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1980-02-13 第91回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月十三日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 田村  元君   理事 小此木彦三郎君 理事 瓦   力君   理事 小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君      稻村左四郎君    小里 貞利君       片岡 清一君    小山 長規君       近藤 元次君    始関 伊平君       藤田 義光君    山崎  拓君       阿部 助哉君    稲葉 誠一君       大原  亨君    川崎 寛治君       兒玉 末男君    野坂 浩賢君       八木  昇君    安井 吉典君       横路 孝弘君    岡本 富夫君       草川 昭三君    坂井 弘一君       木下 元二君    工藤  晃君       柴田 睦夫君    中林 佳子君       大内 啓伍君    岡田 正勝君       中野 寛成君  出席公述人         日本エネルギー         経済研究所理事         長       生田 豊朗君         東京大学教授  佐藤  進君         全国農業会議所         専務理事    池田  斉君         日本団体生命保         険株式会社取締         役       村上  清君         日本労働組合総         評議会経済局長 宝田  善君         全日本労働総同         盟政策室長   高橋 正男君  出席政府委員         内閣官房副長官 加藤 紘一君         総理府総務副長         官       愛野興一郎君         行政管理政務次         官       宮崎 茂一君         北海道開発政務         次官      阿部 文男君         防衛政務次官  染谷  誠君         外務政務次官  松本 十郎君         大蔵政務次官  小泉純一郎君         大蔵省主計局         次長      西垣  昭君         厚生政務次官  今井  勇君         農林水産政務次         官       近藤 鉄雄君         通商産業政務次         官       梶山 静六君         運輸政務次官  楢橋  進君         建設政務次官  竹中 修一君         自治政務次官  安田 貴六君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十三日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     近藤 元次君  稻村左四郎君     小里 貞利君   江崎 真澄君     片岡 清一君   奥野 誠亮君     山崎  拓君   梅田  勝君     中林 佳子君   中川利三郎君     木下 元二君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君    稻村左四郎君   片岡 清一君     江崎 真澄君   近藤 元次君     荒舩清十郎君   山崎  拓君     奥野 誠亮君   中林 佳子君     柴田 睦夫君     ――――――――――――― 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十五年度予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず最初に生田公述人、次に佐藤公述人、続いて池田公述人順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、生田公述人にお願いをいたします。
  3. 生田豊朗

    生田公述人 日本エネルギー経済研究所生田でございます。  私はエネルギー専門家でございますので、私の専門分野につきまして意見を述べさせていただきます。  昨年から始まりましたいわゆる第二次石油危機でございますが、これにつきましては改めて申し上げる必要もないかと思いますけれども、日本経済それから世界経済に非常に深刻な影響を与えているわけであります。石油価格をとってみましても、昨年一年間での産油国政府公式販売価格上昇がちょうど二倍になっているわけであります。わが国につきましては、そのほかに割り高なスポットものの石油の輸入が増大したこと、それから産油国との直接取引、いわゆるDDでございますが、DDにつきましても、いわゆるプレミアムと申します割り高価格のものがかなり入っていること、それからさらに円建て価格にいたしますと、かつての円高から最近の円安への変化がございますので、わが国に入着いたします石油円建てのCIFの価格は、一年前に比べまして約二倍半に上昇しているわけであります。     〔委員長退席小宮山委員長代理着席〕  それから、これは過去一年間変化でございますけれども、年平均をとってみますと、昨年は年間を通じて段階的に小刻みに石油価格上昇してまいりましたので、年間平均価格は年末の価格よりもかなり低いわけであります。すなわち、一昨年の昭和五十三年と昨年の昭和五十四年のそれぞれ平均をとりますと、石油平均価格上昇率が四〇%でございます。しかし、昨年の年間を通じての段階的かつ小刻みな値上げの影響が実はことしになって出てくるわけでございまして、昭和五十五年の石油平均価格は昨年の平均に比べまして約五〇%上昇するわけでありますので、石油価格上昇に伴う影響といたしましては、一見これまでの急激な価格上昇が一段階いたしましたことで、もはや峠を越したというように考えられがちでありますけれども、実はそうではないわけであります。昨年の石油価格上昇影響はその後遺症がことしになって出てくるわけでありますので、経済の各部面における石油価格上昇影響は、実はことしにおきましてかなり深刻に出てまいるというように考えております。  実は、この石油問題は価格の問題だけではありませんで、それと表裏一体の関係におきまして石油供給量が確保できるかどうかという問題があるわけであります。この点につきましては、かねがね世界各国エネルギー専門家が、世界石油資源状況それからそれの開発技術状況、さらにそれに対応します産油国政策の動向などを考えまして、一九八〇年代の後半以降一九九〇年代にかけまして世界的に石油供給制約が強まり、価格上昇があらわれ、それが世界各国特に石油消費国経済成長の頭を抑えることになるという予測をしていたわけであります。しかし、そういう状況が実は数年ないし十年以上繰り上がりまして昨年から始まったわけでありますけれども、これはとりもなおさず、イラン革命でありますとかあるいは中東和平問題に関連いたしますサウジアラビアその他の産油国石油政策変化でありますとか、すなわち中東を中心にいたします国際政治軍事情勢変化と対応いたしまして産油国政策が大幅に変化したことによるわけでありまして、そういう政治情勢変化によって、かねがね予想されていた石油供給制約価格上昇が繰り上がってあらわれたというように考えるべきだろうと思います。  したがいまして、現在すでに進行しております第二次石油危機は、これはいわゆる一過性のもの、つまりしばらくたつとこれで済んでしまうというものではありませんで、今後とも長期的、構造的に続くものと考えなければいけないわけであります。この長期的に続くものと考えた場合に、それがどういう影響を持ってくるかという点については二点あるわけであります。  まず第一には、石油価格が短期的にはそのときどきの景気変動によって変化するわけでありますけれども、長期的な趨勢といたしましては、今後も徐々に石油価格上昇が続くわけでありまして、これをとめる有効な歯どめは、現在のところ石油消費国としては持ち合わせていないわけであります。せめて多少の効果のある歯どめといたしましては、エネルギー消費全体につきまして脱石油を図ること、すなわち石油以外のエネルギー消費をふやすこと、それからエネルギー全般につきまして特に石油中心といたしましてエネルギー節約有効利用、いわゆる省エネルギーを図ること、この二つしか有効な手段を持ち合わせていないわけでありますし、産油国は、石油に対する需要がほかのエネルギー、すなわち石油代替エネルギーとの関係におきましてあるバランスがとれる時点まで、すなわち石油価格石油代替エネルギー供給コストが一致するところまで石油価格を段階的に引き上げていくということを、OPEC長期戦略におきまして明言しているわけでありますので、やはり今後とも石油価格上昇はある程度進むというように考えなければいけないわけであります。  そういう前提で考えてまいりますと、現在一バレル二十六ドルないし二十八ドル程度原油価格が、一九九〇年すなわち十年後におきましては一バレル八十ドルないし百ドルぐらいに上昇するおそれがあるわけでありまして、これは世界石油消費国にとりまして非常に大きな問題であります。  それから供給制約でありますけれども、これも従来は多少誤った楽観論がございまして、産油国特にOPEC諸国石油消費国需要増大に対応して生産を幾らでも拡大するというような見通しがあったわけでありますけれども、それが誤りであることはもう現実に明らかになっているわけでありまして、私は一九八〇年代を通じましてOPEC石油生産はせいぜいふえても現在の水準の二〇%増以内にとどまると考えております。場合によりましては現在の水準の横ばい、それから何らかの政治的な変動が起きました場合は、さらに生産が減る可能性もあるわけであります。OPEC以外の石油生産につきましては、北海の油田の石油生産は八〇年代の後半からは増産が頭打ちになりまして、減産の可能性もあります。メキシコにつきましても増産は継続いたしますけれども、余り大きな増産は見込めないわけでありますし、アラスカを含めましたアメリカの生産も大幅な増加は見込めない状況であります。特にソ連東欧圏につきまして、一九八〇年代の後半以降、ソ連東欧圏を含めた石油需給が現在の状況と変わりまして供給不足になる可能性がきわめて大であります。この供給不足の量につきまして、幅につきましてはいろいろ見解の差はございますが、いずれにいたしましてもソ連東欧圏を含めて石油供給不足になるという点につきましては、世界エネルギー専門家の非常に多くの専門家たちが認めており、そういう展望をしております。私もそのように考えております。したがいまして、一九八〇年代の世界石油需給は今後ともますますタイトになってくるわけでありまして、日本は特に資源を持たない経済大国といたしまして、その石油供給制約下でいかにして経済安定成長を図っていくかというきわめてむずかしい課題を担うわけでありまして、そのためには、省エネルギー、それから代替エネルギー利用拡大、さらに新エネルギー開発の促進を中心といたしましたエネルギー政策がさらに強力に進められる必要があると考えております。  今回の昭和五十五年度予算案におきまして、エネルギー関係予算がかなり増額されましたのは大変喜ばしいことだと考えておりますけれども、それではまだ不十分であると私は考えております。国の経済的安全保障、それから国の繁栄の基礎になりますエネルギーの確保のためのエネルギー政策に、政策中心重点をより強く置いていただくことを強く要望したいと思いますし、それと関連いたしまして、財政面だけではございませんで、税制面全般につきましても、エネルギー関係諸税の抜本的な見直し、それから税制利用しての民間資金エネルギー部門への吸収、投入、そういう手段がさらに追加的に講ぜられることが必要だと考えておりますので、昭和五十六年度以降、そういう諸点につきましてさらに政策が強化され、予算面税制面を通じましてその政策が実施され、促進されていくことを強く要望いたしたいと思います。そういう点も含めまして、私は今回の昭和五十五年度予算案につきましては賛成でございます。  以上です。(拍手)
  4. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、佐藤公述人にお願いいたします。
  5. 佐藤進

    佐藤公述人 東京大学経済学部の佐藤進であります。  五十五年度の総予算についての意見ということですが、私は、当面の最大の問題あるいは課題とされております財政再建の問題に焦点をしぼって考え方を述べ、御参考に供したいと考えます。  以下では第一に、五十五年度予算財政再建の問題にどのようにこたえようとしているかを考えてみたいと思います。それから第二に、財政再建の主要な手段である経費節約及び行政改革の問題、第三に、財政再建基本的前提である税制改革の問題に触れまして、最後に、具体的な提案という角度から意見を述べることにしたいと思います。  第一の問題であります、五十五年度予算によって財政再建への第一歩が踏み出されたと見るべきか否か、これについてはいろいろな観点から疑問があります。  第一に、財政再建第一歩のあかしとされているのが公債発行額の一兆円削減でありますが、これは五十四年度当初予算に比してでありまして、五十四年度補正予算ではすでに一兆二千二百億円といった国債減額が図られておりますので、五十四年度実績比ではむしろ五十五年度にこれを上回る発行を予定していることになります。  それから第二に、国債発行額の一兆円削減というのは、四兆五千七百億円と言われる巨額の税の自然増収に支えられておりまして、こうした大規模自然増収が期待されない五十六年度以降、いかなる手段国債発行減額が達成されるのか見込みが立っておりません。ある意味で特例公債依存度を大きく引き下げる好機を逸したと言わざるを得ないのであります。  第三に、財政再建のため大規模増税増収基本構想を具体化する必要がありますが、五十五年度税制改正では、後で申し上げますように、財政再建前提としての不公平税制是正にほとんど前進を遂げておりません。  政府はその予算編成方針において、公債発行額をできるだけ圧縮して財政再建第一歩を踏み出すとともに、経済の着実な発展に配意するということをうたっておりますが、財政再建の必要を政府が訴えるようになったのは五十一年初め以来でありまして、財政再建キャンペーンというものはすでに五年越しであります。しかし、これに対応した必要な措置政府がとってきたとは言いがたいのであります。  今日、国債発行依存度三〇%ないしそれ以上を五年以上にわたって継続しているような国は主要諸国のどこにも見られないのであります。一九七五年の世界的同時不況以降、各国財政再建努力が続けられているのに、わが国の場合、見通しがほとんど立っていないのでありまして、これが国民経済のみならず国民生活を大きな不安にさらしておると言わざるを得ません。  国債依存度三〇%以上、五十五年度予算では三三・五%ということでありますが、こういう状況を続けることの弊害といたしまして、財政硬直化の進行と並んで民間資金需要に対するクラウディングアウト効果が挙げられ、これは国家的資金需要が優先される結果、他の機関及び企業資金調達が阻害されるという効果発生することが心配されているわけであります。しかし、より以上に重要なのは、国債発行中央銀行信用創造を媒介として発生せしめるインフレ効果でありまして、国債インフレとは切っても切れない関係にあることは、いかに強調しても強調し過ぎることはないと思われます。  現在の時点において国債償還長期的見通しが立っていないとしますと、選ばれるのは国債消極的償還のためのインフレの道でありますが、これが国民経済及び国民生活に破滅的な影響を与えることが最も大きな不安要因であります。もちろん、今日のインフレーションの原因は、国債発行高の累積によるもの以外に原油価格値上がり等コスト要因によるものが多いとされておりますが、財政赤字を埋めるための国債発行を多年度にわたって続けるならば、これによる通貨の過剰が発生することは目に見えております。そして、この巨額財政赤字発生政府の放漫な財政運営によるところが多いのでありますが、これに対する反省は十分でなく、五十五年度予算編成過程を見ますと、困難な事態に対応してこれをコントロールする力が政府にもまた国会にも失われつつあるという感を深くするのであります。  第二の問題に移ります。  財政再建の基本的な方法行政経費の節減と増税増収二つであって、それ以外にはありません。ここで行政改革への志向を含めた安上がりの政府、チープガバメントの実現が第一の課題となりますが、五十五年度予算の目玉とされております行政改革一つ取り上げてみましても、不十分、不徹底でありまして、また行政改革の基本問題についての配慮が払われているとは言いがたいのであります。政府の決定に係ります行政改革案で、将来統廃合の対象とされたものが特殊法人百十一のうち十六とされておりますが、五十五年度実現されるのは三つ程度とされ、地方支分局整理を含む行政機構整理も、五十七年度ないし五十九年度までに実現といった及び腰のものであります。補助金整理がやや実効性を持つ措置とされておりますが、補助金の持つ問題点が解消の方向に向かっているとは評価しがたいのであります。  行政改革の基本問題の一つに、予算会計制度改革をどのように行政改革と結びつけるかという問題があります。資金不正不当支出公団等特殊法人に目立っている現状において、これらの機関に対する会計検査を強めるという措置が必要であります。しかし、それは国際電信電話会社会計検査院の検査対象にするといった措置にとどまらず、特殊法人経営実態予算公開等の形で国民的監視のもとに置くという方向で改正されねばならないと思われます。その際、国民的監視と申し上げましたが、国民代表機関国会でありますから、国会に提出される財政法第二十八条の予算参考書類に、全特殊法人の財務諸表及びより具体的な活動実態の報告を含ませるといった措置が必要と思われます。  私も資料としていただきましたが、財政法二十八条予算参考書類の中で、百十一と言われる特殊法人のうち大体半分程度しか調書の提出がございません。それからさらに、特殊法人に対して国家的な財政資金融資が大量になされておるわけでありますが、特殊法人に対する融資実態を明らかにする財政投融資計画、これをめぐっての国会審議が非常に重要であると考えます。  さらに、行政改革予算会計制度改革と結びつけるためには、行政効果判断の基準を明らかにする事業別予算とかPPBSとかいった新しい予算手法予算の中に取り入れること、それから後で詳しく述べたいと思います財政計画の導入が必要と思われます。予算会計制度改革をめぐって各国でさまざまの努力が払われているのでありますが、わが国の場合、なぜこういうことが不可能なのであろうかということを含めまして、昭和三十八年及び三十九年の臨時行政調査会答申にさかのぼった本格的な論議が必要であります。  なお、私見では、行政改革はこれをやらねばなりませんが、公務員定数削減を含む人員整理中心にこれを行うことには、実行上の困難があるように思われます。公務員数の人口千人当たり数などは、主要諸国に比してわが国の場合はむしろ少ない方であります。人員整理公共サービスの目立った低下につながるという場合には、当然そうした面からの国民の不満が拡大することと思われます。公共サービス水準低下福祉見直し等の形で社会的弱者に及ぶ場合、これまた大きな問題になります。したがって、経費節約むだ遣い是正あるいは不急不要経費抑制重点を置くべきであります。これをさらに行政事務に見合った公務職員の配置がえなどとともに推進すべきであるといたしましても、経費節約だけで財政再建が達成できるとは思われないのであります。  したがって、ここで第三の問題に移りますが、ここで国債を減らし、さらにそれを目立った形で償還するための大規模増税が長期的に見て大きな課題となります。その場合、個人課税でこれを行うのか、企業課税でこれを行うのか、あるいは企業納税義務者とし消費者担税者とする消費税でこれを行うのか、はたまた資産課税でこれを行うのかといった点が税制改革の基本問題となります。  五十五年度税制改正では、当初法人税増徴財務当局によって取り上げられましたが、財界の反対等で見送りとなりまして、増収措置としては退職給与引当金積立限度額の引き下げ、給与所得控除抑制、そして企業課税関係特別措置整理などがなされたにとどまります。これは必要最小限増収措置とされているものでありますが、他方で、土地譲渡所得税の緩和といった不公平税制拡大措置がとられておりまして、財政再建という課題にこたえようとして税制改正がなされたとは評価しがたいのであります。たまたま経済状況の推移に支えられまして発生が予想されておる四兆五千億円余の税の自然増収が見込まれたため、増税プランが大きく引っ込んだという形になっておりますが、これまで何年かにわたって政府は、財政赤字克服のため国民消費に広く負担を求める一般消費税が不可避と力説してきたわけであります。政府は、これを昨年秋の選挙対策等観点から引っ込めた後で、どのような増税プラン国民の前に示すのか、その手段方法、時期の見通しなど全く不確かでありまして、これでは責任のある態度と言いがたいと思われます。  ここで最後に、財政再建のため何が必要か、これを具体的にどういう形で達成するかという問題について考えてみたいと思います。  ここでまず第一に、政府がその責任において財政収支中期的見通しに基づいた中期財政計画を明らかにして、国民判断資料とすることが必要と思われます。これは欧米諸国ですでに行っております中期財政計画に基づいた予算編成ということになります。単年度予算は合理的な事業計画実行を可能にするものではありませんし、また、初年度予算にあらわれますが、これに続く次年度以降の後続費用推計を明確にするものではありません。さらに言うならば、単年度予算公共サービスの全体コストを明らかにするのには不適当であります。今後、わが国予算国債費社会保障費公共事業費等中心増大をするわけでありますが、これらの予算規模推計をはっきりと示す必要があります。  われわれはすでに、この種の推計として、五回にわたる財政収支試算を持っております。これは財政再建展望を与えるものとして有意義と思われますが、大蔵省経済社会計画等前提に機械的にはじき出した数値でありまして、各省庁の同意を得、政府がその責任において確定したというものではありません。この種の財政収支試算は、情報価値としても限られたものであって、これがほとんど唯一の再建論議の材料ということであれば、論議が進まないのも当然であります。  したがって、財政収支試算財政計画にまで高められなければならないと思いますが、その前提としては、財政計画政府の財政政策実態を規定し得るほどの包括性と網羅性を持つこと、ここから一般会計のみの財政収支試算というのでは不十分であるということになります。それから、計画は見通しないし推計ではなくて、何を重点的にやるか、優先的にやるかという順位の明示がなければなりません。それから財政計画というものは、財政当局による単なる推計ではなくて、政府の政治責任を明示したものである必要があります。  このように財政計画前提を数え上げますと、いろいろ困難な条件を政府に課するように受け取られるかもしれませんが、五十五年度予算編成過程を見ますと、五十四年五月のサマーレビュー開始のときに、大蔵大臣が閣議で説明をした財政事情の展望、それからさらに、十一月の末の段階で大蔵大臣が閣議了承の形をとった財政事情の試算等に盛られたフレーム、大枠が、一般会計予算に関する限りではそのまま貫徹しておるというような実績がありまして、これは新しい予算編成のやり方が始まっているというふうにも考えられるわけであります。予算の総枠を早期に決定をするということは重要でありまして、アメリカの議会予算委員会では、支出限度の決定というのが予算委員会の大きな課題となっております。これらを可能にするためにも、次年度予算フレームを早期に決定し得るような中期財政計画の提示が必要であります。  二番目に、行政改革は、これを長期的、計画的に推し進める必要があります。そしてそのため、臨時行政調査会のような機関を改めて設けることによって、今度は財政支出の節約という角度に重点を置いた答申を期待すると同時に、予算会計制度見直しをもその課題とする必要がありますが、それ以上に重要なのは、国、地方を通ずる税制改革の立案であると思われます。  わが国は大正十五年、昭和十五年、昭和二十五年と大税制改革を行ってまいりましたが、その後昭和二十九年、三十六年といった中規模改革はあったにしても、継ぎはぎだらけの改正を重ねてまいっておりまして、現行税制は、現代国家の税制のあり方として必ずしも適合したものとは言えないようになっております。所得税、法人税、消費税あるいは地方税制などどれ一つをとっても、本格的、基本的な論議を回避したその都度の部分的改正でありまして、税制改正論議は前へも後へも進めないという形になっております。税制は、各種利益集団の要求を折衷する形で構成されておりまして、これでは公平で経済的、合理性を持った税制といった理念が全く見失われるようになるわけであります。  税制が個別の審議会、調査会等それぞればらばらに論議されておりますので、たとえばこれにいろいろな形でコミットする経済審議会、税制調査会あるいは地方制度調査会、財政制度審議会といった各種の機関、これにたとえば社会保障制度審議会なども含めてもいいと思いますが、これらの代表者を集めた総理大臣直属の委員会で、財政再建税制改革に焦点を合わせた審議を集中的に行い、その勧告を果断に実行すべきであるといった提案が考慮に値すると思われます。  要するに、財政再建を最緊急の課題とするならば、また、再建をおくらせればおくらせるほど問題解決が困難になるとするならば、それに応じた責任のある措置政府においてとる必要があるのであります。五十五年度予算ではそのような努力が認められるとは言いがたいのでありまして、これが政治に対する国民の不信ないし不安の原因となっております。国会においても、予算の基本問題であります財政再建問題についてさらに熱心な論議が行われることを期待いたしまして、私の公述を終わります。(拍手)
  6. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、池田公述人にお願いいたします。
  7. 池田斉

    池田公述人 私は、まず結論から申し上げますと、非常に厳しい財政の状況の中で国債に依存する度合いが余りにも大きい、これをできるだけ今後調整をしていくという視点から五十五年度予算編成が行われまして、総額四十二兆五千八百八十八億円、その中で私ども関係のある農林予算が三兆五千八百四十億円、こういうことで編成をされ、いま国会審議を煩わしておるわけでございますが、いろいろむずかしい中で工夫がされて予算編成が行われておるということを是といたしまして、結論的にはこの予算に賛成をするものであります。  私は、農林水産関係の問題に焦点を置きまして若干意見を申し上げたいと思いますが、きょうは先生方の顔を見ますと、農政のベテランの方が多いわけで、釈迦に説法のようなお話をすることを恐縮に存じますが、日ごろ考えている問題を若干申し上げたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  私どもが常に政府国会にお願いをしている問題は、日本の農林漁業の資源をフルにひとつ活用して、また、これを担ってやる農業者に活力を与えてもらう、こういうことが常に大事な問題ではないかということを申し上げておるわけでございます。特に、これからの第二のエネルギー問題等を含めまして、経済安定成長路線をどういうふうに歩むか、その中で農業の位置づけというものが将来のビジョンとして明らかになる、こういうことを念願いたしておるわけでございます。特に、高度経済成長で、いわゆる合理主義とか利便とかいうものが優先をされた、言うなれば一つの価値観があったような感じがいたしますが、今日これから中長期の問題を展望いたしますと、国民の生活の中におきましても質を充実する、また落ちつきとバランスをとる、こういうような価値観が非常に大事な時代に入ってくるわけで、そういう視点から、国民が総体として納得をするような農政の路線が敷かれるということを念願するものでございます。  五十五年度予算編成におきまして、一面やむを得なかったというような感じもいたしますけれども、補助金整理ということが非常に大きく取り上げられ、しかもこれは一律削減という考え方が出されておったわけでございますけれども、今後の問題といたしましては、日本の農業というものは非常に幅の広い、きめの細かい、そういう姿の中で、しかも農家がいろいろな形で活力を出していくというような問題がきめ細かく配慮されておるというようなことで、非常に零細な補助金も多々あるわけでございますが、これをコンピューターか何かにかけまして一律にやるということは、私どもはどうしても納得ができないし、そういうものでないということをひとつ皆様方に御理解を願いたいと思うわけでございます。  古い話でございますが、吉田内閣のころに和田博雄さんがいろいろな経過で農林大臣になられました。そのときに、農林省の石黒忠篤先生以下先輩が和田さんに対していろいろ激励をしようという会合に私も出席をした記憶がございます。そのときに石黒先生が申しましたのは、農林省には非常に零細な補助金がいろいろある、しかし、それはそれなりの役割りを持っておるのだ、したがって、この辺のことを和田新農林大臣は、十分きめの細かい配慮をやって行政をやれというような話が、いま耳の底に思い浮かぶわけでございます。  これは古い話でございますが、今日におきましても同様であり、将来におきましても同様な問題につながることであるというふうに考えます。農業者の活力をいろいろな方面から盛り上げる、こういうようなきめの細かい補助金政策というものは今後も当然農林行政に関する限りは続けなければならない問題であるというふうに私は考えますので、ひとつ考えをお聞き願いたいと思うわけでございます。  それから、農林漁業予算につきまして、中長期の展望の中でわれわれはどういうことをこれから期待をするかという問題についてひとつ申し上げたいと思うわけでございます。  それは農業だけではございませんけれども、農業、林業、水産を含めまして、積極的にこれから資源を活用する基盤をどうやって拡充整備をするか。これは何と申しましても国の財政というものが中軸になって投資されなければならない問題でございます。御案内のように、今日、日本の穀物の自給率は三四%程度、これは世界の国におきまして先進国としてはまず例のない姿ではないかと思うわけでございます。しかも、そういう中でことしは五十三万五千ヘクタールの水田の再編を行わなければならない、将来は八十万ヘクタールに及ぶであろう、こういうようなことが言われておるわけでございます。しかし一方におきまして、水田の裏作が可能な面積は百五十万ヘクタールございます。また、今後開発をしようというような考え方に立ちますと、未墾地で開発可能地が農林省の調査では二百八十万ヘクタールある、こういうようなことでございます。  したがいまして、中長期に考えます場合には、国際情勢は必ずしも安定して推移するという保証はないわけでございまして、なおかつ、今回のアメリカのソ連に対する対応のように、食糧が戦略物資化するというようなことも現にいま起こっておるわけでございます。  そういうような観点から、私どもは、基盤整備、農用地の造成、そういう問題につきまして、いま申し上げましたような日本の可能な数字があるわけでございますから、これをどうやって今後計画的に積極的に開発整備するかということがきわめて重要な課題であり、予算の姿というものもそういう点にますます重点を置きながら今後やっていただきたいというふうに考えるわけでございます。  農林漁業の公共投資を見ますと、一番多かった昭和四十年当時には大体二〇%ぐらいの内容を持っておったわけでございますけれども、現在は一六%そこそこに低下しておるというようなことでございまして、先ほどの問題との関連におきまして、これは今後ますます強化をお願いしなければならぬ。  それから、現在水田再編が行われておりますけれども、その場合に、何をつくるかという作目の問題、つくれるような条件をどうやって整備するか、こういうことであろうと思います。この点につきましては、われわれは用排水が分離できる水田の基盤整備ということを強く要望しておるわけでございますが、政府も、この問題につきましては五十四年度から新しい一つの会計を設けて着実に進もう、こういう姿勢は多といたしますけれども、ますますこれからテンポを上げて強力にやっていただきたいというふうに考えるわけでございます。  現在いわゆる農用地区域というのがありますが、この中に二百四十五万ヘクタールの水田があるわけでございます。その中で、いわゆる田畑輪換ができる面積は現在三四%でございます。これは数字にいたしますと八十三万ヘクタールで、まだ残り百六十二万ヘクタールあるわけでございまして、これらをどういう形で計画的に田畑輪換できるか、その用排水をどうやっていくかということは、水田再編対策との関連を含めましてもきわめて重要な問題であると思うわけでございます。  新経済社会発展七カ年計画を見ますと、五十四年から六十年までに二百四十兆円の公共投資が必要だということが言われておりますが、その中で農林漁業部門は七・六%、こういうようなことが政府試算に出ておるわけでございますが、私はこれでは少な過ぎるのではないかという感じがするわけでございます。それから第二の問題は、一方におきまして水田再編の問題は避けて通れない問題で、これはやらなければなりませんが、今日、日本の農用地の状況を見ますと、何と申しましても一番生産力の高いのは水田であり、米をつくるということが一番合理的で能率的であるということは疑いを持たないわけでございます。今日二千万トン以上のえさ穀物を輸入しているという実態から考えますと、これが十年後にはさらに四百万トンぐらいふえるというような見通しがあるわけでございます。私は、この際いわゆるえさ用の米というものの開発に目を向けて、積極的に取り組む姿勢が必要ではないか。これは価格、流通の問題いろいろあり、食管の問題も絡むと思いますけれども、それらとの調整をどうするかという課題を含めながら、この問題には積極的に取り組む姿勢が大事ではないかというふうに考えるわけでございます。すでに民間におきましては実験その他の施策が行われておりますが、今日政府におきましては、超多収米の試験研究は行われておりますけれども、えさ米を頭に置いてそういう実験研究が行われておるということはまだ聞いておりません。いま農政審議会でもそういう問題が議論をされておりますが、やはりどうしても残るであろういわゆる湿田地帯、こういうところを頭に置きましても、やはりえさ米の開発研究、これが現在でも、一トンぐらいはとれる、あるいは一・五トンぐらいは可能ではないかというような議論もあるわけでございます。そういう形におきまして、穀物自給率が三四%に落ちている、これをこれ以上落とさない、あるいはこれを少しでも上げるというような問題は、やはり穀物生産の分野におきまして、えさ米を今後中長期の段階におきましてどういうふうに取り上げていくかということで解決をすべき問題ではないかというような感じがするわけでございまして、特にえさ米の問題につきまして、今後の問題として十分ひとつ御研究を願わなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  それから第三の問題は、これからの国民合意の農政を取りつけるためには、どうしても農業の場面におきましてもやはりコストを下げる努力、これに集中的な政策が展開をされなければならないというふうに考えるわけでございます。このためには、高度経済成長の波の間におきましてこれだけ地価が暴騰し、農地も非常に暴騰をしていることは御案内のとおりでございます。したがいまして、農家は資産的な保有という姿でなかなか土地を手放さない、あるいは貸さないというような問題があるわけでございまして、所有権の移転による問題は、そういう状況でございますから、なかなか簡単にはいかないと思いますけれども、この際この地価問題、あるいは農家が資産的保有にへばりついておる、こういうような問題に対してどういう形でこれに対策を立て挑戦をしていくか、そして特に土地利用型の農業につきまして、規模経済をどうやって実現をしていくか、非常に困難なむずかしい問題でありますけれども、これに挑戦をするということが私は基本的に大事な農政の課題ではないかと思うわけでございます。  とにかく農村には、やる気のある農家なりあるいは後継者が、数の上ではそれほど多くないということも言われますけれども、相当の数がおることは事実でございます。将来農業を自分の生涯の仕事としてやろう、こういう者にいかにして土地の集積を図るかというような問題は、日本の農業政策の中でいままで考え方としてはありましたけれども、とかくおくれておった一つの分野ではないかというふうに私は考えるわけでございます。このことが何か小農切り捨てというような問題につながるような政治的ないろいろな考え方も従来はあったようでございますけれども、今日もはやそういう問題は現実性がない一つの議論ではないか。私は、兼業農家をなくしてしまうという考え方は毛頭持っておりません。これは相当の数があってしかるべきでございます。しかし、それらは本当に農業に精進をするという姿ではなくて、いわゆる農業を自分の飯米をつくるという程度でやる、こういうような問題につながっておる考え方でございまして、やはりやる気のある農家へ、ほどほどにやっていこうという方々が自分の最小限の必要面積を残して、あとをそういう農家群にどうやってひとつ与えていくか、これは賃借の問題を含めた形での解決以外にないと思うわけでございます。  この点につきましては、ようやく政府もそういう問題に目をつけまして、いわゆる農地法の改正なりあるいはそれに伴う新立法なり、またこれの推進の組織をどういうふうに考えるかというような問題にいま鋭意取り組んでおるわけでございます。今度の国会にそれらが出ることを私は念願をしておるわけでございます。特に、私は農業委員会の系統におる者でございまして、農業委員会が農地改革以来農地に対する非常に大きな役割りを持ってまいったことは皆様御案内のとおりでありまして、これは現在、許認可というような姿の中で農地法の番頭をやっておりますけれども、私は、その土地の流動化の問題に一役買う、そういう形での農地法制の新立法と関連いたしまして、農業委員会法の改正が行われる、これが今国会に提案をされるということを念願いたしておるわけでございます。  その次に、簡単に申し上げますが、もう一つやはり大事な問題は、農産物が生産をされ、消費者に渡るまでにいわゆる流通加工という問題がございますが、五十三年度の農業白書を見ますと、いわゆる流通経費が七割をついに超えた、七二%という数字が公表をされておることは御案内のとおりであります。これにも雇用の問題がいろいろつきまとって非常にむずかしいことはよくわかりますけれども、仮に七〇%が二〇%節減されまして、その一割ずつが消費者生産者に還元をされるというような政策が今後中長期に実現をするということになりますれば、これは消費者も喜び、生産者も非常にその恩典に浴する、こういうような問題になります。流通加工政策につきましては、いままで農政が焦点を当てることにつきましてはやや不十分であったというようなこともありますので、その辺の問題はこれからの一つの重要な課題ではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、米の消費拡大中心として、いま基本法農政の選択的拡大部門がそれぞれ過剰基調にある、大変な穀物を輸入しておるという実態の中で、日本の農業の中が過剰であるというような問題があるわけでございますけれども、特に米の問題につきましては、政府も民間も一緒になっていま消費拡大の問題をやっておりますけれども、国民消費に対する誘導ということは行政がやるべきではないという議論もございます。しかしながら、やはり日本国が伝統的に米を主体として長い生活を営んできた、そこにたん白質、動物質の問題がこれから生活の多様化との関連で出てくるわけでございますが、それらをひっくるめまして、いわゆる食生活につきましても一つの国民運動的な形で誘導をどうしたらいいかというような問題は、いまここで中長期に物を考える場合に大事な一つの課題ではないかというふうに考えますので、これもひとつ政治の舞台において取り上げていただきたい問題でございます。  次に、農山漁村の定住条件を整備するという新しい一つの視点がいま大事になりつつあることは御案内のとおりであります。脱都会とかいろいろな形で農村に憩いの場を求めるというような国民感情がずっと全国的にいま広がりつつあることは御案内のとおりであります。そういうようなことで、農村というものが、あるいは漁村、山村が、生産の場であると同時に生活の場であり、混住社会におきましてはいわゆる農業以外の非農業の方も存在をしておる。これらをひっくるめまして私は生活環境の整備、そして自然環境の保全というような形の中で、いわゆる農村整備に対する政策課題はこれから全体として非常に大事な問題になり、これに対する財政の支えということも大事な問題になると思いますので、十分ひとつ御配慮を願いたいというふうに考えるわけでございます。  最後に、林業と水産のことを一言ずつ申し上げますが、御案内のようにいま山は非常に荒れております。これは外材の輸入ということが一つの契機になっておるわけでございますけれども、やはり山を大事にするということは国家百年の問題との関連であり、治山治水の問題にもつながる問題でございます。山をひとつ守る、そして山が荒れている姿を取り戻す、こういうようなことは大事であると思い、また御案内のように、日本はどうも針葉樹を中心として植林をする、濶葉樹の問題を余り考えていないというようなところに一つの問題があるのではないか。ドイツでは針葉樹と濶葉樹をあわせて植林をする。したがって、そういう中で小鳥も生存ができるというような問題があり、日本の植林は大体松とか杉とかヒノキとか、そういう針葉樹に中心が置かれておった。これも非常に長い問題としては少し反省をしなければならぬ問題の一つではないかというふうに考え、少なくとも山が荒れないようにするにはどうやってやるかということが非常に大事な問題であり、マツクイムシにおきましても非常に残念な姿が日本の津々浦々にあるということは、私はきわめて遺憾に感ずるわけでございます。  漁業の問題は、これは二百海里の問題が今日出ておるわけでございますが、やはり二百海里の枠組みの中において日本が沿岸漁業をどうやってこれから十全にその力を発揮するか、その基盤をどうやってつくりあげるかということがきわめて大事であり、この辺の問題につきましては、いわゆる栽培漁業的なものを含めまして、魚の資源というものはたん白の半分でございますので、これを十分に二百海里の枠組みの中でやれるという長期的なビジョンというものが一つなければならないと考えます。また魚の問題は、これは残念ながらまだ、代替エネルギーという問題をどう適用するかということは遠い将来はいろいろあるかもしれませんが、当面はやはり何としても石油に依存しなければならない、こういうのが漁業の実態でございます。そういう意味では、油を確保するということにつきましては万全の対策が政府においてとられることが当面の基本的な問題であるというふうに考えるわけでございます。  以上、私が日ごろ考えておる農政上の問題を若干申し上げまして御参考に供し、本日のこの公述を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  9. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小里貞利君。
  10. 小里貞利

    小里委員 まず、三名の公述人の先生方、公私ともに御多忙にもかかわりませず、専門的な立場から貴重な御意見を先ほどお聞かせいただきまして、感銘いたしておるところでございます。今後の議案審議の上に参考になろうかと考えておるところでございますが、時間の関係がございますので、早速ではございますが、これから質問に入りたいと思います。  私は、エネルギー関係で御意見をお聞かせいただきました生田公述人にまず数点お尋ね申し上げたいと思います。  第一番目に御質問申し上げたいことは、当面のわが国石油輸入の確保についてでございます。先ほどの先生のお話の中にも若干お触れいれだいたのでございますが、最近の国際石油情勢は、産油国生産動向、石油供給構造の変化、あるいはまたイラン革命をめぐる諸般の国際的な情勢によりまして、大変大きくその需給が動揺をいたしておるところであります。  このような情勢下にあってわが国は、東京サミットで一九七九年、さらに一九八〇年一日当たり五百四十万バレルの輸入量上限が決められているところでございますが、一九七九年は、先ほどのお話にもございまするように何とか確保できるにいたしましても、一九八〇年はその目標が果たして達成できるのかどうか、その辺の見通しをお聞かせをいただきたいことでございます。  次に、長期的見通しでございます。これも先ほど若干お聞かせいただいたようでございますが、同じく東京サミットではわが国の一九八五年の輸入目標は政策努力目標として一日当たり六百三十万バレルとすることになっております。この目標は、先ほどからお話がございますように、世界情勢大変激しい起伏が予想されるところでありますが、その達成の可能性はどのように御判断になっておられるのか、お聞かせをいただきたいのであります。  次に、価格問題でございますが、この問題も先ほど先生若干お触れいただきましたが、私は、端的に申し上げまして、石油は量の確保を図るという大きな問題が一つの柱であると思います。     〔小宮山委員長代理退席、瓦委員長代理着席〕 同時にもう一つの柱は、価格の問題であろうと思うわけです。今日の日本経済情勢あるいは資源の乏しい日本実態からいたしまして、この量の問題と価格の問題をどのように判断をするべきか、その辺の御示唆をいただけるなればと考えるところでございます。  次に、その石油価格が諸物価に与える影響でございます。昨日あたりも新聞等で御承知のとおりであります。卸売物価が狂乱並みの高騰が伝えられておりまして、その上げ足が急ピッチで迫っておるという状況でございます。石油価格の顕著な値上がりの原因は複雑な要件の上にあると思われますが、その対応策の一つといたしまして、ドル減価によって産油国の資産がどんどん減価していっているという状況、それに対しまして、消費国が産油国に対して、彼らが石油を売却して得たいわゆる資産の目減りをどうして防ぐかということに対する一つの提示をすることが迫られておるやに感ずるのでございますが、それらにつきましてもし先生の御意見があればお聞かせいただきたいと思います。  次に、当面緊急を要する問題は、先ほどもお話があったと思いますが、石油消費の節減を図るという問題であります。同時にまた石油の備蓄の増強をいかにして図るかという問題でもあろうかと思うわけです。特に、世界におくれをとっていると言われる石油備蓄の増強は急がねばならないと思いますが、十二月末現在で民間備蓄と国家備蓄を合わせて九十九日分と言われておりますが、エネルギー安定確保の観点からは一体何日分の備蓄が必要だとお考えでしょうか。  また、私は鹿児島でありますが、鹿児島などでも石油備蓄には大分積極的に国家要請にこたえてまいったつもりでございますけれども、備蓄の方法として海上、地下あるいはまた地上など、いろいろ考えられておるところでございますが、わが国の諸般の条件から、いかなる方法が考えられるのかお聞かせいただきとう存じます。  最後になりますが、わが国エネルギー危機を克服するためには石油依存からの脱却であります。先ほど先生の話にもありました。あるいはまた生田公述人が何かに書いておいでになる統計書も読ませていただいたことがあります。石油代替エネルギーの主力は原子力であるという主張をお持ちの先生であろうかとも思うのでございますが、それらにつきまして、理事長は原子力局長もやられた経験から、この問題をどういうふうに解決していくか。言いかえますと、国民的な合意の形成をどうしてなしていくか、進めていくかということについてお伺いをいたしたいのであります。  現実に地域エネルギー省エネルギー開発にも真剣であり、あるいは石油備蓄もやっている、あるいは原子力発電所もやっているという南九州の私どもの経験から申し上げますと、原子力発電所などの問題はなるほど幾つかの問題を抱えておることではございますけれども、いざこれを進めるとなると意外に住民の納得、理解を得るために大変な苦労をいたします。予期せぬ住民の抵抗があることも事実であります。私どもは、その安全性などにつきましては専門家意見を信じ、そして決断をして、国の公益という判断から進めてまいった経験もありますけれども、それらの問題について、もっと国家的要請、あるいは公益のために地域社会あるいは全国民のより多くの納得を得られる方途はないのか、もし御意見があればお聞かせいただきとう存ずる次第であります。  最後に、代替エネルギーは原子力のほか石炭、LNG、地熱さらには太陽エネルギー、核融合に至るまで先ほど申し上げたとおりでございますが、相当の種類が挙げられますが、当面は原子力、石炭、LNGでしのぎ、後の世代を新エネルギーとしての太陽エネルギーなどに期待することになるとのお話でございましたが、その新エネルギーについての先生の展望をお聞かせいただければと思うわけでございます。  以上、要点を簡潔にしぼりましてお尋ね申し上げました。先生の御意見をお聞かせいただきとう存じます。
  11. 生田豊朗

    生田公述人 私は先ほど時間を勘違いいたしまして少し短かくやめてしまいましたので、せっかく御質問でございますので、少し詳しく御説明をさせていただきたいと思います。  まず第一の御質問の点でございますが、ことし、一九八〇年におきますわが国石油の輸入の確保の見通しでございます。私、先ほど誤って省略したところでございますけれども、多少は触れておきましたが、世界的な石油需給展望であります。  先ほど申し上げましたように、長期的な趨勢といたしましてはいわゆる売り手市場、産油国の側の力の強い状態が続くと思います。しかし、そういう長期的な趨勢の中におきまして、短期的な変動といたしましては、そのときどきの世界景気の動向、それから政治情勢も含めました産油国政策変化によりまして、短期的にはさまざまな変動があり得ると思います。短期的な変動を繰り返しながら長期的には先ほど申し上げましたような趨勢が続いていくというように考えている次第でございます。  で、ことしの一九八〇年は、実はその一つの局面であるというように私は考えております。なぜかと申しますと、先ほど御説明申し上げましたような一九七九年を通じての大幅な石油価格の値上げによりまして、産油国の貿易黒字が大幅に増大しているわけであります。これはあくまで推定しかできないわけでありますけれども、一九七九年におきまして産油国の黒字の新しく増加した分が六百億ドルと考えられております。ことしもさらに増加するわけでございまして、これは大体一千億ドル程度というように予測されております。先般発表されましたアメリカの経済諮問委員会の経済報告におきましては、九百億ドルという推定をしておりますが、これは産油国からの支払い分を引いて計算したそうでございますので、計算上のいろいろの技術的な問題がございますが、大体一千億ドルと考えてよろしいかと思います。  二年間で千六百億ドルの産油国の貿易黒字の拡大というのは非常な大きな問題でございまして、前回、一九七四年にOPEC石油価格を四倍に引き上げましたときに、同じように産油国の貿易黒字の拡大、いわゆるオイルダラーの蓄積があったわけでありますが、それが約七百億ドルでございます。その後はほとんど値上げがございませんでしたので新たな蓄積がなかったわけでありますけれども、今回は二年間でその二倍以上のオイルダラーの蓄積がございます。これが順調に石油消費国に環流するかどうか、これが世界経済の大問題でございます。  で、前回の七百億ドルにつきましては、二つのルートでこれが環流したわけであります。  その一つは、産油国の外貨準備がふえましたので、それを利用いたしまして産油国経済開発、社会開発、さらには武器の購入による軍備の拡張をしたわけでございます。その資本財、それから一般の消費財あるいは技術、さらに兵器の輸出は先進工業諸国から行われたわけでありますので、そういう貿易を通じまして資金が環流いたしました。  もう一つは、ヨーロッパ、特にアメリカの銀行に預金されましたオイルダラーをアメリカ、ヨーロッパの銀行が運用いたしまして、非産油発展途上国に貸し付けたわけであります。非産油発展途上国は、その貸し付けられました資金利用いたしまして自国の経済開発その他を進めまして、当然その見返りとして工業製品が先進国から輸出されましたので、そういうワンクッション置いた形で同じく環流をしたわけであります。  この環流が二つのルートによって順調に進みましたので、前回の石油ショックの直後に世界経済日本経済経済が著しく停滞いたしましたけれども、環流の進行によって世界経済は回復し、ようやく軌道に乗ったところで今回の第二次危機があらわれたという次第であります。  したがって、今回は再びそのオイルダラーの環流問題を考えなければいけないわけでありますけれども、これはなかなか容易ではないわけであります。  一つは、先ほど申し上げましたように額が非常に大きいということ。それから今後も石油価格上昇が続くと思いますので、明年以降もさらにオイルダラーの蓄積が進むであろうということが一つございます。  それからもう一つは、前回にうまく動きました環流のルートが今回は余りうまく動かないだろうというように考えられているわけであります。すなわち、産油国における経済、社会開発、あるいは軍備の拡張にいたしましてもほとんど限界に近くなっているわけであります。たとえば経済開発をとりましても、経済開発そのものの必要性は高くなっておりましても、インフラストラクチュアの制約でありますとか、あるいは熟練労働力の不足でありますとか、そういう外側のいろいろの点におきまして制約が出てまいりまして、余り前回のような急速な拡大は望めない状況であります。  それから、欧米の金融機関を通じての発展途上国への貸し付けを通じての環流でございますが、これも非産油発展途上国は、わが国以上に石油価格上昇影響を深刻に受けておりますので、経済状況が非常に悪くなっております。したがって、もはや債務の限界に近づきつつあるわけでありますし、国別の危険性、いわゆるカントリーリスクでありますが、これも増大しておりますので、今後は貸し付けがなかなか順調に進まない可能性が大であります。したがいまして、何らかの国際金融の面におきます新たなオイルダラーの環流を考えませんと、その滞留いたしました分が世界経済にとってのいわゆるデフレギャップになるわけでありまして、世界経済の有効需要をそれだけ小さくし、世界経済は当然景気後退に向かうわけであります。本年はそれの一番最初の時期でありまして、まだオイルダラーの環流はほとんど行われておりません。  先生も御承知のように、最近ではわが国の証券市場にかなり産油国が着目をいたしまして、株式の大量購入あるいは国債の購入などをしているわけでありまして、これはいいことであるというように私は考えておりますが、金額的にはまだ大したことはございません。したがいまして、今後有効に働くオイルダラーの環流のルートが開拓されて、それが石油消費国の側に環流いたしますまでは世界経済はどうしても景気後退に向かうのは必至でございまして、ことしの世界経済は間違いなくそういう方向に向かうと思いますし、OECDの予測におきましても、OECD加盟諸国の本年の経済成長はゼロ成長ないしマイナス成長でございます。わが国だけがやや高目の成長でございますが、たとえばアメリカは明らかにマイナス成長になるわけであります。そういうことでございますので、本年はそういう世界景気の後退の影響を受けまして、世界的な石油需要が停滞ないしやや減少する可能性が大であります。特に石油の大消費国でございますアメリカの景気後退がかなり響くというように考えておりますので、消費あるいは需要の停滞が一方で考えられるわけであります。  それから生産面でございますけれども、OPEC諸国生産の減少、すなわち減産によって需要の停滞に対応するということを言っているわけでありますけれども、本来OPECという組織は、これは非常に力の弱い価格カルテルでございまして、生産カルテルではございません。したがいまして、OPECの組織としてのカルテル行為としての生産調整はできないわけでありますので、生産調整すなわち石油の減産は、各産油国政府がそれぞれ自国の判断におきまして行うわけであります。したがいまして、それぞれの国の生産計画の進め方が非常にむずかしいわけでありまして、私はそのかぎを握るのはサウジアラビアの動向であるというように考えております。  御承知のように、サウジアラビアは資源的にも生産能力から申しましてもOPECの中で最大の国でございますし、世界最大の石油輸出国でもございます。それからその特徴といたしまして、石油生産の増加あるいは減少、増減の幅が非常に大きくとれるわけであります。したがって、従来からサウジアラビアは世界石油需給の調節弁の役割りをしてきたわけでありまして、現在でもそれが続いているわけであります。最近は中東和平問題、特にパレスチナ問題との関連によりましてサウジアラビアがややアメリカ離れの傾向を示しまして、それが昨年の第二次石油危機を深刻化させた非常に大きな原因であるというように考えておりますが、その後アメリカの対サウジアラビア外交がある程度成功いたしまして、昨年の後半から再びサウジアラビアは増産に転じまして、現在でも一日当たり九百五十万バレルのかなり高目の生産水準を維持しているわけであります。現在サウジアラビア政府の当局者は、当分の間この高い生産水準を維持するということを言っているわけでございますので、パレスチナ問題その他でアメリカとサウジアラビアの関係にひびが入らない限りは、私は現在の生産水準が当分継続されるというように考えます。  そういう状況でございますと、サウジアラビアが高い生産水準を維持しております間はほかの産油国はなかなか減産がしにくいわけでありますので、私は、各産油国はかけ声としましては大幅な減産をするということを言っておりますが、実行はなかなかむずかしいのではないかというように思いますので、多少の減産は可能であるといたしましても、ことしは昨年の生産ベースと同じか、それを下回っても余り大幅には下回らない程度生産の維持が可能であろうというように考えております。そういたしますと、世界的な需給といたしましてはことしはやや需給が緩む可能性が大でございますので、そういう状況下におきましてわが国が昨年と同じ五百四十万バレル・パー・デーの石油を輸入することは可能であろうかと思います。  それから御質問にはございませんでしたけれども、同時に価格につきましても、ことしは現在すでに進行しておりますような価格体系の整備のための調整値上げ的な値上げが当然行われるというように思いますが、昨年のような大幅急速な値上げはない、比較的安定した形で、何と申しますか、踊り場に一時差しかかったというような形でございます。ただ、これは今後もそういう状況が続くというものではないというように考えております。  第二点でございますが、長期的な見通しでございますが、そういうたとえばことしのような短期の変動を別にいたしますと、長期的にはかなり供給制約が強まってくるわけであります。従来から、今度の第二次危機の始まります以前からでありますが、楽観的な予測をする人たちは、サウジアラビアの生産の増加をかなり大幅に考えまして、それによって世界的に石油需給はバランスするという見解をとっていたわけでありますが、それがもはや非現実的であることは明らかになってまいりまして、長期的に見まして、私も先ほど申しましたように、OPEC生産は昨年の生産水準中心にいたしましてそれから減る可能性もあり、ふえるといたしましてもせいぜい二〇%ぐらいが限度ではなかろうかというように考えております。  そういたしますと、わが国が一九八五年におきまして六百三十万バレル・パー・デーの石油を確保できるかどうかというのはかなり問題だと考えております。これは不可能だと断定することはできないわけでありますけれども、私どもが予測しております一九八五年の時点における世界石油需給規模から考えまして、わが国が六百三十万バレル・パー・デーの石油を確保しようといたしますと、世界石油貿易の中に占めるわが国のシェアがかなりふえなければいけないことになるわけであります。これは全体として石油の供給がふえる過程におきましてわが国のシェアをふやすことは可能でありますけれども、これから先に予想されますような石油供給制約が強まる状況におきましてわが国のシェアをふやすということは決して容易なことではないと思いますので、今後とも石油の確保に格段の努力を払わない限りは、六百三十万の確保はかなり困難だろうというように考えております。  第三点の御質問でございますけれども、そういう状況でございますので、量の確保と価格との関係につきましては、私はまず量の確保を優先させるべきであるというように考えております。もちろん石油価格上昇もこれから、後ほど申し上げますように国内の物価あるいは経済成長などに大きな影響を与えますので、安ければ安いほどいいわけでございますけれども、かつてのように供給量を確保しながらしかも低廉な価格を維持するということを両立させるのはもはや困難な時代でございます。どちらをとるかと申せば、私はまず供給量の確保をとるべきであって、それに伴ってできるだけ安い価格を維持する、そのために最善の努力を払うということをいたしませんと、日本経済そのものの成長ないし循環が不可能になってくるというように考えております。  第四点でございますが、物価への影響でございますけれども、まず二点ございます。国内の物価への影響でございますけれども、これは一般に考えられておりますよりは、石油価格上昇の国内の卸売物価あるいは消費者物価に対する影響は、石油だけでありました場合にはそれほど大きくないわけであります。石油だけと申しましたのは、石油価格上昇から始まりまして、電気料金、ガス料金、その他セメント、鉄鋼のような素材産業の製品、さらにその他の工業製品、一般の消費財、そういうように石油価格経済の各部門、各段階に波及していったのを全部合計いたしましても、私どもの計算によりますと、石油価格一〇%の上昇によって国内の卸売物価の上昇は一%弱、それから消費者物価の上昇は〇・五%弱でございます。ただ、昨年のように二倍、すなわち一〇〇%上昇いたしますと、卸売物価はそれだけでも一〇%上昇し、消費者物価は五%上昇するということになるわけであります。したがって、私は国内物価への影響は物価政策全体として考えることが必要であって、石油価格上昇、すなわち、これは海外での値上がりでいかんともしがたいわけでありますので、これを余り無理して抑えてもこれは抑え切れないわけでありますので、全般的な景気の抑制、物価の抑制、あるいは石油以外の要素による物価の上昇を抑えるということで総合的に行うべきだろうと思います。  ちょっと時間を急がなければいけないようでございますので簡単にさしていただきますが、それからドルの減価に伴う産油国の資産の目減りの問題でございますが、これはかねがねサウジアラビアが強く主張している点でございます。それでサウジアラビアが数年前に主張いたしましたのは、ドルの減価に見合う分だけ特別金利を与えるべきであるということを提案しまして、これは石油消費国側で受け入れられなかったわけでありますけれども、現にこのドルの減価が石油価格上昇の一つの原因にもなっているわけでありますし、ドル離れ、ドル表示をほかの通貨の表示にかえるというような問題もあると思いますので、やはり産油国との協調を考えますと、私は、このドル減価に対する有効な対策、たとえば先ほどのサウジアラビアの提案のようなものをもっと真剣に考えるべきであるというように考えております。  それから備蓄でありますけれども、私は今回の第二次石油危機が始まる以前から、わが国のように石油が国内でほとんど生産されず、しかもエネルギー全体としての輸入依存度の高い国におきましては、IEAの目標であります九十日の二倍、すなわち百八十日分の備蓄を持つべきであるということを主張してきたわけでございますけれども、それが実現されないままに今回の危機を迎えたのは大変遺憾でございます。備蓄は多ければ多いほどいいわけでございますけれども、おのずからその他の諸点において限界のあることでもございますけれども、少なくとも百八十日の備蓄は持つべきであると私は思います。現在すでにアメリカ、ヨーロッパは百二十日から百五十日の備蓄を持っているわけでありまして、石油の供給条件がわが国にとって特に悪いことを考えますと、現在の百日分の備蓄というのは非常に少なくかつ危険であるというように考えております。  備蓄の方法につきましては、でき得れば陸上の備蓄が経費の点でも一番いいわけでございますが、立地問題その他がございますので、現在政府備蓄の方法として検討されておりますような海上備蓄もあわせて進めるべきであろうと思います。  それから原子力でございますけれども、御質問のように、原子力についての国民合意の形成は非常にむずかしいわけでございますが、私は、原子力につきまして一番の問題は、原子力の専門家の知識とそれから一般の国民の考え方との間にまだギャップが大き過ぎるという点にあると思います。そのギャップを埋める有効な方法を早く発見することが必要でありまして、これは専門家と一般の国民との間にある方、すなわちいわゆるオピニオンリーダーのような方、それから政治家の諸先生も同様でございますが、そういう方に、これからより積極的にそういう専門家と一般国民との間の橋渡し、あるいはじっくり懇談をする機会をなるべく多く持っていただいて、少し時間をかけましても国民の信頼と合意を得ていくという、これは大変急速には間に合わない方法でございますけれども、余り急いでやりますよりは私はその方がいいのではないかと思います。原子力の意味でございますけれども、私は、わが国にとりまして今後の経済成長を確保するためのエネルギー政策として原子力、特に原子力発電をできるだけ増大するということは不可欠であると考えておりますが、同時に、原子力だけですべてのエネルギー問題が解決するとも考えておりません。先ほど御質問にございましたように、石炭の再利用、それからLNG、LPG等の天然ガスの利用拡大を含めまして、その三つの現在実用可能なエネルギー利用のトータルの量を最大限にしていくというように考えるべきでございますので、たとえば原子力が少しおくれる場合は石炭火力をふやす、それから石炭火力がおくれる場合は原子力をふやすというような形で、三つの代替エネルギーのトータルの量を最大限にしていくという考え方が現実的ではないかと考えております。  最後に、その他の代替エネルギーでございますけれども、代替エネルギーにつきまして考えます一番大事な点は、あと何年後にどのくらいの量がどういう代替エネルギーによって確保されるかということが必要でございます。  たとえば、いま原子力発電をやめても風力発電で間に合うというのは、時間の要素を全く無視した考え方でございます。風力発電、太陽熱発電、その他のいわゆるソーラーエネルギーの大規模利用は、私は二十一世紀の中ごろでないと不可能であろうかと思います。核融合、それから海洋エネルギー利用も同様でございます。そのもう一つ前の時期に、今世紀末ごろの時点、一九九〇年代の後半におきまして、地熱のさらに大規模利用拡大、それから石炭の液化、ガス化、あるいはオイルサンド、オイルシェールの利用、そういうものが可能になってくるかと思います。それからそのもう一つ前の時期、すなわち一九八〇年代の終わりから九〇年代の初めにかけまして、アルコールを石油に混入する方法がある程度有効に使えると思います。  しかし、八〇年代を通じて考えました場合は、そういう新エネルギーへの依存はほとんど大量には考えられないわけでございますので、当面は先ほど申し上げましたようなことでしのいでいく、次の世代のために研究開発を進めていくということが必要である、かように考えております。
  12. 小里貞利

    小里委員 どうも丁重な御説明ありがとうございました。
  13. 瓦力

    ○瓦委員長代理 次に、片岡清一君。
  14. 片岡清一

    片岡委員 公述人の皆様方、大変お忙しいところ、貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。  私は、時間がないようでございますので、農業問題について池田公述人に一点、そしてちょっと補足的にもう一点だけ、これは簡単にお答えいただきたいと思います。皆さんよくおわかりになっていることでございますので。  まず第一点は、先ほど将来の農業に活力を与えてそして希望のある農業に仕上げていかなければならぬ、こういうお話でございます。それにつきまして、私は一点お伺いいたしたいのは、現在あります農業基本法は、これは三十七年高度成長になりかけのときで、農業と他産業との所得が非常に格差のあったとき、これをできるだけ縮めて農業の地位を高めていこう、そして同時に選択的拡大をして近代化を図ろうというのが基本であったと思います。ところが、いまや農業は他産業との格差がかなり縮まってきた。こういう段階において、私は現在の農業基本法はちょっと時代おくれになったような感じがするのです。これはもちろん農業の近代化、それから選択的拡大ということはまだ残った問題でございますけれども、基本法を改める必要があるかないか、これについての簡単な御意見を賜りたいと思います。  もう一つは、いま大変この委員会でも問題になりました、中小企業が非常にいま困難をして倒産をしておる、そういうときに農業が非常に過保護である。先ほど池田公述人が石黒忠篤先生のお言葉を引かれて、農業に関するいろいろの補助金はこれは細かいもので大事なものだから絶対にこれを整理しちゃ困るという御意見、私も大賛成でございます。ただしかし、外部に、中小企業の方々から、かなり農業はいろいろな補助をもらっておる、おれたちは補助なんて一つもないじゃないか、まあ融資ぐらいなもので、融資といったって後から金を返さなきゃいかぬじゃないか、農業はその意味において過保護であるという意見が大変出てきておりまして、食管制に対して大変風当たりが強くなってきております問題とあわせて、この中小企業との問題をどう調整していくか、農協でいろいろ中小企業に圧迫を加え過ぎるとかいう外部の意見もあるわけなんです。こういう点でちょっと御意見を承らしていただきたいと思います。どうぞ簡単に、時間がございませんようですからお願いいたしたいと思います。
  15. 池田斉

    池田公述人 基本法を改正なり再検討すべき時期ではないか、こういう御質問ですが、私はこれは非常にむずかしい問題だと思います。いまお話しのように、基本法の全体の流れの中の問題意識は、今日も私は当然あの方向が一つの正しい方向だと、しかし確かに、現実的にあのときの考え方がいまの時代にどうであるかということになりますと、若干私も疑問がございます。そういう意味では、やはり再検討をするという対応は私は必要ではないか、これは十分よく総合的に検討しなければならぬ問題だ、こういうふうに思います。  それから、第二の農業の過保護の問題ですが、やや農業は甘えの構造の中で生きてきた、こういう議論、大方の批判が非常に強いわけです。したがって、やはり農業の体質をどう変えていくか。これはある意味では非常に財政その他の面から国が相当支えなければならぬ、こういう問題にかなりウエートを置きかえていく、こういう形の中で、きめの細かい、補助金の中でも残すべきものは残す、そして大きく方向の転換をして、そして、いわゆる世間から言われるような細かい補助金による支えでなくて、これを融資に切りかえるとかいう方向でやはり企業的な感覚が農業の中に出てくる、そういう形で、国民合意の方向はやはり構造政策にウエートを置いた形でやる以外にないんではないか。これと並行した一つの議論ではないかというふうに考えますので、中小企業と比較して単純に過保護という批判は私は当たらないというふうに考えます。
  16. 片岡清一

    片岡委員 私はこれでやめますが、私の意図、基本法の改正に関する考え方、またいまの過保護の問題、これは私は、農業というのはやはり国の安全保障という立場をこれからは非常に強調すべきだ、だから、米の余ったものはこれはある程度調整していかなければならぬ、足りないものについては国民全体の食糧自給力を高めていくということが国の安全保障の立場から基本的なものだ、そういう点を強調した基本法に改むべきじゃないかということと、それから過保護の問題も、そういう点からやはり適地適作をやって、そうしてできるだけ自給力を高めるような方向へ誘導していかなければならぬ、その意味で、保護すべきものはやはりこれは相当金を突っ込んでも保護すべきだ、こういうふうに思っておるわけですが、それに対して一言だけひとつ御意見をいただきたい。それで終わります。
  17. 池田斉

    池田公述人 全く片岡先生と同意見でございます。
  18. 片岡清一

    片岡委員 どうもありがとうございました。
  19. 瓦力

    ○瓦委員長代理 次に、兒玉末男君。
  20. 兒玉末男

    ○兒玉委員 池田さんにお伺いしたいと存じますが、第一点は、現在食糧が余っておるということで、将来八十万ヘクタールの減反政策が予想されるわけですが、総合的な食糧事情から言いますと、池田さんも御指摘のように三四%の自給率、だからむしろわれわれは減反よりも農用地を拡大しながら全体的な農民の農地、農耕地所有を拡大して、その中から食糧の自給度を高める、そのためには飼料政策あるいは流通、価格政策、こういう面の抜本的な改革を求めている時期ではないのか。たとえば、野菜の高騰などは生産需給関係に対する指導性の欠陥、あるいは流通機構の改革ということが大きな解決すべき課題じゃないのか。  それからもう一点は、石油事情が非常に厳しい状況で、日本農業というのは油づけ農業と言われるぐらいに、耕運機からコンバインから、あるいはトラクターなど、この石油問題の抜本的な解決と確保、同時に、農業用資材も園芸作物は大半がビニールハウスでございますが、現在では石油を原料としないこのようなビニール関係のフィルムが開発されております。     〔瓦委員長代理退席、村田委員長代理着席〕 エネルギー資源の確保、省資源という点からも、そのような方面への転換ということを真剣に考えていかなければ、関西財界等が指摘している、これからの油が九十ドル時代という時点を迎えて、一番先に犠牲を受けるのは農民ではないか。  同時に、先般の予算委員会でも取り上げましたが、カツオ関係中心とする遠洋漁業というのが大変深刻な状況に置かれております。このような状況に対して、石油の確保と同時に、低廉な価格で供給する体制と同時に、やはり遠洋から、二百海里時代を迎えて沿岸漁業への方向重点を志向する必要があるのじゃないか。特に、国民食糧確保という見地から、池田さんの御見解を承りたいと存じます。
  21. 池田斉

    池田公述人 第一の問題は、自給率の問題についての御指摘でございますが、総合自給率という視点からは七〇とか七一という数字になって、まあまあというような感じが一面ございますが、やはり農業の基本は穀物である。したがって、穀物の自給率がやたらに下がる姿をそのまま放置することは、それこそ先ほどのお話ではございませんが、国の安全保障、国の独立という面から、非常にこれはゆゆしい問題になる。こういうことで、開発可能地その他はまだ相当ある。確かに金はかかるが、それは中長期にはそういう問題の開発をし、そして特に穀物につきましては、えさ用の米というような問題の開発を含めて、穀物の自給率をこれ以上下がらない、あるいは少しでも回復する、こういう方向に農政の方向づけをしていくべきではないか、こういうことを申し上げ、先生の言われる問題とまさに私は同じような考え方を持っておるわけでございます。  第二の点の、石油づけになっておる農業というものは、私も本当にそのとおりだと思います。これが一たんどうにもならぬということになりますと、いまさら馬耕に戻るというような農業は、これは存立できないわけでございまして、私どもも省エネルギーなりあるいは代替エネルギーの問題は十分これから研究し開発をしていかなければならない問題ではございますが、やはり当面は、食糧を生産しているという場面での石油の問題については、これは少なくとも量的な面では完全に確保してもらうということが絶対に必要ではないか。アメリカのような国におきましても、御案内のようにいろいろ問題がありますけれども、やはりアメリカの政府は農業用の石油だけは最優先的に確保する、こういう政策がとられていることを私は向こうに行って聞いたわけでございます。やはりその点は代替エネルギーその他の開発を十分農業の場面でも考えなければなりませんが、当面は、当分の間、いかに石油事情が苦しくても、この優先確保はすべきであるというふうに考えるわけでございます。  それから、遠洋漁業の問題がだんだん国際的な環境の中でむずかしくなる。しかし、現在は外交交渉を踏まえながら従来の実績を余り下回らない形での努力は続けておりますけれども、やっぱり行く行くは二百海里の枠組みの中で、日本のたん白の半分を供給する漁業というものが成り立つような、そういう中長期の問題をやる。そのためには、それに対する漁業の基盤整備なりあるいは栽培漁業というようなものにますます力を入れて、二百海里を超える問題に、遠洋漁業にそう行かないでも済むような方向での準備をいまから進めていくべきではないかというふうに考えております。
  22. 兒玉末男

    ○兒玉委員 時間がございませんのでもう一点だけお伺いしたいと存じますが、先ほどの質問に答弁漏れがありましたが、野菜関係の暴騰に対する需給関係、流通対策、それから農地法の改正で農地の流動化を図るということをたしか御指摘になったと思うのですが、むしろ全体の農耕地を拡大することによって、その流動化が結局小農を切り捨てるという道につながる危険性を私は大変懸念するものでございますが、野菜流通の問題と、小農切り捨てにつながらないという意味の農地流動化であるかどうか、その点について再度お伺いして、私の質問を終わります。
  23. 池田斉

    池田公述人 失礼しました。  野菜が少し増産されるとただみたいになる、またいまはキャベツが一つ七百円か八百円しておる、こういうようなことで消費者各位はいま非常に困っておる、これは事実でございます。ただ、そういうような需給関係を野菜でどうするかということは従来から問題意識としてはあり、御案内のように野菜安定のための基金制度等もできておるわけですが、とてもその枠組みの中ではできない、こういうようなことで非常にむずかしい問題でございます。  ただ、やはり稲転の問題と絡みまして、とかく手っ取り早いのが野菜だ、こういうようなことで野菜の面積が、もうそんなにはふえないと思いますけれども、ついこれに取りつくというようなことが全体としての問題になるので、野菜の需給関係はむずかしいが、もう少し政府においてもこの辺にもっと積極的な対応があって、安定をするという政策が野菜は一番大事だと思いますので、そういうことの配慮が必要ではないかと思います。  それから、私は農地法制の整備について申し上げましたが、一つは、やはり外縁的に農用地を拡大していく、これは基本的に大事な問題だと私は思います。それと関連をしながら既耕地について農用地の流動化を図る、これが小農切り捨てにつながらないか、こういうことでございますが、これはもう合意の上で納得ずくでやるべきでありまして、先生も御案内のように、いま一番豊かなのは第二種兼業でございます。先ほどの基本法がもはや役割りは終わったと言うのはむしろそういう場面にあるわけで、現在は専業農家の方が苦しいというのが実態でございます。したがいまして、二種兼業でほかの産業で安定しているという方は、まあ飯米程度でひとつやっていただいて、そしてやる気のある農家で本当に専業で苦労しておる、そこへある程度土地を貸していく。これは売り買いはなかなか困難でございますから貸していく、そのかわりいつでも返してもらえるというような問題が、新しい農地法制の改正の一つの焦点になるのではないかというふうに考えますので、私は先生の心配のような小農切り捨てというような従来の概念とは実態が変わっておるということをあえて申し上げたいと思います。  以上です。
  24. 兒玉末男

    ○兒玉委員 終わります。
  25. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 次に、大原亨君。
  26. 大原亨

    ○大原委員 時間もありませんので、二、三点佐藤先生にお願いいたします。  お話がありましたように、数年間も引き続いて三〇%以上の国債を出しておる。景気がいいときに国債を減して不況のときに国債をふやすとか、そういうふうな弾力的な操作がほとんどできないような硬直した状況になっておるわけです。この点についてお伺いしたいのですが、これは一つは予算の編成のやり方で、大蔵省主計局がいまやっておりますね、大蔵大臣ベース、主計局ベースでやっておるあの予算の編成のやり方、スケジュール、ここに問題がないだろうか。  たとえば、大臣も国会議員ですから、大体全体のことはある程度皆知っておるわけですが、しかし一年ごとに交代いたしまして、農林大臣も御承知のとおりでございまして、それでもう大体知りたかと思いますとかわっていくわけでございます。そういう状況になっておりまして、本当に言うなればスタッフを中心に、お話がありましたように中期の計画を立てるという、そしてこれを責任を持って執行するというふうな形になっていない。縦割りでずっと勉強しながら、大臣も行政と一緒になりまして予算査定に加わっていきまして、全体でどうやるかということがかじ取りができないような仕組みになっておるというところに、私は一つは問題があるのじゃないかと思う。  その問題については、いま佐藤先生が御指摘になりました総理大臣直属の審議会を設ける。いま大蔵省や財調、税調その他あるのですが、財界に偏っておって非常に不公平な点があって、税金でも、いままでの経過はなかなか軌道修正ができない。そういう点がありまして、全体を見て低成長や高齢化社会に対応して軌道修正するというようなことがなかなかできない。所得を公平に再配分する能力がないような政治というものは、これからは政治の能力を発揮しないで矛盾が拡大する、こういうことになります。  これは各論は別にいたしまして、予算の編成の仕方について一つ問題がないか。たとえば、いままで言われたように総理大臣直属の予算局なんかを設ける案もありましたけれども、このやり方、スケジュールというのを見まして、これは全く行き詰まっておるのじゃないか。主計局は一生懸命やっておるのに気の毒であるのですけれども、これはひとつ遠慮なしに御意見を伺わせていただきたいと思います。  それから、行財政改革関係いたしまして安い政府、高い政府、これはいいのですが、どうしても一律主義になる。そうなりますと、いまのお話のように軽重について本当にウエートがつかない。しかし、一番大切な点は、一つは中央集権で財源も権限も何もずっと中央に集めておいて、そしてここから陳情政治で地方に流していくような、そういう仕組みを変えるのはやはり分権、大平さんも地方の時代だ、こう言っております。分権を進める上において財政、税制上の改革のポイントになるものは何であろうかという点について、御意見を伺わしていただきたい。  つまり、縦割りの助長行政から福祉型に変えるというようなことをよく言うのですけれども、やはり横割り的な行政を頭に置きながら縦割りもやっていく。こういうことから言いますと、いまの行財政をどうするかということは、分権が一つだと思うのですが、分権の問題の財政上の問題でどういう点がポイントか、こういう点についての御意見を伺わしていただきたい。  それから、財源問題に関係いたしまして、不公平税制是正ということはいつも言われておるわけですが、これが一番大きな政治の機能といたしましては、たとえば自由民主党の政治が続いていくかどうかということもこれにかかっておると思います。そういう能力がなくなりますと、これはだめになってしまいます。それで大体限界に来ているのじゃないか、金権政治や何かということもそういうことじゃないかというように思いますが、それはともかくといたしまして、知事会議が新しい財源といたしまして法人の事業活動の外形課税を主張いたしております。一つの提案があるように思います。それからもう一つ、先生お話しになりましたが、財政だけではなしに社会保障制度審議会的なものを中央一本にまとめるというお話がありましたが、社会保障制度審議会がいまの行き詰まっている年金や医療との関係、特に年金の関係で基本年金をつくりまして、その財源といたしまして所得型の付加価値税、分配以前に事業活動の外形に課する、減価償却等を除いた外形課税的なものですが、そういう提案をいたしております。高齢化社会でインフレに対応しまして積み立て方式だけの保険方式ではだめだ、年金についてはこういう議論も出しております。そういう年金税的な方式をいたしますと、これは賦課方式を土台につくっていくわけになりますから、そういう提案をいたしておるのですが、政府にそういうことを全体的に討議をするところがない。これは国会にも責任があると思うのですが、その二つの外形課税的な税金の新しい制度について提案がございます。私の賛否の意見は別にいたしまして、この点について先生の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  27. 佐藤進

    佐藤公述人 第一点は、国債依存度三〇%を数年続け財政再建見通しが立っていない状況のもとで、これを財政計画というようなベースに直して見通しをつける、それが不可能であるのは現在の予算の編成の仕方に問題があるのではないかという御質問は、ある意味でそのとおりだと思います。  予算編成過程をどういうふうに直すかという問題は、これは非常にむずかしい問題でありまして、戦後定められた財政法の基本的な法規に沿った編成ということなんだと思いますが、ある意味で見直しが必要であるということの一つは、予算編成権というものは政府にあり、実際は大蔵大臣がこれを編成する。また、それを実際事務的に執行するのは大蔵省主計局である。それである意味で、主計局ベースでつくった予算が大蔵原案になり政府予算になり、それが余り修正されないで通る、通ってきた、いままでのケースを見ますとそういう形になります。大蔵省主計局ベースでの予算編成というのは、多かれ少なかれ各省庁の要求をまんべんなく総花的に取り入れ、あるいはその増加分にかげんをするという、われわれはこれを増分主義の予算編成というふうに呼んでおりますが、増分主義予算編成の結果が現在のような大幅な赤字予算ということになっているわけであります。  これらをどういうふうに変えていくのかという点について、いろいろむずかしい問題があると申し上げましたが、現在の財政収支試算というのはもう五年目出ておりますが、これを財政計画に変えるということはそれほどむずかしいことではないと私は考えるわけです。というのは、政府は、経済計画、経済社会七カ年計画を初めとして長期計画というようなものをつくっております。経済見通しほどある意味で不確かなものはないわけでありますが、それらの予想を含めて長期計画をつくっている。その他公共事業、道路、港湾等々について五年計画、十年計画、すべてございます。それで財政計画というのは、これこそ政府責任を持ってつくらねばならないし、つくり得るものなのであります。予算を毎年審議、決めるというのは、これは非常に微細な点まで確定的に決めるものであります。経済計画と違って財政計画というのは、ある意味で政府責任においてつくらねばならないし、つくり得るものであるというふうに考えますので、まずそういう方向において改革をしなければいけない。それを、たとえばいままでのように大蔵省主計局ベースの中期財政計画というようなものにするか、あるいはもう少し広い分野からの参加を得てこれを行うかということ、それを含めて、たとえば財政法の中に、予算と並んで政府は毎年財政計画を作成し、それに基づいて予算編成しなければならないというような条項を取り込めば、これこそ法的な根拠がそれで得られるということになります。まずそういうことが一つの手がかりになるのではないかと考えるわけです。  それから二番目の、財政改革のポイントが、特に安上がりの政府とか高価な政府というのに関連して、どこにあるかということで、まあある意味でわが国政府は、肥大化した政府状況になっておるというふうに私は考えます。統計数字上、政府部門の割合とかあるいは租税負担率の低さとか、そういうところであらわれている状況を超えて、たとえば予算にあらわれない財政投融資計画、先ほど申し上げた特殊法人百十一とかこういうような形でどんどん昭和三十年代、四十年代、国家財政は肥大化の一途をたどっておりまして、それはある意味で、能率的な財政運営という点から見てもいろいろマイナスの面も出てきておる。したがって、これをできるだけ中央政府から地方政府あるいは府県、市町村に移すというような形での分権化の方向での解決というのは、一つの明らかな方法であると考えます。しかしこれも、事務移譲、権限移譲というのは今回の行政改革の一つの項目に挙がっておりますが、余り実体があるものとつかめないわけです。これらの問題は、地方制度調査会というような機関で昨年来論議しておりますが、それらをあわせて、またいま大原さんがおっしゃったような方向改革がなされることを私は期待いたします。  それから福祉財源というのは、今後の財政需要を大きく拡大していくある意味で最大の要因、老齢化社会の到来ということも含めまして最大要因であると思います。そのために財源を確保しなければならないということも当然であります。  それに関連して、社会保障制度審議会等におきまして所得型の付加価値税、昨年来税制調査会等でまとめられました一般消費税とは異なる種類の付加価値税である所得型の付加価値税ということで、これをどう考えたらいいのかということにつきましては、私は、まあ一般消費税の導入ということは好ましいと思えませんが、それに比べればよりましである。しかし、所得型の付加価値税というのは、付加価値税はこれは性格が非常に不明確な面もありますが、せいぜい所得比例税的な性格のものであって、所得再分配というような要請にはこたえ得るものではございません。やはり福祉財源ということになりましても、所得税なり法人税なりあるいは相続税、贈与税、資産課税、こういうものを福祉財源として積み上げていくということが必要だと思います。  そういうこともあるものですから、たとえば大河内先生が会長をなさっている社会保障制度審議会というようなものは、財政再建のためのある意味での中央委員会というようなところに出てもらって、そこで大いに議論していろいろな案を出していただくということが望ましいのではないか。そうでないと、地方のことは地方制度、社会保障は社会保障、あるいは農業のことは農業というそういうところだけでやって、それをまとめるものがないということが大きな問題ではないか、こんなふうに考えるわけであります。
  28. 大原亨

    ○大原委員 ありがとうございました。
  29. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 次に、阿部助哉君。
  30. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうも御苦労さまでございます。  佐藤先生にひとつお願いしたいのでありますが、いま税の計画を立てる。政府の方は、財政の出る方のあれは出すけれども、まあ税調でやっておると言うけれども、税調で何ぼやったってよくならぬのですよね。たとえば租税特別措置は絶えず見直すなんと言ってみたって、これは実際は見直していない。私は問題は政治家の勇気だと思うのです。どんな計画を出してみたって、このサラ金財政という――財政再建ということはもうだれしもが希望するところだ。それだけれども、問題は、それをインフレでやるのでないと政府が言うならば、税金でやる以外にない。そうすると、税金はどの層からよりよけい取るかというところが問題だと思うのです。私は先生の御意見、全く同感でありますけれども、問題は、いろんなことをここでやってみたって、お互い政治家がもう少し勇気を出して――インフレをやるならこれは簡単です。しかし、税金をいただくとかなんとかいうときには、やっぱりみんなが勇気を出さないと、どんなことをやったってこれはもうだめなんじゃないだろうか。そのためにはまず、政治家が姿勢を正し、それで大きな指導的な立場にある大企業や何かがもっと姿勢を正す。そして大衆の皆さんに税金をいただく以外ないのじゃないだろうかと思うのです。私は、この税制をもっと根本的に改めるべきじゃないか、こう思うのです。何か不公平税制というと、特別措置をちょっといじるといいみたいなことになるけれども、私は税法そのもの、本法そのものにまでメスを入れないと国民は納得しないのではないかという感じがするのですが、先生の御意見をお伺いして、私はそれだけで終わりたいと思います。
  31. 佐藤進

    佐藤公述人 現在の税制調査会は昭和三十四年に始まっておるわけでありますが、それが実際いままで行ってきた税制改正の経過を見ますと、これは大きな改革よりも、その都度の時代の要請に応じた、ある意味の継ぎはぎだらけの改正を重ねて現在に至ってきておりまして、一番大きな問題は、わが国税制が非常に複雑で、税法が人々が読んでもわからないような仕組みになっているということと、それから、やはり税金が公平でないということが一番大きな欠点じゃないかと思うわけであります。  それで、実際それならばどうしたらいいのかということについては、私が先ほど申し上げましたように、税制調査会というのは税金のことだけしか取り上げないので、税金の使い道についても当然関連してくるわけであります。税金を使う使い道に関して関係のある各種の部局、あるいは政府の調査会、審議会等のレベルでもそういうものはいろいろあるわけでありますので、それらを含めた総合的な、ある意味でこれは税とか財政だけではなくてもっと経済政策の基本に関連  これはずっと昔のことになりますが、たとえば大正九年、臨時財政経済調査会というようなものを設けまして、これは大規模税制改正中心とした機関であります。それから昭和十五年、これは戦時下の改革でありますが、何かそういう財政再建の問題を集中的に論議する機関を設ける。それから、やはり何よりもこの問題は、大蔵大臣だけに任せないで、総理大臣が自分の全責任でやるという意気込みを示していただかないと、問題は解決しないのではないかと考えます。また政府だけでなくて、国会におきましても、財政再建の重要性というものを十分認識しておられると思いますが、それをどういう手段でやるかということについてある意味のコンセンサスが得られないとすれば、それはまた徹底した議論をやればいい、そのための場はやはりこの予算委員会であります。予算委員会において、予算の問題以外のことに時間を費やすことが多過ぎるのではないか。むしろそういう課題が最大の課題であるとすれば、それについて集中した議論をとことんまでやるということをお願いしたい、こういうふうに考えます。
  32. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ありがとうございました。
  33. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 次に、岡本富夫君。
  34. 岡本富夫

    ○岡本委員 お三人の方、大変御苦労さまです。  最初に生田公述人にお尋ねします。それから次が佐藤公述人、それから池田さんですね。時間が非常にございませんので……。  まず生田さんには、政府の発表しておりますところの長期エネルギー需給暫定見通しというのがありまして、それに対してエネ研の方で、原子力あるいはまたLNGあるいは石炭、こういうようなものに対しての見通しを立てていらっしゃるのですが、きょうは時間がありませんので全部発表してもらうわけにいきませんけれども、そうしますと、この需給見通しと相当ギャップがあるわけです。しかも需給見通しは、これは新経済社会七カ年計画とうらはらになっておるわけですね、エネルギーというものがやはり基礎になりますから。新経済社会七カ年計画は見直しをしなければならぬというのが大蔵大臣のお話でございました。そうしますとこの需給見通しも、やはりエネルギー研究所のような現実性に合ったような見直しをしなければならぬのではないか、この御意見をいただきたいと思います。  それから佐藤先生には、先ほどから話がありましたように地方分権時代、地方の時代。いま地方で一番問題は、縦割り行政の弊害によって地方公共団体の自主性、創造性が非常に失われておる。要するに補助金でひもつきですから、だから定住構想と申しましてもできないような状態になっておる。したがいまして中央諸官庁の統廃合、こういうことを思い切って行うべきではないかということを考えられませんか、これを一点。  それから最後池田さんには、農業は非常に重大でございまして、将来の安全保障を考えますと食糧の自給というものが一番大事だ、私どもこう考えておるわけですが、本年度予算では、農林省では相当減反政策がとられておる、この減反政策に賛成なさるのであるか、賛成だから今度の予算に賛成だというようにとっていいのか、しかし消極的、仕方がないから賛成だ、きょう来て反対と言うわけにいかないから賛成と言うたのか、これが一点。  それからもう一つは、農業の後継者づくりですね、これが大切でございますので、私の本家も農家ですが、この後継者の決め手。最後に、マツクイムシが非常に蔓延しておりますが、この決め手。あなたの御意見がありましたら、これだけを承って終わりたいと思います。
  35. 生田豊朗

    生田公述人 簡単にということでございますので、個々の項目につきましての御説明は省略させていただきます。  全体といたしまして、政府と申しますか総合エネルギー調査会の暫定見通しでございますが、これは、この性格からいって見通しという名前が不適切ではなかろうかというふうに私は考えております。実は私は総合エネルギー調査会の需給部会の専門委員長でございまして、この見通しの作成にも参画しているわけでございますので、一方私どもの研究所で別の見通しを出しているのは矛盾しているような感じをお持ちかと思いますけれども、私どもの方で出しておりますのは、このまま推移いたしますとこの程度にしかならないという見通しでございます。総合エネルギー調査会の方は、あれの中間報告をお読みになりますと、その中にも数カ所書いてございますけれども、いわば政策的に十分な手当てをして、それで効果が上がった場合にはここまでできるということでございますから、私はむしろ目標という名前にした方が誤解がないのではないかということで、私個人といたしましても資源エネルギー庁の方に、名前を変えた方がいいのではないかという意見を申し上げておりますので、そのように御理解いただいたらよろしいのではないかというように考えております。
  36. 佐藤進

    佐藤公述人 行政改革に関連して、ひもつきの補助金とかあるいは縦割り行政を是正をするというようなことについてどういうふうに考えたらいいかということですが、これはぜひ進めていただきたいというふうに考えております。  地方支分局の廃止あるいは整理ということで、たとえば大蔵省財務局というのは、財務部ですか、五十七年度は一カ所廃止するというようなことを言っているわけですが、財務局というのは大体、地方債の許可権限を行使しているあるいは地方債に関する事務を多く扱っているような機関でありまして、これは地方債の許可制度が十分関係してまいりますが、今後余りそういう厳密な許可というものを続ける必要があるのかどうかということを含めましてもう少し、五十七年度一つだけというようなことでは非常に不十分だと思います。  それから、補助金は大きく整理すべきでありますが、補助金の大部分は地方自治体に対する補助金であります。廃止するならば当然、これに対する児返りが必要である。それを交付税の財源に繰り入れるとかあるいは自主税源に切りかえるとか、そういう形でなければならない、こんなふうに考えております。
  37. 池田斉

    池田公述人 三点の御質問がございましたが、減反政策、本年五十三万五千ヘクタール、それに約三千億の金を使う、こういう問題で、まあわれわれ農業関係、また農民から見ましても、基本的に私は減反政策に賛成している者は一人もいないと思います。ただこれは避けて通れない一つの道である、こういう認識もまたあるわけでございます。そういうことで、これに取り組み、われわれもこの問題に頭を痛めながら、いま農家にPRしておるわけでございますが、問題は、やはり転作の方向、それに対する対策がどういうふうに行われるか。そして、これが今後十年間という非常に長期の問題につながるということでございますが、私は先ほど申しましたように、水田の生産力は一番高い、大量のえさを輸入している、穀物自給率をどう守るかという問題でえさ米の問題を提案しているのはそういうことございます。  第二の後継者の問題は、御案内のように大体いま農業に就業するのは新しい人で一万人程度、これでは非常に心配でございます。もちろんUターンが最近少し行われております。しかし、これらの方々は少数でもやはりやる気があるというような形で、農業にひとつ生涯をささげよう、こういうのでございますので、やはり国として長期のビジョンをどうつくって、その道筋を明らかにしてもらうということが私は決め手であるというふうに考えます。そしてなお、私は従来から言っておりますが、農業の後継者は農家の後継者だけで占めるというのはもはやちょっと時代が違うのではないか。やはり農業をやりたいという人は非農家にもこれはあると思うのです。したがって、新規参入を含めたそういう意欲のある者に将来の農業をゆだねるというような形で、どういう対応をしたらいいかというような農政上の課題が私は今後の問題としてあるのではないかというふうに考えます。  それから、マツクイムシの問題は、これは少し手おくれであったということはきわめて残念であります。いま岩手県ぐらいまでマツクイムシが蔓延をしつつある、こういうような状態で、御案内のように特別立法をつくりまして防除をやっておりますが、環境に影響を与えるような問題との関連も含めまして、そう撲滅的な方向に必ずしもいっていないというようなことでございますが、これはやはり日本の国土の緑を守るという意味で、国民的な運動としてこの問題に対する対応というものを、単なる防除という形ではなくて全体でこれをどうするか。やはりこれを切って焼き捨てる以外にないわけですから、そういう問題の国民運動を起こすというようなことで、わが国の松の緑を保つというようなことが大事な問題ではないか、こういうふうに考えます。
  38. 岡本富夫

    ○岡本委員 ちょっと生田さん、この長期暫定見通しでは合わない、目標であればこれでいいんじゃないか、こういうお話でございますが、見通しという場合ですと、やはりあなたの方でも現実的な調査をされておりますから、そういうように見通しであれば現実的な方向にもう一度やり直さなければならぬ、こういうふうに私も解してよろしいか。いかがですか。
  39. 生田豊朗

    生田公述人 見通しとして考えますと、私どもの見通し前提にいたしまして逆に経済成長率を計算していきますと、一九八〇年代で四%台かあるいは三%台まで成長率が落ち込むおそれがあるというように考えておりますので、その見通しを変えます場合は、やはりそこまで考えないといけないというように思っております。その成長率との関係が一番問題でございます。
  40. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。
  41. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 次に、工藤晃君。
  42. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 日本共産党の工藤晃です。三人の公述人の皆さん、大変御苦労さまです。  最初、生田さんに伺いたいのですが、ただいまも問題になりました日本エネ研の方で出されました見通しとそれから総合エネルギー調査会の見通しの問題で、これは朝日ジャーナルにも最近発表されたものとして富舘さんが書かれているわけですね。私もこの問題は大変重視しておりまして、それこそその推移いかんによっては経済成長率そのものにもかかわる、こういう重要な問題だと思うのですが、これは目標と見通しの違いというふうに御説明されたのですが、確かに原油の輸入が確保できるだろうか、この見通し自体も、いまの国際的な諸情勢を考えますと大変むずかしい問題がありますが、特に原子力の問題に関しては、安全性の問題がいろいろありますし、先ほど国民的合意はどうするかというようなことを言われたと思いますが、一応原子力を外して考えてみた場合に、たとえば石炭液化とか、それからかなり深所で大規模に行うところの地熱発電なんかを考えますと、技術研究開発が相当進められなければいけないということが一つ、つまりそれが計画どおりいくかどうか、それともう一つ、それが事業化できるかどうかという問題ですね、二つあると思うのですが、その辺で、本当にそれで研究開発が進んだとしても事業化までいくかどうかということで私は大変疑念を持っているのですが、生田さんの御見解を伺いたいと思います。
  43. 生田豊朗

    生田公述人 私も先生のいまの御質問と同じような感じを持っております。先ほど申しましたように、一九八〇年代に利用できます石油代替エネルギー、これは石炭の生だき、それから天然ガス、原子力と考えておりますが、これはもう事業化の形態が整っているわけでございます。ただ、ただいま御質問にございましたように、それから先のものになりますと、研究開発は進めておりますけれども、まだその企業あるいは産業としての形が必ずしも十分に検討されていない。たとえば石炭の液化につきましても、石炭の液化の技術につきましてはかなり研究が進んでおりますけれども、石炭液化事業をわが国のどういう産業あるいは企業がどこで液化をするのか。私は産炭国で液化をするしかないと考えておりますが、それでどういう形で日本に輸送してきて、それをさらにどういう産業によって精製し利用するかというところがまだ欠落しているわけでございますので、石油代替エネルギーについての検討はそういう点も含めましてまだ相当広範囲に進みませんと、実用化に向かいます上にいろいろ問題があるというように考えております。
  44. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 生田さんにもう一点伺いたいわけですが、これはESPという雑誌に、昨年の十二月号ですが、座談会「エネルギー制約下の経済政策」というのがございまして、生田さん御出席になっておりますが、ここで、海外のエネルギー問題での会議に出られまして、もしアクシデントが起きて石油供給が大きく制約されたら日本は一体どうやって対応するつもりなのかとよく聞かれることがあるということでいろいろ御意見を述べられたと思うのですが、そういう海外のいろいろな会議に出られまして、日本の過去とってきたエネルギー政策あるいはこれからとろうとしているエネルギー政策と、それから西ドイツとかイギリスとかフランスとかいうところと比べて、やはりもっとこうすべきであったとかこういう点はもう少し考えなければいけないというお感じのところがありましたら述べていただきたいと思います。
  45. 生田豊朗

    生田公述人 時間がございますといろいろ申し上げたいわけでございますが、要点だけにさせていただきますけれども、何と申しましても国内に資源がありませんので、たとえばホルムズ海峡が何らかのアクシデントで封鎖されたという場合に、わが国世界の先進工業国の中で最大の打撃、恐らく壊滅的な打撃を受けるわけでございます。それはもう石油の備蓄をする以外にはないわけですが、そうでなくて、そういうアクシデントがなくても長期的にどうやって石油を確保するんだ、日本だけが石油削減を大幅に受けた場合はどうするかということも同時に聞かれまして非常に困るわけでございますので、私は、今世紀末まではやはりエネルギー中心石油でありますから、石油を確保するためには産油国との間の提携関係をもっと強化する以外には方法がないというように考えております。たとえば、現在すでに徴候があらわれておりますけれども、産油国が先ほど御説明いたしました過剰のオイルダラーを使って日本に投資をしようとしているわけでございますが、この投資も日本経済の中にうまく調和できるような形で積極的に取り入れていった方がいいのではないかというように考えております。つまり、日本経済エネルギー問題によって破滅しても世界経済は余り大きな影響は受けないというように考えられてしまいました場合は、日本の立場は非常に惨めでございますので、やはり世界経済の中で日本経済というのは必要不可欠な存在である、これをつぶしてはいけないというような国際的な感覚で政策を進めていくことが一番必要ではなかろうかというように考えております。
  46. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 どうも生田さんありがとうございました。  それでは、佐藤公述人に伺いたいと思います。  先ほどのお話の中で、日本は数年間三〇%以上もの国債依存度、異常な状態に陥った。先ほども予算編成過程に一つは問題があるのではないかというようなことも出ました。御存じだと思いますが、日本共産党の立場からすると、早くから建設公債も含めて余り出しちゃいかぬということを言っておりましたので、国会における議席がもう少し多かったらこういうことにならなかったんじゃないかと思っておりますが、それはともかくとして、どうしても私ももう少し解明していただきたいと思っている点として、日本でなぜああいう異常な増発になってしまったのか、そういうメカニズム、それからそれを合理化するような経済理論といいますか、非常にはやったんじゃないだろうか。よく、成長率を高めればそれだけ雇用がふえるから高めた方がいい、潜在的には高められるんだ、ゆえに財政はそれに合わせてよくなってから後で税金で取り戻せばいいというようなことがいろいろ言われたわけでありますが、いまの雇用の実態というのは必ずしもそうなってないわけなので、そういうことを含めて、日ごろ財政、税制を研究されているお立場から、考え方の上でどういう点に問題があったのか、もし考えておられる点がありましたら述べていただきたいと思います。
  47. 佐藤進

    佐藤公述人 国債で歳出の三〇%を賄う、そういう状況が五年続いたという事態が何を原因にしているかという点についての御質問だと思いますが、これは一般的に言えば、歳入面のことを考えないで歳出をふやし過ぎたということで、歳出を適正な規模にコントロールする能力がなかった。それは特に財務当局責任であるというように考えますが、具体的にどういう点で間違ったかというようなことで私ども考えますのは、たとえば昭和四十九年に二兆円減税というようなことを、つまりちょうどオイルショック後のインフレ、狂乱物価騰貴の最中にそれを行ったということは、やはりある意味で間違いでなかったかという反省が必要であると思います。  それから続いて、不況が深化するにつれて、五十年秋に今度は景気対策、公共事業を中心とする不況対策というようなことで、これはある意味で誤ったフィスカルポリシー論の応用といいますか、それをいわば経済理論的に基礎づけるような形でむしろ支持する人が多かったということで、フィスカルポリシーというのは刺激的な政策を不況の時期続け、好況の時期にそれを抑制型に取り戻すという、これができない状況にあるというのはやはり議会制民主主義国家の一つの大きな制約であるというようなことが言われておりますが、そのように政策的な誤りというものがあったことと同時に、より基本的には、この時期以降、若干ニュアンスは違いますが、ある意味でスタグフレーションというような状況が出て、この赤字が構造的なものになってきたということが大きな理由ではないか、そのように考えます。  それでまた、五十年というのは各国で同じような赤字を出していますが、二、三年で大体依存度一〇%あるいは五%にまで下げるというような努力をしているわけですね。そういう努力をしなかったというのは、ある意味で政治の責任じゃないかというふうに考えております。
  48. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 佐藤さん、どうもありがとうございました。  それでは池田公述人に伺いたいと思いますが、先ほど穀物を中心にしながら自給率を積極的に高めなければいけない、私も大変賛成であります。その場合、一つ国内の諸制度関係の問題もありましたが、国際関係の問題があるのではないか。昨年、日米首脳会談を一つの頂点にしまして日米経済交渉が行われまして、牛肉の問題だとか柑橘類の問題などが大きく問題になりました。それから同時に、最近はOECDなどでこれからの開放経済ということではポジティブ・アジャストメント・ポリシーといって積極調整政策で、国際環境の中で競争力の弱い部門はむしろ取り下げてしまえということが調整政策であるというふうに言われている。  そういうさなかに私が非常に注目しましたのは、昨年の日米の共同宣言の中に、これからアメリカの農産物の輸入を日本にもっと積極的に行うために、アメリカは日本の輸入需要に当たって農産物貿易が確実にやれるよう緊密に協力するという言葉が入ったことなんです。この点についての御見解を伺いたいんですが、一言だけそれにつけ加えさしていただきますと、アメリカの議会側で出したジョーンズ委員会の報告によりますと、日本の農林水産省が自給率を高めるような計画を立てたことに対して、アメリカの農務省が直ちに反応しまして、これを少しやめさせるためには、問題はアメリカ農産物が確実に入るコミットメントをやってやればいいのだというので、いろいろ工作が行われたかのようにこの議会の報告書には書かれているのですが、そういうことを見ますと、昨年の共同声明にはそういう方向が入りつつあると見ざるを得ないわけなんですが、こういうことに対して私たちは自給率を高める一つの問題として、もっと対外的な政策の面でもはっきりした政策をとらなければいけないと私は考えているのですが、その点につきましての御意見を伺いたいと思います。
  49. 池田斉

    池田公述人 国際的な関係を含めて自給率の問題の御質問ですが、確かに日米関係におきましてはその他のいろいろな要素がございますので、日本政府としてはある程度アメリカの要請にどうこたえるかという苦慮があることは事実でございます。私も何回もアメリカへ行って議会筋その他とも話をしていますが、なかなかすれ違いで議論が残念ながら合わないのが現実でございます。  ただ、私は先ほど、穀物自給率を何とかえさ米的なものをひとつ打ち出しながら今後中長期にやるべきではないかと申しましたが、現在でも穀物の輸入の相当のウエートはアメリカに依存をしていることは御案内のとおりですが、ただ、日本政府の中長期計画の中で、さらに穀物を今後十年間に四百万トンも輸入をふやさなければいかぬ。こういうような問題は、私はやはり国内での自給を上げ得る条件というものは一応あるわけでございますから、価格問題その他いろいろございますけれども、それをやることにおいて、アメリカから安定輸入をするといういまの枠組みはアメリカに対応しなければならぬと思いますが、ますますその依存度をふやしていくというようなことは、やはり外交政策から見ましても、日本の国の安全保障の観点からもこれは守るべきであって、アメリカも必ず保証はするとは言っていますが、かつて苦い経験もあるわけで、いざという場合に輸出を規制をするということは絶対にないという保証はないわけでございますので、やはりアメリカとの調整をしながら国内自給率を上げていくという問題は、やり方によって私は可能であり、外交交渉の中でこれはある程度説得をする方向もできるのではないか、こういうふうに考えます。日米の大平・カーターの声明書の中にあるような問題は、いままでも相当買っておるので、このような問題を継続してもらうということで、ますますふやせというようなニュアンスはあの中には私は受け取っておらないわけで、そういう面をてこにしながらやるべきではないかというふうに考えております。
  50. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 時間ですので終わります。どうもありがとうございました。
  51. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 次に、小沢貞孝君。
  52. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 最初に生田理事長さんにお尋ねしたいと思います。  石油の高騰で電気料金が六割だ、七割だという一応値上げの要求が出ているわけであります。電力多消費産業、たとえばアルミニウムあるいはフェロアロイ関係あるいは苛性ソーダ、カーバイド、非鉄金属、こういうところにおいては生産コストの二割も三割もが電力料金なんです。特にアルミニウムなんていうものは電気のかん詰めみたいなものです。いまコストは、アメリカ、カナダあたりはあの大電力でもってキロワットアワー一円ぐらい、ところが国内のものはこの前の石油ショック以来大分値上がりで恐らく八円から十円、ちょっと八倍から十倍のコストの違いがあるわけであります。だから、今度値上げになれば、これらの電力多消費産業は、もうこれは生き残ることは恐らく不可能ではなかろうか、こういうようなことで、その関係の会社や労働組合はこれから大運動を起こすような様子であります。こういうものに政策料金なり何なりつけてやろうかということが考えられないでしょうか。どうやったら一体いいでしょうか。唐突な質問で、こんな質問無理かと思うのですが、お考えがありましたら、ちょっとお答えいただきたいと思うのです。
  53. 生田豊朗

    生田公述人 まず私は、電気料金、ガス料金の今回の値上げは、もう申し上げるまでもなく、基本的には石油価格の二倍半の上昇がその原因でありますので、やむを得ないように思っております。余り抑えない方がいいというように考えております。  いまの御質問の、それでは電力多消費産業をどうするかということでございますけれども、私は余り電気料金のことを詳しく承知しておりませんので、あるいは十分お答えできないかもしれないわけでございますけれども、電力多消費産業をどこで線引きするかというのが私は非常にむずかしい問題ではないかというように考えております。確かに先生の御質問のアルミ、非鉄金属、カーバイドその他が非常に大きな影響を受けることは間違いないところでございますし、私もこういう産業の経営者の方から、今後は海外立地をするしかないというかなり切実なお話を伺ったことがございますが、海外立地と申しましてもそう短期間でできるものではございませんので、徐々にそういう形で日本の産業構造を変えていくということと、その間の摩擦を少なくするということが必要だと思いますけれども、政策料金の導入については、私は詳細をよく存じませんけれども、技術的にかなり難点があるのではなかろうかというように考えております。
  54. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 まだいろいろ御質問したいわけですが、次は池田公述人にお尋ねをいたします。  一点、二点お尋ねしたいのですが、いまお聞きしておるそのえさ米、これは大変私も関心を持っておりますし、これから五年、十年後には八十万ヘクタールをとにかく転作しなければならないということは、日本の水田の三割ですから、これは私は不可能事ではないか、こういうように考えます。そういう意味においては、池田公述人の強く主張をされておるところのえさ米転作は非常にいいことだと思いますが、私の心配は、一体ペイするだろうか、外国からトン当たり、どのくらいでしょう、三万円前後で入ってくる穀類と比較をして、日本の国内でえさ米をつくった場合に、先ほどの質問にもありますように、たとえばことしは五十三万五千ヘクタールのために二千九百九十五億、約三千億の金をかけて転作をやっているわけです。だから、十アール当たりにすると総平均で五万六千円かかっているわけです。この五万六千円をそのまま転作のために出してえさ米を、そういうようにして一体トンどのくらいな生産費になるでしょうか。その価格見通しがあるものでしょうか。その辺お聞かせいただければありがたいと思います。
  55. 池田斉

    池田公述人 ただいまの米価水準一トン約三十万円、こういう前提に立って、今後も米価は上がっていくのだ、こういうことになりますと、いま価格面からえさ米問題はなかなか容易でないということは事実だと思います。ただ、現在民間でやっており、またこれはえさ米を志向していませんが政府の試験場で超多収米の研究が始まっている。大体一トンぐらいは現在でもその成果が上げ得る。まあ一・五トンぐらいまでは可能じゃないか。こういうような問題がいま追求されつつあるわけです。仮に一・五トンというと三倍とれるということになるわけですね。そうすると三十万円が十万円でやれる。そうすると、いまの転作作目にこれを指定するということになりますと、三万円にちょっと間に合わない点もありますが、それにやや近づくというようなことができ得るのではないか。ただ、この奨励金がいつまでも続くかということは保証がないわけですから、その辺の問題は、この流通なり畜産との結びつきなりいろいろ配慮を払いながら、コーンスターチではありませんが、抱き合わせをやるとかいろいろな政策も実はでん粉なんかにはございますけれども、何か新しい仕組みを考えてやれば決して不可能ではない。また人によっては、あれだけの膨大なえさを、これは自由化品目ですから簡単にはいかないが、いわゆる課徴金的なものを少し取って、そして国内のえさとのプールをやるとか、いろいろな意見などもあるわけで、その辺をいろいろこれから詰めながらやっていくということにおいて、決して荒唐無稽な政策の展開ではないというふうに私は考えております。
  56. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 引き続き池田さんにお尋ねしたいわけです。  この委員会でまた出すか、こう言われるのですが、昭和十七年まではお酒は全量米でつくっておったわけです。この米が余ってどうしようもないという時期に当たっても、依然として米がなかったときのままに続いておるわけです。これはむしろ私の方のお願いであります。どういうことから全量米のお酒ができないかというと、やはり米のコストの問題があると思います。いまどういうような状態になっているかといいますと、米だけでお酒をつくると百万トン要ります。ごくラフに言うと、その半分は米で半分はアルコールであります。そのアルコールはどういうアルコールを使うかというと、国内の農作物からつくっているわけではありません。ブラジルだとか東南アジアから悪い粗留アルコールを輸入してくる、あるいは糖みつを輸入してくる。そういうものからアルコールをつくって添加しているのが、米に換算すると約五十万トンであります。だから、私はこれをもう少し率直に申し上げて、稲富先生や小平先生とも、なぜ農業団体がこれにもつと力を入れて運動をしないのかな、どういうことだろうかな、何か特段の理由があるのだろうかなと、けさも打ち合わせをしたばっかりなんです。要するに、いま五十万トンの米を転作するのに、十アール当たり四百六十六キロにすると五十万トンが約十一万ヘクタールになるわけです。五十三万五千ヘクタールから十一万をとれば、これは昨年と同じぐらいな転作の面積になるわけですから、こんな問題を起こさないで済むのではないか。そのために政府は減反の奨励金といいますか転作の奨励金を幾ら出しているかというと、特定作物、永年作物の転作率を最高で計算すると約八百五億であります。総平均にすると六百一億であります。ところが酒屋さんがどうしても困るというのは、米の値段が高いから困る。お酒の値段を上げないで幾らまでにしたら合うかという詳細な計算をすると、トン三十万円のお米を十九万七千円、約二十万円にすればいいわけです。その差額十万三千円を五十万トンに掛けると、約一千億の金があれば足りる、こういうわけです。詳しく言うならば、五十三酒造年度で約四十二万トンですが、そのときにアルコールからお米にかえるだけで一千十四億要るわけです。ところが、いま転作のために使っている金が平均なら六百億、私がマキシマムに計算したのは八百五億なんです。だから、それを振りかえるだけで、残り四百億ないし二百億あれば足りるわけなんです。だから、これを一気にというわけにはまいりません。三年計画、五年計画でやっていけば、この余った米をお酒屋さんに使ってもらって、おいしい酒をつくることができる、こういうことになるわけです。  ところが一方、ことし米の消費拡大のために五十五年度予算が幾らあるかと言えば、農林省に百八十億、文部省の学校給食に四十七億、合計二百二十七億、それで幾ら実績が上がるかというと、驚くなかれ、学校給食は、昭和五十三年度の実績しか出ておりませんが、あれだけの騒ぎをして三万五千トンであります。ことしの学校給食は九万トンと見込みをつけておりますが、とうていそこまでいかぬ。六万トンか七万トンだと思うのです。仮に十万トン行ったとしても、二百二十億の予算ですから、一万トン当たり二十二億の金をかけて消費拡大しよう、こういうわけです。だから二十二億もかけているくらいなら、五十万トンに二十二億掛ければ一千百億すぐ出てしまうではないか、片方から言えばそういう計算も成り立つわけです。  そこで、私は池田さんにぜひお願いをしたいことは、この運動というものは全然全中もしなければ農業会議所も、全農総連もだれも言い出さぬ。どういうわけだろうと言って、けさ稲富大長老ともさんざん打ち合わせてきたわけですが、これを実施させるにはやはり大衆運動、農村からの運動がなければ、とてもじゃないが不可能です。予算的には少額なんです。ほとんど幾らも要らないでできるわけです。だから、いまちょうど大蔵大臣酒屋、農林大臣酒屋、学校給食の文部大臣酒屋、酒屋ばかりそろっているものだから実はよけいやりにくいみたいな話なのですが、これだけの米が余っているときに外国からアルコールを入れてきて半分まぜて五十万トン分使っているということは許せないことだ、こう思うわけで、これは私のお願いなんです。ひとつ農業諸団体挙げてこの運動をやっていただいてぜひ実現していただけば、二割の減反をやめることができる、こういうわけですから、これは農村にとっては大変な問題ではなかろうか、こういうように思うわけです。御意見と私のお願いに対して御答弁いただければありがたいと思います。
  57. 池田斉

    池田公述人 まさに御指摘のとおりで、米の消費拡大運動は官民挙げていま取り組んでおりますが、なかなかその成果があらわれてこない、これも事実でございます。しかし、これは学校給食を含めて、気の長い一つの問題として、やはり今後も続けなければならぬということですが、かつては過去に、昭和四十三年ですか、やはり過剰米が出て、そのときにはアルコール問題に対してかなりわれわれも強く主張をしましたが、いま御説のとおり、余りいまそれを具体的に取り上げていないということも事実で、非常に恐縮に存じております。いまお話しのような問題意識を持って、やはり米の消費拡大は何も米のまま食うだけではありませんから、いろいろな面で米の消費拡大問題、その中でアルコールの酒に対する添加問題、これもお話しのように、われわれも反省をいたしまして、重大な一つの項目として取り上げてこれからひとつやりたいというふうに考えます。  ただ、これは値段の問題だけじゃなくて、私非常に心配なのは、何か最近はアルコール添加の方が酒がさわやかでよろしいというような、そういう間違った一つの問題がいろいろ出てきておるわけですね。ですから、やはり日本の古来の伝統の味というものを若い人からもう一遍取り戻すというか、そういう一つの運動を含めてやらないと、何かイミテーションになれるとそれがよろしいというような、牛乳でも薄い方がうまいとか、こういう国民的な食生活の嗜好を日本的なものにどう取り戻すか、こういう運動を含めながらやらないと、単に価格だけの問題でもないような気がしますが、御説のとおり非常に大事な問題でございますので、これから十分対応いたしたいと存じます。
  58. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それじゃ時間ですので終わらせていただきます。
  59. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十三分開議
  60. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和五十五年度予算に対する御意見を拝聴し、予算審議参考にいたしたいと存じますので、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず最初に村上公述人、次に宝田公述人、続いて高橋公述人の順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、村上公述人にお願いいたします。
  61. 村上清

    ○村上公述人 村上でございます。  現在、予算編成におきまして、財政再建は最も重要な命題の一つになっております。その第一段階として、五十五年度予算では国債発行額で一兆円の減額が行われると伺っております。財政再建の進行は望ましいことでありますけれども、しかし一方では、別の面で財政の悪化が進行しているように思われます。具体的に申しますと、年金制度の分野であります。  現在、厚生年金も国民年金も、その保険料は、将来に約束される給付との見合いで考えますと、給付に必要な費用のごく一部にしか当たりません。つまり、現在の状態は、給付は約束されるけれども、それに見合う費用は徴収されていない年金が著しく大きな額になっているということであります。この額は、たとえば厚生年金についてごく大まかに見ましても、年間で十七兆円程度になると思われます。つまり、一方では財政再建が進んではいても、他方では十七兆円の赤字が生じ、将来に繰り越されているということであります。  十七兆円と申し上げましたのは厚生年金だけであります。このほかに国民年金、共済年金があります。しかも、この赤字は単年度だけでなく、長年にわたって累積されてきております。これまでの累積総額で言えば、少なくとも三百兆円にはなっていると思われます。  しかし、この額を赤字と呼ぶのが妥当かどうか。この額はすでに消費されてしまった金という性格のものではありません。将来の給付として約束されながら、それに見合う資金の裏づけのない部分という意味であります。この金が実際に支払われるのは長い将来のことであります。したがって、将来その額が年金として支払われる時期に、それに見合う費用が十分に調達される見込みがあれば、特に赤字というように考える必要はないわけであります。  それでは、将来、その時点で必要な費用の負担が行われる確約があるかどうか。残念ながらそのめどは立っておりません。もし、現在の規定で定められた給付を将来ともに支給するとすれば、将来の勤労世代の負担は現在の何倍かの著しく高い負担になります。そのような負担を負うのはそのときの勤労世代、現在で言えば二十代、三十代の若齢世代であります。これらの若齢世代から、将来それだけの高負担を甘んじて負うという合意は、これまでのところ得られてはいないと思います。もし、そのような合意が将来ともに得られないとすれば、年金給付のうちで、すでに支給の約束はあるものの、負担の伴わない部分は、やはり赤字国債と同じ性格のものになるのではないかと思います。  年金制度は国民全体の合意に基づくべきものということは、だれも反対のないところであろうと思います。しかし、現状ではそのような合意は成立してはいないと思います。若い世代にとって、これから長い将来の保険料の負担も、あるいは引退して自分が受ける給付も、皆目見当がつきません。見当がつかないものには合意もしようがないわけであります。年金制度は国民政府の問題ではなく、国民相互間の問題であります。年金制度は世代間の所得の振りかえの制度であります。勤労世代が老齢世代を順送りに扶養する世代間扶養の仕組みであります。それは、いわば世代を超えた国民相互の扶養の約束であります。その意味で、欧米では年金制度を、世代間扶養の社会契約と呼んでおります。  年金制度が世代間の扶養の契約であれば、給付と負担の収支が見合っていなければ契約にはならないはずであります。もし、収入と支出が合わなければ、給付か負担かいずれかが約束を裏切られることになるわけであります。長期にわたる収支が成り立ってこそ世代間の契約であり、国民の合意であり、それによって給付は保障されるわけであります。  アメリカの公的年金について一言申し上げてみたいと思います。  アメリカでは、将来七十五年にわたり収入と支出が合うような計画が法律で定められております。保険料について言えば、将来七十五年にわたり段階的に引き上げられる保険料率がすでに法定されています。七十五年という期間は、現在制度に加入し、保険料を拠出している最も若い人の生涯をカバーする期間であります。加入者のだれもが、自分の将来の負担の限度と給付の内容を知らされ、それが法律によって守られていることによって確実な保障と感じます。給付と負担が相償うように法定されていることによって、年金制度は国民の合意の上に成り立っていると言えると思います。  現在の日本の公的年金は、残念ながら給付と負担は著しく離れております。厚生年金で言うと、現在の保険料は必要な費用の三分の一程度にしか当たりませんし、国民年金では負担はさらに低い割合にしかなっていません。厚生年金について具体的に申し上げますと、給付水準は加入期間の平均給与の六〇%程度とされております。男子が六十歳から年金を受給するとすると、年金の受給期間は平均して十八年になります。この費用を負担する加入期間を大ざっぱに三十六年としてみます。三十六年は十八年の二倍であります。つまり、二の期間保険料を負担し、一の期間年金を受け取る仕組みであります。だとすれば、一の期間に給料の六〇%の年金を受けるには、二の期間に給料の三〇%の負担が必要になるはずであります。実際には、現在の保険料率は九・一%ですから、必要な費用の三分の一にしか当たらないわけであります。女性に関して言えば、負担はもっと低い割合になっております。  だとすれば、現行の給付を維持するためには、将来は保険料率を三倍に引き上げなければならないし、現在の保険料率でいけば、給付を三分の一に減額しなければならないはずであります。実際には、このいずれもできないことだと思います。そうであれば、これから長期にわたって、一方では給付を切り詰め、他方では保険料率の引き上げをしていかなければなりません。  どこに目標を置くかといえば、費用を負担する勤労世代と給付を受ける老齢世代との折り合いのっけられるところであります。  年金制度では、できることなら給付は高く、負担は低くありたいと思うのが当然であります。しかし、年金制度は所得の振りかえの仕組みであります。給付と負担は、総額では同額でなければ成り立たないはずであります。だとしますと、給付の改善は負担の増であり、負担の面からは改悪です。負担を低く抑えることは、負担の面では改善ですが、給付の面では改悪になります。つまり、負担と給付の両面について言えば、改善は同時に改悪であり、改悪は同時に改善であります。所得の振りかえである年金制度では、何が改善かは一概に言えないことであります。  それなら、本当の意味の改善は何でありましょうか。二つのことが言えると思います。  第一は、費用を負担する勤労世代と給付を受ける老齢世代との間に適切なバランスをとることであります。第二は、貴重な保険料や税金によって徴収した年金給付の財源は、できる限り保障の優先順位の高いところに配分することであります。  現在のわが国の公的年金は、いずれもまだ未成熟の段階にあります。したがって、約束された給付に対して負担はまだ低い水準にとどまっております。しかし、やがて給付の支払いが成熟化し、同時に老齢人口の増大が進めば、負担は漸次増大することは避けられません。現在のままの状態を引き延ばして将来の姿を予想しますと、勤労世代と老齢世代の収入のバランスが逆転する事態が予想されます。厚生年金の給付は、平均的な給料の六〇%とされています。実際には、そのほかに勤労者世帯の大部分が、妻が国民年金に加入しています。両方を合わせますと、年金給付は恐らく八〇%の水準になります。一方では、老齢化が進めば、その負担は勤労世代の肩にかかってきます。将来を予想しますと、税金、社会保険料を合わせて勤労世代の負担は恐らくは給料の三〇%、あるいはそれ以上になると思われます。もし三〇%が控除されれば、七〇%の手取りの所得では、勤労世代が老齢世代より低くなります。老人世帯は二人に対して勤労世代は四人世帯、子供の養育その他の経費を考えますと、著しく貧しい生活になりかねません。このような状態は、事実上成り立つはずはありません。  豊かな年金は、確かに老齢世代を豊かにするかもしれません。しかし、その負担で勤労世代の収入が切り下げられたとすれば、それは福祉ではありません。一軒の家で親子が一緒に暮らし、子が親を扶養している場合を想定すれば、両者の配分はおのずからルールがあるはずであります。現在の年金制度は、このままでいけばやがては成り立たなくなります。両者のバランスがとれて成り立つような方向に現在から少しずつ修正していくことが必要であると思います。  次に、給付の優先順位について申し上げます。  現在の制度は、必ずしも適切な優先順位にあるとは思われません。今回の政府の改正案では、この点につき改善の方向が見られます。たとえば厚生年金で言えば、扶養加算の取り扱いです。現行の規定では、夫婦ともに厚生年金の老齢年金受給資格を得た場合には、両方に扶養加算がつきます。これはどう考えても不合理であります。改正案ではこれを外し、そのかわり、一方しか年金の受給資格がない場合の扶養加算を一万五千円に引き上げております。  アメリカの公的年金では、夫だけが年金の受給資格を持つときには、妻帯者には妻の分として五〇%の加算をつけております。夫婦とも年金の受給資格を取得した場合には、いずれにも加算はつきません。今回の改正はそこまではいっておりませんけれども、保障のニードに応じた給付という意味では、一歩の前進と思います。  同じことが遺族年金についても言われます。同じ遺族であっても、高齢の寡婦あるいは子供を抱えた母子家庭には、より手厚い保護が必要であります。今回の改正案では、これらのより優先順位の高いところに給付の配分が行われている点で、十分に評価できると思います。できることなら、遺族年金の引き上げは、金額ではなく支給率の引き上げが望ましいわけでありますが、現状のように被用者の妻の大部分が国民年金に加入している状況では、率で固定することはかえってアンバランスを生じ、将来に不公平を生じます。したがって、この問題は、公的年金における妻の位置づけが明確に定まった段階で処理すべきものと思います。  国民年金については、母子年金で大きな改善が行われております。新しく設けられる一万五千円の母子加算は、国民年金の母子年金だけしか受けられない母子家庭に支給されるもので、他の遺族年金を受給する場合には支給されません。現行のわが国の公的年金では、母子家庭に対する給付は必ずしも適切ではなかったと思います。たとえばサラリーマン家庭で、妻が国民年金に任意加入していれば、母子家庭には二つの年金が出ます。一方、自営業では、母子年金は一つだけであります。今回の改正では、このようなアンバランスを、若干ですが修正することができたと思います。  公的年金の改正については、今回の案で十分満足すべきものとは思いません。まだもっと改める点があります。  厚生年金で言えば、中年加入の特例、任意継続の制度は見直しの必要があると思います。これらの規定は、確かに特定の人にとってはありがたいことであります。しかし、受給者全体について見渡したとき、必ずしも公平な方法とは思われません。一部の人にきわめて有利な規定は、他の人にとっては迷惑な負担を負わされるからであります。今後高齢化の進行とともに、負担の増は不可避であります。増大する負担に国民の納得を求めるためには、給付は公平なものでなければならないと思います。  国民年金について言えば、早期繰り上げ減額支給は再検討すべきであると思います。任意に早期に受け取れる規定は、親切なようではありますが、実はそのために貴重な保障を失わせる結果になっております。同じことはアメリカでも経験され、結果としては失敗であったという判断が下されております。  今回の改正案について、総括的に意見を申し上げれば、基本的な問題を多く将来に持ち越している点が目立ちます。  これまでの公的年金の体系は、被用者世帯は厚生年金、自営業者世帯は国民年金という体系で進められてきました。現在では、一つの世帯の中にこれら二つの制度が複雑に入り組んで適用されております。このような状況のもとでは、制度の側をどのように公平なものに整理したとしても、それでは問題の解決になりません。むしろ、入り組んだ適用を受けている家計の側から制度を見直し、その上で将来の年金制度の体系を整備していくべきであります。  その場合、現在の不安定な女性の年金権をどう位置づけるか、任意加入という中途半端な状態にある被用者の妻の国民年金をどう処理するのか、離婚した妻の年金権をどう保護するのか、これらはすべて未解決のままであります。しかし、この問題については、関係審議会、懇談会でも、まだ十分な結論は出ていない問題であります。しかし、これが方向づけがはっきりしない限り、今後の前進はできないわけであります。できる限り早い機会に、これらの問題を詰めていただきたいと思います。  年金制度は、国民の生活の基本的な保障であります。有利なように見えても不確かなものでなく、つつましくても確実なものでなければならないと思います。そのためには、長期にわたり収支の合った姿を国民に提示し、国民の各世代の合意を求めることが必要であります。現在自分たちがとうてい負えないような負担を後の世代に繰り越し、その負担によって給付を求めることは、望ましいことではないと思います。将来の給付を約束してくれるのは、国でも政府でもなく、いまの二十代、三十代の若い世代であります。その意味において、若い世代を含めた国民的合意に向かって一層の努力をすべきであると考えます。  今回の政府案は、将来の年金改革に向けて必ずしも抜本的な方策を打ち出したものではありません。年金制度が真の安定した姿になるまでには、まだ長い道のりが必要だと思います。しかし、今回の改正案は、その方向に向かって一歩を踏み出したものと考えます。そのような見地から、私の専門とする分野から見て、今回の予算案には賛成するものであります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  62. 田村元

    田村委員長 どうもありがとうございました。  次に、宝田公述人にお願いいたします。
  63. 宝田善

    ○宝田公述人 私は、専門家でありませんから、ことしの予算編成のやり方の中に見られる、かなり憂慮すべき傾向と私が感じておることについて、少し意見を申し上げたいと思うわけであります。それは、これからしばらく続くのではないかという懸念も持っております。  御承知のように、赤字国債は、この年度末に六十兆近いとも言われまして、日本の財政危機というものはかなり深刻であります。政府及び大蔵省は、昨年の夏まで、一般消費税の導入がなければ日本財政再建はできないというふうに言い続けてこられました。しかし、結果としては、国民の多数の反対意思がありまして、一般消費税の導入はつぶれたわけであります。ところが、今度は公共料金の引き上げ、福祉切り捨てというふうな形で問題が転嫁されまして、財政の数字合わせが行われたと思います。幸いことしは四兆六千億と言われる自然増収がありまして、ある程度切り抜けられたかもしれませんけれども、来年は恐らくそんなに大幅なものは期待できないということは、大蔵大臣でさえ新聞で申されているとおりであります。そうなりますと、また来年も同じような福祉の切り捨てなり、そういうものが進むかもしれないというふうに考えられるわけであります。現に、大蔵省と厚生省の間で取り交わされた覚書なるものは、そのことを公然と内外に示していることになるのではないかと思います。  問題は、そういうことをこれから何年も続けていって、八〇年代の日本の財政というのは国民生活にとって一体どういう性格のものになっていくのか、それが私にとっては八〇年代の財政論の一番大きな問題点ではないかと思うわけです。  通常、予算の分析といいますと、もともと予算は単年度主義が原則でありますから、前年度に比べてどう変わったかとか、新しい問題がどう入ったかとか、そういう分析が正当なやり方だと思います。われわれもそれなりに細かな要求とか批判というものも持っておりますけれども、ことしの場合には、そういうことよりももっと長期的な、八〇年代に日本の財政というものはどういう性格に変わっていくのか、それは決して財政再建の数字の問題ではなくて、むしろ財政というものと国民経済国民生活というふうなものの関係論、質の問題がむしろいまは反省されなければならないのではないかというふうに思います。  といいますのは、八〇年代というのは、世界的にも国内的にも非常に不安定な時代、先行きがわからない時代であります。そのことはだれも否定できない。スタグフレーションは非常に深刻化し、エネルギー危機が存在し、国際的には政治的にもかなり不安な要素がふえている。内外情勢がそういう時代であるということになれば、われわれ国民生活というのは、むしろできる限り安定性というものを求めるわけであります。不安定な社会だからこそ、政治に安定性というものを期待するということになろうかと思います。高度成長のときには、われわれはまだ成長の中に生活を向上させる可能性があったわけですけれども、低成長の段階に入りますとそうはいきませんで、むしろ老後の安定とか、物価の安定であるとか、食糧の安定であるとか、エネルギーの安定的供給とか、いろいろな意味で安定性というものを求めるようにならざるを得ないわけであります。このスタビリティ-とかセキュリティーというものを、政治、経済、社会のいろいろな仕組みを変えることによってこれから新しくつくり出すのが、日本の政治、財政の課題ではないかというふうに思うわけです。  そのためには、日本経済も余り世界との摩擦の中で伸びていくような、いわゆる輸出第一主義というのはもうとれませんで、国民生活向上型の、内需に基礎を置く成長への転換ということはもう避けられないと思います。同じように、省エネルギーであるとかいろいろな方面でいま転換が図られているわけですが、それは国民生活のさまざまな体系の中にも同じことが言えるのではないか。何とかわれわれの老後が安心できるとか、何とか安心して学校生活が送れるとか、そういう安定性というものを持つためには、いろいろな分野でいま中期的な目標を定めて、どういう政策をとるかということの選択を迫られている、いまはそういう中期的な諸政策の選択の時代ではなかろうかと思います。  たとえば、国鉄という問題が一つありますが、国鉄の赤字線を赤字対策としてどんどん削っていく。五年かけて三千六百キロとか四千キロとか減らすことは、同時に、国民の方からしますと、国鉄離れ、マイカー主義に転換せざるを得ないということになるわけであります。ところが、他方でエネルギーの問題からいいますと、運賃値上げによる飛行機への転換とか、マイカーへの転換ということは、相当日本の交通のエネルギー効率を一方では悪くするわけであります。一体、十年、二十年先の日本の交通体系というものはマイカーにかえるべきなのか、かなり大衆交通手段というものを考慮した交通体系を考えるべきなのか、どうもいまのところははっきりしていないのではないか。少なくとも、赤字という理由だけでずるずる対策を重ねていきますと、中期的にはそれは一つの路線になるのではないかというふうな感じであります。  また、大蔵省の今度の予算の説明書の六ページには「総合的な食糧自給力の向上」というふうな言葉が出ております。このために「長期的な視点に立って総合的な施策を展開する」こう書いて予算を提案されておるわけでありますけれども、予算を見まして、これが総合的な食糧自給力の向上という中期目標を想定できるかといいますと、どうも私にはそうは思えない。やはり、いまの日本農業というのは相当な危機的状況でありますから、食糧自給力を向上させる、いまの傾向に反対の結果を生むためには、相当中期的な思い切った政策が必要ではないか。どういう政策をとるかということをめぐって、その選択をめぐって大いに議論があってしかるべきではないか。政府というのはそのどれかの路線を選んで、そのことを予算に反映させていただきたい。そういう中期的な政策不在の上に農業予算を組みますと、それは去年よりふえたとか減ったとか、そういう議論しかどうもできないのではないか。  また、高齢化社会の接近はかなり深刻であります。やはり国民の願うところは、最低の生活保障ということを考えますが、先ほども話にありましたように、この選択はかなりむずかしい問題を持っているわけですね。ところが、予算の決まり方を見ておりますと、昨年も福祉年金は野党が修正をされて何がしか上積みをされる、ことしもあるいはそういうことになるかもしれない。一体、福祉年金というのは、厚生年金に比べて中期的に見てキャッチアップを政府は考えているのか、そういう原則はとらないのか。一体どちらを考えて予算を編成されているのか、われわれにはよくわからない。あるいは、そのときどきの財源次第で福祉年金というものの予算は計上されるのか。もし、そういう後者のようなことであれば、われわれは年金のミニマムというものについて中期的な見通しを持つことはできないと言わざるを得ないのであります。  そういうことが土地の制度にしても、住宅問題にしても、いろいろな分野であるわけです。言いかえますと、これからの八〇年代の国民生活というものは、どうも市場任せでは安定性というものがない。どこか大事なところで国家の手による、あるいは社会的なあるシステムがありまして、そういうものによって生活の基本部分の安定性というものを新しくつくり出す必要があろう。それが年金であったり、医療制度であったり、教育制度であったり、交通、住宅、都市計画、完全雇用、食糧、エネルギー、いろいろな分野でいま問題が続出をしている。そこに何がしかのそういう中期政策がないと、われわれは生活の展望が持てない。そのことが、現在の予算編成の裏に実はなければならない。それが私がいま考えている問題でありまして、そういう尺度抜きに財政を判断せいと言われても大変困るわけであります。  今度の予算をめぐりまして、新聞にも幾つかの批評が出ております。たとえば、福祉の制度論を抜いて短兵急に受益者負担を強いているとか、あるいは制度にメスを入れないと数字のバランスで終わってしまうとか、総合的な改革の視点がなくて経費節減だけで個別的政策をねらい撃ちしているとか、種々の批評がありますが、これは私は同感でありまして、赤字対策も必要であるけれども、どういう型の赤字対策をとるかというときに、対策は必ずしも一つではないのではないか。そこのところが政府政策にはっきりしていませんと、予算というものがその場のバランス論になってしまう。  現在の政府の中長期計画というものは、できたときからもう機能が喪失しておりますが、それは一つは世の中が非常に不確定で、できたときには前提が狂っていたとかいろいろなことがあるのですが、もっと大事なことは、ああいう中期計画というものの中にこういうシステム的な検討というものが入っていないで、公共投資何兆円とか何年間何兆という、いわばGNP論的な中期計画でしがなかったというところに、われわれの関心を呼ばなかったゆえんがあろうと思うのであります。言いたいことは、そういう中期的な生活諸課題というものの詰めを抜いて、財政の編成というものはないのじゃないかという感じであります。  ところが、たった一つ、ことしの予算で出てまいりました長期の問題点は、厚生年金の受給年齢の引き上げでありました。これはまさに二十年タームの制度論であります。ありますが、国民の世論はそれに対してノーといま答えているわけであります。なぜかと言えば、その理由は一般消費税と同じでありまして、赤字対策論の中期、長期政策ではありますが、高齢者の生活問題のシステムではないからであります。  外国の労働者に、日本では定年制と年金の間に五年のギャップがあるということを言いますと、どこでも言われますことは、それは非人間的だということをまず言われます。次に、その間どうやって生活できるのか。この二つは共通の質問であります。いまわれわれはこのギャップを何とか埋めたいというのが、日本の労働組合、労働者のほぼ総意でありまして、どうやってとりあえず六十歳まで定年を延長するかということが運動の課題になっている。一般にヨーロッパではそういう定年制というものはありませんで、たまにありましても、それは年金の受給権を超えたところに企業の定年制というものは設定されている。日本の場合には反対であります。労働者は六十五歳あるいは六十三歳、受給年齢になりますと、労働を継続するか年金を受けるかを選択するわけであります。選択権は労働者が持っている。だから、それは労働者の権利であります。そうでなければ、また労働者は老後の安定性を感ずることができない。日本の場合にはいま何とかそのギャップを埋めたい、そういう運動が日本の労働者の間にやっと盛り上がったところに、また五年ギャップを広げますという提案が政府からなされたわけであります。  労働者は、どちらが自分たちの老後にとって安定性があるかということで、この問題に対して判定をいま下しているわけであります。ですから、労働者の生活の方から年金のことをお考えいただかないと、なかなか労働者の合意というものは得られない。むしろ制度が労働者の生活を振り回すという傾向がいまあらわれているのではないかと思います。  そういうことで、財政の編成の仕方を考えてみますと、数年前までは日本でも、近代国家の財政機能というのは所得の再配分である、これは福祉国家として不可欠の機能である、あるいは完全雇用というものが国家の大きな目的であるということが言われてまいりました。そういう意味で、福祉元年という宣言を政府もしたことがあるわけですけれども、一体、八〇年代になって日本の財政というものはそういう所得再配分機能を強めていくのであろうか、完全雇用機能というものを掲げていくのであろうか、どうも年々の赤字、黒字論だけやっていたのでは、その辺の性格変化というものを判断することができません。財政というものは、いつの間にか自分自身の赤字から抜け出すということだけが至上目的になっていはしないでしょうか、そのことを私は一番痛感するわけであります。  二番目に、昨年通産省は研究会なるものの名で八〇年代の産業政策というものを発表されました。これはわれわれ日本の労働者にとって非常に大きな関係を持ちます。ということは、失業の諸制度もさることながら、日本の雇用の総量を決めるのは、いまでは成長率が低いですから、週休二日制が貫徹されるかどうか、労働時間の短縮がどのぐらい実現できるか、それからもう一つは雇用を拡大できるような産業構造というものが八〇年代に維持できるかどうか、この二つに大体しぼられていると思います。ところが、現在の八〇年代産業政策と思われるものはかなり世界に進出をするような構想でありまして、国際的視野における比較優位産業に日本の産業構造を特化させていこう、資本進出を進めよう、そのうらはらといいますか反面としまして、国内市場を開放して大いに製品輸入を進めよう、三番目に資源エネルギー、四番目に九〇年代の技術革新というのが通産の大きな方向のようであります。  問題は、世界に進出をし、世界からなるべく物を買うという、この相互乗り入れということが行われた場合に、日本の中小企業というものは相当影響を受けるであろう。われわれは、必ずしも保護貿易とか封鎖経済ということを言っているわけではありませんで、その開放される段階で日本の中小企業政策というものがどういう性格を持つか、ここがむしろ問題なのでありまして、開放よりも、開放に際してどういう産業政策日本政府はお持ちになるかということであります。  日本は、明治以来二重構造に悩んでまいりました。中小企業というのは特殊性を持っております。それはヨーロッパのような構造ではないのでありまして、そこにいままでのような補助金型の中小企業政策はもうとれない。補助金はいま整理縮小であります。そういう補助金型の三十年代の中小企業政策から一体どういう方向に転換をするかということを考えますと、通産というのはどうも中小企業置き去り型の発想をお持ちのように見える。いまの日本の中小企業の最大の問題は、技術開発とか内製力、マーケティングの能力であるとか、そういうものを非常に求めている。ですから、お金よりもむしろ、かつて日本政府が技術革新で大企業を優遇したような、そういう質的なものを求めている。そのような傾向がもしありませんと、やはりブーメラン効果というものが必ず出ると思います。産業がやられますと雇用が危なくなるという構造でありまして、日本の八〇年代の中小企業政策というものの質を私は憂慮するものであります。  最後に、行政改革ということについて簡単に申し上げます。  行政改革というのも、まさにいま申し上げました一連の文脈の中にある問題でありまして、かなり中長期の問題として考えていただかないと困るわけであります。単に赤字であるとかそういう問題ではない。また、省の数とか特殊法人の数、そういう問題でもない。むしろもっと根本的な、交通、住宅などに見合うような大きな中期課題としてとらえたい。というのは、いままでの行政というものはやはり高度成長型であったことは否めない。しかも、三十年の成長の中で、古い部分が出たり、新しい部分に対応していないという問題がありますから、もっと根本的に見直しをすべきだ。その際、われわれ労働組合の原則は民主、公正、効率性であります。これは、行政改革の視点が、さっきも言いましたように赤字のためではなくて、もっと国民ニーズに合うか合わないかという問題からやってもらいたい、日本の民主化のためにやってもらいたい、もっと公正を保ってもらいたい、もっと効率性を持ってもらいたい、この民主、公正、効率性であります。これがわれわれの大会で決定し、あらゆる機関で決定している原則であります。特に官僚制度というものは利潤原理がききませんから、効率性というものをわれわれも尊重いたします。  問題は、そういう行政改革というのを単に官僚レベルの問題ではなくて、もっと外から、国会国民の参加というものの中で行ってもらいたい。そういう意味で、国会の特別委員会をぜひつくってもらいたい。それから、国民が参加できる、スウェーデンのオンブズマン型のそういう監視機構、チェック機構というものをぜひつくって根本的にやってもらいたいということであります。  二番目は労働条件でありますが、行革をやれば労働条件が動くことは必至であります。したがいまして、労働組合ですから、雇い主である政府なり特殊法人なりそういうものと協議をして、労働条件の具体的な問題に対処したい、協議、団交権というものをわれわれは持ちたい、そういうことを前提にしまして提言というものをもっと積極的に出せ、これがわれわれがこの半年間やってきた態度であります。そのことは民間でも同じでありまして、およそ合理化をやるときに労働者、労働組合に相談しませんと問題は煮詰まらない、強いて労働組合、労働者を飛び越してやりますと、いまのSSKのような人権闘争になるわけであります。ですから、民間でも必ず合理化というものは労働者と慎重に協議をしてやっているはずであります。  そのことは公務員といえども同じでありまして、行政改革をおやりになるときは当該労働者と十分話し合ってもらいたい。そのかわり、われわれもガラス張りの協定なり協約なりというものをやって、やみで処理するようなことは一切やめる、硬直的なことも改める、もっと国民的立場に立って行革というものの提言をしたい。このことは、いま総評加盟の全部の組合の共通の方針であります。  ただし、公務頂も労働者でありますから、雇われておるわけであります。ですから、自分たちの権利が無視されてまで行政改革をやられることには、労働者としてはがまんができない。したがいまして、国民の方もいまや知る権利がありますから、情報はもっと公開すべきだとわれわれも提言をする、いろいろな意見も申し上げます、協議もしたい。が、労働者の団結権、団交権とか協議権というものを否定されたのでは、これは労働組合としては容認できない。  ですから、われわれも積極的提言をします。国民の参加権、行政を改革する権利というものを認めますが、それが労働権の否定の上に行われてはならない。この両方の権利をどうやって共存させるかということこそが、ヨーロッパの労働運動が長年かけてきた歴史でありまして、ストライキと市民の権利と労働者の権利というものの共存関係というものを、かつてヨーロッパがやったことをいまわれわれはやっていきたい。われわれは、国民との共闘ということをこの五、六年重視しておりますから、市民権と労働権の共存ということを前提にして、行政改革というものに対しては積極的に取り組むという態度をとっております。  以上でございます。(拍手)
  64. 田村元

    田村委員長 どうもありがとうございました。  次に、高橋公述人にお願いいたします。
  65. 高橋正男

    ○高橋公述人 高橋です。  今日最も重要な課題は、物価対策、エネルギー対策、財政再建行政改革、完全雇用政策など、これらの施策の充実強化であると思います。私は、特に行政改革と物価対策、そして雇用政策等について意見を述べることにします。  まず行政改革について。  昨年十一月二十一日、二十九日に、同盟及び政策推進労組会議は大平総理に対し、それぞれ行政改革を含む政策課題について申し入れを行いました。     〔委員長退席小宮山委員長代理着席〕 また、十二月十三日、同盟は宇野行政管理庁長官に対し、行革の具体的なプランを示し、強い姿勢と決意でその断行を図るよう申し入れました。宇野長官は同盟の申し入れに際して、官僚の抵抗は異常なほど強いが、基本方向については賛成であるし、政府としても強い決意で取り組む旨表明されました。  しかし、今回提出された政府の方針は、またしても官僚の圧力に屈して大幅に後退したものであり、国民の世論を軽視したもので、強く不満を持つものであります。大平総理を初め各大臣は、リーダーシップを発揮し、行革を断行をしなければ、国民はますます政治不信に陥るだけであります。社会経済が構造的に変化してきた中で、行政改革という重要な課題が毎年見逃されるとすれば、国民の正邪の方向感覚を失いかねない姿となり、そのときはわが国の民主主義自体が大きな危機に見舞われることになると思います。  このような観点からも、われわれの要求の主要点について、これから申し述べます。  第一に、地方分権化を推し進めるということです。  歴代の内閣がかけ声倒れに終わり、国民の期待にこたえることなく今日まで来たのは、余りにも中央集権的な政治行政のためであって、この体制が長期化すれば政治の退廃を招くものであり、今日その懸念は隠し切れない状況にあると思います。この流れを変え、民主主義の活力を増進させていくには、地方分権化を拡大し、真の地方自治の確立に向けた行政の改革を図ることです。  第二には、中央省庁と地方出先機関改革です。  民社党委員長は、行政改革について隗より始めよと言われましたが、全くそのとおりで、中央省庁の統廃合、局部課室官等内部機構の簡素化と、行政管理庁、大蔵省を先頭に立てた地方出先機関の統廃合を断行すべきであります。  第三は、公社、公団等特殊法人の統廃合であります。  政府は、特殊法人のあり方を徹底的に洗い直しを行い、総数八十法人程度に縮減し、かつ、高級官僚の天下りを規制して民間人を登用し、活力ある経営組織づくりに努力するとともに、不正の防止に当たるべきです。  第四は、行政の簡素化を達成する上で、公務員の勤労に対する権利、義務の徹底を図るとともに、人事考課、信賞必罰を明らかにすることです。  第五には、国会内に行政オンブズマン制度を確立し、また、情報公開法、納税者訴訟法の制定などを図り、国民の知る権利に対し、国民の監視と参加を強める方策を樹立することです。  第六には、財政に厳しくメスを入れることであります。  まず、巨額補助金について思い切った一般財源化、総合化、メニュー化等を進めることです。行政簡素化によって一兆円程度の節減を図るべきです。  第七には、このような措置を講じ、行政の簡素化を図るとともに、不公正税制是正を断行し、国民の期待に沿ったものにならない限り、一切の増税、新税については理解されるものではありません。  われわれは、このような国における行政改革と同じ程度のウエートで、地方行財政の改革を求めています。しかし、国の改革が停滞しているのに地方のみに強要することは酷であり、国の改革が先行し、地方の改革をリードすべきであります。行政の権力が強くなり過ぎ、行政が政治の実権を握るような姿になることを国会は厳しく追及し、行財政の改革を推進されることを強く求めるものであります。  次に、物価対策の問題について申し上げます。  八〇年の日本経済を左右する当面の緊急課題の一つは、インフレの再燃にどう対処するかであります。  われわれは、完全雇用の達成と並んでインフレ抑制を重要な政策課題とし、政府に対して、八〇年度消費者物価上昇率を五%台にとどめるよう、強力な対策実施を求めておるところであります。原油価格の高騰が物価にはね返らざるを得ない状況のもとで、卸売物価は大幅に高騰を続け、これが消費者物価に波及するのは必至であります。  加えて、五十五年度予算に盛り込まれた公共料金の値上げと電気ガス料金、私鉄運賃など、企業関連公共料金が申請どおり引き上げられるとすれば、国民生活を大きく圧迫することは避けられません。そしてこのままでいきますと、六・四%以下に抑えるという政府の目標すら困難になると判断されます。  そこで私たちは、政府に対し、次の物価対策の実行を重ねて求めるものであります。  第一は、すでに予定されている一連の公共料金の値上げについて、政府は、国民生活に与える影響の大きいことを考慮して、経営努力を基本に厳正な原価査定を行い、極力値上げ幅を圧縮することや実施時期の繰り延べなどの措置を講ずるべきであります。  第二には、公共料金の決定について、現在不明確な決定方法を改正するなどを含めた値上げ決定のルールを確立するため、経済企画庁のもとに中立的委員会を設け、早急に結論を出すべきであります。  第三には、公共料金値上げに伴って便乗値上げが行われるのを防止するため、政府、地方自治体は便乗値上げ監視体制を強化すべきであり、具体的には、地方自治体に物価監視委員会を設け、調査権など必要な権限を与え、厳しく取り締まるべきであります。  第四には、独禁政策の強化、生鮮食料品の輸入枠拡大など適切な施策をタイミングよく実行に移し、インフレ防止の体制を確立することです。  第五には、財政政策については、当面、景気に対し中立的運営が望ましいし、公共事業の執行は過度に後ろ倒しとならないよう配慮するなど、物価と景気の動向を見きわめつつ、弾力的、機動的運用を図るべきであります。  金融政策については、大筋現在程度、マネーサプライ一一%程度の管理を堅持するとが必要だと考えます。  次に、雇用対策について申し上げます。  完全雇用の達成は引き続き最重点課題であります。  長期不況で深刻化した雇用不安は、景気の回復に伴って昨年後半からやや薄らぎつつあるものの、依然として中高年齢労働者は就職難にあえいでいること、さらに加えて高齢化社会の到来や、婦女子の臨時、パートタイマーなど不安定就業者の増大などが今後大きな問題となると思われますし、また八〇年代の内外環境の変化、とりわけ産業構造の急激な変化や技術革新の一層の進展の過程で、多くの職場を失わせ、失業者を増加させるおそれもありますが、新しい雇用機会増大までの間、かなりのギャップが生ずることが予想されます。いわば完全雇用を妨げる構造的要因が重くのしかかっており、必ずしも雇用指標面から楽観することのできない状況にあります。したがいまして、私たちは、引き続き中高年労働者を中心とした完全雇用の達成に向かってあらゆる努力を積み上げていかなければならないと考えます。  ところが、政府の五十五年度予算案を見ると、必ずしも私たちの要求にこたえているとは言いがたい内容であります。  第一に、伝統的な雇用施策はともかく、新たな発想に立った雇用創出策についての具体的な措置が講じられていない点であります。  申すまでもなく、同盟は一昨年以来、雇用機会の拡大、とりわけ中高年齢労働者の雇用機会の確保を図るため、地域における潜在需要を開拓することによって雇用創出を図り、完全雇用の達成を目指すための雇用創出機構の実現を求めてきました。昨年発足を見ました中央、地方の雇用開発委員会は、私たちの要求を一部実現せしめたものと理解しておりますが、これら雇用開発委員会に対する予算措置と対応は、きわめて不十分なものであると言わざるを得ません。  私たちは、地域における雇用機会の積極的開発を図るために、一つとして、地方雇用開発委員会を今年度は新たに十県に設置していただきたい。二つには、一県当たり五百万円の予算を計上し、離職者の実態調査、今後成長が見込まれる産業、業種の予測など、委員会の調査研究機能を強化する方策を講ずるべきであります。  第二には、中高年齢者雇用開発給付金の期間指定の基準を緩和し、六月七日以降一年間指定期間を延長するとともに、明年以降は恒久的施策とするよう必要な措置を講ずる必要があります。また、同給付金の支給期間を、中高年それぞれ六カ月間延長する措置を講じられたいとお願いをするわけであります。  第三は、中高年離職者の生活安定を図るため、雇用保険法の個別延長給付日数、特定不況業種及び特定不況地域離職者臨時措置法の個別延長給付日数をそれぞれ三十日延長すべきであります。  第四に、特定求職者雇用奨励金制度など、就職困難な人々の雇い入れを奨励するため、もろもろの給付金制度の総合的な充実強化を図るべきであります。  第五には、今後の産業構造の転換や社会の二ーズに対応した職業訓練体制の総合的な改革が必要であります。中でも、地域の中核企業の持つ最先端の職業訓練システムを地域の労働者の職業訓練に活用できるようにするため、これらの企業を訓練法人として認可するなど、職業訓練施策の充実を図るべきであります。  第六に、政府は、中高年労働者の雇用と生活の安定を図るため、六十歳定年制の早期確立のための行政指導を一層強化すべきであります。同時に政府は、年齢による雇用差別禁止法を速やかに制定し、六十歳定年の定着化に全力を挙げることであります。  最後に、政府財政再建を優先させ、福祉の後退を図ろうとしているが、このような政府の姿勢に強く反対するものであります。とりわけ、厚生年金の支給開始年齢六十五歳の引き上げについては、改善の方向にあるようでありますが、六十歳定年がいまだ確立されておらず、定年後の生活に不安を抱く労働者にとってとうてい受け入れがたいものであります。六十五歳までの雇用保障政策が十分に確立されていない段階では、年金支給開始との間のギャップが生じることは当然であります。いわゆる年金の官民格差が解決されていない。これらの問題が非常に多いと言わざるを得ません。したがって、これらの条件整備が十分に行われない限り、支給開始年齢の引き上げには反対であります。  最後に、エネルギー対策の問題であります。  わが国経済にとってエネルギーの対策は最重点政策の一つであると思うわけであります。特に、省エネルギー、さらに代替エネルギー開発、それしかないと思うわけであります。この点については、立地問題、さらには環境問題、そういう問題もありますので、国民合意を得るために、総理大臣の諮問機関としてエネルギー対策国民会議を設置されるよう強くお願いをするわけであります。  以上申し上げたことについて五十五年度予算案に反映されることをお願いして、私の意見を終わります。(拍手)
  66. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 どうもありがとうございました。
  67. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 これより各公述人に対する質疑を行います。  なお、公述人各位に申し上げます。  質疑者の持ち時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎拓君。
  68. 山崎拓

    山崎(拓)委員 限られた時間でございますので、年金問題にしぼって御質問申し上げます。  村上公述人から貴重なお話を伺ったわけでございますが、その中で特に年金財政の問題につきまして、給付と負担のバランスにつきまして強調されたわけでございます。ただいまも宝田公述人並びに高橋公述人からも御指摘がありましたように、年金財政の長期的なバランスということを考えました場合に、支給開始年齢の引き上げの問題が出てまいるわけでございます。宝田、高橋両公述人からは、雇用政策との調整の観点からこれに反対の陳述があったわけでございますが、年金財政の観点から申しますと、この点はどうしてもこの機会に着手すべきではないかと私は個人的に考えておるわけでございます。  さきに社会保険審議会の答申の中では、両論併記となりましたことは御案内のとおりです。また、昨日の社会保障制度審議会の答申では、「雇用政策はもとより、いわゆる官民格差の是正、早期支給制度、積立金の管理運用の改善などへの配慮が欠けている。」というような指摘にとどめておるわけでございますが、これら両審議会の答申を受けまして、これから政府案が提出されようといたしておるわけでございます。  村上公述人におかれましては、支給開始年齢の引き上げの問題について、今回着手すべきであるとお考えになっておりますか、あるいは、雇用政策あるいは官民格差の問題等があって今回は見送るべきであるとお考えになっているか、その点についてお伺いいたします。
  69. 村上清

    ○村上公述人 六十五歳の問題についてお答え申し上げます。  各審議会から意見が出ておりますけれども、私の見ました範囲では、どの審議会も避けて通れないという理解は持っていると思います。問題は、いま手をつけるか、あるいは数年先に手をつけるかだと思います。そういたしますと、いまから二十年かけてやるのがいいか、あるいは五年待って十五年でやるのがいいかというような選択になる。といたしますれば、私は早く着手する方がいいのではないかと思います。  それからもう一つ、六十五歳の問題に関しまして、必ずしも条件が整備していないということも事実でございます。この点につきましては、その期間内に早急に対応しなければならない。現在六十五歳に対しての反論といたしまして、定年制がようやく六十歳になりかけているところなのに無理ではないかという声もあります。あるいは、最近アメリカでは年齢による差別禁止で七十歳に定年が上がった、日本はどうなんだということがございます。ただ、この点は若干誤解があるのではないかと私は思うのです。  アメリカの定年と日本の定年とは全く性格が違うと思います。アメリカの場合には、年齢だけを条件にして解雇してはいけないということでございまして、事業場の必要があれば、レイオフとかあるいは勧告とかいうふうなことで退職する場合は間々あることでございます。日本の場合には完全な雇用保障が通常定年と考えられております。そういたしますと、六十あたりまでは個人差というものもそれほどないと思いますけれども、六十から六十五という期間は、個人の能力、体力あるいは適職、それから本人の意思もあると思うのですけれども、非常に多様化してまいります。それをいまのような定年でもって全部カバーすることが可能かどうか。これは率直に申してかなりむずかしいことでないかと私は思います。  したがって、まず定年六十、これはぜひやりたいと思います。しかし、六十から上は、まず第一に、なるべく雇用をするような勧告はすべきだと思います。しかし、他の国を見ましても、六十から六十五の間というのは必ずしも雇用で保障していない、いろいろな制度をミックスして対応しているわけですね。アメリカの場合でも、六十二、三で解雇といいますか、退職させている例は幾らもある。ただ、その場合には、退職した年齢から公的年金の始まるまで企業が年金を支給しております。つまり働く者にとっては、仕事か年金かということで、いずれかの道はあるわけだと思うのです。あるいはヨーロッパなどでも、この五年間は老齢年金ではなくて、いわば非常に景気の悪いときには失業保険を与えてなるべく引退して若い人に職を与えるとか、あるいはパートタイムだったら若干の補助を与えるとかいうふうな、いわば政策のミックスでやっているわけでございます。  それで、日本はもう世界で一番寿命の長い健康な国になったわけでありまして、その国で老齢の定義が六十というのは非常に残念なことであります。六十五というのは、むしろ前向きに考えて、本当の老齢といいますか、引退年齢は六十五、そこからは老齢年金、しかし六十から六十五の五年間というものは、雇用あるいは事業主の年金なり失業保険なり、その他の政策をミックスして何かの形で所得は保障される、そういう政策をあわせてやっていけば、これは十分対応できるのではないかというふうに思うわけでございます。
  70. 山崎拓

    山崎(拓)委員 村上公述人がもう一点強調されました点で、現行年金制度の給付の優先順位を明確にすべきだという点がございました。今回の改正案を、その意味におきましては改善の方向に沿っておるということで評価されたように私は承りましたわけでございます。社会保険審議会の答申も、今回の改正案が「給付水準見直し、遺族年金の改善、加給年金の引上げを行う等評価できる点もある」ということを指摘いたしておりまするし、また国民年金審議会の方も、「母子年金について、母子家庭の生活実態を勘案し、母子加算の創設等により、大幅な改善を図っていることは、厚生年金の遺族年金の改善との見合いからも適切な措置であると認める。」このような指摘になっておるわけでございます。ところが、社会保障制度審議会の答申では、加給年金につきまして「加給年金額の二・五倍以上にものぼる大幅な引上げは疑問である。特に、妻については厚生年金が夫婦単位であるという原則を変更することになるおそれがあり、」云々と、こういうふうになっておるわけでございますね。さらに遺族年金につきましては、「遺族年金の改善は、本来給付率の引上げによって対処すべきものであり、前記加給年金額の引上げに要する財源があれば、給付率を六割に引き上げることは可能なはずである。」こういう指摘がなされておるわけでございます。  したがって、今回の厚生年金法の改正案の中で、とりわけ指摘がありました給付の優先順位を考慮いたしました改正ですね、加給年金、遺族年金等の改正の中身について、実は批判的な見解がここに盛られておる、こういう内容になっておるわけでございます。この点についていかがお考えですか。
  71. 村上清

    ○村上公述人 私も制度審議会の意見は拝見いたしました。その中でいまお話しのように、たとえば遺族年金については率で六割に上げるべきではないかと書いてございまして、額で乗せているのは妥当ではないという意見でございました。私はやはり額で乗せるべきだと思います。というのは、制度審議会の考え方は、それと並行いたしまして、いまサラリーマンの妻が入っている国民年金は打ち切りにすべきだという前提があるわけですね。それを打ち切りにすれば、私は六割でも七割でもいいと思います。ところが、それを打ち切りにするということに対していま果たして合意があるだろうか。現在八百万人加入しております。その人たちがやめてもいいという合意があれば私は制度審の案が妥当だと思うのですけれども、しかし、恐らくそれについての合意はまだどこにもないのでないかと思います。また、年金制度というものは非常に長い期間加入して長い先の給付を期待しておるものでありますから、せっかくいままで二十年近くわたって掛けてきたものをこの際打ち切るということは、むしろほかの制度に対して、いい悪いにかかわらず、不信感を生むものではないかと思います。  そういう考え方から申しまして、いまの国民年金に妻が加入しているのを打ち切るということはむずかしいと思います。といたしますと、六割という給付を加えますと非常なアンバランスが生じますので、これは立っている基盤が違いますものですから、私としては制度審の案はそのまま受け入れにくいと思います。
  72. 山崎拓

    山崎(拓)委員 もう一点だけお伺いしますが、公的年金制度の補完的な制度といたしまして、郵政省の個人任意年金制度の提案がございまして、来年度におきましては採用にならないことになったわけでございますが、なお提案としては残っておるわけでございます。この点についてどう評価されますか。
  73. 村上清

    ○村上公述人 老後の保障の方法といたしましては、公的な方策それから職域の方策あるいは個人の方策というものをそれぞれバランスをとり、そしてそういうものが積み重なって妥当な生活設計ができるべきものだと思います。そういう意味におきましては、私的な努力というものは尊重することが、個人にもあるいは社会にとっても活力を増す面ではないかと思います。郵便年金につきましては、そういう意味で個人年金という案が出てきたと思います。  ただ、前回出ました案を見ますと、その運用の方法とかあるいは国庫負担とかいうふうな面がありまして、たとえば国庫負担について考えますと、これはやはり優先順位としては公的な保障の方に振り向けるべきではないか、私的なものは自前でやるべきではないか、あるいは運用等につきましても、やはり公的と民間との違いもございますので、その辺を勘案してお考えいただくべきではないかというふうに思うわけでございます。
  74. 山崎拓

    山崎(拓)委員 終わります。
  75. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 次に、横路孝弘君。
  76. 横路孝弘

    ○横路委員 お三方からお話をいただいたわけですが、初めに宝田公述人にちょっとお尋ねをいたします。  結局、お話は、内外大変不安定な中で、ともかく国民生活の安定性を得ることが必要だ、そのために財政を含めて社会の仕組みを洗い直して、抜本的な改革が必要なんだということで、特にいろいろお話がございましたが、福祉、教育、食糧そのほか中期的な目標を立てることが必要だというお話がございました。それに関連して初めにちょっとお尋ねをしたいと思うのです。  確かに道路や港湾、空港、治山治水のような公共事業関係は、五カ年計画というような形で長期的に計画がずっと戦後詰められてきているわけです。そういうことから言いますと、食糧、農業の問題にしても、教育問題にしても、福祉の問題にしても、先ほどお話がございました年金等の問題にしても、目標を決めて、それに単年度予算をどのように構成をしていくのかというような観点というのはきわめて弱いのだろうと思うのです。  お話、おっしゃるとおりなんですが、問題は、では財政との関係が一体どうなるかという問題がやはりあるのではないかと思うのです。私たちはそういう福祉を含めて中期的な目標を決めると同時に、財政についてもきちんとした中期計画を持つべきでないかというように考えているのですが、宝田公述人に、先ほどお話のあった中期的目標との関連で、財政という問題についてはどのようにお考えになっているのか、ひとつお話を聞かせていただきたいと思うのです。  最近いろいろな議論の中には、たとえば財政についても負担増を考えなければならない場合にも、たとえば福祉なら福祉であるとか、負担をする部分が一体どこに行くのかということを明確にしていくべきではないかという議論もあるわけなんですが、中期的な目標ということと財政再建あるいは中期的な財政計画というような関連をどうお考えになっているか、お話をいただきたいと思います。
  77. 宝田善

    ○宝田公述人 私の感じでは、財政の再建計画というものは一番先に出るのではなくて、むしろ最後に出るべきものではないか。それは行政改革でも同じでありまして、幾ら削ればいいとか何人減らせばいいということではなくて、むしろこれからやるべき行政というのは一体何だろう、古いものでやめるべき行政は一体何だということを差し引き計算しまして、結果としてどういう省をつくるとかどういう部局をつくるとかどういうところをなくすとか、そういうふうに結果として出るものでありますから、一国の財政の場合でも、どういう教育政策をやるかとかどういう農業政策をやるかということを先に議論をしまして、締めてみて、財政から見てどうであるか、むしろ財政の方はチェック要因にならなければならない。  ですから、いま日本の財政のウエートを国際比較しますと大変低いですね。低いにもかかわらず国民増税に反対しているのは、むしろ財政の方に問題があるからで、もっと福祉型であればもっと負担をしても構わないという世論の合意は可能だと思うのです。  そういう意味で、財政の絶対量といいますか、ウエートそのものを決めるのは、財政ではなくて個々の政策である。そちらの方が国民的であるとか民主的であれば、財政というのはむしろチェックをすべき要素であります。そういうものの総合として私は財政の中期計画というものが出るのだろうと思いますので、いまの赤字から財政の再建計画だけを考えるというのは、それは行政なり諸政策を固定したあるいは延長した発想ではないかというように考えます。
  78. 横路孝弘

    ○横路委員 確かに振替支出は一二・何%ぐらいで、世界各国の中で多分一番低いくらいだったと思うのですが、いまお話のあった福祉型の財政という点をもうちょっと詳しくお話をいただきたいと思うのです。
  79. 宝田善

    ○宝田公述人 従来言われておりました福祉型財政というのは、概して社会保障関係のウエートが先進国並みになれば福祉型だというふうに考えていたと思うのでありますが、日本の場合にはかなり特殊事情がありまして、必ずしもヨーロッパのような発想で財政の性格を福祉型であるとかないとかいうことを判断するわけにはいかないと思います。  といいますのは、先ほども言いましたように、日本の農業とか中小企業とか労働というものは、明治以来の後発性を持ちました非常に特殊な構造を持ったまま来ておりますので、必ずしもそういうウエートだけではどうもはかり切れない、むしろ諸政策の質が国民生活型に向いているかどうかということを考えないとだめだと思うのであります。たとえば住宅政策一つとりましても、ヨーロッパでは戦後の初期に公的な住宅政策を先にやりまして、そのためにマイホームの建設を抑制をしております。それが一段落した後で、所得が十分上がった後でマイホーム型をとっている、これがドイツ、イギリスその他の形なのでありますが、日本の場合には最初にマイホーム型をとりまして、三十年たっても住宅難が片づかないということがありますから、必ずしも同じ比較はできないというふうに思います。ですから、産業からいろいろなことを含めまして、かなり質的に福祉型ということを考えていただきたいという希望は持っております。
  80. 横路孝弘

    ○横路委員 その問題、また最後にお伺いさせていただきます。  次に、行政改革の問題なんですが、一般的に行政改革と言えば、総評は反対しているのじゃないか、こういうイメージが非常に強いわけですが、先ほどのお話ですと、幾つかの原則、特に民主、公正、効率というようなことをお話しになって、あとは当事者よく話し合ってくれ、こういうことだったと思うのです。ただ行政需要が大変変化してきて、同時に国民のニーズというものも非常に変化を見せてきているわけです。日本の場合、よく安上がり政府というようなことを言われますが、公務員の数だけ比較してみると、ヨーロッパに比べて国民当たりの数そのものは大変少ないわけです。ただ、行政需要変化しておりますし、国民のニーズも大変変化してきているということから見ますと、それにやはり対応していかなければいけないんじゃないかと思うのですね。  そうしますと、これは宝田公述人と高橋公述人にもお尋ねをしたいと思うのですが、総評なり同盟なりに参加している労働組合ですね、先ほど何かいろいろなことで総評の方でもお考えになっているということでしたが、政府サイドから話を出す前に、皆さんが働いている職場の問題についてはいろいろな問題点を一番知っているわけですから、むしろ皆さんの方から率先して、行政というのはこうあるべきだという問題提起をいまこの時期になさった方がいいのではないか。そして問題をわれわれ国会の方にも投げ出すと同時に、労働条件にかかわる問題については同時に皆さんがそれぞれお話しになるということが必要じゃないかというように思うのです。そのことが一つ。  それからもう一つ、いま一律何%削減というこのやり方ですね。行政需要変化に対応するという意味から言いますと、一律何%というのは確かにおかしいわけで、行政需要のふえているところには人をふやすべきですし、行政需要の減っているところは減らすべきだということになろうかと思うのですが、その点もあわせて両公述人からお話をいただきたいと思います。
  81. 宝田善

    ○宝田公述人 確かに日本の公務員の数というのは先進国に比べますと大変少ないですね。しかしそれは、だから公務員はいまのままでいいとかもっとふやした方がいいということにはなりませんので、もっとやはり質の方を吟味してやるべきだ。資本主義というのはやはりいろいろ矛盾が深まっていますから、いろいろな規制が必要になる。公害もそうです、食品の品質とかさまざまの面で、自治体も一そうですけれども、やるべき機能というのはいっぱいあるわけです。ですから、そういう地域の住民なり国民なりの便利になるような形で公務員がふえていくことは合意を得やすいと思うのですね。たとえば、労働基準監督というのが法律ではありながら、実際は野放しになっているとか、細かいことで言いますと、われわれの要求もいっぱいあるわけです。そういう方向でふえていくことは大変結構ですけれども、余り再軍備でふえてもらいたくないという気持ちなのであります。  それからもう一つは、先に出せということですね。これはいまやっております。現に今度の公共料金に関連しまして、近く国鉄労働組合と全逓の労働組合から、料金を上げなくともやっていける、案をいま作成していますから、出ます。同じようなことは全農林の組合も先般も出しましたし、今月末に日本の食糧政策についてもう一遍出ます。それから国家公務員の組合も全部いまやっております。これも全部具体的に出てまいります。  ただ、そういうことをやっている労働者が異口同音に言うことは、われわれがある提案をしますと、当局はつまみ食いだけする、おまえらも行革を認めたとか、後の細かいことは不履行だという先例が余りにも多いので信用できないんだ、だからむしろ政府側が全部出してごらん、われわれの労働条件にそう不利がなくて、いい改革であればのみますというふうな構えになっているのは歴史的な経過なんです。だからわれわれは、行政改革政府がお考えになるのであれば、まず現場の労働者と協議をしてもらいたいということを言っているわけですよ。協議をしないで提案を出すと、いいところだけ使ってしまう。それは大河内さんが社会保障で言った言葉と同じ言葉なんですね。だけれども、いまわれわれは積極的にやることはやっております。  それから一律ということをそもそも行管が言い出した意味は、一律でばっと抑えれば苦し紛れに中で何とかやるであろう、それが行政近代化のバネになる、しごけば何とかいくというのが行管の公式の発想であります。文書に書いてあります。だけれども現場の声でいきますと、一律で下ってきますと、病院で言えば看護婦さんも一律に減る、こういうかっこうになるわけです。たとえばいま地震予知というのが静岡を初め当該県では大変な問題だということになっておりますが、気象庁で一律に定員を削減しますと、その地震予知情報に絡んでいる数十人の人も一律に減っていくわけですね。ところが、小さな組織ですから、一人減っても大変困るという訴えがあるわけですよ。ですから、一律というのは現場に行きますと相当な弊害があるということを言っておきます。
  82. 高橋正男

    ○高橋公述人 先生の指摘されましたように、社会経済が構造的に今日まで大きく変化してきたわけであります。歴代の内閣も行政改革の必要性を認めてきたわけでありますけれども、実現できなかった、こういう経過があると思うのです。行政というのは、あくまでも国民のための行政でなければならないわけであります。当然その行政に働く人々は、国民のためにいかに生産性を向上するかということになろうかと思うわけであります。したがって、その事前協議なり管理者との協議、そういうものが欠けている点が過去にあったんではないのか。当然国民のニーズが変わるわけでありますから、それに対応した行政機構にやっていただきたい。特に働いている者が、実はこの同盟の行政改革案については了解をして、そして提出したものでありますが、ただ個々のその行政パートにおいてパート、パートごとに十分な協議がされていないということであります。特に必要なところには増員というのも当然であります。たとえて言うならば税関業務、これは大変な仕事がふえているわけでありますけれども、人間がふえていない。そういう変化に対応した行政改革という前提で提言をしているわけであります。
  83. 横路孝弘

    ○横路委員 雇用問題についてお尋ねしたいのですが、政府の方は雇用情勢は大変明るくなってきたと言っていますが、内容を見ますと、中高年のところでは、失業率にいたしましても、有効求人倍率にしても、やはりまだまだ問題が残っているということが言えるんじゃないかと思うのです。  そこで、これからその雇用を拡大するといっても、経済を成長させて雇用を拡大をするという要素がなかなか厳しくなってきて、ことしの四・八という成長でもこれは現状維持が精いっぱいじゃないか。大体そのめどが五%くらいだと一般的に言われているわけです。そうしますと、どうしてもやはり定年制の延長とか、週休二日という問題が出てくるわけですね。ただ、石油ショック以後の最近の状況を見ますと、企業のいわゆる減量経営と言われるものの中身というのは、やはりそこの中高年のところに集中してきておって、出向であるとかいろんな形をとってきているわけですけれども、いわば定年制の延長とか週休二日制という問題とある意味で言うと矛盾する側面も、特に定年制の延長なんか出てくるわけですね。つまり、企業のそういう減量という方向性と矛盾するわけですね。いろいろ調べてみますと、定年制の六十歳への延長というのはやはり大企業ほど実施の割合というのはだめなんですね。金融機関がだめですし、それから石油、電気、ガスというようなところがだめですね。  いま政府の方は、できるだけ労使の話し合いで昭和六十年をめどにということなんですが、一体これは労使の話し合いだけでその可能性があるのかどうか。野党の方は、どうもそれはむずかしいのじゃないかとか、やはり法律でもつくらなければならぬじゃないかというようにわれわれ考えておるわけですが、そこのところをどのようにお考えになっているかということを、ひとつ宝田公述人と高橋公述人からお話しをいただきたいというふうに思います。
  84. 宝田善

    ○宝田公述人 そのことでは恐らく労働四団体というのは、あるいは四団体に入っておりません諸団体も含めまして、大体意見は同じだと思いますが、われわれとしては、そもそも企業定年制というものが年金の受給権よりも低いところへ設定されるというのは反社会的な行為だというふうに考えているわけですよ。要するに年金権というのは労働者の権利ですから、掛金払っているわけですからね。そこまで働く権利を持つというのが諸外国では通常ですから、その前に個々の会社が年齢を理由に首を切るというのは、やはり反社会的な制度である。それはなくしてもらいたい。個々の会社が定年制をお持ちになるというのは企業の自由でありますけれども、それは年金権よりも上でなければならない。そういう意味で、いまわれわれは性とか年齢を理由とする差別反対法案というものをつくろうとしているわけです。
  85. 高橋正男

    ○高橋公述人 中高年層が一番雇用調整の犠牲者になるといいますか、賃金が高いわけでありますからやはりそこに集中される。これは五十歳前後が特にその雇用調整の対象になっている。特に構造不況産業、造船、重機械とかそういうところは端的に証明されているわけであります。したがって、高齢者社会も来るわけでありますから、やはり中高年齢者の雇用創出のために抜本的な改正をやらなくてはいけないのではないか。ますます高齢化社会になるわけでありますから、そこを重点的に申し上げたわけであります。  この中高年齢がなぜ集中的に雇用調整の対象になったのか。雇用構造が変化しているわけであります。たとえて言うならば、五十三年にパートタイマーが百十五万人、五十四年度には百三十万から五十万ぐらいになるのではないか。特に婦人の入職の方が多いわけですね。これも私は大きな問題になるのではないかと思うのです。しかし、パートタイマーを規制することはできません、国民生活に溶け込んでいるわけですから。したがって、労働四団体でも事務レベルで話し合って、労使自主的な交渉で六十歳にやることが当然なんですけれども、なかなかできないので、ひとつ年齢雇用差別禁止法を出していただきたい、こういうふうにお願いしているわけです。
  86. 横路孝弘

    ○横路委員 もう一つ、将来の雇用の方向というのは主に第三次産業、産業構造が変化していく中で就業構造も変わって、吸収力のあるのは第三次産業ではないかと言われているわけです。一般的にそういうことなんですが、ただ、第三次産業の中身をいろいろ点検してみますと、たとえば卸や小売の部分ですと、もうヨーロッパよりもむしろ雇用が多いくらいの状況ですね。ただ、大変おくれているのは個人とか事業所に対するサービス、対個人、対事業所サービスという分野はまだまだこれから余地があるだろうと一般的に言われているわけです。ただしかし、その対個人、対事業所サービスということになると、民間の部門だけで、じゃそういう雇用創出ができるだろうかという問題がもう一つ出てくるのじゃないかと思うのですね。やはりある程度公的部門がそこに加わらざるを得ない、あるいは公的部門がみずから雇用創出せざるを得ない、またそれが、ある意味で言うと、国民のニーズとも合致するところじゃないかと思うのです。そうしますと、一番初めの問題の財政の負担という問題とまたかかわり合いを持ってくるわけですね。時間がございませんのでこれでやめますが、ひとつそこのところをどういうぐあいにお考えになっているのか。将来の産業構造と雇用創出ということで一つ。  それからもう一つは、宝田公述人からも高橋公述人からもお話がありましたが、そうやって産業構造が変化していくと、今度はいろいろな問題が起きてきます。たとえば石油を確保するためにプラントを輸出しなければならぬということになりますと、じゃそのプラントの製品をどうするか、日本がやはり引き受けざるを得ないという問題になると、国内の産業との関連が出てくるわけです。先ほど宝田さんの方からは中小企業というところに視点を当ててのお話がありまして、必ずしも保護政策を主張するものではないというお話がございましたが、いずれにしてもそこのところは、日本が国際的な経済の中で南北問題に対応していかなければいけないというのが今後大変大きな課題になっていく。政策の優先度でも経済協力というのは優先順位が大変高いものにならざるを得ないと思うのですね。それが国内の雇用関係に大変大きな影響をある意味で言うと与えていくというのはもうはっきりしているだろうと思うのです。そのときにどうするかですね。構造不況産業と言われるものも、繊維にしても造船にしても、やはりそういうふうな構造変化の中で起きた問題だろうと思うのですが、保護政策でなくて、国際的な経済状況に対応せざるを得ないということになりますと、あとは個別的な、何といいますか、就職の転換であるとか、その間における労働者の権利なり生活というものをどうやって守るのかという問題が出てくると思いますが、いずれにしても大変大きな問題じゃないかと思うのです。将来の雇用創出ということにかかわってその二つの点をどのようにお考えになっているか、宝田さんと高橋さんの方からお話しいただきたいと思うのです。
  87. 宝田善

    ○宝田公述人 個別対策も非常に重要ですけれども、私は、それ以前の日本の産業構造論あるいは通産省の産業政策というものにかなり問題があるのじゃないかと思います。  御承知のように、いま世界で自由貿易論に立っているのは西ドイツがトップでありまして、次が日本であります。西ドイツはすでに、西暦二〇〇〇年までにこのまま自由貿易を続けたら西ドイツの産業構造はどこがどのくらいやられるかというモデルを全部計算してあるわけです。一割五分雇用が減るであろう、その分ある分野でカバーできるであろう、大丈夫だという作戦をとっております。私は、その資料をドイツで見てまいりました。日本ではそういうデータが全くないわけです。このまま資本輸出をしあるいは商品輸出をして、それ以外の産業はできるだけ物を買って、日本の雇用は一体どうなるか、二〇〇〇年まで大丈夫だろうかといいましても、データが全然ない。それをわれわれは通産に求めているわけであります。現に一昨日ですかアメリカのUAW、自動車の委員長が参りまして、アメリカに自動車工場をつくってくれ、そうでないとアメリカの雇用はたまらぬということを言っておりますけれども、同じ状況はいずれ日本にやってまいります。そのことはもう見えているわけであります。  ここで私が重視したいのは、それではいま世界に伸びているエンジニアリングであるとか基幹産業以外の産業というのは一体南へ移るのかといいますと、必ずしもそうではない。ネクタイはやはりピエール・カルダンであったり、陶器というのは先進国でつくっているものが多いわけですよ。家具はデンマークであったりスウェーデンでありますね。そういう意味で、われわれが水平分業とか南北開くと言うときに、全部つぶれるということはないわけですよ。ガラスでも何でも、あらゆる国のガラス製品が共存している。繊維もそうであります。そういう意味でわれわれがヨーロッパをよく見てまいりますと、日本ではもうつぶれるかと言われているような刃物だってちゃんとゾーリンゲンで残っているわけですね。そういう質的なもの、質的な高次化ということをやれば、二次産業というのはまだ違った形で共存し得るわけです。水平分業というのは、自動車は日本がよくてあとのものはつぶれるという形ではなくて、あらゆる産業においていろいろな国の商品が共存し得るという形をとらなければ、日本は特定の輸出産業に特化してしまう。香港を大きくしたような産業構造になってしまう。それは国民生活とはかなり遊離した世界輸出型の産業構造でありまして、大変危険だということを私は再々言っているわけであります。  それを前提にしまして、次にサービス業でありますけれども、確かに日本は保健所機能が弱い。ですから、医療は全部事後治療でありまして、事前の疫学的な予防というのは非常に弱いわけであります、あるいは危険なものに対するチェック機能が非常に弱い。そういう意味で、公的部門でもっと雇用をふやすべき分野というのはいっぱいあります。いまの教育崩壊というのは、教科書から教科課程から学級編制に至るまで変えなければなりませんけれども、四十人学級にすればかなり人がふえる、校舎がふえるということは明らかであります。そういう意味で公的部門がふえる可能性はあるわけですが、問題は、雇用からではなくて、むしろやはり国民のための政治とか行政とかいうものを先に考えて、結果として第三次産業の中でも公的セクターというものがふえていく。老人医療であるとか、養老事業であるとか、そういうものの充実によって三次産業の公的セクターがふえていくべきであるというふうに考えております。  それから、資本が出ていけば、当然国内では産業と雇用の空洞化あるいはブーメラン効果というものが出てまいります。要するに、アジアへ出ていった工場の製品がもう一遍日本へ入ってくる、それが日本の産業をつぶすということはアメリカその他で先例がございます。そういうことに対して資本主義ではなかなかチェックできない。  われわれがいま一番考えておりますのは、アメリカの経験から学ぶ限りは、電機の組合、自動車の組合等々が、自分たちの産業のあり方を自分たちの労働組合が発言し、介入していくということなんです。これが参加であります。ですから、労働組合というのは、労働条件だけではなくて、投資のあり方その他について全部参加をしていく。そのことによって、自分たちの雇用、労働条件というものを多国籍化した場合でも守っていくというのが、いまのアメリカ、ヨーロッパの労働組合のタイプなんであります。  そういうことをわれわれは念頭に置いて、開くべきものは開きますが、守るべきものはいままでと違った新しい形で守っていく、これがこれからの労働組合の課題だろうと思います。
  88. 高橋正男

    ○高橋公述人 第三次産業の雇用機会の拡大というのは、第一次、第二次産業との関係において、これは無制限ではないと思うのです。したがって、雇用を新しく創出するということについては、一つは新機種の自主開発、要するにいま世界の最先端レベルにあるのを、やはり日本が比較優位産業として維持するためには自主開発が必要だ。原子力発電の問題もそうですけれども、とにかく日本で新しい、世界の最先端技術を開発することが必要だろう。それが一つ。  それから潜在需要を開拓する。先生も指摘された未充足分野が、病院とかそういう公的なところにもまだまだあるわけです。そういう未充足分野を開拓する、潜在需要を開拓する。特にここでお願いしたいのは、地域経済開発に伴う、すなわち雇用政策をそこにプットしてもらう。すなわち、定住構想とか生活圏構想を言われておりますけれども、その中にはあくまでも雇用政策を入れていただきたい。雇用ないところに定住はなし、そういう考え方で、その地域、地域の中でその素材を加工する。たとえば農産物とか海産物については、ただそれだけ売るのじゃなくて、加工する。これは農業政策の中にもそういう問題が多々あると思う。そうして国民のニーズに合った構造改善をやっていく。大企業がそういうものを設立するというのは不可能だと思います。百人なら百人でもそういうのを農村地帯、過疎地帯に建設することによって日本がもっと豊かな生活になるのじゃないか。やはりそこに雇用政策というものを入れていただきたい、こういう考えであります。
  89. 横路孝弘

    ○横路委員 時間ですから、どうもありがとうございました。
  90. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 次に、岡本富夫君。
  91. 岡本富夫

    ○岡本委員 私に与えられた時間は十五分でございますので、簡単に、率直にまた明確にお答え願いたいと思います。  最初の質問は、お三人の方にお答え願いたいのですが、年金の支給年齢、政府が六十五歳にしようとしたのですが、私たちも反対してどうやらやっと六十歳に戻るようでございますけれども、そこで、いままで余り問題になってなかった保険料率の引き上げということが出てくるのじゃないかと思うのです。厚生大臣から当委員会で被保険者の負担率は収入の一八%が妥当だというような発言があったわけでありますが、そこで、お三人の方の御意見をひとつ承りたいと思います、まず村上さんから。
  92. 村上清

    ○村上公述人 厚生大臣が言われました一八%というのは、恐らく西ドイツの例を参考にして言っていらっしゃるのだろうと思います。私も現在のような仕組みのままでいきますと、恐らく一八%ぐらいが限度だろうと思います。と申しますのは、年金の給付は変わらないでずっと参ります。ところが、受給者がふえればふえるだけ当然保険料は上がらなければならないから、したがって働く世代の収入は、保険料が上がる分だけ切り下げられてまいります。したがって、相対的な割合で言いますと、確かに賃金総額に対しては六〇%というものは変わらなくても、手取り収入で比べますとそれが七割になり、八割になり、逆に言えば、働く世代の収入が相対的に下がってくるわけでございます。ですから、最近西ドイツとかあるいはアメリカでは、可処分所得に対する比率でセットすべきではないかという議論がございます。したがいまして、もしそういうふうな形にしますればこれはバランスがとれて、つまり老齢化の負担を両方の世代がひとしく負うわけでありますから可能なわけでありますけれども、いまのように給付の方はセットして、そしてその負担の方だけだんだん勤労世代が手取りの減で負うということになりますれば、あるところまで手取りが下がってくれば、それ以上は勤労世代が負担してくれなくなるのではないかというふうに感じますので、そういう意味におきましては、いまお話しの一八%、まずその辺がかなりきつい線ではないかという感じがいたします。
  93. 宝田善

    ○宝田公述人 受給者がだんだんふえていきますから、ある程度負担率というものが上がっていくことはこれは歴史的な流れ、傾向だと私は思います。ただ問題は、それは何%まで労働者が納得するかということはもう少し時代の推移を見ないとわからない。それより大事なことは、いま日本の年金制度の中で労働者というものは全く参加の権利がないわけですね。幾つかの審議会にはメンバーが少し出ていますけれども、しょせん少数派であります。われわれが掛金を出しているわけですね。それからもらう当事者であります。それが全く物事の決定権、運営権がありませんで、すべては厚生省にいってしまって、それから先は大蔵省に吸い上げられて、そのことについてわれわれが意見を持っていても、それはしょせん外部からの意見でしかないのです、官庁から見ますと。ですから、われわれは何かお金を召し上げられまして、後では何か与えられるような感じを避けられない。どうしたらいいかということは、やはり自分たちが参加をした、そこで物事を決めていきたい。年金制度というものは、ある官僚の手にあるものとかそういうものではなくて、三者で運営していくとか、そういう制度をつくらなければ労働者の合意というものはなかなか得られないんじゃないかというふうに感じます。それは原子力でも、どこか情報がわからないで安全だ、安全だと言われても、なかなかわからない。もっと公開でいろいろやってみた方がむしろ真相がわかるのではないかということと同じでありまして、われわれはそういう問題がむずかしくなればなるほどもっと労働者を参加をさせて、当事者として中から意見を言わしてもらいたいという見解を持っております。
  94. 高橋正男

    ○高橋公述人 中高年齢層になりますと年金についてはきわめて関心が高い。やはり老後の生活は年金しか頼りにならない、これが実感だろうと思うのです。したがって、今回の予算に盛られた年金のあり方についても関心が高まっている。  この年金というのは国民皆年金、こういうのが望ましいわけであります。いろいろ八種類ぐらいあるわけでありますけれども、やはりその調整というのが必要だろうと思う。たとえば厚生年金については大体労使折半、政府の負担は二〇%ぐらいだろうと思いますけれども、やはり老後の生活は年金に依存するならば料率を上げるということもこれは当然だろうと思うのです。その適正な上げ方については政労使、そういう中で十分話し合っていかなければいけないんじゃないか。特に急速に高齢者時代を迎えるわけでありますから、十分討議して合意を、国民的なコンセンサスを得るようにして、高負担というものもやむを得ないんじゃないか、そのように考えます。
  95. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、先ほどからもお話が出ておりまして、また公述人からお話がありましたが、週休二日制の促進の主張があったようであります。御承知だと思いますけれども、零細企業では現実的に週休二日制をやるともう食べられなくなるというような現状でございます。そこで大手労組や官公労の労働条件の中に、大手企業あるいは官公労の生活がよくなる、そうすると零細企業との格差というのが特に大きくなってくるわけでありますが、中央幹部の方がお二人お見えになっておりますので、その対応策をどうされるのか、ひとつ具体的にお聞きをしたいと思うのです。  特に大手企業の賃上げが行われた場合、その下請の零細企業に非常にしわ寄せが行われているのが現実なんです。したがいまして、この二点についてひとつ宝田さん、高橋さん、両方からお聞きしたいと思います。
  96. 宝田善

    ○宝田公述人 まず労働時間の問題でございますけれども、昭和三十五年から三年ほど前まで日本の労働時間の動きを、大企業、中企業、小企業という統計がありますので、これをかなり長い期間にわたって追ってまいりますと、実は意外なことに、この間の格差というのはほとんど開いていない。ということは、大企業が五時間短縮しますと中も五時間短縮をしております。小も約五時間短縮をしているということで、賃金の場合には相当大手と中小というのは格差が大きいのですが、もちろん労働時間にも格差があるのですが、カーブは非常にそろって同じ方向で約二十年近く動いてきている。ところがこの構造不況になって以来、大手の短縮がぱたっととまったわけですね。  いま千人以上の企業平均の週労働時間というのは四十時間をちょっと切っておるのであります。約四十時間。中手の企業が四十三時間前後で、小企業というのは四十八時間近いんでありますね。問題は、四十三時間ぐらいまでまいりますと変則週休二日制に移行してまいります。これは大手の流れでございますね。ですからいまそういう傾向値から見ていきますと、中手の企業で週休二日制への移行期にいま入っているわけですね。これがうまくいきますと、大中と大体いきますと世間相場というものが確定をいたします。賃金と違いまして、労働時間というのはあらゆる労働者にとって一日二十四時間でありますから、一人だけ長い時間働きますと、バスも不便になるし保育所も閉まってしまうし、生活上からいいまして労働時間ほど格差が広げられないものはないわけですね。広げられたら困るわけです。そういう意味で、もう少したてば、要するに中企業の時間短縮がもうちょっと進めば、日本は週休二日制の社会へ大局としていける、それがわれわれのいまの運動課題だというふうに思っております。  それから賃金の方はなかなかそうはいきませんで、下請への転嫁ということが起こるわけですね。そこでわれわれは、日本の組合というのは全部企業別組合でありますが、にもかかわらず一種のやっぱり春闘相場というものをつくるということをねらって春闘というものをいま編成している。組織労働者が相場を立てないと中小にはまた波及をしないというメカニズムがあるわけですね。ですから、大手の賃上げというのは半面では中小にしわを寄せるという側面もありますが、半面では大手の相場が立たないと中小もキャッチアップができないという構造になっております。ですから、一方ではわれわれは現行の賃金引き上げの労働運動を進めながら、他方で国民春闘共闘会議、総評、中立労連ですけれども、これがことし抜本的な転換をしましたのは、これからは高度成長の時代じゃないんだから、ハートであるとか中小の労働者であるとか未組織労働者とかのあらゆる労働条件の格差をなくしていくという方向に労働運動の主たる目標を転換していく。ですから、一方では年金その他で政府改革を求めますが、他方では労働者の内部改革、あらゆる格差をなくして、男女格差を初めパートとか、そういうものに力点を置いて、どこの労働者も大体世間並みの労働条件が持てるように、これをやることを戦略的な課題としていま設定しているところであります。
  97. 高橋正男

    ○高橋公述人 週休二日制を積極的に推進しなければならないという立場で、この週休二日制というのは二つの大きな目標があると思うのです。一つはワークシェアリングといいますか、仕事を分け合うという問題、一つは国際的に日本だけだと思うのです、先進工業国でまだ週休二日制もやられていないのは。これは通商摩擦、もうすでにアメリカやらECあたりからそれが指摘されている。そういう点を考えてみた場合に、この週休二日制というのは労使で本当に真剣に討議すべきじゃないか、協議すべきじゃないか。具体的には、私も経験したわけでありますけれども、週休二日をやった方が実は能率が上がるという面があるわけです。それは賃金なんか経営側はダウンさせようとしますけれども、実は労働集約型については就業規律をばっちりすれば、りっぱに就業規律をやれば効率もいい、こういう点があるのですから、経営者が週休二日に反対する理由がないじゃないか、こういう一つの考え方を持つわけです。  それから下請関連企業の問題については、やはり犠牲になっている一面もあります、率直に。それについては、その労働組合の親企業の労働組合、その一体として同じ企業集団でありますから、一つの下請関連が非常に劣悪な労働条件というのはこれは恥なわけであります、企業集団としては。だからその親企業の組合も下請関連の労働者と話し合って全体的な水準を上げる、こういう血の通った支援をすべきじゃないか、具体的にまたそういう運動を進めています。
  98. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、先ほどちょっと出ておったのですが、定年制の問題ですけれども、われわれは年齢差別禁止法を出して政府に六十歳定年制の実現を迫っているわけですが、労働省はその法制化にはなかなか慎重でございまして、労使問題と逃げておるのです。大体昭和六十年ころに六十歳定年を実現したいというようなことでございますけれども、労使問題ということでございますから、村上公述人それから各公述人にお聞きしたいのですが、大体どのくらいのところに落ちつくか、あるいはまたどうかということに対しての御意見を再度承りたいと思うのです。
  99. 村上清

    ○村上公述人 定年につきましては、私先ほど少し申し上げましたのですけれども、やはり六十歳定年というところまではできる限り早い時期に持っていくべきだし、鉄鋼、私鉄などの傾向を見ましても、ほぼその方向には進んでいるんではないかと思います。ただし、そこから上の年齢につきまして、一方では公的年金の支給が上がるということもございますけれども、これは日本だけでなくて、たとえばOECDなどの記録を見ましても弾力的定年制と申しますか、フレキシブルリタイアメントという言葉がもう共通して使われております。つまり、そのころの世代の人は、たとえば現在で申しますと、非常に不況になりますと優先的に引退してもらって、そのかわり失業保障で厚く見て、その仕事を若い人に与えるというふうなことも行われているし、また好況になれば積極的に働いていただくというふうな、そのときどきに応じた要請もあるだろうと思います。だからといって所得なしでほうり出すということは絶対にあってはいけないわけでございまして、もしたとえば企業努力義務を課すというふうなことでありますれば、まず雇用を優先する。しかし、もし雇用ができないならばその期間については何らかの形で所得を保障するというふうな方策、あるいはこれは単独企業でやるかあるいは企業全体が集まって、たとえばスウェーデンの例を申しますと、企業が全体で集まって拠出してある種のつなぎ年金をやっております。そういったようないろんな方策をこれからあわせて考えていくべきではないかというふうに思う次第でございます。
  100. 宝田善

    ○宝田公述人 私は少し意見が違います。というのは、ヨーロッパは大体六十五歳年金というのが多数なんでありますね、いままで。いまそれを一生懸命引き下げることを労働組合はやっている。西ドイツは六十三歳まで下がってきているわけですね。ということは、通常の職場であればヨーロッパの場合にはだれでも六十五歳まで働けるから年金年齢が六十五歳であったわけです。炭鉱とか特殊なものは別ですけれども、一般的には、あらゆる職場というのは大体人間六十五歳まで働けるようにできている、それが通常なんだということであります。五十五までしかもたないとか、六十までしかもたないというのは、これはどこか、残業時間が長いとか労働条件が悪いとか非常に労働のスピードが早過ぎるとか、そういう問題があるわけですよ。ですから、日本だと六十までしかもたない職場が、同じ産業、同じ業種がヨーロッパでいままで長年六十五歳でやってこれたというところに一つ問題があるのではないか。  いまヨーロッパで問題にしておりますのは、職場の人間化という言葉がこの数年間非常にはやってきておりますね。職場というのは若い人しか勤まらないというふうなことであってはならない。日本の場合に、車のセールスとかいろいろ見ていますと、夜討ち朝駆けで一体いつ遊んでいるのかわからないようなことをやっておりますよ、実際。あれでは六十五まではもたないのですよ。ですから、あらゆる職場が原則として六十五まで働けるような労働条件、職場のヒューマナイゼーション、人間化ということをまず前提に私は考えるべきだ。それから、六十歳までというのは、これは年金の方を下げろと言っても下がりませんから、早急にやはり法をつくってでも断固やるべきであると思います。
  101. 高橋正男

    ○高橋公述人 昭和六十年に六十歳定年制を一般化するという、一般化という意味がきわめてもことしておるわけでありますけれども、われわれが端的に受けとめるならば九〇%ぐらいが一般化だと思うわけであります。しかしながら、労使交渉の中で鉄鋼、私鉄だとか、もう六十年代では六十歳が大体保障されるようでありますけれども、やはりこの社会的な波及力というのは大きいものがあると思うのです。あくまでも労使交渉で六十歳定年をとるというのはやはり組合の力でもありますから、組合の誇りとしてもやはり第一にとる、そして法的にはそれをサポートしていく、こういう立場が前提でなければいけないと思うのです。  それから、職場において、じゃ二十五歳と五十五歳以上の人と同じ能力かどうか。これはやはり若干違う、職種によりますけれども違う面があるわけであります。そうすると、六十歳近い人に適応した仕事をつくる、こういう努力も労使でやらなければならぬのではないか。当然、労働人口が多いことが、年金生活者を少なくすることが実は負担が少ないわけでありますから、そういう労使も政府も総ぐるみで高齢化社会に向けてその準備をいまからすべきではないか、そのように考えます。
  102. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ終わります。
  103. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 次に、工藤晃君。
  104. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 共産党の工藤晃です。きょうは三人の公述人の皆さん、大変御苦労さまです。  最初に村上さんに伺いたいと思いますが、社会保障及び年金などのたてまえとして、先ほどの村上さんの立っておられる立場だと思いますが、国民相互間の助け合いであるということでありますが、実は私たちの考え少し違いまして、これは第二次大戦後も世界労連などが五三年のウィーンでの会議などでも示したような、資本主義のもとでは社会保障制度というのは労働者の権利であるという立場ですね。こういうことから言えば、負担の仕方も資本家の方がより多く出すとかそういう形もとり得るわけなんです。  そういうことを前提にして以下いろいろ伺うわけなんですが、確かに今後二十年、三十年考えて財政収支がどうであるかということをお考えになっているんだろうと思いますが、厚生年金に限って一つ問題を出しますと、私もこれはいろいろ検討して一つ大きな問題は、非常に長く積んで、いまのところは成熟してないというので、ともかく積立金がふえていっておりますね。二十三兆四千億円余りというのが五十四年度末出てくるわけですが、実はただ積みつ放しであるということから、これが一つは財投にいろいろ使われてきた。使い方は、私たちはこれは高度成長政策に使ってきたという見方をしておりますが、それはともかくとして、ともかくこの間のインフレによって積み立てたものが非常に減価していくわけですね。この減価を私一つの計算をしてみますと、これは昭和二十五年度からなんですが、だんだん積み増していった分について減価をいろいろ計算しますと、いまの二十三兆円というのは、いまの価格で言うと三十六兆円ぐらいのものが二十三兆円に減価したんだ。言ってみると十三兆円ばかりの差が出てくるわけですね。これを将来に、五十五年度までは六・五%の金利とかその後は六・二%と、いろいろ計算もやられているわけですが、そういうので三十年延ばしてみると――三十年延ばすのは少し大げさかもしれませんが、二十三兆円というのは百四十四兆六千億円ぐらいになって、三十六兆六千億円というのは二百二十六兆、つまり八十一兆円ぐらいふえてしまう。つまり過去のインフレ政策があったための減価が、将来にこういう積立方式で延ばしていくと八十兆もの差が出る。こういうことを考えると、やはり本来ならば政府インフレ政策が起こした減価というのは何らかの形で補てんされなければいかぬ、補てんされれば三十何兆になる、それを延ばせばいまよりも八十兆以上ふえるわけですね。こういうことを考えると、これまでのこういう積み立ての場合、政府インフレ政策というのは非常に大きな問題を起こす、将来も起こすということであって、こういう厚生年金型の年金であると、今後インフレ政策をはっきりやめるとか、あるいはもっと別の運用のあり方を考えるとかしなければいけないのじゃないかと思いますが、その点について伺いたいと思います。
  105. 村上清

    ○村上公述人 ただいま労働組合のお立場のお話もございました。どの国でも労働組合が非常に社会保障の拡充の推進を担ってきた、これはもう過去の明らかな事実でございます。  いま御質問のありました積立金の問題についてお答えしたいと思います。  ほかの人と私少し言うことが違うかもしれませんけれども、私の考え方では、年金財政の面から言いますと、積立金が目的で積み立てをしているのではないというふうに私は感じます。ということは、いまの世代から将来の世代に向かって、いまの世代が非常に低い負担をして、ある時期に急に高い負担をするということは、それはやはり不公平だと思うのです。したがいまして、それが可能なように、なだらかな掛金の引き上げをしていく、これはやはり制度を円滑に運営するために当然なことだと思います。  そういたしますとい一方年金給付の方は、これは社会保険方式をとりますと徐々にしかふえませんので、その間にたまりといいますか、資金の蓄積ができるわけでございますね。これが積立金だと思います。いま御指摘の、じゃその積立金が減価するではないかというお話でございます。事実減価していると思います。ただ、これは私的な貯蓄の場合と、それから国全体の制度の場合では分けて考えてよろしいのではないだろうか。私的な貯蓄は、これは目減りしたらもう損しっ放しだと思います。国全体の制度の場合には、その金というものは金で残っているわけではなくて、その運用がいいか悪いかはまた別問題といたしまして、あるいは道路になり港湾になり、次の世代の資本蓄積に役立っているだろうと思います。そうしますと、物や道路になっているものは、これは減価していないと思います。  年金財政について積立方式がいいか賦課方式がいいかという議論はしばしばあることでございます。その代表的な一つの例を申し上げますと、スウェーデンの年金制度は、これは私どもの目から見ると積立方式でございます。GNPの六割にも相当する膨大な資金を積み立てる計画になっております。ところが、彼らに聞くと賦課方式だと申します。つまり、成熟した時点では積立金はなくなる、それまでの経過的なたまりとしてできるんだということですね。  それからもう一つの理由は、なぜそういう大きな積立金が要るか。年金制度をつくれば、将来大きな配分をする約束をすでにしてしまっているわけであります。将来それだけ大きな配分をするためには、その配分が生み出せるだけの資本の蓄積、生産拡大がなければいけない。この積立金というのは、その生産拡大に役立てて、その成果を将来の世代が分け合うのだというふうな説明を私ども聞いております。したがいまして、公的年金の場合にはもちろん高利運用第一だと思いますけれども、しかし、同時にそれが国の経済生産にどれだけ役立つかということも、同様に、あるいはより以上に重要ではないかと思うわけでございます。
  106. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 どうもありがとうございました。  次に、宝田さんと高橋さんにお伺いしますが、一つは、いま大変流動的でありますが、政府が老齢年金の支給開始年齢を六十五歳へという方向を出したわけですね。それに対して、もちろんわが党はこれを阻止するためがんばる決意でありますが、労働組合として、仮にそういうことを強行されようとしたときにどう対応されるかということについて、簡単なお答えをいただきたいと思います。
  107. 宝田善

    ○宝田公述人 もし今度の国会で強行すれば、われわれは安保並みの行動を起こすということを大体決めております。  それから、引き続き審議されるのであれば、それは参議院選における最大の国民的争点として勝負をするつもりでおります。  以上です。
  108. 高橋正男

    ○高橋公述人 全く不当なものであり、国民の期待を裏切るものでありますから、国民運動として全国各地で大衆運動を展開して阻止する、こういう計画であります。
  109. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 さて、年金問題と関連しまして、いま企業年金が大きな問題になってきております。それで、厚生年金加入者の四〇%以上カバーされているということも、最近ある銀行のレポートで見ました。この企業年金の場合は、適格年金と調整年金と二つありまして、後者の方は厚生年金の制度に乗っかっているといいますか、ある接合があるわけです。いま見ておりますと、この企業年金の動きとして、企業の側から言いますと、この企業年金をつけることによって退職金を減らすような動きと、それからもう一つは、定年制を延長しないというかわりにこれを持ってきて、そしてつなぎに少し早くから受給するときには退職金並みに一括して払ってしまう、こういう動きがある。幾つかの問題点を感じるのですが、それはやはり労働組合としまして、宝田さんと高橋さんの方から、どうごらんになっておられるか、どうあるべきだと考えておられるか、その点について伺いたいと思います。
  110. 宝田善

    ○宝田公述人 総評の場合には、ごく最近、厚生年金対策委員会というところが結論を出しまして、ある程度企業年金というものも認めていくという方向になっております。といいますのは、諸外国の例を見ましても、国の公的な年金というものの上に、多かれ少なかれ産業別の年金というものを持っておりますね。これはもとはやっぱり企業年金から産業年金へと上がってきて、あるいはもともとは年金というのは産業別の年金を国家的な年金に上げてきている、発展させてきているという経過があります。そういうこともあれこれ考えまして、一番大事なのは、公的年金の方を労働者年金というふうに将来的に統合化していきたい。やっぱり自営業者その他の国民年金と労働者年金と大きなかっこうで整理していって、その中にミニマムを確立し、それぞれの掛金に見合った部分というものも確立する、さらにその上に、日本では特殊な退職金の制度もありましたし、それから外国でも企業年金あるいは産業別年金という制度がありますから、そういうものへとだんだん統合していきたいというふうな発想に立っていると私は理解しております。
  111. 高橋正男

    ○高橋公述人 退職一時金というのがウエートは確かに多いと思うのです。企業年金をつくっているところは、やはり退職一時金との関係で操作されているというのが一部あります。  問題は定年延長の関係でありますけれども、これは全く異質なものと受けとめて対応しているわけであります。これは企業年金、退職金と定年延長というのは無関係である。定年延長というのは国民的な重要な課題でありますから、それは別だ。そういうふうに性格は全く異なるものだというふうに対応しておりますし、企業年金についてはその労使労使で企業ごとに協議しておりますので、弾力的に対応しています。
  112. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それでは、次に宝田さんに伺いますが、先ほど通産省の産業構造政策に対して大分御批判がありました。いろいろ参考になる点が多かったと思います。それで、ともかくいまの産業構造政策といっても、雇用という観点が大変ないのではないか、そういうことを私も感じております。  それで、八〇年代の国際経済の枠組みということから言えば、東京ラウンドあり、またいわゆる積極調整政策といったような方向もあり、それからいま円の相場は一時少し安くなったと言われますが、これはアメリカにとっては大変不満な相場になっておる、こういう事情もあると思います。そういうときに、いまのままでいくと一次産業、農林水産業、そこからはますます労働力が締め出されていくのではないか。二次産業も労働集約型の分野、そういう分野においては、それこそいろいろな国との競争で、そこはだんだん放棄しなきゃいけないとか、そしてまた、産業構造政策で通産省あたりが考えていた、将来はふえるであろう唯一と言ってもいいような分野であるところのコンピューターなどを含めての組み立て産業部門というのは、ここは非常に大きな企業が支配していて多国籍企業化しているために、必ずしも国内での雇用はふえていかない。こういう状況があって、そして残された第三次産業について言うと、それこそ商業その他ではかなり過剰に見られるけれども、教育だとか医療だとか保健、社会福祉など、社会的な必要からいってふやしてもらいたい分野はいまの財政危機問題その他で必ずしもふえない。こういう状況を考えますときに、私はこのままでは非常に雇用の見通しが暗いというふうに考えざるを得ないわけですが、そういう点で、先ほど労働条件の改善の問題と、それから参加ということで雇用問題を解決しなきゃいけないということを言われましたが、もう少し具体的に雇用拡大をする方法手段についてお考えがありましたら伺いたいと思います。
  113. 宝田善

    ○宝田公述人 日本の場合に第二次産業が伸びたと言っても、電機とか自動車とか、いわゆるマスプロ産業でかなり伸びてきたわけです。ところが、先進国の構造をよく見ますと、必ずしもそういう産業だけということはないわけですよ。それはスイスを見てもスウェーデンを見ても西ドイツを見ましても、いろいろな分野でやはり産業は残っている。特に品目別で見てみますと、いろいろなもので残っている。いま急に後退しているのは、大体日本にやられた分野が多いわけです。だからセラミックス、陶器だとか家具だとか、そういうものをとってみても全部先進国に残っている。御承知のように、繊維というのは西ドイツがいま最大の輸出産業でありますね。アメリカの繊維もいま立ち直りつつあるというようなことを考えますと、余り単純にあの産業はだめ、この産業はだめというように大くくりにくくってあきらめてしまうところに、私は通産省の産業政策の問題がある、こういうふうに言いたいわけです。  それから、一次産業というのはもう手おくれの感があるほど日本の場合ひどいわけですが、一方で食糧の自給率ということを考えますと、やはり十年か何年かかけましての抜本的な立て直しをやるべきだ、そういうことをいま地域割りにして問題を考えてみたらどうなるか。代議士の皆さんは選挙区を皆お持ちですから、自分たちの都道府県を見ればわかるのですけれども、その中で世界に雄飛するところなんというのは幾つかの会社しかないだろうと思うのですね。大部分は農業であり、商業であり、中小企業であるわけです。これが雇用を抱え切れないとなったら、日本の雇用問題はもうおしまいなんであります。そういう意味で、いまわれわれは、農業でも地場産業でも商業でも中小企業でも飯が食えるようにするためには、総じてあらゆる産業における体質改善ということがどうしても必要だ。そういうことをやはり通産省というのはもっと本気になって考えませんと、海外に出て行ける産業だけを伸ばす、売れる産業だけを伸ばすような、そういう特化の仕方をとっているところに、雇用問題の将来の深刻性というものがある。私は、やはりあらゆる分野で少しずつ雇用というものが確保できるように、産業というものを変えていくべきだというふうに考えております。
  114. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これで終わります。
  115. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 次に、中野寛成君。
  116. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 どうも公述人の皆さんきょうはありがとうございます。  先ほど来幾つかの御提案なり御意見を開き、また質疑応答が交わされたわけでありますが、若干、部分的にその中の具体的な問題に入る部分があるかもしれません。それだけにお答えしにくい部分等があるかもしれませんが、できる限りの範囲でお答えいただければありがたいと思います。  まず高橋さんにお伺いをしたいわけでありますが、いま労働問題または日本の産業の分野で注目されている大きな出来事は、全米自動車労連のフレーザー会長が来日をして、そしていろいろと日本に対して注文をつけていることであります。彼の今日までの発言を聞きますと、日本はアメリカに対して自動車とともに失業を輸出している、これはけしからぬじゃないかということで、むしろ工場をアメリカにつくってくれ、またアメリカへの輸出をもう少し規制をするように持っていきたいと、ある意味ではおどしとも思えるような発言もあるわけであります。今日彼が来日しているのは、日米のコミュニケーションギャップを埋めるためだということで自動車総連が招いておられるわけでありますけれども、しかし、アメリカへの工場進出をもし安易にやったとすれば、これは同時に日本の雇用を輸出することにもつながるわけであります。大変厳しいジレンマを抱えていると思うわけであります。  このような国際的な産業構造政策の問題、いまもございましたけれども、これらのことについて、先般も通産省は自動車メーカーの代表を呼んで、ひとつ早く工場進出やるようにと言ったようでありますが、果たしてその場合に通産省は日本の雇用の問題を念頭に置いて、その対応策を考えてやったと言えるかどうか、このことを私ども大変大きな疑問として持つわけであります。  一連のこういった発言や出来事、これに対してどのようにお考えか、まずお伺いをしたいわけであります。
  117. 高橋正男

    ○高橋公述人 UAWのフレーザー会長が参りましたが、私も昨年IMFの金属労組のカナダ、アメリカ、日本の定期会議出席してきたわけでありますけれども、やはり何といっても労働組合サイドにおいて国際的な交流というものが必要だ。特に構造改善が余儀なくされているわけでありますから、それぞれ労働組合としても相互理解、すなわちコミュニケーションギャップを埋める役割りをやらなければならないわけですが、これはやはり政府といたしましても、日本の雇用問題を考えてお互いに経済協力をする、こういう考え方も必要だろうと思うのです。もう一つは、日本に対してアメリカは市場を開放しろ、たとえば電電公社なり国鉄の開放を求めているように、そういう一面も実はあるだろうと判断をしているわけであります。  したがって、これらの問題については、自動車労連等については、これは塩路会長でありますけれども、やはり進出すべきだという意見が発表されておりますし、さらにトヨタの石川委員長も進出したらどうかという提言をされているわけであります。しかしながら、日本の雇用面から考えたらこれはまた大変な問題だろうと思うのです。そこで、経済外交といいますかそういう面も無視できません。したがって、その辺の調和をどう図るのか。これは労使なりさらに政府なり、そういう中で話し合いをやるべきじゃないのか、このようにまず考えているわけであります。特に労働組合においては、自由労連傘下の中で、これはもう決してアメリカだけではありません、イギリスにおきましても、フランスにおきましても、このような問題が今後出てくるだろうと思いますので、労働組合の役割りということを自覚して、お互いにやはり通商摩擦のないように対応していかなければいけないのじゃないかという立場で、AFL・CIOとの定期会談を今年の五月に日本において開催することにしておりますので、これらの問題についても話し合いで解決に努力していきたい、このように考えております。
  118. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 あわせまして、私は労働外交大変すばらしいことだと思いますし、そのことが、経営参加という言葉も最近よく言われますけれども、いろいろな意味合いからいって、言うならば参加意識を高める上からも大変大事ですし、また果たしている役割りもきわめて大きいと思うわけでありますが、いまの御答弁に加えて、政府はいかになすべきかということをあわせてお聞かせいただければありがたいと思います。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  119. 高橋正男

    ○高橋公述人 政府の外交の問題ですが、一面、アメリカに従属したような外交ではないのかという批判もあるわけであります。この点については、やはり経済外交というのは国益を前提とするということが、ただ目先のことでなく、中長期的な展望に立って、国内の産業とアメリカなりECなりとの産業の関係において、言いたいことは堂堂と言うべきではないのか。日本人は外交問題になると笑ってごまかすというようなことが一般的に言われておりますけれども、最近はそのようなこともないようになっておりますが、やはり日本日本としての立場、そういうものを主張すべきであるし、この自動車の問題についても、大型についてはアメリカははるかに優位なわけであります。エネルギーが量的にも価格的にも問題があったので小型車が急に伸びた。しかしながら、GMにいたしましても、フォードにいたしましても、やはり開発途上にあるわけでありますから、そういう展望というものを見定めて、通産なり外務省が積極的な外交を展開すべきだろう、このように考えます。
  120. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 続きまして、政府の説明やその他の統計によりますと、景気が徐々に回復して雇用情勢も安定しつつあるかのように言われているわけでありますが、特に民間産業労働者をむしろ多く擁する同盟の立場からどのように感じておられますかということと、この際あわせまして、たまたま高橋さん、御出身が造船重機労連ということもあって、一つの雇用創出の面からも、例の関西新国際空港の浮体工法の問題等に熱心に政策推進労組会議また同盟等と取り組んでおられるわけでありますが、その持っている意味等につきましてあわせてお聞かせをいただければありがたいと思います。
  121. 高橋正男

    ○高橋公述人 雇用情勢は、確かに昨年の下期から指標等については改善の方向にあるわけでありますけれども、やはり依然として中高年齢層がその失業の大半を占めているというのが実情であります。経済成長も、政府は四・八%、しかし民間の機関平均で大体三・五%、そういう中では、一時的に雇用情勢が改善されたとしても、中長期的には依然として深刻な雇用情勢にあるということをはっきりとらえて対策を講じなければいけないのではないかと考えるわけであります。  問題は、造船重機労連は構造不況という中で大変な、下請関連を含めましても、これはもう社員、従業員も三万人ぐらい、合計十五万人ぐらいの雇用調整が行われた、きわめてピンチな立場に立ったわけであります。しかし、造船産業がそうなる前から、日本の空港についてはやはり成田の二の舞いをしてはいけない、警察官も五名のとうとい犠牲にもなっている、こんな内陸に空港というものをつくるべきではない、海洋日本であるならば、やはり海洋開発のために浮体空港でやるべきだというのが、五年前にたまたま私が書記長をやっておりましたから、そこで提起をしたわけであります。  そのことは、何といっても公害がある、自然を守らなければならない、そういう前提に立つならば、新しい技術の自主開発世界で初めて日本がやり遂げる、そういう技術の波及がすべての産業に影響するし、そこは雇用創出も可能になる、そういう点から、浮体空港の問題をいま運動として展開しているわけであります。世界で初めてだから、経験がないからそれはだめなんだというようなことでは、日本の将来はきわめて危惧されるわけであります。われわれは常に新しい技術に挑戦する、こういうことが国民の生活を守ることだ、こういう考え方から、自然を壊さないで海上浮体空港をつくるべきだ。関西空港ばかりじゃない、北九州にもできるだろう、また愛知県にもできるだろう。それはあくまでも海洋開発前提とした浮体空港の方がよりベターであるし、また技術的にも完璧でありますし、予算についても少ないわけであります。航空技術の発展というものも、ジェットエンジンになりましてから二十数年、二十七年ぐらいでありますか、それも今後の二十年、三十年のうちには技術も変わってくるだろう、垂直に上がって成層圏を飛ぶという時代、こういう問題があるわけであります。  ですから、われわれは今日、原子力発電の問題についてもやはり一つの挑戦だと思うのです。すべての新しい分野に対する挑戦を試みなかったら、資源の乏しいわが国経済国民生活も守れないのではないか、このように考えます。
  122. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ありがとうございました。  次に、宝田さんと高橋さん、お二人にお聞きしたいわけでありますが、ことしのベア要求は八%を基礎にして要求して運動を展開されるということを聞いているわけであります。しかし、今後の経済見通し等によりますと、ことし後半に至ってはスタグフレーションに陥る危険性が非常に高い、こういうことを言われておりますし、恐らく総評、同盟ともに、各一般組合員の皆さんは八%では低過ぎるという声が当然出てきていることも事実だろうと思うわけであります。その関連において、いうならば八%に基準を決められたことは、ある意味では、最近のインフレ傾向や物価の問題等々に対するいわゆる両にらみの関係で、一面で警戒をし、一面では労働者の良識を示すという、いろいろな配慮の中から決められた数字だと思うわけでありますが、それだけに、この八%がもし獲得し得たとしても、実質賃金の上においてそれがプラスであるということでなければ意味がないのは言うまでもないわけであります。  そういう意味で、ことしの政府経済運営について、時間の都合もございますので、端的に何を望むかということをお聞かせいただければありがたいと思います。
  123. 宝田善

    ○宝田公述人 われわれの場合には八%ミニマムということになっておりますから、大体八%から一二%の範囲にいま要求が固まりつつあります。これが非常に低いということは、先般の臨時大会でも大方の意見として出てまいりました。ただ、昨年のようにみんなが要求額をそろえないで闘争するのもまたこれは大変しんどいのでありまして、そろえるとなれば、ことしの場合にはこれしかない、そのかわりに、われわれは従来のようにある額を要求してもっと低いところでやめる、そういうことをもうやめようということで、満額獲得をとにかく一遍目指すということが大方の合意であります。  ただし、これは臨時大会の方針でありますけれども、年度の後半に至って物価その他の状況が急変した場合にはこの限りにあらずという条件が一つついております。これが一つ。  それから二番目は物価闘争をもっと本格的にやろう。そこで、さっきも言いましたように、国鉄とか全逓が公共料金を上げなくてもしばらくやれるという方向をごく最近出すことになっております。われわれが政府に望むのは、すべての物価データを公開しまして、なるべく物価上界を抑えるということに全力を挙げてもらいたいということであります。
  124. 高橋正男

    ○高橋公述人 八%を基準にするという背景については、従来と変わりない考え方で設定をしたわけであります。このことはもう控え目な要求である。これは、今度は経営者や政府に対して果たしてもらいたいことがあるわけです。われわれも控え目な八%要求なんだから、それは満額出してもらいたい。そうして個人消費を伸ばしてもらいたい、そうして民間の設備投資を伸ばしてもらいたい。そうして物価を抑えてもらいたい。そうして定年延長、時間短縮もやってもらいたい。そういう国民生活全体を考えまして総合的な、整合性ある立場からの八%であるわけでありますから、当然それは要求にこたえていただきたいし、今後はそれらの課題について政府並びに経営者は最大の努力をしていただきたい、強く要請したいのであります。
  125. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 最後に、年金の問題につきましてお伺いをいたします。  先ほど村上さんのお話をお聞きしながら、理論的な体系づけとして大変興味深く、かつなるほどという気持ちを反面持ちながら聞かせていただきました。しかし、現実的な国民の要求というものは、残念ながらその理論体系とかなりかけ離れていることも事実であります。先ほど来の最初のお話と、それから後の質問に対するお答えの中で総合的に出てまいりましたお答えが、定年制を六十歳まではできるだけ早く引き上げた方がいいだろう、なお年金の給付開始時期を六十五歳からとすることを早くした方がいいだろうということでありますが、その六十歳から六十五歳までの間のギャップを埋める方法として、たとえばヨーロッパ等で行われている失業保険または企業等で埋める、こういうふうにすればいいのではないかというお話がございました。ゆえに、何らかの方法で雇用期間と年金給付開始時期とをドッキングさせるということについては考え方は同じであろうというふうに思ったわけであります。  しかし、その埋める場合に、失業保険、企業年金、企業の負担等々、日本の現在の状態の中で果たしてそれが可能であるかどうか。たとえばそれが可能であり、かつそれが具体化し、実現されるということでなければ、六十五歳へ受給年齢を引き上げることを幾ら早急にと考えたとしても、これは大変大きな反発を受けることは事実である。また、現実にほとんどもうこれを強行することは多分政府は断念されたと私ども思っておりますけれども、しかし、実際上、将来もしこのことを改めて提起してこられたときにも、そういう条件が整備されなければ全く意味がないのではないか、こう思うわけであります。そのことについて、可能性も含めましてお聞かせいただければと思います。
  126. 村上清

    ○村上公述人 ただいまのお話について、特に六十から六十五歳の問題でございます。日本の場合、なかなか定年が上がらないということ、これは一つには定年がいわば雇用保障であるという面と、それからもう一つの条件があると思います。いままでの日本の社会はいわゆるピラミッド社会で、すべての組織あるいは企業の内容というものが、そういうピラミッドの形に合うような職制なりあるいは給与体系というもので組み立てていたと思います。いまやそれが急にビヤだる型のような形にふくれ上がってまいりまして対応し切れない。そのために中高齢問題というのが起こっているわけであります。しかし、これはある時期がたちますれば、むしろそういう形の社会に諸制度あるいは賃金体系といったようなものが徐々に適応してくるのではないか。若干楽観的とごらんになるかもしれませんけれども、欧米社会でそういうことが行われるとしますと、日本も違った人口構造に合うような社会的な体系というものができてくる。そうすれば徐々に定年というものは延びてくるのではないか。ただ、従来のように年功的に賃金が上がるとか、あるいは年をとっても従来と同じ賃金ということはできないと思います。  そういうことを踏まえまして六十から六十五の間を考えると、まず第一優先順位は雇用だと思います。ただしかし、企業によりましては適職がないとか、あるいは人員がきわめて過剰であるという場合には、それを一律に能率に関係なくということは、これは現実問題として強制できるかどうか。  そこで、その間を埋める所得の問題でございますけれども、これはいろいろな政策をミックスするわけでございますから一概に言えませんが、たとえばいま退職金という制度がございます。この退職金は欧米と比べれば日本独自の制度でございます。なぜあるかといえば、一つは従来、公的保障が貧しかったということ、それから定年が低かったということ、ここら辺に原因があると思います。もしこの退職金をもって老後の保障ということにいたしますれば、現在一年間は雇用保険があるわけでありますから、あと四年間。そして、しかもその四年間を埋めるのはまだ二十年先であります。これから八年たって支給年齢が一年延びるわけですから、その一年は雇用保険で埋められます。このようなものと総合いたしますと、六十五までの収入を保障できる程度の額に退職金はなっているのではないか。しかし、これは放置いたしますと、いま退職金というのは年々目減りしている傾向がございます。過去十数年の統計を見ますと、賃金に対する比率では六割に下がってきておりますので、むしろそういう制度があるうちに、それを生かしながら雇用あるいは就労、どちらかの道が選べる、そしてどちらかは必ず可能であるというふうな方策を打ち出していくのが好ましいのではないかと思うわけでございます。
  127. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 時間も来ておりますから簡単にお聞きしますが、特に高橋さん、民間企業が多いわけでありますが、いまの私が御質問を申し上げました最後の年金の問題ですが、日本の風土の中で果たしてできるとお考えになりますでしょうか。組合の立場からお聞かせいただけばと思います。
  128. 高橋正男

    ○高橋公述人 ちょっと質問のあれが聞き取れなかったので、もう一度……。
  129. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 六十歳から六十五歳までの年齢ギャップを埋める場合に、失業保険、企業負担等で果たして生活保障等ができるか、または退職金の見直し等についても村上さんから御指摘があったわけですが、果たして日本企業の体質の中で可能性があるか。
  130. 高橋正男

    ○高橋公述人 これは同盟の方針でありますが、定年延長に対しては、五十五歳が賃金のピークとしてやはりカーブする、柔軟な対応でいく。鉄鋼の場合は、これはJCの中で話し合ったわけですけれども、五十歳から弾力的な賃金帯カーブをとる、これが賃金のあり方。そのために定年延長を可能にしてくれということで実現されたわけであります。  六十歳から六十五歳のポリシーミックス的な形でいろいろな方法があると思うのですけれども、これはいまの企業の中では不可能ではないのかな。したがって、あくまでも公的年金で、六十歳過ぎたらそこに年金をドッキングする、こういう方法でなければどうにもならないだろう。これはすべての年金についても言えるのではなかろうかと思うわけであります。  ただ、問題なのは、財政的な欠陥もある。そういう点から、六十歳から六十五歳の間にどう対応するか。減額年金という構想もこれは考えられないことはないと思う。しかしながら、定年も六十歳までいっていないところが大半でありますから、それについてもまだ時期的にはそういうようなポリシーミックス的なものは適用できないのじゃないか。まず第一には六十歳定年、そして昭和六十年に六十歳が本当に一般化されるならば、やはりその後には本当に高齢化社会でありますから、六十五歳定年ビジョンというものを国民の中で合意をつくるための運動をひとつ展開して、政府もそれに対応するような行政というものをやっていかなければいけないのではないか、そのように考えております。
  131. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ありがとうございました。
  132. 田村元

    田村委員長 以上で各公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、明十四日午前十時より公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十分散会