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1980-03-03 第91回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年三月三日(月曜日)     午後二時十六分開議  出席委員    委員長 田村  元君   理事 小此木彦三郎君 理事 瓦   力君   理事 小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 二見 伸明君 理事 寺前  巖君    理事 小沢 貞孝君      稻村佐近四郎君    奥野 誠亮君       片岡 清一君    金子 一平君       倉成  正君    小山 長規君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       橋本龍太郎君    藤田 義光君       村山 達雄君    阿部 助哉君       稲葉 誠一君    大原  亨君       川崎 寛治君    兒玉 末男君       武部  文君    松浦 利尚君       八木  昇君    安井 吉典君       横路 孝弘君    岡本 富夫君       草川 昭三君    坂井 弘一君       工藤  晃君    藤原ひろ子君       松本 善明君    大内 啓伍君       岡田 正勝君    中野 寛成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         任用局長    斧 誠之助君         総理府人事局次         長       川崎 昭典君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省条約局長 伊達 宗起君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生大臣官房審         議官      竹中 浩治君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         厚生省援護局長 松田  正君         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省生活         産業局長    児玉 清隆君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 石月 昭二君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省郵務局長 江上 貞利君         郵政省貯金局長 河野  弘君         郵政省簡易保険         局長      浅尾  宏君         郵政省電波監理         局長      平野 正雄君         郵政省人事局長 林  乙也君         郵政省経理局長 守住 有信君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労政局長 細野  正君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省婦人少年         局長      高橋 久子君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         日本電信電話公         社総務理事   玉野 義雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   山崎  拓君     津島 雄二君同月二十八日  辞任         補欠選任   中川利三郎君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     中川利三郎君 三月一日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     工藤  晃君   瀬崎 博義君     藤原ひろ子君   中川利三郎君     松本 善明君 同月三日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     武部  文君   野坂 浩賢君     松浦 利尚君   工藤  晃君     安藤  巖君   藤原ひろ子君     瀬崎 博義君   松本 善明君     中川利三郎君 同日  辞任         補欠選任   武部  文君     稲葉 誠一君   松浦 利尚君     野坂 浩賢君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  これより、理事会の協議により、物価雇用福祉問題等国民生活関連諸問題について質疑を行います。武部文君。
  3. 武部文

    武部委員 私は、きょうは物価問題のみについて政府の見解をただしたいと思います。  いま、物価高騰の折という言葉流行語になっています。これはかつて昭和四十八年、四十九年当時の第一次石油ショックのときにこの言葉がはやったのでありますが、いま同じように、諸物価高騰の折という言葉便乗値上げ言葉として流行しておるのであります。  私は、この際、去る二月十八日、日本銀行が発表いたしました二月上旬の卸売物価を見ますと、ついに前年同月比で二〇%の大台を突破いたしました。しかもその内容が問題であります。生産財が主として上がっておりましたが、その生産財から消費財に移りつつあることはきわめて注目すべき現象であろうと思います。いよいよ消費者物価卸売物価の後を急速にスピードを上げて追い始めたことが、この内容からもはっきりしておるのであります。いま国民だれしもが、数年前に経験をいたしましたあの忌まわしい狂乱物価を思い出しておるのであります。インフレヘの不安が急速に全国に高まりつつあります。  かつてニクソン大統領は、インフレ今世紀最大の盗賊である、こういう名言を吐いたのでありますが、大平総理さきの本会議で、物価の安定こそは国民生活基礎をなすものである、こういう発言がございました。御出席経済企画庁長官は、物価問題は非常に重要であって、物価の安定は国民的課題だ、こういう発言をされました。総理はおられませんが、いまのわが国のまさしく狂乱物価に近づきつつあるこの物価現状、この現状をどのようにとらえ、今後どのような姿勢で臨まれようとしておるのか、これをまず最初にお伺いをいたしたいのであります。
  4. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 御指摘のように、卸売物価の騰勢はますますその足取りを速めておるということは、ただいまお話し日本銀行発表等でもはっきりいたしております。いまニクソン大統領発言とか大平総理、私どものあれを申されましたが、私もインフレーションこそはパブリックエネミーのナンバーワンである、こういう認識皆様と御一緒物価問題に取り組んでおるのでございます。  いま仰せのように、卸売物価がだんだん上げ足を速めておりますが、その消費者物価への影響波及、これが一番大事な点でございます。前回石油ショックのときと比べまして、卸売物価は非常に上がったにかかわらず、消費者物価の方が比較的落ちついた基調を保ってきておったのは、私はやはり、前回の苦い経験に照らしまして日本国民各層の方々が、インフレというものに対していま御指摘のような非常に強い姿勢でこれを防がなければならぬという信念から、いろいろ行動しておられることが根本であろうと思います。  さき日本銀行は公定歩合の引き上げを行い、預金準備率引き上げも行い、また今般、円レートの非常な下げぶり低落ぶりに対しまして、大蔵省日本銀行においては、御承知のように、これが防止のための力強い緊急措置を講ぜられたのも、私はすべてこれ、いま申し上げたような物価問題の重要性に対する認識、それが根本であろうかと思っております。  私どもとしては、財政、金融のあらゆる施策、また個別物価対策、これは通産省の所管の物資あるいは農林水産省生活物資、そして運輸その他の輸送の関係についても、また公正取引委員会日本銀行、あらゆる機関を総動員いたしまして、これ以上の卸売物価引き上げをできるだけ小さくするとともに、それの消費者物価への波及を防止することに、最小限度に食いとめることに全力を尽くしておるわけでございます。  いま御指摘物価問題に対する認識においては武部委員と全く同じ考えを持っておることを申し上げて、お答えといたします。
  5. 武部文

    武部委員 それでは五十四年度、本年度物価上昇の問題についてお伺いをいたしますが、政府は去る一月二十四日、五十四年度消費者物価当初見通し四・九%、これを四・七%と下方修正をされたわけであります。ところが、先ほど述べましたように、危機的な卸売物価に続きまして、諸外国と比べて比較的安定しておったと見られる消費者物価、これもついに二月で御存じのように七・六%という数字が発表されました。したがって、三月は前年同月比で恐らく八%に迫る数字が出るのではなかろうか、このように思われるのであります。四月からは、これから申し上げますが、電力ガス、そういう公共料金引き上げが計画されておるわけでありますし、同時に、予想よりも二十年も早くやってきたと言われる一バレル三十ドル時代、こういう原油影響もそれからが本番と見なければならぬと思います。したがって、これらを見越した仮需要によるところの物価上昇が大変心配されるわけでありますが、政府は、このような情勢の中にあって下方修正された四・七%、これは必ず達成させる、そういう約束をされるかどうか、これをひとつお伺いいたします。
  6. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、結論を申し上げますと、何としてもこの四・七%という実績見込み、これを私どもとしては、ちょっときざな言い方ですが、死守していきたい、これをぜひ守っていきたい、こういう決意であらゆる施策をそれに集中しておるわけでございます。  仰せのように、大変卸売物価波及、そして一番大きな問題は何といいましても季節的な野菜、特に葉っぱの野菜、こういうものの非常な値上がりが、いま御指摘のように消費者物価が瞬間風速的に相当大きく上がっておる、これの主たる原因をなしております。これについては、ただいま申し上げたような野菜対策としては、農林水産省におかれて春野菜早期出荷あるいはまた契約栽培中のものの繰り上げを促進する、また輸入をふやす、こういう施策をとってくださっております。先般の閣議においても各閣僚からも非常な関心を示されまして、農林水産大臣みずから生産地を回られ、いろいろと努力をしておられることは、武部委員も御承知のことかと思います。また通産大臣は、需給の逼迫した重要な資材につきまして緊急出荷あるいは備蓄の放出、そういう施策を進めておられるわけでございます。  仮に、これからいま御指摘のように相当程度の瞬間風速は高さを見せましても、私どもは、年度平均の比較におきまして、いま実績見込みとして掲げております四・七%はぜひとも達成したい、またそれはできるものというふうに信念を持って各般の施策を進めておるところでございます。
  7. 武部文

    武部委員 いつのときもそうですが、物価が上昇するとその犯人季節商品転嫁をされておる例が今日までたびたびございました。今回も同様でありまして、特にばか値の野菜、これが物価上昇の引き金になっておる、こういうことで季節商品犯人扱いになるのであります。消費者物価の中に占める野菜のウエートは一万分の二百八十、確かに相対的に見て高いわけですが、これが今日まで物価犯人扱いにされておる。しかし、去年は全く大暴落でありました。  そういうことを考えると、後で私は五十五年度物価上昇の問題に絡めて申し上げますから、これはこれだけにしておきますが、それならば、これからいよいよ五十五年度物価上昇のことについてお伺いをするわけでありますが、先ほどから申し上げますように、卸売物価が——昨年来から年始にかけて原油値上げされて、その入着がいよいよ本格化されてきた。したがって卸売物価がじりじりと上がってきた。消費者物価への連動もいよいよ本格化してくる、こういうふうに見なければならないと思います。  この予算委員会で、一月三十一日に、わが党の多賀谷書記長企画庁長官質問をいたしておりましたが、そのときに、企画庁長官答弁を私は聞いておりました。あなたは、公共料金値上げは最小限のものにしたい、家計への影響年額一万八千円ぐらいになるだろう、こういう答弁をしておられまして、新聞にもそのように報道されました。これは予算関連項目を頭に置いて、しかも直接的な効果だけを計算をして答えられたものであって、こういう考え方では真剣に物価考えておるものとは言えない、このように私は聞いておりました。野党各党主張長官はお聞きになったと思いますが、いずれも年額十二万円から十三万、十四万円という、そういう公共料金値上げによって家計は圧迫されるという発言各党からあったのです。私はそれを聞いておりました。そういうような主張に対する企画庁長官答弁は、年額一万八千円、しかもこれは〇・八といういわゆる予算関連項目しか頭に置いてない答えです。しかも、これから先の物価を取り巻く情勢というのはきわめて厳しい情勢だと言わなければなりませんが、政府は、約束をされておる六・四%、この六・四%は必ず達成するということをしばしば言明され、ついせんだっても大平総理はある会合でそのように答えておられますが、間違いないか、一体六・四という数字はどのような根拠によるものか、この際、はっきり述べていただきたいと思います。
  8. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 来年度六・四の見通しにつきましては、実は先般、武部委員中心になられまして社会党の方で、これはなかなかむずかしいというだけではなくて、若干きつい、手厳しい御批判でしたが、虚構の目標というふうな表現がございました。われわれの算定とは若干やり方が違うわけでございますけれども、しかし一つの御見識でございますから、早速、武部委員中心とされる社会党のお考え方を伺って、それを専門的に検討をさした次第でございます。  後で詳しく申し上げますが、私どもとしては、経済の成長、これはいろいろの輸入、輸出、また国内における生産活動労働力関係雇用関係その他を総合的に勘案いたして、しかも最近の五十四年度実績見込み等基礎にいたしまして、来年度六・四%というものをはじき出したわけでございます。これに対しまして社会党さんのお考えは、年度末の、先ほども御指摘のような瞬間風速的なものを基礎にしてのいわゆるげたというふうな構想をおとりになってのいろいろのお考え方でございますので、この点については場合によって詳しく後で申し上げますが、われわれとしては、そういう物価というものの総合的な、経済一つ関係を象徴した物価目標というものをつくっておりまして、これはまた同時に、近づく春闘の賃上げその他にも非常に関係が深いものでございますから、ぜひとも何とかして守っていきたい。先ほどお話しのように、予算関連公共料金のほかにいろいろの民間料金等もございますが、これはただいま通産当局中心として電気ガスの査定が行われておる最中でございますから、それがどの程度になるかはなかなか軽々に申し上げかねるのでございますが、そういうものを全体として来年度六・四%という目標は合理的なものであり、またこれは達成可能なものと確信を持って、いまその実現のためにわれわれとしては万般の施策を講じておるということをお答え申し上げておきたいと思います。
  9. 武部文

    武部委員 それならば、五十五年度物価上昇見通しがわれわれの計算と全く違う、しかも根拠がない、こういうことを具体的な例を挙げて政府とやりとりをしてみたいと思います。  先ほど申し上げますように、一万八千円という数字、十何万という数字、それは確かにあなたがおっしゃるようにとり方が違う。しかし、考え方としては、公共料金というものを考えると、これは予算関連だけではないのであります。いまあなたがおっしゃったように、電気ガス、そのほかすでに三月一日から値上げになりましたけれども航空運賃、あるいはこれからかかるであろうNHKの受信料私鉄運賃公立高校授業料、こう数えてくると数え切れないほど予算関連以外の公共料金値上げがあるわけであります。この影響の方が予算関連項目よりも確かに大きいのです。そのほかに地方公共団体の許認可にかかわるところの公営家賃とかあるいは水道料とか各種の手数料とかそういうものは計算し切れないほどあります。われわれは手元にある資料において、こういうものが物価に与える影響計算をしてみたわけであります。もちろん申請どおりにはいかないかもしれませんが、申請どおり認められたと仮定いたしますと、消費者物価を二・五五%、この中には先ほどあなたがお述べになった〇・八の予算関連項目値上がりも含んでおります。それを含んでわれわれの計算だけでも二・五五%という数字が出てくるのであります。しかもこれは直接効果だけでありまして、この上に重要なことは間接効果であります。とかくいままで国会の論議は間接効果ということが抜きにされるきらいがあったと私は思うのですが、そういう意味で、先ほど申し上げるように物価上昇の折からというような流行語がはやってくる、これは明らかに公共料金に便乗したところの値上がりが起きてくる可能性がある、そのことを意味しておると私は見ておるのでありますが、ここであなたにちょっと申し上げたいことがあります。  かつて大平総理がこういう発言をしておるのであります。これは大平内閣物価姿勢として私は非常に重要だと思うので、このことをあなたに申し上げてみたいと思いますが、たしか去年の七月ごろだったと思います。大平総理日本商工会議所の講演で次のように述べています。原油値上げによるコスト上昇分は末端までそのまま反映される、政策的に修正を加えて抑え込むようなことはしない、こういう発言をしておるのであります。これは大変重要なことであります。これは安易にコストアップ分販売価格に全額転嫁してもよいというようなお墨つき総理みずからが業界に与えたような印象を受ける、こういうふうに当時大変物議を醸したのであります。  ちょっと手元計算をして持ってまいったものがありますが、いよいよこれから三月期の決算が発表されるわけでありますが、日本石油は過去最高の記録を出す、そういう予測であります。年七回も値上げをしてきた日石は、三月決算予測経常利益で約三百億円が見込まれるというのであります。民間のある有力な調査機関によりますと、この三月期の決算で増収、増益率ベストテンの第二位にゼネラル石油、三位に興亜石油、四位に日本石油、十位に三菱石油と、ベストテンのうち実に元売石油会社が四社も顔を並べておるのであります。これは明らかに先ほど総理が述べられた発言を全くそのまま受けた業界姿勢であると言っていいと私は思う。  このように総理みずからが安易にコストアップ分販売価格転嫁してもいいんだというような姿勢をとっていることは私はまことに遺憾にたえない、そう思うのです。総理みずからがそういう姿勢だから、この重大な時期にすべての企業がみんな値上がり販売価格転嫁をして利益をむさぼっておる、こういうことになると思うのですが、企画庁長官はこの大平総理日本商工会議所における発言、この政治姿勢、このような点についてどうお考えだろうか、これをお伺いしたい。
  10. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 私も予算総括質疑の間、総理と御一緒で、ここで皆様の御質問をお受けになった答弁ぶりをずっと聞いております。まあ商工会議所発言の前後の脈絡、いわゆる文脈がどういうふうにあったのか私は存じませんが、総理はやはり非常に物価問題を重視しておりまして、いま御指摘のような安易な考え方でないということは、私はもう十分承知をしておるわけです。特に便乗値上げについては非常に厳しい。ただ、いま問題になっておる電力ガス等については、これは非常に重要な基礎的なエネルギーサービスでございますから、そういうものを確保する必要性、私もその必要性の認識において総理と全く同じでございます。したがって、原価主義という法律に定められた主義を曲げることはできない。しかし、そういう原価主義に立ちながらもコストの各項目を厳正に査定をして、厳しい企業の合理化を行ってぎりぎりのところで料金の値上げを認めなければならぬ、またそれをほかの方に便乗して値上げすることは一切厳しく監視しなければならぬ、また調査してそれについて対策を講じていかなければならぬ、こういう考え方であることは私は十分うかがい知ることができるわけでありまして、その点で先ほども申し上げたように、一連の施策をごらんいただいても物価問題が最重要事項であるという考え方に基づきまして今回の予算修正等の折衝も行われたものと私は承知をいたしております。総理が決して安易な物価についての考え方を持っておるものとは考えておりません。これからも厳しく内閣として全体で努力していく考えでございます。
  11. 武部文

    武部委員 総理発言をかばっておられるようですが、私はそうは思いません。少なくともこの大平総理発言は、物価抑制を望む国民に対して背を向けた発言だ、このように言わざるを得ません。原油値上げに伴うやむを得ないこの値上げ分というものは国民もある程度の負担を負わなければならぬだろう、この点については国民も了承されると思うのです。しかし、企業努力によってコストアップ分をできるだけ吸収させて、インフレマインドを国民から払拭させるのが政府の責任であるはずです。  去る二月二十日、日経新聞に、電気料金の「値上げ率を仮に五〇%とすると、製造業全体では半期で本年度上期の経常利益額の約一九%に相当する約八千四百億円の負担増になる」、こういう記事が載っておりました。これは住友銀行が計算をしたものでありますが、企業はこの電気料金の値上げ分は必ず製品価格に転嫁をしてくることは間違いない、あるいは便乗値上げをするものも出てくるだろう、こういうふうに思わなければならぬと思うのです。それを何とかして抑えなければならぬ、便乗値上げをやめさせなければならぬ、便乗値上げは厳重に監視するということをおっしゃっておるわけですけれども先ほど発言に見られますように、片一方ではそういうことを言いながら、片一方では、もう仕方がない、末端の価格まで転嫁してもやむを得ぬのだということを総理がじきじきに言うようなことでは、これは同じ内容のものを全然違ったところでは全く相反するようなことを言っておる、これは私としては絶対に納得できない。そのことをあなたと論議しても仕方がありませんから……。  そこで、五十五年度の六・四%をあなたは必ず守る、確信を持ってと、こういうことをおっしゃったわけですが、それならば次の数字はあなたはどのようにお考えになるか、これをひとつお伺いをいたしたい。  先ほど私は電気ガス値上げのことを申し上げましたけれども間接効果は直接効果とほぼ同じ数字である、これは物価委員会において企画庁もお認めになった数字であります。仮に申請どおり電気ガス値上げが認められるといたしますと、電気で一%、ガスで〇・五%の直接効果が生ずるのであります。しかも、この数字先ほどの二・五五%の中に入っておりますが、間接効果はまたこれと同じものである。間接効果電力で一%、ガスで〇・五%。ほかにもたくさん間接効果が出てくるわけですが、この二つだけをとってみます。そうすると、二・五五%という公共料金の直接効果電気ガス間接効果一・五、これだけ加えても実に四・〇五%になります。これはもう数字ですから間違いない。二・五五%の内容もここに明確に出ておりますが、これにたった二つの間接効果電気ガスを加えただけでも、実に四・〇五%の物価上昇になるのです。そういう数字はもう間違いなく出てくる。  しかも、さらに重要なことは、先ほどあなたがちょっとお触れになったけれども、五十四年度から五十五年度にかけてずれ込むげたの問題であります。このげたの問題は、同僚の松浦委員がこの後詳細に内容を取り上げますので、私はこの内容については触れません。しかし、このげたというのが物価の上昇の中に占める影響は非常に大きいのであります。冒頭に私が申し上げましたように、この二月は七・六%、三月はひょっとすると八%の上昇になるかもしれません。そうなってくると、確実に五十五年度にずれ込むげたは三%を下らぬのであります。これは事実がはっきり証明するのであります。いずれ一カ月か一カ月半の後には、げたが何%であるかということは明白に出てくるのであります。隠すことができないものであります。そうなってくると、われわれが計算をしておるように、仮にこれが最小見積もって三%といたしますと、五十五年度物価上昇は、四月から公共料金が上がったといたしますと、ここですでに七・〇五%という数字になる。仮に端数を切り捨てにいたしましても、七%という数字は紛れもなく出てくるのです。そのほかに、地方の公共料金その他の諸物価値上がりというものが後メジロ押しに控えておる。この数字から見ても、政府が言う六・四%というものは間違いなくうそだ、そんな数字は一体どこに根拠がある、このように言わざるを得ない。私の言っているととが間違いならばひとつ反論をしていただきたい。
  12. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 その点で、先ほどちょっと申し上げたように、武部委員松浦委員その他でいろいろ御苦心をされて、物価問題、特に来年度見通しについて細かに研究をされたことは、私は心から敬意を表しておるわけでございます。  そこで、ちょっと私もメモをとってきたわけですが、社会党さんのいわゆるげた、これは厳密に言うと二・九%というふうに私は承知しておりますが、この中に野菜等の季節商品、これは本当に去年は大変な暴落であったのが、ことしは暴騰、特に台風、長雨その他による異常な上がり方でございますので、これをずっと続くというふうにいわゆるげたに扱われることはいかがであろうか、これが第一でございます。そこで、われわれは春野菜早期出荷とか繰り上げ出荷とか、あるいはそのころになると野菜の需給関係は正常化する、こういうふうな見通しを持っておるものですから、  一応この一・二%を取りますと一・七、こういうことになるわけでございます。これはわれわれのやり方と違うのですが、社会党さんの一つの見識ですから、社会党さんの方式でわれわれとしては考えさせていただいたわけでございます。  そのほかに、いま御指摘のいわゆる予算関連あるいは日本航空等の航空料金は年度内に上がりましたものでございますから、また来年度の二・五五というものの中にもこれが入っておるように伺いましたので、これは一種のダブル計算ではないかということから〇・一、これをさらに引きますと一・六、これがいわゆるわれわれのげたという考え方ではなかろうか、こういうふうに考えまして、この一・六といま御指摘の二・五五を足しますと四・一五、こういうことになろうかと思うのであります。そこで、われわれの目標の六・四に対するマージンを見ますと、二・二五ぐらいのマージンになる。社会党さんではこれを〇・九五ぐらいしかもうマージンはないというふうな御計算をしておられるのですが、〇・九五に対してわれわれの方では二・二五ぐらいのマージンというふうに考えております。  詳しいことはあるいは政府委員からまた申し上げますが、私のところでは一応そういうふうなことで、社会党さんのこの御努力と、そしてまた、物価問題に対する一般の関心を非常に高めていただいた点については心から敬意を表するのでありますけれども、いまわれわれは、六・四は達成不可能だとか虚構であるとか、そういう考えは毛頭持っておりません。努力することによってこれは達成できるものだ、こういう信念のもとに進んでおるわけでございます。
  13. 武部文

    武部委員 先ほどから申し上げますように、げたというのはごまかしのきかぬものであります。これは必ず数字となってあらわれるものであります。事実が解決するわけであります。  いまお聞きいたしておりますと、われわれのげたの数字から一・二%引いて計算をするとおっしゃった。何か野菜を引いておるように見えますが、これは全く誤りだと私は思います。あしたの日から野菜が大暴落するものではないわけでして、農林大臣がどこか千葉県の方へ行って大根を抜いてみせたって、それは簡単に落ちるものじゃない。そういうことを考えると、一・二%というものをこの中から引くなんということがそもそもこの計算の魔術であって、われわれはそんなことは絶対に起こり得ない、このように見ております。このげたの問題は同僚の松浦委員に譲りますからこれ以上のことを申し上げませんが、そういうふうな計算から見ても、明らかに六・四%という数字はまさしく低いどころの話ではなくて、後でも申し上げますが、五十五年度消費者物価予測からははるかに低い、遠い数字だ、このように言わざるを得ません。  しかも、私は公共料金ということについていま触れてきたわけでありますが、実は公共料金という言葉は外国語にはないのであります。日本特有のものであります。この言葉が初めて登場いたしましたのは、三十五年の九月三十日に公共料金抑制を打ち出したときの消費者物価対策という閣議了解事項の中に初めて出てきたのであります。定義としては、法律によって定められた価格や料金、あるいは国、地方公共団体によって許認可される価格や料金、こういうふうに言われまして今日まで来ておるのであります。しかし、一般の国民から見ると、これはまことに広義に解釈されるのであります。よく考えてみますと、一般の人が考えておる公共料金というのは、概念は、単に国や地方公共団体のものだけではなくて、一般の人人の社会生活に強い関連性を持つ財やサービス、そういうものはみんな公共料金だ、このように国民の側は考えておるのです。そう考えなければならぬのです。したがって、公共料金に入っていないからといって灯油やプロパン、そういうものが値上げをすれば国民は大騒ぎをするわけです。私立学校授業料や民営の家賃や地代が上がっても大騒ぎをするわけです。これは消費者にとってみれば、灯油代やあるいはプロパン代やそういう値上げ電気ガスと何ら変わるところがない、国民生活にとって何ら変わるところのない商品であります。そういう物の考え方物価対策をやってもらわなければ困る、われわれが指摘するのはここであります。  私立学校の授業料の値上げも国公立の授業料の値上げも何も変わらない、国民の側から見れば同じものであります。むしろ灯油以外の方法で暖房しておるところの家庭の方が少ない。プロパンガスの場合も、都市ガスの家庭よりもはるかに多いのです。都市ガスは千四百万世帯、プロパンガスは千九百万世帯が使っておるのです。そうなってくると、プロパンの値上げはまさしく国民にとっては公共料金です。灯油だってそうですよ。そういうふうに見なければならぬ。私立学校の場合でも、大学は圧倒的に私立が多い。しかも内容を調べてみると、次のようなことがわかってきました。高校の場合でも三分の一は私立です。こういった日常生活と切っても切れない公共性を持つものは公共料金の仲間に入れて計算をしなければならぬ。そうすると、私が申し上げるような五十五年度の上昇は公共料金だけでも二・五五%のような低いものではなくなってくるのです。もっと高くなってくるのです。これは私の先ほど計算には入っていないのです。私立大学の入学の納付金はことしは七割の大学が値上げをするというのです。平均一四・一%、これは文部省の発表です。関西大学の工学部などは一挙に九〇%も値上げをするわけです。入学納付金です。東京都の調査によりますと、公共料金の消費支出に占める割合、これは約一五%程度です。さらにこういった公共的性格の強い品目、いま申し上げましたような公営家賃であるとか手数料であるとか、そういうものの支出割合というのは大体一一%、これで合計二六%になるわけです。  こういうものを含めますと、いま長官がここで確信を持って五十五年度物価上昇は六・四%、こういうことをあなたはおっしゃったけれども、まさしく至難のわざだ、いや全く達成不可能な架空の数字だ。あなたは虚構ということに対して反論されましたけれども、われわれは虚構の数字だ、こう言わざるを得ないのですが、重ねて経企庁長官の見解を承りたい。
  14. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いま御指摘のいろいろの要素を無視しておるわけでは決してございません。特に公共料金だけではなくて、そのほかに、それに準じあるいはそれと同様に重要ないろいろの問題について最近次々に値上げが行われようとしておるではないか、そういう問題についてどう考えておるか、こういう御質問でございますので、この点については政府委員からお答えを申し上げたいと思います。
  15. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答え申し上げます。  国が関与するもの、さらには国が認可するものということで、国が関係しております公共料金についてはその範囲が決まるわけでございます。そのほかに、地方公共団体の決めるものがあるわけでございます。  いま御質問のありましたその他の料金につきまして、公共料金に準ずるものがあるのではないかというお話でございますが、たとえば灯油のようなものになりますと、確かに民間のものでございますが、国民生活に非常に関係の深いものでございますので、これにつきましては、昨年来のOPECの値上げの過程、それが実際の価格に影響していく過程におきまして、便乗値上げを防止するということについて最大限の努力をしてきているわけでございます。さらに、たとえば私学の授業料等になりますと、これは国の私学助成の強化という形で、学生さらには父兄の負担ができるだけ軽減されるような方向で努力もしておりますので、その価格、料金の内容、その性格によりまして、必要なものは国においてもできるだけの努力をしていくということをしているわけでございます。
  16. 武部文

    武部委員 企画庁長官と私の見解は食い違うようであります。さらに電気ガスの問題を後で申し上げますから、ちょっとこの問題を保留をしておきたいと思います。  ここで労働大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、先ほど五十五年度物価見通しについて経企庁長官とやり合ったのでお聞きになったと思いますが、この六・四%の見通しというものはとても達成できそうもない、こういう点はおわかりいただけたと思います。  そこで、五十三年一月以降の消費者物価、これをずっと振り返ってみますと、賃金は物価を引き下げる要因として働いておったというふうに見ることができると思います。賃金が物価を引き下げる要因になっておった、このように見てよかろうと思います。それは五十一年以降の賃上げ率を見ると明白であります。五十一年八・八%、五十二年八・八%、五十三年五・九%、五十四年六%、大変低いのであります。しかもこれは定昇込みの賃金であります。勤労者は所得の低いのにじっとがまんをして耐えてきた。そして来年度、五十五年度は非常にインフレが心配されるのであります。いま春闘で要求されておる最低八%、これはぎりぎりの要求だというふうに見てよかろうと思いますが、その前提はあくまでも五十五年度物価上昇を六・四%としておる、このように見てよかろうと思います。五十年代の実質賃金は大体平均的に見て二%程度アップをしてきました。それがずっと続いてきたわけであります。いまの物価の状況から見ますと、物価上昇は二けたに達するのではないかというふうにわれわれは大変心配をしておるわけでありますが、こうなってくると、八%ぐらいでは実質賃金は確実にマイナスになる、したがって勤労者の生活はダウンをする、こういうことは間違いなかろうと思います。こうなってくると、GNPの半分以上を占める民間最終需要が消費の減退によって大きく抑えられて、そうして景気を冷やして経済成長の足を引っ張る、こういうことになるおそれが多分にある、このように見なければならぬと思います。  そこで、労働大臣としては、今後の賃金のあり方というか、賃金の引き上げはどうあるべきか、どういう点が望ましいか、インフレで勤労者の生活が実質低下してもやむを得ぬというふうにあなたはお考えなのか、それとも六・四%という政府の公約が達成できない、それ以上のインフレになったならば第二春闘をやれというお考えか、一体どういうお考えか、この際ひとつ労働大臣の見解をお尋ねいたしたいと思います。
  17. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 わが国の経済は着実に拡大をしてきておりまして、非常に暗い不景気のどん底から立ち直ってきたというふうにここ二、三年見てきておるわけでございます。その間に、労使の非常に広い視野からながめた自主的な良識的な話し合いによりまして賃金が決定をされてきたということにつきましては、私ども先生と理解を同じゅういたしておるわけでございます。  そんな中で、特に最近の物価の上昇の動きにつきましては、非常に心配をいたしておるわけであります。しかし政府といたしましては、先ほど経済企画庁長官から種々御答弁がございましたように、経済の安定成長それから物価を安定させていくということにつきましては最大限の努力をしてきておりまして、目的の数字以下に抑えるように政府を挙げて努力をいたしてきておるところでございます。今後ともその努力をさらに重ねまして、心配をしておりますことは先生も私どもも同じように心配をしておるわけでありますけれども、そういった方向に向かわないようにあらゆる手を打っていくということで今後も努力をしていかなければいかぬ、こう考えておるところでございます。  賃金問題は、御理解をいただいておりますように、どのようなところに持っていくかということは、これは政府が干渉する立場にもなければ、また所見を申し述べる立場にもないわけでありますけれども、そういった一連の経済運営の動きの中で、労使がまさに国民経済的な視野に立ちまして、それぞれ良識を発揮して良識的な話し合いを進める、これはやはり労使双方が今日の物価上昇ということに対しては十二分の警戒をしていく立場に立たない限り、そういう方向に向かわないわけでございますから、政府自身も努力をいたしてまいりますけれども、自主的な労使の話し合いが着実に進められていくように心から期待をしておる、こういういまの立場を御理解をいただきたいと思うのでございます。
  18. 武部文

    武部委員 これも仮定のことでありますからこれ以上の論議はできませんが、六・四%という政府の公約が崩れた場合、賃金要求というものは新たな段階を迎えるであろう、このようにわれわれは見ておるのであります。八%最低要求というのはあくまでも六・四%が前提の要求だろう、このように見るし、もし賃金がダウンということになれば、いま申し上げるような経済成長の足を引っ張る、そういう役目を果たす、この点も十分注目をしていかなければならぬ、このように思うのであります。  さて、時間の関係で次に、具体的な電力ガスの問題についてお伺いをいたしたいのであります。  いま国民は、電気料金、ガス料金の値上げに大きく注目をしておるのであります。電力八社の改定申請が電灯五五・六六、電力六八・四三、平均六四・四二というかつてない大幅な申請が出されて、いま通産省は査定にかかっておるということのようであります。先ほども述べましたように、この申請をそのまま認めたといたしますと、直接、間接の両効果は、電気料金で二%を超す、ガス料金で約一%、この二つだけで実に三%も物価を押し上げることになるわけです。これはいままでのわれわれの論議の中で明白に出ておる数字であります。東京では標準世帯で電灯で月に約二千円、ガスで同じく月に二千円、合計、年額で約五万円近い支出増になるわけであります。標準世帯でそうです。  具体的には、時間の関係内容を詳しく説明することはできませんが、すでにわが党が独自で試算を行った資料を通産省なりあるいは経済企画庁に提出をいたしております。これは八社平均で三三・五六%まで圧縮できるという結果を発表したわけであります。具体的にコンピューターを使って詳細に検討した結果、八社いずれもその内容について具体的に圧縮できるという資料を持っておるのであります。すでに提出したとおりでございますから、御検討いただいておると思いますが、この内容を見ましても明らかなように、燃料費の価格のとり方については明らかに大きな水増しがある、国民は納得できるものではない。同時に、事業報酬についても、核燃料や建設仮勘定の著しい増加、これはわれわれとしては認めるわけにはいかない、しかも八%という数字根拠が薄い、そういう中から七・五%という事業報酬率を出したわけであります。その他、修繕費や減価償却の定額のあり方、人件費、購入電力料やあるいは配当、そういうものについて、水増し分と思われるぜい肉を極力落としてこのような数字を算出したわけであります。結果は三三・五六%まで圧縮できる、こういう数字を出したわけであります。  わが党の試算について、われわれは必ず国民の合意を取りつけられる、また国民の大多数が納得できる数字だと思っております。したがって、五十五年度経済運営にとってやむを得ないものにしろ、最も妥当な値上げ率だと確信をしておるわけですが、これについて、国民注目の査定の権限を持つ通産省、あるいは物価担当及びこの調整機能を発揮する経済企画庁長官として、わが党のこの三三・五六%という圧縮幅についてどのような見解をお持ちか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  19. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先般、ここにおられる社会党松浦先生が大将になりまして皆さんお見えになりました。いまお話しの三三・五六%の値上げ案に関しまして詳細に承りました。原価の諸要素に関しまして種々の前提条件を置きまして、一つの試算として出たものと了解してございます。  わが方といたしましては、この電気料金の値上げのいま査定に入っておるわけでございますので、大変貴重な資料といたしまして、これを参考にしつつ、あくまでも原価主義の原則にのっとりまして、厳正かつ慎重に対処したいというふうに考えてございます。
  20. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ただいま通産大臣からお答えいたしましたように、せっかくの社会党さんのおつくりになりました各項目、大変貴重な参考としてわれわれも拝聴いたしております。いずれ通産省から御協議をいただきましたとき、この社会党さんのお考えその他を十分考慮に入れながら、協議をしてまいりたいと考えております。
  21. 武部文

    武部委員 衆議院の物価問題特別委員会は、この電力ガスの社長十三人及び消費者、学識経験者十五名、実に合計二十八名にも及ぶ参考人を国会にお呼びをいたしまして、具体的に電力各会社八社、ガス三社、この内容について検討を加えました。先ほど申し上げますような燃料費や修繕費やあるいは事業報酬や配当や、いろいろな問題について疑問の点をそれぞれ問いただしたわけであります。その結果、水増しその他の条件が明らかになってまいりました。こうした中で、多くの疑問点が出ておるわけですが、今日これほど国民に大きな不安を与えておる電力ガス値上げ申請については、慎重な上にも慎重な査定が必要だと思うのです。  新聞報道のあるものを見ますと、何かこの八日ごろに通産省は査定を終わるかのようなことが報道されておりますが、私はよもやそういうことはないと思うのです。いまこれほど重要な問題になっておる電力ガスの問題を、そんなに簡単に査定されるものとは思っておりません。しかも、四月一日の実施などということは何もいまここで考える必要はない。厳重に査定の上にも査定をし、慎重な上にも慎重に、との私どもの申し上げた具体的な各項目にわたる水増しその他の条件について査定をしながら、国民の納得のいく数字を示してもらわなければならぬ、このように思うのですが、現在通産省におけるこの査定の作業はどのようになっておるか、これをお伺いしたい。
  22. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 電力ガスの査定につきましては、先生御高承のとおり、電力関係が公聴会を終わったばかりでございます。それから、東京電力と北陸電力につきまして実施いたしております特別監査が間もなく終了いたします。それからガスにつきましては、三月の四日、五日が東京瓦斯、それから大阪瓦斯も大体同じような日取りで、五日には大体公聴会が終了すると思いますので、それを待ちまして査定に入るということでございます。ただ、完全に公聴会等が終わりました後から査定をするという立場ではございませんで、従来から基本的な考え方につきましてはヒヤリングを行っておりますし、査定の考え方もまとめつつございますけれども、いま申し上げたように特別監査あるいは公聴会等が終わった段階で本格的な作業に入る、こういうことでございます。
  23. 武部文

    武部委員 重ねてお伺いいたしますが、四月一日に間に合わせるようにいいかげんな査定をしたりするようなことは絶対にしない、先ほどから何遍も申し上げますように非常に大きな影響を持つ電気ガスの料金問題でありますから、慎重な査定をこれからも続けて、四月一日を実施時期とするようなことはまだ決めていない、そのように理解をしてよいかどうか、重ねてお伺いいたしたいと思います。
  24. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 慎重の上にも慎重に査定するのは、お説のとおりだと思います。
  25. 武部文

    武部委員 それならば、次に、ナショナルミニマムについてお伺いをいたしたいのであります。  家庭用の従量電灯料金、この第一段階は現在百二十キロワットアワーであります。それ以下を、福祉型の色彩を強くして料率を極力抑制すべきであるというふうにわれわれは考えるのであります。第三段階、これは二百一キロワットアワー以上ですが、それについては逓増型を強めて料率を傾斜すべきだ、このように考えるわけです。  従来の三段階区分のうちで百二十キロワットアワーを一つの区分としておるわけですけれども、百二十キロワットアワー設定のときと今日の状態は全く様子が変わっておるのであります。東京における現在の標準世帯の使用量は百九十キロワットアワーであります。そういうことから考えると、生活の実態が全然今日では変わっておる。したがって、この際、生活実態と合わせるために第一段階の上限を百四十ないし百五十キロワットアワー程度引き上げるべきだという主張をわれわれは持っておるわけでありますが、これについて通産省の見解をひとつお伺いいたしたい。
  26. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 電灯料金の三段階制につきましては御高承のとおりでございまして、私どももそれなりの対応をしようという気持ちでございます。  それから、いま御指摘のございましたいわゆるナショナルミニマム的なもの、これを百二十キロワットアワーの数字を変えたらどうかという御指摘でございますが、私どもは、先生の御指摘になりました家庭用の電気製品の使い方がずいぶん変わっているじゃないかということにつきましては、そのとおりだというふうに認識いたしておりますけれども、一方、家庭用の電気製品につきまして、かなりなスピードでいわゆる省エネルギー型の機器の開発が進んでおりますので、百二十キロワットアワーの使い方につきましては、実質的にはそう大きな変化はないのではないか、こういうふうな考え方を持っております。  若干具体的な例を申し上げて恐縮でございますけれども、現在普及いたしております家庭用電気製品のうちで六〇%ほど普及率のあるものを選択いたしましてそれを合計いたしますと百二十キロワットアワー、こういうことになりますので、その考え方は変える気持ちはないわけでございますが、御指摘のとおり第一段階目の料金をできるだす低減いたしまして第三段階目に逓増料金を採用するという考え方は、私どももそういう考え方に立ちたいと思っております。ただし、第三段階目の料金は、御高承のとおり主として中小企業の方方がお使いになる分でございますので、第一段階を余り極端に圧縮いたしますと第三段階目へのはね返りが大きくて、それによって迷惑を受けられる方々もたくさん出てくるということでございますので、考え方としましてはナショナルミニマムをできるだけ尊重するという考え方に立ちながらも、第三段階目の料金との調整を図るというのが今回の私どもの基本的な査定方針だということでございます。
  27. 武部文

    武部委員 確かに私が申し上げた二つのものが相互関係を持っておることは間違いありません。しかし、弱者救済という立場からも、現実離れをしておる、百二十キロワットアワーというものを少なくとも百四十ないし百五十まで引き上げることはできないことじゃない、このようにわれわれは思っています。したがって、福祉重点というか弱者救済、そういうためにも、ぜひこのナショナルミニマムについては査定の際に十分考えていただきたいということを要望として申し上げておきたいと思います。  私は、原価主義の問題やあるいは石油価格の政策についてお伺いをいたしたかったのですが、そういう時間がございませんので、最後に郵政大臣と電電公社の総裁にお伺いをいたしたいのであります。  郵政大臣は、去る二月二十二日の閣議で大平総理から電話料金の値下げについて指示があったというふうに記者会見で述べておられるようでありますが、そのような指示があったでしょうか。
  28. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  御指摘の閣議の際には、主として官房長官からでありましたが、総理御自身も御発言がございまして、単に郵政省だけではございませんで、各大臣に対して、その省庁にかかわる公共料金について引き下げるものがありはしないか、これを検討せよ、こういうお話がございました。そこで私の方から、いまの郵政省の関連の電電公社の電話料金について、電電公社が検討を進めておる料金の値下げについての現況をきわめて簡単にその場で御報告した、こういうことでございます。
  29. 武部文

    武部委員 報道によりますと、夜間電話料、深夜電話料、この二段階及びその具体的な時間別、距離、そういうものまで新聞に報道されておりますが、そういうことを大臣は御説明になったのですか。
  30. 大西正男

    ○大西国務大臣 一つの例示として、その場で発言をいたしました。
  31. 武部文

    武部委員 例示としてお話しになったということを言われますが、この例示は、あなたは三百五十キロということをおっしゃっておるようですが、私ども承知するところでは三百五十キロなんていうキロ数はないように思うのです。三百二十キロの誤りじゃないかとも思いますが、いずれにしても、今日は、夜間電話料の割引は午後の八時から午前の七時まであります。あなたは何か午後の十時から翌朝の午前六時まではまた別な割引をやるとかいうような御説明をされたというようなことが新聞報道にあるわけであります。まことに結構なことでありまして、別に割引に反対をしておるわけじゃないのですが、電電公社の総裁は、この大臣の指示に基づいていま電電公社が作業に入っておる、検討しておられる、このように理解をしていいのかどうか、この点をちょっとお伺いをいたしたい。
  32. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答えします。  夜間料金の割引につきましては、先般の閣議で総理大臣のお話の前から私ども関係方面と打ち合わせの上、何らかの夜間割引程度のものはやってみようじゃないかということの議が調いまして、昨年の暮れごろからもう関係方面と研究を重ねております。郵政大臣からも一遍検討してみろという指示はございました。その程度でございまして、まだ今後、これは認可料金でございますので、しかも実施するに当たりましては全国一斉にやらなくちゃなりません、それには同時に切りかえられる電子式の施設を発注し、また工事もしなければなりませんので、どんなに急いでも暮れごろにならないとなかなか実現はできないと思っておりますが、その間には十分ひとついい案をつくってみたいと思って目下検討を進めているところでございます。
  33. 武部文

    武部委員 重ねてお伺いいたしますが、それは現在の夜間電話料、新たに深夜電話料の割引と、こういうような二段階制、したがって時間も先ほどちょっと申し上げたように二段階、料金の率も、現在夜間は四割、それ以上のものを深夜電話料として割り引くとか、そういうようなことを念頭に置いて作業を進めておる、そのように理解をしてよろしいかどうか、いかがでしょうか。
  34. 秋草篤二

    ○秋草説明員 現行夜間割引の料金は午後八時から朝の七時まで、四割でございます。したがいまして、これを改善するとするならばもう一歩踏み込んで新しい時間帯を設ける、あるいはまたもっと国民の喜ぶ割引率を考えるということでございますから、おっしゃるとおりでございます。
  35. 武部文

    武部委員 これで終わりますが、この値上げラッシュの続く中で一つでも値下げをしたいという、大平総理は何か大平内閣の目玉の一つにしたいぐらいに思っておられるかもしれませんが、これは目玉でも大平総理の目ぐらいのもので、開いておるのかつむっておるのかようわからぬ、大したものじゃないと思うけれども、それでも値下げについては非常にこれはいいことだと思います。したがって、前向きでぜひ検討をして、できるだけ早くこの夜間割引あるいは深夜割引料の引き上げを実現するように御努力を願いたい、そのことを申し上げまして、時間が来ましたから私の質問を終わります。(拍手)
  36. 田村元

    田村委員長 これにて武部君の質疑は終了いたしました。  次に、松浦利尚君。
  37. 松浦利尚

    松浦委員 いま同僚武部委員から基本的な問題について質問がありましたから、私は具体的な問題について質問をいたします。  正示経済企画庁長官が言われるように、まさに物価の非常事態だという発想についてわれわれもそのとおり受けとめておるわけであります。そこで、この問題に入ります前に、大蔵大臣に具体的な数字の問題として数字をお尋ねをいたします。  それは、昭和五十五年度の来年度予算を編成をするときの経済見通しでありますが、これを見ますと、来年度雇用者所得の伸びをほぼ七・三%と見込んでおられるようであります。そうすると物価の上昇を六・四というふうに計算をしておられるわけでありますから、その問題について具体的にお尋ねをいたします。  いま大体平均家族構成で年収が二百九十万から三百万程度とこう言われておるのでありますが、ほぼ課税する金額、課税対象金額と言っていいと思うのでありますが、二百四十万、この二百四十万の税金は幾らになるのか、そのことをまずお教えいただきたい。それから、雇用者所得が七・三%伸ぶというふうに想定をしておるのですから、機械的に七・三というふうに計算をしてみますと、この課税金額というのは二百五十七万五千円に引き上がります。それに対する課税金額、その二つについてお教えいただきます。
  38. 高橋元

    高橋(元)政府委員 計数のことでございますから、私からお答えさせていただきたいと思います。  申しわけございませんけれども、いま手元に二百五十万円というのがございますが、それでよろしければ申し上げさせていただきたいと思います。二百四十万はちょっと計算に時間をかしていただきたいと思いますが……。
  39. 松浦利尚

    松浦委員 それでは私の方から申し上げましょう。二百四十万の方の課税は三万六千九百円ということになります。二百五十七万五千円に七・三雇用者所得が伸びた場合計算をしますと、四万九千円ということに相なります。そうしますと、この人は七・三%上がったことによって税金を一万二千百円よけいに納めるということになるわけであります。さらに、事務当局で恐らく計算をしておられないでしょうから私の方からもう申し上げますが、二百五十七万五千円の人は、政府経済見通しで六・四%物価が上がるとこう想定をしておるのでありますから、この人がインフレによって目減りする分というのは、二百五十七万五千円に物価上昇六・四を掛けますと、十六万三千円のインフレによる目減りということになるわけであります。事務当局の方後で計算してください。私どもの一方的な数字にならないようにぜひ計算をしておいていただきたいのですが、そうしますと、この十六万三千円のインフレの目減り分と、五十五年度に対して税金を負担する増加分一万二千百円を足しますと、この人は十七万五千百円の負担増ということになるわけであります。ところが、雇用者所得が七・三で、この人は実際に五十五年度で想定される名目所得の伸びは十七万五千円ということになるわけであります。計算をいたしますと百円の負担増、こういう計数になるわけであります。ですから、この経済見通しで出されておる数字そのままで仮に雇用者所得が七・三伸びて物価が六・四という想定で計算をいたしますと、実際名目七・三上がったように見えますけれども内容的には全く上がっておらない、むしろマイナスという現象が出てくるわけであります。そのことはぜひ大蔵大臣理解をしていただきたいと思うのであります。  ですから、そういった意味で言いますと、今度のこの経済運営というのは国民に対してきわめて厳しい内容を持った、しかもがまんをしてもらうという前提に立った予算であり経済見通しだと言わざるを得ないのであります。ですから六・四%というのはまさに政府にとってはただ単なるかけ声の政策目標ではなくて、きわめて厳しい公約に等しい政策でなければならぬというふうに理解をするのであります。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 その点について長官の見解を求めたいと思います。
  40. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ただいま御指摘の点はわれわれも非常に重要な問題と心得ております。松浦委員おいおいと御質問をしていただくと思いますが、結局物価を安定させる、六・四におさめる、これがもうあらゆる問題の大前提でございまして、そういうことを達成することによって、経済の成長も国民の生活の一応の安定ということも図られるきわめて重要な目標であることは、御指摘のとおりに心得ておるわけであります。
  41. 松浦利尚

    松浦委員 大蔵大臣、いま私が申し上げたことは、これはもう冷厳な事実であります。言葉ではあらわせられない、数字ですから、修正のできない数字を申し上げたのでありますが、大蔵大臣の考えを承っておきたいと思います。
  42. 竹下登

    ○竹下国務大臣 冷厳な事実として受けとめた場合、まさに六・四%というものは国民全体に対し厳しい目標数値を示したものである、そのように理解して私どもも対応しなければならないと考えております。
  43. 松浦利尚

    松浦委員 それでは、先ほど武部委員が言った問題に触れて議論をさせてもらいたいと思うのでありますが、先ほどげたは一・二だ、こういうふうに言われました。ところが、私どもがすでに経済企画庁の方に試算をお渡ししておるケース一に該当するのですね、一・二というげたは。それはどういう状態かというと、昨年の十二月の消費者物価が一月、二月、三月とも全く変更なく横ばいをする、もう昨年の十二月で消費者物価の上昇は凍結するという計算をして、げたは一・二という数字になるのです。これは過去の数字の積み上げですから、冷厳な事実です。これは長官といえども否定できない事実であります。それは大体ケース一に該当するのであります。ですから、いま六・四%というのはきわめて重要な政治目標であり、公約だということで両大臣が言われましたから、具体的にお尋ねをいたします。  来年度は六・四%物価が上がりますよということだけは、もう政府見通しておるのですから、物価は六・四上がるということは否定できないと思うのですが、先ほど武部委員が言われたように、それでは今年度から来年に繰り越されるげた——俗にげたというのは亡くなられた池田総理が使われた言葉でありますけれども、このげたが幾らになるかということは、来年度物価の政策目標に重大な影響を与えるのですね。すでに、今年度予算内容を見ましても〇・八、予算に関連する物価だけで〇・八押し上がる。負担は一家族当たり一万八千円、これはもうすでに予算委員会で御報告になったとおりであります。ところが、それ以外に、指摘をいたしましたように電気代とかガス代、航空運賃、NHK料金、私鉄運賃等が上がっていくわけですが、先ほどちょっと三月から上がったものもあるとかなんとか言われましたけれども、私たち社会党の試算の中には、電力が上がる波及効果というのはゼロに見ておるのです。直接的な影響が〇・九、波及効果は全くゼロで計算をしておるのですから、その分を影響の中に入れますと二・五五にはおさまらない。本来は三ぐらいにいくところなのです。しかし、厳しく見て二…五五という数字が実は予算関連も含めてあらわれてきておるのです。  ですから、ただ単に季節商品がどうのこうのと言われますけれども、大臣はもう御存じでしょうが、今度の値上がりをした最大の原因というのは、野菜が暴落をした、ですから農家の人が作付をしなかった。また暴落をすると大変だというので、大体暴落した翌年はサイクルからいって作付面積が減るのです。そして、その作付面積が減ったところに、御承知のように暴風が来たり冷害があったということで、非常に生産がダウンした。ですから、いま盛んに政府が言うような形でフードウイークとかなんとかを設けて、野菜をこうしようしようとしておりますけれども、そう簡単に下がるという見通しはない。これは端的に言うと農政の失敗なのです。台風が来たからじゃない。暴落をさせたということに対する農家のつくり控え、生産控えという現象が、いま政治のツケとして回ってきておるだけなんです。ですから、あなたが言うように簡単にマイナス一にするというような条件はないのです。その点について簡単に、どういうふうに御理解なさるか、もう一遍お聞かせください。
  44. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 この野菜の問題、松浦委員の御指摘は、去年が暴落をしておる、それに対して農民の方々の、野菜農家が当然の一種の自衛措置といいますか、そういうふうに言われますが、私はやはり、あのちょうどわれわれ選挙で忙しい最中の台風でございましたが、それが大変な被害を与えた。これは全国的に後で対策を講じたわけでございます。そしてそのときも何とかこれをリカバーするための施策はないかということでいろいろやったのですが、なかなか簡単にいかなかったことは事実であります。その後、物価問題もきわめて重要性を加えてまいりましたので、農林水産省におかれてもいろいろな施策を講ぜられたのでございますけれども、これは要するに葉菜というのですか、葉っぱの出ておる白菜、キャベツ、そういうものを中心としてのこの事後処理といいますか、これもなかなか簡単にいかない。そこで最近の野菜緊急対策は春野菜の繰り上げ出荷、それから契約栽培中のキャベツの出荷促進、輸入、こういうふうなことによっていまこれを一生懸命に督励しておるわけです。ですから私は、やはり一つのサイクルというよりは異常な天候被害、そういうものによって野菜の価格は異常に高値である。そういうものがげたとしてそのまま進むという見方、これが社会党さんの一つのげたの中の大きな重要な要素なものですから、先ほどお答えいたしましたように、この分を一応除いて野菜の需給関係が正常化するときの問題として考えていくのが素直ではなかろうか、こんなようなことで言っておるわけでございます。また後、お答えを……。
  45. 松浦利尚

    松浦委員 これは結果ですから、先ほど武部委員からもお話がありましたように、これはどちらが正しいかは結果論なんです。ところが、野菜野菜と盛んに言われますけれども総理府の統計によりますと、野菜のウエートというのは二百八十なんです。野菜というのは一万分の二百八十がCPIに対するウエートなんです。ですからいまの上がってきておるものは季節商品だけに限定をしてしまいますと、政策を失敗すると思うのですね。ですから野菜だけを台湾から何か輸入して、要するにげたを少なくするために値下げすればいいんだという目先のことだけでは物価問題は解決しないと思いますね。ウエートがいま言いましたように二百八十ぐらいしかない、小さいのですから、その点はひとつ物価担当大臣ですから見誤ってはおられないと思うのですが、その点はどうですか。
  46. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 仰せのとおり野菜をいま急に出して値を下げるということだけで問題が解決するなどとは考えておりません。たびたび申し上げますように需給関係を正常化する、これが私どもの政策の根本でございますから、そういう正常化の方向に向かって長い目で政策を進めていきたいと考えておるわけであります。
  47. 松浦利尚

    松浦委員 それで、この六・四がどうだ、げたがどうだということをここで議論しましても、私たちはげたが三だ、公共料金が二・五五上がる、そうすると来年度はもう政策の幅としては一ありませんよ、それほど厳しいのですよということを言いたいために社会党はあの試算を公表したのです。その点はひとつ間違えないように御理解いただきたいと思います。  そこで、労働大臣がおいでになっておりますから、労働大臣にお尋ねをいたしますが、ここにこの前閣議で決まりました「新経済社会七カ年計画」フォローアップ昭和五十四年度報告が出ております。これは前もって労働大臣にお話ししてありましたから。これを見ますと、一番最後の付表三で「消費者物価上昇の要因試算」というところがあります。これは実質賃金の関係でありますが、この消費者物価上昇の要因試算によりますと、卸売物価要因、それから需要要因、公共性料金要因、季節商品要因というのがずっとプラスに連動してきておりますね。ところが、そのプラスの連動しておる部分をマイナスでカバーしておるところがあるわけですね。そのマイナスになっておるところが賃金コスト要因なんです。賃金コスト要因というのは五十三年の一月以降ずっと一貫してマイナスに作用して、いま正示大臣が言われるように、去年、ことしと消費者物価がきわめて安定をいたしました。昨年は四・九を下方修正して四・七にまでしましたね。その最大の理由というのは、実は賃金がマイナスに連動して、上がる要因を吸収してくれたから安定したのですね。その点、労働大臣お認めになりますでしょう。
  48. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほど武部委員にもお答えをいたしましたように、一昨年から昨年にかけて労使の非常に良識的な話し合いによって賃金決定がなされてきた、このように評価をしておるわけでございます。
  49. 松浦利尚

    松浦委員 それから新経済社会七カ年計画、もうこれは全くたな上げ的な要因になっておるわけですけれども、しかしこの内容を見ましても、労働分配率というのはずっと下がっておるのですね。確かに不況になったときにはこれは上がります。しかし、きわめて生産性が高い段階では日本の労働分配率が異常に下がっておるのです。ここに出ておるのです。ちゃんと文章に書いてある。「労働分配率は傾向的に低下することとなった。」こう書いてある。ですから、賃金が上がるから物価が上がるというふうに言われておった原則というのは、政府から出されたこの資料で見る限り、率直に言ってもう今日ではあり得ない。むしろ労働大臣が言われたように、労働者が良識的に働いてくれたから、労使が良識的だったからというよりも、労働者が賃上げをがまんして、CPIが上昇する要因を吸収してくれたからこそ今日の物価安定があるんだ、そういうことが政府の統計で明確になっておると私は思うのです。労働大臣、そのことも否定されませんでしょう。
  50. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 いろいろな要因がございますからとらえ方でございますけれども、先生御指摘のように、労使が非常に良識的な話し合いを進めてきたということについては、私は高く評価をしたいと思います。
  51. 松浦利尚

    松浦委員 そこで、長官にお尋ねをいたしますが、この六・四という物価上昇先ほど厳しく受けとめておられる両大臣からお話がありましたから、それで結構だと思うのですが、しかし問題は、私たち社会党が試算をすると、六・四におさまりそうにない。あなた方はおさまる、こう言う。おさまらなかったときの政治責任というのは、この際明確にしておかなければならない。六・四%で約束をして、しかも今度の経済見通しによると、予算関係では雇用者所得が伸びるように計算はしてあるけれども、実質横ばいかダウンするような計算になっておる予算なんです、今度のは。そして六・四を国民の前に公約をして、それを一生懸命強調する。労働者にはこれからも良識的に働いてくれと労働大臣が言っておられる。とするなら、六・四%が仮に実現しなかったときの政治責任というのは、私はこの際明確にしておく必要があると思うのです。当然だと思うのですが、長官はどう思われますか。
  52. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 申し上げるまでもなく、日本は自由主義経済でございまして、先ほど武部委員にもお答えいたしましたように、あらゆるデータを収集いたしまして、経済の成長目標卸売物価消費者物価の騰貴見込みというふうなものを算定をしてお示しをしておるわけでございます。したがって、われわれとしてはこれは相当の努力の成果というふうに考えておりますけれども、しかし、やはり計画経済ではないところに若干いま御指摘のような不安要因があるわけでございます。  ただ、五十四年度が当初目標の四・九を四・七に下方修正して、それの実現をいま一生懸命やってぜひとも実現したい、こういう意気込みで進んでおることもたびたび申し上げておるとおりであります。六・四についても、冷厳にこれを受けとめて、その実現に全力を注いでおる、こういうことは申し上げたとおりであります。われわれの気持ちをひとつ一貫したものとしておくみ取りをいただき、とにかくいま万一達成できないときの政治責任はというふうにわれわれとしては申し上げるよりは、ぜひともこれはその実現に向かって全力を尽くして実現を図るべき目標である、こういうふうに理解をさせていただきたいと思っております。
  53. 松浦利尚

    松浦委員 大蔵大臣に具体的にお尋ねしますが、いまこういうふうに所得が低下——低下とは言えませんが、目減りをしていっておるというのは、昭和五十三年度から物価上昇は見込むけれども、それに伴う物価調整というのは全く行っておらないのですね。一時、戻し税がありましたけれども、それ以降物価調整減税というのが全くないわけですよ。そのことがこういう所得のアンバランスを起こしてきておるのです。ですから、財政再建の第一年だという号令はわかりますけれども、そのツケを国民の側に回す今年度予算でありますから、もし六・四%が——それは一生懸命やっていただきたい、六・四に入ることをわれわれも期待をしますけれども、もし結果的に六・四に入らなかったときには、当然今度は物価調整減税等は補正予算で行うべきだ、そういうふうに思うのです。それぐらいの政治感覚を持って経済運営をしていただかないと、財政運営をしていただかないと、これは目標でございますから、結果的に年末にまた修正をして、物価は八%でしたという経済見通し修正だけで終わってしまう。ですから、国民の側も冷厳に受けとめておるのですから、そのことの実現を期待しておるわけですから、もし六・四%を超えたときには、八%あるいは社会党が言うように九%台にいったときには、少なくとも物価調整減税はします、それぐらいのことは約束した上でやらないと、国民の側にだけツケを回すということについては国民の大変に大きな批判を受けるということになりますから、それぐらいのことは財政担当大臣として断言をすべきだ。実現できないときば物価調整減税をやりますというぐらいのことは言えませんですか。
  54. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはいま経済企画庁長官からもお答えがありましたように、ことしのごとき物価上昇を四・九に見込んでおったものが四・七の下方修正の中で、何としてもその中に、この三月の問題が非常にきつい問題でございますけれども、おさめなければならぬということで各般の施策を展開しておるところであります。そうして五十五年度には六・四%という目標を目指して諸般の政策を行うわけでございますが、物価調整減税というようなものは、せっかく財政再建一歩を踏み出したと言われる今日、まず念頭に置くべきものではないではないか。そういう事態が起こらないような経済運営にまず万全の努力を行うべきである。そうして、わが国の所得税の体系そのものを見ますと、言ってみれば、課税最低限は大変に高く、そして有業人口というものはフランスと並んで少ないという情勢の中で、それらのものを検討する段階にはいまないというふうに考えております。  ただ、そのような気構えでやれという鞭撻に対しましては、先ほど佐々木通産大臣松浦さんが大将でいらっしゃったと申しましたが、本当に傾聴する意見としてそういう意見を踏まえながら、われわれはやはりきちんとした経済運営をやっていかなければならぬというふうに考えております。
  55. 松浦利尚

    松浦委員 大臣、くどいようですけれども雇用者所得が七・三伸びて物価が六・四上がって、数字的には〇・九実質所得が上がるように見えるけれども、実際に計算をしてみると横ばいかマイナスなんですよ、標準家庭で、標準所得者で。そういう犠牲を強いておる今年度経済見通しであり、予算なんです。その前提が崩れるときには物価調整減税をしてでも国民のそういった苦労に、がまんをしたことに対しては返すんだというぐらいのそういう政治の姿勢がなければ、またぞろ六・四が狂ったから勘弁してくれでおしまいになるような気がしてならないのですよ。だから、端的に言うと六・四に入ればいいわけでしょう、入るように努力をする、こう言っておられるのだから。むしろ来年度、五十五年度見通しを誤ったときにはそれぐらいのことはやるんだ、そのことを国民の前に明確にした上で取り組まないとしり抜けになるということが私は非常に恐ろしいのです。もう一遍開かしてください。
  56. 竹下登

    ○竹下国務大臣 その松浦さんの鞭撻は肝に銘じて経済運営をやっていきたい。しかし、物価調整減税というものをいま念頭に置くような財政状態にはないということに対しても御理解をいただきたいし、それらの目標達成のためには、その鞭撻の声にこたえて誠心誠意経済運営をやってまいりたい、このように考えます。
  57. 松浦利尚

    松浦委員 それでは、もう時間がありませんから労働大臣。今度は各労働組合の要求がほぼ八%ということで出そろっております。そうすると、いま言いましたように、六・四の前提が崩れても、いま覚悟はそういう気持ちでやるということですけれども国民に向かって、六・四%が仮に崩れたときには物価調整減税するとは財政再建の前提もこれあり、言えません、こういうことであるとすれば、当然生活を守るという立場で第二春闘といいますか、年末に物価の経過を見た上でのそういう動きが始まるのだということは、労働大臣としては推定はできますでしょう、想像はできますでしょう、その点はどうですか。
  58. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 あくまでも賃金問題は労使の自主的な話し合いに属することでございますので、第二春闘のごときものは考えられるかどうかということについても、所見を申し上げることは控えさせていただきたいと思いますが、実質賃金を確保してまいりますことは勤労者の生活を維持、改善をしてまいりますために非常に大事な課題である、このように行政の立場で考えておるわけでございます。  そのためには、何といたしましても、基本的に物価を安定をさせるということが最大の条件でございまして、したがいまして、先ほど来いろいろ御答弁申し上げておりますように、政府全体が所期の目的を達成するように物価対策に最重点を置いて取り組むということでいま鋭意努力をしておる最中でございます。物価調整減税といった方向につきましても、いま大蔵大臣からお答えがあったとおりでございますが、一方ではやはり財政事情が非常に厳しいという事情にも置かれておりますので、当面はとにかく物価を安定させるということを経済企画庁長官中心にいたしまして、政府全体の課題として取り組んでまいりたい、こう考えておるところでございます。
  59. 松浦利尚

    松浦委員 経済企画庁長官、これはやはり労働者のがまんも、良識も限界があると思うのですね。先ほど言いましたように、一貫して賃金がマイナスに作用したから消費者物価が安定をしてきた。ですから、逆に言うと、労働者に、労使におんぶされてきたのですね、良識という言葉で言われておるけれども。しかし、率直に言って、そういう六・四%という前提が狂ってきたときには二つの方法がある。一つは、物価調整減税をするか、もう一つは、いま言われたように、自主的にそれぞれの立場で第二春闘をやるもよし、あるいはそれぞれの立場でやられるでしょうけれども、しかし問題は、そういう事態が起こらないようにこれからの経済運営をしていく意味では、この六・四%というのは本当に厳しいのだ。ですから、この六・四%を仮に守り得なかったときには、私は、大変なことになるという、言葉は不穏当ですから申し上げませんけれども、これからの経済運営なり財政運営に非常に重大な影響を与えるということだけは間違いありません。  ですからこの際、労働大臣、経済企画庁長官それから大蔵大臣に、それぞれもう一遍国民に向かって本当に六・四におさめることができるのだ、それじゃ具体的にどういうことがあるのかということまではもう時間がありませんからお聞きはいたしませんが、もう一遍ひとつそれぞれ御覚悟のほどを聞いた上で、物価調整減税をしてもらいたかったのですが、また改めてそのときには議論することにして、そのことを最後にお聞きをして、終わりたいと思います。
  60. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 この問題は非常に重要でございまして、物価対策特別委員会等でも、これからもたびたび皆さんといろいろ御意見を交換しなければならぬと考えております。    〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 御案内のように、アメリカにおきましても、新しい国内政策の一番の重要事項はインフレ対策である、しかもそれは、賃金問題についてどういうふうにしていくかというふうなことが議論されております。きょう松浦委員が御指摘のように、あらゆる問題は物価目標達成ということを中心にしてこれからの春闘その他も展開されていくのであるから、きわめて重大な問題であるという認識のもとにこれを努力をしなければならぬ、全く私も同感に感じております。  日本の労使の関係が、先ほど労働大臣からもお話しのように、目先の賃上げだけではなくて、全体の労働者の皆さんの福祉と定年の延長その他の問題を含めて、きわめて良識的にいままでずっとりっぱなパフォーマンスを上げられたことについて私は心から敬意を表し、したがってまた、われわれは担当する物価政策というものの重要性を肝に銘じてその達成のために全力を挙げなければならぬということを心得ております。これをぜひ、内閣打って一丸として各省大臣の方々と力を合わせ、また国会その他民間の方々とも一致結束して達成するように努力をしたいという決意を重ねて申し上げて、御支援、御協力をお願いする次第でございます。
  61. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 石油の問題を初めといたしましていろんな要因から物価は上昇ぎみになってきているということにつきましては、これを抑制するのが今日の内閣の最大の課題であるというふうに考えまして従来も取り組んできておるところでございます。政府としては物価対策に最善の努力をする。経済界に対しましては、こういった機会に便乗値上げをしたり、あるいはこういう時期に特別の利益を求めるといったような態度にならないように自粛を求めていくことが非常に大事だと思いますし、同時に、労使の自主的な話し合いの中でも、国民経済的な広い視野に立って話し合いが進められるように心から期待をいたしておるわけでございまして、それぞれがそれぞれの立場で全力を挙げて物価を抑制をしていくという方向に向かって努力をしていかなければなりませんが、わけても、政府が先頭に立って物価抑制のあらゆる努力をしていくということをこの機会にお誓いをいたしたいと思います。
  62. 竹下登

    ○竹下国務大臣 御鞭撻、数々いただいたわけでありますが、重ねて申し上げますが、政府としてもそれこそ厳しい自己努力を重ねながら経済運営をやっていきたい。具体的な一つといたしましては、昨晩十時にアメリカの通貨当局と同時発表いたしました、いわゆる円相場の安定を図ることがわが国経済の持続的発展を確保する、すなわち持続的発展ということは物価の安定ということがその中に強く含まれているという認識のもとに、双方がそのような発表をいたしましたことも、弾力的運営の厳しい態度のあらわれの一つである、このように御理解をいただければ幸いである、このように考えます。
  63. 松浦利尚

    松浦委員 終わります。
  64. 田村元

    田村委員長 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  次に、大原亨君。
  65. 大原亨

    ○大原委員 最初に、いま最後に大蔵大臣がお答えになりましたが、昨日、日銀と大蔵省が協力いたしまして円防衛措置について若干の手を打たれたわけであります。いまいろいろ議論があるわけですけれども卸売物価は二月には年率で二〇%、三月には三〇%にいくだろう、こういうふうに言われておるわけですね。物価と円安の悪循環を断ち切るということで防衛措置をしておられる、国内的な原因とも関係しておるわけですから。そうすると、一ドルを幾らの円相場を目標にしていま政策を打ち出しておる瀞という点について最初にお答えください。
  66. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは大原さん、いわゆる円相場がどこが適正かということに対しましては、通貨当局者としてそれを公にすることだけは差し控えさせていただきたいという答えに尽きると思います。
  67. 大原亨

    ○大原委員 一ドルが二百五十円というのは安過ぎるということで、いままでの議論からもそういう点はかなり政府は意見を述べたわけであります。  そこで、では第二の質問ですが、今回の措置で大体円の価値が、円の相場が安定するものかどうか。もし安定しないとするならば、やはり悪循環を断ち切るような次の措置が必要だと思うのですが、それについてはどういうふうにお考えですか。
  68. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一つだけ例で申し上げますと、先週末のニューヨークが二百五十一円八十五銭、本日の終わり値が二百四十八円ちょうどでございます。一時、二百四十七円八十銭という、一時ごろの時間がございましたけれども。したがって、これは直ちに効果がこのように出ましたと言うほど私も肩怒らす考えも全くございませんけれども、やはりこの問題につきましてはきわめて冷静な立場でその推移を見守っていなければならぬ。したがいまして、次どうなったらどの手を打つかということも含めて、やはりこれは慎重であらねばならぬと思いますので、具体的な事項についてのお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  69. 大原亨

    ○大原委員 では本論に入りますが、お手元に配付いたしました終わりから二枚目の資料ですが、これは厚生年金保険積立金の目減りの額についての試算をしてもらったわけでありますが、やはり資金運用部の資金は莫大な厚生年金の積立金に依存いたしておるわけです。しかし、その積立金がインフレによりまして目減りをするということになりますと、そうすると年金保険の財政や保険料率に決定的な大きな影響を及ぼすわけです。積立方式は成立しないわけです。  私が試算を要求いたしまして出した資料は、前の石油危機のときですが、昭和四十八年から、四十九年、五十年、五十一年というふうに試算をいたしてみますと、運用利回りを超えて物価が上昇いたしますと、運用利回りを含めても積立金が莫大な目減りをするわけです。その四年間に二兆五千四百二十六億円ほど目減りをいたしております。しかし、この計算も、これは年金の計算の仕方としては確実ではないのであって、運用利子による資金の収入を当てにいたしまして積立方式は成立しておるわけですから、運用利回りを超えた物価上昇分を目減りとして計算するというのは、最小限度少な目な計算であるわけです。  それで、私は思うのですが、積立方式を採用いたしまして、資金運用部で財政投融資といたしまして政府が運営する場合には、絶対的に目減りをいたしました分だけは運営をしておる大蔵省政府がやはり責任を持つ、穴埋めをするというふうな方式をとらないと、年金の長期計算はできない。これから慢性インフレ、構造不況の時代に入るわけです。石油危機を背景といたしまして国内的な原因が加わってくるわけですが、そう思うわけです。これは学者の中でも、本委員会における公述人の中でも、そういう意見を言った人があるわけです。ですから私は、そういう点について、目減り分については、一般財源から穴埋めをしながら積立方式を運営するということでなければ成立しないのではないか、こう思うわけです。つまり、年金制度の最大の敵はインフレです。厚生省は長期計算をいろいろするのですけれども、これが崩れたらば全然だめになってしまう、こういうことになります。  目減り分の穴埋めについて私が意見を申し上げましたが、大蔵大臣、厚生大臣の御意見を聞かせてもらいたいと思います。
  70. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この年金積立金目減り額でございますか、大原委員の御指摘のとおり、五十四年は見込みでございますけれども年度別のものが厚生省からの試算で出ております。そうして、四十八年以後五十一年までの消費者物価が著しく上昇したということが大幅な減価を生じたものであるということは私も理解できるところであります。  ただ、この年金積立金の目減りでも、されば国庫で補てんしたらどうだ、こういう御意見でございますが、年金積立金のいわゆる目減り分というものを国庫で補てんするということは、結局国庫負担をさらにふやすということになるわけでございますので、現在でも諸外国に比べては国庫負担がかなり高い水準であるし、また厳しい財政事情にありますので、今日はきわめて困難なことであるとお答えせざるを得ない状態であります。
  71. 大原亨

    ○大原委員 だから、いろいろな審議会、社会保障制度審議会も社会保険審議会も、積立金の運営については被保険者、労働者、これが最低限度参加しなければいけない。この前、米沢委員でありましたか、質問に対しまして、四つの理由を挙げまして、積立金の自主運用については大蔵省は反対だと言って、昔からと同じことを答弁されまして、厚生大臣も大蔵省に遠慮いたしまして答弁しておりました。しかし、これは後で時間を見まして、時間があれば議論いたしますが、少なくとも労働者があるいは被保険者が参加いたしましてやらなければ、この積立方式は首尾一貫しない。こういうことについて共済年金との考え方を配慮しながらやるべきだ。これはひとつ後回しにいたします。  そこで、従来からずっと大きな政治課題となっておりまして、国民が大きな関心を持っておる問題ですが、厚生年金の六十五歳開始につきましては、公的年金閣僚懇談会も二転、三転いたしました。制度審議会も答申を出しました。そして厚生大臣の私の総括質問、一般質問に対する答弁も二転、三転をいたしております。したがって、私へのその後の、他の委員に対する答弁もあいまいです。  そこで、その際にも申し上げておきましたが、厚生年金を六十五歳から開始するという問題については、いま、これはナショナルセンターも全部含めまして、全部雇用との関係で了承できない。これは非常に強い意見を持っていることは御承知のとおりで、自民党三役も一つの案を出したわけです。ですから、この厚生年金の六十五歳の開始について、厚生大臣の、厚生省の、あるいは政府の——官房長官、だれがやってもよろしいから、政府の統一見解をここでひとつやってもらいたい。
  72. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 去る二月十八日の本予算委員会におきまして先生からお尋ねの支給開始年齢について、改めて見解を申し述べたいと思います。  まず第一に、厚生年金の支給開始年齢の問題につきましては、さきの社会保険審議会及び社会保障制度審議会の答申を踏まえまして、政府としての対処方針を検討いたしました結果、今回の改正では支給開始年齢の引き上げに着手することについては見送ることにいたしたわけでございます。ただ、この問題は、両審議会におきましても、今後避けて通れない事柄であることは共通の認識とされておるところでございまして、次回の財政再計算期において真剣に取り組むべき課題であると考えまして、その趣旨の規定を設けることにいたしたのでございます。  厚生年金保険法による老齢年金の受給資格年齢につきましては、現段階において具体的な処置を想定しているわけではなぐ、この規定は、次期再計算期において諸般の事情を総合的に勘案し、その時点で必要と考えられる処置を講ずべき旨を明らかにしたものでございます。  なお、次期財政再計算期において所要の処置をとるという場合におきまして、両審議会の指摘いたしております雇用との関連やいわゆる官民格差の問題につきましても十分考慮する必要があると考えておるものでございます。
  73. 大原亨

    ○大原委員 二月十八日の私の質問に対しまして、つまり、今度の厚生年金改正要綱で決めまして、附則四十六条で規定しております「厚生年金保険法による老齢年金の受給資格年齢については、この法律の施行後に初めて行われる厚生年金保険の財政再計算の時期に、所要の改定措置が講ぜられるべきものとする。」というふうにある「所要の改定措置」について、野呂厚生大臣は「「老齢年金の受給資格年齢については、」ということが前段に出ておるわけでございますから、現在六十歳、それを六十五歳に改定していきたい、こういう措置を講じたいということでございます。」と、もう一回同じようなことを答弁いたしております。そうして、今度は三回目の答弁にいまのような後段の点をつけたわけであります。  そういたしますと、前の二回にわたりまして答弁いたしましたことは取り消しだということになりますか。
  74. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 取り消しということよりも、いま御答弁申し上げたことが政府としての考え方でございます。つまり、訓示規定におきまする所要の措置につきましては、現段階では具体的な処置の内容やスケジュールを想定しておるものではないということが第一点。第二点は、次期財政再計算期において諸般の事情を総合的に勘案しながら、支給開始年齢についてどのように対処するかを判断いたしたい、こういうことでございます。
  75. 大原亨

    ○大原委員 それでは、またもう一回お尋ねいたします。  次の再計算期の昭和六十年には、あるいはいままでの慣例によると五十九年になるかもしれないが、ほかの問題はともかくとして、六十五歳の年金開始については出す、こういうことですね。
  76. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、諸般の事情を総合的に勘案して支給開始年齢の問題にどのように対処するかを判断するということでございまして、六十五歳とかあるいは何歳とか、そういう内容をいま具体的に考えておるわけでもございませんし、またスケジュールもいま想定していない、その事態においていろいろな諸条件というものを勘案しながら、それによって支給開始年齢をどういうふうに扱うかということを判断したい、こういうことでございます。
  77. 大原亨

    ○大原委員 それでは、あなたが第三項の最後にお答えになりましたが、両審議会でも指摘をしている点ですね。雇用とか官民格差の問題の解決、それらの問題が解決しない限りは六十五歳だけをつまみ食いするというようなことはない、こういうふうに理解してよろしいか。
  78. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 解決ということが前提条件なのかどうか、問題は総合的にいろいろな情勢を判断しながら、さらにまた審議会の御意見等も判断をしながら、その時点に立ってこの問題について対処したいということでございまして、解決が前提条件であるとかどうとかという、そういう条件つきのものでないと考えております。全体の中でいろいろの条件というものがどのような形で進められておるか、そういうものを判断しながら、支給開始年齢についてもどのように取り扱っていったらいいか、その時点で判断すべきことではないだろうかと考えるわけでございます。
  79. 大原亨

    ○大原委員 官房長官、八〇年代は人口構造が急速に変わってまいりまして、相対的にも絶対的にも高齢化社会に向かうわけですね。そういう国民経済の中で労働力をどういうふうに活用するかという問題があるわけです。そういう問題について政府全体のはっきりした方針を持たないでこの年金改定はできないということなのですが、いままで昭和二十九年から昭和四十九年まで二十年間かけまして、厚生年金の開始年齢を五十五歳から六十歳にしたわけですよ。しかし、振り返ってみますと、この年齢が、大きな企業を中心に五十五歳でなおかつ定年制が続いておるのが四一%あるわけですね。経過期間を置いてやりましても、過去のことを見てみますと、日本においては依然として定年制という一こんな制度は外国にはないのですよ。後で質問しますが、ないです。定年制という制度があって、それで五十五歳を定年にしておる。そこで雇用が終わりだというところが大企業を中心に四一%もあるわけですね。少しも改まっていないのに、ここで、つまみ食いというふうに言っているわけですけれども、突然六十五歳年金開始を出したから非常に大きなショックを与えたわけです。そうして、全体についてはそういう政策についての言うなれば指導性を持っていない、指導力を持っていない、推進力を持っていない厚生省が突然出したものですから、非常に大きなショックを与えた。しかし、いま質疑応答をいたしてみますと、いろいろなことを述べておるけれども、これから再計算期に当たってこれらの問題が解決されるという保証はないのではないか、こう私は思うわけです。  いま雇用保障の問題と、それから官民格差の問題を含めまして議論があったわけですが、官民格差もスローガン的に言ったのではいけない。それぞれ年金のいままでの経過があるわけですから、それらを踏まえながら具体的にどうするかということが必要なんですね。そこで私は、年金の開始、年金権の発生と雇用保障のあり方について根本的に考え方を変えなければ、八〇年代のこの政策、政治というものはできないのではないかというふうに思うわけです。  人事院総裁がきょうはお見えになっておるわけですが、国家公務員の定年制の問題について人事院総裁は書簡を出されて、それに基づいて国家公務員の定年制をやろうとしておる。あるいは地方公務員も右へならえしようとしておる。昭和六十年に六十歳になったならばやめるのだ、そういう考え方の定年制をとっている国が外国にありますか。そしてこれが八〇年代の雇用保障のあり方として間違ってはいないかどうか。議論が出された当時とは、今日の情勢は急角度に違っておるのではないか、こういう点を私は指摘したいと思うのですが、総裁のこの書簡を出されました御見解を聞きたいと思います。
  80. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 国家公務員の定年制に関しましては、いまお話がございましたように、総理府の方からこの問題は国家公務員の身分上の重要な問題であるので、人事院の見解をひとつ聞かしてもらいたいという書簡が参りまして、これを受けて鋭意検討を重ねてまいったところでございましたが、その結論がまとまりましたので、昨年の八月、総理府に対して人事院の見解としてこれを示すということにいたしたわけでございます。  その内容につきましては、いろいろございますけれども、一番骨子になりますのは定年年齢の問題でございまして、これは六十歳ということで六十年にこれを実施に移していくことが適当であろうという結論を示したわけでございます。  いま専門家の大原先生が御指摘になりましたように、この問題は大変むずかしいことでございます。雇用の問題、また身分保障の問題、あるいは今後における高年齢社会への推移との関連ということで、いろんな角度から積み上げて考えていかなければならない。いままでない制度を取り入れるのでございますからして、それだけによほど慎重な配慮をしませんと将来に悔いを残すという観点に立ちまして、人事院といたしましても慎重に検討を重ねてまいったところでございます。  そこで、現在におきます公務員の人員の年齢別構成の問題、あるいはまた各省庁がやっております退職管理、なかんずく勧奨退職の実態はどうなっておるかというような点、それから将来の雇用問題なり公務員の退職後の身分の問題というようなものをいろいろ総合的に勘案をいたしました結果、民間の状況、民間との均衡というものも十分考慮をいたしました結果、現時点におきましては六十歳、六十年実施ということが一番妥当な線ではないのかというふうに考えた次第でございます。  なお、外国の諸制度等についてもいろいろ検討をいたしました。国によりましてはその定年の考え方というものもいろいろございます。年齢自身もわれわれが考えておりますものよりもさらに後の時点、すなわち六十五歳とか七十歳とかというようなことをやっておるところもございますし、アメリカのごときむしろ定年制というものは廃止すべきであるという線が出ておるところもあることは、われわれ自身といたしましても調査をいたしました結果知っております。知っておりますが、総合の勘案の結果、現時点におきましてはそういう点を踏まえましたところで六十歳、六十年実施というのが一番妥当なところではないだろうかということで、意見を申し入れをいたしたような次第でございます。
  81. 大原亨

    ○大原委員 総務長官、国家公務員について六十歳定年法というのをこれを受けて出される、こういうことでありますね。しかし、私が外国に例がないと言ったのは、六十歳になりましたら全部やめるんだぞ、こういう定年はないのですよ。これは高齢化社会において、六十−六十五歳の労働力をどう活用するかという大きな課題を抱えているわけです。  そこで、私は端的に質問しますが、いま野呂厚生大臣も統一見解で御答弁がありましたけれども雇用と官民格差の点を考えながら六十五歳開始について総合的に判断するんだということでありますね。うんと言っているからそうでしょう。この国会で法律で公務員の定年を六十歳にしておきますね。そうしたら今度は、昭和六十年までに六十五歳を考えているんです、厚生大臣も官房長官考えておられるんです。その関係はどうなるんですか。官民格差の問題が出てくるじゃないですか。どうなんですか。——わからないですか。つまり、いま六十歳の定年で六十歳になったならばやめる、こういう制度をつくっておきましたら、昭和六十年までに再計算をする機会が厚生年金、一番大きな年金にあるんですが、そこで六十五歳に決めるといたしますね。そうしたら六十と六十五の間は、官民格差という点から見ても、国家公務員、地方公務員は六十歳、共済年金の開始も六十歳、こっちは六十五歳にすると言えば、官民格差の解消はできぬじゃないですか。わざわざできないような、敷居を高くするような法律をつくるんですか。アメリカで七十歳定年制というのは、七十までは年齢を理由として雇用上の差別をしないという法律をつくっているんだ。だから、若い人が減って労働力人口も高年齢になるわけですから、そのときを展望してもこの問題はおかしいのじゃないか。官民格差という点をどういう関係で定年制の問題について判断をしてやろうとしているのか、こういう点についてお答えください。——じゃ、順序を逆にしましょう。  自治省も出すという話ですが、後藤田自治大臣はこの点についてはどういうふうにお考えでありますか。国家公務員に右へならえするという意味でありますか、あなたは。後から答えるのですか、先に答えてもいいでしょう。(後藤田国務大臣「いや、それは後がいいです」と呼ぶ)
  82. 田村元

    田村委員長 人事院総裁、先にしますか。
  83. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 事はいささか専門的になっておりますので、便宜私から申し上げたいと思うのですが、これは私の立場から申し上げるのが適当であるかどうかは若干疑問でございますが……(大原委員「簡単にしてください」と呼ぶ)簡単に申します。  いま六十五歳その他ということが問題になっておりますのは、無論雇用の保障というような点の関連もございますけれども、それ以上にやはり現下のいろいろな深刻な問題としての保険財政とのにらみ合わせという問題があろうかと思います。したがいまして、厚生年金なりなんなりというものが支給開始年齢が将来六十五歳になる、それと定年の問題とはおのずからやはり別問題ではないだろうかという認識を私としては持っておるわけでございまして、厚年が支給開始年齢が六十五歳になるから直ちにそのときに民間の定年が六十五歳になるという保証は、いまのところではないのではないだろうかという感じを私は持っております。  ただ、これから非常に急速に高齢化社会が進行してまいることでもございますので、それらの経過を見まして、公務員につきましても、六十年というのが五年後においていかにも非常識なものになるというような事態が出てまいりますれば、これはやはり放置はできません。したがいまして、それらの点は、今後の全体の推移を十分見守りながら、これに対して改善を加える措置を考えなければならぬという事態があれば考えてまいりたい、そういうことでございます。
  84. 大原亨

    ○大原委員 人事院がそういう見解で返答されたということは、私は非常に遺憾なことであると思う。政府の政策はばらばらであるということですね。もう話にならぬと私は思っております。これは結局は、昭和六十年におきましても開始年齢の問題は片がつかないと私は思っている。六十歳になったら全部やめるというふうな定年制を外国ではしいてないですよ。そんな制度はないわけです。ましてや日本は五十五歳で四一%定年をやっておるわけです。そうすると、年金と雇用との間にギャップができるから、非常に大きなスタグフレーションの中において高齢化社会で不安を持っているわけですよ。そこをどう解決するかという一体的な方針なしにこれからの政治をやることはできないと私は思っております。だから、国家公務員の定年制についても答えられぬでしょう。自治大臣の答弁も右へならえだから答えられぬでしょう。雇用と年金は関係ないじゃないですか、あなたの方の議論は。そうしたら、厚生大臣の答弁も実現できないということになりますよ、官民格差の解消を言っているのだから。そういうばらばらな、でたらめな政策で、この国民生活をどう安定させるかという大きな八〇年代の課題にこたえることはできないと私は思っておるのです。  もう一つ、ついでに私は言っておきますが、現在、上級公務員は、言うなれば同級生が次官になりますと、そうするとあとの局長は全部外へ出て天下っていくわけです。それはそうですよ。五十三歳か四歳ぐらいでもう仕事をやめてあと年金でやれと言ったって、そんなことは無理でしょう。だから当然にはみ出て外郭団体に天下るわけですよ。宇野管理庁長官のところへいくわけです。それで理事や重役のポストがどんどんふえる。それはそうしなければしようがない。しかし、たとえば上級職の諸君も六十歳以上ということになれば、外務省は六十三、六十五がおるのだから、大学の教授は六十三がいっぱいおるわけですから、それは十分経験を生かして働けるのですから、少なくとも最低六十までは保障するということで、まずそういう上級職について適材適所の方針をやれば、定年に対する考え方を変えることになるのじゃないですか。あるいは行政改革の問題や天下りの規制の問題が実現できるのじゃないですか。  私ども局長に聞いてみますと、それは六十から六十一、二までやらしてくれれば天下る必要はないと、皆局長は言っておるよ。五十三、四でやられたら、働くことをやめるわけにはいかぬでしょうから、そこで外へ出ていかなければならぬということになる。天下りの問題と深い関係でしょう。管理庁長官、そういうことを考えたことがありますか。
  85. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いま御指摘の点は、行政改革三人閣僚会議におきましてもしばしば話題になっております。それで民間からもさようなことを指摘されまして、やはり五十一歳、働き盛りそこそこで一人次官が出るとほかがやめるということはおかしいじゃないかということに関しまして、われわれといたしましても一つの議論であるというので行っておりますが、これに対しましても、新陳代謝が早くなるのだとかあるいは若返りがあっていいのだとかいろいろございまして、まだそうした問題に関する結論は得ておりませんが、しかし役人そのものはどうすればよいか、いわゆる役人としてのライフサイクルはいかがあるべきかということに関しましては、今後もやはり検討をしなければならない重大な問題ではないか、かように考えております。
  86. 大原亨

    ○大原委員 藤波労働大臣、官房長官、私は八〇年代の雇用保障の問題は、年金権は六十歳から、雇用の保障は少なくとも六十五歳まで、そして六十歳の年金権と雇用とを選択できるように制度的につないでいく、こういうことを官民通じまして頭を切りかえてやっていくことが必要だと思うのですよ。私ども考え方はそういうことです。これはむちゃな考え方じゃないです。若年労働が減りまして高齢化社会に向かう中において、日本労働力をどう活用するかという問題と生活安定との接点がそういうことだと私は思っています。  雇用基本計画によりますと、労働省の計画は昭和六十年までに六十歳の定年を定着させるということなんですが、私はそれは認識が足りないのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  87. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生御指摘のように、高齢化社会に入っていく中で、日本労働力をどのように確保していくかという問題が一方にございますが、一方で一人一人の国民の立場に立って、いわゆる中年から高齢に達していくときにどのような設計を立てて働き、生活をしていくかということは、政治の一番大きな課題であると思います。  その中で、当面労働省といたしましては第四次の雇用対策基本計画におきまして、昭和六十年度六十歳定年をぜひ一般化したい。これは日本の社会が終身雇用で成り立っているところが非常に多うございますので、やはり定年の問題が一番大きな問題である。そこで、できる限り定年の延長で六十歳に持っていくという努力をしてきておるところでございます。定年でひとまず労働の場を離れますときには、あと年金でやっていけるということと、それから一人一人によって条件は変わりますけれども、蓄えを持っていて年金と両方で老後は生活をしていけるというような構えになっていることは非常に大事なことであります。  したがいまして、労働省としての立場からいきますと、六十歳定年を一般化するようにあらゆる努力をいまいたしておりますけれども、同時に、六十歳を超えてもぜひ働いていきたいと思う人には、働けるような場を確保していくことに向かって努力をしていくことは非常に大事なことである、このように考えております。六十歳でもういいですと言っているわけではありませんで、六十歳の定年が一般化して、その一般化するまでにもさらに年齢を引き上げていくという努力もしていきたい、このように呼びかけをしておるところでございますし、同時に、シルバー人材センターのような仕組みで、継続的な雇用でなくても働きたい、働く能力のある人には仕事が与えられるというような構えもどんどん開発をしていかなければいかぬ、こういうふうな努力も重ねておるところでございまして、先生御指摘のように、定年の問題と年金受給年齢の問題は非常にむずかしいこれからの課題でございますけれども、労働省といたしましてはそういった観点に立って最善の努力をしていきたい、このように考えておるところでございます。
  88. 大原亨

    ○大原委員 誠意をもってまじめに答弁しようという気持ちはわかるのですが、しかし中身については遺憾ながら納得できない。  私は思うのですが、いままでの高度成長時代から今日までの雇用問題、失業問題と、これからの雇用問題、失業問題は違うと思うのですよ。あなたはいまシルバー何とかといったりっぱな名前を言われたけれども、それは結局は雑役なんですよ。問題は、六十五に達するまでそういうことで、一生を働いてきた人に対して自分の能力を十分に発揮できないようなところに雑役の仕事をつくっていくということがいいかどうかということだ。これは方針として間違いじゃないかということです。  いままでの高度成長時代から今日までの雇用問題というのは、——私は時間を省く点で言うのですが、言うなれば循環的な失業、景気、不景気が循環するというときには、これは職業訓練をやったり給付金を延ばしたりして若干やればいい。あるいは摩擦的な失業、これは全体としては完全雇用に近いけれども、この企業がだめになったという場合には職業訓練等でつないでいけばいいわけです。しかしいまは慢性インフレ、慢性失業で、これからはスタグフレーションのもとにおける構造的な不況なんです。そういうときに人口構造が急速に変わっているわけですから、雇用政策については変えて、いままで大出委員等もここでやりましたけれども、週休二日の問題とか時間短縮の問題とかあるいは定年制に対する発想方法の転換とか、そういうことを考えながら、そして中高年齢雇用促進法だってペナルティーを課すればいいのだ。企業は、国は、社会的な責任として雇用については延長する措置を講ずればよろしい。こういうように総合的な政策を立てなければ、構造的な不況の時代には、構造的な景気対策、雇用政策としては成り立たない。こういう点の全体の転換をしなければいかぬ。そして雇用がだんだんと伸びていけば、年金をもらう人は少なくなってくるのだから。それで六十五歳の上限ができれば、制度がなくても事実上六十五でやめるということになるでしょう。一人一年金の制度をつくらなければいかぬのに、いまダブってもらっているのがいっぱいあるのだ、恩給もらい、共済年金もらい、厚生年金もらっている人がおるのだから。そういうととは、これからは皆年金のもとにおいていけないわけです。ですから、そういう雇用と年金を総合的に考えるような八〇年代の政策がなければいかぬのに、厚生省が無暴にも六十五歳のつまみ食いをしたことは、これは絶対に繰り返してはならぬ、こう思うわけですね。  年金の考え方について、公的年金の閣僚懇談会の座長である官房長官、私の見解に対していかがですか。
  89. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  これからの社会が高年齢化していくということでございますので、高齢者の働く場所といいますか、雇用の問題といいますか、これが非常に重大な問題になるという先生のお説はそのとおりだと私は思うわけでございます。  それで、この高年齢者の問題の対策としても、年金の問題もあれば週休二日の問題もあれば、いろいろな角度で考えなければならぬということをおっしゃったわけでございまして、私も年金だけがこれを解決する問題ではないとは思います。そこで一番重要な問題は年金でございますが、そのほかいろいろな総合的な見地に立って、雇用の問題、高齢者の問題を考えろという御意見には、私はそのとおりだと思います。
  90. 大原亨

    ○大原委員 そうすれば厚生大臣、あなたの統一見解の中にありました最後段の問題ですが、雇用や官民格差の問題等含みながら、たとえば公務員の共済年金には——民間にある企業年金、あるいは税法上の年金があるのですよ。大蔵省の管轄の中で、税法上の企業年金があるわけです、特例を設けた。あるわけですから、公務員についても企業年金的な、職能的な部面をつくりなさいということがあるわけです。社会保障制度審議会でも保険審議会でも出ておるのですよ。だから、そういうものを整備いたしまして、雇用と年金を接続さしていきながら——年金で全部の生活はできない、いまの状況では。できないけれども、そういう矛盾をなくすような総合政策をやるということが必要だ。私は最初の総括質問のときに大平総理大臣に、あなたの今回の予算査定は福祉の切り捨てなんですか、あるいは総合的に内容を充実させるのですかという質問をしたら、当然後段ですと、こう言った。総合的に政策を整備することが必要ですよ。でなければ、六十五歳のつまみ食いをもう一回やろうと思ったってできませんよ。このことわかりますか、厚生大臣。いかがです。
  91. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 それはよくわかります。
  92. 大原亨

    ○大原委員 これは深追いをいたしませんけれども、いまのままでは出せないということです。いままでの経過を踏まえてみまして、昭和二十九年から四十九年まで二十年かかって経過措置を設けて、そして厚生年金を五十五歳から六十歳にしたのですよ。雇用との関係は全然ない。ましてや、いままではそれである程度許されたかもしれないけれども、これからの八〇年代の雇用政策、生活保障政策というものはそれではいけない。私はこれをずっといろいろと議論していまして、たとえば社会保障制度審議会は、それらの高齢化社会における年金の構造を、財源問題を含めてどう改革するかという問題について提案しておるのです。私は、その問題については、社会保障制度審議会の一メンバーではありますけれども、これは全部が全部賛成じゃないのです。ないのですが、総合的に考えておる点については敬意を表する。総理大臣の諮問機関でありながら大平内閣はそれに対しましては一顧も与えないで、はなもひっかけないでおいて、そして大蔵大臣のこれを見てみますと、財政審議会は大蔵大臣の諮問機関ですが、——こんなにたくさん審議会があるのです、いっぱい、いい答申が出ておるんだけれども、それを総合的にどうするかということについては考えないで、たとえば財政審議会主導型で、大蔵省の役人がつくった案どおりで財政再建をやろうとしているから、こういう予算修正の問題等が起きてくるんじゃないですか。私は、財政はもちろんですけれども、社会保障制度審議会という、雇用の問題を含めて総合的な案について提案をしておるところがあるのですから、それらを総合的にどう考えるかという点を判断しながら施策を進めてもらいたいと思うわけです。  私は質問通告しておきましたが、社会保障制度審議会の二回にわたる建議について、これは政府としては検討いたしましたか、財源の問題を含めて出ておるわけですが。これは官房長官いかがでしょう。あなたはそういうことがあることは初めて知りましたか。
  93. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  審議会から基本年金構想、二階建てといいますか、が出ており、その財源として付加価値税という税方式も建議の内容になっておることは知っております。  この問題につきましては、現行制度とどういう円滑な移りかわりができるかというような問題もございましょうし、果たしてそういう財源も考えられるのかどうか、いろいろ問題がございますので、これは当然厚生省で検討してもらっておるということでございます。
  94. 大原亨

    ○大原委員 今度の厚生年金の改正によりまして、平均的な給料を十九万八千円といたしますね。これは約二十万円の月給の人ですが、その人は一年間に、被保険者、労働者の負担が二万一千六百円の負担増になるわけです。年金の保険料の掛金がそういうふうに増大いたします。この健康保険の掛金の増大案が、ボーナスまで含めてあるわけです。共済の方は短期給付について出ておるわけです。莫大な負担なんです。保険料は第二の税金といいますが、莫大な負担が出ておるわけです。これは公共料金の中へ計算する考え方もあるわけです。いまのままでは八〇年代の高齢化社会と構造的な不況の中で対処できない、こういうことで発想の転換を求めたのが、一つのこの社会保障制度審議会の考え方ですよ。ですから、私はこれが全部いいと言うのじゃないのですよ。ないのですけれどもインフレに強くて、その基本年金の下の部分、基礎年金の部分は賦課方式で財政計算をするわけですから、インフレに強いわけです。安定度もあるわけです。その財源をどうするかという問題は、所得型の付加価値税を出しておりますが、これは保険料に最も近いということなんですけれども、そういう考え方があるわけです。これが絶対じゃないが、法人税やあるいは所得税に対して付加してもよろしい。保険料ということになると、生活費に食い込む保険料ですから、どんどんいまのようにふえていったならば、これは逆再配分になるわけですね。ですから、考え方を総合的に変えて、十分議論をしてこういう問題を詰めてもらいたいと私は思うのです。かりそめにも、今回の厚生省のような軽率なことをしてもらってはならぬと思います。  そこで官房長官、公的年金に関する閣僚懇談会が二回開かれたわけですが、ここで重要な問題を決断しようというわけですが、そこに研究会を設けるというのですけれども、どんな研究会を設けて勉強されるのですか。いまから勉強されるのですか。いつごろまでに終わるのですか。一年もたたぬうちにまた閣僚更迭でしょう。どんな研究会なんですか。
  95. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま御質問でございますが、閣僚懇の中で研究会をつくって共済年金のそれぞれの間の問題点の研究でございますとか、あるいは共済年金と厚生年金の問題でございますとか、官民格差の問題でございますとか、そういうものをひとつ研究してもらおうということで、専門家を委嘱してその研究会を行うということを実は決めたわけでございまして、これはなるべく早く発足をしていくというふうに考えております。
  96. 大原亨

    ○大原委員 たくさんここにもあるのですけれども、たくさん審議会があるのにまた研究会をつくってやるのですか。忙しいのにこれから勉強するのですか。そうすると、この審議会、ちゃんと予算を組んで、もうスタッフを集めてあるわけですよ、たくさん。また研究会やって、それで、かなりお年を召しておられるのに、これから勉強するのですか。何をやるのですか。
  97. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 御質問でございますが、私たちがその研究会に入って研究するわけじゃございませんで、優秀な専門家に入っていただいて、そしていま申し上げましたような各共済年金間の格差の問題でございますとか、あるいは厚生年金との格差の問題とか、そういう問題について、どうしたら整合性のとれたものができるかということを検討してもらうということでございます。
  98. 大原亨

    ○大原委員 私ども社会党は、ある党と違って、たとえば共済年金の問題でも、経過措置とかあるいは既得権尊重の措置をとるとか、雇用と年金をどうつなぐかということで総合政策を立てるとか、そういうことで、共済年金については既裁定年金のベース改定もあったから、これはいろいろ慎重審議をした結果、六十歳年金開始ということには同調したわけですよ。やはり年金の制度というのは、皆年金のもとですから整合性がなければいかぬ。インフレのもとですから、財源使うのですから、よけいそういうことが必要ですね。整合性のある年金の制度をつくらなければいかぬということで、一部の者は反対いたしましたけれども、われわれはこれを押し切ってやったわけですよ。ですけれども、この年金の制度をどうするかという問題について、こういう無方針な大平内閣のもとにおいて、これは任すわけにいかぬわけですよ。たとえば公務員や地方公務員の定年制問題でも考え方が逆立ちをしているという点を私は指摘をいたしましたが、総務長官、私の言ったことが理解できましたか、賛成、反対は別にいたしまして、理解できましたか。いかがですか。
  99. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 あるいは私のとり方が違っておりましたらお許しいただきたいと思いますが、先生の立論をそのとおり公務員の関係に関して申し上げますと、御指摘のように、共済年金につきましては、法律を改正をいたしまして六十歳にいたしたわけでございますが、しかし一方では、六十歳定年制をしこうということで、現在法律を作成中でございます。しかし、御指摘のように、年金権とそれから定年の問題を考えますと、むしろ公務員に関しましては、共済年金もかなり年数を経て六十歳を実現していくわけでございますので、ことし仮に法律が通るといたしますれば、六十歳、五カ年経過でその間の選択の幅が出てくるわけでございまして、国家公務員関係の問題につきましては、私は整合性が非常にあるものだと思っております。一方、厚生年金と並びに民間の定年の問題につきまして比較をいたしますと、その間に官民格差論もまた出てくるのではないか、こう考えますが、私どもの立場から国家公務員の問題を考えますと、私どもの方としてはそれなりに整合性のあるものだという理解をいたしておる次第でございます。
  100. 大原亨

    ○大原委員 自治大臣、いかがですか。ちょっとテストしてみるから、自治大臣。
  101. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 だんだん大原先生の御意見を拝聴いたしておりましたが、やはり日本の人口構成が非常に諸外国と比べて異常でございます。しかも急激な老齢化が進んでおるというようなことを考えまして、やはり二十一世紀の初頭になれば、私は先ほどの大原先生の意見に一つも反対ありません、そういうことになるのだろうと私も思うのです。  ただ問題は、今日のこの定年制の問題を考えましても、やはり官民の実情が一体いま何歳であるか、それを一挙に六十五歳に持っていくことが一体できるのかできないのかというような問題がございます。それからもう一点は、何といっても、理想は理想としましても、やはり財政問題を離れてはなかなか議論ができない。こういうようなことで、私どもがいまの時点で考えられる案は今日のような考え方にならざるを得ないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  102. 大原亨

    ○大原委員 これは人事院総裁もよけいなことを言われたのですが、財政上の見地ということなんですが、しかし、それは申し上げたように、週休二日とか時間短縮とか定年の延長の問題は、仕事を分け合って一生涯をみんなが有益にどう活動するかということなんですから、これで最低生活を安定するめどをどうしてつくるかという問題なんですから、一番政治の基本的な問題なんですから、そのために財政再建もあるのですから、財政再建はほかのためにあるわけじゃないですから、だから、そこの局面だけをとるということは、私は時代錯誤であるという点を指摘しておきます。そういうことをいたしましたら、これは雇用と年金の関係で厚生大臣の考え方とも全く不一致なことを言われておることになるので、そこをとって議論いたしましても、これは大議論になる問題なんです。  時間の関係がありますから最後の質問ですが、厚生年金、国民年金の改正の中で、国際婦人年は折り返しに来たというのですが、従来昭和三十六年に発足いたしましたときに、夫が働いておる場合に国民年金に妻の任意加入の権利を認めたわけです。それがずっとふえてまいりまして、約八割は入っておるのです。それは保険料を掛けまして年金をもらいますと、年金の給付のときに二分の一の国庫負担が入ってくるのですから、非常に有利なわけですね。しかし、あと二割は残っているのですよ、任意加入ですから。そういうものとの間において非常に不公平です。ましてや、妻が年金に全然入っていないで、最近非常にふえているのですが、離別をいたしますね、別れますと、年金権はなくなっちゃうわけです。こういう妻の年金権、婦人の年金権にかかわる重要な問題について、今度の改正で結論を出さなかった理由は何か。そして、これからどういうふうに持っていこうとしておるのかということをお答えをいただきたい。
  103. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 妻の年金権を確立すべきではないかという御趣旨だと思うのでございますが、被用者の妻が、夫が加入している年金制度の中でカバーされておるほか、さらにまた国民年金に任意加入できる制度が開かれておることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、被用者の妻のこの任意加入がもうすでに八〇%を超えておる、あと二割ばかりでございますが、しかし、どんどんこれがふえていっておる傾向にあるわけでございます。  いまのような御指摘の点については、これは妻の年金権、いわゆる公的年金制度におきます重要な事項でございますので、慎重に今後とも検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  104. 大原亨

    ○大原委員 終わります。もう全然あれは納得できません。そんなおざなりな答弁では、だめだ。
  105. 田村元

    田村委員長 これにて大原君の、質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  106. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三であります。  まず最初に、厚生大臣にお伺いをいたします。  先週の土曜日、三月一日に中医協が二年ぶりに開かれたわけですが、何か話によりますと、最初に開会が二時間ぐらいおくれた理由は、厚生大臣のあいさつの中に医療経済実態調査報告を要請をするというのがあったようでございますが、それに対して何か問題があったようなので、手直しをするというようなことがあったように聞いておるわけですが、そういうことなのかどうか、これをお伺いをしたいと思いますし、あわせて、今度の中医協の中でも医療費の値上げ等について厚生大臣に質問があったようでございますが、それとはちょっと別にいたしまして、どっちにしても薬価調査の報告も出るわけでございますが、薬価が引き下がった場合に、技術料に振りかえる考え方があるのかないのか、これを二番目にお伺いしたい。  三番目に、この三つまとめて質問をいたしますが、いわゆる健康保険法の改正が上程されておるわけでございますが、支払い側の非常に有力な団体でございます健保連が、改正案についての修正案を出しておるわけであります。これに対して、何か大臣は検討すべき提案だというようなことを語ったというように伝えている報道もあるわけでございますが、大臣の見解をお伺いしたい。  以上三点、どうでしょう。
  107. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 中医協が二年ぶりに開かれました関係がございまして、開会が約二時間ばかりおくれたわけでございます。その間、三つのそれぞれの側との総会の運営について協議をされたわけでございます。その際、私のあいさつが訂正されたかどうかとかいう新聞での報道でございますが、これはどこまでも厚生大臣としてのごあいさつでございますので、別に法律でもなければ、またむずかしい問題でもございませんので、私がごあいさつ申し上げる内容について私自体が検討したわけでございまして、別にこれに対して修正したとかどうとかという事態ではございません。初めから私自体がごあいさつする原稿が事務局から回ってまいりましたので、私はそれに対して自分の考えも含めまして総会でのごあいさつにいたしたわけでございます。  第二点の、薬価基準の改定によりまして、もし薬価が引き下げられた場合については、診療費のいわゆる技術料に振りかえることになるのかどうかということでございますが、薬価基準の改定によりまして今後薬価の基準価格と市場価格との差を解消を図っていかなきゃならぬということは、いままでにもたびたび本予算委員会でお答え申し上げているわけでございますが、それとともに、診療報酬において技術料を中心にこの医療報酬体系というものを持っていかなければならない、今後とも努力してまいりたいと考えますけれども、薬価の基準の引き下げによって生じた余裕分を技術料に上積みするかどうかということは、これは中医協で審議されるものと考えるわけでございまして、したがいまして、中医協の審議を踏まえまして、どういうふうに今後対処するかということを決めてまいりたいと考えておるわけでございます。  もう一つ、健保連が健保法改正案についていろいろ意見を出しておるようでございますが、この点につきましては、国民的合意が得られるような、そういう国会での御審議をいただいた上で検討すべきことであると承知をいたしておるわけでございます。
  108. 草川昭三

    ○草川委員 いま大臣がおっしゃられたように、中医協の役割りというのは非常に重要なものになってくるわけでございますが、大臣が冒頭にあいさつをすること自身に二時間余の時間が空白となったというのは、それだけに今日的な問題があるわけでありますから、訂正をなされるか修正をされたという言葉が悪ければ考え方が変わったという言い方にしてもいいわけですが、ひとつしっかりと対処をしていただきたい、こういうように申し上げるわけであります。  そこで第二番目の問題になりますが、実はこの年金問題について、いままで私どもはいろんな日本国民の方々のことを中心に取り上げてきたわけでございますが、これは当然なことであります。しかし問題は、実は戦前にいわゆる帝国主義的な戦争が行われた当時に、いわゆる外国人の方方、特に今日非常に問題になっておりますところの永住権を持つ外国人、特に在日韓国人の方々あるいは朝鮮人の方々等の年金適用の問題が非常に放置をされてきておったわけであります。昨年の十一月二十九日に全国の市長会が、町長さん、市長さんの会合がございまして、国民年金の外国人適用について国に要望したいという決議を満場一致で行っております。特に採択の内容を見ますと、制度的無年金者と呼んでおるわけでございますが、私は、この点についての厚生大臣の見解はどうかということをお伺いをしたいと思うわけでございます。
  109. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 昨年末に全国の市長会が、国民年金の外国人への適用について国の方に要望される決議を行われたわけでございます。現在日本にいらっしゃいます外国人に国民年金等の受給権が得られるように処置をしなさいという決議でございまして、これは承知をいたしておるわけでございます。  ただ、御承知のとおり、国民年金は社会保険の仕組みによって運営されておるわけでございまして、年金給付の前提条件といたしましては最低二十五年という長期間の保険料の納付が義務づけられておるということでございまして、外国人の方を適用した場合においては、年金給付に結びつかない方に対する権利の保全をどうするかということも配慮しなければならないわけでございまして、一概に外国人の適用に持っていくということは大変むずかしい問題でございます。韓国の方におきましては、これだけはそれならば別扱いにしようかということにもなかなかできかねるわけでございますので、市長会のせっかくの御要望でございますけれども、いまのところ外国人にこれを直ちに適用するという方法は生まれていない、こういうことでございます。
  110. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、いまから私は、世界人権宣言というものをなぜ昨年政府は承認をしたかという、根本的な問題に入ってこなきゃいかぬと思うのですよ。労働省の方はスト権問題があったから留保条項というのをつけたわけです。だから私は、昨年の世界人権宣言の承認のときにも、厚生省にくれぐれも年金の問題を質問をしたわけですが、いわゆる漸進的に適用すればいいじゃないかという、こういう言い方で厚生省は態度を逃げたわけですよね。ところが、いまのお話だと、基本的に在日外国人の方々、永住権を持つ、しかももう二世、三世、四世ですよ、いま。しかも国に対しては税金を納めておる、しかも祖先は日本によって強制的に連れられてきた方々、そういう方々に対して、年金の制度という問題でいま答弁をされておるわけですけれども、それは私は間違っておると思う。だったら私は、世界人権宣言を承認すべきではない、あるいは留保条項を厚生省はつけるべきだ、こう思うのですが、非常に問題点があると私は思うのです。しかし、これは意見の違いになりますから、それだけ申し上げて……。  いま、では厚生省は二国間協定方式ということを考えられておると思うのですが、たとえば二国間協定方式だと日米の間に年金の通算制度というようなものを検討なされてみえるようでありますが、日米の年金通算協定についてはどういうお考えでしょうか。
  111. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 本格的な国際化時代を迎えておりまして、諸外国人との人的交流が盛んになってまいりまするにつれまして、外国に滞在する日本人及びまた日本に滞在する外国人に対する年金の取り扱いが、年金政策の一つの大きな課題になってきていることは御指摘のとおりだ、かように私は考えます。このような背景の上に立ちまして、昨年の七月、東京で開催されました日米両国の厚生大臣の会談におきまして、今後両国間で年金の相互の通算に関する処置について技術的な検討を開始することが確認をされたわけでございます。それを受けまして、昨年の十月、ワシントンにおきまして、日米年金通算検討会議が持たれましたのでございますが、日米年金通算の目的が、両国の二重適用を解消する、もう一つは給付の通算にあるという点において意見の一致を見たわけでございます。日米両国の年金制度について相互の理解を深めながら、適用、給付の両面にわたって、通算することに当たっての問題点が議論されたということでございまして、今後引き続きまして両国間におきましてこの技術的な問題を討議しながら、継続してこの問題の一致点、解決を見出してまいりたいと考えております。
  112. 草川昭三

    ○草川委員 いま厚生大臣の方は、日米の間は二国間協定ということを一面的にはやられておるようでありますが、私は、先ほどから申し上げたように、世界人権規約というものを締結をした以上は、いわゆる世界人権規約の中にある社会保障条項を適用して、基本的に年金制度というものに対処しないと問題がある、こう思うわけであります。  そこで、大蔵省にお伺いをいたしますが、すでに建設省あたりは、在日外国人、特に永住権を持つ方々には、住宅金融公庫の利用あるいはまた住宅公団の入居等の制限が撤廃をされたわけでありますが、国民金融公庫の取り扱いが残っておるわけでございます。国民金融公庫の取り扱いについてはどのような処置をなされるのでありましょうか。
  113. 竹下登

    ○竹下国務大臣 結論から申し上げますと、実施は四月一日から、貸付対象を外国人にまで拡大するという方針で作業を進めておりまして、近く通達を出す予定でございますが、三月上旬——もう上旬になっておりますので、旬日以内に出せるということであります。  若干問題がございましたのは、これは草川委員御案内のように、国民金融公庫法は「国民大衆に対して」ということが書いてあるものですから、日本国民ということでいろいろ問題がございました。それから、国民金融公庫の資金需要にも問題があったことは事実でございます。が、先ほどのお話の昨年六月でございますね、この国会で承認されました国際人権規約、これが国民金融公庫の取り扱いの変更を義務づけたというものではございませんけれども、そのような考え方に立ちまして、御指摘のように住宅金融公庫においても五十五年度に踏み切られるということでございますから、そのような結論的なお答えをする立場に今日立ったということでお答えといたします。
  114. 草川昭三

    ○草川委員 いま大蔵大臣から初めて、国民金融公庫の利用について明確な割り切った御答弁がございましたので、非常に私は敬意を表させていただきたいと思うのであります。ですから、ぜひこれは年金の方も厚生大臣、いま竹下さんがおっしゃられたように、ひとつ気分のいい答弁をやってもらいたいと思うのです。  そこで、同じように文部大臣にお伺いをしたいのでありますが、実は国民体育大会、国体に、日本に永住権を持つ外国人の子弟が何とか参加することができないのかというのが私の意見なんです。有名な王選手というのがいるわけですけれども、御存じのように、早稲田実業が国体に参加するときに、一緒にプレーしてきたほかの人は参加したのですが、王選手は参加できなかったという例があるのです。これは差別というかひどいんじゃないか。少なくとも同じように全高連ですか、いろいろな体育へ参加をしているわけでありますから、私はぜひこれも、国際人権規約が批准されたことでもあるわけですから、この精神にのっとって、日本の高等学校に在学をしている在日外国人の少なくとも永住権を認められた子供さんたちには国体に出場ができるよう、国体の事務局というのですか、そちらの方に何とか働きかけてもらいたい、こう思うのですが、どうでしょう。
  115. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えをいたします。  委員がいま御質問をいたされましたように、現在の国体、国民体育大会自体は、財団法人の日本体育協会が定めております国体基準要綱によって運営をされておるわけでありまして、それはまさに日本国籍を有する者という実は規定があるわけでございます。したがいまして、先ほど例を挙げられました王選手等の事案が、国民体育大会には出場できないということになって物議を醸したことがあるわけでございます。こういう問題は今後もまた起き得ることが考えられます。先ほどもお話がございましたように、これは十分ひとつ慎重に検討を要する問題だと思いますが、いまのこの問題に対しまして担当いたしております日本体育協会、あるいはこの国体の問題全体を議論いたしております国民体育大会の委員会等に、いまの御趣旨のところを十分ひとつ伝達いたしたい、そこでの議論に任したい、かように考えておるところでございますので、御了承を願いたいと思います。
  116. 草川昭三

    ○草川委員 大臣から、私がいま申し上げた趣旨を日本体育協会の理事会の方に前向きな形でぜひ伝えていただきたい。この理事会でもし検討がなされるならば、ことしの秋に国体があるわけですが、私はことしの秋には間に合わぬと思うのです。ですから、大臣のこの意向を伝えていただいて、ぜひとも来年には国体参加が実現できるように強く働きかけをしていただきたいことを強く申し入れをしておきたい、こういうように思います。ぜひその実現のために文部省として努力をしていただきたい、こう思います。この点については以上で終わります。  もう一つ、これは厚生大臣に要望ですが、実は障害福祉年金制度にいろいろな谷間というのがありまして、いろいろな例がありますが、きょうは時間がないので申し上げませんけれども、いわゆる特例納付制度というものをぜひ障害福祉年金制度にもしてもらいたいという要望があります。これは厚生大臣、答弁は結構ですから、そういう要望が関係者の団体から非常に強く出ておりますので、ひとつ十分御検討のほどをお願い申し上げたいという要望だけ申し上げておきますから、その点は以上で終わりたい、こう思います。  そこで次は、この年金に関係をいたしまして、郵政省が昨年発表いたしました個人年金制度の問題について、大蔵大臣のお考え方と厚生大臣のお考え方と郵政大臣のお考えを、あわせてお伺いしたいわけであります。  これは高齢化社会が非常に進展をする中で、いわゆる私的の個人年金というのも公的年金プラスアルファとして決して無視できません。これは本人の意思としてやるわけでございますし、特に郵政省が魅力ある年金というものを打ち出して、かなり国民的に関心を呼んだわけです。ところが、残念ながら五十五年度の実施が成功しなかったわけです。一体どこに問題があったのか。この趣旨についてもう一回、簡潔で結構でございますから、郵政大臣から御答弁を願いたいと思うのです。
  117. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  御承知のように、わが国は高齢化社会が急速かつ確実に進行しつつございますので、国民の老後の安定した生活を確保するということのために資する、こういうことで、いまおっしゃいましたように、国民の自助努力という面からこの制度を創設したい、そしていま申しました目的に資したい、こういうことで、この施策を五十五年度予算編成期に、郵政省としては非常に重要な施策一つとして関係方面と交渉したわけでございますけれども、その間に、結論といたしましては、郵政省の考えておる新しい個人の任意年金制度を創設するということと、それからそれを魅力的なものにするために資金の運用範囲を現行に比べて拡大する、こういう基本的な点におきましては合意を見たわけでございますけれども、その拡大をする範囲の具体的な方途につきまして、遺憾ながら合意を見ることができなかったわけでございます。したがいまして、五十五年度は見送られるということになったわけでありますけれども、その間に、いま申しました二つの基本的な合意に基づいて今後も調整を行って成案を得る、こういうことになっておりますので、私どもとしては引き続いて五十六年度の実現を期して各方面とも鋭意折衝を進めておるところでございます。
  118. 草川昭三

    ○草川委員 いま五十六年度目標関係方面と努力をするということをおっしゃっておるわけでありますが、ひとつ厚生大臣にちょっとお伺いをしますが、郵政省が個人年金制度を実施することは社会保障制度の整備や体系を乱すものだという意見が一部にあるわけですが、そういうものになっていくのかなっていかないのか、これは年金制度全体をつかさどる厚生大臣の見解をひとつお伺いしたいと思います。
  119. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 高齢化社会を迎えまして、公的年金制度がより内容のいいものに、そして着実に将来に安定していくということが必要であり、したがって厚生省といたしましては、公的年金制度全体の拡充強化に努めていかなければならないわけでございますが、郵便年金につきましては現在検討中のものでございます。したがいまして、厚生大臣として、検討中の郵便年金についての是非あるいはそれに対しての考え方を申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように思います。
  120. 草川昭三

    ○草川委員 厚生大臣はいいとも悪いともおっしゃらぬ、こういうわけですね。中身がよければ、中身というよりも、いい結論が出れば問題ないわけですね。ということになってきますと、結局大蔵大臣の、いま郵政大臣は関係方面とおっしゃられたのですけれども、結論的にはこれは大蔵大臣だと思うのです。問題は、大蔵大臣からよろしいというゴーサインが出れば、厚生省も問題ないというようなふうにとれるわけでございますし、もちろん郵政大臣はそれにこしたことはないわけでございますが、大蔵大臣としてのこの個人年金についての構想はどうでしょう。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど郵政大臣からお答えがございましたように、最終的には個人任意年金制度については、「引き続き調整の上、成案を得ることとする。昭和五十四年十二月二十八日 大蔵大臣 郵政大臣」、こういう引き続き検討ということをお約束をいたしておるわけであります。  そこで、一度お答えしたことがございますが、先ほど来のお答えのごとく、八〇年代が不確実性の時代とか不透明性の時代と言われますが、確実であり透明であることは高齢化社会が来る、これだけは確実であり透明であります。したがって、公的年金制度が財政面、費用負担面で制約が強まることが見込まれる等から、公的年金の補充としての個人年金を含む私的な年金の役割りは、一層重要なものになるではないかという考え方も基本的に一致しております。  そこで問題は、個人年金についてすでに民間の保険や信託事業として行われてきておる。いろいろなニーズに合わせた多様なものがすでに行われておるということが一つございます。個人年金保険について見ますと、昭和五十一年度以降の普及率は、とにかく五十一年度から五十三年度までの伸び率が二二一%ですから、相当伸びてきておる。したがって、そういう民間のやっておるところへ政府が乗り出すべきかどうかという問題がやはり基本的には一つございます。それから、それが出たときに、いわゆる民間の資金に対して影響も及ぼすではないか。そうしていま一つは、どういたしましても政策税制の拡大をしないと高利回りにならぬという問題が一つあろうと思います。この税制の問題は、厳しい財政状態のもとで重大な関心を持って検討しなければならぬ問題であるということ等がございますので、やはりうんと勉強してみなければならぬ。先刻も草川委員から御質問がございましたような利回りにするために、仮に不動産を買ったり株を買ったりというようなことになった場合、国民から預かっておるものを政府の責任でそこまでやることが適当かどうか、こういう問題も出てまいりますので、重ねて申し上げますが、結論的には、大西大臣からお答え申し上げましたとおり、引き続き、関係方面と申しますよりも、郵政、大蔵、官房長官立ち会っていただいてそういう取り決めをしたわけでございますので、引き続き検討をするということに尽きる、このように考えます。
  122. 草川昭三

    ○草川委員 その引き続き検討はいいですけれども、いま大蔵大臣が御答弁なさったいわゆる民業圧迫論、これは必ずしも私が調べた範囲内では適当なような条件ではなさそうであります。いまの民間の場合は非常に魅力のあるような年金を売っていないようでありますし、またいわゆる政策税制の問題につきましても、そんな特別な強いものもなさそうでございます。結論的には私は、この年金を魅力あらしめるかどうかは資金運用部制度の運用いかんになってくると思うのですね。ここが一番のポイントではないだろうかと思うのですが、そこら辺の点については郵政大臣、どうでしょうか。
  123. 大西正男

    ○大西国務大臣 要するに、与えられた資金の運用の対象を、公債等だけに限られますとこれはなかなか魅力あるものにはなり得ないわけでございます。でございますから、株式等そういった面にこれを拡大をするということが、成案を得るということになれば必然的にそういうことにならざるを得ないと思います。ですから、その具体的ないろいろの問題につきましては、いま大蔵大臣もおっしゃいましたように相互で検討を続けなければなりませんけれども、道順といいますか道筋としては、そういうことでなければ魅力あるものになり得ないというふうに私ども考えております。
  124. 草川昭三

    ○草川委員 簡単に双方の合意と言いますけれども、私は壁ばかなり厚いものがあると思うのですよ。いまきれいにすらっと御答弁なされましたけれども、なかなか私はそんな簡単なものじゃないと思うのです。だけれども、一面的には、この個人年金の五十六年度の実施ということの決意をいま郵政大臣はされたわけでありますが、本当に五十六年度に向けて実施ができるのかどうか。できたら私は今国会中ぐらいにはもう一回、大綱ぐらいの合意を大蔵省と取りつけるぐらいの努力がなければこれはできぬと思うのですが、ひとつ五十六年度に向けての郵政大臣の決意をもう一回お伺いをしておきたい、こう思うのです。
  125. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  おっしゃいますように、簡単でありましたら五十五年度に実現をすることができたと思うのでございますけれども、これが五十五年度に実現をするところまでいかなかったのは、非常に困難な問題が伏在をしておるということの反証にもなると思います。しかし、おっしゃいますようにこれは公的年金の一つの補完として私ども考えているわけでございまして、それから民間とのいろいろの競合の点につきましても、そのジャンルが違うようなものも考えていくべきではないかといったようなことも検討しなければならぬと思っておりますが、いずれにいたしましても、国としてそういうことをいたしますことが、将来の高齢化社会に対する国の姿勢でなければならぬのではないかというふうに郵政省としては考えておるところでございますので、五十六年度に実現をすべく最善の努力を払いたいと存じておりますから、何分の御鞭撻を賜りたいと思います。
  126. 草川昭三

    ○草川委員 どっちにしても、ひとつ魅力のある年金というのはたくさんつくってもらいたいわけです。民間民間でいいものを売ればいい、そして郵政省は郵政省としてどんどんやはり突破口を切り開いてもらいたいと思うんですよ。それで、将来の年金制度はいかにあるべきか、公的年金の拡充は厚生省でやっていただく、そしてさらにそこへ自助努力としての年金をお互いが競い合うというのがこれからの高齢化社会の問題点だと思うので、大蔵省の方も、いわゆるこの余裕金等の運用等についてもなかなか厳しい態度をとっておるようでありますけれども、そういう点についてもやはり考えていただけるように特にこれはお願いをして、この年金の問題を終えたい、こういうように思います。  そこで、三番目に今度は厚生省にお伺いをしますが、試用医薬品、サンプルですね、これの診療報酬の請求についてお伺いをいたします。  五十四年十月二十二日、厚生省の医務局は全国の国立病院長に対して、いわゆるサンプルと言うのですが、試し用の医薬品の取り扱いについて通達を出しておるわけです。このサンプルというのは、全く新しい薬をひとつ試験をしてくださいよという薬ではなくて、もうすでに厚生省が認めた薬なんです。国立病院がAという薬を買っておるんだけれども、Bという薬も買ってもらいたいと言って見本を持ってくるわけです。ところが、この見本の取り扱いについて非常にルーズなものですから、厚生省は昨年の十月に、いろいろと各病院で試用医薬品の検討委員会というような薬剤委員会というのをつくって、使用の目的に沿った適正な範囲内でひとつ新しいサンプルを使いなさいよ、ここまではいいのです。これはわかるわけです。  ここから第三番目に、試しに持ってきたサンプル、「試用医薬品を用いたときの診療報酬は、健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(点数表)によって算定した額とすること。」早く言うならば、ただでもらった薬でも薬価で請求しても結構ですよという通達を出しておるのです。この通達は間違いがないかどうか、まずお伺いをいたします。
  127. 田中明夫

    田中(明)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおりでございます。
  128. 草川昭三

    ○草川委員 私、頭が悪いのでどうしてもこれがわかりませんが、とにかくただで持ってきたわけですよ、これを使ってくださいと。そうしたら、いろいろと値段が違うわけですが、それを正式な薬価で請求してもいいということが私はどうしてもわからぬのです。いろいろと聞いてみたらそういうものだというお話なんで、そういうものかなと思っておるのですが、いま健康保険法の改正案というのは、赤字でしょう、だから何とか黒字にしなければいかぬというので、わんさわんさの提案が出ておるわけです。  では、今度はひとつ支払い側に聞いてみますが、支払い側の担当の保険局の方にお伺いをするわけですが、もうどんどんこういうことはやっても結構なんですよというお考えをお持ちなんでしょうか、どうですか。
  129. 石野清治

    ○石野政府委員 サンプルの診療報酬請求についての法的な問題でございますけれども、薬価基準の価格そのものは御存じのとおり一律に定めておるわけでございまして、保険医療機関が実際に購入する価格というのは、そういう価格とは別に区区でございまして、極端な場合で申しますと、たとえば他の医療機関が閉鎖した場合に、それを他の医療機関に全部寄付するという場合もございます。そういう場合でございましても、やはりその薬剤が正式に認められました基準に該当する品目である限りは、その対価につきましては薬価基準によって請求できる、こういう考え方でございます。
  130. 草川昭三

    ○草川委員 だから、そういう考え方ですから、ただでもらったものを薬価で請求してもおかしくないという御答弁なんです。だけれども、こういう話は一般の市民に理解されるかどうか。たとえば私が患者でどこかの国立病院へ行ったといたします。薬には一々試薬品とは書いてありませんけれども、ただのものが私に投与されたときに、私は三割負担をしなければいかぬわけですから、三割負担のお金を払う。割り切れぬですね、これはどう考えたって割り切れぬですよ。だけれども、そういうことが通るというんですよ。国立病院の年間の医薬品の購入は、予算で見ると約六百億円です。サンプルの量がたとえば一%あったって、それで六億円です。六億円というものをどこかの保険が払うわけです。共済組合が払うか、一般の保険組合が払うか、国保が払うかわかりませんけれども、とにかくだれかが払うわけです。こういうようなことがもしも民間の方にずっと広がっていくとするならば、添付ということは禁止をされておるわけですから、添付はいまございませんけれども、サンプルをどんどん持ってきて、そしてサンプルというのは一回こっきりではいけませんから、ある程度、三カ月とか六カ月間使ってみなければいかぬということになると、私はますます薬価基準というものが載れてくると思うのです。  いわゆるこういうただでもらったものを薬価で請求するということをいま厚生省はおっしゃってみえるわけですが、これは過日来から問題になっておるいわゆる薬価調査に影響しておるのですか、どうですか。薬価調査というのはこういうものが入って決められるものかどうか、お伺いします。
  131. 山崎圭

    山崎政府委員 御案内のように、薬価調査は購入価格あるいは販売価格、この両面のものを調べるわけでございますので、購入価格に反映されないと思います。
  132. 草川昭三

    ○草川委員 それはただですから入らぬわけですよね。だけれども、私はそういうものは、民間ならいざ知らず、国立病院に対して厚生省がそういう指示を出すことが果たして適当かどうかという問題なんです。だから、そういう点について一回私は、厚生大臣としての見解をお伺いしたいと思うのです。
  133. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 医療機関が使用いたしまする医薬品は、それはサンプルであろうとなかろうと、一応法的には診療報酬を請求できるという解釈を先ほど申し上げているわけでございますが、しかしながら、いま御指摘のように業界に十分自主規制をやらせながら、そういうことのないように今後強力な指導が必要ではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  134. 草川昭三

    ○草川委員 いまサンプルについての自主規制も求めたいと言うんですが、そういうことならば、私は、通達の中にもそういうことをやはり入れていただきたいと思うのです。ところが、特に問題になった昨年の十月二十二日の厚生省医務局管理課長の通達、こういうものが出たら民間は、これは結構なことだ、サンプルサンプル、持ってこいよ、ひとつ正式に請求しようや、国会で問題にならぬと言っておるよと、こういうことになるんじゃないでしょうか。実はこれは大変影響力が大きい通達だと私は思うのです。  しかも、私は一体サンプルの受け入れ状況はどういうことかというので厚生省にお尋ねをしたら、きょう午前中に「試用医薬品受入状況」という都内の有力な国立病院の実例を持っておみえになりました。この例の中で、一つの例ですが、抗がん剤、がんの薬で油性ブレオという薬があります。これは日本化薬が外国へも輸出をしておる薬ですけれども、これを三十ミリグラム一バイアル、小さいびんでございますけれども、これは薬価で一万五千九百八十八円、約一万六千円です、この小さいのが。これを三本、五十五年、ことしの一月からことしの三月までの間に多分三本サンプルとしてもらうであろう、もらったということかもわかりませんが、こういう数字が出てきたわけです。これは三人分です。この金額は、私がこの一万五千九百八十八円で計算しますと約四万八千円になるわけでr。五万円以上を超しますと、サンプルでもいろいろともらったものは厚生大臣に届け出をしなければいかぬということになっている。だから、五万円以下ならば問題ないだろうというので四万八千円という数字を出してきたんですが、三本という数字は全くでたらめなんです。  なぜかというと、日本医薬品集、ジャテックというんですが、日本医薬品情報センターというところからいろいろな薬の情報が出ておるのですが、この抗がん剤の油性ブレオは、最低限三百ミリから四百五十ミリ投与しないとあかんですよということがわざわざ効能書きに書いてあるのです。だから、これは十本から十五本使わにゃいかぬというのです。治ってからだって十五ミリ、約半分を十日間ぐらい使いなさいという効能書きが書いてある。だから、常識的に言えば一人の先生のところに少なくとも十五本から二十本持っていっておるはずなんです。ところが、その五万円以上もらったら厚生大臣に届けなければいかぬというのがあるものですから、きょう午前中に三本しかもらってきてないという資料を厚生省はお出しになるわけです。私は正面なことを言ってもらいたいわけです。何回か言うように、本音でいきましょうと言っているわけですよ。だけれども、うるさいから、五万円以上超すと厚生大臣に届けておるかなんとどうせあのやろうどもが言うに違いないから五万円以下にしておこうというので三本という数字が出るわけです。少なくとも私は常識的に、いま言ったように、十本とか十五本納入されておるに違いない、こう思うのですが、この点医務局の方からの答弁をひとつお願いしたいと思うのです。
  135. 田中明夫

    田中(明)政府委員 お答えいたします。  油性ブレオにつきましては、従来のものに比べて効力が持続する等のいろいろな利点があるというようなメーカーからの勧奨によりまして、某病院におきまして三本試用としてもらって一人の患者についてやったわけでございますが、従来からのブレオに比べて特別にすぐれた効果があるというようなこともないので、一名について試用いたしまして、すぐ試験を中止しております。
  136. 草川昭三

    ○草川委員 だから、そういう御答弁は全くうそだと私は思うのですよ。  それで、国立大学の病院の先生と言えば非常に権威のある先生ですよ。少なくとも三百ミリから四百五十ミリ打たなければだめですよ、そして治ってからでも十日間ぐらいは十五ミリを打ちなさいという効能が書いてあるにもかかわらず、三本しか使わなかったというのは、それは三本使ってやめたということなんですよ。少なくとも十本から十五本は最低限常識的にもらっておるはずなんです。だから、そういう素人が考えてもうそだということがわかるようなことを前提に国会に対して資料を提供していただくのははなはだ迷惑だと私は思うのですよ。こういうことは、ぼくたちが何にも知らぬから適当に出しておけという態度にすぎぬじゃないですか。私はもう一回、本当に三本しか持ってきてないと言うなら、この会社のセールスマンを呼んできて、そうではございませんという資料を持ってきたらどうしますか。その点についてどうですか。
  137. 田中明夫

    田中(明)政府委員 ただいまの点につきまして、私どもは病院からの報告をそのまま先生に御説明したわけでございますが、御指摘のような点につきまして、さらに突っ込んで調査いたしたいと思います。
  138. 草川昭三

    ○草川委員 私も、何回か言いますが、重箱のすみをつつくようなことを言っておるわけではなくて、正式な、大体常識的な資料が厚生省から出るならば、ぼくたちも、ああそういうものかな、ではこういうことが民間に余り強く影響しないように、たとえばせっかく厚生省に五万円以下という一つの基準があるなら、それをこの際サンプルの適用については少なくとも五万円以下の範囲内ならやってもいいとか、基準を示したらどうですか。うそを言わずに、正直な姿を出して、そしていま問題になっておる薬の問題について、いい方法をやれば、これは製薬メーカーだって喜ぶことですよ。お医者さんの方だって安心することなんですよ。みんなが喜ぶことじゃないですか。だから、ひとつ正直にいこうじゃないですか。その点で、こういうような処置を、民間の方にも一つの基準として五万円以下というようなサンプルの基準を、新しい通達を出すかどうか、その点についてのお考えはどうですか。
  139. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 サンプルにはそれぞれ目的あるいはまたその利用方法等、いろいろおのずから限界があるわけでございますから、いままでは業界の自主規制にまち、強力な指導を進めてまいったわけでございますが、御指摘のような問題がございますればこれは大変なことでございますから、今後規制処置等についてどうしていくかということを十分慎重に検討してまいりたい、かように考えます。
  140. 草川昭三

    ○草川委員 では、ぜひそういうことでこの問題は終わりたい、こう思います。  次に、ちょっと時間の関係がありますから造船の方へ先に行きますが、いま造船の労働者というのは、一時四十九年のピークのときに二十一万人いたわけですが、大体半分に減って十一万になっておるわけです。特に下請の労働者というのは、もう九万人近い人が三万五、六千人になって非常に減っております。  そこで、この造船の組合の方々だとか下請の方方は、関西の新空港については浮いておる海上空港でどうだろうという壮大な要請運動なんかをなすってみえるわけであります。この前もこの点については私どもの正木政審会長もずいぶん御質問をなすっておみえになりますが、航空審議会というものの、一つの技術的な審議会の預かりということになっておるわけでございますが、いろいろと調べてみると、これもすっきりしない問題が非常に多いのです。きょうは時間がございませんので簡単に質問をしますが、審議会の資料に「ボーリング等によって大阪湾東岸の海岸線に沿って大きな泉佐野断層があるということが想定をされておる」というような文章があるのですが、やはり泉佐野には年平均一ミリぐらいの移動をするというような断層があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  141. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  四十九年まで審議を行っておりました航空審議会の答申が出ました時点におきまして、先生いまおっしゃいましたような泉佐野断層の存在についての疑問が論じられたのは事実でございますが、その後私どもが調査いたして現在に至っております過程におきましては、ここにおきます断層というものは現在のところ正確にその位置が発見されているわけではございません。かつ、ここは相当長期にわたっていまおっしゃいますような地殻変動が行われていないということが別途確認をされておりますので、なお今後の詳細な調査を待つべき点があるいはあるかもしれませんけれども、現実におきましては、おっしゃるような断層による障害の発生ということが大きな問題になるであろうというふうには考えていない次第でございます。
  142. 草川昭三

    ○草川委員 非常に重要な問題ではございますけれども、そう簡単にこの断層というものについて影響しないということが言い切れるかどうか非常に問題だと思うのです。だからこそ逆に、慎重な審議をしたらどうだろう、私はこう思います。  同時に、つい最近の資料四−一「埋立工法についての主要な検討事項と検討結果」という航空審の関西国際空港部会の資料がございますが、その完成後における環境への影響、1、潮流、水質にどのような影響を与えるか。現在調査をとりまとめている。2、水産にどのような影響を与えるか。現在調査をとりまとめている。3、海岸の地形、周辺の波・高潮にどのような影響を与えるか。現在調査をとりまとめている。四−二の1、景観・植生・微気象にどのような影響を与えるか。現在調査をとりまとめている。  いわゆる環境アセスというのですか、非常に重要な問題が現在調査中のまま結論が急がれておるように伺うわけでありますが、一体いつごろこの調査の報告ができるのでしょうか。
  143. 松本操

    松本(操)政府委員 現在、先生が御指摘になりましたような環境関係を含めまして、さらに騒音、排気ガス、こういった問題につきましての調査を鋭意進めてきておるわけでございますが、当初の私どもの計画といたしましては、五十四年度内にはこれらの最終的取りまとめが終わるという予定でございました。ただ、正直申し上げまして、現時点におきまして多少ずれ込むのではないか、このようには考えておりますけれども、しかし予定よりもはなはだしくは違わない時点において、いま御指摘のありましたような点についての結論というものは出せる、このように考えております。
  144. 草川昭三

    ○草川委員 これだけのことですから、私は、慎重な審議をしてそれから工法の決定をされてもいいのではないか、あるいはまた、地域の方々に対して、工法にA案、B案という二つの案があるとするならば、環境アセスを含めて両論併記のような形の答申を——答申が出る前に環境アセスについては両論を地域の方々に発表するのは至当ではないだろうかと思うのですが、この点についてはどうでしょう。
  145. 松本操

    松本(操)政府委員 関西空港計画の最終的な案というものは、当然のことながら地域の方の合意を得て初めて決まるものでございます。いま私どもがやっております作業は、地元の方にお示しできるような形に整理したものということを考えておるわけでございまして、いたずらに素材を列挙しただけではかえってわかりにくくなるという面もあろうかと思います。  したがいまして、いままさに御指摘のとおり、環境アセスメントというものをわれわれなりにいたしまして、その結論を添えて地元にお示しをする、それによってまた地元としては的確な判断をしていただく、このような作業をやっていくようにいたしたい、こう心がけているわけでございます。現在のところ、まだ調査中のものは確かに調査中でございまして、それらをなおざりにしたまま結論を急ぐというふうな拙速的なことはしないという考えで十分に対処してまいりたい、このように考えております。
  146. 草川昭三

    ○草川委員 以上でこの問題を終わります。  最後になりますが、時間がございませんので、簡単に労働省と自治省の方にお伺いをいたしますが、最近非常に婦人労働力というものが急増しておるわけです。労働省の方では一体この婦人労働力の増加というものをどう見るか、同時に、その増加現象がほとんど第三次産業のパートタイマーというのですか、非常に限られた時間内の外食産業なんかに集中的にこれが伸びておるわけでございますが、果たしてそういうような傾向でいいのかどうか。そういうところには労働基準法の適用というものはどうしても困難になりますから、私は、第二労働市場というものが現実に育ってきておるのではないだろうか、こういう一つの危惧があるわけでございますが、まず労働大臣にその見解をお伺いします。
  147. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 できる限り雇用雇用できる産業で吸収していくようにしなければいかぬという観点から、やはり第三次産業に対して新しい雇用の開発をどんどん進めていきたいという希望を持っているわけです。一方、婦人労働者が先生御指摘のようにどんどん職場に進出してくる。しかも未婚よりも既婚の婦人がどんどんと職場に進出してくるというような情勢も一方に事実としてあるわけでありますが、これらが今後どのように動いていくのか、あるいはどのように動かしていったらいいのかということにつきましては、なお婦人労働の実態などもよくつかんで対策を講じていくようにしなければいかぬと思いますけれども、それが何か浮き草のような形で進められていくということであってはならないと思いますので、婦人少年局を中心にいたしましていろいろな対策をどんどんと新しい観点から講じていきたい、このように考えておるところでございます。  ただ、全く新しい労働の市場が別の構えでできておるかということになりますと、必ずしもそんなふうには私ども考えておりませんで、やはりいままでの同じ水平線上で新しい婦人労働のあり方というものをとらえて、そのための対策を講じていくようにしなければいかぬ、こう考えているところでございます。
  148. 草川昭三

    ○草川委員 過日、三重県の津の地裁で、市役所の女子のいわゆる賃金面での格差を認めないという判決があったわけでございますが、本来ならば民間企業を行政指導する立場にある地方自治体でこういう判例がおりたということは、これからもかなり大きな影響力を与えると思うのでありますし、現在いろいろな意味での退職年齢の男女差別等も出ておるわけでございますが、自治省としてこの判例をどのように受けとめられるのか、お伺いをしたいと思います。
  149. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先日の鈴鹿市の判決は承知をいたしておりますが、まだ判決それ自身を私自身見ておりませんが、事務方の方で現在検討をいたしております。同時にまた、鈴鹿市に対しても、事情がどのような事情であったのだということの聴取もいたしておりますので、この段階で判決そのものについて私の見解を述べることは適当でなかろう、かように考えますが、一般論といたしまして、地方公務員法上、単に性別によって差別をつけるということはこれは認められない。やはり職員の昇任とかそういうような問題はすべて勤務の実績、勤務の実証といいますか、それによってやらなければならぬことは当然であろう、かように考えております。  そこで、合理的な理由があって任用上の取り扱いを区別をしているということであれば別として、単に女性だというだけでの差別は、私はこれは認められない。私どもとしましても、従来から人事担当官会議等の場を利用しまして、同時にまた、研修会等もやっておりますから、そういった誤った扱いのないようにという指導をいたしておりますが、今後ともそういう指導は強化をしてまいりたい。ただ、一般的に言いまして、やはりこれは民間等にもあるのかもしれません、地方団体にも、実際問題としては若干の差別的な扱いが今日なお残っておりはせぬかという点については、私自身も感じておりまするので、そういう点については今後間違いのないような処理をさしたい、かように考えております。
  150. 草川昭三

    ○草川委員 これは最後になりますが、労働省の方は、五十二年の六月に年次計画を発表して、退職制度の改善だとか若年定年制の問題等の年次計画を立てておるわけですが、あとわずかで本当にこれが実現できるかどうか、大変疑問に思うわけです。だから、もしこういうような——最近の特に男女差別の問題の判例で、ほとんど当局側が負けるわけですよ。だから、これは容易ならぬことなので、本当に直すべき点があるのならば直さなければいかぬと思います。  もう一つは、今度の予算修正の中でも公明党の方から非常に強く出ております奥さんのパートタイマーの給与所得控除あるいは扶養家族控除という問題で、七十万円の引き上げなんかがずいぶん出ております。しかし、これは制度上の問題がございますからなかなか了解をされていませんが、扶養控除が七十万で対象外になったとしても、せめて企業が扶養家族手当を支給するということは、逆に労働省から行政指導すればできることですね。だから、少なくとも私は、逆に労働省としては今後七十万の底上げの問題あるいは七十九万の給与所得の引き上げの問題、こういうものを少し働きかけませんと、七十万になりますと奥さんがやめるという場合も多いのですよ。中小企業の経営者側としては非常に悩みも多いわけでありますから、ひとつ労働省としてのアクションを起こしていただきませんと、単なる税制上の問題だけでは解決しないと思うので、最後に労働大臣の見解をお伺いをして終わりたい、こう思います。
  151. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生御指摘のように、年次の行動計画を立てて改善の努力をしてきておるところでございますが、今後男女平等の理念の上に立ちましてさらに積極的な努力を重ねてまいりたいと思います。  いま御指摘のありました税制上の問題につきましては、今後十分頭に置いて、実態等も調査しながら検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  152. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  153. 田村元

    田村委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  次に、岡本富夫君。
  154. 岡本富夫

    ○岡本委員 政府物価を六・四%に抑える、こういう目標でありますけれども狂乱物価、円安とかあるいはまた石油の値上げ、こういうようなことで、外圧によってこれができなかったのだというようなことになってはならない。    〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 したがって、物価の動向を大きく左右するところの石油の確保あるいは価格の問題について、特に通産大臣は、国会が終わりましたら、わが国の石油の三〇%を輸入しているところのサウジアラビアを初め中東諸国に訪問する考えがあるかどうか、時間がありませんから簡単に申し上げまして答弁をいただきます。
  155. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お答えいたします。  ぜひ参りたいと思っておりますけれども、まだいつという日時等は決めてございません。
  156. 岡本富夫

    ○岡本委員 江崎前通産大臣は向こうに行って、そして相当活躍をしてきたわけです。今回園田特使が行っておりますけれども、石油の輸入通産大臣の大責任、だからあなたの個人的な考えといいますか、ぜひ行って、そして友好を深め、いろいろとやってきたいという日程をつくる、こういう考えがあるかどうか伺いたい。
  157. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お説のとおり考えております。ぜひ行きたいものだと思っております。
  158. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、通産大臣はぜひ行きたい、行く予定をつくる、こういう考えであるようですが、外務大臣にはさき予算の総括で中東問題をお話ししまして、欧米に勤務する大使級は主流、そうでないところは余り優遇されていないといいますか、そういうようなことでぜひそれも一遍調査に行ってもらいたい、こういうことを要請いたしておきましたが、はっきりした答弁がなかったわけです。  この二月二十七日、コロンビアのドミニカ大使館が占拠された。米国を初め十数カ国の大使がいま人質になっているわけですが、日本の大使は行かなかったから幸いをしたわけですけれども、このとき行っていない。こういうことを見ますと、産油国あるいはまた発展途上国を非常に軽視しておるのではないかということも考えられますので、ぜひ外務大臣も向こうに行き、そして中東外交あるいは産油国との外交に力を入れてもらいたい、こう考えるのですが、外務大臣の御答弁をいただきたい。
  159. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの中東諸国との外交関係につきましては、今国会の総理の施政方針演説それから私の外交方針演説等でも、中東が日本にとってきわめて重要な外交地域であるというふうに表明いたしておるわけでございます。  一つには、中東が世界の平和と安定に重大な関係を持っておる。それから日本のエネルギー資源その他を通じまして、日本の将来にも重大な影響がございますので、できるだけ中東外交を強化してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただいま園田特使が参っておりますが、私も将来、機会がございましたらぜひ参りたい。それから、在外公館の人員及び質の向上についてもいろいろ努力をいたしておるわけでございます。
  160. 岡本富夫

    ○岡本委員 外務大臣、機会がありましたら行きたいというのではなくて、これは機会をつくらなければいけませんよ。先ほど通産大臣は、自分みずから行って中東の油を確保しよう、こういう決意だった。あなたは機会があったらと言うが、逆に言うと、機会がなかったら行かぬということですか。いかがですか。
  161. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 機会をつくって参りたいと思います。各閣僚の日程その他国会の審議等、具体的な日程につきましてはまたいろいろ政府内部でも相談いたしたいと思っております。
  162. 岡本富夫

    ○岡本委員 わが党の竹入委員長も本会議で、大平総理にもぜひひとつ早く行くように申し上げた。それから園田特使も、帰ったらすぐに大平総理に行ってもらう、こういうような報道もあるわけでございます。官房長官質問通告はしてなかったけれども、国会が終わったら一日も早く、アメリカやカナダ、メキシコというような報道がありますけれども大平総理にもあなたから進言して、中東を早く訪問をするように、こういうように要請をしたいのですが、あなたはいかがですか。
  163. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま先生から総理に対して御要望でございますが、総理が国会で、機会があれば中近東も訪問したいということを述べたわけでございます。いま日程が決まっておりますのは、いま先生のおっしゃった各国の訪問をしたいということとサミットが計画されておるわけでございますが、いま先生の御要望の点は、総理も機会があればぜひ行きたいということを言っておりますので、そのまま御意見を総理にお伝えしたいと思います。
  164. 岡本富夫

    ○岡本委員 サミットに行くとき、あるいはまたその後、こういうときを利用してちょっと足を伸ばす。フランスの大統領なんか簡単にどんどん行っているわけでしょう。だから、この前も要望しておいたわけですけれども、もっと総理に強力にお話をして、大切な石油、物価の問題を一番左右するものでありますから、ひとつ力を入れてもらいたい。これは要望しておきます。  そこで、長期エネルギー見通しを見ますと、石油から石炭に燃料転換をする、この石炭が非常に大きなファクターを占めてくるわけでありますが、火力発電の石炭の専焼炉、あるいは鉄鋼の炉やセメント製造の場合の石炭への燃料転換、これをいたしますと環境問題に非常に問題があるのじゃないか、こう考えるわけですが、環境庁長官、どのくらいの影響があるのか、御答弁願いたい。
  165. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答え申し上げます。  石油にかわる代替エネルギーの利用拡大は今後国を挙げて強力に推進をしてまいらねばなりませんが、あわせて環境保全に対しましても十分な配慮がなされなければならないと私は考えておる次第でございます。  先生御指摘の石炭火力と石油火力を比較いたしました場合に、石炭や石油の種類また燃焼条件によりまして一概に申し上げることは困難でございますが、廃ガス処理を行わない場合に石炭火力は、石油火力に比べまして硫黄酸化物で約五倍、窒素酸化物で約三倍、また石炭灰も、たとえば百万キロワットの発電所の場合には年間四十万から五十万も発生すると言われております。したがって、今後、石炭火力の建設等に対しましては、環境保全というものに対しまして十分な配慮をしてまいらねばならぬ、かように考えております。
  166. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、数字がちょっと違うんじゃないかと思うのですけれども、まあ後で……。常識的に亜硫酸ガス、SO2の場合は大体三倍、二酸化窒素の場合は大体八倍、それから粉じんが五百倍くらい、これが常識なんですね。  そこで、私は昭和四十二年から環境問題をやってきたわけでありますけれども、あの四十五年の公害国会、大変な騒ぎになったわけですね。ああいうことは再び起こしてはならない、こう考えているわけでありますので、通産省として、この火力発電所の石炭専焼炉、あるいはまた鉄鋼炉に対してどのような対策をするのか、あなたの方からお聞きしましょう。
  167. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 石炭火力の公害対策問題でございますけれども、大体三つに分けて考えております。それはSOxとNOxとばいじん対策という三つの範疇かと思いますが、SOxに関しましては、先生も御承知のとおりいま湿式の排煙脱硫技術が実用化しておりまして、現在石炭火力の六基にはこれを採用してございます。しかし、もっと副産物も少ないし、脱硫用水等ほとんど要らないというような乾式脱硫技術が大変よろしいのでございますけれども、まだ技術的に開発の途上でございますので、今後これを進めまして、そして完成すればこの方に進みたいということでございます。  それからNOxに関しましては、ボイラーでの二段燃焼あるいは低NOxバーナー等の燃焼技術が広く採用されておることは御承知のとおりでございます。しかし、これもさらにアンモニア接触還元法等による低脱硫技術が実用化の段階にあるほか、高ダスト脱硫技術につきましても、ただいまパイロットプラント等で技術開発をしている最中でございますので、これをさらに進めていきたい。  それからばいじんに関しましては、高性能の電気集じん装置が広く採用されておることは御承知のとおりでございますが、さらに高性能の高温電気集じん装置等の採用等も考えてございます。こういうふうにして、お話しのように石炭火力による環境対策というものは十分注意して今後とも進めたいということに変わりございません。  それから、鉄鋼業に関しましては、これは従来とも石炭多消費産業でございますから、コークス用原料炭を五千五百万トンくらい実は輸入して使っておりますけれども、これは大気汚染あるいは水質汚濁等、環境問題に対して大変重大な影響を持つ問題でございますけれども、鉄鋼業はつとにこの問題に留意いたしまして従来から十分な対策を練っておりますし、また、今後も業界に注意をいたしまして、環境問題に対し慎重な配慮を払うようにということで進めてまいりたいと思います。  もう一つお話がございましたセメントでございますけれども、これはむしろ一番問題は粉じん対策でございまして、これに対しましては集じん機とかあるいは石炭ヤードの散水装置等で対処してまいりたいと存じます。  セメントにおけるSOxに関しましては、これは製品にも吸収されてしまいますので問題はないと思いますが、NOxに関しましては、従来から新型助燃炉つきのキルンヘの転換を進めておりますけれども、いずれにいたしましても、今後慎重な配慮が必要と存じますので、今後とも十分配慮して問題を進めたい、こういうように考えてございます。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産大臣、いま書いたものを読んでおるだけでは本当は——あなたも正直な方だからあれですけれども、長いおつき合いをしておりますが、環境問題については、つくるときにそういうものをちゃんと義務づけなければいけませんよ。これだけは要請しておきます。  時間が余りありませんので、次に公共料金の問題で、一つ電力料金。この算定について、先般の総括質問のときに、今度できるところの再処理工場、再処理会社の資本金を電力料金の算定に入れるという答弁を森山政府委員がしているわけです。これは佐々木通産大臣もよくわかっているように、フランスあるいはまたイギリスで燃料の再処理をすると高くつくから、安くするためにつくるわけでしょう。だから、資本金とかいろいろなものを電力料金に算定するのであれば、では今度は、再処理された燃料が安くなっただけは電気料金を安くするのか、こうなるわけです。この点はどうですか、簡単に。あなたが答えられなかったら、エネルギー庁長官にでも……。
  169. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 再処理会社の出資に見合う分だけは今回の料金引き上げの申請の対象になっておりまして、これは私どもは、電力会社の経営と密接な関係のある分についての投資については、資産の対象とすることにつきましては前向きの姿勢でございまして、いまおっしゃいましたように、利潤を生んだ場合の問題がございますので、その点につきましては相関関係があるということでございます。ただし、この第二再処理会社は大変長期の目標でございまして、先生御高承のとおり、昭和六十五年の運開ということで現在計画中でございますので、蛇足でございますけれども御説明申し上げた次第でございます。
  170. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間がありませんから、これはまたもう一度委員会でやるようにします。  そこで郵政大臣に、NHKの受信料の義務づけ、こういうような方針を出そうというようなことでありますけれども、御承知のように、いまなかなか払わぬというのは、新幹線の騒音あるいは航空機の騒音でりっぱな正常な電波が来てない、そのために反対して払わないわけですよ。ですから、これは加害者が払うべきものなのですね。いつか環境庁長官をやった大石さんは、こういう正常な電波が来ないものは払わなくていいのだというような発言を昔されたことがありましたよ。したがって、この点について、ひとつ郵政大臣はどういうように答弁をされるのか、これをお聞きしておきたい。  次に運輸大臣ですが、大阪国際空港移転補償跡地、これは飛び飛びに移転補償をしておるわけですが、その移転してないところ、農地ですね、これはなかなか放さない。したがって、移転したところと交換をする、そして有効利用をすれば、一つのグリーンベルトができて非常に有効な土地利用になるわけです。  それからもう一つは、民防工事が非常におくれておる。もう一つは、防音工事の対象地域をWECPNLの八十から今度は七十五に拡大するということですから、この前からの対象地域に後で建てた家は対象にならないが、しかし、今度拡大されたところは、その告示より以後に建てた家も対象になる、こういうことでありますので、先に建てた家が民防の対象にならなくて後の家が対象になる、これは非常に不合理だ。この三点について運輸大臣から答弁をいただきたい。  それから最後に、官房長官に、シベリアに抑留された人が全国に約八十万おりますが、この人たちがソ連のあれによって非常に大変な苦労をなさっている、これに対する救済対策、これをひとつ承っておきたい。  それぞれ答えてください。
  171. 大西正男

    ○大西国務大臣 いまの御指摘の、環境が聴視困難な状態の中にあるといったようなところにつきましては.私の方でも、省令とかあるいは実施要領とかいったものでそれに対応しておるわけでございます。その詳しい内容につきましては事務当局から答弁をいたさせます。
  172. 平野正雄

    ○平野政府委員 電波障害地域の受信料の問題かと思いますが、先ほど先生おっしゃいました放送法の改正におきまして、現在放送法の第三十二条に定めております「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」の範囲につきましては、今回の法改正に当たって変更する考えはないわけでございます。したがいまして、飛行場周辺であるとかあるいは新幹線の沿線の受信障害地域における受信料の取り扱いは従前どおりというふうに考えておるわけでございます。  それでは現在どのように行われておるかということを申し上げますと、新幹線など鉄道障害対策につきましては、原因者になっております国鉄が共同受信施設を設置いたしましてその対策をとっておるわけでございます。その際には、当然でございますけれども、NHKが技術援助等の協力を行いまして、例年相当数の実績を上げておる、こういう状況でございます。  また、飛行場周辺の障害対策でございますけれども、たとえば成田空港の対策が問題になっております。空港公団は対策を要する障害世帯につきましてはすべてに対策を講ずることといたしまして、対策を公団に申し出ております、約一万四千世帯ございますけれども、そのうちの約一万世帯につきましてはアンテナ対策をすでに完了いたしております。さらに、残りの約四千世帯につきましては、共同受信施設の設置を含めて今後の対策を現在検討中である、そういうふうに聞いております。  そのほかに、受信障害対策ではございませんけれども、騒音対策の問題がございます。基地周辺の問題あるいは騒音被害の大きい民間空港周辺の問題等ございますけれども、NHKとそれぞれ担当の機関とが相談をいたしまして必要な対策をとりつつある、そのような状況でございます。
  173. 松本操

    松本(操)政府委員 法律的にむずかしい面もございますので、私からお答え申し上げます。  まず最初に御指摘のございました、移転補償の跡地が散在しておりまして、これの活用がなかなか図れないという点につきましては、確かに御指摘のような問題がございますので、五十三年度からは、航空機騒音防止法を改正いたしまして、地方公共団体に無償で貸し付けるというふうなことができるようにいたしました。  さらにまた、予算補助といたしまして、移転跡地等を地方公共団体が利用して公園あるいは防火貯水槽等をつくります場合に、しかるべく補助をするというふうな周辺環境基盤整備費補助制度というものもスタートをさせたわけでございます。  ただ、移転跡地というものは運輸省の行政財産になっております関係上、国有財産法のたてまえでかなりむずかしい運用の規制がございます。そこで、先生の御指摘は確かに一つのアイデアであるわけでございますけれども、なかなか一般論として用地の交換をスムーズに行うということは困難な状況にございます。そこで、私どもといたしましては、交換ということももちろん含めますが、さらに、移転跡地の適切な価格による売却といったような点をも含めまして、個別案件ごとに財政当局と協議し、さらに関係の市とも御相談しながら、いま虫食いのようになっております移転跡地をなるべく速やかに整備をいたしまして、御指摘のような趣旨に早く対応できるような方法をとるようにしてまいりたい、このように考えているところでございます。  次に、民家防音工事の進捗がはかどっていないではないかという御指摘でございましたが、実は五十四年度から従来の民家防音工事を、いわゆる一室、二室という範囲から全室防音の形に広げました。そのために御希望の戸数も非常にふえてまいりました。そういうこともありまして、多少立ち上がりがもたついたわけでございますけれども、現段階で全国的なレベルで見ました場合に、大体順調にできるのではないか、こう思っております。  ただ、大阪周辺におきましては、他の空港に比較して実は格段に事業量が多いのでございまして、五〇%を超える事業量が大阪空港周辺に集中をしておるというふうなこともございまして多少おくれておりますが、しかし、現在のところはあらゆる努力を集中いたしまして、せっかくのお申し越しに対応できるように機構等を督励して取り組んでいる状況でございます。  それから、最後に御指摘のございました民家防音区域、つまり一種区域の逐次拡大に伴う矛盾点でございますが、これは確かに先生おっしゃいますように、従来は八十五WECPNLでやっておりました。それを昨年度八十に広げたわけでございます。したがって、広がりました部分は昭和四十八年以降につくりました家でも対象になる、中側の方は実は非常に問題を残してしまった、いずれこの八十からまた七十五へ広げていかなければなりませんので、おっしゃるような矛盾点のあることは重々承知をしておるわけでございますが、ただ、現在の法律のたてまえが、その制度をしき、線引きをいたしました以前にそこに住んでいる人、その以後国側のあるいは空港設置者側の都合によって範囲を広げたものは当然救済の対象にすべきであるけれども、それが宣告された後においてそこに家を建てたという場合は、当然承知をしていたのではないかというふうな議論が根っこになって組み立てられておるものでございますので、現在の騒音防止法のままで直接的な方法論というのはないわけでございますが、しかし、いろいろと私どもも苦心をいたしまして、別の方法との組み合わせで極端に問題の多いところはいままでも取り組んでまいりました。しかし、当面の私どもの方針といたしましては、まず八十、やがては七十五WECPNLまでを早急に整備をするということに最大の重点を置きまして、御指摘のような矛盾点につきましては、当面別途の方途をいろいろくみ上げながら、最後に残る問題として真剣に取り組むようにしてまいりたい、こう考えております。
  174. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いまの御質問は、戦後シベリアで抑留生活をされた方に対して特別なことを考えられないかということでございます。私も戦後中国で抑留されたことがあるのですが、そのときの不安といいますか焦燥といいますか、精神的な苦労あるいは肉体的な苦労というのは、特にシベリアでは大変だったろうと想像はするのでございます。  ただ、戦中、戦後、日本人はどこにいましても相当の犠牲を払った方が多い、あるいはまた、抑留生活をされた方でもシベリア以外の方もあるということがございますので、シベリアに抑留された方だけに特別な処遇をするということは、ほかの方々との権衡上もなかなか困難なことだと実は考えております。  ただ、シベリアで死亡されたあるいは負傷された方々につきましては恩給法とか、あるいは遺族の方に対しましては遺族等の援護法、あるいは負傷された方には戦傷病者援護法という法律でいま一般的にやっているわけでございまして、恩給法等でも、抑留期間は二倍に算入するとか、そういうことを実はやっておるのでございますが、いま申し上げました事情によりまして、シベリアに抑留された方だけに特別なことを考えるということはなかなか困難なことだというふうに思っております。
  175. 岡本富夫

    ○岡本委員 では終わります。
  176. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。  次に、藤原ひろ子君。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 日本共産党一革新共同の藤原ひろ子でございます。  国民生活に大きな影響と打撃を与えます電力ガスなどの値上げの査定が慎重にかつ厳正に行われなければならないのは当然のことだと思います。私は最初に、通産省が査定をいたしますについての考え方あるいは基準の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この問題に入ります前に、四十九年の査定の内容を知りたいのです。まず、四十九年料金改定時の申請で、企業側の総括原価のうち燃料費は幾らで、そのとき政府の査定は幾らだったか、電力九社の合計をお答えいただきたいと思います。
  178. 安田佳三

    ○安田(佳)政府委員 四十九年の電力の申請に当たりまして、これは八社でございますが、燃料費につきましては、申請は一兆六千八百五十六億でございまして、これに対しまして査定といたしましては一兆六千二百五十四億円というふうに査定いたしたところでございます。  次に、ガスについてはいまちょっと資料をとってまいりますので、少し御猶予をいただきたいと思います。
  179. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 四十九年は申請よりも三・五四%削減をしただけで、まあまあ申請のとおり認めたということになっております。  そこで私は、査定額に対しまして実績は一体どうなのだろうかということで調べてみたわけでございます。そうすると、四十九年は、いま八社おっしゃいましたが、私は九社の合計で、一兆六千四百九十七億円に対しまして、実績は一兆四千百八十六億円、その差額は二千三百十一億円、つまり八五・九九%で済んでおり、一四%も見込み違いがあるわけでございます。これは私は何とも理解しがたいのですけれども、どうしてこういうふうになったのか、理由を御説明願いたいと思います。
  180. 安田佳三

    ○安田(佳)政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、ガス三社の燃料費についてお答えいたします。  ガス三社の四十九年の燃料費の申請は二千四百九十二億円でございまして、これに対しまして、査定は二千四百三十七億円ということになっております。  それから査定と実績との差でございますが、これにつきましては、燃料費につきましては、一つには円高による差益の発生がございます。それからまた、発電所の熱効率、消費率の向上によりまして、燃料費が減少したという点もございます。それからまた、石油の価格がそれほど上がらなかったというような事情もございまして、そういう事情を総合いたしまして、燃料費につきましては査定よりは実績が下回ったというような結果になっておることでございます。
  181. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは五十一年の改定のときはどうだったでしょうか。さっきと同じように、燃料費につきまして九社全体の申請と査定、この分についてちょっと速やかにお答えをいただきたいと思います。
  182. 安田佳三

    ○安田(佳)政府委員 これは二年合計でございますが、原価の査定いたしましたものは、二年で四兆一千百八億円ということになっておりますが、これに対しまして、実績は三兆九千九百九十七億円ということになっております。
  183. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私も調べてみました。このときは、いまおっしゃいましたように、二年原価でやられたわけですが、実績との比較で見る場合に、五十二年度の後半は円高で燃料費が下がりましたので、五十一年度だけに限って比較をしてみたわけでございます。その結果私は、通産省の査定というのは余りにも企業寄りではないか、企業に対して全く甘いと思うわけです。五十一年の申請は、二年平均で九社合計いたしますと、二兆九百四十八億九千三百万円、査定は二兆五百五十四億七千五百万円、わずか一・八%の削減です。ところが、この年の実績は一兆七千三百十四億八千七百万円です。査定に対する実績額は三千二百三十九億八千八百万円も少なく、比率は八四・二四%で済んでいるわけです。もしこれを単年度ごとに比較すれば、もっとその差が縮まるのだというふうにあなた方がおっしゃるなら、その資料を出していただきたいと思います。あなた方は、それは内部資料だから出せない、こういうふうにおっしゃるものですから、私は仕方なく平均で出したわけでございます。  また、この年の需要予測と実際はどうだったのか、これを調べてみますと、一〇三・五%と予測を上回る需要があったわけです。関西電力の場合は、二年平均の資料によりますと、五十一年度は査定に対して七百八十四億七千五百万円も少なくて、それは比率で申しますと、七九・九%、約八〇%で済んでいるわけです。つまり、関電は、計画よりも多く電力を売りながら、燃料費は約八百億円も少なくて済んでいるわけです。大臣、通産省がこの査定をおやりになったわけです。  もう一つ私が指摘しておきたいと思いますのは、東北電力の修繕費の問題です。これは四十九年の申請は三百十二億円、査定は二百六十八億円、ところが実績は百九十五億円。率で見ますと、査定に対しては七二・七六%、申請は六二・五%なんですね。私は、四十九年には何か特別なことでもあったのかなと、こういうふうに思いまして、五十一年を調べてみますと、またまた申請は二年平均で四百二十二億円、査定は三百四十五億円、何と実績は二百十九億円なんです。全くおかしいではありませんか。私はこれを見ておりますと、東北電力は帳簿の上で数字をひねくり回して、水増し計算によって修繕費を申請して総括原価の膨張化を図った、こういうふうにしか考えられないわけです。  こういうことに対して、一体あなた方通産省はだれの顔色ばかりうかがって査定をやっていらっしゃるのでしょうか。通産省は修繕費については一層の合理化を見込み、原価の減少を図った、こういうことではないのでしょうか。燃料費に比べますと、はるかに変動要因が少ないと思われる修繕費で予定と実績のギャップ、つまり水増し率が大きいということは、単なる企業の節減努力とか、あるいは見込み違いでございましたなどでは済まされない重大な問題でございます。  私どもは、先日、収容定員が五十人という京都のある養護老人ホームを訪問いたしました。ここではどうでしょう。電力ガス値上げ申請によりますと、年間電気代は二百七万円から三百三十四万円に、ガス代は三十七万四千円から五十五万二千円に、合計百四十四万八千円の負担増です。老人一人当たりにいたしますと、電気ガスだけで約三万円の負担がふえてくるという勘定になるわけです。ここでいろいろとお話を聞きますと、一日の食費は老人一人たったの五百四十八円という老人ホームです。暖房費はもうすでに摂氏十八度という節約をしておられました。つめに灯をともすような暮らしです。これ以上光熱費を切り詰めることは、年寄りは病気になれ、老人は早く死ね、こういうことではないでしょうかと訴えておられました。  大臣、物価高に苦しむ国民の切実な叫びにもつと真剣に耳を傾けていただきたい。査定に当たりまして政府は一度ならず、五十一年度にもまた繰り返してこの甘い査定を行ったわけです。この過ちを三たびも繰り返しては大変だと思います。大臣のお考え伺いたいと思います。
  184. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私、五十一年度の実績の検討は余りよくわかりませんので、後から担当官から御説明させたいと思いますが、査定にいま入ろうとしている最中でございまして、本年度の査定に際しましてはあくまでも企業努力と申しますか、合理化というものを前提にいたしまして、そして法の示すところによって厳格な原価主義に基づきまして、物価あるいは生活等に対する影響の大きい問題でございますから、そういう点も十分考慮しつつ慎重かつ公正に査定いたしたいということで、せっかくいま努力中でございます。
  185. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いま大臣は、実績の検討はわかりませんとおっしゃいましたけれども、大変困ったものだというふうに思います。通産省が査定をして決めたら、その実績はどうだったのかというふうな検討を行う、そうしてその後の教訓にするということが大切だと思います。この点、今度はきちんとやっていただきたいということを強くお願いをして、次に移りたいと思います。  私は、次にガスの問題についてお尋ねをしたいと思います。  今日、LNGの価格が急騰いたしまして、今回のガス料金値上げの最大の理由になっているのがやはり燃料費の高騰でございます。ガス会社の原料に占めますLNGの比率は、いまや大手ガス会社の燃料の六割と言われております。政府の資料によりましても、昭和五十三年度には千百六十八万トンの輸入量であったものが、六十年度には二千九百万トンと、約二・五倍もの増加を見込んでおります。このように量も価格も上昇するLNGの輸入形態というのは一体どうなっているでしょうか。同時に、輸入価格の交渉はだれがだれとおやりになっておりますか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  186. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま御質問のございましたLNGの輸入形態につきましてお答え申し上げます前に、先ほどの議論に戻りまして大変恐縮でございますけれども、一言だけ申し上げますが、四十九年、五十一年当時の油の価格は、御承知のとおりOPECは統一価格をとっておりましたので、私どもはそれなりの査定をしたわけでございますが、今回は大変な変動があったということが前回との違いだということをぜひ御理解いただきたいと思うわけでございます。  それから、LNGの輸入形態につきまして御質問ございましたのでお答え申し上げます。  現在、わが国が輸入いたしておりますのは、アラスカ、ブルネイ、アブダビ及びインドネシアの四カ国でございます。これらのLNGにつきましては、すべて、LNGの消費者でございます電力会社及びガス会社が、相手国におきますLNGの売り主でございます国営石油会社あるいは合弁企業等から直接購入をしておるわけでございます。したがいまして、価格の交渉もそういった関係で交渉が行われるということでございます。
  187. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いま森山長官の御答弁どおりに、LNGの場合は、ガスの採取、液化、販売、このすべてにメジャーが必ずかんでいるというのが特徴です。いまや開発輸入が量的に見まして大部分を占めている状態ですから、このあり方についてチェックをすることが何よりも重要です。水際からこちらの部分、つまり輸入後の便乗値上げなどに対する監視も非常に重大だと思います。同時に、水際まで運ばれてくる段階でむちゃくちゃな価格つり上げがやられていないのかどうか、政府はきちんとこの点チェックをしておられるでしょうか。いかがでしょうか。
  188. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、輸入形態及び価格交渉につきましては、直接購入しますユーザーでございます電力会社あるいはガス会社が相手国と交渉するわけでございますので、基本的にはこれはプライベート契約だという認識を持っております。したがいまして、私どもはその段階で直接的なコントロールをする意思はございませんし、その権能もないと思っておるわけでございますけれども、ただ、電気料金及びガス料金の認可申請という段階になってまいりますと、そういう範囲内におきまして私どもは十分なるヒヤリングも行いますし、それにつきまして政府としての査定も行うということで、コントロールはできるというふうに解釈をいたしております。
  189. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 コントロールや権能はないなどとおっしゃっておりますと、大変なことが起こっております。生ガス値上げになったんだからいたし方ない、OPECの値上げでこういうことになるわけですけれども、それは確かに事実であっても、それよりももっともっと大きな要因があるではありませんか。  たとえば、ブルネイLNGについて見てみましょう。ブルネイLNGにつきましては、七七年の二月、本予算委員会でわが党の工藤議員がこの価格つり上げのからくりを明らかにしたわけでございます。つまりどういうことかといいますと、三菱商事とメジャーのシェルが、タックスヘーブン、無税国のバーミューダに置かれていたペーパーカンパニーを使って価格をつり上げて莫大な利益を上げていたことを指摘したわけです。このペーパーカンパニーのコールド・ガス・トレーディング、これはその後バーミューダから引き揚げましてブルネイに移りましたが、この輸入形態は変わっていないはずでございます。すなわち、ブルネイLNGが液化して、販売会社でありますコールド・ガス・トレーディング、ここが日本のユーザーに売るという形態になっているわけです。いかがでしょうか。変わっておりませんでしょうね。
  190. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 輸入の形態はいま先生がおっしゃったとおりでございまして、変更はございません。
  191. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 ブルネイLNG、コールド・ガス・トレーディングに出資をいたしております三菱商事の昨年の九月期中間決算によりますと、ブルネイのLNG開発投資の配当が百億円になった、こういうふうに七九年十一月二十一日、朝日新聞に出ております。ブルネイLNG及びコールド・ガス・トレーディングヘの出資は現在三菱商事、シェル、ブルネイ政府、これがそれぞれ三分の一ずっとなっております。したがいまして、この三者は半年間で合計三百億円の配当金を受け取っているということになるわけですね。ブルネイ政府を別にして考えましても、シェルと三菱商事の二社で半期に二百億円の配当になるわけですね。これはもうけ過ぎだというふうにはお思いになりませんでしょうか。
  192. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま藤原先生から御指摘のございました、三菱商事がブルネイのLNG関連で百億円の利潤があったということは、私どもといたしましては承知いたしておりません。つまり三菱商事といたしましての海外総投資に対するリターンの計算はあると思いますけれども、その中におきまして具体的なプロジェクトによりまして幾ら幾らの配当あるいは利潤があったかということは、それは企業秘密ということのようでございまして、私どもとしては承知していないところでございます。  それから、御指摘のとおりブルネイLNG株式会社は、シェルが三三%、三菱商事が三三%、ブルネイ政府が三三%の株主構成でございますので、それぞれ出資した会社及び政府の運営によりまして行われるものでございますから、三菱商事一社の意向でこの方向が決まるというものでもないというふうに私どもは了解しておる次第でございます。
  193. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 長官はこの百億円の配当金というのは御存じないということですけれども、この「大手九商社の九月中間決算 売上高は最高に」というところに、「三菱がブルネイの液化天然ガス(LNG)開発投資の配当約百億円のほか各部門で手堅い利益を計上し、」というふうにあるわけですが、御存じないということは、私が申しましたことがうそだというふうに言われたのではないと思うわけです。新聞をきちんと読んでいらっしゃらない、その新聞に基づいて、こういうことが出ていたがいろいろ検討がなかったというふうに理解をいたします。  次に、それでは、そんなのんきなことを言っていたら大変なことが起こっております。ブルネイLNGといいますのは、日本にしか輸出をいたしておりません。五十四年四月から五十四年九月の通関統計を調べてみますと、ブルネイLNGの輸入量というのは二百七十四万三千九百九十一トン、輸入額はCIF価格で七百二十五億五千四百二十万三千円、平均価格はCIFでトン当たりにしまして二万六千四百四十一円です。これをもとにして計算しますと、ブルネイLNGとブルネイのコールド・ガス・トレーディングの支払い配当三百億円というのは、総売り上げ、すなわち日本輸入した額の四一・四%を占めているわけです。言いかえますならば、トン当たり価格二万六千四百四十一円のうち一万九百四十七円が配当分ということになるわけです。三菱商事とシェルの半期受取配当について見ますと、二社で二百億円なんですから、トン当たりの価格の二七・六%で、七千二百九十八円となるわけです。二万六千四百四十一円のうちの七千二百九十八円が二社への配当分なんですよ。これでもあなた方はもうけ過ぎなどと思わないのでしょうか。それとも、この計算はうそだ、そんなことは知らぬというふうにおっしゃるのでしょうか。いかがでしょう。
  194. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まず、ブルネイのLNGを日本だけが買っておるではないかという御指摘に対しましては、先生御高承のとおり、LNGは買い手と売り手が話し合いをいたしましてプロジェクトを進めるものでございまして、石油の場合と違います一番大きな特徴は、買い手と売り手が直結するというのがLNGのプロジェクトの特徴でございます。したがいまして、特に日本への供給を対象といたしまして開発いたしましたLNGでございますから、日本に入ってくるのは当然ではないかというふうに解釈をしているわけでございます。  それから、いまLNGにつきましての利潤あるいはもうけ過ぎというお話がございましたけれども、御承知のとおり原油価格とのスライドというのが世界的な風潮でございまして、ブルネイにつきましても、つい最近まで独特の計算方法をしておったわけでございますが、どうしても産油国と申しましょうか、産ガス国と申しましょうか、そういうところの強い主張がございまして、原油価格にスライドするという方式が適用されたわけでございますので、それに比例いたしましてLNG価格は上がってきたということでございます。  なお、LNGが一時、買い手市場という時代がございました。そのときにおきましてはLNGというのは大変安価に推移したわけでございますけれども、御高承のとおり、クリーンエネルギーということもございまして、最近はいわゆる売り手市場に転換いたしております。そうなりますと、どうしても産油国といいましょうか、産ガス国といいましょうか、そういう側の主張に引きずられるというのが実態でございますことをぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  195. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 うまくごまかしてもらったら困ると思うのです。石油というのはOPEC、つまり産油国から買っている、政府から買っているわけです。しかし、LNGというのは、あなたがさきにもみずからおっしゃったように私企業なんですから、この私企業から買っているわけなんです。政府から買っているのではないということを明らかにしなければならないと思います。  七七年で見ますと、ブルネイLNGの資本金は三千万ドル、コールド・ガス・トレーディングは二十四万ドルです。これはレートを二百四十円としまして二社の資本金は合計約七十三億円、すると二社の配当率は持ち株に対しまして一年に換算いたしますと、八二二%となります。通産大臣、年に八二二%の配当ですよ。この事実からして、少なくとも生ガス値上げがそのままLNGの価格値上がりとなったなどと強弁はできないと思うわけです。真の価格つり上げの元凶はこのメジャーのシェルと三菱商事であることは明白ではありませんか。  通産大臣、ブルネイLNGのユーザーは東京電力と大阪瓦斯と東京瓦斯の三社です。シェルや三菱商事のもうけ過ぎの分は結局はこの三社のお客さんであります消費者、国民に負担をさせられているわけです。電力ガスという公益事業の会社がシェルや三菱商事にもうけ過ぎを許し、その分を消費者にしわ寄せをするというこの値上げは実に不当きわまりないことでございます。先ほども述べましたように、石油にかわりますエネルギーとして電力ガス会社のLNGの輸入が増加しております今日、この不当性が政府の手によって放置されていたのでは国民はたまったものではありません。  通産大臣、このようにぼろもうけをしているLNGの開発輸入の実態を調査をして、そして商社やメジャーがぼろもうけすることを規制する、こういう手だてをとるべきだというふうに思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  196. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私の承知しているのでは、御承知のようにLNGを輸入している日本への出荷先はインドネシア、アブダビ、ブルネイ、アラスカ、四カ所でございますが、インドネシアは初めから原油にスライドいたしまして、原油の上がった率で上げますよ、こういうことになっております。最近になりまして、アブダビもこの一月から原油にスライドして上げることになっております。それからいまお話しのブルネイ、アラスカも四月からスライドをするということで、原油値上がりどおり向こうは上げるのでございますから、これはいかんともしがたいのでありまして、それに応じなければ入ってこぬだけの話でございますから、その点はやはりよく考えてやらぬといかぬと思います。
  197. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 通産大臣、私の質問をよく聞いていただきたい。LNGは、石油のようにOPECから、産油国から、すなわち政府から買っているんじゃない、LNGは全部私企業なんだからそういうところから買っているんだということをあれほど申しているわけです。  いま現在、わが国が輸入しておりますLNGは、アラスカを除いてすべて開発輸入をしているわけです。政府も輸出入銀行からの融資で援助をしていらっしゃるでしょう。ブルネイLNGにつきましてもこの援助をしているではありませんか。商社が借りた金を返しさえすれば、もうけ過ぎやろうが何やろうがやってもいいじゃないか、こういうものではありません。  私は決して妥当な利益も上げてはならないなどと言っているのではありません。先ほどから言っておりますメジャーや商社のもうけ過ぎを抑えて、電力ガス料金の消費者負担を軽くすることが政府の務めだと言っているわけです。そんなこともしないで、原料が上がったんだから仕方がない、こういうことを繰り返しおっしゃっていたのでは、政治は要らないということになるではありませんか。私はこの点を再度、政府がきちんと調査をし、実行をしていただきたい、ここを強く求めまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。  電力ガスなどの公益事業は、国からその事業を独占的に行うことを認められているという企業なんです。ですから、公益事業というものは、一般の私企業が地域社会や国民との結びつきを大切にする以上に国民の合意を得る努力、みずからの行動を律するという厳しさが必要だというふうに私は考えます。通産大臣電力ガスなどの公益事業は、真に公益事業としての企業倫理を今日どのように確立しているでしょうか、また、みずからの行動に対してどんな姿勢をとっているでしょうか、所管大臣としての御見解をお尋ねしたいと思います。
  198. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お話しのとおり、公益事業でございますから、他の私企業等と違いまして社会的な責任を自覚して行動するのはお説のとおりだと存じます。したがいまして、たとえば政治資金の問題にしても、御承知のように東電は大分前から、あるいは各電力会社もそれに従いまして政治献金は取りやめということで表明いたしまして、ただいまは政治献金はしておらぬというふうに聞き及んでおりますけれども、こういうのもお話しのような一つの公益事業としての自覚のあらわれではなかろうかというふうに判断しております。
  199. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 一昨年の十一月の二十三と二十五の両日でございました。川崎市の主催で東京電力東扇島LNG燃料タンク基地建設、これに伴います環境アセスメント公聴会が川崎市立産業文化会館で開かれたわけです。この公聴会に対しまして——いま通産大臣は、東電は大変公益事業として自覚を持って努力しておる、こうおっしゃったのですが、実はこの公聴会に対して東京電力は、職制を使って社員に傍聴の申し込みをするように指示をして、傍聴席から市民を締め出すという事件が起こったわけです。全く残念だと思います。  主催者であります川崎市は、東電のこのようなやり方に対しまして公聴会の「傍聴人申込等に係る取扱いについて」、こういう公文書を東電の平岩社長あてに出したわけです。通産省は公聴会をめぐる事件の概要を調査されていると思いますので、それに基づく見解を述べていただきたいと思います。
  200. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 この問題は、二月二十二日の衆議院の商工委員会で小林政子議員から御同様の質問がございまして、一応お話はしたそうでございますけれども、再度調査をしてもらいたいというたってのお話でございましたので、再度調査をいたしました。その結果、ただいま調査した担当官から直接御説明申し上げたいと思います。
  201. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 いま御指摘川崎のLNG基地に関します調査でございますが、先ほど大臣がお答えいたしましたとおり、先般小林先生から商工委員会でお話がございまして、その後私ども調査いたしました。  その結果を申し上げますと、会社といたしまして計画的、組織的に傍聴の申し込みを行った事実はない、こういう回答をもらっております。それからなお、一部従業員の中に個人的に傍聴を希望し、申し込みを行った者がいたかもしれないが、会社といたしましてはその実態の掌握はなかなか困難である、こういう回答を得ております。
  202. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は東京電力の見解を聞いているわけではありません。通産省としての見解はどうなのか。いまおっしゃった答弁では、通産省の見解も東電と全く同じことだと言わんばかりの言い方だと思うのですが、いま通産省の御答弁に当たっては、川崎市が東電に提出した資料を見ての上の見解でしょうか。いかがでしょうか。
  203. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先生御承知のとおり、この公聴会は川崎市条例に基づく公聴会でございまして、川崎市主催の公聴会であるわけでございます。したがいまして、私どもは一応東京電力川崎市との文書のやりとり等も取り寄せまして拝見いたしております。そこで会社側が川崎市からの質問に答えまして回答した文書も拝見いたしておりますし、これに対しまして川崎市から東京電力に対して出しました文書も拝見しておるわけでございまして、その上でそういう判断をしたわけでございます。
  204. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは、大臣のお目にまだとまっていないかもわかりませんから、私は委員長のお許しを得て資料のすべてを大臣にお渡ししたいと思います。どうぞ。  時間がありませんので、私はその内容を申し上げますので、資料をごらんいただきたいと思います。  まず第一に、この資料は、東京電力の社名が印刷してあるこの袋に入っていたわけでございます。資料では四枚目にコピーをしてございます。この資料は東電の川崎火力発電所の資料であるわけです。会社が指示しております内容が書かれておりますが、その資料の中に「厳秘」と書いてありますものが入っておりますので、ごらんをいただきたいと思います。  ちょっとわかりやすいように、あっちこっち飛びますが、読んでみます。そうするとこの内容がよくわかると思います。  まず、   特管職は、全員出すことになっているので当直長も出す。   官製往復はがきは、全部で二十四枚きています。内四枚は当直長分、残り二十枚は、川崎在住者十名掛ける二枚イコール二十枚となっています。   本当に信頼出来る人にお願いし、別紙のような記入例により行う。   川崎在住者のうち観音、伊勢町社宅は除いた。別にかかげた人は二名(本人掛ける一名。他 は、川崎在住の親、子供でもよい。子供の名を使い年令を三十−五十歳で書くことでもよい。〇〇方と云うように記入。状況によっては、本当に信頼出来る近所の人でもよい。)   公聴会傍聴申込書の書き方については、別紙例の中よりどれでも良いので知らせてやって下さい。   この資料は、当直長のみとし他には絶対に見せないようにして下さい。 などと書いてあるわけです。  こういうふうな私が読み上げました内容ですから、東電が公聴会の傍聴席から市民を締め出すための組織的な手が打たれたというふうに私は判断をいたしますが、いま長官のお答えは、組織的、計画的にやったものではないと東電は言っている、東電にも川崎市から出ている資料ももらった上での判断でいまおっしゃったということが明らかになりました。  いま通産省から、これは組織的、計画的に行ったのではないという御答弁をいただきましたが、しかし、どうでしょうか。私の判断は間違っているでしょうか。組織的な手が打たれたというふうに私は思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  205. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私はこの資料は初めて拝見いたしますし、また、この資料に基づきまして東電から事情を聴取したかどうかもつまびらかでございません。でございますから、長官からもう一度答弁してもらいたいと思います。
  206. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 大臣は御存じないと思いましたので資料を配らせていただいたわけです。あなた方は事を起こした当事者であります東京電力だけの話を聞かれたのか、それとも東電以外ではだれからどういうふうに話を聞かれたのでしょうか。こういうことをなぜ聞くかといいますと、当事者があれこれ弁解することを通産省はうのみに信じ込んでいるのだということを知ったら、国民は納得できないと思うから私は聞いているわけです。東電のほかにだれから何を聞かれたのか、お答えをください。
  207. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、この公聴会は川崎市が行った公聴会でございます。したがいまして、私どもは東京電力の話を聞き、かつ、川崎市がどういう対応をしたかということを調査いたしまして先ほどお答えしたようなことを申し上げたわけでございまして、東京電力以外にだれに聞いたかということにつきましては、いま申し上げましたとおり、東京電力川崎市の両方から話を聞いたということでございます。
  208. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは私はますます理解に苦しむのです。東電と川崎市の両方から聞いた。開発行為者自身が自己の条件をよくするために市民を締め出して傍聴席を独占しようとした事件だ。こういう事件に対して、東電からも川崎市からも聞いたけれども、なおかつこれは組織的、計画的ではない、とこう強弁をなさる。しかもこういった資料はもうそれでは長官の手には入っていたのではないかと私は思うわけです。  大臣、きょう初めてだということで、よくお聞きをいただきたいと思います。私は、冒頭にも言いましたように、公益企業というのは地域住民とのコンセンサスを最も大切にしなければならない、こう思うのです。ところが、どうでしょうか。この問題は川崎市長名で警告文まで出ているわけなんです。普通、一つの自治体が大企業相手に警告文を出すというようなこと、公文書を提出するには、よほどの裏づけと勇気が要ったはずでございます。その資料の中にもございますが、「貴社においては地域社会の一員としての責任を自覚し、現代社会に即応した斬新な企業倫理の樹立に努めるとともに、積極的に市の施策に対応されるよう警告する。」こういうふうに市長名で書かれているわけです。ですから、私も、東京電力がそんなことを本当にやったのだろうかな、こういう疑問を持ちながら、しかし徹底的にこれを調べてみたわけです。  この封筒に書かれております鉛筆書きの氏名、コピーにありますけれども、ここに名前が書かれておりますけれども、この氏名は一班、二班というふうにすべての班の人のことなんです。私は川崎火力発電所に実際にこの人たちがいるのかどうか確かめてみますと、この封筒に書かれている人たちの名前が川崎火力発電所の発電部の職制の中に出てくるわけです。差し上げました資料にその図を明記いたしましたので、封筒の名前と照らし合わせていただきたいと思います。また、この東京電力の罫紙に書かれております——これも資料の中にありますが、これは東京電力株式会社の罫紙です。これには「1、返信ハガキは傍聴許可の有無にかかわらず会社へ持参する 2、許可の場合は早急に環境担当にTELのこと」電話せよ、こう書かれていることです。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  こういうことで、その結果命令によって提出されたと思われるはがきですね、私は四枚返信のはがきをここに持っております。私は先日川崎市に出向きまして、市の環境管理部長さんに直接にお会いをして、この件についてお話を伺ったわけです。部長さんは、東京電力が意図的にやったのかどうか調べるつもりなら方法はあります、しかし、もしも他の傍聴申込者に御迷惑をかけてはいけないと思ってこれ以上はやりませんでした、こうおっしゃっていたわけです。何と良識ある態度ではありませんか。  しかし、だからと言って、川崎市は——東電の、会社として明記されておりますけれども、返事はこう書いてあるのですね。「会社として計画的、組織的に傍聴の申込を行ったことはございません。」こういう一片の回答文に対して、決して川崎市がこれで納得しているわけではないわけなんです。  通産大臣、このような東京電力の、公聴会から市民を締め出すという事件について、先ほど申し上げました公益企業としての企業倫理に照らしてみて、よいと思われるのでしょうか。いかがでしょうか。
  209. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 公聴会そのもの、公述人の問題でありますと、これは大変シリアスですけれども、傍聴人の問題でございますので、私はその実態がよくわからぬものですから何とも申し上げられぬのでございますけれども、しかし、お話のように資料が提出されましたので、そういう資料をもとにして、どういう調査をいたしたか、通産省の調査の仕方等をもう一遍よく確かめてみたいと思っております。
  210. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 公聴会の問題だからよくわからぬとおっしゃいますが、この電力値上げが会社から申請をされて、国民はどこで物が言えるのですか。どこで物が言えるのかといったら、この公聴会しかないわけですね。ここがこんなことになっているという問題だと思うわけです。  それで、いま資料を見たところでよくわからぬとおっしゃるので、私はるるこれを読み上げて御説明申し上げたわけです。ですから、それを聞いて、まさかそれはうそだ、おまえさんがつくって持ってきたんだろうなどとは言えないと思うのですけれども、こういう事実に対して通産大臣としてどうお考えになるか。後、再度事務担当に調査せよと命じてくださるのは大変結構です。しかし、いまあなたはこれを聞いてどうお感じになったか。こういうことはいいのか悪いのか、明快にお答えください。
  211. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 誤解されたようで恐縮ですけれども、私申し上げましたのは、傍聴人の問題でなくて公聴会の公述人そのものの妨害等であれば、これは大変ゆゆしい問題だと思います。そうじゃなくて、この公述人はひどく厳密に何百人かの人間の中から選択するのはよく御承知のとおりでございまして、この方の問題ではなくて、傍聴席を、なるべくたくさん行って聞いてくれというお話のようでございますので、先ほどのようなお話をしたわけでございます。  ただしかし、それにいたしましても、ああいう資料自体がございますから、そういう資料に基づいて東電の調査をしたのかどうか、その点がございますから、もう一遍よく事務の方へ確かめます、こう返答した次第でございます。
  212. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは、この予算委員会の終わりますまでに調査をお願いしたい、こういうふうにお願いしますが、いかがですか。
  213. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 いま藤原先生が御指摘になりましたように、川崎市当局でほかの傍聴人に対しても大変な迷惑がかかる危険性があるので、この問題につきましては警告文を発することにいたしたいというようなお話がございまして、私どもも同様な感触をつかんでおるわけでございます。先ほど先生読み上げられました警告文の中に「たとえ貴社として計画的、組織的に行った事実はないとはいえ、当該事案の取扱いについて疑惑をまねいたことは、住民参加を根幹とする条例の本旨に鑑み誠に遺憾である。」こういう文章がございまして、それから先ほど先生の引用されました文章があるわけでございまして、その辺が川崎市といたしまして大変な、実態把握につきましての問題性という意識を持っておられるのではないかということでございます。  したがいまして、私どもは再三申し上げておりますとおり、本件の主催者が川崎市ということでございまして、川崎市の方がそういうような考え方のもとに処置をしたということでございますので、私ども川崎市の考え方に同調させていただきたいという気持ちを持っておる次第でございます。
  214. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 そんな無責任なことを国民が知ったら本当に嘆かわしいと思うのではないでしょうか。川崎市が遠慮をしてこういうところでおさめているのに、その上に政府が乗っかる、全く私は政治ではないというふうに思うのです。開発行為者自身、東京電力自身が自己の条件をよくするために市民を締め出して傍聴席を独占しようというふうな意図的、計画的なものを、東電と一緒になって、組織的ではございません、計画的ではございません、こんなことを言っていたら本当に大変だと思うのです。もっとしっかりやっていただかなかったら国民は立つ瀬がないということではありませんか。  そういうふうなことをおっしゃるなら、さらに、私は、もうこれはやめておこうかと思いましたが、言わせていただきたいと思います。  東京電力は、地域住民、国民を敵視した行動をとっているだけでなくて、社内でも労働者の権利を無視しているというようなことをやっているわけなんですね。東電は、私どもが調べましたところ、今回の大幅料金値上げの問題に批判的な労働者に対しては陰に陽に圧力をかけているのです。私どもが現在判明させている問題だけでも、千葉火力発電所、新東京火力発電所、調布支社、武蔵野支社、神奈川中営業所、山梨県の職場、まだまだあるわけなんです。課長と副長が労働者を勤務時間中に呼び出して、勤務時間外の行動について種々問いただし、会社の意思に反するような動きに対してはやめるように圧力、いやがらせをやっているわけなんです。  私は具体的に調査結果を述べてみたいと思います。  これは新東京火力発電所の問題ですが、磯友吉当直副長が、鈴木君、ちょっと当直長のところへと呼びに来る、行ってみると青柳当直長が、二月二十日にあなたは新橋で電気料金問題に対するビラをまいたということを聞いていますが、間違いありませんね、と勤務時間外の行動について問いただしているわけです。青柳当直長は、続いて労働者高山さんも呼び出して、同じことをやっております。武蔵野支社では、久保課長が労働者上原さんを呼びつけて、勤務時間外のビラまきについて心外だ、こう言って圧力をかけています。支社では、大久保課長が労働者石川さんを呼び出して、きのう石川さんは休んで新橋の駅でビラを配ったそうですが、本当に配ったんですか、と詰問をいたしております。  労働者が勤務時間外に行った行動で、しかも一市民としては正当なことをやっていても、これが職場において呼び出され、注意を受けるという対象になっているわけです。また、職制は、勤務時間外のことを、労働者が会社に拘束されているという時間に呼び出して詰問をしてよいという権利を保障されているというのがこの東電の状態ではありませんか。こんなことがまかり通れば、労働者は勤務時間外のことまで会社から事実上縛られてしまう、こういうことになるわけです。  しかし、私は、これら職制の人たちも自分の意思で労働者に注意をしているのではないというふうに思うわけです。それは何かといいますと、たとえば新東京火力の青柳当直長はこう言っております。きょうのニュースで、鈴鹿市の女性職員が差別裁判に勝利したそうですが、八〇年代は不確実な時代と言われ、高山さんたちが勝って、私たちの立場が逆転するかもしれない、しかし違う流れに身を置いているので、私にも何もできないとこぼしながら注意をしているわけです。通産大臣、自分の意思、個人の自発性で職制が労働者に注意を与えたのであれば、こんな言葉は出ないはずではありませんか。これはまさに会社の方針として、労働者の時間外の行動まで職制に監視をさせて、電力料金改定に協力をさせるという意図は明白ではありませんか。このような非常識なやり方、行き過ぎ、これについて即刻やめさせてください。通産省いかがでしょうか。通産大臣いかがでしょうか。——大臣のお答え。
  215. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私から事務的にお答え申し上げます。その後大臣から答弁があろうかと思いますが、いま御指摘のことにつきましては、私どもも具体的な事実を確認いたしておりませんけれども先ほど大臣がお答え申し上げましたとおり、公益事業という立場からそこに厳然たるビヘービアを持つということは当然のことではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。先ほど来私が申し上げておりました公聴会の件は、川崎市の主催する公聴会ということで私どもなかなか調査いたしかねるということを申し上げたわけでございますけれども、いま御指摘の点は会社のビヘービアの問題でございますから、そういう点につきましては国民皆様方に疑惑を招かないように、厳正な注意は喚起をしておきたいと思います。
  216. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 最後に、通産大臣の御決意のほどを伺いたいと思うのですけれども電力ガス料金の値上げの原因は、石油やLNGなど、エネルギーにその大部分があるわけです。政府も盛んに国民に向かってエネルギーの節約を呼びかけていらっしゃいます。しかし、日本の企業の中には、このときとばかりに利益を得ようと血眼になっている集団があるわけです。それが、先ほど申しましたブルネイLNGに出資をいたしております三菱商事のような会社であり、また三月期決算では史上最高の経常利益を得る、こういうふうに言われております日本石油のような石油元売り会社でもあるわけです。このような状態を野放しにしておいて、幾ら国民にがまんをせよ、こういうふうに要求をされても国民は納得がいかないわけです。やはり政府がこれらの企業に対して厳しいチェックを行って、エネルギーをもうけの対象にさせないようにしなければだめだと思うわけです。  また、電力ガス会社に対しても同じことです。政府がチェックするから、こう言って水増し申請をしておく、サバ読みをしておく。国民が、せめて公聴会で自分の意見をとこう思っても、会社が独占をする、こういうふうなことでは全く国民はだまされっぱなしではありませんか。私が先ほど申し上げました東京電力の公聴会の独占問題とこれは、そういう意味で軽視できない重要な問題を含んでいるというふうに思うわけです。川崎市任せというふうなことにせず、査定の決定を目の前にして、通産大臣の決意のほどを最後にお聞きしたいと思います。
  217. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先ほども申しましたように、けさもインドネシアの公社の総裁が見えたのですけれども、LNGの価格問題は、その国のそれぞれの傾向によりまして、いまは大変需要と供給の関係が逆になりまして、需要が非常に強いわけです。そこで、インドネシアは初めから原油とスライドさせておったのですけれども、しかしほかのところでもそれにスライドするという方向に変わってきておりますので、それでは要りませんよと言えるかといいますと、そういうわけにもまいりません。でございますので、その点も十分ひとつごしんしゃくのほどお願い申し上げたいと、先ほどから言っている次第でございます。
  218. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 決意になっていないんですね。  時間が参りましたので、終わらせていただきます。(拍子)
  219. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて藤原君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢貞享君。
  220. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 先ほど来拝聴しておりましたが、当面の一番大きな円安、それがまた物価高、インフレという悪循環のどろ沼に入るかと思われるほどの恐るべき円安の関頭に立って、ちょうど一昨年、ドル防衛のために国際共同行動に出たと同じように、ちょうど昨晩、私十時か十一時ごろスイッチをひねっておったら、日、米、西独、スイスの円防衛の共同行動、スワップ発動の用意等、円安防止のためのいわば適切な措置を大蔵大臣がとられたように拝見をいたしました。  そこで私がお尋ねをしたいことは、一つはその骨子をごく簡単に。それからわれわれ調べる由もなくていま質問しているわけですが、きょう為替相場にそれはどういう影響をもたらしたか、第二点であります。第三点としては、さらに先の円安という憂えはないだろうか、先行きの見通し。この三点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  221. 竹下登

    ○竹下国務大臣 委員指摘のとおり、最近の外為市場の動向にかんがみまして、円相場の安定を図る、わが国経済の持続的発展を確保するために必要不可欠なものであるという考え方、そしてそのことは国際通貨情勢の安定にも資することになるという考え方をもちまして、米国通貨当局と日銀とのスワップ取り決めの発動の用意を含めまして発表をいたしたところでありますし、また大蔵省自体の行います具体的な措置といたしましては、外為公認銀行の本支店自由円勘定を通ずる海外からの資金取り入れを弾力的に認めるということが一つ。それから二つ目には、外国中央銀行等の自由円預金は臨時金利調整法に定める金利最高限度の適用除外とすることとして手続をとるということ。三つ目には、本邦企業等の円建て私募債の海外発行について弾力的に取り扱う。それから四つ目には、本邦の外為公認銀行にも中長期インパクトローンの貸し付けを認めて、インパクトローンの導入を一層弾力化するというような四つの具体的な措置ということがお答えの内容になろうかと思うのであります。  その当面の効果といたしましては、本日の東京為替市場での終わり値は二百四十八円ちょうどでございます。先週末の二百四十九円八十銭に比べますと二円弱の円高でございます。ニューヨーク市場の先週末の終わり値に比べますと四円弱の円高ということになりますが、御承知のとおりきょうの分は、十四時間違いますから、今晩の十一時以後にきょうの寄りつきがわかるような状態であります。ロンドンがいま入りましたのでは、二百四十八円八十銭ぐらいというふうに入っておりますけれども、これは商いが大変薄うございますので、必ずしもいま委員質問に答える大きな要素ではないかとも思います。現状はそのとおりでございます。そこで私といたしましては、今回の措置が為替市場に心理的なよい影響を与えて、そして一方、資本流入を促進させることによって円相場が安定していくことを心から期待しておるところであります。  そこで、具体的に今後の円レートの推移の見込みということになりますと、これは通貨当局者でございますので、具体的なこれぐらいがよかろうとは申せませんけれども、この安定していく推移を見守りながら、しかもそれに対して期待を心からしておるというお答えでもって御理解をいただきたいと思います。
  222. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 きょうの相場はそれなりの効果をあらわしてはいるのではなかろうか、こう思います。ただ、一月の国際収支三十三億ドルの赤字、史上最高、それから、五十四年度の国際収支の見通し政府見通しより二十ないし三十億ドルの赤字がさらに積み増しになるであろうという環境のもとにおいて、為替の小手先だけで一体円安は防止できるだろうか、私はこれは大変不安があるわけであります。したがって、さらに財政支出を一層圧縮する、あるいはまた財政支出の後倒し、引き締め、こういうことを抜本的に行わなければならない時期が来るのではなかろうか、こういうふうに考えます。どうでしょう。
  223. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、五十四年度の補正予算が御審議いただいて通過した段階でございますが、さきにとりましたいわゆる公共事業費五%の留保ということなどが、いま小沢委員指摘の弾力的措置の一つである。そうして、いま審議していただいております五十五年度予算の執行、いわゆる後倒しというお言葉をお使いになりましたが、そういう方向をどの時期に検討するかということは、まさに予算の審議と並行しつつ、そしてまた、それこそ諸般の情勢を総合的に勘案しながら、本当に慎重に対処してまいらなきゃならない事態であるという認識においては、小沢委員と私どもとの考えは一致しております。
  224. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 これはまださらに数日間の推移を見ながら、総括締めくくり質問なり何なりで、機会がありましたらさらに質問を続けたいと考えます。  次の問題に移りますが、郵政大臣あるいはまたあと電電公社総裁から御答弁いただきたいと思いますが、私は端的に結論から先に言うと、電報というものをやめてしまったらどうか、こういうように考えます。  一つの理由は、十数年前から比べれば電報そのものの量が約三分の一に減ってしまった。  それから第二の理由は、これがあるためにことしでは恐らく収支率といいますか、一の収入に五の支出ぐらい、電電公社の赤字は一千三百億ぐらいになっていくのではなかろうか。これを七、八年続ければ、恐らく一兆円という赤字が電報で電電公社に覆いかぶさっていくわけであります。  三つ目の理由は何かというと、昔は「ゴケツコンオメデトウ」、「ツツシンデゴボドウサマノゴセイキョヲイタミオクヤミモウシアゲマス」段落何何、いまから十数年前はそういう電報が一割か一割二、三分しかなかった。あとは電報の機能を果たして、「チチキトク」云々というような電報の機能を発揮しておったわけであります。ところが、もうことしあたりは、慶弔電報というものが七割から八割を占めるようになって、ほとんど電報本来の機能というものはなくなってしまっておる。こういうものがあるものだから、われわれは、もう毎日のように電報を打つことに追われている、こういうことでありますから、思い切ってこれをやめてしまう。  これも人の問題がありますから、電電公社で一万七千人ぐらい、郵政省で約七千人ぐらい、合計二万四千人もの者がこれに携わっておりますから、漸進的に人の配置を考えて、二、三年あるいは三、四年計画でもよろしゅうございます、やめてしまった方がいい。これはだれが考えたってそうだと思いますが、郵政大臣、いかがでしょうか。
  225. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  電報の事業の収支の傾向が、先生のおっしゃるような傾向をたどっておりますことはそのとおりだと思います。ただ、先生御自身もいま御指摘になりましたように、いろいろ問題がございますし、また現状におきまして、やはり電報という通信手段の使命というものが存在をしておる、このように考えておりますので、いま直ちにこのことについて廃止をするという方向ではございませんけれども、将来長い問題としては十分検討してまいりたいと思っております。
  226. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 将来検討してみたいというような結論の御答弁であります。私はそういうような、即刻すぐやめますとは御答弁がなかろうと思いますが、行政管理庁から監察結果をわれわれは聞いておるわけですが、たとえば電報専用受付窓口業務専担者、専任の担当者を廃止したらどうかとか、余り人が多過ぎはしないだろうかとか、たびたび行管からも勧告を受けているわけであります。  これはどうしてかというと、電報の量が昭和三十八年には九千四百六十一万通あったものが、昭和五十三年で三千九百十九万通というのですから、約三分の一であります。ことしあたり恐らく三千万通ぐらいに減っているでしょうから、まさに三分の一であります。それから、先ほど申し上げように、慶弔電報が三十八年のときは一四%であったものが、五十三年には七割、ことしは恐らく二割五分ぐらいしか電報機能本来のものを果たしておらないのではないか、こう思いますが、その収支が五十三年のときには、これだけの電報を扱うのに、三百十四億の収入に対して驚くなかれ一千四百七十億、これだけの支出をしているわけであります。だから差し引き赤字が一千百五十六億。だから、これをこのまま昭和五十五年度に持ってくれば、一千三百億の赤字は出しているのではないか。  これだけの赤字を出しているにもかかわらず、行政管理庁の指摘したように、人の状況はどうかというと、昭和三十八年度のときに一万九千人いたものがいま一万六千六百人というのですから、その業務の減っただけ、三分の一に減っているにもかかわらずこれだけしか減っていないわけであります。したがって、行管が指摘するように、窓口の専門担当者をやめたらどうか、あるいはまた、もっと民間に委託したらどうかという具体的な問題が提起されているのではないか、こういうように考えます。このほかに、郵政省でまだ七千人近い人を抱えて扱っているというわけであります。だから、本来の機能がなくなった盲腸的存在でありますから、これはやめていった方がいいと思うわけであります。  ただ、日本人は古来、婚礼のときにどっかから電報が来た方がにぎやかでいいとか、お葬式のときに弔電でも来た方がそれなりによいということについて、郵政大臣、私は代案を持っているわけです。慶弔レター、慶祝手紙、いいじゃないですか、封筒の上にツル、カメの例の電報のようなきれいなものが入っているものを送ってやればいいんだから。現にもうそういうことをやっているところが出てきているわけです。もしやめないというのなら、私は実力行使であります。全国の封筒業者、印刷業者と話して、これをどんどん売ってくれないか。みんなでそういうようにやるようになれば、幾らやめたくないと言ったってやめざるを得ない、もうわれわれの実力行使であります。弔電のかわりにちょっと黒いような色が入ったので、中へ余り長々と書かれてはいかぬから、やはり電報用紙みたいなものを入れて売ってやれば、これは重宝がられてみんな買いますから、もしお答えがなければ、私はこれから印刷工業界と話して、あるいはまた封筒業者と話して、実力行使してでもこれはやめなければならぬ、こう思います。どうでしょう。
  227. 大西正男

    ○大西国務大臣 いまお尋ねの点につきましては、いずれ御審議をいただきます郵便法の改正法案の中でそういうことを実は考えておるわけでございまして、はがきの一部分にいろいろと図案とかそういった文字とか、慶弔、あるいは慶弔に限らずその他のものも含みますけれども、もちろん慶弔についてもそういうことが可能であるということで、そういうことを考えておるわけでございます。しかしただ電報は、たとえばお葬式の日とか時刻とか、あるいは結婚の披露宴とかそういうところへ届くような手段は現在もやっておるわけでございますが、はがき等の場合に、お祝いの志をあらわす図案等はそれにできますけれども、到達をすることについて、適時適切にこれをお届けするということについては実はお受け合いいたしがたい面があるわけでございまして、そういう点で電報と相違があろうかと思います。
  228. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 考えておりますということなので、それ以上ここで、はい、やめますとは答弁が当然できないと思います。手紙で送ってやっても速達で送って二百円か二百五十円ですから、電報の八百円だ九百円だと比べればその方がはるかに安上がりでありますし、最も根本的な問題は、一千三百億も一千四百億も赤字を出さないで、それを電電公社のこの間四千億も黒字が出たという上に上積みすれば、先般来論議されている深夜通話料をさらに抑えることができるというように持っていかなければならないのではないか、こういうように考えます。郵政省が前向きで検討していただくような御答弁でありますが、電電公社の総裁はいかがでしょうか。
  229. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答えいたします。  小沢先生が電報に対していつも御持論を持っていらっしゃることも前から承知しておりますが、いまの御質問にお答えするならば、郵政大臣と同じように、慶弔郵便というのですか、いま郵政省で考えていらっしゃるのは、テレメールとかメールグラムとか、郵便と電報のあいのこのようなものでございまして、電電公社の伝送路をフルに使いまして、非常に大きな力を持っている郵政省の配達力というかこれを両方使って、国家的に見てもっと安い、料金としては電報よりはちょっと高いが、速達よりはもう少し速いというものを考えておることも承知しております。しかしこれはいろいろ法制上も、いまも大臣がお答えになったように相当な時間もかかりまして、なかなか早急には間に合わないと思いますが、私たちはこれは非常に期待を持って郵政省の対策を好意的に応援していきたい、こういうふうに思っております。
  230. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 電報の問題はその程度にしておいて、戻ってくるはがきが多いんですよ。不親切だなと思うんだけれども、戻ってくるはがきや手紙が多い。これが一体どのぐらい戻ってくるかというと、二・〇八%というのですから百通の中で二通、二・〇八、これだけ戻ってきて、一日に七十万通。これをもとの出した人まで戻さなければいかぬのですから、その金を計算して、まあ往復だから四十円、あるいは封書ですから五十円と計算すると一日二千万円から三千万円、年間にすると百五、六十億から二百億になるわけであります。そこで、どういう原因で戻ってくるかを調べてみましたら、あて名不完全のもの、あて名のところに尋ね当たらないもの等々が七、八割であります。  そこで私は端的にお尋ねをしますが、私たち電話帳でよく手紙や封書を出すわけです。もう少し電電公社と郵政省と協力をしてもらって、たとえば松本市は北深志一丁目と、一丁目だけでは戻ってきてしまう。この後の番地を入れてくれるならば、これはこのごろ電話が普及しましたから、大変利便なあて名書きになるのではないか。あて名不完全だといって戻すならば、郵政省はもっと親切にあて名をきちっと書いておくべきじゃなかろうか、そういうものを出すべきじゃないか。ところが電電公社の方は、料金を請求しなければいけないから、料金の請求書というものはあて名どおりぴしっぴしっとくるわけですから、全部電電公社は知っているはずであります。最後の一けたを親切にここへ入れていただくならば、これは大変利便なものになる。年間二百億のもうけになってくるのではないか、どうでしょう。
  231. 玉野義雄

    ○玉野説明員 先生おっしゃる御意見、ごもっともでございますが、私たちの方としましては、たとえば東京の電話番号簿ですと、あれでも厚い厚いと言われておりまして、これで番地まで全部入れますと、約四〇%ぐらい厚くなってしまうわけでございます。それで経費としまして、ほぼ四割ぐらい高くなってくるわけでございます。それで、厚くならないようにうまくできればいいわけでございますが、その辺については私たちも種々検討いたしておりますが、まだ結論を得ておりませんので、その辺御了解いただきたいと思います。
  232. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 郵政大臣、四〇%も厚くはならぬと思うのです。われわれこのスペースをいろいろ計算してみて、一割か一割五分厚くなるだけですし、分割してもいいと思います。前向きに検討しているそうでありますから、ぜひ実現するようにこれは強く要望しておきます。  その次に私がお尋ねしたいことは、十年間ぐらい貯金を出し入れしないと、みんな郵政省で没収しちゃうわけであります。その額を調べてみたら、これがわずかな額ではないわけで、大概貯金通帳で十円か十五円残っているやつは捨てちゃうみたいにどこかに行ってしまうわけで、その状況を申し上げますと、大体昭和四十二年に百八十二万口座、いまは百六十万七千口座。没収しちゃった金額が、最初は七億一千四百万だが、いまや十九億七千一百万、約二十億であります。毎年毎年これだけのものを郵政省は郵貯特別会計で没収しているわけであります。いまの昭和四十二年から五十三年までをトータルすると三千万口座、大きいですよ。それで額が百三十九億、百四十億になんなんとしているが、これは貯金特別会計へ没収しちゃっていいように法律には書いていないが、いいわけでしょうかね。これは零細な貯金だから何かに使わなければならないような気が私はいたします。それが一点。  もう一点は、貯金局を合理化しなければならない。七千万口座の中に、いま私が調べただけで二千万口座あるわけですから、二千万口座を全国二十八地方貯金局でいま丁寧にしまってあるわけなんです。それだけ没収しちゃったら、それはみんな廃棄すれば貯金口座は五千万口座、もう三分の一以上はそれはみんなカットできるわけですから、その方が貯金局の合理化なり何なりになるんではないか。そういうことまでどうしてもっと積極的に目を配ってやらないか。この二点について。なお行管庁の長官も意見があったら。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  233. 河野弘

    ○河野政府委員 非常に事務的な問題でございますので、貯金局長からお答えをいたします。(小沢(貞)委員「わかっているよ、常識的だ」と呼ぶ)失礼いたしました。数字の問題でございますので……。  この権利消滅金の会計上の処理の問題が第一問の問題だと思いますが、これにつきましては現在、郵便貯金特別会計法第五条の中で、この歳入の欄といたしまして附属雑収入ということで国庫に帰属するということになっているわけでございます。ただいま先生からお話のございましたとおり、年間約二十億、少ないときで十億ぐらいのお金が国庫に帰属しているということになっているわけでございます。  それからいま一つ、二番目の問題でございますが、先生お示しの七千万口座の中に二千万口座眠っているというお話であったかと存じますが、この七千万口座は現在生きている口座でございまして、いまお示しの二千万口座というものは、これはもうすでに権利消滅した口座というものになっているわけでございます。十年間出し入れのなかった貯金通帳につきましては、あと二カ月の間、御利用の住所あてに催告いたします。こういうあなたの通帳が現在御利用になっていませんがということで催告いたしまして、催告いたしましてもなおかつ御返事のなかったものでも、貯金事業の特質といたしまして、結局国民生活の安定あるいはまた福祉というような観点からいたしまして、直ちにこれが消滅ということにいたしますと、必ずしも本来の国民のためにもならないという点からいたしまして、一応法律上は権利消滅いたしますけれども、私どもといたしましてはこれを保管しているわけでございます。マイクロフィルムにこれをおさめまして約十年間これを保存いたしております。この十年間保存している分がいま先生お示しの二千万口座。したがいまして、現在生きております通常貯金七千万口座、このほかに二千万口座の通常貯金がある、こういうことであります。
  234. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 七千万口座は生きておる。二千万というのは、昭和四十二年から五十三年までで二千万口座ですから、もっと長い間だったら三千万か四千万に相当しているわけです一それをまたみんな保管をしているのですか。そういうことはやめた方がいいと私は思う。それだけの人件費をかけて保管の事務をやりている必要はない。没収してしまって、金使ってしまう。そんなものは何でいつまでも保管しているか。これは大臣、もう答弁は要りませんが、そういう余分なことをやらないで、そういう人をなるべく合理化をしなさい、そういう目で見なさいと私は言っているわけです。どうぞそういうぐあいにやっていただくようにお願いしたいと思います。
  235. 大西正男

    ○大西国務大臣 先生は、郵政省の経費の節減等について御心配をいただいての御質問だと思いますが、いま局長からお答え申し上げましたように、最終的に国庫に帰属する形になっておるわけでありますが、それは法定をされてそうなっておるわけでございます。ただ、これは実際の例を私が聞いておるところによりますと、預金者の中で忘れておったり何かの機会に通帳が出てきたりして、そしてその期間がたった後に請求に来られる方もかなりの数あると聞いておるところでございます。でございますので、言うならばその預金債権が一種の時効、時の経過によって消滅するといったような考え方に立っておると思うのでありますが、しかしそれはそれといたしまして、国民の皆さんのためになるべく利益になるようにしたいというのが郵政省の考え方だと思います。ですから、法的に言うならそれは自然債務として残っておるから、御請求があればそれに一定の期間内においてはおこたえ申し上げようという心組みだと思っておるわけでございます。
  236. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 気がついたときに戻しにくるのに対して親切にやっておくために、二千万も三千万も、恐らく四千万ぐらいあると思いますが、そんなものをマイクロフィルムに入れて保管しておくようなことをやる時間、そのための費用、一分間四十円かかるんですよ、郵政省の貯金は。それで十円か十五円忘れた人が取りにくるためにそれだけのことをやっておく方がいいか、そういう目でもって見なければならないということを申し上げているわけで、そういう意味においては、銀行においては百円から金利をつけるのに郵政省においてはたしか十円からつける。いまの時代にそういうことをやっておる。人を多くかけて経済効果のないことをやっている。そういう意味で見直してほしい、こう言っておるわけです。  次に通産大臣にお尋ねをいたします。  電力料金値上げでどうぞ厳しく査定をしていただきたい。先般来、いろいろと御発言がございました。それから税のことについては、野党修正となかなか一致いたしませんでしたが、お話しになるような税、こういうものは、なるべくインフレの原因となる電気料金に覆いかぶさってこないように、あるいは事業税等においてもそうだと思います。そういうことはぜひ厳しく査定をしていただきながら、私はだれからも提起されない重要な一つの点を提起いたしたいと思います。  それは電気を原料として使っている工場、最近の言葉電力多消費産業、こう言うわけであります。具体的にいま一例を申し上げますと、たとえば亜鉛は、一トンの加工料といいますかそれが五万円、そのうち電気料金が三万五千円、七〇%現在は製造コストの中に電気料金が占めているわけですが、これを申請どおりでなくて五割値上げをしたならば五万四千円になって、もう一〇〇%以上に上がってしまって、これは完全につぶれであります。あるいはフェロアロイ、アルミニウム。アルミニウムは電気のかん詰めと言われます。カナダやアメリカ等はキロワットアワー一円の料金であり一今度八円か九円、十円のものが四割、五割上がったら十数円になる。そして製造コストの中に占めている電気料金のウエートは四割から四割五分、五割近く占めているわけですから、これが五割、六割上がったらもう壊滅的打撃であります。  電力消費が大変進んできた理由は何かというと、このお手元に差し上げた一番終わりの資料をごらんになっていただきたいと思いますが、「最近の夏季需要電力量」、夏電気が不足してしまうということが電力事情を悪化させる一番大きな原因でありますが、たとえば昭和五十一年は百四・五億キロワットアワー、それが五十二年を飛ばして五十三年に来ると百九十一・九億キロワットアワー、つまり五十一年と五十三年の比では倍使っている。夏季に倍使っているわけであります。これが一番電力の需給逼迫の原因でありますが、その下の注−一、注−二に書いてあるように、家庭用のクーラーとか扇風機とか冷蔵庫とか業務用の空調とか冷蔵庫とか、そういうものの需要がふえたがためにこれだけ電気がよけい要るようになった、こういうことであります。夏のピーク時に必要だからというためにどんどん電源開発をしなければならないという直接の原因は、クーラーとかこういうものが一番の原因であります。  ところが、いま私が申し上げる電力多消費産業というのはどういうようになっているかというと、一番前の表を見ていただきたいと思いますが、たとえばフェロアロイの電力消費、生産、製品輸入の状況、生産量ば昭和四十九年が二百四十五万四千トン、五十三年は百六十五万トン、その右の輸入量は四十九年は十七万三千トン、五十三年は四十六万六千トン、輸入比率がもう三割近くまでふえてきているわけであります。したがって、フェロアロイが電力をたくさん使っているから、それで電気をたくさん必要とするような状態になったのではないわけであります。その一番下のアルミニウム、電気のかん詰めと言われるアルミニウムの生産量は四十九年は百十一万六千トンが五十三年は百二万三千トンですから、凹凸はあるが大体同じでありますが、輸入量は四十九年の約三十五万ドンから七十五万七千トンになって、輸入率は二三%から四二・五%にふえておる。こういうことでありますから、電力多消費産業が電力をたくさん使うがために、夏のピーク時なりあるいはまた電源開発をしなければならないという原因ではないわけで、原因はほかにあるわけであります。  そしてついでに申し上げますが、この雇用の状態を見ると、その一枚目の表ですが、フェロアロイの企業は従業員が、五十年三月が一万二千五百四十二人が五十四年には八千人。アルミニウムは、一番下の表の右側にありますが、四十九年は一万五千人がいまや九千人、こういう状態のときに、値上げの仕方はどうなっているかということを次の表で見ていただきたいと思いますが、もう輸入量がどんどんふえて雇用がだんだん厳しくなって六割、五割減ってきている中で、値上げの状態は、これはある製錬会社がモデルをつくってくれた表でありますが、六四・四%という、一番右の下に八電力会社の総平均がありますが、大口電力のさらに上の電気を原料とするようなところの契約を需給調整契約制度というわけで、一番上に書いてあります。東北が八八、東京八〇、中部八〇、北陸七三、関西六九、中国九二、四国七五、九州七三で、七八・八%、これは約八割に近いわけであります。電灯の一番安いところは多分四割幾らの、どこか四国だか中国にあったと思いますが、それから比べると倍上げるような状態になっているわけであり、これでは電力多消費産業は倒産、雇用問題に爆発的に発展をしていくに違いない、そういうようにもういまから予見されるわけであります。  そこで私は、フェロとかソーダとか亜鉛とかアルミというものが日本に初めて生産が始められた原因を考えてみると、これらは豊富かつ捨てなければいけないような電気があった、そういうことをもとにしたことが一つの理由と、いま一つは、アルミを国産でやろうというのは国防上、国家の安全保障上無理に無理を重ねてつくったわけであります。  以上、時間の関係で私は私の方から言いたいことだけを申し上げましたが、一つは、こういうように需給調整契約電力という超大口の電気を原料としている工場の上げ率を、これだけ上げたならば、これはもう壊滅的な打撃を受けるごとは明らかでありますから、これには何らかの政策料金を設けなければならないということが第一点と、通産大臣にお尋ねをしますけれども日本においてアルミというものがなくなってもいいか。食糧でさえ武器として使われるわけでありますから、アルミとかフェロとか、いろいろの発生の原因を考えるならば、私は、国家として最低これだけは国内で生産をしなければならないという量があってしかるべきだ。そういうものの確保のためには国内の電気料金でめんどうを見るよりほかに見ようがないわけであります。アメリカではキロワットアワー一円であります。日本へ来れば、今度値上がりしたら十五円なり十六円。さっき言ったように人員は減っているわけでありますから、どれだけ企業努力をしてももう間に合わぬ状態でありますから、その二点について、一つは政策料金、一つは国内でどういうようにこれらのものは最低確保しなければならないか、私は、国家の安全保障上の問題もかかっているのではないか、こういうように考えます。
  237. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 一々ごもっともな御指摘でございます。私も、一昨年でございますか、自民党の資源エネルギー調査会長というのを仰せつかっておりまして、当時金属産業、金属工業が大変な不況になりまして、その一番大きい原因は電力料金にあったわけでありますから、何とか電力料金というものはもう少し考慮する余地はないものかと、実は当時非常に苦慮したものでございますので、お話は身につまされてわかります。アルミニウムもあるいはフェロアロイも非鉄金属も日本にとっては基幹産業でございますので、これは一定量はどうしても国内で確保していくということは大変重要なことだ、その点は全く同感であります。  ただ、いまの法律のたてまえからいきますと、原価主義と同時に不公平なことはいかぬというおきてになっておりますので、特別に大口需要だからというわけで特別料金をつくるということはなかなかできません。でございますから、先ほどお話ございましたように、そういう場合には何とか特約料金的な一つの、深夜料金と申しますか、といったようなことでしばらくがまんできないものだろうか、あるいは電気にあらざる面でそれに対する対処というものはできないものだろうか。おととしは御承知のように金利でアジャストして金融でつないでいったわけですから、あるいは特定の不況産業ということで業種に指定いたしまして、そうして合理化をしていったわけですね。というような、電力にあらざる方面で対策を立てられないものだろうかというふうに実は考えます。いまの法律のままですとどうにもならぬということで、私、もしやれるとすれば、特約料金的な制度がございますので、そういうことと考えます。  また、先ほどの夏季ピーク時のお話も全くそのとおりでございまして、お説のとおりでございます。できますれば、そういうピークはできるだけ小さい方が一番いいことはもう仰せのとおりでございます。ただ、それに対して季節別料金制度のような特殊な制度が考えられないものだろうかということでただいませっかく検討中でございますので、今後の料金体系におきましても、できれば、検討の結果許されるものであればやってみたいというふうに実は考えてございます。
  238. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 これ以上私、通産大臣に申し上げようと思いませんが、カーバイドにおいては値上がりした後の、五割ぐらい上がったと仮定した後の六割六分が販売代金に対する電力料金なんですよ。石灰窒素でいったら六割、ソーダでいったら六割四分、フェロシリコンでいったら九割三分、酸素でいったら六割五分、研削材だと五割八分、電気亜鉛は先ほど申し上げたように一〇〇%以上、アルミニウムは七割近い、もうこれだけのことになっては私は産業が壊滅すると思うから、国家の安全保障上最低限残さなければならない量はこれだけだ、それについてはらうしなければいけないという通産のポリシーがなければならぬ、こういうことを言っているわけです。  適正原価というのだけれども、家庭用に電気を持ってくるには、二百ボルトくらいで持ってきて変圧器を置いて、また家へ入るときは変圧器を置いて百ボルト、延々と長い間を低電圧で持ってくると送電ロスというものは物すごいわけです。電気を原料とするようなところは高圧で持ってくるから送電ロスはないとか、適正原価主義といったっていま少しそういうことを考えて、本当の適正な、しかも、これは電力会社と多消費産業とのあれですが、夜中にだれも使わないときに労働者を連れてきて一生懸命やっているわけだ、日曜のときばかり出てきてやっているわけだ、質の悪い電気を何とか使ってやろうとして粒々辛苦してやっているわけであり、そこに壊滅的な打撃を与えないように、これはひとつ通産大臣に要望をしておきたいと思います。  次に、国鉄及び運輸大臣に私はお尋ねをいたしたいと思います。  この前も総括質問のときに私は申し上げましたが、まず国民にいろいろ迷惑をかけている、一人当たり毎年一万円ぐらいずつ税金をつぎ込んできたり、いま就業人口一人当たり十二万円ぐらいが、これはたな上げでだんだん国民から出してもらわなければならぬ、国民にそれだけの負担をかけているわけですから。それにしては、内部を振り返ってみて余りにも合理化、そういう努力が足りないのではないか。これが、私たちは四千キロのどうにもならぬのをもう切って地方に頼む、こう言うならあえて賛成もしますけれども、それには余りにも内部努力が足りない。これは、われわれ外から見て余りひど過ぎるから、私は繰り返しこれを申し上げるわけですが、非常にフランクな目で、いま申し上げた一問一答でもわかっているでしょうが、ひとつ民間経営者がやっているような目でどうかもう一回いま見直していただきたい、そういうお願いであります。  その一つとして、私たち門外漢から見ていてもそうなんですが、公安職員三千百人ばかりおります。これは日航にも全日空にもそういうものはないわけです。長距離バスにもそういうものはないわけです。これは、昔は唯一の交通機関が国鉄であった、犯罪防止のために必要性があったと思いますが、いまになってもこういうものが果たして要るだろうか。そういうぐあいにわれわれ外から見てすぐそう思うわけです。私はすぐとは言わぬ、毎年二万人ずつ減っていくわけですから。いま公安職員は三千百人だか二百人おるわけです。こういう制度をだんだんなくす。ここに国家公安委員長もいるんだけれども、そのことは幾らでもできるのではないか、私はこういうようにも考えるわけです。どうでしょうか、こういうことは。すぐとは言わぬ、何カ年計画かでこれはなくす方がいいんじゃないか。
  239. 高木文雄

    ○高木説明員 御指摘のとおり、国鉄におきます公安職員制度についてはいろいろなお考え方がございましょうかと思います。私どももいろいろ考えではおります。ただ、一つは、かなり長い歴史を持っておりますが、この歴史がどういうわけでそうなってきたかということ。諸外国においてもこの種の制度があるのはどういうわけだろうか。一般警察にお願いをして最小限度の治安を守るということにしないで、鉄道が自分で警察官を持っている国が多いというのはどういう事情なんだろうかというようなことをいろいろ考えておるわけでございます。しかし、この問題は全体として非常に重要な問題の中で三千人といえどもかなり人件費がかかっておるわけでございますので、いまの御指摘の点は、私どもも日ごろからどうしたらいいかと苦慮いたしております。  と同時に、現在におきまして、先般もありましたように、置き石事故というような人命にかかわるような事故があります。ああした場合に私どもの方では、私鉄にはそういう者はいないとおっしゃいましたが、沿線の小学校、中学校に働きかけましたり、父兄のグループに働きかけましたりして、何とかそういうことが起こらないようにする仕事はだれがやっているかというと、実は公安職員がやっているというようなこともございまして、なかなか踏み切りがつきにくい点もあるわけでございます。  しかし御指摘のことは、私どももいろいろどうしたらいいかと悩みながら考えているところでございますので、私どもは三千人の公安職員はよくやってくれているとは思いますけれども、いまの方法がいいか、一般警察でお願いする方がより能率的であるか、あるいはまた、これを国鉄の支弁経費で賄っていることがいいかどうかというようなことも含めて十分考えさせていただきたいと思っております。
  240. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 ちょっとお尋ねしますが、昭和五十年から五十三年ぐらいまでの間に、ストによる国鉄の損害というものは幾らでしょう。
  241. 高木文雄

    ○高木説明員 恐縮でございますけれども、損害の算定は非常に困難でございますが、少なくとも収入減という意味では、いまのお示しのように収入減を当日の平均の収入にその日数あるいは時間を掛けましたもので計算しますと、ほぼ千億ぐらいになるのではないかというふうに計算をいたしております。
  242. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私、夕刊フジで見たのですが、国鉄の問題はストライキによる減収分が運賃値上げの増収分とほぼ同じである。ことし運賃を上げよう、こういう額がたしか一千三十八億だか、そのくらいであります。これは総裁も一番の悩みだと思いますが、今度は自由に上げられるわけですが、幾ら上げてもお客さんが乗らなくなる、こういうことだと思いますが、それが過去三、四年間におけるストの損失分一千億、いま総裁が御答弁になったその損失と同額であります。  私は、国鉄の再建にいま一つ大事なことがあると思います。先般もここで質問をいたしましたが、鉄道学園が何十カ所だったかあったわけで、それを調べてみたら、年間二百五十億か三百億かけていろいろ教育をしたり何かしているようでありますが、年間延べ六万七千人やっているわけであります。そういう教育の場で、国鉄の実態はこういうことだ、法律に違反したストはやってはいけないと経営者が言えるべきそのくらいの教育ができないか。伝えられるところによると、それが団体交渉の場になっている。違法なストをやってはいけないというようなことを言ったならば講師が突き上げられて、もう講義を続けていくことができないようなケースがあるという。だから私は、四十二万の国鉄の職員に運賃を上げなければならないぞという実態を教えて理解を得ないで、何で国民に理解をさせることができるか。自分の従業員に、こういうように赤字線は切らなければやっていけない、こういう合理化をやらなければもう国鉄はやっていけない、そういう教育を国鉄の中で従業員にできないで国民に協力を求めることができるか。国民からは毎年一万円、おぎゃあと生まれた子供からも一万円の税金を納めてもらっている。有業者一人当たり十二万円のたな上げ債務、みんな国民から負担を受けなければならない。こういう中にあって、自分の従業員にさえ教育ができない、こんな無能な経営者があるか。管理職がしっかりしてないのだ。まる裸になって国民に協力を求める四十二万の国鉄の職員ができれば、私は国鉄は再建できると思う。どうでしょう。
  243. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもが立て直しをいたします場合に一番基本的な問題であると考えております。ただいまのような御指摘を受けますことは、私として非常に情けないというか、申しわけないというか、そういう気持ちでおります。  ただ、一言だけ言わしていただきますと、先ほどお示しありましたように、学校の先生がそういう教育ができない状態にあるということからは最近やっと脱してまいりましたので、さらに大いに教員諸君あるいは職員の指導の立場にある者を誘導して御期待に沿い得るようにいたしたい。過去においてはそういうことがあったことは事実でございます。これを何とか立て直してまいりたい。一生懸命やってまいるつもりでございます。
  244. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 終わります。
  245. 田村元

    田村委員長 これにて小沢君の質疑は終了いたしました。  明四日からは分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十三分散会