというふうにわれわれとしては受けとめているわけですね。上院のあるいは軍事委員会等の発言を聞いておりますと、相当やっぱり強い姿勢が日本に対して求められているというふうに感ずるわけです。果たしてそういうふうに非常に厳しい姿勢でもって日本に対しての要求というものが現実になされているのか、またしようとしているのか。したがってその絡みの中で、防衛分担金、防衛費についても、もっと上げるべきではないか等々。恐らく一番ウイークポイントと言われるこの問題を、日本の立場を知りながら、日本の国情というものを知りながらも、なおかつそういう厳しい条件というものをあるいは突きつけてきはしまいかというふうに思えるんですけれども、いかがですか。
  77. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいままでにもいろいろな御指摘のような意見の表示がございましたけれども、正式に日本政府に要求するという形のことはいままで一度もございませんでした。希望の表明あるいは期待の表明というような形はございますけれども、本来この自衛の問題は、日本として、日本の国情、経済、財政の限界、それから基本的には日本国民のコンセンサスというものに基づいて行われるべきでございまして、自主的に判断をすべき問題だと思っております。
  78. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いままで外務大臣としての御発言の中で、GNP、これは軍人恩給費を含めない実質の防衛費については、一%以上にやっぱりせざるを得ないだろうという問題あるいは防衛力整備法強化のために、対米協調というものを考えた場合に、やはり何らかの形でそれにこたえられるような質的向上というものを図る必要があるんではないかということを表明されたように記憶をしているのであります。これは防衛庁との絡みもございますのでいかがかとは思いますけれどもね、質的向上、なるほどそれは実際に航空機にいたしましても艦船にいたしましても日進月歩でございますから、常に優秀なものが開発されていくでありましょう。やはりそれに対応するためには、その意味からもそれに匹敵するようなものをということになりますと、日本自体がますますエスカレートしちゃって、やはり端的に申し上げれば軍事力強化といいますか、そういう方向へ踏み出さないとも限らない危険な要素というものは常にやっぱり共存しているのではないかということを心配するわけです。そういったことについても、今回そういうようなにおわせるようなお話をされるおつもりがあるのかどうなのか。
  79. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先ほども申しましたが、日本の自衛力はあくまでも専守防衛でございまして、自国の安全を守るという基本的な性格がございますので、これを逸脱することは絶対にあってはならないと私ども考えておるわけでございます。  GNPに対する比率について具体的な要請がアメリカ側からあったことはいままでもございません。これは日本のGNPが非常に大きなものになっておるわけでございまして、GNPの〇・九%と申しましても、約百億ドルになるわけでございます。これにNATO方式の計算を加えれば、年間百五、六十億ドルという絶対額になりまして、これは世界で第六位ぐらいの力になるわけでございます。
  80. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 わかります、わかります。もう時間も余りありませんのでね。それはいままで正式にそういう要望はなかった。今後もないというふうに判断されていますか、あり得ると判断されていますか。あった場合どうするのか。
  81. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 絶対ないとは言えないと思いますけれども、あった場合は、これは仮定の問題でございますが、やはり日本の立場、先ほど来いろいろ申しておりますような日本の立場を申し述べて両者の了解点、一致点を見出すということになると存じます。
  82. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大変その辺デリケートな御答弁でございましてね、両者の一致点とは果たしていかなるものであるかと、言葉じりをとらえて言うわけではございませんけれども、非常に重要ないまの御発言だろうと私は思います。
  83. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これはやっぱり基本的な日本の立場がございますので、それを逸脱することはできないという前提で、そういう立場で相手側の納得を得るというふうに申した方がよろしいかと思います。
  84. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、いままで感触なのかどうかわかりませんけれども、あるいは一%ぐらいにパーセンテージを上げなければならないかもしれないという、これは単なる大来さん御自身の気持ちを述べられたのかどうなのか。そうではなくして、あくまでも従来の政府の方針は曲げないんだと、たとえどういう強硬なアメリカからの要求があっても、従来の方針には変わりはないんだというふうに判断してよろしいんですか。
  85. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 国防会議におきまして、一%を超えないことをめどとしてという国防会議の決定がございます。この点については当時の段階における政府のコンセンサスだったと思います。これからの経済の成長率が、これが改定の七カ年計画では年率五・五%実質成長でございますから、現在の比率を維持いたしましてもその程度の支出の増加は考慮できるわけでございます。まあ日本の国内の現実から考えまして、この一%に到達するということもそう短期間にできることではないというふうに私どもは解釈しておるわけでございます。
  86. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 本日もっともっと御期待を申し上げた御答弁を待ち望んだんですけれども、ちょっと不明確な点は次回に譲りたいと思いますので、いずれにせよ今回の訪米につきましては、独自の自主外交というものがなるほどと思わしめるような、国民にそれだけの認識と理解が与えられるような、そういう成果というよりも取り組み方でぜひ当たっていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  87. 立木洋

    立木洋君 大臣、いま問題になりました大臣の訪米の問題ですが、私も最初にそのことに関連してちょっとお尋ねしたいんですけれども、大臣が訪米されるのが三月の十九日から二十三日までというふうに聞いております。御承知のように、ちょうどこの期間というのは参議院で予算の重要な審議が行われる日程であるわけですね。これは、参議院を軽視して外務大臣が訪米するのはけしからぬと言えば、いや、決してそうではございませんと、軽視はいたしておりませんといって答弁が返ってくると思うので、そのことを改めて私の方から質問はいたしませんけれども、しかし、問題はそういう重要な国会審議の日程の過程であえて五日間外務大臣が訪米される。それはただ単にあいさつに行って、そして予算委員会の実は審議が終わってからでも構わないような問題をこの五日間の間に議論されるなどというようなことは考えられない。やはりそれはそれなりに、大臣御自身これはいまの時期に検討することが重要であるという判断のもとに、予算委員会の審議中であってもあえて訪米されるものだというふうに考えざるを得ないと思うわけですね。  先ほど来同僚議員の方からも質問がありましたように、一つは全般的な世界情勢の問題について話し合いをしたい、もう一つは二国間の問題について話し合いをしたいということでございますけれども、これはアフガンの問題、中東の問題をめぐる情勢について日本側の見解もはっきりと述べておきたい、もう一つは二国間の安保の問題あるいは経済摩擦の解消の問題等々あると思うのですが、もう一度その点を、なぜこの時期に急いでおいでにならなければならないかという観点も含めて、こういう重要な問題が話し合われるんだということを理解できるように、ひとつまとめて御説明していただきたいと思います。
  88. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私、外務大臣に就任いたしましたのが去年の十一月の九日でございまして、たまたまその前後からイラン問題あるいはアフガン問題が発生いたしまして、これに対する対応ということについては、やはり米国との十分な相互理解が必要だとかねがね考えておりまして、できるだけ早い機会に訪米の機を得たいというふうに思っておりました。  日米間の問題につきましては、一時やや無風状態といいますか、緊張緩和の状態がございましたが、最近になりまして自動車問題、鉄鋼あるいは電電公社問題等につきまして再び問題が出てまいっておる。それから、安保問題につきましては、先ほど渋谷先生からも御指摘がございましたいろいろな考え方がワシントン方面でも出てまいっておる。そういう情勢から見まして、できるだけ早い機会に訪米をすべきではないか。御指摘のように、まだ参議院の予算審議が終わってない段階だと思いますので、その点は申しわけないのでございますが、一つには二十日が祭日でございますので、十九日の夕方の飛行機で出まして、二十日の休みの日と二十一白の金曜、二十二日の土曜、この二日を休ませていただいて二十三日の日曜に帰ると、最小限の欠席で済ませたいということでございまして、先般来各党の御了解をお願いしましてそういう日程を決めたわけでございます。
  89. 立木洋

    立木洋君 どうもそれでは納得できかねるわけでございますけれども、別の点からお尋ねしたいんですが、大臣が外交演説を議会でなされて、またきょう本委員会でもお話があったわけですけれども、平和外交の問題については確かに大臣強調されておりました。ただ私、最近の動きを見ておりますと、世界の情勢をわれわれが判断する場合に欠くことができない問題というのは、やはりどのような国であろうともその国の進路に関してはその国自身の国民が進路を決定する、選択する、そういう当然の権利がある。これはいかなる国であろうとも、それは、侵してはならないという問題というのは、いまの国際問題を考える上で欠くことのできないきわめて重要なモメントになっておるだろうと思うのです。これが侵されるといろいろな平和に関する差し支えが起こったり、いろいろな問題が出てくるわけでありますから、この問題はきわめて重視されなければならないというふうに思うわけです。  一方では、そういう状況の中で、やはり大国がこうしたいわゆる小国と言われるような国々に対して内部的な介入、干渉が行われる。場合によっては、極端な場合には、御承知のような武力による介入が行われる。これは当然許されるべきではないわけで、ですから、そういう意味で、こうしたどのような国であろうとも外国の主権に関する介入、干渉は絶対に許されてはならないという点についても、日本政府はやっぱり自主的な姿勢をとるべきではないだろうか。これは一つの点で、日本の特に民族の主権の問題で言えば、欠くことができない点で言えば、領土の問題がありますし、領土の問題で言えば千島の問題があり、尖閣列島の問題があり、竹島の問題がある。これらの問題というのはまだ残されている問題ですし、これは、ただ単に外国の民族の主権に対してそれを尊重し擁護するということだけではなくて、日本の将来を考える場合でも、この問題に対する明確な態度をはっきりさしていくということはきわめて重要な点じゃないかというふうに考えているわけです。この民族の主権に対する考え方、それから、いかなる外国、大国であろうとも介入は絶対に許してはならないという点の強調ですね、こういう点を、私は外交演説を聞きましてもっとやはりいまの状況から考えて当然強調されるべき点ではなかっただろうかという感を強くしてならないわけですが、この点についての大臣のお考えをまず最初に、具体的に入る前にお尋ねしておきたいんです。
  90. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この領土の尊重、主権の尊重、他国への干渉の排除、これは第二次大戦後の世界の大きな世論であり流れだろうと思います。現実が必ずしも一〇〇%そういう方向に行っていない面はあるわけでございますけれども、日本の立場は、基本的にそういういま御指摘のような立場をとっておると思います。
  91. 立木洋

    立木洋君 それで、先ほどもこの問題で質疑があったわけですけれども、大臣の外交演説の中でアフガンの情勢の問題に触れられまして、「これら諸国の平和と安定を維持するための国際的な努力が払われるべきであります。」というふうに述べられているわけですが、繰り返しになりますけれども、もう一度、日本政府としては具体的にどういう措置をお考えになっておられるのかはっきりさしておいていただきたいと思います。
  92. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 一つは、昨年十二月二十九日に私の談話という形でアフガンヘの軍事介入については首肯いたしかねると、できるだけ速やかな外国軍隊の撤去を求めるという発表をいたしまして、これをポリャンスキー大使に手交するということをいたしたわけでございますし、もう一つは、国連の緊急総会におきまして、日本の代表から同様の趣旨の演説をいたしまして、早期撤退決議に賛成の投票をするということをやっておるわけでございます。
  93. 立木洋

    立木洋君 十二月二十九日の談話ですね、これは中心的な点として三点述べられておるわけですが、確かにここでは、いかなる問題も武力の行使または威嚇によってではなくて、平和的話し合いによって解決されるべきである、という日本政府考え方が述べられ、今日のようなソ連のアフガンに対する進駐というものが国際の平和と安全を損なうものである、という指摘があり、なおかつこの問題に関しては、同国アフガンの独立と主権の尊重という立場に立って撤退すべきであるという等々の問題が述べられているわけですけれども、一方、私たちがいろいろ調べたところ、あるいは外国の報道等々によりますと、一九七八年の四月、アフガニスタンでは民族的、民主的な革命の方向で新しい政権がつくられました。で、その新しいアフガニスタンの政権がつくられて以降、その政権に賛成できかねると言われる一部の人々が外国に逃亡して、外国でいわゆるアフガニスタンの政府に反対をするいろいろな策動が開始されるという状態が起こったわけでありますが、こうしたアフガニスタンの政府に反対をする一九七八年四月以降の策動に関して、アメリカからのいろいろの援助、介入が行われておるということも数限りなく挙げることができるわけですが、このようなアフガニスタンにつくられた新しい政府、これも日本政府承認しているわけですから、その政府を転覆するために行われるいろいろな策動に対して、外国が援助、介入するというふうな事態について日本政府はどのようにお考えですか。
  94. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) いまの点につきまして、事実があったかどうか、政府委員から答弁させたいと存じます。
  95. 千葉一夫

    政府委員(千葉一夫君) ただいま立木先生の御質問にございましたような、たとえば、米国等によるアフガニスタンの政府を転覆させようとするような介入というこの事実につきましては、われわれは把握いたしておりませんので……。
  96. 立木洋

    立木洋君 千葉さん、いろいろと新聞はごらんになっているだろうと思うんですよ。一九七八年以降のアメリカが出しておる新聞、それから昨年の二月二日のアメリカの報道によっても、アフガニスタン反政府ゲリラがパキスタン領内で訓練をされているという明確なことが述べられ、それに対するアメリカ政府の否定は一切ありません。それから、アメリカが秘密裏に介入する可能性をめぐってカーター政権内部で議論を引き起こしておるというのは、七八年の五月二十八日、当時、ブレジンスキーと一連のCIAの中堅幹部がそれに積極的に介入すべきであるという提言が行われておるというふうな問題、それから日本の新聞でも、幾つかの新聞が一九七八年四月以降アフガニスタンでつくられた政権に対して、この新しい政府に反対する活動が活発化するにつれて、アメリカやその他外部からの武器の援助が進められておるという幾多の報道があるわけですが、こういう報道については全く関知しないという態度をとっておられるわけですか。ごらんになったこともないというわけですか。
  97. 千葉一夫

    政府委員(千葉一夫君) 報道は拝見いたしておりますが、それが果たして事実であるかどうかの確認はいたしておりません。
  98. 立木洋

    立木洋君 千葉さんの立場としてはそういうふうにお答えになるだろうと思うんです。しかし大臣、こういう事態がもしか事実であるならば、やはりこれは許してはならないことだろうと私は思うんですけれども、たとえどういう国であろうと、その一国の政府を転覆するような一部の勢力に武器を援助をしたり、あるいはそれをそそのかすような行為、行動が行われんとしておるならば、これは当然許すべきことではないだろうと思いますけれども、事実を認定されていないというわけですが、そういう幾多の新聞があるわけで、もしかそういう事態があるとすれば、大臣はどういうふうにお考えですか。
  99. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私どもの方ではその事実を認定しておらないわけでありますが、仮に全く仮定の問題として、ある程度の外からの援助があったといたしましても、そのことは、他の外国が運事力を用いて直接その国に侵入することの正当化にはならないだろうと思います。
  100. 立木洋

    立木洋君 それでは、その事実を認定されておらないという。ところが、ことしの一月の二十七日から二十九日までイスラム諸国に対する外国の圧力に関する決議というのが問題にされております。この中で取り上げられておるイスラム諸国に対する介入、干渉の問題、これはアフガンの事態も含めてでありますけれども、ここでは、超大国というのが複数の言葉で使われておりまして、現にここでは、イスラム諸国に対し各種の形態の圧力を行使し、武力行使の威嚇を行い、国内問題に干渉し並びに超大国間で激化する闘争と関連する超大国の利益及び戦略計画を守るためにイスラム諸国の領土内に軍事基地を建設していることに対し、深い懸念を表明し云々ということが述べられ、こうした介入や干渉のあり方には賛成できないということを、イスラム諸国に対する外国の圧力に関する決議の中では明確に述べられているわけです。そして、外務大臣所信表明演説の中で、もちろんこれ以前の外交演説でありますが、参議院の本会議の席上でも、「今回の事件に対する第三世界の諸国、なかんずくイスラム諸国の深刻な認識を理解するものであり、これら諸国への支持を表明するものであります。」ということもはっきり外務大臣述べておるわけですね。そうすると、イスラム諸国がソ連軍事介入には絶対反対、もちろん私たち日本共産党も絶対反対で、これは撤退しなさいと要求している。この点は一致しているんです。問題ない。ところが、超大国と挙げておる、アメリカという名指しはしておりません、複数で書いてある超大国ですから、これは常識ですが、これのいわゆる威嚇や武力行使にまたがるような行為に対して、あるいは軍事基地をつくるというふうなことに対する懸念を表明し、それには賛成できかねるという態度を表明しているわけです。この点についてはどういうふうに御認識ですか。
  101. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 外交演説で申しておりますことは、日本のたてまえからして、経済的あるいは人道的援助ということについて申しておるわけでございます。
  102. 立木洋

    立木洋君 私の言っておるのは、イスラム諸国の外国の圧力に関する決議の中で述べられておる超大国に対する厳しい批判という内容について、大臣はどういう御認識をお持ちですかということ。
  103. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) まず政府委員から……
  104. 立木洋

    立木洋君 いや、これは政府委員のあれじゃないんです。大臣のお考えを聞きたい。事実を認定しておらないとおっしゃったんだから。
  105. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) イスラム外相会議の決議は読んで、拝見しておりますし、いまのような表現があることも承知いたしております。これはあの地域の国々もいろいろな立場がございますけれども、外国からの干渉を排除したいという共通の気持ちがあると思っております。
  106. 立木洋

    立木洋君 ですから、これは確かにソ連のアフガンに対する介入というのはこれは重大な問題でありまして、これはすべての政党が一致してこれには賛成できないと、直ちに撤退すべきであるという態度をとっているということは、大臣御承知のとおりだと思います。その点はあえて申し述べませんけれども、しかし、どのような国であろうと、他国の民族の主権に介入し、干渉するというふうな行為は、これは絶対に許されてはならないことである。これはたとえ日本と友好の関係を基軸とするアメリカであろうとも、大臣はきちっとそういうたてまえ、趣旨は貫くべき私は立場になければならないと思うのですが、その点あえて質問させていただきますけれども、いかがでしょうか。
  107. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その点はお説のとおりでございます。  日本もアメリカに基地を提供しておりますけれども、日本自身の政府を持ち、日本自身の議会を持ち、日本自身の決定をしておると思います。
  108. 立木洋

    立木洋君 ここに述べられておりますね。イスラム諸国の領土内に軍事基地を建設していることに対し、深刻な懸念を表明し、というふうに述べられておりますけれども、いまアメリカはイスラム諸国のどこどこに基地をつくっておるのか、御承知でしょうか。
  109. 千葉一夫

    政府委員(千葉一夫君) 私どもの承知しております限り、トルコにアメリカの軍事施設がございます。これはNATOに基づくトルコ側の許可を得てやっておると承知いたしております。そのほか、エジプト領内の航空基地を使用しておるという報道も見たことはございます。
  110. 立木洋

    立木洋君 いま局長が言われたトルコとエジプトの件は確かにそのとおりだと思います。ただ、そのほかにバーレーン、それからソマリア、これはアメリカとの間でいわゆる日米安保条約みたいな条約があるところではございません。けれども、基地が置かれる。それから軍事顧問団が派遣されているのはサウジアラビアに軍事顧問団が派遣されておりますね。それから、現在交渉中で、基地だとかあるいは軍隊の派遣を認めてほしいという趣旨の交渉が進められておるのがケニア、オーマン等々でアメリカが行っておるという事態があるわけですね。いま挙げただけでもいわゆる七カ国。これは、中近東のイスラム諸国の中で、すでにこれらの諸国がこのイスラム諸国の領土内に軍事基地を建設していることに対して深い懸念を表明し、それに賛成できかねるという態度をとっておる。つまり、今日の事態の中で力によって問題を解決するのではなく、平和的に解決すべきであるという立場からしてそういう懸念が表明されておる。にもかかわらず、現実的にはこうした国々に米軍の基地やあるいは軍隊が存在しておるというふうな状況があるということを大臣十分お考えに入れておいていただかないと私はならないだろうと思うんです。  そういう意味で、私は、今回大臣がアメリカに行かれた場合に、このアフガンやアフガンの問題をめぐる問題の話し合いをされるときに、十分にそのことを念頭に置いて私は話しをしていただきたい。これは、先ほど大臣自身がおっしゃったように、これは非同盟諸国の動向をも十分に考え、あるいは西欧諸国のいわゆるあり方をも十分に念頭に入れてということを大臣がおっしゃったのでありますから、特にそういうことを私はあえて述べさしていただくわけです。その点はいかがでしょうか。
  111. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 十分頭にとめてまいりたいと思います。
  112. 立木洋

    立木洋君 それから、大臣が先ほど言われましたように、紛争問題が、武力の行使ではなく、あるいは威嚇によってではなく、当然、平和的な話し合いによって解決されなければならないという趣旨のことを述べておいでになるわけですが、最近のアフガニスタンの状況をめぐるアメリカの対応、これはその前にカーターの一般教書演説等々を見てみましても相当厳しい表現があります。ペルシャ湾地域を支配しようとする外国勢力による試みは米国の死活的利益に対する攻撃とみなされるであろう、それは軍事力を含むいかなる必要手段をも行使して撃退されるであろう、これは大変な言明ですね。これは日本政府が平和的な話し合いによって解決しようということとは全く違っておる。軍事力を含むいかなる必要手段をも行使して撃退されるであろう、という態度表明ですが、また、これとの関連でいわゆる核兵器の使用も辞さないという問題がアメリカ国防総省のイラン極東報告の中で述べられているという報道もあるわけですが、こうしたアメリカ側の対応については、当然、それは大変結構だというお立場をとるとは思いませんけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  113. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) そういう点については、今回訪米の機会によく話し合ってみたいと考えております。
  114. 立木洋

    立木洋君 念のためにあれですが、どういうふうな形で御主張なさるのか、構わなかったら多少なりとも事前に聞かしておいていただきたいと思うんですが。
  115. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) これは先ほども申し述べましたけれども、米ソ間の緊張がエスカレートして人類の将来を破滅に導くようなことは絶対にあってはならない、という立場からお話ししたいと思います。
  116. 立木洋

    立木洋君 私は、当然そうなければならないし、その点は言い足りない状況にならないように、ぜひとも強調して十分に述べてきていただきたいと思うんですが、大臣も御承知でしょうが、七八年当時でしたか、福田総理がイランを訪問された際述べておる言葉をいま思い出すんですが、ペルシャ湾の問題に関して、これは日本の生命線であるというふうな言明をされた。これは、中東までおいでになって福田総理が、ペルシャ湾は日本の生命線であるというふうなことを述べ、そういうことが文書に記載されるというようなことについては、これはきわめて大変なことだということが問題になったことがあったわけでありますけれども、当時福田総理が述べられたという、このペルシャ湾が日本の生命線であるという認識について、当然外務大臣はいまのお言葉からすれば異なった見解をお持ちになっておるというふうに判断していいでしょうか。
  117. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本経済国民生活を支えるエネルギーから見まして、七四、五%は石油でございまして、その石油のまた八割近くか中近東地域から来ていると、万一あの地域からの石油の供給がとまれば日本経済国民生活は大混乱に陥るという意味では生命線というような表現もあり得るかと思いますけれども、しかし生命線というのは、ある意味では戦前の響きもございますし、私としては余り使いたくない表現でございまして、この問題についても日本の立場はあくまでも平和的な解決という線でいくべき問題だと考えております。
  118. 立木洋

    立木洋君 経済の観点から若干先にお述べになりましたけれども、これは当時の福田さんのお話というのはそういう意味とは違った点から述べられているわけですね。これはペルシャ湾の平和と安全に言及した内容として、日本の生命線であると。これは戦前の響きがあるとおっしゃったのはまさにそのとおりでありますし、先ほどのカーター米大統領の一般教書を引用した部分からしましても、これがつまりペルシャ湾の問題、これがアメリカの死活的利益に対する攻撃とみなされるという趣旨とやはり思想的には共通する問題になるわけで、そうすると大変な事態が起こってくるわけですから、この日本の生命線であるという点については、やっぱり明確に異なっておるということをはっきりさしておいていただきたいと思うんですか、いかがでしょう。それでよろしいですか。
  119. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 先ほど答弁いたしましたような趣旨でございまして、経済的には日本に大きな影響があるというふうに考えておりますが、私の立場では生命線という表現は避けたいと思います。
  120. 立木洋

    立木洋君 それから、大臣が二月の十四日の衆議院の外務委員会で答弁なさっておられるわけですが、日本について、日本は極東ではアメリカの世界戦略に協力することになるが、ペルシャ湾の事態は直接の軍事的脅威ではないという趣旨の御答弁をなさっておりますが、これは間違いございませんですね。
  121. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) そのとおりでございます。
  122. 立木洋

    立木洋君 そうすると、アメリカのペルシャ湾への軍事介入には一切協力しないということは、これは明確なわけでしょうか。私は軍事協力というふうに限定しておりますが。
  123. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 日本の平和憲法の趣旨からしても、それはできないことだと思います。
  124. 立木洋

    立木洋君 だから、その点に関しても、いわゆる今度は訪米なさった場合に明確にされてこられることが私は重要だと思いますが、そういうふうに御期待申し上げてよろしいでしょうか。
  125. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) その辺は、アメリカ政府内部でも承知の人が相当いると思いますが、念を押してまいりたいと思います。
  126. 立木洋

    立木洋君 じゃ、時間がだんだん迫ってまいりましたのでこれ以上あれですが、いま申し上げた点ですね、大臣が訪米に関してまあ十分にお考えいただいて、そして私は、あえてやはり参議院の審議が行われている重要な時期で、もちろうお休みになるのは二日間でございますが、しかし、私はそれなりに日本の進路が誤るような事態になってはこれは大変でありますから、先ほど来の議論にもありましたように、十分に念頭に置いて対応していただくことを切に要望しておきたいと思うんです。  で、次の問題にちょっと移らして二、三点述べさしていただきたいんですが、これは外交演説の中に明確に触れられていないように思ったわけであえてお尋ねするわけですけれども、人権問題、つまり国際的な人権規約、すでにわが国は加盟したわけで、この人権問題についての国際外交の中での位置づけという点について大臣がどういうふうにお考えになっておられるのか、その点お伺いしたいんですけれども。
  127. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 人権問題につきましては、これは一つには、それぞれの国の歴史的な背景とか発展段階とか、いろいろの立場でこの人権問題に対する対応が違っておる面があると思います。ある特定の国の国内の人権問題の観念をそのままほかの国に適用するということは、国際関係からいって無理な場合もあり得ようと思っておりますが、まあ基本的人権を守るというのは人類社会共通の念願であり、要請であるということは同時に考えるべきだと思います。
  128. 立木洋

    立木洋君 これは私たちもきわめて明白にしているわけですが、これがどういうふうな社会体制にあれ、やはり基本的な人権は尊重されなければならないと。で、これが、考え方の相違が、これが物理的、あるいは武力、あるいは行政的な措置等々で問題が解決されるというようなことは望ましいことではないわけですから、これはやはり毅然としたわれわれ基本的な、人権規約に加盟した日本政府としてもきちっとした対応をぜひとっていただかなければならないというふうに思うわけですが、ところが、昨年の三十四国連総会で、チリの人権問題に関する決議で日本の国は棄権をされたんですけれども、これはどういうふうな理由から棄権をされることになったんでしょうか。
  129. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この点につきましては、最近のチリの国内の情勢で、政治犯の大量釈放、戒厳令の解除、国連人権問題調査団の受け入れ、新労働法の制定など、漸進的に民主化政策を推進しており、まあある程度人権問題、チリにおきまして改善に向かっておるという認識を持っております。また、日本以外にも、ASEAN諸国等はすべて棄権をいたしておるわけでございまして、そういう、いま申し上げました日本の判断によって棄権をいたしたわけでございます。
  130. 立木洋

    立木洋君 いま大臣がおっしゃった点は、私は違うんではないかと思うんですよ。一昨年の三十三国連総会のときには日本政府はこれ、賛成されたわけですね、このチリの人権問題に関する決議では。そして去年は棄権されたわけです。ところが、一昨年、このチリの人権問題に関する決議で賛成した国は九十六カ国です。去年も九十六カ国なんです。そして反対したのは、一昨年は七カ国が反対して去年は六カ国か反対している。棄権したというのが、いわゆる諸国が大分棄権された国が多いと言われますけれども、一昨年の場合には三十八カ国が棄権されているのに去年は三十三カ国が棄権するというふうな状況になっているんですよ。それで、チリの状態が若干好転したというふうなことを言われましたけれども、チリに関する人権の問題でのこの決議の中では、一般的に人権状況の改善は見られず、むしろ前回の報告よりも悪化していることに注目する、ということが国連の決議の中に明確に第六項に述べられているんですよ。そしてほかの国は大体みんなそうだというふうに判断して、賛成九十六、反対も減り棄権も減っているのに、日本政府だけが棄権に回る。しかもこれが国際人権規約に加盟した当初に人権問題にとった日本政府の態度ということになると、これは全くいただけない。これは、賛成に回ったのが棄権に回っていったんだから悪くなったわけですよ。日本政府の態度というものは。もういま大来さんが外務大臣ですから、私は園田さんが外務大臣のときにチリにおいでになるときに、チリに行かれるというのは大変われわれとしては賛成できかねると。そしたらそのとき園田外務大臣は、私はチリに行くような状態になったということについて後でいろいろ考えてもみたと、しかし私はチリに行ったら必ず人権問題、これを最初に私は出して、絶対にこういうことはするなということを厳しく要求すると、だからぜひチリに行くということに反対をしないでほしいという趣旨のことを、私はあそこの外務省の大臣室でお会いになったときに直接言われたんです。ところが、現実に向こうに行って今度帰ってきたら、チリの事態というのは好転しておるという園田外務大臣の記者会見での発言を見て私はびっくり仰天した。ここではチリの大変な事態というのは、資料たくさんありますけれども挙げる時間がありませんから挙げませんけれども、これは私は、いま大臣がおっしゃったことというのは全く理解しかねる答弁だというふうに言わざるを得ないんですけれども、もう一度よくお考えいただきたいわけですが、いかがでしょうか。
  131. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 私の前任者の園田大臣のときからの問題でもございますし、国連局長から答弁させたいと思います。
  132. 賀陽治憲

    政府委員(賀陽治憲君) チリの人権に関します国連決議は毎年提出されておりまして、先生御指摘のように毎年のことでございますが、また昨年国連総会に出てまいりました報告書が先生御指摘のようにチリの人権問題について相当詳細にわたっておりまして、必ずしも改善措置ばかりではなくして、むしろ改善していないところが多いではないかということを指摘している点も、事実としては私はそのとおりだと思うのでございますが、これにつきましては加盟国が非常に意見が分かれておりまして、何せこの報告書はこの決議案をつくる指導勢力となっている国々かやはり書くものでございますから、これはその国の主観的判断が反映されていることは、これはある程度いたし方ないということであろうと思いますし、多くの国がかような事態の認識に賛成をしない。したがって、チリに対します漸進的な人権問題の改善ということが見られるときに、全く改善の跡がないというのを牽強付会にこれを決めつけるというようなやり方が、果たして国連のとるべき現実的な対応策であるかどうかという点に至りますと、非常に意見が分かれておるというのが実情でございます。そういう意味合いにおきまして、私どもの方の昨年の総会における判断におきましても、新しい事態の認識を十分踏まえて、その上で判断をすべきであると、それが年々歳々同じような、判で押したような対応策で一体チリの人権問題が解決に向かうのかどうかという点を率直に考えるべき時期が来たというふうな判断をしたわけでございまして、そういう意味でわが方の棄権ということが投票として示されたわけでございまして、大臣が御答弁になりましたように相当多くの、特にASEAN諸国の全部、それからアフリカ諸国の大勢、これが棄権をもってこれに対処することが最も現実的だという判断を示した、その状況を日本も認識をともにするということであろうかと思うわけでございます。
  133. 立木洋

    立木洋君 いわゆるマンネリ的にならないように、やっぱりチリの人権問題というのは率直にどう解決していくかということを真剣に考えるべき時期に来ておるという点については、私も認識は同じだと思うんですよ。当然そうしなければならないだろう。しかし、その問題と、これに対して棄権をするということとは私はやっぱり別のことだろうと思うんですよ。  いま局長が言われた、これは部分的にはいろいろ留保をつけるとかというふうなことがあっても、この人権問題に関する決議に賛成をするか反対をするか棄権をするかというのは、基本的な態度の変化にかかわる問題なんですよ。私は部分的な問題で日本政府が留保をつけるというようなことが結構だと言っているわけじゃありませんよ。しかし、仮にそういう事態があったとしてもですよ。  それからもう一点は、アフリカ等々の多くの国々が、と言われますけれども、棄権した諸国というのは三十八カ国から三十三カ国に減っているわけですからね。これは三十三カ国が多いか少ないかと言えば、何に比較して多いか少ないかということにこれはなるわけでしょうけれども、しかしもちろんこれは少ない数とは言いません。しかし、それならば前の年になぜ三十八カ国も棄権されておるときにそういう事態を重視して棄権せずに今度棄権するようになったのかと言えば、それは理由にならないと私は思うんですよ。  それで、私はそういう意味から言いますと、いわゆるこういう点では日本政府が人権問題に関して毅然とした態度をとるというふうなことを、少なくとも国際人権規約に加盟した、その最初の国連でいわゆる態度を表明すべき問題であるこのチリ人民の人権問題で、こういう棄権の態度をとったというのはきわめてやっぱり遺憾だと、よくその点はもう一度御検討していただきたいと思います。  それからまた同時に、このピノチェト訪日の問題に関して、前回、園田外務大臣のときに私が質問をいたした点については、「まだ検討をしておるところでございます」、しかしまた「苦慮している」というふうな表現もあるわけですけれども、こうした点も私はピノチェトの訪日の問題等々どういうふうに検討されているのか。もしか招請するということが決定されているならば、この点もあわせて検討し直してほしいということをあわせて要求しておきたいんですが、その点最後に大臣の御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  134. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまのいろいろな御意見は承りましたが、ピノチェト大統領の招待につきましては、すでに既定の事実になっておると了解いたします。  中南米参事官から補足答弁をさせます。
  135. 色摩力夫

    説明員(色摩力夫君) 時間もございませんから、先生の御質問の最後の問題だけに限定さしていただきますが、御承知のとおり、昨年夏、園田外務大臣が中南米諸国を歴訪なさいました。その際、御承知のとおりチリも正式訪問国の中に加えられたわけでございます。その際に、歴訪国六カ国すべて儀礼上同じようなことをしたわけですけれども、先生御指摘のとおり、ピノチェト大統領、それからクビリョス外務大臣に対して正式の招待を、原則の招待をいたしたわけでございます。もちろん、こういう外交慣例上、具体的の日時その他の詰めは外交ルールをもって双方の政府の都合のいい時期にということになっております。それに関して、いままでのところ先方はなるべく早い時期に訪問したいという希望が寄せられております。それに関して、まだ外交交渉は始まっておりません。したがって、具体的日時の詰めについてはいまだ少なくともわが方にとっては具体的な交渉に入ってない状態でございます。
  136. 立木洋

    立木洋君 一言だけ。  大臣訪米されましたら、先ほど来大分舌足らずの点がありましたけれども、意のあるところをぜひ理解していただいてやっていただきたいというふうに思います。  それから、最後のチリの問題に関しては、これはやっぱりチリの人権問題というのは非常に重要な問題ですから、これは十分に、国連の人権規約に加入をしたわが国としても国際的にやっぱり恥ずかしくない態度をとるべきだど思いますし、ピノチェトの来日の問題についても、われわれとしては全く反対ですが、よく御検討いただきたいということを最後に述べておきたいと思います。
  137. 田英夫

    ○田英夫君 大来外務大臣には初めての御質問をさしていただくわけでありますし、さきの本会議における外交演説、そしてきょうの所信表明を伺いまして、私の感じているところを率直に申し上げて御質問をしてみたいと思います。  一つ基本的な問題として、大変失礼でありますけれども、外交演説並びに本日の所信表明を伺いまして、大来外交と言うんでしょうか、そうした外務大臣外交哲学と言えるようなものを実は最も伺いたかったのでありますが、残念ながらそれを伺うことができませんでした。この種のものは実はそう簡単にやりとりの中で理解し合えるものとは思いませんけれども、本来国会の、特に参議院の外務委員会は、具体的な問題についての意見の交換をすると同時に、より基本的な外交の問題を話し合うということであるべきだと思います。その意味で、本日もそうでありますが、常に最近の質疑応答を予算委員会を含めて拝聴しておりますと、いわゆる与野党の間の外交哲学といいますか、外交問題についての基本的な姿勢というものに余り大きな違いがなくなってきているということを感ずるわけであります。実はそれは当然のことであって、現在の国際情勢からすれば、そうなることの方が当然ではないだろうか。野党の中にむしろ意見の相違が明白になりつつあると思います。また、これも失礼ながら与党の中に、一つの党の中に意見の相違があらわれている。たとえば、日中平和友好条約の場合はその一つの例でありましようけれども、これは一体どういう現象なのかということをお互いにしっかりとつかんでいくことから始めなければならないんじゃないだろうか。つまり、かつての東西対立冷戦構造という世界の構造が変化をして、イデオロギーで世界を色分けするというそうしたことがいま崩壊したということの中で、外交姿勢、外交哲学というものも組み立てられていかなくちゃならないと。それに追いつかないものは、おくれているものは与野党、保守革新を問わず、むしろ保守と革新の中で共通の考えがあり、また、保守と革新の中で別の共通の考えがあるというそういう状況を生んでいるんじゃないだろうか。失礼ながら、党派の名前などは挙げられませんけれども、そういうことを私は感じております。そうした意味で、大来外務大臣の基本的な姿勢をひとつこれからお聞きする具体的な問題の中で出していただきたい。また、今後もこういうやりとりでありますから、抽象的な話で質疑をすることは時間のむだでありますから避けまして、具体的な問題に移りますので、ひとつそういうことを私が希望しているということをぜひ御理解の上お答えをいただきたいと思います。  最初に、先日韓国の金大中さんが公民権を回復されたという私ども隣人としてまことに喜ばしい事実が生まれたわけでありますが、この金大中さんが先日記者会見をされて、いわゆる金大中事件の関係者といいますか、私は犯人と申し上げたいんでありますが、その追求はしない、こういう意味のことを言っておられるのでありますが、これについて政府はどういうふうに理解をしておられるか、このことをまず伺いたいと思います。
  138. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) ただいまの発言につきましては私どもも承知いたしておるわけでございますが、これは金大中氏がさきの事件の被害者としての立場で発言をされたことだと了解しております。これ以上の追及をしない 過去を水に流すという趣旨のことを言われたわけでございます——と了解しております。
  139. 田英夫

    ○田英夫君 これも失礼な言い方かもしれませんけれども、あの報道をごらんになって、当時の外務大臣であり、第一次政治決着の外務大臣であった大平現総理並びに第二次政治決着の総理大臣であった三木さん、あるいは宮澤当時の外務大臣、こういう方々は率直に言ってほっとされているのではないかというふうに思うのでありますが、私はほっとされては困ると、政府はいま大臣が言われたような理解でおられては私は困ると思うわけです。金大中さんの記者会見の模様が、詳細に実はもう報告が入っていると思いますが、御検討いただきたいと思いますけれども、金大中さんの気持ちは、要するに、自分は韓国の民主化の先頭に立っていくのだという決意をあの表現によって述べられた、こう理解できないでしょうか。
  140. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 全文を拝見いたしますと、そういう決意がくみ取れるように思います。
  141. 田英夫

    ○田英夫君 私もこのことは非常に重要なことだと思いますし、実は、韓国の民主化を望んでおられる韓国の皆さんといろいろ接触をした中で私も実ははっとしたことがあるんでありますが、金大中事件の直後にいわゆる金大中事件の原状回復と、日本の国権が侵されたのであるから金大中さんに一日も早く再来日をしてもらおうと、ソウルに金大中さんが姿をあらわして以後そういうことを私もこの委員会で強く求めましたし、一種の日本の世論でありましたが、そのときにある韓国の人から、日本の皆さんがそういうことを言われることは十分理解できるけれども、それはあくまでも日本の方々の立場だ、われわれの立場からすれば金大中さんはどんな困難の中でもソウルにとどまって、民主化運動の先頭に立ってもらわなくちゃいかぬのだ、一日たりとも国外に行く暇などはないのだという気持ちだ、こういうことを言われてはっとしたことがありますけれども、今回公民権を回復して自由になられた金大中さん、ますますもって民主化運動の先頭に立つのだという意欲を、もちろん大統領選挙を控えてということを含めましてあそこで表明をされた。金大中事件の解決はどうでもいいのだということでは全くないと。私に言わせれば、金大中事件の解決は一にかかって日韓両国政府責任においてなされるべきだということを、記者会見の中でもそれをにじみ出させる言葉を吐いておられますが、私はそう思いますが、政府はどういうふうにお考えでしょうか。
  142. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 政府といたしましては、この金大中事件に対する立場、これは従来とも変わりございませんで、もちろん公権力による主権の侵害があったという証拠なり判明するならば、そのときは従来どおりこの政治決着を見直すということもあり得るわけでございまして、そのことを含みまして、政府の立場というものは最近の一連の事件にもかかわらず変わりございません。
  143. 田英夫

    ○田英夫君 従来の政府の御答弁の繰り返しだと思います。そのとおりだと思いますが、伊東官房長官も同じことをこの間言われました。新しい事実が出ればということがあるわけですが、新しい事実が出ればということは日本の捜査当局は捜査を継続していると、こういうことを指すわけですね。言っているわけですね。したがって、その捜査の中で新しい事実が出てくるということを期待できることになります。金大中さんが自由になられたと、こういう中で、何らかの方法によって金大中さん自身の口から事件の真相を解明しようとされるのかどうか。これは、きょうはあえて私は捜査当局の方の御出席を求めませんでしたが、このことはいずれ別の機会に御答弁をいただきたいと思うわけですけれども、そういうふうに考えるのが常識ではないでしょうか。で、今回の金大中さんの記者会見における、関係者の責任は追求しないという言葉が、実は日本の捜査当局の接触をも断って、私はそういうことには一切関係しないと、こういうふうに受け取っておられるのかどうか、これは外務省に伺うのは筋違いかもしれませんが、解釈を伺いたいと思います。
  144. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 捜査当局が捜査を依然として継続しておるということには今後とも変更がございません。政府としましては、従来に引き続きまして真相の究明を図っていきたいと、かように考えております。
  145. 田英夫

    ○田英夫君 金大中さんが自由になられたということは、金大中さんの問題だけでなくて、そういう状態が韓国で生まれてきたということの中で、今後いままで言われてきたような日本政府の御答弁では非常に困惑されるような事態が起こるということを私は予想をしております。この問題はそのことだけ申し上げておきたいと思います。  次に、そのような変化が起きている韓国と、朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮との間ですでに対話が始まっているわけでありますが、この点について外務大臣の御所感を伺っておきたいと思います。
  146. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) すでに準備会合も行われたわけでございまして、双方の総理会談も行われるかと存じております。私どもとしても、この南北会談の成り行きを十分注意して見守っておるわけでございます。まだいまの段階で早急に、どういう成果、どういうところまで到達するのか、いまの段階ではまだ判断いたしかねておるわけでございます。
  147. 田英夫

    ○田英夫君 実は、大臣の言葉じりをとらえるようで恐縮ですけれども、いまも総理大臣の会談という言葉を使われたんでありますが、いわゆる北側はこの一連の、現在すでに行われているものも、それから今後行われることが予想されている総理クラスの接触も、接触という言葉を意識的に使っているということを北側関係者から私直接聞いたことがあります、最近のことですが。で、あくまでも会談ではありませんと、これは注意深く北側の文書などを読んでみますとそのとおりであります。御承知のとおり、北側は従来から政府間接触というものを朴政権下では拒否してきた。そして大民族会議というものを、つまり各界各層広い国民の代表同士の接触を主張してきました。ところが今回は、総理大臣同士の接触もよろしいと、こういう態度の変化を示したことで、あたかもそれは総理会談か、両国政府トップ会談がすぐにも行われるかのような印象を持ちやすいのでありますが、そうではないんだということを北は強調をしております。この点で、私はこれは要望でありますが、ぜひ大来さんが今度訪米される中で、アメリカ側の朝鮮半島に対する認識をぜひ聞きただし、そしてこの問題について御討議をいただきたい。私の認識では、アメリカの朝鮮問題についての認識はここ数年来かなり大きく変化をしております。そのことは、先ほど冒頭私が申し上げた世界情勢の大きな変化ということをアメリカ当局者があるいは議会筋も含めて認識したからの結果だと思うわけでありますが、このことは私どもの隣人である朝鮮半島の平和、そして統一という問題について非常に大きな影響力を与えると思いますので、政府責任者としてぜひこのことを率直にお話しいただきたい。特にその場合にこれも私の認識では、アメリカは北側の態度についてきわめて認識が不足していると思います。そういう点をぜひお話しをいただきたいと要望いたしますが、御所見を伺いたいと思います。
  148. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) この朝鮮半島の問題も今回の話し合いの一つにいたしたいと私の方では考えておりますが、従来、私ども米国側に接触しておるところでは、韓国を抜いて北だけとアメリカが接触することはないというふうに申しておるわけでございます。
  149. 田英夫

    ○田英夫君 これは一つ要望で、さらに帰国されましてから機会がありましたらいろいろお話を伺いたいと思いますが、もう一つ朝鮮、韓国に関連をした問題で、日本読みにして徐俊植君という、日本で生まれ育ち、ソウル大学で学んでいて、朴政権下で逮捕された政治犯、これは兄弟おりますが、その徐勝、徐植兄弟、そのうち特に弟の方の徐俊植君については二年前の五月に七年の刑が満了して、本来ならば釈放されるべきところを、社会安全法という法律で、日本で言えば予防拘束といいましょうか、つまり朴政権に気に入らない人物であるから、これ一九七五年にできた法律ですが、そのまま拘禁を続けるというそういうことで、いまだに釈放されておりません。これはこういう聞き方をすると、それは韓国の国内問題でありますからという御答弁が返ってきそうなんですが、それは私はあらかじめその答弁は防いでおいて、日本で生まれ育った人であり、また彼らが——彼らがという言葉もいけませんが、在日六十万の朝鮮民族というのは、そもそも日本が戦争前あるいは戦争中に強制的に連れてきた人たちの子孫であるということを含めて考えたときに、人ごとでよその国の法律だからとやかく言えないのだということは言うべきではないと、こういう立場から政府としてこの青年の釈放を韓国政府に要望されるお気持ちがないかどうか。すでに去る二月六日に与野党十人を超える国会議員の署名で大韓民国の崔圭夏大統領あてに徐俊植君の釈放を求める要望書を官房長官を通じてお渡しをいたしましたので外務省も御存じと思いますけれども、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  150. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 私どもの答弁を部分的に田委員おっしゃられましたので、その点は省略いたしますけれども、この徐兄弟の今後の処遇についての御関心のほどは私ども十分承知いたしております。すでに韓国側に御関心のほどは伝えてございますし、再度そのラインに沿って努力いたしたいと思っております。
  151. 田英夫

    ○田英夫君 これは、朴政権下のあのような状態の韓国の中で起きた不幸な事件の一つでありまして、金大中さんは公民権を回復されましたけれども、この徐兄弟はいま申し上げたような状態でありますし、金芝河氏も依然として釈放されていない。社会安全法というのは、いわゆる維新体制、維新憲法のもとで、維新憲法第十条に基づいてつくられた法律でありまして、いま次第に維新憲法というものは、崔圭夏大統領のもとですでに一つずつ取り払われているというような状況にあるわけでありますが、実は徐俊植君のお母さんはいまかなり重い病気にかかっている。この社会安全法によると、二年間ずつの区切りで拘禁を続けることができる、こういう規定のようでありますから、ちょうどことしの五月二十七日で二年間のいわば拘禁を続ける期間が切れるわけでありまして、一つの大きなめどだと、こう思うわけで、この点はぜひ私は政府としても深い関心を持っていただきたい。しかも、民主化が進みつつある韓国のことを御配慮いただきたいということをお願いをしておきたいと思うんです。  次に、同じように拘禁をされているという問題でありますけれども、これは日本の青年ですが、渡田正弘君という青年が、去る昨年の十二月二十一日に、台湾に参りまして、帰ろうとしたところを空港で逮捕されておりますが、このいきさつ、現状を外務省はどういうふうに把握しておられるのでしょうか。
  152. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 私どもとしては内々に交流協会を通じて本件についての詳細をつかむように努力いたしております。
  153. 田英夫

    ○田英夫君 外交ルートが直接ないという状況の中で、なかなか把握しにくいとは思いますけれども、しかし、日本の青年が旅行中に逮捕をされる——私もこの身元を、身元といいますか、出身その他いろいろ調べてみました。全く東京で仕事をしていた一青年が、たまたま昨年の十二月十日に起きました高雄事件、この問題に巻き込まれてしまったという。台湾側の当局側の発表によりますと、この高雄事件のいわゆる容疑者、反乱側ですね、これは国民党に反対をして市民たちか立ち上がった事件でありますけれども、それと関連をしていたんだというようなことを当初言い、またことしの二月の初めになりまして、高雄事件には直接関係がないので別件で調べているというようなことも言っている。どうも台湾の当局側の発表は二転三転しているように思いますけれども、この辺の事情はどういうふうになっておりますか。
  154. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) この青年は高雄事件に関連して目下裁判にかかっておるというふうに私どもは承知いたしております。
  155. 田英夫

    ○田英夫君 実はかつて朴政権下の韓国で、日本の早川君、太刀川君という青年が逮捕された事件を思い出すんでありますけれども、この問題についてやはりもう少し政府か——いろいろ障害はあると思うんですけれども、真剣に、つまり外交ルートという点が大変障害かもしれませんけれども、さまざまな方法はあると思いますので、もっと親身に把握をしていただいて、早期の釈放を台湾当局側に求めていただきたい、こう思いますが、そうした見通しはいかがでしょうか。
  156. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 田委員の御関心を踏まえまして一層努力いたしたいと思っております。  見通しは、裁判手続を了した後、近い将来に送還されるということを期待いたしております。
  157. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つアジアの問題でありますが、カンボジアの難民救済、この問題はいま私どもの周辺、アジアの中のさまざまな問題の中で最も重要な問題の一つだと、こう考えておりますが、さきに報道されたところによると、政府の派遣した団の一部が現地から消えてしまったというような報道がありました。この辺のいきさつはどうなっていたのか、お答えいただきたいと思います。
  158. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 田委員御指摘のとおりの報道があったことは事実でございます。実はこの点なかなか困難な側面がございまして、すなわち日本から派遣されておる方々というのは政府の派遣でございます。したがいまして、政府といたしましてはその身辺の安全に、場合によっては必要以上に神経質になっておるということが指摘できると思います。かたがた、タイ側もその点を踏まえまして私どもに非常な慎重な配慮、それが場合によっては神経質過ぎる配慮ということから早期引き揚げというような事態を招いたことは事実でございます。しかしながら、このカンボジア難民の窮状を一刻も、一日も救済をし続けるという必要性については、現地に行かれておる方々も痛切に感じておるわけでして、安全が確保されるにおいては国境周辺に戻るということにすでに方針を決めております。医療協力チームのみならず、水の井戸掘りのために活躍しておられる方についても同様でございます。
  159. 田英夫

    ○田英夫君 カンボジアの難民救済につきましては、タイ側に逃げてきたという、そういう人たちの救済については、比較的日本側としましてもあるいは国際的にやりやすいといいますか、すでにかなり進んできているというふうに聞いておりますが、日本政府の、あるいは民間も含めていいんですけれども、救援活動、あるいは物資その他の救援も含めてですが、そうしたものはタイ側に逃げてきた人たちを対象としているのか、カンボジア側に残っている人たちをも救済し得る状況になっているのかどうかですね。聞くところによりますと国際赤十字に寄託されました救援の物資はプノンペンへも送られる状態にあるということも聞くのでありますが、その辺はどういうふうに把握しておられますか。
  160. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 日本政府が直接関与しておりますのは御指摘のとおりタイ領にありますカンボジア難民が対象になるわけでございます。カンボジアの中には私どもとしても入れず、結局中立の国際機関がカンボジア側の了承を得て入っております。したがいまして、わが方の救恤物資は国際赤十字委員会あるいはユニセフの機関を通じてカンボジアに残っておる難民に手渡されております。
  161. 田英夫

    ○田英夫君 いまおっしゃった国際赤十字とユニセフの場合は、まさにカンボジアに残っているという意味でプノンペン側にも渡っていくというふうに政府としても理解しておられますか。
  162. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) プノンペン側というお言葉が、その政治的なプノンペンの政府ということであればこれは違いまして、要するにプノンペンにおります、あるいはカンボジアにありますところのカンボジア人に渡っておるというふうに御了解いただきたいと思います。
  163. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つこれ全く報道でありますが、いわゆるポルポト政権、民主カンボジア政府といいますか、日本政府は依然としてカンボジアの政権としてはこことの関係を持っていると理解をするのでありますが、そのキュー・サムファン新首相が中国を訪問する途中日本に立ち寄るという報道がありますが、これは政府は確認をしておられますか。
  164. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) キュー・サムファン氏が日本経由北京に行くというような事実は私どもも承知いたしております。ただし、現実に日本に果たして来られるかどうかは確認いたしておりません。
  165. 田英夫

    ○田英夫君 その場合は日本政府はどういう扱いをされるのでしょうか。つまり日本政府が認めている政権の首相というのは日本への——まあこれは公的訪問になるのかどうかも問題でありますが、その辺はどういうふうに扱われるのですか。
  166. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 公的訪問になるというふうには了解いたしておりません。どのような接遇を行いますか、これはわが方の承認しておる政府の関係者でございますので、もちろんコレクトな処遇ということに相なると思いますが、その具体的な対応につきましては、現実に立ち寄られることがはっきりした段階で考えたいと思っております。
  167. 田英夫

    ○田英夫君 次の問題に移りたいのでありますが、この委員会でもかつて何回か御質問をいたしましたが、もういまから十年以上前に日米間で結ばれましたいわゆるミクロネシア協定のことでありますが、以前から気になっておりましたが、機会がありませんでしたのできょう御質問をいたしますが、日米双方五百万ドルずつ、当時の日本のレート、ドルのレートで日本の場合は十八億円、という負担で日米それぞれが戦争中のミクロネシアの人たちへの被害の補償をするといいますか、政府はこれを見舞いというふうに考えるという御答弁が当時あったようでありますが、それはそれとしまして、日本側はその十八億円相当を物資で供与するということで、すでにこれは完了したと私は理解をしております。ところが日米間で、政府間ではっきり協定をし、この国会でも野党側は反対したんでありますが、これは承認をされて成立をしたといういきさつがある。その協定がアメリカ側では守られていないということを聞くのでありますが、つまりアメリカ側の負担の五百万ドルというものはいまだに現地の人たちに支払われていないというふうに聞くんですが、いかがでしようか。
  168. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま田委員御指摘のミクロネシア戦時補償の問題については、日本側はすでに支払い済みでございます。アメリカ側については先生が当委員会あるいは別の委員会で御指摘になりましたように、一時アメリカの支払いの仕方が日本側の支払い、さらに追加支払いとリンクさせるというようなことでございましたけれども、その後アメリカ側はリンクさせるという態度は変えております。ただ、最終的に約束しました全額が支払われているか否かということは、まだ私たちの方では確認しておりません。
  169. 田英夫

    ○田英夫君 これはアメリカともあろう国が、本来私はこの委員会でも申し上げたとおり、現地に実は私、ミクロネシアに参りまして現地の方々とも話し合った結果なんですが、あの戦争中の被害というものはあの戦争には全く関係がなかった、ただ日本の委任統治領であったということのかかわりの中で、全く戦場と化して悲惨な被害を受けているわけです。同時に日本とのかかわりで言えば、軍属というような形で徴用をして戦争に参加をさして亡くなっている人も多数おる、あるいはアメリカ軍の爆撃のために亡くなった方、あるいは家を失った人もたくさんいるというこういう状態の中で、その亡くなった方や負傷した方や家を焼かれた人の補償をキャッシュで、現金で支払うのがアメリカの責任であったはずです。それをいまだにアメリカともあろう国が遂行していないと、金額は五百万ドルだと、これはやはり私は国際的に許されないと思います。大変差し出がましいんでありますが、私はワシントンでニューサム国務次官に会いました折りにこのことをただしました。すぐに担当者を呼んで調べましたところが、いま北米局長がお答えになったとおり、アメリカ側は実は現地の人たちに一定の基準を設けて、家を焼かれたら幾ら、命を失ったら幾らというような補償の額をめどを決めて申請さしたところが、もう何十倍という額に達してしまってどうしようもなくなったのだと、こういうことなんですね。これは私はもう一回見直してほしい。ただ、協定を見直すということは政府間でやれないことは私もわかりますので、現実の問題としてあの悲惨な戦争の災害を受け、しかも日本のあの戦争のためにそうした悲惨な災害を受けた人たちなんですから、大体そもそも五百万ドルというような形で処理したこと、十八億円で処理したことか——十八億円というのはちょうどいま予算が問題になっておりますけれども、日本国家予算から考えたって本当に小さな額なんですね。そういう意味でむしろ憤激を感ずるわけです。現地を見てくればすぐわかります。ですから協定協定としてやむを得ませんけれども、ここで政府は反省をして、アメリカ側もいま反省しようにもいま処理に困っているわけですが、何らかの方法を講じてこの問題を処理をしていただきたい、アメリカ側と話し合っていただきたい。これは外務大臣が今度行かれるときに大臣自身が言われれば一番結構ですけれども、外務省の当局の方と——向こうはニューサム次官は、私が行ったときにこのことを知りませんでした。私が言ったので、調べてわかったと言っておりましたから、いまは知っております。ですからぜひこのことは問題として提起をしていただきたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  170. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 若干事実関係もございますので、私の方から答弁さしていただきますけれども、いま先生御指摘のように、ミクロネシアと日本というのは地理的にもかつ歴史的にも非常に深い関係がございます。協定の上では、もうすでに処理済みでございますので、協定を見直すということはできませんが、先ほど申し上げたような日本との深い関係、さらに近いうちにミクロネシアが独立いたします。そういうこともございますので、われわれといたしましては、それらの地域に対する経済協力をどういうふうに進めていくかということで目下鋭意検討中でございますので、その考えの中で処理していきたいというふうに存じております。
  171. 田英夫

    ○田英夫君 最後に、大臣にお願いをする形で申し上げておきますが、大変これも差し出がましいことですけれども、たとえば、この国際協力事業団の事業の一つとして、新しいプロジェクトとして取り上げるとか、そういうことができないものだろうかということを、これは私は国際協力事業団の事業の内容も詳しく把握しているわけではありませんから、大変差し出がましいのでありますが、そういう方法もあるのではないか。とにかく現地は、いま局長もお答えになったとおり、全部ではありませんが、独立をするところもあるわけで、この機会にひとつ全部処理をしておいていただきたい。お願いをしたいと思います。
  172. 大来佐武郎

    国務大臣(大来佐武郎君) 本件につきましては、私も事務当局から少しいろいろ説明を受けたことがございますが、このミクロネシアは独立いたしますと国際協力事業団の援助の対象になるわけでございますが、それまでは法律的にできないということで、ただいま局長も答弁いたしましたように、事後的にまた方法もあろうかと考えます。
  173. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  174. 石破二朗

    委員長石破二朗君) 本日の調査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会      —————・—————