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1980-02-19 第91回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月十九日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事小此木彦三郎君 理事 瓦   力君    理事小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君      稻村左近四郎君    小里 貞利君       越智 伊平君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       小山 長規君    近藤 元次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       田名部匡省君    田中 龍夫君       中村正三郎君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    福家 俊一君       藤田 義光君    松澤 雄藏君       村山 達雄君    山下 徳夫君       阿部 助哉君    井上  泉君       稲葉 誠一君    上田 卓三君       大原  亨君    川崎 寛治君       兒玉 末男君    土井たか子君       野坂 浩賢君    八木  昇君       安井 吉典君    横路 孝弘君       池田 克也君    岡本 富夫君       草川 昭三君    坂井 弘一君       工藤  晃君    野間 友一君       大内 啓伍君    岡田 正勝君       中野 寛成君    宮田 早苗君  出席国務大臣         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長官伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         警察庁刑事局長 中平 和水君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁水資源局         長       北野  章君         国土庁大都市圏         整備局長    伊藤 晴朗君         国土庁地方振興         局長      四柳  修君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 豊島英次郎君         法務省保護局長 稲田 克巳君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省証券局長 吉本  宏君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省銀行局保         険部長     松尾 直良君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文化庁次長   別府  哲君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生大臣官房審         議官      竹中 浩治君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    松原 治世君         通商産業大臣官         房審議官    尾島  巖君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         運輸大臣官房総         務審議官    永井  浩君         運輸省港湾局長 鮫島 泰佑君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         郵政大臣官房長 小山 森也君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省住宅局長 関口  洋君         自治大臣官房審         議官      久世 公堯君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第三局長  肥後 昭一君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     近藤 元次君   江崎 真澄君     越智 伊平君   倉成  正君     小里 貞利君   澁谷 直藏君     山下 徳夫君   福家 俊一君     田名部匡省君   藤尾 正行君     中村正三郎君   阿部 助哉君     井上  泉君   兒玉 末男君     上田 卓三君   横路 孝弘君     土井たか子君   矢野 絢也君     池田 克也君   野間 友一君     不破 哲三君   岡田 正勝君     宮田 早苗君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     倉成  正君   越智 伊平君     江崎 真澄君   近藤 元次君     荒舩清十郎君   田名部匡省君     福家 俊一君   中村正三郎君     藤尾 正行君   山下 徳夫君     澁谷 直藏君   井上  泉君     阿部 助哉君   上田 卓三君     兒玉 末男君   土井たか子君     横路 孝弘君   池田 克也君     矢野 絢也君   不破 哲三君     野間 友一君   宮田 早苗君     岡田 正勝君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。池田克也君。
  3. 池田克也

    池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。  限られた時間の中で三つばかり大きな柱を持って御質問をしたいと思います。  最初にオリンピックの問題でございます。  御承知のとおり、レイクプラシッドで冬季オリンピック大会が開かれていまして、わが国選手もなかなか健闘して連日日の丸が上がっている。国民はこの次のモスクワの問題にやはり関心を深めていると思うのです。それ以上に強化合宿参加して日夜練習に励んでいる選手たちあるいは関係者たちは、このモスクワに果たしてわが国参加するかどうか大変大きな関心と同時に不安にも駆られているんじゃないか。私は、文教委員会オリンピック記念青少年総合センター国立化の問題ももうここ三年ばかり審議されておりまして、そうした経過を踏まえてわが国オリンピックに対する問題も取り上げ私の考え方も申し上げてきたわけです。きょうはそういう点を踏まえまして、二月の冒頭に政府としてモスクワオリンピックに臨む態度というものをまとめて発表されたわけでありますが、それから今日までかなりの時間の経過もあるわけですが、その当時の態度と今日の態度と変化がないかどうか、官房長官からお伺いをしたいと思います。
  4. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  二月一日に先生おっしゃるような政府意向JOCに伝達したわけでございます。その後IOC理事会等決定があったのでございますが、われわれとしましては、あのとき伝えました意向ということにつきましていま変わった気持ちは持っておりません。あの当時のままの気持ちでおるわけでございます。あと五月十九日とも二十四日とも言われますが、申し込み期限まで大分日がございますし、いろいろな情勢もございましょうし、いまは静かに見守っておるという態度でございます。
  5. 池田克也

    池田(克)委員 あの当時の声明というものを拝見しますと、最終的な結論JOCに任せる、しかし政府として好ましくない。行くのか行かないのかどっちともとれる、こういうような表現になっているわけでありますが、端的にお伺いしたいのですが、いま政府としては日本オリンピック選手団を派遣しないのかあるいは派遣するのか。国民から見るならば、JOCがどうだろうとあるいは政府がどうだろうと、その辺の詳しいことはわからない。日本は行くのか行かないのかどっちだと、五月十九日ですか、エントリー期限もあるようですが、そういうような切迫した時期ではなくて、現在進行中の訓練、強化もあるわけですから、その辺のいわゆる端的な結論というものをお聞かせいただきたいのです。行くべきなのですか、行かない、行くなとはっきり指示しているのですか。
  6. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問の点、担当の文部大臣から詳細お答え申し上げます。
  7. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 お答えをいたします。  私たちの方から、行くとか行かないとかいうことを何も申し上げておるわけではありません。JOCの方として判断をされるわけでございまして、聞くところによりますと、JOCの方ではそのための小委員会等をつくって対処をされておる様子であることは十分承知をいたしております。
  8. 池田克也

    池田(克)委員 このオリンピック大会開催に関してIOCモスクワを決行するということを決めた、これはもうすでに御承知のとおりであります。このモスクワ決行を決めたというこのときの報道の中に、罰則ということが出てくるのです。このときの報道を見ますと、オリンピック大会参加するよう義務づけられている、つまりわが国JOCですね、「各国オリンピック委員会オリンピック大会参加するよう義務づけられており、政府圧力のため参加しないという場合は罰則対象になる」、こうキラニン会長が語ったと伝えているわけです。罰則というのは一体どういうことを指しているのですか。
  9. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 参加するかしないかという決定――開催するかしないかという問題はこれはIOCが決めることでございますが、そのオリンピック参加するかしないかということは各国NOC日本の場合はJOC決定するということもこれも明らかにしておると思います。そのいまの御指摘になりました罰則なるもの、ちょっと私よく存じておりませんので、事務の方から答えさしていただきたいと思います。
  10. 柳川覺治

    柳川政府委員 お答え申し上げます。  オリンピック憲章の定めるところによりますと、オリンピック規則を侵犯したような事実があります際は、スポーツ選手競技への参加を認めない、あるいはIOCの承認しておりますNOCとしての資格を停止するというような措置がございますが、いま先生指摘案件につきましては、たとえばこのキラニン会長声明の中で申しておりますが、オリンピックの招待を受諾するか拒絶するかはそれぞれのNOCが決めることであるということを明確にうたっておりまして、参加しないという国の国内オリンピック委員会がございました際は、たとえばその国の報道関係の方は競技会場に入ることを認めないとかいうような意味のことは言われておりますが、直接、事情によって参加をしないということだけのことによる制裁措置はないというように聞いております。
  11. 池田克也

    池田(克)委員 これは重大な問題だと思うのですね。文部大臣御存じなかったということも、私そう申しちゃなんですけれども、この問題本気で考えていらっしゃるのかという危惧を抱かざるを得ない、失礼な言い方かもしれませんけれども。はっきりと二月十三日付の新聞に、各国オリンピック委員会オリンピック大会参加するよう義務づけられており、政府圧力のため参加しない場合は罰則対象になる、こういうふうに声明されている。もちろんそうでしょう。IOCはそれぞれ世界各国委員理事を持ち、それによってその合意によってモスクワ開催も決めているわけです。勝手にIOCモスクワだと決めて、そしてそこへ日本に来るか来ないか、来るか来ないかは自由だよと言って招待しているんじゃなくて、モスクワでいつ幾日にやるということはIOCの総会で決めている。それにはわが国代表参加している。そして、はい参ります、それは賛成です、こういう合意の上でモスクワ大会が決まっているんですね。その決まっている一つの事実について、行かないということになれば何らかの制裁がある、これは一つ組織を持っているものとして当然だと思うのですね。しかも、こういうふうに罰則対象新聞報道されて、一体どういうことがあり得るかというあらゆる可能性というものをチェックしながら進んでいくのが、政府が物を言った場合の政府責任だと思う。  官房長官、どうですか。罰則対象になる、こういうふうに言っているんですが、罰則の内容を御存じですか。
  12. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 先ほど体育局長からお答えいたしましたように、参加するかしないかということの決定各国NOCにあるわけでございます。これは当然IOCあるいはキラニンさんも認めておるとおりでございまして、その点は問題は別にないと思います。  それから、IOCオリンピック開催決定いたします場合に、IOCNOCとの関係というものは、NOCがそれに参加することを先に決めてやったというわけではないわけであります。つまりIOCは――もちろんIOCの中に日本運動関係の方々が入っておられます。それは事実であります。ですが、あくまでもIOCとしての判断ということでございまして、いわゆるIOC下部機関と申しますか、組織機関という形においてNOC意向IOCに直接反映をして、その代表の意見として発言があったという形とはちょっと組織が違っておるものでございます。確かにオリンピック開催するどうこうという決定IOCに専属しておることでございますし、それから参加するかどうかということの決定各国NOCにある、こういうことでございます。  制裁の問題につきまして私先ほど申しましたのは、いろいろな場合があるだろうということで事務当局の方からお答えをさせていただいたわけでございます。
  13. 池田克也

    池田(克)委員 官房長官、どうでしょうか。罰則問題について研究されていますか。
  14. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  これは、体育局長が申しておるとおりでございます。
  15. 池田克也

    池田(克)委員 ということは、官房長官御存じなかったということじゃないですか。要するに、いま文部大臣からもお話がありましたが、IOC日本代表を出しているが日本JOC関係ない、IOCが勝手に決めたことであって、行くか行かないかは自由なんだ。私はそういう話は通らないと思うのですね。やはりモスクワ大会開催ということは、それこそテレビの放送権の問題をめぐってもかなり国内に議論があった。あるいはまた、国民選手モスクワを目指してと言って準備しておる。別にそれに対して何の疑念も抱かなかった。いまになって、モスクワに行くか行かないかそんなことは白紙であって、IOCが主催するんだ、JOCが行くか行かないかは全くフリーハンドなんだ、私はこんな話はないと思うのです。やはり参加するということが前提であり、それに対してIOC罰則規定がある。  たとえば「規則違反または契約上の義務ならびに責任を守らない場合には、規則第二十三条および第二十五条に従って、IOC開催都市および関係NOCから大会組織する名誉を取り上げることができる。」五十一条ですね。つまり、今後日本開催都市として立候補できなくなる、あるいは日本JOCIOC日本の機構として組織できなくなる。また二十三条によれば、「永久的と一時的処罰の中で最も重いのは停止処分、除名、失格および追放である」。  こういうふうにして開催都市としての資格を失うあるいはJOCの解散もあり得る、あるいは国際オリンピック委員会におけるわが国の立場が停止される、除名される、失格追放という国際的な罰則というものがある。これを事前に政府として分析をし、それに対してどの程度のものであるのか、わが国の国際的名誉、そういう意味において大丈夫なのか。私、ボイコットということに関するバックもよくわかります。アフガンの問題におけるそうした態度政府がおとりになることもわかりますが、反面、こうした国際的信用の問題や世界的なわが国一つ信用にかかわる問題についてのこうした取り扱いということ、もしも食い違っているんならば、この問題についてIOC当局に何らかの質問を行って確認をされているんでしょうか。あるいは、この新聞報道が全くでたらめだと言うんでしょうか。文部大臣どうでしょうか。
  16. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 各国NOCは、IOCによって、オリンピック参加するあるいはIOC開催します国際競技に対して参加するしない、そういう一つ認定を受けておるわけであります。つまり、そういう団体としての認定を受けておるわけでございます。したがいまして、JOCに、あるいはほかのNOCでもそうでございますが、オリンピックそのもの参加するかしないかという決定各国NOCにあるということ、これはもうIOC規定なりオリンピック憲章ではっきりしているわけでございます。もちろん先ほどお話がありましたように、もうずっと前から、通例の状況でありますれば、モスクワオリンピックが開かれるということは周知の事実と申しますか、そういうことで順序が進んできておるわけでございますので、当然に日本におきましても選手の養成、その他準備をしておる、これはもうそのとおりだと思います。しかし、最終的な決定権というもの、参加するかしないか、これはIOCにあるのではなくてNOCにある。ただ、その開催するかどうかという決定IOCに専属しておる、こういうことでございます。
  17. 池田克也

    池田(克)委員 そんなこと聞いているんじゃないんです。日本罰則対象になると書いてあるから、罰則はどうなんだ、心配ないんですかと聞いているんです。
  18. 柳川覺治

    柳川政府委員 お答え申し上げます。  オリンピック憲章によりますと、大臣が御答弁いたしましたとおり、参加を決める権限各国NOCのみが持っておるということでございまして、罰則関係につきましてはエントリー参加申し込みをした後に正当な理由なく参加を取り下げたりいたしますと、そのときには罰則懲戒処分がかかるということがございます。しかし、参加するしないを決めるに当たって、たとえば選手派遣費問題等理由から参加をしないという国も起こり得るわけでございまして、参加するしないということだけでもって罰則の適用はございません。  それからなお、先生が御指摘オリンピック規約違反あるいは契約条項不履行というような事由による罰則規定がございますが、これはオリンピック開催する都市におきまして設けられました組織委員会オリンピックの実施に当たって契約条項不履行あるいは規約違反等をした場合は、その都市オリンピック開催する栄誉を取り上げるという規定でございまして、そのことは一般参加するかしないかのNOC関係には関係のない規定でございます。
  19. 池田克也

    池田(克)委員 これは変な押し問答になったんですけれども、要するにすれ違っているんです。ここにキラニン会長罰則対象になると報道しているんです。ですから、私はこの報道信用します。いまおっしゃるように、NOCにそうした参加決定権限が与えられているのかもしれません。しかし、確かにそうだとすれば、主催国は困るでしょうね。開催の二月前くらいにエントリーが決まって、それまで何人来るんだか何カ国来るんだか見当がつかない。道路も施設も競技場も恐らく主催国としてはかなりの国費を投じて、日本だって東京オリンピックやったじゃないですか。やはりめどというものはあるし、来なければ困るでしょうし、やはり私はオリンピック委員会はそういう点ではそれなりのペナルティーというものは考えると思うのです。私はこのキラニン会長が言っている「政府圧力のため参加しないという場合は罰則対象になる」ということはわれわれ重大な関心を持って、わからないことがあるならIOCに聞いてやって、日本だって代表がいるんですから、この間行ってきたばかりじゃないですか。この罰則について日本のそうした世界的名誉を失わないかどうかということを私は心配するのです。  官房長官、どうですか。この問題、御存じないならないで、もう一遍IOCへ問い合わせるなり何なり、この罰則問題を検討すると、そういうことじゃないかと私は思うのですが、実際これはもう関係ないのだ、大丈夫なんだ、こういうことでしょうか。
  20. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 先ほどお話を申しましたように、繰り返しのことで恐縮でございますが、エントリー申し込みをしました後における問題は、先ほど体育局長が言ったとおりのことだと思います。  キラニンさんもはっきり言っておりますように、五月の二十四日まで、あるいは十九日ということもありますが、これは向こうから来ているのは十九日ということのようでありますけれども、それまでにエントリーの最後の決定をする、こういうことを言っておるわけであります。IOC自体は地元のオリンピック委員会モスクワオリンピック委員会との関係におきましては、いろいろな問題が生じるだろうと思います。しかし、先生の御質問になっております点は、そうではなくて、NOC日本の場合はJOCというものが今日の段階でオリンピック参加しなかった場合に罰則があるかないかということをどうだというお話のように先ほど聞いておるわけで、その点は私のいままでのあれでは罰則はないというふうに聞いております。
  21. 池田克也

    池田(克)委員 ですから、キラニン発言が二月の十二日にあったのです。この発言に対して確認して、罰則問題の処置を安心できるようにしてあるかと聞いているのです。前の認識とか常識とかじゃないのです。キラニンさんはこう言っている。世界各国かなり多くの国が行かないことになってきたら、キラニンさんとしては何らかの発言をするでしょうし、それに対してオリンピック委員会判断というものがあるでしょう。この問題に限ってどうですか。研究しますか、調べますか。
  22. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 いまの問題につきましては、こちらの方のJOCとどういうことになっているかと問い合わせはしてみたいと思っております。あるいはすでに私の方の事務局の方でそういうことをやっておるのかもしれませんので、体育局長から答えさせていただきます。
  23. 柳川覺治

    柳川政府委員 お答え申し上げます。  キラニン会長声明の中でも、組織委員会の招待を受諾するか拒絶するかはNOCのみが決め得る権限を有するということを明確にうたっておりまして、それでいま私はここにキラニン会長罰則のことを触れられたという報道関係をちょっと持ち合わせておりませんが、たとえば例で申しますと、モントリオールのオリンピック大会にはアフリカの……(池田(克)委員「それを見てください。そこに書いてあるのです。その件に関して聞いているのです」と呼ぶ)二十数カ国が不参加でございましたが、特にそれに対しまして罰則の適用がされた事実はございません。
  24. 池田克也

    池田(克)委員 結構なんです。いま言っているのは、二月十三日に言っているのです。そんなことじゃ審議できないですよ、本当に。ふまじめじゃないですか。
  25. 柳川覺治

    柳川政府委員 この「政府圧力のため参加しないという場合は罰則対象になる」ということが報道されておりますが、これの真意につきましては私ども承知しておりませんので、これは先生指摘のとおり、詳細さらに聞いてまいりたいと思っておりますが、いままで大臣からお答え申し上げたとおり、参加するしないかということだけでの罰則はないというように承知しておる次第でございます。
  26. 池田克也

    池田(克)委員 官房長官、いままでの締めくくりとして、日本政府全体として、この問題、罰則問題も含めて考えるべきだと私は思うのですが、一言だけ御所見を伺いたいと思います。
  27. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えします。  先生の御心配は、新聞報道にそういうキラニン会長が言っていることがあるから、そういうことになっては非常に不名誉であり、心配なことがあるから、そういうことないかという御質問でございますから、これはすぐに真相を確かめて、いま文部大臣体育局長お答えしたとおりだと私は思うのでございますが、調べましてまた御報告申し上げます。
  28. 池田克也

    池田(克)委員 大変時間をとってしまったのですが、IOC総会で国旗、国歌の問題というのが大きな問題になりました。私は、オリンピック問題を考えるに際して、二つの側面がある、こう思っているわけです。  この辺は外務大臣にぜひお伺いしたいところなんですが、一つは、オリンピックの正常化という問題なんです。いまのオリンピックというのは、国家が前面に出てきて、非常に政治的になってきている。仮にモスクワの件が出てこなくても、アフガンの件が出てこなくても、このままじゃいかぬ、こういう声は私はかなり広い方面にあると思うのです、ですから、そういう観点が一つある。その中に、今度はアフガン、モスクワ問題が起きてきた。  二つの問題がたまたま同じ時期に重なってしまった、こう私は認識するのですが、まず、外務大臣から、国際的なわが国の情勢ですね、あるいはまた外務省として国際環境をいろいろ分析していらっしゃる、そういう点で、オリンピックというものを正常と見るかあるいは手直しをしなければならぬと見ているか、その辺の認識をお伺いしたいのです。
  29. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御指摘のように、オリンピック政府関係、いろいろ不分明な面がございますし、アマチュアを中心としてやる精神に必ずしもいまのオリンピックが沿っているかどうかという基本的な疑問が従来からございますことは確かであります。それから、参加国の問題をめぐりまして、今回も台湾の問題が発生いたしましたが、しばしば政治の問題がオリンピック関係してまいるということも事実でございまして、それはある程度現実の世界情勢を反映しておる面があるかと思いますけれども、私の方といたしましては、できるだけオリンピックというものが平和の祭典としてなごやかに開催されるということが基本的に必要だろうと思っておりますので、ただ、政治問題が全く無関係であるということが言えるかどうか、この点については、いろんなケースがあり得るように思われますし、今回のレークプラシッド、台湾の代表団が参りまして、結局出場を認められないで引き返したわけでございますが、こういう問題がございます。  前の方のオリンピック精神と現在のオリンピックのあり方については、外務省の仕事の範囲をある程度越えますので、国内での考え方は文部大臣からお聞きを願った方がよろしいかと思いますが……。
  30. 池田克也

    池田(克)委員 どうも外務大臣の話がもう一歩すれ違っちゃっているのですね。私は分析して言っているのです。いまのオリンピック問題というのは、片方にオリンピック正常化という動き、もう一つにはアフガン問題に対する当面の対策、二つあるというふうに私は分析する。その私の二つの見方について賛成ですか、こう聞いているのです。
  31. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その二つの問題があるというお考えは私も賛成でございます。
  32. 池田克也

    池田(克)委員 文部大臣どうですか。
  33. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 私もそういう考え方はよくわかると思います。
  34. 池田克也

    池田(克)委員 国旗と国歌を削ったということは、私は、そういう意味では、その二つに分けた、要するにオリンピック問題の正常化というもの、国家、政治、これが全くゼロになるということはむずかしいことだと私も思います。小さな国国における力の問題等もあると思います。けれども、少なくともそういう方向に向かっていく。ステートアマの問題であるとか、あるいは膨大な予算を開催国が必要とするとか、国家なしにはやっていけないというような今日の事態を改善していくその一つの方向が国旗と国家の問題であって、たまたま台湾、中国の両方が参加するという、こういうことに限った決定ではない。もっと幅の広い正常化への第一歩だと私は思っているのですが、外務大臣、どうお考えですか。
  35. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 オリンピックが次第に大規模化しまして、各国NOC、これは民間の機関でございますけれども、予算その他で政府の援助を受けるというような点も出ておりますし、また、社会主義国家ということになりますと民間と政府関係が余りはっきりいたしませんが、そういう点で本質的な問題があると私どもも感じております。そういう点から、この国歌の問題、国旗の問題が今度のIOCの大きな議題になったと存じますし、できるだけそういう国家的な色彩を強く出さない、余り表に出さないということが今回のIOC決定の背景になっておると存じておるわけでございます。
  36. 池田克也

    池田(克)委員 確かにいま私も申し上げたし、大臣もおっしゃっていました。  織田幹雄さんがこういうことを言っているのですね。「オリンピックはどんどん変わっている。このままでは、国を背景にしたプロの競技会と変わらなくなってしまう。それなら世界選手権でたくさんだ。オリンピックをそう方向づけたのは、実はソ連なんだ。そのソ連が起こしたアフガン問題をきっかけに、オリンピックを本当の意味での国際交流、国際親善に役立てる大会にしなくては」こういうコメントを出しております。要するに、その辺からアフガン問題と正常化の動きとがオーバーラップしてきた、問題が少しこじれて国民にはよくわからなくなってきた、私はそういう印象を事実持っているのですね。  要するに、いまお話が出ましたようなオリンピック正常化、国家というものをなるべく前面に出さないようにしていく、私はその方向は正しいと思うのです。その問題で、いまのオリンピック正常化が着々と進んで――着々かどうか知りませんが、着ぐらいかもしれませんけれども、進んでいくという方向にあると私は思うのですが、これをさらに進めて、日本一つのドライブをかけると申しましょうか、そうした世界の一つオリンピックの正常化の方向に日本がリーダーシップをとっていく、そういうお考えというのはないものでしょうか。外務大臣、どうですか。
  37. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは実は外務省として考える問題か、あるいはJOC自体あるいは体育の担当の文部省あるいは日本国内の世論、こういうものでだんだん動いていくものだと思いますので、私どもとして、いま御指摘の点についてどうするかということはちょっと申し上げかねるわけでございます。
  38. 池田克也

    池田(克)委員 端的に聞きますと、この次、八四年のサラエボですか、サラエボでこの憲章が改正になって旗と国歌を変える、日本はどうするのですか。
  39. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 国旗と国歌の問題も、やはりこれはオリンピックの、日本の場合で言えばJOC判断、それからIOCに対しましてのJOCの考え方を申し述べていくというところで決める以外には決めようがないと私は思います。  ただ、先ほどから先生が御指摘になっておりますように、矛盾が若干あるわけなんです。というのは、こういうふうに非常に大規模になりまして、これに対して施設をする、その他いろんなことは、とてもじゃありませんが、ごく素朴な民間の力、自発的なアマチュアだけではなかなかやれない現実になってきておること。事実またIOC等も各国NOCがそういう民間及び公共団体の協力を縛ることは認めておるわけでございますが、そういう問題と、そういうことからくる政治色の強いものをなるたけ省いて、いわゆる一人一人の市民としてのアマチュアリズムによるオリンピックをどこまで維持していくかということは、オリンピック関係全体の一番の重大問題だと思います。国旗、国歌の問題もそういうこともあるだろうし、あるいは先生がちょっと先ほど触れておられました当面の台湾問題の処理だけに限定しておるのか、そこらのところは正直なところまだ判定ができかねておるわけです。  しかし、憲章でそういうような改正をいたすといたしますれば、単に目の先だけでなく、もっと深い見通しもあるのではないかというふうに私たちも推測はいたしておりますけれども、もう少し状況がはっきりいたさなければちょっと判断がしにくい状況であろうかと思っておりまして、JOCの方とは連絡をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
  40. 池田克也

    池田(克)委員 なぜ私がこういうことを言うかといいますと、要するに、そういう国家、政治の力が前面に出過ぎた、これをぐっと引き下げていく。たとえば、日本がもう日の丸は使いません、日の丸も含めたオリンピックのマークが入った旗がありますよね、要するに国旗として日の丸単独のものを使わない、あるいは新しい歌をつくる、そういうことを決めただけでも、世界に日本のそうしたオリンピック正常化というものに対する姿勢というのはわかるのですね。そういう点では正常化ということに本当に強い関心が向けられ、そして正常化へ日本がどんどんと運行していく。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 たまたまモスクワ問題というのは、その正常化はいま当面の間には合わないのだ、当面の間には合わないので、正常化の路線はずっと続けるから、このモスクワの問題に関していまの状況の中で日本だけが政治と関係ない関係ないと言ってもこれは現実的じゃないから、この問題はある意味で政治的な発言は認めてほしい、そういう国民に対するはっきりとした割り切った正常化の努力をしていく。私は、その辺のはっきりとした立て分けと努力というものがなされない限り、ずるずる時間がたって結論を出さざるを得ない、国民はもやもやする、はっきりしない様子が残ると思うのです。  時間がありませんから申しますけれども、たとえばオリンピックが本当にいまの状態から大きく改善されるまではしばらく日本オリンピックからお休みする、モスクワも行かないしロスも行かない、それでその正常化の努力を一生懸命やりましょう、このぐらいになって初めて、ああなるほどそういうことかとわかるのですね。そういう意味では、ぎりぎり理解をした言い方をすれば、正常化というものを強力に進める、その反面で当面の問題の処理についてさまざまな、いまの罰則の問題だとか、後で伺いますけれども漁業交渉に関する影響だとかいろんなことを、デメリットをなるべく少ないというふうに判断をするからこうだ、そう言うならわかるのですね。ごっちゃごちゃになっている。私は、そういう点でもう一歩突っ込んだ事態の分析が必要だ、こう思うのですが、官房長官、いかがですか。
  41. 伊東正義

    伊東国務大臣 御質問でございますが、オリンピックの正常化――正常化というのは政治的色彩からなるべく遠ざかるということが正常化という意味で御質問のようでございますが、憲章の改正というのは今度の理事会で決まったわけでございまして、なるべく政治色を薄めてということが憲章で出てきたわけでございます。これは世界の一つの傾向として考えられるわけでございますが、そういう問題とモスクワオリンピック参加するかどうかの問題をごっちゃにしないで、もう少し考え方をはっきりして結論を出すべきだという御意見でございまして、私どももこれは傾聴に値する御意見だと思います。まだ時期がありますので、そういう点をどう考えていくかということを参加決定するまでの間、もう少し検討させていただきたいと思います。
  42. 池田克也

    池田(克)委員 農林水産大臣おいでですが、この問題でソ連はわが国の日ソ漁業交渉に何らかの報復措置をする、こんなような含みのある報道を私見たことがあるのです。何もこの問題に限りません。アフガンを取り巻く経済制裁が今日行われている。私は、ソ連の側から見るならば、モスクワオリンピックわが国がボイコットしたとすれば、それについてソ連としてもこれは痛いでしょう。それに対する報復、制裁ということはあるし、それが一番出てきやすい部分が日ソ漁業交渉であって、その当事者は武藤大臣じゃないかと私は心配するのですが、全く心配ない、こうお考えでしょうか。
  43. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ、いまのところ北洋漁業に対して特にソ連側から何の影響も出てきていない現状でございますし、いまのオリンピック論議と私どもの北洋漁業、特にこの三、四月に交渉の始まる予定でございますサケ・マス交渉について影響が出るのではないかという御指摘でございますが、どうも私、いまの段階ではどういう影響が出てくるとかどうとか申し上げる段階ではございません。ただ、われわれ農林水産省といたしましては、今後とも北方漁業の維持安定を図っていくということは私どもの当然の務めでございますので、そういう方向で努力をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  44. 池田克也

    池田(克)委員 どうもよくわからないのですよ。要するに、心配するのが担当大臣の普通の心理ですよね、交渉に行くのですから。あらゆることが全部大丈夫だ、おれが行くのだから一切言うとおりになってくるのだ、私はそういうことはないと思うのです。あらゆる要素が心配の種であり、ソ連へ交渉団を送られる、あるいはそれについての指揮をおとりになる大臣としては、心配御無用という立場にはない。いまの世界情勢は、ソ連と交渉する者としてはしんどいのだ、これは本音じゃないですか。
  45. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これは向こう様がどう出てくるか、こちらは全くわからないものでございますから、私はいまの段階でどうもはっきり申し上げられないとお答えをしたわけでございます。たとえば、この間私ども、北方の、北海道周辺その他でソ連の漁船のために被害を受けたものに対しての損害賠償を強く要請をしておったわけでございます。金額的にはたしか四万八千円だったと思うのでございますが、網とか漁具を壊したというその補償に対して、初めて応ずる、こういうことをソ連側が正式に言ってきたわけでございます。そういうことを見ますと、必ずしも――いま御指摘のようなオリンピックボイコット運動とか、あるいは経済的ないろいろの問題とか、まだ出てきておりませんがそういうようなことがあるかもしれない、そういうこと、下手なことをしたらおまえの方の漁業交渉に非常に影響があるのではないか、心配じゃないか、こういう御指摘でございますけれども、たとえばそういう現象も出てきておるわけでございますので、どうも私ども、ソ連という国がどう出てくるのか全くわからないものでお答えができないわけでございまして、私どもとしては、とにかく何とか北方の漁業の維持安定を図っていくという従来の姿勢はより強く貫いていきたい、こうお答えをしたわけでございます。
  46. 池田克也

    池田(克)委員 ですから、そういう心配があるから、政府としては余り思い切って――JOCと九九%一致しているのだ、JOCに最後の判断をゆだねるのだ、オリンピックは行かない方が望ましいけれども最終はJOCだ、わかったようなわからないような答をしている。あらゆる国とのつき合いの中で、最小限に国益を失わないようにしながら路線を引いているのじゃないかと私は思うのですね。いまお話しのように四万何千円か初めてソ連が払ってきた。ではいままで一切だめだったということなんですね。そういう事態を見ても、本当に国際関係というのは大変むずかしい。また、いまおっしゃるように、向こうの出方が全くわからない。わからないで交渉する、こんな手探りなことはないと思うのです。  私は、そういう意味で、いまのお話まだまだお伺いしたいところですけれども、時間の関係でほかへ移ります。政府として、文部、外務両大臣もおいでですけれども、この問題についてなるべく早い時期に、選手もいることです、やはり国民にもわかる形で解決をされることを要望して、ほかへ問題を移したいと思います。農林水産大臣、ありがとうございました。  次の問題は、大学卒業生の就職の問題でございます。  ほかの問題でずいぶん時間をとってしまいましたので端的にお伺いしたいのですが、谷垣文部大臣、就職のあっせんというのを政治家としてめんどうを見られたことはあるでしょうか。
  47. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 ずいぶんと苦労をいたします。
  48. 池田克也

    池田(克)委員 これは恐らく、きょうここに御出席の各委員の方々もそれぞれ御感想をお持ちだろうと思うのです。文部大臣におなりになって、学生さんの就職で御苦労された経験から、何らかこれは手を打たなければならぬな、こうお考えになっていることはないでしょうか。
  49. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 大学の卒業を前にいたしましての学生諸君の気持ちを考えますと、いろいろなことを実は心配をいたしております。  すでに先生御存じだろうと思いますが、大体ことしの状況は、いままでのところは何とか全体的にこなせるのではないかという見通しを持っておりますが、各大学それぞれ工夫をいたしておるわけでございます。事務局に就職のためのあっせんをいたします課を持っておる、それぞれのところで大体そういう体制で進めております。国立は厚生課その他でやっているところが若干多いようでありますが、そういう状況でございますので、いろいろ心配をしながらやっておるというのが現状でございます。
  50. 池田克也

    池田(克)委員 私は、率直に言って、いまの学生さんが就職の話を持ってくる、そのケースの中にはいろいろなものがあると思うのです。こういうのは大学でやってくれないのだろうかな、あるいはまた、どこでもいいから何とか入れてくれ、あなた専攻があったのでしょう、自分が選んだ何何学部何学科という専攻があったのでしょう、そういうところと関係ないところでもいいのですか、いやいいのだ、こう言うのですね。要するにいまの大学の実情というのは、自分の職業と自分の進路ときちっと結びついていない。たとえば、予備校とか高等学校とかいろいろなところで模擬試験をやって、コンピューターではじいた偏差値で何点ぐらい出れば何々大学政治学部、何点ぐらいだったらば文学部。政治志向と文学とはずいぶん違うはずです。文学部なら入れます、政治学部はだめです、法学部なら入れます、こういうふうに出てくるのですね。政治と経済と文学とさまざま専攻が違うし、それが出てくる社会のニーズも違うはずですし、私は、たてまえとしては大学はそういう別の考え方を持って講座も編成していると思うのですが、学生側は自分の進路なんか考えないですね。入れるところに入っていく。実際、ぼくは大学を卒業したがどこか行くところないか、とにかくサラリーマンになりたいのだ、何とか私を入れてください。聞いてみると、大きいところがいい、東京がいい。一体いまの大学の中身というのは学生一人一人の人生観とか進路をどうとらえているのだろうかな、大臣、そう思いませんか。文部省の長という立場もおありでしょうが、一人の政治家としてどうでしょうか。
  51. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 御指摘のような点はつくづく感じることがよくございます。  もちろん一つには、学生自体がもう相当な年齢に立っておるわけでございますから、自分自身で判断をしていくそういう環境、またそういう自覚、これが必要だと思いますが、しかし非常に膨大な就職の広がりでございますから、やはり何らかのそういうものに対する整理は必要だと思います。それは先ほど申しました各大学における就職に対してのいろいろな世話、それがすべて大学の仕事ではございませんけれども、そういう必要があると思いますし、学生自体も、先ほど御指摘がございましたけれども、余り高望みをしないで、もっと広く自分の能力を生かせるような、そういう気構えが必要だと思います。  それから、もう一つ問題がありますのは、御指摘にはなっておりませんでしたが、いわゆる学歴偏重の――求人側と申しますか各会社側と申しますか、そういうところがもっと広く人材を求めるような態勢、単なるいわゆる指定校制度というようなことで言われているような問題はなるたけ避けていくような、そういう要請も私たちとしては産業界その他にもやらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  52. 池田克也

    池田(克)委員 いまの発言の中で確認しますが、膨大な学生に対して就職に対する何らかの整理が必要だ、こういうお話のように承りました。整理整とんという意味、つまり考え方の整理とか大学の法制的なそうした整理とかという意味ですか。
  53. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 私が申し上げましたのは、学生自体の方で、自分のこれからの進路というものに対して自分自身が整理をしていかないと、もちろんそれは非常に膨大なものですからわからぬことが多いと思います。それに対しましてのガイダンスと申しますか相談相手にはいろいろな諸君がなっていると思いますが、学校自体もそれを担当してやっていく必要がある、こういうことを申し上げたのです。
  54. 池田克也

    池田(克)委員 それは文部大臣じゃなくても言えるのです。要するに、いま私が伺ったように、政治家としていまの学生の就職のあり方についてさまざまな感想をお持ちだ。これは意見が一致したのですね。  そこで、文部大臣というお立場、そういう面に関しては世の中を変えられる立場にあなたはお立ちになっていらっしゃる。これは任期がどのくらいおありか私どもの推測することではありませんけれども、とりわけ総理大臣が兼務された重要なポストとして文部大臣におなりになった。しかも、自分の直接の経験から見てずいぶんと苦労をした、学生諸君にも望みたいことがある。それならば学生諸君に物が言えるのだ、文部大臣なのだから、大学を統轄しているのですから。それは限度があるでしょうけれども、学生諸君に対して、君たちは高望みするな、もう少し就職に対する自分の整理をしなさいと言える立場なのです。ここで私に答弁したようなことを、全国の国立大学の学長会に出ても、あるいは何らかの手段を講じてでもおやりになりますか。
  55. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 私は、これは整理をしてみますとこういうことになるのだろうと思います。  学生自体がもう少しきちんと自分の行くべき道の整理その他をしなければならぬ。しかし、それも社会の状況がわからなければできないことでございますから、そういう意味におきましてのガイダンスのようなものあるいは学校側におきましてのそういうあっせん、こういう必要があると思います。  それからもう一つは、先ほど申しました受け入れ側に指定校制度のような問題に拘泥しないような空気をつくっていく必要があると思いますし、行政当局の私たちとしてもそういう努力をしなければならぬ。  それから、労働省その他の職業の関係の問題をやっていただいておるところとの連絡等も、従来もやっておるわけでございますけれども、当然やっていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  56. 池田克也

    池田(克)委員 労働省のお話が出てまいりましたので、労働省にお伺いをしたいのです。大臣が御不在なので、どなたがいらしてますか、局長さんですか。  大学生の就職口といわれる大企業の求人数というのは、これから先五年ぐらいをめどにして横ばいなのか、ふえるのか、減るのか、大まかで結構ですが、お答えいただきたい。
  57. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答え申し上げます。  大学卒の就職あっせんというのは、職業安定法上大学が行うという立場から、私ども求人数というようなものの全数を的確に把握するということがいままで行われておりませんけれども、時折の調査等で一部、二部上場企業の採用計画というようなものを調査はいたしております。したがいまして、いままでの数字はある程度そういう限定されたものでつかんではおりますけれども、今後の見込みということになりますと非常に予測しがたい面がございますが、全般的な大企業の経営態度から見まして、これから先大企業の大卒に対する求人数がそうふえるということはちょっと考えられないと思います。まあ横ばい程度ではないかというふうに考えるのが適当だと思っております。
  58. 池田克也

    池田(克)委員 いま問題が一つありましたね。要するに、労働省としては大学の就職は職業安定法三十三条の二、これによって大学の就職課にげたを預けてある、したがって、労働省の職業安定の担当部局では、大企業からどのくらいの求人が来ているかはっきりわかってない、こういうことですか。
  59. 関英夫

    ○関(英)政府委員 御指摘のとおりでございまして、そういう意味での全数の把握を私どもの機関で行うということはやってない現状にございます。
  60. 池田克也

    池田(克)委員 これは問題ですね。労働大臣お帰りで、済みません、早速ですが、労働大臣、文教行政にお詳しいという方で、労働省においでになって大臣のお立場で、いまの大学生の就職の問題なんです。  先ほど来文部大臣にも伺ったのですが、いま職業安定局長からお話があったのですが、労働省としては大学生が行くべき大企業の求人数というものをつかんでない、こういういま局長の答弁なんです。これはどうですか、大学に一切任せて、あちらさん大人なんだからということで、どのぐらいの数でどう推移していくのかつかんでない、こういうことですが、これはそれでいいのでしょうか。
  61. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生御理解いただいておりますように、大学を卒業して就職をいたします場合には、先ほど来局長お答えをしたところであると思いますけれども、大学が職業紹介をしていく、それにできる限り労働省としてはたとえば職業紹介の情報でありますとか、あるいは大学のあるところが偏在をしておるわけでありますから、そういう意味では、全国的にいろいろな就職をしていきたいという卒業生のために、できる限りいろいろ地方での情報なども提供するようにいたしまして、大学が行う就職紹介に対してお手伝いをする、こういう立場に従来立ってきておりますので、そういう立場に立ってできるだけのことはしてきておりますけれども一基本的にはそういう形で進められてきておるということを御理解を得たいと思います。
  62. 池田克也

    池田(克)委員 私が聞いているのは、お手伝いするためにも、どのくらいのお手伝いが必要かということを考えるためにも、労働省として大企業がどのくらいの求人数を今後見込めるかということをつかんでないというのは、これは無責任な話です。わが国の雇用行政、労働行政の総元締めですよ。おかしな話ですな。これは無責任だ。
  63. 関英夫

    ○関(英)政府委員 先ほど御答弁申し上げました基本的な仕組みはございますが、私ども、その全数ではございませんが、動向をつかむために調査などもいたしております。たとえば五十五年三月卒の大卒者に対する求人動向について一部、二部上場企業、そういったものに対しまして調査をいたしまして、採用計画のある企業数がどのぐらいか、あるいはそこで採用予定している採用者数はどうかというようなことも調査いたしまして、たとえば五十四年三月卒と、五十五年三月卒に対します採用企業の数がどうかとかあるいは採用数がどうかというような調査はいたしております。ただし、これは全数ではございません。いま手元にある数字で申し上げますと、五十五年三月卒予定者に対しまして、採用計画のある企業数は八百五十九社、採用者数が四万九千二百一というような調査結果がございます。これは東京の上場企業千四百二十七社について昨年の九月一日現在の状況で調査した数でございます。
  64. 池田克也

    池田(克)委員 全数調査でない。さっき調査してないということだったのですが、つかんでないということだったのですが、少し出てまいりました。  時間がありませんので少し飛ばしますが、文部大臣にお伺いしたいのですが、大学の学生の数というのはこれからどうなっていくのか。これは求人とあわせて非常に重要な問題なんですね。私の伺ったところでは、私立学校法の附則十三項で、明五十六年の三月末まで大学の新設を認めない、こういうふうになっていたようですし、それを新しく法案をお出しになって延長される、つまりもう私立大学の学部や定員はふやさない、こういう御意向だと伺いましたが、そのとおりですか。
  65. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 お話の五十六年云々の、大学は新設を、ことに大都市圏においては新設、増設をなるたけ認めない、地方の大学はまだ認めることはございますけれども、大都市圏においては余り認めない、こういうことでございます。  それから、先ほどの大学の卒業の見通しでございますが、五十四年度におきます大学卒業生の数は大体五十四万少しございます。それで、その中で実際就職いたしますのは、いろいろあるようでございますが、四十万少しぐらいの数だと思います。それで現在、御指摘になりましたような、ある部門においては入学定数の増加を認めておるようなものもありますしいたしますが、片一方で大学の水増しの定員入学を認めておるようなものがございますので、そういうものはだんだんいま改善さして、実質に近い数に持ってこさしている。そういうことをいろいろ考えますと、今後におきます大学卒業生の数は停滞もしくは微増――微増というぐらいのところで落ちつくものだと私たちは考えております。
  66. 池田克也

    池田(克)委員 大臣、いま御答弁の中で、私立学校法の附則十三項というのは、私立大学の増員というのは認めないとはっきりしているのですよ。地方がどうでこうでとおっしゃっていましたけれども、大学局長いらっしゃったら、どうですか、この私立学校法の附則十三項というのは。
  67. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 御指摘の私学法附則十三項の規定は、御案内のように、文部大臣が大学設置審議会、私立大学審議会、両審議会の意見を聞いて、特に必要があると認めるもの以外は新増設を認めないということになっております。したがって、専門分野構成の問題であるとか、あるいは地域配置の問題であるとか、人材養成の問題であるとか、そういったことを考えて、特に必要があると認めるものについては認可をする場合があるわけでございます。全体としては量的な拡充は抑制をするということは御指摘のとおりでございますが、事情によっては認可をいたしてきております。
  68. 池田克也

    池田(克)委員 そういうふうに私は理解をしておりますし、全体として抑えていく。ところが、去年の十二月に発表された「高等教育の計画的整備について」という報告によりますと、昭和五十六年から六十一年までの向こう六年間に、国公立大学で一万四千人、私立大学で二万人、合計三万四千人の増員が妥当だ、こう述べているのです。これは、いまの法律の精神、求人の需給から考えて、もう大学はこれ以上できない、目いっぱいだという状況と真っ向から反対の意見というものがこういう報告に出てくるのですが、これは一体どういうことですか。
  69. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 御指摘の後期の高等教育の整備に関する計画は、五十一年から五十五年までの間進めてまいりました前期の高等教育の整備に関する方針をそのまま維持しようというものでございます。  前期の期間は、いま御指摘の私学法附則十三項というものも踏まえまして、できるだけ量的な拡大を抑えるということで対応したわけでございますが、その間に一応規模の増の目途としてとった数字が三万一千五百、約三万二千という数字であったわけであります。これは、それまでの高度成長の間に毎年ふえてまいりました高等教育の規模の一年分をやや上回る程度の規模でございました。それを五年間の計画規模にとって全体の量を抑える。  後期の場合には、前期の場合と違う事情は、前期は十八歳人口が百五十万人台で横ばいを続けましたけれども、後期の場合には、多少でこぼこはありますが、全体としては十八歳人口が増加の傾向に転じます。そういう状況のもとにおきましても、なお前期と同じような抑制の方針をとる。その全体の量的な拡充の範囲というものについて、いま御指摘の、定員で言えば三万四千、実員で言えば約四万の範囲内で、これからの高等教育の地域的な配置等の問題に対応していこうということでございます。したがって、この計画の示している実員で四万人程度の六十一年度までの拡充の目途の数というのは、むしろ全体としてはかなり抑え込んだ数字であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  70. 池田克也

    池田(克)委員 いまのお話ですと、確かに十八歳の人口がふえるわけです。ですから、それに伴って少しは門を広げないと、受験過密はもっとひどくなる。そういう面からも、片一方には学生数がふえるという一つの力関係がある、片一方には景気の動向から見て、いま局長さんおっしゃるように、大企業の就職というのはそう大きくふえない。私はここに問題があると思うのですね。やっぱり大学生というものは、いまのままほっておきますと、さっきもお話が出ているように大企業志向が強いですね。そして、ホワイトカラー、サラリーマンという志向が強い。そうすると、そこに求人というものと大学生を、これは当然入学させれば出ていくわけですから、この関係のすり合わせというものが私は必要になってくると思うのですね。重大な問題だと思うのです。  しかも、いま大学局長は、三万人から四万人、抑え込んで三万人ふえますよと軽くおっしゃるのですけれども、就職する方はたまったものじゃないですね。先ほど来申し上げているように、大学の就職課の人たちは、学生が入ってくる、入ってくるときはとにかくどこかへ入りたい入りたい、これだけですから、自分がどうなるのだか考えていない。さあ三年なり四年なりしてどこかへ入れてくれ。汗水流して企業に頭を下げて歩いて、開拓をして、就職の求人のビラを張って、面接、何とかかんとかいって毎年おさめている。もうこれ以上は大変だ、こういうのが私は本当の就職関係者の声だと思うのです。  私は、そういうようなことを調べているうちに大変おもしろいパンフレットを発見した。労働省が「大学卒業者の就職問題を考えよう」こういうものでお出しになったわけで、私、この中で非常におもしろいなと思ったのは、大学を卒業する必要はないとはっきり言っているのですね。「大学を卒業することの経済的メリットはますます小さくなってくるのではないでしょうか。このようなことを考えますと、中学、高校のそれぞれの段階で本人自身はもとより両親、家族をはじめ関係者のすべてが単に学歴のみを求めるのではなく、本人の適性と能力を見つめた上で、進路を決定することが望まれます。」その件に関しては私は正論だと思う。「学歴による賃金の格差は縮小しつつある」これによりますと、「大学四年間の学費等を金利を含めて考えますと、その投資効率は決してよいとはいえないという試算もあります。例えば、四年間の学費百万円と生活費二百四十万円とを三十五年間の複利計算で運用したとすれば五千万円となる計算になります。」要するに、親にしてみれば、あなた、お子さんを大学に行かせないでその分の月謝と生活費をいま定期預金に入れなさい、そうやって定期預金に入れていけば、三十五年間というと仮に二十五歳の子供が六十歳ということですが、その段階で五千万になるというのです。これは五十二年ごろの計算なんですね。これは私、かなりいまの社会において大きな問題提起をしていると思うのです。  確かに大学というものが経済的側面からだけはかるものではないことはよくわかります。しかし、ある面から考えれば、経済的側面がかなり重いのですね。いまの社会状況の中で大学へやるとすれば、四年間で大体一千万ぐらいの金を親は投じていくことになるんですね。そして、今度一千万というものをこうやって計算していけば一億何千万ということになっていくわけです。私はこういう点を考えて、この労働省がお出しになったパンフレット、なかなかおもしろいな、ずいぶん思い切ったことを言っているなと思うのですが、労働大臣、これは何年ごろ、何部おつくりになって、どういうところへおまきになったのでしょうか。
  71. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 五十二年につくりまして、三万部、全国のいろいろな職業紹介その他の機関に配付をいたしました。
  72. 池田克也

    池田(克)委員 もう少しこの問題についてお話を続けますと、要するに、大学を出ても仕事をちゃんと身につけなければ食べていけませんよ、こういうことも言っているんです。「最近の傾向として、大学・短大を卒業して、大学の専攻と異なる職業を見つけるため等の理由で職業訓練校へ入校し、技能や技術の習得に励む」人たちが東京では入校生の一五・九%を占めている。つまり、大学は出たけれども、特に仕事が適確なものがなくて、もう一遍職業訓練校に入り直して、そして「調理師、大工、左官、造園工などの技能を身につければ、収入も多く、自営すれば定年もありません。」私は大学を出て調理師になったっていいと思いますよ、あるいは大工さん、左官屋さん、結構だと思います。しかし私は、社会の需要の中で、大学というものをそういうふうにおとらえになる面と、そういうことならば初めから専修学校へ行かせた方がいいんじゃないかという父兄もいると思うのですね。このパンフレットは労働省としてどういうねらいでおつくりになったのでしょうか。私はこれはおもしろいと思っているのです、本音だと思っているのです。ねらいを教えてください。
  73. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 少し表現は、労働省の出したものでありますから、たとえば大学を出るより中学校や高等学校を出て実社会へ出ていった方がもっと得ですよとか、大学を出たってうまくいくとは言えませんよとか、表現はそんな感じになっておると思いますけれども、先生御理解いただいておりますように、いま文部省の方で進められてきた第三の教育の改革の理念というのは、やはり一人一人の児童や生徒、学生の個性と能力に応じて教育が進められるということであったと思うのですね。それが今度の教育課程の改定であるとかあるいは大学のいろいろなコースを設定していくというようなことの中で実現をしていっている。四二%を超える大学への進学率というのは、アメリカと並んで世界で最も高い数字を示しておりまして、教育が普及しておること、特に高等教育が大衆化したことは日本の国にとって非常にありがたいことだと思いますけれども、高度成長期以来の、みんな一流の大学を目指し、一流の企業を目指し、一番美人の嫁さんをもらって、外車に乗って通勤して、子供と一緒にどこかへ遊びに行くというお定まりの人生の設計というものは、もうそんな時代は終わった、それより本当に一人一人の人間の持ち味を生かして個性を発揮しながら、能力に応じてという言葉がいいか悪いかわかりませんけれども、自分の能力に見合った仕事を力いっぱい進めていくことが一番生きがいになるわけでありますから、そういうふうに教育の方でも方向が転換されているときに、労働省としても、自分の持ち味を生かしてひとつがんばっていきましょう、こういうことを呼びかけておるわけでございます。  私はおとといある結婚式に出ましたが、その新郎は中学を出て、国の職業訓練校で板金コースを非常に優秀な成績で技術を身につけまして、一流の板金屋としてがんばっているという長男、それから弟がいたけれども、どうしたと言ったら、大学を出てきてまだ就職が決まらないのでどうにもならぬから兄貴の板金屋でも手伝うか、こう言っておりますが、そんな話をおとといも聞きました。長男の技術を身につけていく行き方、学校は中学しか出ていないけれども、きわめて自信に満ちて、希望に満ちて社会生活を進めていく姿を見ましたときに、やはりこれからの社会のあり方というのは、人間一人一人を大事にしていこうと思えばなおさらのこと、個性と能力に応じた職業が選択され、落ちついた気持ちで生涯を送っていくようなことに対応していくことが、教育の面でも労働行政の面でも大事なのではないか、こういうふうに感じたところでありますが、そういった方向で労働行政を進めてまいりたいと思います。
  74. 池田克也

    池田(克)委員 文部大臣、このパンフレットについていかがですか。ごらんになりましたでしょうか。
  75. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 いま労働大臣からお話がありましたように、いままで何でも大学を出れば就職もしやすいし、世の中に出てもそれでずっといくんだという考え方が少しびまんをし過ぎておる状況であったと思います。しかし、こういうふうに大学なり高等教育の場所がずいぶん開放されて多くなってまいりますと、やはりもう少し本質的な問題を見詰めていくようなことになると思います。若いときからその人たちの能力が十分に伸ばせるような部門というものは世の中にはずいぶんあるわけでございますから、いまの労働大臣の御指摘になりました点あるいは労働省の先ほどお示しのパンフレットの趣旨は私はよくわかると思います。  したがいまして、大学なり文部行政の立場から申しましても、各学校の特色のあるものを多様化に応じましてつくっていく必要があると思います。それから、先ほどの専修学校等の問題も、地についた技能を持つ意味におきましてこれから重視をしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  76. 池田克也

    池田(克)委員 特色のある大学をおつくりになる、これは未来の話ですね。確かにこれから学校は余りつくらない、ぎりぎりに抑える、私はそれはいいと思うのです。  これからの問題です。いままでの大学は大体毎年三十五万くらいの卒業生を出してきている。その中の二十七、八万が就職をしている。この人たちにとっていま何らかの変革をしなければ、毎年毎年吐き出されてきて、その人たちが会社訪問に列をつくって、企業側はいい学生がいないと言っているんです。企業側から見ますと求人難だと言っている。今度、学生側から見ると就職難だ。これはニーズのずれなんですね。  ここにあるのは、大臣御存じのとおり「厚生補導」という文部省が出している雑誌です。この中に日大の就職部長さんが原稿を書いていまして、「「学生にとっては就職難・企業にとっては求人難」という悲しむべき相互のニーズのズレを、どう調和させてゆくべきか」、企業の方は大ぜい面接はするけれども、もう欲しいのはほとんどいないし、それは何らかの手づるで別に押さえてあるみたいなことを言っている。見当がつく。今度は、大ぜい来る人たちの中にはなかなかいいのがいない。この大変な矛盾ですね。親が費用をかけているのは入学時に百万、生活費が年百万、月謝が百万、一千万かかっている。そうして親が仕送りして、東京へ行った、大学を出た、ちゃんと自分で何とか一人前になって食べていくだろうと思って、さあ卒業かと思っていると田舎に帰ってくる、仕事がないんだ、何とかしてくれとUターン現象。  私は何も学問、教育の場である大学が必ずしも就職教育だけとは思いませんよ。思いませんけれども、進学率が三十数%にもなっている今日、昔のような、大学は学問と教育だと言っているんじゃだめだ。未来の改革はいいです、特色ある大学づくりは結構です、大学も抑えようということも。この事態を変えていくためにいまの大学に何らかの手を打つ必要があると私は思うのですね。  まず、就職問題を担当する労働大臣から、大学に対してどういうことをお望みになりますか。何かできると思いますか。     〔村田委員長代理退席、瓦委員長代理着     席〕
  77. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 大学はそれぞれ大学の目的に向かって大学教育をお進めいただいておるわけでありますけれども、いま申し上げてまいりましたように、一人一人の学生の個性と能力に応じて生きていく正しい職業観であるとか労働観といったものを植えつけていただくような、これは中学、高校の段階からそうでありますけれども、ぜひそういった一面を出していっていただきたいと思いますし、それから、ともすると大都市に集中している大学が――非常に地方のいい大学が育ってきているという今日の実情に見合わせて、その地方地方の進学者が自分たちの郷里、地元の大学を大事にして、そこで勉強して、地元の指導者になってがんばっていくというようなことも、これからの大学と地域社会との関係で非常に大事なところだ、こういうふうに思いますし、労働省の側からも、いろいろ考えておることを申し上げたいこともございますが、今後、文部大臣ともよく御相談を申し上げまして、先生の御指摘のような方向が、実際に地について、かつ実っていくように行政の中で努力をしていきたい、こう考えておるところでございます。
  78. 池田克也

    池田(克)委員 いま労働大臣の御発言の中に、文部大臣とも相談をするとおっしゃった。これは非常に重要なことだと思う。文部大臣いかがでしょうか。労働大臣とこの大卒者の就職の問題について専門にじっくりと協議するということはどうでしょうか。私は必要だと思うのです。
  79. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 いま御指摘になりました問題、私が伺っておりまして、二つ問題があるのだろうと思います。  一つは、先ほどの学生の能力、素質をどういうふうに改めていくか、あるいは需要に向くような、ニーズに応じたものにしていくか、これは大学本来の目的もありますからいろいろ問題があろうかと思いますが、しかし、それは非常に重要な御指摘でございまして、私たちも十分検討しなければならぬ問題だと思います。  それからもう一つ、当面の就職についての問題が現実の問題としてあると思います。これは従来も、いろいろ各産業団体の諸君だとかあるいは労働省の諸君にお集まりを願いまして、就職問題の懇談会等を開いておるわけでございますが、こういう問題におきまして、労働省の方との連絡を強くしていかなければなりません、従来もやってまいりましたけれども。さらにそういう中から、最初に御指摘になりましたような、教育に対しましてのもう少し深いいろいろな対応の仕方が生まれてくればありがたいことだ、こういうふうに考えております。
  80. 池田克也

    池田(克)委員 要するに私の伺いたいのは、以前にもたしか海部大臣のときでしたか、青田刈り等の問題で労働大臣文部大臣と協議されております。いま労働大臣側から文部大臣とも相談しますという話が出たのです。文部大臣はそれに賛成して、お二人でこの問題について協議されるお考えはありませんか。
  81. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 これは当然御相談をして協議してやっていかなければならぬと思います。ことに御指摘になりましたいわゆる青田買いのような問題、採用の時期、試験の時期等の問題は、すぐ目の前にやっていっていける問題でありますし、あるいは指定校制等の問題もあろうかと思います。そういう問題につきましては、十分協議をしていい結果を生むようにしなければならぬと考えております。
  82. 池田克也

    池田(克)委員 自治大臣においでいただきながら大変お待たせしてしまったのですが、公務員の就職の問題について、大変短い時間ですが、お伺いしたいと思うのです。  公務員の就職というのは、今日、安定志向が学生に強いものですから、非常に就職先として期待されておるわけでございます。公務員の採用のあり方なのですが、人事試験研究センターというのができて、地方の公務員試験の出題をされて、大体期日も統一されている、こんなふうに伺っておりますが、実情はどうでしょうか。
  83. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 採用試験の方は、先ほど御質問にございましたように、一番いけないことは青田刈りだと思います。したがって、この点については、文部省が労働省と御相談になって私どもの方にそういう御通達をいただきますから、それによって指導しておりますので、どこの団体も大体十一月以降三月ごろまでの間に採用試験をやる、こういうようなことになっております。  それから試験のやり方で、いまセンターの問題がございましたけれども、何といいましても試験は公正で、しかも合理的なものでなければなりませんので、これは大変専門的な知識が要るわけです。そうしますと、地方団体は三千三百あるわけですが、やはりそういった専門職の人は数が少ないということになりますので、そのセンターにいろいろな点をお願いもし、御相談もした上で、その試験センターで検討していただいたもので試験を実施する、大体かようなやり方になっているように思います。
  84. 池田克也

    池田(克)委員 この試験センターができて期日が統一されたということが全部ではないのですが、一人の学生がいろいろな府県を受けるチャンスが限られてきてしまったわけです。いままでだったらこの日、この日、この日と幾つか受けられたのでしょうが、一律同じ日にぽんとやる。そういう影響か、私の調べた中にそういうことも出てきたのですが、中級、初級へ大卒が来る。特に、このデータなんかによりますと、都道府県の中級などは約六割から七割が大卒になっていますね。本来短大卒を程度とするのでしょうが、来ている。初級も一割ぐらい大卒が来ている。この現象は、私は余り好ましいことではないのじゃないかと思うのですが、どんなものでしょうか。
  85. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 確かに初級であれば高校卒、中級であれば短大卒というようなそれぞれの学力に応じての試験をやっているわけですから、制度としては大学卒業者が中級なり初級なりを受けるということを期待しておるわけではございません。したがって、一般論として言えば、大学卒業者は上級職を受けてもらいたい、こういうことでしょうけれども、これは国家公務員につきましても現在禁止していないわけですね。現実にどうなっておるかといいますと、四十三年と五十二年を比較しますと、都道府県が四十三年が二二・三%で、五十二年が三七・二%です。つまり都道府県で見ますと、現在の大学進学率と大体似ておるのです。したがって、大学卒業者が中級、初級を受けることによって、短大卒なりあるいは高校卒の人たちの進路がふさがれるということになると、やはり私は問題があろうと思いますが、いまのところ県の段階でその程度。それから指定都市以下市町村等になりますと、大学の進学率よりはよほど大学卒の採用者の割合が低いのです。  したがって、現在の段階でそれを一律にやめろという時期ではまだないだろうと思います。一般的に言いますと、学力によって能力は別段そう違うわけではありませんけれども、市町村等に行きますと、高学歴者がもう少し採用されてしかるべきであろう、かように考えておりますが、いまの段階は、自治省としてそれを制約するというような考え方は持っておりません。
  86. 池田克也

    池田(克)委員 いまの自治大臣のお考えは、大体進学率と見合っているから、ある年代のある人たちが、片方は大学を出、片方は高校を出て初級、中級へ来る、こうお考えのようですが、私は逆に考えて、だんだん試験を受けてみるとみんな大卒だな、結局大卒でないと、自分も大学へ行ってこの試験を受けないとついていけない。高校卒で就職、公務員試験を受ける場合、この問題は方向としてはっきりしておくべきだと思いますので、そういう若干の変則的なこともあるのかもしれませんが、全体として中級、初級というものはやはり短大卒、高校卒になっているのですから、それをはっきりして――どんどん進出してきている、それによって高校生がやはり大学に行かなければ一人前になれないのかなと思って、どこでもいいから大学へ行く。それは全体の国民の水準が上がるのですからいいと思いますよ。しかし就職、経済的負担ということを考えた場合に、中級、初級についてはもうちょっと整理しておく、絶対だめというのではなくて、少なくとも意識としてこの程度にしておけ、これから先は余りふやすな、いまおっしゃるとおりです。いまのうちは心配ないという御答弁ですが、そういう一つの配慮というものが必要ではなかろうか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  87. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私も一般論としましては先生のおっしゃるとおりだと思います。私が先ほど申したのは、まだ現実がそこまでいっていないからいまたちまちどうということを考えていないだけだ、こう申し上げたのですが、やはり日本の社会全体に流れておる学歴社会といいますか、それの弊害から直さないといけないのじゃないか。もうここまで時代が来れば実力本位ですべて考えるべきだ。したがって、御家庭も子供さんの教育に当たっては本当に子供さんの能力その他を見て、そして単に大学さえ出ればいいのだといったような考え方は直していかねばいかぬのじゃないか。御家庭もそう考えていただくし、同時にまた、採用の側といいますか、世の中全体もだんだんそういう風潮に向かうように誘導すべきがいまの時期でやらなければならぬことだろう、かように考えます。
  88. 池田克也

    池田(克)委員 時間が参りましたのですが、最後に一言だけお聞きしたいと思うのですが、先ほど来いろいろと学生の就職の問題をお伺いしてまいりました。きょうは郵政大臣にもおいでいただいたのですが、KDDの未払いの問題を取り上げたいと思ったのですが、ちょっと時間がございませんので別の機会にさせていただきたいと思うのです。大変恐縮でございました。  最後に、先ほど文部大臣と労働大臣とでこの学生の就職の問題についてお話しになる、テーマが幾つか文部大臣から挙げられました。私はそのテーマについては特にどうという考えは持ちません。     〔瓦委員長代理退席、委員長着席〕 大枠として大学の学生の就職の問題についてぜひ幅広い観点から御意見の交換をしていただいて、そして両方のお役所が力を合わせて、できれば自治大臣にも公務員の就職の問題も貴重なものですから私は入っていただきたいと思うのですが、当面労働、文部でそういう一つの協議というものをお始めになっていただきたいと思うのです。確認ですが……。
  89. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 御趣旨はよくわかります。そういうふうな進め方をしてまいりたいと考えております。
  90. 池田克也

    池田(克)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  91. 田村元

    田村委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次に、宮田早苗君。
  92. 宮田早苗

    宮田委員 原油の三十ドル時代を迎えて、わが国経済は第一次石油危機直後のあの狂乱物価を再現しかねない環境にあると思います。私は、日本経済の根幹を揺るがせているエネルギー問題を中心にして質問を展開したいと思うわけですが、関係大臣の時間の都合もございますので、最初に物価、賃上げ問題から質問をいたします。  日本銀行は本日より公定歩合の一%引き上げを実施したわけであります。これなどは政府が現下の卸売、消費者物価の異常な上昇を容易ならざる事態、現象としてようやく受けとめ始めたという証左と言えるわけであります。折しも民間企業に働く労働者の賃上げ要求案が出そろう時期でございますが、私どもが目下最も注目しておりますのは、年度末を目前にしての消費者物価の動向でございます。いわゆる春闘相場を形成する金属労協の賃上げ率が八%基準に集約されておるわけであります。この根拠は、組合が明らかにしておりますように、実質賃金水準を維持するため過年度の消費者物価上昇率、つまり政府見通しは四・七%以下です、これに生活向上分をプラスした要求なんです。インフレ再燃が危惧される中での後追い的な賃上げでございますだけに、コストプッシュ要因、ひいてはインフレの火つけ役にはならないという意思表示でもございます。労働組合の社会的責任を果たそうとする姿勢にこたえるためにも、物価抑制に政府は一段と責任を持って取り組まなければならぬと思うわけですが、まず政府の決意のほどを示してほしい。同時に、見通しをお伺いいたします。
  93. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えいたします。  ただいま宮田委員指摘のとおりに、今回の公定歩合の引き上げは、これはもう物価安定ということを一番大事な政策として実行せられましたこととして、私は金融当局に心から敬意を表しておるわけでございます。  さて、私どもの責任はますます重大になってまいりまして、本年度の年度末において年度を通じての消費者物価の上昇率を、当初は四・九というふうにわれわれは見通しておったわけでございますが、これを四・七、それよりも内輪におさめ得るということをだんだんと検討いたしまして、ただいまのところは若干野菜価格その他、また卸売物価の消費者物価への波及等の問題がございますけれども、何とかして四・七におさめ、なおかつ来年度の見通し、これは六・四というふうに打ち出しておるわけでございますが、これはまた一層この卸売物価からの波及とか、あるいは公共料金の値上げ問題等で非常にむずかしいわけでございますけれども、今回の金融当局の英断、私どもの各省庁、また国会その他のいろいろの御協力をいただいて、これをぜひ達成したいと考えております。  私が申し上げるまでもなく、諸外国に比べて、日本のこの消費者物価の安定は、労働者の方々、また経営者の方々の良識ある賃上げ、なだらかな賃上げということが一番大きな要素になっております。決定的な要因になっております。このことを高く評価して、ただいまのような決意を申し上げてお答えにかえたいと思います。
  94. 宮田早苗

    宮田委員 もう一つ決意を表明していただきたいのは、御存じのように昨日から今日にかけて政策推進会議とか金属関係の労働組合とか、いろいろな労働団体と政府・与党との話し合いが続けられておるわけでございまして、その際、労働組合は労働組合なりに政府に対しまするいろいろな要求をするわけでありますが、問題はこの労働組合の立場ということの認識について、いまも長官お答えになりましたが、七〇年代という十年間のあの苦境を乗り切って、いまや世界で西ドイツと日本が一番安定をしておると言われておるわけでありますが、そういう安定をした最大の原因というものの探求というものをしなければならぬ。労働組合の力というものがあずかって大であるというふうに私は思います。  同時に、八〇年代に入ったわけでありますが、八〇年代といいますのは、御存じのように、七〇年代より以上に厳しい諸情勢が待ち構えておるだけに、これを乗り切るためにさらに労働組合の立場というものをより認識する必要があると思う。昨日からきょう、あるいはまた最近頻繁に話し合いがされておりますだけに、その話し合いに臨まれます態度、その点もう一遍、労働大臣もおられますので、お二方にひとつ決意の表明をしていただきたいと思います。
  95. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 御指摘のとおりに考えております。  実はこの御質問の後、官房長官、労働大臣とともにまた組合の方々にもお目にかかることになっております。私も全くいま宮田委員指摘のとおりに考えております。イギリス等の例と日本の例を比べますと、労使の方々が良識をもって大所高所からの判断によって賃上げ交渉というものを合理的にお決めになっておられる、この実績というものは本当に高く評価すべきものと心から敬意を表しておるわけでございます。私どもも、そういう方々のいままでの非常に貴重なパフォーマンスといいますかこの実績に対しまして、十分これにこたえるような物価対策を進めていかなければならぬという決意を一層固めておるわけでございまして、今後ともいろいろと御指導、御教示を賜り、私どものこの実行にひとつ国を挙げての御協力を願いたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  96. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 労使のお話し合いあるいは関係につきましてもいろいろ歴史的にございましたけれども、労使がそれぞれに立場を自覚をし合う時代、それぞれに立場を理解をし合う時代、そしてさらに信頼と理解の上に立って話し合いを進める時代、今日はまさにそういう時代に入っておるのではないかというふうに考えます。日本経済の運営をどう持っていくか、あるいは日本の国を取り巻くいろいろな情勢等をどう把握するかということについて労使がそれぞれの立場で、良識のある話し合いが進められていくことを心から期待しておるものでございます。  なお、先ほど来の先生の御指摘のように、特に今日の一番大きな政治課題は物価を安定をさせることである、こう考えておりますが、一方で公共料金の問題などもいろいろ出ておりますので、あす産労懇を開きまして、電力側あるいはガス業界の代表の方からいろいろ事情等の説明も受けて、公益側、労使側、皆それぞれの立場でいろいろ意見を持っておりますけれども、ひとつ十分研究し合い、良識のある話し合いが進められていくように努力をしていきたい、こう考えておるところでございまして、特に先生の御指摘の線に沿って今後とも経済企画庁とも十分連絡をとり合いながら進んでいきたいと思っているところでございます。
  97. 宮田早苗

    宮田委員 政府の決意のほどはわかったわけですが、先ほど私は日銀の公定歩合引き上げ措置を歓迎したわけでございますが、政府の対策がやはり後手に回っている、こう思うのです。そのいい例が、消費者物価をつり上げてまいりました野菜に対する何ともどろなわ式の緊急対策です。秋野菜から冬野菜の高値にさんざん悩まされておりまして、いまさらという主婦の実感ではないか、こう思うのです。  打つ手が遅いことに関連して申し上げたいのでございますが、石油の高騰、それから電力料金の大幅値上げ申請に連動して、素材産業から二次加工製品段階ですでに相当の値上げの動きが表面化しておると思うのです。政府はこのような事態に直面して、以前、あの狂乱物価時に、物価担当とも言えます副総理を置いた経験を持っているわけでございますが、各省庁まちまちの物価対策から、政府一丸となって取り組むべき時期に来ておると思うのですが、この点はどうお考えですか、お聞きしたいと思います。
  98. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  物価の安定ということが、国民生活安定の基本であり、経済発展が秩序正しく行われる基本でありますことは先生のおっしゃるとおりでございまして、政府におきましては経済企画庁長官が中心になりまして物価問題と取り組む、関係閣僚会議も開くということをやっているわけでございまして、いま野菜のことについて御指摘がございましたが、私どもとしましては物価の安定が何より大切な問題だという認識のもとに、経済企画庁を中心にして取り組んでまいる決意でございます。
  99. 宮田早苗

    宮田委員 私は、春闘に関連をいたしまして、年度末四・七%の消費者物価上昇率を何としても守るべし、こう申し上げたわけですが、五十五年度の目標自体も問題だ、こう思うのです。政府は五十五年度の経済見通しの中で消費者物価上昇率を六・四%としておりますが、それはそれとして、五%以下という七カ年計画に沿って、年度末も五%以下に抑えるからあらゆる分野で国民の協力を仰ぎたい、これくらいの決意を示すべきじゃないか、こう思うのですが、長官どうですか。
  100. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 新経済社会七カ年計画では、その期間において消費者物価上昇率を五%程度にする、これが最も望ましい一つの計画の見通しになっておることは御指摘のとおりでございます。ところが、あの計画をつくりました直後からこういうエネルギー関係の思いがけない事態が起こりまして、しかし五十四年度は、先ほど申し上げたように、またいま宮田委員指摘のように、四・七%におさめる、この努力をいたしたわけでございますが、来年度はどうしても五%ということは無理でございますので、六・四%というふうにいま打ち出しておるわけでございます。しかし、これを死守したいということは先ほど来繰り返し申し上げたとおりでございます。  なお、今後の六十年までの期間においてはどうかという点につきましては、エネルギーの関係についても、ことしは通産大臣を中心に、予算の面でも特段のいろいろの努力が払われておるわけでございます。内外の情勢に対処して最善の方策を講じながら、エネルギーについてもできる限りその制約を克服いたしまして、安定した成長に持っていくことが私どもの理想でございます。今後とも五%という一つの中長期の目標達成のためにはあらゆる努力を払っていきたい、かように考えますが、さしあたり五十五年度については六・四%という目標で努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  101. 宮田早苗

    宮田委員 長官御苦労さまでした。よろしいです。それから労働大臣何か退席ということですが、よろしい、後からまたお願いします。  官房長官おいででございますので、さっき答弁をされましたことに関連して、あのときには副総理という立場をおつくりになって狂乱物価に対処されたわけでございますが、今回はそれ以上にさらにゆゆしき問題に発展しそうな傾向に立ち至ったのじゃないか。いま後手後手と言いながらも、きちっとした手を打つ必要が当然にあろう。そのための各省庁間の対策が、どうもそれぞれであって連携がなかなか密にいかないのじゃないかという批判もまた一方ではあるわけでございます。こういう批判にこたえる意味で、各省庁連携をしながらこの物価問題に対処する方法を、いままでその点に立って実行されたと思うのですが、これからもおやりになる必要があると思いますが、その点について、経過とそれから今後の方向をお答え願いたいと思います。
  102. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど御答弁申し上げましたとおり、正示経済企画庁長官を中心にしまして物価の経済閣僚懇談会を開いて各省の措置がそごを来さぬようにということでやっておるわけでございます。特に担当大臣を別に決めるということでなくて、私どもは、有能な経済企画庁長官を中心にしまして、この関係の閣僚会議を活用して、大平内閣の総力を挙げて物価問題と取り組むという姿勢でやってまいりたいというふうに考えております。
  103. 宮田早苗

    宮田委員 エネルギー問題について、大臣お見えでございますので御質問します。  世界のエネルギー情勢は、サウジアラビアまたイラン等産油国の生産動向から依然供給量と価格高騰の不安にさらされておるということなんです。わが国もまた政治、経済、あらゆる分野がこの石油の量と価格で動かされてしまう宿命とも言うべき状態にある、こう思います。そこで私は、石油消費国の国際協調のあり方、現下の国民の最大関心事とも言うべき電力料金値上げ、そうして代替エネルギー開発という三点に問題をしぼって総理――総理はお見えになりませんが、大臣に所見を承りたいと思うのです。  まず第一点は、IEA、国際エネルギー機関は、昨年十二月の閣僚理事会で決めた石油輸入量の上限一日当たり二千四百五十万バレルを百四十万バレルさらに削減する方向で、特にアメリカがこの案に積極的だということですが、そういう方向で検討されているという情報がございますけれども、これは事実かどうか、その点をお答え願いたい、こう思います。
  104. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 昨年の十二月十日だと思いましたが、パリでIEAの会議が開かれまして、私も出席いたしました。その会議の開かれる前にお話のような提案が米国からなされたやに伺っておりますけれども、その会議ではそういう議題はございませんでした。いま新聞等でまたそういう提案があるやにも出ておりますけれども、確報はございません。いま三月下旬ごろに予定されておりますIEAの閣僚理事会そのものも三月中に開かれるかどうか、これも実は危ぶまれるような状況でございまして、ただいまはむしろ削減される場合の方程式と申しますか、調整方式をどうするかといったような検討を常任理事会で進めておるように承知してございます。
  105. 宮田早苗

    宮田委員 そうすると、三月二十日過ぎに閣僚理事会を開催するという方向が考えられていたわけですけれども、これは見送られるということなんですね。
  106. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 まだ確定しておりませんけれども、どうも延びるんじゃなかろうかという公算の方が強いように承知してございます。
  107. 宮田早苗

    宮田委員 IEAでの協議はさておくとして、ことしの一日当たり五百四十万バレル、これを八五年の六百三十万バレルという輸入目標が達成できるかどうかの不安がある。この要因はサウジの減産とかイランの政情不安、さらには非OPEC産油国の輸出余力に多くを期待できない等々、不安要因を数え上げたら切りがない、こう思うのです。五百四十万を確保できないことも想定しなければならぬと思うのですが、その場合五十五年度の七%節減目標の見通し、あるいはまた新たな政策が必要となると思うのですが、これに対する政府の対処の仕方をお聞きいたします。
  108. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お話のように五百四十万バレル・パー・デー、これが去年の暮れのIEAで決まりまして、国としてはそれ以上はいけませんぞ、それだけはぜひ確保しなさいということで決まっておるわけでございますけれども、この数字を基礎にいたしまして、そしていまの七%節約というものをもって、いま経済見通しとしております経済成長四・八%でございますか、これが成り立っておるわけでございますので、この五百四十万バレルというものが欠けるということは、日本にとって、見通しとしては今後大変重大な問題になるわけでございますから、私どもといたしましては、何としても決められました五百四十万バレルは確保いたしたいということで努力中でございます。  世界全体の今年度の油の需給見通しは、IEAの計算によりましてもまずまず供給が少し上回るような想定になっておりまして、オーバーオールな需給関係というものはそれほど心配してございません。しかし、お話のように流通過程におきまして、メジャーから入っておりました石油が、産油国がメジャーに対する供給をカットしてきつつありますので、流通体系は大分変わってまいります。私どもといたしましては、それにかわるものといたしまして政府政府あるいは自主開発あるいは直接取引等の、メジャーを通さないで多方面から入手することも必要だと思いまして、ただいま一生懸命努力中でございます。ただいまの見通しでは、いろいろ従来の、去年の供給量を上回るというふうな、あるいは新しく供給してくれるという地帯もございますので、備蓄もございますし、供給量そのものには不安はなかろうというふうに考えてやっております。
  109. 宮田早苗

    宮田委員 もう一度節約の問題について。エネ庁の方お見えと思いますが、五%目標ということについてはすでに達成されておるというふうに聞いておりますが、さらにその上、七%五十五年度に削減をしなければならぬということについて、果たしてこれが可能かどうか。可能でないと可能になるような方法を考えなければいかぬと思うのですけれども、そういう点について長官どうですか。
  110. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 五十四年度の五%節約の目的は、先生もよく御承知のとおり、供給不安に対します先進国の対応ということでございまして、昨年の三月にIEAで先進国が協調的に実施を決めたわけでございまして、わが国では五%の節約を前提といたしまして原油ベースで二億八千万キロリッターの輸入を行うということでございまして、量も二億八千万ちょうど入ってまいりました。それから一方消費の方について見ましても、おおむねマクロ的には五%の節約が達成されたものというふうに思っております。ただ、私どもが進めておりますいわゆる省エネルギー運動につきましては、アンケート調査等で調べましても達成率が八四%程度ということでございますので、マクロの議論とミクロの議論が必ずしもかみ合っていないというところに若干の問題点はあろうかと思います。  そこで、いま御指摘の七%の意義でございますが、五百四十万バレル・パー・デーという輸入目標でございますから、昨年とことしが全く同じ量の輸入しか行われないということでございます。実数で申し上げますと二億八千万キロリッターになります。そこで経済成長率四・八%という前提に立ちますと、原油の輸入量が一定である場合にやはり成長を保つためには弾性値をある程度低下しなくちゃいけない、こういう宿命がございます。そこで私どもは七%の節約を打ち出したわけでございますが、昨年の五%は実数で申し上げますと千五百万キロリッター程度の削減でございます。それに今回はさらに五百万キロリッターぐらいの上乗せをいたしまして二千万キロリッター程度の節約を図ろうということでございまして、プラス分が五百万キロリッターでございます。  それをどういう方向で達成するかという御質問でございますが、大きく分けまして、民生用で二百万キロリッターぐらいの節約を図ろう、それから産業用で三百万キロリッターの節約を図ろうということでございます。民生用の二百万につきましてはいろいろやり方があるわけでございますが、直接的な効果を期待いたしておりますのは、暖房の十九度Cから十八度Cへ下げるということでございまして、これによりまして二百万キロリッターの削減を期待いたしているわけでございます。それから産業用につきましては、一般産業用の燃料転換、これは主として石炭への転換でございます。それから電力会社におきますところの燃料転換、そういうものを期待いたしまして三百万キロリッターの削減を図るということでございまして、合計いたしまして五百万キロリッター、七%の節約はそういう方法で達成をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  111. 宮田早苗

    宮田委員 石油の供給ルートの構造変化の問題についてですが、これにどう対処していくかが重要な政策課題となってきたと思います。つまり、対メジャー、対産油国、さらには自主開発原油に対する考え方等、従来の考え方や手法でいいのかということなんです。  OPECの原油価格が野放し状態となった結果、メジャーのわが国の外資系と民族系石油企業への対応が変化して、企業間格差が生じようともしておる、こう思うのです。また、産油国がわが国の石油企業の株取得を迫るといったことも報道されておりましたが、これらの問題に政府はどう対応されていかれるのか、お聞きをします。
  112. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先ほども簡単に触れておきましたけれども、お話のようにメジャーからの原油は大幅に削減されつつございますので、政府といたしましては、その対処方法といたしまして、まずDD取引、直接取引を最大限にふやすように努力をして、同時にまた、いまお話のございました政策石油、すなわち自主開発あるいはガバメント・ツー・ガバメント、政府政府の原油の取引、これを中心にいたしまして今後進めてまいりたいと思っております。
  113. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 原油の流通形態につきましては、ただいま宮田先生から御指摘のございましたように、この一年間で相当大きな変化があったわけでございます。いわゆるメジャーあるいはいま大臣お答え申し上げました直接取引、こういうような形態の変化が一つございますが、別の次元で考えました変化といたしましては、いわゆる政府公式販売価格で売られますものと、それ以外で売られますいわゆるスポットと称するものでございますが、この二つの区分があろうと思います。  そこで、先ほどの通産大臣の御説明に補足をいたしまして事務的な数字を申し上げますと、五十年度はおおむねメジャーから七割程度買っておったわけでございまして、直接販売が約一四%程度でございます。残りが自主開発原油というものでございましたが、それがだんだんと変化してまいりまして、たとえば五十四年の十二月で申し上げますと、メジャーが半分を切りまして四九・六%ということになっておりますし、それからDD、GGといいますいわゆる直接取引の分が四〇%、それから自主開発原油が約七%、こういう変化をしておるわけでございます。  それから、もう一つ別の観点で申し上げました政府公式販売価格で売られましたものと、それからそれ以外のつまりスポットでございますが、こういう比率を申し上げますと、昨年十二月末の現在で八六%が政府公式販売価格でございまして、残りの一四%がスポット物ということでございます。  そこで、こういう形態にどういうふうに対処していくかということでございますが、先ほど通産大臣が御答弁申し上げましたとおりに、メジャーの大体五割程度のシェアというものは、これはこれなりの水準で推移していくのではないかという一つの期待はございますけれども、別途の観点でDD、GGの直接取引につきまして重点を置いて、そういう分野の開拓をしてまいりたいというのが主たる願いでございます。  それからもう一つの観点のスポット物の動きにつきましては、昨年の十二月をピークにいたしまして、ことしに入りましてから急速に価格が下落をいたしておりますので、それに伴いましてスポット物の販売量も若干低下をいたしておりますので、スポットにつきましてはできるだけ厳正な取引をしましてこのシェアをできるだけ下げていく、こういうことが石油政策の一つの課題になっているのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  114. 宮田早苗

    宮田委員 石油問題につきましては、御答弁されましたように非常に複雑多岐と言っていいほどの状態にございますだけに、まず新エネルギーの研究開発、そして実用化、しかしそれまでは原子力とか石炭、LNG等で増大する石油の穴埋めを図っていかなければならぬと思うのです。  そこで、私はその中の一つ、石炭対策について二、三お伺いいたしますが、近年石油火力発電の見直し機運が高まっております。総合エネルギー調査会の石炭供給目標でも、年々そのウエートを高める政策目標を掲げておるわけであります。私どももその必要性を認めているところなんですが、主として海外炭に依存するこの政策は、机上の計算ということにもなりかねない点が幾つかあると思うのです。海外炭の開発、輸入体制をどうするかがまず第一点です。  次に、液化の実用化までの大型石炭専焼火力には、過去の石炭火力時代とは違った環境問題といいますか、大きく違った時代の背景があると思うのです。つまり脱じん、脱硫、脱硝、灰処理、こういう技術の確立等が重要だと思いますが、個々の技術が未熟であったり、トータルシステムが開発されていない現状をどう打開していくか、これもまた大きな問題でございます。  そして、最終的な液化技術への取り組みというナショナルプロジェクトとどう取り組んでまいるか。  この三つについて御答弁願いたいと思います。
  115. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 まず、石炭の輸入問題でございますけれども、お話のように大変重要な問題だと思います。海外石炭の開発に関しましては、お話のように今度できます機構が主たる任務といたしまして措置をしていくつもりでございますが、差し当たっての輸入でございますけれども、お話のように一般炭の輸入が大変ふえてまいりまして、五十二年度は九十五万トン、五十二年度は百万トン、五十四年度は百八十三万トン、五十五年度は七百五十万トンというように急激に増加をしてまいりました。  そこで、それの受け入れ体制をどうするんだ、こういう問題でございますが、これまた大変重要な問題と思います。まずその中で、石炭火力のような、大型船で直接輸入できるような地帯のところは、港湾が整備してございますので、これは別にそう大した問題でございません。むしろ問題になりますのは、大きい船で運んでくるわけですから、小口に対してどういうようにするんだ、こういう問題だと思いますが、これは特にセメント等、どんどん石油から石炭にいま切りかえつつございまして、非常に焦眉の急でございます。そういう問題に関しましては、御存じのように、コールセンターをできるだけつくりまして、そして、小口にそれを分けてやるという操作が必要でございますから、今年度は九州の響灘のコールセンターの活用とか、あるいは鉄鋼ヤード等を一部利用さしていただきまして、そして、そういう仕分けに役立てたいと思っております。なお、国内炭がこれまた大変重要なものでございますから、これに関しましては、御承知のように、今度の機構で石炭合理化事業団をそのまま引き継ぐことになっておりますので、従来同様進めてまいりたいと思っております。  二番目の質問であります、石炭に絡む公害防除を一体どうするのだ、こういう問題でございますが、公害は、御承知のように、硫黄酸化物に対してどういう対処をするか、あるいは窒素酸化物に対してどういう対処をするか、ばいじん対策は一体どうするのだ、この三つにお話がございました。そのとおりだと思います。  硫黄酸化物に関しましては、御存じのように、湿式の排煙脱硫技術というのが実用化しておりまして、現在もう六基ばかり石炭火力に使っておるのであります。それ以上にさらに余り脱硫の水が要らない、あるいは副生品も少ないという長所を持っている乾式の脱硫技術、これが大変急がれているわけですけれども、まだ発展途上でございまして、実用化しておりません。これは早く実用化するために技術を進めたいと思って、いま鋭意進めております。  それから、窒素酸化物に関しましては、ボイラーでの二段燃焼、あるいは低NOxバーナー等の燃焼技術が現在採用されております。しかし、さらに低減を図るために、脱硝技術、たとえばアンモニア接触還元法による低ダスト脱硝技術というような、これは御承知のように実用化しておりますけれども、さらにそれを改善するために、高ダスト脱硝技術についても、パイロットプラント等によりまして、技術開発を進めてございます。  三つ目のばいじん対策に関しましては、高性能の電気集じん装置が広く採用されておりますが、今後さらにこれの高性能のものを開発いたしたいということでただいま進めてございます。  最後のお尋ねの石炭液化問題でございますけれども、液化に関しましては、これはまだ少し時間がかかりますが、国内では三つの液化方式でただいま進めてございます。  海外的には、御承知のように科学技術協力協定をアメリカとの間に結びまして、ただいま日米独三国によってSRCⅡ、日産六千トンのデモンストレーションプラントを米国のウエストバージニア州で共同開発をしてございます。同時に、溶剤処理液化法で、これもプロジェクトとしてただいま日米間で進めてございます。以上の質問だと存じますので、お答え申し上げます。
  116. 宮田早苗

    宮田委員 次に、電力各社の値上げ申請に関連いたしまして質問に入りますが、北海道電力を除きます八電力会社は、最低で五八%台、最高で七八%台という、これまでにない大幅な値上げ申請をしておるわけであります。もとより、このような値上げが産業界のコストアップ要因に、そうして卸売物価、消費者物価に与える影響がきわめて大きいことから、政府に対しましては厳格な審査と、個々の企業の合理化努力を強く求めておかなくてはならないと思うのでございます。しもとより、この種の料金は長期的に安定していることが最も望ましいことは言うまでもございませんが、石油、石炭の大半を輸入に依存している現状から言いますと、企業内だけで吸収することの困難性がある、こう思うのです。  そこで、大臣にお伺いいたしますのは、代替エネルギー開発元年と言われる今日、中長期のエネルギー政策を立案、実施していく中での電気事業のあり方、役割りを明確にしておく政治姿勢が必要だと思うのですが、この点はいかがですか。
  117. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 エネルギーの中でも電力が一番中心であることは、お話のとおりだと思います。したがいまして、いまの料金値上げの問題に絡みまして、もちろん物価あるいは国民生活等に対する影響が非常に大きいですから、これに対する十分な配慮を払わなければならぬことはもちろんでございます。  しかし同時に、御指摘ございましたように、石油はもうやがて需給が逼迫してくることは見えておりますので、これにかわる対策を講じませんと、日本の経済も国民生活も保持できないことは、これまた明瞭でございます。何といたしましても、日本の将来を考えますと、油にかわる、特に原子力あるいはLNGあるいは石炭等の発電が必要になってまいりますので、それはいずれも御存じのように大変に設備資金の大きいものでございます。そういうものをだれが開発を担当していくかと申しますと、申すまでもなく電力会社が担当していくわけでございますから、電力会社の経営の基礎をこの際危うくするということは、開発ができない、したがって、また電気の安定供給は不可能だということになるわけでございますので、どうしても物価の安定とエネルギーの開発の問題とあわせ考えていかなければなりません。と申しましても、あくまでもこれは経営の合理化、経営努力というものが前提でございますので、それにどれほど力を注いだかということを十分審査した上で、法の示すところに従いまして原価主義であくまでもやらなければいけませんが、慎重に公正に処していきたいと考えております。  そこで、最後の御質問でございました、いまの電力業界のあり方、これが九分割、あるいは沖繩まで入れますと十分割になりますか、こういう分割方式のままでよろしいかという御質問かと存じますけれども、もしそういう御質問だといたしますれば、やはりいまの九電力発電に備えて補完的に電源開発あるいは広域運営等をして、欠点とおぼしきものは補っていくようになってございますし、九分割によりまして、個別企業の持っている、民間企業の持っている活力と効率と申しますか、こういう点を十分伸ばすためには、やはりいまのような組織でそのものは伸ばす、そして足らぬところは、さっき申しましたような体系で補っていくというふうな行き方の方が一番よろしいのじゃなかろうかというふうに考えてございます。
  118. 宮田早苗

    宮田委員 これに関連をいたしまして、もう一つ大きな問題だと思いますが、電力多消費産業に与える影響というものが非常に大きい、こう思うのですが、この点について対策はいま検討されておると思いますが、もし検討されておる面がございましたら、お答え願いたいと思います。
  119. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 常々私どもがこの委員会の席上でお答え申し上げておりますのは、電力料金に対します査定方針は企業の徹底した合理化を前提にいたします原価主義というお答えをしているわけでございます。この原価主義ということを分析いたしてみますと、二つの要素があるのではないかと思っております。これは電気事業法上の考え方でございますが、一つは狭い意味の原価主義、もう一つは公平の原則ということでございまして、通常私どもが原価主義と申しておりますのは、狭い意味の原価主義と公平の原則と両方合わせまして原価主義と言っておるわけでございます。  したがいまして、いま電力多消費産業への影響という御質問でございますので、それに直接的にお答え申し上げますと、ただいま申し上げました公平の原則のたてまえから申し上げますと、やはりそこに差別があってはいけないのではないかというのが電気事業法上のたてまえでございます。しかしながら、産業に与えるインパクト等を考えますと、一つの公平の原則の概念だけで一律に規定をすることはいかがだろうかという御指摘だろうと思いますので、その辺につきましてのお答えを申し上げますと、従来、特約制度という制度がございます。これは近年、需給調整料金制度というふうに言葉を改めてまいっております。つまり、たとえば夜間に労働をしていただくとかあるいは休日を振りかえて労働していただく、そういうことによりまして需給の調整を図っていただく企業の方に対しましては、特約の料金制度を適用いたしましても冒頭に申し上げました公平の原則に反しないのではないか、こういう考え方を私どもは持っておりますので、従来の特約料金制をそういうふうに概念を変えつつも同じような方法で適用を図ってまいりたいということでございまして、これは、本質的に申し上げますと電力会社と各企業の契約の問題ということになろうかと思いますが、与える影響も大変大きいというふうに考えておりますので、私どもも、単に企業同士の話し合いということだけにかかわらずに十分な配慮を払ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  120. 宮田早苗

    宮田委員 通産省におかれましてもこれから本格的な審査を進めると思うわけですが、この査定基準等について二、三お伺いいたします。  まず、エネルギー関係特別会計予算の電源開発促進税率の引き上げ、キロワット当たり八銭五厘から三十銭ということになっておるわけですが、八百二十七億円を取り入れることになっておるわけです。これが申請中の料金値上げにどれだけ寄与することになるか、何%になるかということをお答え願いたいと思います。
  121. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 御指摘のとおり電源開発促進税の引き上げをお願いしているわけでございまして、現在御審議中の予算案の中に入れておるわけでございますが、それを電気料金へはね返した場合の計算方法につきまして申し上げますと、八社平均いたしまして、電灯料金に対するはね返りが一・〇九%程度、それから電力料金に対しますはね返りが一・五九%程度でございまして、電灯、電力を平均いたしますと一・四三%ということになります。現在申請中の八社の引き上げの額にはこの数字は入っておりませんので、この改正税法が成立いたしましたならば、その後からいま申し上げました数字がそれぞれオンをする、こういうことになろうかと思っております。
  122. 宮田早苗

    宮田委員 大幅値上げを圧縮する方法は幾つかありましょうけれども、この税率引き上げを考えます方法もあるんじゃないか、こう思うのです。  それから、私案ですけれども、従来の税率に据え置いて、その財源として、石油税の一般会計における積み残し分の活用で確保したらどうか、こういう考え方もあるのですけれども、その点どうですか。
  123. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 電源開発税の取り扱いにつきまして、いま大変貴重な御意見をちょうだいしたわけでございますが、一つの方法論として石油税の積み残し分を充てたらどうかという御指摘でございますが、私ども、新しい代替エネルギーの開発のために財源を確保したいという考え方のベースになっておりますのは、やはり直接的な需要者の方々にエネルギーコストを負担していただくのが最もいい方法ではなかろうか、こういう考え方を持ったわけでございます。そこで石油税の関係は石油関係の代替エネルギーの開発、それから電源開発促進税の関係は電気関係の開発に充てさせていただきたい、こういうことでございます。そして、公平の原則という立場からいたしますと、やはり電気関係の税金をちょうだいした分を電気の開発の方に向けていくというようなことを考えておるわけでございます。つまり、電気料金の分といたしまして税金を御負担していただくことによりまして、需要家の方々に代替エネルギーの、特に電源開発関係のコストを負担しておる、こういう意識を持っていただくのが最も妥当ではなかろうかな、こういう判断でいたしておりますので、ただいま先生からせっかく御指摘になりました石油税の振りかえは、考え方の上からちょっとむずかしいのではなかろうかな、私ども通産省といたしましてはそういう判断をしておる次第でございます。
  124. 宮田早苗

    宮田委員 大蔵大臣お見えでございますが、税金のことでございますのでこの点について大蔵大臣のお気持ちをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  125. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいまエネルギー庁長官から正確なお答えがありましたとおりの考え方であります。安定的供給を確保することを通じて一般電気事業者、ひいては電気の消費者に受益関係が生ずるわけでございますので、したがって、現下の厳しい財政事情を考慮いたしますと、これらの対策に要する財源は受益者負担的観点に立って措置することが妥当ではないかという結論に達したわけであります。したがって、電源開発促進税の税率引き上げにより財源措置を講ずることとしたわけであります。  なお、長期的に見ますと、電源開発に結びつく受益者負担にはなじまないもの、当面実用化のめどがないというようなものにつきましては、基礎的な研究でございますとかそうしたものには、一般会計において一般財源よりこれを措置しておるという構えをとっておるわけであります。  いろいろな議論がこれの途中においてもございました。が、確かに石油につきましては、まさに石炭並びに石油及び石炭代替エネルギー対策というところへ区分けをいたしまして整理されてきたというのが、やはり現在の妥当な考え方ではなかろうかというふうに考えます。
  126. 宮田早苗

    宮田委員 何らかの形で対策を立てないと、このままの形では大変なことになりそうな気がするわけです。  そこでもう一つは、自治省お見えでございますので、地方税となります電気税、これはぜひとも見直さなきゃならぬじゃないか、こう思うのです。現行の免税点は月の使用料金が二千四百円でございますね、このぎりぎりの家庭をモデルに、今度の値上げで幅を圧縮して仮に五〇%の値上げをしたといたします、料金の負担増に電気税が加算されますから、このケースでの料金値上げは実質六五%になるわけなんです。そこで、五十五年度予算案では、この電気税をどのように扱っておられるかということをお聞きいたします。
  127. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 いま仰せのように電気税につきましては、家庭用電気の使用状況であるとか地方財政の状況、さらには零細負担排除ということで二千四百円の免税点でございますが、これを世帯数でいいますと大体四二%ぐらいが適用対象になっております。  ところで、今回電気料金が値上げになるということになりますと、これをどう考えるかということでございますが、まだ電気料金値上げそのものの幅、時期等も確定をいたしておりませんので、具体的なお答えはできませんが、一般論といたしまして、いままで二千四百円の免税点の適用を受けておった世帯が、今回の値上げによって新たに電気税の負担がかかるといったようなことのないように措置を考えてみたい、かように考えております。
  128. 宮田早苗

    宮田委員 財政が同じく苦しい自治体にとっては、増収で欲しい財源かもしれませんが、事は庶民の負担の問題でございますだけに、免税点をぜひ引き上げる必要があるのじゃないかと思うのですが、自治大臣だけじゃなしに関係大臣お答えを願いたいと思います。
  129. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お説のとおりだと思います。
  130. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今回の電気料金の改定につきましては、現在、関係当局において申請内容を審査しておられるところでありますが、料金の改定が行われた場合の免税点の見直しにつきましては、料金改定の状況でございますとか地方財政の状況等を勘案いたしまして、自治大臣とも協議をしながら検討してまいりたい、このように考えております。
  131. 宮田早苗

    宮田委員 何といいましても、この地方税の免税点を引き上げるとかなんとかの方法をとらなければ、事が庶民に全部かかわってくるものですから、その点について配慮あるお答えを願いたい、こう言っているのです。
  132. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私が先ほどお答えしたのはそのようなつもりで、まだ時期、幅等が決まっておりませんから一般論としてお答えしたので、要するに電気料金が上がることによっていままで免税点の恩典を受けておった人が新たに課税対象になるような結果にならぬように措置をする、こういうことでございます。
  133. 宮田早苗

    宮田委員 自治大臣はそういうある程度前向きのお答えをなさったわけですが、大蔵大臣、それでどうですか。
  134. 竹下登

    ○竹下国務大臣 基本的に変わっていないと思うのです。改定幅、実施時期等が明らかでない段階にありますので、今後、料金改定の状況を見きわめながら見直しを検討することが必要であるということであります。したがって、当初から自治大臣お答えになるべきものだと思っておりましたので、自治大臣と相談をして検討してまいりたい、こういうことでございます。
  135. 宮田早苗

    宮田委員 ぜひ前向きに検討をして、庶民の負担を軽減してほしいということを強く要求しておきます。  そこで、農林水産大臣がお見えでございますので、前段に物価問題をちょっと申し上げたわけですが、今度の農林水産省の野菜対策五億二千万の予算措置関係してお伺いするわけです。  民間の労働組合も、苦しい時代を生き抜くために、政策全般の整合性を求めるように転換しておるのです。その中でも消費者という立場から、労働組合の組合員ほとんど全部が消費者ですから、特に農業政策に多くの不満を抱いておるのが実態だと思うのです。今度の緊急措置で果たしてそれがどうなるかということをお答え願いたい。
  136. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、何とかこれによって野菜の価格が少しでも下がって安定するのが望ましいということで、ああいう計画を立てたわけでございます。数字的に申しますと、早どりあるいはキュウリなどの施設野菜の生産の促進、あるいは長距離輸送によって京浜地域及び京阪神地域へ持ってくる、こういうようなことをやりまして、大体一万三千トンぐらいの増加を来すことができるのではなかろうか。あるいはまた、輸入の促進をやりまして、これによって二千トンぐらいが大体余分に入れられるのではなかろうか。それから、キャベツなどの契約栽培をやっておりますが、これを思い切って出すことにいたしますと、四千トンぐらいがそれで期待ができるのではなかろうか、そんなようなところの供給量の増加を期待をいたしておるわけでございます。  それじゃ、これが価格にどうはね返ってくるかということでございますが、普通の場合でございますと野菜の場合、前の日よりも一割入荷量が多いと大体三、四割値段が下がるのでございます。しかし今度の場合、そこまでいくのかどうかなかなかわからないわけでございますけれども、少なくとも多少は価格についてもいい影響が出てくるんではないかというふうに私どもは期待をいたしておるわけでございます。
  137. 宮田早苗

    宮田委員 さっきも申し上げましたように、狂乱物価のときには相当な手を打たれたわけでございまして、今度の場合も手を打たなければならぬはずが後手後手ということで、せっかく農水大臣、具体的な手を打たれたということについて、一つの前進と思いますが、それをさらに前向きにひとつやっていただくということを特に要望をしておきます。  そこで、労働問題についてお伺いをいたします。  わが国の急速な高齢化社会到来への備えは非常に多くなっておるわけですが、特に大きな政治課題ということであります。最も重要な問題としてこれからはとらえていかなければならぬ、こう思うわけです。ちょうど一年前、深刻な雇用不安の解決、中でも中高年層の雇用の場の確保が本委員会でも重要なテーマとして議論を呼びました。その結果、中高年齢者雇用開発給付金制度の新設や全国五カ所に地域雇用開発委員会が設置をされ、一方、民間企業におきましても鉄鋼労使が、段階的ではございますけれども、六十歳定年延長に合意するなど、民間の定年延長機運が徐々に盛り上がってきておるわけでございます。この政労使の努力が今日の雇用情勢の好転に若干なりとも効果を上げていると思うのです。この点については、まあ評価したいわけですが、これで事足れりというわけにはまいらぬわけです。  そこで、労働大臣にお伺いしたいのは、昨年の通常国会で当時の栗原大臣が、雇用審議会への定年延長問題の諮問を約束されたわけです。審議会での審議状況、この点についてはどうなっておるか、まずお伺いいたします。
  138. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 高齢化社会に入ってまいります中で、特に雇用問題が非常に大きな課題でございますが、先生指摘のように、政労使それぞれの立場で、大変な協力体制の中で一つの空気が醸成されてきていることを私も大変ありがたく思っておるわけでございます。  その中で、特に定年延長というのは非常に大きな具体的な課題でございまして、いま御指摘のように、昨年の通常国会におきましていろいろな御議論が出されたわけでございます。それを踏まえまして、昨年の六月二十五日に雇用審議会に対しまして、定年延長の実効のある推進策につきまして、立法化問題も含めて諮問をしたところでございます。その後今日まで主として総会の場で、定年制の現状でありますとか、あるいは定年延長の阻害要因に関するいろいろな資料を分析をする、あるいは問題点を出し合う、こういった会議を重ね、御審議をいただいてきたところでございますが、昨日十八日に開催されました雇用審議会の定年延長部会の会合におきまして、労使からの業種別のヒヤリングを今後毎月一回程度精力的に進めていこう、こういうふうにスケジュールを立てまして、今秋までにそのヒヤリングを終えるというような予定で毎月作業を進めていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  139. 宮田早苗

    宮田委員 昨年六月の審議会の諮問以来今日まで、四回しか審議会が開かれていないわけです。当時大臣は、立法化措置を含めて二、三年をめどに結論をということだったと記憶しておるわけですが、政府はこれに対してどう取り組もうとしておられるか、お聞きいたします。
  140. 関英夫

    ○関(英)政府委員 事務的に昨年来のことをちょっと申し上げたいと思いますが、昨年六月二十五日に御諮問申し上げたわけでございますが、それから二回ほどは第四次の雇用対策基本計画を雇用審議会で審議しておりまして、定年延長問題について審議する時間が余りございませんでした。その後、委員の改選等の問題がございまして、先生指摘のように、総会は昨年六月以来四回しかございません。ただその中で、先ほど大臣お答えにもございましたように、部会を設けて、その部会で専門的にこの問題を論議していこうということが決まりまして、部会が昨日発足した、そして業種別に労使の方に来ていただいていろいろ検討を進めていこう、こういうことになってきたわけでございます。ちょっと補足して申し上げた次第でございます。
  141. 宮田早苗

    宮田委員 大臣もそうですが、政府の答弁をお伺いしておりますと、労使の自主的な話し合いによる解決ということにほとんど期待をされておるようにお聞きするわけでございますけれども、その点どうですか。
  142. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 日本の労働慣行は終身雇用の上に成り立っておりまして、しかも、それぞれの産業あるいは企業によりましていろいろ事情が異なる。したがいまして、一律に法制化を進めることによりまして、上から押っかぶせてこれでいけと言ってもなかなか無理が出てきますし、地についた実行へなかなか進んでいかないというような心配もございます。そこで、一方で審議会の方で精力的に御審議をいただきまして、その答申を待って法制化するかどうかということは決めていきたい。決して法制化が全然だめだというふうに言っているわけではありませんけれども、いろいろな資料に基づいて客観的に一つ結論を出していただきたいという答申をお願いをしているわけでございますが、一方におきましては、労使の精力的ないろいろな話し合いの中で、それぞれの企業、それぞれの業態に応じまして定年延長が進められていくように、いろいろな行政指導でそういう環境づくりをしていきたい、こういうふうに考えておりまして、幸いに労使ともに定年延長への話し合いの機運は非常に盛り上がっておりますので、従来よりもことしから来年へかけてこの空気はさらに醸成をされていくのではないだろうか。そしていまの第四次の雇用計画に基づきまして、昭和六十年度には六十歳定年が一般化するという方向に向かって、従来よりも積極的に行政指導を進めていくようにいたしたい、このように考えておる次第でございます。
  143. 宮田早苗

    宮田委員 私どもがもう一つ懸念しておりますのは、公務員等のスト権問題が審議会を隠れみのにして、かれこれ二十年近くも結論を先へ先へと引き延ばしているわけですから、同じことになりはしないかというふうに懸念するわけです。そのようなことがないように強く要望しておきます。  さて、引き合いに持ち出すまでもございませんが、欧米諸国の中高年齢者の雇用上の保護の状況を見ますと、わが国が当面の目標としております六十歳よりさらに上の六十五歳とか七十歳までというように、まことにはっきり法制化されておるのです。昭和六十年に六十歳が一般化するといたしましても、労働行政はポスト六十歳定年の政策立案に現時点から取り組むべきだと思うのでございますが、考え方がございましたらお示し願いたい、こう思います。
  144. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 当面は御指摘のように、昭和六十年度六十歳定年を目指しまして積極的に努力を進めてまいりますが、同時に、平均寿命がもう七十代に延びておりまして、六十歳以後におきましても非常に働く能力があり、しかも働くことに非常に生きがいを感ずるという層がふえてきておりまして、そういう意味では、六十歳で終わりだという意味ではなくて、さらに六十歳以上、六十歳代前半層のいろいろな雇用対策につきましても努力を重ねていかなければいけない、このように考えておるところでございます。  当面は六十歳定年で進んでおりますけれども、できる限りそれをさらに延長していくように努力をしていきたい。考え方としてはもうそのように打ち出しておりますし、また各企業等におきましても、再雇用その他、いろいろな形があると思いますけれども、単に定年延長と言うだけでなかなかとらえがたいところがございます。それは、六十歳を超えると、肉体的な条件なども一人一人みんな変わってまいりますし、生活に対する気持ちとか希望なども個人によって異なりますので、なかなか一律にとらえにくいところも出てまいりますけれども、それでも働きたいと思う人には、六十歳を超えても働けるような環境をできるだけつくっていくように努力をしていきたいと思います。  そういったことも含めまして、昭和五十五年度から新しくシルバー人材センターといったような仕組みに対しまして国が二分の一の補助を出すという構えをつくりまして、それぞれの地域等におきまして、いろいろな短期的な仕事の需要に対応して、働こうと思う能力のある人がそれぞれ対応していけるような組織を援助していくというふうにもいたしておりまして、これなども年齢的には六十歳代の前半層を中心にして考えていきたい、こういうふうに思っておりますので、まだまだこれからの課題でございますけれども、先生指摘のような方向に向かってさらに努力を重ねていきたいと思っているところでございます。
  145. 宮田早苗

    宮田委員 今度は、中高年齢者の雇用開発給付金制度が昨年六月にスタートしたわけです。六月以来の運用状況について伺いたいわけですが、民間企業の今日までのこの利用状況はどうなっておるのですか。
  146. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  中高年雇用開発給付金制度は六月から非常に手厚い制度に変わりましたけれども、以前からの制度がございます。そういう意味で五十四年度は、四月から十二月までを累計いたしますと、六万三千五百二十三の方がこの制度を利用していただいているということで、特に六月以降、制度が非常に手厚くなりましてから対象者がふえまして、最近の十月以降の三カ月は月々八千人を超える方がこの制度によって就職しているというような状態でございます。
  147. 宮田早苗

    宮田委員 さて、労働市場の環境好転は喜ぶべきことなんですが、この給付金受給資格の要件を見直す必要があるんじゃないかということを指摘する人もたくさんおります。といいますのは、有効求人倍率ですね、それから完全失業率、両方の条件を満たすことが指定基準になっているのですが、四十五歳から五十五歳未満者の期限切れとなるこの六月時点で二つの指定基準に合わなくなる可能性がきわめて強いと思うのです。景気の先行きに相当の不安がある現状にかんがみまして、基準を緩和する措置を講ずべきと思うのですが、この点はどうですか。
  148. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 御指摘のようにこの制度は、特に雇用、失業情勢が厳しい時期に、主にそのしわ寄せを受ける中高年齢者に対しまして緊急特例の措置として手厚い助成を行うものでございまして、その期間が六月にやってくるということも御指摘のとおりでございます。この期間の指定等につきましても、このことを踏まえて中央職業安定審議会に諮った上で、定めた指定基準に基づいて行うこととされてきておるのでございます。  今後どのような雇用、失業情勢で動いていくのか、先行き非常に明るい展望もありますが、一面また、この予算委員会でいろいろ御議論をいただいておりますように、石油問題その他不安定な要素も多うございまして心配もいたしておるわけでございます。今後再度指定するかどうかというようなこと等につきましても、あるいはまた指定の基準をどういうふうに持っていくかということ等につきましても、中央職業安定審議会の御意見を十分参考にさせていただきまして、それを踏まえて対処していくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  149. 宮田早苗

    宮田委員 この制度は文字どおり中高年齢者対策ということなんですが、各種の労働統計で環境改善が進んでいるとはいえ、四十五歳以降の求人倍率等は依然水面下ということなんです。むしろこの年齢層の求人倍率、失業率を指定基準にすべきと思うのですが、その点どうですか。
  150. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  中高年雇用開発給付金制度が現在のように、賃金の五分の四の助成というような、あるいは期間も高齢者について一年半というような非常に長い期間に六月八日から改められまして、非常に手厚い制度になったわけでございます。賃金の八割も国が助成するというような手厚い制度にいたします際に、それまでの制度というものの基準を見直しまして、従前の制度の基準は先生いま御指摘のように、中高年齢者の求人倍率等で発動するようになっておりましたけれども、非常に不況の深化した中で特に就職困難な中高年齢者に八割補助というような非常に手厚いものをやるんだ、したがって、全体的に非常に不況がはなはだしいときに緊急の措置として発動するんだ、こういう考え方から、ただいま御指摘のような指定基準に変えたわけでございます。  そういう意味で私どもとしては、審議会の諮問も経て決めたこの基準がこういう緊急措置としては適当ではなかろうか、こういうふうに考えますが、先ほど大臣の答弁にもございましたように、これからの雇用、失業情勢も見た上で、また安定審議会のこの基準に関する御意見も十分参考にしながら、今後対処していきたいと考えております。
  151. 宮田早苗

    宮田委員 この制度を活用しております企業が多いのは結構なことでございます。そこで、再就職した人の賃金水準はどうかということなんです。また、制度の公平な運用のため、各人の資格がなくなります一年あるいは一年半後の企業内での待遇ですね、これを追跡調査をする必要があると思うのですが、その準備されておりますか、お聞きします。
  152. 関英夫

    ○関(英)政府委員 昨年の六月から始まりました制度でございまして、実際のこの給付金の支給は、事業主が六カ月間賃金を支払ったその実績に基づいて給付金を支給していくというような仕組みになっております。したがいまして私、先ほど受給資格決定した数を申し上げましたけれども、給付金の支給あるいはその支給が終わった後の状態、そういったものについてはまだまだ先の状態になりますので、現在のところこの制度の対象者の賃金がどのくらいか、あるいは支給期間が切れた後どうなっていくかというようなことについて、まだ十分な調査はいたしておりませんが、そういう点について十分意を用いていきたいというふうに考えております。
  153. 宮田早苗

    宮田委員 労働問題ひとまずこれで終わりますが、何をおいても雇用対策というのが非常に重要なテーマということになっておりますきょうこのごろでございますだけに、労働大臣大変だと思いますけれども、これからの非常に厳しい経済情勢、社会情勢を乗り越えていくためにその対策の万全をひとつ期していただきたい。幸いなことにわが国の労働者、それを結集しております労働組合というのは、日本経済というものを絶えず前提に置いて労使交渉を始めておるんですから、また、日本の国というものを非常におもんぱかっての運動ということなんでございますから、これは世界に類を見ないと私は自負しております。それだけにこの労働者に対する対策というのは、政府を挙げてひとつ取り組んでいただきたいということを要望をしておきまして、その点の決意をひとつ表明していただきたいと思います。
  154. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほどもJCの宮田議長さん初め皆さん方おそろいでお出かけになられまして、官房長官、経企庁長官と一緒にいろいろな申し入れを受けたところでございます。特にこの物価問題を非常に心配をしておられまして、しかも非常に建設的に、たとえば生活を守るために農業政策などにもつと思い切った手を打てといったような御指摘もいま受けてきたところでございまして、労働界のいろいろな団体の非常に建設的な御提案を政府としても真剣に受けとめさせていただきまして、それぞれの省庁の壁を乗り越えて政府全体で受けとめて、勤労者の生活を守り、そして労使力を合わせて日本の経済の安定的な発展を図っていくという方向に向かってさらに努力をしていかなければいかぬ、心からそのように決意をいたしておる次第でございます。今後とも御指導いただきますようにお願いをいたします。
  155. 宮田早苗

    宮田委員 最後でございますが、もう一括して、通産大臣せっかく最後まで御苦労願いましたのでお聞きしたいことは、最近の日米通商問題についてです。  これは具体的にはいろいろ申し上げると長くなりますから申し上げませんが、自動車とか鉄鋼とか半導体とかいうものについてアメリカの規制というものが非常に強くなっておるようです。しかし、考えてみますと、鉄鋼一つとりましても、トリガー価格という制度ができたにもかかわらずダンピングなんということが出ておる。このことはあり得ぬことなんでございましょう。あるいは自動車一つとりましても、日本の車が省エネに非常に適しておるということで自然に流れるということなんでございますし、半導体あたりなんというのは日本がむしろよけい買っておるというようなことなんでございますから、余りにもアメリカの政府を初め、非常に極端に言いますならば高飛車過ぎるのじゃないか。これに対して日本政府あたりがちょっと軟弱じゃないかというように聞こえるのです。やはりここまで参りましたならば、もう少し日本も強気になって結構じゃないか。これは努力するところが進む、また努力するところが勝つのはあたりまえなんですから、なぜおまえさんのところは努力しないかというぐらいのことは堂々と言っていいのじゃないかと思いますが、そういう点についての姿勢をひとつお伺いして、私の質問を終わりたい、こう思います。
  156. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 アメリカとの貿易収支バランスは、大分黒字の幅が減ってはまいりましたけれども、まだ相当の黒字でございます。アメリカの経済状況等も考え、従来から集中豪雨的な輸出はやはりこの際自粛すべきじゃなかろうかということで、節度ある輸出あるいは秩序ある輸出をしてもらうように、それがまた日米関係全体に悪影響を及ぼしては大変なことになると思いますので、そういう点をアメリカの情報を的確に業界の皆様には伝えつつ、節度ある輸出、秩序ある輸出をしてもらうように指導しておるところでございます。
  157. 宮田早苗

    宮田委員 終わります。(拍手)
  158. 田村元

    田村委員長 これにて宮田君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。本会議散会後再開いたします。     午後一時二分休憩      ――――◇―――――     午後二時十二分開議
  159. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上泉君。
  160. 井上泉

    井上(泉)委員 ちょうど法務大臣に出席をお願いをしておるわけでありますので、法務大臣から先にお尋ねをしたいと思います。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕  法務大臣は政治家としての大先輩であるわけですし、私は、最近における政界の世相を見たときに、これは城山三郎の小説ではないけれども、男子の本懐、政治家としての本懐を全うするために決意をされて政治家としてやられておる、こういうふうに思うわけですが、そこで、大臣の任期のときに、何かやはり法務大臣はこうこうでした、倉石法務大臣はこういうことをやったんだということが印象に残るような、そういう足跡を私は残してもらいたい。  それは、もちろん大臣自身はそのことを考えておられると思うわけですけれども、その足跡を残してもらいたいためにも、この間の狭山の事件で石川君の再審要求が却下された、このことは、やはり今日の日本の裁判の再審制度についても問題が提起をされておることであるし、そういう点から、現在の再審制度のあり方、さらには石川君の再審が却下されたことについての大臣としての見解を承りたいと思います。
  161. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 いわゆる狭山事件の再審請求事件につきましては、去る二月七日、東京高裁において請求棄却の決定がなされましたことは承知いたしておるわけでありますが、この決定に対しましては同月十二日、弁護人から異議申立てが行われておることでもありますし、また、裁判所の判断については私が論評をいたす立場にございませんので、その点のお答えは差し控えたいと思います。
  162. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで大臣に、裁判の続行中のことについては大臣としての所見を申し上げることは云々という話をされたわけですが、それでは、政治家と裁判所、日本の司法というものについてはどういう位置づけをしたらいいのでしょう。これは勉強のためにお習いをしたいのですが、政治家いわゆる法務大臣と、日本の裁判のあり方とか、あるいは検察のあり方とかいうものをどうお考えですか。
  163. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 個人の政治家はもちろんのことでございますが、ただいまの議会制民主主義では、政党がつくられて、その政党内においても、いろいろな問題についてお互いに討議をいたしまして方向を決定して、議会において進めておる、こういうことだろうと存ずるわけであります。  しかし、私がきょうここで井上さんとこうして質疑応答をやっておりますのは、法務大臣として出てまいっておるわけでございまして、先ほどのような事件につきまして裁判所の下された判断に対して、法務大臣がとかくのことを申すことは差し控える方がよろしい、こう思っておるわけであります。
  164. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは現行の再審制度がいいと思っておるのですか、それとも現行の再審制度は改めるべきであると考えておるのか、これは大臣として見解を言うことはできるでしょう。これも差し控えるというようなことは、これは理屈にならぬですよ。
  165. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 申し上げるまでもなく、再審のことは法務関係の手続の問題でございますから、これはいずれの方も大いに勉強していただくことは結構なことだと思いますが、先般この席でもお話し合いがどなたかとの間にあったようでありますけれども、御存じのように、わが国はやはり多くの諸外国と同じように大体三審制でございます。したがって、これは再審制になるということになりますと、わが国の刑事訴訟法のたてまえにもどういうふうな影響を持ってくるか、あるいはまた、最終判決の確定いたしたものを再審に付するということについてのいろいろな意見がそこへ出てまいると思っております。したがって、再審制をもう少しやりよいようにやれという御意見はよくわかるのでありますけれども、そういうことについてはなお基本的な問題を掘り下げて検討をしてまいる必要がある、このように考えております。
  166. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、あなたはそれは掘り下げて検討しますか、しないですか。
  167. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 法務省におきましては、そういう問題について十分検討することはあたりまえの任務だと思っております。
  168. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、大臣として法務省にその問題については検討するように、なお大臣としての強い姿勢を要望しておきたいと思うわけです。  次に、帝銀事件という昭和二十三年に起こった事件のことについては大臣承知をしておると思うわけですが、その帝銀事件の被告として死刑の判決を受けている平沢貞通さんがきのう八十八歳の誕生日を獄中で迎えた。ところが、私、昨年も平沢さんに面会をしたのですけれども、昨年とことしともう格段の老化現象が進行しておるわけです。これは大臣なんかはむしろだんだん若返っていきやせぬかと思うような印象を受けるのですが、平沢さんは一年の間に物すごい老化現象が出ておる。そういう中で、これを早く釈放するような、特赦をするような、そういう願いというものがほうはいとして起こっておるわけで、きのうの朝は弁護団も行かれておったそうですが、私も面会をして、そうしていま大臣にもお見せした平沢貞通さんのきのうの食事の項目を見た場合に、生きることについてあの限られた条件の中でどんなに苦闘を重ねておるか、苦心をしておるのか、そのことを本当にひしひしと身に感じたわけです。そうして本人から、何としてでも生あるうちにしゃばへ出て、そして自分の画法であるテンペラ画をぜひ完成をさせたい、もう私も八十八歳、いわば八十九歳になるのだから、何としてでも特赦をされて出たい、こういう願いに満ち満ちた訴えがきのうもされたわけであります。  そこで、いろいろ聞きますというと、中央更生保護審査会でそのことが検討されておるということを聞くわけでありますが、大臣としてここらあたりでもう決断をされて、そして日本で本当に貴重な画法の創始者であり権威者である平沢さんを、いわばもう一年、二年とない年をしゃばで送らすような、そういう温かい配慮というものを私はとっていただきたいと思うわけですが、大臣としての御見解を承りたいと思います。
  169. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、恩赦は、いまお話のございました中央更生保護審査会が審理をいたしまして、その申し出に基づいて内閣が決定することでございます。平沢から出願のありました恩赦については、現在中更審において慎重に審理中でございますので、この段階において私がとやかく申し上げるのは適当ではございませんで、中更審の判断を見守りたいと思っておる次第でございます。中更審には、経験、識見ともにすぐれた委員がそろっておられますから、すべての事情を考慮いたしまして適切な判断を下されるものと思っておりますが、私どもの立場としては、この中更審の意見が出るのを待って処理いたさなければなりません。そういうことについて御疑念がございますならば、個人的にも補足して御説明を申し上げたいと思います。
  170. 井上泉

    井上(泉)委員 中央更生保護審査会の方が御説明をしてくれるということでございますので……。
  171. 稲田克巳

    ○稲田(克)政府委員 お答えいたします。  私、法務省の保護局長でございまして、中央更生保護審査会の庶務的な事務を担当している立場にあるものでございます。ただいま法務大臣に対する御質疑、平沢に対する恩赦について大臣としていかように考えているのかというような点であったと思われるわけでございますが、先ほど法務大臣も申し上げましたように、中央更生保護審査会が恩赦を申し出するかどうかについて審査し議決いたしまして、恩赦相当と議決した時点について法務大臣に申し入れがあり、そして内閣に閣議請求が出されるということになっております。  この中央更生保護審査会は、行政機構としましては法務省の付属機関ではございますけれども、その職務権限の重要性と申しますか、または権限行使に当たりましての職務の公正の保持というふうな見地から、独立してその権限を行使するというふうにされておるわけでございます。したがいまして、法務大臣が、現に審査会に係属しております特定の案件につきまして具体的な御意見を述べられるということは適当ではないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  172. 井上泉

    井上(泉)委員 その具体的な意見は述べなくとも、審査会として審査を早くやってやれ、こういうことは許されるでしょう。
  173. 稲田克巳

    ○稲田(克)政府委員 そういう点につきましては従来から各般からいろいろ申し出もございまして、私どもといたしましても審査会に対しましていろいろの要請事実を伝えまして、なるべく早い段階に適正な審査がなされ、議決されるようにお願いいたしておる次第でございます。
  174. 井上泉

    井上(泉)委員 ところが聞くところによると、審査会の委員長はいま病気でずっと休まれておるということですが、そういうことになると、その審査が長引くということになりはしないか。その点についてはいささかも心配がないのかどうか、その点を聞きたい。
  175. 稲田克巳

    ○稲田(克)政府委員 御指摘がございましたように、現在、中央更生保護審査会の委員長は病気のために休んでおります。しかし、委員長に事故がありますときには、あらかじめ定められました順位によりまして委員委員長の職務を代行いたしておりますので、委員会としての職責を果たす上におきましては支障がないようになっておるわけでございます。
  176. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで大臣、いま政府委員の説明でも、大臣がこれをどうしてやれということは言えなくとも、審査会としての審査を促進するということは、大臣としてすることには何ら問題はないようでありますので、大臣として本当に平沢さんが――この方は再審を要求しておったのですよ。再審を要求しておったけれども、再審でやっておるといつまでたっても決着がつかぬから、だからもうしようがない、早く出て何とかしたいという気持ちの中から、今度はいわば再審を却下したというそのことを認めた形になっても何としてでも特赦で出たい、出て余生を自分の絵の研究で送りたい、こういうひたむきな芸術家としての良心、そうしてまた、三十年という長い獄中を支えたところのいわば犯罪に対する無罪であるという確信、そういうものから考えて、ここで無罪、有罪のことは言わないけれども、早く出たい、そういう状態です。なるほど、いま医者の診断を受けた場合に、どこが悪いかといえば悪いところはないという。週刊誌なんかに載っておるように、よたよた歩くとかいうこともない。それはちゃんとあたりまえに歩きます。それで食べる量でもかなりなものをとっておる。それは自分の健康を守るということに本当に精魂を傾けておるから、健康を守ることの努力をしておるのですから、そういう真情にこたえるために、大臣として、あれをこうしてやれああしてやれとか言えなくとも、中央審査会の機構としては委員長が病気であっても故障はないと言っておるのだから、連日でもそう幾らもかかるものではないと思うわけですから、少なくとも早く審査会をやって結論を出してやれというぐらいの指示は、心温かい政治家として大臣がおとりになっていただくことを私は非常に期待をするわけですが、このことについて大臣の見解を承って法務省に対する質問を終わります。よろしくお願いします。
  177. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御意見をよく承っておきたいと思います。
  178. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣、何か非常に老練な政治家といいますか、そういう表現が当たるか、何かぱっとこたえるもの、はだで感ずる答えが返って来ぬで、非常に歯がゆく思うわけですが、これはひとつ大臣、もっとこれを調べていただいて、温かい法のぬくもりが国民に伝わるような、そういう態度をとっていただきたい。これはここで私はこんなに言うて不毛な論議に終わらせたくないのですから、その点についてもう一回、くどいようですけれども、大臣のお気持ちを聞かせていただきたいと思います。
  179. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど来お話しの井上さんのお気持ち、よくわかりましたので、それを承っておきます、こう申し上げておるわけであります。
  180. 井上泉

    井上(泉)委員 どうもありがとうございました。大臣、もう結構です。  私、大蔵大臣にお尋ねをするわけですが、ちょうどいま小説でベストセラーになっておる「男子の本懐」、その「男子の本懐」は浜口雄幸総理とそれから井上準之助大蔵大臣と、この二人の出会いから、その二人がちょうど昭和三、四年ですから日本の経済危機という状態の中で、それに取り組む政治家としての本当に脈々たる気魄に満ちた決意のものがずっと書かれておるのをなにして、いまの日本の総理の大平さん、そしてまた大蔵大臣のあなた、これが本当にこういう日本の重大な財政危機の現状に対して、これだけの気概を持って日本の政治に取り組んでおるのか、こういうことを非常に失礼ながら思ったわけです。  大臣は、マスコミでは将来の、いや現在も日本の財政を背負っておるのですから、将来はもっともなことですが、いま日本の財政を何としても再建しなければならぬ、あらゆる障害を排してもやらなければならぬ、そういう気概を持って大蔵大臣としての職務についておるのかどうか、あるいはそれが官僚の発想の中で、ただあちこち上手に泳ぎ回るような、そういう大蔵大臣としての行き方をしておるのかどうか、これは前者だとは思うわけですけれども、なおひとつ大臣の決意を承っておきたいと思います。
  181. 竹下登

    ○竹下国務大臣 浜口雄幸先生とかあるいは井上準之助先生とか、そういう歴史を刻んだ方々の気概というようなものは、後世たまたまその職についた者として大変参考にしなければならぬことだと思っております。ただ、私は、自分の能力も知っておりますし、そして高度に発達した議会制民主主義の中においては与党あり野党あり、それぞれのプリンシプルの相違の中にどこに調和点を求めていくかというようなことも、また新しい政治家としての歩むべき道ではないかと思っておりますので、私に歴史を刻むほどの能力があるとはうぬぼれておりません。
  182. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣、謙遜して――それは大臣が非常にすぐれた政治家であるということは皆認めておるのですよ。だから大蔵大臣になっておるのですから。  そこで、大臣として遠慮したことではなしに、やはり前向きに問題に取り組む。なるほど、それは野党もうるさい、いろいろな各党派がどうとか。しかし、いまのいわゆる連合の時代というものが指呼の間に出てきておるような状態の中にこそ、私は、今日の日本の財政危機を招いた自民党の大蔵大臣としての決断をすべき行政上の課題というものはたくさんあろうと思うわけです。  そこで、そういうことは大先輩の予算委員先生方が話をされておるのですから、私はそんな大演説を打つ能力はないのですから言いませんが、今度のこの土地税制の改正は、これは大臣の発想ですか、それとも大蔵官僚の発想ですか。
  183. 竹下登

    ○竹下国務大臣 土地税制の問題については、これは大蔵省と言わず建設省と言わずあるいは国土庁と言わず、もう長らく引き続いてまさに継続的な検討と申しましょうか、絶えずそういう意見の交換を行ってきたものであります。したがって、今度これを改正に至った経過というのは、もとより政府税調、党税調等の答申も踏まえながら、その累積した意見の交換が結果としてここに出たものであって、私自身の独創によってかくあらしめたというようなものではございません。
  184. 井上泉

    井上(泉)委員 これは大臣の構想によって決めたものでもないということですが、そういうことであるならば、これはなおさらのことですが、あなたは、過去のこの土地税制の改正というのを三年連続で緩和を打ち出してきておる。五十三年度においては二七%の適正利益率の廃止、こういうふうなことまでやってきておるわけです。それから五十四年度においても緩和しておる。また今度やる。これによって宅地供給が容易になったり、土地の値上がりが抑えられたりとかいうような効果があったのですか。ないから、もう一回追い打ちをかけるために今度の改正案を出したのですか。どちらですか。
  185. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私からお答えすべきことでありますかどうか、やはり私は、もともと今日の土地税制の基本というものは、いわゆる土地転がし等によって巨利をおさめたという社会的不公正に対する庶民感情というようなものが大きな要因の一つであったと思います。  しかしながら、いま一方、宅地の供給、なかんずく三大都市圏、特に首都圏における市街地の宅地供給の問題は、これは重要な問題であります。したがって、それを念頭に置きながら、その都度調和を求めながら改正されてきたものが今日に至った経過であろうというふうに思っておるわけであります。したがって、今回でも、あくまでも既存のいわゆる原則というものは踏み外すことなく、特に三大都市圏、首都圏の宅地供給の円滑化を促進するために行った土地税制の改革であるというふうに御理解をいただければ幸いであります。
  186. 井上泉

    井上(泉)委員 いままでもそういう趣旨のもとにこの土地税制の改正をやってきたのですが、その税制をやってきたことが安価な宅地供給の実績になったのかどうか、これはひとつ建設大臣に御答弁願いたいと思います。     〔渡辺(美)委員長代理退席、小宮山委員     長代理着席〕
  187. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えします。  いまお話しのように、五十三年、五十四年、五十五年と、確かに税制改正をしていただくように進めておったわけでございます。特に五十四年度は優良宅地についての措置をいただきましたけれども、その条件は相当厳しかったわけでございまして、そういうような意味におきましては、必ずしも私どもが要望しておりましたような内容ではなかったわけでございますが、五十五年度におきましては御承知のように相当な改善が見られたと思っております。  そこで、私どもといたしましては、じゃそれらを通じましてどれだけ供給がされたかということを具体的に申し上げることは非常に困難だと思っておりますけれども、やはり私どもは、この土地の譲渡益の重課制度あるいは個人の長期譲渡所得につきまして、優良な住宅地等の造成のために土地等を譲渡した場合の特例を設けようというような措置を講じておりますが、これらの改正につきまして、いま申しましたように、計量的な議論をすることは困難だと思っておりますけれども、たとえば五十三年度から、宅地開発の先行的な指標であります開発許可の面積というのは相当にふえております。たとえば昭和五十一年におきましては三千五百八十ヘクタールでございましたものが、昭和五十三年度には五千九十六、あるいは区画整理事業の認可面積等におきましても、昭和五十年に四千八百四十四ヘクタールでございましたものが、昭和五十三年度には六千七百九十八というようなふうに相当な増大を示しておるわけでございまして、相当な効果があったものというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一つ、今回の土地税制改正の中の主要な問題点でございますが、三大都市圏の既成市街地等の中の土地などを中高層耐火共同住宅の建設のために提供いたしました場合の買いかえ制度というものを今回は創設いたしたわけでございますが、これは当面の急務であります大都市の既成市街地の土地の有効利用の促進には多大の効果があるものというふうに考えておりまして、もちろん税制だけで宅地供給が進むとは考えておりませんけれども、税制を含めました総合的な宅地供給対策というものを私どもとして全力を挙げまして進めまして、宅地供給の拡大を実現してまいりたいと思っております。  特に、宅地供給として私どもが必要だと思っておりますのは、新市街地におきまする計画的な宅地開発と、それから都心部におきまするいわゆる既成市街地の再開発等によりまする高度利用、こういうものによりまして宅地供給を進めていきたいと思っておりまして、先生すでに御承知のように、建設省といたしましては、民間並びに公的機関によりまするいわゆる計画的な宅地開発というものを進めてまいりますこと、それからいろいろ御協力をいただいてまいりましたが、関連公共公益施設の整備、五十五年度は五割増の九百億を予定しておりますが、なお、今度法案をお願いしょうとしております都市再開発によりまする土地の有効利用の推進と、それからいろいろ御議論のございました都市計画法の線引きの見直しによりまして調整区域の中で宅地に活用できるものにつきまするいろいろな配慮、それから今後、私どもといたしましてもいまいろいろ検討しておりますが、市街地の中の農地を極力進んで宅地に供給していただきまするような政策というものを総合的にかつ強力に推進してまいりたい、こう思っておりまして、税制につきましてもこれらの政策の一環としまして努力をいたしてまいりたい。     〔小宮山委員長代理退席、村田委員長代理着席〕 いま大蔵大臣おっしゃいましたような、いわゆる重課制度の枠は残しながらも、私どもといたしましてはこのような土地税制の改正をお願いいたしておりまして、これがいわゆる一連の措置によりまして土地の流動化が促進をされ、また宅地供給というようなものが増加するということにつながるものであるというふうに期待をいたしておりまして、今後とも努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  188. 井上泉

    井上(泉)委員 宅地供給がしやすくなるという面から建設大臣としてはこの方が結構だと、こういうわけですけれども、この問題はまた建設委員会で論議をすることといたしまして、これは財政的にすべてが軒並みに増税の気配のあるところへもってきて土地の関係だけは減税の方向に例年いくという、その減税の額というものはどれくらいのものであって、そういうふうなことをすることが国民感情にこたえる道であるのか、日本の財政再建の上に土地税制をそういうふうに緩和することはこれは何ら問題でない、少額であるから問題でないというのか、その点ひとつ大蔵大臣の見解を承りたいと思います。
  189. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 今回御提案申し上げております土地税制の改正によりましていかほどの増収または減収になるかというお尋ねでございますが、実は土地がいかほど移動をするか、また、それについて譲渡益が幾らになるかということは、物事がキャピタルゲインでございますので、技術的に見込みがむずかしいということで、従来から総体としての増減収はお示しをしていないわけでございます。さようなふうに御理解をいただきたいと思います。
  190. 井上泉

    井上(泉)委員 それだけで論議をしておったらもう時間がないので、そのことは次の機会になにしたいと思いますけれども、こういう連続三年も土地税制の緩和をやるということについては、これは大方の国民の声としては反対であって、そのことはむしろ逆に土地の値上げを誘うておる。これをやって宅地の供給が拡大をされることによって、一面土地の値上げにストップをかけることができたといえばこれは結構だと思うわけですけれども、反対にその土地の価格はずっと急上昇しておるでしょう。そういう状態の中でなおかつ減税措置をして土地所有者に恩恵を与えるというようなことは、これはまさに悪政じゃないでしょうかね。私はそう思うということを付言しておきたいと思います。  そこで、次の地震保険の関係、大蔵省の関係ですが、今度地震保険に関する改正法が提案をされる、こういうことになっておるわけですが、これもいろいろと質疑をいたしたいと思うわけですけれども、火災保険と地震保険との関係をどう位置づけておるのか、この点についてお聞かせを願いたいと思うのです。
  191. 松尾直良

    ○松尾政府委員 お答えいたします。  地震保険と火災保険との関連についてのお尋ねでございますが、日本は大変な地震国でございまして、火災保険で地震が担保されないかということで明治以来いろいろな議論、要望があったわけでございます。ところが、地震というのは御案内のとおりいつ起きるか、必ずしも平均的に起きるものではない、しかも一たん起きますと非常に損害額が大きいということから、火災保険の中では地震保険というものを処理いたしかねるということで、明治以来火災保険の約款といたしましては、地震による火災はてん補をしない、こういうことで来てまいっておるわけでございます。現在の地震保険制度というのは昭和四十一年にできたわけでございますが、これは新潟の地震を契機といたしまして、そういう地震に対する災害を何らか保険という仕組みの中で考えられないかということから現在の地震保険が誕生いたしたわけでございます。したがいまして、火災保険といたしましては、明治以来一貫いたしまして地震による火災というものはてん補をいたさない、地震によります損害、火災、倒壊、すべてを含みまして地震保険という新しい保険の中で処理をする、こういうことで現在まで参っておるわけでございます。
  192. 井上泉

    井上(泉)委員 地震による火災は火災保険の対象にはならない。ところが、地震が起こってそれから数時間後に火災が発生をしても、これは地震に関連をするということで火災保険の対象にならない。そうすると、何千万もの保険契約をしておった者もこの地震保険による一千万円を限度としたもので物を処理をされる、こういうふうなことになっておるわけです。それからまた、地震保険の場合の国の再保険の危険準備金にいたしましても、大きな地震が発生した場合には、現在国が保有しておる地震保険の準備金の六百億やそこらではとてもじゃないが足りもせぬということですが、そういう地震保険制度、地震保険を取り入れる中で、いまのような直接地震ではないけれども間接的に火災が発生をした場合における火災保険というものもやはり一定の額を見るようなことをするのが、被災者に対する保険としての当然の措置ではないか。それからさらに、地震保険を掛けてない者は、今度は火災保険からも一銭ももらえぬ、それから国の保険でも、国が負担をする分も一銭ももらえぬ、同じ地震を受けた者でも、地震保険を掛けておると掛けてないとによって、国から受ける恩恵を全然受けることができない、火災保険もだめ、国からのものもだめ、こんな矛盾というものがあっていいものでしょうか。これは大臣、どうですか。
  193. 松尾直良

    ○松尾政府委員 若干私の言葉不足でございまして、先ほどのをより正確に申し上げますと、火災保険では地震による火災がてん補されないということは明治以来ずっと一貫いたしております。地震を直接または間接の原因として生じた火災、これは地震保険として地震保険金が出るということでございます。したがいまして、いままでは地震を直接もしくは間接の原因とする火災については一切てん補されるものがなかったのが、四十一年六月から、この地震保険ができましたことによって、そういうものについては地震保険としてカバーされるという面が出てきたわけでございます。ただ、その金額が小さいではないか……(井上(泉)委員「もらえないのもあるでしょう。地震保険を掛けてなかったら全然もらえぬでしょう」と呼ぶ)これは保険の制度といたしましては、保険料を払った方に保険金を支出する、当然のことではないかと思っております。
  194. 井上泉

    井上(泉)委員 それはあたりまえのことですが、国としてやる場合に、それなら別に、そういう地域の被災者に対しては、地震保険を掛けておった者には五百万出す、ところが掛けてない者は全然ない、火災保険はもらえない、こういうことではいけないから、保険を掛けてない者に対しても何らかの救済措置を、これは大蔵大臣の領分であるのかあるいは建設大臣の領分であるのかどうか知りませんけれども、やはり法のもとにおける恩恵は平等でなければならぬという原則からいっても、やはり国の施策の恩恵は被災者が保険を掛けておろうがなかろうが、地震という被害に直面した場合にはそれを受けられるように何らかのそれに対する救済措置を講ずるというのが、私は今度の地震保険法の改正をするときになお検討すべきことではないかということを言っておるわけであるし、それから明治以来、地震に起因をするものについては火災保険の保険金は支払わないことになっておる、こう言っても、なっておることをよい方向に直していくのが政治であって、昔こう決めておるからもうこのとおりでございますと言うて金科玉条にこれを遵守するというのは政治というものではないし、やはり行政というものは流れておるわけですから、現代に適応したところの保険体系というものに変えなければならぬと思うわけですが、これもくどくど説明する必要はないので、大臣の見解を承っておきたいと思います。
  195. 松尾直良

    ○松尾政府委員 明治以来直さなかったという御批判でございますが、これはまさにそういう需要がございましたので、四十一年六月、地震保険という制度を発足いたしまして、先般の宮城沖地震でいろいろ問題が提起されましたのに応じまして今国会で改正案を御審議願う予定にいたしておるわけでございます。  全体として、やはりこの地震保険ができるだけ普及をされるということが望ましいわけでございますので、私どもこの地震保険の普及には業界を指導いたしまして、一層普及されるように努力をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  196. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、地震保険にしろ火災保険にしろ、火災保険でも甲の保険会社はこの焼失は三割と認める、乙の保険会社は五割と認める、あるいは六割と認めるというような形で、火災による損傷の程度というものはそれぞれ保険会社の調査によって決めておるわけでありますが、そういうふうな被害の査定というものを保険会社任せじゃなしに、被保険者、いわゆる保険加入者である者が発言ができるか、あるいは第三者――広範な地震保険とかというようなものになった場合には、これは伊豆で地震が起こった。そうすると、伊豆へは行かれない。行かれないけれども、向こうの人は何とかその間でも生活せねばならぬと言うて現状を少しでも修理をする。修理をすると、この程度だからこれば保険金を払えないぞという査定を保険会社はする。保険会社は公的な性格を持っておるといっても一つの営利企業ですから、やはり今度の地震保険法を改正するに当たって、損害の査定委員会のようなものを第三者でつくって適正な査定をして、そうして被災者に対して適正な補償の決定をするようなものを設けるべきだと私は思うわけですが、これについて大臣の見解を承りたいと思います。
  197. 松尾直良

    ○松尾政府委員 損害の査定が公平でなければならないということは御指摘のとおりでございます。地震保険につきましては、一たん大規模な地震が起きましたときには公平の確保ということと迅速な査定という二つが大事な要請であるというふうに考えております。個々のほかの保険と違いまして、大きな地震が起きますと、非常に広範な範囲で損害が発生いたします。(井上(泉)委員質問の趣旨に答えてくださいよ、査定委員会をつくるのがいいのか悪いのかと聞いているのだから」と呼ぶ)公平を期するという点におきましては、共通の査定要綱を作成いたしまして、しかも共同査定で当たるという体制で準備を進めております。  御指摘の第三者に査定をさせてはどうかというごともいろいろ検討をいたしてみました。これにつきましての一つの問題は、やはり契約当事者以外の第三者が、結局その契約当事者との交渉という場面がどうしても出てまいるわけであります。あるいは第三者の機構をつくる。あらかじめそういった要員をどうやって確保するか、その費用を一体だれがどういうふうに負担するかというような問題がございますので、共同の査定要綱をつくって損害保険会社が迅速に共同に査定をする、こういう体制で準備を進めておるわけでございます。  なお、個々の苦情の処理につきましてもしかるべき機関をつくる必要があるということで、これは査定の公平を確保するためにそういった苦情処理機関を具体的に地方につくる、こういう方向で指導して、ただいまいろいろ準備を進めておる、こういう段階でございます。
  198. 井上泉

    井上(泉)委員 その点については、法案が国会にかかった場合にはそれぞれ所管の委員会なり何かで当然審議をされると思うわけですけれども、私はその公平な第三者機関を、いま言う特殊法人だとかなんとかいうような金を食う、そして天下りの機関としてこれをつくれと言っておるのではないですから、その辺をわきまえてひとつ検討しておいていただきたいと思うわけです。  そこで、ついでに保険のことですが、自動車保険の運用益というものは相当莫大にあるわけで、その自動車保険の運用益というものはユーザーに返す措置をするのがこの使い方の使命にあるわけですが、これは一体どういうふうになっておるのか。運輸省、大蔵省それぞれ膨大な運用益を抱えて、これを目的別に配分もしておると思うわけですが、それの運用益がどれだけあって、どういうふうに配分しておるのか、そういう過去三年の資料を運輸省、大蔵省別々に出していただいて、次の分科会等その他の機会に質問をしたいと思いますのでへその資料を提出することを委員長に要請をしておきます。
  199. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 どうですか、資料は。
  200. 松尾直良

    ○松尾政府委員 御要望に沿った資料を提出できるようにいたします。
  201. 井上泉

    井上(泉)委員 運輸省は……。
  202. 飯島篤

    ○飯島政府委員 運輸省も同様に御協力いたしたいと思います。
  203. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、いま皆それぞれ大平内閣の重要な閣僚のポストについておられるわけですが、大平内閣が目玉的に地方にアピールしておるのが田園都市構想、こういうことになっておるわけですが、その田園都市構想について国土庁の長官にまずお尋ねをしていきたいと私は思うわけです。  実は、定住圏構想、田園都市構想とかモデル何とかといって、自治省、建設省、いろいろ地方開発の構想があるわけですが、この五十五年度の予算で果たして大平内閣が目玉として国民に訴えておる、国民に施政方針でも言った、あるいはまたそのほかいろいろな機会に言っておるのですが、この田園都市構想というものが本当にどうやったら花も実もある構想として実現をすることができるか、こう思っていろいろ検討してみますけれども、なかなかこれは花も実もあるものになるには前途ほど遠しという感がするわけですが、これについて所管の国土庁の長官としてはどういうお考えを持っておられるのか、承りたいと思います。
  204. 園田清充

    ○園田国務大臣 いま御指摘のございました田園都市構想というものをどう国土庁として受けとめておるかということでございますが、私どもは具体的な政策として総理から指示を受けてはおりません。ただし、先生承知のとおり、三全総において、国土庁としては定住圏構想の推進ということで全国四十カ所のモデル定住圏を選定して、いま各県が関係市村町と協議をして構想を進めていただいておるわけでございますが、この構想がまとまるのが大体ことしの六月ごろ、そして、私ども政府側といろいろ基本的な事業についての話し合いに入っていただくわけでございますけれども、こうした観点からいたしますと、いまの総理の言われる田園都市構想というものは、私どもが考えておるモデル定住圏の一つの基本理念と受けとめて、実はモデル定住圏を推進しているわけでございます。聞くところによると、総理の側近ではいろいろ政策的なものも検討されているようでございますが、いま申し上げますとおり、具体的に総理府並びに総理からの提示は受けておりません。
  205. 井上泉

    井上(泉)委員 正直な御答弁をいただいたわけですが、しかし、総理から受けてなくとも一つの省を預かっておるし、それで省の持っておる使命というもの、たとえば国土庁では土地の利用区分を決めるとかというような大きな仕事もできるわけですから、そういう点でも私は積極的な取り組み方をむしろ国土庁の長官としてはされたらどうか、こう思うわけです。これは大蔵大臣もおられるから、だから予算的な面についても……。  モデル定住圏区域は、おっしゃるとおり日本の全国の過疎地が全部対象になっておって、その過疎地の中の中心地が一つの中心都市として位置づけられておるわけですが、ここで定住圏構想を打ち立てるためには、ここに人が住むようにしなければならぬ。人が住むようにするためにはどうするかということについては、それぞれ地方自治体ではいろいろな旗を上げておるわけですけれども、この三全総の課題地域として位置づけておるところは、いま私が言ったようにほとんどが第一次産業の地域である。そうすれば第一次産業を発展させる方向で地域開発をやらねば、ここに工業を誘致するということが大前提になるような、つまり中核事業を何にするかということを決めて、それによって地域の開発を図る、定住圏構想を具体化するというような考え方というのは私は間違っていると思うのです。この際、むしろ国土庁の中では、大都市圏整備の推進という中で、工場、大学の適正立地の推進ということを書いてあるわけですが、今日の大都市圏の中の問題ではなしに、地方における過疎地域の中核都市というものをむしろ学園都市的に形成をする。そうすることによってそこの地域の人口もふえるし、第一次産業を発展さすために必要な学問の場もできるし、一石二鳥、一石三鳥の効果を発揮すると思うのですが、そういう点で、地方の田園都市圏の定住圏構想の中にこうした国家の教育施設を移すということが、いまの大都市圏の中で大変な交通の混乱、そして住宅難、そういう中で大学を持っているよりかずっと効果的であると思うのです。そういう点について、国土庁長官としてその構想が及ばないかどうか、承りたいと思います。
  206. 園田清充

    ○園田国務大臣 いま御指摘のあった点は、私どもも全く同感でございます。  そこで、いま地方の時代ということが言われますが、地方の時代ということも、いま御指摘の田園都市構想ということも、考えてみますと、三大都市圏を中心として、国土の約一割の中に五〇%の人間が住まっておる、そういう点から考えて、当然地方には地方の文化と伝統、そうしたものを踏まえてりっぱな居住環境の地域を設定していこうという考え方で進められておるものでございまして、いま私どもが中間的にいろいろ地方と折衝している段階で、先生が御指摘になりました大学の地方移転と申しますか、そういうことは、ある意味では大都市圏の機能を発揮させる上からも移転が必要だというふうに考えて、実は文部省とも過般この問題について正式に協議に入りましたし、かつまた国土庁の中に、ある意味では大学と、そうした計画をお持ちの町村との仲人役を果たすという意味からライブラリーを設定して、両方にそれぞれの資料を提供しながら、御説のような大学の地方分散を図るようなことを推進していこうということで、国土庁としては熱心に取り組ましていただいておるというのが現状の姿でございます。
  207. 井上泉

    井上(泉)委員 国土庁は廃止の対象にしたらよいとかいうような意見も聞かれる中で、私は今日、日本の国土というものを考えた場合に、国土庁の仕事というものは相当重要なものがあると思うわけですが、その重要性を発揮するためには、大臣がいま言ったようなことを大胆に提言をして、やることによって国土庁というものが国民の前にクローズアップされてくると思うので、大胆にそういう方向を打ち出していただきたいと思います。  もう与えられた時間がありませんので多くを申し上げません。ただ一つ、これは直接建設委員会で論議いたすわけですけれども、きょう公定歩合の引き上げをやった。それによって物価の値上がりを抑える、こう言っていますけれども、物価の値上がりが抑えられるはずがない。私は抑えられないと思う。抑えられたらお目にかかりたい。国民のために喜ぶが、大きなことを言うようですけれども、これは、私なんかが代議士をやめたところで何ら関係がないけれども、しかし、大臣としては公定歩合を上げたということによって物価を抑えることができる、こう言う。きょうも企画庁の長官は労賃が上がったどうのこうの言って、とんでもないお門違いの話をしているわけですが、これは全く程度の悪い話です。  そこで、物価は値上がりをする、その値上がりをする中で、いま公共事業費が非常に悪のように言われておるわけですが、いま地方で公共事業がなくなったら、地方に仕事がなくなるのですよ。そこで建設大臣、公共事業をやっておる地方の業者の間においては、零細な中小業者ですが、これがこんな資材の値上がりの中で非常に苦労しておるのです。きょう住宅ローンについては金利は据え置き、これは大臣非常にいいことですが、そういうことも言われておるわけですが、この中小企業が使う資材の値上がりに対して、従前のような物価値上げに対応する措置で事足れりと考えておるのか、これに対して何らか措置を講じなければならぬと考えておるのか、大臣の見解を承って、私の質問を終わります。
  208. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 ただいま井上先生のおっしゃいました問題は、現在の油の需給あるいは価格の高騰の現状からいきまして、非常に私ども心配いたしておる問題でございますが、現在ございます契約約款等の内容からまいりますと、たとえば十二カ月経過して三%以上とか、あるいはインフレ条項とか、必ずしも現状に即したような措置ではございませんので、中央建設業審議会にいまお諮りを申しておりまして、いろいろ約款の問題等について御検討いただいておりますが、これには相当な期間を要するのではないかと思っておりますので、当面、たとえばセメントでありますとかアスファルトでありますとか、そういう特殊な資材等につきまして相当な値上がり等が予想されますけれども、そういう問題に対処いたしましてどうするかということにつきましては、ただいまその約款そのものについては相当時間がかかりますので、当面の措置についてただいま御審議を願っておりますので、いずれその御結論をいただきましたならば、これらの問題に対処できるような措置を講じたい、せっかくただいま検討いたしておる段階でございますので、いずれ近くそのような結論をちょうだいいたしましたら、早くひとつそれに対処する具体的な考え方を示してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  209. 井上泉

    井上(泉)委員 どうもありがとうございました。
  210. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 この際、上田君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。上田卓三君。
  211. 上田卓三

    上田(卓)委員 関連いたしまして、私の方から部落問題の解決について、政府が一体どのように考えておるのかということで、いわゆる同和対策事業を含むところの総合的な問題につきまして関係大臣に御質問を申し上げたい、このように思うわけでございます。  総理府の小渕長官は二月五日の本委員会におきまして、わが党の野坂浩賢代議士の質問に対しまして、いわゆる同和対策事業については五十五年度の新年度の予算が通過いたしますと、それをその予算を除いた場合に残事業は八百億円である、こういう御発言をされておるわけでございまして、いわゆる残事業が果たしてそれだけであるのかどうかということは非常に重要な問題でございますので、それだけで同和事業の解決が図られるという問題ではないにいたしましても、この数字につきましては昨年の通常国会におきましても、小委員会等で十分大いに議論になったところでございますので、そういう点で、昭和五十年の全国の同和対策の実態調査、いわゆる残事業調査といわれておるわけでございますが、その残事業調査の不十分さというのはすでに指摘されておるわけでございますが、その点について十分に説明した上で注釈を入れて言うていただかないと非常に国民に誤解を与えるのではないか。特に、三年の延長がなされたわけでございまして、あと残るところ二年という状況でございますので、政府の把握している正確な残事業、括弧つきの残事業についてどれだけ見ておるのかということをまず問いただしたい、このように思います。
  212. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 お答えいたします。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  先回、野坂委員に御答弁申し上げました同和対策の残事業につきましては、昭和五十年度調査の結果、当時七千六百四十億と調査結果に基づいて、その後予算措置をして消化いたしてまいりましたものを差し引きまして、合わせて昭和五十五年度予算を五十四年度における消費者物価指数等で掛け算をいたしてみた数字で差し引きますと、残余は八百億程度になるだろうという事務的な数字を申し上げたわけでございますが、委員指摘のように、その後法律が延長されまして現在も残事業の調査をいたしております段階でございますので、昭和五十六年度予算をつくりますまでには、この本院で御指摘をいただきました附帯決議に基づいて、各省庁あるいはまた私どもとしても鋭意その後における事業を把握いたしまして、改めて数字等につきましては五十六年度予算の段階までにまとめ上げたい、こういうことで鋭意努力をいたしておるところでございます。
  213. 上田卓三

    上田(卓)委員 そういう意味では、この八百億というのは全く話にならない数字であって、やはり正しい意味での残事業というものは、国が、総理府が中心になりましてはっきりしたところの数字の把握をぜひともやってもらいたいというように思うわけであります。  特に問題になりますのは、何を言いましても五十年調査はわれわれの調査と比べても、あるいはたとえば政府昭和十年にも調査しておるわけでございまして、そのときの調査から見ても千カ所ほど少ないという状況になりまして、それじゃそれ以後四十数年間に千カ所の部落が完全に消滅したのかどうか、部落問題が根本的にその地域について解決しているのかどうかというような疑義もあるわけでございます。いわんや五十年以降、私が総理府から聞いた話では、百五十五ですかの新しい地域が指定追加という形になっておるというようなことも聞いておるわけでございまして、もっともっとそういう意味では全国的にそういう未解放部落でありながら国の同和対策事業の恩恵に浴してないところが多々あるのではなかろうかというように思いますし、また同時に何を言いましても、この実態調査の調査項目が国のいわゆる補助対象になるものだけにしぼっておるというようなものもありまして、全国の市町村、自治体のすべての同和対策事業を調査したものでないということは明らかではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。  昭和五十二年の十月に全国市長会が調査した中で、特にこの同和関係を含むところの全国の市は二百五十六市あるわけでございますが、その中で特に二百四十一市についてだけでも残事業が一兆二千億という数字が出ておるわけでございます。そうしますと、まだ町村があるわけでございまして、約七百八十五の町村が同和地区を含み、また現実に同和対策事業をやっておるというような状況があるわけでございまして、ざっとした試算でございますけれども、これについても約二兆七千億ほどの残事業があると見なければならぬじゃないか。そういう意味で私どもは去年の三年延長の際に、とりあえず最低五年以上の法延長をして、その間に法律の抜本的な総合的な改正を図ることが必要ではないか、こういうように申し上げておるところでございまして、そういう点で非常にわれわれとしては遺憾である。  きょう、自治大臣もお見えでございますので、自治省の方からさらにそれに関連してお答えいただきたいわけでございますが、いわゆる自治体の行うところの同和対策事業に対して国庫補助対象になっておるのは、近年だけで結構でございますので、どの程度の補助対象になっておるのかということ、それから補助対象になっていないがために、せっかく補助を受けられるにもかかわらず補助を受けられないために不当な超過負担を強いられている、赤字で苫しんでいるという自治体の実態があるわけでございまして、いわゆる十条適用のないところの同和債というもの、過去累積赤字はどれだけあるのか、その数字について明らかにしていただきたい、このように思います。
  214. 土屋佳照

    土屋政府委員 ただいまお話のございました同和対策事業に関連いたしましては、なお地方の負担も多いわけでございますけれども、逐年国費の比率が高まっておりまして、同和対策事業の中で国費として見られておりますものが、五十三年度で見まして約七百九十三億でございまして、全体の地方単独も含めた中で三九・一%ということに相なっておるわけでございます。  それから同和債の残高が現在どうなっておるかということでございますが、五十三年度末で四千三十九億円ということに相なっておるわけでございます。
  215. 上田卓三

    上田(卓)委員 いまお答えいただいた中で明らかになったのは、同和対策事業特別措置法に基づいて国庫補助対象になっておるのが五十三年度だけで何と三九・一%である、こういうことですね。その結果、多くは各自治体の単独事業になっておる。その結果、五十四年度で四千三十九億円の同和の赤字があった。これは元利をつけて返さなければならないところの性格のものであるわけでございまして、これは同和対策事業特別措置法に言うところの法律違反じゃないか、こういうふうに私は思うのですが、まず自治大臣、このことについて御感想というか見解というものを出していただきたい、このように思います。いまあなたのところの局長お答えになったあの数字の中身についてあなたは一体どう考えるのか、ひとつ見解を出していただきたいと思います。
  216. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 同和対策事業につきましては、御説のように非常に地方が大変苦労をしておる。というのは、地方の単独事業の負担が多いわけでございますから、そこで、私どもとしましては毎年できる限りひとつ国庫負担補助の対象の事業にふやしていただきたいというお願いをして、そして今日たしか四割ぐらいが単独事業になっておるのじゃないかな、私はそう理解しておるのですが、先ほどのは恐らく財源ベースか何かでお答えしたのだろうと思います。いずれにいたしましても、この事業はあと二年間の時限ということになっておりますので、できる限り残事業を調査いたしまして、そして私どもとしては、地方財政は現在非常な負担増に苦しんでおりますから、したがって国に対して今後とも一層国庫補助負担の対象事業の拡大ということをひとつお願いをしたい。同時にまた、起債等については私どもとしても十分配慮もし、同時にまた特別交付税等においてもできる限りのめんどうを見たい、かように考えております。
  217. 上田卓三

    上田(卓)委員 このような大事な部落問題の解決に、国庫補助対象になっていない同和事業があるということはもう本当に言語道断だと私は言わざるを得ない、こういうふうに思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、そういう状況の中から莫大なそういう残事業というものをいま全国の自治体は抱えておるわけでございまして、これに対して国が特措法の総合的な改正を図って、抜本的な財源措置をとらなければならぬということは当然のことではないか、こういうように思うわけでございまして、総理府が中心になって一日も早くこの部落のそういう実態の把握ということをまず何よりも先駆けなければならないだろう、こういうように思うわけでございます。全国市長会なりあるいは町村会なりあるいは全同対とかいう組織もあるわけでございまして、そういう方々の意見を聞いて、やはりいまからあと二年の中で抜本的な、五十年調査のような形の――抜本的になってないから問題になっているわけですけれども、そういう大がかりな調査ができないということになりますと、まず全国の市町村の数字の把握をやはり信用していただいて、これに基づいて後の計画を立てていく必要があるのではなかろうか、こういうように思うわけであります。私の大阪でも、五十四年度以降の残事業だけでも二千七百八十億円という数字が出ておるわけでございまして、五十三年度ベースだけでも六年近くかかってしまうというようなこともございます。あるいは福岡の場合でも、いわゆる三年延長後でも約三千億から四千億の残事業が見込まれるというようなことも県当局は言っておるわけでございまして、そういう点でわれわれは、政府が言うところの新年度予算が通ったらあと八百億だという数字が全くとんでもない数字であるというように考えておるわけでございまして、そういう点で総理府長官の残事業把握、実態の把握というものについて本当にこの二年の間にしっかりと把握していただくのか、いま鋭意努力中というならその努力の中身というものを含めてひとつお聞かせいただきたい、こういうように思います。
  218. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 残事業につきましては、御指摘ありましたように、五十年度調査に基づいて先ほどの数字は機械的に算出したものだろうと思います。地方自治団体からの数字等も上がっておるようでございます。私ども直接手足があるわけではありませんので、関係省庁の十分な協力を得て御指摘のような点について十分配慮して、今日法律が施行しております期間の中にともかく処理のできるように調査を十分進めていきたい、このように考えております。
  219. 上田卓三

    上田(卓)委員 私、いま二年間と申し上げたわけですが、やはり二年間では遅いわけでございまして、少なくともことし中には、残事業という表現を使うならば、それが実際にどれだけあるのかということを把握しなければならないだろう、その上に立ってやはり法の総合的改正というものを御検討いただかなければならないだろう、こういうように思いますので、ひとつ時期について、五十五年度中にこの実態の把握を終わるというようにお答えできるのかどうか、質問したいと思います。
  220. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 最初に御答弁申し上げましたように、現在施行しておる法律は五十六年度末で一応終わることになっておりますので、最終年度に処理するためにも御指摘のように五十五年度中に残事業の調査を進めてまいる最善の努力をいたすことは当然だと思います。
  221. 上田卓三

    上田(卓)委員 次に、いわゆる部落地名総鑑につきまして、法務大臣なり、また労働大臣から考えを明らかにしていただきたいわけでございます。  御存じのように一九六五年に出されましたところの同対審答申にも述べられておりますように、部落問題の解決は実態的差別の解消と心理的差別の解消、この二つにおいて解決されなければならない、こういうふうに言われておるわけでございまして、いわゆる残事業などと言われているものは実態的差別の解消の部分であるわけでございますが、同時に小委員会の中でも法務省の鬼塚人権擁護局長は、近年差別事象が頻発しているという発言をされておりますし、三つの附帯決議の中でも事象が続発しているという表現がなされておるわけでございます。  そういう点でまずひとつ法務省に質問いたしますが、第二の「部落リスト」の発行者はだれであるか、それから第四の「大阪府下同和地区現況」のいわゆるすでに発表された以外の購入者の氏名を明らかにしていただきたい。  それから、第五番目のいわゆる「日本の部落」について、昨年の十二月の二十五日、毎日新聞は全国で二十五社、そして二十七冊の購入がされたということをすっぱ抜いておるわけでございますが、そのことについて大臣は把握しておるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  222. 中島一郎

    ○中島政府委員 お答えを申し上げます。  まず最初に、第二のリストの発行者はだれかというお尋ねでございますが、その後の調査によりまして、発行者としてこの人ではあるまいかというめどをつけている者はございますけれども、まだ確定するには至っておらないという段階でございます。  その次に、第四のリストの購入者につきましては、二十六社、二十七冊ということになっておりまして、第五のリストにつきましては、二十五社、二十七冊ということになっておるわけでありますが、具体的な購入企業の企業名につきましては、この席で申し上げるのは差し控えさせていただきたい、このように考えております。
  223. 上田卓三

    上田(卓)委員 企業名がこの場で発表できないということですから、後刻私の方へその企業名を連絡してもらいたい、このように思いますので、その点についてのみいま答えてください。
  224. 中島一郎

    ○中島政府委員 委員会の御要望がございましたら、提出するという方向で検討させていただきます。
  225. 上田卓三

    上田(卓)委員 委員長、それでよろしいですね。
  226. 田村元

    田村委員長 いいですね。――それじゃそのように計らいましょう。
  227. 上田卓三

    上田(卓)委員 十年も前にこの地名総鑑を購入しながら隠し持っておって、そして昨年六月に発覚する、こういう状況は一体どうだろうか。国会でもしばしば取り上げられながら、告発されるというのですか、あるいは見つけ出されるというのですか、そういう状態になるまで企業が隠し持っておったという現状が出てきておるわけでございまして、もう第一から第七、第八、まだまだ九、十、十一と、私の方で次々と民間の手段でそれなりの把握に努めておるわけでございますが、国は本当にわれわれの追及で後手後手に回って、ここにもあるじゃないか、ここも一回調べろという状況の中で調べたらあったというような状況になっておるわけでございまして、われわれから言うならば、そういう購入企業なりあるいはそういう興信所、探偵社というものと法務省を中心とした政府とが全く黒い癒着で結ばれておるのではないか。そこにわれわれは大きな疑惑を感じざるを得ないわけでございまして、そういう点で、本当に政府みずからがもっともっと啓発して次々に――いまなおまだ隠し持っておるところがたくさんあるわけでございますので、そういう点で法務大臣の決意というものをひとつこの際聞かしていただきたい、このように思います。
  228. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 法務省の同和対策といたしましては、人権侵犯事件の処理等を中心といたします啓発活動によって心理的差別の解消を図ることを目的とするものでございますが、各種の広報手段を通して部落差別の解消を広く国民に呼びかけるほか、具体的な人権に関する相談、それから人権侵犯事件の調査、処理等を通じまして、積極的に啓発活動を推進しておるところでございます。  先ほど来お話のありましたようなことにつきましては、厳に戒めてそういうものの皆無になるように努力をいたしたいと思っております。
  229. 上田卓三

    上田(卓)委員 二月の八日に大阪で購入企業に対する追及をする会がありまして、その中で明らかになったのは、「日本の部落」を見て、そして試験で合格になっておったにもかかわらずそのリストを見たがために、こういう者を採用してはならないということで、実は三人の合格者を失格にしたんだ、採用しなかったんだ、いまになって大変反省しているんだけれども、その当時そのリストを見たがために、せっかく合格している人間を不採用にしたんだというような告白さえも、実はある企業がいたしておるわけでございます。  そういう点で、法務大臣はいま今後かかることのないようにということで、人権の啓発も含めて積極的に取り組みたい、こういうことを言っておるわけでございますが、いま現在法務省において新しいリストの購入者というものについて持っているなら出してもらいたい、把握しているなら出してもらいたい、このように思うのですが、どうですか。
  230. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 事務当局からお答えいたさせます。
  231. 中島一郎

    ○中島政府委員 ちょっと御質問の趣旨を十分に理解いたしませんでしたが、現在法務省において購入者の判明しておる分につきましては、先ほど申しましたように、委員会の御要望がございますれば提出するということでございます。
  232. 上田卓三

    上田(卓)委員 それは、われわれが追及をし、すでに世上わかった分について、あなたのところは調べ、そしてわかった分についてわれわれに連絡するということであって、まだ問題になっていないことで――われわれが一々言うて初めてその問題について調査して出しているということなんだけれども、私から言うならば、すべて持っておって、言われるまで置いてあるのじゃないか。そういう意味で、言われるまでにあるなら出しなさいということを言っているのです。答えてください。
  233. 中島一郎

    ○中島政府委員 法務省で現在認知と申しましょうか、存在を知っておるいわゆる差別リストというのは、従来問題になっております第一から第八までの八種類の図書でございます。
  234. 上田卓三

    上田(卓)委員 ところが、ここに私は資料を持っているのです。大臣、これはあなたのところの調査の中に出てきてない、われわれの調査によって初めて明らかになった二社のものです。はっきりとここには誓約書が入っております。昭和四十九年ごろ探偵社と思われる男から三万円程度で地名総鑑一冊を購入しました、そして、四十九年秋ごろ近畿地方分をコピーし、神戸、京都支店あてに送付しました、そして、五十年十二月に自宅にて現物を焼却したと言っているのですが、これは安田信託銀行の本社大阪事務所の何がしが、われわれの追及によってそのことが明らかにされているわけです。もう一社については名前を申し上げませんが、本当にこういう問題がわれわれの調査によってしか発見されていかないということに対して、法務省はどのように考えておるのか。先ほど私何回も言いますように、知っておりながら、逆に言うならば企業の方からあなた方に対していろいろの手を回して、発表しないでくれとかあるいは隠密にしてくれとかいろいろな情報が、われわれから言うならば本当に法務省というのはそういう差別企業を摘発するというよりも、差別企業を擁護しているとしか思えないような現状があるわけでございますので、この新しい事実について一体どうするのか、そのことをひとつ明らかにしてもらいたい、このように思います。
  235. 中島一郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  従来問題になっております第一のリストから第八のリスト、これは第七のリストは若干事情が違いますが、いずれも昭和四十五年ごろから四十九年ごろにかけて発行されたものでありまして、五十年の末にその第一のリストが発覚をいたしまして、それを契機としてわれわれも力を入れていろいろなそういった差別図書の掘り起こしと申しましょうか、解明に努力をいたしておるわけでありまして、今後とも従来にも増して積極的にその解明に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  236. 上田卓三

    上田(卓)委員 最近のリスト購入者、企業を調べますと、非常に銀行関係が多いのですね。これは大蔵当局の監督下にあるわけでございまして、この安田信託銀行もそうでございますが、御存じかもわかりませんが、すでに熊本県の阿蘇製薬株式会社が東京商工リサーチを使って第一次の合格者十九名を身元調査しているということが明らかになり、調査中に判明し、われわれがそれを追及する中で一応行政指導で全員が合格、こういうことになったわけでございます。ここに東京商工リサーチの調査報告書を私は持ってきておるわけでございますが、この中でどういうことをこのリサーチがうたい文句にしているかということでございますが、第四は、「わが社の調査、情報、資料などが大蔵省や通産省、経済企画庁、日銀などを初め新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどに採用される。信用を高め、その調査は海外でも信頼されている点にあります。」ということで宣伝をされて、われわれはこういう信用のあるところから仕事をもらっているんだ、こういうことを言っておるわけでございます。そういう点で、本当にこういう国民のプライバシーあるいは触れられたくないところ、そういうものを調査し、そして結果的には人権侵害、差別事件につながる、そういう悪質な商売をしているところの興信所とか探偵社が、大蔵省関係あるいは通産、企画もそうでございますけれども、特にそういうところに出入りしている、お得意さんであるということに対して、大蔵大臣は一体どう考えるのか。また同時に、数多くの銀行、金融機関がこういうリストを購入しておるわけでございますが、その点についてどのように考えているのか、今後どうするのか、その点についてお聞かせをいただきたい、このように思います。
  237. 竹下登

    ○竹下国務大臣 上田委員の御指摘で私は初めて勉強させていただきました。素直に申し上げます。好ましいことではないという感じを率直に受けました。
  238. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、好ましくないというだけでなしに、どうするのかということを私はやはり明らかにしていただきたい。私が初当選して間もなく、この同和対策事業特別措置法の強化改正、延長問題で与野党の議員の先生方にいろいろお願いに参りました。そのとき、当時竹下大臣ではございませんでしたが、何といいましても自民党の大物の代議士、わざわざ私の部屋まで来ていただきまして、上田先生どういうことでしょうか、しかじかかくかくですと申し上げましたら、それは重要な問題です、私も賛成しましょうということで、たしか私の部屋で署名をしていただいたということを私記憶しておるわけでございます。そういう一つのものに判を押すということだけじゃなしに、やはりいま大蔵大臣でもあるわけでございますから、そういう点でいまその監督下にあるところの銀行なりあるいは出入りの業者がこういう悪質な人権侵害事件を起こしておるわけでございますから、ただ単なる、そういうことがあって初めて聞きました、深刻な問題ですということだけでは何もならぬわけでございますので、もっと積極的にどうするのだ、そういうものに対して出入りを禁止するとか取引を停止するとか、あるいはそういう購入銀行に対してはどうするという強い決意のほどを国民は期待しているし、私もそのことを期待するものでありますので、再度ひとつお答えいただきたい、このように思います。
  239. 竹下登

    ○竹下国務大臣 どのような方法で具体的に対応するかということになりますと、これは検討させていただきたいと思います。しかし、私自身懲罰とかそういうような感覚は別といたしまして、委員指摘の趣旨を体してそれなりの措置をとる方向で検討をしなければならぬということは、そのとおりに感じました。
  240. 上田卓三

    上田(卓)委員 大蔵大臣には後からさらに関連して御質問申し上げたいので、次に移りたいと思います。  法務、自治省にさらに質問したいわけでございますが、昭和五十一年に民法が一部改正されたわけでありまして、その結果戸籍といわゆる除籍は公開制限をされておるわけでございまして、これは公開されるということが差別、侵害につながる、興信所、探偵社の悪質なそういう活用によって大きな問題が起きるということで制限されておるわけでございます。しかし、にもかかわらず、それに類似した事件が続発しておるわけでございまして、公開制限をされていないところの戸籍付票や住民票を活用する業者が出てきておるわけでございますが、そのことについて知っておるのか、そしてそれに対してどう処置をしようとしているのか、そのことについてお聞かせいただきたい、このように思います。
  241. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 ただいまお話がございましたように、住民基本台帳の制度というのは住民の居住関係の公証の制度でございますので、公開を原則としておりますことは御案内のとおりでございます。しかし、ただいまお話がありましたように、島根県の安来市におきましてこの住民基本台帳を公開いたしまして、住民基本台帳の全体を写してこれを転売するという事件が起きました。これは本来、先ほど申し上げましたように居住関係を公証するものでありまして、これを転載して売るなどということは制度の趣旨あるいは個人のプライバシーの保護の見地から許すべからざることだと存じております。したがいまして、このような事件が発生をいたしましたことはまことに遺憾だと存じております。  実はこのような事件が昭和四十八年には発生をいたしておりまして、そのときに自治省といたしましても、市町村にそのようなことがないように適正な運用をされるようにということの通達を出したわけでございます。たとえば閲覧をするときには職員が立ち会うようにいたしますとか、そういうことで不適正な閲覧が行われないような措置をいたしたわけでありますが、今回のような事件が起きまして個人の秘密がやはり漏れるというのは大変問題だと思います。そこでこの取り扱いなり制度につきまして私の方でも制限ができるように検討いたしたいと存じております。
  242. 上田卓三

    上田(卓)委員 このようにわれわれがしばしば国会で取り上げてまいった諸点について、いまだに十分な措置がとられていない。これは法務省を中心にして、部落地名総鑑なり、あるいは戸籍、除籍あるいはいま言いましたところの戸籍付票あるいは住民票の公開など、そういうことに端を発しての人権侵害が起こっておるわけでございまして、やはりこれは現行法の不備といいますか、人権思想が十分そこに取り入れられていないというところにあるわけでございまして、部落問題に端を発して、そういう悪質な差別企業といいますか、あるいはそういうものを製造する企業に対して法的な規制を加える必要があるのではないか、こういうことで、法務省が本来ならば窓口になってやらなければならないものが、何か同和問題ということになりますと、総理府だとか、いや通産がどうだとか……。アメリカなどでは、たとえば探偵法などがあって、探偵とかそういう興信所に対しては、一番プライバシーを侵害する可能性のある、本当にそういう紙一重の仕事をしているということで、許認可制度できっちりとそういうものを登録させて一定の指導をしているということでありますが、わが国の場合は全くもう放任主義で、逆に言うたら、放任しているというよりもそういうものを放任したような形で政府なり大企業が泳がしておるのではないか、そういうものを必要視しておるのではないか、規制せずにそういうものをやみからやみへ、国民のプライバシーというのですか、人権侵害をそういう形で、容易に行えるような形で育成していると言ってもしかりだとわれわれは言わざるを得ないわけでございまして、この点についての法的規制の問題について、法務大臣と総理府長官に再度この問題についてどのように検討を加えるのか、ひとつお聞かせいただきたい、このように思います。――ちょっとこれは大きな問題だから、局長答えられるの、こんな問題。
  243. 中島一郎

    ○中島政府委員 法務大臣にかわってお答えさせていただきます。
  244. 田村元

    田村委員長 中島君、君が答えた後、大臣に答えてもらいます。
  245. 中島一郎

    ○中島政府委員 ただいまの御質問、興信業者の認可制あるいは登録制の問題であろうと思いまして、私ども関係省庁とともに検討を重ねておるところでありますけれども、いろいろとむずかしい問題がございますので、たとえば一例を申しますれば、興信業者と申しましても、その実態の把握がなかなかむずかしい、いろいろな業態がございまして規模も一様でないというような点もございますので、問題点についての検討を重ねておるというような状況でございます。
  246. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 同和問題の解決を図りますために必要な今後の施策の方向等につきましては、現在総理府を中心に関係各省で協力して鋭意検討いたしておるところでございます。
  247. 上田卓三

    上田(卓)委員 本当に私は納得できないと思うのです。後で述べますように、総合的改正という問題もございますので、私はやはり総理府あるいは法務省を中心にいたしまして、各省が鋭意努力してもらいまして、これは国会の問題でもあるわけでございますが、やはり部落問題が根本的に解決されるような、そういう法的措置あるいは具体的な行政指導といいますか、行政的措置を講じなければならない、こういうふうに思うのです。  徳川三百年、そして明治以後からでもやはり百年以上が経過しておるわけでございまして、このような長きにわたるところのそういう差別の歴史がある中で、こういうむずかしい問題が十年で解決するとか、いやあと三年したらできるだとか、いや残事業がどうだからもうあと二年で打ち切れとか、いや直ちに打ち切れとかいう問題ではなかろう、こういうふうに私は思っておるわけでございまして、そういう点で本当に、どう言いますか、私はその立場の人間でありますからそう言っているわけじゃございません。私も国会議員になって結婚式に行く場合が多いのです。そうしたら、どんな結婚式であるか。相手の親族はだれも来てないのですよ。ただ一人なんです。しかし、それでは結婚式ができません。だから、自分たちの友人とか知人とかあるいはこちら側の親族の方を一部そちらへ回して、そしてみんなからお祝いの言葉をいただいているけれども、果たして当人たちの心中はと、本当に涙というよりも私は怒りが込み上げてくるのです。同和問題がないとか、いや解決しているとか、寝た子を起こすなとか、一部の人間が騒いでいるというような言い方をする人があると思いますが、果たして自分たちはそういう立場に立って物事を考えることができるのか、私はそういうことを言いたい、このように思っておるわけでございます。  そういう点で本当にこの問題に対して、地名総鑑というのは全く悪質な、国民の一個人が犯す、そういうことではなしに、そういう差別を利用してもうけていく企業犯罪ですね、そういうものを許してきたということに対して、私は激しい怒りを感じると同時に、やはり政府を糾弾したい、このように思うわけであります。  次に、さらにもう一つの点についてお伺いして、ひとつ各大臣の意見を賜りたい。  昨年のことでございますけれども、アメリカのプリンストンで第三回の世界宗教者平和会議開催されたわけでございますが、そのときにカナダとインドの代表日本の部落問題を世界の宗教者も取り上げていこうという積極的な提案がなされたわけでございます。日本の部落問題が世界の宗教者の中で大きな問題になったわけでございますが、ところがそのときに、事もあろうに全日本仏教会の理事長でございました曹洞宗の宗務総長の町田宗夫氏が、私は日本人だからよく知っている、日本には部落差別はもうない、ただ一部で騒いでいる人々がいるようだ、こういう形で、その重要な提案に対して三回も否定的な発言をして、ついにその会議の決議文からこの問題を削除さしたということで、いま日本の仏教界だけではなしに、宗教界全体がこの問題について議論をし、町田氏のそういう差別発言に対して糾弾の声が大きく上がってきておるわけでございますが、そのことについて政府は知っておるのか、また政府はこのことに対して一体どのように考えるのか、政府なり国会なりが少なくとも部落問題について一定の見解を出し、いろいろなことがなされておる、それさえも一部の人間が騒いでいるというような形で誹謗中傷するような状況にあるわけでございまして、本当に仏教者といえば平和の問題と、そして人類の平等の問題、これが基本題目のような形になっておる、そしてその中でも、仏教界の中では一大教団であるところの曹洞宗の宗務総長が、当時のですよ、この事件があって解任させられたというようなことを聞いておるわけでございますが、そういう点について所見を賜りたい、このように思います。
  248. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 昨年アメリカで行われました世界宗教者平和会議の場におきまして、わが国参加者の言動に関しまして、いわゆる町田発言という問題が生じておることは、新聞報道等を通じまして承知をいたしております。町田氏のお考えが同和問題はすでに解決済みであるというものであるといたしますれば、それは政府の認識とは明らかに異なるものであります。政府におきましては、申すまでもありませんが、同和問題は基本的人権にかかわる未解決の重大な問題であるという認識に立っておるわけでございまして、諸般の施策もその精神に基づいて処置をいたしておることでございます。
  249. 上田卓三

    上田(卓)委員 この町田発言に対して、具体的にはこれはどうするのですか、お答えください。
  250. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 政府としては個人的な言動に対してその責任の処断をいたすというようなことは考えておりません。現在はその事実の実態につきまして法務当局で調査中と承っておりますので、その結果等もお聞きをしながら判断をさしていただきたいと思います。
  251. 上田卓三

    上田(卓)委員 法務省の見解を……。
  252. 中島一郎

    ○中島政府委員 お答えを申し上げます。  おおむねただいま御質問のような発言が町田宗夫氏によってされたということは新聞その他によって法務省も承知をいたしまして、人権侵犯事件として該当するかどうかということを検討いたしますために、現在情報の収集に当たっておるわけでありますが、いずれにいたしましても、同和問題に対する無理解と申しましょうか、理解不足に基づく発言のように思われますので、この問題についての啓発ということに努力してまいりたいと考えております。
  253. 上田卓三

    上田(卓)委員 こういうように、仏教界、宗教界の中にも、本当にわれわれにとっては一番の理解者である、こう思っておる、そういう良識のある方々の中でこういう事件が発生し、そして日本から参加した多くの代表者がその発言に対して何ら抗議なりあるいは停止をすることができず、結果的には黙認する、同調するという結果に終わっておるわけでございまして、本当にそういう意味で、こういう部落問題の解決、部落の解放というものはやはり国民すべての方々のそういう一定の認識というものが必要になってくるのじゃなかろうか、私はこういうふうに思うわけであります。すでに地方においては各界各層の代表の方々によるところのそういう人権擁護の組織活動といいますか、地域活動というものがなされておるわけでございますが、こういう仏教界での差別事件が起こったことを一つの契機にされて、あるいは地名総鑑がその後頻々と発見されていくという状況の中で、総理府としてそういうような国民的な啓発の会をつくろうというお考えがあるのかどうか。その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  254. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 同和問題の解決を図るに当たりまして啓発活動が重要であるということについては言うをまたないところでございます。したがいまして、政府といたしましても逐年同和問題に対する啓発活動の拡充強化に努力しておるところでありますが、同和問題について啓発活動も含めまして、学識経験者の意見を反映させ、広く国民的な立場で施策を推進するための組織機構として同和対策協議会というものが置かれてもおりますし、いま現在啓発の国民会議というようなものをつくる必要は必ずしもないのではないかと考えておりますが、今後の重点施策の一つといたしまして、啓発活動をより効果的に進めるための方策等については今後とも十分検討してまいりたいと考えております。
  255. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間もありませんし、他の大臣もお見えでございますので、手短に質問申し上げたい、このように思います。  労働大臣には、いわゆるそういう地名総鑑の問題に関連いたしまして、部落の失業、半失業の状況にある青少年、中高年齢者に対して、部落問題としての労働行政は一体どうあるのかということについて、やはり労働問題が何年で解決するというようなものでもないわけでございまして、この特措法がどうしても事業というような形で環境改善を中心としたものになりがちで、こういう雇用対策、労働対策というものが非常にお留守のような状況にあるわけでございます。昨年国際人権規約が批准されたというようなこともありますし、特にILO百十一号の批准についても一体どう考えておるのか、直ちに私はこのことを実施すべきだというふうに考えておりますので、その点についてお問かせいただきたい、このように考えます。
  256. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほど来の先生の御指摘で、たとえば熊本県で就職に関して非常に差別的な疑いの濃い行為があったり、あるいは地名総鑑に基づいて就職のときのいろいろな条件が考えられたりというような御指摘がございまして、非常に遺憾なことだというふうに考えております。  特に、具体的に御指摘のありましたILOの百十一号条約の問題でありますが、百十一号条約は、職業訓練を受けること、雇用されること、個個の職業に従事すること及び雇用条件について、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身または社会的出身を理由とする差別待遇を除去するためとるべき方針について原則的に規定したものでありますこと御高承のとおりでありますが、御指摘のように国際人権規約とその理念を一にするものというふうに考えております。  ただ、この条約の批准につきましては、いろいろと国内法と抵触する部分もございますので、それらの地ならしを十分考えた上で進めていくようにしなければいけない。理念は理念としてとうといことはもうよくわかりますけれども、一応国内法との問題を十分調整していくというふうにしていきたいと思いますので、さらに検討させていただきたいことを御理解をいただきたいと思います。
  257. 上田卓三

    上田(卓)委員 厚生省には、特にこの措置法ができて以後も、たとえば部落の生活保護者の数が減っていない。所においてはふえているというような状況がありまして、全国の平均の六、七倍という実態が全国的にあるわけでございます。また、非常に健康に恵まれないという悪環境のもとにあるわけでございまして、ところが診療所とか病院の地域での建設は同和対策の国庫補助にならないというような状況があるわけでございます。やはり厚生省として、たとえば隣保館事業一つ見ましても、まだまだ建ってないところの地域の方が多いというのが現状であろう、こういうふうに思っておりまして、法律が切れたからといってもう隣保館事業が終わるというものではなかろう、こういうふうに思っておりまして、法の総合的体制といいますか、そういうものも含めて決意というものを述べていただきたい、このように思います。
  258. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 いま御指摘になりましたように、まだまだ該当地区におきまする厚生行政の推進に当たりましては十分であるというわけにはまいらないかと思います。  生活保護の方々が全国的には減少の傾向にある中にありまして、同和地区は五倍あるいは六倍といったような増加の傾向にあるということは大変遺憾なる事実でございます。それらの実態に徴して考えまするならば、いろいろの厚生行政のなお進めていかなければならない諸問題が私は残っておるのではないかと考えておるわけでございます。  厚生省の残事業の問題でございますが、これもいろいろ残事業というものの実態の把握は大変むずかしい問題でございますが、府県などのヒヤリングを通しましてその実態を掌握いたそうといたしているわけでございまして、五十四年までにはすでに五十年調査によります厚生省関係の残事業はこなし得まして、さらに上回って国の負担におきまする千七百八十九億の予算を投入いたしまして、しかも五十五年度におきましては五百九十八億の予算を計上いたしているわけでありますが、なお隣保館の問題あるいは診療所に対する問題、特に医療関係につきましては今後ともに十分留意をいたしまして、その推進を図ってまいりたいと考えております。
  259. 上田卓三

    上田(卓)委員 次に、文部大臣にお尋ねいたしますが、たとえば高校進学一つ見ましても、部落の高校進学は全国の平均に比べて七%から一〇%落ち込んでいる、近年はそれが顕著であるという状況です。大学については約半分という実態があるわけでございますし、また、学校における同和教育、社会における同和教育の問題もありますし、そういう大学での差別事件などもあるわけでございまして、そういう点で、部落問題の解決は教育に始まって教育に終わるとも言われておるわけでございまして、文部大臣の決意というものをひとつ述べていただきたい、このように思います。
  260. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 お答えをいたします。  基本的な人権を尊重し、またこれを擁護してまいるという問題につきましては、これは教育の問題が非常に大きいと考えております。学校教育あるいは社会教育の分野におきまして、これを強化してまいらなければならぬと考えております。それから、指定地域におきまして教育の条件その他で格差がございますが、これを解消するように努力を続けてまいりたいと思います。  御指摘がございました高校あるいは大学への志望、入学率その他、いま御指摘がありましたような平均のあれよりもかなり劣っておることは残念でございまして、従来からやっております奨学金及び通学用品等助成金の給付というような問題を含めまして今後充実をさせていきたい、かように考えておる次第でございます。
  261. 上田卓三

    上田(卓)委員 最後に、大蔵大臣総理府総務長官にお答えいただきたい。  いままでの約一時間の質疑の中で明らかになってきておることは、三年延長の際の附帯決議の中身であります措置法の総合的改正というものがぜひとも必要であるわけでございまして、措置法のあの延長のときに、単純な延長であれば延長してもらわない方がいいのじゃないのかという地方自治体の意見があったわけでございまして、やはりぜひとも法の改正も含めて延長してもらわなければ困るということがあったことは記憶に新しい、こういうふうに思っておるわけでございますが、この総合的改正に対する両大臣の決意というものを各省を代表してひとつお答えいただきたいということと、附帯決議の中に「地方公共団体の財政上の負担の軽減」ということを特にうたっておるわけでございますので、この点について大蔵大臣、さらにつけ加えてひとつ決意というものを述べていただきたい、このように思います。
  262. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 法律を延長いたしました段階、本院におきましての三項目における附帯決議が当面する問題として集約的に考えられておる問題だろうと思います。それぞれにつきまして、その趣旨を十分踏まえまして対処いたしてまいりたいと思います。
  263. 竹下登

    ○竹下国務大臣 政府といたしましては、同和対策関係施策の円滑な推進を図るため、毎年度国庫補助の増額、国庫補助対象事業の拡大等予算措置の充実を図り、地方公共団体の財政上の負担軽減を図ってきたところでありますが、今後とも、苦しい財政事情のもとにあるが、できる限りの努力を払ってまいる所存であります。
  264. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
  265. 田村元

    田村委員長 これにて井上君、上田君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子さん。
  266. 土井たか子

    ○土井委員 懸案の環境影響評価法案、いわゆる環境アセメント法案が今国会に上程されるというそういう機運がただいま急テンポにどんどん動いてまいっております。関係省庁の間の詰めや、いままで、そう言っては大変失礼でございますが、腰の重かった自民党の方も、非常に積極的にただいま動いておられるという状況でございますが、ただ、アセスメント法案というのはつくればよいというふうなものじゃないはずでございまして、私たち日本社会党の方も、もうすでに早くから法案の準備をいたしまして、国会に上程すること四回、その成立を期していままで努力に努力を重ねてまいりました。急ぐ余り、環境行政がいままで蓄積してまいりましたものをなし崩しにしたり後退させることは絶対認められないと思うわけであります。  そこで、まずお尋ねをしたいことがここにございますが、いままで経団連、財界は一貫して健康被害補償制度の見直しを要求してこられた、これは周知の事実でございます。いま世上、環境影響評価法案と財界からの切なる要望である健康被害補償制度との取引があるのではないかということが非常に懸念されているわけなんですが、環境行政の上でアセスメント法は一番列車であり、健康被害補償法は二番列車であり、これは単線を走るものであって、大体これをワンセットに考えるというふうな考え方はおとりになっていないはずだと思うわけでありますが、環境庁長官、いかがでございますか。
  267. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさしていただきます。  業界との間におきまして、さようなことはございません。
  268. 土井たか子

    ○土井委員 業界との間でさようなことはございませんという御答弁はおかしいので、環境庁としての姿勢を私は聞いているわけです。環境庁としてこういう問題に対してどうお考えになっていらっしゃるかというのを、長官もう一たび、ちょっとお答えくださいますか。
  269. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさしていただきます。  環境影響評価の法制化は時代の要請でございまして、歴代大臣も国会へ法律案を出すべく大変努力をなさってまいったわけでございますが、今日まで日の目を見るに至らなかったようなわけでございます。私といたしましては、現在、自由民主党の政務調査会の環境部会、また政府部内におきましても鋭意検討がなされておりますが、関係機関の御了承をいただきまして、一日も早く国会に出し得るように最大限の、最善の努力をいたしてまいりたいと思います。
  270. 土井たか子

    ○土井委員 長官はるるそういう御説明をここでされるわけです。公式の場所、特に国会審議の場においては長官の御答弁は、終始一貫そういうことでいままでございました。  ところで、環境庁の中で環境アセスメント法案を担当しておられるのは、御承知のとおり企画調整局長を中心にしたメンバーでございます。一月十一日にこの企画調整局長を中心に大阪の関西経済連合会に出向かれまして、そしてそこでるるこのことに対する説明を文書によってされているわけでありますが、そのことについてまず局長に確認をしたいと思いますが、いかがですか。
  271. 金子太郎

    金子政府委員 昨年アセスメント法案が……。
  272. 土井たか子

    ○土井委員 私は日付をきちっと明示してお尋ねしているのです。もう一度私の質問に対してお答えください。
  273. 金子太郎

    金子政府委員 関西経済連合会に環境アセスメント法案について理解をいただくために、確かに一月十一日に説明に参りましたが、その際、公害健康被害補償制度についても言及いたしております。
  274. 土井たか子

    ○土井委員 言及いたしております、そこまでは確認しましたが、そのときの説明のときに文書によっての説明をされているかどうか。
  275. 金子太郎

    金子政府委員 そのときは、用意してまいりました三つのテーマについてまず資料を配付いたしまして、引き続き、質問があったためと思いますが、二つほど資料を配付しております。その中に、公害健康被害補償制度関係が入っていたかどうかは早急に確認させていただきたいと思います。
  276. 土井たか子

    ○土井委員 確認をされるということでありますが、確認を待っておったら切りがないのです。ひとつその資料をまず環境庁から提示していただきたいと思いますが、ここに私はそのときに配付された資料を手持ちにあるのです。ここで、先ほど公害健康被害補償制度と絡ませないという環境庁長官の御答弁がありましたことから、ひとつこの資料によって私はもう一度問いただしたいことがございます。  この資料は、一から十まで、読めば読むほど驚くべき中身でございまして、こんなあきれ果てた文書をよくぞ外にお出しになったと私自身思うわけですが、恐らく説明を聞いた側の財界の人も実はびっくりなさったのではなかろうかと私は思うくらいの中身でございます。  関係のところについて、その部分を読んでみますと、「昨年以来この問題が」というのは健康被害補償制度の問題が、「患者団体の反発や野党の追及などにより社会問題化し、制度合理化をめぐる情勢が非常に厳しくなってきた過程において、経団連などが要望している事項については、通商産業省(立地公害局)からの公式の要請もない状況です。環境庁としては、公式の要請があればその時点で、環境行政全般の立場に立って慎重に検討してまいりたいと考えています。」と、こうあるのですね。そしてしかも、「この健康被害補償制度に対しては、裁判による個別企業のねらい撃ちを避け、企業経営の安定を願う産業界の積極的な要望を受けて創設されたものです。」と、こう書いてあるのです。  そこで、ここでは名指しで書いてある通商産業省にお尋ねをしたいのですが、通産省からの「公式の要請もない状況です。」というふうなこの中身の御期待にこたえて、通産省としてはこの点に対して環境庁に要請されますか、いかがです。
  277. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  アセスメント法と公健法とはそれぞれ別個に議論が行われるべきものであるというふうに考えておりますので、私どもとしてそのような要求をした事実もございません。
  278. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは通産省としては、環境庁と共管事項でございますから、経団連のいままで言われることに対して合理性があるとお考えになっていらっしゃるかどうかも重ねてちょっと聞いておきたいと思うのです。
  279. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  公害健康被害補償制度のあり方につきましては、現在、中央公害対策審議会で検討が行われておると承知しておりますので、私どもとしてもその検討経緯を見守ってまいりたいというふうに考えております。
  280. 土井たか子

    ○土井委員 そういうお答えでありますが、順を追ってこの大阪で説明をされたときに出されました文書の中身で少し確認をし、環境庁自身の姿勢をただしたい点がたくさんございます。  そのうちの一つに、こういう部分があるのです。文章を私は読みたいと思うのです。「美濃部条例案と比較して、住民参加を初めさまざまな点で大幅な後退であると強く批判されることが十分予想されます。」というのは、これはただいまの東京都の環境アセスメント制度についての問題であります。「このような条例案が都議会に再提案されれば、鈴木知事の与党である都自民党は言うまでもありませんが、」ここで公明党も出てくるのです。「美濃部知事の与党であった都公明党の都議会における立場はさらに微妙にならざるを得ず、また鈴木知事も、財政再建等多くの課題を抱えている中で、環境問題を中心にして苦しい立場に立たされるのではないかというのが大方の予想です。さらに、本年七月の参議院選挙を控え、美濃部条例案を住民の直接請求によって制定しようという一部の動きもあることから、鈴木知事及びその与党に対する政治的な批判材料として利用されるおそれもあります。この際、早急に国において環境影響評価法を制定し、法律の範囲内での条例を制定することがこの問題の適切な処理に資することとなると考えます。」と言って、まるでこれは政治問題に対してるる環境庁の立場でここに述べられている部分があるわけですが、これはちょっと説明としては度が過ぎた説明じゃありませんか。こういう説明で、環境影響評価法というものを早くつくれ、早くつくれというこういう姿勢に対しては非常に疑惑がございますよ。いかがですか、環境庁長官
  281. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさしていただきます。  かねがね幹部に対しまして、正々堂々と小細工はしないで前向きでやれということを命じておったのでございますが、先生指摘のようなことがあったといたしますならば、まことに申しわけなく、深くおわび申し上げます。
  282. 土井たか子

    ○土井委員 そうして、いまの問題は条例に関係がございます。条例の部分についてこういう記述がさらにあるのです。これも大変な問題だと思うのですが、「環境影響評価に関する条例を定めることができることについて規定しているように見えますが、上乗せを認める規定も設けず、このような規定を置くことによって、法律で対象としている事業者が行う対象事業については、条例による上乗せを認めないことを明らかにすることにポイントがあるのです。」と、こう書いてあるのです。そうしてしかも本来、法律に違反する条例というのは認められないというのが常識なんですが、わざわざ「この規定は強行規定であり、これに反する条例の規定は違法なものとなります。」と、御丁寧にもだめ押しのような、念押しのような記述がございまして、さらに、「環境庁としても環境影響評価法が制定されれば、これに基づき既存の条例の改正を含めて地方公共団体を強く指導することとしています。」と、こうあるのですよ。自治大臣、これをお聞きになってどのようにお考えになりますか。
  283. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 これはもう土井先生は法律の御専門家ですから、いまさら私がお答えするまでもないと思いますが、法律と条例の関係でございます。条例は法律に違反してはつくれないわけでございます。しかしながら、御質問のような点は、やはり法律の内容、書き方いかんによるのではないのか。したがって、いまアセスメント法案は中身が決まっておりません。ただ、私どもの方に環境庁の方からいろいろ御相談を受けておりますけれども、いずれにいたしましても、法律が先占をしたという場合に、後からできる条例は少なくともその事項に関しては法律の範囲内でなければならない。ただ、法が先占をしてない面については条例で書き得る。ただ問題は解釈上、法の先占をしておる範囲は一体どこなのだというそこは、相当論議の余地があろうかと考えております。私がいまお答えできるのはその限度にとどまるのではないか、かように考えます。
  284. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、自治大臣にもう一度確認をいたしておきますけれども、もう条例をつくっている自治体もございます。また条例をつくろうとしている自治体もございます。それを抑えるためのアセスメント法であってはならないと思うのですね。やはり自治体においてはそれぞれ独自の立場がございます。環境基準についても、それぞれの条例でもって自治体が具体的に策定をして、上乗せという中身も具体的にいままで積み重ねてきているという過去の経緯がございます。そういうことも重ねてひとつ、いまの物の言い方に対して自治大臣なりの御見解をもう一度承りたいと思います。
  285. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 仰せのとおり、現在若干の地方団体で条例をつくっておるところがございます。またつくらんとしておるところもあるわけでございます。そこで、環境アセスメント法案なるものが成立をした暁には、地方団体としてはそれとの調整ということを考えるべきものと、かように考えております。
  286. 土井たか子

    ○土井委員 調整を考えるとおっしゃいますが、それは引き下げるための調整であってはならないと思うのですよ。やはりあくまでアセスメント法の趣旨というのは、健康を守るということ、環境保全というものを全うしていくというところに主眼があるわけですから、そういう点からいたしますと、後退は断じて許されない、こういうことを重ねて確認をさせておいていただきます。よろしゅうございますね。
  287. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私はまだ環境アセスメント法案の内容を承知しておりませんけれども、環境アセスメント法案が国民の健康を守るために後退をするというようなことは、いまの段階では考えられないのではないのか、必要にして十分なる法律案ができるものと、私はかように考えております。
  288. 土井たか子

    ○土井委員 大変な御期待を自治大臣は持っていらっしゃるようでありますが、果たしてそのとおりになれば幸いなのでありますけれども、ただいまの環境庁がこういう姿勢であるというところからしますと、まことに危惧なしといたしません。実は大変問題が多いのです。  さらに、これは事もあろうに、国会の立法に対して介入をしているとおぼしき部分さえあります。「国会の審議の過程で修正されて、関係省庁などとの調整の結果が無意味になるのではないかという危惧を持つ向きもありますが、環境庁としては、瀬戸内海環境保全特別措置法の例のように、与党の協力を得つつ無修正で成立を図ることを期しています。」一体これは何ですか。環境庁が法律をつくるんじゃないのですよ。立法機関に対しての介入もはなはだしい、説明の中身としては度が過ぎる、このように思われますけれども、環境庁長官、いかがでございますか。
  289. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  先生お説のとおり、国会は唯一の立法機関でございまして、そのとおりでございます。
  290. 土井たか子

    ○土井委員 さあそこで、これ全体を読んでさらに具体的なポイントを挙げていくと枚挙にいとまがない。一から十までこれはまあただただあきれ果てる中身なんです。問いの一から問いの六まで、項目では大体財界が疑問として出しておられる点を整理して、それに対しての環境庁なりの主な論点についてという表題で用意をされた中身であるようにこの文書はうかがえるわけですが、局長、説明のときにこういう文書を用意されたわけですね。
  291. 田村元

    田村委員長 その前に局長、先ほどの資料要求、あなたの方は出せますか。
  292. 金子太郎

    金子政府委員 どういうものを配ったか確認した上で――いま言われている全部、配っていると思いません。
  293. 田村元

    田村委員長 いや、出せるのですか。配ったものは出せるのですか。
  294. 金子太郎

    金子政府委員 はい、確かめた上でなら出せると思います。
  295. 田村元

    田村委員長 では、答弁してください。
  296. 金子太郎

    金子政府委員 先ほどの点も、無修正で通ることを期待しているということでございまして、確かに私どもの用意したものが不穏当なところがあったとすれば、おわびいたしたいと思います。
  297. 土井たか子

    ○土井委員 局長がわびられるところを見ると身に覚えがある。これは確かにこういう文書をもって説明されたという過去の経緯があるから、日ごろなかなか謝ることをなさらない局長がここでそれに対して遺憾の意を表明される、よほどのことであります。  私が調べたところでは、このことは確実に配付されている資料としてございますので、ひとつ調べた上でとおっしゃいますけれども、これは長官、本当なんですよ。長官とされますと、これは環境行政の上ではゆゆしい問題ですよ。やはり環境行政そのものの姿勢が問われる問題になってまいります。ただいまアセスメント法に対して主管庁ですからね。この政治責任を長官としてどのようにお考えになりますか。
  298. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさしていただきます。  率直に申し上げまして、金子局長も何といたしましても――今度国会へ法律として出し得ませんと五回目になります。何としても今度は法律として出させていただきたいということで、関係団体を飛び歩いてお願いに参ったようなわけでございまして、その間、大変御迷惑をおかけするようなことがございましたことは、率直に私はおわびいたします。
  299. 土井たか子

    ○土井委員 長官が謝られて済む問題ではないように私は実は思うのです。ここで幾らわびられたって、国会でわびられたって、これからいよいよ提案されるこのアセスメント法に対して疑惑があるということはこれはぬぐい切れないですよ。こういうことじゃ大変問題になってくると思うのですね。そうしてまた、こういう問題を見た場合に、財界と環境庁が談合したのではあるまいか。また、環境庁から財界に情報提供をされているのではあるまいか。情報提供という言葉がスパイ行為ということになりますと、まさしくこれはスパイ行為にも匹敵するような中身だと言われても仕方がないような状況だと私は思うのですよ。場合によったら、これは国家公務員法違反にも引っかかるのじゃないですか。国家公務員の職務の内容からすると、信用という問題が大事だということはちゃんと条文化されていますよ。環境庁長官はここで謝って、このことに対してひとつ何とかこれで済まそうということであるのかもしれません。熱意の余りとおっしゃる。熱意は大いに認めますが、熱意があったら何をしてもいいのかというと、やはりそうはいかないです。すでにここで謝っておられるわけでありますけれども、それでは済まないと思うのですよ。どのようなお心づもりでこの問題にさらに対処なさるかということをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  300. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさしていただきます。  財界との間にさようなことはないと、私はかように確信をいたしております。
  301. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、長官が幾ら確信確信とここで確信犯のようにおっしゃっても、この動かぬ証拠がある限りは、これはどうにもならないのです。だから、このことに対してどういうふうに政治責任を全うされるかというのは今後問題になりますよ。アセスメント法の審議に当たって、これは大変な大問題だということに当然なってまいりますから、そういうことでひとつ環境庁長官の姿勢というものをもう一たびはっきりお示しいただきたい、政治責任というものをはっきりしていただきたい、そういうふうに考えます。いかがでございますか。
  302. 土屋義彦

    土屋国務大臣 先生の御意見も踏まえて、いろいろ考えさせていただきます。
  303. 土井たか子

    ○土井委員 これはいろいろ考えさせていただきますとあいまいなことでは済まないですよ。これは機運が非常に急テンポで進んでいっている最中ですからね。アセスメント法案というものを出されて審議をすると、これは無修正で通したいという環境庁自身の意思表示がここにもあるとおり、それはもう非常に急テンポで動くわけであります。いろいろこれから考えられるという、そのいろいろとおっしゃることは、具体的に言うとどういうことなんですか。
  304. 土屋義彦

    土屋国務大臣 私は、責任を感じまして今後も真剣に環境行政と取り組んでまいりたいと思います。  それから法案につきましては、いろいろ問題がございまして、ただいま自民党の政調の環境部会におきましてもいろいろと検討がなされておるような次第でございまして、しばらくひとつ御猶予いただきますようにお願いいたします。
  305. 土井たか子

    ○土井委員 しばらく御猶予とおっしゃいますから、この問題は保留にしましょう。長官がしばらく御猶予とおっしゃいます。いろいろ考えてくださるのでしょう。政治責任をそれでひとつ具体的に表明してくださるらしいですから、ひとつ保留にさせていただきますが、委員長、よろしゅうございますか。
  306. 田村元

    田村委員長 質疑をお続けください。――土井さん。
  307. 土井たか子

    ○土井委員 いま種々理事の皆様に大変お手を煩わして御検討いただいたのですが、それではひとつ局長に確認をさせていただきます。  外部に出したか出さないかということは別といたしまして、内部資料としてそういう資料を検討されたという事実はあるのかないのかということをひとつまず確認させてください。
  308. 金子太郎

    金子政府委員 内部ではいろいろ検討いたしましたけれども、なお推敲の余地があるという段階のものでございました。
  309. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、その事実をお認めになったわけですから、ひとつその資料を出していただくということを、またここで再度確認をしつつ要請をいたしまして、私自身は質問を先に進めます。そして、資料が提出されて後に、また質問は後で、いずれの機会になるか別として、当国会での予算審議が終了するまでの間、ひとつその部分についての質問を保留の形で、さらに継続をさしていただく。本日は保留の形で継続をさしていただくということを、ひとつ御確認をいただきたいと思うのですが……。
  310. 田村元

    田村委員長 まず、金子君、資料を出せますね。
  311. 金子太郎

    金子政府委員 大阪の関経連で出した資料は、理事会のお許しをいただければ提出いたします。
  312. 土井たか子

    ○土井委員 こういうことなんですね。環境庁長官、これはやはり主務庁とされて、アセスメント法をこれから上程するというときに、このような基本姿勢が環境庁の中にあるとするなら、これは大変なことだ。そういう姿勢でアセスメント法に取り組まれるということになると、これはやはり世上いろいろとこのことに対して危ぶまれている免罪符を用意する以上には全然ならない、そういう感じもいたします。環境庁長官、この点について御決意のほどをもう一たびひとつ聞かせていただきたいと思います。
  313. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさせていただきます。  みずから姿勢を正して環境行政と真剣に取り組んでまいります。
  314. 土井たか子

    ○土井委員 アセスメントの対象は大体国の補助、助成、それから融資の対象になる事業ということでございますけれども、石油備蓄施設というのはアセスメントの対象にするという御用意がございますね。いかがですか。
  315. 金子太郎

    金子政府委員 現在までのところ、なお通産省と折衝の課題の一つでございます。
  316. 土井たか子

    ○土井委員 まだ課題ということなんですが、それではひとつここで具体的な例を示しながら疑義をただしたいと思うのです。  九州の上五島の青方に世界に例のない六百万トンという、二十万トンタンカーの三十倍、これはごらんいただくと非常によくわかる、ここに図がございます。こういうことですが、長さが九百メーター、この図のとおりに島よりも大きい海上タンクが浮かぶという計画がございます。ところが、この海上タンク、つまり貯蔵船の大きさについて、わが国で建造された最大の巨大タンカーの寸法以下にせよということを、運輸技術審議会は昭和五十三年四月七日の安全指針の中で示されているわけであります。ここにちゃんとあるのです。日本で最大のタンカーとなると、御承知のとおり五十万トン。これは一つ一つのタンクが七個に分かれておりますけれども、その一個をとってみましても八十万トンあるんです。五十万トンタンカーの長さ三百六十メーター、幅六十メーターに比べて、これはタンクの長さ三百九十メーター、幅九十七メーター、はるかに大きいのですね。これは率直に申し上げて、安全指針に違反するというふうに、単純素朴に考えてまずはっきり言い切れると思いますが、いかがでございますか。
  317. 永井浩

    ○永井(浩)政府委員 お答え申し上げます。  その備蓄タンクが船舶に該当するかどうかは別といたしまして、仮に船舶ということであれば、運輸技術、審議会の指針以上のものであると考えます。
  318. 土井たか子

    ○土井委員 仮に船舶であるとすれば――どうですか、ちゃんとここの指針の中に「貯蔵船方式」と書いてありますよ。すればという仮定の問題じゃない。そうすると、これは安全指針に矛盾しているということはお認めになるんですね。
  319. 永井浩

    ○永井(浩)政府委員 運輸技術審議会の検討の範囲外のものであると考えます。
  320. 土井たか子

    ○土井委員 検討の範囲外というと、どこが検討なさるのですか。これは大体検討する指針だとか安全基準というものがあるのですか。
  321. 永井浩

    ○永井(浩)政府委員 いままで大型タンカーとして運輸技術審議会が検討の対象としておりましたもの以外のもの、つまり従来は検討の対象としてなかった、こういうことでございます。
  322. 土井たか子

    ○土井委員 従来は検討の対象としていないものをおつくりになるというのは、これは大変な無理があるということをまず言わざるを得ない。  また、具体的なことを一つさらに申し上げますと、衝突に対して十分な強度を用意することは安全対策のABCだと思うのですが、「海上貯油センターについての安全対策について」という三菱重工の資料がございます。いま問題にしている、先ほど新しい備蓄方式というのでこの上五島の略図を見せたのは、実は三菱から出ている資料なんでありますが、この昭和五十二年の八月に三菱重工が作成をいたしました「安全対策について」という文書を読んでまいりますと、三千トンの船が四ノットで衝突して耐えられるとなっている。ところがこの図によりますと、隣接の桟橋がございまして、この桟橋は三十万トンタンカーが着けるので、操船中衝突するということもあらかじめ安全対策としては予期した形で考えなければいけない。単純計算でも〇・〇四ノットで衝突した場合が限界だということになるのです。〇・〇四ノットというと、これはなかなか素人判断じゃむずかしいかもしれませんけれども、このスピードは風に流されただけでも容易にタンクが損傷するということになるわけでありますが、この点について現在の計画からするとどうも矛盾する。この安全対策について違反するということにならざるを得ない。これはお認めになりますね。
  323. 永井浩

    ○永井(浩)政府委員 その三菱の計画なるものは詳細に承知しておりませんので、お答えを差し控えさせていただきます。
  324. 土井たか子

    ○土井委員 これは施工するのが三菱なんです。よく存じませんという程度じゃ、これはどうにもならない。これは現に予算がもうついているでしょう、事実上の予算というのが。
  325. 鮫島泰佑

    ○鮫島政府委員 五十五年度のいま御審議いただいております予算案の中で、この外郭の防波堤につきまして予算では私ども考えているところでございます。
  326. 土井たか子

    ○土井委員 こういう不確かなものを不確かなままにしておいて、予算さえつければいいということじゃ困りますね。主客転倒ですよ。  さらに、これはお尋ねを進めますが、この桟橋はタンカーが安全に着桟できる配置でなければならないということになっていますが、この付近は浅瀬があって狭いので、航路が百二十度も曲がっていて、急旋回しなければどうにもならない場所になっております。港湾法の四十九年七月十六日の省令第三十号というのを見てみますと、航路は三十度以上は曲げてはならないということがちゃんと決められているのです。ここでは三十度以上曲げずに航行せよと言ったって事実上不可能ですよ。これは現地に行って私も見ておりますけれども、素人目にもありありとこのことはわかる。巨大タンカーは曲がり切れずに座礁するおそれが十分にあるのじゃないか。せっかく運輸省としておつくりになっている省令三十号違反ということになるのじゃないか。この点についてはいかがですか。
  327. 鮫島泰佑

    ○鮫島政府委員 お答えいたします。  いま先生がおっしゃいました基準はタグボートを使用しない場合の基準でございます。しかし、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、私ども、この予算案の中にあれを盛り込んでいるわけでございますけれども、その段階といたしましては、まずこれを重要港湾に指定をするということがあります。重要港湾に指定をいたしました場合に、港湾管理者が港湾計画をつくらなければいけません。それをつくりました場合に運輸大臣に提出されまして、運輸大臣がそこで港湾審議会のお力をかりながら審査をするという一連の手続がございます。その過程におきましていろいろ細かい疑問点も今後出てくるかもしれませんけれども、その過程におきましてこれは十分に慎重に配慮されるべき事項でございます。
  328. 土井たか子

    ○土井委員 その時点で配慮される事項と言われたって、果たしてそのことを確認ができるかどうかというのは、どうもはなはだ心もとない話なんです。やはり予算をつける前に、こういう安全対策に対しての確認なり、こういう計画に対しては大丈夫かということに対して、ちゃんと指針に沿った線で計画というものが用意をされてしかるべきだと思います。だから、いまおっしゃったようなことからすれば、順序は主客転倒ですよ。  さらに、南の方の志布志に参りますが、志布志は五十万トンタンカーが入港する石油備蓄基地や石油コンビナートを造成する新大隅開発計画がいま一応保留になっております。その計画の一号用地に相当する部分を埋め立てて港湾を拡大する計画が進められているのですが、昭和四十九年の運輸省の第四港湾建設局が作成した志布志湾地域開発計画調査報告書には、ここにございますが、読んでみるといろいろ驚くべきことが書いてあるのですね。いまからその要点だけをここで読み上げます。「志布志湾は東の外洋に向けて開いた深い湾である。外洋で発達した波やうねりが直接浸入し、しかも水深が深いため、余り衰えずに浸入する場所であるから、台風の避難錨地としては使用できない。ところが、地理上近くに避難港や避難場所がない。避難地は百三十マイルも離れた高知の宿毛湾か大分の佐伯湾になるが、中型船以下の避難は、日向灘をしけの中を十数時間航行しなければならないから、避難はほとんどできない。また、大型船も建造物を破壊され、その機能を失うおそれがある。志布志湾から避難する場合、風速毎秒十五メートル以下のうちに日向灘を航行しなければならない。そのためには七十二時間前に台風の動向を判断して避難を決定しなければならないが、その予測は困難である。」と書いてあって、つまりこの港を使えないと言っている。  このような無責任な計画はどうも中止すべきであるというのが私は常識だと思います。しかも、志布志湾の港で年間調査を行っている資料、この中で見ますと、一年に百日も船が稼働できないことを明らかにしているわけですが、この港の建設について、運輸大臣、ひとつ責任を持って、これはちょっと適地でないというふうにお考えになりませんか。いかがですか。――いつでも局長が出てきて、技術論の何か便宜主義のような論法を展開されるわけでありますが、これは適地であるかないかというのはきちっと大臣からお答えいただくべき問題だと思いますよ。事は非常に大きいですよ。第四港湾建設局の企画課が、運輸省自身がちゃんとそういう報告書を出していらっしゃるのだもの。いかがですか。
  329. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 御指摘の点につきまして、十分調査いたしまして対処いたしたいと存じます。
  330. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、運輸大臣としてはもう一度考え直すというふうな意味を含めて精査をされるようでありますから、いま私が申し上げた点もその中心にして、十分にひとつ留意をしていただかなければならぬと思います。よろしゅうございますね。  さて、今度は北に飛びます。むつ小川原の問題なんです。青森県は総事業費約二千億の予算を使っています。二千人の農民の土地を買い上げております。石油コンビナートが来るから十万人の雇用が可能であるという宣伝も一時期ございました。不況で企業が進出しないために、通産省や国土庁と一体になって国家備蓄を誘致することとしたわけで、それを推進中であるのがただいまの実態であります。その雇用はわずか百人にしかすぎないということに結果としてはなってしまいました。この開発の失敗に対する責任は非常に大きいです。この責任もさることながら、この計画には重大なミスがあると言わざるを得ません。これもいろいろ挙げることができるのですけれども、時間の関係からするとその二、三にとどまることを私は非常に残念に思いつつ質問をいたします。  青森県が風や波を調査して五十二年十一月に港湾審議会に提出した資料がございます。ここにあるのですが、年間八〇%船がつけられるというふうにしているにもかかわらず、その半年前の三月の運輸省の報告書を見ますと、これまた年間百四十八日しか使えないということになっている。この重大な食い違いは、この計画を無理に強行しようとする象徴的な事実だと思われるのですが、まずその一因として、青森県と運輸省が協力をして、荷役可能日数の割り出しの重要な物差しとなる風の測定で目に余る虚偽のデータを作成しているという事実が実は出てまいりました。  ここに写真がございます。これまた見ていただきたいと思います。この写真に見られるように、まず鷹架という観測所があります。これが鷹架観測所なんですが、見たところ松林ばかりだと思います。どこに観測所があるのかわからないような松林ばかりの中に観測所がある。実はこの松林にさえぎられまして風が小さく観測されるというのは、一目瞭然この写真を見たってわかるのですね。松林のど真ん中にあるのですよ。ところが、まともな観測はそこから一キロ北にある発茶沢で行われているわけですが、この両者の風速の違いを、運輸省の小川原地区気象報告書を見てみますと明瞭に出しているわけです。  ところが、一方気象庁も報告書を出しておりますが、気象庁の報告書を見てみました。そうすると、鷹架観測所は局地的なもので使えないということを証明しているのです。にもかかわらず、それを知りながら、あえて風を小さい鷹架で観測した方を採用して、稼働率にそれをおっかぶせていっているということが事実として出てくる。しかも気象庁は海上の風が陸の二倍もあるということを明らかにしているのですが、海上の風を調査したという結果はみじんもございません。一体何のための風の調査かということは目を疑うばかりであります。  こうなると、港湾審議会に提出された資料というのは根本的に誤っている、やり直しが必要だということが言えると思いますが、いかがでございますか、運輸大臣
  331. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 港湾局長から答弁することをお許し願いたいと思います。
  332. 土井たか子

    ○土井委員 もういいですよ。  運輸大臣、いまのこれを聞かれてどういうふうにお思いになるかというのは、政治家としてひとつ責任を持って御答弁なすったらいかがです。大臣どうぞ。
  333. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 御指摘の点は大変重大な問題だと思いますので、関心を持って調査いたしたいと思います。
  334. 土井たか子

    ○土井委員 運輸省自身の調査レポートがまたございますが、そのレポートを見ると、何とここのシーバースはほとんどつくれないという報告書が出ているのです。そういう報告書を出しながら、一方ではそれを推進しているという事実がある。全く理解できません。昭和五十年三月の大規模工業港原油ブイバース調査報告書というのがここにございます。運輸省第二港湾建設局、昭和五十年三月、ちゃんと日付まで振ってあるこれは調査報告書でございますが、その中に、水夫のもぐれる限界は四十メーターであるが、現在の計画場所は四十五メーターから五十五メーターもある。しかも、それよりも深い。きわめて困難だ。一点係留ブイバースをこの場所に設置することはメンテナンスの面から見てきわめて困難だと書いてあるのです。現在まで世界的にまだ十分開発の進んでいない五十万トン用であること、水深が四十メーターより深いこと、太平洋の洋上で風波が激しいことなどを考えると、新しい方式を開発しなければならないと書いてあるのですよ。わが国では一般に原油ブイバースは東京湾や瀬戸内海の湾内に御承知のとおり設置されております。このような外洋で設置されるというふうなことについて、これは私は、せっかく御用意になった運輸省のいままでの調査を全部見切るようなかっこうで工事に対して突進されたということを言わざるを得ないのですが、このような報告書がありながら、本当にこういう計画が実施できるというふうにお考えになっていらっしゃいますか、いま進みつつある計画が。いかがですか。これも運輸大臣、問題は大きいですからお答えください。
  335. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 十分調査をいたして検討いたしたいと存じます。
  336. 土井たか子

    ○土井委員 全部調査、調査なんですが、これはいつごろまでに調査なさいますか、大臣
  337. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 事務当局と打ち合わせまして時期を決めます。
  338. 土井たか子

    ○土井委員 これはしかし、事については、計画決定をして着工を続々していられるという問題について、こういうことを出せば幾らだって出てくるのですよ。幾らだって出てくる。  最後に、防衛庁いらしていますね。この現場付近が米軍の実弾射撃訓練場になっています。運輸省の報告書でさえこの演習場の撤去が必要だということをちゃんとおっしゃっている。一体どうなるのですか。
  339. 玉木清司

    ○玉木政府委員 防衛施設庁としましては、四十七年の九月にこのむつ小川原開発第一次の基本計画が出されまして、それの内容を閣議了解されたわけでございますが、その中に、工業開発地に関する防衛施設については、その重要性にかんがみ、防衛機能を阻害することのないよう措置するというふうに決められておりますので、その方針に従って措置されることと私どもは理解しております。
  340. 土井たか子

    ○土井委員 心もとない御答弁なんですがね。事は、やはり危険な区域ということでだれしもが認めるような状況を黙認しながらそこに計画を進め、着工し、そしてやがて船が航行し始めますと、これは単なる船じゃなくて石油を積んでいるのですね。大変危険きわまりない。こういうことをひとつ全部もう一度見直すという姿勢で、運輸大臣、事に当たっていただかないとなりません。  また、これから福井も同じような問題をはらんでいるのです。福井の問題はこれからがいよいよ山場を迎えていますけれども、開発を推進することばかりが先立って、安全の問題や環境保全の問題などについて、これには手をこまねいたようなかっこうで、十分に配慮を払ってこなかったという姿勢が、いろいろこういう事実を検討してみればみるほど出てくるのですよ。  そこで、時間の関係がございますから、環境庁長官に最後に一言お尋ねをしたいのは、先ほど局長答弁では、石油備蓄施設というものをアセスの対象にするかどうかというのはただいま検討中だということなんです。きょう私が取り上げました上五島、志布志、むつ小川原、すべて石油備蓄施設ですよ。いままで計画をされ、しかも着工にまで踏み切られてしまっている問題について洗いざらい出していくと幾らだって問題点が出てくる。運輸省がつくられている省令や指針に対して明らかに違反しているような事例まで見逃しにしているような自治体が、行政運営の上でございます。こういうことに対してチェックをかけるのはだれなんですか。そういうことを考えると、やはりアセスメントの中に住民参加を十分にすること、それから徹底的にアセスの内容として公開性の原則というものをはっきり保障すること、それから公聴会の問題などを初めとして、それぞれの自治体に対して自治体の独自性を尊重するという姿勢で臨むこと、そういうことが大変大事だと私は思うのです。公聴会は義務づけない、環境庁はノータッチ、自治体は事業者の補助作用しかしない、自治体の条例は制限するというふうなアセスメント法案であっては、これは十分に実情にこたえ得ないと私は思います。  そこで、環境庁長官に、この石油備蓄施設も対象として考えるというふうなことも含めて、いま私が申し上げたような趣旨をアセスメント法案の中に生かすというその決意のほどをひとつお示しいただきたいと思います。
  341. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさしていただきます。  先生の御意見を踏まえて、関係省庁と折衝いたしてまいります。
  342. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。(拍手)
  343. 田村元

    田村委員長 これにて土井君の質疑は保留分を除いて一応終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  344. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三であります。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  まず最初に、厚生年金の問題について厚生大臣にお伺いをいたします。  過日来から、この年金の問題については受給年齢の引き上げの問題をめぐりましていろいろと論争になっておるわけでございますが、その後政府は閣議等を開きまして今国会に厚生年金保険法の改正案を提出する、特に訓示規定、年齢の六十五歳の問題等を含めて、保険料率の問題なり給付の改善等の問題を出すと思いますが、その点についてのお考えをまずお伺いします。
  345. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 厚生年金の改善におきまして、将来の若い世代の費用負担を配慮しながら、今後も老後の生活の支えになるようなそういう年金の内容を維持していくためには、今回の改正におきましてもその引き上げに着手すると同時に、支給開始の年齢の問題を含めまして、社会保障制度審議会、社会保険審議会に諮問をいたしたわけでございます。その結果、両審議会の答申は、この支給開始年齢については将来避けて通ることのできない課題であるけれども、高齢者の雇用との関連、またいわゆる官民格差などが問題であるから、今回改正では支給開始年齢の引き上げについて着手することを見送ることに実はいたしたわけでございます。  なお、給付の水準の見直しあるいは遺族年金の改善、保険料の引き上げは、審議会に御意見を伺う案そのものを盛り込むことにいたしたわけでございます。しかも、このことにつきましては、特に老齢年金の受給資格年齢については、現段階におきまして具体的な措置を想定いたしておるのではございませんが、附則の規定の中に、次期再計算期において諸般の事情を総合的に勘案してその時点で必要と考えられる措置を講ずべきである旨を明らかにいたしたのでございます。なお、次期財政再計算期におきましては、こうした措置をとることを判断する際には、両審議会の御指摘になっております雇用との関係やあるいは官民格差の問題についても十分配慮する必要があると考えておる次第でございます。
  346. 草川昭三

    ○草川委員 簡単にお答え願いたいわけですけれども、次期再計算の時期は四年後と考えておられますか、五年後と考えられておるか、一言お伺いします。
  347. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 法律には五年以内とこう出ておりますので、それは今後の情勢判断を必要とするものだと思います。
  348. 草川昭三

    ○草川委員 いまもお話がありましたように、その五年以内の中で官民格差の解消、定年延長等の雇用政策の充実が実現できると思われますか。
  349. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 雇用問題につきましては、いろいろの経済環境の大きな変化、そういうものを判断しながら考えていかなければならぬと考えているのでありますが、特に官民格差という問題につきましては、すでに御承知のとおり、政府が一体となって、各公的年金制度間の格差是正を十分認識しながら、それらの整合性をより高めていく努力をいたしてまいらなければならないと考えております。
  350. 草川昭三

    ○草川委員 ここで大蔵大臣と厚生大臣に一言ずつお伺いするわけでございますが、私は、五年以内にいまのような雇用条件の問題なり官民格差の解消ができないとすると、また四、五年先に今回と同じようなことになると思うのです。出したり引っ込めたりするようなことが年金問題にあっては相ならぬという意見です。特に、今度の訓示規定というものは大蔵省サイドの方から強く意見反映が出たのか、あるいは厚生省独自の判断としてこの訓示規定というものが出たのか、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  351. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 別に大蔵省からの指示でもございません。もともと厚生省としては、年金制度の中で九割を占める加入者の将来の展望、そして同時に、しかもこれは強制的な年金制度である、国の責任において将来を年金財政の上において展望いたしますときには、このようないろいろの配慮が必要である、こういう考え方でございまして、したがいまして、先ほどお答え申し上げましたような一つの考え方、その認識の上に立っていまのような附則規定を設けたわけでございます。
  352. 草川昭三

    ○草川委員 現在の厚生年金法というのは昭和四十年に改正になっておるわけですが、この昭和四十年の改正のときに、附則第三条で減額老齢年金制度というものが訓示規定として打ち出されておるわけです。それから十四年たっておりますけれども、いい悪いは別でありますけれども、十四年たっても訓示規定というものは実際は生かされていないわけです。訓示規定というものはそういうものでいいわけですか。
  353. 木暮保成

    ○木暮政府委員 先生指摘のように、昭和四十年の厚生年金の改正法におきまして、減額年金を検討の上導入するようにという規定が置かれたことは事実でございます。減額年金は、もう御承知のように、支給開始年齢前から繰り上げ支給を受けると同時に、金額につきましては所定の減額率がかかるということでございます。その減額率は六十歳を超えましても続くということでございますので、年金制度の上でなかなか大きな問題であるわけでございます。そういう観点から検討をいたしてまいったわけでございますけれども、六十歳の支給開始年齢を前提といたしますと、減額年金がどういう役割りを果たすのか、その辺の問題がございまして、現在減額年金は実現いたしておりません。
  354. 草川昭三

    ○草川委員 だから、十四年間かかっても現実には進行しないわけでしょう。そういう程度のものですかということを聞いたわけですよ。だから、今回も、五年先、あるいは四年先になるかわかりませんけれども、その先のことに今度のような訓示規定というものをつけても、実際客観的な情勢でどうなるかわからぬわけです。そのときにまた、一体六十五にするべきか、どうのこうのというようなことにならぬようにしてもらいたいと思うのです。だから、私は、年金に対して、出したり引っ込めたりあいまいなことをこの際やるなと言うのです。こういうことを強く言いたいわけです。  特に、私は今回非常に不満を持つのは、この予算委員会で六日の日に私は厚生大臣に、一体年齢引き上げの問題と給付の内容と保険料の問題は一つのセットで考えるのかどうかということをくどく聞いたわけです。議事録を持ってきましたけれども、もう一回ちょっと読みますよ。六日の話ですからね。私は、非常に政治不信感を持つわけですから、本当のことを言ってもらいたい、セットなのかどうなのかなんというのは、われわれにとっていま一番知りたいところですよ。もう一回答弁してください。
  355. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 年金制度改正におきまする支給開始年齢の問題、それから保険料の改定を含めましての給付水準の問題、これは当然将来にわたりまする年金財政を考えてのことでございますので、一つのセットであると考えております。ということになると、年齢だけ取り下げたら全部これは出直すということになるわけですね。これは、厚生大臣、われわれの質問に対してうそを言ったということになるのですけれども、その点どうですか。
  356. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 あの時点では、その前後にいろいろお答え申し上げておると思いますが、厚生省としての考え方を両関係審議会に諮問を申し上げている最中でございます。したがいまして、答申の結果を待ってその両審議会の御意見を十分に尊重してまいりたい。したがいまして、その時点におきまする厚生省としての考え方は、審議会への諮問の案の問題を申し上げたわけでございます。
  357. 草川昭三

    ○草川委員 それは答弁にならぬですよ。私は、そういうことを踏まえて、一体セットで厚生省がどう対案を出せるのかどうか一番知りたいといってわざわざ聞いたわけですからね。いまのは答弁にならぬですね。そういう上に立って改めて厚生大臣は、セットであると考えております、とこう言われたわけですからね。それは答弁にならぬですよ。
  358. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 当時は、両方の絡みも持った形で、厚生省の長期展望に立った年金財政の安定化はこういうことではないだろうかということで審議会に諮問をいたしたわけでありますから、その審議会の答申を待ってでなければ今日提案を申し上げております年金制度の改正の内容と食い違うことがあったとしてもやむを得ないのではないかと考えております。
  359. 草川昭三

    ○草川委員 当時といっても十三日前ですよ。しかも、新聞では、ほぼ受給年齢については厚生省はあきらめるということが報道されておったわけです。だから私は、特に前段で本音で話をしてもらいたいという注文をつけて厚生大臣に答弁を求めたわけです。そのときに大蔵大臣もお見えになったわけですし、官房長官もお見えになったわけですから、私のいまのこの質問がおかしい質問なのかあるいは厚生大臣の答弁がいいのか、一回ほかの人にも聞いてみましょうか。しかし通らぬですよ、それは。どうですか。
  360. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 同じことを繰り返して恐縮でありますけれども、審議会にせっかくの御意見を承りたい、こういうことでございますので、その途中の段階でございますから、諮問したその案について私どもの考えを述べたということでございます。そうでなければ、審議会に諮問した内容についてその答申を待たずに違ったお答えを申し上げることはあの立場においてはできなかったということで御理解を願いたいと思います。
  361. 草川昭三

    ○草川委員 違った立場と言われますけれども、私は、何回か言いますけれども、違ったということを前提に大臣に聞いたわけですから。私も実はいろいろと厚生省の方々とレクをやりましたよ。そうしたら、厚生省の方々もいまどうなるか全くわからぬのだということで終わっていたわけですよ。だから私もあえて聞いた。しかも、あのときの答弁があって、ワンセットとして考えると言ったときに、いろんな方がお見えになりましたけれども、あれっというような声もあったのですよ、これはざっくばらんな話ですけれども。だから、これは厚生大臣の勇み足なら勇み足で、それは率直に、条件が違ったなら違ったと言ってもらったっていいと思うのですよ。余り抗弁をせずに、それはそのときそうだったかもわからぬけれどもと素直に言っていただきたいと思うのです。
  362. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 素直に申し上げたいと思うのでございますが、諮問いたしました案というものは、これはやはり厚生省の長期展望に立った年金制度がこうなければならぬ、したがって、六十五歳という考え方、そしてそれに見合うものとしては掛金率はこの程度にしたいというような一つのセットの考え方であったことは事実でございます。しかし、審議会の御意見を十分尊重しますということであり、また、自民党からもこれに対して慎重に配慮すべきであるという御注意もいろいろありましたので、それらを考え合わせながら今日国会に提出いたすような内容になったわけでございます。
  363. 草川昭三

    ○草川委員 そういうように、その当時はそう思ったとおっしゃられたらそれはそれで結構です。そういうことで、改めてこういうことになったということだと思いますが、年金というのは、何回か申し上げますように、そう簡単にくるくる変わってもらっちゃ困るのです。国民の皆さんの老後の生活ということを基調にみんな心配して考えておみえになるわけでありますから、しっかりと長期展望を立てて、それこそ料率はどうあるべきか、給付の内容はかくあるべきだ、あるいは雇用の面、トータル的な面でぜひこれは考えていただきたい、こう思います。第一番の問題につきましては以上で終わります。  では、第二番目の問題で、労働福祉事業団の問題についてひとつ問題提起なり政府の考え方を聞きたいと思います。  御存じのとおり、全国各地に労災病院というのがあるわけでありますけれども、それを統括するのが労働福祉事業団というものであります。これは労働保険特別会計の労災勘定から事業団に、私の資料では千二百五十億と書いてありますが、千三百七十二億の資本投入が行われております。それで具体的には、事業団が直接食堂だとか付帯する仕事はできませんから、外郭団体に財団で労働福祉共済会というのがつくられております。これが実際上の病院運営を、サブの形でありますが、いろいろな意味でやっておるわけでありますが、ここでダミー会社が新しくできつつあるわけです。すでに昭和四十四年にできておるわけでございますけれども、これが労災病院に医療機器などを半独占的に売り込んでいることが私どもの調査で明らかになりました。しかも、その民間の株式会社の筆頭株主として労働福祉事業団の外郭団体が投資をしておる。いわば一極のダミー会社になっておるわけであります。私は、特殊法人なりあるいはそれに付帯するところの財団というものは、本来お役人の天下り、救済の目的のためにできたわけじゃないと思うのです。それなりの目的なり意義があってできておるわけでありますし、すでに内閣の方も民間人のいろいろな知恵を導入してひとつ新しい体制をつくっていこうということを言っておるわけでありますから、そういうような旧お役人の、OBの足場としてこの事業団が運営をされたり、あるいは財団が運営をされたり、さらに財団で限界があるから営利活動をやろうというようなこと、しかも、そこへずっと国の金というのですか、労災勘定から流れていくわけですから、私はこれは問題があると思うのです。しかも、役員がずいぶん兼任をしてみえる例が多いというわけであります。  これは私がたまたま労働省の問題を取り上げましたが、各省全部こういう似たようなケースがあると思うのです。きょうは行管の方に言って大臣にも来ていただいておるわけですから後ほど御意見は賜りますけれども、この事実経過一つ一つ私聞いてまいりますからお答えを願って、この背景というのをひとつ聞いてもらいたい、こう思います。  まず、労働省から労働福祉事業団という一つの流れがあるわけでございますが、これは三十二年七月に成立をいたしまして、役員は七名。ここに前の労働事務次官の藤繩さんがいま代表者になっておられますが、元役人が役員七名のうち全部で、労働省六名、警察庁一名の方々で役員構成をなすってみえるわけですが、これに間違いございませんか。
  364. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 きょうの御質疑をいただく御様子を新聞で拝見をいたしまして、私も早速に藤繩さんを呼んで、いろいろと事実関係について調査を進めておりますが、もし私の短い期間の研究で、あるいは調査で不備なところがあるといけませんので、政府委員から事実関係については一つ一つお答えをいたしますので、お許しをいただきたいと思います。
  365. 吉本実

    吉本(実)政府委員 お答えします。おっしゃるとおりでございます。
  366. 草川昭三

    ○草川委員 その次に、労働福祉事業団というのが各病院等の付帯する事業等については直接手が出ませんから、事業団が二千万円の基本財産というのですか、このほかいろいろな売店等の経営をやっておりましたその他もろもろのものがございますが、大まかに言いますと、当初二千万の金額を出しまして財団法人労働福祉共済会というのをつくりました。これも役員は九名おみえになりますけれども、労働省の方々六名、会計検査院の方が一名、大蔵省一名、建設省一名、こういう方々で財団運営をなすってみえるわけです。これは労働福祉事業団と兼務をなすってみえる方々が四名おみえになります。小鴨さん、松尾さん、沢田さん、永江さんという形になりますが、こういうことも事実でございますか。
  367. 吉本実

    吉本(実)政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、事業団と共済会の兼任しております四人につきましては非常勤になっております。
  368. 草川昭三

    ○草川委員 ではその次に、この財団労働福祉共済会というものが実は共済商事という会社をつくったという言葉は悪いかもわかりませんけれども、たまたま左の方にございます池辺道隆さんというのが元労働省の参事官をやられまして、この方が労働福祉事業団の開設の準備をいろいろとやられまして、理事をやっておみえになりまして、現顧問ということになります。この方が、財団の労働福祉共済会の現在の会長をなすってみえるわけでございますが、共済商事という会社をつくられて現在の代表取締役になっておられます。昭和四十四年三月にこの会社はできまして、資本金は四千万円、そして役員は十名でございますが、ここも労働省の方六名、大蔵省一名、人事院一名、事業団の方が一名という形になっておりますし、しかもこれは、労働福祉共済会という財団と兼務をなすってみえます。小竹さんと小林さん。これも事実でございますか。
  369. 吉本実

    吉本(実)政府委員 お答えします。そのとおりでございます。
  370. 草川昭三

    ○草川委員 それで、共済商事の四千万円は財団法人共済会が三〇%の筆頭株主であるということも事実でございますか。
  371. 吉本実

    吉本(実)政府委員 そのとおりでございます。
  372. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、大体表はお認めになったわけでございますから、第二ページの方にいきます。  池辺さんから小鴨さんからずっとお名前がありますが、私ども別にいやがらせでこういうのを調べたわけではございませんけれども、実際上池辺さんは現在民間会社の共済商事KKの社長さんでございますが、労働省の方からずっとお見えになっておるわけでございます。これもいま私が質問をしたわけですから同じだと思いますが、小鴨光男さん、小竹宗男さん、この方も労働省の方から労働福祉事業団に天下られまして、そして財団の労働福祉共済会へ入っていられる。あるいは、全部名前を挙げておりますと切りがございませんから、小鴨さん、小竹さん、小林さん、岩崎さんと読んでいきますが、たとえば小林正二さんという方も、現在は共済商事という民間会社の監査役をやっておられますが、これは労働福祉共済会から三〇%の資本が出ておる会社です。そして、元大蔵省で、事業団、労働福祉共済会、共済商事とずっと行かれるわけですね。大蔵省の方々がどうして労災病院などに関係するところに行かれるのかわかりませんが、これは財政投融資などをいろいろ事業団などに融資をするというのですか、そういうことができるので問題なしにこういうところに行けるのでしょうか、大蔵大臣どうでしょうか。
  373. 田中敬

    田中(敬)政府委員 経理の専門家としての職能を請われて最初事業団に行ったものと思っております。
  374. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると同じように岩崎忠孝さんですか、会計検査院におみえになりまして、特に労働省関係の検査課長をやっておみえになった方でございますが、財団労働福祉共済会へ入っていかれておるわけでございます。検査院の方にお伺いしますが、これも結局いまのような御答弁になるのでしょうか。――そういうことになると、労働福祉共済会というのは、お金に色がついておるわけではないので、どういうことになるか私はわかりませんけれども、とにかく労災保険というのを事業者が納入をする、そういうのが特別勘定に入っていく、そして福祉事業団の方にいき、そして出資をしておるわけでありますから労働福祉共済会へいく。しかも、労働福祉共済会で今度新しくひとつ民間会社をつくろうやということになると、労働福祉共済会のお金が三〇%、四千万円の資本金の中に投入をされていく、こういうことは普通一般的にやられておることなのでしょうか、その点はどうでしょう。
  375. 吉本実

    吉本(実)政府委員 いまの御質問でございますけれども、必ずしもそういうことは通常とは思いません。
  376. 草川昭三

    ○草川委員 通常ではないとすると、これは特別なケースだ、こうおっしゃられるわけですね。では、特別なケースなのかどうかということも私ども十分検討しなければいかぬと思いますけれども、たとえば労働福祉事業団と共済商事との関係というものは一体どういう形になっておるかといいますと、労働福祉事業団というものはそれぞれ各地域にブロックがあるわけです。関東であるとか関西であるとかいうブロック会議というようなものもやっておみえになるようでございますが、四つのブロックに分かれておる。ところがこのブロックに、たまたま民間の共済商事の支所も設置されておるわけであります。北海道・東北地域、関東・中部地域、近畿・中四国地域、九州地域、この四つに事業団のブロックがあるわけです。同じように共済商事KKというのも東北支所、東海支所、関西支所、中国支所、九州支所というところに分かれて置かれておるわけでございますが、当初はこれは全部労災病院の中、中部の労災義肢センターというのも実質的には労災病院の中にあるわけでございます。こういう事実はどうでしょうか。
  377. 吉本実

    吉本(実)政府委員 おっしゃるとおりでございます。そこで「注」にございますように、五支所については、昨年十月まで事業団の労災病院内にあったのでございますが、その後一支所を残しまして全部外に出ております。
  378. 草川昭三

    ○草川委員 私、ここに共済商事のパンフレットを持ってまいりましたが、この裏に共済商事の東北地区、東海、関西地区支所、ずっと共済商事株式会社という会社の支所の名前が書いてあるのですが、全部東北労災病院内、労災義肢センター内、関西労災病院内、関西労災病院内、九州労災病院内と書いてある。新しいパンフレットの中では、いまおっしゃるように大阪は二カ所昨年の十一月に変更しております。というわけですけれども、これはどう考えても――民間の会社で医薬品を売り込むパンフレットをつくっておるわけです。だから私はこの共済商事というのはあったっていいと思うのですが、この会社がいろいろなものを売っておるわけでございます。この内容についてちょっとお伺いしたいわけですけれども、労災病院を取り扱っておるわけでありますから、事業団の医療機器の購入金額、そしてここへ共済商事が一体どの程度の金額を納入しておるのか、パーセントを含めて、私の五十三年度の資料には、ここに書いてありますが、この点間違いがあるかどうか、一遍読んで御答弁願いたいと思います。
  379. 吉本実

    吉本(実)政府委員 事業団の購入額が、五十三年度医療機器で五十億三千百十一万円、そのうち共済商事株式会社からの購入額は十六億四千二百三十一万円、約四一%に相当しております。
  380. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると医療機器は五十億、私の方は四十億と書いてあるのは間違いですね。五十億ですね。これは相当大きな金額になるわけであります。  ここで厚生省の方にちょっと聞きますけれども、薬事法第三十九条というのがあるのです。「厚生大臣の指定する医療用具を業として販売しようとする者は、あらかじめ、営業所ごとに、その営業所の所在地の都道府県知事に厚生省令で定める事項を届け出なければならない。」こういうのがございますが、東北というのですから仙台、宮城県ですね、あるいは愛知県、大阪府、福岡といったようなところでこのような届け出はされておるのでしょうか、どうでしょうか。
  381. 山崎圭

    ○山崎政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、共済商事株式会社、医療用具の販売業ということでございまして、おっしゃるとおり都道府県知事に届け出義務がございます。そこで私ども東京都から調査いたしましたが、東京都知事には医療用具販売業の届け出が行われております。そのほか御指摘の四カ所でございますが、これは関係府県から聴取いたしましたところ、仰せのとおり、名古屋、大阪、福岡、宮城県はちょっといまいないようでありますが、いずれにしても過去四カ所、これは連絡員を置いておった。直接医療用具の保管、授受等は行っていないという理解のもとに薬事法上の届け出は必要ない、営業所に該当しない、こういう解釈で各都道府県には届け出が行われておりません。
  382. 草川昭三

    ○草川委員 そこが私、いまおっしゃられたように、営業所でないのにもかかわらず、全国で労災病院は三十六カ所ですか、だから全国に散ってまじめにやはり民間会社は器械を売ってもらいたいと思うのですよ、いろいろな業界の人がいるわけですから。ところが、共済商事というのは中央だけ届けておいたら、あとは労災病院に一人だけの駐在員しかいない。いまのお話だと、もういまいないという。いないにもかかわらず年間五十億円の医療機器を買う、この労災病院が十六億四千万円も買っておるわけですよ、その会社から。独占的といわざるを得ないじゃないですか。しかも片一方じゃ、こういうパンフレットを持って一生懸命売ろうという意思だけはあるわけでしょう。しかも共済商事のパンフレットの中で社長さんも、ぼくは正直なことを言っておると思うのですが、今度事務所を移して一生懸命がんばっておりますという、これは新年のあいさつですが、会社として独立体制を確立することができたのもひとえに労災病院の皆様方の御支援のたまものと深く感銘をするとパンフレットに書いてあるのですね。こういう商売というのはありますかな。一般の会社にこれを売ろうといってパンフレットを持っている。そこで社長は労災病院のおかげで私の方は伸びました。それはそうでしょう。事務所だってみんな提供していただいて、総売り上げの四〇%も通過勘定でしょう。私、いろんな業界の方々から聞いたら、大体ここへ瞬間タッチと言いますけれども、とにかく実際、この医療器具はこの共済商事に入れないわけでしょう。労災病院へ持っていっちゃうわけです。五%程度のマージンだけ払うというわけ。大体医療用の器械というのは地域代理店を持っているのですよ。だから、共済商事に入れても労災病院に入れても同じ金額だということになるわけですね。値引きしないわけですよ。そうしますと、だからその分だけどうしてもオンコストになって、労災病院は高いものを買わなければいかぬということになるわけですね。これは現実に労災病院の組合の方に聞いていただいても、私もいろいろと組合員の方に聞きましたけれども、非常に用度係で現実にきらっている人がいるのですよ。九州では、現実にいろんな問題が出ているのです。なぜ、こんなところを通じて買わなければいかぬのか。そんな上からの天下りの人たちだけのためにやるのはかなわぬ。業者の人はメンテナンス、アフターサービスは自分たちでやらなければいかぬわけです。共済商事がこんなレントゲンの器械とか、いろんな器械のアフターサービスをしないわけですよ、大体人がいないのだから。そういう独占的な地位に近いことがやられておるということは、これは通る話なんでしょうかね。どうなんでしょう。これは一遍大臣に意見を聞きます。
  383. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、この話を聞きまして早速にいろいろと私なりに聞いてみました。共済会が生まれ、そしてまたそれと非常に近い関係と思われる商事会社がある。この事業団と三つの関係についていろいろと長い歴史があるわけでありますが、最初事業団がいろいろな売店その他を直営でやり始める、しかしなかなかうまくいかない。それはもう武士の商法ということもありましょうし、もっと研究していかなきゃならぬところ、なかなかもう一つうまくいかない。そこで共済会というような形でできるだけ能率を上げていくようにしよう、こういう新しい知恵のもとに共済会が出発をする。そしてさらに労災病院等のいろいろな機器であるとか備品関係等の調度をそろえてまいります中で、なかなかまともに一つ一つの商品と取り組んでいるといろいろな問題が起こってもいかぬというような、非常にむしろ細かい神経でいろいろ気を使って、そしてなるべく間違いの起こらないようにいろいろな機器などを調整するという方法はないかというような中で、ずいぶんその間に歴史的に時間がかかってずっと今日に来ている。こういういきさつがあるということはとにかく聞きました。  ただ問題は、そのときそのときには非常に真剣に考えたり、あるいはよりいい方法はないかと思って考えていることでありましても、それが一つの時間がたって、ある時点に立って考えてみますると、たとえばそのほかの業者の方々から見れば非常に不明朗な、前に立ちはだかって明朗に商売ができないというような関係になる場合もありましょうし、あるいは責任を持つという意味で、非常勤などで名前を連ねるというようなことが、非常にまじめに考えてそのように出発したとしても、時間がたってある時期にそのことを考えてみると、それは非常に不愉快な癒着のような形になっておるというようなとりようもありますし、そんなことから、特に昨年あたりから藤繩理事長を中心にいたしまして、ゆめゆめ誤解を受けないような形にすっきりしていかなければいかぬ、こういうふうに考えて取り組み始めまして、昨年ずっとずいぶん努力をしてまいりまして、役員の交代でありますとか、あるいは営業所といいますか出張所といいますか等を中から外へ出てもらうようにするとか、いろいろな努力を重ねてきておりまして、まあ今日の時点ではずいぶん改善されてきて、さらに誤解がないような形にもう最後の仕上げをしよう、こういうふうなところに来た、こう言っておるわけです。  しかし、私は現場を見ているわけでも何でもありませんから、いま御指摘を受けるような感じで歴史的な経過等も考えあわせてみて、なおいろいろとまだ改善しなければいかぬ、あるいは措置しなければいかぬというところも多分にあるように思いますので、そういった点につきましては早急にひとつ措置を講じて、ゆめゆめ誤解のないようにしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  384. 草川昭三

    ○草川委員 ちょっと大臣、私のいまの質問をずっと余り聞いておみえにならぬようでございますが、いまの御答弁は弁解ですよ。歴史的な経過がある、誤解があったかもわからぬから、ちょっといま何かごそごそやっておるというわけですよ。悪いとか間違っているということは少しもおっしゃってないわけ。  そうしますともう一回、これは一遍大蔵大臣に、お金のことだから聞きますし、行政管理庁にも聞きますが、これ予定してないのですがね。事業者が労災保険払っているわけでしょう、あるいはとうといお国の税金ですよね。いろいろな形でいくわけですから、そういう金が特別会計から福祉事業団に行き、福祉共済会に行き、そして共済商事という民間の会社をつくろうや、いま何も実体ないですよ、共済商事というのは。ピンはね会社ですから。労働省は大体ピンはねやっちゃいかぬというそういうあれでしょう。そういうところが共済商事というのをつくりまして、国の金で投資するわけですよ。だれだってやりたいじゃないですか、それは。みんなやりたいですね、そんな都合のいいことが通るなら。それが本当に現場で労災病院の方が、この財団だけではやっていけぬから民間会社をつくってくださいよ、国の金を投資しても結構ですというような要望でもあればいいですよ。ぼくは労働省ばかりじゃないと思う。思い上がりがあると思いますね、お役人は。国民のお金ですよ。大蔵省は特別会計から融資をするのも国のために融資をするわけでしょう。それは労働省の金じゃないですよ、特別会計というのは。労働省の金だと思い込むから財団をつくる、じゃおいこの金で民間会社をつくろう、おい、ここでやろうというわけですよ。だからもうちょっと、本当に悪ければ悪いということを言ってもらえば、ぼくは労働省とは社労をやっていたから余りこんなことをやりたくなかったわけ。ところが、資料請求をしていると、何だかんだでぼくたちが言ったことについててんで御理解なさってないわけです。いまでもそうでしょう。もっと率直に悪かった、特に民間会社に国の金を勝手に使うなんということは許されないと言ってくださいよ。どうですか、この点は。お見えになる大蔵大臣も行管長官も全部言ってくださいよ。そんなことが許されるなら日本の国がむちゃくちゃになりますよ。
  385. 竹下登

    ○竹下国務大臣 お話を聞いておりまして私もそれなりの感懐を抱いておりますが、実態を知らないままに無責任お答えをしてもならないと思いますので、草川さんの御意思のあるところは私なりに理解ができたということで御容赦をお願いします。
  386. 草川昭三

    ○草川委員 労働大臣、答弁してください。
  387. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 御指摘のようなところにつきましては一つ一つさらに調査をいたしたい、こう思いますけれども、私は率直にむしろ昨日の新聞以来、関係者に聞いてきたところを先生に申し上げたわけでございます。したがいまして、その時点、その時点で悪意を持ってとか、そこでトンネル会社にしようとかということでなかったとしても、現実にいまの時点でその事実を見てみたときに、非常に誤解を受けやすい形になっている。このことは私も率直に思います。したがいまして、間違いでございました、謝りますと言うのは、なかなか事実をしっかり見てみないと私もわかりませんので、かえって逆に軽々にそのことを申し上げられないわけでありますけれども、少なくとも誤解を受けやすいという形はどう考えてもよろしくありませんので、これを誤解を受けるようなことのないように、ひとつ厳正に調査いたしまして対処してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  388. 草川昭三

    ○草川委員 大臣、この「実態3」というところをついでに見ていただきたいわけですけれども、いろいろと誤解を招いてはいかぬというのだけれども、誤解もくそもないのですよ。財団と事業団との間に協定書というのがあるのです。それで食堂の経営だとかいろいろなことをやってもらいたい、当初の間は赤字だろうからある程度ひとり立ちをしたら借地料を払いなさいとかいうようなことになっているわけです。だからそれはそのスタートのときは理解できるわけです。ところが、だんだん事業活動をやっていって黒字が出ても、いわゆる借地借用料というのは払っておみえにならぬわけです。この中にもありますように、いま総貸付面積というのは五千四百八十平米になっているわけです。これはたとえば坪あたりの家賃一万円と仮定いたしましても、一年間で一億九千万円から、約二億ぐらいのものは入ってくるわけですよ。いろいろな費用というのは全部無料ということになっておるわけです。これのかわりに協力金という形で実は事業団の方に千四百三十七万円程度のものが払われておるわけです。これはいわゆるその対価でしょうね。だけれども、これも本当に事業団の方に収入として上がっておるかと言ったら、事業団の方は上がっておると言うのです。二十五億の雑収入の中に入っておるから間違いないと言うのです。私は余り細かいこと言いたくないのですよ、一つの病院あたりにすれば年間四十万円ぐらいですからね。この財団法人の決算報告を見ると、この協力金という項のところにいわゆる福利厚生費負担と書いてあるのですよ。だから、ぼくたちのような人間、現場で働いてきた人間の判断だと、その病院の運動会の費用だとか、それから一年間のレクリエーションのときの負担金だと思うわけですよ。だからそれは出したっていいわけですよ。それを労働省の方は、絶対そういうことはございません、あくまでも受け取っております、こう言うのですが、だったらその財団の方の損益計算書の中になぜ正式に借地料だとそういう項目を起こして納入しないのか。括弧として福利厚生費の負担分と書いてある。  これは会計検査院の方に言いますけれども、この点は少なくとも労働省は、絶対もらっておみえになる、福祉事業団は受け取っておると言いますが、本当にそうなのか、私はこれを一回調べてもらいたいと思うのです。そうでなければ括弧の中に厚生費負担分なんというのは書くわけがないのですよ。その点はどうですか。検査院の方にお伺いいたします。
  389. 肥後昭一

    ○肥後会計検査院説明員 その金が事業団に入っていることは確認いたしております。間違いございません。
  390. 草川昭三

    ○草川委員 では事業団の方に入っておるというならば、なぜ財団法人の損益計算書の中に括弧して福利厚生費負担分ですか、厚生費負担分ですかというようなものをわざわざ入れなければいかぬのでしょうね、項目の概要説明の中に。おかしくないですか。では、これは財団の方が間違っている、こういうことになるのじゃないですか。それは局長の方でいいですから答弁してください。
  391. 吉本実

    吉本(実)政府委員 ただいまおっしゃっていることでございますが、確かにただいまお話がありましたように雑収入といたしまして事業団が受けておりますが、その雑収入のことにつきましての使用に、事業団の認可予算の歳出面におきましては、それがいろいろ福利厚生費等に使われているというふうに考えております。
  392. 草川昭三

    ○草川委員 それが入ってから福利厚生の方に入っておるという――建物の収入が大変大きな金額だったですね。二十五億の中にわざわざ財団の費用というものが、千四百万円という金額がひもつきで入っておる、こういうことなんですね。これも一般的には通らない話ですよ。  それで、じゃ会計検査院の方にお伺いしますが、こういうことはいいのですか。よければよいでいいのですよ。ぼくはさっきから聞いておるように、お金に色はついてないけれども、そういう財政投融資あるいは労災勘定というものが上から下へずっと入ってくる。最後に民間会社に資本として投入をされてもいいのですか。三〇%の株を持っておるわけですが、そういうことはこれからどんどんつくられていってもいいのですか。ここだけは一遍はっきり聞かしておいてください。検査上の問題なのか。検査で関係なければ、さっきから労働大臣は何とも答えてみえぬから、それは労働大臣でいいでしょう。これはどっちかではっきりしてください。こういうことは通るのですか。――じゃ労働大臣、はっきりしましょう。検査院の人に言ったってしようがないから、労働大臣、悪いのかいいのか、はっきりしなさいよ、調査をするとかせぬじゃなくて。事実三〇%のあれが出ているのだから。何回か言いますけれども、民間会社にやっていいのですかと聞いているのです。だから、やっていいならいいと言いなさい。そういうものなのか。
  393. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 よく調査をしたいと思いますけれども、そういう事実があるとすればよくないと思います。
  394. 草川昭三

    ○草川委員 そうでしょう。はっきりすればいいのです。よくないということがわかればやはり改めてくださいよ。そして、民間の人が苦労して機械を売って歩いておるわけですよ、公正な競争をやって、サービスがいいというのを労災病院は買えばいいじゃないですか。それだけの話でしょう。こんなのはこんなところで大きな声を出す必要は全然ない。国民の常識だよ、こんなものは。初歩的なことじゃないですか。それをわれわれがガッガガッガ大きな声を出して、こんなことは衛生上悪いですよ。そうでしょう。そんなことはさっと言えばいいじゃないですか。だからぼくは、労働省というお役所は現場の労働者を預かる大切な役所だから、いいことはいい、悪いことは悪い、そして協力をしてくれ、こういう役所だと思うのですよ。それを何だかんだと……。こんなものはけんかをやる筋じゃないですよ、本当に。常識の問題ですからね。いま大臣が事実とするならばいいことではないとはっきりおっしゃったので、それは早急に対策を立ててください。  それから、同じように労働福祉事業団と労働福祉共済会との関係で、この後ろにも協定書があります。これは四十三年の当初の協定書でございますが、労働福祉事業団の理事長の中西さんも同じ人物です。そして甲と乙の両方とも、財団法人労働福祉共済会の中西さんが同じ人ですね。こういうことで、一人が、同じ人物が、おい、貸しますよ、ただでしますよ、こういう協定書がたくさんあるわけです。これも改善する必要があると思うのですが、その点はどうでしょう。
  395. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 出発をいたしましたときには、先ほど申し上げましたように、共済会に事業団にかわる仕事をさせていこう、こういうような動機から設立をしたものと聞いておりますが、したがって、その時点では代表者が同じ人物で出発をするということもまたあり得るかとは思います。しかし、さっきも申し上げましたように、時間がたって考えてみたときに、そのことがいいことかどうかということは、これはもうまた一目瞭然のところでございますので、五十四年度、非常におくれましたけれども、さっき申し上げてまいりますように、改善をしなければならぬという立場に立ってまずここの点を改善しようということで、同一人物が理事長と会長を兼任するということのない形にいたしまして措置してきておるところでございます。今後十分気をつけてまいりたいと思います。
  396. 草川昭三

    ○草川委員 ではそこで、検査院の方にお伺いをしますが、過去長い十何年の間事業団と共済会との関係について一体どのような監査をなすっておみえになったのか、労働福祉事業団法第二十九条には財産の処分等の制限等、あるいは施行規則の二十条で百平米以上の建物を貸し付ける場合には、実際のことを言って、労働大臣の認可を受けなければいけないということになっておるわけですよ。これは実際は細かいことについては一々認可されていないでしょう。事業団法四十条においても、役職員には三万円以下の過料に処すというような非常にはっきりとした規定もあるわけですよ。こういうことがあるわけでございますが、検査院はいままでの検査を果たしてなすってみえたのかどうか、あるいは検査の講評はどういうようなものであったのかお伺いをします。
  397. 肥後昭一

    ○肥後会計検査院説明員 お答え申し上げます。  当初は、事業団の仕事のかわりにやったという点から、安いのもやむを得ないということで検査をいたしたようでございますが、その後は、労災病院の医療費とか建設費、そういうものの検査が重点でございまして、各病院にしますと面積が小さいものですのでつい見落としていた、検査をしなかったというのが実情でございますが、昨年度におきましてはこの点に気づきまして、賃貸料が安過ぎるということで、改善するよう事業団に求めますとともに、本院でも現在その金額その他についてどうあるべきかということを検討いたしておるところでございます。
  398. 草川昭三

    ○草川委員 そういう講評は、これは本来ならば文書でやるべきですよ。そして、行政管理庁の方も、これは昭和四十六年ですが、「公益法人の指導監督に関する行政監察」というのが出ております。もちろん、この財団の方までは手に負えないというので過日来から問題になっておりますけれども、これは官房長官、いまいろいろと私の質問をお聞きになっておられますけれども、いわゆる国家公務員については禁止をする明確な方針というものが出ておりますね。ですけれども、特殊法人の役員とその特殊法人と密接な関係のある公益法人の役員との兼職の問題、こういうことについても具体的な弊害がいまあるわけでありますけれども、私はやはり同様に禁止をすべきではないだろうか。そして、本当にやむを得ないというような事例があるならば、それはそれなりに明快にしておく、私がいま取り上げたように、いいわいいわで国民のお金というものを何となく自分のものだと思って使っていくところに今日の過ちがあるわけですから、そういう点について私は抜本的な見直しを要求したいと思うのですが、官房長官の御意見はどうでしょう。
  399. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  本件の実態を知りませんので、いま初めて伺ったわけでございます。私、伺っておりまして、たまたま福祉事業団が問題になったわけでございますが、ほかの省にも同様のことがなければいいがなと心配しておるわけでございますが、この件につきましては、いま労働大臣責任を持って直すということでございましたので、私はそれを信じておりますし、またこういう事例がないように、各省に対しまして適当な機会に注意をするつもりでございます。  また、国家公務員の特殊法人に対する再就職でございますとかそういうことにつきましては、閣議決定で厳正にやっていく、また、なるべく民間の方の活用もしていくということを決めておるわけでございますが、特殊法人の役員が公益法人の役員と兼職するというところまでは、実は監督といいますか、十分閣議で見るとかいうことはしておらないわけでございまして、その公益法人の監督官庁がそれは指導してもらう、監督してもらうということでやっておるわけでございますが、いまのような誤解を受ける、疑いを受けるようなおそれのある兼職はなるべくやらないということで、各大臣から監督指導してもらうように、内閣として適当な機会に注意を早急にして、綱紀粛正ということの目的が達せられますように努力をしてまいります。
  400. 草川昭三

    ○草川委員 適当な機会なんということを言わずに、やはり早急に私のようなこういう例を挙げて、厳重に各省庁にもこういう類似事項のないように勧告をしていただきたいと思います。  最後になりますが、労働大臣に、この福祉事業団と共済会との協定書は破棄をしてやり直す、いまおっしゃっておられますので、それはぜひ早急に近代的なものにやっていただきたいということ。そして、事業団の医療機器の購入等については、共済商事に偏ることなく、やはり公正な競争をさせて、そしてメンテナンスというのですか、アフターサービスができるように、ひとつ公正な条件の中で医療機器の購入等ができるようにしてもらいたい。そして、私も、先ほど出ましたように、専門の会計検査院の方だとか大蔵省の方々が事業団等を通じて下部へ行くことそのものをいやがらせ的に反対しておるわけじゃございません。そういう能力のある人があってしっかりとした監査をやっていただけるならいいのですけれども、こういうことのないように厳重に注意をしていただきたい。そして、これは行管庁にも、宇野さんにも一言御意見を聞きますが、こういうようなことのないように十分行政監察もやっていただきたい。  以上の点を申し上げますので、お二方から御答弁をお願いします。
  401. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 協定書につきましては、中身も検討いたしまして、早急に誤解のないような形に改善するように措置をいたします。  それから、いろいろ納入の機器等につきましては、正常な商行為によりまして、先生指摘のように、いいものがなるべく安く買えて、まあ正しく買えてといいますか適切に買えてといいますか、そしてアフターサービス等につきましても行き届いていくように、正常な商行為が進められるように、あらゆる措置を講じて改善をいたします。
  402. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ただいまお話しの一連のことは、私、承りまする限り最も悪い例の一つである、かように存じます。したがいまして、省庁と公益法人との間に関しましては、草川さん御発言のとおり、四十六年に監察をいたしておりまするが、やはりその線におきましても、いま戒められたことを私たちは強く省庁に勧告をいたしております。その趣旨で今後も特殊法人と公益法人あるいはまた特殊法人の子会社、孫会社等々の関連におきましても厳しく監督をしていきたいと考えております。
  403. 草川昭三

    ○草川委員 時間がございませんので、次は十全会の方に行きます。  先週の土曜日も、たしかNHKで「ルポルタージュにっぽん」というので京都の十全会病院の問題が取り上げられておりますが、実は私が取り上げました趣旨というのを簡単に申し上げます。  これは三つの病院で十全会というグループになっておるわけでございますが、日本でも一番大きい民間の病院でございます。しかも、精神科を中心とした老人専門病院と言われておりまして、この法人の五十三年の収益は、今回若干税の修正申告をいたしておりますが、四十七億です。大変です、これは。そして、もうけたお金で朝日麦酒、高島屋など日本のトップ企業の株を買い占めておるわけです。朝日麦酒、二五%買い占めです。しかも、これはそれぞれのグループの名前で買っておりますから、医療法違反にならないわけです。しかも、この医療の内容にいろいろな問題点がございまして、ずっと以前にもこの予算の委員会で問題が出ておりますが、当時は九カ月間で八百五十九名の死亡者が出ておるというようなそういう数字すら出ておる病院でございます。現在のところは二千七百五十一ベッドあるわけですから、一口で二千七百といいますが大変ですね。大量のお年寄りが入っております。そういう点からこの十全会の問題を取り上げたいわけでございます。ごめんなさい。厚生省からの新しい資料によりますと、五十四年四月には許可病床は三千百七だそうです。ここに三千四百九十七名の方々が入院をしておみえになるというわけでございますが、精神科の病床だけでも一九・八%の過剰入院だということになっております。最近の数字ではちょっと下がっておりまして、一・〇八倍だというようなことでございまして、多少やりくりはあるようでございますが、それでもけさほど厚生省からいただいた資料では、許可病床数が三千百三十四、入院患者数が三千四百六人になっておるわけですが、こういうことですか。どうでしょう。
  404. 田中明夫

    田中(明)政府委員 お答えいたします。  十全会系の病院の許可病床数は、東山高原サナトリウムが千八十九床、京都双ケ岡病院が千五百六十一床、ピネル病院が四百八十四床でございまして、これに対する入院患者数はそれぞれ千二百四人、千七百十三人、四百八十九人となっております。ピネル病院が許可病床数に対して五人超過という比較的超過入院患者が少ないのに比べまして、他の二病院は約一割程度の超過入院となっております。現在京都市において指導が行われているところでございます。この超過収容につきましては、先生指摘のとおり五十三年の医療監視時と比べるとある程度の改善が見られるわけでございますが、患者の超過収容は望ましくないことでございますので、病院の実情を把握しつつ今後さらに指導の強化が図られるよう配慮してまいりたいと思っております。
  405. 草川昭三

    ○草川委員 お医者さんも非常に少ないのです。常駐のお医者さんというのが圧倒的に少なくて、一人で百四十八名の担当になっております、私の方の調べでは。常駐者はわずか三九%にすぎません。常駐のお医者さんは四割弱なんですね。そういうところへ特に年をとった方々、約十五台のパトカーがありまして、福祉事務所だとかいろんなところで、老人性痴呆症というのですか、あのおじいちゃん、おばあちゃんはもうどうにもならぬよと言うと、すぐ自動車が迎えに来て入院をさせるわけです。精神病院で許可をとっておりますから大量に、許可ベッド数よりたくさん入院をすることができるわけです。しかも、入れると両手を縛られるわけです。両足を縛られるわけです。そして食事を食べることができませんね。だから全部点滴をするわけです。  きょう私は時間がございませんから、厚生大臣に一部だけレセプトを持ってきました。これをちょっと見てください。  これは専門のあれですから余り皆さんの方に資料ではお配りをしませんけれども、四種類の診療報酬請求が私の手に入ってまいりました。去年のよりはちょっと請求月額が安いのですね。だけれども、平均しますと、八十八歳のおじいさんあるいは七十六歳のおばあさん、八十七歳のおばあさんというような方々のレセプトが来たわけですけれども、一カ月七十二万円、七十八万円、八十七万円、六十九万円という請求の内容であります。年をとったおばあさん。しかもこのおばあさんは、最初はどうでしょう、脳動脈硬化症だとか老人性痴呆症だという形で入ってきたわけですね。七十、八十のおばあさん。それで精神病院ですから、縛りつけというのはある程度認められるわけです、どこかにうろうろせぬようにというので。だけれども、食事の時間になったら食事を食べたいのだけれども、食事が目の前に来るのだけれども、看護婦さんだとか介添え人がいないものですから、来ることは来るけれどもそのまま引き揚げられるという例が多いというのですよ。  それで、八十過ぎたおばあさんにどういう注射をやられておるかというと、一人は一カ月に七十六回、一人は百三十回、一人は九十九回、一人は九十一回。点滴注射です。あるいは皮下注射です。しかもその注射は十一種類ぐらいのいろいろな薬がミックスされたのが、こういうのがあるでしょう、こういうのをぶら下げて腕の中に注射をさせられておるわけです。だから少なくともその間は生きておみえになるわけですけれども、どんなおばあさんだって一カ月に七十回とか八十回打たれたら、それはどうでしょう、普通の人だって何とかなるのじゃないですか。  それで、私、専門家じゃございませんけれども、たとえば腎不全という病名を書かれたおばあさんがいます。セポランという薬、これは抗生物質ですが、一カ月に二十回打たれております。これは三十一日の診療日数ですから。あるいはシンクロチンというようなものも十二回打たれておる。ところが、このセポランというのは、いろいろと調べてきますと、腎不全には非常に悪い薬なんだそうです。それでわざわざこの薬の箱には、注意をして打たなければいかぬと書いてあるのですね。「多量の投与は腎障害があらわれることがあるので観察を十分行い異常が認められた場合は投与に注意をし適切な処置を行え」と書いてあるのです。八十八歳のおばあさんは、そういうセポランという薬を一カ月に二十六回も打たれておるのです。どうでしょう、こういうのは。これは専門家じゃございませんから、いやそういう必要があったと言えばあったわけですけれども、私は常識的に見てこれは問題だと思うのです。しかも、この診療点数の五五%とか六三%は全部点滴なんです。普通皆さんがお医者さんにかかると薬をもらってきますね、飲み薬を。それはほとんどないのですよ。とにかく注射ばかりなんです。それで縛りつけでしょう。これは人権上問題にならぬのかという問題なんですがね。こういう例は人権擁護局はどういうふうに思われますか。
  406. 中島一郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘案件につきましては、まだ関係者等からの申告もございませんので、私どもとして事案の内容をつまびらかに承知いたしておりませんけれども、人権に関する問題があるとすれば、人権擁護の観点からこれに対処いたしましてしかるべき措置を考えていきたい、このように考えております。
  407. 草川昭三

    ○草川委員 老人性痴呆症の方ですから、本人が申告できっこないわけですよ、本人はこうして病院の中に入っちゃっているのですから。できないでしょう。だからなかなかこれが正直なこと言って非常にむずかしいのは、私も現地に行っていろいろな方に聞いてきたのです。そうしたら、近くにある病院があるのです。そこの病院で脳血栓のおばあさんが治ったというのです。それで家族に引き取りに来いと言ったのです。なかなか家族は引き取りに来なかった。ようやく治ったから早く引き取りに来いと言って引き取らしたら、その家族が、こんな八十過ぎたおばあちゃんなんて言っておって、今度十全会にまた入れちゃったというのです。十全会に入れたら十何カ月後に、ということを期待するというのですよ。これは恐ろしいことじゃないでしょうか。そういう雰囲気というものが実はあるのです。だから京都へ行くと、十全会はそういう意味では、余りぎゃあぎゃあ言うなよ、高齢化社会で老人性痴呆症になって行き場のないいわゆる恍惚の人というのは、あそこに行けば何とか始末をしてくれる、こういう風潮があるのです。これは言ってはならぬことですがね。言ってはならぬけれども、そういう事実があるのですよ。現実に打たれているでしょう、いまこのレセプトの方を見ただけでそうでしょう。  そしてこの中にも、もっとひどい例があるのですよ。涙を流さぬと見れぬような話があるのです。たとえば酸素テントに二十五日間入っておるわけです。一カ月近い。その人が水中機能訓練といって、ふろの中に入れさせられるわけです。手を挙げて立ってふろの中に入っていくわけです。それを二回やられるわけです。そして片一方では、これはいかぬというのかどうか知りませんが、注射を打つわけです、連続して二十何回とかね。抗生物質なんというのは四回か五回注射したら、効かないと薬をかえなければいかぬ。これは医療の常識でしょう。という形がやられておるのですから、これは物の見方によっては、精神病だ、あるいは老人病対策だ、逃げていくかわからぬからある程度縛りつけも必要だ、みんなこれは合法的だ。だけれども、それが一歩裏になると、これは金もうけになるわけですよ。大変なことになるわけです。これはどっちでしょうね。しかも、そういう病院というのが、十全会ではなくて、全国的に、ああいうことをやろうじゃないか、こういうパンフレットを配っているんです。いいですか。これは厚生大臣、ちょっと答弁してもらいたいのです。担当官でもいいです。これはあるのですよ。みんな老人専門病院だ。これは十全会ではないのですよ。ほかですよ。名前は挙げませんけれども、「診療科目内科」、ここまではいいですね。「(老年病入院専門病院)」と書いて福祉事務所に配って歩いているんですよ。あそこのおばあさん、一人でもうどうしようもないという話があると福祉事務所が電話して、ここに引き取りにこいというわけだ。さあっとそのおばあさん、おじいさんを受け取ってくれる、そういう病院がふえるわけ。無料ですからね。そして一カ月に七十万、八十万という収入がお医者さんはあるわけです。これは本当に大変なことですよ。高齢化社会だと言って総理が大演説をぶっておるけれども、その裏では現実にこういう話があるのです。しかも、大変な収益を上げておる。  これは厚生省、どう思われますか。こういうやり方、宣伝していいのですか。
  408. 田中明夫

    田中(明)政府委員 医療法によりまして、国民に適正な医療を確保するという観点から、医業に関する広告について規制を行っております。もし御指摘のような広告がなされているといたしますと、医療法第六十九条の広告制限に違反すると思われますので、関係機関を通じて調査した上、所要の指導を行ってまいりたいと思います。
  409. 草川昭三

    ○草川委員 だから、そういう事例を挙げましたから、ひとつそういうことがないように指導してもらいたい。  同時に、いま私、時間が非常にないので簡潔に申し上げましたが、こういうことこそ、実は医療監視を十分行う対象じゃないんでしょうか。一年間で約千人死ぬんです、この病院では。正確な情報を警察に聞いてもわかりません。そして、お寺へ行ってお寺で聞いてもわからない。あるいは火葬場に行ったって報告してくれない。みんなこれなんですよ。厚生省に行って、去年から厚生省に何回か頼んでおるけれども、京都府から厚生省にUターンで戻ってくるわけですよ。千人近い死亡者が出ておるのです、現実に。これは老人処理工場ですよ。  こういう事例があるわけだから、厚生省は、昨年の予算でついた監査指導官制度というのが生まれておるわけですが、医療Gメン、これを発動する気持ちはないですか。これは厚生大臣、答えてください。
  410. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 大変遺憾な事実であると拝聴いたします。そういう実態であるかどうか、今後指導監査を十分徹底いたしまして、いやしくもこうした医療機関が国民から疑惑を受けることのないように十分徹底してまいりたいと思います。
  411. 草川昭三

    ○草川委員 徹底はいいのですが、Gメンをどうするのですか。出すのですか。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  412. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 御承知のとおりに、中央、地方を通じまして、指導監査の者がおるわけでございますから、京都府と一体となってこの問題の指導に当たってまいりたいと思います。
  413. 草川昭三

    ○草川委員 これはこの前、大原さんも、渡辺先生も言っておみえになりましたけれども、これはやらなければだめだよ、これほど明らかになった問題だけはどんなことがあっても。そのために予算がついてこういうGメンをつくったわけだから。代表的な例ですから。これは相談をしてからとか、京都府と一体になって、京都府がだめだと言ったからやめたなんということは言わないようにしてください。これはもう一回、とにかくその決意を表明してください。
  414. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 徹底した指導監査を行いたいと思います。
  415. 草川昭三

    ○草川委員 ということで、十全会がとにかくお金をもうけて、いま朝日麦酒五千二百万株、全体の二五%です。そして高島屋二千二百万株、一〇・五%、資金量は、高島屋で約六十億、朝日麦酒で九十億。百五十億円の資金量を動かして株の買い占めをやっておるんです。大蔵省、この点どうですか。
  416. 吉本宏

    吉本(宏)政府委員 十全会グループによる朝日麦酒株式会社等の株の取得につきましては、名義人がかなり多岐にわたっておりますので、完全な把握はむずかしいわけでございますが、おおむね委員の御指摘のとおりでございます。すなわち朝日麦酒が五千二百七十万株、発行済み株式の二四・九%、また高島屋が二千二百五十万株、発行済み株式の一〇・七%ということに相なっております。
  417. 草川昭三

    ○草川委員 いまもおっしゃられたように、非常に分散しておりますが、関西フードだとか関西商事だとか関西理容サービスとか、いろいろな会社で株を持っているのですよ。それで、関西理容サービスというのは床屋さんですわ。双ケ岡病院で四人の床屋さんがいるわけ。それから東山病院で三名か二名の床屋さんがいるわけ。そういうので、何と驚くなかれ、これは百六十万円の資本金だったですかな、四十八万株、一億五千万円朝日麦酒の株を持っているのですよ。床屋さんが持っていけないとは言いませんよ、頭のいい人がいるわけだから、資金を運用すればやれるわけ。しかし、これは明らかに床屋さんが一億五千万円の金を動かしっこない。結局これは十全会の理事長以下が動かしているわけよ。だから、医療法人じゃないから医療法に違反はしませんけれども、実態は私は、明らかにこれはだれが何と言っても、法的に問題はないけれども、ダミーがはっきりしているわけですから、論理的には問題だと思うのです。しかも一流の会社の株が二五%もぽんぽん持たれて、気持ちいいですかこれは、経営者として。よくはないと思うのです。こういう事実について大蔵省は、大蔵大臣はどう思われますか。
  418. 吉本宏

    吉本(宏)政府委員 現在の証券取引法によりますと、大量株式の取得自体を規制する手だてがございません。したがいまして、私どもとしては、こういった買い占めが一般投資者に対していやしくも不測の損失をこうむらせないように今後十二分に監視をしてまいりたい、このように考えております。
  419. 草川昭三

    ○草川委員 いまもお話がありましたが、結局、本当の老人病なり高齢者はどうあるべきかという問題を、われわれは一遍これで問題提起をしなければいかぬと思うのです。いまは保険の点数でそれを支えておるわけですよ。だから、ちょうど都合のいい病院があるじゃないか、金もうけだかしらぬけれども、黙って目をつぶろう、こういうわけ。そういうところはもうけたので株へ投資をする。明らかに近代国家としては恥ずかしいことですよ。社会福祉の国なんということは、何が世界的なレベルになったんですか、こういうような事例をほうっておいて。私はがまんのならぬ問題だと思うのです。特に行政管理庁は老人病の問題について問題提起をしておりますね。その点についてどういうようにお考えになりますか、お伺いしたいと思います。
  420. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 老人医療に関しましては、いわゆる公費負担医療、二十数種でございますが、この全般に関しまして昨年監察をいたしました。その結果、本年一月でございますが、厚生大臣にぜひともその制度及び運営に対して必要な改善を加えるべきであるという勧告をいたした次第でございます。  内容にちょっと触れさせていただきますと、御指摘の老人医療に関しましては、創設以来受診率等が相当増加したということが一点。中には、一部でありますが、同一の疾病で重複して受診をしている方々も見られる。そうしたことが、老人が比較的加入の割合の多い国民健康保険の財政にも影響を与えておるということが明らかとなった次第でございます。しかも、保険医療に関しまして諸制度がございますが、特に老人は医療費保障に九五%依存いたしておりますので、余りにも偏しておるのではなかろうかと思います。健康診査、健康教育、保健指導等の一貫した保健サービス、こうしたことに関しましては欠如しておるような面が把握された次第でございます。したがいまして、本当に医療を必要とする老人のために適切な給付を確保することが必要である。それこそ高齢化社会に対するところの制度の確立をもう一度改めて見直しなさい、こういう内容であります。
  421. 草川昭三

    ○草川委員 それじゃ最後になりますが、文部大臣にお伺いをします。  いまいろいろと私ども問題提起をしたわけでございますが、実は医学教育という面で、残念ながら国立大学に老人病を専門とする講座というのが非常に少ないわけですよ。私はもっと力を入れていくべきじゃないだろうか、こう思うのですが、その点についてはどのようにお考えになられますか。
  422. 谷垣專一

    谷垣国務大臣 御存じのとおり、老人医学の問題は、初め内科の専門というような形になっておりましたが、だんだんこれがその分野として確立をしなければならぬということで、たしか東大がその講座を持ちましたのが三十六年、それから京都の大学が四十二年、大阪、それから名古屋、最近は高知の新しい医科大学でそれぞれの講座を実は持っておるわけであります。また大学病院におきましても、老人専門の診療のセクションをいま申し上げましたようなところでは持っておるわけでございます。  老人医学の問題につきましては、これからまだ問題が多いと思いますが、現在までのところはそういう状況で、学問的にも極力この問題に対しての解明を続けていかなければならぬ、こういうふうに考えてやっておるところでございます。
  423. 草川昭三

    ○草川委員 ちょっと話が飛躍をいたしますけれども、私はいま例を申し上げましたように、七十だ八十だというおじいさん、おばあさんに幾ら抗生物質を投与したって限界があると思うのですよ。そういう点では、たとえば中国の漢方だとか、あるいははり、きゅうだとか、いろいろなのがありますね。そういうものをもっと学術交流をして日本の中に導入をして、これまた今度は厚生省にお願いをしますけれども、そういう中国医療というようなものをもっと大胆に保険点数に採用するようなことの方が私は日本人的な意味でなじむんじゃないかと思うのです。これは私は素人ですから出過ぎたことになるかもわかりませんが、感じで申し上げますけれども。ところが、そういう分野というものは非常におくれておりますね、やはり西洋医学というのが優先しておりますから。だけれども、徐々にひとつ見直そうという時期が来ておるようでございますが、そういう点について、たとえばもっと理学療法士というようなものをたくさんつくるとか、私の提案したようなことについてどのようにお考えになっておられるか、文部省と厚生省にお伺いしたい、こう思います。
  424. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 はり、きゅうなど、リハビリも含めまして、こうしたものはどちらかといえばまだ医学の上には十分その位置づけが明確でない点もあろうかと思います。この問題につきましては十分検討いたしまして、医学の治療の上にこれらがもっと重視されるような方向に検討してまいりたいと考えております。
  425. 草川昭三

    ○草川委員 いろいろと問題提起をいたしましたが、時間が来ましたので以上で終わりますけれども、私は、この十全会病院という問題を一つ取り上げましたが、この病院だけではなくて、いま全国的にこの種の老人病というものに対して何らかの対応を立てていかなければいかぬことは事実であります。私は、たまたまいま治ったおじいさん、おばあさんを、家族がそれを喜ばずに、ではあそこの病院へ連れていこうじゃないかということを言うような現代姥捨山ですね、現代姥捨山ということは決してこれは遠い国のことだとか特殊なケースとして思ってもらっちゃ困ると思うのです。実はどこにもこれは転がっておる問題なんです。だから逆に早急に――本来の老人病あるいは高齢化社会に対応する全体の、人の心の問題だとか、あるいは医療と経済性の問題だとかということも、いいことはいい、悪いことは悪いということを区別をしないところに、こういうおかしなことが生まれてきたと思うのです。だから、もっと大胆に厚生省が、いかぬことはいかぬとはっきり言い切る、そしてやっちゃいかぬことはやっちゃいかぬということでやる、そういうけじめさえついておれば、こういう例は生まれなかったと思うのですよ。そしてまた、そういうものをまねをするという例がないわけですから、この点は素人で申しわけございませんけれども、私は私なりの問題提起をしたつもりでございますから、どうかひとつ十分理解をしていただいて御検討をお願いしたい。  以上申し上げまして終わります。ありがとうございました。(拍手)
  426. 田村元

    田村委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十五分散会