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1980-03-07 第91回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月七日(金曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 村山 達雄君      小宮山重四郎君    保岡 興治君       井上 普方君    稲葉 誠一君       川崎 寛治君    小林  進君       横山 利秋君    小川新一郎君       草川 昭三君    兼務 井上  泉君 兼務 上田 卓三君    兼務 神田  厚君 兼務 竹本 孫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君  出席政府委員         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務大臣官房会         計課長     松田 慶文君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         文部省体育局長 柳川 覺治君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君  分科員外出席者         インドシナ難民         対策連絡調整会         議事務局長   村角  泰君         法務大臣官房参         事官      山本 達雄君         水産庁海洋漁業         部国際課長   中島  達君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       安楽 隆二君         建設省住宅局住         宅企画官    北島 照仁君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     小林  進君   草川 昭三君     小川新一郎君   中川利三郎君     梅田  勝君 同日  辞任         補欠選任   小林  進君     山花 貞夫君   小川新一郎君     草川 昭三君   梅田  勝君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     横山 利秋君 同日  辞任         補欠選任   横山 利秋君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     清水  勇君 同日  第一分科員井上泉君、上田卓三君、第三分科員  神田厚君及び竹本孫一君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 村山達雄

    村山主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。大来外務大臣
  3. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 昭和五十五年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  外務省予算の総額は、二千八百五十九億九千百万円であり、これを昭和五十四年度予算と比較いたしますと、四百三十八億二千万円の増加、一八・一%の伸びとなっております。  激動する国際情勢下にあって、有効かつ機動的な外交の展開を図るためには、外交実施体制を一層整備強化する必要があります。この観点から、昭和五十五年度においては定員拡充機構の整備を図るとともに、在外職員勤務条件改善にも配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実外務省にとっての最重要事項でありますが、昭和五十五年度においては、定員八十名の純増を得て合計三千四百八十名に増強されることになります。また、機構面ではブラジルのクリチバに総領事館を開設することが予定されております。  次に、経済協力関係予算について申し上げます。南北間の著しい経済格差世界経済安定的拡大にとっての障害であり、また、政治的な不安定要因でもありますが、わが国としては、この南北問題の解決のための国際的努力を成功に導くために引き続き積極的な役割りを果たす必要があります。かかる見地より、政府としては政府開発援助の三年間倍増の方針を打ち出してまいりましたが、昭和五十五年はその最終年に当たっており、この目標を確実に達成すべく所要の予算が計上されています。その一環として、五十五年度においては無償資金協力予算を前年度より百億円増の七百五十億円とするほか、人づくりのための技術協力費拡充を図った次第であります。  このほか、国際的な相互理解を一層増進するための広報文化活動強化を図ることとし、ワシントンに広報文化センターを新設することを予定しております。また、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校五校の増設を初め施設の充実、教員の増員と待遇改善を図る等の配慮をしております。  以上が外務省関係予算概要であります。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を主査において会議録に掲載されるよう配慮願いたいと存じます。
  4. 村山達雄

    村山主査 この際、お諮りいたします。  ただいま大来外務大臣から申し出がありましたとおり、外務省所管関係予算の主要な事項につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 村山達雄

    村山主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  6. 村山達雄

    村山主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 村山達雄

    村山主査 なおこの際、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  8. 小林進

    小林(進)分科員 限られた時間でございますが、私は金大中事件について、予算その他で十五回以上質問いたしておりました。本衆議院においては、一つの問題で十五回の質問はレコードだそうでございます力記録づくりだそうでございます。これをきょうは質問するに際しまして読み直してみましたが、この中における外務省責任者答弁は全部うそであります。  この問題に関連いたしまして、今度はいみじくも金大中さんはいわゆる公民権回復せられた、内外ともに自由の身になられたのでありまするが、これに対して外務省は一体いかなる処置をおとりになったのか、一言ごあいさつなさったのかどうか、まず承っておきたいのであります。
  9. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回の金大中氏の公民権回復は、韓国国内の法令に基づく純粋国内問題と私ども解釈いたしておるわけでございます。
  10. 小林進

    小林(進)分科員 国内問題であろうとも、事件発生日本の九段のホテル・グランドパレスから始まっている。これは国際的な大きな問題じゃありませんか。原因の発生日本ですよ。
  11. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま私が申し上げましたのは、公民権回復韓国純粋国内問題であるというふうに申し上げたわけでございます。
  12. 小林進

    小林(進)分科員 それだけで切り離してものを考えるわけには私はいかないと思う。ずっと問題は継続して、しかも深刻な問題です。この問題に対して金大中氏は、自分としては拉致事件に関連したすべての人たちを許し、今日以後一切事件を問題として取り上げることをしないと言い、ただし、韓日両国政府世界の世論を納得させる方法でこの問題を処理することを要望すると述べている。日本政府要望いたしておりますよ。この要望に対してあなたは、韓国国内の問題だからノーコメントだ、関係ないとおっしゃるのかどうか、いま一度御返答を願いたい。
  13. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この件につきましては総理大臣が、韓国民主化の措置といいますか、方向を歓迎するという趣旨発言をいたしておりますが、外務省といたしましては、いまの段階で正式に見解を発表する考えはございません。
  14. 小林進

    小林(進)分科員 私は韓国方向の云々を聞いているのではない。公的地位における金大中個人のことを私は聞きたい。金大中個人に対しましては伊東官房長官はこう言っている。政治家としての見識だ、いわゆる拉致事件に対して触れないということは政治家としての見識だという。何という人を小ばかにした発言なんだ。日本政府に対して、そういう真実をしゃべってくれない、これは助かったということの裏話だと私はとらざるを得ない。そんなことではいけませんね。けれども、この問題は真実は隠されることができないのですよ。残念だけれども時間がないから、あれば一日やっていたい、実際。政府が言われたいままでのうそ答弁を全部一つ一つ繰り返して、あなた方の前に勧進帳のように広げて、私は言いたい問題がある。怒り心頭に発しているのでありますけれども、時間がないから私は言えないけれども、しかしきょうあたり新聞でも、金泳三氏と金大中氏が会って、いわゆる次の大統領選挙に醜い争いはしないようにしようという申し合わせをされたようでありますけれども韓国情勢をわれわれはわれわれなりにキャッチいたしておりますけれども、やがて金大中氏が韓国の政界に名実とも指導者として立ち返る日も遠からずと私は考えている。そのときに、いずれの日かそのときに、この問題が明らかにされたときに、一体日本政府はどうするお考えですか。まだそれでもほおかむりしていかれる気持ちですか。  なお、加えて言いますけれども、こうやって金大中氏が拉致されて以来、雨の日も風の日も、私は公の機関を通じて論じている。私は金大中氏自身も、私ども国会におけるこの真実追及に対して、われわれに対し感謝をしているものと思っている。いつかわれわれのこの要望にきちんとこたえてくれる日があると思うのです。ただ、いまは言えない。なぜ言えないか。それは私が言わぬでもあなた方御存じでしょう。いわゆる公民権回復したけれども、やはり韓国で一番大きな権力を握っているのは韓国軍部だ。軍がまだ反金大中的色彩が強い。亡くなられた朴大統領のその係累に属している。あの国の中で金大中氏が自分の身辺にまつわる一切のものをしゃべるためには、まだまだ身の危険を感じているそういう韓国情勢だから、だから彼はしゃべらないんだなと私は見ている。しかし遠い将来じゃありませんよ、必ず近い将来返るときがある。それにいまから備えていらっしゃいますか。それでもまだほおかむりされますか。いまのうちに真実を語って、悪いことは悪い、間違ったことは間違ったと公明正大に明らかにされたらいかがですか。
  15. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は従来の答弁の繰り返しになるわけでございますけれども、いままでのところ、わが国主権侵害があったという証拠が挙がっておらないわけでございまして、ただ、本件は刑事事件として捜査を継続しておるわけでございますので、新しい重大な事実が出てまいりましたときにはまた検討するというたてまえを続けておるわけでございます。
  16. 小林進

    小林(進)分科員 あなたはまだ少しは従来のそこらにいる既成の外交官と違って、斬新にして正しいことをおっしゃるかと思った。せめて自民党なんかから立候補しないで民社党あたりから参議院に出られたという、そこに大来さんの一片の良心が存すると私は考えたわけだ。(「いや違う、新自由クラブだ」と呼ぶ者あり)ああそうだ、新自由クラブだ。間違えたけれども、似たようなものでありますから、大して差がありませんが、そこにまた一片斬新性がある。私はいつも言っている。外交は哲学ですよ。外交は正義ですよ。正対不正なんだ。そんな小手先の取引でやろうなんて、外交が長もちするはずはない。テクニックじゃないと私は言っているのだ。それがどうも最近の戦後の外務官僚は全部、外交テクニックだと思っている。白を黒、黒を白と言いくるめるのが外交だと思っている。そんなけちなことで世の中なんか通るものじゃないのだ。  いま日本国民が、まだ日本主権が侵された、独立が侵された証拠がない、国民の中でそんなことを信じている人がいますか。対外的にアメリカを中心に、そんなことを信じている人はいますか。だれも信じない。だれも信じていませんよ。私も信じていない。完全なる韓国のいわゆる国家権力に基づく日本主権侵害です。間違っておったら私は腹を切るから、あなたも腹を切るか。腹切り問答をやりますか、昔からあったけれども。そういうごまかして通そうといったってだめだと私は言うのだ。それを国民の前に――いま日本政府は、金大中氏の公民権回復とともに、いわゆる日本外交日本政治、それをとことんまで信頼を失墜する瀬戸際なんですよ。いまのうちに悔い改めたらどうですか。せめて金大中氏に一応のあいさつくらいあってしかるべきじゃないですか。長い間御苦労様でしたくらい言ったっていい。それが何でできないのですか。そのあいさつできない理由を教えてください。
  17. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本政府といたしましても、先般、須之部大使金大中氏に会見いたしてお話をいろいろ承っておるわけでございますし、そういう点について全然努力をしていないということは当たらないと考えるわけでございます。
  18. 小林進

    小林(進)分科員 さわったといって、どのくらいさわったのですか。手をさわったのですか、足をさわったのですか。さわったのならさわった内容国民の前に明らかにされたらどうですか。須之部君がどんなさわり方をしてどういう交渉経過をされたのか、それをお示し願いたい。時間がかかるなら文書でいいですよ、お示し願いたい。
  19. 木内昭胤

    木内政府委員 ただいま外部大臣から申されましたように、須之部大使以下館員と金大中氏との接触はたびたびございます。金大中氏の意向は、新聞でも御承知と思いますが、日韓友好関係というものに対する深い関心の表明がございました。
  20. 小林進

    小林(進)分科員 何言っているの。私は拉致事件のことを聞いているんですよ。日韓親善だの友好だの、そんな抽象的なことを聞いているんじゃないですよ。私の時間は限られているのだから、そんなくだらないことを余り答弁しないでください。  一体須之部大使というのは、そんなつまらぬことしかやっていないのですか。日本から拉致せられていったその問題に対して、一言わびてもいいだろうと言ったら、わびの言葉一つないじゃないか。そんなことで一体外交の道が正しく筋が通ってやれるかと言うのだ。だめです。外務大臣、改めてあなたから、金大中さんにおわびの電報でも電話でもお話しなさる意向はありませんか。あなたの特使でもいってやられる気はありませんか。あるかないか、イエスかノーだけ言ってください。
  21. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私、いまの段階でそういう意図はございません。
  22. 小林進

    小林(進)分科員 そういう返答は私も了承できませんから、あの手この手でまたあなたと対決をいたします。そしてあなたがまいったと言うまで私はやりますから、どうぞ……。  次に、私は北方領土の問題をお聞きします。北方領土の問題も私が質問すると言ったのだけれども、五十三年二月一日、予算委員会で私がやった速記録をあなたはごらんになりましたか。
  23. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私はまだ拝見いたしておりません。
  24. 小林進

    小林(進)分科員 それだからおまえさんのところは、政府委員が何を質問するのか聞きに来ているんだから、そのたびにあなた方に事前に質問する内容を教えたりして、私の質問の勉強せいと言っているにもかかわらず、やっていないというのはけしからぬじゃないですか。質問者をあなた方は軽く見ているんじゃないの。外務大臣、余り軽く見てはいけませんよ。そんなことなら質問を聞きに来たって教えない。みんな教えているじゃないか。そういう不謹慎なことをやっちゃいかぬ。だから外務官僚というのはだめだと言うのだ。  その中で私は言っているんだ、北方領土の問題。鳩山さんが三十一年の十月の何日かに行って共同宣言をやってこられた中に、歯舞色丹日本へ返すと言っている。その後ソ連が言ってくるあらゆる発言、あらゆる情報の中で、北方領土の問題はもう完全に終わったんだと言っている。これは一体どういうことなんだ。歯舞色丹は返すということも含めて全部終わったと言うのだが、これはまだあの宣言は生きていて、返すのか返さないのか、これを教えてもらいたい。
  25. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本政府解釈といたしましては、これは返すべきものだと考えておるわけでございます。
  26. 小林進

    小林(進)分科員 まことにおかしいですね。あなた方は返すと思っているなら、なぜ一体その点をソ連確認しないのですか。あなた方は会うたびに、外交交渉の中で繰り返し、向こう北方領土の問題は全部済んでいる。その前に、歯舞色丹だけがこれは別格だとか例外だとか、これは共同宣言にあるから別だなんという話はちっとも出てこない。だれが聞いたってあのソ連側発言を聞けば、もはや北方領土の問題は歯舞色丹も済んで、全部向こうは返さない気だと取る以外にないじゃないですか。その国民疑惑に答えるために、あなた方はなぜ一体この点を念を押さないのですか。
  27. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本政府としては、あらゆる機会をつかまえまして北方四島の返還を要求いたしておるわけでございます。ごく最近も、スパイ問題に関連してソ連大使申し入れをいたします場合に、北方領土の問題もあわせて申し入れをいたした例もございまして、引き続き将来もやってまいるわけでございます。
  28. 小林進

    小林(進)分科員 私はそういう総括的な四島云云を聞いているんじゃない。四島の中の二島はもはや日本に返すことに決まったことが、前言を翻して向こうは返さないように態度を変えたじゃないか、変えたものとみんなが考えているが、その国民疑惑に答えるために、四島の中の二島だけは日本に返してくれるのですねということをなぜ念を押さないか。念を押して、そうだと言ったら、国民にそれを知らせるようになぜ教えてくれないかと言うのです。四島じゃない、二島のことを言っているんだ。二島はどうなったかと聞いているのです。
  29. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 二島問題を取り上げますと、他の残りの二島についての影響も出てくるおそれがございます。この辺の解釈につきましては、担当局長から答弁させたいと思います。
  30. 小林進

    小林(進)分科員 担当局長なんかに聞きたくない。そんな手練手管で物を言うようなそんな官僚なんか相手にしたって答えにならない。私はだれも疑問が解けないから、五十三年から繰り返し言っている。その答弁官僚答弁です。園田君が言った答弁と同じだ。そんなことを聞いているんじゃない。  この問題は明確にしてもらわなければいけないです。明確にしてもらうことによって、いわゆる鳩山さんが結んだ共同宣言も、これは取り消してもらわなければいけない。取り消す必要があるのですよ。なぜあるかといえば、あの共同宣言で、日本ソ連要求する諸要求も全部これを御破算にして、もはや一切の要求をしないということが共同宣言に盛られている。日本は一切の権利を放棄した、しかしソ連はそれにこたえるために二つ領土だけは日本へ返すと言った。ところが、いま二つ領土を返すとは言わない。全部済んだと言っている。済んだということは、二つ領土も返さないと解釈する方が素直なんです。そこを念を押せぬのだったら、いわゆる共同宣言をやめてください。実行されない共同宣言はやめて、日本も堂々とソ連に請求すべきものは請求してもらいたい。いいですか、この態度を早く打ち出してもらいたい。大臣、私の言っていることわかりますか。あなたならわかると思うんだよ、官僚はわからないけれども。  そこで、私は申し上げる。ここにちょうど親友渡辺美智雄君もおりますけれども、二人で一緒にやっているけれどもシベリア抑留の問題です。シベリア抑留の問題で、あの問題は一体何の権限があって、あの終戦と同時に満州、朝鮮、樺太等におりました日本人日本の軍人を主体にして五十七万五千人もシベリアに連れていかれたのですか。何の権限があります、何の権限で連れていった。その中の五万五千人が死んでいるのです。何のためにシベリアに行ったのか、死ななければならぬのですか。ポツダム宣言カイロ宣言に何と書いてありますか。戦争が済めば、特殊な戦犯その他は除いて、一般の兵隊は健やかにふるさとへ帰る、生業につくことができる、妻子に会うこともできる、平和な日本人として生きることができると言ったから、われわれは素直にポツダム宣言を受諾した。その受諾した後に、これだけの大量の日本人シベリアに持っていって、長きは十二年に及んで、これをいわゆる強制労働その他あらゆる面で進めた。これは一体どこに権限がありますか。それを放棄したことは屈辱です。向こう領土を返さぬならば、この宣言をやめて、この五十七万人の損害賠償をしてもらおうじゃありませんか。やりますか。共同宣言、取り消しますか。
  31. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御指摘のように、ポツダム宣言の第九条あるいはヘーグ陸戦規則等から見ますと、当時の国際法に照らして、いま御指摘の点は種々問題があると考えておりますが、日ソ共同宣言を取り消すということになりますと別でございますが、これが存続している限りは、第六項の中で「すべての請求権を、相互に、放棄する。」ということを明記しておるわけでございますので、共同宣言をした以上はこの放棄したという条項が生きるわけでございまして、現在のところ、共同宣言を取り消すという考えはございません。
  32. 小林進

    小林(進)分科員 だから、共同宣言を取り消す考えがなくて正しくそれを履行するなら、こっちだけが履行しないで相手方も履行してもらう、それを確認をとりなさい。相手履行義務は、さっきから繰り返しているように二島日本に返還する、これは共同宣言に入っているじゃないですか。その二島日本に返す、歯舞色丹。それを日本態度が変わったから返すのをやめたと向こうは言っているんだ。それでもう島に関する限りは一切済んだと向こうは言っているんだ。それじゃ、相手側はいわゆる共同宣言を履行しないということが明確になったから、こっちの方も履行するのをやめたらいいじゃないか、それが理屈です。私の言うことは違っていますか。どうですか。
  33. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は、領土問題は終わったということを確かにソ連側としていろいろな機会に申しておりますが、終わっていない趣旨発言も従来御承知のようにあるわけでございます。いまの共同宣言を廃棄するということになりますと、いろいろの影響が出てまいるかと思いますので、現在の段階でその宣言廃棄ということは妥当でないというふうに考えております。
  34. 小林進

    小林(進)分科員 それではいま一度念を押します。どうぞひとつ公式の方式で、共同宣言に盛られた歯舞、伯母は日本に返す姿勢はソ連は変えない、こういうことの確認をとっていただけますか。国民はだれも信用しません。とっていただけますかどうか。
  35. 武藤利昭

    武藤政府委員 お答えいたします。  ソ連側は、ただいま御指摘がございましたとおり、北方領土問題なるものは存在しない、解決済みであるということは言っているわけでございますが、このようなソ連側の主張には全く根拠がないわけでございまして、先ほど外務大臣から申し上げましたとおり、機会あるごとにわが方からソ連に対しまして、ソ連のそのような言い分は理由がないということを重ね重ね申している次第でございます。
  36. 小林進

    小林(進)分科員 こういう答弁だからいやだと言うんだ、官僚答弁は。根拠がないということはちゃんと知っているんだ、みんな。北方領土のことは知っているんだ。しばしば交渉してもう知っているんだ。そんなわかり切ったことを時間かせぎで返事をされたんじゃかなわないんだ、時間は三十分しかないんだから、もう五分もないんだから。  いま言うように、諸君らはいかにしばしば交渉したか、交渉なんかしてないなんてことはだれも言ってない。けれども、その二島さえも返さないというそういう発言ソ連が繰り返しているから、そうでないというならば、二島共同宣言どおり返しますというその言質を、国民が納得するような返事をもらってくれますかと言うんだ。それができますかということを私は言っているんですよ。もらうかもらわないか言ってくれればいいんですよ。それだけでいいんです。
  37. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御承知のように政府といたしましては、四島一括返還という立場をとっておりますので、その根拠を危うくするような行為、行動は避けたいと考えておるわけでございまして、この二つの島だけについての確証を得るということは、いまのような立場から見て、現在政府として行う意思はございません。
  38. 小林進

    小林(進)分科員 やらないのですな。そうすると、向こうはあくまで四島の問題、北方領土は全部済んだ、こっちはまだ共同宣言があるから、二つの島は返してもらえるとみずから主観的に考えている、これは磯のアワビの片思いと言うんです。全く問題にならぬ話だ。そんなへっぴり腰の外交だから、日本外務省政府をだれも信用しないと言うんだ。そんなことは了承できませんよ。やりなさいよ、国民の意思に従って。損得は別です。外交は正義である。外交は哲学だ。国民は全部、ソビエトロシアは四島の問題も含めて、共同宣言を土足でけっても、四つの島はもちろん、二つの島までも返さないと信じているんだ。そうでないという証拠をひとつ確かめてください。国民の前に明確に示してください。それは相手国からそうでないという確証をつかんでもらう以外にありません。これを強く私は要望しておきます。何と言ったってこれはやってもらわなくちゃいけません。  そこで次に、もう時間がないけれども、いずれにしても、そういう不当な相手側の行動に基づいて、五十七万人もシベリアに抑留せられて、そして五万五千人も死んでしまったが、あとの人たちが来て、この不当なる抑留に対する何らかの補償を国家がしてくれなければ、これはわれわれは戦争が済んだとは言えない、われわれはゆえなくして、国際法あるいは俘虜規定あるいはカイロ宣言ポツダム宣言すべてに違反する行為に基づいて、これほどの苦難とこれほどの自由を束縛された、それに対する補償をよこせ、国家補償を払うべきは当然だという要求がいま出ておりますが、これはだれが考えてもそのとおり。彼らは国家のへっぴり腰か、ソ連圏の不当な行動によって犠牲を強いられたのでありますから、あなたたちがソ連に請求する力がなければ、国を代表する国家みずからが補償するのはあたりまえだ。やりますか。
  39. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日ソ共同宣言の第六項に言っております請求権の放棄ということは、平和条約の第十九条でございますか、これと趣旨を同じにしておるわけでございまして、それらの請求権につきましては、国に法的な補償の責任がないということが従来からの政府の見解でございまして、最高裁判所の判例も同様な見解を示していると存じております。
  40. 小林進

    小林(進)分科員 これはまた異なことを聞いたですね。サンフランシスコ条約がそういう国内の個々の相手国の不当行為のために被害を受けた者に対して国の責任がないということは、一体どの文章から出てくるのですか。どこから出てくるのですか。
  41. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  平和条約第十九条でございますが、これにつきましてもわが方は請求権を放棄しているわけでございます。それにつきまして日本国民の側から、国家が請求権を放棄したのであるから、それに対する賠償というものは国家がすべきであろうということで、日本の裁判所に提起をされまして、最高裁判所にまで上った事件がございます。最高裁判所の判例といたしましては、昭和四十三年十一月二十七日の大法廷判決もございますし、四十四年七月四日の第二小法廷判決もございます。これらにつきましても、この条約で政府相手方に対する国家及び国民請求権を放棄したこと自体は国民の実体的権利を放棄したものではないのであるから、国に直ちにその事実に基づいて法的な補償の責任は生ずるものではないという判示が出ているわけでございまして、これは従来の政府考え方と一致しているものでございます。
  42. 小林進

    小林(進)分科員 残念ながら時間が参りましたので、これが一番議論の存するところで大いにやりたいところだが、これでやめますが、第一に、その請求権云々、それは間違いです。もしそれが間違いでないとするならば、それ以外の、いわゆる満州に置いた財産に対する幾らかの補償問題その他政府がやっておりますが、そういうことも含めて全部、いままでの政府の行為はそれと同じように白紙に戻さなければいけませんよ。あれにはやる、これにはやらない、全く自分たちの都合のいい解釈で終始するようなことは許されるものではありません。この問題は重大なことですから、いま一つ議論し直します。  いずれにしても、繰り返しているように、請求権の放棄はいわゆる共同宣言なんだ。その共同宣言相手国はちっとも実行していないんだ。しかもそれを否定しているんだ。それをあなた方は一方的に、だれも了承しないにもかかわらず、放棄したものとは考えないなどというへっぴり腰で、その宣言の存立を認めながら、北方領土の請求もやらないで、そして何もかにもみんな取り上げられ、裸にされている。こういう屈辱の外交をいまなお続けているなどということはとうていわれわれの了承するところではありません。だからソ連はだんだん肩怒らして、日本なんというのはへっぴり腰だから、今度はシベリア開発なんかも、一緒にやるのはおまえたちのためだ、いやならこっちでやりますよ、こういうふうな高飛車なことをきのうだかおとといも言われているじゃないか。一つはたかれ二つはたかれて、ソ連から両方びんた食っているのが日本外交ですよ。一体そんなことを国民の代表としてわれわれが黙って見ていることができますか。いま少し腰をしゃんと伸ばして、国民のための外交をやっていただくことを要望いたしまして、やめますよ。
  43. 村山達雄

    村山主査 小林進君の質疑は終わりました。  次に、小川新一郎君。
  44. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 ただいまソ連外交についていろいろお話がありましたけれども、私はソ連日本にスパイをしている、こういった立場から問題を提起したいと思います。  今回の宮永スパイ事件ソ連側に漏洩した機密の内容は中国に関する情報であり、外務省が入手した情報が防衛庁に渡り、それが漏洩したと言われておりますけれども、事実のほどはどうですか。
  45. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 このスパイ事件につきまして、外務省もこれを非常に重大に受けとめていたということは、当時から申し上げていることでございますけれども、いかなる情報が流れていたのかということについては、私どもも非常に関心を持っておりますが、現在このことは裁判にかかっておりまして、裁判の過程を経ましてその辺の真実が明らかになることを望んでいるというのが現状でございます。
  46. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私はその問題で昨日、防衛庁長官に質問したわけです。では、重大な機密が裁判で全部公開されたときには、わが国の機密というものは、宮永が漏洩した機密がこれくらいとする、それに関連する日本の関連機密が裁判でもっと出たとする。そういうこともあり得るから、刑訴法第百三条においては、機密に対する強制捜査並びにその資料の提出を拒むことができるとさえ言われている。  では、外務省は、今回の宮永事件が中国に関した情報でない、全くそんなことは知らないんだ、裁判を見るまでは全くわからないんだ、そんないいかげんなことじゃないでしょう。そのことが発言されて、細田防衛庁長官の前任者である久保田防衛庁長官は、中国に関する情報であったからよかったよかった、こういうことを言ったことが原因の一つどなって辞任に追い込まれたことはあなたも御存じじゃないですか。どうなんです。
  47. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘のように、中国に関する情報が漏れたのではないかという話は私どもも聞いておりますけれども、この点はまさに今回、これからの裁判の過程におきまして明らかになっていくということでございまして、現在、私どもは正確な中身についてまで承知していないというのが現状でございます。
  48. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 正確な内容はわからなくても、中国に関した問題であることは外務省も知っていますね。
  49. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘のように、私どもも捜査当局と接触を持っておることは事実でございますけれども、これは現在、検察当局が裁判を進めている段階でございますので、捜査中あるいはこれから裁判にかかる事項であるということでございますので、外務省からこれについての中身を申し上げるのは現在は差し控えるべきものと心得ております。
  50. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 防衛庁の統幕議長さえ言っているんじゃないですか。これは周知の事実じゃないですか。内容については何かということはわからぬにせよ、日本のものか何かということは警察庁も言っているじゃないですか。それはわからないのですか。
  51. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 繰り返しでございますけれども、私どももいろいろ話し合いをしてはおりますけれども、これはやはり捜査当局のお立場からは、現在捜査中であるので、その辺の扱いについては捜査当局の立場を尊重してほしいというふうな話を聞いております。これはまたもつともなことと思いますので、現在、私ども外務省の立場から、こういうような話である、どういうものが漏れたようであるということを申し上げるのは、申しわけございませんけれども差し控えるということにいたしたいと思います。
  52. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 三月十七日から裁判が開かれる、公判されることは御存じですね。そこでもしも、あなたの方で知っていても、いまこの場では言えない、言えないけれども、中国に関する問題が日本の自衛官及び自衛官をやっていた人によって機密が漏洩されたという事実が判明した場合にはどうなんですか。ないなんと言っていて、もし出たらどうなんですか。そんないいかげんなことを、国会でもってできないできないと言っていて、どんどん公表されますよ、公開されますよ。十七日といったらもうすぐじゃないですか。そのときにはどういう処置をとるのですか。
  53. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 中国側もこの問題に非常に関心があるのは当然でございます。そういうことが一部報道されましたので関心がございますので、私ども中国側にも現在、そういう事件が起きた経緯についてはすでに内報はしております。したがいまして、今後の裁判の過程におきまして中国に関する情報について何か公になりました段階では、もちろん中国側に対してもその間の事情を説明しなくてはならないと思っております。  それから、こういう関係情報が、中国に限りませんけれども、このような形でもし漏れていたとすれば、これは御指摘のとおり大変遺憾なことでございます。その点は、こういう意味で私ども事件発生以来、この事件については深い関心また憂慮を持っているということでございます。
  54. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 大臣、いまのお話を聞いていて私、一つひっかかることは、中国ともう話し合いが始まっているのですね。ここでは発表できないのに、なぜ中国とそうやって話し合いをしているのですか、おかしいじゃないですか。
  55. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は私も予算委員会、本会議でも触れたことでございますが、内容についてではございませんで、こういう事件が起きたということをとりあえず中国側にも連絡したわけでございます。
  56. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 中国側に連絡したということは、中国に関する問題が出たということを証拠立てていることじゃないですか。あなたは最初から言えない、中国だとか何だかということは。そんなばかな話はないじゃないか。  そうすると、裁判において明らかに機密の漏洩がはっきりした場合は、それを提供してくれたアメリカ及び中国、関係諸国に対してどう釈明するのですか。
  57. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 本件につきましては、中国に関連した種々の報道が出ておりますので、とりあえず中国側に対して、現在取り調べが進行中であるということについて連絡をいたしたわけでございまして、種々の報道がこれは一般に出ておるわけでございますので、そういう趣旨で先方に接触したわけでございます。
  58. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 一国の外交、一国の外務大臣が、これだけ重大な問題を、報道されたことだけについての関連、何らそれについて警察や防衛庁当局に意向もたださない、そんな無責任なことありますか、これは大変な外交問題じゃないですか。日本の機密が流れたというなら、まだこれは日本の問題でしょうけれどもソ連と中国との関係、あなたも御存じのとおり。その中国とソ連がまかり間違えば戦争状態にだってならないとも限らないような状態の中にあるその国々の機密が日本の国を通じて流れたということを、新聞報道やいろんなことで知ったから、ただそういうことだけの話し合いだ、何にも調べもしやしない、事実も確認しない。そんな内容まで聞けと言っているのじゃないですよ。そんな内容まで捜査当局に立ち入れと言っているのじゃないのです。中国に関する問題か否かぐらいのことは聞かないことはおかしいじゃないですか、日本外交として。
  59. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この内容につきましては、先ほどからかなり官房長から答弁いたしておるようなとおりでございますけれども、中国側に対しましては、現在捜査が進行中でございまして、将来その結果が出てまいりましたような場合にはさらに連絡をいたしますということを申し上げておるわけでございます。
  60. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そのことは、いつ、だれと、どこでやったのですか。中国側のだれと。
  61. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 これは事件発生後、そのような報道がなされました直後に外務省が、アジア局と在京の中国大使館とのレベルで行ったものでございます。
  62. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 その際の中国側の返事はどうだったのですか。
  63. 木内昭胤

    木内政府委員 わかりましたということでございます。
  64. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 たった、わかりました、それだけですか。
  65. 木内昭胤

    木内政府委員 先方も、現在捜査段階であるということは十分承知しての返答であったと了解いたします。
  66. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そういたしますと、事件が明確になり、中国政府に迷惑をかけた場合には、事が判明したときには、大臣、釈明もしくは謝罪をする、何らかの処置を講ずる、これは事実ですね。
  67. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは承ります内容によることでございまして、内容によってはただいま御指摘のようなことも必要になるかと思いますが、まだそうでない、中国関係ということだけで、それがどういう内容であるかということによると考えておるわけでございます。
  68. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 内容によっては釈明もし謝罪もする、内容によってはしない、そういうことですね。
  69. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 さようでございます。
  70. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 次に、外交スケジュールについてお尋ねします。  大来外務大臣の訪米の後、大平総理大臣が訪米すると聞いておりますが、その日程、目的、重要な議題、どういう必要性があるのか、防衛で日本が重荷を背負うようなことにはならないのか、この四点。
  71. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私の日程は、三月十九日の夕方出発いたしまして、二十日、二十一日、木曜と金曜、先方と会談いたしまして、二十二日の朝先方を立ちまして、二十三日の日曜の夕方までに帰ってまいることにいたしておりまして、これはすでに国会の……(小川(新)分科員「大平総理大臣のことを聞いている」と呼ぶ)総理大臣につきましては、目下相手国と接触中でございまして、まだ日程は確定いたしておりません。
  72. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 中国の華国鋒主席の訪日が予定されておりますが、それはいつごろか、すでに正式な招請をしたのか、その回答は来ているのか。
  73. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、昨年の十二月総理訪中の際、華国鋒主席の都合も伺いまして、五月二十七日から三十一日までということで日程が確定いたしまして、加藤官房副長官から公表いたしております。
  74. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 正式な招請はしたのですね。
  75. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 さようでございます。
  76. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 園田特使の中東訪問を踏まえて、大平総理みずから中東諸国をできるだけ早く訪問すべきであると私は考えております。外務大臣は総理に進言するのですかしないのですか、あなたのお考えを聞きたいです。
  77. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、国会中でもございますし、他のいろいろな日程との調整もあるかと思いますので、園田特使も近日中に帰られますので、直接御意向を承りたいと思っております。その上で判断いたしたいと思います。
  78. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 あなた自身は総理大臣に中東訪問をするよう進言いたしますか、それは日程等はいずれあると思いますが。
  79. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私としてもその必要はあると考えておりますので、一時期の点は別にして申し上げたいと思っております。
  80. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 ありがとうございます。  中東外交は御存じのとおり大切な外交でございますが、アフガニスタンの情勢をどのような認識をしているのか、ソ連軍の撤退の見通しはどうか、ソ連軍の早期撤退はあり得るか否かの判断について、ひとつお尋ねします。
  81. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまアフガニスタンにおきますカルマル政権の基礎が必ずしも十分に定まっておらないという状況を考えますと、ソ連軍の撤退ということは、現状におきましてはなかなか困難であろうかと判断しておるわけでございますが、世界の世論は緊急国連総会等でも示されましたように、強く早期撤退を求めておるわけでございます。ただ見通しとしては、なかなか早期撤退はむずかしいのではないかというふうに考えております。
  82. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そうすると、ソ連軍の早期撤退はちょっと期待薄、悲観的である、こう理解してよろしいですね。  二番目、EC外相理事会でアフガンの中立化構想が提案されておりますが、わが国政府はこれを支持するのですか否か。
  83. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 わが方といたしましては、この提案はまだ必ずしも明確な形をとっておりませんので、大きな関心を持ってこの情報をとりまして検討いたしておる段階でございます。
  84. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 その検討は、前向きの検討なんですか、後退的な検討ですか、いつごろわかるのですか。
  85. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 趣旨といたしましては、その結果ソ連のアフガンからの撤退が行われるということであれば結構なことだと考えておるわけでございます。ただ、事実上撤退が行われるかどうか、この点についてはまだ相当疑問の点もございますので、今後の情勢を見てまいらなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  86. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 イスラエル占領下のパレスチナ解放機構、PLOをわが国政府は承認するつもりがあるのですか、ないのですか。
  87. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 PLOにつきましては、領土もございませんので、法的な意味での承認ということは現状においては困難かと考えております。
  88. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そういたしますと、困難ということは、やる気があるけれども、まだまだ環境整備が整わない、その環境整備の整ったときは承認に踏み切る、こう理解していいものなんでしょうか。
  89. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御質問の環境整備という点でございますけれども、その内容によるわけでございまして、PLOの、パレスタインの問題がもう少し明確な形をとりまして、国家承認あるいは政府承認という条件を備えてまいるようになりましたら、当然承認になる、承認すべきであると考えておるわけでございます。
  90. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 見通しについて。
  91. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは一方におきまして、キャンプ・デービッドの協定によるイスラエル、エジプトの国交回復ということが行われまして、これはさらに、公正にして包括的な和平を中東にもたらすという目的をうたっておるわけでございます。これに対して、他のアラブ諸国の多数は、そういう状況にはならないのではないかという疑念を表明しておるわけでございまして、さらに今後の情勢を見守らなければならない。しかし方向としては、多数のアラブ諸国の要求といいますか念願といいますか、これが世界世論の中でも次第に力を得つつあると私どもは判断いたしておるわけでございます。
  92. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 わが国資源エネルギー、石油問題、また世界の平和問題、こう考えたときの中東問題をいまこうして個条的に聞いているわけでございます。時間があればそれを一つ一つ詰めていくわけでございますが、わずか三十分の中で聞くのでありますので、いまあなたの方向性がはっきりしましたので、これでこの問題を終わらしていただきますが、中東のペルシャ湾岸地帯の石油輸送路の安全確保に関しての全欧州規模の国際会議をいまソ連が提唱しております。こういう問題、わが国政府意向は一体どうなんだろうか。こういう問題をも踏まえた上で中東問題というのは考えなければならない。ソ連のこういう提唱については、大臣はどう考えていますか。
  93. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 二月二十九日のタス報道にいまの石油輸送路の安全確保のための国際会議に関するソ連の提案というものが出ておるわけでございますが、これはソ連政府から正式に提案されたものではございませんで、いまの段階では内容が不明な点が多いわけでございまして、わが国のこれについての対応を決めるという段階ではまだないと存じております。これはアフガニスタンからのソ連軍撤退の要求が一面にございますので、その他のいろいろな国際的な動きに対応いたしまして、ソ連側のタス通信の形で一応の案が出ておるのではないかと考えておりますが、具体的に対応を考えるにはまだ尚早だと考えております。
  94. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そこで、あなたの訪米に際して幾つかの議題がいま問題になっておりますが、GNP一%の防衛費の問題、自動車問題、穀物輸入問題、そしてアメリカとのこれからの対ソ戦術、こういった問題が当然議題になると思いますけれども、自動車問題をひとつお尋ねしたいと思います。  大平総理興日米経済関係悪化を防ぐために何らかの措置が必要だと思うと述べております。具体的にはどのような措置を自動車問題でとるのか。対米工場進出について、フレーザー会長と会見した総理は、工場の設置を世界的に考える時代になってきていることはよく理解できると述べております。外相は、トヨタ、日産の対米工場進出に際してどのような考えを持っているのか。トヨタ、日産に対して政治配慮という圧力をかけ、採算面などは度外視して対米進出することは、プラスなのかマイナスなのか、どういう禍根が出るのか。また昨日、通産事務次官がトヨタ自動車に対して、トヨタの対米進出に対する要望を行っております。こういった一連の動きは、あなたの訪米に際しての布石だというふうに私は解釈しておりますけれども、それ以上に大切なことは、対米工場進出、輸出抑制という二枚のカードのうち、一枚を引くだけで問題が片づくのだろうか、それとも二枚のカードを引かなければならないのか、これはいまのところわかっていないと思いますが、私どもはそれに非常に重大な関心を持っております。この問題についてお聞かせいただきたいと思います。
  95. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この自動車工業の問題につきましては、私も先般フレーザー会長とも会見いたしましたが、アメリカの国内の各方面、政府、消費者団体その他各方面に多様な意見が現在存在しておるように見えますので、この点について今回訪米の際に結論を出すというよりも、アメリカ側の多様な意見についての情勢判断をいたしたいというふうに考えておりますし、究極的にはこの工場の進出問題は経営者の判断にゆだねなければならない問題かと思っております。
  96. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私はこの問題について実はあなたの方のある課長さんをお呼びした。対米問題について、防衛費の一%の問題も、それに近づけるようなことを発言しないでアメリカがあなたを許して帰すんだろうか、また、いまのような中途半端な私どもに対するような考え方で、アメリカの日本に対する感情や政策を抑えることができるんだろうか、こう聞いたところ、感触をつかんで帰るだけでたくさんなんだ、方々のアメリカの関係者に会って、どういうことを言わんとするのか、どういうことを主張したいのかというアメリカの感触をつかんで帰るだけでたくさんなんだ、それ以上のことは、まことに苦しいけれども外務大臣には言わせないんだ、そうしたら外務大臣いわく、さみしいことだと言ったとか言わないとか、こういうようなことは外務大臣官僚にすべてを抑えられて、あなたはアメリカの大統領と会って、感触をつかむだけで、無事に太平洋を渡って帰れると思っておりますか。先ほどの社会党の小林先生のお話にもあるとおり、外交は一国の正義をあらわすものであるならば、その主張を主張としてアメリカに当然言わなければならないのにもかかわらず、いま私が言ったことに対して何を言っているのだか全くわからない。あとわずか一分か二分しかないからそれ以上言えないのだけれども、とことん追い詰められたときには一体何を言わんとするのか、そのくらいのことは、公明党の議員だからといってばかにしないで、ひとつ聞かしていただきたい。
  97. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回の自動車問題につきましては、先ほど申し上げましたように、アメリカの国内の意見もいろいろ分かれているようでございますので、こちらの対応を考える前に向こう情勢をつかむということが必要なのじゃないか。また、防衛問題について、いろいろな見解がアメリカ側でも出ておるわけでございますが、この問題については、あくまでも日本自身の、日本国民日本政府考え方に基づいて判断をすべきものだと考えておりますので、日本側の考え方につきまして、あるいは国会におきましていろいろな御意見が出ておりますが、そういう点についても十分先方にも話をしまして、それによって先方が一〇〇%承知するかしないかは別でございますけれども相互の理解を深めることによって日米関係の基本を揺るがせないようにしてまいりたいと考えております。
  98. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 まことに模範的な、当たりさわりのない答弁で、何ら記事にならない、どうにもならない答弁であります。しかし、時間がないから私はこれ以上のことは言えませんけれども、あなたがこのチャンスにほぞをかむような、ああさびしかったなという思いに駆られて、飛行機の中で天を仰いでため息をつかないような外交を展開されることを期待します。  そこで、長崎県壱岐勝本町の漁民がいま悩んでおりますイルカ問題。このイルカも、アメリカの青年が網を破って二百五十頭逃し五。国際的な動物愛護の中で日本は孤立しております。しかし、一頭約二百キロ近い魚を食べる。昨年は二千頭とった。ブリとかイカ、イワシ等、こういったものを食べ尽くされるおそれがあるために、漁民はあらゆる非難を受けながらこういったイルカ漁獲を続けております。これに対して、アメリカへ行って、せめてイルカ問題ぐらいきちっと漁民の意を尽くして話してもらいたい、何か成果を出してもらいたい。最後に私はこのイルカの問題をあなたにお願いしたい。決意のほどを承りたいと思います。
  99. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私はこの問題は、前回のときも多少承知しておりますが、アメリカが愛玩動物として、ことに子供たちがイルカに愛着を持っており、テレビの番組等にもございまして、それがたまたま日本の風俗習慣の違う、経済事情も違うところで起こっておる現象に結びつけられておりますことは、非常に不幸なことだと私は考えております。この点につきまして、できるだけ機会を求めて、状況の違いということについての説明をやってまいりたいと考えております。
  100. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 どうも大変ありがとうございました。
  101. 村山達雄

    村山主査 小川新一郎君の質疑は終わりました。  次に、竹本孫一君。
  102. 竹本孫一

    竹本分科員 私は二つ、三つ質問をいたしたいのでございますが、まず第一は、外務省が最近発表された「国際情勢の近況」という資料がございます。大臣はこれは目をお通しになりましたか、ちょっとそれだけお聞きしたい。
  103. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 概要、目を通しております。
  104. 竹本孫一

    竹本分科員 私は、経済問題もそうでございますけれども、特に外交の問題においては情報を集めるということが一番大事だと思います。一つの哲学、ビジョンがなければならない、そしていよいよ実行となれば勇気がなければなりませんけれども、その間に情報という大きな役割りがあると思うのですが、ビジョンがあっても情報がなければ困るし、情報があって決断を下しても勇気がなければ困ります。  きょうは、特に情報の問題について一口だけ申し上げますが、この資料を拝見して一番驚くことは、いまもアフガニスタンの問題について大臣は、関心を持っていると言われました。私のところで調べてみたら、この資料に情勢を注目しておるというのが幾つぐらいあるかというと二十四カ所あるのですよ。注目、注目、注目とね。確かに情勢は注目をしなければなりませんから、注目することは大事でございますが、どういう方向から注目をするか、また注目した結果どういう方向に行くであろうという一つの判断を持っているかということが大事だと私は思うのです。たとえばニュース映画を撮るにしても、ただ漫然と自然現象を写せばいいというものではなくて、一つの問題意識があり、一つの構想があって、そこからニュース映画を撮る。すべて社会の視角外をつかむつかみ方というものは、そういう意味においてはっきりした一つの立場があり、その立場から注目をする、あるいは少なくとも注目した立場から一つの結論をサゼストしながら一つの問題を出す、そういう意味の注目でなければ、単なる物理学的注目では意味をなさぬ、政治的注目でなければならぬと思うのです。ところが、ここにある二十四の項目は、注目、注目と書いてあるけれども、相当好意を持って読んでみても、どっちへ向けていこうという考えのもとに問題をとらえておるかという問題意識がわれわれにはっきり映ってこない。これは重大な問題であります。  私は、イデオロギーを持って、一方に偏った考え方で世の中を断ち切れとは言いません。しかし、日本外交の基本的な立場というものがなければならぬ。その基本的立場、基本的方向というものに即して注目をしなければならぬと思うのだけれども、そういう意味の問題意識や政治的な意図はほとんど読み取りにくい。冷静に中立的であると言えば非常にりっぱでもあります。しかしながら、政治というものは、そう簡単に物理学的な中立性なんということは意味をなさない。一つ方向がなければいかぬ。そういう意味で私はこの注目に注目するわけですが、外務省一つ方向を出される場合には、どこが問題か、国民に何を訴えようとするのか、そういう問題意識を持って資料を出すようにしていただきたい。それに対する大臣のお考え一つ。  それに関連して証拠を挙げますけれども、たとえばSALTIIの問題等がいろいろ書いてあります。十三ページに「米ソ関係が大きく変化する可能性は少なく、基本的には競争関係とともに現在のデタント追求路線が継続されるものと考えられる。」と書いてある。しかしながら、これは現実の事実には余り合ってない。私は最近ケナンさんの論文をちょっと読みましたけれども一つの高い見識に貫かれておって、大いに敬意を払います。しかしながら、そういうものにも敬意を払うけれども、同町に、厳しい現実の動きというものを見た場合に、この認識は当たらなかったということではないか。可能性は少なくて、デタント追求ができる。追求してほしいと思いますし、ケナンさんが訴えておられるように、われわれもタカ派的な考え方だけでなくて、いろいろと反省もし、考慮もしなければならぬと思いますけれども、少なくともこの認識は余り当たってはいない。  それから、四十ページはアフガニスタンの問題だ。「当面は現在のような反政府側のゲリラ活動が続くものとみられる。」この「ゲリラ活動が続く」ということは当たっておる。しかしながら、ゲリラ活動がより広く広がろうということは全然書いてない。同時に、これは十二月二十何日かに出たとかいって書いてありますが、その翌日ぐらいにアフガニスタンにソ連軍が侵入したのでありますけれどもソ連は侵入する日に侵入したのではない。その前に、たとえば道路をつくる。これは私の知り合いがずっと前にサゼスチョンしてくれた記憶があるのですが、いたずらにと言うと語弊があるけれども、とにかくどんどん道路ができ始めた、あるいはまた軍事顧問団が入り始めたというその徴候を見たときに、やはりソ連の動きというものをある程度外務省の鋭い感覚でつかまなければいかぬ。それも全然つかまれていないで、ただ反政府ゲリラの活動が続くものと見られると書いてある。続くだけではなくて、発展する、発展する結果ソ連が入ってくるかもしれぬ。これは後ろへ向いた予言者の立場で言うわけではありませんけれども、しかし、そのころすでに道路はどんどんできておるし、軍事顧問団は入っておるということは間違いないんだ。そういうことに対する問題のとらえ方が全然ない。要するに、そういう意味で余りに中立的な立場を考える。一応ごもっともな理由もあるのだけれども、それにしても問題意識がなさ過ぎるのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  105. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問の点でございますが、一つには、この文書が外務省の中の調査企画部の文書でございまして、外務省全体の意見を必ずしも代表することにはなっておらないわけでございまして、むしろ政府なり外務省の政策面を含む見解は、国会の初めの総理の施政方針演説あるいは私の外交演説、こういうものをごらん願うということになるかと思います。  ただ、御指摘のように、いろいろな見方についてあるいは別の見方もできる場合もいろいろあるかと存ずるわけでございますけれども、調査企画部の文書としてできるだけ客観的に触れて、さらに予言的なことをこの文書の性質上避けるというような点もございまして、あるいは御指摘のような点についての舌足らずの面もあったかと思いますけれども、基本的にはいまのこの文書の性質からそういうことになったのではないかと考えております。
  106. 竹本孫一

    竹本分科員 時間もありませんので、余り論争的なことは言いたくないのですが、いろいろ避けなければならない、遠慮しなければならぬ立場もわかりますけれども、それにしても問題意識がなさ過ぎるということだけは心にとめておいていただきたいのですね。  一つの例を言いますと、たとえば沖縄返還のときに核抜き本土並み返還ということをわれわれ民社党は言ったのですよ。一番最初に言ったのですよ。そのときにアメリカ大使館から入ってきた情報を中心にして、その情報に立って佐藤榮作首相は、何というばかなことを言うかと言ったのですよ。新聞にちゃんとみんな出ていますよ。そして最後には、佐藤さんはわれわれが言うとおりのことをやったのですよ。そのときには繊維交渉の問題がやかましくなっておりまして、その関係もあって繊維のために何とかかんとかいうような議論まで出てきましたけれども、少なくともあれは下田大使でございますが、しかも彼はぼくのクラスメートでございますけれども、しかしぼくは下田君にも言ったのだけれども、あのときの大使館の情報外務省情報、その誤った情報に基づいて佐藤総理の判断も間違っていて、核抜き本土並み返還なんというのは何というふざけたことを言うかとはっきり言ったのですよ。そういうふうに政治の判断を誤らしてはいけないという意味でぼくは言っているのですね。間違っていないと言うなら幾らでも証拠を出しますよ。だからそういう意味で、時間もないから結論だけですが、とにかく問題意識をもう少し持たないと判断を誤りますよということを言っているのです。  第二は、こういうようないろいろな欠陥が出てくる一つの原因として、日本外交を私が考える――大臣も新しいフレッシュな立場からいろいろお考えがあるだろうと思うのだが、私の考えは、一つは特に発展途上国等に日本は顔のつながりがなさ過ぎる。三木さんが行ったり園田さんが行ったりして初めて名刺を出して交換をする程度のことでは、なかなか外交はやりにくい。そういう意味で顔のつながりが少な過ぎるし、これは少ない一つ理由は、大使その他が大体二年ぐらいの期間でぐるぐるかわるでしょう、そういうことも一つの大きな原因ではないか。それからまた、日本外務省の試験制度そのものも大国中心的な考え方がひとつ多過ぎるのではないか。あるいはまた上級、中級、語学研修生といったような一つの格づけがありまして、みんなが伸び伸びと、生き生きと外交活動ができるような仕組みになっていない。そういう意味で、新しい、外から入ってみえた大来外務大臣の間に外務省の人事を刷新することも必要だし、また、その基礎としての外交試験制度といったようなものもこの辺でより広い視野で再検討されることが必要ではないかと私は思いますが、大臣はいかがですか。
  107. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま竹本先生御指摘の点につきましては、私も就任以来考えております問題でございまして、一つには外部からの人材をある程度考えるということで、先般高橋展子さんのデンマーク大使任命について決定いたしたわけでございますが、そのほか専門家、これは部内、部外含めて専門家をできるだけ活用するという点、これはいろいろ内部で聞いてみますと、たとえばアラピストの中から二人大使が出ておる。それから内部から、中級から上級職への登用といいますか、この道もだんだん開けつつある。外務省の事務当局としてもいま御指摘のような方向にいろいろ努力をしておるように私は存じますけれども。  それから大使の任期につきましては、これは御指摘のように二年では短か過ぎるのではないか、やはりできれば三年くらいが望ましいのではないかと私としては考えておりますが、いろいろ人づくりの都合もございますけれども、ある程度腰を落ちつけた外交が必要だろう。外務省としても、非常に世外の問題が複雑、多様化してまいりまして、ある意味では情報量も大変ふえてまいる、これに対応していかなければならないわけでございますけれども、いまのそれに対応できる人材の採用、訓練、試験の面などにも新しい工夫を加えていくということで、外務省内部でも前向きにいろいろな問題を取り上げて検討しておる最中でございますので、今後ともいろいろ御忠告なり御意見を賜りたいと思っております。
  108. 竹本孫一

    竹本分科員 私は、アメリカのやり方のいろいろの民間人材の抜てきの仕方等には教えられるところが非常に多いと思います。いずれにしましても大臣御在任中にやはり、いわゆるキャリアの外交官でない、新しいより広い感覚と視野に立って、ぜひこの問題の解決のために積極的な御努力を願いたいと思います。  次に、難民問題について伺いたいのですが、現在日本が受け入れているところのいわゆるベトナム等の難局のうちで、日赤関係と民間の宗教団体関係、こういう二つの大きな流れがあるようでございますが、初めの間は難民受け入れに関しましては民間主導型といってもいいぐらいに民間に頼っていたようでございます。結論的にはいま半々みたいなものでございますが、一体将来は民間中心で行くのか、あるいは政府主導型の方向になるのか、その辺に対する基本的な結論だけを伺いたい。
  109. 村角泰

    ○村角説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のとおり、現在海上で救助されまして日本に到着いたしましたいわゆるボートピープル、これらの方々に対する一時収容施設の提供と申しますのは日本赤十字社関係及び宗教団体の関係によって、数から言いますと大体半々ということでございます。先生御承知のとおり、日本赤十字社の分につきましては厚生省からその必要な経費の全額の補助金が出ております。それから難民の方々の食費、諸雑費等は、国連難民高等弁務官府から、宗教団体あるいは日赤関係を問わず一律に十六歳以上は一日九百円、それから十六歳未満は五百円、こういうラインで支給されて運営されているわけでございます。  ところで、これを将来どういうふうにするかという御質問でございますが、この点につきましては、実は現在千三百八十五人の一時収容の難民がおりまして、あるいはこれがまたさらにふえる可能性もあるかと思われまして、来年度の予算におきましては、厚生省の方でいままで五百人分であったのを千人分を予算案において計上していただくようお願いをいたしております。ただし、かといって、現在宗教団体が実施しておられる一時収容施設がやめられてはこれはとても困りますので、引き続きしばらくお願いするということでございます。  なお、政府といたしましては、日本に定住を希望する難民に対して日本語を教え、職業の紹介、職業の訓練をする定住促進の機構というのを昨年発足させまして、これにつきましては実は全額政府の経費でやっております。一時収容施設というのは、日本に定住を希望される人はもちろんいま申し上げた定住希望の方に乗れるわけですけれども、大部分の方々は第三国への定住を希望しておられまして、そこでいま待っておられる次第でございます。今後この数がどういうふうになっていくかということはわかりませんが、私どもとしては、できるだけ早く本邦あるいは第三国の定住が促進されるように、むしろその辺に力を尽くしたいと思って考えておる次第でございます。
  110. 竹本孫一

    竹本分科員 時間がありませんから細かいことはやめまして、最終的に大臣の基本的なお考え二つほど伺っておきたいのです。  一つは、新聞でも御承知のように日本努力が足らない点がいろいろ批判をされておりますが、この際は余り事務的に細かい議論をしておったら間に合わないと思うのですね。そういう意味で少し大胆にこの問題に取り組むべきではないか。そのためにはいまもいろいろ御説明がありましたが、日本に定住する条件というようなものを余りむずかしく言い過ぎると結局何もできないということになって、数を見ても恥ずかしいような数字しか出ておりません。  結論的にお伺いしたいのは、一つは、日本のいまの定住の条件というものを速やかに大幅に緩和をするということはできないか。それから第二は、大幅に緩和するとして、一体何万人ぐらいをとりあえず日本は難民として受け入れるかということについて、国際社会に恥ずかしくないだけの数字を出してもらいたいと思うが、どの辺までのことを考えられるかということが二つ目。  ついでに、時間がなくなりましたからもう一つだけ。もう一つは、難民の保護を規定しておるところの難民の地位に関する条約あるいは難民の地位に関する議定書、こういうものを日本はまだ批准をしてないようですけれども、そしてよその国はすでに相当やっておるようですが、これを一体どうされるつもりであるか。特にこの議定書の批准等につきましては速やかに批准の案件を提出したい、これは去年この国会で政府は約束しておられるはずなんだが、この国会にまだ出されておらないようだけれども、どういうふうになるのか。条件の厳しいところがあるということもわかりますが、それならばそこは一部留保してでも速やかにやるべきことはやるという形がいいんじゃないか。  この三点についてお伺いしたいと思います。
  111. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 難民の定住問題につきましては、私ども外務省といたしましても、国際的な他の国々の状況等にもかんがみまして、できるだけこの定住が容易になるように、こういうことを要望いたしておるわけでございまして、これは関連国内官庁もいろいろございまして、その辺で政府の方針としてまだ十分煮詰まらない点もあると思いますが、外務省としては、絶えず国内官庁に対して、この点についてできるだけ枠を広げた方向でいくべきだということを伝えておるわけでございます。具体的な数字の枠についてはちょっと私から申し上げることはできませんが、後ほど難民対策連絡室の方でもし発言があれば答えていただきたいと思います。  それから、難民条約につきましては、やはり国内各官庁との調整を鋭意進めておるわけでございます。いろいろ関連する国内の施策との問題がございまして多少暇取っておりますが、今国会中に提出するために極力努力をしておるわけでございます。
  112. 村角泰

    ○村角説明員 大臣の御説明を補足させていただきたいと思います。  現在、先ほど申し上げましたような一連の定住促進の形ができました結果、許可数で申しますと百五十四人の定住許可が行われております。  どのくらいを目標にするかということでございますが、昨年四月の閣議了解におきまして五百人を目途に定住促進を図るということが一たん合意されまして、その後七月十三日の閣議了解におきまして、この五百人の定住枠は定住の進捗状況に応じて漸次弾力的に拡大を図るものとするということが、また了解されました。したがって、私どもはまず現実に定住を促進するということが大切だと思いまして、五百人の枠には必ずしもとらわれない、また現実にそういう人がおればどんどんふやしていくべきであろうと考えておる次第でございます。  ところで、それでは果たしてそれだけの難民の定住希望者が次々あるかという御質問になると思いますが、それにつきましては、現在アジア地域に申請中の件数が約二百四十件ございまして、この定住促進の事業を委託いたしましたアジア福祉教育財団の方から次々にいま適格者調査団――現実に希望者に面接いたしまして、条件にかなうか、あるいは本当に日本に来て働いて安定した生活を営むようになれるか、そういうことをよく向こう側に説明すると同時にインタビューをしてくるというチームが派遣されております。こういうことによって日本の定住がさらに促進されると思います。  以上でございます。
  113. 竹本孫一

    竹本分科員 一応説明を承っておきますが、大臣、私の友人でベトナムの難民を五十人ほど受け入れたいという人もいるのですよ。そして何とか世話を頼むと言われたので、私は私なりにいろいろ努力をしてみたけれども、結局あそこに行け、ここに行け、こちらに行けば向こうと言うし、向こうに行けばこちらというようなふうで、わけがわからない。県庁の方へ手を打ってみても、それもよくわからぬ。この人は社会事業家で、犠牲的にやりたい、熱意を持ってやりたいというのに、その人の手紙をきょう持ってこなかったが、一体政府はやらせるようにするのか、やらせないように考えているのかわからないというのが本人の結論なんですよ。本人はやりたい。施設も持っている。そして場合によっては、自分のところの土地を持っていますから、私は後で経済的に困りはしないかという注意を与えたが、いや土地を半分売ってもいい、こう言っているのですよ。それほど犠牲的な精神を持ち、それだけの熱意を持って取り組もうとしておるのに、あちらへ行け、こちらへ行け、結局そのうちにまた制度が変わるとか方針が変わるからそれまで待てとかいうようなことで、かれこれずいぶん長い間になりますが、全然問題が解決がつかぬ。  だから、こういうことこそ国際的な信用にも関する問題ですから、外務省がやられるがいいか、厚生省がやられるがいいか、それは政府にお任ぜするけれども、窓口を一本化する。頼んでもやってもらいたいのを本人の方がやろうといって希望しているのに、答えができないというようなばかなことはないと思うんですね。そういう点は、もう少し前向きといいますか、決断を持って対処してもらいたいということを強く要望しておきます。  それから、先ほどの条約の国会提出の問題も、ちょっと御答弁を聞くと、またこの国会も危ないかなという感じですが、本当に出されるつもりか、出されないつもりか、努力をする結果、出せるのか出せないのか、これも注目をしておりますが、ひとつ見通しをはっきり言ってもらいたい。
  114. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 現段階で出す方に努力するということで、できるだけその方向で進めたいわけでございます。国内官庁の問題がございまして、なかなか調整に難航しておる面もあるように聞いておりますので、極力努力するということで御了解願いたいと思います。  それから、最初にお話ございました、ベトナム難民受け入れの問題、そういうことをお考えの方がおられるということは非常に心強いことでございまして、私どももいろいろほかの例なども伺っておりまして、国内官庁の従来の考え方を国際化時代に相当いろいろ切りかえてほしいということが外務省としての立場でございますので、さらに今後も努力を続けてまいりたいと思います。
  115. 竹本孫一

    竹本分科員 最後に一つだけ。これは要望ですけれども、最近の日米の経済摩擦の問題の一つとして自動車問題がございます。自動車問題だけじゃなくて、これはもう大来さんは専門家だから私からいろいろ説明も要しませんが、要するに、アメリカに対して日本はまだ戦後の敗戦ぼけの延長がいつまでも続いておる。いまのアメリカの反ソ大合唱の問題にしても――もちろん私はソ連にも厳しい批判を持っておりますが、アメリカのそういう姿勢の問題にしても、あるいは最近の経済的な問題に対するアメリカの態度等を見ましても、われわれはアメリカとの関係は一番大切にしたいという立場を持っておるわけですけれども、しかし、それならばなおさらアメリカに対しては言うべきことは言わなければならぬ。これは恐らくどなたも同感だと思いますが、問題はなかなかそうなっていないではないか。  特に、経済問題について言いますならば、大臣は御専門の立場でよくおわかりのように、私は、日本の繊維交渉のときにアメリカへ参りました。そしてあそこの国会議員の連中三、四十人と会いましたときに、初めは、民社党さんはフリートレードに賛成かと向こうで聞いてきたのです。賛成だと言った。またそれでなければ日本はやっていけないのだと言った。そうしましたら、だんだん繊維の問題になりまして、文句ばかり言うのです。そこで私の方はこういうことを言ったのです。日本は労使一体になって繊維産業こそはということで力を入れて日本の繊維産業は伸びた。その結果、日本は安くてよい品物をどんどん輸出することができるようになった。したがって、それに対してアメリカの消費者からも、あるいはアメリカの外務省からも感謝をしてもらいたいと思うのだけれども、文句を言われるとはどういうわけだと。そうしたら、よくて安いから困るのだという向こう答弁なんですよ。だったら、よくて安いものをつくったらいいじゃないか。第一、アメリカは一体何だ。設備投資のあり方を見ても、御承知のように日本とアメリカの設備投資に対する努力はまるっきり違いますよ。日本の方がよほど進んでおる。ある場合には三倍、四倍と言えるかもしれぬ。したがって、日本とアメリカは生産性の伸びがまるっきり違う。細かい数字はやめますが、まるっきり違いますよ。したがって、コストも違うということになって競争力ができる。いまの小型自動車時代にアメリカの対応が下手であるかおくれておるか、その結果、日本のものがどんどん出ておるわけです。しかも、結果はいずれにしても三九%程度らしいけれども、とにかく日本の品物が出るのは強引にダンピングばかりやっておるわけじゃないので、その点でアメリカの努力の足らない、海外投資の方には熱心だったけれども国内投資にはそれほど熱心でなかった結果がいま出てきているのだから、そういう意味で経済の合理性という立場からもアメリカはもう少し反省すべき点がたくさんあると思うのです。それに対してはもう少し勇敢に指摘していただいて、強い外交をやっていただきたい。これは要望にとどめておきますが、よろしくお願いしたいと思うのです。
  116. 村山達雄

    村山主査 竹本孫一君の質疑は終わりました。  次に、上田卓三君。
  117. 上田卓三

    上田(卓)分科員 まず私の御質問申し上げたい点は、アフガン問題をきっかけにいたしまして、ソ連に対して経済制裁といいますか、それだけじゃないわけでございますが、そういう話が大きく報道され話題になっておるわけでございますけれどもわが国ソ連政治的にもあるいは経済的にも断絶して冷戦体制に入るのか、それともアフガン問題はあるにしても、やはり日ソ友好関係の維持を対ソ政策の基調として進めていくのかどうか、この基本問題についてお聞かせいただきたいということ。  それから、オリンピックにつきましても、これは世界の祭典、選手たちも非常に期待をいたしておるわけでございまして、そういう意味で正常な形でオリンピックがモスクワで開催されるということを望んでおられるのか、それともオリンピックはもうない方がいい、このように考えておられるのか、その点についてまずお聞かせいただきたい、このように思います。
  118. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日ソ関係の基本につきましては、日本政府の立場はあくまで話し合いによって問題の解決を進めていく、基本的な関係を維持していくということでございます。     〔主査退席、保岡主査代理着席〕  ただ、最近、北方領土におけける軍事基地の建設とかスパイ問題とか、あるいはアフガニスタンに対する軍事介入とか、いろいろな問題が相次いで起こりまして、日ソ関係も厳しい条件があるわけでございます。しかし、基本的な対ソ外交としてはあくまでも話し合いの道を続けていくという考えでおるわけでございます。  オリンピックにつきまして、二月一日に政府意向が表明されたわけでございますが、あの表明の中にも言われておりますように、オリンピックは本来平和的、友好的雰囲気のもとで行われるべきものだ。それで、具体的にはJOCが各国の情勢、各国の委員会とも連絡をとりながら最後的には判断すべきものだというたてまえで、その後も変わっておらないわけでございます。この前のレークプラシッドでIOC、国際オリンピック委員会の方はモスクワ・オリンピックの開催を決めておるわけでございますが、これに各国が参加するかどうか、その申し込みの最終期限は五月二十四日ということになっておりますので、それまでの情勢をにらみながらJOCとしても最終的に態度を決定することになるのだろうと考えております。
  119. 上田卓三

    上田(卓)分科員 アフガン問題があるにしても、ソ連との友好関係は進めていくということですね。  それからモスクワ・オリンピックについても、平和的なそういう状況のもとで開催されることについては賛成である、こういうように受けとめていいですか、簡単に答えてください。
  120. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま……(上田(卓)分科員「イエスかノーかだけで結構です」と呼ぶ)平和的ということがアフガン侵入ということで害されておる。それに対して世界の百四カ国がソ連の即時撤退を求めておるわけでございますので、現状が続きますと、平和的ということがなかなか言いにくいという事情にあるわけでございます。
  121. 上田卓三

    上田(卓)分科員 要するに、四年目に一回のオリンピックでありますから、これが正常に行われないということになりますと、これからのオリンピックはどうたるのか、こういうことになるわけでありますから、わが国としてもオリンピックが開催されるような、そういう条件づくりというものをぜひともやる必要があるのではないか、こういうように思っておるわけでございます。  先に進みます。政府がJOCに伝えた意向内容が非常にわかりにくく、また解釈もさまざまなようでございまして、新聞などでは、現状では不参加、こういう見方をしておりますし、また、カーター政権は日本を不参加国に入れておるようでございます。しかし、二月二日の衆議院の予算委員会伊東官房長官は、参加するとかしないとかいうようなことを言ったのではない、このようにおっしゃっておるわけでございますし、また、いろいろ政府の文書を見ましても、どこにも参加とかあるいは不参加ということは書いてないことは事実であろう、こういうように思うわけでございます。そこで政府は、参加、不参加を決定せずに五月のエントリー締め切り日まで情勢を見守っているんだ、こういうように理解してよろしいですか、どうですか。
  122. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは先ほど申しましたように、参加、不参加を決めるのはJOCでございますが、政府としてもその情勢を見守ってまいるということでございます。
  123. 上田卓三

    上田(卓)分科員 谷垣文部大臣も、たとえJOCが政府意向とは逆に参加する場合でも、選手団派遣費などの政府補助金を打ち切るなど報復措置をとらない、このように二月十三日の参議院の予算委員会で言明しておるわけでございますが、このような姿勢は変わりございませんか。
  124. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 谷垣文部大臣は二月十三日の参議院予算委員会答弁におきまして、「報復をするとかしないとか、そういうことは毛頭考えておりません。」という答弁をいたしております。そういう趣旨でございまして、今後の情勢を見守るという立場で文部大臣答弁されたと解釈いたしております。
  125. 上田卓三

    上田(卓)分科員 具体的な問題で御質問申し上げますが、選手団の練習は順調にいっておるのかという問題が一つ。それから企業からの協力が順調に進んでおるのかということでございまして、いわゆるこのモスクワ・オリンピックが開催される場合に万全の措置がとられておるのか。参加するのかしないのかわからぬというような状況のもとでは、はっきり申し上げて練習だって熱が入りません。やはり一応やられるんだということで、一つでも金メダルをよけい取るんだということでみんなが練習しなければ、非常に選手に不安を与える、こういうように思いますので、そういう点、参加に支障がないのかという問題。それから参加チームを決めるアジア地区の予選は一体どうなっておるのか、そういう点。具体的な問題でございますので、ひとつお答えいただきたい、このように思います。
  126. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 御指摘のモスクワ・オリンピックへのJOCの準備の状況でございますが、現在各競技団体におきまして計画どおり強化合宿を行い、あるいは候補選手選考会を実施する、それから御指摘のアジア地区の予選につきましては、三月二十一日からマレーシアにおいてサッカーの予選が行われることになっており、順調に準備が進められておるというように開いております。  なお、日本体育協会の方で、「がんばれニッポン」ということで、関係の御理解ある企業等とキャンペーンの形で募金活動を行っておるところでございますが、これにつきましては今後の動向等を考え、慎重な扱いをしていくということのようでございます。
  127. 上田卓三

    上田(卓)分科員 二月二十一日の衆議院の外務委員会での外相の発言は、補助金をストップするといったような形で報道されておりまして、JOCとかあるいは選手団に大きなショックを与えて動揺を与えておるわけでございまして、やはりこういう問題につきましては、文部省が補助金を出すというようなことになっておりますので、そういう問題について外務省が触れるということは軽率ではなかろうか、私はこういうふうに思っておるわけでございます。  大体アメリカ大統領選挙とオリンピックの年が一緒だというのが問題というのですか、これは一年か二年ずらせば非常にいいのでございますけれども、何か対ソ問題で強硬発言すればアメリカ大統領選挙に有利だというようなこともちまたではうわさされておるわけでありますが、いずれにいたしましてもカーター政権のそういうヒステリックな対ソ政策といいますかあるいはモスクワ・オリンピックの不参加というものについて、いろいろ日本とアメリカとの関係はあるにしても、やはり対ソ政策というものもありますし、また全方位外交というようなことも含めて、日本はもっと独自に意思決定をすべきではないか、私はこういうように思っておるわけでございます。  そういう意味で、カーターのそういう選挙運動にスポーツを利用させてはならぬ、こういうように思っておりまして、JOCの自主的な判断をぜひとも尊重し、モスクワ・オリンピックをボイコットすることのないように、また特にスポーツに政治を介入させないということがオリンピック憲章の大原則でもあるわけでございますし、先般のIOC総会の開催決定を私自身は全面的に支持するものでございますので、このことを特に申し上げておきたい、こういうように思います。  次に移らさしていただきます。  政府は、アフガニスタン問題に対する不快感の表明ということで、ソ連の外国貿易省のイワノフ次官の訪日を拒否をいたしたわけでございます。この結果、日ソ間の新しい経済協力プロジェクト、電磁鋼板プロジェクト三億五千万ドルほど、あるいは大口径パイプ約三億ドルあるいは南ヤクート原料炭開発の追加融資四千万ドルほど、あるいは第三次極東森林資源開発約五億ドルほどあるわけですが、すべて宙に浮いて、予定された輸銀資金もストップした、こういうような状況でございます。プロジェクトの内容を見るまでもなく、こうした経済協力は日ソ両国の両方に利益を与えるものではないか、こういうふうに思います。日本側の一方的な話し合い拒否に対して、ソ連は単独ででもシベリア開発は進める、こういうふうに言明をいたしておるわけでございます。  特に、対ソ制裁を言うなら向こうの方が逆に日本に対する制裁というようなこともポリャンスキー大使を通じて云々ということも聞いておるわけでございまして、そういう意味で日ソ関係の他の分野にも悪影響を与えるということになりますと、いわゆる日ソ間の新規の経済協力のプロジェクトの一方的中断だという、事実上の対ソ経済制裁になるのではないか、こういうふうに思いますので、その点についてどのようにお考えなのかお聞かせいただきたい、このように思います。
  128. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問の点でございますが、基本的にはソ連軍のアフガンに対する軍事介入という問題がございまして、これが国際的に当然だというようなことになりますと、今後の世界の秩序につきましても非常に重大な問題になってまいります。やはりこういう軍事介入ということについては、国際法上も世界平和の維持という点から見ても承服できない、この点についての意思表示はいろいろな形でやらなければならない。これは世界各国、第三世界、特にイスラム諸国等を含めて非常に強い批判、反対が起こっておることでございまして、そういう情勢のもとで日本ソ連の個々の問題についての対応を考えていく必要があると思うわけでございます。  ただいま御指摘のいろいろな協力案件につきましては、政府の中で現在いろいろ条件を考えて検討中でございますので、まだどれがどうという具体的なことは申し上げられない段階でございますけれども、これはアフガンに対するソ連の今後の行き方、世界各国、特に西欧諸国等の動きなども考慮しつつ具体的な対応措置を決めていかなければならないと考えておるわけでございます。
  129. 上田卓三

    上田(卓)分科員 対ソ経済制裁をしていないということですね。そういうアフガン問題に対して不快感の意思表示はしたが、まだそういう対ソ経済政策はとっていないということですか、こういうことですか。簡単にお答えください。
  130. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いままでのところ、検討中でございますけれども、具体的にとったものはございません。
  131. 上田卓三

    上田(卓)分科員 毎年三月の中旬から始まるところの日ソサケ・マス交渉にいわゆる致命的な影響を与えかねないということで関係者は大変恐れておるところでございまして、交渉開始の申し入れもないと伝えられておるわけでございます。それでなくてもことしは不漁年だ、こういう状況でございまして、このままではサケ・マス交渉自体開催されない可能性もあり得るといったような、そういう悲観論もあるようでございます。  農林水産省として、対ソ制裁などということに恐らく賛成できないだろうというふうに思うわけでございますので、その点についての考え方と、ことしのサケ・マス交渉の見通しはどうなっておるのか、あるいは減船補償といったようなことも準備はしておるのかどうか、農水の方にお答えいただきたい、こういうふうに思います。
  132. 中島達

    ○中島説明員 ただいまアフガン問題に関連しての漁業分野につきましての御質問でございますが、私どもとしては、先生御承知のように、まだソ連は何らこの問題につきまして、漁業の分野につきまして正式の意向表明というものを行ったとは承知をいたしてないわけでございまして、また現在までのところ、わが国の北洋漁業一般に対する実際の影響というものは何も出ていない段階であるわけでございます。先生も御指摘ございましたように、私どもといたしましては今後とも北洋におきますわが国の漁業の継続維持、その安定というものを図っていくという方針のもとに対処をいたしたい所存であるわけでございます。  御指摘のありました対ソ関連措置でございますが、先ほどこれに関するわが国考え方につきましては外務大臣から御答弁がございましたとおりでございます。特に私どもといたしましても、日ソ関係全体の中で漁業関係というものが占める地位、位置というものを十分考えて検討をされるべきものではないかというふうに存じているわけでございます。  また最後に、ことしのサケ・マス交渉の見通しでございますが、先生先ほども指摘ございましたように、まだ交渉開始あるいは交渉の日程も定まっていない段階でございますので、現段階では見通しがどうなるということを明確にお答えできる段階ではない、こういうことでございます。
  133. 上田卓三

    上田(卓)分科員 通産省の方にお聞きいたしますが、昨年十月、サハリン沖で四億五千万トンの埋蔵量を持つところの有望な大型油田が発見された、こういうことを日本経済新聞の十月二十六日号で報道もされておるところでございます。同地域では日米ソの三カ国が協力して石油開発を進めておるわけでございますが、カーター大統領の対ソ経済政策の一環として掘削装置の輸出が規制され、サハリン沖の石油開発が非常にむずかしくなってきておるようでございます。サハリン沖からの石油輸入が成功すれば国民生活に大きい影響を与えるわけでございまして、この場合、アメリカの対ソ制裁は日本の首を絞めることになるのではないか。掘削装置の輸入納期は七月と言われておるわけでございまして、通産省としてはアメリカに輸出規制解除を働きかける必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、その点について見解をお聞かせいただきたい、このように思います。
  134. 安楽隆二

    ○安楽説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、日ソ協力としてサハリンの大陸だなの石油天然ガスの探鉱開発は、すでに五年間探鉱を続けました結果、二つの有望な坑道が見つかっておりまして、ここは夏場しか作業ができませんので、ことし分は七月から作業をする、ところがその作業にはアメリカからのサービス機器の資器材の輸入はどうしても必要なわけでございますが、アメリカはことしの一月からこういったものに対するライセンスの発給を停止しておりまして、今後どうするかということをいま検討しているというふうに聞いております。その結果も近いうちに発表されるということを聞いておるわけでございまして、そうした事態の中でどうするかということは、もちろん会社を中心に対応策も検討しておりますが、政府といたしましても米国政府の方針がどうなのかということをいま打診中でございます。
  135. 上田卓三

    上田(卓)分科員 次に移ります。  通称ワシントン条約と言われておるわけでございまして、私たちは原則的に一日も早くこの条約が批准されることを望んでおるわけでございます。人間の場合であれば昨年批准されました国際人権規約があるわけでございますが、それの動物版と言ってもいいのがワシントン条約ではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  たとえば、くつとか履物とかグローブとか、ミットとか、カバン、袋物、毛皮、革といったような、そういう皮革製品は伝統的な同和産業、こう言ってもいいのではないか、こういうふうに思っておりまして、最近のそういう国際的な荒波の中で非常に打撃を受けておるとか、あるいは大資本の進出で本当に壊滅状況になっておるのが現状であるわけでございます。特に兵庫とか大阪とか和歌山、奈良、東京、埼玉に集中するところの千四百のなめし業者も革の輸入拡大の圧力を受けて非常に苦しい状況にあるわけでございます。  特にこの問題の爬虫類の鞣製業界は、わずか全国で七十ほどの業者で家族も含めて二千人にも満たないような状況にあるわけでございまして、そういう点で外務省なりあるいは通産、環境庁とも業者が三十数回にわたりましていろいろお話し合いをしまして、昨年の十二月、一定の留保も含めて合意が成り立ったわけでございますので、こういう点について本当に誠意を持って業界の育成に当たっていただきたいし、当然、輸入の自主規制ということになりますと、製品のある程度の規制というものもやっていただかないとしり抜けになってしまうのではないか、こういうふうに思います。  それからもう一つは、ワニとかトカゲとか、そういうものについての増養殖というものも非常に大事になってくるのではなかろうかと思いますので、ぜひともこういう点について協力的に御支援いただきたいと思いますので、関係当局の答弁をお聞かせいただきたい、このように思います。
  136. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまのワシントン条約、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約でございますが、御指摘の点でいろいろ関係業界とも相談いたしまして、特にただいまお話しにございました爬虫類につきましては、全部要求といいますか要望を取り入れるということになっておるわけでございまして、今回この国会に提出しておりますのでぜひ御承認を得たいと考えておるわけでございます。
  137. 上田卓三

    上田(卓)分科員 次に移ります。  昨年やっと国際人権規約が批准されたわけでございますが、留保条件があるわけでございますので、一日も早くこの留保を解除していただきたいということは当然のことでございます。たとえば、そういう内容とかあるいは精神というものの普及が大事ではないか。交通安全とかあるいは省エネということになりますと大変PRされておるようでございますが、事人権の問題に対しては諸外国に比べて非常にわが国は劣っていると言ってもいいと思うのでございまして、そういうPRをぜひともやっていただきたい。特にテレビとかあるいはラジオとかマスコミ、雑誌等でこのPRをすることが必要であると思いますので、この点についてどう考えておるのか、あるいはまた、国内法の改正について具体的にどう進んでおるのかということをお聞かせいただきたい。  それからもう一つは、昨年の八月にアメリカで開催されましたところの第三回世界宗教者平和会議において、当時の仏教会の理事長でありますところの曹洞宗の宗務総長の町田氏が、日本に部落問題、差別待遇は全くないということを言って、世界の四十六カ国三百五十人のそういう仏教とかキリスト教、イスラム教などの参加者の前で重大な差別発言をいたしておるわけでございます。そういう点で、やはり私としては、こういう問題を世界の方々に正しく理解をしてもらうという意味で、国際的なシンポジウムを日本で開くということも積極的に外務省あたりでやっていただくことが必要ではないか。大阪などを初めとするところの地方自治体でもそういう機運が非常に高まっておる。おととしでしたか、マルク・シュライバー前国連人権擁護部長さんをわれわれ招待いたしまして、外務省の前国連局長でありました大川さんも出ていただいたりして、そういう催しもあって、国際人権規約の批准に大きな役割りを果たしたわけでございますが、そういう国際シンポジウム等について積極的に支援するといいますか、あるいはみずから外務省が乗り出すというような意向があるのかどうか、この二点についてお尋ねしたい、このように思います。
  138. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもも人権問題は非常に重要と考えておりますので、国際人権規約の批准の問題、関係各省と極力話し合いを進めておるわけでございます。いろいろ社会保障その他の関係につきましても国内関係各省の調整を要する面がございますけれども、たとえば最近、公団の住宅、賃貸、分譲に対して外国人を認めるという通達が出たわけでございまして、一歩一歩そういう点を解決していかなければならないわけでございます。  ただいまのセミナー等につきましても、今後検討してまいりまして、できるだけ前向きに取り組んでまいりたいと考えます。
  139. 上田卓三

    上田(卓)分科員 時間が来たようでございますので、質問を終わります。
  140. 保岡興治

    ○保岡主査代理 上田卓三君の質疑は終わりました。  次に、井上泉君。
  141. 井上泉

    井上(泉)分科員 大臣に尋ねするわけですが、朝鮮半島に朝鮮民主主義人民共和国という国が存在しておるということ、これは大臣は認識をしておるでしょうか。
  142. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 認識いたしております。
  143. 井上泉

    井上(泉)分科員 国家として存在しておるということを認識をしておる以上は、国家間の交渉、国家間の関係というものは早くつくるべきである、持つべきである、こういう考え方が当然大臣としては生まれてくると私は思うのですが、大臣の所見はいかがですか。
  144. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、情勢を検討しながら将来考えていかなければならない問題でございまして、従来、日本韓国と国交関係を結んでおります。その関係に対する影響等も含めて考慮しつつ、将来取り組んでまいりたいと考えております。
  145. 井上泉

    井上(泉)分科員 戦後三十年以上経過した今日、国家としての存在を認めておる以上は、やはり国家間の交渉というものを早く持たなければ、それによってこうむる日本国民のいろいろな問題が解消しないと思うわけです。その一例といたしまして、終戦当時に三十八度線から北、つまり朝鮮民主主義人民共和国の平壌、元山、ああいう地域で、終戦当時の非常に混乱をした状態の中で日本人が多数飢餓と伝染病、そうしたもので亡くなるなど、悲惨な生活状態が続けられたということは御認識をしておるでありましょうか、どうでしょうか。
  146. 木内昭胤

    木内政府委員 戦争の結果、そういう不幸な事態があるということは十分承知をいたしております。
  147. 井上泉

    井上(泉)分科員 そしてその何万人という戦死者、これは外務省、厚生省の資料だけで、三十八度線以北の主要地点の死亡者というだけでも約八千人というものが伝染病その他で短期間に集中して死んでいる。それで、やっと生き残った方たちは、両親が死に、あるいは兄弟が死に、そういう地域に対する愛着といいますか、郷愁といいますか、一日でも早くそこの地に行って墓参――墓ももちろんないでしょうけれども、その地へ行って何とかそういう自分たちの肉親のそうした悲惨な死に方をしたことに対して弔いの気持ちをあらわしたいという願いがあるわけですが、この願いは日本人ならば当然あるのがあたりまえだと思うし、そういう願いをかなえてやるような措置をとるのが政治としての任務ではなかろうかと思うわけですが、大臣どうでしょうか。
  148. 木内昭胤

    木内政府委員 関係者のそういう願いがあるということは委員御指摘のとおり当然のことだと思います。そういう願いをかなえなければならぬということも私ども十分承知いたしております。しかしながら、北朝鮮人妻の問題なんかでも御承知のとおり、北朝鮮との連絡というものは非常にむずかしいという認識も不幸にして持っております。
  149. 井上泉

    井上(泉)分科員 あなたは朝鮮名主主義人民共和国という国が存在していることは認めておるでしょう。そうすれば、北朝鮮とかいう国はないのですから、国交があるなしにかかわらずそういう用語を使うことは慎んでもらいたい、こういうように思うわけです。  そういう願いがあるというならば、その願いをかなえる方向に、たとえば国交関係がなくとも赤十字社を通じてそれを向こうへ伝えるとか、行政としてやるべき手段は幾らでもあるはずだと思うわけです。そういう点について大臣、どうですか。それで、アジア局長が大体北朝鮮なんということを言うのは間違いですよ。
  150. 木内昭胤

    木内政府委員 先生の御指摘でございますけれども政府といたしましては、北朝鮮を国際法上の国家としては現段階では認めておりません。政権であるということを御理解いただきたいと思います。  したがいまして、外交関係がないという制約から種々連絡に困難があることは遺憾ながら事実でございます。北朝鮮との連絡につきましては、日本赤十字社等を介して行うほかに現段階では道はないわけでございます。
  151. 井上泉

    井上(泉)分科員 ないから、それをするかしないかということ。
  152. 木内昭胤

    木内政府委員 北朝鮮はわが国としては承認いたしておりません。
  153. 井上泉

    井上(泉)分科員 それは局長、そうじゃないですよ。赤十字社を通じてとか以外にやる方法がないと言うから、それしか方法がないならその方法をやったらどうか、こういうことですから、別に承認しておるとかおらぬということは関係ないですよ。
  154. 木内昭胤

    木内政府委員 具体的に問題が提起された場合には、日本赤十字社等にお願いしてやるつもりでございます。
  155. 井上泉

    井上(泉)分科員 具体的にいまここで問題を提起した。そういう機会というものをひとつつくるように、これは善処してもらいたい。これはやはり大臣から御返事を承らなければならないし、国際法上の国家として朝鮮民主主義人民共和国を認めてないから北朝鮮ということ、これはもう外務省も頭を変えたらどうですか、それをあわせて大臣に。
  156. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま具体的な件についての御提案がございましたから、これは私どもとしても赤十字等と話し合いを進めてみたいと考えます。  称号につきましては、一つには日本との正式の外交関係がございません、一つには、たとえば中国とか韓国とか各国の名称をそのつど全体を呼ばないで簡単にして呼ぶ慣習もいろいろございまして、そういう点もあわせてございますので、北朝鮮という言葉が出てまいる点も御了承願いたいと思います。
  157. 井上泉

    井上(泉)分科員 いまのところ、それはそういうことを了承せよと言っても了承できないのですけれども、そういう姿勢はやはり改めていかないと、将来、国家間の関係を持とうとするためにも障害になると思うので、指摘しておきたいと思います。  それで、国家的な関係ということでよく言われるわけですが、日本政府が民主カンボジア政府を承認をしておる、民主カンボジア政府は国連の正式加盟国である、こういうことについては論議をはさむ余地なし、いままでの外務省当局の見解あるいは国連における行動等を通じて私どもは認識をしておるところですが、これは間違いないですか。
  158. 木内昭胤

    木内政府委員 先生御指摘のとおりでございます。
  159. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、いま民主カンボジア政府は、どうもポル・ポト政権では国内の統一が困難だというようなところから、十二月の十五日にカンボジア人民代表大会を開いてキュー・サムファン氏がその新しい首相になり、カンプチア民主愛国統一戦線を結成をし、その議長にキュー・サムファン氏が就任をしておるということが報道されておるわけですけれども、これは事実でしょうか。
  160. 木内昭胤

    木内政府委員 御指摘のとおりでございます。
  161. 井上泉

    井上(泉)分科員 そうなると、キュー・サムファン氏は民主カンボジア政府の国家元首である、こういう位置づけをするのが当然だと思うわけですが、このキュー・サムファン首相が来日をする、そういうことが伝えられておるわけです。外務省当局はそういうことを承知をしておるのかどうか、見解を承りたいと思います。
  162. 木内昭胤

    木内政府委員 以前に来日するという話もございましたけれども、現在は立ち消えとなっております。
  163. 井上泉

    井上(泉)分科員 現在は立ち消えになっておるということでありますが、その来日の計画はやまってない、私はこう思うわけです。それで、私どもが聞いた情報によりますと、中国を訪問し、その帰途立ち寄るとかいうような話もされておると聞くわけです。そういう場合に、国家元首である、首相であるということ、そして日本も民主カンボジア政府を承認をしておるということからいきますと、小なる国といえどもやはり国家元首であるということから、これを遇するのに国家元首としてこれに対処するのかどうか、その辺のことを承っておきたいと思います。
  164. 木内昭胤

    木内政府委員 先生御指摘のとおり承認関係にございます。したがいまして、訪日する場合に、これが公式訪問であかあるいは非公式訪問であるか、その時点において検討されるべき事柄でございますけれども、きちんとした接遇を行うべきものと考えております。
  165. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、そういう外務省態度は非常にりっぱだ、こう思うわけです。そこで、来た場合には首相とかあるいは外務大臣と会談を希望されるのは当然だと思うわけです。そういう場合には十分その要望にこたえられるような接遇の仕方を希望するわけでありますので、それについての御所見を承っておきたいと思います。
  166. 木内昭胤

    木内政府委員 井上委員御指摘のとおりに考えてまいりたいと思っております。
  167. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、ことしの二月十五日の北京からの共同の報道によりますと、「民主カンボジア(ポル・ポト政権側)のピク・チャン駐中国大使は十五日、在中国日本大使館に吉田大使を訪ね、ベトナム軍がカンボジア南西地区で毒ガス、細菌など生物化学兵器を使い、住民みな殺し作戦を進めているとして、ベトナム非難の国際的な圧力をかけて欲しい、」こういう要請をされたということを私は東京新聞で拝見をしたわけですが、そういうことが外交ルー寸を通じて北京の大使館に言われてこられたかどうか、その辺をひとつ確認をしたいので、お願いしたいと思います。
  168. 木内昭胤

    木内政府委員 民主カンボジア政府の当局が、ベトナム側が化学兵器を使用したという声明を出しておりますことは先生御指摘のとおりでございます。その点につきましては、国連で先方が訴えておることも承知いたしておりますが、わが方には具体的なアプローチはございません。
  169. 井上泉

    井上(泉)分科員 ちょっと聞きづらかったのですけれども、カンボジア政府の大使が日本の大使館の吉田大使にそういうことを申し入れをした、そういう話はまだ外務省には入ってないといま言われたのでしょうか、どっちだったでしょう、その辺わからなかった。
  170. 木内昭胤

    木内政府委員 私どもには入っておりません。
  171. 井上泉

    井上(泉)分科員 あなたたちに入ってないということは、外務省日本側の外交ルートには入ってない、こういう解釈でいいでしょうか。
  172. 木内昭胤

    木内政府委員 吉田大使にもそういう連絡はございません。
  173. 井上泉

    井上(泉)分科員 そうすると、この報道というものは、共同の記者が結局でたらめな報道と、表現は悪いですけれどもでたらめな表現、こういうことに理解をされるわけですけれども、天下の共同が北京からそんなことを言うわけはないと思うのです。もう一回、こういうふうな話があるかどうか。  ちょうどいま上田君の質問の中にも出ておりましたが、アフガニスタンの問題で、アフガニスタンにおいてもソ連軍が毒ガスというようなものを盛んに使用しておる、こういう非難が高まってきておるし、そういうことは許すべきことではない。そうなりますと、やはりカンボジアにもそういうことが行われておるのではないか、こういう想像をするわけですので、これはやはり、そういうふうな申し入れがあったかどうかということを一遍北京の中国大使館に照会をしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  174. 木内昭胤

    木内政府委員 吉田大使の方にそういう事実がありますかどうか確認いたします。恐らく共同さんの方におきましては、民主カンボジア政府が国連に訴えたことをあるいは混同してわが方大使に訴えたという誤解があるのじゃないかと想像いたします。
  175. 井上泉

    井上(泉)分科員 カンボジアの情勢といいますか、これは圧倒的な優勢なベトナム軍の攻勢の前で、しかもまた、彼らのやる手段というものがこういう毒ガス兵器等を使っての武器による住民の皆殺し、あるいは飢えによる皆殺し、カンボジア民族をいわば消滅させるようなそういう作戦に出ておるのではないかというようなことが懸念をされるわけですし、またそういうことは許すべからざることだと思うわけです。  そこで、私はカンボジア政府に対しまして、前に佐藤大使がカンボジア大使を兼任されておるときに向こうへ行かれたときの話の中で、カンボジアに対する経済援助というようなことも話し合いをされた、こういう報道を聞いたのですが、そのことが事実であり、そしてまた、そのことは現在実行されておるのかどうか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  176. 木内昭胤

    木内政府委員 現在は物理的に、民主カンボジア政権に経済支援を与える状況にはございません。当面日本政府がやっておりますことは、カンボジア領にアクセスのある国際機関、すなわち国際赤十字委員会あるいは国連のユニセフ等を通じまして人道的な援助を行っております。
  177. 井上泉

    井上(泉)分科員 その人道的な――それはいま局長の言われるような情勢の中で物理的に困難でありましょう。しかし、カンボジアのそういう状態の中で非常に難民がタイの方に流出してきておる。その難民の生活状態、そういうようなものを見た場合に、これはもうかなりのカンボジア人民の苦しみというものが私は察せられるわけであります。そういう点で、やはりこのアジアのいわゆる先進国としての日本、そしてまた、同じ国交関係を持った日本としては、これに人道的見地からの援助というものをどの程度にいままでやってこられたか、これからはどの程度にやるお考えがあるのか、そのことを承りたいと思います。
  178. 木内昭胤

    木内政府委員 これまで政府といたしましては、カンボジア領内にあるカンボジアの人々の窮状を救うため、それからタイ領に押し出されたカンボジアの人々を救済するために相当程度の援助をやっております。この援助は引き続き続けてまいりたいと思っております。
  179. 井上泉

    井上(泉)分科員 ぜひそういう状態に対して積極的な援助の方法を講じていただきたいということを要請すると同時に、いま乾季攻勢だとかあるいは皆殺し作戦だとかそういうふうな状態が続けられておると言っても、やはりこのカンボジアのいまの政権というものは強固に根を張っておる存在であるということは承知をされるわけですので、日本政府が国連において、カンボジア問題について一つの国際会議を持ったらどうか、こういうふうに提唱しておる、これは私は非常に結構だと思うのですが、それについてはいまどういうふうな状態にあるのか、その現況を御報告願いたいと思います。
  180. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 御指摘の昨年の総会で、日本も共同提案国になりましたASEAN諸国等と共同のカンボジア問題に対する決議があるわけでございますが、その中で事務総長に対して、カンボジアの平和的解決というような問題も含めて国際会議を開催する手段を追求するようにという条項があるわけでございます。現在の段階では必ずしもこの条項が円滑に行われるような環境とは思いませんが、趣旨は生きておりまして、事務総長としても機会をうかがいつつこの決議の実施に当たる決意を持っておるものと思っております。
  181. 井上泉

    井上(泉)分科員 今日のこのカンボジアの情勢にしても、アフガニスタンの情勢にしても、カンボジアにはベトナム軍が入ってきた、それでアフガニスタンにはソ連軍が入ってきた、こういうふうに他国の軍隊が他国の領土に、どういう形であろうとも入って、他国の主権侵害し、他国の人民に危害を与えるようなそういう行為に対しては、これは国際的にも世論を喚起して糾明せねばならないことではないか。そういう点でも、アフガニスタンに対するソ連の侵攻、これに対する日本外務省の対応も、そのことを不快感というか、そういうようなことで表現はしておるし、あるいはまた、その問題と関連をしておるかどうかは承知しませんけれども、ベトナムに対する経済援助どうのこうの、しかし、ベトナムに対する経済援助の契約についても、こういうことでやるのじゃなしに、あなたの国がカンボジアへ侵入する、そういう戦争行為はやめなさいよ、そうしないとうちは援助できませんよ、これくらいの積極的な外交姿勢というものを展開せねば、平和を旗印とする日本の国是が泣くのじゃないか、こういうように私は思うわけですが、大臣どうですか。
  182. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ベトナムに対する援助はすでに約束されておりますけれども、その実施については情勢を見ながらというたてまえできておりまして、いまだに実施をいたしておらないわけでございまして、この実際の経緯から、先方も日本側の考えを察知できるのではないかと存じておるわけでございます。
  183. 井上泉

    井上(泉)分科員 ベトナムもそのことを察知しておるかもしれぬという見解、私もそのことは想像するわけですが、やはりこういう国際間の問題の中で、日本は平和主義、平和に徹した国家ですから、やはりそういう戦争行為で力を行使するというやり方は、たとえアメリカでも、中国であろうとどこであろうと、日本としてはそれにくみするものではない、こういう毅然たる外交方針を堅持していくのは当然だと私は思うのです。  それと同時に、日ソ間の関係、いま上田君も指摘をしておりましたが、日本ソ連との関係では、私は領土問題が何といっても最大の課題だと思う。どういう外交交渉があろうとも、それはすべて領土に通ずる、領土返還に通ずる、こういう姿勢というものを堅持しないと、最近ではどうも外務省当局は北方領土返還の国民の願望にこたえるようなことはもうほおかぶりをしておるじゃないか、そういう印象を受けざるを得ないわけです。  確かにむずかしいのです。北方領土の返還の問題はむずかしい。むずかしいけれども日本としてはどうしてもこれをかち取らなければならぬわけですから、そういう点で、外交のむずかしさも想像されるわけですけれども、すべては領土返還に通ずることである、対ソ連関係については。そういう日本外交方針というものを堅持すべきではないか。領土領土、これはこれというようなものではない。これはあくまでも国家主権の権威にかかわる問題ですから、私はそういう考え方を持つものですが、大臣の見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  184. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの領土問題につきましては、政府といたしましても、機会あるごとにソ連側申し入れいたしておるわけでございまして、決して外務省として努力を緩めておることではないと思います。最近もポリャンスキー大使にスパイ事件等に対する申し入れと同時に、領土問題をあわせて指摘してまいっておりますので、今後もあらゆる機会をとらえて繰り返してその努力を続けてまいりたいと考えておるわけでございます。
  185. 井上泉

    井上(泉)分科員 どうもありがとうございました。
  186. 保岡興治

    ○保岡主査代理 井上泉君の質疑は終わりました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  187. 保岡興治

    ○保岡主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  主査が所用のためおくれますので、主査が御出席になるまで、指名により私が主査の職務を行います。  外務省所管について質疑を続行いたします。草川昭三君。
  188. 草川昭三

    草川分科員 草川昭三であります。  まず最初に、外務大臣の方にお伺いをするわけでありますが、中東におけるわが国政治的な役割りを探るために園田特使が中東を訪問をされて、やがて帰国をされることになるわけでございますが、この園田特使の成果というものを大臣としてどのように御評価なされるか、まずお伺いをしたいと思います。
  189. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいままでいろいろ特使の方からも連絡をいただいておるわけでございますが、まだ全体は終了いたしておりませんけれども、中東の部分はすでに終わっておるわけでございまして、評価といたしましては、今回の訪問先で、日本の果たすべき役割りに対してこれら諸国に相当大きな期待がある。これは経済面、技術面、特にそれぞれの国の建設に日本の協力を得たいということがございますが、同時に、中東の包括的な和平ということに対して日本がさらに政治的な発言ということを、あるいは努力をすることに対する期待がある。それからまた、石油の問題につきましても、単に一方的に供給を仰ぐという  ことだけではなくて、いまのような日本の技術、経済力、特に技術力に対する評価が高い。そういうことで、互恵的な相互依存の関係で協力をする余地が大きいというような点を含めまして、中東の地域に対する日本役割りを認識する上に大きな効果があったと思いますし、同時に中東側が日本についての認識をさらに高めるという両面での効果があったと存じております。
  190. 草川昭三

    草川分科員 園田特使のその成果について両面から大きな成果があったという大臣の御答弁でございますが、午前中にも公明党の小川議員の方かの御質問もあったわけでございますが、やはり中東、アラブ諸国のわが国に対する期待というものを正しく受けとめるためにも、私はPLOの、解放同盟のアラファト議長の招待というものをぜひ実現することが大きな柱になると思うのです。そういう意味では、現在、日本一パレスチナ友好議員連盟の招待状、しかもこれは、宇都宮前議員がかわられておりますので、新しい招待状が行っておるのでありますし、しかもその招待状というのは村田大使を通じてアラファトさんの方に行っておるというふうに承っておるわけでございますけれども相手側は、現在の日本政府態度では、ただいまのところ応じられないというのが実情だと思うのです。いわゆる日パ議員連盟の招待状プラス政府の何らかのオフィシャルな、ひとつ前向きというのですか、前進する態度で、相手の方もわが国に来日されるような条件ができると思うのですが、その点についてはどうお考えになられますか。
  191. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、オタイバ・ア首連石油大臣を経由しましてこの招待状を向こうに渡すようにいたしております。いまだに向こうに渡したという確認は得ておりませんが、すでにオタイバ大臣の手に入っております。それで、向こうがこれに対しましてどういう態度を示すかという点でございますが、まだ私どもは、オタイバ大臣の肝いりによりますところのPLOとの対話におきまして先方の意見は聞いておりません。で、いろいろと新聞報道等もございまして、たとえばアラファト議長は、政府の招待でなければだめなんだ、そのようなことを言われたと伝えられておりますが、PLO側からわれわれが直接いまだに、先生御指摘のようなことも含めまして態度表明は聞いておりません。
  192. 草川昭三

    草川分科員 私は、実現をしないというのが――宇都宮先生が会長時代にもう出ておるわけでありますし、何回か向こう側に日本政府態度というものが伝わっておると見なければなりません、全く知らぬというわけではありませんから。でございますからいまのような新聞報道も出てくるわけですから、もう一歩前向きの何らかのものが必要ではないだろうか。そういうことが一番最初に大臣から言われました、いわゆるアラブ側の日本に対する理解というもの、日本がどうアラブというものを理解しておるのか、単なる市場性としてより理解をしていないのではないかという強い不満があるわけでありますから、その点は、私は政府態度ということははっきりと変えるべき必要があると思いますし、これも午前中に出た言葉でございますけれども、今度外務大臣が訪米を予定をされておみえになるわけでありますけれども、PLOの承認というパレスチナ問題への姿勢をはっきり示すということ、そして同時に、アラブ、イスラエル間の中東和平問題でアラブ諸国の立場を理解をするためにも、そのイスラエルの最大の支持者であるアメリカの説得というものをアラブ側は日本に期待をしておるのではないだろうか、私はこう思うのです。ここが私はポイントだと思うので、このアラブ側の期待をするイスラエル最大の支持者であるアメリカに対して、PLOの承認等の問題について外務大臣はどのような対応を示される予定でございますか、その点についてお伺いをします。
  193. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 園田特使も来週帰国されますし、これは出発前からのお話でもありましたが、特使のお帰りになった上での話をよく承って、私はその後ワシントンに参りまして、そのいろいろな中東における話し合いの結果を十分に米国側にも伝えて話し合ってまいりたいと考えております。
  194. 草川昭三

    草川分科員 一番最初に外務大臣は、双方の理解が深まるであろうという意味で園田特使の評価をされたわけでございますが、おっしゃられたように、必ずしも経済的な問題だとか技術的な問題だけではないわけですよ。そういうことだけだからこそ、日本とアラブとの関係というものがなかなかもう一歩、いいところまで行っておっても理解ができないというところがあるわけでありますから、このPLOの承認というもの、あるいはアラブ側が非常に強いそういう意向を園田前外務大臣に表明しておると私どもは理解をするわけでありますが、そういうたとえばPLOの承認というものをアラブ側が非常に強く日本に期待をする、同時にアメリカに対しても説得方をもし要請をするような背景があるとするならば、その点について具体的にどう対応をせられますか、もう一度お伺いします。
  195. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 園田特使がいろいろアラブの要人に会われましたことは先生御指摘のとおりでございまして、いろいろと東京に対しましての報告に接しておりますが、PLOに関しましては、PLOに対する理解を深めてくれということは、アラブ側の要人は不満を申しております。しかし、その承認とかそういったような具体的な問題については特に触れておりませんで、察するに、日本側に任せるということかと存じます。その点だけ、ちょっと事実を申し上げたいと思います。
  196. 草川昭三

    草川分科員 私もそう簡単に、こういう国際間の問題でございますからあれでございますけれども、しかし、少なくともそういう背景の問題、あるいはまたそういう背景をつくるためにも、日本がアラファト議長に訪日を求めるというようなことが当然それに付随をして出てこなければいかぬと思うのですね。逆に、そういう問題についてもう一歩前進の理解がない。あるいはまた、園田特使の方もアラファトさんに会う会うというようなことを日本発言なされたために、かえって会見の成功ということができなかったというように私ども伝え聞いておるわけでありますが、一体日本政府は、アラファト議長に園田特使が会われることを期待しておったのか期待していなかったのか、お伺いしたいと思います。
  197. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 園田特使のいろいろな訪問のプログラムを作成いたしましたときに、アラファトさんと会うというふうな計画はつくっておりませんでした。そこで、果たしてそれを組み込んでやっていくべきか、そのためにはいろいろアレンジメントする必要がございますが、種々検討の結果、それはしないということになったわけであります。なぜそういうことになったかと申しますと、先ほど御答弁申し上げましたように、アラブ首長国連邦のアブダビで、オクイバ石油相肝いりのもとで、わが方の村田大使と先方はPLOの要人との間で対話が行われておりまして、すでにその当時三回行われておったわけでございます。しかし、この対話におきまして、ただいま先生御指摘のアラファトさんの訪日問題等もすでに取り上げられておりまして、いろいろな経緯がございます。そこで、やはりこれを続けた方がいいのではないかという考え方でございまして、そのことはオタイバさん等にも御相談したわけでございます。これは特使の御了承を得てやりました結果、やはりこっちのルートでもって続けてやっていきたいという点は、アラブ側としてもそういう気持ちであることがわかりましたので、そのようにしたわけでございます。
  198. 草川昭三

    草川分科員 私は、きょうは時間がございませんから、アラファト議長の訪日問題等についてはこれで終わりますけれども、何といっても日本政府がもう一歩議員連盟の招待状を裏打ちする態度を表明しない限り、基本的な解決はないと思うわけでありますし、何かにらみ合いの状況で打ち過ごす問題点ではないと思うのです。  そこで、このアラブ問題について最後にもう一言お伺いしたいわけですが、午前の論議の中でも、ひとつ首相のアラブ諸国訪問を勧めるよう、外務大臣としてもそういう機会があれば申し上げたいというようなことを言っておみえになったようでございますが、アラブ連盟というのがあるわけでございますし、今月にアラブ連盟の三十五周年記念の総会が開かれると聞いておるわけでございますから、アラブ全体の友好関係を深めるためにも、アラブ連盟の事務局長のシャドリ・クリビという、これは元首級の方でございますが、ひとつこの際、この方を招くようなことも考えたらどうか、こう思うのでございますが、その点についての大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  199. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御指摘、私どもも十分考えてみたいと存じます。ただ、御承知のように、エジプト、イスラエル間の平和条約の成立に関連いたしまして、エジプトがアラブ連盟から除名された形になっておりまして、現在のところ連盟がカイロとチュニジアと二つに分裂しておるというような事情もございますので、この辺の事情も考慮しながら検討いたしてみたいと考えます。
  200. 草川昭三

    草川分科員 外務省外務省なりの中東政策というのがあるわけでございますが、われわれにとってみますと、非常にわかりづらい姿勢ではないだろうかと思うわけであります。いまもたまたまアラブリーグの現状を分裂とおっしゃられて、五対五、フィフティー・フィフティーに見られておりますけれども、私は現状はそういうものではないと思うのです。そういう理解である限り、この問題は進みません。そういった意味で、たまたま三十五周年というような記念行事があるわけでありますから、そういうものからでも手をけることが必要だと私は思うのです。でございますから、私どものそういう意向をぜひとも実現するように強く要望をし、一つ方向を示していただきたい、こういうように思います。  時間がございませんから、次に法務省の方に、外国人登録の手続の簡素化の改正案を出されるということを言っておみえになりますけれども、その外国人登録手続の簡素化ということについては、実はいろいろな問題があるわけでございます。今回、在留期間の延長あるいは登録項目の変更届の内容だとか再入国の許可、まあ四つのことが出ておりますけれども、これは事務的な手続のみの改正ではないだろうか。かつてわれわれが主張しておったような本質的な解決にならぬのではないかと思うのですが、その点について法務省、どうでしょうか。
  201. 山本達雄

    ○山本説明員 ただいま御指摘の三項目のほかに、登録確認制度の合理化を考えております。これらは、御指摘のとおり、手続面の簡素化、合理化を図ったものであります。  この外国人登録制度につきましてはいろいろ基本にかかわる問題があることは御指摘のとおりでありまして、それら基本の事項につきましては、目下入国管理局におきまして鋭意検討しているところでございます。
  202. 草川昭三

    草川分科員 私どもは前に外務委員会でもこの問題を取り上げて指摘したわけでございますが、たまたまこの証明書を不携帯だということで検挙されておる件数というものも相変わらず多いわけでございます。これは昭和五十年の警察庁の資料でございますが、三千三百九十件の証明書の不携帯が、五十四年でも三千四百四十九件、大体三千台あるわけであります。外国人登録法違反で送検された件数というのが、五十年一万四千三百七十三件から七千六百三件に減ってきておりますけれども、依然としてこういう問題があるのです。血の通った行政というものをやることが必要ではないだろうか。  たまたまスーパーへ買い物に行った、自動車に乗っていったけれども駐車違反であった、駐車違反だということで証明書があるかと言うと、つい忘れたという場合もあるわけであります。極端な例は、おふろ屋さんに行くときに証明書を持っていなかったというために送検されたというような例も過去にはあったわけでありますから、少なくとも日常の生活圏の範囲内においては認められるべきではないだろうか、こういう要望がございます。そういう登録証明書年齢の十四歳以上への引き上げということについても何回か善処をするということを言っております。だけれども、今回の改正案にはこれが盛られておりません。あるいは指紋の廃止。再登録の場合の指紋も、地方の自治体の窓口で、三世、四世の在日外国人の子弟の方方が指紋を公衆の面前で押さなければいけないというのは非常に屈辱的な問題ではないかということ、これも何らかの前向きのような答弁が出ておったのですが、出ていないわけです。あるいは切りかえの長期化だとか、本来こういう特例で罰則条項があるのがおかしいと思うのですが、罰則条項の廃止というようなことも今回は触れられていないわけでありますが、根本的な問題については一体どのようなお考えを持っておみえになるのでしょうか。
  203. 山本達雄

    ○山本説明員 御質問事項、不携帯、不呈示の問題、指紋押捺の問題、切りかえ期間の問題、罰則の問題、これはいずれも外国人登録制度の基本にかかわる事項であります。今回の改正案には含まれていないわけでありますが、たとえば指紋押捺の機会を減らすこと、現行の三年という切りかえ期間が妥当であるかどうか、あるいは現行の罰則が画一的に過ぎるのじゃないか、こういうような点につきましては十分検討の余地があると思われますので、先ほど申し上げましたとおり、基本問題の検討の場で鋭意検討しているところでございます。
  204. 草川昭三

    草川分科員 検討しなければいかぬということをおっしゃったわけでありますから、それは了解をしますが、一体いつごろまでの間にそれが出るわけですか。永久に検討するということはないと思うのですが、どうでしょう。
  205. 山本達雄

    ○山本説明員 この基本にかかわる問題は、先ほど御説明申し上げた以外に、大きな問題としまして長期在留外国人処遇の問題とも絡む事項もありますので検討中というわけでありますが、この長期在留外国人の中には、協定永住許可を受けている韓国人のほか、その法的地位が未確定な、いわゆる法一二六号の二条六項該当者である朝鮮半島出身者及び台湾出身者並びにこれらの子孫が含まれております。これらの者の法的地位及び処遇を決定するためには、国際関係国内関係等、諸般の事情を慎重に考慮してまいる必要があると考えるのでありますが、ではこの外国人登録法の全面的な改正法案はいつごろ国会に提出できるのかというお尋ねに対しましては、卒直に申し上げまして、現段階において明言することは困難であります。しかしながら、再検討の作業の努力目標といたしましては、あえて申し上げますと、国際、国内情勢の推移いかんにもかかわっておることではありますが、できれば今後三年前後のうちには一応の結論を出したいと考えています。
  206. 草川昭三

    草川分科員 三年という具体的な数字が出ましたが、努力目標ではございますけれども、別にきのうきょう始まったことではございませんので、ぜひなるべく早急に改正案ができるよう強く求めておきたい、こう思います。  それからあわせて、細かいことの話になって恐縮でございますが、新生児の永住権の申請でございますけれども、新しい協定永住者の場合でございますが、新生児について親が市町村の役場に出生届と同町に永住権の申請をするのが普通なのです。これはたまたま在日韓国人の場合でございますけれども、昨年韓国の民法の改正によりまして夫婦共同親権が認められたために、夫婦で届け出をしなければだめだというようなのが市町村の窓口の段階での行政指導になっておるわけです。今日日本のこういう現状から、子供が生まれるというような両親というのは大体共かせぎでございますから、奥さんだけでもいいのではないだろうか、何らかの形でその御主人の意思が表明されるならば、先ほどの合理的な手続ではございませんけれども、私はそういうことは認めてあげるべきではないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  207. 山本達雄

    ○山本説明員 この新生児の協定永住許可申請の件に関しましては、ただいま先生御指摘のとおり、韓国民法の規定とかかわってくるわけでありまして、父母の共同親権ということになっております。そのようになっております以上は、新生児の協定永住許可の申請も父母が共同してこれを行わなければならないというのが原則であります。しかしながら、これは一例でございますが、重い病気、そういうやむを得ない事由によりまして父母の一方が出頭できない場合であって、その出頭できない親権者の協定永住許可の申請手続を行う意志を有していることが確認できるときは、あえて両親双方の出頭を求めることなく現実的に対処すべきであると考えており、現にそのように指導いたしておるところであります。
  208. 草川昭三

    草川分科員 各地方自治体の窓口についても、法務省の柔軟な対応で受け付けるような姿勢がいま表明されたわけでございますから、これはぜひそういうように周知徹底をお願いを申し上げたいと思います。  それから、住宅公団、建設省の方にお伺いをいたしますが、過日来から、この永住権を持つ在日外国人の方々の、住宅公団なり公営住宅なり、あるいは住宅金融公庫への申し込み等が行われることが認められることになったわけでございますが、その保証人の資格の問題でございます。日本国籍を必要とするというようなことがあっては相ならぬと思うのでございますが、現状はどのように御指導なすっておみえになりますか、お伺いいたします。
  209. 北島照仁

    ○北島説明員 公団住宅あるいは住宅金融公庫の外国人開放は、一応この四月一日から実施することにしております。  この保証人関係でございますが、まず公団住宅関係につきましては、保証人は必要としないという方向で検討しております。それから住宅金融公庫関係の保証人でございますが、これは申し込み資格と何様の資格でよい、すなわち日本人に限定しないという方向で検討しております。
  210. 草川昭三

    草川分科員 いま日本国籍を要しないという御答弁だと思いますので、ぜひそういう形で通達を出していただきたい、こう思う次第でございます。  最後に外務大臣の方にお伺いいたしますが、昨年の六月に国際人権規約というものを私どもは承認をしたわけです。園田外務大臣のときでございまして、せっかくこういうようなりっぱな人権規約というものを承認をしたのだから、「漸進的」とは言うけれども、本当の世界人権宣言に従うことを認める形で、いろいろな民族差別をなくしたり、あるいはまた移動の自由だとか、居住の自由についての権利ということを明確にうたっておるわけですから、それはぜひ国内法の改定、これは年金の問題なんかはどうしてもだめだと厚生省は言っておるわけでありますが、私は積極的にやっていただきたいと思うのです。  しかも地方自治体で、私は尼崎市のパンフレットを持ってきましたが、「民族差別をなくするために」と言って非常にりっぱなものですが、朝鮮侵略の歴史、植民地化というようなことをいまの子供に教えておるわけです。そうして本当に民族差別のないようにという地方自治体のこういう努力もあるわけでございますが、外務省としても人権規約を提議した立場上、将来これの実現方をお願いしたいわけでございますけれども大臣の見解を聞いて終わりたいと思います。
  211. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの件につきましては、外務省といたしましては、永住権を有する外国人につきましてはわが国に生活の本拠を有しておるわけでございますし、日本国民と同様の生活状況にもございますので、これらの残された権利の保障については特に早急な実現を図るように、国内各官庁に対しても要請を続けてまいりたいと考えております。
  212. 草川昭三

    草川分科員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  213. 保岡興治

    ○保岡主査代理 草川昭三君の質疑は終わりました。  横山利秋君。
  214. 横山利秋

    横山分科員 日ソ関係について大臣にお伺いをいたします。  いま日ソ関係は、アフガン問題以来必ずしもいい条件にはありません。しかし、極東の平和を維持いたしますためには、どうしても日中が済んだ後における日本における外交の歴史的命題として、日ソの平和条約の締結を初め懸案の解決というものが基本的課題だと思っております。  そこでまず大臣に、日ソ関係の基本的な解決についてどんな所信でいらっしゃるか、伺いたいと思います。
  215. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日ソ関係は、日本外交の重要な柱の一つでございまして、基本的に友好な話し合いを通じて解決してまいるというのが従来からの方針でございます。現状においては、北方領土における軍事基地建設とかスパイ問題とかあるいはアフガンに対する武力介入、いろいろな問題がございまして、両国の関係はかなり厳しい事情がございますけれども、ただいま申しましたように、基本的には話し合いを通じて関係を改善をしていくという考えでございます。
  216. 横山利秋

    横山分科員 一月二十五日、大平総理大臣がアフガンの問題に関連いたしまして、米国との連帯を軸として西欧と協調、ココムの強化を含む措置を検討、実施し、それがわが国にとって犠牲を伴うものであっても避けてはならないというきわめて強硬な立場の御意見がございました。外務大臣もこういうお考えでございますか。
  217. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 総理と同じ考えでございます。
  218. 横山利秋

    横山分科員 犠牲を伴うものであってもという点でございます。現状私の承知いたしておりますところを申し上げますと、日ソ経済協力プロジェクトについて見ると、ことしの初めからの実施が目標とされておりました第三次KS(森林資源開発)プロジェクトは、昨年末のソ連例GA(基本契約)案に対する日本案をケイニス産業が一月二十七日に訪ソして交渉に入る予定であったが、しばらく情勢を見るという通産省の意向でペンディング。ポストーチヌイ港拡充と紙パルプ委員会のプロジェクトは、双方とも一月末か二月初めにGA交渉を行う予定が無期延期。それから、対ソ・バンクローンの供与は、一月二十四日にソ連イワノフ次官ら一行がやってまいってやる予定が流れ、一切の新規信用供与は凍結ということになった。このために大口径鋼管は、価格交渉が煮詰まっていながら最終段階で宙に浮く。そして大型プラントは、決済がバンクローンであるものは現段階で契約できないことは明らかだが、それ以前の問題として、ほとんどの大型プラントはライセンスオーナーがアメリカの企業であることのため、商談自体ができなくなっている。リグ製造設備、塩化カリ製造設備、石油回収設備などいずれも本年一月末には商談を詰める予定になっていたが、交渉に入ったプラントは一件もない。その他いろいろございますが、こういう状況というものは、政府が指示なさっているのですか、この犠牲を伴うものはやむを得ないというように指示なさっておるのですか。産業界にとりましてはきわめて大きな影響をもたらしておると思うのですが、外務大臣はこの種の状況を御存じでございますか。
  219. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 大体承知いたしております。まだ正式に態度を決めていないわけでございますが、いまのような案件については大体承知しております。なお、具体的には通産省からお答え願った方がよろしいかと思います。
  220. 横山利秋

    横山分科員 簡潔に御報告してください。
  221. 真野温

    ○真野政府委員 私どもが把握しております限り現在までのところ、対ソ関係の通常の貿易については従来どおりの形で動いていると思います。ただ、大型のいま先生御指摘のようなプロジェクトにつきましては、必ずしもその全貌を把握しておるわけではありませんが、関係商社等慎重な態度は示しておりますけれども、基本的には努めて継続するように仕事をしておるというふうに私ども聞いております。
  222. 横山利秋

    横山分科員 きのうかの新聞で土光会長が、日ソ貿易は商売だ、日本はもうけることならやるし、損することならやめるし、産業界としては割り切るという立場を鮮明にいたしておりますし、一月七日の経済四団体首脳合同記者会見では、日ソ関係のあり方について、日本は資源がない、国民生活の基礎を固めるために産業界が資源調達をするのはあたりまえである、ただ、資源を引き取るかどうかは国民感情によってある程度決めらるべきでもあるが、経済人としては現在の情勢で協力の中断などは考えていない、こういうふうに非常にシビアに、また経済問題として割り切って産業界は受けとめておるのですけれども、これは通庭省並びに外務省として、このような財界の反応をどういうふうに受けとめていらっしゃるのでしょうか。これからの大型プラントにしても何にしても、通産省、外務省が圧力をかけてそれは成立させるな、こういうふうに圧力をおかけになるおつもりですか。
  223. 真野温

    ○真野政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもが判断しております限り現在までの日ソ貿易関係というのは、基調としては着実に伸展してまいったと思います。御指摘のようないろいろな資源の輸入等も含めて逐次発展してまいったものだと思います。ただ、御指摘のようにアフガン問題以来、対ソ関係をどうするかというようないろいろな議論がかまびすしく各国で行われておりますけれども、現在までのところ先ほど申し上げましたように、通常貿易については特段な変化なく順調に推移しておるものと思います。  それから全体としてプロジェクトその他を含めて、これは先ほど先生が御指摘にたりました総理の施政方針演説にもございますように、基本的には西欧諸国と連帯しながら全体の取り組み方を考えていく、こういう点で、西欧諸国の出方、考え方等も慎重に私どもとして見守っておる、こういう状況でございます。
  224. 横山利秋

    横山分科員 そこでその西欧諸国ですが、ソ連イワノフ次官らクレジット代表団は一月下旬、日本訪問を取りやめてフランス、西独、イタリアを訪問、フランスではゼネラルローンの新規協定の交渉で本本的合意を取りつけ、西独では同国金融機関と大口径鋼管に関するバンクローンの協定で合意に達したと言われております。フランスは、対ソ経済制裁のアメリカの呼びかけに対していち早く同調しないことを明らかにし、西独は、沈黙を守ったが、その裏ではイワノフ次官とのクレジット交渉が進行していたわけであります。イタリアは、勇ましく対ソ経済制裁参加を表明したが、実はイワノフ次官とのゼネラルローン交渉が金利をめぐって折り合わず不調に終わったためと言われ、結果だけをかっこうよく声明したにすぎないと言われております。この結果、カーター大統領の提唱した西側諸国の一致した対ソ経済制裁なるものは全くのしり抜けとなり、いまのところ同調している先進工業国は、英国、カナダ、豪州のアングロサクソングループと日本、イタリアにすぎないということにもなっています。こういうような状況は、通産省では把握していらっしゃるでしょうね。
  225. 真野温

    ○真野政府委員 ただいま先生のお話しになりました内容について、必ずしもそのとおり全部同じではございませんが、いろいろな各国の動きについては十分注意して情勢把握に努めております。
  226. 横山利秋

    横山分科員 そういうことなんですね。私の言っているとおりではないにしても、西欧諸国がしり抜けの状況であるということの概要については、通産省も外務省も御存じであろうと思うのです。いま大平総理大臣の一月二十五日におっしゃった西欧と協調、米国との連帯を軸、この二つのうちの西欧との協調がしり抜けになってきておるという厳然たる事実と、それから、日本の産業界がこれでもし額面どおり総理のおっしゃるようなことをやるとするならばかなりの後遺症が残る、そして、日本とソビエトの貿易でまとまるべきものが絶好のチャンスとして西欧に逃げてしまう、そういう傾向をかなり現実問題としてとらえざるを得ないと私は思っておるわけであります。その点、これは通産省の所管でございましょうけれども外務大臣として事態をこれからどういうふうにお考えになるか、お考えを伺いたいと思います。
  227. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題の発端は、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入でございまして、これは国際平和上、国際法上から見ても平和に対する脅威でございます。国連の緊急総会におきましても、多数の第三世界の国を含めまして百四の国がソ連軍隊の早急な撤退を要求しておるわけでございまして、こういう他国に対する軍事介入が何でもないというふうに認められることは、将来の世界の平和に対して重大な影響がある。やはりこういう行動はコストがかかるということをソ連としても自覚することが必要だと思われます。一方におきまして、ただいま御指摘のありました日本国内のいろいろな見方もございますが、現在のような軍事力による他国への介入は認められないという立場も同時に考慮を払う必要があるわけでございまして、そういう点から総理の施政方針演説に御指摘のような文言が盛り込まれたものと了解いたしております。
  228. 横山利秋

    横山分科員 お気持ちはわかるのですけれども日本が犠牲を伴うものであっても避けてはならないと言って貿易を、あれも待ったこれも待てと言っていると、結局西欧とソビエトが現実にやってしまうのですよ。だから、あなたの言うような効果は上がらない、損するのは日本の経済界だけだ、ばかをみるのはばか正直の日本だけではないかという実証が上がりつつあるということを私は心配するわけであります。いままで成約したものはやりますという通産省のお答えであります。大型のこれからもまとまっていくべきものを抑えてしまえば、それがよそへ、西欧へ流れてしまう。その流れてしまうことによって、それだけでなくて、それは後遺症となってずっと数年間続くだろう、こういうふうに私は心配しておるわけなんですよ。その点はあなたはあくまで、いや西欧もがん、はるというのならそれはそれでよろしい、西欧と約束があるというのならそれでよろしい。けれども、それはもう底が割れてしまっているではないか、現実的な経済問題として外務大臣もそういうきれいなことを言っておってはだめではないか、通産省もその辺のことを考えなければだめじゃないか、こう言っているのですよ。それに対するお答えがありませんね。
  229. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの点は外務省といたしましても、ヨーロッパ各国の対応の方法、詳細に情報をとり連絡を受けておりますわけで、御指摘のような具体的な問題については、従来日本が受けておった注文がほかの国に回ったという具体的な例はまだ承知いたしておらないわけでございます。さらには、日本とアメリカが組んでソ連に機材を供給するようなケースにつきましては、組んでいる相手のアメリカ側ができない場合に日本も動けないという事情が場合によっては起こってくるわけでございます。
  230. 横山利秋

    横山分科員 わかりました。日本とまとまるべきものが横へ流れた、西欧へ流れたという事実は知らない。私はいまそれが具体的にこれだというのは差し控えますけれども、しかし、直接でなくてもほかの方法は幾らでもあるのですから、原則的に私の心配が杞憂に終わればいいのですけれども、西欧諸国とソビエト側の経済提携という情報がどんどんと入っていることは通産省もおわかりだと思うのであります。もしそういうようなことになるならば、日本側としても考える、また十分注意をして善処する、こういう通産省のお考えと理解してよろしいですか。通産省、どうですか。
  231. 真野温

    ○真野政府委員 最初に、先ほどお答え申し上げました中で若干足りなかった点を申し上げますと、現在ソ連との貿易の関係企業、非常に慎重に行動しておりまして、私どもに逆にいろいろ情報を求めてくる、その上で自主的にいろいろ向こうとの関係を維持しよう、あるいはそれについてどういうふうにこれから進めるかというようなことを考えておる状況でございまして、特に私どもの方からこうせいああせいとか抑えろとか進めろとか、こういふうな形にはなっていない状況でございます。  それからいま一つ、ヨーロッパ諸国が日本のかかわっておる案件について、これを横取りすると  いいますか横から持っていくというような話は、先ほど大来外務大臣の話にございましたように私ども承知しておりません。ヨーロッパ諸国も、こういう際でございますから日本との連帯等も考えて、これを横合いから取って刺激するというようなことはむしろ避ける状況にあるのではないか、こういうふうに私ども考えております。そういう意味で、これからの進めぐあいにつきましてはもちろん、情勢の推移とか先ほどのヨーロッパその他の動きを十分見ながらこれについて逐次進めてまいる、こういうふうに考えております。
  232. 横山利秋

    横山分科員 問題の把握が少し甘いと私は思いますよ。時間がございませんからきょうは、原則的にあなたの方も十分注意をする、ばかな目に遭わないように注意をするという趣旨であるということを了解して、また具体的に後刻質問いたしたい。  同じ問題で、オリンピックでございますが、外務大臣、私の地元の名古屋が一九八八年にオリンピックをやりたいと言っているのです。そのことで、今度のモスクワ・オリンピックに対して日本政府及びJOCがどういう態度をとるかについて――一九八八年の名古屋オリンピック開催希望に対して、政府も本会議で大平総理大臣ができるだけの御協力はするという趣旨のお話がございました。したがいまして、私も何も地元だから言うわけではございませんけれども日本で一九八八年にオリンピックをやるについて、今度のモスクワ・オリンピックについて日本政府及びJOCがどういう態度をとるかによって、実現が不可能になるか可能になるか、その一つの境目にあると私は憂慮しておるわけであります。アメリカは別にやる、各国でやる、分散して各種月別の大会をやると言っておるわけですが、モスクワでは片肺であろうと何であろうとオリンピックはやると言っておるわけです。IOCもやると言っておるわけですね。したがって、日本政府及びJOC、日本オリンピック委員会がどういう態度をとるかということはきわめて重要なことであり、かつ一九八八年名古屋オリンピック開催の提唱国となる日本にとっても判断がきわめて大事なことだと思うのであります。その点、どうお考えでありますか。
  233. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 名古屋が八八年のオリンピックの開催を要望しておられることは、私も承知いたしております。  この問題もソ連のアフガン軍事介入のところに端を発したわけでございまして、元来オリンピックは平和的、友好的な雰囲気のもとに行われるべきものだというたてまえからいたしまして、二月一日の政府意向表明というものが行われたわけでございまして、本来開催するかしないかはIOCが決めることでございまして、先般のレークプラシッドでモスコー開催を決めておるわけでございますが、これに参加するかどうかは各国のオリンピック委員会が決める。その最終的な期限は五月二十四日までということになっておるわけでございまして、日本におきましてはJOCがその決定をすることになるわけでございます。JOCが各国の情勢等を見ながら検討して、最後の決定をするというふうに私どもは了解しておるわけでございます。
  234. 横山利秋

    横山分科員 端的にずばりお伺いしますが、一つは、あなたが一九八八年名古屋オリンピック開催に賛成をしてお骨折りをされる立場にあるか、おれはそれは知らぬと人ごとみたいに考えるということなのか。それから二つ目は、政府はこの間アメリカに同調して、行かぬ方がいいよというような趣旨のことを言ったのですが、条件が変わりてきておるのですけれども政府はあの立場を固執するのですか。片一方ではスポーツ大会を各国でやる、もう片一方では片肺であってもやる、こういう状況に条件が固まってきたわけですね。そのときに政府としてはJOCに、やはり行くなというあの立場を継続されるつもりですか、この二点に正確に答えてください。
  235. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 第一の名古屋の問題につきましては、これは文部省が主管でございますし、財政当局の判断もございますし、私一存としては申し上げられない。(横山分科員「あなた自身はどうなんです」と呼ぶ)外務省としては申し上げがたい。やはり各省と協議の上でなければ、この分科会で私の個人の意見を申し上げるわけにいかないと考えております。  それから第二に、二月一日の政府意向表明でございますが、私どもとしてはその後現在まで状況の変化はないと考えておるわけでございます。
  236. 横山利秋

    横山分科員 状況の変化はないというのは少し論弁じゃないですか。実際問題としてもう選択の段階なんですよ。あの当時はこうまで固まってはいなかった。いまは決定的に、アメリカの態度は各国スポーツ大会、ソ連は片肺でも、アメリカが参加せぬでもやるというふうに決まって、いまや選択は、モスクワ・オリンピックに参加するかどうか、国際的なアメリカのスポーツ大会に参加するかどうか、この二つですよ。二つとも参加すればいいじゃないかと私は思っているのですが、あなたはどうお考えになりますか。
  237. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最初に申されました代替の方、かわりの大会は私どもの了承では、これはまだ決まっておらない。そういう考え方がアメリカ側にあることは承知しておりますけれども、まだ決まっておらないことでございます。モスクワの方は先ほど申しましたように、IOCで決まっておることでございますが、各国の参加はそれぞれのナショナルコミッティーが決めることだということで、これもまだ全貌は決まっておらないというのが実情だと考えております。
  238. 横山利秋

    横山分科員 ともあれ、あなたははっきりお答えなさらぬのですけれども、もういまはモスクワ・オリンピックに参加するかどうか。アメリカもいまさら参加することはないと思いますから、各国スポーツ大会をおやりになるだろうと私は思うのです。JOCは政府の顔色を、やはり意見を聞くだろうと思うのですよ。そのときに政府が、二月一日に決まっておるとおりだというようなことは万あるまいと私は思っております。同時に、本当に政府が、いろいろな条件はあるけれども日本で一九八八年にオリンピックを国際的に主張しようということであるならば、今回のモスクワ・オリンピックに参加するか否かはその問題に対して重大な影響を与えることである、こういうことは、私の言おうとしていることはおわかりでございますね。おわかりで、これからひとついろいろ検討していただけると思いますが、いかがですか。
  239. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御趣旨は十分了解しておるつもりでございます。同時に、外務省の立場としては、国際情勢の検討をあわせて行いながら判、断してまいりたいと考えるわけでございます。
  240. 横山利秋

    横山分科員 いま日ソ善隣協力条約案について議論をするのは私は必ずしも国際情勢、日ソ間の情勢が適当ではないとは思いますけれども、しかし外務大臣に一、二の意見を聞いていきたいと思います。  かつて園田外務大臣とこの分科会でやり合いをいたしました際に、私も園田さんに訂正を申し入れたところ、素直にお聞きになりました。それは当時、日ソ善隣協力条約案が発表されましたときに外務省筋から、あれは衛星国並みだ、あるいはあれは後進国並みだというPRがされまして、私がソビエトと各国、先進国、開発途上国、衛星国、その三つのソビエトが結んでおります条約と比較いたしましたところ、そういうことは間近いではないか、むしろソビエトがアメリカやフランスやそういうところ、先述国と結んでおる条約に似ておるではないか、こういうことを指摘いたしましたら、外務省筋のそういうPRについての誤りをお認めになりました。あなたもその点は御同意でございますか。
  241. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの点につきましては、善隣条約そのものについて日本政府はこれを検討する立場にないという基本的な事情もございます。それで、内容的な点につきましては政府委員から答弁させていただきます。
  242. 横山利秋

    横山分科員 いいです、要りません。ただ、外務大臣にお伺いをしておきたいと思うのですが、これが要するに軍事的な問題であるかどうかというのがポイントなのであります。私が先進国と同じではないかということを言いましたゆえんのものは、条約草案の中に「双方が平和の維持にとって危険であると考える状況が発生した場合あるいは平和が侵害された場合には、双方は状況の改善のためにいかなる措置をとり得るかという問題について意見を交換するために直ちに接触する。」こういう内容なんで、これはソビエトがアメリカやフランスその他先進国と結んでおる内容とほぼ似通っておる。ソビエトがアフガニスタンを初めいわゆる衛星国と結んでおるのは完全な軍事条約である、あるいはまた、後進国と結んでおるのもややそれに似通ったものである。     〔保岡主査代理退席、主査着席〕 ところが、ここに提起されておりますこの条約草案というものは「改善のためにいかなる措置をとり得るかという問題について意見を交換するために直ちに接触する。」ということであって、共同歩調をとるとか軍事援助をするとか、こういうことは何にも書いていないということについて、外務大臣は了解をしておられるでしょうね。こういうことをあなたの口から聞きたいのです。
  243. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど申し上げましたように、この善隣条約につきましては、日本側としては検討する立場にないという基本的姿勢でございますので、そういう状況のもとで内容、性質について立ち入った見方、考え方を私の立場で申し上げるのは適当でないと考えておるわけでございます。
  244. 横山利秋

    横山分科員 適当であるかないかよりも、それならここに書いてないこととして、こういう文章があった場合――こういう文章を私はいま読み上げたわけですね。たまたまこれが条約草案であることは間違いございませんけれども、こういう「直ちに接触する。」という言葉で結んでおることは、軍事条項ではないということについてはあなたもお認めではありませんか。――大臣の意見を聞いているんだ。もう時間がないから……。
  245. 武藤利昭

    武藤政府委員 若干条文の細かい話でございますので、事務当局からお答えさせていただきますが、一昨年、昨年の当分科会での先生の御指摘になりましたときの議事録をよく勉強させていただいております。  それで、御指摘の点でございますけれどもわが国に対しまして提案された条約案の協議条項が、他の開発途上国との間の善隣友好協力条約の協議条項と少し形が違うということは確かに御指摘のとおりでございます。ただ、他の先進諸国とソ連とが結んでおりますいわゆる協議に関する議定書、これはたとえば定期協議を開催するというようなことを取り決めているわけでございまして、またそれともちょっと違うということではなかろうかと存じますが、いずれにいたしましても、以上のようなことでございまして、基本的には大臣が申し上げましたとおり、この条約案につきまして政府としての正式のコメントを行う立場にないということをまた申し上げさせていただきたいと思います。
  246. 横山利秋

    横山分科員 残念ですが、時間です。
  247. 村山達雄

    村山主査 横山利秋君の質疑は終わりました。  次に、神田厚君。
  248. 神田厚

    神田分科員 きょうは、インドシナ難民問題を中心に御質問を申し上げる予定でありますが、その前に、過日の新聞等の報道によりますと、外務省内におきまして安保政策についての新たな検討がなされている、これは米国の世界戦略にわが国がどういうふうに対応するか、日本の立場を明確にしていくというような形でのものだというふうに言われておりますが、この問題につきまして最初に御質問を申し上げます。  まず、こういう形で検討がなされているというふうに言われておりますけれども、これは事実でございますか。
  249. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、今次国会におきまして多くの議員の方々からも御質問、御意見もございましたし、政府の方といたしましても、いろいろな面から十分検討をしてまいらなければならないということで検討いたしておるわけでございます。
  250. 神田厚

    神田分科員 そうしますと、検討というのは、いわゆるアメリカの世界戦略に対応する、NATOが対応しているような形で日本もまた対応する、こういうふうな形での検討がされているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  251. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そういう趣旨ではございませんで、日本の置かれております立場、日本の従来の政府の方針等からにらみ合わしてみまして、どういうことはできるか、どういうことはできないか、そういう立場についての検討をいたしておるわけでございます。
  252. 神田厚

    神田分科員 一つの問題は、核戦略に対応するということが大きな問題になってくるわけでありますが、過日の予算委員会における私の質問に対しまして細田防衛庁長官は、極東ソ連軍の増強の中には日本に対する核の脅威もある、こういう答弁をされております。その点につきまして、外務大臣としましては、潜在的な脅威ということをお認めでありますけれども、やはり同じように核の脅威が存在する、こういうふうにお考えでございますか。
  253. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 潜在的脅威には、核あるいは非核、あらゆるものが含まれると考えます。
  254. 神田厚

    神田分科員 そうしますれば、SS20、さらにはバックファイア、こういうものの極東配備ということを考えていきますと、極東ソ連軍増強の中には日本に対する核の脅威もある、こういうふうに判断してよろしゅうございますね。
  255. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 もちろん日本側といたしましては、非核三原則というものがございますから、この対応という問題は別でございます。
  256. 神田厚

    神田分科員 対応ということをたな上げにしておいて、現実の面としまして、それでは核の脅威が存在するということについては御認識をお持ちでございますね。
  257. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 脅威とは申しませんで、潜在的脅威が存在するというふうに申しておるわけでございます。
  258. 神田厚

    神田分科員 潜在的脅威の中に核の脅威も存在する、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  259. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 潜在的脅威なら結構でございます。
  260. 神田厚

    神田分科員 潜在的脅威と顕在的脅威という言葉の中に、これは潜在的な脅威というのがすべての根本ですから、顕在化されれば一つの表面的な戦争の形をとるわけでありますから、潜在的脅威の中でもやはり核の脅威があるというふうに御認識をなさっていること自体は非常に重要でありますね、また認識をしなければならないような状況になっているわけでありますから。そうしますと、それにどういうふうに対応するかという問題もまた一つ出てくるわけでありますけれども、その辺はどういうふうに考えておられますか。
  261. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の安全保障のたてまえから申しますと、日本は非核三原則を守り、核については安保条約に基づく日米間の約束に従ってアメリカの抑止力に期待する、依存するというたてまえでございます。
  262. 神田厚

    神田分科員 アメリカの抑止力に依存するたてまえというふうなお話でございますが、今度の安保政策の新しい検討の中には、いわゆる全体的な核戦略に対する検討ももちろん入っているのでありますか。
  263. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先ほど大臣からも答弁されましたように、現在外務省においては安保問題についていろいろ検討しておりますけれども、いま先生御質問のような特定の問題についてどうこうということでございませんけれども、もちろん日本の安全保障を考える際に、米ソの核バラソスということも当然検討というか念頭にあるということは事実でございます。
  264. 神田厚

    神田分科員 そうしますと、米ソの核バラソスを踏まえて、新たに日本としまして外務省としまして、従来のアメリカの核の抑止力に頼るというたてまえから一歩踏み出すような形での検討がなされていると理解してよろしゅうございますか。
  265. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 そういうことはございません。従来からやはり核の問題については、アメリカの抑止力に頼るというのが外務省の見解でございます。
  266. 神田厚

    神田分科員 潜在的脅威の中に核の脅威もあるということを認めておるわけでありますから、当然その問題について、日本は非核三原則を堅持しておりますからそれ自身、持つこと自体、あるいは持ち込ませること自体、つくること自体、すべて厳密に禁止をされているわけであります。そういう面からしますと、どうしてもこの問題はアメリカと協議をしていく問題になってきますね。これから先の問題としましては、やはり真剣に検討課題として協議をしていかなければならない問題になってくると判断しておりますが、その辺はいかがでございますか。
  267. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先ほども申し上げましたように、従来からアメリカとソ連との核戦略あるいは核のバランスの問題については、例年国防総省の発表いたします白書その他で承知しておりますし、あるいは、日本とアメリカとのいろいろな話し合いを通じてそういうことも話しておりますけれども、いわゆる先生御指摘のように、核戦略を日本がアメリカと一緒にやるということは、非核三原則ということもございまして、そういうことはあり得ないというのが立場でございます。
  268. 神田厚

    神田分科員 当面そうしますと、いわゆるそういうふうな脅威のままで、このままさらしておくということについては無責任でありますね。防衛庁長官は今後の検討課題だということを明確に言っておりますけれども外務大臣としましてはその点はどうでございますか。
  269. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点はやはり日本のこれからのあり方に関係する問題でございまして、日本は非核三原則を守ることが日本の長期的な安全に役立つのではないか、そういうふうに私どもは判断しておるわけでございまして、核の抑止力についてはあくまでも米国に依存するという方針を変える考えはございません。
  270. 神田厚

    神田分科員 米国に依存する形での新たな検討を米国と協議をする、こういうふうに判断してよろしゅうございますね。
  271. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は従来も、いろいろな機会における両防衛当局あるいは外務省とアメリカ政府との意見交換の中で出てくる問題でございまして、いま改めてそういう措置をとるという考えはございません。
  272. 神田厚

    神田分科員 従来に引き続いた形でさらに新たなこういう状況に対応する、協議を続けていく、こういうことでございますね、外務大臣
  273. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまさらに新たにと言われましたけれども、従来のやり方で意見交換を続けていく、特にさらに新たにという必要はないと考えます。
  274. 神田厚

    神田分科員 しかし、たてまえとしてそうであるけれども、さらにいわゆる核バランスの問題についても新たな見直しをしながらやっていくという形の答弁があったわけですから、そういう面で、前から少し踏み込んだ形での検討というのは協議せざるを得ない状況になっているのじゃありませんか。
  275. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 SS20とかバックファイアの配備というのは比較的新しいことでございますし、そういうことの持つ影響も比較的新しい問題かと思います。従来のような意見交換を通じて、いろいろ変化しつつある事態に応じて話し合いは常時やっていかなければならないわけでございますから、そういう変化する事態を踏まえながら話し合いを続けていくことになるかと思います。
  276. 神田厚

    神田分科員 そういたしますと、SS20とかあるいはバックファイアとかそういう新たな状況があるからその問題について話をしているということは、すなわち、そのものが持っている核の問題等についても当然話の対象になっているわけですね。
  277. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 従来からアメリカの対ソ核戦略その他については状況に応じて説明を受けておりますので、今後もそういう情報の提供あるいは協議というものは続けていくと思いますけれども、再三御答弁しておりますように、それだからといって、日米が共同して核の戦略に対処するということは今後ともあり得ないということでございます。
  278. 神田厚

    神田分科員 それでは一つだけ具体的な問題で、日米共同行動の指針、ガイドラインの詰めが行われているということでありますが、たとえばいま一番問題になっていますのはシーレーンの防衛をどうするか、こういうような問題が出ております。報道によりますと、防衛の海洋分担について注文も来ているというような話でありますが、この辺の問題については具体的な話になっておるのでありますか。
  279. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ガイドラインに基づく協議はあくまでも第五条、すなわち、日本が攻撃された場合の共同対処の方針でございまして、その問題について現在、日米の制服の間で話し合いは続けておりますけれども、私ども承知しているところでは、具体的な問題についてそれほど突っ込んだ討議はまだ行われていない、ましていま先生の言われましたシーレーン分担について話し合いをしているというふうには外務省としては承知しておりません。
  280. 神田厚

    神田分科員 防衛問題はいま非常に大事になってきておりまして、外務大臣が訪米なさる中でも大変大きな問題になると思います。アメリカの方からも非常にきつい要求が出てくるのじゃないかというようなことが言われておりますけれども、訪米に当たりまして外務大臣としては、防衛の問題についてはアメリカとの協議をどういうふうにしていく心づもりなのか、その点、基本的な考えをお聞かせいただきたい。
  281. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、防衛の問題は基本的には日本国民日本政府が自主的に決めるべきものだと考えております。これは国民のコンセンサスとか財政上、経済上の制的、そういう問題を考えて自主的に決めるべきものだと思うわけでございます。それで、今次国会でも防衛問題、安全保障の問題についていろいろな御討議がございましたことを踏まえて、アメリカ側ともできるだけ意見の交換をやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  282. 神田厚

    神田分科員 防衛庁と外務省の方で少し答弁内容が違うようでありますが、いずれにしましても、日本を取り巻く状況について新たな対応をしなければならない、こういうふうなことは同一であるという判断を私は持っております。この問題につきましては、きょうは時間がございませんから、後日またほかの機会質問させていただきます。  続いて難民問題について、インドシナ難民問題を中心に御質問申し上げます。  その問題に入る前に、難民条約の問題について昨年の三月二十六日、わが党の柳澤議員の質問に対しまして園田外務大臣は、次期国会に条約を提出したい、上程できるように努力をすると明言していたわけでありますが、現在まだこの難民条約について上程されるという話も聞いておりませんけれども、部内での作業はどういうふうになっているのですか。
  283. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 難民条約につきましては、今国会で御承認をいただくことを目途といたしまして、ただいま鋭意努力をしておる段階でございます。
  284. 神田厚

    神田分科員 そうしますと外務大臣、条約は上程されるというふうにわれわれ考えてよろしゅうございますか。
  285. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題につきましては、国内各省庁との調整を要する点がございまして、極力努力中だとただいま局長が申し上げましたように申し上げられるわけでございます。絶対に今国会に出るかということになりますといまの段階でまだ断言ができませんが、極力その方向努力するということでやっております。
  286. 神田厚

    神田分科員 これはもう大変長い問題になっていますからね、園田前外務大臣のそういう答弁もあったことですから、今国会に出すように部内の調整、関係省間の調整を早く進めてほしい。いま大臣は出す、極力という言葉でございますから、われわれとしては当然出てくるものだという判断を持って、その件についての努力をさらにお願いをしたい、こういうことでございます。  次に、先月中旬でありますが、これもまたいろいろ問題になりましたが、カンボジアの難民キャンプから日本政府の派遣医師団と井戸掘りの調査のチームが戦火を逃れるということで撤退をしてしまった、日本のほかの関係の医療機関等は現地にとどまってがんばっているところもあるのだけれどもと、こういうことが非常に大きく報道され、現地でも非常に評判になってしまって、日本の難民問題に対する姿勢を非常に問われたわけでありますけれども、その後そういう状況はどうなっておりますか。
  287. 木内昭胤

    木内政府委員 御指摘のようなことがあったことは事実でございます。すなわち、政府派遣の関係者ということであり、わが方大使館を含めまして政府としては、非常に慎重に対処しなければならない、そこへもってきてタイの当局からも、事態が必ずしも平穏ではないという示唆がありまして、神経質過ぎる行動をとったことは事実でございます。しかしその後、情勢はそう急激に悪化するということもないようでございまして、現に水資源探査で非常に好評を博しておりますわが方の専門家は、現地にまた戻って作業を開始するという状況に至っております。
  288. 神田厚

    神田分科員 水資源のチームは二人か三人戻ったという話でありますが、派遣された医師団の関係はまだ戻っていないようでありますね。しかも、大使館の指示によってこれらが撤退をしたということでありますが、外務大臣、その辺はどういうふうに考えておりますか。
  289. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは具体的には局長から答弁いたしますけれども、やはり日本政府から派遣した人々についての危険、万一のことがございますとこれは重大な責任問題になりますし、タイ政府からのサゼスチョンがあったために措置をとったわけでございますが、医療関係につきまして全部国内に引き揚げたというわけではございませんで、サケオ地区に移動しておるわけでございます。適時サケオ地区からもカオイダン地域に出かけていくというような措置をとっておるわけでございまして、今後の状況を見守りながら、当面それほど危険がないという判断になりますれば、さらに前の状態に基づいて協力をしていきたいという考えでございます。
  290. 神田厚

    神田分科員 ほかの国の医療機関はそこにあってがんばっているわけでありますから、日本の医師団だけが出てしまったということで、どうも国際的な評価がよくないようであります。大使館経由でそういう問題が発生したわけでありますから、外務省としましてそういう状況の回復について早急に指示をして、そしてもちろん現場の状況もあるでしょうから、そういう問題についてもひとつ外務大臣の方からきちんとした指示をしなければいけない、このように考えておりますが、いかがでございますか。
  291. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題については、やはり現地大使館当局あるいはタイ政府当局の判断を尊重いたさなければなりませんから、そういう状況を基礎にしながら、早急にお話のような措置をとるようにいたしたいと思います。
  292. 神田厚

    神田分科員 さらに、援助問題でありますけれども、タイのバンコクの大使館では難民問題で、受け入れやその他ボランティアの世話など非常に職務繁忙だというようなことも聞いておりますが、この問題について早急な解決というものが見られない以上は、これからも日本としまして、難民問題に本腰を入れて取り組まなければならないわけでありますから、その現地のキーステーションであります大使館等に難民対策の本部のようなものをつくって、人員なりその機関なりの拡充をしなければならないのではないか、こういう指摘を方々で受けているわけでありますが、この辺の問題につきましてはどんなふうにお考えでございますか。
  293. 木内昭胤

    木内政府委員 神田委員のごとく御理解をいただけると私どもとしても大変心強いわけでございます。確かに御指摘のとおり制約はございますが、それにしてもその枠内で、タイの大使館には現在七名からなりますタスクフォースをすでに編成いたしております。これを今後ともただいま御指摘のラインで拡充強化してまいりたいと思っております。  かたがた、バンコクの日本人会の棟を借りまして、バンコク在の邦人の有志の方々によります日本奉仕センターというものができておりまして、これに日本から参りますボランティアの水先案内であるとか、あるいは、救恤物資をさばくというようなことでも御支援をいただいております。この点につきましても、さらに一層の御協力を得るように私どもとしても努力してまいりたいと思っております。
  294. 神田厚

    神田分科員 そういうふうにして拡充してやっていただける方向を出していただいて、大変ありがたいのでありますが、問題は語学、言葉が非常に不自由で、どうも現地の言葉を話せる人がいないというようなことで、なかなかむずかしい面もあるようでありますから、そういう人を新たに派遣するということができるのかどうか一つ問題があります。できないとすれば、現地の人をうまく採用するなりなんなりしまして、少し本腰になってそのセンターを中心に、あそこにおられます邦人の方たちが同じくセンターをつくって協力をしようという体制になってきたようでありますから、外務省としましてひとつそういう点でも力を入れて、そこを基点として難民救済の活動をしていただきたい、こういうふうに思いますが、外務大臣、いかがでございますか。
  295. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御趣旨のようなことで進めてまいりたいと考えます。
  296. 神田厚

    神田分科員 この難民問題は、一つはタイに対する問題にもなっているわけで、タイ国政府がいろいろな面で非常に苦心しているようであります。日本に対しましても、援助問題等でなおいろいろ要望等もあるようでありますが、具体的には、タイ国の難民キャンプのある地域の人たちの生活の条件というのを高めていかなければならない。その中では、農機具等の援助についても対処してくれということもあるようでありますけれども、この点についていかがでございますか。
  297. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、私どももタイ政府からの要請も受けておりますし、たとえば難民に対する医療が付近の住民の医療にも及ぶように、あるいは、先ほど局長から申しました水の探査、これはほかの国が五本井戸を掘って一本も当たらなかったのでございますが、日本のチームが二木掘りまして二本とも当たったということで非常に好評を博しました。これは単に難民だけじゃなくてタイの農民のためにも非常に役立つことだから、こういう援助は今後もぜひ大いにやってほしいというような申し入れを受けておりまして、難民のみならずタイの住民のために役立つようなこともできるだけ進めてまいりたいと考えております。
  298. 神田厚

    神田分科員 具体的に中古農機具等の援助というようなことも言われているわけでありますが、その辺はどうでございますか。
  299. 木内昭胤

    木内政府委員 ただいま大臣から水のことで、周辺のタイの農民の方々にも裨益しておるということでございます。私どもとしては、食糧援助あるいはそれに関連しましての農機具の援助というものは、過去にもやってきておりますし、今後ともこれは住民の民生安定に多大の寄与をなすという見地から、神田委員御指摘のラインで一層進めたいと思っております。
  300. 神田厚

    神田分科員 最後になりました。時間がありませんので要望だけにしておきますが、難民の国内受け入れの問題、これはちょっと残してしまいまして、時間ですので結構ですが、各国の膨大な受け入れに比べまして日本は非常に少ない。私どももたまたま飛行機なんかで乗り合わせますと、難民がアメリカへ運ばれていく姿を見ていまして、日本として難民問題にもっと力を入れなければ、国際的に孤立をしてしまうというあれもありますし、難民問題も大分前向きな検討がされて整備をされてきましたから、ひとつこの際、より一層力を入れてこの問題の解決努力をしてほしい、こう要望して質問を終わります。
  301. 村山達雄

    村山主査 神田厚君の質疑は終わりました。  井上普方君。
  302. 井上普方

    井上(普)分科員 先般、新聞報道が伝えるところによりますと、安保理事会に日本は立候補するというお話が伝えられておりますが、本当でございますか。
  303. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、安保理事会の立候補の前提といたしまして、アジアグループの統一候補として出られることが必要だと判断しておりまして、目下の段階は、アジアグループの中の統一候補に日本がなり得るかどうか、この点を打診しておる段階でございます。
  304. 井上普方

    井上(普)分科員 一九七八年の暮れの選挙でバングラデシュに日本は敗れまして、当時、木村元外務大臣を初め外務省首脳が選挙運動にやっきになったのでございますが、敗れた。その結果、日本は恥かいたといいますか、日本外交自体がえらく反省をいたしまして、当時の園田外務大臣は、これは日本外交の成績表であるとまで言っておるのでございます。  そこで、今度立候補に先だちまして、アジア諸国の統一候補になりたいのだ、こういうお話でございますが、しからば、アジア諸国にほかに立候補する国がありましたならばおりるつもりですか。どうでございますか。
  305. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 現在の段階におきましては、選挙が十月末から十一月でございますので、見通しを申し上げることは少し尚早であると思いますが、これは今後の各国の動向を見て判断するということであろうかと思っております。
  306. 井上普方

    井上(普)分科員 巷間伝えられるところによりますと、日本に対立するアジア諸国からだれか立候補したら日本は必ず負けるのではないか、そのために日本外務省はほかに出るのを抑えるべく懸命の努力をしているといううわさすら私の耳に聞こえてくるのであります一当時、園田外務大臣は、これは日本外交の成績表であるとまで言われたことは、外務省首脳の方は記憶に新たなところだろうと思う。  そこで、一体成績表がそれほど悪かったのだから、外務省としてはどういうような政策に転換したのか、その成果をお示し願いたいのと同時に、そういうアジア諸国の統一候補になりたいなんというようなこそくなことでは私はだめだと思う。新聞報道の伝えるところでございますけれども、あの当時はアジア諸国は全部そっぽを向いてしまったというのが実情じゃなかったのでしょうか。少なくともアジア諸国から、日本こそ出てくれという運動が起こるようなことこそ日本外交のあるべき姿と思うのでございますが、いかがでございますか。
  307. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 御指摘のように、各国から推されまして日本が統一候補となることは理想的な状態でございますが、国連におきましてはやはり重要な機関の席を求めるわけでございますから、自分がその意思を持つということが先決であるわけでございまして、その意味では日本がその意思を持ち、統一候補となりたいと言うことであろうかと思います。同時に、御指摘のように、国連外交に対する積極的な寄与を果たすだけの意欲と熱意、これが各国にしみ渡ることが日本の議席確保を容易ならしめることであろうと思いますので、その点につきましては、国連におけるわれわれの日常の活動というものをその意識のもとに強めてまいっておるということであろうかと存じます。
  308. 井上普方

    井上(普)分科員 でございますから、アジアの諸国から信頼せられている、私はこれがまず前提になければならないと思う。でございますので、七八年から今日まで、アジア諸国に対する外交で、日本外交として一体どういう点が転換したのか、あるいは心構えとしてはどういうふうに考えられておるのか、転換した点をひとつお示し願いたいと思うのです。
  309. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 国連における選挙の場合に、たとえば開発途上国の団結という問題、あるいは中小の国々が中小の国々の代表を送り込みたいとか、あるいはイスラムの宗教に基づいた団結とか、いろいろな面がございまして、そういう点について多少情勢判断が不十分だったのではないか。これは私もその当時のことを余り詳細に知らないわけでございます。  一方におきまして、日本の国際的な努力、特に平和的、建設的な面で国際的な面での協力を進めていくという日本の基本的な姿勢は、このアジア諸国のみならず、アフリカ、中南米等にも少しずつわかってもらえつつあるように私ども思うわけでございますが、そういう日本の基本的な姿勢に対する理解が深まることを背景にしてこの安保理の問題に臨んでいかなければならないと考えておるわけでございます。
  310. 井上普方

    井上(普)分科員 当時の各新聞、あるいはまた外務省当局としましても、いままでの日本外交は、アメリカ、ヨーロッパ等々の大国の方向にばかり顔が向いておった、これはやはり日本外交としては大きな反省点であるという総括がなされたやに私どもは承っておるのであります。また新聞論調なんかでも、盛んにそういうことが書かれておったのであります。しかしその後、そういう方向において――ただいまもカンボジアの難民救済の問題が出ておりますが、これに対して外務省日本外交としましては、少なくともASEAN諸国に対して不満を持たせるような外交しかできてない。この中において過去二年間に、一体日本のアジア諸国に対する外交をどう変えていったのか、そこがなければ、安保理事会に立候補しても、これはまた二年前のとおりになるのではないか、私はこのように考えるのです。したがって、どういたしましても日本が自立するには、アジア諸国からあるいはまた世界各国からの信頼を得るような政策に転換しなければならないと思うのですが、この点についてはどうでございましょうか。
  311. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本とアジア諸国、たとえば日本とASEANの関係等につきましても、この二年くらい、関係はかなり改善いたしてきておるように判断いたしております。他のアジア諸国につきましてもあるいは中東の方面につきましても、一足飛びにというわけにはまいりませんけれどもわが国との関係が少しずつよくなりつつあるということは一般的に言えるかと思いますので、いまのお説のように非常にドラスチックな変化というわけにはまいりませんけれども、こういう問題はやはり少しずつ努力を積み上げていく必要があることだ、その点では二年前よりは状態はやや改善しておるのではないかというふうに判断しておるわけでございます。
  312. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、これはやや改善したくらいじゃだめなんですよ。この前は八十六票対六十一票で日本は敗れて、とうとうこれは辞退しなければならぬという立場に追い込まれたのです。それくらいでございますので、やや改善したくらいのところで立候補しても目的を達することはできないと私は思うのです。  たとえて申しますと、このたびのソ連のアフガン侵攻に対しまして国連は非難決議をいたしました。ソ連外交それ自体はこのたびのアフガンの侵攻によって大きな失敗をした、こう私は判断いたしておるのであります。その一つは、非同職諸国がソ連離れをしたこと、あるいはイスラム同盟の諸国もこれまたソ連から離れていったこと、並びにソ連友好親善条約というものがどういう性格のものであるかを世界各国も知ったこと等々、ソ連外交は大きな失敗をしたと思います。そしてまた、非同盟諸国あるいはイスラム同盟諸国との関係を修復するにはなかなかむずかしいものがあろうと思います。  そこで私は、そういうようなときに日本外交としては当然に非同盟諸国あるいはまたイスラム諸国に対して積極的な外交を展開する好機ではなかろうか、このように思うのでございます。この点について、先ほど来アフガンの問題について質問があったようでございますが、依然として日本政府としては歯切れの悪い、諸外国の対応を見てこれに対処しようという姿しか表明されていないようでありますが、私はこういうようなときにこそ日本外交は積極的に動き出すべきであると思いますが、いかがでございますか。
  313. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私もそのように考えておるわけでございまして、今般園田特使が中東及び南西アジアを回っておられて来週帰ってこられますが、現地からのいろいろな中間報告によりましても、かなり積極的な効果があったように考えております。単に経済面のみならず、日本政治的な影響力という面につきましても、たとえば中東の包括的和平というような問題に対する立場なり考え方について中東諸国も同意を示しておるというようなことまで含めまして、いろいろ努力をいたしておるわけでございます。  それから、前段のお尋ねでございますが、確かに楽観することはできないわけでございますが、前回の経験にかんがみまして、やはりアジア統一候補ということが一つ大事な要素だということも認識いたしておるわけでございます。
  314. 井上普方

    井上(普)分科員 ただいまのお話は二つ分かれてあるのでございますけれども、その後の方から申しましょう。  アジア統一候補になるということは、アジアの諸国にほかの国は出てくれぬようにしてくれといって頼む以外ないじゃないですか。そうしなければ日本は自信ないでしょう、バングラデシュにさえ敗れたのだから。この点どうなんです。
  315. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 国連の選挙のやり方でございますが、これは統一候補になるということが最良の状態でございます。それから、これは長い期間行われるわけでございまして、いろいろな瀬踏みの段階でございますとか打診の段階がございまして、必ずしも数カ国のところから出てきたからこれでもう選挙はできないのだというようなことでは国連の選挙はございませんで、その間にいろいろな樽俎折衝と申しますか、そういう国同士のいろいろな働きかけがあるわけでございます。そういう意味でこれは今後の動向を見て、いかなる国がどういう態度をとるかということを判断して決めざるを得ないわけでございまして、一国が安保理の席を求めたいという場合にこれを抑止することはできないわけでございますから、その国が出てくればまたその国と話し合うということにならざるを得ないかと思っておるわけでございまして、国連の選挙というのはそういう側面を持っておるわけでございます。
  316. 井上普方

    井上(普)分科員 二年前に破れたときには、外務省は公式見解として次の機会には必ず立候補しますなんということを言っていますね。しかし、それにはアジアの統一候補でなければ実際問題としては目的は達せられないんだろうという感じが私はするのであります。それほど日本はアジアの諸国から離れておるんじゃなかろうか、私はここを心配しておるのであります。事実、私も一昨年インドネシアへ参りまして、私ら自身がインドネシアという国はどういうような国であるのかというのを見、かつまた、はだで感じまして、こういう国だったのかという認識を新たにいたしたのであります。しかし、外務省とすれば、何を申しましても日本はアジアの一国であることは動かしがたい事実なんですから、善隣外交を行わなければならない責務がございますけれども、果たしてそれができておるかどうか、私はどうも疑問に思わざるを得ません。このままもしアジア諸国がもう一つ立候補したならば、恐らくまた二年前と同じ轍を踏むのじゃなかろうかと私は思います。二年前はどうでした。木村元外務大臣を初めとしてたくさんの大使を国連に送り込んで選挙運動をやったんでしょう。結局負けてしまった。そして反省としては、これは日本外交が大国にばかり顔を向けた外交を展開しておったからこういうことになったんだ、日本外交の成績表だ、当時の外務大臣園田さんはこういうことをおっしゃっておられるのであります。それの反省に基づいて日本外交は、まあドラスチックな転換はしないとしましても、どのように転換したのか、そこらあたり私は疑問に思わざるを得ないのであります。  一例を挙げれば、先ほどのアフガンの問題ですが、いまEC諸国が中立化案を出されております。これも英国大使から日本に対して日本はどういう態度をとるか、そのためには説明があったんじゃございませんか。どうでございますか。
  317. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 前段のお話でございますが、私も東南アジア、南西アジア等いままで数十回出かけてまいっておりまして、現地の人たちともいろいろ意見交換の機会があったわけでございますけれども、先ほど申しましたように、日本との関係は少しずつ改善しておるという印象を受けておるわけでございます。しかし、それで楽観してよろしいというわけではございません。  それから、アフガン問題につきましてのイギリス提案、キャリントン外相の提案というのは、ローマで開かれましたEC外相会議の席上で初めて出されたようでございまして、ヨーロッパ各国、現地の大使館あるいは在京の大使等を通じまして日本側にも従来いろいろ連絡を受けておるわけでございます。
  318. 井上普方

    井上(普)分科員 この中立化案に対しまして日本はどういう態度をとるのでございますか。
  319. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これはまだ検討中で最終的な形にはなっておらないようでございますが、もしもこのECの提案に対してソ連側が本気でこたえてくる、そしてアフガンからの撤兵をするということになれば、これは世界情勢から考えて非常に望ましいことだと考えるわけでございます。  ただ、現状におきましては、アフガンに対するソ連の兵力の増強が行われておるようでございまして、ソ連側は必ずしもこのECの提案について前向きの反応を示しているとは見られない節がいろいろございます。ただ、そういう案が正式にはまだ出ていない段階ソ連側の正式な反応も示されていない段階でございますので、いろいろ憶測をするのはまだ少し早いというふうに考えております。
  320. 井上普方

    井上(普)分科員 いまの外務大臣の御答弁を側いておりますと、評論家的な態度でいまおるんじゃないかと私は感じてならないのであります。このEC案によってソ連が撤兵するのが望ましいんだけれども、それはソ連はまだ前向きでないらしい。だから日本はどうするんだという決意がない。日本は中立化案に賛成なのかどうか。ECとともに世界平和にどういうように貢献するか、そういう姿勢が望ましいんじゃございませんか。
  321. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 お説のとおりだと考えております。
  322. 井上普方

    井上(普)分科員 しからば、日本は積極的に動かなければならないでしょう。国連でいままで、非難決議に賛成しただけではありませんか。いかにして世界平和に寄与するかということこそ、日本外交の最も中心でなければならないと私は思うのです。イランにしてもしかりです。ただアメリカの言いなりになってきたいままでの外務省の惰性、これがこのたびのアフガン問題に対しても出てきておるのではございませんか。  私は、もう少し大来さん、部外から入られてやりにくいところも多々あろうかとは思います。しかしながら、日本外交がいかにあるべきか、根本は、世界平和にいかに寄与するか、ここに中心を置くならば、日本は積極的にこの問題に対処すべきではないかと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  323. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 従来から外交チャンネルを通じてヨーロッパ各国政府とも連絡をとっておりますし、今月私もワシントンに行く予定になっておりますので、その際の話し合いの一つの重要な項目として米国側とも話し合ってみたいと考えておるわけでございます。
  324. 井上普方

    井上(普)分科員 それであれば、わが国はこのEC案に対してどういう態度をとるのか明確にした上でなければ、話し合いにならないでしょう。アメリカさん、あなたはこの案に対してどういうようなお考えでございますか、アメリカさんのおっしゃるとおりに私は動きましょうということでは、何にもならないではありませんか。積極的な外交というのはそういうものではないと私は思う。EC諸国と手を結んで、この中立化案が正しいとするならばそれを積極的に応援し、かつまた、アメリカを説得するという努力こそ日本外交のあり方だと思うのですが、いかがでございますか。
  325. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、米国政府もこの構想について賛成の意を表明しておるわけでございまして、問題はソ連でございます。ソ連の対応についてある程度見きわめていかなければならない。その辺については、ソ連がどういう対応をするか。形式的な対応だけで終わるようなことになりますと、かえって結果がマイナスになるという点もございますので、まあ外交というのは、政策の考え方と同時に情勢の判断、客観的な情勢の判断と政策の考え方とを結びつけてまいらなければならないわけでございまして、そういう意味での情勢判断をやる一方、考え方を固めていくということでなければならないと思っておるわけでございます。
  326. 井上普方

    井上(普)分科員 抽象論は評論家に任そうじゃありませんか。いま日本は一体どう行動するか、世界平和に対してどう貢献するかというのが、いま日本に求められておる役割りではございませんでしょうか。ただ、アメリカがこの案に賛成しておるのだから、それについてアメリカと相談して、それからソ連の対応を見ながらやるんだと言えば、後手後手になるじゃありませんか。  EC案に対して日本政府はどう考えるのだというぐらいのお気持ちを表明してもいいのじゃございませんか。EC案に対して日本政府の対応というものは、いいとお考えになっておるのですか、悪いとお考えになっておるのですか、この点だけでもひとつお知らせ願いたいのです。
  327. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私は、いいと考えているということをすでに申しております。
  328. 井上普方

    井上(普)分科員 しからば、それに対して積極的に日本は行動しようじゃございませんか。私は、これがどうも欠けておるように思われてなりません。  私の常日ごろの日本外交外務省に対する考え方は、一言で申しますと、日本外交というのはどうも何か一つの問題に対して直ちに対応できない、じんぜん日を過ごして、そしてその機会を逸しておるというような感がしてならないのであります。まことに外務官僚に対しては無礼な言い方かもしれませんが、ちょうど幕末の幕府の外交官のような態度じゃなかろうか。そして、アメリカから、ちょうど明治維新のあのイギリスのパークスのごとき恫喝外交が来れば、これに対しておびえ切って右往左往しておる、これが日本外交の姿じゃないかという気がしてならないのであります。これはまことに外務官僚に対して失礼な言い分ではあろうかと思います。しかし、そのように私どもには考えられる。  積極的に、日本外交はどうあるべきか、世界平和に対してどう行動するか、これがいま求められておる日本外交の積極性じゃなかろうかと思うのです。せっかく大来外務大臣が民間から出られて、いまの日本外務省の体質それ自体について、在野当時には厳しい御批判をお持ちであっただろうと思う。お持ちにならなければ、私は外務大臣におなりになる意味合いはなかったと思うのです。そういう意味から、勇断を持って日本外交方向をお示し願いたいことを、そしてまた、積極的な外交を展開していただきたいことをくれぐれもお願い申し上げまして、質問を終わります。
  329. 村山達雄

    村山主査 井上普方君の質疑は終わりました。  これにて昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算外務省所管についての質疑は終了いたしました。  以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力によりまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚くお礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後二時五十八分散会