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1980-03-06 第91回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月六日(木曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 村山 達雄君      小宮山重四郎君    保岡 興治君       稲葉 誠一君    金子 みつ君       川崎 寛治君    中村 重光君       広瀬 秀吉君    山口 鶴男君       湯山  勇君    草川 昭三君       長谷雄幸久君    中川利三郎君    兼務 高沢 寅男君 兼務 藤田 高敏君    兼務 渡部 行雄君 兼務 近江巳記夫君    兼務 中川 嘉美君 兼務 森田 景一君    兼務 神崎 敏雄君 兼務 小沢 貞孝君    兼務 近藤  豊君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         大蔵大臣官房会         計課長     金成 圭章君         大蔵大臣官房審         議官      梅澤 節男君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省理財局次         長       迫田 泰章君         大蔵省証券局長 吉本  宏君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省銀行局保         険部長     松尾 直良君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁次長   伊豫田敏雄君         国税庁税部長 矢島錦一郎君         国税庁間税部長 小泉 忠之君         国税庁徴収部長 田中 哲男君         国税庁調査査察         部長      矢崎 新二君         厚生大臣官房会         計課長     小林 功典君         農林水産大臣官         房予算課長   田中 宏尚君         通商産業大臣官         房会計課長   石井 賢吾君         建設大臣官房会         計課長     杉岡  浩君  分科員外出席者         法務大臣官房営         繕課長     増井 清彦君         文化庁管理課長 石田正一郎君         厚生省公衆衛生         局結核成人病課         長       大池 真澄君         厚生省医務局総         務課長     森  幸男君         厚生省年金局企         画課長     長尾 立子君         食糧庁管理部長 石川  弘君         通商産業省産業         政策局商務・サ         ービス産業室長 細川  恒君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      山梨 晃一君         建設省都市局街         路課長     並木 昭夫君     ————————————— 分科員の異動 三月六日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     中村 重光君   川崎 寛治君     中西 積介君   草川 昭三君     玉城 栄一君 同日  辞任         補欠選任   中西 積介君     山口 鶴男君   中村 重光君     湯山  勇君   玉城 栄一君     長谷雄幸久君 同日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     山田 芳治君   湯山  勇君     稲葉 誠一君   長谷雄幸久君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   山田 芳治君     堀  昌雄君 同日  辞任         補欠選任   堀  昌雄君     金子 みつ君 同日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     広瀬 秀吉君 同日  辞任         補欠選任   広瀬 秀吉君     佐藤  誼君 同日  辞任         補欠選任   佐藤  誼君     川崎 寛治君 同日  第三分科員藤田高敏君、近藤豊君、第四分科員  近江巳記夫君、中川嘉美君、森田景一君、神崎  敏雄君、第五分科員高沢寅男君、渡部行雄君及  び小沢貞孝君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算  (大蔵省所管)      ————◇—————
  2. 村山達雄

    村山主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算大蔵省所管について政府から説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十五年度一般会計歳入予算並びに大蔵省所管一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明いたします。  まず、一般会計歳入予算額は、四十二兆五千八百八十八億四千三百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げます。  租税及び印紙収入については、二十六兆四千百十億円、専売納付金については、七千五百八十八億七千六百万円、公債金については、十四兆二千七百億円となっております。  次に、当省所管一般会計歳出予算額は、六兆四千五百十五億九千二百万円となっております。  このうち主な事項について申し上げます。  国債費については、五兆三千百四億四百万円、政府出資については、千八百二十億円、予備費については、三千五百億円となっております。  次に、特別会計について申し上げます。  造幣局特別会計については、歳入歳出とも二百十七億六千四百万円となっております。このほか印刷局等特別会計については、お手元予算書等によりごらんいただきたいと存じます。  最後に、当省関係の各政府関係機関収入支出予算について申し上げます。  日本専売公社については、収入二兆三千二百四十六億四千六百万円、支出二兆三千八百十一億四百万円、差し引き五百六十四億五千八百万円の支出超過となっております。  専売納付金は、先日、本院で可決されました日本専売公社法等の一部を改正する法律案による改正後の日本専売公社法に基づいて、七千五百四十八億二千九百万円を見込んでおります。  このほか、国民金融公庫等の各機関収入支出予算については、お手元予算書等によりごらんいただきたいと存じます。  以上、大蔵省関係予算概要を申し上げました。  なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもって詳細な説明にかえさせていただきたいと存じますので、記録にとどめてくださるようお願いを申し上げます。
  4. 村山達雄

    村山主査 この際、お諮りいたします。  ただいま竹下大蔵大臣から申し出がありましたとおり、大蔵省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 村山達雄

    村山主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  6. 村山達雄

    村山主査 以上をもちまして、大蔵省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 村山達雄

    村山主査 なお、この際、政府当局に申し上げます。  質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  8. 高沢寅男

    高沢分科員 私は、東京豊島区東池袋三丁目、現在ここは池袋サンシャインシティーと呼ばれておりますが、これは旧東京拘置所跡地であります。いま、ここに公園建設するということが進んでおりまして、その公園の中に、戦争裁判遺跡保存する措置をとる、こういう問題がいま出ています。このことについてお尋ねをいたしたいと思います。  初めに、法務省増井課長お尋ねをいたしますが、この問題の出てきた発端は、昭和三十九年七月三日に、当時の閣議で、東京拘置所の敷地の一部を戦争裁判遺跡として保存する、こういうことが閣議了解決定をされた。その後、いろいろの経過がありましたが、それは省略いたしまして、昭和五十四年、昨年の十一月二十九日に、国有財産関東地方審議会において、旧拘置所跡地の六千百平米を豊島区へ無償貸し付けをすることが決定されて、本年の一月十四日にこの貸し付けが行われた。したがいまして、いまこの土地は豊島区の管理のもとにありまして、豊島区はその公園建設の仕事をいま進めておりますが、その無償貸し付けを行うに当たって、戦犯処刑跡地がありますが、これを戦争裁判遺跡として保存する措置をとることが一つ条件として示された。それに対して豊島区の方も、その条件を受け入れる、こういう形で無償貸し付けを受けた。こういうふうに事実の経過があったわけですが、この事実の経過はこのとおりで間違いないかどうか、初めに増井課長お尋ねいたします。
  9. 増井清彦

    増井説明員 そのとおりでございます。
  10. 高沢寅男

    高沢分科員 そういたしますと、この後は、無償貸し付けをやられた直接の担当大蔵省でございますから、あとひとつ大蔵大臣あるいはまた理財局担当者の方に主にお尋ねをすることになるかと思いますが、昭和三十九年七月に戦争裁判遺跡として保存する措置をとるということを閣議で決めた。三十九年といえばかなり古い以前のことになるわけですが、こういう閣議で決められたその目的は一体どういうところにあったとお考えか、まず大臣の御判断をお聞きをしたいと思います。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私、三十九年には内閣官房長官をしておりまして、定かに記憶をいたしておりませんが、いわゆる戦犯処刑者の碑というようなものが、そういうようなことを二度としてはならないという、ある種の平和への礎というような形で残すべきではないかというふうな議論がなされたことを記憶いたしております。
  12. 高沢寅男

    高沢分科員 私たちが聞いているところでは、こういう問題が閣議に出てくるその前に、たとえば遺族会であるとかいうふうなところから、いま大臣の言われたのと逆に、そういう戦犯処刑された人たちはいわば犠牲者であったとか、あるいはそれらの人は愛国者であったとか、そういうものをひとつ顕彰してほしいというような、陳情といいますか、そういうものがあって、それでこの問題が閣議へ出されてきた、そういう経過があったやに聞いているわけですが、しかし今度は、閣議でこういうことを決められたお立場というものはそういうことではなくて、いま大臣の言われたように、こういう戦争とか、その中で戦争犯罪者が出るとかいうようなことが二度とあってはならぬ、こういうふうなお立場でこの閣議決定をされた、こういうふうにいまの大臣お答えを理解してよろしいでしょうか。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 大筋それでよかろうと思います。要するに当時の議論は、その戦犯になられた個人を云々するわけではない、これはいろいろな経過とか背景があったであろう、しかし将来にわたっての問題としては先ほど申しましたような理解の仕方であったと思います。
  14. 高沢寅男

    高沢分科員 大事な点でありますので、実はこの問題について、二月二十一日、衆議院内閣委員会でわが党の上田卓三議員がこの問題をやはり御質問しているわけです。その御質問の際に、この閣議決定は、いわゆる戦犯を顕彰するというような、そういうものでは全くなかったということが、法務省増井課長からもそういうお答えがあったわけですが、ここでもう一度増井課長のそのことを確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
  15. 増井清彦

    増井説明員 そのとおりでございます。
  16. 高沢寅男

    高沢分科員 そういたしますと、この立場でもう一つ問題を進めたいと思いますが、わが国連合国との間に結んだ対日平和条約ですね。この対日平和条約は、昭和二十六年に、当時吉田内閣によって調印をされて、国会の承認を受け、批准手続を完了して現在に至っております。この平和条約の第十一条にこういうふうに書いてあるのですね。「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」これをわが国としては受諾して、そして調印批准手続を済ました、こうなっているわけでありますが、この趣旨は、要するに東條英機を初めとするそういう戦犯と呼ばれた人たちが太平洋戦争を起こしたわけであります。その起こした結果が、アジア国民もそうでありますが、同時にまた、日本国民に対しても重大な戦争の被害を与えた、このことが戦争犯罪として国際法廷でいわば責任を追及されるということになり、そして戦犯ということになって、その処刑が行われた。このことを平和条約日本政府がその戦争裁判を受け入れるという決定をしたということは、今後は日本政府立場として、こうした第二次世界大戦に対する見方の上に立って、こうした戦争を二度とやってはならない、こうした戦争犯罪を二度と起こしてはならない、これが日本政府立場になった、こういうふうに私は考えるわけです。  その後時間はたっておりますけれども、政府一貫性として、現在の日本政府もこの立場を当然貫き、受け継いでおると考えるわけでありますが、この点、国務大臣として竹下大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり明らかに条約上の問題でございますから、そのとおりだと思います。
  18. 高沢寅男

    高沢分科員 そういたしますと、この昭和三十九年に閣議で決められた戦争裁判遺跡保存する措置をとるという場合の保存の仕方、あるいは保存をする精神といいますか、そういうものは、いまの大臣お答えのとおり、二度とそういう戦争なり戦争犯罪というものがあってはならぬ、こういう趣旨精神に立って保存措置をとるというやり方が正しいのじゃないか、こう思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 趣旨としては私も賛成でありますが、当時、もう一つ思い出しましたのは、これは巣鴨という意味ではありませんが、戦争犯罪戦争裁判そのものが、勝者が敗者を裁くという意味において、あるいは無実の人が外地なんかで人違いとかそういうものもあったのではないか。したがって、戦争裁判全体については、個人を、一つ一つのものを非難していくというようなものであってはならぬとか、そういう議論もしたことをいま思い出しました。しかし、大筋としてはおっしゃるとおりです。
  20. 高沢寅男

    高沢分科員 私も、この問題を御質問するに当たって、その一人一人の、この人この人というものをどうこうせよという立場で言っているわけじゃないのです。その御質問立場は、全く歴史的に日本の経験した悲劇であった、あるいは日本の経験したアジア国民に対する犯罪であった、そういう戦争を二度としてはならぬ、その中からそういう戦争犯罪を二度と生んではならぬ、こういう考えに立って御質問しているわけで、いまの大臣お答えも私はそのように受けとめるわけです。  そこで、そういう保存措置をとるのに、ではどういうふうに保存措置をとるかということについて、豊島区に対して法務省の方から、こういうふうに碑の文面をつくったらどうかという文案を示されたと聞いているわけですが、その間のいきさつを増井課長お尋ねいたしたいと思います。
  21. 増井清彦

    増井説明員 都市公園自体計画につきましては、もとより豊島区が自主的に判断して御決定になるべきことだと思います。しかし、その一部につきまして、閣議了解戦争裁判遺跡として保存するという決定が行われておりましたので、豊島区の方から閣議了解を求めました両省の一つであります法務省に対しまして、閣議了解趣旨都市公園の設置についてどのように考えるべきかというお尋ねがございましたので、関係省庁担当者とも相談いたしまして、便宜その趣旨説明する一つの資料といたしまして、スケッチと遺跡説明文の案文を法務省で作成してお示ししたわけでございます。
  22. 高沢寅男

    高沢分科員 そういたしますと、いまの御説明によれば、示されたものは、たとえばというようなものとして示された、こう理解してよろしいでしょうか。
  23. 増井清彦

    増井説明員 全くそのとおりでございます。
  24. 高沢寅男

    高沢分科員 そういたしますと、これを受けて豊島区議会の中で豊島区としてそれをやるということになったわけですが、それではそういうものをやるのに豊島区の主体性というか自主性というものは一体どの程度あるのか、たとえばとして示されたそういうものに一体どういうふうに拘束されるのか、拘束されないのかという議論がずいぶん豊島区の議会の中ではあった、それが大問題になったというふうに聞いているわけであります。いまの増井課長お答えによれば、この示されたものは全くたとえばである、したがって、今度はそれを受けて豊島区がどういうものをつくるか、どういうふうにつくるかということについては、これは全く豊島区に自主性がある、主体性がある、こういうふうに考えていいかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  25. 増井清彦

    増井説明員 戦争裁判遺跡として保存されるのであれば、その保存方法につきましては全面的に豊島区が自主的に判断されるべき事項であろうと思います。
  26. 高沢寅男

    高沢分科員 この点は一つのポイントでありますから、無償貸し付けをされる立場大蔵省にも、いまの点の豊島区の自主性主体性ということについての御見解お尋ねしたいと思います。
  27. 迫田泰章

    迫田政府委員 大蔵省といたしましても、遺跡保存するという閣議了解の線がございますので、碑を設置していただきまして、遺跡として保存ということが前提でございますれば、碑文というものについては、ただいま法務省が言われましたのと同じ考えでございます。
  28. 高沢寅男

    高沢分科員 その点は確認ができたわけでありますが、そうすると今度は、そういう保存するものをつくるのに、たとえばそれを木でつくるのがいいのか、石でつくるのがいいのか、石としても大理石を使うのがいいのか、御影石がいいのか、あるいはそれはどのくらいの大きさにしたらいいのか、そこにどのような文章を書き込むのがいいのか、いわば公園としての全体の調和がありますから、それを前提としながら、そういうことを具体的に決めるには豊島区の判断で一番いいように決めていい、こういうふうに理解いたしますが、それでよろしいですか。
  29. 増井清彦

    増井説明員 そのとおりでございます。
  30. 高沢寅男

    高沢分科員 もう大体御趣旨はわかりましたので、最後に、私はこういうふうに考えるということを申し上げて、それに対しての見解大臣お尋ねをしたいと思うのであります。  先ほど平和条約十一条の趣旨をどう理解するかということで大臣お答えをいただいたわけでありますが、つまり、これは第二次世界大戦日本が起こしたというこのことのいわば責任を永久に忘れてはならぬ、そしてそれを二度と繰り返してはならぬ、こういうことでの大臣お答えがあったわけであります。  最近マスコミ等でよく言われるのは、日本国民は大変忘れやすい、もう戦後三十数年たってそうした戦争の体験であるとかあるいはまた戦争責任であるとかというふうなことが、日本国民の中ではだんだん時間の経過とともに風化してきて、もうそういうものが忘れられていく傾向がある。ところが、たとえば西ドイツなどへ行きますと、そうするとかつて第二次大戦の中でユダヤ人に大変な残虐な行為がドイツにはあったわけですが、今度はドイツ国民はいまに至るもその問題についての責任というものを非常に厳しく考えておる。また、それをやられた立場の今度はユダヤ人の方からも、そういうものをやったナチスの責任追及というものを現在に至るも一刻も忘れることがないという、そういうことがよく報道され伝えられるわけでありますが、われわれ日本国民としてもこうした経験あるいは責任というふうなものについては、これをこれから育ってくる若い人たちに十分伝えて、そして二度とこうした戦争悲劇を起こしてはならぬということを繰り返し繰り返し確認していかなければいけない、こう思います。  そういたしますと、私としてはこれから豊島区がそうした自分の主体性自主性を持ってこの問題を決めていくに当たっては、こうした平和条約十一条の精神を十分体して、二度と戦争があってはならぬ、二度と戦争犯罪というものが起きてはならぬ、こういう趣旨前提にしてその立場でこの保存措置をとられるということが一番いいんじゃないのか、こう思います。しかし、これはもちろん豊島区が判断して豊島区が決められる問題でありますが、そういうふうに事態が進んできた場合、それは大変結構なことである、そういう豊島区の判断というものは豊島区の自主性として大いにこれを尊重する、こういうお立場が私は大臣のきょうのお答えで当然あろうかと思いますが、繰り返しだめ押しになるようで大変恐縮ですが、そのことについて一度大臣の御見解を聞かしていただいて終わりたいと思います。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃることと全く一致しております。  ただ一つだけ、いま間違い申しましたことをおわびしますのは、私が内閣官房長官になりましたのが三十九年の十一月でございまして、それで池田総理が病気をずっと長くしていらした。したがって、その間の閣議了解事項引き継ぎの中で、何か三日くらいかかって引き継ぎをいたしましたので、それで記憶しておったということでございますので、たまたまそのとき副長官ではございませんでした。それだけはおわびいたします。
  32. 高沢寅男

    高沢分科員 それでは三十分時間をいただきまして多少余りましたが、以上で私お尋ねしたいことがお答えをいただきましたので、終了いたしたいと思います。  どうも大変ありがとうございました。
  33. 村山達雄

    村山主査 高沢寅男君の質疑は終わりました。  次に、近江巳記夫君。
  34. 近江巳記夫

    近江分科員 万国博覧会が開催されましてちょうど今年で十年目になるわけでございます。万博跡地につきましては、記念公園といたしましていま整備されつつあるわけでございます。大蔵省が管轄をなさっておられるわけでございまして、その整備問題につきまして御質問申し上げたいと思います。  六千四百二十一万人という世界各国からの方々がこの万博には参りました。そういう意味でこの記念公園につきましては、それにふさわしい公園にしていこうということで政府としても御努力をいただいておるわけでございます。ところで私が非常に注目しておりますのは、この五十五年度予算におきまして記念施設整備事業費補助金が計上されておらないわけですね。では一体政府はどういうお考えでいらっしゃるか、非常に大きな疑問を持つわけでございます。昭和四十七年十月に、「日本万国博覧会記念公園基本計画」というものが策定されたわけでございます。この基本計画におきましては、   計画基本方針  日本万国博覧会記念公園は、日本万国博覧会記念事業として整備運営されるものであるから、近隣地域のみならず、広く国民一般国際的利用にも応ずることができるよう、次の内容をもったものとする。  一 記念公園は、人間と自然がふれ合うことのできるすぐれた「緑」の環境を実現し、自然の中において市民が積極的、能動的に参加し、体験することができる芸術学術およびスポーツレクリエーション等文化的活動の場を提供するものとする。  二 協会は、多くの市民が親しみ楽しめる魅力ある公園とするよう努めるものとする。  三 記念公園は、協会一括的管理・運営を行なう。  四 協会は、記念公園の諸施設を十分に活用し、芸術学術およびスポーツレクリェーション等の各分野において、国際的な催しならびに多くの人々が参加できる魅力ある諸活動を積極的、主導的に企画し、推進する。 こういうふうに基本方針というものはうたわれておるわけです。こういう中で、いままで無料でございました入場料も有料化されまして、私もかつて大蔵委員会におきましてこの問題を指摘し、当時入場料が二百円というようにほぼ決まっておったわけでございますが、これを強く指摘いたしまして、地元住民も非常に反対運動に立ち上がりまして、一応百円ということに落ちついたわけです。こういう一つの問題を見ましても、この二項目にうたわれておりますように、「多くの市民が親しみ楽しめる魅力ある公園とするよう努めるものとする。」有料化されたということでこういう項目に対しても大きなブレーキがかかったのじゃないか、こういうように思うわけです。  それにつきましても、この五十五年度予算において計上されておらないということ、一体これはどういうことかと思うわけです。この整備計画の事業の進め方を見ましても、「長期プログラム」といたしまして「公園の成長過程を、次の三期に分ける。(一)創成期(一九七二年〜一九八三年)「跡地」から「公園」への転換(二)育成期(一九八四年〜一九九九年)「緑」に包まれた記念公園の完成  (三)熟成期(二〇〇〇年〜  )記念公園の充実」こうなっておるのです。こういう中で政府補助金をつけておらないということは一体どういうことであろうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  35. 迫田泰章

    迫田政府委員 万博記念公園の整備につきましては、先生先ほどおっしゃいました昭和四十七年十月に決めました日本万国博覧会記念公園基本計画というものに基づきましてやっておるわけでございます。まずあの跡地をどうするかということで、公園にしなければいかぬではないか、跡地から公園ということで第一期整備計画をつくったわけでございますが、それは四十六年度から整備事業を行いまして五十四年度までに九十二億九千万円、これは国及び大阪府の補助でございますが九十二億九千万円、万博協会の経費負担による単独事業で二十八億四千万円、合計百二十一億三千万円で事業をやってきたわけでございます。この結果、第一期と言いますか、跡地公園にするという第一期の基礎的な整備は一応完了して、十分御承知とは思いますが、公園は緑に包まれてきつつあるということになっております。  基本計画で第二期、育成期に関連しまして「「緑」に包まれた記念公園の完成」という目標があるわけでございます。したがいまして、第一期の基礎的な整備が終わったということで、これですべてが終わったという観念をしておるわけではございませんので、今後とも緑に包まれた魅力ある文化公園という方向に持っていく必要があると考えておるわけでございますが、それにはどのような施設を整備していく必要があるかという問題が残っております。この点に関しましては、現在、万博記念協会の方で県や機関に調査を委託いたしまして検討を重ねている、こういうふうに聞いているわけでございます。
  36. 近江巳記夫

    近江分科員 こうした記念公園、この基本計画にもうたわれておりますように緑に包まれた——確かに緑が育成していくためには長期間かかることは私もわかるわけです。しかし、現実にあの公園が完成したとは、だれしも思わぬわけです。緑の育成状況一つ見たって、本当にまだまだこれで公園と言えるかという状況でございまして、この基本計画にうたわれておりますように、もっとそういう整備充実を図っていかなければならぬわけです。  ところが、いまここで五十五年度予算には計上されていない。ぽかっと穴があいているのですね。そうであるならば、これは予算がついていないのですから、整備を進めようにも進めようがないわけです。また計画も、御答弁にありましたように、第一次整備計画が一応この五十四年で終了した。それなら、当然わかっているわけですから、五十四年終了までの間、第二次整備計画というものをダブらせて計画をして、それを決定し、五十五年度予算に当然つけるべきであったのです。それを、いま考えておりますという段階で、こういう空白を生じていいのかという問題であります。これについてはいかがお考えですか。
  37. 迫田泰章

    迫田政府委員 基本計画をつくった時点と現在は、大分様子が変わっておるというか、四十七年と現在時点というのは、経済情勢も社会情勢も相当変わっておるわけでございまして、第二次の整備計画をつくるに当たっては、相当新しい観点からいろいろな案を練り直す必要があるのではないかという感じがしておるわけでございます。  御承知のように、基本計画をつくった段階では、五十年度時点における来園者総数を四百二十万人と想定をしておりましたけれども、現在は百数十万人ぐらいしか入っておりません。そういう問題を考えると、万博周辺の交通条件というものを整備する必要があるのではないかとか、そういう四十七年当時から変わりましたいろいろな社会経済情勢を勘案すると、第二次整備計画をどう持っていくべきかを少し本腰で考える必要があるのではないかということで、続いては計画に基づいて工事に入らなかったわけでございますが、そういう新しい観点から計画を見直そうということで、現在検討しておるわけでございます。  もちろん緑、木をいろいろ植えておりますが、それをほったらかすわけではございませんので、それの維持管理については、当然五十五年度も緑になるように整備をしていく、そういう一般的な管理はやっておるわけでございます。
  38. 近江巳記夫

    近江分科員 この基本計画にも、広く多くの市民に親しまれ、このようにうたわれているわけです。そういうことであるならば、当初からそういいうアクセスの問題等は考えておかなければならぬわけですよ。これもやはり欠落しておった。しかも、無料を有料化してきた、こういうことも入場者の数をとめていることになるわけです。こういうようなことで、政府が当初見込んでおりました四百二十万というのが、いま百数十万、これは政府がそれだけの原因をおつくりになっているわけだ。こういう点を十分反省され、今後の交通体系の整備ということにつきましても十分——いまモノレールの調査費もついておるわけでございますが、早急にそうした点を解決していただきたいと思うのです。  そこで、現実にこれはおくれておるわけでございますので、現在策定中と聞いております第二次整備計画の進捗状況はどのようになっておりますか。それには具体的にどういう施設考えられておるのか、できるだけ詳細にお伺いしたいと思うのです。
  39. 迫田泰章

    迫田政府委員 現在、第二次整備計画策定のための調査を依頼をしておるわけでございますが、これは、西暦二〇〇〇年を目標といたしまして、緑に包まれた文化公園完成のための必要な文化施設のあり方について調査を委託しておるわけでございます。五十四、五十五年度にわたって調査を委託するということで、現在は五十四年度の第一次調査が終わったというか、まだ完全には終わっておりませんが、そういう段階で中間報告的なものでございます。  この第一次調査の結果につきましても、万博記念協会では内部的検討をして評議員会に報告をして、正式に当方に報告をするということでございますので、まだ正式に固まったものではないということで御了解を願いたいわけでございますが、できるだけ詳細にということでございますので、現在わかっておる段階で、若干時間をいただいて説明をいたします。  第一次の調査報告で考えておりますことは、今後の記念公園の整備は、以下申し上げます七項目を目標とするということでございます。  第一は、文化領域の拡大を図ろうというもので、これは市民文化の多様化等に対応して、記念公園全体に文化活動のための新たな施設を誘致、整備しようというものでございます。第二は、利用者層の拡大を図るべきであるというもので、さらに幅広い利用者の支持を得られるような施設の整備を図るべきであるというものでございます。第三は、専門家層に対しても魅力ある施設整備を図るべきであるというものでございます。第四は、スポーツ施設の高度化ということで、これはこれまで基本計画に沿って整備開設をされてきたスポーツ施設については、今後第一級の競技が行われるよう高度化するとともに、屋内スポーツ施設も整備する必要があろうというものでございます。第五は、アクセスの整備で、これは大量輸送機関でございます大阪環状モノレールの実現を期して、これの導入に伴う修景、動線処理を行って利用者層の利便を確保しようというものでございます。第六は、来園者サービスの充実を図るというものでございます。第七は、その他記念公園の熟成に向かうため必要な基盤と施設との相互補完的な整備を図るべきである。  こういう七項目を目標にすべきであろうということでございます。こういう七つの目標に対しまして、万博公園の第二次整備計画といたしましては、一つは、文化施設等の充実及び導入、二つは、大阪環状モノレールの導入に伴う具体的な対応整備を提案をしております。  この計画の文化施設等の充実、導入について説明をいたしますと、具体的には、一つは理工系文化施設の整備でございます。これは、多様な文化施設の要求にこたえまして、将来の文化公園としての総合性を保つために、広域的な位置づけが可能であり、核として機能し得るような理工系文化施設を整備するというものでございます。  具体的には、産業技術史博物館(仮称)の設置でございますが、これはわが国の代表的な産業技術とその成果を歴史系統的に展示し、産業技術の保存、研究の意義を広く啓蒙するとともに、調査研究を行うものでございまして、東の広場に設置しようというものでございます。  次は、宇宙映像館でございますが、これは、産業技術史博物館とともに科学ゾーンを形成するものといたしまして、現在ございます鉄鋼館を有効利用し、科学映画を提供する施設として用いようというものでございます。  二番目に、文学系文化施設の整備でございますが、文科系の文化施設群の中でも文学部門が欠けているので、この分野での文化活動を支えるために、子供たちから大人まで親しめる図書館機能を含む児童文学関係の総合施設として、仮称でございますが、児童文学館の整備を行うべきである。  それから、交流的文化施設の整備ということでございまして、記念公園を多目的に維持、利用していく場合にどうしても必要になる各分野での専門家たちに魅力を備え、かつ広範な人々と専門家との幅広い交流を図るための文化的施設を整備すべきであるということといたしまして、具体的には、宿泊、会議場、教室、アトリエ等の機能を持った関西文化会館(仮称)をいまの協会のビルを使って設置する。もう一つは、ビッグイベントや屋内総合スポーツのための施設としてクロス・カルチュア・ホールを設置する。この二つを総合施設として関西文化センター(仮称)というものを設けて、建設、運営をさせたらどうかということでございます。  最後には、スポーツ施設の高度化のための整備といたしまして、より高度な利用を可能とするために、陸上競技場などにスタンドを整備する、そして関連施設の整備を図る、こういうものでございます。  以上、申し上げましたのが、現在第二次整備計画のあり方について調査されている概要でございます。
  40. 近江巳記夫

    近江分科員 いま基本的なお考えをお聞きしたわけでございますが、この第二次整備計画を早く固めなければ、後続行ができないわけですね。これはいつまでに、いま発表になりました案を固められて、すぐその第二次整備計画に入られるのか、このめどについてお伺いしたいと思います。
  41. 迫田泰章

    迫田政府委員 いま考えられておるのは、最初に申し上げましたように、西暦二〇〇〇年を目標とする非常に大きい構想でございまして、五十四、五十五年度にわたって調査をしようということでございます。いま申し上げましたのが中間報告でございまして、来年度は具体的にどのくらいの規模でやるかとか、建設費はどのくらいかかるであろうとか、そういうものを具体的にまた調査をしなければいかぬと思うわけです。したがって、この第二次整備計画についての調査は五十五年度もやることになっておりますので、五十五年度中には完了をいたしたい、こういうふうに協会の方は考えておるようでございます。
  42. 近江巳記夫

    近江分科員 大臣、先ほどからいろいろお聞きになっていただきまして、この第二次整備計画に入る、現在計画中でございますけれども、いずれにしてもこれは空白が生じておるわけですね。そういう点で一日も早くこの整備計画を固めていただきまして、第二次整備計画に充実したものを進捗させていただきたい、このように思うのです。そこで大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 これは近江さんに初めて御指摘されたんですけれども、実は今年度の補助金整理合理化計画の中へこれを入れるべきかどうか一遍議論したのでございます。一応第一期ができた、そうすると整理させてもらおうじゃないか、しかしいま権威ある機関で第二次整備計画の絵がいろいろ描かれておる、したがってその描かれた後において、そしてこれは各省にわたることになりますが、この話があった時点でまた相談に応じようじゃないかという趣旨で、これは一応ことし千六百数十億の補助金整理の対象の一つにしたのであります。したがいまして、補助金というものは決してこれは補助金性悪説をとるものではございませんから、りっぱな第二次整備計画ができて、そして各省とも協議をした段階において十分話し合いに応ずべきものであるというふうに考えております。
  44. 近江巳記夫

    近江分科員 ひとつ大臣補助金の整理につきましては、これは大事なことだと思います。しかし、この万博記念公園の問題につきましては、当初私が申し上げましたように、世界各国の方がこの地にお見えになり、そして後いわゆるモニュメントとしてりっぱな公園を残していくということは、国際的に文化事業として高く評価されているわけです。これに対しましては、やはり当初の基本計画にありましたように、国が力を入れていただく、この中で初めて充実したものが完成するんじゃないかと思うのです。  そういう点で、大蔵当局としましてこの補助金の中でもさらに従来よりも増して厚く補助をしていくのである、こういう観点に立っていただきたい、これを強く要望したいと思うのです。もう一度重ねて大臣からお伺いしたいと思います。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 その話が出た段階において、御趣旨を体してそれに対応してまいりたいと思っております。
  46. 近江巳記夫

    近江分科員 それでいま入場者の問題も出たわけでございますが、これは交通機関の問題が非常にネックになっておるわけです。このモノレールにつきましては予算もつけていただいたわけでございますが、早急にこれも実現をしていただきたいと思うのです。きょうは担当建設省もお見えになっておると思いますので、その見通しにつきましてお伺いしたいと思います。
  47. 並木昭夫

    ○並木説明員 大阪環状モノレールにつきましては、昭和四十六年にすでに都市交通審議会におきまして新設を検討すべき路線ということで御提案がされているわけでございますが、その後基礎的な調査を実施いたしました結果、大阪国際空港を起点といたしまして、千里ニュータウンあるいは万国博記念公園、それと周辺の住宅市街地、こういったものを中央環状線沿いに連結いたしまして、そして阪急電鉄の南茨木駅に至ります約十四キロの区間でございますが、この区間につきましてはルートであるとかあるいは採算性等実現の可能性が高いというようなことが予測されるに至りましたので、昭和五十五年度事業の調査に着手したいというふうに予定しておるわけでございます。  この路線は大阪都市圏の放射方向の交通混雑、これを解消するというようなこと、あるいは環状方向の交通需要へのサービスといったようなこと、さらには沿線地域の開発に資するというようなことが考えられるわけでございますが、その下部構想につきましては、道路事業といたしまして大阪府が実施するというふうに考えております。  このモノレールの構想であるとか経営主体、そういったものは調査を踏まえまして決定されるものでございますが、五十五年度に予定いたしておりますのは、測量であるとか概略設計であるとか、そういったものを予定したいというふうに考えております。
  48. 近江巳記夫

    近江分科員 これは現実の問題として一刻も早く完成に向かうように努力していただきたいと思うのです。それにつきましても、何といいましてもやはり計画を早急に立ててそして遂行するための予算の問題になってまいります。この点大蔵省としても十分ひとつこの機会に頭に入れていただきまして、最大の項目として重点的な施策をしていただきたい、このように思うわけでございます。  それから有料化後の万博協会、財政の収支の状況でございますが、同時に、私は有料化をめぐって大蔵委員会で論議をしましたときに、万博協会の機構あるいは定員の合理化等について検討するように申し入れたわけでございますが、こういうこともその後どういうように改良されたのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  49. 迫田泰章

    迫田政府委員 昨年の有料化に関連をいたしまして、いろいろ機構、定員の合理化等について検討いたしたわけでございます。この問題につきましては、有料化も契機ということもございますが、その前から種々鋭意検討をしてきたわけでございます。  それで、まず昭和五十三年度から向こう三年間で——五十二年度末の定員九十二名いたわけでございますが、二割程度減員をするという計画を立て、それをさらに一年繰り上げるということをいたしておりまして、この結果、五十四年度末の定員は七十一名ぐらいになる予定でございます。それから理事一名の削減を昨年行いました。さらに五十五年度には東京にございます基金部を大阪に移転をするということになっております。したがいまして、この機構、定員の合理化については万博協会の方も種々努力をしていただいておると考えております。  それから、公園を有料化したということもございまして、協会の収支でございますが、まだ五十四年度は決算に至りませんので具体的に数字を申し上げる段階に至っておりませんが、五十三年度六億七千百万円の赤字が出ておったわけでございますが、黒字になるということはちょっとむずかしいかと思いますが、相当改善をされるんじゃないか、こういうふうに現在考えております。
  50. 近江巳記夫

    近江分科員 時間が来ましたので終わりますが、こういう採算はうんと赤字になっていいのですよ。国がうんと補助をしていただきたいということを特に申し上げておきます。今後整備計画と合わして、あくまでも幅広い国民から親しまれる公園として、採算という点におきましてはうんと今後国庫補助をふやしていく、こういう方向でやっていただきたいと思うのです。一日も早く整備計画を固めていただいて、そして進展が図られるように最大の御努力をしていただきますよう、さらにこのエキスポランド等民間に委託をしてやっているわけでございますが、これなども決して営利主義に走ることなく、多くの子供たちが親しめるようなそういう配慮、十分な監督をしていただきたい、このことを強く要望いたします。  この点、最後に一言だけ大蔵大臣の決意をお伺いして終わりたいと思います。
  51. 竹下登

    竹下国務大臣 近江さんの御意見、しかと承りました。
  52. 近江巳記夫

    近江分科員 終わります。
  53. 村山達雄

    村山主査 これにて近江巳記夫君の質疑は終わりました。  次に、山口鶴男君。
  54. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 きょうは、国民が持っております素朴な疑問についてお尋ねをいたしたいと思います。幸い、主査も前の大蔵大臣村山さんでございますので、ひとつ一緒になって考えていただきたい、こう思うのです。  お尋ねしたいことは、予算編成の問題であります。昭和五十五年度国の予算決定までの手続を日を追ってみたのでございますが、昨年の十二月二十日に政府予算編成方針を決定された。二十二日に五十五年度予算について大蔵省原案を決定して各省に内示をされた。二十三日からいわゆる復活折衝が始まりまして、局長折衝、次官折衝、大臣折衝等を積み上げまして、最後竹下さんを中心にして与党の三役との三役折衝が行われて、二十九日には五十五年度予算政府案が閣議決定された、こういう手続のようでございます。  ところが、大蔵原案として内示されました予算総額は四十二兆五千八百八十八億四千三百万円、復活折衝で予算を取った取ったということが喧伝され、新聞にも大きく出ます。ところが、閣議決定の数字を見るとこれまた四十二兆五千八百八十八億四千三百万円、内示と全然変わっていないわけなんですね。国民考えると、取った取ったというのは一体どういうことなんだろうか。第一次折衝、第二次折衝、局長折衝、大臣折衝で幾ら取ったということが大きく喧伝される。ところが、予算の総額全体は全然変わっていない。もちろん、その中には公開財源の一千八百億円というのがございまして、いわば保留分みたいなものでしょう。これが各省に配分されたということだと思うのですが、どうもそれだけではないようですね。聞くところによりますと、官房調整費なるものが各省にそれぞれ配分されている。取った取ったというのは、結局この官房調整費を取ったのだ。それから公開財源の千八百億をそれぞれ折衝の結果各省庁が確保した、大蔵省の側から見れば予算をつけたということだろうと思います。どうもこのからくりは国民の皆さん非常に疑問に思っておるのではないかと思うのですね。  そこでお尋ねしたいのですが、公開財源は千八百億円、それでよろしいですね。官房調整費なるものは一体総額で幾らだったのでございますか。
  55. 禿河徹映

    禿河政府委員 ただいま先生からお話がございました、予算の編成過程におきますいろいろの調整の財源といたしまして、いわゆる官房調整費とそれから公開財源と言われるものがございまして、公開財源は千八百億円でございます。  もう一つの官房調整費と申しますのは、これは特定の費目で官房調整費というふうなことで実は計上いたしておるものではございませんで、政府部内におきます予算のいろいろな折衝、調整というものを円滑ならしめるために一応官房の方に留保するというものでございまして、予算編成の途中の折衝過程の問題でございまして、率直に申しまして、それが初めからぴたっと幾ら官房調整費として置いてあるとか、そういうものでございませんものですから、何億の官房調整費というものがぴしっとある、こういう性格のものでないということで御容赦願いたいと思います。
  56. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 どうもわからないですね。  ある省に、おたくの省は官房調整費幾らですねと聞きましたら、名前は差しさわりがあるから言いませんけれども、いや何百何十億円でありますというお話を素直にされた方もあるわけです。官房というのは各省の官房を指すわけでしょう。ですから、その各省の官房にそれぞれ大体幾らというものは事前にあったんじゃありませんか。各省別のものは、各省の会計課長さんがお見えですからこれからお尋ねしようと思うのですが、総額幾らであるか、また、各省別幾らであったかということは、禿河さんの方で、あるいは吉野さんの方で、あるいは竹下さんの方でわかっていたはずじゃないのですか。そういうことを国会にお示しできないというのは、大蔵省さんは国会を大変軽視をしておられるということじゃないかと思うのですが、正直にお答えになったらいかがですか。
  57. 禿河徹映

    禿河政府委員 官房調整費と申しますのは、先ほど申しましたとおり、予算の編成過程におきまして、大蔵原案の内示から復活に至るまでの過程におきます調整手続といたしまして、これは四十三年度以降とっておる方式でございますが、組み替えというもの、それから調整財源による方式、この二つをとっております。  その第一段階と申しますか、いわゆる組み替えと申しますのが、官房調整費財源を中心といたします既内示額のいわば組み替え、こういうものでございます。先ほど申しましたとおり、これは特定の費目を設けて行うものではございませんが、当初内示におきまして、その内示をいたしました総額の一部を特定費目に固定せずに、今後におきます折衝の過程におきまして、各種施策に対します配分の優先順位の確定的な選択を求める、こういう趣旨からその財源として各省庁の官房に留保するものでございます。各省、各庁とも大蔵省との間におきましては、復活折衝の過程を通じましてこの組み替えを進めていくわけで、最終的に具体的な事項なり金額というものを確定するものでございます。  なお、こういうふうな官房調整費というもののほかにも、特定の費目に対します内示済み額というものにつきましても、また各省、各庁の御判断によりまして、これはほかのもうちょっと優先度の高い施策の方に振り向けたいとかいうふうなものもございます。そういうものにつきましても、やはり協議、折衝の上で組み替え決定するということでございまして、官房調整費もそういう意味での組み替えの中の一つの財源でございます。  これにつきましては、確かに組み替えの主たるといいますか、中心的なものであろうと思いますが、実際、予算を編成いたしてまいります私ども実務の面で申しますと、その辺のいわゆる組み替えというものをどういうふうに具体的にやっていくのかとかいうふうなことは、実は第一線の主計官とか主査とか、そういう方面でやる面が多いわけでございます。もちろん、大きなものにつきましてはそれぞれ上司の判断を仰ぐとかいうふうなことはございますけれども、実際に複雑多岐にわたり、しかも一定の期間内で予算を仕上げていくという過程におきましては、そういうふうな組み替えを実際問題といたしまして主計官、主査というものが状況を見ながらやっていくという面も多いわけでございまして、私ども後になりまして振り返って、その組み替えが総体としてどのくらいだったのかとかいうふうな数字は実はフォローしていないわけでございます。そういう点で、確定的な数字を申し上げることができないという点は、ひとつ御理解をお願いしたいと思います。
  58. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 肝心なこと答えてないじゃないですか。全体で幾らですか。
  59. 禿河徹映

    禿河政府委員 そういうことで、そういう数字がぴしゃりとどのくらいということを申し上げるわけにはまいらないという事情にございますので、その辺は御容赦願いたいと思います。
  60. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 けしからぬ話だと思うのですね。聞いてもいないことを長々と御答弁されて、聞いていることについてお答えにならないわけでして、大蔵省は国会というものをどうも余り尊重しないという伝統があるのか、最近になってそうなったのか知りませんが、遺憾に思います。  それじゃ、各省に聞きましょう。  厚生省の会計課長さん、厚生省の官房調整費は、五十五年度予算においては幾らでしたか。農林水産省の予算課長さん、農林水産省の五十五年度予算における官房調整費は幾らでしたか。それから、通産省の会計課長さんにお尋ねいたします。通産省における五十五年度予算の官房調整費はお幾らでございましたか。さらに、建設省の会計課長にもお尋ねいたします。官房調整費は一体何ぼでございましたか。
  61. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 官房調整費につきましては、ただいま大蔵省の方から御答弁申し上げたような性格のものでございますので、金額につきましてはひとつ御容赦を願いたいと思います。
  62. 石井賢吾

    ○石井政府委員 いまの厚生省の会計課長の答弁と同じでございまして、内部調整のための予算編成過程における問題でございますので、一応金額を申し上げることは御容赦願いたい、かように思っております。
  63. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 ただいま二つの省から話がありましたように、予算編成過程上の内部調整的な話でございますので、金額については御容赦願いたいと思います。
  64. 杉岡浩

    ○杉岡政府委員 ただいま関係省庁が申しましたように、予算編成の一過程の調整財源でございますので、特に金額等については御容赦願います。
  65. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 まあ村山さんも大蔵大臣をされたわけですけれども、いまのような御答弁について一体どうお考えなんでしょうかね。省によりましては、どうですかと言ったら、何百何十億でありますよということを申した省もあるのですよ。そうしますと、大蔵省、厚生省、農林水産省、通産省、建設省というのは、国会を軽視するのですか。少なくとも予算について私たち予算委員会分科会で審議しているのですから、予算について私ども質問をする権利はあると思うのですよ、審議し決定する審議権は国会にあるのですから。それをその編成過程の問題についてお尋ねしてお答えがないとは何ですか。まさに国会軽視じゃありませんか。竹下さん、どうなんですか。竹下さんも私と同じように官僚出身ではなく、議運、国対を長くやってきた仲間だと私は思っているのですが、やはり国会というものを国民に開かれた国会にする、予算というものを国民に開かれた予算にするということは、お互い党人として努めようというようなお気持ちがあるのじゃないかと思うのですよ。どうなんですかね。お尋ねします。
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 私もいろいろ疑問を持っておったことがございますけれども、いわゆる官房調整費と言うよりも官房調整財源とでも言った方が適切ではないかと思うのでございますが、それはまさに予算の過程において絶えず動いていくものであるので、一体数字で計算できるものかどうかということも私には判然と理解ができておりません。まさにいわゆる主計局主査あたりの段階からずっと変化して上がってくるものであるという感じがいたしますので、どの段階で幾らあるかというような計算ができる性格のものではないような感じがしております。まさに素人答弁でございますが……。
  67. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 大蔵省御出身で専門家である前の大蔵大臣村山さんもおられるわけですけれども、角度を変えて私は聞きましょう。  とにかく予算編成期になりますと、全国から各−種の団体の方が大ぜい東京にお集まりになるわけですね。地方自治団体もございましょう。それからまた、各種民間のそれぞれの団体もございましょう。そういう方々が予算編成期になりますと霞が関周辺にたくさんおいでになる。自主的においでになる方もあるようでありますが、それとなく各省の方からいろいろな連絡があって、心ならずもといいますか、立場上忙しいのに出てこなければならぬという方も大ぜいあるようであります。そして自民党本部にも大ぜいの方がおいでになる。あるいはこの周辺のホテルにも大ぜいお集まりになる。そして大蔵省の内示はどうもけしからぬ、どうもこれが足らぬじゃないか、これについて何とかせいというお話になる。そして各省の課長さんや局長さんや次官の方々が、それぞれの段階の折衝に大蔵省にお出向きになる。そして、いやこの予算については幾ら取りました、幾ら確保できましたというような報告がそれぞれの団体に行われる。また、それぞれの団体の方は各省をお回りになる。あるいは大蔵省にも大ぜい御陳情に参るでしょう。こういうような状態を考えますと、それに費やされる経費というのは一体どのくらいだろうか、まさに莫大な経費ではないかと私は思うのですね。  竹下さんも御存じだろうと思いますが、こういうような予算編成をやっております国というのはないんじゃありませんか。内示をする額と閣議決定の額とが全く変わらない。しかもその間には、いま申し上げたような陳情の行動なり折衝の行動が行われて、この部分については予算が取れた、取れたというような御報告がある。そして最後も答えは同じだ。そして予算編成期には全国の皆さん方が大ぜいしてお見えになる。このような予算編成のやり方をやっている国というのは、私寡聞にして日本くらいじゃないかと思うのですが、その点、竹下さんあるいは局長でも結構ですが、御感想があれば承っておきたいと思うのです。
  68. 禿河徹映

    禿河政府委員 確かに、日本予算の編成過程のやり方といいますのは、余り諸外国にも例がないようでございます。私どもいろいろ諸外国の予算編成過程を調べてみたこともございますが、どちらかと申しますと、政府案ができますまでは一切数字も外に出ていかないというのが多いようでございます。国によりましては、各省の要求金額自体も外部に発表しないとかいうふうなこともございます。そして政府案ができまして国会に提出いたしました段階で初めて数字が出ていく、その途中の過程の数字は一切公表しないという国が多いようでございます。そういう関係もございましょうか、先生ただいま御指摘がございましたような、いろいろ各地方から予算の陳情というふうなことで、たくさん首都に集まってくるというケースも少ないようでございます。ただ、これはいろいろ国情等々の差によるものであろう、かように考えております。
  69. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 まあそういう状態ですね。  そこで、また角度を変えて私は各省庁の会計課長さん、予算課長さんにお尋ねしたいと思うのですが、さっき禿河さんがお答えしましたように、いわゆる官房調整費というものは内示額の中に留保してある調整分としての経費であるということなんですね。そうしますと、結局各省庁に、各省庁の官房長のところに、金額はどういうわけかおっしゃらないけれども、行っていることは間違いないわけですよ。そうして優先順位をつけて、それをどういうふうに配分するかということを一々大蔵省の方と折衝になる。局長折衝や次官折衝という形でやるわけでしょう。大臣折衝は主として公開財源を中心にしておやりになるようでございますが、それは別として。  とにかく厚生省なり農林水産省なり通産省なり建設省なりの官房に内示された額であることはもう間違いないわけですよ。そうでしょう。それをどこへ持っていくかということは、いわば厚生省なり農林水産省なり通産省なり建設省の立場で自主的におやりになっていいはずじゃないですか。そういう疑問を持ちませんか。しかるにその分を、いまのお話でもそうでありますが、優先順位をつけて配分するのに、わざわざおたくの省の局長さんや次官が大蔵省の方へ行って最敬礼をするか、過去には肩をもんだというような方もあったそうでありますが、そういうようなことをやって、そうして決める。大蔵省の方からあなた方のふところに手を突っ込まれているのと同じじゃないですか。そんなことをされて当然だと各省庁思っているのですか。あなた方のふところに大蔵省から一々手を入れられているのと同じじゃありませんか。怒ったらどうですか。そういうお気持ちはあるのですか、一通り各省にお伺いいたします。
  70. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 御案内のように、予算政府全体で決定すべきものでございますから、財政当局と協議をしながら編成すべきものであろうと考えております。
  71. 石井賢吾

    ○石井政府委員 厚生省と同じ意見でございます。
  72. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 官房調整費の財源としての話でございまして、それをどういうふうに重点的に配分していくかということは、やはり財政当局と協議しながら国全体として決めていくべきものと思います。
  73. 杉岡浩

    ○杉岡政府委員 ただいま通産省からも御答弁がございましたように、やはり大蔵省とその優先順位等について打ち合わせながら配分していきたいと考えております。
  74. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 どうも元気のないお答えですな。まあ会計課長さんでは無理ではないかという声もございます。実は官房長さんをお呼びしたのですが、どうもそれぞれ各省の官房長さんお忙しいというので、きょうは来ないので残念なのですが、官房長さんが来れば一人くらい元気のある方がいたのじゃないかと思って残念に思います。  それはそれとして、いまのようなお答えに対して疑問を持たないのですか。そういうことだからこそ、何か各省の上に大蔵省があるというようなことになっているんじゃありませんか。私は、そういうことについて、各省庁一人くらいは疑問に思っているよと言うくらいの方があってしかるべきだと思うのですが、ここに禿河さんや吉野さんがにらんでおられるからきっと遠慮しておるのじゃないかと思うのですね。  そこで大臣お尋ねしたいと思うのですが、確かに、日本日本的な事情があるということは私はわかりますよ。等しからざるを憂えるというような形で、大ぜいの皆さんのコンセンサスをもつて予算をつくる、開かれた形で予算をつくるという考え方は、私は一つ考え方だと思うのです。しかし、わが国予算編成を考えますと、余りにも大ぜいの皆さん方がこの時期においでにならなければならないというむだについても、私はやはり省くということを考えてしかるべきじゃないかと思うのですね。とすれば、その官房調整費という調整財源は、大蔵省が各省庁に内示する段階までに、各省庁と事前に十分詰めておくということも一つの方法じゃないかと私は思うのですよ。そしてあとは公開財源で、政治的立場で、大臣折衝なり三役折衝なりで片をつけるということが一つの方法ではないかと私は思うのです。官房調整費というようなおかしなかっこうで、金額を明示しないかっこうで、こっそり各省庁に配分しておいて、実際には大蔵省がそのひもを握って、各省庁のふところに突っ込むというようなおかしなことをやらないで、それ全体を含めて、公開財源一千八百億、たとえば官房調整費が三千億円ならば、四千八百億円を公開財源という形で正々堂々とおやりになったらいかがかと私は思うのです。いかがでしょうか。
  75. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、最終的に大臣折衝で行いますのは主とし公開財源になります、そうでないものも幾らかございますけれども。大蔵省にあります権限というものは、一応文字の上では調整権限なんですね。そうするとまさに、要するに公共事業等で見ますならば、補助率とかいうものは本当に横並びの、これをいじればこれもいじらなければならぬとか、そういう長い歴史の中でそれなりに知恵をしぼった体系ができておるわけです。そういうものはまさに調整すべき課題である。それから、中小企業と農業との場合の金利バランスは同じにしていくとか、いろいろなバランスというものがあって、最終的には政府全体の責任においてつくる予算でございますから、そういう段階を踏んでいった方が、私はそれなりに開かれた予算編成という感じがしております。  ただ、陳情団等がたくさん来て、むだだという感じは私も率直に持っております。ことしみたいに、ないないと言っておりますと、陳情団がことしは少なかったというような話もございますけれども、陳情行為というものは、その意味においては民主主義が日本ほど発達しているところはないのじゃなかろうか、そういう民意の反映を陳情という行動によって行うわけでありますから、そういうものを私は否定するものでもございませんけれども、節減はされつつあると思います。そして私も、大蔵省におったこともありませんし、大蔵大臣になってみて、そういう一つ予算編成の過程というものは最も開かれた形でやられておるという感じが素直にいたしております。それが私の実感でございます。
  76. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 開かれた予算編成にしていきたいという竹下大蔵大臣の御見解一つの御見識であり、お考え方だと私は思うのです。とすれば、私がさっきから言っておりますように、国民が素朴に疑問を持っている、内示をした額と最後の答えも同じだ、表に出ているのは公開財源の千八百億円、何となくその間に官房調整費というえたいの知れないものがあって、あれは一体何だろうかという疑問にも、開かれた予算編成をする以上は答えられたらいいのじゃないかと思うのです。  禿河さんはどうもなかなかかたくて答えにならぬのですが、いま一人の主計局次長の吉野さんがおられるから、吉野さんに聞きましょう。吉野さんの担当の分野でも結構ですが、担当しておられる分野での各省庁の官房調整費は一体幾らあったのですか。
  77. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 先ほど来禿河次長及び関係省庁からもお答えしておるとおりでございまして、あくまで大蔵原案から政府案への確定の過程におきまして財政当局と関係各省との間のいわば調整作業の一部分でございますので、そのような調整過程の数字につきましてこの国会の場で申し上げることは御容赦をさせていただきたいと存じます。
  78. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 どうもおかしいですね。開かれた予算編成にしたいという大臣のお考えからいって、私はそぐわぬと思うのです。国会の審議権のたてまえから、あくまでも、官房調整費は総額幾ら、各省庁幾ら、これを国会に示していただきたい。このことを主査に強く要求いたします。そうでなければ国会軽視ですよ。こんなことじゃ済みませんよ。ひとつ主査を通じて官房調整費は幾らであるか、国会に明示いただくように御指示をいただきたいと思います。
  79. 村山達雄

    村山主査 後刻各党の理事と相談いたします。
  80. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そうしますと、主査報告の中にきちっと入れて、予算の理事会の中できちっとこの問題を相談いただけますね。
  81. 村山達雄

    村山主査 その取り扱いにつきましては、後刻各党の理事と相談した上で決めさせていただきたいと思います。
  82. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 国会にお示しいただくことを強く要求しておきます。
  83. 村山達雄

    村山主査 山口鶴男君の質疑は終わりました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  84. 村山達雄

    村山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  大蔵省所管について質疑を続行いたします。中村重光君。
  85. 中村重光

    中村(重)分科員 銀行局長お尋ねするのですが、生命保険会社と契約者との間のトラブルが非常に多くなっているのです。前置きは抜きますけれども、入院疾病特約とか、傷害特約とか、手術給付金特約とか、いろいろあるのですが、主として第三分野のトラブルですね。  トラブルの一例を申し上げると、手術給付金の特約では、開頭術とか、あるいは開胸術とか開腹術とか、四肢切断術とか、眼球摘出術とかということでいろいろあるでしょう。これらの手術に伴って給付金を支払うという規定がある。御承知のとおり、最近医学が非常に進歩してきた関係もあるのだと思うのですが、背中を切開して腎臓を出すということ、あるいは放射線を照射して病原のある臓器を破壊をするということになる。そうすると、開腹とか開胸をやらないで済むわけです。ところが保険会社は、開腹術とかあるいは開胸術とか、そういう契約になっているからというので保険金を払わないのですよ。それでトラブルが起こるのですね。こんな不合理というのか、ふざけたことはあってはならないと思うのですが、この点はどうお考えになりますか。後でまとめてこれは大臣からお答えをいただきます。
  86. 松尾直良

    ○松尾政府委員 保険部長からお答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、入院手術特約といったものは保険としてわりあい新しい分野でございます。多くの保険が統一約款と申しまして、各社統一をした約款で売られておるわけでございますが、こういった入院手術特約につきましては、歴史が新しいということもありまして、各社若干ばらばらな内容になっておる面がございます。  これは大きく分けまして、どういう手術の場合に保険金給付が行われるかということの規定の仕方に大まかに申しまして二通りございます。ただいま先生御指摘になりました開腹術あるいは開胸術というような決め方をしておる、これを手術名包括方式と申しておりますが、もう一方は手術名の個別列挙方式で、どういう手術であるという細細とした手術名を数十列挙しておる方式と、二通りあるわけでございます。  こういう包括方式というものが出てまいりましたのは、手術名というのは非常に技術的で素人にはわかりにくい、むしろ素人にわかりやすいように、開腹術とか開胸術ということで、広くいろんな手術がカバーされる、こういうことから出発をしておったのでございますが、ただいま先生御指摘のように、医学の進歩が非常に急速でございまして、当初予定されていなかったような手術方式が出てまいります。たとえばヘルニアの手術につきまして、医者によってあるいは病状によって、従来は前からメスを入れるというのが後ろからメスを入れる。そうすると、開腹術という規定の仕方をしておりますところでは、それは契約上保険給付の対象にならないというような問題が出てまいりまして、先生御指摘のようなトラブルが現実に起きてまいりました。これは御指摘をまつまでもなく、同じ病気で同じ効果がある手術をしながら、ある会社の場合には支払いが行われ、ある場合には行われないということは、はなはだ適当でないということで、昨年来早速業界の中で検討を進めてまいりまして、業界の中の医務委員会というところでいろいろ検討いたしまして、やはりこれは早急に是正されるべきものである、素人わかりがするという点では、先ほど申しました手術名包括方式という方がよろしいのですが、トラブルを避けるためには細々と手術名を列挙した方がいいではないか、かつ、各社が統一した約款を用いるべきであるというような結論を出しまして、これは医務委員会の結論でございますが、目下そういう方向で検討を進めておる。  ところが、統一約款を採用するというのは時間がかかる問題でございますので、すぐにでもこういう事態を避けるために、暫定的に、いまの開腹術とか開胸術と書いております書き方の中でも、こういう手術には準用するというようなことを速やかに実施に移すべく私どももただいま指導いたしておる、こういう段階でございます。
  87. 中村重光

    中村(重)分科員 保険業法第七条で、生命保険と損害保険との兼業禁止という規定があるのですね。ところが、昭和五十一年の九月に保険部長方針見解というのが出て、そこで損保と生保各社の相互乗り入れが行われた。そのことで契約というものが多様化してきたということですね。それが一つ原因と言っていいのか、そういう摩擦が起こっている導因役的なものを果たしたのではないかというように思うのですが、それは否定であれば否定で結構なんですが、いずれにしても、いまお認めになったようなことが起こっているわけです。  これは外交員というのか外務員というのがわからないんだろうと思うのですね。あんな裏に細かく書いてあるのを読んで保険に加入する人はいないですよ。ところが、現実にそういう問題が起こったら保険金を支払ってくれない。いま行政指導は、審議会の答申もあるわけでして、それに基づいておやりになるということはあたりまえなんですけれども、そうでなくて、腹を切って腎臓を出す、背中を切って腎臓を出す、腎臓を出したことに間違いないのですね。それから、切開手術しなくたって放射線を照射して破壊する、そこで手術してやったと同じ効果をあらわすんだから、これはもう当然払うのが常識だと私は思うのですよ。  それで、いろいろ指導されるということでございますけれども、保険会社もなかなか、何という表現で言ったらいいのか、役所の人をはね返すなんといったようなこともあり得るわけなんで、私は強力な指導が必要だと思うのですが、大臣いかがですか。これはもう常識だと思う。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 話を聞いていれば私もそういうことが常識のような感じもいたしますが、実態にわたって私そういう知識がきわめて乏しいものですから、私のお答えお答えになるとは思いませんが、常識的にはそういう感じはいたします。
  89. 中村重光

    中村(重)分科員 それは保険部長も私の指摘を否定しなかったのですよ。もっともだ、だからそういう方向で指導していく、こう言っているんだから、大臣も積極的にそういうものは改善させるという力強い答弁を私は期待したんだけれども、ずいぶん用心深く答弁されて、あなたらしくもないなと思って、いま聞いていたのです。  いずれにしても、これは保険会社の契約重点主義ですよ。過当勧誘ですな、それがもたらした。最近、保険金目当ての殺人とか自殺とかいうのがあるでしょう。これももう相手構わないで、その金額のいかんを問わないで、ただ勧誘さえすればよろしいということだから、そのような大きな社会悪を引き起こすようなことだって起こってきているんだから、いま言うような給付金のトラブル解消ということだけではなくて、いわゆる契約重点主義というようなことを中心とした保険会社のあり方というものにメスを入れる強い行政指導というものがなされなければならぬ、私はこう思います。この点、大臣いかがですか。
  90. 竹下登

    竹下国務大臣 その方向で指導してまいりたいと思います。
  91. 中村重光

    中村(重)分科員 薬価基準のことについてお尋ねをするのですが、この間も予算委員会の総括で渡辺委員から質疑がなされておったのですが、もう目に余ると思うのですね。  高い薬を買っている者はないかと探し求めていくというようなかっこうでバルクライン九〇%を装う。ともかく、抗生物質を二十円でお医者さんは買うのですね。それを保険診療では百二十円で請求するのですよ。それからへんとう腺とかなんとかの消炎剤というのがあるでしょう、あれは五円ですよ。それを保険診療では十倍の五十円で請求する。だから、いまの給付の出来高払い制度というようなことも、これは薬を売らんかなということで患者を薬づけにしているということになっているわけですが、それだけではなくて、実際に薬を問屋から買うのと保険診療で請求する額の間に五倍とか八倍とか十倍とかというようなことなのだから、これは事は厚生省が所管であるけれども、保険会計が赤字になってきている。それについては政府管掌を初め財政支出をしていかなければならぬということから考えると、この点に対しては大蔵省は厳しく薬価基準の見直し——アメリカとか西ドイツなんかの例を見ても、総医療費の中に占める割合というものは一二、三%でしょう。日本は四〇%以上でしょう。こういったようなこと自体がおかしいと大蔵省考えてメスを入れていくという態度をなぜにおとりにならないのだろうか、こう思うのです。この点はどうお考えになりますか。
  92. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 私担当外でございますので、あるいは的確なお答えがむずかしいかとも存じますが、ただいま先生御指摘の薬価の問題、これは非常に重要な問題でございまして、御指摘をまつまでもなく、厚生省におきましても絶えずその適正化について努力をしているというふうに私ども聞いております。これは財政にとりましても非常に大きな影響を持つ問題でございますので、今後とも私どもは厚生省の努力と一体になって適正な薬価水準というものが形成されてまいりますように努力をしていかなければならない、かように考えております。
  93. 中村重光

    中村(重)分科員 ともかく、薬のことば厚生省に行くよりも武見会長のところへ行った方が早わかり、これは定説みたいになっているのですよ。厚生省がせっかく努力をしているということだけれども、そういういろいろな圧力もこれあり、製薬メーカーも厳然として後ろに控えているのだから、そういうもろもろの大きな壁によって厚生省の努力というものが実を結ばないでいる。少なくとも厚生省も、良心的な考え方を持って是正をしていかなければならぬと思っていると私は思う。それができない壁がある。これはやはり大蔵省が打ち砕いていくというぐらいの態度が必要だ、こう思うのです。この点はきわめて重大な問題だから大臣から。
  94. 竹下登

    竹下国務大臣 先般来薬価基準の改定につきまして予算委員会等でももろもろの議論が行われまして、厚生省といたしましてもその見直し作業がかなり進んでおる段階であるというふうに聞いております。そしていまのいろいろな客観情勢のお話がございましたが、そういうものに対応いたしましても、これは必ずしも直接関係のある問題ではございませんけれども、中医協が一応正常化した。そういうところからこの薬価基準の改定の問題はかなり早まりつつあるというような、厚生大臣の答弁等を聞きながら、私もそのように感じておりますので、財政当局といたしましても、それをただ静かに見守っておるだけではなくて、財政当局の物の考え方として、厚生省とも協調して適正な薬価が決定されるような方向に努力してまいりたい、このように考えます。
  95. 中村重光

    中村(重)分科員 銀行局長に申し上げるのですが、この政府三公庫の出資それから財投ですね、これが総貸出高の一〇%というのがここ二十年近く変わらないのです。絶対額はふえているが、これは総貸出高がふえてきているわけだから、そのパーセンテージは余り変わらない。これではいけないと思うのですね。これはいろいろな銀行方面等の圧力もあるのだろう、またそういう金融機関に対する大蔵省の配慮もあるのだろうと思うのですが、金利にしても余り民間よりも安くないといったようなこともあるわけです。だから政府中小三公庫に対しては、信用公庫を含め、あるいは保証協会に対するところの補助額等々、中小零細企業の倒産は御承知のとおりのような状態ですから、思い切って政府の出資なり財投を増額していく、それから条件を改善していくということが必要だろうと思うのですが、いかがですか。
  96. 米里恕

    ○米里政府委員 政府系中小三機関の問題でございますが、御指摘のように、計画自体は五十四年度、五十五年度も大体一〇%増という数字になっております。五十四年度についてみますと、大体この一〇%増という枠内で、資金需要に即応する中小三機関の役割りとして、実績、計画対比がとんとんに進んでおるという状況でございます。御承知のように、中小三機関の場合に、申込額と現実の貸出額にそう大きな差はございませんので、もっぱらその資金需要がどれくらいあるだろうかというようなこととの関連になるわけでございますが、五十四年度におきまして、五十三年度に比べて一割増しくらいの資金需要で大体三公庫が即応してまいるということで、過不足なく年度を平均的に推移できるという見通しになっております。五十五年度も、大ざっぱに申しまして大体一割増くらいの数字になっておりますが、これも私どもの見通しでは、申込額に対応する貸出額としては大体この辺でいいのじゃなかろうかというように考えております。  一般的に、資金需要が五十四年度と五十五年度と全体を通じてどういうふうになってまいるかということは必ずしもはっきりいたしませんけれども、たとえば政府の経済見通しのもろもろの数字などから見まして、大体一割増ということで適切なのではなかろうか。多くの申し込みがあるのを貸し出しの段階でそうカットしておるという状態でもございませんので、一応そういった計画を立てておるわけでございます。もちろん、五十五年度の情勢が変わりまして、資金需要が非常に旺盛である、なかなか一割増では応ぜられないというようなことになれば、それはまたその段階で適切に対処するように考えなければならぬと思っておりますが、現在のところはこれで十分対応できるのじゃないかというふうに考えております。
  97. 中村重光

    中村(重)分科員 三公庫の融資対象というのがふえてくるんですね、いわゆる浮き貸しというような形がありますから。だから、資金需要はますます増大をしてくるということになる。いまそうカットしているものでもないのだからとおっしゃるのだが、現場を知っている私の方としては現実はそうじゃない、こう申し上げざるを得ないのですよ。これは信用力がないという形で貸し出しをしないということもあります。それからカットしていくということも事実ですね。それから保証協会の保証、ここにも限度があります。枠がありますから、その枠を超えられないというような形に実はなっていますから、年末とか年度末ということになってまいりますと、前の四半期にも食い込んでしまっている。いわゆる窮屈になってきますから、特別な配慮をする必要があるということをひとつ申し上げておきたいと思います。  それから金取引の問題です。これは通産省が所管であるわけですけれども、いまや金の自由取引ということで金管理法というのは死文化している。ですけれども、通貨としては大蔵省が所管、物としては通産省が所管という形になっておる。ところが現物売買、先物取引、商品市場では先物と言うのですけれども、金の場合は延べものという形で実質的には同じようなことをやっている。これはまさに無法地帯になっている。テレビでもしょっちゅう深刻な被害者の訴えというものが報道されているわけですが、金管理法というものがまだ廃止されていないという実態等々から考えて、大蔵省というものは重大な関心を持って、これにどう対応していくのかということ、所管の通産省を初め関係各省とも連携をとりながら対策を講じていくということでなければ、政府は何をしているのだ、この無法地帯というものを放任していくのか、どこに政治があり行政があるのかという痛烈な批判というものが高まりつつあることは御承知のとおりだと思うのです。この点に対してはどのようにお考えになりますか。
  98. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 御指摘のとおりでございまして、私どもは、外為管理法上、通常の物と金とを分けて考えておりまして、対外決済手段の一つのものという考え方で非常に重視しております。  御指摘のように、四十八年輪人の自由化、五十三年輸出の自由化をいたしたわけでございますが、そのときの考え方は、国民が自由に金を保有できるようにしょう、そのはね返りで、ただいま御指摘のような国内の取引についていろいろな問題が出ておるわけでございます。国内の問題について、商品取引所の問題等々、通産が所管しておりまして、去年の協会をつくるという問題、こういうような際には、私どもも通産省と一緒になりまして議論いたしております。中村分科員の御存じのとおりで、いろいろなPR活動とか啓蒙というものを通産省はやっておるわけでございますが、御指摘のような点は重々踏まえまして、私どもも重大な関心を持って見ておりますし、その都度お互いに意見交換をやって、どういうふうに改善するかということは絶えず検討をしておる次第でございます。
  99. 中村重光

    中村(重)分科員 先般、日本金地金流通協会ですか、これは通産省、大蔵省の共管にするか専管にするかということで、結局通産省の専管になったわけですね。これは、いいものを育成して悪いものを追放していくということでPRをしていこうと、いまあなたもそうお答えになったのですけれども、私は、こんなことでは悪いものの追放なんということは不可能だと申し上げてもよろしい。  商工委員会でも何回もやりましたし、私が商工の流通小委員会の小委員長をしているという関係もありますが、そういうことで関係各省も御出席をいただいていろいろこの問題について取り組んでまいりました。商品取引と一緒に上場しようというような取引業界の声もあります。しかし、いまの商品取引業界の実態を考えると、少数のプロのために多数の庶民が巻き込まれていって損害を受けるという形、特に金ですから、そういう実態というものが起こってくるということを私どもはおもんぱかっております。したがいまして、そういう意味の上場というものには必ずしも賛成はいたしかねる。また、業法をつくろうというようなことも通産省エネ庁の方で検討をしておるようでございます。ですけれども、通産省は通産省としてやるべきことはやらなければなりませんが、英国は、バンク・オブ・イングランド法ですか、これによって大蔵省が規制をしているのですよ。ですから、諸外国のこういう例等もあり、大蔵省大蔵省として、単に協力ということよりも、みずからこの問題に対処していくということは、必ずしも通産は通産、大蔵は大蔵だという縦割り行政の面ではなくて、相連携する点は連携する、独自な立場でやるべきものはやる、そういう方向が当然考えられなければならないと思いますが、大臣、いまお聞きになっていかがですか。
  100. 竹下登

    竹下国務大臣 通産省で金地金流通協会でございますか、そういう議論も私もいろいろ聞いておりますが、先ほど国際金融局長からお答え申し上げましたとおり、われわれとしても重大な関心を払って、これは十分指導啓蒙に努めてまいらなければいかぬという認識の上に立っております。
  101. 中村重光

    中村(重)分科員 きょうは通産省からもお見えでしょうが、もう時間が五分ぐらいしかありませんから、商工委員会等でやることにいたします。せっかく御出席いただいたけれども、御検討いただいて、質問の際にお答えいただくということでお願いしたいと思います。  サラ金の問題をお尋ねするのですが、どうでしょう、これは議員立法でやろうと言って各党それぞれの案を出しながら、なかなか議員立法もまとまらない。政府の方も、大蔵は大蔵の主張があり、法務省法務省の主張があり、経企庁は経企庁の主張があって、役所の考え方が一致しないということで、悪徳金融業というのは全く悪い商行為を一層露骨にしている。いい庶民金融機関はその巻き添えによって悪評をともに受けるというようなこともあるのですが、もうここらでサラ金に対するところの立法措置をやって、厳しく規制をしていくということでないと、零細中小企業者また一般庶民も救われない。私ども弱い者は政治の場で救われないのか、強い者だけの政治なのか、これが本当の弱い立場の人の悲痛な声ではないでしょうか。この点についてはどうお考えになりますか。
  102. 米里恕

    ○米里政府委員 先生御指摘のとおり、サラ金を含めました貸し金業界の問題については、いろいろ社会的な問題が起こっております。こういういろいろな問題が発生いたしますのは、一つは業者の質の問題ということがあろうと思いますし、あるいは現在の制限利息の水準の可否という問題もあろうと思います。また契約内容が適正かどうか、取り立て行為が適正になされているかどうか、そういったようなもろもろの問題があろうかと思います。いま挙げましたような問題は、本来はいずれも法律によって規制をするのが一番適当であるということは、私ども全く同じ認識でございます。こういった認識に立ちまして各党でいろいろ御勉強をされまして、八十七国会、八十八国会に各党それぞれの案をお出しになったわけですが、御承知のような諸般の事情により廃案になって今通常国会に至った、こういう状態でございます。  この問題は、いまもお話がございましたように、政府のサイドで立法するということは事柄の性質上なかなかむずかしい問題がございます。制限利息という問題をとりましても、これは一つ判断の問題であって、何%が適当だということは、客観的な確たる理屈というものがなかなか出てまいらない。また、いわゆる出資法の利息の最高限度の問題と利息制限法の利率の問題との間の取り扱い、グレーゾーンとか、考え方によっては任意ゾーンと言われておりますが、その段階の支払いをどういうふうに考えるかということにつきましては、最高裁の判例などもございまして、政府として、最高裁の判例に対する見解も含めながら立法してまいるということは、各省間の意見も一致せず、また行政あるいは司法というような関係から申してもなかなかむずかしい面もございます。そういったことで、各党が積極的に御勉強になって議員立法をしておられるのだと思いますが、私どもといたしましては、いずれにいたしましても、現実に日々刻々いろいろな問題があるわけでございますので、再三通達を発しまして、最近で申しますと五十三年の九月あるいは五十四年の十一月、去年の暮れでございますが、上限金利の引き下げであるとか、業務内容の適正化であるとか、必要に応じて報告、調査を行うというような線で、庶民金融業協会及びそのアウトサイダーに対して、大体各党共通のお考えに沿ったところは行政指導を進めるようにというような通達を各都道府県に発しております。  しかし、これは行政指導ということよりも、やはり法律によって規制するということが事柄の本質から見て適当であるというように考えますので、私どもとしては、今通常国会で早期に法案が成立することを強く期待しておる次第でございます。
  103. 中村重光

    中村(重)分科員 これで終わりますが、最後にこれは大臣に、銀行局長が最初に言われたのは政府がこれをやることはどうか、一番最後に、ただ行政指導ではなくてこれは立法化していかなければならぬ、それに対しては期待をすると言われたのだ。政府はやらない、議員立法で出ることを期待するというように受け取れるわけだ。そうすると、政府はもう行政指導以外何もやらないのだ、こういうことになる。私はそれは問題だと思う。しかし、村山さんからおしかりを受けたら大変なので、時間が来ましたからこれで終わらなければなりませんが、そうでなくて、やはり政府も積極的にこれに対応して立法措置等についても検討を加えていく。そして議員立法というような点等もあることは事実でありますから、そういう点についてはともに話し合いをすべきものは話し合いもしていく、こういうことでなければならないと思います。私は、積極的な政府の立法についての対応というものがなければならぬと思います。ひとつあなたの御見解を伺って、終わることにします。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 これは私も両方の立場に立ってのお答えになろうかと思うのでありますが、確かにこの種の問題は、政府部内で正式な手続でもってこれを詰めようとしたときに意見調整に大変時間のかかる問題であります。したがって、幸いにしていま各党が案をおつくりになった、そしてもう合意のできる部分というのはかなり詰まってきている、私現実にそう思っておりますので、そのようなお手伝いのための努力を大いにいたしまして、できるだけ早期にそれが合意に達するような方向になるように御協力申し上げてみたい、このように考えております。
  105. 中村重光

    中村(重)分科員 これで終わります。
  106. 村山達雄

    村山主査 中村重光君の質疑は終わりました。  次に、神崎敏雄君。
  107. 神崎敏雄

    神崎分科員 大蔵省が二月二十六日に発表されました一月中の外資導入状況によりますと、その流入超過は千九百六十七億円と過去最高になっております。そのほか株式、公社債なども高い水準であります。要するに外貨の流入がかなり増加している傾向にあります。この背景にオイルマネーのわが国への流入があるという点も明らかになっております。外資の流入の増加傾向について大蔵省当局は、わが国への影響は当面はないと考えておられるのでしょうか。やはり私は程度の問題であると思うのです。たとえば最近、オイルマネーの日本株式取得がふえておることが一つの話題になっております。ある調査によりますと、オイルマネーの総額は七四年六百億ドル、七五年四百億ドル、七六年も四百億ドル、七七年も四百億ドル、七八年は百五十億ドル、七九年はうんと上がってまた六百億ドルと言われております。そして八〇年は千億ドル、約二十四兆円にも達すると言われております。このうちわが国にどれだけ入ってきたのか、またことしはどうなるのか、正確にはもちろんわからないわけですが、八百八十五億円はすでにあるだろうという人もあります。少なくとも大蔵省当局はオイルマネーのわが国への流入増加の傾向に注目はしておられると思うのですが、いかがでございましょうか、お尋ねいたしたい。
  108. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 数字の点でございますが、御指摘のように十二月以降、株、社債等で千億円のオーダーで続いております。この中でいわゆるオイルマネーがどのぐらいあるか。巷間いろいろなことが伝えられておりますが、御承知のように資本の取引については秘密が非常に問題になっております。それからもう一つは、いろいろなダミーを使ったりクッションを使ったり、本当のところつかむことが困難でございます。私どもの方では、そのうち幾らぐらいのものが云々であるかというようなことを率直に申して把握できません。したいとは思うのでございますが、なかなかできません。それから三番目には八〇年、いろいろな数字が流れておりますが、先般アメリカの財務省の財務次官が議会の公聴会で言った数字あたりが一応の権威があるかと思いますが、千とか千二百とかそういう数字が黒になります。その中で日本にどのぐらいのものが来るのであるか。これも、たとえばサウジアラビアならサウジアラビアの場合にいろいろな資産運用の考え方がございます。こういうようなものは当然のことながら、部外者にはなかなかはかり知れない。結果で推測するというようなことになるわけですが、結果も、さっき申しましたようになかなかわからないわけでございます。  それから、こういうようなものがわが国にどんどん入ってきた場合にどうなるか。二つ考え方があるわけでございます。一つは、ポートフォリオ、要するに資産運用というような考え方、もう一つは、経営権を云々するというような角度で金を入れてくる、こういうような二つの投資のタイプがあるわけでございますが、OPECのほとんどの国はどちらかというと、資産運用の考え方でやっております。したがってそういう方の御懸念はない。  それから次は、それでは金融市場なり資本市場にどういう影響を与えるかという問題であります。これは先ほどの数字で言いますと、私どもの立場で正確かどうかわかりませんが、千なり千二百なりのOPECの黒字がある。工業国はその中で五百億ぐらいの赤である。非産油途上国が六百とか七百とかの赤である。いま国際金融の領域では、いわゆるリサイクルという問題が懸念されておるわけです。たとえばわが国の場合、国際収支が赤でございますが、輸出増進でこれをやるというようなことは不可能であるわけです。したがってわが国の場合も、そういうようなリサイクルを受けなければならない。それから同時に、わが国立場で言いますと、非産油途上国等の国々に対してリサイクルに貢献しなければならない、そういうような考え方が大体国際金融の中のコンセンサスになっております。したがって、先ほど申しました資産運用の形態として考えるということ、それから、世界全体の経済の円滑な拡大を維持するためにそういうふうな金の動きを円滑にやっていくというような考え方、こういう二点から考えまして、OPECのあるいはオイルマネーのわが国資本市場あるいは金融市場に対する流入はそう懸念することはない、全体の流れがそうなっておわけであります。ただその場合私どもは、出るときにすぐ出るというような問題、あるいは入ってくるときに大量に入ってきて、現在のわが国の金融政策に阻害要因になるのかならないのか、この二点は、そういう点の御指摘だろうと思うのでございますが、いろいろ注意をいたしまして、それから、今回の改正法におきましてもそういう際に適宜適切な手が打てるような条文を認めていただいております。そういうようなことで万々遺漏のないようにやっていきたいと思っております。
  109. 神崎敏雄

    神崎分科員 ヨーロッパやアメリカでは、オイルマネーによる不動産取得あるいは金の取得がうわさになり、西ドイツではクルップとベンツの株が二五%買われた例もあります。わが国の場合では、たとえばクウェート政府取得の例で言えば、東芝株で千三百万株取得しましたが、これは発行済み株式数の〇・六一%にすぎない。しかし二十四位の大株主であります。さらに、三菱電機株千二百万株は、これまた〇・八六%でございますけれども、二十一位でございます。また、カタール政府取得の住友精密株は二十六万株、これは一%で第八位の株主です。しかし、現行法では二五%未満まで外資が占めることは自動認可しているのです。発行済み株式の二五%を超える株式が、いまも御指摘ありましたが、証券市場で売買されるとすれば、与える影響はきわめて大きいと私は思っているのです。それはいまおっしゃっておりましたが、この点について少し御見解を聞きたいと思います。
  110. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 非居住者による対日証券投資でございますが、先ほど国際金融局長の方からも御答弁ございましたが、最近の状況で申し上げますと、株式の取得、処分、たとえば十二月はかなり対日投資が多いというふうに言われたのでございますが、千百二十六億円の取得、処分が八百二十三億円でございまして、ネットで三百三億円の株式の買い越しになっております。一月で見ますと、千二百五十七億円の取得、処分が九百八十四億円、ネットで二百七十三億円の買い越し、こういう状況でございます。一方、株式市場の売買高でございますが、十二月で見ますと、全国の証券取引所の売買高は片道で三兆二千六百三十二億、こういうふうになっておりまして、先ほど申し上げました千百二十六億円はその三・五%に当たるわけでございます。こういうことで、マクロ的に見ますと、まだ外人の証券投資がわが国の証券市場に撹乱的な要因を与えるというふうには私ども考えていない、こういうことでございます。
  111. 神崎敏雄

    神崎分科員 証券取引法に照らしまして何ら違法性がないということになっても、しかし、外国投資家による株式売買がわが国の株式市場に重大な影響を与えるということはあり得ることですね。  ところで、わが国の株式市場への影響を防止するという目的のために、外資法に基づいてオイルマネーなど外国投資をチェックすることはできるのですか。
  112. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 現行法では御承知のように外資法の十一条で、先ほどお話が出ましたように原則自動認可でございますが、個別審査で持ち株比率が一外国投資家一〇%以上、あるいは全外国投資家二〇%以上の取得である場合、会社の同意ということになっております。それから、新法におきましても、原則平時自由でございますが、有事規制になっておる。それから、いわゆる乗っ取り規制というような条文もできておるわけでございます。したがって、そういう御指摘のようなことのないようにこの法律の趣旨を適確に運営していけば大丈夫だろうと考えております。
  113. 神崎敏雄

    神崎分科員 オイルマネーを初め外国資本による株式、公社債、不動産、さまざまな形で投資が行われることは、政府は原則自由ということにしております。しかし、その個々の件の量がわが国の国内法に定める基準以下であっても、総量としては膨大な量に達することはあり得るわけであります。そうなりますと、株式市場への影響だけではなくて、それの影響は非常に広範囲に及ぶことは避けられません。たとえば今日のように金融引き締め政策を強めていても、大量の外資の流入によっていわばしり抜けになっていくということも考えられるのですが、どうですか。
  114. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 先生御承知のように、金融引き締めの場合には、たとえばまずマネーサプライの観点をとりますと、その要因に確かに対外資産という問題がございます。しかし同時に、対政府信用、対民間信用という大きな項目がある。そういったもの全体を含めたマネーサプライというものがどういうふうに推移しているかを見ながら、金融政策を考えていくという問題が一つございます。また、資金需給関係で見てまいりますと、御承知のように対外資産の動きが政府の受け払いの中に入ってまいります。政府の受け払いのそういったものも含めた全体の姿その他を見まして、市場の資金過不足状態が出てまいります。それに対して日銀で金融調節が行われることになりますので、いずれもそういった対外資産の動きというものを一つの与件としながら、その他の要因を含めて金融政策全体を判断していく、しかるべき金融調節あるいは金融政策を実施してまいることになると思いますので、そういったマクロ的な見地から対外資産の動きをも見ながら金融政策を行っていくことは、マクロとしては十分可能だと思います。
  115. 神崎敏雄

    神崎分科員 外資に関する法律の第一条、これの目的には、「日本経済の自立とその健全な発展及び国際収支の改善に寄与する外国資本に限りその投下を認め、」とあります。形の上では認可制ですが、実態は自由、いわゆる原則自由、自動認可が主な流れの方針になっております。株式投資について言えば、外国の経営支配が及ぶことによってわが国の経済に重大な影響があるかどうかという点だけがチェックポイントになっておる。したがって、外国の経営支配が及ばないという場合、これであればどんな影響があってもチェックはできない仕組みになっている。また株式市場以外の面での影響、たとえば金融引き締めのしり抜け、あるいは、円高になるとさらに円高が加速される、円安になるとさらに円安が加速されるということも当然考えられます。さらに重視すべきことは、資金運用を目的とした投資であるから、流入だけではなく流出もある。外資の引き揚げ、撤退もある。これによる影響はきわめて大きいと思うのです。この面のチェック、すなわち引き揚げてはいけない、こういうことはできない。要するに外資流入の自由化拡大、オイルマネーを初めとする外資流入の大幅増加は、わが国の金融政策などのかじ取りに大きな影響を与えることは当然考慮しなければならないと思うのです。現行法規には、経済撹乱行為へ規制が欠落していることは明らかであります。  大蔵大臣最後にこの問題についての見解を聞きたいのですが、私が問題にしているのは、経常収支の赤字とかいうことではなくて、オイルマネーを初めとする外資が大量に入ってくることによって、わが国の自律した経済運営に大きな影響があるということであります。このような影響が出た場合、経済混乱の出た場合、政治責任はどういうふうにおとりになるのか、こういう観点からひとつこの問題を明確にしていただきたいと思うのであります。
  116. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 大臣の御答弁の前に、現行法の規定あるいは新法の考え方を御紹介したいと思います。  新法の一条に御指摘のように「我が国経済の健全な発展」ということがうたわれております。それから二十一条に御指摘のようなケースが、三つのケースについて記述されております。したがって法律体系といたしましては、御指摘のような場合に備えた装置ができております。あとは具体的な運用の問題になるわけでございますが、先ほど申し上げましたように誤りなきを期すべく十分注意をしてやれる体制ができております。
  117. 竹下登

    竹下国務大臣 政治責任というとこれは大変お答えしにくい問題になりますが、やはり新法によりましていま神崎さんの御心配いただいたようなものがチェックできる、そういう法的背景が一応整った。したがって政府といたしましては、それに対して非常に弾力的に対応して誤まりなきを期したいということが精いっぱいのお答えではないかと思います。
  118. 神崎敏雄

    神崎分科員 そういうことの起こらないように十分ひとつ事前事前に手を打っていただきたい、このことを要望しておきます。  きわめて時間が制約されておりますので、次の問題に移りますが、財政再建が国の重要問題となっている今日、国税庁職員の綱紀を正し、納税者の信頼を得られる税務行政がますます重要であることは明らかであります。国税庁にはこうした面を専門的に担当する監察官が配置されておりますが、現在何名配置されておりますか。大阪では何名かということをまず初めに聞きたい。
  119. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 現在監察官につきましては、定員百二十名、実員百二十名となっております。なお、大阪についてはどうかということでございますが、大阪につきましては現在、一応内部の取り扱いでございますが、二十一名を担当させております。
  120. 神崎敏雄

    神崎分科員 納税者の信頼を得られる税務行政の確立にとって重要なポイントの一つは、直接納税者と接する全国五百六の税務署の職員、とりわけ税務署幹部、税務署長がその模範となることにあると思うのですが、いかがですか。
  121. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 そのとおりだと考えております。
  122. 神崎敏雄

    神崎分科員 はきわめて残念ですが、ここで税務署長の不当行為の事実を明らかにせざるを得ないのであります。  問題の署長は、大阪市の東住吉税務署長です。彼は昨年の七月、多分この時期に異動で就任したのだろうと思うのですが、業者などに酒食の供応を連日のように強要しているのですね。たくさんありますけれども、時間がありませんので、私の方で判明している一例だけを紹介します。たとえば七月の着任早々だと思うのですが、これは納税協会の役員との問題ですが、阿倍野東海クラブ、九月には区内の家具業者、さらに、これは指された方の人のなにもありますから、それは後で調べてもらったらいいし、お聞きになったらまた紹介しますが、特にここではイニシャルで言いますが、T土建、M砥石会社、こういう場合は南区の料亭の清水などでやっておるのです。これは当局で調査すればわかることですから、私は特に昨年の年末年始、この種の署長の行動をひとつ正確に調べていただきたい。  しかもこの署長は、こうした宴席の席上必ず、そのもてなしが貧弱である、こういうことを公言をする。きわめて傲慢不遜の態度をとる。こういう状態が重なるにつれて、副署長が署長との同席をいやがって、以後はもう宴会があるたびに署長と副署長が口論するというのであります。労働組合に対する態度も狂気じみておって、大阪国税局の総務課長より叱責されたこともある。しかし逆に手ぬるいと反論するなどその行状は、署員の信頼を失うばかりか、納税協会を初め税務署に協力的だった諸団体、納税者の間にも非常に不信感が広がっているという状況にあります。  さて、そこで伺いますが、税務署長が特定の業者の酒食のもてなしに応じ、またこれを要求するという行為は、当局はどういうふうに処置されるか伺いたい。
  123. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 大変具体的な御指摘をいただいたわけでございますが、具体的な問題を控えまして私がここで一般論につきましていろいろお答えすることは、われわれの方もまだ実情未調査でございますので、そういう段階で一般論としてではございますけれどもお答えすることは、かえって誤解を生ずるゆえんかと思いますので、調査を約束させていただくということで、この席上におけるただいまのような御質問に対するお答えは御容赦願いたい、このように考えるわけでございます。  なお、大変恐縮でございますが、われわれの立場を一言この席で申し上げさせていただきたいと思いますが、われわれといたしましては、課税の適正公平を期しまして税務行政に対する国民の信頼を高めていく上には、綱紀を厳正に保持することが基本的に重要であると常々考えております。この観点から当庁では従来から綱紀の粛正についてあらゆる努力を払っておりまして、たとえば税務運営方針の基本の一つとして全職員に示達し、また、機会あるごとに通達等をもちまして注意を喚起し、あるいはまた、会議、研修等に際しましてもその点につきまして職員の倫理意識を高めるように常に努力しているところでございます。そういう実情でございます。  ただいまのようなお話、調査をしてみなければ確たるお答えはできませんけれども、もし社会通念の範囲を超えるそのような酒食供応を受けるというような事態があるとすれば、なお、税務行政上の必要その他につきまして十分調査をいたしまして、もし社会通念の範囲を超えるものとすればはなはだ残念なことと、このように考えております。
  124. 神崎敏雄

    神崎分科員 これについては調査をするというお約束をいただきましたので、この問題についてさらにさらにという形では時間もないから申しません。これはぜひとも調査していただきたいということを言っておきます。  国税庁の税務運営方針には、「管理者は、常に研さんを積み、識見を広め、部下職員の範となるよう努めなければならない。」こういうふうに明記されております。また、一部の職員の間に起きた不正事件であっても、それは税務行政全般の信用を傷つけるものである、あなたがいまおっしゃったとおり。東住吉の税務署長の言動は、彼一人の特別の例外とは私は思えない。程度の差はあってもいま指摘していることは氷山の一角だ。特定の事業者の酒食のもてなしに応じるという事例は数多いであろうし、そういう状況から公正な税務行政は確立されない、こういう意味でこれを重視しているのです。税務署長を招待する側にしてみれば、何の見返りもなくてそういうことをするわけがないと考えるのが常識であります。違法行為が隠されている可能性もある。厳重な調査を私は求めておきたい。  そこで、私は最後大臣に一言お尋ねしたいのです。われわれ地域の税務署長とそして納税者、あるいは納税者が自分の税金について疑義を持ったりただしてみよう、こういう形で税務署長に面会を求めましてもなかなか会わぬ。いま電力、ガスなんか問題になって、われわれもよくやっていますが、あのところなんかは、たとえばガスの問題、電力の問題といっても、社長とか副社長とか責任のある人が来て一般消費者に対してちゃんと答弁したり説明したりするのです。ところが、事税務署長なんといったら全然会わないですね。たとえばわれわれが面会に行きます。そういう納税者が、やはり国民代表の一人ですから訴えてくる。聞けば、これはなかなか道理がある。では、署長に一遍聞こうと思って行きますと、その人と一緒に行ってもその人とは会わない、ぼくと秘書だけは入れるけれどもあとは入れない、こういうような形で、村山さんなんか昔からのなにでよく御存じだと思うのですが、とにかくいまの税務署長というのは大変な権力を持っている。これでは納税意欲を逆に阻害する。もう少し納税者と会って、あるいは団体の代表とも会って、そして悪ければ悪い、あるいは聞くべきものは耳を傾けて聞く、こういうような立場をとらせるのでなければ、いまの財政問題の再建だとかいろいろ言っているときに、税収の一番の玄関でそういうようなことでいろいろな形で不信を招いていくということは、大変な問題を後に残すと思うのですが、こういう形については、大臣の方でひとつ注意を出していただいて、きちっとした折り目をつけて、会うなら会うというように指導していただきたいと思うのです。最後にそのことを聞きたいのですが、どうですか。
  125. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 実情だけを先にちょっと申し上げさせていただきたいと思います。  税務行政に対する苦情に関しましては、税務署長に面会要求があった場合には努めて面会するように、そしてまた、その事案に応じてできる限り税務署幹部が応対するようにということにわれわれの方はいたしておりまして、これは近づきやすい税務署ということから各税務署の方にも通達しているところでございますが、何分にも非常に税務署長も多忙でございます。そういう問題もございましてお目にかかれないようなこともあり、あるいは、場合によれば一部の団体の中には、非常に多数でお見えになるようなこともございまして、その場合には、お目にかかることの実りあるか否かにつきまして判断をさせていただいて、小人数の方とお目にかかっているような例もございますので、その点はひとつ実情でございますので、よろしく……。
  126. 竹下登

    竹下国務大臣 それは神崎さんがいらっしゃれば、これは国政調査権に対して最高の協力をしなければならぬわけですから当然だと思うのです。しかし忙しいと思いますよ。私は税務署長をやったことはございませんけれども、そして、これだけたくさん納税者の数がふえた今日、一々お会いするのはなかなかむずかしいと思います。しかし、いま伊豫田次長から基本的な考え方を述べましたので、そういう中で対応していきたいと思うのです。
  127. 神崎敏雄

    神崎分科員 そうしたら、多数で行った場合はなかなかむずかしいとか忙しいとかいうことが出ていましたが、そういうことではなしに、多数で行った場合だったら、十人なら十人とかあるいは二十人なら二十人とかいうことに人員を規定して会えばいいんで、いつ行っても会議会議ばかりで全然会わない、そして宴会の方は全部出席をしておる、納税者との話には逃げて欠席をしておる、こういう現状だから、あなたが御答弁されるようなことが現状であればここでこんなことは言いませんから、そのことを申し上げて終わります。
  128. 村山達雄

    村山主査 神崎敏雄君の質疑は終わりました。  次に、長谷雄幸久君。
  129. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 初めに、医療法人制度に関してお伺いします。  医療法人制度は、医療に必要な資金集めを容易にする、医業の継続性を保障する、こうした目的をもって医療法に基づいて創設をされたものでございます。このために医療法によって、余剰金の配当を禁止し、余剰金はすべて内部蓄積し、医療内容の向上に役立たせるように義務づけられております。したがって、余剰金があればそれだけ出資者の持ち分の評価額は増大することになります。しかし、このことがかえって相続などの際に、一挙に多額の相続税を課せられる結果になります。中には、出資者の死亡によって、こうした事情から医療法人は経済的危機に陥る事態さえ起きているという現状にございます。そこで、こうした事態に対して配慮するために、相続税の減免措置を講ずるなどの手直しを考える余裕はないかどうか、お尋ねします。
  130. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘のありました医療法人の相続税の課税の問題でございますけれども、御案内のとおり相続税と申しますのは、富の再配分という観点に立ちまして、事業の種類とかあるいは経営形態のいかんを問わず、やはり公平に負担をしていただくというたてまえで構成されているわけでございます。したがいまして、医療法人につきまして特別の減免措置という御指摘でございますけれども、医療法人につきましては御案内のとおり、特定医療法人という制度がございます。この制度でございますと、持ち分の規定がございませんので、いま委員から御指摘のありましたような相続税の課税上の問題がないわけでございますけれども、通常の法人形態の医療法人でございますと、やはり持ち分の譲渡も可能でございますし、それから、たとえば解散いたしました場合に、財務財産の分配もその持ち分に応じて行われるわけでございますので、御指摘のように現在の相続税の考え方からまいりますと、医療法人といえども本来の財産評価に基づいて課税価格を算定の土負担していただく、こういうことになろうかと思います。
  131. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 せっかくの御答弁ですが、私はここで一つの方法として、相続税の算定に当たっては、たとえば出資持ち分を評価減にするか、あるいは、余剰金などを考慮しない設立当時の出資金を基礎にして算定するというような方法は考ててもいいのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  132. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 先生の御質問でございますが、設立当時の出資金を基礎として相続税を課したらどうかという御提案でございますが、相続財産の価格は御承知のように、相続税法の規定によりまして、特別の定めのあるものを除いて、課税時期におきます時価によって評価するというたてまえになっております。その場合の時価は、客観的な交換価値によるということでございます。  いま梅澤審議官の方からも御説明がございましたが、やはり医療法人の出資につきましては、譲渡が可能である、あるいは中途脱退によって払い戻しが受けられる、あるいはその解散のときには財務財産の分配を受けられる、こういうようなことになっているわけでございまして、こういうような場合におきましては、すべて資産価格によるということが正しいというふうに私どもは考えているわけでございます。そういう意味におきまして、現行の法令上特別の規定がないにもかかわらず、医療法人の出資のみを時価とは認められない払い込み済みの出資金額によって評価することはむずかしいというふうに考える次第でございます。
  133. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 この点につきましては、精神病院の指定病院について言いますと、同病院の場合、精神衛生法第六条の二によりまして、診察室、食堂、リビングルーム、作業室、室内体育ホール等施設整備に対して現在、整備費の三分の一を国庫から補助しております。このことは、同病院の公益性が高いという点にあると私は考えます。そこで、こうした公益性、公共性の高い同病院に対する課税について、国庫補助を含めた施設のすべてを評価し、これをもって相続税の説税対象にするのはいかがなものであろうかと思います。特にこれら精神病院の施設は御承知のとおり、固定化して他に転用がまず不可能に近い、そういう特殊施設であることも考慮に入れなければならないと思います。  この点で、たとえば個人立幼稚園等の教育用財産については非課税措置がとられております。医療法人とは制度が全く異なるものでありますけれども、個人立幼稚園等は公益事業であることから、その経営者が死亡し相続人等に承継される場合、公益事業に使用されている財産に相続税の課税が及ぶこととなるために、その対象となる公益事業の範囲及び財産を限定して、適正な事業としての所要の制限を明確にした上で相続税を課税しているのが現在のたてまえでございますが、私はこれも一つの参考になろうと思います。これと同様に、精神病院の医療用資産についても、相続税に関しては非課税対象にするなど何らかの措置を講じてもいいのではないか。いかがでしょうか。
  134. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりましたように、精神病院につきましては別途、歳出の面で補助金が出ておることは御指摘のとおりでございます。ただ、相続税の課税に当たりましてそういうものを考慮するかどうかという問題でございますけれども、これは先ほど申しましたように相続税と申しますのは、富の再配分という観点から公平に課税をするという基本的な考え方に立っておるわけでございます。したがいまして、被相続人の財産がどういう経路で形成されたか、それが御自身でおつくりになったかあるいは国庫補助金をもってお受け取りになったかは問わず、相続時の財産の実情に即して課税をするというのが相続税の基本的な考え方でございます。たとえば国庫補助金で固定資産を取得するような場合に、法人税とか所得税では御案内の圧縮記帳の制度がございますけれども、これとても非課税という考え方ではございませんので、課税の繰り延べという措置にすぎないわけです。したがいまして、その財産の源泉が国庫補助金であるかどうかという点に着目して相続税の課税上これを区分するということは、やはりいかがと考えるわけでございます。  なお、個人立の幼稚園につきましては、これも御指摘のとおりでございまして、一定の場合に教育用の資産につきまして相続税を非課税といたしております。しかし、これは御案内のとおり学校教育法におきまして、本来教育というものは学校法人たるものが行う、それを受けまして、そういう公益事業については相続税の課税を非課税としておるわけでございますが、個人立の幼稚園につきましては、これは経緯がございまして、幼稚園といえども学校法人で運営しなければならないというのが学校教育法の基本的な考え方でございますが、附則でもちまして当分の間、個人立の幼稚園も学校法人並みに扱うというたてまえになっておりまして、相続税法ではそれを受けまして、これもかなり厳格な要件を設けておりますけれども、一定の基準に該当いたしました場合に限りまして、教育用の資産について相続税を非課税にしておるということでございますので、医療法人、特に精神病院の例をお挙げになったわけでございますけれども、いささかこの点も事情が違うのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  135. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 私は、公益性あるいは公共性があるということから申し上げておるわけでございますので、ぜひとも御検討願いたいと思います。  関連して厚生省にお伺いしますが、この剰余金の配当禁止が法律に規定がございますけれども、この医療法の改正を考えてはどうか。さらに、医師一入でも法人化できるという制度はどうであろうか。いかがでしょうか。
  136. 森幸男

    ○森説明員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘の点、二点あったわけでございますが、最初に剰余金配当禁止の問題でございます。  確かに先生御指摘のように、医療法人の剰余金の配当禁止の規定というのがございますが、これは、営利を目的とした病院、診療所は開設を禁止するという医療法の趣旨に基づきましてできておるものでございます。営利目的の開設を認めた場合には、いろいろ収益を追うことが重視されまして、そのために医療の質の低下を招くおそれが大きいのではないかというようなことを考慮して決められているものでございますが、現在においてもこの規定をいま緩和をするということは適当ではないんではないかというふうな考え方を持っております。  それから第二の問題でございますが、一人法人の問題につきましては、これは現在の法律で、病院あるいはお医者さんが三人以上いる診療所につきまして医療法人の設立が認められております。小規模な診療所の場合には法人化の必要性がそれほど大きくないだろうというようなことで、こういう制度になっているわけでございます。ただ、最近診療所におきましても、必要な開設資金というのが相当大きくなってきているというような状況もございまして、いま御指摘のような点につきましては、今後種々検討をしてまいりたいというふうに思っておりますが、何せこの問題も、医療法人の設立の認可基準であるとか手続であるとかいろいろ関連するところがございますので、この点、先生の御意見等も踏まえましてさらに検討を進めたい、こういうふうに考えております。
  137. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 精神衛生法の第六条の二によりますと、国庫補助は、その二分の一以内を補助することができる、こう規定されております。ところが現実はそうではなくて、三分の一の補助にとどまっております。五十五年度予算について見ますと、保健衛生施設等整備費補助として五十六億円が計上されておりますが、この補助率を高めるという考えについてはどうでしょうか。
  138. 禿河徹映

    禿河政府委員 民間病院に対しましては国庫補助は行わないのが実は原則でございますが、先生からお話がございましたとおり精神衛生法の規定によりまして、精神病院の施設整備につきましては二分の一以内の補助というのが法律で決められております。実はその法律の第六条におきまして、県が設置義務を持っております精神病院の施設整備につきましては、二分の一の補助ということになっておるわけであります。そういう点との均衡を考えまして現在、民間の病院に対します補助としては三分の一といたしておるわけでございます。
  139. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 次に国有地の管理について伺います。  普通財産取扱規則第三条によりますと、「財務局長は、常にその管理する普通財産の現状を適確には握し、その維持保全に努めるとともに、国民経済及び国家施策の総合的見地から、効率的かつ適正にこれを管理及び処分しなければならない。」こう規定されております。ところが大蔵省では、俗に一坪国有地と言われる小規模な土地から、立川基地跡地のように、その場合は約五百七十ヘクタールございますが、こうした広大な土地まで管理しておられます。しかし現状は、東京、大阪など大都市圏でかつて農耕用の道路、水路として利用されていた国有地約三十八万平方メートルが、現状変更しまして企業などに無断で使われておることが、一昨年の会計検査院の調査で判明されました。この調査の対象に入らない小規模及び極小規模の国有地についてはなおさら、未掌握のままに今日まで放置されておるように思いますが、実態はいかがでしょうか。
  140. 迫田泰章

    迫田政府委員 先生いまお話しの水路等は、法定外公共物と申しまして、建設君所管の財産でございます。そういう小さいものは、わが方が所管といいますか担当いたしますのは、畦畔というような非常に小さいものがございます。そういうものの実態というのは、これは全国に非常にたくさんございまして、これを全部現在の人員で把握しろ、こういうことにつきましては、まず現在の予算、人員では不可能であるという現状でございます。
  141. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 ここで一つの実例を挙げてみたと思います  東京都下の町田市では、昨年の十月の台風によって、同市野津田町二百六番地のある会社の工場の裏手にある高さ七、八メートルの斜面地、これは国有地でございますが、これが崩壊しまして、この工場の建物の床下の一部を削り取るという事故が起きました。その後も雨のたびに地盤が緩み、建物やその土地全体に影響が出てきております。このような状況になって連絡を受け、大蔵省として初めて国有地であることがわかった。そしてこの場合について申しますと、関東財務局の立川出張所の担当官が現地に出向いてきた、こういうことでございます。  この物件は、国有財産台帳にも記載されてなかったようでございます。このように以前から崩壊の危険があるのでございますが、この場合におきましては、根っこの張る植物などを植えたりしまして自分で手当てをしておる、こういう状況でございます。それがこの場合ですと、ようやく先週になって、財務局も払い下げの方向で測量を始めたという状況でございます。このような危険を伴った国有地が数多くあるように思います。大蔵省としては、きめ細かく管理を行うべきであり、未掌握のままでもし事故が起こってから対策を講ずるというのでは問題にならないと思います。速やかに国有地の総点検及び見直しを行って対策を講ずべきであると思いますが、どうでしょうか。
  142. 迫田泰章

    迫田政府委員 先生御指摘の土地は、いわゆる畦畔だと思います。畦畔は非常にたくさんございますが、全部把握することは不可能でございますが、といって、御指摘のとおり、それによってがけが崩れて人身事故があったとかこういうことでは大変申しわけないと思いますので、実はがけ地のものにつきましては、五十四年、昨年でございますが、全国で調査をいたしました。これは、がけが五メートル以上、人家が下の方に五戸以上、要するに崩れたら人身事故がある、こういうものは危険防止の観点から調査する必要があるということで調査をいたしまして、それは全国で六百五十件でございます。こういうものについては、すでに危険防止という観点から逐次、予算の範囲内で修理をしていくという考え方で現在やっております。
  143. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 これまで過疎地にあった土地で、地目が田畑あるいは山林であったものが、都会から郊外へと人口が流れていく過程におきましてこれらの土地が宅地開発され、人口密集地域となる。ところが、そういう状態の中に囲まれて、ひとり国有地のみが放置されたままの状態で取り残されているのが実態でございます。取り残された国有地の中には、先ほどの例にありますように、当該国有地が他へ危険を及ぼす状況のものさえございます。このように国有地が地域住民に危険を及ぼしている場合にどのような処置をとるのか。今後速やかに管理を明確にして、払い下げあるいは貸し付け等の処置を講じて、地元住民の安全に供すべきではないかと思いますが、この払い下げ等に関する国の基本的な考え方があれば伺いたいと思います。
  144. 迫田泰章

    迫田政府委員 現在、国有地の払い下げの基本的な方針は、公用公共用に優先して払い下げるということでございますから、通常は一般の民間には払い下げません。しかし御指摘のように、がけ地とか昔の里道の残渣といいますか小さいものは、隣地の所有者に縁故ということで払い下げをしていくという方向でやっておるわけでございますが、がけ地等は実際にはなかなか買ってもらえない。通常の場合は余り関係ございませんので、金を出してまで買ってくれる人がないということでございますが、積極的に売り払っていくという方針ではございます。
  145. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 大蔵省管理しております普通財産の中で全く利用されていないものは、土地について言いますと国有地全体の一割近い状況だと言われております。これらの土地の中には、長年にわたって放置されていることによってたとえば不法占拠の問題が起こったり、また、管理費がかさむというようなことのためにいろいろな管理上の負担になっているものが大分あるように思います。しかし、こうした状態につきましては、具体的な問題につきましては各財務局の判断に任されていることも原因しているのでしょうが、管理が非常に停滞している、こういう状況であるように思います。また、一般にこれを競売に付したとしても、そのことがかえって地価をつり上げたりするような結果にもなることを考えますと、容易に処分に踏み切れない実情にあることも理解はできます。この点、一層きめ細かい処分要領を作成して、国有地が長期にわたって放置されることのないように管理等に万全を期すべきだと思いますが、この点についてどういうお考えを持っているか。  あわせて、極小規模の国有地につきましては、直接に公共の用途に使えないものに関してのみ、私人が都市計画法に基づき許可を受けて当該地区全体にとって最も有効な用途に供する場合には随意契約で民間に払い下げてもよいと、国有財産中央審議会で答申がありますけれども、処分可能なものについてはできるだけ地域社会に貢献すべく処分、活用を考えてもいいのではないかと思いますが、この点もあわせてお答え願いたいと思います。
  146. 迫田泰章

    迫田政府委員 先ほど申し上げましたように、国有の未利用地につきましては、公用公共用優先ということで、地元地方公共団体等から利用計画の提出がございますれば、それを優先的に考えまして処分をしていっておるのが実情でございます。小規模なものでそういう公用公共用に使うあてがないというものにつきましては、それをいつまでも管理をしておくのは管理上の経費もかかりますので、こういうものについては民間に払い下げるという方針でやっておりますが、それは原則は一般競争入札ということでございます。しかし、現在地価高騰の時代でございますので、一般競争入札をして高い値で落ちるということは地価問題を刺激するおそれがあるということで、現在は暫定的ではございますがストップをしております。しかし、一般競争入札は別といたしまして、隣地の人が先ほど申し上げましたように、がけ等を払い下げてくれということがございますれば、それについては払い下げていくという方針でございます。  それから、私人でも都市計画事業等の観点から国有地を利用するということはどうかということでございますが、この点につきましては、都市計画事業、そういう法律に基づく事業をやることの一環として国有地が要るということでございますれば、それは公共用ということで考えてその事案を検討して、個々に判断をして、必要があれば払い下げていくという方針でございます。
  147. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 いわゆる筑波移転跡地利用計画についてお尋ねをいたします。  昭和五十三年十一月、国有財産中央審議会筑波移転跡地小委員会の東京都日野市蚕糸試験場日野桑園に対する跡地利用の試案について申しますと、この試案は、計画決定については保留するとしていると聞いておりますけれども、その理由はどういうことでございましょうか。
  148. 迫田泰章

    迫田政府委員 日野桑園跡地につきましては、これは筑波移転跡地全体についてでございますが、筑波移転跡地処理小委員会でいろいろ検討してもらったわけでございますが、この日野桑園につきましては、委員で検討した結果は、本跡地周辺地域は市街化形成の途上にあり、現時点でその全部を公園とすると決めてしまってよいかどうかという点が疑問であるということで、一応「本地域における望ましい都市像が決まるまで利用計画決定を留保する。」こういう案になったわけでございます。
  149. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 東京都の昭和五十五年一月二十九日付のさきの小委員会の試案に対する回答内容として、公園を基本とし、その他は学校用地留保地にしてほしいとの要望が出ております。  そこで大臣お尋ねをするのですが、この東京都の回答内容は、日野市の将来の都市像のあり方を十分に検討した上での説得的な内容のものであります。この方向で積極的に検討されることを要望しますが、いかがでございましょうか。
  150. 迫田泰章

    迫田政府委員 東京都からおっしゃるように意見が出てまいりまして、当初全部公園にしたいというのが地元の話でございましたけれども、小学校用地というのが新たに最近出てきたわけでございます。したがいまして現在、その具体的な利用計画を地元から聞いております。その結果を踏まえて、今度新しく改めてと申しますか、小委員会で検討をしてもらって結論を出すということに相なろうかと思います。
  151. 竹下登

    竹下国務大臣 この蚕糸試験場跡地のみならず、一月末でございましたか、東京都から意見が出てまいりました。したがって、小委員会の作業グループの先生にまたこれから御相談をして、それから結論を出していこう。私自身の感じを申し上げますと、私はもっともっと地元との難航する問題が多いかと思っておりましたが、だんだん距離が近づきつつあるという、一般論としてそういう感じがしておりますので、作業グループの先生方の御審議を期待しておるところであります。
  152. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 大臣から積極的な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。  次に、文化庁にちょっと関連してお尋ねをいたしますが、現在東京都下の八王子市、府中市、調布市、町田市、多摩市、それから狛江、稲城、日野、秋川の各市などの近郊では、宅地開発、住宅建設が進む中で、いわゆる埋蔵文化財保存に関するトラブルが著しく増加をしております。文化財保護法で、発掘調査費はその地域の開発事業者が負担することとなっております。企業、公団の負担は昭和五十二年度には百十六億円、五十三年度では百六十二億円と年々増大してきております。その結果、個人事業者に対する影響が大きくなっていることは否めない事実だと思います。また地方公共団体としても、財政難の折から大きな負担増になっていることも否定できないと思います。この点、発掘調査費の事業者負担の軽減を図る必要があるのではないかと思います。特に個人が事業者の場合には、負担額については十分な御配慮をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
  153. 石田正一郎

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  埋蔵文化財につきましての工事を行う場合の発掘に要する経費につきましては、原則としてその工事を行います事業者の方でいまお話ございましたように負担をしていただく。そうして通常は、その負担によりまして地方公共団体の方で、考古学的な専門的な発掘調査を行うということでございます。そうでございますが、個人の住宅建設などの場合のように、その事業の収入というものが見込めない場合、この場合につきましては、地方公共団体の経費の負担においてその発掘調査を行う、国がその二分の一、半額を負担するという仕組みで現在進めておるわけでございます。  御指摘のように、こういう特に個人住宅などの場合についての調査費、経費についての国の負担、補助の充実ということが言われているわけでございます。文化庁といたしましては、従来からその経費の確保に努力をしてまいりまして、五十三年度の予算で約十一億円、それから五十四年度の予算で二億増の約十三億円を計上しておりまして、今度の五十五年度予算におきましてもさらに二億増、なかなか財政的に厳しい中で財政当局の御理解と御配慮を得まして、十五億円を計上しておるわけでございます。今後ともこの充実に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  154. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 終わります。
  155. 村山達雄

    村山主査 長谷雄幸久君の質疑は終わりました。  次に、湯山勇君。
  156. 湯山勇

    湯山分科員 私は、同和対策につきまして大蔵大臣お尋ねいたしたいと思います。  同和対策を進める上において予算が非常に重要な役割りを演じていることはもう申し上げるまでもございません。ただ、大蔵省は直接具体的な事業をお持ちになっていないので一般的なお尋ねになりますし、非常に質問がしにくいのですけれども、しかし、非常に大事な大蔵省に対してはぜひ質問をするようにというようなことで私がそれを担当するようになりましたので、ひとつ御理解をいただきたいと思います。  先般、上田卓三君の質問に対して大蔵大臣は、「毎年度国庫補助の増額、国庫補助対象事業の拡大等予算措置の充実を図り、地方公共団体の財政上の負担軽減を図ってきたところでありますが、今後とも、苦しい財政事情のもとにあるが、できる限りの努力を払ってまいる所存であります。」このようにお答えになっておられます。ですから結論的に言えば、こういうお答えをいただいておるのですからそれで十分だとも言えるのですけれども、ただ予算委員会その他で、同和対策の残事業等について、いまのペースでいくと最後は一千億に足りないことになるとか、これはもちろん机上の計算だからこれが正しいというわけじゃないという断りはありますけれども、そのようなことが論議されたりいたしておりますので、ひょっとするとそれだけ終われば事業は終わるんじゃないかといったような間違った判断をしておられる人も、大蔵大臣大蔵省じゃございませんが、他にはあるやに聞いておりますし、さらにまた、先般三カ年間期間の延長が行われました。その附帯決議におきましても、その第一項で「実態の把握に努め、速やかに法の総合的改正及びその運営の改善について検討する」ということが附帯決議とししてつけ加えられております。そういうこともありますので、一層ひとつこの問題について御理解をいただき、そしてこの事業完遂のために御尽力をお願いいたしたいというのが私の質問趣旨でございます。  そこで、この同和対策事業というのは、昭和四十四年に成立した同和対策事業特別措置法、これと、そして同じ四十四年に閣議了解をなされました同和対策の長期計画、この二つを軸として進められなければならないということが当初確認されておりますが、今日もなお、この措置法と長期計画、二つを軸として同和対策を進めていくことには変わりがないと私は理解しておりますが、これは総理府の方へお聞きする方がいいかと思います。同和対策室長、いかがですか。
  157. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 御指摘のとおり、特別措置法と長期計画をもとに各省それぞれ定められた目標とする施策を一生懸命実施してまいっているところでございますし、今後ともその方針は変わりございません。
  158. 湯山勇

    湯山分科員 非常によくわかりました。  そこで、この長期計画というのは、前期五カ年と後期五カ年とに分かれておりました。前期つまり昭和四十四年から四十八年までの五カ年間には、同和地区の他の地区に比べておくれておるところ、取り残されているところ、それらに対する施策を行うと同時に、全体施策の推進も同時に行っていくということが言われております。  それでは、一体後期は何をやるか。後期におきましては、後期の五年では、前期の全体的な実施状況を検討して、各庁各省の調整連携をとり、総合的効果的に事業を仕上げる、こうなっておりますが、そのとおりかどうか、これも同和対策室長から御答弁を願います。
  159. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 先生御指摘のとおり、この長期計画は四十四年度を初年度とし、おおむね十年を目途とする計画でございまして、前期五年、後期五年の二段階で施策を進めていくということでございます。前期におきましては、「施策全般について社会的経済的諸事情を考慮し、必要な調整をはかりつつ、遅れた部門の施策の促進に努める。」特に同和関係施策の中でも立ちおくれた分野の施策に重点を置いて進めろという御趣旨であろうかと考えております。後期計画におきましては、「前期計画の実施状況に検討を加え、総合的効果的な同和対策の推進をはかる。」先生御指摘のとおりでございます。したがいまして、前期五年間の終わりました五十年に総合的な調査を行いまして、それをもととして五十年度以降さらに一段と力を注ぎまして施策の推進を図っておるところでございます。
  160. 湯山勇

    湯山分科員 若干私と理解が違っております。これは、おくれた、取り残された部分の施策を進めるということは一致しておりますが、全体施策の推進を同時に行うというのがついておりますね。ちょっともう一度いまの点だけ……。
  161. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 先生御指摘のとおり、施策全般に対して実施すべきことは当然でございますが、特におくれた部分に十分配慮しておるということでございます。
  162. 湯山勇

    湯山分科員 それで結構です。そうしますと、本来この長期計画の前期で大体どういうことをやっていくかというのは、これも判断がつくわけで、現在進められている事業というのはむしろ前期の枠内に入る事業、つまりおくれているところ、取り残されたところ、それから全体施薬、全体も推進する、こういうことですから、前期の事業と言ってもいいのではないか。つまり、それまでは一体どういう事業をどうするということが五十年までは掌握されてないわけです。ですから、初めてこういう事業をやるんだというのが出てきた事業というものは、これは前期の事業であって、本当に今度はその実施状況の検討と言ったって事業計画なしで来たわけですからね、前期というか初めは。初めて計画が出てきて、掌握できたのは五十年ですから、そこで、実施状況の検討、各省の調整連携、後期の総合的効果的に事業を仕上げる、こういうことはむしろ今後の問題ではないでしょうか。
  163. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 調査なしにということではございませんで、四十四年の一長期計画を策定する基礎になりましたのも、一つには四十二年に調査が行われまして、それらを踏まえまして施策の目標を掲げておる。ただ、先生御指摘のように非常に精緻な五十年調査と比較すればそれは御議論のあるところだと思います。
  164. 湯山勇

    湯山分科員 ですから、いま四十何年かにあったけれども、それは長期計画という計画のもとにできたものではない、このことは間違いありませんね。
  165. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 間違いございません。
  166. 湯山勇

    湯山分科員 そこで、この点はいまのように見てまいりますと、前期の実施状況を検討して各省調整連携をとって総合的効果的にやるという後期五カ年の仕事というのは、むしろまだこれからのことになっておる。  たとえばこういうことなんです。厚生省は昭和二十八年から事業をやっています。そしてこの措置法が実施される、十カ年計画が実施される四十三年までに五十億程度の事業をしています、約十五年かかって。しかし、五十五年度、来年度予算を見ますと一年間で五百六十億、つまり十五年間、措置法ができるまでの十五年間に当たるものの十一倍を一年間でやる。さっきの大臣が御答弁なさいましたように、ずいぶん本当にたくさんの予算が、前大蔵大臣もいらっしゃいますが、とにかく予算がついている。建設省もこれは三十五年から始めています。厚生省は二十八年、建設省は三十五年で、措置法実施までに百十億の事業をやっていましたが、五十五年だけで千二百七十二億、一年で措置法実施までの十二倍もの事業がなされている。通産省は四十一年から始めて四十三年度までにはわずかに五千万の事業でした。それが五十五年だけで二百五十九億ですから、一年間で措置法、実施までの期間の二百五十倍、ですから非常に大きな伸びです。法務省は、ここいらがやはり変なんですが、四十三年までは何もやっていない。措置法の実施される四十三年にわずかに百万です。来年度はどうかというと、七千八百万ですから七十八倍。  こんなふうにスタートもまちまち、それから事業もまちまち、ただ、おっしゃったように本当に思い切って予算措置をしておられることは非常にありがたいのですが、しかしこういうふうにまちまちですから、たとえば厚生省のある環境改善の分は、これはかなり十分にできておりますけれども、法務省なんかは特設人権相談所で人権相談をやって、いま取り上げられる相談件数は五万を超えています。その中で法務省が差別事件として処理、排除したのはわずかに五十件。百件に足りません。千分の一ぐらいしか措置できていない。各省まちまちです。だからこれはいまのように後期の計画で調整してやらないと、この差別事件というのはふえる一方です。まだ下向いてもいない。ある事業は大体終わりが見えているものもあれば、まだまだこれから上り坂、どこで一体峠が見えるのかわからないようなものもある。そういうことですから、いわば現在のところは事業の推進が各省まちまちになっている。  こういうことですから、私はこれは、ぜひその調整を図って総合的に行くようにしてもらわなければならない。一例を挙げてみると、共同作業場ができた。これは結構なんですが、共同作業場ができたけれども保育所ができていない。すると、せっかく共同作業場へ地域の人が生活のために家庭の主婦もどんどん行きます。保育所がないから結局共同作業場が有効に働いていない。あるいは近くへ就職あっせんを労働省でやる。それで女の人も就職口ができた。しかし、これも保育所がないためにやはり効果が発揮されないというようなのは、これはこれからの仕事だと思います。さらにまた、大きい部落では開業しておるお医者さんもない、診療所もないというときには、病人がかなりいますから、お年寄りもいますから、そういう診療所とかやはりお医者さんがなければ、そのためにまたせっかくのいまの共同作業場その他が効果を発揮しないというような点も多々あります。そういうアンバランスがある。  これは、事業のスタート等がおくれた法務省のような、そういう各省間のアンバランスもあるし、地域を単位にして考えてもそういうアンバランスがあるということは、これは大蔵省もお認めになると思いますが、禿河さん、いかがですか。
  167. 禿河徹映

    禿河政府委員 関係各省の同和対策事業、それの出発時点が異なったりあるいはそれの進行度合いに差が出てきておるということは、先生の御指摘のとおりだと思います。ただ、私どもといたしましては、総理府を中心といたしまして関係各省とも十分連携をとりつつ、御指摘のようなことがないようにできるだけ配慮をしてまいりたい、かように考えます。
  168. 湯山勇

    湯山分科員 それから五十年以降の物価の上昇ですが、これは正確に見られておりますか。掌握できておりますか。時間が余りありませんから簡単にお答えください。
  169. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 物価につきましては、消費者物価、卸売物価、いろいろあろうかと思いますが、近年までは消費者物価の上昇率が高うございました。高い方で見てみますと、五十年度を一〇〇といたしますと、五十一年度は九・四%のアップ、さらに五十二年度は一六・七、それから五十三年度は二〇・七、五十四年度は三七・四というような上昇になっております。
  170. 湯山勇

    湯山分科員 そうすると、五十年の計画はいまのようにその間の物価上昇というものを見てない数字でしょうから、これも相当見ていかなければならないし、それから地域が相当ふえていると思います。本米、四十六年から五十年までの間には四面、年平均百地区もふえたものでした。しかし、五十年から後は現在のところ百五十五ふえているというのですけれども、昭和十年の調査では五千三百六十五の地区があった。それが五十年調査では四千三百七十四と、千ばかり少なく見られております。その中にはすでに解消したところもあることは当然だと思いますけれども、しかし、現に名前を挙げてもいいんですけれども、寝た子を起こすなとか、いやうちの県にはそんなのはないんだ、うちの市町村にはないんだというようなことから、この同和対策に対する理解の不足あるいは啓蒙の不足、そういうところから最近まで全然地域の指定を申請していなかった県もあるし、現在もしていない県あるいは市町村もあります。このことはお認めになりますか。
  171. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 全然同和地区のない県があることも事実でございます。それから、最近もいろいろと御相談のあることも事実でございます。
  172. 湯山勇

    湯山分科員 ありながら、県によってまだ全然してない県もあるでしょう。
  173. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 これは一番事情に詳しいのはやはり当該市町村でございますので、こちらの立場から、ありながら、してないところもあるというようなことはちょっと確認できませんので、御返答いたしかねます。
  174. 湯山勇

    湯山分科員 たてまえ論ではそうでしょうけれども、北陸の方の県には、当然ありながらまだ一地区も出てないというのもあります。それから宮崎県あたりは最近まではとにかく一地区も申請してなかった。現在幾つ出ていますか。
  175. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 宮崎県は現在、五十年調査以降三十二地区出ております。
  176. 湯山勇

    湯山分科員 いまのような状態です。まだこれから私は相当ふえると思いますが、お見込みが立ちますか立ちませんか。
  177. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 現在その対象といたしております地域の要件といたしましては、「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域」という定義でございまして、たとえば昭和十年、三十三年、三十八年、四十二年、四十六年にそれぞれ調査しておりますが、それぞれその定義が幾らかずつの違いもあろうかと思います。したがいまして、数字はまちまちでございます。昭和十年以降で一番大きな数字が出てまいりましたのが五十年調査でございますので、先生のお考えのほどあるかどうかということについては、ちょっと判断いたしかねております。
  178. 湯山勇

    湯山分科員 現実にこれだけずつふえてきておるわけですし、いまのような状態ですから、まだまだふえることを考えなければならないということもあると思います。  それから、いま申し上げましたように、非常に古い時代に、まだ措置法もできない以前にいろいろな施設や設備をやった。たとえば住宅なり改良した。もう古くなっていまの実態に合わない。狭かったり電気冷蔵庫や電気洗たく機を入れると置く場所がないというので、やり直さなければならないものがもう出ている。これはお認めになりますか。
  179. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 地区の状況で、現地にちょっと見たところでそれに該当するところはございませんが、相当早いものについては相当ひどくなってきておるというような話は聞いております。
  180. 湯山勇

    湯山分科員 それは大変間違いですよ。稻村長官担当で近畿の方を回られて、そういう場所があるというのを自分で見てきて、自分で委員会でもお答えになっているのですから、これは室長、お聞きになってなければ後で聞いておいてください。いいですか、ありますね、いまの稻村さんが言われたのは。
  181. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 稻村長官当時御視察願った状況によりますと、兵庫県の状況だったかと思いますが、また少し手を入れなくちゃならぬところも出てきておるという御認識だったようでございます。
  182. 湯山勇

    湯山分科員 ですから、兵庫県の一部をごらんになってそうだから、全国方々でたくさんあるということはおわかりだと思うのです。  それから一番大きい問題は、やはり附帯決議の第二項にある超過負担の問題です。これは一々申し上げる時間もありませんが、一番代表的なのはさっき挙げました保育所の問題、これが一番わかりやすいかと思います。保育所がこの措置法の対象になったのはいつからでしょうか。——時間がありませんから、これは四十八年です。四十八年からですから、初めの約五年間は対象になっていなかったのです。そこで、大臣がさっき国庫補助事業の拡大ということにも努めてきたとおっしゃった代表的なものがこの保育所であったと思います。さっき申し上げたように貧困が一つの差別の原因になっているのですから、これがなければ女の人が働きに行こうといったって行けない、どうしたって保育所が要るというので認められたのが、措置法がスタートして五年後です。  さて、ではいまどうなっているかというと、対象基準は措置児一人当たり五平米から六平米ですね。ところが実際はどれくらいになっておるかというと、それでは足りないので大体九平米から、大阪あたりでも十平米、それくらいのものを建てています。これもおわかりですね。
  183. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 超過負担と言われるものの中に補助基準を上回る規模でつくっている負担増もあることは事実でございます。
  184. 湯山勇

    湯山分科員 大阪では平均十平米、大体九平米から十平米というのですから、それだけの超過負担でも四七%くらいになっています。  それから今度は単価の差、これが五十四年度は鉄筋で十一万七千五百円見られておりますが、大阪の方は聞いてみますと、五十五年では大阪の公共の建物で鉄筋だと実際は十七万四千円くらいを見ていると言っています。だから五十四年度でも、どんなにしても二〇ないし三〇%の超過負担になっています。  それから、保育所のそういう超過負担と今度は土地です。用地は一体どうなっていますか。これは禿河さんおわかりですか。
  185. 禿河徹映

    禿河政府委員 保育所の施設整備につきましては、同和対策といたしまして、御承知のとおり通常の二分の一の補助率を三分の二といたしておるわけでございますが、いまお話しがございました用地費補助の問題につきましては、これは地方公共団体が取得いたします土地のうち、その保育所の建物の敷地につきましては補助対象といたしてございません。
  186. 湯山勇

    湯山分科員 そうすると、これがまたそっくり超過負担になります。大臣、いま申し上げましたように、保育所はぜひ大事だと言いながら、規模基準においても四〇%余りの超過負担、単価においても三〇%近い単価の差、それから土地は全部地元負担ということになれば、これでは保育所は建たない。こういうことを直さなければ、本当の同和対策の完成を期するということにはならないと私は思いますので、ぜひこの辺をお考えいただきたい。  これだけではありません。そのほかにもいまのようなかっこうで超過負担の対象になっておるものがたくさんあります。共同作業場や隣保館、それから地区内の道路でも土地に対しては二分の一しか補助がない。一般は三分の二、土地については二分の一です。これらも大きな超過負担の原因になっていることを御理解願って、自治省の財政局長から禿河さん、あなたの方へも要請が来ておりましたね。もう全くあのとおりです。つまり、そこにありましたとおり、財政負担は「国における同和対策事業に対する予算措置が十分でなく、単価、数量、対象範囲等の国庫補助負担基準が実情に即したものになっていないことなどによるものと思われます。」この際、「国庫補助負担制度の大幅な拡大及び補助負担基準の大幅な改善並びにこれに伴う同和対策事業関係予算の確保に特段の配慮をされるよう強く要請します。」と来ておりますね。ちょっとお答えください。
  187. 禿河徹映

    禿河政府委員 先生いまお話しの自治省の財政局長からの文書、昨年の七月七日付でございますが、私どもも十分拝見をいたしてございます。  ただ、その用地費の問題でございますが、先ほどお話ございましたとおり、共同作業所あるいは隣保館というふうな同和対策事業に固有の事業で、それが同和対策の推進にとりまして特に緊要な施設である、こういうふうなものにつきましては用地費は補助の対象といたしておるわけでございますが、保育所のように土地取得そのものを事業目的にしているとは考えられないもの、また地方公共団体の永久資産として残るものである、こういうふうなことから現在その用地の取得費は国庫補助の対象といたしてないわけでございますので、その点の御理解もちょうだいしたいと思います。  ただ、用地費のうちで、先ほど申しました保育所のような場合、補助対象となっておりませんけれども、それにつきましても地方債で措置することとされておりまして、そういう点で事業の推進に支障がないように配慮されておるところだと考えております。
  188. 湯山勇

    湯山分科員 時間が来ましたが、いま禿河さんの御説明にも異議があります。たとえば地方債で措置されましても、この措置法でいうように、その起債の八〇%を国が財源措置してくれることにはなってないのです。そのために、同和対策事業で地方債を出しましても、本来ならば、趣旨から言えば八〇%は国がちゃんと償還してくれなければならない、償還措置をとってもらわなければならないのに、実際は半分にもなっていない。これも資料がありますけれども、起債もそういうこと。それから、いまのように補助にしておるのもそうですし、土地がなくて上だけ措置して保育所をつくれと言っても、これもいまのように他の部面でも超過負担がありますからなかなか大変です。そしてまた、地方自治体が持つというのがいけないのなら、国が買い取って貸してやって、用が終わったら取り上げても結構ですが、とにかく保育所がすらっと建つようにすれば保育所に対する要求はもっとうんとふえてくる。  こう見てまいりますと、私は最初申し上げましたように、本当に各省庁間の連絡提携、そしてそれらが有機的に総合的に機能を発揮するように、そういうことのための後期の事業というのはむしろこれからの事業である、このように考えます。この辺をひとつ御理解願いまして、いまのような趣旨で今後さらにこの同和対策事業について大蔵大臣の御尽力、御理解をいただきたいと思いますが、最後に御答弁をお願いいたしたいと思います。
  189. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、五十五年度同和対策予算を見てみましても一一・五%という、一般歳出五・一%の倍以上の伸びということでございますので、それなりに御理解をいただけると思うのでありますが、それ以上に今後の問題でございます。今後とも厳しい財政事情が続くものと考えられるわけでございますけれども、もとより関係各省と相談をしながら、同和対策関係施策の円滑な推進を図るためにはできるだけの努力を続けなければならない、このように考えております。
  190. 湯山勇

    湯山分科員 以上で終わります。
  191. 村山達雄

    村山主査 湯山勇君の質疑は終わりました。  次に、中川嘉美君。
  192. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 私は、筑波研究学園都市移転跡地にかかわる銀座八丁目の電子技術総合研究所木挽町分室についてまず伺いたいと思います。  このことにつきましては、隣接する中央区の第一中学校というのがありますが、この校地の拡張と一部公園の整備、こういうことで東京都と中央区が一致して大蔵省に申請してからかなりの年月がたつわけですけれども、その後の経過等について御説明をいただければありがたいと思います。
  193. 迫田泰章

    迫田政府委員 いまお話しの電子技術総合研究所木挽町分室の跡地の問題でございますが、この跡地の利用につきましては、東京都から昭和五十三年九月十九日に、全面積について中学校の拡張用地にしてほしいという利用要望がなされております。  筑波研究学園都市の跡地の処分の問題でございますが、現在、この跡地の処分の方針については国有財産中央審議会に審議をお願いしておるわけでございます。主要な大きいものの具体的な処分についても審議会にお諮りをしておるわけでございますが、それ以外の小さい跡地についても、全体をどういうふうに処理していくかという基本方針について審議をお願いしておるわけでございますので、それの結果を待って具体的な処分に入るという段取りになるかと思います。
  194. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 現在の学校だけでも非常に狭いわけで、何とかしたいということが一つ。さらに将来の計画としては、第一中学校、第二中学校、これらを統合したいという案もあるわけで、そのためにもより広い土地が必要とされるわけです。いずれにしても、現時点では第一中学校の校庭拡張のために必要とされているわけでもあって、緊急を要する課題であるわけです。ところが、最近ほかからも要求が出ておりまして、大蔵省に積極的に働きかけているという情報も実は得ております。  その一つは、郵政省東京南部小包集中局としての郵袋継送センターをつくる規模拡張のため土地を拡大したいと言っていること。それからもう一つは、通産省が総合グラウンド及び体育館の用地として大蔵省申し出ているという情報なんですが、こういったことは事実であるのかどうか。もし働きかけがあったとするならば、申請はどことどこから出ているか、実情をお聞かせいただければと思います。
  195. 迫田泰章

    迫田政府委員 郵政省から利用要望が出ております。それは、内容は現在の郵便輸送手段が鉄道から自動車輸送に変わってきた、しかもだんだん自動車が大型になっておるので、現在の東京中央郵便局の自動車発着施設が狭隘になっておる。これを打開するために、この跡地の隣に郵政省が土地を持っておりますが、それと合わせて地方あての大郵袋の保管、分類、発送を一元的に行う郵袋継送センターを設置したい、こういう要望が当方に参っておりますが、通産省の方からの利用要望は現在は聞いておりません。
  196. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 先ほど御答弁のあった内容で一応私も理解すべきだと思いますが、実はさきに発表になった国有財産中央審議会、この筑波移転跡地小委員会の試案には電子技術総合研究所は含まれていないわけですが、関係市町村との意見の調整というものは試案にあるところだけについて行われて、試案にないところはその意見調整を行わないのかどうかという問題ですが、この点はいかがですか。もう一度確認したいと思います。
  197. 迫田泰章

    迫田政府委員 試案に出ておる主要跡地については、いろいろ地元からの意見を聞いて検討しておるわけでございますが、その主要跡地以外の跡地についても地元からの中学校拡張用地にしたいという話を聞いておるわけでございますが、さらに具体的に処分の段階に至りますと、聞く必要があるとすれば地元の方からの意見も十分聞いていきたい、こういうふうに考えます。
  198. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 電総研究所の跡地については、面積が四千七百平方メートル程度、大きな土地とは別な扱いになっているようですけれども、中央審議会の小委員会にかけないで国有財産関東地方審議会一つ一つ個別に決定していくものかどうか、この点はいかがでしょうか。
  199. 迫田泰章

    迫田政府委員 こういう小さい土地については、中央審議会に個別にかけるつもりはございません。したがいまして、具体的な処分は関東地方審議会で審議をしていただくということになります。この筑波移転跡地だけではなくて、一定面積以上の財産を処分する場合には、常に各財務局にあります地方審議会にかけるということになっておりますので、その一つとしてこの木挽町分室がかかる、こういうふうに御理解をいただければ結構かと思います。
  200. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 この関東財務局だけに任せておくんじゃなくして、最終的には当然大蔵省の本省で利用方針というものが検討されあるいは決定される、このように解釈してよろしいかどうか。この点はいかがでしょうか。
  201. 迫田泰章

    迫田政府委員 筑波移転跡地につきましては、そういう細かいものもいろいろ問題がある、利用用途が競合しておる、こういうような問題があるものにつきましては、本省の方でいろいろ意見を聞いて検討していきたい、こういうふうに考えております。もちろん関東財務局の意見も聞きますが、本省が全く知らぬ顔をしているということではございません。
  202. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 次に、払い下げの優先権、これと時期について伺いますけれども、国有財産の大きなものが決まらないということで小規模のものが後回しにされがちではないかという問題。小規模なものが手続上大規模なものの後回しになるということになりますと、これは納得できないわけで、私はむしろ小規模なもので競争の少ない、どちらから考えても優先的な施設とわかるものについては、早く決定して払い下げてあげるべきじゃないか、こういうふうに思います。  また、この跡地利用の決定はいつごろの見通しになるのか。この点もあわせてお答えをいただきたいと思います。
  203. 迫田泰章

    迫田政府委員 筑波移転の関係は今年度をもつて大体の機関が移転を完了するであろうということを踏まえまして、この筑波移転跡地小委員会における主要跡地の利用計画とそれから跡地全体の転用の基本方針についての結論はなるべく早くいただきたいということで、現在鋭意審議会、具体的には小委員会のさらに下部となりますか作業グループというところでやっていただいておりますが、そこで鋭意検討していただいておるわけでございまして、審議会の話でございますので事務当局でいつ答申がいただけるということはここで確答はできないわけでございますが、われわれの気持ちといたしましては来年度なるべく早い時期に答申をいただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  204. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 電総研究所の跡地に先ほど申したように地続きである第一中学校の校地の面積というのが二千六百四十四平方メートル、きわめて狭いわけですね。校舎も昭和二年に旧文海小学校校舎として建設されたものを転用しているものであって、中学校の校舎としては教室の規模が適正ではないと私は考えます。伸び盛りあるいは育ち盛りの中学生にとって校舎の改築あるいは校庭の拡張、こういうことについては冒頭にも述べましたとおり緊急な課題と言わなければならない。それに比較して郵政省東京南部小包集中局の土地というものは一万二千平方メートル、これだけのものを用意しておっていまだ空き地もかなり豊かであるわけです。  こういう観点からも、大蔵省は電総研究所跡地を地元中央区民の意見を大いに反映してその利用を決定すべきではないだろうか、このように思いますが、大臣のこういうことに対する所感といいますか、また御決意のほどを伺いたいと思います。
  205. 竹下登

    竹下国務大臣 筑波の跡地の問題につきましては、これは私の率直な感想を述べますと、私は五一十一年に建設大臣をしておりました当時、一体これは地元との話がつくものだろうかというような、大変先のような気がしておりました。たまたま今度大蔵大臣に就任してみますと、ああして東京都は一月末にちょうだいしますし、神奈川も三月にちょうだいできる。地元と審議会とでも申しますか、その距離がだんだん近づいてきた、一般論として申し上げますならばそういう印象を強くしております。したがって、いま迫田次長からも申し述べておりますが、これから検討して、高山先生を初めとするいわゆる作業グループの先生方に精一ぱい検討していただかなければならぬ状態に来たなという印象を非常に強くしております。  ただ、いま御指摘のところは私も実情に詳しくないものでございますので、一般論としてお答えいたしましたことをお許しいただきたいと思います。
  206. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 どうかひとつ、地元の住民の意向というものもできる限り大臣もおくみ取りいただけるようにこれからも配慮願いたい、こう思います。  次に、東京教育大学の跡地について伺います。  都内文京区の東京教育大学の跡地問題については、一昨年の三月の二日に予算委員会分科会で私が取り上げたわけですけれども、その一昨年の暮れに国有財産中央審議会の筑波移転跡地小委員会が取りまとめた試案が出たわけです。これによると、地元の要求とかなりかけ離れたものも実はあるわけですけれども、地元住民の意向を先ほど来申しておるように尊重をして文京区案どおり払い下げるべきだと思うわけです。ただ、情報によりますと、最近「教育大跡地を住民本位に利用させる会」、こういう会がございまして、大蔵大臣にもこの方々が会われたそうですけれども、大臣はそのときに、講道館が払い下げ申し込みをおりた、このように述べられたそうですが、果たして事実かどうか。また、そのような動きがあるのかどうか。そうであればその根拠は何であったのか。根拠をお示しいただきたい。詩道館議員連盟のある議員さんが、講道館はおりたよ、このようにも言っていたそうですが、大蔵省はこういった発言を聞いておられるかどうか、事実を明らかにしていただきたいと思います。
  207. 迫田泰章

    迫田政府委員 筑波大本部の跡地については、地元から一番強い反対があるのは講道館の柔道センターの問題でございますが、この柔道センターについていまおっしゃいましたような話はいろいろあるようでございますが、われわれとしてはまだ正式に聞いていないわけでございます。
  208. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 この「教育大跡地を住民本位に利用させる会」が大蔵大臣に陳情したとき、大臣はいかがですか、御記憶がありますか、どうですか。一言で結構です。
  209. 竹下登

    竹下国務大臣 奥さん方がたくさんいらっしゃいまして、お会いしました。私も実は柔道連盟の役員をしておりまして、したがってそのとき、地元の事情とかいうことを全然考えなしに、世界の講道館、いいじゃないか、こういう気持ちになったこともありましたので、幾らか関心があったわけでございます。したがって、当時のようなどうでもつくろうではないかという動きが少なくなっておるということはまあ言える。そうして、この間来東京都の意見等を見てみても、他にいまいろいろございますけれども、この地域は、私はだんだん話し合いで距離の近づいてくる問題ではないかという印象をかなり強く持っておる一つでございます。そういう意味において、明確に講道館がおりたとかいうようなことを申したわけじゃございませんけれども、奥さん方、たくさんのお方でございましたので、私もきわめてにこにこしてやさしくおつき合いしましたので、顔があるいはそういう印象を与えたかもしらぬなという、いま反省もいたしております。
  210. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 先ほど申し上げた小委員会の試案に対する地元の意見というのは、やはりこの柔道センターについては反対である。東京都の意見も、世界柔道センターについては再検討願いたい旨文書で大蔵大臣あて提出されているはずでありますけれども、昨年後半から文教区内の各町会等が反対の決議を行って、大蔵省に文書でやはり提出しております。それも区内の八五・四%に当たる百八十七団体、これらの団体から出されているわけですけれども、理由としては、ここが広域避難場所に指定されていて、災害時に焼けたりガラスが落ちてくれば二次災害につながる、こういうおそれもあるということで、そういう団体からいろいろと文書で提出が行われたわけです。試案には、世界柔道センターは災害時には施設を開放する、このようになっておりますけれども、このように人の集まるところですと、避難場所としては、車の出入りもありますし、非常に危険性が大と言わざるを得ないわけです。そういうことで、地元の意向を生かす方向でぜひ再検討すべきではないか、このように考えるわけですけれども、いま一度御意向を伺いたいと思います。
  211. 迫田泰章

    迫田政府委員 試案で柔道センターを認めましたのは、センターの建物を、あそこが避難広場として使われる場合には防火壁として使うこともできるではないか、あるいは避難した人たちを収容することもできるじゃないか、そういう防災上の観点からも有用ではないかということで試案に入ったわけでありますが、東京都から再検討願いたいという意見が出ております。地元からも非常に強い反対の意見が出ておることはわれわれも十分承知しておりまして、現在作業グループの方へそういう地元の意見、声もある、東京都からの回答も再検討願いたいということで来ておるということで、そういうことを踏まえまして改めてまた審議をお願いしておるという段階でございます。
  212. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 先ほどの大臣の御答弁の中にも、たくさんの奥様方が見えて、ついリップサービスというわけでもありませんでしょうけれども、お顔そのものがそうなっちゃったんだという印象がいま残りますけれども、そういう方々は大臣が言われたというので頭から信用する可能性というのは非常に大きいわけですから、どうかひとつ、これからも当局としても、さらに大臣におかれても、この問題について責任ある対応をしていただきたい、このように思います。  次に、やはりこの試案の中に占春園があるわけですけれども、占春園は現状のまま保存するのだというふうにあります。現在文部省としては、筑波大学の財産として管理されて、筑波大附属小学校の実験活動の場として利用されているようでありますが、文京区としては区民が利用できるように大学側と交渉しているようです。大蔵省としては占春園についてどのくらい区民が利用できるものと聞いておられるか、従前どおり大学側が管理して一般開放して使えるようにするのかどうか、この点をまず第一点として伺いたい。  というのは、昭和五十四年の三月一日に行われた建設委員会の場において、大蔵省の高橋特別財産課長ということで議事録があります。文京区の教育大本部の跡地利用問題についてということで、御答弁をこれはずっと読むと長くなりますから要約しますけれども、大体占春園を含めて公園としては七割くらい利用することとなると思う、それから二割が現在の筑波大学、残りの一割を講道館に使用を認める、こういう要旨の答弁をしておられるわけですから、占春園は当然この地元七割の中に含まれる、このように解釈しますけれども、この点は間違いありませんね。文京区の図面上の計算によりますと、占春園というのは一万五千平方メートルもあるわけですから、もしこれが抜ければ七割にはとうてい満たなくなる、こうなるわけですけれども、この辺はいかがでしょうか。
  213. 迫田泰章

    迫田政府委員 試案の段階でも占春園は現状のまま保存するというのは、緑地というか公園といいますか、そういう状態で保存するという趣旨であれが出ているわけでございますが、文部省の方で、占春園の部分はあそこにおる附属小学校等の自然観察活動の場として筑波大学の用地の一部として使用したいという要望が出ておるのですが、その中で占春園の地域住民への開放には十分配慮しながら大学の方において占春園を整備、管理をしたい、こういうふうに文部省の方で要望が出ておりますので、文部省の方へ占春園の管理を任す、そういったところで従来以上に厳しく立ち入りを制限をするということはあり得ない、われわれはそう考えております。
  214. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 今後の見通しですけれども、昨年を目安に決定する予定だったものが、三月を迎えてもいまだ開かれてないわけですね。一体いつごろ決定をする方針で進めておられるのか、またその場合、どういう点を踏まえて処理していこうとされているのか。私は、あくまで東京都と文京区の意見というものを尊重して地元住民の生命と財産、これを守るという点から払い下げを決定すべきだ、このように考えますが、これに対してのお答え、そしてまた、大臣からこのような意向を中央審議会の方にぜひ伝えていただきたいと思いますが、この件についても大臣から次に御答弁をいただきたいと思います。
  215. 迫田泰章

    迫田政府委員 先ほども申し上げましたけれども、筑波移転跡地の処理の方針につきましては、大体今年度中に移転完了しますので、来年度早々には中央審議会の答申をいただいて具体的な処分に入っていきたい、こういうふうに考えて現在作業を進めておりますので、来年度早々には答申が出る、四月はちょっと無理かと思いますが、とにかく早々には出るというふうに御理解を願いたいと思います。  それで地元からのいろいろな要望につきましては、これも先ほど申し上げましたけれども、筑波移転跡地全体についていろいろ地元からの要望がございます。そういう要望も現在作業グループに全部上げまして、そこでいろいろ議論をしていただいておるという段階でございます。
  216. 竹下登

    竹下国務大臣 迫田次長が申しましたとおりでして、素直に地元の要望それから東京都の意見、これは御説明申し上げて、あの四人の先生方、それぞれりっぱな学者さんでございますので、私も非常に妥当な結論を出していただけることを心から期待をしておるところであります。
  217. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 ぜひひとつその方向に強力に進めていただきたいことを要望しておきます。  最後に、あと若干しか時間はありませんので一、二問で終わりたいと思いますが、今度は、建設省の土木研究所跡地について伺います。  これも実は五十三年の三月二日に行われた当分科会で私は発言しているわけです。ここは、今国会の建設省設置法の一部を改正する法律案が通りますと、法律上正式に筑波へ移転が認められて、最終的にいわゆる行政財産から普通財産となるようですけれども、御存じのように、隣接する昭和小学校が校庭拡張のために強く要望してきた場所でもあるわけです。いまも約一千名の生徒が狭い校庭が早く広くならないかと待ち望んでいるわけですけれども、大蔵省は今後どのような方針で地元へ払い下げをしていかれるのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  218. 迫田泰章

    迫田政府委員 これも筑波移転跡地一つでございますので、全体の転用基本方針を出していただいた上で、それに従って処分をしていくということに相なろうかと思いますが、全体の転用基本方針は、先ほど申し上げましたように来年度早々には中央審からの御答申がいただけると考えますので、それに従って処分をしていくということに相なろうかと思います。  隣の昭和小学校が非常に狭隘である、しかもことしの七月には夏休みを利用して取り壊しを行いたいという地元からの陳情がたびたびございまして、われわれとしてはその辺の事情も十分承知いたしておるわけでございますので、その辺の実情も踏まえながら結論を出していきたいと思います。
  219. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 建設省から大蔵省へ管轄が移るのはもうわずかな日程ということですから、このように競争相手もいない小規模の土地は早く地元に払い下げを決定した方が喜ばれるのじゃないかと思います。ある情報によりますと、教育大跡地について、先ほど申し上げた講道館とかあるいは大学側の要求を認めないと土木研究所跡地も認めないぞという取引材料に使わんとしているのじゃないかという風潮もあるわけです。たとえば地元の文京区の皆さんが大蔵省へ行ったときにそういうふうな感じを受けたというような情報もあるわけです。すでに土木研究所そのものは筑波の方にすっかり移転してしまって、中はがらんとしているわけですが、管理の方は現在どうなっているのか。それからまた、小学生の通学途上にこのような空き地を放置しておくことは非常に危険だと私は思います。一日も早く文京区に払い下げるように、審議会そのものを開いて決定されることを強く要望するわけです。  ただいま申し上げた取引材料の件と、管理がどうなっているのかという件をお答えいただいて、最後に、この問題についての大臣の所感もあわせて伺って、終わりたいと思います。
  220. 迫田泰章

    迫田政府委員 われわれがいま作業しているいろいろな筑波移転跡地の問題でございますが、非常にたくさんございまして、利用要望なども競合しているものがございます。われわれの感じといたしましては、先ほど申し上げように来年度早々には基本方針を出していただいて、処分をしていきたいと考えております。  取引材料という言葉を使われましたけれども、われわれの感じといたしましては、区あるいは市町単位にいろいろ問題がたくさんございます。問題がたくさんあるといいますか、跡地がたくさんございますので、できれば一遍に方針を決めて処理をしていきたいという感じを持っておるわけでございます。これを認めぬと本所の方を認めぬよ、こういうえげつない取引材料という意味ではありませんが、できれば一遍に処理をしていきたいなという感じもございます。  それから、管理の問題でございますが、現在まだ法律が通っていないせいもございまして、土木研究所の職員が昼間は二名あそこに常駐をして管理をやっていただいておるようでございますが、法律が通りますと、それも向こうへ行くということになって当方で管理をすることになりますので、管理の万全の面からもなるべく早く処分をした方がいいと考えております。
  221. 竹下登

    竹下国務大臣 私がお会いいたしましたのは、大蔵省の先輩の方で元衆議院議員の方が、ちょっとたくさんだが会ってくれということでございました。私もそうなれば勉強しておかなければいかぬだろうと思いまして多少勉強しておきましたら、私が柔道連盟に関係しておりましたので、私もその限りにおいては理解が早かったわけです。思い出したわけでございます。したがって、率直な感じで受けとめましたのは、まだ都あるいは区の意見と審議会の意見とずいぶん乖離したところもございますけれども、大筋としてだんだん近づきつつあるなという印象を受けておりますし、きょう中川委員から御質問いただきました個所は、私の感覚ではどちらかと言えば大筋において近づきつつある範疇に属するものではないかという感じがいたしましたので、四人の先生方に精力的にやっていただくようお願いしてみたらどうだと言って部内でも話し合っておるところでございます。
  222. 中川嘉美

    中川(嘉)分科員 以上で終わります。
  223. 村山達雄

    村山主査 中川嘉美君の質疑は終わりました。  次に、金子みつ君。
  224. 金子みつ

    金子(み)分科員 私は結核の治療費の問題について少し質問申し上げて、御所見を伺いたいと思っております。  実は、いま審議中の五十五年度の国家予算が編成されますときに、大蔵当局におかれましては、結核の治療に関する公費負担制度に関して非常に重大な考えをお持ちになったようでございます。そしてそのことが関係者にわかりまして、関係者は非常にびっくりいたしましたし、同時に大変なことになったと不安を感じたわけでございまして、いろいろ要望も出てまいったと思いますし、大蔵当局にもお願いに上がったことだろうと思いますし、いろいろございました結果、五十五年度予算におきましては従来どおりに行われることが決定したようでございますけれども、来年度新しく国家予算が組まれる際には、再検討する必要があるというようなニュアンスの御発言もあったというふうに伺っているわけでございます。  そこで、私がこの問題に関しましてまず最初にお尋ねしたいのは、昭和二十六年から始められたこの結核治療の公費負担制度でございますが、なぜ公費負担をする必要があると考えてこの制度をお始めになったのか、そして今日なぜこの制度をやめようとお考えになったのか、全面的に廃止ということではないように伺っておりますけれども、公費負担に最優先的にかかっておりました取り扱いを、そうでなくて健康保険に優先的にしようと考えられていると承っておりますが、その理由を伺わせていただきたい。
  225. 禿河徹映

    禿河政府委員 あるいは厚生省の方から初めにお答えがあった方がよろしいのかもしれませんが、五十五年度予算の編成過程におきましていろいろ議論もあった関係もございますので、私ども財政当局としての考え方を申し述べさせていただきたいと思います。  いま先生から御指摘がございましたとおり、現行の結核につきましての公費負担制度は昭和二十六年の新しい結核予防法、これに基づいて創設されたものでございます。古くは大正八年から旧結核予防法がございましたけれども、現行の制度はこの二十六年に創設されたものでございます。  この結核に対します公費負担制度が当時できましたのは、その当時におきましては医療保険の普及が十分でない状況のもとで結核がわが国の死亡率で第一位を占める、こういう状況にございました。そういう点から、公衆衛生面でも重大な問題になっていたわけでございます。そういう事情を踏まえまして、社会防衛の観点から感染性の患者に対しまして治療を命令する。同時に、社会保障制度の一環といたしまして患者の医療費の負担を軽減して、結核の予防と患者に対します適正な医療の供給ということを目的としてこの制度ができたものと理解いたしております。  その後、いろいろ社会経済情勢等の変化に即応いたしまして、最近におきましては、もちろんこの間におきます関係の方々の多大な御尽力、御努力がございましたが、そういう御努力の結果、医療の高度化とか予防対策の推進とか等々、結核を取り巻きます状況が著しく改善されてまいりまして、これらに伴いまして結核患者数あるいは死亡者数というものは非常に減少傾向をたどってきております。あわせて、その間におきまして医療保険制度というものも充実整備されてまいっておりまして、こういう状況を勘案いたしますと、公費負担医療制度全般につきまして、そういう全体の状況、疾病構造の変化とかあるいは医療保険制度の充実という、そういう事態を踏まえまして、見直しを行っていっていいのではないか、かように考えておりますが、その一環といたしまして、この結核につきましても、現在の公費優先という仕組みを保険優先というふうに切りかえても差し支えのないような、そういう時期に至っておるのではないだろうか、かように考えたわけでございます。ただ、その場合でも、私どもといたしましては、保険優先となりましても、その保険の自己負担相当額というものは原則として公費で負担する仕組みといたしまして、患者負担が増大しないように配慮する必要はある、かように考えたわけでございます。  ただ、そういう考え方でいろいろ厚生省の方とも御相談いたしましたけれども、五十五年度におきましては、一応現行の制度をそのまま踏襲いたし、今後の検討課題、こういうふうにいたしたわけでございます。
  226. 金子みつ

    金子(み)分科員 いまの御説明によって、どういうふうに結核に対する認識をお持ちであるかということがわかりました。ただ、私はいまから少し申し上げたいことがあるのですけれども、それを踏まえていただきたいと思うので申し上げます。  確かに、結核の死亡率は日本では一番でございましたけれども、今日では十番目ぐらいに下がっております。一番がほかの病気が出てまいりまして、結核の死亡の順位は下がっておりますけれども、患者がいなくなったわけではもちろんございません。  それで問題は、この結核は今日でも、これは一番新しい数字は昭和五十三年の数字でありますけれども、新登録患者は八万人ございます。そして死亡率も人口十万対一一〇・三から七・二に減ってはおります、国内で確かに減ってはおりますが、日本が先進国家だと言ってもし外国にその姿勢を正すのであるといたしますならば、結核の死亡率の国際比というのを見ますと、日本は世界より約十年立ちおくれております。世界でいま一番少ないのはオランダでございますが、オランダは人口十万対一・五です。日本は九・五あります。ですから、オランダの約六倍、それからデンマークに比べますれば、デンマークは二・四ですからその約四倍というふうに、日本の結核死亡の国際比較は決していいところにはおりません。先進国とは言えない状態にあるということがわかっていただけると思います。  なお問題は、感染性の結核患者はなお今日でも三十万近くいるということでございます。しかも、もう一つわかっていただきたいことがあります。従来は結核患者は大変に手厚い取り扱いが行われておりまして、そして感染源は全部、ほとんど結核療養所に収容されて、そして手厚い看護を受けていたわけでございますけれども、今日の様子はすっかり変わってしまいまして、結核患者はどこにいるかということです。結核療養所は確かに患者さんは減りました。国立結核療養所でもベッドがあきましたのを、結核でなく、難病ですとかあるいは筋ジストロフィーの患者とかあるいは身体障害者というようなところに振り向けるほど、ベッドはあいてくるようになったわけですが、その分だけ結核はなくなったのではなくて、ほかのところにいるわけでございます。  どんなところにいるかと申しますと、問題は自営業者とかあるいは家庭の主婦あるいは自由業、高齢者、在宅医療に主としてかたまっているということでございます。数字を申し上げれば、活動性結核患者、活動性結核患者は申し上げるまでもありません、排菌者です。菌を出している感染源です。この在宅医療を受けている人たちは二十二万九百九十六名おります。これは昨年の十二月の数字でございます。肺結核は二十万六千二百十四、その他の結核が一万四千七百八十二でございます。合計して二十二万九百九十六名おります。これに対して入院している結核患者、従来ほとんどが入院していたその患者ですが、これは大変減りました。入院している患者は、肺結核が六万四千八百六、その他は三千二百七で、合計して六万八千十三名、合わせて二十八万九千九名、こういう数でございます。  これをごらんになっていただいてもわかりますように、家庭の中に在宅の結核患者が非常にふえたということです。そしてその死亡率も高齢者になればなるほど高くなる。高齢者の結核患者がふえたというところに大きな問題があります。あ、おじいちゃん、ぜんそくだ、と言っているところが、全部孫に感染させてしまっている。こういう例は幾らもございます。こういうとごろに問題があるということを見逃さないでいただきたい。  また、これは一つの新聞に出ていたことですけれども、これはキリスト教新聞でございますが、大阪の釜ケ崎というのはドヤ街でございますね。この釜ケ崎に対して、キリスト教の団体で越冬委員会というのがございます。冬の間をこの釜ケ崎の人たちを病気にさせないようにどうやって守っていこうか、こういうことで運動が進められているわけでございますが、死亡者を一人も出さないでといってがんばってきたのに、五名結核で亡くなってしまった、こういうふうに言っております。そしていま一番弱い立場人たちがいつも取り残されて、しわ寄せが来る、結核患者がいなくなる日までがんばろうとお互いに話し合っているということでございますが、この冬の結果では、結核患者がいま一番大きな緊急課題になっているということでございまして、千七百名から千九百名の結核患者がおります。そのうちの七百名は排菌者でございます。感染源です。これは西成保健所の調べでございますから間違いないと思いますが、そういうような実態にあるわけでございますから、私は公費負担制度を今回切りかえようとなさっていらっしゃる財政上のお立場の御意見は、いま御説明を承りましたので納得できないこともないのでございますけれども、それだけで進めていったら大変なことになるということを私は警告申し上げたいと思うわけでございます。  ことに心配だと思いますのは、現在の公費負担制度の中で一番重要な問題は命令入所の問題ですね。患者を発見して、そしてこの感染源を強制的に入所させて感染源を周りから取り除くという方法ですが、この命令入所は全額公費負担になっております。この全額公費負担を今度どのようになさろうとなさっていらっしゃるのかということも知りたいことでございます。これは全額をやめようという御趣旨のようでございますから、そうしたらこれは全額でなくなる。そうすると、それが半々になるのか七、三になるのか、その辺のことは私はつまびらかにいたしておりませんけれども、命令入所がもしなくなってしまうということになりますと、現在の患者さんたちをどうやって管理することができるようになるだろうかということが非常に問題だろうと思います。  いま一つは、健康保険に切りかえる、それも結構だと思いますけれども、健康保険法の改正問題もいま取りざたされているところでございます。この国会に提案されております。この改正がもし実現するようなことがあるといたしますならば、患者の受診を抑制することはもう目に見えております。有料になるわけでございますから、これはとても大変なことになる。そうすると受診抑制が起こる。したがって、早期発見ができなくなる。そうなれば本人の健康はもちろん悪化するでございましょうけれども、それだけではなくて、感染源として放置されますので、これが公衆衛生上大変大きな問題になると思います。初めに公費負担制度ができたときには、先ほど御説明がありましたように、公衆衛生上重大な問題だからというので公費負担にしてこれだけの措置をしてきたということはよくわかりますが、同じようなことがまた繰り返されるんじゃないかという心配があるわけでございます。管理と指導はどうやってやるようになるだろうか、登録はどうしてするようになるだろうかというようなことなんかも非常に心配になるわけでございます。  そこで、これらの問題につきまして私が一人で心配しているだけじゃ話になりませんが、そうではなくて、関係者が大変にそのことを心配いたしておりまして、中でも専門家の方々、公衆衛生審議会の結核予防部会でありますとか、あるいは日本結核病学会でありますとか、結核研究所でありますとか、そういった専門家のおられるところの御意見というものが厚生省の方へ申請として出されていると私は伺っておりますので、厚生省の方にお尋ねいたしますが、どういうような内容でそれらの申請がなされているのか、聞かせていただきたいと思います。
  227. 大池真澄

    ○大池説明員 御説明申し上げます。  先生御設問のように、昭和五十五年度の予算編成過程におきまして、結核医療費公費負担制度を保険優先に改めることの是非につきまして政府部内での検討が行われたわけでございますが、それにつきまして、私どもの諮問機関でございます公衆衛生審議会の結核予防部会の意見書が年末に出されたわけでございます。その中で主として二つほどの点が強調されておるわけでございます。  その一つは、結核医療費公費負担制度のあり方については、医療費公費負担制度全体の検討を行う際に総合的かつ慎重な検討を行うべきである。  その第二は、医療費公費負担制度の変更は患者管理、治療に支障を来すことが懸念されるというようなことを理由に、単に財政再建の見地からのみこの問題を取り上げることには反対の意が表明されたわけでございます。  また、同じ時期でございますけれども、日本結核病学会、結核予防会等からも同様の趣旨の陳情書が提出されておるわけでございます。
  228. 金子みつ

    金子(み)分科員 ありがとうございました。  お聞き及びいただいたことだと思うのでございますが、専門家の人たちはそういうふうに心配をして意見を出しているわけでございまして、私も全くそれに同感でございます。いまの専門家の方方の御意見の中に具体的には出ておりませんでしたけれども、私がさらに懸念いたしますのは、最も大きな伝染病であるこの結核の感染源をそのままにしておきますならば集団発生、先ほどどこにおるかということを申し上げましたからおわかりいただけると思うのでございますけれども、こういった高齢者だとか無職とか自営業とか中小零細企業の人たちとか、あるいは家庭の主婦などというようなところに感染源があるわけでございます。そうだといたしますと、一遍に集団発生だって起こらないとは限らない。何十年か昔の日本の状態に戻ったら大変だというふうに考えるわけでございます。  そこで、いまの御意見の中にもございましたように、単に財政的な見地からだけでこの問題を処理なさるということは大きな過ちを犯すのではないかということを私は懸念いたしますが、この点についてどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  229. 禿河徹映

    禿河政府委員 私どもが結核の公費負担優先を保険優先に切りかえられないかというふうに考えました理由は先ほど申し上げましたとおりでございまして、患者負担を増大させて受診を抑制するとかあるいは結核の現状というものを軽々しく見ておるとか、そういうことに基づくものでは決してございません。  ただ、最近におきます疾病構造の変化なり医療保険制度の整備充実というふうな事態を踏まえまして、公費優先でなくても保険優先という形にもう持っていってもいいのではないか、こういう考え方で提案をいたしたわけでございます。そういう意味におきましては、財政的見地ということになろうかと思いますけれども、私どものそういう考え方が、いままで営々として築き上げてきました結核の予防、治療というものに対して非常にマイナスになる、せっかくいままで積み上げてきたものを台なしにするというふうなことにつながるものとは実は考えておりません。患者の負担増大を避けていく、さらには、仮に今後保険優先ということになりましても、結核患者の管理あるいは結核治療のあり方につきましては悪い影響が出てきませんように、先ほど御指摘がございました昨年末のいろいろの御意見は、私どもも厚生省を通じて十分承っておりますけれども、そういう御懸念の向きもあるようでございますが、こういう公費負担制度の見直しによりまして結核の治療等の対策に支障を来すことがないように、その点につきましては十分留意してまいる必要があると考えておるわけでございます。
  230. 金子みつ

    金子(み)分科員 ここに結核研究所所長の意見がございます。いろいろございますけれども、私は重要だと思うところだけを抜き出してみたいと思っております。  「私どもが今回の結核医療費公費負担制度の健康保険優先への切り替えに強く反対している理由の一つは、政府が先頭に立ってこのような措置を講じることによって、ただでさえ心配されている結核軽視の風潮に拍車をかけることが予想されるからである。国の財政再建の必要性については、理解するにやぶさかでないが、それを唯一つの理由にして、数多くある医療費公費負担制度に総合的な検討も加えず、最大の伝染病である結核を弱者ということでねらい撃ちにする財務当局の姿勢が、財政再建の美名」のもとにあるとするならば、これは許されないことだと思います。「いぜんとして最大の伝染病である結核の危険性を正しく認識」してもらわなければならないと思います、というふうに言っておられるわけです。  私も確かに本当にそうだと思います。やはりそうでないとおっしゃっても、政府が公費負担制度を切りかえて健康保険優先にするようにしたんだということがわかりますと、それじゃ結核はそれほど大変な病気じゃないんだ、余り重要視しなくてもいいんだという風潮はどうしたって広がっていくわけです。こういう専門家の方々はこれを憂えながら、そうでないように努力をなさっていくとは思いますけれども、一般的にはそうでない。そうすると、さっきも申し上げたように現在の感染源は家庭の中にあって、中あるいはそれ以下の生活集団の中にあるということになりますと、私は本当に以前のようなことに返らないとも限らないのじゃないかという心配があるわけでございます。  そこで、私は今度は厚生省にお尋ねしたいと思うのです。実は結核は、結核医学の進歩の陰に治らなくなる病気もあります。最後まで治らないというのもありますし、それから肺機能が低下して低肺機能の人になってしまう。こういう一人前の人間としての生活ができない、一週間のうち半分は寝ていなければならないというような体になってしまうというようなこともございますし、高齢化は先ほど申し上げました。そこで、長い間療養生活をしている間に失業してしまうことがあるわけです。職業を失うということがあります。また、新たに職が見つかっても、あるいは長い間療養しておる間に住宅難というようなこともあったりして、社会復帰ができなくなっているという問題も非常に大きな問題でございます。ですから、結核の問題はただ単に経済的な見地からだけ考えるのではなくて、もっと総合的に、社会的な立場からも考えて対策が確立されなければならないと思いますのに、今日ではそれがないわけでございます。  そこで、今回このようなことが大蔵当局の方で計画をされたのを機会にして、直接公衆衛生行政を担当していらっしゃる厚生省としては、この問題について今後どのように対処していこうとなさっていらっしゃるかということを簡単におっしゃっていただきたいと思います。時間がございませんから簡単にお願いします。
  231. 大池真澄

    ○大池説明員 この問題の提起としては、公費負担医療制度をめぐる問題提起として私ども受けとめておるわけでございまして、まず公費負担医療制度の全般につきましては、先ほど来政府答弁がございますように、保険制度全般の充実の状況、疾病をめぐる状況の変化等も踏まえまして、医療保障の費用負担のあり方も含めて、今後総合的な見直しを行う必要があるとされているところでございます。したがって、結核公費負担医療制度につきましても、このような観点から、その一環として所要の見直しを検討したいと考えておるところでございますが、今後とも関係議会等の意見を十分聞きまして、またその際、見直しに当たりましては、患者負担が増大しないよう配慮することは当然でございますが、さらに患者管理、患者治療といった結核対策に支障を来すことのないよう十分留意して、関係者の合意を十分得て、こういった問題を処理してまいりたいと考えておるわけでございます。
  232. 金子みつ

    金子(み)分科員 厚生省は直接の御所管でありますから、どうかしっかり、最も求められている対策を立てていただきたいと思います。総合的な見地から十分な対策を練っていただきたいと思うわけでございます。  そこで、大蔵省にもう一度お願いがございます。申し上げたいことがございます。従来公費負担をずっと続けてきておられますが、昭和三十年度あたりに比べますと、今日でははるかにその負担分も少なくなっております。毎年毎年負担分が非常に削られてきております。これは患者の数のことだとかあるいはいろいろな理由があると思いますけれども、確かに減ってきていることは事実なのでございます。たとえば、三十年度には結核医療費は総医療費の中の六七・〇%だったのが、四十五年あたりには二二・五%になり、それがさらに少なくなって五十年には一二・〇、五十二年には七・七というようにずっと減ってきております。私は、これは自然の現象だと思いますからこのことをとやかく言うわけではございませんけれども、私はこれでいいと思いますから、これを続けていく必要があると思うわけです。ここで切らないで、ここでぐんと落としてしまわないでこれを続けていく必要がある、切るのは時期尚早だと思うわけでございます。  そこで、私が考えておりますのは、結核はまだ五年ごとの実態調査をやっておりますね。ですから五年ごとの実態調査をやった結果で方針を立てていっていただきたいと思うわけでございますが、いまから十年、実態調査の二回分ぐらいをやった時点で再検討をしても遅くはない、私はそれくらい慎重にやっていただきたいと思うわけでございます。いまここで結核軽視でないとおっしゃいますが、事実上は、結果的には軽視になるわけです。ですから、そうすれば管理が弱体化しますし、そして短期治療の普及もおくらせてしまいますし、結核事情はだんだん悪くなってしまうということになりますので、そういうことのないようにしなければならないと思いますので、この点を私は最後大臣お尋ねしたいと思うのでございます。  結核は、患者が排菌しなくなった、菌を出さなくなってから三年間は登録しておくわけです。そして三年間菌が出ないことがわかったら初めて登録を外すのです。それぐらい慎重にやらなければいけないものなんです。ですからそのことを考えていただいて、今回は、この五年ごとの実態調査を続けるということを含めて、公費負担の問題はいましばらく取り扱いを延期していただくということを強く要望したい。そうなさらないと、いまここで医療保険に切りかえておしまいになると、私は全く昔のようになると思いませんけれども、はるかに悪い結果が出てくるだろうと推察できるので、大変に心配をするところでございます。その点をよく踏まえていただいて、この問題を延期するということについて大臣の御所感を伺わせていただいて、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。お願いいたします。
  233. 竹下登

    竹下国務大臣 実は、私も就任早々この問題に対処しなければならないことになったわけでございます、御審議いただいています五十五年度予算編成の直前に大蔵大臣になったわけでございますから。したがって、率直にそのときの感じで申し上げますと、厚生省のいろいろな施策をやっていらっしゃるそれが、お金の面で患者に何らの悪い影響を与えないとしたら、それはそれなりの考え方だ、こういうことを率直に考えました。しかし最終的に、機いまだ熟せずということでことしはやめたわけです。いま専門家の金子先生の言っていらっしゃるようなものを皆やって健康保険の方へ移したらどんなものかなという感じを持ちながら実は聞いておりました。したがって、基本的には厚生省におかれまして各種審議会でいろいろ御相談いただくようでございますので、その結論を得てこれに対処していかなければならぬというふうに考えております。
  234. 金子みつ

    金子(み)分科員 わかりました。ぜひ悪化しないように方針を立てていただきたいと思いますので、これを強く要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  235. 村山達雄

    村山主査 金子みつ君の質疑は終わりました。  次に森田景一君。
  236. 森田景一

    森田分科員 公明党・国民会議森田景一でございます。  委員長、それから大臣関係の皆さん、連日の審議、大変御苦労さまでございますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  私は最初に、都市緑地保全のために山林の物納制度を確立してはどうか、こういう問題についてお尋ねしたいと思っております。  総理大臣の施政方針演説に「私は、田園都市国家の構想を進めていくに当たって、活力に満ち、快適な環境を備えた多様な地域社会の形成を目標として、都市においては、災害からの安全の確保にも配慮しながら緑に満ちた都市づくりを進め、」云々、こうございます。また「その具体的展開に当たりましては、第一に、自然の緑の活用、都市と田園をつなぐ緑の造成、暮らしの中の緑の再生を図ることにより、」云々、こういうことを総理大臣はおっしゃっておりました。このことは大蔵大臣もよく御承知のことであろうと思います。  私は、大平総理大臣の演説のように、緑に満ちた都市づくりができれば実にすばらしいなと本会議場で考えておりました。しかし、どうもこの総理の演説は美辞麗句を重ねたような、言ってみれば大ぶろしきを広げたというような感じを率直に持ったわけでございます。大蔵大臣は大平の内閣の、言ってみれば健康をあずかる、俗に言う大番頭さんの役目ではないか、このように私は考えております。その緑に満ちた都市づくりが本当にできるのかどうか、大蔵省として、大蔵大臣として、こういう総理の構想をどのように進めていかれるのか、そしてこの構想が一体何年ぐらいたったらどのように緑に満ちた都市ができていくのであろうか。こういうことをひとつお聞かせいただきたい、こう思うわけでございます。
  237. 竹下登

    竹下国務大臣 大平総理が申しておりますいわゆる田園都市構想というものは、一つの理念であろうと思っております。したがって、いつまでにそういう緑したたるわが国づくりができるかということになりますと、これは一定の期限というようなものがあるべきものではなくて、いつまでもいつまでもそういう気持ちが背景にあってしかるべきものではないか。そこでこれを具体的に進めていくといたしますならば、あるいは定住圏構想でございますとかいろいろ各省で打ち立てられております、私も建設大臣をしておりました当時そういう計画もつくりました。それらをどう調和して進めていくかということをいま国土庁で具体的にまとめてみよう、こういうことになっておりますので、それは事業計画としての一つの期を画することであって、その理想はまた永遠に続いてしかるべきではないか、こういう感じがいたしております。もっとも、私はまさに山村僻陬の出身でございますので、窓をあければ公園だというところに住んでおるものですから、多少緑に対する認識が違うかもしれません。余りに恵まれ過ぎておりました。
  238. 森田景一

    森田分科員 竹下大臣は島根県の御出身、このように承っておりますから、確かに緑の豊かな地域でございますのでそう感じていらっしゃるかもしれません。ところが、私は千葉県のしかも柏市というところ、東京のすぐ近くに住んでおります。御存じのとおり、この東京首都圏、千葉県、埼玉県、神奈川県という地域は、人口が非常に増大している地域であるということは大蔵大臣も御認識だと思います。  千葉県の人口増加をちょっと数字を挙げて申し上げてみますと、昭和三十五年には二百三十万六千十名、こういう状況でございましたが、昭和五十四年、昨年の十二月一日現在で見ますと、四百六十五万七千六百二人、実に昭和三十五年の二倍以上にふくれ上がっております。これは千葉県全体でございますけれども、特に私の住んでおりますところ、東葛中部地域、こう呼ばれているようでございます、松戸市川を除きまして柏とか鎌ケ谷あるいは流山、我孫子、こういった地域でございます。この地域は昭和三十五年に二十万二千五十九人だ、こうなっておりますが、昨年の十二月一日には何と六十五万六千二百七十四人、これは三倍以上にふえている地域でございます。  このように人口がふえてまいりますと、これは当然住宅がふえてくるわけでございます。住宅需要がふえてまいりますと宅地開発が進むのは当然でございまして、したがって、山林は開発されまして、いままであった緑地が突然なくなっていく、こういう現象がずっと続いているわけでございます。今日でもこの進行に衰えは見られておりません。  総理の言うように自然の緑の活用ということには全く正反対なこういう現実を、この大平内閣の大番頭さんという立場でどういうふうにお考えになっていらっしゃいましょうか、またこれを防ぐにはこういう方法があるではないかということをお持ちでございましょうか。あったらひとつお聞かせいただきたいと思います。
  239. 竹下登

    竹下国務大臣 大変むずかしい次元の高い御質問でございまして、いま森田さんのところはそういう状態であるし、私の出身の町は人口が一万五千ありました。いまは五千でございます。大変な過疎現象をもたらしておる。それは結局は、国土の均衡ある発展という意味において、いわゆる日本という国が資源の乏しい国であったので、したがって、大体ならば南農北工型とでも申しましょうか、南の方の肥えた土地に農業が残って、スイスがいい例でございましょうか、余り肥えない地帯に工業が起きた。それが日本の場合はまさに南工北農とでも申しましょうか、いわゆる資源がございませんから輸入しなければならぬ。そこで港ができて、そこの近いところから工場が張りついた。そして緑に象徴される農林業というものが海から遠いところにだけよけい残ってきたという感じが率直にいたします。そういう歴史的経過と国土狭隘にして人口が多いというようなことからいたしまして、私は、本当に緑豊かな田園都市構想というものは根強い努力が必要だと思っております。     〔主査退席、保岡主査代理着席〕  したがって、そういうものを努力しながらも、本当にうっそうとした森林などというものを柏ではなかなか見ることは現実に困難ではないかということになりますと、むしろ柏から、たまたまここに栃木県の先生方いらっしゃいますが、そこへりっぱな道路がついて土曜、日曜にそこらに行って、国土全体がある種のふるさと意識であるという意識転換でもすることが、一つ考え方かなということを私なりに政治家として考えております。だから、現実的な問題としては、いま国土庁で詰めておりますところのもの、自治省にもございます、建設省にもございます、そういうような計画をどこかで調和を保って、一つの期限をつけてそれを実行に移すようなことにしなければならぬ。だから、大平さんが申しております田園都市構想などというものが本当に空念仏になってはいけないということは、森田さんは私よりまだ若いのでございますから、日本人の永遠の課題として取り組んでいかなければならぬ、かように考えております。
  240. 森田景一

    森田分科員 私より若いというお話でございますが、確かに幾つか若いと思いますが、永遠に私も生きておるわけではございませんので、大蔵大臣も政治家であれば私も政治家でございますので、やはりいまのわれわれの時代に緑を確保する、こういう対策をきちんとしていかなければ緑は失われていってしまいます。  そういうことで、島根県でいらっしゃいますので、緑の感覚はわれわれから見ますとずっと薄いように感じますけれども、地方自治体では、大臣がいまおっしゃっておるようなことを言っておられないのです。現実にこの地域にこれだけの人口がふえてきた。この人たちにわが町、わが市を愛するような住民になってほしいというふるさとづくりの運動が柏にもございますし、都市化の進んでおる各地にこういう状況があると思います。地方自治体では、そういう緑を守るためにわざわざ条例をつくりまして、個人の持っている山林に補助金まで出しまして木を守ってもらいたい、こういうことでいろいろと苦心しております。  時間の関係で細かいことまで申し上げられませんけれども、地主さんが御当主のときにはそれでもいい。ところがお亡くなりになりますと、大体山林等をお持ちの方はかなりの財産でいらっしゃいますから、遺産相続という問題がある。大体市の方でそう指定しておきましても——一番先に市の方に相談が来るそうです。実は相続をするので市の方に買ってもらえないか、こう言ってきますと、市の方は御存じのとおり、国も大変ですけれども地方自治体も大変でございまして、欲しいけれども買うお金がない、こういうことになるのです。  一方宅地開発が進みますと、大ぜいの住民が住んできますから子供さんが生まれる、公園が欲しい。こうなってきますと、宅地開発したところをまた市の方は大したお金を使いながら公園用地として買い戻す。公園には国から補助金が出るのです。こういうことを繰り返しているわけですから、いっそのこと最初から山林が国なり地方自治体のものに確保できるような対策、これをやっていけば、それこそ私は永遠に生きてなくても緑は残る、こういうふうに私は考えたわけです。  それで、実は遺産相続のときに、私余り古いことはわかりませんけれども、戦後の一時期物納ということがいろいろな面で行われた時期がありました。現在でもこの物納という制度は生きていることは生きているようでございますが、なるべく現金で納めろという趣旨になっているようでございます。ですから、これを時価に評価して国が物納としてちゃんと受け取る。それを国がみんなそっちこっちにあるのを管理するわけにいきませんから、地方自治体にその管理を任せる。そうすれば、この山林がずっと公共用地として残されていくことが可能なはずです。そういうことをせっかく総理大臣も言って、大蔵大臣だってその御相談にあずかっていらっしゃったと思うのですね。そればあくまでも理念だ理念だと。理念だけではいい政治できっこないのです。理念は理念で結構でございますが、現実にその理念を実現するための対策というものをいろいろと講じていけば、理念が実現に近づいてくるわけですから、そういう点、私は、こういう物納というものをきちんと相続税法、まあほかの税法も関係あるかもしれませんけれども、こういう中で位置づけていくことが緑を守るということに通じるのではないだろうか、こう思うわけなんですね。  それで、特に遺産相続のことにつきましては、島根県でも恐らくそうじゃないかと思うのですけれども、なかなか遺産相続しない方も多いのです。特に農家とか山林をお持ちの方は、おじいさんの代のものがそのまままだ名義が残っているなどというのがたくさんあります。私なんかもいろいろ相談を受けることがございます。それはやはり、相続税はお金で払わなければならないということになりますと大変な負担になるものですから、私の代に財産を減らすわけにいかないからというので、そのままにしてきている。こういういろいろな問題がありますので、ひとつせっかく総理大臣の、第二次大平内閣発足の所信表明演説にこういうことが出ていましたけれども、私は、これは実現できたらすばらしいことだと思ったわけでございますので、きょうあえて質問したわけでございます。どうかひとつ、大蔵大臣のこの問題に対する見解をお聞かせいただきたいと思います。
  241. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 大臣の御答弁の前に、現在の制度について若干御説明申し上げますけれども、御案内のとおり、近代の租税というものは金銭納付が原則でございますけれども、相続税の場合に限りまして、これは財産税でございますし、一時にかなりの税負担が通常発生いたしますものですから、一定の要件のもとで現在でも物納制度は認められておるわけでございます。ただ、一定の要件と申しますのは、やはり金銭納付が困難な場合ということと、それから納期限までに物納の申請をしていただくということ、それからもう一つ、これは問題のポイントになるのでございますけれども、その場合に国が収納いたします価格というのはあくまで相続税の評価価格で受け取るというのが基本的なたてまえになっております。
  242. 竹下登

    竹下国務大臣 私も終戦直後、実はあれは戦争に負けた後の財産税でございましたが、山林を二百町歩ばかり物納した経験がございます。それはいま国有林になるわけですからりっぱに残っておるわけでございますけれども、いまの相続税法のたてまえはいま申し上げたとおりでございますので、やはりケース・バイ・ケースで、地方自治体の方でも関心を持っておっていただきながら解決していかなければならぬ問題ではないかなというふうに考えております。
  243. 森田景一

    森田分科員 やはりそういう姿勢ですといつまでもこれは解決しないわけです。率直に申し上げまして、第二次大平内閣がいつまで続くか、これもわかりません。こんなことを言っては失礼かもしれませんけれども、大蔵大臣も、大臣はこれからもずっとおやりになるかもしれませんけれども、大蔵大臣としては何年おやりになるかわからない。だから、竹下大蔵大臣のときにやはりそういう税法を改正するとか相続税法を改正するとか、こういう決断が私は政治家には必要だと思うのです。ですから、どうかひとつ、こういう話をしているうちにも不動産業者はどんどん開発を進めているわけでございますから、重要な検討事項として検討していただけませんかね。その点ひとつ。
  244. 竹下登

    竹下国務大臣 勉強さしていただきます。
  245. 森田景一

    森田分科員 私は実は分科会でずっといろいろと申し上げておるのですが、千葉の県議会に少しおりました。千葉県庁の仕事というのは、ほかは知りませんが、非常に仕事が遅いということで有名でございます。私は野党でございましたけれども、与党の自民党の県会議員が県庁の仕事ぶりを評しまして、検討三年、やります二年、始めましたはぼちぼちと、こういうことを議会で発言しまして、その方は亡くなりましたけれども、それ以来スローモーぶりはいつもこうやって批評されてきているわけでございます。岡の方はそんなことはないと思うのですが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  246. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、森田さんも私も共通しておることは地方議会出身でございまして、それで、私最近感じておりますのは、開発途上県という表現は当たりませんが、いわゆるふるさと意識の強いところ、その生まれ育った人がずうっと続いて定住しておるところが、実は運動公園なんかも多いんですね。それはなぜだろうかというと、子供たちに運動公園をつくってやろうとかプールをつくってやろうということになりますと、PTAなり、やはり奉仕に出たりするんです。私は、そういうことが、そういう定着性の強いところほど公共事業等の進捗度合いが早いということになろうかと思うのです。したがって、国全体を見ました場合に、やはり入り組んだ人間関係の中に非常に遅いところが出てくるというふうに、確かに思います。特に公共事業について申しますと、私も、建設大臣をしておりますときに、不用額の残るのは必ずそういう入り組んだ、人口流動地帯の方が多いということにも一つの理由があるんじゃないかな、こういう感じがいたしております。
  247. 森田景一

    森田分科員 大臣のおっしゃることはわかりますけれども、私申し上げましたのは、さっきの近郊都市の緑地を保存するために、相続税法なりほかの税法なり、こういうものの改革、改正といいますか、これを検討していただくというふうにお話ししました。勉強しますと、こうお答えだったので、余り長々としていられたのでは困りますからと、こういう意味ですから、これはそういう意味でひとつ御了解いただきたい。  次に、米軍柏通信所跡地利用についてお尋ねしたいと思っております。  これも、千葉県の柏市と流山市の一部に、東西約一・四キロメートル、南北約二キロメートル、面積が百八十八万五千二百十七平方メートル、約五十七万坪の広大な米軍基地が、昭和五十三年でしたか、九月三十日、それから昭和五十四年八月十四日ですか十五日でしたか、この二回にわたりまして返還されてまいりました。これは大臣も御存じと思います。この米軍基地の返還につきましては、地元柏市民は非常に長い間大きな関心を持っておりまして、特に市民の団体が返還を陳情いたしまして、これは昭和五十年十二月八日でございますけれども、五万七千名の署名をもちまして、当時の防衛施設長官でありました斎藤一郎さん、この方に陳情いたしました。後で聞きましたら、当時の斎藤長官は非常にりっぱな方だったように思います。といいますのは、その後柏市とか近隣の自治体の責任者の方がやはり防衛施設庁にこの返還のことで陳情に何回か来られたそうですけれども、そのときその五万数千名の署名簿をきちんと保管してありまして、住民の方からもこのような強い要望があるのですよ、こういう話をしたということを当時の市長さんから聞きまして、本当に住民の声を、国民の声を聞く姿勢があるな、こう私は後になって感じました。いずれにしましても、そういう事情はございましたが全面返還ができたわけでございます。  この米軍柏基地の全面返還に伴いまして、地元の柏市、近隣の市町も含めて、貴重な国民の財産として、跡地利用のため国やそれから県の方に積極的に働きかけをしているわけでございます。このことにつきましては御存じでいらっしゃいましょうか。
  248. 迫田泰章

    迫田政府委員 柏の米軍基地跡地の利用問題につきましては、現在地元の方で利用計画を作成中であるということでございまして、その結果を出していただきますれば、当方でまたいろいろ検討いたしましてなるべく早い時期に利用計画をつくりたい、こういうふうに考えております。
  249. 森田景一

    森田分科員 そうしますと、私の聞いておりますのは、国有財産中央審議会から、日本じゅうのこれから返還されるであろうあるいは返還された基地の跡地利用については、いわゆる三分割有償方式という方式をとれ、こういう答申が出たわけでございますね。実はそのことで、三分割はやむを得ないとしても、有償というのは地方自治体に非常に厳しいことだ、こういうことがありました。しかしいずれにしても、せっかくのあれだけの広大な基地でございますから、先ほど申し上げました国民の財産として、柏あるいは近隣の市町の住民の方々のためにあれは非常にいい計画だ、われわれのために貴重な財産を先輩は残してくれた、先ほど大蔵大臣は、これから先ずっと長くというお話がありましたけれども、そういう方針で地元では取り組んで、当初、じゃああれ全部返していただいて、払い下げを受けたらばこういうふうにしようと計画をつくりました。それが県庁の方と、あるいは大蔵省とも御相談になったかもしれませんが一案、二案とできまして、三案が、県の方と合意を得た案ができました。そしてできたやさきにどうしても三分割だからだめだ、こういう話になりまして、率直な話、三分割ということは面積を三等分するというふうに当初誤解をしたようでございますが、大蔵省担当者のお話を聞きますと、必ずしも三等分ではなくして三つに分けて使うんだというお考えだ、こういうように私は聞いたわけです。  いまお話をお伺いしますと、地元柏市で計画をつくって、それで国の方に持ってくれば、それによって御相談に応じます、こういうふうな御答弁だったと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  250. 迫田泰章

    迫田政府委員 この跡地の利用計画は、御承知のように中央審議会で審議をしていただいて御答申をということになっております。地元利用計画というのを踏まえてこちらがつくらなければいかぬわけでございますが、地元が全面的に自分の方で使いたい、こうおっしゃれば三分割の方針に反するのじゃなかろうか。地元といろいろお話をしておるわけでございますが、いままで立川と朝霞の跡地を処分したわけでございますが、三分割というのはちょうど三分の一ずつにならなくてはいかぬのかという話に対しましては、いろいろ利用要望がある、それを調整する指針でございますので、ちょうど三分の一にならなくてもいい、しかし、その利用要望分を調整する指針としてわれわれは考えておるのだ、こう申し上げておるわけでございます。
  251. 森田景一

    森田分科員 そういうことで地元の方も安心してまた計画が策定できると思いますが、地元の方の担当者の話を聞きますと、いまお話しのように、国の施設といいますか、国の利用計画が決まらないと、地元としても重複があっては困るのだ、こういう話も出ているわけなのです。だから国の方が、三分の一は残すにしましても、ここはうちの方はたとえば五万坪なら五万坪でいい、そういうことでここには何を国としては考えるのだという案を出してもらえば地元の方はやりやすい、これはもっともなことだと思うのです。その点についていかがでしょう。
  252. 迫田泰章

    迫田政府委員 国の方で優先的にここを三分の一いただきますよということで出せば、地元はそれでオーケーと言われるかと思うとなかなかそうでもございません。これは要するに、お互いにいろいろ調整しながら計画をつくっていかなければならぬ、こう思いますので、十分地元ともいろいろ話をしながら三分割の方針に従ってやっていきたい、こういうふうに考えております。
  253. 森田景一

    森田分科員 それでは時間が参りましたので、最後に少し要望を申し上げておきますが、有償払い下げということは非常に地方自治体を圧迫いたしますので、私は無償貸し付け——無償払い下げができれば一番いいわけですけれども、いろいろと審議会関係もありましょうから、無償貸し付けという方針を大蔵省検討していただきまして、そういう方向で実現できるように要望申し上げまして、質問を終わります。
  254. 保岡興治

    ○保岡主査代理 森田景一君の質疑は終わりました。  次に、広瀬秀吉君。
  255. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 私は大蔵大臣及び国税庁に対しまして、主として財政再建問題ということに焦点を合わせながら、もう一つの見地は、大平総理がこの通常国会冒頭の施政方針において政治の倫理を確立するということを言われましたが、その問題に税制の問題が深くかかわり合いを持っている、そういう立場で、税制には今日制度そのものに不公平があるという問題が言われておりますし、それは大きいところに甘く小さいところに重いというようなものやあるいはクロヨン論議に見られるような、水平的公平あるいは垂直的公平などと言われますが、そういうものが侵されて不公平であると同時に、そういう税制の執行面というか運営面というか、そういうものが的確に行われておるかどうかという点で、特に使途不明金の問題について税務調査で明らかになる、しかもそういうものの中に政治を乱る原因がほとんどすべてひそんでいる、そういうようなものでありますので、財政再建の問題と政治倫理を正す附題とはそういうところできちんと結びつくのではないか、こういいう見地で質問をしていきたいと思うわけであります。  そこで、私は全般的な問題じゃなくて、主としていわゆる調査課所管の法人、これはいずれも大法人とそのまま言いかえてもいいと思うのでありますが、どういう調査の仕方をしておるか、そういうようなことをまず伺っておきたいと思います。
  256. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 お答えいたします。  国税庁は従来から、大法人に対しましては特に重点審査というふうな体制をとっておりまして、具体的には、一般の法人に比較いたしまして、実地調査割合とかあるいは一件当たり調査日数等から非常に差がございまして、非常に密度の高い調査を実施してまいったところでございます。特に国税局の特別国税調査官が調査を分掌しておりますいわゆるマンモス法人につきましては、毎年特に実地調査を行いまして、一回の調査に延べ数百日を要するというふうな非常に密度の高い調査を実施しているところでございます。
  257. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 密度の高い調査を重点的にされるというたてまえは、私はそれはそれなりに結構だと思うのであります。     〔保岡主査代理退席、主査着席〕 ところが、私どもどうも納得できないのは、大体調査課所管法人が一万七千社程度ある。そういう中で、五十二年度と五十三年度の資料をいただきましたけれども、実地調査件数が五十二年度で四千三百社、五十三年度は四千二百社、こういうように比率にいたしまして二五%に満たない、五十三年度は二四・七%、そういうことになっている。そうしますと、これは一万七千社全部を疑るわけではないけれども、このピッチで実地調査をやれば四年に一遍しか回ってこない。仮装隠蔽等のよほど悪質なものでない限りは、三年で税法の除斥期間というか時効というかそういうことになってしまって、追及できないというようなことにもなるわけであります。  短絡的にそこまで言っていいかどうかわかりませんけれども、五十二年度で申告漏れ所得の把握が二千八百六十三億、五十三年度では四千二百社あたり三千百九十億、こういう膨大な所得漏れというものが発見されるのですが、大臣、この辺よく聞いておいてください。しかもこれは二四・七%の数字でありますから、二五%に満たない。四分の一と見てこれをそのままストレートに四倍してみると一兆二千七百六十億。これをそのまま申告漏れというのはちょっと粗っぽい議論だと承知をいたしておりますが、少なくとも一兆円くらいあるんではないかということは国民だれしもそう疑わざるを得ないのですね。それの調査をこの程度しかしてない。やってみれば、わずか二五%ぐらいでやってみても三千億を超える三千百九十億というような申告漏れが発見されてこれに対する課税ができる、こういうことになります。これも粗っぽい議論でありますが、これを仮に一律四〇%という税率で税金を徴収したとすれば、三千百九十億ですから大体千二百億を超える税金が脱漏しておったということになるわけですね。それを全面的にやったら、仮に四倍すれば一兆二千七百六十億、大体一兆二千八百億くらいになるのですけれども、それを割り引いてみても一兆円くらいやったとすれば、四千億くらい税金が出てくるのではないか、こういうようなことが推定されるわけです。推定しても無理じゃないというようなものであります。そういうような状況であるということに対して、これをどう改善する気持ちがあるのか、これは大臣の方から答えてください。
  258. 矢崎新二

    ○矢崎政府委員 御指摘のとおり、大法人というものが非常に重要な地位を占めておるということにかんがみまして、先ほども次長の方から御答弁を申し上げましたように、私どもの重点的な調査対象として重視をしておるわけでございます。ただ、御指摘のように、現在の実地調査割合が約二五%くらいであるという点は確かにそのとおりでございますけれども、全法人の中で見ますと、たとえば税務署所管の法人と比べてみますと、税務署所管法人の場合は実調率が約九%くらいというものに比べまして、私どもといたしましては精いっぱい重点的な事務量の投入をしておるということを御理解をいただければありがたいというふうに思っておるわけでございます。  また、御指摘のように、この調査体制をどうやって改善をしていくかという問題につきましては、私どもも非常に心を砕いておるわけでございますけれども、一つには、調査人員の問題があろうかと思いますけれども、これは全体の国の定員の厳しい管理という環境の中におきまして、やはり限界のある問題ではないだろうかというふうなことを感じておるわけでございます。しかしながら、こういった限られた事務量の中におきましても、従来から大法人に対しましてはいわゆる重点調査体制をとっておるわけでございまして、特に国税局の特別調査官が分掌しておりますマンモス法人につきましては、連年実地調査をやるとかあるいは一件について延べ数百日を投入するといったようなことで、徹底した調査を期したいというふうにやっておるわけでございます。  そういう実情を踏まえまして、この大法人に対します調査事務運営の基本的な考え方を若干御説明いたしますと、私どもの調査課所管法人におきましては、大規模重点、不正所得の把握重点あるいは調査力向上のための研修の充実といったようなことをいろいろと工夫をして推進をしていきたいということを考えておる次第でございます。
  259. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 大臣昭和五十一年から五十三年までの実際調査をした案件が、五十一年には四千四百六十六件、五十二年は四千二百九十五件、五十三年は四千百七十六件とこう漸減をしているわけですよ、そういう状況がある。われわれは調査課法人は、いままで二四、五%ぐらいで来たものをさらに三割にふやし四割にふやしというようなことで、少なくとも二年に一遍ぐらいは一回りできるぐらい、そのくらいのものをきちんとやる。千日調査だとか五百日調査だとかいうような、調査にそんなべらぼうな長期間を要するなんというのはこれはおかしいと思うのですよ。もっと短期間にもっと精鋭をよりすぐって調査を早くやるということ。本来ならばもっと重点的に精査をしなければならぬところをやりたいという気持ちがあるならば、こういう実績に対してどう処置すべきかということに対して大蔵大臣はどうお考えになりますか。
  260. 竹下登

    竹下国務大臣 私が大蔵大臣としていつも大変に心を痛めます一つの問題としては、定員削減計画等につきまして行政管理庁あるいは内閣官房長官あるいは大蔵大臣でいろいろ議論をするわけであります。それと一方、税務事務に携わる職員の数でございますね、これだけ件数がふえておりながら十年間ほぼ一緒、こういうところにも非常な悩みがあります。しかし、だんだん努力の結果、少数精鋭で仕事を一生懸命に今日やっておるという実態を御理解をいただきたいと思います。
  261. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 財政再建の一つの有力な手段としてもちろん行政、特に人員をだんだん減らしていこうというようなことが主たる、項目にもなつているわけですけれども、われわれはただ総体的に減らせばいいというものではない、やはりふやすべきところにはきちんとふやしていく、そして不要不急のものがあればそういうところを減らしていくという、そういう質的な面を考慮したものでなければならぬと思うのです。  いま査察部長が言いましたけれども、確かに国税庁の中でも国税実査官、これが百四十名でずっとそのままである。それから国税調査官がやはり四十名、査察官が二十七名ということで、どんどん膨大化していく業務量に対応しなければならぬ、こういう面がある。それからまた、国税局の方で言いますと、東京、大阪を初め千二百三十人の国税調査官、そのほかに特別国税調査官、統括国税調査官というようなのがそれぞれありますが、三十三人とかあるいは三十一人とかというような数字で、全部総体的に見ましても千三百六人ぐらいにしかならないのですね。そういうことでずっと年々膨大化していくそういう仕事に対処しているということで、しかも最近の企業側の対応というようなものも、海外の子会社を利用したり、その間の送金、それの間の為替差益を利用したりといういろんなものになってきたりして、非常に調査の質を向上さしていかなければならないような面がある。国民の側、大企業の側で対応が巧妙になってきている。それを超えるしっかりした調査が行われる。査察にならないように調査の段階で把握して、当然徴収すべき税金が正しく法に基づいて徴収されるということでなければ、大きいところは皆逃がれているんだ、小さいところばかり税務署はいじめている、そういうことが国民の声としてある。  しかも最近、ロッキード、グラマン事件あるいはKDD事件というようなものがそれにつけ加わって、使途不明金というようなものが一年間に三百億を超えるような額が発見される。しかもそういうものが、先ほどのように二五%ぐらいの調査の中から使途不明金が三百億を超えるというようなことになれば、さっきの論理じゃないけれども、四倍すればこれは使途不明金だけでも千二百億にもなるじゃないか。そういうものの中で政治の腐敗が醸成される、政界工作費だとかそういうようなものが出されていくんじゃないかというような、現在の政治資金規正法の不備やそういうものの中からそういうものが国民の不満の種となって醸成されていく、そういうような問題もあるわけであります。  したがって、そういうものについては、本当に必要なところにはきちんと要員も正しくふやしていくというようなものが一つなければならぬだろう、こういうように思うのですが、その辺、どうですか。これは大蔵大臣、税の執行というものが正しく公平に税法に基づいて行われている、そして税を逋脱する者は非常に少なくなる、正しく税金が納められる、こういうようなものがやはり財政再建にとって非常に必要なことだし、そしてまた、それは国民の政治に対する信頼を回復する道にもつながる、そう思うわけでありますが、いかがでございますか。
  262. 竹下登

    竹下国務大臣 確かにそういう問題が財政再建に直接結びつくことはもとより、また、政治不信に対する解消とでも申しましょうか、そういうことになろうかと思いますので、それには精いっぱいの力をいたさなければならぬ課、題であるというふうに考えております。
  263. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 そこで、使途不明金というものの扱い、これは税務当局としては、企業が取引上のいろんな慣習とか、お得意様を大事にしたいとか、そういうような見地からあるリベートを出したとか、あるいは、得意先との取引を継続していくために必要な支出をして、しかもそれを相手の要望によって隠すというようなことなんかがあって、それをばらされたら今度はお得意さんを失う、そういう中からある程度使途不明金というのが計上されるのは、これもまた現代社会ではやむを得ないことかなと私も思うのですよ。しかし、相当なしっかりした上場会社等において巨額の使途不明金を出すというようなことに対して、これをどう始末をつけるか。税務署は、向こうが自認してこれは税金を払いますから使途は追及しないでくださいと言われれば、それまでの立場であるけれども、しかも、その使途不明金の中で、所管法人のわずか四分の一をやっただけでも三百三十億も出る、使途不明金が発見される、そしてそれを追及して透明にすることもできないというような場合に、しかも、その使途不明の全く不透明な部分の中から政治腐敗といわれる後ろ暗い金が動くというようなことが政治を乱るというようなことになろうと思うのです。  そういう場合に、たとえばグラマン問題で松野前代議士が六七年、八年、九年、三年間にわたって五億円を次々にもらっていったというようなことなんかも、そのときに税務調査があったんですか、なかったんですか。それは発見できなかったんですか。いかがですか。
  264. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 その点につきましては、通常税務調査は、それぞれ個人について相当額に上る場合には行っておりますので、そういう調査は行ってきた、このように考えております。
  265. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 前に返りますが、大蔵大臣、二五%ぐらいしかやらないということになれば、四年に一遍やることもあるということなんですよ。だから、その間が抜けたと言われればそれまでなんだけれども、結局あれは時効だというようなことになって、税法上も追及できないということになったんでしょう。しかも刑事犯としても、もう時効になってしまっているから贈収賄罪も適用できない、こういうことになってしまった。同じ政府機関がやることをぴしっとやっておれば、これは怪しい、この中に犯罪性が隠されているなというようなことは、それを調べるのは国税当局の役割りではないにしても、犯罪性を疑わしめるに十分なような当然の問題が含まれているということがわかったというような場合に、これはやはり同じ政府機関である——国税犯則法に基づく告発をするかどうかという問題ではなくて、それはそういう政治的な犯罪というか刑法犯というか、そういう贈収賄罪というようなものを非常に濃厚ににおわせるようなものがある場合に、これは検察当局との共助の関係というか通報の関係というようなものをやっていく、同じ政府機関の中ですから、そういう場合にそういうものがあってしかるべきだと私は思うのです。そうすればあの問題なんかだって、国民の指弾を受けるような、批判を受けるような結果にはならないで済んだのではないか、こういうように思うのです。だから、これは私の意見ですが、刑事局長にかわって水原さんがおいでになっておりますので、水原さんの方からその点についての法務省としての御見解を伺いたいと思います。
  266. 水原敏博

    ○水原政府委員 広瀬委員のせっかくの御提案でございまして、私ども慎重にそれについて検討をさせていただきました。調べてみますと、委員も御案内のとおり、税務調査はあくまで賦課徴収の目的のために行うものでございまして、法律の制度そのものが犯罪捜査を目的としたものではないということが規定されておりますし、加えて、収税官吏に課せられている守秘義務というものは非常に厳しいものがございます。これらのことをあわせ考えますならば、税務調査の結果を御通告いただきまして直ちに犯罪の捜査の端緒に使うということは、現在の法制度のもとだとか、それから自主申告納税制度の円滑な運用の上から申しましても、非常に多くの難点があろうかという気がいたします。  しかしながら、委員も先ほどちょっと触れられましたが、いわゆる犯則事犯につきましては、これまでも国税御当局の査察部門と検察庁とは非常に緊密な連絡を持って事に対処いたしておりますし、また現実の問題といたしましても、それらの連絡を密にしました結果、相応の成果を上げてきている実績もございます。したがいまして、税務調査の結果を即捜査の端緒に使うということは非常にむずかしい問題があろうかと思いますが、今後ともに税務当局との間におきましては連絡をより一層密にいたしまして、犯則事犯の捜査等を通じて事案の適正な、そして厳正な捜査処理をすべきものだと考えておりますし、検察当局はそのように実行するものだと思っております。
  267. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 いまここで私は早急にこの問題について結論を出すことを迫ろうとしておるものではありません。これは私の一つの提案としてお聞きいただきたいと思うのですが、もちろん守秘義務の問題もあることも十分承知をしておるし、査察事案の問題についてはこれは両者の緊密な告発の関係もあるものですから、そういうことも承知をしておるわけでありますけれども、政治の乱れを正すのだということ。そしてまた、ほとんど全部といっていいほどこの使途不明金というものを計上して、非常に不透明な部分を残す。その不透明な部分、これは税務署、国税当局としては、税さえ取ればそれで事は終われりなわけだけれども、しかし、その使途不明金の中からそういう政治を乱す金が動いていくのだというその構造だけは、国民だれしもが認めるだろうと思うのです。それを国税当局は、守秘義務があるのだからそれをそのままにして税金だけ取ればよろしい、それで終わってしまうということで将来もあったならばいけない。これはやはり検察当局ももちろん、独自の立場でそういう問題に対しても、使途不明金を多く出している、これはおかしいというようなことがわかるようなシステムというものは、政府部内において大平総理自身も政界浄化、政治の倫理化というようなことを大きな目玉として、施政方針の中に重要な部分として提起をされているわけですから、そこにいろいろな現行の法制上は問題があるだろう、しかし何らかそれを乗り越えてそこまで踏み込まなければ、本当に政治を正すことはできない。使途不明金の中にすべての金が含まれている、それが実態なんです。使途を言えないというのは、今日の社会の中でそれしかないと言ってもいいぐらい。それをそのまま守秘義務があるからというようなことだけで済ましていいかどうかということは、かなり問題があるということを私は強く指摘をしておきたいわけであります。これについては、国務大臣として竹下大蔵大臣の答弁を要求いたします。  それと、もう一つこの際申し上げておきたいのは、租税特別措置法、これはいつも大蔵委員会にも予算委員会にも減収見込み額というものがそれぞれの項目ごとに出される。しかしこれが果たしてそれだけの減収であったのか、もっと減収があったのかというようなことについては、決算報告がなされたためしがないのですね。これは私も大蔵委員会で長いことやってきた問題で、ある国税局だけを限ってならば出せないことはないというようなことを、当時の高木主税局長からは答弁も得たのですけれども、それ以上には前進しない。われわれがいろいろな点で財政再建問題をめぐって、不公平税制の象徴的な存在として租税特別措置法に手を入れなければならぬと言っているのだけれども、その減収見込みだけは出すが、実際に税の執行の中でそれがどの程度のものであったかということについて出されたことはない。この点についてもひとつ大蔵大臣としてお答えをいただきたい。それで私の質問を終わります。
  268. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 大臣の御答弁の前に先ほどの御指摘の後者の部分でございますが、租税特別措置の減収額の実績額が出ていないという御指摘の点でございます。  御指摘のように毎年予算委員会大蔵省から、当該対象になっております年度の平年度ベースでの試算見込み額を提出いたしております。ただ実績額につきましても、一部の資料は提出申し上げているわけでございまして、これは今年も先般御提出申し上げました「資本金階級別法人税負担割合」という資料がございます。  その前に申し上げなければならないのでございますけれども、租税特別措置の実績額というものを把握いたします場合に基本的に問題がございますのは、法人税の場合と所得税の場合とで全然事情が異なるわけでございます。法人税の場合でございますと、国税庁の税務統計を中心といたしまして、ほぼ実績額に近い資料がまとめられるわけでございまして、これは先ほど申しましたように先般、ただいま実績が出ております昭和五十三年度分までの減収額を提出いたしております。ところが、所得税の問題につきましては、端的に申し上げますと、たとえば利子配当の課税の特例の問題でどれだけ減収額が起こるかということになりますと、御承知のように源泉分離選択課税の問題は申告が出てまいらない分野でございます。それから、たとえば少額貯蓄にいたしましても、これは申告が出てまいらない問題でございます。そうすると、その実績ということになりますと、納税者の方から全部その実情を集めなければいけない。同時に、所得税は御承知のとおり累進構造になっておりますので、他の所得と合わせまして一体減収が幾ら出たかという計算をいたさなければならないということになりますと、技術上不可能に近いということもございますので、私どもマクロデータに基づきまして若干の推計基準を置きまして、所得税の部分につきましては現在見込み額しか御提出できないというのが実情でございます。
  269. 竹下登

    竹下国務大臣 まず最初の問題でございますが、正式な名前をちょうどいま思い出せないのでございますけれども、内閣官房長官が中心になられて再発防止に関する委員会ができております。その中で、大蔵省大蔵省なりに時効期間の延長の問題でございますとかテーマが与えられて、いま各省とも鋭意協議をしておるところでございますので、これも姿勢の一つのあらわれではないか、早急にこれは詰めていかなければならない課題であるというように考えております。
  270. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 終わります。
  271. 村山達雄

    村山主査 広瀬秀吉君の質疑は終わりました。  次に、藤田高敏君。
  272. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 私はきょうは主として厚生年金に関する課税問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  年金問題は言うまでもなく、高齢化社会を迎えましたわが国にとりましてはきわめて重要な課題として、今国会でもすでに論議をされてきたところでございますが、長期的な問題はともかくとして、現実的な当面の問題として、年金受給者に対する税金は過酷じゃなかろうか、こう思うわけであります。そこで、基本的なことをいまさらお尋ねしてというような感もあるわけでありますが、基本的には今日の年金制度で、いわゆる遺族年金とか障害年金といったようなものに対しては、当然のことでございますが課税をしない原則が貫かれている。ところが、厚生年金、老齢年金等につきましては課税されておることは、御案内のとおりであります。  そこで、私は基本的な考え方として、社会保障分には課税すべきでないという考え方、それといま一つは、最低生活費には課税すべきでないという原則、こういうものについて大蔵大臣見解をまずただしてみたいと思うわけであります。
  273. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいまの委員の御指摘でございますが、ただいま御指摘になりましたようにわが国におきましては、年金のうち、遺族年金の系統、それから障害年金の系統は非課税にいたしておりますが、老齢年金は課税の対象にしておるわけでございます。ただ、老齢年金につきましてもいわゆる老年者年金特別控除、これは六十五歳以上の方で一定の所得制限がございますが、その方につきましてはわが国独特の特別控除の制度がございまして、現在老人夫婦二人で年金生活者の場合、二百十九万円までは税金がかからないという水準になっておるわけでございます。(藤田(高)分科員「二百十三万だろう」と呼ぶ)いいえ、老人夫婦二人で年収二百十九万までは税金がかからないわけでございます、老年者年金特別控除の適用を受けられる場合は。(藤田(高)分科員「二百十三万じゃないか、こう言っておるんだ」と呼ぶ)社会保険料控除をカウントされない場合には二百十三万というモデルもございます。  そこで、年金制度に対する課税のあり方の問題でございますけれども、これはたとえば年金制度が非常に成熟化しておりますヨーロッパ諸国の税制を見てまいりますと、ほとんどの年金につきまして課税の対象になっておるわけでございます。一部の国で障害年金だけを非課税にしている国もございますけれども、ほとんどほかの所得と区別なく年金所得というものは課税されているという実情でございます。わが国の場合も、これはいまさら言うまでもないわけでございますけれども、今後人口が老齢化し、また年金制度が成熟化してまいりました場合に、やはり年金所得のウエートというのはかなり高まっていくことが考えられるわけでございまして、基本的な方向としては、やはり年金所得者の方にもそれ相応の負担をお願していかざるを得ないのではないかというのが基本的な考え方でございます。  なお、社会保障給付につきまして、これをすべて非課税の対象にすべきではないかという御指摘でございますが、これはたとえば社会保障給付の中にもいろいろな種類のものがございまして、端的に申しますと、たとえば生活保護費とかあるいは失業した場合の保険金給付などはすでに課税の対象になっておりませんし、社会保障給付の中も、いろいろな給付の性質において判断していくべきものではなかろうかというふうに考えられるわけでございます。
  274. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 答弁が少し長いような気がしますね。演説じゃないのですから、少し要領よくやってください。  そこで、お尋ねしたいのですが、去年の九月三日に厚生大臣の諮問機関である社会保険審議会の厚生年金保険部会が意見書を出していますね。こういったものを引例するまでもないのですが、「老齢年金は、本来非課税とすべきであるが、当面は」かくかくのことを急ぐべきだ、こういうふうに意見書が出されておりますが、どうでしょうか、これに対する大蔵省見解、厚生省の見解を聞かせてもらいたい。
  275. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 年金の非課税の問題につきましては、先ほどくどくどしく申し上げましたけれども、基本的には、年金であるからといって非課税とすることは適当でないというふうに大蔵省としては考えております。
  276. 長尾立子

    ○長尾説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように昨年九月、私どもいただきました社会保険審議会の御意見でも、老齢年金につきましては非課税にすべきであるという御意見をいただいておりますし、先般、今国会に御提案を申し上げております厚生年金保険法等の一部を改正する法律案につきましての御諮問に際しましての御意見も、やはりこういった老齢年金につきましては非課税にすべきであるという御意見を改めていただいているわけでございます。  私どもといたしましては、先ほど審議官からお話がございましたような老年者年金特別控除という形で、年金受給者につきまして税法上の配慮をしておるわけでございますが、老齢年金が老後生活の支えであるというようなことから、厚生省といたしましては、老齢年金の課税についてその適正なあり方につきましては、今後とも検討させていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  277. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 いまの厚生省の見解も検討ということですが、そのものずばりで言って、この答申に盛られたようなことはずっと厚生省としては検討してきたことでしょうから、これに対する見解をいま少し明確に答えてほしいということ、それと、いま厚生省の見解がまあまあ示されたと思うのですけれども、この老齢年金についても大蔵省は非課税にすべきでないという見解ですか。
  278. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 先ほど申し上げましたように老齢年金につきまして、老齢年金であるからといって非課税とすべきではないというふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほど厚生省の方からお話がございました老年者年金特別控除の水準のあり方でございますけれども……。
  279. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 そこはこちらはまだ何も触れていない。よけいなことを言わぬでよろしい。
  280. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 従来検討を続けてこられたというのは、そういうふうに私、受け取ったものですから。
  281. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 だから、そんなことを聞いておるんじゃない。そこだけ答弁したらいいじゃないか。そんなことはこれから質問する。
  282. 長尾立子

    ○長尾説明員 私ども政府部内でこの老齢年金の非課税のあり方につきまして検討を進めてまいったわけでございますが、私どもといたしましては、この老年者年金特別控除というようなものを実質意味あらしめるという形でお願いをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  283. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 それでは、原則的なことを言っておっても時間がありませんから次へ進みますが、私は基本的には、やはり社会保障に係る年金は非課税の原則を貫くべきである、こういう主張を私の主張として申し上げておきたいと思うのです。  厚生省のいまのお答えを聞きますと、いわばこの非課税の原則は具体的な制度の中で生かしていくように極力努めたい、こういうふうに理解したのですが、それでよろしいですか。
  284. 長尾立子

    ○長尾説明員 結構でございます。
  285. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 それでは特別控除制度、いわゆる現行の制度の中で、制度をさらに将来に向けてそういう非課税の原則が極力生かされるようにという立場に沿って私質問しますが、現行の制度によりますと、詳しく申し上げませんが、いわゆる単身者の場合、厚生年金は六十五歳以上になりますと百八十万が非課税限度額ですね。そして夫婦の場合は六十五歳は二百十三万になりますが、問題は六十歳ですね、六十歳から六十五歳まで、いわゆる六十五歳未満の場合はもう百八万を超しますと税金がかかる。これは私は、いませっかく厚生省の見解が示されましたけれども、現行の制度はいささか厚生年金の受給者にとっては酷ではないか。これはやはり中身の改正をする必要があるんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  286. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 老年者年金特別控除の問題でございますけれども、まず現在の制度は、ただいま御指摘のありましたように、六十五歳以上で一定の所得制限があるわけでございます。  これを六十歳まで下げてはいかがかという議論は確かにございます。私どももずいぶん検討したわけでございますけれども、基本的に現在の老年者年金特別控除というのは、いわば老人福祉対策の一環として位置づけられるものであると考えるわけでございます。そういたしますと、老人福祉法にいたしましても、国民年金の支給開始年齢等等を見ましても、やはり六十五歳というのが一つの国の老人対策の体系の中で位置づけられておるものでございますから、これを六十歳まで下げるということは、やはり税制としても適当でないというふうに私どもは考えたわけでございます。
  287. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 六十五歳以上の層にいわゆる老人福祉的な政策的配慮を税制の中に盛り込むということについては、私は積極的に賛成であります。ただ問題はいま言ったように、六十歳になると同じ厚生年金の受給資格が発生するのですね。ところが、同じ厚生年金の受給資格を持ちながら、五歳違うことによって倍以上と申しますか、いわゆる六十五歳未満は百八万を超えますと税金がかかる、片や、先ほど二百十九万とか言っておりましたが、私どもは二百十三万と理解しておりますけれども、二百十三万、ちょうど倍の額までは税金がかからない。ここは少し開きというものが大き過ぎるのじゃないか。  私見をもっていたしますと、この夫婦で百八万になりますと税金がかかるということは、月額にして九万でしょう。日額にして三千円なんです。夫婦二人ですから、一日千五百円の年金に税金がかかるということになるのですね。どうでしょうか、今日の社会的な条件の中で、一人千五百円で生活しろということになりますと、憲法の二十五条ではありませんが、これは年金受給者といえども国民に変わりはないわけだから、健康にして文化的な生活を営む権利があると私は思う。こういう一日千五百円の年金受給者に税金がかかるということは、果たしてそういう憲法の精神に沿った政治だということができるだろうかということを考えると、一気に全部厚生年金を非課税にしろということが現実の問題としてむずかしいとしても、百八万というレベルをもっと上げる必要があるのではないか、こういうふうに私は思うのですが、どうでしょうか。これは場合によると基本的な問題にかかわりますから、私は大臣見解も聞いておきたいと思うのです。
  288. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 大臣の御答弁の前に、実情について御説明申し上げたいと思います。  御案内のとおり現在厚生年金におきましても、六十歳から六十五歳の層につきましては、いわゆる在職老齢の制限の規定がございます。したがいまして、実態につきまして私ども詳細にここで御説明申し上げるデータは持ち合わせていないわけでございますけれども、六十歳から六十五歳の方で年金のほかに収入があるという方はかなりおられると思うわけでございます。したがいまして、非常に大ざっぱな推計でございますけれども、現在の課税最低限の数値で見ましても、年金部分について課税を受けている人は恐らく、七五%以上は課税されていないと私どもは承知をしておるわけでございます。
  289. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 いまの審議官の意見は、年金が低いから税金がかからない、そんなことは何も自慢にならないんだよ。いま百八万までは税金がかからないんでしょう。その百八万というのは私が言ったように、一日一人当たりの生活費は千五百円なんですよ。千五百円と言ったら食べるだけですよ。極端に言ったら、テレビも見るな、外出もするな、どこへも行くなというくらいの費用じゃないですか、千五百円の費用と言ったら。ですから現実の問題としては、百八万がせめて、六十五歳以上の単身者の百八十万までいかないにしても、段階的には百五十万くらいまで上げていく、あるいは、六十歳と六十五歳の刻みが五歳一遍に飛ぶのではなくて、そこを六十二歳とか六十三歳とか段階の中間的な刻みを設定する、そういうことによって年金受給者の生活というものを保障するような措置を税制上考える必要があるのじゃないか、こう思うわけです。  いま審議官説明によると、在職老齢年金じゃないけれども、年金受給者で別に働いておると言いますけれども、働いておるというのは、年金では生活ができないから働くんですよ。しかし、あなたが大蔵省の中におって頭の中で考えるほど、六十歳から六十五歳の高齢者の人の雇用条件というものはそんなに簡単なものじゃないんだよ。それはとっても厳しい。仮に働いたにしても、収入というものはきわめて低いんですね。そういうことを考えると、私は税の面でその程度の改正をやって年金受給者に対する人間的な生存ができるような措置を講ずるべきでないか、こう思うわけですが、重ねて見解をただしたいと思います。大蔵大臣、どうでしょう。
  290. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 何遍も同じことを繰り返して恐縮でございますけれども、年金に対する課税の基本的なあり方についての先生の御指摘と私どもと若干の食い違いの問題がありますほかに、先ほど申しましたように、現在の老年者年金特別控除というのは、老人福祉対策の一環として税制の中で位置づけておるものでございますから、御提案の点につきましては、非常にむずかしい問題があるというふうにお答えせざるを得ないと存じます。
  291. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 これはむしろ私だけの見解というよりも、先ほど例にとらしてもらった社会保険審議会の意見書も、「老齢年金は、本来非課税とすべきであるが、当面は老年者年金特別控除制度の控除限度額の引上げと対象年齢の引下げを図るべきである。」審議会の、客観的な答申ではないけれども、意見書がこういうふうに出ておるんだよ。それを大蔵省大蔵省立場から、そういうことはやるべきじゃないとか、強圧的とは言わぬけれども、社会保障本来の立場というものをネグって、何か財政的な見地からだけ押し込んでいくんだ、こういう態度というかそういう考え方が露骨に出てきておるような気が私はするんですよ。そうではなくて、こういう客観的な審議会の意見というようなものは、やはり積極的に大蔵省としても取り上げていくという姿勢がなければおかしいのじゃないか、こう私は思うわけですが、どうでしょうか。
  292. 竹下登

    竹下国務大臣 実は大蔵大臣になりましてから衆参の本会議等々で、六十五歳を六十歳に下げるべきである、こういう御質問は一番よくあるのです。その場合のお答えとしては、先ほど来申しておりますように、老人福祉法というものを基本に置いて考えた場合、六十五歳というものが至当であります、こういうお答えをしておる。その六十歳と六十五歳の間の、もっと別の角度から措置を講じてみろという御提言でございますね、これは実は私初めて聞いたのでございます。したがって、税制調査会等もございますが、税制調査会等に国会で出た貴重な意見というものは報告して検討してもらうわけでございますので、そういう方途をとらしていただきます。
  293. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 大臣見解わかりました。ぜひそういう中間的なランクを一つつくるということ、それと、それこそくどいようですけれども、六十五歳以上の単身者の場合百八十万で、夫婦の場合六十五歳未満は百八万なんですね。ですから私はこの百八万というものを、社会保険審議会の意見書ではありませんけれども、やはりこれ自体を、一気に百八十万まで引き上げるということが無理であるとすれば、一ランク上がるような措置をも一緒に考えてほしい、これはぜひ要請をしておきたいと思います。  私はいま一つ、このことに関連して申し上げるのですが、社会保険の費用は入り口出口論というのを国会でも盛んにやってきたと思うのですけれども、いわゆる給与所得の入り口では、社会保険控除費として税金の対象にならないでこういうふうにずっと積んでいくんですね。ところが、いよいよ税金の対象にならない別枠として積んでいったものをもらう段階になって、出口になるとこの財源に税金がかかる。これはいわゆる給与所得として取り扱っておるから、給与所得とみなして税金をかけておるわけです。せっかく入口で税金のかからないものとして取り扱うのですよ、そのための社会保険控除として源泉所得で引いていくのですよ。それを積んできたというものの支給ぐらいは、やはり非課税にすべきではなかろうかというのが一つと、いま一つは、厚生年金は、これは釈迦に説法ですけれども、積んできた積立金と国の税金で二割国庫負担という形でこの年金を見ておるわけでしょう。これを考える場合に、国庫負担という形で税金で見たものにまた税金を取り立てるのですね。税金で見たものをまた税金で取り戻すようなことになっておると思うのです。こういう厚生年金そのものの性格、その財源の性格からいって、税の問題については、前段申し上げたことと関連をして、ぜひ税制調査会でも私の趣旨を生かす方向でひとつ検討を願いたい。大蔵当局としてもせっかくの検討を願いたい。この点について再度大臣見解をただしておきたいと思います。
  294. 竹下登

    竹下国務大臣 これは所得税は所得税として一つの性格ですから、いまの議論を私はここでそのまま是認しようという考え方があるわけではございませんが、前段以来の一つ考え方としての問題は、国会で出た議論でございますので、当然税制調査会へお話しすべき課題であるというふうに考えております。
  295. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 時間もありませんので、第二問は簡単に申し上げたいと思います。  これはすでに予算委員会あるいは分科会等でも出たかもわかりませんが、実は今朝来、私が特別委員長をやっております災害対策特別委員会においても議論になったことでありますが、つい先日、新潟、山形、秋田、福島四県の豪雪の被害調査に行った。そこでさまざまな意見が出ましたが、税制上の問題としてどこの県からもどこの市町村からも特に共通して出てまいりました問題の一つは、いわゆる所得税からの雑損控除ですね、雑損控除で雪おろし、除雪の費用を見てほしい、こういう強い要求が出されてまいりました。けさ方来の各党の質問者も、この問題については全部一致した要求が出てまいりました。  そこで、私は大蔵省に特に求めたいのでありますが、せっかく国税庁が、五十二年でございましたか、いわゆる雑損控除について、雪おろしの費用を雑損控除として取り扱いなさい、差し支えないという通達まで出している。これは私はきわめて時宜を得た措置だと思うのです。ところが、いわゆる税法による特別控除の七十二条でしたかその規定によりますと、全所得の一割足切りになっておるわけですね。問題は、三百万だったら三百万の所得があって三十万、一割の雪害といいますか、雪おろしあるいは周辺の除雪の費用にかかったそれ以上が雑損控除の対象になるというのですが、地元のあの雪国の中で生活しておる人はむしろこの一割以内の、足切りではなくて一割以内のかかった経費を雑損控除として見てくれないか、こういう強い要求でありますが、そういう方向の税制改正というものが必要でなかろうかということが一つ。  いま一つは、せっかく国税庁長官の通達が出ましても、いまの制度では、極端に言えばその制度によって救済される、雑損控除の対象になるものはもう一〇〇%いないのではないか。これはちょっと国税庁にも聞いてみたいのですが、もし雑損控除の中身がわかっておれば教えてもらいたいと思うのです。やはりせっかくそういうものが行政的に通達として流れる以上は、それによって救済する現実のものが出てこないと、法律が空回りしておるのではどうにもならぬのではないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  296. 矢島錦一郎

    ○矢島政府委員 先生御専門で釈迦に説法でございますが、五十二年十月に「豪雪の場合の雪おろしの費用に関する雑損控除の取り扱いについて」ということで各税務署あてに通達を流しまして、同時に、会議の折なんかに常々そういうPRを図るように努めておるわけでございます。ただ雑損控除の内容として、それじゃ豪雪の分がどのくらいあるかという御質問でございますが、御案内のように、たとえば全体として五十二年に六千三百二十二人おったというような適用件数全体の数字は私ども把握しておるわけでございますが、その原因別に、しからば豪雪の雪おろしのための雑損が幾らであるかということまでは統計上とっておらないというのが実情でございます。したがいまして、残念ながらちょっとお答えできないという状況にございます。
  297. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 これはせっかくこういう税制があり、そして国税庁として、徴税当局としてせっかくそういう通達を出しておっても、恐らくこの該当者はいないと私は思うのですよ。これは一つの要望ですが、ぜひひとつ出先あたりで、その対象になったものはどれくらいあるかということを後日調べて報告してもらいたいと私は思うのです。  私は時間がありませんので、ぜひこの際要望をしておきたいと思うのですが、やはり村山大蔵大臣も新潟の御出身で、この豪雪地帯の御出身でありますが、私は今度行って本当に、南国の出身でありますから特に実感として感じたのかもわからないのですけれども、一年間のうち、かれこれ三分の一あの雪の中で生活をするということになると、これは大変失礼な言い分だけれども、貧乏がついて回るんじゃないか、雪の国の人には。そういう地域の住民の問題は、これは最近大平総理の地方の時代ではありませんけれども、やはりりっぱな地方の時代を築くという観点からも、そういう雪の国であれば、雪の国の中で非常につらい思いをして生活をしておる住民、国民の問題というものをもっともっと積極的に取り上げていく必要があるのではないか、その一環として、いま申し上げた雑損控除に係る税制の改正の問題、これはぜひひとつ、先ほどの前段の厚生年金の課税問題ではありませんが、私の趣旨を生かす方向で、これまた税制調査会で具体的に取り上げる方向で財政当局としても検討を煩わしたい、こう思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  298. 竹下登

    竹下国務大臣 実はきょうお昼に園田国土庁長官が私に対して、もう藤田委員会ではこの問題ばかり議論しておる、したがってぜひ税制調査会で検討してもらえぬかという御要請がありました。まだ話しておりませんけれども、ちょうどここへ入ってくる前に、なるほどなと思って感じておりました。ただ、いま南の国と北の国という話がありましたが、きょう私は別の資料で、五十二年のいわゆる新潟県全体からの国税とそれがどれだけはね返っているか、愛媛県全体の国税とそれがどれだけはね返っているかということになりますと、愛媛県の方が比率としてよけいはね返っているわけです。そうすると、新潟のお方は、これは主査にごまをする意味では全くございませんが、大変働き者だなというふうな感じを持ちました。これは余談でございます。
  299. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 どうですか、税調の関係、前向きで御検討いただけますね。
  300. 竹下登

    竹下国務大臣 それは国土庁長官からやや正式に私にお話がありましたので、そういう扱いをしなければならぬと思います。
  301. 藤田高敏

    藤田(高)分科員 どうもありがとうございました。
  302. 村山達雄

    村山主査 藤田高敏君の質疑は終わりました。  次に、近藤豊君。
  303. 近藤豊

    近藤(豊)分科員 現在、日本国民の生活に対して何が一番深刻な問題となっていくかということを考えますと、防衛とかエネルギーとかいろいろありますが、私は実はインフレの問題が一番直接はだ身に感じて大変な問題だと思っております。  そこで、国債の発行が昭和五十年より急激にふえて、そして現在すでに依存率が四〇%近くなっておるわけなんですけれども、今度の政府の方針によれば、昭和六十年までに特例公債をゼロにする、そして五十五年度を財政再建元年として財政再建に取り組むのだということであります。しかしながら、その場合でも昭和六十年の国債の発行残は恐らく百四十兆になるはずでありまして、これはとてつもない金額であるわけです。このような巨額の借金をしょっては国債の償還の経費が大変なものになっていく。大きなインフレをやらずにはとても返せない額だと思います。したがって、昭和六十年に特例公債をゼロにするというようなことではとても間に合わないのじゃないだろうか。インフレを覚悟すればいいのですが、インフレをしないということであればむしろショック療法をやらないことにはとても間に合わないのではないかという懸念が非常にいたすわけです。そこで、これについて政府の存念を伺いたいと思います。
  304. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま委員御指摘のように、五十五年度予算、私ども歳出の節減にもずいぶん努力をいたしまして、公債の発行額といたしましては五十四年度の発行額よりも一兆円少ない十四兆二千七百億円にとどめることができたわけでございます。できたわけでございますが、これも先般一つの試算といたしまして国会に提出いたしました財政収支試算の数字を借用して申しますれば、これは五十九年度、先生御指摘のように特例公債から脱却をするという前提を置いた試算ではございますが、その試算によりましてもなお、昭和六十年度におきましては公債残高が約百三十兆円にも上るというような試算になっているわけでございます。したがいまして私どもは、問題はとにもかくにもこの公債の発行額を今後五十六年度以降年々極力抑えまして、公債の残高の累増をともかく防止をしていくということに全力を挙げなければならない、かように考えております。  そこで、これも当然のことでございますが、五十六年度以降歳出の面におきましてもそれからまた歳入の面におきましても、従来にも増して一層厳しい見直しの努力をしていかなければならない、さように考えているわけでございます。
  305. 近藤豊

    近藤(豊)分科員 そうしますと、基本的な方向はもうだれも異存はないと思うのですけれども、昭和六十年に国債の発行残が百三十兆になる、それに対してうんと努力しなければいけない、そういう場合に、これはもう実は政治の問題だと思うのです。勇断の人であられる竹下大蔵大臣といたしまして、ショック療法と申しますか、これをもっと早く切らなければいけないのだ、そのためには相当政治家がどろをかぶり恨みを買い、怨嗟の的となって、切って切って切りまくらなければいけないんだという気がいたしますが、その辺について、その御決意おありや否や、承りたいと思います。
  306. 竹下登

    竹下国務大臣 いまも主計局次長からお話し申し上げましたように、財政再建元年という言葉をお使いいただきました。私も元年と言うと何だかこれは肩を怒らしたような感じがするなと思いまして、最近はつつましやかに第一歩という言葉にかえております。  そこで、それのあかしというものが何かと言えば、いまの一兆円減額、これは当初予算ベースではございますものの、まずこれが一つ。それから一般歳出の伸び率の五・一%、昭和三十一年度以来の低い伸び率でございます。それから本格的ないわゆる増税路線というものは、諸般の環境からしてまず入るをはかる前に出るを制せよということで見送りましたものの、租税特別措置でございますとか給与所得控除の見直し、退職給与引当金の見直し、このことをやったことが三番目。そうして四番目がいま近藤さんがおっしゃいますあるいはその意味かとも思うのでありますが、いわゆる行政改革。それでとにもかくにも環境が熟したという考え方から、特殊法人の統廃合、十六法人というものの純減を五十五年行革としてスタートしたわけであります。これは直ちにそれによって歳出が削られるものではございませんが、将来にわたっての一つの方向、姿勢であろうと思います。そうして三月末までには何とかブロック機関についての計画も発表しよう、六月末には府県単位の機関の整理の発表をしよう、それからさらに補助金の整理合理化というようなことを行財政改革として手がけたというのがせめてもの第一歩としてのあかしではなかろうか。  したがいまして、いま大変な怨嗟の的とおっしゃいましたが、そのような批判には耐え忍んで勇気を持って立ち向かっていかなければならぬというふうに、私も同感でございます。
  307. 近藤豊

    近藤(豊)分科員 大変な勇気を持ってこれから当たられるということに、大いに私どもも声援を送ってまいりたいと思います。  ところで、きょうの朝刊を見ますと、六・一国債が七十九円八十三銭、とうとう八十円を割ってしまったのです。これは大変なことなんで、特にこの引き受けをしておる市中の金融機関にとっては、このことによって大変な欠損が出てくる。一時話題になっておりました原価法で評価するのか低価法で評価するのかというような議論ももう吹っ飛んでしまうほどのこれは大暴落だと思うのです。この際当面の問題として、国債整理基金の残がある程度たまっていると思うのですけれども、それを一兆円でも一兆五千億でもありったけ投入して至急買い支えをし、プライスのレベルの回復をしなければいかぬ。そうしませんと、これは市中金融機関はあとは引き受けできないよというくらいの痛手をこうむる可能性があると思いますが、との点はいかなる御方針でいらっしゃいますか。
  308. 渡辺喜一

    ○渡辺(喜)政府委員 きのう六・一国債が七十九円八十三銭という値段をつけて、八十円を割り込んだということになったわけでございますが、これは取引が非常に不活発でございまして、特に買いがほとんど出ないという状況のもとでの相場でございますから、非常に数量的に限られたもので、本当に全面的にこういう状況になったというところまではまだ判断はしていないわけでございますが、いずれにしてもかなり市況が悪化しておるということは間違いのないところでございます。  それで、原因はいろいろ複合的にあるわけでございましょうが、特に金利の先高感といいますか、こういうものが根底にございまして、それはまたこれからの物価に対する懸念あるいは国際的な金利の上昇機運、そういうふうなものに絡んで出ておることだろうと思うのでありますが、そういうことでなかなか思うように市況が回復しないというのが現状であるわけでございます。  それで、私ども発行者といたしましては、できるだけ債券価格については思惑とかあるいは行き過ぎた不安心理といいますか、そういうものを除去いたしまして、本当に実勢に基づく相場が実現するように努力をしたいと考えておるわけです。それでこの二月の二十九日第一回、それから三月五日に第二回、国債整理基金の資金を使いまして約一千億ずつ買い出動をやったわけでございます。その結果はある程度の効果は発揮いたしましたけれども、まだ大勢を食いとめるところまでは行っていないというのが現状でございます。今後も状況を見まして適切な時期に必要があればさらに買い出動をするということを考えておるわけでございます。  ただ、何と申しましてもそういう根底の不安人気といいますか、そういうものが除去されない限りは、なかなか買い出動を繰り返しても全体の流れを変えるというところまではいかないわけでございます。その辺の状況も見きわめながらこれからの買い出動を考えていきたい。国債整理基金につきましても、資金量には限度があるわけでございます。したがいまして、そう無限にそういうことを繰り返すわけにもいかないわけでございます。現在いろいろな国債に対する対策というものを検討しておりますけれども、なかなか抜本的な施策というのがうまく出てこない、苦慮しておるというのが現状でございます。
  309. 近藤豊

    近藤(豊)分科員 大変苦慮をしておられる。そして国債の価格がこんなに下がってくるのは将来の先行き金利高という懸念があるからだといういまの局長の答弁でしたけれども、実は昭和五十年から国債の発行ががぐんとふえて以来、国債の引き受けあるいはプライシングについて何ら根本的な対策が講じられていない。延々と国債発行がされているわけですけれども、それまでの大したインパクトのない割合の国債が発行されていたころから変わりがないわけです。ただ一つ変わりがあったのは、昭和五十三年に中期債が発行された。しかしこれもそうシェアがふえない。御承知のとおりアメリカなどは中期債が非常に多いわけで、日本は長期債が多い。  なぜこうなのかということをいろいろ勉強してみたのですが、やはり根本は国債の発行が市場原理を無視しておる。財政当局の立場国債費をミニマムにしておこうという目的意識から、国債の発行に際してシ団との引き受けあるいはその他の市中金融機関との引き受け交渉の際も、どうも実勢、市場原理を無視したところでこの値づけをしていこうということがなされておる。ですからこれはもう思い切って自由化をすべきである。市場原理にのっとって国債の引き受けが行われ、か一つ、その取引が行われるということにしない限り、当分この国債に御厄介になるわけですから、このジレンマは解けないだろうと思うのです。もちろん、そうした場合に国債費が非常にかさんでくる。でもそれは、国民国債費というのはかさむのだ、国債ということをやって借金をしなければならない財政はうまくいかなくなるのだということをもっと赤裸々に認識した方がいい。それを認識させるのが政府の役目じゃないか。いやなことも言わなければならない、そういう時期だと思うわけであります。  そこで私は、国債の引き受けに際しては市場原理に基づいて自由公募、民間の公募の入札を原則としてやることに切りかえたらどうだろう。もちろん、今回はもう無理かもしれません。しかし、五十五年度の国債の引き受けに際して六千億ぐらいが今度交渉になるのでしょうけれども、それでも八%の利子ということで予定されていることは、恐らく銀行にとってはもう不可能だろうと思うのですね。よほどの欠損をしなければならない。年間に欠損が四百億にも五百億にも一行がなっていく。それを何年も続けられないというところに来ている。そうしますと、もうこれは一部銀行とか市中金融機関に損をかけるのではなくて、国民みんながその損を負担すべきだ。これは税金の問題にも入っていくわけですけれども、そういう考え方に切りかえるべきではないか。自由公募、公募入札ということでこの国債の引受方式というものを変えていったらどうだろうと思うのですが、この点は非常に大きな問題で、いやなことを国民に言わなければならないということだと思うのです。大臣、いかがでしょう。
  310. 渡辺喜一

    ○渡辺(喜)政府委員 先生のおっしゃる趣旨はよくわかるわけでございますが、実際問題といたしまして、果たして本当にこれだけ大量の国債を市中に自由に公募して、投げ出して、安定的に歳入の確保が図れるかどうかという点に関しましては、私どもいま一つ自信が持てないというのが現状でばなかろうかと思います。  御承知のように、わが国の金融構造というのは間接金融が主体になっておるわけでございます、資金の流れの九割というのは金融機関を通じて資金が流れるという状況になっておりまして、直接金融市場というのはまだわずかなウエートしかない。そういう状況のもとにおきまして、直接金融市場にこれだけ大量の国債を一挙に投げ出すということになりますと、これはかえって金融秩序を非常に混乱させるというようなことにもなりかねない。経済全体の観点からいたしましても弊害の方がむしろ大きいのではないかという懸念がするわけでございます。わが国の場合はさらに長期資金といいますか、これを潤沢に保有するような投資家というものがまだ育っていない。資金の運用というのはほとんどが短期の観点で資金運用を行っておるというような状況でございますし、国債の大部分というのは十年という長い期間を持っておるわけですから、長期に先行きを見通して、そして今後十年間の金利水準というものは一体どうなるだろうか、そういうふうなことまでしっかりと見通して応札する訓練といいますか、それもまだ十分に育っていない。何としても環境が未成熟ということではなかろうかと思うわけであります。  基本的には、やはり発行量が非常に大きいというところに問題があるわけであります。現在のような発行量が続きます限りは、公募入札ということよりは、そのときどきの資金の需給、金融の状況、見通し、こういうものを引き受けシンジケート団と十分話し合いをして、そして適正な発行条件をお互いに合意して発行していく、こういうやり方が安定的に歳入を確保していくという観点からは一番望ましいのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。もちろん、この発行条件の設定につきましては、シ団引受方式ではございますけれども、できるだけシ団と十分な話し合いをいたしまして、そのときどきの状況に適した発行条件を適用していく、こういう心構えは必要だろうと思います。  御案内のように、最近におきましては、従来と違いましてかなり頻繁に発行条件の改定も行っておるわけでございます。去年の三月以来すでに四回、十年債の発行条件を改定しておる。それからまた一方、市場の実勢というものを判断する参考にもなりますし、また市場のニーズというものにもできるだけ発行を合わせていくということから、先ほど先生のおっしゃいましたように中期債というものも新たに導入して、これはシ団引き受けでなくて、公募入札でやっていくというようなことも織りまぜてできるだけ円滑な消化を図っておる、こういうのが現状でございます。
  311. 近藤豊

    近藤(豊)分科員 いまの答弁の中にもあったように、われわれはまだ長期の見通しになれてないのだ、これはそのとおりだと思うのです。しかし、これだけ世界じゅうが荒れ模様になってきますと、もうどんな人でも、たとえいままでなれていた欧米の金融機関の専門家でも、視界はきかなくなってきているわけですね。だからこれはもう見通しを立てようという方が無理なので、市場の実勢というのはそのときの条件に応じていくわけですが、市場の実勢というものしか頼りになるものがない。そうすると、長い見通しをつけてやろうなんということがむちゃだと思うのです。いま、シンジケート団と交渉しながら納得のいく形でと言われるのですけれども、現実にはなかなか納得のいく金利を政府がお出しになっていない。そうしますと、銀行側の欠損というのはどんどんどんどんふくらんでいくわけです。たとえば五十四年の上期に実質預金増を上回る国債の引き受けが、事実上大蔵省の強い要望によってなされているわけですね。実質の預金増を上回るような国債の引き受けということはいろいろな面で国民を大変圧迫するわけです。ですからもう限界に来ておる。しかも、銀行の欠損ももう限界に来ておるということになると、一遍に全部を自由化しろということはむちゃかもしれませんが、やはり公募入札の割合というものをどんどんふやしていかなければいけないのじゃないか。それが一点。  それからもう一点は、いまおっしゃったように、中期債をパイロットとして売り出しておられますね。数日前もそれを売り出されて、たしか三年債が千五百億だか出されて、それが多分八%ぐらいで決まったはずです。そうすると、三年ものが、クーポンが七・七で出されて、決着が多分八%ぐらいですか、そういう状況で、今度は三月末になるのか来月になるのかわかりませんが、十年債を、新しいものを八%で出される。これは三年ものと十年ものとが同じだということでとても無理じゃないか。それをもし銀行側がのんだとしたら、それはしようがないからのむんだというととで、もう続かないだろうと思うのです。そういう事態を踏まえて、公募入札をふやせという議論に耳を傾けられる気はありませんか。
  312. 渡辺喜一

    ○渡辺(喜)政府委員 私どもも、中期債の公募入札につきましては、できるだけこれを育てて、定着させていきたいというふうに考えておるわけでございます。遺憾ながら、五十四年度の実績は、金融状況等が幸いいたしませんで、思うような成績を上げ得なかったわけでございます。その実績を踏まえて、もし五十五年度、単純に公募入札をどのくらいするかということを考えた場合には、そう大きな金額の設定はむずかしいということであったわけでございますが、金利天井も年度内には過ぎるであろう、年度後半には金融環境もやや好転するのじゃないかという期待とへさらにはせっかく始めた公募入札という制度をもう少し育て、定着させたい、こういう気持ちがございまして、五十四年度の実績は恐らく一兆をちょっと上回るという程度で終わるのだろうと思いますが、五十五年度につきましては二兆円を公募入札で調達する、こういうふうな計画を組んだわけでございます。  金利の問題でございますが、こういう金融情勢になりますと、日本のみならず主要各国みんな同じような状況でございますが、むしろ短期金利の方が長期金利より高いというのが現状でございます。したがいまして、仮に市場実勢といいますか、現在の市場の価格をそのままストレートに反映させるといたしますと、期間の短いものの方が利回りが高くなるというのが現状でございます。十年債というのは、これから先十年の金利のいわば平均ということになるわけでございますが、逆に、たとえば二年債ですと、これから先二年間の金利でございますから、二年終わったところで果たして金利の状況がどうなっているかということは、これはまた全く別の条件であるわけでございますから、こういう状況におきましては、期間の短いものの方が金利が高いということがあっても、経済原理から言えば別にそう不可思議なことではないわけでございます。そういう意味におきまして三年中期債の入札が、結果はあした出るわけでございますが、仮に八%に非常に近いということになりましても、これはこれで受け入れざるを得ないことではなかろうかと考えておるわけでございます。
  313. 近藤豊

    近藤(豊)分科員 要するに中期債を中心に公募入札をされるから、逆に公募入札がふくらまないわけなので、金利体系全体の中で金融債があったり長期債があったりいろいろしているわけですけれども、その金利体係が崩れることを心配しておられるのかどうか。やはり長期のものを公募入札されていかないと、中期債だけでは公募入札しても公募入札の制度はそうふくらまないだろうと私は思います。     〔主査退席、保岡主査代理着席〕  それから非常に大事な問題は、先ほどの答弁の中にあったわけですが、個人がなかなか買わないということです。だけれども、本当は個人が国債を買ってくれないと、大臣、国債というものはなかなか定着しないと思うのです。ですから、もっと国民全体が国債になじむようにする、それから国債にアクセスが簡単にあるようにする、これが大事だと思うのです。  そこで二点質問したいわけですが、一点は、まずもっと中期のものを多くするということ、しかも事業の目的別の債券をつくるという考えはどうなんだろう。  もう一つは、現在アクセスが悪いわけです。証券会社がどんどん買っていますけれども、証券会社から買うだけで、これは全国合わせても多分二千ぐらいしか店舗がないわけです。そんなことでは市民はなかなかなじめない。むしろ市銀から地方銀行まで全部ディーリングさせるようにしろ、あるいは信金までふやしたっていいじゃないか、もっともっと、どこででも国債が買えるようにする。目的によっては、農業関係の国債を出すのだったら農協だってどんどん売れるわけです。そういう意味で窓口をしぼらないで、むしろどんどんふやせ、そのかわり国債で国がパンクしなければ大丈夫なのだということで、国民の協力を広く呼びかけるということが肝要じゃないかと思うのです。  これは、国債を国民に愛されるようにするのだという基本方針についての大臣のお考えと、あと技術的な面は事務局からお答えいただきたいと思うのです。
  314. 渡辺喜一

    ○渡辺(喜)政府委員 私どもも、こういう大量発行下におきましては、国債消化の円滑化を期するために個人消化というものが一つの大きな柱であるということは全く先生と同感でございます。したがいまして、個人の消化促進につきましてはかねてから税の特別措置を講ずるとか、あるいは証券についての金融の円滑化を図るとか、もろもろの手だてを講じてきておるわけでございます。ただ、何といいましても国債の発行環境が悪くなりますと、法人あるいは機関投資家のみならず、個人も含めて消化が難渋するということになるわけでございまして、個人消化の国債発行全体に占める比率といいますか、これは五十四年度は恐らく一四%そこそこというくらいなことで、五十三年度に比べますとかなり落ち込んできておるというのが現状でございます。ただ、私どもといたしましては、それは国債の発行環境全般の問題でございますから、その中においてあくまでも個人消化についてはこれからもいろいろ意を用いていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、目的別にというお話がございましたけれども、現在の国債は一般歳入の財源ということで発行しているわけでございまして、これを特定財源化するということまでは現在考えていないわけでございます。たとえば政府機関関係、こういうところで債券を発行しておるものはもちろんあるわけでございまして、そういう特定の目的、分野につきましては、そういうものが実質的には資金調達をやっておる、こういうことになろうかと思うわけでございます。  それから、窓口の拡大につきましては、窓販問題というふうなことが長い間いろいろ議論をされておるわけでございます。これはもちろん、国債を出きるだけ広く売るという立場から申しますと、私どもとしては大変ありがたい話でございますけれども、この問題はただ国債の拡販ということだけにとどまらない非常に大きな問題を含んでおる。特に、わが国の金融制度のあり方あるいは公社債市場のあり方、こういうふうな非常に大きな問題に関連してくることでございますので、私どもも鋭意検討は続けておるわけでございますが、まだ結論を得るに至っていないというのが現状でございます。
  315. 竹下登

    竹下国務大臣 いま理財局長からお話を申し上げたとおりが基本でございますが、率直に申しまして、私いま気になるのが、六・一国債が何ぼになったかということと円レートが二百四十七円幾らになったという、それだけが毎日大変な心配の種でございます。六二国債なんというのは九兆幾ら出ておるわけでございますから、本当にこれは毎日心配の種というふうに考えております。  したがいまして、個人消化の問題になると、いかにしてなじますか、いろいろPRもしてみております。そしてわれわれ閣僚も相談して、毎月の報酬から私の方で取り上げる——取り上げるという表現はおかしいのですけれども、買ってもらったりということをしておりますが、これもなかなかPRに手間取る。しかし、これは大いに努力をしていかなければならない問題である。これは、発行額が多いから、国債管理政策についてわれわれ側は近藤さんからこのような鞭撻を受けるわけなのですね。したがって、そこに基本があるわけでございますけれども、市場のニーズに応じたり、いろいろな手だてをこれからもやってみたい。  それから、いま窓販問題の話がございましたが、これはいま答弁をする人は理財局長ということに決めたのです、仮に証券局長と銀行局長が答弁したらあるいは違ったことを言うかもしらぬというぐらい、これは本当に基本的な問題をはらむ問題でございますので、それなりに貴重な御意見として、また私どももこれからもいろいろな意見交換をして適切な方向を見出したい、このように考えておるところであります。ありがとうございました。
  316. 近藤豊

    近藤(豊)分科員 終了いたしました。ありがとうございました。
  317. 保岡興治

    ○保岡主査代理 近藤豊君の質疑は終わりました。  次に、渡部行雄君。
  318. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 最初に、大臣にお伺いいたします。  いま私どもの地域で一番大きな問題になっているのは、今度の集中的な豪雪によりまして住民は大変な損害をこうむっておるわけであります。しかし、この豪雪地域というのは、一時的な損害が大きく出る場合もありますが、概して毎年一定の雪に関する特殊な費用が出ているわけであります。こういうものについて、現在では雑損控除という形で除雪費が考えられておる程度であります。しかもこれは、御案内のとおり、年間所得の一〇%を超えた部分についてのみ考えられておりまして、現実にはこの適用というものはそれほどないわけでございます。  そこで私は、まずこの所得税というものの根本的な考え方についてお伺いいたしますが、いま一番考えられなければならないのは、各個人に帰属する所得を総合してこれに超過累進税率を適用することなどによって、各個人の担税力に応じた最も公平な租税の実現ということが重要ではなかろうか、こういうふうに考えますと、現実に、負の所得と申しますか、実際別な方から金は入ってもその金は全くもうどぶに捨てるような使い方をして何にも自分の益にはならない。ならないどころかそれ以上の損害を受けている、こういういまの豪雪地帯の実態に対して現在の税制というものはなじまないということで片づけられていいだろうか、この辺についてまず大臣の御所見をお伺いいたします。
  319. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりました所得税といいますものは、各個人の担税力に応じて、能力に応じた負担をするというのが基本的な考えであることは仰せのとおりでございます。所得税法の体系の中では、各種の人的控除、所得控除、それぞれの組み合わせと申しますか、体系をつくりまして、担税力に見合った負担をしていただくという姿勢になっておるわけでございます。ただ、これは所得税法としては非常にむずかしい問題を含んだ分野でございます。個々の方々の個別の事情をどの程度制度として反映させていくかということは非常にむずかしい問題があるわけでございまして、税制調査会等におきましても長年にわたってこの問題を議論していただいておるわけでございますけれども、やはり税の制度といたしましては、そういう個別の事情をしんしゃくするのには制度上おのずから限界があるだろうというのが現在の所得税法の基本的な考え方であろうということでございます。
  320. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 私は大臣にお伺いしたのだから、大臣からひとつ。
  321. 竹下登

    竹下国務大臣 所得税そのものに関する基本的な考え方はいま申し上げたとおりであります。すなわち、国民一般に普遍的に控除されるものとかいうようなことは議論すればそこにおのずからの帰結するところが出るわけでございますけれども、個別な個々人の生活ということになりますとなかなかむずかしくて、委員の御通告いただいておりますいわゆる豪雪地帯における雑損控除の問題等が、まさに具体的に生活の知恵によって出た仕組みとはいえ、それが実際問題としてどれだけ機能しておるかということについては、それこそ災害対策特別委員会なんかで大変な議論をいただいておるところである。きょう、国土庁長官が向こうから私の方へ参られまして、国会で出た議論でございますから何とか税制調査会の方へ報告して検討してもらえぬだろうかという御要請がございまして、このことはまだ事務当局におろしておりませんけれども、私もきょう、終わりましたら、帰って部内で相談してみなきゃいかぬ課題だなというふうに考えたわけであります。
  322. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、この所得の厳密な意義と申しますか、それについては、日本の現行法上はまだ明確にうたわれていないようでございます。しかし、所得というものを端的に考えますならば、これは個人に帰属する経済的利益のすべてと解してよいのではなかろうか。そうした場合に、この収入源だけを固定して、そして実際に、先ほど言ったようなマイナス面、いわゆる自分の利益には全然無関係なマイナス面というものについては、負の所得という考え方を導入すべきではなかろうか。たとえばいま二人の者が十万円ずつ所得をしたという場合に、一人の者は五万円どこかになくしてしまった、紛失した、こういう場合に、お互いに所得したのは十万円だから課税対象はあくまでも十万円だ、こういうことでは税の公正は期されないのではないか。そういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  323. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりました所得の概念でございますけれども、これは端的に申し上げまして、収入から必要経費を控除した分ということになろうかと思います。ただ、所得税の場合でございますと、たとえば事業所得の場合でございますれば、必要経費をそれぞれ積み上げてやるという仕組みになっておるわけでございますけれども、たとえば給与所得者の場合でございますと、給与所得控除という概算の経費控除がございます。それから基本的に基礎控除とか各種の人的控除、それから高年齢の方にはそういう控除もございますし、あるいは寡婦の方にはそういう控除がある、あるいは障害者の方にはそういう控除があるということでございまして、基本的には所得の概念というのは収入から経費を差っ引いたものでございますけれども、実際上課税所得として浮き上がってまいりますものは、先ほども申し上げましたけれども、各種の所得控除の体系としてつかまえられておるわけでございます。  したがいまして、たとえば雑損控除の場合に足切り限度額の問題がよく問題になるわけでございますけれども、通常私ども生活をいたしております場合に、いろいろ不時の支出もあるわけでございます。その分は、それぞれ基本的には各種の基礎控除なり何なりの控除で、税の概念としては必要経費部分は概算的に控除されておるものでございますから、ある程度のもの以上を超えた場合に、それを必要支出と申しますか、避け得ない支出として所得計算を行うというたてまえで現在の雑損控除におきます限度額等が設定されておるということでございます。
  324. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この必要経費の控除ということでございますが、これも非常にいろいろな考え方があると思うのです。必要経費とは一体どれを指して言うか、それにも議論があるわけですが、恐らく一般的にいま控除されておる二百一万五千円というものがあるからある程度考慮されているんじゃないか、こういう議論もありますが、しかし私どもから考えてみますと、それはもしそういう見方があるとすれば、実際にかかった光熱費やその他衣類あるいは家屋保存費、いろいろあるわけですね。そういうものを細かに対比して、雪の降らない地域と雪の降っている地域にどのくらいの差があるか、そこで雪の降らない地域から比べてその出た差額については、それなりの領収書なり証拠書類を添付すればそれは必要経費としてみなすとか、そういうことで処理できるんじゃなかろうか、こういうふうに思うのです。  この雑損控除というのは、全くこれは名前だけで実のないものですよ。実際に三百万の収入の人は三十万以上の除雪費を使わなければ雑損控除の対象にならない。そんなに使うところはないのです。二戸当たり大体十万円平均ですよ。大きなうちは別としまして、平均とすればそんなものです。そうすると、この対象にはほとんどなってい奪い。これは全く条文があってないような状態です、そういう点についてもりと温かい、きめ細かい対策を考えてはどうか、こういうことです。
  325. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま御指摘になりました実額経費の問題でございます。これも所得税法の中では非常にむずかしい分野の問題でございまして、従来の税制調査会の基本的な考え方と申しますのは、必要経費と申しますか実額経費というのは一体何かという場合に、必ず物差しをつくる必要があるわけでございますね。その物差しを決めるということが非常に技術的にむずかしい問題がある。何が経費であるかという問題であります。同時に、納税者の側に立ちましても、今度はそれを税務署の方に申告していただく場合に、平たい言葉で言いますと、経費の立証の上手下手でかなり実際的な税負担の公平を欠くという場面も出てくるのではないか。したがいまして、そういう納税者の便宜とか実際上の負担のある意味では公平を図るという見地から、むしろ概算控除をしかるべき水準に設定しておくというやり方が、日本の所得税としては望ましいであろうというのが基本的な考え方でございまして、従来そういう方向で日本の所得税法は進んできておるわけでございます。
  326. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 概算控除でやるというその概算が、つまり所得の一〇%以上ということのようでございますが、そういう概算はあなたの方で勝手にやるもので、実際に豪雪地域の人々には何ら関係のないことですよ。私たちは実際にかかったもの、この経費を見てくださいというだけの率直な国民の願いですよ。しかも、それは理屈としてはわかりますよ。学説上からあなた方は言うのかもしれませんが、日本の税制は、歴史的に見ても課税が重点になって考えられて、非課税の範囲というものは余りこれは論理的には追求されていない。むしろ、これは社会政策的な考え方によって追求されている程度でありまして、そういう点ではいまの税制がこの現実になじまないのはあたりまえのことなんです。  もともと、毎年降る雪の被害というようなものは期待しないでこの税制ができている。それがいまようやくこういう権利意識が住民の中に高揚してきて、そして、このようにお互いに公平に対する関心が高まって、税の改正を要求している。だからこそ、いまの現行税制を見直す必要があるのではないか、これが住民の声なんですよ。これに対しては一体どうなんです。
  327. 竹下登

    竹下国務大臣 これは渡部さんの意見に反することが書いてあるのでまず申し上げますと、五十二年の税調の答申でございますが、新規控除創設の要望、教育費控除、住宅ローン控除、豪雪控除等の新規控除創設の要望があるが、新規控除を次次と創設していく場合、税制をいたずらに複雑にするし、そもそも個別的事情を税制においてしんしゃくするにはおのずから限界があるので適当でない、これが五十二年に出た答申なんです。  そこで、税調に私ももう一遍報告して審議していただくということに本当は幾らかちゅうちょしておりました。しかし、きょうたまたま園田君がやってきたように、やはりこれは国会での意見でございますから、いま一度報告して審議をお願いしてみる課題であるというふうには考えます。ただ、個別案件というのは非常にむずかしい問題でございまして、また別の意味において今度は給与体系の中に光熱費がついているとか、いろいろな仕組みがそれぞれ働くわけでございますので、一律にどうこうという結論がどのような形で出るものかということについては、にわかに予見するだけの能力は私に目下のところございません。
  328. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 ただいま大臣の御答弁は、非常に誠意ある答弁として受けとめ、ぜひそのような方向で努力をしていただきたいと思います。  そこで、いまの税制の中で、たとえば寒冷地給とかそういうもので公務員の方々は給与そのものの中である程度の光熱費やそういうものが見られておりますけれども、農民なんかはこれは全然見られていないわけですよ。そういう給与所得でない方は全く見られていない。こういうものに対しても相当配慮をすべきじゃないか。しかも、雑損控除の中身の問題にしても、これは通達が昭和五十二年の十月二十七日付で出されたのですが、その前は除雪費という中でだけ考えられておりまして、それが今度範囲が若干広げられた、こういうわけでございますから、だんだんと考えられつつあるということは事実です。本当に国民の大きな関心事であるというところから、この流れをとめないで、さらにこの流れに従ってもっと積極的な対応を考えていただきたい、こういうことでございます。ひとつ御答弁をお願いいたします。
  329. 竹下登

    竹下国務大臣 これは税制においてしんしゃくするのはおのずから限界のある問題である、確かに私も、いろいろなケース、ケースで考えてみると、そういう感じがいたします。そして法人の場合と個人の場合とでまたおのずからの相違があると思いますが、せっかくの御意見でございますので、そうしたことも含めて税調に御報告申し上げてみたいと思っております。
  330. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 次に、二線引き畦畔という問題について、昭和五十四年の十二月五日付で大蔵省の通達が出されております。正式な名称は「国有畦畔に係る取得時効の取扱いの特例について」という通達でございますが、この場合、これの第一項があるわけです。時間がありませんので、この中身を詳細に言うことは避けまして、一項とか二項という呼び名で言わせていただきます。  この第一項の時効取得というものが出されましたが、これは国土調査の実施地区以外の場合についてだと思いますが、この一項はそういうふうに解釈していいでしょうか。
  331. 迫田泰章

    迫田政府委員 この一項は、取得時効、要するに国土調査をやっていない地域も含めて全部——国土調査をやっている地域にはまた別にございます。だから一般的に適用になる、こういうふうにお考えいただければよろしいと思います。
  332. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 私が言うのは、国土調査を実施している地域は別な二項があるわけです。だから、一項はそれ以外の地域に適用する、こういうふうに解釈していいじゃないかということです。
  333. 迫田泰章

    迫田政府委員 そのとおりでございます。
  334. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、この地域の中で、最近所有権移転によってもし二線引き畦畔を伴う土地を所有したという場合には、時効取得は中断されるのかどうか、この点お伺いいたします。
  335. 迫田泰章

    迫田政府委員 それは、前者の占有を承継しますから、承継をするというふうにお考えをいただければよろしいと思います。
  336. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 それでは、第一項の申請が出された場合、その認定者は一体だれなのかを明らかにしていただきたいと思います。
  337. 迫田泰章

    迫田政府委員 認定者は大蔵省、具体的に言えば現地の財務部ないし財務局ということになろうかと思います。
  338. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 財務局長ですか。
  339. 迫田泰章

    迫田政府委員 財務局長でございます。
  340. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 実際問題として、こういう事案を持っておる地域を見た場合、すでに国土調査が実施されて調査済みのところにはこういう問題はないと思いますが、いかがでしょうか。
  341. 迫田泰章

    迫田政府委員 こういう問題というのはちょっとわかりかねますが……(渡部(行)分科員「二線引きの問題」と呼ぶ)国土調査を実施済みのところでございますか。そこのところはその段階で、取得時効で認めるか、あるいは民有の主張がなければ国有になるか、ただし、民有の主張があっても、時効取得申請がないということになりますと、依然として問題が残っておるという状態があるかと思います。
  342. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これはまことに不思議な問題が出ているわけです。というのは、東北地方にもかつては二線引き畦畔があったが、国土調査の結果を見ると、そういうものは何らの手続なしにもうすでに、あるいは国土調査ばかりでなくて土地改良区の仕事の中でも、こういう問題は出てこない。ところが、神奈川とか京都とかいうところではものすごくこの問題が噴出してきておるという違い、一体どういうわけでこういう違いが出てきているのか、この辺をひとつお聞かせ願いたい。
  343. 迫田泰章

    迫田政府委員 確かにおっしゃるように、われわれの二線引き畦畔の処分実績を見ますと、東北の方にはないわけでございますが、具体的に詳しく調査したわけではございませんので、推測で恐縮でございますけれども、明治以来からの土地制度で、東北の方は二線引きを二線引きとして残さずに、一筆として明治時代の地券あるいは公図に整理をしたのではなかろうか、こう推測しておるわけでございます。
  344. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、実際にこういう問題を大蔵省は具体的に把握しているでしょうか。たとえば調査済みの地域には全然ないなら全然ない、あるいは何件あるなら何件ある、あるいは今度は、実施対象地域にはどれだけある、こういうふうにその件数でいいですから実態を把握しているのでしょうか。
  345. 迫田泰章

    迫田政府委員 いままでの処分実績全体としては大体何件というのはわかるわけでございますが、実施地域に何件あり、実施地域以外に何件あるということは押さえておりません。
  346. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 この地域は、財務局に行ってみても把握されていないわけです。したがって、そういうのは把握できていないのが現実であります。  そこで、私はどうも不思議でならないのは、これは無番地の地だから所有者がいないのだという認定のもとに国有を主張しておる。しかし、自分の所有を主張するならば、それがどこにあるかを把握するのは当然ではないか。一方において農民たちは、これは明治以来、太政官布告によってはっきりと農民の所有として認められて、それ以来たんぼや畑に付随するものとして管理収益をやってきた、だからこれはおれのものだと言っておるわけです。その際に、一体その所有権を争う余地があるだろうか。この辺についてはどうでしょうか。
  347. 迫田泰章

    迫田政府委員 この二線引き畦畔の問題は非常に長年の論争といいますか、問題でございまして、われわれが考えておりますのは、明治初年の地租改正以来の土地制度の沿革から、土地所有者はみずからの土地を丈量して申告をして地券を交付されたということでございますので、それには地番がついておるわけでございますが、それに外れたものがいわゆる二線引き畦畔というふうに残っておるわけでございます。したがって、そういうものについては当時、明治七年でございますか、改正地所名称区別というのが出ておりますが、民有地にあらざるものは官有地としたわけでございますので、自分のものという申告がなかったものは官有地である、したがっていまは国有である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  348. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 これは大分議論したところですが、時間がありませんので大体この程度にしておきますが、民有地でないものは官有地だ、こういう全く単純に主張されると私は困ると思うのですよ。たとえば、どこかに行って玄関の前にオーバーが脱いであった、しかしそのオーバーには名前も何もない、これはあなたのものだという証拠がないから私のものだと言っていいだろうか。そういう一つの論理のもてあそびみたいなことで人の財産権を侵害するということは許されないんじゃないか。しかし、今度の通達は非常によくなりました。私も感心しました。ですから、この通達は私の主張も大分入れられましたので一応多とするものでありますが、なお考え方として、そういう強引に国有を主張しないで、実態に即してひとつ考慮されるようお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  349. 保岡興治

    ○保岡主査代理 渡部行雄君の質疑は終わりました。  次に、小沢貞孝君。
  350. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 きょうは大蔵大臣とゆっくりここで質問というよりは相談をさしていただくようなつもりで参りました。連日連夜の質問もきょうの私が最後だそうでありますので、ひとつじっくり相談に乗っていただきたい、こう思うわけであります。  お手元へ資料が届いているでしょうか。最初に、米の消費拡大にいろいろお金が使われておるようですが、見出しが「米の消費拡大に予算の効率的な使い方」こういうことで、主計局ででもやらなければいかぬようなのをゆうべ頭の悪い私が書いてきたので、また数字が違っていたら後でだれかから御指摘いただけばいいと思います。  消費拡大に米一万トン当たり何億かかっているかという試算を私ちょっとしてみました。一番上の欄の1は、五十五年度の米消費拡大予算、文部省の学校給食用のものなんかも含めて書きました。一般の方でも新しく拡大対策をやろう、こういうことが出ておりまして、これは表七を後で時間があったら参照していただけばいいと思いますが、七の次に「米飯給食実績と予算」五十一年から学校給食をやりましたが、五十一年は一万三千トン、五十二年が二万三千トン、五十三年が三万五千トン、これだけしか消化が進んでいないわけです。五十四年はまだ実績が出ていませんが、予算では六万六千トンの見込みですが、私は恐らくこれは五万トン前後ではないかと思う。それから五十五年度は九万一千トンということで、百六十億の予算が組まれております。これも私は六、七万トン行くか行かないかだと思う。これは農林省だけです。このほかに米の消費拡大ということで予算がたくさんとってありますが、これも私は見るべきものはないのじゃないかと思いますので、冒頭の表に戻っていただきたい。  それらのいろいろのものを合わせて、ことしは十万トンくらい消化が進めば御の字だ、こう思うわけです。十万トンのために二百二十八億の予算を使っておりますから一万トン当たり二十二億八千万、これは消費者の人が聞けばびっくりされちゃうのだけれども、数字がそうなっておるのです。一万トン当たり二十二億八千万の金を使ってことしは消費拡大をしよう、こういうことです。これは大臣おわかりだと思います。  二番目は、転作のため、水田再編のため、二百四十五万トン。ここに農林省いらっしゃるから、私、二百四十五万トンだか二百五十万トンだかちょっとそこはわかりませんが、とにかく一万トン当たり十二億から最高の場合には十六億であります。一般的な総平均でいうと十二億、一万トン当たりかけております。これの細かい点は表二に出ております。これは総括質問のときに農林大臣が私に答えようとしたそのメモといいますか、それを私もらってきたのです。これは私がお酒の質問をしたときに、私自身も試算したりしながら、一万トン当たり幾ら金がかかるだろうかということを試算した表で、一番左の数字が十五億、括弧十六億は私の最高に出た数字で、永年性作物で転作率がよくてという最高で出ると十六億かかるわけです。そのほか十一億、十二億とありますが、これは農林省で試算したものです。それを第一表に私まとめたわけであります。第一表の上から二番目は、米をつくらせない、何かほかのものをつくってもらいたい、こういうことのために一万トン当たり十二億ないし十六億の金をかけておる。これをぜひ御理解をいただきたいと思います。  三番目は、四百八十万トンの古米の処理のために農林省の計画では九千億、こうなっておりますが、これには魔術というのですか、年度末へいくと、赤字になっているのを赤字を二回も三回も落としちゃっていますから、こういうふうに安くなっていますけれども、買い入れ価格一トン三十万円、それに金利がつきます。倉敷料がつきます。そういうことをやっていくと、一トン当たり四十万にもなっているわけですから、この四百八十万トン、九千億というのは毎年償却してしまっているというのですか、赤を落としてしまっていますから。それで一万トン当たり二十五億以上、私は三十億はかかっていると思います。  そうすると、一番下の欄の四番目がお酒にアルコールを使わないで、そしてお酒屋さんが引き合う値段で割引をしてやって——ちょっと大臣、これは十分おわかりだと思いますが、全部米でつくれば大体百万トン要るのです。それを約五十万トンしか米ではやっていないで、あとの五十万トンはアルコールであります。アルコールはブラジルや東南アジアのサトウキビをしぼったかすの糖みつ日本へ持ってきて、協和醗酵百ルコールをつくってそれでやっている、こういうことですが、私の言うのは、お米の値段を割引してやって、お酒屋さんが値を上げないでもよろしい、お酒屋さんに全然負担をかけないでもよろしい、こういう値段を表九、十、十一に細かく、これは国税庁が計算しましたので間違いありませんので、そこへそっくり持ってきたわけで、その安売りのために必要な価格は一万トン当たり十億ないし十二億、こういうことであります。  大臣、これは結論から言いますと、お米一トン三十万のを二十万で売っていただけばいいわけです。三分の一安売りすればいい。そうするとお酒屋さんは引き合って、お酒の値段を全然上げないで全量お米でお酒ができる。そのプロセスは大変でありますから、これは時間があったらゆっくり相談さしてもらいますが、一気にやれとか、そういうことは言わない。私こそやりたいという人が出てきますから、そういうところからだんだんやっていくために、昭和五十三酒造年度で計算をした額で四十二万五千トンということが書いてあります。これは約五十万トンの消費が伸びるわけであります。それが十億から十二億であります。  ただ、私の計算はこういうことで計算されていますので、上から二番目に書いてある転作のための金を使わないで、それをお酒の方へ回すということですから、表の2と4を合算をしなければならぬ。これは当然そうだと思いますから、転作に使う金五百億は使わないでお酒屋さんの補助に持っていけ、その上お酒屋さんに補助をしろ、こういうことですから、2と4を合算したのがお酒屋さんに出す米の割引ですから、大体一万トン当たり二十二、三億かければいい、こういうようになるわけであります。  そうなれば、私は国家予算の一番効率的な使い方、せっかくの税金でありますから——消費を拡大するのにことしの予算は一万トン当たり二十三億かけている。それで古米処理には二十五億から三十億以上かけている。そうなってくると、転作のための予算はないものとすれば十億か十二億かければいい、こういうようになるわけで、この計算がもし違っていたら御指摘いただきたいと思いますが、米の消費の拡大にはお酒屋さんに値段を三分の二にして米を売ってやれば、どこにも何にも影響がなくて米の消費が五十万トン近く進むわけです。ということは面積に直すと十一万ヘクタールであります。  閣議の申し合わせを変更して、五十五年度からは三十九万一千ヘクタールから五十三万五千ヘクタールに十何万ヘクタール転作面積を大きくしたわけですが、ふやした分だけは、計算上はこれで済むんだ。十二万ヘクタールというのは大きいです。五十万ヘクタールのところ十一万ですから、約二割米をつくってよろしい、こういうことになるわけで、これはどうでしょう。こういう数字をまずお認めいただくという相談から入っていきたいと思うのです。これは事務当局でもいいが、間違っていたら指摘してもらいたい。御答弁を……。
  351. 小泉忠之

    ○小泉(忠)政府委員 お答え申し上げます。  大体御指摘のような計算には相なるかと存じます。  ただ一点、先生よく御存じの点ではございますが、念のためにお答え申し上げたいのですが、第一表の2と4でございますが、すでに御指摘ございましたように、転作のための予算が節約になって、それから業界の方のコストアップがカバーされるというのは大体半分でございます。前回の御質問にもございましたように、ざっと計算いたしますと四十二万トンで一千億の負担増になる。ところが、それに見合います転作予算は、この二にございますように五百億という計算になります。したがいまして、単価計算も一万トン当たり二十億は必要なわけです。大ざっぱで恐縮ですが、そのうちの半分はすでに転作のための予算が使われておる、こういうことになろうかと存じます。  なお、細かくコストで申し上げますと、現在アルコールの一キロ当たりの価格は二十一万円ということになっております。アルコールを添加いたしまして、経費として使われている経費額は全体で二百三十一億円ということでございます。それに対して、今度それを米に変えましてどれだけになるかということの計算をされますと、先ほど御指摘ありましたようにトン当たり三十万円ということで計算いたしますと、これが千二百四十五億でございますから、考え方といたしましては、二百三十一億のものが千二百四十五億になるということでございますので、原料としては六倍の増加になります、こういう関係になるわけでございます。
  352. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 いま御説明があったことは表三に書いてあります。表三の左側の方はそういうことであります。上から四行目か五行目に、いまアルコールを使っている額は二百三十一億三千万円です。「全量米で製造した場合の米代の増加額」がBというので千二百四十五億六千万円であります。だから、今度アルコールが要らないからその分だけ差し引くと、Cに書いてあるBマイナスAは一千十四億円。大臣、その一千十四億円あれば、アルコールを使わないで全部米でやってお酒の値段を上げないでいい、表三はそういうことを書いてあるわけであります。  大臣、いま言うように、これで四十一万五千トン米が消化できますが、その四十一万五千トン消化する転作のための金を農林省は幾ら出しているかというと、アバウトで五百億出しているわけです。だから、純粋に出す金はあと五百十四億でいいじゃないか、こういう計算なんです。あと五百十四億出せばいいんだ。その五百十四億は、もとへ戻ってもらって表の一番下に書いてある一万トン当たり十億か十二億だ、こういう意味であります。その真ん中の二番目に書いてあるのは、転作のための五百億をこっちへ持ってこなければいけないから、私は正直に申し上げて2と4を足さなければいけない、こう言っているわけで、だから二十二億前後ばかかります、そのかわり農林省へ出す五百億は節約できます、こういう意味です。  そういうように考えてくると、この三つ四つの中で、これはお酒に使っていただく方が予算の効率的な使用としては一番いいんではないか、国民の税金を使うわけですからいいんではないか、これが私の提言の一つであります。大臣御納得いただいたと思いますから、先に進ましていただきます。  この場合に、酒造組合中央会というのでしょうか、この方とも私はもう数回にわたっていろいろお話をしました。酒造関係人たちはいろいろな悩みを持っていることがわかりました。中小企業のお酒屋さんは現在すでに赤字であります。大企業の人はもうかっているわけであります。  白米一トンに対して二百八十リッターのアルコールを入れてよろしい、その入れてよろしいという承認基準、これは昭和四十八年以来ずっと一定になっておりますが、実質的には、だんだんアルコールを入れる量を下げて努力していただいている、こういうこともわかりますが、その努力をしているところは、お米をたくさん使ってもよろしいと思うところは大製造会社で、企業努力によって安く製造できるところはなるべくお米をたくさん使いたいわけです。どうも方々で宣伝がされて、お米をたくさん使うと嗜好に合わないみたいなことを盛んに宣伝するわけです。  これを私言い出したら、反対運動が出てまいりました。協和醗酵、宝酒造、こういうところから反対運動が出てきました。これは無理ないと思うのです、だんだんアルコールを使うのが少なくなるから、小沢さん、そんなことを主張してくれるな、こう言っているけれども、製造の状況を見ていると、お酒屋さんの大企業のところは、承認基準二百八十リッターまででなくて、もっと低い二百とか二百十リッター、なるべくアルコールを少なくした方がいいんだということをお酒の製造屋さんみずから実現しているように、大きなところはアルコールの混入量を下げているわけです。私がこの問題をやり出したら、いまアルコールが入っていた方が、合成酒の方が若い人の口に合って、その方がいいのです、こういう宣伝を盛んにする。協和醗酵や何かの人もそのことを一生懸命言ってくる。いやいや昔のお酒の味なんてだめです、新しい若い人は、アルコールをなめてすかっとしていた方がいいのです、こういう宣伝を盛んにしてきます。  ささやかなこの資料の中にもあるように、表の上から四番目、これはやはり国税庁で出していただいた資料ですから間違いがないと思いますが、一番左が酒造年度であります、昭和四十八年度から五十三年度まで。二番目が普通酒、三番目の行が純米酒であります。純米酒は五十一年からですが、一万二千七百六キロリッター、お酒の全量の中の約一%しかありません。五十二年度は一万三千百一キロリッター、これも約一%強であります。五十三年度になったら一万五千九百三十四であります。これは一・三%にふえてまいりました。いまお酒屋さんは、なるべくお米を入れて味を上げたという宣伝をしたくて、中にはもう一二%ぐらいしかアルコールを入れてないと言っているところもあるようでありますから、そこらから宣伝が来ても一大臣、そのことははねのけていただきたい。やはりお酒はお米からつくった方が味がいい、これは現実に数字が示しているわけですから、どうぞその点はお気になさらない方がいいのではないか、こう思います。  そこで——途中ですが、反論があるわけだ。まあ話し合いだから、どうぞ。
  353. 小泉忠之

    ○小泉(忠)政府委員 大臣からも前回先生にお答えがございました点繰り返して恐縮なんでございますが、アルコールにかえまして米を使うといった場合、酒の質でございますね、それがやはり第一に問題になろうかと思います。専門家の方にいろいろ伺いますと、アルコール添加をしてできた酒というものにつきまして、やはりそれに対する嗜好というものを十分考えてお酒というものは飲んでいただくという趣旨議論が非常に多うございます、御指摘の一端であろうかと思いますけれども。  その理由は、考えてみますと、釈迦に説法で恐縮でありますが、お酒の味というのはいろいろな表現がございまして、甘い、辛い、重たい、軽い、あるいは濃淳である、淡麗である、あるいはきれいである、いろいろな表現を使って嗜好をあらわしておるわけでございますが、このアルコールを適量添加したお酒につきましては、淡麗であるという評価が非常にございます。べたべたしなくて非常にすっきりしているということではなかろうかと思いますが、こういう嗜好が一つございます。したがいまして、戦後かなりそういうものに一般消費者の嗜好は傾いてきておるということは一つの問題点ではないか。  それから第二には、アルコールを使いますのは最近始まったわけではございませんで、三倍増醸につきましては、その原料事情等がございまして、昭和二十四年から導入されて今日に至っておるという状況でございますが、アルコール添加一般につきましては、やはり江戸時代から柱じょうちゅうという表現でそういう技術が今日に至っておるということを伺っております。この効用は、いま申し上げましたような嗜好の点も一つございますが、同時にまた保存の面で非常に効果がある。雑菌を防いでこれを消費者に新しいもので提供できるという効用も一つあろうかと思います。そういった嗜好の面が一つございます。  それからやはりコストの点が、先ほど申し上げましたように、原料で見ますと、現在切りかえた場合には六倍になる。これを一升当たりに換算いたしますと、原料だけで百二十円でございますから、その他米を処理することを考えますと、労務費とか運搬費とかそういった経費を考えますと、少なくとも百二十円が百五十円から二百円というような感じも出てまいります。その原料高というのが、やはり最近の清酒の需要状況を考えてみますと、かなり市場が成熟過程に入っておりまして、需要の伸びが非常に少ないという状況でございますので、そういった点も考えなければならぬ。  それから同時に、先ほど御指摘ございましたように……(小沢(貞)分科員「余りやらない方向ばかりの宣伝をやらないで」と呼ぶ)大変恐縮でございますが、もう一点は、中小企業が大変多いということで、先生御存じのとおりでございますが、承認基準いっぱいでぎりぎりのところでアルコールを利用している。これはコスト面からの要請かと思いますが、大体七割の業者がそういう形でございますので、それを急激に転換いたしますと、やはりそういう面でインパクトが出てくる。設備も使えないとか、工程も長引きますから、タンクも必要である。精米機とか蒸米機とか放冷機とかいろいろございますけれども、そういうことも考え判断しながら、業者、業界の方は対応をいたしております。
  354. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 ずっと国税庁はそういう態度です。私は酒造中央会ですか、二、三回にわたって話したが、こういうわけです。悩みがいろいろあるわけです。いま言う赤字、実は私も酒屋で、腐らしてつぶれちゃったわけで、それでよく知っておりますけれども、そういう悩みをみんな私たち聞いて、そういうものを受け入れた上で、なお困難を克服してできないか。  それで酒造中央会の人と話すと、中小企業と大きい企業、これは私データを持っておりますけれども、中小の小企業、それが軒数で言えば絶対的なウエートを占めておるわけです、製造量では少なくても。それがもう赤字なんです。私たちは外から見ていて大変認識不足だったわけですが、素封家の人がお酒をつくっておるので、山の木を売ったり何かしながら、経営をやっと続けておるというようなところすらあるわけですから、従来続けていたような構造改善事業、こういうものを強力に進めてもらうことも一つだと思います。  それから、私の言うことを向こうが一番納得してくれたのは、ある酒造年度を切って、ある酒造年度において二百リッターのアルコールを使ったとします、それはみんな税務署でわかっていますから、それ以降、たとえば二割アルコールを減らした、三割減らした、こういう場合に、二割なら幾ら、三割なら幾らといって、安売りの値段はみんなずっと国税庁から出してもらって出ておりまますから、そういう自分でやる量に応じてやればいい。それで中央会の方も大変納得して、そうですか、そういうように強制をしないで希望者からやっていく、こういうことにしてもらうなら大変ありがたいことだ。  いや、私が一番最初に臨時国会で質問したら、信濃毎日新聞にそのことがちょっと出たわけです。そうしたら、県会議員のお酒屋さんの人も、お米さえ安く売ってもらえば、私たちの設備は余っています、杜氏も幾らでもおります、それで、これだけ米が余っているところですから、そのど真ん中にあるわれわれ酒屋は米でお酒をつくりたいです。そういう人が五人、六人と明くる日連絡をよこしたということを見れば、やはり現場にいるお酒屋さんは、昔から米でお酒をつくりたいという希望を持っておりますし、そういうところは設備を持っておるわけで、設備がないというのは、大企業で何百人も使ってやっているようなところはアルコール添加でもって量をふやしてきましたから、そういうところはないかと思うのですけれども、そういうところはもうかっている会社ですから、あと制度資金なり何なり、設備をふやすのを援助をしてやる、こういうことがあると思いますから、そういうことはいいと思います。  それから、いまのうちならば、お酒屋さんの杜氏だってみんな確保して、杜氏自体も農村にいる人が多いわけですから、就業の機会に恵まれて本来のお酒づくりをやりたがっている。私の地方にもいっぱい杜氏がいますけれども、それを希望しているわけであります。  それから、もう一つこういうことを言っているわけです。メリットを何か与えてもらいたい。たとえばアルコール量を減らしていった場合に、ただ米をその分だけ安くしないで、何か少しメリットを与えて誘導をしていただけば結構です、こう言うのであります。私が言っているのは、希望して立候補した人だけから始めていけばいい、こう言っているわけです。私は確信を持っているわけです。もうかっているところはアルコールを減らしてお米の量をふやしているのが現状ですから、私は、酒屋さんはそういう方向へ行くと思います。国税庁や協和醗酵の労働組合や協和醗酵の会社の人と違って、そういう方向へ必ず行くと思いますから、価格の面で誘導をしたり、設備の面で誘導だか制度資金を貸してやるということで、どうぞやりたい人だけやってください、そのかわり、昭和五十三年度のときに二百リッターのアルコールあるいは二百五十リッターのアルコール、それから一割減らせば幾らの安売り、二割減らせば幾らの安売り、全量減らせば、さっき申し上げたように、三十万円のものを十九万七千円で売ればいいのです。そこまで到達するのに五年も六年もかかると私は思うけれども、そういう道をこの際用いてほしい、こういうように言っておるわけであります。こんな無理のない話はないのですよ。
  355. 小泉忠之

    ○小泉(忠)政府委員 これも前回大臣から先生には御答弁があったかと存じますが、先ほども申し上げましたように、コスト面、それから経営面で業界負担が一千億ふえるという問題につきましては、慎重に考えざるを得ない問題でございますが、やはり添加量を急激に減少させていくという方向へ誘導するにいたしましても、かなり問題が残るというふうに私どもは考えております。  と申しますのは、これは私ども国税庁の所管ではございませんが、財政的な援助を仮に振りかえたとしても、やはりこれに対応できる業界の準備といいますか、こういったものが必要であるし、現在の状況では、清酒の需給状況から見ますと、こういった方策を急激に取り入れていくということにつきましては、対応できる状態にはないのではないかというのが一点でございます。
  356. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 時間なので、それでは大臣に。  私は、最終的なネックはこういうところになると思います。一般の消費者にお米を売るより、何でお酒屋さんにそんな安い値段で売るか。いま直前に私は四分科へ行って農林大臣に言ってきたわけです。それを割り切らなきゃいかぬ。工業用に売っているものはうんと安売りをやっている。それと同じように、お酒ももう工業用だ、そういうように割り切るような考え方を持たないといかぬ。これは政治的判断だと思います。そうでないと、一般消費者には何だ、米一トン三十万円、お酒屋さんには一割引だか二割引とは何事だ、これはもう問題が出てくると思いますから。今度は、処分している米が一万トン当たり二十五億も損して売っているのです。そういうようにするならば、やはりそこは割り切る。これは工業用と同じことだから割り引きをするんだ、これはもう政治的判断だと思います。そういう判断さえつげば——私は無理を言っているわけじゃない。さっきから急激に、急激にと言うが、希望者だけやればいいということを何でわからない。  それで、五十四年度なら五十四年度を境にして、そのときに二百リッターのアルコールを使っていて今度は百八十にするといったら、二十減るわけでしょう。二十減ったものに、それに相当するもの、そこに一覧表がありますから、幾らに割り引けばいいが。たった一、二割の米を割り引いてやればいい。全量をやりますと言ったら、そこの表にもあるように割り引いてやればいい。希望者だけやらせる、そういう道を開くということを言っているわけですから、いけませんの何のと、役所というのはこういうところへこり固まっていて動かぬからだめだ。いま日本で一番困っているのは、米をつくるところがないということですよ。六十五年度には三分の一もう米をつくれないわけですから、これだけの財政的負担をやっているという大所高所に立って、国税庁の石頭を少し変えていく。  急激に、急激にという答弁。だれも急激にとは言っていない、希望者だけやれというんだ。そのときに酒造組合の人は、いま努力をして二百八十リッターの承認基準を二百四十にした人に対して、二百八十やっている人と同じにしたのでは不公平です、こう言うから私はこう言うのだ。五十四年度のとき二百八十の人は一割引いたら一割の値引き、五割のアルコールを減らしたらそれ相当の努力をした人にやる。立候補して手を挙げた人しかやらないのですよ。それを急激とは言わないんだ。  それで、結論として大蔵大臣、ひとつこのことを本当に真剣にやって研究してもらいたい、こう思う。これは、日本の農政の中で米の消費拡大ということでは最高の問題です。  私はこの間も、農業会議所の池田斉さんが公聴会に来たから、おまえさんたちは何でこのことに気づかないと言った。全農にも私は言って、全国運動を起こさせてこれは絶対にやります。  それから、その一番終わりに書いてあるように、社公民でも割引の予算書をつくったのです。一番最後に書いてある。それまでつくったけれども、農林問題だけは今度はおけや、こういうことになったのです。それで出せなかっただけで、われわれ社公民一致してこれを出そうじゃないかというところまで行っているわけで、これだけ国民の世論があるのに、国税庁は石頭でいかぬ。
  357. 小泉忠之

    ○小泉(忠)政府委員 承認基準の問題かと存じますので、若干これも釈迦に説法でございますけれども……。  現在製造場単位で見まして、米をつくります場合に、原料等の関係で承認する基準を設けております。これが先生御指摘のように、白米一トン当たりアルコールを使っていい最高限度を二百八十リッターというふうに定めております。したがいまして、二百八十リッターを上回らなければ結構なわけでございまして、これを二百にしようが二百五十にしようが、これは承認基準にないわけです。
  358. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 それはわかっていて言っている。それを二百五十、二百四十と減らしているということは、米をたくさんでやりたいという、酒屋さんが言っていることを私は言っているんだ。
  359. 小泉忠之

    ○小泉(忠)政府委員 実際は、御指摘のように、現在二百五十五リッター、二百五十六リッターというような水準に参っております。と申しますのは、十年前、たとえば昭和四十年と比べますと、このアルコールの使用量は八八%に下がっている。御指摘のように、業界としてはコスト状況の厳しい中で、アルコールから米への振りかえの動きというのは年々進んできております。したがって、私ども申し上げておりますのは、やはり基本は企業経営の問題でございますので、私どもの方から急激にこれを減らすようにとか、あるいは減らすような形の承認基準の変更ということが果たして妥当かどうかということを考えざるを得ないわけでございまして、自然にこの傾向は進んでいくのではないかとお答え申し上げておるわけでございます。
  360. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 それはもう政治判断をしなければならない段階だ。だから、これは大蔵大臣でなければだめなんだ。国税庁はああいうようにかたいからに閉じこもっているけれども、米をつくるところがなくなってもお酒屋さんはアルコールでやっているか、こういうことになっていくのだよ。本当ですよ。昭和十七年の米がなくて困ったときにできたものを墨守しないでもいいのです。  うんと簡単に言うなら、やりたいというところからやっていくのを財政援助しろ、こう私は言っているのだ。そういうことなんですよ。だから、三年間にみんなやってしまえとか、五年間にみんなやってしまえとは言わぬ。そうすると必ずふえてくる、国税庁の思っていることと私の考えていることとは違うのだ。必ず米は消費がふえていくからそうやったらどうだと言っている。大臣、ひとつ真剣に研究してもらうように御答弁を……。
  361. 竹下登

    竹下国務大臣 私も非常に答えにくいのです、私も酒造業者でございますから。いま兼職禁止規定によって取締役も辞任いたしておりますけれども、弟が家を継いでおります。  ただ、約一万軒ありました酒屋が三千軒ぐらいになりまして、なぜ一万あったかということを考えてみますと、昔は大体一万カ町村ありました。そこで、小沢先生のところもそうだったとおっしゃるのですが、多少頭のいい地主が、恐らく交通網の発達していないところですから、まさにてんびん棒で担いでその範囲というものに一つずつ酒屋が大体できてきたわけです。だから、一万軒というものも数字が合うわいな、こう思っております。それで、確かに一遍酒が腐りますと、そこはいまで言う倒産をするわけです。それから、息子を三人学校へ出すと大体百石酒屋はちょうど倒産する。そのいい例が佐藤榮作さんだそうでございます。それから、いま三千軒になって今度その態様を見ますと、それは大変な零細関係が多いわけです。大体どういうところが生き残っておるかと思ってみますと、学校を卒業いたしまして、大蔵省の滝野川の醸造試験所くらいに一年入れてもらって、それで若い衆が帰ってやったところは残っているのです。政治家になったところは大概だめになっておるわけです。  そういうようなことを考えながらいま見ますと、仮に私のところで、ことしはちょっと変えましたけれども、いままで千二百石つくって大体三百石しか売らないわけです。九百石は灘、伏見へおけ売りしているわけです、そんなに売れるわけないですから。それで名前をいろいろ変えたりして工夫してみてもなかなか売れない。したがって、仮に設備があるといたしますと、その設備はまさに精米機なんという昔の水車小屋でつく設備、そういうものは確かに残っております、文化財的価値はございますけれども。そういう設備投資が一体それに対応できるだろうかなというようなことも考えてみたり、私もこれは大蔵当局で勉強する前に、私自身が、先生が酒造組合中央会へいらして勉強なすったと同じように、これは大蔵大臣としてでなく、私自身中央会へ行ってよく話を聞いてみょうがな、こういう気がしました、本当のところ。  実際問題として、三百石つくるも千二百石つくるも人は同じでございますから、したがってコストをできるだけ下げるために、千二百石つくって三百石分だけが利益になって、九百石は原価で引き取ってもらえばいいというような考え方でございます。そういうようなことを考えて、実際問題できる問題であろうか。昔はホルマリンでございましたか一種の防腐剤、そういうものを使ったりしたり、確かに杯に粘っこく出る酒というものがありました。いまあの粘っこい酒というものが、明治生まれの者ははだに合うかもしれないが、先生は大正五年でございますね、私は十三年ですが、まあ大正ぐらいまでかなという感じがしたりしています。  ただ小沢さんの、実際問題いわゆる過剰米の処理という問題からのお考え方、しかし、過剰米をいま処理しておりますのは古米でございまして、古米を酒に使っていい酒もできませんし、などなど考えると、まず大蔵当局が大勉強する前に、私自身が小沢さんと一緒になって酒造組合あたりで大勉強してからでないと決断をするだけの自信はいまのところないということを、率直に業者の一人として申し上げます。
  362. 小沢貞孝

    小沢(貞)分科員 終わります。
  363. 保岡興治

    ○保岡主査代理 小沢貞孝君の質疑は終わりました。  以上をもちまして、昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算大蔵省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明七日午前十時より開会し、外務省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十七分散会