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1980-02-15 第91回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月十五日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事小此木彦三郎君 理事 瓦   力君    理事小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君      稻村左近四郎君    越智 伊平君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       片岡 清一君    金子 一平君       岸田 文武君    小山 長規君       近藤 元次君    始関 伊平君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       田中 龍夫君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    福家 俊一君       藤尾 正行君    藤田 義光君       松澤 雄藏君    村山 達雄君       阿部 助哉君    稲葉 誠一君       大原  亨君    川崎 寛治君       兒玉 末男君    野坂 浩賢君       八木  昇君    安井 吉典君       横路 孝弘君    飯田 忠雄君       岡本 富夫君    草川 昭三君       坂井 弘一君    正木 良明君       中川利三郎君    中林 佳子君       四ツ谷光子君    大内 啓伍君       岡田 正勝君    中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         総理府人事局次         長       川崎 昭典君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁長官官房         防衛審議官   友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁労務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁研究         調整局長    勝谷  保君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁大都市圏         整備局長    伊藤 晴朗君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省保護局長 稲田 克巳君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁医療         保険部長    此村 友一君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   田中 宏尚君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         運輸大臣官房総         務審議官    永井  浩君         運輸省港湾局長 鮫島 泰佑君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         労働省労政局長 細野  正君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省婦人少年         局長      高橋 久子君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 加藤  孝君         労働省職業訓練         局長      岩田 照良君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省都市局長 升本 達夫君         建設省河川局長 稲田  裕君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 関口  洋君         自治大臣官房審         議官      久世 公堯君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     近藤 元次君   江崎 真澄君     越智 伊平君   倉成  正君     片岡 清一君   塩崎  潤君     岸田 文武君   矢野 絢也君     飯田 忠雄君   工藤  晃君     中林 佳子君   多田 光雄君     四ツ谷光子君   松本 善明君     中川利三郎君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     江崎 真澄君   片岡 清一君     倉成  正君   岸田 文武君     塩崎  潤君   近藤 元次君     荒舩清十郎君   飯田 忠雄君     矢野 絢也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。二見伸明君。
  3. 二見伸明

    二見委員 最初に、物価問題についてお尋ねをしたいと思います。  総理大臣に初めに、現在の物価情勢をどう認識されているのかお尋ねしたいわけでありますけれども、一月の卸売物価前月比二・一%のアップであり、年率換算二八・三%という大変な上昇であります。これは総理御存じのように、前月比上昇率では四十九年二月の三・九%以来の、いわゆる狂乱物価以来の大幅な上昇であります。しかも、その上昇の中身を見ますと、特に素原材料は前年同月比で六五・三%、中間品二二・四%、完成品四・五%のアップでありまして、素原材料価格上昇を反映して中間品価格がここにきて目立って上昇してきた、これは近い将来、完成品価格を押し上げ、消費者物価上昇に波及するおそれがあると思います。また、地価の上昇も不気味な状態であり、さらに原油価格もさらに引き上げられる、原油価格の引上げがとまらないという傾向を考え合わせますと、もう物価情勢警戒水位ではなくて、特に卸売物価状態を見ますと、非常事態を迎えているのではないかというふうに私は判断するわけでありますけれども、総理大臣の御判断はいかがでございましょう。
  4. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 去年は予想以上に卸売物価騰勢が続いたわけでございますけれども、消費者物価の方は、幸いに基調としては落ちついた動きを維持することができたことは、大変ありがたいことであったと思うのであります。けれども、卸売物価騰勢が、海外要因を初めといたしまして大変いわば異常な状況になってきておりますことは、いま御指摘のとおりでございます。したがって、これを受けて国内的に消費者物価にできるだけ波及が少ないように持っていかなければならぬわけでございまして、政府は、あらゆる手だてを動員いたしまして、機動的な対応策をいま講じつつありますることは、御案内のとおりでございまして、いま経済政策の最重点は、御指摘のように物価政策であると言わなければならぬと思いまするし、今日の状態は、よほど警戒を要する段階であると私も承知いたしております。
  5. 二見伸明

    二見委員 日銀総裁は所用がおありだそうでございますので、最初に二、三お尋ねをしたいと思います。  私は、これからの物価問題を考えた場合に、やはりインフレマインド、さらに仮需要、これが一番恐ろしいと思います。そのためにも金融政策早目がよいと私は思うわけでありますけれども、日銀は、まずマネーサプライについては、ここのところ大体一一%前後の伸び率でずっと推移してまいりました。これは四十八年のときのいわゆる狂乱物価のときのマネーサプライとは様相をかなり異にしておりまして、その面では量的な引き締めが効いているのではないかと思います。こうしたいわゆるマネーサプライを一〇%前後にこれからも続けていくという量的な引き締めについては、日銀はどのようにお考えでしょうか。
  6. 前川春雄

    前川参考人 マネーサプライにつきまして、前回石油危機のときにはマネーサプライがかなり上昇いたしました。今回はマネーサプライを低目に維持していくことが必要であるという判断のもとに、金融政策早目早目に手を打ちながら対応してまいったわけでございます。現在マネーサプライは、十二月末で前年比、M2プラスCDでございますが、一一%の上昇でございます。これは昨年の五月に一二・八でございましたが、その後ずっと低下してまいりまして、ここまでまいりました。  今後のことでございますが、私ども各四半期ごと予想値を発表しております。一月初めにこの――三月の予想値を出しましたが、大体一〇%台だというふうに予想値を出しております。いまの物価情勢から見まして、マネーサプライにつきましては、低目に誘導していくということが必要であろうというふうに思っております。予想値にありまするようなテンポで少しずつマネーサプライが下がっていくことが望ましいというふうに考えております。
  7. 二見伸明

    二見委員 四半期ごと日銀マネーサプライ予想値を出しておりますけれども、この予想値というのは、もし予想値が大幅に狂うようなことがあれば、単なる予想値ではなくて目標に近い予想値なのか。ということになれば、予想値を大幅に狂うようなことになれば厳しい措置をとるということになるのでしょうか。この予想値はどういうものでしょうか。
  8. 前川春雄

    前川参考人 現在、先進国では目標値というものを出すのが通例でございまするけれども、目標値利害得失両方ございまして、そういう点も勘案いたしまして、私どもの方では、一・四半期ごと予想値ということでわれわれの判断を一応そこに示しておるわけでございますので、もしその予想値と違うような動きがございましたときには、その原因、背景というものを十分究明いたしまして、必要があればそれに対する金融政策上の措置をとってまいるというふうなことが必要であろうというふうに考えております。
  9. 二見伸明

    二見委員 参議院の補正予算審議でも、公定歩合引き上げについての議論があったようでありますけれども、公定歩合をいつ引き上げるか、何%かということは、ここでお聞きしても御答弁ないのがあたりまえだと思いますけれども、ひとつ現在、予算案審議中でございますけれども、予算案審議かかわりなく、審議中であろうとあるいは審議が終わった段階であろうと、日銀としては、いま公定歩合引き上げなければならないと、こう判断した場合には、公定歩合引き上げるのでしょうか、それとも予算案審議中は公定歩合引き上げをすることは好ましくないという判断をされるのでしょうか、いかがでしょうか。
  10. 前川春雄

    前川参考人 公定歩合につきましては、現在まだ具体的に考えておりませんので、一般論として申し上げたいと思います。  予算経済全体に非常に大きな影響を及ぼすということは当然でございまして、そういう点から予算案の通過が予定どおり行われるということが必要であろうというふうに思っておりまするが、金融政策もまた経済全般に非常に大きな影響がございます。そのときどきの情勢に応じて必要があれば機動的に運営してまいるべきものであろうというふうに思います。それに金融政策は、機動的かつ弾力的に発動できるという利点がございます。そういう点から、どういう事情がございましても、金融政策の変更が必要であるというふうに判断される場合におきましては、公定歩合を含めまして金融政策上の措置をとって対応してまいるというふうに決心しております。  ただ現在、繰り返して申しますと、まだ公定歩合については具体的に考えておりませんので、これは一般論としてお答え申し上げました。
  11. 二見伸明

    二見委員 予算案審議にはかかわりがなく判断される、一般論としてそういうふうに判断するということで了解してよろしゅうございますか。  もう一点、公定歩合引き上げるかどうかということになる場合に問題となるのは、いわゆる長期プライムレート長期金利だと思います。前回十一月に公定歩合を一%引き上げたときには、長期プライムレートは、景気先行き影響があるということで、これは長期プライムレート大蔵省管轄なんでしょうけれども、引き上げなかったわけです。長期プライムレートは据え置きましたですね。長期プライムレートについては日銀の方の管轄ではないと思いますけれども、今度公定歩合引き上げることになれば、長期プライムレートも恐らく自動的に引き上げられるだろう、率は別といたしまして。そうすると、それは景気先行きに――石油の問題でデフレ効果がこれから出てくる。それに輪をかけて景気先行きにまた一つ問題を起こすわけでありますけれども、その点の判断公定歩合引き上げる場合にはされるのでしょうか。それとも、いまは物価が最重点だということで、長期プライムレート引き上げはやむを得ないという前提で公定歩合引き上げはされるのでしょうか。一般論で結構です。
  12. 前川春雄

    前川参考人 一般論としてお答え申し上げます。  公定歩合が変わりましたときに、その他の金利が改定されるかどうかというのは、そのときどきの金融情勢で決まるべきものでございまして、自動的にほかの金利も一斉に上がる、あるいは下がるというふうなことではございません。過去の例におきましても、公定歩合が変わりましたときに、その他の金利が変わらなかった例は何遍もございます。今度、仮に将来公定歩合というものを変える場合に、一般論といたしまして、その他の金利が変わるということは、金融情勢に応じては当然あり得ることであろうというふうに思っております。その範囲がどこまでまいりますか、それはそのときどきの金融情勢あるいは関係者判断ということで決まってくることでございますけれども、そういうことは十分考えられるわけでございます。
  13. 二見伸明

    二見委員 総裁、ありがとうございました。  総理大臣に改めてお尋ねいたしますけれども、やはり景気を今後持続的に維持しなければならない、物価を安定させると同時に、景気を持続的に維持しなければならない、そのためには、まずインフレにならないようにしなければならぬ、そのために監視員の強化や個別商品対策というのは当然のことでありますけれども、さらに金融政策だけではなくて、やはり五十五年度の財政運営ということも考える必要があるのじゃないか。五十四年度の公共事業は五%、約一兆円五十五年度繰り越しになるような方向でございますけれども、かつて不況のときには、需要を喚起するということで公共事業前倒しをやりました。ただ、いまの卸売物価情勢を見ると、ここで需要超過を起こすような要因というのは避ける必要があるのじゃないか。  もう一つは、五十五年度の九月以降になりますか、時期は明らかではありませんけれども、いずれにしてもデフレ的な傾向が出てくる、そのときに景気下降局面になったときに、下降局面になった景気を下支えするという意味と、超過需要を現在引き起こしてインフレに拍車をかけないためにも、前倒しではなくて財政運営、特に公共事業というのはある程度執行をおくらせるなど、後ろ倒しといいましょうか、慎重な運営を五十五年度の当初はしなければならないのじゃないか。そうしないと、場合によっては、どこかのネックのところが一つ発火点となって、一気に卸売物価からさらに消費者物価への急上昇ということにはね返ってくるのじゃないかと思いますけれども、そうした点については総理大臣はどういう御見解でしょうか。
  14. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 経済政策の姿勢といたしましては、かねがね申し上げておりますように、物価景気を両にらみで慎重に運営していかなければならぬと存じております。しかし、仰せのように、ことしの予算景気に中立型の予算にいたしておるわけでございまして、それは十分念頭に置いて経済運営に当たらなければならぬと考えておりまして、いまの段階におきましては、二見さんが仰せのように、物価について十分警戒的な態度でいかなければならぬと考えております。しかし、デフレ的な様相が出てきた場合にどうするかというようなことにつきましては、それなりの対応財政として考えなければいかぬと思いますけれども、いまそういうことよりは、当面、物価を重視した運営を心がけなければならぬのじゃないかと思っておりますけれども、なお詳細につきましては、大蔵大臣から答えさせます。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの二見委員の御意見を交えた御質問でございますが、結論から申しまして、現段階で確たることを申し上げることはできませんが、貴重な意見として承らせていただいた、こういうことに結論としてはなると思うのであります。  総理からもお話がありましたように、物価の安定と景気の着実な拡大、雇用の安定、それを基本課題としまして経済運営を図ってまいっております。五十五年度の公共事業等事業執行に当たっても、このような基本的な考え方のもとで経済情勢に応じた機動的、弾力的な運営を行っていくというのが基本的な考え方でございますが、御指摘になっておる点、そして環境に対する認識は全く一緒だろうと私は話を聞きながら思ったわけであります。したがって、具体的な措置としていま申し上げるという段階にはございませんけれども、基本認識をともにした、経済情勢を見きわめながら、貴重な御意見として受けとめさせていただいたというふうに御理解を賜りたいと思います。
  16. 二見伸明

    二見委員 総理大臣お尋ねしますけれども、一昨日の参議院の予算委員会で、物価抑制の面から言うと公共料金値上げは大きな要素なので、当局の査定については幅、時期など厳正を期してほしい、こういう日銀総裁の答弁があったそうであります。公共料金の引き上げ問題については、政府とわれわれ野党とは見解を異にしております。ですから、こちら側の意見で言うわけではありませんけれども、公共料金を引き上げなければならないという政府側の立場に立ってこれから電力料金を初めとする公共料金の引き上げを考えた場合に、一つは、上げ幅については、当初政府が考えていたよりも電力料金を初めとする公共料金の引き上げ幅をさらに圧縮する必要があるのではないかということ、もう一つは、公共料金の引き上げの申請の時期、たとえば四月からだとか五月からだとかいろいろな申請の時期がありますけれども、その申請の時期についてもおくらせる必要があるのではないかという判断をいたしますが、総理大臣はいかがでしょうか。
  17. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 公共料金政策につきましては、かねがね申し上げておりますように、関係する企業並びに経営体の合理化というものを前提にいたしましてまず厳しい査定をするということ、それから、国民生活への影響を考えて、時期、幅等について慎重に配慮するということで終始してきたわけでございます。去年一年は、そういう意味では公定料金の値上げというものは、非常に慎重にやることができたと思うのでございまして、電気料金なども非常な無理をしているので、五十四年度中は上げないという方針を堅持してまいりましたことは御案内のとおりでございまして、われわれはこの態度はいつまでも堅持していかなければならぬと思っておりますが、今日、ことしは不幸にいたしまして、いろいろな公共料金の値上げがもくろまれておるわけでございますが、基本的にはいままでの態度と変わりはございません。しかし、ことしにたくさんの値上げがございまするから、特別の配慮をせねばならぬというお気持ちはよくわかるわけでございますけれども、そうかといって、いままで相当無理をしてしんぼうさせてまいりました経営体をそのまま放置するわけにもまいりませんので、そのあたりは現実の経営、今日並びに将来の経営、それからサービスの将来への提供の安定性を保つ上から申しましても、妥当な水準に、また妥当な時期を選ばなければいかぬと考えておりますが、しかし基本は、原価主義を厳しくやりまして、受益者に最小限度必要なものは御負担をいただかなければならぬということには変わりがないと考えております。
  18. 二見伸明

    二見委員 そういたしますと、実施時期をおくらせることもあり得るというふうに理解してよろしゅうございますか。
  19. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 実施時期につきましては、もういろいろ考えて今日まで延ばしてきておることは、二見さんも御承知のとおりでございまして、これ以上延ばすことができるかどうかというふうなことになりますと、非常にしんどい話になるのじゃなかろうかと考えております。
  20. 二見伸明

    二見委員 この問題は、大分論議されておりますので、これ以上繰り返しませんけれども、ただいまの総理の御答弁ですと、実施時期については、どうやら申請どおりお認めになるような感じがいたします。これはやはり今後の物価対策を考えた上で好ましくはない。実施時期についても、申請者側の意向ではなくて、むしろ政治判断をされるべぎ筋合いではないかと私は思います。それは私の意見として申し上げておきたいと思います。  大蔵大臣お尋ねいたします。先ほど公定歩合引き上げについて日銀総裁の御意見を伺ったわけでありますけれども、実際にはまだ引き上げられておりませんので、仮定の論議にはなるかと思いますが、いずれにいたしましても、去年の十一月に公定歩合引き上げられたときには、長期プライムレートは据え置かれたし、預貯金の金利も据え置かれたし、国債の金利も据え置かれているわけであります。今度公定歩合引き上げられれば、こうした長期金利あるいは国債金利、預貯金の金利も、上げ幅は別といたしまして、引き上げる必要が出てくるのではないかと思いますけれども、大蔵大臣の御判断はいかがでしょうか。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 二見委員も非常に気を使った御表現でございますので、公定歩合につきましては、日銀総裁からもお答えがありましたように、まさに日銀の専管事項でございますので、それを前提に置いた御質問にお答えすることは適当でなかろうかと思うのでありますが、一般論としてと、あえて前言葉をつけていただいておりますので、お答えをいたします。  国債の発行条件は、原則から言えば公定歩合とは別の問題でありますし、必ずしも公定歩合に連動して引き上げる性質のものではないと考えております。国債の発行条件につきましては、これまでもその時々の経済金融政策の基本的姿勢を踏まえ、市場の基調とか他の公社債金利を初めとする各種金利とのバランス等々を勘案いたしまして適切に決定したところでありますが、今後ともその考え方に沿って適切に決めていきたいというのが、きょう申し上げられる限界ではないかというふうに考えます。  そこで、長期プライムレートの問題、預貯金金利の問題、御指摘のとおり当面引き上げないということで今日まで続いてきておるわけであります。これも必ずしも連動するものではなくして、公社債市場の動向、長期資金の需給関係等を踏まえて、関係者が長興銀とかそういうところと総合的に判断して決めるものであるという原則を述べます。そして政府関係金融機関の金融につきましても、これも必ずしも連動するものではございませんので、今度はまた、民間金融機関の長期プライムレート等の長期金利の動向を踏まえて判断して決めていくという原則論でもってきょうのお答えはお許しいただきたいと思います。
  22. 二見伸明

    二見委員 この問題は、これ以上お尋ねしても、それ以上出てこないだろうと思いますので、これで打ち切りますけれども、十一月の公定歩合引き上げのときには金利が据え置かれておりますので、公定歩合引き上げられれば、やはり常識的には引き上げられるのではないかなという感じを持っているわけでございます。ただ、これ以上お尋ねしても、大蔵大臣としてはお答えになりにくい様子ですので、この問題はこれだけにしておきます。  それでは、環境アセスメントについて、政府側の基本的なお考えを承りたいと思います。  環境アセスメントについては、政府部内では通産省が当初から実質的な反対をされておりまして、経済界でも電力業界を中心として反対がありました。そのために、過去四回提出を予定しながら提出できずに、今国会は五度目の提出予定法案であります。経団連からの反対の陳情がかなり執拗に行われておりますので、決して楽観は許さない状態にありますけれども、けさの報道では、自民党の首脳でも環境アセスメントに余り反対はできないのではないかというようになされておりました。しかし、新聞報道によりますと、依然として自民党の中には商工部会を中心として根強い反対論もあるようであります。  総理大臣は、衆議院の本会議で、わが党の竹入委員長の質問に対しまして、「自民党と政府との間で目下審議が続けられておりまして、成案を得ましたら、国会の審議に供したいと考えております。」という御答弁がありました。一見前向きに見えますけれども、成案が得られたら国会に出す、得られなければ国会に提案をしないということでございまして、環境アセスメントが今国会で日の目を見るかどうかは、まだ非常に疑問でございます。  私は、環境アセスメント法の成否というのは、まさに総理大臣の指導性と決断にかかっている問題だと思います。私は、総理大臣総理総裁としての指導性をこの際発揮いたしまして、自民党内それから政府部内、経済界の反対論を説得して今国会に法案を提出し、成立させるだけの御決意がおありなのかどうか、まず基本的な総理大臣のお考えを承りたいと思います。
  23. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私は、日本的な環境アセスメントのシステムというものができまして、いろいろな悶着がなくなることは大変望ましいことと思っております。したがって、そういうシステムの確立のために、政府としても検討を鋭意進めなければならぬと考えております。  それから、アセスメント法案の問題でございますが、これはたびたびお答え申し上げておるとおり、自民党と政府との間でいま話し合いが続けられております。この話し合いを続けまして、成案を得次第、国会に出したいと考えておるわけでございます。しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  24. 二見伸明

    二見委員 自民党との話し合いということ、それからしばらく時間をかしていただきたいということは、もう私たちも何度も聞いているわけであります。過去四回、この法案は日の目を見なかったのでありますから、ことし突然出てきたわけではありません。ですから私は、総理大臣が積極的に反対論を説得する決意が欲しいわけであります。  それはそれといたしまして、また後で伺いますけれども、環境庁長官に伺います。  環境アセスメントについてわが党はわが党の独自の考え方がございます。しかし、それはそれといたしまして、環境庁は、環境庁の考えている法案というのは、昨年の四月十日、いわゆる中公審から出された答申、これを一歩も後退をしてはならない、最低この中公審の答申の線だけは堅持した法案をつくるべきだと私は思いますけれども、長官のお考えはいかがでしょうか。
  25. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど総理の方から御答弁がございましたとおり、ただいま自民党の政務調査会と政府部内におきまして前向きで鋭意検討がなされております。  また、環境庁といたしましては、先生がお述べになられましたとおり、昨年の四月十日に中公審の答申がなされております。その線に沿って、関係機関の了承を得まして国会に出さしていただくべく、私といたしましては最大限の努力をいたしてまいりたいと考えております。
  26. 二見伸明

    二見委員 環境庁が自民党の政務調査会と前向きで検討中ということはわかりました。問題は、政府部内の環境庁ではなくて、長い間環境アセスメントに実質的に反対してこられた通産省のお立場であります。  通産大臣にお尋ねをいたしますけれども、経団連は二月十三日、「環境影響評価制度の立法化問題について」という考え方をまとめまして、あちらこちらに配っております。通産大臣もお読みになっただろうと思いますけれども、たとえばこう書いてあります。冒頭に「環境影響評価のための科学的合理的な予測手法、評価基準が十分確立されていないこと、適正な住民参加も必ずしも期待できないこと等に鑑み、当会はかねてより、環境アセスメント立法化は時期尚早との意見を表明してきた。」こういうふうに述べまして、したがって、最後に結論として、「立法化は当面見送られるよう要望する。」こういう見解を経団連はまとめて、恐らく通産省にもこれは行っただろうと思います。  私は、「環境影響評価のための科学的合理的な予測手法、評価基準が十分確立されていない」とか、「適正な住民参加も必ずしも期待できない」ので立法化を見送るべきだというこの経団連の見解というのは、まことに時代錯誤な見解だと思います。この時代錯誤な経団連の見解に対して、通産大臣はどういうふうにお考えになりますか。またあわせて、環境庁長官はどういうふうにお考えになりますか、これは。
  27. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 いまの御質問に対して的確な答弁をする前に、この前に正木先生からも御要望がございましたので、その後の状況を若干お話しいたしまして、いまの御質問にお答えしたいと思います。  通産省といたしましては、環境アセスメントの必要性は十分認めているところでございまして、これはよく御存じのことと存じます。でございますから、電源立地に関しまして、環境庁ともよく相談の上、アセスメント実施要綱をつくりまして、ただいまその実行を指導し、実施しているところでございます。私どもといたしましては、法律をつくるよりはむしろ行政運営の積み重ねをいたしまして、その定着化を図っていった方が最も実態に即した行き方ではなかろうかというふうに考えております。  しかしながら、影響庁からぜひひとつアセスメント法案の内容を審議してもらいたいという御要望がございまして、私どもも、それでは篤とひとつその後の状況も踏んまえ、内容を吟味したいというので、ただいま実は、毎日環境庁の法案の説明をヒヤリングしておる最中でございまして、そのヒヤリングの上、慎重な検討に入るわけでございますが、ただいまはそういう状況にございます。  それから、お話の経団連の問題でございますけれども、私自体は、少なくとも経団連からまだそういう提案を受け取っておりません。しかし、お話しのような話のメモ的なものは聞いております。私がそれに対してどういう考え方を持っているかという御質問でございますけれども、先ほど来申し上げましたように、ただいま環境庁から法案の内容の説明を聞いて審議に入る途中でございますので、私自体がこういう考えだということでございますれば、審議そのものもあるいはゆがめられるかもしれませんと思いますので、私の意見は差し控えさせていただきたいと存じます。
  28. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  経団連の方から二月十四日の日付で「環境影響評価制度の立法化問題について」の意見、建議というのをいただいております。私は御意見として承っておくわけでございますが、今日、私が申し上げるまでもなく、高速道路をつくる、新幹線、また電源立地等の建設が環境に与える影響を事前に調査、公表する、そしてまた未然に公害を防止するということは当然のことであろうと、私はかように確信をいたしておる次第でございます。  それから、この意見書の中で技術的な面に触れておられますが、先生御案内のとおり、これまで本四架橋それからまた電源立地等、各省庁や地方公共団体等で数多く実施されてまいりました環境影響評価の例を見ましても、その時点で得られておりまする科学的な知見に基づいて調査が行われておりますので、何ら技術的な問題が法制度化の基本的な障害になるとは考えておらないような次第でございます。
  29. 二見伸明

    二見委員 通産大臣、お尋ねしますが、ヒヤリングの最中だと言いますけれども、大体このヒヤリングは、いまのペースでいくとどのぐらいかかりますか。
  30. 島田春樹

    ○島田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま環境庁の方からお話を伺っておるところでございますが、いつまでということを、いままだその入っている最中でございますので、時期をはっきり申し上げることは私としては御容赦願いたいと思います。
  31. 二見伸明

    二見委員 冗談じゃありませんよ。法案は、環境庁の原案はきのう、きょうできたのじゃないんだ。通産大臣、ヒヤリングしておりますと言うが、もう過去に四回も出ているんだ。この調子でいけばこれは三年も五年もかかりますよ。冗談じゃありませんよ。いいですか。  それでは通産大臣に伺いますが、あなたは行政指導でやった方がいいのだというのは経団連の意見と全く同じなのだ。「この際は、既存の各種関連制度や行政運用の中で実質的にアセスメントを行うことが重要であって、」通産省は経団連の意見と同じです。経団連と同じことを言っている。法律なんか要らないのだ、行政指導でやりたいのだ、それが通産省の基本的な考え方。それは経団連と全く同じなのだ。お尋ねしますけれども、経団連では、住民参加はけしからぬ、アセスメントなんかやると住民参加が行われて発電所ができなくなる、だから困るというのが経団連の考え方なんです。同じですか。
  32. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私は、原子力発電等を長いこと手がけておりましたので、住民参加というのはどういうものかよく知っております。また、これをはさんで紛争が現実に各地で起きていることも御承知のとおりだと思います。そういうことでございますので、この問題の扱いは慎重にいたしたいという気持ちでございます。
  33. 二見伸明

    二見委員 通産大臣、これはもう一度聞きます、民主主義に対する基本的な認識だから。住民参加はけしからぬのですか。住民参加はけしからぬ、審議できない、そんなこと言われたのじゃ……。
  34. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 たとえば原子力発電等では公聴会等を開きまして広く皆さんの御意見も聞くようにやっております。しかし、この問題は、この前にも申し上げましたように、技術的な点等、まだ評価の基準とかあるいは技術手法とか未解決の点もございますので、そういう際に、そういう点が未解決なのを審議の対象にいたしまして、未解決なるがゆえにということになりますと、なかなか問題がむずかしくなりますので、私どもといたしましては、たとえば原子力発電でありますれば公聴会という形式でただいま住民参加をお願いしておりますし、また、それ以外の発電関係では、先ほど申しましたように、アセスメントの要綱を環境庁ともつくりまして、その要綱に基づきまして、どういうふうな住民の皆様とアプローチをした方が一番よろしいかということで、その環境に応じまして、組合に折衝あるいはお話しした方がよろしいと言えばそういたしますし、あるいは村会等と話した方がよろしければそういうふうにいたします。状況に応じまして弾力的に進めておりますので、住民参加そのものに反対というよりは、現に住民の参加を認めてそして進めているのでございますけれども、画一的にやるよりは、むしろ事情に応じて弾力的にやった方がよろしいのではなかろうか、こういう趣旨でございます。
  35. 二見伸明

    二見委員 通産大臣、住民参加が差し支えないならば法案をつくればいいじゃないですか。なぜ反対する理由があるのですか。反対しなければならない理由は一体どこにあるのですか。しかも、科学的合理的な予測手法、これが確立されてない。新しい技術でやれなんてどこにも言ってないのです。いまある現状の技術でもって、科学でもって予測すればいいのだとなっているじゃありませんか。新しいものをつくれなんてだれも言っていません。一体何言っているのですか。ただあなたの方は、この法案を何でもいいからつぶしたいつぶしたい、それだけでしょう。つぶすことに通産大臣としての目標があるのでしょう。経団連の代弁者でしょう。
  36. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私といたしましては、いまの置かれた日本のエネルギー情勢を考えまして、少しでも早く脱石油時代と申しますか、電源開発を急いで、そしてエネルギー源で国民に不安定な気持ちを持たせない、日本の経済を安全に運転していきたい、こういう念願に燃えているものですから、先ほど申し上げましたように、できますればいまの行政運営で――ただいまやっている最中でございます。何も通産省ばかりではございません。各省とも行政運営で進めておる最中でございますから、その定着を待って、その上で法律をつくってもよろしいのじゃなかろうかという態度でございます。
  37. 二見伸明

    二見委員 それはだけど通産大臣おかしいですよ。  もう一点通産大臣にお尋ねいたしますけれども、行政指導でやりたいというわけでしょう。通産省資源エネルギー庁が去年出したむずかしい要綱がありましたですね。「環境影響調査及び環境審査に伴う地元住民等への周知等の措置要綱」、これでやれというのでしょう。これでやっているからこれを定着させてくれというのでしょう。  通産大臣にお尋ねしますけれども、環境アセスメントに反対をしている電力業界の都合のいいというか、電力業界が自分でやるそうしたアセスメントに住民が納得すると思いますか。環境アセスメントには反対している、そういう法律をつくることに反対している電力業界がやるアセスメントに住民が納得すると思いますか。
  38. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 科学的なあるいは経済的な理由等で住民の納得のいくような説明がつきますれば、私は住民は納得してくださるものと思います。
  39. 二見伸明

    二見委員 冗談じゃありませんよ。  環境庁、通産大臣の言い分をあなたはどう思いますか。
  40. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  通産大臣と今後合意を得るように精力的に話し合ってまいりますので、御理解をいただきたいと思います。
  41. 二見伸明

    二見委員 通産大臣は先ほど鋭意ヒヤリングをしていると言うけれども、ヒヤリングしているのは時間かせぎですな。いかがですか。本気になって、今国会で何とかこの法案を提出し、成立させようというお気持ちはあなたにあるのですか。あなたは行政指導で何とかやっていきたい、法案はできるだけつくりたくない、法律はつくりたくないというのがあなたの本当の考えでしょう。
  42. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お言葉を返すようですけれども、環境庁の法案でも事業者がアセスメントをやるのだそうです。ですからその点は相違はございません。  私自体の本心はどうかということでございますけれども、先ほど来申しましたように、私どもといたしましては、アセスメントしないというのじゃなくて、アセスメントを現在進めておるのです。そこで、できるだけ行政運営で実体を積み重ねて定着させていきたいというのが念願でございまして、法律的にこれを画一的にやるというのが果たしてよろしいかどうかという点に大変疑問を持っておりますので、その点に関して、環境庁の法案をただいま説明しょうというお話でございますから、よく詳細に検討しましょうということで、せっかくいま検討中でございます。
  43. 二見伸明

    二見委員 法律と行政指導はどう違うのですか。
  44. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 行政運営でありますれば、法律的に、画一的に進めないで、弾力的に事態に即して問題を進め得るし、また法律違反といったようなことで、仮にこの法案の――どういう法案か私もまだつまびらかにしておりませんからあれですけれども、私の方でやっておりますアセスメントの問題は、一生懸命になってそれは勉強しました。しかし、環境庁の方の法案はただいませっかく検討中でございますので、その検討の結果を待ちたいと存じます。(発言する者あり)
  45. 二見伸明

    二見委員 いいですか。行政指導ならば弾力的にやれるということは、いいかげんにやるということではありませんか。法律でやれば義務化される、きちんとやらなければならない。行政指導ならば、行政措置ならばどうにでもなる。中公審の答申にもそう書いてありますよ。いままでは、行政指導ではやるべきこともやれないところがあったと答申に書いてある。だから、きちんとやらせるためにも法律をつくらなければだめなのです。それがいやなのでしょう。
  46. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 好き、きらいの問題ではございません。そうではなくて、私どもとしては、くどく申し上げるようですけれども、いませっかく進みつつあって、効果を上げつつございますから、それが定着するまで法律化は見送ったらどうでしょうかと言っているのでございますけれども、しかし、法律化を急ぐという御提案でございますから、その説明をよく聞かせていただきたいというのです。ただいまその説明を正式に聞いている最中でございまして、環境庁の法案を通産省としては詳細に聴取している最中でございますので、その過程におきましても順次検討を進めていくでございましょうし、その結果を待ってもらいたい、こういうことでございます。
  47. 二見伸明

    二見委員 環境庁に伺いますが、通産省のこのペースでヒヤリングをやったらどのぐらいかかりますか。
  48. 金子太郎

    金子政府委員 相手のあることでございますから断定的には申し上げられませんが、一週間ぐらいはかかろうかと思います。
  49. 二見伸明

    二見委員 一週間でヒヤリングが終われば、そこで通産省としては明確に態度が出ますね、やれるという。
  50. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 ヒヤリングを聞きまして検討をするわけでございますから、その検討の結果を待ちたいと思います。
  51. 二見伸明

    二見委員 通産大臣、もう一度くどく言いますけれども、このアセスメントに一番反対しているのは、通産省の所管では電力会社だ。電力会社は、一方では料金値上げをしてくれと頼みながら、もう一方ではアセスメント法なんかつくってもらっちゃ困る。どうですか、これは余りにも横暴でしょう。通産大臣は、この横暴な電力会社のいわば肩がわりといいますか、代貸しみたいになってがんばるのですか。
  52. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 大変きついお言葉で恐縮でございますけれども、私は別に電力会社の代弁でも何でもありません。ただ、ただいま検討中だということと、私自体もこういう問題に関しまして、アセスメント等に関しましては、原子力発電の許認可に関しましてずいぶん長いこと苦労した一人でございますから、そう申しておるのでございます。
  53. 二見伸明

    二見委員 この問題は、環境アセスメントをつくるということは、わが国の環境行政にとっても大事な問題であります。しかも、いまの通産大臣の御答弁は、委員長お聞きのように、余りにも恣意的であり、常識判断には苦しむ答弁が続出しております。このままでは、この問題については審議できません。(発言する者あり)
  54. 田村元

    田村委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  55. 田村元

    田村委員長 では、速記を始めて。  この際、大平内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。大平内閣総理大臣
  56. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 アセスメント法案提出が大変おくれておりまして恐縮しております。極力与党との調整を急ぎまして、御期待にこたえるよう努力します。
  57. 二見伸明

    二見委員 要するにそれは行政指導じゃなくて、この種の問題を法律できちっとやるべきだと総理大臣はお考えになった上で、そして一週間ぐらいヒヤリングがあとかかるそうですから、せめて一般質問の終わるぐらいまでの間に、明確な形で法案を提案されるということに受けとってよろしゅうございますか。これはかなり早目に出さないとどうなるかわかりませんからね。
  58. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 法案をまとめるべくいま与党との調整を急いでおるところでございます。法案の形で早くまとめるように鋭意努力します。
  59. 二見伸明

    二見委員 私は、この問題でこれ以上もう言いたくないのです。言いたくないのだけれどもやはり言わざるを得ないのは、ずっと同じ似たような答弁が過去何回も行われてきたわけですよね。これが初めてきょうここで問題にされての総理大臣の御答弁であれば、これは前向きだなと……(大平内閣総理大臣「わかっていますよ」と呼ぶ)それでは、今国会に法案が必ず出てくるというふうに私は確信をしてよろしゅうございますか。
  60. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういう方向で最善の努力をします。
  61. 二見伸明

    二見委員 それでは、この問題についてはその結果をもうしばらく推移を見させていただきたいと思います。ただいまの総理大臣の御発言は総理大臣としての御発言でございますので全面的に信用させていただきます。  さらに私は、関連質問がありますので、時間がありませんので簡単に防衛問題についてお尋ねをしたいと思います。  カーター大統領の一般教書それから国防報告から、アメリカの世界戦略というのは私は大きく変わったと思います。すなわち、ソ連の軍備増強、アフガンヘの侵入に対して、力には力でというのがいまのカーター大統領の姿勢だと思いますし、この姿勢はかつてのニクソン・ドクトリンとは異なったものだ。ニクソン・ドクトリンでは、直接脅威を受けた国が自主防衛努力をすべきだというニクソン・ドクトリンとはカーター大統領の考え方というものは私はかなり変わったと思います。したがって、スイング戦略だとか中東を念頭に置いたいわゆる緊急展開部隊だとか、これはアメリカの世界戦略とすれば私は当然のことだと思います。アメリカの立場からすれば当然だと思います。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕  また、国防報告の中でソ連の世界的な軍事力増強に対応するため、日、米、西欧の合同防衛計画努力の必要性を認識するよう促したというのも、アメリカの立場から見れば私はあたりまえだと思うのです。ただ問題は、そうしたアメリカの世界戦略に対して日本がどういう対応をするのかということが日本にとっては一番大事なことであります。総理大臣は、基本的にはそうしたアメリカの世界戦略には協力するという立場をおとりになるのか、それともそうではないのか。また、もし協力をするということになると、その中身はどういうものをお考えになっているのか、お示しいただきたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ペルシャ湾をめぐる事態というものの緊張がございますが、これはアメリカの死活的利害であるにとどまりませんで、世界の平和と安定にとりましてゆゆしい事態であると思うのであります。したがって、そういうことに対しましてアメリカが単なる言葉でなくて抑止力を構えてその事態の改善、解消を目指すということは理解できるところでございます。アメリカの行動は国連憲章に照らして、その枠内における行動であると私どもは理解いたしておるわけでございます。その限りにおきましてアメリカの行動は支持できるものであると考えております。  わが国といたしましては、しかしながらわが国の立場があるわけでございまして、個別的な自衛権の発動しか認められていないわが国の憲法のもとにおきまして、われわれがなし得ることというのはおのずから限界があるということはよく承知いたしておるわけでございまして、われわれは許された権限の範囲内におきまして、世界平和の招来のために、緊張緩和のためにできることをやってまいるという態度に終始いたしたいと考えております。
  63. 二見伸明

    二見委員 アメリカの国防報告の中でこういうところがありますね。われわれは最近の会談において、ペルシャ湾付近及び一般にインド洋における米国のプレゼンスの増強が日本の安全に貢献するであろうことを強調した。日本の政府首脳はこの点を認め、また一般的にたとえときどき、一時的に西太平洋及び地中海における米軍事力が減少せざるを得ないようなことがあっても、インド洋への米海軍力展開がより頻繁に行われることの価値を理解していると、こうありますけれども、この点については、こういう話し合いがあり、その中身は余り詳しく言えないでしょうけれども、大体このとおりの話があり、日本側の理解もこういう形で理解をしているという認識でよろしゅうございますか。
  64. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この国防報告書にいま御指摘の点が書いてございますが、これは特定の日本政府高官の間での話し合いではなくて、事務レベルでのいろいろな協議を通じて米側がそういうふうに了解している。これはテキストを見ますと、それまでの部分は大体、私、「アイ」ということをブラウン長官が言っておりますが、この部分は「ウィー」になっておりまして、全般的なそういう行政レベルの話し合いの結果だと解釈いたしております。
  65. 二見伸明

    二見委員 それではこれに関連してお尋ねいたしますけれども、実は私は日本語の方はまあ人並みでございますけれども横文字の方は余り得意じゃありませんのでわからないのですが、これは外務省にお尋ねします。  アメリカの国防報告の中で百八十ページのCの一だと思うのですけれども、この中に、インド洋での海軍プレゼンスの増強に関連いたしまして、インド洋とペルシャ湾における最近の出来事から、海軍のプレゼンス、この地域における海軍のプレゼンスを増強しなければならぬというような記述がありまして、そのために、具体的には航空母艦の配置をいろいろやるんだろうと思いますけれども、それについていろんなことが考えられているというような記述があって、さらに日本のミッドウェーの母港化が成功しているというような例を挙げながら、航空母艦をどこかにもう一隻、母港化させたいというような内容の記述があると思いますが、ありましたらば、よりもう少し詳しく外務省から御説明いただきたいと思います。
  66. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 お答えいたします。  国防報告の中で、アメリカの空母戦闘群についての記述がございまして、いま先生のお読みになっておる、最近のインド洋及びペルシャ湾地域における事件の結果、米国は同地域における海軍プレゼンスを増加させることを決定した。その後で、ずっとその空母のことが書いてございますが、展開可能な空母の数が一定のままであるうちは、海軍としては地中海及び西太平洋における現在の展開水準を下げることなく新しい地域へ空母の前方展開を広げていくことをどのように決定され、また計画に基づくものであれ、これを行うことは困難であろうということを言っておりまして、それにさらにその次に、アメリカは前方展開の柔軟性及び柔軟対処の能力を改善し、海軍関係者が受けられるようなプレゼンスの方向として、日本でミッドウェーがうまくいっている例にかんがみ、海外母港化の拡張がオプションの一つとして考えられるという記述がございます。
  67. 二見伸明

    二見委員 アメリカの空母は地中海に二隻、西太平洋に二隻配置されておりますけれども、しかし、最近のペルシャ湾におけるいろんな情勢にかんがみて、西太平洋にある航空母艦は実際にはインド洋に行っておりまして、西太平洋は空っぽというのが実情だそうでございます。国防報告のいまの記述はしたがってもう一隻、西太平洋に二隻置くためには、西太平洋を守るためにはさらにもう一隻をインド洋に置く必要があるというアメリカの考え方が出てきたのではないかと思いますけれども、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  68. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 私たちの了解は、アメリカの考え方は母港化が必要である、ただしその母港化をどこにするかまだ決まっていないということでございます。
  69. 二見伸明

    二見委員 ということは、インド洋にもう一隻プラスする、現司令官か何かアメリカの下院だかどこかで証言されておりますね。もう一隻航空母艦ほしい、よこせ。そういうことを考え合わせますと、アメリカはもう一隻航空母艦、空母を西太平洋じゃなくてインド洋に持っていきたいんだろうと思います。その場合、いまお話があったように、アメリカとしてはどこにその一隻の母港を求めるかというのがアメリカ側の考えだろうと思います。ミッドウェーが日本での母港化に成功しているなんという例を挙げているところを見ると、日本とは限らない、日本も母港化の可能性もあるし、オーストラリアもあるしいろんなところが母港化の可能性があるだろうけれども、アメリカとしては日本も母港化の一つとして考えることもあるんではないかと思います。もし日本にもう一隻の母港化の要請があった場合は外務大臣としてはいかがなさいますか。
  70. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話しのとおり、米側はそのオプションについて検討中と了解いたしております。したがって、そのオプションに日本が該当するのかどうかまだ全然わからない状態でございまして、いまの段階でわが方の対応ぶりを申し上げる、具体的に考えるというわけにはいまのところはまいらないわけでございます。
  71. 二見伸明

    二見委員 しかし、アメリカがインド洋に空母をもう一隻派遣したいという考え方があり、ということは当然どこに母港を求めるかということはあたりまえの話でありますから、それに対して要請がないから考えられないとかなんとかということではなくて、日本としてのきちんとした態度というのは考えておいてもよろしいのではないですか。
  72. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いま申しましたように、仮定の問題でございますが、もしそういう要請がありました場合には安保条約上の必要性とか関係地元住民の考え方、こういう点も考慮して対応すべきだと思っております。
  73. 二見伸明

    二見委員 それは母港化もあり得るということですか。
  74. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 安保条約と地元の受け入れの考え方とその検討の上で決めるということでございます。
  75. 二見伸明

    二見委員 地元住民の賛成が得られない場合には母港化は困難ということになり得ますか。
  76. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 現在の時点では先ほど大臣からお答えいたしましたように、全く仮定の問題でございますが、理論的にもし要請があった場合に日本政府はどうするかということは大臣が答弁したとおりでございますけれども、やはり施設、区域の円滑な利用については地元民の深い理解が必要であるというふうにわれわれは認識しております。
  77. 二見伸明

    二見委員 もう一点簡潔にお尋ねします。  極東の周辺についていろんな議論がございました。特に多賀谷書記長に対する伊達条約局長の答弁が問題となっております。私はそのことをきょうここでお尋ねしようとするのではないのですが、条約局長は再答弁の中で、極東の周辺とは極東の平和及び安全を脅かすか否かが判断の基準になるというお話でございました。私は、もう時間がありませんので、この御答弁に対して私の方からさらに追いかけての質問はできないのですけれども、それだけにきちんとお答えいただきたいのですが、その脅かすかどうかという判断をするのは、これは日米で協議した上で脅威と判断するのか、アメリカが脅威だという判断をするのか、日本が一方的にそれは脅威であるとか脅威でないとかという判断ができるのか、このことだけをお尋ねしておきたい。そしてこの議論はまた後ほど別の機会に改めてさしていただきますけれども、よろしくお願いします。
  78. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 一義的には日本政府が脅威があるかどうかということを判断する立場にあると思います。
  79. 二見伸明

    二見委員 関連質問をお願いします。
  80. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 この際、飯田君より関連質疑の申し出があります。  二見君の持ち時間の範囲内でこれを許します。飯田忠雄君。
  81. 飯田忠雄

    飯田委員 現在の憲法が施行されましてから昨年九月の解散まで十一回の解散が行われました。それは全部内閣または内閣総理大臣の権限として実施されてきましたことは、周知のとおりであります。  ところで、こうした従来の衆議院解散の方式は、行政権力にすぎないところの内閣による立法府たる衆議院支配の方式であります。このような内閣による衆議院支配、これは憲法の三権分立の原則、また立法、行政、司法の三権力機関相互不可侵の原則、あるいは憲法に規定しておりますところの国会が最高機関であるというこの規定、これに反すると思われるものであります。こうした内閣の衆議院支配方式というものが議会制民主主義の発展を阻害するものでありますし、また議会制独裁主義に陥るものであると言わなければならないのであります。国家機構及び政治の根幹に関する重大な問題だと私は考える次第であります。  そこで、本日は三つの問題を提起いたしたいと思います。  第一は、天皇の国事行為としての衆議院解散の法的効力は何であろうかという問題です。  つまり、解散詔書の発布は衆議院解散の効力を生じないのではないか、この問題であります。  第二は、衆議院の解散権、それは一体内閣にあるのか、内閣にあるというのが憲法の根本原則に反する憲法違反の考えではないか、この問題であります。  それから第三は、過去における衆議院解散は法的に有効であるかどうかという問題であります。  つまり、衆議院議員が本会議で議長の詔書朗読について異議申し立てをしなかった、このことの法律効果の問題であります。  この三つの点につきまして御質問を申し上げたいと思います。  まず最初の問題ですが、衆議院公報第九号というのがございます。これに詔書が書かれておりまして、それによりますと、   日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。  御 名 御 璽    昭和五十四年九月七日        内閣総理大臣 大 平 正 芳こう書いてあります。  ところで、この日本国憲法第七条というのはこれは天皇の国事行為に関する規定であるはずであります。それならば、衆議院を解散するということがこれは衆議院解散という国事行為なのか、それとも実際に衆議院解散の効果を生ずる国政行為なのか、どちらのものとしてお書きになっておるのであるか、お尋ねします。  政府の御見解をお伺いします。
  82. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 御質問の問題は、純粋の憲法解釈の問題としてお取り上げになっているのだと思います。  そこで、御質問に直接お答えする前に、もしお許しがあれば、私どもの基本的な考えと申しますかそういうものを多少申し上げることをお許し願いたいと思うのですが……。
  83. 飯田忠雄

    飯田委員 ちょっと待って。それは時間の関係で私の質問だけに答えてください。
  84. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 それでは、直接の御質問の、衆議院の解散を決定することは国政に属することであるかどうかという御質問だと思います。衆議院の解散を決定することは、もとより政治的に非常に重要な事柄であり、政治的決定であると思います。そういう意味では、事の本質から言えば国政に属する事柄であろうと思います。
  85. 飯田忠雄

    飯田委員 憲法の第四条をあなたは御存じですか、法制局長官。第四条にはどう書いてある。
  86. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 第四条は、「天皇は、この憲法の定める國事に閲する行為のみを行ひ、國政に關する權能を有しない。」これが第一項であります。
  87. 飯田忠雄

    飯田委員 この詔書を見ますと、衆議院を解散するという政治行為を天皇が行ったことになりますね。御名御璽とあります。これは総理大臣の詔書じゃないでしょう。天皇の詔書ですね。そうしますと、憲法第七条、これは国事行為に関するもので国政行為に関する規定じゃない。国事行為に関する規定を根拠として天皇が自分の権限でもない国政行為を行ったということじゃありませんか。こういうことを生じておるこの詔書、これについて総理大臣は副署しておられますが、これはどういう意味ですか。
  88. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 それで、私は最初に私どもの基本的な考え方を申し上げることをお許し願いたいと申し上げたわけですが、実は、率直に申し上げますと、飯田委員が去年以来この問題を取り上げていろいろ御質問になりました。質問主意書も二回お出しいただきましたし、また衆議院の法務委員会で御質問になったわけです。  私どもと飯田委員とは基本的に見解が違うわけであります。そこで、そういう意味で、私どもの考え方を一応申し上げることをお許しいただけなければ、その問題にはなかなかお答えしにくいと思います。ただ、申し上げますが、私どもは、これは憲法七条というものが衆議院の解散の根拠規定であり、同時にそれが内閣の助言と承認によって天皇の国事行為が行われるということを通じて、内閣に実質的な解散権があるという解釈をとっておるわけであります。そういう解釈をとりますと、とる立場から申し上げますと、国事行為自体が形式的な、名目的なものであり、政治に関する権能を含まないということ自体は、これは飯田委員と同じ立場に立つわけであります。ただ、第七条というものがありますから、それ自体としては政治的決定を含む解散について、内閣の助言と承認が行われることにより、天皇の行為は結果的に形式的、名目的なものとなるということであります。  したがって、いま御指摘の天皇の解散詔書というものは、まさにそういう形式的、名目的なものでありますけれども、その背後には内閣の解散についての助言と承認というものによって支えられているものでありますから、決して、ここから先はちょっと飯田委員のお説をかりて申し上げますが、衆議院の議決に基づいてそれを形式的に宣布するような行為だとは思いませんから、したがいまして内閣総理大臣の副署というものも当然正しい行為であろうと思います。
  89. 飯田忠雄

    飯田委員 きょうは時間が少ないときに重大問題を解決しようとするのだから、要らぬことは答えないで私の問いだけに答えなさい。よろしいか。  あなたはさっきから助言、助言とおっしゃるが、内閣総理大臣が助言するのは国事行為についての助言ですよ。国政行為についての助言じゃありませんよ。どうですか。そうでしょう。そのどっちか、それだけを答えなさい。簡単でいいから。
  90. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 いや簡単には申し上げられないのです。そこが根本的に違うところであります。国事行為についての助言と承認ということは確かにそのとおりであります。しかし、私どもは、天皇の国事行為というものは、内閣の助言と承認によって、内閣が実質的に決定したところに従って、形式的におやりになる。そこで、天皇の国事行為というものは、政治に関する権能は内閣の方へ移りますから、後へ残るものは形式的なものである、こういうことを言っているわけであります。
  91. 飯田忠雄

    飯田委員 私の聞いておるのはそんなことじゃない。あなたは助言、助言とおっしゃるのだが、何を一体助言するのか。助言するということは、天皇に対して解散詔書をおつくりくださいということを助言するのでしょう。解散をやりなさいということを、あなた助言するのですか。そうじゃないでしょう。  それからもう一つ、解散を決定することは、あなたは初めから内閣総理大臣にあると決めておられる。憲法のどこにそれが書いてある。憲法の第何条に内閣総理大臣に衆議院を解散することができるという規定がありますか。挙げてください。
  92. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 これは先ほど来申し上げているとおり、飯田委員と私どもは基本的に出発点が違うわけでありますから、私どもの意見も聞いていただきたいと思います。(飯田委員「これは学説の問題じゃなくて憲法の条文の問題だ、憲法の条文を挙げなさいと私は言っている」と呼ぶ)憲法七条であります。(飯田委員「憲法七条を読んでみなさい、どこに内閣総理大臣が解散すると書いてありますか」と呼ぶ)
  93. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 ちょっと飯田委員委員長を呼んで、質問してください。
  94. 飯田忠雄

    飯田委員 わかりました。  きょうは時間の関係で、どうか時間を節約してほしい。私の問うたことだけ答えていただきたい。いいですか。  この助言という問題は、天皇にこういうことをやってくださいということを言うわけでしょう。その内容は解散詔書をつくってくださいなんです。解散が決定されましたから解散詔書をつくってくださいという助言でしょう。解散をどこで決定したという問題は、憲法の大原則によって決めるのじゃありませんか。憲法の中に立法、司法、行政、三つの機関がある。この三つの機関はお互いに独立しているのですよ。行政が司法を支配していいという、また行政が立法を支配していいという、そんなことがどこに憲法にあります。ないじゃありませんか。あるのは、皆独立している、お互いに侵し合ってはならぬ、内閣は行政をやる、国会が立法をやる、そうでしょう。立法機関を行政機関が支配するならば、独裁国家じゃありませんか。共産圏と同じじゃありませんか。あなた方が一番きらいな独裁じゃありませんか。どうです、この問題は。
  95. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 日本国憲法の規定の中には、直接には、たとえば内閣は衆議院を解散することができるというような規定はございません。同時に、衆議院は議決により解散することができるという規定もございません。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味では、飯田委員が言われるような明文の規定というのは、確かに解散に関する規定としてはございません。学者の中には、そういうことをもって日本国憲法の解散に関する規定はやや不明確であるというようなことを言われる方もあります。同時に、解散に関する問題が過去国会でいろいろ論議されたのも、そういう若干規定の上で明文の規定がないというところにも原因があると思います。そこで、飯田委員のようなお説も当然出てくると思いますし、また、私どものような見解も出てくるゆえんだと思います。  そこで、私どもは憲法七条をもって明文の規定と考えているわけです。飯田委員はその憲法七条の規定は明文の規定ではない、したがって明文の規定はない、ない以上はということで、御見解がそこから出発しまして、恐らく衆議院の俗に言う自律解散権についての御主張をなさっておられるのだと思います。しかし、私どもの憲法七条についての理解は、決して御指摘のようにファッショ的だとかそういう――失礼しました。ファッショ的という言葉をお使いになったかどうかちょっといま忘れましたから、もし言われなかったとすれば取り消しますが、そういう行政権横暴というような考え方ではなくて、まさに憲法の規定そのものから出てくる解釈として申し上げているつもりでございます。
  96. 飯田忠雄

    飯田委員 衆議院の権限のことについてあなた触れられたからちょっと申しますが、憲法の四十三条を御存じですね。憲法の四十三条には衆議院の組織について書いてあります。国民の代表として選挙された議員がこれを組織する、こうありますね。衆議院というものは衆議院議員によって組織されたものなんです。主権者たる国民の代表ですよ。主権者たる国民の代表によって組織された衆議院だ。しかも国権の最高機関であるとされる国会の、その中でも優位的な地位を占める衆議院だ。それを組織するのは直接選挙によって選任された衆議院議員だけだよと書いてある。そうでしょう。そういう衆議院なんだ。その衆議院を解散しようとするならば、衆議院議員自体が、主権者たる国民が解散権を持つのです。主権者たる国民の代表は衆議院議員でしょう。衆議院議員がみずから自分の組織を解く、これが衆議院の解散です。それ以外にあり得ない。あなた、一般的に団体を構成するときに、構成員が、私はきょうから団体を解きますよというのは、構成員が解くのでしょう。法律によって特に特別の規定がない限り団体を組織した者が団体の構成を解く、これは法理論上当然のことじゃありませんか。こんなわかり切ったことがわからないようじゃ、あなた、これはもう法制局長官として勤まりませんよ。
  97. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 大変きついお言葉ですが、憲法四十一条なり四十三条自体の解釈については、飯田委員と同じでございます。しかし、大変お言葉を返すようですが、そういう四十一条と四十三条の解釈を出発点として、衆議院自体が解散権をお持ちになるという考え方は、私は衆議院自体もお持ちになってないと思います。過去ずっといろいろこの問題は議論されて、そして今日まで来ているわけですけれども、はなはだ失礼ですけれども、衆議院自体もそういうお考えは持ってない。衆議院の解散という問題は、これは内閣だけの問題ではございません。衆議院の構成にかかわる問題でございますから、衆議院自体の問題として、この問題は絶えず過去において論議されたわけです。そのときに、衆議院が自律的に解散をできるというようなそういう御議論は、過程において出ておりますけれども、結論においてはそういうお考えは衆議院自体はおとりになっていないのじゃないかと思います。
  98. 飯田忠雄

    飯田委員 私がきょうここで論じておりますのは、学説を論じておるのではありません。私は、憲法の条文自体、日本国憲法自体にいて、どうあるべきかを論じておるのです。よろしいか。  現在、もし内閣に解散権があると言うなら、憲法の明文で内閣総理大臣または内閣は衆議院の解散をすることができるという規定がなければならない。これは国家の根本機構に関する問題です。国家の根本機構に関する問題については、その例外は必ず憲法に明文がある。そうですね。たとえば衆議院のことは衆議院がやる、国会のことは国会がやる、当然でしょう。それに対して、もし司法なり行政なりが干渉を加えたい場合は、憲法に必ず明文がある。明文がなければできないのです。明文がない場合は必ず原則に立ち返る。例外規定がない限りは原則に立ち返る。その原則は、衆議院のことは衆議院がやるということでしょう。衆議院議員は主権者たる国民の代表です。  ある裁判所で判決がありました。その判事さんはどう言うたかというと、衆議院の解散という問題は、これば国家の大本である、だから、これは理論的に言えば主権者たる国民のみが持つ、こう言うたね。知ってるでしょう。東京地裁の判決です。そうしますと、そうした衆議院自体が解散権を有するということが、これが本来の趣旨でなければならぬはずだね。つまり、衆議院議員というのは、主権者たる国民の代表でしょう。直接選挙によって選ばれたのでしょう。それが持つというのは当然でしょう。内閣総理大臣というのは、あなたその地位御存じですか。国会の指名によってなったのですよ。衆議院の指名なんです。そうでしょう。指名によって得た地位というものは、それを指名した者よりも権力が上ということはない。当然独立している。その独立して存在するものを、その独立を侵すようなことをやるのはおかしいじゃありませんか。  私はいままでの学説を言っているのじゃありませんよ。学説は私は信用しない。学説で憲法改正はできない。憲法改正はきちっとした手続があります。学説で憲法改正されたんじゃたまらぬですね。そうでしょう。あなたの言うことは、最初が間違っておるわけだ。最初に吉田総理が間違えて解散をやっちゃったんだ。それを理論づけようとして、学者を総動員してつくった理論、みんな間違っているのですよ。それを踏襲していままでやってきておられる。この際、改めていただきたい。
  99. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 飯田委員のお考えと申しますか、そういう考え方そのものを私は決して批判しておるわけではございません。ただ、憲法の合理的な解釈としては、これは私どもの説の方が正しいとただ申し上げているだけで、ちょっと論争にわたるようで大変恐縮でございますけれども、もし飯田委員のお説のような考え方を憲法自体が取り入れているとすれば――私どもは解釈上そういう説は成り立たないと思いますが、仮に取り入れているとすれば、私どもがすぐ疑問に思うことが一つございます。これをお教えいただきたいと思うのですが、もし衆議院の解散が衆議院の議決のみによって行われるものと解釈するならば、それは憲法の規定の上から言えば単純過半数の議決にならざるを得ないわけです。これは憲法にはっきり書いてあります。この憲法に特別の定めがあるものを除くほか単純過半数、二分の一以上だと書いてあるわけです。ところが一方において憲法では、議員の除名の場合あるいは資格争訟において議員の地位を失わせる場合は三分の二の多数決を必要とすると書いてあるわけです。一人や二人の議員を除名したりする場合でも三分の二の多数決であるにもかかわらず、衆議院の総員の地位を反対者があるにもかかわらず過半数で失わせるというようなことを、憲法がもし衆議院の議決のみで解散するということを考えているとすれば、およそそういうことに対する手当てというものは必ずあるはずだ、そういう手当てがないということは、憲法はそういうことを考えていないのだというふうに私どもは考えております。
  100. 飯田忠雄

    飯田委員 時間かせぎをされたんじゃ、これはどうにもならぬ。いいですか。まじめになってこの問題は検討してほしいのだ。  私が申し上げているのは三権分立の原則、これは憲法の原則でしょう。この原則に従ってなぜ国政をやらぬかという問題です。あなたのおっしゃることは、衆議院議員が解散権持つなら定足数がおかしい、こうおっしゃるが、そんなことは関係ないのだ。憲法に決めてあるとおりにやればよろしい。そうでしょう。除名するときの問題が重くて解散が軽いからけしからぬとは何事ですか。解散というものは衆議院議員の議決によってやるのですよ。いいですか。本会議において議決によってやるのです。議決によってやるのなら、当然いまの憲法の規定に従ってやるのはあたりまえのことです。それをあなたは要らぬことを言うのは、これはまさに時間つぶしだ。そういう不心得なことじゃ困りますよ。  時間がもう近いので言いますが、先ほどの第一の問題ですが、「天皇は、國政に關する權能を有しない。」ですから、解散詔書というものは、これは本来は解散がありましたということを国民に知らせる詔書なんです。そうでしょう。国事行為というものはそういうものなんです。国事行為と国政行為の区別さえつかぬようじゃ困りますよ。この解散詔書というものは、解散がありましたということを国民に知らせる効力を持つ、そういう詔書なんです。そうしますと、その解散があったというのはどこかで決めなければならぬ。どこかで決めるのは、憲法の大原則によって決めろ、憲法の構造、憲法の精神によって決めろということです。いいですか。行政が司法を支配するといったようなことが国民主権制に照らして正しいとお考えになるかどうかという問題、それから行政が司法を支配するという問題は、これが一体三権分立の憲法の大原則に合致するかという問題、行政が立法を支配するといったようなことが三つの機関の相互不可侵の憲法の大原則に合致するかという問題、この問題から判断しなければならぬ問題でしょう。衆議院議員が衆議院を解散するのはこの原則にぴたっと当てはまっている。憲法の解釈というのは、憲法の条文、憲法の構造、憲法の精神によって解釈しなければならぬでしょう。それに外れるようなことは全部憲法違反です。そのことを私は申し上げている。  それで、もう時間がないから結論を申しましょう。もっと言わなければならぬが、あなたの頭はかたいから、どうにもしようがないから申し上げますが、この衆議院の解散をする場合は、解散は必ず国会議員が発議をして、そうして本会議でこれを討論し採決して、その結果を内閣総理大臣に通報する。その結果、それに基づいて内閣総理大臣は天皇に、衆議院で解散の議決がありましたから、どうか解散詔書を出して国民に知らしてください、こう助言する。これが助言の内容でなければならぬはずだ。そういう当然わかり切ったことを何とかしてつぶそうとなさるのは、これはよろしくない。いま時間がないので、時間つぶしやって、一時間三十分ごまかせばいいわい、そういったような考えでは困りますよ。そんなことじゃ困るんだ。大問題だ、これは。
  101. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 一言だけ言わしていただきます。  飯田委員の基本的なお考え、たとえば四十一条あるいは四十三条を引用しての、国権の最高機関であるとか、あるいは国民の代表者である議員で構成される国会であるということ自体を私どもは何にも批判しているわけではなく、全くそのとおりだと思います。ただ、憲法の客観的な、純粋の解釈として憲法七条の規定の意味を申し上げているわけであります。  で、大変失礼でございますけれども、飯田委員のようなお考え方は、かつて国会の中で、例の、御承知の両院法規委員会で取り上げた場合にも議論されたように記憶しております。ただ、そのときにも、そういうような考え方自体は確かにありましたけれども、そういうのは現行憲法の規定の上では無理じゃないかというような考え方がむしろ強かったのじゃないかと思います。  それから、同時にいまのような手続、確かに飯田委員のお説に立てばそういう手続をとるべきだと思いますが、そういう手続というものを過去十一回の解散を通じて衆議院がおとりになってないということは、これは衆議院がそういうお考えをとっていないという前提であろうと私どもが推察するのはどうして無理でございましょうか。
  102. 飯田忠雄

    飯田委員 これは衆議院がとったという問題ではないでしょう。衆議院は、内閣が解散の効力のない詔書を持ってきて議長にお渡しになるから、議長はそれをお読みになる。それをむだにしたのでは――当時は自由民主党が多数党でしょう、ですから、総理大臣の顔つぶしでしょう、だから皆さんは賛成された。これは、詔書朗読に対して異議申し立てをしないでおるということは黙示の追認です。衆議院議員の意思表示です。よろしいか。だから有効に解散は成立したのです。もしあのときに、この詔書は、これは衆議院解散ということを、実体をつくり出す効力はないんだ、だから、衆議院議長は読んでも、衆議院議員は反対だということを全員で言うたらどうなります。そんなことは通らないじゃありませんか。
  103. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 どうも衆議院のお取り扱い自体を私がとやかく申し上げるのは、これはちょっと僣越かもしれませんけれども、衆議院の議長が解散詔書をお読みになる。議事のやり方としては、ただいま詔書が伝達されましたということで議事を中止されて詔書をお読みになるわけです。それに対して、これも議事録によれば「万歳、拍手」と書いてありますが、この解散というようなきわめて重要な行為について、それが、現在までのやり方というものが、あるいは現在におけるやり方というものが、衆議院議長が解散を議場に諮った行為である、そしてしかも、それに対して議員が異議を申し立てなかったといういわば議決行為が「拍手、万歳」であるというようなことは、事が重要であるだけに、とてもそういうような、飯田委員のお言葉をかりれば軽易な手続、これは質問主意書に書いてありますが、軽易な手続によって衆議院が処理をされるというようなことを前提とする議論に、私ども政府がそのとおりでございますとは、とうてい言えません。
  104. 飯田忠雄

    飯田委員 私が申し上げましたのは、従来政府が憲法違反の行為をなさっておる。もし解散が憲法違反だということになってしまえば、それじゃどうなるかというと、法律上の大混乱を来す。それで、そういう混乱を来しては困るので、いろいろ検討した結果、衆議院解散のときにおける状態が、これが異議申し立てがないようだから追認があったとして有効と認めてもいいではないかと。過去のことに対する法的評価の問題ですよ。あなたは過去のことを全部無効にしたいのですか、それでは困るでしょう。私どもはそうした国政を混乱させることは困るので、そのような法的評価ができるのではないか。だから、それはそれで済ませて、今後の問題として、憲法違反はおやめなさい。この助言から衆議院解散権が生ずるなんといったようなことはおよそおかしいのですよ。国事行為を助言する助言権があるから、だから、憲法の大原則である三権分立を壊してしまうような解散権が総理に存するといったような、そんなことはとうてい法理論上認めることはできません。そんなことをあなた方がおっしゃるのはおかしいことです。  それから、衆議院でいままで議論にならなかった、衆議院でどうこうとおっしゃるのだが、そんなことは過去のことだ。いまここで論じておるのは、現在憲法を解釈するのはどうあるべきかという問題。よろしいか。日本の国を独裁国家にするのか、議会制民主主義を守っていくのか、その問題を私は問題にしている。わかりますか。いまあなたのあれでいくならば、総理大臣があくまでも衆議院解散権を持つというなら、ナチスと同じになるじゃありませんか。ナチ党が天下を握ったときの様子はどうでした。毎度居続けて解散をやったじゃありませんか。少数党が天下を握ったときにおいて必ずそういうことになる。日本の国を独裁国家に陥れることをあなたは望まれるのか。総理、ひとつ御答弁願います。
  105. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 飯田さんの意見に必ずしも賛成できませんけれども、しかし、解散権は乱用してはならない、民主主義はあくまで守らなければならぬということは、私もよく心得ているつもりです。
  106. 飯田忠雄

    飯田委員 本日はもう時間がありませんのでなんですが、この問題は国家事項のきわめて重大事項であります。ぜひ今後この問題を論議する機会を設けていただきたいと思います。そして解決しておきませんと大変なことになる問題であります。また、場合によっては憲法学者を呼んでいただいて公聴会を開いて、私に憲法学者に質問させてください。法律論というのはうまくごまかして、法制局長官のようにああでもないこうでもないと言うてごまかすことをやれば時間かせぎできる。そんなものじゃありません。これは重大問題です。私はきょうは急に総理にお聞きしたので、総理はちょっとおわかりにならぬから、自分が信頼している法制局長官の言うことが一番いいとお思いかもしれぬけれども、あれは間違っているのですよ。ぜひ総理も真剣に、この問題については内閣で検討していただきたいのです。自由民主党が多数党であれば自由民主党の議決で解散はできるじゃありませんか。何も総理がやらぬでも、党議でおやりになったらいいじゃありませんか。どうです、総理
  107. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 民主主義において解散権というのは大変重大な権限だと思います。これは慎重に運営、運用しなければならぬものと心得ております。
  108. 飯田忠雄

    飯田委員 では、きょうはこれでやめます。
  109. 田村元

    田村委員長 これにて二見君、飯田君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十三分開議
  110. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  111. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 日銀総裁、御用でございますので、先にやらせていただきたいと思います。  「エコノミスト」とそれから東洋経済総裁がいろいろ談話といいますか、出ておるのですけれども、一つは今後の物価の動向、卸売物価消費者物価の動向を中心にお話を願いたいのですが、特にその中で「それではこの先、消費者物価はどの程度になるかだが、かねてから言っているように、五四年度末の段階で七%程度にとどまることを期待している。」こういうことがございますね。ここら辺のことを中心に、ひとつ物価の現況、将来の見通し等についてお話を願いたいと思います。
  112. 前川春雄

    前川参考人 卸売物価につきましては、先日発表いたしました一月の卸売物価が二・一%上がりまして、前年比一九・三とかなりの上昇になりましたのは御承知のとおりでございます。これから卸売物価がどういうふうな動きを示すかという点につきましては、海外の状況、その他がございますので、必ずしも断定的には申せませんけれども、まだ原油価格上昇が尾を引くと思います。それと最近、御承知のように商品市況が軒並み上昇をしてまいりました。そういうことから申しますると、卸売物価につきましては、二月もかなりの騰勢を続けざるを得ないのではないかというふうに思われます。  それから先につきましては、原油価格が一番大きな要素でございまするけれども、それ以外にもいま上がっておりまするいわゆる戦略物資的なもの、非鉄金属、木材、化学製品、そういうようなものがどういうふうな動きをいたしまするか、国内の商品市況がどういうふうな対応をするかということにも関連いたしまするので、私どもは一刻も早くそういう状態が落ちつくことを願っておるわけでございます。  消費者物価につきましては、幸いいままでのところ、卸売物価上昇の中でも完成品上昇が比較的穏やかでございまするので、そういうことを受けまして、消費者物価の方はいままでのところそれほど、卸売物価ほどの上昇を示しておりません。ただ、これが上がりますと、どうしてもじわじわと波及してまいりますので、これから先必ずしも楽観を許さない状態であるというふうに思います。  年度末の三月の消費者物価がどのくらいになるかということにつきまして、これも、私どもは実は消費者物価の方は集計をしておりませんので、私どもがそういうことを申し上げるのは筋違いでございまするが、何とか七%台で推移してほしいというふうに考えておるわけでございます。一月の東京が六・二でございまして、全国はまだわからないのでございまするけれども、これから二月、三月と行きます間に多少の上昇、これも野菜の季節商品の動きでずいぶん変わりますものでございますから、なかなか見通しをつけることは困難でございまするが、何とかその辺でおさまってほしいというふうに考えております。
  113. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから、物価の問題に関連をして、日本の場合には早目早目と手を打ってきた、そのことが効果を上げておるのだというふうなお話が出ていますね。そうすると、今回の場合にもやはり早目早目にそうした問題をやっていって効果を上げたいというふうなお考えでございしょうか。
  114. 前川春雄

    前川参考人 前回の第一次の石油危機のときには、御承知のように物価が大変な上昇をいたしまして、いわゆる狂乱物価ということに相なりました。あの当時マネーサプライの方もかなり上昇をいたしまして、前年比ピークでは二八%増というようなところまで参りました。現在はマネーサプライが、けさも申し上げましたけれども、大体一一%くらいのところを歩いておるわけでございます。私ども、そういう意味でマネーサプライをふやさないようにすることがまず第一であるというふうに考えまして、昨年来金融引き締め早目に打ち出しまして、マネーサプライがふえるのを防いできたわけでございます。そういうことが物価の面でも、もちろんそれだけではございません、企業あるいは一般国民の対応も第一次の石油危機のときとは違いまして非常に落ちついておったということが大きな要素ではございまするけれども、また一つには、そういうふうな物価に対して非常に厳しい態度を強く早目に出したということがやはり効果を持ったのではないかというふうに考えておるわけでございます。  今度の場合、いまの状況で、それではこういう物価が上がり始めているときに早目に手を打つかという御質問だと思いますが、私ども、その早目早目対応してまいるという姿勢は変えておりません。ただ、現在、それではすぐ金融政策について何らかの変更をするかということでございますれば、私ども、いまの引き締め政策はちょうど去年から一年になりまするが、その効果が非常に浸透してきているということもございますので、そういう事態を冷静に見きわめて、対応に誤りなきを期してまいりたいというふうに考えております。
  115. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 公定歩合の水準が日本と外国とで非常に違うんですね。これは、たとえばイギリスが一七%、それから一〇%以上の国がイタリア、カナダ、アメリカ、まあいろいろ。九%台がフランス、オランダ。六%、日本はいま六・二五ですか、わずかに日本と西ドイツだ、こういうわけですね。これはどういうことでこういうふうにほかの国は高いというか、日本と違うのでしょうかね。
  116. 前川春雄

    前川参考人 御案内のように、先進国でも、ただいま一〇%以上に公定歩合がなっておりまするところは六カ国か七カ国かあるわけでございます。そういう国の物価状況でございまするけれども、消費者物価上昇がいずれも二けた以上になっております。そういうことで、それぞれの国がいまインフレに非常に悩んでおるわけで、それに対応いたしましたインフレ対策としての金融引き締めあるいは財政政策の推進、そういうことをやっておるわけでございまするが、消費者物価がそういうふうに二けた以上上がっておりまするときに、金利面でもやはり、それに相応するような金利水準にいたすことがそれぞれの国にとっては有効であるというふうに判断されておるのだというふうに想像いたします。
  117. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは総理大蔵大臣にお聞きをしたいわけですが、公定歩合引き上げがありますと、結局他の金利に連動してまいりまして、国債費の金額なんか変わってきますね。そういう場合には、本年度予算の修正ということについてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  118. 竹下登

    竹下国務大臣 稲葉委員にお願いしますが、公定歩合の問題でございますので、あくまでも一般論としてのお答えで御了解いただきたいと思います。  それは、いつ行われるものか、上げ幅は幾らなのか、そうしてそれに連動して、必ずしも連動するべき性格のものではございませんが、上げるべきものかどうか、すべての前提がございますので、いまここでにわかに、どれだけのものが金利等で響いてくるということは実態としてお答えしにくい問題であります。
  119. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはよくわかりますけれども、金利に響いてくる。どの程度響いてくるかは別として、金利に響いてくるということは一般論として認めざるを得ないということですか。
  120. 竹下登

    竹下国務大臣 一般論として認めるとすれば、短期プライムは連動しておりますね。他の問題は、やはり臨時金利調整法でございますか等でいろいろな手続をして、その都度判断しておる問題でございますので、単純に長期プライムまで皆連動するものだというふうには言えないと思います。
  121. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 御苦労さまでした。日銀総裁は帰っていただいて結構です。  この前、質問の中で医療費の問題について聞いたわけですが、医療費の指導というのですか、これは厚生大臣に改めて問題を整理して聞きます。  ことしの予算、五十四年度の予算で二億八千九百十七万一千円の被保険者指導に必要な経費というのは、現在まで一銭も使われていない。これは政管健保の被保険者に対し、一々支払ったとされる医療費の内容が適切であるか、虚偽の申請がなされていないかを調査、指導啓蒙するのであると理解をするわけです。これが、せっかく巨額の予算がつきながら、今日まで一銭も支払われていないというのは、これを被保険者に通知し、その内容が確認をされますと、医師の不正申告がはっきりわかって、厚生行政に対し医師会が協力しなくなるおそれがある、それでその指導通知を怠っていたのではないかとか、また、この予算は、ある健保関係の民間組合がレシートの検査を試みたところ、年間に、これは被保険者が十二万、それから家族が三十万の健保の組合ですが、年間二百五十億ぐらいの予算の健保組合で、不正が次から次へわかってまいりまして、四億三千六百八十万円の不正が明らかになった。そして、これが同組合に返還をされた。この事実がわかりまして、大蔵省は厚生省に対して積極的に働きかけた。厚生省としては消極的であった。だけれども、そういうふうな結果から今日まで一銭も予算を使わないでいるのではないか、こういうふうに考えられるわけです。したがって、これに関連をいたしまして、次の問いに答えてほしいと思います。  本件の予算、これは被保険者指導に必要な経費、これが五十四年度になって急についた理由ですね。これは五十三年度まではなかったわけですから、五十四年度に急についた理由。  それから第二は、本年の予算期内にこの予算を消化すると厚生省は約束していますけれども、これは各被保険者に医療費の明細を確認しなければ意味がないわけですね。ところが、この点をやるつもりがあるのかどうか、こういう点が第二点。  第三点として、この結果、医師の不正申告が大量に暴露されることになる、明らかになるというふうに思うわけですが、その結果、これを国会や国民に報告すべきであると思いまするし、また、告発等によって不正を追及すべきである、こういうふうに思うのですが、厚生省としてはどういうふうな態度をとっておるのか、これが第三点。  それから第四点は、これは大蔵省に聞いた方がいいかもわかりませんが、この予算は、五十四年度、それから五十五年度のことは後で聞きますが、この予算をつけることによって、大幅な医師の不正、脱税を明るみにすることができる。その結果、政管健保をめぐってどのぐらいの不正受給、その返還が明らかになるか。結局、増収になると思うのはどの程度の金額が見込まれるのか。――防衛庁長官、寝ていると質問するよ。そのことを明らかにしてほしい、こういうふうに思うわけですね。  それから第五は、五十五年度予算の内訳、これには四億八千百九万六千円ですか、そのうちに本年度の被保険者に対する指導啓蒙、これが三億八百幾ら、これはふえていますね。そのほかに一億七千二百九十七万ですか、事業主に対する指導というかな、これがあるわけね。五番は厚生省に聞くわけですが、これを具体的にどういうふうにやるのか。  こういうふうな五点について、四点を大蔵省、その他は厚生省に質問をしたい、こういうふうに思います。
  122. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 まず第一点の五十四年度におきまする医療費の通知、つまり被保険者に対する健康に対しての認識、それを通しまして医療費がどの程度にかかっておるか、そしてそれがために、健康保険財政の上に寄与していきたいというような啓蒙指導を目的といたしているわけでございます。  したがいまして、五十四年度は初年度でございますので、まず健康保険の医療費に関する一般的な知識を各被保険者に知ってもらいたい、こういう意図のもとに、平均医療費の額であるとかあるいは平均の受診の状況などを通知することにいたしたわけでございます。  さて、これが大変長引いておるではないかという御指摘は、この前の総括質問でも稲葉先生から御指摘になったわけでございます。まず、これは初年度であったために、どうすることが啓蒙指導として一番適当な方法であろうかということを慎重に検討してまいったわけでございます。しかし、その結果準備も整いまして、三月の初めには各地方の出先でございます社会保険事務所を通じまして、被保険者にこうしたPR資料を送付できるものだというふうに考えておるわけでございます。  なお、被保険者に対する指導啓蒙がお医者さんの不正請求の摘発に結びつけておるのではないかというふうなことでありますが、これは被保険者の健康に対する認識を深めるものを目的といたしておりますので、決して医療の不正請求の摘発を直接のねらいといたしていないということでございます。  さらに五番目の問題でございますが、五十四年度に引き続きまして、五十五年度におきまして被保険者の指導に関する経費の内訳でございますが、総額は四億八千万円でございますが、それに対しまして五十四年度は二億九千万円、そのうち被保険者に対する指導の分は三億八百万円、この中身は年に一回一月分の医療費を事業主を経由して被保険者に通知したい。もう一つの内容は事業主、被保険者に対する指導啓蒙でございます。これは五十五年度の予算予定は約一億七千三百万円でございます。年一回、これは事業所単位に被保険者一人当たりの医療費、受診率を算出いたしまして、これを事業主、被保険者に通知するわけでございます。新しい五十五年度としてやってまいりますのは被保険者個人に対する指導啓蒙をやっていこう、こういうことでございます。
  123. 田中敬

    田中(敬)政府委員 今回予算計上いたしましたいわゆる医療費のお知らせ等に要する経費につきまして、大蔵省といたしましては、医療費に関する被保険者の認識を深めていただくことによって、健康保険財政の適正化に資するということを目的として計上したわけでございまして、これによって診療機関の不正受給額がどれぐらいになるであろうかというような、計量的なものは期待をいたしておりませんし、また計算もいたしておりません。
  124. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 厚生大臣、健康保険ができてから一体何年たつの。初めのころならこういう必要はもっとあったかもわからぬけれども、いまになって一体、ということは、いままで一体何していたの。あなたに聞いたって、あなたは厚生大臣になったばかりで知らぬかもしらぬけれども、これはどういうわけなの。いままで啓蒙なんかしなかったの。それが一つ。  それともう一つの問題は、ことしやるのは平均医療費の額、平均の受診状況、これを調べて一体何になるんですか。一人一人が幾ら実際に医療費がかかって、幾ら請求をしているか、それが真実であるか真実でないか、このことを一人一人調べなければ全く意味はないじゃないですか。  これは、いまさっきお話ししたようにある東京の健康保険組合がやったんだ。御存じでしょう。これを調べたら、その人は、自分が九州に行っているときに診療受けているようになったり、外遊しているときに診療受けているようになったり、全然知らないときに診療受けているようになったり、一日に十回も診療受けているようになったり、もう全然めちゃくちゃなのね。このことのために、これはいま私がお話ししましたように約四億三千幾らの金が返ってきたんですよ。このことの事実はあなたは知っているでしょうが。そのことのために、この健保の組合は、医師会からもほかからも非常な迫害を受けた。迫害を受けたけれども、これだけの金が返ってきた。これは年間二百五十億くらいの予算ですよ。そしてこれだけの金が返ってきたということは、調べれば大体大まかに言って五十分の一返ってきているわけです。だから、これを全面的に調査をしてみれば、いかに医師の不正というものが大きいかということがわかってくる。――政管健保の全部の費用大体幾らぐらい、予算幾らぐらい。それの五十分の一ぐらいの金が返ってくるんだよ、単純計算でいけば。(渡辺(美)委員「それ本当だ」と呼び、その他発言する者あり)それ本当だと渡辺君も言っているじゃないか。本当だよ。横町の小犬なんて言われたけれども、横町の子犬だっていろいろいるから、太ったのもいるし、世論で押されればどんどん強くなるんだから。だめですよ、あなた。五十四年度は医師会が反対をして、やれないということであきらめておったんじゃないですか。あきらめておったのを、ぼくら質問したからあわててやるようになったんじゃないですか。そうじゃないですか。本当のことを言いなさいよ。だから、五十四年度はもうしようがないから、間に合わないからあきらめる、そのかわり五十五年度からはやるようにするからと言ってたんだ。言ってたんじゃないですか、自民党の人に対しては。ぼくがこの前質問したらあわてて急にやり出したんじゃないですか。  だから、いまのぼくの質問は、一体健康保険というのはいつごろできたんだ、いままで何をどういう啓蒙をしていたのかということが一つと、現実にある健保の組合がやったならば四億三千六百八十万円の金が返ってきているんですから、現実問題として。そのことから言ったって、一人一人にちゃんとレシートの確認を求めればいいのに、平均の医療費の額だとか平均の受診の状況とか、こんなものを調べたって何の役にも立たないじゃないですか。あたりまえじゃないか、こんなこと。子供だってわかるよ。はっきり答えなさい。いや、それはあなたの責任じゃない部分もずいぶんあるんだよ。それはぼくもよくわかるんだけれども、これ、はっきり答えなさい。
  125. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 御指摘のように、平均医療費だとか平均の受診状況などを資料として一体何の効果があるのか、しかも五十四年度の予算の消化についてもきわめておくれておるではないかということについてのおしかりでございますが、このことについては、まず第一に、健康に対する被保険者の認識を高めていくということ、それを通しまして今後、個々の診療費というものが幾らかかったかということを的確に通知をするという、二段構えで進めていくことがいいのではないかというふうに考えましたので、五十四年度につきましては、おくれておりましたのを督励いたしまして、急ぎこれをやらすことにいたしたわけでございます。五十五年度は十二分にこの役割りを果たし得るような、そういう指導啓蒙をいたしてまいりたいと考えております。  詳しくは政府委員からお答えを申し上げたいと思います。
  126. 此村友一

    ○此村政府委員 稲葉委員指摘のとおり、健康保険制度は大正十五年にできておりまして、五十何年か経過をしているわけでございます。ただ、いままでしばしば御指摘のありますのは、政府管掌健康保険がきわめてマンモス的な企業である、そういう意味で被保険者との接触が乏しいというような御指摘もございます。私どもそういうような点をも勘案いたしまして、とにかく社会保険庁なり保険課の名前で直接的に、いま大臣から申しました各指標について、入院、入院外、歯科あるいは本人、被扶養者別、こういうような数字をなまに被保険者の世帯まで届けるということは、遅きに失したという御批判はあるかもしれませんが、私どもはそれなりに意義があるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  127. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると来年は具体的にどういうふうにやるのか、もう少し詳しく説明してください。やって、その結果を得て、どうするんだ。その結果が出てくれば、実際の医師の診療請求は不正であったことがわかってくるでしょう。わかってきたときどうするんだ、あなたの方で。
  128. 此村友一

    ○此村政府委員 五十五年度の予算につきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、この予算の趣旨が十分生かされるようにいたしたい。なお、その積算と申しますか考え方は、個人の医療費通知というものと、もう一つは事業主につきましては事業主単位の平均医療費を通知する、こういうような考え方で成り立っておりますので、その両方をミックスいたしまして実施をいたしたい、私どもはそう考えております。  それから第二番目の、稲葉委員のおっしゃいました不正との関係でございますが、これは直ちに不正摘発を目的として実施するものではございません。ただ、それが機縁となりましてはっきりした場合には、保険事務所といたしましては、指導官庁としての立場でありますところの県の保険課に連絡をするということは当然すべきだと思っております。
  129. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 問題は、県の保険課や何かが何をやるかということが問題なのよ。これは、大体二、三兆円くらいの金が浮いてくると専門家はみんな言っているんですよ。  それから、問題になってからは、これは不正受給で金を返すんでしょう。返すとき利息をつけないのか。利息をつけないのはどういうわけ。
  130. 石野清治

    ○石野政府委員 これは先日の渡辺先生の御質問にもお答えいたしましたけれども、利子はつけておりません。その理由でございますけれども、これは法律上いろいろ、先生御専門家でございますので私から申し上げるのもどうかと思いますけれども、考えられますのは民法上の規定しかないわけでございます。  三つの場合がございまして、債務不履行の場合と不法行為の場合とそれから不当利得の返還請求、こういう場合ではないかと思うわけでございますが、医療機関の場合の医療行為につきましてはいろいろな態様がございまして、少なくとも前者の債務不履行なり不法行為には該当するのはなかなかむずかしいのではないか。そうしますと、不当利得の返還請求ということが法律上の唯一の根拠になるか、こういうふうに思うわけでございます。  実はこの問題につきまして確かに善意、悪意の問題がございまして、善意の場合は別といたしまして、悪意の場合については当然利子をつけることができるという民法上の規定がございますが、その場合の善意、悪意の判断の基準の問題、なかなかむずかしい問題がございます。そういうことから恐らく、昭和二十八年でしたか二十九年でしたかに当時の保険局長の方から通知が出ておりまして、こういう問題につきましてはその額そのもの、損害額そのものを請求するというふうなことになっておりまして、それが自来続いておるわけでございます。  なお、その法律論は別といたしまして、不正請求で返還をいたしました場合に、きわめて悪意と思われますものにつきましては指定の取り消しをいたすわけでございます。そういたしますと、指定の取り消しということは生活権の剥奪ということになりますので、そういうことも兼ね合わせて恐らく利子をつけていない、こういうことではないかと思うわけでございます。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 民法の七百四条でいこうというのでしょう、基本原則。そうすると、医師の行為というのは一体何なのだ。商行為なのか、どうなんだ。商行為なら年六分でしょう。民法なら年五分でしょう。これはどっちを考えているの。
  132. 石野清治

    ○石野政府委員 これは私の方は、やるとしても年五分という一般規定ではないかと思います。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 どうして。
  134. 石野清治

    ○石野政府委員 これは規定がいろいろございますが、商行為というふうに割り切っていいのかどうか、非常に疑問があるのではないでしょうか。一般にこれにつきましては、私ども考えておりますのは民法上の、ほかに規定のない場合の利子の規定が年五分となっておりますので、それを適用する以外にない、こう思っておるわけでございます。
  135. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ところが健康保険法の十一条ですか、保険料を払わなければ延滞料を取られるのでしょう。百分の十四・六取られるでしょう。そんな高額を取っていて、不正受給してその金を使っているんですよ。使っているということは利益を得ているということだ。利益を得ているということは、あなた、不当利得でそれだけのあれをしているわけだから、年五分なら五分でいいけれども、それをくっつけて返還さすのはあたりまえの話じゃないですか。そんなことはだれが見たってあたりまえよ。ただ善意、悪意が問題だと言ったって、善意、悪意の理解の仕方が違うのよ。素人の人は悪意というといかにも悪いように考えるけれども、そうじゃない。不正受給ということを単に知っていたということだけでそれが悪意なんですから、法律的に。害意とは違うんだから。そこら辺のところで、みんな悪意の推定を受けたって構わないじゃないですか。あたりまえじゃないですか、そんなことは。だから、当然これは利息を取るべきですよ。そんなもの取らないなんて考え方はいかぬですよ。これはもう絶対ぼくは納得しませんよ。だめだめ、これは。こんなものは取れるんでしょう。取れるんだけれども取らないのか、法律上取れないのか、どっちなんだ。はっきりしなきゃだめだよ。
  136. 石野清治

    ○石野政府委員 先生御専門家ですけれども、民法上の規定で、確かに請求者の意思によって取ることはできるというふうに思うわけでございます。ただ、取るか取らないかという請求者の判断に立った場合に、先ほどのいろいろな要素を兼ね合わせまして取っていない、こういうことでございまして、これは実は健康保険法だけじゃございませんで、結核予防法、生活保護法全部関係ございまして、医療保険全体の中でどうするかという問題がございますので、慎重に検討さしていただきたいと思います。
  137. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 慎重に検討するのはいいですけれども、保険料は延滞すれば百分の十四・六か、取られるんですよ。こんな高いものはありはしない。それで、医者が不正なあれをして金もうけをしていて、その金を使ってしまっておれば利息を払わなくてもいいという、そんなばかな話はないですよ。これは法律で取れるんだから、取るように検討しなければいけませんよ。大蔵大臣、どうなんです。
  138. 竹下登

    竹下国務大臣 検討さしていただきます。
  139. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 検討というのは前向きに検討します、こういうふうに大きな声で答えなさいよ、あなた。
  140. 竹下登

    竹下国務大臣 前向きというのか後ろ向きというのか、まじめに検討します。
  141. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 まじめに検討すると言うんだから、それを信頼しますが、これは一つの民間の健保の組合がつぶれかかったんですよ。つぶれかかったら、それを一々レシートを出さしてみんなに確めたんだ。そうしたら出てきたんだ。海外出張しているのに金の請求が出ている、死んでいるのに請求が出ていたり、九州に行っているのに出てきたり、一日に十回も診療を受けたりなんかしている。それでこの金が四億幾ら返ってきたでしょう。それでこの組合は立ち直ったというんだ。うそじゃないですよ。こういうふうなことがあるんだから、これはまじめに検討してください。ぼくも理論的には検討しますがね。  そこで、問題を次に進めましょう。  これは外務大臣、園田さんとの話はもう済んだんですか。いいんですか。――それじゃ外務大臣にお聞きするんですが、アラブ外交ですね。アラブ外交というかイスラム外交というか、この進め方についての基本的な見解をお伺いをいたしたいということが一つ。  それから、実は私、ことしの一月にアラブの世界をひとつ見ようと思って、一週間ばかりエジプトへ行ってきたのです。エジプトじゃわからないと言えばわからないかもわかりませんが、見てきました。ソ連ではカイロの大使館に百人の人がいた。日本は二十人。それだけ熱の入れ方が違うわけですね。  それはそれとして、そこで、イスラム外交というかアラブ外交の進め方の中で、今度園田特使が行くのだけれども、日本政府の歓迎の意思を園田特使を通じて正式にPLOのアラファト議長に伝えるのかということが第一点。それから第二点は、アラファト議長の訪日を一体政府としては歓迎をしているのかどうかという点が第二点。第三点は、来日をされるとするならば、総理、外務大臣が各国の高官並みにこれを接遇するのかどうか、こういう点が第三点。第三点は、むしろ総理からお答え願いたいと思います。
  142. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問でございますが、日本が対中東外交を重視しておりますことは、総理の施政方針演説及び私の外交演説の中でも申しておりますが、今回の園田特使の同地域の訪問に際しましてアラファト氏に会うという問題は、政府ベースでは承知いたしておりません。  それから、ただいまアラブ議員連盟の木村先生のお名前で招待状がPLOの方に行っておりまして、PLO側からはまだこれは対する正式の回答が来ておらない段階でございます。  第三の点も、総理お尋ねでございましたけれども、もよろしければ――もしアラファト氏、カドウミ氏等が来られれば、前例に従って適当な接遇をするということにいたしております。
  143. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 園田・アラファト会談というのは、外務省としては公にはまだ聞いてないというのですけれども、現実にはそういうことが考えられる、それでなければアラブ外交の大きな目的は達しない、こういうふうに考えるのですが、ただ、その点については、いま外交の問題だから、ここですぐ答えるのは勘弁してほしい、それは御推察に任せるとか、あるいは目的を達する上に必要ならば会うことになるでしようとか、こういう、ふうな答え以外にないかとも思いますが、そういう答えでもいいですよ。
  144. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 政府を通じての正式の話は、いまのところございません。その他の面につきましては、まだ何とも申し上げようのない状況でございます。
  145. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それでは一体外務省で、いわゆるアラビストと称して、アラブ語がありますね、変な字、あれを読んだり書いたりできる人というのは一体何人ぐらいいるの。
  146. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私の承知しているところでは、アラビストが五十四名、大体本省にその半分、現地に大体半分という配置になっておるわけでございます。
  147. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 大体、約五十名ですね。これはぼくもカイロで聞いてきたのだけれども、大体五十名ですね。そうすると、その五十名でアラブ外交というものを本当にやれるかどうかということですね。あそこにいるいわゆるキャリアの人たちは、あのむずかしい字を読めるころになると、もう転勤しちゃうわけですね。だから、そういうことに関係なく、今後じっくり腰を据えてアラブ外交に取っ組んでいく必要があるというふうに私は考えるのですね。アラビストというのはほとんどノンキャリでしょう。ノンキャリの人が多いんじゃないですか、そんなことを言っては失礼だけれども。今後どういうふうにそれを拡大強化していくかということですよ、大事なことは。
  148. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 おっしゃるとおり専門職の方が多うございますし、また伝統的には専門職の方が、戦前からやっておりますので技量その他についてはより優秀な者が多い、そういうことは言えます。しかし、上級職の方でも最近は年々養成をいたしておりまして、こういう人たちは言葉も覚えないうちに転勤ということはなるべくないようにして、じっくり腰を据えるようにやっております。ただし、何分若年者が多いものですから、まだ少し時間がかかると思います。
  149. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、今度はいよいよ問題が総理に対する質問になるわけですが、総理は施政方針演説の中で第四として、政治と行政が公正かつ清廉で、国民の信頼にこたえるものでなければならない、このためには、政治の倫理を高め云々ということを言っておられますね。それからその中で、「政治倫理の確立につきましては、すでに明らかにいたしましたとおり、政治資金の明朗化」ということが必要だというふうなことも言っておられるわけですね。この辺は具体的にどういうことを言っておられるのかということが一つと、それから政治資金の明朗化ということならば、与党である自由民主党の収支というものをやはり国民の前に明らかにすべきではないか、こう思うのですがね、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  150. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政治に対する信頼を維持してまいるということは、政治、行政の基本でなければならぬと考えております。しかるに、最近その信頼を損なうような事件が続発いたしまして、国民に対して大変申しわけなく存じております。したがって、こういった行政上の不始末、政治の信頼を失うようなことの再発を防ぐためには何をなすべきであるかというような点につきまして、政府といたしましても有識者の御意見も承りまして、まずいま仰せの政治資金の規正について新たな検討をしなければならぬのじゃないかと存じております。これまでの政治資金規正法は、個人のことには触れていなかったわけでございますけれども、個人に絡まる政治資金の収支を明朗にしてまいるという手だてを考えるべきではないかということで、ただいま政府と自民党の間で検討を急いでおるところでございまして、これは成案ができましたら御審議をいただきたいと存じております。  それから、いま稲葉委員の、党の方の政治資金につきましてのことでございますが、これは現行の政治資金規正法の要請に従いまして、自由民主党といたしましてはそれだけの手続をもって届け出をいたしておるものと私は承知いたしております。
  151. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 まず隗より始めよということがありますから、あなたの方で具体的にやはり自民党の中の資金がどういうふうになっているかということを明らかにすることが、ぼくは国民の政治に対する信頼を高めるゆえんではないか、こういうふうに思うのですね。  なぜかといいますと、あなたのところの自由民主党幹事長櫻内義雄さん、こういう人がいますね。宝塚の好きな人ですが、去年の十二月三日、こういうことを言っているのですよ。「参院選に向けての党内態勢について」ということで、こう言っているのですね。読みますからよく聞いていてください。あなたの感想というか、あなたの考え方を率直に承りたいのです。  「いま私がもっとも頭を痛めていますのは、幹事長を引き継いで、いったいわが党の財政状況はどうかということです。幹事長になる前は、いまや政治資金は党へ集中して、そして総裁派閥の幹事長が、その資金をろう断しており、そのことによって派閥の勢力を増大させているのではないか、ということで、いろいろ色目で見ておったのですが、これが案外、思ったほど政治資金がわが党へは動いておらない。  こまかいことは抜きにして、いまだに五十億円の焦げつき債務が残っているという状況ですし、また、このあいだの総選挙においても、相当の借金を残しておるというのですから、いったい参議院選挙に臨むに資金問題をどうするか、ということで頭を痛めています。」  こう言っているのですよ、櫻内義雄さんは。国民政治研究会というのは新聞記者の集まりですよ。そこで言っているのです。五十億円の焦げつき債務が残っているということなら、この実態というものをやはり私は政府の与党が国民の前に明らかにする必要があると思うのですよ。単に一政党の問題ではないのですよ。国民の政治に対する信頼の問題だとぼくは思うのです。これは明らかにすべきだと思うのですよ。  この前、銀行から自民党会館をつくるときに百二十億借りましたね。六十億は返したのです。六十億はどうしたのです。知っているのでしょう、どうしたのか。それとは別でしょう、この五十億というのは。五十億の焦げつき債務がまだ残っている。どこからどういうふうに金を借りて、一体どうしてこんなに焦げつき債務が五十億も残っているのですか、自民党に。これを明らかにしなければ政治の倫理の回復ということはできないのじゃないですか、あなた。こんなことほおかぶりしていて、わしゃ知らぬよなんて言っていて、そんなことじゃだめじゃないですか、これは。総選挙においても相当の借金を残しておる。どれだけ総選挙に金がかかって、収入がどれだけあって、どれだけ借金残したのか。(「社会党はどうだ」と呼ぶ者あり)いやいや、社会党のことを聞いているのじゃない。自民党は政府の与党なんだから、まずそれを明らかにしてから。ぼくらの方ではちゃんと報告しているのだから。政治姿勢の問題として聞いているのですから。こういうふうに言っているのですよ、はっきり。いいですか。「参議院選挙に臨むに資金問題をどうするか、といことで頭を痛めています。」それはそのとおりかもわからぬね。  それからまた、こういうように言っているのですよ。「それから、この前の総裁選挙のとき、吉田工業が集団入党しましたが、そういう場合だと個々の会社の政治資金に影響があるかと思うのですが、わが党でも政治資金については非常に細かく検討していて、全国の、これは、という法人の個々の枠はどのくらい、そして自民党には幾らきてるというのをずーっと計算しておるのです。そういうように個々の会社には枠がありますから、党にくるのがある程度増えておれば、派閥へいくのが減るのですが、派閥が余計取っていれば、党のほうにはこない、という加減はありますね。」  これはこのとおりだ。結論はこのとおりだよね。個々の法人について枠がどのくらいあるか、個々の会社にどのくらい枠があるか、どの程度党に来るか、そんなことを天下の政党が一々こんなに細かく調べていく、そういうことで政治の倫理化ということが一体果たせますか。どういうふうに考えるのですか、あなた。こういうことみんな知らないんですか、知っているのですか、どっちなんです。五十億円の焦げつきがあると言っている。総選挙で相当な借金が残っちゃったと言っている。参議院選挙でどうやって金を集めるか頭痛めていると言っている。法人でどんどんやってきて、法人の枠を一生懸命探しているというんだ。それは皆とられちゃったら今度は派閥のあれがなくなっちゃうから、派閥に先にとられちゃ大変だから党の方で先にとっちゃおう、とは言ってないけれども、まあそういう意味だ。そういう意味に聞こえるよ、これは。  こういうことで一体あなたの言うような政治の倫理化ということはできるのですか、できないのですか。どうなんですか、あなた。大きな問題ですよ、これは。(発言する者あり)うるさい、そんなこと、よけいなこと言うんじゃないよ。横町の子犬がほえるのじゃないのだ、そんなことは。そういう点どういうふうにするかということですよ。単に自民党の問題ではないですよ、これは。
  152. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 声を荒立てての御質問でございますけれども、自由民主党は借金があることは事実です。かつて百億円近くの銀行からの借り入れがございましたが、これは数年前に半分返しまして、五十億円弱の借金がまだありますことは事実でございます。しかし、これは焦げついた債務ではございませんで、ちゃんと事前に、金利もちゃんと払っておるわけで、自由民主党の信用によって公明に借り入れておるものでございますので、御心配に及びません。  それから第二に、自由民主党が先般の総選挙におきまして、どういうように金が必要であって、どのようにやりくりをしたかということ、詳しくは私も存じませんけれども、まあ若干の一時的な借り入れを、金の調達を一時的にいたしたことは私も若干記憶いたしておりまするけれども、これは毎年やっておることでございますけれども、年度内にきちんと支払いをいたす予定でやっておりますので、これまた、どこからお調べを受けましても差し支えがないものになっておることでございます。  それから第三に、こういう状況で参議院選挙の資金が集まるかどうか、それは櫻内君でなくても、だれが幹事長になっても心配するであろうと思います。いまの政治資金規正法が各法人の政治資金の拠出につきまして量的制限を加えておりますので、それを超えてお願いすることはとうていできないことでございますので、そういったことについて若干関心を持っておったとしても、別にそれは不思議なことではないと思うのでありまして、いまの規正法の中で合法的にどれだけぐらいがこの会社といたしましては政治資金として期待できるかということを一応計算をしてみましても、それは別にとがめられるべき性質のものではないと私は考えておるわけでございまして、こういった自由民主党の政治資金の出し入れというものにつきましては、冒頭に申し上げましたように、現行政治資金規正法によりまして届け出をいたしておるわけでございますので、それで御了承いただきたいと思います。
  153. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 五十億円の借金があることまで政治資金規正法で届けてありますか。(「よけいなお世話だ」と呼ぶ者あり)よけいなお世話じゃないよ。政治の倫理化にとって一番大事なことですよ。参議院選挙で幾ら金を集めようというのですか。それが問題となって、それがほかのことに関連してくる可能性がある、そういう一つのあれがあるからぼくは聞いているのですよ。いいですか。これでは国民の政治に対する信頼というものは失われてきますよ。  また、福田赳夫さんはこういうふうに言っているのだ。同じところですが、これは一月九日。「党の体質改善に不熱心な総裁」と、あなたのことを言っている。「四十日間に、いろんな問題について、大平総理とも話し合った。その中で、君が内閣総理大臣としてやってること、これについては私は評価もし、そう荒立てるような考えはないけれども、はなはだ不満であるのは、自民党の体質問題について、まったく無関心であることだ。」福田さんこういうふうに言っているのだよね、あなたのことを。これは内閣総理大臣というのはあなたでしょう。だから、「自民党の体質問題について、まったく無関心であることだ。」これは自民党の体質問題ということだけじゃないでしょう。ここで言っているのは、恐らく自民党の金権体質ということを言っているんだろう、こう思うのだ。自民党の金権体質ということが日本の政治を腐敗させていろいろな問題を起こしてくることなんですから、この点については十分考えて、非難を受けないような形で金権体質というものをなくすように骨を折ってもらいたい、私はこういうように思うのです。福田さんがこういうふうに言っているのをあなたはどういうように理解をされますか。
  154. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私は、自由民主党をそう金権体質とは考えていないわけでございまして、福田さんとは見解を異にいたします。もし、どこが金権体質であるかということでございますならば、御指摘をいただいて、具体的事実を示していただいて、それについての見解を求めていただかなければ、非常にハイハンドに金権体質だなどということをきめつけられますと、自由民主党は大変迷惑に存じます。
  155. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あなたのところが金権体質だというのはもう世間の常識じゃないのですか。そうじゃないですか、あなた。たとえば宇野何とかというのが――宇野宗佑じゃないよ、宇野何とかというのがいるでしょう。糸山英太郎とかいっぱいいるわね。いっぱいかどうか知らぬけれども、いろいろなのがいるね。選挙のときに一体どれだけの金を使っているかということを考えれば、普通、一般の国民があなたのところは金権体質だと考えるのはあたりまえですよ。これは常識ですよ。具体的な例を示せと言えば、幾らでも示せますよ。  次の問題に移りましょう。大蔵大臣、この予算の前提としての為替レート、これを幾らで計算してこの予算ができたのですか。それから石油は一バレル幾らぐらいということで計算してこの予算を組んだのですか。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 正確を期するため、事務当局から答えます。
  157. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 正確を期すためじゃないよ。あなたが大蔵大臣として責任を持って予算を組んだんじゃないの。あなたはこの前、補正予算の公債の減の金額についてもわからなかったじゃないですか。一兆二千二百億、この数字もあなたはわからなかったでしょう。だから大蔵省の中でも、あなたに対して頼りないという空気がどんどん出ているじゃないですか。だめだよ、そんなことじゃ。(発言する者あり)失礼じゃないよ。本当だよ。こんなことわからないじゃだめじゃないですか。あたりまえだよ。今度の内閣で一番大事なのは大蔵大臣ですよ。ほかの人たちは――そんなことを言っちゃ悪いから言わないけれども。これは大蔵大臣が一番大事なのよ、目玉なんだから。もう少ししっかりしてくださいよ。本当に困ってしまうよ。まあいいや。じゃ為替レートと、石油が一バレル幾らで組んだかということは後にしましょう。  じゃ、税金の問題について聞きましょう。あなたはこの前私に対して、一般消費税については五十六年度も導入できるような環境じゃないと言いましたね。それはそれでいい。そうすると、五十六年度の税収というものはどういう形になってあなたとしては考えておられるわけですか。
  158. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまず、ことしのところは入るをはかる前に出るを制するという形で、格別の本格的税目による増収を求めなかった、しかし五十六年度以降そういうことで十分やり得るという状態にはないと私も思っております。しかしながら、その場合新たなる負担というものはどの税目に求めるかとかということになりますと、私はこれからの経済の推移を見ながら、しかも稲葉さんとここで問答しておるように、国民の各界各層の意見を聞いて、その意見に基づいて、基本的には財政再建に関する本院の決議の趣旨に沿ってその方途を模索していかなければならぬ。だから、具体的に来年はこれをやりますという段階にはただいまのところない、このように御承知いただきたい。
  159. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それではこういうふうにお聞きしましょうか。五十四年から六十年までの増税を、この「政府の窓」一月十五日号では九兆一千百億と見ているわけですね。まず、この数字の五十四年度からずっと六十年度までの年度別の増税額は幾らになりますか、これを先に聞きましょう。
  160. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨年の二月に当委員会に御提出をいたしました五十四年度ベースの財政収支試算、そこでの自然増収として見積もられる額と、その財政収支試算に書かれております各年度の税収との差額でございますが、これは当時の推算によりますと、五十五年度は一兆二千六百億円でございます。五十六年度が一兆五千億円でございます。五十七年度が一兆七千七百億円でございます。五十八年度が二兆一千億円、五十九年度が二兆四千八百億円、以上申し上げました金額を合計いたしますと九兆一千百億円となります。
  161. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それだけの増税をやらなければならないわけですね。そして、それがこの前の答えでは五兆八千五百億か、こういうふうに変わってきましたね。これはどういうわけで変わってきたのですか。その場合に年度別の税収額は幾らになるのですか。
  162. 高橋元

    高橋(元)政府委員 五十五年度ベースの財政収支試算、これは過日当委員会にお出ししたものでございますが、それに基づきまして同じ手法で差額を計算してまいりますと、その合計は五兆八千五百億円程度に相なります。  なぜ先ほど申し上げた九兆一千億と違うかというお尋ねでございますが、これは第一に、四カ年間でございます。五十五年度ベースは五カ年間でございます。それから第二に、出発点となります五十五年度の税収がそこで五十四年度ベースと五十五年度ベースでは約一兆円違っております。その二つの要因から全体の金額が変わってくるわけでございます。計算をしました結果でございますから、たびたび大蔵大臣から申し上げておりますように、これが増税の所要額を直ちに示しておるということではございませんが、計算した金額を申し上げますと――概数でよろしゅうございましょうか。(稲葉(誠)委員「はい」と呼ぶ)  五十六年が一兆一千億、五十七年が一兆三千億、五十八年が一兆六千億弱、五十九年が一兆八千億、そのくらいの程度になります。
  163. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、この本年度の予算は、二六・五%の租税負担率というものを動かさないで計算しているわけですか。どういうふうになっているのですか。
  164. 高橋元

    高橋(元)政府委員 六十年度におきます国民所得に対する租税負担率二六カ二分の一というのは経済社会七カ年計画によっておるわけでございますから、これは、前年度の試算も本年度の試算も変えておりません。
  165. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで大蔵大臣お尋ねするのですが、あなたのところへ経団連の花村という副会長が来ましたね。これはその後総理大臣のところへ官房長官と一緒に行っているわけですね。花村さんと田中六助さんと行ったのかな。どっちでもいいや。そこで、法人税を大蔵省では本年度から、最初伝えられたのは何か三%ということを言っていましたね、上げるという計画を試算していたのですか。一%で大体二千百億円だ、そういうふうになりますね。そういうふうな計算をしていたのかどうかということが一つなんですが、大蔵大臣に聞きたいのは、一体日本の法人税というのは、国際比較をした場合にほかの国と比べてどうなんですか、安いのですか安くないのですか。どういうふうに理解をしているのですか。  それから、花村さんが来たときの話はどういう話があったのですか。あなたの方から呼んだのですか、向こうから来たのですか。
  166. 竹下登

    竹下国務大臣 花村さんは、向こうからいらっしゃったことが五回ぐらい、私がお呼びしたことが一回でございます。柔道友達でございますので……(稲葉(誠)委員「いや、予算に関連してだよ」と呼ぶ)その柔道のことも予算に関連した話でありましたが、そういう陳情もありました。それで、法人税だけの話でお見えになりましたのは一回だと思います。恐らく稲葉さんは――経団連が法人税の、実効税率を五一・一一%と言って、だから他の国に比べて実効税率は決して低くないのだという趣旨のお話は承りました。これに対しては、計算の方法もいろいろありますが、そういう詳しい話はしないで、ただ承りましたと申し上げたわけであります。  それから次に私がお呼びいたしましたのは、法人税というものを五十五年度予算編成に当たって全く頭の外に置いておったわけではございません。本年度予算は法人税の本格的な増収を求めることなくして組み得たという結果として、法人税はことしはやらなかったわけでございます。したがって、将来これを避けて通るという状態にはありませんと、別に来年度の予告をしたわけではございませんけれども、友人でもございますので、私の赤裸々な声を申し述べておきました。
  167. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、来年度は法人税の増を避けて通れないということがあなたの花村さんに対する赤裸々な声ですか。
  168. 竹下登

    竹下国務大臣 数字には弱いわけでございますが、言葉は私非常に丁寧に申しまして、例外に置くことはできない、こういうふうに申しました。
  169. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 法人税が増徴されれば、大ざっぱに言って日本の場合は一%で大体二千百億ぐらい。そうすると、三%だと六千三百億かな。こういう計算を大蔵省ではしていたんじゃないですか、本年度要求しようとして。これは大蔵大臣に聞くんだけれども、あなたは自然増収がふえたと言うのでしょう。ふえたから、それで賄えるから法人税の増税をしなかったと言うんでしょう。自然増収がふえたのなら、それをなぜ公債の減額の方に充てなかったのですか。それが当然じゃないですか、あなた。ドイツなんかみんなそういうふうにやっていますよ。ドイツなんかそうでしょう。どうしてそういうことをやらなかったのですか。
  170. 竹下登

    竹下国務大臣 それは、五十四年度の補正予算におきましては自然増収分の皆々というわけじゃございませんが、公債減額に充てたわけです。五十五年は当初予算で一兆円以上と私も申しておりましたが、結果としては一兆円ぽっきりということになりましたが、五十四年の当初予算に比べまして減額をしたわけであります。したがって、五十五年度の予算を組むに当たっての自然増収見込みというものを仮にもし――それはやはりいろいろな当然増的経費とかそうしたものの中で全部消化されて、すなわち私とてそれは十三兆台にしたいとかそういう気持ちは持ったことはございますけれども、それをみんな充てるような環境にはなかったということが実態であります。
  171. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 ちょっとおかしいですね。あなた、それは法人税をなぜ取らなかったという理由には少しもならないんじゃないですか。法人税がほかの国と比べて日本の場合は安いということを税調でもちゃんと書いてあるでしょう。それで経団連は五一・一一%とかなんとか言っているね。こっちは四九・幾つとか言っている。お互いに計算は都合のいいように引っ張っている。それはそれとして、それならば当然法人税の増徴による増収ということをやってよかったんじゃないですか。ことしどうしてできなかったのですか。どうも説明がはっきりしないな。主計局はどうなの。初め法人税の増収を考えたんじゃないの。主計局、それはどうなんだ。
  172. 高橋元

    高橋(元)政府委員 税制調査会の中期答申にもございますように、「実効税率で比較してみると、我が国の水準は主要諸外国の水準に比べてやや低いと認められるので、今後適当な機会をとらえて法人税に若干の負担の増加を求める余地があると考える。」これは五十二年秋以来の税制調査会の中期答申でございます。  本年度の予算の編成をするに当たりまして、昨年の十一月三十日にフレームのAとBというのをつくりまして、フレームのBでいきますと八千四百億円ぐらい現行の税制で到達できない税収が必要であるという試算を出しました。Bのように大きな予算規模ということはとうてい考えられないので、AとBの間で予算の編成をやっていくわけでございますが、何分にも十一月の三十日でございますから、差し迫った予算編成のための税制改正をどうするかという準備を税制調査会でもお願いをいたしたわけでございます。その八千四百億円全部というわけではございませんけれども、それを埋めていきます場合の税制改正の項目の一つとして、この税制調査会の中期答申にあるように、法人税に若干の負担の増加を求める余地があるかないか、それが適当な時期として五十五年は考えられるかというようなことを御審議いただいたことは事実でございますが、そのときに、いまお尋ねのございますように、法人税の税率を上げるということをはっきり決めておったわけではございません。検討の材料としたということでございます。
  173. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 答えがはっきりしないですね。法人税の増徴をことしなぜやらなかったの。ことしやれなければ、来年になったらやると言ったってなかなかやれなくなってくるんじゃないですか。それはあたりまえじゃないですか。  いま大蔵大臣は、数字に弱いと言うけれども、来年やると言うのだから、それはそういうことを信用しておきましょう。  そこで大蔵大臣、日本の税金は、たとえば所得税法の百二十条で、これは収入でなくて所得に対して課税する方法をとっておりますね。アメリカでは収入に課税していますね。いいですか。うんうんと言っているが、わかっているの。そうすると、そのやり方によって具体的にどこがどういうふうに違ってくるの。それはどこに影響があるの。
  174. 竹下登

    竹下国務大臣 その問題はわかりませんので、政府委員から答えさせます。
  175. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 わからないのは無理もない。ぼくの質問がちょっとねじって質問しているから、あなたにわからないのは無理もない。質問を意識的にちょっとねじっているから。時間がないから簡単に答えてください。
  176. 高橋元

    高橋(元)政府委員 所得税にいたしましても法人税にいたしましても、個人または法人の所得、すなわち収入金額から経費を引いた残りを課税標準といたしておりますので、収入金額即所得と考えておりますのは、たとえば利子所得の場合でございます。これは利子の収入金額が即所得でございまして、必要経費を認めないというようなことはございますけれども、原則としてどこの国の所得課税でも、収入から経費を引いた残りに課税いたすということは変わらないと思います。
  177. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 アメリカの場合は、ぼくらの調べでは収入があれば申告しなくちゃいけない。そうすると、日本の場合は所得だから、収入から経費を引くから所得がないということで申告しないから、新規開業の場合、二年、三年ずっと申告しないで済んでいるんですよ。その金を収入主義に直せば、大体二兆円ぐらいの金が取れるという計算をぼくらの方ではしているのですよ。そういう計算になってくる。ここが違う。  もう一つ違うところがある。これは時効か除斥期間かちょっとわからぬけれども、日本では脱税の期間は悪質の場合五年でしょう。ドイツでは十年。ほかの国では、フランスやアメリカではこれは無期限でしょう。だから、ほかの国では税金というものを五年たったって取れるのですよ。そこが日本と非常に違うのじゃないですか。これを改正すれば、そのことによって、今後日本は脱税によって悪いことをやってのほほんとしている連中からもっともっと金を取ることができるのですよ。  いまの二つの点が日本の税制と外国の税制とは基本的に違うのです。後の点はどういうふうになっておりますか。これを日本もドイツのように十年ぐらいにしたらどういうふうになるの。どれだけふえるようになるの、はっきり数字はわからぬけれども。
  178. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いわゆる課税の除斥期間に関する税制でございますが、アメリカは脱税の場合、無制限でございます。実例としては十年以上遡求した例がないようでございますが、規定上は無制限。イギリスも無制限。ドイツは最大限十年。フランスは四年プラス二年、こういうことでございますか、六年でございます。日本の場合には、御指摘のように仮装隠蔽の場合五年でございます。  この課税の除斥期間をさらに延長して税の公平を一層確保した方がいいという御意見がございまして、私どもも検討いたしております。  ただ、むずかしい問題がございます。一つは、商法上の商業帳簿の備えつけということは十年というふうになっておりますけれども、実際に商事の債権が五年で消滅時効にかかりますので、したがって、商業帳簿の保存というものは必ずしも十年になっておりません。したがって、除斥期間を延長いたしましても、実際調査の対象になります法人の帳簿というのがないということがあります。その点が現実にどうなっておるか、いま調べておるわけでございます。  もう一つは、公の債権というのは時効が五年、これは明治二十三年の会計法以来ずっと変わらない制度でございます。したがって、除斥期間を延長いたしましても、債権が消滅時効にかかってしまう、そこの調整をどうするかという問題がございます。  そのほか、細かく当たっておりますといろいろむずかしい問題がございますが、いまその点を含めまして、外国の事例も含めまして検討いたしておるところでございます。
  179. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 いまの二つの点は非常にむずかしい点です、確かに。だから、商業帳簿が十年間の保存というのは商法で決まっているわけですから、それと時効との関係なんかもマッチさせなければいけないというふうなことも考えられるわけですが、この点については十分検討してもらいたい、こういうふうに思うのです。  それから、各種の引当金がありますね。大蔵大臣、金融関係、保険関係、これはいま千分の五でしょう。これを千分の三にするという内示をもう銀行にしているでしょう。これはどういうふうになっているのですか。
  180. 竹下登

    竹下国務大臣 いま経過期間中でございますので、その後の問題について、いわゆる内示をしたかどうかという問題については正確に知っておりませんので、事務当局から答えます。
  181. 高橋元

    高橋(元)政府委員 金融保険業以外の事業の法人の貸し倒れ引当金の率は、五十四年に二割引き下げました。金融機関につきましては、千分の八から千分の五に五十一年度に引き下げたわけであります。現在、五十六年の九月までは経過期間中で積み増し停止の措置がとられておりますが、五十六年の九月ごろになりますと、金融機関はおおむね千分の五という積立限度になると思います。その段階をとらえて改正をいたしたいという気持ちは持っておりますが、まだ具体的に内示をいたしたというところまでいっておりません。
  182. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そんなことうそだよ。ちゃんともう千分の三という内示があったと銀行の人は言っていますよ、ぼくは銀行の人に会って聞いたんだから。そんなのだめです。大蔵大臣はそこまで聞いていないのかもわからぬけれども、銀行の人はもうそういうふうに言っているのですよ。  だから、もうこんなのはなくたっていいのですよ。ドイツやアメリカのように実績主義でいいのです。いまアメリカはまだ実績主義じゃないけれども、これは八八年か、実績主義になりますね。実績主義でいい。実際は、こんな貸し倒れなんというのは金融保険会社にないですよ。だから、実績主義でいけば、ずっと少なくて済む。こういうふうになってくるので、ここら辺のところも十分考えなければいけない、こういうふうなことですね。  時間の関係で先に進みますが、いままで出ていなかった問題で大きな問題は、ぼくは公共事業費の問題だと思うのです。これは二百四十兆、これを動かさないでいてほかのものをずっと計算しているわけですね、この六十年までの予算は。ここに問題があるんです。  あなたは本会議でこういうふうに言っていますね。「公共事業関係費の内容については、引き続き、住宅、下水道、環境衛生等の生活関連施設の拡充に力を入れるほか、」云々と、こう言っていますね。だけれども、いま言ったように、まず私が聞きたいのは、この二百四十兆という公共投資を動かさないでしょう。この数字を動かさないでやっていること。道路何年計画とか港湾何年計画とかという自民党の諸計画が十三ありますね。これを合計したものでしょう、この二百四十兆というのは。だから、これを動かさないであなたはやっていこうというんじゃないですか。  それから、ここではあなたは道路のことを意識的に抜かしておりますね。道路でなくて生活関連の方に重点を置くように言っているけれども、依然として道路が一番大きいじゃないですか。そうでしょう、これを見れば。意識的に道路のことを外しているのに、あなたは道路予算だ、道路予算だと言われるのがいやだから、生活関連の方に重点を置く、こういうような形で意識的にやっているのですよ。  これを見てごらんなさい、あなた。道路がやはり一番多いじゃないですか。道路が一九・二でしょう、五十四年度から六十年度までの累積は。そうして環境衛生が一四・〇でしょう。こういうふうな形になってきておるんじゃないですか、あなた。いかにも環境衛生関係、生活水準関係に重点を置いているようなことを言っておきながら、実際の数字は違うでしょう。こういうふうな一つのトリックをやっているのですよ、あなたの方では。こういうことをやっちゃいかぬですよ。  まず私の聞きたいのは、その二百四十兆ということの内訳は、自民党の中にある十三の長期の何とか計画、何とか計画というもの、この計画の寄せ集めではないかということが第一。  それから、あなはた何かいま自分の手元に三つの長期計画が来ていると「エコノミスト」で言っていますね、この具体的内容がどうかということ。  それから、これを見るというと、やはり依然として道路が中心ではないかということですね。そうでしょう。ここら辺がいまどういうふうになっているかということ。  もう一つ、将来、昭和何年か知らぬけれども、この公共事業費を削るか増税をしなきゃならないかという分かれ目に来るでしょう。分かれ目にいつごろ来るかということ、それから、来たときどうするかということですよ。ここが一番大事なところです。  これは主計局長がよく知っている、あなたが書いているから。しかし、そういう点について、私は大蔵大臣、あなたにお聞きをしたいのです。  公共事業費を、不要なものを削らなければ財政の再建はできないですよ。そうすると、公共事業費を削ったら自民党の選挙に不利になる、こういうことになるかもわからぬから削れない。それを不動のものとして、二百四十兆を動かないものとしてやっているんじゃないですか。これはそういう予算の決め方でしょう。
  183. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、三つ長期計画を見送りましたのは、海岸と港湾と飛行場の三つでありました。これはあと一年、五カ年計画の残りがありましたので、その時点で検討すればいいだろう、こういう考え方で見送ったわけであります。  それから、二百四十兆というものには、これは私がお答えすべき課題かどうかわかりませんが、長期計画というのはそこまで届いていないわけですね。全部それより手前の方で切れる計画なんです。だから、むしろあの七カ年計画ができてから、二百四十兆がある種の土台になってもろもろの長期計画が組まれたような感じです。途中できておるものについては、それが土台になったことは事実であろうと思うのであります。それと経済成長と掛けて、そうして出た数字がこの二百四十兆であるというふうに私は理解をいたしております。  それから、道路を意識的にあの演説で抜かしたわけじゃございません。本当に、市町村道などというのはまさに生活そのものでございまして、私も建設大臣をさせていただいたことがございますが、陳情の九〇%が道路でございます。それは、いわゆる産業道路と言われる高速道路とかそれに関連する道路とか、これを産業用であり、暮らしとは別の問題だというその範疇に属させること自体問題があると私はかねて思っております。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕  しかしながら、やはりいま暮らしの問題に直結した環境衛生でございますとか下水道とかいう問題は、ことし公共事業を前年度同額に抑えた中でも、住宅、環境衛生、下水道、公園等にはその伸び率の中で配慮をしたというところでございます。そうして、あの経済社会七カ年計画を見ていただきますと、確かに古いあの百兆円の計画があったことがございます。そのときから比べますと、やはり世の中の変化、ニーズの変化に適応したカーブが巧みに描かれておる。たとえば、昔で言えば道路、鉄道、港、こういったものが、下水道が上がってきたり、農業基盤が上がってきたり、公園などというささやかなものが上がってきたり、それなりに私はバランスのとれておる計画であるとは思っております。
  184. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、この田中君の言ったのを見ると、二百四十兆円という公共投資を予定をしている、それをやっていく場合に、租税負担率が五十三年は一九・九だった、それが二六・五まで上げざるを得ないというので、そういう形で財政収支試算をつくって、七カ年計画にそれが出ていると言って二百四十兆というものを動かせない、金科玉条としてやっているわけです。ここにこの予算の問題点があるのじゃないですか。ぼくは公共投資が悪いと言っているのではないのです。だけれども、その重点の置き方をもっと生活関連に置きかえるとかということをしなければいけないのではないか、こういうふうに言っているのです。  それから問題になってくるのは、公債との関係でいまの租税負担率を将来二六・五にしたでしょう。これを上げていって特例公債をゼロにするのか、あるいは租税負担率を二六・五のままで、また特例公債は別に借りかえなどをやってやっていくのか、そういうことが今後の大きな問題になってくるのでしょう。そこについてはどういうふうに考えているのですか。
  185. 竹下登

    竹下国務大臣 新経済社会七カ年計画は年々フォローアップ作業を行うわけであります。したがって、この間企画委員会でございますかで行われたのにつきまして申しますと、成長率の実質、名目あるいは鉱工業生産指数あるいは卸売物価等がフォローアップの結果ある程度変更されておりますが、大筋いまおっしゃいましたような社会保障移転(対国民所得比)とか、あるいは租税負担の二六カ二分の一とかいう問題は、今年度は新経済社会七カ年計画はそのままの姿で続いておるわけであります。したがって、主計局長のいわゆる田中論文でございますかでいろいろ書いてありますのをお読みになった上での、その考え方を踏まえての御質問であろうと思うのでございます。  そこで、国会からいろいろ御注文があったりして、われわれもいろいろ問題を醸すことも承知しつつ財政収支試算というものを出したわけです。しかしそれではいかぬ、財政計画そのものでやはり将来展望を明らかにすべきだ、こういう意見もあって、それに対していま鋭意検討をしておるという段階でございますので、いまのままで二者択一を迫る、社会保障の給付水準を下げるのかあるいは国民負担を求めるのかとか、あるいは国民負担を下げるのか公共事業によるサービスを下げるのかとかという二者択一な物の考え方では、私は政治そのものは成り立たないというふうに基本的には考えておるわけであります。
  186. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 二者択一をしろと言っているのではない。二者択一の時代がいずれは来るだろう、こういうことを言っているのです。それが六十年ころに来るだろう、こういうことを言っているわけです。そのときの話です。  そこで、問題をちょっと変えますが、経済企画庁長官に聞くのですけれども、ことしの物価で下がるものは何ですか。
  187. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 大体において皆上がるということで大変御心配をかけておりますが、どこからどこまでで下がるかということになりますと、けさほど農林水産大臣に大変御心配をかけまして野菜の早出しというふうなことをお願いいたしました。これで恐らく今日の野菜の値段はある程度下がるものと期待をいたしております。
  188. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 野菜はいま異常な状態にあるのだから下がるのはあたりまえな話なので、いまのまま続いたら大変な騒ぎです。そのほかのもので下がるものはあるのですかと聞いているのです。答えはないのでしょう。では、上がるもの、上がりそうなものも含めて何と何ですか、法律上のあれもあるし、それから認可のものも、政府の関連するものもしないものもあるけれども。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  189. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いま一番上がっておりますのが御案内のように外国から来る原油、これが大変な上がり方で、そのほか国際情勢を反映いたしましていろいろの原材料価格、これについても大変上がっております。国内ではいろいろと企業努力その他をやっていただきまして、個別には上がり方の非常にモダレートなものもあり、中にはある程度合理化によって下げられておるものもあり得ると考えております。  詳しくは政府委員から申し上げます。
  190. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 もうさっき日銀総裁のお話を聞いておられたでしょう。日銀総裁は、五十四年度末に七%におさまることを期待していると言っているのです。ということは、七%は無理だ、五十四年度末に七%はすでに無理だということを言っているのです。  それではあなたの方では、原油がいま三十までいっていないかもわからないけれども、一体幾らに上がるという前提のもとに考えておるのかということ。それから六・四ですか、これでいくという見通しをつけているところはどこもほとんどないですね。国民政治研究会か、これは六・三でしたか、あそこだけで、あとはみんな七%以上ですね。いまの日銀総裁の話を聞いてみても、物価は今後相当な上がり方をせざるを得ない。六・四ではとてもおさまらないということは当然過ぎるくらい当然に考えられるのではないでしょうか。
  191. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほど稲葉委員前川総裁との問答を私もつぶさに拝聴いたしておりました。七%というのは瞬間風速とわれわれは言っておるわけで、三月末に前年同月と比較するとどうか。そこで七%、私どもはそういうことを織り込んで、年度平均でいきますと四・七%におさめる。五十四年度の年度平均では四・七%、当初の目標は四・九でございます。それを四・七で必ずおさめる、こういうことを強く申し上げておるわけでございます。来年度の六・四%につきましても、総理以下関係閣僚が申し上げましたように、大変むずかしい状況でございますけれども、あらゆる努力を払ってとにかくこの目標を達成するよう万全を期していこう、こういうことでただいま進んでおるわけでございます。
  192. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 抽象論としてはわかるのですが、今後の行き方を見なければわかりませんが。  そこでドイツの場合と比べると、ドイツは国債依存率が二五%になったときに再建案をつくって、きわめてドラスチックな方法をとったわけですね。それで経済を再建しました。日本ではその場合にそういうようなやり方をとらなかったわけです。大蔵大臣財政演説の中では、「過去数カ年にわたり政府の行ってきた積極的財政の結果、わが国財政は、特例公債を含む大量の公債に依存せざるを得ない異常な状況が続いております。」こう言っているのです。そうすると、「過去数カ年にわたり政府が行ってきた積極的財政の結果、」これは決して放漫財政だと言っているのではなくて、この「積極的財政」というのは具体的にどういうことを指すのですか。その積極的な財政をやっている中で、今日のいわゆる特例公債を含む大量な公債に依存せざるを得ない状態という見通しがついたのですか、つかなかったのですか、どうなんですか。
  193. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、積極的な財政という問題でありますが、確かに、戦後の経済、それに対応した財政を考えてみますと、一九六〇年代というものは所得倍増計画から……(稲葉(誠)委員「そんな昔のことじゃなくて」と呼ぶ)非常に短く話しますから。三ドル数十セントの原油が一ドル七十セントまで十年間で下がった。その中に猛烈な高度経済成長をした。そして七一年に、それこそいわゆるドルの兌換停止が発表されてから国際経済社会の中で日本の経済がもまれて、そして原油は今度どんどん上がってきた。そのときにその不況をどうして脱却するかということがいわゆる積極財政公共事業投資を中心とする積極財政であった。そのときに国民の負担を求めないで、福祉の水準もそのまま保ちながら、すなわち借金財政でやってきた、その限界に達したというのが今日の状態ではないかというふうに理解をいたしておるところであります。それが積極財政ということではなかろうかと思うのであります。したがって、積極財政を行っておる、その積極財政だけではありません。それに民間の大変な減量努力とかというものが加わって民需は堅調に推移してきておる、こういう状態になったわけでございますが、そうなると限界に達するから、ここでせめて昭和五十九年までにはいわゆる特例公債からだけは脱却しようというところに財政再建の第一の目標年次を定めた、こういうことでございます。
  194. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私の聞いているのはそういうことじゃなくて、積極的財政をとった結果がよかったのか悪かったのか、どういうふうに考えているのかということなのですが、それはそのときの情勢でとったというのでしょう。田中君のあれを読むと、四十年以降の問題らしいけれども、あのときに減税をやったということ、それから負担を切り捨てなかったということ、このことが今日のとがを呼んでいるのだと主計局長が言っているわけですね。そこら辺のところが一つの問題点ではあると思うのです。  そこで、こういうふうに今後物価が六・何%とか上がるということになってきて、これを平気に考えているけれども、ドイツなどの場合には四%、五%物価が上がったらもう大変な騒ぎじゃないですか、日本人はなれっこになっちゃっているから。それでも二年間物価調整減税をやってないわけでしょう。だから、毎年こういうふうにどんどん物価が上がって下がることがないでしょう。上がってきた形になれば、近いうちに物価調整減税をやらざるを得ないでしょう。それを大蔵大臣、どういうふうに考えますか。それでなければどんどん収入が減っていくわけですから、国民は納得しませんよ。
  195. 竹下登

    竹下国務大臣 これは確かに消費者物価をOECDの調べで見ましても、五十四年までは日本がまだ一番安定しておる。その次がドイツである。だが、五十五年はドイツの方が少し安定するじゃないかという見通しを立てておる、それは事実であります。しかし、今日の時点において財政難の問題もあります。と同時に、わが国の所得税というのは課税最低限は世界に比べて一番高く、そして有業人口からする率は一番低いわけでございますので、この上なお五十五年度物価調整減税等をやるという考え方は適当でない、こういうふうに考えております。
  196. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 五十五年度と限定しないで、今後物価が引き続いて上がってくればそのときには物価調整減税というものを考えざるを得ない、こういう答えはできないのですか。
  197. 竹下登

    竹下国務大臣 財政を預かる責任者としましては、そういう状態を必要としないような適時適切なる経済運営に精いっぱい力をいたすということが、やはりまじめなお答えではないかというふうに考えております。
  198. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それでは国民の怒りは爆発しますよ。物価はどんどん上がりますよ。調整減税をやらないでいたらどんどん収入が減るじゃないですか。  別のことをお聞きします。それは賃金と生産性の関係ですが、これは特に五十二年、五十三年、五十四年にかけて、暦年の場合と通年の場合とありますね。それを分けて、この点について御説明を願いたいと思います。
  199. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生御指摘の具体的な数値を申し上げますと、労働生産性の伸びにつきましては、年度ベースで五十一年度一二・一%、五十二年度四・〇%、五十三年度九・一%、五十四年度上半期で一三・〇%。年ベースでまいりますと、五十一年一二・三%、五十二年五・一%、五十三年八・〇%、五十四年一月から九月が一二・一%となっております。  賃金の伸びにつきましては、年度ベースでまいりますと、五十一年度が一一・六%、五十二年度が八・一%、五十三年度五・五%、五十四年度上半期が七・八%。年ベースで賃金の伸びを申し上げますと、五十一年が一二・三%、五十二年が八・五%、五十三年が五・九%、五十四年の一月から九月が七・二%となっております。
  200. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこでわかることは、五十二年度は別で、五十二年から賃金が数字の上で生産性の伸び以下に抑えられているということがはっきりわかってくる、こういうふうに私は思うわけですね。これはこれとして、貴重な資料として私はいただいておいて、こちらの方でまた活用させていただきたいと思うのです。実際はもっと開いているように言うんだけれどもね。五十四年度は賃上げが五・五で生産性が一二・七%だというのです。そういうふうに言う人もいるし、いろいろ数字は出てきますけれども、いずれにしても五十三、五十四は賃金の伸びよりも生産性の伸びの方が多いという数字は出てくる、こういうことですね。  そこで最後に、時間がなくなりましたので厚生省にまとめて質問しておきますが、一つは難病の公費負担の医療対象疾患、これは現在政府案は二十一疾患になっていますが、これを六十二疾患に拡大するということについての考え方。それから救急医療等の緊急性にかんがみて、特に救急医療の命の関係、これは救急センターを新たに三十二カ所設置をしろ。それから老人ホーム入所者の費用負担の値上げ等を抑制すること。保育所、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム等社会福祉施設を充実することというのが、私どもと公明党との間の共同修正の要求になってくるわけですが、ほかの党もそうだろうと思いますが、いまの四つの点について厚生省の考え方を前向きにしていただきたい、こういうふうに思います。
  201. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 まず第一点の難病の公費負担医療対象疾患でございますが、現在の二十一疾患を六十二疾患まで拡大してはどうかという御指摘でございます。現在こうした難病の原因が明らかでないということ、また治療に対する方法も必ずしも確立していない、こういう現状でございますが、その中で特にむずかしい、重い状態に陥る危険性の高い疾患に対しましては、専門家の意見を十分聞いて、二十一疾患というものを指定しておるわけでございます。その他の疾患につきましてはいろいろ今後検討しなければなりませんが、いまのところ特定疾患治療研究対象にはいたしていない、しかし難病対策は大変大事なことでございますので、十分研究して何とかこれを広げていくような方向に努力をしてまいりたいと考えております。  第二点の救急医療のセンターの拡充を図り、さらにまたそうしたセンターをもっとふやしていく必要があるではないかという御指摘でございます。御承知のとおり救急医療体制につきましては、昭和五十二年度から体系的な整備を進めてまいったわけでございます。したがいまして、救急センターにつきましては各都道府県に一カ所、さらに人口などの多い都道府県におきましては複数設置をいたしまして、人口百五十万を基準にしてさらに一カ所ということでございます。したがいまして、全国では七十八カ所を昭和五十六年度までに設置することといたしておるわけでございます。ことしまでに整備見込みを含めますと四十七カ所の設置済みに相なるわけでございます。今後、この整備計画を推し進めてまいりまして、五十五年度には十五カ所設置いたしましてこの体制を固めてまいりたいと思いますが、しかし今後ともにこの救急医療体制の実態調査をいたしまして、その結果に基づいて、さらにこれを拡大するように検討してまいりたいと考えております。  第三点の老人ホーム入所者の費用負担の値上げの抑制の問題でございますが、今度費用負担につきまして改定をいたしたのでありますが、これは社会保険料とかその他医療費などの必要経費を控除いたしました残りの収入、いわば自由に使えるそういう収入の中で一部を負担していただくということに相なったわけでございます。これはもうずっと前から、いろいろ審議会などの意見を私どもは聞いてまいったわけでございまして、したがいまして老人ホーム施設によって賄われない身の回りの品物であるとか、あるいは教養、娯楽費などに支出する費用を考慮しながら、その収入が年収二十五万円以下の入所者からは負担を求めないということになっておるわけでございまして、入所者の費用負担額というものは入所者の負担能力に応じて適正と考える額を設定いたしておるわけでございます。これは年金などの収入を生活費に充てておる在宅老人との社会的な公正を図る見地からも、この際やむを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  第四点の保育所とか特別養護老人ホームあるいは養護老人などの社会福祉施設の充実のために、もっとこの施設整備費を充実すべきではないかということでございます。施設の方におきましては、六百五十億円でさらに設備費として十七億円、合計六百六十七億円、五十五年度予算を用意いたしておるわけでございます。社会福祉施設の整備の充実は、これは重点的に進めてまいらなければならないと考えておるわけでございまして、今日のこの予算におきましてまず対応できるものだ、かように考えておる次第でございます。
  202. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 時間が来ましたので質問を終わりますが、厚生大臣、これは総理ももちろん聞いていただきたいのですが、厚生省というのはなかなか大変な役所だと思うのですよね。こういういま言ったようなことを中心に一生懸命やらなければならないし、そしてまた最初ぼくが言ったように、医師会と対立しながら、何かやれば医師会から文句を言われる。だけれども、あの横丁の子犬だって集まれば力は強くなって、世論に押されればブルドッグにだって対抗できるんだから、ブルドッグなんかやっつけられるのだから、そのくらいの力でやっていかなければならないので、医師会の悪いところは悪いところとしてちゃんと直して、しっかりとした姿勢を持って今後進めていってもらいたいし、最初にお話しした医療の指導の経費、本年度はそういうことならばそういうことでやって、しようがないから、来年度については各個人個人についてしっかりとした指導をして明細を出させて、事業主も含めてそして適正な医療によって不正なことが行われないように十分してもらいたいということを申し上げまして、時間が参りましたので私の質問を終わります。(拍手)
  203. 田村元

    田村委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  204. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は、予定いたしておりました質問の前に、若干日米関係のことについてお尋ねをさせていただきたいと思います。  一つはアフガンをめぐる問題、オリンピックをめぐる問題、そして自動車をめぐる問題、大変注目をされている日米関係であると思います。また、三月十九日に外務大臣も訪米をされるというふうに報道で聞いているわけでありますが、その報道について、実際その御予定決まりましたのでしょうか、まずお聞きをしたいと思います。
  205. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 三月の訪米につきましては、内内先方を打診しておりますが、実は国会の会期中でございますのでいま国会の方に御相談申し上げておりますので、まだ最終的に決まっておりません。
  206. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 いずれにせよ、日程がまだ決まらないけれども、行くということについてはその御意思でいらっしゃることのようであります。  そこで、まず第一点お尋ねをしたいわけでありますけれども、ソビエトのアフガニスタン侵攻に関連をいたしまして、たとえばアメリカからはヨーロッパ諸国に対して、また日本に対して、経済制裁を含めたかなり多くの協力要請がきているわけであります。すなわち、中東における米国及びヨーロッパ諸国、これは日本も含まれると思いますが、その利益を守る立場に立っての要請だということは紛れもない事実だと思います。  しかしながら、一方、先般の米国の国防報告においても触れられておりますように、ソビエトの脅威の一つとして日本の北方領土の問題、また北方領土へのソビエトの基地建設の問題等が挙げられているわけであります。このソビエトの行為は明らかに日本国の主権を直接に脅かす行為であることは紛れもない事実だと思うわけであります。アフガニスタンの問題も大切でありますけれども、日本自身が直接主権を脅かされているこの問題について、果たして日本はアメリカを初めとする諸外国に対してどのような説明をし、そしてそのことに対してどのような共同行動を求めてきたか、このことが私はきわめて重要でありますし、同時にまた米国からの具体的な協力というものがあってもしかるべきだろうという考え方を持つわけであります。このことについて今後どのように対応していかれますか、まずお開きをしたいと思います。
  207. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 北方領土につきましてソ連の基地が設けられておるということにつきましては、日本政府としてもソ連政府に対して抗議を申し入れてまいっておるわけでございます。  さらに極東におけるソ連の軍事力がこの十年くらいに著しく強化されているということも認識しております。日米間には常時話し合いのチャンネルがございますので、常時相互に連絡を保っておるわけでございまして、まあアメリカ側の情勢認識としてはブラウン長官の報告その他にも記されておるわけでございます。
  208. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 しかし、日本は何か具体的な共同行動を求める、そういう要求をなさいましたか。またそれに対してアメリカがどういう対応措置をとられましたか。私ども、日本の外交、もちろん平和を根底に置かなければなりませんけれども、なすべきことをなし言うべきことを言う、そこに国益を守る基本があると思うわけでありますが、いかがでありますか。
  209. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米間の常時対話を通じて意見の交換をやっておるわけでございますが、アメリカが具体的に本件について申し入れをしているという形ではございませんで、ただ一般的な形で極東の防衛の強化、それから日本の自衛力の強化についての要請を行っておる。それから、防衛の内容については外務省でございませんで、防衛庁の方からお聞き取り願いたいと思うのでございますけれども、日本側からさらにいま御質問にございましたアメリカに対して北方関係の問題で特別に申し入れをしたということは現在の段階ではございません。
  210. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 先般来の本委員会の論議において、潜在的な脅威という言葉で表現をされ、またその言葉がいろいろと取りざたをされました。しかしながら、少なくともわが国の主権を直接に侵されているというこの主張は私どもの共通した認識でありますし、同時にそのことはアメリカ自身も認めているそのことではないかと思うのであります。私は、そのことをはっきりと認識して具体的な行動が起こされなければならぬ、このように思います。  この問題については、まさしく日本の外交の基本でありますが、国政そのものの基本であるという考え方から総理にお聞きしたいわけでありますが、いま中座をされておられます。――私は、もう一度繰り返すようですが、このアフガンの問題だけではなく、日本にとってはより一層具体的な問題として認識すべきこの北方の領土及び基地の問題について、先ほど来の大来外相の答弁、きわめて不満足であります。日本の権益を守るために、私は総理御自身の責任において具体的な共同行動を呼びかけるべきである、このように考えますけれども、改めて総理にお聞きをしたいと思います。
  211. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日ソ間に横たわる未解決の問題は、われわれとしては平和的に解決しなければならぬわけでございまして、ソ連当局との間にしんぼう強い話し合いを通じまして打開の糸口をみつけて、これを解決して平和条約を締結するという基本的な目的を達成しなければならぬというのがわが国の対ソ外交の基本にあるわけでございまして、この基本を踏まえてわれわれは不断にしんぼう強く平和的解決を求めてまいる努力を怠ってはならぬと考えております。
  212. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 アメリカに対して、アフガン問題等でわが国はいろんな協力要請をされる。その協力要請にこたえるためには、わが国自身も多くの犠牲を払わなければならない。そういう関係の中でわれわれは日米関係を保っているわけです。私たちはこの時点において、むしろわが国も要求すべきことは要求をしていくという姿勢が対等な外交なのではないか、この気持ちを強く持つわけであります。ましてや相手は他の国ではありません、ソビエトという大国であります。日本もそれ相当の決意を持って当たらなければなりませんけれども、このように東西の緊張をより一層高めるそのかなめとしての認識を持たれている北方領土や基地の問題について、日米間において十分な意思の疎通が図られ、協力関係が保たれることは、むしろ私は今日時点きわめて必要だと思うのであります。総理の御答弁、私は今日までのたてまえ論としてわからないではありませんけれども、改めて私は、そのような時点に立ってむしろアメリカに対してこの要求を、協力要請をなすべきであるという観点でお伺いします。
  213. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日ソ関係の懸案につきましての所在につきましては、アメリカはよく理解をいたしておりますことは申すまでもございません。また北方領土周辺における軍備の増強等につきまして、事実アメリカもよく承知をいたしておるわけでございます。日米間におきましては、そういった問題につきましての意思の疎通は不断に行われておるわけでございます。ただ、私が申し上げておるのは、この問題はあくまでも平和的な解決を求めなければいかぬということでございまして、その点につきましてもアメリカはよく理解をしておることと思うのでございまして、わが国の外交努力全体を通じまして平和的解決を達成するためにあらゆる手段を組み立てて対応していかなければならぬわけでございまして、対米関係、対米協調はその中で大きな柱であることは御指摘のとおり心得ております。
  214. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 時間も限られておりますから、この問題についてはこれでおきますが、対アフガンの問題、北方領土の問題、私どもは世界の平和を守るという観点からわが国の果すべき役割り、同時にわが国の主権を守る観点からより一層強い姿勢で臨まれんことを要請しておきたいと思います。また改めて後刻同僚議員からお尋ねすることもあろうかと思います。  続きまして自動車の問題であります。これも私はわが国の産業政策、そして経済状態、労働問題、そのようなことを常に認識しながら対応していく必要があるだろうと思います。現在、米国自動車労連のフレーザー会長が来日中であります。まさに旋風のごとくフレーザー旋風が吹きまくっているかのような印象が持たれます。彼は彼の立場としてアメリカの主張を言いに来た。そしてそれに耳を真剣に傾けて聞く姿勢は私も大変いいことであるし、今回彼が来日されたことについては大変よかったことだと思います。そして彼は彼の言いたいだけのことを言った。私はそれでいいと思います。しかし、問題はわが国がこれにどう対応するかということであります。もちろん、それは一つの自動車産業または企業の問題として最近の通産省の対応があるようでありますが、私はむしろこれは日本の産業の問題、経済の問題として大きな観点から取り上げるべきではないかという考え方を持つわけであります。たとえば今般来日されたフレーザー会長は、クライスラー社の重役としての立場もお持ちになるわけであります。そしてまた、今回の問題が米国における邦銀がクライスラー社へのLC供与の打ち切りを行ったことが一つのきっかけになっていることもすでに報道をされているとおりであります。そういう背景の上に立って、アメリカは、たとえばUSスチールの会長が略奪的なダンピングだと言って日本の自動車会社を非難する発言を行う、またきょうはアメリカの国会において自動車の輸入規制の法案が提出をされる、言うならばアメリカの議会、政界、そして産業界、労働組合挙げてこれらの問題をタイアップして日本に対応してこようとしているわけであります。それを受けて立つ日本は、通産省のおっしゃるように一産業、一企業の問題としてこれをそこへ転嫁してしまっておって果たしていいのか。この問題は、本当に日本のこれからの、基幹産業にすでになっている自動車、それだけに日本の経済、労働問題、多くの問題を惹起する軽視できない問題であると考えるわけでありますが、このことについていかがお考えでございましょうか、通産大臣。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  215. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 最近の対米自動車船積み台数の増加あるいは米国内の自動車販売のシェアの急増といったような情勢を踏まえまして、円滑ないままでの日米関係を維持したいという観点から、今後とも関係業界に米国の情勢を逐次十分に伝えまして、そして秩序ある輸出に努めると同時に、自動車に関しましては、投資につきましても適切な対応を図るよう行政指導してまいりたい、こういうふうに考えてございます。
  216. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 いまの通産大臣の御答弁は、私がそういうことだけではだめだと言ったそういうことについてお述べになりました。それではだめだと申し上げたわけであります。広範な体制を整えて、そしてこの対外貿易の問題を考えなければ、これから日本は、今日まですでに幾つかの事案が起こりましたけれども、多くの国々でこのような事態を迎えることになるのではないか。むしろ国際的な一つ経済戦略として、日本がしっかりとしたものを持っておく必要がいまあるのではないか、このように申し上げたのであります。  もう一つ、昨年私も訪米をいたしました。何人かの向こうの議員にも会いました。こういう品物を日本は買ってくれ、日本は黒字ばかりふやしてなかなか買ってくれないじゃないか、何人かの議員にそう言われました。それではあなたの選挙区はどこですか、こう問い直すと、必ずその産物がとれる地域を選挙区に持っている議員でありました。また、ある人はこう言いました。日本の悪口を言っている限りだれからも批判されない。極論かもしれませんけれども、いまの米国の雰囲気はそういう雰囲気なのではないでしょうか。  むしろ、日本はそういう意味では下手だ。たとえば、日本はもっと牛肉を買うべきだ、こう主張されたときに、むしろ飼料を日本に売っている業界やその地域の人たち、またそこの選出の議員に向かって、牛肉を買え買えと言われているけれども、牛肉を日本がどんどん輸入するようになったら日本の畜産業が成り立たなくなりますよ、アメリカからえさを輸入することができなくなりますよ、そう答えたらアメリカはどう対応するか。そんなことも助言をしてくれた人さえいました。  一産業、一企業の要求が国策のようにして伝えられてくる。それをまともに、まじめに聞くことは結構ですけれども、それをアメリカ全体の声のようにして受けとめてあわてふためく、そのことにも問題があると思います。  そういう国際経済のあり方、日本の対応のあり方、そのことについて、もっと総合的な対応が必要であると思いますけれども、国際エコノミストとしての外務大臣に御見解をまずお聞きしたいと思います。
  217. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の立場は、自由貿易体制のもとでできるだけ日本の輸出競争力のある産業を伸ばしていく、こういう形で従来やってまいったわけでございますし、将来も基本的にその方向をとらなければならないと考えております。  同時に、現在の世界各国の情勢を見ますと、経済問題が非常に密接にその国の社会問題、政治問題と結びついているという点も見落とすことができないわけでございます。自動車産業の問題も、自動車工業だけで二十万の失業者が出ておる、日本の車のシェアがことしの一月で二二%になったというような問題も背景にございまして、これは日本の競争力が強い、あるいはアメリカの消費者が日本車を求めているということは事実でございますけれども、同時に社会的な関係あるいは日米外交の全般に及ぼす影響というものを考慮しなければならないわけでございまして、産業政策を純粋な形で貫くということには、現在かなり困難が出てきておるのではないか。そういう意味では、経済と外交と政治関係をある程度全般的に総合的に見た対応策というのが、日本側にも求められてきているのではないかという感じを強くいたしておるわけでございます。
  218. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 ここに、フレーザー会長がことし一月のUAWの年次総会であいさつしたそのあいさつ文を持ってきております。彼がその中で言っている言葉、それは「日本はわれわれとの交渉でわれわれの知恵を上回り、口先でわれわれをごまかし、われわれとの取引でうまく立ち回ったのです。公正貿易というものは一方通行であるはずはありません。」大変厳しい口調で日本人のリップサービスの現状を批判しております。  彼が訪日をした。どういう立場であるかは別にして、総理を初め多くの重要な人たちとお会いになりました。単に理解を示した、それだけでは納得をしないはずです。まして理解をしたという態度そのものが、そういう印象を彼に与え、次にその理解を示した後の具体的な行為がとられなければ、なおその後の彼らの対応は厳しいものになるだろうと思います。単に一企業にいろんな負担やリスクを負わせるということではなくて、いま外務大臣が最後に申された、総合的な対策というものを講じなければならない時代に入った、こうおっしゃられたそのことを早急に立案され、対応されることが必要だと思うのであります。  これは一大臣にお聞きするわけにはまいりません。そういう総合対策についての基本的な姿勢を総理にお伺いしたいと思います。
  219. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日米間、二国間の間柄としては、史上類例の乏しい濃密な関係を持っております。貿易も往復四百億ドル近く行っておるわけでございますから、中野さんの仰せになるように、摩擦はしょっちゅうあるわけでございます。ない方がおかしいのであります。しかし、ある摩擦を、できればこれが重大な政治問題、社会問題にならぬうちに解決するということがわれわれの任務であろうと思いまして、日本としてもそういう手だてを講じて今日までやってきておるわけでございまして、いま外務大臣の言われたような総合的な観点からあらゆる手を陰に陽に打ってきておるわけでございますし、今後もそれは間断なくやってまいらなければならないことであると考えております。  今度の自動車の問題にいたしましても、フレーザー氏の来日というのは一つのモメントでありまして、それなりに彼の来日がこの日米間の相互理解を深める上におきまして、また問題をスムーズに解決する手だてとして有益に働く契機になることを私は望んでおるわけでございますが、それは一つでございまして、彼は彼の立場を持っておるわけでございますが、アメリカといいますと政府の立場もございましょうし、ビジネスの立場もございましょうし、消費者の立場もございましょうし、いろいろ総合的にあるわけでございまして、そういった点はわれわれがくみ取ってこれに対応していかなければならぬわけでございます。  通産省といたしましても、外務省といたしましても、もとよりそういう視点を離れておるわけでは決してないわけでございまして、仰せのような総合的視野から問題の解決に資するような施策を次々に打ち出していかなければいかぬと考えております。この問題につきましても、そういう立場からいろいろ苦心をいたしておるわけでございまして、今後ともいろいろ国会の御注意も拝聴いたしながら、われわれとしては最善を尽くしてまいるというつもりです。
  220. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 この問題は余り深入りいたしましても、具体的な問題や戦略的な問題が含まれておりますから、以上にとどめたいと思いますが、しかし、どうかいま申し上げた姿勢を持って、日本の将来にとって、特に貿易立国としての日本の将来にとって過ちのない筋道をお立ていただくことを特に御要請申し上げておきたいと思います。  もう一つ、次に関西新空港の問題についてお尋ねをしたいと思います。  現在、関西新空港につきましては、その工法について審議会において審議がなされているところでありますし、先般も同僚議員からこの新空港の問題についての質問がなされたところであります。  さて、その場合に、今日までのいろんな報道、これは報道の自由でありますから、どういう印象を持たれるかは自由でありますけれども、しかしながら、たとえば航空局長の答弁等の報道が、いかにも埋め立て工法と浮体工法とを比較した場合に、埋め立ての方が安上がりであるかのような印象を与える、そういう報道がなされてきたことも事実であります。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 私は、総合的に判断をし、空港をつくるのかつくらないのか、その場合には、いかに効率的でかつ環境破壊をしない空港をつくるか、そのことを国民的な課題として真剣に考える必要があると思うわけであります。  きょうは時間がありませんので、若干私が疑問に思います点を具体的に二つ、三つお尋ねをするにとどめたいと思います。  すなわち、先般の質問に対する御答弁の中で、埋め立ての場合には千二百ヘクタールの人工島、これで一兆三千億、浮体の場合は一兆四千億、面積はその半分、そういうふうな答弁。しかし、その答弁の際にもかなりの注意をなさって、一概に比較はできませんがという条件つきでの御答弁があったことを否定いたしませんが、しかし、たとえば埋め立ての場合にはその施設のものは一階建て、浮体工法の場合には二階建てに使えるとすれば、上から見た面積は半分で済むはずであります。同時にまた、埋め立ての場合と浮体の場合と比較いたしますときに、土砂の買い付け費用及び土取り費用、ざっと並べてみますが、飛行場表面の舗装費用、治山治水費用、コンベア用地買収費、そしてコンベアの製作費及び建設費、港湾施設及び作業基地の建設費、工事用道路、土地買収及び建設費、船舶及び建設用機具の費用、特に、私自身も現在の大阪空港の近くに住んでおりますけれども、補償費用、漁業補償を初めとして多くの補償費用は決してばかにならない数字であります。むしろ浮体の場合には、全国の造船所等でつくって浮かべて運んでくる、そういうふうなこと等をも考えますと、費用計算は一概にいかないどころか、大変多くの問題をも抱えていると思うわけでありますが、運輸省からお聞きをしたいと思います。
  221. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  いま先生の御質問の中にも言及していただいたわけでございますが、私、先日当委員会でお答えしました場合に、一概に比較することは非常幅危険だということ、ただ数字を例示せよというような御趣旨でもございましたので、幾つかの前提を置いてお答えしたわけでございますが、とりわけいまおっしゃいました中での、浮体の場合と埋め立ての場合にどういう形の空港になるのかというのが非常にむずかしい問題だと思います。  これはいずれにもせよ、今後長く使ってまいります空港として、公害のないことは当然でございますが、使い勝手のよさとかあるいは今後の需要の変動に十分に対応し得るゆとりを持つこととか、そういったようなこともをあわせて考えていかなければならないのではないか。したがいまして、せんだって私申し上げましたときには、埋め立てを千二百ヘクタールとし、浮体を六百ヘクタールとして、仮の数字をお答えしたわけでございますが、この場合にも、まず滑走路を何本にするのかというふうなこととか、いまおっしゃいました貨物、旅客の取り扱いの施設をどういう形でどこにどう配置するのかというふうな点が非常に大きなファクターとなって効いてまいります。とりわけ埋め立ての場合には、いまおっしゃいました埋め立て土砂の採取の費用でございますとか治山治水費用でありますとか、こういうものを含めるのか含めないのか、さらに浮体の場合には、これもいまお話の中にございました構造物の中にどの程度組み込んだ形で客扱い施設なり貨物取り扱い施設なりを入れることができるのか、それを事前の建設費の中に組み込めるのか、後から追加しなければならないのかというふうな点でもまた、はなはだしく変わってくるであろうかと思います。  したがって、現在、工法小委員会でそこら辺のところを詳しく詰めていただいておるわけで、先日も二回にわたり埋め立ての専門家あるいは浮体の専門家、それぞれ数時間を費やして参考意見をいろいろとお聞きしたような状態でございますので、この時点で御質問に明快に、これに入っておるとかいないとか、幾らであるとかいうことをお答え申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ包括的に一つだけお答え申し上げますと、埋め立ての場合におきましてもあるいは浮体の場合におきましても、飛行場表面の舗装でございますとか滑走路の舗装費でございますとか、それから、たとえば漁業補償をどういうふうに見るかというのは、ある程度の数字は念頭に入れてございますけれども、漁業補償の範囲というのは、現実にどんな形のものができるかによってもはなはだしく変わってまいりますので、そういうふうな点をしさいに詰めるまでにはまだ至っていない、そういう数字を現実の数字らしい形で組み込んだ形にはなっていないというふうに御理解いただきたいと思います。
  222. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 なおもう一つ、環境上の問題なんですが、でき上がってからの環境の問題はそう大して変わらないかもしれません。しかし、むしろ建設途上における環境変化というのは大変な違いがあると思うわけであります。土取りの問題は先ほど申し上げました。それから、たとえば土砂の海中投棄による海水の汚濁、それからヘドロ地盤の改良等によるヘドロの浮遊や薬品公害、または巨大島建設による海流や魚その他の生態系の変化、多くの問題等が起こると思うわけであります。言うならば、でき上がってからの環境アセスメントの問題ではなくて、どちらの工法にするかのその選択の過程においても、環境破壊の問題はやはり事前にチェックされ、論議されなければならないと思うわけであります。  環境庁及び運輸省は、どのように判断をしておられますか。簡単にお答えいただきたいと思います。
  223. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  この空港は、もともと公害のない空港ということを標榜して計画をスタートさせておるわけでございますので、でき上がってからのことはもちろんのことながら、工事の過程においていまおっしゃいましたような諸般の問題を環境破壊の形で起こすということであれば、これは問題であろうかと思います。したがって、その点について、私どもとしてはわれわれなりの勉強をいまいろいろとやってきておるわけでございます。  特に埋め立ての場合に、いま御指摘のありましたような海底地盤の改良に対してどの程度海水の濁りが起こるかとか、あるいは構築物をつくってまいるわけでございますので、その間においてどのような影響が出るかとかいうことにつきましては、それぞれのレベルに分けまして私どもなりの勉強をいましてきておるわけでございます。  一方、浮体の場合にも、やはり暗黒水面の問題がどのようになろうかとか、あるいはそれが水産物に及ぼす影響がどういうことになろうかとか、いろいろの問題がまたおのずからあろうかと思います。  いずれにしましても、大体今年度いっぱいぐらいを目途に、完成後の状況については何とか答えを出したい。途中の工事中のプロセスの問題につきましては、それぞれの工法の検討の過程の中でそういう点に振り返りながら十分に詰めていきたい、このように考えておりますので、現在のところ、環境を大事にすべきであるという点については先生御指摘のとおりでございますが、具体的にいずれがいずれぞやというところまでの詰めを申し上げる段階までは詰め切れていない。そこら辺のところもまたあわせて審議会において御審議願っておるというふうに御理解いただければと思います。
  224. 金子太郎

    金子政府委員 埋め立て工法、浮体工法のいずれが環境にどのような影響を及ぼすかという点につきましては、環境庁といたしましてまだ直接相談を受けておりません。いずれ御相談をいただく段階はあろうかと思いますが、現在のところはまだ受けていないという状況でございます。
  225. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 その工法の結論を出す時期、それが聞くところによりますと三月だというふうなことを聞いたりもいたします。果たしてそのような状態結論が即座に出せるものでしょうか。結論を出すまでに環境庁等との調整も図るのでしょうか。また、四十九年の八人委員会の答申、これは埋め立てが適当となっているわけでありますが、そのことは前提に置かないで審査をされるということがはっきりと明確に確約されるのでしょうか。そのことについて最後にお聞きしておきたいと思います。
  226. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  多少順序が逆になろうかと思いますが、まず四十九年の、これは八人委員会というものではございませんで運輸審議会の答申でございますが、ここにおきましては、四つの工法について比較検討した結果として、その時点において埋め立て工法が妥当ではないかと、こういうことでございました。したがいまして、埋め立てについて私どもとしてはそれ以後かなりの勉強をしたわけでございますが、五十二年ごろから浮体工法についても新しい技術が開発されてまいったということを踏まえて、五十三年、五十四年の二年間に約一億の金を投入し、私どもとしても自前の研究をしたわけでございますし、また、別途業界においても相当の研究がなされておるわけでございます。したがって、軽々にこの両工法についての結論を出すべきでないという観点から、改めて審議会に部会をつくって御審議を願うと同時に、とりわけ浮体、埋め立ての両工法については小委員会まで設けて、すでに現在までのところ四回の小委員会を繰り返してきたわけでございますが、当初のねらいとしては年度内には何とかお答えをいただきたい、こう審議会の方にお願いを申したことは事実でございますけれども、現在の審議の状況から、私の口をもって必ずそのように結論がいただけるかどうかということをいま申し上げられない、非常に慎重な御審議をいただいている段階でございます。  結論を得ました時点におきましては、当然のことながらこれは地元に対していろいろと説明をしていかなければなりません。その段階では、仮にそれが運輸省の案であろうとも、関係の省庁との間に十分の打ち合わせをしていかなければなりませんので、時期として私どもとしてはなるべく早いことを願ってはおりますけれども、三月中に答えを出して云々というほど確定したものではなく、十分の議論を尽くした上で公平妥当な判断を求め、関係省庁とも十分な詰めをした上で地元にお話を持ち込むという段取りを踏むようにしてまいりたい、このように考えております。
  227. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 これまた時間がありませんから終わりますが、地元住民にとって、建設途上及び建設後の環境問題、いずれにせよきわめて重大な問題であります。環境の問題等あわせて慎重な検討がなされることを特に強く要請をしておきたいと思います。  それでは、本論といいますか、教育の問題をお尋ねしたいと思います。  総理は、さきの施政演説の中で、文化の時代に対応した二十一世紀へ向けての国づくりということで、田園都市国家の構想、それから家庭基盤の充実、日本型福祉社会の建設、大変高い格調をもってお述べになられたと思うわけであります。社会の原点が家庭であること、子供は未来への使者であること、一つ一つの言葉を大変興味深く聞かせていただきました。私もその表現の内容について、総論としては大変評価をするものであります。しかし、具体的な問題については、決して総理のお考えどおりに現象がなっていないことだけは事実だと思います。  総理はヘッドホン族というのを御存じでしょうか、最近はやっておりますが。
  228. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 よく存じません。
  229. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は、決して青少年が新しくつくる文化を軽視しようとも思いませんし、それが新しい文化を構築する大きな要因になるという意味で、むしろ私は注目したい気持ちでありますが、しかし、電車の中で、街角で、ディスコサウンド、あの激しい音の音楽をヘッドホンをはめて聞いている、その青年たちの姿を見るときに、果たしてそれでいいのかなと、私自身あの音楽をきらいではありませんからそのまま批判はいたしませんけれども、しかし、そういうことが流行をする風潮は果たしてどうなのかな。総理は家庭基盤の柱として住宅の問題を取り上げられました。社会の原点は家庭だ、そして住宅の問題は大変大切だとお取り上げになりました。私はそのことは、一つの的を得ていると思います。住宅の問題も一つあるかもしれません。しかし、そういう現象は本当は住宅問題だけではないのではないのか。むしろ、子供たちがながら族といって深夜ラジオを聞きながら受験勉強をする風潮だとか、そしてその激しい受験戦争の中でますます友達を失い、孤立化もしていく。家族の理解が必ずしも得られない、そこからまた孤立化をしていく。失敗をし転んだときに、それが過激な行動になって自殺になったりいろんな問題を惹起してくる。そういう子供たちの孤立化が一つの原因ではないのか、こういうふうに思うわけであります。  たとえば、これは昨日の夕刊そのまま持ってまいりましたけれども、載っておるのは、十代の暴走、中学生が卒業リンチや学校放火、ポルノ所持をしかられて放火をした。そしてここに載っているのは、まだ十三歳までは殺人をやっても罪に問われないといって母親を刺したその事件。結局いま新聞のどこを見ても、その半分ぐらいは青少年のそういう数々の非行や殺人やそして売春やリンチや放火、また一方、子供が犠牲になる子殺し、誘拐、かぎっ子、一家心中、いろんな言葉が出てきているわけであります。そしてそれぞれの事件を起こす内容を見ますと低年齢化、大学生がやっておったようなことを高校生がやり、高校生がやっておったようなことを中学生、小学生がやる。小学生の自殺なんというのは本当に見ていられない、本当に心が凍る、そんな気持ちがするわけであります。そういう現象がますます強くなっているこのときに、果たして本当に総理が演説だけではなくて具体的な対応をどうされるのかということは、大変重大な問題だと思うのであります。最近のそういう子供たちを取り巻く現象を見て総理がどのようにお感じになり、具体的にはどういうことを指示されようとしているのかをまずお聞かせいただきたい。
  230. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういう病理現象は、端的にこれに対応する簡単な方便があるわけではないと思いまして、あらゆる手だてを講じていかなければならぬものだと思うのでございまして、家庭もその一つであろうと思うのでございまして、われわれ乾いた世の中で一番打算とか嫉妬とかいうようなもののない世界、単純に成員の幸せをこいねがっている世界というのは家庭の以外にないわけでございますので、いわばこの聖域というものを大事にしていくということは大変大事なことではなかろうか。そういうことになりますと、いま仰せになりましたような病理現象を排除していく場合におきましても、一つの有力な手だてになるのではなかろうかと思うのでございまして、学校は学校として、職場は職場といたしまして、それぞれモラルがなければならぬわけでございましょう。そういった点も気をつけなければならぬこともとよりでございまして、政治は政治の世界で、秩序正しい責任政治がちゃんと行われ、清潔な政治が行われるというようなこともまた一つの大きな課題ではないかと思うのでございまして、あらゆる手だてを真剣に講じていかなければならぬのではないかと思います。
  231. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 総理のお答えはどうしても総論的な、基本論的なお答えになるわけでありましして、むしろこれからそういう基本姿勢を持って、しかし本当は早急に具体的に対応しなければ、子供たちの犠牲というのは大変多いわけでありますから間に合わない、私はそのことを痛感をしながら、幾つかの具体的な問題をお聞きしたいと思うわけであります。  昨年十月二日に出されました、これは内容を総務長官にお聞きしょうと思いましたけれども、もう時間がありませんからそのままこちらで申し上げますが、青少年の自殺問題に関する懇話会、「子供の自殺防止対策について(提言)」、こういう冊子が出されております。結局、結論は決め手はないということのようでありまして、基本的には、家庭ではこうすべきだ、学校ではこうしたらどうか、もっと子供を日ごろ注意深く見守らなければならぬ、こういうことでありまして、ここから果たして何が生まれてくるのか、私にもよくわからないのであります。しかし言えることは、やはり家庭が大事であるということははっきりしていることだと思います。  先般日教組が行いました教研集会、私は日教組もずいぶん変わったなという印象を持ちながら新聞でその報道を拝見いたしました。子供たちの自殺や非行の問題、そういうものをむしろ家庭に押しつけるのではなくて、自分たちの問題としてどうしたらこれを防ぐことができるだろうか、学校の現場で先生方が真剣に取り組んでいる姿が発表されておった。私は、イデオロギー論争よりもはるかにそのことの意味の大きさというものを感じながら、むしろ大いに期待をしたいと思いました。しかし一面、家庭の方の受けざらというものがやはりつくられなければならぬと思います。そういうことも踏まえて、家庭の日というふうなものも何か考えられているようでございますけれども、むしろ私はこういう提案を申し上げたいわけであります。幾つか申し上げます。  家庭の問題としては、たとえば、これは厚生大臣の所管に現在のところはなっているかもしれませんけれども、母子健康手帳というのが交付されると思うのであります。これは、ただその手帳を持っていく、そして時期を見てそれを提示して診察を受けたりするというまだまだきわめて不十分な内容だと思うのでありますが、むしろ私はそれを、各市町村に母子保健センター的なものを設置して、そして健康手帳をそこで交付する、しかしその際に両親の出席、それを求めて、母親になる人だけではなくて父親になる人に対しても、親としての心構え、親になることの責任、乳幼児に関する知識、そして教育のあり方、そういうことをそこでともに論議をする、または知ってもらう、まず親の認識をそこでしっかりと持ってもらう、そのことから始めるべきなのではないだろうか。単に事務的に手帳を交付すればいいというものではない、このように思うわけでありますが、いかがお考えでしょうか。  正直言って、いま核家族の時代の中で、なかなかおじいさん、おばあさんから具体的なことを教えてもらう、または家風だとかしつけだとかそういうものがだんだん伝えられるという時代ではないわけであります。私も昭和二十二年に小学校に入学しましたが、そういうことをどこかで教えてもらった記憶は私自身も余りない。若い父親や母親が戸惑う、その中で子殺しや子捨てが行われている、そういう実態を見るときに、私はもう少し親切に新しい家族の姿に合わせた対応が必要じゃないかと思いますが、まずいかがでしょうか。
  232. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 しつけとか非行化の予防として学校よりも家庭における教育が大事である。特に今日では家風というものがなくなってまいりました。若い親にとって戸惑いすら考えられるわけでありまして、そこで、母子健康手帳交付の際に両親を呼んで、そこで両親に対して教育するようなことはいかがなものだろうかという御提案でございます。児童の心身の健全な育成はまさに家庭がその基盤であるわけでございます。お説のように、母子健康手帳交付の際に両親に教育するのも確かに一つの方法ではないか、これはひとつ検討さしていただきたいと思います。  もちろん厚生省といたしましては、家庭におきまする子供の養育機能の充実を図るために、母親クラブであるとかあるいは母子愛育班などの地域組織活動の促進を行ってきておりますし、また児童に対する悩みやあるいは健康に心配がある場合は福祉事務所でいろいろ相談をいたしております。また保健所におきましても、必要に応じた相談に応じておるわけでございます。したがいまして、いろいろの機会をもって育児の指導等に万全を期しておるつもりでございますが、いま母子健康手帳交付の際に両親を招いてそこでいろいろ両親に教育することも一つの道ではなかろうか、これは十分前向きに検討さしていただきたいと私は思います。
  233. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 それから、これは労働省だと思いますが、育児休業奨励金、ことしも若干ふえているようでございますけれども、しかしその執行率はきわめて低いと言われております。子供たちの権利を守る、親の立場から言えば育児権を保障する、そういう観点から言えば、保育所でもう乳児から預ってしまうという制度を保育所をふやすことによって普及するよりも、たとえば子供が生まれたら、一年間は生活保障的なものがそこではなされるぐらいの思い切った措置が本来はむしろ望ましい。そして、それ以後どうしても保育に欠ける子供たちは保育所という制度もいいでありましょうが、こういう制度については本当はもっと前向きに考えられなければいけないのではないか。育児休暇制度の確立、そういうふうなものがむしろ望まれるのではないだろうか、こういうこと。そしてまた、たとえば先ほどの母子健康手帳交付制度の改めての考え方、そういうふうなものの方が、家庭の日なんというようなものを設けて、それで事務的にまたやっていますよというような参議院選挙対策で考えるよりはむしろよほど効果的で、そしてまた国民の皆さんも喜ばれるのではないか、こう思いますが、労働大臣の立場からお考えをお聞きしたいと思います。
  234. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生御指摘のように、青少年の非行は非常にふえている、その中で、小さいときからやはり母親がそばにいて子供をどのように育てていくかということは非常に大きな問題だと思います。そういう意味では、まさに家庭にあって子供を大事に育てていく母親と子供の立場というものを大事にしていかなければいかぬということにつきましては、厚生大臣も文部大臣も労働大臣も同じ考え方に立って政府としてはできる限りこういった施策を推進していくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。  産前産後等につきましてはずいぶん普及してきておるわけでありますけれども、育児休業につきましてはまだまだ普及していないところもございまして、従来働く婦人という立場でこの制度を大事に考えながら育ててきておるところでございますけれども、先生御指摘のように、新たに小さな子供たちを母親が育てるという観点に立った新しい角度からの取り組みが非常に大事であるというふうに考えますので、こういった仕組みをさらに普及していきますように最大の努力をしていきたい、こう考える次第でございます。
  235. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 どうしても時間の都合で詰めていくことができませんけれども、本当に真剣な取り組みを強く要請しておきたいと思います。  それからもう一つは、子供にとって、家庭、学校とともに忘れてならないのが社会体制の問題であると思います。ちなみに、地域環境の確立という立場からアメリカにおいては、教育を学校から取り戻し地域に返す運動というのが取り組まれています。スウェーデンにおきましてはむしろことしあたりから、地域と学校の統合を図るという意味で、たとえば学校の周辺に学童保育所、幼稚園、保育園、老人ホーム、病院、図書館、文化体育センター、公共食堂、そういうふうなものを設置するいわゆるSIA学校の構想がかなり具体化されようとしているわけであります。まさしく緑を守り、そして日本型の福祉社会または田園都市構想、幾つかの言葉をお並べになられました総理のイメージにむしろこういう考え方は合うのではないのか、こうも思うわけでありますが、一朝一夕にもちろんできようとは思いません。こういう問題をむしろ建設省、国土庁、自治省、そういうふうなところで総合的にお考えになる、そして将来、教育国家、文化国家への実質的な歩みというものを始める、このことが私はきわめて重要ではないかと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  236. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いままでの建設行政にいたしましても国土行政にいたしましても、いわばハードウエアの面にアクセントが置かれ過ぎておったというわけで、いま仰せになりましたような文化面、目に見えない福祉面、そういった面がもっともっと多彩に生かされなければならぬと私も感ずるのでございまして、そういうアプローチは各省においても逐次行われておるわけでございますが、ますますこれを促進してまいる必要を感じております。
  237. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 もう一つ、ボランティア制度についても大変前向きの姿勢をお持ちのようでありますが、たとえば孤立化していく子供たち、しかしそこから何とか社会性を培ってもらいたい、友情を深めて本当に社会性を持った子供たちに育ってもらうためには、その友情の輪を広げるいろいろな制度が必要でしょう。青少年団体の育成だとか、またはソシアルアンクル制度の確立、いまは法務省でBBS活動という、いわゆる非行青少年を対象とした友だち活動というようなものも促進されておるようでありますが、それをもう少し一般化させていく、または場合によっては制度化をしていく、そういうふうなことも必要なのではないだろうか、こういうことを思うわけであります。いわゆる町づくりだけではなくて、そういう社会環境をつくることについての御努力をもあわせて要請をしておきたいと思います。  時間がありませんから、次に移ります。保育所と幼稚園の関係であります。  いま保育所は厚生省、幼稚園は文部省、よく幼保の一元化という言葉が使われますが、これについて前々から何回か指摘をし、両省で幾つか協議もされたのではないだろうかと思うのでありますが、このことについてどうお考えでありましょうか、お聞きしたいわけであります。現在、実は地方自治体の中では、私立も含めましてむしろ幼稚園の施設が過剰ぎみなところがあります。しかし、相変わらず保育所が足りない。むしろ幼稚園でも、その勉強時間が終われば保育所としての役割りを果たすということになれば、これは一つの大きな役割りを果たせるでしょうし、また施設を有効に活用することもできると思います。こういうのはむしろもうそろそろその使い分けをきちんと整理をしながら一本化された方がいいのではないかと思いますけれども、このネックはどこにあるのでしょうか。厚生省にお聞きした方がいいのか、文部省にお聞きした方がいいのか、それぞれ意見が食い違うのかもしれませんが……。
  238. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えいたします。  先ほどから先生のいろいろな家庭教育に対します御提案、非常に興味深く敬意を持って聞かさせていただきました。幼稚園と保育所の問題は大変長い間なかなか統一のとれない問題でございますが、これも御存じのとおり、幼稚園が幼児を対象とする教育施設だという立場をとっておりますし、保育所は保育に欠ける乳幼児を保育するという立場をとっておりますわけでございまして、なかなかこの調節がしにくい状況でございますので、両省で相談をそれぞれいたしまして、学識経験者の方々に、幼保一元がどういうふうなところに問題があるのか、こういう問題に対しての懇談会を発足させていろいろ議論をしていただいているという現状でございます。先ほど御質疑の中にありましたように、具体的には保育所と幼稚園とが近くに位置いたしまして、幼稚園の時間が過ぎました後、保育所的な仕事を連絡をしてやるというような例もぽつぽつ出てきておる、こういう現状でございます。いろいろこれまでの経緯もあると思いますが、両省いまの懇談会の結論等を待ちまして善処をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  239. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 文部省と厚生省とが決してこの問題でなわ張り争いをいたしているわけではないのでございます。その目的、機能を異にいたしておるという点におきまして、必ずしも一元、一本化をすることにおいて保育行政が完全なものにし得るかどうか、そこに問題点があるのではなかろうかと考えております。したがって、保育行政におきましては、乳幼児の保育に対応した保育内容を向上せしめると同時に、特に障害児の保育の問題等がございますから、単に義務教育の就学直前の幼児教育の一元化でいいのではないかという観点だけでは解決できない多くの問題があるわけでございます。  しかしながら、この幼稚園及び保育所を通ずる基本的な問題を協議するために、昭和五十二年から幼稚園及び保育所に関する懇談会が開催されて、鋭意協議が続けられておるわけでございます。先ほど文部大臣がお答えになりましたとおり、この問題につきましても大体煮詰まってきたのではないか、論議もほぼ煮詰まってきたのではないかというふうに考えておりますので、その結論を得次第、これに対応してまいりたいと考えております。
  240. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 五十二年から、ことしはたしか五十五年、その該当する子供たちはどんどん小学校へ入っていく、そういう感じになってしまうのであります。むしろいまのお言葉を聞いておりますと、何となく厚生大臣のお言葉の方が消極的に聞かれるのでありますが、これは実は地方自治体の観点にいきますと、行財政の改革につながってくるのですよ。そういう意味ではむしろ私は、突然で恐縮ですが、行管庁長官あたりの御指導というかそういうものも、もちろんこれは子供の教育の観点から考えなければいけませんけれども、しかし財政をより教育に有効に使う意味から、本当はこの問題というのは真剣に考えられてもいい課題だ、こう思うわけであります。お聞きしたいと思いましたけれども、一言で済みそうにもありませんから終わります。  あと四十人学級の問題、それから教科書の無償化等々お聞きしたかったわけでありますけれども、時間がもう来ておりますから省略をしたいと思いますが、何とかこれが早く進められることを特に要請をいたします。教科書の無償化、その実施にはそれなりの意味があるわけであります。これが財政の立て直しを理由にして削られること、そのことについては私どもは強く反対をしていきたいと思います。  大変時間が参りまして恐縮ですけれども、こういういろいろな情勢の変化の中で、実は母親にとって、父親にとって、労働者にとって、常に一生変わらざる教育の場というものが与えられる、そしてその機会が保障されるということが重要であります。そういう意味で最後にお聞きしたいわけでありますが、ILO百四十号条約、一九七四年につくられていますが、有給教育休暇に関する条約というのがあります。むしろこういうものは、祝日をふやすよりもよほどそれこそ有意義であるわけでありますけれども、最近の科学技術の進歩、情報化社会の到来、高齢化社会、余暇の増大、そしてまた学歴主義を排するためにも、この締結、そしてその内容の実施、これがきわめて重要かと思うのでありますが、最後に労働大臣にお聞きをしたいと思います。
  241. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 生涯にわたって能力を開発していく、そして平均寿命が延びてきておりますので、非常に長い生涯にわたってそのときそのときの適切な教育や訓練を受ける機会をつくっていくことは、これからの社会、わけても高齢化社会の非常に大事な政治課題である、こういうふうに考えております。文部省の方でもいろいろな仕組みを考えて、生涯教育への推進を図っていただいておるところでございますが、労働省といたしましても、特に御指摘の有給で教育訓練を受ける休暇という制度を普及をしていきたい、このように考えまして、五十五年度の予算の中でも約二億の予算を計上いたしまして、そういった仕組みを活用する事業主に奨励金として交付するというような仕組みをとっておるところでございます。今後非常に大事な課題だと思いますので、さらに積極的に展開していくようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。(中野(寛)委員「ILO百四十号条約については」と呼ぶ)  百四十号条約につきましては、先般の御質疑の中でもお答えをしたところでございますが、若干国内法と抵触をする部分がございますので、それらを十分地ならしをしていく必要がございます。しかし、百四十号条約のねらいとする教育訓練休暇といったような方向につきましては実質的に積み上げていくようにいたしたい。なお、批准その他につきましてはさらに時間をかけて検討してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  242. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 終わりますが、最後の一言、時間をかけてというのは、むしろ時間をかけないで早急にやっていただきたい、強く御要請を申し上げて終わります。(拍手)
  243. 田村元

    田村委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次に、理事会協議による質疑を行います。大出俊君。
  244. 大出俊

    ○大出委員 四十分という時間でございますから、長い、細かい質問ができませんけれども、最初に、この間私が五つ質問いたしました浦項製鉄所にかかわる疑惑をめぐる問題についてちょっと承りまして、あとほとんどの時間は週休二日制に関する御質問を申し上げたいと思います。  ところで、伝えられるところによりますと、三菱商事は内閣官房からの連絡によって、私が指摘した幾つかの問題に対して一両日中に回答をするというふうなことが私の耳に入っておりますが、政府を含めまして総理がおっしゃった速やかに調査をなさる、この御返答がいただけますかどうか、まず承りたいのであります。
  245. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 三菱商事を呼びまして調査をしておるそうでございますので、調査いたしました担当局長から御回答申し上げます。
  246. 大出俊

    ○大出委員 長い答弁は要りませんから、簡単にお答えください。
  247. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 お答えいたします。  三菱商事から事情を聞きつつございますが、個個の品目について重量当たり単価で高いものがあったという点でございますが、まず個々の品目についての具体的内容につきましては、古いことでございまして、まだ詳細聞いておりません。一般的な説明を聞いております。  それによりますと、三菱商事からは、本件のいろいろな品目はプラントの機材構成要素の一部でございまして、プラントという商品の性格上、いろいろ設計費、加工費あるいはプラント取りまとめの費用といったような、いわゆるソフトに属しますいろいろな費用というものを特定の品目に割り掛けることもございますので、通常の場合の単体の輸出に比べて価格が高くなる場合があり得るという一般的な説明を受けております。ただし、先生御指摘の個々の品目の詳細については、まだ把握いたしておりません。
  248. 大出俊

    ○大出委員 商法三十六条でございますから、十年間はなければならぬ書類でございますから、個個の品目の中身が出てこなければならぬはずであります。  いま総体的な話としてお答えをいただきましたが、どこかで聞いたようなことがあったと思って、ひょっといま思いついたのですが、ちょうどソウル地下鉄の質問を私がいたしましたときに、同じ三菱さんですが、ちょうどいまと同じような答弁が最初出てまいりました。大変どうもわけのわからぬ御回答でございますが、それじゃ続けて質問するわけにもまいりませんから、早急にというお言葉でございましたので、早急にひとつ個々の問題につきましても、どこがどういうことでどう高いのかということについての御回答をいただけるように、御手配をお願いいたしておきたいと存じます。  そこで、週休二日制の問題でございますが、冒頭にお断りをいたしておきたいのは、大変に実はこの問題は私自身も苦労し続けた問題であります。私は、御存じのとおり内閣委員会にまる十五年おりましたが、この委員会に大蔵大臣でおいでになった現総理大平さんにも御無理を願ってお出かけをいただいて、週休二日制の質問をいたしたこともございます。かくて二回の試行を経て、人事院が勧告を昨年の八月十日にしたわけであります。  しかし、ほとんど何もしていないと言っていい政府対応であります。がまんがならぬところでありまして、私の関係する党の内閣部会の皆さんも、まさに怒り狂わんばかりのことでありまして、都合のいいものは片っ端持っていって人事院を利用して出してくる。たとえば、後から申し上げますが、退職手当法の改正であるとかあるいは定年延長にかかわる法案であるとか、そんなのはみんな勧告と関係がないのにどんどん出してこようとする。しかもひどいのは、私が退職手当法の説明を総理府から聞いた。全く概括的な説明しかございませんでしたが、翌日でございましたか翌々日でございましたか、新聞には全部載ってしまう。これは不届き千万だ。腹に据えかねる。  もう一つは、銀行法十八条の改正に基づきます銀行の週休二日制の問題であります。これも実は言葉は悪いのですけれども、いま私の同僚の山田耻目さんが後ろの方においでになっているようでありますが、わが党の大蔵部会もこれまた腹に据えかねている。こんなふざけた話があるかというわけです。言葉は悪いけれども、大平さんが五十年に大蔵大臣をおやりになっているとき以来、結果としてだまされ続けて今日に至っている。  だから私は、きょうここで総理から、片や人事院の勧告は実施をする、この国会に法案をお出しいただくという御回答をいただけるまで、この席から去る気はありません。  もう一つ、言葉は悪いが、結果的にこれだけだまされ続けた大蔵委員会のやりとり、後から指摘をいたしますが、したがって、この銀行法十八条改正をめぐる問題についても結論が欲しい。片や人事院の権威にかかわる。来年改めてなんというようなことでたなざらしにはできない、勧告でございますということをひとつ前提にして、きょうは御回答いただくまで、九時になろうと十時になろうと十二時になろうと、ここに私は座っています。あした土曜日が休みになれば国会から週休二日制が始まるわけでございまして、ぜひひとつこれはしかと御回答いただきたいと思うのであります。  そこで総理に伺いたいのでありますが、週休二日制に関して人事院勧告を実施なさるおつもりがあるか、銀行法十八条改正、これを具体的に抜き出して法改正としてお出しになる気があるか、いずれもこの国会、この点を承りたいのであります。いかがでございましょう。
  249. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 国家公務員の週休二日制につきましては、大出委員指摘のように、昨年八月十日に人事院から勧告をちょうだいいたしておるわけでございます。昨年、関係閣僚による会議を開きましたが、内閣も改造されましたので、本年一月に二回目の会議を開きまして、勧告を基本的に尊重する方向をもちまして、現在鋭意法案を作成し提出のできるよう努力をいたしておるところでございます。しかし、なお調整すべき数点が残されておりまして、その調整に手間取っておりますが、最善の努力をいたしてまいりたいと存じております。
  250. 竹下登

    竹下国務大臣 銀行法を改正して金融機関の週休二日制を促進すべきではないか、これは昨年六月二十日に金融制度調査会の答申が出ております。一つは、実施は、基本的方向として社会の大勢である。二番目には、実施に当たっては十分な国民的コンセンサスが得られることが重要である。三番目は、預貯金業務を行う他の機関、すなわち郵便局、農協等の週休二日と関連配慮しろというようなことと、もう一つは、何としても、いま御指摘のように国会決議があるわけでございます。  その国会決議は五十四年六月一日でありますが、「金融制度調査会において同法の改正を中心に審議が行われていることにかんがみ、」すなわちまだ審議中だったわけですけれども、それにも先駆けて「その改正の一環として同法第十八条の改正につき適切な措置をとり、金融機関の週休二日制が実施される際は遅滞なく対応できるようにすること。」こういう全会一致の決議があります。そこで、その決議を読んでみますと、やはり銀行法改正の一環として、一体不可分のものとして取り扱うのが適当だというふうに、私は答申も決議もそういうふうに読めるのではないかというように理解をしております。もう百も御承知のように、手形法、小切手法等関連法規の整備、郵便局、農協等々他の機関もあわせて実現するということでございますだけに、いま御指摘の第二番目の銀行法第十八条の改正だけを先行してやれという御趣旨には直ちに沿いかねる、こういうことであります。
  251. 大出俊

    ○大出委員 つまりこの国会には、総務長官の方も大蔵大臣の方も、片や勧告の実施という形の週休二日制にかかわる、これは給与法の十四条の改正になると思いますが、お出しにならぬ、また大蔵大臣の方も銀行法十八条改正はお出しにならぬ、こういうわけでありますから、ここで、それじゃ御相談いただいて、出しますとおっしゃるまで座っていますと言えば済むんですが、聞いている皆さんに御納得いただけにくいので、もう少し質問を続けさしていただきます。  そこで、いま大蔵大臣がそういう言い方をなさいましたが、実はそうじゃない。内閣委員会で私が何回も何回も質問を重ねて、大平さんにお出かけいただいたこともあり、森美秀大蔵政務次官にお出かけいただいたこともあり、局長クラスの方にお出かけいただいたこともありますが、人事院が週休二日制に関する勧告等を行って、これが実施をされる、こういうことが合意をされれば、銀行法十八条をその際は抜き出して改正することにやぶさかでない。明確に議事録に残っております。私の質問です。だから、片一方で実施しないというんなら、竹下さんの言っている、つまり銀行法全体をという物の考え方も成り立つけれども、そこまで用心して質問はしている。なぜかというと、銀行法というのは本来昭和二年の法律です。いまここで改正しようとすれば何と五十三年ぶりで改正です。大蔵当局は改正の意思はないのです、できればやりたくない、勝手なことできないですから。年百年じゅう銀行に天下るでしょう、大蔵官僚というのは、片っ端。自由がきかなくなる。そういう意味ですからやりたくはない。だから、私は初めから夜中になっても座っていると言っている。  そこで、昨年の八月十日に出た勧告であるにもかかわらず、出た直後に一遍閣僚懇談会をやっている。あと一月になって一遍やってそれっきり。しかもまた、小渕君、前のこと知らぬからしようがないけれども、でたらめ言っちゃいけませんよ。何を話し合ったか全部ここにある。やる意思なんかないじゃないですか。大方、早急に結論は出さないでいただきたいというので出さないということでしょう。うそ言っちゃいけませんよ。だれが何と言ったかここに書いてある。行管は反対だ、大蔵省は反対だ、自治省は反対だ、厚生省は反対だ、法務省は反対だ、みんなここに書いてある。見え透いたことをやりなさんなと私は言いたい。だてや酔狂で人事院は二回にわたる試験実験やったんじゃないんだ。その間に試験実験についても苦心惨たんしている、ぼくらは。警察庁が第一回のときに参加してない。後藤田さん御存じでしょう。橋本さんという当時厚生課長おられたでしょう。後で滋賀の県警本部長におなりになった。私どもはそういう方々にまで当時話している。この方は、警察は労働組合がない、だからこういうことは積極的に参加すべきだと私は思う、担当課長として、ということでついに参加していただきましたよ、第一回。そうでしょう。法務省はとうとう逃げちゃった。時の法務大臣が何と言ったかというと、こんなものをやれば国が滅びる。こういう法務大臣じゃ困るんだけれども、お年寄りだからしようがないけれども、私はやかましく言って、官房長の引き継ぎで二回目の試験実験には法務省に入っていただいている。一々苦労しているんです。そうでしょう。そういうことを踏まえて勧告になっている。きのうやきょうじゃない。  そこで、人事院の総裁にここで承っておきたいのですが、試験実験を二回にわたってやってきたこの過程で、定員であるとか予算であるとかというところにぶち当たった例はない。ここに皆さんの報告が出ている。調査結果が出ている。つまり、職務専念義務免除という形で二カ年やってきた。四週五休ですよ。簡単に言えば一カ月に一遍休むということ。一遍土曜日を休みにする。その過程で定員、予算というものと直接ぶつかっていない、小人数の官庁でも。そうでしょう。しかも人事院は幾つもの条件をつけて、そこらまで非常に心配をして勧告を書いている。人事院の総裁に御答弁願います。そうでしょう。
  252. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  週休二日制につきましては、世界の大勢あるいは民間の実情から申しまして、これとの均衡上やはり公務員についても導入すべきであるという基本的な立場に立ちまして、今日までいろいろ苦心をしてまいっておるところでございます。  ただ、これにつきましては、国民のやはり納得を得るということが必要でございますので、そのためには、これをやることによってサービスが低下するということがあってはならない。それと、このことをやることによって定員、予算がそのためにふえるということは避けるべきだ。そういう前提のもとにやれることはやってみようではないかということにしたわけであります。そのためには、やはり工夫、努力をやってみて、実際にどうかということを十分検証しないと、それをやらないで直ちに本格実施ということになりましても無責任でございますので、これは給与勧告と違って各省がそれぞれやっていただかなければならぬ事柄でございますので、そういう観点に立って二回に分けて実は重ねてテストをやったわけであります。  いまお話がございましたように、第一回のテストのときよりも第二回の場合はいろいろ御理解も賜りまして、その参加対象もふえてまいりました。参加をしていただいたところの省庁では、当方でもいろいろ御注意を申し上げましたし、各省でも自分のことでありますからして直剣に御検討いただいた結果、いろいろ創意工夫をこらしていただきまして、おおむね参加したところについてはまず問題がないというわれわれは確信を持ったわけであります。これはただ単に、こちらは机上でもって推測でやっているのではございませんで、各省庁のそれぞれの担当者とそれこそひざ突き合わせていろいろやってまいりまして、これなら何とかやれるだろうという結論を得たわけでございます。二回にわたって慎重にテストをやりましたその結果を踏まえて、昨年の八月に、四週五休という、この程度のことであれば何とかやっていただけるはずだという確信を得ましたので、お願いをするということにいたした次第でございます。
  253. 大出俊

    ○大出委員 いま総裁が、二回にわたる試験実験を苦心しておやりになった経過を含めて、定員、予算にぶつからぬと、そういうふうに考えたんだと、実際にひざ突き合わしてやってきたんだとお答えになっているでしょう。  ここに、人事院で五十四年八月十日、勧告のときにあわせて経過を報告しています。この中身を見ましても、克明に書いてある。第一回の試験実験は昭和五十一年十月から。第二回の試験実験は五十三年の四月から。五十一年の十月から五十二年の九月までやった。それを集計して、すぐ追っかけて五十二年の四月から五十四年の三月まで実験をやった。だから、この二カ年間というのは実は四週五休なんです。要するに、公務員は実験とは言いながら休んでいるのです、一土曜日だけ。それをいまここでやらないと、こう言う。法案も出さない。ほっぽっておいてごらんなさい。二年、この真ん中にちょっとした集計の空白があるけれども、休んできている諸君は――ことしの勧告は八月だ、来年の通常国会、よしんばそこで間に合うにしても、去年の人事院勧告が出て以降、ことしの八月で一年でしょう。来年二月になれば一年半でしょう。旧来二カ年やってきているものさえできないじゃないですか。そういうふざけたやり方はない。  しかも、勧告の中身にわざわざ、一つは「当分の間、職員は、四週間につき各庁の長が職員ごとに指定する一の土曜日には勤務を要しないこととすること。」二番目に「勤務の特殊性により又は官庁の特殊の必要に応ずるため、一」つまり一カ月の中の一の土曜日を休みにできない場合には、「により難い職員については、各庁の長は、別に勤務を要しない時間を指定することができるものとすること。」仕事に支障のないようにしているのですよ。さらに三番目に、いま二つ挙げたこの二つ「による勤務時間に関する措置は、勤務一時間当たりの給与額の算出には影響」を与えないものとする。どういうことかというと、超過勤務の一時間当たり単価を引き上げない。これは給与法の十九条に絡む。私が十五年やってきている法律だ。絡むが、私もこれで文句を言う気はない。十九条からいけば、勤務時間が短くなれば一時間当たりの単価というのは上がるのはあたりまえでしょう。にもかかわらず、上げないということを勧告でわざわざうたっているんだ。つまり、予算に全く影響ないようにといって苦労している。ここまで克明、丁寧に、言えば切りがないが、しかも一カ月の一土曜日。  なお細かく書いてある。変形などの例示。①土曜日に替えて比較的休み易い日時に休む、②業務繁忙期を避け、四週間のわくを超えて、つまり一カ月に一日でなくてもいい、他の時期に休む、③少人数官署においては一定の時期にまとめて休む、④長期航海を要する船舶においては停泊中にまとめて休む、⑤研修教育部門においては夏冬等の時季、これにひっつけて、又はその他の比較的休み易い日時に休む方法等について各省庁で考慮するとともに、⑥窓口部門においては、利用者に対し予約制等を導入して土曜日の業務を他の曜日に分散し、⑦一人制の部署等においては、利用者の理解を得て土曜日の業務を他の曜日に振り替える等の措置を考慮することが必要である。実験の結果を細かく分析をして、例示までしている。  これでもやらないなどということをおっしゃるなら、これは私は総理の責任を承りたいと思っておるのですが、総理、ひとつこの辺で一遍答弁していただけませんか。
  254. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 お言葉を返すようでございますが、先ほど答弁申し上げたのは、行わないと、こう申し上げたのではなくして、御指摘にありましたように、四週五休で試行いたしてまいりました経過にかんがみまして、現在各省庁間との話し合いを進めておるところでございますが、予算の増高あるいは定員、あるいはまたその他少人数官署の問題、交代制勤務のところというような問題について、まだ最後の詰めがなされておりませんために、現在その取りまとめをいたしておるところでございまして、鋭意世論の動向等も十分考えながら精力的に取り組んでまいりたいというのが先ほどの答弁でございます。
  255. 大出俊

    ○大出委員 そういう答弁がいけないんだ、小渕君、総理もそうだが。口の先じゃいろいろなことをあなた方は言い続けている。全部ここに記録がある。そういうことを言いながらみんな逃げてしまう。総理に承りたい、総理答えないから。  これは朝日新聞の昨年六月二日の社説です。「「週休二日」と夏休みの定着へ」という見出しです。この中に「四月下旬に行われた日米欧委員会東京総会で、首相はこう述べている。」大平さんが述べている。「公正で品格ある日本的福祉社会建設につとめる。余暇についてもより充実させることが望ましく、とりあえず週休二日制を一般化したい」、去年の四月ですよ。その後八月に勧告が出ているのに一般化しないじゃないですか、あなた。何を言っておる、一般化したいなんて。東京サミットの基本方針だって大きなことを言っているじゃないですか、あなた。外に向けてはそんなことをやたら言っておいて、日本の国会じゃ何と言っている。  今度の国会の施政方針演説では、「昭和六十年度までに週休二日制の普及なども含めて、」――普及なんだ、「普及なども含めて、西欧諸国並みの労働時間を目指す」、これが今度の予算が始まる前の、本会議のあなたの施政方針演説です。総理の施政方針にちゃんと書いてある。こんないいかげんなことを言っていて、これはやらぬということですよ。そうでしょう。六十年まであなたはやらないんだ。そういういいかげんなことじゃいけませんよ。ウサギ小屋の中の働き過ぎの日本人だなんてやたら言われるものだから、外に向かっては体裁のいいことを言って、そして内の方に向かっては本会議でこういうことを言っている。あなたの腹の中は一体どこにあるのですか。何を考えていらっしゃるの。答えてください。そんなむちゃくちゃなことで審議できやしないじゃないですか、うそばかり言って。
  256. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国会で申し上げることは真実でなければなりません。したがって、私といたしましても責任の持てることを御答弁申し上げておるつもりでございます。したがって、その御答弁自体はお気に召さぬかもしれませんけれども、それは私の責任でやっていることでございますから、そういうものとして御理解をいただきたいと思います。  それで、週休二日制の問題につきましては、これまでの経緯は私も私なりに承知いたしております。人事院にいろいろな調査をお願いいたしておりますことも承知いたしております。それを踏まえて関係閣僚の間でいま詰めを行っておるところでございまして、若干最終調整をしなきゃならぬ問題があるということでございますので、鋭意それを詰めておるところでございますので、外に向かってうまいことを言っておりながら内で怠けておるというようなことはいたさないつもりでおります。
  257. 大出俊

    ○大出委員 いま責任を負わなきゃならぬからと。そうすると、責任を負わなきゃならぬと言うなら、責任を負わなきゃならぬから本会議じゃ六十年度と言った、外で言うときには責任がないから、これはまことにみごとに言い切っているんですよ。新聞社はうそを書いてないですよ。いま申し上げたとおりです。外じゃ責任を負わないで済むからというので、きれいなことを言った。国会の本会議になると責任を負わなければいかぬからというので六十年度と言った。それじゃ何を信用すればいいのですか。  あなたは信用しろと言っているのですよ。例を挙げましょう。これは大蔵委員会の筆頭理事の山田君の質問にあなたは答えている。昭和五十年の四月二十三日、あなたの立場もつらかったかもしらぬ、そのときあなたは赤字国債を発行したのですからね、大蔵委員会は責められる場ですからね、だから週休二日制を責められてこう言っている。いまから考えてみると信用せざるを得ぬなという形の言い方をされている。何と言っているかと言いますと、「私といたしましては、政府を御信頼いただいて見守っていただきたいと思うのでございますけれども、」これは前置きです、「少なくとも一両年の間には結論を出していただくようにいたしたい」、こう言っている。  ところが、今度四年たって、五十年のあなたは大蔵大臣、赤字国債を出したときだ、四年たって五十四年三月六日、去年の三月六日、あなたは今度は総理におなりになった、総理におなりになったあなたに大蔵委員会に来ていただいて山田さんが質問している。こういう言い方はないですな。この点を取り上げて、あなたは一両年中と言ったじゃないですかと言った。そうするとあなたの答弁は、「ちょっと弁解じみて恐縮でございます」、弁解しちゃいけませんよ。「ちょっと弁解じみて恐縮でございますけれども、一両年に実施するという約束はいたしておりません。一両年の間に目安をつけたいと私の希望を付して、本委員会であなたと論戦をいたした」思い出はございます。こんな、むちゃくちゃですよ。山田君が、じゃ議事録をお読みいたしましょうかと言った。いまのこれは一体何です。こんなふざけたこと。ここにちゃんと議事録を持っている。こんないいかげんなことを言われて黙っているわけにはいかない。
  258. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 希望を述べておる。やるということを言った以上これはやらなければいかぬわけでございますので、その点は私も非常に注意深く発言いたしておるつもりでございます。また、よその私の演説でも私は私の希望は述べておるつもりでございますが、政府としてこうやるということは言った覚えはないわけでございます。その点だけはあなたも山田さんも信じていただかなきゃならぬと思いますが、しかしいずれにいたしましても、問題は、これを実行に移す場合に、誠意をもって御期待に沿い得ていないということは間違いないことのようでございます。したがって、政府部内を督励いたしまして、できるだけこれを促進してまいるつもりでございます。
  259. 大出俊

    ○大出委員 これ以上私は言いませんが、あなたは好きにしてください。私はあなたに回答をもらうまでここを動きませんから。  ここに、週休二日制をやっている世界各国の表があります。何と、三十五カ国のうちでブラジルの三十二時間、週休完全実施、二日制。ここから始まりまして、三十五時間の国が幾つもあります。三十七時間もあります。アメリカなんか四十時間。いまアメリカは週休三日制が二三%もある。三日制ですよ。ところが、日本は三十五カ国のうちの一番どんけつ、一番下。四十四時間で、週休二日制未実施国。日本のほか中国とポーランドしかない。こんなことになっているのに、あなたそういういいかげんなことを言うなら、いまの言葉はやらないということじゃないですか。やってください。あなたに私はもう質問しない。やってください。うそばかり言っちゃだめです。一両年と言ったのが何年たっていると思う。
  260. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 一両年の間にそうしたいという願望を述べたわけでございます。やるという約束をいたしておったのなら大変だと思いますけれども、そうではないことはあなたが御指摘されたとおりでございます。  ただ問題は、このようにおくれておることにつきまして、私も責任を感じないわけじゃございません。部内を督励いたしまして、できるだけ早く煮詰めるように努力いたします。
  261. 大出俊

    ○大出委員 明確にひとつ、勧告ですから、やるとお答えください。以上はもう私は質問をしません。
  262. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 努力いたします。
  263. 大出俊

    ○大出委員 努力じゃなく……。勧告だ。そんなわけにいかない。(発言する者あり)
  264. 田村元

    田村委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  265. 田村元

    田村委員長 それでは速記を始めて。  この際、官房長官より発言を求められておりますので、これを許します。伊東内閣官房長官
  266. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  ただいまの週休二日制の問題につきましては、人事院から勧告があった、そのとおりでございます。実は私が官房長官になりましてから、私が座長になりまして、この週休二日制の取り扱いの関係閣僚懇談会を開催したのでございます。そして、その席で各閣僚からいろいろ意見を伺いまして、定員をふやさなければできないという意見もございました。あるいはいまの行政改革をやっている際に公務員が真っ先に二日制というのもどうかなという意見もあったり、いろいろな意見、もちろん賛成意見もございました。一回懇談会を開きまして、また二回目の懇談会を開いてひとつ結論を出そうじゃないかということをやりましたのがいままでの経過でございます。  でございますので、このことにつきましては、世論のいろいろな意見もございましょう。あるいは党の意見もございます。いろいろございますが、私どもとしましては、これは積極的に懇談会を開いてこの問題に結論を出していくという努力をしてまいりたいと思います。
  267. 大出俊

    ○大出委員 どういうことなの。それはやってみなければわからぬということじゃないの。いいですか。これは閣僚の中で反対するのははっきりしている。行管だって、大蔵だって、自治だって、厚生だって、法務、皆反対じゃないですか。そんなのまとまりはしないじゃないですか。結論を出さぬでくれと言って、じゃ継続検討しましょうということで終わりじゃないですか。ふざけちゃいけませんよ。人事院勧告で残っているのはこれだけなんだ。片方は人事院に意見を聞いて、途端に定年制をこの国会に出してくるんでしょう。片方は人事院に官民の退職金比較を調査さして、途端に退職金減額法案を出してくるのでしょう。メーンになっているこの勧告の方はどうしてくれるの。そんないいかげんなことで――八月に出た勧告を一遍しかやっていないというのはどういうわけだ。だめだ。
  268. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答えします。  一回ということでございますが、勧告が出た当日も、八月十二日でございますか、私が官房長官になる前のことでございますが、そのときも会合をし、私が就任してからも実は会合をしたわけでございます。  先生がいまおっしゃったように、いろいろな意見のあることは確かでございます。そういうことで、何とかして結論を出したいということで、また私は積極的に努力をしていくということを申し上げた次第でございます。
  269. 大出俊

    ○大出委員 この国会に法律を出すのか出さないのか。退職手当の減額法案と定年制を出すのでしょうが、人事院を利用して。勧告に載っかっているやつはどうしてやらないのですか。この国会ではっきりやってくれと言っているのだ。やってくれればそれで終わる。勧告を実施してくれればいい。
  270. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 先生がおっしゃったように、予定法案の中には定年法と退職手当法が出ておることは確かでございます。これは閣僚懇談会をやりまして結論が出ましたので出したわけでございます。本件につきましてはまだ結論が出ませんので、その予定法案に載っけなかったわけでございますので、私どもとしましては、また閣僚懇談会を開きまして、きょうの御議論も踏まえて、これからまた結論を出すということに努力をしてまいるつもりでございます。
  271. 川俣健二郎

    ○川俣委員 関連。私ら伺っておるところによれば、私はあえて委員長に取り上げてもらいたいと思ったのは、聞いておりますと、私も社会労働委員会でこの問題をやってまいりました。これは主に民間の方です。民間はかなり先行しております。いろいろとやって、金融の窓口というところでかなりこれはとまっているわけですよ。そこで、銀行法の改正ということになったわけです。そういうものを全部踏まえて、総理大臣はどういう考え方を持つだろうかなと思いまして大出質問をずっと聞いてみると、あるときは、外交辞令かもしれませんけれども、やります、あるときは、本会議では六十年めど、それから山田質問等の、法案を抱えたりすれば一両年でやります、同じ本人のこういう一貫性のない発言に私は不愉快なんだ。これは違った観点で私は不愉快なのかもしれませんけれども、同一人がそれぞれの委員会、それぞれの場においての発言が一貫性がないと言っているのですよ。(「人事院勧告を何と思っている」と呼ぶ者あり)そうですよ。
  272. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 施政方針演説で申し上げた六十年というのは、一般も含めまして週休二日制の普及に当たりまして六十年をめどに努力しますということを申し上げたつもりでございます。  銀行法につきましては、私も大蔵大臣時代から手がけておるわけでございまして、一両年の間にめどをつけたいということを申し上げたのは事実でございます。そのラインに沿いまして、大蔵省におきましても法案につきまして検討が進められて、相当熟した段階にあるように聞いておるわけでございます。  もう一つの問題は公務員の週休二日制の問題でございまして、これにつきましては、きょう問題になっているような経緯で関係閣僚懇談会でいま煮詰めておる段階でございますので、私は大変方方で違ったことを言うほど気のきいた男じゃございませんで、いつでも愚直に答えておるつもりでございます。この問題につきましては、ここまで参りましたので、関係閣僚懇談会を御信頼いただきまして、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  273. 大出俊

    ○大出委員 あなたは前の議事録でも、政府を御信頼いただきたいと言って、一両年でめどをつける、こう言ったじゃないですか。そうでしょう。いままた御信頼いただきたい、こうおっしゃって、何年先になるかわからぬ。あなたが一両年でめどをつけたいと言ったのは昭和五十年ですよ。ちょうどあなたが赤字国債を発行しようというのでさんざんもめていた大蔵委員会。五十年のものが、いま五十五年でしょう。しかも、去年勧告も出ているでしょう、片や人事院関係の方で言えば。だから、これは信頼してくれと言ったって信頼できないですよ。やるのかやらないのか言ってくれればいい。この国会に法案を出しますか、法案できているのだから。
  274. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 銀行法関係のものにつきましては、いま銀行法の改正案につきまして検討を進めておるわけでございますので、それはその系統で努力をさせてまいります。  それから、公務員の方につきましては、いま申し上げましたように、関係閣僚の間でいま懇談を続けておるわけでございまして、鋭意続けてまいりまして、できるだけ早く出せるようにいたしたいと思います。
  275. 大出俊

    ○大出委員 続けているとおっしゃいましたが、一遍しかことしになってやっていないでしょう。最初の昨年の八月の十日というのは、勧告が出たときには顔合わせみんなやるじゃないですか。それだけじゃないですか。そうでしょう。それで、都合のいいところだけは二つ予定法案になっているでしょう。そうすると、いま総理が答えているのは、できるだけ努力してこの国会に出すというのですか。中身は簡単なんだよ。給与法十四条に附則三つつければいいんだよ。それだけだよ。公務員の方ならいとも簡単だ。三項目書けばいいんだよ。
  276. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私からお答えします。  先生一回とおっしゃいますけれども、私になってからもやったので、これは二回でございます。二回やったんです。そのとおりでございます。  それで、いま段々の御議論でございますので、この国会に出せるように最大の努力をいたします。
  277. 大出俊

    ○大出委員 それではひとついろんなデータを――私もこれに取り組んで長い、十五年ですからね。ですから、データで知らない、目を通していないのはありませんけれども、皆さんがそんなに心配しなくても大丈夫です。というのは、いまさらこれは数字を申し上げてもしようがないけれども、ここまで参りますと、できるところはほとんどやってきているわけだから、そうすると、公務員と銀行が踏み切りませんというと、日本の週休二日制というのはここから前進することにならない。あわせてそのことは、あなたがいみじくも本会議でも言っているように、雇用とも大きくこれは絡んでいるのですよ。アメリカはいまエネルギー節約を含め、雇用を考えて、カーター大統領が週休三日制ということで議会に出しているでしょう。あなたは新聞を見ているでしょう。いま出ているのです。そこまで来ている。だから、踏み切るときには踏み切らなければ物事は前に進まない。だから、全力を挙げてひとつ、いま御答弁いただきましたが、この国会にお出しください。よろしゅうございますね。総理、念を押しておきます。
  278. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま官房長官がお答えしたとおりです。
  279. 田村元

    田村委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、去る四日の八木君の保留分の質疑を行います。八木昇君。
  280. 八木昇

    ○八木委員 去る四日、本委員会で私が保留をいたしました質問の要点を改めて簡略に申し上げたいと思います。  ICRP、国際放射線防護委員会の勧告の線に沿って、わが国でも職業人に対する許容線量は年五レム、三カ月三レムということになっておるのでありますが、一日当たりの被曝線量についての規制値というものがあるはずである。各国ともそうであります。この点について、参議院においての論議があったのでありますけれども、その際、資源エネルギー庁の児玉審議官は真実を隠しておる。児玉審議官は、一日百ミリレムを目安としているという答弁に終始をしたのであります。実際にはそれを上回ること十倍という被曝線量が許容されておるということではないかという吉田参議院議員の繰り返しの質問に対しましても、児玉審議官の答弁は、目安として一日百ミリレムという答弁に終始したわけです。  ところがその後、事実が東京電力あるいは中国電力等でも明らかになってきたわけでありまして、その点を明らかにせよという点でございましたが、この際、改めて児玉審議官の再答弁をまず求めたいと思います。明確に真実を述べられたい。その後もう一点発言をいたします。
  281. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 昨年十二月七日の参議院科学技術振興対策特別委員会におきます放射線従事者の被曝線量の規制値につきましての答弁におきまして、一日当たり百ミリレムと申し上げましたのは、目安被曝線量のことでございまして、通常の作業はこの値以下において実施されております。ただし、特殊作業をする場合においては、作業計画の都度、作業内容に応じて被曝線量の上限を想定し作業を進めております。この場合、計画被曝線量は、たとえば一日千ミリレムの被曝線量ということもございます。この点を申し上げなかったことは私の手落ちであり、おわびいたします。  なお、被曝線量につきましては、これを引き下げることが世界の趨勢であり、健康管理上も望ましいことでありますので、事業者に対して強力な指導をいたす所存でございます。
  282. 八木昇

    ○八木委員 一応いまの答弁で承っておきたいと思いますが、この被曝問題はいまや重大な問題になってきておるわけでございまして、政府の発表の数字でも一九七八年一万三千二百一人レムとなっておる。幾何級数的にこの被曝の量がふえていくという情勢でございます。  いま一月十五日から二カ月の予定で福島原発第一の一号炉の圧力容器のひび割れの削り取りと給水スパージャーの交換という作業が行われておるのです。これは重大な問題だと私は思う。報道されておるところによりますと、このひび割れば世界最大のものであるとすら伝えられておる。事実、この給水管に十二センチあるいは六センチというような大きな傷が発見された。しかも、それは戻り水がいわゆる原子炉圧力容器に戻ってきてまた再び圧力容器に入る、その部分にひび割れが大きく起きておる。しかも、それを削り取って動かすというのでしょう。その削り取り作業をいまやっておる。そうして、しかもそのタービンを回して戻ってきた水は圧力容器にそのまま入りますと、ある程度温度を高めておりますけれども、圧力容器内の水の温度と非常に格差がありますから、これは非常に問題であります。そこでスパージャーというので一応受けて、そして温度格差を若干緩和し、さらにまんべんなく圧力容器内にその戻り水が散らされるようにという、スパージャーというのが通常原子炉圧力容器の内側にずっとある。それの取りかえを全面的にやらなければならないというのでしょう。金額から言ってもこれは五十億円からかかるものである。そうして圧力容器の下部に燃料棒がある。そこへ人間が入っていってやらなければならない。しかも、それは二カ月を要する大作業をやるというのです。そしてそのスパージャー取りかえは福島原発第一の一号炉においては二年前にも全面取りかえをやった。たった二年でまた全面取りかえをやる。私は欠陥原子炉だと思います。  これらについては後日質問をいたしたいと思うのですけれども、この被曝の問題等について十分なる政府としての対処を要望したいわけであります。そこで、先ほどの審議官の答弁をこの際大臣からも確認をしていただきたい。
  283. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先ほど児玉審議官からおわびを申し上げましたが、私も今後心してまいる所存でございます。  後段の件に関しましては、十分調査もいたし、善処されるように指導いたしたいと思います。
  284. 田村元

    田村委員長 これにて八木君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。
  285. 田村元

    田村委員長 これより一般質疑に入ります。  答弁を求められている大臣以外の大臣は御退席いただいて結構です。  質疑の申し出がありますので、これを許します。村田敬次郎君。
  286. 村田敬次郎

    ○村田委員 お許しをいただきまして、現在問題になっております経済財政その他数点について御質問をさせていただきたいと思います。  六〇年代は黄金の時代と言われておりました。そして七〇年代は崩壊と幻滅の七〇年代ということを言っております。また、新経済社会七カ年計画では激動の七〇年代ということを言っておりますが、八〇年代について不透明の八〇年代とか危機の八〇年代とかいうことが言われておるわけでございます。まさにこの経済あるいは社会情勢の基調をなすものは、この七〇年代以降において非常に大きな国際社会の上での、あるいは経済の上での変化が起こったということであろうと思います。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 つまり日本国内について言えば、高度成長時代が終わって安定成長を志向しなければならないという時代がやってまいりました。したがって、五十五年度の予算、八〇年代最初予算はいわば非常に抑制基調に彩られた予算になったわけでございます。  この予算の編成について、総理大蔵大臣初め内閣の非常な苦労があったことと思うのでございますが、そうした抑制基調にもかかわらず、二月十二日に開かれた政府・自民党の月例経済報告関係閣僚会議では、急騰する卸売物価消費者物価に波及するのを全力を挙げて食いとめるということで一致をしたわけであります。政府は五十五年度の消費者物価上昇率目標六・四%を守るために、経済企画庁としては経済問題についての全体図を描き、問題点をつかむ作業を急いでおる方針でございますが、これに先立つ物価抑制策の第一弾として、電力、ガス料金の値上げ、高騰している鋼材、非鉄金属、野菜などの個別商品対策を担当各省がすぐに進めることにいたしました。しかし、この一月の卸売物価上昇率は、前年に比べ一九・三%、非常に上げ足を早めておる。二〇%に迫っておる。商品市況も、一月下旬から一層上昇速度が速まっておるわけでございます。したがって、こういった経済予測、物価の予測の上に立って、国内経済の現状と今後の見通しについて、まず大蔵大臣から承りたいと存じます。
  287. 竹下登

    竹下国務大臣 最近のわが国経済の状況を見ますと、一方でWPIの高騰に見られますように、物価はまさに警戒を要する状況にあります。他方、企業倒産の増大に見られますように、景気も予断を許さない、そういう状況にあることは御指摘のとおりであります。  過去二年間にわたりましては、公共投資の大幅な拡大、国民の堅実な消費態度、あるいは労使ともに協力した企業の努力等を背景としまして、国内民間需要を中心に着実な拡大を続けておりますし、雇用情勢も緩やかながら改善が続いております。  しかし、他方、原油価格上昇等の要因から、物価の動向につきましては、先ほど申しましたように大変警戒を要する状況にある。したがって、景気先行きにつきましても、石油情勢、それから欧米経済の動向等、今後注視すべき要因がありますので、大変に予断を許さない、こういう状態であります。  こうした経済情勢の中にあって、政府としては、物価景気の両にらみという従来からの基本的態度のもとで、特に物価の動向に注意をして政策運営を行っておるところでありまして、五十五年度におきましても引き続いて細心の注意を払いながら、まさに適時適切なる弾力的運営というもので対応していきたい、このように考えております。
  288. 村田敬次郎

    ○村田委員 ただいま大蔵大臣から答弁がございましたように、景気の基調は悪くない。月例経済報告においてもその点は認められておるわけでございますが、問題は物価でありまして、これは大蔵大臣指摘をされたとおりでございます。したがって、五十五年度の経済運営の基本的なスタンスと申しますか、その姿勢は、景気物価を両にらみしながら、物価の方に重点を移していくということでございましょうか。その辺の財政運営の態度をお伺いしておきたいと思います。
  289. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに基本的には、物価景気の両にらみということで総括的な表現となろうかと思いますが、当面は特に物価警戒しなければならぬというのが基本的なスタンスであります。
  290. 村田敬次郎

    ○村田委員 そこで、日銀総裁にお伺いをしたいのでございますが、最近日銀総裁は「エコノミスト」等に寄稿しておられます。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 これを注意をして読ませていただきました。そしてその中で、先行きは不透明だ、そして物価の安定というものをどうしてもやっていかなきゃならないということを指摘をしておられるわけでありまして、日銀総裁には、公定歩合引き上げの問題その他、きょうもたびたび野党の先生方からも質問があったわけでございますが、ひとつここでお伺いしたいのは、狂乱物価のときと比較をして今回の物価の現状をどういうふうに考えられるか、そして今後の物価の見通しについて日銀総裁はどういうふうに考えられるか量りたいと思います。
  291. 前川春雄

    前川参考人 狂乱物価の当時と見比べまして、原油あるいはその他の諸原材料、そういうものの上昇前回と同じくらい上がっておるわけでございます。ただ前回と非常に違いまする点は、物資の加工段階が高まりますにつれて、卸売物価の物資の中の完成品価格上昇が、前回はきわめて高かったわけでございまするが、今回は比較的落ちついておるのが第一の大きな違いでございます。  なぜこういうふうな違いが起きたかという点でございまするが、一つには、前回上昇期と比べまして、今回はまだ電力あるいはガス等の料金改定は行われておりません。そういう意味で、コスト面でかなり違う面があることが一つでございまいうような大きな傷が発見された。しかも、それは戻り水がいわゆる原子炉圧力容器に戻ってきてまた再び圧力容器に入る、その部分にひび割れが大きく起きておる。しかも、それを削り取って動かすというのでしょう。その削り取り作業をいまやっておる。そうして、しかもそのタービンを回して戻ってきた水は圧力容器にそのまま入りますと、ある程度温度を高めておりますけれども、圧力容器内の水の温度と非常に格差がありますから、これは非常に問題であります。そこでスパージャーというので一応受けて、そして温度格差を若干緩和し、さらにまんべんなく圧力容器内にその戻り水が散らされるようにという、スパージャーというのが通常原子炉圧力容器の内側にずっとある。それの取りかえを全面的にやらなければならないというのでしょう。金額から言ってもこれは五十億円からかかるものである。そうして圧力容器の下部に燃料棒がある。そこへ人間が入っていってやらなければならない。しかも、それは二カ月を要する大作業をやるというのです。そしてそのスパージャー取りかえは福島原発第一の一号炉においては二年前にも全面取りかえをやった。たった二年でまた全面取りかえをやる。私は欠陥原子炉だと思います。  これらについては後日質問をいたしたいと思うのですけれども、この被曝の問題等について十分なる政府としての対処を要望したいわけであります。そこで、先ほどの審議官の答弁をこの際大臣からも確認をしていただきたい。
  292. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先ほど児玉審議官からおわびを申し上げましたが、私も今後心してまいる所存でございます。  後段の件に関しましては、十分調査もいたし、善処されるように指導いたしたいと思います。
  293. 田村元

    田村委員長 これにて八木君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。
  294. 田村元

    田村委員長 これより一般質疑に入ります。  答弁を求められている大臣以外の大臣は御退席いただいて結構です。  質疑の申し出がありますので、これを許します。村田敬次郎君。
  295. 村田敬次郎

    ○村田委員 お許しをいただきまして、現在問題になっております経済財政その他数点について御質問をさせていただきたいと思います。  六〇年代は黄金の時代と言われておりました。そして七〇年代は崩壊と幻滅の七〇年代ということを言っております。また、新経済社会七カ年計画では激動の七〇年代ということを言っておりますが、八〇年代について不透明の八〇年代とか危機の八〇年代とかいうことが言われておるわけでございます。まさにこの経済あるいは社会情勢の基調をなすものは、この七〇年代以降において非常に大きな国際社会の上での、あるいは経済の上での変化が起こったということであろうと思います。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 つまり日本国内について言えば、高度成長時代が終わって安定成長を志向しなければならないという時代がやってまいりました。したがって、五十五年度の予算、八〇年代最初予算はいわば非常に抑制基調に彩られた予算になったわけでございます。  この予算の編成について、総理大蔵大臣初め内閣の非常な苦労があったことと思うのでございますが、そうした抑制基調にもかかわらず、二月十二日に開かれた政府・自民党の月例経済報告関係閣僚会議では、急騰する卸売物価消費者物価に波及するのを全力を挙げて食いとめるということで一致をしたわけであります。政府は五十五年度の消費者物価上昇率目標六・四%を守るために、経済企画庁としては経済問題についての全体図を描き、問題点をつかむ作業を急いでおる方針でございますが、これに先立つ物価抑制策の第一弾として、電力、ガス料金の値上げ、高騰している鋼材、非鉄金属、野菜などの個別商品対策を担当各省がすぐに進めることにいたしました。しかし、この一月の卸売物価上昇率は、前年に比べ一九・三%、非常に上げ足を早めておる。二〇%に迫っておる。商品市況も、一月下旬から一層上昇速度が速まっておるわけでございます。したがって、こういった経済予測、物価の予測の上に立って、国内経済の現状と今後の見通しについて、まず大蔵大臣から承りたいと存じます。
  296. 竹下登

    竹下国務大臣 最近のわが国経済の状況を見ますと、一方でWPIの高騰に見られますように、物価はまさに警戒を要する状況にあります。他方、企業倒産の増大に見られますように、景気も予断を許さない、そういう状況にあることは御指摘のとおりであります。  過去二年間にわたりましては、公共投資の大幅な拡大、国民の堅実な消費態度、あるいは労使ともに協力した企業の努力等を背景としまして、国内民間需要を中心に着実な拡大を続けておりますし、雇用情勢も緩やかながら改善が続いております。  しかし、他方、原油価格上昇等の要因から、物価の動向につきましては、先ほど申しましたように大変警戒を要する状況にある。したがって、景気先行きにつきましても、石油情勢、それから欧米経済の動向等、今後注視すべき要因がありますので、大変に予断を許さない、こういう状態であります。  こうした経済情勢の中にあって、政府としては、物価景気の両にらみという従来からの基本的態度のもとで、特に物価の動向に注意をして政策運営を行っておるところでありまして、五十五年度におきましても引き続いて細心の注意を払いながら、まさに適時適切なる弾力的運営というもので対応していきたい、このように考えております。
  297. 村田敬次郎

    ○村田委員 ただいま大蔵大臣から答弁がございましたように、景気の基調は悪くない。月例経済報告においてもその点は認められておるわけでございますが、問題は物価でありまして、これは大蔵大臣指摘をされたとおりでございます。したがって、五十五年度の経済運営の基本的なスタンスと申しますか、その姿勢は、景気物価を両にらみしながら、物価の方に重点を移していくということでございましょうか。その辺の財政運営の態度をお伺いしておきたいと思います。
  298. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに基本的には、物価景気の両にらみということで総括的な表現となろうかと思いますが、当面は特に物価警戒しなければならぬというのが基本的なスタンスであります。
  299. 村田敬次郎

    ○村田委員 そこで、日銀総裁にお伺いをしたいのでございますが、最近日銀総裁は「エコノミスト」等に寄稿しておられます。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 これを注意をして読ませていただきました。そしてその中で、先行きは不透明だ、そして物価の安定というものをどうしてもやっていかなきゃならないということを指摘をしておられるわけでありまして、日銀総裁には、公定歩合引き上げの問題その他、きょうもたびたび野党の先生方からも質問があったわけでございますが、ひとつここでお伺いしたいのは、狂乱物価のときと比較をして今回の物価の現状をどういうふうに考えられるか、そして今後の物価の見通しについて日銀総裁はどういうふうに考えられるか量りたいと思います。
  300. 前川春雄

    前川参考人 狂乱物価の当時と見比べまして、原油あるいはその他の諸原材料、そういうものの上昇前回と同じくらい上がっておるわけでございます。ただ前回と非常に違いまする点は、物資の加工段階が高まりますにつれて、卸売物価の物資の中の完成品価格上昇が、前回はきわめて高かったわけでございまするが、今回は比較的落ちついておるのが第一の大きな違いでございます。  なぜこういうふうな違いが起きたかという点でございまするが、一つには、前回上昇期と比べまして、今回はまだ電力あるいはガス等の料金改定は行われておりません。そういう意味で、コスト面でかなり違う面があることが一つでございまであろうというふうに考えております。  そういう意味で、私どもは、これからの海外の物価高による、原燃料高による影響を、極力国内の要因でそれが加速されるとかあるいは増幅されるということがないようにしてまいりたいということで金融引き締め政策をとってきたわけでございます。第一次石油危機のときの経験にも照らしまして、そういうふうに国内要因から加速されるということを防ぐことが一番大事なことであろうというふうに考えています。
  301. 村田敬次郎

    ○村田委員 大蔵大臣日銀総裁物価問題を非常に重要だと考えていらっしゃる、この点は全く同感でございます。ただその場合に、これは二者択一ではないと日銀総裁が御指摘になったわけでございますが、物価景気かというエントベーダーオーダーというのがここではとり得ないという考え方、これは私は賛成でございます。ぜひひとつ日銀総裁として、物価の抑制に最大限の努力を払っていただきたいと思います。大変お忙しいと思いますので、総裁どうぞ御退席いただいて結構でございます。  それでは大蔵大臣に御質問をいたしますが、物価安定のために大蔵省としてはどのような施策を行おうとしておるのか、お伺いいたします。
  302. 竹下登

    竹下国務大臣 通貨政策としましては、日銀が三度にわたって行われました公定歩合の操作について、その浸透の度合いを大変静かに見守っておる、こういうことであります。したがいまして、物価関係閣僚会議で示されて、私どもとしてそれを受けて、たしか一月十一日の閣議でございましたかでやりましたこと、いわゆる公共事業の五%相当分の留保ということは、まさに当面の物価をにらんでやった一つの施策であります。  他の面におきましては、先般来いろいろ御指示がありまして、民間の電気とかガスとかそういう問題について連動する値上げ等についての金融とか財政とかという問題についての検討も命ぜられたところであります。いずれにしましても五十五年度に引き継ぐ問題でございますので、予算執行の面においても十分に弾力的な執行を行わなければならぬであろう、そのように考えております。
  303. 村田敬次郎

    ○村田委員 竹下大臣は、かつて建設大臣として公共事業の大部分、七割のシェアを持っておる建設省の指揮に当たられたわけでありますけれども、今回は大蔵大臣としてそれを引き締める方の立場に回られておるわけでございまして、大変お立場はよくわかるのでございますが、ただいまお話に出ました公共事業等執行留保措置、この五%というものは非常に重要だと思います。この景気に与える影響、これについてひとつお述べいただきたいと思います。
  304. 竹下登

    竹下国務大臣 「五十四年度の今後の公共事業等の事業施行については、経済動向に細心の注意を払いつつ、機動的に対処する方針の下に、現下の物価動向に配慮し、公共事業等歳出予算現額の五%を当面留保すること」を一月十一日、閣議決定した。一応正確に申し上げておきます。  それで、この執行留保措置によりまして、このまま推移したといたしますならば、国民経済計算上の資本支出ベースで約八千億円が五十五年度へ繰り越されるということも考え得るわけであります。この繰り越しの景気に与える影響を実質経済成長率に対する寄与度で見ますと、五十四年度の実質経済成長率を〇・三ポイント引き下げて、五十五年度の実質経済成長率を〇・七ポイント押し上げる効果を持つ、こういうことになるわけでありますので、そういうことになったといたしますならば、二年間にわたってなだらかな景気拡大基調を維持する効果も一面持っておる、このように理解をいただきたいと思います。
  305. 村田敬次郎

    ○村田委員 つまり、この五%が留保されまして五十五年度に繰り越されるという前提でいけば、いま大蔵大臣がお述べになったような、景気に好影響を与えるであろう、そういった考え方のもとに公共事業執行留保分を措置をしている、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  306. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のように、いわゆる留保というものはまさに留保でございまして、「今後情勢が変化し、解除することが適当と認められるときは、これを解除するものとする。」こういうことがきちんと閣議決定の中にも書かれてあるわけであります。したがって、今後の経済情勢の推移を慎重に見守っていかなければならぬ。したがって、繰り越しというものは、言うなれば結果として繰り越しになった場合まさに両年度にわたる経済成長の下支えの役割りは果たすであろうというふうに理解をしております。
  307. 村田敬次郎

    ○村田委員 いま大蔵大臣のおっしゃったように運営をしていただくことを期待しております。  ところで、五十五年度の公共事業費は非常に厳しく圧縮された結果となりました。公共事業執行を進める時期、それからそれを圧縮する時期、これが引き続いてリンクをして起こってくるわけでございますが、五十五年度については非常に厳しく圧縮をされました。これで経済社会七カ年計画による二百四十兆円は達成できるかどうか、その点はいかがでございますか。
  308. 竹下登

    竹下国務大臣 新経済社会七カ年計画におきましては、五十四年度から六十年度の間におおむね二百四十兆円、これは五十二年度価格でありますが、この公共投資を行う、こういうことになっております。まさに公共投資というものはそのときどきの経済の動向、財政事情等を勘案して弾力的に実施していくべきものでありますので、本年の予算措置が直ちに長期間にわたる計画の達成の可否に直結するということは言えないと思うのでございます。したがって、年度ごとにある程度の幅を持たしていただかなければならぬ問題であると思うのであります。しかし、現段階で計画の達成の可否を断定することは適当でないにしても、現状においては、計画の想定よりややおくれぎみになるという感じもないわけでございませんので、完全に達成することは、まことに何と申しましょうか容易ならざるものがあるというふうに考えております。
  309. 村田敬次郎

    ○村田委員 二百四十兆円をこれからやっていくという際に、これは経済社会の基本計画でありますから、当然これがルールになって進行されるわけでございます。そこで、私は長期計画について一つの御提案があるのです。  それは、かねがね私は思っているのでございますが、国が経済社会七カ年計画を決定しておる。その中にあるいは住宅、下水道、都市公園、治山治水、道路、土地改良、漁港整備等々のいろいろな五カ年計画があるわけでございますけれども、この五カ年計画が必ずしも整合していないわけでございます。たとえば第五次治山事業五カ年計画は五十二年度から五十六年度で、五十五年度というものが一つの起点になっておりません。第五次治水事業五カ年計画もまたしかりであります。それから第二次土地改良長期計画は、四十八年から五十七年という十年間のスタンスになっておる。漁港整備は五十二年から五十七年、道路整備は五十三年から五十七年ということで、現在閣議決定に係る公共事業関係の長期計画が十数本あるわけでございますが、少なくともそのうちの六本はその年次が合っていない。一つ政府が進めてまいります公共事業執行計画がこのように不整合であっていいものであるかどうか。私は五十五年度の予算編成のときにもこのことを指摘をし、主張した者の一人でありますが、この長期計画の編成について、経済企画庁長官、お考えはいかがでございますか。
  310. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 村田委員は公共投資についての大変なエキスパートであることはよく存じ上げております。いま御指摘の点は、先ほども野党の委員からも御指摘があったように、これは若干問題があるかと思っております。ただ、いわゆる経済社会七カ年計画というのは、一つの大きな目標を定めまして、民生関係といいますか、生活関連の公共投資に、いままでは大体二八%ぐらいでございましたかね、それを三〇%に持っていくというふうな一つの大きな目標を示しまして、それに向かって財政、金融その他の施策を講じていく、こういうことを定めておることは御承知のとおりであります。  そこで、おっしゃるとおりに将来に対する展望が非常にはっきりしてまいりますれば、今年度の予算あるいは来年度の予算、続いての予算というふうなことが相当はっきりするわけでございます。長期計画についても、先ほど来大蔵大臣もお述べになりましたように、さらにこれを将来に長期計画に合わせるというふうなこともあるいは可能であったかもしれませんが、今日は、原油事情、為替レート、非常に不透明な要素が多いわけでございます。私どもはフォローアップがせいぜいだと思っておるわけでございます。新しい計画をつくりなさいと言われても、どういう事態を想定して新しい計画をつくるかということは、これはもうほとんど不可能であろうかと思っております。そこで、ただいまのところはいま申し上げたようなことで、大きな目標をそのままにしておいて、しかし経済の成長率、物価の動向等をある程度実情に合わせたものに見直しておる、こういう実情でございますので、一日も早く事態が安定し、将来の展望が開けて新しい計画がつくれるようになることを私は心から期待をしておるわけでございます。
  311. 村田敬次郎

    ○村田委員 経企庁長官のお話はよくわかるのですが、しかし、本来一つ政府の立てる計画がこのように年次がばらばらにずれておるというのはまことに整合性がない。もちろん自由主義経済でございますから、そういう前提のもとに進める誘導政策であるものもたくさんあるわけでございますが、少なくとも国の行う公共事業について、年次の上でこのような不整合があるということには大変納得しかねるのでございます。これは、束ねをして財政を統括しておられる大蔵大臣の御見解も承り、そして今後はさらにこの公共事業の年次の統一、いろいろな面での整合を図っていくという御答弁をいただきたいのです。いかがでございましょうか。
  312. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに五年計画あり、六年計画あり、十年計画あり、そうして、そもそも二百四十兆というものを決めるときにも、それをどういうベースにおいて計算すべきかというようなことで、私も当時は村田委員と同じような感じを持った一人でありますが、現実問題として、直ちにそれに手をつけるということには余りにも不透明、不確実な点が多過ぎるというような感じがいたしますので、もう少し勉強させてやっていただきたいと思います。
  313. 村田敬次郎

    ○村田委員 先般、大蔵省で財源の試算をおやりになってお出しになったわけです。これについてはこの予算委員会の舞台で野党から非常に厳しい追及があったわけでございますが、この点は、税の増徴であるとかいろいろな面で、いまおっしゃったようなXYZと申しますか、不確定の要素が多過ぎるために確実な答えが出ないのだと言って、わかりながら要求をしておられる向きも一部にあったかと思うのです。私は、そういった解けない方程式を無理こやっこに解かせるという無理な要求をするよりも、むしろこういった公共事業計画でひとつしっかり整合をさせて、しかも素直な見通しに対して与野党が協力をして将来の財政をやっていくという方向にできるだけ進めていただきたいということを希望するわけでございます。  ところで、冒頭に物価の問題を申し上げましたので、ここで一、二伺いたいのです。  農林水産大臣、秋冬野菜の価格が高騰をいたしまして、消費者は今後の野菜の価格動向を非常に心配をしております。四月以降出回る春野菜の出荷、それから現在の秋冬野菜の価格、そういうものについて見てみますと、なるほどキャベツだとかあるいは白菜だとか、レタスだとか、トマトだとか、こういうものは昨年の一月に比べて大変な暴騰の仕方であります。一方、サトイモ、ニンジン、バレイショ、タマネギ等の安い品目もあるわけでございますが、こういう野菜の価格について消費者は大変に困るわけでございますから、農林水産大臣、きょう閣議でいろいろ御説明をされたようでございますが、これについてこの場でひとつ御説明をいただきたいと思います。
  314. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま御指摘のとおりで、一方バレイショだとか、サトイモだとか、あるいはタマネギだとか、こういうものについては大変安いのでございますが、片っ方、白菜、キャベツなどが大変高くございまして、非常に消費者に御迷惑をおかけしておってまことに申しわけなく思っております。  ただ、これは御承知のとおり、昨年の長雨、また台風が二回にわたって十月ころに来たというようなこと、これらが影響いたしましたことと、あわせてその間に非常に日照りが結果的に少なかった、これでできが悪くなりまして、大体通常の六割程度しか白菜などは品物がないという状況でございまして、大変残念に思っておりますが、いま御指摘いただきましたように実はけさ閣議で、これからのいわゆる端境期、春物については作付面積も大体昨年と同じくらいの作付面積でございますし、こちらはまた逆に天気が非常に順調なものですから、春の野菜というものは四月から出回るのですけれども、これは相当価格は低落をするだろう、極端にいけば暴落する場合もあるであろう、私どもはこういう判断をいたしておるわけでございます。そこで、そういう暴落をする見込みの立っておるものであるならば、なるべくこの際、より早くひとつ早出しをしていただいて、そして現在の端境期にそういうものを供給していただいたらどうであろうか、こういう観点からいろいろの対策を立てまして、けさの閣議で報告をして了承いただいたわけでございます。  せっかくでございますので、その中身を少し詳しく御説明をさせていただきます。  まず第一に、出荷の督励であります。私どもの責任者を中心にして出荷督励チームを編成し、それぞれの主産地に派遣をして出荷の促進を図ることにしております。  二番目には、早出しが期待できるキャベツ、大根、白菜、ホウレンソウ、レタスにつきまして、これもそれぞれの産地を対象といたしまして、早出し出荷を促進するため、出荷の時期と出荷量が出荷計画を上回る程度に応じ、奨励金を交付することといたしております。  また、春野菜の出荷においてウェートの大きいキュウリ、トマト、ピーマンにつきましては、この際特別の緊急措置として、省エネルギーとは少し逆行するかもしれませんが、それぞれの施設内の温度を上昇させて生育を促進し、出荷の促進を図ることとし、これに対しても、出荷の量が計画を上回る程度に応じて奨励金を交付することとしております。  また、遠隔地の、たとえば香川のレタス、宮崎のピーマン、こういったようなものの京浜地区あるいは阪神地域への出荷を促進するための増加出荷分の、それだけ運賃の余分にかかるものについては助成措置を考えております。  また、第三の措置といたしましては、野菜供給安定基金で契約栽培をやっておりますキャベツなどについて、思い切ってひとつ集中的に放出をさせようと思っております。  第四につきましては、輸入につきまして、台湾のキャベツあるいはカリフォルニアのレタス、こういったようなものについて極力輸入の促進をし、それによって欠損が生じた場合には運賃の二分の一程度を対象にして補助金を出したいと思っております。  それから第五に、小売価格が各店頭におきまして適正に行われるかどうか、こういうことについては、食糧事務所の職員等によって巡回をし、そしてその点の価格の監視、指導を十分強めてまいりたいと思っております。  大体以上のようなことをやらしていただきたいと考えておるわけでございます。
  315. 村田敬次郎

    ○村田委員 私も総理府におりまして物価調査に従事をしておりましたが、特に野菜その他の庶民に生活与える影響は非常に大きいわけでございますから、担当大臣として努力をしていただきたいと思います。  また、石油価格の変動によりまして一部の建設資材について価格上昇傾向が見られるわけでございます。これについては、関係業界からの公共事業の円滑な施行を要望する声が非常に高まっておるわけでございますが、建設資材、たとえばセメント、アスファルト、鋼材等々、いろいろございます、こういった価格上昇公共事業の円滑な施行について支障はないかどうか、建設大臣からお答えをいただきたいと思います。
  316. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えいたします。  お話しのように、一部建設資材の価格が流動化傾向にありますことは御指摘のとおりでございます。その結果、公共事業の請負契約に際しましていろいろと支障が生じてまいりました。事業の円滑な執行に混乱を生ずるのではないか、このような懸念も実は生じておるわけでございます。現在行っております請負契約の約款におきましては、賃金、物価の変動に伴いまする請負代金額の変更は、契約後十二カ月経過いたしましてなお請負代金額が三%以上変動した場合、またはインフレ等特別の事情によりまして賃金、物価に著しい変動を生じ、請負代金額が著しく不適当となった場合、こういうときにのみ行うことになっておるわけでありますが、こういうような規定は非常に長期な工事に適用されるものでありまして、まだ現在の物価情勢のもとではこのような規定を発動する事態ではないと考えられるわけでございます。  そこで、ただいま中央建設業審議会におきまして、御指摘のような事態に対処いたしまして、請負契約上の特別な措置を行うために鋭意検討を行っていただいておりまして、これには若干の期間を要しますが、それにはまた当面とりあえず措置すべき問題等につきましてただいま御検討をいただいておりまするので、その審議会の御結論をちょうだいいたしまして速やかに適切な措置を講じまして、いろいろな懸念がないように万全の措置を講じたいと考えておるわけでございます。
  317. 村田敬次郎

    ○村田委員 私は建設業の実態というものをよく知っておりますから、その意味で、公共工事の標準請負契約約款のいま大臣の指摘された点の適用というのは非常に重要だと思います。わけてもこういった時期に企業の倒産が多いわけでございますけれども、一例をとってみますと、中小建設業に対するあふりが非常にきつい。中小建設業の倒産状況とかそういうものは普通の企業に比べてはるかに件数が多いし、また中小建設業そのものの数が四十数万というような非常に幅の広いすそ野を持っておりますから、こういった時代において公共工事の施行あるいは中小建設業の保護といったような問題について、建設大臣はどういうふうに考えておられるか承りたい。
  318. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えいたします。  まず、ただいまの御質問の中で最近の建設業の倒産の状況でございますけれども、最近の全産業と建設業の倒産状況を対比いたしてみますと、昭和五十二年におきまする倒産件数あるいは倒産率は最も高かったわけでございまして、五十三年には倒産件数、倒産率ともに減少いたしておりますが、昭和五十四年に入りましてからの倒産状況を見ますると、倒産件数は全産業、建設業ともにほぼ横ばいでございますけれども、倒産企業の負債総額につきましては、全産業ではやや減少しておりますけれども、建設業では約二七%の増加を示しております。また、各年度を通しまして、建設業の倒産率は全産業の倒産率の二倍強となっております。そういうような意味におきましては、建設業は従来から他産業に比べまして倒産しやすい脆弱な基盤に立っておるわけでございます。  このような状況に対しまして、私どもといたしましては、中小建設業者に対しまする受注機会の確保あるいは下請代金支払いの適正化、こういうようなものにつきまして建設業界に対する指導を行っておりますが、なお、連鎖倒産防止のための中小企業倒産対策緊急融資制度の適用期限の延長等を中小企業庁にも連絡をいたしまして、三月末まで延長が実現をしたわけでございます。  なお、基本的には建設業の経営基盤が脆弱で倒産が発生しやすい特殊性を持っておりまするのでありますから、建設業の近代化、合理化、それらの施策が必要でございますから、そのために一層総合的に施策を推進してまいりたいと思っております。  なお、そのような状況下でございまするので、私どもといたしましては、この厳しい環境の中でいわゆる下請業者が非常な圧迫を受けまして倒産をするというような事態ももちろん憂慮されるわけでございますから、下請代金の支払い等に対しましては不適正な事例が生じかねない、このようなことも懸念いたしまして、かねてより発注者の御協力も得まして昭和五十二年十一月三十日に元請・下請関係合理化指導要綱を策定いたしておりまして、下請業者の保護のために、まず第一番に標準下請契約約款に準拠いたしました下請契約を締結させるように指導いたしますこと、下請代金に現金払いを原則といたしまして、手形による場合もできる限り短期のものとするというようなことで建設業者に対しまして指導いたしておりまするが、今後ともそれらの施策を徹底いたしまして、なお資材等に起因する変動要因を不当に下請業者に負担させることのないように十分注意してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  319. 村田敬次郎

    ○村田委員 進行いたします。  次の問題に行きますが、日米自動車戦争と言われておるわけでございますが、この問題はこの数日非常に報道されておりまして、日本の自動車業界にとっても大変大きな問題になってまいりました。それは、UAWのフレーザー会長が日本にやってまいりまして、そして日本政府、自動車業界に対米輸出の規制とトヨタ、日産の二社に対米工場進出を説得するためだ、こういうふうに公言をいたしまして、大平総理とも会われ、また外務大臣や通産大臣、あるいは業界の代表の方々と会っておられるわけであります。  UAWは、御承知のように組合員約百四十万を擁しておるアメリカでも有数の労組であって、米政府、議会に強い発言力を持つ。カーター大統領が前回当選したのもフレーザー会長率いるUAWが支持したためと言われておりまして、このフレーザー旋風というのが大変吹きまくっておる。しかも、フレーザー会長が指摘をするところは、日本の自動車が非常に最近輸出をされておる、そしてこの対米進出状況が米国において非常な旋風になっておるということをいろいろデータを挙げて指摘をし、トヨタ、日産の首脳とも会ったわけでございますが、日本車の対米進出状況、特に米国における日本車のシェアはどうなっておるか、通産大臣から承りたいと思います。
  320. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 現在、対米自動車問題になっておる乗用車で見てまいりますと、米国における日本車の新車登録台数は一九七七年百三十九万台でございましたが、七八年には百三十六万台と若干減りました。さらに、去年七九年の春までは減少傾向が続いておりましたけれども、夏以降国際エネルギー情勢が大変不安定になってまいりましたので、それが反映いたしまして、低燃費、燃料費の安い車に需要の嗜好が高まってまいりまして、急速に需要が伸びてまいりました。年間を通じての販売台数は、昨年は百七十七万台と大幅な伸びを示してございます。  そこで、御質問の米国内における販売シェアはどのぐらいかと申しますと、七七年の一二・四%から七九年の一六・六%と伸びて、本年の一月には二二・一%と大変な伸びを示してございます。
  321. 村田敬次郎

    ○村田委員 このフレーザー会長の発言その他、これは日米の大変重要な問題になってきたという感じがします。たとえばマンスフィールド駐日大使は、対米自動車輸出問題が日米経済摩擦の導火線というふうに発言をしておりますし、またこれに対応するために天谷通産省審議官を特使として派米をさせる、そして米政府、自動車業界の考え方を打診をする、これが二月下旬だと聞いておりますし、また安川対外経済関係担当の政府代表を三月には派米をさせるというようなことを決定しておるというふうに聞いております。これだけこの事態を非常に重視をしておる証拠でございまして、大平総理もこのフレーザー会長とじかにお会いになっておる。官房長官も同席をされたようです。また外務大臣もこの問題についてはフレーザー会長と会われたようでございますが、この問題、日米間の非常にぎくしゃくとした摩擦になったら大変だというふうに思うわけでございますが、外務大臣のお考えはいかがですか。
  322. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 二年ほど前に、日米貿易関係で非常に大きな摩擦がございましたが、その後、一つには日本側の国際収支が赤字に転じまして、これは為替レートの関係もあったと思いますが、やや小康状態を保ってまいったように思いますが、最近、この自動車問題をめぐりまして、御指摘のようにかなり問題が再燃の傾向が見られるように存じます。やはり私ども外務省の立場、日米関係に余り大きなダメージを及ぼさないという点からいたしますれば、なるべく事態を予測して経済関係が大きな政治問題、外交問題にならないうちに手当てをしていくことが望ましいと考えておるわけでございます。基本的には自由貿易の立場を日本としてもアメリカとしてもとるべきでございますが、自動車労連、自動車産業は従来自由貿易の立場をとっておったわけでございますけれども、最近になりまして、これは一つには急激な日本からの輸出の増加も刺激になっておるかと思いますし、それから自動車会社の経理状態の悪化とかあるいは失業の増大ということがいろいろ影響しておると思うわけでございますが、私もフレーザー氏に会いましたときに、これは過渡的な現象とは思わないかと申しましたが、やはり小型車に移ることは大きな傾向であって、必ずしも過渡的とは思わない。それから、アメリカの自動車工業が対応がおくれたのではないか、そういう意味では日本の責任ではないのじゃないかということも申しましたが、それは確かにそのとおりであるけれども、とにかく急激な進出ということで非常に影響を受けておる。特にフォルクスワーゲンの例をいろいろ引きまして、将来日本は、いつまでも完成車の輸出ということではなくて、アメリカの国内に来て製造をやるべきだ。フォルクスワーゲンはいま十六万六千台の能力を持ち、近いうちにさらに二十万台ぐらいの能力をふやして三十五万台の年産に達する見込みであって、このケースは何らアメリカで摩擦を生じていない。そういうようないろいろなことがございまして、特に日本の主要なメーカーがアメリカに出てきて仕事をすることを強く希望いたしておったわけでございます。
  323. 村田敬次郎

    ○村田委員 アメリカの日本車批判、対米工場進出を求める論拠というのは、日本車の対米輸出が急増している一方で、米自動車業界は深刻な不況に陥っておる。現在一時解雇は二十万人、UAW組合員の七人に一人が失業しておる。これを放置しておくと大変なことになるという心配があるわけでございます。先ほど通産大臣がおっしゃいましたように、アメリカ国内で販売された乗用車の台数は一千六十五万台で、そのうち日本車は百七十七万台もある。だから、アメリカでは五台のうち一台は日本製の乗用車なんだ。日本はアメリカに乗用車とともに失業も輸出しているという非難があるわけです。しかし、これは先ほど通産大臣もお触れになりましたが、そういった小型車の生産について、日本の車が大変アメリカの需要に応じられたためだというのが大きな理由になっておるようでございまして、いま外務大臣の説明したようなこの間の事情があり、日本の自動車業界がどしゃ降り輸出を一生懸命やろうとしたということではない。むしろアメリカ市民の大きな需要に支えられておることだというふうに反論をすることができるのではないかと思います。  ところで、フレーザー会長が迫っておる輸出規制はどうか、あるいは工場進出はどうかというこの二つとも、日本の業界にとって大変な難問であるかもしれないと思うのです。この対応の仕方によっては、日本の自動車業界あるいは日本の貿易全体に深刻な影響を与える可能性がある。これについて、通産大臣はどういうふうに対応をしようとしておられるか、またトヨタ、日産等の大手メーカーと話し合いをいかにしておられるか、承りたいと思います。
  324. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私もけさ実はフレーザー氏とお会いいたしました。ゆうべ会うつもりでございましたけれども、向こうの都合でけさにしてもらいたいというので、けさ、閣議の前でございますから時間が余りありませんで十五分ばかり、二十分くらいありましたか、いろいろ懇談をいたしました。  私からは、日米関係というのは世界的な意味でも安定が大変重要だ、こういう日米間の経済協力というのは大変大きいことでございますから、個別的にはあるいは摩擦問題が起こるかもしれぬけれども、しかし重要なことは、こういう個別的な問題について密接な意思疎通を図りまして、実際的かつ感情的でない解決によって、日米関係全体にひびを入れないというふうに考えるのが一番重要でなかろうかというお話をいたしまして、そしていままで通産省が、たとえば三菱社のクライスラーへの貿易金融等いろいろ努力をいたしましたというお話をいたしました。フレーザー氏から、いままでずっと日本でお会いした印象を話されまして、私からは、一番要望している投資に関しましては、通産省としていままで対米投資を阻害してきたことはもちろんございませんし、最近の米側の状況を考えまして、日本の企業の投資を促進するように努力しているところだ、今後も努力いたしますということと、ただ、最終的な投資の判断はあくまでも企業自体の問題でございますので、政府の協力というのもおのずから限界がございますという点は御理解いただきたいというおを申し上げておきました。輸出に関しましては、従来から集中豪雨的な輸出は行わないというのがわが国の貿易政策の基本でございますので、今後ともこれは継続してまいりますというお話をしてお別れしたのですけれども、その後引き続いて通産省首脳部ともいろいろ懇談を重ねたいというのですが、まだその機会を得ておりません。  御質問の各メーカーに対しての通産省の応対ぶりはどうかという点でございますけれども、まず今年の一月に本田技研が、アメリカのオハイオ州に乗用車工場を今年中に着工、そして進出の最後の詰めに入ったと発表しておりまして、現在同社において進出の具体的な立案に取り組んでいると聞いております。  それから二番目のトヨタ、日産でございますけれども、投資につきましては、検討組織をつくったりあるいは米国へ調査団を派遣などして、対米進出是非についてただいま一生懸命検討中と承っているところでございます。
  325. 村田敬次郎

    ○村田委員 この問題は、その程度の御答弁ではとても納得ができないわけです。なぜかと申しますと、もし輸出を規制するということになれば、これは日本の自動車業界にとって大変な打撃になる。それと同時に、もし工場進出をするということになれば、いわゆる自動車生産というのは非常にすそ野の広い産業でありますから、日本における雇用をアメリカに輸出をしてしまうことになる。そうすると、それは日本の雇用の問題にも大きく響いてまいるわけでございます。そしてまた、仮にトヨタ、日産が進出をするといたしましても、いま大臣は本田技研工業が米オハイオ州に進出をすることについて例を引いておっしゃいました。これはよく納得ができるのでございますが、もしいわゆる一貫工場を建設するとなれば、私は愛知県の出身でございますからよくわかっておるのでございますが、少なくとも一貫工場の建設作業が終わるのには三カ年ないし四カ年かかる。三年先、四年先の自動車の需給見通しというのは、それこそ不透明ないまの時代に予測がつかないわけでございまして、それを思い切って踏み切るのについては、トヨタ、日産においても企業のリスクというものを相当これは計算して当然だと思います。もちろん企業のリスクは企業のリスクでありますから、国政に直ちにイコールだというわけではございませんが、自動車産業の持っておる重要性からぜひひとつ対米輸出についてもっと突っ込んだ検討をやっていただきたいと思うのでございますが、さらにこの問題についてお答えをいただけませんか。
  326. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 日本の自動車メーカーの対米進出を求める米国における各界の声というのは、御承知のとおりでございまして、その状況等は逐次日本の業界の方にもお伝えしてございます。それで、対米進出の判断に当たりましては、白米経済関係への配慮はもちろんでございますけれども、同時に、いまお話しになりましたわが国の雇用あるいは下請企業への配慮も十分考えてもらうようにという要請をしてございます。
  327. 村田敬次郎

    ○村田委員 時間の関係でこれ以上突っ込めないのが残念でございますが、この関係は引き続いてぜひ政府において御検討いただきたい。そして、輸出規制の問題も大問題でございますから、ぜひそれはしないようにしなければならない。それからまた同時に、アメリカヘの工場進出の問題は、日本の自動車産業は日本の経済を支えておる大きな有力な一翼でございますから、国益という問題とも直接関係をする面が多いわけでございます。ぜひひとつ総理とも政府としてよく御相談をいただいて、業界に対する誘導政策に誤りなきを期していただきたい。そしてまた、別の機会にこの問題のさらに突っ込んだ検討を聞かしていただきたいと思います。  次に、婦人問題に入らせていただきます。  国連婦人の十年というのがあります。これは国際児童年が一九七九年、国際障害者年が一九八一年ということでございますが、国連で国際婦人年を一九七五年に定めました。「そのテーマは、「平等、発展、平和」で、婦人が男性と平等の立場で社会の発展に参加し、世界の平和に貢献しょうと、世界百三十三カ国の代表がメキシコの世界大会に参加し、世界行動計画を採択した。その後の国連総会で、国際婦人年に続く十年間が「国連婦人の十年」と定められ、世界行動計画の実現を図ることになった」わけでございます。こういった意味で、婦人問題が国際的に非常に脚光を浴びてきたということがわかるわけでございます。  一九八〇年代は、先ほどは不透明の時代と申し上げましたが、最近マスコミで言われるのは、女の時代であるということがよく言われるわけでございます。その女の時代であるというのはどういう意味かというと、三つほどの理由があるらしい。  それはことし、すなわち一九八〇年代の最初の年は国連婦人の十年の折り返し点であって、後半の五年の運動に切りかわるという意味で世界的なアピールの時期であるということが一つ。ことしデンマークで世界大会が開かれるわけでございますが、政府においては高橋展子さんを婦人大使の第一号としてデンマーク大使に派遣をされました。これは外務大臣、総理の英断だと思いますが、大変結構なことだったと思います。そのデンマークで世界大会が開かれる。  その第二の理由としては、八〇年代の日本の女性の平均寿命が大体確実に八十歳台に乗るであろうということが言われております。八十歳台に乗るということになると、女性は男性よりもはるかに長生きであります。しかも、日本の女性は長生きであるが、男性はたしか七十三歳で世界一の長命だが、女性は七十八歳で世界第三位というようなことが言われております。いずれにしても女性の方が約五年長生きで、しかも平均寿命が八十歳になる。そうすると、現在は女性が結婚をして子供を生み、その子供が義務教育を受けるようになる、それが大体三十五歳といたしますと、八十歳の平均寿命とすれば四十五年間、女性は非常に煩わしい家庭の仕事から解放される。これは男性よりもはるかにそういった意味で有利になってくるであろうという解釈のようです。  それから第三は、エコノミストが指摘をいたしておりますように、消費支出の八〇%前後が主婦の裁量にかかる。最近の家計支配のパターンが八〇年代にはいよいよはっきりしたものになるであろうというわけでございます。アメリカでは消費者のことをドルの投票者と呼ぶことがあると言われております。企業やそのつくる商品をお金で選ぶ人という意味だということでありますが、これを日本にたとえると、さしずめ日本の女性は円の投票者であるということになります。  したがって、いま申し上げました国連婦人の十年の折り返し点に当たるということ、平均寿命が八十歳になって、今後女性の職場への進出のチャンスであるとか自由の享受の仕方であるとか、そういうことが非常に多くなるであろうということ、それから消費支出の中心になるのが女性であるという意味で、女の時代だと言われるのだそうでございます。  そこでお伺いしたいのでございますが、まず、こういった国際婦人年といったような国際的な問題としてアピールをしておる。しかしサウジアラビアでは、王室の女性が民間の青年と恋をして国外脱出をしようとしたのが見つかったために死刑に処せられたというような国も一方にはあるわけであります。こういった世界のさまざまの婦人問題というものを踏まえて、日本の婦人問題を国際的にどういうふうに考えられるか、まずフェミニストの大来外務大臣からお伺いしたいと思います。
  328. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま村田委員からいろいろお話がございました婦人問題につきまして、ことにことしが折り返し点でございまして、五年間の世界行動計画、それに基づいて作成されました国内行動計画を国際的にレビューをする、その会議がデンマークで開かれることは、ただいまお話がございましたとおりでございます。外務省といたしましても、高橋展子さんに初代婦人大使、デンマーク大使ということをお願いいたしのも、一つはこういう会議があるからでございます。ことにデンマークは、外交官、政治家、非常に女性の割合の多い国でもございます。私どもとしても、日本の婦人の活動の分野がますます広がっていくことを、国際面で特に日本の婦人がだんだん有力な活動をするようになっておりますので、この点についてはできるだけお手伝いしたいというふうに考えております。この国連の活動につきましては、もちろん政府としてもできるだけのお手伝いをするという方向でやってまいっておるわけでございます。
  329. 村田敬次郎

    ○村田委員 この婦人問題についての総合的な責任機関は総理府であります。小渕長官を中心にして国内行動計画を進めておられるわけでございますが、この婦人対策についての総合的なお話をひとつ要点だけ短時間で言っていただきたいと思います。
  330. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 今日、婦人は社会の多くの分野に進出しておりますが、各分野での政策、方針の決定に参画する婦人はまだ少数でございます。このため、婦人問題企画推進本部は昭和五十二年六月、国内行動計画前期重点実施事項の一つといたしまして、婦人の政策決定参加を促進する特別活動の実施を決定いたしまして、行政への婦人の参画の拡大等を強力に進めているところでございます。  昨年十月、この特別活動のこれまでの進捗状況を踏まえ、今後一層の成果を挙げるため、女子公務員の採用及び登用、審議会等の委員への婦人の登用等につき積極的に取り組むよう、各省庁に対し格段の協力要請を行ったところでございます。その結果、国の審議会等委員のうち婦人委員の割合が、昭和五十年一月の二・四%から四・〇%となり、昭和五十四年度国家公務員の採用、上級職(甲)試験に基づく女子の採用内定者は二十三人となり、国家公務員採用試験のうち、女子の受験を制限している職種につきましても、昭和五十四年度から運輸省所管の海上保安学校学生など五職種が女子に開放され、さらに国税専門官、皇宮護衛官について人事院において昭和五十五年度から女子の受験を認める方向で検討が進められているなど、具体的成果が見られるところでございます。今後とも国の行政のみならず地方公共団体、民間諸機関に対し、この活動の趣旨を十分徹底させ、国内行動計画前期重点事項にふさわしい成果を上げるよう努力をいたしてまいりたいと存じております。
  331. 村田敬次郎

    ○村田委員 ぜひひとつ総理府は、その相互連絡機関でもあり、その中心になって活動されるところでありますから、小渕長官がんばってひとつ婦人問題を進めていただきたいと思います。  次に、法務大臣にお伺いいたしますが、相続に関する民法改正の要綱試案というのが練られておるということでございます。法制審議会の民法部会あるいは法制審議会の身分法小委員会等ですでに試案を検討しておるということを聞いておりますが、女性の相続、妻の相続についての民法改正のポイントをひとつ簡潔におっしゃっていただきたいと思います。
  332. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 お話しのように、ただいま法制審議会において民法改正をやっておるわけでありますが、その中に配偶者の相続分を増額すべきであるという項目がございます。成案を得ましたら本国会で成立させたいと思いますが、民事局長が来ておりますから、その点を御説明申し上げます。
  333. 村田敬次郎

    ○村田委員 ひとつポイントを簡単に言ってください。
  334. 貞家克己

    貞家政府委員 ただいま法務大臣からお答えがありましたとおり、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会の答申をわれわれ速やかに得たいと期待しているところでございます。実は今月の十二日に、法制審議会の下部機構でございます民法部会で法律案要綱案を決定いたしまして、それに基づきまして近く法制審議会の総会で審議がされ、答申を得たいというふうに考えているわけでございます。  そこで、まだ法制審議会の答申をいただいておりませんので、法律案の確定的な内容を申し上げることはできないことをあらかじめお許し願いたいと思いますが、民法部会で決定いたしました要綱案に即して御説明申し上げますと、改正点の大きな柱は、配偶者の相続分の引き上げと寄与分制度の新設でございます。つまり、相続分につきましては、現行民法において配偶者は常に相続人となるわけでありまして、子供でありますとか、直系尊属でありますとか、兄弟姉妹というような者と共同して相続するわけでございますけれども、現行法によりますと、その相続分、つまり分け前でございますが、それは、配偶者は子供と一緒に相続するときには三分の一、直系尊属とともに相続するときは二分の一、兄弟姉妹とともに相続いたします場合には三分の二というふうに定められているわけでございます。それを、今度の改正におきましては増額いたしまして、配偶者の相続分を引き上げまして、子供とともに相続するときには二分の一、直系尊属とともに相続するときは三分の二、兄弟姉妹とともに相続するときは四分の三というふうにそれぞれ引き上げようというのがその骨子でございます。  いま一つは、共同相続人間の公平を図りますために、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした相続人に対しまして相当額の財産を与えることができるようにするという、いわば相続人間の公平を図るための寄与分の制度を設けようという点、以上の二点が主要な柱でございます。
  335. 村田敬次郎

    ○村田委員 時間がありませんので、法務大臣から簡潔にお聞きしたいのですが、いま民事局長がお述べになった民法の相続規定の改正は、成案を早急に得てこの国会に提出をされる予定であるかどうか、はっきりと御答弁をいただきたい。
  336. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ぜひこの国会に提案をいたしたいと努力いたしております。
  337. 村田敬次郎

    ○村田委員 次に、労働大臣にお伺いをいたします。  婦人の雇用の問題を調べておりましたら、これは非常に男女差別が激しいということがわかったわけでございます。給与においてもあるいは婦人の若年定年制の問題にいたしましても、いろいろな問題点が多過ぎる。それで職場における男女の差別がこんなに多いということに実はびっくりしたわけでございますが、これについて労働大臣はどういうふうに考えておられるか。役職への進出あるいは婦人給与の引き上げ、または婦人労働の条件をもっともっとよくするということについて、時間がありませんので簡潔に御答弁を願います。
  338. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 今日、五十四年度で婦人雇用者の数は千三百十万人、雇用者の三分の一に及んでおりまして、しかもその中身も、未婚者から既婚者へと非常に大きな変化を遂げてきております。いろいろと実態、御指摘のようなところがございますが、簡潔に政府委員から少し御説明申し上げますので、お聞き取りをいただきたいと思います。
  339. 村田敬次郎

    ○村田委員 高橋さん、恐縮です。簡潔にお願いします。
  340. 高橋久子

    高橋(久)政府委員 お答え申し上げます。  婦人の職業の実態につきましては、先生がいまおっしゃいましたように、いろいろとまだ差別的な取り扱いが見られます。賃金につきましても、男女の格差は縮小してきたとは言いながらも、まだ女子の就業分野が男子と違っていることや勤続年数が短いということを反映いたしまして、まだかなり大きゅうございます。また、管理的な職業に従事しております女子は、実数ではふえてきておりますけれども、その割合は非常に少ないという現状でございます。そのほか、採用、配置、教育訓練、昇進昇格、定年退職、いろいろな面でまだ男女差が見られるという残念な状況でございますので、私どもはこのような状況を考えまして、労働基準法に基づきまして同一労働同一賃金を徹底していくということ、あるいは男女別の定年制や結婚退職制等を解消するために年次計画を立ててその改善を進めております。そのほか、男女平等の促進の機運醸成を図っていくということで婦人労働旬間を実施したりしております。このようにいろいろ努めておりますが、今後とも職場における男女平等の問題につきましては、婦人少年行政の最重点といたしまして努力をしてまいるつもりでございます。
  341. 村田敬次郎

    ○村田委員 雇用の問題、それからまた若年定年制、結婚退職制というようなのは、本当に日本のような進んだ民主主義社会にまだこんな状況が広く行われておるのかと思われるような実態であります。ひとつ労働省、そしてまた総理府、関係各省がよく相談をしていただいて、雇用における男女平等をぜひ進めていただきたいと思います。  婦人問題と直接の関係が直ちにあるわけではございませんが、政府は現在、新たな祝日として家庭の日を設けたらどうかという提案をしておられるようであります。これについて政府では、これは私的な諮問機関でございますか、総理府に設けて検討をするということでありますが、この家庭の日新設についての考え方を総務長官とそれから官房長官にお伺いしたいと思います。
  342. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 家庭基盤の充実は大平内閣の大きなテーマの一つでございます。家庭基盤の充実は総合的な施策によらなければならないことでございまして、祝日家庭の日をつくるだけで事済むものではなかろうと思いますが、一方、家庭の日を設けることによって、日本型の福祉である三世代の家族の新しい見直しというようなものも、この日を設けることによっていま一度見直すべきだという主張もまた強いものでございます。したがいまして、総務長官のもとに私的な各界各層の有識者による懇談会を設けて検討を進めてまいりまして、実はきょう二回目の懇談会を開いておったところでございまして、まだその結論を得ておりませんが、懇談会の考え方を十分踏まえながら最終的な結論を得てまいりたい、このように考えております。
  343. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま総務長官からお答えになったとおりでございまして、全然同意見でございます。
  344. 村田敬次郎

    ○村田委員 もう少しはっきりと言っていただきたいのですが、検討するだけでは答弁にならないわけです。与党の質問でありますから、小渕総務長官、お若いのですから、もっとはっきりと、やります、こう言ってくれませんか。
  345. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 申し上げましたように、懇談会で各界各層の意見を承っておるところでございますので、まだその結論を得ておらない状況でございますし、私が御諮問申し上げておるところでございますので、はなはだ申しわけありませんが、皆様方の御意見を取りまとめて、その上に立ってこの日の制定について考えてまいりたいと存じます。
  346. 村田敬次郎

    ○村田委員 官房長官、前向きに対処すると言ってくれませんか。
  347. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  総理府に懇談会を設けたということは、皆さんの意見を聞いて、できればやりたいということで懇談会を設けたわけでございますから、そこでその趣旨は御了承願いたいと思います。
  348. 村田敬次郎

    ○村田委員 最近はウーマンリブが非常に落ちついてまいりまして、マスコミではとんでる女とかキャリアウーマンというような流行語がはやるようになった。そして、とんでる女の向こうを張って、昨年は紅白歌合戦のときに「関白宣言」という歌が大変にヒットをしたそうでありますが、この「関白宣言」の内容というのは、実は亭主関白であるかというとそうではなくて、女性パワーの攻勢に対する反撃と思ったら、実は形ばかりの関白で、心底から女房にほれ、甘えているかわいい亭主ぶりを歌っているにすぎないと、こうある評論が書いておりました。まさに実態的にはもう女の時代に移りつつあるということがわかるわけでございますが、とんでる女ではなくて、じみちに、着実に脚下照顧をする女性として、ひとつ女性施策を進めていただきたいと思います。  それでは、最後にオリンピック問題について伺います。  これはいま行われておる米ニューヨーク州レークプラシッドの第十三回冬季オリンピック大会のことではありません。またモスクワ・オリンピックのことでもありません。それは、一九八八年第二十四回オリンピック競技大会の開催都市の決定についてのお伺いでございます。  一九八八年といえばいまから八年後でございますが、昭和六十三年の第二十四回オリンピック競技大会の開催都市をひとつ名古屋及び中部圏に持ってきていただいたらという提案が地元にございます。昭和五十六年の九月に西独のバーデンバーデンで開催されるIOC総会において、この開催都市は決定をされることになっております。そして一方、IOCへの第二十四回大会開催の申し込みは、それに先立つ昭和五十六年三月だということになっておりまして、名古屋がIOCへ第二十四回大会開催の申し込みをするのに当たっては、政府の了解が必要とされております。この政府の了解は、条規により遅くとも昭和五十六年二月ごろまでにはなされなければならないわけでございますが、地元としては、開催の誘致のためにいろいろの手はずを考えまして、一日も早く政府が閣議了解をしてほしいということを希望しております。本年一月四日ですか、大平総理が伊勢神宮参拝をされた際に、地元の代表者の人々、愛知県の仲谷知事、名古屋商工会議所の会頭を中心に要望しておるわけでございますが、これは中部圏全体のいわば大きなモメントになっておるわけでございます。  それはなぜなれば、オリンピックが先年東京で開催をされた、そして大阪では万国博が開催をされたということから、中部圏の東、西に対する谷間という意識が非常に高まっておりまして、何としても地元のいわば大きな飛躍のために国際的行事を行いたいというような希望が猛烈に芽生えておるわけでございます。したがって、ことしの春、できたら政府が了解をしてほしいという陳情を大平総理に地元がいたしましたところ、大平総理は、地元と相談してできるだけ早く結論を出したいというように答えたと伝えられております。この問題について、ひとつぜひ政府各省の了解を進めていただきたいわけでございますが、まず文部大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  349. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 お答えをいたします。  地元で非常に熱心に準備その他を進めておられますことは、私もよく承知をいたしております。また、バーデンバーデンで開かれますIOCに対しましてどういう意思表示をするかということ、日限等の問題もあることも十分承知をいたしておるわけであります。ただ、御存じのとおりに、非常に大きな事業でございますし、また、いま承っております段階でも、具体的な数字その他の詰めはまだはっきりいたしておりませんけれども、膨大な施設費等の要望もあるように見受けられるわけでございます。したがいまして、それらの問題等固まりまして、大体の姿がはっきりしてまいりました場合に、非常に多くの関係省がございますので、十分相談をいたしまして、時間におくれないような準備をやらさなければいかぬ、かように考えておる次第でございます。
  350. 村田敬次郎

    ○村田委員 バーデンバーデン総会で名古屋開催が決まったら、国際大会開催の実績をつける意味で、学生のスポーツ祭典であるユニバーシアード大会を誘致をして、運営のリハーサルを行いたいというような計画も地元にはあるようであります。  私が特に申し上げたいのは、これは地域エゴから申し上げておる希望ではない、日本全体の地域開発計画の中から、東京でオリンピックが開催をされ、大阪で万国博が開催されたら、いまいわゆる三大都市圏という中で一番取り残されておる、しかも日本で一番面積も広い、人口は三大圏の中で一番過疎である中部に、ひとつぜひそういった新しい開発の機会を与えていただきたいという意味で申し上げているのです。官房長官どうですか、総理大臣の代理としてお答えください。
  351. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま文部大臣からお答えしましたように、愛知県、名古屋市、名古屋の市民の方、その周囲の地方公共団体が非常に熱心に誘致運動をしておられますことは私もよく承知しております。国際的な大事業でございますし、片一方にはまた非常に厳しい財政事情もこれあるわけでございますが、何とかなるべく金がかからぬような考え方でひとつ案をつくってもらって――茨城で国際科学技術博覧会を実は決めたわけでございますが、あのときにもなるべく金のかからぬようにということで、みんなで相談してやったわけでございます。ひとつ誠意を持ってこれは検討してまいりたいというふうに思うわけでございます。
  352. 村田敬次郎

    ○村田委員 ぜひひとつそういうふうにお願いをしたいと思います。  通告では土地問題、住宅問題それから地方の都市と大都市の過密問題等についてお伺いをするつもりで御通告を申し上げておったのでございますが、残念ながら時間が来てしまいました。  きょうはこれで終わります。(拍手)
  353. 田村元

    田村委員長 これにて村田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会