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1980-02-20 第91回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月二十日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田村  元君   理事 小此木彦三郎君 理事 瓦   力君   理事 小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君      稻村左近四郎君    越智 伊平君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    小山 長規君       近藤 元次君    塩崎  潤君       田名部匡省君    田中 龍夫君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       福家 俊一君    藤尾 正行君       藤田 義光君    松澤 雄藏君       村山 達雄君    阿部 助哉君       稲葉 誠一君    大原  亨君       川崎 寛治君    兒玉 末男君       野坂 浩賢君    八木  昇君       安井 吉典君    横路 孝弘君       市川 雄一君    岡本 富夫君       草川 昭三君    坂井 弘一君       浦井  洋君    工藤  晃君       田中美智子君    大内 啓伍君       中野 寛成君    米沢  隆君  出席国務大臣         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         環境庁自然保護         局長      藤森 昭一君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済局次         長       羽澄 光彦君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房審         議官      梅澤 節男君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省証券局長 吉本  宏君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁調査査察         部長      矢崎 新二君         文部省大学局長 佐野文一郎君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生大臣官房審         議官      竹中 浩治君         厚生大臣官房審         議官      正木  馨君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房審議官    塚田  実君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 石月 昭二君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房長 小山 森也君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省郵務局長 江上 貞利君         郵政省人事局長 林  乙也君         郵政省経理局長 守住 有信君         労働省婦人少年         局長      高橋 久子君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省道路局長 山根  孟君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     近藤 元次君   江崎 真澄君     越智 伊平君   始関 伊平君     田名部匡省君   矢野 絢也君     市川 雄一君   野間 友一君     浦井  洋君   松本 善明君     田中美智子君   岡田 正勝君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     江崎 真澄君   近藤 元次君     荒舩清十郎君   田名部匡省君     始関 伊平君   市川 雄一君     矢野 絢也君   米沢  隆君     岡田 正勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。田中美智子さん。
  3. 田中美智子

    田中(美)委員 質問いたします。  十八日の予算委員会でわが方の東中委員KDDに対して、政界工作疑惑の一つになっている商品券購入状況について資料提出を求めました。ところが、きのうの午後四時になってこのような資料が届いたわけです。これをちょっと読んでみますが、名前国際電電株式会社というふうに書いてありまして、こんな単純なものです。これに「当社商品券購入状況について 標記について、当社からの照会に対して、百貨店から回答された購入額は次のとおりであります。」それで、社名と購入総額三越六百八十五万円、伊勢丹六十六万円というふうに書かれたこういう単純な、非常にわけのわからない資料国会提出をされてきたわけです。それでこれを見ますと、三越伊勢丹は合わせて約七百五十万円にしかなっていません。いままでの新聞報道によると、少なくとも二千万とか三千四百万とか言われているわけです。十八日の東中委員質疑の中でも明らかにしたように、三越分だけでも一千万円は優に超えている。そういう点でこれは非常に信憑性に欠けているというふうに思います。それからまた、言われております西武デパートや高島屋のものが欠落している。さらに、これには日付が全くありませんし、いつからいつまでのものか、どういう内訳のものであるか、購入年月日もそれを発注した人の名前も全く書かれていないふまじめきわまりないものだというふうに思います。しゃあしゃあとこんな資料国会提出するとはまさに国会を冒涜している、KDDはけしからぬというふうにこの資料を見て国民は多分思うと思います。  それで、大西さんはこの資料を見まして、KDDがみずから疑惑を解明しようとしている——ちょっとよくこっちに集中して聞いてください、大事なところですから。KDDがみずから疑惑を解明しようとしている姿勢と思うか、そういう姿勢がこの資料からうかがえるか、その御意見を伺いたいと思います。
  4. 大西正男

    大西国務大臣 お答えをいたします。  東中先生からKDDに対して御要求のあった資料については、KDDとしてあとう限りの能力で誠実に調査をして御報告したものと私は思います。
  5. 田中美智子

    田中(美)委員 これがKDDがあらん限りの能力を発揮して調査したものだと思うと大西大臣が言っているわけです。わかりました。わが方の寺前委員にあなたがお答えになっているわけですけれども、郵政省としては十分監督してこれからも調査をし、いろいろな資料提出する。ですからこの資料は、あなたが十分に監督し、KDDがあらゆる能力を出して調べた調書であるということをあなたはお認めになったわけですね。そういうあなたのあいまいな姿勢、それがKDDに反映して、国会などいいかげんにあしらっておけばいいと、これはだれが見てもそういう資料です。国会などどうでもいい、いいかげんにあしらっておけば済むんだ、こういう態度ではないかと私は思いますが、あなたはこれは十分に指導した、こういうふうに言われているわけです。そして、KDDはあらゆる能力を発揮した、こう言われているのですね。  それで、私はもう一つ質問いたしますが、デパートには伝票もあればコンピューターの記録も残っています。何月何日にだれが発注したか、このだれというのは、KDD側の職員のだれかですね、発注した係、こういうものが全部伝票に書かれているわけです。名前まで記録されています。ですから、これは商品券に限らず、こういうものがずっと書かれているわけです。それで第一、のしを何にするかとか、粗品にするかとか、どういうのを使うかとか、こういうものまで書かれているわけです。ですから、その中から商品券のところだけをデパートにピックアップさせれば、簡単に正確な資料はできるはずです。しかしこれには年月日も何もない。これがあらゆる能力を発揮してKDDがやったものだ、大臣の御指導であるということをあなた自身がいまお認めになったわけです。監督官庁である大臣大臣権限で、私がいまお教えしたようなことをKDDに対して指示をしていただきたい。KDD姿勢というのは結局、あなたの姿勢の反映なんですから、KDDが勝手にこうしてつくるのではなくて、デパートからきちっとピックアップした資料提出させるようにKDDに御指示を願いたいと思います。それについての御意見をお聞かせください。
  6. 大西正男

    大西国務大臣 お答えいたします。  きょうの委員会先生からそういうお話があったということを伝えておきます。
  7. 田中美智子

    田中(美)委員 お伝えするのではなくて、あなたは指導する権限があるわけですから、あなたの権限でもってそれを私のところに提出させていただきたい。提出させていただけるでしょうか。
  8. 大西正男

    大西国務大臣 これは委員の御要求でございますから、そういう意味においてKDDの方へは伝えておきたい。判断するのはKDDかと思います。
  9. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、刑事局長来ておられますか。——十一月十四日に成田税関支署KDD関税法物品税法違反東京地検告発している。税関から告発されたら検察庁は一切の捜査証拠書類を引き継ぐことになっている。ですから、佐藤室長を当然調べているというふうに思いますが、調べているのでしょうか、お答えください。
  10. 前田宏

    前田(宏)政府委員 ただいま御指摘のありましたように、関税法違反物品税法違反につきまして税関の方から告発を受けておるわけでございます。したがいまして、その告発に基づきまして捜査をしているわけでございますが、だれを、いつ調べたかというような具体的な内容になりますと、捜査進め方等にも関係することでございますので、従来からそういう具体的なことは捜査中の段階では差し控えさせていただいているわけでございます。
  11. 田中美智子

    田中(美)委員 ちょっとそこへ座っていてください、まだありますから。  それで、本人は調べられていると言っているんですね。新聞にこう報道されているんですよ。それも秘密で言えないということですか。
  12. 前田宏

    前田(宏)政府委員 そういうような報道が一部にあったことは私も承知しておるわけでございますが、私どもの立場といたしましては、そういうことは適当でないというふうに考えておるわけでございます。  強いて申し上げますならば、佐藤何がしという方は当然取り調べの対象になる方だと存じております。
  13. 田中美智子

    田中(美)委員 昨日の朝日新聞の夕刊によりますと、佐藤室長は重大な発言をしています。これによりますと、何回か調べられているが、今度調べられたら政界工作についてもできる限り話したいと、こう言っているわけですね。ですから本人が、地検で調べられたら政界工作についてもしゃべると、こう言っているわけですから、それについても含めて調べるつもりがあるかどうかお聞きします。
  14. 前田宏

    前田(宏)政府委員 新聞報道を別に疑うわけではございませんが、私どもじかに聞いておるわけではございませんので、それを前提にしてもお答えいたしかねるわけでございますが、このKDDのことにつきましては、いろいろと疑惑と言われるものが報道され、御論議をされておるわけでございますので、そういう点も当然踏まえて取り調べをするものと思います。
  15. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、政界工作についてもこれを踏まえてお調べいただけるということですので、国民はこの点を一番聞きたがっているわけですので、一日も早くこの点をしっかりと聴取されることを要求して、その次の質問に移りたいと思います。  この同じ朝日新聞ですが、この会見の中で佐藤室長は重大なことを述べています。そのことについてちょっとお伺いしますが、小渕さんいらっしゃいますね。——あなたはパーティー券を買ってもらったということを認めていられるわけですけれども、佐藤室長はこのように言っています。あなたの方からパーティー券を買ってくれという申し入れをしたけれども、その金額は少ないから——少ないといっても百万円ですので、私は少ないと思いませんが、KDDの板野さんがそれは少ないからわざわざ増額して二百万円にした。それでこういうことを書いてあります。「『今度で当選六回目だろ、大臣も間近いんだから』とかね。そうしたら、やっぱり(大臣になった)。さすが社長だ、と感心したなあ」、これは佐藤さんがそう言っているんですね。あなたが大臣になるだろうというので、要求額の倍の金額パーティー券を買ってあげた、こういうことを言っているわけです。だからあなたは二百万円のパーティー券を買ってもらったんだと思うのですけれども、これをお返ししたというふうにあなたは言っていられる。これは真実であるか、いつ、だれにお返しになったのか、これをちょっとお聞きしたいと思います。
  16. 小渕恵三

    小渕国務大臣 御指摘のものにつきましては、確かに返却したという報告を受けております。
  17. 田中美智子

    田中(美)委員 私の言っていることをちゃんと聞いて答えてください。返却したと聞いているといって、あなたは返却しているんだから、だからいつ、だれに返却したかと聞いているんです。
  18. 小渕恵三

    小渕国務大臣 私のお金を返すのではありません。いわゆる励ます会という主体がありまして、私を励ましていただく方々の集まりの会でさようなお願いをし、そのことについて御協力をいただきましたことに対して、私を励ます会の主催者お返しをいたしたということでございます。
  19. 田中美智子

    田中(美)委員 いつ、だれにと聞いているんですよ。(発言する者あり)だから、いつ、だれにと聞いているんです。だれが返したかと聞いてませんよ。いつ返したか、だれに返したかと聞いているんです。
  20. 小渕恵三

    小渕国務大臣 経理責任者がしかと相手方お返しをし、相手方からもしかるべき領収書も確かに拝受しておるということでございます。
  21. 田中美智子

    田中(美)委員 どうして返したところをはっきり言えないのですか。相手方というのはKDDですね。KDDのだれかということはわからないのですか。何課とかどことかという……。だれに返したのですか。経理部に返したのですね。
  22. 小渕恵三

    小渕国務大臣 委員長から御指命がありますれば、しかとしかるべき書面もここに提示をすることもやぶさかでありません。
  23. 田中美智子

    田中(美)委員 委員長、出していただけますか、後でも結構ですから。出すこともやぶさかでないと言うので、後で結構ですから、どこへ返したかという、だれが向こうのだれに返したかということを提出なさるとおっしゃるのですから、いまでなくて結構です。後でいただいて……。
  24. 田村元

    田村委員長 理事会に一遍相談をかけまして……。
  25. 田中美智子

    田中(美)委員 本人が出すと言っているんです。本人が出すと言っているんです。
  26. 田村元

    田村委員長 委員長からということかね。
  27. 田中美智子

    田中(美)委員 委員長が承諾すれば……
  28. 田村元

    田村委員長 委員会からかね、委員長からかね。
  29. 小渕恵三

    小渕国務大臣 委員会で御指示をいただきますれば、励ます会にお願いをいたしまして、そのように私はしかと報告をいたしまして、私を励ます会の方々ですから、私を信じていただいておることですし、私も信頼をいたしておる方々がやっていただいていることですから、その言を信頼しておりますので、しかるべきものは確かにあるものと存じております。
  30. 田村元

    田村委員長 それではいま言ったように……。
  31. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは出していただきたい。私もいまの小渕さんの……(発言する者あり)
  32. 田村元

    田村委員長 委員会からというのですから、理事会にやはり相談をかけなければしようがないのじゃないですか。委員長というのなら私の一存でできますが……。
  33. 田中美智子

    田中(美)委員 初めは委員長と言われたんですよ。だけれども後でそれを言い直されているんですよ。  委員長、私は疑っていないんですよ、小渕さんの言っていることを。だからそんなにあれしないで、ただ、どこへ返したかを知りたいんですよ。だからどこへ返しただけ知りたい。あの人は返したと私は思っているんです。
  34. 田村元

    田村委員長 それはわかっているのです。ですから手続上だけのことですからね。  小渕君、もう一回確認します。委員長ですか、委員会ですか。
  35. 小渕恵三

    小渕国務大臣 私は予算委員会は崇高な場だと認識いたしておりますし、委員長委員会を代表するものだと理解しておりますので、よろしくお取り計らいのほどをお願いいたします。
  36. 田村元

    田村委員長 それではよろしくお取り計らい申し上げます。
  37. 田中美智子

    田中(美)委員 わかりました。  それでは今度は竹下さんにお伺いしますが、あなたも百万円買ってもらったということを認めていらっしゃいますけれども、これはいつ、だれにお返しになったのでしょうか。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 五十四年の十一月中旬の参議院決算委員会におきましてKDDパーティー券の問題が起こりました。私はその場にたまたま他の案件出席をいたしておりました。そこで、事によったら私が昨年六月行いました出版記念会で購入してもらっているのじゃないかと思いまして調査を命じました。そうしたら百万円を受け取っておりました。それは五十四年五月十五日付であります。発起人等の方が恐らくあっせんしていただいたものと思います。  したがって、KDD特殊法人であり、こういう問題が生じておることにかんがみまして、この百万円は返した方がよいと思いまして、出版記念会事務局から五十四年十一月二十日、この百万円をお返しいたしました。先方の領収書は、秘書室長千葉謙太郎氏となっております。あて先は竹下登出版記念会事務局、こういうふうになっております。
  39. 田中美智子

    田中(美)委員 このようにちゃんと小渕さんも、防衛しないで正直に、国会はあなたが言っているように崇高な場だと、こう言われているのですから、がちゃがちゃ言わないで、竹下さんのようにちゃんとお答え願えればいいと思うんです。しかし、いま竹下さんが十一月の二十日にお返しになったと言われているんですけれども、十二月の一日に私たちがKDD高橋経理部長という方に聞いたわけです。そうしましたら、小渕さんの分は経理部に返っていると、こう言っているんですよ。だから、私は疑っていないのに、あの人は何かもっと悪いことがあるからと思ってガードを固めて……。崇高な場だから胸を張ってやってほしいんです。  それで、私はちょっと竹下さんに言うんですけれども、小渕さん以外の人は十二月一日段階ではだれも返ってきていない、小渕さんだけだと、こう言っているんです。そうすると、竹下さんの分は返っていないとKDDが言っているんです。それで、千葉謙太郎という方にもう一度調べてみなければならないわけですけれども、少なくともあなたが十一月二十日に返したと言っても、向こう経理課にはこのお金が入ってないのですね。ですから、千葉謙太郎という人が、私、知らない人でいま初めて聞いたんですが、ネコババしているのか、その後きちっと経理に入れているのか、このところが非常にはっきりしていないんですね。ですから、この点を竹下さんはもう一度お調べになって、果たしてどこに入っているか、この高橋経理部長にも聞いて、私の方でも調べますが、あなたの方も、返した金がどこへ行ったかわからないというのでは、国民はやっぱり信じられないわけですよ。返したのが本当かうそかわからないわけですね。だから、返した金がどこにあるかということをちゃんとはっきりしてもらいたいというふうに思います。これをいま伺ってもあなたお答えできないでしょうから、この点は明らかにしていただきたいというふうにまず要求しておきます。それで、わかりましたら私のところにその点を御報告いただきたいと思いますが、よろしいですか。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 やはりここで、いま御質問でございますから、委員長の許可を得まして、そして私が受け取った時、すなわち五月十五日の出版記念会事務局からKDDあてに出した領収書と、それから十一月二十日に先方からいただいた領収書、この写しを委員長の方へ提示することによって御勘弁いただきたい。
  41. 田中美智子

    田中(美)委員 竹下さん、もう一つ伺いたいのですけれども、あなたがこのパーティー券を買ってもらうときに、記者会見で善意の第三者の仲介で買ってもらったというふうに言っていらっしゃるのですけれども、この善意の第三者というのはだれですか。
  42. 竹下登

    竹下国務大臣 これは発起人の方でございます。だから、少なくとも善意の第三者であったと思います。しかし、その人の氏名をここで発表することは、やはりプライバシーの問題でもございますので、御容赦を願いたい、こういうことです。
  43. 田中美智子

    田中(美)委員 それは郵政省じゃないんですか。その善意の第三者というのは郵政省じゃないんですか。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 全く関係がありません。
  45. 田中美智子

    田中(美)委員 きのうの朝日新聞の夕刊によりますと、佐藤室長は、自分がパーティー券を買う担当者であるということを言っていますし、自分が買ったパーティー券の九〇%までは——これは竹下さんだけじゃないですよ。入っているかどうかわかりません。KDDが買ったパーティー券の九〇%までは郵政省の加宮秘書課長から依頼されて買ったというふうに言っているんですね。加宮秘書課長は電話で佐藤室長に、郵政省が三持つから、そして電電公社に四持たせるから、KDD、あなたは二・五持って買ってほしい、こういうふうに言われたので、自分は二・五の割合の分担のパーティー券を買ったと、こう言っているわけですね。  郵政大臣に伺いますが、KDDにこういう指示や依頼をあなたはなさったのでしょうか。
  46. 大西正男

    大西国務大臣 私は昨年の十一月上旬に就任をいたしました。そんなことをしたことはございません。
  47. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、これは引き継いでいるわけですからね。ですから、自民党の郵政大臣ですから、郵政省がそういうことを依頼したり指示をしたりしているのですかと聞いているんです。
  48. 大西正男

    大西国務大臣 いまあなたというふうにお尋ねになりましたから、私に関することだと思ってお答えをしたわけでございますが、ゆうべの新聞を私も見ました。加宮君にも聞いてみましたが、そういう事実はないということでございます。なお、これは私の就任以前の期間にもわたる問題でございますから、詳しくは事務当局からお答えをさせます。
  49. 小山森也

    小山政府委員 御指摘のような点につきまして調査しましたが、そのような事実はございません。
  50. 田中美智子

    田中(美)委員 秋草さん、いらっしゃいますね。——あなたも、郵政省関係の方から四の割合でパーティー券を買わされたと言っているわけですけれども、買わされたんですか。そんな形で買わされましたか。
  51. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答えします。  私自身にもだれからもそういうことがかかってきた覚えもありません。したがいまして、秘書課長とか文書課長、郵政省にかかわりのある担当の課長にも聞いたことはございますが、そういう事実は全くございません。
  52. 田中美智子

    田中(美)委員 いまは電電公社として答えていらっしゃるんですね、秋草個人ではなくてね。
  53. 秋草篤二

    ○秋草説明員 はい。
  54. 田中美智子

    田中(美)委員 それで、お二人に今度は聞きますけれども、こういうことをKDDの首脳が言っているわけですね。それで、あなたたちの方は調べてみたといって、いつ、どんなふうに調べたか、後でどんなふうに調べたか報告していただきたいんですけれども、こんなことを天下の新聞に公表されて、国民ほとんどが知っているわけですから、これに対しては抗議も何もしないんですか。お二人に聞きます。お二人というのは個人じゃないですよ。
  55. 小山森也

    小山政府委員 すでに昨日の新聞で加宮個人も申し上げておりますとおり、そういうことは一切覚えがないと言ってあの紙面にはっきり出ております。したがいまして、これについては読者が了解しているものと私どもは思っております。
  56. 田中美智子

    田中(美)委員 それが調査だったんですね。そんな調査調査だなんというところが大変、郵政省にしても電電公社にしても、その程度の調査ではちょっと困ると思うんです。加宮秘書課長は新聞で事実否定しています。否定していますけれども、こんなことも言っているわけですね。「政治家から、郵政省の幹部にパーティーの招待券が届くことはあるが、個人的に親しい人に限って出席している程度だ。」ということを言っているんですね。これは非常に軽く言っていますけれども、いずれにしても、郵政省の幹部が国会議員の招待券をもらって出席していることは認めているんです、加宮さんは。ということは、これは三、四、二・五、この三の部分のものではないんでしょうか。そういう疑いを持つのですが、どうですか。
  57. 小山森也

    小山政府委員 御招待券をいただきましてそれに出席しているかどうかということでございますが、これはあくまでも個人に対する招待でございまして、それに対して出席するかしないか、これはいずれも個人の判断によって出席するしないということになろうかと思います。
  58. 田中美智子

    田中(美)委員 個人の問題と言いますが、これは郵政省の幹部がパーティーに出ているということは事実なんですね。このパーティー券が一体何なのかということですね。これはいま追及してもここではしようがありませんが、三の部分ではないか。これをもらって、そしてあとはあちこち売りつけているのではないか、こういう疑いが持てるというふうに思うのです。それは佐藤室長だけでなく、KDDの首脳も言っているのですね。  これはけさの読売新聞、ここを読んでみますと、「政治家のパーティー券は、政治資金規正法の改正で個人献金が規制されて以来、合法的な資金パイプとして一般的で、仲介に当たった郵政省側の態度も「かなりオープンなものだった」。具体的には郵政省官房筋から事前に電話で紹介してきたり、政治家の秘書から「郵政省の紹介で」と言ってくるケースがあった」こう述べているのですね。ということは佐藤室長も言っているし、他の首脳もこう言って、電話で郵政省が頼んできている。そう言ってやっている。ここまで具体的に述べているのに、あなた方は全然そんなことはありません、知らぬ存ぜぬ、調べてもわかりません、こういうふうに言っているわけです。  これでは国民疑惑は深まるばかりです。政治不信はますます高まってきます。いま一般の庶民が、国民がどういう感覚でKDDを見ているかと言えば、いい服着ているねと言うと、これはKDDにもらったんじゃないよ。こういうふうな話が出たり、たんすを買ったと言えば、あなた、これはKDDからもらったのなんというような冗談まがいにでも何でもKDD。ちょっとすてきな絵がある、ちょっとした骨とう品があると、これはKDDじゃないか、いやKDDだ。ここまでKDD疑惑というものは日本国じゅうを覆っていますし、世界にもこれは知れていっているのですね。  それにもかかわらず、こんな資料が、大西さんがKDDの全能力をかけてこの資料をつくったんだと公言しているということは、何という国会だと私は思います。何という大臣だ、こういうふうに思います。どうしてもここでやらなければならないことは、こうした国民に対する疑惑国民に対しての国会の責任として、板野前社長と佐藤室長を証人喚問して、ここの食い違いをしっかりとしなければならないし、世界の人たちに向かっても、日本の国会はきちっとこういうものを片づける、不祥事件が起きてもきちっとこういう形で国会で片づけているということを天下に知らせるということは、私は日本のためにもやらなければならないことだと思いますので、証人喚問の要求をこの二人についてしたいと思います。  最後に一言、委員長にお聞きしたいと思います。  委員長、いまそこでこのやりとりをお聞きになっていたと思います。あなたも人間ですからおわかりだと思いますけれども、ここまで状態が来ているのに証人喚問をしないで済むと思いますか。あなたの御意見を私は聞きたいと思います。
  59. 田村元

    田村委員長 私も人間でございますから、個人的な意見がないと言えばうそになりますけれども、いま委員長という立場にありますから、個人の感情でもって発言をすることは許されないと思います。その点、私の公の立場を人間として御了解いただきたい。お願いします。
  60. 田中美智子

    田中(美)委員 それではあなたに対して、田村さんという一人の人間の良心にも訴えながら、その田村さんは委員長であるわけですから、それは切り離すことはできませんので、その委員長と人間田村の良心に沿って、ぜひ板野前社長と佐藤室長を証人喚問することを強く要求したいと思います。  これでKDDの質問を終わりまして、あと残された時間、婦人に対するあらゆる形態の差別撤廃条約についてお伺いいたします。  この条約は、御存じのように、昨年の十二月十八日に国連の総会で採択になりました。これに政府は出席し、賛成をしていますので、その賛成した趣旨や動機を簡単にお述べを願いたいと思います。
  61. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話がございましたように、昨年の十二月に国連の総会で日本代表も賛成をいたしておりまして、本条約は婦人に対する種々の差別撤廃を国際条約によって進めようという趣旨でございまして、わが国としてもその趣旨に基本的には賛成でございますので、賛成票を投じたわけでございます。
  62. 田中美智子

    田中(美)委員 これについて政府はこの基本的行き方が賛成だと言われているので、これを批准する道というのはどういう道がありますでしょうか。
  63. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この内容につきましては、具体的な内容、個々の問題につきましては多少検討を要する点もございまして、ただいま関係各省の間で打ち合わせをしておりますので、その打ち合わせが終わりました段階で批准の問題に入っていくかと思います。
  64. 田中美智子

    田中(美)委員 批准の問題に入っていく経過はわかりますけれども、これは国内法がこれに沿っていなければだめなのか、それとも、こことここの部分はまだちょっとほど遠いので留保してから批准をするのか、それとも努力目標としてまず批准をしておいて、そうしてやっていくということができるのか、この三つ方法があると思うのですけれども、批准するにはどういう形が一番早くできるのでしょうか。
  65. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの点につきましては、政府委員から答弁させたいと存じます。
  66. 賀陽治憲

    ○賀陽政府委員 お答えいたします。  批准の方法でございますが、ただいま大臣からお答えがございましたように、関係各省と十分相談いたしまして、国内法の改正というようなことがもし必要であれば、そういうことも検討しなければなりません。その場合には理論的には留保することもありますが、現在の段階ではそこまで詰まっておりませんので、今後の協議にまたざるを得ないと思います。
  67. 田中美智子

    田中(美)委員 これは、国連で差別撤廃宣言をしてから、それから国際婦人年の世界行動計画やメキシコ宣言が出て、またその後これが条約として出されたということは、世界の婦人にとっては非常に大きな喜ばしいことだというふうに私は思っています。これに対して日本政府が賛成したということも、私は、大変世界に向かってもよかったというふうに思っていますので、一日も早くこの批准をする努力をしていただきたいというふうに思うわけです。  それで、その批准をするときの注意というほどのことではありませんけれども、労働大臣にちょっとお願いいたしたいことがあります。  それは、この差別撤廃条約の中にはこういうことが書いてあります。「母性を保護するための特別措置をとることは、差別とはみなされない。」こう言っているわけです。それから、メキシコでの行動計画の百項目、これは二百十九あるわけですが、みんな日本政府は賛成しています。そのうちの百項には「母性保護にかんする規定は男女にたいする不平等の待遇であるとみなされるべきでない。」  ですから、いま日本政府のとっている態度は国民は疑っているのですね。保護か平等かという形で疑っているのです。この疑いはどこから出てきたかというと、一昨年の労働基準法研究会の報告書、この報告書の評価をいまとやかく私はもう時間がありませんので、論争しません。しかし、この報告書が、働く婦人たちの間に保護か平等かという形で母性保護を後退させるのではないかという疑惑や心配を働く婦人が持っているということは、これは客観的事実なんですね。ですから、政府が賛成した両方に、母性保護を前提にすることによって本当の平等が成り立つのだということを言っているわけです。大臣が今後この報告書の結果をどうするかはまだ聞いておりません。しかし、国民がこれだけ心配しているわけですから、労基法の母性保護を後退させるというようなことは絶対ないように、これはむしろ進めていくべきだ、母性保護を前提にすることによって本当の男女平等が成り立つのだというふうに思いますので、その点についての大臣の見解を聞かせていただきたい。
  68. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 男女平等をめぐりましていろいろな議論があるわけでございます。そこで、労働省としても、どのようにして男女平等という考え方をまとめていくかということにつきましては、いま婦人少年審議会にお諮りをいたしましていろいろ御意見を伺っていく、少し時間をかけて検討していく、こういうことにさせていただいておるわけでございます。  先生指摘のように、平等の問題と保護の問題、非常にむずかしい議論が幾つもふくそうして出てくると思いますが、それらをうまくこれから整理していかなければならぬ。したがいまして、基本的には私の立場は、その審議会のいろいろな御意見を伺っていくようにいたしたい、こう考えておるところでございますが、あまり時間がありませんのであれでございますけれども、労働基準法の研究会報告は、雇用における男女平等を確保するための男女平等法の制定が必要であるということを提言いたしますとともに、勤労婦人の母性保護につきましては、産後休業期間の八週間への延長でありますとか、あるいは妊産婦の受診時間の確保でございますとか、あるいは妊産婦の時間外労働や深夜業の禁止など、その充実の面も提言をしておるわけでございまして、決して一方的に平等だからいままでの保護の分を外してしまえということではないと思うのです。その辺を十分踏まえまして、従来保護してきたところにつきましては、やはりいろいろなことを、扱いを大事に考えて基本的に進んでいくことが重要だろう、こういうふうに私は考えておりますが、なお、何回も申し上げますけれども、審議会の御意見等も踏まえ、さらに広く国民の皆さん方、わけても御婦人の皆さん方がこの問題をどのようにお考えになっているかというようなことを十分踏まえて今後対処してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  69. 田中美智子

    田中(美)委員 いま聞き捨てならない言葉がちょっとあったのですけれども、直接保護の点では、あなたは言われましたけれども、深夜勤の禁止をとるということは、これは保護の後退なのですから、ちょっとお間違いないように。そこのところを混乱されますと——大臣、混乱しないようにちょっと勉強してくださいよ、そこは後退の部分ですから。いかにもいいように言われましたので、それを訂正してくださいね。
  70. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 申し上げましたように、具体的にはいろいろな角度から考えられると思いますが、従来保護という形できておるものについては、やはり大事に保護していこうというふうにお考えになる方、それから、いやむしろ保護という形できておるのが本当は差別になっていくので、平等にはもっと思い切っていままでの壁を取り除いたらどうだという意見の方もございます。しかし、私は基本的には、従来保護されてきたものは保護される形で進められていくことが大事だろう、こういうふうに考えておりますけれども、しかし、なお審議会等の意見をよく踏まえて対処していくようにいたしたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  71. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣は、私と似た意見でやっていくが、審議会の意見を聞いて、こう言われましたけれども、そのときに、審議会だけでなくて、審議会もこういうものが反映されると思いますけれども、日本政府が世界の人たちとともに約束したものを十分に踏まえて、そういう点で、保護を前提にしてこそ平等は達成されるのだということをしっかりとお考えの上で、今後母性保護の問題、労基法の問題を前進させていただきたいということをお願いしまして、私の分担を終わります。関連で浦井さんがこの後やりますので……。
  72. 田村元

    田村委員長 この際、浦井君より関連質疑の申し出がありますので、田中さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。浦井洋君。
  73. 浦井洋

    浦井委員 田中議員の関連で質問を続行したいと思います。  まず厚生大臣にお伺いをしたいのですが、昨年来金銀の価格の異常な高騰で、医薬品関係では、歯科材料であるとかあるいはレントゲンフィルムの購入価格が、健康保険で決められている基準価格を非常に大幅に上回っておる、逆ざや現象が起こっておる、そしてレントゲンフィルムについては売り惜しみさえも起こっておるという報告を私は受けておるわけなんです。だから、検査であるとかあるいは治療をやればやるほど赤字を生むということで、非常な困難を来しておるわけです。昨年の十一月に厚生省は一定の基準価格の手直しをやったわけなんですが、このままでほっておくならば、歯科補綴であるとかいろいろな点で私は混乱が起こると思う。  そういう点で、厚生大臣はこの際思い切って基準価格の改定をやるべきではないか、また、それを何か予定されておるというふうに聞いておるわけでありますけれども、私はもう早急にやるべきだ、このことをまず厚生大臣にお尋ねしたい。
  74. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 いま浦井先生の方から御指摘になりました金銀などの高騰によりまして、御指摘のように、昨年の十一月に約四〇%の告示価格の引き上げを行ったところでございますが、その後の異常な高騰に対しまして、市場価格が告示価格を上回っておる、つまり逆ざや現象である、これを解消することがきわめて大事であると考えておりまして、これを急ぎやらないと、国民の側にも治療の問題において混乱が生ずるという心配がございますので、急ぎこれに対して対応いたしたく考えておるわけでございまして、ごく近い機会に金銀等の材料の高騰によります対応策として告示価格を引き上げてまいりたい、かように考えております。
  75. 浦井洋

    浦井委員 急いでやる、ごく近い時期にやるという大臣の御返事でありますけれども、大臣もよく御承知のように、歯科では、三月に入ると学年末、そして三月の中ごろからは休暇に入るわけでしょう。そうしますと、その時期に親御さんとしては歯科の治療を受けさせたいということで、例年三月には学童を中心にして歯科に殺到するわけですよ。そういう点では、やはり三月一日からやるということをここではっきりと言明をして、そして国民の皆さん方やあるいは医療担当者の側に安心感を与えなければいかぬと私は思うのですが、どうですかもう一遍。
  76. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 大体御指摘のような考え方で進めてまいりたい。いまここで三月一日という時期をお選びをいただいておりますが、しかし、その需要の時期というものも十分考えながら、そういう御趣旨をめどとして急ぎ改定をいたしたい、こういうように申し上げたいのであります。
  77. 浦井洋

    浦井委員 大蔵大臣、いま聞いていただいたと思うのですが、これは金の要ることであるわけです。ひとつ大蔵大臣の所見を尋ねておきたい。
  78. 竹下登

    竹下国務大臣 私も関心を持っておりますが、何分厚生省と協議の上決定することでございますので、厚生省の方の推移をいまは見守っておる、こういうふうに御理解をいただきたい。
  79. 浦井洋

    浦井委員 重ねて要望しておきたいのです。  ごく近い時期にやるということでありますから、やはり三月一日、一般紙にも三月一日改定だと出ているわけなんです、だからそれをぜひ実行していただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  それから次にスモン問題であります。  まず厚生大臣にお尋ねしたいのですが、厚生大臣、昨年の九月十五日にスモンの原告あるいは弁護団とそれから厚生大臣と製薬三社、これが連名で確認書に調印をしたわけなんです。いわゆる確認書による和解を進めようということで、この問題の解決が飛躍的に前進をしたというふうに私は受け取っておるわけでありますけれども、まず、この確認書というのは前厚生大臣が調印をされておるわけでありますが、これは、あなたももちろん現在の責任者としてこの内容をきちんと引き継いでいく、しかもそれは内閣を代表して厚生大臣がやるんだという点を確認しておきたいと思います。
  80. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 前橋本厚生大臣と関係者の間におきまして取り交わしました確認書は御指摘のとおりの性格を持つものでございまして、厚生省としてもその責任を持つものでございます。したがいまして、今後とも確認書の線に沿って患者の早期救済に努めてまいりたい、かように思います。
  81. 浦井洋

    浦井委員 確認書の線に沿って努力をしたいということでありますが、そうしたら大蔵大臣、この和解の成立に当たっては、内容御存じだろうと思うのですけれども、たとえば一時金の支払いであるとかあるいは恒久対策の実行であるとか、こういうものは製薬会社とともに国としても金銭支払いの分担を負うているわけなんですよ。と同時に、昨年成立をした薬事二法、特に救済基金法による製薬会社への融資、こういうことについて債務保証をするということになっておるわけです。だから国の財政措置が必要になってくるわけなんだ。いま厚生大臣は、確認書による実行をこれから真剣にやっていきたいということでありましたけれども、大蔵大臣、確認書によるこの和解、大蔵大臣としても誠意ある対応をすべきだと思うのですが、ひとつ大蔵大臣の御決意を承っておきたい。
  82. 竹下登

    竹下国務大臣 歴史的経過があることでございますが、五十四年九月十五日の確認書というものがありますし、なかんずく恒久対策等が挙げられております。したがって、今年度予算におきましても、恒久対策等について、さらに治療研究事業の充実を図りますとともに、重症患者に対する介護人による介護に要する費用の補助等を行ってきておるわけでございますので、厚生大臣の申されました方向に対して、われわれも協調すべきものであるというふうに考えております。
  83. 浦井洋

    浦井委員 そこで具体的にお尋ねをしたいのです。  去年の九月十五日に確認書に調印をされた。そのときに、同時に提訴済み原告の年内解決ということも、これは議事録確認という形でやはり双方で確認をされているわけです。ところが、一つお尋ねしたいんですが、事務当局でもよろしいが、昨年の九月十五日以後現在までに、この九月十五日に調印をされた確認書による和解というのは何人ぐらいおられるのか。
  84. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 昭和五十五年の二月二十日現在におきまして、すでに和解いたしました患者数は二千四百二人でございまして、したがいまして、和解一時金の総額は五百六十三億円でございます。国の負担の金額は百八十四億でございます。現在提訴いたしております患者の数は五千二十六人でございます。これは五十五年の一月一日の時点でございます。今後予想される和解の患者数は約二千六百人と想定をいたしております。したがいまして、これらの見込み金額はおよそ六百二十億円ではないか、こういう現状でございます。
  85. 浦井洋

    浦井委員 厚生大臣は私の質問にきちんと答えておられないわけなんです。しかも余分のことも答えておられるわけだ。なれておられないから無理ないとは思うのですけれども、私が言ったのは、去年の九月十五日確認書が調印されて、それ以後その確認書による和解が成立した原告の数は一体何人なのかということを聞いているわけなんです。
  86. 山崎圭

    ○山崎政府委員 お答えいたします。  御答弁申しましたように、現在二千四百二名が和解済みでございますが、そのうち九月十五日以後の和解者は四百五十二名、こういうことになっております。
  87. 浦井洋

    浦井委員 これは非常に少ないわけでしょう、大臣。せっかく早期全面解決ということで確認書による和解方式がとられて、これを実行しようということで双方意気込んでおったのに、去年じゅうに解決をしなければならぬのに、いまに至るも解決してない。それだけでなしに、こういうふうに和解をしておる人たちが非常に少ない。  特に私ここで強調したいのは、スモン患者としてもうすでに鑑定が済んでおるわけなんです。しかも、そうであるのに投薬証明がないということで和解が成立をしていない人たちがたくさんおる。これは理解できますか。わかりますか、私の言っていることが。だから、そういう中で投薬証明がないということで和解に応じようとしておらないのは一体厚生省、国なんですか、それともチバ、武田あるいは田辺、こういう製薬企業なんですか。一体どこなんですか。もし企業であれば、この和解を渋っておる企業の名前をはっきり言ってください。
  88. 山崎圭

    ○山崎政府委員 お答え申し上げます。  投薬証明書のない患者の取り扱いというのは、これまた九月十五日の確認書に付属するべき事項として確認事項ということが挙げられておりますが、投薬証明書のない患者については差別なく扱うのが当然である、かようなことを御答弁申し上げましたことが確認事項として置かれておるわけであります。その線に沿いまして鋭意努力しておりますが、現在投薬証明書のない患者の扱いということが非常にむずかしい問題であることも先生御承知のとおりだと思います。そこで、私どもは東京地方裁判所にその判断を求めているところでございまして、近く東京地方裁判所からその御見解が示されることを期待しておるところでございます。  以上でございます。
  89. 浦井洋

    浦井委員 投薬証明のない患者の取り扱いは非常にむずかしい、だから東京地裁に判断を求めておる。これはどこかで聞いたことがあるのですよ。国会の答弁の中で、これと同じことを言われていることがあるのですが、大臣御存じですか。薬務局長でもいいですよ。
  90. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 投薬証明のない患者の取り扱いは大変大事な問題でございまして、この問題解決なしにスモン病の解決はあり得ないと私も判断をいたしておるわけでございます。したがいまして、東京地裁の意見を求めておるものでございまして、近く東京地裁の判断が示された場合におきまして、その意見を十分に尊重して国の方針を決定したいということについては、この前の当委員会におきましても私からも発言を申し上げたわけであります。
  91. 浦井洋

    浦井委員 お答えがピント外れなので私から言いますけれども、いまさっき薬務局長が答弁をされた内容というのは、去年の二月二十二日に広島地裁で判決が出た、その日の衆議院の社会労働委員会の中で同じことが言われておるわけだ。私、議事録をここに持ってきておりますが、当時の薬務局長はこう言っておる。「この件の処理をどのようにすべきかということについての判断を東京地裁に求めているわけでございます。」「これはすでに早い時期に東京地方裁判所にそういう判断をお示しいただくようにお願いをいたしておるところでございまして、近い将来にその判断が示される、政府としてはこれを受けて適切に対処策をとりたい、」どうですか、同じでしょう。  ところが、事態は一体どうなのか。いまだに東京地裁の判断なるものが出てきていない。いまからも出っこないですよ。東京高裁の判断待ちというようなかっこうにまた地裁はなるわけです。ところが、先ほどから私申し上げておるように、九月の十五日に一体何が行われたか。いつまでも裁判で争うのではなしに、和解で早期救済を実現しよう、こういうことでお互い双方が確認書を取り交わして調印しておるわけでしょう。問題が飛躍的に前進をしておるわけなんです。であるのに、いまの時点で東京地裁の判断待ちだというのは、これは私は客観的に事態を後退させるものだと思う。確認書を双方が確認をしたのに、その約束に違反するもはなはだしいと私は思うのです。  大臣、わかりますか、この事態。大臣は、和解を渋っておる製薬企業に対して、不当な言いがかりをやめるように、これはもうぜひともやってほしいし、すでにやっておかなければいかぬわけなんです。一体、大臣何をしたのですか。これから何をするつもりですか。
  92. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 従来の経緯はいま御指摘のとおりでございますから、私どももその従来の経緯を踏まえまして、早急に解決を図りたいという姿勢は、大きく前進をしておると判断をいたしておるわけでございます。したがいまして、製薬会社とも十分話し合いを進めて、国と企業の両面の責任に立って、残されたこの問題の解決を早期に実現したい、こういうふうに考えております。
  93. 浦井洋

    浦井委員 大臣、私が言っているのは、そういう不当な言いがかりをつけて——たとえばこういうことがあるのですよ。これはいまの時点です。製薬三社は、スモン患者に対して、自社製品を投与したとの、医者の証明がない者には責任を負わないと言います、これが投薬証明のない患者の実態なんですよ。これに対して責任のある国として、企業に対して、企業の社長を集めてきちんと早く和解せよ、そういうことをやりますか、近々のうちに。どうですか。
  94. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 渋っておるというような製薬企業は許せないと考えますし、厚生省としても十分説得をいたしてまいりたい。これは厚生省の責任であると考えております。
  95. 浦井洋

    浦井委員 いま事態が非常にせっぱ詰まっておるわけなんです。そうしたら、もうあすにでもあさってにでも、チバと武田と田辺と責任者を呼んで大臣説得しますか、どうですか。
  96. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 ただ、これに対しましては、さきに申し述べましたとおり東京地裁の意見を求めておるわけでございますから、その意見も近く出るものだと判断をいたしております。したがいまして、その意見を十二分に尊重して対応策を講じてまいりたいということを申し上げたいと思います。
  97. 浦井洋

    浦井委員 去年の二月二十二日に前の薬務局長が、近々のうちに東京地裁が判断をすると言うておる。ちょうど一年でしょう。まだ出ぬわけですよ。ここへスモンの被害者の方もたくさん傍聴に来ておられる。いつまで待たすわけですか。この辺で、もう事態が煮詰まっておるのだから、企業を大臣が呼んで、そして早く和解せよという説得をなぜできぬのか。どうですか。スモンの被害者の皆さん方の前で大臣はっきりとそれを言いなさいよ。
  98. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 これはすでに私もその関係企業を招きまして、和解を速やかに解決するようにという要請はいたしておることでございます。しかし、その具体的な問題に関しましては、私は、東京地裁の判断というものを求めて、その結果において適切な方法をとらないと、過ちを起こすようなことがあってはいけないということでございます。慎重にこれを扱うためにおくれるとか、あるいはこれ以上スモン患者の方々に御迷惑をかけようという意図では決してないのでございまして、積極的に問題の解決に当たりたい、この誠意においては前橋本厚生大臣に劣らない決意の上に立っておるということを御理解賜りたいと思います。
  99. 浦井洋

    浦井委員 大臣が具体的に乗り出さなければいかぬですよ。これは政治の問題なんですよ、ここまで来たら。東京地裁の判断を待ってそれをよりどころにしてというようなことを国が言っているから企業はなめておるわけですよ。だから、すぐにでも製薬企業の責任者を呼んで大臣が説得しなさいよ。問題はわかっていますか。企業が渋っておるのは、投薬証明のない患者さんに対して費用負担がどうなるかということがまだ決まってないところに原因があるわけでしょう。そうでしょう。ところが費用負担の問題というのは、ここへ来ておられるスモンの被害者の皆さん方に何も関係がないわけなんですよ。国と製薬企業の間の問題なんです。しかも事態はそういうふうに渋滞しているわけなんです。だから、スモンの被害者の皆さん方は、この寒空に、大臣も御承知のように二月十四日、十五日、三百人も全国から集まられて、そして早うしてくれということで国やあるいは国会にもずっと陳情に来られておるわけなんです。これは大臣もよく御承知のことだと思うわけなんです。  こういう事態、これはまさに政治不在だと私は思う。早く大臣が企業に対して適切な手を打って、たとえば費用の分担が決まっておらないということであれば、一時国が立てかえてでもやって、その後でゆっくりと費用の分担を決めてもいいじゃないですか。どうですか。そういう方法でもとりますか。
  100. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 この問題は、先ほども申し述べましたように、製薬企業と国との双方の責任であると私は思います。したがいまして、厚生省といたしましては、国が方針を決定いたしまして、その方針に製薬企業は従っていただくということでございます。  先ほど申しましたとおり、今日の厚生行政の中でスモン患者に対する対応は緊急かつ重要な問題であるという認識を私は持っておるわけでございます。誠心誠意これが解決に当たりたいと考えますが、その具体的なお金の問題はどうだというような御心配につきましては、どうぞお任せをいただきたい、決して患者に御迷惑をかけないように誠心誠意これに当たりたいということを申し上げる次第でございます。
  101. 浦井洋

    浦井委員 それはだめですよ。厚生大臣、スモン病というのはどんな病気か知っていますか。どんな病気なんですか。
  102. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 私も医学的にそれをどうということのいま説明は大変むずかしいと思いますが、すでに患者の代表の方々とたびたび私もお目にかかっておりまして、その実態については承知をいたしております。
  103. 浦井洋

    浦井委員 大臣、一遍二十四時間、一日じゅうスモンの被害者の方と生活をともにしてみなさいよ。そうしたら、そんな悠長なことを言うていられないはずですよ。大臣、どうですか。もう事態は、確認書に双方調印して解決のルートに乗っておるわけなんです。じんぜん日を過ごさせておるのは企業の責任なんです。それに対して国が遠慮しておるのです。これが事態の本質なんです。さらに突き詰めて言えば、先ほどから言っているように費用分担が決まっておらない。だから、国が一たん立てかえてでも払って、しかる後に費用分担を決めたらいいわけなんです。それを皆さん方は待っておられるわけなんです。どうですか。
  104. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 国が立てかえて、後また企業にその分担を果たさせる、そういうことはむしろ大変困難ではないか。もちろん国が急ぎその方針を決定いたしましたならば、企業をして責任を果たさせる、同時に、国としても国の責任分についてすぐに実施をするというようなことでいいのではないか。責任分担が明確でないから、したがって、あえて国が立てかえて先に支払ったらどうだということよりも、どういう中身でどう解決していくか、順次この問題の処理を急ぎやらなければならぬということが大事ではないかというふうに私は思っております。
  105. 浦井洋

    浦井委員 だめだよ、それは。  大臣、それならもう一つ尋ねますけれども、基金法に基づいていま製薬会社から、具体的にはチバ、武田、田辺ですが、具体的に製薬会社から幾らぐらい融資の申し込みが来ているわけですか。そしてすでに幾らぐらい融資をしたわけですか。
  106. 山崎圭

    ○山崎政府委員 お答えいたします。  明年度分といたしまして、両社合わせて三百三十億の融資申し込みがございます。
  107. 浦井洋

    浦井委員 すでに融資は……。
  108. 山崎圭

    ○山崎政府委員 すでに融資は今年度九十一億だったと思います。
  109. 浦井洋

    浦井委員 内訳はどうですか。
  110. 山崎圭

    ○山崎政府委員 内訳は、ちょっとお待ちください。——大変失礼いたしました。五十億と四十一億と記憶しておりますが、ちょっと詳細は、確かめまして後で御報告申し上げます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  111. 浦井洋

    浦井委員 薬務局長、数字もはっきり覚えていないというのはおかしいですよ、五十億とか四十一億とか。どこへ融資したわけですか。
  112. 山崎圭

    ○山崎政府委員 田辺に対して五十億、チバに対して四十一億でございます。
  113. 浦井洋

    浦井委員 もう一つ尋ねます。  融資の申し込みはどこから何ぼ来たのか、その明細を言いなさい。
  114. 山崎圭

    ○山崎政府委員 田辺から百億の申し込みがあり、それからチバから二百二十億の申し込みがございました。
  115. 浦井洋

    浦井委員 大臣、聞かれたでしょう。すでに田辺に対して五十億、チバに対して四十一億。これは言うておきますけれども、チバというのは武田とずっとつながっておるのですよ。だから、悪い薬キノホルムを出した蛇口というのは田辺系とそれからチバ、武田系の二本ですよ。御存じでしょうね。それに対して、さらにまた申し込みが田辺から百億、チバから二百二十億。国が債務保証をする。非常に十分な手当てをされているし、またこれからもしようと国がしているわけなんです。こういうような条件があるわけなんだ。しかも企業は、先ほどから私が申し上げておるように確認書に基づく和解を渋っておるわけなんです。けしからぬわけなんです。約束違反なんです。国が指導するというならこういう手段を使ったらどうですか。具体的に、債務保証をしないというようなことであるとか、いろいろな手があると思うのですよ。企業に対して早く和解するように具体的に施策として手を打ったらどうですか、大臣
  116. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 この点につきましては、具体的に二つの企業とも話し合いを進めていきたいと思います。どうぞ、こうしたらいいんだ、ああしたらいいんだということについては、私ども責任を持って問題の解決に当たるということで御理解を願いたいと思うのでございます。誠心誠意早急にこの解決に当たるということで御理解願いたい。
  117. 浦井洋

    浦井委員 私はそれに納得できないですよね。誠心誠意とか、言葉だけではだめなんですよ。もう一日千秋の思いでスモンの被害者の皆さん方は待っておられるわけなんです。政治家としてそれに具体的にこたえないといかぬわけでしょう、大臣。  それと、もう一つの問題がある。既判決者の問題ですね、すでにいろいろな地裁で判決を受けて勝利をした。すでに判決を受けた人たちがいま何人ぐらいおるわけですか。
  118. 山崎圭

    ○山崎政府委員 すでに判決を受けました患者さんの数は四百九十七名に及んでいます。
  119. 浦井洋

    浦井委員 その中で、この確認書による和解に至っておらない人たちがあるでしょう。それはその数でしょう、いま言われたのは。どうですか。もう一遍言ってください。
  120. 山崎圭

    ○山崎政府委員 御指摘のとおりでございます。
  121. 浦井洋

    浦井委員 局長が数字を間違うというようなことはぐあい悪いですよ。その各地裁で判決を受けた人がいまだに去年の九月十五日の確認書による和解に至っておらない、その原因は一体何なんです。
  122. 山崎圭

    ○山崎政府委員 実は一月の十九日に東京高裁から和解勧告が東京地裁分の既判決者について出されておりますが、その和解勧告につきまして、私ども、鋭意裁判所を通じまして円滑な和解の推進に努めたい、かように考えております。  その余の地方裁判所、高等裁判所におきましては、まだ和解の勧告にも至らず、確認書のとおり別途協議し、個別に処理する、こういう基本前提に立ちまして、それぞれ精力的に和解の話を進めているところでありますが、残念ながらいまのところ和解に至っておりません。
  123. 浦井洋

    浦井委員 すでに判決を受けた人たちに対して、確認書では一体どういうふうに言っておるわけですか、大臣
  124. 山崎圭

    ○山崎政府委員 確認書の一時金の項に、既判決者につきましては「別途協議を行い、各別に処理する。」かような文言で確認書に記載されております。
  125. 浦井洋

    浦井委員 各別に処理するということで、そして後で協議をして、判決主文どおりに支払うということになっておるわけでしょう。そうでしょう。
  126. 山崎圭

    ○山崎政府委員 確認書におきましては、さような文言は使われておりません。
  127. 浦井洋

    浦井委員 その後の協議で……。
  128. 山崎圭

    ○山崎政府委員 その後の協議は個別に進めておるところでございます。
  129. 浦井洋

    浦井委員 判決主文に従うのでしょう。
  130. 山崎圭

    ○山崎政府委員 判決主文に従うという関係のお約束は、あることはございます。
  131. 浦井洋

    浦井委員 そうしたら、東京地裁の判決主文のこの項に関連したのはどういう文言なんですか。
  132. 山崎圭

    ○山崎政府委員 東京地裁の高裁勧告につきましては、元本は可部和解基準のとおりでありますが、いわば利息に相当するものにつきまして、その起算の時期が判決言い渡しのとおりか、あるいは結審の日か、この問題について違っておりまして、判決言い渡しの日から起算するというのが東京高裁和解勧告の内容でございます。
  133. 浦井洋

    浦井委員 だから、東京地裁の判決主文に従ってやるということは、結審をした日から遅延損害金を払うということになるわけでしょう。そういう線に従って国が何で明確な態度をとれぬのか、大臣どうですか。
  134. 山崎圭

    ○山崎政府委員 私どもは、裁判上の和解でございますので、やはり裁判所のお力をかりまして和解の線に乗りたい、かように考えております。そういうことでございますので、すでに十五部の和解勧告が出ましたから、それに従って処理したいというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  135. 浦井洋

    浦井委員 国は裁判所に皆任せておるわけだ。厚生大臣なり薬務局長はスモンの問題を一体どのように理解しているのか、私は非常に疑わしいと思う。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 先ほど私申し上げたように、スモン病というのは、粘膜がやられる、目はやられる、あるいは脊髄がやられる、そして足からずっとしびれてくるわけですよ。これは治らぬわけです。そういう状態なんですよ。そういう中でスモンの被害者の皆さん方は非常な困難に遭われておるわけです。しかも企業の一つである田辺の方からはビールス説が意識的に流されて、そしてそのために、せっかくまとまりかけた縁談が破談になったり、あるいは離婚を余儀なくされたり、あるいはそのために自殺をしておるというような方がたくさんおられるわけです。もう悲惨という言葉以上の状態なんです。しかし、スモンの被害者の皆さん方はそのことにくじけずに、力を合わして何とか裁判を起こそうではないか、そしてずっと裁判を起こされて、とうとう企業と国とをテーブルに引っ張り出して、そして去年の九月十五日に確認書に基づく和解ということまでこぎつけたわけです。そして、早く一時金ももらいたいし、それから恒久対策も講じてほしいということで、いま一生懸命努力をしてきている。ここに来て、そういう時点の中で、いまの問答でわかるように、国が企業に引っ張られて和解を渋っておる。もう東京地裁待ちだ、東京高裁待ちだ、こういうような態度は全くけしからぬと私は思うわけなんです。  大臣、どうですか。本当に人の心があるならば、ここでこの事態を肝に銘じて、一遍スモンの患者さんと二十四時間一緒に暮らしてみたらどうですか。具体的にどのようにするのか、もう一遍大臣の再考を求めたいと思う。
  136. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 スモンの患者の代表の万々と私もたびたび会っておるわけでございます。したがって、患者の訴える心情には十分理解をいたしております。また同時に、事務当局に対しまして、私は、この問題は今日の厚生省における最重要課題であって、早期解決をやりなさい、その具体的なことをさらに推し進めなさいということを指示いたしておるのでございます。  そういう具体的な方法につきましては、問題をいま関係省庁と詰めておるわけでございます。決して放任をいたしておるというようなことはございません。必ず製薬企業との間におきまする決着もつけていきたい。厚生大臣の責任においてその解決をすることをこの機会に明らかにいたしたいと思いますので、どうか御理解を願いたいと思います。
  137. 浦井洋

    浦井委員 答えに具体性がないですよ。いつも抽象的な話なんです。  大蔵大臣と厚生大臣に最後にお聞きしたいのですけれども、たとえば、大蔵大臣、いま重症の方——重症というのは御存じですか。スモンの患者さんの分類は、超々重症と超重症と重症と分かれる。だから、重症というのはその三者の中では軽い人なんです。家の中でやっと動作ができるという方が重症なんです。この重症者の方に介護手当がつくようになったですね、三万円。ところが、これについて大蔵省が何かいちゃもんをつけておるというような話も聞くわけです。そういうことは絶対許せぬと思う。  同時に、さらに健康管理手当がありますね、月三万円。これを当初の患者さんたちの要求どおりに五万円に上乗せしてほしい、こういう要求もあるわけなんです。  さらに恒久対策について言うならば、大蔵大臣もよう聞いておっていただきたいのですけれども、中心的な京都、東京、こういうようなところに病院をつくる、これも大事でしょうけれども、同時に、患者さんが比較的たくさんおられる地方に、たとえ少数でも専門のベッドをつくってほしい、これがスモンの被害者の皆さん方の切なる要求であるわけなんです。  さらに言うならば、いま治療の方法がないわけでしょう。はり、きゅうに頼らざるを得ぬわけです。このはり、きゅうに対して国は一体どれだけ金を出しているのか。なるほど、ことしからは全額国が負担するというふうに変わったけれども、八百円プラス三百円でしょう。実際にはり、きゅうを受けたら幾らくらいかかると思いますか。二千円以上かかるわけですよ。こういうことについて問題が一つも前進しておらぬわけなんですよ。  具体的に、この問題についてひとつ厚生大臣、大蔵大臣、答えてください。
  138. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 重症者につきましては、患者一人当たり月額三万円を限度として介護人による介護に要する費用を補助いたしておるわけでございます。はり、きゅうなどの実態は、これは治療としての公費負担というたてまえをとっておることはいま御指摘になったとおりでございます。  それから健康管理手当、これは企業負担でございますが、月額三万、これは医薬品副作用被害救済基金を通じまして、二月の末から支給できるようにいま準備を進めておる次第でございます。
  139. 浦井洋

    浦井委員 大蔵大臣、どうですか。
  140. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、昨年ここで予算委員長をしておりました当時、橋本厚生大臣がこの問題についていろいろ苦労しておられた実態をよく知っておりますが、そこで、たまたま大蔵大臣になりましたので、これが予算編成に際しましては、いま厚生大臣からお話がございましたように、恒久対策等においても、五十五年度においてさらに医療補助を拡充していったというふうにいま理解をいたしておりますが、いずれにいたしましても、今後とも未解決の問題を含めて厚生省と十分相談をしながらスモン患者の円滑な救済に努めたい、このように考えます。
  141. 浦井洋

    浦井委員 終わりますけれども、私は、きょうは老人保健医療の問題についてひとつ聞きたかった。ところが、スモン問題でひっかかってしまって、持ち時間全部使いました。それは厚生大臣の答えが余りにも抽象的、一般的で、せっかく傍聴に来ておられるスモンの被害者の皆さん方の期待にこたえておられない。この点を十分肝に銘じて、先ほどから私が申し上げておるようないろいろな要望、これをぜひとも、しかも早急にやっていただきたい。スモンの確認書によれば、年内に早期に全面的に解決するということになっていたわけなんだ。それがおくれているわけなんです。そこに根本の問題がある。こういうことをはっきりと認識していただいて、今後具体的に問題を解決していただきたい、このことを要求をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  142. 田村元

    田村委員長 これにて田中さん、浦井君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  143. 野坂浩賢

    ○野坂委員 昨日来の質問の中で、日ソのサケ・マス漁業の交渉問題についてもお話がありましたが、農林大臣は、心配も安心もしておらぬ、情勢はちっともわからぬというようなお話もございました。二百海里の時代に入って、世界一と言われるわが国の水産業の中で、漁獲量が非常に激減をしておるというのは御案内のとおりであります。ソ連やアメリカ、相次いで隣国であります朝鮮等も二百海里の時代に入りました。日本海沿岸におる私どもの漁民がこれは大変だということで、朝鮮民主主義人民共和国との国交が回復しておらぬというのが現状でありますから、一九七七年の十月に、自由民主党の久野さんが会長をしております日朝議連というのがございますが、これが交渉に臨まれまして、日朝漁業協議会と東海水産協同組合連盟と民間暫定合意書が締結をされ、また二年前に、五月三十日のぎりぎりにこの暫定合意書の延長が決定をされた、こういう経緯がございますが、これについて農林大臣はどういうふうに評価をされておるのか、また外務大臣も、どのように理解をしていらっしゃるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  144. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまお話のございましたように、日朝の暫定的な合意に基づいて、いま日本の漁民が北鮮の水域において安全操業がなされておることは、そこで操業しておる漁民にとっては非常に重要な漁場であるだけに、私どもは大変喜ばしいことであると思っております。
  145. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外務省といたしましても、ただいま農林水産大臣からお答えのありましたような趣旨で、この民間の話し合いによって安全操業が行われていることは、これを評価しておるわけでございます。
  146. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これの漁獲高ですね、漁獲量というのは、量と額にして今日どの程度ですか。
  147. 今村宣夫

    ○今村政府委員 北朝鮮の暫定操業水域内でわが国が操業しております主な漁獲実績を申し上げますと、五十三年でイカ釣りが二万二千トン、金額に直しますと九十九億円でございます。それからマスの流し延べなわが六百トンで、金額で三億八千万、紅ズワイガニが漁獲量三千五百トンで五億八千万、合わせまして漁獲量で二万六千百トン、金額にして百八億六千万円でございます。
  148. 野坂浩賢

    ○野坂委員 約百八億円に上る漁獲高があるわけでありますが、これは他の外国との二百海里の水域に入る場合は許可証も必要でありますし、入漁料も取られておる。この朝鮮の場合については、その許可証も必要でなく、入漁料も取らない。そのかわりに中小の漁業者の生活権を守る、こういう意味で、協定といいますか、合意書が結ばれておる、こういうことは御認識だと思います。今度、ことしの六月三十日でこの期限が切れるわけでありますけれども、切れるということになりますと、改めて交渉を行わなければならない。一番初めの交渉の際にいろいろ難航したわけでありますが、今度延長されるということになれば、これについて理解をし、あるいはこれを支持するというふうにお考えでありますか。民間漁業協定が改定または延長されるということになれば……。
  149. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、民間の日朝漁業協議会、またそれをバックアップされて日朝友好議員連盟があるわけでございまして、そういう中で従来も暫定合意がなされておるわけでございますし、今回、また日朝友好議員連盟もお出かけになるやに承っておりますが、そういう中でよりよい方向でいまのものが延長されていくということになれば、私どもは大変ありがたいことだと思っております。
  150. 野坂浩賢

    ○野坂委員 外務大臣お願いします。
  151. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 外務省といたしましても、ただいま武藤大臣の答弁の趣旨で、この暫定合意書の延長、さらには新たな取り決めの締結が見られまして、その結果として安全な操業が継続されることを高く評価するものでございます。
  152. 野坂浩賢

    ○野坂委員 理解をし、支持するということでありますが、第一回の交渉の際には、相互主義なり政府保証の問題が問題になりました。これにつきまして、日中間でも漁業協定が締結をされた経緯があります。いま国交は正常化し、国交回復しておりますから問題はないわけですが、民間漁業協定がされておるという経緯と事実があります。それについては、その決定を受けて、国内では告示をしてそれを支持する旨がされておるわけですね。そういうことはされるだろうと思うのですが、その点が一点。  それから、相互主義とかいろいろ言われております。いま朝鮮の方からわが国がこの三年間、年次別にどの程度水産物を輸入しておるのか。  それから、外務大臣も結構なことだ、もちろん入漁料も要らないし入漁許可証も要らないわけですから、これは結構なことだろうと思うのですが、しかし相手側としては、それだけ提供するから、そのかわりに相互主義にのっとって考えてほしいというので今度の交渉は難航するだろうと思うのですね。なかなかむずかしいものがあるだろうと思うのです。その場合に、たとえば人的な交流とか従来言われてきたのですから、この間外務大臣もその辺はやらなければならぬだろう、だんだん積み上げだ、こういうふうにおっしゃっておったわけですから、それらの点について配慮されるだろうか。それから関税にしても、この間は検討するということでありますが、農林水産大臣としてはそういう差別についてあるいは輸銀の問題等についてこれから検討される用意があるだろうか、その点について伺っておきたいと思います。
  153. 今村宣夫

    ○今村政府委員 民間暫定合意につきまして、政府としてはどういうふうに保証といいますか担保をするのかという問題でございますが、民間暫定合意の規制内容の履行につきましては、第一義的には、日本側の当事者であります日朝漁業協議会が、直接または団体加入を通じまして関係漁業者に対しまして周知徹底、順守についていろいろ責任を持っていただくことだと思いますが、政府としましては、その規制内容がわが国の漁業関係法に照らしまして合理的と認められるものについては、そういう担保の措置を講じたいと考えております。日中の場合におきましては、中国の機船底びき網の漁業禁止区域等についてやりましたから、もしそういうふうなことで朝鮮が何とかでございますれば、政府としても同様の措置をとることは考えていきたいと思っております。  それから第二点の、北朝鮮からの水産物の輸入でございますが、これは最近非常にふえておりまして、五十三年には三十九億九千万、約四十億でございますが、五十四年には八十七億ということで、金額で約二・二倍にふえております。それから数量でいいますと、大体二倍にふえております。主な品目は、たらこが五十億円で、あといろいろなものがございます。  そこで問題になりますのは、スケトウをどうするのかということでありますが、これはソビエトあたりから入れますときには、日本が加工船を持っていきまして、向こうでとれましたものを加工船ですぐすり身にするという形になっております。北朝鮮の場合には、なかなかそういう形での買い方というのは、日本の体制もまだちょっと整っておりませんし、同時に北朝鮮の方も冷凍施設がございませんものですから、そこら辺に輸入に関してはいろいろ問題がございますので、そこら辺のことを十分検討して対応していかなければいけないのではないかというふうに思っておる次第でございます。
  154. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大体わかりましたから、手落ちのないように措置をしていただきたいと思うわけであります。  次に、これも論議が若干ありましたが、本会議でも、白菜が七百円なり千円する、非常に野菜が高くなってきたという物価の問題に絡んでいろいろお話がありましたが、確かに歩いてみますと、このぐらいのが最近は六百円程度ですね。大体農家の手取りはどの程度だろうか、末端価格でたとえば七百円ということになると、生産者の手取りは一体どの程度だろうか。これだけ農業が疲弊しこんぱいをしておる。しかし高い、高ければ農家の手取りも非常に多いのじゃないか、だから農家は非常に所得が高いのじゃないか、そういう消費者からの見方がございますが、それについて農家の手取りというのはパーセントにして大体どのぐらいですか。
  155. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私、いまの高い野菜の手取りというのはちょっと承知をいたしておりませんけれども、いろいろの農産物の流通の中で、農家の大体の手取りと申しますか、シニア分は三割そこそこではないかというふうに従来判断をいたしております。
  156. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まあ農林大臣お答えになったとおりだと思うのですね。農家の手取りというのは、四十年が三七%で四十五年が三二%で五十年は二九%だ。五十三年度は、推計として二七%程度ではないかというのが農産物の農家手取りとしては考えられる。他の産業ではそういうことは考えられないですね。二七%ということになれば、百円で売れても二十七円。そのうちに自分の所得というものは、農薬とかあるいは肥料とかあるいは農業機械の償却、これを考えますと、さらに手取りが四割程度しかない。そういうことになると非常に安いという結果になるわけでありますが、だんだん農家手取りが減ってくるということになると、どこに問題があるかということです。どこに問題があるというふうにお考えですか。  それと、流通対策については、この間公聴会においでになりまして、大学の先生や農業会議所の責任者、そういう方が、流通については切ったじゃないか、これではたまらぬじゃないかというようなお話がありました。なぜそういう措置をされたわけですか。——一つは、手取りがだんだん安くなってくるという現状ですね。なぜ三五%のものが二七%にも二八%にもなってきたのか。もっと手取りをふやすというのが農林水産大臣の権能だと思うのですが、それが下がっておる。  それから、流通機構をもっと整備したいということをおっしゃっておりますね。それをあなたの方は要求されておりますが、たとえば食料品関係商業経営合理化推進は若干減っておるし、流通調理システム開発推進調査費等はゼロですね。あるいは食料品小売業経営の問題はゼロ、食品卸売業構造基礎調査、この問題については全部切っておる。これは農林省は要求しておるようですが、大蔵省はずばずばっと切っておる。向こうでは調査中でありますから、大蔵大臣から先にお答えいただいてもいいのですが、流通の問題は非常にやっていかなければならぬ、こうおっしゃっておるのに、五十五年度はみごとにゼロになっておりますね。それらについてはどういうお考えですか。
  157. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 細かい数字、またそのいきさつについては事務当局から答弁をさせますが、私どもといたしましては物流全体についてひとつ思い切って検討を加えて、先ほど御指摘のありましたような形で、生産者の手取りが案外少ないのに消費者が高く買わなければいけないというようなことではいけないわけでございまして、その辺にメスを入れていきたいという考え方で、重要政策の一つとして私はやっていきたいと思っておるわけでございます。
  158. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 生鮮食料品につきましてのまず生産者手取りの説明につきまして大臣から三〇%と申し上げましたのは、加工部門あるいは外食部門、これらを総計いたしましたナショナルベースでのシェアでございます。生鮮食料品が市場を通じてまいりまして小売を通じます過程で申しますと、野菜の場合には六割から六割九分、大体七割近く、この間が生産者手取りになっております。果実でございますと大体七割前後、これが生鮮食料品として市場を通じて消費者に渡る率でございます。  なお、予算の関係につきましては、重要野菜需給調整事業等新規の重要事業を起こしておりますのと、従来なじみました補助事業等について若干整理したことは事実でございます。
  159. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大蔵大臣には後で勉強されてから答弁していただきたいと思います。  流通加工対策の強化という項目がありますね。これでは七百億ふえておるのですけれども、問題は末端価格。たとえば加工にしましてもこのあたりが、末端のところで一番ふえるのですね、サービス業のところで。  これについては、あなたのところの統計表を見ますと、四十年は七%だったのが四十五年が一〇%、五十年が一五%、五十三年は一六%というふうにこの辺がふえておりますから、いま私が指摘したように、小売の際のその辺が問題ではないか。ここのあたり、この辺の流通が問題じゃないか、それが切られておるから問題ではないかということを指摘しておるわけです。それらの点については十分これから配慮されますか。
  160. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 小売のマージンが結果的に多くなっておるのは、私は、これからの小売業の体制をより新しい時代に向かったような形で進めていくところにマージンを減らすことができるのではないかと考えておるわけでございますが、それらを含めて、先ほど申し上げましたように流通、あるいは輸送もあるかと思います、そのあり方についてひとつ思い切って再検討をやりたい、こう思っておりますので、いまの御意見も十分尊重しながらひとつ検討させていただきます。
  161. 野坂浩賢

    ○野坂委員 検討するということでありますから、大蔵大臣、五十五年度予算はそのあたりみんなぶった切ってありますから、改めて検討していただくということで次に進みます。  外務大臣御退席でございますからこの際お尋ねをしておく必要があろうかと思いますが、この間の私の質問で農林大臣からもお答えをいただいたわけでありますが、いまの農政審議会に提案をした自給率の問題等を含めて、対ソ食糧あるいは穀物の輸出停止というような措置が出てきたことにつきましてこういうふうに御答弁をいただいております。対ソ食糧穀物の輸出停止の千七百万トンの小麦のうち百万トンをわが国が輸入をするということについて、大来さんは賛成だというお話でありましたが、農林大臣としては、検査の問題とか倉庫の問題、保管場所、こういう問題からいって非常に難色を示しておられましたね。ところが、きょうの新聞だったかきのうの新聞だったかには、百万トン輸入を決めた、こういうふうにおっしゃっておりますね。それで、三井とか三菱とか丸紅とかがこれを入れるということになっておりますね。それについてはどういうふうに御決定になったわけですか。
  162. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまの御指摘でございますが、何も決めておるわけではございません。新聞報道もいろいろあると思いますけれども、たとえば日本経済あたりはこれから商社が検討すると書いておるわけでございまして、これはたまたまきのうの私の記者会見のときに、その後どうなっているかという話が出たわけでございます。ここで御答弁をいたしておりますように、私どもといたしましては、五十五年度で買う小麦をより早く前倒しで買った場合にいまの設備その他からいってせいぜい十万トン程度でありましょう。また、外務省の所管ではございますけれども、KR援助でたしか七十五億今度の予算でふえることになっておったと思うのでございますが、それに見合う分が大体十万トンぐらいではなかろうかと思います。それから私どもで配合飼料供給安定基金というものがございますが、そこでいま大体一カ月分ぐらいをストックいたしておりますけれども、この備蓄は今後ともふやしていこうという計算をいたしておるわけでございまして、現在たしか四十万トンぐらいでございますが、これを五十万トンぐらいにふやそうという計画を立てておるわけでございまして、その計画を早く実施すれば十万トンぐらいであろうということで、合計せいぜい三十万トンではなかろうかというのが私どもの考え方でございます。相当前でございますけれども、たまたま閣議において外務大臣から、何か商社の方もある程度買い入れの意向があるかもしれないよという話もございましたので、ちょうど先生の党の大会でございました二月八日の日に、予算委員会も開かれておりませんでしたので、商社の人たちに私が来てもらいまして、民間でもある程度そういう前倒し的に買える余地があるならば検討してもらいたいと言いましたときに、たまたまそこで話題が出たのがどのぐらいだろうかということで、それは百万トンぐらいだとちょうどいいんじゃないかという話が出たわけでございます。その経緯を私がきのう新聞記者に答えたということでございまして、まだ何も私ども決めたわけでもございませんし、いま商社で検討していただいているわけでございます。
  163. 野坂浩賢

    ○野坂委員 閣議では話がありましたか。
  164. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 閣議で正式にはございません。いま申し上げましたように、閣議へ出ましたときに大来外務大臣から、商社の方、いわゆる民間側もある程度買ってもいいような空気もあるようだから、こういうお話があったので、私がそうだろうかということで呼んだということでございまして、しかし二月八日のときにはアメリカの穀物相場は相当上がってきておりまして、商社の人たちは、いまアメリカのものを買うということは自分たちも相当先まで予約をしておるのでなかなかむずかしい、しかし検討はしてみます、こういうお話であったわけでございまして、まだその回答は私の方へは参っていないわけでございます。
  165. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大来外務大臣は閣議でそのようにお話しになった模様ですね。アメリカとの外交交渉の中でそういう姿にしていかなければならぬような何か事態でも新たに起きておるわけですか。
  166. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの問題は、正式に外交ルートを通じた話はいままでのところ何もございませんが、アメリカの議会関係者の発言とかワシントンにおける情報などで、非公式な意向があるということでございます。千七百万トンの穀物につきましては、約四百万トンが小麦でございまして、残りの千三百万トンがトウモロコシ、主としてえさというふうにも聞いておりますので、まあえさは民間の商社が扱っておるようでございますし、たまたま国内で村上泰亮先生その他政策フォーラムの方々が提案をしておられまして、その関係でこのえさについても何か可能性があるのではないかということを、できれば農林大臣も御検討を願えればというようなことを、私的に申し上げたわけでございます。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂委員 外務大臣は私的に言ったのであって、別にアメリカから非公式な話はあったけれども、公式にはないということでありますから、農林大臣としては、先ほど御答弁がありましたように、政府小麦と飼料穀物の十万トン前倒し輸入をする、あとはKR援助その他で三十万トン、これ以上は出ない。日本の農業の実態から考えて、いまの現状から考えてそれ以上は輸入はできぬ。しかも食糧管理法の検査問題にも絡みますから、そういう点についてはこれ以上は考えていないということが明言できるわけですね。
  168. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 政府の手でやらしていただけるのはそれ以上は無理だ、こういう判断でございます。商社と話をいたしましたのも、あくまで小麦ではございませんので、トウモロコシの問題について商社がいま輸入をしておるものについて前倒しができるかどうかを検討をしてくれ、こういうことを言っただけでございます。
  169. 野坂浩賢

    ○野坂委員 政府の考え方は一応わかりました。  そこで、この間の農林大臣のお話は総合自給率の問題ですね、これを中心にお話しになりました。しかし、いまもお話がありましたように、アフガン問題に端を発して、まさに食糧は戦略物資になった、こういうことは認めておられるわけですね。したがって、農政審議会に諮問をした。これからの自給の問題についても若干変えていかなければならぬだろう、こういう御見解が述べられました。御案内のとおりですね。  そこで、そういうことになってくると、わが国で考えるオリジナルのカロリー計算でいくとどういう自給率の状況になっておるかということを、まずお話しをいただきたいと思います。
  170. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  オリジナルカロリーの計算には、野菜、果実等の栄養素でビタミン、ミネラル等は含まれないというような問題もございますのと、畜産物の一カロリーにつきましてどの程度の飼料換算をするかという問題もございまして、公式的な資料はございませんが、一応畜産物の一カロリーにつきましては飼料で七カロリーという前提を置きまして計算いたしますと、オリジナルカロリーの五十二年度の自給率が四五%、第一次試算といたしまして先般公表いたしました需給見通しで計算いたしますと、六十五年度に同じく四五%程度、こういうふうになります。
  171. 野坂浩賢

    ○野坂委員 日本経済新聞の二月十四日に出ておりますね。農林省が試算をした「お寒い食糧自給力」というのがありますね。御存じですか。持っていますね。——これは農林省が試算をした数字でしょう。
  172. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 これは日本経済新聞の方で計算したものでございまして、農林水産省で算定いたしました数字は、先ほど申しました四五%でございます。五十二年度四八%という計算が記事に出ておりますが、私どもの計算では四五%ということになります。
  173. 野坂浩賢

    ○野坂委員 渡邊さんがんばりますな。この新聞では「農林水産省筋がえさの輸入依存を考慮した熱量換算でわが国の食糧自給率を計算したところ、こんな結果が明らかになった。自給率は五十二年度が四八%で、六十五年度が四五%。」と書いてありますね。その結果、表で、飼料等は約二千万トンも外国から入っておるわけですから、鶏卵はゼロですね。牛肉は三五%、豆類は三四・三%となっておりますね。そのとおりですね。
  174. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 オリジナルカロリー論は、一般に総合的な自給率を算定するものと私ども了解しておりますが、ただいま御指摘になりました日本経済新聞での算定は、私どもとしては個々の品目については多少問題があるというふうに存じております。個別については私どもまだ検討しておりまして、この数字が妥当というふうには考えておりません。
  175. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、わが国のオリジナルのカロリー計算による自給率の資料をこの委員会に出していただきたい。お願いいたします、委員長。いいでしょうか。
  176. 田村元

    田村委員長 武藤君、いいですか。
  177. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 資料提出いたします。
  178. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは穀物の自給率でいきますと、五十二年の自給率は四〇%ですね。たしか総合自給率は七一ですけれども——七一ですね。当初、あなたが農林大臣の前に、ここにいらっしゃった渡辺さん、こういう方々が農林大臣の際には、六十年の目標は七五%、今度あなたの手によって五年間で自給率の向上をいたしますとおっしゃって設定をされたのが七一%。たしか主食用穀物自給率は六十年目標は七三%だったですね、これが六八%。穀物の自給率は三七%が三〇%。耕地面積は五百八十四・六万ヘクタールが五百五十一万ヘクタール、減っていますね。耕地の利用率は、いまは一〇二・九ですが、六十年の目標では、前の大臣は一一四・三だとこう言っておりました。今度あなたの手によるいまの諮問は一〇八%。耕地の利用率も目標よりも激減、こういうかっこうになってくるわけですね。  大平さんはいつもいろいろ鈍牛とか言われておりますけれども、これではだんだん土地の利用率は落ちるし——目標ですからいまよりも高いのはありますよ。しかし、当初六十年を目標にしたよりもはるかに落ちてくる。これがあなたの自給率向上の主眼ですか。これを直しますか。——直しますね。
  179. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この間もこの席でお答えをしたかと思いますけれども、いま御指摘になりました数字は、十一月に私ども農林水産省がこの六十五年の長期見通しをいろいろと農政審議会で検討していただく上に農政審議会に提出したものでございます。これは大体過去の統計数字からその趨勢の方向をある程度勘案をして出したものでございます。  しかし、私は、ここでもお答えをいたしましたけれども、その後アメリカの対ソ穀物輸出停止とか、あるいはFAOが、非公式ではございますが、新聞報道によれば、二〇〇〇年にいまよりも五〇%食糧の増産を図らなければならないとか、いろいろの世界情勢の中で私どもは考えざるを得ないことが出てきたわけでございまして、私といたしましては、従来のそういう数字に基づいた客観的なものも大切であるけれども、あわせて、国で相当の予算をいま使って、そしていろいろと政策を掲げて、小麦などについてもより増産をしてもらいたいとか、あるいは米の消費についても拡大を図るということで予算を組んでおるときに、自然自然に減ってきたものをそのまま認めるというのはいかがなものであろうか、あるいは増産に対してやはりそういう政策を掲げてやっている以上は、もう少し何か政策目標がうまくいったときにはどうなるかという姿もつくるべきではないか。こういうことを省内で私は強く指示をいたしまして、そういう政策目標を織り込んだ形での数字というものもひとつはじき出してみなさい、そして農政審議会にその両方をひとつ勘案をしていただきながら検討してもらいたい、こういうことを私はこの間指示をいたしたわけでございまして、今後農政審議会になるべく早い機会にそういうものもお示しするように、いま鋭意事務当局で検討をしておるわけでございます。そういうことで御理解をいただきたいと思います。
  180. 野坂浩賢

    ○野坂委員 理解はいたしますが、農政審議会は三月ごろ開かれるだろうと思うのですが、それでは、いつ開かれて、この長期見通しについては、農林省はいまの試算について別なものを農政審議会の方に提案をするというふうに考えてよろしいですね。
  181. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 もうすでに農政審議会の各部会ではいろいろ御議論いただいておるわけでございます。  いまの目途といたしましては、五月いっぱいぐらいにひとつ結論を出していただけるようにと、それで私どもの資料もそういうことで、いまいろいろ事務当局も苦労いたしておりますけれども、ある程度のものを検討していただく数字はぜひ出していきたい、こう考えております。
  182. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまの農業というのは、私ども耕種農業と畜産農業は一貫性のあるもの、一体化するものだ、こういうふうに考えておりますが、そのとおりでしょうか。
  183. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもいわゆる複合農業という言葉を使っておりますが、当然それぞれの農家においても、あるいはその地域内においても、あるいは各地域相互間においても、できる限りそういう考え方で進めてまいりたいと思っております。
  184. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういうふうに政策は進められておるにかかわらず、いまは鶏はみんな鶏のアパートに入っておりますし、豚も入っておりますし、耕種農業と畜産農業というのは別個になってきておる。牛にしましても、五百頭飼っておる農家というのは全酪農家の一%ですね。しかしその頭数というのは三〇%、こういうことで占めておるわけです。だから、完全に分断されつつあるというのが今日の農業の実態じゃないかと思うのです。  そこで、あなたは耕種農業と畜産農業の一体化論、言うなれば複合経営論、これをやっていらっしゃるわけですから、わが国の自給率が一番足らぬのは、鶏卵にしても鶏肉にしても豚肉にしても、全部わが国のオリジナルのカロリー計算でいけばゼロだというのは、外国の飼料が入ってそれを腹を通しておるからそういうことになるわけですね。そうすると、どうしてもその飼料というものに重点を置かなければならない。いまの稲作の転換ですが、ずいぶん見通しを誤ったし、失敗をしたし、約束違反をした。この減反、減産の政策の中で、いまの耕種農業と畜産農業の一体化、一貫性、こういうものを考えて飼料作物というものに重点を置かなければならない。  いまなぜ米というのが三十九万一千ヘクタールを五十三万五千にしなければならなかったのか、考えてみますと、農家は、湿田はいわゆる生産性の上がらない農地は減反をして、上田といいますか乾田といいますか、そういうところにはつくっていくからやはり伸びていく、こういう結果が出てきたと思うのです。従来、日本の農地というのは稲作に適して、これは合理的だし技術の向上はする、だんだん伸びていきますし、それでは稲に似たものをやらなければならない。土地の利用率が低下をしたのは、農林大臣がこの間言われましたように、何といいましょうか、この再編の場合に管理田ができて、そのための落ちなんだ、こういうふうにおっしゃった。米をつくらないで小麦を表作にしなければならない、こういうこともおっしゃった。だからそれは両方ともやれるように、この間もお話をしたえさ稲をつくって、これが表作になって裏作には小麦をつくるということになれば一挙両得ですから、その方がむしろいいではないか、こういうふうに私たちは思うわけです。それが土地の利用率の向上にもなる、こういうことになります。その点については政策として十分進めていかなければならぬ。  ところが、あなたの反論は、それは価格が安いのだ、トン三万円あたりだったら引き合うのではないか、まあ稲を畳にするにしても二万円程度だ、流通も問題がある、これは食糧管理法に波及するおそれがある、こういうことを言っている。しかし、食糧管理法の第二条を見てもそういうことは御心配がない。いわゆる食糧なんですから、これは飼料なんですから、そのためにこれから前向きに十一県で試験田をやっておる。試験田でこれを開発し、収穫を上げられ、価格についても十分考えられるということになればいいわけですけれども、農家の皆さんは、皆さんよりも研究は進んでおるのです。だからもう、他の稲とは穂も違いますし高さも違いますし、これは稲転の対象作物として取り入れるべきだ、こういうふうに結論をしておるわけです。それについてはどうですか。
  185. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この間からお答えをいたしておりますように、やはりそれは、相当農家でも進んでやっていただいておるところもあることは承知をいたしておりますが、私もまだ残念ながらその現場を見ておりません。きょうも農林水産委員会でもそのお話が出ましたので、一遍私は現場をぜひ見せていただきたい、それで直接私がそういう苦労をしていただいている農家からお話を承りたい、機会があれば近い将来、なるべく早いうちにぜひお邪魔をしたいということを申し上げましたけれども、私、いまのところは事務当局から、特に技術会議あたりから聞いておる段階でございまして、その段階ではいま先生のお話とはいささか違っておりまして、トウモロコシと比べると相当コストは違う、こういう判断だということでございます。そして、トウモロコシと見合うようなコストでのものをつくり上げるにはまだまだ相当期間がかかる、こういう報告を私は聞いておるものでございから、この間申し上げましたように、いまのところはなかなかコスト的にむずかしかろうという問題でございます。  それからいま一つ、識別の問題でございますけれども、これは確かに食管法は食糧でございます。だからそれはえさだからいいじゃないかということでございますけれども、これはまた一方においては同じ米であるということには変わりないわけでございまして、やはりそのえさの米はどういう形でそれでは流通していくのかという点も、十分実は私どもの内部ではまだ検討が進んでおりません。これからそういうこともひとつより一層スピードアップして検討をしていかなければならない、こう考えておるわけでございます。この問題については私ども本当に真剣に検討してみたいと考えております。
  186. 野坂浩賢

    ○野坂委員 アルボリオジャパン一号というえさ稲を御存じですか。
  187. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は名前はよく存じません。何か韓国におけるものの方が日本のいまのものよりも進んでいるという報告はいただいておりますが、いまの具体的な名前については私承知をいたしておりません。
  188. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これはイタリアの品種で、他の稲よりもずっと背も高いし、穂も違うし、この食糧管理法の二条に書いてありますね、「主要食糧トハ」というところで「米穀、大麦、裸麦」云々書いてありますね。これについては、その流通をチェックすることがなかなか問題だということですけれども、飼料として初めに決めればそれがチェックできるわけですから、むしろこれには影響しないわけですよ。だから稲転ということで決めて、飼料作物ということでチェックをしていけば米に波及をすることはありませんし、むしろ整々としてきます。ただ、生産コストが高いということは言えます。米よりも安いけれども普通の飼料作物よりも高いということが言えます。しかし水田に合って、農家がやりたい、そのためにはいまの四万円とか五万五千円のいわゆる奨励金というものを出せば、ある程度農家が喜んでできるという、そういう政策は農林省として当然とるべきだと思うのです。だから、はっきりしておるのです。だから、もうやったらいいじゃないかということを、あなたにお願いということよりも、やったらどうですかということを提言するわけですが、それについての御見解を明らかにしてもらいたい。
  189. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまお話しのようなものについて、私が事務当局から聞いておるのでは、米ということにおいて、幾らえさということに限定をしても、たとえば万が一横流しということがあるんじゃないかという心配もいたしておるわけでございます。ですから、先ほど申し上げておりますが、私自身がやはりよく見せていただいて、現物も見せていただいて、やはり私が自信を持たないことには、事務当局の説明だけではいまのところ消極的にならざるを得ないわけでございます。そういう点はもう少しひとつ時間をおかし願いたいと思います。
  190. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いつ行くかということですね。いつ現地においでになりますか、これが一点。  それから、現地で納得できたら稲転のいわゆる生産調整の対象作物にお入れになるか、こういう二点ですね。それをはっきりしてもらいたい。
  191. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 こういう国会の状況でございますので、やはりある程度予算委員会も終わり、あるいは農水委員会の方においてもある程度お暇がいただけるような時期にならなければ行けないと思っておりますが、いずれにしてもなるべく早いうちにお伺いをしたいと思っております。  それから、そのときにそれじゃどう判断するか、私はまだ全然見てもおりませんので、どうも仮定の上に立ってお答えをするのはいかがかと思いますので、それをよく見て私は結論をつけたい、こう考えております。
  192. 野坂浩賢

    ○野坂委員 早急に見ていただいて五十五年度の生産調整の対象品目に間に合うように御結論をいただきたい、よろしゅうございますか。
  193. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま申し上げましたように、私は見てから結論を出すわけでございますので、いまここでそれじゃ五十六年度からの……(野坂委員「五十五年度だろう」と呼ぶ)いや、第二期は五十六年度でございますから、水田利用再編対策の第二期のいろいろの仕組みの見直しの中で、それを入れるか入れないかということについて、ここで結論を出すということは少し差し控えさせていただきたいと思います。
  194. 野坂浩賢

    ○野坂委員 前向きに検討するということですね。
  195. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私が見にいくということでございますから、もちろん検討させていただくということでございます。
  196. 野坂浩賢

    ○野坂委員 次に、畜産対策についてごく簡潔にお尋ねをします。  牛乳は二十一万トン余っておるというお話ですね。最近中央酪農会議では全国の各県が集まって割り当てをしましたね。アウトサイダーその他もあるし、県内消費で一%上乗せ、こういうことを決めました。そこで余っておる乳を指定事業の補助対象として全乳哺育をやっておりますね。北海道でもやっておりますし、これから宮崎県でもやる、わが県でもやる、こういうことがございます。  ところが、これは一キロ当たり三十円の補助ですね。三十円を補助して、そして紅をつけて色をつけて、それがまた市販に出ないようになかなか考えておられますけれども、そういうかっこうで全乳はやっておられますね。これについては一キロ三十円。いま乳が余るので——われわれは農業基本法の九条なり十一条の選択的拡大で果樹とか畜産をやった。だから、畜産振興法もでき、あるいは果樹農業振興法もできた。しかし、ミカンも残るし、乳も残る。何とかしてこの乳を消化しなければならぬという農民自身の知恵もあります。私どもの方では農協が、全脂粉乳と言います——いわゆるいままでは御承知のようにカードックという二十五キロの食物性油と脱脂粉乳をまぜたものが七千円で市販されていますね。それだけではなしに、カロリーから見て全乳哺育というのは非常に効率がいい。しかも、乳が余るということならそうしょうということで、全脂粉乳ということをやり出した。全部粉乳です。それについては全乳哺育と同じように、指定事業品目として、一キロ当たり三十円の補助。加工賃等は農民が出し合ってやる。全乳と同じ補助率で結構だから、これをやってほしいという声があります。また、具体的に作業にかかりつつあります。それについては補助金は全乳哺育と同じように出されますね。これは畜産振興事業団から出すわけですね。
  197. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この制度はたしか五十四年度中ということになっておりまして、五十五年度からどうするか、また別の問題でございます。それで、いまの五十四年度中、あと一月かそこらでございますけれども、それについては、私は事務当局から聞いておる範囲では、非常にコストがいろいろとかかってしまって、そういうことが普遍的にいくのかどうかという点について大変疑問を持っておるようでございまして、いまのところ三十円の対象にするわけにはいかないというのが現在の結論のようでございます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  198. 野坂浩賢

    ○野坂委員 事務当局ではなしに、あなたにお聞きしなければならないわけです、政策問題ですから。  ちょっと聞きますけれども、牛乳というのは夏がよく売れるか、冬がよく売れるか、御存じですか。そうしてどっちが腐りやすいか。
  199. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 技術的な問題でございますので、お答えさせていただきますが、牛乳は、夏場は牛が夏ばてになりますので、当然生産量は落ちますが、消費は増大をするという状況にございます。
  200. 野坂浩賢

    ○野坂委員 夏は腐りやすいというのが常識じゃないですか。寒くて腐るというのは余り聞かぬのですから。酒をつくるのと余り変わらぬのじゃないですか。だから夏場は腐りやすいし、夏はみんな飲むのですよ。先生方も、大臣方もみんな飲むでしょう。冬は余り飲まぬのですよ。だから夏は出にくいし、冬は乳がたくさん出る。出るということになれば、そのときに全乳哺育で飲め飲めと言ったって、牛はなかなか全部飲み切れません。夏はなかなか出にくいし、人間の方がたくさん飲みますから、牛に回ってこない、こういうことになりますでしょう。それなれば、冬場は乳は飲ませるけれども、夏場は飲ませないという結果になりますよ。そうでしょう。農林大臣、聞いておってください。そういうことになりますね。そうすれば、冬たくさん出るときに乳は全脂粉乳にして、夏場に乳が足らないときでも、全脂粉乳なら湯をまぜて出せば飲めるわけですからね、その方がいいじゃないですか。そうすれば一貫して酪農対策、牛乳対策というものはできる。  それから、それはコストが上がる上がるとおっしゃっておりますけれども、政府としては全乳に補助金を出す、一キロ三十円で結構だ、その全脂粉乳をつくる加工賃も農民自身がみんな持ち寄って、みんなプールで計算をするということになって、われわれは一生懸命に乳を買うということになれば、むしろその方がわれわれにとっては、これからの酪農に対する力の入れ方というものが違ってくるのだ。だから無理は言わぬ、三十円でやむを得ぬ、加工料も。そうすれば、その方がむしろ全乳哺育体制の面からして政策として進めるべき効果というものは非常に高い、私はこういうふうに考えておるのですが、どうですか。
  201. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、どうもいまのところは、事務当局の説明を私は聞いておりまして、五十四年度については対象にしないという結論を出しておるわけでございます。しかし、五十五年度からはまだ助成をするかどうか決めておりませんけれども、五十五年度からどうするかを、いずれにしても検討しなければなりません。もし助成をするというような場合には、先生の御意見を私もきょう十分拝聴いたしましたので、そういうことも含めて、ひとつ検討をさせていただきます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  202. 野坂浩賢

    ○野坂委員 乳の問題はこれぐらいで終わりますけれども、考えてみますと、乳が余るんだから農民の知恵で、人間が飲んでも二合か三合しか飲まぬのですから、子牛は一日に四升ぐらい飲むわけですから効果が上がるわけです。それが酪農振興の政策の一助だということを十分頭に置いて、そして五十五年度は前向きに検討してもらうようにお願いしておきます。
  203. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほどお答えをしたとおりでございまして、前向きというか、まだ五十五年度にどういう助成をするかを実は決めていないものでございますから、ここで前向きという表現はとれませんけれども、五十五年度でもし助成を続けるというような場合にはいまの問題は前向きに検討させていただきます。
  204. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それから、乳がたくさん余っておる。いまの新聞にも出ておりますようにナチュラルチーズというのがあります。プロセスの場合は非自由化ですが、ナチュラルチーズというのは自由化ですね。どんどん入ってきて、生乳換算しますと五十三年で九十四万五千トン、約百万トンに近いです。そうすれば、これを国産化をしていけば十分間に合うのですね。酪農振興は、まだまだ牛を殺さなくても済むし、これから発展をする。しかも外国から二百六十一万トンの乳が入っておるわけですからね、バターとかチーズとか。外国はたとえば牛乳とか脱粉とか練乳とか粉乳とかチーズとかバターとか、こういうことになっておりますが、日本の場合は酪農政策の中でチーズは落としておるわけです。だから、いまこそナチュラルチーズというものは進めていく必要があるだろう、こう思うのです。そうすれば、この百万トンに近い数字というものが消化できれば、これで酪農家も安心をして酪農にいそしめる、こう思いますが、その点についての御見解を承りたい。
  205. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ナチュラルチーズの製造設備につきましては、畜産振興事業団から五十四年度から助成をいたしておるわけでございまして、私どもはナチュラルチーズは相当国際競争力もあるんではないか、こういう判断をいたしておりまして、今後とも思い切ってその振興策には力を入れてまいりたいと考えております。
  206. 野坂浩賢

    ○野坂委員 しっかりやっていただきたいと思うのですが、最後に豚の問題をやっておきましょう。  豚肉価の価格安定基準がありますね。最高が七百三十五円ですね。最低が六百一円ですね。これはいわゆる倒産防止基準ですね。最近は五百四十五円でしたね、十月。十一月が五百七十円、この基準よりも下回っておる。だから十月一日に畜産振興事業団は御案内のように、緊急買い出動をやった、調整保管をやるためにやった。ところがそれでもやられた。六百一円以下の場合は、そういう法律もあるわけです、買うことができるとありますけれどもね。その点について、豚を飼っておる皆さんは非常に深刻な状態です。これについての対策はどうですか。
  207. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 相場でございますけれども、現時点では大体五百八十円前後になっておるはずでございます。これはいま御指摘のございました去年行いました自主調整保管、それから今度新たにこの一月から畜安法に基づきまして事業団が調整保管をいたしておるわけでございます。実際はいわゆる畜安法に基づく調整保管を全農その他にお願いしておるわけでございます。この自主調整保管と畜安法の法律に基づく調整保管、この合計が大体五十万頭というのを予定をいたしておるわけでございます。畜安法に基づくものが三十万頭、自主調整保管の分が二十万頭、合計五十万頭でございますけれども、現在まだ畜安法に基づく分が七万頭そこそこだと承知をいたしております。今後より一層畜安法に基づいての調整保管がなされていくならば、私どもは安定基準価格に達するんではないかという期待をいたしておるわけでございまして、確かにもう一つ次の段階は畜産振興事業団による直接買い上げというものもできることになっておりますが、そこまで行かなくても大体六百一円という価格には行くんではないか、こういう判断を私どもいまいたしておるわけでございます。
  208. 野坂浩賢

    ○野坂委員 倒産防止のぎりぎりの基準なんですからね、それについては責任を持って農家が安心をして農業が営めるように、畜産農業が営めるような措置をしてもらわなければ、ほかのものはみんな上がるんですけれども、農産物の問題についてはほとんど上がっていない。しかも手取りは先ほど農林大臣お答えになったような状況なんですから、幾ら末端価格が上がっても手取りは非常に少ないというのが現状ですから、その辺を認識していただいて豚対策なり牛対策を進めていただきますように希望しておきます。  それでは次は、国鉄をやりましょう。運輸大臣、閣議ではどういうふうな題目で国鉄財政再建の法律はお通しになっているんですか。何にも異議ありませんでしたか。
  209. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 昭和六十年度までに国鉄の財政の再建を図り、三十五万体制を踏まえて収支均衡を図るという考え方で閣議に諮りました。
  210. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この中で問題になっておりますのは、地方交通線、特に特定地方交通線、これの赤字はどのくらいあるんですか。
  211. 山地進

    ○山地政府委員 地方交通線全体で二千五百億ぐらいでございますが、特定地方交通線の部分につきましては千億ぐらいでございます。
  212. 野坂浩賢

    ○野坂委員 約九千億円赤字が認められるわけですね。八千八百六十七億と言われておりますね。最も大きい赤字というのはどこなんですか。
  213. 山地進

    ○山地政府委員 九千億の赤字のうち、二千五百億円が地方交通線でございますので、それを引きますと、約六千五百億円ぐらいが幹線部門、特に貨物部門から多く赤字が出ております。
  214. 野坂浩賢

    ○野坂委員 特に幹線系線区というのが約六千六十七億円も赤字がありますね。大体そういうかっこうです。それで、一番弱いところから切っていこうというわけですね、今度は。特定地方交通線から切っていこう、こういうことになっておるんじゃないですか。
  215. 山地進

    ○山地政府委員 地方交通線と幹線と比べまして収支係数というのを調べますと、助成前で幹線の方は収支係数が一三五、つまり収入に対して経費が一三五でございます。それに対しまして地方交通線の方は四四五、百円の収入を上げるのに四四五かかるということでございます。国鉄の再建を考える場合に、収入の方で上げるのと経費を節減して上げるのとこの二つあるわけでございますが、幹線の方の一三五ということは、収入を上げあるいは経費を節減することによって達成が可能な数字だと思うわけでございます。ところが、地方交通線の四四五ということになりますと、これは国鉄の経営努力をもってしてはいかんともしがたいということでございますので、かつ、地方交通線におきましてはバス輸送の方が、道路もかなり発達しておりますし、国民経済的にも有利である、また乗車の旅客の方も、回数がふえるとかあるいはバスストップが多くなるとか、そういうようなことから考えまして効率的な輸送体系であるという考え方から、地方交通線問題の対策を講じておるわけでございます。
  216. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先に進みませんから、一つ例だけを申し上げておきますが、大阪−博多間の新幹線は二百三十八億円の黒字ですね。しかし在来線は千二百九十二億円の赤字です。差し引きしますと、千五十四億円の赤字が出ております。そういう実態なんです。東北線なんかも、新幹線ができれば必ずこうなります。東海道線はドル箱だったのですが、新幹線ができれば必ずこういうことになる。ということは、国鉄の近代化を図り、足も守るし便利さなり速度差ということを考えればこうなりますが、経営から考えると、一つ例を挙げてもこういうことになるのですよ。そこで、過疎、過密という問題は政治問題化をして、この過疎の解消論というのが非常に叫ばれてきたのです。  それで私が聞きたいのは、今度出される法案、この法案の中で、特定地方交通線対策協議会というものをつくりますね、運輸大臣。それは国鉄と政府と自治体及び警察ですね、大体三者構成でする。これは全体一致で話し合いができたときに廃止をするということの趣旨ですか。採決をやるわけじゃないでしょう。
  217. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 いまのお話のメンバーのほかに学識経験者等の方にも入っていただきまして、二年間にわたっていろいろ地方線の対策を協議していただく、そしてどうしても協議が相調わない場合には、一応バス転換を図る等を検討することになるわけでありますが、その間、知事の意見等も聞きまして、十分論議を尽くして、住民の御意見の反映する内容に持っていきたい、かように考えております。
  218. 野坂浩賢

    ○野坂委員 学識経験者の中では、列車の利用者も含みますか。
  219. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 当然入るものと存じます。
  220. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それから、いわゆる特定地方交通線の指定をする場合には、その旨を県に通知をしますね。知事は、これについて意見を述べることができるわけですね。この知事の意見というのは、どういう意義と効力を持つものですか。
  221. 山地進

    ○山地政府委員 法律に書いてございますように、選定につきまして知事が意見を述べるわけでございまして、それに基づきまして運輸大臣の承認をするということでございますから、承認の際に知事の御意見につきましては十分考えさせていただくということになろうかと思います。
  222. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、知事の意見というのは、運輸大臣が承認をするに当たって非常に重要な要素を持つ、これは廃止してもらっては困る、特定地方交通線から除外してもらわなければならぬ、こう言った場合は、それについては十分考えて対処する、運輸大臣、こういうことですか。
  223. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 十分知事の意見を参考にいたしたいと存じております。
  224. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、現在考えていらっしゃるのは、一日の乗車人員が二千人で四千キロということですが、線区として何本ですか。
  225. 山地進

    ○山地政府委員 ただいまの法律では、政令で定める基準に従って選定いたすわけでございまして、政令のつくり方によってそれらは違ってくるわけでございますが、従来私どもが内部で、こういう基準をつくったらこうかなということでやっておりましたのは、八十線以上でございまして、約三千八百キロぐらいが二千人以下、一日当たり一キロ当たり二千人以下というものにつきましては四千キロ弱でございます。
  226. 野坂浩賢

    ○野坂委員 八十線区以上というよりも、何本なんですか。八十六本だといって新聞記者の皆さんは書いておりますね。そうですか。
  227. 山地進

    ○山地政府委員 先ほど申し上げましたとおり、確定的な数字というのは、政令との関係がございますのでまだ決まっているわけではございませんが、私どもが検討していた段階で、ある時期で八十六本、八十六線区ということもあったかと思います。
  228. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸大臣にお尋ねをしますが、国鉄地方交通線の転換が地元住民の生活に重大な影響を及ぼす、こういうふうにお考えになっておりますか。
  229. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 この法案の趣旨は、国鉄の再建を図るために考えられた法案でございますが、地方交通線の廃止ということは、どこまでもバス転換その他によって必ず住民の足を確保するということで、どこまでも住民に御迷惑のかからないような措置を講ずるという内容を含んでおるものでございます。
  230. 野坂浩賢

    ○野坂委員 「日本国有鉄道の再建について」という閣議了解事項には、国鉄地方交通線の転換が地元住民の生活に及ぼす影響、これはあると書いてありますよ。しかし最小限度におさめよ、こういう考え方ですよ。あるのですよ。あるんでしょう、どうですか。ちゃんと書いてあるじゃないですか。
  231. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 いろいろ住民の不満その他もおありになると思いますが、最終的に足の確保に努めようということで進んでまいりたいと考えております。
  232. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは一年を二年にしたというのはどういう理由からでございますか。
  233. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 百年来の長い国鉄というものに対する住民の方々のいろいろな郷愁その他もおありでしょうし、また地方自治団体のいろいろなお考え方もありましょうから、十分御審議いただきましょうということで二年に延ばしたわけでございます。
  234. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それは一年間ではなかなか話し合いはできまい、だから二年にしたんだ。しかし、運輸大臣はりっぱな方ですから、見切り発車をするようなことが書いてありますが、地元住民の理解を得ないまま、また学識経験者は利用者なり地元住民の意向を十分そんたくするということでありますから、そういう理解が図られない限りに、国鉄が一方的にやるというようなことは考えていらっしゃらない、私はこういうふうに思っておりますが、そういうふうに考えていいでしょうか。
  235. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 地元の住民の方々に影響するところが大変大きい問題でございますから、十分地元の御意見を聞き、また、地元の方に国鉄の現状、財政再建の内容、こういうものについて御理解をいただきまして、御理解を得た上において実施いたしたい、かように考えております。
  236. 野坂浩賢

    ○野坂委員 理解を得なければやらないということですね。
  237. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 十分御理解を得たいと考えております。
  238. 野坂浩賢

    ○野坂委員 理解を得るまで努力するということですね。
  239. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 二年間で何とか御理解を得ようというふうに努力いたしたいと思います。
  240. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは通勤時通学時一時間千人以上の乗車がある場合はやらないわけですね。
  241. 山地進

    ○山地政府委員 これも政令で定める基準の一項目かと思いますが、バスに転換することが困難な路線というものについては、やはり国鉄で運営することがいいのではないだろうかという考え方がございます。その場合、バスに転換することが困難な場合というのはどんな場合があるだろうか。その典型的な例が、先生のおっしゃるような一時間当たりの輸送量がラッシュ時千人を超えるというと、バスが七十人乗りでございましても、だんごになって道路に非常に迷惑をかけるというようなことから、バスで輸送することがむずかしいのじゃないだろうか、そういうことで、一応私どもの内部で現在検討しておる案としまして、ラッシュ時の一時間当たりの輸送量が千人ということについてはバス転換が困難な路線としていいのではないだろうかという意見があるわけでございます。
  242. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それはいまの在来線に乗車をしていない人たちですね、バスに乗っておる人たちを含めてですか。
  243. 山地進

    ○山地政府委員 いまの千人と申しますのは、汽車に乗っている方が千人、つまり、並行道路の状況というのはまたどういうふうになっているかということは別の問題としてございます。ですから、そこの並行道路がかなり余裕がある場合にも、千人乗っている場合はバス転換困難というふうに現在は考えております。
  244. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ちょっと伺いますが、私のところに若桜線というのがあるのです。大体車両は六両から七両です。余り上等な箱ではないものですから、大体定員七十名、それと七十五名の箱もあります。四百二十名のところを七百人乗っておるのです。大体七百名乗るといっぱいになるのです。それ以上は乗れぬのです。隣の八東は乗れないというのが現状です。汽車に乗ろうと思っても乗れぬのです。通勤時に乗れない。七百人乗ると超満員になるわけです。貨物で言うと、本当は積載違反で道路交通法違反になるわけです。そういう状況のところは、乗ってないからやむを得ぬということですか。乗ろうと思っても乗れないという場合はどういうふうに算定するわけですか。
  245. 山地進

    ○山地政府委員 若桜線は私も一回乗ったことがありまして、おっしゃるように大変古い列車が走っておるところでございます。私どもの手元の資料から申し上げますと、一日当たり一キロ当たりの輸送密度というのは千六百人ぐらいでございます。ただ、私どもの方でこの千六百人と申しますのは往復でございまして、私どもが二千人以下の路線について転換を図ったらどうだろうかと考えておりますのは、理由といたしましては、一つはバスに転換する……(野坂委員「バスはだめです」と呼ぶ)いや、片道千人を切っているものでございますから、そういうところですと、ラッシュ時にだんごになっている量もかなり制限されてくる、そういうものについてはバスに転換することが可能である。それからもう一つは、採算面から申しまして、二千人以下の路線というのは大部分、ほとんどでございますけれども、先ほど申し上げました地方交通線の平均の収支係数の四四五以下の路線でございます。それらを考えまして、二千人以下の路線についてバス転換を図ったらいかがかと、かように考えておるわけでございます。
  246. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これはまた論争したいと思います。  次に、運賃の問題は、きのうもちょっと触れられたのですが、国鉄は今度旅客運賃は四・七%、貨物運賃は八・九%、こういうことで四月から上げるわけですね。いままでの内容から見ますと、国鉄運賃二等級で二十キロメートルまでは二千九百五十三円ですね、トラック運賃は千五百円。三十キロが国鉄が三千七十三円、トラックが千七百五十円。四十キロが三千二百七円、トラックが千九百五十円。五十キロが国鉄が三千三百四十円、トラックが二千二百円。六十キロが三千四百四十円、トラックが二千四百円。七十キロが三千五百五十三円、二千六百五十円。走行キロ八十キロが三千六百七十三円に対して二千八百五十円。九十キロが三千八百七円に対して三千百円。百キロが三千九百四十円に対して三千三百円、こういうことになっております。これで貨物運賃を上げますと、貨物が寄ってくるという状況にはないわけですね、運輸大臣。結果的にはだんだん逃げていくというかっこうですね、そうでしょう。トラックの方が安いのに高い方をまた上げれば、それが寄ってくるわけがないじゃないですか。これはどういう関係ですか、運輸大臣。これではだめじゃないですか。これでは国鉄を再建することになりません。運賃さえ上げれば収入が上がるということにはなりませんよ。どうですか、運輸大臣は。
  247. 山地進

    ○山地政府委員 先生指摘のとおり、近距離についてはトラックというものが、その機動性から考えてかなり優位に立っているというのが、従来の統計から見ても言えることだろうと思います。  それからいま御指摘の値段の点でございますけれども、値段につきましてはトラックの場合には、それは標準運賃でございまして、それからまだ安くするということで、トラックと近距離において競争するということは、国鉄の現状からいってかなりむずかしいと思います。それから貨物につきましては、国鉄の方の三等級ございましたのを一つの等級に直す場合は、貨物の大量、定型に出てくる荷物につきましては、営業的に十分荷主の方と御相談をして国鉄に運んでいただけるような値段ということを十分考えて、激変緩和ということについては考えてまいっておるところでございます。
  248. 野坂浩賢

    ○野坂委員 鉄監局長、問題なのはその辺ですよ。あなた方は今度は中心を三つに置いて、貨物の場合は大量、定型型でいこう。というのは、たとえばトヨタ自動車を積む、これは貨車も自分でつくるんだからいわゆる一五%なり二〇%安くする、これは長く一挙に行くのだからこれも一五%ぐらい安くする、こうやったら、貨物運賃が上がってくるのは、いわゆる農家とか中小企業とかその辺だけが上がって、大工場なり大産業の皆さんの荷物は結果的には一つも上がらぬということになるのです。だから、そういうことでは国民の国鉄ということになりませんよ。これは少量物品だけが上がるわけです。大貨物はこれでは絶対上がりません。今度また下がります。下げなければならぬ。そういうことを運輸大臣はよく御認識ですか。知ってないでしょう、知っていますか。
  249. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 貨物運送の内容については、よく存じておりません。
  250. 野坂浩賢

    ○野坂委員 知ってないですから、十分検討していただきたいと思うのです。どうですか。
  251. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 十分検討させていただきます。
  252. 野坂浩賢

    ○野坂委員 建設大臣、せっかく来ていただいておりますが、時間もありませんからごく簡潔に申し上げます。  国鉄が線路を廃止をして道路にすると言うのです。これは道路法にも関係があります。道路の指定については、第五条あるいは七条にあります。これを整備して舗装して自動車道にするということになると、どのぐらい金がかかりますか。
  253. 山根孟

    ○山根政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問は、鉄道の廃線敷を改良していかがかと、こういうお話でございます。実は、平地部のような場合には比較的容易にまいろうかと思います。ただ、山岳地あるいは川を横断するというようなところが多うございますと、ままず橋梁につきましては、車を通す場合はそれなりの構造を必要といたします関係上、かなり手を入れなければならぬという問題が一つございます。それからトンネルでございますが、やはり往復交通ができるようにいたそうと思いますと、現在の単線の鉄道トンネルをそのまま道路に使う、こういうことに相なりますとトンネルをやりかえねばならぬ、こういうことがありますので、一概に廃線敷を改築をしてやるということは必ずしも得策ではない。いろいろ並行いたします道路がかなりあるわけでございますから、むしろそちらの方の整備をやっていくという方が経済的にはよろしい場合が多いのではないか、こう考えております。しかし、いずれの場合にせよ、鉄道の立地条件、関連をいたしますその地域の道路のネットワーク、その辺のところからやはり個々の場合について検討をしてまいらねば、一概には申せない、このように考えております。
  254. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間が参りましたので、さらに質問を続けることはできませんが、いま簡単に国鉄、運輸省は、それがいけなかったら自動車線にするんだというようなことをおっしゃいますが、全体的に見ればこれは千億何ぼの赤字よりも政府支出が増大します。竹下さんはもちろんチェックをされると思います。そして草ぼうぼうになってカメムシをつくってまたたんぼの方に被害を出す、これが落ちですから、十分御検討いただきますように運輸大臣お願いをしておきたいと思います。  最後に郵政大臣、あなたの方の料金改定が十月一日からやる、こういうことに出ておりますね。一種、二種、三種、四種、書留、書留速達、普通速達というのがあります。これでの収支状況はいま現在どうですか。
  255. 大西正男

    大西国務大臣 現在の収支状態につきましては、事務当局からお答え申し上げます。
  256. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この合計ですよ。合計で結構です、時間がありませんから。一種、二種、三種、四種、書留……。
  257. 守住有信

    守住政府委員 お答え申し上げます。  総原価、総収入、損益ということで各種別に把握しておるわけでございますが、第一種、定形と定形外に分かれておりますけれども、定形、総原価千八百七十五億、総収入二千三百三十億、損益四百五十五億、定形外は総原価四百七十三億、総収入七百四十二億、損益二百六十九億。第二種でございますけれども、総原価は二千二十四億、総収入千四百七十二億、損失として五百五十二億。以下第三種等々ございます。
  258. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。  時間がありませんから、いまお話があった総合計は七十六億円の黒字になりますね、現在。そうですね局長、通常郵便の合計。
  259. 守住有信

    守住政府委員 通常郵便の合計としては七十六億の黒でございますが、郵便料金それ自体は総合原価主義によっておるということでございます。
  260. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いわゆる通常郵便は黒字なんです。問題は、小包郵便に赤字が出ておるので、個別にやれないから総合原価主義でやります、だから今度上げていただきたい。もうかっておるところは、いまもお話があったように、第一種なんかは定形で四百五十五億円利益が出ておるわけです。定形外でも二百六十九億黒字が出ておるわけです。そういうことですね。だから問題は、考えてみますと、小包は六キロで大きさが一・五メートルまでだ、こういうことになっておりますね。国鉄の場合は貨物が赤字が出ておるわけです。だからみんなこれにおっかぶせておるわけですから、国鉄なり郵便は十分考えていただかなければならぬ。もっとやることがたくさんあります。もっとほかに、上げなくても済む方法というものは、特定局舎の問題等を一つ一つ引っ張り出しますとそういう点がはっきりしてくると思うのです。  だからこの際、経済企画庁長官に伺っておきたいのですが、いま電力料金なりガス料金なり、原油の引き上げによって大幅に上がって、日本銀行は、衆議院の予算委員会の開会中でも、インフレを押しとどめなければならぬという立場で公定歩合の引き上げをあえて断行した。公共料金もそういう状況を含めて、軒並みのメジロ押しに上がろうとしているわけだから、これを引き延ばすとか、いまの問題等について十分精査をされて、ことし一年なりあるいは実施時期というものをずらすとか、検討する必要があるのではないかと思います。いろいろありましょうけれども、特に政府が考えておる財政の問題については、いまの国鉄の貨物運賃についても運輸大臣は検討すると言っておるわけです。通常郵便というものは七十六億の黒字が出ておるわけです。そういうことを踏まえて十分検討する必要があるではないかというふうに思うのですが、そういう御用意はございませんか。
  261. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いま野坂委員指摘のように、物価問題が大変大事な局面に参りましたので、公定歩合の引き上げを異例の英断をもってやられたことについては、これを大変高く評価いたしております。  さて、政府の予算関連の公共料金につきましては、予算の編成の際に、それぞれの省庁からいろいろ御要求がありましたものを、私どもは一定の期間にわたりまして検討を加えまして、それぞれの原要求に対しましては相当強く抑制をお願いいたし、また実施時期等についても調整をいたしたわけであります。一方ではいわゆる財政再建というふうなことも大事な要請になっておりますので、若干の期間にわたりまして収支を見ますると、この程度のことは最小限度に必要であるという認識のもとに予算の基礎になる公共料金を決めておるわけでございます。したがって、ただいまのところ私どもは、これをさらに見直すという考えは持っておりませんが、しかし、各省庁、その経営主体におかれては、一層努力工夫をされまして、たとえば国鉄離れを防ぐとか、郵便についてもさらにその内容を改善するとか、大いに努力をしていただきたい、私はかように考えておるわけでございます。
  262. 野坂浩賢

    ○野坂委員 質問の時間が経過しましたのでこれでやめますけれども、国鉄の貨物運賃は検討すると言っておるんです。それから通常郵便料金というものも黒字なんですよ。外国なんかでは、英国なんかは、ガスとか電力とか通信とか郵便で不足を生じたときは一般会計からでも出す。あなたは国民のことを考えないで、いわゆる財政再建だけに目を向けておるというところに非常に問題がある。  私は、この際委員長お願いしたいのは、郵政省の郵便料金、一種、二種、三種、書留、小包、それぞれ管理費なり人件費というものが、提案では人件費が九〇%ですと書いてあります。しかし、償却費とか管理費とかたくさんありますから、それらを個別にやってもらいたい。それからいわゆる集配も配達と取集が別でありますね。そういう点もきちんと個別にしてもらわぬと、この資料がなければ十分検討ができません。言うなれば第三種郵便は十五円のものが今度三十五円になるわけですから、そういうふうに倍以上に上がってくるわけですから、非常に問題です、これなんか一遍に持っていくわけですから。そういうきわめて細かい原価計算をしなければ国民の納得が得られないので、そういう資料をぜひ出していただくように資料要求をしておきます。  企画庁長官、もう一遍考えてもらわなければ、わかっておるけれどもやるんですよ、こういうようなことでは全く議論になりませんから、十分勘案をし、もっと微細に検討していただかなければならぬということを要求して、質問を終わります。お願いします。
  263. 田村元

    田村委員長 大西君、いまの資料はどうですか。
  264. 大西正男

    大西国務大臣 いま経理局長からお答え申し上げましたのは五十三年度のようでございます。五十四年度は赤になっておるようでございまして、でありますから、四十八年に石油ショックが起こりまして、郵便事業の財政というのは非常に困難な、窮迫した状態になったわけでございます。そこで五十一年に値上げをさせていただいたわけでございます。一時好転をいたしましたけれども、その後また苦境に入りまして、石油ショック当時できておりました累積赤字二千五百ですが、現在も大体二千四百ないし五百くらいの累積赤字になっておるわけでございます。したがいまして、郵政審議会に対して、郵便財政の健全化ということについて、昨年の十月でございましたか、私、就任をいたします前に御審議を願うことにいたしまして、そしてそれが私、就任いたしましてから答申をいただいたわけでございます。その答申によりますと、いま先生が御指摘になりました第一種、第二種につきまして、封書の方は五十円を六十円、はがきの方は二十円を四十円、ただし、はがきについては一年間緩和措置を考えよ、こういう御答申をいただいたわけでございます。  そこで、その実施を七月一日からやることが必要だ、こういう御答申でございますけれども、私どもの方で物価の情勢その他を勘案いたしまして、これを十月、五十五年度の下半期から実施をしようということにいたしたわけでございます。そうして、はがきにつきましては、御答申の四十円ではなくて、五十五年度中は三十円でやっていこう、そして五十六年度に入ってから御答申の四十円にしよう、こういうことにいたしたわけでございます。なお、封書の点におきましては、ミニレターというものがございますから、この点については現行のままに据え置いていこう、こういうふうにしたわけでございまして、苦しい情勢でございますから、何とぞ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  265. 野坂浩賢

    ○野坂委員 資料を出すかどうかということを聞いておるわけです。
  266. 大西正男

    大西国務大臣 資料の点につきましては、御必要なものは出させます。
  267. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それではお願いします。
  268. 田村元

    田村委員長 これにて野坂君の質疑は終了いたしました。  午後一時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  269. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。米沢隆君。
  270. 米沢隆

    米沢委員 私は、最初に新田原基地における日米共同訓練について御質問いたします。  まず防衛庁長官、去る二月十六日、あなた方はとうとう地元、特に新富町の反対論渦巻く中で、日米共同訓練を強行されました。あなた方にとりましては、これは予定の行動でありましょうし、何ということもないのでありましょうけれども、地元にとりましては大変な問題であります。ために、町当局の仕事は麻痺状態でありますし、そしてとうとう初日から流血の惨事が起こりました。  そういう意味から御質問したいのでありますが、自衛隊の訓練ということのためには、国の防衛の大義のためには、地方自治体はどうなってもいいのかという感じがするわけであります。そういう意味で、訓練をやられる場合に、地方自治体はどうなってもいいというのが防衛庁の方針なのかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  271. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  新田原の日米共同訓練に際しまして、十六日から本日までの間でございますが、地元で大変大きな問題が起こっておりますことは、いま御質問にございましたように、訓練をやればどうなってもいいというような問題ではございません。地元にそういう問題が起こっておりますことを私ども大変遺憾に存ずると同時に、大変心配いたしておるような次第でございます。地方自治はどうなってもいいのか、特に県よりも市町村、この自治というものは私は非常に大切なものだと存じておりまするし、特にこれまでも基地問題等について非常に御協力をいただいておりましただけに、今回の問題は大変遺憾千万なことだと存じておる次第でございます。
  272. 米沢隆

    米沢委員 遺憾の意を表明されましても、現に町当局は大変な混乱の渦の中にございます。もとより私たちは、日米安全保障条約というものを根幹とする国の防衛については理解を示してきたわけでありますし、それゆえに今回の戦術技量の向上のための訓練というものは必要なものであろう、そういう静観する立場でいままで推移してまいりました。ただ、問題が問題だけに、地元の了解をうまくとってもらいたいという気持ちが大きかったことも事実であります。  しかし、一月の中旬ごろから地元の態度は硬化するばかりでございまして、いまさら言っても仕方がありませんが、当初、町当局に何がしかの見解の混乱があったとはいいましても、この問題につきまして、条約上の問題であり地元の了解の必要はないけれども一応御了解をというまくら言葉から始まった地元の説得工作は、私は拙劣きわまりないという感じがしてなりません。全国で、基地を取り巻くいろんな反基地闘争とか反自衛隊闘争等々いろいろありますけれども、そういうものに、今回の地元説得と同じようなかっこうで、木に竹を接ぐようなかっこうでの地元住民の説得なんということが行われておるということは、私は大変大きな問題ではなかろうかと思うのでございます。現に、いまの町当局の町長は決して革新派ではありません。まさにおとなしい保守派の町長さんでもあります。そういう町長あるいは町当局を反対の旗頭に結果的には追い込んで、このような騒動を引き起こした原因を一体どう考えておられるのか、聞かしていただきたいと思います。
  273. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいまの御質問の中にもございますように、いろいろな経緯につきまして非常な御理解をいただいた上での御質問と私ども承りました。先ほどお話がございました、町当局の最初の御態度等につきまして、われわれの側で少しこれに対する甘い観測があったようなことも、実は私ども承っております。またこの種の、地元にいろいろ説得をしお願いをするというそのやり方につきましても、ただいまお話がございましたような問題点がいろいろあったことも、私ども報告を受けておるようなわけでございます。  これは新田原に限りません。各地域でいろいろこれまで問題がありますし、今後ともあることでございますけれども、私どもとしましては、とにかく全力を挙げて話し合いをする。法律上どうとか、これはまとまらなければどうとかいうようなことでなくて、国民の皆さん、特に地元の皆さん、特にまたその中でも自治体の当局並びに議会の皆さん、こういう方々とは、十分ひとつ今後とも話をしていかなければならぬと思いますが、具体的な問題については防衛施設庁の方からお答えをさせていただきたいと思います。
  274. 玉木清司

    ○玉木政府委員 私どもの地元に対しますこの問題の説得工作等について御所見をいただいたわけでございますが、御承知のように昨年の夏から事前の準備をいたしまして、そして十月の終わりには公式に申し入れ、今日に至りました。その間の紆余曲折につきましては十分御承知のところと拝察しておりますが、御指摘のような結果になっておりますことにつきましては、深く考えを新たにして対処しなければならぬと思っております。  なお、新田原というところは、他の場所よりもさらに町を中心に形成されておる共同体のように思いますので、私どもも最初から町当局あるいは町議会、こういう方々を中心に話を進めてきた次第でございますが、今日のような事態に至りましたことにつきましては、私どもの方におきましても、ただいま大臣からお答えいたしましたように、今後に対し深く考えて対処していかなければならない、こう思う次第でございます。
  275. 米沢隆

    米沢委員 私どもは、ちょうど二月四日でしたか、どうも地元の雰囲気が堅固な感じだ、したがって、ちょっと冷却期間を置く意味で一時延期をしたらどうかという申し込みをいたしました。その際、いや、まだちょっと時間があるから地元説明をやりたい。そこで地元の要請があれば説明会を開きたいので、その時期は二月七日くらいになるというお話でございました。この件に関しましても、この前の予算委員会で同僚の兒玉委員の方からの御質問に対して、まだ若干の日時もあることでございますので、十分御理解をいただくように全力を挙げてまいりたい、こういうふうな御答弁をなさっておるわけでございます。  二月七日、平行線をたどって物別れになった後、十五日に至るまで、どういう地元の説得をされたのですか。
  276. 玉木清司

    ○玉木政府委員 二月七日には町長主催の住民に対します説明会がございまして、係官を派遣して終日冷静に対話が行われたという次第でございます。  それ以降におきましては、主として舞台が東京に移りまして、東京におきまして数度にわたります上京してきた方々との対話が行われたということでございます。
  277. 米沢隆

    米沢委員 そういうことで、二月七日、余りにも強硬に反対論者が議論をするものだから、びっくりして、もう地元相手の説得工作みたいなものは結局なされていないわけですね。  私が申し上げたいのは、先ほど長官の話にありましたように、この新田原の基地というのは全国でもまれに見るうまく基地運営がなされてきたところではないか、私はそういう感じがするわけです。しかし、人間ですからいろいろと感情のもつれもありましょうけれども、たとえば、この日米軍事共同訓練は反対だという署名をしておるような方々に、自衛官そのものが、おれは軍国主義者だからそんな署名なんかする必要ないとか、おれはおまえらにとっては敵だから、そんなことする必要はないとか、そういう暴言を吐いておる事実もあるわけですね。一体、自衛隊というのはどういう教育を隊員にやっておるのか、私は不思議でなりませんね。  事が事であるだけに、その基地に勤める自衛官については、それこそ皆さんの気持ちと一緒になって頼むというような話をされるのが筋であって、ましてや反対する者はおれたちの敵だ、そういうようなことを公言してはばからない、そういう隊員がおる限り、今後基地そのものがそう簡単に安定的に運営できるはずはない。一体、自衛官に対してどういう教育をなさっておるのですか。
  278. 原徹

    ○原政府委員 自衛官は、もちろん基地ということの重要性、それから庶民と一緒になってやる、そういうことでございますので、ただいまのお話のようなことを本当に言ったのかどうか私は存じませんけれども、そういうことは絶対あってはならないわけでございます。やはりわが国を守るのには基地が必要であるわけでございますし、基地が維持をされるためには地方の基地周辺の住民の方々の非常な御理解と御協力がなければならないことは当然でございまして、もしそういう発言がございますならば、それは直さなければいけないと思うわけでございます。
  279. 米沢隆

    米沢委員 私は、今回のこの事件は、確かに防衛庁としては訓練をするという実績をとられたかもしれませんけれども、将来にわたって基地が存在しなければならぬというこの現実の前に、結果的には将来の安定的な基地運営というものは失われたのではないか、そういう感じがしてならないわけでございます。いま国を挙げて防衛に対して国民的なコンセンサスをつくろうという議論があるにもかかわらず、実際やられることは地域住民に、それもほとんど皆さんの気持ちを理解できるような人まで巻き込むようなこういう闘争になっていくということは、国民に反基地闘争、反自衛隊闘争みたいなものを眠っておる人にまで教え込むようなものではありませんか。私は、そういうやり方というものは断じて許してはならない、そう思うのでありますが、防衛庁長官、どうですか。
  280. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 おっしゃるように大変大事な時期だと思います。こういう時期に、しかも、国民の皆さん全般にそうでありますが、特に大切な基地を持っておられる地域の皆さんや町や町議会当局がそういう反対的な気持ちを持たれるということは、御心配をいただいておるように、非常に重大な問題だと思います。したがいまして、今回の、きょうで実は演習が終わるわけでございますけれども、この結果、あるいはこの影響、こういうものについては十分に反省をいたしまして、それらの点についてはどうしても直していくということで努力をしてまいらなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
  281. 米沢隆

    米沢委員 この前地元から上京されてきたときに、地元の助役さんは、訓練を中止しないならば地方自治体として自衛隊に非常識な行動をとるかもしれぬ、こういう話をなさったそうでございます。そして地元では自衛官の住民登録、異動、自衛隊の募集、このあたりを拒否しなければならぬじゃないかという議論になりつつあるのですね。今後、この訓練が終わりました後でも、しこりとしてかなり残っておりますから、不測の事態が起こるかもしれないという心配もあるわけです。同時に、国鉄の動労はこれと軌を一にして減速闘争をやろうということで、ジェット機燃料等の輸送についても日豊線、香椎線等々、何か日に上下四本走っているそうでありますけれども、今回の訓練については一月中にすでに燃料については仕入れてあるので問題はないけれども、今後の問題として、またこういう減速闘争なんかされて国鉄が麻痺するのでは皆さんたまったものではないわけですね。そういうことになっていったら一体皆さんどうなさるおつもりですか。
  282. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 いまおっしゃったような状態はまことに困ったことでございます。先ほど一部お話がございましたような大変不穏なような発言ですね、あなた方とわれわれとは敵だとか、全然立場が違うとかいうようなことがあったやの報告にも私接しました。実際やったかどうかということはまだ調査しなければわからぬようですが、そのようなことも伺いました。  やはり国の防衛を今後全うしてまいりますためには、一〇〇%皆さん方の御賛同をいただくということにはかなりの困難がありましょうけれども、しかしこれは、そういうことだからと言いまして、対立対立というようなかっこうにしたら、売り言葉に買い言葉みたいな話では物はぶち壊れるだけ、悪くなるだけと思います。したがいまして、この点につきましては、われわれの方の側でこれはもうあくまでも実情をよく御説明をし、御説得申し上げて最善を尽くしてまいる以外にはないと存じまするし、また、そういうことで必ずおわかりいただけるというふうに私ども思っておりますし、そのような努力をもっともっと積んでいかなければならぬと思います。  それから、個々の自衛隊の隊員やあるいはその家族等につきましては、いろいろ不謹慎なことがあったというような話をちょっと耳にいたしましたが、とんでもないことだというふうに考えておる次第でございます。
  283. 米沢隆

    米沢委員 ちょっと話題は変わりますけれども、この訓練は日本から言い出したものですか、アメリカから言い出したものですか。  それからもう一つ、なぜ二月中旬にやらねばならぬと固執をされるのか私はわからぬわけですね。逆に、これに固執をされればされるほど、何か急がなければならぬような事情があるんだろうかという感じがするのです。  この二点、率直に御意見を聞かしていただきたいと思います。
  284. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  この訓練の実施につきましては、日本側が言い出したことでございます。これは実は日米共同訓練を航空自衛隊も一昨年の十一月以来アメリカと始めておりまして、本年の一月末現在までで十二回実施をして成果を上げてきたのでございますけれども、その訓練実施場所が三沢基地に限られておりました関係上、日米共同訓練を効果的に行うためには三沢基地のみでは、日米の航空部隊の数、配置等の現状から見まして、どうしても西日本に一カ所訓練基地が欲しい、こういうふうに考えました。そしてアメリカの戦術技量を学び取るために、F15というすぐれた戦闘機と現有の日本の航空自衛隊との異機種間訓練をやりたい、こういうことを私ども希望したわけでございます。西日本には、御承知のように新田原のほかにも基地があるではないか、築城、岩国がございますけれども、たとえば岩国は海上自衛隊の航空基地でございまして、補給、整備等の問題に難点がございますし、築城も日本海性気象の影響あるいは訓練空域までの所要時間がかかりまして訓練上効率的にできないというような問題点がございまして、新田原が最適であるという判断をしたわけでございます。  二月になぜやったか、特に二月にどうしてもやらなければいけなかったのかというお尋ねでございますが、御承知のように冬季になりますと北の方は気象条件が悪うございまして、訓練をするのには西日本のなるべく南の方が適当であるということで、今回も四国沖の訓練場を使用したということでございます。二月にこれが行われるようになりましたのは、先ほど施設庁長官から御答弁申し上げましたように、昨年来交渉を実施してまいりまして、日米安保条約に基づきアメリカ側にもこのお話をしておりました関係で二月にスケジュールされた、それをやらせていただいたということでございまして、ほかにどうしても二月にやらなければいけなかったということではございません。
  285. 米沢隆

    米沢委員 これでわかりました。日本の方から言い出したから、やはりアメリカ軍に対してひけ目があるんだな。したがって、変更するなんというのはどうも米軍の都合で無理だ、こういう議論になっていく。私は、そういうことを聞くと、地元の困難よりアメリカ軍に対するひけ目の方が優先する、冗談じゃないという感じがします。まあそれは言うても平行線でしょう。  それで、この種の訓練はこれは新田原でなくてもどこでもやれるたちの訓練でしょう。
  286. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  新田原でこの訓練をさせていただきたいということで地元にお願いをするようになりました経緯は、西日本における三つの航空自衛隊の基地のうち、ここが最適であった、こういうことでございます。現在は三沢、そして今度新田原、二カ所目でございます。
  287. 米沢隆

    米沢委員 新田原の基地が最適であるというよりも、四国沖だとか九州西部沖でやるところに大きな目的があったんじゃないですか。
  288. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  従来北の方でやっておりました部隊は、北方であるとかあるいは中部航空方面隊等がやっておりまして、西部あるいは南西に配置になっております部隊は、三沢まで移動をいたしますとその分だけ時間あるいは航空燃料等のむだがございます。したがいまして、どうしても西で一カ所訓練空域を使ってやりたい、こういうことでございます。
  289. 米沢隆

    米沢委員 これから先の訓練はどうなんですか。次はいつやられるのですか。
  290. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  おおむね地元にお話をしております基準は、年四回程度ということで三カ月か四カ月に一回お願いをしたいというお願いをしておるところでございます。(米沢委員「次は」と呼ぶ)  次は、現時点具体的にはまだ日時は確定しておりませんけれども、三ないし四カ月後にはできればやらせていただきたいと考えております。
  291. 米沢隆

    米沢委員 この問題は、以後当分の間というのが、かなり長い間これからこういう訓練がなされるということでございますので、地元との関係は大変また大きな問題に発展するかもしれないという案件でありますから、事後修復並びに今後の運営について適切な処置を十分とられるように希望して、次の問題に移りたいと思います。  次は、年金の問題についてお伺いをします。この問題はもうすでに予算委員会で大分触れられておりますし、昨日もかなり突っ込んだ議論があったようでございます。しかしながら大事な問題でありますから、一応御質問を続けたいと存じます。  もうすでに御承知のとおり、厚生省のいわゆる六十五歳引き上げ案というものはまあ撤回された段階にありますけれども、実際この法律のねらいそのものは、高齢化社会の到来、厚生年金の成熟化を控えて、将来の国民負担を可能な限度内に抑える、制度の安定を図ることということにあったことはわれわれも理解いたします。したがって、厚生省の六十五歳への引き上げというのは一つの選択であったと思います。しかし、逆に国民の立場から言いますと、高齢化社会の到来が予測をされて現実に中高年齢者の就職状況が大変厳しいということを考えましたときには、国民の年金に対する期待は、年金財政の厳しさを認めながらもやはり高齢者雇用対策の確立の方が先だ、あるいは制度間格差の是正、特に官民格差の是正の方が先だ、それで定年と年金支給開始年齢を連結してほしい、こういうものであるのは当然だ、そう思うわけでございます。そういうもっと広い立場から年金というものを見てほしい、要請がそこにあった、そう考えます。ところが、今回の場合には、こういう問題につきまして将来の見通しも保証もないままに、六十五歳だけがひとり歩きをしたというところに混乱の大きな問題があると言わざるを得ません。  したがって、現段階で考えてみまするに、第一に、将来の園児に余り大きな負担を残すべきでない。年金財政の厳しさは十分わかったので、何らかの対応策はしなければならぬというのは私はコンセンサスになったと思いますね。  第二番目に、そのためには支給開始をおくらせて六十五歳年金に移行するというならば、官民そろってやってくれ、これも一つの合意だと思いますね。それで官民格差の是正も一緒にやってほしい、こういうものも私は合意だと思います。それには六十五歳までの雇用の確保が先決である、ここらが現段階での国民の大体のコンセンサスではないか、そう思うのであります。  したがって、今後の年金改革は個々の年金だけを見て狭い視野からで物を言うんじゃなく、ばらばら行政の積み重ねではなくて、政府全体として将来の年金のあるべき姿を提示して、そこに到達するスケジュールを示しながら改革に着手せよというのが国民の大きな合意点だと私は思うのでありますが、厚生大臣、大蔵大臣、どうでしょうか。
  292. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 いま米沢先生の御指摘の点については、私は全く考えを同じゅうするものでございます。厚生省が六十五歳を先に一人歩きさせるという勝手なことを必ずしも考えておったわけではないのでありまして、まさにこれは国民の選択の問題である。しかし、今日の年金制度というものを今後どのように展開していくかということにつきましては、長期的視野に立たなきゃならぬ。したがって、どういうふうな方向でこの問題の解決を図っていくかということについて、私どもは慎重にいままで検討してまいったわけであります。  しかしながら、こうした年金制度の改革に当たりましては、二つの審議会の議を経なければならないということでもあり、審議会に意見を求めたわけであります。その結果、審議会においては、現状において二つの問題がある。御指摘のように一つは雇用との問題、これをドッキングする方法を適確に考えるべきである。そして同時にまた官民格差、いわゆる他の公的年金制度との格差問題を速やかに解決することが先決でなかろうかというような御指摘がございました。しかし、いずれの審議会も、支給開始年齢の問題については、今後長期にわたっての検討を要する課題であるという点においては意見が一致しておると思うのでございます。  したがいまして、そういうふうな考え方を踏まえながら、私どもは次期再計算期において長期財政の安定を見ながら、一方は経済の動向からくる雇用問題、もう一つは公的年金制度との格差、政府が一体となって進めていく段階の中でどういうふうにこれに対応すべきかということを検討すべきではないかというふうに考えて、今回の政府提案の法律には、いわゆる訓示規定ということで附則の中でその趣旨をうたったわけでございます。
  293. 竹下登

    竹下国務大臣 米沢委員の御指摘でございますが、いわゆるコンセンサスとおっしゃった問題、まさに具体的には関係審議会等においても共通の認識、こういう言葉で大体私も一致した認識であると思うのであります。  そこで、この訓示規定の問題については、いま厚生大臣からお答えがあったとおりであります。したがって、次の高齢者雇用の問題等につきましては、今後関係省庁間で十分協議を進めていかなければならぬということは、これまた共通の認識に対する共通の避けて通れない課題というよりも行動であるというふうに思います。  そうして今度は三番目の官民格差の問題でございますが、これは年金の目的とか仕組みとか、あるいはそれ以上に沿革の問題等の相違がしからしめる点が確かにございます。したがって、昨年末の共済年金法の改正において、男女を問わず段階的に六十歳に引き上げることとして格差の解消を図ったこともその一つであるというふうに御理解をいただきたいのであります。  したがって、やはりこうした問題につきましては、将来の年金財政など幅広い検討を行わなければなりませんので、このため支給開始年齢の問題も含め、学識経験者等まさに専門家の方によりますところの研究会で御審議をいただく、こういうことに決定をいたした次第であります。
  294. 米沢隆

    米沢委員 尋ねぬことまでもうすでに答弁になっておりますけれども、やはり問題になっておるのは、政府が従来から将来の年金のあり方等については、たとえば社会保障制度審議会等に諮問をし建議を受けながらも、それを受けて年金全体を議論して、公平な年金という立場からこの公的年金制度を横断的に比較考量しながら改革していく、そのためにリーダーシップをとる場所、とる人、そういうものがいなかったということが、私は大きな問題点ではないかと思います。したがって、それぞれの所管で個々の年金についてのみ整合性を求めるだけでございまして、トータルを建議する立場から見ると、そんなのはつまみ食いだとおしかりを受けるのも無理のないことである、むべなるかなという感じが私はするわけでございます。  今回、そのような観点からだと思いますけれども、従来の公的年金連絡調整会議から公的年金関係閣僚会議の設置というものがなされておりますけれども、その際発表されました「公的年金制度の均衡ある発展について」と題する方針を読んでみましても、どうも何を言っておるかわからぬわけです。ただ言おうとしておるのがわかるのは、厚生年金は六十五歳に引き上げましょう、共済年金は当面六十歳を定着させましょう、共済年金のあり方については今後検討を進めるために研究会をつくります、新たに社会保障制度審議会に年金数理部会を設けますという、ただそれだけですね。先ほどから言っておりますように、今回の六十五歳への引き上げという問題をきっかけにしましてほうはいとして沸いておる国民的な世論に対しては、ちょっとこれはピンぼけなんですね。  したがってお尋ねしたいことは、これから先、国民が望んでおります年金の抜本改正に向けまして、政府すなわちこの公的年金関係閣僚会議は、一体どのような方針でどのようなことをやろうとされておるのか、当面の課題は何か、責任者はだれか、このリーダーシップをとって横断的に年金をながめながら改革を積み重ねていく責任者はだれか、このことを官房長官答弁してほしいと思います。
  295. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま先生のおっしゃったように、公的年金制度に関する関係閣僚懇談会を開きまして、二度懇談会をやったわけでございます。先生がいまお読みになりましたのは、第一回目の会議で議論したときのものでございます。二度目には、いま厚生大臣、大蔵大臣からお話のありましたように、この際は次の財政再計算期にひとつ抜本的な検討をやろうじゃないかということを決めたわけでございます。  それで、私は二度その座長をやっての感じでございますが、先生がおっしゃいましたように、各年金制度、公務員の共済年金制度の中におきましても共通した問題がございますが、熟度の点等におきましてはこの前からここで議論があったようにいろいろ違う問題があるわけでございますし、また、いまおっしゃった官民格差の問題がございますし、労働大臣の所管される定年制、高年者の雇用との問題の関連もあるわけでございまして、これは非常に大きな問題が各省にまたがった問題として出てきたわけでございます。でございますので、やはりこれはこの公的年金制度に関する閣僚懇談会というものの持っている力を十分発揮して、ここでおのおの問題を持ち寄って、閣僚でございますからその省の最高責任者でございますので、そこの問題を持ち寄って相談する。また、事務的なことはいまの調整連絡会議もございますし、計数の計策の問題は社会保障制度審議会の中に計数部会をつくってもらってそれもやる。あるいはまた政府の中にも、閣僚で相談しまして大蔵省にひとつ研究会をつくってもらって、そこでもやろうということで、この問題はなかなか大変だということをみんな認識を一つにしまして、いまのような官民格差あるいは雇用の問題、そういう問題を頭に置きまして、これから研究をやっていこうということをこの間したわけでございます。私が座長になりまして二度やったわけでございますので、これから関係の閣僚と何回も懇談をしまして、先生の御希望に沿えるようにやってまいりたいというのがわれわれの決意でございます。
  296. 米沢隆

    米沢委員 やはりいまの答弁を聞かしてもらっても、一生懸命やろうというお気持ちだけは、言葉はよく伝わりますけれども、どうも責任の主体がない。したがって、もたれ合う、各省庁のばらばら行政がそのまま続くのではないかという懸念がありますので、今後そのあたりも含めて、官房長官、責任を持って責任体制をつくってもらいたい、そう思います。  それから、先ほど厚生大臣の答弁にありましたように、六十五歳の五十五年度着手は見送ることになりました。しかし、附則規定において、次の財政再計算期に所要の措置がとられるというようなことが盛られるということでございますけれども、当初厚生大臣は記者会見等では、昭和七十五年までに六十五歳支給の実現というのが原則だということをおっしゃったようでありますけれども、その後自民党との見解がちょっと分かれて、最終的にはいま白紙の状態にある、しかし、財政再計算期には何らかの所要の措置をするということだけは残っておるというふうに理解してよろしいですか。
  297. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 御指摘のように、両審議会におきまして、今後避けて通れない事柄であるというのが共通の認識でございます。したがいまして、次期財政再計算期におきまして、この問題こそ真剣に取り組むべき課題である、その趣旨を盛り込んだのがいわゆる訓示規定なるものでございます。したがいまして、その際所要の措置を講ずるという点については、今後とも審議会の御指摘になりました雇用との関連、あるいはまた官民格差の問題等、これらを十分に勘案しながら諸般の事情を総合的に考えて、その時点で必要とされるであろう処置を講じたいというふうに考えておるのでございまして、当初審議会に諮問いたしました厚生省の年金制度の改正にありましたものについては、いま申し上げたような方向で対処するものでございます。したがって、次期再計算期におきましては、支給開始年齢の問題にどのように対処するかという判断が必要でございます。現段階におきましては、どのようにするのかという具体的なスケジュールを想定いたしていないということを申し上げたいのであります。
  298. 米沢隆

    米沢委員 財政再計算期と言いますと、常識的には五年先、ひょっとしたら四年先、その間に所要の措置がとられるとするならば、そういう条件ができていなければならない。そのためには高年齢者の雇用の確保問題、官民格差の問題等が解消されておることを前提にして所要の措置をとられる、こういうふうに理解してよろしいのですね。
  299. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 先ほど申し上げたように、五年先になるのか、少なくとも五年以内、次期再計算期のその時点におきます社会経済情勢、労働の面におきます雇用問題、これらを勘案してということでございまして、前提条件とかそうむずかしくお考えにならずに、いろいろな情勢を判断し、審議会の意見というものを十分尊重した上でどういう対応をすべきであるかということを判断すればいいのではないかと考えております。
  300. 米沢隆

    米沢委員 それならば、あと四、五年先に所要の措置をとられるために、条件整備のために努力をされる。その際、官房長官、大蔵大臣、政府が一体となって検討を進める共済年金についてはあるべき方向というものが四、五年先にはすでに出ておる、結論らしきものが出ると思ってよろしいのかどうか、御返事いただきたい。
  301. 竹下登

    竹下国務大臣 共済年金につきましては各省それぞれの担当がありますが、一応大蔵大臣が総合的な答弁をする場合における代表選手、こういうことになっておりますので、私からお答えをいたすことにいたします。  いまの仕組み等の差がございます。しかし、基本的方向としては、可能な限りある種の方向が出るような研究会等の御研究をも参考にしながら模索していかなければならぬ課題であると考えております。
  302. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま大蔵大臣からお答えしたとおりでございまして、先般もここで、国鉄でございますとか電電でございますとか、共済年金制度の熟度の問題がいろいろあったわけで、これは非常にむずかしい問題があるということは、私どもよく知っております。それで公的年金制度の閣僚懇談会の中でも、研究会をつくってそういう問題に取り組もうということをやったわけでございまして、そういう共済年金相互の問題あるいはいまの厚生年金との関係、これはいろいろございますから、次の再計算期にはまた同じ問題が出てきて同じことになるわけでございますから、われわれとしましては、一生懸命それまでに努力して一案を得ることにしなければいかぬというふうに思います。
  303. 米沢隆

    米沢委員 いままでの答弁を聞かしてもらった限りでは、高齢者の雇用確保の問題と官民格差みたいなものは解消されることを一つの前提にして、そこらあたりを勘案されて所要の措置をとられる、こういうことでございますね。  そこで、言われる官民格差ですね、これは言う人の気持ちでみんな違うのですね。それぞれの省庁にはそれぞれの歴史があったり、その制度をつくるときの経緯があったり、理屈を言うたら、ただそれを認め合うだけであって、官民格差なんという議論にならないわけですね。したがって、われわれが考えている官民格差の解消というものは一向に手がつかない。しかし、四、五年の間に所要の措置をとるとするならば、この官民格差というものは一体何が官民格差なのかという合意を得た上で、少なくともその点についてはある程度解決されるか、あるいは解決のめどが示されるかということでないと、私は所要の措置はとれないのではないか、そう思うわけでございます。いまわれわれが言う官民格差というのは、私の理解では、一つは給付水準の差、一つは支給開始年齢の差、一つは給付の算定方式の差、一つは再就職した場合の支給制限の問題、次には遺族年金併給の問題等々が官民格差であると理解をしておるのでありますが、それでいいのか。  理屈を言うたら、いろいろまた違ってきますから、簡単にお答えいただきたいことと、同時にこの四、五年先、いわゆる官民格差らしきものがなくなったという環境のもとで所要の措置をとられるというわけでありますから、その中に、共済年金も厚生年金、国民年金と同一に六十五歳に今後二十年の間に引き上げるということまで含まれておるのかどうか。他の年金水準との関連で給付水準の見直しがすでに行われた状態で四、五年先に考えるのか、在職年金とのバランス等が図られる、こういう問題についての結論が四、五年の間に出ていて、その後に所要の措置をとられるというふうに理解していいのか。二点お聞かせいただきたいと思います。
  304. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 官民格差とは何を言うのかということでございますが、公的年金制度間におきまする沿革あるいはまた算定方式など、いろいろその立場を異にしてこの制度が発展してまいったわけでございますから、一概に、これを平面的に並べて、これとこれとが格差であるというふうに断定はできにくいものがあると思うのでございます。しかしながら、そういう沿革なり今日までの発展の過程を踏まえながら、もしこれを官民格差と言うならばということになりますれば、御指摘のその主な問題は四つでなかろうか。つまり、給付の水準の差の問題であるし、支給開始年齢の差であり、あるいは給付の算定方式の差であり、もう一つは再就職した場合の支給制限の違いであるというふうに申し上げてしかるべきだと思います。  さて、それがために次期再計算期においてこうした問題がすべて解決されなければ、その年金制度の改正に取り組めないということについて御指摘があったわけでありますが、この官民格差というすべての問題がぴったり平面的にも一致しなければ格差が是正されたのではない、全く同一でなければならないという理論はいろいろ私はあると思うのでございますが、しかしながら、これは制度の違う点等もございますので、総合的に判断をいたしまして、これらの四つの問題が大体ほぼ方向において整合性ができていくという見通しが立つ場合においては、これは格差の是正の段階であるというふうに御判断願っていいのではないかと思うのでございます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  したがいまして、給付の水準が果たして五年先に詰められるのか、あるいは同時に支給開始年齢の差、これも詰められるのか、あるいは算定方式もちゃんと改正するのか、あるいは再就職した場合の支給制限、あるいは遺族年金における給付の水準の問題等々、全部がぴちっと平面的に完全に差がありませんというような形になることは、私はこれは大変むずかしい問題でございますから、十分その整合性をより高めていくという方向の見通しの時点においては考えるべきことではないだろうか、かように思うのでございます。
  305. 米沢隆

    米沢委員 そこで、いまの御答弁は、国民の理解できる程度の格差縮小があった時点で所要の改正を考えるというふうに理解をしたいと思います。  そこで、特にこの支給開始年齢については、この前共済年金の改正で、二十年かけて六十歳になる。所要の改正が四、五年先にあって、それが六十三になるか六十五になるかわかりませんが、それもやはり二十年程度かけてやられるとするならば、これは半永久的に支給開始年齢の差というものは出てくるわけですね。四、五年ではこれは埋まらない。しかし少なくとも共済年金については、大河内会長が言われるように、共済年金をまず六十歳支給への移行を早め、速やかに六十五歳支給へ動くべきだというような結論が四、五年の間に出てきた後で所要の改正をやられるというふうに考えてよろしいか、大蔵大臣
  306. 竹下登

    竹下国務大臣 共済年金制度は、昨年末にいろいろな御議論を国会においていただいた上で改正が成立したわけであります。したがって、当面はその六十歳支給をまず定着さすということが現実問題としては先決であろうと思うのであります。したがって、その後の問題につきましては、重ねて申し上げますようですが、専門家による研究会等の議論の経過も踏まえながら、世論の動向も見つつ、またこのような問答の繰り返しの中で国民、各界各層の理解を求めながら進めていかなければならぬ、このように思います。
  307. 米沢隆

    米沢委員 まあそれぞれの研究等の成果を得て結論を出されるものでありましょうが、当面は六十歳を定着させるということは、当面というのは二十年間ではないと思っていいですね。
  308. 竹下登

    竹下国務大臣 当面というのは一月から、恐らく二十年になりますか十年になりますか、あるんでございましょうが、私どもはせっかくいろいろな議論をしていただきながら改正した。それが国会においてその改正の手続が終了して法律が歩けるようになったわけでございますが、今度いわゆる共済の関係者の方々全体に理解していただくというのがまさに当面の課題であって、それを定着さすのに二十年もかかっておるというような余裕はないというふうに思っております。
  309. 米沢隆

    米沢委員 官房長官どうぞ。済みませんでした。  次は、労働大臣にお尋ねをします。  年金と関連して高齢者の雇用確立というものが目下の一番大きな課題になりつつあります。御承知のとおり、政府の方でも第四次雇用対策基本計画あるいは新経済社会七カ年計画等で、計画期間中、すなわち昭和六十年までに定年六十歳の一般化に努めるということで各般の努力をされておることは存じ上げております。そこで、先ほどの議論からおわかりのとおり、所要の措置をとろうとする時期が四、五年先だとするならば、やはりこれは六十年ですね。ですから、昭和六十年の段階でいま皆さんが努力目標にされておる六十歳定年を一般化するということが、一体現在の進捗状況からして達成可能なものかどうか、この点についてまずお伺いしたいと思うのです。
  310. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 日本の社会が高齢化社会に入っていくということは相当前から予測はされたわけでありますから、先生指摘の、第三次の雇用対策基本計画の中におきましても、六十歳まで定年の延長等を中心にしてできる限り働いていただく場を確保する、こういうことになっておったのを、第四次の計画ではこれを一般化する。特に昭和六十年度というふうに時間を切りまして、六十歳定年を打ち出して努力を重ねてきておるところでございます。  従来の経緯を少し見てみますると、昭和四十九年から五十二年ころ、これは非常に不況の時期でございましたけれども、それでも徐々にやはり定年の延長が進められてきている。そこで、第四次に入りまして、政府としてもできる限りその環境づくりを進めるということで努力をしてきておりますが、幸いに昨年の鉄鋼、私鉄などが定年延長についての決定をするというようなことが一つの契機になりまして、労使双方のいろいろな話し合いの中で、特にこの定年延長問題が大きく取り上げられて今日に至っている、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。  政府としても、あらゆる機会に、たとえば産業別でありますとか、地方へ出ましてこういった行政指導を強力に展開をしていくようにいたしておりますが、当然、労働側としても、自分たちの長いライフサイクルの計画を達成していくために、何といっても中心は定年延長だというふうにお取り組みになっておられますし、また経営側としても、活力のある企業経営をやっていこうと思うと、これからは健やかな高齢者を労働力としていかに確保するかということが企業の浮沈を決めるというような感じでやはりこの高齢者問題を考えていただく、定年延長問題に取り組んでいただくという風潮ができてきておりますので、こういった中でさらに努力を重ねていきますれば、当面第四次の目標といたしまする昭和六十年度の六十歳定年というものの一般化には大きな見込みを立てることができるのではないか、このように考えておる次第でございます。
  311. 米沢隆

    米沢委員 御努力は率直に認めますけれども、第三次雇用計画を立てられた五十一年以来、少々は進んでおりますけれども、そんなにびっくりするほど定年延長が盛んに行われておるという状況ではありません。  そこで、御承知のとおり八十七国会におきまして定年延長の促進については立法化問題を含めて政府は審議会の意見を求める旨の合意がありまして、五十四年の六月に雇用審議会にこの件に関し諮問がなされたと聞いております。この議論の際、労働省の持ってこられた資料からは、二、三年先に結論を得るというような答弁がなされたとあるのですが、それを受けて私はその質問の中で、こんなものは二、三年なんというのは余りにも遅すぎる、一年以内ぐらいにある程度の結論を出すべきではないかと言ったら、できるだけそういうような方向でがんばりますという答弁がなされておるわけですね。ところが、雇用審議会の進捗状況は一体どうなっておるかと調べると、大したことはないですね、やっと入り口論に入っただけぐらいじゃありませんか。そして、二、三年先に結論を出すといったら、もう昭和六十年になります。一体、雇用審議会に諮問された諮問案件、これは事は急を要するのだけれども、どういうことになっておるのですか。雇用審議会の進捗状況、これから先の方向等を御説明いただきたい。
  312. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、雇用審議会に定年延長の実効ある方策について、昨年六月に立法化問題を含めて御検討をお願いしたわけでございます。その後雇用審議会におきましては、定年延長問題全般の状況あるいはその阻害要因等について、関係資料の分析、検討を総会の場でやってまいりましたが、しかしやはり非常にむずかしい問題でございますので、専門的にこれを検討していく部会を設けようということで、総会の委員及び専門委員から成る定年延長部会というものを設けて、そこで関係の業種からのヒヤリングをやっていこう、そのヒヤリングも、現に定年延長の実行を労使で合意したところ、あるいは非常におくれているところ、あるいは中小企業等々を順次選んで、その阻害要因等を探っていこうというようなことで、その定年延長部会がつい先日行われ、ヒヤリング等の日程を決めたところでございます。
  313. 米沢隆

    米沢委員 そういうスローモーではちょっと追いつかないですわ。もっとスピードを上げてやってもらうようにお願いしてもらわねばならないと思います。ましてや雇用審議会の中で定年延長の法制化なんかまだ議論にもならないわけですね。そういう意味ではもっと政府も、いろいろ審議会の委員の都合もありましょうけれども、事は急を要しますので、早急に審議の積み重ねを御要請申し上げたいと思います。  そこで、定年延長に関する限り、現在の段階まで政府の方は労使の交渉にゆだねる、それが大前提であるという方針でやってこられておるわけです。しかし、今日の経済情勢からして、ただ単に労使関係にゆだねるだけで果たして昭和六十年に六十年定年が一般化するだろうか、こう考えますと、私はほぼ絶望的であろうという感じがしてならないわけでございます。御承知のとおり、定年が延びたといういろいろないままでの経緯等を見ておりますと、やはり景気のいいときに延びておるのですね。たとえば昭和四十年、電機、自動車産業あたりが六十歳に定年延長をしております。これはまさに好景気に沸きに沸いたときです。企業にしてみますと、高度成長によって十分な利益を上げておりますし、生産性向上に協力した労働組合に成果を分配するというような意味を持っておった、そう思いますね。同時に、その時点におきましては、若年労働力というものが大変不足をしておりましたから、そういう観点からも労働力確保のねらいというものもあったのかもしれません。そういう意味では定年延長に有利な条件が昭和四十年代は整っておった、私はそう考えるわけでございます。  しかしながら、御案内のとおりこの不景気、高齢化社会の危機意識、中高年問題が大変深刻化するという中で定年延長を図っていかねばならぬということは、単に労使関係にゆだねるというだけでは、どうしてもプッシュ要因として余りにも小さい、大変な要因が多過ぎるという感じがするわけです。  そこで、これは再三のお尋ねなんでありますけれども、やはり政府としてもこの段階でより積極的な誘導策、すなわち法的な裏づけを持って行政指導をしていく、そのために年齢による雇用差別禁止法というものをそろそろ策定する気持ちになったらどうか、そういう気持ちでおるわけでございます。これが六十年に六十歳定年を一般化する、その目標を達成する第一の早道だと私は考えますが、どうでしょうか。
  314. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 審議会の方も法制化の問題を含めて鋭意検討を進めていただくようにお願いをいたしておりますので、先生の御指摘のように、さらに精力的にこの審議を進めていくようにあらゆる働きかけをしていきたい、まずこのように考えます。  それから先生お話しのように、経済の伸びが大きいときには非常に定年の延長がしやすい。しかし、今日のだんだんと安定成長社会に位置づけていくという形の中で、昭和六十年までの経済の見込みなどをとってみて一体その達成の見込みが立つのか、こういうお話につきましては、やはり再三の御答弁でまことに恐縮でありますけれども、わが国の終身雇用慣行のもとで定年の延長を推進していこうと思いますと、その前提として年功的な雇用賃金慣行の見直しがどうしても必要である。これはもう上から法律でおっかぶせていくというよりも、労使が信頼の上に立って力強いいろいろな話し合いであるとか、あるいは双方のいろいろな工夫であるとか、そういった努力を積み上げて初めて定年延長という一つの仕組みができ上がるものだ、このように考えるわけであります。現にアメリカでは差別禁止の法律がございますけれども、アメリカと日本の労働の慣行を見てみまするときに、やはりあくまでも日本の従来の慣行の上に立ってこれを徹底させていくようにねばり強い努力をしていかなければいけない、このように考えておるわけでございまして、そういう意味で行政指導を従来よりもより積極的にやる。給付金の改善等を中心にいたしまして、あるいはいろいろな形の会議を重ねましてその環境をつくっていくように努力をしていきたい、こう考えておる次第でございます。一方では、審議会のいろいろな御審議をさらに深めていただきますと同時に、一方では、さらに強力に行政指導を展開していくようにいたしたい、このように存じますので、釈迦に説法ではございますけれども、どうか深い御理解をいただきますようにお願いをいたしたいと思います。
  315. 米沢隆

    米沢委員 定年延長法みたいなものをつくるということが、何か労使関係のスムーズな自主交渉等を阻害するかのごとき理解が大変強いのじゃないかと私は思うのですが、少なくともそのつくり方はいろいろな方法論があるわけでありまして、法的な根拠を持つようなガイドラインを定めて、その法的根拠に基づいて行政指導もなされる。逆に新法をつくることによって定年延長の機運を醸成するとか、あるいはまた、労使の自主交渉を逆に促進する大きなアクセルになり得るという、そういう意味での新法みたいなものもつくり方いかんによってはできるのでございまして、そのあたりも最大の検討課題として私は労働省としてがんばってもらいたいと思うのですが、再度御答弁をいただきたいと思います。
  316. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 法律によらないで行政指導で強力に進めていきたいと申しております意味は、たとえば中央、地方の雇用開発の委員会でのいろんな調査や研究でありますとか、あるいはいろんな地域あるいはいろんな業種等の労使を含めた会議等で定年延長を強く打ち出してまいります際に、やはり行政指導の中でいろいろなガイドラインのようなものを申し上げて、こういうふうな方向でぜひいってもらいたい、こういうことでできるだけきめ細かく指導をして、それを積み上げて一般化するようにしていくというふうに努力を重ねてきておるところでございます。私も率直に申し上げて、どうもやり方によっては何か一つの法律でいく方が早いのじゃないかというような感じがしないでもありませんけれども、むしろそんなふうに簡単に考えないで、一生懸命粘り強く行政指導を積み上げていく中で、日本的な慣行の中で初めて地についた定年延長の仕組みを一般化することができる、このように考えておる次第でございますので、いろいろ検討はさせていただきながら進めますけれども、今後ともむしろその努力を積み上げていくというふうなところに主眼を置いてがんばっていきたいと思いますので、どうぞいろんな意味での御指導をいただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
  317. 米沢隆

    米沢委員 また年金に返りますけれども、将来の年金財政が大変厳しい。したがって保険料率のアップだとか、あるいは支給開始年齢の引き上げ等々が検討されているわけでございますが、同時に考慮に入れてもらわなければならぬことは、これは非常にむずかしい問題でありますが、膨大な年金積立金の有利な運用というものをもう少し考えるべき余地があるのではないかと思うのです、大蔵大臣。  五十四年度末で、御承知のとおり厚生年金だけで二十四兆、五十五年は二十七兆、国年を入れますと約三十兆近くなる。これが全額資金運用部の方に預託をされて、自主的な運用が全然なされない。積立金の管理運用につきましては、そういう意味では被保険者の保険料等のアップ等にも密接に関係があるわけですから、少なくとも共済組合程度の自主性を確立し、極力有利に運用を図るべきだ。これは社会保険審議会等が何回となく建議をされておるにもかかわらず改善されてないわけですね。もうここらで積立金の有利運用というものを、ある程度額を限ってでも結構でありますから、極力有利に運用できるように、もう少しこっちに任せてもらったらどうかと考えるんだけれども、大蔵大臣、考慮の余地はありませんか。
  318. 竹下登

    竹下国務大臣 これは米沢さん御存じのとおり、資金運用部資金法の第二条でございますか、要するに郵便貯金また政府の特別会計の歳入歳出の決算上の剰余金を積み立てた積立金は、すべて資金運用部に預託しなければならない、こう規定されておるわけですが、その規定されておるゆえんのものがまさに一元的に統合管理運用することがよりベターだという考え方に基づいておるものと思います。  そこで、私もいろいろなところからいろいろな御意見を承りながら総合的に考えてみますと、四つの理由がおよそ言われるんじゃないか。  一つは、やはり資金量が大きければそれだけ安定的なものとなりますので、国民のその都度のニーズに応じた重点的運用がよりやりやすいということであります。それから二番目は、資金の供給を一元化することによりまして、いわゆる重複投資がなされないということであろうかと思います。それから三番目は、資金運用部で持っておりますと、他の財政金融との整合性を持った運営ができるということであろうと思います。それから四番目は、特にいま行政改革のいわれる今日でありますが、個別に資金運用を行うことになりますと膨大な機構、人員が必要になります。特に専門的な能力も必要でありますので、この四つの理由が、私は総合的な運用がベターであるという根拠であろうと思うわけであります。  したがいまして、結論から申しますと、この統合運用の原則を崩すことは考えておりません。ただ、やはり年金でございますからそれなりの配慮はしてしかるべきであるというところから、この特殊性にかんがみまして、国民の福祉向上に直接役立つ分野を中心として、預託金増加額の一定割合を還元融資として保険料拠出者の福祉の増進に寄与するよう運営をしておるところであります。  御案内のとおりでございますが、年金資金等の使途別分類等によりますと、八五%というものがおよそ住宅、生活環境、厚生、福祉、文教、中小企業、農林というところへ行っておるということでもって工夫のあるところを御理解を賜りたいと思います。
  319. 米沢隆

    米沢委員 もう従来からの説明は聞き飽きました。この段階で年金財政が大変だ、それなら膨大な積立金を何とかしよう、有利に運用できないものだろうか、全額そうしたらそれは大蔵省困りますよね。しかし、ある程度の限度額を決めて、任せて運用させることは可能だ、私はそう思うのです。  いま、国債も売れないと言って大変心配されておりますけれども、あれでも十年ものでは七・七八%ですか、いま特利を入れて運用部資金の金利は七・一五ですから、その差額だけでもこれは大変なものですよ。年金財政に大変大きな貢献をする。厚生大臣、もうちょっとがんばって運用部資金をよこせというような話はできないものですかね。
  320. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 年金積立金はすべて年金給付の資源でございますから、御指摘のように安全であり確実であり、そしてまた年金財政を考えるならば有利な方法を考えていくということは、これはもう言われるとおりでございます。  しかし、今日やっております方法がこの三つを総合的に勘案して最も確実な方法ではないかというような考え方でございまして、しかしながら今後、将来の有利な運用については大蔵省を中心に関係当局とも話し合って進めてまいらなければならぬと考え、いまの時点におきましては私どもはそういう方法でいっておることを御理解いただきたいと思います。
  321. 米沢隆

    米沢委員 大蔵大臣に聞きたいのですが、ちょうど昨日から公定歩合が一%引き上げられて七・二五%になりましたね。現行の資金運用部資金は特利を含めて七・一五%、ここで逆転をしておるわけです。従来まで公定歩合の引き上げにほぼ連動をして運用部資金の金利も変えられてきたのですが、今回はどうなさるおつもりですか。
  322. 竹下登

    竹下国務大臣 引き上げられたばかりでありまして、いまいわゆる短期プライムレートが〇・二五%上げられるというのが二十二日でございますか、他の問題につきましてはやはり広範にわたる各種金利体系を勘案しながらこれから作業を進めることでございますので、一つをスポットしてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  323. 米沢隆

    米沢委員 次に、経過年金の問題についてお尋ねします。  日本の年金制度の問題点の一つに、国民年金の福祉年金あるいは五年年金など、いわゆる経過年金の水準が大変低い。老齢者の生活の支えとしてはちょっと不十分ではないかという指摘がずっとなされてまいりました。その発足の経緯もありまして、水準が低いということについてはわかる部分もあるわけですけれども、時間の経過とともにその受給者はどんどん減っていくわけでありますから、やはりある程度経過年金等を引き上げる場合には、これもちょっと急ぐ課題の一つではないか、そう思うわけでございます。しかし問題は、国民年金の本来の給付水準とのバランス、あるいは長期的な年金財政に与える影響等も考慮しなければなりませんでしょうし、経過年金引き上げのための財源をどこに求めるかというのがやはり大きな問題だろう、そう思います。年金懇の報告等にも種々建議はなされておりますけれども、福祉年金も含めて経過年金の水準引き上げというのはやはりこれは重要な政策課題でありますから、一般会計に余裕がないということでその都度その都度ちょろっと上げてお茶を濁しておるわけでありますけれども、やはりこの際、この経過年金を一挙に引き上げる、そういう財源措置を含めてすでに検討がなされておると思うのでありますけれども、その経過と今後の方針等について、厚生大臣にお聞かせをいただきたい。
  324. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 老齢福祉年金や五年年金といったいわゆる経過年金の水準の引き上げについて、新たな財源措置の検討が必要ではないかということにつきましては、いまお話しになりましたように、年金制度基本構想懇談会あるいは国民年金審議会等におきまして、御意見として指摘されておるわけでございます。厚生省といたしましては、これらの意見を受けまして種々検討を重ねてまいりました結果、公的年金制度全体の加入者の社会連帯意識、それから世代間の扶養という観点に立ちまして、その財源を拠出金によって賄うという構想を取りまとめたわけでございます。この構想につきましては、昨年末に厚生年金、国民年金の労使の方々、学識者の関係者の方々に御説明を申し上げたわけでございます。これらの関係者からは、この構想については、福祉年金の引き上げの必要性は認められるし、新たな財源措置としては一つの考え方である、しかしながら、将来の給付水準や費用の負担のあり方などを含めまして、慎重に検討を要すべき問題であるという御意見をいただいたのでございます。したがいまして、こうした問題点につきまして、引き続いて検討してまいりたいと考えております。
  325. 米沢隆

    米沢委員 あと十分しか残されておりませんが、昨年末の予算折衝の過程で大きな議論を呼んだのが福祉見直しの要請、大蔵省の厚生省に対する節減合理化等の事項は十四項目にわたったというような報道がなされております。その中で大きな問題は、やはり老人保健医療制度の改正という問題じゃないか、そう思います。今回は厚生大臣の社会保障の後退という強い反対もあって現状維持になりましたけれども、その条件として、昭和五十六年に所要の制度改正の実施を図るという約束をされたという経緯があります。  そこで、これは多岐にわたっておるのでありますが、一つだけ老人保健医療制度の今後のあり方についてお伺いをしたいと思います。  予算折衝の過程で、老人保健医療制度については要綱までついていろいろと注文がなされたわけでありますが、厚生大臣はこのことをどういうふうに受けとめて、今後年末までにこれは結論を出すなんというのはとてつもない、これはできないことだ、そう思うのですけれども、どういう作業をされようとしておるのですか。
  326. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 いまお話しになりましたとおり、福祉のいろいろな制度について、特に老人医療制度の問題あるいは児童手当問題等について、大蔵省なりあるいは党の三役の方々との間において、いろいろ認識を確認したということでございまして、あの覚書と言われるものには、覚書という字は一つも見当たらないのでありまして、大事な問題について、お互いにこういう考え方で検討しなければならぬ問題だという、そういう認識をあそこで確認したということでございまして、果たしてこれを覚書と言えるものかどうか、私はそのようには解釈をいたしていないのでございます。  しかしながら、そういう認識のもとに、今後特に老人保健医療制度について、本格的な高齢化社会を迎えたわけでございますから、健康な老後を保障した老人医療費の負担の公平を図るなどの見地に立ちまして、基本的な見直しは大変大事なことであり、今後の大きな課題であると考えておりますので、したがって、関係審議会の意見を聞きながら、とにかく五十六年度には所要の改正ができる方向に向かっていませっかくの検討をいたしておるわけでございます。
  327. 米沢隆

    米沢委員 この老人保健医療制度というのは、やはり高齢化社会の医療をどうするかという体系の中でしか議論できない。したがって、まだ健保法改正法案も通らない段階で、非常にこれはむずかしい問題を含んでおる、そう思うのですね。老人準備室あたりを設置されていろいろと御検討がなされておると思いますけれども、合意に至っていない。覚書はないとおっしゃいましたけれども、五十六年に所要の措置をとるという約束はされたのでしょう。そうなりますと、これはそう簡単に結論の出るものじゃないわけですね。たとえば、制度改正と言いますけれども、新たに老人保健医療制度というのを創設するのか、それとも現行医療保険制度の枠内で財政調整をやろうとするのか、あるいは五十五年度の内示予算に見られましたように、一部負担の導入で現行制度に歯どめをかける制度にしようとするのか、いろいろな方法論があるわけですよね。この結論についても、制度審に諮問をされてもまた結論のつきかねる問題でもあるわけで、これは非常に大きな、時間を要する問題だと思うのだけれども、一年以内に拙速で結論を決めるなんということは、これは大変な問題ですね。そのあたりを含めて、今後どういう方向で——小沢試案とか橋本試案とか、いろいろありましたよね。しかし、それもみんな問題があるといってほごになっているわけで、ほかにそれじゃベターな方法があるかといいますと、それもないわけですね。制度審の話でなくて、あなた個人の見解を聞きたいのです。
  328. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 老人保健医療制度の問題は大変むずかしい問題でございまして、御指摘のように、一年以内にその制度の確立を見出し得るのかどうか、大変激励のお言葉をいただいたわけでございますが、小沢試案とか橋本試案とか、こういったような試案を踏まえながら、しかも審議会の意見を聞きながら、慎重に検討を進めてまいりたいということを申し上げる以外に、いまのところ、見通し、その方向を申し上げる段階ではないと思います。
  329. 米沢隆

    米沢委員 最後に、健保法の問題にちょっと触れたいと思います。  もう時間もありませんけれども、御承知のとおり、健保法案は再三廃案になったり継続されたりして、もたもたしております。私どもは、今度の国会ぐらいで片をつけなければ、最終的には赤字はわれわれに返ってくる、こういう観点で、大幅な修正をすることによってぜひ今回は片をつけたい、そう思っておるわけです。しかしながら、その修正の内容についてそれぞれ議論があるわけで、小さな、ちょろちょろ半分まけろとか五〇%にせよという、そういう細かな修正ではなくて、大きな修正をやることによって、少なくとも今回の国会でけりをつけたいと思うのです。そういう意味で、大幅な修正、特に保険外負担の解消という問題はぐっと踏み込んでもらわなければ、ちょっと議論は進まない、そう思うのでありますが、その点を含めて、健保法修正についていま厚生大臣はどういう御見解をお持ちか。同時に、政管の収支好転という誤算もありまして、またこの健保法案は最初からやり直せという議論が多くなりつつあるというようなマスコミの書き方もあるわけでして、これは大きな問題だ、そう思うのですね。そういう意味で、大幅修正の可否についてかなり踏み込んだ検討をなされておるかどうかという問題と、保険外負担の解消について、それから文部省の方にちょっと来てもらっておりますから一言申し上げたいのですが、差額ベッドは厚生省等の努力によりまして少しずつ減ってはきておりますが、一番多いのは私立大学の病院ですね。これの差額ベッドは全然変わってない。よう聞いてみますと、私学の研究費を捻出するために差額ベッドを持っておるんじゃなかろうかという話があるのだけれども、そのあたり、やはり私学の研究費等の増額等々、文部省は一体どう考えておるのか、この点を聞かしていただきたい。  以上、二点御質問をして終わりたいと思います。
  330. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 今回の健康保険法改正案は、今後に予想されます医療費の高騰、また低経済成長への移行などの社会経済情勢の大きな変化に対応するための医療保険制度の改革の第一段階として策定されたものでございます。したがいまして、政府といたしましてはこの案が最善の策と考えたわけでございますが、医療保険制度の改革は緊急な課題でございますし、いろいろ国会でもいままでにも御意見が開陳されておるわけでございます。それらの意見も参酌しながら、今国会での国民的合意が得られるような十分な御審議の上に、速やかに可決されるようにお願いをいたす次第でございます。  もちろん、これに絡みまして、保険外負担の解消が前提でなければならないではないかという御指摘、厚生省といたしましては、差額ベッドの問題を初めといたしまして、特に付添看護の問題につきましては、その適正化のために従来から努力をいたしておるわけでございまして、今後ともその解決に向かっては全力を傾けて努力をいたしてまいりたいということを申し上げて、ぜひとも今国会において健保法改正については格別の御配慮を賜りますようお願い申し上げて、お答えといたします。
  331. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 五十四年の時点で、私立医科大学の付属病院が保有する病床に対する差額病床の保有率が五五%でございます。五十二年の段階で五九・九%、約六〇%であったことに比べれば若干の改善は行われておりますが、厚生省の指導基準を大きく上回る状況にございます。  これについては、大学の付属病院がいわば臨床医学の教育研究の場として高度の医療水準を維持しなければならないということ、あるいは大学としての経営の問題等があるわけでございますけれども、しかしやはり大学病院といえども地域医療の中心的な機関として十分な協力をする体制をとらなければいけないことはあたりまえのことでございます。  文部省としては、かねて私立医科大学協会等を通じてこういった状況の是正について指導をいたしておりますが、今年の一月にも改めて文書をもって、付属病院を持っております私立医科大学の学長に対して、差額病床の保有率あるいは三人室以上における差額の徴収、そういった点の改善を図るように強く要請をしたところでございます。今後とも厚生省と十分に連絡をとりまして各大学の指導を進めてまいりたいと考えております。
  332. 米沢隆

    米沢委員 終わります。(拍手)
  333. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。
  334. 川崎寛治

    ○川崎委員 きょうは不正防止の問題を重点にやりたいと思いますが、官房長官が時間の都合でおくれるそうでありますので、きょうの次第に入ります前に、外務大臣早くお見えになりましたので、ひとつ外務大臣にお尋ねしたいと思うのです。  それは、けさの新聞に、まあごく一部の新聞でございますが、ベイルートの情報といたしまして、ペルシャ湾沿岸の湾岸の国でありますオーマン、御承知のようにエジプト、イスラエル、オーマンというところはアメリカの中東軍事戦略に積極的に対応しておる国でありますが、そのオーマンの防衛計画にヨーロッパの西ドイツ、それからフランス、イギリス、日本と、四カ国で参加をする、南イエメンの国境地帯だが、そしてそれは、特に第一次は港湾施設建設と諜報網組織の確立であり、資金は日本がその大半を肩がわりする、こういう報道になっておるわけですね。そしてそれがまた、園田中東特使がオーマンを訪れるときの議題にもなろう、こういうふうに言われておるわけでありますが、これは、アラブ側の情報というのはいろいろ分かれて流れてきます。しかも、このオーマンに行かれることとその他のアラブ関係の国々に行きますことについては、すでに東京を立つ前からいろいろと情報もあるわけであります。それだけに、今日、日本が中東にどう対応するかということは大変慎重でなければならない。しかし、大平総理がアメリカの中東軍事戦略全面支持、こういう全般的な態度を出しておりますから、こういう行動がありますときに結びつけられてくる、こういうおそれなしとしないと思います。  そこで、大変小さな記事ではございますけれども、私はいいかげんに扱かっておってはいけない、こう思いましたので、あえて冒頭に外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  335. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私もその記事を拝見いたしたのでございますけれども、全く事実無根と考えております。  つい先般、このオーマンの王室顧問ザワウィ氏が来まして、私も面会いたしましたが、あの地域における親西欧の立場をとっておる国でございまして、全体の経済情勢その他についての意見交換をいたしたわけでございまして、御指摘の、新聞記事に伝えられるようなことは全然ございませんと思います。
  336. 川崎寛治

    ○川崎委員 思いますでなくて、ありませんならありませんと断定しておいた方がいいんじゃないかと思うのですがね。  それじゃきょうは、先ほど申しましたように、航空機疑惑等不正防止制度という問題にしぼりながら少しお尋ねをします。  昨年、大平総理の私的な諮問機関であります疑惑防止対策協が九月七日、まさに解散の日に提言をいたしたわけでございます。これが選挙対策であったということはだれも否定をしないわけでありますが、それはそれといたしまして、政治の浄化、企業倫理の確保、行政の公正確保、制裁法規の整備強化という四つを柱にいたしておりますこの提言については、大平総理を初め、政府側の積極的な対応の仕方、また国会側もこれは大変責任がある、こういうふうに思いますし、それらは進めてまいらなければならないと思います。  しかし、この中で落ちておりますのは、会計検査院の強化と証券取引委員会の設置の問題で、大事な柱でありますが、実はこの提言の中から落ちております。そこで私は、この四つの柱の問題はおきまして、いまの会計検査院の強化と証券取引委員会の設置という問題を重点にしながら少し質問をいたしてみたい、こういうふうに考えます。  まず、ロッキード、ダグラス・グラマン、KDDと、この数年間に大変大きなものが相次いでまいりまして、その前後にはいっぱいあるわけです。ところが、このロッキード、ダグラス・グラマン、KDDという問題を考えますと、この三つとも、これは実は国内なりあるいは内部のチェック機能によって問題がえぐられたのではなくて、ロッキードの場合ですと、これはアメリカの上院外交委員会の多国籍企業小委員会で文書が発表された。ダグラス、グラマンはSECから出されてきた。KDDもたまたま成田の空港で、KDDを知らぬかと言っていばったばかりにひっかかって、これがこういうぐあいに大きなものに発展をしてきているわけですね。そうしますと、どれ一つとってみても、内部にありますチェック機能、あるいは国内における機能上の問題によって明らかにされてはいないということを私はまずはっきりしておきたい、こう思うのです。その点については、ひとつ内閣を代表しまして官房長官いかがですか、私のいまの指摘
  337. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま先生おっしゃった問題は、いろいろな疑惑の問題が、内部のというよりも外からのことで出てくるのじゃないか、内部監査といいますか、そういうことをもっとしっかりせにゃいかぬという御質問だと思うわけでございます。  それで、昨年、実は航空機の購入の問題で非常に問題となったわけでございますので、そういうことを契機にしまして、これに関する防止対策協議会をつくってやっているわけで、各省ともそれに基づいて、内部でできることをひとつ各省がそれぞれやっていこうじゃないかということで、政治資金の問題でございますとか、あるいは法律の問題でございますとか、行政管理庁の問題でございますとか、それぞれ取り組みまして、いまやっている最中でございます。
  338. 川崎寛治

    ○川崎委員 つまり、いま内部の統制力によって問題が出てきたものでないということをお認めになられた。これは大変大事なことなんです。後の議論に関係してきますから、よく頭に入れておいてほしいのです。  そこで、大蔵大臣にお尋ねしますが、いま大蔵省の最大のターゲットは何ですか。
  339. 竹下登

    竹下国務大臣 航空機疑惑不正防止対策についての大蔵省の取り組み方……。
  340. 川崎寛治

    ○川崎委員 いや、まだそこまでいかぬ。いまターゲットは何かと聞いているのだから、ひとつずばっと答えてくれればいいのですよ、大蔵省全部の。
  341. 竹下登

    竹下国務大臣 財政再建そのものであります。
  342. 川崎寛治

    ○川崎委員 そのとおりだろうと思います。そうしますと、その財政再建ということは、つまり増税ということとうらはらの問題としていま苦闘している。  そこで、この増税という問題が大きく出ますと、一方では納税者、また第二の一般会計と言われます財投の原資を提供しております善良な少額の貯蓄者、簡保その他いろいろありますね、そういうものの保護という問題がうらはらの問題として大変大事だと思いますが、いかがですか。
  343. 竹下登

    竹下国務大臣 お説のとおりだと思います。
  344. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、そういう立場に立ちますならば、これは後ほど法務大臣の方の商法の改正などとも絡んでまいりますけれども、先ほど官房長官も残念ながら不正の問題についてお認めになられた。そうしますと、会計検査院の強化という問題はこれは非常に大きな課題であります。課題でありますから、特にロッキード事件以来この問題は繰り返し論議されておりますし、実は衆参両院の本会議におきましても全会一致で決議がなされておる。総理もいろいろと答弁をしておられる。いまこういう過程にありますね。この会計検査院の強化について、つまり会計検査院は院法の改正を具体的に内閣に提出しておりますが、そのことについて大蔵大臣は賛成ですか、反対ですか。
  345. 竹下登

    竹下国務大臣 大蔵大臣といたしまして、会計検査院の機能の強化、これは賛成です。  あの院法の改正につきましては、たたき台でもございませんが、内閣へ提出されておるものでございますけれども、わが方がいま引き続き慎重な検討を要するとしております点は、申すまでもなく資料提出等の要請にできる限り応ずるという立場をとりつつも、政府関係金融機関の融資先まで会計検査院の検査権限調査権限を及ぼすことは民間の企業活動に対する国家権力の過剰介入となるおそれが強いということからいたしまして、慎重な検討を要するという立場をとっておる現状であります。
  346. 川崎寛治

    ○川崎委員 それではちっとも機能強化に賛成をしておるという態度ではないわけなんです。だから、私はいま申し上げましたでしょう、納税者やあるいは少額貯蓄者の保護ということが増税のうらはらの問題として大変大事ですよと。そしてそれは、政府関係金融機関が融資をしております問題、そこにたくさんあるわけですから、それを検察庁がやるようにチェックしようと言っているのじゃないのです。だから、問題が起こったときに政府関係金融機関が融資をした先にそのことに限って調査をする、そのことがなぜぐあいが悪いのですか。私はいまの大蔵大臣の御答弁では納得できませんですね。なぜ悪いか。つまり納税者なり少額貯蓄者なりを守るという立場から——税金については言うまでもありませんね。それから少額貯蓄の場合は、国家管理しているわけですから、そして国家機関が運営しているわけですから、それについてぐあいが悪いのだという、そのぐあいが悪い理由を、もう少し明確に言っていただきたいと思うのです。
  347. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的な問題としましては、政府関係金融機関の融資先が、特に輸銀、開銀、中小公庫等の融資先の場合には、検査院が企業の意思に反して調査に来るということになった場合、これら機関からの融資を避けるようになって、せっかくの政策金融が有効に機能しなくなるおそれがあるということが一つであります。  それから、現在いわゆる融資先の契約上の約款に基づいて行われておって、そしてそれが相手方の了承を得ておりますので、トラブルが少なく行われておる。表現が適切かどうか別ですが、現実に契約約款に基づいてトラブルなく行われておる。したがいまして、大蔵省として国会決議の趣旨を尊重して、調査依頼、資料提出の要請があった場合はできる限りこれに応ずるよう関係機関を指導しております。そういう形で今後御協力申し上げるならば、私は会計検査院の実が上がるであろうと思うからであります。
  348. 川崎寛治

    ○川崎委員 政策金融というお話でしたが、たとえば農林水産業関係とか、農協なんかもそうです。官房長官は坂井委員の質問に対しては、農業やそんなものでびりびり入ってくるからいかぬのだということを言っているけれども、そうではなくて、農協や漁協なんかは積極的に協力してやっているわけですよ、政策金融融資を受けていますけれどもね。小さな、少額であってもみんな会計検査院に協力してやっておる。中小企業振興事業団の融資の問題にしましても、たとえば伝統産業その他いろいろな中小のものも協力をして、必要なときには応じてやっておるわけです。なぜ大手の企業はぐあいが悪いのですか。いまの大蔵大臣の政策金融離れがするという言い方は、大手企業に限って何でぐあいが悪いのですか。開銀とか輸銀とか経済協力基金とか、なぜそれがぐあいが悪いかということは、いまの御答弁では回答になっていない、私はこう思います。いかがですか。
  349. 竹下登

    竹下国務大臣 これは大手企業のみでなく、私は中小公庫等の融資先の場合も同じではないかと思うのであります。やはりちゃんと契約の際に約款に基づいてそういう指導がしてありますので、法律でもって介入するまでもなく、私は会計検査の要請にこたえ得るではないか、こういう判断であります。
  350. 川崎寛治

    ○川崎委員 先ほど官房長官もお答えになりましたが、ダグラス、グラマンのときの日商岩井の問題にしましても、これは全日空にも入れなかったわけですね。ただ輸銀を通して提供される資料でしか見れなかった。大変これはポイントだったわけですね。だから、いま内部でうまいぐあいにいっているんだと言うけれども、現にここで非常に問題になった問題はできていなかったわけなんです、だから、より今日の不正の問題を阻止しようという、そして法務省において商法の改正その他も進められようとしておりますけれども、そういう中で、国民の大事な税金なりあるいは少額の貯蓄なりを原資にしておるそういうものについて政府関係機関からの融資先に必要な場合に、しかもそれは検査官会議などを通して慎重に結論を出して行くわけなんですから、それがなぜぐあいが悪いのか。それは大出君が繰り返しやっておりますソウルの地下鉄の問題にしましても、あるいは浦項の製鉄所の問題等にいたしましてもそうですね。だから、やはり会計検査院の機能を強化していく、そして院法改正の案で出しておりますそうした融資先の調査ができるようになる、そのことがなぜ不都合なのかということについては、私は十分納得しません。うまいぐあいにいっているんだ、それはもともと行政指導で何でもうまいぐあいにいくんであるというならば、会計検査院も要らぬと私は思うのです。あること自体じゃまになるんだ。だから、内部でやれるんだとか行政指導でやれるんだとかいうことでは、いまの御答弁では——国民が会計検査院法改正の問題について大変注目して見ております。そのことについて、あなたも全会一致の決議に参加をしたわけですから、それがこっち側からそこに移ると途端に反対の方になる。それじゃいかぬのですよ。もう一度いかがですか。
  351. 竹下登

    竹下国務大臣 これは衆議院の議決を見ましても、まさに「会計検査院の検査機能の充実強化は引き続き検討すべきである。」という御決議の趣旨でありまして、私もそれには当然のこととして賛成をいたした一人であります。  ただ私は、基本的な物の考え方といたしまして、国家権力というものの介入というものはどこまでであるべきかということについて、いわば過剰にわたらないというその判断の基準はどこに求めるかといたしましても、国家権力の介入はできるだけ過剰にわたらない方が好ましいと思っております。しかも、会計検査院というものの存在はまさに、言ってみれば第三者機関とでも申しましょうか、検査官の任命につきましても国会の御同意を得た上の機関でありますので、これの存在は私も十分認識をいたしておるところであります。そうした立場でありますだけになおのこと、行政府がこれに御協力申し上げて、トラブルのない形でもってそれらの検査に協力できる立場をこれからも一層貫く方がより妥当ではなかろうかというふうに私は考えております。
  352. 川崎寛治

    ○川崎委員 結局、抽象的には機能の強化に賛成、しかし、いま提案されておる院法の問題については賛成しかねる、こういう大蔵省の姿勢ですね。これはやっておっても切りがありませんから、いまの大蔵大臣姿勢というのは大変遺憾に思います。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  では、通産大臣——まだお見えでないので、それでは経済企画庁長官、いかがですか。あなたのところは経済協力基金という問題の機関を所管をしているのですからね。
  353. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 通産大臣が先般の大出議員の御質問に対しましていま大変いろいろ努力をしておられるのでございますから、通産大臣からその間のお答えがあってしかるべきだと思います。  ただ、いま大蔵大臣と川崎委員との質疑応答を拝承しておりまして、私も、政府の関係機関がいろいろやる場合に、それらに万遺漏なきを期するような体制をとるべきであるという川崎委員の御趣旨、これに対して、今日御案内のように行政機構を整理縮小するという方向で財政再建を考えておる大蔵大臣の立場も私はわかるわけでございます。そこで、そういう整理縮小、いわゆる行政改革、そういうものと、一方においては、いま御指摘のような若干の権限の強化、それに伴う行政機構の充実とでもいうふうな問題との兼ね合いの問題もこれあり、私はやはりこれらの点について十分国会の御意見も拝聴し、政府部内においても十分検討いたしまして、最小限度のところにとどめていくということが今日の要請であろうかと思いますので、私からとやかく申し上げるよりは、そういう問題として一層の検討を加えていきたいと思います。  私の方の所管の経済協力基金等のやっております仕事については、これはもう一層監督を厳重にいたしまして、疑惑のないように努めていくべきことは当然と心得ておるわけでございます。
  354. 川崎寛治

    ○川崎委員 あなたの前任者の小坂経企庁長官は民間出身ですよ、財界人なんですけれども、私は八〇年代を担う一人かなとやはり思います。小坂長官は、「特に経済企画庁といたしましては、海外経済協力基金の関係がございますが、これは従来から会計検査院の調査には協力するようにということでまいっております。しかし、昨今いろいろな問題もございますので、いずれにいたしましても、国民の税金を大切にするというのは政治の基本的姿勢ではないかと思いまして、そうした趣旨がさらに明確になる方向の改正であるならば、これは結構なことであると私は考えております。」と明確に言っておるわけですよ。これならやはりちゃんと国会の決議に参加をした人の答弁ですね。いまの経済企画庁長官の答弁というのはわからぬ、結局何を言っているかわからぬですね。  それでは外務大臣、あなたは前に経済協力基金総裁として大変冷や汗を流した人でありますから、しかも新自由クラブから、金権腐敗の保守の政治改革ということで立候補したこともあるわけでありますから、国際エコノミストとして、特に国際的な経験の上から見ても、またがっての経験等から見ても、この問題についていかがお考えですか。
  355. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 国際的に経済関係が非常に深くなりまして、その面から腐敗の問題等が発生するということもございますが、これは各国近年相当気を使ってといいますか、問題になっておるところでございまして、アメリカの例をとりましても、腐敗防止法が新たに成立いたしまして、海外腐敗防止法でございますが、そういう企業の海外における腐敗行為を取り締まるというような法律も成立をいたしておるわけでございます。こういう面については、だんだん国際的な協力も必要になってまいるかと考えております。
  356. 川崎寛治

    ○川崎委員 いまのは院法の改正にどうだということになりますか。
  357. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 率直に申しまして、その点はまだ私自身として検討しておりませんので、はっきりしたことを申し上げる立場にございません。
  358. 川崎寛治

    ○川崎委員 しかし、経済協力関係でたくさん問題が起きているんですよね。だから、少し外務大臣としては、きょう通告もしてあるわけなんですから、そういうあれに臨む姿勢としては非常にいいかげんだ、こう私は思いますね。非常に残念です。  そこで、官房長官、大変大平内閣というのは口では言うんですよ。ところが、大平総理の答弁というのをずっと読んでみますと、全部逃げているんですよね。そして結局は、慎重に検討ということで、とにかくいじらないでいこういこう、時間をかせごう、こういう方向にあります。これでは腐敗防止という、そしてまた、自民党の金権体質を克服していくとかあるいは政治の信頼を回復していく、あるいは日本の民主主義が大変危機にあるわけですが、そういうものを打開していくということについて言いますと、この会計検査院法の改正につきましても、あなたが内閣の中で取りまとめの役をしておるわけですから、そして、検討してこの国会中に目鼻をつけるということを大平総理は坂井委員の質問に対して答えているわけでありますから、そこで内閣官房長官としては、大平総理がそれまで国会で言っておることに対してあなたが実際に処理をしなければならぬわけです。最後の決断は総理にあるとしても、かなめの官房長官としてこの問題を実際どう進めようとしておるのか。あるいはこの国会中は手がつかぬということでまた逃げをやろうとしておるのか、私はそれではいけないと思うのです。率直な伊東官房長官ですから、ひとつこの問題については、体を張って問題を解決し、前進させるという決意が必要であろうと思いますが、官房長官の御意見を伺いたいと思います。
  359. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま先生が御質問になったのは会計検査院法の改正の問題でございますが、例の疑惑防止の関係につきましては、あの中でできることは一つでもやっていこうということで、刑法の改正を出しましたりいろいろやっておるわけでございますが、いまの会計検査院法の問題は、あの協議会の中でも実は議論になりまして、民間の企業というのは自由濶達にやれるようにというような消極的な意見が実はあったわけでございます。一方、いま先生のおっしゃるように、会計検査院法の改正の問題がございまして、国会の決議がございまして、私の前任者のときから取り組んでおるわけでございますが、私も実はこの問題に取り組みまして、会計検査院からも事務総長に来ていただきまして話を聞き、あるいは各省の金融関係の担当者に来てもらって別個に何回か実はやったわけでございます。  いままでの段階ではまだ意見がまとまっておらぬのでございますが、いま大蔵大臣からも御説明がございました、あるいは農林漁業金融公庫でございますれば農林水産省、中小企業でございますれば通産省というふうに各官庁の意見を聞いているのでございますが、政策金融が法律的に検査院の検査ということに義務づけられると、心理的圧迫といいますか、そういうことでなかなかうまくいかぬじゃないかということが一番の大きな原因でございます。あるいは、いま肩越し検査ということで、検査院と各省庁で話し合いをされて、ここをやるから協力してくれ、やりましょうということでやっているというような現実があるというふうなことでございまして、まだ法制化まで実は結論が出ていないというのが現状でございます。いままでもやりました。今後も続けていくのでございますが、いつまでにまとめるという期限は、いまここで率直に申し上げまして日を切ってということはなかなか困難でございますが、今後とも私はこの調整に努力をしてまいるつもりでございます。
  360. 川崎寛治

    ○川崎委員 大平総理は、できるだけ早く結論を急ぎたい、今国会中には見当をつけて御報告するようにいたしますと言うから、これは出しますとか何とかしますというんじゃなしに、大平一流ですよね、例によって例のごとしなんですが、いまの官房長官の答弁はまたもっと後退しているわけですよ。どうなんですか、大平総理がこう言っていることに対して。今国会中ですよ。
  361. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 総理は、結論をつけてということを言って、どっちとも言っていないということでございます。恐らくそのとおりだと思うのでございますが、いま申し上げましたのは、私は何とかして調整をしたいということで実は取り組んだわけでございまして、いろいろな意見もその中で私は言っているわけでございます。でございますので、私はやはり最善の努力をしてみて、調整をするという努力をするというのが私の立場じゃなかろうかと思っております。
  362. 川崎寛治

    ○川崎委員 それじゃ会計検査院長は、こういうぐあいに院の方で考えをまとめたらと、こういうことが去年の通常国会における決算委員会等における議論でもあったわけですし、会計検査院としては、院法の改正について案を内閣に出しておるわけなんです。いま特に大蔵大臣からは、政策金融の問題で言っておりますけれども、大蔵大臣が言うようなおそれ、それで院法の改正をやるとぐあいが悪いんだ、こういうことで、しきりに大蔵省、通産省、経済企画庁、そこの諸君たちが一生懸命反対の陣を張って大臣に突っかい棒しておるわけです。しかし、それじゃ困るんだ、これはこの数年来のロッキードやダグラス、グラマンやいろいろな問題からしまして、どうしてもやらねばいかぬのだということで、私は会計検査院としては大変いろいろと検討した上に出されたと思うのです。だから、改正の方向についての会計検査院長の熱意というか決意というか、そういう考え方を明確に述べていただきたいと思う。
  363. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 ただいまの会計検査院法の改正問題につきましては、内閣におかれまして官房長官を中心に慎重に検討中であると承っております。  政策金融に支障があるかどうかということになりますると、これは政策論議になることでもございまするし、現にお願いをしている立場でもございますから、細かな論議は申しませんが、私どもといたしましては、国会の決議もこれあり、国家資金の使途の検査を厳重にするという意味におきまして、最小限のものとしてまとめたものでございまするので、これがお認めいただけるように期待をしているのは当然でございます。
  364. 川崎寛治

    ○川崎委員 総理がおりませんから、議論がこれ以上進まぬわけですけれども、これは改めてまた何らかの機会に、総理の出席しておられるところでさらに詰めなければいけないだろう、こう思います。  じゃあ次に移りまして、投資家保護の問題です。これは公認会計士協会が昨年来、金子前大蔵大臣当時からも公認会計士協会の会長の方とも相談をして、この問題については検討しておる、こういうことでもありましたし、また昨年の防止協の方の提言の中にも入っておる問題でございますが、交際費の監査強化あるいは対外公開というふうなことで通達を昨年の暮れ出しておるわけです。しかし、これは法的な拘束力がないんですね。これは本来大蔵大臣の規則制定権に基づいて規則として定めるべき問題だ。これは要するに倫理規定にしかすぎないわけなんです。だから、なぜ大蔵大臣が規則を制定をしていくという方向でやられないのか、その点を伺いたいと思います。
  365. 竹下登

    竹下国務大臣 ディスクロージャー初め多岐にわたる問題でございますので、事務当局からお答えをいたすことをお許しいただきたいと思います。
  366. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま川崎委員の御質問は、公認会計士の監査業務についていろいろ規則制定権を発動してきちっとしたらどうか、こういう御質問かと存じます。御承知のとおり、昨年の航空機疑惑不正防止対策の一環といたしまして、投資者保護の立場から公認会計士の監査を強化しようということで、私どもいろいろ工夫をしてまいったわけでございますが、組織的監査を強化するという立場から、協会ともいろいろ相談をいたしまして、監査業務審査会というものを設置しよう、ここで公認会計士の監査の指導とかあるいは監査内容のチェック等をやっていこう、こういう話になっているわけでございます。私どもとしては、公認会計士協会のこういった自主的な活動をできるだけ助成する、協力する、こういう立場でこの公認会計士の監査業務を強化する、こういった考え方で臨んでまいりたい、このように考えているわけでございます。
  367. 川崎寛治

    ○川崎委員 だから大蔵大臣には、いま証券取引法上は規則制定の権限はないんですか。
  368. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 公認会計士の監査業務について大蔵大臣報告を徴するとか、あるいはその監査内容について審査をする、こういう権限は証券取引法で認められているわけでございますが、特にこの規則の制定とかそういったことは法的な根拠はございません。
  369. 川崎寛治

    ○川崎委員 それが昭和二十七年に改正をした前の法律といまの法律との大きな違いにもなってきていると思うのですよ。これは金子前大蔵大臣と去年の予算委員会でいろいろやりましたときも、金子当時の大蔵大臣も、やはりアメリカのSECと比較をすると大変権限がない、その点は非常に落ちるんだということは明確に認められた。当時の渡辺証券局長も、それらの点についてははっきりと認めておられたわけです。ただ、日本とアメリカと制度が違うんだ、こういうことで、証券行政の強化の問題については大変逃げられたわけです。しかし大平総理も、戦後三十年、国際化の中でいろいろと問題がある。しかし、これもやはり大平流で逃げているわけですね。「日本の法体制がそういう事態に完全に照応いたしまして、水も漏らさぬ体制にできているかどうかということにつきまして私まだ自信がございません。もしそういった不備がございますならば改めていかなければならぬことだと思います。」こういうことで結局逃げているわけですね。しかし、金子当時の大蔵大臣はわりに前に踏み込んで、検討しなければならぬということはずいぶん悩みながらも言っておったと思うのです。当時は竹下さんはそこの予算委員長席におったわけですから。  そこで、これはやはり継続だと思いますね、大臣がかわって新しいからという問題でないと思うのです。いろいろ検討しなければいかぬのだということを約束をしておるわけです。そして、これは分科会でありますけれども、金子大蔵大臣は、SECとの問題を少しやりましたが、「これはやはり司法行政の一環ですから、法務省とも十分連絡をとりながら、そのねらいをどこに定めてどういう点のチェックをしっかりやっていくのか、そのためにはどういう部局、委員会を設けたらいいのか、そういうことではないのかと思います。当然私ども証券局が中心になって考えなければいかぬことでございますけれども、制度機構の問題ですから、大蔵省だけでできる問題ではございませんし、総理府もかまなければいかぬかもしれませんけれども、それよりも準司法行政の一環として考えるとすれば、法務省の物の考え方、いまの検察行政との関連の仕方、そういうことを十分連絡しながらやっていかなければいかぬと考えております。」ここまで相当突っ込んで言っているわけですよ。  大蔵大臣、いまのこの点について、第二次の大平内閣は、証券行政の機能強化、制度改革、そういう問題について、前大蔵大臣が答えられたそのことに対してどういうふうに進めてこられたのか、伺いたいと思います。
  370. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに金子前大蔵大臣であり、前々大蔵大臣は村山委員であり、これがずっと継続しておることは事実でございます。したがって、そういう工夫の中で大蔵省におきまして、公認会計士監査に対する審査を強化するため来年度以降、併任の形ではありますが九名の証券監査官を増員することとしたというようなのも、まさにこの予算要求自体は、前任者の金子さんの考え方に基づいていまなされたものであるというふうに私も理解をいたしております。そして実際問題、アメリカのSECみたいなものができるというふうに途端に私も考えるほど飛躍をしては物を見ておりませんけれども、当時の環境の中で金子大臣が苦労をされ、そして一つのあらわれとしてこういうことが結果としてあらわれてきたというふうに理解しておりますだけに、金子大臣の時代からの精神を受け継いで、私も引き続きこの機能の強化等については意をいたさなければならないことである、このように考えております。
  371. 川崎寛治

    ○川崎委員 法務大臣、大蔵省からこういう証券行政の改革の問題について、いまは監査官の増員の話だけなんですが、その制度の問題について、大蔵省との間でどういう詰め方をされたか伺いたいと思います。
  372. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのようなお話が大蔵省からございますれば、十分協力を申し上げることは当然でございます。(発言する者あり)大蔵省からお話がございますれば、そういう点について十分協力をいたすことは当然でございますと申し上げたのであります。
  373. 川崎寛治

    ○川崎委員 去年の二月ですよ。法務省と話をしよう、場合によっては総理府とも話をしなければいかぬのだ、こう言っているんですからね、もう一年たっているんですよ。これからなんですか、いままでなかったということですか。
  374. 貞家克己

    貞家政府委員 公認会計士関係の諸問題につきましては、いま私どもの方で商法改正の準備をいたしております。その場におきまして、公認会計士の方あるいは大蔵省の担当の方にも御出席をいただいておるわけでございまして、そういった場でございますとか、あるいはその準備におきまして協議をいたしておるところでございます。
  375. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうじゃないんですよ。つまり日本の大蔵省の証券局は力がない、それは認めたんですよ。しかしいま竹下大蔵大臣も、SECのようなものまでは飛躍できぬと、こう言う。それは金子さんもそういうふうに答えていた。しかし何か変えなければいかぬ。そうでなければ国民の不信に対してこたえられないし、今日の不正がたくさんあるそういう問題に対してチェックできない。だからそういう問題を法務省とも話をしましょう、こういうことで来たんですが、大蔵省と法務省との間ではなかったのかということを法務省に聞きます。それから法務省の次に大蔵省の証券局長に答えてもらいます。——法務省が先だよ。あったかなかったか。
  376. 貞家克己

    貞家政府委員 そのような問題についても事実上お話を伺っております。
  377. 川崎寛治

    ○川崎委員 では、どういう詰めになっているんですか。
  378. 貞家克己

    貞家政府委員 非常に問題が複雑でございまして、なお十分商法の改正等と関連して検討をいたそうというつもりでございます。
  379. 川崎寛治

    ○川崎委員 つもりでございますといって、だからどういう間でどういう話を詰めてきたかと聞いているんです。そんないいかげんな、法務省がうそを言ってはいかぬよ。
  380. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもとしては、今回の商法の改正の問題に関連しまして、かねて法務省といろいろ話し合いをしております。その具体的な内容をちょっと申し上げますと、一つはディスクロージャーの内容でございます。会社が営業報告書にどういう記載をするか、その記載の細かい内容について法務省といろいろ詰めておる、こういう状況でございます。  それからもう一つは、会計監査人の地位ということで、これは公認会計士の地位の独立性を強化する、こういう観点から、会計監査人の選任の方法をこの際変えたらどうか、こういう話し合いをしておりまして、現在、株主総会で会計監査人の選任をしたらどうか、取締役会でなくて株主総会で選任するということでその地位の独立性を図ったらどうか、こういうふうな話をしている次第でございます。
  381. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうじゃないんですよ。それは商法改正との関係での問題なんですよね。そうじゃなくて、つまり、アメリカのSECがなぜ立ち入り調査権を持ってやっておれるか、そういうことについて証券局長からも答弁をし、大蔵大臣の方も証券局の機構の問題として検討しますということで答えているんですから、いまの答弁は機構の問題じゃないんですよ。ただ、それをやるについても、法務との間でそういう思想的な面のすり合わせをしなければならぬから、それをやりながら機構の問題についても検討しましょう、それからさらには、機構の問題だから総理府ともやります、これが前大蔵大臣の答弁なんです。だからそういう機構の問題を、証券局の機構改革というか機能強化のための問題を大蔵省が本当にどう取り組んできたか、それはいままでの答弁ではっきりしているように、何にもしていないということなんですよ。だから、その質疑があるときにはいかにもやるような、前向きの姿勢のようなことを言いながら実際には何にもやらぬ、それがいかぬと言うんですよ。だから本当にどういう機構の問題についてやったのか、これは金子前大蔵大臣に答弁してもらった方が早いかもわからぬけれども、それではぐあいが悪いでしょうからね。本当にその問題はやっているのかやっていないのか。いまはただディスクロージャーの問題だとか、公認会計士云々のそういう問題だとか、そういうことなんですと、それならそれではっきりしてくださいよ。
  382. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 先ほど大臣からお答えいたしましたが、私どもの証券局としても、何とかこの体制の整備を図りたいということでいろいろ工夫をいたしまして、来年度から証券監査官、これは現在、上席が一名と監査官が七名、計八名ということでございまして、また財務局に監査官が十九名おる、こういう状況でございますが、併任の形でこの監査官を九名ふやしまして、こういう非常に定員管理の厳しい時期でございますけれども、特にお願いして九名の監査官を増員する、こういう形で処理をしたい、このように考えております。
  383. 川崎寛治

    ○川崎委員 それはもう大蔵大臣がすでに答弁しているんだ。そんなむだな時間をかけられるとかなわぬですよ。結局、制度改革という問題についてはまだ一歩も前進していないということが明らかになったと思います。大平内閣のそういういいかげんな答弁については、今後さらに責任を追及してまいりたい、こういうふうに思います。  そこで、法務大臣に伺いますが、先ほど来、政策金融の問題については、融資先の商社等企業に入って調査をするのはぐあいが悪いのだ、こういうことでありますけれども、法制審議会で商法改正の方向がいま出されてきたわけです。結局、会社の機関のあり方であるとか計算の公開であるとか、そういう問題が案として出されてきたわけですが、このことは、要するに不正が多い、そして事件が頻発をしておる、そういう中から、ヨーロッパ、特にアメリカ等が進めておりますそういう投資家保護の制度をきちんとしていこう、こういうことで経営公開の義務を厳しくしていくことだ、こう思うのですね。ですからそういう方向について、私はそう思うのですが、改正の理由、それから内容並びに今後の進め方というものについて伺いたいと思います。
  384. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのような件で、ただいま法制審議会の商法部会におきまして会社法改正のため審議を行っておりますが、会社の不正行為の発見及び防止のための必要な措置として、株式会社の財務及び業務内容の開示を充実させますほかに、株式会社の機関については、株主総会の運営の適正化、取締役の責任の明確化、監査役の監査機能の充実強化等の方策について検討いたしておりますが、その答申が得られ次第、速やかに法律案を作成いたしまして本国会提出いたしたいと考えて、鋭意努力をさせているところであります。
  385. 川崎寛治

    ○川崎委員 今国会ですね。
  386. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 そのつもりでございます。
  387. 川崎寛治

    ○川崎委員 促進をしていただきたい。  そこで、外務大臣にお尋ねしますが、これも去年の予算委員会で、つまりロッキードとかダグラスとかという問題、あるいはさらにはソウルの地下鉄や浦項の製鉄所、あるいはインドネシアのLNGの問題、その他経済協力関係等からもたくさん問題が出ておりますね。大型の飛行機等の輸入はもとよりですが、そういう経済協力関係からも出ておる。そこで、経済協力関係の交換公文に不正支払い防止の条項を入れなさい、どうですか、こういうふうに質問いたしましたら、園田外務大臣は明確に、やるように、入れるように検討しますと、つまりこれは、そこはもう念を押して聞いたのです。検討じゃだめだと言ったら、いや、やるようにするんですと、こういうふうに明言をしたのです。ところが、もう時間がないからどんどん言いますが、私は昨年の四月以降の外務省が結んだ円借款等の交換公文を全部見せてもらいました。一つも入っていないのです。大臣がここで約束をしたことをなぜ実行をしてこなかったのか、その理由を伺いたいと思います。
  388. 梁井新一

    ○梁井政府委員 お答え申し上げます。  園田大臣が、経済協力資金の適正使用につきまして、その適正な使用を求める条項を交換公文に入れてはどうかという御質問に対しまして、検討するとおっしゃったわけでございますけれども、……(川崎委員「入れるように検討するだよ、ただ検討じゃないんだ」と呼ぶ)その結果、現在私どもは、日本が無償で供与いたします無償協力の物資につきましては適正かつ効果的に使用されることを確保することという条項を交換公文の中に入れております。  ただ、この問題につきましては、契約の相手方が外国政府でございますし、またわが方の企業との契約によりまして物資が供与されるわけでございますけれども、企業の秘密の問題もございますし、強制的にこれを執行するということはもちろん不可能でございまして、なるべくそういう形で外国政府に対しても効果的な使用をやるようにお願いするということをやっております。
  389. 川崎寛治

    ○川崎委員 ただ協議するだけで——明確に不正防止を交換公文の中へ入れますという約束だったのですよ。それをただ随時協議をするとかというのは、これはいままでとちっとも変わらぬわけです。どこが変わったのか。去年のこの答弁以降どこが変わったのか、いまちょっとわき見しておったあれもありますけれども、明確に示してください。
  390. 梁井新一

    ○梁井政府委員 お答え申し上げます。  現在交換公文に入れておりますパターンは、交換公文によって多少は違いますけれども、日本国の贈与に基づいて相手国政府に供与される物資につきましては、交換公文に規定してございます目的のために適正かつ効果的に維持され及び使用されることを確保することということを、向こう側の政府の約束として書いてもらうということを現在やっております。
  391. 川崎寛治

    ○川崎委員 いままでなかったのですか。
  392. 梁井新一

    ○梁井政府委員 さようでございます。
  393. 川崎寛治

    ○川崎委員 適正かつ効果的ということを入れたことによって不正防止という商旅になったんだというわけですか。そんならいままでと変わらぬ。
  394. 梁井新一

    ○梁井政府委員 お答え申し上げます。  こういう形で交換公文の中におきましては適正使用に関連する条項を入れまして、外国政府との交換公文の中で向こうの政府の一定の行為と申しますか、合意をしておるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、調達契約を結びます場合には向こうの政府と日本国の私人が契約するのが通常でございます。外交上の問題もございますし、この適正なということについて、どこまで具体的にこの点を確保できるかという問題は外交上の問題もあるということを申し上げたかったわけでございます。
  395. 川崎寛治

    ○川崎委員 相手側だけじゃないですよね。この不正防止ということは相手側だけでなくてこちら側もあるわけで、アメリカが海外不正支払い防止法を制定し、さらには政治家への献金、政治献金の禁止などをやって、それがSECが非常に強い調査に入る一つの足場にもなっておるわけなんです。でありますから、この問題は国連の中における協定の問題等とも絡み、今後の国内法整備の問題とも絡んでくるであろう、こう思います。  時間がありませんからこれはいずれかの機会に譲りますが、そういうことでますますふえればふえるほど、この問題による不正を起こさせない、起こさない、つまり外交関係でありますから、相手国との間の友好の問題その他もございますけれども、しかし不正を防止するということについてはお互いの政府の責任でありますから、それを明確にしていくということは大事なことであろうと思います。外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  396. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘の点につきましては、国連あるいはOECD等におきまして国際的な不正防止についての審議が行われておりまして、これは日本政府としてもこういう審議に従来から積極的に参加協力いたしておるわけでございます。国連については一応の報告書はできておりますけれども、まだ最終的な決定に至っておらない状況でございますけれども、この国連及びOECDの審議については、わが方といたしても協力しておるわけでございます。
  397. 川崎寛治

    ○川崎委員 では次に移りたいと思います。  鹿児島県の志布志湾は、大型開発の問題地域として長年にわたっていろいろと論議が行われてまいりました。国会においてもたびたび議論の行われておるところでございます。先般、国家石油備蓄基地の調査予定地の指定があったわけでありますが、その際に、この志布志の問題について、実は第二次計画から外れておるわけでありますが、そのことに対して鹿児島の県の方は、外れたけれども、あたかも第三次の候補地として予約されておるというふうな形での発表というか、リードをいたしておるわけであります。そして、十分石油公団並びに通産省の方には話がついて、六十年目標に志布志も立地していくんだ、こういうことを国と県が合意をした、こういう形で報道がなされております。でありますから、石油公団並びに通産省として、この志布志についてもそういう第三次の予約をしておるのかどうか、内諾を与えておるのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  398. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 第二次の国家備蓄の四ヵ地点を決めましたところには、志布志湾はお話しのように入っていません。  今後の三千万キロリットルに拡大する、五十五年度の分でございますけれども、五十五年度予算には調査費は盛ってあります。盛ってありますが、今後の調査の進め方といたしましては、全国の各地の候補地点から都道府県の知事の推薦をまず得まして、その推薦を得た地点に対していろいろ概査を行いまして、そしてさらにフィージビリティースタディー等を行って決定していくわけでございます。したがいまして、まだ予算も別に決まっておりませんし、第三次と申しますか、三千万キロリットルの候補地点が内定しておるという事実は私は承知しておりません。
  399. 川崎寛治

    ○川崎委員 特にこの志布志の場合は、大隅開発計画、それが壁に突き当たり新大隅開発計画、そして次々に来ておるわけでありまして、隣県の宮崎県との問題もございますし、現地の反対運動もありましたし、それからさらに国定公園の解除の問題等もありますし、こういうことで非常に壁に突き当たってきているわけですね。  そうしますと、それを一つ一つちぎって、いま志布志港湾の改定計画というのが港湾審議会の方にもかかってきておるわけであります。さらには石油備蓄基地という問題が出てくる。新大隅開発計画の中にはコンビナート計画というのもあった。そういうばらばらのやつをそれぞれ個別に進めながら一本にしていこう、こういう形で県の方は進めようとしておる。そのことがあの白砂青松の美しい、日本でも有数の美しいところですけれども、その自然が壊される、こういうことで現地の反対も大変根強いものがあるわけです。  そういうばらばらの計画が進められていくということについて、この備蓄基地の問題も実は大きく絡んでくる。もし備蓄基地だけならば雇用の問題も全く出ないわけですね。つまり、備蓄基地になれば石油を入れたまま、天下非常のとき以外は入れているわけですから、そういうものであれば雇用の問題なんというのはちっとも前進しない、こういうことになるわけですね。ですから、そういう方向について、将来ここを石油精製基地などをさらに付随をして進めるということなどは、今日の石油の状況、つまり五百四十万バレル・パー・デーが今日の状況ですが、それをさらに六百三十万バレル・パー・デーに今後持っていくというふうなわずか二、三%の伸びの今日の状況の中で、ここにそういう石油精製基地などをつくるということについて、通産省として検討があるのかどうか。いかがですか。
  400. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先ほど申し上げましたように、これからの問題でございまして、知事さんから御推薦があるかどうかもわかりません。あった場合に、さっき申しましたいろいろの概査を行うわけでございますが、そういう場合には、お話の趣旨も踏まえまして調査を進めたいと思いますが、いまのところでは内定という事実は全然ございません。
  401. 川崎寛治

    ○川崎委員 国定公園の解除の問題が、もし挙がるとすれば出るわけですが、今日環境庁としてはどういう態度なのか、伺いたいと思います。
  402. 藤森昭一

    ○藤森政府委員 お答えを申し上げます。  御指摘の志布志湾における石油備蓄基地等に関しましては、その建設構想につきまして環境庁としては承知をいたしておりませんので、現段階におきまして公的にこれに見解を述べる立場にはございませんことを御了承願いたいと思いますけれども、川崎委員指摘の日南海岸国定公園の志布志湾地域につきましては、大変すぐれた自然環境あるいは自然景観等も残されておるわけでございまして、国定公園といたしましてきわめて重要な地域というふうに認識をいたしております。環境庁といたしましては、国定公園の指定を安易に解除するというような考え方は持っておりません。
  403. 川崎寛治

    ○川崎委員 それを貫いていただきたいと思います。  それでは次に、これは国土庁長官にお尋ねをしたいと思うのでありますが、全国の活動火山対策のために活動火山法の大改正を一昨年やったわけです。これは超党派でなされたわけでありますし、当時私が衆議院の災害対策委員長でございましたから、この法制定については大変皆さんの御協力をいただいたことを感謝しておるわけですが、ただ、この法律ができましたときには、火山性ガスの問題、ガスの発生という問題は出ていなかったのです。今日桜島に、爆発に伴い火山ガスが常時流れておる。濃度の濃いところとそう濃くないところもございますけれども、大変人体への影響並びに農作物への影響というものが大きいわけです。不安も大きいわけです。  国土庁長官が一月の十二日現地を視察していただいたことに感謝をいたします。感謝をいたしますし、またその際長官は大変積極的なことを記者会見で述べておられます。私は大変結構だと思うのです。火山ガスの問題としては、農林水産省の中でも、これは非常にまれな問題として、いま農林水産技術会議の方でも非常に大型の試験研究対象にしてもらっております。ですから、対策がさらに進みますことを期待したいのです。しかし、大変時間がかかるわけですね。それが現地にしますと苦しんでおるわけです。  そこで、長官が記者会見で言われました特別立法を考えたい、こう言われたこと、並びに長官のもとに専門家による諮問機関を設置したい、それで上京後早速やる、こういうふうに記者会見をしておられるわけでありますが、それらの点がどういうふうに進められ取り組まれておるのか、伺いたいと思います。
  404. 園田清充

    ○園田国務大臣 お答えをいたしますが、まず先生からいま質疑の中で、当時の本院の委員長であるということでお話がございましたとおり、実は災害担当省庁として、当時の御苦心からいろいろ承知をいたしておりますし、心から感謝をいたしておるわけでございます。  実は現地における記者会見の中で、十七条、十八条まで細かい御配意をいただいておることも承知をしておりました。もし地名等が間違っていたらお許しをいただきたいと思いますけれども、鳥居が埋まったところで、たしか黒神とかと言ったと思います、そこの中学に参りましたときに、中学の先生と子供さんが、非常に地元の国会議員並びに県当局、県市の関係で御努力願って、こうした空調なり窓の問題、いろいろ施設整備について御協力をいただいて感謝をしておるという言葉もございました。  ただ、その中で私自体実は熊本の出身だけに阿蘇のことでよく承知はいたしておりますけれども、桜島の場合に実は特異な感じがいたしましたのは、あれだけの噴火口から近い距離に住まっている方がほかの火山地帯から見ますと非常に少ない。ところが子供さん方の話の中で、長い時間亜硫酸ガスがいまのように風の向きで来ると、のどの痛みを感ずる。先生の話では、軽症の場合にはうがいで治ります、ところが中には二、三日頭痛がして学校を休む生徒がまれにはありますというお話を承って、これは御苦心いただいた法律の中で、果たしてこの人たちの補償、救助というような問題まで手が回るかどうかというようなことを考えて、現行法の中で処理できるならば、ひとつ現行法の中で処理したいが、及ばなければ特別立法の御配意もまた願わなきゃならぬだろうという記者会見をいたしました。そして、いまの問題について私なりの考え方を申し述べたのですが、記者の方からは、なにを見てみますと、いまのように地元の要請にこたえろということで、県自体も同じような要求が出ておりますので、せっかく当時の委員長として御努力いただいたので、もし足らない点があるならば今後とも御協力いただきたい、こう思いますので、ひとつどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。
  405. 川崎寛治

    ○川崎委員 いま長官が同じ火山地帯の出身として、大変共感を持ってこの問題をお考えいただいたことに感謝をいたします。  確かに、ガスの問題は時間のかかる問題でもありますし、また現に農作物で農民の被害も大きいわけでありますから、これらの問題は今後ぜひさらに検討願いたい、そういうふうに思います。よろしくお願いいたします。
  406. 園田清充

    ○園田国務大臣 一つだけいまちょっと落としましたけれども、いつ専門家の会議の設定ができるのかということでございますけれども、いま大学の先生お願いをして半ば御了承いただいた向きもございますので、ひとつ年度早々には専門家によるいまの問題の取り組みに入らしていただきたい、こう思っておりますので、よろしくどうぞ。
  407. 川崎寛治

    ○川崎委員 県の農業試験場も取り組んでおりますが、ぜひ長官のもとの直属のそういう諮問機関で大学の先生方もともに取り組んでいただきますことをお願いしたい、こう思います。  私は、一つ大蔵大臣にお尋ねしますが、それは監査証明の問題です。先ほど商法改正の問題とか公認会計士の問題とかいろいろ出ました。そこで、法律の食い違いからくる問題というのを私は一つ指摘をして、これについての見解を伺いたいと思うのです。  それは、証券取引法によりますと、証券取引法の関係法令として監査証明省令というのがあります。この監査の証明の仕方というのは、その監査証明省令の第四条でなされておる。つまり監査のやり方というのは、監査証明省令の第四条で規定をしているわけです。ところが、公認会計士法の三十条二項——証券局長いいですか、まず開いておいてくださいね。三十条の二項には「公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明した場合には、大蔵大臣は、戒告又は一年以内の業務の停止の処分をすることができる。」こういうふうになっているのです。監査証明省令が監査の基準になっている一方、公認会計士法の方にはこういうふうな規定があるわけですね。これと監査証明省令の四条というのは合わないのですよ。つまりこれではカバーできないのです。  そこで証券局長にお尋ねしますけれども、この公認会計士法の三十条二項の「重大な虚偽、錯誤又は脱漏」そういうものを摘出するためにどういう監査基準があるか、それを示していただきたいと思います。
  408. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 公認会計士の監査につきましては、企業会計原則が基本でございます。これを基本といたしまして、財務諸表の作成手続とかそういったものが定められております。これによりまして適正な監査が行われているかどうかということを審査いたしまして、もし虚偽または脱漏その他非違がございました場合には公認会計士に対して処分をする、こういうたてまえになっております。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  409. 川崎寛治

    ○川崎委員 ですから、虚偽と脱漏の方ははっきりするのですよ。では錯誤の基準は何か。その錯誤というものを引っ張り出してくる基準は何か、それを示してほしいのです。
  410. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 ちょっと突然のお尋ねでございますので、調査いたしまして後ほど御報告申し上げます。
  411. 川崎寛治

    ○川崎委員 これはその監査基準がないのですよ。ですから、この証取法の方の監査のやり方を決めておる、つまり企業会計原則があるのだ、こういうお答えだが、重大なる錯誤とあるのだけれども、それの監査基準は実はないのですよ。そうしますと、やはり監査基準の検討し直しということが、この二つの法律の間にある矛盾からまいりますと必要じゃないか、こう思うのです。これを見直すかどうか、いかがですか。
  412. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 非常に大事な御示唆と考えておりますので、十分検討させていただきます。
  413. 川崎寛治

    ○川崎委員 それじゃ、これはぜひそういうことで検討し直すということについて、大蔵大臣いかがですか。
  414. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的な問題は私には十分理解できておりませんが、証券局長からお答えいたしましたように、詳しく検討をいたします。
  415. 川崎寛治

    ○川崎委員 終わります。(拍手)
  416. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  次に、岡本富夫君。
  417. 岡本富夫

    ○岡本委員 建設大臣が来る前に、最初に法務大臣に聞いておきますが、配偶者に対するところの相続税について、配偶者が取得する遺産が総遺産の三分の一以内であれば配偶者には相続税の課税をしないということに現在なっております。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、財産形成上、妻の役割りというものが非常に大きく認められて、これに対するところの民法の改正を現在法務省は考えておるということですが、法務大臣から、民法九百条の改正について、本国会に出すのか、またその内容について、まずお聞きしたいと思うのです。
  418. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのお話の件でありますが、配偶者の相続分の引き上げ等に関する民法の改正につきましては、来る二月二十五日の法制審議会におきまして最終的な審議が行われることになっております。それに基づきました答申がなされる見通しでございますので、速やかに改正法律案をこの国会提出したいと考えておりますが、主たる内容は民事局長から御報告いたします。
  419. 貞家克己

    貞家政府委員 ただいま法務大臣から答えがありましたように、近々のうちに法制審議会から民法改正に関する答申がいただけるものと期待しているわけでございます。  答申がまだでございますから、法律案の具体的内容につきまして確定的なことを申し上げるまでには至りませんけれども、その骨子を申しますと、第一点は、ただいま御指摘がありましたように、配偶者の相続分の引き上げという点でございます。それから代襲相続の点でございますが、兄弟姉妹が相続人となるべき場合の代襲相続人の範囲は、兄弟姉妹の子、すなわちおい、めいまでに限るという点、第三には、いわゆる寄与分と言われるものでございまして、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人に対しては、遺産分割の際にその寄与に相当する財産を取得させるということによりまして、遺産分割の際における相続人間の公平を図る、以上三点が主たる改正点でございます。
  420. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、いまの改正は、聞くところによると現在は配偶者が三分の一ということになっておりますけれども、これを二分の一に引き上げるように改正ができるんじゃないか、こう考えるのですが、この点いかがですか。
  421. 貞家克己

    貞家政府委員 仰せのとおりでございまして、詳しく申し上げますと、現行法におきましては、配偶者は常に相続人となるわけでありまして、子でありますとかあるいは直系尊属など、ほかの相続人と共同して相続人となるというたてまえになっておるわけでございます。そしてその相続分、つまり分け前でございますが、それは現行法によりますと、子とともに相続するときは三分の一、直系尊属とともに相続する場合には二分の一、兄弟姉妹とともに相続いたします場合には三分の二というふうに定められております。それを、今度の改正試案におきましては、配偶者が他の相続人と共同相続する場合に、子とともに相続する場合には二分の一、つまり従来の三分の一が二分の一になる。それから直系尊属とともに相続するときには三分の二、兄弟姉妹とともに相続するときには四分の三というぐあいに、それぞれ引き上げるということが改正の内容になっております。
  422. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、大蔵大臣にお聞きいたしますけれども、これは御承知だと思いますが、五十年に、配偶者が取得する遺産が総遺産の三分の一に、民法の改正とともに相続税が変わったわけですが、これは当を得たと思いますけれども、今度民法の改正がありますと、やはり妻の相続税が二分の一に引き上げられるようになるのか、この改正が行われるのか、ひとつ率直に伺いたいと思うのです。
  423. 竹下登

    竹下国務大臣 きょう法務省から御答弁がございましたように、われわれは法制審議会で審議がされておりますので、その審議会の審議の模様を見きわめつつ、状況に応じまして今度は税制調査会にわれわれの方としては諮らなければならぬわけでございます。ところが、いま承っておりますと、その答申も間近いというふうに御答弁がございましたので、税制調査会にお諮りをした上で検討していただいて、その上で結論を出す、こういう手順になりますので、その議を経ていない前に私から確定的なことを申し上げる立場にはないということを御了承いただきたいと思います。
  424. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体、審議会だとかあるいは税制調査会だとか、いろんな試案をちゃんと役所でつくって、そしてあとは、おざなりとは言いませんけれども、それに近く、大体大蔵省なら大蔵省の意向に従って出てくるのがいままでのあれで、よく隠れみのと言いますけれども、その試案にきちんと載っていないとこれはお話にならないわけですが、なるほど税制調査会の意見が出てこないと確定的なことは言えない、こういうのはよくわかりますけれども、時間がありませんから率直に伺いたいのは、大臣の感触として、民法が改正になると、やはりこういった税制の改正もするのがあたりまえである、こう考えてよろしいですか。
  425. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ただいま大臣からも御答弁ございましたように、税制調査会の御審議を経た上で成案を得て改正案を取りまとめたいと思うわけでございますが、妻の配偶者控除、妻または夫でございますが、いかほどにすべきかということにつきましては、御承知のように相続税はいろいろ揺れ動いてきておりまして、昭和五十年以降現在の考え方になっておるわけでございます。五十年の税制調査会の答申で、ただいまの三分の一または四千万円いずれか多い方というふうに決まりました際の税制調査会のお考えは、配偶者の負担軽減問題、かねてからの懸案でありましたが、それを解決するために同一世代間の財産移転であることを考慮してなさったわけであります。そういう経緯もございますが、相続税と申しますのは、かたいことで恐縮でございますけれども、富の集中を抑制してその再分配を図るという一つの使命もございます。ただいま申し上げましたように、同一世代間の財産移転についてどうするかという問題もございます。両方を取り合わせて税制調査会の御審議をお願いいたしたい、ただいまさように考えております。
  426. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうももう一つはっきりしないな。すでにこれは、現在の憲法になってから、いままでの明治憲法の時代のように夫唱婦随でなくなった。しかも同一世代間で、ともに苦労をして夫婦間で財産形成をしたものでありますから、当然その半分は妻のものである、こういう考え方がいま世の中に浸透しておるわけです。したがって、その考え方から民法の改正も行われるのではないかと思うわけですから、私はこの相続税の軽減もやはりそれに合わせてやるべきである、こういうことを主張いたしておきますけれども、大臣、若干政治的な配慮からひとつ答弁をいただきたい。官僚の答弁はいかぬ、こう思うのですが、どうですか、あなたの感触。
  427. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり役所でございますので、その手続については正確なことを申し上げなければいかぬ。岡本さん、いま感触を言え、こうおっしゃったのでございますが、岡本委員の御主張は私どもがよく理解のできるところであるという答弁でもって御了承をいただきたいと思います。
  428. 岡本富夫

    ○岡本委員 まあそのくらいにしておきましょう。そうすると、大体民法の改正と同じような状態にするのが理解できる、こういうように踏んでよろしゅうございますね。  そこで次には、この相続税の納入方法につきまして、率直に言うと、金納で申告をしてありますと物納がきかない、物納で申告してありますと金納がきく、こういう法律になっておる。先般、これはまだ四十四、五歳の方でございましたけれども、御主人が急に亡くなった、そしてどうしていいかわからない。税務署に相談に行くと、この税理士さんに聞きなさいということで、その税理士さんもこれがよかろうということで金納で申告してしまった。ところが、財産はありますけれどもその財産はほとんど全部貸してしまっている。昔からの家賃ですから三千円とか五千円とか安い。だから買ってくれない。買ってくれないものですから、約二億ほどでございましたけれども、売れない。売れないでおくとどんどん金利がついてくる。そうして大変な騒ぎで、自殺寸前というようなところを駆け込んできたわけでありますけれども、この問題を税務署に話ししましても現在の税法ではどうしようもない、こういうような大変悲惨な姿を見たわけでありますので、金納で申告してありましても、どうしようもない特例として物納を許してあげる、こういうような改正ができないものだろうか。物納で申告してあるものは金納できるわけですから、この点についてひとつ御意見を承っておきたいと思うのです。
  429. 高橋元

    高橋(元)政府委員 御案内のとおり相続税法の四十一条の規定がございまして、それは相続税額を金銭で納付することを困難とする事由がある場合に、その納付を困難とする金額を限度として税務署長が物納を許可をいたします。その許可の時点は相続税の申告時までというのがたてまえでございます。これの原因と申しますか、その基礎となっておりますのは、結局租税と申しますのは金納が大原則ということから派生してきておると思うわけでございますが、たまたま相続税が財産税で、しかも課税される方にとっては相当な税負担になる。こういうことにかんがみまして、相続財産を課税評価額で物納をするという特例を開いたものでございます。したがって、物納はきわめて例外的な制度であるというふうに観念をいたしておりますので、その利用につきましても当然制約を受けるということを御了承いただきたいと思います。  ただいまお示しのケースは、延納の許可を受けた後に延納中納付困難になる、こういうことであろうと思います。いまお示しの具体的なケースは詳細承知しておりませんけれども、当初相続財産を換金して相続税を納めていただく、こういうおつもりであったのに途中で売れなかったというケース、または延納中に相続財産が値下がりをしたので換金するのをやめたというケース、こういう場合に延納を取り消して物納にいたしたいというお申し出がある場合が一番多いかと思うわけでございますけれども、冒頭に申し上げましたように、延納か物納か御判断になりますのは相続税の申告時でございます。相続税の申告時までに将来の売却見込みなどを考えて延納を選択なさったわけでございますから、いま私が類型的に申し上げたケースに当たります場合には、結果的に値下がりとか売れなくなった事情というものが発生して売却できなかったということが出てまいるわけでございますから、延納か物納か選択的にいつまででもできるという状態をつくっておくのは望ましいことではない。これは他の納税者との権衡という点から、一般的にいつまでも選択を認めておくというのは望ましいことではないと思いますし、納税者の見込み違いや値下がりによる損失を国庫に転嫁するということもそのままでは妥当な方法だというふうに考えられませんけれども、お示しのように具体的にはいろいろむずかしい場合もあろうかと思います。どういうふうにやってまいったらよろしいか、私どもも時間をかけて、と申しましても決してだらだらやるつもりはございませんけれども、詳細に掘り下げて勉強はしてまいりたいというふうに考えております。
  430. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、税務署で話がつかなくて、国税庁長官のところへ一緒に連れていってあげたわけですけれども、この点は、いまおっしゃったようにひとつ検討していただきたいと思うのです。しかも申告期間が六カ月。中心の御主人が亡くなられてから六カ月ぐらいはもうがたがたすぐたってしまう。そうしてどうしようもなくて税務署に相談すると、じゃこの税理士さんに相談しなさい、その税理士さんはよかれということで金納にしたということで大変な騒ぎが起こったわけです。したがいまして、いまこの点についてはもう一度検討する、勉強するということですから、これは了としておきましょう。  建設大臣が見えましたので、建設大臣何かちょっと用事があるそうですので、先に建設大臣に質問いたしますけれども、御承知のように列島改造ブームによって都市近郊の山を宅地開発した、そして住宅団地というものが多量に建設された。そしてそこに移り住んだわけでありますけれども、住宅は建ったけれども交通問題、これが放置されております。したがいまして、マイカーで通勤される人が非常にふえている。しかし、そこからその都市に入ってくる道路は地方道路で非常に狭い。その拡張問題が非常に急務になっておることは御承知だと思うのです。ところが、御承知のように地方財政というものが非常に貧困であるがゆえに県道の拡幅もできない。日増しに国民の不満がつのっておるのが現在の姿であります。したがいまして、全国的にこのような地方道を国道に昇格さして、そしてそういうものを解決していくというのが私は建設省の急務だと思いますが、建設大臣の御所見を承りたい。
  431. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答え申し上げます。  道路予算は御承知のとおりでございまして、ことしは非常に厳しい予算編成になっておりますが、先生お話しのような住宅が建っていくというようなところのいわゆる生活道路は、その中におきましてもある程度重点的にこれは進めておるつもりでございます。  先生お話しの国道昇格の問題につきましては、経済社会情勢の変化に伴いまして、輸送の需要と自動車交通の増大あるいは土地利用の変化等に対処しまして、国土の有効利用を図り、流通の合理化を図ってまいる、もう一つは、国民生活環境の改善に寄与する、こういうような意味におきまして、近代的な幹線道路網体系の確立をめどに、道路網の再編成の一環として国道昇格は実施をしておるわけでございます。最近の国道昇格はおおむね五カ年間ごとに実施をしておりまして、ちょうどことしはその年に当たるわけでございますが、前回は昭和四十九年の十一月に約五千九百キロメートルにつきまして実施をしておるわけでございます。ちょうどオイルショックがございまして、その後行われました総需要抑制策等の影響もございまして、道路整備というものが一時非常に停滞をいたしました。そういう関係でなお整備を要する相当な事業量が残されているように思われるわけでございます。  したがって、すでに昇格をしております国道の整備の促進にまず努めておるところでございますけれども、しかしまた一面、近年におきまする経済社会の変化に即応いたしまして、幹線道路網の整備を、より適正な道路網体系のもとに進めていくこともきわめて重要な課題であると考えております。そういう意味で、国道網の再編成につきましては、高速自動車国道とあわせまして、全国的な幹線道路網を形成する国道網のあり方、あるいは交通需要の動向、道路整備の見通し等につきまして総合的に勘案しつつ調査検討を進め、現国道の整備のあり方をも含めまして、国道昇格につきましては私といたしましては前向きに対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  432. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで率直に、大臣もこれは御存じだと思いますが、大阪とそれから兵庫県の間にあります川西、それから猪名川を通って篠山線、これはあなたもよく参られるところですが、この川西というところは御承知のように三万ぐらいの人口だった。それが最近こういうことで二十万都市になってきた。非常に交通ラッシュで通勤バスも動かない。したがって、国道に昇格して、猪名川の上にバイパスをつけるとか、こういうことをやってもらいたいというようなことで、私は実は建設委員会で長谷川さんが建設大臣の時分に話をしまして、約一千万の調査費をつけてもうずいぶんになるわけですが、これがそのままになっている。この点と、それからそれに連動します国道百七十六号線、大阪の池田から西宮間のこの線、これがおくれておる。これをひとつ率直に検討してやるということをお答えいただいて、あなた、建設委員会に行ってもらいますから、いかがですか。
  433. 山根孟

    ○山根政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘の尼崎−池田線、川西−篠山線の問題でございます。まず、尼崎−池田線につきましては、実はすでに二車線の改良舗装済みとなっておりますが、御指摘のように交通需要が大変ふえてまいりまして、このため都市計画決定に基づきまして、基本的には四車線とする二次改築を鋭意実施中でございます。一方主要地方道の川西−篠山線につきましては、鋭意整備の促進を図っておりまして、五十五年度中には一応二車線の改良舗装を概成することにいたしております。  国道昇格の問題でございますが、ただいま大臣が申し上げましたように、国道網再編成の一環といたしまして今後の検討課題にいたしたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  434. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間がなくなるから、大臣、いま私が提案しましたことはひとつすぐに検討して、もうずいぶん前に提案しておるわけですからちゃんとやってもらいたい、これをひとつ要望しておきます。あなた、最後にひとつ……。
  435. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 ただいま局長が御答弁を申し上げたようでございますが、先ほど申しましたように、国道昇格は前向きに取り組みたいと思っておりますので、具体的にはひとつ十分検討してまいりたい、かように考えております。
  436. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に本論に入ります。  御承知のようにKDD問題、すでに新聞紙上でも毎日問題になっておる。司法当局の手も入って、そして現在は上層部にまで波及しようというような状態になっておる。  このKDDの取り締まり官庁は郵政省、郵政大臣。ところが郵政大臣は、先般の矢野書記長の質問に対して監督権限が非常に未熟ではっきりした監督ができてなかったというような意見もありましたが、しからばKDDの法案の改正、これが難上に上っているようでありますけれども、具体的にはどういう改正案を用意しておるのか、また今国会にそれを提出するのか、その内容を簡単に御説明願いたい。
  437. 大西正男

    大西国務大臣 お答えいたします。  お尋ねの件につきましては、郵政省の監督権限を強化する、こういうことで法の改正について、その案をいま鋭意今国会提出すべく作業並びに検討を進めさせておるところでございます。  内容ということでございますが、一つには、いま申し上げましたように、郵政大臣の認可権限といたしまして収支予算、これはいま認可の対象になっておりませんが、これを認可の対象にするといったようなことと、それからKDDの会計を会計検査院の検査対象にしよう、こういうことでいま申し上げましたようにその検討並びに作業を進めさせておるところでございます。
  438. 岡本富夫

    ○岡本委員 どんないい法律をつくりましても、結局、巷間伝えられているように当局とKDDとの間に癒着があっては意味がないわけです。  そこで、現在のKDD会社法の第十五条第一項には「郵政大臣は、会社に対し、公共の福祉を確保するため、その業務に関し必要な命令をすることができる。」こういうように規定しておるわけでありますが、この条項に基づいてどういう命令を発動したのか。また、この事件が発覚してからは何の命令も発動していない、こういうふうに考えるわけですが、いかがですか。
  439. 大西正男

    大西国務大臣 お答えいたします。  いま御指摘の業務に関する命令と申しますのは、従来郵政省における解釈としては、国際電信電話業務自体に関する、本体に関する命令ということに解釈されてきておるわけでございまして、私が就任いたしまして以来、それに関する命令は出しておりません。
  440. 岡本富夫

    ○岡本委員 昨年の十一月でしたか、KDDが九月の中間決算を申請しておりますね。そして、郵政相の認可を求めているわけでありますけれども、この認可はいたしましたか。いかがですか。
  441. 寺島角夫

    ○寺島政府委員 お答えいたします。  ただいまお尋ねのありました件は、昨年の十一月二十二日にKDDより申請がございました中間配当の実施に関します申請と考えておるわけでございまして、御案内のとおり、現在のKDD法におきましては利益金の処分が認可の対象となっておるわけでございまして、この条項に基づきましての株主への中間配当の実施に関する認可申請でございましたので、内容審査の上、妥当と認めまして、十一月三十日に認可をいたした次第でございます。
  442. 岡本富夫

    ○岡本委員 その利益が妥当であるかどうかということは、やはり決算書を見て調査をしなければわからない。出てきた利益をどこへやるか、それなら子供と一緒じゃないですか。しかも、いまの政府の方針としては、行政管理庁の長官が行政管理の強化について、それはその主務官庁が監督するのが筋だ、こういうように明らかに言っているわけです。ところが、ただ出てきた利益がどこへ行った、行政指導は全然やらないことになっているのじゃないですか。行政指導はできないのですか、大臣
  443. 大西正男

    大西国務大臣 お答えをいたします。  国際電信電話株式会社法によりまして郵政大臣に与えられております権限というものは、具体的に一つ一つ定められておるわけでございます。ですから、包括的な監督権といいますか、そういうふうな法の定め方に現在なっておりません。でございますので、その具体的に定められておる範囲内におきましては監督をいたしておるわけでございます。
  444. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産省は、石油業法というのがあるのですが、石油業法から外れて、要するにこれも普通の石油会社ですね、本当の民間会社に対して、公共の福祉のために、要するに物価が上がらないようにいろいろと行政指導をしておる。このKDDも、こんな大きな交際費、後で話しますけれどもめちゃくちゃな乱脈、これに対して何にもできない。何にもできないということは、KDDが恐ろしいのじゃないですか、取り締まり官庁でなくなっているのじゃないですか、そういうような国民疑惑が非常にあるわけです。普通の官庁は法律を超えて行政指導をやっておる。ところが、郵政省だけはこの法令を盾にとって一口も物を言えないのですか、いかがですか。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  445. 大西正男

    大西国務大臣 私どもKDDを別にこわいとも思っておりませんし、向こう——どういう意味で先生そういうお言葉をお使いになったのかは存じませんけれども、こわいなどということはもちろん考えておりません。ですから、こういう問題が起こったことにつきましては、郵政省としても、監督の過去におけるあり方について非常に反省をしておるわけでございます。そこで、そういうあり方を検討いたしました結果、法律の改正まで進むべきではないかということで、先ほど申し上げましたような内容について作業、検討を進めておるわけでございます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  それから、KDDの事件が発生をいたしましてから、私は当時まだ就任をしておりませんけれども、しかしそういうことが起こり得るとは、恐らくKDDを信頼しておったと思いますので、思いもよらなかったことと思いますけれども、残念ながらそういう忌まわしい事件が発生をしたわけでありまして、これに対して、KDDに対しては自主的にこれが刷新について十分に努力をするようにということは全般的に指導いたしておるわけであります。KDDにおきましては、御承知のように刷新委員会をつくりまして、事案そのものの究明と同時に、KDD内部における組織とかあるいは経営の姿勢とか、そういったことについて刷新に努力をしてきておる、こういうことでございます。
  446. 岡本富夫

    ○岡本委員 要するに、郵政省としては何にもできないということですよ、いまのあなたのを聞くと。KDD社内でそういうことをやっているだけだ。  そこで、昨年の十二月に、わが党の委員林孝矩君が衆議院の決算委員会で、この板野さん外三名の方の退職金問題について質問をいたしております。そして、これは閣議決定をしたよりも非常に高額である、それに対して行政指導を行うかということに対して、いまここにいらっしゃる伊東官房長官は、行政指導をいたします、こういうふうに言っているわけです。行政指導ができるわけですよ。ところが、あなたの方は全然やらない。そこでこの点は非常に私は不満とするわけであります。  そこで今度は総会、きょうのテレビを見ましても非常に荒れておりますね。この総会に板野さんら三人の退職慰労金をちゃんとかけておりますか、かけていないか。これはかけていないのです。ところが、去年の方針では、ことしの二月の総会にこの退職慰労金をかけるということになっていた。なぜかけなかったのか、この点について一言。
  447. 大西正男

    大西国務大臣 KDDの退職金の問題につきましては、先ほど御指摘のありました閣議決定の実施をされましたのは昭和五十三年四月以降でございます。その昭和五十三年四月以降今日に至りますまで、現実にKDDで役員に対する退職金を支払ったことは全くございません。  そこで、この前の御指摘もございましたが、そういうことでKDD内における退職金に関する規程については、この閣議決定に従ってその規程を改めるべきである、こういうことでその点は指導いたしまして、いま改まっておるわけでございますが、その改まった規程に基づいても、退職金を支払った例は今日までまだございません。  それから、きょうの臨時総会は役員の選任の件でございますから、退職金等その他の問題はこの臨時株主総会では議題になっておらないわけでございます。
  448. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう時間がありませんからはしょりますが、板野さんが退職してからもう四カ月、これはまだ決まっていないのです。これは異例なことじゃないですか。ということは、板野さんが何か悪いことをしたのですか。何か悪いことをしたから出ていないのか、非常に異例なことだ、こういうように考えます。  そこで、もう時間がありませんが、せっかく公安委員長に来てもらっておるわけですからお尋ねしますが、山口さん、保田さんが自殺された。その遺書の中にも、私たちは上層部の方から指示されていろいろやったのだ、こういうことが出ておるわけです。だから、結局今後の調査については、そこの上層部の方を追及していかないと事件の解明ができない、こういうように考えるわけでありますけれども、上層部の方に波及するのかどうか、これまた常識ですけれども、その点ひとつお伺いしておきたい。
  449. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御質問は、上層部まで及ぶのか及ばぬのか、こういう御質問だと思いますが、御承知のとおり捜査は一つずつ証拠を積み上げていくわけですから、いまの段階捜査中でございますので、そこまで行くとも行かぬともこれはちょっと申し上げかねるわけでございます。ただ、この事件は国民の関心の非常に高い事件でございますし、国民的な疑惑が那辺にありやというようなことは捜査当局として十分踏まえた上でやっておるものと、私自身はさように期待をいたしておるようなわけでございます。ただ途中で、御本人はもちろんのこと、御家族の方には本当にお気の毒だと思います、警察も残念に思っておりますが、二人自殺者を出すといったような事故があり、ことに保田さんはこの事件解明のためには重要な参考人であったと私は思います。それだけに、あの方がお亡くなりになったということで捜査に支障がなかったとは言えない。これは捜査に支障は出てきておったものと私は判断をするわけでございます。  同時にまた、この事件は大変複雑な事件でございますので、皆様方のお立場でお考えになれば、少々もたもたしておるではないか、長くかかり過ぎる、こういう御疑問は当然あると思います。しかし、そこらも踏まえながら、私がいま報告を聞いている範囲では着実な捜査が進んでおる。しかもそれは単に関税法違反といったような範囲にとどまらなくて、幅の広い捜査をいたしておる、かように考えておりまするので、私としては事件の全容を警視庁当局は検察庁とも十分協力をしながら解明をしてくれるもの、かように考えております。
  450. 岡本富夫

    ○岡本委員 後に関連の市川委員がおりますので、最後に国税庁長官、この事件では、税法上の交際費、それから郵政省に申請している交際費、このKDDの交際費に非常に大きな相違があって、これを見ますと約五十数億のむだ遣いをしておるというように見えるわけでありますけれども、いまのところは書類が捜査当局の方に入っているからいたし方ないと思いますけれども、それが戻った時点においてこのKDDの税務上の再捜査をおやりになる決意があるか、これをひとつ承っておきたいと思います。
  451. 磯邊律男

    磯邊政府委員 ただいまの御指摘のように、ただいま司法当局の方で捜査中であるやに承っておりますので、税務上の調査はいま差し控えております。しかし、新聞紙上その他でいろいろなことが伝えられておりますから、司法上の調査がある段階に参りまして税務上の調査をやってもいい時期に参りましたら、国税当局の方といたしましても再調査をいたしまして税務上の適正な処理をさせていただきたい、かように考えております。
  452. 岡本富夫

    ○岡本委員 市川君に譲ります。
  453. 田村元

    田村委員長 この際、市川君より関連質疑の申し出がありますので、岡本君の持ち時間の範囲内でこれを許します。市川雄一君。
  454. 市川雄一

    市川委員 私は、通産省と農林水産省に関連いたしまして、小豆、インゲン、ソラマメ、エンドウ、この雑豆をIQ適用に指定していることによって起きてきました不合理というか矛盾といいますか、そういうことを中心にお伺いしたいと思います。  まず具体的な質問に入る前に、通産省並びに農林水産省は公平な立場で、この競争経済の中で弱い立場にある中小企業やあるいは消費者の立場を擁護する、守る、こういう確固たる行政の姿勢を持っていらっしゃるのかどうか、この点を通産大臣あるいは農林水産大臣にまずお伺いしたいと思います。
  455. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、農民を守り、また同時にあわせて消費者に理解をされる農業をやっていかなければならないと考えております。
  456. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私どもも同様でありまして、消費者あるいは監督している諸団体等に関しまして公正な扱いをしていきたいという考えであります。
  457. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いいたしますが、前回、昨年二月二十一日の予算委員会で同じ問題を私はこの場で取り上げました。雑豆にIQを適用している矛盾、不合理性を具体的に指摘をいたしました。農林省、通産省のお答えは、IQ物資に指定した理由としては生産者の保護、特に私がこれから問題にしようと思っておりますのは小豆とインゲンでございますが、生産者の保護といいますと北海道が国産の主産地ですから北海道の農家を保護する、もう一つは価格安定に寄与するんだ、こういう御説明をされました。もちろん生産者の保護に私たちは異論があるわけではありません。ただし、価格安定のためとおっしゃっておりますが、実際これが価格安定にはなっておりませんでして、高値安定、商社の過剰利益を構造的に保証する制度になっている。  一例を挙げますと、五十二豆年度で輸入小豆だけを見ましても百一億六千四百万の利益を四十五商社で上げているわけです。この利益率は六〇%と見ておりますが、これから指摘する利益率はもっと上回っております。低目に見まして、小豆だけで五十二豆年度で百一億六千四百万、五十四年度では小豆だけで二十六億三千八百万、インゲンで十六億七千四百四十万、小豆、インゲン合計で四十三億千二百万という巨額の利益を上げております。こういう過剰利益を構造的に保証をしている。この過剰利益の実態が、昨年の予算委員会で取り上げて以来、何ら改善、是正の策が講ぜられていない、こう私は認識しております。しかもこのIQ適用によりまして事実上通産省、農林省が四十五社の商社からFOB価格の二〇%に当たる課徴金を召し上げている。これも年間五十数億という非常に巨額なお金になりますが、このお金を利用して通産省、農林省のお役人の天下り先をおつくりになっていらっしゃる、こういう実態について昨年取り上げました。通産大臣も農林大臣も生産者の保護は必要だけれども、消費者の利益を無視することはまずい、あるいは生産者保護の美名に隠れて消費者の立場が守られないことはよくない、是正いたします、近代化、合理化、改善をいたします、こう答弁なさっていらっしゃったわけでございますが、一年間通産省としてどういう具体的な改善の努力をされたのか、答えは簡潔に、具体的にお答えいただきたいと思います。
  458. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 担当局長から詳しく説明をさせます。
  459. 花岡宗助

    ○花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  昨年二月のこの予算委員会におきます市川先生の御質問を受けまして、その後難豆の輸入割り当てに関しましては五十四年度上期から次のような改善措置を行っております。第一には、従来不公表にいたしておりました輸入割り出て枠について公表いたすことにいたしました。  二番目には、割り当て当事者から輸入価格、国内販売価格等に関します報告を徴収することにいたしまして、輸入雑豆の価格、流通の実態把握に努め、これを国内の行政所管の農林水産省の方にも連絡をいたすということをいたしております。  なお、需要者割り当ての問題につきましては、需要業界を所管いたします農林水産省において目下検討していただいておると聞いております。
  460. 市川雄一

    市川委員 異論はございますが、時間がありませんので、もっと大事な核心に早く入りたいと思います。  過剰利益はいろいろそういう改善策をされたというのですが、商社の過剰利益は消えてない。これは資料ではっきりしているんです。  参考までに申し上げますと、五十四年十月十五日の取引、これは実際は一月、二月積みですが、天津小豆で約五一・四%の利益率を上げております。それから五十四年十二月二十五日の取引で台湾小豆が一一四・七%の利益率、五十五年二月五日、竹小豆、これはインゲンでございますが、この取引で一〇九%の利益率でございます。五十五年二月七日の台湾小豆七四・八五%、五十五年二月十四日の天津小豆で九四・七%、五十五年二月十四日の唐山小豆で九一・七%。これは実際に取引のあったものについて調査したのですが、FOB価格に対して軒並み一〇〇%だとか、七四%だとか、九四%だとか、こういう過剰利益の実態が何ら改善されていないじゃありませんか、何も手が打たれてないじゃありませんか。  そこでお伺いいたしますが、結局、改善した改善したとおっしゃいますが、ただ形式上のことをおやりになっただけの話であって、通産省、農林省に本気で四十五社の商社の過剰利益をなくそうというお考えがないのですよ。ないから小手先でごまかしていらっしゃる。  その一例を申し上げますと、現在輸入商社は四十五社に特定されておる。新規参入ができない。法的根拠は別にない。しかし上位五社で小豆なら小豆、雑豆の外貨割り当ての五一・七七%のシェアを独占している。上位八社で六二・三六%、これだけのシェアを独占している。  小豆は、御承知かと思いますが、大体五月に作付して、十月ごろにできまして、十一月に市場に出回ってくる、商品化される。本来農林省では需給推算をなさっている。それは国内の消費見込みに対して国産の小豆だけでは不足が生まれる。ですから、消費見込みに対して生産予想と在庫量を足して不足したものを輸入する、そして需給バランスをとることによって生産者の保護と価格を安定させよう、こういう御趣旨だと思うのです。ところが、これがそういうふうには働いていない。商社はこの国産の品物が出回ってくるころ、たとえば国内産を大量に買い占める、あるいは輸入の時期をずらす。そうなりますと当然国内の市場では小豆が品薄状態になります。そして中国や台湾ではどうなるかといいますと、一番購買力を持った上位五社が買わないわけですから、これは自由化しておりませんから、だれにでも売るわけにいかない。買ってもらいたい一番シェアを持っている人が買わないわけですから、小豆はだぶつく。国内では高値で売り手市場、外国では安値で買い手市場、この瞬間をとらえて商社は先物売買をやるわけです。そして先物売買ですから、安い中国の小豆と台湾の小豆を買って、それを先物価格でいま立っている相場で問屋なり何なりに売りつけちゃう。リスクは負わない。過剰利益が構造的に保証される。これを可能にしているのがこのIQ四カ月、IL六カ月、十カ月間の幅がある。輸入時期をずらすか国内産を買いつけるかどちらかをやる、あるいは両方一緒にやる、こういうことが可能なわけです。本来この小豆、インゲンというのは利権物資だということは通産省も農林省も百も御承知だと思うのですよ。だからこそIQに指定されて、しかも二〇%の課徴金をお取りになっていらっしゃるわけですから、こういう運用面でもっと価格安定という目的にかなうようなしっかりしたチェックをなさればいい。それをこれからなさいますか。通産省にまずお伺いしたい。どうですか。
  461. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 その決心と申しますか、と申しますよりも、どうすればよろしいかという問題の方が私はむしろ御質問の趣旨じゃなかろうかという感じがいたしますので、一番私の気づくところでは、需要者割り当てについて、雑豆の需要業界を所管する農林水産大臣、農林水産省で目下需要者割り当てを検討しているそうでございますから、合理的な需要者割り当ての仕組みが可能であれば、通産省といたしましてもその導入につき前向きに検討いたしたい、こういうふうに考えてございます。
  462. 市川雄一

    市川委員 需割りのことをお聞きしているわけじゃないのです。それはお聞きしたいと思っていたのですが、終わりの方でお聞きしようと思っていたことなんです。私が申し上げているのは運用を、商社にそういう時間差商法を許さない、運用をチェックしなさいということですよ。  たとえば農林省と通産省が考えていることは、国産の小豆が足らない、供給が不足する、供給が不足すれば当然値が上がる、価格安定のためには需給のバランスをとらなければならない、そのためには足らない分を外国から輸入しよう、こういうことでしょう。需給をバランスさせて生産者の保護と価格を安定させよう。ところが、これを商社が時間差商法で輸入時期をずらす、そうなれば当然国内産が少ないのですから値が上がる。さっき言った国内では売り手市場、外国では買い手市場という結果が生まれて、過剰利益が生まれてくる。この物資はだれでもが自由には買えないわけですから。それだけ特権を与えているわけでしょう。利権物資で、四十五社の商社しか輸入してはいけませんよ、外貨割り当てですよ。それだけ特権を与えていらっしゃるんだから、そこから先を野放しになさらなければいいのですよ。チェックすればいい。  いつ入れるのか。大体国産の小豆が十一月ごろまでに商品化されるのですから、そのころまでに間に合うように、たとえば外国の小豆をきちんと輸入させるとか、そうすれば商社は適正な利潤で損もしないで、しかも国産と輸入で需給がバランスとれて、あなた方がお考えの価格安定ということに寄与するんじゃないかと思う。そういうことをなさらないでほったらかし、自由。これは全く道義の上からも許せませんし、制度的にもおかしいと思うのですよ、こういうことを聞いているのです。需割りをやるかやらないかということを聞いているわけじゃない。そういう運用面に立ち入って商社の行為をもっとチェックする決意があるのかないのか、それをちょっとお答えいただきたい。
  463. 花岡宗助

    ○花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘ございました雑豆の輸入割り当ての発券を、五十年度までは二月と八月ということで期末にやっておったわけでございますけれども、五十一年からはこれを期の初め、五月前後とか十月前後に行いまして、いま先生がおっしゃいましたように、需給のバランスを調整するのに最も適当な時期に輸入できるというような体制にいたしております。しかしながら、輸入割り当て書の有効期限、現在四カ月となっておりますけれども、これにつきましては、一定期間内にある程度予定した供給量を確保するという観点で、余り長くするのは好ましくないということもございますし、また短かくしますと海外で割り高な買い付けを強いられるというおそれもございますので、このくらいの期間が適当と考えられる。もう一つは、豆の種類とか輸入先によりまして現地の出回り時期が異なるということもございますので、そういった観点で期間は四カ月程度が妥当ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  464. 市川雄一

    市川委員 本当はもうちょっとお聞きしたいのです。そういうようにせっかく需給バランスがとれるようになさったんだから、商社の行為をチェックしなければだめなんです。それで環境を整えられたんだから、実際その輸入時期が、きちっと需給バランスが保たれる時期に輸入しているのかしてないのかということを、IQ物資なんだからチェックする必要がある、本当は。これをやらなければ何も意味がない。  時間の関係がありますので公正取引委員会にお聞きしたいのですが、この雑豆、IQ物資を取り扱っている四十五社の商社でつくっている雑穀輸入協議会という団体がございます。その規約には、会員共通の利益を増進し、国内、海外取引の情報交換を行う、こうなっておりますが、恐らく私の推測では輸入時期だとか価格についての話し合いをしているのじゃないかと思うのです。いまここで具体的にそれを指摘できないのは非常に残念なんですけれども、もし協定があったり、暗黙の了解が行われていた場合、これは独禁法に触れると思いますが、いかがですか、その点は。
  465. 橋口收

    ○橋口政府委員 雑豆の輸入商社四十五社でつくっております協議会というものが仮にございまして、協議会の場で輸入の時期等につきまして調整をしているということがあれば、これは独禁法上問題になり得るか、こういうお尋ねだろうと思います。  輸入の時期を何のために調整するかという問題はいろいろ議論があったところでございますが、何らの利益もないにもかかわらず輸入の時期だけを調整するということは本来考えにくいことでございますから、いまお話がございましたように、何か時期のほかにいろいろな問題につきまして調整をしたりあるいは協定をしたりしているということがあれば、これはもちろん問題になると思います。ただ、一番最後におっしゃいましたように、単なる情報の交換だけであれば、これはそれ自体問題になり得るということではないと思います。  それから暗黙の了解ということもちょっと御発言になりましたが、暗黙の了解がありまして、それが了解どおり実行されるというときに初めて問題になるわけでございまして、その場合もやはり数量とか価格とか、取引の本質に触れたような行為につきまして暗黙の了解がありました場合には法律上の問題になるということでございまして、単に情報の交換というようなことにつきまして暗黙の了解ということは、これは本来あり得ないことだと思います。
  466. 市川雄一

    市川委員 独禁法の問題はまた後でお聞きいたします。  その前に、外務省にガットの関係をお伺いしたいと思うのです。  この問題で、本来なら私はガットの問題を外務省にこういう席でお聞きすることは内心非常にじくじたる気持ちでございますけれども、どうも農林省、通産省が本気でおやりになる気がないので、法に触れるか何かに触れないと改善するという反省がないようでございますのであえてお聞きいたしますが、この雑豆のIQに関連いたしまして、先ほども説明いたしましたが、通産省は外貨を割り当てるときに、通産省が認可した財団法人雑豆輸入基金協会が発行した確認書を添えて通産省に出さないと、通産省が外貨割り当ての許可をおろさないという前提になっているわけです。したがって、言ってみれば通産省のいわば行政の一環として四十五社の商社に、通産省が割り当てた外貨割り当て額の二〇%に当たるお金、これを財団法人雑豆輸入基金協会に商社が払い込む。課徴金ですね。課徴金を、利権物資だから、もうかり過ぎるから少し取ってやろうじゃないかという、そういう意味の課徴金を二〇%商社から巻き上げる。これを確かに受け取りました、払いましたという確認書を財団法人、略して雑豆協会が商社に渡す。商社はその確認書を添えて通産省に持っていきませんと、外貨割り当ての内示額の割り当て額がもらえない、こういう仕組みになっている。  そうなりますと、これは要するに通産行政の一環としてやっている行為、二〇%の課徴金というものを通産行政の一環として取っている、こう言えると思うのですね。輸入量全体も通産省と農林省で決め、その外貨割り当ての総量も決め、商社四十五社も特定し、しかもその外貨割り当て額の二〇%の課徴金を支払ったといういわば領収書を持ってこい、そうしなければ外貨割り当てはしないぞ、それを通産公報でちゃんとうたっているわけでしょう。申請者の資格だとか添付書類だという形で通産公報にうたっている。これはどう考えても通産行政の一環でやっているとしか思えない。  そこで外務省にお聞きしますが、これはガットに触れるのじゃありませんか。どうですか。
  467. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  ガットにおきましては、対外的に約束いたしました関税以外に課徴金等を取ってはいけないということになっておるわけでございますけれども、ガットの規定は先生御承知のように締約国の権利義務を規定したものでございまして、国が徴収する金銭的負担のことをガットで言う課徴金というふうに解されるだろうと思います。したがいまして、この場合、輸入する人に対しまして輸入に関連して一定額の負担が要件とされている場合でも、国が直接に徴収する形になっていないものは、ガットで言うところの関税ないし課徴金というものとは性格を異にするものというふうに考えております。
  468. 市川雄一

    市川委員 国が直接お金を取ればという政府行為が主体になるという御答弁だったと思うのですが、これは国が直接取っているのと同じじゃありませんか。国が強制しているのですよ、通産省の公報で。いいですか。外貨割り当てを受ける申請者の資格、これは二〇%の課徴金を財団法人雑豆協会へ払ったといういわば領収書、確認書を出さなければだめだと言っている。行政で強制しているじゃありませんか。しかも、昨年の予算委員会で、この同じ質問で通産省の水野上貿易局長はこういう答弁をされている。「三十九年まではジェトロを通じまして納入金を受け入れ、」納入金というのはこの二〇%の課徴金ですけれども、「それを国庫に入れていたわけでございますけれども、それはやはりガットの課徴金その他の問題にかかわるのではないかということで、現在の自主的な納付金という形に改めてございます。」こう答弁している。ということは、通産省にもガットに触れるんだという罪の意識は十分にある。だからまずい。まずいから、わけのわからない、そう言っちゃ失礼ですが、財団法人雑豆輸入基金協会というのをつくらした。OBがそこへ天下りしている。そしていかにも自主的な形態を装っております。しかし、これは現在は自主的だからいい、前は自主的でなかったからまずいという答弁です。しかし、現在も自主的じゃないじゃありませんか。自主的ですか。外貨割り当てを受けるのに、通産省の公報にうたっている財団法人雑豆協会に二〇%の課徴金を納めなければ外貨割り当ては受けられないのですよ。これを払うことを政府が強制しているじゃありませんか。これがなぜ自主的なんですか。これはガットにひっかかるのじゃありませんか。どうですか。
  469. 花岡宗助

    ○花岡(宗)政府委員 お答えいたします。(市川委員「外務省に答えていただきたい、通産省に聞いているわけではない」と呼ぶ)自主的であるという点だけ御説明いたしたいと思ったわけであります。  雑豆の価格は国産と輸入と非常に開きがございまして、現在輸入関税はガットの協定税率になっておりますので、これを引き上げることは種々の困難がある。そこで国内生産者を保護するとともに輸入業者の過大な利益発生を防止するために、輸入業者の自主的な拠出という形で一定の差益を財団法人に納付を受けておるということでございます。
  470. 手島れい志

    ○手島政府委員 私どもといたしましては、ただいまの通産省の御答弁にありましたように、輸入業者が自主的に納付しているものであるというふうに聞いておりますので、この限りにおいてこの差益金の納付というものは、ガットが直接に規定するところにはなっていない、そういうふうに言わざるを得ないと考えます。
  471. 市川雄一

    市川委員 通産省はいま自主的だ、こうおっしゃったのですね。よく覚えておいていただきたい。自主的だ。通産省は行政でやっているわけじゃない、民間がやっているんだ、こういう意味ですよ。  そこで、それを前提にして独禁法との関係をお伺いします。  財団法人雑豆輸入基金協会、これは何も法的な根拠がない。なくて、四十五社の商社から二〇%のお金を巻き上げているわけです。二〇%というパーセントについての幅も法的な基準が何もないということは通産省が認めていらっしゃる。(「二〇%は幾らになる」と呼ぶ者あり)年間で約五十億ですよ、雑豆輸入基金協会に入る金は。  そこでお伺いしますが、これがまた非常に独禁法すれすれの、私はもう触れていると思うのですが、すごいからくりがある。雑豆輸入基金協会と四十五社の商社が契約書を交わすのです。この二〇%の課徴金の取り方、別名が売買差益金、政府は調整金、こう言っている。この契約書によりますと、よろしいですか、雑豆輸入基金協会を甲として、それから乙を商社として、ここに契約書がございます。契約書の一番最新の見本。これによりますと、雑豆協会は商社から「一、甲は乙から、乙が上記輸入割当に基づき輸入する豆類(緑豆及び大豆を除く。)」小豆、インゲンですね、あるいはエンドウ、ソラマメ、実質的にはこれはいま問題ではありませんけれども、「全量を輸入港渡し  円で購入する。」ですから、財団法人雑豆輸入基金協会は、通産省があなたのところの商社にはこれだけの外貨割り当てをいたしました、この外貨割り当て額に相当する小豆を買いなさい、そういう内示をしておいた、その分をそっくり全部この財団法人雑豆輸入基金協会が買ってしまうわけですね。四十五社と個別に全部契約書を結んで買う。買って、今度はどうするかというと、買った瞬間に商社は「乙は甲から、上記一の豆を輸入港渡し  円で買戻す。」商社が今度は買い戻す。しかも自分が売った売り値の一二〇%の金で買い戻すのです。そうすると、そこに当然二〇%の売買差益金が生まれるわけですよ。この売買差益金を雑豆輸入基金協会が指定する銀行口座に振り込め、こういう契約書になっている。これは明らかに売買行為。五十二年度で雑豆全体でこの調整金、売買差益金が約五十一億九千六百八十万円、五十四年度で二十三億六千九百万円、これだけのお金が、売買総額じゃありませんよ、二〇%の売買差益金が財団法人雑豆輸入基金協会に入っているわけですね。これは明らかな商行為ですよ。なぜかというと、大蔵省も国税庁も、これは商行為であるという取扱文書を出していますよ。ここにありますよ。だから商行為として課税する。しかも通産行政とは関係ありません、自主的にやっているのです、民間でございます。政府が決めた輸入量全部を結局四十五社と個別に契約して買い占めてしまう。しかも瞬間タッチで二〇%の金で買い戻しさせる。利益が保証されている。かずのこみたいに買い占めてみたけれども失敗して倒産するなんてリスクはこれにはない。買い占めた途端に二〇%もくる。五十億、二十三億という利益が転がり込んでくる。そのお金で天下り先をつくるということなんですけれども、これは独占禁止法の私的独占に触れるおそれが十分にあると思いますが、いかがでしょうか、公正取引委員会
  472. 橋口收

    ○橋口政府委員 財団法人雑豆輸入基金協会の性格の問題に関連すると思いますが、いまお話がございましたように、また契約書をちょっと拝見しました限りでは、売買の当事者になっておるわけでございます。差益を捻出するための一つの技術的な操作ではあると思いますが、財団法人が恒常的に売買の当事者になるということになりますと、財団法人としての公益性は一体どこにあるのかという疑問を持つわけでございますが、ただ、独禁法に違反するかどうかという問題は、お話の中にもございましたように、大変にむずかしいすれすれの問題を含んでいるのじゃないかという感じがするわけでございまして、独禁法に違反の行為があります場合にはだれかが損をするということが生ずるわけでございますが、(市川委員「消費者が大損をする」と呼ぶ)おっしゃいますように間接的には一般消費者に影響のある問題ではございますが、当事者の範囲におきましては、お話がございましたように商社も利益があって喜んでいるという実態があるようでございます。そうなりますと、おっしゃいました私的独占の条項に触れるかどうか。  ただ、確かに輸入商社としては基金に売買するということが一種の義務づけられた性格でございますから、したがって相手方を選択するという自由は失われておるわけでございます。ただ、繰り返して申し上げますと、それによって商社も利益を得ているという問題がございます。そういう点から申しまして、どの条章に、どの条項にぴたり触れるかということにつきましてはいまここではっきりお答えするということはむずかしいのでございますが、お話のような実態もございますから、少し関係者から事情は聴取してみたいというふうに思います。ただ、全く問題がないという認識ではございません。
  473. 市川雄一

    市川委員 非常に問題だらけだと思いますよ。だって、政府が決めた輸入量を全部買い占めちゃうのですからね、しかも二〇%の利益が保証されて、販売価格と売り値を自分で両方指定しちゃうわけですから。こんなことが民間で許されたら独禁法なんて何にも意味ありませんよ。  時間がありませんので、そういう意味で改めて確認したいのですが、事情聴取をなさって、ぜひ公正取引委員会として処置をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  474. 橋口收

    ○橋口政府委員 関係者からよく事情を聞いてみまして、工夫の余地があるかどうか、これは政府側でお考えになることだと思いますけれども、われわれとしましても独禁法に触れないような工夫の余地があるかどうかを含めて検討いたしてみたいと思います。
  475. 市川雄一

    市川委員 この雑豆輸入基金協会が二〇%の売買差益金を取っている弊害というのは、IQを小豆、インゲンに適用した弊害とあわせて大きな弊害があるのですね。こんなことを何で通産省が認可した公益法人にやらしているのかということなんです。そこが私は通産省の姿勢として非常に問題だと思うのです。  どういう弊害があるかといいますと、IQに指定した理由は生産者の保護と価格安定だ、こう言うのです。価格安定になってないということは先ほど申し上げました。時間差商法による高値安定、過剰利益を生み出している。しかも、国がぐるになって取引もないうちに外貨割り当ての前提として二〇%の利益金を巻き上げておりますから、二〇%取るというこの制度が商社の過剰利益を正当化しているわけです。商社を免罪にしちゃっている。だから通産省も踏み込んでいけない。そういう面がある。  それから、この巨額の調整金で、財団法人雑豆輸入基金協会代々の理事長は全部通産省の方が天下りしている。そして、その雑豆輸入基金協会から巨額の寄付を受けて成り立っている財団法人日本豆類基金協会、これは農林水産省の認可の公益法人で、ここにまた農林省の方が天下りをしていらっしゃる。そしてまた、その財団法人日本豆類基金協会からの十五億の寄付ででき上がりました財団法人日本特産農作物種苗協会、これも農林省の認可で、またここへ農林省の方が大ぜい天下りされていらっしゃる。そしてまた、その寄付でできた社団法人北海道豆類価格安定基金協会、これも農林省の認可。これは日本豆類基金協会から十五億の寄付を受けた。ここにも天下りをしている。行政改革だ、何だかんだと言っているときに、特殊法人のことはいま問題になっておりますけれども、こういう実態もある。天下りを確保するためにこういう商社に過剰利益を保証し、そして消費者の立場を二重三重に踏みにじる形で二〇%の売買差益を取っていらっしゃるのじゃないかというように考えたくなるし、事実御執念から言うとそういう感じじゃないかなと私思っているのですが、こういう弊害があるのです。  そして、生産者の保護、生産者の保護とこう言いますが、私たちも生産者を保護することに異論はありませんが、その面がどうなっているか。生産者はこれでかっちり保護されておりますので、小豆の品質改善の意欲がスポイルされている。減退しちゃっている。ところが、台湾の業者は、国際競争にさらされておりますから、日本の北海道に来て一生懸命技術を勉強して、品質改善の意欲が非常にすさまじい。最近国際市況では台湾小豆の品質改善が非常に著しいということが認められている。むしろ北海道産の小豆の品質が落ちてきている。そういう意味では本当の意味では生産者の保護になっていない。甘やかしているだけの実態。  片方では商社の過剰利益を許し、天下り先をつくる。これでは消費者は踏んだりけったりじゃありませんか。しかも通産省が認可している公益法人、農林省が認可している公益法人。どうですか、これはもう少し具体的に改善策を打ちなさいよ。通産省にまずお聞きしたい。
  476. 花岡宗助

    ○花岡(宗)政府委員 お答えいたします。  財団法人の雑豆輸入基金協会の受け取っております差益金は、同協会の寄付行為によりまして、ジェトロ等によります貿易振興、国際経済交流の促進、円滑化と国内産の雑豆の生産振興の国内対策と二つに使用されるということになっておるわけでございます。これは各種の税金を控除しました残額を二つに分けて使うという観点は、一つは、結局IQに対しまして台湾とか中国とか各国は非常に不満を持っておるわけでございますから、それに対しましてジェトロを通ずる国際交流によって彼らの不満をなだめてやるということに半分使う、半分は国内対策といたしましての消費者を含めた国内の生産者対策等に使われるというたてまえになっております。
  477. 市川雄一

    市川委員 何だか全然具体性がないのですけれども、また機会を改めて時間をたっぷりかけてお聞きしたいと思っておりますから、その節によろしく御答弁いただきたいと思う。  関連して。雑豆の中にエンドウマメとソラマメがある。これは通産省も農林省もよく御承知だと思いますが、国産の豆はその量が少なくて希少価値がある。しかも国産と輸入では品質の格差が著しい。要するに国産の方がすぐれているということですね。ですから、輸入が入ってきても価格は落ちない。しかも国産のソラマメは乾燥豆じゃなくて蔬菜としてほとんど食べられてしまう。ですから輸入の乾燥豆から守る必要がない。したがって、IQを適用する理由が全部消滅している。ですからエンドウマメ、ソラマメをIQから外すべきだと思うのですが、これはいかがですか。  それから、実需者割り当てについて伺っておきます。日本製鋼協同組合連合会、全国菓子工業組合連合会、社団法人パン工業会、全国調理食品協同組合、こういう四団体が実需者割り当ての受け皿としてかなり話が煮詰まっているようでございます。私は、商社が受けている利権、過剰利益をこの実需者に移動するという形で需割りが行われることについては反対でございます。あくまでも消費者に利益が還元されるということでIQ制度の欠陥を補う意味での需割りということを申し上げてきたわけですが、この需割りについてさっき通産省は前向きにやるという御答弁でした。農林省はどういうお考えか、お答えいただきたい。  それから通産省には、大企業との競争力を中小企業にも持たせるために、中小企業の擁護育成という立場から、大企業は外して、せっかくこの中小企業団体でまとまっているわけですから、それの方がすっきりまとまるわけですから、そういう形でこの需割りをお進めになってIQの欠陥を補う考えはないかどうか、これをお答えいただきたいと思います。  それから、行管庁がいらっしゃっていますが、さっき申しましたように、通産省は認可している公益法人に対してああいうずさんなことをなさっているわけですが、行管庁としては、特殊法人、それも数は限られておる、今後特殊法人を広げたいということでございますが、こういう通産省の公益法人に対する行政姿勢のあり方、これはやはり問題だらけだと思うのですが、せっかくお見えになっていただいておりますので、ぜひ行管庁からもその点御答弁をいただきたいと思います。
  478. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 先ほどから話を伺っておりました。この問題につきまして私どもの方で、自分で調査したことがないのでございますが、今後こういう問題についてどう考えるか、十分折を見て調査するなり考えてみたいと思います。
  479. 市川雄一

    市川委員 要するに通産省の行政のあり方……。
  480. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 もしもお話のようなことがあれば、やはり望ましいことではないと考えております。
  481. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 まず最初に、エンドウ、ソラマメについて、これを自由化したらどうかというお話でございますが、エンドウ、ソラマメ、これは小豆などに比べますと国内生産量が少ないということは事実でございます。輸入したエンドウ、ソラマメは乾燥した豆でございますが、このエンドウ、ソラマメは、用途といたしましては小豆、インゲンと同様にあん原料として相当使用されております。したがいまして、小豆、インゲンとは代替性が非常に強いということもございまして、これだけを切り離して自由化するということはやはり雑豆全体に対する影響がきわめて大きいということで困難ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  それから第二点の、需要者割り当てについての検討結果はどうかということでございます。現在商社割り当てをやっておるわけでございますが、これを需要者割り当てにしたらどうかということにつきましては、いろんな前提条件がどうしても整備されることが必要であろうと思います。  まず一つは、小豆というものだけでは困りますので、やはり先ほども申し上げましたように、相互に代替関係がございますので、小豆からインゲン、ソラマメ、そういう雑豆全体ということをまず考えないといかぬということ。それからもう一つは、関係の需要者が全部参加をするという角度で考えてもらわないと困るということなんです。その上でいろいろ関係者が話し合いをして、需要者の資格としてはどういう資格にするか、またそれぞれの需要者方の配分の物差しというものをどうするかということを関係の者が話し合いをして、こういうことでいきましょうというようなことになりませんと、実際問題として実需者割り当てはむずかしいのではないかというような考えに立ちまして、昨年来需要者の方々のお話等も伺ったわけでございます。しかしながら、雑豆の需要者はやはり製あんの関係、製菓の関係、煮豆あるいは製パンというようなことで種類が多岐にわたっておりまして、その辺が数も多くて、需要者の特定なり、需要量の把握がきわめてむずかしいということがございますほかに、需要者の団体の方方とそれぞれお会いいたしましたけれども、大分団体相互の御意見等も違っておる向きもございまして、現段階におきましては歩調がそろっておらないということで、受け皿はまだできておらないということでございますので、需要者割り当ての導入ということは現段階におきましては困難である、かように考えておるわけでございます。
  482. 市川雄一

    市川委員 答弁に非常に不満ですけれども、また反論できる余地もたくさんありますが、時間がもう終わりましたので、これで終わります。(拍手)
  483. 田村元

    田村委員長 これにて岡本君、市川君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十七分散会