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1980-03-04 第91回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十五年二月二十一日(木曜日)委 員会において、設置することに決した。 二月二十二日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。       片岡 清一君    始関 伊平君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       渡辺美智雄君    阿部 助哉君       八木  昇君    池田 克也君       瀬崎 博義君 二月二十二日  始関伊平君が委員長指名で、主査選任され  た。 ————————————————————— 昭和五十五年三月四日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 始関 伊平君       片岡 清一君    澁谷 直藏君       田中 龍夫君    渡辺美智雄君       阿部 助哉君    川口 大助君       斉藤 正男君    八木  昇君       池田 克也君    斎藤  実君       庄司 幸助君    兼務 井上 普方君 兼務 稲葉 誠一君    兼務 小野 信一君 兼務 岡田 利春君    兼務 沢田  広君 兼務 清水  勇君    兼務 関  晴正君 兼務 竹内  猛君   兼務 貝沼 次郎君 兼務 平石磨作太郎君    兼務 薮仲 義彦君 兼務 竹本 孫一君    兼務 玉置 一弥君 兼務 中井  洽君  出席国務大臣         農林水産大臣  武藤 嘉文君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       堀内 俊夫君         経済企画庁長官         官房長     山口 光秀君         経済企画庁長官         官房会計課長  吉岡 博之君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省構造         改善局次長   岡本 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君  分科員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  佐野 国臣君         大蔵省主計局主         計官      佐藤  浩君         大蔵省主計局主         計官      的場 順三君         大蔵省主税局税         制第一課長   内海  孚君         大蔵省銀行局特         別金融課長   中田 一男君         文部省体育局学         校給食課長   坂元 弘直君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 藤井 正美君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     堀田 俊彦君         海上保安庁警備         救難部長    野呂  隆君         労働省労働基準         局補償課長   原  敏治君         建設省都市局下         水道部公共下水         道課長     玉木  勉君         建設省河川局開         発課長     堀  和夫君     ————————————— 分科員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   瀬崎 博義君     藤原ひろ子君 同月三日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     瀬崎 博義君 同月四日  辞任         補欠選任   八木  昇君     斉藤 正男君   池田 克也君     伏屋 修治君   瀬崎 博義君     三谷 秀治君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     川口 大助君   伏屋 修治君     沖本 泰幸君   三谷 秀治君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   川口 大助君     八木  昇君   沖本 泰幸君     鳥居 一雄君   小林 政子君     庄司 幸助君 同日  辞任         補欠選任   鳥居 一雄君     大橋 敏雄君   庄司 幸助君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     渡部 一郎君   正森 成二君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     新井 彬之君   三浦  久君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   新井 彬之君     斎藤  実君   林  百郎君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   斎藤  実君     池田 克也君   津川 武一君     瀬崎 博義君 同日  第一分科員井上普方君、岡田利春君、平石磨作  太郎君、玉置一弥君、第二分科員稲葉誠一君、  小野信一君、竹内猛君、薮仲義彦君、中井洽  君、第三分科員貝沼次郎君、竹本孫一君、第五  分科員沢田広君、清水勇君及び関晴正君が本分  科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算  〔総理府所管経済企画庁)及び農林水産省所管〕      ————◇—————
  2. 始関伊平

    始関主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、よろしくお願いを申し上げます。  本分科会は、昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算経済企画庁農林水産省及び通商産業省所管について審査を行うことになっております。  なお、各省庁所管説明は、各省庁審査の冒頭に聴取いたします。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算経済企画庁所管について、政府から説明を聴取いたします。正示経済企画庁長官
  3. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 昭和五十五年度の経済企画庁関係予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算額は、百十八億三千五百万円となっており、これは前年度予算額に比べて三億八千万円の減額であります。  また、財政投融資計画につきましては、海外経済協力基金に係る分として二千六百七十三億円を予定しております。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  第一に、経済政策総合的推進に必要な経費として、三十二億一千九百万円を計上しております。  この内訳の主なものは、国民生活安定対策等経済政策推進費であります。景気の維持と雇用の安定、特に物価の安定が引き続き経済運営の重要な課題であるという観点に立ち、生活必需物資需給価格動向の監視、生活必需物資等安定供給対策物価に関する適確な情報の提供等を実施するとともに、各省庁内外経済対策総合調整機動的推進を図るための経費として、三十億円を計上しております。  また、長期経済計画推進を図る経費として、一億一千六百万円、基本的経済政策企画立案業務充実を図るための経費として、一億三百万円を計上しております。  第二に、国民生活行政拡充及び物価行政推進に必要な経費として、三十二億一千二百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、国民生活の面から省資源省エネルギー対策を強力に推進するための経費として二億五千七百万円、国民生活センター活動強化を初めとする消費者行政充実に必要な経費として二十六億七千六百万円、総合社会政策体系等開発推進を図るための経費として七千百万円を計上するとともに、物価行政運営のための諸対策強化を図るための経費として二億九百万円を計上しております。  第三に、経済社会に関する総合的調査研究充実に必要な経費として、十八億三千九百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、内外経済産業動向に関する調査分析拡充強化に必要な経費として三億一千六百万円、総合研究開発機構の機能を強化し総合的な研究開発の一層の推進を図るための経費として八億七百万円を計上しております。  また、世界経済動向予測に関する研究等経済研究体制充実を図るための経費として四億六千百万円、新国民経済計算体系の整備を図るための経費として二億五千五百万円を計上しております。  最後に、海外経済協力基金でありますが、昭和五十五年は政府開発援助の三カ年倍増計画達成の年であり、そのため事業規模として四千二百二十億円を予定しております。  その原資は、一般会計からの出資金が一千二百二十億円、資金運用部資金からの借入金が二千五百四十三億円、政府保証債が百三十億円、自己資金等が三百二十七億円となっております。  このうち、一般会計からの出資金は、大蔵省に計上しております。  以上、五十五年度における経済企画庁予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議のほど、よろしくお願いいたします。
  4. 始関伊平

    始関主査 以上をもちまして経済企画庁所管についての説明は終わりました。
  5. 始関伊平

    始関主査 質疑に先立ちまして、分科員各位にお願い申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は要領よく簡潔にお願い申し上げます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  6. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 長官予算関連公共料金というのは米と国鉄郵便、この三つですか。
  7. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは、今年新しくお願いしたものと、そのほかに去年から引き続き審議未了になっておるたばこ、それから健保、この二つも入れているのが予算関連ということでございます。
  8. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 「時の動き 政府の窓」ことしの二月十五日号、あなたと高原須美子という御婦人の評論家との対談の中を見ますと、国鉄は四月二十日ごろを予定していると言っていますね、上がるのは。これはどこからこういうものが出てきたわけですか。幾らぐらい上げるのですか。
  9. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほどちょっと申し落としましたが、それから国立学校授業料もございますから、つけ加えて申し上げておきます。  それから四月二十日というのは、私、予算編成過程大蔵省運輸省その他と協議をいたしまして、たしかこういうことを記憶しております。新年度に新しい入学生が高い料金よりは少しずらしたらどうか、こういうお話を申し上げまして二十日にずらしていただくように記憶しております。
  10. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 どのくらい何が上がるわけですか。
  11. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 予算を組みましたときには増収率として四・九%ということでやっておりますが、現実には国鉄の方から申請が出まして、そしてそれを運輸省が認可する、その過程経済企画庁協議を受けて決めていくということでございまして、現在、その申請の作業について運輸省で検討しているところでございます。
  12. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 それから、郵便は十月ごろを予定しています、こう答えていますね。これはどういうわけでしょうか。
  13. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これも、予算関連公共料金につきましては、その引き上げ率、時期、これについて極力調整をいたしまして、一般消費者物価あるいは国民生活に対する影響を緩和したい、こういうことで極力努力したわけでございます。  そこで、郵便料金につきましても十月一日ということで予算のときに話し合いをいたしましたものです。それから、つけ加えて申し上げますが、はがきは一挙に上げるようなことなしに二段階でやってはどうか、こういうふうな話し合いをしたことを申し上げたわけであります。
  14. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 それが大体六・四の中の〇・八%に当たるというのは、それは米と国鉄郵便三つで〇・八という意味でしょうか。仮にそうするならば、その内訳はどういうふうになっているわけですか。
  15. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほど申し上げた、稲葉委員が御指摘米価国鉄郵便のほかに国立学校授業料、それから従来の継続中のたばこ健保、それを全部入れまして直接の影響は〇・八、こういうふうに言っておりますので、その内訳を申し上げますと、米価で〇・〇八、国立学校授業料で〇・〇一、これは程度というのがつくわけでございますが、それから国鉄運賃で〇・〇八程度郵便料金で〇・〇四程度たばこで〇・三三程度健保で〇・二四程度、それを合計いたしまして〇.八、こういうふうになっておるわけでございます。
  16. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 問題はこれからの電気ガスなんですということを長官も言われておるわけなんですが、そこでこの電気ガスについては、最初にお聞きしておきたいのは、たとえば一〇%上がると一これは国と地方両方ありましたね、一〇%上がると〇・二七だという数字をお聞きしたわけですが、これは後からいろいろな問題が出てきますけれども、お聞きしておきたいのは、ことし参議院選挙がある、だからことしの値上げ幅はある程度低く抑えて、そして来年にまた値上げをするのだという、いわゆる二段階値上げ論、これはとらないならとらないとはっきり言っていただけますか。
  17. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 はっきりと、そういうことをやるつもりはございません。私どもといたしましては、もちろん極力、物価国民生活への影響というものを考慮いたしまして、経営の徹底した合理化をやっていただくことを前提にしておるわけでございますが、そのほかに、御案内のようにいままでは二年、これを審議会では三年ぐらいにしたらどうか、こういうことでありますけれども物価がいわば一つの非常時の観を呈しておるわけでございますので、一年で一応申請は出しておるわけでございますが、その一年の料金の改定を見る場合には、最近までの情勢を織り込みまして、いま御指摘のように選挙対策等で来年また上げるというふうな含みでこの査定を手心をするというふうなことは毛頭考えていないわけであります。
  18. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 そこで、よくわかりませんのは、六・四%、六・四%と、こう言うわけですね。一体この数字が、まあマクロでしょうけれども、どこからどういうふうにして出てきたのかよくわからないのですよ。
  19. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これは昨日も、稲葉委員も御熱心に聞いておいでいただいたようでございますが、私が集中審議でお答えをいたしましたように、われわれとしては個々に計算をして六・四というものを出したわけではないわけでございます。最近における卸売物価消費者物価情勢、これをもう一番重要な資料としておることは当然でありますが、このほかに、これからの生産の見込み、生産消費あるいは在庫、これにつきましては国内及び海外からの影響等を総合的に勘案いたしまして、卸売物価はどういうふうになるか、そしてまた、それが消費者物価にはどうはね返ってくるか、そういう一つ整合性を持った数字として消費者物価の六・四というものをはじき出しておるわけでございます。
  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 それは、私の聞いているのは何を何%、たとえば実質成長率四・八と見たとか名目をどう見た、雇用をどう見た、見方はいろいろあるわけでしょう。その見方をどういうふうな計算をしていて六・四という数字が出てきたのか、これを御説明願いたいということです。これが一つ。これは時間がかかりますから、資料として出していただいてもいいですが、それと、では五十四年度を四・七に直したという場合の五十四年度のそうしたものとの比較が、どこがどう違うか、これを聞きたいわけなんですよ。
  21. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 五十五年度の見通しにつきましては、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、これは経済見通しの一環としてやっているわけでございまして、物価というものが物価そのものとして決まってくる過程というのは、やはり生産なりまた消費がどう動くか、さらには輸入物価がどう動くかというようないろいろな要素から決まってまいりますので、どうしてもその経済見通しの中でその他の諸変数と整合性をとったものとして計算しなければなりませんので、そういう意味でマクロ的な計算をするということでございます。(稲葉(誠)分科員「それはわかったのよ、だから項目別に分けてくれと言うんだ」と呼ぶ)その中ではまず生産一つございます。これは経済見通しの中でも四・八%ということになっております。それから雇用につきましては五十五年度一・四%の増加を見込んでおる。それから消費につきましては三・七%の増加を見ておる。それから賃金の関係ですが、一人当たり雇用者所得として七・三%を見ておる。それからレートの関係でございますが、五十五年度の見通しといたしましては二百三十七円というので見ております。そういうような需給要因、そしてコスト要因、両面から一定の相関式を予定いたしまして、その中から計算をしていくものを五十五年度の数字としてとっているわけでございます。  それから五十四年度につきましては……。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 それはいいです。  いまのはわかりましたけれども、それからどうやって六・四が出てくるのか。一覧表を後で出してください。わかりません。そこにもう一つ、では政策判断というものが加わっているのか、いないのか。その点をお聞きしたいと思うのです。
  23. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 政策的には物価を安定させるということが基本でございます。したがって、あらゆる努力政府においても、また企業においても、また企業勤労者方々にも、また一般消費者方々にも賢明な消費生活をやっていただくという前提をわれわれは堅持して出しておることは、もう御理解をいただけると思います。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 そんなことを聞いておるのではございませんよ。いまあなたが言った、いろいろな数字を並べたでしょう。一体そのどこに政策判断がどの程度入っているかということを聞いておるわけですよ。総合的に物価をただこうするんだ、こうするんだ。それは全体としての話で、私は六・四という数字が出てきたのはわからぬですよ。そこへどういう政策判断が加わったかということは、その全体の一つ一つ数字の中にどの程度政策判断が加わっているかということの累積だと思うのですよ。ただ物価を重視するからということだけではあれしないんで、六・四というのは賃上げを抑えるための一つ数字として出てきたとも考えられるわけです。だからそういうことを聞いておるわけですけれども、それを聞いても時間がかかっちゃいますから、後でいま言った六・四が出てきたいろいろな数字の根拠、これを出してくださいよ。いいですね。それはいずれ商工委員会で大体一時間半ぐらいもらうことになったから、そこでゆっくりやりますから。とてもここでは無理ですから。  そこでお聞きしたいのは、この電気ガスの問題は、そうすると六・四の中にその値上げは入っているのですか。
  25. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まず、いまちょっとお触れになりましたが、春闘の賃上げを特に低く抑えるために消費者物価をどうするというような配慮は全然しておりません。しかし、先ほど申し上げたように一般的な物価の安定ということが非常に大事である。御案内のように、一時、景気物価両にらみと言っておりましたが、私は就任以来もう一貫して物価の安定、これが一番大事であるということでやっておることは、私は、大きな一つ政策である、こういうふうにいま考えているわけでございます。  そこで、いま電気ガス料金についてはどうなのか。これは現実にただいま通産省査定をしておるときでございまして、われわれも必要に応じて物価安定政策会議等を開きまして各方面の意見を徴し、通産省へも連絡をとっておりますが、まだ正式の協議を受けてはいないのであります。しかし、やはりこれを六・四の中にどういうように見ておるかということになりますと、これはなかなかまだ決まらぬときに、そういうことをどの程度見込んでおるということを申し上げることは不可能でございます。したがって、これはいずれ決定を見てその上のことになりますが、いまのところは、あらゆる努力を傾けて、先ほど申し上げたようにぎりぎりのところでやっていけば、やはり私どもとしては六・四の目標というものをいまから達成不可能であるというふうには考えていないので、努力いかんによっては達成できる、こういうふうな考え方でございます。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 そんなことを聞いているんじゃないのですよ。六・四の中に電気ガス値上げが入っているか入ってないか。
  27. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 そういう努力をすることによって六・四におさめるという意味では結局入ることになるわけでございますが、いまどの程度を見込んでおるかということはお答えできない、こういうことでございます。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 それは入っていることはわかったですね。いまどの程度見込んでおるかということはお答えできない。それはいまわかります、私も。だけれども、ある数字が、電気の場合何%上がる、ガスは何%上がるというおおよその数字が見込まれてこそ、この六・四%という数字が出てきたんじゃないですか。それでなければ出てこないんじゃないですか。いまあれしているときだから、具体的な数字を言えと私は言いませんよ。それをある程度見通しを立てているからこそ、六・四という数字が出てきているんじゃないですか。
  29. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 そこが、きのうもずいぶん議論をいたしましたように、社会党さんの方のお考えはやはりげたがあって、その上に公共料金がどうだというふうに大変法律家的な推理が強くあります。私どもは、先ほど物価局長も申し上げたように帰納的といいますか総合的といいますか、そこのところが違っておりまして、きのう私は集中審議では、一応社会党さんのお考えに基づいていろいろお考えについて、社会党さんの案について御議論を申し上げたわけでございますが、いまのところはわれわれは決して、そういう内容的に、電気料金幾らガス料金幾ら、それの直接的、間接的な影響はどうだというふうなところから積み上げて六・四を出したのではない、どこまでも全体のところからはじき出して、その中におさめようとしていま努力をしておる、こういうことでございます。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 ですけれども電気ガスの場合に一〇%上がれば〇・二七の数字になるということは、きのう経済企画庁課長からレクチュアを受けたわけですね。それがたとえば三〇%上がった場合、四〇%上がった場合に、これは一体全体〇・二七が単純に三掛けていいのか四掛けていいのか、あるいは違うかもわかりませんけれども、あるいは五の場合にどうなるかとか、そういう数字は当然考えられてくるんじゃないでしょうか。その場合を試算しているわけでしょう。
  31. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 それは電気一割上げた場合〇・一八、それからガスが一割で〇・〇九ということは確かに申し上げておるのですが、これはやはり一つの仮定でございまして、需給関係あるいは企業努力あるいはまた消費節約、いろいろの変数といいますか変わり得る要素がありますが、一応計算的にそういうことになりますということをお答えしておるわけでございます。  これは直接的にCPIに対する影響を試算したものでございますが、いわんや間接的影響ということになりますると、これはもう関連業界におけるいろいろの努力のやり方、それからまたそのときの金融のあり方、財政執行のあり方、いろいろと複雑な要素が関連をいたしまして最終的に決まるわけでございます。われわれはそういう方面に大いに努力の余地があるという考え方をとっておりますので、せっかくの御指摘でございますけれども、そういうものを不動のものとして算定したものではないわけでございます。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 それはわかりますけれども、そんなことを聞いているんじゃないのです。私の言うのは、一〇%で〇・三七だ、こう言うのならば、じゃ、一〇%で〇・二七というのは標準家庭に与える具体的な数字としての影響はどのくらいになりますか。
  33. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 消費者物価のウエートの問題になりますが、家計調査上のウエートから出しまして、一〇%上がった場合に〇・一八、〇・〇九という数字になっておりますので、それに見合う影響を、それに見合ったものとして家計の負担額がふえるものと見ていいかと思っております。今回の申請によりますと、一世帯当たりの家計負担の増加額は電気の場合約二千円ということになっております。(稲葉(誠)分科員「月にね」と呼ぶ)はい。ですから、これは今後の査定段階で決まった数字に応じて、私どもとしては標準家庭の家計の負担額を算出できるものと思いますので、その際には改めて数字を申し上げたいと思いますが、一応現在の段階では申請ベースでの家計負担でございます。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 そうすると、電気なりガスの値段については、これは通産省と企画庁は意見が分かれるかもわかりませんけれども、具体的にいつごろ、どういうことを基準として決まるわけですか。基準はまあいいや、いつごろ決まるのですか。
  35. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 これもきのう御議論がございまして、余り四月初めからやるなどということではいかぬぞという強い、国会の有力な社会党さんの御意見もございました。われわれは拙速にということは考えておりません。しかし、同じ、いま言われましたような適正妥当な結論が出ましたならば、できるだけ実施時期を余りずらすことのないように——ずらしますと、やはり上げ幅を上げよという御議論になりますので、そこら辺は両方よくにらみ合わせまして妥当な結論を出したい。できれば、いい結論が出たならば、実施時期はやはり申請の最初にやりたいと言っておる時期をそうずらすことのないようにやっていった方がいいのではないか、こういう判断をいたしております。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 そうすると、実績の査定の場合には四百十九品目で四百八十五銘柄ですか、これで実績の査定、算定といいますか、それが出てくるわけですね、家計調査の場合。これは五年ごとにやっておるわけでしょう。そうすると、その場合に品目ごとのウエートのかけ方が非常に問題になる、こう思うわけです。そのウエートは、ガスの場合とか電気の場合はどのようなウエートをかけて実績が出てくるわけですか。
  37. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 いま正確な数字を持っておりませんので、すぐ申し上げたいと思いますが、いまおっしゃったウエートの問題は、現在の数字は五十年度の家計調査に基づくものでございまして、これは五年に一遍改定をいたします。そういう意味では五年間は固定いたしておりますので、その数字に基づいて計算をいたします。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 そうすると、いままでわかったことは、六・四の中に電気ガスも入っていることは入っている、これが一つと、それから、ことし仮に決めれば二段階で来年上げるということはしない、このことはわかりました。これはいいわけですね。  そこで、たとえばあなたの経済演説を見ますと「五十二年度以降における公共投資の大幅な拡大による景気浮揚政策がここに実を」結んで景気が拡大を続けている、こう響いてありますね。ところが、大蔵大臣のあれを見ますと、結局それは「積極的財政の結果、わが国財政は、特例公債を含む大量の公債に依存せざるを得ない異常な状況が続いております。」こう財政演説にありますね。それは見方が、側面が違うかもわからぬ、トーンが違うかもわからぬけれども、一方において特例公債を発行したことが経済の危機になっておるという、いわばマイナス的な見解ですね、大ざっぱに言うと。一方において経済演説では公共事業は特例公債を含む、それによって公共事業が行われて景気が浮揚してきたのだ、基本的にこういう考え方ですね。  この考え方には矛盾があるのではないかということが第一に私は考えられるのですが、その点どう考えているかということが一つと、それからもう一つは、物価景気というもの二つを、二兎追うということはできないのではないかと思います。それを二兎を追っているところに日本の財政なり経済の誤りがあるのであって、物価なら物価に集中するということならば、ある程度景気が悪くなってもいたし方ないというところまで締めていかなければならないのじゃないでしょうか。この辺のところについて企画庁長官、どういうふうにお考えでしょうか。
  39. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まず結論から申し上げますと、物価を重視いたしますけれども景気経済の安定的な成長もないがしろにしない、こういうことで進まなければならぬ。これは雇用の問題一つ考えても非常に大事な点でありますから、そういうふうに進んでいかなければならぬということが私ども経済運営基本的な態度でございます。  そこで、御指摘になりました経済演説と財政演説のことでございますが、これは物の見方を財政の立場と経済の立場というものから見た場合、表現がそういうふうになっただけでありまして、実態はやはりそう食い違っていない、私はこういうふうに考えております。すなわち私の方では、総需要が大変落ち込んでおったときに財政が出動をいたしまして、総需要を喚起することによって経済のリノベーションといいますか、こういうものに大いに役立ったという認識でございます。しかし、そういう財政のファンクションが、財政の立場から見ると公債の累積または毎年毎年相当多額のものを発行せざるを得ないという事態、これがずっと続いてまいりまして、そのまま放置いたしますと、これは財政インフレというところになって、結局私どものねらっておる物価の安定そのものが阻害されるという事態になっておるので、そこに財政再建ということが大きく取り上げられざるを得なかった、こういうわけでありまして、今日のやはり適切な財政政策、当時においては少なくとも適切な財政政策、その後の積もり積もった国債の処理あるいはこれからの国債政策、そういうものについては大いにこれから改革をしていかなければならぬ時期に来たという点においては、大蔵大臣の認識と少しも違っていない、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)分科員 これは私は見方が違うかもわかりませんが、トーンが非常に違うように感ずるのです。財政の大きなマイナスが出てきたということの方が現時点においては大きなウエートを占めておる、こういうふうに考えられるのであって、特例公債を中心として公共事業を拡大強化した、そのことによって景気は維持された、なるほど維持されたかもわからぬけれども、それを両方うまくやろうといったって実際問題としては無理じゃないかと思いますよ。  これは大蔵省主計局の田中君なんかは、三、四年前だったか、減税をやったりしたことは間違いだという意味のことをはっきり言っているので、その辺のところはありますが、そこで、時間がありませんからお聞きしますが、経団連の資料を見ますとこういうふうに言っているのです。「卸売物価は徐々に沈静化し、五十四年度二・七%上昇から五十五年度は九・三%の上昇になる。逆に消費者物価は、年度前半は上昇率が高まり、後半には落ち着きを取り戻すパターンになろう。五十五年度の上昇率は七・三%になる。」こう言っています。どこでも大体のところは七%はみんな言っていますね。学者によっては、電気ガスの上がり方が物価に与える影響というものをずいぶん重く見ている学者もいるのです。たとえば横浜国大の岸本さんのものなんか見ると、ずいぶん重く見ていますね。そういうようなことから見ると、電気ガス値上げの問題については慎重な上にも慎重で、最小限度ぎりぎりのところにせざるを得ないということ、そのことについての長官の決意をお伺いして、時間が来ましたので質問を終わります。
  41. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 大変適切な御指摘でございます。私どもも決して電気ガスの問題を軽視したり、あるいはいま御指摘の各方面の御忠告といいますか御指摘、こういうものを十分考えて、原価主義という一つの主義がございますけれども、この原価主義を貫くに当たりましても、さっき申し上げたようなあらゆる方面から考えて、極力引き上げ幅を圧縮することに全力を尽くしてまいる決意でございますので、一層の御支援と御協力をお願いしたいと思います。
  42. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 先ほどの数字電気が一万分の百九十一でございます。ガスが一万分の九十三でございます。
  43. 始関伊平

    始関主査 これにて稲葉誠一君の質疑は終了いたしました。  次に、竹本孫一君。
  44. 竹本孫一

    竹本分科員 私は、きょうは主としてインフレ問題についてお尋ねしたいと思います。  最近はインフレの問題が新聞でも大変騒がれるようになりました。輸入インフレという言葉もあるし、ホームメード・インフレという言葉も言われておる。ごく最近では政治インフレという新しい表現まで出てきた。これは宮津さんが経済企画庁長官時代に私も質問したことがありますが、インフレになるとかならないとかいう前提として、一体インフレとはどういうことを意味するかという定義、考え方というものを決めておかなければ、インフレになるとかならないとか言ってみても議論にならない。そういう前提として、長官、現在日本においてインフレという場合にはどういうことを意味しておるか、どういうお考え、物差しで、インフレになるならないということを議論されるか、その辺をちょっと承りたい。
  45. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いま竹本委員がお挙げになりましたように、一番大事な点はやはり海外からの影響卸売物価が非常に騰貴しておる、これはもう厳然たる事実でございます。そこで、これをわれわれは輸入インフレとか海外インフレとか申し上げておるわけで、これをホームメード・インフレに転化させないようにということで、あらゆる努力を払っておるわけでございます。これは、いまの時点においてそういう努力を払っておることによって、若干概念的にも海外要因と国内要因というふうに分けられるのでありますが、前回の石油ショックのときは、これが国内の状況がいまと大変違っておりまして、御案内のように大変な狂乱物価を現出したわけであります。ああいうものを起こさないようにというわけで、今日では海外から来るものを何とかしてホームメードに転化させないようにということで努力しておる、こういうふうに御理解いただければ結構でございます。
  46. 竹本孫一

    竹本分科員 長官の御説明一応わかりますが、私がお尋ねしたいのは、たとえば昔は定期預金の利子と消費者物価の値上がりとを比較しながら、それがどうだこうだということで、インフレということの定義を一応やったわけですね。いま輸入インフレをホームメード・インフレにしないように努力中だという御説明はよくわかりますが、そのそもそものインフレという場合に、定期預金の利子も今度また上がるわけですけれども、その関係において問題をとらえていかれるのか、いかれないのかということをもう一つ伺いたい。
  47. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 利子はお話しのようにいろいろと変動いたしますので、またこれからも相当日本としても高金利政策にいかざるを得ないではないかという観測もございます。しかし、一時的に物価の上昇が預貯金利子を上回るようなときには、目減り問題ということで重大な社会的な問題であることは私も十分心得ております。さようなことのないようにしていかなければ、大事な国民の貯蓄意欲というものを減殺していくという意味で、大事なファクターであることは承知をいたしておるわけであります。やはりインフレということになりますと、マネーサプライその他にも大きな増加の徴候があらわれまして、そういうものがアウト・オブ・コントロールといいますかコントロールし切れなくなるような事態、これは私は相当悪性のインフレというふうに言わなければならない、こう心得ております。
  48. 竹本孫一

    竹本分科員 恐縮でございますが、もう一度伺いますが、私はこれから定期預金というものを一つの基準としてインフレになるかならないかというふうにとらえていきたいと思いますが、大体そういう考え方でよろしいか。
  49. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 私はそこはちょっと危ないのではないか。金利政策というのは非常に大事でございます。しかし日本の金利政策は、もう竹本委員御承知のように相当硬直性を持っておることもまた御承知のとおりなんです。金利の自由化をせよという要望も非常に強いわけでございます。そういうこととにらみ合わせながら、金利と物価、これについては、日本のこの預貯金金利がいまの率で、それを超える物価騰貴というときは、これはもう一種の悪性インフレだというふうに断定せられることについては相当の警戒が必要ではないか、こういうふうに考えております。
  50. 竹本孫一

    竹本分科員 御説明もよくわかりますけれども、一応何かの具体的な基準というものがないと、ただ物価が上がった、金利がどうだと言うてみても、これはきわめて相対的なものだし年じゅう動いているものですから、何かと何かを比較した場合に、これはインフレになる危険があるんだとかあるいはインフレになったんだとかいうような問題、これから先はきょう詰めようとも思いませんけれども、私は日本で経済政策の中で一番大事なものはインフレ問題だというふうに考えております。その一番大事なインフレの正体が、あるいは定義の基準がはっきりしないで議論をやっておるということは非常に生産性が少ないと思いますので、ひとつ適当な機会に、いまの政府ではこうなったらインフレだ、そうならないためにこういう努力をするんだという努力目標をはっきり決める意味も含めまして、インフレということはこういうものだというその定義を、非常にこれはむずかしいと思いますよ、むずかしいということはわかりますけれども、しかし一応、われわれが毎日のように議論するその物差しがはっきりしない、伸びたり縮んだりするような物差しでは困りますので、明確な基準をつくられたらどうか。  きょうは要望にとどめておきますけれども、何かがなければ議論の出発点が不安定だという意味で、ひとつ強くこれは要望しておきますから、また改めてお伺いすることもあろうかと思いますが、日本政府努力をする、インフレにならないように努力をする、そのインフレとはこんなものだということについて、定期預金で一つの基準があるかないか、これも一つ議論です。しかし政府は何を基準にして考えられるかということを決めていただきたいということが要望です。
  51. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 やはり先ほどちょっと申し上げたように、前回の石油危機のときといまとを比較いたしますと一つの概念が出てくるのじゃないか、こう私が思いますのは、円の対外価値と対内価値、この二つをとりまして、最近円安対策を緊急に実施されましたが、これは円が売られてドルが買われるというふうなことから、それに対する応急対策というか緊急対策をとられた。これが国内において通貨の信用が落ちるということで物にかわる、たとえばトイレットペーパー騒ぎあるいは換物思想から不動産を買いあさる、こういうふうなことが起こってくれば、これは非常に危険なインフレの危険信号、こう見なければならぬのじゃないか。それからまた、そういうことと同じ心理状態が投機を生む。対外的にも円に対する投機、国内的にも仮需というのですか、物を買いだめたりそれから見越し生産をやっていくというふうなことからいろいろの弊害が起こってくるようなときには、これはやはり通貨に対する信用がどんどん下落しておるという意味において、私はインフレ的現象と言っていいのじゃないか、こう思っております。
  52. 竹本孫一

    竹本分科員 大体わかったようなわからないようなことになっているわけですが、前回のときは定期預金の利率を超えて物価が上がるというのがインフレだという説明政府は一時していたのです。ところが事実はそれを超えたんですね。そうしますと今度は、その次の説明は、相当期間超えていくと今度はインフレだということになる、こういう説明だった。それがまた不十分になりましたときに、今度はそれを原因としていまお話しの換物運動が起こったときがインフレだという話になった。こういうふうにインフレの定義もぐるぐる変わっていくのですよ。それだから私は、今回はより大きな危機を感じますので、ひとつ物差しをはっきり決めておいていただきたいという意味で定義をはっきりしろ、こういうことでございますから、そういう期待に沿うような努力をお願いをしたい。  次に移りまして、時間も余りありませんからあれですが、これから先、いわゆるそういうインフレの定義は別としまして、インフレになると思われる心配をする問題の要因は非常にたくさんありますね。一番よく言われるのは油の値上がり、その次はいまお話しのように円安、さらに円安はまたドルが高くなればますます円安になりますから、ドル高もその一つの原因でしょう。それから財政の赤字もあります。そういうようなことで次々にインフレになる要因が重ねられておると思うのですけれども、それを今度は抑える側の政府努力、いろいろ期待を申し上げておりますけれども、たとえば最近において、いま一番目立つインフレを抑える要因になり得るものは何かといえば、ぼくは野菜の値下がりだと思うのです。四月になれば買いだめて売り惜しみをしておる大根やその他の値が下がるだろう、キャベツも下がるだろう、非常に極端な言い方をしますと、これが唯一ではないかもしらぬけれども非常に大きな期待の要素になっている。  そこでお伺いするのは、インフレにならないようにしていきたい、そういう立場から、そうならない要素として考えられるものは一体野菜の値下がり以外に何があるか、具体的にですよ。しかも目立って目玉になって考えられるものがあるかという点を、お考えをひとつ伺いたい。私は後で申しますけれども、インフレの危機というものを非常に感じますのは、要因がいろいろあることも問題ですけれども、それに打つ手が何があるかという点を特に心配するわけです。それで野菜の値下がり以外にどんと物価の値上がりを抑えるものが何があるだろう、あるいは政府として何を期待しておられるだろうか、この辺を伺っておきたい。
  53. 藤井直樹

    藤井(直)政府委員 野菜につきましては、御指摘のとおり現在の高値が昨年に対して約二倍ということでございます。これは四月ころになりまして、新しい野菜がいろいろ出てまいります。その段階においては大きな変化が起こるだろうと思っております。それと同時にまた、野菜緊急対策の効果も出るだろうと思います。  そこで、その他の物資についてのお話でございますが、一般的に見まして、私どもといたしましては、コストの波及の過程におきまして便乗値上げというようなことによって上がることを防ぐというのを基本といたしております。しかし同時にまた、コストが上がっても生産性の向上によってできるだけ吸収するということも訴えていかなければならない。そこで、現在の消費者物価の個別の商品を見ますと、需給関係が価格の形成にかなり大きな影響を与えておりまして、中に、現在非常に価格が上がっているというお話もあるわけですが、たとえば食料品の中でも鶏肉でございますね、鶏肉とか豚肉などは昨年に比べて現段階でも下がっております。それから、衣料の中におきましても一部下がっているものもございますし、耐久消費財の中にもございます。そういうようなものを見てまいりますと、個別の需給関係が緩んでいるものについては、コストが上がってきても末端の価格は上がらないということがあります。  そういう意味で、やはりそういう適正な需給バランスを確保することを全体として考えていくということも一つあるのではないか。そういうような努力を重ねて、全体としての価格上昇ができるだけモデレートなものになるような、そういう対策をとっていくということにしているわけでございまして、現段階では、生活の必需物資それから国民経済上重要な物資についての価格の監視、さらには需給動向について詳細にその動きを見て、必要に応じて備蓄を放出するとか、原材料の出荷を要請するとかいうような形での対応を心がけているところでございます。
  54. 竹本孫一

    竹本分科員 これも御説明はわかりますが、やはりインフレ対策というのは、先ほども長官からお話がありましたように、一番大きな問題は心理学的な問題なんですね。でありますから、その気持ちを抑えるだけの目に見えた目玉がないと、いまの御説明で個条書きを並べると幾らでもあると思うのです。しかしながら国民が、あれがあるからそんなにインフレにならないだろう、あれをやってもらうならばならないだろうというはっきりした期待が持てるような、要するに目玉というものが要るのではないか。項目をたくさん並べるということは気のきいた対策がないということになるのでして、そういう点で後でも申しますけれども、やはり目玉をつくっていただきたい。インフレ対策の目玉政策は何かということをもう少し詰めて考えていただいた方がいいのではないか、こういうふうに思います。これも要望しておきます。  次に、これは問題がちょっと飛びますけれども、園田さんがいま外国を回っておられる。私はその努力に非常に敬意を払っております。そしてまた、あの着想は非常によかったと思うのですけれども、何と申しましても、世界じゅうがいまアラブ、中東の油に振り回されておる。それがいわゆる政治インフレでしょう。あるいは政治インフレの最たるものでしょう。経済外的というか、とにかくそういう政治的な要因によって世界じゅうが振り回され、世界のインフレが引き起こされる、そういうことになる点を非常に心配するのです。  ちょっと私、いまはっきり記憶しませんけれども、計画とか統制とか——統制という言葉はおきらいな方も多いのですが、計画化でもいいですよ。計画化をするあるいは経済の計画的運営をやるという場合には、常に三つの条件が必要であるということを言った学者がおるのですね。それは何かといいますと、一つは、一元的なものでなければならぬ。ワンマンコントロールといいますか、とにかく一つのところから全体の計画を立てなければ、計画の主体が三つも四つもあったら意味をなさないのですから、一元的でなければならぬ。第二番目の条件は、全面的でなければならぬ。要するに、一つの商品をやっても、関係の隣の商品が勝手に動けば意味がないのですから、また一つの国が幾ら努力をしてみても、よその国が勝手にインフレをやればやはり波及しますから、全面的でなければならぬ。第三の条件は、バラエティーがなければいかぬ。多様化して、それぞれの条件に合った、特殊事情に合ったものでなければいかぬ。一元的であることと、全面的であることと、多様性を持つこと、こういうことを言った学者があるのをちょっと思い出すのですけれども、そういう意味で一番大事なことは、一と二に関係をしますが、これから先は世界的規模における計画化というか、そういうものを考えなければ意味をなさぬと思うのですね。  そこで、私がいま申しました油に振り回されておる世界の経済ということを考えますと、その問題について本気で考えなければ、あるいはその対策が確立されるのでなければ、サミットを幾らやっても何にもならぬと思うのですね。そういう意味から言えば、これから日本の閣議等でもひとつ取り上げて考えてもらいたいのだけれども、サミットなんかも、七カ国か五カ国か知りませんが、そういう消費国だけが集まってみても生産国の方は一応別に勝手に動いておる、あるいは資本主義国だけが要領よく動いても、社会主義諸国はまた分裂行進曲で勝手に動いている。そういう計画の中心が幾つもあるようなものは本当の計画にならぬし、計画的努力にならない。いまわれわれに直接関係のある油の問題についても、そういう意味で世界的規模における、特に消費国だけでなく生産国も含めた世界経済なりあるいは油の需給調整ということを考えなければ意味がないのではないか。園田さんの特使としての役割りもその一部分を担うわけでしょうけれども、サミットもまた行われることでございますから、そういう世界的規模における計画化あるいは計画的努力調整ということを考えなければ意味をなさぬという点について、いかがでございますか。
  55. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 私はまさにそういうことがこれからの大変大事な政策の核心ではないかと考えております。  結局インフレ対策は、あらゆる方法を講じまして需要と供給を適合させていくということがやはり根本でなければならぬ。もちろん供給というのは、生産者だけじゃなくて消費者の方も消費節約ということによって供給にミートさせていく、こういう努力があるわけでございますが、結論としては、最小限度必要なものは供給を確保するというところがあれば、先ほど申し上げたような心理的インフレムードというものの根源を断つのだ、こういうことが言えると私は思うのであります。  そこで、おっしゃるように、油の消費国と産油国との間に大きなパイプがやはりこれからどうしても必要になってくる。IEAの会議、OPECの会議、そういうものはいま不幸にもお互いに考え方を交換するような場がはっきりいたしておりませんが、今回の園田特使もまさにその一つのケースでありますけれども、これからは産油国に対して消費国が何とかしてお互いに話し合いの場を持っていくように努力することこそが、世界的に原油に基づくインフレを克服していくために大事なステップである、こういう点においては竹本分科員と全く同感であります。
  56. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで、それに関連して一つ、二つ意見があるのですが、一つは、今度はベネチアでやるのですかね、そのサミットのときにはむしろ日本から、そういう問題について消費国だけが集まって議論しても話にならない、より根本的には産油国も入れて話をしようではないか、あるいは別枠でも結構だが、そういうはっきりした国際協議の場をつくらなければならぬ。これはアメリカでもそういう提案が一部にあるようですが、国際経済協議の場をつくるということを御提案されたらいかがかと思うが、どうですかということが一つ。  それに関連して、今度は日本に返りまして経済企画庁の新経済社会七カ年計画、これについて実は私はだれにも劣らない、計画的な努力に賛成の立場なんです。したがって日本には中期計画がなければならぬ。ここに阿部さんがいらっしゃいますが、財政についても中期計画がなければならぬ、償還計画がなければならぬと強く主張されております。私も全部同感です。しかし、いまの情勢でそういう計画が立てられるかという客観的な情勢判断をしますと、これは経済企画庁がいかに努力をされても大変むずかしいと思うのです。ほとんど不可能に近いと思うのですよ。かつて、戦争中でも戦時動員計画というものがなければならぬという議論が一方にあったし、海軍の人はそんなことは絶対できるものではないと言って反対されたことがありますが、それは別として、とにかく新しい七カ年計画というものは、私は本来的には一番熱望しております。しかし、それはいまできるかと言われると、いま申しました国際的な条件、外からの条件が余りにも多過ぎるし、それは余りにも変動が厳しいものですから、ほとんど不可能ではないか。不可能ならば、可能であるかのごとくゼスチュアはしない方がむしろ誤解を招かないでいいじゃないか。  そういう意味で、少し乱暴な提案になりますけれども、伺いたい質問でもありますが、新経済社会七カ年計画は、情勢が変わるのですから、あるいは変わったのですから、再検討される意思があるかどうかということが一つ。  それからもう一つは、それに関連をして、ぼくは、いまのような社会の流動化の激しいときには、これはもともと無理である、当面はこれをやることだけだというふうにあっさり看板をおろした方が勇敢でもあり、正直でもあり、ミスリーディングを避けるゆえんでもあると思いますが、その点について長官、お考えがあれば承っておきたい。
  57. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まず最初の、今度サミットに出られる総理その他の閣僚に対して、竹本委員のおっしゃられた趣旨での提案というのは大変意味があることだと私は思いますので、私からもよく申し上げますが、また竹本委員も機会あるたびにそれを御推進を願いたい、かように考えます。  それから新経済社会七カ年計画問題は、これはもう本当に予算委員会でも重要な問題であったことは御指摘のとおりでございまして、われわれは先般、フォローアップというので最近の実績から最小限度の見直しはいたしましたが、それを基礎にしての財政収支見通し予算委員会でも大変厳しい批判を受けまして、結局財政計画というものをまたつくるというふうなことになっておるわけでございますが、いま御指摘のように、これを急いで新しい計画につくりかえるということは、これは本当にむずかしい事態でございます。産油国との対話その他ができて、エネルギーの供給についてわれわれが持っておる計画というものが、実行性がどの程度に確保されるか、すなわち見通しの不透明さがどういうふうにして排除されていくか、こういう前提がやはり最小限度に必要ではないかという感じを非常に持っております。  しかし、先般フォローアップを経済審議会で御議論いただくときも、いま御指摘のように二つの考え方がございまして、やはり何とかしてつくって、それが財政計画の基礎になるべきじゃないかというふうな考え方もございました。しかし、事態がいまのような状態ではなかなかむずかしいんじゃないかというふうな見方もございました。私どもとしては、ここしばらく事態の推移を見、またサミットにおけるいま御指摘のような点についても努力を重ねまして、一日も早くできるだけ的確な見通しのもとに新しい計画をつくり得る事態になることを心からこいねがっておるというふうにお答え申し上げる以外はないと思っております。
  58. 竹本孫一

    竹本分科員 一応納得できますけれども、私が言っているのは、必要であることと可能であることは違う。必要性はよくわかりますよ、私はむしろそれの一番の信者なんですから。しかし可能でないんだからという点を心配して、それからもう一つは、したがって、いまの新経済社会七カ年計画をまたフォローアップして新々経済社会七カ年計画にしろというのではなくて、私の結論は、残念ながらできないんだからできないと言ってあきらめる方が正直ではないか。  それからもう一つは、そのことによって、いまの経済社会は全くそれこそ不確実性で一寸先も見えないんだ、そういう危機的状況になっておるんで、国民全体でひとつ考え直さなければいかないんだということを正直にアピールされる方がいいではないか。できないことをできるかのごとく幻想を与えてはいけないんだ、危機的な状況をすっかりそのまま正直に示したらいかがでしょうということを御提言しているわけですから、ひとつ御理解をいただいて検討していただけばありがたいと思います。  実は福田さんがサミットでヨーロッパに行かれたときに、その後ぼくはドイツに行きまして、われわれの社民党の仲間からいろいろ話を聞きました。そのとき彼らが一番言ったことは何かといいますと、あのときはパーセンテージ六・七でしたか、これは神様でも約束できぬと言うのです。あるいは神様でなければ約束できぬと言ってもいいですよ。とにかく六%ぐらい成長させます、七%ぐらい成長させますという約束は不可能だけれども、やや努力目標としては一応わかる。しかし〇・七とはどういうことかと言うんだな。神様でない人間が〇・七%までの約束をするということは顕微鏡的正義だから、そんなことまで約束をするということは、いかに日本の政府の連中が無責任であるかということがこれでわかったと言った人がおりますよ。そういう意味で、私が言うのは、人から笑われるような計画を計画と言って打ち出すことは避けた方がいいんではないか、こういうことをいま申し上げておるのですから、意味のあるところをくみ取っていただきたい。  時間が参りましたから、最後に、余り細かく言えませんが、これからのインフレ対策でよく常識的に言われますのは、供給管理政策で対案を考えていくんだ、それから需要管理の方へ重点を置いて考えていくんだという考え方があると思うのですね。経済企画庁としては、両方だなんというような漠然たる言い方でなくて、これからの考え方としては、どちらへ重点を置いて考えていかれるおつもりであるかということをお尋ねしたい。  特に私は、先ほど来七カ年計画もやめて危機的な状況をはっきり訴えたらどうですかということと関連してついでに申しますならば、最近前のアメリカのバーンズさんが言っているようですけれども、こうやったら何が起こる、こうやったら問題がこうなるというような心配ばかりしておったら、初めからインフレとの決戦においてもう負けておるんだ、これ以外にはないんだということをまっしぐらに言ってドラスチックな改革をやらなければ、インフレ抑制はできないと言っている。私はバーンズさんと立場は違うけれども、彼の言っていることは大体賛成の場合が多いんだが、日本でも一部ではわれわれの生活を三五%切り下げろと言う人がおる。何を根拠に言っているのか私まだよくわからぬが、たとえば財政で言えば、国債依存率が三九%とか三三%ですから、おおむね三三%切り下げろということもサゼスチョンとしてはわからないではない。そういうことも含めまして需要管理政策に重点を置かれるか、供給管理政策の方へ重点を置かれるか、またその重点の中身は何であるか、きわめて簡単に伺いたい。
  59. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 竹本委員とだんだんお話しをしておりますと、非常に教えられるところが多いわけです。ただ最後の点については、私は、サミットに関する御提案とか、それからこれからの新しい国際関係をつくり上げていく上においてやはり諸外国と協調していく、特に産油国あたりとは何としても太いパイプを通じてやっていく、こういう方向に努力をしていきたい。そういうことをやりながら、供給の面においても明るい展望を開いていく。そして需要についても、しかしながらやはり資源有限という実態を踏まえて需要の管理ということも大事である。両々相まって、私どもの将来にできる限り安定した、しかも堅実な展望を開いていきたい。したがって、先ほどの新しい計画についても私は望みを捨てていないわけでございます。何とか努力をして、一日も早くそういう現実に即した計画をつくり上げられるような事態になることをこいねがっておるわけでございます。最終的ないろいろの御指摘は大変感謝いたしますが、お互いさまにひとつ大いにこれから努力をして、需要、供給、その双方に新しい天地を切り開いていくことを私としてはいろいろ御教示を賜りたい、かように考えておるわけでございます。
  60. 竹本孫一

    竹本分科員 どうもありがとうございました。
  61. 始関伊平

    始関主査 これにて竹本孫一君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算経済企画庁所管についての質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時十分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  62. 始関伊平

    始関主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算農林水産省所管について、政府から説明を聴取いたします。武藤農林水産大臣
  63. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 昭和五十五年度農林水産関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  最初に、各位の御協力を得て御審議いただくに当たりまして、まず、農林水産予算基本的方向について御説明申し上げます。  今日のわが国農林水産業の現状を見ますと、種々の大きな課題を抱えております。  農業につきましては、米を初めとする農産物需給の不均衡、経営規模拡大の停滞等の問題に直面をしております。  このような情勢に対処し、わが国農業の健全な発展を図るためには、需要の動向に即応した農業生産の再編成、中核農家等の規模拡大による農業構造の改善、農村地域社会の連帯感の醸成と農村環境整備等の諸施策を、地域の実態に即しつつ、農業者の自主性と創意を生かして、総合的、計画的に実施することが肝要であります。  このため、地域農政特別対策事業の拡充強化を図るとともに、新たに集落リーダーの育成等集落における自主的な活動の組織化を促進する事業を実施するほか、新農業構造改善事業等の一層の推進に努めることとしております。  また、最近における米の需給不均衡の著しい拡大にかんがみ、水田利用再編対策について転作等目標面積を拡大して実施することとし、これに関連して、地域農業生産総合振興対策拡充強化、稲作農家等が経営転換等を図るのに必要な資金の新設、排水対策等に重点を置いた農業基盤整備の推進を図るとともに、品種改良や栽培技術の改善等畑作物生産技術の開発を推進することとしております。  さらに、米の消費拡大につきましては、新たに地域に密着した対策を講ずる等、その一層の推進を図ることとしております。  次に、農山漁村を活力に満ちた住みよい地域社会とするためには、農林漁業者が生きがいを感じながら安定して農山漁村に定住できる条件を整備することが肝要であります。  このため、既存事業の拡充実施を図るとともに、地域ぐるみの住民の交流の促進と環境条件の整備を図る事業を実施することとしております。  このほか、農林水産業における石油需給の安定確保と省エネルギーの推進に努めることとしております。  林業につきましては、林業生産活動の停滞等厳しい状況にありますが、木材等林産物の安定的供給、国土の保全、山村社会の発展を図るという観点から、森林資源の整備と林業の振興を強力に推進することとし、新たに、総合的な国産材の供給体制づくりと魅力ある山村地域社会の形成を図る新林業構造改善事業等を実施するほか、マツクイムシ被害対策拡充強化等を図ることとしております。  水産業につきましては、二百海里時代の本格的到来、燃油価格の高騰という厳しい環境に対処して、水産物の安定的供給と水産業の振興を図るため、沿岸漁場の整備開発、栽培漁業の振興のための施策の拡充強化を図るとともに、新たに、産地における流通加工施設の総合的整備を行う事業や、漁業用燃油対策特別資金の融資枠の設定等の対策を講ずることとしております。  以上、申し上げました農林水産業施策の推進を図るため、昭和五十五年度農林水産関係予算充実に努めた次第であります。  昭和五十五年一般会計における農林水産関係予算の総額は、総理府など他省庁所管関係予算を含めて三兆五千八百四十億円で、対前年比一千二百九億円の増加となっております。  以下、この農林水産関係予算重点事項につきましては、委員各位のお許しを得まして説明を省略させていただきたいと思います。  よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。
  64. 始関伊平

    始関主査 この際、お諮りいたします。  ただいま武藤農林水産大臣から申し出がありました農林水産関係予算重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 始関伊平

    始関主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  66. 始関伊平

    始関主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  67. 始関伊平

    始関主査 質疑に先立ちまして、分科員各位にお願い申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は要領よく簡潔にお願い申し上げます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
  68. 井上普方

    井上(普)分科員 武藤農林水産大臣にお伺いいたしたいのですが、このたびの内閣改造の際に、武藤農林水産大臣がお若いにもかかわらずなられて、その後の評判を聞くと、非常に御勉強をなさっておる、まことに評判のいい大臣だと巷間伝えられておるのでございます。まことに時代は若さを発揮しなければならぬ時代でございますので、ひとつせっかくの御努力をお願いいたしたいと存ずるのでございます。  そこで、お伺いしたいのですが、先ごろ週刊朝日に立花隆君が農協についての評論と申しますかルポルタージュを出されておりますが、お読みになっておられますかどうですか。
  69. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 なかなか国会が忙しいものでございますから、時たま問題点のあるときには、だれかがリコピーをして持ってきてくれます分については読んでおりますが、全体については読んでおりません。
  70. 井上普方

    井上(普)分科員 お忙しいのだから、まあ私はわかりますが、あれをお読みになっての御感想はいかがでございますか。
  71. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 特に全共連の問題等についてはいろいろ御意見がございまして、その分析のあり方について必ずしも当を得ているかどうかは、私はよくそこまでは突っ込んで承知をいたしておりませんが、また傾聴すべきいろいろの問題点もある、こういうふうに感じました。
  72. 井上普方

    井上(普)分科員 私のきょうお伺いしたいのは意見を交えてでございますが、あらかじめ御了承願いたいと思うのです。  昨年の予算委員会分科会において私は質問したのでございますが、この全共連のあり方について非常におかしいところがある。でございますので、事項を列挙いたしまして実は質問をいたしました。その際、調査の後御返答するということでございましたが、一向に農林省当局から私には返答がないのでございます。一体どういうような調査をしておるのかお伺いいたしたいのと同時に、それが契機になりまして全共連の幹部は総辞職をしたことも、これまた事実であります。どういうような調査をなさり、なぜ私に報告がなかったのか、この点をお伺いいたします。
  73. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えいたします。  昨年の当分科会におきまして、井上先生から全共連の特に不動産について御質問があったことは、私も議事録を読みまして承知をいたしております。特にその中で、蓼科高原等の土地について、当時の全共連会長が共済の監事を相手に売り主となりまして、その十日後にさらにこれを買い取るという行為をしていた、また活用不可能な土地を取得しているではないかという二点が、特に御質問の中心であったというふうに私は理解をいたしておる次第でございます。  この点につきましては、御指摘もございましたので、昨年四月に担当官を現地に派遣いたすなどいたしまして、不動産の取得にかかる契約関係、それから取得地の状況等につきまして、先生の御指摘もございましたので調査をいたしてまいりました。  その結果は、お尋ねのうちの第一点の、全共連会長が監事に土地を売った十日後に重ねて買い取った、そういう事態はなかったわけでございます。確かにおっしゃられますように、会長と監事の間で売買契約をしたということは、会長と監事ではございませんが、会長が名前を連ねておりますところの公社と、それから監事がその代表になりました全共連との間で土地の売買が行われた、これは事実でございますけれども、しかしそれを重ねて売ったという事実はなかった次第でございます。  また、その取得に関しまして違法な手続があったかどうかということにつきましても調査いたしましたが、この点につきましては、その取得につきまして特に違法というような事態はわれわれとしては発見できませんでした。  しかしながら、第二点の、活用不可能な土地を取得したのではないかという点につきましては、取得当時の経済情勢、社会情勢が大きく変動いたしておりまして、具体的にその活用の有無ということにかなり問題があるのではないかという点は、確かに当時の経済情勢といまの情勢が違ったという前提を置きましても、現時点から判断をいたしますと、なおかつその稼働化につきましてその見通しその他につきましては、その当、不当は問題にされるべき点があるのではないかというふうに感じておりました。  ところが、先生もただいま御指摘のように、全共連についてはその執行部の内部の不統一と申しますか、業務の執行体制が必ずしも円滑にいかないという状態が現出いたしまして、その結果、理事、監事全員の総辞職という事態に発展をいたしまして、まさに新たな執行部が選ばれてまいったわけでございます。私どもといたしましては、特にこの第二点につきまして今後の稼働化が可能かどうか、稼働化ができない場合にはそれを処分するかどうかということまでも含めまして、検査上厳しく指摘をいたしておりますので、全共連の執行部から新執行部にそのことをぜひはっきりと回答してほしいということを言っている次第でございます。  したがいまして、先生の御質問でございますが、調査はいたしましたけれども、その稼働化等につきましては、新執行部の体制がまだ整っておりませんので、まだ発足したばかりでございますから、その発足を待ってその稼働化の状況等も十分にこちらの方で検討いたしました上で調査の結果を先生に申し上げたいというふうに思っていた次第でございます。
  74. 井上普方

    井上(普)分科員 調べて、稼働化がその土地でどういうようになっておるか、少なくとも約束した以上は守ってもらいたい。執行部がやめたのはいつです、最近ではありませんか。その後また新しい執行部を選んだ後で報告したいなどということは、調査したことについてわれわれに報告しない。何といってもここに、はっきり申して農林省と農協との癒着があるということを私は言いたいのであります。事実、立花隆君のルポを見ましても、そのことが現実に出てきている。こういう点は、農林大臣、十分に御留意願いたいのであります。この土地といいますのは百年間は使えない土地なのです。それに投資しているのです。  そしてまた、経済局長、いまあなたの言うた言葉に絡むようなことだけれども、当時の情勢といまの情勢とが違ってきているのだ、こうおっしゃる。当時の情勢といまの情勢と変わってきておるというのは、土地が動かないということなんです。とすると、転売を目的にしてこの土地を買ったということにもなりかねない。あるいは土地転がしを意図してやったとしか思えないのであります。農協自体、共済連自体がそういうような考え方であっていいのか、ここに私は大きな疑問を生じざるを得ないのであります。こういうことを見逃しておる、このことが日本の農協組織が農民のためになっていない、農民のための農協運営がなされていない理由であろうと思うのであります。  そこで一つ、二つお伺いしたいのですが、全共連が九十何%を出資しております子会社の組合貿易という会社を持っています。この組合貿易なる会社はオレンジの輸入をやっておる。チェリーの輸入をやっておる。さらにまた生牛の輸入もやっておる。生牛というのは、農林大臣、あなたも御存じだろうと思いますが、種に使うのだといって牛をアメリカから買ってくるのです。そして飛行機に乗せて日本に来る。来た途端に、通関いたしましたら、ばさっと殺して肉として出しているのです。牛肉というのは通産省あるいは農林省で割り当てしていますから、やみ行為なんです。これを農協貿易がやっているのです。  どういうようにお考えになりますか。あなたはお知りにならぬとすれば、政治家としてどういうようにお考えになるか、ここのところをひとつ考えていただきたいのです。お知りにならなければ知らないで結構です。
  75. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 昨年やはりこの問題について先生から御指摘があったということだけは報告を受けておりますが、十分私自身が調査をしたわけではございませんので、一般論として私は申し上げますけれども、いまの話で肉は輸入の制限がなされておる。そこで肉としてなかなか持ってこれない。それで種牛ということにして、認められておるから持ってきて、入ってきたら肉にしてしまう。そういうことがもし事実であるとすれば、これは大変制度を悪用しておるというか、そういうことになるわけでございまして、私どもとしてはそういうことがあっては困るわけでございますから、そういう点は大変望ましいことではない、こう考えます。
  76. 井上普方

    井上(普)分科員 それが農協の子会社がやっているのです。ここらに矛盾を感じませんか。  私どもは牛肉の輸入反対といって、農協の連中から報告を受ける。それは畜産農家にとっては大変だということで、私どももまともにそのとおりお伺いしておったけれども、裏ではそういうことをやられる。チェリーもしかりです。チェリーも二年前に輸入するようになりましたが、輸入するようになる前までは、農協の連中は、チェリーの輸入は、国内のサクランボ業者に大打撃を与えるから絶対にやめてくれということで私ども陳情を受けたし、そのとおりだろうと思っておった。日にちは制限していますよ。国内のチェリーが最盛期を過ぎた後輸入するようにはしておりますけれども、組合貿易が一〇%輸入しているのです。  こういう状況を一体どう考えられるか。農林省としては指導をどういうふうにやっているのかお伺いすると同時に、またこの組合貿易はかずのこの買い付けをやっていますね。カナダで買っていますよ。これが農協の、全共連の九十何%出しておる会社の業績なんです。今度かずのこで倒産したのがありますが、恐らくこれにもかなり被害をこうむっておるのではなかろうかと私は思います。  農林大臣がおわかりにならなかったらだれでも結構です。御答弁願いたい。     〔主査退席、阿部(助)主査代理着席〕
  77. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 昨年の分科会でも先生がこの点を御指摘になったことは、よく私も議事録で承知しております。この組合貿易の貿易の実態につきましては、私どもその後すぐに、御指摘がございましたので調べております。  一つは、言いわけがましくて恐縮でございますが、ジュース類は、先生もよく御案内のようにブレンド用でございますので輸入せざるを得ないのです。そのほかにつきましては、確かにチェリーとかあるいはグレープフルーツ、そのほかわれわれが本来なるべく国産を使いたいというふうに思っておりますものにつきまして組合貿易が取り扱っていることは事実でございまして、かずのこについては私どもよくわかっておりません。しかしながら、ある程度まで輸入いたしませんと、品ぞろえのためということもございますので、少量でございますが、ある程度の物を輸入いたしていこうという実態でございます。  しかしながら、本来農協としては組合員がつくっている国産物というものを主体にして販売していくということが組合の運動から申しまして当然のことだろうというふうに考えますので、やはり組合活動の中で国産品を中心にして扱っていくということをやっていきながらこういう問題に対処していくというのが至当であるというふうに考えております。
  78. 井上普方

    井上(普)分科員 品ぞろえというのは何です。品ぞろえというのはどんなことです。
  79. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 それは、農協が販売をいたします際に他の顧客に対しましてある程度の品がそろっていないとなかなか売れない、こういうことでございます。
  80. 井上普方

    井上(普)分科員 農協というのはそんなに品ぞろえをしなければ成り立たぬのですか。少なくともオレンジの輸入をやめてくれというのは、農林大臣、あなたも議員のときには注文があったはずです。チェリーもそうです。ところが、平気でやっているのです。牛もそうですよ。生牛もやっているのですよ。こういう体質をどうお考えになりますか。そして、農林省とすればどういう指導をしなければならぬとお考えになっていられるか。悪いことはわかっているのです。わかっておってなお直さずに——農協法の法律には、これはもう制限があります。また、それに対する税法上の、あるいはまた独占禁止法上の保護があります。     〔阿部(助)主査代理退席、主査着席〕 しかし、それはできないというので子会社をつくって、こういう農協本来の仕事でないものをやっている。かずのこもやっていますよ。指導できぬのではないですか。農林省の役人どもが、古手がみんなあそこへ行っているから、言えないのではないですか。余りにも癒着がひど過ぎる。だから、立花隆君のああいうルポが出てくるのだろうと思う。これは事実かずのこをやっているのですよ。お調べになりますね。お調べになって御報告を賜りたいと同時に、どれくらい損したか、その責任はどうするのか、その点をお伺いいたしたい。どうです、大臣
  81. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いまのお話を聞いておりまして、大変好ましくない。何か投機的に、かずのこなんか特に今度は投機的に行われたわけでございまして、そういうことがもし万が一にも全共連が出資しておる会社で行われていたとするならば、これは大変望ましいことではないわけでございます。私、早速ひとつ調査をさせましてしかるべき指導をいたしてまいりたいと思いますし、先生の方へ御報告をさせていただきます。
  82. 井上普方

    井上(普)分科員 これはかずのこだけじゃなしに、チェリー、輸入量の一〇%を扱っていますよ。それからオレンジだってやっていますよ。品ぞろえのためというのは理由になりますか。ジュースについては、国内のミカンジュースに添加するということで、その程度の輸入については私はとかく申しません。しかし、オレンジ、生をそのまま、丸玉のまま輸入しているのですよ。そして農協で売るのに品が不足だったからぐあい悪いというような理由、理由になりますか。農協というのはスーパーマーケットですか。こういうことが公然と行われておる。牛にしてもそうです、牛肉にしても。これが農協の実態であって、本当の農民のための農協になっていない。ここを私は言いたいのです。若い農林大臣は蛮勇をふるって、本来の農協の組織のあり方に戻してもらいたい、それを期待するがゆえに私はあえてこういうことを申しておるのです。いかがでございますか。
  83. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 農協のあり方といたしましては、当然農民のためにある農協であり、それが全く農民のためでない方向で運営されていくということは遺憾なことでございますから、そういう点はひとつ十分私も今後指導を強めてまいりたいと思いますし、全共連も御承知のように役員がかわりました。私はこの間も、新しい会長さんもお越しになりましたのでよく申し上げましたことは、ひとつ農民が信頼をする全共連になってもらいたい、こういうことを注文をつけてあるわけでございまして、そういう方向で努力をしてまいりたいと思っております。
  84. 井上普方

    井上(普)分科員 ともかく理由にならぬことで答弁せられても困るのです。本当に真剣にやっていただかなければ、農協と農民との乖離が起こってくる。数多くの問題が農協にはある、このことは第三者のルポとして出ております。全部が全部本当だとは私は思いませんけれども、われわれとしては考えなければならぬ点が多々あるし、私自身も感じたところをいま申し上げて農林大臣の御賛同を得たのでございますが、ひとつこの点は厳しくやっていただきたいと思うのであります。  続いて物価問題についてお伺いするのでございますが、魚が大豊作だといいながら町に出てこない、あるいは出てきても非常に高い。たとえばイワシなんかそうです。  原因は何だろうということを考えてみますと、やはり政府が補助金を出して漁業組合か何かに冷凍庫をたくさんつくらしておる。冷凍庫をつくらしておるけれども、その冷凍庫の中に貯蔵されて、そしてそれが魚転がしというような形でぐるぐると回されておる。こういうことで、物価問題からすると冷凍あるいは冷凍設備というのが問題になってくるというふうに思われてならない。現にことしの暮れのかずのこなんかは、値が上がるまで冷凍庫でためておくんだというようなことを、三菱商事の連中は公然と言っておる。消費者はたまったものではありませんよ。そしてまた、農林省は、そのようなことをするために冷凍庫をつくったんじゃないと思うのです。  だから、これは本来の目的にするにはどうしたらいいかお考え願えないだろうかと思うのですが、どうでございます。
  85. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 たしか私の記憶では、私どもの方が進めておるのは地方の漁場の各産地の冷凍庫であり、この消費地の場合は運輸省ではなかったかと思いますが、詳しいことはひとつ局長から答弁させます。
  86. 森実孝郎

    森実政府委員 お答え申し上げます。  政府政府資金ないしは助成をつけまして現在整備しておりますのは、大体産地市場冷蔵庫でございます。これは大体ある漁場においてある時期集中的にとれます魚を、年間を通じまして全国の産地に加工用、生食用と振り分けて出荷している形でございます。  それからなお、輸入品につきましては、消費地の冷蔵庫が一般に利用されるわけでございますが、御案内のように輸入される時期、つまり輸出国側で漁獲されて出荷される時期と販売される時期には通常かなりずれがあるのが普通でございます。そういう意味で、かずのこ等につきましては、買い付けの時期と現実に販売される時期、これはもう十二月、一月に集中するわけでございますから、この間のずれがあることは事実でございます。この点は御賢察いただきたいと思います。
  87. 井上普方

    井上(普)分科員 いいですか、北海道漁連の状況を聞いてみますと、ことしの正月のかずのこは何年前のかずのこだったかわからぬですよ、私らの口に入っているのは。どこかでともかく貯蔵されているに違いない。三菱商事が現に、値が下がっているのだから値が上がるまで待つと言っているのですから、ことしの一月に売れなかった分は来年——あなたのおっしゃるのであれば、ことしの十二月、来年の一月に売る可能性も出てきているのです。ともかく、これほど商売人というのは冷凍庫というのを利用するのですね。  それは産地の冷凍庫は農林省の政府資金あるいはまた助成金等々でつくられている。しかし、ここでも長いこと貯蔵されている。現に北海道漁連は空売りをやっているじゃありませんか。空売りということは、いいですか、産地にはこれだけありますよという証明書で動いているのでしょう。だから、空売りというのが行われるのだから、空売り自体、それ自体は、新聞紙上で見ますと、商習慣として現在公々然として認められているじゃないですか。そこにメスを入れなければ、本当に漁連駐漁民のための漁連でなくなる。消費者にとっても、値段が上がる、冷凍庫にほうり込まれて、いつまで待たされるかわからない。被害を受けるのは消費者である。ここらあたりについてもっと工夫のある運営ができないか、ここを私はお伺いしているのです。
  88. 森実孝郎

    森実政府委員 まず、御指摘の空売りという問題でございます。これはもう御案内のように、大体いわゆる横の取引でございまして、いわば産地仲買いとか消費地の問屋集団との間で倉荷証券なりあるいは名義書換変更通知票を媒介にして行われている事実がございます。  ただ、これは、現実の物の価格自体は、やはり市場で形成されております、いわば縦の流通の関係で形成されておりますので、そういう長期保管というものが関係者の利益になるかどうかという問題は、かなり投機的な要素があるわけでございまして、それは一概になかなか判断はできないだろうということは事実だと思います。  ただ、問題は、できるだけそういった思惑的な取引を、関係業界全体を通じてなくすようにしていく、圧縮していくということは、水産物の流通を考える上で非常に重要な問題だろうと思います。その意味で、まず一つは、需給予測というものをどう確実に立てるかという問題にやはり政府としても取り組んでいかなければならないと思っております。  さらに、本来の商取引でございますし、これは水産物だけではなくて、在庫調整とか金融との関係で行われます売買というのは通常の取引社会でも非常にあるわけでございますが、やはり市場流通とかあるいは組合の系統機関の流通等を通じて、そういうものを国の行政の監督の中でできるだけ減らしていくという努力基本ではないかと思います。御指摘の点も受けまして、先般大臣からも予算委員会で御答弁がございました線で、私ども、水産庁、協力して水産物の流通の正常化という問題に取り組んでまいりたいと思っております。
  89. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、政府資金あるいは政府の助成措置によってつくられておる冷凍庫を利用した生産物、それが空売りの対象になったり、あるいはまた、ともかく思惑で売り買いが行われるということは、私は余り好ましいことじゃないと思うのです。  ただ、需給予測を立ててと言いますが、需給予測を立てればなおひどくなりますよ、一面から言えば。こういう点もひとつ御理解願いたいので、もう少し水産庁としては知恵を出してもらわなければいかぬ。そして水産庁は、生産者の利益を考えるのはこれは当然でございましょうけれども消費者のことももう少し念頭に置いてもらわなければならない。かずのこなんというのは何年前のかずのこを食っているのかわけがわからぬじゃありませんか。それがもし政府が助成した冷凍庫を利用されるということになりましたら、これはゆゆしき問題になるのです。生産地においては、確かに私はこの冷凍設備が思惑の道具に使われておると言っても過言じゃないと思うのです。ここらあたりの措置をひとつ、どういうように適正化するかということをお考え願いたいと思うのですが、いかがでございますか。
  90. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私も実は、いま局長からも答弁いたしましたように、北海道漁連及びかずのこ問題で非常に水産物の流通については問題があるのではないか、こういう指摘をいたしまして、何とか一日も早く、消費者にも理解をされる、そして漁業者も本当に理解をする流通を確立する必要があるのじゃないか、どこにその問題があるのか。先ほどの話で、やはり自由な商取引の中でございますから、なかなか完全に国が管理しておるような体制にはいかないと思いますけれども、しかし、少なくとも指摘を受けるようなことのないように、少なくとも思惑、投機、そういうものによっていま御指摘のあったように倉庫が利用されたりすることのないように、何かいい流通のあり方というものをできるだけ早く結論を出すように検討してもらいたい、こういうことで宿題を与えてございまして、きょうの先生のいろいろの御意見も十分尊重させていただいて、その中で生かさせていただきたいと思っております。
  91. 井上普方

    井上(普)分科員 ともかく税金が思惑買いの道具に使われるようなことを厳に戒めていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。
  92. 始関伊平

    始関主査 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  93. 沢田広

    沢田分科員 いま井上先生からもお話がありました農協のあり方等については、われわれ近郊農業の地帯におきましてもたくさんの問題を抱えているわけでありますが、特に近郊農業のあり方について、これは長い答弁をされても困りますから具体的にお伺いしますが、いわゆる直売店を農協で行っていくという考え方はないかどうか。  特に白菜が八百円もするとかいうような事態になりますと、いわゆる独占化されている市場だけで運営されますと、どうしても消費者といいますか一般国民に迷惑がかかる。ですから、ある意味においての市場競争ということも含めながら、農協ではいわゆる豊作貧乏にならないような直売店というものをつくって、せめて週に一回でもいいと思いますが、朝市とかあるいは昼市とか、そういうようなものによって、近郊、特に首都圏の地区においてはそういうものを催していくという配慮が必要ではないか、こういうふうに思いますが、いかがお考えになっておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  94. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘のような都市近郊の近郊蔬菜、これからも重要な商品だと思っております。ただ、恒設的ないわゆる直販店の問題につきましては、都市近郊の蔬菜は圧倒的に実は個人出荷でございまして、かつ品ぞろえもできないという関係で、なかなかむずかしい点があると思います。しかし、農協の、先生御指摘のような共販の足がかりをつくっていくという意味におきましても、それから都市住民と農業者との交流の機会を深めるという意味においても重要なことだと思っておりますので、私どもの補助事業等を通じてできるだけ前向きに具体的な要望を受けとめてまいりたいと思っております。
  95. 沢田広

    沢田分科員 答弁は非常に適切な答弁だと思いますが、具体的にはやっていただけると、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  96. 森実孝郎

    森実政府委員 具体的に地区の要望を来年度の予算の実行で取りまとめたいと思いますので、具体的な要望はひとつお出し願えたら審査させていただきたいと思っております。
  97. 沢田広

    沢田分科員 続いて、首都圏内における農業用水路の問題であります。もともと昭和四十五年に都市計画法ができました際に、農林省は何らなすすべもなく建設省に押し切られて、今日の都市計画法が制定されたわけであります。そして線引きも行われ、あるいはそれぞれ今日のような虫食い状態という、国土利用の面からいったらば非常にむだの多い都市計画というものが行われているわけでありますが、特にその中で土地改良団体の農業水路にその都市排水というものが物すごく流れ込んで水質を汚染する、あるいははんらんを起こす、あるいは濃厚のカド米をつくる、こういうような状況も生まれていることは御存じでしょうか。
  98. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 都市計画法に限らず土地利用の各種の計画があるわけでございます。農林省といたしましては、優良農用地を確保するという観点から、農業振興地域の整備に関する法律という法律を制定いたしまして、そういう土地利用についての秩序ある体制というものを整備してまいっておるわけでございます。都市計画法あるいは市街化開発区域との調整の問題、個別に具体的にいろいろ生じてまいっております。その一つの形として、現に都市的な排水として利用されている農業用の用排水の問題、それについて負担関係、利用関係をどういうふうに調整するかというふうな、かなり深刻な問題が生じておることも承知いたしております。
  99. 沢田広

    沢田分科員 そこで、建設省にも来ていただいておるわけでありますが、建設省としてはこの都市排水をどういうふうに処理しようと考えているのか。農業用水路にほうり込んだり何かすることは何ら考慮の対象にはしてない、そんなものは問題じゃない、こういうふうに考えておられるのか。  特に、下水道の関係で申し上げますと、下水道は分流方式を建設省は施行いたしております。御承知のとおり、分流方式は雨水は全部用水路、河川、これによって吸収するということが原則であります。そういうことに対して農業地帯の負担ということについてはどのように考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  100. 玉木勉

    ○玉木説明員 下水道の整備につきましては、現在全国的に第四次五カ年計画に基づいて実施をいたしておりまして、その促進を図っているところでございますけれども昭和五十三年度末現在で全国の下水道普及率は二七%という非常に低い状況でございます。特に都市近郊地域におきましては、先生御指摘のように非常に急速な市街化によって未処理の下水が河川なりあるいは農業用水路等に流れ込んでおるという状況でございまして、水質汚濁の非常に大きな原因になっていることは御承知のとおりでございます。  そこで建設省といたしましては、この抜本的な対策といたしましては、都市地域の公共下水道並びに都市下水道、いわゆる雨水排除の下水道でございますが、これらを整備いたしまして、用水、排水の機能を極力分離するということが望ましいと考えておりますので、今後ともそういう方向で下水道の整備を進めてまいりたいと考えております。  なお、公共下水道につきましては、先生御指摘のように雨水と汚水を分離した分流式を原則的に行うようにいたしております。
  101. 沢田広

    沢田分科員 だから、迷惑をかける農業用水路その他に、あなたとしてはどういうふうな対策を講じて、どういうような考えでいくのか、簡単に言えばその負担を担うとか、流してもらう水路に対して資金を流すとか、そういうことについては何も考えていない、迷惑はたれ流しである、こういうふうに解釈してもいいですか。
  102. 玉木勉

    ○玉木説明員 下水道については、特に農業用水路に対して負担をするとか、そういうことは考えておりませんで、とにかく下水道の整備を極力促進する方向で考えておりまして、下水道整備に要する財源といたしましては……
  103. 沢田広

    沢田分科員 そんなものは聞いてないよ。いいよ、そんな程度で、時間がないから。  私が言っているのは、農業用水路を使わないであなた方の排水はできますか、イエスかノーかで答えてください。
  104. 玉木勉

    ○玉木説明員 現状では農業用水路を一部使わざるを得ないところもございます。
  105. 沢田広

    沢田分科員 使わざるを得ないということになれば、当然それに伴って——何を使ったって建設省であれば占用料も取るし、あるいは河川の放水をすれば河川の放水料も取るし、護岸負担も取るのです。それだったら農業用水路についても建設省もそれぞれの負担にして、放流させてもらっているということに対応して、その分に応じた分を、適正な金額が幾らであるかは別問題として、そういう気持ちになっていいんじゃないですか、価額は別として。
  106. 玉木勉

    ○玉木説明員 農業用水路を排水路として利用する場合には、都市下水路ということで指定をいたしましてやっておるケースがございまして、この場合は農業用水路とダブって施行しているものもございますけれども、通常はできるだけ用水と排水を分離して施行するようにしておりまして、特に農業用水路を使う場合に下水道が負担をするということはいまのところ考えておりません。
  107. 沢田広

    沢田分科員 そこで、農林省に聞きたいのでありますが、そういうふうに農業用水路は、都市計画法ができました後、土地改良法の改正も行われまして、それぞれの該当土地改良区は管理規程を制定することができる権限を担ったわけであります。ところが今日、五十一年ですか、もう五年くらいになりますが、管理規程のできているというところは全国皆無だと私は承知をいたしております。なぜ管理規程が皆無かということは、言うならば農林省の当局が怠慢で放置をしているということにほかならないのであります。  片方では、いま言ったようにいわゆる都市排水のたれ流しです。ミニ開発がされれば、その下水もどんどん用水路にも流れてくるし、排水路にも流れる。それの改修負担は農民がやらなくちゃならない。そういう条件の中で、農林資金を借りるなり、あるいは県単なり補助金でやったりという形でいまやっているわけですね。  土地改良区がそれを流してもいいかどうかということの権利ももちろんのことながら、それの水質保全、あるいはカド米が出ればちょっと出ただけだって相当な金額が出るけれども、国も県も全額負担はしてくれない。結果的には農民も負担をしてカド米対策で井戸を掘るというかっこうが今日の現状でしょう。そこでそれぞれの土地改良区は、排水の拒否権を含めてあるいは排水をする場合については適当な負担を相手側に求めることを可能にしていくために、また水質保全をみずからが維持していくことが可能なような管理規程をつくれるような体制に速やかに出発してもらいたいと思うのでありますが、これに乗り出していただけますかどうですか、お伺いします。
  108. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 御指摘のように、四十七年の土地改良法の改正によりまして、管理規程の制度が設けられております。現実にこの管理規程を制定している土地改良区は、現在までのところございません。なぜできないかということについては、農林水産省の怠慢ではないかという御批判でございましたが、私ども実は、管理規程を常時いかなるところでも制定してこれを発動するということよりは、それ以前に実態的に水質の保全あるいは負担関係の適正化ということについてもっと有効な解決策を講じなければいけないというふうに考えておるわけでございます。そういう管理規程に至る前の、特に市町村、農協、地域住民の団体あるいは企業といったものとの話し合いの場を設けるようなことを中心に、具体的な運用策を進めているところでございます。  そこで、なぜ管理規程ができないかということは、これは細かくなりますからごく簡単に申し上げますが、一つは排水といいますか、実際に流れてくる水の水質基準をつくらなくちゃいけないということがございますが、この水質基準をつくることが技術的にきわめてむずかしい問題があるとか、個々の小さい住宅から流れてくる排水路についてはこれを一々対象として取り上げるのはいかがかというような問題がたくさんあるわけでございます。また、都市側にその水は受け入れられないというような結論を突きつけましても、先ほど建設宵の御答弁にもありましたように、必ずしも公共下水道の整備が十分それに即応していないというような体制のときに、これはいたずらに社会的な混乱をもたらすというようなことにもなりかねませんので、そういう社会問題であるということも踏まえながら優良な農用水の確保を図っていく。同時に、流れ込んでくるものについては、その管理について費用負担の適正化を図っていくということで対応してまいりたいと考えておるわけでございます。
  109. 沢田広

    沢田分科員 何もやってないじゃないですか、そんなことを言って。結果的には農民いじめの政策がどんどん進められているだけじゃないですか。  農林大臣もよく聞いていてくださいよ。これが農林省の官僚がやっていること、何にもしていないためにどんどん土地改良区の農業水路は荒廃の一途をたどっているでしょう。境界ですらだんだん失われていっているのが現状でしょう。COD、BOD、SS、シアン、カドミウム、その水質だってどんどん汚染されてきているのが現状でしょう。これを放置していることが何が有効的な解決なんですか。  じゃ、具体的に有効的な解決策はどこで何を出すのですか。法律ができて今日まで放置しておいて、何が有効的な解決策ですか。では言ってみてください。
  110. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 水質の問題は農林省だけでは解決の困難な問題でございます。地域の問題、市町村あるいは県といったような公共団体全体で取り組むべき問題だと考えております。そういう中で現実に流れ込んでくる、そして新たに良質の農業用水の確保のために新しい負担が生ずる、あるいは現在ある用排水路の維持管理に負担が、特に現在、受益者の土地改良区の構成員の数も減ってきているというようなことから、一人当たりの負担も大きくなるという実態が生じております。  それらに対しては従来から国としても各種の助成措置もとってまいっておりますし、特に市町村等との話し合いが大事だということでそのための調整対策経費でありますとか、それから一部の施設についての維持管理適正化事業として、定期的な改修の経費でありますとかあるいは……(沢田分科員「いい、わかった、時間が……」と呼ぶ)計上いたしておりますし、話し合いを進めて、現に市町村等において負担をかなりしてもらっているという実績は上がってきているわけであります。
  111. 沢田広

    沢田分科員 さっき建設省の委員会で質問したのですが、高級マンションができたときに市町村はそれぞれ負担を取る、あるいは教育負担を取る、ごみ負担を取る、こういうことで、それが開発指導要綱で決められている。しかし、法律的な根拠はない。結果的にはあくまでもそれは任意の寄付である、法律的にはこういうことになる。この管理規程ができればこそ、正当な、対等な立場で市町村とも話し合うことができる。この管理規程がなければ本当に押し流されていくだけのことにしかならない。あなたのは答弁になっていない。  結果的には管理規程をそれぞれがつくって、それ以上にするには浄化装置をつくらせるとか、あるいは護岸の拡張をしなければならぬ場合にはその負担を持たせるとか、そういうようなことをそれぞれ協議ができるようにするために、この管理規程が土地改良法でできたのでしょう。それをつくっておいて見殺しにしているということは、言うなら農民を見殺しにしていることと変わりがないのですよ。  はんらんが出れば責任はだれかと言ったら、それは管理者に責任がくるのですよ、理事長に。それはわかっているのでしょう。どんどん流すことは流さしてはんらんを起こして、住民の床下浸水を起こしたり床上浸水を起こせば、河川管理者は——寝屋川のはんらんにしても、多摩川の決壊はんらんの判決にいたしましても、それぞれ責任は明らかにされているでしょう。そういうような状況から見れば、やはり管理規程をつくって正常な管理状態をつくらせなければならぬということは、火を見るよりも明らかだと思う。そんないいかげんな答弁で、三十分だから残念だけれども、了承するわけにいかない。  管理規程は速やかに土地改良団体がそれぞれ自主的につくる。行き過ぎるのもあるでしょう、あるいはおくれる管理規程もあるでしょう。それをどう調整していくかが農林省の仕事じゃないですか。まず自主的に管理規程をつくらしていく。混乱だけ起きると、なぜ農民を信頼しないのですか、農民を信頼しない農林省というのがあっていいのですか。もっと農民団体を信用していったらどうですか。信用して管理規程をつくらせて、そして同じ土俵で話し合いができるように地位を向上させてやるということが農林省の仕事じゃないですか。何のことはない、都市側にたれ流しされてもがまんしていろ、それだけできていないのだからがまんしていろ、こういうがまん、がまん、がまんが徳川以来の今日までの農政の実態なんです。  農林大臣もそういう意味において、この管理規程を速やかに各地の団体がつくって——たとえば新幹線一本できただけだってどれだけの水が流れるかわかりますか。どれだけ土地改良区の負担がふえるかわかりますか。七十メートルの幅のたとえば一キロとすれば七万平米、六十三リの雨が降れば四トン、その水が土地改良区へ入ってくるんですね、簡単な計算でいっても。そういう状況をだれが負担してくれるのか。はんらんを起こせば付近の住民から苦情が出る。そういう状況の中で、首都圏近郊においては特にそれが顕著であるから、管理規程をもっと早く進めさせて、そして対等、平等の立場で話し合いができる場をつくるのが農林省でしょう。ぜひそういう立場に立って管理規程を促進をさしてもらいたい。特に管理規程は知事の承認を要するということになっている。これも知事もなかなか承認をしない。それは農林省がうんと言わないからだ。  それで、公害の問題にあなた触れたけれども、公害は県が管理をしている。だから、水質汚染の調査も、河川は県がやっている。しかし、土地改良区の水質検査はだれもやってくれませんよ。土地改良団体がやっているんですよ。やらなければどんどんカド米が出てきたりなんかするんですよ。そういうことも知っていますか。それで管理規程をつくらせないで放置しておいて、農民団体が保ちますか。つぶしてしまうならつぶすでいいですよ、放棄するんだったら。放棄するのでないとするならば、自分の団体の水路の維持管理を、きちんと自分の責任において正常な管理者としての義務が行える土俵というものを与えてやらなければ、責任だけ押しつけることになるじゃないですか。  ここは政治的な発言ですから、官僚じゃだめですから、ひとつ大臣からお答えいただきたい。
  112. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 大臣から最終的な答弁はお願いすることにいたしますけれども、管理規程の問題については、従来できてなかったことについて説明が求められたものですから、そちらの方を先にいたしましたけれども、これからどうするかということについては、先ほど申し上げましたような私どもの実情がございますが、モデル的な地区において何かモデルとしてのそういうものがまずできないか、そういう話し合いを地域で進めていくことはできないかということで、一、二検討を進めている段階でございます。  ただ、非常にむずかしい問題があるものですから、自信を持って全国のどこどこに何カ所くらいつくります、こう断定的なことは申し上げられない。しかし、趣旨としては、先生おっしゃられるように、そういうものを背景にして、しかも現実に強力なものができているということならば一層権利も主張しやすいし、交渉もしやすいということになるかと思います。そういう方向で私ども努力してまいりたいと考えております。
  113. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま御指摘の点は、決して農民のためでない農水省があってはいけないということは当然でございます。そこで、いまの管理規程が、せっかく土地改良法が改正になってでき上がっているのに実際には行われていないという点については、いろいろいまこちらからも答弁をいたしておりますが、何か問題があるのじゃなかろうかと私は思います。管理規程というのをせっかく法律で決められているならば、実際にそれがあちらこちらの土地改良区でつくりやすい仕組みを考えていくことが大切なことではなかろうかと私は思いますので、きょうの御意見を踏まえて、土地改良法が改正になった後、管理規程という規定が設けられたにもかかわらずなぜそれができていないかという点にメスを入れて、いまのいろいろの生活排水あるいは工業排水その他との調整が必要でございますから、差しとめをするためにも、これは管理規程がなければできないわけですから、そういう意味で管理規程ができるようにするにはどうしたらいいかということを、前向きにぜひ検討させていただきたいと思います。
  114. 沢田広

    沢田分科員 貴重な答弁でありますから、それはそれなりに評価をいたしますが、土地改良法を改正して管理規程をつくろうといったときは高度成長の華やかなときでした。これは緊急に必要だったわけです。ところが、今日まで放置をされたためにどれだけ手おくれになっていたかということを反省していかなければいかぬものがあるのであります。私も土地改良の団体の役員をやっておりますけれども、そういう立場で管理規程もつくりました。知事が許可しない。知事が許可しないというよりも農林省がうんと言わない。それでもしこれが決まらなければ、たとえば各企業が放流する場合に負担を求めても、管理規程がなければ、法律上の根拠がなければ、許可を与えて金を取ったとしても、その取った金は税金の控除の対象にならなくなる。そうなれば、管理規程がなければ納めなくともこれは法律上対抗条件が発生しないのですよ。私も二十八年からやってきているのですから、あなた方農林省の人よりも実際にはぼくらは実態には詳しいつもりでいますよ。だから、そういう条件から見ると、管理規程がつくられなければ第三者に対抗条件というものが発生しないのですよ。訴訟をされれば負けちゃうのですよ。いま言ったように、ただつくりたいとかそういう状況で守れるものではないのです。カド米が出ればどうしますか。出ればその土地改良団体が井戸を掘ってやらなければならないのですよ。県の補助ももらったりなんかしますけれども、それは掘ってやらなければならないのですよ。そういう状況を考えて、農民いじめの農林省であってはならない。だから、せめて都市側との対等な条件というものを農民団体に与えるということが当面の急務である。あそこにやるとかここにやるとかそんな段階の問題じゃないのですよ。これは京阪地区もそう、京浜地区もそう。もう少し農林省は毅然とした態度で、都市側だけに唯々諾々としていないで、それにおべっかを使うんじゃなくて、独立した農林省としての役割り、農民に自信を与えてやってほしいのですよ。  どうかそういう意味において、おくれているということで準備しますと言っているのですが、準備じゃなくて即座に発効させてください。そうしなかったら、これからも都市計画法が、また線引きも見直しの期間が迫ってきております。私のところは埼玉ですから、新幹線もまた入ってきます。新幹線でどれだけの雨量がふえるかということでいま大変な議論をしています。それはバイパス一本通ったって大変な雨量が入り込むわけです。改修が間に合わないのです。そのときに床上浸水が起きたらだれが責任を負うのですか。結果的には団体が、河川管理者が負うのでしょう。そういう状況を踏まえて、ひとつ農林大臣からもう一回、都市側との対抗条件をつくるという意味においての管理規程とあわせて姿勢をお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  115. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、管理規程をつくっていくということが大変大切であるということは御指摘のとおりでございます。そこでやはり管理規程がつくり得るような形に持っていかなければならないわけでございますから、なぜそういうことになっていったかをひとつ分析をして、その上に立って管理規程をできるだけ早くつくり得るような、つくりやすいような体制をつくっていかなければならない、こう考えておりますので、そういう点についてひとつ前向きに検討させていただきます。
  116. 沢田広

    沢田分科員 強く要望して、質問を終わりたいと思います。
  117. 始関伊平

    始関主査 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、貝沼次郎君。
  118. 貝沼次郎

    貝沼分科員 私は、農業の機械化に伴って最近非常に災害がふえておりますので、この問題について当局の見解を承っておきたいと思います。  そこで、先般、農林水産省の調べでは、たとえば死者年間四百人前後とか、過去五年間で二千人を超えているとか、こういう見出しでいろいろ報道されておるわけであります。また年間七千人の人の指が切断されているということもあるようであります。農業の省力化、それから労働生産の向上を目指して農業機械の導入というのは昭和三十年代後半から全国的に進んできたわけでありますが、とりわけ耕運機、防除機にかわってトラクター、コンバイン、こういう高性能な大型機械が普及をしてきました。四十年から四十五年まで平均伸び率、大体七〇%と言われております。  それから、一方、作業中の死傷事故、これもまたふえてきておりまして、四十六年以降の農業機械の使用による作業事故の死者を見ますと、四十六年に三百六十四名、四十七年が三百六十人、一日一人という平均になりますが、四十八年に四百二十四名、四十九年四百四十五名、五十年が四百十三名、五十一年が三百九十六名、五十二年が四百名、五十三年はまだわかりませんが、農業団体の調べだと事故だけでも一千三百一件に上るだろう、これも前年度に比べて一年間に八十五件ぐらいふえておるというようなショッキングなデータが出ております。  また、農林水産省の調査では、最近三年間で死亡事故の機種別で、たとえば歩行型トラクターが一番多い、その次が乗用型トラクター、それからトレーラー、こういうふうな結果も出ておるようであります。さらに四十八年以降は女性の割合が全死亡者の二五ないし二七%になってふえてきておる。  そのほかこの農業機械にかかわる、機械と一緒にたとえば転落をして亡くなったとか転倒死、これは農業に携わる方々がだんだん年をとっておりますので機敏な対応ができないというところからそういう痛ましい事件が起こっております。あるいは荷崩れの問題、それからハンドルの操作でもって首を締められたという、これは私も事実遭った人に話を聞いたことがありますが、そういったことがいま起こっております。  こういうような現実の姿を見た場合、今後このような方々に対する対策というものがきちっと確立されなければならないのではないか、こう思っておるわけでありますが、当局としてはどういうふうにお考えですか。
  119. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま先生からお話しございましたように、高性能な農業機械の普及の進展に伴いまして重度な農作業事故が発生をいたしております。したがいまして、この農業機械作業の安全性の確保ということも非常に大事でございます。それとともに、万一事故が発生いたしました場合におきます補償対策ということも非常に重要になってまいるわけでございます。  そこで、現在、こういうような農作業事故に対します補償制度としてございますものが、一つは労働者災害補償保険法に基づきます特別加入制度といいますものが四十年度から道が開かれております。これには中小事業主等と指定農業機械作業従事者という形のものとございますが、こういう特別加入の制度に加入ができるという道がございます。それから、これ以外に農協のやっております共済事業、民間の傷害保険等の種々の仕組みがございます。  したがいまして、農林省といたしましては、こういう農業者に対しまして、その就農状況に応じて労災保険の特別加入制度なり農協の共済等に加入するよう指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  120. 貝沼次郎

    貝沼分科員 いま機械の安全性並びにその指導、それから補償問題として労災法の特別加入の制度を使ってさらにこれの加入を進めていきたい、こういう話であります。ところが、この特別加入の方もいま関心は高まってきておりますが、いま一歩いかない。たとえば昭和五十二年三月末現在で八万六千人くらいです。専業的農家組合員数が百十万人程度というふうに推定いたしましても、たかだか七・九%という程度でなかなか進んでおりません。したがって、いまこれを進める進めると幾ら言っても、実は進まない要因があるわけであります。それを解決しなければこれは進みません。  そこで、どういうことが問題になっておるかというと、これは農業団体などでも言っておりますが、一つは農作業の範囲の問題、それからもう一つは補償の適用機種、機械の問題です。この問題を見直す必要があるのではないか。それをやらなければどんなに特別加入推進をやってみても、実際かからない人がずいぶん出てくるということで非常に心配をしておるわけであります。  それからもう一点は、いまお話しの中で安全性の鑑定ということのお話がございましたけれども、この安全性の方も進んでおりません。たとえばこれは五十二年の一月ころ、いよいよ国会に農林省は農業機械促進法の改正案を出そうとした。また通産省も農業機械安全法案というものを、仮称でありますが出そうとした。ところが、この間にどうも話がうまくいかなくて、最終的にお流れになってしまったといういきさつがあるわけです。したがって、安全性確保と幾ら言ってみても、それだけの法律がなければできないことでありますので、当時断念したものはいまどうなっておるのか、これが一点。  もう一点は、先ほど申し上げましたように、農業機械の機種の枠の拡大、それについてどう考えておるか。それから農作業の範囲の問題、これについてどう考えておるか答弁を承りたいと思います。
  121. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず第一点でございますが、五十二年当時農業機械の安全性の問題等が非常に問題にされまして、これに伴いまして何か法制化が必要ではないかというようなことで、農林水産省といたしましても農業機械促進法の改正案等も検討をいたしました。通商産業省におかれましてもそれなりの検討をされたわけでございます。しかし、種々の事情によりまして法制化という問題ができなかったわけでございます。  ただ問題は、現在それではどうなっておるかということでございますが、この農業機械それ雄自体の安全性の確保というような問題につきましては、特に農業機械化研究所におきまして型式検査をやっておりますけれども、これにつきまして安全性に関する事項といいますものを付加いたしまして機械そのものの安全性を確保する。また型式検査に非常に時間がかかるというような場面におきましては、安全鑑定というものを実施することを充実していくというようなことで、機械につきましては非常に安全性の確保された機械というものが普及されてきておるという実態でございます。したがいまして、今後もこういう面の充実ということは引き続いてやっていきたいということでございまして、現在その法制化という問題につきましては、これも引き続き検討はいたしますけれども、いまのところは直ちにどうというところまでは考えておらないわけでございます。  それから、第二点の労災保険の特別加入の対象機種の拡大の問題でございますが、これにつきましては、現在十三機種が対象になっております。ところが、これ以外に、最近になりまして相当事故件数もあるというような機種も出てまいっております。そういうことからいたしまして、その対象機種の拡大につきましては努力していきたいということで、現在労働省の方とも折衝をいたしております。たとえば軌条式運搬機械、いわゆるモノレールあるいは伐採用機械、チェーンソー、そういうようなもの等につきまして、さらに指定農業機械として追加をしてほしいということで折衝をいたしております。  それから、作業の対象範囲の拡大の問題でございます。現在におきましては、その対象の範囲といいますものが、植物の栽培、採取等の作業というようなことになっておりまして、養蚕とかあるいは養畜の場合の家畜の飼養管理、こういう角度までは現在の省令上及んでおらないというのが実態でございます。ただ、いろいろなカッターなりそういうような機械等につきましては、農作業の段階で使う場合が当然あるわけでございます。そのほかに飼養管理をする場合にも同じ機械を使うということがございます。事故が起きた際も、農作業で事故が起きれば労災法の対象になる、飼養管理の段階ではならないというのが現在の規定です。規定上そうなっておりますが、その辺につきましては、さらに飼養管理等も含めて労災法の対象にすべきではないか、こういう観点に立ちまして、現在労働省の方とこれも強く折衝をいたしておる、こういう状況でございます。
  122. 貝沼次郎

    貝沼分科員 かなり前向きの話になっておりますが、たとえばこれは労働省の方にお伺いいたしますが、いま農林省の方からは拡大の話が積極的に出ました。したがって、労働省としては、たとえばいま話にありましたチェーンソー、それから樹園モノレール、農用裁断機、あるいはもみすり機、製縄機、乾燥機、定置式動力防除機あるいは背負い式動力防除機、また動力整枝機、定置式運搬機械、こういったものについて拡大をする考えがあるかどうか、この点が一点。  それから、いま作業の範囲についての積極的な農林省の意見がありましたが、これについてどういうふうに受けとめられておるか、この二点を御答弁願いたいと思います。
  123. 原敏治

    ○原説明員 労災保険の農作業に関する特別加入についての農作業機械の拡大につきましては、先生御指摘の機器等を含めまして、災害の状況あるいはそういうものの普及の状況等を検討の上対処していきたい、そういうふうに考えておりまして、現在農林水産省の事務当局と協議を進めているところでございます。  それから、特別加入の範囲の拡大全般につきましては、実は労災保険制度の基本と大変かかわりの深い問題でございますので、問題点が大変多くございまして、そう容易ではないように考えておりますが、御指摘の点等につきまして私どもとしてもさらに研究をしてまいりたいと思います。
  124. 貝沼次郎

    貝沼分科員 さらに、農林大臣の諮問機関であります農業機械化審議会、これから昭和四十五年十二月十四日に当時の農林大臣に対して答申が行われました。その中にるるいろいろな問題が述べられておりますが、中でもこの農業災害の問題については、単なる労災法によるだけではむずかしい。そこで「農業機械作業に従事する農業者の災害補償については、農協による共済制度も発足しており、これらの諸制度の活用をはかるとともに、農作業中の災害補償について新制度を創設することについても検討する必要があろう。」こういうふうに出ております。その後農林省はこれについてどう取り組んだのかということが一つ。  さらに、これは恐らく労働省の方にも聞こえておる話だと思いますので、これについて今後どう取り組まれようとされるか。特に、この問題につきましては農業団体でも農業労働災害補償制度をつくった方がいいとか、あるいは私ども公明党といたしましても、従来から農業労働災害補償法を制定すべきであるというふうに主張してきておる関係もありますので、当局の見解を承りたいと存じます。
  125. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 四十五年の十二月十四日に、農業機械化審議会から農林大臣あてに答申が出ております。その中で、ただいま先生がお話しされましたように、「農作業中の災害補償について新制度を創設することについても検討する必要があろう。」ということに相なっております。したがいまして、この答申を受けまして検討を鋭意進めてまいっておるわけでございますが、実はこれは検討すればするほど非常にむずかしい問題であるということがわかってまいっておるわけです。  それでは、一体何がむずかしいんだということでございますが、大きく言えば四つほどあろうと思います。  一つは、農業者の就農の実態が複雑かつ区々でございますので、これをやはり一律に全員を強制加入というようなかっこうでやらせることができるかどうか、この辺が非常にむずかしいという点でございます。  万一それが強制加入でなくて任意でもいいではないかということになりますと、任意加入によります小人数の保険では掛金の方も相当高くなりますし、また補償内容の方もそれに見合ってどの程度の内容にするかということがございます。したがいまして、現在の労災保険の給付の内容、年金等もございますけれども、そういうようなものに比べますと魅力ある制度というのは非常にむずかしいということが第二点でございます。  それから第三点は、すべての農作業を対象にするというようなことで制度を仕組むということになりますと、やはり農業者の家計と経営が判然と区別しがたいというようなことがございまして、果たして農作業中の事故なのかどうかという認定技術上の問題が非常に多い。  それから第四点は、現在あります労災保険なりあるいは農協共済、そういうものとの調整をどうするかというような点がむずかしいというようなことで、四点ほど主な点だけを申し上げましたけれども、なかなか困難な点があるということでございます。  以上でございます。
  126. 原敏治

    ○原説明員 農作業者全般につきましての農業作業による災害補償制度につきましては、雇用労働者の場面とは大変離れた農業政策全体と関係することでございますので、私ども農林水産省とともに検討するということについてはやぶさかではないわけでございます。いままでも保険制度での運用上の問題点、あるいは財政上のいろいろな問題、そういうものについても私どもの技術的な知見がございますので、そういうものをもちまして一緒に協議するということについては差し支えないかと思っております。
  127. 貝沼次郎

    貝沼分科員 これは逆な話ですね。大体農民の立場に立って一生懸命やってくれと頼むのが農林省でなければならないし、それはむずかしいというのが労働省かもしれない。ところが、労働省はやる気になっておる、農林省はむずかしいと言っておる。そんなばかな話はないですよ。大臣、どうですか。これはもう少し農林省としても考えた方がいいんじゃありませんか。大臣の見解を承りたい。
  128. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いまのお話の中であることは、独自の保険については私ども非常にむずかしいということでありますが、労災保険の中で対象の拡大については先ほど局長も前向きに答弁をしているわけでございまして、できるだけ農民の実際の農作業の実態に即して、極力保険として当然対象になり得べきものは対象にしていこうという姿勢でございますので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  129. 貝沼次郎

    貝沼分科員 労働省は一緒に相談をする用意はあると言っているじゃありませんか。ところが、農林省はもう相談すらしようとしていない。こういう姿勢はうなずけないと私は思うのです。もう一回大臣の見解を承りたい。
  130. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 先ほど来話がありますのは、現行の労災保険制度については、極力対象を広げるように農林省も当然前向きで取り組んでおるわけであります。ただし、新しい保険制度をつくるとなると、やはり強制という問題、任意という問題がございますし、その財政上の問題もいろいろありますし、なかなかこれは一朝一夕にはいかない、こういうことでございまして、労働省もそういう点については何も意見は違っていない、私はこう思うのでございます。
  131. 貝沼次郎

    貝沼分科員 いや、労働省の方は、先ほど読んだ答申のことについて農林省と話し合いをしてもいいというお話でしょう。ところが農林省の方は、する気持ちがないんでしょう。この答申は農林省の方に出ているのですよ。こんなちぐはぐな話ってありますか。労働省がそこまでやろうという気持ち、あるいは話し合いをしようという気持ちがあるなら、農林省だって一緒に相談していいんじゃないですか、それはどうですか。
  132. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほど申し上げましたように、農業者を対象にした独自の制度を仕組むということにつきましては……。
  133. 貝沼次郎

    貝沼分科員 わかった、もうよろしい。その説明はいま聞かなくてもいいです、先ほどうんと聞いたのですから。  では、労働省にもう一回聞きます。  たとえば農林省から、そういうことの法の制定という問題について検討したいという話があれば、検討に対してどういう対応をされますか。
  134. 原敏治

    ○原説明員 ただいまの御指摘の問題は、技術的にあるいは財政的にも大変問題が多いことであろうかと思っております。私ども、労災保険の運営の中での技術的な問題についてはそれなりに知見を持っておりますので、そういう面でお役に立つ場面があるのではないか、そんなふうに思っておる次第でございます。
  135. 貝沼次郎

    貝沼分科員 微妙な言い方をしておりますけれども、お役に立つ場面があると言っているのです。ですから、農林省はもっと積極的にやっていただきたい、これを要求いたします。  それから、時間があと何分もありませんので、まとめて一つ二つの問題を伺っておきたいと思いますが、要するに狭い国土をどう有効利用するか、あるいは農地の土地条件の整備等を図るということは非常に重大な問題になってきております。私どもの岡山県の場合も、たとえば畑灌事業であるとかあるいは県営のあるいは団体営の灌漑排水事業というものをやっておるわけでありますが、いまその実施状況というのはどうなっておるのか。そして今後、予算の拡大要求ということが問題になっておりますので、それについてこちらとしてはどう希望を持っていいか、前向きの姿勢かどうか、この点について一点。  それからもう一点は、同じように岡山県の話でありますが、笠岡湾の干拓が行われております。ところが、この干拓は何のために使われ、その農地の利用というものがどうなるのかという、いわゆる千陸計画というものはまだ決まっていないようでありますから、これが今後どういうスケジュールによって決まってくるのか、この二点を伺っておきたい。
  136. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 最近におきましては、畑作振興ということがきわめて重要視されてまいっております。国の予算一般も、水田関係に比べまして畑作関係の基盤整備が近年は大きく伸びてまいっておるわけでございます。  岡山県の工事の状況でございますが、現在、灌漑排水事業につきましては、国営が一地区、それから県営が五地区、こういう形で事業が進められておるところでございます。それから畑地帯総合土地改良事業が七地区、この総合事業におきましては灌漑施設の整備のほかに、農道の整備、圃場の区画整理、こういったことをあわせ行いまして畑地帯の総合的な基盤整備をやっているということでございます。  今後こういった事業がもっと伸びるのかというお尋ねでございますが、岡山県におきましては瀬戸内の温暖な気候にも恵まれている、畑作地帯としてきわめてすぐれた条件にあるということ、それから中国自動車道の開通によって消費地とも直結できるような交通条件ができているということ、そういうことが反映いたしまして地元の要望も大変強うございます。私どももそういったものを十分くんで積極的に推進してまいりたい、こたえてまいりたいというふうに考えております。  それから、笠岡湾の干拓地の土地利用計画についてのお尋ねでございますが、これは四十一年度着工、大分時間がかかりましたが、五十二年度に干陸、五十九年度に完了ということで、目下地区内の工事を進めているところでございます。この地区の土地利用につきましては地元におきましても種々意見があるということを承知いたしておりますが、私ども何といいましてもこれは農用地のために干拓をした事業でございます。現時点において多目的に利用するという考えはございません。  内容的に若干申し上げますと、酪農、野菜等の畑作を基幹とした大規模自立経営農家の育成を目的とするということで、その具体的な内容につきましては、現在千陸地区調査におきまして検討しているところでございます。五十五年度、来年度におきまして干陸計画を樹立して、その結果を待って土地の配分を行うということを予定いたしております。
  137. 貝沼次郎

    貝沼分科員 以上で終わります。
  138. 始関伊平

    始関主査 これにて貝沼次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、庄司幸助君。
  139. 庄司幸助

    庄司分科員 私は、まず農林大臣にもっぱら基本的な問題を少しお伺いしたいのです。  実はこの一月、例のソ連のアフガニスタン侵攻があって、それに対応してアメリカが例の千七百万トンの穀物輸出をとめた。それに対して農協の幹部たちが異口同音におっしゃっていたのは、やはり食糧というのは戦略物資であったなと、これが実感としてわかったと言うのですね。これがもし逆に日本にはね返ってきたらどうなるのだろう。いまはその心配は当面はないでしょうけれども、この心配がやはりあるのです。  ところが、果たせるかな若干はね返ってくるような傾向が逆に出てきた。つまり、日本でこの分を引き受けてくれというようなアメリカの各界の意向がもたらされたわけですね。これは議員団も来て言っております。その点で、日本の農民も異口同音にその心配をしている。これは結局、民族の独立の問題と絡んで御心配なさっているのだろうと思うのですよ。そういう点で日本の農業を、民族の独立をしっかり守っていくために、どうやって自給率を高めていって外国に依存しないようにやれるか。全部が全部とは言いませんけれども、この自給率を高める問題。特に穀物の自給率ですね、これは飼料穀物もありますし、主食もあります。  そこで、この自給率の向上計画、これが一体どうなっているのかさっぱりわからないのですが、その計画があるのかないのか、それからもし現在ないとすればどういう観点でお立てになるのか、この点ひとつお伺いをしたいと思うのです。
  140. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま御指摘のように、私どもは今度のアメリカの対ソ措置に関連いたしまして食糧が外交的手段に使われるようになってきたという点については非常に深刻に受けとめております。  そこで、自給率につきましては、いま農政審議会に昨年十一月に私どもの方から出しましたものがございます。これはたたき台にしていただくために出したものでございますが、しかし、それ以降にこのアメリカの対ソ措置が生まれてまいりましたので、いまのたたき台はたたき台といたしまして、農政審議会で御議論いただいている中において、これは大体ことしの半ばまでには結論を出していただこうということでやっておるわけでございますが、やはり政策的にもう少し織り込んだ自給率を考えるべきではないか、あのときに出しましたよりは何かもう少し高い、特に主食用の穀物についてはもう少し高い自給率が出せないであろうか、こういうことで、いま議論をいたしておるわけでございます。  いわゆるえさの原料になります関係の飼料用の穀物の自給率は、これはなかなか思うようにいかないのでございますが、しかし、これについても将来を考えた場合には、いまは非常に安い飼料用穀物が入ってくるという前提でいまの自給率を立てておりますので非常に低いところにありますけれども、これもまた永久にそれがいつまでも入ってくるかどうかわからないわけでございますから、その点については、それにかわるべきものを早急に研究しなければいけないということで、たとえば飼料米などもその一つでございましょうけれども、そういうものの研究をこれからもっと鋭意努力をしていかなければならないんじゃないか、こんなような考え方でいま進めておるわけであります。
  141. 庄司幸助

    庄司分科員 その点で、これは新聞報道の限りでありますけれども少し確認しておきたいのですが、何か農林省としてはアメリカの要請、これは正式にあったのかないのかわかりませんが、それにこたえるようなかっこうで、一連の措置について農林水産大臣は商社側の検討結果、外務省などとの意見調整などを踏まえ、近く米国側に打診して、三月中旬の大来外相訪米の際、いわゆるアフガン問題に絡んだ余剰穀物引き取り問題に決着をつけたい考えだということで、七十万トン商社に依頼する、あと三十万トンは政府ベースで購入する、こういう報道があるのですが、こういう御検討がなされているのかどうか、これは正式に答えていただきたいのです。
  142. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 これはアメリカからは正式には私ども政府に対して要請は来ておりません。ただ、先ほどもお話がございましたように、議員団が訪日をいたしましたときであるとか、あるいはまたアメリカ国内においてそれぞれ議員の方々が、日本はそういうものを買ってくれてもいいんじゃないかということを発言しておられることは私ども承知をいたしております。  そこで、私どもの対応でございますけれども、必ずしもいまの新聞報道は的確ではありません。要望、要請もございませんので正式にこうやらなければならないということではございませんが、しかし、そういうアメリカ側の議員の動きもございますので、もしそういうことになったときはどうするかということで研究は進めてきたわけでございます。そこで政府としてできることは、たとえば昭和五十五年度で予定をしております小麦の購入予定を十万トンぐらいは前倒しで買えるであろう、また五十五年度で予定をいたしております配合飼料供給安定機構、ここで大体十万トンの備蓄のトウモロコシの積み増しは考えておりますので、これもできるではないか、あるいはKR援助で、これは外務省の予算でございますけれども、これも増額を予定いたしておりますので、その分についてはこれもそれだけよけいに買えるのではなかろうか、こういうことで、かれこれ三十万トンくらいは政府の五十五年度のいまの予算の中で考えられるであろうということは、これは前から答弁をしてきておるわけでございます。ただ、それだけでは少ないかもしれないから民間において幾らかでもこういう点について協力ができないか、こういうことについて商社において検討してもらう意見交換会というようなものを私の手元で非公式にやりましたのが、たまたまそういう新聞報道になったのではなかろうか、こう考えておるわけでございます。
  143. 庄司幸助

    庄司分科員 いまもしそうなったらということで御研究なさっているようでありますが、私が大臣に望みたいのは、もしそうなったらというあれじゃなくて、そういうことをさせないための研究なりあるいは腹を固めるなり、これをひとつお願いしたいのですよ。  そうでないと、いま農民が非常に悲観しておりますのは、いわゆるこういう世界情勢一つある、それへ持ってきて国内でも、昨年の米価審議会のあったころだと思いますけれども政策推進労組会議というのがございますが、あの団体が、日本の農産物の生産性が低い、割り高だ、だから外国の安いものを買った方が、いまの低成長下でわれわれの月給でおまんまを食うためにはその方が安上がりの食糧が手に入る、こういった御意見を発表なさったのです。これで農民団体の方々は非常にがっかりしたのです。いままでは米審で労働者の団体や農民団体が一緒に腕を組んで生産米価の適正な引き上げのためにがんばってきたのですが、労働組合にも裏切られた、何でああいうハイカラな理論を立てるんだろう、こう憤慨しているのですよ。  だから私は、先ほど言ったように食糧が戦略物資に使われるような状況になっていますから、この間のNHKのテレビを見ても、アメリカの大穀物商社の動きも報道されております。やはり日本民族の食糧をできるだけ自給率を確保していく、このたてまえで、多少犠牲はあっても自給率の向上をやっていく。予算的にも犠牲もあるでしょう。そこのところを示して差し上げるのがいまの荒らしづくりで心の中まで荒らされている農民をもう一遍農業労働の意欲をかき立てる道筋だろうと思うのです。そういう点で、もしそうなったらの御研究も政府部内ではあるいは必要かもしれませんけれども、そうならないような強い御意見を農林水産大臣として閣議でも主張していただきたい、私はこう思うのです。その辺いかがでございますか。
  144. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私どもとしては、いま米の過剰が六百五十万トンもございますし、実際問題として外国からより多くの食糧を輸入する余地は少ないと思っておるのです。しかし、現実に小麦は買わなければならぬわけでございまして、日本の国内だけでは足りないわけでございます。将来はいま御指摘のように自給率を高めていかなければならぬことは当然でございますけれども、すでに五十五年度でも買う予定があるわけでございまして、その買う予定のものの前倒しをするのに十万トンぐらいが、こういうことを申し上げておるわけでございます。それ以上のことは、私ども全く新しく、いま予定しているもの以外に買おうという気持ちはないわけでございます。  それから商社の関係についても、これは民間のベースでやっておることであって、政府が関与できるものではございません。ただ、現実にはいまここで畜産関係のトウモロコシが入ってこなくなったとなったら日本の畜産業者は大変困るわけでございまして、現実にいま、ことし、来年というところで新しい飼料穀物が日本でできるわけはございませんので、そういう面においてこれも相当買わなければならぬことは事実でございます。その買う予定のものを商社で前倒しに少しでも早く買えないかということを検討さしているわけでございまして、その点は私ども、農民の皆様方のお気持ちを十分含んで、何も余分に買うのではなくて、いま買う予定のものをより時期を早めて買うのがどのくらいできるか、こういう検討をやっておるということでございます。
  145. 庄司幸助

    庄司分科員 ちょっと話題を転換しますけれども、確かに米は現実に余っています。私も認めております。それで、今度の減反の上積みで農民の方々はうんと怒っていらっしゃる、これは御存じだろうと思うのですよ。問題は減反とか転作をいろいろ強制するだけじゃなくて、何も農民は米だけつくっていればいい、こう思っておる農民は余りいらっしゃらないと思うのですよ。本当に真剣に複合の道を探し求めている。ところが、その条件がなかなかつくっていただけない。結局米にしがみついて悪循環を繰り返すようなかっこうになるのですから、この悪循環は断ち切らなくちゃいけない、こう私思うのですよ。  そこで、実は減反の上積みの際、私は非常にけしからぬと思ったのですが、仙台で県内の農協の大会があったのですね、表彰式もありましたが。その際、ちょうど大平さんが総選挙の敗北の後を受けてまだ特別国会も開けない、こういう時点なんですよ。農政についての新内閣の総理の所信表明もなければ、農林水産大臣の所信表明もない時点ですね。その時点で東北農政局長がわれわれ代議士がいる前で、この減反の数字をどんぴしゃり発言しているのですね。これは私は越権行為じゃないかと思うのですよ。こういう先走りが出先の官僚によってやられる。こういう点で農林水産大臣が——まだ農林水産大臣が決まってていないころですな、こんなことを勝手にやらしておいていいのか、越権行為じゃないか。これが一つ。  それからもう一つ、実は本年の一月三十一日に、私ども宮城県の古川市の市議会代表が農業基本政策の確立、それから飼料米の転作作物認定と品種改良、この二つの陳情で農林省に参ったのです。そのときお会いしたのが事務次官です。その方がこういうことをおっしゃった。生産米価の引き下げとともに、生産調整奨励金を削減してなくす、こういった意味のことをこの市議会代表におっしゃったものですから、市議会代表もびっくりして帰っていった。これは彼らがテープにもとっていったのです。これはこういった意味のことをと私は申し上げておきますが、これが大臣考えを反映していたなら大変なことですね。  東北農政局長のああいう出過ぎた行為と事務次官の発言について、一体、大臣はどういうふうにお考えになっているのか、御訂正をするならするでひとつここでやってもらいたい。
  146. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 農政局長の発言については官房長からお答えをいたします。  それから、事務次官の発言についてもそれは何か間違いじゃないかと私は思うのですが、いま何も生産米価をここで引き下げるともなんとも決めているわけじゃないわけでございまして、テープを持っていったというお話、それは何か誤解じゃないかと思いますので、それはぜひ誤解を解いておいていただきたいと思います。
  147. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 仙台におきます宮城県の農協大会での東北農政局長の発言でございますが、その際に減反の数字まで申したかどうか私ども確認しておりませんが、本件につきまして、場所として適当であったかどうか、そういう点はあろうかと思いまして、本人には注意しておいたところでございます。  なお、ただ昨年来の減反の問題につきましては、八月ごろからこの問題につきまして農林本省といたしましては、市町村会あるいは知事会、農協中央会等関係者とかなり折衝を重ねてまいった経過がございます。こうした経過もございましてそうした状況についての報告をしたものと思いますが、場所柄等が適当であったかどうかという問題は確かにございますので、本人にはよく注意しておきました。
  148. 庄司幸助

    庄司分科員 古川市議会の代表に誤解があったようなお話ですね。そうじゃない、誤解なすっているのは大臣なんです。これは事務次官に聞いてもらいたいと思うのですよ。こういうことはやはり勝手に言わせますと、意思の不統一があるやに感じられますので、これは農民のショックは大変ですから、厳重にひとつ注意していただきたいと思います。  それで、次に移りますが、これも大変小さな問題で恐縮なんですが、しかし本質はちょっと大きい問題なんで申し上げたいのです。  実は、同じ古川で転作として大麦をつくったのです。それで百三十三・五トンほど出荷されたのですが、出荷されて長い間たってもそのまま古川市農協の倉庫に眠っているわけです。これは突然の質問ですから、おたくの方で事情はおわかりにならないだろうと思いますけれども、この事実そのものは、売れないということなんですね。売り方が下手とかなんとかじゃなくて、せっかく大麦に転作しても売れない。こういう問題を一つ一つ解決しないと、どんなに減反、転作をお進めになっても結局は農政不信が起こることになると思うのですけれども、この辺はひとつ調べて、せっかくつくった転作の大麦は、恐らく飼料用だろうと思いますが、この辺ひとつ御指導をお願いしたい。これは後でお返事だけちょうだいします。  それからもう一つは、さっき前の質問者に大臣もえさ米の問題、私にも御答弁になっておりますが、実は青刈りの稲、これはやはり牛にも牛の好きこのみがあると見えまして、農林省はいや食うはずだとおっしゃっていますが、現実に食わないのですよ。また、食わせるためのいろいろな流通の問題やサイレージの問題、いろいろあると思うのです。現実には食わないで敷きわらにされているのが多い。これじゃ転作の意味をなさないわけですね。そういう点で、最近、東北地方で秋田県やその他大分えさ米の研究が進んでいまして、相当の成績を上げている。特に湿田地帯はなかなか乾田化できないでしょう。乾田化するために農林省の補助も相当入れていますけれども、むずかしい場所もある。  私はよく高崎あたりへ行ってみるのですが、あそこに鳥川があって水はけがいい。五月ごろになると一晩で麦から水田に変わって、赤城山のてんぐもびっくりするなんという話まであるんですね。ところが、湿田地帯はそうはいかない。そういう点で、農民が一生懸命研究していますし、試験場でも若干やっていますが、転作用のえさ米の品種を改善する、あるいは技術の指導をやる。それからもう一つは、えさ米そのものを転作作物に指定する、これは一刻も早くやっていただきたいと思います。その点で種もみの供給やらそういうものをいつごろをめどにやれるのか、ひとつめどを示していただきたい、こう思うのです。
  149. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 飼料米については、この間から私、農林水産委員会においても予算委員会においてもお答えをしておるとおりでございまして、現在の時点ではコスト的に見た場合に、一方においては非常に安いトウモロコシが入ってきているものでございますから、そういうこともありますけれども、現時点では日本の畜産に価格的に適するものはなかなかできない、こういうのが現状である、これは事務当局からでございますが、私は報告を受けているわけでございます。  それ以外に流通の問題もいろいろあるということも聞いておりますが、これはどなたかに予算委員会でお答えしましたように、一度私自身が現実の事態を見てみないことにはいけないわけでございますので、国会がある程度の、少し私が外へ出られる余裕のある時間になりましたときに、現地の実際に研究をなさっておられる農家の方の話やらあるいは農事試験場でやっているところなどを実際に見て、そして私自身が今後これをどう持っていくかの検討の材料にさせてもらいたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  150. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 古川市におきます大麦の状況について私どもいま資料を持っておりませんので、直ちに調査いたしたいと思います。  ただ、確かに麦の転作を進めておりますが、その間で非常に品質上の問題があることは確かでございます。こうした点についての品質向上について、私どももさらに指導を徹底いたしたいと思います。御指摘のように、場合によってはえさ用の処分ということもあり得るかと思いますが、なお調査してその処理について適切にいたしたいと思います。
  151. 庄司幸助

    庄司分科員 大麦は実際えさ用なんです。それでも売れないという問題があるのです。  それで最後に、私は豚の問題で一問だけお願いしたいのです。  豚価格、これは最近何ぼかは持ち直してきたのじゃないかと思いますけれども、依然として六百円以下であることは間違いないと思います。これについてぜひ事業団による買い上げをやっていただきたいし、それからもう一つは、農林省の指導もあって農民がせっかく生産調整を自主的にやっているわけでしょう。これに対して、これと矛盾するような商社系の養豚事業が所々方々にあらわれている。このおたくからもらった統計を見ても、五十年対比で五十四年を見てみますと、千頭以上飼っている規模の経営体、これが〇.三%強、これから〇・七%ぐらいまでシェアをふやしている。一方、飼養頭数でいくと、これらの経営体が五十年の八十七万頭から五十四年では百四十七万頭近くに飼養頭数をふやしている。こうして見ますと、この間大臣がまだいらっしゃらなかったころ、わが党の津川議員や何か取り上げた例の養鶏の問題と絡んでくる。あれも卵価が安いために生産調整をやって、三千羽以上はやらないということで減羽したわけですね。ところが、商社系の経営体が、これは宮城県ではノースエッグであったのですが、これがやみ増羽で百万羽近く飼ってしまった。これで大騒ぎになったのですね。ですから、一方で生産調整や自主調整保管をお願いしながら、一方でこういうふうにやみ増豚をやる、あるいはやみでなくても大型の養豚事業が商社系の資本が入って、おまけに農林中金の金まで入ってやられている。これでは豚の値段がまた下がってしまう。この辺でやはり商社系といいますかそういう養豚事業をぜひ規制していただきたい。そして農民の、本当に自主調整をやっている農家の期待にこたえていただきたい。この点ひとつ最後に御答弁をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  152. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 第一の買い上げの問題でございますが、豚価は御承知のとおり昨年秋以降低迷をいたしまして、各般の対策を講じてまいりました。現時点での動静でございますが、東京市場におきましては五百八十円台のところまで戻してまいっております。昨日は五百九十円台ということで、もうあと一歩というところにまいっておりまして、畜安法に基づく調整保管、まだ頭数の枠が残っておりますので、これを使いまして価格の回復に鋭意努力をいたしたいと考えております。そうした状況で、現時点では事業団の買い入れを直ちに行うという必要がないというふうに考えている次第でございます。  それから企業養豚の問題でございますが、御承知のように現在養豚の関係団体が集まりまして養豚経営安定推進会議というのを全国並びに各都道府県に設けまして、計画生産を自主的に進めることといたしております。全国は昨年の十一月にできまして、各都道府県はことしの一月末で全都道府県でき上がっております。この都道府県の推進会議におきましては、参加経営者から飼養頭数等の報告を現在求めておりますが、いままでのところ企業養豚が計画生産に参加しないという事態は生じておりません。やはり計画生産を進めるためには、企業養豚といわず農家養豚といわず、全養豚関係者が参加をする必要がございますので、そのような指導をしてまいりたいと考えております。
  153. 庄司幸助

    庄司分科員 最後に大臣、ぜひえさ米の現場を近いうちにひとつ見ていただきたい、これを要請して終わります。
  154. 始関伊平

    始関主査 これにて庄司幸助君の、質疑は終了いたしました。  次に、中井洽君。
  155. 中井洽

    中井分科員 三重県の上野、名張両市にまたがってかねてから行われております青蓮寺パイロット事業の幾つかの問題について、大変細かくて恐縮でありますが、お尋ねをしたいと思います。  まず最初に、青蓮寺パイロット事業の現在の進行状況、どのようなものであるか御報告をください。
  156. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 国営総合農地開発事業青蓮寺地区の概要を申し上げますと、進行状況ということでございますので予算との関連で申し上げますと、当初の事業期間は、全体実施設計を昭和四十二年度に行いまして、着工は四十三年度、そして完了は五十八年度に予定いたしているところでございます。現在までの進行状況は、総事業費が百七十九億三千万円でございますが、このうち五十四年度までに百十三億五千百万円が計上されております。五十五年度、来年度の予算案は二十億円ということになっておりまして、五十五年度までの累計の進捗率は七四・五%、こういうことになります。
  157. 中井洽

    中井分科員 予定どおり五十八年までに完成をいたしますか。
  158. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現地で調整を要する問題がなお若干あるわけでございますが、鋭意予算の確保及び事業の進捗に努めて、できる限り五十八年度までに完成をいたしたいと考えております。
  159. 中井洽

    中井分科員 五十八年に完成するときには、いま一番事業としておくれております登記の変更やらそういった事務的な事業もすべて終わる、こういう形で理解してよろしゅうございますか。
  160. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 工事の主要部分はその前年である五十七年度までに完了させまして、完了年度である五十八年度におきましては、地区内の整備、残っておりますそういうものを整備するというほか、換地関係の手続等最終の問題がございます。その換地処分を行う、それから換地処分の登記申請、これも含めて一切作業を完了させたい、こう考えております。     〔主査退席、片岡主査代理着席〕
  161. 中井洽

    中井分科員 工事そのものは大変順調に進んでいることを聞かしていただいておるわけでありますが、換地の登記あるいは後でまた触れたいと思いますが排水の処理、そういった残事業的な、あるいは本体の事業とは関係ないことが非常に手間暇がかかっているように私どもは聞いております。大変無理のないことでもあろうかと思いますが、ひとつそれらが残らないような形で予算措置等をおとりいただくようにお願いを申し上げておきます。  その五十八年に終了時点から三年据え置き、十二年償還という形で、畑、山地をめくっていただいたお金をお払いする、こういうように私どもは聞いておるわけであります。あと、たんぼのあれとかいろいろな費用の払い方あるいは利子等についてお聞かせをいただきたいと思います。
  162. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 この事業につきましては当然地元負担があるわけでございます。地元負担の償還条件は、いま先生が御指摘になったとおりでございます。私ども、十アール当たりの年償還額は約四万円程度になるかと考えております。ただ、この事業によりますところの生産効果といいますか、全体としての生産性が上がって所得がふえるというのは二十八万円程度は、これはいずれも十アール当たり年間の金額でございますが、あろうかと見込まれますので、償還金の返還は、営農が順調に進む限り支障なく行われるものというように考えております。
  163. 中井洽

    中井分科員 私は、そういうことじゃなしに、どういう形で、利子は何ぼで返していくのか、あるいは用水の費用等が幾らぐらい、十アール当たりで結構です、つくのか、そういったことをお聞きしたいのですが。
  164. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 これは補助事業でございますから、当然自己負担分についてはその償還の年限に従って金利がつけられて償還されるということになるわけでございます。金利は定金利ではなくて、時期ごとに差があるわけでございます。これはやはり時の金利趨勢を反映しているわけでございますが、一番高い時期で、五十年十二月から五十二年五月の間の七分五厘でございます。  それでは一つ一つ申し上げますと、五十二年六月から五十二年九月までは六分七厘五毛、五十二年十月から五十三年四月までは六分五厘、五十三年五月から五十四年五月までは六分五毛です。五十四年六月から五十四年八月までは六分六厘五毛、五十四年の九月は七分一厘五毛でございます。償還条件は、先ほど先生の方からおっしゃられましたが、三年据え置きで十二年償還ということになっております。そういう条件のもとに償還されていくということでございます。
  165. 中井洽

    中井分科員 用水の使用料というんですか、そういう金額はどのくらいにつきますか。
  166. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 用水の使用料といいますか、あるいはあとの施設の管理費といいますか、こういったものについて、申しわけございませんが、いま手元に資料を用意しておりませんので用意をいたさせます。
  167. 中井洽

    中井分科員 大体五千円ぐらいだという計算をしているようでありますが、それで大体いけますか。
  168. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま私ちょっと説明を間違えたわけでございますが、これは国営事業でございますので、償還金の中にその分も含まれているということでございます。金額については、一般の場合はおおむねその程度かと思いますが、ちょっと詳細なデータを持ち合わせておりませんので確認いたします。
  169. 中井洽

    中井分科員 そうすると、四万何がしのお金の中に諸経費あるいは電気、水、そういった費用も入っておる、こういうふうに理解していいわけですね。違うんですか。ごめんなさい、ぼくの理解の仕方が悪いですか。
  170. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 若干質問の意味を取り違えたかもわかりません。お許しください。私が申し上げましたのは、国営の灌排事業の負担金の償還の問題でございます。あと維持費的なものは当然その受益者が負担するという形になります。それは営農の形態によって金額的には差が出てくると思います。
  171. 中井洽

    中井分科員 つくる作物については、どのような御指導あるいはどのような法的な決め方をされておりますか。
  172. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 計画は、当初計画、その後地元の事情等も聞きまして、現在決めております段階ではブドウ二百二十ヘクタール、桑を八十ヘクタール、お茶を百ヘクタールです。それから花卉を五十、野菜二百というように予定いたしております。いま申し上げましたうちで、前の三つが永年作物でございます。これが大きく分けてくくりまして四百ヘクタール、それから花卉、野菜、普通畑のものが二百五十ヘクタールということになっております。そのほかスイカ、キャベツ、白菜、バレイショ、こういったものを裏作等で予定いたしておるわけでございます。
  173. 中井洽

    中井分科員 実は、この計画ができました当時は、私どもの郷里は全く山間僻地でございまして、この計画自体が立てられたことに大変喜びを感じておったわけでございますし、また私ぐらいの人たちが将来の楽しみとして農家の跡継ぎをやろう、こういう形が郷里全体の空気であったわけでございます。ところが、御承知のように名阪国道等が開通するあるいは交通の優等がよくなっていく、近所あたりが土地開発等で、変な意味でありますけれども山林が高い値段でどんどん住宅開発に売られていく、あるいはまた工場等が次から次へと進出してまいって、なかなか農業の跡取りというのは出てこない、出てきても赤と秋の日曜日に米をやるだけで、ふだんこういう形で耕していただいた広いところをやろうという意欲、空気というのが、計画をいただいた時点とすっかり変わってきておるわけでございます。  そういった空気の中で、確かにおっしゃるとおりに計算をしていただければ、耕していただいて水をきちっとしていただいて二十何万円上がります、だから四万円返すのは幾らでもございません、こういうことでありましょうが、たとえばそれをやる人がいない。現実に続けている十何年間、やっていく人がいないという農家の悩み、あるいは逆にそういう返すのがなかなかつらいがゆえに、勝手につくるものを決められて自分の好きなものはつくれないからなかなかむずかしいのだ、こういう不満等が、ずいぶん勝手な話は勝手な話でありますが、出てきているわけであります。そういった点の処理。たとえば大阪から車で来たら一時間半くらいで来ちゃう。奈良だったら四十分で来るわけであります。名古屋からだって一時間四十分であります。名阪国道沿いの開発された畑なんか、はっきり言えば貸し農園にするのが一番いい、こう言うのですよ。おじいちゃん、おばあちゃん、息子はもうやらぬようになったし、せっかくつくっていただいたのに悪いし、お金を返さねばいかぬし、貸し農園にする、そうしたら幾らでも採算がとれるじゃないか、そういうことにさしてくれないだろうかといういろいろな希望、要望が非常に出てきているわけであります。そういった点について、計画というものはそう一遍に何もかも変えるわけにいかぬでしょうし、おつくりになったときのいきさつあるいは国全体の供給のいきさつ等もあるでしょうが、そういった変更について柔軟な態度でお取り組みいただけるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  174. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 周囲がだんだん市街化してくる、それに伴って経営者の姿勢も農業から遠ざかるようになってくる、兼業化が一般的に進むということは確かにございます。これは何も三重県の青蓮寺地区だけでなく全国的にも見られる傾向でございます。そういう中で専業的あるいは中核的な農家をどう確保していくかという問題は確かに営農の問題としてございます。私ども、兼業化が進み小規模の農家がたくさんできるということよりは、やはりできるだけ中核農家に経営が集中することを望んでいるわけでございます。そういう意味では、この青蓮寺地区の事業は、地元増反といいまして従来の既存の農家の経営面積を広げるということを内容としていたものでございますが、その担当者について、本当に跡を引き受けられる者に肩がわりしていくということは、地元での相談なりまた計画の検討の段階考えられる話だと思います。  それから作目についても、これは強制するものではございません。本当に何をつくりたいか、どういう技術なり意欲を持っているかということに応じて、作目の選択はおのおのの判断を一番のベースにすべきだと思っております。  ただ、いまの経営者の問題にいたしましても、それから作目の問題にいたしましても、これは集団的にまとまって経営をやる、耕作を行うということが一番有利になることは事実でございます。せっかくまとまった団地をつくるわけですから、そういう営農形態を希望する。そういう意味で計画的な一つの指針を持っているわけで、これを一つのめどにして現在まで地元にお話しをしてきているわけでございます。できるだけまとまってやるという前提のもとに、現在の計画はこれはこれとして皆様にも承認していただかなくちゃならぬわけですが、今後、将来の問題としてそれが絶対的なものであるかどうかということについては、その事態に即応して弾力的に考えていかなければならぬ面があると思っております。
  175. 中井洽

    中井分科員 郷里でお尋ねをしたり、ときどきいろいろな方にお聞きをしても、農家の方々はほとんどつくる作物も決められておるのだという受け取り方をしているわけであります。皆さんの方に聞きますと、自由でございます、ただし集団で、こう言うわけであります。それじゃ一つの在所で、桑をつくることにしてください、しましょう、こういうことになって、わしゃ桑かなわぬ、こう絶対言えぬのであります。そうしますと、結果的にはほうってしまう。ほうってしまったら、お金をどうして返すのだ、自分の従来持っている孔たんぼの米の上がりから払っていく、非常にばかばかしいような話が実は出てきているわけですね。私どもは、青蓮寺のパイロット事業というのは非常に楽しみにしてますし、農業全体のためにとっても私どもの郷里のためにとってもぜひ成功してほしいし、私どもの郷里の農業が前向きに進んでほしいわけであります。しかし、現実にはいろんな問題が出ております。そういう問題を、おっしゃるように、ここで本当に自由にやらしてくれるという説明あるいは計画変更ももう少し自由にできるんだということ、これらを、やっている最中になかなかやりにくいかもしれませんが、地域できちっと御説明を願えますか。
  176. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いま先生がおっしゃられましたけれども、やっている最中になかなか言いにくいだろうということは事実あるのでございます。といいますのは、一つ一つ意見調整をやっておりますと、いつまでたっても事業内容が確定しないというようなことにもなりますので、どこかで踏み切ってこういうことでやるんだということで進めていく、そしてまたしばらくたったところで、現にこの前がそうだったわけでございますが、また実情を勘案して手直しするというようなことになるのかと思います。  いずれにいたしましても、現地の要望に沿わない、事実結果として不毛の地になってしまうというようなことがあれば、これはまことに残念でございます。現地の農業の前進のためにということを基本に置きまして指導に当たっておりますところの農政局それから県当局、県当局は営農についてかなり積極的に関与しておると思いますので、そういったところとも打ち合わせまして、適切な指導、調整が行われるようにいたしたいと考えます。
  177. 中井洽

    中井分科員 くどいようでありますが、たとえば、つくる作物をお決めになるときに酪農ということが一つも入ってないわけであります。こういうところで開墾して、酪農というのはパイロット事業そのものの趣旨に合うのかどうかわかりません。しかし、私どもの郷里であなたがおっしゃった専業農家、中核農家と言われる人たちは全部酪農です。各地で自分の集落でその酪農をやろうたって臭いという形で一番農村できらわれておるのは酪農農家なんです。かつては全部飼っておったんですけれども。そういう形でそういう人だけが専業農家なんです。あと野菜やらでめったに専業にやっておる人はいないのですよ。そうすると、初めの段階で牧草地をやりたい若い人たちが、十人くらい集団で申し込んだってノーという形で断られた。ようやく最近やっとどこかの地区の方々の理解で貸していただけるようになった、こういうことでございます。そういうことを考えると、私は、おっしゃるように柔軟に対処していると言われるけれども現実に地域ではなかなか縛られた形での農業、こういうことであろう。農家から見ると、そこまで縛ってつくるものまで決めるんだったら、ちゃんともうけさせてくれるのか、支払い責任を持ってくれるのか。そうすると、さあそれは二十八万円くらい入るから何ぼでも払えますよ。こんなこと言われたってなかなかむずかしいわけであります。虫のいい話もありますけれども、ひとつそういったことも含めて御指導をいただきたいと思います。  それから、もう一つは大変細くて恐縮なんでありますが、この農家が大体八反から一町くらいめくっていただいておるのだと思うのでありますが、その中に自由に小屋をつくれないのであります。たとえば、いままで畑でなかった山地へめくっていただくわけですから、しばらく乗り物に乗っていく、歩いていく、道具を持っていくわけであります。明くる日も畑へ行くというのに道具を持って帰らなければいけない、生理的な要求があってもやれない、こういうことであります。小屋建ててよろしいか、だめだ。それはやはり下がめくってあってということでございます。そういうことに対する指導をどのように計らっていらっしゃるのか。本当に自分のめくっていただいた畑に自分の好きなように建てられない。家建てるわけじゃないでしょう。農作小屋を建てられない、そこのところはどうですか。
  178. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 この事業は農地開発、作物をつくる農地をつくるということが前提でございます。そして、そのために山を平らにする、土壌が悪ければ土壌改良も行うというようなことでかなり多額の投資をして、しかも国費の負担が七五%というような高率で行われる事業でございます。そういたしますと、やはりその趣旨、目的にかなったような使い方をしていただく、またそういうことによって各農家の負担の額も決められるということになっているわけでございます。したがいまして、目的以外に使われるということは、これは避けなければならない。  そこで、いまお話しのように農業用の施設、小屋とか何かそれに類するものをつくってはいけないかということでございますが、これは開発事業でやらなくても別途それなりの補助事業あるいは特に融資事業でもって施設用地ともども施設をつくるということは可能なわけでございます。私どもとしましては、やはり開発事業におきましては農地として使っていただきたい。そうして施設用地を別途必要とするのであれば、それは別途の事業でもって融資なり何なりの手法を用いておつくりいただきたい、かように考えておるわけでございます。
  179. 中井洽

    中井分科員 お話はよくわかる。施設用地と言ったって、大変な広さの中に決められたものがあるわけでしょう。そこへ一々戻ってやって農家なんというのはできないですよ。自分の持っている八反なら八反の田の好きなところへ農作小屋くらいつくらせたっていいじゃないですか。それはわかりますよ。お金をつぎ込んで耕したのだから農作物をつくってもらわなければならない、こうおっしゃるけれども、あなた方がそんなことを言ったって、日本じゅういま米つくったらあかん、やめておけやめておけと言ってお金を払っておるじゃないですか。計画の初めからだって別に構わないでしょう。立ち小便せいというのですが、変な話ですけれどもそういう話なんです。だから私は、一反なら一反、三反なら三反に五坪なら五坪くらいの自分の小屋を建てる、そこへ機械を入れるあるいは着がえを入れる、弁当を置いておく、それくらいは認めてやればいいじゃないか、このように申し上げておるのですが、いかがですか。
  180. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 一つは事業のたてまえというものがございまして、そういうものがいいということになりますと、現実どの程度までがいいかということが基準などがなかなかつくりがたくなります。およそ一切合財何でもいかぬというのではなくて、たとえば工事に伴って土を捨てる場所が必要であるというのは、むしろ工事自体の農用地として必要な部分であるというような考え方もあるわけでございます。お話しのような小型のものですと、これはそういう原則論というよりはむしろ現地の応用問題かと思いますが、私、実態を存じませんし、そこはやはり現地を知っている農政局なり何なりに事情を分析して判断してもらうということが必要かと考えます。
  181. 中井洽

    中井分科員 現地で柔軟にやらすというお答えをいただければそれで結構なんでありますが、なかなか現地の方が柔軟にやってくれないのですよ。私は、去年でしたかおととしでしたか、何か青蓮寺の工事で水脈が切れて井戸が枯れた。何とかしてくれと青蓮寺の事務所へ泣きついた人のことをいまちくっと思い出したのでありますが、そのときに農政局やら当地の方々は何と言うたかというたら、いままで井戸水が出ていた証拠出せ、こう言うのであります。毎日何トン出ておったか、そんなものわかるはずがないのであります。そういうのをたとえばこの排水問題一つとりましても、この地域は非常に水のむずかしい地域であります。青蓮寺の工事で切れたか切れないか、あるいは工事をしたために急に水はけが悪くなったか、なかなか証拠を立ててやるわけにはいかぬと思います。しかし、現実に排水の悪いところを替え地として充てられた人は大変な不満を持つわけでございます。また、近所の井戸やらあるいは学校のプールの水なんかが出なくなったら大変な問題になるわけでございます。そういうときにも大変な工事費で事業をおやりになっていらっしゃるわけでございます。その中で柔軟にこれらの問題に対処をして、無事五十八年にそういった排水の問題とかいろいろな問題を残さずに終わらしていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。どうでございますか。
  182. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現地がなかなか柔軟に対応してくれないということで現地の不満があるということでございますが、これはやはり国費を多額に投じているということ、会計検査という問題もございます。厳正適正に事業を執行するということからいたしますと、ある程度規則でもって対応するというようなことにならざるを得ない点もあることは御了承いただきたいと思うのでございます。しかし事業の効果が実質最大限に発揮できるように意図していることは、これはだれしも同じでございます。排水の問題も私どもも聞いております。確かに水がたまるようなところで畑作というわけにもまいらないでしょうから、それは改めてそういったものを抜くような排水事業も必要かと存じます。そういう工事が後で有効に使われるような補正といいますか調整のための事業も含めまして、できるだけ五十八年度までには終わらせたいものと考えております。
  183. 中井洽

    中井分科員 最後に、いまお答えをいただいたように、とにかくこの事業を柔軟にいろいろ対処をしていただいて、でき上がった段階で農家の方々が喜んで営農に取り組めるような事業として完成をさしていただきたいとお願いをしまして、質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  184. 片岡清一

    片岡主査代理 これにて中井洽君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内猛君。
  185. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 私は、茨城県の県西用水、その中の霞ケ浦用水の問題について質問をするわけでありますが、その前に農林大臣に若干質問をしておきたいと思います。  それは、日本の農政がますます混迷をしてきている、というのは、米づくり農政から野菜へといっても、その野菜が、いまの場合には特別な形であるけれども、通常の場合、若干生産がふえればそれで値が下がるというのがもう通例であったわけだ。そういう野菜にも魅力がない、畜産に力を入れればこれも生産制限で抑えられる、果樹を植えればこれも制限だ。こういうように、混迷と危機の状態にある日本の農政の中で、安倍農林大臣のときに六十年の長期展望をつくりました。これは二年にして狂ってしまった。そして今度は、六十五年の長期展望を出そうということになっている。まず、この六十五年の長期展望というものはいつごろまでに出せるのかということについて、ひとつ大臣関係者から聞きたい。
  186. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 御承知いただいておりますように、いま農政審議会で検討を願っておるわけでございまして、私どもは、農政審議会の結論を遅くも今年半ばでございますから大体五月の終わりないし六月の初めぐらいまでにはひとつ答申をいただきたい、こういうことでいま作業を進めていただいておるわけでございます。
  187. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 その中に盛り込まれる農政のビジョンというか方向というものについてはどういうことになっているか、それもあわせてお尋ねします。
  188. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 農政のビジョンといたしましては、やはり現在の経営規模が小さいところに一つ問題がございますから、経営規模を拡大をしていただくとともに、できるだけ国内で自給できるものは自給するという形、その中で農家の皆様方のより充実した生活環境整備もやっていくということ、あるいは後継者をりっぱに育て上げていくための後継者の育成にも力を入れていくこと等があり、それに加えて、いま先生の御指摘のございました今後の食糧の自給率をどう持っていくのかという問題があるわけでございまして、それに対しては、昨年の十一月に農林水産省としての試算を実は出しまして、それをたたき台にしていまやっていただいているわけでございます。これについては、たとえば小麦の自給率が五十四年度で大体八%になるだろうと推定されておりますけれども、それを一九%ぐらいまでに持っていくとか、あるいは大豆がいま大体四、五%でございますけれども、これを八%ぐらいまで持っていくとかいうような形でのたたき台を出しております。しかし私は、そのたたき台に出した数字よりもより自給率が高まるような形に持っていけないだろうか。それはなぜかと言えば、いろいろの政策をやるわけでございますし、あるいはアメリカの対ソ穀物輸出停止というような、食糧が一つの外交手段に使われるようになってきた、こういう事態を踏まえれば、何か見直しをするに当たってはもう少し高いところに目標がつくれないだろうか、こういうことで審議を願おうと思っておるわけでございます。
  189. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 この際、大臣は用事があって他の方へ行かれるようですから、ひとつその前に要望をして次の方へ移りますけれども、私はやはり一遍出した長期見通しというものを余りときどき変えるようなことのないようにしてもらいたい。これは非常に困るですね。出したからには、それが次に継承されて、その基礎の上に発展をしていくようなものでないと、また先へ戻ってやり直しをするようなことは非常に困る、それが一番農家が困っていることでありますから。だから、長期の展望をつくったらそれをさらに延長をしていく。そのためには土地の利用というものを明確に——土地と水と資本とそれから農民、人ですね、有力な後継者を育成していくということが要素だと思うし、それにふさわしい金利、お金とか価格政策、流通、それから国際関係がありますね。こういうことについて十分に考慮を払って、二年ぐらいで変わることのないようにしてもらいたいということを強く要望して、次に移りますけれども、そういうふうなものを出していただきたい。官房長、その辺はどうなっておるかね。
  190. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 現在、これらの問題につきましては、農政審議会の各部会におきまして、構造部会、需給部会あるいは食品の流通加工部会等の各部会に分かれまして、それぞれの専門的な検討をいたしておりまして、今後こうした見通しを基礎づける各種の要素の確定を急いでおるという状況でございます。できるだけ御期待に沿うように取りまとめたい、こう考えております。
  191. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 この問題はもうぜひ十分に考慮して、二年ぐらいで変わることのないようにしてもらわないと本当に困るのです。そういうことを強く要望しながら県西用水、茨城県の問題でありますけれども、これはいまのことと関係がありますから、先にちょっと聞いておいたわけです。  茨城県の県西地区に大規模な用水事業を実施するということに対しては、基本的には賛成であります。そこで、幾つかの条件がありますが、現在この事業というものがどういうふうに進んでいるかという概略について説明をしていただきたいのです。
  192. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 手続的には、現在その基幹的な部分については水資源開発公団事業として実施することを予定いたしております。できるだけ早期に事業着工にかかりたいということで、いろいろ手配をいたしているところでございます。それから、水資源開発公団事業に接続するところの国営事業につきましても、これは五十五年度に着工することといたしまして所要の予算を計上しておる段階でございます。それから、そういう水資源開発公団事業あるいは国営事業に接続するところの県営事業等につきましては、まだ年次的には決まっておりませんが、計画的に実施して早期に事業効果が出るように進めてまいりたい、かように考えております。
  193. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 そこで、水資源の問題でありますから建設省にお伺いしますけれども、霞ケ浦の総合開発事業、四十三年から五十八年まで一千三百億の予算で概略進められているものは順調に進んでいるかどうかということが第一点。  第二点は、水資源の問題で、いま茨城県では県議会が始まっておりますが、県議会の中でやはりいろいろ議論になっていることがあります。それは、那珂川の導水の問題や利根川の導水の問題やあるいは霞ケ浦の汚濁防止の問題、こういう問題があるわけです。この辺について現段階説明できる範囲内で説明をしてもらいたいし、後に残る問題があるとすればどういう問題が残るのか、こういうことについて説明をしてもらいたい。
  194. 堀和夫

    ○堀説明員 お答え申し上げます。  霞ケ浦の開発事業につきましては、現在水資源開発公団事業として事業を実施しております。昭和四十八年から関係漁業組合との補償の打ち合わせをやりまして、五十三年二月をもちまして大方の漁業組合との漁業補償は完了しております。  工事の実施状況でございますが、五十四年度までの進捗状況は大体五〇%程度でございます。内容につきましては、昭和四十六年度末から漁業組合の起工承諾に基づいて着手しておりました湖岸堤が一番進捗しておりまして、五十四年度末で推定の進捗率は約七九%でございます。その他農業、上水道用のポンプ施設補償工事でございます。それから船だまり等の水辺路に伴い必要となる補償工事等を鋭意実施中でございまして、昭和五十五年度においても鋭意事業の推進を図ってまいりたいというふうに考えております。  それから第二の点でございます。現在の水資源開発基本計画におきまして、いま申しました霞ケ浦の開発事業が位置づけられておるわけでございますが、昭和五十一年四月十六日に決定されました水資源開発基本計画におきましては、これだけでは十分でなくて、さらに霞ケ浦を中心とする利根水系、隣接関連水系を含めた関連開発あるいは上流ダム群等を推進する、あるいは霞ケ浦の水質に配慮するというようなことが基本計画で決められております。建設省といたしましては、現在そういう趣旨に沿いまして、そういう計画を受けまして、那珂川導水の実施計画調査を実施しておりますし、利根川上流ダム群の調査も現在のダムを推進するとともにやっておるところでございます。  なお、先ほど申し上げました霞ケ浦開発事業に関連しまして、霞ケ浦開発に関連いたします周辺地域の整備という問題が水源地域対策法の中で位置づけられておりまして、この整備計画も同時に関係省庁ともども推進されており、水質対策等につきましても下水道を重点に実施されておるところであります。
  195. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 逐次順調に進んでいると思います。これはいろいろ隘路もあると思いますけれども、ぜひこれを進めてもらいたいと思いますが、何といっても一番の問題は、事業をやってみてかかる経費と、農家がそれによって潤うかどうか、満たされるかどうかという問題なんです。農林水産省計算によると、この経費というものは反当幾らになるか、農家の負担は反当幾らになるかということを現在の時点で計算したらどうなるか、それをちょっと出してもらいたい。
  196. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 現時点での試算によりますと、霞ケ浦用水事業の概算総事業費は約九百五十五億円でございます。そのうち農業用水として負担が予定されている金額と、水源とする霞ケ浦開発事業の費用負担分として予定されている金額を合わせますと、基幹施設に対する農家負担額、これは十アール当たりで約八万円と試算されております。さらに末端の関連土地基盤整備事業に要する費用を加えますと、農家負担額は全体で十アール当たり十五万円前後というふうに見込まれます。この事業によりまして水田地域の用水施設それから畑地灌漑施設が整備されれば、土地利用の高度化、生産の安定化が図られるわけでございますが、それに伴う農家所得の増加分は、ただいま申し上げた事業に.要する農家負担分を十分償い得るものと考えております。
  197. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 その問題に関連して、私のところに二つの要請と陳情が来ている。  第一の問題は、これは岩井という市の市議会で議論した。ここでは「霞ケ浦用水事業の国営事業の一〇アールあたり負担額は、年償還金九千六百円、維持管理費が参千九百円の合計壱万参千円となり、更に併行して実施する関連土地改良事業費をあわせると莫大な負担金となり、既に完了した団体営の土地改良事業の償還金が一〇アール壱万七千円、維持管理費が一〇アール壱万参千円の計参万円で、合計すると四万参千五百円の負担となり、米の減反、米価のすえ置き、農産物価格の低迷等、農業危機が一段と強まりつつある現在、県の基本計画に示されている受益者負担率一四%を五%以下に引下げられるようご配慮願いたい。」というのがあります。  この岩井という市は、野菜の中心地ですね。このところで、こういうのが出ているということは、いまの局長説明とはかなり違っている。まず経費の分担から違っていますね。これはどういうふうな指導をされていたんでしょうか。
  198. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 いまの岩井の具体的な陳情の数字は私ども存じませんでしたが、恐らく年償還額かと存じます。私どもの方は総体の負担額を申し上げたわけでございます。ただ、総体の負担額にせよ年償還額にせよ、もとは同じ計算から出ているものと思いますので、それは後ほど詳細に資料について突き合わせて検討してみたいと思います。  ただ私どもといたしましては、やはり後の営農が順調に進むという考え方のもとに施設整備の暁は所得の増加分というものが見込まれる、それによって、いま申し上げました負担分は、年償還額ベースで計算するにせよ全体の総負担額で計算するにせよ十分償還は可能であるというふうに考えておりますし、そういう前提のもとに工事を始めることといたしたわけでございます。
  199. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 もう一つは、これは岩井とは全く距離を異にするところでありますが、協和町という町があります。ここはこの間、岡本次長と伊藤水利課長にお会いしていろいろ話した場所でございますが、ここらは、反当十五年間にわたり水田で二万九千円かかり、これも物価が上がれば上がることがある、そしてこのことはすでにはっきりと市町村には話してあるはずだとも述べた。しかし県では、この事業をすることによって反当十二万円の増収になり、その中の二万九千円だから簡単に払えるのではないかと述べているけれども、具体的な内容については話をしてくれない、こういうわけであります。  そこで、各地区ともにこういうふうにいろいろ違っておりますが、茨城県の県の方が指導している想定問答集というのが出ているのですね。これについて、この内容については御存じですか、そのことについてまず伺いたいと思う。
  200. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 先生おっしゃる協和町の人たちが、私じかに会ったわけではございませんが、陳情に見えたとき、その想定問答集が大分しゃくし定規で現地の実情に合わないというようなことを言ったということは承知しておりますが、内容については、私は見ておりませんので存じません。
  201. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 それは調印をするときに何とか成立をさせたいということで、その経費と収入というものをきわめていいかげんにして、ともかく判を押してくれということで、これをつくったことはよくわかるけれども、こういうものが一たん出たという以上は、これに対して責任をとってもらわなければ困るんですね。この中には、いとも簡単に収支がうまくいくというふうに書いてある。だから、この責任はどこでとるかという問題が当然出てきますね。聞くところによると、これは土地改良の理事には相当配ってあるようですね。よく読んでみると、この内容はかなり問題があると思うのです。一遍取り寄せて十分に検討してもらいたいと思います。こういうもので指導するということはきわめて適当でないと思うのです、これを表に出すことは。それを指導の内容としてやるのは結構だけれども、これによってやるということは後で責任をとらなければならない。これは法律でもないし、政令でもないし、何でもない。一個のメモにすぎないものが、あたかもこれでなければならないような指導が行われているという状態、この点についてはどうですかな。
  202. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 この霞ケ浦用水土地改良事業に係る土地改良区は、所要の手続を経て五十四年十二月二十八日付で、ごく最近でございますが、知事の認可を受けて設立したと聞いております。それから、その国営土地改良事業は、土地改良法に基づく事業計画概要申請に必要な事項が公告されて、現在同意を求めているところでございますが、最近の中間取りまとめによると約九一%の同意が得られたというふうに聞いております。その過程で、先生の御指摘のような、ある意味で仕事熱心の余り判こだけをとって回ったというような事例もあるいはあったのかもしれません。これは県の方のあるいは土地改良区の方の言い分も聞いてみないと実態はわからぬのでございますが、あるいはあったかもしれません。いずれにしましても、現地の実情に必ずしも即さない、あるいは現地の人たちの意向に反するというようなことがあっては後々確かに問題になりますので、私ども、その実態については県においてなおよく調査をし、地元の理解を得られるよう説明するとともに、直すべき点があれば直すということを県に伝えて指導させたいと考えます。
  203. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 これはどこに問題があるかというと、さっきの長期計画と関係があるのです。どうしても水は欲しい、しかし水を入れたときに何をつくるかという問題になったときに、確かに、野菜をつくればいいだろう、こういう話があります。その野菜が若干増反をすると値が下がるわけです。いまは下がっておりませんけれどもね。米はこれからますます減反の方に行く。畜産物もうまくない。そうなると、かかる金だけはきわめて明らかであって、収入のところがないから、その部分についてはいいあんばいに書いてあるわけです。それにもかかわらず、水が欲しいから判を押してくれ、こういうことで判をとって歩いているということが現状なんですね。それで、金は払わなくてもいいから判だけ押してくれということで判を押した。ところが、後になってみるとそうはいかない。判を押したら金を払わなければいけないのだよ、こう言われると、それじゃ困る、脱退しようじゃないかというわけで、協和町の約五百戸の農家が、一地区が脱退をするということでこの間交渉に来て、岡本次長や伊藤水利課長の話を聞きながら帰っていって、県、町それから受益者と話をして、この脱退の問題については一応の方向が決まったようでありますけれども、受益者自体が脱退をするということでありますから、それはやむを得ないだろう。しかし将来水が来て、その地域がよくなって、またもう一遍加入したいということになれば、いままでの金はもらいます、こういうお話をしてあるわけだから、これもまたしかるべき方法だと思うのですが、現状においては脱退をしたいという人がかなりいる。それが今度は連鎖反応を起こせばかなりの部分について問題が起こる、こういうことになりかねない。  このような状態の中で、この営農作目について何か新しい指導をされているのかどうなのか。これは先の話だから、それはそのときだと言われればそれまでのことだけれども、いませっかく六十五年を展望する新しい方向が出るのですから、それの柱を幾つか立てて、その中で農家がこれならやっていけるという確信を与えなければ、せっかく水が来てもこれはどうにもならないのじゃないかという形になるから、その辺のところがいまのところ非常に心配ですから、行政はやはりその辺をポイントにしてやっていかなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  204. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 確かに、一般的に何をつくるかというのは現在の農業経営の大きな問題点であろうかと思います。水は欲しいけれども、そういう水を使う適切な作物がなかなか見つからないというようなこと、それから負担がなかなかきついというようなことから、一部の地区においてはいろいろ意見もあるということは、この種の事業には往々にある話でございます。ただ、いま先生の御指摘のように、これ自身は、大きなことを言うようでございますが、日本の農業経営全体をよくしていくことのためにぜひ不可欠の必要な事業だと考えております。その意味で、目先の判断だけでなしに、本当に事業の効果というものを判定して賢い選択をしていただきたいというふうに私どもは思っておるわけでございます。波及するようなことがあって事業自身がうまくいかないということがあれば問題でございますので、いまの協和町の問題も含めて、営農指導には十分安心できるような体制を整えるように指導してまいりたいと考えております。  何をやらせるのかという話でございますが、茨城県、特にこの地域は、御存じのように畑地中心の地域でございます。従来も野菜の主産地として計画生産がかなり行われている地域でございますので、その方向をさらに伸ばすということをべースに考えております。作目については、押しつけるわけではございませんが、この地域では、キュウリ、トマト、スイカ、白菜、レタス、こういった国とか県によって生産なり出荷に対しても安定が図られている品目を中心に各種の野菜類、それからそれとの輪作体系が組まれる落花生あるいは麦といったようなものを予定いたしておるわけでございます。なお今後とも現地の意見、希望等も聞いた上で、こういう営農計画については慎重に検討していいものをつくっていくようにしたい。そのための県の指導も十分徹底するように、私どもも配慮してまいりたいと考えております。
  205. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 この問題に先駆けて、かつて国営吉田用水という水の問題がありました。この問題について当時の調印のときに、水が必要だから、お金は要らないから判を押してくれということで吉田用水事業はでき上がった。ところが、昨年の六月ごろから賦課金がかかってきた。反当九千円。それで問題が起こりまして、その問題についてもそれぞれ関係機関に要請をして一定の方向に進んでおりますが、このことといまのことが同じような形になっては困る。だから、必要だけれどもやはり注意をしておかなければならぬということで、いま注意をしている。  それで協和町の問題でも、決裁金の問題をどうするかという問題でありますが、脱退した者については決裁金は取らないということで話が進んでおるようであります。  なお、この際、私は一つ、要望しておきますが、いま局長から話があったように、あの地区は畑地であり、それから水田の土地でありますけれども、ここには筑波研究学園に農林水産省の技術会議が多く移転をしてきている。技術者が相当おります。そこで、近いところにあるわけですから、そういう機関も活用して、もう少し地域の特徴を生かして計画的な指導と流通問題を考えていく必要があるのではないかと思うのです。残っている青年はきわめて熱心な青年です。先ほどから要請があった岩井はもちろん野菜の産地だし、協和町は最高の野菜の生産地ですね。そういうところにこれから手を加えようとしても、技術としてはそれは必要かもしれないが、流通、価格という問題がより重要な問題だと思うのです。こういう点については、農家の手ではどうにもならないことなんです。だから、行政がやるべきことはむしろ流通面、価格面それから加工といった問題で、農家自体が自分は原料だけつくって仲買人やブローカーに取られるのではなくて、農協などをもっと活用して付加価値というものを農民の所得にかえていくということをしなければいけないと思うのです。そういうような場所であるだけに、しかも東京、横浜という大消費地があるだけに、野菜でいくならば野菜の生産団地をつくって、それを活用するような方向で行くことを私はやはり考えてもらいたいと思う。そのことは、先ほど農林水産大臣から話のあった六十五年を長期展望する計画と結びつけてやってもらいたい、それは茨城県を主としてやってもらいたい、こういうことを要望したいと思うのですが、これについて最後のお答えをいただいて終わります。
  206. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 竹内先生の御意見、きわめてごもっともに存じます。私どもも、一々申し上げると長くなりますので省略いたしますが、そういう御趣旨を体して今後とも努めてまいりたいと思います。
  207. 竹内猛

    竹内(猛)分科員 終わります。
  208. 片岡清一

    片岡主査代理 これにて竹内猛君の質疑は終了いたしました。  次に、斉藤正男君。
  209. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 私は米と学校給食の問題を中心にして、農林水産省、特に食糧庁関係の皆さん、さらに文部省の皆さん方に数点にわたって伺いたいと思います。  まず最初に、文部省の方に伺いますけれども、行政改革に伴いまして、学校給食を実施いたしております日本学校給食会と日本学校安全会の統合が日程に上っております。承りますと、日本学校健康会という名のもとに法案も今国会に提出をされているというように聞いておりますけれども、その構想と日程的なめどについて、まず最初に伺いたい。
  210. 坂元弘直

    ○坂元説明員 先生御指摘のとおり、今国会に、日本学校給食会と日本学校安全会を統合いたしまして日本学校健康会という新たな特殊法人を設立するための法案を上程いたしまして、現在御審議を願おうとしておる段階でございます。これは放送大学学園を特殊法人として設立することに伴いまして、行政機構の合理的再編成という観点から、文部省の特殊法人を統合するということが課題になりまして、日本学校給食会も日本学校安全会もともに児童生徒の健康の保持、増進に深くかかわりがある業務を行っておるということで、両者を統合いたしまして、児童生徒の健康の保持、増進のための業務を総合的に推進していこうというものでございます。  これに伴いまして、やや細かい説明になって恐縮ではございますけれども、役員数などにつきましては、常勤の役員を七人から五人に減らす、あるいは非常勤の役員も六人から三名に減らすというような縮減をいたしておりますし、それから職員につきましては、何せ職員が現在働いておるということで、そう簡単にはなかなか合理化できないということではございますけれども、今年度と比較いたしまして三名の職員を縮減するということ、それから予算などにおきましても、管理経費等につきまして両者の統合することによって生ずるメリットというものを生かしまして、管理経費の削減等に努めて処置いたしました。  日程的には、国会で法案が成立させていただければ、私ども、本年度の十月一日からこの新法人を発足させたいというように考えております。
  211. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 二つの特殊法人を統合して学校健康会というものがつくられる、その役員構成なり日程的なものについては理解できました。中央ではそのような合併が行われた場合——私はつまびらかではありませんけれども、各都道府県単位にそれぞれの学校給食会、それから学校安全会については安全会の支部という形で今日まで運営されていると確認をいたしております。もしそうであるとするならば、中央の統合が行われて両者が合併をし、日本学校健康会が発足した場合、各都道府県の現存する学校給食会あるいは学校安全会の支部はどういう関係になるのか。地方組織について伺いたい。
  212. 坂元弘直

    ○坂元説明員 現在、各都道府県には都道府県の知事が認可いたしました財団法人形式の都道府県の学校給食会がございます。この都道府県の学校給食会が日本学校給食会からお米、小麦粉等の基幹物資を中心とする給食物資の供給を受け、そこから各学校現場に物資の供給を行っているわけです。それからもう一つは、いま先生御指摘のとおりに日本学校安全会には大体三名から八名程度の支部が各都道府県に置かれております。合併いたしましても財団法人の各都道府県の学校給食会はそのままいまの業務を、もちろん日本学校健康会と別個の財団法人として従来の機能を果たしていただくように期待いたしておりますし、それから日本学校安全会の支部につきましては、日本学校健康会の支部にはなりますけれども、その日本学校健康会の支部の業務は従来日本学校安全会が行ってきた業務に限って支部として機能していただくというように考えておりますので、都道府県段階での業務につきましては、名称は変わりますけれども、現在と変わりはないというふうに考えております。
  213. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 そうすると、この行政改革というのは中央における日本学校給食会と日本学校安全会を統合して日本学校健康会にするだけであって、地方の組織と運営については従前と全く変わらない、こういうように解釈してよろしいですか。
  214. 坂元弘直

    ○坂元説明員 そのとおりでございます。
  215. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 いまお話しを聞いてやや安心をいたしたのでありますけれども、十月一日から新しい財団が行政改革の名のもとにおいて中央では発足をする、しかし地方における業務は、組織といい運営といい全く従前と同じであって、学校給食なりあるいは学校安全についての業務運営は全く支障ない、中央の改組によって何ら支障のあるものではないというように断定できますか。
  216. 坂元弘直

    ○坂元説明員 私ども何ら支障がないということで運営していきたいというふうに考えております。
  217. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 地方における組織、機構、運営については全く従前どおりであって、問題はない。もし問題があるとすると、私はやはり中央だろうと思うわけです。役員も常勤が七名から五名に、非常勤が六名から三名にというように変わる。当然これはだれかが会長をやらなければならないわけですね。だれかが常任をやらなければならないというような場合に、日本学校安全会と日本学校給食会がこの統合の場でいたずらな競合をしたりなわ張り争いをするというようなことは、これはゆゆしき問題だというように思うわけであります。これは文部省関係の委員会でございませんので、学校給食課長にこのようなことを申し上げるのはちょっと恐縮でありますけれども、私はやはり大部分の実務を担当する地方の組織と機構が現状どおりであるということならば、中央のこの改革、改組のことによってもし学校給食なりあるいは学校安全について手抜かったというようなことになれば、これは大変なことだと思うわけであります。ぜひ円満な統合合併が行われ、新法人が学校給食と学校安全のために全力を挙げて取り組んでいただきたいというように思うわけでございます。  そこで、米穀給食の実態について農林水産省から伺いたいと思うわけでありますけれども、私が承っているところでは、米を学校給食に取り入れることが本格的に取り組まれたのは五十一年度以降だということであります。文部省学校給食課の言い分は別として、農林省なり食糧庁の立場から、日本の学校給食の流れというのは、戦後三十年続いたパンと牛乳、牛乳は大部分が脱脂でございますけれども、そういう大きな太い流れが流れていて、米を学校給食に入れるということにはかなりの抵抗があったといいますか、問題があった。ようやく五十一年から米飯を学校給食にということになったけれども、今日なお学校給食の実態というのは、パン、牛乳といった流れが大宗ではなかろうかと想像するのであります。そんなことはない、ずいぶん改革されましたということだろうと思うのでありますけれども、大づかみに学校給食に米穀を取り入れるという考え方に立った五十一年前後から今日まで、どういう御感想を持っておられますか。きわめて多量に採用され満足ですということなのか、あるいはまだまだこれからですとかいうような分け方をすると、文部省がいて言いにくいかもしれませんけれども、率直にひとつ御意見を承りたいと思います。
  218. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 学校給食への米飯導入につきましては、文部省とも協力をして進めてまいっておりますが、五十一年度から始めまして、必ずしもその進度は上がっておらなかったというふうに考えております。しかし、最近に至りまして、学校給食用の米の売り渡し価格を引き下げるというような措置を講ずるようになりまして、近年急速にその比率が高まっておるということと考えております。具体的には、学校数の七八%が米飯導入をいたしておりますし、そのうち週二回以上の学校の普及率は三四%ということになっておりますので、その前年の五十三年五月が二〇%であったのに比べれば、近年急速に伸びておるのではないかというふうに考えておりまして、このような勢いで今後五十六年、週二回の目標を達成するように努力したいというふうに考えております。
  219. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 私の手元の資料では、米を学校給食に採用した五十一年が予定量一万トン、実質使用量一万一千トン、五十二年予定量二万トン、実質使用量二万一千トン、五十三年予定量四万トン、実質使用量三万二千トン、五十四年予定量六万トン、これに対して実質使用量四万七千トン、さらに予定としては、五十五年に八万トン、五十六年に十万トンというような計画を立てておられるというように聞いておるわけであります。とりようによっては大変な伸びでございますし、特に週五回の給食回数のうち二回を米飯による給食というようなことが、実施校につきましても年々増加をしておるということは、米の消費という点から考えましても非常に意義のあることであるというように私は思うわけでございます。  そうした意味で、御承知のとおりパン、ミルクといった形の流れが生まれておりましたので、給食設備、施設、これに一時大変な抵抗があったことは当然だと思うわけであります。したがって、文部省はもちろんのこと、農林省におかれましても、炊飯施設等の助成については大変な御勉強をいただいたというように聞いております。  ここで特に米を原材料とした給食について文部省のとった補助政策、農林省がとった助成、補助政策がおわかりになりましたら、文部省は文部省側として、農林省は農林省側として御説明いただけませんか。
  220. 坂元弘直

    ○坂元説明員 学校給食、特に米飯給食を自校で炊いて提供するというやり方と、それから外部に炊飯を委託してやるというやり方と両方ございますが、私ども予算措置いたしておりますのは、自校炊飯をする場合には、それに必要な炊飯がまや何かを設置するために施設を増設する場合の施設の増設、あるいは炊飯がま等の設備を設置するというその経費に対して二分の一の補助を行うということで、五十一年度から予算化して措置いたしております。ちなみに本年度、五十四年度はその予算額が補助金の額で四十一億でございますが、来年度はこれを四十七億の措置をいたしております。  それから、これは私どもあるいは農林省とも別ではございますが、仮に自校炊飯をする場合には当然労働過重になるであろうということで、臨時職員を雇う場合、週二回、一回に二人ということで、普通地方交付税の中で賃金相当分を積算して措置をいたしております。  以上でございます。
  221. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 学校給食導入に必要な施設の助成といたしまして、農林省といたしましては委託炊飯の施設の導入事業として五億円、それから弁当持参のための保温施設として五億円、合計で十億円の予算を組んでおりますが、農林省の予算といたしましては、このような施設予算よりもむしろ米を値引きする予算が大きいわけでございまして、この予算額が五十四年度では百三億でございましたものが、五十五年度では百四十九億、約百五十億ということで五割増にいたしておりまして、この値引きの方でできるだけ米飯の給食を促進していきたいと考えております。
  222. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 文部省も農林水産省も、特段の努力を米飯給食のためにされていることが予算面でも明らかになっておりまして、大変結構なことだと思いますけれども、この学校給食というのは、おやりになっていておわかりのとおり、父兄の負担過重の問題これあり、子供の食に対する嗜好これあり、あるいは職員の労働条件といいますか、これあり、市町村の負担ももちろんありますし、これは理屈や口で言うようになかなか簡単にいかないのですね。特に新しい学校給食の内容を取り入れる、変えるというような場合、どうしたって適正な価格でなければならぬ、適正な価格というよりもより安い価格が望まれる、しかも均質なものが全国に普及されなければならない、もちろん安全はイの一番に考えなければならぬというようないろいろなことがございまして、私どもも補助の整理だとか助成の整理だとかといろいろ言いますけれども、整理できない、当然残っていく緊急必要な補助なり助成の対象になる仕事だというように思っておるわけでございます。  ところが、実態を見てみますと、全国で児童生徒数が非常に多いところが米飯給食というのはおくれているわけです。それで比較的児童生徒数の少ないところで普及をしているということで、文部省にお願いして、ベストテンはどこまでで、児童生徒数がどのくらいあって、ワーストテンは——これでワーストとかベストというのもおかしいのですけれども、どのくらいでどこだというようなことも資料を出してくれと言ってありますけれども、少なくともワーストを調べてみますと神奈川がトップですね。これはもう米の使用量が非常に少ない。続いて大阪、東京、兵庫、福岡、広島、京都というようになっておりますね。これは一体どういうことなのか。都会の子供は米をきらうということじゃないと思うのですね。ほかに条件があってこういう結果が出ているのじゃなかろうかと私は思うのであります。このベストテンとワーストテンの児童生徒数を調べてもらうように言っておきましたけれども、お答え願いたいのと同時に、どうしてこういう大都市で米を使わずに田舎の方で米を使う給食が多いのか、理由を御説明ください。
  223. 坂元弘直

    ○坂元説明員 最初に、ワーストテン、ベストテンについての数字を申し上げますと、週二回を実施するという前提で、その週二回にどの程度達しておるかという進捗率のいい県は、栃木、秋田、高知、沖繩、富山、福島、茨城、岐阜、石川、福井の十県でございまして、そのトータルの学校給食実施児童生徒数が百八十七万に対しまして、米飯給食が昨年の五月現在で実施されております数が百七十一万、実施率は九一%で、進捗率、実質的な回数と頻度数を加味した進捗率で申し上げますと八五%に達しております。お米の使用消費量は、精米ベースでございますが、一万一千九百トンに達しておりますのに対しまして、進捗率の悪い県というのが、神奈川、大阪、東京、兵庫、福岡、広島、京都、北海道、岡山、島根。島根を除きますとほぼ政令都市を抱えております都府県が進捗率が悪いわけですが、この都府県の学校給食実施児童生徒数が五百七十万人、それに対しまして米飯給食実施児童生徒数が三百三十五万人、進捗率で申し上げますと二六%でございます。米の消費量で申し上げますと、精米ベースで七千七百トン程度でございまして、わずか百八十万の十県で一万一千九百トン消費しているのに対しまして、五百七十万人の児童生徒を抱えておるこれらの府県が七千七百五十トン程度でとどまっておるという状況でございます。  参考までに申し上げますと、全国平均の進捗率は四六%でございます。いま申し上げました神奈川以下のワーストテンの都府県が全国平均並みの四六%の進捗率を達成して米飯給食を実施していただくとすればどのぐらいの米の消費量になるかと申し上げますと、約一万八千九百トン、現在七千七百五十トン消費しておりますので、その差は一万一千二百トンという膨大な数になりまして、あと一万一千二百トン程度ふえれば計画にかなり近い線に達するという数字になっております。  それで、これらの大都府県がどうして米飯給食の進捗率が悪いかというのは、いろいろな事情がございますが、考えられますことは、一つは、農村地区を比較的多く抱えていない、特に政令都市を中心とする都市はそういう地域じゃないということで、住民、父兄からの強い要望というのが余り当局側にストレートには響いてこないということと、それからもう一点は、現場の給食調理員関係方々の中で、米飯給食をやるならば自校炊飯、ただし定数をふやして常勤の職員をふやすという前提で自校炊飯に固執しておるということで、教育委員会側と調理員関係者となかなか話がつかないというようなことでやや進捗率がおくれておるというようなことが原因じゃなかろうかと思っております。しかし、これらの都府県も、ことし先ほど食糧庁長官から御説明いたしましたとおりに値引き率が六〇%、七〇%になったということで、かなり調理員関係者の方々話し合いを持ち前向きに取り組んできておりますので、ぜひこういう方向で私どもとしても給食調理員関係者にも強い御理解と御協力をお願いして前へ進めてまいりたいというふうに考えております。
  224. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 週五回の給食をパン食二回、米飯二回、めん類一回というような目標を立てられているようでありますけれども、この米飯そのものがやっぱり炊飯等で、いまもお話がありましたようにどちらかというと消費能力のうんと強い政令都市を含めた十県が進んでいないと思うのです。これを何らかの形で、たとえば米を原料にしたスパゲッティ的なものに変えていくというようなことがもし可能ならば、なおその消費量は伸びるというように思うわけであります。  そこで、大臣、最後に、もし米を原料にしたいわゆるパンでもなければ飯でもない、ということになってくるとマカロニ、スパゲッティ的なものになるわけでありますけれども、先ほども申し上げましたように、均質な適当な価格のものをしかも安全にまんべんなく普及できて、しかも給食に要する人件費、手間といったようなものが省けるというような新しい分野が開拓された場合、農林水産省として、そういう食品の原材料に対し、大変な助成を六〇%も値引きをして学校給食用飯米については配慮をいただいておるわけでありますけれども、そうしたものに対する原材料の助成といったようなものもぜひ図っていただきたいというように思うわけでありますが、その点はいかがでございますか。
  225. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 御指摘の点は、私どもいま米というものの消費に対して一生懸命になっておるものといたしましては大変ありがたい御意見かと思います。ただ問題は、いろいろ全農あたりでもあるいはその他のメーカーなどでもいま工夫をしていろいろ試験をしてつくっていただいている最中でございまして、そういうものがいま御指摘のとおり相当量規格といいますか、品質において均一的なものが出てこないと、なかなかこれは取り上げられないと思うのでございますが、そういうものが出てきたことを前提にして考えた場合には、文部省とも相談をしていかなければなりませんけれども、極力私どもはそういうものも取り上げていけるような方向にぜひ努力してもらいたい、これは文部省にお願いをしなければならない、こう考えておるわけでございます。
  226. 斉藤正男

    斉藤(正)分科員 もしそういう適当なものがあるのだということでしたら、いまお答えをいただいた方向で文部省と協議の上十分御高配をいただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
  227. 片岡清一

    片岡主査代理 これにて斉藤正男君の質疑は終了いたしました。  次に、薮仲義彦君。
  228. 薮仲義彦

    薮仲分科員 先般厚生省が発表しましたH2O2は発がん性があるから今後の使用を禁止するという事柄、これについて若干質問をさしていただきたいと思います。  この問題は、御承知のように一月十一日に厚生省が環境衛生局長発表ということで、食品添加物のH2O2が発がん性があるということで、今後使用については十分注意するということから始まったわけでございますが、国民の生命にかかわる問題ですから、発がん性の物質の使用についてこのような発表を直ちにしたことについてはそれなりに評価できるわけでございますが、この環境衛生局長の通達の内容というものが、ある意味では非常に正確に理解されないというか、あいまいな面が多過ぎた。ですから、今後こういうものを国民に伝えるときにこうあっては困るという立場から、厚生省に私は何点かお伺いをしておきたいと思うのですが、その趣旨は、こういう大事な問題です、やはり正確に伝達してほしい、こういう意味で何点か申し上げます。  その第一番は、ここに環境衛生局長の通達があるのですが、最初の方には、助成した研究においてこのようなことでございますという経過がございまして、要点だけ読みますと、本実験は発がん性の程度は弱いと目される、この実験はマウスだけである、それからきわめて大量投与の実験である、こういう経過のお話があって、問題はその次です。「食品中に過酸化水素が残留することは好ましくないものと考える。したがって過酸化水素を食品加工上可能な限り使用しないよう関係省庁協力を得て」云々、こうなっておるわけです。ここには「可能な限り使用しないよう」、こうなっているわけです。そこから少し文章を読んでいきますと、時間の関係で中間は飛ばしますけれども、ゆでめんであるとかシラス、かまぼこに使われているのは非常にごく限られた部分しか使われておりませんよということを言って、この結論のところで、「この程度のレベルのものであれば食品の保存、調理、そしゃくによって実質上胃内へ過酸化水素の形で入ることはほとんどないと見られているので今、直ちに過酸化水素使用食品が危験であるとは考えられない」 最初の段では「可能な限り使用しないよう」、次の段では「危険であるとは考えられない」となっている。  この通達をまともに受けた業界並びに県は理解に非常に苦しんだわけでございます。これからこのような大事な問題を通達するときには、だれが読んでも、確かにこれは表現としてはまことに当たりさわりない結構なことであるかもしれませんけれども、対応する業界もしくは県にすれば、こういう表現というものは非常に混乱を招きますので、正確な判断、そして適切な行政指導ができるような明確な文章で私は発表すべきだと思うのですが、厚生省の見解をまずお伺いしたいのです。
  229. 藤井正美

    藤井説明員 先生御指摘のとおりの発表を一月十一日にしたのでございます。御指摘のように、確かに一部において誤解を招くようなことがあったことは否めないと思っております。その点については非常に遺憾なことと考えております。  ただ、発がん性物質であるということが明らかになりました時点において、現在これを人間との関係において遮断しているというのは国際的なルールとなっております。そういった関係から、これをどのように国民に伝えるかという問題が種々考えられるわけでございますが、衛生行政の面の立場と、またそういったものを使用している生産業者の方の立場と両方の立場があり得るわけでございます。そこで私どもは、「残留することは好ましくない」という表現を用いまして、過酸化水素の使用の自粛をできる限りお願いしたわけでございます。  しかしながら、ここで起こります安全面の立場というものを国民に理解いただくために、過酸化水素の現在の使用のレベルにおいて、また残留のレベルにおいてはそれを勘案してつけ加えたものでございます。
  230. 薮仲義彦

    薮仲分科員 それはそのとおりなんですよ。われわれは確かに専門的な立場からの説明、専門的な表現、よくわかるのです。私が申し上げたいのは、いわゆる国民的なレベルでこの問題をどう受けとめたか、そういう点を十分注意していただかないと非常に困る。  たとえば第二点を申し上げますと、このH2O2は発がん性があります。でも実際は同じ水産練り製品、あるいはシラスあるいはうどん等にいたしましても、必ずしもすべての製品がH2O2を使って殺菌しているということではないのです。そのことをテレビを見、新聞を見た方々が正確に受けとめたか、そうではない。水産練り製品について非常に危惧を抱いた。シラスに、あるいはまたうどん等に一抹の不安を覚えた。  そこで私が申し上げたいのは、正確にと冒頭に申し上げた。確かにH2O2を殺菌剤として用いている地域、製品もありますけれども、ほとんどH2O2を使っておらない県並びに生産地もありますし、製品もあるわけです。そういう点が今度の場合は何ら配慮されていない。画一的に、H2O2が発がん性がありますと。おっしゃるとおりです。国民の食生活から遮断すべきですと心当然です。でもそれを正確に伝えないと、単なる遮断ではなくしていたずらに不安を招く、こういう点がありますので、正確に、この場合も、使用している製品は、うどんの中でもこれだけです、あるいはシラスの中でもこれだけです、これら産地のものは使っておらずというような、もう少し思いやりのある通達が当然あってしかるべきだったと思うのですが、いかがでしょう。
  231. 藤井正美

    藤井説明員 先生御指摘の点につきましては、別に当日食品と過酸化水素という書類を配付いたしまして、めん類におきましては七〇%が過酸化水素を使っていないこと、また魚の練り製品につきましては、かまぼこ類についてはほとんど使われていない、ゆでかまぼこ類に使われているということを述べるとともに、市場におきます食品監視データの結果から、これらに含まれております過酸化水素の含量というものを、シラス並びにめん類等について平均値を並べて、私どもといたしましては十分にその点は配慮いたしたというふうに考えているわけでございます。  ただ、私どもの発表に対しまして、一部の自治体におきまして、私ども考えておりますよりもやや厳しい業界指導に走った点があった。そういった点で、先生御指摘の混乱というものを一部の地域に起こしたということは非常に遺憾だと考えております。
  232. 薮仲義彦

    薮仲分科員 もう一つ申し上げたいのですが、私はこれは必ずしも悪いという立場で言うのではなくて、やむを得ないということも十分承知の上で言うのですが、いわゆるいまマウスによる発がん性の実験方法、TD50というような言い方もされておりますけれども、こういうようなことで投与をして発がん性がありました。これがそれでは、先ほど御答弁にもありましたように人間との直接の関係は一体どうなるのか、こういう点で確かにもう少し生活実感として正確に伝わってほしい。というのは、このマウスの実験による投与量というものは通常マウスが飲んでおる、摂取した水の中に入っているわけですから、われわれがたとえば「なると」、私の住んでおるところでも「なると」をつくっております、H2O2の殺菌を使った……。しかし、いま課長が先月一カ月間自分で「なると」何切れ食べたかな、こうお考えになると、あの「なると」数切れという数しか出てこないと思います。ではこのマウスによる実験というのはどんなものだ、これはもう課長が先刻御承知のとおりです。この実験でいけば、人体にやれば一万二千倍から十六万倍です。あの「なると」、ちくわでも結構、ああいうものをわれわれが人間の生活のレベルで食うとなると、一日四トン近いもの、食えない量ですよ。四トンなんて食えない。食えない量を六十歳まで毎日立て続けに六十年間食べなければならないのですよ。離乳期になった赤ちゃんが六十歳になるまで毎日四トンずつ食うのです。理論的には食えない、不可能なんです。  しかし、それがこのような形に出てくるということについて、発がん性というようなことからやむを得ないけれども、正確に物事を伝えてほしい。正確に国民が理解することがいたずらな不安ではなくして正しい食生活というものを理解できるという立場の上から、今後こういう発表については私はもう少し慎重であっていただきたいと思うのですね。この点いかがでしょう。
  233. 藤井正美

    藤井説明員 先生御指摘のように、TD50から計算いたしますと四・一五トンというような計算方法があることは事実でございます。ただ、現在の発がん性の動物実験と申しますのは、動物が一生涯を終わるのに影響を与えない最大量の投与でその物質の発がん性をながめるというのが、国際的に評価された動物実験のルールになっております。こういったルールに対して私ども行政の立場、これは必ずしも日本だけではなく国際的にも、こういう大量投与の結果起こる動物実験が人間との相関関係においてどうなのかという点については、一様にある種の疑問を持っているわけでございます。しかしながら、現在の発がん物質を探る学問と申しますのは、先ほど御説明いたしましたようなルールでやることになっているわけでございます。こうしたルールに正確に基づいてやられた結果に対して、これを国際的にわが国が破壊する、あるいは打破する、こういった概念を出すのには遺憾ながらこういう発がん動物実験における学問の大方の固まりというのは現在ございません。と申しますよりも、発がん性がそういう実験でわかった限り、人間との関係を遮断するというような概念で現在まで来ておるわけでございます。  したがいまして、そういった結果について一般方々に非常に御理解しにくい点があることは十分わかるわけでございますが、現在の科学、そしてそれに基づく行政というものについてもぜひ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  234. 薮仲義彦

    薮仲分科員 私はそのおっしゃること、ことごとく理解しておりましてあえて申し上げておるわけでございますが、厚生省にちょっとお願いしたいのは、厚生省は、このようにTD50ということで発がん物質を検出しました、これはおやめなさいとおっしゃったわけで、それはそれなりに非常に評価しております。ただ、私が申し上げたいのは、それでは逆に申し上げれば、現在食品添加物が幾つあるのですか。五十四年三月現在で三百三十四品目というのを厚生省が指定しておるわけでございますが、それでは一体この三百三十四品目ことごとく発がん性について安全なものですか、こう逆に質問した場合、安全を確認しているのが何品目でしょう。それをまずお答えをいただいた上で——私の手元にある資料ではこの三百三十四のうちまだ十九品目程度しかできてないのじゃないか、実際シロと判断しているのは八品目ぐらいしかないのじゃないか。ということは、あと三百二十数種類のものはまだまだ発がん性については安全を確認いたしておりません、それを国民の皆様にある意味では食べていただいているという、表現は妥当かどうかわかりませんけれども、実際食べている。  これは科学技術庁が資源調査会の「食品添加物による調査報告」、四十四年の五月のコメントですが、人間は一日六十品目から七十品目の添加物を食べておりますよ、これがその調査報告になっておるわけですね。そうなりますと、やはりわれわれは、おっしゃることはわかるのですが、逆に言えば、三百三十四品目の中で発がん性を確認されてないものを相当数食べているのじゃないか。  私は、そういう意味でおっしゃるのならば、厚生省はもっと積極的にこの食品添加物の発がん性の安全性について総点検すべきだ、一日も早く予算措置を講じて安全な添加物を国民の皆様に安心して提供するような体制を早く確立すべきじゃないか、こう私は考えるのですが、いかがでございましょう。
  235. 藤井正美

    藤井説明員 三百三十四の食品添加物が現在指定されているわけでございます。ただ、この三百三十四のうち、食品添加物ではありますが、ビタミン類に関するもの、アミノ酸に関するもの、また有機酸に関するもの、その他カゼインなど食品中の常在成分として存在するものが合成的につくられている、あるいは若干の化学反応で溶けやすくつくられている、こういった品目が相当数を占めるわけでございます。したがいまして、三百三十四のうち人為的に合成された、人が創造した化学薬品と申しますのは三十五品目でございます。  一方におきまして、これらの全部に発がん性等のデータをとるという必要性は、現在、過去の経験から安全性を、安全らしいという形で評価するのではなく、データ的に評価するというのが国際的な動きになっておりますので、すべてについて当たるという必要性はあるわけでございます。しかしながら、一方においてこうした発がん実験をやってくれる施設あるいはまたその技術者、こういった能力がわが国並びに世界においてもきわめて数が少ないわけでございます。  そういった観点から、これらの発がん性物質というものをどういうふうにながめていくか、現在三十品目が進行中あるいは結果が出ているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、これらの添加物をいろいろと分類いたしまして重点的に発がん性等の実験を進めていきたい、そういうふうに考えております。  また一方におきまして、わが国だけで発がん性実験をやるのではなくて、これらは国際的な協力のもとに進めていくということがさらにそれを能率化していく材料になる。そういう方面の働きかけを現在進めているところでございます。
  236. 薮仲義彦

    薮仲分科員 重ねて聞きますけれども、その必要のあるものについては早急にやるべきだと思いますが、いかがですか。
  237. 藤井正美

    藤井説明員 現在進行中でございます。
  238. 薮仲義彦

    薮仲分科員 これは最後に厚生省に要望しておきますけれども、今度の一月十一日から始まりました厚生省の発言の内容ですが、確かにいろいろな経過があってのことでございますが、一月十一日、それから一月三十日の食品衛生調査会の発表、そして最終的な二月二十日の告示ということでございますが、これを見ておりますと、ある意味では一月三十日の場合はゼロであれば使用してもいいというような、そういう理解のされ方すらございました。判断に振れがあったというようなこともございました。どうかこういうものについては十分慎重であり、しかも正確な通達の仕方を今後とっていただきたい、このことを強く要望をいたしておきます。  と同時に、これはちょっと厚生省に念のために伺っておきたいのですが、厚生省はそのように発がん性の物質は危険ですよということで通達をお出しになる。ところが、これを受けるのは業者であり、所管の省庁といいますと農水省が所管をするわけでございまして、やはりこういうものについては、かわるべきものはこうですよとか、この影響性はかくかくしかじかでございますというようなことは、厚生省として事前に農水省にきちんと話し合いもし、また代替の殺菌方法については打ち合わせるべきだと思いますが、もう打ち合わせができているのですか。いかがですか。
  239. 藤井正美

    藤井説明員 今回の発表につきましては、あるいはまたその後の法令的な措置につきましては、十分農水省と連絡をとりながら相談し、やってきたつもりでございます。最後の代替品の問題でございますが、この点につきましても直接的には厚生省の任にあるという関係ではございませんが、農水省の御協力を得て、そういう方面に大いに関心を持っている次第でございます。
  240. 薮仲義彦

    薮仲分科員 どうか関係の業界、業者の方々の被害、影響というものをおもんぱかって、今後十分そういう点の対策、配慮をいただきたいと思います。  次に、今度は被害を受けた業者の方々から具体的な形で今後の対応等を迫られた。どちらかといえば一番困ったのは農林省の方だろうとは思うのでございますが、その農林省の対応についてお伺いをしたいのでございます。  ここでやはりいま厚生省にも伺いましたように、大事なのはこのかわるべき殺菌の方法、あるいは殺菌法がなければ製造の仕方あるいは輸送手段等を変えなければならない。いろいろな問題が、これからいよいよ製造のシーズンになってまいりますので、重要な課題になってくると思うのです。と同時に、被害を受けた業界、業者の方に対して金融、税制面での対策、これが非常に重要なことだろうと思いますし、このことは大蔵省から具体的にお伺いはしたいと思いますが、農林省としていまの問題についてどうあったか、時間も余りございませんので要点だけ簡単にお答えいただきたい。
  241. 今村宣夫

    ○今村政府委員 まず、お尋ねの被害を受けた業界に対する金融、税制の措置はどうかということでございますが、水産練り製品業界を例にとって言いますと、今回の問題によって需要の減退に伴う生産中止でございますとか在庫の問題というようなことで相当な被害を受けましたので、また今後製造方法を改良しあるいは低温流通の整備等を図らなければなりませんので、私たちといたしましては関係省庁を通じまして、政府関係金融機関に対する新規の貸し付けでありますとか償還猶予の措置、あるいはまた信用保証協会による円滑な信用保証、あるいは中小企業経営安定資金制度の活用、また中小企業設備の近代化資金制度の活用等によりまして、その金融措置を円滑に講じてまいりたい。また農林水産省としましても、中小企業関係のこれらの制度資金のほかに、漁業近代化資金制度の活用についても関係県を指導していくことにいたしておるわけでございます。また、税制につきましても国税庁、自治省と連絡をとりまして、納税の猶予措置について配慮方を要請いたしているところでございます。  もう一点の、過酸化水素を使わない製造方法でありますとか代替剤の確立を早急に図る必要があるのじゃないかということでございますが、これらの点につきまして水産庁といたしましては、本年の一月から東海区水産研究所が中心になりまして、関係道県の水産試験場の協力を得ながら緊急な試験を実施いたしておるところでございます。それらの試験は、品目別にいろいろとございますけれどもこれは省略をいたしまして、ある程度の知見は得ておりますけれども、いまの現在の研究の成果を踏まえまして、代替剤の利用技術の定型化等を図りますための試験検討をさらに取り進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  242. 内海孚

    ○内海説明員 税制の面につきましては先ほど農林水産省よりの御答弁がございましたけれども、資金繰りがこの件によって非常に困難になるというような業者の方に対しては、納税の猶予等を適用いたしまして適切な措置をとるべく措置をしておりますが、なお薮仲委員からの本日の意もよく税務当局に伝えまして、遺漏なくやっていきたいと思っております。
  243. 中田一男

    ○中田説明員 金融面の措置につきましても、ただいま水産庁長官の方から具体的に御紹介がございましたように、農林水産省の要請にこたえまして、中小企業庁とも相談いたしまして、ただいまの政府関係金融機関の融資の円滑な実施でございますとか、あるいは中小企業経営安定資金制度の活用でございますとか、そういう措置をただいま実施中でございます。
  244. 薮仲義彦

    薮仲分科員 時間がございませんので最後にこれはまとめてお伺いをしたいのですが、ちょっと話題が変わって恐縮ですが、私は、現在起きておりますお米の登録店並びに未登録店の問題について、食糧庁長官並びに大臣の見解を最後に伺っておきたい。  警察庁もお見えのようですから警察庁の御意見もあわせてお伺いしたいのでございますが、結論だけ申し上げますと、現在御承知のように全国各地でこの問題が起きておりますが、先日も静岡県の浜松でいわゆる登録業者と未登録の販売を行おうとする業者との間で暴行事件にまで及んでしまいました。こういう問題は、私は現在の食管制度の上から非常にゆゆしき問題だと認識いたしております。食管法が厳然と存在する以上、国民の食糧の安全保障という立場から食管法というものは堅持されていなければならない。しかも法治国家ですから、まじめに法を守る者が守られなければならないのが日本の国であろうと私は思います。ところが、むしろいまは法を守らないことが公然と横行するような事態に立ち至ってまいりました。私はここで、やはりまじめに食管法を堅持し守っていこうというお米の登録販売店の皆さんの立場を守る上から、食糧庁長官がこの問題に対して、食管法を守る、しかもこのような不法な行為については取り締まりを厳重にするという姿勢を示していただきたいと思いますし、特に行政指導ではもう及ばないというところについては当然やはり食管法違反というようなことで取り締まりの対象、いわゆる刑事事件になるかならないか非常に問題かもしれませんが、ある程度、やはり告発をしてでも、まじめな業者を守り食管法を堅持していかなければならないんじゃないか、こう私は考えておるわけでございます。しかし、これは決して取り締まりだけで直るものじゃない。やはりもっと積極的に登録販売店をふやし、国民の皆さんに米を安定した形で供給できる体制をつくらなかった行政の立ちおくれもあるいはあるかもしれない。もっと積極的にスーパーヘテナントを出しなさいというようなこともあるいは必要かもしれない。そういう積極的な行政をやりつつも、なおかつ不法に大量にこのようなことをやる特定の業者あるいは特定の地域に対しては、食糧庁長官また大臣としても、食管法を守る立場から厳格な行政指導と積極的な対策と同時に、悪質なものについては法に訴えても取り締まるべき用意があるかどうか、その辺を食糧庁長官大臣並びに警察庁に伺って質問を終わりたいと思います。
  245. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいまの御指摘の事件につきましては、私どもも先生からお話を受けるまでもなく、食管法を堅持する立場に立って考えました場合に、非常に問題が多い事件であるというふうに考えております。したがいまして、私どもといたしましては、直接的な指導の責任を持っております都道府県と直接お話し合いをいたしまして実態の究明にいま当たっておりますが、その実態に基づきましてしかるべき処置をとり、そのことによって食管制度の健全な維持を図るように努力をしてまいりたいというふうに考えております。ただ、食管制度自体につきましてはなお改善すべき余地もございますので、現実と遊離しておる面もございますので、これらの点につきましてはなお食管制度自体についての再検討も必要であるということで、現在食管制度全体の運営についての見直しも行っておるということでございます。
  246. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま長官から答弁がございましたが、食管制度については、やはり国民の主要な食糧を安定的に確保するという見地からも、私どもは今後ともその根幹は維持をしていかなければならない。ただ現実面といたしましては、いろいろと法律の中身と現実とが非常に遊離している点もございますので、そういう点は、いま長官も答弁を申し上げましたように、やはり何らかの現実に合った形で法律あるいは制度の一環として私ども直すべきところは直さなければならないんじゃなかろうか。そして御指摘のとおり、やはり取り締まるべきものは毅然たる態度で取り締まっていく、こういう姿勢が私ども必要である、こう考えておるわけでございます。
  247. 佐野国臣

    ○佐野説明員 お答え申し上げます。  一般論ではなはだ恐縮でございますが、一般に申し上げますと、各種の行政法規におきます罰則、これは当該法令に掲げられた目的を達成するためのいわゆる行政施策の担保、特に最終的な担保として設けられておるというふうに私どもは理解をいたしております。したがいまして、食糧管理を目的とするこの種法令違反の取り締まりにつきましては、事柄の性質上、第一次的には所管行政庁の行政措置に期待して、法令違反があったからといって、直ちに警察が捜査を行うというふうな性格のものではないんではなかろうかという考え方は基本的には持っております、あくまでこれは一般論でございますが。ただ、ただいま先生が御指摘ございました、あるいはほかの省庁からもお話がございましたように、私どもの方も、実態の把握とかそういった面につきましても十分留意いたしまして、御質問ないしは御指摘があったというふうなことを十分念頭に置きまして、この種の問題に対処してまいりたい、かように考えております。
  248. 薮仲義彦

    薮仲分科員 終わります。
  249. 片岡清一

    片岡主査代理 これにて薮仲義彦君の質疑は終了いたしました。  次に、川口大助君。
  250. 川口大助

    川口分科員 限られた時間でありますので、結論を先に申し上げますが、一つは、えさ米づくりを農政の軌道に乗せられないか、こういうお尋ねであります。  大臣御承知かどうかわかりませんが、いま秋田県の雄勝町で自前で実はえさ米をつくっておるところがあるのです。秋田県と言えば御承知のとおり稲作単作地帯でありまして、しかもそれが水田単作でありますから、たんぼで転作作物を作付するという適当な品目がなかなかないわけであります。さればといって、それを畑に転換するというふうになりますと、御承知と思いますが、大体七十センチ地下水を下げるのに六十万もかかるということでありますし、さらにまた、最近は食糧が戦略物資に使われておる。戦略物資に使われるということは、つまり食糧が不足だから戦略物資になるわけでありまして、そういうことを考えますと、いずれ将来は食糧難の時代がこの世界にやってくるかもしらぬという考えもあるわけであります。そうしますと、せっかくたんぼを畑に直しましても、またぞろたんぼにそれを変えるというふうなことも出てくるやもはかり知れないわけでありますから、ならばたんぼのままで、いわゆる政府の減反施策に協力する形の上で転作作物をひとつ考えていきたい、これが秋田県農民の非常に深刻な悩みであります。  大体いままでのいろいろな政府とのやりとりを聞いておりますと、どうも輸入えさに比較しまして少し高過ぎる、そういう問題が一つと、それからいま一つは、そのえさ米を普通の米と混合しながら流すようなことになりはしないか、この二つが問題で、なかなか転作作物としては認めがたいというのがいままでの政府の対応なようであります。  しかし、私どもいろいろ実際の現場を見ながら、作付をいたしました農民とも話をしながらお聞きしますと、大体裏作で青刈りをして、その青刈りと混合しながらえさをつくるわけでありますので、カロリー的に計算しますと、輸入米よりは確かに幾分は高くつく。しかし、これが転作補償金をもらえると農家の所得上でも問に合いまするし、また水田畜産の複合経営としてもりっぱにやっていける、こういうめどがついた、こういうふうに言っておるわけであります。  さらにまた、米との混合の問題につきましても、何かいろいろいま恐らく政府でも研究していらっしゃると思うのでありますが、茨城県やその他で、イタリア産の何とかという品種と混合したものによってやりますと、粒も大きくてとても人間の食えるようなしろものじゃないけれども、カロリー的には十分役に立つということで、大分普通の米とは見た目だけでもすぐ区別がつくというような状態でありますから、そう心配もないんじゃないか。こういうことで、時間の関係上一気に申し上げましたが、この際大臣の御所見を伺っておきたい、こう思うわけです。
  251. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 えさ米につきましては、この通常国会が始まりましてからもいろいろの先生方から私に同じような御質問をいただいておりまして、確かに今日までの私どもの事務当局と申しますか農林水産省の立場は、いま御指摘のとおり、やはりいま外国から入れておるトウモロコシその他の飼料用穀物と非常にコストが違うという点が一つと、いま一つは、主食用の米穀との判別がはっきりしかねる、そういう点において流通面で問題がある、こういうことで非常に消極的であったことは事実でございます。私も、正直そういう話を聞いておりましたので、なかなかこれは大変むずかしい問題でございますという形で答弁をしてまいりましたが、これほどまでに各地で御熱心にえさ米の研究をしておられる方があるからこそこういう質問も出てきておる、こういうふうに私も承知をいたしまして、この問題については、私自身が直接一度現地を見させていただいて、そして私自身がひとつしっかりした判断のもとに取り組んでみたい、こう考えておるわけでございまして、国会がある程度のめどがついたところで、どこを見に行くかということは私まだ決めておりませんけれども、できるだけ御熱心にやっておられる農家のところと、また、私どもの方でも農事試験場あるいは北陸、九州の試験場でもやっておりますし、また、県でも十一県でいろいろ試験をやっていただいておりますので、そのいずれかのところをひとつぜひ見せていただいて、そしてこの問題については真剣に取り組んでみたい、こう考えておるわけでございます。
  252. 川口大助

    川口分科員 どうもありがとうございました。前向きの御答弁で大変喜んでおるわけですが、現在やっておりますのはなかなか自前ではやり切れませんので、そこの羽後町の町役場と、それからこれも恐らく秋田県だけじゃないと思いますが、秋田県の労働組合の団体があるのですが、その労働組合の団体が労農提携、出かせぎ者解消、こういう立場に立って労働組合も助成を幾らかして、何とか転作補償金の償いをしようというぐらい熱心にやっておりますから、ぜひひとつ御視察の際には秋田へお出まし願いたいということを心からお願いを申し上げておきます。  次に、米の消費拡大について、これも大臣御関心があると思ってお尋ねするわけですが、酒の三倍増醸酒をやめたらどうかということです。これは御承知のとおり、昭和二十年代は食糧不足でありましたし、たしか昭和二十八年だったと思いますが、アルコールを使って、酒をつくってもいい、こういうふうになったわけでありまして、自来そのまま進んできているわけです。  しかし、これもアルコールを使うわけでありますから、普通の米を使うよりもコストは安くなります。しかし、コストが安いから米にかえられないというふうになりますと、酒の値段が実は適正でないということになるわけですから、余りコストが安いということも業者は口にすべきではないと思いますが、そういう問題があります。それから嗜好、人間の好みでありますから嗜好の問題もあるわけであります。しかし、これも最近アル中患者が非常に多くなっておるということでありますが、やはり一〇〇%のアルコールをもろみの段階で水とブドウ糖をまぜて簿めるわけでありますから、私には人体にとっても必ずしも有意義なものとは考えられないのであります。そもそもこの酒の問題をどうして大蔵省が扱っておるのか、私、大変不審にたえないのでありますが、大臣として三倍増醸酒をやめて米の拡大消費を図るよう大蔵当局と折衝されて、そのような取り組みをなさる御意思がないでしょうか。
  253. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 幸か不幸か、私も酒屋でございますし、大蔵大臣も酒屋でございまして、これはどちらでもいいわけでございますが、いま御指摘の点は、たしか昭和十八年であったと思いますが、承認基準が改定になりまして三倍増醸というのが生まれたと思うのでございます。私も、三倍増醸というのは時代が変わってきたわけでございますからなくすのがいいと思っております。そこで、いま正式に、実は食糧庁の方から国税庁に対して、この三倍増醸についての承認基準において三倍増醸というのは廃止する方向で検討を願いたいということは申し入れをいたしました。     〔片岡主査代理退席、主査着席〕  申し入れをいたしましたが、逆に、今度はコストの面で問題がはね返ってまいりました。三倍増醸をやめますと、これは米が大体十一万トンぐらい増加するわけでございます。十一万トンよけい米を使ってそれではいまのままの価格でいいかとなりますと、正直、大変高くつくわけでございまして、逆算をいたしますと大体七千円ぐらいの米でないとどうも合わないのではないかという計算が成り立っておるわけでございます。  そこで、一体それでは十一万トンだけ安いものを出すことができるのかどうかという問題がございますし、またもう一つ議論されておりますのは、それだけ酒の価格が高くなるならば、税で考えてもいいんじゃないかという議論も業界の中にはあるようでございます。やはりその辺をよく考えていかないとなかなかむずかしい問題でございますが、方向としては、時代が変わってきて、あれは米がない時代に三倍増醸というのを特に承認基準の中に入れたものでございますから、これだけお米がふんだんにある時代においては再検討すべき問題であるという点は、私は先生の御指摘のとおりだと思って検討を進めておるわけでございます。
  254. 川口大助

    川口分科員 たまたま大臣も酒屋の関係だそうでありますが、実は私も液量の関係なんです。大蔵大臣も酒屋の関係なら、これはいいコンビでありますから、この機会にひとつ酒の値上がりについては、つまり米を保管料で補てんしていくか、いろいろあるわけですから、余っているわけですから、しかも多額の保管料を払って外国に安く売りつけているわけでありますから、こういう問題について、やはり私も酒屋でありますからもうけを少なくするということは必ずしも業界の立場では穏当な発言ではないかもしれません。しかし、いまのような日本の状態から考えますと、私はぜひ三倍増醸酒を中止すべきであると考えますので、いまの御答弁で満足でありますから、どうかひとつよろしく御配慮をいただきたいと思います。  次は、どうも大変みっともないことなんですが、秋田県に田代農協というのがあるのです。ここの職員が農業者年金の掛金を横領したということになっているわけです。大変これは遺憾なことであります。  そこで、県の問題をどうしてここで私はあえて質問をするかといいますと、農民は自分の掛金が横領された、果たして自分は年金をもらえるかどうかという心配があるわけでありますが、そういうものに対する対応が全然ないのであります。また、農協自体は、その横領された掛金というものを農協が立てかえたかどうかわかりませんが、その事後の処理についてもほとんど話がない。ですから、指導的立場にある県自体でもその対応の話がないし、また、警察がこれにタッチをしていろいろ御調査したというふうなものもないのであります。いま、国民年金を初め年金制度に対して大変関心の深い時期でありますから、心配がありませんよ、こういうことと、また、農協も少したるんでおるのではないか、また、県庁も農協に少し甘過ぎるのではないか、こういう点について大臣の御見解とその対応をお伺いしておきたいと思うわけであります。
  255. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 昨年の十一月下旬に秋田県が行った田代町農協の常例検査の際に、農業者年金関係の経理に問題があるということが明らかになりました。そのことは報告を受けて承知いたしております。ただ、現在までのところまだ事件の全容について、いつごろからどれだけの金額をどういう形で横領したかというような詳細については明らかでございません。秋田県において再度調査中であるということで、その報告を待っているところでございます。  ただ、いずれにいたしましても、農業者年金、こういう公的な制度の金が横領されたということになりますと、年金制度そのものの信用にもかかわる問題でございます。当然私どもは加入者が迷惑を受けることのないよう、農協に納入した以上は保険料は納付されているんだという前提のもとに己れは処理すべきだと考えておりますが、詳細を承知した上で適正な措置を図りたいと考えております。それからまた、県に対してもくれぐれも厳正な指導をするように要請してまいりたいと考えております。
  256. 川口大助

    川口分科員 わかりました。わかりましたが、ちょっと心配が出てまいりました。というのは、いつから横領したかわからないということは、掛金が掛かっているか掛かっていないかもわからないということでしょう。その点はどうなんですか。
  257. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 一応の概要はわかっているのでございますが、果たしてそういう農業者年金関係のものだけかどうかとか、詳細については十分明らかになっていないという意味でございます。概略、農業者年金関係の経理について問題があったということで、さらに詳細を調査しているという段階でございます。
  258. 川口大助

    川口分科員 それでは確認をいたしますが、そういうことであるとすれば、つまり掛金を掛けました農民自体は実害がないように取り計らいができる、そこを確認したいと思います。
  259. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 それは私、先ほども答弁したつもりでございますが、十分詳細にわたらなかったせいで御理解いただけなかったかと思いますけれども、農協というのは農業者年金基金の委託を受けて保険料の徴収を行ういわば窓口でございます。その窓口に納められている以上、後で内部経理関係に問題が起こっても、これはまさに内部の問題でございまして、加入者には迷惑をかけられる性質のものではございません。そういう観点に立って農協とも、それから県とも相談して、十分加入者に迷惑がかからないような措置を図ってまいりたいと考えております。
  260. 川口大助

    川口分科員 どうものみ込めないのですが、いつから横領されていつまで横領したかが明確にならないと、窓口だから心配なんですよ。その窓口から十分に行っているかどうかということなんですが、それは心配ないとおっしゃるわけですから、その辺のところの説明がちょっとのみ込めない。  つまり、私、最後に時間がないから確認しますが、仮に窓口から納められておらない場合があったとしても、農民自体には実害がないように取り計らいます、こういうことだけをひとつ確認しておきたいと思います。
  261. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 御質問の趣旨のとおりでございます。一たん農協の立場で受け取っている以上、これは本人に御迷惑のかからないように措置いたします。
  262. 川口大助

    川口分科員 最後にいま一つですが、実は、農業改善事業といいますか、あるいはまた総合農地開発事業といいますか、この点について見通しをお聞きしたいのです。  私、心配しておりますのは、秋田に大潟村という、日本農業のモデル地区にするということで干拓をしました農村があるわけでありますが、考えようによってはこの大潟村も一種のパイロットだと思うのですよ。つまり、日本の将来の農業はこうなるのだ、一つのパイロットだと思いますが、しかし、いま大潟村を見ると、確かに生んではくれましたが、さっぱり育ててくれないわけです。生み捨てであります。アフターケアが全然ないわけであります。  こういうことを考えますと、現在、秋田県で、特に私の選挙区でありますが、能代地区と鹿角地区でもパイロット事業をやっております。ところが、農民は減反とは言いながら案外たんぼは喜ぶのでありますが、畑の場合は余り喜ばぬ。特にこういうことを申し上げていいかどうかわかりませんが、能代地区の場合は畑を転売するような動きさえあるわけであります。でありますから、このパイロット事業をただ大きくすればいいんだ、機械を入れるようにすればいいんだ、大型化だけをねらいましても——大潟村の場合であれば計画段階では農民は参加しておりませんから、できたものに入植する、こういうかっこうでありましたから、いまの能代、鹿角地区の場合におきましても、つまり野菜にいたしましても流通の体系が十分でありませんし、価格保証もこれまた十分でないわけでありますから、そういう中で大きいことはいいことだということで改善事業をやりましても、先の見通しとして確信をお持ちになれるかということと、いま一つは他地区でさらに進んだ事業段階に入っている地区があるとすれば、それはうまくいっているのかどうか、こういう点をお聞きしておきたいと思うのであります。
  263. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 確かに八郎潟大潟村は、当初、全面的な水田を予定して発足した事業でございましたが、今日、転作の時代にあっては最も効率的な米生産が行えるような体制にありながらも、やはりほかと同じように転作ということで畑作物に転換を余儀なくされている事情がございます。確かにパイロット的なところではありますが、転作は国全体の農政の話でもございますし、それはそれで受けとめていただかなければならないということでお願いしているわけでございます。ただ、営農のスケールとしてはやはりほかとは格段に大規模でございまして、それなりにパイロットとしての成果は上げていると思います。  それから、ほかの地区でも問題を生じていないかと言われますと、むしろ開発事業あるいは干拓事業で、造成途中で目的を変更するというようなものもかなり出てまいって、若干の混乱は生じた経過がございます。ただ、私どもとしては全体の米の需給、農産物全体の動向等について十分御説明をし、畑作転換をお願いしているところでございます。それなりに御苦労はかけますが、営農指導それからほかの一般的な農政全般の対策をあわせて、農家にできるだけ御迷惑のかからないようにこれを持っていくように努力をしたいと考えております。
  264. 川口大助

    川口分科員 いずれこれは農家自身にも負担金はかかるわけでありますから、どうか十分配慮してひとつ実施段階に入っていただきたい、お願いします。  大分はしょりましたから時間が若干余りましたので、もう一つ大臣にお聞きしたいと思います。  最近、エネルギー問題に関連して、作物からエネルギーを考えようという動きが大分出ておるわけであります。端的に申し上げますが、たとえばせんだって新聞にありましたが、ユーカリ油、ああいうものからアルコールを取る、あるいはジャガイモからアルコールを取る、こういうふうなことで、エネルギー開発に対して農水省としても取り組む分野が大分あるとぼくは思うのです。  そこでいま地方の時代だ、こう言っておるわけでありますが、やはりエネルギーも中央に集結をして中央集権的なものではなしに、地域地域に自給体制のできるような体制については農水省としても目をかけていく。極端なお話をすれば、御承知かどうかわかりませんが、いまスウェーデンなんかでは八百人くらいの人口を一つの単位にしましてエコロジカルの実験村をつくっている。生物と環境との関係がどうなるか、学問的にも大分外国では進んでおるわけでありますが、残念ながら日本にはその研究はまだいまだしという観が強いと思うのであります。どうも私どもはいままでは化石燃料に頼りまして、それがエネルギーのすべてなような錯覚にとらわれておったわけであります。しかしいま食糧がこのように進歩したのは、つまり化石食糧がなかったから人間の知恵と技術によっていまのような食糧体制ができたわけであります。したがって、そう考えてみますと、エネルギーの根源は太陽でありますから、太陽の恩恵を受ける作物あるいは木やそういうものから新しい価値を考えながらエネルギー対策に取り組んでいくのもいまの時期には必要なことじゃなかろうか、こんなふうに思うわけでありますが、大臣の所見を伺っておきたいと思うのであります。
  265. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 私ども五十五年度から機構改革の一環といたしまして、役所の中にも省エネルギー対策室というのを設けることにいたしております。そこではどちらかと言えば、現在の油づけと言われるくらいにまでなりました農林漁業を何とか少しでもエネルギーの節約を図っていこう、こういう観点から進めておるわけでございますが、いま御指摘の点は、それはそれとして、もっと進んで代替エネルギーと申しますか油にかわるべき、たとえばアルコールであるとかその他のものをもっと開発をしたらどうか。それはユーカリその他からもアルコールが取れるではないか、こういう御指摘かと思うのでございます。  これは、私の方では農林水産技術会議の方の担当になるかと思いますが、大変示唆に富んだ問題でございます。しかし、なかなかコストの点で大変だなという感じも私はしないでもございませんけれども一つの示唆に富んだ問題としてこういう点も積極的に日本の国内で、本当にある程度コスト的に見合うアルコールが取れる方向であるならば、これは進んで取り上げていくべき問題であろうと思いますので、ひとつ今後検討をさせていただきたいと思います。
  266. 川口大助

    川口分科員 いまコストのお話がありましたが、問題はやりようなんです。たとえば養豚あるいは鶏、そういうものと複合しましてメタンをつくり、メタンから電気あるいは暖房、こういうものもやれるし、あるいは風車や水車を利用しながら発電をやっている。ただその場合であっても、発電しても蓄電装置をつけようとすると莫大なものになる。出た電気をそのまま使うようになりますと、案外手軽な方法もあるわけであります。でありますから、その辺は余り画一的にならずに、人見て法説けということでいろいろやってくだされば、コストの面は解決するめどはある、私はこう思うのであります。  そこで、もう一つお願いですが、現在、先ほどの羽後町のえさ米じゃないですが、地域によっては豚からメタンを取ったりいろいろやっているところがあるわけですが、そういうものに対していささかでも元気をつけるために幾らかの補助金なり奨励金を出してその研究を促進するような御意思がないかどうか、あわせてひとつお伺いしておきたいと思います。
  267. 川嶋良一

    ○川嶋政府委員 エネルギーにつきましては、いろいろと地域ごとにきめ細かい対策考えていかなければならないと考えておりまして、御指摘のように太陽熱、地熱、風力、それからお話しの家畜の排せつ物、それから生物の利用、こういったものについていろいろと私どもも研究を進めております。それから現地でも各方面でいろいろと工夫をされております。こういった点につきましては、十分連携をとりながら今後とも進めてまいりたいというように考えております。
  268. 川口大助

    川口分科員 終わります。
  269. 始関伊平

    始関主査 これにて川口大助君の質疑は終了いたしました。  次に、平石磨作太郎君。
  270. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 私は養豚についてお伺いをしたいと思います。  いま豚の卸売価格というのは非常に低迷状況に陥って急速に卸売価格が下落した。そして昨年の八月以降年度後半は、ずっと今日に至るまで低迷を続けておる。こういう状況に陥って、いわゆる養豚生産農家は非常に厳しい経営状況に陥っておるわけです。こういうような現況が出てきたということは、もちろん過剰生産あるいは過剰な輸入、こういった供給過剰が原因であるということはよくわかるわけですが、このような状態を農林省は、昨年価格の低迷が始まった当初から御存じであったかどうか一言。
  271. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 昨年来豚肉価格が低落をいたしております。具体的には、昨年の八月下旬から価格低迷が始まりまして、畜産物価格安定法に基づいて決めております安定基準価格を下回って推移をしてきたわけでございます。そうした事態に対しまして、これに対処をするために生産者団体とも協議をしながら各種の対策を講じてまいっております。  一つは計画生産体制を進める。それから第二に消費の拡大を図る。第三に、それらの措置の効果が直ちに具体化するということはなかなかむずかしいということでございますので、調整保管を行う。この調整保管につきましては、昨年十二月までは自主調整保管、生産者団体等による自主的な措置として進めてまいりましたが、本年一月以降は畜産物価格安定法に基づく生産者団体による調整保管の形で進めてまいっております。  これらの対策によりまして卸売価格は漸次回復の方向に向かっておりまして、昨年の十月には、東京の市場の卸売価格でございますが、キログラム当たり五百四十三円でございましたが、最近では五百八十円台の水準にまで戻して推移をいたしております。今後引き続き、さきに述べましたような対策をさらに積極的に推進をいたすということで現在考えておるわけでございます。
  272. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 御存じ、しかも後々そういったような指導がなされて、いまお答えにありましたように自主調整保管がなされた。これは私は素人でわからぬのですけれども、こういった豚肉については価格変動があるんだ、これを予想して畜安法という法律でもって価格安定帯というものを設け、いわゆる安定基準価格で価格安定をし、経営の安定を図っていこう、こういう趣旨で畜安法という法律ができておるんだ。しかも農林省は、当初からこの六百一円というものを超えて下落さしていった。そして五百円台、五百四十円、五百五十円といったようなものがずっと続いてきておる。ここでなぜ畜安法の発動ができなかったのか。そういったことを予想してちゃんと国はそのことを整備してあるはずじゃないか。  そしていま局長の答弁の中に、政府がその畜安法の適用を発動せずに自主調整保管という、生産者団体が供給過剰に基づくものをみずから調整していこう、こういう体制、これは指導もあったかもわかりませんけれども、自主調整なんです。私はなぜ買い入れを事業団によってやらすようなことが発動できなかったか、そのことをちょっとお聞きします。
  273. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 豚肉の価格は、他の農産物も同様でございますが、需給の動向によって価格は当然変動するわけでございます。畜産物価格安定法におきましては、それが大幅に変動することのないように安定帯価格を決めておるわけでございます。ただいま御指摘のように、確かに安定基準価格を下回って豚肉の卸売価格が推移をした。その時点でなぜ事業団の買い入れをして安定基準価格に回復するようにしなかったのかという点でございますが、豚肉の価格の基本的な問題といたしましては、需給の均衡を図る、そのことによって価格が安定するということで、需給の均衡とは無関係に、あるいはそれを度外視して価格支持を行うということは過剰状態を永続化させる、そのことによって養豚経営自体の将来について非常に大きな問題を投げかけるということでございまして、そのためにはやはり生産者団体におきましてもみずからの問題として需給の均衡を図るという努力をするということが前提になる。そこで、生産者団体にも呼びかけをいたしまして、同じような認識のもとに自主的な調整が行われた、こういうことでございます。
  274. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 いまお答えになった、過剰肉というものを、いわゆる供給過剰だからこれを何とか調整していくということは結構なことですよ。そのために安定法があるんだということです。そのためにある安定法はこっちへ疎開しておいて自主調整、そういった形に農林省も指導し、自主的に調整保管を行ったということ。これはその共通認識には立っておるけれども、法律ができ上がって、しかもその安定帯を農林大臣はやらなければならぬのですよ。そのことを考えたときに、この過剰事態に陥っておるものは事業団がこれを買い取ってそこで価格の安定を図っていく、価格が高騰してしまったらまた放出をしてやっていくというのが制度なんでしょう。だから、そのことを疎開して自主調整でやったということについては、私はやはり農林省としての、いわゆる法の手前から言うとちょっと怠慢と言うたら言葉が汚くなってどうかと思いますけれども、時期がおくれたのじゃないか。そして今年へ越してそのことが発動された。これから見たときに、私は、時期がおくれた、このように指摘をしたいと思うのです。  それから、この過剰になった原因というのを、私いろいろと農林省からいただいた数字を見てみますと、これはやはり輸入量がもう極端に多いのですね。国内生産も上がってはおりますけれども、この国内生産を見てみますと、五十三年度を五十二年度と比較した数字と、五十三年と五十四年を比較した数字の伸びを見てみましても、これは極端に伸びた数字は出ておりません。大体八%から九%、一〇%ラインの国内生産の伸びです。ところが、輸入の方を見てみますと、五十三年と五十四年、この対比を見てみましたら、五月が一四〇%、六月が一三三%、七月が二二二%、それから八月が一七八%、九月が一五〇%、十月が一一八%、十一月が初めて前年対比で一〇〇%、もとになっている。それから十二月から六七%、一月が六一%と、十一月から以降輸入が落ちておるわけです。このように、国内生産で見ましたら大体六、七%から一〇%ラインの伸びでありますが、輸入はいま申し上げたように倍以上輸入がなされたり、あるいは倍近く輸入がなされたりということになっておる。こうしますと、過剰生産の原因は輸入肉だ、このようにしかこの数字からは見えません。  そうすると、一方にはおっしゃった畜安法があり、そして外国からの輸入因については、港へ着いたときに関税でもってそこに障壁が設けられておるはずです。このことから考えたときに、安い外国肉が入ってくることに対しては、農家の経営安定を保護するために差額関税を取っておるはずだ。それで、基準輸入価格というのが、結局いま言う安定帯の中における中心価格、いまの安定帯で申し上げますと、六百六十八円というのが基準輸入価格になるんじゃないか。私は素人だからわかりませんけれども、六百六十八円になるはずだ。そして、その六百六十八円まで、その差額金を関税として納めなければならぬ。そして、国内の市況はどうかと言ったら、五百四十円、五百五十円、それがいま答弁にありましたように五百八十円まで回復してきておるのだが、これはこの基準輸入価格の六百六十八円という大きなハードルを乗り越えて輸入がどんどん入ってきておるという結果です。  どうしてこんなになるのか。しかも畜安法と関税とがいわゆるリンクされた形において、二つの法律がリンクされて機能を果たして養豚農家を守る、こうなっておるのです。そうすると、畜安法の発動もなかった。今年へ持ち越した。関税のその面についても、これも機能を果たしてなかった。ここに私は国内の養豚農家が非常な苦しみに陥った原因があると思うのですが、御答弁願いたい。
  275. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 豚肉の輸入につきましては、いま先生のお話しのとおり、五十四年全体を通じて見ますと、対前年で一二八%の増加になっております。輸入豚肉の国内供給量の全体に占める割合は約一〇%でございますが、それにしても相当の伸びであるということでございます。  ただいまお話しの差額関税制度との関係でございますが、輸入基準価格は、差額関税におきます制度といたしまして、畜安法に基づく価格安定制度とリンクをしておる。この価格は六百六十八円であるということは御指摘のとおりでございます。ところが、その基準価格を乗り越えて輸入が入ってくるということで、入ってまいります輸入豚肉は枝肉換算で六百六十八円以下のものはございません。部分肉につきましては、歩どまり換算をして、さらにそれより高い価格でしか輸入はされないという状況でございますが、そういう状況でなおかつ入ってくるということにつきましては、主として加工原料用にこれらのものが向けられている。加工原料用として見た場合に、第一に規格なり品質が輸入豚肉についてはまさっておる、第二に国内の需要に応じて特定の部分の肉を選択して輸入することができるというようなことがありまして輸入が入ってくるということでございます。  これらが理由になって入ってきておりますが、加工団体等におきましては、国内の豚肉の需給状況等にかんがみまして自粛措置をとるということで、先ほど先生からお話のありましたように、十二月、一月というのは対前年比で大幅の減少になっておるのが現状でございます。
  276. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 大体わかりました。その中で、私がいまの御答弁を聞いて考えたことですが、これは品質向上の問題もあります。したがって、部分肉その他枝肉をどのような歩どまりとかいろいろのこともありますが、時間がないからそれは省きます。省きますが、御答弁を聞いた中で感じたことは、品質をやはり生産農家が上げていかなければならぬという問題が一つ。それと、これからのいわゆる過剰が起きないように養豚農家もその点についてはただ法律におんぶするということでなしに、やはりみずから調整をしていくという姿勢に立って価格安定をみずから図り、そして安定した養豚生産ができるようにすべきだ、私は、その自覚に立っていわゆる自主調整保管というものをやり始めたのだと思う。これは喜ぶべきことですが、私はこういったいわばいまの価格安定の六百一円というものを大きく割ったがために、そこに一つの枝の基準をつくって、六百一円を中心にして五%、五百七十一円ラインでどうにか買い取ってもらう、こういうことをも生産農家がみずからした。そして一方で畜安法も関税法も全く機能が果たせないから、そこで生産農家はみずから調整に入った。これは全部自分でやっておるのですよ。  それで、農林省はどんな指導をしておるのかと思って、私は局長さんのこの通達を見た。この通達を児ますと、えらい過剰生産になって八月から急速に下落して困った、それから需要に見合った供給体制を早く整備しなければならぬ、そして豚肉生産増加につながる可能性の高い養豚に係る補助事業については、当面下記のとおり行います。それは何だと申しましたら、事業量の圧縮、計画の延伸等の措置を講ずるようにしてください、こういうことですね。だから生産が伸びるような事業については補助事業は控えてくださいよ、こういうこと。もう一つは、近代化資金については、借り入れに当たっては申し込み前に借り入れ希望者も地方会議との間で調整を先にしてください、勝手にはすぐ貸しませんぞ、このようにいわば消極的な、いわゆるこれから伸びる、生産増加することについての歯どめを農林省の通達でかけてある。  ところが、この一方で自主調整をしておるということに対して、農林省はこうしますという指導がない。だから私は、そのように生産農家がいわゆる自主調整をして、八万頭の子豚をとる雌豚の調整をいわゆる出血までしてやっておるということを考えたときに、おたくの方、農林省の方はそのままほっておいて、そして自主調整に任してそれを待つというような姿勢でなしに、これに対して助成ができないかと聞きたい。どうですか。いろいろ会議をやったり、経費が要ると思いますよ。これに対して助成できるでしょうか。
  277. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 養豚経営に対する私どもの指導方針としては、一つは、当面の需給の不均衡についての均衡を回復する。それから第二には、先ほど輸入の豚肉との関係で申し上げましたが、品質の向上等の推進を図る。それから第三には、需給の均衡なり品質の向上とあわせた形で、計画的な生産生産者団体等が自主的な形で進めることに対する指導助成をしていくということでございます。  最後にお尋ねになりました、そういう自主調整ということから発展をいたしまして、計画的な生産生産者団体等がやろうということで、養豚経営安定推進会議が中央、地方に設けられておりますので、これに対して五十四年度は約三千六百万の畜産振興事業団からの助成をいたしております。これにつきまして五十五年度どうするかということにつきましては、さらに検討を現在いたしておるところでございます。
  278. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 大臣、いまお聞きしまして、自主調整生産農家は非常に政府協力をしておるわけです。だからいま局長の御答弁にあったように、これらに対して五十四年度は三千六百万というものを事業団から助成をいたします、こういうことですが、私はこの経緯を考えたときに、政府が打つべき手というのは全部いわばお預けになっておる。最前からお聞きしていておわかりだと思うのです。そして生産農家に対して、私は生産農家ばかりを申しますが、企業関係ありませんので企業経営は別ですけれども、そういうふうに自主的にやって、こういった人たちの中にはいろいろな借入金の問題もあります。飼料も上がってきておる。こういったようなことを考えたときに、政府は単なるこういう指導通達だけでなしに、もっと積極的にこれらの経営農家の安定のために私は助成が必要だと思うが、ひとつ大臣のお答えをいただきたい。
  279. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 先ほど政府の助成について計画生産のお話を申し上げましたが、畜産物価格安定法に基づく調整保管につきましては、これは当然助成を行うわけでございます。本年一月から約三十万頭の調整保管の枠をもって、それに対する助成費といたしまして、三十万頭がそのまま行われるといたしますれば約二十六億円の助成費になるわけでございます。それにしても、さらに前向きにいろいろ助成なり指導をすべきではないか、その点についてはそのような考え方に立ちまして、五十五年度予算におきましても、養豚経営の安定あるいは品質の向上あるいは流通の改善、それらについての助成を行うように予算措置を講じておるところでございます。
  280. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 なかなかむずかしいのは、どちらかというと私どもいままでやってまいりましたのは、養豚の生産の方へのいろいろの補助は考えておったわけでございますが、余ったときにそれに対する助成をという点については、確かにおっしゃるとおり自主的にやっていただきたいという方向が先に出てしまうわけです。そういう点でいろいろ御指摘をいただいておるわけでございますけれども、多少その点はやり方のテンポが遅かったのではないかという反省はいたしておりますけれども、ある程度生産調整をおやりにならないうちに全くこちらで手を打ってしまいますと、これは先ほどの話で、余ったままで大変な状態にもなりますので、その辺のところが大変むずかしかったわけでございまして、ある程度需給調整ができそうなところでうまく手を打つのが一番いいのでございます。しかし、その点が少しおくれたという点は多少あるのではないかと思います。今後その点は十分気をつけて、せっかくいま生産調整に取り組んでいただいておるわけでございますから、これに対しては積極的に私どもも応援体制をとっていかなければならない、こう考えております。
  281. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 いまお答えがありましたように、生産については助成がある。ところが、それによって生産過剰になったからまたそれもという、私もそこはようわかります。だからその点はその程度にとどめますが、これから先のことを考えたときに、いま五十四年度にあの法律二つが機能を果たさなかった、それは一体原因は何かということになりますと、まず価格安定を一応法律で決めてあるけれども、その裏打ちになる需給計画がない。そしてもう一つは、その裏打ちになる生産計画がないということです。この土台のないところを価格安定だけ決めてやるからこんな形になってくるので、あくまでも農林省は大きな指導の立場から、輸入といったようなもの、あるいは国内生産、これらを踏まえて需給計画あるいは生産計画を私は持つべきだと思う。これは時間がないから私はもう一方的に申し上げますが、持つべきだと思う。いままでそれがなしにやっておられるからこんな問題が出て、さあいよいよ発動しようかと思ったら発動のできないような過剰の状態に陥ってしまった、ここが私は指摘できると思うので、この点は大臣、ひとつ頭に入れていただきたい、こういうことです。  それから輸入について。いま生産団体は自主調整に入って、ずっとこれがダウンしてくる。調整が終わった段階のときに、ある程度需給に見合った供給体制になっておるときに輸入がまたぐんぐん入ってきますと、これは生産農家泣かせになりますよ。ここもしっかり行政の上で見ていただきたい、私はこれも申し上げておきます。  それからもう一つ。そういうように全体像をひとつ見ていただいて、いま生産農家が困っておるのはもうすでに御案内だと思うのですが、長期借り入れとかあるいは中期の借り入れ、こういった借入金の延伸、それから金利の補給、いわゆる利子補給、それから飼料価格が非常に上がってきておるのでこの安定基金への補てん、こういったことを要望しておりますが、ひとつお答えいただきたい。
  282. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 需給見通しにつきましては、農産物の需給の長期見通しということで、政府がこれで立てて公表をいたしております。現在作業中でございますが、昭和六十五年の見通しにつきましては策定を農政審議会に諮りながら進めておりまして、これによりまして長期的な豚肉の需給関係についてどう見るかということを明らかにいたしております。それから短期的な需給の問題でございますが、豚肉の生産につきましては、種つけの動向あるいは子豚の生産動向、これによりまして短期的な数カ月後の需給の動向はわかります。そういう種つけ動向、子豚の生産動向なるものを農林水産省としては公表いたしまして、これを参考にいたしまして適正な養豚経営が行われるように誘導をいたしておるわけでございます。確かに単年度ごとの需給計画をつくるということにつきましてはそのようなことをいたしておりませんが、需給問題は、やはり養豚経営者みずからがみずからの問題として判断をしながら進めていく、環境づくりをするということで現在進めておるわけでございます。  それから輸入の問題につきましては、これは自由化をしておる物資でございますので、政府が直接これを規制することはできませんけれども、先ほどの関税制度の機能を十分発揮できるように、今後ともこれらの細部の運用につきましてさらに検討を進めてまいりたいと考えております。  それから最後に借入金の問題でございますが、すでに借り入れている制度資金につきましては、その制度のもとでケース・バイ・ケースで延伸等の措置がとり得るように指導してまいっております。さらに経営安定のための資金についてのお尋ねでございますが、これにつきましては確かに昨年の九月以降は非常に価格が低落をいたしましたが、それ以前は利潤、所得も相当ございました。やはり年間を通じてどういう状況になるか、その見きわめをした上でその良否について検討をいたしたいと考えております。
  283. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 来年の価格決定についてもやりたかったのですけれども、時間がありませんのでこれで終わります。
  284. 始関伊平

    始関主査 これにて平石磨作太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  285. 岡田利春

    岡田(利)分科員 農林水産省は、今年度サケ・マス漁業交渉開始について、すでにソ連側に交渉開始の時期また場所について日本側の希望を表明している、こう報道関係は伝えておるわけです。     〔主査退席、片岡主査代理着席〕 大体、例年三月中旬になればサケ・マスの漁業交渉が始まるわけですが、ことしのサケ・マスの交渉は一体いつから始まるのか、また場所は一体どこで行うのか。その後の対ソ関係を通じて、すでにこれらの問題については双方の意思が合意されているか。今後の状況について御説明願いたいと思うわけです。
  286. 今村宣夫

    ○今村政府委員 本年のサケ・マス交渉につきましては、日本といたしましては三月の下旬から行いたいということで、場所は東京または双方の合意をした場所ということで申し入れをいたしておりますが、まだソビエトから返事が参っておりません。  昨年は日ソ漁業委員会がございましたものですから三月の下旬から始まりまして、政府間交渉は四月から行ったわけでございます。ことしはサケ・マスの資源論は行わなければなりませんけれども、先般昨年末に漁業委員会の方は済ましておりますので、直ちに政府間交渉ということに相なろうかと思います。そうしますと、交渉開始の時期は三月の末ぎりぎりかあるいは四月早々ということが一応のめどになるかと思う次第でございます。
  287. 岡田利春

    岡田(利)分科員 ことしの春早々アフガン問題が起きて、わが国は対ソ関係に対するアメリカの要請に基づいて制裁措置といいますか、これらについて踏み出しておるわけですね。まして経済協力関係についても今日いろいろ問題が提起されておるわけです。だが、フランスやあるいはまた西ドイツの場合には、貿易の関係においてあるいはまたプロジェクトの輸出について、経済協力について、従来よりむしろ一歩進めて対ソ関係経済協力を進めているというのが私は実態だろうと思うのです。まだソ連側からの返答がないというわけですが、きわめて厳しく受けとめなければならぬではないか、いわば魚と経済協力とかそういう関係は別だということにはならないと思うのですね、つまり経済協力の範囲でありますから。そうしますと、今年度サケ・マス交渉をスムーズに進めてこの解決を図るためには、少なくともいまフランスや西ドイツが詰めておるような経済協力に対する姿勢を日本が確立をして、そしてサケ・マスについてもいままで同様に日ソ間の交渉に乗せて四月中には解決をする、この基本姿勢を確立しないとサケ・マスの交渉は非常に厳しくしかも前途が多難ではないか、私はこう判断せざるを得ないわけですが、この点の政治判断について農林大臣の見解を承っておきたいと思います。
  288. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 御指摘の点も私ども十分判断の上に参考にさせていただかなければならないと思いますが、正直いまのところ全くわからないわけでございまして、いろいろの対ソ経済措置というものとサケ・マス交渉が絡んでくるのではないかという御指摘でございますけれども、もちろんそうなるときもあり得るかもしれない。しかしそうならない場合もあり得るかもしれませんし、いずれにいたしましても、対ソサケ・マス交渉に関しましては従来以上に厳しいものであろうという判断の上に立って、従来からのサケ・マスの北方における漁業が何とか維持継続ができ得るように粘り強く交渉を進めていきたい、こういう考え方にいま立っておるわけでございます。
  289. 岡田利春

    岡田(利)分科員 いま大臣から答弁いただきましたけれども、私は、水産庁レベルだけでこのサケ・マス交渉の打開を考えても、今日的情勢はむずかしかろうと思うのです。その例としてフランス、西ドイツの対ソ経済協力の姿勢について指摘いたしたわけです。したがって、早急に政府部内において対ソ関係のこれからの経済協力についての日本側の姿勢をまず明確にする、確立をするということなしにこの交渉に臨むとすれば、交渉の開始の時期はおくれ、短期間でしかも交渉の見通しは非常につけにくいということになって、ゆゆしき事態に置かれるだろうというのが私の判断であります。それらについて、外務省初め政府部内としては、対ソ経済協力についていろいろ報道関係も伝えられていますけれども、日本側の姿勢の調整を図っておるのかどうか、この点については従来の外務省の示している見解よりも一歩も出ていないのか、この点承っておきたいと思います。
  290. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いまのところ、特にこの漁業交渉を頭に置いてのいろいろの対ソ経済関係についてどう処置をしていくかという協議政府部内においていたしておりません。
  291. 岡田利春

    岡田(利)分科員 例年から言えば、この三月に入れば交渉開始のめどがついているというのが例年の慣例だろうと私は思うのです。そういう意味で、この点について特に非常に明確な方針が出ておるようであり、また一方において、ヨーロッパ諸国の態度等も判断しながら調整しておるようにもわれわれ受けとめられるわけであります。そういう意味で、この点早急に整理をして、対ソ関係経済協力の姿勢というものについての日本側の態度を明確にすべきだということを特に指摘しておきたいと思うのです。  私も昨年訪ソして、それぞれ関係機関といろいろ話をしましたけれども、日ソ関係でイシコフ体制が崩壊をして新しい漁業省の体制ができたという意味は、資源に関する評価、これが変わってきたと言わざるを得ないと思うのです。したがって、従来のイシコフ体制の交渉の延長線上に問題を解決する、すべての問題に通じますけれども、そういう姿勢では甘い、こう言わなければならないのではないか、こういう感じを非常に強く受けてきておるわけです。あるいは私ども、先般貝殻島のコンブの問題についても意見交換をしてまいりましたけれども、特に昨年意見調整をしました三つの原則というものを踏まえながら、ソ連側ともいろいろ話をした経緯が実はあるわけであります。しかし、コンブについてもこの三つの原則については、われわれが主張した点については向こうは理解を示して交渉する用意がある、これはもちろん民間ベースでありますけれども、そういう意向もわれわれは受けておるところでありますから、そういう点から判断しても、日ソのサケ・マス漁業交渉にいま日本側で最も明確にしなければならぬのは経済協力の進め方についての姿勢である、こう考えますので、この点、早急にそれらを整理して交渉がスムーズにいくように特に強く要望いたしておきたいと思います。  次に、先般水産庁長官は韓国を訪問して日韓の漁業問題について意見の交換をされてきたようでありますけれども、参議院の対馬議員の質問に対して答弁もされておりますが、われわれの側からすればきわめて期待外れだ、こう申し上げなければならないわけです。したがって、交渉の内容は一体どういうところに力点を置かれて交渉されたのか、またいまの日韓の問題点というのは一体何なのか、この機会に明確にひとつ示していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  292. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先般、一月の末にソウルで日韓水産庁長官会談を行ったわけでございますが、御指摘のように進展を見なかったということはまことに遺憾でございます。私たちとしましては、北海道沖の韓国の操業問題につきましては、たとえ韓国がそれを公海であると考えましても、日本の漁業者が規制を受けて操業をしておる、そこへ韓国が来てやるわけでございますから、日本の操業上の規制を守ってやってくれることは当然のことではないかということを主張いたしたわけでございます。もしそういうことが行われないとなれば、日本の国内事情等から見て日韓関係に重大なる影響を及ぼすであろう、したがいまして韓国においてもこれらの点に十分配慮して、日本の操業規制を守って操業をしてもらうということを要請をいたしたわけでございます。  日韓の漁業問題の基本的問題は何かというお尋ねでございますが、私は、日韓漁業協定ができて以後相当の時間を経過しておりまして、西の方におきましてはそれをベースにして比較的円滑に行われておるわけでございますが、北海道問題でありますとかあるいは山陰沖の韓国の操業問題でありますとか、あるいはまた日本が韓国の想定した二百海里内においての操業の数量、それから同時に、日本の二百海里があるとすれば、韓国がその地域内において操業する数量を比較してみましても、日韓漁業協定が成立した以後からは相当な状況の変化があると思っております。したがいまして、こういう事態を踏まえて新しい日韓間の漁業秩序というものをどのように考えていくか、また、それをどういうふうに確立していくのかということが基本的問題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  293. 岡田利春

    岡田(利)分科員 いま日韓双方の漁業関係レベルにおいて相互主義の立場にあると思いますか、そうでないと認識されますか、いかがですか。
  294. 今村宣夫

    ○今村政府委員 やはり相互の利益のために日韓漁業協定というものがあるのではないかと思っております。
  295. 岡田利春

    岡田(利)分科員 日本側が領海十二海里を宣言して以来、韓国漁船は公海の自由の原則で操業しているわけですね。しかし昭和四十年に李承晩ラインで問題になって双方で日韓の漁業協定が結ばれて共同水域ラインというものがしかれて、すべてこれは規制されているわけですね。協定書がありますけれども、非常に具体的に規制をされておるわけです。もちろんそのときには、韓国は遠洋漁業のちょうど上り坂のときであって、日本の公海ではまだ漁業を営んでいなかったわけです。しかし今日では、もうむしろ量的には逆転しているという時代ですね。そうしますと、韓国水域についてはわれわれは規制されておるわけです。日本の海域については規制がないわけですね。相互主義の立場が崩れている。したがって相互主義の立場にない、こう認識するのが外交上、国際上きわめて常識的ではないでしょうか。いかがですか。
  296. 今村宣夫

    ○今村政府委員 非常にむずかしい御質問でございますが、現実の事態は、先生御指摘のように最近において韓国に日本が追い上げられておるといいますか、日本近海において相当な漁獲を上げておるし、同時に、韓国の規制水域内での操業は日韓漁業協定に基づきまして規制を受けておるわけでございますから、そういう意味では、韓国はよろいを着ておるけれども日本は裸であるというふうな見方もできるわけであろうと思います。しかし、現実的に日韓漁業協定がございますものですから、それをどうするかという問題につきましては、諸般の情勢を十分踏まえて検討対処してまいらなければいけない問題ではないかと考えておる次第でございます。
  297. 岡田利春

    岡田(利)分科員 共同規制水域ライン内において、わが国の水揚げはどの程度の実績を示していますか。
  298. 今村宣夫

    ○今村政府委員 五十三年で五万三千トンでございまして、五十二年には七万五千トンということになっております。ちなみに五十一年は五万五千トンでございます。
  299. 岡田利春

    岡田(利)分科員 協定によれば十五万トンの協定ですね。そうしてアローアンスがあるわけです。これが実績として五万三千トンないし七万五千トンという量に、協定時期から比べると半分にダウンしているわけですね。いかなる理由ですか。
  300. 今村宣夫

    ○今村政府委員 この数字はそれぞれ漁業者の報告に基づいた数字でございまして、それ以外にはちょっと確定のしようがないのでございますが、漁獲量が減ったということは、韓国の規制が特に厳しいために漁獲量が減っていったというふうには理解をいたしていないのでございます。装備状況その他によりまして実績を上げていないということは御指摘のとおりでございますが、大体その辺の水準で移行をしておるのが現実の姿でございます。
  301. 岡田利春

    岡田(利)分科員 共同規制水域のみならず共同資源調査水域というのがあるわけですね。これは日本の沿岸にまで、九州から鳥取県まで及んでおるわけですね。全体の海域がそうなっておるわけですよ。そういう意味では、これも条約上は一つの規制になっておるわけですね。この点について考えてみますと、日本側の場合には、資源の調査について何らのこともないわけです。しかし、日韓の関係では規制水域ライン外にさらに共同資源調査水域が設定されたわけですね。こういう状況の中で、依然として長官交渉で問題が解決できると認識されているのでしょうか。もう長官交渉というのは、岡安さんも二回も行ったでしょう。それから森さんも行ったわけですよ。あなたも先般行かれてきた。何回行ったって基本的な問題は解決しないわけですよ。私は外務委員会でも、今度長官が行って問題解決できない場合はどうするんだ、その場合にはもう少しハイレベルに上げて本格的なハイレベルの交渉をせざるを得ない、長官の交渉の結果判断する、こう農林大臣は答弁されたわけですね。今度の交渉を見て何かまた長官を派遣して交渉する、参議院ではそういう答弁をされているわけです。外務委員会では、今度の交渉の結果を見て交渉のレベルを上げざるを得ない、外務省においてもそういう見解を述べられているわけですけれども、今度の長官交渉を踏んまえて、この日韓の交渉のレベルはさらにこのまま延々としてつないでいくつもりなのか、一体どういう判断でしょうか。
  302. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 参議院で答弁をいたしましたときには、あれは一月の終わりでございましたか、たまたま韓国船の操業の問題について、いわゆる韓国側の自主規制のラインをオーバーして入ってきたというような問題もございまして、それに対しては早急にひとつこちらでいろいろ向こうにも抗議をしなければいけないという形で、場合によれば水産庁長官にももう一回行ってもらわなければならぬ場合もあるし、あるいは両方にそれぞれ大使館があるわけでございますから、そういうところを通じて向こうに対して強く申し入れをするということもあり得る、私はこういう答弁をしたと記憶をいたしておりますが、いま、これがなかなかうまくいかないときにはどうするかという点においては、もう少しハイレベルでという御指摘もございましたけれども、ハイレベルへすぐ持っていくのかどうか、これはタイミングの問題でございますけれども、三月中に実務者会議をやることになっておりまして、この間水産庁長官が韓国に行ってまいりましたときに、今度の実務者会議は、従来は西の問題だけであるけれども、今回の場合は北海道の問題も含めてひとつ議論をしようということで帰ってきておりますので、そこでどういう形になるかはまだわかりませんけれども、今度の場合にはひとつ北海道の問題を絡めて実務者会議でもう一度議論をしてみたい。そこに何か解決策が出れば大変いいわけでございますので、そういう努力をいま一つしてみたいということで、部内でいろいろ検討いたしておるわけでございます。
  303. 岡田利春

    岡田(利)分科員 昨年渡辺農水大臣は、私は海なし県だけれども、もちろん私は親韓派であるけれども、この問題はゆゆしき問題だ、したがってできれば任期中に何とか解決をしたいということを明言されているわけですね。しかし、その後余り見るべき交渉の成果というものも上がっていないわけであります。したがって、いままでの交渉の経過をずっと踏んまえてみますと、長官のレベルで問題は解決できないと私は思うのですね。やはりハイレベルに持っていって、そしてもう少し日韓の経済関係のトータルな面で漁業問題を解決するという視点がないとむずかしいと思うのですね。この次長官が行かれて交渉をやられるというお話ですけれども、それでも解決しない場合は、それこそハイレベルで交渉しますか。いかがですか。
  304. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま申し上げましたのは、この三月に今度ソウルで行われる実務者会議にはいまのところ長官の派遣は考えておりませんで、部長を派遣をする予定でございます。そこでいろいろ詰めてもらいたい問題について、先ほど申し上げたように省内で議論をいたしておるわけでございますが、そこでうまくいかなかったときはどうするかということでございます。それはそのときになってどういう結果が生まれてくるか全くわかりませんので、私がここで、その結果がどう出るかという予測をしないで、こうしますということもどうも言えないわけでございますけれども、いずれにしても、不調に終わった場合には、それこそハイレベルと申しますか、もう一つ上の段階なり、あるいはいま御指摘のありましたように、一つは日本の対韓経済協力の観点の中にそういう問題も織り込んでやるか、その辺のところはその時点で検討してみなければいかぬ、私はこう思っておりまして、いまここでこうしますというお答えは少し控えさしていただきたいと思うわけでございます。
  305. 岡田利春

    岡田(利)分科員 いまわが国は韓国から水産資源をどの程度輸入していますか。全体の水産資源の輸入量の何%ぐらいを占めていますか。
  306. 今村宣夫

    ○今村政府委員 数字はいますぐお答えをいたしますが、相当量を韓国から輸入しております。
  307. 岡田利春

    岡田(利)分科員 歴史的に調べると大体二〇%前後ですね。もちろん一七%時代もありますけれども、二二%とか二〇%、一七%、大体ほぼ二割近いものが輸入されているわけですね。よく水産庁の方は、いや、北でとる魚と南でとる魚の価値、値段が違うということを、前の中川農水大臣も述べておったのですけれども、この感覚はやめた方がいいと思うのです。韓国の国民は赤身の魚を食べますか。
  308. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先ほどの数量でございますが、大体二十四万三千トン韓国から五十三年度は入れております。主要な品目はマグロ、カジキ類その他でございます。  それからいまの御質問でございますが、韓国人はスケトウを好んで食べまして、御存じのように主食に準ずるものだということになっておりますが、日本人が好んで食べるような魚は韓国では余り食べないということでございます。
  309. 岡田利春

    岡田(利)分科員 そうなんですね。ですからスケトウというのは、日本で言えばちげなべですけれども、ミョウンタンと言われて一般の韓国人の生活に欠くことのできない魚種であるわけです。しかし赤身の魚はほとんど食べないわけですね。日本が最もよい輸出国であるわけです。そして日本でマグロ中古船をどんどん輸出して、技術を教えて、マグロをとって、これを日本に輸出する。こういうことで日本のマグロ業者はみずからの首を絞めているのが現状なわけです。そして韓国はいまや遠洋漁業国としては世界第三位ですね。日本、ソ連に次ぐ世界第三位。すなわち遠洋漁業においては先進国家なんです。そういう関係において、何らかの双方の協定を結ばないで二百海里時代に通用すると思いますか。問題が解決すると考えるところに無理があるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  310. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先ほどもお答えをいたしましたように、韓国の水産業の発達あるいはまた最近におきます日本、韓国相互間におきます操業状況等を考えますれば、日韓漁業協定を締結いたした時期と相当な違いがございます。したがいましてそういう事態を踏まえまして、今後日韓間の漁業秩序をどうして確立していくかということは御指摘のとおり基本的な命題であると認識をいたしております。
  311. 岡田利春

    岡田(利)分科員 水産庁、ここ二、三年の北海道周辺における資源状況について詳しく調査したことがありますか。いかがでしょうか。
  312. 今村宣夫

    ○今村政府委員 北海道の資源状況につきましては、私の方の水産試験場でありますとかそれからまた学者等が北海道沖におきます底魚資源についていろいろ検討いたしておりますが、五十五年度予算におきましては、さらにスケトウ等を中心にいたしまして資源の動向につきまして十分調査いたしたいと思っております。
  313. 岡田利春

    岡田(利)分科員 スケトウ資源の激減といいますか、漁獲の減少というものは目に見えておりますね。資源状況がさらに悪いですね。ピンスケのようなかっこうです。魚体が小さくなっているのです。日本の国は七十センチあればスケトウは資源状況が安定していると言うかもしれませんけれども、ソ連流で言えば、一メートル四十から七十センチなければ、そういう魚体でなければ資源状況が安定したと言わないわけです。資源に対する認識が違うわけであります。  同時に、韓国の水揚げの状況を分析してみますと、メヌケを初め底魚の漁獲量も非常に多いわけです。いわば周辺の漁場というものは二千トン程度の底びき船でオッタートロールでやられて、資源状況は急速に悪化している。前浜にいて魚体を見て、漁獲の量を見て、素人目にもそういう状況がわかるわけです。われわれ素人でもそう判断するのですけれども、水産庁でこれを検討するのは簡単じゃないでしょうか。資源状況はそう悪化してないと現状認識しておりますか。
  314. 今村宣夫

    ○今村政府委員 スケトウダラにつきましては太平洋系群は非常に減少いたしておりまして、この資源状況はきわめて悪化しておると思っておりますが、北見沖系群と北部日本海系群につきましては、学者等に言わせますと大体横ばいではないかと言っております。
  315. 岡田利春

    岡田(利)分科員 それはそうでしょう。日ソ間に二百海里がしかれて漁場が全部制限されておるのですから、向こうの方でどんどん資源がふえれば、こちらの方に回遊してくるわけです。そういう傾向はもう見えているわけです。オホーツク海それから北方四島付近でもそうですし、北部の海域もそうでしょう。カニ資源だって規制をされているから、最近はタラバガニでも日本海の中間線から日本寄りの方に漁獲が見えてきておるわけです。だから長官の答弁はけだし当然なことを答弁している、こう言わなければならぬわけです。  そこで私は、そういう意味でもうここまで来れば何回も何回も、ここ二、三年間この問題を取り上げて、政府の決断を迫っておるわけです。あらゆる角度から検討してみたわけです。そして私の結論は、もう長官レベルでは解決しない、そして一段高めたレベルで話し合いをして、そこで最終決断をすべきだ。二百海里を適用するのか、あるいはまた日韓の漁業協定と同じように日本の二百海里水域にそういう協定を別に結ぶのか、あるいはまた部分的な法律の適用を図るのか、いずれにしてももう一段レベルを上げて、その上で交渉して判断されなければならない。日韓の関係を私はやはり大事にしなければならないと思うのです、隣国ですから。しかしその関係は、経済協力その他トータルで日韓の関係調整すれば問題は解決できる、こう確信を持っておるわけですね。韓国の政情の問題もございますけれども、この点もう毎年毎年この問題が国会の議論になる時期は過ぎた、私はそういう主張をしたいのですが、そういう認識について、そしてまたそういう一つの認識に基づいてひとつ決意のほどを承って、時間もありませんから終わりたいと思うのです。
  316. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 ここ数日前も北海道の方々がたくさん私のところにも来られまして、深刻な状況については私も十分認識をいたしておるつもりでございます。今度実務者会議でいろいろ検討と申しましたけれども、それについても相当突っ込んだ形での実務者限りでやれるようなことをいま省内で検討しておるわけでございまして、そういうものをひとつ、あるいはそのときにはこちらからある程度政治的な動きをしていくことも必要ではないかという御意見をされる方もございますので、そういう意見も私は十分頭の中に入れながら今度の実務者会議にひとつ臨みたい。そこでいい結果が出れば大変結構でございますが、そこでまた出なかったときには、いまお話しの二百海里をそれではしくのかどうかとか、あるいは先ほど申し上げましたように、対韓関係経済協力も含めて全般の経済問題としてのこの問題をその中に入れていくのかどうかとか、いろいろのやり方が全く別の観点からあるだろうと私は思うのでございますけれども、どういう方向でいくかについてはその結果を見なければわかりませんが、いずれにしても、この問題については早急に何らかの形で解決をしなければならない時期に来ておるという認識だけは持っておりますので、そういう点でひとつ対処してまいりたいと思っております。
  317. 岡田利春

    岡田(利)分科員 終わります。特に実務者会議が終わったら、私は外務委員会に所属しておりますから、十分その結果の報告を受けて、また見解を承りたいと思いますので、特に強く要望しておきます。
  318. 片岡清一

    片岡主査代理 これにて岡田利春君の質疑は終了いたしました。  次に、玉置一弥君。
  319. 玉置一弥

    玉置分科員 大臣の御都合がございますので、一番最後にしようと思った問題をまず簡単にお答えいただきたいと思います。実は、いろいろいままでの農政の動きを見たり、あるいは水田再編成等の進捗状況、そういうところから、本来であれば結果を聞いて質問するということになるのですけれども、結果はまだ出ていませんので、先に基本的な問題から御質問いたしたいと思います。  特に、いままでの農業そのものが原価補償という形で行政が主体になって進めてまいりましたけれども、これから諸外国との貿易という絡みあるいは現在の水田から畑作への転換、そういうものから見ても、現在のままの農業ではこれからの先行きが成り立たないのではないか、そういうふうに危惧を感じておるものでございます。特に現在の諸外国との経済摩擦、そしていま小麦においては米国の約十倍の価格であり、あるいはヨーロッパの小麦の価格の約二倍強である、そういう実態から見て、これからやはり諸外国からの抱き合わせ輸入という農産物がふえてくるように聞いておりますし、また外国からの話によると、まさにそういう希望を出しておるという事実がございますし、そういう観点から、現在までの所得補償という農業政策そのものを変えていかなければならないのではないか、そういうふうに思うのでございます。私の地元は農業が非常に盛んでございまして、こういう委員会の席では非常に発言しにくいのでございますけれども、将来の安定ということをねらった場合に、やはりいつかは言わなければならない事実である、そういうふうに感じているのでございまして、今回あえて質問するわけでございます。これから産業として価格競争力のある体質をつくっていかなければならないのではないか、そういうように考えるのでございますけれども、それに関して農林大臣はいかにお考えになっておりますか。
  320. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま御指摘のございましたように、今後の日本の農業のあり方といたしましては、確かに国際環境の中で日本の農業の生きていく方向も考えていかなければならないことは当然かと思います。そうしないことには、一般の国民の理解がなかなか得られなくなるのではなかろうか、こう考えております。  しかし一方においては、またアメリカの対ソ穀物輸出停止に見られましたように、食糧というものが外交の手段に使われるようになってきたわけでございます。また将来、長い目で見れば世界的には食糧の需給はタイトになっていくことはFAOも指摘をしているところでございます。そういう点からまいりまして、やはり食糧の自給度を高めていくということも、私はこれは大変大切なこれからの国策であると考えておるわけでございます。  そこで、そういう二つの問題をどう、どこで調整をしていくかということになりますと、やはりでき得る限りコストを安くし、そしてそれを国民に提供していく、こういう農業にしていくことが必要ではなかろうかと私は考えておるわけでございまして、いろいろ分析してまいりますと、施設利用型の農業においては、幸い相当の国際競争力がついてきたと考えております。しかし、土地利用型の農業は依然として国際競争力が弱い。ですから、いま御指摘いただいたような小麦の値段などの価格になっておるわけでございます。そこで、こういう点から考えて、今後の一つの方向といたしましては、土地利用型の農業の規模を思い切って拡大をしていくという方向で考えていかなければならないのではないかと考えておりまして、農地の流動化をより促進をする方向で法制の整備なども思い切って進めていきたい、こう考えておるわけでございます。
  321. 玉置一弥

    玉置分科員 それに関してずっといくのですけれども、お時間があるようでございますので結構でございます。  それでは、水田利用に戻りましてお聞きをしていきたいと思いますけれども、五十三年以来水田利用再編対策というものが進められておりまして、ただ現在のお米の余りぐあいから見て、五十五年度からまた新たに減反の目標が追加になったと思います。現在第一期、第二期といろいろ予定をされているようでございますけれども、一応五十四年度末の状態あるいは五十五年度の予測を入れて、先行きの見通しというものをお聞きしてまいりたいと思います。
  322. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水田利用再編対策につきましては、ただいま先生からお話がございましたように、五十三年度からスタートをいたしました。当初の目標は三十九万一千ヘクタールというのが転作等目標面積でございます。これに対しまして、農家の方を初めといたしまして関係者の御努力によりまして一一二%という達成率になっております。それから、それに引き続きまして五十四年度、これは目標を変えておりません。自主的に御努力をいただくということで、さらに一層の御努力をお願いいたしましたところ、五十四年度の実施見込みといたしましては一二一%の達成率になる見込みでございます。  このように目標をオーバーする達成率に相なるわけでございますけれども、米の需給の現状はきわめて厳しいものがございます。昨年の十月末で六百五十万トンも古米が在庫するというようなことでございますので、三年間原則固定ということでスタートを切ったわけでございますけれども、第三年目の五十五年度につきましては、十四万四千ヘクタール上積みをいたして五十三万五千ヘクタールの転作等目標面積にせざるを得なかった、こういうことでございます。この五十三万五千ヘクタールにつきましては、昨年の十一月末に都道府県別の配分をいたしまして、都道府県の方では市町村別配分を大体終えております。終わっていないのは宮城県ぐらいとなっております。したがいまして、さらに市町村から農家に対しまして目標等面積をおろしておるというのが現在の段階でございます。
  323. 玉置一弥

    玉置分科員 目標に対しては実施の方が非常に上回っておるわけでございまして、いろいろな条件から予想よりもさらにたくさんお米がとれたということで上積みをされたのだと思います。しかしいろいろ考えますと、転作をするためのいろいろな条件に合わないところが非常にふえてきているのではないか、また、ある程度行き着いてくると、そういうのがネックになって、その後進まないのではないかという心配をしているわけでございます。  一つは、現在非常に兼業化が進んでおります農業、そういうような中に非常に労力というネックがあるわけでございまして、従来稲作を行っていた場合に兼業農家が生計を立てられていたわけですが、畑作に転換するということは非常な労力がかかる。それも土曜日、日曜日だけというふうに限定して行うということがむずかしいと聞いておりますし、事実、私が私の家の近くで見ているのもそういう状態でございます。そういうところから、兼業農家というものをこれからどういうふうに扱っていくのかということが、稲作からの転換の非常に重要なポイントではないか、そういうふうに感じるのでございます。  そこで、割り当てを消化するということが現在一番大きな問題だと思います。稲作を変えていくということが当初の一番大きなねらいでございますから、そのためには、要は稲作を行う場所が減ればいいのだということがまず一つですね。当然、畑作いわゆる食糧政策全般との絡みもございますけれども、しかし一つの目的はやはり稲作を減らしていこうということだと思うのです。ところが、いろいろ聞いてみますと、学校あるいは建設用地、道路とか、そういういろいろな公共施設に提供された土地、そういうものがたとえば百ヘクタールありまして、そのうち二十ヘクタールが建設用地として、あるいは公共施設に供出をされる。ところが実際かかってくるのは、もうすでにそういう部分が除かれて残りの八十に対するパーセントでかかってくるわけでございまして、その辺から部分的にそういう公共用地を供出した土地を持っている方にかかる部分が非常に大きくなる可能性があるわけです。そういうところから、公共用地に供出をした場合に限り、減反といいますか転作の目標面積にカウントできないかどうか、私としてはぜひカウントすべきだと思うのですけれども、いかがでしょう。
  324. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水田利用再編対策につきましては、ただいま先生からもお話がございましたように、稲作を減らすというのが確かに一つの大きな眼目であろうと思います。ただ、問題はもう一つの眼目がございまして、それは単なる米減らしというのにとどまるのでなくて、稲から自給力向上の必要性の高い麦とかあるいは大豆とか飼料作物とか、そういうものに重点を置いた他作物への転換を進めて農業生産の再編成を図っていきたいというのが目的でございます。  ただいま先生からお話がございました建設用地あるいは道路敷地というようなことで、公共用地の敷地というようなものにかかるものは転作ということでカウントできないか、こういうお話でございますが、私たちといたしましては、これは公共事業にかかるものもそうでないものも同様でございますけれども、やはり農業生産に直接結びつかない水田の壊廃自体を転作としてカウントするというのはいかがなものであろうかというふうに考えておるわけでございます。  と申しますのは、一つは、この転作等目標面積、たとえば五十三万五千ヘクタールというものを出します際に、これに見合います数字が二百四十五万トンになるわけですが、これをさらに導きますためには、潜在生産量というものをはじくわけでございます。その潜在生産量をはじくときには反収と面積と両方出てくるわけですが、この潜在生産量をはじきます面積が、いわゆる壊廃というものをあらかじめ織り込んでしまって、たとえば五十五年産であれば五十四年に対しまして二万数千ヘクタール減るであろうとか、そういうことを織り込んで実は潜在生産量を出しまして、そこからだんだん計算していきまして、二百四十五万トン、五十三万五千ヘクタール相当分を転作していただきたいということで県別配分等もやるわけであります。その県別にやる際も壊廃等を織り込んだという感じの話はもちろん申し上げておるわけです。したがって、それからあと県が市町村あるいは農家というふうにおろしていくわけでございますが、こういうことで一応決めました後に公共用地で敷地になってしまって、水田は確かに敷地になりますから、先生のおっしゃるとおり水稲は植えられないのですが、それではその部分を転作したというふうにカウントしてくれということになりますと、今度は転作すべき面積が他作物に転換してなくともその分だけカウントしますから、実際は転作する分が足らなくなるわけでございます。逆に言えば、よけいに生産されてしまうということになりますので、カウントするということは、いまのやり方のたてまえといいますか、そういう過程からいたしますと、この辺は困難であろう、こう思っておるわけでございます。
  325. 玉置一弥

    玉置分科員 全体から見れば調整の余地はあるんですけれども、逆に実態からいきますと、各農家組合の単位までおろされているわけですね。各市町村を通じて農協を通じて——逆ですか、農家組合という、要するに旧村単位といいますか、そういう単位までおろされてきているわけでございまして、非常に単位が細かいから調整がつかないというのが実態なんです。いろいろ話を聞いてみると、どうしても役員の中である程度かぶっているという状態でございまして、もしカウントできないということであれば、ぜひともそれの救済策というものを考えていただきたい、そういうふうに思うわけです。たとえば市町村単位でやるとか、あるいは都道府県で薄めてしまうとか、そういうことも必要だと思うのです。でなければ、逆に公共施設としての供出というものが非常に困難になってくる、そういうふうに考えますので、ぜひその辺を考えていただけるようにお願いをしておきたいと思います。  次に、先ほどもちょっと話が出ましたけれども、野菜とかほかの産物についていろいろ産地指定という制度がございまして、たとえば白菜、キャベツ、大根、ホウレンソウ等、こういうものについて産地指定が行われております。ところが、野菜の実態というのは値段の動きが非常に激しい、そしてこれが最終的には産地をつぶしてしまう、そういう結果を導いているわけでございまして、これからの価格安定というものを図るためにはぜひ産地というものを守っていくような、そういう行政というものが必要になるのではないかと思うのでございます。  たとえば、ことしキャベツ、白菜が当たりました。来年は必ずいまよりも作付の面積が拡大されるというのが実態でございまして、それが来年は非常に大幅な価格の低落を招くということが多分予想されると思うのです。これをぜひ防ぐような措置というものを考えていただきたいと思うのですが、そういう内容についてどういう対策考えられておりますか、お伺いしたいと思います。
  326. 森実孝郎

    森実政府委員 野菜の供給の安定化という問題は、御指摘のように非常に重要な課題であろうと思います。また、この過程を通じて農家の安定的な再生産が確保されるということも御指摘の点だろうと思います。何と申しましても天候等の要因によって作況が非常に振れますし、価格も非常に振れやすい本質を持っておりますので、農家の対応も敏感であることは事実でございますが、やはり基本的に御指摘のような線で取り組んでいかなければならぬと思います。  その意味では、一つは、やはり系統出荷を育てていく、主産地の形成をひとつ進めていく必要がある。もう一つは、やはり野菜の価格安定制度のカバー率をできるだけ上げて、計画的な出荷体制の整備をするという問題が一つあるだろうと思います。三番目は、実はただいま御審議いただいております予算にも盛り込まれておるわけでございますが、来年から生産出荷団体が中心となりまして、出荷段階だけではなくて、作付段階から調整を行っていく。つまり、ある程度ゆとりを持って作付をしながら、出荷団体でしっかり調整できる体制をとる、そういう形で価格の安定、供給の安定を図っていく、こういった点を考えなければならないと思います。また、そういった問題の運用に当たりましては、ちょっと御指摘もございましたが、それぞれの産地の作付を中期的にある程度見込みをつくって織り込んでいくという努力を計量化することが必要ではないかと思いますので、御指摘の点も踏まえまして検討させていただきたいと思っております。
  327. 玉置一弥

    玉置分科員 出荷団体というのは農協になるわけですか。
  328. 森実孝郎

    森実政府委員 原則的に農協でございます。
  329. 玉置一弥

    玉置分科員 現在、たとえば地方卸売市場ですか何かで価格安定基金の導入なんかを行っていますけれども、そういうものとのつながりというのはどういうふうになるわけですか。
  330. 森実孝郎

    森実政府委員 実はいまの価格安定制度は、産地と消費地市場とを両方それぞれ指定して結びつける仕組みになっておりまして、AならAという産地がアという市場、口という市場にどれどれ出していくかというふうな形になっているわけでございます。そういった意味では、消費地の市場につきましても、従来のように六大都市の中央卸売市場に限定することなく、やはりそれぞれの地域の野菜供給の上で重要な役割りを果たす市場につきましては、これをシステムに織り込んでいるというのが現状でございます。
  331. 玉置一弥

    玉置分科員 先ほど大臣にも申し上げましたけれども、これからやはり野菜づくりについても価格的に非常に安定するということには、一つ生産技術というのもあると思うのです。そういう意味で、現在本当にあっちこっちで細かくつくられている、そういう野菜づくりそのものを規模の拡大ということを中心に変えていかなければならないと思います。そのためには、現在各農家ごとに散らばっている畑地、そういうものを一カ所に集めていくような、そういうことを思い切ってやっていかなければならないと思うのですけれども、産地の場合にはそういうことが可能ですか。
  332. 森実孝郎

    森実政府委員 先ほどお答え申し上げました主産地の形成に当たっては、団地化を一番大きな要件として進めております。現実に大根、キャベツ、白菜等の主要野菜についても、それからまたキュウリ、トマト、ピーマン等の主要な施設作物につきましてもかなり団地化が進んできているという状況でございます。ただ軟弱蔬菜等については、やはり個々の農家の孤立的な生産出荷が依然としてかなりあるという実情にありますので、これをどうやってうまくそれぞれの地域で作付としても出荷としてもまとめていくかということについて、先ほど申し上げたような方向に沿って取り組んでまいる必要があるだろうと思っております。
  333. 玉置一弥

    玉置分科員 時間がないのでちょっとあっちこっちへいきますけれども、兼業化が進むということと、それから転作の場合、現在保全管理に出されている田畑が非常にふえてきております。これは一つは、先ほど言った野菜づくりにすると労力がかかるということで、転作する気持ちはあるけれども自分ではできないということだと思うのです。それと、現在の農地法によりますと、小作契約すると自分の意思で返還をしていただくときに非常な負担がかかってくる。そういう両面から保全管理という安易な形でなされている、そういうように考えるのですけれども、現状を見ますと、個々に農家同士の話し合いで作物をかわりに植えたり、あるいはかわりにいろいろなものをつくっている部分もあるわけでございまして、現在の農地法にかわる何かを考えなければいけないと思うのです。それについて、非常に時間がございませんので簡単にお願いをいたしたいと思います。
  334. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 農地の有効利用、できるだけ中核的な農家にこれを集積していくということで流動化の促進を図っているわけでございます。現在、いわゆる農振法の体系のもとでの農用地利用増進事業というのを行っておりますけれども、私ども今国会にこれをさらに拡充して、単行法の形、独立法の形でもってそういう農地の出し手、それから受け手、まあ貸し手と借り手でございます。これを安心して貸し出しできるような結びつける仕組みをつくりたい、これを一層推進してまいりたいというように考えております。非常にはしょった答弁で失礼ですが、そういうことを基本に農地法制の整備を考えておるわけでございます。
  335. 玉置一弥

    玉置分科員 今国会に出される用意があるということですね。
  336. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 今国会に提出を予定して、目下作業を進めておるところでございます。
  337. 玉置一弥

    玉置分科員 最後に、わが党が中心になってやっております行政改革という問題についてお聞きをいたしたいと思います。  現在、農産物検査官というものが全国で相当数おられるということでございますけれども、われわれの党としては、非常に多過ぎるのじゃないか、あるいは仕事の内容から言ってもっと考えるべきではないかという結論を出しているのでございますけれども、何人ぐらいおられて、どういう仕事をなさっているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  338. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 現在、農産物検査官は一万三千名ほどでございますが、この農産物検査官は検査の時期におきまして農産物、主として米でございますが、それ以外の農産物につきましても検査に従事いたしますとともに、検査期間以外におきましては、買い入れ、管理、保管、輸送、さらには売り渡し、流通段階における指導というような、いわゆる食糧管理事業として必要な事業、事務に携わっております。
  339. 玉置一弥

    玉置分科員 たとえば米の検査方法なんですけれども、一俵一俵水分検査とか品質検査をなさっている、そういうふうに聞いているのでございます。それで、欧米の例ということでいろいろ調べまして、特に欧米の場合には電気水分計という簡単な機械を利用していろいろな測量、これは多分水分だと思うのですけれども、検査をなさっている。ところが、日本の場合には百五度C五時間加熱乾燥法というふうに規定されておりまして、欧米でやっているものの実績を調べておられながら、それを補助的に使っているというのが現状だと思うのですけれども、やはり人数そのものが多いということは非常に一人当たりの時間がかかるということが原因だと思うのです。やはり欧米である程度実績のあるような計測方法というもの、あるいはもっとそれ以上に簡単な検査方法、そういうものを進めていかなければいけないと思うのですけれども、それについていかがでしょうか。
  340. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 農産物検査の合理化を進めなければならないということは御指摘のとおりだと考えておりまして、そのためには検査の方法を合理化する必要がございますので、特に現在まで御指摘のような全体についての検査をいたしておりましたものを、抽出検査ないしは流通についてのばら検査というようなことで検査方法を改善する、それによって検査の合理化をするということを進めようといたしております。  それから、水分の検査につきましては、制度といいますか、現在の通達等のたてまえでは、お話のように電気水分計は補足的な使い方のようなふうに書いてございますけれども、実態はここにございますような電気水分計を全検査官が持っておりまして、主としてこれによって検査をしておりまして、この検査で十分でなかったところを先ほど申しました時間をかけた検査法でチェックをするということでございますので、一般的にはこの電気水分計をすべて使っております。
  341. 玉置一弥

    玉置分科員 時間が参りましたので、まだいろいろあるのですけれども、やはり水田利用の再編対策ということで兼業農家そのものをこれから日本の農業として考えていかなければならない、これはもう専門でございますから皆さんよく御存じだと思うのですけれども、やはり地域的にも非常にばらつきがある。そして、特に大都市周辺については兼業のための条件というものがそろっているわけでございまして、特に近郊農家というものをある程度専業、兼業というふうに見きわめをつけていくためには、専業の生きる条件あるいは専業と兼業というふうな農家そのものの役割りの分担というものがこれから必要になってくると思うのですけれども、時間がないので、また別の農水の時間をいただいて質問してまいりたいと思いますけれども、これからぜひ実態に合ったような農業政策というものをお願いしてまいりたいと思います。  どうも本日はありがとうございました。
  342. 片岡清一

    片岡主査代理 これにて玉置一弥君の質疑は終了いたしました。  次に、清水勇君。
  343. 清水勇

    清水分科員 まず、私は農業用電力に関連をしてちょっとお尋ねをいたします。  八電力会社が電力料金値上げ申請を行って以来、農業関係者からは、私が申し上げるまでもなく、非常に切実な訴えが続いております。何としても基本的に値上げ幅が正しい意味で圧縮をされなければなりませんし、同時に重要なことは、新たに今度の申請を通じて農事用電力制度を廃止する、あるいは夏季料金制度を新設する、この制度が申請どおり認められるなどというようなことになりますと、わが国の施設園芸等電力多消費型の最近の農業傾向というものからにらみ合わせて、これはまさに重大な影響をもたらさざるを得ない、こういうふうに私は思います。  そこで、たとえば先月二十一日から始まっている通産省の各電力社別の公聴会で切々と、値上げ幅の圧縮はもとよりですけれども、農事用電力は継続をしてもらいたい、夏季料金制度などという季節料金制はできれば採用してもらいたくない、どうしても季節料金制度というものを新設をする場合にはいわゆる農事用関係については適用除外というふうにすべきではないか、こういうことを訴えておられるわけでありますが、農政推進のかなめである農林当局としてはそういう切実な声をどのように受けとめておられるか、まずお聞かせをいただきたい。
  344. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 今回の電気供給規程の改正の件につきましては、ただいま先生からもお話がございましたように、八電力会社平均いたしまして六四・四二%の値上げという申請でございます。したがいまして、農林水産省といたしましては、国民食糧の安定的供給の確保という観点に立ちまして、この電力料金値上げ幅の圧縮といいますか、これについては極力圧縮をするようにということは一般的にも要請をいたしております。  そのほかに、ただいまお話がございました農事用電力制度というのがあるわけでございます。これにつきましては、今回の申請等を拝見いたしますと、本則から削除をして附則の方に移したいというような申請内容になっておりますけれども、これは従来どおりやはり本則に残してもらいたい。  それから、夏季料金制度につきましては、この制度の趣旨はよくわかるわけでございます。わかるわけではございますけれども、七月から九月というこの時期は他の時期に比べて一割増しという料金制度を新規に導入しようということでございますが、この面につきましては、この制度の趣旨はわかりますが、特にこの時期に使用いたします灌漑排水の関係なり、あるいはエノキダケの関係等につきましては、適用から外してもらいたい、そういう考え方に立ちまして、現在通商産業省並びに関係電力会社に対しても要望を行い、通産省とはただいま申し上げましたような観点に立って折衝をやっておるという段階でございます。
  345. 清水勇

    清水分科員 通産省から来ていますか。  先日も商工委員会でこの問題に触れて、森山エネ庁長官に問うたこともあるわけですけれども、公聴会における生産農家の皆さんの切実な訴えはこれを前向きに受けとめて、査定に当たって十分検討をしたいと思っている、こういう趣旨の答弁がございました。だんだん査定についても詰めが進められていると思いますし、とりわけ、いま農林当局からも言われるように、夏季料金制度あるいは農事用電力の問題は重大な影響を持つものでありますし、全電力消費量、供給量から見れば、農事用電力の占めるウエートというのはある意味で言うと非常に小さいわけですけれども、農業生産に及ぼす影響というのは非常に大きいものですから、この点で通産側ではどう前向きに検討しているのか、お聞かせをいただきたい。
  346. 堀田俊彦

    ○堀田説明員 そもそも今回八社がどのような申請をしてきたかということから御説明申し上げたいと存じますけれども……。
  347. 清水勇

    清水分科員 いや、その点はわかっていますから。時間が余りないから。
  348. 堀田俊彦

    ○堀田説明員 先日商工委員会で先生に私どもの森山長官がお答えいたしましたとおり、公聴会を初めといたしまして各方面から、農事用電力及び今回導入するように申請が出ております季節別料金制度につきましては、いろいろ御意見がございます。農林省の方からもすでに私どもにいろいろ御意見が出されております。農林省とは、現在私どもの方から十分制度の趣旨を御説明するとともに、農林省の方から農業の実態を詳しくお伺いしている段階でございます。まだ審査中の段階でございますので、いまこれ以上申し上げることはここでは差し控えたいと存じますが、真剣に本件を検討していきたいと考えております。
  349. 清水勇

    清水分科員 幸い武藤農林大臣は、一面では長い間商工委員会の筆頭理事というようなことで、この種のテーマについては非常に造詣が深い、こういうふうに私承知をしているわけでありまして、農林水産省に対しては釈迦に説法になるのでありましょうが、農業生産というものは要するに自然現象を相手になされているわけでありますから、どうしても春から秋口にかけて生産活動が集中をする。とりわけ夏場などに施設園芸に限らず電力が非常に使われるようになっている。いまのような制度が仮に廃止をされたり入ってきたりするということになりますと、一面で、これからの農業の基盤というものを非常に揺るがすだけではなしに、農林省が鋭意進めていこうとする水田利用再編対策についてもこれは重大な支障を来す。一面では国策として進めている、しかし、他面ではこれを事実上チェックをする、ブレーキをかけるというようなことが一つ政府の中であってはならないと私は思うわけでありまして、この点、鋭意農林省側の意向も承ってというふうにいま通産側の御答弁でございましたが、大臣からちょっと所信のほどを聞かしていただきたい。
  350. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 電力料金というのは、御承知のとおり電気事業法に基づきまして、コスト主義で認可料金になっておるわけでございます。そこでコストが非常に高くなってきたので料金値上げという問題が起きてきておるわけでございます。そういう面からいけばなかなかむずかしい問題もあろうと思いますし、また二面、特にいま考えられておる夏季料金を高くするというのは、私は省エネルギーの考え方からそういう発想が出てきておると思います。これもやはりいまの時代の要請であろうと思います。  ただし、いま御指摘のように、農業というものは夏場に大変忙しいわけでございまして、その辺が幾ら省エネの観点からそういう料金がなされるとしても、それじゃ省エネに協力するといっても、農業の場合限度があるわけで、まさか夏仕事をやめるわけにはいかないわけでございます。そういう点でこれは非常に特殊の事情があるということは、私ども農林水産省から通産省にも十分伝えてあると思いますけれども、私も十分その辺は両方の仕組みがわかっておるつもりでございますので、ひとつできるだけ通産省に、きょうは課長に来てもらっておりますが、私から通産大臣なりあるいはエネルギー庁長官に対しても強くその点は、日本の農業の置かれておる環境というものを私は私なりによく理解をしてもらうように努力をしたい、こう考えております。
  351. 清水勇

    清水分科員 大臣言われるように、電気料金が原価主義あるいは公平の原則、こういうものを基盤に決められているというようなことは私も承知をしておりますが、しかし、それゆえに時によると必要な政策について政治的判断というものがあって、これまでもたとえば農事用電力といったような制度が設けられてきている。にもかかわらず、これがここでついえ去るなどということになると、大臣言われるように、農業の将来を非常に暗いものにしていく。農業は国の基本だと言いながらこれがだめになるというようなことでは、わが国の将来がまた暗たんたる結果になると言わざるを得ませんので、農事用電力の存続、あるいは仮に季節料金制度が導入をされるようなことがありとしても、農業用についてはこれを適用除外をする。この点についてひとつ両省せっかくの努力をしていただきたい。これは私の大きい注文ですけれども局長どうですか。一言でいいです。
  352. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 農林水産省といたしましては、通商産業省、担当の資源エネルギー庁の方と十分こちらの事情も申し上げ、ただいま先生からもお話しございましたように、四十九年の改定の際にも農事用電力というものはやはり認めていただいたわけでございますし、今回も従来どおりやっていただきたいという線で強く折衝をしたいと思っております。
  353. 清水勇

    清水分科員 通産省の方も私のいまの要望について十分前向きに対応していただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  354. 堀田俊彦

    ○堀田説明員 先ほども申し上げましたけれども、農林省と十分御相談の上、最も適切な方策をとりたいと存じております。
  355. 清水勇

    清水分科員 それでは、電力にいささか関係を持っているわけでありますが、実は長野県を主産地とするエノキダケ栽培というものがございます。現に全国の約八二%を長野県で生産をいたしております。総額二百四十億、そのうちの約二百億を生産している。ところが、これは御承知のように大変に電力を食う産業でございまして、現在でも販売価格の一八・四%という非常に高い電力料のウェートでございます。  にもかかわらず、現実には昭和五十一年度をピークにして、価格の方は、一袋六十二円ぐらいがコンスタントであったわけですが、だんだん低落をしてきて、現在五十四円が限度、八%から一〇%ぐらい下がっている。  そこで、一番困ることは、エノキダケの栽培という特別な性格上、夏場にかけてどうしても冷房用のクーラーなどを用いなければキノコの生育を順調に進めることができない。しかもキノコというものは厄介な植物ですから、御承知のように室内に一定の外気、酸素等がなければならない。ですから、密閉した建物の中では思うような生育を見ない。ですから、勢い暑い夏場は大変な電力を消費してクーラーを運転せざるを得ない。そこでいま言うように夏場電力料金だとか、あるいは最近は、通年栽培の場合には低圧電力を使っておりますけれども、半年くらいという季節栽培の場合は農事用電力を使っているわけですから、これが変化をするということはもう完全にエノキ栽培ができなくなる。そうなると十何年か前のように、冬場はまた出かせぎに頼らざるを得ないというような非常に深刻な事態に逆行する。林野庁でいろいろ心配をされているのだろうと思うのですが、そういう状況についてどういうふうに受けとめておられるか、聞かしていただきたい。
  356. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 ただいまエノキダケの生産につきましてお話がございましたが、先生おっしゃるとおり、エノキダケの栽培には厳格な低温管理が必要でございます。そこで、生産費に占めます電力料金がばかにならない額になっておるわけでございます。さらには生産額も、五十三年が全国で二百七十億を超えておる。シイタケに次ぐ重要な作物というふうに私ども考えておりまして、今後とも振興を図っていきたいと考えておるわけでございます。  そこで、今回の電力料金の改定につきましても、私ども大変憂慮いたしておるわけでございまして、先ほど来農林大臣また農蚕園芸局長から御答弁ございましたように、私どもといたしましても、この栽培農林家に重大な影響がないようにひとつお願いしたいということで関係省庁に折衝、お願いをしておるところでございます。
  357. 清水勇

    清水分科員 一つは、電力料金の問題を上手に片づけてもらわなければなりませんし、いま一つは、いま長官言われるように、基本的に今後の振興施策をどのように確立をしていくか、両々相まって進める。長野県で開発をされたこのエノキダケ栽培という技術は、御承知のようにいま全国に広がっているわけですね。北海道でも東北でも新しい農業という一面で、これが非常に貴重な存在になろうとしている。  ですから、そういう点から言えば、実は五十二年の八十国会の際、やはりこの分科会で、当時鈴木善幸さんが農林大臣でありましたが、私はむしろこの際思い切って農事用電力の甲の認可というか、甲に認めるべきではないのかと言ったことがあるのです。そうしましたら鈴木当時の農林大臣は、次期改定期には通産大臣と直接談判してでも何とか趣旨にこたえたいと言われた経過もあります。しかし、情勢が変わっているから、いまちょっと甲にと言ってみてもそれは実情が許さないと思います。そこで、前任者はそういうふうにおっしゃっておられた経過もございますので、これは現武藤大臣にもそんなつもりでひとつ鋭意御努力をいただきたい、これは要望でございます。
  358. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 長野県におけるエノキダケの生産が非常に高いことはよくわかっておりまして、しかも最近の栽培方法が相当電力をお使いになる栽培方法をおやりになっておると承っております。シイタケに次いでの大変重要な産物でもございますので、私どもその振興を図っていかなければならないことは当然でございます。  ただ、先ほど申し上げましたのと少し事情が違いまして、これはもう少し電力の消費を節約できる方法はないのであろうかという点もぜひひとつ研究をしていただかなければならないのじゃなかろうか。  そういうこととあわせて、その特殊事情において先ほどの農事用の電力と同じような考え方で対処してまいりたいと私は思っておるわけでございます。
  359. 清水勇

    清水分科員 後段に大臣言われた点については林野庁の方でも鋭意御検討をいただきたい。むろん生産者側も自主的にコストダウンをどうやって図るかというようなことは一生懸命やっているわけですが、現状ではなかなかかわるべきものがない、こういうことです。これは大臣もそう言われているわけですから、積極的に国でもお進めをいただきたいと思います。  さてそこで、時間も少なくなってまいりましたから大臣一つ伺いたいことがございます。  私、いわゆる行革に関連をして、いささかの疑問を最近持っておるのです。正しい意味での行政改革あるいは言われるところの綱紀粛正をやる、その推進を図るということは私どもも人後に落ちるつもりはないのですけれども、最近の行管筋のアドバルーンであるのか本音であるのかよくわかりませんがいろいろと言われている発言を私なりに承ると、どうもそういう本筋からちょっと逸脱をして、何か数字合わせみたいなものすらうかがわれることがある。  最近国のブロックの出先機関をかくかくしかじか統廃合する、こういったようなことも言われるわけでありますが、私は思うに、たとえば林野庁関係などというのを見る場合、五十三年度において他の省庁に先駆けて局なり署なり事業所なりについて、まあよくここまでがまんをしてやったものだと思うような統廃合を実はやっておられる。ところが、そういう経過を正しく評価をしないで、今日現在の数字をただ突き合わせてここもこの程度始末をしてもらわなければならぬのだというような行革方針というもの、これは行政改革ではなくて単なる行政整理と言わなければならないんじゃないか、いわゆる国民のニーズにこたえる行政水準をいかに推持するかという立場から見れば、むしろこれはデメリットにつながっていくのではないのか。そういうやり方では真の意味での行革の成果を期待できないのではないか、こういうふうな感じがするのですけれども、その点、大臣の御所信を承りたいと思います。
  360. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 御指摘のとおり、行政改革というのは行政の効率化を図って、そしてなるべくむだなところを省いていくということが行政改革の本旨でございます。そういう面において、いま御指摘のございました林野庁関係合理化計画を立てまして昨年から出発をいたしたところでございます。そういう点から考えれば、林野庁関係については行政の効率化にすでに相当取り組んでおると私は判断をいたしておるわけでございまして、具体的にはまだ行政管理庁から何も私の耳には入っておりませんが、新聞でいろいろうわさがなされておりますので御心配の向きがあるかと思うのでございますけれども、それは正式の問題でも来ておりませんけれども、私としてはいま申し上げたような観点から取り組んでまいりたい、こう考えております。
  361. 清水勇

    清水分科員 仄聞をすると、林野庁の方へ行管から何か言ってきているのじゃないか、こういう説もあるのですけれども、その辺はいかがですか。
  362. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 それは事務的には一切ございません。
  363. 清水勇

    清水分科員 そうすると、大臣に承りたいのですけれども、これは三月三日ですからきのうです。読売新聞の朝刊にあるのですけれども、こういうのをごらんになっていると思います。農林水産省関係では、名古屋営林局を長野営林局に併合する、こういうことが明確に伝えられている。     〔片岡主査代理退席、主査着席〕 これは何も伝わっておりませんか。
  364. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 何もございません。
  365. 清水勇

    清水分科員 なければ結構でありますが、前段に大臣言われておりますような立場に立っていれば、少なくとも現在この時点で、たとえば長野営林局をどうするとか名古屋営林局をどうするとか、ある見方によれば長野営林局を名古屋へ持っていくとか、いまの新聞によれば名古屋を長野へ持ってくるとか、こういう俗にいう数字合わせ的なことをやるということはどうしても納得のいくやり方ではない。  そこで、仮に今後において何らかの具体的なアクションが行管方面から起こってきた場合、これは大臣言われるような所信に沿うてあくまでも拒否をしてもらう、こういうことをお考えになっておられるかどうか。
  366. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 正式に申し入れがないものでございますから、私がそれに対してここでお答えをするということはいささかどうかと思いますが、先ほど申し上げましたように、行政改革というものはあくまで行政の効率化を図っていく、むだを省いていくということであり、少なくとも林野庁の関係、営林局を含めまして全体的に合理化計画を進めている現在でございますので、私は、その計画をより進めていくということにおいては努力をしていかなければならぬと思っておりますが、そういう観点で物を考えていけばおのずから答えは御理解をいただけるのではなかろうかと思うわけでございます。
  367. 清水勇

    清水分科員 大臣の言われる御理解を願えると思うという趣旨についてはよく理解ができますので、禅問答みたいで大変いけませんけれども、申し上げたような動きが今後ございましても毅然たる態度を貫いていただきたいということを要望して、終わります。ありがとうございました。
  368. 始関伊平

    始関主査 これにて清水男君の質疑は終了いたしました。  次に、小野信一君。
  369. 小野信一

    小野分科員 四年連続のスルメイカの大不漁によって漁業経営者並びに従業員は非常に苦労いたしておりますけれども、水産庁ではこの実態をどのように把握しておるのか、まずお聞きいたします。
  370. 今村宣夫

    ○今村政府委員 イカ釣り漁業の経営でございますが、お話しのようにスルメイカ資源が非常に減っております。それからソ連が二百海里を実施しましたので、ソ連の二百海里内におきますいい漁場がなくなったということで、近年漁獲量の減少が見られるわけでございますが、さらに最近では燃油価格が高騰いたしまして漁業支出が非常にふえておりますので、イカ釣り漁業の経営というのは年を追って収支状況が非常に悪くなってきておるわけであります。
  371. 小野信一

    小野分科員 減少などというなまやさしいものではなくて、岩手県においては最盛期の四・八%、岩手県の主要五港の水揚げ高は、昭和四十三年と五十三年と比転しますと、わずかに三%しかありません。五十年以降は皆無に近いと言っても過言ではありませんけれども、その原因をどのように分析し、調査し、将来のスルメイカ資源見通しについてどのような見解をお持ちなのか、お聞かせ願います。
  372. 今村宣夫

    ○今村政府委員 イカの資源の問題でございますが、スルメイカにつきましては、先生御指摘のように、非常に資源が減少をいたしておるわけでございまして、これは昭和四十三年に漁獲量がピークであったわけでございますが、その後非常に減少しまして、五十二年度以降一応資源が回復して増加期に入るのではないかということを期待されたわけですが、全然回復の基調が認められておりません。したがいまして、四十八年ごろの漁獲努力量を非常に強化した、当時隻数もふえましたし、集魚灯というふうな漁獲操法を用いるようになりましたので、再生産に必要な資源量が維持できなくなったのではないかというふうに認識をいたしております。
  373. 小野信一

    小野分科員 このように急激に漁獲量が減少した原因について明確な答弁がありませんけれども、調査研究しておるとすれば、再度の答弁を求めます。
  374. 今村宣夫

    ○今村政府委員 イカの資源のうちで従来から御指摘の主たる漁獲対象であったスルメイカの資源が太平洋において非常に激減をいたしておるわけでございます。このような現象は、先ほど申し上げましたように、漁獲努力量の増大によります産卵する親イカの減少によるという見解もあるわけでございますが、イカ資源の動向は、御存じのように、それ以外に海況等の自然的要因に大きく左右されるということもございます。さらにはまた、五十二年からソ連の二百海里の実施に伴う好漁場の喪失ということもあるわけでございまして、これらの資源問題につきましては、私たちは水産研究所その他におきまして今後の動向の把握に努めておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、残念ながらその回復の徴候は見られないという状況にございます。
  375. 小野信一

    小野分科員 十年以上、漁獲量の落ち込みが続いておるわけでありますけれども、その調査が十分行われておるとは考えられませんので、今後鋭意努力していただきたいことをまずお願いしておきます。  いま最盛期の五%以下に落ち込んだスルメイカ漁獲量によって、船主と従業員は非常に苦しい経営を余儀なくされております。本来漁船を建造する場合には近代化資金あるいは設備資金を利用してこれをつくっておりますので、これらの政府資金あるいは系統資金の返還状況はどうなっておるのか、もし把握しておるとすれば御報告を願います。
  376. 今村宣夫

    ○今村政府委員 私たちの承知しておる限りにおきましては、たとえば農林漁業金融公庫等の融資の償還はそれほど滞ってないということでございますが、これは漁業者の方々が非常に無理をして返済をされておるのではないかということも考えられますから、滞ってないということをもって直ちに安心といいますか、問題ないんだというふうには理解をいたしておりません。
  377. 小野信一

    小野分科員 御存じのように漁船の建造の場合には近代化資金を、政府系統資金を利用して建造いたしております。しかし、長い不漁のためこれを支払うことができないために、経営安定資金に乗りかえましてこれを支払っております。したがって、昨年度岩手県における経営安定資金の申し込みと政府資金の供給高とは二対一の割合になっております。したがって、経営安定資金を借りられなかった人というのは金利を含めまして借金据え置きという形で非常に困っております。したがって、経営安定資金を早急に増額しなければならない実態だと考えますけれども、これに対する政策あるいは考え方をお聞きします。
  378. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御存じのようにこの五十五年度予算におきましては、漁業用の燃油対策特別資金として五百億円の要求をいたしておりまするし、また漁業経営安定資金は三百七十億円を要求いたしておるわけでございますので、この予算が通りますならば御指摘のような点について十分配慮をしてまいりたいと思っております。
  379. 小野信一

    小野分科員 経営安定資金を借りられない経営者は非常に困窮いたしておりますので、もし三百七十億円でも不足の場合には何らかの措置をとっていただかなければならないと考えますので、再度の努力を心からお願いをしておきます。  続いて、イカ一本釣り漁業者への不漁対策としてどのような指導を行おうとしておるのか、お聞きいたします。
  380. 今村宣夫

    ○今村政府委員 いろいろとイカ釣り漁業に関しましては問題がございますが、一つはやはりイカ資源の回復ということを考えなければいけないのではないかと思います。同時に省資源ということもあわせ考えまして、集魚灯の光力のコントロールといいますか規制といいますか、それから産卵期の保護等のための操業禁止期間の拡大ということも検討してまいる必要があると思いますが、同時にまた、北部の太平洋におきましては、イカ釣り漁業の不漁ということの対策としてサンマ漁業の承認の要望がございますので、五十二年——五十四年、特別措置として承認したこともございますが、これらの点も踏まえまして、今後とも関係業界と十分協議をして対処してまいりたいというふうに考えております。
  381. 小野信一

    小野分科員 従来イカ一本釣り漁業はイカ一本釣り漁業に依存するという形で行われてまいりました。昨年からサンマ操業が二十トン未満ですか許可になっておりますけれども、ことしはますますイカ一本釣り漁業者のサンマヘの転換の要求が強まると考えますけれども、具体的にこれにどのように対処なさるおつもりであるか、お答え願います。
  382. 今村宣夫

    ○今村政府委員 五十四年度には、先生御存じのように北海道で二百四十一隻、本州で百隻、うち岩手県で四十八隻ということで、合わせまして三百四十一隻の特別承認を行ったわけでございます。もちろんそれには条件がございまして、操業区域は自県の沖合い海域である、あるいは漁獲物の陸揚げは自県内の港である、それから一航海ごとの漁獲物の積載量は十五トンであるという条件はございますけれども、私たちとしましては、イカ釣り業界が、現在サンマの生産調整をやっておりますからそういう生産調整協力をしていただける、あるいはまた、いま申し上げたような条件を守って操業をしていただけるということでございますれば、大体こういう数字につきまして、いろいろ業界と調整の上対処してまいりたいというふうに考えております。
  383. 小野信一

    小野分科員 恐らくサンマヘの転換が大きな課題になると思いますけれども、希望するイカ一本釣り漁船の隻数を十分満たしてやるつもりがございますか。
  384. 今村宣夫

    ○今村政府委員 これは先生御存じのように、現在サンマが生産調整をいたしておるような段階でございますから、そういう関係から考えましても、現在五十四年の三百四十隻を認めるということにつきましてもいろいろ問題があるわけでございまして、これをふやすということになると、なかなか今後はサンマとの関係で非常に調整が困難になりますので、私たちとしましては、これを減すということのないように、まあ御存じのように五十三年は百二十隻ぐらいだったわけでございますから、この三百四十隻というのは相当な隻数でございますので、これを減すというようなことでなしに十分検討していきたいというふうに思っておるわけでございます。
  385. 小野信一

    小野分科員 要するに、イカ一本釣り漁業者の救済は周年操業を一つの目標にしていかなければならないと思います。その一つとしてサンマの許可が生まれたわけですけれども、そのほかに何か操業の指導をされるようなものをお持ちのことはないでしょうか。
  386. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先生御存じのように小型三十トン未満は知事の承認事業でございまして、これは沿岸漁業との調整上、新たなことを考えるといいましてもなかなかむずかしい問題があると思います。それから中型、大型につきましては、これは御存じのように今回ニュージーランド等の操業を行っておるわけでございますが、その際の合弁事業も含めまして、そういう方面についての大型、中型の操業規模といいますか、全体の操業の拡大ということにつきまして考えていったらどうか、そういうふうに考えております。
  387. 小野信一

    小野分科員 周年操業にイカ一本釣り漁業者を転換させるという緊急要請と、もう一つやはり大切なことは、制度資金の償還延長あるいは金利負担の緩和、これらが現在の緊急課題だろうと思いますけれども、水産庁としてはこれを実施する御用意がないものでしょうか。もし業界がこぞって働きかけるとすればこれを受け入れる準備がないものかどうか、お聞きいたします。
  388. 今村宣夫

    ○今村政府委員 金利につきましては、御存じのように石油資金におきましても、あるいは経営安定資金におきましても、まあ相当低利になっておると私は考えておるわけですが、もちろん漁業者から見れば安ければ安いほどいいことは当然でございますが、制度資金のうちでは低利な部類に属するのではないかというふうに思っております。  ただ、漁業の経営という観点から着目して、いろいろな制度資金を借りておられる漁業者がこれの返済がなかなかむずかしいということでございますならば、その実態に応じまして、償還猶予でありますとかその他の措置につきましては考えていく必要があるかと思いますが、ただ、一般的にではなしに、やはり漁業者の経営の実態に応じまして、それらの対策を検討していく必要があるのではないかと思っております。
  389. 小野信一

    小野分科員 確かに近代化資金の償還は滞りなく行われておる、こう言われておりますけれども、経営安定資金が出ておりますので、先ほど申し上げましたように、それに肩がわりになっておる。それを借りられなかった人々は漁業関係の系統資金を利用し、あるいは単協の自己資金を活用して、政府に対して余り迷惑をかけないような措置をとっていたしております。したがって、単協の漁業者に対する貸付金が急激にふえてまいっております。したがって、これを解決しなければ漁業組合経営自体が非常に資金難に陥るという緊急な事態に直面しておるはずです。したがって、早急にこれらに対する対策考えなければ、親も子もともに倒れてしまうという現実です。  再度お尋ねしますけれども、早急に償還期限の延長並びに金利負担について業界からの要望にこたえていただけるかどうか、検討していただけるかどうか、お考えを聞きます。
  390. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように、近代化資金の償還期が来ておるということで、それを償還するために、あるいは漁業経営安定資金が振りかわっておるということの実態は私も想定できるわけでございますが、現在直ちに漁信連が貸し出しがふえておるために金が回らないというふうには考えておらないのでございますが、もちろんそういう実態がございますならば、まずやらなければいけないのは資金手当てでございまして、これらについては農林中金等とも十分協議をいたしたいと思っております。  もう一つの問題は、恐らく負債整理資金的に長期資金に借りかえて、系統資金を借りかえていくというふうなことのお尋ねではないかと思いますが、現在私の方として、直ちにそういう長期低利の資金に系統資金のものを振りかえるというふうにはいまのところ考えておらないのでございます。
  391. 小野信一

    小野分科員 単協、漁業者ともに資金に非常に困窮いたしておりますので、十分な御配慮をお願いしておきます。  次に、スルメイカ不漁の一つの原因として、オットセイがここ十数年来非常に大きく繁殖したためではないか、こう日常海に出ておる漁師は言っておりますけれども、この漁師の考え方に対して、水産庁はどのようにお考えになっておるか、お聞きいたします。
  392. 今村宣夫

    ○今村政府委員 オットセイの食害から三陸沿岸の漁民の生活を守れというような、何といいますか、記述と言うと悪いかもしれませんが、あるいはそういうお話があることは承知をいたしておりますが、そこで、一体オットセイというのはどのくらいイカを食べるのだろうかということを想定をしてみたのです。これは確たる資料があるわけではないので、水産庁の技術の人たちが一応想定をいたしてみますと、具体的な研究報告がございませんので、一定の仮定を置いて、大体多目に見積もって一万五千トンぐらいじゃないかなということでございます。一万五千トンもそれじゃスルメイカを食べられたら大ごとじゃないかということなんでございますが、食性から言いまして、テガキイカとかドスイカとかいうものを食べるのだそうでございまして、スルメイカは余り食べないということなんですが、したがって私たちは直ちにオットセイの食害がイカの資源を食いつぶしておるというふうにはまだ考えておらないのでございます。
  393. 小野信一

    小野分科員 水産庁では、三陸沖に回遊するオットセイの数をどの程度と把握しておるのか、お聞かせ願います。
  394. 今村宣夫

    ○今村政府委員 三陸沖に回遊するオットセイは、推定でございますが、大体三十万頭から五十万頭ぐらいというふうに考えております。
  395. 小野信一

    小野分科員 漁師は、少なく見積もって五十万頭、多い人は百万頭いるのじゃないかと言われております。オットセイは、動物園で食べる魚は、一日に五キロ食べます。したがって、少なく見積もって五十万頭としますと、一日に二百五十万キロの魚を捕食いたします。百万頭いるとすれば一日に五百万キロの魚を捕食することになります。オットセイの胃袋を調査いたしますと、ハダカイワシ、イカ類、サバ、ホタルイカが入っておることは、水産庁御存じのとおりです。したがって、スルメイカのえさはイワシでありますから、この二つの魚種が一日に五百万キロも食べられるとすれば、三陸漁場のイカ資源が枯渇するのもむべなるかなと考えます。したがって、これに対する対策を急がなければならないと考えます。  しかし、アメリカ、カナダ、ソ連、日本の国際条約によって、オットセイを捕れるものではないことは、急激に解決できる問題でないことは承知しております。したがって、これらに対する調査を正確にしかも早急に行って、捕獲できるような、他の三国に対する説得力がある調査結果を示さなければならないと思いますけれども、いま水産庁ではどのような調査を行い、この捕獲についてどのような考え方を持っておるのか、お聞きいたします。
  396. 今村宣夫

    ○今村政府委員 御指摘のように、オットセイ委員会では、今後とも各国によります調査の継続が必要だということでございまして、わが国としましても三陸沖合い等においてオットセイの食性の調査等を実施してきたわけでございますが、さらにそれにつけ加えまして、五十五年度からは海産哺乳動物の基礎調査を実施いたしたいと考えておるわけでございます。したがいまして、これらの調査につきましては、私たちとしまして鋭意努力をしてまいりたいと思っております。
  397. 小野信一

    小野分科員 いまオットセイの調査を鋭意努力するという御答弁でありますけれども予算を見ますと、水産庁の担当者は一人、調査船は一隻、しかもオットセイの調査を専門に行うわけではなくて、数種の研究を同時に行うという人です。しかも調査期間は四月から六月までの三カ月間。資源調査のために国際条約の中で二千五百頭が捕獲が許されておるにもかかわらず、五十二年度にはわずかに百四十七頭しか捕獲いたしておりません。これでは他の三国を納得させ、そして捕獲できるような資料を提供することはほとんど不可能に近い状態です。したがって、これらに対する調査、予算措置を十分行うべきだと考えますけれども長官の御答弁を願います。
  398. 今村宣夫

    ○今村政府委員 従来、オットセイ調査におきましては、御指摘のように調査船一隻をもちましてそれぞれオホーツク、三陸につきまして調査をいたしてきたわけでございますが、五十五年度に、先ほど申し上げました海産哺乳動物の基礎調査におきましてさらに調査船を一隻ふやしまして、三陸地域につきましてオットセイ、イルカ類の食性調査でありますとか、操業実態のアンケート調査でありますとか、生態系分析のモデルの開発等について調査を行うことにいたしておるわけでございます。  私たちとしましても、本件調査につきましては、先ほど申し上げましたようにできる限りの努力を払ってまいりたいと思っておるわけでございます。
  399. 小野信一

    小野分科員 とにかくイカ一本釣り漁業業者に言わせますと、政府のオットセイ調査はまことになまぬるい、こういう声が非常に大きいわけでありますから、イカ一本釣り業者の要望にこたえて十分なる御配慮をお願いいたしておきます。  次に、繁殖等で捕獲いたしましたオットセイの皮は、アメリカから捕獲量の一五%、ソ連分から一五%の割合で日本に引き渡されるわけでありますけれども、現在までに金額にしてどれほど国庫収入になっておりますか、お聞きいたします。
  400. 今村宣夫

    ○今村政府委員 昭和三十三年から五十三年までの累計で三十三億六千四百万円でございます。
  401. 小野信一

    小野分科員 私は、先ほど申し上げましたけれども、オットセイによって三陸漁場のイカあるいはイワシが捕食される大きな数量、それによって被害を受けておる漁民のために、この三十数億、四十億になんなんとする金を具体的に使うべきではないのかと考えますけれども、そのような方策をとる御意思はございませんか。
  402. 今村宣夫

    ○今村政府委員 オットセイの獣皮の売り払い代金は、御存じのように試験場製品等の売り払い代ということで一般会計の歳入とされておるわけでございまして、総予算のたてまえから、イカ釣り漁業が不漁であるからそれの対策ということでこの金を使うということは、そういう特定目的に支出するということはきわめて困難なことかと思います。
  403. 小野信一

    小野分科員 お願いいたしておきますけれども、オットセイによって莫大な被害を受ける漁民のために、たとえそれが無目的に入る国庫収入だったとしても、他の方法でこれに見合う額を当然被害を受けている漁民のために使用する方が漁民も納得できるはずだと私は考えますので、この点に対する強い要望を申し上げまして、質問を終わります。
  404. 始関伊平

    始関主査 これにて小野信一君の質疑は終了いたしました。  次に、斎藤実君。
  405. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 私は漁業問題につきまして、特に北海道周辺海域における韓国漁船の操業問題あるいは日ソサケ・マス漁業交渉についてお尋ねをしたいのであります。  御承知のように、北海道周辺の海域における韓国漁船の操業問題につきましては、私は本委員会で、再三にわたって早朝解決のために論議をしてきました。しかし、今日に至るまでも解決されていないわけでございまして、きわめて遺憾だ、こう思うわけでございます。最近では韓国の漁船が一千トンあるいは二千トンという、しかも十数隻にも及ぶ大型トロール船団で操業しておりまして、漁具被害を与えているのみならず、産卵場を破壊し、稚魚を含めて乱獲をしているわけでございまして、これがまた、長年にわたって進めてきた関係上、水産資源の保護培養並びに漁業秩序を根本から揺るがしておるわけでございます。したがって、沿岸漁民の経営と生活はいまきわめて窮地に陥っているわけでございまして、このまま放置しておきますと深刻な事態が発生するだろうと考えられるわけでございます。  水産庁長官は、この問題について本年一月に日韓水産庁のトップ会談で具体的に話をされたと伺っておりますが、どういう合意をされたのか、また進展があったのかどうか、まず長官に伺いたい。
  406. 今村宣夫

    ○今村政府委員 北海道沖の韓国の漁船操業問題につきましては、一月二十八、二十九日にソウルで日韓水産庁長官会談を行ったわけでございますが、御存じのように、昨年の十二月初めに韓国は一定の自主規制を通告してきたわけでございます。しかし、私どもといたしましては、その韓国の自主規制というのは、韓国の努力としては評価できる面もあるけれども、しかし、それでとうてい足りるものではない。公海上としても、操業秩序、資源保全ということから、わが国の北海道漁民が守っている国内規制措置を韓国漁船も守ってもらいたいということを強く主張いたしたわけでございます。これに対して韓国側は、昨年の自主規制は韓国側としては思い切った措置であって、現在これ以上の措置はとれないということをまた主張いたしたわけでございまして、結論として申しますならば、その会談において見るべき進展を見なかったことはまことに残念なことでございますが、ただ、韓国の今回の態度は、公海だから北海道沖で操業することは当然の権利であると従来言ってきたわけでございますけれども、そういうことではございませんで、何とかこれを解決したいというふうな態度でございました。この点は従来とは異なることでございますが、この会談の内容につきましては、いろいろな話し合いを二百海里も含めまして私としては端的にいたしたつもりでございますが、今後の段取りといたしましては、三月に日韓漁業委員会の実務者会議を行います際に、これは日韓漁業協定に基づく委員会でございますから、北海道沖問題というのは正式議題ではありませんけれども、北海道沖操業問題を協議するということでございます。さらにまた、九月のしかるべき時期あるいは十月初めになるかもわかりませんが、水産庁長官間の次期定例会議を開催しようということを話し合ったわけでございます。もちろん、それだけではいけませんので、必要に応じ、また機会をとらえて日韓間の協議を行うことはもとよりでございます。したがいまして、韓国との協議は非常にむずかしい問題でございますが、一方また、北海道沖操業問題の解決は、できる限り速やかにこれを図らなければならないことはもとよりでございますから、私たちとしましても、そういう心構えで対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  407. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 いま長官のお話を伺っておりますと、何ら見るべき成果というものが出てこないわけでございまして、確かに自主規制を決めておりますね、昨年の九月でしたな、漁具の集中している海域での夜間操業を禁止するという合意ができて、それ以後十月中旬から実施に移されたわけですが、依然としてその被害が出てきておるわけです。十月中旬以降では十件、被害金額四百二十万、十一月は四十四件、一千四百万円。しかも十二月からは、韓国では操業区域の自主規制を通告したけれども、なおそれでも十二月には十五件、八百一万円の被害が発生しておるわけですね。問題は、自主規制ですから、日本側に取り締まりの根拠がないわけでございまして、法的に拘束力を持っていないわけです。したがって、自主規制だけでは実質的な解決にはならないことは明白なんですね。したがって、このままいきますと平行線になる。もう二百海里法を適用すべきときが来たのではないかと私は思うのですね。  それで、大臣、これはもう歴代の大臣にも私は何遍も言うのですけれども、何も長官がどうこうというのじゃなくて、こういう政治問題ですね、ですから、事務的な折衝の積み上げも必要だと思いますよ、しかし、国務大臣であり政治家である大臣が出かけていって、どこに問題があるのか、あるいは大臣として積極的な路線を引くという姿勢が最も必要ではないか、私はこう思うのですが、大臣、いかがですか。
  408. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま長官からも答弁を申し上げましたように、たまたま今月ソウルで実務者会議が開かれる予定でございまして、そのときには、この間の庁長会談によりまして——従来でございますと、日韓漁業協定に基づいて、大体西のことを検討してきたわけでございますけれども、今回においては、北海道沖の問題も含めて検討することになっております。いままでは西と東というか、西と北と申しますか、そういういろいろな問題があったことは御承知のとおりでございますので、今度大変いい機会ではないか、両方の問題を含めて議論するところに何か解決の方向も見出せるのではなかろうかと私は期待をいたしておりまして、いまそこへ持ち出すいろいろの考え方について省内で議論を詰めておるわけでございます。  それを見まして、それでもなおかつうまくいかなかったときには政治的な決断をしなければならない場合も来るのではないかと思っておりますけれども、いずれにいたしましても、様子をちょっと見させていただきたい。これは今月のことでございますので、様子を見て、その結果私もまた判断をしたいと思っておるわけでございます。
  409. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、北海道海域の被害だけじゃないのですな、西日本でも山陰沖のシイラ漁場、福井県、京都府付近の近海でも同様な被害を受けておるわけですね。したがって、これは西の問題だけではなくて、もう日本全体の大きな問題だろうと私は思うのです。もう毎年毎年この問題はここで論議しているわけですが、一向進展しない。政治不信がきわめて強くなってきている。したがって、大臣、ひとつ政治的な決断をされて、韓国の大臣と政治的な交渉をして、ぜひ解決をしていただきたい。これはもう私は心からお願いするわけですが、再度御答弁いただきたい。
  410. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま私、西と申しましたのは、西の方の人が主として韓国周辺の水域に漁業に行っているわけでございまして、そういう関連と、こういうつもりで申し上げたわけでございます。ですから、そちらの韓国水域へ出かけていってやっている漁業の人たちの問題と北海道沖の問題とを、今度の会議においては両方が一つのテーブルの場で議論し得る可能性が出てきたわけでございますので、そこでいろいろ議論をしてもらった上でどういう結果が出てくるか、それによって私も判断をしなければならない。その結果、たとえば二百海里、先ほど、長官も答弁をいたしましたように、二百海里の問題もこの問の庁長会談では議論しておるわけでございますし、あるいは韓国との関係においては、もっと高度の政治的な判断で対処するのかどうか、いろいろやり方はあろうと思いますけれども、それらについては、いずれにしても実務者会議の会談の結果を踏まえて私は判断をしたい、こう考えておるわけでございます。
  411. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 大臣、ぜひひとつそういう面で決断をされるように要望しておきます。  それから、海上保安庁、いいですか。この韓国漁船に対する徹底した監視体制、これもまた私は非常に大事だと思うのですが、いま監視体制はどうなっているのですか。
  412. 野呂隆

    ○野呂説明員 韓国漁船に対する監視体制について申し上げます。  ただいま先生からお話がありましたように、わが国の漁具の損害の防止あるいは日本漁船と韓国漁船の紛争防止のために、巡視船及び航空機によりまして常時パトロールをやっております。そのパトロールの状況は、常時道南海域に四隻、それからオホーツク海域に二隻、それから日本海側に一ないし二隻の巡視船をパトロールさせております。なお、韓国船の出漁状況によりましては、その海域に増強して配備することにいたしております。なお、航空機によりまして一日一回の監視飛行をいたしております。  そういう状況でございます。
  413. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 次に、サケ・マスの日ソ漁業交渉についてお聞きしておきます。  相手がソ連ですから、現在国際問題となっておりますアフガニスタン事件あるいはモスクワ・オリンピック不参加表明、防衛庁に絡むスパイ事件等で、日ソ間の外交、漁業関係の悪化を私は非常に憂慮しておるわけでございますが、特に日本が米国に同調して対ソ経済制裁に踏み切るようなことがあれば、この三月に予定されている日ソサケ・マス漁業交渉に悪影響を及ぼすと、新聞報道等で警告をしたと私は聞いているわけですが、この日ソサケ・マス漁業交渉の対応、見通しについて伺いたい。
  414. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いまの新聞のはイズベスチヤの論説ではなかろうかと思うのでございますが、先生の御指摘はそうだろうと思うのでありますが、私どもそれは必ずしも正式のソ連政府の意思表明とは受け取っていないわけでございます。がしかし、いずれにいたしましても、昨年の十二月の日ソ漁業委員会におきましても、ことしはマスは不漁年であるとか、サケ・マスの資源は非常に悪い状態にあるとか、ソ連側から非常にきつい話ばかり出ておったことは、もう私ども十分承知をいたしておるわけでございまして、ことしのサケ・マス交渉については相当厳しい姿勢で出てくるんではなかろうか、こういう判断をいたしておりますけれども、いま御指摘のありました、アフガニスタンのソ連の侵攻に伴うアメリカのいろいろな対ソ経済措置、これに対して日本もまたどう出ていくかということが非常に関連していくのではないかという御指摘でございますけれども、正直に言って私ども、いまの段階でどうなっていくのか全くわからないものでございますから、そうでございますというお答えもできないわけでございます。  いずれにしても、これは慎重に対処していかなければならない。そして私ども考え方といたしましては、どんなに厳しいものであろうとも、北方のサケ・マス漁業の安定維持というものについては、極力それが確保されるような形で対処していかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  415. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 御承知のように、これは昭和五十二年、五十三年と二百海里設定に伴って妥結ができなくて、ずるずると五月に入ってしまったということで、減船とかいろいろな補償問題が起きまして、漁民に多大な損害を与えた。それで関係漁業者は、そういう国際情勢を踏まえて大変心配をしているわけですね。日ソ間の合意がこのまま得られないでずるずると漁期を迎えるのではないかという不安に駆られているわけですね。恐らく三月の二十日ごろまでに決まらなければ——国会の承認も必要ですし、いろいろな手続がありますから、時間的にそう余裕がないわけですね。したがって、現在どういう交渉を進めているのか、それの感触はどうなのか、ひとつ大臣に伺いたい。
  416. 今村宣夫

    ○今村政府委員 ちょっと日程のことに関係しますので、私から御説明を申し上げます。  昨年ソビエトから来ました返事では、三月の下旬になりまして漁業委員会を持とうということを言ってきたわけでございます。それで、政府間交渉をやろうというのは、日本側の代表が出かけると相前後しての話でございまして、これは三月の下旬もずっと詰まってからの話でございました。日ソ漁業委員会というのは昨年十二月にやりましたのでことしはいたしませんので、恐らく三月の末か四月に入ってから日ソの政府協議が行われるような段取りになるのではないか。去年も大体四月の二日ごろ行われておった。したがいまして、ソ連の回答がいまないからといってとやかくどうということではございませんので、三月のしかるべき時期までは返事がないと思っておらなければいかぬと思います。  それから、出漁しなければいかぬのは五月の一日からでございますから、交渉は、やはり国会の承認の関係で、四月の二十日か二十一日か二十二日、大体それぐらいまでには妥結をいたさないとというような段取りになろうかと思っております。
  417. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 ぜひひとつ、これは早期に妥結するように、強力に御努力を願いたいと思います。  それから、日ソ漁業損害賠償請求の件ですが、これも大変長い聞かかっていまだに解決されない部分がずいぶんあるわけですね。ソ連に対する賠償請求は約七億円というふうにわれわれは見ているわけですが、いろいろな事実関係、あるいは完全にソ連の責任だという証拠があっても、なかなか問題が解決していないわけです。第三者の証言等があってもいまだに解決をされていない。一体これはどうするのか、政府として漁民が受けた損害に対してどういう交渉をされているのか、伺いたいと思います。
  418. 今村宣夫

    ○今村政府委員 日ソの漁業損害賠償処理につきましては渡辺前大臣が訪ソいたしましたときにカメンツェフ漁業大臣との間で話し合いをして合意がついたわけでございますが、一つは既請求案件のうちで加害船の判明案件については従来どおり一件ごとに審査をする、これを私たちはAグループと言っておりますが、既請求案件のうちで加害船が不明のものがございますが、不明案件でございますから、それぞれ言い合いをしておってもななかからちが明かないので、これについては一括審議で処理をしようということで、これはBグループと申しておりますが、要するに加害船が判明しておるものは一件ごとに処理する、加害船が判明していないものについては一括処理をするということでございます。それから今後の損害賠償請求は、加害船がはっきりしているものについてやるということでございます。  そこで、この大臣間の合意に基づきまして、問題の解決を図りますために主として東京委員会におきましてソ連側へ話を行っておるわけでございますが、加害者不明船についていろいろ分類をいたしまして、加害者不明船のうちでも、それこそ本当にわからないものと、わかっているようでわからないものとございますので、そういう分類の基準でございますとか、今後の損害賠償請求を行う案件の範囲でございますとかいうことについて現在鋭意検討中でございます。  さらに、今後の損害賠償請求は加害船がはっきりしたものについて行う。これはグループCと言っておりますが、そのCグループにつきまして、一体いかなる証拠書類を添付しなければいけないかという問題についても、現在交渉中でございます。
  419. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 その問題処理について積極的にぜひひとつお願いしたいと思います。  次に、日ソ漁業共同事業でございますが、これは昨年エビかごを中心にした七件ほど実施されておるわけでございますね。対ソ外交の変化等によって今後とも共同事業が継続できるかどうか、見通しを伺いたいと思うのです。  もう一点は、この事業が中小漁業者の経営の安定なり、両国の漁業関係に好影響を与える限りその実施に反対するわけでありません。しかし、ことしは三十社以上の業者が実施を希望しておりまして、ソ連側に直接アプローチをしているというふうに聞いているわけでございます。しかし、これらは直接やる関係で、共同事業についての条件に合致しないケースが多数含まれているのではないかというように私は心配をしているわけでございます。したがって、この共同事業の基本方針をまだ関係者に明確に徹底されていないのではないか。したがって、多数の業者の参加希望の原因になっておるのではないかと思うのですが、これはどうでしょうか。本当に共同事業を実施したいという資格者の適格性を審議するための総括的な窓口機関をきちっと決めれば、個々ばらばらにソ連に行って交渉をするということがなくなるのではないかというように私は考えるのですが、昨年の事業実施に当たっての反省を踏まえて、共同事業にどう取り組むのか伺いたいと思います。
  420. 今村宣夫

    ○今村政府委員 日ソの共同事業につきましては、水産庁としまして従来から政府間協定によるわが国の漁船の漁業実績に悪影響を及ぼさないということと、それから関係漁業著聞において十分な意見調整が行われているということ、まだ二点ほど基準がございますが、そういうことを基本方針として対処してまいったわけでございます。共同事業を行うことそのことは、お話しのように妥当といいますか適当なんでございますが、これが無用の混乱を起こすようなことになってはいけませんので、先般水産庁長官通達を出しまして、先ほど申し上げましたき本的方針に加えまして、その手続等につきましても所要の通達をいたしたわけでございますが、今年やはり対象魚種としては甲殻類を対象とする。といいますのは、スケトウとかイカとかいうものを対象にいたしますれば、これは非常に国内的に問題が多いわけでございます。それから、水域は現在の日ソ、ソ日で対象となっている水域以外の水域で操業をする。  そういうことで三月二十日までに水産庁に申し出をしてもらって、水産庁はこれを適当なものと認めたものにつきましては、大日本水産会その他関係の団体の意見を聴取し、そこでいろいろと協議をしてもらって、そして先ほど申し上げました関係業者間において十分な意見調整が行われたというものにつきまして、日本としては許可を出す。ただ駆け込みでソビエトへ行って許可をもらってきたものについては許可をしないという方針にいたしておるものでございます。そういうことで、私といたしましては共同事業をやるときにはできるだけ正々と共同事業をやっていくことが望ましいと思っておるわけでございます。  そこで、それをさらに徹底するために日本側の窓口一本化を図るべきではないかというお話でございますが、そういうことで関係者にもそういう意見があったことを私も承知をしておるわけでございますが、昨年七月に農林水産大臣が訪ソをいたしましたときにも、ソ連側に対しまして、共同事業が秩序正しく行われる必要があるということで、そういう旨を申し入れたところでございます。  そこで、共同事業の交渉には経済的条件も含んでおりますので、一元的な窓口においてこれを行うということは実際上むずかしいのではないか。また、現実に窓口一本化論につきましては、関係者の間でも賛否両論がございます。したがいまして、私たちとしては、それよりむしろ先ほど申し上げましたようなラインに従って関係漁業者間の調整を経て適正にこれを実施するということが現実的な取り扱いではないかというふうに思っているわけでございます。
  421. 斎藤実

    斎藤(実)分科員 時間が参りましたので、終わらしてもらいますが、先ほど申し上げましたように韓国漁船の操業問題、日ソ漁業交渉、サケ、マス交渉については、大臣ひとつ積極的な姿勢で取り組んで解決をしていただきたいことを強く要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  422. 始関伊平

    始関主査 これにて斎藤実君の質疑は終了いたしました。  次に、関晴正君。
  423. 関晴正

    ○関分科員 林野庁長官にお尋ねをしたい、こう思います。  実は、青森に帰りましてショッキングな話を出されました。何のことかといいますというと、青森の営林局がなくなるのじゃないだろうか、こういう話であります。ぜひひとつこの存置方について国会においてもお話ししていただけないか、このことは知事からもありましたし、県議会からもありましたし、県内の市町村長からもありましたし、林業にかかわる諸団体の代表からもあったわけでございます。  申し上げるまでもなく、青森の営林局というのは北海道に次ぐところの大きな営林局であるし、それだけにまた大きな機能を果たしておるところだ、よもやそういうようなことはあるまい、こう思っておるだけに寝耳に水、これは私ひとりだけそう思っておるものなのか。林野庁長官も、また幸いここには大臣もおられるから、先ほどの清水さんの質問にもあったわけですけれども、非常に青森県の方々が心配しているわけです。こういう地方の方々に心配させるなんということはしてはならぬことだ。そういう意味において、そういうことは心配しなさんな、こうお答えいただければと思いますが。
  424. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 お答えいたします。  ただいまのお話は、昨年の十二月の閣議決定におきます地方ブロック機関の統廃合の問題と関連があるわけでありますが、実は、行管当局が御検討されておるということは聞いておりますけれども、具体的な内容につきましては私ども一切お聞きをしていないわけでございます。それがどういう経路か知りませんが、ある種の新聞等に具体的な名前入りで報道されまして、その結果連日のように林野庁に対しまして、各関係地元から御陳情が出ておる状況でございます。  したがいまして、ただいま先生からお話がございましたように、青森営林局は確かに大変大きな営林局でございますので、どういう案が検討されておりますか私ども全く承知しておらないわけでございますが、林野庁内部といたしましても一切検討はいたしておりません。そういうことで、どのような形で出てまいりますかわかりませんけれども、その際にいま先生がおっしゃった点も踏まえまして適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  425. 関晴正

    ○関分科員 大臣
  426. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 これは先ほど清水さんにもお答えをしたとおりでございまして、林野庁の関係においては、昨年来非常に合理化計画を立てて実行してもらっているわけでございまして、これも実は行政改革の一環だと私は考えておるわけでございます。下手なことをやってそれがうまくいかなくなることの方がかえってまずいのでございまして、私は先ほども答弁を申し上げておりますように、この計画を今後も進めていくということに力を入れるべきであって、それ以外のことについては私は全く考えていないわけでございます。いわんや、行政管理庁からも私の方へ正式には何も言ってきていないわけでございますので、私は、そういうことは何か新聞の単なる推測記事だと思っておりますけれども、いずれにしても私どもの方ではいま長官もお答えいたしましたように、何らそういう点について検討はいたしておりません。
  427. 関晴正

    ○関分科員 行政管理庁の方からどういうことがあるのか全然知らない、こういうお話でもありますし、これはまあ単なる話にすぎないであろう、こうも思いますので、この問題について深く質問するということはおきまして、願わくは北海道に次ぐような大きな営林局がそういうようなところにさらされたりするようなことだけは絶対にないように御配慮していただきたい、こう思います。  次の質問は、国有林野内の補助治山事業について聞きたいと思います。  なぜこのことを聞くかと申しますと、いままで国有林野内における治山事業というものは国有林野を持っておる営林局がやってきた。国がやってきたと言ってもいいでしょう。ところが、今度の予算においてはこれを補助事業に切りかえる、こういうわけであります。そうして都道府県に三分の一持ってもらう、いままで国有林野特別会計で持っておった分をそちらにしてもらうんだ、こういう改正のようでございます。少なくとも国土の安全、国土の治山、そういう事業というものは当然に林野庁の責任においてとにかくすべき仕事だろう。それを自分の持っている山まで都道府県にとにかく責任を負わせる治山事業に進めるんだ、こういうようなことはどうしても合点がいかないわけです。この際、この補助治山事業というものを新しく創設した趣旨というもの、あるいは考え方というもの、そうしてこの趣旨をつくるに至っての民主的なあり方というものの経緯がどうであったのかということについてお答えをいただきたいと思います。
  428. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、国有林におきます治山事業は従来から全額国費でやっておったわけでございまして、今後ともこの国有林におきます治山事業はその大部分を国有林治山事業でやってまいるわけでございますが、実は国有林野内事業の治山事業といいますのは、御承知のとおり国有林が奥地にございまして、どちらかといいますと流域保全という形で従来とも進めてきておるわけでございます。ところが、最近開発が進みまして、地域によりましては地域防災上の観点からその付近の住民の方々の生命、財産が脅かされるというような事態が出てまいりました。これは新しい事態でございまして、特に今回考えております国有林野内の治山事業というのは、こういう地域防災の観点からどうしてもやらなければならないという新しい需要にこたえるということでやろうとしておるわけでございまして、実施主体は都道府県になりますので、どこまでも民有林治山事業と同様な都道府県の自主的な判断に基づいておやりいただくということでございまして、国有林といたしましてはこの都道府県の自主的判断を十分尊重いたしまして進めてまいるということでございます。  そこで、どうしてこういう事業を始めたのかという手続等についてお尋ねがございましたが、実は昨年学識経験者あるいは大蔵省、自治省あるいは農林水産省のOBの方々によります治山問題検討会というのを開いていただきまして、ここで十分現在の国有林のそういう局所防災的な個所について現地視察も含めまして御検討いただきました結果、これはやはり民有林の治山事業の一環として、部分的ではあるけれどもやるべきであるという結論が出されまして、それに基づいて今回五十五年度からこれを実行しようということでございます。
  429. 関晴正

    ○関分科員 検討委員会というもので御審議をしていただいた、こういうわけですけれども、こういうような問題こそ法律に基づいてある中央森林審議会あるいは林政審議会、そういうようなものを活用して、そこで御審議をしていただいたならばよかったのじゃないかと思うのですが、これにはお諮りしましたか。
  430. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 前もっていま先生が申されました審議会にお諮りはいたしておりませんけれども、何分にも治山事業、専門的なことでもございますし、特に関係する皆さん方に御検討いただくということがまず大事だろうということで御検討いただいたわけでございますが、もちろん中央森林審議会等には御報告は申し上げるつもりでおるわけでございます。
  431. 関晴正

    ○関分科員 これは大臣にも聞きたいと思うのですけれども大臣の諮問機関に林政審議会というのがあるわけです。それから中央森林審議会が林野庁の中にもあるわけです。森林法の中にあるわけです。こういうようなものの議をなぜ経ようとしなかったのか。これほどの重大な変更をどうしてそういう関係者だけで検討委員会というものに任せておいて進めたのか、合点がいきません。これはひとつ大臣からも——重要な治山事業における自治体負担の問題です。しかもそれは国有林野のことなんです。なぜ自分の持っておるものを地方団体にゆだねるという方針をとらねばならなかったのか、当然これは中央森林審議会なりあるいは林政審議会にかけるべきものではないだろうか、こう思うのですが、まず大臣からこの点についての考えを聞きたい。
  432. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 大臣のお答えの前にちょっと私から申し上げておきたいのですが、この問題は非常に緊急を要する特定の地域の問題であるということでございまして、早急に対応する必要があるということで、相諮りまして、先ほど申し上げましたような治山問題検討会にお願いしたわけでございまして、先生御指摘の重要な変更というふうには私ども考えておらないわけでございます。特に先ほど申し上げましたように、国有林の近くにどんどん開発が進んでまいりまして民家が所在いたしますので、やはり民生の安定という意味から、従来から一般治山事業でも取り上げておりますので、そういうことで一般治山事業で取り上げるということにしたわけでございまして、必ずしも重要な変更というふうには私ども考えていなかったわけでございます。
  433. 武藤嘉文

    ○武藤国務大臣 いま長官からお答えをいたしましたように、多少何か誤解がおありではないかと私思うのでございますが、あくまで従来の国有林の中の治山事業は計画的に国で直接やっていくわけでございまして、国有林でも、中には都市化してきた近くにあるところもあるわけでございます。そういうところで民家が近くにどんどんできてきたのにその辺の治山が必ずしも——全体の国有林は全体の計画でやっておりますので、特殊の地域だけを考えた場合、そこでやはり急いで治山事業をやらなければならないという防災上の見地から、そういうものに限ってこれをやるというふうに私は承知をいたしているわけでございまして、そういう面においてはもちろん審議会にもがければ結構だということでございますが、そういう点で従来の国有林の治山事業というものの計画が全く変わるということではないわけでございますので、そういう面では必ずしも審議会にかけてからやらなければならないという問題ではなくて、いま防災上の見地から急いでやらなければならないということでありましたので、これは当然今後、いま長官もお答えをしておりますように、報告はしなければならない、こう考えておるわけでございます。
  434. 関晴正

    ○関分科員 緊急であり急いでやらなければならないということと、自分たちの負担を免れるということはどうしてイコールになりますか。この点についてお答えいただきます。
  435. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 どうも先生に誤解があるようでございますが、国有林の負担を免れるためにこれをやるということではございません。民生の安定上、やはり一般の防災事業と同様な観点からやっていただくということが趣旨でございまして、国費の負担を免れるためにこれをやるということではございませんので、その辺は御了承願います。
  436. 関晴正

    ○関分科員 重要な間違いをあなた方の方でしているのじゃないですか。いままでの国有林野の治山事業というのは国有林の特別会計の方で三分の一持ったでしょう。国の一般会計において三分の二。そのあなた方の方の特別会計で持つべきものを今度持たないで自治体に持たせるということでしょう。それが自治体に所属するところの山なら別ですよ。民有林だというなら別ですよ。これはあなた方の山ですよ。国有林の地内において発生する治山事業なんですよ。これは大臣も誤解していると私に言うけれども、じゃ何で特別会計の方の負担を軽減して、負担をしないで自治体に持たせるのです。この意味が私にはわかりません。重ねてお答えください。
  437. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 治山事業の費用につきましては、森林法及び地すべり等防止法等によりまして国及び都道府県の負担が定められておるのでございまして、現在、おっしゃいましたように、民有林の治山事業ではこの制度の趣旨に沿いまして費用が分担されておりますけれども、国有林野内の治山事業については、従来、全額国費で持っておったということでございました。  先ほど申し上げましたように、今回の対象地は、最近における状況の変化でございまして、いわゆる地域住民の生命、財産の確保に直接結びつくということでございまして、民有林治山事業と同様に治山事業の一部を都道府県に負担させるということでございますが、なお国有林野内におきまして都道府県が実施いたしておりますたとえば河川砂防事業、これは国有林の中でございます、についても都道府県が費用を負担しておりますし、また、文部省所管の国有林等におきましても、あるいは大蔵省所管の国有林等におきましても、都道府県が実施する治山事業については都道府県が費用を負担しておるということでございまして、さらに地方自治体にこのことによって多額の負担金をかけるというような趣旨では決してございませんので、その辺は御了解いただきたいと思います。
  438. 関晴正

    ○関分科員 これは大変かみ合わない話になってしまうのですが、多額の負担を地方自治体にかけないのだ、こうおっしゃいますけれども、それは何の根拠でそうおっしゃいますか。三分の一の負担というのは多額の負担ですよ。  それから、あわせて聞きたいと思うのですけれども、何か緊急な事態であるとか、特別都市化したからそうだとかとおっしゃいますけれども、私は現地を踏査してきました。私どもの青森県の中で予定されておる増川営林署の管内五カ所、これは全く国で持って結構な場所だと私は見てきました。何でこういうものをいまさら青森県に持たせなければならないのだろう、その感を深くしてきたわけです。そういう意味からいきますと、いたずらに国有林野の特別会計で負担をしないでこれを自治体に押しつけようとする以外の何物でもないと私は見ているわけです。  そういう意味において、その三分の一の負担をさせることは地方自治体としては大変な負担だ。いま林野庁長官は大した負担ではないと言った。実際にこの仕事を持ちますと、それだけの人員が必要になってきますよ。いままで以上に人手もかかる。いままで以上に予算もかかる。その人員増あるいは予算増、それはどこでめんどうを見てくれるのですか。
  439. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 この事業は他の民有林治山事業と同様に、事業費の一部を都道府県が負担して行うものでございますが、県の費用負担に対する財源措置といたしましては、地方交付税あるいは起債等の措置が講ぜられる。これは私どもがやるわけではございませんが、聞いておるわけでございます。  また、この事業量の増についてお話がございましたが、治山事業は毎年、予算によりまして多少の増減がございます。したがいまして、都道府県におきます執行状況等も当然加味して考えなければならぬことでございますし、先ほど冒頭に申し上げましたように、この事業は私どもがお願いするということではなくて、都道府県の自主的な御発意によっておやりをいただくことでございますので、たとえば予算の面あるいは人員の面、過重な負担が起きるということはまず私ども考えていないわけでございます。
  440. 関晴正

    ○関分科員 長官考え方は、県の要請によってやることだから県に負担してもらうんだ、こういう御趣旨のようです。しかし、治山事業というものは明治以来ずっといままで都道府県に持たせるなんということなくてきたわけですよ。これは初めて持たせることなんです。これは初めての行政措置になるわけなんです。それだけに、貧弱な地方財政の中にある自治体としてはありがた迷惑なんです。しかし、ここ、ここはやってほしいと要望はしますよ、自分の山でないんですもの、あなた方の山なんですもの。あなた方の山において危険があるところを何とかしてもらわなければならないというところ、これは要求しますよ。その要求を受けてまた国としては善処してくるわけでしょう。それを県が要求するんだから県が負担をしてやるべきだという、この思想がわれわれにはわからぬわけです。何でこんなことをするのですか。自分の山を守るのに自分の費用で守ったらいいじゃないですか。自分の山が他人に迷惑をかけるというなら、自分の費用で迷惑をかけないようにしたらいいじゃないですか。それを地域住民に迷惑のかかることを救うためには地方団体に三分の一持ってもらわなければやれないんだということは一体何です。自分の責任を都道府県に転嫁していることになりませんか。お答えいただきます。
  441. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 どうも先生のお言葉は、お言葉を返すようでございますが、自分の責任をとこうおっしゃいますけれども、国有林がたまたまあって、(関分科員「たまたまじゃないよ」と呼ぶ)いやいや、そこの地域にありまして開発が進んでくる、民家が近くまで来る、これは国有林の責任ではございません。国有林がその民家の近くで何か山に施業いたしまして、施業の欠陥があってこれによって災害が起きる、あるいはそういう危険性があるということであれば、これは確かに国有林の責任だと思います。しかしながら、国有林が前からここに存在しておりまして、そこへ開発がどんどん進んできた、民地でございますね。国有林の裏山まで住宅が密集してきた。これまで国有林が責任を負えと申されましても、これは大変困る問題でございまして、もちろん国として何らかの手当てをしなければならぬことは当然でございます。しかしながら、そういう場合には従来国有林のそばまで民有林の治山が進んできております。そこで、そういうものと一体となって、民有林治山の計画の中に入れていただいてやっていただくということは、国有林としても非常に助かるわけでございますね、責任論は別といたしまして、実態問題として。そういうことでこの制度をお願いしておるわけでございます。
  442. 関晴正

    ○関分科員 とにかく山に新しく開発されて構築された物件が危険になったとするならば、開発行為をした者において処理したらどうか、こういうお話のようです。しかし、私どもの青森県における軒先国有林というこの地帯においては、初めから軒先まで国有林があるのですよ。その地帯では危なくてしょうがないからといってひとつ治山事業をよろしくお願いします、こうやってきているのですよ。それを受けて、特別会計で負担してやってきたじゃありませんか。なぜそれをこれからも続けることができないと言うのです。続けたらいいじゃありませんか。それをなぜ都道府県に持たせるのですか。持たせるなら持たせるように、その分については特別交付税で自治省の方にめんどう見てもらうようになりましたと、こう言えますか。覚書を交わしているけれども、あの覚書の内容は何です。地方負担については所要の財源措置を講ずるものとする。所要の財源措置というのは何です。先ほどのお話によると、交付税とか起債だとかと言う。起債というのは借金ですよ、これは。何もありがたいものじゃないですよ。  とにかく国有林の特別会計で持っていたものを都道府県に持たせるという、これは重要な変更なんです。大臣、そこまでおわかりになっておられるのですか。そういう特別負担させることについての責任を自治省と交渉してどのようにされましたか。起債ですか、交付税ですか、何ですか。明確に答えてください。
  443. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 現在、主要な民有林治山事業につきましては国庫補助が三分の二行われておりまして、都道府県が財政措置をいたします三分の一につきましては起債対象ということに相なっておるわけでございますが、この場合、財源措置されました起債額の元利償還金の約八〇%相当額が地方交付税に算入されることになっておりまして、この国有林内治山事業につきましても、一般民有林治山事業と同じような措置がとられるというふうに私ども聞いておるわけでございます。
  444. 関晴正

    ○関分科員 地方自治体に負担させるに当たっての態度というものがまことに安易だと私は思うのです。しかも、あなた方の方から流れている文書等を見ますと、国有林野の活用に当たっても大いに考えてやれ、言うなれば一つの取引みたいなものです。選挙で言えば利益誘導の方です。国有林の活用についても積極的に当たってあげて、そうして地方自治体に持ってもらうようにしなさい、逆に言えば、地方自治体に持ってもらう分、活用についてもひとつ考えてあげなさい、考えてもらいなさい、こういうことまで出ています。私は、活用法の活用についてのあり方、行き方というものとこの補助治山の事業というものとは全く別個のものだと思っています。どうしてそういうような文書やそういうような思想がここに出てくるのですか。お答えいただきます。
  445. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 国有林野の活用につきましては、ただいま先生から御指摘ございましたとおり、国有林野活用法に基づきましてやっておるわけでございまして、今回の国有林野内治山事業と直接関連ございません。したがいまして、国有林野の活用につきましては従来の基本方針どおり進めてまいるわけでございますが、ただ、先ほど来御説明申し上げておりますように、非常に土地の利用上様相が変わってきておりますので、いままで以上にやはりこういう地域については、国有林野の活用といいますか、利用という面について積極的に考えていく必要があるであろうということを申し述べておるにすぎないわけでございまして、決して国有林野の活用をするから治山事業をやってくれというような、そういう取引といいますか、そういう感じを持っておるわけではございませんで、その辺は誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。
  446. 関晴正

    ○関分科員 とにかく重要な財政負担を地方自治体にかけるということ、そうしてそれが対策というものは、私は見るべきものがない。特別交付税で見るようにしたというならば別です。あるいは普通交付税で見てあげることにしたというなら別です。起債で見てくれたという、起債というのはありがたくありません。逆に言うならば、国有林野の特別会計で持つ分を地方自治体が起債で持つようになった、こう言えるようなことです。なぜ二十四億のうちの十六億だけ国有林に出させておいて、あと八億を国有林の特別会計から出そうとしないのです。ことしはまず八億出していただいて、そうして地方森林審議会なりにもう少しかけて検討してみたらいかがです。金の問題でないというならば、八億のことは金の問題でもないと私は思いますよ。自治体にとっては大変な金の問題なんです。そうして、これが出発点になると、ずうっと続いていくと大きくなるのです。いま初めは青森県の場合、二千万かあるいは四、五千万か、そういうところになるかもしれませんが、やがて三億ぐらいになるであろう、こう勘定しておるのです。出発のいまは少しで済むかもしれませんけれども、やがて大きな負担になる。そういう意味で、私はこれは考え直すべきものだ、こう思います。長官の方は、何も無理してやらせるんじゃない、地方自治体が求めて、そして緊急性があるというならば、何か責任を都道府県にかけておられるようです。私としては、これはきわめて納得のいかない措置ではないだろうか、こう思いますので、ひとつ十分これからも検討していただいて、これは急ぐに当たらないことだ、こう思いますので、この点について農林大臣林野庁長官、どちらからでもよろしゅうございます、お答えいただきます。
  447. 須藤徹男

    ○須藤政府委員 先ほど来御説明申し上げておりまして、まだ十分な御説明になってないかと思いますが、これはいま申し上げましたようにそんなに今後どんどんふえていくという性格のものではございませんので、その辺は今後とも自治省あるいは関係都道府県と十分調整をとりながらやってまいるつもりでございますが、何回も申し上げますように、たとえ国有林でありましても、やはり地域防災という観点から、そういう需要がほかにもございますけれども、これはやはり緊急にやるべきものにつきましてはやはりどうしても都道府県の防災対策の一環としておやりいただくということが最も効率的であり、かつ緊急に要求を満たすということでございますので、この方針でぜひとも御協力をお願いしたいというふうに考えておるのでございます。
  448. 関晴正

    ○関分科員 質問は終わります。これはひとつ、無理しないで、十二分に地方自治体にかける負担のことも考えて、その対策についてはきちんとやる、やれた、こういう段階で事を運ぶならいざ知らず、そうでない限りはこれは進めるべきではない、こういう意見を申し上げて、終わります。
  449. 始関伊平

    始関主査 これにて関晴正君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午前十時より開会し、通商産業省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時六分散会