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1980-02-16 第91回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月十六日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田村  元君   理事 小此木彦三郎君 理事 瓦   力君   理事 小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君       荒舩清十郎君    小里 貞利君       越智 通雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    鴨田利太郎君       小山 長規君    始関 伊平君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       畑 英次郎君    福家 俊一君       藤田 義光君    松澤 雄藏君       村山 達雄君    山下 徳夫君       阿部 助哉君    稲葉 誠一君       大原  亨君    兒玉 末男君       野坂 浩賢君    八木  昇君       安井 吉典君    横路 孝弘君       草川 昭三君    坂井 弘一君       柴田  弘君    武田 一夫君       藤田 スミ君    松本 善明君       山原健二郎君    大内 啓伍君       岡田 正勝君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         内閣総理大臣官         房管理室長   関  通彰君         総理府恩給局長 小熊 鐵雄君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁地方振興         局長      四柳  修君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       名本 公洲君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         厚生省援護局長 松田  正君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房技術審議官  松山 良三君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸大臣官房総         務審議官    永井  浩君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政省電波監理         局長      平野 正雄君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省都市局長 升本 達夫君         自治大臣官房審         議官      久世 公堯君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第五局長  小野光次郎君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     畑 英次郎君   海部 俊樹君     鴨田利太郎君   金子 一平君     小里 貞利君   倉成  正君     山下 徳夫君   藤尾 正行君     越智 通雄君   正木 良明君     武田 一夫君   矢野 絢也君     柴田  弘君   中川利三郎君     松本 善明君   中林 佳子君     藤田 スミ君   四ツ谷光子君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     金子 一平君   越智 通雄君     藤尾 正行君   鴨田利太郎君     海部 俊樹君   畑 英次郎君     江崎 真澄君   山下 徳夫君     倉成  正君   柴田  弘君     矢野 絢也君   武田 一夫君     正木 良明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。横路孝弘君。
  3. 横路孝弘

    横路委員 初めに、北海道周辺における韓国漁船規制の問題について、農水大臣外務大臣の方にお尋ねしたいと思うのです。  これは参議院予算委員会でもつい先日議論をされた問題でありますが、韓国漁船北海道周辺における操業というのは本格化してすでに四年になるわけです。この間、漁具などの被害並びにこれらの無法操業による資源の乱獲は大変な状況になっておりまして、そうしたことから、たとえば昨年の十一月十六日には漁民が怒って韓国漁船を取り巻いて投石事件が発生する、本年も一月二十日過ぎに日本海操業中の北海道沖合い底びき漁船に対して韓国オッタートロール漁船が突っ込んで危うく事件になりかけたというような問題がありまして、いろいろ水産庁にもお骨折りをいただいておるところですけれども、なかなか問題解決の糸口がつかめないでおるわけです。一方、その被害はどんどん拡大するばかりということです。  さきに参議院農林水産大臣から、再度韓国水産庁長官を遣わして交渉するということだったわけですが、解決のための一体基本方針というのは何をお考えになっているのか、この辺からまずお答えをいただきたいと思います。
  4. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私がこの間参議院予算委員会でお答えいたしましたのは、水産庁長官を派遣するということもあるし、あるいは両国の間にはそれぞれ大使館があるわけでございますから、ソウル大使館を通ずるなり、あるいは私ども水産庁の方から日本にある韓国大使館を通じて言うなり、そういういろいろなルートもあります。いずれにいたしましても、いろいろの点から解決に当たるということを申し上げたわけでございます。  それではどういう方針解決をしようとしておるのかということでございますが、この間水産庁長官韓国へ参りましていろいろ議論をしてまいりましたときにもあったことでございますけれども、せっかく日本の側で、この地域は魚族の資源保全のためにも操業をすることはやめよう、こういう形で自主的にやめておる地域があるわけでございまして、その地域韓国側が入ってきて操業するということは大変遺憾なことであるので、少なくともそういうことのないようにしてもらいたいというのが私ども基本線で、そういう方向解決してもらいたい、こう思っております。
  5. 横路孝弘

    横路委員 韓国側のとった自主規制措置というのはきわめて不十分です。結局、北海道オッタートロール規制ラインの外に出なければだめだというわけです。ただそれは皆さんの方でお願いするだけになっていますね。もう少し何か知恵を出すとか、あるいは、きょうは議論しませんが、二百海里宣言等を含めた決断がなければ問題は解決しないだろうと思うのです。水産庁の方もみずから、こちらの水産庁長官の方も向こう水産庁長の方も禁治産者であって、禁治産者同士で話したって解決できないのだ、こういう発言を繰り返しなさっておるようでありますが、ここ一、二年の交渉経過を見てみると、民間民間話し合いをしている。水産庁レベル水産庁レベルで話をしている。しかし、問題の解決は全然なくて、依然として韓国漁船は、北海道周辺日本海に行ったり噴火湾の方に来たり、魚を追って漁業に従事しているという実態があるわけです。  この水産庁レベルで話をするに至った経過というのはいろいろあると思うのですが、五十三年九月に日韓閣僚会議ソウルで開かれたときに、操業水域問題について水産庁レベルで話をしようということになって、ずっとこの間交渉が行われてきたという経過があると思うのです。  私は、いろいろな法律的な議論はきょうはする気がないので、ひとつ外務大臣に、先日の参議院予算委員会発言も聞いておられると思うのですが、結局、問題は、こちらの水産庁長官向こう水産庁長が話をしたって、これはある意味で言うと当事者能力がないわけです。したがって、やはり両国間の外交関係という一つ立場に立って、基本的に総合的な日韓関係の中でこの問題を解決するということがなければ解決ができませんし、この問題が長引いているうちに資源が枯渇をしてなくなってしまうという大変大きな問題にいま北海道が直面しているわけです。したがって、これは農林水産省の方も協力をして、外務省皆さん方の方でもう少し表に出てしっかりした交渉をやってもらいたいと思うのですが、外務大臣いかがでしょうか。
  6. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもの方も従来水産庁と密接に連絡をとっておりまして、この問題が北海道資源保全あるいは漁具の破損、その他いろいろ深刻な問題につながっておるということを承知いたしておるわけでございます。従来、園田前外相から外交レベルにおきまして、昨年の二月に朴外務部長官の訪日の際にこの問題について申し入れをいたしましたし、私もついせんだって、二月八日でございましたか、金在日韓国大使に対しまして、この問題を強く申し入れしたわけでございます。  問題自体がかなり複雑な点がございまして、御承知のように、西日本漁業におきましては韓国十二海里の線まで行って日本漁船操業いたしておりますし、その辺の関係も、これは水産庁の方でいろいろ御調整が必要なことだと思いますが、外務省といたしまして、ただいまお話しのように、さらに広い見地で韓国側との交渉水産庁と協力して進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  7. 横路孝弘

    横路委員 漁業問題というと、ある意味では国内問題的、西の問題を持ち出しますと、国内の調整的な要素というのが出てくるわけです。そうではなくて、二百海里法という法律もあって、西の方は日韓漁業協定という協定もあるわけですね。法律的な議論をするといろいろな問題が出てくるわけなんですが、その議論はいましない方がいいだろうと思いますのでやめますが、場合によってはやはり決断をしなければならぬこともあるでしょうし、あるいはもうちょっと知恵を出すことによって、北海道周辺韓国漁船をどこかよそへ行っていただくというような措置だっていろいろな話し合いの中で可能性があると思うのです。  そういうことで、従来もいろいろと外務省が協力してきたことはあると思うのですが、もう少し表に出て、きちっと外交ルートに乗せた話を積極的にやっていただきたいと思うのですが、再度外務大臣から……。
  8. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 現在までも、先ほど申しました閣僚レベルでの話と、さらに事務レベルでもこの問題について外務省としてもいろいろ先方に申し入れいたしておりますけれども、いまお話しのように、今後さらに広い立場から韓国側との交渉水産庁と協力しながら進めてまいりたいと思います。  二百海里の問題も、御承知のようにかなり複雑でございまして、いろいろなはね返り問題も考えなければならない事情がございますが、何か方法がないものか、さらに検討いたしてまいりたいと思います。
  9. 横路孝弘

    横路委員 時間の余裕が余りない問題でございますので、外務大臣農林水産大臣も、今後一層この問題の解決のために少し時間を早めて御努力をいただきたいというように思います。  ありがとうございました。結構です。  次に、労働省の方に、雇用問題でこれから若干時間をいただいて、御質問をいたしたいと思いますが、初めに、一昨年あたりと大分違いまして、雇用見通し失業率有効求人倍率改善されて明るい見通しだと言われておりますけれども、今後の見通しについて労働省としてどういうようにお考えですか。
  10. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いま先生指摘のように、雇用情勢はだんだんと改善をしてきている。石油の値上がりその他いろいろと不安な要素もございますけれども、いま徐々に追い上げてきている雇用情勢を何とか維持していくようにあらゆる努力をしていきたい、このように考えておるところでございます。労働省一省でやれることではありませんので、経済企画庁等とも絶えず連携をし、経済見通し等におきましても、雇用を従来よりもより改善していくような方向で盛り込んでいく努力をしていきたい、このように考えております。  なお、そういった中で、特に日本社会そのものがそういう姿になりつつあるわけでありますが、中高年の求職の事情というのは非常に深刻でありまして、もう一つそこを乗り越えていくことがなかなかできないという情勢にございます。  したがいまして、八〇年代の大きな労働行政の課題といたしまして、中高年対策に特に力点を置いて一般的に制度も改善をしていかなければなりませんし、また、それぞれの職業安定所窓口等におきましても、むしろどんどんと中高年向き雇用を創出していくというような構えで、従来の受け身の労働行政から、積極的に職場を開拓していくという考え方で取り組んでいくようにいたしておりまして、今後ともその改善方向をさらに前進させていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  11. 横路孝弘

    横路委員 雇用改善は、確かに大企業の面で見ても回復の基調にありますし、常用雇用が回復し始めていますし、製造業就業者も減りがとまった、一部回復しているようなところもある、こういうことだろうと思うのです。  そこで、通産大臣に特に第二次産業製造業分野についてお尋ねしたいのですが、雇用調整はもう終わったと判断されていいのかどうか。皆さんの方が去年の十一月に発表された労働力移動調査ですか、これは五十三年の調査のようでございますが、これを見ると、やはりまだ中高年齢層中心として過剰雇用感が強いのだという報告になっているわけですが、第二次産業のこの情勢についてはどのように把握されているでしょうか。
  12. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 第二次産業では特に省エネルギー関係中心としたものがこれから伸びてくると思います。中でも知識集約産業中心で、また機械工業等組み立て的な工業が伸びてくると思います。そういう面ではまだまだ雇用を増大する余地があるのじゃないかというふうに考えております。
  13. 横路孝弘

    横路委員 いや、将来のことじゃなくて、いままで大体雇用調整は各企業終わったというように通産省は見ているのか、また、過剰な雇用感というものが企業はあるのか、その辺のところを、局長でも結構です。
  14. 宮本四郎

    宮本(四)政府委員 前回のオイルショックの後大変長く不況が続きまして、その間雇用調整が長期にわたって行われたわけでございますが、漸次最近回復してまいっておりまして、私ども労働省といろいろ相談をしておる過程におきまして、上向いてきた徴候を感じております。現に、五十三年十二月と五十四年十二月を比較いたしまして、製造業における就業者の数が四十八万人とふえておるということがそれを物語っているものと私どもは理解いたしております。
  15. 横路孝弘

    横路委員 ただ、製造業全体で見るとそういう数字になるのですが、産業別に見てみると、やはりいろんな特徴がそこにあらわれているわけです。比較的いいのは、景気を反映して電機とか精密機械関係ですね。これは雇用増加していますし、所定外労働時間もふえております。ところが、鉄鋼セメントになりますと、雇用はやはり依然として減少ぎみ所定外労働時間もまだ増加が弱いということですね。その中間にあるのが繊維とか家具とかいうような分野なわけです。したがって、全体的に雇用調整は終わったということではなくて、済んでいる部分もあるし、まだ終わっていない部分もあるということじゃないかと思うのですね。それは雇用調整が終わって、そこで、じゃ二次産業雇用吸収力があるのか。長期的に見ますと、いま通産大臣が言ったように、組み立てなど付加価値の高い産業分野ではあるのでしょうけれども、全体的に二次産業の今日の状況を踏まえて短期的に見る場合に、雇用吸収力というものがあるのかどうか、その辺のところを踏まえてお答えいただきたいと思うのです。通産省から。
  16. 宮本四郎

    宮本(四)政府委員 短期的に見ますと、先生指摘のとおりに、業態によって非常に区々でございます。最近の経済情勢、総じて力強い生産活動が継続いたしておりますけれども、中におきましては繊維その他需給関係の弱いものもございます。したがいまして、その間におきますところの雇用情勢も、おっしゃるとおりに、ふえているところ、必ずしも十分ふえていないところ、差別があろうかと思います。したがいまして、このような情勢が続く短期の見通しといたしましては、業態によって区々ではございますけれども、総体といたしましては製造業になお雇用吸収の力を持っておる、かように考えております。
  17. 横路孝弘

    横路委員 どの程度雇用吸収力がありますか。
  18. 宮本四郎

    宮本(四)政府委員 ただいまのところ、私どもの方としてはその数字は持っておりませんです。
  19. 横路孝弘

    横路委員 減量経営というのはやはり依然として大企業中心に続いておるわけですね。そうしますと、確かに、景気回復して稼働率が上がってくると、当然雇用はふえてくるわけですけれども鉄鋼だとかセメントなんか見てみますと、雇用そのもの増加というのはまだ弱いですし、むしろ数字で見ると減少傾向は続いているわけですね。  労働省の方は、その辺のところ、確かに製造業全体としては四十万ほどこの一年間でふえているのですが、これに大きな期待をすることができるのかどうか、その辺は労働省としてはどうお考えになっていますか。
  20. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  先ほど来、付加価値の高い産業等製造業の中でも今後雇用伸びが見込まれる業種もあるというお話もございましたけれども、これから数年間の先までを含めて考えますと、やはり産業構造全体として見ますと、第三次産業におきます雇用伸びが大きく期待されるものの、製造業におきます雇用伸びというのは大きなものはほとんど期待できない、横ばいをやや上回る程度しか期待できないのではないか、こういうふうに考えております。
  21. 横路孝弘

    横路委員 新経済社会七カ年計画を見ても、就業者中の割合は、製造業伸びるということにはならないで、横ばいということだろうと思うのです。  先ほど労働大臣からも、中高年層は明るいとは言えないというお話がありましたが、確かに、失業率有効求人倍率改善されている中で、五十五歳以上を見ると、失業率は二・六ですし、有効求人倍率は〇・一七という最近の状況で、改善は確かにされているけれども、内容的には大変大きな問題をそこに秘めているということなんです。  これからちょっと、今後の失業率失業者数がどうなるかということについてお尋ねをしたいのですが、五十五歳以上の失業者というのは、昭和五十年以降あるいはその前からとってみても、毎年毎年ふえてきていますね。昭和五十年が十六万で、その間中九万、二十万、二十二万、二十三万というようにふえてきて、これは増加傾向というのはずっと続いておるわけです。これから失業率失業者考える場合にどうなるかというと、三つほどポイントがあると思うのですね。一つは若年層でどうなるか、高年層でどうなるか、女子が一体どういうように労働市場に出てくるのかという三つの問題があると思うのです。  この三つの問題を考えてみると、若年層の場合、労働力率というのはヨーロッパに比べても圧倒的に低いわけですね。学歴がそれだけ高学歴化しているということだろうと思うのです。で、若年層の失業増というのは、そんな意味では、学歴が高くなればなるほど、ある意味で言うと職業を求めますから、求人活動といいますか、それに伴うそういう職業を求める転職活動が活発化していって、むしろこれは失業率が上がってくる傾向にあるのじゃないか。それから高年層の場合は、労働力率がずっと低下しておったのがとまって横ばいですね。労働市場にやはり高年層というのがずっと滞留してくる傾向は、数字の上でも失業率の上でも出てくるのじゃないかと思うのです。それから女子の場合は、依然として需要もふえてきますし、それから労働力率自身も上昇してきて、これは低下するというのはなかなか考えられないということになりますと、今後失業率が全体として大きく低下をしていくということにやはりならないのじゃないかというように思うのですね。  経済の成長のこともありますが、これは後でお尋ねしますが、全体的に失業率そのものというのは大きく低下しないで、やはり現状で推移していくというように私、考えるのですが、その失業率失業者数の今後の展望についてはどのようにお考えでしょうか。
  22. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、女子の労働市場への進出というものが進んでまいりまして、また、一度労働市場に出ました女子が、離職後いままでは家庭に入るというような形で非労働力化する傾向が非常に強かったわけでございますが、これからはその後も労働市場にとどまっていく、そういう傾向が強まるだろうと思いますし、また、高齢層の人口が今後非常に急激にふえる時代に入ってまいります。そういう意味から言いましても、高齢者の失業者数というのは絶対数として伸びる傾向にあることは先生のおっしゃったとおりでございます。  したがいまして、経済の成長問題、確かにございますけれども、完全雇用という状態は、従前と比べてむしろ失業率が高い率のもとでの完全雇用の状態という経済の姿が描かれる場合が出てくる、むしろそうなっていくというふうに考えるべきだろうと思います。  私どもも新経済社会七カ年計画あるいは第四次雇用対策基本計画考えます場合に、一応完全雇用を目標とし、その昭和六十年の完全雇用の場合の失業率として一・七%程度にこれをとどめることとしたい、こういうふうにいたしましたけれども、それは従来の一・三%よりもそういう意味で〇・四ポイント上げた数字にいたしているのも、その辺に理由があるわけでございます。
  23. 横路孝弘

    横路委員 それもまだいろいろと問題があるのですが、いまお話しのように、失業率全体として改善を大きくされていくという見通しはないわけですね。ある意味で言うと、それはあるいはアメリカ、ヨーロッパ型の構造になっていくということなのかもしれません。  雇用対策基本計画というのがありますね。これの見通しというのは、昭和六十年度までの見通しは成長率を大体どのくらいで立てておられますか。
  24. 関英夫

    ○関(英)政府委員 第四次雇用対策基本計画におきましては、約七年間の成長率の平均は四・八%程度と推計いたしまして労働力その他の見通しを立てております。(横路委員「何%」と呼ぶ)失礼しました。ちょっと……。
  25. 横路孝弘

    横路委員 時間がないようだから、これは七カ年計画よりちょっと高目の六%ぐらいじゃないですか。
  26. 関英夫

    ○関(英)政府委員 五・七%程度と見込んで計画をいたしております。
  27. 横路孝弘

    横路委員 新七カ年計画の方は五・七ぐらいですかね。この雇用対策基本計画の方はたしか六%ぐらいの成長率で見ていると思うのです。  そこで、企画庁の長官にお尋ねしますが——これはまず最初に労働省にお聞きしますが、今後の就業者増加数に対応できるような成長率というと、大体どのくらいになりますか。いま大体弾性値が〇・二ぐらいと言われていますから、五%の成長で一%ぐらいの就業者増だと言われていますね。今後の就業者数の増加というものを考えた場合に、どの程度の成長率を考えているのか。これは労働省の方に先にお尋ねしましようか。
  28. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  今後の就業者数の増加そのものをどう見込むかということにいろいろ問題はあろうかと思います。労働力率の問題等の見込み方の問題があろうかと思いますが、この雇用対策基本計画におきましては、先生のおっしゃいましたような一%程度の増でいくものというふうに考えまして、先ほど申し上げましたような五・七%程度、やや六%近い成長であれば一・七%程度失業率のもとで就業が確保できるという見込みに立っております。
  29. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お話しのように、成長率の問題が大変大事なんでございますが、横路委員承知のように、当初私どもば七カ年計画では五・七という成長率を一つの目安にしておることは御承知のとおり。しかし、五十四年度の実績見込み等を基礎にいたしましていまフォローアップをやりまして、これは五・五ぐらいに引き下げるのが本当じゃないか。しかも、五十五年度についてはもうすでにたびたび申し上げておるように、四・八というふうに低目になっております。しかし、五十五年度に限って申しますと、一%ぐらいの労働力増加を予定いたしましても、この程度の成長でもって失業者の数はふえない、こういう基本的な考え方で労働省とも打ち合わせて策定いたしたわけであります。  そこで、これからの問題でございますが、やはり成長率は、先ほど申し上げたように、当初計画を下方修正せざるを得なかったということでございますけれども、いまのところは六十年度の目安値、これを変えておりません。先ほど来労働省から御説明のあったような一・七という失業率を予定しておりますが、その中でも特にいまの第三次産業、これにどうしても重点を置いてくる。そして、後でお話があるのだと思いますが、どうしても労働時間の短縮、定年制の確立というふうなことがこれからの大きな課題ではなかろうか。そういうことを前提としながら、雇用関係を少なくとも悪化させないように持っていかなければならぬというのが私ども考え方でございます。
  30. 横路孝弘

    横路委員 弾性値の見方など、議論すればいろいろな議論ができるわけです。ただ、いま労働省と企画庁の方でもややニュアンスの違いというのはあると思うので、総需要の拡大という点から雇用問題を考えれば、やはり成長率は高い方がいい。大体一%程度の就業増に対応できるということで六%近い成長率が望ましいというのが労働省のお答え。それから企画庁の方は、今後はやはりだんだん下方修正をせざるを得ないだろうというお話なわけですね。いずれにしても、余りそこに期待をして雇用対策を考えるとこれは間違えるということだろうと思うのです。  そこで、じゃそのほかの方法は何かということになりますと、いまも御答弁ありましたが、定年制の延長、労働時間の短縮、あるいは雇用吸収考えられる分野への産業の誘導、あるいは個別的な対策をきちんとするということに大体分けられるだろうと思うのです。そこで、この中高年の問題についてお答えをいただきたいと思いますが、最近の失業が改善された中でも、五十五歳以上の中高年状況というのは依然として変わっていないわけです。世帯主の失業が多く、その求職の目的は生活のためというのが圧倒的に依然として多いわけですね。  そこで、これから定年制の移行の問題についてちょっとお尋ねをしますが、定年制五十五から六十へということで、いまいろいろ労働省もがんばっていただいているのですが、現実の実態、産業別の実態はどうなっているか。特に低いところはどこなのか、そこをひとつ労働省の方から明らかにしてください。     〔委員長退席、瓦委員長代理着席〕
  31. 関英夫

    ○関(英)政府委員 労働省の五十三年の調査でございますのでやや時点が古い面があるかもしれませんが、一般的に金融保険業のあたりが定年制が非常に低いという結果が一応出ております。
  32. 横路孝弘

    横路委員 いま五十五歳定年制がまだ四一%あるわけですね。しかも、その割合は大企業ほど多いということで、定年移行が非常におくれているのが金融保険業が多いということのようです。大蔵大臣に座ってもらっているのは実はそのためなんですが、もうちょっと議論してから大蔵大臣にもお答えいただきたいと思いますが、高齢者の雇用促進法に基づく法定雇用率六%というのがありますね。これの未達成企業、これも産業別に言ってどういうところが未達成が多いのか、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  33. 関英夫

    ○関(英)政府委員 五十四年六月一日現在の高齢者雇用率の調査結果でございますが、未達成企業が高い産業といたしましては金融保険、不動産業、それから卸、小売業のあたりが七割に近い非常に高い未達成企業があることになっておるわけです。
  34. 横路孝弘

    横路委員 それで労働省、この六十歳定年制へ向けてあなた方具体的にどういうことをやっているのですか。労使の話し合いに任せろということなんでしょうか。労働大臣、どうですか。
  35. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先ほど来お話しのように、六十年度に六十歳定年を一般化するという目標のためには労働省としては最重点の施策の一つとして取り組んできておるところでありますが、具体的には業種別の労使会議を開催をいたしまして、それぞれ業種によっていろんな事情もありますので、ぜひ六十歳定年に持っていくように思い切ったコンセンサスを得るように努力をしている。それから定年延長の奨励金制度を従来よりもさらに積極的に活用していく。高年齢者雇用率、いまお話がございましたけれども、これを達成をしていくように未達成の企業あるいは業界につきましては思い切った行政指導をしていく。さらに、高年齢者雇用開発協会に対する助成措置をいたしまして、いわゆる経営者に対して、事業主に対しましていろんな相談を進めていく、こういったことを従来よりもきめ細かくしかも積極的に進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第であります。
  36. 横路孝弘

    横路委員 皆さんの方でその指導を五十四年度は銀行に関して行ったんでしょう。五十五年度は電力関係でやりたいということですね。その銀行でやった結果はどうだったですか。
  37. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  銀行協会初め大きな銀行の人事労務担当の方々に集まっていただきまして、定年延長の阻害要因がどういうところにあるのか、労使間の話し合いがどういうふうに進んでいるのか、これからの取り組み、そういったものについてのお話し合いを進めて今後の努力をお願いしている状態でございます。
  38. 横路孝弘

    横路委員 去年までは企業だけ呼んでやっておったわけですね。五十五年度から労使を呼んで協議会つくってそこでやろうというわけでしょう。私はこれは労働省だけの問題ではなくて政府全体の問題だと思うのです。  そこで大蔵大臣、いまもお話がありましたように、定年制が五十五歳というところが、つまり六十歳移行がおくれておる関係がやはり金融保険関係が多いわけです。それから法律で決まっている六%ですね。この割合の未達成企業も金融関係、保険関係が多いのですね。いろいろ指導しておるけれども、なかなか実効は上がらない、こういう実態なわけです。  そこで、きのう週休二日制についてもやはり銀行が一つの大きなネックになっておるということが明らかになったわけなんですが、あなたの方で監督官庁として金融機関を、労働省とも協力しながらひとつ金融機関でも何とか定年制を六十歳に移行するように、また法定の雇用率も達成するようにいろいろ指導を強めていただきたいと思うのです。いろいろな事情はあるだろうと思うのですが、そういうことを言っておるとなかなか進まないわけで、政府全体として六十年までに達成するという目標を掲げておるわけですから、ひとつ大蔵大臣の見解を承りたいと思います。
  39. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昨日以来議論のあるところでございますが、銀行法改正の一環としての問題はさておきまして、まず一般論として御指摘のとおりでございます。したがって、基本的に言えば、銀行行政固有の問題というよりは、むしろ各産業を通じての労働行政の一環として考えるべき問題であるとは思うのでございますけれども、確かに他産業に比べてまさに銀行の定年制が著しく問題になっておるわけです。したがいまして、所管省である労働省の意見を承りながら、必要に応じてやはり銀行を監督するという立場から、できる範囲において適切な行政指導とでも申しましょうか、そういうことをしなければならないという気になっております。確かに銀行によりましては六十という方向を打ち出していただいたところもありますけれども、全般的にはいま御指摘のとおりでございますので、労働省の御意見を承りながら監督官庁としてそれなりの責めを果たしていかなければならぬというふうに考えております。
  40. 横路孝弘

    横路委員 そういうことで、大蔵大臣の方も御協力を願いたいと思います。大蔵大臣、結構です。もういいですよ。  それから通産大臣にお尋ねしますが、金融と同じように電気、ガス、これも定年制が、五十五歳が一番多いのが実は電力です。法定雇用率の未達成の割合も高いということなんで、通産大臣も大蔵省と同じように電力、特にいま値上げの申請などがかかっている時期でもございます。それに絡めろとは言いませんが、いずれにしても電力というのは独占企業です。地域独占。それから金融機関は金融機関としての社会的使命もあるということになれば、やはり率先してこういう点を行ってもらわなければならぬと思うのです。特に減量経営などということになりますと、一番先に矛盾するのは中高年問題なんです。しかし、社会的な要請でもあるし、今後の推移を考えれば、実は電力と五十五年度、労働省の方では話をすることになっているのですが、規模別の定年の年齢を見ますと、産業別で一番悪いのが電気、ガスの分野なんです。通産大臣についても同じようにひとつ御検討賜りたいと思うのですが、いかがでしょう。
  41. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 御指摘のように心して監督したいと思います。
  42. 横路孝弘

    横路委員 ここだけの言葉だけではなくて、ひとつやっていただきたいというふうに思います。  この法定雇用率の問題でちょっとお尋ねしたいのですが、未達成企業が六号を達成した場合どうなるかという問題なんです。企業の方に対して昨年の六月一日調査したときに、今後どの程度雇用するかということで七万人程度雇用するという計画書を出させたということのようなんですが、現時点で雇用率未達成の企業雇用率を達成すると仮定した場合に、直接の雇用増になるかどうかは別にして、試算した場合にどの程度の人間が高年齢者数として必要なのか、これはいかがでしょうか。
  43. 関英夫

    ○関(英)政府委員 五十三年度におきまして五百三十二社につきまして雇用率達成のための計画をおつくりいただいたということになっておりますが、その計画は一年計画ではございませんが、計画の始期の雇用率が一・四%、終期は六%という計画になっておりまして、この六%全部を達成したときの高齢者の純増の数は七万九千五百六十人ということになっております。
  44. 横路孝弘

    横路委員 それは計画を出したのは七万九千でしょう。そうじゃなくて、一つの仮定として、雇用率未達成の企業がいま時点で雇用率を達成するというように仮定した場合にどの程度の数になるかということなんです。これは皆さんの方で資料として予算委員会に出したものがありますから、これで見ると、二十九万五千人ということになっております。つまり、この法定雇用率六%ということの意味は、これからだんだん年齢がふえていくとおのずからそこで達成されるものが出てくるわけですね、定年が延長になったりなんかしますと。ところが、二十九万という大きな数字になるわけです。  そこで、いま現実に企業に出させたのは七万程度数字のようですが、これから高齢化が進んでいくということになりますと、達成状況を見ながらやはりこの六%を引き上げていくということが必要になってくると思うのです。おのずから市場構造が変わっていけば、定年制が延長されれば何にもしなくたって上がっていくわけですから。そうじゃなくて、その状況を見ながら将来的にはやはり達成率を引き上げていく、目標を引き上げるという措置がだんだん必要になってくると思うのですが、労働大臣、いかがでしょう。
  45. 藤波孝生

    藤波国務大臣 六%達成の動きを見ながら、さらにまた六十年へ六十歳定年の一般化を図っていくという努力ども進めながら、社会全体の動きを見ながらその数字については検討していきたい、こう考えております。
  46. 横路孝弘

    横路委員 ちょっと中高年で具体的な問題なんですが、中高年雇用開発給付金というのがございますね。いわゆる十万人雇用創出と言われておったものですが、この六月に切れるのですが、このいわば給付金の適用条件といいますか、指定の基準を見るとこういうことになっていますね。六カ月間の労働市場を見て完全失業率が平均が二%以上、有効求人倍率が〇・七以下ということになっておりますね。最近の状況を見るとその辺のところは大分改善されているわけです。ところが、対象になっている、つまりこの給付金制度の対象になっている年齢のところを見ると、失業率についても有効求人倍率についてもきわめて悪いわけです。  そうしますと、全体の平均でもってこの給付金を実際に実施するかどうかというように考えると、先行きを見ますとこれはだめになってしまうわけですね。しかし、現実に対象となるところは改善されていないで悪い状況だということになりますと、指定の基準そのものをやはり改めて、十万人雇用創出というのはなかなか効果を発揮しているようでございますし、五十五年度予算でも組まれているようですから、これはひとつ検討されて、指定基準が緩和されて全体がよくなったからといって中高年のところは変わってないわけですから、変わってないのに、全体がよくなったからといって中高年のところを切られるということになりますと制度の趣旨にも矛盾をしてくるので、その指定基準を改善してもらいたいということと、もう一つは、この期間を延長する、いまの四十五歳と五十五歳ですか、中年、高年と分けて一年と一年半でしたかな、ということになっていますね。それをそれぞれ六カ月程度延長してもらいたいというのが労働四団体の大変強い要求なんですが、ここのところをどうお考えですか。
  47. 藤波孝生

    藤波国務大臣 先生指摘のように非常に雇用失業情勢が厳しい時期に緊急特例の措置として期間を定めて措置するということで今日まで来ておるわけでありますが、六月七日で日が切れるということになっております。基準の問題も含めまして中央職業安定審議会の御意見を踏まえて従来も措置してきておるところでございますけれども、いま御指摘をいただきましたことを踏まえまして、さらに中央職業安定審議会の意見を聞いて考えていくようにいたしたい、このようにいま時点では考えておるところでございます。
  48. 横路孝弘

    横路委員 定年制の延長の問題なんですが、七カ年計画の中では立法化措置を含めて審議会で検討しようということになっていますね。これはいま実際に立法化措置を含めて審議会の中で検討はされておるわけですか。
  49. 藤波孝生

    藤波国務大臣 立法化の問題も含めて審議会で御検討をいただいております。
  50. 横路孝弘

    横路委員 次は週休二日制ですが、これはきょうは大体問題が解決しましたので……。公務員の方は法制化するということであります。  時間短縮という観点からもう一つちょっとお尋ねしたいのですが、労働基準法の四十条、これはいわゆる特例措置が認められているわけです。いろいろ議論がございましたが、長い間の慣行だというようなこともあって今日まで来たわけですが、時間短縮という全体の流れの中で、たとえば卸、小売だとか旅館だとか医療だとか販売の関係だとか、いろいろ特例措置が認められているわけですね。私は、この労働時間の特例措置を廃止すべき時期に来ているのではないかというように考えるのですが、労働大臣、この問題、いかがでしょうか。
  51. 藤波孝生

    藤波国務大臣 労働基準法上労働時間は一日八時間を原則といたしておりますけれども、公衆の利便、業種の特殊性などから一部の業種につきましてはその特例が認められて今日に至っておるところでございます。その後もいろいろな指定されております業界の業態などにつきましても鋭意調査を進めてきておるところでございますけれども、今日この時点に立ちまして労働時間短縮という基本原則、行政の強い指導を進めてまいりますためには、基本的にはこの特例をもう認めないという方向で、やはりある時期に結論を出さなければならぬのではないかという、むしろそういった前向きの方向でいま検討しておる最中でございます。
  52. 横路孝弘

    横路委員 実態は大分時間短縮の方向にこれらの分野でも行っているところもかなりあると思うのです。だからその素地はあると思うのですね。やはり二、三抵抗してくる業界もあるかもしれませんが、ひとつそういうことで決断をして進めていただきたいというように思います。  時間がございませんので先に進めて、第三次産業のことでちょっとお尋ねをしたいのですが、将来の雇用は第三次産業だ、こう一般的に言われるわけですが、第三次産業の中身をいろいろ検討してみますと、実はなかなか問題がたくさんあるということがわかるわけです。新経済社会七カ年計画雇用対策基本計画も、大体大きく分けると知識集約的な組み立て加工産業、二次産業ではそこの部分、あとは三次産業、三次産業分野では対事業所サービスやあるいは余暇関連サービスなどのサービスですね、それから社会福祉、医療保健、文化教養などのいわゆる公的あるいは社会的なサービスの分野というようなことに大体言われておるのじゃないかと思うのです。  ただ、国際比較をしてみますと、これは経済企画庁の一昨年の経済白書ですか、就業構造の国際比較をしてみると、運輸、通信、倉庫あるいは金融保険、不動産などの対事業所サービスは大体ヨーロッパ並み、それから卸、小売などになりますとヨーロッパをはるかに上回る。おくれているのは対地域、対社会、個人サービスという分野が先進国の中では大変ウエートが低いですね。そうすると、第三次産業雇用吸収力があるといっても、その中身はやはりかなり限られてくるのじゃありませんか。どうですか、労働大臣。
  53. 藤波孝生

    藤波国務大臣 今後きめ細かくどのようにむしろ産業の転換が進められていくのか、しかも先生指摘のように第三次産業の中でもさらにそれぞれの分野でどのように変わっていくのか、まだつかみ切れないところがございますけれども、しかしそういった中で非常に期待をいたしておりますのは、やはり婦人労働に対応するような仕事であるとか、あるいは従来よりも高齢者向きの仕事がその中で出てくるのではないかというようなことにむしろ期待をつないで、そしてきめの細かい新しい方向への対応を進めていくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  54. 横路孝弘

    横路委員 ところが必ずしもそれがそうでもないのですね。  通産省にちょっとお尋ねしますが、第三次産業の中でも伸びが認められるのはやはりサービス業だと思うのですね。しかも、そのサービス業の中でも家計消費の支出を主とする民間消費部門と教育だとか医療、公務などの公共部門の消費拡大が大体前提になるのではないかというのがあなたの方の五十三年の産構審の長期ビジョンの中の分析になっていますね。大体こういうことでよろしいでしょうか。
  55. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私も大体そう心得ておりますが、局長から補足させていただきます。
  56. 宮本四郎

    宮本(四)政府委員 大臣から申し上げたとおりでございますが、私どもといたしましては、御指摘の第三次産業の中で将来伸びていくものといたしまして、三つぐらいの分野があろうかと思います。第一のグループは、企業活動の外部化ということでございまして、いままで企業が内部で持つておりましたたとえば計算センター、これが出ていく、あるいはエンジニアリング部門が独立して外へ出ていくとか、こういった部門が将来出ていくだろう。それから第二のグループは余暇関連でございますが、これはいろいろポピュラーなものがございますから省略いたします。第三のグループといたしまして、教育、文化、保健、医療、福祉、こういった関係でございまして、五十四年度の経済白書にも書いてございますように、財貨の増分が医療、保健、交通、通信その他もろもろの外部的なサービスにふえていくということでございますので、こういった分野での増加を期待したいと考えております。
  57. 横路孝弘

    横路委員 実はそこにいろいろな問題が発生してくるわけですね。アメリカと比較してみますと、第三次産業日本との就業で目立つのは何かということで、昨年のこの経済白書の分析によると高学歴層、女子の割合、この二つが比較的少ないということですね。アメリカと日本とを比べてアメリカが比較的相対的に多いものは何かというと、医療とか保健とか学校教育とかいうような文化的公共的サービス、それから非物財企業関連サービス、いまもお話しのあったような部分ですね。こういうことになりますと、これはかなり高度の教育を要する、つまり専門職になるわけですね。そうすると、必ずしもそこに、これから発生してくる中高年層、つまり二次産業から出てくる、あるいは産業構造の変換に伴って失職して出てくる人間が吸収されるということにこれはならないと思うのですね。違いますか、労働大臣。
  58. 藤波孝生

    藤波国務大臣 分野によってやはりとらえ方はいろいろだろうと思いますけれども、そういった中でもやはり長い間の経験を生かした高齢者の労働力を活用するといった面もまた出てくるのではないかということにむしろ期待をつないでいるわけでございます。
  59. 横路孝弘

    横路委員 皆さんの方でもやっていると思うのですが、第三次産業の就業構造で伸び率の大きな業種の中で高年齢層の比率の比較的高いものは何かというと、現在のところ不動産業だとか建物サービス業というようなところ、大体その程度ですね。ついでに伸び率の大きな業種の中で女子の比率が比較的高いなというのは娯楽関係、それから社会保険、社会福祉の関係というようなところです。そうしますと、大体いまの私の分析でいいのかどうか。第三次産業の中で中高年齢層の比較的高い部分というのはどの部分で、そこにどの程度期待できるのか。私は、このアメリカなんかとの比較から言って、第三次産業就業者としてまだ日本で低い部分というのは、これはむしろ新しい労働力がどんどん吸収されていく分野であって、中高年から転職していく分野というのはそんなに多くないような気がするのですね。したがって、私が言いたいのは、第三次産業雇用が吸収されるよと言うだけではだめで、中身の分析をきちっとされて、どの部分中高年層や一しかも中高年齢層がいい部分、いままで比較的多い部分というのは、実は女子が多い部分でもあるのです。そうすると、中高年層のそういう転職部分は女子労働と競合するという関係になります。そうすると、むしろ安い女子の方を採用するということになって、そこからもやはり中高年層が余されるということになるわけですね。だから、もうちょっときめ細かい分析を将来にわたって行って、そして職業訓練なりあるいはその職場の中における教育というものを変えていくという見通しを立てた対策というものが必要になってくるのじゃないだろうか。三次産業、三次産業と一般論だけではどうも一これは求人率の高いところは高くなるけれども、そうでないところは競争が激しくなって、失業というのは中高年齢層解決されないで労働市場に滞留するということになるんじゃないでしょうか。
  60. 藤波孝生

    藤波国務大臣 御指摘のようなことを踏まえて、よく対策を講じてまいりたいと思います。
  61. 横路孝弘

    横路委員 だから、たとえば職業訓練の体制をそういう方向へ変えていくとか、あるいは職業情報ーー何かガイドブックを今度来年度予算でつくるのですか。これはことしじゅうにできますか。そういう情報をきちっと提供していくとかというきめの細かさというのは一方で必要になってくるわけです。いかがですか。局長でも結構です。
  62. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおりでありまして、現在中央で中央雇用開発委員会というものを設けまして、第三次産業で今後どんな業種あるいは職業というものが発展が見込まれるか、そういうものの推計をやり、かつその職業につくために必要な技能、資格はどんなものか、それはどういうところでその資格を得ることができるか。そしてその資格を得た場合の労働条件、賃金等はどんなものかといったような内容を盛ったガイドブックを作成していこうということで現在研究調査を進めております。(横路委員「いつごろできます」と呼ぶ)そしてその中間的な報告が近々得られると思いますので、中間報告に即して今後私ども来年度に入りまして具体的な作成作業に入っていきたい、こういうふうに考えております。
  63. 横路孝弘

    横路委員 あと三次産業のこれから伸び分野というのは、先ほど通産省の方のお答えもございましたが、市場の原理で提供されるものばかりではないわけですね。むしろ社会サービスの分野での就業、たとえば医療とか教育、児童、老人ヘルパーなど、こうずっと見てみますと、公的部門が果たさなければならない役割りというのも結構大きいわけですね。これはちょっと、いままで社会サービス分野での就業者の数が民間部門と公的部門でどうなっているか、ひとつこれを簡潔にお答えいただきたいと思うのです。——わからぬですか。社会サービス分野、このサービス全体のうち四百万くらい、うち民間が二百万ぐらいということですね。そうしますと、との社会サービス分野で公的部門が果たさなければならない役割りというのはいままでも大変大きかったわけです。伸び率は最近民間部門がかなり高くなってきていますけれどもね。  そこで、これは労働省、つまりいま行財政改革で安上がり政府と、こう言っているわけですね。しかし安上がり政府といっても、一律何%というのは大変国民のニーズというものを見ない議論だと思うのです。やはり公的負担をしなければならない部門というのもこれからふえていくわけです。これは財政の問題に必ずぶつかってくるわけですね。民間だけでやるなんという路線で走られたのでは、これはこれから一番雇用増加が見込まれる部分で吸収できないということになるわけです。ひとつそこのところを労働大臣、どうお考えになっておりますか。これは今後一番大きな問題だと思いますよ。
  64. 藤波孝生

    藤波国務大臣 公的部門での労働のあり方につきましては、この予算委員会でもいろんな議論が進められておるところでございますが、たとえば定年制の問題をどうするかとか、あるいは定年になった後どのようにして持っている労働力を活用していくかとか、従来の年金の支給年齢の問題等も含めていろいろな職業生涯の問題がこの予算委員会で浮かび上がったというふうに考えておるわけでございます。安い政府をつくってまいりますためには、本質的に行財政を改革して質の高い行政、より行き届いた行政に持っていくという中身の問題と、ただ形だけ何割減というようなことでいけば行政改革がそれで済んだと思うようなやり方といろいろとある。その点についてもいろいろな御議論をちょうだいしておるところでございます。従来もコンピューター化などをしてずいぶん職場の合理化も進んできておりまして、いま抱えております公務員の活動、公的部門で働いておられる方々の活動というのはずいぶん質的にも高いもので、研修も進められてきているというふうにも私どもとしては理解をしておるわけでございまして、そういう意味では行財政改革のあり方につきまして今後とも労働省としての考え方を行管庁あるいは大蔵省等にも申し上げまして、いろいろな意味で公的部門での雇用も確保されつつ、しかも国民に対して質の高い行政を進めていくことができるような構えをつくってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  65. 横路孝弘

    横路委員 いや、私が聞いているのはそういうことじゃなくて、国民のニーズが変わってきている、そして第三次産業の中でそういういわば文化的公共サービスあるいは社会分野のサービスがふえていくだろう、アメリカ、ヨーロッパと比べた場合にそこの就業者の数が圧倒的に少ないというわけです。そうすると、それをどういうぐあいに負担していくか。民間の市場だけで提供されるのかというと、提供されない部分もあるじゃないか。そうすると、公的な部門と民間部門とどういうぐあいに機能分担して負担していくのかということが大きな問題になりますよ。それを単なる行財政の一律何%ということじゃなくて、いずれにしてもこれは財政負担の問題がすぐ出てくるわけですから、そこのところの機能分担をしっかり見ていかなければいけないだろう。つまり、労働省としてはそういう議論をするときに雇用という観点も、これからの財政再建なり何なりいろいろな議論が出てくる中で考えていただきたいということを私言っているわけで、一般的な行政改革のことを言っているわけじゃないわけです。つまり、公的部門と民間部門の機能負担をどうするかということですね。これについては何かいろいろ御検討されているのですか、これからの課題ですか。
  66. 藤波孝生

    藤波国務大臣 いままでも取り組んできてないわけではありませんけれども、今後、一方で行財政改革が進められていく、そしていま先生指摘のように、第三次産業の中で御指摘のような部門の重要性というのは非常にふえてくる、その機能をどのように担当し合っていくのかということにつきましてはさらに十分検討を進めていきたい、このように考えておるところでございます。
  67. 横路孝弘

    横路委員 これからも、こういう時代ですから、産業構造の変化、つまり国際的な経済の分業ということを考えた場合に、日本としてはやはり南の国に譲っていかなければいけない産業分野というのは出てくるわけですし、エネルギーが高くなればエネルギー多消費産業の中にもあるいはそういう部分も出てくるかもしれません。そういうことに関連した転職者あるいは失業という問題が今後とも出てくるわけですね。しかも、中高年齢層が多い、その失業の期間が長くなる、世帯主が多いというのが大体いままでの数字の傾向です。一方で第三次産業雇用吸収力があるといっても、その中ではいわゆる女子の職場進出ということになりますと、中高年層と競合する分野が出てくる。新しい分野はわりと専門的な高度な技術を要する部分が必要だ。そこには出てくる失業者が必ずしも吸収されることにはならないだろうというのがこれからのいろいろな問題だろうと思うのです。  マクロに経済成長をどうしていくかという問題も一つございますが、やはりきめの細かい対策というのがこれから望まれていくわけでございまして、ひとつ労働大臣には、そんな意味でもうちょっと細かい第三次産業の内容分析をして将来的展望も考えて、ひとつ対策を今後とも考えていっていただきたいというように思います。  労働大臣、結構です。  それでは、ちょっと省エネルギーのことについて通産省……。  その前に、企画庁の長官、今度の成長を四・八ということですが、省エネルギー七%というのがありますね。省エネルギー五%プラス二%としましたね。実は石油の輸入の方は五百四十万バレルで抑えられているわけです。そうしますと、どっかでやはり省エネルギーを行って、その部分で成長を図らなければならないということだろうと思います。したがって、この七%の省エネというのは単に節約をするというのじゃなくて、実は五十五年度予算の成長を達成するためにきわめて重要な要素になっているのじゃありませんか。
  68. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 まさにそのとおりでございます。いままで五%、千五百万キロリッターの節約を目標というか、必要に迫られてやっておるわけでございますが、これをさらに、成長を維持していくためには七%、二千百万、それを二千万キロリットル、こう抑えたわけでございます。そのときの弾性値〇・四、このぐらいに高めていこうというわけで、成長を維持し、雇用を安定させ、しかも一方においてエネルギーの制約を克服するためにやる、こういうことでございます。
  69. 横路孝弘

    横路委員 弾性値が五十一年度が一・一で、五十二、五十三が〇・三ですね。平均どの辺でとるかによって弾性値の見方は変わってくるわけですが、ただこれから、いままでやってきた形の省エネルギー、といってもいろいろありますね。節約をしようとか、エネルギーの使用合理化あるいは効率化していこうだとか、消費そのものを減らしてしまおうとか、あるいはもうちょっと長期的に産業構造を転換したり、経済、社会のシステムを変えていこうというような問題があるだろうと思うのです。いままでやってきたのは節約ということ、温度をどうするかとか、車をどうするか、ネオンをどうするかというようなこと、あるいはエネルギー使用の合理化、効率化、これは産業分野中心に行われてきただろうと思うのですが、その程度のものはかなりいままでやられてきた。これからだんだんそこのところに焦点を当てたのでは先行き大分むずかしくなるということになるのじゃないでしょうか。これは通産省がいいのかな。
  70. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 横路先生指摘のとおりでございまして、現在私どもが展開いたしておりますいわゆる省エネルギー運動、これだけでは当然にエネルギーの弾性値の低下あるいは消費節約というものが期待できないということでございまして、そのほかの方法でいろいろな対策を講じていかなくてはならぬということでございますが、各種の法律の整備その他からいきますと、とりあえず私どもは現在展開いたしておりますいわゆる省エネルギー運動を推し進めていこう。それにプラスいたしまして、先ほど先生指摘になりました法制的な裏づけ等の措置を講じていきたい、こういう構えになっておるわけでございます。
  71. 横路孝弘

    横路委員 五%をどの程度達成できますか。
  72. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 五%の達成の状況につきましては幾つかの見方があるかと思いますが、まず、先ほど申し上げましたいわゆる省エネルギー運動の効果から申し上げますと、アンケート調査の結果、大体八四%程度の達成率ではないか、こういう感じがいたします。  それから、マクロ的なアプローチで五%の節約はどうなっているかというつかまえ方をいたしてみますと、たとえば石油供給計画で燃料油を五%節約した場合の計画値が、上期が一〇二・三%でございますが、実績は一〇一・七%でございますので、この分では五%節約は達成されておるのではないかということでございます。それから、下期に入りまして十月−十二月の実績が九八・一%、これは対前年比でございますけれども、これは計画が一〇一・八%でございますので、マクロ的に申し上げますと、燃料油合計では五%の節約はほぼ達成できておる。ただ、先ほど申し上げましたように、いわゆる運動の成果といたしましては八四%程度というのが現状でございます。
  73. 横路孝弘

    横路委員 この間の省エネルギーといいますか、産業部門でかなり進んでいる、民生、輸送部門はなかなか進んでいないという現状だろうと思うのです。ただ、企業の方の対応も、いままではやはり費用をかけずに効果を上げることができる管理強化だとか操業改善、運転の合理化といったようなものにやはり重点があったのじゃないかと思います。それから、あるいは既存の設備やプロセスの一部を改良したりするような新たな設備更新であっても、わりと短期的なものに重点があったんじゃないか。これからは、ある意味で言うと、設備のスクラップ・アンド・ビルドや能力拡大を伴う際にエネルギーの消費効率をどうやって高めていくかというような点が今後の課題としてあるのではないかというように思うのです。  そこで、皆さんの長期エネルギー需給の暫定見通しで、昭和六十年度の目標が一二・一%に省エネルギー率がなっていますね。これを皆さんの方では一体どのように、たとえば生産部門と民生部門、輸送部門というように分けて、どの程度のものを配分しながら考えておられるのか、そこはいかがですか。
  74. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 御指摘のとおり、私どもの長期需給暫定見通しにつきまして、六十年度に一二・一%の節約の目標を掲げておるわけでございますが、それをブレークダウンいたしますと、生産部門におきまして約四千二百四十万キロリッター、これは比率にいたしまして一一%の比率でございます。それから、家庭・業務部門におきまして千六百二十万キロ、これは一一%でございます。それから、輸送部門におきまして千二十万キロリッター、これが一〇・八%でございます。それから、先ほど来お答え申し上げましたいわゆる省エネルギー運動、こういうことによります効果を千百三十万キロということでございまして、合計いたしまして八千万キロリッター、比率にいたしまして一二・一%の節約、こういう計画を現在もくろんでおるわけでございます。  それから、生産部門、家庭・業務部門、輸送部門をいかにして達成するかという問題でございますが、これは先ほど先生の御指摘になりましたエネルギー使用の合理化に関する法律、この法律を前提にいたしましてこの措置を講じてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  75. 横路孝弘

    横路委員 やはり量から言うと、生産部門で相当大きなものを考えていかなければいけないわけです。  そこで、生産部門におけるエネルギー多消費産業の方もそれぞれいろいろとやっておるようですが、たとえば一番多いのは鉄鋼ですけれども鉄鋼だとか化学だとか非鉄金属など、産業別に目標はずっと出しておられますか。その一二・一の中身ですね。皆さんの方で当然出して——一二・一じゃなくて一一・〇ですか、生産部門は。その中身としてエネルギー、特に多消費型の業種の産業別の目標をちょっと明らかにしてもらいたいと思うのです。
  76. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 生産部門四千二百四十万キロリッター、一一%の内訳でございますけれども鉄鋼が一二・五%、化学が一一・二%、窯業土石が一二・三%、紙パルプ業が一〇・四%、非鉄金属が八・九%、こういう状況でございます。
  77. 横路孝弘

    横路委員 かなり進んでいるところとまだまだその余地があるものと、省エネ設備の普及状況を見ると分かれているわけですが、いまの目標、これは一応皆さんの方の省エネルギーというものは別に強制力がないわけですから、行政的に、各産業ごとにいまお話があったのを目標として今後指導していく、こういう数字なわけですね。
  78. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 私どもの省エネルギー推進の根幹は、いま御指摘のとおり指導助言ということでございまして、その前提といたしまして指針的なものを考えておるわけでございます。その一環といたしまして、先ほど申し上げましたような各業種につきましての節約目標というのを掲げてあるわけでございますが、一つ考えられますことは、法律的な裏づけでこういう政策を推進していくと同時に、やはり企業におきますところの原単位の問題あるいは採算性の問題ということからのアプローチということも側面的な期待として私どもとしては考えておるわけでございまして、そういうことを総合いたしまして、先ほど申し上げましたような数字が達成されることを強く期待しているというのが実情でございます。
  79. 横路孝弘

    横路委員 それはもう産業界の方に示されて、大体業界の方もそういう方向でいこう、協力しよう、こういう体制になっておりますか。
  80. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 エネルギー使用の合理化に関する法律は昨年国会で通していただきまして、昨年の十月一日に施行されたわけでございます。そこで、各生産部門の方々あるいは輸送部門の方方、家庭・業務部門のハードウエアをおつくりになる方々、こういう方々に対しまして私ども考え方をお示しいたしましたし、それから特に生産部門におきましてはエネルギー管理指定工場という制度をとっておるわけでございまして、大体製造業の八割をカバーしたいというふうに考えておりますが、実数にいたしまして四千五百工場ぐらい指定をしたいということでございます。現在四千二百工場ぐらいまで指定を終わっておりますので、もう少したちますと目標の四千五百は達成できるんではないか、こういうふうに考えております。
  81. 横路孝弘

    横路委員 最後に、このエネルギー使用の合理化に関する法律の中で家庭の関係ですね、ここに機械器具の指定があると思うのです。いろいろお話を聞いてみますと、電気冷蔵庫とかエアコンディションというのがやっぱり電力を食うようですね。それについては指定があるようですが、ほかの家庭電気製品というようなものについてはこれからやはり順次指定をしていくおつもりなんですか。
  82. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 とりあえず幾つかの業種を指定したわけでございますけれども、逐次追加をしてまいりたいと思っております。  それから、別途の考え方といたしまして、いわゆるムーンライト計画というのがございまして、先生承知だと思いますが、通産省の工業技術院が中心になりましていわゆる省エネルギー化ということをやっておりますので、それとのタイアップということも考えてみたい、こういうふうに考えております。
  83. 横路孝弘

    横路委員 省エネルギーというのは、そんな意味でこれは経済成長を達成するために大変大きな要素になってきているわけです。しかも、石油の輸入の方が下方修正されるという、六十年の六百三十万バレルにしてもそういう危険性がないわけではないわけでして、そういう意味でこの省エネルギーの持っている意味というのはこれから大変大きなものになってくるんじゃないかというように思います。ひとつ通産省の方としても、この法律できたばかりでございますが、努力をされることを期待をしたいというふうに思います。  時間がございませんので、これで通産大臣、それから企画庁長官も結構でございます。  最後に、ちょっと国家公安委員長に、最近の右翼団体の動向についてお答えをいただきたいと思います。
  84. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  右翼勢力といいますか、現在警察として、一応六百五十団体、約十二万人と、こう見ておるわけでございますが、最近の右翼の動向としましては、たとえば北方領土問題、国防問題あるいはソ連のアフガン侵入問題、こういった国内外の情勢に敏感に反応いたしまして、そのときどきにこれらの問題をとらえまして活発な街頭宣伝活動を行っておるというふうな実情でございます。特に最近の特徴的な傾向としましては、政府批判を強めるというふうな反体制的な動きも活発化しておるような状況でございまして、そういう面で警察としても十分警戒をしておるということでございます。
  85. 横路孝弘

    横路委員 その右翼団体の中で興国社という政治結社と新日本行動社という団体があると思うのですが、この団体の概要について、簡単で結構でございますからお答えいただきたいと思います。
  86. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 いま御質疑の興国社、新日本行動社でございますか、この団体の性格でございますが、一応当方といたしましては右翼団体と見ております。その運動目標等は、自主的な防衛体制の確立であるとかあるいは北方領土返還の問題であるとか、こういうことを掲げておりまして、日常活発に街頭宣伝を行っておる、こういう団体でございます。
  87. 横路孝弘

    横路委員 この二つの団体ですが、昨年の東京都知事選挙のときの最終日に新宿でいろいろな事件がございましたが、あの事件に関連してこの二つの団体から逮捕者そのほか出しておりますか。私たちの調査しているところでは、あの太田候補に対する投石など含めて、あのときの混乱にこの二つの団体も参加しているようでございますが、いかがでしょうか。
  88. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 昨年四月の都知事選に絡みまして御質疑の新宿駅前でのトラブルがあったわけでございますが、この際、警察としまして五十五名逮捕いたしております。その五十五名の中に興国社の構成員が五名、それから新日本行動社の構成員が二名含まれております。それぞれ公務執行妨害罪容疑ということでございます。
  89. 横路孝弘

    横路委員 話ちょっと変わりますが、テレビ朝日がモスクワのオリンピックの中継を独占するということで、これに抗議をしてやはり右翼団体が押しかけているのですが、その押しかけた団体の中にこの興国社やあるいは新日本行動社というものがあったように私たちは聞いているのですが、それは御存じでしょうか。
  90. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 いま御質疑の点につきまして私の方で聞いております段階でお答えできることは、五十三年の一月段階のようでございますが、モスクワ・オリンピックにつきましてテレビ朝日が放映独占をしたというふうなテーマをとらえまして、興国社、新日本行動社、この二団体が一月、二月段階に街宣車等を含めましてテレビ朝日に抗議というふうなかっこうで参ったのをはしりといたしまして、五十三年中に、この二団体が主であるようでございますが、延べ百五十八人、二十七回にわたりまして抗議街宣というふうな行動をしたというふうな報告に接しております。
  91. 横路孝弘

    横路委員 そこで、私問題だと思うのは、この二つの団体があちこちにこんなはがきを出しているのです。どういうはがきかといいますと「テレビ映画企画 放映御案内」と称して「来る、昭和55年2月23日(土曜日)午後9時〜11時迄、当団体企画による」、当団体企画ですね。当団体というのは、いまお話をいたしました興国社と新日本行動社です。それが入りました大日本国民協議会というところなんですが、「当団体企画によるテレビ映画が、テレビ朝日の御好意により左記の通り放映致す事と相成りました。我々の運動目標であり“マスコミの正常化”運動の結果として」ぜひごらんいただきますよう御案内申し上げますということですね。つまり、右翼団体が企画して持ち込んだのをテレビ朝日が放映することになったから皆さん見てください、こういうわけです。  その中身は何かというと、ここにシナリオがあるのですが、題名は「東京クーデター」という中身でクーデター番組なんです。総理大臣のSPがクーデター側の人間でありまして、総理大臣を拉致するというところから始まってこのクーデターが進行するわけですが、この内容については、それはいろんな意見があるだろうと私は思いますのでとやかく言いません。しかし、いま経過で明らかなように、この騒いだ右翼団体がテレビ朝日に押しかける、そして、私はこれは基本的にはテレビ朝日がだらしないと思うのであります。つまり、表現の自由を守るという観点から言うと、そこでどうも抵抗できなくて、二十数回押しかけたわけでしょう。どうも押しかけてその圧力に屈した形でこのいわば企画というのを持ち込まれて承諾を与えて放送することになったんじゃないかということがうかがえるわけですね。テレビ朝日が自主的にこういう番組やったということになれば、内容についてはそれはテレビ会社のいわば自主的な権限の範囲内ですから問題ないだろうと私は思うのですが、右翼団体が騒いで押しかけて、そして自分の企画を持ち込んでそのことと引きかえにこういうものを放送させたということになりますと、今度は中身と関連してきてちょっとこれはいかがなものだろうかというように思うのですが、ひとつ郵政大臣、その辺のところをどういうぐあいにあなたお考えになるかということと、その押しかけた結果としてこういうものの放送になったのかどうか、それは何かもし警察で情報としてとっておられればお話しをいただきたいというように思うのです。     〔瓦委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  先生承知のように、放送法には番組編成権の自由があるわけでございます。したがいまして、番組をどうするかということはその放送事業体がみずからの責任において判断すべき事項になっておるわけでございます。でございますから、郵政大臣といたしましては、個々具体の事例について意見を申し上げることは放送法のたてまえ上適当でない、このように考えております。
  93. 横路孝弘

    横路委員 そのことは私も十分承知をしている。ただしかし、表現の自由がもし力で押し切られたということになれば、これはやはり問題がそこに生じてくるんじゃないだろうか。どうもその経過を見ておって、テレビ朝日の方の特にこれは実際に制作した方の対応で、そちらの方の話を聞いてみますと、われわれの聞いているところではその抗議と引きかえにこの企画を受け入れたという疑いが非常に強くあるわけです。これは警察は何かそんなようなことをお話聞いていますか。
  94. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 数日前のあるマスコミでそういう記事があったのを私自身も見まして初めて承知したわけでございますが、その内容あるいはシナリオの内容がどうであるか、そういう経緯については一切当方としては知りません。
  95. 横路孝弘

    横路委員 またそこを警察に調べろとも私は言いたくないのですが、ただしかし、こういう右翼が力でもってやったとすれば大きな問題があるんじゃないかというように思うのです。  そこで、ひとつ公安委員長にも今後とも右翼の取り締まりというものを厳重にやっていただきたいというように思うのですが、いかがですか。
  96. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先ほど警備局長から申し上げましたように、警察はやはりイデオロギーなんかにとらわれておるわけじゃなくて、あくまでも不偏不党の立場で厳正な取り締まりを従来からやっておりますし、将来ともやってまいるつもりでございます。  御質問の両者の話し合いが仮に強談威迫あるいは脅迫というような刑事法令違反の事実があれば、これは当然取り締まりの対象になりますけれども、事柄自身はそこまでいっておるのかどうか私ども承知しておりませんし、また、さようなことがあったとも聞いておりません。事柄は表現自由の問題とも絡んでおりまするので、警察としてはあくまでも慎重に考えてまいりたい、かように思います。
  97. 横路孝弘

    横路委員 私もいますぐ警察が呼んで話を聞けとかなんとかいうことを言うつもりはないのです。そういうことで、国会の周りで大分騒がしく連日動き回っておりますが、違法行為についてはひとつ厳重に取り締まっていただきたいというように思います。  最後に一言郵政大臣に、一月の九日の日に山口放送テレビで自民党の党員募集のお知らせというスポットが流されたのですね。金を出して、これは選挙のときには各党それぞれ何といいますか、宣伝やりますが、これは選挙の特例ということなんで、郵政大臣、これはどうですか、マスコミの自主規制にも、自民党が金を出して党員募集をテレビを通してやるというのはこれはやはりちょっといかがなものだろうか。このマスコミの民間放送連盟放送基準というものにもちょっと触れるのではないかというように思いますが、いかがですか。
  98. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  先ほどのお尋ねにお答えいたしましたように、番組編成権の自由は広告も含んでおるわけでございますので、そういう意味におきまして、山口放送がやった事実の内容については私存じませんけれども、やはりその放送主体の自主的な判断に従ってやるべき問題でございまして、私の方からとやかく申し上げる筋合いのものではないと思っております。
  99. 横路孝弘

    横路委員 ただこの放送基準から言うと、特にこの政治に関するところとやはり問題が出てきますね。これは自主的な民間放送の問題にしても、やはりある意味で言うと常識の問題でもありますが、ひとつこんなことがこれからどんどん起きるなんていうことのないようにしていっていただきたいと思います。  時間が参りましたので終わります。(拍手)
  100. 田村元

    田村委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。  次に、武田一夫君。
  101. 武田一夫

    武田委員 私は、農業問題を中心にいたしまして、関係閣僚並びに当局に若干の質問をしたいと思います。  まず、この八〇年代の農政を展望いたしますときに、私は非常に内外とも厳しい環境に置かれているというように思うわけでありますが、振り返ってわが国の農業というものをつぶさにながめますと、昭和三十年以降の高度経済政策によって、いわゆる農村の基盤というのが大きく破壊されたということも事実でありまして、食糧自給率がそれ以来低下の一方である、こういうことは皆さん方も認識はひとしくしていると思います。また石油ショック第一次、二次、こういういろいろな大変な状況のもとに、農産物の価格抑制もありましたし、あるいは輸入外圧等もございましたし、さらに物価の高騰によりまして資材の供給不足、価格の高騰、あらゆる面で大変な中に生産調整が五十三年に行われましたけれども、これもまた見通しが狂ってしまい、多くの負担を、いまや五十五年度という第二期目の生産調整、農民は大変なる苦労の中でスタートしなければならぬ。言うなれば、私は嵐の中に羅針盤を失った小舟が投げ出されたような感じがしてしようがないわけであります。  そのときに当たりまして、私は、やはり農業の健全な発展というものが、私たち日本の国の経済はもちろん、社会の健全なる発展維持のために欠かせない要素であるという認識に立っておりますので、そういう観点から二、三の質問をしたいと思うわけであります。  まず最初に、政府としましては、今後の食糧事情、特に食糧の安全保障というものに対する考え方、見通しをどのようにお考えであるか、まずこの点を農林大臣にお尋ねしたいと思います。
  102. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 現在の農業の現況に対しては、私ども先生おっしゃるように厳しい見方をいたしております。ただ、最近のアメリカの対ソ穀物輸出の停止というような形で、食糧というものが外交手段に使われるようになってまいりましたということも、やはり一つの大きなファクターとして考えていかなければならないと私は思っております。また、いま御指摘のように、農業の健全な発展があって初めてその地域社会の発展もあるわけでございまして、そういう点において、今後の食糧需給というものをどう考えていくのか、それを私は農業の発展の一環としてやはりとらえていくべきではなかろうかと思っております。  御承知のとおり、八〇年代の農政のビジョンづくりということで、いま農政審議会に御議論をいただいておるわけでございます。昨年の十一月に、今後の日本の食糧の形は大体どの程度の生産がいいのか、自給率はどうなのか、こういう形で農林省として一つの試案を出したわけでございます。これは先生承知のとおりでございます。ただ、私は、その試案を出しました後にあのようなアメリカの措置が出てきたわけでございますし、また正直、あの試案はいままでの統計数字を基礎にして、それからある程度の、上回るものは上回るものという考え方で試算をいたしております。私は、それに加えてやはり政策をこれから私どもやっていこうとするのでございますから、その政策をやっていく場合にはどうなるのか、政策がうまくいった場合にはどうなるのかというようなものもやはり考えていくべきではなかろうか。単なる従来の一つの統計数字に基づいた試算だけではなくて、一つの政策目標的なものも考えるべきではないか。いわんや将来、たとえばこの間FAOが、これは非公式の報道でございますけれども、二〇〇〇年には大体いまよりも五〇%食糧の供給を増加しなければいけないということまで言われておるわけでございまして、そういう観点からも、私は、この間のああいう試算とともに、もう一つやはり政策目標を織り込んだ形での将来の一つ数字というものをつくるべきではないかというふうに考えておりまして、農政審議会においては、それらも含めて今後検討していただいて、何とかひとつ明るい、将来農民もやっていただける、また国民にとっても食糧の需給がこういう形で確保できるというようなものをぜひひとつつくり上げたいということで、いま農政審議会にお願いをしておるということでございます。
  103. 武田一夫

    武田委員 総理の施政方針演説の中では、対米基調を今後も一層強めていくという、そういう感じが受け取られるわけでありますが、私は、この政治姿勢というものが今後一つの口実となって、これから一層ますます輸入攻勢というのが農産物について行われないという保証は一つもないし、どちらかというとそれが強くなってくるのじゃないかという心配をしているわけでありますけれども、こうなりますと、生産調整を含めた今後の八〇年の農政の見通しというものは、まるっきり暗く、どうしようもない。ここに大きな問題があるわけでございますが、この日本のそうした危機というものにやはり歯どめをかけなくちゃならたい。こういうためには、国際状況というもの、特にアメリカというものの存在が非常に大きいわけでありますから、どのようにこういうものに対して、この輸入攻勢というものを食いとめ、そして協調の中で日本の国民が安心して食糧を確保できるかという問題に取り組むか。この問題は、まず外務大臣からひとつ見解を伺いまして、その次農林大臣、こういうふうにお願いしたいと思います。
  104. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 世界の食糧事情から申しますと、主たる供給地域がアメリカ、カナダ、オーストラリアということでございますが、日本も大量の穀物を輸入しておるわけでございまして、まあ米についてはかなりの過剰がございますが、その他の農産物については大量に輸入をしておるわけでございまして、一面において外からの食糧の輸出攻勢と申しますか、いまお話しのような点がございますが、他方において、やはり日本人の食生活を確保するために外からの安定的な食糧の供給を確保していかなければならない、そういう両面があるように思うわけでございまして、その意味で、特にアメリカが主たる穀物の供給源でございまして、日本がアメリカから安定的な供給を得るということも、日本人の食生活の上にとりまして重要な面であろうかと存ずる次第でございます。
  105. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、食糧の安定供給ということは国民にとって大変大切なことでございます。そういう形において、やはり安全保障的な考え方から、国内で生産できるものは極力国内で生産をしていく。しかし、どうしてもやむを得ないものは、これは海外に依存しなければなりません。そういう意味においては、特にいまアメリカからは相当多くの穀物を輸入しておるわけでございまして、十分協調のもとに、どうしても足りない分は将来確保できるような形で常に協調体制でいかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  106. 武田一夫

    武田委員 外務大臣にお尋ねしますが、先ほど農林大臣は食糧が戦略物資化したという認識のもとで話がありましたが、外務大臣はそういう認識をお持ちかどうか。  それからもう一つ、十四日、外務省顧問である牛場さんが自動車輸出問題につきまして非常に貴重な意見を言っておるわけですが、私はこの言葉を今後の農政の場にもぜひひとつ確認をして、こういう内容の決意で取り組んでほしいというものがありますので、新聞の記事をちょっと読んでみたいと思います。「米国の圧力に屈しないという認識を持つことが大事だ。主張すべきはハッキリ主張しなければならない」「圧力をかければ日本は何でも言うことをきくという風にみられるのは遺憾である。わが国の基本的立場を堂々と主張することが大事だ」、こういうことを言っておるのですが、この点あわせてひとつ答弁いただきたいと思います。
  107. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 第一の点でございますけれども、食糧が戦略物資として用いられるかどうか。これは戦略という言葉の意味にもよりますけれども、従来、米国はそういう目的には食糧は使わないということをいろいろな機会に申しておりましたのですが、今度のアフガン問題に関しましては、御承知のような食糧の輸出をとめるという手段をとったわけでございまして、そういう意味では、国家安全保障ないしは外交上の観点から、この食糧貿易がある程度手段として用いられることがあり得るというふうに考えられるわけでございますが、日本の場合には、先ほど申しました世界の主要な食糧輸出地域、アメリカ、カナダ、オーストラリア、いずれとも非常に友好な関係を維持しておりますので、こういう関係が維持される以上は、この食糧がそういう手段に日本に対して用いられるという可能性はないだろうと考えておるわけでございます。  第二段の牛場さんのお話につきましては、これは長い間の外交経験者、特に対米交渉の直接衝に当たっておられましたので、私もいま御指摘の新聞記事を拝見いたしました。この点は牛場さん、原則論を述べておられると思います。ただ、現実の問題の交渉に当たりましては、確かに一部の局部的な利益に基づいた発言というものがアメリカ側にもいろいろあるわけでございますが、それが国全体の立場として調整されるかどうかということは牛場さんの御指摘のとおりでございますけれども、同時に、現実の議会なり政府なりあるいは言論機関を動かす力としていろいろな問題が出てくることは無視できない。これをまた一方的に無視をいたしますと、全般的な日米関係にひびが入ってくるということでございますので、牛場さんのお説は一つの貴重な御意見として私ども考えていかなきゃならないと思っておりますが、同時に、日米関係の基本を損なわないという考慮もきわめて重要だと考えます。
  108. 武田一夫

    武田委員 農林大臣には、いま新聞の記事で述べましたような決意をもって臨んでもらわなければならないと思いますが、それは答弁は結構でございます。  次にお尋ねしたいことは、六十五年の農産物の需給見通し、これはいま作成中であるというけれども、漏れ聞くところによりますと、どうも六十五年の穀物の自給率が三割程度に激減するのじゃないかというように聞いておるのですが、その真偽のほどはどうですか。
  109. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 六十五年の穀物自給率の見通しの三〇%という数字でございますけれども、これはまだ決定したわけでもございません。先ほど私が申し上げました農政審議会でたたき台にしていただくために、十一月に、従来の統計数字を基礎にいたしましてはじきました中間見通し、こういう形で農林省が出したものでございます。その中に三〇%があるわけでございますが、これは御承知のとおり、何もお米だとか小麦だとかあるいは大麦だとかこういったような食糧だけではなくて、えさ用の穀物も入っておるわけでございまして、現在日本の国民の食生活が変化をしておりまして、畜産関係の、たとえば牛肉であるとか豚肉であるとかあるいは鶏であるとか、こういうものが非常に従来と比べると多くなったわけでございます。また、えさはどういうものかといいますと、特に豚や鶏についてはほとんどが濃厚飼料を使っておりまして、この濃厚飼料の大半であるトウモロコシあるいはマイロ、こういったようなものがどうも日本では相当高くしかできないものでございますから、そのほとんどを外国から輸入をしておる。これは今後もそういう状況が続くであろう、日本ではどうも安いえさはできないのではないかというのが一つ考え方でそういうものを出したわけでございます。  主食関係だけを考えますれば、私どもは大体いま六八という数字が出ておりますが、私は政策目標としては七〇ぐらいはひとつ考えなければいけないのじゃないかと言っておりますが、試算では六八が出ておるわけでございまして、三〇というのはいま申し上げましたように、現在の日本の農業の中ではえさになるトウモロコシあるいはその他のものについてはどうもできない一できないというか、つくることはできますけれども、コスト的に全く合わない、こういうことでどうも海外に依存せざるを得ないという形で自給率がそうなるであろう、こういうことでございます。
  110. 武田一夫

    武田委員 そうしますと、現状のまま穀物の自給率が減っていくということは必至だと考えていいわけです。  それで、現在でも米は大体一〇〇%自給できるとしても、それ以外の自給率が三・一%だ。日本はいま約二千八百万トンですか輸入しているわけでありまして、米が千二百万トンとしても二倍強、そのうちの七割がアメリカである、こういうようなアメリカのかさの下にいるような状況であります。ところが世界の動向を見ますと、FAOやOECDなどのいろんな中長期の見通しを見ますと、開発途上国の存在というものはわが日本にとっては非常に脅威であろう。特に最近の途上国の需要というのは、所得が上がってくればくるほど食生活が向上していることは事実でありまして、急激な石油産油国の輸入というものが見られるわけです。小麦などは世界の貿易に占める割合が七七年で一割を占めるようになったし、米が三分の一、牛肉が一割、羊の生体輸入が五割、しかもここ数年の間に市場拡大が大きくなってきている。しかも、かつて七十七の国で数年前にローマで世界食糧会議が行われたわけですが、そのときに一つの強硬な申し入れをしたことがあった。日本はそれを拒絶して辛うじてこれをとめたけれども、要するに先進国は食糧の逼迫したときには開発途上国に優先的に支給するようにしてほしい、すべきである、こういうような主張をしてきている。今後こうした国々がさらにふえて、七十七が九十というふうにふえていったときの戦略というものは、私は大変むずかしいと思うわけです。外貨があるからといって強引に買えば、食べ物の恨みは洋の東西を問わず深い恨みとなります。  こういうことを考えますと、私はやはり国内の自給率の向上というものは八〇年代の農政の中の最大の課題である、こういうように思うわけでありまして、そうした配慮を踏まえた上で先ほど申し上げましたような外圧といいますか、そういうものに対処していただきたいと私は思うわけでありますが、大臣の決意と御見解を伺いたいと思うわけであります。
  111. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもは国内で生産のできるものは極力国内で生産をして確保していきたい、しかし、どうしても国内でできないものは外国との十分な話し合い、協調のもとに十分供給の安定を図っていきたい、こういう基本線に立っておるわけでございます。  そういう方向でぜひ今後ともより努力をしていかなければなりませんし、また、国内においてはいまいろいろと試算はなされておりますけれども、先ほどちょっと触れましたように、せっかく農業のこれからの新しい方向においてのいろいろの政策も打ち出しておるわけでございますから、その政策を実現することによって、いま試算をしておるよりももっと高い自給率が確保できるような方向努力をしてまいりたいと思っております。
  112. 武田一夫

    武田委員 次に、いわゆる水田利用再編対策の問題について。  非常に残念な思いでありますが、二、三年にして当初の計画が大きく狂ってしまった。天候の度合いがどうとか条件がいろいろあったということでございますが、そういうような中で農家が第二期目に挑戦をしてその対策に取り組まなければならないわけですが、農家にとっては再編対策ではなくて大変対策だと認識しなくてはいけない、私はこう思います。それだけに転作作物の定着化をどうするか、何を植えたら所得に見合うようになるのか、これはいろいろ問題がある、こう思います。  その意味で、どうも当初のあたりは、これはいまでも私は各地を歩いて感ずるのですが、緊急避難的なものとして受け取りながら作業を進めている農家が多分にある、こういうふうに思えてなりません。これでは、いつかまた米をつくるときが来るのではないかという思いがその中に深くあるわけでありますから、転作問題についてはやはり奨励金の問題が一つの大きな問題になってくるのじゃないか。そういう意味で、この転作奨励金のシステムというものが今後どうなるのか、今後の方向性について、まず農林大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  113. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもは、今度の水田利用再編対策は、いま御指摘ございましたが、単にしばらくの間緊急避難的に米の生産を抑えればいいということだけではいけないと思っております。全体的に米が非常に供給過剰になり、先ほど来話が出ておりますように、小麦にしてもその他の大豆にしても非常に自給率は低いわけでございまして、そういう主食に相当する、食糧に相当する農産物は将来できるだけ国内で供給できるような体制をつくることが大切でございまして、水田利用再編対策は現在の米の供給過剰ということだけでなくて、そういう将来を踏まえた形で考えていかなければならない。ですから、ぜひ転作の定着を図っていただきたいと考えておるわけでございます。  そういう面からいって、それじゃ奨励金は今後どうなるかということでございますけれども、五十三年を初年度といたしまして、おおむね十年間はこれを続けていかなければならないということで閣議了解もできておるわけでございますので、今後ともに奨励金の交付については必要である、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  114. 武田一夫

    武田委員 大蔵大臣、大蔵省関係ではときに変な茶々を入れまして、これは検討するとかなんとか言っているようですが、大臣としてはどうなんですか。農林大臣は十年間、私はきちっとこれが定着して、穀物、いわゆる米などと同じように、そういうようなものに見合うだけのものにするまでは当然必要であるし、将来においてはあるいは数年後、たとえば五年後あたりを一応のめどとしまして、転作奨励金という形ではなくて、いわゆる米収に見合うだけの価格制度としてこれを考えるべきだ、こういうふうに思っておるわけでありますが、大臣の考えと今後の方向をひとつ示していただきたいと思います。
  115. 竹下登

    ○竹下国務大臣 食糧政策というものがわが国の大きな意味におけるセキュリティーの問題であるという認識も私自身は持っております。したがって、今度の水田利用再編対策につきましては、これは五十三年一月二十日の閣議了解でございますが、その趣旨、方向につきましてはただいま農林大臣からお話があったとおりであります。私どもといたしましても、閣議了解の趣旨を体して、これは農政の問題としてそれなりに認識を持って対応して今日まで来ているところでございます。本対策の期間中、稲から他の作物への転作を推進するため、各期ごとに定める奨励交付金を交付するということに決まっておるわけでございますので、その趣旨はこれから踏まえていくわけでございます。  ただ、生産コストの引き下げが図られまして、そして対策が終わるという段階では、これは奨励補助金を交付する必要はなくなる、財政的にはそのような理解の上に立っていなければならないではなかろうかというふうに認識をいたしております。
  116. 武田一夫

    武田委員 農林大臣、私、いまちょっと前に言ったのですが、将来五年くらいのめどをひとつ目標にしまして、これは奨励金でなくて価格制度として確立する方向、その間準備期間としましては基盤整備等いろいろ転作条件の大事な要件というのを整備しながら準備を整えて、将来その方向へ持っていくというお考えはないものかどうか。農家の方々はその方向を相当期待していると私は思うのですが、どうですか。
  117. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私は、これは大変むずかしい問題だと思うのでございます。私ども、もちろんこれから農業政策の中においては、できるだけ生産性を高くし、コストを安くしていくという努力を農家の方にもしていただけるようにいろいろ仕組みを考えていきたいと思っておるわけでございます。いま米と同じような形に結局しろというお話でございましょうけれども、やはりそういうことは財政的にも将来ともに大変拘束される形になりますし、かえってそういうことよりは、いまお互いに農家も努力をしていただこう、私ども努力をしていきたい、こういう形で政策を進めているわけでございまして、その中でより水田利用再編対策で御迷惑をかけることにおいて転作奨励金を出しておるわけでございますので、私は、やはりいまの仕組みの方が将来長い目で見た場合にはいいものではないか、こう考えておりまして、何とかいまの形で考えていきたいと思っております。
  118. 武田一夫

    武田委員 私は、そういけば過剰の問題で相当——たとえば米をつくっている方々が転作で酪農をしよう。ところが既存の酪農家がいて、牛乳が過剰になって生産調整をしなくてはならない。われわれは転作してこうなったんだから、これは買ってもらわなくちゃいけない。酪農の方は、われわれはもうすでにそういう仕事としてやってきた、あなた方が後から入ってきてわれわれが犠牲になるわけにはいかない、そういう利害のぶつかり合いがある。または集団転作、計画転作等についてもそうした明確なものがなければ、必ずその転作の推進というのは政府が考えるようにはうまくいかない、こう私は思います。各地をつぶさに歩いて私はそういうことをはだで感ずるわけです。ですから、私は今後の一つの課題として検討していただきたい。答弁は求めませんが、大臣はあちこち歩いて様子を聞こうと張り切っておいでになりますから、私は、そういう実情をよく踏まえて一つの検討問題にしていただきたい、こう思うわけであります。  次に、米の需給均衡化対策、いわゆる消費拡大の問題です。これはずいぶん金をかけまして、対策室の皆様方も御苦労なさいましてるるやっております。しかしながら、相変わらず減退といいますか、その傾向には歯どめがかからない。そういう中で、まずいつになったらこれは減退がストップするんだ。また大臣としては、いっこの減退をストップしなければならないのか。拡大と言っておるのですが、拡大ではなくて、いまのところ要するにストップをかける対策ですね。拡大というのですから、どこかで少しでもふえているかというと、ふえているわけでもない。政策的には拡大しているものがたくさんありますけれども、この点大臣はどういうふうに考えているか。私はこのくらいのときにはストップしたいと思いつつ政策に取り組んでいるんだとかいう、私見でも結構ですが、簡単にちょっと聞かせていただきたいのです。
  119. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 ことしも、米の消費拡大ということで、たとえば従来でございますと大体五月いっぱいはどうも新米を供給できないという形でありましたが、この四月から供給したり、あるいは学校給食の米の価格を据え置いたり、あるいはいま地域ぐるみの消費拡大をやっていただいたりということで、いろいろ新しく考えておるわけでございます。一体どの辺で歯どめをかける考えかとおっしゃるわけでございますが、これも大変むずかしい問題で、いま農政審議会で御議論いただいておるわけでございますけれども、私の私見でもいいということであれば、私ども農林省で出しました試算では、いま国民一人当たりの消費が大体八十一キログラム、それを昭和六十五年には大体六十ないし六十五キログラム、こういう判断をしているわけでございます。ですから、私は、六十ないし六十五、少なくとも六十五キログラムは消費が必ずできるような形で歯どめをかけるべきではないか、こういうことをいま省内で議論をいたしておるわけでございまして、六十五キログラムになりますと約一千万トン、少し切れますけれども、約一千万トンの米の需要が結局要るということになるわけでございまして、何とかその一千万トンというものだけは将来しっかりと維持する一つのラインに持っていくべきではなかろうか、こういうことで議論をいたしておりまして、私見でもいいというお話でございます、まだこれはこれから農政審議会でいろいろと御議論いただくわけでございますけれども、私はそういう考え方を持っておるわけでございます。
  120. 武田一夫

    武田委員 そこで、文部大臣にお尋ねしますが、いつも消費拡大というと文部省、こうなって恐縮なんですが、大臣かなり張り切って米飯給食に取り組んでいくという積極的な御発言がありまして、私も心強い限りでありますが、いままで決められた、五十六年でしたか週二回というような既定方針が、大臣のそういう表明によって今後軌道修正されるものかどうか、その点まずひとつお伺いしたいと思います。
  121. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  御存じのとおり、米飯給食は五十一年から始めておるわけでございまして、五十六年までにはぜひ週二回の米飯給食を実現いたしたいということで、現在それを実行しておるところでございます。  ちょっと古い統計ですが、五十四年度におきましては、米飯の学校給食を二回以上やっておりますものはまだ四四%ぐらい、学童数でまいりますと二八%程度状況でございますので、五十六年度に週二回を完全実施してまいりますためにはよほどの努力をいたさねばならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  それで、将来これをどういうふうに拡大していくかという問題は、いろいろ意見がございます。とにかく五十六年度の計画をできるだけ完全に遂行する、その段階までに、いろいろと各方面の御意見を聞きながらやってまいりたい。地域によりましては、非常に積極的な学校給食の増大が見られる地域もあるわけでございますので、篤とそのあたりも考えてやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  122. 武田一夫

    武田委員 積極的に推進している地域もあるし、反面、非常に遅々として進まずという地域もある。そういう地域に対しては、特に文部省としては今後かくかくしかじかの手を打たなければならないとかいうようなものをお持ちでしょうか、文部大臣。
  123. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 大体におきまして農村地帯はかなり進捗度があるようでありますが、大都会の地域におきましてはやはりなかなかスピードの出ない傾向が出ておるわけであります。これはいろいろ原因もあろうと思いますが、私たちといたしましては、炊飯施設の整備を進めてまいるとか、あるいは委託して炊飯をさせるようなものに対して補助金を出しますとかいうようなことで進めてまいりたいということで、せっかくいま努力をしておる、こういうところでございます。
  124. 武田一夫

    武田委員 そういう努力をしながら、進まない地域というものの指導というものはやはりもっとしなくてはいけないと思う。そういうところが余りいかなかったら、もう弁当持参にでもさせたらどうですか。大臣どうですか。
  125. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  文部省で学校給食いたしております考え方は、これはやはり教育的な見地からやっておるわけでございまして、もちろん日本の国の主食が米であるし、また将来ともにこのことは変わらないであろうということを踏まえて、教育の立場から、たとえ今日の学校給食の消費量は少なくとも、将来その児童たちが大きくなっていった場合に米飯というものをしっかりと見直していただける、こういう基礎をつくっていくという意味が片一方にはあると思います。それと同時に、先生も生徒もできるだけ一緒に給食の食事をする、こういう問題があろうと思います。弁当で御飯を持ってくるということは、これは当然考えていっていい問題ではありますが、学校の立場、教育の立場から言いますと、自家炊飯と申しますか自校炊飯、学校で炊事をして、そして皆一緒に同じ食事をいただく、あるいはよしんば委託をいたしまして外部で炊飯をいたしましたものでも、やはり同じものを一緒に食べるというところに一つ意味があろうかと思います。やはりこれが主体でなければならないと思います。いま先生が御指摘になりました米そのもの、御飯そのものを弁当の形で持ってくるということも当然考えていいと思いますけれども、主体は、やはりいま申しました立場からそうあってほしい。これは各学校の実情もございまししょうし、その地域一つの合意もございますので、そこらのところをよく考えてやっていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  126. 武田一夫

    武田委員 私はその趣旨はわかります。学校教育の一環である、となれば、私は教育に偏りはよくないと思うのです。その点をやはり検討して、そうした偏った教育ですね、文部省の教育の一環とするならば、そういうものをやはり是正しなければならないと思うのです。それを放置しておくというのはいかぬと思います。その点、私はやはり文部大臣の今後の活動の中で改めなければいけないと思うのですが、どうでしょうか。
  127. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  文部省が教育的立場で学校給食をいたしますのは当然のことだと思います。ただ子供たちがそこで食べておる米だけを考えるのではなくて、将来その子供たちが大きくなっていった場合に、日本の食糧としての米の重要性というものになれてもらうということ、簡単に外国の小麦粉を食べるというのではなくて、もっと米というものの意味も加えつつやってもらいたいというところに私たちの米飯給食の本当の真意があるわけであります。米が余っておるから学校給食にするという、それも確かに一つの理由ではございましょうけれども、そう簡単な立場ではない、こういう立場でやっておるわけでございますので、そこらの事情も十分御了解を願って、学校給食の中で米飯の比率が高くなっていくように努力をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  128. 武田一夫

    武田委員 時間の関係でその辺にしておきますが、えさ米、いわゆる飼料米の問題についてちょっとお尋ねします。  八十万ヘクタールというふうな大規模な減反をしたときに、やはり何を植えればいいかという問題で農家は相当苦労します。明確な目標というか、指標を示さなくちゃいけない。いままではあれこれ、何をしたらいいかと悩んで模索している。転作の圃場条件とか技術あるいは価格、流通など、いろいろな問題で研究しながら定着をしていかなければならないという現実でありますが、やはり稲作農家の考えの中に、このえさ米というものを非常に期待している向きがある。特に畜産のえさが大量に輸入されておりまして、これは過剰などという心配はないという、一つの大きな希望があるわけです。ですから、農家の熱いまなざしがここに行っているというのが最近の状況だというのは大臣も御承知だと思うのですが、現在政府としては、この研究のためにどのように取り組んで、現状がどうなっているのか、今後これに対してどういうふうに手を打っていくかという問題をまず農林大臣にひとつ。
  129. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 えさ米につきましては、確かに従来の稲作の技術がそのまま利用できるとか、あるいは湿田でもできるとか、いろいろメリットのある点もございまして、農家の方が非常にそういう御期待をしておられるということは、私どもも十分承知をいたしております。しかし、えさの価格という点から申しますと、先ほども触れましたが、トウモロコシあるいはマイロ、こういったようなものと比べると大変割り高であるものでございますから、将来、えさの原料も国内で自給しなければ外国から全く買えないというような事態というものがあれば、またこれは別かもしれませんけれども、先ほど申し上げたように、それはひとつ輸出をしていただいている国と協調し、よく話し合って何とか輸入で確保していきたい、こう考えておるものでございます。コスト的に非常に問題があるということと、もう一つは識別の問題で、つぶぜばいいとか、いろいろ私どもも意見は聞いておりますけれども、そういう形で本当にうまく主食の米と識別できていくのかどうかという問題もございます。  しかし、研究だけはしなければいけないということで、いま農事試験場、また北陸、九州の私どもの農業試験場でもやっておりますし、また県によっては、たしか十一県だったと思いますけれども、十一県の農業試験場でも研究をしていただいているわけでございまして、将来こういうものは全く必要でないということであれば、そういう研究はしないわけでございまして、私どもも、いま申し上げました二点について何とかいい方向ができるならば大変結構なことでございますので、引き続いて今後も積極的に研究を続けてまいりた  い、こう考えております。
  130. 武田一夫

    武田委員 聞くところによりますと、その研究はいまのような状況でやっているというけれども、研究用の予算がずいぶん少ないようですね。たとえばずいぶん長ったらしい名前なんですが、「転換畑を主体とする高度畑作技術の確立に関する総合的開発研究」こういうのがあるのだそうですね。それで五十四年から六十三年の十年間、プロジェクト研究をするために、五十五年度約六億円ですか、国が五億円で県が約一億二千二百万、予算が計上される。どうもえさ米の研究にはこの六億円の中の一千万ちょっとぐらいではないか。そうすると、国内の十三の研究室が総がかりでこの研究に取り組むという決意を持っているようですが、一研究室わずか百万からぜいぜい百五十万くらい。日本というのは学術研究の予算が非常にシビアな国だというので有名ですが、文部省の関係なんかもそうなんです。大学の研究の皆さん方に聞きますと、金は来るけれども、光熱費の分が高くて、肝心の研究費に来ないと言って嘆いています。県の方なんかを見ると、技術者というのは余り優遇されない傾向もあるようです。これではいけないと思うのです。  やはり研究ということをもう少し前向きに考えて、農林省も、またそれをバックアップする大蔵省も、えさ米の研究というものにひとつ本格的なプロジェクトチーム、研究班をつくる。そのための予算づけをせめて——大体三千億近い稲転予算がございますね。その一%でもいい、あるいは二%でもいい。そうすると三十億ぐらいです。たとえば、プロジェクト研究の予算措置を見ますと、特別研究、三年間で、これは単年度が一千五百万から二千万、それから一般別枠研究というのが四年から五年で一億五千万から二億円、そして総合的開発研究、これが十年間、そして五億円から六億円つく。その上に大型研究があって、これが十年、十億円とあるのですが、せめて生産調整の十年という一つのめどがあるわけですから、そう簡単に開発できないけれども日本のいままでの技術と英知を集めて真剣にやれば、そして予算的なそういうバックアップがあれば、十年を一つのめどとしまして、開発研究というのは相当成果のあるものにいくのじゃないか一こう思うわけでありまして、この辺の五億、六億くらいの予算は一つの研究のために必要だと思うのですが、この点、大蔵大臣どうですか。
  131. 竹下登

    ○竹下国務大臣 学問研究が大事であるということは、私もそのとおりだと思うのです。大体、学術研究というものは、それこそ顕微鏡をじっとのぞき込みまして、経費的には非常にかからないものもありますし、また一方、たとえば地震のがけ崩れの実験などということになると、また大層な金もかかる。だから、一概に予算そのもので研究というものが位置づけられるものではなかろうと思っております。  いまのえさ米の問題でございますが、私も勉強さしていただいてみますと、いま、大体粗収入で十アール当たりが一万二千円程度と見込まれる。これはもちろん、主食用の十分の一にもならないし、生産費はおろか、物財費が六万五千円と言われておりますので、物財費以下の粗収入、こういうことになるわけでありますので、これはなかなか大変なことだなと思うのであります。  今日、主食用のお米がこれだけ生産性を上げたということは、これこそ長い間の、天照大神以来の日本人の本当に長い英知、知恵、研究というものがそういう成果をもたらしたのではないかと思いますので、一概にお金でもってえさ米の研究ということが進むとは私も理解できないところであります。  いま、委員おっしゃいますのは、三千億の金の一%、アバウト三千億でございますから、一%と言えば三十億ぐらい出したらどうだ、こういう積極的な御発言でございますが、えさ米そのものにそういう研究費を出していくという考え方はいまのところありません。  また、聞くところによれば、仮に食管法上えさ米というものが主食用に混米されるような危険性もありはしないかとか、いろいろな議論を聞いておりますので……。ただ、委員の御指摘の学術研究に対して積極的な対応をしろというその精神は、私も同感でございます。
  132. 武田一夫

    武田委員 それはその辺にしておきます。また次の機会に……。神武以来の長い話ですから。  そこで次に、時間の関係で、価格制度の問題についてお尋ねします。  政府は、今国会に農用地利用増進法案(仮称)、それから農地法の一部を改正する法律案、また、これと関連して農業委員会等に関する法律の一部改正案を提出するということで検討をしている。その準備状況ですね、いつごろこれが出てくるものか、これを簡単にひとつ農林大臣から……。
  133. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 御承知のとおり、農振法の改正によりまして農用地利用増進対策事業というのを進めてまいりまして、おかげさまで、最近の実績を見ておりますと、農地の貸し借りが非常に進んできておりますので、この際、日本の農業の生産性を高めるという意味からいっても、経営規模の拡大が必要でございます。特に、土地利用型の農業がどうもコスト的にも非常に問題があると言われているわけでございまして、そういう面でも生産性の高い農業、そして実際農業に重点を置いてやろうという意欲を持ってやっていただいている農家に、より中心になってやっていただきたい、こういう考え方から、いま御指摘の三法案について取り組ましていただいているわけでございます。  大体どんな状況かということでございますが、農地問題研究会というものを実はつくりまして、いろいろとそこで議論をいただいておりまして、その議論を集約しながら、いま法律の改正に取り組みたいと思っておるわけでございます。大体順調に作業は進んでおるようでございます。できるならば、三月十四日が法律の国会への提出期限になっておりますので、三月十四日までには何とかひとつまとめて出せれば、こういう意欲を持っていま取り組んでいるような次第でございます。
  134. 武田一夫

    武田委員 それでは小作料の問題ですが、四十五年の農地法改正のときに統制小作料が一応廃止されることになったけれども、その後十年間の経過措置として適用を認められてきた。ことしの九月末日に期限切れになりますね。これは米価算定においては、農林省にとりましては、統制小作料を使う根拠を失うということになる。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 となれば、現在米の生産の九割以上は自作地で、五十二年で九二・三、五十三年で九一・七%という割合ですから、九割以上はこういう自作地でありますね。ですから、統制小作料を使用せず、全部実納小作料で算定するならば、相当米価への影響は大きくなると思うのです。  そこで、仮に昭和五十四年度の米価において全部実納小作料で算定すればどういうことになるか、ちょっとお尋ねしたい。これは簡単にひとつ……。
  135. 松本作衛

    松本(作)政府委員 ただいま御指摘のように、自作地についても実納小作料によって試算をいたしますと、五十四年産の決定米価を六十キログラム当たり二千七百円程度上回ることになります。これは大体一六%弱上回ることになります。
  136. 武田一夫

    武田委員 相当大きな影響力があると思うのですが、この笑納小作料の米価算定の適用はことしの米価からか、それとも来年なのか、これはどうなんですか。
  137. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだ現在のところ決めておりませんので、全くどうも申しわけございませんが、ここで申し上げるわけにはまいりません。
  138. 武田一夫

    武田委員 それではその次に、時間の関係で補助金のあり方ですね、ちょっと一問質問したいのですが、私は、補助金農政といいますか、これはやはり見直しすべきだと思うのです。メスを入れるときではないか。そういう意味で、いままでのように地域の実情を無視したそういう画一的なものは検討しなくてはいけないのではないか。むだを省くということは大事なことだと思うのです。ですから、農家の方々も、一生懸命努力をなさっている方々はそれなりの成果を出して、自信を持って仕事をやっているわけですね。ですから、基盤整備などを見てみましても、どちらかというと、それを請け負う土木業者の中間マージンに多くとられている、こういうようなケースがある。  そこで私は、農業者本位のものに改めると同時に、財政のいわゆる効率的な運用というか、有効性というものを考えた上での補助金というものの必要性を明確にしていかなくてはいけないと思うのです。先日も新聞に載っていました竹本さんの例なども見ますと大変な違いですね。たとえば、育苗施設などが十アール五千四百円で竹本さんがやっているけれども、それが農協の半額国庫負担でやると一万二千七百円となって、約一丁四倍も一金がかかっている。もみ乾燥施設にしましても、三千五百八十円が九千三百五十円になっているのだ。これなども二・六倍である。あるいはまた、秋田県の農家の方も言っております。あるいは岩手にいる権威ある学者の方も言っているのですが、いずれにしましても、圃場整備事業などにおいても、国の予算の十分の一くらいでできるものが十倍もかかっているというようなことがるる報告され、これは生活の中から体験的に出ているわけでありますから、この点をやはり十分に考えなければいけないのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  こういうようなものをしっかりと政府が考えた上で補助金を与えていないから、世間的に、農業は過保護だとか、金のもらい過ぎだとかというようなことで、農家が大変苦痛を強いられているわけでありますから、その点を明確に、これからの一つの施策の中で私は実行していただきたいと思うのですが、農林大臣、そして大蔵大臣も、その点について御答弁を簡潔にお願いしたいと思います。
  139. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 今回の財政再建に伴います一つの問題として行政改革、そしてその中において補助金の見直しということも当然私どもやっていかなければならないこととして取り上げておるわけでございます。特に、補助金制度の非常に多い農林水産省でございます。その補助金が正しく使われるように、また、その地域地域の実情においては、画一的であるために非常に農民に迷惑をかけているものも全くなきにしもあらずだということも承知をいたしておりますので、ひとつ補助金のあり方については十分見直しをし、本当にそれが生かされて、効率的にその補助金が使われるようにしていかなければなりませんし、もし必要でなくなってきているようなものは整理していくということが当然私どもは必要かと思っておりまして、そういう方向努力をしてまいりたいと思っております。
  140. 竹下登

    ○竹下国務大臣 補助金につきましては、行政改革の一環として、これの削減合理化を図る、こういう基本方針に基づいてもろもろの計画が行われておるところでございますけれども、元来補助金というものは、それが半ば既得権化して硬直化したようなもの、これはもちろん悪いことでございますが、全体的に補助金性悪説というものは必ずしもとるべきでない。したがって、いま農林大臣からもお答え申し上げましたように、その都度まさに政策上必要なものについては、これに対してスクラップ・アンド・ビルドの原則というものも貫きつつも、これに対しては対応していかなければならぬというふうに考えております。
  141. 武田一夫

    武田委員 農業問題の最後に、簡単に文部大臣にお尋ねしますが、小学校から中学校の教科書をずっとぺらぺらめくってみまして、私も七年教員をやったのですが、農業についてうんとうなるようなものがないのですね。いわゆる国民的な合意とか世論の形成というものは、子供のときから形成しておかなくてはいけないというのが私の持論なんですが、国語にはまるっきりなかったわけです。それで、社会のある教科書を小学校から中学三年までのものをずっと見てみたのですが、余り感心するものはないのですね。私は、これからの教育の一つの中身、どう考えても、要するに教育を通して農業の理解というものをしていかなければいけない、こう思っているのです。  そこで、ちょっと聞いたところによりますと、英国の場合、こういうことが言われているというのです。これは英国の全農民の大半で組織する全国農業者組織というものがあるのだそうです。そこでこういうことを教訓として言っているそうです。農業の安全保障を確保し得る最大の希望は、立法にあるよりも、自覚した世論にある。イギリスの偉大な世論が、どんなことが起ころうとも農業が窮地に追い詰められるのを放置してはならないというとき、農業は安全である。この文句は、大事な日本の農業に与えられた警告だと私は思うのです。  そういうことを考えましたとき、やはり学校の教育課程の中にそうした国民的世論の形成ができるような、子供のときから農業というものに対して、米も同じだと思います、そういうものがやはりあってしかるべきだと思う。その点について文部大臣の所見をまずお聞きしたい。農林大圃は結構でございます。
  142. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  先生が体験を通じていろいろ御意見を持っていただいておりますこと、大変頼もしく、敬意を表する次第でございます。  いま教科書等を見ていただいたようでございますが、御存じのとおり、小中学におきましては社会科において、わが国の農業の特色、地理的条件との関係等々の農業の持っておる問題を教えておる、私たちはそのつもりでおるわけでございます。今年度から新しく指導要領が改定をされましたが、この指導要領の中でやはり勤労体験というものをかなり重視をいたしております。すでに各地で休耕田等を実際に児童生徒に耕作体験をさせまして、効果を上げておるところも例があるようでございますが、教科書も、同時にまた、実際の勤労体験等の時間に農業の重要性、物を育てる楽しみ、そういうものを子供たちに教えていくようなやり方を今後ともにやってまいりたい、かように考えておるわけであります。
  143. 武田一夫

    武田委員 そうした配慮の中で、ひとつ国民的に農業の重要性というものが理解できるような、そういうものをひとつ考えていただきたい。  時間が来ましたので、最後に三全総の問題、東北開発を中心として、通産省、国土庁、そして文部省にお尋ねいたします。  三全総というのがスタートしてからもう時間がたつわけでありますが、三全総の計画されたそれがどの程度計画でいっているのか。意図された方向にこの三全総というものが進んでいるものかどうか、総括的なことをひとつ国土庁長官にお尋ねして、それから工場誘致、企業誘致の問題、なかなか進まない。通産大臣も秋田出身ですから、一番頭の痛いところでございます。秋田、岩手といえば、これは東北でも所得指標というのは最低の地域ですから、かなり頭を痛めて、そのために大臣になられたのではないかと私は期待をしているのですよ。そういうような企業誘致の実態、これはどうなっているのか、今後どういうふうにしていくのか、この一点。  それからもう一つ、文部大臣には、大学の地方分散というものが叫ばれている。これが過密解消の一つの方策だ、こういうふうに言われている。その点の現状、そして今後の対策というのを簡単にひとつお願いしたい、こういうふうに思います。まず国土庁長官通産大臣、そして文部大臣。
  144. 園田清充

    園田国務大臣 お尋ねの点についてお答えをいたします。  まず、三全総がどの程度進んでおるかということでございますが、実は、二年経過したではないか、それにどういう状況だということでございますけれども、御承知のとおり、過去私どもは、新産都市の形成、工特法の問題だとか、いろいろなことでいろいろな誘致合戦がございました。しかし、そういう反省の中で三全総を考えましたときに、やはり三全総の持つ性格というもの、ねらいは何か、それはやはり国土の均衡ある発展を図っていかなければならない。同時に今度は、同時にと言うよりも最優先的には、人間居住の環境ということを整備していかなければならないということが三全総の考え方でございまして、そこで、従来いろいろ言われてまいりました官製的なものからむしろ地方的な、民意を尊重した姿の中でひとつモデル定住圏というものを設定したい、こう願って、実は四十カ所の選定を終わりまして、いま各都道府県においてそれぞれ計画を各関係市町村とお話し合いを願っておるわけでございますが、これが本年の六月には大体固まってくるようでございます。  そこで、計画せられました地方の整備について、同時に国が基幹的にやらなければならない仕事、こういう仕事につきましては、国土庁としては十七省庁の関係連絡会議を開きまして、そしてモデル定住圏を推進するということに優先的に協力をしていくという各省庁の手形をいただいておるわけでございます。そういうことでひとつ進めていきたいし、余分なことであるかもしれませんけれども、特に先生の東北というのは、私どもにとっては、国土の四〇%を占める、ただ人口的には一五%というような地域で実は大いに将来を期待をいたしておるわけでございますので、ひとつ今後の御協力を心からお願いを申し上げておきたいと思います。
  145. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 工業立地の企業誘致の現状でございますけれども、五十二年が大体景気の底でございまして、そのまま徐々に傾向的には上向いてきております。  そこで、お話の東北地方でございますけれども、東北縦貫道等の交通網の整備の進展に伴いまして、順調に伸びてきております。ちなみに、数字を御参考までに申し上げたいのでありますが、全国におけるシェアでありますけれども、五十一年度は一四・四、五十二年度には一四・六、五十三年は一五・七、五十四年、去年の上半期ぐらいまでしか統計はございませんけれども、一八・四と、最近になって大分上向いてきてございます。  それから、どういうことをやっているのだというお話でございますけれども、やはり三全総にもありますように、魅力のある地域経済社会というものを築き上げるためには、どうしてもまず雇用機会を確保してやるということが一番重要だと思います。そこで、雇用機会を確保する方法といたしまして、根本的には工業の地方分散あるいは新規工業の地域的な導入というのはもちろんでございますが、それと並びまして、特に力を入れておりますのは、地域に根差す地場産業等の育成強化の問題でございまして、産地中小企業対策といたしましては、産地中小企業対策臨時措置法でもって調整をしておりますし、伝統的な工芸品産業に関しましては、伝統的工芸品産業の振興に関する法律に基づきまして、それぞれ各種の助成を行っております。また、五十五年度には新たに地場産業、県内部ぐらいで販路を持っている地場産業に対しまして、その振興を図るため、地場産業振興対策の基礎となる各地の実態調査をただいま進めておりまして、予算もついてございます。そういうことでだんだん調査が進むにつれまして、地場産業の振興のために努力してみたい、こう思っております。
  146. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  最初に、事例を申し上げておきたいと思いますが、昭和五十年度以降、国立大学で移転を済ましましたものが四校、それから進行中のものが七校、そのほか実施予定のものが一校、その他懸案となっておりましたものとか、あるいは計画がありましたができなかったというようなものが、国立大学の形においては出ております。それから私立大学では、移転済みをいたしましたものが、大学が八校、短大が十五校、移転進行中のものが、大学が三校、短大が一つ、検討中のものはかなりあるようでございますが、これは私たちのところへ出てきますよりは、新聞等で情報がわかる程度のものでございます。  これらは、御指摘のように大学の教育条件とか、あるいは校地が狭くなりましたようなことから移転を希望するものがあるわけでございまして、しかしそれは、従来大学の所在している、大都市が多いのですが、それの近郊の土地へ出ていくという体制のものが多いわけでございます。これらに対しましては、国立大学の場合はもちろん国としていろいろな助成もいたし、助成と申しますか、国立大学でございますから必要があるものはそういう努力をいたしております。それから私立大学におきましては、これは移転しますかどうかということは国から言う問題とは違いまして私立大学自体の経営、非常に根本的な問題でございますので、ただこういう申し出がありました場合には、いまの制度といたしましては私学振興会から融資をいたしておる、こういう形に相なります。  それから、これと少し趣は違いますが、地方におきます国立大学、これは御存じのとおり医科大学につきましても各県に一つずつつくってまいりまして、いまそれが完成しておる、こういう状況でございます。これもいま申しましたように、いわば地方の均衡のとれた配置が必要でございますので、大都市圏におきます大学の拡充は抑制をしながら、地方の大学あるいはその学部そのものの充実に努めておる現状でございます。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 武田一夫

    武田委員 残り時間は同僚の柴田委員に譲りますので、以上で終わります。
  148. 田村元

    田村委員長 この際、柴田君より関連質疑の申し出があります。武田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。柴田弘毅。
  149. 柴田弘

    柴田(弘)委員 私は、日本専売公社の経営の合理化、そして経費の節減という観点に立ちまして、現在世上で空超勤でないかと言われておりますいわゆる端数時間の超過勤務の支給の問題につきましてお伺いをしていきたい、このように思います。  そこで、きょうは総裁もお忙しいところお越しをいただいておりますので、総裁にお尋ねをしたいわけでありますが、この問題がいつから発生をしたか。私が入手いたしました資料によりますと、昭和三十五年ごろから始まっている。また金額が一体幾らであるか、こういうことでありますが、私が申しますのでひとつ確認の意味でまず御答弁をいただきたいと思います。  これはもう三十五年から始まっておりまして、超勤の支払いの総金額が九億円、そのうちいわゆる空超勤ではないかと言われておる分が二億円。同様にずっと言っていきますが、三十六年度が十一億の三億、三十七年度が十四億の四億、三十八年度が十六億の五億、三十九年度が十七億の三億、四十年度が二十二億の七億、四十一年度が二十二億の八億、四十二年度が二十三億の六億、四十三年度が二十九億のうち七億、四十四年度が三十五億のうち七億、四十五年度が四十億のうち九億、四十六年度が四十五億のうち十一億、四十七年度が五十五億のうち十五億、四十八年度が六十四億のうち二十二億、四十九年度が九十億のうち二十九億、五十年度が百四億のうち三十四億、五十一年度が百六億のうち三十六億、五十二年度が百十二億のうち三十九億、五十三年度が百二十億のうち四十億、合計十九年間にわたりまして九百三十四億円のうち二百八十七億円となっております。三〇%強であります。まずこの金額についての御確認をお願いしたい。  それから、あわせまして、このような支払いの具体的な内容は一体どういうふうであったか。特に支払いの方法、認定の方法を含めてお伺いをしたい。その中で私が特に疑惑を持っておりますのは、この支給が公社の全職員個々一人一人のいわゆる端数時間の超勤の実態というものを完全に公社として把握をされて支払われたかどうか、この点であります。もしそうだとおっしゃるならば、そういった支払いについての証拠書類、たとえば上司の超勤の命令書あるいは支払い明細書、こういったものがなければならないと私は思いますので、この場でひとつそれを提示をしていただきたい、このように思います。
  150. 泉美之松

    ○泉説明員 お答え申し上げます。  私ども専売公社におきまして超勤を命令いたします場合は、それぞれ所属長の委任を受けまして課長相当の者が命令を出しまして、その超勤命令を受けた者が命令を受けたということを確認する判を押しまして超勤をいたしまして、超勤が終わった後その時間を確認いたしまして超勤を支払うというのが原則でございます。  ただ、超勤というのは通常一時間単位程度で行うのが常でございますけれども、公社の場合始業前あるいは終業後におきまして、いわゆる端数時間の超勤というのが出てまいるのであります。たとえて申し上げますと、始業前でございますと、たとえば工場でございますと、作業の準備に作業用の工具や物品を準備いたしましたり、機械設備の点検を行う。それから終業後におきましては作業場の整理整とん、機械設備の点検、手入れ、注油、清掃、不良品の選別、整理、それから工場全体の整理清掃、こういったのがございますし、工場以外の部面におきましてもいろいろあるわけでございまして、そういった始業前、終業後の端数の超勤時間がございまして、これにつきましては、一人一人について個々に超勤の実態を把握いたしておりません。そこで、超勤の使用の目途の立ちます十一月ごろにその年度の予算の範囲内におきまして端数時間を整理いたしまして、これを超勤として十一月以降三月までの間に支給している実態があったわけでございます。  ただ、これはいま柴田委員のおっしゃるような一人一人につきまして確認するのが本来たてまえでありますけれども、そういう確認をいたしてございませんので、お話しのような証拠書類はございません。ただ、いま申し上げたような始業前、終業後の端数の超勤時間という実態はあるわけでありまして、したがって私どもは何ら超勤の実態がないのに超勤を支払ったというつもりではおりませんけれども、しかし御指摘のように、そういう支払い方法は超勤簿につきまして一々確認した上の支払いでございませんので適当でなかったと思っておりまして、五十四年度におきましては、現在どうするかまだ検討中でございます。  金額につきましては、お話しのとおり過去にさかのぼって実績を把握することは大変困難でございまして、私どもがあえて大まかな推算をいたしたものがいまのおっしゃったような時間数になっておりまして、全体の超勤支払い額の三〇・七%になっております。
  151. 柴田弘

    柴田(弘)委員 金額いいですね、間違いないですね。
  152. 泉美之松

    ○泉説明員 はい。
  153. 柴田弘

    柴田(弘)委員 私は、この問題につきまして私なりにいろいろ調査をいたしました。何点かにわたりまして問題点を御指摘を申し上げまして、総裁の公社としての正式な御見解をひとつお尋ねしたい、このように思います。  一つは、いま総裁もおっしゃいましたように、超勤手当の支給の正常なプロセスというものは、直属長がその超勤の必要性を認めて超勤の命令書を出す。それに対して従事者がまず承認の印鑑を押す。そして超勤を行って、また実際超勤が行われたかどうかを確認するわけであります。それからそれに応じてその月その月に超勤手当の支給の精算をするというのが本来のやり方である。これが今回の場合に行われなかった。ここに一つの問題がありまして、私は、なぜ正規の手続がとれなかったか、このようにお伺いをしたいわけであります。  それから二つ目は、ただいまもお話がありましたように、個々一人一人の勤務の実態というものを確認すべきであるが、確認をしなかった。一つの標準的なモデルを公社の方で算出をして、一人当たり月平均八時間程度の支給を行った。これはやはりその一人一人にとって言えば、その基準に達している人と達しない人がある。私は、この認定の方法に大きな問題があって、達している人はいいわけでありますが、達しない人に対しては空超勤の支給ではないか、このように疑問を持たれてもやむを得ないのではないか、このように思います。  それから三点目は、その支給の時期。これは予算執行の状況を見ながら予算の余裕のあるときに、本来ならばその月その月に精算支給であるのであるが、十一月から翌年の三月まで各年度支給をされている。これはぼくは会計処理上問題があるのではないか、このように思います。  それから四つ目は、第二点と関連をしてきますが、従事者一人一人の端数時間の超勤、これを明確に直属長が確認をしていない。だから全体からいっても、いまあなたは確かに労働の実態はあった、このようにおっしゃいますが、やはり総計していけば、これは金額イコール労働の実態とは、一人一人において違うわけなんですから、基準に達しない人もいるんですから、支払いの実態と労働の実態とは符合していない、私はこのように申し上げたいわけであります。  それから第五点でありますが、この問題の発覚、私はこれに大きな問題があると思います。昨年、鉄建公団のあの不正経理事件がありました。そのときに専売公社の監理官の方から、あるいはまた会計検査院の方から公社の方へ問い合わせがあって、そしてこの事実を公社が報告されました。もしあの鉄建の不正経理事件がなかったならば、あるいはまた監理官の方、検査院の方から問い合わせがなかったら、公社の方としてはほおかぶりをしょう、こういうふうにしたんじゃないかと私は思う。なぜかならば、もう二十年来続いているわけですね。そういった問題について公社として、今日のいわゆる厳しい減量経営のそういった合理化の姿勢、あるいはまた国民的な立場に立った社会的責任の自覚欠如、これをぼくは声を大にして指摘をしたい、このように思いますが、まず総裁の正式な御見解、そしてまた、五十四年度はそういったことがあって支払われていないわけでありますが、完全に勤務の実態と合うものであれば一つのルール化をして支払うべきだ、私はこういうふうに思いますよ。今後この問題にどういうふうに公社として対応していかれるのか。時間がありませんので、ひとつ簡単明瞭にお答えをいただきたい、このように思います。
  154. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、本来の超勤の正常な手続によらずして一律支給したという実態につきましては、私どもは空超勤を払ったつもりはございませんけれども、しかし、国民の皆様方に疑惑のもとになるようなことでございますので、大変遺憾に存じております。  それから私ども、その端数の超勤時間があるということは実態でございますので、それをモデル的なものとしまして、お話しのように一月一人当たり七時間あるいは八時間という超勤をしたものとして支払っておるわけであります。ただ、お話しのように、そのあれは標準的なものでございますから、中には超勤時間どおりの超勤をもらえなかった者もおるかもしれませんけれども、超勤時間より多い超勤をもらったということもあろうかと思います。そういう意味におきましては、空超勤と言われましてもやむを得ないことでございまして、まことに恐縮に存じておる次第でございます。  それからまたお話しのように、超勤予算というのは年間予算で決まっておるのを十月ごろまではやらないで、超勤予算の支給のめどがついた十一月以降処理しておるという点につきましては、私どもとしましては超勤予算の範囲内でその年度を過ごしていこうというために初めの間かなり厳しくしておる、それから十一月ごろ超勤の予算の執行のめどがついたときに、その点、超勤の実態を見まして一律支給するという措置をとったのでありまして、超勤予算の執行上、少し慎重に過ぎたというきらいがあるかと思いますけれども、いずれにしましても十一月以降だけそういう支払いをするというやり方は適正でないと思っております。その点は反省をいたしておる次第でございます。  今後の問題でございますが、関係官庁とも十分連絡いたしまして、いまの端数時間の実態に合うような支給方法をどうしたらいいかということを検討いたしまして改善を図ってまいりたい、このように思っております。
  155. 柴田弘

    柴田(弘)委員 時間もありませんので、会計検査院と大蔵大臣にまとめて御質問します。  まず検査院でありますが、いま公社総裁もお認めになりましたように、要するに一人一人に限って言えば、その労働の実態と支払いの実態とが見合っていない、これは空超勤と言われてもやむを得ぬ、こういう御答弁がありました。そこで、検査院といたしましては一月から検査に入っておみえになります。大変御苦労さんと思いますが、いまおっしゃったように空超勤の疑いがありと、私はもう空超勤だというふうに思っているわけでありますが、いまの公社総裁の発言について、たとえば会計検査法上、三十四条の違法不当事項に当たるかどうか、こういうことであります。私は違法不当事項に当たる、このように思うのですが、その点、どのような御見解であるか。それから三十六条の改善の意見表示を要求すべきであると思うが、その点どうか。法律に照らしてひとつ御所見を伺いたいと思います。  それから、公社五百五十の全事業所でこういったことが行われたというふうに私は聞いておりますが、今後の検査の対象はどのようになってくるか。それから、いま私が三十五年度からと言いましたが、いま検査院が検査をなさっておりますのはとりあえず五十三年度ですね。だから、そういう実態であるならば、五十二年度以前にもさかのぼって検査をすべきであると私は思いますが、その辺の方針を伺いたい。  それから大蔵大臣にお伺いしますが、いま総裁の御答弁があったとおりでありますが、これについていまどのような御所見をお持ちになっているか。  それから公社法の四十四条に大蔵大臣の監督命令権もあります。それから大蔵省設置法あるいは専売公社監理官の監督規程、これも一条から十条あります。この法律、監督規程に照らして、今後大臣としてはどのような措置を出されていくのか、この辺をひとつお伺いをしておきたい、このように思います。  まず、検査院からお願いします。
  156. 小野光次郎

    ○小野会計検査院説明員 お答え申し上げます。  まず会計検査の現状と今後の予定でございますが、会計検査院といたしましては、先ほどお話ございましたように、ことしの一月末から出先機関の検査に入っております。これは出先機関においての超過勤務の実態、そして一律支給の実態、こういうものにつきまして調査に入っておるわけでございますが、引き続きまして、本社の検査にこれから入ろうと思っております。本社の検査に当たりましては、そういうような一律支給をするに至った経緯、それから事情、そういうものを十分調査してまいりたいと思います。さらに、その結果に基づいて、各工場等の出先機関について、その後引き続いて検査に入ろう、かように思っておるわけでございます。  次に、院法における問題でございますが、この問題につきましては、やはりその実態を十分調査して、それによって必要があれば、院法の三十四条に基づきまして是正、改善の処置を要求すべきだと思っておりますが、これも実態を調査した上で判断したいと思います。  ただ、私ども実際に検査してまいりまして、そういう実際の超勤の実態が非常に多数の人間にわたるときに、どこまで把握できるか自信がないわけでございます。ただ、現在の支給の実態が実際の超過勤務の実態と相違しているということでございますので、この点につきましては、本社の検査の結果その事情を聴取して、それに基づいて判断させていただきたいと思っておるわけでございます。  それから、五十四年度の検査を現在実施しでおるわけでございますが、五十四年度の検査につきましては、先ほど先生からお話がございましたように、現在そういう支給はないというふうに判断しております。したがいまして、今度五十三年度にさかのぼって私ども検査することにしておりますが、その検査の結果によりまして、やはり必要があれば五十二年度以前についてもさかのぼっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  157. 名本公洲

    ○名本政府委員 この問題につきましては、私ども管理監督の責任を設置法上、公社法上持っておる者といたしまして、長く見過ごしてまいりました。実態につきましては、払わなければならない超過勤務というものもあるわけでございますから、その整理の方法その他につきまして不行き届きの点があった、これを見過ごしてまいりました点につきましては、大変遺憾に存じておるところでございまして、今後監事等とも十分連携をとりながら、適正な超過勤務の支払いができるように十分指導をしてまいりたい、かように考えております。
  158. 竹下登

    ○竹下国務大臣 実態をどういうふうにして改善をしたらという問題については、私自身も見当がつきません。しかし、御趣旨は私にも非常によく理解できるところでございますので、専売公社監理官また監事、これを私といたしまして督励をいたしまして、今後遺憾なきを期したい、このように考えております。
  159. 田村元

    田村委員長 これにて武田君、柴田君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時四分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  160. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため出席が少しおくれますので、御出席になるまで、指名により私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  161. 兒玉末男

    ○兒玉委員 防衛庁の方にお伺いいたしますが、先般、二月六日の当委員会におきまして、今回初めての試みとして、宮崎県の新田原航空自衛隊においてアメリカとの合同訓練が展開されることになりまして、今日までいろんな紆余曲折がありましたが、最終的には地元関係機関の全面的な了解を得ないまま訓練が強行される、きょう米軍の戦闘機も、輸送機を含めて新田原航空隊に着いている模様でありますが、このことについては、長官としても十分な話し合いをする旨当委員会で答弁されておりますし、私も、現地の農民なり関係団体との衝突をできるだけ避ける意味から、十分な話し合いを要望しましたが、最終的に八日の地元における施設局との話し合いも合意を見ないまま今日の段階を迎えたことはきわめて遺憾であります。  現地情報ではかなりのけが人も出たし、また町長みずから現地での話し合いに赴いたところ、一般の抗議行動の民衆と一緒くたにしてほうり出される、こういうことは、今後の訓練の期間の長短は別としても、やはり関係機関の理解と協力があることが本来の自衛隊に対する協力関係の基本ではなかろうかと存じますが、防衛庁長官としては、その後の経過を含めて、非常に困難が起きている状況に対してどういうような対応をされようとするのか、長官の見解を承ります。
  162. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいま御質問の中にございましたように、本日から新田原基地を使用いたしましての日米の合同演習が始まったわけでございます。現地におきましてトラブルが起こっておることを、先ほど私も報告に接した次第でございます。  そこで、まだ先ほどのことでございまして、その後刻々といろいろな情報が入っておるようでございますが、事実関係がまず大切かと存じまするので、事務当局からただいままで入っておる情報、こういうものによりまして状況を、お答えをいたす前に先に御説明をさせていただきたい、かように存じます。
  163. 玉木清司

    ○玉木政府委員 御指摘のように、必ずしも全面的な御同意をいただくまでに至りませずに訓練を開始するという事態に相なりました。先生指摘のように、今日に至りますまでの紆余曲折というものにつきましては、十分御理解いただいていると思いますが、私どもとしましても、最終的な合意をいただき得ないで訓練を開始せざるを得なかったことにつきましては、なお一層の努力をしなければならぬというふうに考えておるところでございます。  町民あるいは地元の直接に被害を意識されております方々とのわれわれの対話でございますが、先回ここで御報告いたしましたことのほかに、十四日には、代表の皆さん方防衛庁長官とが直接に話し合って対話をいたしましたが、最終的な相互の理解が得られるまでには至らなかったという状態でございます。  なお、本朝来の状況でございますが、朝早くから反対を主張されます方々が基地周辺に集まられまして、その意思表示を行っておられますけれども、町当局とわれわれとの間の関係は、けさ七時四十分に町長が面会を申し入れてまいりまして、七時五十分から十五分間、町長、議長及び区長の代表二名、計四名と基地正門の近くにございます面会所におきまして基地司令が応対をいたしました。その際に、町長その他の方々の御主張は訓練を中止しろということでございましたが、るる経過を申し上げて御期待に沿うことができないという旨を申し述べ、対話は終わっておる次第でございます。  なお、町長はその会談終了後、八時五分に正門から外に出ようといたしましたが、基地司令から電話による報告によりますと、出ようとしましたが、デモ隊に押し戻されて少し危ないと思われたので、面会所の中で九時二十五分まで休息をとっていただいて、それから基地外に退出をしてもらったという状況でございます。
  164. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は、問題の本質を十分理解してもらわないとさらに今後このような紛糾が重なると思っておるわけです。というのは、八日の現地における施設庁当局との話し合いでも、住民の意思がどうであろうとも、了解を受けなくても、この演習というのはわれわれはやるのだと非常に高姿勢で臨んでいることが新聞に報道されております。これでは今後さらに現地における住民の反発がますます強まる。これは米軍の基地ではないわけであります。防衛庁としてはこれから一定の期間この訓練が続くと見る、あるいはこの訓練で抵抗がなければ米軍のいわゆる永久基地として新田原を使う、あるいは今度のF15の場合は、滑走路の整備並びに延長を図らなければ十分にその効力を発揮できない。少なくともF15の場合は七トンの爆弾を積載するわけですから、かなりの構造的な改良も必要だ。今回の場合はミサイル等の搭載はしないという答弁がありましたが、恐らく永久基地化あるいは長期の訓練が十分に予想されるわけでございますから、この際防衛庁当局としては、完全な意見の一致を見るまで、いま申し上げたような関係について住民の理解が得られるまでは問題の訓練の行動を中止する、事前の話し合いが了解するまで中止するだけの慎重な配慮が必要だと思うのですが、長官の見解を承りたいと思います。
  165. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えを申し上げます前に、実は、ただいまの御質問の中にありました米軍の基地にするとかそういう具体的な問題についていろいろ御心配があることはごもっともだと思いますが、そういう点につきまして、また、今回の演習の中身、そういうものにつきまして事務当局から先にお答えをさしていただきたいと思います。
  166. 玉木清司

    ○玉木政府委員 今回開始いたしました演習は、さきに御答弁申し上げましたように、年間四回、一回あたり約一週間の期間を限りまして、異機種、すなわちF104が現に配置されておりますが、F104以外の機種との空中におきます戦闘技術を向上させるということで、異機種との訓練をやるという目的のために一週間ほどやるのだということでございまして、これは御答弁申し上げましたとおりの計画でございますし、これによりまして恒久的な配置とかいうようなものにつながるものでないことは、ただいままで御答弁申し上げてきたとおりでございます。  なお、滑走路の問題を御指摘ございましたが、現在二千七百メートルで、オーバーランを入れますと、両方に三百ずつのオーバーランがございますので、当面予想されます将来の航空機につきましても、延長という問題は技術的には俎上に上らないのではなかろうかというふうに存じておりますが、滑走路面の耐力を向上させますための問題は、将来重い機種が配置されるようになれば問題になろうかという感じがいたします。
  167. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これはもう時間の関係で私は打ち切りますけれども、問題の焦点は、長官は余り歴史は御存じないと思うのですけれども、過去においては新田原は航空隊の訓練校として地元に置かれておる。それが結局訓練校から実戦部隊へ転換しておるわけですよ。しかも飛行機の機種も最新鋭の飛行機を、次々実戦に対応できる飛行機を持ってきているということからも、防衛庁の言うことは信用できないという基本的な背信感があるわけですよ。だから今度の場合でも、滑走路は延長しません、それから米軍は長くおりませんと言っても、これは日米合同委なり、あるいは地元の関係市当局と防衛庁が正式に書面による文書の交換をしない限りは、またほごにされるという懸念があるわけです。まして、最近極東における情勢等も非常に厳しい状況にあるという点等からも、私は、地域住民が心配するのは当然であって、心配するのが無理だと言う方がめちゃくちゃだと思うのです。ですから、早急にそういう点の合意に関する地元との書面の交換ということを最後に防衛庁に強く要請し、長官の見解を承って、私の質問をこの件については終わります。
  168. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  この新田原基地のございます新富町の町長さん、議長さん初め数人の方に私も先日ちょっとお会いいたしました。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 これまで長い間この基地の問題について非常な御協力をいただいておる町であることをよく承知しております。それが今回こういう状態でございますので、原因につきましてはいろいろ経緯があるようでございます。私も伺いました。経緯があるようでございますが、いずれにしても現実の問題としてきょうこういうトラブルが起こっておるということ、これはもうまことに遺憾なことでございまして、このようなことはないようにしなければならぬ、こういうことでございますが、この演習は、束の方では三沢を中心にやっておる。西でどうしても防衛の訓練上やる必要があるということから、年四回程度とただいま御説明がありましたように、やらなければならぬ、こういうことになっておりまして、やむを得ず万全の御承諾というものが、地元との合意が得られないままで本日から約一週間始まることになったわけでございます。  こういうことでございますので、私どもとしましては、国の防衛の問題と地元の皆さん方の先行きの心配、あるいは米軍の基地にしてしまうんじゃないかとかあるいはいろいろ御心配があとことを、私も町長さん初め地元の皆さんから聞きました。そういうことでございますので、これは私どもとしてもさらにこの問題につきましては十分話し合いを続けていかなければならぬ問題でございまして、防衛庁は国の守りの点からやはりやらなければならぬという必要性を、これはもういろいろな角度から検討をいたしまして絶対必要性があると、こう信じてやらせていただきたいと、こう言っておるわけでございます。やらなければならぬと、こう考えておるわけでございます。したがいまして、本日のような状況がこの今回の演習につきましても起こらないように、いろいろいま現地でも苦労しておるようでございます。また、町当局の方も、それから一部警察の方々も間へ入っていろいろ苦労しておられるようでございますが、今後の問題につきましてはさらに誠意を持って十分に話し合いを続けてまいりたい。この点につきましては私も地元の皆さんと先日お約束したわけでございます。  こういうことでございますが、今回はもうどうしてもやらせていただかないと、約束を破るということになってしまうわけでございます。いま御趣旨にございましたように、これまで長い間御協力いただいておりますだけに、私としましても今後十分この点につきましては全力を挙げて御了解いただけるように、またどうしたら御了解いただけるかということについての措置につきましてもひとつ十分配慮をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  なお、恒久的な問題等につきましては、先ほど施設庁長官がお答えしたとおりでございます。
  169. 兒玉末男

    ○兒玉委員 余り防衛庁は高姿勢で臨まないように、けが人が出たということもやはり住民の怒りがあらわれた証拠でありますから、ひとつ十分慎重な配慮を強く要望します。  次に、農林水産、通産関係でございますが、すでにきのう農林大臣の方で対策が出ておりますが、冬野菜の高騰の関係であります。これは大都市の庶民にとっては非常に大きな課題でありまして、農林省からいただいた統計でも、昨年十二月下旬の統計で大都市における流通段階の段階別価格水準動向でも、大根、白菜、キャベツ、ホウレンソウ、ピーマン、こういうものはいずれの都市においても前年の同期よりも、たとえば大根の場合が二倍、白菜が四・八倍、キャベツが四倍、ホウレンソウが二・二倍、ピーマン二・三倍、こういうふうに庶民の台所を暴騰で襲撃をしているわけであります。私は、緊急的な場当たりでなくて、やはり大都市周辺における需給の関係、あるいは園芸作物の生産農家に対する需給と長期の対応策というものの解決を図らなければならない、また農協団体等の集荷体制等でも、一時的な金もうけを中心とした仲買業者等が早目に買い占めをして、そして暴利をむさぼっている、こういう傾向等含めて、適切な対応策が必要でなかろうか。  それからもう一つは、昨年末発生しましたかずのこの問題でございますが、これにしても、新聞報道等見ていると、まことにばかげた行動が商社行為として行われている。しりぬぐいは、末端の中小企業にツケが回るということであります。先般水産庁の見解を聞いたが、かなり事前にそういう行動のないようにという勧告もしているようでございますが、これは農林省と通産省関係であろうかと存じますが、まずこの二点について見解を承りたいと存じます。
  170. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まず、野菜の方からお答えをさせていただきます。  野菜につきましては、まことに値段がそういう形で昨年と比べまして非常に高騰いたしておりまして、非常に遺憾に存じておるわけでございますが、先生承知のとおり昨年、一昨年というのは逆に大変野菜の価格が安かったときでございまして、それとの比較で非常に高いということに加えて、もう一つ大変残念なことには、去年の秋、御承知のとおり十月に入ってから台風が二回もやってまいりまして、しかもその台風が全国的にずっと南から北まで行った。そうして、その影響でその後引き続いて日照りが余りございませんでした。こういう関係から、大体主産地で二割から四割たしか生産が落ちておるわけでございます。結果的には、品物がないところへもってきて、ないものですから値段が高くなる。そうして、その値段の比較をされると、逆にその前の年は非常に豊作の年であった、こういう豊作の年と不作の年と重なってしまったものでございますから、大変申しわけない現象になっておるわけでございます。  私どもといたしましては、しかし春物については逆に去年と比べて作付面積も大体横ばい、同じような作付面積でございますし、天候につきましても、その後順調な天候の推移を見ておりますので、四月以降に出荷される場合には、逆に非常にまた今度は安くなってくるのではないかということを考えております。そういう暴落する場合もあるかもしれないということでございますので、この端境期の対策としてきのう発表させていただいたように、四月に出荷する予定のものをなるべく三月に出荷をするように、極力奨励金までつけてひとつ出させようとかいうような対策を立てておるわけでございます。  それから、いま御指摘のように、今後は重要野菜対策事業というような形で、ひとつ需要に見合ったような形で生産され出荷されるというよう形に指導してまいりたいと思って、五十五年度の予算では新しい事業も計画をいたしております。  私どもは、いま御指摘のとおりやはり消費者にも御迷惑をかけてはなりませんし、また実際野菜をつくっていただく農家の方にもある程度安定した収入が必要であろうと思います。そういう両方のことをにらみ合わせながら今後強力な政策を進めてまいりたいと思っております。  また、青田買いというのはほとんどないと聞いておりますが、畑買いは相当あるようでございまして、畑買いをしてしまってそれで投機に使うのじゃないかという御指摘でございますが、なるべくそういうことのないようにしなければいけない。私ども承知しておるのでは、大体市場価格でやっておるのでそういうことはないと聞いてはおりますけれども、なお一層投機的にそれが使われるようなことのないようにこれはしていかなければならないと思っております。  それから、かずのこの問題でございますけれども、いまお話しいただきましたように、私どもは、昨年の秋のかずのこのCIFの価格も相当高くなってきておりましたので、これではいけないということで商社を呼んで、とにかくなるべくめちゃくちゃなことにならないようにということを再三注意をしてきたわけでございます。しかし、必ずしも私どもの行政指導がうまくいかなくて値段が非常に高くなった。高くなったために逆に消費者離れをして、結果的には北商のような倒産まで起きた。こういうことであろうと思いますが、今後より一層この点については強力に行政指導をしてまいりまして、なるべくそういう投機的なことは避けなければいけないことは当然でございまして、十分その辺は厳重に指導をしてまいりたい、こう考えております。
  171. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 通産省といたしましては、かずのこの価格の高騰に対処するために、昨年十一月末に農林水産省と一緒になりまして、輸入商社を日本水産物輸入協会に集めまして、かずのこについて適正な価格形成を行うこと、今後海外での過当な買い付け競争は慎むこと等の指導をお願いした。また十二月には個別に商社を通産省に呼びまして、事情をよく聞くとともに、同様の指導を行った次第でございます。
  172. 兒玉末男

    ○兒玉委員 通産大臣、再度聞きますけれども、通り一遍の指導ではなかなかこの問題は解決できない。また来年も同じことが繰り返される可能性がありますし、高値操作というのは商社の当然の行為だということが新聞等でも取り上げられているわけですね。だからこれによって一番被害をこうむるのは、最終的には末端の小売業者あるいはそういうふうな資本力の小さいところにしわ寄せがいって、それで中間の商社はぬくぬくとする、こういう点については今後ひとつ厳しい行政指導なり監督を行って、このようなことが再度繰り返されないように厳重な指導を強く要望申し上げたいと存じます。
  173. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そうしたいと思います。
  174. 兒玉末男

    ○兒玉委員 農林大臣にお伺いしますが、さらに園芸作物に関連しまして、九州では熊木、長崎、宮崎、大分、それから和歌山、静岡等ミカンの生産県においては、野菜と違って深刻な価格暴落から、大体キロ当たり生産原価八十円程度かかるのに二十円ぐらいしか手取りがない、ミカンをちぎりに行くよりもそのままの方がいいという異常な現象であります。この点はもちろん、園芸作農家自身にも反省の余地があろうと存じますが、農林省としては、やはり品質の転換なりあるいは摘果の強力な指導なりあるいは加工等のいろいろな角度から指導をお願いして、少なくとも生産農家の経営がこれ以上不安定な状況にならないような的確な指導が必要ではないかと存じます。特に園芸、なかんずくミカン作農民に対する指導を今後どのように行おうとしているのか、お伺いしたいと存じます。
  175. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私も実は、先生の県は行けなかったのでございますが、お隣りの大分県は一月に視察をさしていただきまして、あそこの国東半島ですか、大変大ぜいの方々から強い御要望がございました。温州ミカンが非常に余ってきたということで、大変御心配でございました。私もこの点については現地で十分声を聞いてまいりましたので、何とか対策を考えていかなければならないと思っております。  御承知いただいておりますように、従来も出荷調整なりあるいは加工用により多く向けるようにというような指導もしてまいりましたし、また現実に、果汁を学校給食でより多く使っていただくようにとかというようなこともやってまいりました。また、温州ミカンから晩柑類への転換というようなこともお願いしてまいりました。しかし、それがまだ十分いっていないわけでございまして、現在は果汁の調整保管に対する倉敷金利などの助成措置についてもっとより多く考えろとか、あるいは従来借りておる農業近代化資金あるいは農林漁業金融公庫からの融資を受けているものについてはぜひひとつ延ばすように考えてくれとか、いろいろの御要望もちょうだいいたしておりますので、私どもこの問題についていま真剣に取り組んでおるわけでございます。できるだけ早い機会にひとつ何らかの回答を出したいと思っておりますし、今後についてもより強力な形で生産調整をやっていただけるように進めていきたいと考えております。
  176. 兒玉末男

    ○兒玉委員 農林大臣に再度お伺いします。  いま申し上げたような対策は、やはり個々の農家としてではだめだと私は思うのですよ。生産地帯というのは大体集中しておりますから、個々の農家でなくして集団的な農家の栽培形態というものを、そういうふうに国の助成をいただきながら、言われたように晩柑に切りかえるとか、あるいは宮崎等の場合はポンカンが非常に成績がいいわけですね、そういう方向に切りかえるとかいうことを、集団的な農家の栽培形態として展開していかなければ、個々の場合ではむだな金を使って、その効果は薄いと思うのですが、そういう点について、集団的な栽培形態の計画ということについてはどういうふうにお考えか、伺いたいと思います。
  177. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま私どもは、米の転作に関連いたしまして、できる限り転作については集落的にやっていただくようにお願いしておるわけでございます。また、晩柑などについての変更につきましても、個々の農家だけでなくてやはり集落でよく話し合っていただき、また農協などでもひとつよく指導していただいてやっていただくようにお願いしておるわけでございまして、先生の御指摘のような方向で私ども努力してまいりたいと思っております。
  178. 兒玉末男

    ○兒玉委員 時間がありませんので次に移りますが、環境庁関係についてお伺いします。  実は昨日当委員会でも取り上げられまして、総理大臣も前向きの姿勢の答弁があったわけでございますが、いずれにしましても環境影響事前評価基準の設定ということは、過去四回国会に提起されながら日の目を見なかったいわくつきのものであります。この点は建設省なり通産省なり厚生省、農林省、運輸省、非常に広範な関係を持つ関係から、きのうの総理の答弁も、ようやくみこしを上げて、何とかぜにゃいくまいというふうな、余り前向きの答弁ではなかったように受けとめるわけでございますが、主管庁である環境庁長官として、このアセス法の今国会での成立についての決意のほどをまず最初ひとつお伺いをしたいと存じます。
  179. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  環境影響評価の法制化は時代の要請である、かように私は確信をいたしておる次第でございます。残念なことに、先ほど先生指摘なされましたとおり、歴代の大臣が何としても法制化しようということで大変御努力をなされた次第でございますが、ついに今日まで日の目を見るに至らなかった次第でございます。特に前通常国会に出すべく環境庁といたしましても全力を挙げて関係機関と鋭意折衝をいたしたのでございますが、これまたついに話し合いがうまくいきませんで、会期内に法律を出すまでに至らなかったような次第であります。  昨年の四月の十日に中公審の答申もいただいております。一日も早く法制化するべしということでもございますし、また去る一月二十三日に自民党の政調部会の環境部会におきましても、関係各省と折衝に入ってもよろしいというゴーサインもいただいておりまして、ただいま関係省庁と鋭意検討をいたしておるような次第でございます。昨日総理の御答弁もございましたし、私といたしましても、何が何でも皆様方の御理解、御協力をちょうだいいたしまして、今国会にぜひ法律として出していただきたい、ただいま全力を傾けて努力いたしております。御理解を賜りたいと思います。
  180. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ただいまのアセス法案の提案については環境庁長官の決意を聞きまして、これにはやはり建設省なり通産、厚生、農林、運輸等各省の積極的な協力がなければ、環境庁長官だけが孤立してまた前車の轍を踏むということになりますので、各省は積極的な協力をお願いしたい。  それに加えまして、先般の委員会でも若干触れましたが、新たな見地から「クルマ社会抜本見直し」という見出しで、交通公害に対して総合的な対策、すなわち総量規制方向を検討し、これを中公審に諮問してこれの実現を図るということが報道されております。これはけだし当然のことでありまして、アセス法にも比肩するほどの重要な課題でございますが、第一点、総量規制の場合では、まず建設省関係では、道路使用に関連する問題が一つの大きなネックであろうと思うのですが、建設省としてはこれにはどう対応しようとするのか。  それから通産省関係は、何といっても大型化された最近のトラック、バス等の排気ガスの規制ということが、この総量規制とは密接不可分の関係にありますが、通産省としての対応はどう考えておるのか。  なおまた、運輸省としては、やはり大都市へのこの車公害の影響が、五人のうち四人までがこの車公害の影響を受けていると言われているわけでございますが、これにどのように対応されようとしておるのか。  また、厚生省としては、これが与える地域住民への健康ということに重大な関係を持つわけでございますが、厚生大臣としてはどういうふうな対応を考えておるのか。  さらに、農林省関係としては、今日、二百海里専管水域の時代であり、しかも燃油が高いために遠洋から近海漁業への大変な不振が続いておりますし、当然これから沿岸漁業等についての見直しをしなければいけない重大な転機を迎えておるわけでございます。やはり工場排水、排煙、廃液等が今日、内海なり沿岸漁業に大きな支障を与えておるわけでございまして、すべてがこの環境基準の問題、大きなポイントになっているわけでございますが、これらの点について関係各省の見解をまず承りたいと存じます。
  181. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  先生御案内のとおり、総理府が昨年行いました交通公害に対する世論調査の結果を見ましても、騒音で四四%を占めております。それからまた、公害の発生源といたしまして五一%、交通機関を挙げております。今日、この交通公害は大変な大きな社会問題であろう、かように私は信じております。  そこで、環境庁といたしましては、庁内に総合的な交通対策を確立するために検討会を設けまして、昨春来鋭意検討をいたしておる次第でございます。また私、昨年の暮れに東名高速道路の川崎インターチェンジを中心といたしまして視察をして驚いたことに、典型七公害のうち、特に大型トラック、ディーゼル車等が三公害、騒音、振動、大気汚染ですか、占めておるようなあの実態を見て、さぞかし沿道の皆さん方は大変御迷惑を受けておるのではないかということを、身をもって体験をいたしたような次第でございます。  そこで、私も素人でございますので、専門家や学者の意見を承ろうということで、先月の一月二十一日に交通公害問題に関する懇話会というのを第一回目を開きまして、いろいろと御意見を拝聴し、また三月早々にでも第二回目の会合を持ちたい、かように考えております。庁内におきましても、いろいろの角度から検討いたしておりますし、また、この専門家の先生方の御意見等も踏まえまして、でき得れば七月ごろをめどに中公審に諮問をいたしたい、かように考えております。
  182. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 排気ガスの規制問題に関しましては、担当局長から御説明させます。
  183. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  いまお尋ねのありました排気ガスの規制の問題につきましては、特に大型車の問題でございますが、環境庁、運輸省とも十分協議して問題を検討してまいりたいと思います。通産省の方といたしましては、特にこの方面の技術開発の問題というのが大事だと思いますので、この点につきましてできるだけの努力をいたしたいというのが私ども考え方でございます。
  184. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 自動車の排気ガスあるいは騒音等非常な交通公害を防止するために、いろいろ発生源対策、周辺対策に努力しております。またさらに、地下鉄などを整備し、ハス輸送をさらに強化いたしまして、マイカーなどからそれらの輸送機関に誘致するように努力してまいりたい、かように考えております。
  185. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 交通公害の問題でございまして、これは環境庁なりあるいは運輸省の所管のことであると思いますが、厚生省といたしましても、国民の健康を守る立場におきましても、各省庁と連携を保ちながら、そういうことのないように協力をいたしてまいりたいと考えております。
  186. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま先生指摘のとおり、二百海里時代を迎えまして、私どもやはりこれからは沿岸漁業中心として、あるいは栽培漁業と申しますかつくり育ててとる漁業、こういう形で、そういう方向を重要視していかなければならないと考えております。そういう意味においては、水質がよくなることが当然望ましいことでございまして、従来も水質汚濁防止法などによっていろいろとやってきていただいておりますが、今後ともそういう面においては、環境庁ともよく相談をしながら、よりよい水質になるように努力をしていってもらいたい、こう考えております。
  187. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 建設省の立場から申し上げますが、私どもはやはり道路交通に伴いまする騒音、振動、大気汚染、こういうものに対しましては十分の配慮をせねばならぬというのはかねがね考えておりますが、特に騒音に対しましてはいろいろと配慮をいたしておりまして、ただそれのみでなく土地利用等の問題ともあわせ考えまして、将来に対しましても万全な制度をつくってまいりたいといろいろ検討いたしてまいりましたが、今度の国会には、沿道環境整備制度という形で法案をお願いいたしたいと思います。これらを通じまして道路交通に伴いまする公害に対しまする抜本的な措置を講じてまいりたい。そのためには、もちろん環境庁ともよく御連絡をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。  詳しいことは、必要でございますれば後ほどまた局長から説明をさせていただきます。
  188. 兒玉末男

    ○兒玉委員 建設大臣に再度お伺いしたいわけですが、最近建設業に関連する中小企業の倒産が非常に多い。いただきました統計資料によりましても、土建業関係でも四十五年から五十四年までの推移の中で、特に昨年は一万六千三十件の全産業の倒産のうち、建設業というのが二八・二%、四千五百十一件を占めておりますね、これは非常な比重だと思っているわけですよ。  それでわれわれが地域において聞くことは、現在土建業関係は、建設省直轄の場合でもいいのですが、土木、建築とも等級が決まっているわけですね。その中でA、B、C、D、Eというランクがありますが、これは大体各会社の数ですね、それがもしわかっておればお聞かせをいただきたいと思います。
  189. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 お答えいたします。  一般土木の例で申しますと、建設省の直轄工事で指名願いを建設省に出しておりますA業者が百七十一社、B業者が七百十二社、C業者が三千八百二社、D業者が五千三百七十七社、E業者が六千四百三十二社、合計で一万六千四百九十四社でございます。
  190. 兒玉末男

    ○兒玉委員 だから、ほとんど一割か二割程度が一億以上の仕事を請け負う業者ということになっているようでありますね。  そこで、われわれが非常に感ずることは、この倒産した業者というのは、いま言われたランクでいえば大体どのランクに入っている階層か、わかりましたらお聞かせください。
  191. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 四千五百社余りのうち、その大部分がC業者以下だと思います。
  192. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣にお伺いしたいわけですが、もうこれはわかり切ったようなことなのですけれども、こういうようにせっかくのランクを決めておっても、大手の業者がいろいろな会社の組織を変えて小さな末端の、いわゆる一千万か二千万程度の領域まで実は侵略しているという苦情をわれわれは聞くわけですよ。このランクの設定というのは、先ほどお話がありましたように、倒産業者の大半がC以下であるということは、資本力の膨大な大手業者があらゆる手を打ってそういう分野まで入ってきて、この決定した分野を守っていないところに私は最大の原因があるというのが一つです。だから、今後その分野の確保についてはどういうふうな対応をお考えになっているのか、第一点お伺いしたいと思います。
  193. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えします。  ただいま先生のおっしゃいますように、中小建設業者の倒産を防止し、または中小企業の振興を図るということは大変大事なことでございますが、そういうような意味におきましては、私どもも中小建設業者に対しまする受注の機会の確保を図るということに努力をいたしておるところであります。昭和五十四年度建設省所管事業の執行についてという通達を出しておりまして、発注の標準を守りまして、契約予定金額に対しまして等級より上位の建設業者を選定することは極力避けてもらう。なお、優良な工事成績を上げておりまする中小建設業者につきましては、極力施工能力等を検討いたしました上で、上位の等級に属しまする工事に指名するというような積極的な受注機会の確保等も図っておるつもりでございますし、なお、分割発注を進めていくこと、共同請負制度を適用、活用するということにつきまして、各発注者に対しても指導をいたしておるところでございます。なおその結果、建設省所管の建設工事につきまして、中小企業向け発注割合の目標は毎年度立てまして、これを実行するように努力をし、督励をいたしておるところでございます。  もう一つ、中小建設業者の経営規模が非常に脆弱でございますので、それを漸次改善をしてまいらなければなりませんので、そういうような意味におきましては、総合的な建設業振興策というものも進めておるつもりでございます。  なお、いまお話がございましたけれども、私どもといたしましては、これらの問題につきまして、元請、下請関係の適正化というようなことにつきましても積極的に努力をしておりますし、また各県の行います仕事等につきましても、知事あてに通達を出しまして積極的にお願いしておりますので、お話しのような件につきましては、今後とも努力をいたしてまいりたいと考えております。
  194. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣にお伺いしますけれども、公共事業関係というのは、工事請負業者が一括してまた下請に出すということは法的には禁止されているのじゃないか。  それからもう一つは、下請代金の支払い遅延防止に関する法律というのがございますが、われわれが聞いた範囲では、下請代金支払いの遅延防止ということで、法律の条項では、大体下請業者に支給すべき経費を元請業者が取ってから六十日以内に支払うように義務づけてあるように私は解釈していますが、そのとおりですか。
  195. 宮繁護

    宮繁政府委員 お答えいたします。  下請代金の支払いにつきましては、下請業者の資金繰りを圧迫することのないように、その適正化につきましてかねてから指導いたしておりまして、五十三年には元請下請関係合理化指導要綱を策定いたしまして、下請代金はできるだけ現金比率を高めること、手形によります場合もできるだけ短期のものにするように指導いたしております。また元請、下請の契約が必ずしも文書ではっきりしてないような場合も多うございますので、標準の下請契約約款をつくりまして、これに準拠いたしまして現金、手形比率をはっきり明示する、あるいはまた手形の期間を明確にするような下請契約を締結するように指導いたしております。それで指導の徹底を図っているところでございますが、逐次この現金払いの比率も高まってまいっておりますし、手形期間の短縮も逐次改善を見ておるわけでございますけれども、なお一層徹底的にこの指導を強めていきたいと思っております。
  196. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから公共事業の一括下請は禁止されているのかどうか。
  197. 宮繁護

    宮繁政府委員 一括下請は、特別の場合で発注者の合意があります場合は別といたしまして、一括下請は禁止されております。
  198. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それに関連してお伺いしますのは、恐らく五十四年の四千五百件の倒産は、私はやはり下請業者に対する支払いが法的に保証されないというのが大きな原因じゃないかというふうに理解します。いまの御説明は、大体原則的に実行されているという御答弁ですが、現実にある有力な企業で、一年以上も長い手形を払って下請企業をいじめている業者もいるわけですよ。名前を言えといえば言いますよ。だから、こういうことが下請、孫請さらに曽孫請の末端の業界に対する大きなネックとなり、今日の土建業界の倒産を招いているのじゃないかというふうに感じますが、今後そういうような行為を徹底的に指導してそのような悪徳行為がないように、同時にまた、この倒産の原因なり、現在大手の企業がどういうような形で下請に対する支払い決済をしておるか。これは委員長、特に私は資料として提出を要求しますので、お取り計らいをいただきたい。
  199. 田村元

    田村委員長 建設大臣よろしいか。
  200. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お話しのような資料は準備するようにいたします。
  201. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから、建設省から公共事業労務費の調査結果というのを先ほどいただきました。新年度の予算を編成する際の積算の基礎になる資料でありますが、これによりますと、たとえば建設労働者の全国平均賃金というのを見ますと二十万二千五百六十五円、宮崎県の場合は十四万九千六百五十四円であります。賃金比率から見ても、この建設省の公共事業労務費調査の資料は、たとえば特殊作業員の場合で全国平均が、これは日給ですが、九千四百四十円、宮崎県の場合を例にとるわけですが、八千八百円。それから軽作業員の場合で、全国平均が五千三百五十九円で、宮崎の場合が四千二百四十一円。だから総体的な平均と地域の比較をする場合に、全国の労働者賃金平均に比較して、この建設省の設定しているところの労務費調査というのは非常に格差が少ないわけです。ここにも現実と建設省が設定している基準調査費との間に大変な格差があることがはっきり数字でわかるわけです。ということは、同じ建設省の直轄事業を請け負っている大手企業が結局は労務賃金の格差で膨大な利潤を上げているということが十分理解されるのですが、この辺の関係はどのように判断をされておるのか、御説明をお願いいたします。
  202. 宮繁護

    宮繁政府委員 お答えいたします。  公共事業の発注の場合の積算単価の中に織り込む労賃につきましては、建設省、運輸省、農林水産省、三省が調査をいたしております。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 これは大体事業所一万カ所、労務者の数が十六万人でございまして、元請の従事者が八万人、下請従事者が約八万人、こういう人たちにつきまして直接、特定の月の一カ月に支払われます労賃を賃金台帳から調査事項を複写し、または転記することなどによりまして調査を行ったものでございます。  それで先生お手持ちのものは、これらの調査結果に基づきまして決定を見ております数字でございますけれども、実際の発注に当たりましては、五十五年度でございますと、前年度の十月に調査いたしました数字でございますので、さらにそれに時点修正をするとかあるいはまた地域的、経済的な条件等を配慮して積算の単価を決定するわけでございます。この調査によります数字はボーナスあるいは税、保険料等も入っております八時間当たりの平均的な賃金水準でございます。現実に労働者の方に支払われる賃金は、日給の場合もありますし月給の場合もありますけれども、賞与等が後から支払われるということで手取りとは違うことは、調査の性格上そういうことになっております。  ところで、この調査に基づきます元請従事労務者と下請従事の労働者につきましての賃金格差等を調べてみますと、一番標準的な普通労務者につきましてはほとんど格差がないというような状況でございます。  以上でございます。
  203. 兒玉末男

    ○兒玉委員 これは私は、きょうは時間がございませんが、こういうふうな公共事業関係の積算の基礎において少なくとも元請が二割程度のピンはねをし、さらに下請、孫請に行って、結局は工事費の中に占める労賃の中からある程度のピンはねをしないことには、かなりの仕事の内容がずさんになるということがはっきり指摘をされるわけです。これはやはり今後そのような制度をもう少し厳密に指導し、あるいは支払いが一年にもなるというばかげた手形によってなされる、そういう点では今日の零細な下請企業に犠牲を強要している結果であり、そこに働く賃金労働者が、この簡単な平均賃金でも七割という開きがあるわけですね。十対七ですね。そういう点から考えましても、今日の公共事業を推進する過程における、なかんずく土建業界のこれはモラルの問題だと私は考えるわけであります。こういう点の、さらに現地の的確な資料をもとにして、今後の建設行政のあるべき姿について、特に建設大臣としては謙虚で真摯な気持ちで今後建設行政に取り組んでいただくために、最後に大臣の御見解を承りたいと存じます。
  204. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えします。  ただいま担当局長から申し上げましたように、大体元請と下請との賃金の差は余りないというふうに私どもは聞いておりますけれども、そういうお話もございますので、さらに私ども、資料も提出をいたしまして御検討いただくつもりでございますし、なお、中小企業の受注率も大体最近は大分目標を上回る実績を上げるようになっておりますし、支払いの状態も、大体百二十日以下というのが五割近くにまで最近上がって改善をされておるように私は承知をいたしておりますけれども、いまお話しのございましたように、元請、下請の関係あるいは中小企業の業者の受注確保等の問題につきましても、十分ひとつ私ども意を用いまして努力をいたしてまいりたいと思っております。  ありがとうございました。
  205. 兒玉末男

    ○兒玉委員 最後に、戦後処理の関係について、厚生大臣並びに総理府、外務省の方にお伺いしたいと存じます。  第一点は、戦後ソ連に抑留されましたいわゆる通称捕虜と言いますが、これに関しまして毎年請願が出されているわけであります。昭和二十年八月十五日の終戦を転機にしまして、いわゆるポツダム宣言の定めるところにより、陸海将兵は武装解除を受けて復員の途につき、平和な家庭の人となることが宣言によって全世界に明示されたわけであります。ところが、ソ連軍の支配下にあり捕虜として収容されたこの地区の人たちは約五十七万五千名と言われているわけであります。その中に、すでに死亡者五万五千名であります。少なくとも冬季では零下三十度以下の劣悪な労働条件、衣食住の条件のもとに大変な苦労をされているわけでありますが、その後何らこの要求に対するところの解決を見ないまま今日に至っておることは、まことにこのような該当者には遺憾の意を表明し、同時に、これの解決に政府としては責任を持って当たるべきだと私は考えるわけであります。  そこで、たとえば西ドイツ等の場合は昭和二十五年にこの問題の解決にいち早く踏み出して、この解決が済んでいると聞いているわけでございますが、これらの該当者が要求する問題点は、第一に、ソ連抑留者とその遺族に対し強制労働に相応する賃金補償をなされたいこと、抑留者とその遺族に対し精神的、肉体的被害について慰謝料を支給せられたいこと、抑留期間中の犠牲大なるにかんがみ心身障害者等に対する医療費の国庫負担を行うこと、現地墓参、遺骨送還を早急に図っていただきたいこと、こういうことが繰り返し繰り返し各地区で行われているわけでございます。私の同級生も五名がこの犠牲者でございますけれども、戦後すでに三十四年を越しております。これに対する政府の見解、外務省なり総理府なりあるいは厚生省の御所見をお伺いしたいと存じます。
  206. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 戦後処理の問題におきまして、とりわけシベリアで抑留生活を送られた人々の御苦労にははかり知れないものがあるということでございます。私どもといたしましては、この方々に対して何らかの処遇をすべきでなかろうかといろいろ検討いたしてまいったわけでございます。戦後抑留されたために病気にかかり傷ついたというような方々、または死亡された方に対しましては、御承知のとおり、軍人、軍属、一般民間人を問わずに恩給法、援護法によりまして遺族への給付あるいは障害給付が行われてきておるわけでございます。シベリアに抑留されまして無事に帰られた方々の問題については、確かに心情的には理解ができるわけでございますが、現行制度のもとでは、これを取り上げていくといろいろな波及の問題等もございます。果たして制度としてそこまで対象にすることができるか、そして何らかの処遇を行わなければならぬが、現行制度のもとではどうしてもそれが困難である、大変申しわけございませんが、いまのところそういうふうな考え方でございます。
  207. 清水汪

    ○清水政府委員 ただいま厚生大臣から御答弁がございましたことと私ども全く同じ考えでございます。抑留された方々の御苦労に対しましては大変な御苦労であったということでございますけれども、今日の時点におきましてその問題を取り上げることにつきましては、戦中戦後にわたります当時におきまして、全国民にわたり、あるいは内地であるいは外地におきまして種々さまざまな御苦労があったというようなことから考えましても、特にシベリア抑留者の問題だけをとりたてて何らかの措置をすることは、全体とのバランスの問題からいたしましてもきわめてむずかしい問題ではなかろうかということでございまして、政府といたしましても、たびたびただいまと同趣旨の御質問をいただくわけでございますが、同じ答弁を繰り返さざるを得ない立場でございますので、御賢察を賜りたいと思います。
  208. 兒玉末男

    ○兒玉委員 総理府の方にお伺いしたいわけですが、あとまだ軍歴通算の問題等もございますので、これは同僚議員の川俣さんから関連して聞きますけれども、シベリアに抑留されて強制労働に供されたのは、いわゆる捕虜という概念でおられるのかどうか、その点見解を承りたいと存じます。
  209. 清水汪

    ○清水政府委員 その点につきましては、あるいは外務省当局からお答えする方が筋かと思いますが、私も実は過去二、三年この問題につきまして御質問いただいておりますので、外務省当局がお答えいたしましたことを繰り返すことになろうかと思いますが、終戦直後の当時における措置等からいたしまして、いわゆる戦争捕虜、戦争俘虜というふうに考えるものではないということでございます。
  210. 兒玉末男

    ○兒玉委員 外務省はどういう見解ですか。——厚生大臣にお伺いします。  ただいまの御答弁でございますけれども、西ドイツの場合の処理は、大体抑留者協会が言っているような主張が十分に配慮されて解決されているというふうに聞いておるわけですよ。だからそうするならば、日本の場合でも財政措置だけが問題であり、それをやればまた外地引き揚げ者がどうだとかああだとかうるさいから、もうこの辺で勘弁しておけというふうに厚生大臣は理解をされるのかどうか。  それからまた同じように、これに関連しまして軍歴通算で、任官者の場合は恩給等の関連もあって救われておるわけですけれども、任官できなかった一般兵隊の場合は全く見放されているわけであります。公務員とか公社勤務とかいう場合等は兵役期間が全部通算されていますね。当然厚生年金なり国民年金なり、この問題を含めて、俘虜期間を入れて軍暦通算の問題についてもこの際配慮があってしかるべきじゃないのか。これは先般三原総務長官時代に、調査費をつけて十分対処しますという御意見が団体との交渉の中でもあったわけですけれども、実際ふたをあけてみたらこれに関する調査費はついてなかったということで新任の小渕長官に強く要望し、小渕長官としても調査費の計上には最大の努力をする旨団体代表の前で表明されているわけです。これは当然、軍人期間を一〇〇%考慮できなくても、その期間の何年かだけでもやはり厚生なり国民年金期間に加算してやるのが——一銭五厘のはがきで召集され、あるいは満蒙開拓義勇軍の一員としてそのまま極寒の地に抑留され、そういうようなもろもろの情勢から国の政策に自分の意思に反して従った人が大半であります。とするならば、恐らく予算的な措置にしても何十億という金額じゃないと私は思うのです。その点について、政府としてはもう少し思いやりのある施策が強く要望せられるわけであります。この際、調査費の関係についてはどうなっているのか、せっかく大蔵大臣も御出席でございますので、この点について御見解を承ります。
  211. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 恩給資格年限に満たない軍歴者について、その年歴の期間を国民年金あるいは厚生年金の期間に通算して年金を支給すべきではないかというお尋ねでございます。  兒玉先生承知のとおり、恩給は国家保障という考え方に基づいております。基本的には旧軍人や文官に対する国の約束の履行であると考えておるわけでございます。それに対しまして厚生年金、国民年金などは、相互連帯の精神に基づきましてすべての加入者が保険料を納めて、それを前提として組み立てられておるという、いわば社会保険制度でございます。恩給とはその仕組みにおいて本質において全く異にいたしておるわけでございます。したがいまして、皆年金となる以前の期間のうち軍歴期間のみを通算することは軍属あるいは準軍属、さらに厚生年金制度発足前の民間人との均衡を失うということにもなるわけでありまして、言葉は適当でないかもわかりませんが、これが軍民格差とも言えることにも相なるかと私は思うのでございます。  ところが、御指摘のように、それならば公務員に対しては通卸しておるではないかということでございます。共済年金におきまして、一部の方、つまり公務員などは軍歴期間を通算しておりますのは、恩給制度は共済年金制度の前身でございますから、このことは厚生年金が旧厚生年金保険法の被保険者の期間を通算しておると同じことでございまして、これは決して官民格差と指摘されるべきものではないと私は考えておるわけでございます。  この恩給資格年限に満たない軍歴者に対する処遇の問題は、むしろそれ自体は恩給制度におきまする問題とは申しましても、現行の恩給制度ではどうすることもできないのではないだろうか。したがいまして、厚生年金保険や国民年金保険制度におきましても、軍艦期間のある者だけを特例的に取り扱いますことは、一般的に社会保障制度としての公平に欠けるではないかという観点からも問題がございます。大変申しわけございませんけれども、その軍歴期間をこの社会保障制度の中に通弊することはできないわけでございます。  したがいまして、恩給でもどうにも処理できない、同時に厚生年金、国民年金にも通算することはできないとするならばどうするのかということになりますならば、牧牛に駆り出しておいたその犠牲に対してどう報いるかという問題は、むしろ政府全体の姿勢として今後検討さるべきものではないか、かように考えておる次第でございます。
  212. 川俣健二郎

    ○川俣委員 関連して。いま厚生大臣がお答えしましたように、いまの制度内ではもがいてみてもどうにもならない問題であり、全面的な検討の上でというのはおっしゃるとおりでありまして、私もそう思っております。これはそれぞれの委員会で取り上げられ、古くて新しい問題なのだが、やはり戦後処理の中でどうしても取り残されている問題の一つがシベリア抑留者の問題であります。  そこで、きょうは肝心の総理府長官が、せっかく兒玉先生が取り上げるのにおられない。これは、時間の都合でどうにもならなければ私も了解しますが、政府として、シベリア抑留者の三年も四年も、あれは一体何だったのだろうか、賠償労働だったのだろうか、あるいは単なる戦争の捕虜の延長という解釈だろうか。ある委員会においては、あれは捕虜の延長だという解釈も出た。この件で、総理府長官でもおれば政府の統一見解を伺いたかったのだが、とりあえずその関係省の一つである外務省に、一体あれをどう位置づけるのか。そこの入り口から始まらないと、厚生大臣がおっしゃったように、単に社会保障でこれを救えと言ったって無理なんです。そういう観点で、一体あれは何だったのだろうか、今後どう扱うべきか、こういう考え方をひとつ披瀝してみてください。
  213. 武藤利昭

    武藤政府委員 外務省といたしましては、国際法の見地から本件を判断いたすわけでございますけれども、国際法上の問題といたしましては、降伏いたしましてソ連の勢力のもとに入りました軍人、軍属等は捕虜というふうに観念されるべきものと解しております。
  214. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、いま重大なお使いで園出前外務大臣、この方が、捕虜とはどう考えても概念づけるわけにはいかない、ポツダム宣言あるいはまた満州に大陸令——いまの東北ですが、大陸令というのがあったそうです。私らはわかりません。それによると、捕虜と言ってはいけないというところまで書いてある文章が出てきた。したがって、園田外務大臣は、捕虜ではないという答弁をその関係団体にはっきり答えているわけなんです。そういう考え方で概念を規定づけないと、この問題の制度には入っていけないということだからね。ひとつ委員長、きょうは総理府長官もいないことだから、厚生省も外務省もいろいろと関係するわけですから、せっかく予算委員会の一般質問で兒玉先生から出されておりますから、何とか理事会等でこれを検討するというお約束を願いたいと思うのですよ。
  215. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 ただいま川俣君から御提案のありました件につきましては、理事会において検討させていただきます。
  216. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それから、委員長、大蔵大臣に調査費の計上について御答弁をもらってないのですが……。
  217. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま厚生大臣の答弁を聞いておりまして、私は、仕組みは詳しくありませんが、それなりに、厚生大臣の答弁のとおりだな、こう思ったのでありますが、私がきょう兒玉委員にお答えしょうと思っておりましたのは、従軍看護婦さんのあの調査費については、五十五年度予算でこれを計上しておるところであるということを申し上げたかったわけであります。
  218. 兒玉末男

    ○兒玉委員 では終わります。
  219. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて兒玉君の、質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  220. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、主としていわゆる四十名学級問題について質問をいたします。  最初に大蔵大臣、文部大臣に伺いたいのですが、国民的世論とでも申しましょうか、現在の非行、自殺、さらには落ちこぼれというような問題が出まして、国民の要求がこの四十名学級ということに大変集中されてきたわけでございますが、この点について、私は、共通の認識としてこれは早く解決をしなければならない焦眉の問題であるという点では皆さんと意見が一致すると思いますが、まず文部大臣、この点どうでしょうか、早急に実現をすべき問題であるというふうにお考えでしょうか。
  221. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  教育は、御存じのとおり、早急にというかある程度見通しを持った形でいかなければいけないことと思っております。ただ、四十人学級の実現の問題につきましては、すでに国会におきましても委員会等で十分に御論議を願い、また御決議等も受けておったわけでございますので、五十五年度からどうしても発足をいたしたい、こういうふうに考えまして、現在の財政状況等もございますので、そこであのような計画を立てた、こういうことでございます。
  222. 山原健二郎

    ○山原委員 大蔵大臣、早く解決しなければならぬ問題であるとは認識をされておられると思いますが、いかがでしょうか。
  223. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国会の決議もございましたので、財政困難の折、この問題を基本的に実現をする方向で認めた、こういうことであります。したがって、財政と教育理念の調和をとった結果が今度の予算編成であったというふうに理解をいたしております。
  224. 山原健二郎

    ○山原委員 国民の世論、さらには子供たちの置かれておる実態から見まして、国際的にはもう全部二十五名から三十名で、ちょっと訂正しなければなりませんが、配りました資料の中にNHK作成のものが出ておりますが、NHK作成というのは大変恐縮でございまして、NHKの取材班が取材したものを転載されておりましたので私はここへ持ってきたわけでございますが、世界各国見ましても、三十名、二十五名というふうになっておるわけでして、われわれの調査またはいろいろな書物に出ておるものを見ましても大体これは一致しているわけです。そういう点から見まして、日本の国内においてこれだけ問題が起こっている、早く解決しなければならぬということ、これはもう一致した認識だと私は思っております。  そこで、文部省はこの問題について九年計画を立てられ、概算要求をされました。その中身は、九年で十二万人の教職員をふやすということ、それから教室増が一万三千教室ということです。そして教員増につきましては年次計画が出ておったのであります。これについてはもちろん国民の間から批判が出ました。九年というのは長過ぎるという意見が出ておりました。ところが、これが昨年末の十二月の予算折衝の最終段階におきまして、いわゆる十二年計画となったわけであります。  この十二年計画の中身はどんなものかと言いますと、わかっておりますのは要するに十二年であるということと、八万一千人規模の教職員の増ということでございまして、そして初年度、五十五年度に四十人学級のために五百六人の教職員をふやすということだけなのでございます。  そこで、この年次計画について伺いたいのでありますが、五十五年が五百六名、五十六年は何人になりますか。これは文部大臣に伺いたいのであります。
  225. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 五十五年は大体いま委員お話しになりましたとおりであります。五十六年の問題はまだ正式にはっきり決まったわけではございません。ただ、大体の考え方といたしまして、最初の五十五年、五十六年、五十七年、これは人口が、したがいまして生徒数が余りふえない地帯約一千市町村におきまして、各小学校一年生から順次いまの四十人学級の制度を採用してまいる、こういう考え方でいっておるわけでございます。五十六年におきます具体的数字につきましては、まだ正式に決まっておるわけではございません。大体の方向はそういうことでございます。
  226. 山原健二郎

    ○山原委員 たとえば昭和六十年度というものをとってみますと、一体その時点で四十人学級がどれだけ到達できて、そしてどれだけまだ残るかというようなことはおわかりになりませんか。
  227. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 先ほど申しますように、まだこれが最終的な計画として認められておるわけではございませんけれども、大体の考え方はほぼ固まりつつあるわけでございます。これは事務当局の方から答弁をさしていただきたいと思います。
  228. 山原健二郎

    ○山原委員 説明の前に、教育行政ですから、大体十二年間、八万一千人という数字だけ決まって、その途中でどういう状態になるかということは大変な問題なんです。  まず聞いておきましょう。年次計画があるのかないのか、どうなんでしょう。
  229. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 最終的な年次計画という段階ではございませんが、十二年を見通しましてのほぼの腹づもりのものは持っておるわけでございます。
  230. 山原健二郎

    ○山原委員 文教委員会に小委員会をつくられまして、昭和五十三年度一年間かかってこの問題を討議しました。そしてその結果は、文部省が悉皆調査をやる、全国の各学校についての調査をやる、その調査結果が出るからということで、最終的にはその調査結果に基づいて年次計画を立てて実施すべきである、これが各党一致した小委員長報告なんです。これをどう受けとめておられますか。
  231. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、ほぼの計画は立てておるわけでございます。
  232. 山原健二郎

    ○山原委員 事務当局から答弁さすと言いましたが、事務当局は年次計画を持っておりますか。
  233. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 事務当局からお答えをさしていただきます。
  234. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 今回の十二年計画でまずはっきり決まっておりますのは、十二年間に八万一千ほどの教員をふやす、その内訳は四十人学級に四万三千、それからその他の事務職員とか養護教員とか、免許外担任教員の増というものが三万八千人、その数は今回の標準法の中に法律事項としてはっきり規定をいたします。  そこで、先生御質問の点は、それらの八万一千人をどういうふうに各年度充足していくか、その計画が具体的に立っておるかというお話だと思います。そこで、四十人学級の方は、先ほどちょっと大臣からもお話がございましたけれども、これは最初の五十五、六、七の三カ年は黙っておっても子供の増に対応する教員が征年九千名くらいふえるということでございますから、四十人学級は人口減少の始まる市町村についてだけ、しかも既存の施設が利用できる範囲でこれをやらせるということでございますから、教員増としては五百名くらいになるわけですけれども、これを五十五年からそういう地区の小学校を六カ年かけてやる。そうしますと次に、その他の市町村についてはいつから始まるかということですけれども、これは私どもの腹づもりとしては、急増の三年が過ぎた五十八年度以降やりたい、やったらどうだろうかという考えを持っておるわけでございます。中学校も同じようにその後に続いて三年の期間を置いてやるというのが一応のめどでございます。それは各年度政令で決めるということになっておりますから、まだ具体的に毎年度これだけの数ですよというふうなことはどこにもお示ししていない。これは財政当局と御相談しながらやってまいりたい。  もう一方の三万八千人の方はどうかと言いますと、これはいま申しましたように、児童生徒の増に対応する教員の増、あるいは減少に対応する教員の減というのは不可避的な数字でございます。それから、四十人学級もいま申しましたように一遍地域的に、この地域はいつからということに指定しますと、それはまた走り出して途中でやめるわけにいかない数字でございますから、そこで三万八千人の方のその他の教員の増減の問題は、そのときの財政事情、経済事情等を勘案しながら、各年度どのくらい養護教員をふやすかとか、事務職員をふやすかということは弾力的に考えて、政令で決めてまいりたいというのがいまの考え方でございます。
  235. 山原健二郎

    ○山原委員 聞きたいことはありますが……。  この予算折衝の段階で、大蔵大臣と文部大臣との間に確認事項というのが交換をされております。これは資料に出しております。私は実はこれを昨日いただきまして、いままで新聞等にも報道されてまいりましたけれども、この中身を見てびっくりしたのです。一は、「計画期間は十二年とする。」これはいま御説明がありました。二は、「改善の規模は、学級編制基準の引下げに伴う増員も含め八万人程度とする。」八万人という、つまり最終段階は決まっているわけですね。三番目は、「財政再建期間中(特例公債から脱却するまでの期間)は、教職員の改善増は極力抑制する。特に児童生徒数の増加に伴う教職員の自然増が見込まれる昭和五十七年度までの間は、厳しく抑制する。」それから四番目が、「計画期間の各年度の教職員の改善規模は、経済情勢、財政状況等を勘案し、弾力的に決定する。」言うならば、極力抑制する、厳しく抑制する、弾力的にやる、こうなってまいりますと、年次計画が立てられないのはあたりまえのことなんです。これが毎年毎年財政状況によって教育行政が振り回されるという確認書ですよ。  しかも、文部大臣に伺いますが、特例公債から脱却する期間をいつと思っていますか。
  236. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 これはむしろ財政当局の方のお話を願いたいと思っておりますが、いまの見通しは五十九年というふうに私は聞いておるわけでございます。
  237. 山原健二郎

    ○山原委員 大蔵大臣、どうですか。
  238. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そのとおりであります。
  239. 山原健二郎

    ○山原委員 大蔵委員会において大蔵大臣が答弁をしております。第二枚目の資半に出しておりますけれども、特例公債の解消年限が五十九年度。いま文部大臣おっしゃったとおりです。しかし、これは財政収支試算ですよ。しかもそのときには、税収を見ますと現在の二十四兆六千六百億が四十九兆七百億という二倍になる計算の中で、特例公債の脱却時期を五十九年に押さえているわけですね。こんなことが果たしてできるのか。大蔵委員会における大蔵大臣の答弁を私もお聞きしておるわけですが、この税収は、自然増収というものを考えましてもとてもこういう数字は出てこない。私たちの試算では恐らく二十兆円の国税、地方税の増収が必要ではないか。こうなってくると一般消費税問題その他がまた出てくるわけで、この間の総選挙におきましても国民は一般消費税に対して大きな反発をしておるわけでございまして、こういう試算が守られるような状態では私はないと思うのです。そのことを確認書に書くとは一体何事ですか。しかもそれを文部大臣が、教育行政の最高の機関であり、教育行政を進め、子供たちを守る任務にあるあなたがこういうものに賛同するということは納得いきません。これはどうですか。
  240. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 これは毎年の状況にもちろんよるわけでありますが、ここでうたっておりますように、計画の期間を十二年とする、それからいわゆる四十人学級その他の職員定数の改善も入れて八万人程度とするということでございまして、その限りにおきましてはほぼの計画はあるわけでございます。三番目の財政再建期間中極力抑制する、これもまた財政当局の方から見られましてもこういうことになるのだろうと思いますが、私たちの方もこの八万名の中での四十人学級の問題は、これは御存じのとおり生徒数の状況に応じましてそのとおりやっていかねばなりませんから、四十人学級の方は私はほぼ計画どおり進められていくものだと思います。もう一つの方の定数改善の方は、若干の余裕を持った判断ができるかと思っておりますが、そういうことでこれはこなしていけるものだと私は思っておるわけであります。
  241. 山原健二郎

    ○山原委員 私は自分で試算をした数字を後で出しますから、聞いておいていただきたいのですが、要するに五十五年度の初年度の五百六名という数字と、それから改善分の二千数百名という数字は出ております。これはわかっていますよ。来年はどうなるか、再来年はどうなるか、十二年間どうなるか、これはわからぬです。計画がないのです。計画を立てようがないのです。財政事情によってその都度変わるというのですから。毎年予算折衝で、たとえば予算委員会が開かれているわけですが、予算修正問題も出てきておりますけれども、毎年これをやらなくちゃならぬ、こういう状態になるわけですね。およそ教育行政でこんなずさんなことは、私はいままでなかったと思うのです。しかも大蔵大臣が、日本の教育行政の重要な部分について十二年間にわたっての確認を文部大臣とするなどということは、私はあり得ないことだと思うのですよ。これはまさに大蔵大臣の越権行為です。しかも、財政に従属して文教行政が行われるということになりましたら、これはいままで私もたくさんの文部大臣に接触してきましたが、そんな者はおりはしません。文教行政というものがどれほど自主性を持って進められなければならぬものであるか、あるいは国民の合意のもとに行われなければならぬものであるかということを考えますと、一財政当局の支配のもとに置かれるなんていうことは断じて許せない。この確認書を廃棄しなさい。それくらいの中身を持っておるということを私は指摘をいたしたいのでありますが、これは文部大臣いかがですか。
  242. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 現在の予算、財政の立て方というのは単年度主義でございます。ほかのいろいろな建設計画その他におきましても、何年かの計画を持って進めておられるわけでありますが、私たちの教育に関しまするこの計画におきましても、過去の例から見ましても、ここでほぼ約束をいたしました計画は遂行されるものだと私は確信をいたしております。
  243. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣、いつまでも文部大臣をされるわけじゃありません。十二年先といえば、私が七十幾つになるのです。皆さんだってこの場所におるかどうかわからぬ。九〇年代の問題ですよ。いま一九八〇年代の初年度です。八〇年代の日本の子供たちをどうするかという問題で、九〇年代のことまで約束するなんてばかな話がありますか。  これは自治大臣にお伺いしますけれども、こんなことやられたら地方自治体はもうお手上げですよ。たとえば私の県の高知市に過密学級があります。これは一宮小学校と書いてありますけれども、これは学校を今度二つに分けなければ、生徒が多くて困るのですね。だからいま用地を買収する、そして建設をする。この建設をするときに、たとえば四十五人学級で建設をするのか、それとも、計画がないものですからいつここが四十人になるかわかりませんから、だから四十名になったときには、これはまた建て増しをやらなくちゃならぬという問題まで出てくるのです。これは自治大臣、本当に深刻な事態だと思いますが、私は各県の実態を見ますと、たとえば知事あるいは市長などは皆校舎建築について計画があると思うのですよ。そのときにいつ四十人になるかわからないということになりますと、いま一クラス四十五名で国の補助が行っておりますから、そこで変更が起こってくる。まあ生徒数が減るから、そこそこその辺はうまくいくんじゃなかろうかというようなことではなくて、やはり地方自治体が本当に計画できるのか、あるいはまた教員の採用の問題、配置の問題にしましても、毎年毎年その都度予算が決まらなければ人数の配置が決まらないなどということになりますと、また教育施設の設備充実の面から言いましても計画性がないままに、国がないものですから地方自治体も出てこないということになったら大変だと思うのです。自治大臣としては、こういう事態をどういうふうにお考えになるか、伺っておきたいのです。
  244. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 この問題は、私は四十人学級は賛成でございました。ただ、何といいましてもそれを実現するためには財政上許されるぎりぎりと、実現性を考えなければいけませんので、そういう面から私どもの方も、財政当局としてはこれは容易ならざる事態であるという認識でおったわけでございますが、当初の九年計画が十二年に延び、人員も十二万名から八万一千名ばかりになる。同時にまた、財政の大変厳しいこの数年間、できる限り金のかからないような方法で漸次やっていく、こういうことでございましたし、同時にまた、ふやさなければならぬ教室の数もたしか八千四百ぐらいに計画がなったと思いますが、そういうふうな事態を踏まえて、大変結構なことであるから、この程度であるならば何とか、地方団体に非常な財政上の重荷はかかりますけれども、そういう点については将来それらを踏まえて、何とか地方団体が可能なような財政上の方途、これらも考えながら実現ができるであろうということで賛成をしたわけでございます。  で、御質問の年度の計画がはっきりしていなければそれぞれの町村としては計画の立てようがないではないか、これは御説のとおりだろうと思います。それらの点につきましては、それぞれの年度でどういう御計画をお立てになるのか、文部省当局とも打ち合わせまして、むだのないようなやり方でやっていきたい、かように考えております。
  245. 山原健二郎

    ○山原委員 まあ答弁は答弁でそれは聞いておきますけれども、全く無計画な、これは驚くべきことなんですよ、十二年間。たとえばあと三年しまして、五十五、五十六、五十七年。五十八年ごろから小学校の生徒は減少していきます。それがそのころ一体どうなるのか。大体日本の教育のイメージが、姿というものが、私はかなり専門家のつもりだけれども出てこないのですよ。そしてどれだけの過密学級が残るか。たとえば秋田県などは、先生方が定数が減りまして大騒ぎになって、この間も請願が出されまして、その請願が採択をされております。そういう状態で、恐らく五十八年あたりからほとんどの過疎県におきましては、このままで行けば四十人学級が実現するんじゃないかと思います。ただ、過密の都市においては残るところが出てくるわけですね。そういうところをもし仮に知事が一挙にやってしまうというようなことになった場合に、この十二年四十人学級というのは逆の足かせになるということです。  それからもう一つは、過密学級、たとえば東京、大阪、神奈川などというところは最後まで残されるんじゃないか。第一、いまの自治大臣のお話を聞きましても、大平総理大臣の演説を聞きましても、施政方針演説では、子供は未来への使者である、行き届いた教育をしなければならぬということを言っているのです。ところが、各党の代表質問に対する四十人学級の答弁に対しては、既存の施設を使ってやります。要するに、金がかからぬようにやります、安上がり教育ですね。口では教育を大事にすると言いながら、金がかからぬようにやっていくのだというこの考え方、まさに私は八〇年代、子供ほったらかしの教育行政を志向しておると思います。そういう意味で非常に残念です。それで年次計画がないというわけですから、これはどうにもなりません。これは早急に出すべきだと思いますが、この点について一応伺っておきたいのです。
  246. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 先ほど申しますように、現在の財政の状況が単年度の編成をいたしておりますから、その意味におきまして、来年度以降の問題について不分明な点があるということを申し上げておるわけでありますが、しかし、十二カ年にほぼ八方、八万一千ぐらいになるかと思いますが、そういう人数の教職員の方々の増員をしてこれをやっていく、それから最初の三年間は生徒数の伸びがない地帯約一千市町村、これをやっていく、その後において他の市町村に手をつける、しかも、最初一年生から年次的な計画でやっていく、こういうところは計画として決まっておるわけであります。したがいまして、いま御指摘がありますように、全然手探りでやるという性格のものではございません。財政事情その他、もちろんそういうことの大きな点がこれからいろいろ変動することもありましょうけれども、四十人学級その他の見当はほぼそういうふうにつけまして、その都度全体の状況の中で各地方で御用意を願うようなものもあらかじめ御連絡のできるような、そういう状況でこの計画を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  247. 山原健二郎

    ○山原委員 結局、予算、財政優先ということで一応の目安は頭の中にあるんだということですが、問題は、過密学級の一番切実な要求としておるところがどこで解消されるかということなんですよ。それが出てこないでしょう。結局、九年間が延期されて、そしてあとの三年でやってしまう、人口が減少した段階で。あるいは場合によっては十一年間、まあ生徒数の減るところでそこそこやっておいて、最後の一年間でやってしまうということだって可能性のある文部大臣の御答弁ですよ。だから私はこれは本当に納得しませんが、私は計算してみました。  それで、資料をちょっと見ていただきたいのですが、この計算です。後ろから三枚目に出しておりますのは、九年間でやるときの文部省の案ですね。これがいまのところ消えたわけですから、十二年間で。  もう一つ、後ろから四枚目の資料です。これをちょっと見ていただきたいのですが、こういう状態が出てまいります。  一番上の資料は、昭和五十二年、五十三年、五十四年というふうに教職員の純増の計が出ております。いままで、大体年間一万五千人、一万七千人、一万六千人というふうに教職員がふえてきておるわけですね。  そして、その次の十二年計画に伴う教職員の増減、これは私の推定を含む資料をつくってみました。そうしますと、五十五年、五十六年、五十七年、ここまでは教職員の自然増なんです。大体九千名、八千名、九千名という状態です。それから、五十八年から生徒減によりましてずっと減っていくわけですね。五十八年が千六百三十五名というようにずっと減ってまいりまして、六十三年までは文部省の資料に出ております。ところが十二年間に延期になりましたから、六十四年、六十五年、六十六年の三カ年、これがどれだけ先生が減るかという計策をしてみますと、文部省の方を呼びましてお聞きしましても、これは三年間に平均に割ってみたわけですが、十二年間における増の分と減の分とを差し引きいたしますと、減が三万七百四十七名となります。恐らくもっと減るのではなかろうかというふうに私は思っておりますが、これがどういう事態を起こすかといいますと、一つは、これは平均して全国の先生方の減る数ですから、恐らく過疎県にとっては大変な事態が起こると思う。膨大な数の教員減が起こってくると思います。  次に、十二年計画で教職員の改善計画が五十五年度は二千七百五十六名、これはいま出ておりますからこのとおりです。しかし、そこから先は計画がないものですからわかりませんが、いま文部大臣もおっしゃておるように、十二年間で八万一千人これがふえる。この数字は確定をいたしておるわけですね、いまの確認事項で。そしてこの数字の中で四十人学級に伴う教職員の増がわかっておるのは五十五年度の五百六名のみです。二千七百五十六人の中へこれが含まれているわけです。それからは年次計画がありませんからわかりません。わかりませんが、これが四万三千百四十二名という数字になってまいります。  そこで、AとBの差し引きをいたしますと、五万九吾二十七名という数字が出てまいります。ところが五万九百二十七名でございますけれども、これだけ増員になるわけですが、最初の五十五年、五十六年、五十七年の間で約三万名の増がありますから、五十八年からの九年間を見てみますとほとんど先生はふえないのです。九年間で二万人弱という状態が出てまいります。私の計算では一万五千四百七十人になるだろうというのが一番下の注の六に出ております。そうしますと、いままで年間一万五千人程度ふやしてきておった。そのために財政支出もしてきたわけですね。ところが五十八年からは、これは私平均してみましたが、九年間は一年千七百十八人しか増員をしないという結果になってくるわけであります。大蔵省大もうけですよ、いままで年間一万五千人もふやしておったのに、十分の一もふやさなくてもやっていけるという計算になってくるわけですから。  そうしますといろいろな問題が出てまいります。過密県は恐らく後まで残るでしょう、既存の施設を使うというのですから。過疎県の場合は教職員の首切り、あるいは過密県に対する大転勤をしなきゃならぬという数字が出てまいります。そしてもう一つこれから出てくることは、過密学級、過密都市における現状は十二年間恐らく最後まで解決されないだろう。それから、過疎県におきましては生徒減に伴いまして四十人学級はほとんどできるだろう。むしろ四十人ではなくて三十五人というふうに数字を落とさなかったならば、恐らく大量の首切りもやらなければならぬではないか、こういう状態が出てまいります。しかも、年間千七百十八人しか仮に平均して雇わないとしますと、この九年分合わせて一万五千人ですから、一年間でばりとやれるぐらいの数字ですけれども、これを九年間に割ってみますと千七百十八人。教育学部を卒業する生徒だけでも二万八千人年間生まれてきているのですよ。退職者の問題がありますから推定はむずかしいのでございますけれども、退職者の場合だっていま停年六十歳問題が出ております。年金五十五歳が六十歳になるなどという問題が出てきますと、なかなかやめないという問題が出てくるのです。やめる人はいない、雇う増員の数は千七百、こうなってまいりますと、教員の需給関係だって一体どうなるのかという問題が出てまいります。  そうしますと、結局、あなた方が確認事項としている、また昨日閣議で決定されたという今度の定数法をまだ見ておりませんけれども、十二年間で四十人ということが結局足かぜになってしまう、やれるところもやれなくなる。御承知のように、山梨県では昨年度小学校一年生を四十人学級にしているわけです。今度二年生がどうなるかというと、大変混乱が起こっておりまして、一年生でクラスを分けておったのがまた一緒にしなければならぬなどという事態も起こっているわけでございます。こういうふうに、人口の動態あるいは教職員の増減、こういうものから考えますと、十二年間で八万人先生がふえるのだということが新聞へでかでか出ておるけれども、実態は、大蔵省にとっては全く支出ゼロでもやれるという状態が出てくる。  そうなりますと、いま教育予算が一般会計に占める比率というのは、もう一〇%を割ってしまいました。だんだんじり貧になっておりますが、もっともっとシェアは少なくなってくるということなんです。ここまで来ますと、結局文部省もお困りになるのではなかろうか、地方自治体も大変困った問題が出てくるのではなかろうか。  こういう計数をはじいたのでございますが、これは私がいまできる限りの資料を集めてつくった資料でございますけれども、この私の見解について誤りがあるとか批判があれば、簡単に言っていただきたい。どうでしょう。
  248. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  先生のお示しをいただきました資料に関しましてもう少し検討さしていただかなければ、先生も大変に時間をかけていただいたんだろうと思いますけれども、私の方も少し検討はさしていただきたいと思います。  ただ申し上げておきたいと思いますことは、確かに生徒数の増減の趨勢というものがわかるわけでございます。このことと、したがいまして、自然増もあれば自然減の時代に入っていくところもこれは当然あるわけであります。地域的にもそれらの異動等ももちろんこれは考えていかなければいけません。そしてそのほかに四十人学級に伴いまする教職員の増を考えていかなければなりませんし、あるいは他の標準定数をふやしていくという問題も考えていかなければいけません。その底にいわゆる生徒数全体の人口増による増減の問題があるわけでございます。もちろん御指摘になっておりますように、かなりの将来を見通しての体制を整えていかなければならぬということは同感でございます。先生のお示しをいただきました数字につきましては、もう少し検討をさしていただきたい、こういうふうに考えております。
  249. 山原健二郎

    ○山原委員 いまの文部大臣の御答弁、かなり問題が出てくるのですね。というのは、いまおっしゃったように四十人学級をやるための増も出てくるだろうし、それからまた一般的な教職員のいわゆる改善増ですね、事務職員をふやすとかいうような問題もありますからね。それもおっしゃったんですけれども、問題は、十二年間で八万という数字を確定しておるからそういうことになるのです。この八万の中には、いま文部大臣がおっしゃった数字は、四十人学級をつくるための教職員の増もそれから改善増も入って八万ですからね。そうでしょう。確認事項はそうなっているでしょう。学級編制基準の引き上げに伴う増員も含めて十二年間で八万、この確定がじゃまになるんですよ。これは外さなければならぬ、外さなかったら大変なことになる、いま文部大臣がおっしゃったようなことはできないんですから。十二年間八万という締めくくりのこの枠を大蔵大臣と文部大臣との間に確定された確認事項、これをのけなかったらどうにも動かないんです。恐らく大矛盾が起こってまいります。文部省も困ると思います。だから私は、この十二年間に八万なんという数字、あるいは十二年間に四十人学級をつくるというのじゃなくて、もっと数を下げてたとえば四十人以下とすれば、まだ話はわかりますよ。四十人でぴしゃっと押えて八万人という数、これは乱暴な確認ですよ、幾ら考えたって。こんなことすべきじゃないんです。だから大蔵大臣、これは私は幾ら考えてもこの確認事項は、法的根拠もないと思いますけれども、これはことしの予算を編成する上に困ってこんなことをやったんだけれども、実際はこの点については変更もあり得るということくらいはこの場所で言っておかれないと、政府そのものがお困りになるということを警告しておきたい、どうでしょうか。
  250. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは実際まさに、教育界全体の四十人学級にしろという要望と財政事情をこれほど巧みに調和した作品、まあ作品という表現、本当に私自身はそういう感じがしてこういう確認事項をしたのですよ。だから、決して芸術作品であるとは申しませんけれども、まさに調和のとれた予算編成であったと、私はみずからの心にしみじみとそういうふうに言い聞かせております。
  251. 山原健二郎

    ○山原委員 まあ、芸術作品か何かわかりませんけれども、これは教育の問題ですからね。たとえば建物を建てる、国立劇場をつくるとかあるいは国立の何かをつくるというのとは違うのですね。だから、たとえば生徒の増減だって、私はこういう数字を出したのですが、これはでたらめに出したのではなくて、実際文部省の方にも聞きまして、あと出ていない六十四年、六十五年、六十六年という数字は、まだ生まれてない赤ちゃんのその推定まで含めなければならぬ問題ですからずいぶんお聞きして、この減少率はもっと多くなるだろうという御意見もありましたけれども、大体はこういうものかもしれないということで出したわけでございます。  そこで、本当にここで共通の基礎をもって私たちが論議をする、たとえば予算修正の問題が出ています。実は私は、四十人学級を五年間でやる、これはもともとそういう要求が国民の間から強かったわけですから、これをやるためには、初年度はどれだけの経費が要り、五年間でどれだけの総計が要るかということを常任調査室に調べていただいたんです。ところが、常任調査室は、いろいろ御苦労なさったと思いますけれども、最終的には、それは幾ら言われましても基礎資料がない限りその数字は出てまいりませんということで、予算修正にも影響が出てくるような問題がこの基礎数字の問題であります。  ところで、文部省は五十三年度に全国の学校に対していわゆる悉皆調査をやられました。これは隠すべきものでも何でもありません。こういうものでございまして、生徒の増減あるいはそれに伴って教室がどういうふうになるかということですから、隠すべきものでも何でもないわけですね。ところが、私どもはこれを文教委員会におきましても提出を要求してまいりましたが、これがいまだに出ておりません。これはぜひ提出をしていただきたい。そうでなければ、私のこれからの論議もできませんし、また文部省も私の先ほどの推計に対する反論も出てこないと思いますので、全国悉皆調査の結果を出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  252. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 いま委員から御指摘がございました悉皆調査は、これは個々の一つ一つの学校の実態資料をコンピューターに組み入れるための作業としてやったわけでございます。その調査結果に基づきまして今回の年次計画を作成した、年次計画と申しますか、その基礎の数字を出したわけでございますが、その際に、各年度の自然増減の教員数、それから四十人学級実施に伴う増加教員数及び所要の増加いたします教室数、それから四十人以上学級の分布の実態、それから児童生徒数の減少いたしまする市町村等の実態に関連する資料、これはまとめた資料ということになりますけれども、すでに発表をしておるところでございまして、いま申しました、全然発表してないというわけのものではございませんので、その点は御了承を願いたいと思います。
  253. 山原健二郎

    ○山原委員 今度、予算委員会の審議に当たりまして、学級編制及び教職員の配置率等の実態調査をやられておるので、それを出していただきたいと言って、出てきたのがこれだけのものなんです。これは過密九県の学級数その他、それからその他の県の学級数その他、これが一枚出てきているのですね。しかし、これはいま文部大臣おっしゃいますけれども、私どもは一昨年から、しかも、いま四十五名学級になってことし十一年目ですよ。下手するとこれは、十二年間延ばされましたら二十一年間四十五名学級で勉強しなければならぬ子供たちが出てくるという深刻な問題ですからね。しかも私どもは五十三年度にこのための小委員会をつくりました。そして文部省に対して、四十人学級にするためにはどうするかということで真剣に一年間討議をしたわけです。その間、文部省はどういう説明をしてきたかといいますと、いま悉皆調査をやっておるからということで、五十三年の九月には結果が出ます、十一月には結果が出ますということで私どもは待ったのです。ところが出てこない、コンピューターの計算が誤ったとかいろいろのことがございまして。しかし、その間各党一致して待っておったのはこの悉皆調査の結果でありました。ところが、小委員会は国会がかわりますために一応結論を出さなければならなくなりまして、一昨年の十二月二十一日であったと思いますが、夜遅くまでかかりまして、各党が一致して、この悉皆調査の結果が出たならばそれを検討して、年次計画を立てて四十人学級を実現する、こういう結論を生み出したわけでございます。だから、この悉皆調査というものは、各党とももう本当にこれを審議するために皆欲しいと言ってきたわけです。それが出ることをいままで待ち望んできたわけでございますが、いまだに出さない。こういう原簿があるはずですから、これが出なければ文部省と私どもの間に本当の予算を含めての真剣な討議はできないのです。皆さんはこれを持っておる、われわれはこれを持ってない。推測でしか判断をできないということで、予算討議はできないのですよ。また、修正をすると言っても、五年間でやる場合にはこの計数に基づいて初年度はこれだけの経費が要る、五年の後にはこれだけの総額が要るということを出さなければ、予算修正できないじゃありませんか。なぜせっかく持っておるこんな貴重な資料をわれわれに出さないのですか。
  254. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 これは山原先生もうすでに御存じだと思いますが、一つ一つの学校、教室等を調べたもので、コンピューターに覚え込ませたものでございまして、それから出てきます各年度の自然増減の教員数でありますとか、あるいは先ほど申し上げましたような数字、これらの点につきましてはもうすでに発表もいたしておりますし、御要求がありますればそれを発表することは何らあれじゃありません。ただ、一つ一つのコンピューターに振り込んでおりますようなものをこれ以上発表するということはいまのところ考えていないわけでありまして、すでに先ほど申しましたような、四十人学級実施に伴います増加教員数はどれだけになるとか、あるいは教室はどのくらい必要でありますとか、あるいは四十人以上の学級がどういうふうに分布しておるとかいうような必要なものは御報告を申し上げておるはずでございます。
  255. 山原健二郎

    ○山原委員 おかしいじゃないですか。文部省が九年計画のときには一応こんな数字が出てきたのでしょう、さっきの最後のところへつけてありますような。ところが、もう計画はなくなったわけですから、十二年計画ですから、私どもどうなるかわからぬわけですよ。だから、五十六年度、五十七年、五十八年、五十九年にはどういうふうに先生の数がふえるか、また四十人学級のためにどれだけの教員増をやらなければならぬかというような数字がこれを基礎にして出てくるわけです。これがなかったら出てこないのです。全く出しようがないのですね。だから、あなた方一年間かかって国費をかけて調査をされたわけでしょう。何にも隠すべきものではない。コンピューターへかみ込ますためにつくったなんて言われたら話になりませんよ。原簿を出してください。もしこの予算委員会の時間の関係で一般質問の最終段階まで出ぜないというのだったら、典型を出してください。たとえば東京、大阪、京都、あるいは神奈川、あるいは大蔵大臣の地元である島根県、これは出していいのですよ。秋田県、出してください。原簿を出したら私は計算しますよ、大体どれくらいのことがやれるか、そして経費はこれだけだと。余り大蔵大臣が頭を痛めなくても、この教職員の増減の中で、六十年度にはもうほとんどやってしまえる、あと一歩のところは本当にお互いが考えて一挙にやってしまおうじゃないかということだって出てくるわけです。何も十二年間八万人なんということでやらなくても。財政事情というのはよくなるときもあれば悪くなるときもあるのですよ。  それから、いま私が出しましたように、この教職員の減——地方自治体だってそうでしょう、給与は半額国庫負担ですから。たとえば私は高知県ですが、高知県の先生はぐっと減ってくるわけです。県の支出する半額の予算分というのは浮いてくると言っても過言ではありません。そうしますと、その分で四十人学級を一挙にやってみせるというような知事だって出てくるのはあたりまえのことです。そういうことで初めてこの四十人学級というのを早期に実現することができる。また、ここで討議をしても、では予算委員会でこう決定してもっと早くやろうということだって出てくる。その資料がこれなんです。これを隠して予算審議はできないということを私は申し上げまして、あえてこの原簿の提出を求めます。
  256. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 先ほど申しましたとおりに、すでにお見せをしておる資料、そのほかに何か御必要な資料がございますれば私たちの方も検討いたしたいと思いますが、資料の関係でございますので、事務当局の方からお答えをさせていただきたいと思います。
  257. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 先生の御要望なさる資料というのがちょっと私理解できないのですけれども、御指摘のそれは各学校の個票でございますね、それを全部コンピューターにはめ込んでございますから、今回の計画を策定する際に、その個票をもとにして九年間で計画を立てた場合には教室は幾ら要るようになるか、あるいは先生は幾ら要るようになるかというのがまさにその個票り集積でございますから……(山原委員「九年間は出ているのでしょう、十二年間は出ていないのでしょう」と呼ぶ)十二年間というのも同じような形でしたものでございます。ただ、六十三年から六十六年ですか、その間の人口動態などは悉皆調査ではございません、これは人口問題研究所の想定を資料として使ったりいたしておりますけれども、そのほかの施設の関係その他はいまの悉皆調査をもとにして、先ほど先生も教室が八千二百ぐらい要るというお話ございましたけれども、それもまさにその調査をもとにしてつくったわけでございますから、私どもとしましては、先生御注文のような資料は、それをもとにして全国的に集計するとこういうふうになりますよという形ですでにお示しをしておるというふうに考えておるわけでございまして、この上さらにどういう資料を御要望なさるのか、失礼でございますが、ちょっと教えていただきたいと思います。
  258. 山原健二郎

    ○山原委員 それは全国三万の学校をこれで全部やっておるわけですからね。全部出されて集計することは短時間で私どもできません。けれども、少なくともいま問題になっておる過密学級、これはとにかく早く解決しなければ自殺が起こるし非行の問題が起こる。早く解決したいと言っておるところの典型は、やはりこれは私ども調べる能力を持っていますよ。東京なら東京、あるいは大阪なら大阪というようなところを出していただきまして一なぜそれを私はあえて強調するかといいますと、たとえば予算修正の問題が出ているわけですね、その際にどういう計数が出てくるかということは、私だって計算しなければなりません。そういう問題もございます。  また、もう一つこだわる面は、九年の計画の場合は文部省はこれをもとにして出されております。ところが、文部省は今度九年案を捨てたわけでしょう。これを捨てて十二年案になったわけですから、この十二年になった場合に、たとえば東京では五年後にはどれだけの学校が残るか、あるいは島根県ではどれだけの学校が残るか、その到達度は、四十人学級はほとんどできたんだが、九九%できたんだが、たとえば島根県ではあと一校、二枚が残ったとかというような計数がこれは出てくるわけです。  なぜ私がこれを言うかというと、これを文部省は余り出さぬものですから県の教育委員会に連絡した、県の教育委員会は隠すべきものではありませんからこれを見てくださいと出してきた、そうしたらその直後に文部省から電話がかかってきて、文部省がつくった作成物を人に貸すとは何事かといって取り上げられてしまった、こんなことをしておるのですよ。だから私は頭に来ている。だから、原簿を見せてもらいたい。これは本当にそれぐらいのことをしなければ共通の基礎の上に論議はできませんから、もう一回要求します。全部を出せということは時間的な関係もありましょうから、出せるならば原簿を出していただきたい。出せないならば典型を出していただきたい、たとえば過密地帯、過疎地帯の幾つかで結構ですから。それを私ども分析をしまして、たとえば五年間で四十人学級ができるというならば、私たちは修正案を出します。六年でやるというところもあります。また、九年案をとるところもありましょう。ありましょうが、少なくともこれは予算委員会ですから、予算に関する資料は出していただかなければなりません。  それともう一つは、この五年、六年、十二年の、文部省が九年案でつくったような資料を出していただきたい。その上で私はさらに討議を進めていきたいと思いますので、この点についてお答えをしていただきたい。
  259. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 過密県の実態等につきましては、たとえばいま四十一人以上の学級が全国でどのくらいあって、それはどういう分布になっておるかというのを簡単に申しますと、小学校でいいますと全学級数の約四分の一、そのうちの半分は過密九県にあるというようなことで、この数字はすでに発表いたしておりますので、そういうものはまたごらんいただきまして御検討いただきたいと思うわけでございます。  電算機にはめてありますのは、原簿とおっしゃいますけれども、そこに記載されました各学校の個別の調査事項全部を全国的にあるいは府県別に集計した原簿があるわけではないので、計画を策定するに当たって必要なものだけを機械と相談して出してくるというたてまえでございますから、いままで私どもは、計画を策定する過程で必要であり、また発表した方が適当だと思うものは、繰り返すようですけれども、全部お出しをしておるわけでございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  260. 山原健二郎

    ○山原委員 諸澤局長はちょっと情勢の認識が違っておるのですね。というのは、四十一名以上の学級がどれだけあるかなんというのは私も知っておりますよ。それはあなた方が配られたこの資料の中にもあるわけですね。これは文部省が九年間で実施をされる場合の教室数、教職員の数、たとえば教室数は一万三千ふやさなければいかぬという数字が出てくるのですが、問題は、あなた方は十二年間に納得されたのです。十二年間八万人という数字が出てきたのです。教室は何ぼになるか、私はまだわかりません。これもこの基礎数字がなければわからぬわけです。なぜわからぬかというと、十二年間でやる年次計画がないからわからないのです。だから、コンピューターへはめ込む場合に、たとえば五十九年にはこれこれのところは四十人にします、それをコンピューターへはめ込むということなら出てくると思いますね。それからまた、学年進行型でやる。たとえば小学校一年生から、次は二年生まで、三年生まで、六年までやっていくというやり方もありましょう。それからもう一つは、この学級定数の四十五を、来年度は四十四にする、再来年度は四十三にするというやり方もありましょう。そういうことによって、コンピューターへくわえ込ますやり方は違ってくると思います。けれども、いずれにしても私、どっちかわからぬ。十二年間の計画は、いま初年度しか出ていませんから。  だから私どもは、この原簿を見なければ——たとえば私どもは、少なくとも五十八年、五十九年、六十年のころには全部四十人学級にしていきたいと考えました場合でも、これがないんです。私たちはコンピューター持っていませんから、はめ込ますことはできない。けれども、少なくともそれだけの計算は、私たちもする権限はありますよ、予算修正する場合には。五年間でやる場合にはどうなるかということをやらなければいかぬわけですから。だから、この原簿を見せなさい、しかも、原簿を全部見せるわけにはいかないときには、過密の典型と過疎の典型とを見せていただいたならば、私ども何年間でやれるかというおおよその見当はつく。だから原簿をお示しくださいと言っているわけですから、それを出してください。
  261. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 いまおっしゃいましたような過密の場合、それから過疎の場合、あると思うんです。それらのものの資料を整えまして、あれしたいと思います。
  262. 山原健二郎

    ○山原委員 わかりました。資料が出てさましたら——私は先ほど矛盾があるということを言いましたが、一方的な私の言い方ではだめですから、文部省にも言いたいことあると思います。この点は、この私の数字、私は、十二年かかれば、やり方によっては三十五名学級ができると思っている。何も十二年、四十という数字できちっと枠をはめなくともできると思っています。だから、その点は論議をしなければならぬ問題ですから、資料が出ました暁において質問を続行したいと思います。私は、きょうはこの問題に集中しておりますから、できましたら委員長の許可をいただきまして、あと残された時間を留保したいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。
  263. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  264. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 速記を始めて。
  265. 山原健二郎

    ○山原委員 せっかく自治大臣おいでになりますので、高等学校建築補助の問題ですが、一月十九日の朝日新聞の埼玉版を見ますと、自治大臣が埼玉へ行かれまして、知事の要請を受けられましたときに、高等学校建築補助については打ち切らずに今後も継続をするという御発言をされておりまして、大変評価をされておるようでありますが、そのお考えは変わりありませんか。
  266. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御承知のとおり、現在予算補助でたしか三分の一の補助が出ていると思いますが、しかし、高等学校の生徒数が引き続いて増加をするということが予想せられておりますので、この国庫補助制度は、五十六年度以降の延長について全力を傾けてみたい、かように考えております。
  267. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、文部大臣に伺いますが、六・三・三・四制の見直しについて指示される趣であるというような新聞が出たのでございますが、この問題は、いままでもたびたび各文部大臣に対して、またさきの内藤文部大臣に対しても質問がなされましたけれども、各大臣ともその意向はないとおっしゃっておられたのでありますが、谷垣文部大臣、就任されてそう時間がたっておりませんが、そういうお考えを持っておられるのかどうか伺っておきます。
  268. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 この問題につきましては、前の臨時国会でも委員会でどなたでしたかの御質問に私お答えをしたと思います。  教育のあり方につきましては、時代の変化でありますとか進展に伴いまして、常に改善を加えていかなければならぬと私は考えておりますし、文部省としましても、今度は指導要領を改善して実現しようとしておるわけでございます。  ただ、これらの六・三・三・四制というような教育制度全体の抜本的な改革につきましては、これは非常に重要な問題でございますので、そう簡単にこれをどうするというわけのものでは私はないと思いますし、十分慎重に対処していかなければならないものだと考えております。現在の制度自体、戦後の日本の教育の中において、正当に高く評価されていいものだというふうに私は考えておるわけでございます。
  269. 山原健二郎

    ○山原委員 そういうお考えがないということがいまの段階でわかりましたので、これ以上申し上げません。  もう一つの問題は、授業料の問題でございますが、今回も国立大学の授業料が値上げをするということでございます。そして、私立大学におきましても約七〇%の学校が授業料値上げに踏み切ろうといたしておりまして、初年度納入金を含めまして、私立学校では七十一万という金額が出ているのです。そこで、大学局長もおいでになっていると思いますが、文部省の資料を見ましても、私立大学における経常経費の収支を見ますと、確かに四十八年、四十九年、五十年度までは赤字が出ております。ところが、五十一年度より黒字に転化をいたしておるのでございますが、たとえば五十一年度の経常収支を見ますと、百七十八億円の黒字が出ております。全収支によりますと千五百三十五億という黒字が出ておるわけでございますか、これでもなおかつ授業料の値上げが大幅に行われるということについては、私は納得がいきません。  まずお伺いしたいのですが、この経常収支が黒字に転化したという、これは文部省の資料でもありますが、そういう御認識を持っておられるでしょうか、伺っておきたいのです。
  270. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 最近の私立学校の経営の状況が、以前に比べまして全体として改善されてきておることは御指摘のとおりだと思います。私立学校におきまする授業料、納付金等の引き上げ、これは給与の問題、物価の上昇等の問題あるいは教育研究条件の一層の整備というような問題を考えまして、それを理由として行われるわけでございます。授業料等の引き上げのずっと最近までの状況を見ますと、確かに値上げはいたしておりますが、先ほどの経営状況等と比例的に、値上げ率そのものは少し鎮静化しておるという感じは持っておるわけでございますが、国といたしましても経常費の補助等を図りまして、教育条件の維持とそれから就学上の経済的な負担の軽減が図れるように期待をしておるところでございます。私学の関係でございまして、直接にそれをどうこうしろというところまでの指導はちょっとできにくい、こういう状況でございます。
  271. 山原健二郎

    ○山原委員 私立学校法によりまして、私学の自主性、公共性ということが出ております。私は、現在日本の勤労者の平均所得の者では、もう大学へやれないという事態が起こっておることを最後の資料に出しておきました。教育の機会均等は憲法上の保障であります。経済的あるいは門地その他によって差別されないということは当然のことでありますが、それがいまもう普通の家庭では大学へやることができないという事態は、これは改善しなければなりません。  しかも、これがどういう形で上昇しておるかといいますと、いつでも国立大学の値上げが引き金になるのです。現在十四万四千円が今度十八万円に値上げをされます。これが私立大学の値上げを誘発をしていくということで、これはもう常に悪循環を展開しておりまして、つまり低所得層は大学から締め出されるという異常な事態が起こっておることは御承知のとおりと思います。  かつて、私学助成法ができましたときに、当時坂田文部大臣でありますが、私は坂田文部大臣に対して質問をいたしました。この助成が行われたときに授業料の値上げは歯どめをかけることができるかという質問に対して、坂田文部大臣は、値上げをすべて抑制するというところまでは直ちにいかないかもしれませんが、歯どめにはなります、こう言ったのです。ところが、その後私学助成は行われるけれども、授業料はどんどん上がってまいりまして、いまや平均家庭ではもう大学にやることはできないという事態が起こってまいりました。これは私は本当に異常な事態だと思っております。  そこで、私学助成の問題につきましては、経常費の五〇%というのが法律作成の当時の附帯決議にもありますから、これが現在三〇%程度ということでありますが、五〇%にしまして、私学に対する国庫の助成が行われたならば家庭に対して負担をかけないという効果がなければならないと思います。そういう意味で、今日の国鉄運賃の通学費の値上がり等もございまして、これ以上は私は全く異常な事態だと思いますので、これに対しては凍結をする、あるいは当面の値上がりは抑制をするというような指導がなされるべきではなかろうかというふうに思うわけでございます。もちろんいままで授業料を値上げをしないでがんばっておる、いわゆる自助努力をしておる学校もございますから、そういうところに対する経常費補助をふやしていくなどということは考えられなければなりませんし、同時に、私学に対する奨学制度の拡充、全く低劣な状態に置かれておるわけでございますが、これらも解決をしなければならぬと思います。  要するに、これ以上の値上がりというのは、物価の上昇率からいいましても異常な値上がりである。しかも黒字が出ておるということになりますと、受益者負担思想というものがありますけれども、当然この授業料値上げ抑制の方向に進むべきであると思いますが、いま一度お伺いをいたします。
  272. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 これは各私立大学それぞれの状況によって異なるわけでございますが、先ほど申しましたように、私学経営全体を見ますと若干上向いてきている点は御指摘のとおりだと思います。ただ、御指摘がありましたように経常費補助の努力をいたしておりますが、まだもちろん半分までにはまいりませんが、しかし五十五年度の予算におきましても、五十四年度に比べますとかなりの補助額の増額をいたしたつもりでございます。私立大学に対しまして直接の内容の干渉その他はできかねるわけでございますので、各大学のそれぞれの良識に訴えていかざるを得ないと考えております。  なお、育英会その他を通じまする問題につきましては、条件その他に関しましてそれを改善してまいってきておるところでございます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  273. 山原健二郎

    ○山原委員 これはぜひ努力をしていただかないと、相当な事態が起こる可能性があると思います。これでは就学できないわけですから、ほとんどの学生がアルバイトをしておる。先ほどのNHKの取材班の資料の中にも、一番最初の欄にございますように、もう他の国におきましては授業料はゼロになっているわけですね。そんな点から見ましても、ちょっと異常な事態がいま起こっておるわけでございまして、この点については、今後の文部省の努力を強く要請をいたしたいと思います。  最後に、文教予算そのものがかなりしわ寄せを受けておるということはおわかりだと思います。伸び率にいたしましても、また一般会計に占める比率にいたしましても、かつては一五%、一二%、二二%、こういう状態でございました。ことしは一〇・〇七%というふうに下がっておりまして、漸減の方向にあるわけでございます。さらに伸び率にいたしましても、二十五年ぶりの低伸び率という状態が出ておりまして、先ほど私が数字を挙げて申し上げましたように、生徒減に伴うところの教職員減が続きますと、さらに文教予算の国家財政に占める比率というのは低下してくると思います。そういう点から考えますと、当然十数%というかつて維持しておりました比率にまでは返すべきであるという、この考え方で予算折衝を今後行うべきであると思うのでございますが、文部大臣の見解を伺いたいのであります。
  274. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 文教行政に関しましては、その重要性にかんがみまして、その都度の財政の予算折衝の場合におきまして全力を尽くしておるところでございます。ことしの予算に占めます比率その他の問題がございますが、国債費あるいは地方交付税というふうにことしの財政におきます特殊なものを除きました以外の一般経常予算と申しますか、その中で考えてみますと、私は文教予算は昨年に比しましてもそのシェアをむしろ若干でもふやしておる、こういうふうに考えておりますが、先生が御指摘のとおり、文教の必要性から、予算その他の国家財政におきます地位につきましても、今後とも主張を続けてまいりたいと思います。ただ、全体予算の何%ということに固定をした考え方は、私はいささか無理があろうと思います。主張いたします際には、そのときの状況に応じましての主張を続けてまいりたいと考えておるわけでございます。
  275. 山原健二郎

    ○山原委員 先ほどの資料提出されました後五分間の質問を留保しまして、私の質問を終わります。
  276. 田村元

    田村委員長 これにて山原君の質疑は、保留分を除いて一応終了いたしました。  次に、岡田正勝君。
  277. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 まず冒頭に、原子力船「むつ」の問題につきまして科学技術庁長官にお尋ねをいたします。  佐世保重工業のあのすさまじい人権闘争が、去る十三日組合側の全面的な勝利に終わりましたことはまことに喜ばしいことでございまして、今後速やかに労使の信頼関係を回復いたしまして、再建が軌道に乗ることを祈るものでありますが、この佐世保重工で一つだけぽつんと置き忘れられておるものがあります。それは御承知の原子力船「むつ」でございます。昭和四十七年八月に七十三億円の巨費を投じましてつくられたこの「むつ」は、一体現状はどうなっておるのであろうか。また、うわさで聞くところによりますと、契約すらまだできてないということを聞いておりますが、一体いつ契約なさるおつもりでありますか。さらにまた、今後どうしようとしておるのか、明確にお答えを願いたいと思います。
  278. 長田裕二

    ○長田国務大臣 資源に非常に乏しくて、しかも世界有数の造船国、海運国でありますわが国は、海運に関連しますエネルギーをできるだけ多彩に、しかも最新のものを新しく開発していくということが必要でありますことは、先生も御高承のとおりでございます。  そのような観点から、お話しのように昭和四十七年、七十三億円の資金を投じまして原子力船の「むつ」を建造いたしました。ところが、不幸なことに、昭和四十九年九月の出力上昇試験の際に放射線漏れを起こしましたためにその開発が停滞しておりまして、その後五十三年十月、佐世保港に回航されまして、佐世保重工佐世保造船所の岸壁につながれておる次第でございます。係船契約も締結されないままに事実上そこに係船されておりまして、その後昨年の一月以降点検は進め、船の底とか外板の塗装だとかそういうことなどはなされておるわけでございますが、いまのところそのままの状態でおるわけでございます。  実は真っ先に締結すべき係船契約を早く締結し、その後の作業を進めるつもりでおりましたところ、お話しのような労使の紛争が起こりまして、その問題も進捗しないままになっておりました。幸いにして、労使紛争は解決いたしたようでございます。私どもは、いままで長崎県知事の久保さんを介しましていろいろと重工あるいは労働組合側等へのいろいろなお願いなどもいたしておったところでございますが、紛争解決いたしましたので、早々と係船契約を締結し、さらに佐世保重工、その他関連企業の方と遮蔽改修の工事を早急に進めてまいりたい、そのように強く念願し、また企業側に強く働きかけてまいる、お願いをしてまいる、そのような所存でございます。そういたしまして、その工事が済み、実験運転も済ませまして所期の成果を早急に上げてまいりたい、そのように念願している次第でございます。
  279. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。ただいまのところは紛争が解決したばかりですから、いきなりこういう質問をしても無理だと思いますが、一日も早く契約をされまして、所期の目的を達せられるよう念願をしております。結構です。  それでは次に、運輸大臣にお尋ねをいたします。せっかくの機会でありますから、ただいま船の問題が出ましたので、日本の造船の問題につきまして運輸大臣の御認識を承りたいと思うのであります。  まず第一に、大臣は、日本の造船界の技術力とその努力というものを今日どういう評価をしていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  280. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 造船の技術等については全く素人でございますが、しかし大変日本の技術はすぐれたものであると伺っております。
  281. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。率直な御意見で大変結構です。  続いて申し上げますが、現在のこの不況で造船界は御承知のとおり、三五%の設備処理をしなくてはならなくなりまして、いわゆる九百八十万シーグロストンから六百四十万シーグロストンに縮まります。従業員も、五十年四月には十一万五千九百五人おりましたものが、昨年の十月で五三%に減りまして六万一千五百六十六名しかいません。技術と申しましてもしょせんそれは人間であります。技術者であります。その貴重な人材や技術が拡散されていくことはまことに残念なことでありますが、大臣はこの問題についてどう思われますか。
  282. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 造船不況によります失業者の増大等につきましては大変頭を痛めておるわけでございますが、これにつきましていろいろな立場において配慮しながら、転換あるいは再雇用、いろいろな手段を講じておるところでございます。
  283. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後に、造船の問題につきまして大臣の認識を伺っておきますが、これからの日本、特に資源がありませんわが日本にとっては、無限に広がっております海洋へ進出をしていく、新技術の開発を行う、新分野の開拓を行うということこそ至上の緊要の課題ではないかと考えますが、大臣の御認識をお願いいたします。
  284. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 おっしゃるようなことになることが望ましいと存じます。
  285. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、いよいよ本論に入らせていただきます。そういう認識の上に立ちまして以下、関西新空港について質問を申し上げてまいります。  さて、その質問の前にちょっとお尋ねをいたしますが、運輸大臣は、中国にあります万里の長城をごらんになったか、あるいは行ったことがありますか。
  286. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 まだ参ったことがございません。
  287. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 まことに残念であります。しかし、地図の上あるいは話あるいは絵ではごらんにたっておると思いますが、さて、この空港の埋め立てに要します土量は、いまのところ明らかにされておる数字では五・六億立方メートルと言われております。この数量は、ただいま私がお尋ねをいたしました中国のあの万里の長城が四本も入る土量であります。さらに、青森から鹿児島までの延長二千二百キロメートルの高速道路をつくったといたしますと、それがすっぽり全部入ってしまうだけの土量であります。しかもその高速道路の大きさは、上幅におきまして車道で二十五メートル、高さが六メートル、底辺五十メートルの土手であります。それだけのものがすっぽりと入ってしまいます。また、たとえを別にとりますと、日本の全国民が赤ちゃんも含めてそれぞれ一人が十トソのダンプカーで一台ずつ運んでこなくてはならぬほどの土量であります。  これだけの大きなものが大阪湾の沖合い五キロメートル、水深が二十メートル、しかもおかゆのような三十メートルに及ぶ厚みのヘドロの上に乗っかるのであります。大変な大事業でありまして、こんな前例のない埋め立て計画があるということは当然大臣は知っていらっしゃると思いますか、いかがですか。
  288. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 四十九年以来、関西空港の問題を建議を受けましてから、泉州沖を中心として鋭意調査を進めているところでございます。現在、航空審議会におきまして答申を求めておりますが、この答申を待ちまして将来の計画を進めてまいりたい、かように思っております。なお、これを進めるにつきましては、関係の府県、地元住民の意見、環境調整、いろいろ万全の策を整えてまいりたい、かように思います。  いま先生いろいろお話しの面は工法問題のことだと存じますが、専門的なものでございますから、航空局長から今後答弁をさせたいと思います。
  289. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、続いて入らせていただきます。  そこで、中身に人らせていただきますが、この空港は、五十三年の計画で見ましても、およそ空港そのものに二兆円、地域開発に二兆円、周辺整備事業に二兆円、合計六兆円の巨費を投ずる一大国家的なプロジェクトであります。調査費の関係につきましても、昭和四十九年以来すでに八十億円を超えるという段階を迎えております。しかも、先般の各委員の質問にお答えになりましたところによりますと、本来の三月末を目標に計画を提出したいということで作業中だということでございますから、この際この問題は、下手をいたしますと、これだけの大事業がまさに海の中へ水のあわと帰してしまうかもしれない大事業でありますだけに、十分に時間をかけて御質問を申し上げたいと思っておる次第であります。  ところで計画では、五・六億立方メートルの埋め立て、これは一日当たりにいたしますと約五十万立方メートルであります。これを掘るためには、一日に百トン強の、しかも年間約四万トンほどの発破に使う火薬が必要となってまいります。これはいま日本全国で使っておる一年分の火薬の量に匹敵するものであります。したがって、この火薬の供給、輸送が大変なことでありますので、−現地に巨大な、日本全国一年分を賄うに足るだけの火薬工場をつくらねばならないということになっておりますが、御存じでございますか、大臣。
  290. 松本操

    松本(操)政府委員 具体的、数字的な面でございますので、私からお答え申し上げますが、いま先生おっしゃいました発破に要する火薬の生産量の問題につきまして、私どもが現在までに承知しておりますところでは、現在わが国におきます発破用のこういった火薬類の生産能力の枠の中で所要の作業が行い得るというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  291. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、後のお答えのときに一緒にお答えをいただきたいと思いますが、現在、日本の国内にある火薬工場の生産能力を高めれば、四万トン、いわゆる一年分に相当するだけの火薬が十分確保できます、新工場はつくりませんということでありますかどうか、その点をはっきりしておいてください。  また、これだけの土砂を近くから持ってくるということになりますと、地元におきましては、採掘、運搬その他で大変な建設公害が発生いたしますが、さらにその上に四千万立方メートルの海砂の手当てが必要だとも承っております。この中で、埋め立ての土砂だけをとってみましても、計画期間の三年半でこれを運ぶといたしますると、仮に一万トンクラスの船で一日当たり百隻も超えることに相なります。これでは海上は未曽有の大混乱に陥ると言われますし、専門家の話を伺いましても、とてもとても運航管理が不可能であろうと聞いておりますが、いかがでございますか。
  292. 松本操

    松本(操)政府委員 火薬工場の能力の点については、ちょっといま私、手元に持っております資料の中に見つけ得ませんので、できる限り早く調査をして御返事を申し上げたいと思います。  それから、土砂運搬に関する能力の問題につきましては、おっしゃいますように、相当大型の土砂運搬船を使わねばならないということが予想されるわけでございまして、土運船といたしまして、七千五百立米積みのもの、一万五千トン近い運搬土量、これを一年当たりの施工能力として三百六十万立米、投入数量三十二杯、稼働期間が三・五年、こういうふうなことが私どもが審議会に提出いたしました資料の中にも触れられておるわけでございますが、これがどの場所、どの海域をどのように動くかということは、これから具体的に土取り場等が決まりましてからの話であろうかと思いますので、いささか抽象的なお返事になることをお許しいただきたいと思いますけれども、現在東京湾の中で行われておりました鋸山近辺からどろを取りましてそれを横浜近辺に運ぶ、これはちょうど東京湾における船舶の流れを直行する形で、この土運船がプッシャーバージの形で動いておったわけでございますけれども、これらの実況等から判断いたしまして、簡単な仕事であるというふうには毛頭思っておりませんけれども、さらにまた、今後十分海上保安の面との具体的な詰めが必要であるということはよく認識をしておるわけでございますけれども、収拾がつかなくなるような大変なことになってしまうということではないのではないかというふうなのが、いままでのところの一応の結論でございます。
  293. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 泉南沖五キロメートルの予定の地点で、これは水深二十メートル、その上に約三十メートルに及ぶおかゆ状のヘドロ層がありますが、こういう海域というのは、かつてわが日本の土木業界におきましても経験はありませんし、埋め立てには最も適していない場所であろうと思いますが、御意見を伺います。
  294. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  一般的に言って埋め立てば、水深が浅いほど及び海底の状況が粘土質でない場合の方が、おっしゃるように容易であることは間違いないわけでございますけれども、しかし従来幾つか行われました埋め立ての中で、海底の地盤改良を行ってその上に埋め立てを行う、あるいは護岸を建設する、こういう例は幾つか例があるわけでございます。したがいまして、現在検討されております埋め立て工法の中でいろいろと論ぜられておりますやり方といたしましても、やはり護岸の下部あるいは埋め立て部分の下部については地盤改良してから埋め立てをするというふうなことが考えられておるわけでございまして、こういう例が全くないというわけではございませんが、規模が大きいという点は否定できないかと思います。
  295. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 航空審議会の関西国際空港部会の工法小委員会におきまして、工法論議が現在急ピッチで進んでおるようでありますが、マスコミの面で見ます限り、当局が埋め立ての方を強く押し出すようにリードしているかのように伝えられております。しかし重要な問題点が明らかにされていないと思うので、この際質問をいたしますが、まず工法については、埋め立てと浮体方式が現在検討の対象になっておると聞いております。その検討は著しく公平を欠き、浮体を軽視するという風潮があるのではないかと思いますが、いかがでありますか。
  296. 松本操

    松本(操)政府委員 まず、工法の全般的な問題といたしまして、去る四十九年の八月に航空審議会から答申が出ました時点におきましては四種類の工法、つまり埋め立て、浮体、桟橋、干拓、この四種類の方法について、当時の技術をもって検討した結果、埋め立てが妥当、適切であろう、こういう結論でございました。したがいまして、それからしばらくの間は私ども調査研究も、いずれかと言えば埋め立てに集中しておったことは率実でございます。  しかし、昭和五十二年末に至りまして、四十九年の答申のころに考えられておりましたポンツーン型の浮体工法ではなくて、いわゆるセミサブという新しい方式が開発され、これが非常にクローズアップしてきたわけでございます。そこで、私どもといたしましても、急遽この問題を検討の対象に加えることにいたしまして、五十二年から五十三年にかけて、私どもの船舶技術研究所及び港湾技術研究所に対して研究を委託したわけでございます。また民間では造船工業会等がいろいろと御研究になっておったのとジョイントで、いろいろな研究をしていただきました。したがって、それ以後の時点におきましては、埋め立て工法と浮体工法というものがほぼ同じラインに並んだ形になってきているというのが私どもの認識でございます。  ただ、埋め立て工法の方が、何と申しましても百年からの歴史がございますので、わりあいとデータが集めやすいということは否定できない事実でございますし、一方、浮体工法につきましては、船舶の海上溶接等幾多の新技法の例なしといたしませんけれども、何せ幅数百メートル、長さ数キロメートルという浮体を浮かすのはまだだれも見たことがないものですから、これらの議論をする過程におきましても、なかなか素人にはわかりにくいというふうな面があるのもこれまた否定できないのではないかと思います。  そこで、審議会の議論をいたしますのに当たりまして、いま先生が仰せられましたように、いささかなりとも偏見が先走るというふうなことがあってはいけないというふうに私ども強く考えましたので、したがって、埋め立てにおいて一回議論をすれば必ず浮体においても同じく一回議論をする、両方を等分にテーブルの上に出してできる限りの議論をお願いするということで、実は今月になりましても、ついせんだって四日の日には、埋め立ての方の専門家を参考人としてお招きして数時間御意見を伺い、さらに十四日には浮体の方の専門家に来ていただきまして、同じように数時間をかけて御意見を伺うというふうな形で、両者の特質というものを十分に審議会が納得し得るようなそういった形で審議をしておるわけでございます。  したがってまた、その審議のテーブルの上に出ましたデータは、ことごとくこれ公開をしておるわけでございますけれども、遺憾ながら一部の報道機関において、予断をもって記事が書かれているのではないかと思われる節もないわけではございません。あるいは新聞の常でございましょうが、わりあい長々と説明をしたものを、紙面の長さの都合もありましょう、前後を切って書いてしまいますので、そこだけ読みますと何か非常に偏ったふうにとれるというのも私、実は気がついて大変気になったこともございます。今後ともそういう点は十分注意してまいりたい、こう考えております。
  297. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ただいまの答弁を承る限り、公平に審査が行われておるものと信じたいと思います。  ただ、ここで確認をしておきたいと思いますのは、気持ちの上だけではよくわかりませんので、具体的な例を取り上げてお尋ねをいたしたいと思います。たとえば調査費がいままでの御答弁では、五十二年、五十三年の両年にかけまして、一億円有余のもので浮体の調査を当局としてもいたしております、それにプラス民間の造船工業会の研究も利用させていただいておりますというお答えがございましたが、今日まですでに、ことし五十五年度の十二億円の調査費を含めますと約八十三億円の調査費を使っておることになりまするが、その中でわずかに一億円とは一体どういうことなんでしょうか。それで公平な審査が進められておると言うことができるでありましょうか。しかもこの調査は、審議会の資料によりますると、埋め立ての資料は、民間に委託した部分を含めまして第三港湾建設局の名前になっておるものがここに出ております。それに比較をいたしまして浮体の方は、港湾技術研究所や船舶技術研究所が主体となって行ってきましたのに、この資料の出どころは造船工業会と銘を打ってあります。片や官辺の名前を使い、片や民間の名前を使って調査結果の報告を出せば、世間の受け取る目、審議会のメンバーの皆さんが受け取る目にはいかように映るでありましょうか。それでも公平な審議と言えるのでありますか、お答えをいただきたいと思います。
  298. 松本操

    松本(操)政府委員 まず、前段の調査費の件でございますが、集中的に調査費を投入するに至りましたのは五十一年度からでございまして、五十四年度までで七十億六千万の調査費を使っておるわけでございます。その中で、空港条件の調査費として使いましたのが十億九千七百万でございました。その余は何かと申しますと、自然条件に十四億、社会条件に一億余、環境影響に四十四億、こういうふうな割り振りでございます。それでこの空港条件の中をさらに分けまして、施設の計画、施工計画、管理計画、こういうふうに分けてあるわけでございますが、この施工計画というものが、五十二、五十三、五十四の三カ年間で五億七千二百万円、こういう数字になるわけでございます。  その施工計画と申しますのが、中身がどういうことかと申しますと、工法に集中するわけでございます。埋め立て工法について使いました金額が丸めまして三億七千三百万程度、浮体工法が一億三千五百万程度、そのほかに桟橋工法につきまして四千五百万程度を行いました。共通経費といたしまして、たとえば波浪等の力の分布のありようといったようなものに二千万円程度を使っておるわけでございます。それで、この埋め立て工法の三億七千三百万ばかりのうち、実験装置に実は一億四千五百万ばかりの金を使っております。それから、先ほど来御質問の中にも出てまいりましたが、土砂の運搬工法というものが非常に大きな問題になるかと思われましたので、四千六百万ばかりは土砂の運搬に使っておるわけでございます。したがってネット、基本的な埋め立て工法のメカニズムあるいは浮体工法のメカニズムというものをチェックした額は、そう大きな違いがあるわけではないというふうに御理解いただきたいと思うのでございます。  それから発表の仕方が確かに、片一方は第三港湾建設局というのが出ておりまして、もう一方は造船工業会によると、こうなっておるのはおっしゃるとおりでございますが、昨年の六月に、実は私どもがやりました船舶技術研究所と港湾技術研究所との共同研究をとりまとめたものを小パンフレットにまとめまして、浮体工法の基本的なメカニズムはこんなものである、外力の作用の状況はこんなふうに考えればよろしいといった浮体工法に関する基本的なものにつきましては、その中でそれを両方まとめまして、運輸省航空局の名においてつくった小パンフレットを関係の皆様にはお配りした覚えがございます。  それで、今回の資料の中でなぜ、では、そういう使い分けが出てきたかと申しますと、昨年私どもが出しましたのは骨組みだけの浮体工法でございました。これでは実は、どういう形のものになって、どういうふうな空港機能を持たせるのかというふうな点については全く行き届いていないわけでございます。そういう点特に問題になりますのは、浮体をドルフィンに固定をいたします。その固定部分をどうするかとか、あるいは橋と浮体との間には波その他によって上下動が出てまいります。こういう場合に橋と浮体とのつなぎ方をどうすればいいかというふうにきわめて技術的な点になりますと、これは船舶研究所にもあるいは港湾研究所にもその能力がございません。したがって、そういう点につきましては、造船工業会のかねてからの研究の成果というものを率直に使わしていただくという形をとったわけでございますので、その点何とぞ御理解をいただければと、こういうふうに思います。
  299. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは別の問題に入らしていただきます。  さて、大変なヘドロの海域でございますから、調査をすればするほど深刻な問題が後から後から出てきておると思いますが、これだけの千二百ヘクタールに及びますこの海上島、この空港のボーリングは一体何カ所おやりになりましたか。
  300. 松本操

    松本(操)政府委員 やや弁解がましくて恐縮でございますけれども、地元の方とのお話の過程におきましては、まだ完全にあの空港を受け入れていただいているわけではございませんので、したがってボーリング等も、技術的に満足のできるような形ではできないわけでございます。したがって、必要最小限度のデータをとるという意味で、九カ所程度のボーリングをしたはずでございます。
  301. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いやもう大変なことをいま承ったのでありますが、何といってもおかゆのようなヘドロの上に千二百ヘクタールに及びます空港をつくろうといたしますのに、ボーリングが満足にはいっておりません、これが責任者である局長のお答えであります。満足にいってないボーリングでもって——私は埋め立て関係土木技術の専門家でありますが、こんな話はいままで聞いたことがありません。こういう状態でようもようも審議会あるいは工法小委員会にいたしましても、どうやって審議が進むのでありましょうか。海底の状態がわからない——上に島をつくるなんていう、万里の長城が四本も入るような大土量ですよ、こんなものが一体どうなるのか。大臣、いかがですか、この審議会のこの調査の仕方は。お答え願います。
  302. 松本操

    松本(操)政府委員 ボーリングをいたしましたのは正直申し上げまして九カ所でございますが、そのほかに超音波によります地層の探査は十分にしております。したがいまして、下層のレーヤーがどういうふうになっているかという点についての断面図も幾つかつくって持っておるわけでございます。また、大阪湾内は御案内のように大体似たような形の、あれは沖積層というのでございましょうか洪積層というのでございましょうか、私ちょっと専門外でございますのであるいは恥をかくかもしれませんが、そういうことでございまして、粘土層と砂層とが大体交互に積み上がっている、その間にはなはだしい断層もないというふうなことは、超音波探査によってかなりの程度に確認もされてきておるわけでございます。したがって、これから本当に工事をするというのでありますればもちろん、それは九カ所のボーリングでよしということには絶対なりませんので、先生おっしゃいますようにもっと詳細な検討をしなければなりますまい。ただ、埋め立て工法が可能であるのかないのかということを判断するための必要最小限のデータといたしましては、一応私どもとしてはとったつもりであるわけでございまして、これで直ちに実物をそのままのデータでつくるということになりますと、まさに御指摘のように問題点があることは私もよくわかるわけでございますが、検討の過程におきましては一応できる限りのデータは調べてあるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  303. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 埋め立て工法の予算につきましても、大体の大まかな予算でありますが、浮体工法が一兆何千億、埋め立てによりますと一兆何千億、大体ほとんど変わりませんなんていうことをようもようもそれで言えましたね、こんなでたらめなことで。  それでは、いま一つだけ重大な問題を聞いておきますが、話に聞くところによると、どこまで行っても行ってもヘドロと砂とのサンドイッチでありまして、いよいよここが岩盤でございますというところに到達するのには二百メートルからの距離があると聞いておるが、そのボーリングを一本でもやったことがあるか、お答え願いたい。
  304. 松本操

    松本(操)政府委員 岩盤まで通すボーリングはいたしておりません。ただ、先ほどお答え申し上げましたように、粘土層と砂層がどういうふうなレーヤーになっているかという点については一応の調査を終わっているというふうに御理解いただきたいと思います。
  305. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ますますおかしいことを承るものであります。  はなはだ専門的になって恐縮でありますが、地元住民との関係から、ボーリングは、こんなに広大な千二百ヘクタールに及ぶ海上空港でありましてもわずか九本のボーリングをやっているのにすぎませんということで、どのぐらいいいかげんなものかということがよくわかりました。しかも、どこまで行ったら地底へ到達するのか、それすらやっていない。少なくとも超音波探知器による調査をやったと言われた。超音波探知器による調査は無数になるのか何本になるのか知りませんが、そういうことが全然わからぬのですか。海底がどこにあるのかわからぬずくに、あなた方はその数字をこの委員会へ発表したのですか。お答え願いたい。
  306. 松本操

    松本(操)政府委員 私が承知をしております限りでお答え申し上げますならば、最初の粘土層はヘドロ層と呼ばれるようなもののようでございます。したがって、これに対して地盤改良を行うことによって埋め立ての工程中に十分な圧密沈下が期待できる。その下は砂層でございますので、それから先にもちろん粘土層なり砂層なりが交互に出てくるといたしましても、おっしゃるように何メートル下に岩盤があるという、その岩盤までを完全に押さえ切らなければ埋め立てというものが成り立たないということはないというふうに私は聞いておるわけでございますが、これは先生、御専門でございますので、私は、私どもの現在まで行いました調査の結論をかいつまんで申し上げるにとどめさせていただきたいと思います。
  307. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 聞けば聞くほど心細くなってくるわけでございますが、これ以上お尋ねすることはやめましょう。  ただ問題は、これだけは覚えておいていただきたいと思います。現在大阪湾の地底に眠っております粘土と砂のサンドイッチは、およそ二百メートル下に岩盤があると言われておりまするが、その間は粘土と砂とのサンドイッチがずっと積み重なったものであります。しかも、その粘土と砂とはいま安定しております。何によって安定しておるのでしょうか。それはその上に二十メートルかぶさっておる海水の重みを支えておるだけで安定しておるのであります。二十メートルの水の厚み以上の重さはかって経験したことがないのであります。その経験したことがない地層の状態というものを探らずして、何をもってこの人工島の建設ができるというのでありましょうか。私は猛反省を促しておきたいと思います。  次に進ませていただきます。  私も長年、埋め立て工事に従事いたしてまいりましたが、ボーリングの施工数が絶対的に少ないということは、いま局長もお認めになったのですからこれ以上申し上げません。だがしかし、これだけの巨費をかけて調査をなさいましたのに、九本のボーリングをしておるのに、なぜこの二本だけしか公表しないのでありますか。もっともっと何千本というボーリングをしなければ設計が十分にできないしろものであるにもかかわらず、それを、地元住民の了解が得られないというのが本当かうそか知りませんが、そのことによって九本しか打ってなく、しかも、その九本ぐらい全部出すのに何の手間が要るのですか。なぜ二本だけしか公表しないのか、その理由をお答えいただきたい。
  308. 松本操

    松本(操)政府委員 これは別して秘密にしようとか何かそういうことでは全くございません。かなり広い範囲に散らばって九本をボーリングしたわけでございますので、その中で、空港の場合、メーン滑走路の近辺を代表すると思われるところを一本と、補助滑走路を代表すると思われるわりあい沖合いのところを一本と、サンプルとしてごらんに供しただけでございまして、そのほかが必要であるという委員等の御意見があれば、これはもうあるわけでございますので、いっでもごらんに供せられるわけでございます。
  309. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。非常に素直にお答えいただきまして恐縮です。  しからば、いままでやられました調査、ボーリングの九本だけではなくて超音波探知によりまするところの深層探知、その内容につきましても公開されることを望んでおきます。資料を御提出いただきたい。この資料がなければ施工計画も立たないはずでございます。にもかかわらず当局は先般委員会におきまして、一応一兆何千億円という概算の見積もりを発表になりました。その見積もりの内容につきましても、そのすべてを——そういう資料がなければ見積もりができない。見積もりがなければ委員会では発表できない。それを発表されたのですから、ボーリングの資料だけではなく、見積もりの内容についてもその詳細を御提出いただきますように要求をいたしますが、回答をお願いいたします。
  310. 松本操

    松本(操)政府委員 いま先生のおっしゃいました超音波探査によります海底のレーヤーの状況につきましては、第何回の資料であったかまでいま私覚えておりませんけれども、審議会に提出いたしました資料の中にございますので、そういうものはいつでもごらんに供し得る状態にあると思います。  それから、せんだっての一兆云々の数字の話につきましては、これはきわめてラフな計算でございますということを申し上げたつもりでございますが、その後二月四日に埋め立て工法の専門家の意見を聞きましたときにも、やはり同じように一兆三千億という数字が出てまいりました。また、そのときに私はたしか六百ヘクタールで一兆四千億といったような数字を浮体工法の数字として申し上げたような記憶があるわけでございますが、去る十四日の浮体工法の専門家の意見陳述の中では、また別の数字が出てまいってきております。これはきのうも中野委員からたしか御指摘があったと思いますけれども、単に平面的に浮体工法の構造物を使うのでなくて、ダブルデッキと申しますか、使用可能なところは二階延てにして使う。したがって、表面積は八百何がしヘクタールでございますけれども、実使用可能面積がほぼ千二百ヘクタールになるというふうな状況でたしか一兆七千六百億という数字が試算で出てきておったように思います。ただ、これらの数字は、これも非常に紛らわしくて恐縮なんでございますけれども、たとえば浮体の場合には燃料タンクとか清水タンクとかいったようなものが全然外側になってしまっております。また、埋め立ての場合にも浮体の場合にも、橋は全然ないことになっております。それから埋め立ての場合には、上部構造物、滑走路の舗装、エプロンの舗装、こういったような費用が入っておりませんし、浮体の場合には、二階建てにいたしました場合の鉄鋼構造部分については勘定に入っておるようでございますけれども、内装等については全く入っておりませんし、甲板の上に突き出す部分については入っていないというふうに、前提条件が非常にまちまちでございます。  したがって、せんだっても申し上げましたように、単純にこの数字をいまの時点で比較するというのは、非常に間違いを起こしやすいことでございますので、さらに審議会でそういったような比較条件を詰めながら、はっきりした数字にまとめていくようにいたしたい、こう考えております。
  311. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 出すのか出さぬのか、はっきり言ってください。
  312. 松本操

    松本(操)政府委員 ボーリング等についての資料は、すでに審議会にも出ております。喜んでお出しをいたします。
  313. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 見積もりは……。
  314. 松本操

    松本(操)政府委員 見積もりにつきましては、審議会に提出した資料をそのままお出しするようにいたしたいと思います。
  315. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 では、資料を出していただけるそうでありますから出していただいて、さらに分科会でまたお尋ねすることにいたします。  要するに、この海域は埋め立てに適していないと私は思います。問題は不同沈下だと思います。私の経験からいたしましても、恐らくこの地点におきましては、沈下が十メートルを超えるであろうと思います。空港といたしましてはきわめて危険な不同沈下が起こるでありましょうから、地盤改良のために、たとえば堤防の下はサンド・コンパクション・パイル、あるいは埋め立て地盤におきましてはサンドドレーン工法というような計画をお使いになるようでありますけれども、その置きかえをいたしますときに、砂のくいを打っていきますときに、七〇%のヘドロが、入れた砂とかわりにはみ出てまいります。そのはみ出したどろは、海底から十五メートル程度新しいヘドロ層が持ち上がってくることになりますが、当初の私が持っております三港建の資料によりますると、このヘドロは除去するとなっております。ところが審議会に出ていきました資料では、今度は除去するという言葉が途端になくなっておりますが、一体これはどうなったのですか。どこで除去されたのですか。この文字はどこで除去されたのですか。はっきりしてください。おわかりにならなければここにありますよ。
  316. 松本操

    松本(操)政府委員 非常に細かな御質問でございますので、私もちょっと専門家の先生を前によう答え切れない面がございますけれども、私が承知をしておりましたのでは、確かに、砂ぐいを打ちますとヘドロが上がってくる分は取って外洋に捨てるという議論が当初あったように記憶をしております。ただその後のいろいろな議論の中で、まずトレミー管とかいうのを使って砂をまきまして、その下に砂ぐいを打っていく。そうしますと、置きかわったのは敷砂の下に入るということもあるのではないかと思いますが、しかし、ここで無責任なお答えをいたしかねますので、きちっと調べた上でまた別途お答えをいたします。
  317. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それではお答えができぬようでありますから、後ほど調べてお知らせをいただきたいと思います。  いまこういう重大な、砂ぐいを打ったら打っただけの体積のものが上へ上がってくるのは、どなたがお考えになってもわかる話で、上がってきたヘドロというのはますます撹拌されて、まるで牛乳に粘土をぶち込んだようなかっこうになってきます。もう手を突っ込んでも全然こたえないくらいの状態になってまいりますが、いまのような回答では巧みに言い抜けをされたとしか思われませんけれども、このヘドロというのが、上から砂を拡散するにいたしましても、いわゆる置き砂を置いて上から押さえていくにいたしましても、その際船の上から砂を落としていくのでありますから、その海の中は全くもう一寸先も見えないほどの汚濁に包まれてしまいます。すなわち、海水に拡散をして、恐ろしい公害を振りまくことになりますが、その点についてどう思われますか。
  318. 松本操

    松本(操)政府委員 確かに、海中でどろをまいたり砂をまいたりするわけでございますので、海水の汚濁という現象は起こると思います。この起こりぐあいと、それからこれをいかに少なく起こらせて、さらになるべく早く鎮静させるかということが技術開発の主たるねらいであろうかと思いますが、現在そういったことを取りまとめ中でございます。したがって、いまこの時点で、そういったことが起こりませんとも私申し上げないわけでございますが、起こるということを前提に、それに対する影響の度合い、対応の方法、こういった点を取りまとめておりますので、まとまり次第、これまた審議会にデータを提出して御検討を願うということにいたしたいと思います。
  319. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どうやら余りやる熱意がないような御回答になってくるのでありますが、とにかく一番大事ないわゆる建設公害の最たるものがヘドロであります。これがもうもうと煙のように海の中に巻き起こっていく、その影響というものは恐らく何キロメートルも離れたところまで影響が起こるでありましょう。漁業補償なんかはもう天文学的な数字になるのではないかと思っておるのでありますが、わからぬとおっしゃればいたし方がございません。  しかし、ここで私の感想を申し述べておきますならば、そんなに大事なことが、一番むずかしい作業が何にもわからずにおいて、よくも予算委員会で一兆三千億円という概算が出たもんじゃなと私はたまげておるのであります。さて、やってみなければわからぬというのがどうも真実のようでございますが、これだけは、やってみたがだめでしたとなったら一体どうなりますか。これは大臣の首が飛ぶだけじゃ済みませんぞ。  そこで、長崎空港におきまして一つの例を申し上げますが、これは泉南の沖よりははるかに地盤がよろしゅうございます。であるのに、いまでき上がって八年たちました。八年たっておりますが、護岸もりっぱにできて埋め立てもできて飛行機も飛んでおるのに、いまだにその飛行場から汚濁が絶えません。そしてモズクが全滅をいたしております。仮にいま埋め立て業者の皆さんが言うところのサンドコンパクションあるいはサンドドレーン工法等で地盤の改良が可能であったといたしましても、砂の置きかえにかわりますそのヘドロの始末をやっておかなければどうにもなりませんが、これを除去する手段、そして一体どこへ持っていって捨てるのですか。北極海へ持っていくのですか。その点をお知らせ願いたいと思います。
  320. 松本操

    松本(操)政府委員 おっしゃいますように、ヘドロの問題は確かに出てまいりますので、これは外洋に運んで、影響のないところへ投棄をする。大阪湾内で右から左に動かすというのではなくて、紀伊水道のはるか外側へ持っていって、関係のないところへ投棄をするというふうなことを考えております。
  321. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので、局長さん、てきぱき核心をついた答えをしてください。何せおたくの方は六年間にわたる調査をやってきているのですから、もうすみからすみまでわかっておるはずなんで、どうもよくわかりませんとか、調査が行き届いておりませんとか、資料がありませんとかいうようなことのお答えが出てこぬようにどんどん答えてください。  かつてない膨大な砂を海の中へ打ち込んでいくわけでありますが、それにかわるところの、いわゆる置きかわっていくところのヘドロの対策を、どうも外洋に持っていって捨てればいいわいというようなことをおっしゃいますが、その外洋に持っていく船へ積み込むのにどうやるのですか。そういうこともお聞きしたいのでありますけれども、時間がありませんから飛ばします。こんなまことに奇妙きてれつな、本当に煙のような、水と全く変わらないようなヘドロになっちゃったやつをどうやって船へ積み込んでいくのでしょうか。そういうことなんかでも全然研究が行われておらぬようでありまして、私といたしましては、まことに奇妙きてれつな話で、全くキツネにつままれたような気がいたします。改めて別の場所におきましてこの問題は追及することにいたします。  次いで、建設の費用について聞いておきたいと思いますが、工費は埋め立てと浮体との比較を行います。そのときにはその条件を公平にしなければ比較をしたことにはなりませんね。空港の場合、重要な条件の一つに離着陸の回数があります。当局はこの問題は、開港当初年間十五万から十六万回でよろしい、そして昭和七十五年、すなわちいまから二十年後に一日に二十六万回の離着陸ということを予想いたしておりますが、この二十年後の二十六万回の規模というものを、なぜ二十年光のことを見越して最初から埋め立て工法でおつくりになるのか、その意図は一体どこにあるのか、それを聞いておきたいと思います。
  322. 松本操

    松本(操)政府委員 空港というものは、世界どこでもやはりつくってしばらくたつと足りなくなっていろいろなものを継ぎ足してくるわけでございますので、関西空港の場合、二十数万回と申します数字はしばらく先の話でございます。したがって、いまの時点でいきなりそれに対応するものをつくろうという考えは持っていないわけで、現在は十六万回に対応する約千二百ヘクタール程度のものでよろしい、これを一期工事と呼んでもいいわけでございますが、そういったものでとりあえず対応しておけば十分ではないか。ただし、仮に埋め立てを使ったといたしました場合には、護岸というものを後からくっつけるというのは、工事としては非常に手戻りの激しい工事になりますので、したがって護岸部分についてはあらかじめつくっておこう、こういうことだけでございまして、埋め立てまでしてしまうということは考えておりません。
  323. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、ひとつこういうふうにお尋ねをしてみたいと思います。  浮体の方式によりますると、埋め立てのようなでこぼこの沈下もありません。したがって、補修の必要がありません。したがって、常時まるまる二十四時間使うことができます。そのために、主滑走路は一本で補助滑走路が一本あれば、ほぼ二十五万回の離着陸が可能であります。これでも二十年後まではまだまだ余裕たっぷりでありますが、当局の言われる二十六万回と二十五万回では、一万回だけの差がございます。たった一万回の差のために、埋め立て工事の関係では、わざわざ滑走路を三本にふやそうとしておられます。本当に必要とするならば、二十年後に、浮体であるならば何ということはない、箱をくっつけるだけでありますから、簡単に増設ができます。だがしかし、埋め立て工法の場合には、あらかじめ護岸をつくっておかなければなりません。  ここで大臣、聞いておいてください、いま二十年後の話をしているのですよ。いかにも遠大な計画をして周到な計画のように聞こえますけれども、この航空界における二十年というのは、どんな現象があるでしょう。いまジェット旅客機がもうあたりまえのように言われておりますが、このジェット旅客機が出てきたのはたった二十年の間の出来事であります。新経済社会七カ年計画ですら、先般来の委員会の質疑応答を聞いていますと、まだその基盤がぐらぐらしておる。七年先ですら不透明だと言われておるときに、こんな膨大な先行投資を二十年先のことを考えてやるということは、税金一のむだ遣いにはならぬかと思いますが、いかがでありますか。
  324. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 先生より大変貴重な御意見を承りましたので、十分、浮体あるいは埋め立ていずれも真剣に討議をして検討してまいりたいと思います。
  325. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。真剣に検討するということでありまして、大臣のまじめな回答に感謝をいたします。  さて、埋め立ては、沈下のために常に補修をしなければなりません。下手をすると使用不能の状態が起こってまいります。そこで、一本だけの主滑走路では間に合わないから、もう一本非常時用のために主滑走路をつくらなくてはならない、そこで、浮体工法では二十五万回使えるというのに、一万回だけ余分にふやせば、二十六万回ということになれば往生したということになりはせぬかというような、そんな意地の悪いことを考えていらっしゃるとは思いませんけれども、事ほどさように、埋立地帯につくるということは、余分な主滑走路を一本つくらなきゃならぬというほど基本的には高くつくものであると考えておりますが、いかがでありますか。
  326. 松本操

    松本(操)政府委員 先ほど来いろいろな数字が出ておるわけでございますが、結論的に、埋め立てと浮体といずれがいずれぞやということになりますと、建設そのものにかかる工費もございましょうし、あるいはこれは埋め立てのときに当然問題になってくるでありましょう土取り場近辺における問題を解決するための金がどうなるかという問題もございましょうし、また浮体の場合でございますと、何せ鉄鋼構造物でございますから、いろいろと防食のための手当てなりあるいは腐食が起こった場合にどういうふうにするかとか、日常の維持管理をどうするかとかいったようなランニングコスト的な面も考慮しなければならないかと思います。したがって、繰り返し申し上げておりますように、現在手持ちのデータで右か左か、経費的なものを議論するのはきわめて早計だろうと私は思います。けれども、いまおっしゃっておりました二十五万か六万かというのは、実は私どもはやや違う観点で考えたわけでございまして、二十五万回か二十六万回かということであれば、先生おっしゃるようにわずか一万回の違いでございますから、いずれでもいいということが言えるかもしれません。ただ、滑走路というものは航空機の離着陸に当たって絶えず安全にそれが行われるような状態に保持をされている必要がございます。現実に羽田におきましてもあるいは成田におきましても、滑走路に着陸し損なった航空機というものが年に何回か出てまいります。そういうことによって一時的に滑走路が閉鎖をされるというふうなこともございます。また風向きというものは、いろいろ工夫してそれに合うように滑走路をつけるわけではございますけれども、一年のうち特定の季節になりますと、必ずしもその滑走路には向かない風が吹いている時期もございます。そういう場合に、主滑走路が一本しかない場合と二本ある場合とを考慮いたしますと、やはり二本の滑走路をたとえば出発と着陸に使い分けるというふうな方法によりまして、風向きが多少不利であってもその時点における能力を落とさないで済むといったような空港機能上の利点というのもあるわけでございます。これらのことは航空審議会に細かな資料を提示して御審議願っておるわけでございますので、また別途先生の方に提出してもよろしいわけでございますけれども、決して、埋め立てというものを推進せんがためにわずか一万回の差を設けて、二十五万と二十六万は二十六万が一万多いから埋め立ての方がいいのだというふうなことを主張する気は毛頭ございませんので、その点はぜひ誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  327. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これはまことに妙なことを承りました。  いま局長さんのお答えによりますると、空港というものはどんな場合においても飛行機が着陸するようにしなければならない、これは当然でしょう。ところが、空には風が起こっているわけでありまして、風向きの次第によっては着陸がしにくくなる場合がある、したがって風向きが違ってもおりられるようにもう一本の主滑走路があった方がよろしい、まことにもっともに聞こえますが、しからば、いま提出なさっておるところの、この間予算委員会で御発表になりました、あの埋め立て工法における主滑走路二本というのはクロースパラレルじゃありませんか。クロースパラレルというのは何ですか。これは主滑走路がここに一木あるとしたら、これから約五百メートルかあるいは場合によっては七百メートルぐらい離してもう一本平行に主滑走路をつくるということではありませんか。同じ方向で同じ主滑走路を何のためにつくるのですか。風向きが変わるからつくるとは一体どういう意味ですか。余り議員を欺くようなことを言わぬようにしてください。少なくともこの場における会議録は議事録になって残るのですよ。クロースパラレルじゃありませんか。オープンパラレルじゃないでしょう。はっきり答弁してください。
  328. 松本操

    松本(操)政府委員 図面も何も用いませんでお答えをするのは、私の能力からいって大変にその範囲を超えたことなのでございますが、クロースパラレルの場合にも両方の滑走路を同じような形で使うのか、一本がとまったときに、一本のメーンと一本の補助を使うのか、あるいはクロースパラの一本はもっぱら着陸に使い、一本はもっぱら離陸に使うのか。これは風向きが同じでございますから、着陸専用と離陸専用に二本のクロースパラを使い分けるということは可能でございます。こういうふうな幾つかの組み合わせを季節による風向きに応じて全部調べまして、一つのチャートをつくってございますので、このチャートをごらんいただければ、私が決していいかげんなことを申し上げたわけではないことを御理解いただけるかと思います。
  329. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので次に参りますが、そのことにつきましても、資料をひとつ要求をいたしたいと思います。あるとおっしゃるのですから、資料を要求したいと思います。  さらに、比較上の問題を取り上げてみますと……。
  330. 田村元

    田村委員長 岡田君、ちょっと待ってください。いいですね資料、松本君。
  331. 松本操

    松本(操)政府委員 いま委員長の方から御指示のありました資料につきましては、審議会に対して提示をした中に細かに入っている資料で十分御満足いただけるかと思いますので、それらを全部取りそろえてお渡しいたすようにいたします。
  332. 田村元

    田村委員長 岡田君、いいですか。
  333. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 はい了解。  さらに、比較上の条件の問題を取り上げてみますと、浮体方式の場合は浮体をそれぞれのドックでつくってまいりまして、海の上を引っ張ってきて接合するだけ、したがって費用の構成もきわめて明解で、だれにでもわかりやすいものであります。  一方、埋め立てにおきましては、山を買収し、発破をかけ、土砂を掘り出し、運搬し、その跡を覆土し、そして調整池をつくり、河川を改修し、岸壁をつくり、船をつくり、コンベヤーをつくり、そして立ち退き補償を出し、あるいは漁業補償を出し、膨大な関連の経費を伴ってまいりまするが、昨日わが党の中野議員の同趣旨の質問に明快なお答えがありませんでしたので、改めて聞いておきますが、簡単に質問を縮めます。  海砂、捨て石は費用の中に入っていますか。また、海砂を採取いたしますときの漁業補償というものが物すごい大きな金になってまいりますが、入っておりますか。土取りやコンベヤー用地の買収費は入っていますか。以上のことにつきましてお答えをいただきたいと思います。
  334. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  埋め立て土砂の採取費は入っております。治山治水費も入っております。コンベヤー用地の借り上げ費あるいはコンベヤーの製作費、こういったようなものも入れてございます。ただし、漁業補償については、前々からお断り申し上げているように、これは入っておりません。
  335. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それはおかしいではありませんか。海砂を持ってこなければあそこの地盤改良はできないとはっきり明言をしております、何遍その説明を聞いても。持ってこなければ埋め立てができないというその海砂をとるのに、だれの了解もなしに、補償も支払わずに勝手に海砂を盗んでくるのですか。そういう費用の計算をしておるということは、まことに計算の仕方にトリックがあるじゃありませんか。そういう大きなトリックを使っておいて、浮体とそして埋め立ての方とは、表面積の関係から言ったら倍半分違いますと言わんばっかりの説明をこの委員会でいけしゃあしゃあとするとは一体何事ですか。この問題は許しちゃおかれぬ。議員をペテンにかけるもはなはだしい。用地の確保には莫大な費用が要りますが、いずれにいたしましてもそれは国民の税金が使われるのであります。漁業補償の費用は、当然海砂の代金に含まれておるべきであります。それは、たとえば山を買って整理しましても、跡地を売り払ってその利益で副産物として全部ペイするんだというようなことを言いたいんでありましょうが、たとえその造成しました跡を売ったといたしましても、それを買うのはだれですか。国民ですよ。外国人が来て買うんじゃありませんよ。日本の国民が買うんであります。  そういうあらゆる一切のものを除外をいたしまして、浮体と埋め立てとは費用の方では余り変わらぬが、表面積が倍半分違うから浮体の方が倍もかかると言わんばっかりの印象を与えるような予算委員会の答弁というのは、もってのほかだということを私はこの際申し上げておきます。  さらにここで申し上げておきます。  では、土砂の積み出し港、そういう港湾の造成費なんか一体どうするのですか。一般の港湾計画の中に入っているからこれも含めないとおっしゃるのですか。おかしな話ですね。そして空港をつくるのには埋め立ててつくる分ですから、土砂の積み出し港湾が必要となることは当然じゃありませんか。そしていまのヘドロの除去の費用にいたしましても、ただどこか知らぬけれども遠い海へ持っていって捨てるんだという、そんなことが国際的にも問題になりませんか。さらに治山治水、調整池や沈砂池、砂防の土手あるいは切った跡の客土、それからそれの緑化の費用、そういうものは一体どうなるのでありましょうか。  ここで、結局当局はこの仕分けのテクニックで答弁をしておるんではないかということが、委員の各位にもおおよそおわかりになっていただけたことと私は思うのであります。  空港建設の費用から見ました上で別にこういうことを操作するというのでは、こういう次元で比較をされては、浮体の方がはなはだしく不利になり、不当な比較をされておるということになりますが、昨日の中野議員の質問に対して、空港の舗装などは含まれていない、ただいまも含まれていないとおっしゃいましたね。私は非常におかしく思うのであります。飛行場というのはただどろで埋めただけで、草ぼうぼうのところでジェット旅客機が飛ぶのでありますか。そして当局の御計画によれば、千人乗りのジェット旅容機を飛ばすんだそうですね。それだけのものがどろの上にばっと来て大丈夫なんでしょうか。それで飛行場はでき上がりですか。それで一兆三千億ですか。少なくとも国民を代表する議員の前でいいかげんなことを言ってもらいたくない。はっきりしてもらいたい。
  336. 松本操

    松本(操)政府委員 私が議員をペテンにかけたとか大変きついおしかりでございますが、しかし私は、この問題について責任のある立場から取り組んできておりますし、冒頭申し上げましたように、両工法について可能な限り公平な比較考量をするという基本的態度を捨てた覚えはございません。  そこで、ただいま御指摘の一兆三千億の中に舗装費が入ってないで何で空港かという御指摘でございますが、これを陸の上につくるとしましたらば、これは用地買収費に相当するものでございましょう。海の中につくるからこそ、護岸、埋め立て、地盤改良が要るわけでございます。浮体の場合も右に同じでございまして、これはただ鉄のかたまりにすぎません。浮体の方でお考えになっている一兆七千六百億というのは鉄のかたまりでございまして、これも滑走路はございません。エプロンもございません。ただそれに壁をつけ舗装をし、諸般の仕掛けをつけていけば空港になるし、埋め立ての場合も滑走路を舗装し、ビルを建て、格納庫を乗っけて橋をかければそれで空港になる。一般の陸上空港でございますれば用地の買収が終わったというだけでございますので、それから地ならしをし、舗装をし、ビルを建てるというプロセスはいずれも同じでございます。繰り返し私が申し上げておりますのは、これをもって左右あれこれ比較すべき事態ではございません、ただあえて申し上げるならば、かくかくしかじかの数字であり、単純に面積比をはじいてみますとこんなことになりますと申し上げたのみでございますので、決してそういう別途の意図を持って申し上げたことでないことは御理解いただきたいと思います。
  337. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 何にも御存じのない方々を相手にして一席の講演をぶつのならそれで十分であります。まことにおみごとな答弁であります。だがしかし、私はだまされません。  浮体空港の方は鉄板でありまして、鉄板の上にじかに飛行機が、だれがそんなことを言いましたか。その上にもちろん飛行機が離着陸するための舗装をすることは当然なことです。飛行機が滑って海に落ちてしまいます。それはわかっておるが、浮体工事の方では全然基礎工事が要らぬではありませんか。埋め立ての場合には舗装するだけでは済みませんぞ。これに対する基礎工事が要るが、基礎工事も含んでおらぬでしょうが。  私はここで一つだけ体験をお話ししておきますが、私どもが埋立地に工場をつくりました。工場をつくって、そこで一台が百三十トンもするような大きな機関車をつくったことがある。りっぱなコンクリートの床であります。いままで何年たっても事故のなかった床です。だが、ある日の晩、突然、ぼこっというすさまじい音がしたと思ったら機関車一台がすぽんと落ちたのであります。コンクリートの床が、抜けるはずがないのが抜けるのであります。それは下が埋め立地だから埋め立ての圧密沈下が年々進んでいくから、確かにどろの上に基礎工事をやって、コンクリートを打って、床をこしらえて仕事をしてきたのだけれども、何年かたつうちに下は人間がもぐって歩けるほどのすき間があいてしまう。したがって、その上に百三十トンもするような機関車を置くのでありますから抜けるのはあたりまえです。ジェット旅客機がもし着陸をして滑走路の床が抜けたということになったら、一体だれが責任をおとりになるのですか。そのことをはっきりしてください。
  338. 松本操

    松本(操)政府委員 滑走路がそういうことになって責任を云々しても、もはやその時点では始まらないわけでございますので、そういうことがないように地盤を改良し、その上の土砂の捨て方にも工夫をし、おっしゃいますような圧密沈下の起こり方も百年で約三・六ないし五・三メートルというふうに計算上はでておるわけでございますが、それを実行上近づけるような技術的な工夫もし、おっしゃるようなことが起こらないように滑走路の路盤も十分しっかりしたものを使い、ということによって空港をつくり上げていくというのが、仮に埋め立て工法を使いました場合のプロセスになっていくのではないか、こう思います。
  339. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がないのでちょっと急ぎますが、とにかくいま言うように、滑走路なんかでも埋め立ての場合はどうやってこしらえるのか。いわゆる浮体工事のように、鉄板というがちっとした基礎がないのであります。いつ沈んでいくかわからぬというのも、いまのお答えによるとたしか八年と言いましたね、八年、沈下。
  340. 松本操

    松本(操)政府委員 八年ではなくて、百年でございます
  341. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 何をか言わんや、百年間にわたって沈下を続けていくような、そんな空港をよくもつくる気になりましたね。驚き入った次第であります。私はいざというときの用意のために、たった一本のボーリングでしかないけれども、精査に精査を加えて、私もそれにほとんど近い年数を出してまいりました。局長の言われることと一緒です。隠さずに言われたことだけは私も感心いたします。  さて、それらに要する滑走路の基盤工事に使うところの費用も出してください。  さて、時間がありませんから急ぎますが、私はこの規模の大きさに驚く一方、海底土質のきわめて悪い条件からきます危険性について大変実は心配しておるのであります。私はこれまで埋め立て工事に携わってまいりました長い経験の中で、ヘドロの恐ろしさというものをいやというほど知っております。私の見ている目の前で、護岸や防波堤がこのぐらいのスピードで沈んでいくのであります。いま私が手を落としていくこのぐらいのスピードで。あしたの朝、午前十時に竣工検査をするという堤防が目の前でどうすることもできぬ。どんどん沈んでいくのであります。そういう恐ろしさを見ております。  さて、日本のことばかり言うたんでは相済みません。御信用に相ならぬかもわかぬから外国のことを申し上げますと、たとえば先般、フランスのニース空港が突如として崩れましたね。そして大津波が起きて十何人という人が行方不明になっちゃったでしょう。あれは一体どういうわけですか。あれもヘドロですよ。よく覚えておいてください。  さらに、工期の問題についても私は心配をしております。これは日本の出来事を言わなければわからぬでしょうから申し上げますと、神戸のポートアイランド、これなんかでもいかがですか。十年計画でおやりになりました。ところが、いまだに完成をいたしませんが、一体どういうことですか。着工いたしまして十年の工期は早くも過ぎて十五年、一体どうなっているのですか。局長さんは新聞記者に会っては、やあ、空港そのものは島が六年でできるのだが、いろんなことがあってさ、大体十年ぐらいはかかるだろうなんて、ポートアイランドと同じ工期を言っている。この空港よりもうんと小さな、何分の一という小さな、しかも地盤の最もいいような神戸のポートアイランドでさえ、もうすでに五年も工期は超過しておるのであります。ひとつお考えをいただきたいと思う次第であります。  さらに私はここで申し上げたいのは、国会で少なくともあなたが、埋め立ては幾ら、浮体工法は幾らというお値段をおっしゃいますときには必ず注釈をつけてください。いままでやりました長期の土木工事におきまして、仕切り価格で、契約したときの金額でおさまった工事があったら教えてください。各大臣も御列席でございます。大蔵大臣もいらっしゃる。建設大臣もいらっしゃる。皆さん方広い耳を持っており、情報も持っていらっしゃるわけです。いままでの長期の土木工事、決して仕切り価格でおさまってはおらぬのであります。大抵が何倍、何倍という大きな大きな金額に相なっております。  そのことを、時間がありませんから、一、二だけ例を申し上げておきます。いま走っております東海道新幹線、、一番最初の計画は千九百十七億円、でき上がったときには三千八百億円、ちょっきり倍であります。そしていま話になっておる神戸のポートアイランド、十五年たってもおさまらないのは、これは一番最初九百二十一億でつくると言っておったのが、今日現在幾らですか。二千二百五十億円かけておさまりがつかないのであります。さらに東北新幹線、該当者の議員の方がいらっしゃったら恐縮でありますが、値段の比較だけですからお許しいただきたいと思いますが、これなんかにいたしましても、たとえば東北新幹線は、当初八千八百億円がいまの見積もりでは二兆一千七百億円になっているじゃありませんか。上越新幹線は昭和四十六年五千八百億円が現在では一兆二千五百億円です。いずれも当初の仕切り価格ではおさまっておりません。  だがしかし、浮体工法というのは仕切り価格でぴしゃっと決まります。でき上がるのに四年たちますが、四年後になって契約金額が変更なんということは、そういうことはいままでに例がないのであります。建設工事におきましては、そういう意味におきましても、幾ら金をつぎ込んでいくのかさっぱりわからぬと思うのでありますが、こういうことに対して危険性を感じないかどうか、この点、大臣の御意見を聞いておきたいと思います。
  342. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 先生お話を承っておりますと、浮体工法でなければならないような感じがするわけでございますが、航空審議会を通じまして十分両方比較検討いたしまして、適正な判断をするようにいたしたいと存じます。
  343. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 運輸大臣、まことに恐縮でありますが、いま一度確認しておきたいと思います。ただいまの回答、実に真実味のあるお答えでありますが、いままで私が申し述べましたことから考えて、埋め立てということにこだわらないで、これからは浮体工法という問題について真剣に検討すると当局は約束をするかしないか、はっきりしてください。大臣が約束するか。
  344. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 浮体工法にも埋め立て工法にもいろいろ問題点があるように感じられます。十分両方、審議会の答申を待って検討いたしたいと思います。
  345. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後にお尋ねをいたしたいと思いますが、いかなる計画にいたしましても、結局は国民の選択、地元の合意で決するべきだと思います。これはどなたも否やはないと思いますが、その意味で重要なことは、建設中もでき上がってからも公害がないというほど少なく、住民の環境が守られるということが一番大事だろうと思うのであります。  さてそこで、昨日わが党の中野議員が質問いたしましたことに対しまして局長さんおっしゃるのに、建設中もでき上がってからも公害のない空港にいたしますということをおっしゃいました。大臣も、あらゆる意味で公害が最も少なく、環境が守られる方策によって選定するべきであると思われますかどうか。その点をはっきり確約できるなら、確約できる、環境が最優先というふうにお答えを願いたいと思います。
  346. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 昭和四十九年以来のこの泉州沖の問題につきましては、環境調査に非常に重大な関心を払って調査を続けて、多額の金額を使いながら調査をしております。もちろん先生のおっしゃるとおりに公害のないものにつくり上げていかなければならない、かように考えます。
  347. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、この問題の最後にさせていただきます。  私が大半の時間をとうとうかけてしまいましたが、この問題の質疑を聞いていらっしゃってもおわかりのように、はなはだ不明瞭なことがたくさん残っております。私は、一番大事なことは、この空港は安全でしかも公害、環境破壊などの影響の最も少ない方法を選んでいかなければならぬという国民に対する大臣の基本的な姿勢が必要であろうと思いますので、最後に大臣の姿勢を確認する意味の質問を行いまして、運輸大臣に対する質問は終わらせていただきます。
  348. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 数々の空港に対する御質問をちょうだいしたわけでございますが、国民の皆様の期待に沿えるように、国民の皆様方に御迷惑のかからないようなものをつくり上げてまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  349. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは年金の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、あと五分しかありませんので、どうもわざわざ御出席いただいて恐縮であります。  そこで、それではこの中で一つだけ選んで申し上げたいと思うのでありますが、私が言いたいことは、六十五歳に年齢を引き上げるということは、幸いにいたしまして十三日、政府・自民党におかれては断念をしたということはまことに喜ばしいことであります。ところが、どうもまだ何か一つぶら下がっておるのですね。それは何かといったら、これから先五年以内に所要の改定措置をとるという訓示規定を盛り込むのだということを漏れ承っておりますが、それは本当でしょうか。
  350. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 将来の高齢化社会を見通します場合におきまして、老後生活の支えになる年金水準を保ちながら、将来は現在の数倍に及ぶお年寄りの年金生活を支えていかなければならぬ。したがいまして、若い世代に相当の負担をお願いせざるを得ないことになるわけでございます。しかし、その若い世代の負担にも限度がございますので、年金制度を将来にわたって安定的に運営していくためには、いろいろな工夫が必要であろう。国民の理解を得ながら、そういう総合的な観点からこの問題に対処していかなければならぬのでございます。したがいまして、御指摘のような支給開始年齢の問題は、各関係の審議会におきましても避けて通れない問題であるという御指摘をいただいておるわけでございまして、次回の財政再計算におきましても、この問題は真剣に取り組むべき課題でなかろうか、そういう趣旨の規定を設ける必要があると考えたわけでございます。
  351. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんから厚生大臣に申し上げておきますが、現在御心配をいただいております厚生年金は、この五十五年度末におきまして約二十七兆円の積立金となるのでございます。全然使ってないお金であります。それほど厚生年金というのはお金持ちの団体なのであります。片や各共済年金、国家公務員、地方公務員、企業体職員等のいろいろな共済年金がありますが、いずれもパンク状態です。恐らく一年か二年の寿命しかないでありましょう。そのときには国会にまた泣きついてくるのだと思いますが、そういうパンク寸前の共済年金のことはほっておいて、三十年先の昭和八十五年にならなければ赤字にならない、いわゆる在庫の積立金がなくならないという、まだ三十年先でないと貯金がなくならぬという厚生年金のことについていやに御熱心でありますが、そう心配をされぬようにひとつこの際お願いをしておきたいと思います。  さらに、大蔵大臣御出席でありますので、この機会にお願いをしておきたいと思います。年金というものは、みんな働いてこられて掛金を掛けた人たちのこれは唯一無二の老後の生活を支える保険でございます。そこで、長年かかって掛けてきたその年金がやっともらえたと思ったら、その年金にまでそれは所得であるから税金を取るぞよと言って税金を取る、これはひどいのじゃありませんか。これは共済年金、国民年金あるいは厚生年金を問わず一切の年金は非課税扱いにすると、大平総理がお留守でありますけれども、遠慮することはありませんから、ひとつそういう約束をしていただきたいと思います。  以上です。
  352. 竹下登

    ○竹下国務大臣 岡田委員、百も承知で御質問でございますが、御案内のように所得税というものは、本来納税者の所得水準に応じて応分の負担を求める、これはまさに原則的にそういう税金でございます。したがいまして、主要先進国におけると同様に、社会の高齢化の進行に伴って、年金所得のウエートは当然これから増大してまいります。そういう意味において、公的年金の受給者といえども、公的年金の収入金額、がある種の水準を超えた場合、やはり所得税を納めておる人の不均衡感というものは否定できないのじゃないか。  そこで、いま御案内のように、年金受給者、二百十九万四千円でございますかまでが課税されないわけでございます。一方、隣に住んでおる独身者は八十三万一千円、あるいは隣に住んでおる婿さんと嫁さんは百十三万六千円。こういうようなものがありますと、年金でもって老後を——確かに積み立てられたその努力に対しては感謝する気持ちはあっても、年金の仕組みが、また御老齢の方は私どもの負担において老後を安らんでいただいておるという気持ちの中に、やはり不均衡感というものはぬぐい去れないのではないか。したがって、委員が御指摘のように年金全部を非課税にしてしまえということになりますと、そこのところ、勤労意欲の問題と所得税というものの持つ性格そのものの問題ということがございますので、私は現行の水準でおおむね御理解がいただけるのではなかろうか、このように期待をいたしております。
  353. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が三分間超過をいたしましてまことに恐縮であります。質問はこれをもって終わりますけれども、大蔵大臣に再度お願いをいたしておきたいと思いますことは、先進国においても税金をかけておるのだから、あるいは独身者がこうだ、夫婦者がこうだから、働いておる者の意欲も考えてまあいいではないですか、この辺でどうですかとおっしゃる理屈もわからぬではないのでありますが、しかし、いわゆる何十年とかかって掛けてきましたその年金、いよいよ働けなくなって、それだけの収入を当てにしておる人たちに対する年金というのは、働いて所得を得る人の所得とは大きに中身が違うと私は思うのです。もっともっと温かい、ああよく働いてくださった、後は老後を安心して、これだけしかありませんけれどもこのお金で生活をしてくださいと言ってお渡ししてこそ、私は福祉行政であろうと思います。したがって、こういうものから課税を外してしまう、非課税にするということは、私はまさにこの不況でインフレになろうとする時代にもし実行されたら、仁徳天皇以来の大快挙になるであろうということを進言をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  354. 田村元

    田村委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時散会