運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1980-02-21 第91回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月二十一日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田村  元君   理事 小此木彦三郎君 理事 瓦   力君   理事 小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君      稻村左近四郎君    小里 貞利君       越智 伊平君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       小山 長規君    近藤 元次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       田中 龍夫君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    福家 俊一君       藤尾 正行君    藤田 義光君       松澤 雄藏君    村山 達雄君       阿部 助哉君    石野 久男君       稲葉 誠一君    大原  亨君       川崎 寛治君    兒玉 末男君       土井たか子君    野坂 浩賢君       八木  昇君    安井 吉典君       横路 孝弘君    岡本 富夫君       草川 昭三君    坂井 弘一君       西中  清君    正木 良明君       工藤  晃君    津川 武一君       中川利三郎君    山原健二郎君       大内 啓伍君    岡田 正勝君       神田  厚君    中野 寛成君  出席国務大臣         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      伊東 正義君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁防衛局長 原   徹君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         公安調査庁長官 山室  章君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省保険局長 石野 清治君         社会保険庁医療         保険部長    此村 友一君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   松本 作衞君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         運輸大臣官房総         務審議官    永井  浩君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         労働省労働基準         局安全衛生部長 津澤 健一君         建設省道路局長 山根  孟君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         原子力安全委員         会委員長    吹田 徳雄君         会計検査院事務         総局第一局長  岩井  毅君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     近藤 元次君   江崎 真澄君     越智 伊平君   倉成  正君     小里 貞利君   稲葉 誠一君     石野 久男君   川崎 寛治君     土井たか子君   矢野 絢也君     西中  清君   浦井  洋君     津川 武一君   田中美智子君     中川利三郎君   大内 啓伍君     神田  厚君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     倉成  正君   越智 伊平君     江崎 真澄君   近藤 元次君     荒舩清十郎君   石野 久男君     稲葉 誠一君   土井たか子君     川崎 寛治君   西中  清君     矢野 絢也君   津川 武一君     山原健二郎君   神田  厚君     大内 啓伍君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。阿部哉君
  3. 阿部助哉

    阿部(助)委員 厚生大臣を中心に質問する予定でございますが、参議院から十分ぐらいかかるそうでありますから、それまで大蔵大臣にお伺いをいたします。  大蔵大臣、この本会議の「財政再建に関する決議」というところでも、よく読むと大変うまいことをおっしゃっておるのですね。それで、この委員会における御答弁でも、一般に税の体系の中に消費に着目した税体系そのものが未来永劫に姿を消すのはどうだこうだとこう言っている。それで、いわゆる一般消費税仮称)なんて、これは専門家皆さんはおわかりになるのかわからぬけれども国民にはさっぱりわかりませんよね、いわゆる一般消費税仮称)なんてばかり言っておったのでは。問題は財政再建という、本当を言えば財政なんというものは政策の手段であって目的ではないのだと私は思うのです、本来ならば。しかし皆さんは、この七カ年計画にもはっきりと財政再建五大目標一つとして大きく掲げておる。そして、いままさに日本財政は本当にサラ金財政というか危機的な状態にある。それを再建しようというのですから、なまやおろかの決意ではこれはできないと思うのです。そして、それは同時に、国民にも、つらいかもわからぬけれども最大限度理解をいただかないと、この財政再建はできない。しかし、この文章を読んでみますと確かにうまいことを、知恵をしぼった文章であって、大臣のおっしゃることもこの決議に違反したとは言えない。しかし問題は、そういう小手先の問題で財政再建ができるんだろうかどうか。私はそうじゃないんじゃないか、つらいかもわからぬけれどもやはり国民にも御理解願うところは願うという姿勢がないといかぬのじゃないかという感じがする。いまもう小手先技術の問題ではなしに、財政再建勇気決意の問題、そこにもうかかってきておると私は思うのです。それが何かいわゆる(仮称)では、大蔵大臣、(仮称)なんというものではとても財政再建なんというものはできるとは私は思えないのであります。  そこで、私はこれを読んでみて感ずるのは、皆さん閣議決定あるいはまた七カ年計画一般消費税というのは一応決められた。その後この五十五年度できるだけ早い機会にやるといういわゆる試案をつくられた。その試案は本会議決議、また総選挙の結果で、やりません、こういうことなんですね。しかし、その前にやった閣議決定一般消費税、これは生きておるのであって、将来これをやらないとは言いませんというのがあなたのこの前の御答弁の趣旨だ、こう思うのですが、これは間違いありませんか。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 この閣議決定は、一般消費税仮称)については昭和五十五年度中に実現できるよう諸般準備を進める、こういうことなんですね。だから、五十五年度中に実現できるよう諸般準備を進めるという閣議決定に基づいて準備をしてきた。それが、総選挙の結果とでも申しましょうか、とにかく国民にきらわれた、中身まで入る前に。私はヘジテートされた、こう言っているわけですが、したがって、今度は財政再建決議がなされまして、そこでこの閣議決定そのものはもうそれによって打ち消されたわけです。総理から、阿部さんの質問を聞きながら、何か閣議決定の方法について考えてみろと言われておるのです。私も、それから考えてみますと、現実五十五年度中に進めるために準備をするといったものがもうすでに打ち消されてしまった。そうすると、いまさら打ち消されましたという閣議決定というものもいかがかという感じがして、それでもう少し経済企画庁とも相談してみてくれ、これは官房長官からでございますが、こういうことでございます。ただ、閣議決定、いわゆる諸般準備を進めようという閣議決定が、その手法でなく五十五年度予算案がつくられておるから、いまさら閣議決定で何をするか、とにかくやらないことにいたしましたということは答えが出ておるわけでございますから、閣議決定の仕方がどういうものかなあということに対して扱いにいささか困っておるということでございます。  それから(仮称)の問題は、これは本会議決議が行われます際に何度か議院運営委員会等にも私もお願いしましたのは、いわゆる消費一般にかかわる税というものが全部否定された場合は税体系から消費税という言葉がなくなってしまうのはいかがかという問題があったから、あえて学術的な立場からいわゆる一般消費税仮称)という言葉をお使いいただいたのでございまして、いままで準備された手法はそのまま取り入れることはまさに五十五年度はできなかった、そして五十六年度においてもそのままの手法をとることの環境にはない、こういうふうなお答えをしておるわけであります。
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうするとまた少し違ってくるのじゃないかな。消費一般に云々とおっしゃるけれども、その消費一般というのが普通いわゆる一般消費税と、こう言うのじゃないですか。だから消費一般のとかなんとか言うけれども、本当はずばり言えば、閣議決定した一般消費税、これは生きておる、しかし五十五年度にやる試案は消えてしまった、だからこの五十五年度で皆さんが予定したやり方一般消費税でもいろいろのやり方があります。たとえばもっと厳しくインボイスをつけるとか、二千万円を一千万円、最低を控除するとか、食料品にもかけるとかというやり方は、五十五年度の試案とは違うのですよ。だから、皆さん消費一般にかける税金というのが、これが一般消費税なんですよ。もっと言えば、これはいわゆる付加価値税と言われた。ところが大蔵は、前の次官の大倉さんじゃないけれども付加価値税というのは余り評判がよくないから一般消費税という名前に変えたのだ、こう言うのだけれども、これが一般消費税なんですよ。だから、それはあなたが言う消費一般にかける税金なんです。個別消費税じゃないです。これが一般消費税なんですよ。だから、これは生きておるのではないですか。私何も皆さんにお手伝いしようと思っているわけではないけれども、ただ五十五年度実施を予定した試案議会決議でなくなった。だから、これから五十六年もやらないという御答弁をなすった。しかし、将来はこれよりも違う形のもっと厳しい一般消費税になるかもわからない、あるいはもっと緩和をされた一般消費税になるかもわからない、それは将来永久にやらないとは言わないんだというのが本当なのではないですか。  問題は、私はこんな細かしい議論をしようと思わないけれども、私も決議に参加したのだからこれはあなたと同罪なのかもわからない。だけれども、こういう国民に対してわかりにくい手法を使うのは一体どうなんだろう。大臣御承知のように、いま濱口雄幸井上準之助さんの「男子の本懐」という本が大変よく売れておるそうであります。しかし、いま本当に財政再建というものを考えたとき、これはやはり大変なお仕事であって、濱口さんの言葉じゃないけれども、尋常一様ならざる人を大蔵大臣にしたんだ。これは大平さんもそういうつもりなんじゃないかと思う。あなたは選ばれてその席へ座ったとすれば、小細工財政再建なんというものをやろうとしたってこれはできないんだ。もっとずばりと、本当に腹を決めてこの財政再建に当たらなければいまのサラ金財政は直らないということを私はあなたに申し上げたい。そういう点で、(仮称)なんて、余り小むずかしい、ただその場を何とか逃れればいいという小細工や何かをするのではなしに、われわれ野党もそうであります、もちろん政権担当の与党はなおさらであります、お互いに身を慎んで、そうして国民にお願いするところをお願いするという姿勢がなければいまの日本財政再建はできないのではないか。もう小細工はやめようじゃないか、そうしてお互いにもっと腹を打ち割って討論をして、そこで日本財政再建に当たる。それでも国民は恐らく税金を取られるのはいやでしょう、不満があるでしょう。これは当然のことであります。それだけに順序があるだろう。まず責任の一番大きな政治家が身を慎む、そうして大きな利益を上げておる人たちがまず金を出すというのから大衆にもお願いするというところにいくのではないだろうか。私は増税必ずしも賛成はしませんけれども、しかし、いまのサラ金財政を立て直すにはもはや小細工の問題ではなしに、勇気の問題、決意の問題だと私は考えるのだが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 阿部さんと私と気持ちは全く一緒だと思うのです、立場は異なるにしても。私どもに対するあるいは叱咤鞭撻言葉として受けとめていいほど、財政再建に対する決意とか姿勢は全く一緒である。そうして、いわゆる一般消費税仮称)などということはもうわかるだけわかったから、そういう言葉は使うなとおっしゃっていただくことは、まさに国民に対してそういう理解度が深まる一つの大きな衝撃を与えるような鞭撻言葉であるとも受けとめますので、手法のとり方は違うと思うのでありますが、決意としては、全くその御鞭撻にこたえて財政再建に当たらなければならないというふうに思っております。その点は全くありがとうございました。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 厚生大臣おいでになりましたので、厚生大臣にお伺いをいたします。  このたびの予算委員会ずっと拝聴しておりまして、ある意味では厚生大臣一番花形で、登壇回数の一番多いのが厚生大臣なんじゃないかという感じすらするわけであります。この論議の中で、健康保険あるいは年金の問題に対する質問は、初日以来数多く出てまいりました。しかし厚生省の御答弁では、いま国民の多くが抱いている医療の荒廃、薬づけ医療に対する不安、さらに健保赤字理由とする国民負担の増加、これに対する問題が何一つ国民理解を得、解決をしておるとは私は思えないのであります。  私は、薬の値段の問題に大体しぼってお伺いをいたしますが、この薬問題を取り上げる理由は、第一には、なぜ薬づけ医療が起きるのかを明らかにし、第二に、薬づけ医療が是正されないまま薬代患者負担半額負担が実現されたときは、国民負担が激増するだけでなく、医者にかかりたくてもかかれない人が出るんじゃないだろうか。第三に、薬代を適正な価格にすれば健保会計赤字解消につながると同時に、私は今日のような、どっちかと言うと技術が軽視される診療体系の是正にもつながり、医療の改善に役立つ、こう考えるからであります。  まずそこで、厚生大臣にお伺いしたいのですが、薬の値段の問題をこの国会の場で論議する必要があると私は思うのですが、大臣いかがです。
  8. 野呂恭一

    野呂国務大臣 薬づけ医療指摘されておる現状に対しまして、これの適正化を図っていくことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、薬価基準等の問題につきましても御論議をいただくことは大変適当であると考えます。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まず、会計検査院の方に確認をしたいのでありますが、これは確認を終わればお帰りになっても結構でございます。  会計検査院は、昭和五十年に社会保険診療収入に対する実際の経費率を御調査なさった。五千三百七十二人の医師対象調査を行った。その際、前の税法では七二%が必要経費だ、こう言っておるけれども、実際はそれよりはるかに低い五二%、そして薬の値段はその中の一九%、こうお調べになっておったはずでありますが、これは間違いありませんか。
  10. 岩井毅

    岩井会計検査院説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生おっしゃいましたように、私ども五十一年度決算検査報告に掲記いたしましたとおり、昭和五十年度の所得一千万円以上の医師で、特別措置法二十六条の適用を受けました方々の所得税確定申告書及び収支計算書等によりまして分析いたしました結果では、確かに御指摘のとおり薬価経費のうちの一九%を占めております。間違いございません。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはちょっと前なんですが、日本医師会実施医療経済実態調査、これを見ますと、薬代消耗品費材料費を加えた経費収入は二四・七%、こうなっておりますが、厚生省、これは大臣でなくとも、間違いありませんか。
  12. 石野清治

    石野政府委員 日医が昭和五十年で行いました医療経済実態調査というのがございますが、それから試算いたしました有床、無床診療所の平均の薬価差益率が四三・四というふうに出ておりますが、間違いでないでしょうか。
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 厚生大臣にお尋ねしますが、民間医療機関における薬の仕入れ原価は、収入に対してどの程度の割合になっておるのか。いま四三・四となっているが、これは病院だのいろいろあるのでありますが、保険請求単価と薬の仕入れ価格、平均してどのくらいの差があるのか、もう一遍お答え願いたい。
  14. 石野清治

    石野政府委員 ただいま会計検査院の方の資料、それから、あと自治体病院等が行っておる資料等いろいろございますが、その間差益がどのくらいあるかと申しますと、これはなかなかむずかしい計算になるわけでございまして、私ども差益率そのもの計算した例はございません。私どもの方は、あくまでもその時点におきまする市場価格薬価に反映させるという方針できておりますので、現実一般病院なり診療所がどの程度差益率になっているかにつきましては明確にしていないわけでございます。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 明確にできないで、それで健保赤字でございますとか、後でこれは指摘をしますけれども、やれ国民負担だとかいうようなことをおっしゃっても、これはどうしようもないじゃないですか。だから私は冒頭に、国民責任を食うという立場でここで論議をすべきかどうかと言ったら、論議してくださいとこう言う。論議するのに皆さんの方資料を持っておらない。あるのでしょう。全くわけがわからずに皆さん医療行政をやっておるわけじゃないのでしょう、どうなんです。
  16. 石野清治

    石野政府委員 私が申し上げましたのは、薬価節定方法薬価基準の決め方の問題について申し上げたわけでございますが、実際に五十三年度で自治省それから厚生省病院経営収支というのが出ておりますが、これを用いて数字をはじいてまいりますと、自治省昭和五十三年度地方公営企業決算の概況というのがございます。それから試算いたしました自治体病院、全数の九百六十一病院でございますが、それの薬価差益率は、五十三年度でございますけれども、二〇・四%という数字が出ております。それから、厚生省昭和五十三年度の病院経営収支調査年報というのがございますが、それから試算されました地方公共団体、日赤、済生会、厚生連それから国家公務員共済連合会病院対象が二百二十八病院でございますが、その薬価差益率は二三・七%、こういう数字になっておるわけでございます。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 一番肝心のところがないですな。民間医療、特に乙表適用のお医者さんのところはどうなんだ。私はここが一番知りたいんだ。
  18. 石野清治

    石野政府委員 民間関係調査につきましては、五十一年度に医療経済実態調査というのを、これは中央社会保険医療協議会、略して中医協と申しておりますが、そこが実は実態調査をやっておりますが、その取りまとめが実はまだできていないわけでございます。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 一つ中医協がおやりになっておる。しかも五十一年におやりになっておる。その統計が、ことし何年なんですか。下手すると、税金ならもう時効になっちゃうんだな。五十一年に調査したのがまだできていないなんて、あなた、とぼけた話よくできるな。これはちょっと驚きだな。こんなとぼけた話はないよ。一カ月や二カ月ならわかります。五十一年の調査が、もう五十五年度の予算審議をしておる最中にまだ出ておりませんじゃ、一体それで薬の値段を上げてくれなんという話がよくできるな。ちょっとこれは、どうなんです、皆さん。これは与野党の問題じゃなしに、いま皆さんは薬を国民負担してくださいよと、こういうお願いをするのでしょう。そのとき、五十一年度調査したけれどもまだ数字が出ておりませんでは、これはもうとても審議なんてできるものじゃないじゃないですか。大臣、これはどうなの。あなた、なったばかりなんで気の毒だけれども
  20. 石野清治

    石野政府委員 大変おしかりを受けたわけでございますが、実はその医療経済実態調査実施主体につきましては、昭和四十二年の中医協の建議から中央医療協議会自体でやるというふうに決められまして、調査実施なり調査の結果の検討、それから結果の公表、すべてこれは中医協自身が行うことになっておるわけでございます。  それで、大変言いわけになるのでございますけれども、五十一年の調査実施後に、本件の取り扱いにつきましては、五十三年の二月診療報酬改定を行いました際にその取りまとめを実はお願いいたしたわけでございますが、医療費改定の方が優先審議の場になりまして、その取りまとめの時期を失したわけでございます。ところが、その後直ちに厚生省日本医師会との間に断交が始まりまして、断絶状態になりまして、それで中医協自身が開けないというようなことになりまして実は現在に至っておるわけでございます。私ども、やはり五十一年の実態調査が一日も早く取りまとめられることを願っておりまして、そういう意味でも中央医療協議会の開催を強く望んでおる次第でございます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣、これ、中医協調査なすった、まあ任意調査だとかいろいろおっしゃる。そこで資料は公表しませんとこうなっておる。しかし、実際の事務は厚生省皆さんが事務局を担当しておられる。だから、実態は皆さんは御承知のはずなんです、本当言えば。だけれども、これは公表できませんとこう言う。そうすると、大臣は薬の値段を上げる最高責任者ですよ。あなたの権限です。それは大臣は一体だれに責任を持つのですか。だれに責任を持つのか、まず教えてください。
  22. 野呂恭一

    野呂国務大臣 薬価基準の改定は厚生大臣責任において行うことでございます。したがって、その責任は私にあるということでございます。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、あなたに責任があるんだけれども、その責任は大体国民に持つのでしょう。違うのですか。その国民の代表である議会にまずあなたは責任を持たなければいかぬのでしょう。違いますか。
  24. 野呂恭一

    野呂国務大臣 国民に対しての責任を持つべきであると思います。
  25. 阿部助哉

    阿部(助)委員 国民責任を持つ。あなたは国会に持つ。われわれも国民責任を持たなければいかぬ。国民責任を持たなければいかぬから、こうやって質問をしておるんだけれども、その議会に資料が出せません。それで薬価の二分の一は国民負担にしてください、こうおっしゃるんです。そうすると、われわれは、わからないけれども盲判を押せ、こういうことなんですか。国会は、この二分の一負担については、わからないだろうけれども盲判を押してくれ、こういうことなんですか。われわれはどうやって責任を持つんですか。
  26. 野呂恭一

    野呂国務大臣 先ほど政府委員の方から御説明申し上げましたのは、医療経済実態調査なるものは中医協の方で行っておる。しかし、現在厚生省医師会との間において断交というような事態も続いております。したがいまして、この実態調査の結果が中医協調査検討されていないという実情は大変遺憾に思うわけでございます。しかしながら、この調査自体は中医協がやるんだという建議に基づいておりますために、厚生省は別途いろいろの観点から医療の経済実態というものに対しては把握いたしておるはずでございます。ただ、中医協の行っておる医療経済実態調査なるものは、いまのところ公表されていないというのが現状でございます。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは、中医協だとかいろいろなことを言うけれども、あなたは中医協の方にだけ顔を向けておるけれども国民負担をしてくれと言うときには国民にお願いをせねばいかぬのですよ。それが、資料が出せませんならば、厚生省自体で調査なすったらいいじゃないですか。なぜそれをやらないのですか。実態を知っておるというならば、それはちゃんと国会の審議に供するのがあたりまえなんじゃないですか。それもせずに、国会にこの値上げの、二分の一負担を承認してくださいと言ったって、これはわれわれ責任が持てない。皆さん、そんないろいろな回りくどい仕組みをつくってはおるけれども、それで健保赤字だ、三K赤字だなんということを宣伝して国民負担をかけていくけれども、後で申し上げるけれども、本当はこれだけ大きな薬代を払っておる、その薬の値段には、この前からいろいろな方々がここで指摘するように、大変な差がある。バルク九〇だとかいろいろなことを言う。しかも、お医者さんの実際の薬の仕入れは経費の一九%、ところが、皆さんのいろいろなあれを——皆さん資料を出してくれないから、しようがないから、こんな貧乏人がみんなこんなものを買ってきたり、有価証券報告書をみんな買ってきたりして計算した。それによっても、これは大変なことになっておるんです。私の調べたところで、また間違いだと言うかもわからないんだな。皆さん資料を出してくれないんだから。  請求点数に占める薬代の割合は、五十年三七・八%、五十二年三七・七%、ことに乙表適用病院を見ると、診療点数の四三・四%が投薬と注射代である。さらに個人営の場合は五一・三%が薬代である。そうすると、会計検査院指摘した薬は、片っ方では一九%、請求するときには五一%となる。これは二倍半。そうすると、この数字に間違いがなければ、言いかえれば、一千万円の薬を仕入れて、患者に預けるとそれが二千五百万円に化けてしまう。だからお医者さんの薬づけ医療というものが広がってくる。そこに医療の荒廃があり、国民負担の増大がある。これぐらいとにかくいま批判を受けておるときに、なぜ厚生省自体が独自の調査をしないのですか。それもしないで、国民負担をしろなんというのは大体とぼけた話だ。大臣、どうなんですか。
  28. 石野清治

    石野政府委員 いま先生の挙げられた数字で、私の方が発表いたしておりますのは、年度別に出しておりますが、社会医療調査報告で薬剤費の割合を出しておりますが、それは、五十一年の五月で三七・三、五十二年の五月も三七・七、それから一番新しいものが三四・二というのが薬剤費の割合として、特に政府管掌健康保険だけでございますけれども、その割合を発表いたしております。その数字が発表した数字になっております。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 数字はちょっと違ったって、二倍なのか二倍半なのかは別にして、これはいろいろな病院があるのです。ところが、これは皆さん資料なんだ。皆さんからいただいた資料。そのうちのベッドのない、無床診療所、ここの数字を私は計算したわけだ。すると、これは五一・三%になる。この数字皆さん数字に間違いがなければ、割ってごらんなさい、そこで計算機で。この一番最後の無床診療のところで総点数が三十四億九千何ぼ、こうなっておる。それで、投薬と注射を二つ合わせると分子が出る。それを割ってごらんなさい。五一・三%、これだけとにかく薬が化けてしまうわけですよ。お医者さんの買うときは一九%で、患者に預けたときには五一%に化けてしまう、こういうことが解明されないで、医療の荒廃を防ごうとか、国民負担を軽減しようとかおっしゃっても無理なんです。そこへいま薬の患者負担を、二分の一負担してくれというならば、私は当然こんな資料は出すべきだと思う。一々こんなものを私たちが計算をして、ここでやらなければいかぬ。そんなことはないじゃないですか。これぐらいのものはちゃんと計算して、要求にこたえるのがあたりまえなんじゃないんですか。どうなんです。私は少し不勉強なのか、それとも、私は厚生省質問したり、おつき合いするのは初めてだから、阿部助哉は何も知らないとうしろうだからごまかしてやれということでこれを出さないのか、わからぬよ。わからぬけれども、私も長いこと大蔵委員をやってみたけれども、こんなことは一遍だってない。こんな資料はぴしゃっと出てくる。なぜこんなものを私に計算させるんです。だめだね、こんなものは。こんなもので、二分の一負担だなんということを、私は国民責任を持って、この委員会で審議するわけにはいかないですよ。だめだ、こんなものは。
  30. 石野清治

    石野政府委員 私の方は、阿部先生の、おつき合いも余りないから資料も出さぬというふうな話でございますが、決してそういうことはございませんで、むしろ私どもの方は阿部先生にぜひ社会保障関係の援助をしていただきたいという気持ちでいっぱいでございまして、御要求された資料については出せるものは全部出したつもりでございます。ただ、出せないと申しましたのは先ほどの中医協実態調査でございます。これは中医協自身でやっておる問題でございますので出せなかったわけでございます。  先ほどの数字の違い、恐らく薬品費と薬品費プラス技術料の計算で差が出たのだと思います。(阿部(助)委員「注射代と二つ」と呼ぶ)はい、注射代、恐らくその数字だと思いますので、私は先生のおっしゃった数字は間違っていないと思いますが、私が申し上げましたのはあくまでも薬品費そのものの数字を申し上げましたので、それの若干の誤差があったと思います。大変失礼いたしました。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろな言いわけをされてみたって、問題は、中医協がおやりになっておるからわれわれ厚生省はやらないのだ、しかもその中医協の発表は非公開でございます、これでは一体国会はどうなんです。大臣は一体国会に責任を持つのですか。そのことを私はまず聞きたい。それがもやもやしておるようでは、もう厚生省は薬や医療に関する能力がないのだ、私はこう判定せざるを得ない。なぜそれが出せないのですか。出せないならば厚生省独自でなぜやらないのですか。それなしに国会に責任持つわけにいかないでしょう。どうやって国会に責任を持つのですか。
  32. 野呂恭一

    野呂国務大臣 医療の経済実態調査そのものに関しましては、中医協の建議に基づきましてむしろ公正な判断をされるための調査を求めておることは決して間違いであるとは考えておりません。しかし、それだけがすべての医療経済の実態調査であるとは考えておりませんので、先生の御指摘に関する資料はすでに提出をさせていただいているわけでございます。また、厚生省としての責任ある立場におきましていろいろの角度の調査を進めて、医療におきまする特に問題の薬価の実態については十分調査をいたしておるつもりでございます。
  33. 阿部助哉

    阿部(助)委員 あなたうそをついたらいかぬですよ。私の要求しておる資料は出てきていない。それは皆さん出せないと言うのでしょう。ここで審議をするためにそれが必要でしょう。薬づけ医療だどうだこうだと言われておる。私はまた後で——こんなところで数字なんて余り挙げたくないんだ。本当を言えばもっと基本的な政治姿勢の問題で国会は論議をして、あとは官僚の皆さんがきちんとおやりになるというのが私は理想だと思うけれども皆さんこうやって言い逃ればかりすればしようがない、私の方も数字をもって言う以外にない。いま言ったように中医協でやっておるから、われわれは十分検討しておりますが、とこうおっしゃるけれども皆さんは検討したかもわからない——本当は事務局を担当しておるのだから中医協がおやりになっても中はわからぬはずはないのですよ。恐らく検討しているだろうと私も思う。だけれども、それだから皆さんは国会議員はつんぼさじきでいいんだ、盲判を押せ、こう言うのかどうか、私はここが一番問題だと言うのですよ。これがないと私は審議ができないじゃないですか。国民負担をかけるのですよ。その問題で、あなた、ここへ資料を出せないでわれわれに賛成をしろ、盲判を押せなんというのはどうしても私は納得できない。まずそれを出してください。それから審議します。
  34. 石野清治

    石野政府委員 再三申しわけございませんけれども、中央医療協議会で実態調査をやることになった経緯等もございます。中央医療協は三者構成でございまして、それぞれの立場でいろいろ御議論になった上でお決めになる問題でございますので、そういう意味で、まとまったものについては中医協が公表することになっておりますものですから、中医協自身がこれはもう出してもよろしいということになれば当然出せるわけでございますが、実際上まだ中医協自身小委員会を開いてまとめておらないわけでございますので、そういう意味で先ほど申し上げたわけでございます。
  35. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大臣、そのとおりでいいんですか、いまの答弁のとおりでいいんですか。
  36. 野呂恭一

    野呂国務大臣 いま保険局長がお答え申し上げましたとおり、調査の実態は中医協でございます。また調査実施調査結果の検討、結果の公表等につきましてもすべて中医協が行うものであるというような形をとってまいったわけでございますので、いろいろその取り扱いにつきましては、中医協が開催されてそして公表されるべきものだということで、この国会でそのことを明らかにすることができないのではないかというふうに考えております。
  37. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまの問題に関連して。  いまの政府の答弁は、現在進行中だから、まだまとまらないから出せないんだと言わんばかりの感じですが、それじゃ一体まとまれば出せるのか、いままで出しておったのか、出すことができるのか、この三点を伺って、それからこの問題を処理したいと思います。
  38. 石野清治

    石野政府委員 中医協が開かれますと直ちに小委員会を開いて、そこで一、二回の論議はもちろんありますけれども、そこで取りまとめましたものは中医協で公表するということを決めてもらって、そして発表する、こういうふうになると思います。  それから過去においての問題でございますけれども、四十二年でしたか、公表いたしております。
  39. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一遍確認しますよ。それでは発表しないという前提じゃないんですね。できれば発表するんですね。
  40. 石野清治

    石野政府委員 私、事務局といたしましてはぜひ発表したいという気持ちでございます。
  41. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、大体のめどを言ってください。
  42. 石野清治

    石野政府委員 これは中医協がいつ開けるかということと関連するわけでございまして、いま保険局と少なくとも医師会との間が断絶状態になっておりまして中医協を開ける状態になっておりません。できるだけ努力をいたしまして一日も早く開けるようにいたし、そして調査をいたします。
  43. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで質問者に質問を続けてもらいたいのですが、出さないというわけじゃない、しかし一体それじゃ出すのかと言うとできれば出すと言う、出してきた経過があると言う。それじゃわれわれはもう少し質問者と政府の答弁の行きがかりを聞いて、さらに私の議事進行の問題で質問させてもらいたいと思います。
  44. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんも同じことを言うから私も何遍でも同じことを言いますよ。薬の値段大臣がお決めになるのですよ。決めるのは国民責任を持ってお決めになるのですよ。国民に対して責任を負う、それは国会なんだ。そうすると私たちもここで決定をすれば責任を持たざるを得ない。われわれ、どうやって責任を持つのです。資料も出さない、審議もできない、そこでわれわれはどうやって国民責任を持つのか、大臣、教えてください。
  45. 野呂恭一

    野呂国務大臣 医療経済の実態調査は、中医協において調査をされ、そしてそれについて検討の結果、公表する、こういうたてまえをとってきたわけでございますが、薬価を初めとするいろいろな医療行政については、これは厚生省責任を持って行うことができるわけでございます。したがって、いまの薬価に大きな開きがある、市場価格とそして医療機関が取り扱っている価格との間に大きな開きがあることは御指摘のとおりでございますから、そういう薬づけ医療としてのこの批判をわれわれまともに受け取って、そして適正な薬価基準の改定を急がなければならぬと考えておるわけでございます。
  46. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それは、あなたがそう思っておるけれども、われわれも適正な価格にせにゃいかぬということで論議をする。そして国民責任も持つ。だから私が聞いておるのは、では、われわれは、国会議員は、一体どうやって責任を持つのか教えてくださいと言うのです。われわれ、責任持てないですよ。資料も満足に出てこない、それで審議をして責任を持つなんというわけにはいかないですよ。これだけ問題になっておるときに、こんなことで国民責任を持つわけにいかない。どうやったら責任を持つことができるのか、国会議員の責任問題をひとつ教えてください。
  47. 野呂恭一

    野呂国務大臣 医療の経済実態調査というものは中医協で扱っておるわけでございまして、その取り扱いについても、中医協が検討し、その結果を公表するということでございます。この実態調査について、いま私どもも十分承知いたしておりませんので、したがいまして公表することはできませんと申し上げたのであります。その他のいろいろの問題については、厚生省独自のいろいろな調査その他の調査を取りまとめて、御指摘のようにその調査資料はいつでもお出しできることだと考えておるのでございます。したがって、中医協の扱いになっております医療経済実態調査そのものに関することだけを申し上げたような次第でございます。
  48. 阿部助哉

    阿部(助)委員 余り尾ひれをつけて脱線をしないで、国会議員はどうやったら国民責任が持てるのか、はっきり言ってください。同じことを何遍でも言います。もう一遍はっきりそこだけ。
  49. 野呂恭一

    野呂国務大臣 いろいろ資料については、御指摘くださいますれば、その御指摘に沿ってすべて提出をいたしたいと考えます。
  50. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、あなたが善処するというのではないんだよ。私が聞いておるのは、私はこれでは国民責任が持てないから、国会議員はどうやったら国民責任が持てるのだ。資料も出さないで、われわれ、審議できないじゃないですか。われわれはどうやって責任を持つのか、それを教えてくれと言うのです。
  51. 野呂恭一

    野呂国務大臣 国会として国民責任を持っていただくために、要求されました資料はすべてお出しいたしたいと考えます。
  52. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから、それを出してきてないでしょう。出してきてないで、出します、出しますなんて言ったってだめですよ。それは、皆さんは先ほど来言っているように、いままで私にお答えになったのでは、中医協は公表をしない。しかも、これをやるときには、いろいろのことをおっしゃったのですよ。けれども、これは公表しないんだと言っている。ここではできれば公表したいみたいな話をおっしゃっておるので一歩前進だけれども、しかし、それは公表していないんですよ。みんな資料を出しましたなんてとぼけたことを言ってもらっては困るよ。
  53. 石野清治

    石野政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、医療経済実態調査につきましては中医協自身でやっておりますので、これは中医協の方で公表していただく以外に方法はない。そのほかの先生の御指摘されました資料については、私どもも持ち得る資料全部お出しするつもりでおりますし、また先生の方から御要求があればこれからも出すつもりでございます。
  54. 田村元

    田村委員長 大原亨君の関連を許します。大原君。
  55. 大原亨

    ○大原委員 中医協というのは、つまり診療側と保険者側の保険契約に基づく医療費の言うなれば合意の機関、そこで協議して合意をする。そして公益委員というのは——中医協は国会承認人事です。公益委員は国会承認人事として中医協において公益を代表して保険者側と診療側の中に立って、そうして決める機関ですね。それが医療経営の実態調査をやっておるわけですから、医師会がどうしても聞かない場合には公益委員が招集をして、欠席のままでもいいから問題の処理だけをしておいた方がいい。すべきですよ、国会承認人事だから。  それから、阿部委員質問の事項は、実際上はバルクライン九〇とか、つまり実態調査の仕方で、われわれは加重平均をとれと言うのだけれども、バルクライン九〇で重点になっているところはどこかということを中心に、下から九〇までのどこに重点があるかということを中心にやれと言うのだけれども、いま総平均みたいにがらがら計算にしてある、形式上の計算にしてあるからいけない、こういう議論があるのですが、そういう基準は医療費に関係するから中医協が決める。だから経営調査をやっているでしょう。  いま問題になっているのは、阿部委員のもう一つの問題は、五十三年にすでに調査が終わっている。医薬品の調査が終わっているのです、薬務局でやっているのが。それをじっと持っているわけだ。これはたとえば医療費については緊急是正を金や銀に関係してやろうと言うのだから、だから薬価基準の改定をやるのですよ。ですから、実態調査をして持っているのだけれども、それを公表しますとがらっと値段が下がるわけだ、薬価基準の。だからその薬価基準調査しているものを出せ、それは薬務局は出せるじゃないか。(「薬務局は持っているんだよ」と呼ぶ者あり)持っているだけでなくまとまっているんだから。作業中じゃない。五十三年にやっているんだから、もう五十四年が終わったんだから持っているんだ。薬価基準は年に一回改定することになっているんだ。ですから、そのことは現実実態調査に基づいてやればいいんだから、そのことはできるわけじゃないか。その調査は出せるじゃないか。  二つに問題を整理して、後段のことを含めて資料を出しなさい、医師会が了承しなければ資料が公表できぬというものじゃない、薬価の審議をしているんだから、医療費の審議をしているんだから、法律をつくっているんだから、予算をつくっているんだから国会へ出しなさい、こういうことを言っているわけです。それの厚生大臣答弁……。
  56. 野呂恭一

    野呂国務大臣 中医協の取り扱いになっております医療経済実態調査についてはすでに調査はできておると思います。ただし、その調査の結果に基づきます、たとえば小委員会が開かれていない、ことに厚生省医師会との断交という実態が続いております現在において、なかなか中医協が開かれない。したがって、それらが公表されないというような事態はいま御指摘のようなことでございまして、それを率直に御報告申し上げざるを得ないと思います。ただし、薬価の改定に対する、いろいろ薬価調査については厚生省独自で進めておるわけでございますので、このことについては十分いま準備が整っておるわけでございますが、これを公表するかしないか、少しひとつ……。(発言する者あり)
  57. 石野清治

    石野政府委員 薬価調査そのものにつきましては、大原先生御指摘のとおり五十三年の七月にやりまして、その後第五次の補正まで、経時変動調査までやってまいりました。いまちょうどその補正の作業中でございまして、約一万五千品目でございますので、全部補正をいたしておりまして、これがやはりその作業は手作業でございますので、かなり時間を要しておりまして、大体いまのスケジュールでまいりますと、四月の二十日前後には補正作業そのものを終わると思うのです。それから医療費に対します影響率とかそういうものを全部算定して、算定品目を決める、こういうことでございますので、もうしばらく時間をいただきたい、こういうことでございます。
  58. 大原亨

    ○大原委員 いまそれではっきりしたと思うのですが、つまり医療経営、診療所とか病院とかの経営実態の中で、医薬品の問題などもあるんですが、経営実態について、税金にもすぐはね返ってくるからなかなか医師会はうんと言わないわけです。ですから、これは非常に広い範囲ですが、しかし部分的にはそういう医薬品の問題もあるわけです。それでもう一つは、いまの話のとおりで、薬価基準の改定は毎年一回やることになっているのだから、それで緊急是正をしろという権限は厚生大臣持っているのだから、これほど大きな問題になっている医薬品の実際上の、いっぱいいまここで質問が出たわけですから、薬価基準と実勢価格との乖離の問題は、何といっても乖離があればあるほど、お医者さんは医薬分業もしなければ薬を離さないわけだ。それで薬をどんどん点数で払っていけばもうかるわけだから、そうすれば健康からいっても財政からいっても大変なんだから、審議の基本にかかわる問題だから、そのことは、補正をしない、補正の途中でもいいから、実態調査の結果がこうであって、これがどういう影響を及ぼすかということは、もうできておるんです。四月に出すなんというようなことは言わないで、ちゃんと国会に出しなさい、予算審議中に。
  59. 石野清治

    石野政府委員 大原先生、御専門家でございますので、十分御案内だと思いますけれども、現在の補正の段階を終えませんとその数字が出ないわけでございます。これは御存じのとおり、去年の十月からの石油関連の商品の値上がりがございまして、かなり物価の変動がございました。現実に薬の方の値段の変更もございましたので、これを全部修正いたしておるわけでございまして、その修正いたしましたものを、最終的には計数整理いたしまして修正いたしまして薬価を決定するわけでございますが、その時点で初めて個々の品目等について出てくるわけでございますので、その際にさらにそういう影響率等も全部出しまして、できればそういう作業を終わった段階でできるだけ早く補正を進めて発表いたしたい、こういうことでございます。
  60. 大原亨

    ○大原委員 わかった。それでいまの話は石油、これはイランの革命で石油暴騰で倍ぐらい上がっているんだ。そして医薬品は全部石油の合成ですよ。ビタミン剤も抗生物質も全部石油の合成なんだ。だから石油が原料なんだ。しかし、これは付加価値が高いんで、付加価値の高い製品だから、石油のコストというのはほとんど影響ないんですよ。そんなことは若干の計数の是正をすればいいのであって、あなたが言われたようなことなんかは——一年以上たっているんですよ、一年半以上。五十三年七月にやっておる。一年に一回やることになっているんだから、これは大々的にやったはずなんだから、きわめてシビアにやっておる。これを出すと大ごとになるからというので出せないのでしょう。だから、石油のコストが上がったのなんか、これは付加価値の高い製品なんだから、ちょっぴり是正すればいいんですよ、そんなことは。だからその経過をやればこういう問題があるんで、計数整理中だということはわかるわけですから、もうできているものを出しなさい、こういうことです。それで、もしそれを出すことに反対をする人がおったら、たとえば日本医師会なら医師会、これはここに出席してもらう、国会に出席してもらう。それでちゃんとけじめをつけなければだめですよ。だれがけじめをつけるのか。——あなたはできないんだよ。あなたじゃできないんだから、大臣が決断しなければいけない。
  61. 野呂恭一

    野呂国務大臣 私も正直なところ、どの程度その作業の実態が進んでおるのかということについてまだ掌握をいたしておりませんので、しかしせっかくの御指摘でございますし、省内におきましてその調査の結果がどの程度まで算定されておるのかということを速やかに調べまして、そして可能な限り速やかに、皆さんに見ていただくようなものであるならば、それを出すようにいたしたいと考えます。
  62. 大原亨

    ○大原委員 最後に一つ。つまり、こういうことなんですよ。つまり、薬価基準とそれから実勢価格の乖離があるんです。それはものすごい。現金問屋をやってみればわかるんです。需要供給の原則が出ておるのです。そうすると、つまりそれを医師会の側は潜在技術料、こう言っているんだ。既得権だと言っているんです。そうじゃないんですよ。物と技術を分離することはみんな同意しているのですから、医者を含めて。ですから、技術を尊重するということは、医薬品の価格についての実態をきちっと握って、そして技術技術として評価しなければ技術尊重にならぬですよ。薬の中へ技術を含めてやるというインチキな考え方が、売薬医療や薬づけ医療、そして保険財政の破壊をもたらしているんですよ。そして、良心的な医者が繁盛しないで、悪い医者ほど太るという仕組みになっているんだ。だからこれは基本ですから、技術を尊重するという診療報酬体系をつくるためにも、審議の基本ですから、この問題についてはきちっと調査したものを出す、出すことについて反対しておる人がおれば、国会に呼んでちゃんとけじめをつける、そういうことが国民から見て当然のことではないかということに問題があるんだという点を指摘しておきまして、私の関連質問を終わりまして、進行は理事の方でしてもらいます。
  63. 田村元

    田村委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  64. 田村元

    田村委員長 では、始めて。  この際、石野保険局長より発言を求められております。これを許します。石野君。
  65. 石野清治

    石野政府委員 問題を二つに分けて御説明いたします。  一つは、医療経済実態調査の件でございますが、昭和五十一年に行われました医療経済実態調査につきましては、これは中央社会保険医療協議会において調査し、結果を公表するものでございますので、できるだけ速やかに中医協を開いてこの取りまとめを公表さしたいと思うわけでございます。  それから、第二点の薬価調査の問題でございますが、五十三年に行いました薬価調査につきましては、現在作業中でございますけれども、その結果につきましては、できるだけ早急に取りまとめて公表いたしたいと思うわけでございます。
  66. 阿部助哉

    阿部(助)委員 できるだけ速やかにということでありますが、四月とかなんとかいう話もあるようだけれども、本当は国会にこの問題をかけるというならば、予算の審議の前にこういうものを出すというその姿勢がなければ、私は本当はこの論議ができないし、国民責任が負えないと思うんだな。そういう点で、いまできないような仕組みに本当はなっておるようだ、中医協だとかへったくれだとか言うて。だけれども厚生省自体がとにかく国民の負託にこたえてちゃんとしたものをやるという制度が足らないなら、制度をつくりなさいよ。私は本当言うと、余り役人に権限を与えるのは賛成じゃないんだけれども、しかしいまそんなことを言っておれない。いま医療費が大変な金額になっておる。十三兆とも言う。これは五十三年か、十一兆を超えておる。そのうち薬代が四〇%も占めておる。そうすると、これは十一兆の四〇%だったら四兆四千億、この四兆四千億の半分以上が、何か水増しで国民負担をしておるとすれば、それだけでも大変なことなんだ。二兆二千億じゃないですか。健保赤字なんというものはみんななくなって、大蔵大臣健保、三K赤字なんてもう言っちゃいかぬですよね。こんなものはみんな吹っ飛んで、薬代患者負担じゃなしに、健康保険料を引き下げをするという、それが可能じゃないですか。厚生大臣患者負担をするなんという、また健康保険料を値上げするなんということじゃなしに、この問題さえきちんとするならば、健保は大黒字で、国民皆さんに金を返さなければいかぬことになる。なぜこういう問題をちゃんとしないのですか。それを中医協だとか、いや何だとか審議会だとか、いろいろ皆さんおっしゃるけれども厚生省自体がちゃんとしないからこういうことになる。全く国民に迷惑をかけ、財政を破綻に追い込む、その責任はしっかりと考えてもらわなければいかぬ。われわれもやはりそういう点で反省をしなければいかぬし、われわれも責任を負わなければいかぬのだから、一緒になってこの問題に取り組むということでなければだめだと私は思う。どうですか。
  67. 野呂恭一

    野呂国務大臣 医療行政をめぐりまして、厚生省責任の重大であることは、十分私も認識をいたしておるわけでございます。先ほど政府委員からお答え申し上げましたように、一方は中医協に対しまして、速やかにこの問題の処理に当たられるよう強く要請をし、そしていま御指摘のことに対しておこたえ申し上げていきたい。また、薬価調査につきましては、さらに督励をいたしまして、早く結果を取りまとめてお出しをいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  68. 阿部助哉

    阿部(助)委員 では、残り時間を保留いたしまして、最後にひとつ委員長にお願いでありますが、武見医師会長をこの予算委員会に参考人として呼んで審議を進めるようお取り計らいを願いたいと思います。
  69. 田村元

    田村委員長 いまの御提案は、後刻理事会で相談をいたします。  これにて阿部君の質疑は、保留分を残して一応終了いたしました。  次に、津川武一君。
  70. 津川武一

    津川委員 私は、食管の予算、食管制度のあり方について質問いたします。  財界などが、食管制度を非効率的だとか、旧時代の遺物であるなどと言って、その解体を主張しておる向きもございます。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 しかし、食管制度が存在するために、米の投機を抑えている。また、米の流通経費、売買逆ざやや管理経費などの財政負担分を含めても、消費価格に対する割合が二五%、他の農産物では平均三七%、こうなっております。非効率どころか、国民経済の立場からしても、きわめて効率的な制度であると思っております。  そこで、農林大臣、この点についてどう考えているか、基本的な態度を明らかにしていただきます。
  71. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 食管制度というものは、私は、いま御指摘のとおり、国民の必要とする主要な米だの食糧につきまして、政府が責任を持って安定的に供給をしておる仕組みであると考えておりますし、もちろん行政管理経費についても、なお合理的な運用を図っていかなければならない点は図っていくといたしましても、決して、そこに過剰な経費が投資されているわけではございません。いま先生御指摘のとおりでございまして、そういう意味において、私どもは、今後ともこの制度については、現実の事態と遊離しているところは直していかなければならないかと思いますけれども、根幹はしっかりと維持をしていかなければならない、それが国民のためである、こう考えております。
  72. 津川武一

    津川委員 そこで私は、そういう食管制度を国民生活に役立たせていくために、守っていくために、現在至るところで見られている米流通の混乱をきちんと抑える必要があると思います。  そこで、いわゆる自由米の流通、やみ米のことですが、現状はどうなっているか、どの程度把握しているでございましょうか。
  73. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 細かい点については食糧庁の方から御説明さしていただきますが、いわゆる自由米と言われるものは、私どもは、大体百万トンぐらいではなかろうか、こう考えております。
  74. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいまお尋ねの自由米についてでございますが、数量といたしましては、全体の生産量から政府等への売り渡し量及び自家消費量を除きまして推計をいたしますと、平年度で約百万トン程度であるというふうに考えておりますが、これらの米につきましては、一つは農家の段階から農家が保有しております米の余ったものを縁故米等で販売をするというものがあると思いますが、そのほか流通業者を通じて販売されるものもあるというふうに考えております。また場合によりましては、政府の配給操作をしております米の中から、小売店等が売れ残った際にそれを横流しをするというふうな事実もあるかと考えております。
  75. 津川武一

    津川委員 いまの説明、後ほどもう少し具体的にお伺いしてみますが、かなり流通が乱れております。やみ米がかなり横行していると言っていいと思います。たとえば福岡県、大阪、名古屋、東京、横浜、静岡県など目に余るものが出てまいりました。  一番乱れているのは神奈川県じゃないかと思います。やみ卸、未登録卸十数社が、小売店未登録店三千店、こういうものと込みになって流しております。この未登録三千というのは、登録の卸、小売の三千二、三百に匹敵しております。神奈川県内の米の出回り量は政府米と自主流通米合計で約四十万トン、このほかに未検査の米が六万トン、こう言われております。しかも、この政府が管理しておる四十万トンの二割、つまり八万トンが正規の卸、登録されておる卸からやみ米市場に流されていると言われております。総出回り量の三分の一が不正流通と言われております。  いま食糧庁長官が言ったように、神奈川県のやみ米は、県庁の推測によれば、産地からの未検査米持ち込みが二割、あとは正規の卸からの横流し、こうなっております。神奈川県内のやみ卸の中で一番の大手と目されておる海老名市の株式会社「いちかわ」これは法務局への登記に米穀の販売と明記しております。それで年間一万トン以上の米を取り扱っておる。神奈川県知事が同社に対してたびたび勧告を出しております。その勧告はこうなっております。食管法違反事実を指摘し、無登録販売行為の中止を警告しておりますが、五十四年七月二十五日、神奈川県知事長洲一二の名前で、神奈川県内には無登録で米を売っている小売店がある、それを調べたら、あなたが、つまり「いちかわ」がそこに流しておる、これは明らかに食管法に違反している、秩序を乱すものであるから直ちに中止するように。ところが、この会社はこの警告を全く無視してテレビに出ている。何が悪いのだ、こういうことを公言しているのでございます。同県の米小売商業組合幹部は、私に、歴代の食糧庁長官が神奈川県に来るたびごとにこの実態をお話ししている、何とかしてくれとお願いしておりますが、ナシのつぶてだと嘆いているのです。  農林大臣は、こういう状態は好ましいと考えているかどうか、食糧庁長官は、一体これにどういう措置をとったのか、お二人に答弁を願います。
  76. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変遺憾な事態であると考えております。
  77. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 米穀の流通段階におきます指導につきましては、現在国の機関委任事務といたしまして都道府県に委任をいたしておりますので、都道府県においてまず指導をしていただくようにお願いをいたしております。  ただいまの神奈川県の例につきましても、先生からお話がございましたように、神奈川県知事におきましては、食糧管理法違反行為指示書というものを交付いたしまして指導をし、また、それを継続しておるようなものについては、小売の未登録販売の中止についての警告書を出すというようなことで指導をしておるわけでございますが、現在なおそのような不正事実があるということはまことに遺憾であると考えております。  食糧庁といたしましても、食糧事務所におきまして、この都道府県の指導と協力をいたして指導してきておるわけでございますが、必ずしも十分でないというふうな実態が認められますので、私ども一層の指導を進めるように考えていきたいと思っております。
  78. 津川武一

    津川委員 指導が不十分だ、一層の指導をする。そこで、指導の実態をもう少し明らかにしてみましょう。  神奈川県内には「いちかわ」のほかに株式会社藤又、神和食糧、だるま食品、いなり物産などのやみ卸がございます。これらのやみ卸は、神奈川県内でなく、東京や静岡に未登録小売店を広げて、そこで売っているのです。それで東京都が困ってしまった。そこで、東京都は何を言っているかというと、神奈川県知事あてに米穀の違反販売に関する指導をお願いしている。これで東京都内に未登録の小売店がある、これにやみ米を流しているのが神奈川県知事、あなたの県の「いちかわ」、藤又、神和、だるま食品、こう言っているのです。一方東京都はそういう点で、昭和五十三年六月からことし二月までの一年八カ月間、八百四十六件に立入検査を行っている。未登録としての第一次警告を発したのは三百八十件、第二次警告を発したのが百六十五件。しかし、これによって販売を中止したのはたったの八十四件なんです。このことは食糧庁に連絡してありますよ。神奈川県と東京都で県が違うのだから、どうにもならないのだ。  そこで、いま食糧庁が言われた各都道府県にある国の出先機関である食糧事務所は、こういう県や都のやり方にどう関与しているか、ここのところが問題なんです。食糧庁長官が知事に委任していると言っている。だが私は、東京、神奈川、静岡、愛知などで県のそういう関係者の人たちと話してみました。各都県は一生懸命やっておりますが、問題の一つは県の体制が弱い、できない。二つ目には、食糧管理法違反行為は明白なのだが、食糧庁に取り締まる気がない、複数県にまたがっているなどの事情があって、県ではどうにもならない、こういうことなんです。  たとえば神奈川県で県庁による未登録店のパトロールをやった、食糧事務所の職員がついていった、そこまではよろしい。違反に対する警告によって知事名で行ったのを、黙っておって食糧庁があなたたちに連絡しただけ、こういうことなんです。県に委任しているというが、ここに問題があるわけです。東京都の米穀担当の職員が八人、東京都の食糧事務所の人は三百十四人、神奈川の食糧係が六人、神奈川県の食糧事務所が四百二十人、これで登録三千軒、未登録三千軒の六千軒、そしてひどいやみもいま扱っている。指導できるものでも何でもない。だから食糧事務所が要らない機関だと言われている。しっかりしなさいよ。食糧事務所が直接出かけていってやると、仕事は幾らでもある。国民から大きく喜ばれる。あなたらの食糧事務所の連中が要らないなどという非難など一遍に吹っ飛ぶのだ。  この点をはっきりさせなければならない。ここのところにかなり大事なことが出てくるのです。委託されている現地よりも、委託する後ろの方が四十倍、五十倍の人員を持っておる、ここのところにかなり問題が出てきたわけなんです。この点を何としても解決しなければならないと思います。端的に言うと、食糧事務所が直接出かけていってこの問題をつかんで、必要な処置を神奈川県知事や東京都知事と一緒になってやらなければならないと思います。これを全部さぼっておられた、こう言ってもよろしいです。たとえば愛知県の食糧事務所は、皆さんが陳情に行くと、やみのことは県のやることだからと陳情にも立ち会わない、こんなかっこうの食糧事務所がでてきているので、この問題を食糧庁がどう解決に乗り出すか、ここが問題解決の核心になっているわけであります。大臣答弁をお願いします。
  79. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど長官が御答弁を申し上げましたように、都道府県知事に機関委任事務として委任しておるわけでございます。本質的には都道府県知事がその委任をされた事項について厳正に法律に基づいて処置をしていただくのが一番いいわけでございますけれども、いま先生が御指摘のように、それが現実にはうまくいっていない。それで食糧事務所の職員はどうも何か人ごとみたいではないか、こういう御指摘かと思うのでございますが、私といたしましては、できる限り知事にもひとつしっかりとやっていただくように、これは地方自治法にも書いてあるわけでございますから、委任事務においても、私どもが知事に対して指導できる形にもなっておりますので、そういう点も踏まえまして、知事にしっかりやっていただくとともに、食糧事務所に対しても極力もっと積極的に、少なくとも法律違反を犯しておることが横行しておるというようなことがいつまでも放置されていくようなことのないように、今後できるだけそういう点においての県に対しての協力体制、また場合によれば私どもが今度は県に対して指導監督を強めなければならないかと思っておりますけれども、そういう方向でひとつ対処してまいりたいと思っております。
  80. 津川武一

    津川委員 県庁に行ってみましたら、食糧庁に対する不満がひどいのです。東京都の係の人たちは一生懸命おやりになっている、神奈川県も一生懸命おやりになっているが、六人なのでどうにもならないのです。これが委任業務。おたくの方は四十倍、五十倍の食糧事務所の職員を持っている。これが遊んでいるんだよ。これで簡単に、県庁にもがんばっていただく、食糧事務所の人にもやってもらうでは同じことなんです。  そこで大臣、もう一つ、県庁に対してどんな援助をするのか。食糧事務所をこの問題でどう出していくのか。これが一つ。  第二番目にやみの連中。県庁の人が行くと、食糧庁が黙っているものをおまえら何を言うかと言うんだ。この食糧庁の姿勢なんだよ。つまり、彼らはこう言っている。やみをそのまま認めておいて拡大することにおいて、やがては戦前の自由米制度というものを事実上ここでしいて、後でこれを追認する腹なんじゃないのか。食糧庁がきちんと取り締まるという態度を出していただかないと現地はやれないというんです。いかがですか。
  81. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ちょうどこの四月からでございますけれども、私ども、食糧事務所の職員に対しまして、各消費地における正規の小売店の店頭において消費者によく理解のできるような形での品質表示をはっきりと義務づけていきたいと思っているのでございます。そういうことで、十分その辺についてこれから監督を厳しくしてまいります。  そういう関連の中で、しかしながら県によっては、いま御指摘のような、たとえば神奈川県においては結構正規の登録店でなくしてやっておるということでございますので、これはこれから人間が回るわけでございますから、そういう点についても、ちょうどこの四月からそういう方向で食糧事務所の人間をせいぜい回らせますので、ひとつそういう観点でぜひ県に協力をして、相当いままでより強い態度で臨んでいくように指導してまいりたいと思います。
  82. 津川武一

    津川委員 いまの大臣答弁、神奈川県庁の人や東京都の職員は承知しませんよ。やれないと言うんだ。六千軒もあって、そのうち半分やみだ。それをおれたちにやらせろと言ってもだめなんだ。食糧庁が直接県に対して指導に乗り出して援助してもらわなければならぬ、人的に。そういう点での行政的な援助、これを何よりも求めているし、これに対して食糧庁がきちんとした態度をとらなければならぬ。もう一度答えてください。
  83. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 現地の食糧事務所の職員で、登録小売店の店頭における表示がしっかりしているかどうか、消費者に対して正しい認識のもとにお米が買えるような仕組みになっておるかどうか、こういうことを現地の食糧事務所の人間がその現地でやるわけでございまして、神奈川県においてもそういう形で神奈川県にある食糧事務所の職員が回るようになりますので、そのときにいまのやみの小売店がどういう形であるかということも十分認識をして、そして間違っている点についてはできる限り先ほど申し上げたように、それは知事がやれないとおっしゃるかもしれませんけれども、一応いまのところは委任しておるわけでございますから、ひとつ十分連絡をとりながら神奈川県に対しても、そういう間違った登録店でないものに対して認めておるということは違法なんでございますから、そういうことのないようにやっていただきたいということを、食糧事務所の方からも積極的に神奈川県に働きかけるというようなこともひとつぜひ検討してみたいと思っております。
  84. 津川武一

    津川委員 神奈川県で六人の職員が行くという。食糧事務所ついていっているんです。黙って見ているんだ。それで報告をあんたのところによこしているだけなんだ。あんたも黙っているんだよ。そこでこの職員に、神奈川県の県庁、東京都の職員と同じように、ここのところ調べてこうするああすると言って食いついて指導する、こういう体制をやらせるならば、私は、東京都の人たち、神奈川県の人たち納得すると思うのです。この点いかがです。
  85. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま申し上げましたように、そういういわゆる登録店以外のところでもう平気でお米が売られているというようなことは、これは法律違反でございますので、そういうことのないように、十分食糧事務所の連中が現実の事態を見ながら強い姿勢で対処していくように私どもで努力したいと思います。
  86. 津川武一

    津川委員 そこで、売られておる米の品質、これを表示させる、非常によかったです。それと同時に指導してほしい。それから米の搗精の月日が入ってない。この点も明らかにつけさせますか。その日付も明らかにすべきだ。
  87. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 現在も表示の指導をしておりますが、この表示の指導の中で、表示を必須に掲げるべき事項といたしまして、ただいま御指摘の搗精年月日についても触れておりますので、今後とも適正な搗精年月日を明記させるということは努めていきたいと考えております。
  88. 津川武一

    津川委員 そこで、国家公安委員長にお尋ねします。  こういうやみ行為が放任されておるためにいろいろな事態が起こっております。たとえば静岡県で汚職、賄賂、それから静岡県の浜松で暴力ざたが起きておりますが、この暴力ざたのトラブルについて御存じであったら、ここで教えていただきたいのです。
  89. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 浜松で起きた事件につきましては、詳細まだ十分把握しておりませんが、何か名古屋の方の米の業者がスーパーに米を卸しに来たときに地元の方が反対をしまして、そこで暴力事件が起きた。それで二人検挙をされているという話は聞いております。
  90. 津川武一

    津川委員 汚職やトラブルがいろいろ起きておりますが、この浜松におけるトラブルは、私が調べたところでは、名古屋の米常商事、これは登録小売店であるから小売はできますが、数年前からしばしば愛知県の警告を受け、そのたびごとに誓約書を出しながらやみ行為を次々と広げていっておるのです。愛知県内から岐阜県、三重県、静岡県へと拡張している。同社では食管法に挑戦して商売しておるのだと公言しているわけです。昨年、愛知県で県が米の配給を半分に削減したところ、そうなるとここに米をつぎ込む別のやみ屋が門前市をなしている状態、県や食糧事務所が手をこまねいているために、米常に見習え、米常のやみ米を売るならだれも文句を言わない、こういう形で自由米、やみ米の流通を奨励しております。この事例に対して、農林大臣は三月中に何らかの措置をとりたいと述べたらしいが、一体どういう処置をとられるのか。これから米常をどうするのか、お答え願います。
  91. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の方へも陳情に来られまして、そのときにお答えしたのが三月中に何らかの結論を出したい、こういうことでお答えをしたのがいま先生の御指摘かと思います。私といたしましては、特にいまの食管法並びに食糧管理施行規則によりましても小売が販売のできる地域は限定されておるわけでございまして、私の感じでも、どうも今度の、新聞紙上でしか私はまだ承知をしておりませんけれども、米常の行為に対しては、違反をしておるのではないかと思っておりますが、いずれにしてもいま私の方の食糧事務所を通じまして実態を調査させておるわけでございます。その出てきた段階において何らかの処置をとりたい、こう考えております。
  92. 津川武一

    津川委員 これをほったらかしておくと、いま米常の事件が全国に名だたるものになって、これでいけるならば食管はつぶせる、こういう形だ。具体的にその根を断たなければいかぬのです。ここまで考えていただかなければならぬ。この考え方があるのかどうか。これに対して警察は、これを食管法違反として処置するのか。二つを二人に答えていただきます。
  93. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 警察は、刑罰法令違反の事件があればもちろん取り締まりをやらなければならぬことは申すまでもございません。ただ、御案内のように、自然犯と違いまして、いわゆる行政法令に違反する者に対する罰則の運用の問題でございますけれども、行政法令の罰則というのは、本来その行政法令に基本的な目的があるはずでございます。その目的を達成するための最終担保として罰則というものがつけられておるわけですから、そこで、自然犯に対する警察の取り締まりのやり方と行政法犯に対する取り締まりのやり方というのは、おのずから私は差があるもの、かように考えます。  そこで、御質問の食管法違反という問題についても、この食糧管理法というのは、食糧の管理をうまくやるということを目的にしてつくられておるわけでございますから、やはりその目的に従って、まず第一次は、当該所管行政庁の適切な処理というものが私は前提になければならぬと思います。その行政官庁の適切なる処理に従わない、どうにもならぬといったときに警察としては発動するのが私はまず常識的であろうと思います。ただ、御質問の事件を先ほどから、途中からでございますので詳しくわからないのですが、余りにもこれは悪質であるということになれば、私は警察として取り締まりをやってもしかるべきものであろう、かように考えますが、前提としては、相なるべくんば行政庁の適切な指導によってやめてもらいたい、かように考えます。
  94. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、まだ私の方に実態についての正式の報告がございません。そこで、先ほど申し上げた食糧事務所及び愛知県でいろいろといま実態調査をしていただいているわけでございまして、それが出てきたところで私の方でひとつ何らかの処置をとりたい、こう考えておるわけであります。
  95. 津川武一

    津川委員 私は、食糧庁のとる態度、農林省のとる態度をこれから監視して、どこまでもやはり根を絶つために最後までがんばりたいと思っておりますが、そこで、こういうやみ取引が消費者にいい米を届けてくれているならまだ値打ちがある、生産者にいいぐあいに、利益になっているならまだいいんだが、ところが、これがまた大変なんだ。米常ライスのブランドというのがあって「名城」という名をつけて十キロ五千円。静岡県の上限が四千六百二十円。先ほど話した神奈川の藤又、これが東京が最高で四千七百円なのを五千二百円で売っているんだよ。こういう状態なんです。このお米に対して——行管来ていますか。行管では、福岡県で管内行政参考報告書なるものをつくって、小売販売に対する実態を調査した。そうしたら、福岡県の知事の登録を受けた者でなければ販売できないが、何と本県では、多くの無登録販売業者が品質及び価格に問題が多い商品を販売しておる。福岡県では、多数の無登録販売業者が品質に疑問の多い品を無表示あるいは優良品と誤認されやすい不当表示を用いて、詰めかえによる格上げ販売、高価格のものを大量に消費者に販売して不利益を与えておる。これが政府の調査なんですが、行管、このことは覚えておりますか。
  96. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 ただいまのお話の調査でございますけれども、私どもの九州の管区行政監察局が管内の参考報告としてこちらに届けてきたものでございます。ただいま先生のお話のとおりの報告書がこちらに来ております。
  97. 津川武一

    津川委員 国家公安委員長、わかったですね。これがいわゆるやみの実態なんです。これをほったらかしておいていいか。  もう一つ、今度は生産者の方だ。これは食糧庁長官官房調査課がつくった五十四年十一月の調査だ。全国でやみで買っておるのです。大臣のところの岐阜県は、何と一万六千何がしで政府が買うのを一万円で売られていますよ。青森県や北海道のお米が一万六千何がしじゃなく一万二千、一万三千円で売られている。生産者には買いたたき、消費者には悪いものを高く。これで食糧庁は黙って見ている。驚くべき状態なんです。どこへ行っても食糧庁は何もしてくれないと言う。どこへ行っても警察は何もしてくれないと言う。いまも公安委員長答弁にありましたが、五十三年九月十八日水戸地方裁判所の判決、通帳が一般的に使われているということはわかるが、右違反の行為と、通帳での違反行為とやみをやった行為の間には反社会性の面において隔絶したものがあって、同時に論ずることはできない、だからこれは罰しなければならぬ、こういうことなんです。  それで、食糧庁はこういう事例を幾つか告発すべきだ、これが一つ。告発があったならば、警察は事件として捜査する、この二点が必要になってまいりましたが、この二点、答えていただきます。
  98. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいまの食管法違反の問題につきましては、従来からも大口で悪質な者につきましては告発等を行った事例があるわけでございますが、全体といたしますと、食糧管理制度に対する一般理解が希薄になっておるということは、われわれの責任でもあろうと考えております。したがいまして、ただいまお話がございました生産者の段階に対しましても、できるだけ農協系統等が集荷に努力をして、このような自由米の発生をさせないような指導をしていかなければならないと考えておりますし、また、小売の段階におきましても、正規米と不正規米につきましての消費者の理解を十分に得るようにしていかなければならないということで、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、正規の政府米につきましては、表示の内容を明確にいたしまして、原料構成等についてもはっきりしたものにする、それを食糧事務所につきまして十分な指導なり調査をするということをいたしますとともに、消費者に対しましても、やはり食糧管理で扱っております米と不正規な米とについて十分認識をしていただきますように、五十五年度から消費拡大事業を地域ごとにやることになっておりますが、その過程におきまして消費者に対する十分な理解も得るというようなことで、両面からこのようなものをなるべく少なくしていくように努力をしていきたいと考えておりますが、悪質な者についての告発等につきましては考えていかなければならぬと思います。
  99. 津川武一

    津川委員 悪質な者は告発する。そこで、具体的に神奈川県の「いちかわ」、愛知県の米常、これを告発しますか。
  100. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいまの事例につきましては、米常につきましては先ほども大臣からお答えしましたように、実態を調査中でございますが、われわれといたしましては、悪質な者につきまして告発に至るまでの間、段階的に、たとえば警告を発するないしは売り渡し量の削減をする、または登録についての取り扱いを考えるというような段階的な形での指導がまず必要であろうと思っておりますが、そのようなことをしてもなおかつ悪質な者についての告発が必要であろうと考えております。
  101. 津川武一

    津川委員 米常は何回も勧告を受けているんです。勧告を受けるたびごとにやみが広がっているんです。これで調べてなんということで、食糧庁は甘いんだな。それでやみが広がるんだな。これはよくわかりました、なぜやみが広がっていくか。  そこでもう一つの問題。政府がこういうふうに手をこまねいているもう一つの背景には、食糧行政と米穀関係業界の癒着がある。一月に入って、静岡県食糧事務所の業務部の出納課長が県内大手の倉庫業者鈴与倉庫と、登録小売店でありながらやみ行為を大っぴらにやっていた西田商店からごちそうになったり賄賂をもらったりして、いまこれが逮捕されております。こういう癒着がある。静岡県食糧事務所では、便宜を与えることなどはやったことがないと言っているが、これまた大変なんです。食糧事務所自身がぼくによこした資料によれば、静岡県の食糧事務所の課長以上の退職者のうちで、この四年間で、倉庫業者もしくはその組合に天下りした幹部職員が三人。静岡県の食糧事務所で、出納課長だとか業務部長を退職した後は倉庫業者が指定席になっているんです。みんな行っているんです。これが問題を手ぬるくしているんだ、こういうことなんですね。  また、こればかりでないんだ。食糧事務所幹部がやみ米を集荷する企業に天下りしているんです。三井物産が一〇〇%出資している子会社で三井物産農産販売秋田営業所、ここに何と秋田食糧事務所の元検査課長が天下りして、同県内で未検査の超過米を集荷しているんです。農民に言わせると、食糧事務所のえら方がいまはやみ屋のトラックの上で陣頭指揮をとっている。こういう事実を知っているのか知っていないのか。そこで、この秋田の出張所が最近閉鎖したんです。よくなるかと思ったら、親会社の三井物産秋田営業所が今度は乗り出してきてやみ米を集めている。     〔小宮山委員長代理退席、村田委員長代理着席〕 この三井の会社に四十六年から四十八年にかけて元宮城県の食糧事務所長武井仙太郎さん、元新潟食糧事務所長宮沢光寿さん、また三井物産本社には四十五年に元東京食糧事務所長の竹葉柾さんが天下っているんだな。こういう大商社がいま、食糧庁が流しておるこれを利用して、白米の三兆円、この消費に乗り出しにかかっているわけなんです。これはこの間のモチ米の事件で、総合商社の丸紅に売った事件がわかるな。ここのところが非常に大事になってきたわけなんです。  したがって、本当に農民がつくったお米の全量を政府で消費者に届けるように、消費者には間違いなくいい米が安く届くようにするためには、この際何としても、食糧庁長官がいろんな消費者教育も言ったけれども、問題のかなめは、この「いちかわ」とそして米常、これを告発する、その告発に基づいて警察が捜査する、ここにかかってきたわけです。この二点を重ねて最後にお願いすると同時に、天下りをやはり粛正すべきだと思うのですが、農林大臣の所見を伺って、私、次の人にバトンタッチしてもいいと思っております。
  102. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 米常などの問題につきましては、先ほどから申し上げておりますように、事態をしっかりと正確に把握いたしまして、できる限り厳しい態度で対処してまいりたいと思います。  それから天下りの問題でございますけれども、これは政府全体でございますが、国家公務員法の百三条であるとか、人事院規則で、直接の関係の深い営利企業への就職については、これは何年間はだめだ、こういうことをやって、規則があるわけでございますから、私は、当然それに基づいて行われておると信じております。それに違反したような形での天下りというものは決してないと私は思います。しかし、それに違反しない関係においては、たとえば何年か後において就職をされるということまで私どもの方で抑えるわけにはいかないわけでございます。やめた方が何年かたってどこかに就職されるところまでは、これは私どもでどうにもならないことでございます。特に私どもは人事管理の面で管理職以上については勧奨退職もやっておりますので、ある程度若いうちにやめていく人間がある程度の期間を経た後において再就職をすることまで抑えるというわけにはなかなかいかないんじゃないか。しかし、なるべくそういう疑惑の起きないような形で指導していかなければならぬことは当然だと考えております。
  103. 津川武一

    津川委員 次の中川さんに移しますが、大臣、あなたがいま言っていることが問題を大きくしているわけなんです。この際やはりかなり食糧庁の幹部職員は自粛する、こういう態度をとらなければ、癒着でやみが横行していくということを指摘して、次の関連質問の中川さんに譲ります。
  104. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 この際、中川君より関連質疑の申し出があります。津川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中川利三郎君。
  105. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林水産省が認可した公益法人の中に農漁村協会という団体が虎ノ門にありますけれども、この中の理事、役員として名を連ねている方々はどういう方々か、お知らせいただきたいと思います。
  106. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  農漁村協会の役員としてどういう方が名を連ねておるかというお話でございますが、現在登記簿上では、大久保堯明、これが理事長でございます。それから会長が赤城宗徳、それから理事といたしまして大坪藤市、及川孝平、坂村吉正、桧垣徳太郎、丸茂真一、関根耐という八名の方が現在登記簿上残っております。  ただ、いずれも任期満了になっております。
  107. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、登記簿上理事、役員として名を連ねている人は、赤城さんと言えば元の農林大臣、大坪さんというと元農林水産省の経済局長、及川さんは元農林事務次官、坂村さんは元経済局長で元の衆議院議員、桧垣さんは元の農水省の次官で現在の参議院議員なわけです。そうですね。  それではお伺いしますが、この社団法人、公益法人の農漁村協会というのは、これは皆さんの方からいただいた資料皆さんの部内資料だと思いますが、農水省自体五十四年十二月三日付で、公益を害すべき行為としてこういうことを言っているんですね。「昭和五十二年春頃山形、岩手県において畜産団地育成の名目で入会勧誘、入会金詐取行為(未遂)」それから「昭和五十三年秋頃高知、徳島県において同様の行為」こういうことで、要注意団体であるということで皆さん自身がお認めになっているわけです。  またさらに、昭和五十三年十月十六日の参議院の決算委員会でわが党の沓脱タケ子議員が質問しているわけでありますが、これに対して当時の農林大臣であった中川一郎さんはこういう答弁をしているんですね。それは「この法人につきましてはよからぬ御指摘もございますし、過去においても、いま局長答弁いたしましたように解散の勧告を行っております。さらに一層、有名無実でありますから解散に全力を挙げます。同時にまた、事実関係についてもできるだけ調査をいたしましてしかるべき対処」云々ということを言っているわけでありますね。このよからぬ、しかも当時の大臣が国会で全力を挙げると、こういう状況に対して、その後一年五カ月たっておりますが、現在どうなっておるのか、ひとつ大臣から、御存じでしたらお答えいただきたいと思います。
  108. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十三年十月十六日の参議院の決算委員会での質疑以降、この件につきましては農林水産省といたしまして、まず一つは、五十四年の十二月までに数回にわたりまして理事長の大久保堯明等を当省に呼びまして、口頭により厳しく解散を促したわけでございます。それから第二点といたしましては、ことしの二月四日並びに七日の両日にわたりまして同協会の業務実施状況等につき検査を行ったところでございます。それから第三点といたしましては、設立許可の取り消しなりあるいは登記手続に関しましては、法務省の先例なり意見を聞きながら現在鋭意検討を取り進めておるということでございます。
  109. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 大臣が国会答弁で許可取り消しに全力を挙げると、しかし、その後一年五カ月にわたってやったことと言えば、口頭により本人を呼んだ、あるいは法務省と相談した。全力を挙げることの中身がこれだということになれば、証拠になるものは一つも残っておらないわけでありますね。こういうあり方でどうして国会答弁の趣旨が生かせるかということですね。  そういう点で私がお聞きしたいのは、確かにおたくでは昭和五十三年十一月十四日に農水省の名前で、農水省として全国の各県の農政部の主管部長あてに、この団体に対して注意せよ、こういう通達を出したと私聞いておるのでありますけれども、いわば証拠に残るものというのはそれしかないような感じがするのでありますが、どういう趣旨の通達であったのか、御説明いただきたいと思うのです。
  110. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 五十三年十一月十四日付の通達でございますが、件名は「畜産団地造成事業等に関する不当勧誘行為について」ということでございまして、内容は、最近、社団法人農漁村協会の役職員と称する者によりまして、畜産団地造成事業等に関しまして、同協会に加入した場合には、事業実施について制度金融なりあるいは補助金のあっせんをするというようなことでの勧誘行為が行われている模様である。このことにつきまして同協会に照会したところでは、勧誘行為は協会の役職員によるものではないという回答は得ております。しかし、これらの勧誘行為の中に示されていると見られる融資とか補助等は制度的裏づけが明らかでございませんので、各県の農林担当部長さん等におかれましては、この旨御了知を願いますとともに、管内の市町村あるいは団体等に周知徹底を図っていただきたい、それから勧誘行為の情報が察知された場合は御連絡願いたいという内容のものでございます。
  111. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 国会の参議院の決算委員会大臣答弁は、そのものずばり、この農漁村協会を解散させるために全力を挙げると、また事実関係についてもこうだということをおっしゃっているわけですね。ところが、おたくの唯一の資料と見られるこの通達を見ますと、そういう事件があるかということで協会に照会したというのです。大臣答弁はずばりその協会そのものを解散させると言っておるのに、こういう事例があるが、だから照会したら、おれの方でなかったんだ、そういうことを、つまりどろぼうに、あなたはどろぼうしたかどうか問い合わせて、そうじゃないと言われたから、こういうものを気をつけなさいよと言うに等しいじゃありませんか。こういうことでありますならば、大臣責任を持って答弁した国会の答弁と通達の趣旨が明らかに違うと思うのですけれども、これについて大臣の所見はどうですか。こういうことでいいんですか。どうして解散できますか、そういうことで。
  112. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま御指摘のいわゆる大臣の決算委員会における答弁と事務当局の通達との問題でございますけれども、私は、決して事務当局も大臣答弁に反して通達を出しているということではないと考えておるわけでございまして、やはり民法でまいりますと、公益法人の取り消しの問題というのは、非常に法律的に問題がいままであったのではないかと思います。あったからこそ今回の民法の改正が行われたんではないかと、こう私は承知いたしておるわけでございます。  そういう点において、確かに過去においてはなまぬるいものがあったと思いますけれども、幸い、ことしのたしか六月から民法の改正が施行されますので、私といたしましては、これに基づいて、たとえば何らかの命令、監督上必要なことということで、いまほとんど何か休眠状態にもなっているので、休眠状態であれば、三年間休眠ならば今度の民法でこれは取り消しができます。それでやるか、あるいは何か少し事業をやったというような場合には、その事業の遂行上、監督官庁としてこういう点はきちんとしなさいということをして、それに従わない場合はこれは取り消しをすることができると、こうなっておりますので、その辺を踏まえて、ひとつこの六月の民法の改正施行時点において私としてしっかりした、それこそ中川大臣と同じ気持ちで、こういうような非常に惑わせる、あちらこちらでいろいろの問題を起こしたようなそういう法人に対しては断固たる処置をとりたい、こう考えておるわけでございます。
  113. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 すでに農水省の見解としてもこういう悪徳な団体だということをお認めになって、その上でわが党の沓脱さんの追及があったり大臣答弁があったりしたわけでありまして、しかし、その後のおたくのやり方を見ますならば、明らかにどろぼうをかばうというか、かばい立てしている態度であって、そのものに対する追及の真剣な姿勢というのは全く見られないわけですね。しかも、いま大臣のお話を聞きますと、民法改正と。しかし、休眠法人といいますか、居眠り法人ですか、こういうもの云々ということでありますけれども、これは居眠り法人じゃなくて明らかに悪徳の法人なんですよ。にもかかわらず、民法改正というのは十二月に公布されまして、施行は六月なんですよ。その間でも悪事をどんどん重ねていったならば——重ねないという保証は全くないわけでありますね。そういうなまぬるいことで、大臣からいまそういう答弁をいただきましたが、どうするのかということであって、私は具体的な問題として、国会での、参議院決算委員会での大臣答弁の後、またまたすぐ悪事を重ねている具体的な事実を挙げたいと思うのですね。  ここに資料がございますが、これは土地売買契約書というやつです。これは、だれとだれがどうしたかということについてはいま申し上げますが、大臣は解散すると言って、そう言う舌の根も乾かないその二カ月後でありますが、昭和五十三年十二月十二日です、堂々と土地ころがしをやっているのですね、この文書を見ますと。売り主は北斗という株式会社でありまして、不動産屋ですが、買い主、農漁村協会ですね。そうして、この金額を拝見しますと、四万三千四百二十五・六平方メートル、ほとんど宅地、場所は千葉県旭市、そうして二億五百万円というこういう契約を昭和五十三年十二月十二日にやっているのです。つまり、北斗という会社から農漁村がそれだけの土地を買い入れた。ところが次の日、十二月十三日、一日置いて今度は売り主農漁村協会、公益法人、買い主は千葉県東部宅建協同組合ということなんだな。今度は二億六千八十万円。つまり一日で土地転がしをして五千五百八十万円をふところにまず入れているわけですね。それで、両者の土地売買契約書がここにあるわけです。領収証というものも、写しでありますが私は持っておるわけです。これは協会の方で、この団体が売ったときの領収証で二億六千八十万円也の領収証です。私、その現地の写真も持っているわけです。  そこで私がお伺いしたいことは、まず国土庁長官にお聞きしたいわけでありますが、国土利用計画法の第二十三条によりますと、土地に関する権利の移転、これに対しては法に定める届け出の義務があると思いますが、当該地の場合、いま私が申し上げたこの取引の場合、この売買についてそういう届け出があったかどうかということで、私の聞く内容は二つあります。一つは北斗というものからこの農漁村に対する売買、それから農漁村から千葉東部宅建に対する売買、この両方についてそういう届け出の法に定める義務をちゃんと守っているのかどうか、この点だけをお聞きしたいと思います。
  114. 園田清充

    ○園田国務大臣 お答えをいたします。  お尋ねの件につきましては、国土利用計画法第二十三条に基づく千葉県知事あての届け出は提出されておりません。
  115. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 これはもう大変なことだと思います、公益法人がやっている仕事でありますから。  同時に、せっかく大蔵大臣もお見えでありますので私はお聞きしたいと思うのでありますが、そういう届け出はありませんが、一日だけで土地転がしを完全にしたという権利の移転ですね。これは登記簿上、いま登記簿がここにありますけれども、明らかにこの登記簿上でも確認できるわけであります。そこで、この二つの売買契約書の中で明らかなことは、この協会が五千五百八十万円の売買益を得ているということなんです。  ここでの問題点は、公益法人には税金がかからない、そういうことを利用した協会関係者だとかあるいはそれにまつわる不動産業者だとか、こういうものの巧妙な税金逃れ、税金ごまかしの疑いが十分あると思うのです。したがって、その面からの調査というものは当然国税当局、大蔵省としても必要でなかろうかと思いますが、この点について大臣の御所見をいただきたいと思うのです。
  116. 磯邊律男

    磯邊政府委員 いま先生御指摘の法人につきましては、まことに残念ながら、国税当局としましては登記簿上の所在地を管轄する税務署も、それから現在事務所を管轄する税務署も、両方ともこれを把握してなかったわけであります。したがいまして、いま先生御指摘になりましたこの事実、これは果たして収益事業に該当するかどうかということも承知しておりませんけれども、御指摘の事実を踏まえまして実態の調査をいたしまして、それからこれが収益事業に該当するということになりましたら税務上の適切な処理をいたしたい、かように考えております。
  117. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農水大臣にお聞きしたいのでありますが、「社団法人農漁村協会定款」というのがここにございます。この第三条「目的」の項を拝見いたしますと、「本会は、農村・山村及び漁村の生産に協力し、農漁村の文化の向上に寄与することを目的とする。」と書いてあります。つまり、この定款の上から見ましても、こういう土地転がしをしているなんということはまさに法に違反していますよ。それでもなおかつこれは妥当なもので、しかもああいう大臣の約束があったにかかわらず放任しておった結果としてこういう問題が起こっていることについて、あわせてのあなたからの御答弁をいただきたいと思います。
  118. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 定款から申しまして決して好ましいことではないと私は思います。ですから農林水産省といたしましても、先ほど局長からも答弁があったわけでございますが、決して認めているということではないわけでございまして、極力解散をしなさいという勧奨を続けてきたわけでございます。残念ながらまだその成果が上がっていないということでございまして、それは先ほど私申し上げましたように、やはり民法上公益法人の解散についての規定というものがなかなかむずかしいわけでございまして、今度の民法の改正はその十分でないところを充実したものであると私は判断をいたしております。  先ほど、それじゃ六月までどうするかということでございますが、私これはまことに申しわけございませんでしたが、きのう先生からの御質問ということで承知をいたしましたので、たとえばその間においても各県に対してもう一度、こういうものについては十分警戒をしてもらうような通達を出すことも場合によれば私は考えたいと思っておりますけれども、いずれにしてもそういうものによって今後迷惑が起きることは絶対ないようにし、そして六月の民法改正施行後できるだけ早く解散という処置をぜひとりたい、こう考えておるわけでございます。
  119. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は冗談じゃないと言いたいのですよ。あなたはこの協会を積極的に認めていないんだとおっしゃるけれども、先ほど私が紹介した通達の趣旨ですね、全国の農政部長あてのあれを見ましても、恐る恐るそこへ照会して、そこではおれは被害者だ、むしろ名前を利用されただけだなんということで、その手口で皆さんは全部大問題を見逃してきている。そこにこそ問題の本質があるということであって、ここに私、昭和五十二年四月十三日付日本農業新聞の切り抜きを持っているのですが、これを見ましても、山形県の川西町というところでこの農漁村協会の者が、政府の高率補助だ云々と言って大問題を起こしたのですね。大事件であったのです。大きい活字でトップに書いてあるのですが、「その開発待った 農漁村協会の名を“無断借用”」というようなことで、どんな事件であっても彼らの手口がこうだということはあなた方はわかっているのですよ。農林省は現にそのことで頭を痛めているということもわかっているのですよ。にもかかわらず、そういう本人の手口を全部あなた方は免罪してかばい立てて、恐る恐るこういう事件があったけれどもいかがでしょうか、しかしおれの方ではなかったから、ほかを気をつけなさいよというような程度でしょう。これは認めていないということでなくてどうなんですか、積極的に認めているような大変なことだと私は思うのですね。しかもいま出されたような土地転がしの問題、こういう法に違反したやり方、こういう事実があってもなお解散できない。そうすると、この後まだまだいろいろな事件をもし起こしたとするならば、その責任をあなたは負いますか。
  120. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の申し上げておりますのは、決してこの協会の名前でやられていることが何も私は正しいと申し上げているわけではないわけでございまして、いまの民法上の解釈から申しますと、公益法人の解散ということにおいて、たとえば公の害を及ぼしたというその解釈をどうするか、そういうことでこれは農林水産省というよりは法務当局の見解なども承らなければいけないのではないかと思いますけれども、よくその辺も私はもう一度その法律解釈をしっかりといたしまして、いまの現行法の法律解釈においても解散をさせ得るものがあるならば思い切って解散をさせたいと思いますけれども、私のいままで聞いておる範囲ではなかなかその辺のところがむずかしかった、こういうふうに聞いておるものでございますから、その間に二度とそういう不正なことが行われないように、また迷惑をこうむる方のないように、こういうことで、私は、場合によれば都道府県の方へこちらから連絡をすることも必要だ、こういう判断で申し上げておるわけでございます。決して認めておるということではございませんので、その辺は御理解をいただきたいと思います。
  121. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それもおかしいのですよ。あなたは、あたかも民法改正にならなければ、これが公布にならなければできないかのような、そういうことを前提にしていますけれども、私調査して、各省に問い合わせてみました。もう現に運輸省では五十五年一月末に七十一条による許可取り消しがあるのですよ。いいですか。文部省でも一件あるのですよ。たくさんあるのです。つまり民法七十一条によれば、あなたのいまおっしゃった「設立許可の取消」でしょう。「其他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為シタル場合ニ於テ他ノ方法ニ依リ監督ノ目的ヲ達スルコト能ハザルトキハ主務官庁ハ其許可ヲ取消スコトヲ得」と書いてあるでしょう。しかも「正当ノ事由ナクシテ引続キ三年以上事業ヲ為サザルトキ」でしょう。あなたは、ずっと居眠りしておるのだということをおっしゃったら、まさにずばりこれは該当するのじゃないですか。こういうことがありながらなお民法改正の公布を待たなければならないと言うことは、その姿勢自体において大変問題があると私は思うのですが、いかがですか。  あわせて、法務大臣がいらっしゃっておりますから、いま私が申し上げた点、設立許可を取り消すことができると思いますが、先に法務大臣から御意見を伺いたいと思います。
  122. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 民事局長からお答えいたさせます。
  123. 貞家克己

    貞家政府委員 昨年成立いたしました昭和五十四年法律六八号、民法等の一部を改正する法律でございますが、この法律が本年の六月二十日から施行するということになっております。現行法におきましては、監督権限といたしまして、主務官庁が「法人ノ業務及ヒ財産ノ状況ヲ検査スル」ということだけが明定されておりまして、「監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得」という条文がございませんでした。これが新たに加わったわけでございます。それに関連いたしまして設立許可の取り消しでございますが、現行法におきましては「法人カ其目的以外ノ事業ヲ為シ又ハ設立ノ許可ヲ得タル条件ニ違反シ其他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為シタルトキハ主務官庁ハ其許可ヲ取消スコトヲ得」、こうなっておるわけでございます。それをより容易に動かしますために、改正によりまして、先ほど申し上げました「主務官庁ノ監督上ノ命令ニ違反シ」というのを加えたわけでありまして、同時に、いわゆる休眠法人、三年以上正当の事由がなくして事業をしなかった場合、これを加えたわけでございます。  そこで、現行法のもとにおきましても設立許可の取り消しということはあり得るわけでございますが、しかし「目的以外ノ事業」をした、あるいは「設立ノ許可ヲ得タル条件」に違反するというようなはっきりした事態あるいは公益を害するというような非常に大変な……(中川(利)委員「わかりました」と呼ぶ)でございますから、現在は事実上非常に困難であるということは否めないところであろうかと思います。改正法によりましてきわめて容易になるということでございます。
  124. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私が聞いているのは、現行法でもできるということで現にやった事例があるでしょう。いま申し上げたとおりですよ。そうすると、いままで七十一条違反で取り消していながら、今度はこの問題に関してはなかなかそれができないのだ。しかも、そういう刑事的な法に違反した事件を引き起こしていながら、この事実がありながらなおまだどうのこうの言っておるということはけしからぬと私は思うが、時間がありませんから次に進んでいきます。これは指摘だけにしておきます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  では私は、そのほかにもまだこんな悪いことをしているじゃないかということをもう一つ具体的に申し上げたい。  ここに私が名刺をもらっている方で静岡県浜北市大平一二三一、浜北富士見観光富士見ホテル代表取締役鈴木昌幸さん、この方はまたこの協会というものから大きい被害を受けている。どういう手口が特徴かといいますと、従来この協会のやっていることは全部畜産団地だね。畜産の団地を育成するため云々ということでごまかしてやったわけですね。この方の場合はそれがただシイタケ版になったというだけの話でありまして、手口は、従来あちこちで、高知だとかいろいろなところでやってきました同じ手口なんだな。ちょっと私説明しますと、農漁村協会代理人と称する酒井國人なる人物がこの鈴木さんのところに何回も何回も、大臣が国会答弁して二カ月か三カ月、すぐ後なんです、全力を挙げて解散させると言ったのに、ちゃんと来ておるのです。どういうことを言っておるかというと、ここは日本一のいいところだ、条件がいい、観光農園だとかシイタケ農園としてバーベキューだとかキノコが主体の料理をやれば繁盛間違いなしだ、君のところでハウスシイタケ栽培研修センターをつくったらどうだ、栽培家や大学教授を呼んで、受講生の寮もつくったらどうか、もちろんその借り入れには法人組織をつくり、資金は全部政府資金で賄ってあげよう。それで、鈴木さんという人は話が余りうまいから、しかも金もないし、十回も断わったというのですね。しかし、最後に陥落しているのです。この決め手は何であったかといいますと、わが協会の理事、役員にはこういう政治家がいる、農林水産省とは特殊な関係があるというのです。これはいままでずっとやってきた御存じの手口ですね。そうして、その関係で特別な政府融資がある。そうなればだれでも落ちるのですよ。  そこで、ここに「確約書」というものがあるのです。これは鈴木さんあてに協会代理人と称する酒井という者が出した確約書、この一節を見ますと、「政府資金の借入等については、その手続き等の便宜を提供します。」もうあたかも政府資金が当然なごとくなっているわけだね。それから「椎茸榾木売買契約書」というものがある。だれとだれかというと、これはやはり鈴木さんと農漁村協会代理人の酒井何がしの売買契約書、これを見ますと「最終決済は融資手続き完了時に行うものとす。」なんて書いてあるわけですね。まさに政府の方からの融資というのは当然その前提、これは問題の外のあたりまえのことだと思わせるような、そういう状況なんですよ。これは引っかからない方がおかしいのであって、そこで、それをやるためにはまず入会してもらわねばいけないというので、まずばっと金を、賛助会費というのをとられたわけですね。いつもの手口がこれです。これがその入会のときの賛助会費の領収証のコピー。ちゃんと農漁村協会の判こがある。その印刷です。そして昭和五十四年二月二十三日、まず百万円ばんとふんだくられ、そうしてまた契約で二百万円ふんだくられるというようなかっこうでずっと深みにはまっていったわけですね。  そういうことで、政府融資というのは全然ないのはあたりまえでしょう、解散させるというおふれが全国に回っておるのですからね、本当に回っておるかどうか内容は別にして。そういう団体に金を貸す人はだれもいませんね。また、借りられるはずがない者がそういうものをやってみせている。実際にほだ木の売買の経過を見ましても、契約をしたのがここにありますとおり去年の三月一日でありますけれども、しかし、ハウス栽培のほだ木ですからいろいろな施設をつくらなければなりませんね。ところが、すぐ後一万九千本だかのほだ木なるものを送ってきたわけですね。そのまま野積みされちゃって、さあ融資はない、建物は建てられないということで市中銀行へ駆け込んで、そうしてその建物がやっとできたのが八月段階なんですね。それで、銀行からの借金はできるわ、何だかんだと大変なことになっちゃって、この方はここにいろいろなそのための栽培施設をつくるために千何百万円という金を銀行から借りているわけです。やはり建築物だ、土木工事だ、運搬機だ、乾燥機だ、電気工事だとかでいっぱい要るわけですね。そうして、こういうことが実態なんでありますけれども、問題なのはこういう事件が起こっても、いままでいつも政府、農林水産省は代理人というものは何にも関係ないんだ、名前を利用されただけにすぎないんだ、こういうことで見逃して免罪してきたという経緯が私はあると思うのですね。そこのところをはっきりしなければなりませんね。そこを証明するものがあるのです。つまり、いままで協会の大久保何がしという理事長は、巧妙ですから自分が絶対表に出てこないんだ。いつも代理人。代理人が問題を起こせば、それは協会とは関係なかったということで逃げているわけです。  ここに「協定書」というのがあります。昭和五十三年七月九日、甲、社団法人農漁村協会の大久保理事長の名前、乙は福島県郡山市名倉百五十五酒井國人、つまり代理人とこの協会の責任者である理事長との協定文があります。これの関係を見ますと、第一条の(ロ)のところに、乙に協会の代理者としての資格を与える、常に販売に関する協力を約束する。つまり、ここでは乙に、つまり酒井に協会の代理者という資格を与えているのです。第四条を見ますと、「甲は販売事業による利金は乙に対し一定の額を定めて還元するものとす。」つまり親方が、張本人の本山が協会で、もうけが出たときはおまえさんに、酒井に一定の額を還元しますよ、こういう証明なんですよ。こういう関係が——これはもう協会の事業だということが歴然としているわけでありますけれども、こういう事実があって、一体これに対して大臣はどう考えますかということですね。
  125. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、民事局長からも先ほど答弁がございましたけれども、現在の民法の解釈の「其他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為シタルトキハ」、この事実関係の証明が正直農林水産省としてはいままではっきりできなかったがために、私は許可の取り消しができなかったのだ、こう判断をいたしておるわけでございます。しかしながら、そういう事実関係がはっきりすれば、いつでも私の方は現在の現行法でもできるわけでございますから、そのときに取り消しをすることは当然でございます。私、先ほど申し上げましたのは、六月からの民法の改正ではもっとやりやすくなるので、そのときには、これはやれるのじゃないか。しかし、いま現時点ではなかなかやりにくかった。しかし、もし事実関係が出てくれば、これは現行法でもできるわけでございますから、そのときに私は決してこの認可法人の取り消しについてちゅうちょすることはございません。
  126. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま、事実関係がはっきりしなかったからなかなかできなかったとおっしゃったわけですが、こういう事実関係が明らかになったわけでありますから、いまの御発言の御趣旨のようなことを私は早急にやっていただきたいと思うわけであります。  それにつきまして、蛇足というかつげたりみたいなものですが、どうもこれはまずインチキなんですね。私も調べて本当にびっくりしたのです。たとえばほだ木の売買契約でも、契約書を見ると酒井が立会人。実際契約しているのは、鈴木さんと津久井というシイタケの栽培家の契約になっているのですね。しかしこの契約書の中身を見れば、協会の企画により云々と書いて、まさに協会のあれですね。しかし本人並びにその協会は表に出ない。そういう関係で、まあ協会の企画であることは証明するものはあるわけですね。  それでおもしろいのは、この大久保なる者はこの契約締結後に直接乗り出して、静岡県信連の数原専務のところへ、おれは顔がきくから一億五千万ぐらいずつ出すためにはあいさつしなければならない、一緒に行こうと言って、連れていった事実の証言もあるわけですね。しかし数原専務の愛想は余りよくなかったという話もあるわけであります。  それからインチキというか、これは一つの笑い話みたいなものですが、農漁村協会の発行した手引書があるのです。「事業着手時の心得」。これを読むとまさに傑作なんです。「私共協会は農政確立の外郭団体として昭和二十二年に発足、今日に至りましたが当局の農政宜しきを得、」この次が問題だ。「其の大なる成果を得るに致りませんでした」。当局の指導よろしきを得て、大なる成果を得ることができなかったというのだから、まさにこれは噴飯物ですね。しかもここで見ますと、シイタケをやればいかに有利かということの証明として、対外輸出金高も年間一千億円を超えているなんということを言っているわけです。私、林野庁で調べさせたら、五十三年の実績で百二十五億円しか輸出してないんだな。明らかにそういうものを含めて欺罔ですね。そういうことを堂々とへっちゃらにやっているし、時間がないからあれですが、このシイタケの何々式特許なんというのは、いま特許庁を調べてみたら、何もこういう特許はなかったり、あるいは鈴木さんと契約した代理人の酒井というものの郡山市名倉の百十何番地に問い合わせてみたら、そこは保育所であったりして、該当人はもちろんいないわけですが、しかもこのシイタケの津久井何がしという男はよく調べたら酒井の実際の兄であったり、つまりそういうものを操りながらサル回しの役割りをしているのが大久保だという事実がはっきり浮かぶわけです。  そこで私は、時間も迫ってまいりましたから最後にお聞きしたいのは、なぜいままで解散させることができなかったか。そういう事実関係の証明もなかったということもありましょうけれども、私はやはり国会議員です。有力な政治家です。先ほど申し上げましたようないろいろな方々がいるわけでありまして、しかも、私、伊東官房長官にお聞きいただきたいのは、鈴木さんをだまかすときに「社団法人農漁村協会役員名簿」、そういう名簿を出して、その理事筆頭にあなたがいるわけですな。「伊東正義(衆議院議員)」。こういう人がいるわけでありまして——はいどうぞ、これはそのときの本人に渡した文書のコピーですから。そこで私はいろいろ調べてみたのですよ。あなたは登記簿を調べてみたでしょう。ところが、伊東さんの登記簿によれば、あなたは昭和四十九年十月二十五日にこの協会の役員に就任していらっしゃる。そして五十二年の六月七日にあなたは辞任していらっしゃるんだ。そうすると、浜北とは、いまの静岡の問題とは直接関係ないということにもなりますけれども、しかし先ほどごらんに入れた昭和五十二年四月十三日の農業新聞に大きく出た、こういうでたらめなときは、こういう事件を起こしているときは、あなたは現に理事だったのですよ。あなたはこういう事件があったということを御存じであったのかどうか。また、その後のいろいろな問題を見て、いま直接あなたは責任はありませんけれども、御感想をひとつお漏らしいただければありがたいと思うのです。
  127. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  昭和四十九年の五月ごろ、私の親しい先輩からの紹介でその大久保という人が私のところへ来まして、農漁村の生産に協力して、農漁村の文化向上に寄与するために活動している農漁村協会というものがあるんで、理事になってくれということを頼みに来たわけでございます。そして私の親しい先輩から、関係者は大分理事になっておるんで、おまえさんも理事になってくれということを強く頼まれまして理事を引き受けたことは、そのとおりでございます。その後、私はその大久保という人に一回も会ったこともなし、何をしてくれというような頼みもなかったし、また風評では、同協会が設立目的に沿った活動も余りやっていないということを実は風聞で聞いたものでございますから、いま先生のおっしゃったように五十二年の四月五日付で、私は理事をやっていても何も意味ないということで退任をさしてもらった。その間、もちろん同協会からは一銭の報酬も受けたこともございませんし、実は何にも聞いたことがなかったということが事実でございまして、いま何の御質問かなと思って出てきたのでございますが、私はたしか二年間頼まれましてそういうことがございましたが、五十二年にもうそういうことをやっていないということを聞きましたので、実は辞任したというのが事実でございます。
  128. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 伊東さんは感想はまあいいでしょう。あなたはともかくとして、先ほどお答えがありました赤城さん、及川さん、桧垣さん、大坪さん、坂村さんなんという、いわば農林族と言われる政治家や有力者が現に理事に名を連ねている。しかし二瓶さんの先ほどの答弁では、その中の一部の人は辞任届けを出している、私は冗談ではないと言いたいのですよ。私ちゃんと会議録、五十四年十月一日受付第三九七五号の東京法務局に登記された社団法人変更登記申請書というものを持っているのですが、それを拝見いたしますと、その中の一部でありますが、「日時、昭和五十四年九月十七日午前十時開会、午前十時四十分閉会、場所、東京港区虎ノ門」云々と、そこの会議室で、「以上、決議のあったことを証するため署名委員及び出席理事記名捺印する」と言って、その中で赤城さんも大坪さんも及川さんも坂村さんも桧垣さんも全部出席して判を押している。これは議事録の写真です。判を押している。それからこれはカラーの写真です。出席しているところが出ています。いまさらおれは辞任届けを出したとか、そういうあいまいなことであっては通らないと思うんですよね。こういうことで、もしそれが事実だとするならば、これは大問題です。もしそれがそうじゃなかったとするならば、これは私文書偽造に当たることは当然であります。  そこで、法務大臣、まだいらっしゃるからお聞きしますが、民法第四十四条によりますと「法人の不法行為能力」こういうものがあるわけでありまして、「法人ハ理事其他ノ代理人カ其職務ヲ行フニ付キ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」とあるわけですが、そのとおりですね、法務大臣
  129. 貞家克己

    貞家政府委員 ただいま仰せのとおりでございます。
  130. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 わかりました。  そこで最後に、時間があれですからあとおしまいですが、この機会に、最近いろいろな認可法人のでたらめが新聞記事をにぎわしている。二月十七日の赤旗では「労働省認可の日本建設雇用管理協会理事長 助成ちらつかせ詐欺」、それから二月十八日の読売新聞「ずさん補助、七七〇〇万円通産省の認可法人二社倒産、社長蒸発」。  そこで、私は農林水産大臣に最後にお聞きしたいことは、この際、農林省所管の公益法人なり認可法人を徹底的に洗い直してみる必要があると思うが、その御意思がおありかどうか、このことを聞いて質問を終わらせていただきたいと思います。
  131. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 実態ははっきりさせたいと思います。
  132. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 終わります。
  133. 田村元

    田村委員長 これにて津川君、中川君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。本会議散会後再開いたします。     午後一時四分休憩      ————◇—————     午後二時二十五分開議
  134. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西中清君。
  135. 西中清

    西中委員 昨年また今年に入りまして新聞、テレビ等でしばしば報道されておりますように、金の私設市場における取引の実態、さらに取引業者によって被害を受けた多くの市民、それから不正な取引が現在のところほぼ野放しといったような状況にある、こうした状況を踏まえまして、この金の市場について御質問をいたしたいと私は思います。  この金市場の問題については、御承知のとおりに四十八年に輸入の自由化が行われ、五十三年には輸出の自由化、こういう形で今日に至っておるわけでありますが、こういう制度の変更に対しまして、金取引のルールや金に対する国民の正しい理解、こういう受けざらを用意しないままに今日に至ったというところに、混乱の大きな原因があるように思うのでございます。  それから、こういう状況に便乗といいますか、いいことにいたしまして、悪質な業者がつけ込みまして、巧みな言葉で市民の利殖欲をくすぐって商取引に引き込む、そうして数々の被害を与えているというような、まことに残念な姿がございます。  そこで、私は通産省、経企庁、警察庁にお伺いをいたしたいわけでございますけれども、こうした金の先物取引といいますか、それに類似した取引によって発生した被害、この実情はどうなのか、掌握されておりましたならば被害の件数へ金額等を御報告されたいのでございます。
  136. 神谷和男

    ○神谷政府委員 まず、私どもが把握しております金の市場と称せられますものの数は、全国で十数団体に上っておると思います。この中にはもちろん現物の金の地金を現実に取引しておるものあるいはいわゆる延べ取引的なものは行わずに仲間のみで取引を行っておる市場等も含まれておりますが、そのほとんどは、御指摘のブラックマーケットと一般に称されておるものであろうと考えられます。これらの市場には多くの金の取引業者が参加をいたしておりますが、私ども消費者相談所に相談件数としてあらわれましたものの中から把握をいたしますと、百程度の業者が把握されておるわけでございますが、これらのすべてが先ほど申し上げた市場に参加しておるわけでは必ずしもございませんで、単独に、必ずしも好ましいと言えない取引を一般の大衆と行っておるものも含まれておる、いわゆる一匹オオカミ的なものも含まれておるというふうに考えられます。  被害金額に関しましては、私どもとしては正確に把握することは困難でございますが、相談件数といたしましては、たとえば昭和五十四年の四月から十二月までの間二百九十九件に及んでおりまして、これらに関連した金額は八億一千四百万円というふうに把握をいたしております。ただ、この中には、一般的な取引相談、あるいは新聞等でいろいろ報道されるので取引先の業者が安全であるかどうかといったような照会も含まれておりますので、これらの金額が直ちに被害金額とは申せませんが、私どもの把握をしております実態は以上のとおりでございます。
  137. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 金に対する日本の国の政策は御承知のように一貫しておるわけでございますが、これも最近のいろいろな経済に対する撹乱要因が外国から来ておりますように、金に対してどうするかということを各国がそれぞれの思惑でいろいろやっておるというようなことが最近の投機者心理というものに微妙な影響を与えておることは御指摘のとおりだと思います。私の方はそういう意味で国民生活センターとか地方公共団体消費者センター、こういうところへいろいろ御相談のあるのがございます。  これは国民生活センターですが、五十三年に一件、五十四年に五件、五十五年に入ってからはまだございません。それから地方の方では、五十三年に三件、五十四年に三十五件、五十五年はまだない。こういうふうにしていろいろの相談を受けておりますので、ただいま申し上げましたように、金について若干いかがわしい先物取引もあることだから十分注意をするように、こういうふうに御忠告を申し上げておるような次第でございます。
  138. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 被害の実態についてでございますが、昨年来、愛媛、広島、福岡、警視庁の四都県でこの種の取引に係る詐欺事件を検挙あるいは捜査中でございます。これらの事件に関連して発見されました被害者は、現在までの捜査では約二百八十人おります。被害額はおおむね四億四千万に上るものと見込まれておりますが、そのほかに昨年一年間でこの種の取引に関して警察に寄せられました苦情であるとか相談などにつきましては七十八件ございます。その内訳を申しますと、勧誘の際、絶対に損はさせないという約束をしたのに多額の損をさせられたというのが二十七件ございます。それから承諾した覚えがないのに多額の取引をしたことになっているというものが二十二件ございました。また利益が出たので解約を申し入れたが応じてくれないというのが二十五件、その他四件となっております。かなりの被害が出ております。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  139. 西中清

    西中委員 ただいまお聞きになりましたような状況で、金額にいたしましてもかなりの被害者が出ておるわけでございます。  通産省に再度お伺いしますけれども、市場の中で疑わしいもの、また業者として疑わしいものはどの程度であるかということを、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  140. 神谷和男

    ○神谷政府委員 先ほど申し上げました百件強の業者というものは消費者相談の窓口にあらわれたものでございまして、これ以外に金の現物取引を行っておる業者が存在することは推察されるわけでございますが、私どもこれらの照会あるいは相談のあったものがすべて悪質であるときめつけることは困難でございますが、問題を起こしたりあるいはそれに近いものが百業者程度あるというふうに考えております。
  141. 西中清

    西中委員 被害者の立場に立ちますと、これはまことに悲劇的な状況でございまして、多くは、やはり人間には欲があることは事実でございますけれども、教員であるとかわりあいインテリですね、サラリーマン。要するに退職金を投入をして結局は投資した分が返らないというケースが非常に多いわけですね。ですからなかなか把握がしにくいような市場ではあろうと思いますけれども、通産省として、やはりこれは看過できない問題でございますから真剣に取り組んで調査をし、今後の対策の資料とするおつもりはないかどうか、その点もう一度御答弁いただきたいと思います。
  142. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように金に対する関心がきわめて強いのに比較いたしまして、金に関し、あるいは金の取引に関しての知識が十分でない、こういう現状を踏まえますと、やはり被害の実態あるいは問題の発生の状況を見まして私どもとして最大の努力をしながらこの種の被害あるいは犯罪の防止といったものに努める必要があろうかというふうに考えております。  したがいまして、まず第一には、金の取引というのが非常に複雑な契約内容になっており、しかも安易に契約した場合に予期せざる被害が容易に起こるものであるということを、関係者に十分周知するよう、従来もPRを行ってまいりましたが、今後もさらに一層この方面に力を入れたいと考えております。  第二には、金に関する関心というものは否定できませんので、現物取引市場、これは資源エネルギー庁を中心にいたしまして育成いたしまして、正しい金の現物取引が行われるような点に力を入れてまいりたいと考えております。
  143. 西中清

    西中委員 各省庁に寄せられる声というのは氷山の一角であると私は思います。特にこういう種類の損害、やはり他人様には余り聞かれたくないという心理がございますから、実際は大変な被害額に上っておるのではないかと私は思っております。  不正取引を摘発する市民団体として悪徳商法被害者対策委員会というのは御承知かと存じます。ここにもたくさん被害の届け出が行われておるわけでございまして、いま各省から御報告いただいた数字よりはるかに多い数字が出ておるわけであります。対策委員会に訴えがありましたのは、五十三年七月から五十五年一月末までに三百七十八件、十七億三千二百万円に上っております。このうち一番最近の本年一月だけの訴えを見てみましても実に九十五件になる。そして金額にいたしまして六億八千六百万円と過去の三分の一になっておるわけであります。いまも御努力をなさっておると聞きましたけれども、依然として高い水準でこういう被害者の数字が出ておるわけでございます。これは手紙による訴えによるものでございまして、実はこれ以外に電話によるものもあります。その数はこれの約二倍に上っておるわけでありますから、相当な被害者数となっておると見なければならないと思います。ですから、各省庁ダブりもあるかと存じますけれども、いまはっきりいたしておりますこれを足しても約六十億、そして人数にして一千八百六十五人というような、相談ないしは被害ということでございますけれども、件数が出てくるわけであります。そのわりに政府のこれに対する認識というものは非常に薄いのではないかということで、被害者の立場皆さん方は必死で運動を重ねておられますけれども、これは行政上の問題その他についていろいろと問題を含んでいるようでございます。  そこで、通産省に端的にお伺いしますけれども、仮に被害に遭った場合、また被害を受けた、こういう御相談もあったと思います。これに対してはどういう処理を行われましたか、お伺いをしたい。そして被害を与えている会社に対してはどのような処置をなさっておるか、お伺いをしたいと思います。
  144. 神谷和男

    ○神谷政府委員 私どもに相談のございます内容を内訳にいたしますと、先ほども触れましたが、約四分の一が相談ないし照会でございます。これにつきましては、私どものわかっておる限りの情報と金の延べ取引というものの持っておる問題点、性格といったものを十分御説明をいたしまして、慎重な対応を勧奨いたしておるというのが第一でございます。  第二に多い件数は、解約をしたいがなかなか解約ができないという種類のものでございまして、これにつきましては、契約に至った経緯あるいは現在の状況、先方の出方等々を十分お聞きしながら、ほとんどのケースがやはり契約の当事者としての能力を十分有する者がある程度の内容を知りながら契約を結んだものでございますので、民事的に慎重に処理することをお勧めをし、弁護士等と相談しながら解決することを勧奨いたしております。  第三に、犯罪的な要素が含まれると思うものに関しましては、これは警察当局に申し出るように私どもとしてはお勧めをしておる、こういう実態でございまして、犯罪関係は警察で処置をいたしていただいております。  それ以上は、当事者の問題として、解決の方法に関してのアドバイス、一般的な他の先例といったようなものを御相談に応じてお示しをしておる、こういうことでございます。ただ、老人その他非常に対応能力の乏しい者に関しましては、私ども消費者相談室あるいは通産局等が間に入って業者と和解等を行わせた事例もございます。
  145. 西中清

    西中委員 警察にというようなお話がございましたけれども、この種の件で起訴等が行われました事例は何件ぐらいあるのか、警察庁の方にお伺いします。
  146. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 昨年末来愛媛、広島、警視庁、それから福岡の四都県で五つの業者を詐欺の疑いで検挙しております。愛媛県を除きましては捜査中でございまして、現在まで八人がそれぞれ詐欺罪で起訴されております。
  147. 西中清

    西中委員 被害の実態から見ますと、ほとんどこれは無力に近い。なぜしっかりした取り締まりなりこういう被害を受けた方の保護ができないのか、ここが重大な問題だと思います。  この取引の問題については、かねてから、いわゆる商品取引所法の八条の問題で取り締まれるのではないかというように主張する向きも非常に多いわけでありますが、政府の見解はもう一つ明快でない。そのために対応がおくれておるという、そういう主張も多いわけでございます。すなわち、商品取引所法第八条には「何人も、先物取引をする商品市場に類似する施設を開設してはならない。」こうしてすべての商品について先物類似施設開設を禁じておるのではないか、こういう見方があるわけでありまして、昭和二十六年の内閣法制局もその旨の解釈をいたしております。しかし、その後政府部内でのいろいろな解釈のために、この八条は疑問が多いということで適用されておらないというのが今日の実情であります。  私は詳しく申すつもりはありませんけれども、過去に、これは五十二年の夏でありますけれども、貴二貿易という業者の当初の警察の方の対応という点からまいりますと、やはり八条でこの問題を扱っておりまして、商品取引所法第八条二項に違反したという疑いで逮捕しながら、最終的には詐欺による逮捕、そして送検という形で送られておるわけであります。御承知のとおりだと思います。一体何が問題なのか、要するに八条二項の解釈によって混乱が起こっていると言っても過言ではないと思います。  この議論はすでに何遍も行われておりますから、私はこの場でいたしません。しかし、これも大きなかかわり合いを持って今日の混乱の一端になっていることだけは間違いないと私は思うのです。そして、この問題を少なくともけりをつけなければならないように私は思いますけれども、法務省ないしは内閣法制局ですか、おいでになっておりましたら御答弁いただきたいと思うのです。
  148. 味村治

    ○味村政府委員 先生御指摘内閣法制局の意見が昭和二十五年に出ているわけでございます。そして、それによりますと、商品取引所法は政令で定める商品につきまして商品取引所を開設できるとなっているわけでございますが、それ以外の商品でございましても適用があるのだ、こういう説明、解釈になっているわけでございます。最近金取引が非常に問題になりまして、この件につきまして私どもといたしましても検討いたしたのでございますが、文理上の問題、あるいはこの商品取引所法八条に違反いたしますと罰則がかかるという罪刑法定主義といったような問題もございまして、現在のところ検討中でございまして、まだ結論に達しておりません。
  149. 西中清

    西中委員 現在検討中ということでございますけれども、早急の結論をお願いをいたしたいと思うわけでございます。  そうしますと、この八条でこの種の不正な取引に関連しての取り締まりができない。そうしますと、あとは残されているところは、詐欺罪によってこういう種類の被害者を守るといいますか、詐欺罪によって不正業者を摘発し、起訴する、こういうことになろうかと思います。しかし、先ほども議論をいたしておりました中に、御答弁にもありましたが、現在わずか六件というような状況であるということは、これは結局詐欺罪の立証というものが非常にめんどうであるというところに問題があるかと思います。人をだますプロはいてもだまされないプロというものはいないわけなんで、やはりこういう取引をやる業者というものはその点は十分心得て、詐欺罪に問われないようなやり方でやっていく。証拠を残さない。こういうところから、警察庁としても御努力をなさっていただいておるわけでございますけれども、御苦労の割りには検挙数が少ない。結局八条でもだめ、詐欺罪の適用で警察にお願いしてもだめ、一体これはどうしたらいいのだろうというのが被害者の立場であろうと思います。  したがって、現在のところはほとんどの人が泣き寝入りというのが実情で、いわばこれは、こうした八条の解釈の結論を今日まで出さずにおったという怠慢、また、行政上的確な手が打てないという、こういう問題が大きな原因になっていると思います。いわば私は人災だと思っているのです。私は、こういう立場にある皆さん方がどうして救われたらいいのか、主務担当の通産大臣、どのようなお考えか、お伺いしたいと思います。いま手がないのですよね。
  150. 神谷和男

    ○神谷政府委員 私どもといたしましては、先ほどの御答弁の繰り返しになるかもしれませんが、やはりPRを繰り返し繰り返し徹底的に行っていきたいというのが第一点でございます。  第二は、現物取引の市場を育成していくという点に力を注いでまいりたいというふうに考えておりまして、このため、資源エネルギー庁の指導のもとに現物金地金を取り扱う社団法人を設立いたしまして、いわゆる信用の持てる金地金取引業者の登録等を行い、これらの登録業者を通じての現物取引を、金に関心のある方はできるだけ活用していただくよう、これも指導をし、PRをしてまいりたい、このように考えております。
  151. 西中清

    西中委員 被害者の状況というものは大変にお気の毒な立場にあるわけでございまして、そういうものをつくったりPRをして防げるものならばそれでいいわけでございますけれども、現在の状況は、PRといっても一般の人の耳にはなかなか入らない。私はいろいろと問題を起こしておる会社の幾つかを手元にいま持っておりますけれども、その名前を見ると、何か一流企業の会社のように、要するに一流企業の社名にほぼ似せた形で名のっておるというケースが多いわけです。いま一月以降今日の状況を見ますと、特に島であるとか僻地であるとかいうそういう地域をねらいながら仕事をしておるようでございますから、そういうような一流企業の名前に類似をいたしております会社名のこういう業者がどんどん乗り込んでくるということになりますと、非常にこれはだまされやすいと言っても過言ではないと私は思います。  そこで、よく理解をしていただくために、これは六十歳の女性の方から寄せられた手紙でございますから、よく聞いていただきたいと思います。   私は広島のある会社の金取引の件に関しての被害者です。気付いた時はもう遅く、仲々はじめの約束とは違い、引き延され、次の金を要求され、毎日電話が二回、三回とかかってきました。その電話も今では使う事が出来ず、信用を失い、不自由な生活を続ける様になってしまいました。   初めは家族にも内緒でしたし、貸し金もありましたので、その返済をあてこんでうまい口に乗ってしまい、カネの戻りがないと知った時、仕方なく町のサラリーローンより借金しては間に合せておりましたが、利子が利子を生み、今では返済も苦しい状態となっております。止むを得ず、六十才を越した者は働くのも楽ではありませんが、パートとして働かざるを得なくなりました。   それでも、その日その日の生活費がなく、借りる人もなく、困り抜く毎日で、悔しくて悔しくてたまりません。   子供も親の負担が少なくなる様にと家を出てしまいました。仕事に行くのにも交通費が足らず、あわれな目に遭ってしまいました。毎日職場より家庭に帰るのが恐しく、借金の請求に来て待っていないかとビクビクしながら帰る毎日です。   どうか元金が戻るよう、一日も早くお力添え下さいませ。又、良い方法をお知らせ願えましたら此の上もない幸せかと存じます。よろしく、よろしく、よろしく、ご迷惑かと存じますが、呉々もお力をかして下さい。 こういう訴えが何通となく来ておるわけですが、いまこういう人たちを救済する手だては全くないと言っても過言ではないと私は思います。  通産大臣、先ほど御説明ありましたけれども日本金地金流通協会を今度つくって、そしてこの協会で売買をしていただくようにこれから指導していくのだというお話がありました。これはいろいろと事業の中には、金販売業の登録事業がございまして、この登録の対象となる業者、登録の要件、いろいろあると思いますが、その内容はいま聞こうと私思いません、ここに持っておりますから。そこで、私が思うのは、この協会によってこれから安心して安全な取引をしていただくということでございますけれども、よく考えると、この協会に加盟するにはそれなりのいろいろの登録の対象、要件、こういうものが決められておるわけでございまして、むしろ良心的な業者がこの協会に入ってくるということだと思います。ですから、いわゆる悪質業者というものはこの協会には入らないと思いますけれども、どうでしょうか。
  152. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま御指摘の社団法人日本金地金流通協会は、昨年の暮れに発足したわけでございまして、消費者の方々の金地金の健全な取引の促進という観点と、それから金地金の安定的な生産、流通、消費に寄与する、こういう観点で設立を認可したわけでございます。主たる業務の内容はいまお示しのように、登録の制度をこの協会で設けまして、現在十五社でこの協会を運営いたしておりますけれども、そこに厳重なる資格審査委員会を設けまして、登録の御希望のございました金販売業者の方々の資格を十分に審査いたしまして登録をしていただくということでございますので、私どもは大変消費者の立場からごらんいただきまして信頼のおける販売業者の方がこれによって登録をされるのではないか、こういうふうに期待しておるわけでございまして、こういった方々の登録ということを広く一般消費者の方々もよく御認識いただきまして、そういうところで取引をしていただくということを強く期待をしておる、こういう次第でございます。
  153. 西中清

    西中委員 ですから、私の質問は、良心的な業者はここに入ってくる、ここで皆さんどうか取引をしてくださいというPRをする、こういうことですよ。悪質な業者はどうするのかという問題が残っておると思うのです。要するに、この協会をつくって被害者を二度と出さない、こういう形にするためにはこの協会は十分なのかどうなのかをいまお聞きしておるのです。もう一度御答弁ください。
  154. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先生のアプローチは、恐らく悪質な業者は登録しないのではないか、登録するのはある程度良心的な者が登録の申請をするのであって、悪質な者はそもそも登録の申請をしないのではないか、こういう御指摘だろうと思います。そこで私どもは、先ほどお答え申し上げましたとおり、やはり国民の皆様方に本当に信頼のおける金の販売業者はこういう方々でございますよということを広く知っていただく、そういうことによりまして、間接的にそれ以外のところは余り御信用にならないようにという効果を期待しておりまして、そういう意味で良心的な方の登録を推し進める、こういう政策をとらしていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  155. 西中清

    西中委員 私は、認識としては非常になまぬるい、甘い認識ではないかと思っておりますが、こういう協会に入らない、要するにうまみがある限りはなくならないわけでして、そういう業者をどう締め出すか、また撲滅するかということが、これは非常に重要な問題だと思うのです。その点ではこれは役に立たないことだけはお認めになりますか。もう一遍御答弁ください。質問の焦点はそこなんです。
  156. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 役に立つ立たないという議論もございますけれども、先ほど来たびたび申し上げておりますとおりに、信頼の置ける業者の方をはっきりお示しすることによりまして、いわゆる信頼できない方々をまたはっきりさせていただく、こういうねらいでございまして、おっしゃるように、いわゆる信頼の置けない業者の方を何らかの方法で公示するというやり方の方法ではございませんので、むしろ私どもは、プラスの面を強調することによりましてマイナスの効果を防ぎたいという、先生の御指摘のとおり若干間接的な効果でございますので、その辺に問題があると言えば問題があるのではないか、こういう気がいたします。
  157. 西中清

    西中委員 少なくとも問題があるという御認識はいま一致いたしました。ですから、この施策は、まだ本当の意味では片肺飛行みたいなもので、良心的な人は一つの協会に集める、悪徳業者の方はほったらかし、こういう形であることはいま御認識になったところでございます。したがいまして、この問題については、いま発足したばかりでございますからすぐとは言わないけれども、すべての業者と言えばなんですけれども、いわゆる登録業法の採用、法律化、こういうことにして、やはりこの業務をする人はみんな登録をさせる、こういう形をとらなければ悪徳業者は締め出すことはできない、なくすことはできないんじゃないか、このように私は思います。その際に、登録拒否とか登録の取り消しとか、必要な罰則規定をつけるというような措置を講じていって、そして悪徳業者を金の取引から締め出す、こういうような形で対処されるのがいいのではないかというように私は考えるのです。片一方だけいい業者を集めて、ここがいいのですよと言いながら、もっといい話を持っていかれたら悪徳業者がどんどん仕事をする余地はまだまだある。その辺はプロですからいろいろと考える。ですから、これだけでは十分でないのですから、こういう措置をおとりになるようなお気持ちはないかどうか。  それから、時間も大分たちましたが、現にこの協会に加盟される皆さん方、ここは安心して取引できるんですよということならば、やはり一般の方にもよくわかるようにしていただきたいと思うのですね。たとえば、こういう協会の業者である、また登録店である、こういうような明確な表示、標識、こうしたものをつけて、皆さん方が安心できる、この店なら大丈夫だとよくわかるような措置をとるお気持ちはないか。  それから、国家公安委員長にお伺いをいたしますけれども、こうした善良な国民の財産を守る立場から、今後十分なる対策をお願いしたいと思うわけでございます。広島におきましては、暴力団がこれに絡んでいるというようなことも言われておるわけでございます。また、福岡県警では一月に署長会議におきまして、従来、警察は民事不介入の原則をとってきたが、今後、暴力団が絡んだ民事事件については積極的に県民の相談に乗り出す、こういう厳然たる方針を発表されておりますが、こういったことを全国にわたって徹底をしていただきたい。  それから、法務省にお願いをいたしておきますが、地検特捜部は経済犯の取り組みをしていただけるわけでございますから、ここでも徹底的に取り締まりをしていただきたいと思うのです。現時点においてはこれ以外に彼らの動きを封じる手はないということは事実でございますので、厳然たる決意をそれぞれこの前でお示しいただきたいと思います。
  158. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まず、私の方に御指摘がございました二点についてお答え申し上げたいと存じます。  その一つは、登録をした業者を国民の方々にはっきり認識せしめるような何らかの方法を講じたらどうか、こういう御指摘でございますが、これはまことにそのとおりだと思っておるわけでございまして、私どもも協会で登録をされた業者の方には、店頭もしくは店内にしかるべき物件を表示するということを強く指導してまいりたいと思います。  それから第二点目の先生の御指摘は、最初におっしゃいましたけれども、いわゆる悪徳業者を締め出すようなしかるべき法律的な裏づけを考えたらどうか、こういう御指摘に対しましては、先ほどお答え申し上げました社団法人がまだ発足したばかりでございまして、これは冒頭に先生がおっしゃいましたように、金の取引が昭和四十八年から個人所有が認められるようになったというように大変歴史が浅いということもございまして、それから流通取引が必ずしも確立されてないということもございますので、先ほどお答えしましたとおり、まず協会を通じまして健全なる市場の確立に努めていきたい。その間トラブルが起こる危険性もございますので、関係方面と十分連絡をとりながら対策を講じてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。なお、それでも問題が生じた場合につきましては、御指摘のような点を踏まえまして十分な検討をさせていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  159. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 広島で先般検挙いたしました事件の被疑者十一人のうちの一人が暴力団員であるという話は聞いております。ただ、いまのところ、暴力団がこの金の取引に介在してきたという情報は得ておりませんけれども、しかしながら、事暴力団につきましては今後とも厳正な態度で対処してまいりたいと思います。  なお、金の取引に関連しまして詐欺などの悪質な事犯が探知するところとなりましたら、直ちに鋭意捜査をしてまいる所存でございます。
  160. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねのような事案に関しましては、先ほど来のような御意見も十分考慮いたしまして、警察当局とも十分の連絡をとりながら、厳正に対処するように配慮してまいりたいと思います。
  161. 西中清

    西中委員 次は、国鉄と鉄建の問題に移りたいと思います。  最初に鉄建の問題をちょっとお聞きしておきたいと思います。鉄建の不正経理事件の捜査の進展状況についてお伺いをしたいと思います。  伝えられるところでは、「検察当局は、行政処分によって社会的制裁を受けていること、一部は弁済も進んでいることなども考慮し、刑事罰の適用を見送ることになったとみられる。」というようなことが言われているわけでございますけれども、本委員会におきまして一月三十一日、わが党の矢野書記長の質問に対しまして前田刑事局長さんは、一般的には虚偽公文書作成の犯罪が成立する可能性があると答弁をしておられます。この発言は、犯罪の立証が可能になったことを示唆したものと判断しておるわけですが、検察当局としては、刑事責任の追及は無理だと判断しておられるのかどうか、その辺はどうでしょうか。
  162. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどおっしゃいましたような新聞報道が一部にあったことは承知しておるわけでございますけれども、この案件につきましては、従来からも申し上げておりますように、検察当局におきまして鋭意捜査を継続中でございます。どのような状態にあるかということは捜査の内容でございますので、御説明は差し控えさせていただきたいわけでございますけれども、私ども聞いておりますところでは、いま申しましたように捜査が継続中でございまして、まだ結論を出すような状態にはなっていないというふうに承知しておるわけでございます。したがいまして、先ほど御引用のような新聞報道はあるはずがないと申しますか、私どもとしてはそのようなことになっていない、かように理解しております。
  163. 西中清

    西中委員 その他の大蔵省、環境庁等々ございましたけれども、そういった省庁の方はどういう状況であるか、お伺いしたいと思います。
  164. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 その点も前回申し上げましたように、鉄建公団のみならず数省庁のことが検査報告にも載っておるところでございますので、その辺も十分一連の問題として対処してまいりたい、かように考えております。
  165. 西中清

    西中委員 そうしますと、新聞で伝えられるように、「一部は弁済も進んでいることなども考慮」とか「行政処分によって社会的制裁を受けている」、こういうことでは刑事罰の適用を見送るなどというようなことはしない、こういうことでございますか。
  166. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、この事件につきましては現に捜査継続中でございますので、どのような進行になるかということは現在申し上げかねるわけでございますが、検察当局といたしましては十分いろいろな事情を勘案して適切に対処するもの、かように考えております。
  167. 西中清

    西中委員 この種の事件は集団ぐるみ、役所ぐるみで長期にわたっての不正であります。個人が単独で虚偽の公文書を作成したら、しばしば問題になり罰せられるケースが多いわけですが、上司からの命令で組織ぐるみでやった場合は罰せられないなどというようなことでは、私は本当に綱紀粛正にはならない、こういうように判断いたしております。ただすべきところはただす、追及すべき責任は筋を通して追及する、こういうことでなければ、国民の信頼を失うことは間違いないと私は思います。したがって、今後の捜査、またただいまのお言葉、もう一度私はその意味において、いま捜査中であるということでございますけれども、ここにありますような社会的制裁を受けていることなどというようなこと、また弁済が進んでいることなどで無罪放免、またこういう問題は不問に付す、今後こういうことのないように私は要望しておきたいと思いますが、御答弁願いたいと思います。
  168. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 同じようなお答えの繰り返しで恐縮でございますが、まだ現に捜査中のことでございますので、それ以上のことは申し上げかねるわけでございますが、いまおっしゃいましたようなことも一つの要素であることは事実であろうかと思いますが、その点で直ちに結論が出るというわけでもないと思います。
  169. 西中清

    西中委員 それでは次に、国鉄の問題に移りたいと存じますが、今回国会に国鉄の再建計画を含みました法案が提出されました。この国鉄の財政再建というものは非常に重大な政治課題でございます。ただ、私どもとしましては端的に申しまして、再建の考え方が、どうも財政数字のつじつまを合わせるというような印象が非常に強いわけでございます。  これは以下何点かでお伺いをするわけでございますけれども、いずれにしても、赤字の出る地方交通線を切る、これを廃止する。また人員削減といっても、三十五万人体制、四十二万五千から三十五万といっても、民間が再建に乗り出す場合には人員の縮小というのは即座に行われるということが多いわけでございますけれども、これは一人も首は切らないで三十五万人にするということでございます。ですから、国鉄がいま置かれました状況から判断をいたしますと、非常に温情があるというか甘いというか厳しさがないというか、こういった印象が非常に強いわけでございますけれども、国鉄自身の経営の努力というもの、企業努力というもの、こういうものを私は強く要求をしておきたいと思うわけでございます。     〔小宮山委員長代理退席、村田委員長代理着席〕  そこで、まず最初にお伺いをいたしますけれども、新聞報道によりますと、高木総裁は、地方交通線の廃止、この問題について言及をされておるのでございますが、輸送密度二千人以下の線区、これを数字を機械的に適用するわけじゃない、こういうようなお話があったように伝えられております。しかし一方では、四千キロは廃止するというような御発言でございますから、いままで輸送密度二千人の場合は四千キロ、こういう話でありましたけれども、輸送密度二千人以下でも切らないところがあるとすれば、これ以上の線区も対象になるのではないかというように考えざるを得ないわけでございます。要するに二千人を超える線区——二千人以下のところを機械的に切らないということになりますと、四千キロを整理するためにはそれ以上の線区も対象にしなきゃならないのじゃないか。これは運輸大臣もかつて新聞報道に、若干一時そういったニュアンスのお話も出ておりました。この地方交通線の廃止は、輸送密度二千人以下に限るのか、それ以上も含まれるのか、その点を御答弁をいただきたいと思います。
  170. 山地進

    ○山地政府委員 ただいま法案におきましては、どういうものを地方交通線にするか、どういうものを廃止する地方交通線にするかということは政令で定めることになっております。  かねがね私どもが内部で検討しておりましたのは、一日当たり一キロ当たり四千人以下のものにつきましては転換路線と考える、ただし、六十年度までに二千人未満のものを転換するということを閣議了解で決めております。そういうことで、二千人ということが四千キロあるわけでございます。四千キロのうちどれぐらいが——正確に言いますと四千キロを切っているわけでございますが、こういったものについて、転換が困難な路線というものが若干はあろうかと思うのでございます。そういうものは切る場合でも、閣議了解では密度二千人未満のもの四千キロと言っておりますので、それ以上をいま直ちに穴埋めといいますか、そういうものでふやすということは別に考えているわけではございません。
  171. 西中清

    西中委員 地方交通線の廃止ということは大変な問題でありまして、きょうは時間の関係質問は深くはいたしませんけれども、国鉄の財政再建の中でこれは大きな柱であることは間違いがないわけでございまして、私がいま危惧をいたしておりますのは、この廃止について、一体廃止したからといってこの地方交通線に関する赤字や、そして国鉄の赤字にどれほどの影響があるのかという点では疑問を持っているわけですね。  伝え聞くところでは、一キロ当たり三千万、そういった補助を出してこの事業廃止を推進するんだというようなお話もございます。それから現在ありますところの施設につきましては、やはりこれは整理をしなきゃならない。そのほか、路線の今後の使い方によって修理の方法はいろいろ変わるわけでございますけれども、そういったところに対する投資が相当かかるであろうと思われます。それから廃止をいたしますと今度は、道路にも必要ない、バスの路線にも必要ない線路、これはそのまま残されるのかどうなのか、撤去されるのかどうなのか、この辺で投資は相当変わってくるわけでございます。  こういう点で、地方交通線の廃止は、総合して投資として必要な金額はどれぐらいになるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  172. 山地進

    ○山地政府委員 在来線をバスに転換するとかあるいは第三セクターに転換する場合に、一キロ当たり三千万円の転換補償金を出す。この転換補償金のうち、第三セクターに残る場合は車両の購入、あるいはバスに転換する場合はバスの購入、こういう固定施設的なものもございますし、それから定期の差額補助というようなことでいく場合もございます。それからそのほかの関連道路のバスストップとかそういうものもございますので、単純に私どもが——四千キロといいますとその三千万円の四千倍でございますが、そのうち固定的なものにどれぐらい行くかというのは、今後のわれわれの方のそういう三千万円の使い方の研究とか、あるいは実際の地元の方の方々がどういうふうに使うかということによって大分違ってくるのだろうと思うのです。その場合に、先生の御指摘のような専用道路をつくるというような場合は、かなりな金が道路の方に投入されるということになろうかと思います。トータルとして幾らということは、いま積算のあれはございません。
  173. 西中清

    西中委員 路線が確定しておるわけじゃないので無理かと存じます。しかし、おおよその概算を立てて、これは国鉄の再建とは無関係じゃないわけでございますから、近いうちにお示しをいただきたいと思います。  それから私は、仮に第三セクターに転換した場合に、危惧をいたしておる問題が一つございます。それは、国鉄のように世帯が大きいと何とかなるのでしょうけれども、小規模の第三セクターということになりますと、もしも台風、水害等で大災害が起きて、そして路線が流失する、トンネルが崩落する、こういった場合に大変な復旧の投資が必要でございますけれども、とてもこれを維持することは困難になる、こういうケースを考えておるわけでございますが、いまこの点についてはもう一つ明快でございませんが、運輸省として何らかの手当てをお考えになっておるのかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
  174. 山地進

    ○山地政府委員 鉄道の場合に災害というのは、国鉄も私鉄も含めまして原則的にその企業が持つというのがたてまえでございます。ただし、先生の御指摘のように第三セクターができた場合、こういった第三セクターがどういうような形でできるか、どういうふうな育ち方をするかということで私はいろいろと変わってくるだろうと思うのです。まだ新しい分野でございますので確定的なことを予見できないわけでございますが、ただ一つ言えることは、私どもの方でいま第三セクターの欠損補助ということを考えております。第三セクターの場合には二分の一の補助をしたいというふうに考えておりますので、その場合に、災害が起きたときに、欠損というのはそのままその年に全部入るということではないかと思いますが、欠損補助の中である程度のものは消化していける。当面五年とかそういった年限で欠損補助を考えておるわけでございますから、その期間にそういったものは考えていけるし、将来こういった第三セクターがどういうふうな形で運営されていくかということによって、いまのような問題、確かに地元としては大問題でございますので、私どもとしても十分検討はしていきたい、かように考えております。
  175. 西中清

    西中委員 大災害が起こってその後廃線、こういう事態のないように対処をしていただきたいと思います。  そこで、今度は運賃の問題でございますけれども、申請が出ております。公共料金の値上げがメジロ押しでございまして、消費者物価の高騰はまことに憂慮すべき状況でありますが、国鉄運賃の値上げもその及ぼす影響というのは非常に大きいわけでございます。私は端的に申しまして、見送って据え置きのままでいかれるのがいいのではないか、またそう要求をしたいわけでございます。それは、いま申し上げました物価高騰のこうした背景からさらにインフレを助長する一面と、同時に、国鉄がいま財政再建というものに乗り出しておるわけでございますから、何としても六十年には採算を合わせる、こういう立場からいくならば、ただでさえいま国鉄運賃が上昇してお客さんの国鉄離れということが言われておる。そして、ここで大変な値上げをすると、なお一層国鉄離れが進行するおそれが非常に強いわけでございます。ですから、単に財政再建のためにつじつまを合わせるということで値上げをする、そういう発想は乗客の減少を来すという心配が一面ではあるわけですから、上げればいいというものではないと思う。  したがいまして、いま時期的に申しましても非常に悪いわけでございますから、私どもは共同の修正案の中にも、運賃につきましてはぜひ据え置くような方向で、こういう要求をいたしておるわけでございますが、運輸大臣はどういう見解をお持ちか、お答えをいただきたいと思います。
  176. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 五十五年度の計画において、国から財政援助等を受けまして国鉄のつじつまを合わせるように計画しておるわけであります。運賃の改定につきましてはできるだけ差し控えたいと思っておるわけでありますけれども財政再建を考えまして、物価上昇率に合わせる程度で、できるだけ小範囲で、法定限度は二千二百億ぐらいでございますが、その半額程度の値上げにとどめたいという国鉄からの申請がございました。内容を検討いたしますと、初乗りの運賃の据え置きとか、新幹線の据え置きとか、いろいろ細かく配慮し、十分経費の節減を考えながら出してきたようでございますので、現在運輸審議会にかけまして、運輸審議会の答申を待って決定をいたしたいと思っております。
  177. 西中清

    西中委員 運賃につきましては、再建計画にも非常に関係が深いわけでございますけれども、六十年まで毎年消費者物価の上昇率程度の値上げをするということでございますけれども、本気でこれを考えておられるのかどうか。やはり国鉄には公共施設というか、国民の足という役割りもあるわけでございますし、先ほどから言っているように、国鉄離れというものを助長する一方だろうと私は思います。ですから、これは収入減につながるという非常に危険な発想ではなかろうかと思うわけであります。  大体毎年消費者物価の上昇程度の値上げをするということ、これは六十年までその方向でやるつもりですかどうですか、確認をしておきたいと思います。
  178. 山地進

    ○山地政府委員 昨年暮れの十二月二十九日の国鉄再建についてという閣議了解におきまして、消費者物価の動向に配意しつつ国鉄運賃を上げていきたい、こういうことを決めております。消費者物価程度ということにつきましては、消費者物価が上がれば他の交通機関も長い目で見ると上がっていくだろうということも一つ考えに入っているわけでございまして、国鉄の競争力の減殺には直ちにはつながらないだろうということも含めて消費者物価程度を上げる。この消費者物価程度上げるというのは、先ほど私ども大臣の申し上げたとおり、限度額から見ればかなり下回ってやっていく、これは、国鉄離れを防ぎながら財政の再建に貢献していきたいという考えから、そういうふうに決まっているわけでございます。
  179. 西中清

    西中委員 関西とか東京都の近郊私鉄を見ましても、いま国鉄は倍くらいの値段になっておりますね。これでどんどんまだ上げるということになっても、本当に乗客が国鉄を離れないというふうに判断しておられるのかどうか。私は六十年までの財政再建の上でこれは大きな問題の一つであると考えておるのです。たとえば五・五程度の運賃値上げを連続して六十年までやっていけば、運賃としては大体四割アップ、こういうことになろうかと思います。  それから、この運賃改定に加えまして地方交通線の運賃、これには割り増し運賃を導入する条項が示されております。その割り増し率でありますけれども、普通料金の大体一・五倍、このようなことを言われておるわけでございますけれども、これも運賃改定とあわせて実施をされる予定かどうか。それから、こういう値上げをしていくとどれくらいになるかと試算いたしますと、大体現在の倍くらいになってしまうのではないかと思います。ですから、割り増し運賃を採用する地域は六十年でいまの運賃が倍になる、こういう状況でありますから、おおむね過疎地帯が多いということでございますから、これは住民に対する大変な負担となりますし、地域格差という点でも拡大を助長するという方向に進んでいく。ですから、割り増し運賃の導入ということもこれまた非常に大きな問題だ。  いま私が申し上げましたこと、大体数字的にもこういうような形で実施されるのかどうか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  180. 高木文雄

    ○高木説明員 運賃の立て方をどういうふうにしたらよろしいかということは、私どもにとりまして非常に基本的な問題であると考えております。ただ、明治、大正、昭和と続いてまいりました全国均一運賃というものについては、もはやこれを維持でき得る状態ではなくなってきたのではないかという基本認識を持っております。  ただいまお示しいただきましたように、東京、大阪周辺の私鉄で申しますと、現に私どもよりも大分安い運賃で同じような距離の運送をやっておる。一方、地方に参りますと、私どもよりもはるかに高い運賃で私鉄なり私バスなりを経営しておられるという状況からいいますと、どうも均一運賃というのはいささか無理が来たのではないかというふうに私どもは考えております。しかしながら、これを地域別に差異を設けますということは、ある意味でまた非常に大きな問題でございます。したがいまして、今回の法律の中におきましても、そうした制度をとるということをうたってあるわけでございますけれども、その点を国会の御審議の過程で十分議論をしていただきたい、国民の総意がどの付近にあるかということをよく議論していただいた上でないと、私ども勝手にいろいろなことをしてはいけないわけでございますから、どうかひとつこの点も御論議をしていただきたいというふうに考えております。  なおまた、特別運賃の対象となるべき地域、営業キロの長さがどのくらいであるべきかとか、あるいはまたその差がどのくらいまでは許容されるかというような問題もあろうかと存じます。これらすべてにつきまして、今後とも広く各界の御意見を承った上で判断をしなければならぬと私ども思っておりますし、それに先立ちまして、やはり国会での御論議をとっくり承りたいというのが私どもの態度でございます。
  181. 西中清

    西中委員 一・五倍にこだわらないというように受け取ってよろしいでしょうか。少なくともこういう問題は非常に過疎地帯を促進するという危険性も含んでおります。後日の論議になにしたいと思いますけれども、十分の配慮をいただきたいと思います。  そこで、通学定期の割引率、この問題について確認をしておきたいと思います。  国鉄では、通学定期の平均割引率は現行七八・八%、今回これを三%修正しまして七五・八%ということにされるようでございます。このために通学定期は運賃改定のアップと重なりまして、結局一八・九%もの値上げということになるわけでございます。これは大変な父母の教育費負担増大ということにつながってくるわけでございまして、文教政策上も非常に問題が多い、こういうように私は考えておるわけですが、ここで、財政再建の上でこの通学定期の平均割引率はどの程度まで下げていこうとお考えになっているのか、まず確認をしておきたいと思います。
  182. 高木文雄

    ○高木説明員 この問題は非常にむずかしい問題でございますし、また教育政策あるいは教育費の問題と私どもの経営の問題とのぶつかり合う点でございます。この点については、私どもがこれまた勝手に決めるわけにはいかないわけでございますので、前々から政府レベルで御検討いただきたいということをお願いしておったわけでございますけれども、おかげさまで今回初めてそれを政府レベルで検討しようということで予算上の措置もとられたわけでございますので、いろいろな角度から、いろいろなお立場から議論をしていただけると思っております。  私どもといたしましては現在のところ、いま数字をお示しになりましたように、七八・八の割引率ではいかにも割引率として大き過ぎる、もう少し何とか、学生さんあるいはその家計のお立場もわかりますけれども、御負担いただきたいという気持ちは持っておりますが、さてそれを何%ぐらいまでならいいかなということについては、皆さんのいろんな立場の方の間の御議論の上でないといけませんので、私どもとして勝手にそういう水準を目安をつけるのはいけないと思います。ただ現行の七八・八に対しまして、まあ三%ぐらい上げさせていただくということについてはお許しいただけるのではないかという気持ちで申請をいたした次第でございます。
  183. 西中清

    西中委員 私どもの聞いておるところでは、国鉄としては六〇%まで持っていきたいというような御計画であるというふうに聞いておるのですが、そういう事実はございませんか。
  184. 高木文雄

    ○高木説明員 いろいろな議論がございまして、ただいまお示しのような数字のこともあるいは議論の中であったかもしれません。しかし、これはうちの中だけの問題でございまして、他の、つまりコストの関係とかあるいは普通の切符と定期券の場合のコストの差とかいろんなことから機械的に計算すると、いろんな数字が出ないわけではありませんけれども、しかし、こうした問題はそういうことではなくて、父兄負担、家計負担、教育費問題といったようなことを御議論いただいて、そちらからどこまでが負担可能なものかという御議論を賜った上でないと、水準がいかにあるべきやということは出てこないのではないかというふうに思っております。
  185. 西中清

    西中委員 議論は議論として行いますけれども、国鉄の運賃は法定緩和の上で行われておるわけでございますから、今日までいろいろ議論は行われても、この財政再建の大義名分のもとでこれを強行されるのじゃないかということを私たちは危惧をしておる。ですから、先ほども毎年運賃を改定する、それから通学定期の割引率を毎年どんどんと下げていく、こういう事態になりますと、仮にいま国鉄で言われているような六〇%まで行くということになりますと、これだけで通学定期は現行の三倍になってしまう、こういうことも背景としてあるわけでございます。  文部大臣、御答弁をお願いしたいのですけれども、一体通学定期の割引率については、やはり文教政策の一環として今日までとられてきた制度でございます。そういう六〇%という議論が現に行われているわけでございますけれども、非常に問題もあるわけでございますから、どの程度の割引率がいいとお考えになっておるのか、それが一つ。それから今回の値上げ、これは財政再建に絡んでおるわけでございますので、当然文部省としては文教政策上この値上げについてはそれなりの御相談を受けられたり、またいろいろと御要求もなさったのではないかと思いますけれども、その点はいかがでございますか。
  186. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  先ほどお話がございましたように、いまの申請どおりでありますと一八・九%の値上がりになるわけであります。これはいま大学生の定期を使っておる者を平均して考えますと、月五百二十円の増加ということになるわけでございます。文部省といたしましては、こういうふうに国鉄の財政で再建に非常に努力しておられることは重々承知をいたしておりますし、こういう状況である程度の受益者負担がかかるのもやむを得ぬということも全然了解せぬわけではございません。了解できるのでございますけれども、先ほど来御指摘もございますように、学生生徒のいまの状況から考えまして、相当な負担が急にかかるということに相なると思います。したがいまして、これをどういうふうに最終的に決めていただくかということについて、運輸省に対しましては十分に学生の現状あるいは父兄負担等の現状も考えて慎重にひとつ検討していただきたい、こういうことで強く要望いたしたい覚悟でおるわけでございます。
  187. 西中清

    西中委員 とりわけ地方交通線の通学生の皆さん、これは非常に問題が多いと思います。運賃は毎年消費者物価程度上がる、それから地方交通線には割り増し料金を導入する、さらにまた通学定期の割引率をどんどん下げていく、この三つが重なりますと、現行の何倍もの負担ということになるわけでございますから、こういうことを本当に強行されるのかどうなのか、もう一度御答弁をいただき、運賃の値上げについては、財政再建の観点だけではなくて、これは国民生活ということも十分配慮をして考え直していただきたいと思うのですが、大臣並びに総裁の御答弁をいただきたいと思います。
  188. 高木文雄

    ○高木説明員 御指摘のような問題があるわけでございます。一般的にやはり運賃を改定さしていただかなければならぬ。それから私どもの考えておりますような形をとりますと、地域によって特別運賃ということがある。さらに学生割引の是正ということがある。そうすると、いわばトリプルに影響が来るということは御指摘のとおりでございまして、それをそのまま、そういうことがあってはぐあいが悪いなということは私どもも考えております。  ただ、ちょっと申し上げさしていただきたいのは、御質問の中で何倍にも上がるというお話でございましたが、実は現在のところ、地方交通線の地域におきましては、学生さんの負担は他の交通手段に比べて二割あるいは三割ぐらいの低い負担になっております。したがいまして、何倍にも上がるということ、何倍だったら大変でございますけれども、仮に二倍なら二倍と考えましても、まだまだ現在の地方の交通費よりははるかに安い水準であるわけでございます。どうかひとつ具体的な事案に基づいてどういうふうに調整したらいいかということについて、他の運賃との関係も比較しながら、いろいろ御検討を政府レベルでお願いをいたしたい、そういうことも含めて、今度できます調査会、研究会で御検討いただきたいというふうに思っております。しかし、いまの点は私ども非常に悩んでおる点でございまして、決して、そう安易にいろいろいわば乱暴な措置をとるということはぜひ避けなければならぬと思っておることを申し添えておきます。
  189. 西中清

    西中委員 時間も迫ってまいりましたので、私はもう一点だけ申し述べておきたいと思います。  それは、国鉄の財政再建と絡みましてつじつまを合わすというようなことを私先ほど申しましたが、その一つの要因としまして私が考えておるのは、国鉄が抱えております土木構造物、これは非常に疲弊をして、また年代がたっておりまして、これからますますこの傾向が強まる、こういうことでございます。  時間がありませんから、私の方で国鉄内部の資料としてここにございますもので読み上げますが、トンネルでいきますと全体が三千五百カ所、そのうち古い構造のものが九百五十、二七%、四十年以上のものが四一%、千五百カ所、六十年以上が四百カ所、旧式構造は四十年以上が九百カ所、六十年以上が三百九十、こういう状況でございます。  また、橋げたで参りますと四万六千連あって、そのうち旧式構造が一万三千連、全体のうち四十年以上のものが四一%、一万九千。それから橋台、橋脚でいきますと十三万三千カ所全国でございますが、旧式構造が三万三千。あと細かいことを省きますが、もうどうしても取りかえなければならないといいますか旧式構造物がいま申し上げたような数字になっておりますし、同時にまた、当面直ちに措置をしなければならぬ危険度、国鉄ではAAとおっしゃっているようでございますが、トンネルは十五カ所、橋梁は四十五、それから早晩運転を脅かす、異常な外力の作用のときには危険であり、早急に措置をしなければならないいわゆる国鉄でおっしゃっているA1、トンネルが二百五十、橋梁は千六百、そして、将来運転を脅かす状態になるであろう、必要な時期に処置をしなければならぬA2、トンネルは六百カ所、橋梁は一万八千、大体こういうような数字が出ておるわけでございます。現に、いま国鉄が徐行運転をしなければならない地域が二百五十カ所、そして重点警備個所は五千六百四十四カ所、こういう数字をいただいておりますが、総裁、大変な疲弊の状態であるということはお認めになりますでしょうか。
  190. 高木文雄

    ○高木説明員 それぞれお示しいただきました数字はお示しのとおりでありまして、老朽化が大変進んでおります。現在は毎年一兆円を超える設備投資のお金をいただいておりますけれども、たまたま東北新幹線等の工事が最盛期に至っておりますので、なかなか老朽取りかえの方に回る予算の余裕がない、窮屈であるという現状でございまして、しかし何分、安全が私どもの仕事の最大のことでございますから、細かく気を使ってとりあえずのことだけを毎日繰り返してやっております。
  191. 西中清

    西中委員 この財政再建の中では、投資規模というものは現状程度で抑えていくということですから、毎年一兆円程度というようなことになろうかと思います。そうしますと、いま総裁がおっしゃったように十分な手当てができない、これが本当のところではないかと思います。その点については議論を省略いたしますけれども、現に安全のためにこうした施設をつくりかえたり直したりする投資というものは、技術的な面からお聞きをいたしておりますと、年間五千億を使ってもまだまだ私鉄には及ばないというようなお話も聞いておるわけでございまして、これが一兆円程度で東北新幹線の建設から何から何までやるというようなことであれば、これは勢いこの安全対策のための投資というものが非常に削られる、そういう状態を続けて、ただでさえいま老朽しておるこの国鉄の施設が一層老朽化が激しいわけでございます。しかし、この費用につきましては、制度上補助という面からまいりますと、国鉄は自前でこれを処理しなければならないわけでございます。その点で性格的に申しますと、年金の問題であるとか国鉄の過去債務の問題と同じように、これらは将来大きな負担としてはね返ってくる。いまのうちに直せば安く済むのも非常に負担がかかる、こういう関係にあると思います。したがいまして、こういった点については、国鉄が安全を見越して投資をうんとすればそれだけ累積赤字がふえる、こういうことでございまして、もはや国鉄の自力でこの負担に耐え切れないのじゃないかというふうに私は判断をいたしておるのでございます。その点、総裁いかがお考えでしょうか。
  192. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいまもお答えいたしましたように、現状は非常に心配でございます。ただ、ただいま御審議いただいております五十五年度、それから五十六年度を経過いたしますと、東北新幹線のためのもろもろの支出は一挙に減ってまいりますので、その際、ぜひいまの程度の毎年の枠でやれということであれば、それによって多少楽になる部分を老朽取りかえの方につぎ込んでやってみたい。その結果、採算的にどうなるかということについては、もう少しやってみた上で考えてみたい。いまのところは、借入金でやらしていただいてでも老朽取りかえを進めていきたいというふうに考えております。
  193. 西中清

    西中委員 この点について、大蔵大臣、自前の財政でやるということはまことに困難な状況であるし、その範囲でやっておれば非常に憂慮すべき状態であると思います。今後これについて大蔵省として何らかの対応をおとりいただけるかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  194. 高木文雄

    ○高木説明員 ちょっと細かいことになりますので私から御答弁申し上げますが、現在の再建計画では、六十年になれば単年度で収支を均衡するということになっておりますけれども、そのとおりいきますれば、六十年度まで至りませんでも、五十七年とか五十八年とかいう段階で、少なくとも償却前は赤字でないという状態まで持っていけると思いますので、その状態で借入金でいろいろ工事をやるということが採算的にどういうことになるかということをもう一遍念査をいたしたいと思っております。  したがって、私どもまだ運輸省なり大蔵省なりにはそうした老朽取りかえ部分をもう少し別の形の金でやらしてもらいたいということは申し出ておらないわけでございまして、この問題はもう一、二年待っていただいて、現実に大量に取りかえ工事をやるようになりましたときに、採算その他から見て、場合によってはまたお願いしなければならないかもしれませんが、現在は借入金システムでもやっていけるという考え方を持っております。
  195. 西中清

    西中委員 外務大臣せっかくおいでいただきましたので、最後でございますけれども伺いをしておきたいと思います。  アフガン事件から大変国際緊張が高まっておりますけれども、短期的、長期的な展望といいますか、位置づけからいきまして、どうなるか、現在のところは必ずしも明確ではないというふうに実は私は判断をいたしております。したがいまして、これからの対応というものは一歩誤るとわが国にとっても非常に問題が生じてくるのではないか、いま必要なのは冷静な対応ではないかというように考えておるわけでございます。その意味で対ソ経済制裁、これはもう非常に問題があるのじゃないかというように私は実は心配をいたしておるわけでございます。  そこで、端的にお伺いをいたしますけれども、これはアメリカが対ソ制裁を続けるまで日本も同調して行われるのかどうか。それから日ソ経済協力プロジェクト、これは進行中のものがいま現在五つございますが、これは対ソ経済制裁の対象とするのかどうか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  196. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもの方では対ソ経済制裁という言葉を使わないことにいたしておりますが、従来不快感の表明とか対ソ措置というような表現をいたしておるわけでございます。ただ、アフガンに対するソ連の軍事介入ということは、国際法に照らしましても、国際平和から考えましても、どうしても納得できないことでございまして、これは世界の全体の世論でもございますし、国連の緊急総会等にも示されておるわけでございまして、やはりこういう他国への軍事介入が高いものにつくということ、それからそういうことを通じて、軍事介入をさらに拡大していくというようなことは何としても防がなければならないという点もございますので、そういう意味で、世界の国々の動きを慎重に見ながら対策を講じていくという方針で対処いたしておるわけでございます。  具体的には、総理の施政方針演説の中に言っております、当面ココムによります高技術の製品ないし技術の輸出の抑制という問題、それから対ソ信用の問題につきましてはいろいろな影響につきまして目下政府内部でも検討しておる段階で、まだこれについての政府の政策は明確には出しておらないわけでございます。輸出に直接関連したその場その場の延べ払い的なものはそのように処置しておりますけれども、将来の大規模な新しいクレジットという問題をどうするか、目下検討中の段階でございます。
  197. 西中清

    西中委員 時間も参りました。最後にもう一問だけ。  昨年九月の日ソ経済合同会議で三つのプロジェクトを決められました。サハリン紙パルプ工場の改修四億ドル、ボストーチヌイ港の拡張二億ドル、第三次極東森林資源開発六億ドル、これは計画中でありますけれども、これは中止をされるようにお考えなのかどうか。それからヤクート天然ガスは日米ソの合同によりますところのプロジェクトでありますが、アメリカからこれについては経済制裁の対象にするというようなお話があったのでしょうか、なかったのでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。
  198. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 最初にお述べになりましたプロジェクトにつきましては、まだ政府の方針を決定いたしておりません。最後のヤクートの問題については政府委員の方から答弁させたいと思います。
  199. 武藤利昭

    武藤政府委員 シベリア開発プロジェクト、いろいろあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても目下関係業界の方で慎重に御検討中の段階でございまして、まだ政府レベルまでは上がっていないということでございます。
  200. 西中清

    西中委員 終わります。
  201. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて西中君の質疑は終了いたしました。  次に、八木昇君。
  202. 八木昇

    ○八木委員 予定しておりました質問の順序を変えまして、最初にいわゆる奇形ザルの問題について若干質問をいたしたいと思います。  すでに大臣御承知だと思いますけれども、数年前からいわゆる奇形ザルという問題が出ておるわけでございます。それで、特に手足の指あるいは手のひら全部を含めてこれがないという奇形ザルが全国各地で出ている。最近、新聞でも大きく報道をされたのですが、これは朝日新聞の記事でございます。去年の九月の記事で、これは非常に大きな記事として出されております。それからまたテレビでも、本年に入りまして、一月六日TBSテレビの日曜の特集番組でも大きく取り上げておったのでございますが、最近の志賀高原の地獄谷野猿公苑における実情について申し上げますと、昭和四十一年ごろから奇形ザルが生まれ始めた。これは開苑三年目でございます。昭和四十七年になりますと、ここで十三匹生まれたサルのうち六匹が奇形であった。ほかにも、たとえば大分の高崎山とか淡路島のモンキーセンターなど、全国では十三カ所、十五グループにこの現象が出ておるということでございます。  私どもの党の方で地獄谷の方に実は事情聴取、調査に参ったのですけれども、現地の方では、長期間にわたる実験の結果、輸入大豆が原因と推定される、こう考える以外にないと言っておるわけでございます。もしそうだとするならば、かつてサリドマイドとかキノホルムという悲劇があったわけでありますけれども、これはネズミとかウサギに対する実験では現象が出なかったのですけれども、サルで明瞭にその実験の結果があらわれて確証されたということもあるわけでございます。それで、もしそうだとするならば、これは重大な問題だと思います。  厚生省としては当然実情調査、あるいは少なくとも事情聴取等をなされたと思うのですが、いかがでしょうか。
  203. 野呂恭一

    野呂国務大臣 いまの御指摘になられますサルの奇形が輸入大豆が原因ではないかというふうなことでございますが、現在のところそれを断定するデータは得られていないということでございます。しかし、サルの奇形が発生したその原因究明につきましては、やはり関係方面のデータを十分注意をしながらこれに対して対応していかなければならない問題であると考えております。  先ほど御指摘の長野県志賀高原の地獄谷の温泉ザルの奇形については、その事実を新聞等を通しまして承知をいたしております。
  204. 八木昇

    ○八木委員 厚生省として新聞で承知しておる程度で、一度も事情を聴取したり等もしていないということでございます。その点は私は非常に遺憾なことだと考えるのであります。  これは現地の方で借りてきました写真ですけれども、後でごらんいただければ幸いなんですが、そこで、調査の結果の模様を申し上げてみますると、どう考えても遺伝的な原因ではないと考えられる。それは実際、専門家が見るともう顔つきやその他で系統もずっとわかるそうですけれども、それは別としまして、昭和四十七年には十三匹生まれたうち約半数の六匹に異常があらわれた。     〔村田委員長代理退席、小此木委員長代理着席〕 そこで、リンゴとか小麦とか食べさせていたんだけれども、それぞれについて実験をして、そうして大豆をいわゆる雌ザルの妊娠初期に与えることをやめた。秋だそうでございますけれども、そうしたら、以後今日まで一匹も奇形ザルは生まれていないそうです。  それからまた、ウィルス等の病原体が原因でもないということも明らかだというのは、この地獄谷には七グループのサルの集団があって、そのうちの二グープについてのみえづけをやっている。ところが、雄ザルというのは、自分の所属グループに終始とどまってはいないそうでございまして、他グループを渡り歩くのだそうであります。それで、他グループには全く奇形ザルというのが生まれていないそうであります。したがって、これはウィルス等の病原体が原因ではないということもほぼ断定できる。  結局、食物が原因と考えるほかはないということでございまして、地獄谷においてはリンゴと小麦と、それから大豆しか与えていないそうでありますから、そうすると、考えられる原因としては、残留農薬か、あるいは貯蔵、輸送時の防虫剤か、有毒カビか、発酵防止剤か、大豆自体に含まれる何らかの物質か、そしてまた、その相互が何か反応し合ったものか、あるいは生で大豆を与えておるそうでございますから、人間が食べる場合にはほとんどこれを生で食べることはないわけですから、そういうふうに加熱等をしますると原因が除去できるものであるのか、そこいら辺に原因を求める以外にないと現地の方ではほとんど断定的に考えておるわけです。  そこで、きょうはもう時間の関係で十分少々ということでございますから、きょうお伺いをしておきたい点は、当然、厚生省としては、輸入食糧については食品衛生監視員というのが各港に配置をされてやっておられるわけですけれども、聞くところによりますと、その監視員というのは輸入食物のカビ、それも肉眼で見る程度だそうでございまして、あるいは腐敗、あるいは添加物等の監視であって、農薬とか防虫剤等については、輸出する先方の国の言うことを信用する以外にないので、日本で禁止しておるような農薬等は使っていないということを前提にして、一々チェックはしていないというふうに聞いておるのですが、そうであるかどうか。いまの点が一点ですね。  それから、これはかつて厚生省でもちょっと研究をされたそうでございますけれども、農薬を使った作物は必ず一定量の農薬を含有しておるそうですね、程度の差こそあれ、あるいは残留農薬というのも部分的にあるでしょうが。そういうことでありまして、この際、ひとつ徹底的にその辺を調査しあるいは研究するという用意があるかどうか。それも国立衛生試験所の手に負えないかもしれない。いまの野猿公苑も手に負えないというのは、野猿公苑という性格からすれば、もう一度全部大豆を与えてみる、そして再び奇形ザルが発生するかというような実験をどうもするわけにいかぬ。とするならば、この奇形というものを知るためには相当多数のサルに実験を試みてみなければいけないということになりましょうし、何らかの専門家あるいはそういうところに委託してでもこれをおやりになる考えがあるかどうか。きょうはその点だけをお聞きしておきたい。
  205. 野呂恭一

    野呂国務大臣 まず第一点でございますが、奇形ザルの科学的な究明というものは、御指摘にもなられたように大変むずかしい面もあろうかと思われますが、厚生省としてはせっかくの御指摘でございますし、農林水産省の関係研究機関とも連絡をとりまして、そういう科学的な究明の方法が具体的にどうすることにおいて得られるか、そういうことについても検討さしていただきたいということを申し上げたいと思います。  もう一つ、第二点の食品に対しまする輸入監視の問題でございますが、御承知のとおり、食品を輸入する場合におきましては食品衛生法第十六条の規定に基づきまして厚生大臣に届け出をしなければならない、こういうことでございます。厚生省におきましては、全国に十六カ所の港あるいは空港の検査所におきまして、六十名の食品衛生監視員を配置いたしてこの届け出の業務をいたしておるわけでございます。食品衛生法第十七条の規定に基づきまして、必要の場合抜き取り検査もやっておりますが、この検査が肉眼等で十分ではない、チェックが徹底してないではないかというような御心配をいただいておるのでございますが、この食品の輸入の際の検査、こういうものに対しても万全を期すような工夫を図るように今後処理してまいりたいと考えております。
  206. 八木昇

    ○八木委員 もう一問だけで終わります。  そこで、農林省は農林省で、まだ直接やっているわけではないのですけれども、外郭団体でありますところの残留農薬研究所というのがあるのです。そこですでにこの問題について研究をやるということを決定をしておる。事実私はどういうふうに考えているかと問い合わせました。そうしたらば、当面数種類の農薬に限って残留を見る試験を行う予定をしておりますというお答えでございました。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、ここで約束をしてもらえませんか。厚生省としてはみずからの衛生試験所、あるいは場合によっては他にも委託して試験研究をやるということを約束できませんか。
  207. 野呂恭一

    野呂国務大臣 農薬を使用いたしました場合に、それが食品に残留しておるかどうか、いろいろそういう研究についてすでに農林省の関係機関がこれを取り上げてやろうということでございますから、そういうことでありますれば厚生省といたしましても十分連絡をとりながら、厚生省としてできる範囲内のことにおいては積極的に研究をいたしてまいりたいと考えております。
  208. 八木昇

    ○八木委員 それじゃ電気料金問題に移りますので、厚生大臣は結構でございます。  これから電力料金の問題について若干伺いたいのでありますが、今度の電力八社平均六四・四%という料金値上げ申請、これは大変なものでございます。しかもいまの情勢では、このままではこれにとどまらないのではないか。来年もまた値上げ、再来年もという状態が予測されるという大変な事態であると私は思うのであります。それは単に油の値上げのみにとどまらず、たとえば設備費等も昭和五十三年度に比べて五十五年度は五割も増加するということが言われておる、そういう条件等が重なっておるわけでございます。そこで、これはもういまや、当面今度の電気料金値上げをどうするかという問題にとどまらず、行政の根本姿勢が問われておると私は考えるのであります。というのは、たとえば負荷率の非常な低下と非能率化ということは言われて久しいのですが、東京電力や関西電力はいまや五〇%という負荷率である。それで一年を通して平均五割の発電所が遊んでおるということであります。これがもし本州が電力会社が一本であって、電力を徹底的に融通し合うということであるとするならば、もっと負荷率は上がると思う。あるいはそういう状況に対しての行政的な消費側についての指導等もほとんどなされなかったと思うのです。そういうことであるならば、もう電気事業の形態論にまでやはり及んでくるとすら思うわけでございます。何も全国十社でなければならぬということはないのでありまして、仮にそれを全国一社公社化しなくても、三社が合理的ではないか、四社が合理的ではないかということにもなろうかと思うのです。  私は最初に一点だけ伺いたいのですが、昭和四十八年秋のあの第一次石油ショックの後に大幅料金値上げをした。その際に政府筋も各電力会社も、脱石油ということへの努力ということを内外に宣言をしたわけです。ところが事実はどうでございますか。それから数年経過しましたが、脱石油への努力がなされたかどうか。全く漫然と従来どおりで推移してきたと私は言わざるを得ないのであります。いまや御承知のように石炭をたいておる電力会社は北海道とあと中国と九州が、それこそ一握りだけである。あとは全部石油とLNGである。LNGも価格の点から言えば石油に連動するわけでありますから。  そこで私は、ここへ持っておりますのは九州電力の火力発電所の燃料消費量の割合を示しておる表でありますけれども昭和四十五年は全部の火力発電所の中の六三%が重油と原油をたいていた。石炭が三七%ですね。ところが今日はどうであるかというと、確かにLNGが一六%になっておりますけれども、石油は八三%に増大し、石炭はたった一%でしょう。そして日本の主要なる電力会社はオール石油もしくはLNG。九州電力は一%でもたいているからまだいい方です。そういう点についての反省がないかどうか。そうして昭和五十年から昭和五十四年度までの間に石油とLNGがそれぞれ何%消費量が比較してふえたか、そしてふえた量を言ってくれませんか。これは局長でも結構ですから。
  209. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 九電力合計の数字を申し上げたいと存じますが、昭和四十九年度の石油消費量、これは重油を含めまして石油に換算した数字でございますけれども、四千九百二十六万キロリッターでございます。それから五十年度が四千九百九十六万キロリッター、五十一年度が五千三百五十六万キロリッター、五十二年度が五千七百八十九万キロリッター、五十三年度が五千四百十五万キロリッターということでございまして、年平均にいたしますと約二・四%の石油消費量の伸び、こういうことになっております。  ちょっと蛇足でございますけれども、電力の消費の伸びは、先生よく御承知のとおり年率にいたしまして五%ないし六%でございますので、電力の消費量に比べますと石油の伸びの方が大分小さいということでございまして、確かに御指摘のとおり石油消費量そのものはふえておりますけれども、そのふえ方が電力の消費量に比べまして相対的に低いということから脱石油の傾向はうかがわれるということでございます。
  210. 八木昇

    ○八木委員 細かく議論しておる暇がないのですが、第一次石油ショックのときにはちょっと驚愕をして、そして脱石油というようなことを大々的に言われたのですけれども、やはり漫然と過ごしていたんじゃないですか。また今度さらに倍とか二倍半の値上がり、こういうことになるというふうに思っていなかったのでしょう。私はそうとしか考えようがない。これは何ら努力がなされたとは言えません。  そこで、最初にちょっと伺っておきたいのですが、北海道電力と沖繩電力の料金改定を認可されたのですが、三点だけ確かめておきたいと思うのです。  北電と沖電について原価算定期間を昭和五十四年十月から五十六年三月までとして算定をして、二月の十二日からでしたかの新料金を認可されたのですが、これはそういうたてまえ論とかなんとかでなくて実質としてお聞きをするのですが、そうでありまする以上、昭和五十六年の三月以前に再び電気料金を改定値上げをするということは考えていない、こういうふうに理解していいのでしょうか。ことしの二月十二日から北海道電力は新料金ですが、一応先の終わりの期限はないわけですけれども、少なくとも五十六年の三月までは料金改定はないと理解していいかどうか。  それから第二番目は、総括原価の算定のうち、何といってもやはり燃料費の問題が大きいわけでございまして、CIF価格で三十ドル余り、為替レート二百三十七円で査定したというのでありますけれども、後でその内容については質問しますが、今度の北電の認可の場合、北海道電力の消費単価、言いかえれば購買単価と同じだと思いますが、購買単価は一キロリットル当たり何円として査定をされたでしょうか。それは重油と原油それぞれについて答えてください。  それから三番目は、事業報酬八%が従来どおり認められましたが、これは実際、原価算定と直接かかわってはいないかもしれませんが、通産省としては昭和五十五年度の北海道電力の株式配当は一〇%が適当、一割が適当と考えておられるのか、八分配が適当だと考えておられるのか。その三点お答えいただきたい。
  211. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まず第一点の五十六年三月まで絶対に料金の改定を行わないのかという御指摘でございますが、私どもが北海道電力及び沖繩電力から申請を受けまして、御承知のとおり二年間の原価計算期間で申請を受けたわけでございますけれども、特に燃料費の先行きの見通しが大変不透明であるということから、一年半という査定をしたわけでございます。そこで、原価計算期間中は一年半でございますから、五十四年の十月から五十六年の三月までということでございます。私どもは原価計算期間中の間だけの料金という考え方は持っておりませんで、こういう公共料金はできるだけ長く据え置くのが適当ではなかろうかという感じがございますから、五十六年の三月で直ちに次の改定を行うということではなくて、できるだけ一日も長くこの新しく認可された料金を据え置くようにという指導を現在しておるつもりでございます。(八木委員「もとより以前はあり得ないですね」と呼ぶ)以前の問題につきましては、私どもは全くいまのところは考えておりません。  それから、第二点の燃料費をどういう査定をしたかということでございますが、特に後段で御質問のございました原油及び重油の金額を具体的に示せという御指摘に対しましては、これははなはだ申しわけないのでございますけれども、この燃料費のうちの特に原油と重油につきましてキロリッター当たり幾ら幾らの数字で査定をしましたということになりますと、これは商取引の問題もございますので一応公表は差し控えさしていただきたいと思いますが、ベースになります原油のCIF価格につきましては、私どもは三十一ドルという査定をしたわけでございます。この三十一ドルと申しますのは、一月時点での通関実績をベースにいたしまして、五十五年度中に原油の値上がりが大幅には行われないのではないか、こういう判断のもとに一年間の据え置きをベースとして査定をしたということでございます。  それから、三番目に御指摘になりました事業報酬八%の関連で配当をどう見たかということでございますが、これは先生御承知のとおり私どもは配当率を決めるわけではございませんで、公租公課の前提となる配当の予想を一応したわけでございますが、北海道電力側の希望といたしましては一〇%という希望はございましたけれども、これを五十四年度は六%、五十五年度は八%という査定をしたわけでございます。
  212. 八木昇

    ○八木委員 いまの御答弁も非常に不可解なんですね。何と言ったって電力会社自身が言っているとおりだと私は必ずしも思わないけれども、今度の電気料金値上げの原因は八十数%油の値上がりのせいだと、もうすべてをそれにかぶせておるわけなんですよ。それなのに電力会社が購入する油の値段を幾らと通産省は査定をし考えて新電気料金を認めたかという数字を言えないということでは、これは問題にならないですね。三十ドルで見た、為替レート二百三十七円で見たというのはほとんど意味をなさないのですよ。それで計算すれば一キロリットル当たり原油が円の値段で幾らになるというのは、だれだって算術計算すればすぐ出てくるのです。問題は、電力会社が幾らで購入するとみなして査定をしたかということが問題でしょう。しかも、その開きが非常に大きい、極端に大きい。それは後の質問の点で申し上げますけれども、これは電気料金を通産大臣がもっぱらそれを決定することができるなどということ自体が大体私はおかしいと思うのだけれども、地域独占企業の公益事業ですからね。それなのに、われわれ国会議員に、その一番肝心なところを言えないなんということじゃ、これは審議のしようがないじゃないですか。  次に移りますけれども、全般的な問題点がたくさんあるのですが、次に一点だけお伺いをいたします。  大体北海道電力がやはり一番経営が苦しくなっているというのはだれしも認めていたところですが、この料金値上げ申請は三八・八%の値上げ申請でございました。ところが、中国電力は七八・二%の値上げ申請である。値上げ率は倍である。時期的な違いと言いましても、北海道電力が申請をしたのは十一月の十七日でしょう。そして中国電力が申請をしたのは一月の何日でしたか二十三日ですか。ですから事実上二カ月とちょっとしか違わない。それなのに値上げ率が二倍も違うというのは一体これはどういうわけでありますか。二倍も違う。端的にその理由を述べてもらいたい。  それから今度は八社相互について見ましても、東京電力は六五・三三%の値上げ申請、関西電力は五九・八二%の値上げ申請、東京の方が高い値上げ率でございます。しかも、もともと現行電気料金が東京電力の方が電灯も電力も関西より高い、御承知のとおり。もともと高いのへもってきて、値上げ申請率がさらに東京は関西よりも上回っている。その理由は一体何か。もしそれは油の消費量、火力発電所の構成の違いが原因だ、そういう御答弁をなさるとするならこれは大変問題になりますぞ。その点は局長からお答えをいただきたいのです。  それから、これは大臣にお答えをいただきたいと思いますが、何か大臣は、北海道が早々と値上げ申請をしたのはおかしい、適当でなかったという意味のことを言われたようでございます。新聞の記事にはそう報道されております。そうでなかったとするならば、そうではなかったとお答えいただいて結構なんですが、そういうふうにおっしゃるとするならば非常におかしな話で、そのようにお考えになっておるとするなら、実際北海道の料金を決定したのは二月一日なんですから、再度申請を修正するなり再申請をするなりせよと北海道電力に言うべきであったと私は思うから質問をしているのですけれども、最初にこっちの方から大臣答弁していただいて、次に局長答弁を願いたい。
  213. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 あれはたしか物特委員会の記事だったと思いますけれども、御承知のように朝日新聞だけしか載っていません。私はああいう発言をしたんじゃないのでありまして、去年——おととしでございますか、暮れでありましたから。おととし、北海道電力が当時は高い石炭を買わされておるわけでございますから経営が成り立たぬ、そこで国から補助金をもらえぬだろうかという大問題が起きまして、私は当時自民党の資源エネルギー調査会長をしておりまして、担当者だったものですから、三月くらいこの問題でかかっておりました。ですから、北海道電力の実情をようわかっておったものですから、これは容易でない経営状態だな、補助金は若干もらいましたけれども、ということで、北海道電力としては経営上幾ら合理化してももうとてもやっていけぬということで、ああいう他社に先駆けて申請したわけですがね。でございますから、私は申請の方が早過ぎたといったようなことは申すわけがないのでありまして、そういうつもりで話さなかったのが、どういう関係かああいう記事になりまして、本当に困ったのですけれども、そういうことはございません。  それから、いまの値上げ申請してから以後に油の値段が、OPEC初め、またことしの一月と急激に上がってきたんじゃないか、それに対してどう処置をしたんだ、こういうお尋ねのようでございますけれども、これに関しましては査定をいたしました担当官から実情を話してもらいたいと思います。
  214. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私に御指名になりました点のお答えの前に、いま大臣のお答えを事務的に補足いたしますと、北海道電力の値上げ申請の際に見通しました油の価格が、確かに申請の時期が十一月でございましたので、その時点におきますいわゆるOPECの価格の動向というものが必ずしもはっきりつかめていなかったということもございまして、申請は二十七ドルというベースで申請をしたわけでございます。そこで先生御承知のとおり、十一月以降急速にOPECが各産油国ごとに値上げをしてまいりまして、一月までの間に一巡した大幅な値上げが行われたわけでございますので、私どもはいわゆる増額査定、燃料費につきましては先ほどお答えいたしましたように三十一ドルという査定をしたわけでございます。つまり、今後の原価計算期間中に再び料金の改定申請が行われないような配慮をする必要があるという観点から、燃料費につきましての査定を別個の観点で行ったというのが実情でございます。  それから、先ほど御質問のございました二点についてお答え申し上げますと、中国電力の値上げ申請と北海道の申請が倍になっているではないかという御指摘でございます。確かにそのとおりでございまして、この理由といたしましては、一つには石炭火力への依存率が全く違うということでございまして、先ほど冒頭に先生が御指摘になりましたように、ほかの電力会社は石炭をたいてないではないかという御指摘、まさにそのとおりでございまして、この石炭火力への依存度の差がきわめて大きな要因ではないかというふうに考えております。それから二番目には、いま申し上げました昨年末から今年にかけての原油の大幅な引き上げという問題があろうかと思いますけれども、何と言いましても第一の燃料構成が違うという点が一番大きな要因ではないかと思う次第でございます。  ちなみに、北海道電力と中国電力の燃料構成を簡単に御披露いたしますと、御承知のとおり、北海道は石炭が六〇%、重油が三七%、原油が一・六%という状況でございますのに対しまして、中国電力が、石炭が四%、重油が七七・一%、原油が一〇・二%、こういう差が、今回の値上げ申請で大幅に北海道と中国に差が出てきたという理由ではないかというふうに考えておる次第でございます。  それから、もう一つの問題といたしましての東京電力と関西電力の料金の格差でございますけれども、これはいわゆる電源構成が変わっておるということのほかに、発電設備の立地条件の違いもございますし、あるいは電灯、電力等の需要家構成の違いもございます。多様な要素の違いが反映された結果でございまして、両社の電気料金水準にある程度の差が出ておるというのが確かに実情でございます。
  215. 八木昇

    ○八木委員 時間の関係で、きょうはもう問題点を一つ一つ指摘するにとどめざるを得ないのでありますけれども、いまの北海道の場合、申請の時期が早いといいましても、二十七ドルで申請をしているわけです。ほかの電力会社は三十三ドルないし四ドルくらいのところで申請しているわけで、さしたる違いじゃないのですよ。倍も開くというようなことじゃない。そうすれば、結局油をたいているところが得だということでしょう。ちゃんと手当てはしてくれるし、無理にあなた、代替エネルギーを開発したりあるいは高い国内炭をたいてやっておる、苦労しておるところはばかばかしいということになるんじゃありませんか。  それから、いまの東京と関西の問題でも、基本的には東京は火力が七七・二%なのに関西は六三・五%。いずれも油をたいているわけですから、東京が油をたく率が関西よりはるかに高いところに原因があるのでしょう、というふうに踏まえざるを得ないわけなんです。そういうところは、やはり将来とも非常に問題だと思います。  それから、総括原価の問題に移りますが、先ほどの燃料費ですが、総括質問でもある委員がちょっと触れていたのですけれども、各電力会社が申請しておる消費単価、油の購入価格、余りにも高いと私は思うのです。それで、原油一バレル三十四ドル、そうして為替レート二百四十円と、仮にそうして計算しても、一キロリットルにこれを直しまして五万一千四百円くらいになるのですね。今度、北電の場合、通産省はこの三十四ドルでなくて三十ドル、二百四十円でなくて二百三十七円として査定したと言うのですが、そうでなくて、三十四ドル、二百四十円として計算しても一キロリットル当たり五万一千四百円。しかるに、関西電力の申請は七万一千二百八十六円となっておるでしょう。そこで、私どもはわざわざ計算をしてみたのです。通産省は三十ドル平均と言われるから、ミナス石油の場合は三十二ドルとして、それはFOBですから、CIFにすれば〇・七ドルを加え三十二・七ドルとなります。そして為替レートは二百三十七円。こう計算をしてみますると四万八千七百四十二円にしかならない。それから、過去、FOB価格が幾らであった時代に電力会社が幾らで実際燃料を購入していたかということ、その数字はわれわれが架空でやったわけじゃありません。有価証券報告書にのっとってやった。そのときに幾らで電力会社は油を購入した、そのときのFOB価格は何ドルであった、そして為替レートは幾らであった、こう計算をしてその差を出してみると、国内で電力会社が石油会社等に払った額が出てきます。ほぼ比率も出てきます。そういうことになりますね。そういうことで計算をしてみますると、今度の場合に当てはめて、四万八千七百四十二円に関税を加えまして、国内の油会社のマージンは大体三千円とちょっとのはずです。そうすると、昭和五十五年度は合計して五万四千円程度で電力会社は油を購入できるはずです。私のそういう算定方法に誤りがありましょうか。
  216. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいまお示しいただきました算定方法、大変貴重な御意見として拝聴したわけでございますが、まず私どもの見解を申し上げさせていただきますと、原油につきましては、本委員会でたびたび私から御答弁申し上げておりますとおり、五十五年は三十ドルをある程度上回るところで推移するのではないか、こういう見通しを持っておるわけでございます。これが一応ベースになるわけでございます。それから、電力会社が使用いたします原油は、御承知のとおりそれぞればらつきがあるわけでございます。特に公害規制の厳しい地域におきましては、いわゆるローサルファ原油というものを使うわけでございまして、これは一般的に申し上げますと、三十ドルをある程度上回る価格よりも、平均いたしますとさらに三ドルから四ドル程度ローサルファ分のメリット加算がされますので、その分は高くなるのではないかという感じがいたします。そこで、電力会社それぞれがどういう油を使うかということによりまして油の価格は変わってくるわけでございまして、先ほど先生がお示しになりました数字というものをベースにいたしまして考えましても、そこに若干の差は出てまいります。もちろん、関税とか石油税、防災対策費、備蓄費あるいは石油会社のマージンというもろもろを加えてまいりますと、そこに差があるわけでございまして、先ほど先生のお示しになりましたように、消費地域におきます価格が六万数千円になる、あるいは七万円になる、こういうところもございます。これにつきましては、私どもは一応査定の対象にいたしておりますけれども、考え方としてはそういう考え方で申請がなされてきておるのではないか、こういうことでございます。  こういう原油価格についてのベースにつきまして、三十ドルをある程度上回るところで推移するであろうというベースにつきまして、若干電力会社と私どもの間にギャップがあることは事実でございます。と申しますのは、原油の価格の決め方が、先生御高承のとおり、OPECは従来は年に一回総会を開きましてその翌年の値上げを決めておったわけでございますけれども、昨年あたりからその決め方が大分変わってまいりまして、ばらばらに上げるという決め方をしております。現在のこの決め方が果たしてパターン化したのか、あるいはことしはまた一昨年のような状態に戻るのか、そういうことの見通しにつきましては確たる見通しもございませんので、電力会社はそれぞれ、ことしじゅうに五%ないし一〇%上がるのではないかという見通しのもとに、ベースになる原油代金につきまして私どもの考え方とは若干の差があるということでございまして、そのスタートの原油代金についての見方につきましては若干差がございますけれども、その後の経費につきましては一応査定の対象にはいたしますものの、考え方としてはそう無理のない申請ではないか。もちろん額につきましての査定は十分いたしますけれども、私どもはそういう考え方を持っておる次第でございます。
  217. 八木昇

    ○八木委員 細かく質疑応答をしている時間がありません。これは物価問題の集中審議あるいは物特等でも詰めた議論があると思うのですが、実際に、昭和五十一年の上期、下期に重油、原油を東北電力は幾らで購入し、東京電力は幾らで購入したか、全部持っているのです。大した金額じゃないですよ。今度の申請についても、各電力会社の油の値段についての金額の差はさしたる違いはありません。いまいろいろくどくどと局長は言われたけれども、比較的高い額になっているところ、比較的安い額になっているところと言ったってわずかですよ。一番極端な例は、これも総括質問のときに指摘された、北陸電力の重油の購入価格の申請が非常に安いということが一つ目立っております。ベースが問題だと言われたのですけれども、それは三十ドルにしたって三十四ドルにしたって七万幾らというのにならないのですよ。だから、ごまかしておる分は国内価格とFOB価格との差二万円というところにある、これはもう明らかだと私は思うのであります。  質問項目をまだたくさん用意しておりますから先へ参りますが、資本費について、設備費が非常に増大しておる。五十三年度に比べて五十五年度は五割もふえるという各電力会社の申請でありますけれども、電力会社によって多少その割合は違いますが、工事単価が五十三年度に比べて五割も上がるわけはありませんから、主たる原因は、原子力発電所の建設費が膨大にかかるところにあると断定せざるを得ないですね。そうではありませんか。  発電設備の着工ベースについて私は見てみたのですが、昭和五十年度は火力が四百十一万キロワット、原子力は百十万キロワット建設に入ったわけです。昭和五十年度は火力の建設が原子力発電所の建設の四倍です。ところが昭和五十五年度、五年後には三対四になっている。火力が三百万キロワットであって、原子力がそれよりも多く四竹十九万キロワットになっている。原発というのは火力の二倍からの設備費を要する。そこに今度の値上げ要因の非常に大きな部分があるのではないかと考えるのですが、いかがでしょうか。  たとえば原発をつくる場合に一定の補償等は必要でありましょうが、新聞でも大々的に報道されましたように、東北電力が百十億円も漁業補償を出すという、それは全部電気料金にはね返るのでしょう。それで原子力発電所、東京電力のものを福島県につくって超高圧の長距離送電で東京地域へ持ってこなければいかぬという、そういう超高圧の長距離送電線の建設をしなければいかぬ。そして、原発の場合にはもう百万キロをつくっておるわけですから、百万キロが定期検査でばんととまれば、火力の場合であれば、百万キロの火力であっても三十三万キロの発電機が三台ですから三分の一ずつ、三十三万ずつとめていいのですけれども、原発は百万ばんととまるから、それの見返りとして大容量の揚水発電所をどんどんつくらなければならぬというわけでしょう。おまけに、使い済み核燃料の再処理工場をいよいよ始める。それに莫大な金を投入するというのでしょう。しかもその原発は、当初二十年ないし二十五年寿命があると称せられていたものが、とてもそんなにはもたないというのが通説になっているでしょう。私ども感じでは十五年回せればいいところじゃないか、こういうふうに思うのですが、そういうところに今度の値上げの主要な原因があるのじゃありませんか、第二の主要な原因が。
  218. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 今回の値上げ申請のうちの上昇寄与率を見ますと、燃料費の上昇が八三%程度でございまして、それから資本費の上昇が一三%程度というのでございます。したがいまして、いま先生が御指摘になりましたように、第二番目の大きな要因は資本費の高騰だ、こういうことになろうかと思います。  そこで、五十五年度の設備投資額につきまして、私どもの調べでは五十五年設備投資計画三兆五千七百五十八億円ということでございまして、五十三年度に比較いたしますと約二九%の増ということでございます。年平均増加率にいたしますと約一三%ということでございます。このうち原子力発電部門の投資につきましては、五十五年度五千三百四十三億円でございまして、これは計画中の発電所が安全審査等の長期化によりまして着工が五十五年度以降にずれ込んだということの反映がございまして、五十五年度はある程度計画が膨大になっておるということでございます。  それから、揚水発電に対します投資につきまして御指摘がございましたので、一言お答え申し上げますと、ピーク需要に対します主要な供給力といたしまして、五十三年度一千百三十九億円に対しまして、五十五年度は一千六百七十五億円が計画されておるわけでございます。ピーク需要は御承知のとおり依然として先鋭化を続けておるわけでございますので、今後とも揚水発電の重要性は増大するのではないか、こういうふうに考えておるところでございます。  それから、第二点に御指摘になりました補償費の問題につきましては、一般論として申し上げますと、補償費といいますものは確かに資産の中に対象として計上するわけでございますけれども、これはやはりむちゃくちゃな補償をすべて電気料金に反映させるというわけにはまいらないと思います。常識的な範囲で行われました補償費につきましては当然料金の中に織り込むべきだと思いますけれども、それは十分査定をさせていただきたい、かように考えておる次第でございます。  それから、一般論としてまた申し上げますと、核燃料の再処理会社に対します投資の問題でございますけれども、これもベースレートといたしまして資産の中に一部計上するということでございますけれども、これは御承知のとおり電力以外の投資に対しますものは当然に料金から省きますけれども、電力に十分関係のある投資につきましては資産の中に計上するのが妥当ではなかろうか、こういう考え方を持っておる次第でございます。
  219. 八木昇

    ○八木委員 後、関連質問関係がありますので、質問というよりも、この際、ほとんどについては端的に意見だけを述べておきたいと思います。  事業報酬について、こういうときでもやはり八%の事業報酬を認めるということについては、これは通産当局として十分に考えてもらいたい。それから、真実かつ有効なものと判断される資産の八%が事業報酬となっておるのですが、真実かつ有効なものと判断される資産の中に核燃料が入っておる。それから、まだ運転を開始していない建設中の発電所等が入っておるということは適当でない、この際、こういうものはカットすべきではないか。  この核燃料については後でお答えをいただきたいと思います。私どものあれでは、各電力会社は将来にわたってこれはたくものであります、そのウラニウム、八社合計で一兆三千億円ぐらいいま買いだめておりますね。現在の原子力発電所の数でありますと二十年もたける分、それをいわゆる資産とみなして、それの額の八%というものを事業報酬として認めるというのは、これは認めがたい。私が言うとおりの金額の核燃料がすでに購入され、貯蔵されておるものかどうか、これはお答えを願いたい。  それから修繕費、私は二十数年前まで電力会社におりましたから、その当時だってその傾向があったのですけれども、ともかく会社が大体比較的資金繰りがよろしい、調子がいいというときには、大風が吹いたらこの際というのでばんすかばんすか修繕をやる、この修繕費の問題についても問題があります。  そうして、北海道電力の査定の場合に人件費についてのみは物すごくシビアである。公共企業体や主要民間産業のどれよりも、この五年間、電力はベースアップ率が毎年低いですね。これは意見として申し上げておきたいと思います。  それから、内部留保関係で、いまどき渇水準備金などというものを認めるべきかという問題が一つあります。  それから退職給与引当金、大体電力会社がつぶれるなんということは一〇〇%ないのです。電力会社が大量首切りをやるなんということ、しかも生首を飛ばすなんということも一〇〇%ないのでありまして、これを全従業員の四割も一挙に退職する場合に相当する退職金の金額分だけ利益金の中から内部留保で積み上げるなんというのは、取り崩すべきではありませんか。  それから電気料金制度、百二十キロワットアワーまでが第一段として安い、こうなっておるのですが、平均ずっとこの四、五年で使用量がふえておりますね。少なくとも五十キロワットアワーぐらい家庭の電力消費量がふえております。これは大幅に引き上げるべきである。  それから、電気だけではありませんか、遅収料金なんというものを取るのは。メーター検針をして二十日以内に電気料金を納めなかったら、罰金かどうか知りませんが五%追徴金を取るなんというのは、電気以外にはないでしょう。こんなものはやめるべきですよ、それはみんな一般家庭が取られているのですから。  それから、電気事業審議会の労働者代表の問題も言いたいのですが、時間が参りました。  それで、最後に資料を要求しておきます。先ほどのような答弁は了承できません。それで、電力会社の電気料金値上げ申請書というのは、これは関西電力の申請書。私どもが通産省にどういう電気料金値上げの申請があるかということをお聞きすると、たったこんなぺらぺらのものしか持ってこない。そうでしょう。実際の申請書はこういう分厚いもの。しかし、これは分厚いけれども、内容を見ますと、総括原価の算定根拠、燃料費について、たった半ページですよ。これの半分、ここだけ。そうして燃料、油代が幾ら幾ら昭和五十五年度かかります、ガス代が幾らかかります、核燃料代が幾らかかりますという結論の数字が書いてあるだけ。これだけで通産省が査定しているわけじゃないでしょう。この数字が出てくる根拠の資料が全部あるはずです。本当はそれも全部出してもらわなければ国民は監視できない。少なくとも今度それぞれの各項目についてどういう根拠でどういう数字にこれを査定して改めたかという資料を全部出してください。それから、本来は経理公開をすべきでありますけれども、それはまた後日に譲りましょうが、要するに八社のこの申請の数字が出たもとになる資料を出す用意があるか。少なくとも今度の北海道電力、沖繩電力について各項目の数字をどういう根拠でどういうふうに改めたかの資料を通産省として出すつもりがあるかどうか。
  220. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まとめて御質問ございましたので、まとめて簡単に……(八木委員「大部分は意見ですから」と呼ぶ)  それでは、最後に御要求のございました資料につきましては、私どもは経理というものはできるだけ公開すべきことが当然であろう、こういうふうに考えております。公益事業でございますから、公開すべきが当然であろうと思っております。しかしながら、その中にやはり商取引の関係でどうしても公開をはばかるというものもございますし、あるいはプライバシーの関係等の問題もございますし、どこどこの土地をこういうふうに買う予定があるというようなことも一種のプライバシーであろうかと思います。それから、燃料費につきまして私どもが公開をはばかっておる理由は、やはり燃料費は電力会社が石油会社から買うわけでございます。場合によりましてはまた直接産油国と交渉して買うわけでございます。それを私どもが幾ら幾らでいまこういう計算をしておるということがわかりますと、高く見積もっておれば向こうは高く売ってきますし、安く見積もっておればそれは安過ぎるではないかという交渉になりますので、これは商取引と言いながら、やはりひいては料金にはね返りまして、国民の皆様方に御迷惑をかけるということから公開をはばかるということでございまして、この辺はぜひ御賢察をいただきたいと思うわけでございますけれども、そのほか国民の皆様にわかっていただく必要のあるようなものは、私は公開すべきだということでございまして、御指摘の点につきましては、公開をはばかる分を除きましては私はお出しすることはできると思います。
  221. 八木昇

    ○八木委員 資料問題はなお留保しておきます。
  222. 田村元

    田村委員長 この際、石野君より関連質疑の申し出がありますので、八木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石野久男君。
  223. 石野久男

    石野委員 私は、原子力発電所の事故に対する政府の防災計画について質問をいたします。  アメリカのTMI事故にかんがみて、原発事故が起きる可能性はきわめて大きいと思います。私は、放射能障害は地震災害以上に広域にわたり、かつ深刻であると思っております。御存じのように、放射能は生物体や人体にさまざまの障害を与えますし、身体的障害と遺伝的障害に大別されますが、身体的障害は急性障害と晩発性の障害に分けられます。遺伝的障害は生殖細胞や原基細胞に起こった遺伝子や染色体の損傷によるもので、遺伝子の突然変異や染色体異常として子孫に遺伝されるものであります。いままでは高線量の放射能が問題になっていましたが、この十、二十年前から低線量が問題になり、近年は微線量が問題になってきております。アメリカのマクマホン博士の妊婦と胎児に関する報告が重要なこれに対する結論を出しましてから、この微線量の問題が非常に重要になっているわけです。  私は、昨年六月、TMI原発事故の調査に三週間近く行ってまいりました。ペンシルバニア州の州政府やミドルタウン町当局から聞いたこと、あるいはNRCで報告されたことから、防災対策としての避難計画や疎開対策、医療、交通等の具体的な対策を確立していくことがきわめて大切であることを痛感してまいりました。  去る二月の十三日、私どもは東京電力福島第一発電所の一号炉を視察いたしました。私を入れて四名の同僚議員が炉心部に入りまして、吉田参議院議員が炉心に入り、十分間に十八ミリレムの被曝をして帰りました。私自身も三・六ミリレムの被曝をして帰ってきております。炉心部で作業している労働者の被曝はきわめて重大ですが、この件は他日に譲りまして、TMI事故のようなものがもし起きたとき、わが国の場合は炉の集中がきわめて高い。福島、福井、茨城その他、もう世界一の密度を持っておるわけです。そして周辺人口も他の諸国の比ではないほど稠密化しております。TMI事故の後、政府は中央防災会議で対策を練っていると聞き及んでおりますけれども国土庁長官会議のまとめ役だそうですが、いまどの程度にこの成案を得られておるのか、一応御説明いただきたい。
  224. 園田清充

    ○園田国務大臣 お答えいたします。  政府においては、昨年三月末、米国のスリーマイルアイランド事故における経験を教訓といたしまして、御指摘のとおり中央防災会議において、地方公共団体に対する緊急技術助言体制、モニタリング要員及び機器材の動員体制等について当面とるべき措置を決定したところでございますが、これにより関係省庁が地方公共団体等に対しまして適切な指示、助言を行うことになっております。  ただ、現在原子力発電所周辺の防災対策につきましては、原子力安全委員会において専門的、技術的観点から審議が行われておりまして、この検討結果がまとまり次第、避難体制を含め防災計画について関係省庁、地方公共団体と十分協議をさせていただきたいと思っております。
  225. 石野久男

    石野委員 そうですと、まだ原子力安全委員会からの審議の結果が出ていないということもあって、この防災対策については予算的措置はそれほど進んでないと見てよろしいですね。事実上予算を見ましても、地震の対策にはずいぶん金を使っておりますけれども、この原子力災害対策についての予算の何は全然見えないというふうに思いますが、いかがですか。
  226. 園田清充

    ○園田国務大臣 先生御指摘のとおり、まだ原子力の防災体制の問題についての裏づけ予算というのは計上いたしておりません。
  227. 石野久男

    石野委員 私は、原子力発電所の事故に対する考え方というものは、地震なんかとは比較にならないほど重要なものだ、こう思うのです。そういう意味もありまして、この対策のないことは非常に遺憾です。地震の場合はマグマの測定をしておったり、何か動きを見れば大体予知ができます。しかし、TMI事故を見てもわかりますように、原発はいつ事故が起きるかわからない。十年後に起こるかもしれないけれども、あす起きるかもわからない。しかもこの被害はきわめて重大なのです。にもかかわらず、政府はこれに対する対策を全然持っていないということについて、私は非常に遺憾に思う。  そこで自治省に聞きますが、自治省は炉のサイトの自治体を督励して一般大衆をこの放射能の被害から防護するための指揮をとる必要がありますが、サイトごとの避難計画あるいはまた一般大衆のこれに対する訓練、道路、交通の整備などについて、各省庁並びに地方自治体に連絡、協力の要請が出ているような十分な計画をお持ちでございますか、どうですか。
  228. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 原子力発電所の事故に対応しての防災計画でございますけれども、中央防災会議の基本計画に従いまして、今日、各市町村でそれぞれ避難計画等を含みました地域防災計画を立てております。私もその案をせんだって見ました。実は、私自身、去年、ハリスバーグの例の事故現場に行って見てきております。あのスリーマイルでの事故の状況を頭に浮かべながら、地方団体がいまつくっておる地域防災計画を見ますと、直さなければならぬ点があると私は思います。  そこで、いまのところは私どもとして、原子力安全委員会で慎重に検討しておる、こういうことでございまするので、それの出次第、中央防災会議も対応策を講ずると思いますから、それに従って各地方団体の地域防災計画の見直しを行いたい、かように思います。  現状は、訓練の状況ですけれども、紙の上で幾ら書いて見ましても、実際は役に立たぬわけですから、本当は訓練をせねばいかぬと思います。ところが、いまのところは、やはり何といいますか、私もよくわからないのですが、地域住民のいろいろな感情の問題もあるんでしょう。いまのところは図上訓練あるいは第一報の通信連絡の訓練といったような程度にとどまっておるようでございますが、これらについても先行きはやはり現実的な訓練にだんだん足を突っ込んでいかなければならないだろう、そういう際の指導は十分さしていただきたい、かように考えております。
  229. 石野久男

    石野委員 自治大臣にお尋ねしますが、立てておりますと言ってみたり、見直しをしなければならぬというようなことで、率直なことを言いますと、中央防災会議はまだ作案ができておりませんから、本格的なものはないのだというふうに受けとめてもいいのではないかと思いますが、どうですか。
  230. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 いまお答えしましたように、昨年の春ごろでしたか中央防災会議でお決めになった基本計画に従っての地域防災計画がいまできておる、こういうことでございます。ただ、私が先ほど申したのは、もう少し、ハリスバーグの事故にかんがみて、安全委員会調査結果を待って直さなければなるまい、かように考えているわけでございます。
  231. 石野久男

    石野委員 自治大臣のおっしゃること、どうも——中央防災会議でまだ基本的なものができていませんから、それに基づくものはほとんどないんで、従前の防災対策というようなものはあるのかもしれませんけれども、本格的なものはないのだと思われます。  そこで、運輸大臣、おいでになっていますね。運輸大臣にお聞きしますけれども、TMI程度の事故がもし日本に起きた場合、日本ではどの原発サイトにおきましても大混乱が生じるだろうと思うのです。交通の面だけからしても、パニック状態になるだろうと私は思うのです。運輸省は、事故が発生した場合に避難民あるいは疎開対策、スムーズに人々を避難させるだけの自信をお持ちでございますか。
  232. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 もしも災害が起きましたときに、避難輸送に対して自信をお持ちかという御質問でございますが、なかなか自信を持つような防災対策はむずかしかろうかと思います。しかしながら、技術的な指導を受けながら緊急対策に応ずるような方策をただいま練っているところでございます。
  233. 石野久男

    石野委員 建設大臣おいでですか。——いま運輸大臣が自信を持つところまでいっていないというのは、一つは道路との関係があると思うのです。原子力発電所サイトからの避難車あるいは避難する人たちのために国道が大量輸送にたえられるだけのものでなければなりませんが、車や人を一時的に退避させるだけの道路網になっていないと思います。建設省はそれに対してどういうような対策をお考えなのかどうか。  たとえば私は東海村のすぐそばにおりますが、いま東海村には多くの原発の施設がございます。そして、日本原発から六号国道に今度一本新しくできました。原研の道路はもう最初からできておりまして、非常に整備されております。それから動燃団のところからも一本できている。三本すばらしい道路ができているんです。この道路は避難道路ですが、実は都市計画的になりましてその周辺に全部家が立ち並びました。三十年代の原子力研究所ができるときには、原子力研究所の周辺は緑地帯にするつもりだった。そのために学校を移転したのです。ところが、その学校の跡のところに皆家が建っちゃった。こういう状態になって全くでたらめなんですが、さてもし事故が起きて、一たん事業所におる方々が避難する、あるいは周辺地の住民が避難してきて、自動車がもし六号国道へ行ったら、恐らく一台も外へ出れないだろうと思うのです。動燃の方のところから行く自動車が一台出て水戸の方面に出ていく、それからあるいは日立の方に出るとしたら、恐らく原研から出たのとぶつかっちゃうだろうと思います。とてもじゃない。それから原発から出てきたものとぶつかります。しかも十字路になっているのはただ原研の前だけで、あとは皆T字路になっていますから隠れちゃっている。  こんな状態でとても避難させることはできないだろうと思いますが、建設大臣は原発サイトの周辺における国道整備の問題についてどのようにお考えを持っておりますか。
  234. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えを申し上げます。  道路の周辺に少なからざる家が立ち並びまして、実際道路の効用上いろいろ問題が起きていることは承知をしております。ただいまの原子力の施設地帯につきましては、たとえばお話しの東海地区の道路整備につきましては、昭和四十一年度以来科学技術庁とも十分打ち合わせをいたしまして相当な整備を進めてきておると思いますが、まだ完全な地域になっておるとはもちろん言いがたいわけでございます。この具体的なことにつきましては、必要でありますれば局長から説明をさせていただきたいと思います。  なお、スリーマイル島の事故にかんがみまして原子力の防災対策としてはどうかということでございますが、このことは昨年七月の中央防災会議におきまして当面とるべき措置が決定をされまして、さらに原子力防災対策の実効性を高めるために原子力安全委員会の専門部会で検討されておるというふうに承っておりますので、その所要の検討が進められましてその結果が得られ次第、これを踏まえまして、恐らく原子力発電所の立地県の地域防災計画等の一層充実整備が図られることになろうと思います。この場合におきましては建設省といたしましても所要の対応を検討いたしまして万全を期したいと考えております。  具体的なことは、必要でありますれば政府委員から説明をさせていただきたいと思います。
  235. 石野久男

    石野委員 文部省おいでになりますか。——文部省は、原発の事故がありましたときには緊急避難命令が出ます。そのとき一番問題なのが小中学校の生徒さんあるいは幼稚園、託児所、こういうところの児童あるいは幼少児をどういうようにして避難させるかということが大変な問題になると思うのです。文部省は、原発サイトのこうした文教施設にかかわる避難計画をそれぞれの地区ごとにお持ちでございましょうか。そしてまた、そのための予算的措置をなさっておられますか、お聞きしたいと思います。
  236. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 お答え申し上げます。  火災や地震等の災害の場合におきまして児童生徒が安全に行動できるような避難訓練につきましては、平素計画的に取り組んでまいっておりますが、先生御指摘の原発災害の問題につきましては、現在のところ特別の計画を持ち合わせておりません。この問題は、御指摘のとおり地域住民全体にも絡む問題でございますので、関係各省との連携を十分とりまして対処してまいりたいと思います。
  237. 石野久男

    石野委員 労働大臣はおりますか。——労働大臣にお聞きしますが、事故が起きると現場に残る労働者というのは時によっては皆無になると思います。また、周辺の事業所や会社に働いておる労働者もほとんど退避してしまうと思います。そしてその労働者の多くは、避難命令が解除されても数日間は現場には戻らない、これはスリーマイルアイランドにおけるところの教訓です。こういう場合に、TMI事故のこの教訓に学んで、労働者の被曝をどういうふうに少なくするかということを労働省としても関心を持たなければなりませんが、現場での盗難防止や設備防護の問題もあります。しかしそれ以上に問題なのは、この労働者の賃金をだれが払うのだということです。この数日間いなかったときの賃金を事業者が払うのか、だれが払うのかという問題について労働省は対策をお持ちですか。
  238. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 具体的にその事例にどう対応するかということを取り決めてあるわけではありませんが、ごく常識的に事業者が支払うべきものだと考えます。
  239. 石野久男

    石野委員 労働省の考え方はよくわかりました。  通産大臣にお聞きしますが、原発事故を未然に防ぐための直接の責任は、少なくとも実務面については通産省にあると思います。日本の原発の事故の多くは炉本体にかかわるものでございます。大臣は、事故発生時に周辺住民に被害を与えないためにふだんから防災計画をつくっておくべきでありますが、そういう問題を通産サイドにおいてお持ちでございましょうか。また、電力供給上の混乱、先ほど八木委員からの質問の中にありましたが、原発で事故が起きました場合に、供給量が大きいだけに電力供給上大変な問題が起きると思います。だから、そういう問題に対する対策をお持ちですか、どうですか。
  240. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 そういう事故が起こらないようにどうすればよろしいか、言うなれば安全対策でございますけれども、これは私から申すまでもなく、よく御承知のとおりでございますからやめます。  万々一起きた場合どうするかという話をいましているわけでございますけれども、先に予算から申し上げますが、私の承知しておる限りでは、何といいましても緊急時のモニタリングの体制を一番整備しなければいけませんので、これは六億二千百万円今年度予算に組んでおります。それから、実際に事故が発生するということがありますれば、何といっても連絡が一番重要でございますので、緊急時の連絡網は本部と県あるいは発電のサイトとどういうふうに連絡をするか、これに対しては整備のため一億四千三百万。それから、緊急時の医療が必要であるからこれも準備しなければいけませんから、それに対しても二億二百万等組みまして、そういうことで整備しておりますけれども、先生のおっしゃるような実際のどのくらいの被害のときにはどのくらい避難するとかいったような問題に関しましては、先ほどもお話がございましたように、安全委員会の方でただいま専門部会を設けていろいろ検討しているそうでございまして、それができますれば、それに沿うてまた細かい施策が展開していくだろう、こういうふうに考えております。
  241. 石野久男

    石野委員 厚生大臣がお見えになりましたから厚生大臣にお尋ねしますが、TMI事故は沃素131が大量に水中に残留をしたことによって、大気中への放出は非常に微量でございました。それでもその事故が、医薬品を整備しておくこと、供給することがきわめて大切であることを教えております。ケメニー委員会、いわゆる大統領委員会は、「種々のレベルないし種類の放射線から一般公衆を防ごうとするための医学的手段について研究すべきである。この研究は、放射線を防護し、あるいはその効果を打ち消すための医薬品の開発を含む。」と勧告しておるのであります。  厚生省は災害に対する万全の策を立てておりましょうか、そのための具体的な予算措置をとられておりましょうか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  242. 野呂恭一

    野呂国務大臣 災害時におきまする一般的な防災業務の中に示されておりますために、応急的な医薬品については十分対応できる対策が立てられておりますけれども、いま御指摘のような、原発の事故が起こった場合におきましては放射線の被害という特殊な立場がございますので、これに必要な処置を今後とれるように関係省庁と十分連絡をとって対応しなければならない。いまのところその対応は十分であるかという御指摘に対しましては応急対策を考えてまいりたい、かように思います。
  243. 石野久男

    石野委員 国土庁長官にお尋ねしますけれども、いまのような状況でございますると、防災対策上の成案というものは政府にほとんどないわけですね。中央防災会議は大体いつごろこの問題に対する成案を得る予定をしておられますか、大体成案のできる予定等についてお聞かせ願いたい。
  244. 園田清充

    ○園田国務大臣 さっきも御答弁申し上げましたとおり、安全委員会で専門的な検討を急いでいただいておりますので、その審議の結果を待って、いつごろかという時期でございますが、その研究を待っての段階だということで御了承いただかなければ、いまのところいつだということは私の方で明瞭に答えはできません。担当である科学技術庁長官の方からまた重ねて御答弁申し上げることが適切かと思いますので、それで御了承賜りたいと思います。
  245. 石野久男

    石野委員 原子力安全委員長がおいでになられておりますが、安全委員会はこの問題についていつごろ答申を、大体資料をまとめて防災会議に御提出になられる予定ですか。
  246. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 安全委員会といたしましては、防災対策専門部会で慎重に、しかもできるだけ早い結論を出してもらうように依頼をしておりますが、問題が非常に多岐にわたります。それで、いつごろ得られるかということでございますが、私たちはいま言いましたようにできるだけ早くと思いますが、非常に慎重を期する部分もございまして、結論が得られる時期を断言することは非常に困難でございますけれども、二、三カ月といいましょうか、ちょうど昨年の四月末からスタートしておりますので、できるだけ一年以内にまとめてもらえるよう専門部会の検討を進めさせていきたいと思っております。
  247. 石野久男

    石野委員 重ねて聞きますが、委員長、それは自信がありますか。
  248. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 それは専門部会に依頼してございますので、私、委員会としての希望はそうでございますが、ここで断言するということはできませんが、大体その辺を目途にやっていただくように検討を進めさせたいと思っております。
  249. 石野久男

    石野委員 科学技術庁長官は本件については一定の責任があると思いますし、その件について、安全委員長はいまのように言っておりますけれども、原子力の災害というのはそんなに日を待つわけにはいかない。幸いにしてこの一年間何もなかったけれども、あすにでもあるかもわからない。政府の二カ月、三カ月あるいは半年というような状態ではだめなので、もう早急にやるための体制づくりをしなければいけないのじゃないか。もし体制が弱いならば、もうちょっと強い体制を組むような予算措置をしなければならぬのじゃないかというように思いますけれども、その点についてどういうようにお考えになりますか。
  250. 長田裕二

    ○長田国務大臣 原子力の防災につきましては、事故を起こさないという面につきましての措置は従来もとられており、昨年のスリーマイルアイランドの事故以来、原子力安全委員会を中心として、あるいは通産サイドの問題として再点検、あるいは五十二項目の点検、その他相当措置がとられておりますことは御承知のとおりでございます。  また今度は、防災という面から見まして、従来の災害対策基本法でとられております諸措置に加えまして、昨年スリーマイルアイランド事故以後、関係各省が相当緊密な連絡をとりながら打ち合わせをいたしたところでございますが、その中で一番強調されました点は、どういう状況が起こった場合にどういう措置をするのが一番適当かということについて、関係者、地方の行政に携わる者、現場指導者、そういう者が適確な判断を持ち得る体制をつくるのにはどうしたらいいかということで、助言措置とか専門家を派遣する措置とか、そういうことがなされておることは御存じのとおりでございます。  さらに並行しまして、ただいまおっしゃいました原子力安全委員会の防災対策専門部会、ここで今後とるべき措置が検討されておりますことももう御承知のとおりでございまして、これにつきましてその結論を待ってということになっておりますが、その結論を早めるための措置をどうするかということでございます。私どもは従来、専門部会の検討にある程度信頼をおいてその結論を待っておったわけでございますが、ただいまのお話もございますし、もしその結論を急ぎ、適正な成果が出るということを早目に期待しますためにどういうことを重ねてやる必要があるかということにつきましては、安全委員長とさらによく相談をし、打ち合わせをいたしたい、そのように考えております。
  251. 石野久男

    石野委員 もう私はこれで終わりますが、委員長にお願いしておきたいのですが、いまお聞きのように、原子力に対する防災対策は中央防災会議においてもほとんど成案を得てない。議長である総理がいまおいでになりませんので意見がわかりませんが、ぜひひとつその点を委員会としても討議をしていただきたいということを切にお願いして、私の質問を終わります。
  252. 田村元

    田村委員長 これにて八木君、石野君の質疑は終了いたしました。  次に、神田厚君。
  253. 神田厚

    神田委員 私は最初に厚生大臣に、現在緊急の課題になっております、いろいろ話題になっておりますスモン訴訟の問題につきまして、時間がありませんので二、三点御質問申し上げます。  現在、スモンの問題につきましては、これまで金沢、東京など九つの地域において四百九十七人の患者につきまして判決の言い渡しがあったはずであります。国は、スモンの問題は和解により解決をするという基本的な方針に立っておりますから、すでにこれまで二千四百余名の患者と和解を成立さしている、こういうように聞いております。すでに判決のあった患者四百九十七人についても、早急に和解を行い、患者の早期救済を図るべきであるというふうに考えておりますけれども、既判決者についての和解の方針は一体どういうふうになっているのか、その点を御答弁願います。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  254. 野呂恭一

    野呂国務大臣 スモンの解決につきましては、これは当面する厚生行政にとって最重要問題であると考えております。すべての問題を一挙に解決しなければならないと思って、着々その打開に努力をいたしているところでございますが、いま御指摘の既判決者の和解についてでございますが、昭和五十五年一月十九日、東京高裁において和解勧告がございました。厚生省といたしまして、裁判所を通じまして十分協議の上で早期に和解が成立いたしますよう努力をいたしておるところでございます。その他の裁判所につきましても、昭和五十四年九月十五日、患者団体との間で確認をされておりますので、今後別途協議をいたしまして、各裁判所ごとに処理してまいりたいと考えております。
  255. 神田厚

    神田委員 現在提訴を行っているスモン患者の中には、キノホルムを投与したという証明書が得られないためにまだ和解が行われていない者があると聞いているわけでありますが、この投薬証明書の有無にかかわらず、キノホルムによるスモンであるという鑑定が出た者については、これをひとしく救済すべきである、こういうふうに考えておりますけれども、投薬証明のない患者の取り扱いの方針は一体どんなふうにお持ちでございますか。
  256. 野呂恭一

    野呂国務大臣 御指摘のように、前橋本厚生大臣との間におきまして確認書が交わされておるわけでございます。この確認書のとおりにこの問題の解決を図ってまいりたいと考えております。  投薬証明のない患者の取り扱いが最重要問題であると考えておりますが、この問題につきましては、現在、東京地裁におきまして意見を求めておるわけでございます。東京地裁も近くこの判断が示されることを期待をいたすものでございます。この判断が出ましたならば、十分にこれを尊重いたしまして、国の方針を定めてまいりたいと考えております。
  257. 神田厚

    神田委員 それでわかりました。  次に、官房長官、別なことでちょっとおいでいただいていたのでありますが、きょう大平首相とアメリカのマンスフィールド大使との会談があった。その中に対ソ措置やオリンピック問題等が出ておりますが、このオリンピックの参加問題につきましては、長官としましてはどういうふうな御判断を現在お持ちになっておりますか。
  258. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 午前中マンスフィールド大使が総理のところへ来られまして、いま先生御質問の対ソ問題あるいはオリンピックの話が出たことはそのとおりでございます。それで総理から、日本のオリンピック参加問題に対する態度は、この前JOCに意向を伝えたときと同じてあるということの説明があったわけでございます。
  259. 神田厚

    神田委員 そうしますと、日本としての最終的な参加、不参加の態度というのは、大体いつごろ、どういうふうな状況の中で判断をなさるわけでございますか。
  260. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 この問題はアメリカが、この二十日までにアフガニスタンからソ連軍が撤退しないときはボイコットするというようなことを言っているわけでございます。IOCではIOCの決定があったということでございまして、わが国政府としましては、この前意向で伝えましたように、これは平和の祭典でございますから、本当に世界じゅうから祝福されてオリンピックがモスクワで開かれるという状態になることが、オリンピックの本来の目的達成にはどうしても必要だ。しかし、いまの情勢は世界じゅう、ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入をめぐって非常に厳しい世界の世論がある、そういうことも無視し得ない。非常に重要な関心を払っているということにつきましては同じでございまして、ただ、これは参加、不参加を決められるのはJOCの責任でございますので、JOCが世界の国内オリンピック委員会と十分緊密な連絡をとってもらいたいということを述べたわけでございまして、いま私どもとしましては、IOCの決定があったというその後の情勢を見守りながら、JOCが判断をすべきだということを思っておるわけでございますが、五月十九日が参加の最後の締め切りでございますので、やはりそれ以前にJOCは十分政府とも連絡をされるものというふうに思っておるわけでございまして、必要があればまた政府の見解等も述べる機会があるかと思いますが、いまのところは世界の情勢を見守っているというのが現状でございます。
  261. 神田厚

    神田委員 もう一問この問題につきまして御質問申し上げますが、もしもJOCが自主的に参加をする、政府の方では参加が望ましくないというような異なった決定がなされた場合には、政府としては参加の補助金やその他の問題についてはどんなふうなお考えをお持ちでございますか。
  262. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 本日午前中外務委員会でただいまの御質問がありましたので、私から申し上げますが、(神田委員官房長官と相談をすると言っている」と呼ぶ)そうなんです。(神田委員「ちょっと相談をしてくれ」と呼ぶ)実はまだいままで相談する時間がございませんでしたので、これはまた文部大臣とも相談しなければなりませんので、この場で意見の調整を図ることはむずかしいわけでございますけれども、その場合のことについてはさらに関係閣僚の間で相談いたします。
  263. 神田厚

    神田委員 それでは次の問題に移ります。  実は新聞、テレビその他でこのごろ大きく報道されておりますイエスの方舟、極東キリスト教会という宗教法人を装いながら若い女性を誘拐しているような状況が憂慮されている、そういう事件がございまして、いま家族の方々が大変御心配をしております。十五年間探し続けているけれども一切会わせてもらえない、こういうような人もおりまして、本日も家族の方が傍聴に見えておりますけれども、このイエスの方舟の事件につきまして、これは人権問題としてゆゆしい問題でもあるというふうに考えておりますので、この問題につきまして御判断をひとつ示していただきたい、こういうふうに考えております。この事件が現代の神隠しと言われるように、その集団が消えたまま全然見つからないわけであります。二十数人で構成をされているというような状況でありますが、誘拐というかそこに参加をしております十人ぐらいの娘さんも一緒に行ってしまって、二年間もどこにいるか全くわからない。家族の方からは捜索願がたくさん出ているわけでありますけれども、これらにつきまして当局の方に御質問を申し上げます。  家出人捜索願がまず出されて事件が明るみに出ました当初、当局はどのような捜査を行ったのか、防犯警察的な対応が適切であったかどうかという問題が一つここに出てくるわけでありますけれども、最初の事件が明るみに出た段階での捜査の状況についてお答えをいただきたいと思います。
  264. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 ただいま御質問の点で、イエスの方舟の問題になりました経緯を若干簡単に御説明申し上げますと、最初大阪の堺市の付近で極東キリスト教会という団体をつくっておりました千石剛賢という人が、昭和三十四年の十二月ごろに十人ぐらいの同調者と一緒に上京してまいりました。その後、この教会は宗教法人としての届け出もございません。また、ほかの宗教団体との関係も全くないということで、実は詳細はよくわかっていないわけですが、千石らは、歯ブラシであるとかネクタイなどの行商をしながら聖書の研究をするということで信者を勧誘していたようでございます。ところが、昭和五十三年の五月二日に全員が東京からいなくなってしまうということで、その後、岡山の市内に居住していた、あるいは長野県の飯田市にいたという事実も若干わかっております。しかし現在は、住民登録の上では大阪の西成区にアパートを借りて住んでいることになっておりますが、実はだれもいないという状況でございます。  そこで、警視庁の方は、家族の捜索願が出ております。これは女性ばかり七人でございますが、五十二年の九月ごろから大変問題になってまいりまして、その時点で積極的に捜索活動を進めまして、特に少年一課に特別捜索班というのを設けまして、そこで特別の班編成をやりまして、その後鋭意追っかけているわけですけれども、現在に至るまでなかなか詳細が把握できないという状態でございます。なお、大阪の居住地あるいはそのほか関連のところも捜索をしている最中でございます。
  265. 神田厚

    神田委員 この人たちが聖書研究会という名のもとに国分寺の福祉会館、これは公共施設でございますが、こういうところを利用しながら集められてだんだん洗脳されていっているわけでありますけれども、警視庁の方では一時、こういうポスターをつくりまして、みんなきれいな娘さんでございますが、グループの一つの犯罪としてこれを刑事的な問題として検討できるかどうかというふうに研究をしたというように聞いてもおりますし、そういう意味では、この捜査がどうして途中で中断をされてしまったのか。もしもそのときにきちんと、保護願、捜索願が出ているわけですから、そこでその場所を押さえることができれば、現在のようにそこからいなくなってしまって二年間もわからないというような状況はないと思うのでありますが、この間の経緯というのはどういう事情でございますか。
  266. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 この家出した人の捜索につきましては、先ほど中断されたというお言葉がございましたけれども、五十年以来中断したことは一度もございません。現在まで継続して捜索をしているわけでございますが、最初家出人の捜索願が出たときに御家族の方から事情聴取を詳しくいたしました。その後もいろいろと調べてみますと、どうもこの人たちはいずれも、宗教上の理由でみずからの判断で家出したということになっております。現在の時点で略取または誘拐等の犯罪に当たると認められる事実がございませんので、直ちに捜査の対象となるということについては申し上げかねるわけでございます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、家族にも会わせない、またあるいは、警察が行っても言を左右にしてなかなか言わないという常識を外れる部分もございます。そういったことで、今後とも大いに捜索を続けてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  267. 神田厚

    神田委員 現実に千石イエスと自称している男がやっていることというのはどういうことなのか、それらについての調査というのはなされましたか。どんなことをしているのか。この人は、極東キリスト教会という一つの枠をつくって、その中で若い娘さんをたくさん入れて、それで何をやらせて、どんなことをしているのか、こういうことについては調査がちゃんとできているのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  268. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 千石の言っておりますことをパンフレットなどで見てみますと、こういうことを言っております。「私達は宗教団体ではない。キリスト教はもちろん仏教や他の新興宗教などとは一切関係ない。私達は純粋に聖書を研究して、神と人間、そして人間同志の正しい関係をありのままに学んでいるものの集りです。」こういうパンフレットを出して布教活動めいたことをやったことはございますが、その内部でどのようなことをしておるかということにつきましては、詳細把握しかねております。
  269. 神田厚

    神田委員 いろいろ御家族の皆さん等からお話を聞きますと、なかなか中へ入れてくれないから何をやっているかわからない。けれども、服は共同で着させる、あるいは外出するときには一緒に何人かで行かせる。それから、とにかく報道されました教会というようなところは、非常に粗末な、住むにたえないようなところである。そういう中で非常に狂信的な、この法治国家の中ではあるまじきようなそういう常識外れな生活が営まれている。現実に監禁をされておるのかどうかも警察の方では確認できないわけでありますから、そういう意味におきまして、これらの問題が単なる防犯警察的な問題ではなくて、もう少し刑事事件の対象としてもこれをきちんととらえて、さらに、決められた場所ではなくて全国的な捜査体制をしいて、それをきちんと詰めるようにしたらどうかというように思っておるわけでありますが、公安委員長立場でなかなかむずかしい問題ではあるでしょうけれども、これらの問題について、今後の捜査の体制について御答弁をいただきたいと思うのであります。
  270. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 もちろんこの家出をした人たちの取り扱いが監禁であるとか略取であるとか刑罰法令に触れるということがあれば、こんなものはほっておくわけはありません。問題がこれは厄介なんです。それは常識では考えられないのですけれども、要するにこれは狂信者なんですね。宗教上の理由なんです。そこで、幾ら言ったところで、不法監禁せられておるわけじゃありません、十分満足して信仰活動をやっているんです、こういうことになりまして、これはなかなか警察は処置がむずかしい問題です。だから警察としては、御家族の方、これは大変お気の毒ですから、申し出があって、これは家出人の捜索という立場でやる以外いま手がないというのが実態です。しかし、警察がほっておるんではありませんよ。何かあったらやるということだけは間違いがございませんから、それ以上はちょっとこの問題は、直ちに警察がいわゆる捜査活動というわけにはまいりかねるというのが実態でございますが、まあ一生懸命やります。
  271. 神田厚

    神田委員 重大な関心を持ってそれに対処していくということでございましょうが、こういうふうにしまして、二年数カ月も集団で何やっているかわかりませんから、そういう集団がわれわれの社会の中に現実にどこかにあるわけでありますね。それが捜し出せないというのはこれからいろいろな問題がありますから、ひとつとにかく捜査体制を強固にして、さらに一段と捜査に力を入れてほしい、こういうように思うのでありますが、いかがでございますか。
  272. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 せっかくの申し入れですけれども、いまの段階で捜査というわけにこれはいきません。これはやはり家出人の捜索ということでもっと力を入れてやるということは、これは警視庁の方にもよく話します。  なぜかといいますと、この年齢を見てもわかるわけなんですよ。言葉は悪いですけれども、単なるそこらの小娘じゃないわけですよ。これは三十五歳とか四十歳とか、こういう人でして、普通なら分別がつく人なんです。それがどうにもならぬわけですから。しかし、仰せの趣旨はよくわかっておりますから、これはさらに一層力を入れて捜索活動をさせて、その過程において刑事法令違反の事実があれば検挙する、こういうことでやりたいと思います。
  273. 神田厚

    神田委員 いま長官がおっしゃったのは現在の年齢で、当時は、十五年も前の年齢なんですから、みんな若い人ばかりなんですよ。さっきお見せしましたように、こんな若い人ばかりです。こういう人ばかりが、十七歳とか十八歳とかいう人がやられているわけですから、それはまだまだ本当に頭の中が固まっているというあれではありませんから、ひとつ積極的に捜査をしてほしいという御要望をしておきます。  ついでに法務大臣にお尋ねをしますが、この人たちの家族は、法務局に対しまして人権擁護の問題でこれを訴えております。東京法務局やその他いろいろその訴状が出ているわけでありますから、ひとつ人権擁護という立場からもこれを取り上げていただきたい。  ところが、どうして取り上げられないかというと、調査に入った段階で蒸発してしまったんですね。行方がわからなくなってしまったから、なかなか取り上げることができないのでありますけれども、人権擁護という立場から、この問題についても前向きに、これを積極的に取り上げて、法務省としましても、その見解をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  274. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 人権局長を呼んでおりますので、ちょっと御報告いたさせます。
  275. 中島一郎

    ○中島政府委員 お答えを申し上げます。  この件につきましては、昭和五十三年の二月に娘さんの御両親から、人権上の問題として救済を求めるという申し立てが、東京法務局及び東京法務局の八王子支局に行われたわけでございます。  そこで法務局におきましては、娘さんの御両親あるいは関係者から家出当時の実情を聴取いたします一方、このイエスの方舟の責任者と接触をするべくいろいろ努力を重ねたわけでありますが、その段階で、ただいまお話がございましたように、責任者が行方をくらましてしまいまして、現在のところ所在を確知しておらないというような段階でございますけれども、今後ともなお一層調査を進めてまいりたい、このように考えております。
  276. 神田厚

    神田委員 警察当局と法務省の方からお答えをいただきました。どうかひとつ、大変むずかしい問題でありますのは十分わかっておりますけれども、これらの問題につきまして積極的に、法治国家として、こういう捜索願が出ている集団が二年も三年もいなくなってしまって何とも手がつけられないというのは恥ずべきことでありますから、早急にこれを捜し出すように努力をしていただきたい、こういうように思います。  次の問題に移ります。  次は、きょうの委員会でも二、三詰められましたが、国鉄問題につきまして、国鉄当局並びに運輸省の見解をお聞きしたいのであります。  国鉄経営再建促進特別措置法案、これを閣議了解をして国会に提出をする、こういうようなことでございますが、やはり国鉄問題の中で改善をされていかなければならない問題はたくさんある。しかしながら、その中で、赤字地方線の問題については、少し慎重な取り扱いをしていただかなければならない問題だ。そもそも国鉄再建に関する基本構想、こういうものを全部基本方針等についての条件整備ができて初めてこの赤字路線等の問題もこれを積極的に出してくるというわけでございますから、そういう意味で考えますと、これらの基本方針にのっとって、いわゆるその基本方針の三つの条件というのは満たされたというような判断を持っているのかどうか、この点はいかがでございますか。
  277. 山地進

    ○山地政府委員 先生御承知のとおり、昭和五十二年の十二月に国鉄再建の基本方針というのができまして、その基本方針に基づきまして、五十三、五十四年度二年にわたりまして国鉄再建の構想を考えるということで国鉄の再建の基本方針ができているわけでございます。この方針に基づきまして国鉄が国鉄の再建の基本構想案というものを五十四年の七月に出してまいりまして、昨年の十二月に予算作成時に国鉄の再建についてということができているわけでございます。  先生の三つの条件と申されるのは、ちょっと私の方でいま何かなと思っておるわけでございますが、国鉄の再建の基本方針といたしましては、国鉄の合理化とそれから国鉄の運賃値上げ、それから国の助成というものを三つの柱に国鉄の基本方針というものは挙げられるか、あるいはそのことかと思うのでございますが、それらについては十分国鉄の方で努力をしておる次第でございます。
  278. 神田厚

    神田委員 国鉄再建の基本方針は、責任のある経営体制の確立、それから労使関係の正常化、そして利用者、国民理解と協力、こういうのを前提にして再建をしようということでありますから、その中で言えば、一つには経営体制の確立はきちんとこれはもうできたのかどうか、それから利用者、国民理解と協力、これはきちんと取りつけられているというふうに判断をしているのかどうか、そういうような問題を考えていきますと、その辺のところは総裁としてはどんなふうにお考えでございますか。
  279. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもの経営を立て直します基本は、やはり国鉄自身の職員全体がそれに取り組む意気込みを持つということであろうかと思っております。その点につきましては、まことに残念ながらまだ十分行き届いているというわけにはいかないわけでございまして、昨年の七月に運輸省の方に基本構想案を出しまして以後、いろいろな機会をとらえて労使間でも話し合いをいたしておりますし、またその前に私どもの末端の管理者教育等をいま行っている最中でございます。これを確立いたしませんと、ほかのことはできないわけでございまして、今後とも全力を挙げてその体制を尽くしてまいりたいと思っております。
  280. 神田厚

    神田委員 今度の問題も、たとえば地方線の問題は運政審の小委員会の答申、これが基本になっているだろうと思うのであります。ところが、運政審の小委員会の答申が出たのは五十三年ですか、これから先の石油の事情等に大変また石油が値上がりをするというような状況がありますから、バスに転換をした方が有利だというような判断は五十三年度にはできたけれども、果たしていまもこの運政審が言ったような方向だけで地方線をバス転換にして責任が持てますか、どうですか。
  281. 高木文雄

    ○高木説明員 エネルギーと経営の関係でございますが、全体といたしましては、私どもは自動車よりもエネルギーの面から見て能率のいい交通手段だと考えております。ただ、いわゆる地方交通線につきましては、どうしても私どもの方は大変重い車両を走らせるわけでございまして、トラックあるいはバスと比べまして自重が重いわけでございまして、お客さんが少ない場合あるいは荷物が少ない場合には残念ながらバスの方がはるかにエネルギー的に有利だということは言えるわけでございます。したがいまして、運政審の御答申をいただきました後におきましても、つまりエネルギー事情がこう変わりました後におきましても、やはりお客さんの少ないところ、貨物の扱いの少ないところはバスに切りかえさしていただいた方が、私ども赤字の問題とは別にエネルギー効率という面でもいいわけでございまして、そういうことでありますので、御答申をいただきました時期と大分時間がたっておりますけれども、やはり交通量あるいは輸送量の少ない地域においてはバスの方が明らかに能率的であるということが言えると存じます。
  282. 神田厚

    神田委員 地方交通線の赤字は、すでに総裁も御存じでありますけれども、幹線赤字に比べれば非常に少ない。幹線赤字の方がむしろ問題なんですね。ということは、幹線赤字の解消については具体的な計画というのをもうすでにつくってあるのですか。
  283. 高木文雄

    ○高木説明員 御指摘のように、絶対額では幹線の方に非常に問題があるわけでございまして、幹線につきましてはいわゆる三十五万人体制と申しますか、私どもの企業努力を推し進めることによって損失額を小さくしてまいりたいと思っております。  ローカル線につきましてはすでに長年にわたりいろいろ工夫をいたしまして、地域の方には御迷惑でございますけれども、駅を無人化いたしましたり、あるいは駅業務を委託いたしたりいたしておりますので、もうすでに人手は減っておるわけでございます。幹線の方はどちらかというと、人手が多目であるために赤字でございますし、ローカル線の方は収入が少ないために赤字であるということでございますので、相互に全体として見ました場合に、幹線は幹線に対する対策をとり、ローカル線についてはローカル線に対する対策をとるということで、全体としてバランスのとれたものであるというふうに考えております。
  284. 神田厚

    神田委員 私はそういうふうな判断はまだ持てないのでありますが、特に、この経営改善がきちんとなされたという判断を持って、国鉄の経営改善についてこれは心配ないということで果たしてこの法案を出すことになったのかどうか、運輸大臣はどういう御感想でございますか。
  285. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 このたび提出いたしました法案につきましては、六十年度を目指して経営改善に努める、三十五万人体制を完全実施をする、労使協調してこの再建に対して協力をしてもらうというようないろいろな意味を含めまして、この法案を提出したわけでございます。何としてもこの法案を成立させて国鉄の再建を図りたい、かように考えておる次第でございます。
  286. 神田厚

    神田委員 昨年の委員会でも運輸大臣に対しまして質問をし、国鉄当局と運輸省当局がそういう意味では非常に意見が違いまして、それで最終的に法案提出まで至らなかったという経緯もあるのでありますが、私はいまの御答弁を聞いておりましても、やはり再建、経営改善の中身まできちんと詰めた話になっていないというふうな判断を持っておりますから、これらの問題については、特に地方線の問題につきましては再考をしていただきたい、私はこういうようなことを思っております。  ところで、高木総裁にあと一、二問御質問申し上げますが、基準となりますのはこれは政令で定めていくということでありますけれども、一説によりますと、一日一キロ当たり二千人以下という数字を基準とするとか、あるいはその対象が八十八線であるとか、そういうことが言われておりますけれども、そういうことはわれわれとしてはそういうふうに判断をしていいのかどうか、その辺はいかがでございますか。
  287. 山地進

    ○山地政府委員 今回の法律におきましては、政令で定める基準によりまして地方交通線というものを選定することになっております。したがいまして、政令をどういうふうにつくるかということによってどういう路線が決まるかということが決まってくるわけで、政令につきましては政府部内で検討し、さらに各方面の御意見を承りながらつくりたいと思っております。  ところで、いま私どもで考えておりますのは、一日一キロ当たり四千人以下の路線を特定地方交通線と考えておりまして、二千人以下の路線につきましては六十年までに廃止するということを考えております。その場合に二千人以下の路線というのが大体八十線区ちょっとということでございますが、これらにつきましては、最初に申し上げたとおり、政令をどういうふうに決めるかということによって変わってくる数字かと思っております。
  288. 神田厚

    神田委員 私どもも地元にいわゆる対象線と言われる真岡線、足尾線というのを持っております。昨日地元へ帰りましたら大変な問題になっておりまして、交通線の廃止の問題は単なる運輸省と国鉄だけで考えてもらっては困る、こういうことを言われております。通勤の問題から言えば労働省の問題だし、通学の問題から言えばこれは文部省だ。さらに広域行政の問題から言えばこれは自治省もこれにかかわってくるわけでありまして、一つの線を外すということは地域経済に対しまして非常に大きな影響を持つと同時に、いろいろな形で大変な問題になってくるわけでありますから、私どもとしましては、この交通線の廃止の問題につきましてはもっと慎重に地元との協議を重ねながら、地元の納得のいく協力の上でこれをすべきだ、こういうふうに考えております。特に高木総裁は新聞等で、北海道の方の反対が強ければほかの方にその廃止のしわ寄せがいくかもしれないというようなことを言ったとか言わないとかというふうに書いてありますけれども、そういうふうなことでは、ただどこかを切ればいいというような発想でありまして、そうではなくて、その地域その地域の必要とするものはやはり残さなければいけないわけでありますから、その辺をひとつ明快に御答弁をいただきたいと思います。
  289. 高木文雄

    ○高木説明員 いま運輸省が中心になって政府でおまとめいただきました案では、御存じのとおり各線区ごとに協議会を設けて、その協議会で関係者の方々にお集まりいただいて御相談願うということになっておるわけでございますし、いろいろな場面で都道府県知事が運輸大臣に意見を申し述べるというようなことがいろいろ規定されておるわけでございますので、大体今回の案は御趣旨のようなことになっていると言うことができると思います。これまで十年間何度もいろいろな問題で御迷惑をおかけいたしました。ただ、その場合にはもっぱら国鉄と地元の関係者との間でのお話し合いだったわけでございまして、それではかえっていろいろ摩擦が多くてできることもできないしうまくいかないということで、今回そういう仕組みにしていただいたわけでございますので、十分そこでのお話し合いができるような仕組みになりましたから、御心配のようなことは、いままでとは大分様子が違ってきているということを御理解いただきたいと思います。  また、今後の運用につきましても、われわれの仕事はいわば地域の足として重要な仕事でございますから、決して、われわれの立場といいますか、赤字、黒字だけで問題を考えるということでなしに、もう少し別の立場を含めて判断をするようなことでなければならないというふうに考えております。
  290. 神田厚

    神田委員 二年間地元と協議をして見切り発車をするということが言われておりますが、二年間でこれだけ、たとえば八十八線なり、さらにそれ以上になるかもしれないし、それ以下になるかもしれない。そんなことが一遍にできるわけはないのでありますから、ひとつ二年間の見切り発車という条項を、どうですか、もう少し弾力的に考える、あるいは撤回をする、そういうお考えはございませんか。
  291. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 この特定地方交通線は政令で決めるものでございますが、いまお話しのように、地方交通線の問題では地方住民の方々に与える影響は大変大きな問題があると思います。そこで協議会等をつくりまして、国、国鉄、地方自治体、警察、学識経験者等に入っていただきましていろいろ御論議いただくわけでありますが、国鉄の危機的な状態、国鉄の国に与える大変な財政的な大きな赤字というものもぜひ御理解をいただきまして、必ず現在の地方交通線にかわる足を確保するということを納得していただきましてこの交通線対策を進めてまいりたい、かように存じております。
  292. 神田厚

    神田委員 国鉄が赤字だということは理解しておりますが、なぜ赤字になったかという問題はたくさんあるわけですから、それは先ほど言った前提条件がきちっと整理をされなければだめだということでございまして、話は平行線でございますが、再考を促したい、このように考えております。  次の問題に移ります。  次に、北方領土の問題と、それからソ連軍の増強の問題について御質問を申し上げるのでありますが、私は昨年のこの委員会におきましても北方四島のソ連軍の基地の状況につきまして見解をただしたわけでありますが、防衛庁はその問題につきましてなかなかはっきりした答弁をしない。その後脅威論というものが非常に大きくなりまして、防衛庁の方の考え方も大分変わってきたようでありますけれども、北方四島の現情分析といいますか、北方四島には現在どういうようなソ連軍の軍事施設と軍事措置が配置をされておるのか、その点について明快に御答弁をいただきたいと思います。
  293. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 北方領土におきますソ連軍の動向につきましては、昨年、ソ連軍の色丹進駐がはっきりいたしました折に、十月二日に公表いたしました。その折に、北方領土におきますソ連軍は師団規模に近づきつつあるという表現で申し上げたのでございますけれども、その後増強は引き続き行われているようでございますし、それから建設その他も行われているようでございますけれども、表現といたしまして師団規模に近づきつつあるという点に関しましては、その後まだ変更する必要はないと存じます。  もう少し具体的にというお話でございますと、ソ連の一個師団、これは一万三千人でございまして、また戦車、火砲等定数がございますけれども、いまだ完全にその定数には達していないのではないかというふうに考えております。他方、ソ連の師団にない、軍団規模の百三十ミリ砲あるいは軍管区所属のハインドヘリコプターというふうなものも配備されておりますので、いま大体プラス・マイナスすれば師団クラス、そしてまた増強ができ上がった暁におきましては師団プラスの戦力になるのではないか、そういうふうに考えております。
  294. 神田厚

    神田委員 この前のこの問題の質問のときに滑走路の問題を質問したら、一九六〇年から全然拡張されてない、一メートルも拡張されてない、こういう答弁があったわけであります。航空写真等で公表されているところを見ますと、すでに相当量の改修がされているということが公表されているにもかかわらず、防衛庁としてはこの滑走路は一九六〇年以降全然改修をされてないというふうな判断をその時点で示されたわけでありますけれども、現在でもそうでございますか。
  295. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 滑走路周辺の施設の問題は別といたしまして、滑走路そのものの延長に関しましては未確認でございます。
  296. 神田厚

    神田委員 未確認であるというのは、昨年の私がここで質問をした時点から広がったかどうかが未確認なのか、それとも昨年からすでにもうわからなかったのか、それはどうなんですか。
  297. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 滑走路の延長というのは比較的外からわかりやすい性質のものでございまして、その意味で未確認ということは確認されるほどの大きな改良がなかったのではないか、そういうふうに考えられます。
  298. 神田厚

    神田委員 どうもこの滑走路の問題になると歯切れが悪くなるのですね。私はやはり明らかにすべきところはちゃんと明らかにすべきだと思っているのですけれども、なかなか本当のことを言ってくれないようでありまして、非常に残念でありますが、それでは防衛庁はこの北方四島のソ連軍の基地の性格についてはどういうふうな公式見解を持っているのか。さらに、歯舞諸島についてはソ連軍の軍事基地の進出はあり得ないのかどうか、どういう判断を持つのか、その二点について。
  299. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  申し上げるまでもございませんが、北方領土はわが領土であり、北海道にきわめて近いところでもございます。そういった意味から、ソ連の軍隊が配備されておることはまことに遺憾なことでございまして、わが国の防衛にとりまして重大な関心事でございます。昨年の当委員会でいろいろ御論議がありましたことを私は速記録で読んでおります。島嶼防衛的という言葉が出ておりますけれども、これは必ずしも意味がはっきりいたしておらないようにも考えるのでございまして、私どもはやはり極東地区全体におけるソ連軍配備というものとあわせてこれは考えていかなければならぬ問題だと思います。したがって、島嶼防衛的という言葉は、むしろ島嶼配備、極東における一環としての島嶼配備、こういうふうに考えた方が実際には合う、このように現在では考えておる次第でございます。
  300. 神田厚

    神田委員 歯舞の問題は……。
  301. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 色丹の問題は先ほど政府委員からお答えいたしましたが、歯舞の問題につきましては私どもどのように判断していいか、ただいまのところで御答弁を申す限りでないと申しましょうか、御答弁することはできないということでございます。わからないということでございます。
  302. 神田厚

    神田委員 徴候はございますか。
  303. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 それじゃ、これは政府委員から……。
  304. 神田厚

    神田委員 歯舞についてはわからない。わからないということは、配備をされるかもしれないしされないかもしれない、そういうことでございますね。
  305. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 いまのところは徴候はございません。また地積が非常に狭うございまして、それから良港にも恵まれないということもございまして、いまのところ徴候を認めておりません。
  306. 神田厚

    神田委員 地積の問題やそういう港の問題は変更できる問題です。色丹まで配備をされたということがどういうふうな戦略的、戦術的な意味を持っているのかという問題を考えていけば、当然歯舞はそのままでずっと軍事配備がされないでいるという保証はないと思うのですが、その辺はどうですか。
  307. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 おっしゃるとおり、ソ連の意図については予断を許さないものがございまして、私どもといたしましては、いまのところまだ徴候はないとしか申し上げられないわけでございます。
  308. 神田厚

    神田委員 ソ連の意図については予断を許さないという防衛庁の見解が初めて出ていますけれども、まことに予断を許さないような、わが国にとりましては何とかしなければならない問題でありますが、これの返還運動やその他に対しまして政府は非常に弱腰であります。特に、外務省はこの北方四島の問題につきまして、前の外務大臣であります園田外務大臣等は、一説によりますと、その当時大変新聞等にも書かれましたけれども、グロムイコ外相等との会談を通じて、北方のソ連軍、極東ソ連軍の増強が軍事バランスの上で好ましいというようなことを言ったとか言わないとか、こんなふうなことが言われておりまして、非常に物議を醸しました。外務大臣としまして、この極東ソ連軍の現況というのはどんなふうに御判断を持っておりますか。
  309. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 北方の三つの島に軍事基地が設けられ、それが増強されていることは重大な問題だと考えておりまして、これは潜在的脅威が最近増大しておるというふうに見ておるわけでございます。
  310. 神田厚

    神田委員 そうすると、いままで外務省は脅威だということを認めたがらないわけでありましたが、潜在的な脅威だということをここで認めているわけですね。総理大臣も脅威だと言っている。それから防衛庁も外務省も潜在的な脅威だと言っている。それでは、この潜在的な脅威をやはり取り除く努力をしていかなければならないわけであります。このソ連極東軍の増強というのは、その後SS20の配置、さらにはバックファイア、これが配備をされている、こういうことから非常に大きな問題になってまいりました。  そこで、官房長官にお尋ねをしたいのでありますけれども、この北方領土の返還とソ連の軍事基地の撤去の問題につきましては、すでに国会決議もされている、さらにまた国会決議がされようとしている。そしてアフガンのソ連の撤退については、あれだけ外務大臣あるいは日本の外務省、日本国は国連におきましても一生懸命雄弁をふるっている。ところが、日本の固有の領土である北方領土の返還問題につきましては、非常に消極的というか手をこまねいておる、そう言わざるを得ないのであります。  官房長官は、この北方領土の問題については非常に関心があるというふうな話を開いておりますけれども、私がいろいろ調べました結果、北方領土の返還問題につきまして、この北方の現状の問題につきまして、歴代の総理大臣が一度もこの地を視察をしていない、この地を見に行っていない、こういうふうに聞いておるわけであります。これはやはりいまこの時点でございますから、官房長官の方から総理に強く進言をして、北方領土の返還とソ連の軍事基地の撤去、そのためにも北方領土の視察をひとつ行っていただきたい。官房長官御自身の御経験等を入れながら御答弁をいただきたいと思います。
  311. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  実は私国会に出る前に水産庁の長官をしていたことがございまして、水産の面を通しまして北方領土、あの周辺の漁業で本当にトラブルが起き、拿捕されるということがございましたので、私は北方領土問題につきましては、非常な関心を持っております一人でございます。  段々の国会の御決議もあり、あらゆる機会に——この間もポリャンスキー大使が外務省に来られたときに、外務省からも北方領土の問題については警告を発したというふうなことがございますし、北方領土の返還は、私は本当に国民の悲願だというふうに思っておるわけでございます。それで、総理がみずから根室でございますか現地に行きまして、現地で直接関係者の方々から生の声を聞くということは非常に有意義であり、重要なことだと私は思っております。ただ総理、いろんな御都合もございますから、この問題は検討課題としてひとつ考えてまいりたいというふうに思います。
  312. 神田厚

    神田委員 大変時期的に、ソ連との関係もいろいろありますけれども、しかしながら、歯舞あたりまで軍事配備をされてしまう。それから、固有の領土に基地が固定化されて、永久基地になりそうである。こういうような状況がないわけではありませんから、ひとつ早い時期に現地の人たちの声も聞いていただいて、北海道の人たちは非常に不安に思っておりますから、そういう意味では、近い将来総理が現地視察ができるように、ひとつその点を御進言をいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  313. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いまもお答え申し上げましたが、いろいろ総理の御都合もあり、諸般の情勢もございましょうし、先生の御希望も伝えまして、検討課題として考えてまいりたいと思います。
  314. 神田厚

    神田委員 それからもう一つは外務大臣でございますが、アメリカは、北方領土は日本の固有の領土だ、こういうふうに何回も、四回ぐらい公式の場での発言を繰り返している。ところが、日本の方の外務大臣は、国連の場がその返還運動のために生かされていない。そういう意味では、今度は秋に国連総会がありますけれども、アフガンの撤退の問題を言うと同時に、日本の固有の領土におけるソ連軍の基地の撤去の問題、北方領土の返還の問題をもっと強く主張しなければいけないわけだと思うのですが、その点はどんなふうにお考えでございますか。
  315. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問にお答えいたします前に、一つ前の御質問で、園田前外務大臣が国連総会でグロムイコ外相に会いましたときの会談について、ソ連のこの地域における軍備強化は平和に貢献するという発言があったということを神田先生お触れになりましたけれども、これは事実に全く反することでございまして、確かに当時一部の新聞、雑誌等にそういうことが伝えられたようでございますが、会談の中ではそういうことば全然園田前大臣は言っておられないわけでございます。  それから、ただいまの国連の場におけるアピール、北方領土問題でございますが、これは昨年の十月の国連の第一委員会の軍縮演説におきまして、わが方の代表がこの北方領土の問題を述べておるわけでございまして、場所を選ばなければならない。つまり、国連の演説の場合には、二国間の紛争について直接発言するということが多少困難な場合もございますけれども、ただいま御指摘の点につきましては、次回の国連総会等も含めまして、適当な機会にできるだけ発言の機会をとらえるように努力いたしたいと思います。
  316. 神田厚

    神田委員 いままでやってないということはこれは怠慢でありまして、アメリカが日本の北方の島は日本の固有の領土だと一生懸命言っているのに、日本が黙っているという手はないのでありまして、それはちゃんと外務大臣自身が国連総会に行ってきちんと立場を主張してこなければいけない、そういうふうに考えますが、いかがでございますか。
  317. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その点は十分承りまして考慮いたしたいと思います。
  318. 神田厚

    神田委員 それでは、北方ソ連軍の基地の問題で一つ残された問題ですが、ソ連のいわゆるSS20の配置とバックファイアが配備されたということで、この極東ソ連軍の核の脅威というものをわれわれは感じているわけでありますが、防衛庁は、この極東ソ連軍の核の脅威についてはどんなふうにお考えでございますか、防衛庁長官からひとつ。
  319. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 核の配置につきましては大変重大な問題でございます。初めに防衛局長から一応お答えいたしまして、その後私から最終的にお答えしたいと存じます。
  320. 原徹

    ○原政府委員 極東地域にSS20あるいはバックファイア、そういったものが配備されるに至っているということにつきましては、やはりこれも極東ソ連軍全体の一環といたしまして潜在的な脅威の増大、そういうふうな認識でございます。
  321. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいま防衛局長からお答えいたしましたが、先ほど私もちょっと触れましたように、北方領土のみならず、極東におけるソ連の各種の配備というものは、核の問題も含めまして非常に強化されておる、これはもうはっきりした事実でございます。したがいまして、いわゆる潜在的脅威が増大しておると私はもう前回も前々回も申し上げておるとおりでございます。  これにつきまして私どもでどう対処できるかという問題でございますが、もちろん日本としましては、憲法あるいはその他の枠組みがございます。その中で私どもがどういう努力ができるか、また日米安保体制下にあるわけでございますので、この体制の中でどう対処していくかということ、これはもうきわめて大きな問題でございますので、われわれとしましては、どのように対処するかという点につきまして十分いろいろやっておるつもりでございますが、今後ともいろいろな点でやってまいらなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  322. 神田厚

    神田委員 そうしますと、いま防衛庁長官答弁を聞いておりますと、核の脅威もあるというふうに判断をしてよろしゅうございますね。
  323. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 潜在的脅威としてあると考えてよろしいと存じております。
  324. 神田厚

    神田委員 極東ソ連軍の増強は潜在的脅威だ、その潜在的脅威の中に核の脅威も含まれている、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  325. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいま申し上げたとおりでございまして、さように了解して結構だと思っております。
  326. 神田厚

    神田委員 それであるならば今度は、極東ソ連軍の潜在的脅威の中に核の脅威もある、それでは、その核戦略に対しまして日本はどういうふうに具体的な対処をするのか。これがきちんと対処がされなければ、日本国民とその生命財産を核の脅威にさらしたままにしておくということになるわけでありますから、それについてのきちんとした防衛庁の対応、対処の問題について御答弁をいただきたい。
  327. 原徹

    ○原政府委員 わが国の防衛体制でございますけれども、非核三原則がございまして、結局安保条約、アメリカの核のかさにすべて依存するというのがわが国の現状でございます。わが国の自衛隊はそういう核に対する対処力というものを一切持っておらない、これが現状でございますし、そういうためにわが国といたしましては、やはり安保条約の信頼性というものを維持し、増進していかなければならないと私どもは考えているわけでございます。
  328. 神田厚

    神田委員 それでは、具体的にお聞きしますが、この核の脅威が潜在的にあるという認識のもとで、アメリカと日米安保条約の中でこの問題について協議をしているのかどうか、その点はどうですか。
  329. 原徹

    ○原政府委員 一昨年以来ガイドラインというのができまして、いろいろの研究をいたしておりますが、そのガイドラインにおきましても核の問題は協議の対象にしないということでございまして、私どもはアメリカと核の問題について協議をいたしていることはございません。
  330. 神田厚

    神田委員 それでは長官、核の脅威があって、それで核から守る手だてを何にもしない、そのことについてアメリカと協議をしないということになりますと、これは非常に大きな問題になってまいりますね。
  331. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 私が申し上げるまでもなく、日本の防衛につきましては、日米安全保障条約の体制で守ってもらうという基本的な大きな枠組みでやっておるわけでございまして、私どもはこの安保条約を信頼し、アメリカの力を信頼しておる、かようなことでございます。
  332. 神田厚

    神田委員 それでは、仮に核攻撃がなされた場合にはこれはどうなんですか。
  333. 原徹

    ○原政府委員 まあ全体核戦略は、核のいわゆる抑止力ということでございまして、核攻撃がないことを、未然に抑止するというのが全体の核戦略でございますので、それによって抑止されるということが大事なわけでございます。したがって、抑止されるということが前提でわが国の防衛体制はできておるということでございます。
  334. 神田厚

    神田委員 そうしますと、極東ソ連軍の増強というのは、米ソの大きい世界的なバランスから言えば、非常にこれは米ソのバランスを崩す形になりますね。そうすると、そのとき抑止力というのは、ソ連軍の増強の方に力があるのでありまして、日本はそれではそのまま、さらされたままになってしまうという形になるわけでありますね。有効な対応策がなければ受け身だけでありましょう。長官、答えてください。
  335. 原徹

    ○原政府委員 確かに一国で防衛するということであればまさにそのとおりでございますから、どうしても安保条約が必要だということになるわけでございます。
  336. 神田厚

    神田委員 安保条約が締結された状況の中では、こういう極東のソ連の核戦略というのは一つのはっきりした形を持ってなかったわけです。だから、現在新しくそういうものが出てきた段階では、これはやはり核の問題に触れていかなければならないと思うのです。日本としましては、非核三原則、それはもちろん結構でございますけれども、せめてそれに対する大きな対応というのはもう持たなければならない時期に来ているというふうな判断を持つのですが、長官としてはどうですか、ずっとこのままにしておくのですか。
  337. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ソ連の極東における配備の強化とこの日本の防衛ということだけを切り離して考えるわけにいかぬ状態だと思います。ただいまの御質問の中にもありますが、世界的ないろいろな関連がバランスをつくっておると思います。これはもう世界各地で起こっておる状況がいろいろ変化してまいります。それによってバランスがいろいろ変化をしてまいっておる、かように私は考えております。したがいまして、核の問題についてのただいま防衛局長が申し上げた、日本は特別な立場にあるわけでございますから、ただいまはそういう状況でございますけれども、今後アメリカがこの問題に対してどういうふうに考えていくか、またわれわれとしてどういうふうにこれに対処していくかという問題については、今後の問題としてはこれは考えていかなければならぬ問題だと思っております。
  338. 神田厚

    神田委員 アメリカがどういうふうにするかという問題ではなくて、日本としては現実にそういうふうな核の中に入っているわけだから、日本としてどういうふうにしたいということをアメリカと相談しに行くのは、やはり日本の国ですよ。アメリカがどうするかということじゃないでしょう、それは。日本のことでしょう。どうですか、その辺は。
  339. 原徹

    ○原政府委員 確かに核の問題について、日本自体はすべてアメリカの核抑止力に依存をしているということでございます。現在の安保条約の信頼性をやはりそういう意味で高めていく、それ以外にわが国の防衛というのはないのではないかというふうに私は考えておりますので、ますます今後そのためにもわが国自体の防衛力、これはコンベンショナルなものでございますけれども、それの質的改善を図りつつ日米の防衛協力体制を充実していくというのがわが国の防衛で一番大切なことだ、そういうふうに考えている次第でございます。
  340. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 私どもの現在のお答えとしましては先ほどの言葉のとおりでございますが、御心配のような点ごもっともであると思いますし、今後ともそのような点につきましていろいろ私どもの方でも検討、研究もさしていただかなければなりませんし、また、国民の各界各層でも、国会でもいろいろ御議論をいただかなければならないことではなかろうかと、かように存じておる次第でございます。ただいまの状態では私は先ほど申し上げた以上の御答弁はできない、かように存じておる次第でございます。
  341. 神田厚

    神田委員 それではこの問題について、長官、最後に一つ聞くけれども、ソ連の核戦略について、あるいはこのSS20やバックファイアが配備されたということについて、日米安保の問題でアメリカとは一切協議をしてないわけですね。
  342. 原徹

    ○原政府委員 ただいまの段階まで、協議したことはございません。
  343. 神田厚

    神田委員 これは緊急な問題であるから、この問題について協議をする考えはありますか、長官。
  344. 原徹

    ○原政府委員 いろいろ日米間で防衛協力の問題は議論をしているわけでございますが、いま問題になっておりますのは、わが国のいわゆるコンベンショナルタイプの防衛力について非常に十分でないというところが問題の焦点でございまして、それをいまどうするかというのが問題でございます。将来核の問題ということについて議論することは——当分はいまのままであるというふうに私は考えます。
  345. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいま防衛局長からお答えいたしましたが、いずれにいたしましても核の問題はもうきわめて重大な、もう申し上げるまでもございません。ことに、わが国の置かれておる立場というものは、これまでも国会でもう長年にわたっていろいろ御議論もあります。したがって、私どもとしましては、この取り扱い、これに関する発言というものはきわめて慎重でなければならぬ、これはもう当然だと思います。おわかりいただけると思います。したがいまして、今後の問題につきましては十分私どもも研究、検討をさせていただきたい、かように私も先ほど申し上げたわけでございます。
  346. 神田厚

    神田委員 これ以上詰めてもきょうはどうもなかなか、考えも統一されてないようでありますから、この問題につきましてはこれで終わりますが、NATOは核委員会というものを持っておりまして、やはり核の問題についていろいろ対処をしようとしているようでありますね。NATO条約の中でそういう問題があるわけでありますから、当然日米安保の中でもこの核の問題は避けて通れない問題であります。ですから、その辺のところをひとつこれからの検討課題として日米安保の中で核の問題をどういうふうにするかという、そういう考え方を入れざるを得ないと思いますが、その点はどうでございますか。
  347. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  NATOにおきましてはそういう委員会があることも承知いたしております。しかし、NATOの場合と日米安保の場合とでは大変事情やらこれまでの経緯が違っております。神田先生の御意見は貴重な御意見として承らしていただいた次第でございます。
  348. 神田厚

    神田委員 それでは、この防衛の問題でもう一つ大事な問題は、日米の防衛協力の指針、ガイドライン、その中で共同対処の問題がありますね。それでたとえば、この間防衛庁が一部認めたバックファイア等の配備がされますと、日本のシーレーンと言われるあの中東からの輸送路の問題やその他が全部マラッカ海峡までカバーをされてしまう、そういう状況になってきておるわけでありますけれども、この共同対処、海上の防衛の分担というような善業で言われているところもありますけれども、それらの問題についてはどういうふうに話し合いが進んでいるのか、あるいは日本としてはどういうふうな対処をしようとしているのか、その点はいかがでございますか。
  349. 原徹

    ○原政府委員 ガイドラインに基づきましてただいま研究が進められているわけでございますが、ガイドラインにもありますように、わが国の海上自衛隊は周辺海域において主として作戦をするという前提でございます。そういう見地でただいま鋭意検討をしているわけでございますが、そういたしますと、たとえばマラッカ海峡というようなところ、現在は周辺数百海里、航路帯で千マイルというところを海上自衛隊で整備の方針としてそういうふうにやっておるわけでございます。能力的にとてもマラッカ海峡というところまでは行けないわけでございますので、そういたしますと、これもやはり日米安保条約によりまして第七艦隊の機動力というものに依存をする、こういうことになるわけでございまして、ガイドラインの研究では周辺海域において海上自衛隊が行動するという前提での研究が進められているわけでございます。
  350. 神田厚

    神田委員 これはアメリカの方からもたらされた情報で、日本の海上自衛隊の分担を拡大しろ、グアムからフィリピンの周辺まであるいはしなければだめだというような要求が出ているというふうに報道もされているわけでありますね。ところで、そういう海上自衛隊のいわゆる分担拡大の問題もありますけれども、それと同時に周辺といういまの言葉から、やはりいま私が話したような形でアメリカから現実に自衛隊の海上分担の拡大をしろという要求は明確に出ているのでありますか。
  351. 原徹

    ○原政府委員 シーレーンの長さを長くしろとかそういうことではございませんので、一般的にわが国の防衛力、特に海上防衛力と防空能力、そういったものについての改善の要があるのではないか、そういう趣旨の意見はございますが、シーレーンの長さをどうするというようなことは特別ございませんわけでございます。
  352. 神田厚

    神田委員 これはまだ詰めている段階ですから、どんなふうに拡大していくかわからない問題でありますね。しかし、現実にそういう要求があるということは事実でありますね。そして、時間がありませんので続いて申し上げますが、たとえばソ連のバックファイアが極東に配備されたということでマラッカ海峡までこれが一つの制空権を持つということになりますと、いわゆる海上有事の際日本の自衛隊はどうするんだという問題がいつも出てくるのでありますけれども、この点についてはどうでございますか。どういうふうに対処をするのか。
  353. 原徹

    ○原政府委員 その点先ほどもお答えいたしましたように、わが国は周辺海域を中心に作戦をするということが前提で日米共同対処の研究を行っているわけでございますので、現実的には能力もございませんし、そういうマラッカ海峡、インド洋というようなことになりますれば、それはアメリカの第七艦隊の機動部隊の抑止力に依存する、そういうことになろうかと存じます。
  354. 神田厚

    神田委員 この問題で長官どうですか。
  355. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 航空機でも艦艇でも、その他いろいろな武器と申しますか、日進月歩で進むわけでございます。したがいまして、そのような状態にどう対応していくかということでございますので、私どもとしましてはバックファイアの問題だけに限らず非常にたくさんな問題を、言うならば国の防衛という見地からは与えられておるということ、これは間違いがないことだと思います。それに対しまして、このような状態でいいのかどうかということになるわけでございますので、私ども基本的には、先ほど申し上げましたようにアメリカの力に頼っておるわけでございますが、わが国といたしましても防衛力の基本計画の中で、質的な向上、そういうものをやっていく以外にはただいまのところではない、かように存じておりますが、そういう問題につきましては今後とも国の防衛の責任ということからは十分考えていかなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  356. 神田厚

    神田委員 まだちょっと不十分でありますが、時間の関係でこの北方問題につきまして終わりまして、次にレポ船問題、非常に時間が少なくなりましたが、これにちょっと触れさせてもらいたいと思います。  このレポ船問題が出まして、非常にショッキングな衝撃を国民に与えたわけでありますが、さらに問題なのは、公安調査局等がやはりこの問題に絡んでいたという問題がございますね。それで、一体レポ船というのはどんなふうな実態で、今後公安調査庁は、私はもうこのレポ船を使った情報収集はすべきではないという判断を持っているのでありますけれども、その辺につきましてはどういうふうに考えているのか。レポ船の実態とそれから公安調査局の調査の問題について簡単に御答弁いただきたいと思います。
  357. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公安調査庁長官を呼んでおりますので、すぐお答えいたさせます。
  358. 山室章

    ○山室政府委員 お答えいたします。  私どもは、情報収集と申されますが、破防法二十七条に基づくものでございまして、やはり同法に当たる疑いのある団体とその活動、活動の場である国内の公安情勢及びこれに影響を及ぼす国外からの働きかけの実態などを把握するためのさまざまの情報資料を入手して整理分析する、そのような仕事を通して公共の安全の確保に寄与するということでございまして、やはり私どもこれまでの北方水域で拿捕される漁船が増加したころからこれを知っておりましたが、有効な情報、かなり価値のある情報が手に入ったものと考えております。
  359. 神田厚

    神田委員 今後とも続けるつもりですか。
  360. 山室章

    ○山室政府委員 私どもは合法な範囲で今後とも必要に応じて調査は続けるつもりでおります。
  361. 神田厚

    神田委員 やっていることは非常に不正なんですよ。魚をとらしてもらうために情報を持っていったりする。そんなことは、もらう情報なんて少ないわけです。魚をとるために、もうすでにそれで済んでいるわけですから、さらに何か持っていってもらってこようというのはこれはありませんから、十対一くらいの割合でだめな情報でありますね。私はやはり漁船員の人たちにそういうことで精神的な堕落をさせない方がいいと思う。それはやはりもうやめた方がいいです。  それから農林大臣、お見えでございますが、和晃丸の事件で、これは再び漁業許可が出るようでありますと私は問題だと思うのです。大体関税法と検疫法でつかまえているということ自体が問題ですから。関税法と検疫法でつかまえているということは、北方四島は外国の領土だというふうに判断をしているのかという問題にもなりますし、そういう意味ではどうですか、ひとつ少なくとも和晃丸のような行為をしたものには操業許可は出さないというふうなことができますでしょうか。
  362. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもの所管しておる範囲では、漁業法並びにそれに関連する法律の範囲内でございまして、いまいろいろ御指摘になったようなことで私どもが許可を与えるかどうかという点は、これは大変むずかしい問題だと思います。ただ、今回の和晃丸の問題につきましても、これはまだいま捜査中でございますから、その捜査の結論が出たところで、許可者は北海道知事でございますから、北海道知事の判断でやっていただくわけでございますけれども、少し聞いておるところでは、何かタラの許可はとって行ったようでございますが、実際にはカニの捕獲をしていたということもあるようでございまして、万が一それが事実であれば、たとえばカニの捕獲については許可をとっていないわけでございますから、そういう点では場合によれば許可の取り消しということはできるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、司直の手でいま捜査されているわけでございますので、その結果を見て判断をするように、あくまで漁業法というのは魚族資源保護、また漁業の秩序維持、こういう観点で運営されている法律でございますので、その観点で私どもはひとつ北海道知事に十分しっかりした判断をするように指導してまいりたいと思います。
  363. 神田厚

    神田委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、レポ船問題は、レポ船の実態もわからない、それから何をやっているのかもわからない、全然わからないのですね。それで、どこの省庁が責任を持ってこのレポ船の問題に対処するかということも決まっていない。私は質問する段階でいろいろ聞いたんですけれども、各省庁でどこがこの問題について対応していいかわからないという問題があるようでありますから、どうかひとつ各省庁でこのレポ船問題についての一つ関係機関をつくって、不法な操業をやらせないように、不法というのは、魚をとりに行くことは構いませんけれども、情報を持っていって魚をとってくるというような、そういう日本人としてあるまじきことをさせてはいけないという問題もありますから、関係各省庁でひとつ協議をして、このレポ船等の問題についての協議機関をつくって、きちんと指導を強化するように要望したいと思うのですが、いかがでございますか。——こういうように話をしてもなかなか答弁ができないような状況がこのレポ船問題の実態なんです。ですから、その辺のところ、きょうはだれでも、代表者でひとつやってください。
  364. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題は各省にまたがりまして、官房長官の所管だと思いますが、現在おられませんが、外務省関係も各省とこの問題を相談しております。いまの御指摘の点については、確かにはっきりした中心がないということは事実のようでございますので、政府の方としても早急に対応したいと思います。
  365. 神田厚

    神田委員 難民問題も通告しておりましたが、時間の関係でちょっとできませんので、これできょうの質問は終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  366. 田村元

    田村委員長 これにて神田君の質疑は終了いたしました。  この際、去る十六日の山原君の保留分の質疑を行います。山原健二郎君。
  367. 山原健二郎

    ○山原委員 予算修正の一つの焦点である四十人学級の問題について質問をします。  文部省が五十三年度に行った学級編制及び教職員配置等の実態調査結果を質料として要求いたしましたが、とりあえず「学級編制の改善(四十五人→四十人)に伴う教職員定数増及び増設所要教室数の見込数」が送られてきました。お配りしてあります最後のものが文部省から送られましたものです。もちろんこれは一応のめどを示したものであり、財政状況等を勘案し、弾力的に決定するとの備考がついておりますが、文部省の腹案とも受け取ることのできる、初めて出てきた十二年間の年次計画でありますので、これに基づいて質問をいたします。  これによりますと、まず第一番に、十二年間に四十人学級を行うに当たって、教室の増が八千三百六十教室となっております。これは学校数ではありません。教室数です。これは金額にいたしますと約千六百億円だと思います。ところが、この千六百億円を十二年間でやるわけでございますから、財政支出の面から見ますと、ことしだけでも二千三百二十億円の教室増、建築費が出されております。これに比べますと、大蔵省にとりましては財政支出はきわめて少額になるということが明らかになります。  次に、教職員の増でございますが、四十人学級にするために、この資料に出ておりますように、四万三千百四十二名でございます。ところが、私が二枚目の資料に出しておりますように、生徒減に伴うところの教職員の減が三万七百四十七人でございます。これを差し引きいたしますと、教職員の増はきわめて少数になるわけであります。たとえば昭和六十六年度を調べてみますと、増員が三千九百五十九人となっておりますけれども、一方教職員の減は実に一万一千四百七十三人であります。しかも、やめる方は高給取りの方がおやめになり、新しく入る方は若い方が入るでございましょうから、教職員の増につきましても大した国の財政支出とはならないし、むしろ今日まで毎年一万五千人程度の増を続けてきた経過から見まするならば、大幅な支出の減となります。財政的に見ましても大変な少額になる可能性を持っております。  したがいまして、一年でも早く四十人学級の実現のために努力すべきだとこの資料を見まして思うのでございますが、文部大臣といたしましては、十二年間などと言わずに、一年でも早くこれを完成する努力をすべきであると思いますが、文部大臣決意伺いたいのであります。
  368. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えをいたします。  児童生徒の一人一人の能力に応じた、適性に応じた教育をやることが大切であると私たちは考えておるわけでございます。そういう状況で、厳しい財政状況でございますが、その点を踏まえまして、また国会、委員会等での御決議、いままでの経緯がございます。そういうことを踏まえまして、初年度として五十五年度からいよいよ始めよう、こういうことでございます。これは、財政の厳しい状況でございますので、財政の問題も十分考えながら実施をしていかなければならないことでございますので、新しい施設も必要でありますが、既存の施設を利用することも十分考えていかなければなりません。  そういう立場から、この前も御答弁申し上げましたけれども、五十八年度以降認められる児童生徒の減少がある地域ずっと出てまいります。そういうことで、人口が増を見ないそういう地域、生徒増が見込まれない地域約一千町村につきまして五十五年から五十六年、五十七年とまず始めて、そして施設等も既存の施設でやれるものをまず選んでやっていこうという考え方をとったわけであります。五十八年度以降は、いま申しますような生徒数の減の問題も生じてまいりますから、それに対応いたしまするいわゆる教職員の減の問題と、この四十人の学級制度から来ます教職員の増、これは必要な増がございます。それとにらみ合わせながら計画を進めてまいろうということで、文部省といたしましてのほぼの計画をお手元にお届けいたしたわけでございます。  したがいまして、その両方のにらみ合いをしなければなりません。したがいまして、十二年の計画ということにいたしたわけでございまして、文部省といたしましては、この十二年計画は変更することなくやってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  369. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がありませんが、いまおっしゃったわけですが、十二年間を変えるつもりはないということですけれども、私は、財政上から見まして、文部省の出された案から類推をしましてできるという確信を持っています。  たとえば、文部省の出されております、これはT市の場合ですが、五十八年度から生徒減に基づいてやってまいりますと、昭和五十九年からもうほとんど教室を建てる必要もなくなってくるわけですね。したがって、教職員の増がありますが、それも大したことではありません。なぜ文部省が十二年間に固執するかといいますと、五十八年度から小学校一年生をやる、その次には二年生、三年生、四年生、こうなっていきますと、小学校で六年かかる、その後で中学校一年、二年、三年とやりますから、中学校三年間で合わせて九年、しかも最初の五十五、五十六、五十七は生徒増のときだからやらない、こういうことで十二年という案が出ておるわけでございますが、これが学年進行方式だと思います。けれども、たとえば一年生、二年生を一挙に四十人学級にすることだってできるわけです。これが仮に大蔵大臣との間の確認事項を弾力的というふうに解釈をするならば、一年でも早く解決することは、私は財政的に見ましてもきわめて可能であるという確信を持っています。  そういう意味で、あえてもう一度お伺いをいたしますが、文部大臣としましては、九〇年代にまで手が届くような計画ではなくして、大平総理大臣が申しておりますように、子供は未来への使者であると言うならば、それだけの決意をもって臨むべきではないかと思います。あくまでも十二年に固執するならば、私はこれは当然修正しなければならぬ、こういう考えを持っておりますので、あえてお伺いをいたしたいのであります。
  370. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 委員も御指摘になっておりますように、生徒の自然増という基本的な問題がございます。これに対応いたしましての教職員の増加あるいは減の問題あるいはその施設の問題、こういうものをずっとかなり長期的に見まして、その間に余り大きな変化のないようにやっていくこともまた必要だと私は考えておるわけであります。そういう観点から、先ほど申しましたような方策をとりまして十二年間という計画にいたしたわけでございまして、そこらの事情も十分ひとつ委員にも御了解を願いたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  371. 山原健二郎

    ○山原委員 納得しませんが、時間が参りましたので、これで終わります。
  372. 田村元

    田村委員長 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  この際、去る十九日の土井たか子さんの質疑に関し、環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。土屋環境庁長官
  373. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 土井先生御指摘の、本年一月十一日、関西経済団体連合会における当庁配付説明資料の内容に、環境行政を推進する立場にある者として、環境影響評価法案の制度と公害健康被害補償法の見直しを取引するがごとき印象を与える等、穏当を欠く表現がありましたことにつきましては、ここに深くおわびを申し上げる次第であります。  私といたしましては、環境影響評価法案の国会提出を最優先課題とし、全力を挙げて努力する所存であり、これと公害健康被害補償法の見直しとは全然別個の問題であることをここに明言いたしますとともに、環境行政全般についても前向きに努力をいたすことをお誓いいたします。  なお、本件の責任者たる金子企画調整局長に対しましては厳重に注意をすることにいたしております。
  374. 田村元

  375. 土井たか子

    ○土井委員 大臣のお気持ちはわかりました。  そこで局長。この関経連を初め、その他財界に対してお出しになった資料というのを、これは回収されますか。回収されて改めてきちんとした正しいものを配付されるというふうなことをなさいますか、いずれでございますか、どうですか。
  376. 金子太郎

    金子政府委員 早急に回収する等、善後措置を講じたいと考えております。
  377. 土井たか子

    ○土井委員 回収はわかりましたが、善後策として新たにきちんとしたものを出すというところまでお考えになっているのですか。
  378. 金子太郎

    金子政府委員 出す方向で検討いたしたいと思います。
  379. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それはもちろん当方に対しましてもその中身をきちっと提出されてしかるべきだと思いますけれども、必ずこっちにも提出できますね。
  380. 金子太郎

    金子政府委員 提出いたします。
  381. 土井たか子

    ○土井委員 さて、この問題の環境アセスメント法というのは、そもそも住民の要求から出発して、その実現が待たれているところでございます。したがって、立法の趣旨も住民の要求、立場を生かして、その期待に沿うものでなければならないというふうに私どもは考えております。  長官、私たちもこのことに対して大変努力の重ねをいたしまして、今回も社会党案をアセスメント法案として国会に提出するという、この予定をきちっと持っておりますが、しかしここでおよそ四つの基本的な点というのを今回政府としてもお考えいただいて、それを法案の中でひとつ生かすべく努力を払っていただきたい、このことをひとつ申し上げたい。  その一つは、やはり基本的には情報公開という問題ですね。それから、制度の中で住民参加を強化、確立するということですね。それから、何としても大事なのは評価の問題ですが、第三者機関による評価、この問題ですね。そして先日やはり討議の中でこの問題を論点として取り上げましたが、自治体の自主性を尊重する、自治体の自主性と条例を尊重するという基本姿勢を曲げない。この四つの基本的な点を私は申し上げましたけれども、この点が認められないようなアセス法というのはアセス法に似て非なるものだと実は住民の立場からすれば言わざるを得ないんですね。一日も早く望ましいアセスメント法の成立を国民は望んでおります。国民はもとより、世界に目を向けました場合にも、OECDを初め各国が注目をいたしております。いま予見的な環境政策というものは、環境政策の中心課題として問われているということを十分に長官としても認識されまして、今後この期待にぜひこたえていただきたいと思うのです。長官のこのたびの切なる御決意というものを私も評価をいたします。その決意をひとつ望ましいアセスメント法に向けて、その実現を期して、真っ当な環境行政を確立するためにもひとつ御努力されんことを心から望みまして、もう一度長官の、この私が挙げた問題点に対して確認させていただく御答弁をお願いし、私の質問を終えたいと思うのです。よろしゅうございますか。
  382. 土屋義彦

    ○土屋国務大臣 お答えさせていただきます。  まさしく先生の御指摘のとおりでございまして、環境庁といたしましては中公審の答申に沿って、ただいま関係省庁と鋭意努力をいたしておる次第でございますが、先生の御意見大変貴重な御意見でございますので、いろいろと勉強させていただきたいと思います。
  383. 田村元

    田村委員長 これにて土井さんの質疑は終了いたしました。  この際、本日午前中の阿部君の保留分の件について質疑を行います。川俣健二郎君。
  384. 川俣健二郎

    ○川俣委員 先刻の医療経済実態調査薬価基準関係資料の問題ですが、これはわが党の問題だけではなくて、各党が非常に関心がある、医療関係がすべて、この問題なかりせば恐らく与党・政府の方も医療問題の根本を審議するのにどうにもならない。ただ、これがある団体に出すな、国会に出すな、それから協議会もこのとおり不幸にして中断しておるわけですから、大変時間が遅くなりましたが、質問に入らせてもらう前にどうしても確認をしておきたいと思うのであります。  一般質問の処理は全部きょうやるという理事会の確認もありましたが、せっかく委員長のお骨折りで理事会でいろいろ検討した結果をここで確認しておきたいと思うのですが、問題は、まずいま中断されておる中医協をこの予算委員会の名のもとにとにかく早急に開く、こういうところから始まらなければならないので、委員長にいろいろとお骨折りいただいたやに伺っておりますが、関係三団体、いわゆる医師会、歯科医師会、薬剤師会、この三団体に早急に開くべく要求、配慮していただけるかどうかをまず委員長確認しておきたいと思います。
  385. 田村元

    田村委員長 委員長は、中医協開会実現のために、各方面に対し、誠心誠意万全を期して訴える所存でございます。
  386. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、担当の厚生大臣伺いたいのですが、その中医協の結果資料に基づいていろいろと厚生省の作業も進めなければならない、公表もしなければならないという作業があるわけですが、これを委員長のいまの御努力を受けてそのように約束できるかどうかを確認したいと思います。
  387. 野呂恭一

    野呂国務大臣 中医協につきましては、速やかに開会するようにいたします。
  388. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで問題は、さっきから質問者がくどく言われておるのは、一体いつまでに出すのかという問題になったわけであります。そこで、医療問題を審議する社会労働委員会でも従来しばしばこの問題で論議があるわけです。ところが、それを審議する社会労働委員会健康保険法が付託され、きのう提案理由の説明を聴取したやに伺っております。提出されております。  そこで私は、最後に事務当局に確認したいのは、これらの資料健康保険法改正の実質的な内容審議に入るまでに提出できるかということを確認しなければ、私は質問を続けてもむだだなというふうに考えまして、あえて三つ目を確認して私の質問を終わります。
  389. 石野清治

    石野政府委員 中央社会保険医療協議会の中断のためにこのようなことになっておりますことにつきましては、まことに遺憾に存じます。中医協の早期開催を図りまして、その上で資料健康保険法の御審議に間に合いますよう提出いたしたいと存じます。
  390. 川俣健二郎

    ○川俣委員 終わります。
  391. 田村元

  392. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いま確認しましたけれども中医協のこの資料は余り手を加えないで、国会用だなんという手を加えないで出してくださいよ。  そこで、大臣の基本的な姿勢についてもう一度確かめておきます。  一つは、現在日本医師会の拒否によってストップしたり停滞しておるこういう問題は、もう大臣責任を持って処理をしていただく。いま御答弁がありましたように中医協も開くということでありますから、今後もさらに進めていただきたいと思います。  また、次には医療指導監査官、この予算関係でありますが、中央では五十四年二名、五十五年四名。ところが地方では五十四年に十九名、五十五年に三十三名、こうなっておるのだけれども、実際はこれは余り機能していないようだけれども、やはりこれはきちんと国民のために機能するように大臣から指導をお願いしたいと思います。特に日本医師会はこの指導を拒否しておる。こういうことは実際許されないことでありまして、お互いにわれわれも医師という職業は尊重する。ある意味では一般の中小企業とはまた違う、人間の生命を預かる、そういう点でわれわれも尊敬をする。だけれども国民が納得しないようないまの形では困るのでありまして、それを厚生大臣はもっと責任を持って行政を進めていただきたい。  次には、政管の医療費通知は、昭和五十四年度は一般資料の送付二億九千万円、五十五年度は個人あての通知四億八千万円を実施する、こういっておるのであります。予算を組んでおるのでありますが、これは大臣保険者としてきちんと指導し、期待に沿うようにやってもらいたい。  次には、医薬品の薬効作用に対し、薬理作用について日本医師会のいろいろないちゃもんがついたりするそうでありますけれども、これはまた大臣がもっときちんとしてこれを進めていただきたい。  そして次には、指導監査の申し合わせ、いわゆる三十五年の申し合わせ、これはもう情勢も変わっておるのでありますから、これを破棄して、厚生省国民の期待するような行政を進めていただきたい。  以上、いろいろ申し上げたが、大臣の御見解をお願いしたいと思います。
  393. 野呂恭一

    野呂国務大臣 まず第一点は医療事務指導官についてでございますが、昨年の十月に設置要綱を通知いたしまして、十二月には運営要綱を通知し、その活動に万遺憾なきを期しておるところでございます。都道府県におきましても、この通知によりまして関係団体との間において円滑な運営について協議を進めておるわけでございます。その執行につきましては、今後支障のないようにいたしてまいりたいと思っております。  なお、医療事務指導官をすでに設置しております県は十九県でございます。まだ設置できてない県四県はございますが、これは人事上の都合によるものでございまして、既設いたしております十五県のうち、すでに活動を開始している県は十四県ということでございます。今後この仕事が十分円滑に執行できますように督励をいたしてまいりたいと考えております。  第二に、政管の医療費通知の問題でございますが、五十五年度予算におきましては、特に被保険者などの指導に必要な経費として四億八千万が計上されておるわけでございます。その一つは、被保険者に対して、被保険者の世帯における一カ月分の医療費の状況を年一回通知する、また事業主に対しまして、事業所における医療費の状況を年一回通知するということでございまして、被保険者のこうした指導につきましては十分この仕事を進めてまいりたいということでございます。日本医師会の了解を得て行うという性格のものでないというふうに考えておるわけでございます。十分その指導啓発に尽くしてまいりたいと考えております。  三番目の薬効表示の問題でございますが、このことにつきましても、薬事法に基づいて厚生大臣が承認を与えておる医薬品の効能効果の問題でございますので、十分支障のないように進めてまいりたいと考えております。  それからもう一つ、指導監査の問題でございますが、いろいろこのことについて申し合わせがあったではないかということでございますが、これはいままでにもお答え申し上げておりますとおり、指導監査を円滑に執行させるための話し合いが必要であろう、こういうことでの問題でございまして、決してこれによって指導監査が妨げられるというものでないと考えておるわけでございます。したがいまして、政府といたしましては指導監査の強化を十分徹底をいたしまして、不正請求その他不当診療につきましては一層この指導監査を積極的に実施してまいりたいと考えておるわけでございます。  以上でございます。
  394. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いろいろ申し上げましたが、何といっても今日医療費というのは、たしかこれは五十三年の数字だと思うけれども、十一兆を超えておる。そしてそのうち薬代が四〇%くらいある。そうしますと、四兆四千億だ。そのうちの約半分が水増しで、薬づけで使われるなんということになったら、これは大変な金額ですよ。そのうちのまた半分にしたところで、これは薬代をきちんとするならば、お医者さんの技術料を上げてみたって健保赤字になるわけがない。大蔵大臣、三K赤字、三K赤字という宣伝はもうわれわれは耳にたこができるほど聞かされてきたんだけれども、やることをちゃんとやれば健保赤字なんというものは、昨年が百五十億ですか、そんなものはすぐ吹っ飛んでしまう。だから、やることをちゃんとやってくださって、その上でなおかっこの健保がどうしても赤字で動きがとれないというならば国民も納得するはずであります。しかし、それなしに、いまのような姿でこの薬代の二分の一を負担してくれとか、やれ健康保険料を引き上げてもらいたいなんと言ってみたって、われわれも責任を負えないし、私は国民も納得をしないと思うのでして、そういう点で厚生大臣の御努力をお願いしたいと思うのであります。  私は一つは、大製薬メーカー、これはべらぼうにもうけ過ぎておる。皆さん資料をお願いしたけれども皆さんなかなか出してくれない。ひどいのは塩野義さんなんか、有価証券報告書を見ますとこういうことなんだ。研究費のうちに引当金繰入額は次のとおりだ。賞与引当金だとか退職給与引当金なんというのまで研究費の方へぶち込んで、税法上はこれはいいかもわからぬ、構わぬけれども、しかし研究費はこれだけよけいかかりましたよと宣伝をしておるけれども、その中身は退職給与引当金なんかまで入れて、それで研究費がかかりました、薬代をここまでせにゃいかぬみたいなことになったら、これはどうしようもない。  その上に、この数字を見てまいりますと、これは日銀の調査ですが、それでいきますと、全産業の経常利益率というのは大体二・四%ぐらいだ。ところが大手製薬九社は一一・七%ですよ。高いのは一八%もあるのですよ。メーカーで一八%ももうかるなんというのは、まあ薬九層倍と言うけれども、薬屋ぐらいなものです。総資本の利益率はと言えば、全産業が二・九%に対して製薬九社は一二・三%で四・二倍ですよ。こういうことをいま何も皆さん調査をされないで、そうして薬屋は、大メーカーはぼろもうけをする、卸売はそれなりにもうける。お医者さんのところへ行くと、また患者に渡るとき二倍、三倍になる。そうしてこれだけの経費がかかる。それを国民負担させるのでありますから、その辺はもう少し私は真剣に考えてもらいたいと思います。  時間が来ましたので、私、いろいろ本当は大蔵省にも質問を用意したのでありますけれども、あと大原さんの関連質問で終わりたいと思います。
  395. 田村元

    田村委員長 大原君。
  396. 大原亨

    ○大原委員 一般質問が最後だということですから、スモンの問題で、スモン救済は非常に緊急性を要するわけです。二問だけ質問いたすのですが、一つは、厚生大臣。  昨年の九月の十五日に、関係者による確認書ができたわけですが、これには厚生省も調印をいたしておりまして、年内に速やかに一括解決をする、こういうことになっておりまして、そうして私ども社会党も、当時の橋本厚生大臣の要請もありましたし、やはり被害者がばらばらになっておってはいけないということで、原告団の取りまとめ等についても鋭意協力をいたしまして、全面的にこの解決に当たって努力をいたしました。それぞれわれわれと厚生省との間においては約束があったわけですが、それらの問題を履行していないということはきわめて遺憾であります。本委員会におきましてもいろんな質問があったわけですから、この問題について改めて、厚生大臣といたしましての早期一括解決についての決意をひとつ御答弁いただきたい。
  397. 野呂恭一

    野呂国務大臣 スモン問題の早期解決を図りますように、私は就任早々から今日、連日にわたって事務当局を督励いたしておるわけでございまして、私自身も政治的立場におきまして速やかに解決をいたすべく最善の努力を払う決意でございます。
  398. 大原亨

    ○大原委員 第二の質問は、問題は、これは新しい問題の提起の仕方ですが、既判決の患者に対する早期の解決という問題は努力をすればできるわけです。この問題は、もちろん基金が発足いたしまして、基金の運用の問題もあるわけですが、ですから、厚生省だけでなしに大蔵省もこのことを理解をいたしまして協力しなければできないわけです。その点について、私は、もう少し大蔵省が誠意を持って決断をしながら協力をすることに欠くるのではないかというふうに思っておるわけです。そういう点では、厚生大臣にまず御答弁いただきまして、既判決の問題についてはたくさんを申し上げませんが、いろんな内容があるわけですけれども、この問題を解決するということが一歩大きな前進ですから、これを速やかにやってもらう。というのは、月のうちぐらいをめどにいたしましてやってもらうということについて厚生大臣の見解をお聞きいたすと一緒に、これは大蔵大臣と言いましてもなんですから、一番事情をよく知っておられる主計局長の方からあわせて御答弁いただきたい。
  399. 野呂恭一

    野呂国務大臣 既判決着の和解の問題につきましては関係機関と協議をいたしますが、速みやかにこの問題についても解決をいたしたいと存じております。
  400. 田中敬

    田中(敬)政府委員 すでに判決を受けられましたスモン患者の方々の救済の問題につきましては、厚生大臣厚生省と十分協議をいたしまして速やかにその解決を図りたいと存じております。
  401. 大原亨

    ○大原委員 これで終わりですが、申し上げましたように、既判決の問題をいろいろ考えてみましたが、速やかに処理するということは、月内にもやろうと思えばできますから、準備はできておるわけですから、その問題を含めまして全面的な一括解決をやって、歴史的な薬害事件ですから、この問題を政府は誠意を持ってやったということを通じまして、薬務行政や医療行政について新しい出発をしてもらいたい、こういうことでございまして、そのことを強調いたしまして終わります。
  402. 田村元

    田村委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、一般質疑は終了いたしました。     —————————————
  403. 田村元

    田村委員長 この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  昭和五十五年度総予算審査のため、五個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(ただし経済企画庁及び国土庁を除く)及び法務省所管並びに他の分科会の所管以外の事項  第二分科会は、外務省、大蔵省及び文部省所管  第三部科会は、厚生省、労働省及び自治省所管  第四分科会は、経済企画庁、農林水産省及び通商産業省所管  第五分科会は、国土庁、運輸省、郵政省及び建設省所管 以上のとおりにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  404. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、分科会の分科員の配置及び主査の選任、また、委員の異動に伴う分科員の補欠選任並びに主査の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  405. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言の要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  406. 田村元

    田村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十三分散会