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1980-02-09 第91回国会 衆議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月九日(土曜日)     午前九時三十三分開議  出席委員    委員長 田村  元君   理事 小此木彦三郎君 理事 瓦   力君   理事 小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君       荒舩清十郎君   稻村左近四郎君       越智 伊平君    奥野 誠亮君       狩野 明男君    片岡 清一君       金子 一平君    倉成  正君       小山 長規君    始関 伊平君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       浜野  剛君    福家 俊一君       藤田 義光君    松澤 雄藏君       村山 達雄君    渡辺 省一君       阿部 助哉君    稲葉 誠一君       大原  亨君    川崎 寛治君       兒玉 末男君    野坂 浩賢君       八木  昇君    安井 吉典君       横路 孝弘君    市川 雄一君       近江巳記夫君    岡本 富夫君       坂井 弘一君    中島 武敏君       東中 光雄君    松本 善明君       大内 啓伍君    岡田 正勝君       中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         総理府人事局長 亀谷 礼次君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         公正取引委員会         事務局審査部長 妹尾  明君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         行政管理庁長官         官房審議官   中  庄二君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         沖繩開発庁総務         局長      美野輪俊三君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   田中 宏尚君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         食糧庁長官   松本 作衞君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省生活         産業局長    児玉 清隆君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 石月 昭二君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松本  操君         海上保安庁長官 真島  健君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         労働省職業安定         局失業対策部長 加藤  孝君         建設省住宅局長 関口  洋君         自治大臣官房審         議官      久世 公堯君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         原子力安全委員         会委員長    吹田 徳雄君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     渡辺 省一君   江崎 真澄君     越智 伊平君   金子 一平君     浜野  剛君   塩崎  潤君     狩野 明男君   藤田 義光君     片岡 清一君   正木 良明君     市川 雄一君   矢野 絢也君     近江巳記夫君   木下 元二君     松本 善明君   工藤  晃君     東中 光雄君   榊  利夫君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     江崎 真澄君   狩野 明男君     塩崎  潤君   片岡 清一君     藤田 義光君   浜野  剛君     金子 一平君   渡辺 省一君     荒舩清十郎君   市川 雄一君     正木 良明君   近江巳記夫君     矢野 絢也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十四年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十四年度政府関係機関補正予算(機第一  号)      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  この際、倉石法務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。倉石法務大臣
  3. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いわゆる防衛庁秘密漏洩事件につきまして御報告を申し上げます。  元陸将補宮永幸久ほか二名に対する自衛隊法違反事件については、東京地方検察庁において、去る一月十九日、警視庁公安部から事件送致を受けて以来、鋭意捜査を続けてきたところでありますが、昨八日、宮永幸久並びに現職自衛官である香椎英一及び大島経利の三名を東京地方裁判所起訴いたしました。  起訴事実は、一、宮永昭和五十四年八月三十日ころ、大島に対し、防衛に関する秘密を漏らすよう教唆した事実、二、大島宮永教唆に基づき同年九月二十六日ころ、同人に秘密を漏らした事実、三、宮永及び香椎が共謀して同年十一月末ころ、大島に対し、防衛に関する秘密を漏らすよう教唆した事実及び四、大島が右両名の教唆に基づき同年十二月初めころ、香椎秘密を漏らした事実であり、いずれも罪名は自衛隊法違反であります。  本件に関しては、犯行の動機、目的、態様を初めとして、秘密が漏洩した期間、漏洩した秘密の内容、これらの秘密宮永を介してどこに流されたか等の背景事情についてもできる限りの捜査を尽くした上、宮永ら三名を右の事実により起訴したものであり、これらの事情については、起訴事実の立証に必要な限度においていずれ公判廷で明らかにされるものと存じます。  以上、御報告申し上げます。
  4. 田村元

    田村委員長 大平内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大平内閣総理大臣
  5. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ただいま法務大臣から報告のありましたとおり、先般発覚した秘密漏洩事件宮永ほか二名は、昨日起訴されました。  厳正な規律秘密保全が強く要求される自衛隊の内部から、かかる不祥事件が発生しましたことはまことに遺憾であり、私として深くみずからの責任を痛感し、国会国民に対し心からおわび申し上げます。  私は、本事件を厳しく受けとめ、さきに防衛庁における規律の振粛と秘密保全体制の総点検を指示したところでありますが、総点検の結果を踏まえて、二度とこの種の事件を再発させないよう万全の措置をとり、自衛隊に対する国民期待信頼回復に努力する決意であります。
  6. 田村元

    田村委員長 昭和五十四年度一般会計補正予算(第1号)、昭和五十四年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和五十四年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三件を一括して議題とし、質疑に入ります。安井吉典君。
  7. 安井吉典

    安井委員 ただいま法務大臣から報告、そして大平総理から弁明があったわけでありますが、一応そういう経過を、つまりそういう総理大臣の言明があったということをひとつお聞きだけしておきます。  ただ、一点だけ総理に伺っておきたいのは、これで責任追及の問題はけりがついた、だからあとは処理の問題として、罰則を強化したり機密保護法をつくったり、そういうような方向に問題を持ち込まれては困ると思います。そういうようなお気持ちがないということをこの際明確にしていただきたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ただいま申し上げましたとおり、この事件を厳しく受けとめまして、政府といたしましては機密保持体制の総点検をいたすこと、自衛隊の士気の振粛に努めるということを通じて、国民自衛隊に対する期待信頼回復に努めることが私どもがなさねばならぬ仕事でございまして、これに関連づけて、これを理由といたしましてもろもろ立法措置を構えるというようなことをお願いするつもりは持っておりません。
  9. 安井吉典

    安井委員 ただいまの法務大臣並びに総理の御発言については後刻党の委員からさらに質問をすることにして、私はきょうの補正予算に関する総括質問に移ります。  今度の五十四年度補正予算について税の自然増収一兆九千億円の計上でありますが、これはかなり大きな額であります。当初予算のときの見積もりの誤りではないのか、あるいは隠し財源として大蔵省が持っていたのではないかという感じも受けるわけでありますが、会計締め切り期までには、いまの趨勢からいってもっと大きな増収額が出るのではないかとも思います。お見込みはどうですか。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十四年度税収につきましては、最近までの収入実績政府経済見通し等基礎として見込みまして、当初予算額に対して一兆九千九十億円の増収が見込まれましたので、今回の補正予算案において同額を補正増として計上したところでありますが、ただいまの質問につきましては数字的な問題もございますので、事務当局からすぐお答えさすことにいたします。
  11. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お尋ねの一兆九千九十億円の自然増収でございますが、これは実は発生的にと申しますか、二つに分けて考えることが適当であろうかと思うわけでございます。五十四年の当初予算をはじきましたときに、五十三年度税収見積もりは五十三年度の当時の実績見込みによってはじきました。その段階では五十三年度の当初予算に対して五十三年度税収は総体として異同なしと見ておったわけでございますが、その後五十三年の秋以来の景気の好況によりまして法人の収益がふえてまいりました。法人税が六千五百億円増収になりました。それから土地の移動が思ったよりも大きく動きまして、譲渡所得税が千六百億円ぐらい入りました。かれこれ合わせまして五十三年度ですでに七千七百五億という自然増収が出ておったわけでございます。  ただいまのお尋ねの中にもございましたが、また大臣お答えの中にもございましたのですが、経済見通し伸びを使います場合に、伸びとして見ておるわけでございますから、五十三年度実績がふえてまいる、それによって自然にふえていく分が九千億あるわけでございます。残ります一兆円、それが五十四年度経済見通し異同によって生じてまいったということになると思います。それは五十四年度の当初予算をつくりましたときの雇用者所得伸びを七と見ておりましたのが、実績見込みでは、経済企画庁で御作成になりました資料に従いますと、八・四でございます。それから鉱工業生産は六と見ておりましたのが八でございます。卸が一・六と見ておりましたのが一二・一でございます。それから消費者物価四・九と見ておりましたのが四・七でございますから、これらから所得税給与にかかる源泉所得税法人税見込み等作成して伸ばしますと、所得税で五千九百九十億円、法人税が七千八百四十億円、あと大きく動きましたものは円レート輸入量等に関連いたします石油税関税でございます。これが石油税が千八十億、関税が千九百十億、あと消費の好調によりまして物品税が約千四百億円ふえております。それらを合計いたしますと、土台の増七千七百五億円に起因いたしますものと五十四年度経済見通しの修正に伴います分と合わせまして一兆九千九十億円になるというのが補正予算の積算の内訳でございます。
  12. 安井吉典

    安井委員 いまの問題はもうそれ以上詰めませんけれども、必要に応じて財源がぼろぼろ出てくるという感じを受けるわけです。必要のないときは財源はないないということで抑えられていく。そういう何かからくりがあるのじゃないかという疑いを持たれざるを得ないような状況であるということを一つ指摘しておきたいのと、それからもう一つは、今度も五十四年度予算に計上されている公共事業費を五%執行留保するという閣議決定があったそうです。実はこれは毎年こういう仕組みでやっているわけですね。当初予算を組むときに、私たちは公共事業をもう少し詰めた方がいいのじゃないかという主張をすると、いやもうこれだけはどんなことがあっても必要なんですからこのとおりお認めくださいと言う。ところが、年度の終わりになったら五%縮減とか一〇%縮減とかと言う。ですから、一番初めの予算編成のとき、いっぱい地方から出て大騒ぎをして公共事業どうだなんて組んだやつはあのときだけのお祭りであって、もう補正予算段階になったらどこか別の世界へ行ったような、静かに五%削減がされる。これはことしだけじゃないわけですよ。去年もそうだし、おととしもそうだし、その前も、毎年それをやってきているわけですね。削減をされて、財政再建の厳しい状態ですから、節約してもらうのはいいのですけれども、審議をさせられる国会の身になってください。私はその点、閣議公共事業費がどうしても必要だという決定をしながら後になってこれは要りませんから削りますというその感覚を疑いたいと思うのですが、どうですか。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 先般閣議決定いたしましたいわゆる公共事業費の五%の留保の問題の御指摘でございます。このことしとりました留保措置というのは、おのずから例年いわゆる公共事業をてこにして景気の刺激を図らなければならないというときは、年度末の契約率が、一〇〇%とは申しませんが、一〇〇%になるようなもろもろ準備をして努力をいたすわけでございます。ことしの場合は、先般物価関係閣僚会議がございまして、そのとき決定した方針に基づいて、やはり公共事業費物価に与える影響というものを配慮し、そこで留保措置をとる、しかしながら、これはいつの時点でも状況に応じて弾力的に執行に移せる準備は万々整えた上で留保措置を行っておるという性格のものでございますので、経済運営全体の動向の中でそのような措置をとらしていただいた。毎年毎年五%やっておるわけじゃございません。いわゆる促進の年度もありますれば、またある程度セーブする年度もございますので、まさに経済の弾力的な運営の中における予算執行措置として、あくまでも年度内留保という形で五%を決めたという背景でございます。
  14. 安井吉典

    安井委員 大蔵大臣としてはそれより説明の方法はないと思いますが、不自然さを指摘しておきます。  それから、一兆二千二百億円の国債発行削減するということになっているようですが、自然増収の大きさからいってもっと削れるのではないかという気もするわけです。そして特に五十四年度の公債の未発行額年度内にまだあるのじゃないかと思うのですが、それはどれくらいですか。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 国債消化の具体的な数字でございますので、事務当局からお答えをさせます。
  16. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 五十四年度国債の未発行額は一月末現在で全体といたしまして三兆三千百二億円ということに相なっております。なお、二月はまだ発行いたしておりませんが、シ団引き受け十年債で八千億円を発行するということでシ団と話がついておりますので、これは二月中に八千億は発行される、こういうことに相なろうかと思います。
  17. 安井吉典

    安井委員 そのいま言われたそれで全部発行済み、終わるわけですか。
  18. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 なお三月がございますので、さらに残りは三月までに発行をする、こういうことになろうかと思います。
  19. 安井吉典

    安井委員 一月末の三兆三千億はあれですが、二月の八千億を発行しても、まだ三月に至っても二兆五千億もまだあるわけですね。そういう発行が可能なのかどうか。それと、現在の条件で中期債のスムーズな消化はむずかしいのではないかという金融筋の話もあるのですが、どうでしょう。
  20. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 なお、中期債のうち一兆円は運用部が引き受けることになっております。これは年度末までに運用部が引き受けるということでございますので、残りは何とか消化は可能である、こういうふうに考えておるわけでございます。(「それじゃ、しまいには日銀引き受けじゃないか」と呼ぶ者あり)
  21. 安井吉典

    安井委員 日銀引き受けという話が出ましたが、どんなことがあってもそんなばかなことがないように御留意を願いたいが、はっきりしためどをさらにお立てをいただきながら運営をしていただきたいと思うわけであります。  次に、地方財政との絡みについて伺います。  大蔵省は六十年度までの財政収支試算を出したわけですが、自治省地方財政収支試算を国の計算に準じて出していただきたいと思うのですが、自治大臣、どうですか。
  22. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 国の財政収支試算も出ておりますので、それを基礎にいたしまして目下作成中でございます。大体二月中にお出しできるかと考えております。
  23. 安井吉典

    安井委員 五十五年度地方財政計画では歳入、歳出の規模は四十一兆六千億円余り、久しぶりに国の一般会計規模より下回り、前年度と対比いたしますと、国は一〇・三%の伸び率であるのに対し、地財計画では七・三%の伸びで、国の伸びよりも低いわけです。地財計画全体でも七・三%の伸びにとどまって、これはもう昭和三十年以後の低い伸びということになっています。  中身を見ますと、地方税は一六・五%の増ではありますが、地方交付税不足財源の操作を行って八兆七百七十五億円と、前年当初に比べて五%増ということにはなっていますけれども、実はいま審議の対象になっております五十四年度補正で、五十四年度交付税は六千三百九十二億円追加されたわけです。ですから、八兆三千二百八十七億円ということになるわけなので、五十四年度よりも五十五年度交付税の実額が少なくなるのではないかという感じも受けます。その上、地方債の方も前年度四兆九千億円余りあったのが、ことし五十五年度は四兆四千億円余りで、九・七%地方債が減る。ですから、形の上では地方財政が総体的には健全化されたようには見えますけれども、しかし、税収の増加が余り見込めない県や市町村があります。そういうところは起債の充当率も下げられるわけですから、国の財政以上に厳しい財政運営を強いられることになると思うのですが、それはどうでしょう。
  24. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御説のように、地方の財政計画はことし初めて国と逆転をしたわけです。国の方が一〇・三%伸びておる、地方は七・三じゃないか、こういうことでございますが、国の方の一〇・三の中身を見ますと、やはり交付税に割かなければならぬ、あるいは国債償還費に充てなければならぬ、こういうものをのけますと、かねがね大蔵当局からお答えがございますように、五・一%でございます。それで、地方の方の七・三という中から公債費に充てる金を引きますと、たしか六・六%ぐらいでございまして、まずまずこの程度であれば、形の上では逆転をいたしましたけれども、今日のような厳しい財政状況のもとでございますから、財政再建の第一歩ということで歳出全般の節減合理化ということをやったわけでございまして、地方団体としても、この程度の財政計画であればまずまず地方団体としての仕事は十分やれるのではなかろうか、かように私自身は考えておるわけでございます。  なお、数字的な点につきましては事務当局から答えさせたいと思います。
  25. 安井吉典

    安井委員 いや、結構です。私はきょう総体論をやりたいと思って、事務当局の詳しい御説明はまた別の機会にお聞きをしながら、さらにお尋ねをしていきたいと思います。  もう一つ、五十五年度地方債の元利償還金が三兆七百六十六億円、前年度より実に一六・六%も増加しておりますね。それだけ地方財政の総体的な硬直化が進んだということにもなるわけで、年度末の地方債の残高は二十八兆九千十九億円と書かれております。この地方財政も借金体質、国と同じようにそういう状況になっているというのが、将来の運営のかなり重荷になるのではなかろうかとも思うわけであります。  そういう中で私が一番心配しているのは、五十六年度以降において地方財政を再建するためにはもう増税よりほかにないんだというふうに自治省が考えておられるという話を漏れ聞くわけです。実は一般消費税という問題は、大蔵省サイドの国税の問題だけではなしに、その一部が地方消費税という形で地方財政に回っていくのだという仕組みで構想されていたときがあるわけです。ですから、どうも新しい増税構想なるものが、大蔵省サイドの一般消費税の待望論と一緒になって出てきはしないかという心配をするわけです。五十五年度までは一般消費税はいたしませんと、まあ五十五年度は過ぎた、いま現実の問題になっているわけなんだが、五十六年度以降について大蔵大臣も明言していないものですから、自治省も同じように、そういうような気持ちを持っているんじゃなかろうかという推測もあるわけでありますが、どうでしょう。
  26. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御説のように、地方財政も厳しい状況が続くと思います。五十五年度末の地方債の残高がやはり二十九兆円前後、これは普通会計債の残高でございますが、それ以外の残高が十七兆ぐらいですか、それくらいありますし、なお地方財政の場合には、それ以外に交付税の中でずいぶん借金をしておりますから、やはり国と同じように地方財政がまことに厳しい状況にあるということは、御指摘のとおりでございます。  そこで、増税を考えておるのじゃないか、こういう御質問でございますが、私どもがやはりやるべきことは、何といっても経費の節減、合理化、重点的な経費の使用、行政の改革、合理化、こういうようなことで、まずともかく高度成長時代に、言葉は悪いですけれども、水ぶくれをしておる面が否定できません。こういうような点についてできるだけ、ともかくこの際やってみようということで、地方団体と協力をしてその線でまず努力をいたしたい。それ以降のことにつきましては、国の財政当局、大蔵大臣から先般来御答弁を申し上げておるとおり、これと歩調を合わせて考えていきたい、かように考えております。
  27. 安井吉典

    安井委員 次に、外交、防衛の問題に移ります。  この間、外務省欧亜局の兵藤東欧第一課長が北海道で、北方領土についての講演会で話されたという記事が新聞に出ていましたが、ソ連がアフガニスタンに軍事介入したというその法律的な根拠は、ソ連とアフガニスタンの両国の間の善隣協力条約の第四条、両国の安全と平和の維持に危険な場合、情勢改善にお互いに接触するという規定がある、この規定によってソ連軍はアフガンに介入したんだ、こういう説明がされています。ところが、いま読みましたこの第四条と同じ規定が、ソ連が日本に示して締結を要求してまいりました日ソ善隣友好条約の第五条にあるわけですね。同じ規定があるわけですよ。ですから、日本が善隣友好条約にそのまま乗らなかったというのは正しかったという講演であるようであります。  私は、そのお話をどうこう言うわけじゃありませんけれども、やはりアフガニスタンの問題はアフガニスタン人に任せるべきであり、いかなる理由があってもほかの国が介入するということは間違いだと思います。それは、国連での決議に対して予想以上の多数の国が参加をしたということでも私はこれは明らかではないかと思います。ですから、いまのような事態が高じて、アフガニスタンと中東をめぐる危機に発展をし、これは際限なく深まり、広がる心配があります。ソ連が出兵のときに強調をした言葉、ソ連の軍事援助を必要とした原因が除去されるなら直ちに撤退する、こういう言葉があったのを私たちも覚えているわけですが、ソ連軍に対するゲリラ作戦がなかなか激しいようだし、そういうような事情もあって、なかなか撤兵がむずかしいような状況もあるのかもしれませんが、それが居座れば居座るほどアメリカ側の硬直化が進んでいく、もう取り返しのつかない戦争に陥るおそれもあるわけです。ですから、ソ連軍のアフガニスタンからの撤兵計画を明確にして、一日も早く平和五原則の根本に立ち返って内政不干渉の原則を守って撤兵してほしいという願いを私たちも率直に持っています。そのためにもう少し政府も努力をすべきではないか。外務大臣、どうですか。
  28. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま安井委員の御指摘の点は、私も全く同感でございまして、このアフガン進駐という問題がきわめて不安定な状態を世界的につくり出しておることは事実でございます。日本側としても、いろいろな機会にソ連側に申し入れをし、あるいは、安保の討議のときに御指摘のような点についての日本政府の立場を表明してきておるわけでございますが、今後もいろいろな機会をとらえてそういう努力を続けたいと考えております。
  29. 安井吉典

    安井委員 私は、日本政府がこれからこの問題でとるべき態度というのは、直接にソ連に撤兵を強く要求するという具体的な行動をとるということが一つと、それからもう一つは、ソ連が撤兵しにくくなるような状況をつくらないということだと思います。幾ら撤兵しようといったって、アメリカの方がエスカレートしてどんどんいけば、なかなかそれは出られませんよ。だから、撤兵をしにくくなるような状況をつくらないという努力、これをもう少し日本政府は外交努力としてやるべきじゃないかと思います。重ねて伺います。
  30. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この問題につきましては、一つには、すでに軍事介入がアフガニスタンについて行われておりますので、そういう軍事介入がソ連にとってコストが高くつくということをやはり悟らせるということが一面において必要かと考えられます。同時に、緊張がエスカレートしていく、加速していくことは世界的に避けなければならないことだと考えるわけでございまして、この両面をにらみ合いながら日本としても必要な手を打っていくということになるかと思います。
  31. 安井吉典

    安井委員 なかなかむずかしい外交戦術だと思いますけれども、そういう努力が私は必要だと思う。  そして、ソ連もソ連だけれども、アメリカの対ソ制裁といいますか、それはまさに異常なエスカレートぶりだと思います。大統領選挙も絡んでいるのかもしれません。ペルシャ湾は武力をもっても守ると言ってみたり、まさに異常という言葉が当たるような状況ではないかと私は思います。  その頂点に位置づけられるのが、例の一月二十九日のブラウン国防報告だと思います。対ソのアメリカ、欧州、日本の軍事面での共同計画努力の必要の強調だとか、日本や日本周辺の米軍の有事における世界の他の地域への出動の可能性、いわゆるスイング、そのほか西側軍事力の統合という力の論理のみを強調しているという感じを受けるわけです。特にアメリカの対日要求は、自衛隊にアメリカの世界戦略の一端を担え、海上自衛隊の対馬、津軽、宗谷三海峡封鎖など防衛努力を拡大せよ、防衛費を増額せよ、対ソ制裁への協力をせよ、大型空母二隻をつくってアメリカに貸せ、手薄な太平洋の軍事力増強の一部を負担してくれ、特に中東と日本を結ぶ海上ルートの防衛を強化してくれ、まさにとどまるところを知らないような要求のつながりであります。最近の外電でも、アメリカの日本を見る目が急速に変わってきて、日本の特殊体質は容認できない、西側の主要国として政治、経済防衛で日本は応分の役割りを果たせと、とにかく加速度をもってきているような感じがあります。これはどうなんですか。外務大臣、実感として受けとめていますか。
  32. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御指摘のような点は、私どももいろいろな機会に耳にしております。たとえば日米の経済力、GNPの比率がいまから二十年ぐらい前は十対一という比率だったわけでございますが、それが現在は二対一になっておる、十対一の経済力が二対一の経済力に変化した状態において、同じようなことでよろしいのかというような意見も聞かされたりすることがあるわけでございますが、日本の立場としては、やはり戦後日本の選んだ国の進むコースとして、平和憲法のもとで紛争に軍事的手段を使わないということを決意しておるわけでございまして、この基本的な決意を変えることは日本としてはできない。やはり一面におきまして日米安保というものに依存しつつ、他方において、もし万一日本の国土に外から侵略がある場合にこれを有効に撃退できる効果的な自衛力、この二本の柱で事態に対処してまいる。それから、アメリカ側にただいまのような特に日本の経済力の向上に伴いまして不満があることは事実でございまして、これがフリーライド、ただ乗り論として、先ほど安井委員もお挙げになりましたようないろいろな形をとって出てまいるわけでございまして、これについてはやはり日本としても、さらに今後対処の方策を考えてみる必要があろうかと存じます。
  33. 安井吉典

    安井委員 大平総理、私はソ連のビヘービアがよくないことは明確だと思います。しかし、それに対するアメリカの態度もいささかエキセントリックだと思います。両方がこのまま推移したらエスカレートする一方で、戦争になってしまうおそれがある。ですから、そういう緊張の高まりの中にソ連とアメリカが次第に陥っていく、そういうことによって極東の平和も損なうことになり、日本の平和も阻害されることになるわけです。軍事衝突にならないようなあらゆる外交努力を重ねるべきではないかと思います。どうですか。
  34. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ソ連もアメリカも、世界の平和について責任を持つ二大勢力でございます。ただいままで両当局の言明を聞いておりますと、両方ともデタントの基本的枠組みを崩すつもりはないということを言っておるわけでございます。むしろ今度のような事件が起こるとデタントの枠組みを損なうおそれがあるからということが、世界の世論になっておるのではないかと思うのでございまして、私は、両大国が自重した行動をとられることを期待いたします。同時に、両当局が自重した行動をとることができる環境の形成に、わが国はわが国としてできる限りの努力を傾けるべきであること、仰せのとおりと思います。
  35. 安井吉典

    安井委員 ニューヨークタイムズのケナン論文で、アメリカのいまの行動は政治的な配慮を欠くといった過剰反応を批判する論文もあるようでありますけれども、なかなかアメリカの現状はそうなっていないように思います。  大来外務大臣に伺いたいわけでありますが、東南アジアの国々では日本の防衛力の増強を必ずしも歓迎していないのではないでしょうか。東洋平和のためならばと言って侵略戦争を重ねていったあの記憶が生々しいからだと思います。大来さんは一月二十三日の外人記者クラブの昼食会で、アメリカの要請である防衛費の拡大に消極的な意見を述べられて、その理由に、日本が余り大きな軍事力をつくりげるということはアメリカにとってもアジア諸国にとっても望ましいものではないと、そういう話をされたと伝えられておりますが、そのとおりですか。
  36. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもは、日本の防衛力はあくまでも日本国民の安全を守るということに集中すべきでありまして、それ以上のものになることはやはり周りの国々に対しても必ずしも好ましい影響を与えないという考えで、ただいま御指摘のようなことを申し述べたわけでございます。
  37. 安井吉典

    安井委員 私は賛成だと思いますね。  総理、私はこの委員会の部屋でもあるいは本会議でも、かつて全方位外交という言葉をそのときの総理大臣からずいぶん聞かされました。その全方位外交という日本の外交方針はいまはどうなったのですか。
  38. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 たびたび申し上げておるとおり、わが国の外交政策の基軸は、対米協調を軸にして、それで自由圏はもとよりでございますけれども、体制を異にする国々との外交も進めてまいるということでございます。つまり、そういう基本的な軸を踏まえた上で各国との協調を強めてまいるということを全方位外交というのであれば、確かにそういうことだと思うのでございますけれども、無原則に全方位に場当たりの外交を展開するというようなものではないと私は心得ております。
  39. 安井吉典

    安井委員 そうすると、福田総理のときの全方位外交と大平外交とは大分変わってきたということですか。
  40. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 前内閣の方針も、いま私が申し上げたようなことでおやりいただいておったと思います。
  41. 安井吉典

    安井委員 大分変わってきている、情勢の変化もあると思いますけれども、そういう印象を私は受けます。  とにかく、ソ連も困るけれども、しかし、力によってソ連に巻き返しをやるというそういうアメリカの世界戦略、その中に日本が巻き込まれては私は大変だと思います。とりわけ、アメリカとの間の日米安保条約というのは、日本を守るためだと私たちはいままで政府の答弁を聞いてきた。しかし、その日米安保条約があるために私たちはアメリカとずっと戦争までおつき合いをさせられなければならないということでは、これは私は困ると思うわけであります。やっぱり今日の日本の状況の中では、極東の平和と日本の安全を目指す日本の平和戦略というものを明確にしていく、そしてそれを世界に明らかにして、その実現のための最大の努力を払うことだと私は思います。平和憲法、専守防衛、非核三原則、そういう旗印の上で世界の戦争の火種をなくしていかに戦争にならないようにするかということ、そのことにあらゆる努力を払うということ、いま世界の情勢は激しく揺れ動いておりますけれども、その中で冷静な独自の平和戦略を私は打ち出すべきだと思います。どうでしょう、総理
  42. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 安井さんの仰せになること、よく理解できます。私どもといたしましては、国連憲章の示すところに従いまして、公正な関係を持ちながら、平和の維持、緊張の緩和に努めてまいることを基本としていかなければならぬと思います。日米安保条約もそうでございまして、このことは、日本並びに日本の周辺の平和を守るためのものでございまして、事実そのように、締結以来三十年近く経過してまいりましたけれども、そういう抑止力としての働きは十全に果たしてきたと思うのでございまして、日本が戦争に巻き込まれたというようなことは避け得たことは歴史的な事実であろうと思うのでございまして、今後もこの運営に当たりましては、それを踏まえた上で慎重に対処していくことは当然のわれわれの任務であると思います。
  43. 安井吉典

    安井委員 アメリカの要求でも、幾らアメリカとのつながりが深いからといったって、素直に受け入れられないものがたくさんあると思います。日本はアメリカと違って、アメリカが戦おうとしているソ連のすぐそばにあるわけですね、北海道から、日本海でつながっておるわけですよ。もし戦争になったって、アメリカは向こうの端にあるわけですからちっともけがをしないけれども、こちらはすぐ大変なことになる。ですからアメリカから、先ほども申し上げましたような無理な要求がどんどん来ても、大平さんは特技を持っているわけですから、あーうーというやつですね、こんな無理な要求だときたら、それこそあーうーというその特技で、その間に——大平さんのあーうーというのは私が評価をするのは、あのうちに何か新しい言葉が口の中にできて、ぼっと飛び出してくるんですね、後で。ですから、そういう場合は一呼吸置いて、冷静に考えて、きちっと返事をするということでなければならぬと思います。ただ、日本の平和戦略の基本については、これはあーうーでは困るんですよ。やはり平和憲法、非核三原則、専守防衛、その原則だけはきぱっとする、そういう姿勢を私はぜひ総理に御記憶願いたいと思うわけであります。  そこで、いままで私たちもここで防衛論議を続けてまいりましたけれども、かつての安保のころの、十年前あるいはその前からのあの論議とは大分違うわけで、あのころはもし戦争になったらという仮定の上の論争だったけれども、もういまやそれが現実になるかもしれない、そういうふうな状況の中でも大きな違いがあるし、さらにまた、あの昔の論議のときには、軍事技術の進歩やあるいは兵力の転用の容易さなどは、これはもう大分変わってきていますね。さらにまた、アメリカの防衛力のソ連からの劣悪さといいますか、ソ連の方がアメリカよりもずいぶん強くなっている、そういう現実も私たちは忘れるわけにはいかぬと思います。  それからもう一つは、あのベトナム戦争のときのわれわれの安保の論議と今度の米ソの対立の中における論議との違いの一つの大きな点は、沖縄からベトナムにB52あたりが飛んでいく、それらの問題に対してもいろいろ論議はしましたよ。しかし、ベトナムは国が小さいから沖縄に報復爆撃ができなかった。しかし今度はソ連ということになれば、大きな国で報復力を持っているわけですよ。だから私たちは、ベトナム戦争のときのあの安保論議といまの論議との違いというものをはっきり頭に置いて議論しなければならないのではないか、私はそう思います。ですから、ただソ連の脅威を種にして、ソ連の方は物すごく強いから日本の軍備を増強しなければいけない、そういう結びつけ、これでは私は問題の解決にはならぬと思います。それではかえって戦争への道へ傾斜していくばかりではないかと思うからであります。  そこで伺いたいのは、政府は、沖縄のアメリカ海兵隊、これがペルシャ湾に直接発進する、戦闘行動に出る、そういうようなことはあり得ないから、だからこれは安保条約に関係ありませんという答弁をいままで繰り返してきました。もっともこれは、私たちもずいぶん何遍も何遍もいままでやって、あのベトナム戦争のときだって、沖縄から出ていった飛行機が間違いなくベトナムに爆撃しているのですけれども、あのときでも政府は、いや、沖縄にいるあの飛行機は演習の命令を受けて空に飛んだんだ、飛んでいるうちにベトナムに行けというので向こうに行ったので、日本からはこれは移動で飛び立って、途中から戦闘に行ったのだ、だからこれは安保の事前協議に関係ありません、こういう答弁をぬけぬけとしていました。だからこの間うちのここの論議の移動の論議というのは、ああいう答えが出るのはあたりまえじゃないかという気が私はするわけでありますが、しかしアメリカは、沖縄にある第三海兵師団のほぼ半分を二週間以内に海上で急派する、そういう選択も固められておりますと、こう言っていますね。米政府筋からそれが明らかにされているわけですよ。そういう段階において、これは移動だから安保条約の事前協議の対象になりません、こういう説明をいかにここでされていても、これは政府とわれわれとの間の対話の中の確認でしかありません。あるいはアメリカでもそれでいいかもしれない。しかし、もしこれが相手のソ連からすれば、国会で、これは移動であります、出動ではありません、移動でありますとここで幾ら言ったって、現実の問題として向こうの方は、これは出動だと見れば、ばんと沖縄の爆撃に来るわけですよ。  だから、私たちがいままでもこの委員会で、極東の範囲の問題について多賀谷発言を中心にして議論をしながら、いま理事会に預けられてそれをやっておりますけれども、これは一つ重大な、何といいますか縛りとして大切だと思います。これはやらなければいかぬが、しかし事実問題もあるわけですね。ここでいかに国会で決めたって、沖縄に海兵隊がいて、それは明らかに韓国でも演習をして、アフガンに行くかもしれない、あるいはまたペルシャ湾に行くかもしれないということが明らかであれば、安保の解釈にかかわりなく向こうの方はばんと来るかもしれない。その事実関係の中にあるという事実を私たちははっきり念頭に置いていなければいけないわけですよ。これは移動ですと言ったって、向こうには通じないわけですから、沖縄はそれでやられるわけですから、本土もやられるかもしれませんよ。やはりそういう部隊が沖縄にあるというそのこと自体が問題だという、その事実問題を私たちは明確にしていかなければいかぬと思うわけです。どうでしょう。
  44. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米安保条約の解釈の点について、従来から外務省としてもお答え申し上げておるわけでございます。同時に、ただいまの安井委員の御指摘のような事実関係というものについても検討を進めておりまして、アメリカ側に対しては、国防当局に確かめるというような措置も講じておりますが、新しい世界情勢のもとにおける防衛の問題、安保条約の関係というものは、さらに深く掘り下げて、各種の起こり得る事態に基づいた対応策を十分に考えてみる必要があると存じております。  ただ、その場合に、基本はやはり日本の国民の安全を守る。安全を守るのにいまの努力で足りるのかどうかという問題は一つあると思いますが、とにかくあらゆる外からの日本への侵入がある場合に、これを有効に撃退できる力を日本は持たなければならない。外には脅威を与えない、しかし自分は守るんだということはどうしても必要じゃないかと思いますので、いろいろ、安保条約の条文解釈と同時に事実関係、実体関係についても相当徹底した検討が必要だと私どもは考えております。
  45. 安井吉典

    安井委員 沖縄の人たちは一番よく知っているのです。安保条約の極東の範囲がもし明確にならなければ、それこそ無制限に沖縄の基地が使われるということを知っているわけですから、そういうことは明確にしてほしいということが一つあります。  しかし、安保条約の解釈はこうなんですよということをアメリカがソ連に言うのですか。言えるわけないでしょう。ソ連は安保条約に関係なしに、とにかくアメリカの海兵隊の一番ひどいやつがあそこにいるというので沖縄がねらわれる。かつて沖縄戦というのはそういうよく似た状況の中で起きたことを沖縄の人たちは自分のはだに血をもって記憶しています。ですから、そういうことからすれば、解釈の問題はここで話し合いでつくかもしれませんけれども、しかしその事実関係は、沖縄にそういう危険なものがいないようにしてほしいんだというのが沖縄の人たちの願いなんですよね。それが直ちにかなえられないとしても、そういう恐ろしい事実関係に陥らないようなあらゆる努力を日本の外交はすべきだ、私はそう思います。  そこで一つ、この間うちここでも論議されました三海峡の封鎖の問題について、これは私は重大な問題だと思うものですから、特に取り上げてみたいと思います。  アメリカの政府筋が日本に対する防衛分担を増加するという要求として三海峡封鎖問題が飛び出してきたわけです。ずいぶんこの国会でも議論されました。しかし、封鎖は日本だけではむずかしい、かなりの出費が必要ですという防衛局長の話もありました。この三海峡封鎖というのは、アメリカの戦略にとっては、それができればソ連の海軍力の三分の一を閉じ込めることができるわけでありますから、ぜひとも実現したいという発想が飛び出してくるのは当然だと私は思います。しかし、これは日本にとっては実に危険きわまりない戦略、戦術だと思います。自衛隊に機雷敷設など封鎖能力があるかないかという問題、それ以前の問題があります。あるいは宗谷海峡などは、向こうはソ連なんですから、そんな形で封鎖ができるのかという問題があるが、それ以前の重大な問題が封鎖という発想にあるのではないかと思います。  私は戦術は素人です。しかし、私は素人だから言えることなんですが、もし万一日本がこの三つの海峡を封鎖するというようなことをすれば、ソ連の方は黙っていましょうか。恐らくこれは必死になって、その封鎖解除のために国際法上の権限を盾にして作戦計画を立ててくることは間違いないと思います。封鎖を破るために核機雷をぶち込むかもしれないし、あるいはまた日本そのものを攻撃するということにもなるのではないでしょうか。袋のネズミという言葉がありますけれども、これは袋に入れる方が向こうよりも強いというときに使われる比喩であって、これは実は向こうの方はライオンなんですから、ライオンを袋の中に入れようたって、できるわけはないし、入れたつもりでいたって、その袋を破って、たけり狂って北海道を、あるいはまた日本海の沿岸に攻撃をかけてくるかもしれない。そのときアメリカが助けに来てくれるという発想があるかもしれないけれども、しかし、助けに来るか来ないかは別として、日本海は大荒れに荒れた海となり、日本列島は焼け野原になることは間違いないわけですよ。そのことを覚悟しなければ、三海峡の封鎖などという発想にとりつくことはできないのではないかと私は思います。  この間原防衛局長が、これは日本のいまの自衛隊の力ではできないから、もう少し防衛費を増してくださいというような言い方をされました。だからこれは大出委員の言うように、大蔵防衛局長だ、私はそう思います。いま防衛局長に伺いますが、私は戦術の素人なんですが、三海峡を封鎖して日本列島が無傷でいられる、そういう戦略があったらちょっとお話しください。
  46. 原徹

    ○原政府委員 自衛隊は専守防衛でございますから、わが国が攻撃を受けなければ、一切何もいたしません。でございますから、わが国が攻撃を受けて、わが国の艦船等がたとえば太平洋でどんどん沈んでしまうというような状況のときに、そういう問題が起こるわけでございますから、そのときに共同対処で何とか防ごう、こういうわけでございます。でございますから、もしそういうことをしないということであれば、日本は直ちに侵略されて、降伏するというしか道がなくなるわけでございます。私どもはそういうことはできないわけでございますから、やはりそれは何とかしてでもわが国の安全を守らなければならない、そのために自衛隊は戦うし、日米防衛協力で対処する、こういうことなんでございまして、わが国が攻撃を受けない前にそういうことを自衛隊はできないわけでございます。
  47. 安井吉典

    安井委員 私が聞いているのは、いかなる状態があっても、三海峡を封鎖して日本が全く無傷でいられる方法があるかということを聞いているわけですよ。しかし——いや、もうそれはいいです。そんなわけないんですからね、いまあなたのおっしゃるように。戦争になってしまうんですから、これはどういうことになっているかわからぬというときだ、こう言われるのでしょうけれども、日本がもう攻撃をすっかり受けてしまって、焼け野原になって、三海峡封鎖だと言ったって、そんなことは意味があるんでしょうか。アメリカの原子力潜水艦のポラリスからサブロックが飛んでいって助けてくれるというかもしれないけれども、しかしそれより先にバックファイアーや新しい中距離ミサイルのSS20などの核弾頭が飛んでくる、そちらの方が先ではないかと私は思います。とにかくアメリカはソ連から遠い国です。しかし私たちはソ連からすぐ、北海道の稚内からは四十キロぐらいでもう向こうの樺太が見えるのですから、あるいは北の、いわゆる北方領土のところも、向こうがあんなに明らかに見えるのですから、そういうところにある日本の立場から、封鎖をするためにはもっと予算が要るから防衛費の予算の増額の材料にこれを使うような、そういう態度では困るということを私は申し上げているわけであります。ですから、たとえアメリカに要求されても、三海峡を封鎖するというようなことは、これはこっちからソ連への宣戦布告だという、それぐらいの覚悟でなければならぬわけで、北海道の一つぐらいやってもいいという気持ちでなければ、軽々しくそんなことは私は言ってはいただきたくないわけであります。防衛庁長官にこれははっきりお答え願います。
  48. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  おっしゃるように、宗谷、津軽、対馬の三海峡を封鎖するということは、これは大変なことでございますね。そのこと自体が大変でありますし、能力がどうかということもあわせて大変なことでございます。したがって、これだけを切り離して、これをやるとかやらぬとか、できるとかできないとかと言うことは、これは必ずしも適当でないと思います。全般の問題でございます。  いま海峡封鎖についての考え方は、海峡封鎖についてだけの話ではないのでございまして、防衛局長が申し上げたのは、日本が攻撃を受けたときにいろいろ対応する、国を守るためにいろいろなことを日本が単独で、あるいはアメリカの援助を受ける場合もございましょう、いろいろやるということなので、御質問がそういうことでありますので、それをお答えをしておるのだと思います。ですから、国の防衛というものについては全力を挙げてやっていかなければならぬので、したがって、海峡封鎖についていま防衛局長が申し上げましたのは、そういう意味で考えなければならぬことでございます。能力の問題は、またこれは大変な問題だ、こういうふうに思っております。
  49. 安井吉典

    安井委員 長官、ちょっとおかしいのですがね。二月六日の細田防衛庁長官の答弁では、わが国に対する攻撃がない限りは、海峡封鎖はアメリカの要求があっても行いませんとはっきり答えました。それはそのとおりなのでしょう。それから後退したのですか。
  50. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいまの言葉が足りなかったかどうかわかりませんが、もちろんそのことを前提に私ただいま申し上げたつもりでおります。
  51. 安井吉典

    安井委員 ここで私は総理にも伺いたいわけでありますけれども、日本が三海峡封鎖をやらなくたって、アメリカの方が勝手に封鎖作戦に出るかもしれないという言い方もあります。アメリカは、機雷の敷設機はなくても飛行機による敷設ということもできるし、場合によっては核機雷ということにもなりかねない。そうなればソ連の方も核で機雷を一掃というような作戦になって、それこそアメリカもソ連も自分の本土は無傷かもしれませんよ、津軽海峡で機雷のつぶし合いをしたって無傷かもしれないけれども、しかし、こちらの方はたまったものではないです。日本はめちゃくちゃになってしまう。アメリカがそこの封鎖活動をすると言ったって、それは事前協議の対象ですと、この間の御答弁の中にもありました。  ですから、私はアメリカがそのような事前協議をした場合の総理の決断を伺いたいわけでありますけれども、防衛局長や長官じゃなしに、最高の責任者からのお答えをひとついただきたいのは、アメリカが封鎖をするというような事前協議をこちらに持ちかけてきた場合、日本はちゅうちょなく厳粛に私はノーと言うべきだと思います。日本を守り、日本の運命を守るためにそうでなければならぬと思います。どうですか。
  52. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ちょっとお話がよくわからぬですけれども、安保条約の問題としての問題が一つあると思うのでございます。安保条約につきましては、従来からの見解を私の内閣も変えておりません、また今日のような世界の状況がございますけれども、安保条約に対する姿勢、解釈は従来どおりの見解を持っておりますということを申し上げておるわけでございます。いまの場合、安保条約上そういう事前協議の条項があるのかないのか、これは私はちょっと理解いたしかねるわけでございます。  第二の問題は、安保条約の問題以外に、日米関係は広くいろいろな関係を持っておるわけでございます。防衛上の問題にいたしましても、安保条約にかかわらない範囲でいろいろな問題が事実問題として、先ほど外務大臣からもお答えしたとおりあるわけでございまして、それには絶えず双方が緊密な連絡をとり、理解し合って対処していかなければならぬわけでございます。安井さんの仰せになるのは、米ソの間が緊張してくるというような事態を想定してのお話のようでございますが、これはゆゆしい問題でございまして、米ソ両国は両方ともそういう事態は考えていないことでございましょうし、そういう事態を回避するために、世界の平和に責任がある両国はあらゆる工夫を考えておるに違いないと思いますし、わが国といたしましても、緊張の緩和ということにつきましてはあらゆる努力を払っていかなければならぬ立場におる、そういうところから御判断をいただきたいと思います。
  53. 安井吉典

    安井委員 まあ顧みて他を言うというふうに私には聞こえるのですがね。いろいろな努力をもちろんされるべきです。当然ありとあらゆる努力はされるべきだが、しかし、どうしてもアメリカが機雷であそこを封鎖するということを日本に持ち込んできたときはどうするのだということです。これは事前協議の対象になるということ、まずそれからはっきりしていただきましょう。
  54. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの質問の一つ前に沖縄に対する攻撃という御質問がございましたが、安保条約の重要な目的は、核の抑止力、そういう事態にならないようにするということが日米安保の大きな目的でございまして、そういう攻撃が行われるという場合には、これは米ソ全面戦争ということを前提にするわけでございまして、そういう状態に至らせないというのが私どもは日米安保の一つの重要な目的だと考えております。いまの海峡封鎖の問題にいたしましても同様な問題で、そういう事態は明らかに米ソ全面戦争を前提とする事態でございまして、そういう事態のもとでの状況として考えなければならないことだと思います。
  55. 安井吉典

    安井委員 いや、事前協議の対象かどうかということを聞いているのですよ。
  56. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまの御質問の前提の、機雷封鎖が日本の施設、区域から発進する米軍機によって行われるという場合は、事前協議の対象でございます。
  57. 大出俊

    ○大出委員 関連して。事を分けて言いませんとせっかくの問題がはっきりしませんから、ちょっとつけ加えますが、御存じのとおりに、日本に関係のない、極東あるいはその周辺という条約上の地域、周辺は条約にございませんが、この地域で紛争が起こっているあるいは戦争が起こっている、あるいは起こりそうである、その場合に、事前協議というのは配置の変更、装備の変更、戦闘作戦行動、三つです、直接とは書いてないが。  さて、津軽海峡を対象にした場合に、日本は攻撃をされていない。いないが、アメリカの意思において封鎖をしようとした。なぜならばペルシャ湾で紛争が起こっている。三海峡の一番近いのは津軽だが、国際海峡だから宗谷海峡を通って極東艦隊、ソビエトの艦隊が出ていこうとする。出したくない、だから封鎖をする。日本は攻撃されていない。この場合、日本の基地からアメリカのたとえばC130なら130が、一トン機雷を十六個積めますけれども、これが飛んでいく。ソビエトは黙っていない。戦争になる。だから、作戦命令、戦闘行動の命令が出て飛んでいくわけですから、安保条約に基づく事前協議の三項目の、直接というのは括弧に入れますが、戦闘作戦行動に出ていくのだから、当然事前協議の対象になります、攻撃をされていないのだから、イエスもある、ノーもあるというところになる、そうでしょう。せっかく提起している問題だからはっきりしてください。
  58. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの件は日本の基地から出発する場合でございますね。これは戦闘作戦行動になるということでございます。
  59. 安井吉典

    安井委員 総理は、私の突き詰めた質問に対して、顧みて他を言うというようなお答えなんですけれども、それはもう三海峡封鎖なんというのは、そういう事態がいま来たわけじゃないですよ。しかし、アメリカの方がたやすく言っているわけですから。日本に対するさまざまな防衛費をふやせとか、いろいろなことを言う中に、三海峡封鎖などというのを気軽に言っているわけですよ。だから、そういう段階においていまは突き詰めて、事前協議が来たらどうしようかととことんまでの突き詰めをいま私はお尋ねをいたしましたけれども、そういう段階じゃないんだから、もう少しその前にいろいろな努力があると、こうおっしゃるが、だからいまアメリカの方が気安く、たやすく、気楽に三海峡封鎖、封鎖などと言っているそういう言葉をいまのうちから封鎖しておいていただきたい。そのための日本の態度をいまのうちから明確にしていただかなければ、われわれ日本はそのままいくのかなあというような気になってしまいますよ。そのことを私は総理に迫っているわけです。
  60. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 米ソ戦争なんという事態は考えたくもないし考えられもしないと思いまするし、米ソ両国が一番心配していることでございますから、そういうことを前提にしての議論はわれわれ差し控えなければならぬと考えます。  それから、いま安井さんがおっしゃるように防衛論議が、そういう不用意な論議が交わされるというようなことは必ずしもよくないのじゃないかということでございますが、防衛専門家の間でいろいろな想定でいろいろなことが議論されるというようなことはあり得るのかもしれませんけれども、やはりこれはわが国の防衛は、申すまでもなく厳しいシビリアンコントロールのもとにあるわけでございますので、御心配になるようなことのないように政府としては十分注意してまいります。
  61. 安井吉典

    安井委員 それはもう日本の自衛隊を運用する上においてはそのとおりでいいんだが、私が言っているのは、アメリカの方で気安く言っているからですよ。それに対して日本の考え方、姿勢というものを明確にしなければ、そういう問題は、これはさっき私は総理のあーうーを評価いたしましたけれども、これはあーうーでは困ると思うのですよ。やはりきっぱりした姿勢を明確にしてほしい、そういうことです。どうですか。
  62. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 注意していきます。
  63. 安井吉典

    安井委員 とにかくこれはまさに日本の運命のかかっている問題だということを御記憶願って、これからの交渉にぜひ当たっていただきたいと思います。  もう一つ、防衛問題ではリムパックについて伺いますが、日米の合同訓練はこれまでもしばしばありましたが、アメリカ以外の国の参加する訓練演習に参加するというのはこれが初めてだと言われているリムパック、それだけにさまざまな疑念も持たれるわけです。新聞の論調でも肯定的な書き方というのは比較的少ないのじゃないでしょうか。国会でもしばしば論議の対象にもなってきた。しかも、米ソの対立がアフガン問題を中心に厳しい状態にある時期におけるリムパックへの参加。しかしそういう中で、すでにこれに参加する護衛艦は横須賀をもう出発してハワイへ行っている。あした、次の航空機が飛んでいく。  総理に伺いますけれども、リムパックはいつから開かれるのですか。——いや、総理に聞いている。
  64. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 事務当局から答えさせます。
  65. 安井吉典

    安井委員 総理は御存じないですか。——ないようですね。
  66. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 正確には存じておりませんので、事務当局から答えさせます。
  67. 安井吉典

    安井委員 じゃ大来外務大臣に伺いますけれども、リムパックはいつからですか。
  68. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 正確な日程は存じておりません。
  69. 安井吉典

    安井委員 防衛庁長官、いつからですか。
  70. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 この演習を開始する日につきましては、アメリカと共同発表することになっております。したがって、もう数日を出ずしてといいましょうか、そう長い期間じゃないと思いますが、同時に発表することになっております。
  71. 安井吉典

    安井委員 これ、一番詳しいのは佐々参事官ですか。いつからですか。
  72. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  リムパックの開始時期につきましては、主催国であるアメリカが発表をいたしますときに参加国が同時に発表をするという申し合わせになっております。したがいまして、ただいま防衛庁長官、数日うちにと申しましたが、もう少し先になるかと思いますけれども、リムパック演習開始前にアメリカが発表をする時期に同時発表、こういう申し合わせになっておりますので、国際間の慣習に従いまして、主催国の発表時期に合わせて申し上げたいと思います。
  73. 安井吉典

    安井委員 ちょっとそこで佐々参事官、そのリムパックのスケジュールを話してください。
  74. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 リムパックの日時、場所あるいは参加国の数あるいは参加国別の艦艇数、航空機数、兵員数、その他演習の内容につきましても、その時点において同時発表ということになっております。
  75. 安井吉典

    安井委員 ちょっと待って。もうすでに護衛艦は行っているし、あすあさって飛行機が行くんでしょう。
  76. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 そのとおりでございます。
  77. 安井吉典

    安井委員 そうすると、ちょっと待ってください、佐々参事官。行く先もわかっているし、白にちはわからないけれども、公表はしないけれども、中身はあなたは知っているでしょう。
  78. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 承知いたしております。
  79. 安井吉典

    安井委員 しかし、これは防衛庁長官は知らないし、外務大臣は知らないし、総理大臣も知らない。知っているのはあなただけか。
  80. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 シビリアンコントロールの原則に従って決裁を受けた計画でございますので、もちろんこの計画については私だけが知っておるというものではございません。
  81. 安井吉典

    安井委員 しかし、だれに聞いたって知らないじゃないですか。知らないで飛行機が行くし、あした立つし、軍艦はみんな行っているじゃないですか。中身を知っているのは参事官ただ一人。さっき知らないと言った、あなた……。
  82. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  中身についての御質問はなかったと思います。ですから、これは私、防衛庁長官が了承してもうすでに出かけておるわけでございますから、これを参事官だけが知っておるなどというものでは毛頭ございません。よく存じております。ただ、日にちについてはアメリカが発表するというふうに承知しておりまして、私数日と申しましたのは大変失礼いたしましたが、そう遅くない機会というふうにこの際訂正させていただきます。日にちにつきましてはお尋ねがございまして、もう実際は行っておりますし、飛行機ももう出発するという段階でございますので、ちょっと時間的な表現が少し短過ぎましたが、そう遠くない時期にと、こういうふうに訂正させていただきたいと思います。中身はもし必要があれば私がお答えをいたします。防衛庁長官が決裁いたしたものでございますから。しかし、こういう問題につきましては具体的な問題でございますので、参事官からお答えした方がより正確であろうと思って、知らないと言われると大変な問題でございます。防衛庁長官の決裁に基づいて出かけておるものでございます。
  83. 安井吉典

    安井委員 防衛庁長官、それじゃスケジュールの中身はあなた御存じなんですね。
  84. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 防衛庁長官が決裁いたしたものでございます。私ではなくて前長官でございますが、継続しておる原則でございますので、防衛庁長官が承知しておるわけでございます。
  85. 安井吉典

    安井委員 それはどういうことですか。つまり、まだ公表されてないやつでしょう、それは。全体的なスケジュールらしきものはここで話がありましたよ。話はあったけれども、具体的な内容はまだ公表できませんと言う。しかし、どんどん向こうへ行っちゃうわけだからね。国会には何にもわかりませんと言いながらどんどん飛行機や軍艦が行くじゃないですか。だから、その具体的な中身をあなたは知らないのか知っているのか、それを発表してください、ここで。
  86. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 こちらから参加するものについては、はっきり防衛庁長官が決裁をして出しておりますのでよく承知しております。中身の問題につきましてはアメリカがこれから発表するということでございます。ただ、私どもの決裁をしました理解は、これはあくまでも日本の自衛隊の訓練ということでございまして、そういうことでございますから、そのほかの事情ではない、かように理解しておるわけでございます。
  87. 安井吉典

    安井委員 いままでここでどの委員もどの委員もこのリムパックを取り上げているのですよ。そしてそれに対して佐々参事官は立て板に水で、これはまさに集団自衛権の訓練ではありませんとか盛んに言っていましたよ。中身がわからないで、中身を私たちに知らせないで、スケジュールも何も知らせないで、こうだから信ぜよ、そういうあり方ではおかしいんじゃないですか。しかも、外務大臣も知らないし、総理も知らないじゃないですか。おかしいじゃないですか。
  88. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 これは前久保田防衛庁長官の時代にこれへの参加の決裁をいたしたわけでございますが、私どもは、これはあくまでも戦術技量の向上を目的としておるわけでございまして、一部には環太平洋軍事同盟の構想だとかあるいは太平洋巡察艦隊創設の第一歩ではないかとか、日米安保の拡大ではないかといったような懸念があるということもいろいろ承っておりますけれども、あくまでもこの訓練は国際政治上、外交上、軍事上の目的を持って行うものではないので参加するということでございます。
  89. 安井吉典

    安井委員 これは極秘訓練なんですか、長官。秘密訓練なんですか。
  90. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 この点につきましては、私が間違った答弁をすると大変でございますので、佐々参事官からお答えしました上で、私から改めてお答えしたいと思います。
  91. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 事務当局からまずお答えさせていただきます。  計画の内容につきましては、リムパック78の実施内容とほぼ同様でございますので、これまでの委員会におきまして御質問がございました際に、その内容につきましては訓練項目その他御説明を申し上げておるところでございます。実施時期、場所等につきましては、先ほど申し上げました事情で後ほどアメリカと同時発表、こういうことでやっておりますので、内容につきましての御説明はすでにいたしたつもりでございます。
  92. 安井吉典

    安井委員 そうすると、いま公表がされないのは実施時期と場所だけですか。訓練の内容そのものは全部公表されているわけですね。
  93. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 訓練の内容もそのときに発表されることになっておりますが、78リムパックの内容とほぼ同様でございますので、この内容について当委員会の御理解をいただくべく私はすでに御説明申し上げておるところでございます。
  94. 安井吉典

    安井委員 ただ国民やあるいは国会の私たちは、まだ発表されないのでありますということで、中身だけ説明されたってそれを検証する方法はないわけですよ。これは報道機関入れるのですか、入れないのですか。
  95. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  この種訓練は戦術技量にかかわる問題でございまして、アメリカの秘密指定区分の訓練内容等を使いますので、この部分については取材は認められておりません。しかしながら、現在報道関係、特に防衛庁記者クラブの御要望がございますので、アメリカ側と鋭意交渉いたしまして、アメリカの了解のもとに、ハワイの陸上施設の訓練であるとか、あるいは誘導武器評価施設の訓練であるとか、ブリーフィング等を何とか取材させていただくべく現在交渉中でございます。
  96. 安井吉典

    安井委員 いずれにしても、何か事実関係がどんどん進んでしまって、シビリアンコントロールの方は後追いをしておる、そういう印象をぬぐえないわけです。だから私は、時間をかけていままでおかしいじゃないかという気持ちをそのまま率直にぶつけたわけです。やはりこれが初めての訓練ですからね、こういうやつは。さまざまな疑念が持たれているわけですから、それを国会にはいいかげんな説明をしたままで、十分なコンセンサスも得ないままにもう先に行ってしまう、いつやるかわからない訓練にもうすでに行ってしまうという、そういう国会を軽視したやり方ということ、これはおかしいと思うのですが、総理どうですか。
  97. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 あなたのお尋ねがいつ、何月何日に行われるかという具体的な日時の御質問でございましたので、正確を期する意味におきまして定かでないと申し上げたわけでございますが、本計画につきましては事前に私どもも説明を受けておりまして、大体このころになるだろうという見当は伺っておるわけでございます。それが何月何日になるかというところまでは存じませんでしたので、正確を期する意味において正直に申し上げたわけでございまして、国会を軽視するどころか、国会を重視するがゆえにそのようにいたしたことは御理解をいただきたいと思います。
  98. 安井吉典

    安井委員 軽視されているのは、国会総理も軽視されているんだからね、知らされないんだから。(大平内閣総理大臣「いや、知らされておるのですけれども、何月何日かということまで覚えていない……」と呼ぶ)負け惜しみはいいかげんにしてください。ですから、何もかも事実関係が先に進んでしまうこういう事態を、これはまだ演習でも危険な演習だというふうに私どもは受けとめるものですから心配するのだが、これがもっと本当の事態になったらどういうことになるかということを恐れるために私はその点を特に強調しておくわけであります。  あと質問もありますから、もう少しリムパックの問題をお聞きして進みたいと思いますが、参加の法的根拠を防衛庁設置法第五条に求めて、どこの国であろうと合同の訓練ができる、そういうふうな解釈をとっているようでありますが、そのとおりですか。
  99. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  法的根拠は、防衛庁設置法五条の二十一号「所掌事務の遂行に必要な教育訓練」に関することでございます。この所掌事務の解釈でございますけれども、条理上自衛隊法三条でいうところのわが国の独立と平和と安全を守るための自衛隊の任務、これであろうかと存じます。その範囲内であるかどうかということにつきまして、この演習の性格、ただいま御指摘のように、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの参加する演習でございますので、十分に検討をいたしました。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 この訓練の内容は、再々申し上げておりますけれども、戦術技量の向上を目的とする訓練であって、いわゆる集団的自衛権行使のものではないということを確認をし、また、通常兵器による訓練であるということも確認をした上で、先ほど来シビリアンコントロールがノーコントロールではないかというお話でございますが、決してそういうことはございません。昨年の三月以来、政府部内において十分検討を進め、十月これを正式に決定をした、防衛庁長官の権限と責任において決定をしたものでございますので、十分シビリアンコントロールは果たされておる。そういう意味合いにおきまして、この訓練は憲法あるいは現在の基本政策の範囲内である。  それから次に、所掌事務の遂行に必要な限度であろうかということでもって、この判断をいたしたわけでございます。
  100. 安井吉典

    安井委員 私がいま論議しているのは、設置法の五条二十一号だというのですけれども、訓練はなるほどそうだけれども、外国の軍隊と訓練をするという規定はないじゃないですか。それはいまの訓練規定の拡大解釈をしているだけじゃないですか。
  101. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 まず、アメリカとの共同訓練から御説明申し上げますと、これは安保条約の趣旨にものっとっておると思います。また、それ以外の国との訓練はその法的根拠がない、外国との訓練をやっていいと書いてないではないかというお話でございますけれども、やっていけないとも書いてございません。したがいまして、条理上所掌事務の遂行に必要な範囲の教育訓練であれば、この限られた防衛力でもって重大な任務を果たさなければならない自衛隊は、練度を高めなければいけない、その意味において必要な訓練である。法によって禁止はされておりません。
  102. 安井吉典

    安井委員 私は、これは訓練という言葉はあるけれども、外国の軍隊との訓練というのがないのは、これは法の欠缺ですよ。当然最初から、そういうことがあるのなら書いておくべきだったのを、そんな事態はあり得ないものだから、あの当時の立法者はそれを加えてないということであって、だから外国との共同訓練というのは、これは二十一号ならそれにまた一号加えて、新しい法制措置が必要だと思いますよ。ただ拡大解釈をやっているにすぎない、私はそう思います。これは後の問題に残しますけれども、そういう中で強行参加をするということに一つ私は問題があると思う。  さらにまた、この合同訓練、個別訓練という解釈の問題についても、私はずいぶん疑問があるのですけれども、ちょっと時間がなくなりましたので、それからまた、参加の手続の問題その他ありますけれども、これはまた別な機会に譲りますが、一つこれだけは確認しておきたいのは、外国との合同演習というのを合法だとすると、これはもうとめどなく相手国が拡大されてしまう。その拡大を抑える、これは政策判断だと思いますけれども、これはだれがするのですか。そしていかなるめどでするのか。それは国会の承認なしにやるのか。どうですか。
  103. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  その歯どめ論でございますが、まず第一は、必要性であろうかと存じます。この外国との訓練によって戦術技量の向上に資するなり教育訓練上の効果が期待できないような場合、あるいは費用対効果から考えてマイナスであるような場合には、必要性あるいは妥当性という問題が出ようかと思います。また、どこの国ともやれるかということになりますと、これも政策判断が加わってくるであろう。その時点における国際情勢なり諸般の情勢によって、それこそシビリアンコントロールの原則に従って判断すべきであろう。  もう一つ歯どめがございますのは、集団的自衛権の行使を明らかに前提としたような共同訓練に参加をすることは差し控えるべきであろうしこの例として先般御答弁申し上げましたのが、カンガルー3というニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、いわゆるANZUS三カ国がやっておりました訓練、あるいはチームスピリット78、79のような明らかに米韓合同の、韓国を北からの攻撃から守るというような目的がはっきりしておる訓練、こういうものに参加することは、この教育訓練に必要な範囲内を超えておると思います。  それではだれが決めるかということでございますが、現在の防衛庁設置法五条によって与えられている権限でございますので、行政府防衛庁長官の権限と責任の範囲内であり、かっ自衛隊法七条、八条、総理大臣防衛庁長官、それぞれ自衛隊のあるいは防衛庁の最高の責任者、もしくは陸海空幕を通じて隊務を統括する防衛庁長官、この行政府責任者の判断によって決定さるべきだと存じます。
  104. 安井吉典

    安井委員 韓国との訓練はどうですか。
  105. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  チームスピリットに参加するかというお尋ねであれば、これは答えは否定的でございます。  韓国全般との問題、韓国との一般的な共同訓練はどうかというお尋ねでありますれば、法理上はいままでの解釈でいくと可能であろうと存じますけれども、その必要性なりあるいは妥当性なり、そういう政策判断から、この問題についてはまだ具体的な問題となっておりませんので、現時点、考えておりません。
  106. 安井吉典

    安井委員 分裂国家の一つとの訓練などというのは好ましくないのじゃないの。
  107. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  重要な問題でございますから、慎重にこれは対処しなければならぬことは申すまでもございません。
  108. 安井吉典

    安井委員 それが答弁。これは私は大変な問題だと思うのですよしとにかく所掌事務の遂行に必要な訓練ならどこの国とやってもいいという解釈になっているわけですよね。そういう恐るべき解釈になっちゃっているのですから、これはどう悪用されるかわからない。しかも、戦争などというのは、訓練だと言って出て、そこから戦争が始まるという、そういうケースも非常に多いわけですからね、われわれはこれはいいかげんにするわけにはいかぬと思います。ひとつこの問題について、委員長政府から統一見解を出してもらうようにお運びいただきたいと思います。
  109. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 安井君の要求については、理事会で諮って御返答申し上げます。
  110. 安井吉典

    安井委員 ちょっと時間がかかり過ぎて、ほかの問題へ移るわけですが、大急ぎで二、三の問題を伺っていきたいと思います。  経済問題では、もうたくさんあるのですけれども、その中の対米経済摩擦、特に電電公社の調達問題について伺いたいと思います。  昨年、ガット東京ラウンドに関連して政府調達の開放をアメリカが要求した。電電公社のですね。特にこの電電事業の機器の調達が開放されることによって、第一には、先進国がいずれも国家的事業として、電気通信事業の調達を、その特殊性のゆえに自主的、一元的に進めているのに、なぜわが国だけが完全開放を迫られるのか、おかしいではないか、こういう見方もありました。あるいは二番目には、電気通信事業の国民へのサービスに支障を来しはしないか、三番目には、電気通信関連産業労働者の雇用の問題にも波及しないか、こういう問題意識から、対米交渉に当たって、わが国の電電事業の調達問題について現状を破壊されないよう政府に強く要求をしてきたわけです。  昨年の六月二日でしたか、牛場・ストラウス会談で、相互主義をベースにして八〇年の十二月末までに合意に達するよう交渉が続けられることになったのは、私たちも知っております。その後、日米間で今日まで三回にわたって交渉が続けられたと伝え聞くわけでありますが、これまでの交渉の内容を政府から御答弁願いたいと思います。
  111. 手島れい志

    ○手島政府委員 昨年の六月の牛場・ストラウス共同発表以来、七月、九月、十一月の三回に分けまして、事務レベルの話し合いを行いました。この会合には、外務省のほか電電公社の方も代表団の顧問として代表団の中に入っていただいて討議をしておりますし、また九月と十一月の会合には通産省、郵政省の方も代表として討議に参加していただいております。  いままでに話しました主な討議事項は、主として米国の電気通信事業の実態についての解明でございます。そのうち、特に非常に大きな分野を占めておりますATT、いわゆるベル・システムにつきまして、その事業の組織あるいは調達の関係の組織や手続等につき質問をいたし、また先方の要請に応じて、日本側の電電公社の調達の実態等についても必要な説明を加えております。  現在までのところ、先方の電気通信事業の内容についてはかなりわかってきておりますけれども、まだ十分解明を終わっていない分野もございまして、今後とも引き続き話し合いを続けていきたい、そういうふうに考えております。
  112. 安井吉典

    安井委員 もう少し伺いますが、アメリカの大部分の電信電話を受け持っているATT社自身が、直系の製造会社であるウエスタン・エレクトリックから八〇%も調達している実態があるわけですね。それがそういう状態であるのに、日本にだけ完全開放しろと言う、非常におかしいということを私はさっきも申し上げたわけでありますが、そういう問題点もかなり話し合われた、そしてまた両方で理解を深め得たというふうに思いますが、どうですか。
  113. 手島れい志

    ○手島政府委員 いままでに判明しておるところでは、先生御指摘のように、約八割はウエスタン・エレクトリックからの調達である模様でございます。そのほか、このベル・システムの調達の方式につきましては、各ベルの電話会社が調達するに際しましては、ATTの中にございます調達部というものがいかに作業をし、そこで一般供給者からの情報を集めて、これを各ベルの電話会社に回す方式とか、あるいはそのほか各電話会社が直接に一般の供給者からとる方式とか、そういったものも同時に私どもの解明の焦点といたしております。  このベル・システムの調達方式の実態につきましては、一応私どもが了解をしたと思うことをまとめまして、アメリカ側にこういうことで了解してよいかという質問をしておりますけれども、まだいまのところそれに対する返事は来ていない現状でございます。しかし、過去三回にわたります話し合いを通じまして、かなりの程度先方のわれわれに対する理解とわれわれの先方に対する理解は進んできているというふうに考えております。
  114. 安井吉典

    安井委員 今後の交渉日程はどうなっていますか。十一月の大統領選挙までにはできるだけ有利な交渉結果を得たいというのが先方の意向だというふうにも伝えられています。どうですか。
  115. 手島れい志

    ○手島政府委員 事務的な討議は、できればさらに今月中にでも一回行いたいというふうに考えまして、現在アメリカ側と日取りその他について話をしております。  それから今後の交渉の日程につきましては、御承知のように牛場・ストラウスのコミュニケではことしいっぱいということで合意ができておるわけでございます。他方、アメリカの方といたしましては、できればこれをもう少し早くすることができないかという希望を持っているのもまた事実でございます。私どもといたしましては、もし実際的に双方に納得のいく話し合いができ、合意に達することができるのであれば、あえて早期妥結に反対する必要はないだろう、そういうふうに考えております。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 安井吉典

    安井委員 この交渉には外務大臣、通産大臣、郵政大臣の各大臣が関係があるし、それからまた電電公社の総裁もきょうおいでいただいておりますが、もちろん関係大ありであります。それぞれから、これからの交渉に当たる考え方についてこの際伺っておきたいと思うのです。  相互主義ということはお互いに認めたにしても、その調達の様式とかそういうのを同じようなやり方でやろうというのはわかりますけれども、向こうは民間会社だしこっちは国営事業であります。それが、向こうが五〇%入れたからこっちも五〇%入れろというような、そういう形で問題が終結されればやはり問題が残るのではないかと思います。ですから、なぜ国家事業として電信電話事業をやっていかなければいけないか。ヨーロッパはほとんど国家事業なんですけれども、そういう本質に立ってこの問題の交渉を進めて、いい結論を出していただきたいと思います。ただ、最近のアメリカの状態から、日本に対する経済的な要求がだんだん強くなっています。自動車を初め経済摩擦が強まっているというそういう状況ではありますけれども、その渦の中にありながらも、日本の電電サービスの健全性維持を願うという立場から、その御努力の決意を伺っておきたいと思います。
  117. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米経済関係の中で、電電公社の調達、広くは政府の調達問題が従来からも重要な課題になっておりますし、これは同時に日米間だけでございませんで、東京ラウンドの政府調達全体の問題あるいは非関税障壁の問題とも絡んでおるわけでございまして、電電公社が日本の市場の封鎖性を示す一つの典型的ケースととられておるようなところもございまして、この点での交渉にいろいろむずかしい点もあるわけでございますけれども、これは先ほどの六月二日の牛場・ストラウスの協定によりまして相互主義、相互に市場開放を同じようにやっていこうじゃないかという原則に基づいて日米の間で話が進められておるわけでございまして、そういう方向で円満にこの問題が解決することを外務省としては期待いたしておるわけでございます。
  118. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私の方といたしましては、国内の通信機器メーカー等にどういう影響を及ぼすだろうかという点が一番関心を持つところでございまして、まだ、先ほど来お話ございましたように具体的な調達の範囲等がいま折衝中でございますので、その影響等につきましてはつまびらかではございませんけれども、しかし、基本的には、いまの四大メーカーと申しますかの技術水準からいたしますと十分競争にはたえ得るのじゃないかと思いますが、中堅産業あるいは中小メーカー等に関しましては必ずしもそうもいかないというむずかしい問題がございますので、今後ともその影響等に十分配慮していきたい、こういうように考えております。
  119. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えいたします。  この問題につきまして、郵政省といたしましては、先生先ほども御指摘がございましたが、電気通信事業の運営の円滑化と、それから国民期待をされておる電気通信サービスの適正な提供、こういうことを踏まえて従来も努力をしてきたところでございます。その趣旨を踏まえまして、関係の各省とも連携をとりましてこの問題の妥当な解決を得るように御協力を願っておるところでございます。  ただいま先生の御質問は、御質問の形をかりた私どもに対する激励のお言葉だというふうに私は受け取るわけでございますが、そういう御趣旨をよく体しまして今後とも努めてまいりたいと存じます。
  120. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答えします。  昨年いまごろ、当委員会におきましてもこの問題につきまして大変御援助、御指導を賜りまして、厚く御礼を申し上げます。  先ほど来手島さんからの御説明のとおり、三回にわたる、事務当局といいますか、私どもを交え、またATTの専門家も交えた会談は、非常に有効であったというふうに私は理解しております。今後は、やはり外務省あるいは郵政省の御指導を得まして、何とかこの問題の解決を図っていきたいと思いますが、目的は、いま郵政大臣が申しましたように、より信頼性の高い通信事業を維持し、あるいはまたよりコストの安い料金を国民にサービスするという信念のもとに対処していきたいと思っています。
  121. 安井吉典

    安井委員 それじゃ今後の交渉の結果を見守りたいと思います。  次に、エネルギー問題に入るわけですが、初めに、科学技術庁長官、それから原子力安全委員長がおいでをいただいていると思いますが、伺いたいのは、東電の第二原発三号炉、四号炉の建設を前にして、原子力安全委員会は来る二月十四日、福島市で公開ヒヤリングを開こうとしているそうでありますが、一方ではこれは欺瞞的なごまかしの公聴会ではないかという批判も出ています。  そこで、私は伺いたいのですが、なぜこの発電所がつくられる現地の双葉郡で開催しないのか。双葉郡から福島市までは百キロも離れているわけでありますが、最も利害関係の多いのは地元の人です。その地元の人の意見を反映できるのはやはり地元での開催ではないかと私は思うのですが、どうでしょう。
  122. 長田裕二

    ○長田国務大臣 お話しの、二月十四日、福島で予定されております原子力安全委員会の公開ヒヤリング、これにつきましては、そのやり方等は去る昭和五十一年、原子力行政懇談会の提言のやり方の趣旨に沿ってやるものでございまして、原子力安全委員会は、このやり方につきまして、県、地元地方団体などと相当詳しい行き届いた打ち合わせをした上で、場所、日にち、それからその審査の進め方、ヒヤリングの進め方等についてよく御相談した上で取り運んでいるはずでございます。詳しいことは安全委員長の方からお答え申し上げることにさせていただきます。
  123. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 いま大臣から申されましたように、私たち原子力安全委員会は、行政懇の提言に沿いましてこの公開ヒヤリングを開催するものでございます。  先生御承知のように、公開ヒヤリングには二種類ございまして、第一次の公開ヒヤリングは通産主催でやります。第二次の公開ヒヤリングが私たち安全委員会の主催でやるものでございまして、この第二次の公開ヒヤリングは、通産の行いました当該原子力施設の安全性に対する審査の案が出てまいります。その行政庁が行います安全審査に対しましてチェックをする、いわゆるダブルチェックをいたします場合に、地元住民の方々の意見等を聴取いたしまして、これを私たちダブルチェックの安全審査のときに、それの参照をする非常に重要なファクターになっております。  今回の福島の公開ヒヤリングがまさにその線に沿って、地元の自治体の御協力を得まして福島でこの二月の十四日に開催する運びでございまして、その意見陳述者並びに傍聴人の選定に当たりましては、私たちの考えの及ぶ限りの民主的な方法で選定いたしまして、地元の方々の意見が十分公開ヒヤリングで反映されるように運営していこうとしているものでございます。
  124. 安井吉典

    安井委員 なぜその地元の双葉郡が悪いのですか、そこで開くことが。
  125. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 ただいま申し上げましたように、この第二次の公開ヒヤリングというのは、やはり地元の協力というのがどうしても必要でございます。安全委員会といたしましては、地元自治体、県及び富岡町の御意見等をいろいろ承りまして、そうして福島市に決定したのでございます。
  126. 安井吉典

    安井委員 どうして百キロも離れた福島市でやるのかね。普通は全部地元じゃないですか、いままでだって。
  127. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 安全委員会といたしましては、できるだけ地元に近いところはもちろん望ましいのでございますが、そういう地元自治体の意見を十分参照をいたしましてその場所を決定したのでございます。  この公開ヒヤリングというのは初めての試みでございまして、先日高浜で行いましたが、このシステム、つまり地元住民のいろいろな意見を行政の場に吸い上げるという一つのシステムを定着させるためには、やはり皆様方の積極的な御支援をお願いしたいところでございます。
  128. 安井吉典

    安井委員 それはいまのお話では、地元の町でやらないで百キロも離れた福島市、もういま雪が深くて大変なそうですね、そういう遠いところでなぜやるのかというその理由が、全然私は解明されていないように思うのですよ。それに、何か地元の福島市には余り相談されてないというふうに聞くのですが、どうですか。
  129. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 われわれといたしましては、地元自治体、県及び富岡町の御意見を主として承ることにいたしまして、その地元自治体とのお話の結果、私たちとしては福島市が最も適したものと考えて決定したわけでございます。
  130. 安井吉典

    安井委員 どうしても納得できないのですね。どうして百キロも離れた町まで地元富岡町の人を呼んできてそこで話を聞かなきゃいけないのか。高浜の場合だってみんなちゃんと地元へ行って地元の生々しい話を聞くというのが、これが公聴会の本旨じゃないですか。福島市の人の話を聞いたって、百キロも離れたそこの人には原子炉のいろんな放射能がどうだなんということは関係ないのですから。
  131. 吹田徳雄

    ○吹田説明員 もちろんそうでございまして、その陳述人並びに傍聴人の選定に関しましては、そういう地元の意見が十分反映しますように、われわれは選定したつもりでございます。
  132. 安井吉典

    安井委員 その陳述員の話なんですけれども、陳述員から傍聴人までも希望者の中から原子力安全委員会が選別をして指名した者に限られる、陳述員は十二、三人ぐらいに制限してしまう、質疑応答も行われないでただ五分か十分の話の言いっ放し、そういうことでとても住民の納得を得るための公聴会になっているとは私は思えないのです。原発の建設について公聴会をやりましたよという形式づくりにすぎないのじゃないですかね。そんな公聴会ならやめたらどうですか。
  133. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  今回の公開ヒヤリングのやり方につきましては、ただいま安全委員長からも御説明いたしましたが、若干中身の御質問にも及びますので、私から御答弁申し上げます。  今回の公開ヒヤリングは、従来行われておりました公聴会等と異なりまして、従来の方法は先生も御存じのように陳述人の方がおっしゃるだけで、受ける方も聞きっ放しというやり方をしておるわけでございますが、原子力の安全の問題のためには、できるだけ先生御指摘のような地域住民の方の生の声を伺った上で行政庁の方からそれに対する答えを申し上げて、対話と申しますか、そういうものも入れつつ住民の方の御理解を深めつつ、しかも今回の目的が安全委員会が行います安全審査、いわゆるダブルチェックに反映するという形をとって運営していきたいということでございます。  先生御指摘のように、あるいはまだ若干は不十分であろうかと思いますが、約十分間の陳述の方の御質問あるいは御意見に対しまして、通産省の方から自分たちが行いました審査の結論につきまして、ほぼ同様の時間でできるだけお答えするというようなことで進めようと考えておりまして、許される範囲で、できるだけ誠意を持って応対していくように安全委員会としてもお考えでございます。こういうようなことを積み重ねてまいりまして、よりよくしていきたいというのが安全委員会の現在のお考えであろうかと存じております。
  134. 安井吉典

    安井委員 そういう御説明をいただいただけでは、これは納得できませんね。同じ現地の町でやって、それで初めて地元の人の納得を得るのに、百キロも離れた福島でなぜやらなければいけないのか、そういう根本的な問題が私は腑に落ちないし、公聴会の形式だって、いまおっしゃったけれども、とてもそれでこの原発結構です、そういう答えが出るような公聴会などにはなりっこない。形式づくりだと言わなければいけないと思います。どうですか、もう一度思い直していただけませんか。
  135. 牧村信之

    ○牧村政府委員 この公開ヒヤリングを、先生御指摘のように地元の町で安全委員会としてもぜひ開きたいというお考えがあったわけでございますが、委員長も申し上げましたように、どこで開くかはやはり地元市町村あるいは設置する県御当局の御協力というものが非常に大事でございます。そういう面から、地元市町村あるいは県の御意見を十分踏まえて設置場所を決めてまいったわけでございます。そこで、公開ヒヤリングの開催に当たりましては、やはり開催地に物心両面の御負担が大変かかるわけでございますので、この当該富岡町の御意向も踏まえて、先ほど申しましたように福島市に適当な場所が確保できた、地元の方には大変御不便をかけるわけでございますけれども、安全委員会といたしましてはできるだけ御理解を賜って、十四日に行われます公開ヒヤリングを実のあるものにさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  136. 安井吉典

    安井委員 とてもそういうお話では納得できないと思いますね。地元というのは一体何なのか。その地元という意義から言っておかしいと私は思うのですね。そこに住んでいる住民じゃないですか。それを忘れて地元という定義は、私は出てこないと思います。いずれにしても私は納得できません。もう一度、開催地の問題その他について再考慮すべきである、そのことを強く要求して、次の問題に移ります。
  137. 田村元

    田村委員長 安井君、長官から発言を求められておりますが、どうしましょうか。
  138. 安井吉典

    安井委員 いや、いいです。ちょっと時間がないものだから。  灯油の価格の問題で、標準価格の問題だとかあるいはコストの公開とか、そういう問題もひとつやりたいと思っていましたけれども、あとわずかになりましたので、現実において去年の二倍にも値上がりをしている灯油が家庭生活に非常に大きな影響を及ぼしているという現状において、特に生活扶助料でやっとやっている生活困窮者の方々あるいは失対労働者、この失対労働者はずっと以前から寒冷地給を支給してほしいという要求があるにもかかわらず、そういう仕組みにはいまなってないわけですね。しかし、これらの方々にも、ぜひともこの値上がりの生活に対する影響を幾らかでも軽くしてあげる措置が、対策費の値上げ等で措置されなければいけないと思います。  それからもう一つは、公務員の寒冷地手当の問題があります。この急激な値上がりは公務員の家計に対する影響も多くて、この寒冷地給、これはもう北海道だけじゃなしに、東北から山の地帯等全国あちこちにまたがっているわけでありますけれども、五十年の三月に改定されたまま、現在まで改定勧告が行われていないわけです。この五年間のうちに、算定基礎になる灯油の値段は恐ろしい値上がりを示しているわけです。級地の是正だとか、人事院においていろいろ検討は進んでいると思うのですけれども、そういう検討が終わったら勧告するというふうに人事院総裁はしばしば言明したまま今日まで来ています。そして去年からことしにかけて、この大変な灯油の値上がりです。  ですから、多年問題になってきた制度の改革等の問題もありますけれども、とにかくそれはそれとして、いまの段階では応急措置として手当引き上げというのを五十四年度のうちにとりあえず行うべきではないか、いまこの冬困っているわけですから。これは異例な措置かもしれませんけれども、この前のオイルショックのときにもこういう措置がとられているわけですね。ですから、全国に散らばっている、寒冷地で暮らしている公務員のその手当の問題について、人事院の今日までのお考えを承りたいと思います。いま申し上げました厚生大臣、労働大臣人事院総裁、お三人の方からひとつこの問題についてのお答えをいただきたいと思います。
  139. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 先般の総括質問におきまして、安井先生御指摘になりましてお答え申し上げたとおりでございますが、そのお答えを繰り返して大変恐縮でございますけれども、先ほどもお話しになりましたとおり、生活扶助基準というものは石油などの個別品目の物価動向について個々に対応する仕組みになっていない、御了承のとおりでございます。  しかしながら、現在の石油価格の大幅な値上げに対しまして、政府はどうしていくのだということでございますが、五十四年度の四月から十二月までの消費者物価の上昇率、これは三・九%にとどまっておるわけでございます。しかも生活扶助基準というものが八・三%になっておりますので、現在の生活扶助基準で対応できるのではないかというふうに考えておるわけであります。しかしながら、この石油価格を含む物価の動向につきましては、先行ききわめて警戒を要する状況にございますから、今後の物価動向に十分注視いたしまして機敏な行動を起こしていかなければならぬのであると考えております。いまの基準でもって対応できるのではないか。しかし、対応できないというような異常事態が発生いたしたならば、これは特別な処置を講じなければならないと考えておる次第でございます。
  140. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 冬の期間に、北海道など一部の地域におきまして冬季加算の措置を講じてきておりますことは、ただいま御指摘のところでございます。ただ、失対の賃金は、御高承のように、民間の類似の労働者の賃金を考慮して決める、こういうふうに法律で決められておりますので、いろいろと灯油の値上がり等のことについてはずいぶん心配をいたしておりますけれども、しかし、そのまま灯油の値上がりをこういった加算措置に連動するということは、法律上無理であるというふうに御理解をいだたきたいと思います。しかし、失対賃金は失対賃金審議会で決めるようになっておりますので、その御意見を踏まえて決める、こういうことになっておりますので、すでに諮問をいたしておりまして、三月の中旬には答申を得られるというふうに考えておりまして、それらの中でいろいろまた配慮されていくのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  141. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 寒冷地手当の中には、いわゆる基準額と加算額というものがございまして、加算額は特に寒冷度が高い地方におきまする燃料費の補てんということを直接のねらいとして設けられておるものでございまして、その原料というのは、従前は主体が石炭でございましたのが現在は灯油になっておるということで、灯油が主体であるということは御指摘のとおりでございます。しかも、この燃料費というものが非常に上がっておるという事態も、私といたしましては十分に認識をいたしております。したがいまして、寒冷地手当自身の中には、ほかにも制度的な問題で解決を要する点がなお残ってはおりますけれども、それと一緒でなければならぬというふうに私としても割り切って考えておるわけではございません。  ただ、加算額につきましては、御承知のように基準日というものがございまして、これは八月の三十一日時点で一年分を払うというたてまえになっております。したがって、それを決めます場合におきましては、その基礎をいまのところでは大体前年の六月にとっておるというようなことがございまして、そのたてまえを、今度の場合は特に去年の夏以降に非常に著しい高騰が見られるという点がございますので、そういう制度の仕組みをどういうふうに考えていくかという点もございましょう。それに、これに対する民間の対応が現実にどうなされておるのかというような点につきましても、参考に十分把握する必要もあろうかというふうに考えておるのでございまして、それらを見ながら、これに対する対処の仕方、方法、時期等につきまして検討を続けておる次第でございます。
  142. 安井吉典

    安井委員 去年の暮れの総括質問でも私はこの問題を取り上げたのですけれども、お聞きいたしますと、あのときの段階から何にも進んでいない。灯油のこの異常な値上がりに対して、国民生活に多大な影響があるというこの問題について、値上がりをどうするという手も政府は全然打たない。上がりっぱなし。しかも、その上がったものが国民の生活に影響があるという問題についても、対策はほとんどゼロ。これじゃ私は、国民が腹を立てるのは無理がないのではないかと思います。ぜひとももっと進んだ答えを私は得たいと思うのです。  特に生活扶助料の問題だって、機械的な、そろばんがこうなっているからということだけで異常な事態を放置しておくということはおかしいと思うし、これまたもう少し考えようがあるのではなかろうか。  あるいはまた、失対の冬季加算金の問題にいたしましても、三月の中旬の答申だそうでありますけれども、三月の中旬の答申になってだんだんいっちゃうともう雪が解けて暖かくなっちゃうのですよ。欲しいのはいまなんです。いま緊急の措置というものが何かできないのですかね。補正予算がちょうどいま審議されているわけですけれども、大した額じゃないと思うのです。  それからまた、人事院の方もぜひお考えいだたきたいのは、この寒冷地給というのは、たしか議員立法で、もう大分昔の話でありますけれども、当時の参議院先議で成立した経過があったように記憶しています。こういう性格から生まれた法律ではありますけれども、やはりいま困っているという状態に対しては、いま直ちに五十四年度予算内で措置ができるような勧告の仕組みが必要だし、制度論は、残ったさまざまな問題がありますからね、それは八月の正規の勧告時期に譲る、そういうふうに問題を二つに分けて御処理を願う、こういうことを私は希望しておきたいと思います。
  143. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 答弁の繰り返しで大変恐縮でございますが、しかし、その基準を改定をいたして、そして五十五年度にも対応いたしておるわけでございます。その中で対応すべきではないかと考えておりますが、しかし、石油の品目だけを考えるならば、国民生活にかなり大きな影響を与えておるわけでありますから、関係機関と十分連絡、協調いたしながらそういう事態をどう考えてどう解決していくか、慎重にひとつ現実の問題として積極的な考え方を持ちたい、かように考えておる次第でございます。
  144. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 失対事業賃金審議会の意見を十分踏まえて決定をいたしてまいりたいと考えております。
  145. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 加算額の性格からいたしまして、灯油の価格の問題は放置できないものがあるという認識は持っております。ただ、これに対処するやり方、方法等についてはいろいろな周辺の問題もございますので、これらを含めて鋭意検討を続けてまいりたい、かように考えます。
  146. 安井吉典

    安井委員 最後に総理に。  一番最初の宮永事件の処理の問題についての私の質問に対する総理の御見解として、機密保護法やその他自衛隊法も含む罰則の改正等についても、そういうような措置がこのことをきっかけにしてとられないようにしてほしいということを申し上げた際に、前向きに処理するというお答えがありました。機密保護法については当然だと思うのですけれども、自衛隊法の改正もなさらないということと受けとめてよろしいですか。
  147. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま当面のこととして秘密保護体制の点検をいたすことが第一だと思うのでございます。つまり、現在の体制の中でどのようにして秘密を保持してまいるかということの点検をいたしておる。それが第一でございまして、いま直ちに、こういう事件があったから新たな立法をお願いするというようなことは考えていないということでございます。
  148. 安井吉典

    安井委員 それは自衛隊法の問題も含めてのお話ですね。
  149. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そう御理解いただいて結構です。
  150. 安井吉典

    安井委員 終わります。(拍手)
  151. 田村元

    田村委員長 これにて安井君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後零時四十三分開議
  152. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  153. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、主として経済問題につきまして御質問いたしたい、このように思っておりますが、その前に何点か御質問したいと思います。  第一点は、オリンピックの問題でございますが、この八日、レークプラシッドにおきましてIOCの理事会が開かれております。こういう中で、アメリカ・オリンピック委員会のケーン会長が提案をいたしておるわけであります。いまのような状態であるならば、開催地をモスクワ以外の地に移すか、これが不可能な場合オリンピックを中止するように要請した、あるいは代替地が見つかるまで開催を延期するか、これもまた不可能な場合中止するよう主張をした、このように伝えられておるわけでございますが、恐らく理事会でもかなり紛糾もするでしょうし、あと総会ということになると思うのですが、このIOCの決定がなされた場合、わが国としてそれに従うべきであるというのが政府の基本的な考え方であるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  154. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  モスクワのオリンピックの開催とか参加とかいう問題は、基本的にはIOCあるいはJOCが決定をする責任がある問題でございますが、政府としましては、今後の国際情勢の動きもございますし、内外世論の動向ということもございますので、そういう問題を踏まえまして、JOCとの間で十分密接な連絡をとって対処してまいりたいというのが政府の考え方でございます。
  155. 近江巳記夫

    ○近江委員 もちろんJOCとは連携をおとりになることでございますが、尊重したいという意向はあるわけですか。
  156. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 重ねてのお尋ねでございますが、開催と参加ということは、まさにIOCとJOCの責任の問題でございますから、そこで決定をされると思うのでございます。そういう決定というものは、対処する場合の非常に大きな要素となることはもちろんでございます。ただ、まだ間がありますので、その間のこれからの社会的な、国際的な政治情勢の問題、あるいは国内の世論等もいろいろございましょうし、そういうものもまた一つの大きな対処する場合の参考の要素として考えなければならぬと思うわけでございまして、その場合はどうするかということは慎重にJOCと相談をしていくというつもりでございます。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 この二月一日に示されました政府意向によりますと、これは一般に、現状のままでは政府としてモスクワ・オリンピックに参加することは好ましくないと受け取られておるわけですが、政府のねらいも、そういうふうに受け取られることを期待した政府意向じゃないかと思うわけでございます。  そこで、問題になっておりますソ連軍が、オリンピックの申し込み締め切りは五月中旬ですね、それまでにソ連軍がアフガンから撤退すれば、オリンピックに参加してもいいのではないかということが政府の意向であるのかどうか、明確にしていただきたいと思います。
  158. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 この前JOCに伝えました意向は、まさにオリンピックというものは人類の平和と友好を希求することを目的とするわけでございますので、現在のソ連のアフガニスタンに対する軍事介入というようなことに起因した世界の政治情勢あるいは内外の世論は非常に厳しいということについて重大な関心を払わなければいかぬということを言ったわけでございまして、参加はJOCが決めることでございますが、いまの雰囲気は、そういうオリンピックの本来の目的には沿わない空気じゃないかということを言外に書いたわけでございます。  それで、いま先生のおっしゃったような、アフガニスタンからソ連軍が撤退するというような情勢になりますれば、恐らく世界の世論あるいは国内の世論、政治情勢もまた変わってくることも予想されるわけでございまして、そういう場合に、モスクワで世界の人々から祝福を受けて開催ができるというような状態になってくれば、またそれはそれをもとにした判断をするということはもう間違いないことだと思います。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後IOCの決定がどうなるか、それはわかりませんけれども、アメリカがモスクワ・オリンピックをボイコットしたとしても、日本はこれに一切関係なく独自の判断で参加問題を求めるのかどうか。アメリカ政府から日本政府にモスクワ・オリンピックに共同歩調をとるよう要請はあったのかどうか。以上二点についてお伺いいたしたいと思います。
  160. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 二点お尋ねでございますが、アメリカはカーター大統領が、一月二十日でございましたかUSOCに対しまして、ボイコットという場合もあるいはあるかもしらぬ、延期という場合もあるかもしらぬ、中止あるいは別な場所でやるというようなこともあるかもしらぬが、USOCはどういう態度をとるかということをUSOCに言ったわけでございます。USOCはその中で、ボイコットということはとりませんで、開催場所の変更でございますとかあるいは延期とか、そういうことをIOCに申し出るということを言ったということの連絡はございました。通報があったことは確かでございます。しかし、日本としましては、先生御承知のように、この間からレークプラシッドにJOCの人々あるいはIOCの理事をしている方々が出られるときに日本政府の意向を伝える時期が一番いいのじゃないかということで、自主的な判断で、世界の情勢も踏まえまして、内外の世論も踏まえましてああいうことを申し上げたということでございます。  それからもう一つ、これは将来のどういう形になるかということでございまして、先生おっしゃったのは、アメリカが出ない、不参加だという場合にどうするのかというお尋ねでございますが、これはいまから申し上げるのはまだ私は時期が早いのじゃないか。世界情勢というものはアフガニスタンの軍事介入をめぐっての問題でございますので、そのときどういうふうになっているか、また内外の世論がどうかということをやはりわれわれとしましてはよく判断して、JOCと十分その辺は協議をするというのが、いま申し上げられるところでなかろうかというふうに思っております。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 モスクワ・オリンピックを大きな目標としてきた選手、真剣にやっておるわけですが、これは仮定でございますが、JOCがもし規模を大幅に縮小したり部分的にモスクワ・オリンピックに参加することを決定したとすれば、政府の意向としてどのように受けとめられるか、またもしそういう決定をした場合政府は尊重するのかどうか、この点について明らかにしてもらいたいと思います。
  162. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 いま御質問の点も、これから将来そういうことが起こるかどうかという問題でございます。いまの時点でそれをどうするということはまだ政府では何も決めておりませんが、モスクワ・オリンピック目指して努力していられる選手の人たちの気持ちというのはよくわかりますので、その点はどういうふうになりますか、これからの問題でございますが、政府としてはJOCとよくその点も取り扱い方なんかは相談をする、そして希望することは、そうしたJOCの中がそういう先生おっしゃったようなことにならぬように、一本としてまとまるということが一番望ましいことでございますので、内外の世論、世界の政治情勢を踏まえまして、十分その点は慎重に検討してまいりたいと思います。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、KDDの問題について若干お聞きしておきたいと思います。  現在まで捜査はどのようになっておるか、簡潔にひとつ御報告をいただきたいと思います。
  164. 中平和水

    ○中平政府委員 お答えいたします。  KDD関係の捜査につきましては、昨年の十二月四日、関税法違反等の容疑に基づきましてKDDの本社外二十二カ所の捜索を実施いたしまして、それに基づきます押収資料の分析検討を鋭意進めておりまして、現在捜査は着実に進展をしてまいっておる、そういう状況になっておりますが、何分事件が非常に複雑な内容を持っておりますので、全容の解明までには今後相当の期間を要する、そういうふうに考えておる次第でございます。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 現在捜査は着実に進展しておるということをおっしゃっておるわけですが、押収書類の分析結果はどういうふうになっておるか。  まとめてお聞きしたいと思いますが、それから保田参与のいわゆる自殺した件でございますが、遺書につきまして秋山弁護士に提出を求めておられるようでございますが、この入手の見込みがあるのか。以上合わせて二点、お伺いしたいと思います。
  166. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 関税法違反に係る押収の問題でございますので私からお答えいたしますと、十二月の四日と五日に押収しました点数が大体九千点以上、かなりの数ございます。それにつきまして、KDDの旧社長室の関係者十数人、その人たちにもいろいろと事情をお聞きしながら分析をしておるところでございますが、内容といたしましては、書画骨とう、美術品のたぐいであるとか、あるいは資料、書類であるとか、そういったものがございますが、何分点数が多いのとそれから非常に複雑なものでございますから、ただいま分析をしている最中でございまして、その結果その他につきましては、御報告できる段階にはまだ至っておりません。
  167. 中平和水

    ○中平政府委員 遺書の件についてお答えいたします。  遺書につきましては、本人が亡くなられた日の午後、弁護士の方で、御家族あるいは会社の関係等々の方々にあてた遺書六通を弁護士の方で入手している、そういうことを聞いております。今後の捜査上の私ども参考にもいたしたいと思っておりますので、弁護士に現在その遺書の提出についての協力の要請をしておる状況でございます。現在のところ入手いたしておりません。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 秋山弁護士の方にはそういう申し出をなさっているわけですが、拒否なさっているようなことが伝えられておるわけですが、見込みはどうですか。
  169. 中平和水

    ○中平政府委員 今後入手につきまして鋭意努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 保田参与の自殺によりまして捜査には影響が相当出てくるのじゃないかと思うのですが、今後の影響につきましてお答えいただきたいと思います。
  171. 中平和水

    ○中平政府委員 保田氏が亡くなられたことで、その影響につきましてはにわかには判断をいたしがたいわけでございますが、いろんな意味での影響は否定しがたいというふうに私ども考えている次第でございます。しかしながら、先ほど御報告申し上げましたように、各般の資料を私どもは現在鋭意分析中でございますので、今後さらに証拠を積極的に収集いたしまして、事案の真相の解明に当たっていきたい、こういうふうに考えております。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 影響というものは、非常に大きいのですか、小さいのですか、その辺のニュアンスをひとつ。
  173. 中平和水

    ○中平政府委員 私は率直に申して、影響はないとは言えないと思いますが、大変大きいかということになりますと、これまた今後の捜査を待って決めなければいかぬ問題でございまして、先ほどの繰り返しになりますが、真相の解明に全力を挙げたいし、そういう決意と、私ども一種の自信と申しますか、そういう気持ちをもってこれからも取り組んでまいりたいと思っております。
  174. 近江巳記夫

    ○近江委員 この遺書に、読売新聞初めいろいろ報道されておりますが、七人の名前が出ているわけですが、この方たちは捜査上の重要な参考人として見ておられるわけですか。
  175. 中平和水

    ○中平政府委員 新聞報道等を通じまして、先ほどの御指摘の点について私ども十分承知をいたしております。事柄は今後の捜査にいろいろかかわり合いのあることでございますので、この席での答弁は遠慮させていただきたいと思います。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 特に板野さん、佐藤室長に対して事情聴取等はなさったのですか。
  177. 中平和水

    ○中平政府委員 事情聴取したという警視庁からの報告は、いまの時点では受けておりません。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 今後の捜査方針というものにつきましてどういうようにお考えであるか、お答えをいただきたいと思います。
  179. 中平和水

    ○中平政府委員 今後とも従来の基本方針に基づきまして、証拠を確実に収集し、事案の真相の解明に全力を挙げて当たっていきたい、こういうように考えております。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 この真相の解明に全力を尽くすという決意をお述べになったわけでございますが、今後ひとつ力を入れてやっていただきたい、このように思います。  経済問題に入る前に、あともうちょっとお聞きしたいと思いますが、総理も御承知のように、八日の夕刻、北九州市小倉南区の新興住宅街におきまして女性が三人通り魔に襲われて、二人が死亡、一人が重体、こういう悲惨な事件が起きているわけですね。その同じ日に政府閣議決定で、犯罪被害者等給付金支給法の国会提出をお決めになったわけですね。ところが御承知のように、これは来年の一月一日からでないと適用にならぬわけですね。こういう被害に対して総理としてはどのようにお感じになっておられるか、感想をひとつお聞きしたいと思います。
  181. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 この事件捜査してみなければわかりませんが、一般的にこの種の通り魔的な事件によって殺された場合の遺族の方、御本人本ちろんですけれども、同時にまた重傷等を受けた御本人、本当にお気の毒だと考えております。ところが、わが国には欧米先進諸国のように、こらいった場合に、大変お気の毒だ、国として何らかの処置をしなければならぬといったような制度が従来なかったわけでございますが、今回ようやく成案を得まして、今国会国会の御審議を仰いで、こういった場合に何らかの一時金を支給したいということで、現在国会の方に提出をしておるような次第でございます。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 いや、そういうことはわかっておるわけですよ。ですから、いわゆる適用がされないわけでしょう、こういう実情に対してどういう感想をお持ちであるかということをお聞きしておるのです。総理、ひとつお答えいただきたいと思います。
  183. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 せっかく成案を得ましたので、国会で御審議をいただくことになったわけでございますが、それの成立を待たずして痛ましい犠牲になられた方、大変お気の毒でございます。何とか救済の道がないものかと考えたいと思いますけれども、制度をつくる場合にどうしても、どこでいつから適用ということは避けて通れないことでございます。今後の国会の御審議も承りまして、考えなければならぬことは考えていかなければいかぬと思っています。
  184. 近江巳記夫

    ○近江委員 本当に痛ましいことだと思うのですね。それで一つは、この適用の期日の問題があります。それと額にいたしましても、政府の案によりますると、給付金の最高額、遺族給付で八百万、障害給付で約九百五十万円。ところが、現状いろんな保険等を見てまいりますと、自動車賠償責任保険の補償最高額が二千万円なんですね。これはもう非常に低いじゃないかという問題があります。  いろんな問題がございますが、もう一つの大きな問題は適用の問題。そこで、われわれは遡及をすべきだ、さかのぼるべきだ。公明党としては、こういうなかった法案ができるということは確かにいいと思っていますよ。だけれども、どれほどこの犯罪被害において苦しみ泣いておられる方がたくさんあるか。この北九州の事件も、現実にこれは救済されない。総理は何とか救済の道はないかと、そういう非常に真に迫る総理のお心を私は聞いたと思うのです。したがいまして、わが党としまして同日、わが党独自案を提出したわけです。それは、二十年前にさかのぼる、金額も二千万円にしなさい、こういうことなんです。金額的にはそんな膨大な額にはならぬわけです。したがって、総理のそういう何とか救済してあげたいというその気持ちを受けて、政府はそれを修正するなり何なりできるわけですよ。ですから、そういう点につきまして、ぜひひとつ総理を中心に政府全体で御検討いただきたい、これは強く申し上げたいと思うのです。御検討いただけますか。
  185. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 この制度をめぐりまして、近江さんの御所属の公明党の御意見等も十分私わかっておりますし、近江さんのお気持ちも私にも重重わかるわけでございます。しかしながらこの種の案件というのは、ともかく過去にさかのぼる、遡及効を認めるというのは制度として非常にむずかしい問題ではなかろうかなと、かように考えまして・私どもとしては来年の一月一日以降この法律を適用したい、かように考えておるわけでございます。お気持ちはよくわかるわけでございます。  なおまた、金額でございますけれども、八百万、九百五十万、こういうのが最高額になっておるのですが、これを決めるときにもいろいろ実は検討したのです。しかし、この制度は、ともかく本人が掛金を掛けておるとかといったようなことではなくて、国の方からお気の毒だということで見舞い金的な性格で支給するものである。警察官が職務執行しておる、それに対して一般の市民の方が協力をなさった、その協力した場合に不幸にして亡くなったあるいは重傷を負われたというときに現在どの程度の金額を支給しておるのかといったようないろいろな諸制度との絡み等も考えまして、この程度の額が適当であろうということで、今回一応その額の決定をして御審議をお願いしておる、かような次第でございます。
  186. 近江巳記夫

    ○近江委員 まあそういう事情はわかりますが、これは総理政府全体でひとつまたよく御検討いただきたいと強く要望いたしておきます。  それから、経済問題に入る前にあと一点だけ聞いておきますが、七日の日に京都国際会館で第十八回の関西財界セミナーで、日向関経連会長が開会冒頭にこういう提起をしたのです。防衛費をGNPの一・九%にして徴兵制を検討しては、こういう発言があったわけですね。これは聞くまでもないことですけれども、しかしマスコミを通じまして非常に大きく報道せられているわけです。ソ連軍のアフガン侵攻を初め非常に米ソの緊張が高まっておりますし、また米軍事委員会も日本に対する防衛力増強を要請してきております。そういう中でのこの発言なんですね。また、関西財界のトップがこういう発言をしているわけですね。もちろん言論は自由ですし、とやかく言うあれじゃないのです。ないのだけれども、そういう雰囲気の中でこういう発言がなされておる。マスコミでも大きく報道されておる。政府の姿勢というものははっきりしていると思うのですけれども、徴兵制については明確に憲法違反であるということも国会でも答弁されておりますし、あるいは防衛費の一%の問題につきましても、昭和五十一年十一月五日の国防会議決定閣議決定がなされておるわけです。聞く必要もないと思うわけですが、この点につきましてお答えをひとついただきたい、明確に政府の姿勢をお示しいただきたい、このように思います。
  187. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御質問の中にもございましたとおり、徴兵制を施行することは、ただいまの憲法が許しておらないところであることに政府としては一貫して見解が一致いたしておる次第でございます。  なお、防衛費の問題につきましては、全般の情勢を考えながら防衛費の総額を決めるわけでございますが、ただいまこれまた御質問の中にございましたように、閣議決定国民総生産の一%に相当する額を超えないことをめどとしてこれを行うことに決定しておるのでございまして、この方針に変更はございません。
  188. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、外交、防衛等の問題につきましては同僚の市川委員にまたあと譲ることにしまして、経済問題に入りたいと思います。  OECDから政府規制産業の弊害の見直しにつきまして勧告を政府は受けているわけですが、その見直し作業につきまして具体的にどういうように取り組んでおられるかということについて、簡潔にお答えをいただきたいと思うのです。公取委員長と行管長官、それから総理から、今後どのように具体的に取り組まれるか、方針を明らかにしていただきたいと思います。
  189. 橋口收

    ○橋口政府委員 OECDの理事会から昨年の九月に加盟各国に対しまして勧告がございまして、いま先生おっしゃいましたような政府規制産業及び独占禁止法適用除外領域に対して競争政策を導入することの可能性について加盟国は検討すべきであるという勧告でございまして、これは御承知のように、OECDの下部機関であります制限的商慣行委員会におきまして数年にわたって検討を進めてまいった内容の見解でございまして、専門委員会から報告を受けての理事会から加盟国に対する正式の勧告でございます。これを受けまして、競争政策を担当いたします公正取引委員会といたしましては、現在日本における政府規制領域及び独占禁止法適用除外領域の法令の数、全体の経済に占める割合等につきまして鳥瞰図的な分析をいたしておるわけでございまして、そういう意味におきましてはまだ本格的な取り組みの態勢にまで入ってはおりません。  それからもう一つの問題といたしましては、ただいま御審議を煩わしております昭和五十五年度予算におきまして政府規制産業領域等に対する実態究明のための調査費等の経費約五百万円強を計上しておるわけでございまして、これは後ほど御答弁があるかと思いますが、行政管理庁と共同的な作業を行うという趣旨に基づく調査費が中心でございまして、そういう経費をお願いしておるわけでございます。この予算が成立いたしました場合に、昭和五十五年度以降におきましてこの調査費等を使いまして、学者の先生方、専門家の御意見も伺い、また委員会自体といたしましても本格的な検討に入りたいと考えておるところでございます。
  190. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ただいま公取委員長が申しましたことで尽きておる次第でありますが、政府といたしましては、昭和五十五年行革の計画の中に許可認可あるいは報告、法令と並びまして、規制行政の見直しということを掲げております。これは三月ごろに、行管庁にありますところの、私が委員長をいたしておりますが、行政監理委員会におきまして審議を煩わしたい。それと同様に、並行いたしまして公取と行管庁で合同会議を行ってしぼっていきたい、かように考えておるところであります。
  191. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 わが国は、OECD理事会の勧告に対しましては道義上の責任を負っておりますことは申すまでもございません。公正取引委員会といたしましても、活力ある経済を維持するために、政府規制並びに独占禁止法適用除外に関しまして、競争政策の視点から中長期的に見直しを行うことといたしております。
  192. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしましても、この問題は国際的にも非常に大きな問題として取り上げられてきておるわけですね。そういう点、ひとつ政府としては、形だけとは申しませんけれども、意欲を持ってやっていただきたい、このように思います。  あと個別の問題について伺いたいと思うのですが、昭和五十二年度の公取の年次報告によりますと、タクシー運賃改定申請の方法について報告をしております。それによりますと、事業者団体が料金申請を一括して申請を行ってきたことに対して、独禁法三条、八条一項第一号もしくは第四号に抵触するおそれがあるとして改善措置がとられたわけです。こういう点からいきましても、料金の認可制をとっている業界についても、事業者団体がその構成事業者の機能または活動を不当に制限するような行為をとることは独禁法に抵触すると思うわけでありますけれども、この点につきまして委員長からひとつお答えをいただきたいと思うのです。確認しておきたいと思います。
  193. 橋口收

    ○橋口政府委員 いまお話がございましたように、昭和五十二年以降タクシーの運賃改定の際に、従来は事業者団体が一括して申請をいたしておったわけでございますが、こういう一括申請方式にはもろもろの弊害があるわけでございまして、具体的に申しますと、あるタクシー事業者はそれほど大きな値上げを必要としないという見解を持っておりましても、団体として大幅な値上げを申請する、こういうことで構成事業者の活動を阻害するということがあったわけでございますから、そういう意味におきまして、個人タクシーを除いて一括申請の方法は取りやめにして個別申請にいたしておるわけでございまして、今日におきましてもその方針は変わりはございません。
  194. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は重大な問題を申し上げたいと思うのですが、これは全紙報道されましたけれども、北海道電力と沖縄電力を除く電力八社が一月の七日、赤坂のホテル・オークラで臨時社長会を開いて、料金改定申請時期それから料金改定時期について協定したほか、料金原価の計算期間を一年間とするかどうかについても談合し、結果として一致させておるわけです。現に電力八社は一月二十三日の午前中に、中国電力の八四・〇七%を最高に北陸電力六一・五四%の値上げ率に至るまで八社平均六四・四二%の大幅な電力料金の値上げ申請をしておるわけです。さらに料金原価の計算を一年にしているわけです。これは私は非常に問題だと思うのです。今回のこういう電気料金の申請に関して電気事業連合会が料金算定の申請に関し談合した場合は、これはタクシーの場合と同様に独禁法の八条一項四号に抵触すると私は見ておるわけですが、公取委員長の御見解を賜りたいと思うのです。
  195. 橋口收

    ○橋口政府委員 今回の電力料金の改定の申請に関連をいたしまして、いまお話がございましたような事実があってはならないわけでございますので、実は前に、非公式ではございますが、電事連の方から話し合いをすることについての可否について問い合わせがございまして、これは事務方の方からでございますが、そういう行為は本来好ましくないということをお答えしてあるわけでございますから、万に一つもそういうことはなかったものと考えております。  ただ法律論を申し上げますと、先ほど来問題になっておりますタクシー料金とはいささか趣きを異にするわけでございまして、タクシー料金の場合には同じ路線を走るというお互いに競争関係にある事業者の問題でございます。ただ、電力料金につきましては電事法等によりまして地域独占が制度的に認められておるわけでございますから、九電力相互間におきまして競争がない状態が原則でございます。全くないということはございませんが、原則的に競争はないという状態でございます。また、料金は通産大臣の認可制でございますから、仮にでございますけれども、仮定の議論といたしましていろいろ話し合い等が行われましても、通産大臣によって料金が認可されることによりまして競争状態はなくなるわけでございますから、独禁法違反の行為が仮にありましてもそこで中断される、こういう法律上の制約がございます。また、電事法等で行政庁によりまして強力な監督が行われております実態等を考えますと、仮にそういうことがございましても法律的に独禁法違反として問い得るかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題ではないかというふうに考えております。
  196. 近江巳記夫

    ○近江委員 委員長は、行為は好ましくないと、こうはっきりおっしゃったのです。これは重大なことですよ。好ましくないということは、独禁法違反の疑いがあるということなんです。自然独占ということで、確かに電気やガス、鉄道は外されていますよ。外されていますが、自然独占であるということにあぐらをかいて、好ましくないということを平然としてやっておるのですよ。そうでしょう。こういうような、今回のこの電力、ガスの引き上げというものは、どれほど国民生活に大きな影響を与えるかはかり知れないのです。中身自体だって非常に問題がある。原油の価格の算定にしたって非常に高いものにしておるし、現実にここで談合をして、私がいま申し上げましたように、一月二十三日の午前中に八社が全部行っておる。値上げ幅もほぼ一緒ですよ。その幅の中に出してきておる。しかも原価の計算を一年にしておるわけです。そこで話し合われたことは、このまま結果として出ているじゃないですか。好ましくないということは独禁法違反の疑いなのです。自然独占ということでいままで放置されてきた。こういうことはOECDにおきましても、そういうような独占の形というものは果たして国民にそれだけの利益、プラスをもたらすのかどうか、これが大きくいま問われておるのです。好ましくない、こういうことを電力業界がやっておる。委員長、これは私は重大な問題だと思いますし、好ましくないということは、何回も申し上げておりますが、独禁法違反の疑いがあるわけですから、これは直ちに事実を調査すべきですよ。いかがですか。
  197. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほどもお答えしたとおりでございまして、そういう行為があることは好ましい行為かということであれば、これは好ましくないということであろうかと思います。ただ独禁法上処断できるかという問題につきましては、いまお話がございましたように、自然独占という形態でもございますし、また電事法によって制度独占という形態が明瞭に法定されておるわけでございますから、これは独占禁止法によって保護すべき法益はないというふうに考えておるわけでございます。
  198. 近江巳記夫

    ○近江委員 私がいま提起しておる問題は、OECDの勧告もありまして、私はこれはこれから非常に大きな論争の問題になると思うのです。学者のそれだって、私も、全部はそれはなかなか調べることはできませんけれども、いろいろ調べてまいりました。非常にこの問題については提起しておりますよ。神戸大の助教授の根岸さんという人の「独占の容認と見解」、独禁法講座におきましても、非常に問題点を投げかけておりますし、正田彬さん、慶応大学の教授もここで主張しております。それから今村成和さん、北大の教授ですが、「その独占的地位を利用して積極的に他の事業者の事業活動の排除または支配を行えば、当然に私的独占または不公正な取引方法に該当することになる。」また阿部芳久弁護士、「自然独占事業の行為であっても、その独占的地位を不当に利用するような行為は当該事業に固有なものとは認められず、本法の適用がある。」  これはいままで公取委員会は、好ましくないなんという答弁は一回もしていないのですよ。これは初めてですよ。初めてそういう問題点を公取委員長が提起したのです。好ましくないということは、独禁法違反の疑いがあるから好ましくない。しかし、独禁法違反のはっきりとした批判があるとか疑いが濃厚であるということになってくると、いま査定作業に通産省は入っているわけで、これから大変な影響を与えるという配慮で恐らく好ましくないという表現をしておられると思うのですよ。こういう好ましくない行為を、いま料金算定に入ろうとしておる中で放置されるのですか。公取委員会としては傍観されるのですか。こういうことを放置するということは、私は政府全体大問題だと思うのです。好ましくない行為をやっておるのです。どうなさるのですか。
  199. 橋口收

    ○橋口政府委員 法律問題ですから重ねてお答えを申し上げたいと思いますが、いまお読みになりました見解は、他の事業者と競争関係にあります場合に初めて問題になるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、九電力相互間におきましては、地域独占という形態が法的には認められておりますから、相互に競争関係はないわけでございますから、したがいまして、仮に相互に談合いたしましても、これは独禁法には触れないということを申し上げておるわけでございます。ただ、世間一般に対する関係等もございますから、八社の方がお集まりになっていろいろ相談されることが一体適当かどうかということであれば、これは適当でないというふうに申し上げておるわけでございまして、その問題と法律上対象にし得るかという問題とは別問題でございます。  なお、念のために申し上げておきたいと思いますが、独禁法適用が全くないのかということでございますが、それはそうではございませんで、いま先生がおっしゃいました中にも一部ございましたように、たとえば電力会社が不公正な取引方法を行う、経済的強者としての地位を乱用して取引先をいじめるというような行為があれば、これは当然固有の業務には入らないわけでございまして、そこで言っております固有業務は、他と競争関係にある固有の業務があるかということでありますから、そういう点で申しますと、そういうものはないということでございます。
  200. 近江巳記夫

    ○近江委員 この第八条の第一項第四号「構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること。」社長会が定例的に行われてこれだけの中身のことを談合しているのですよ。たとえばA社が、わが社はこれだけの。パーセントの引き上げでいけるんだ。これはほかが非常に高い。そうすると、君のところはちょっと低いから、それじゃなぜ低いかということでまたいろいろな問題がある。もう少しいろいろな点でやればどうか。これはわかりませんよ。わからないけれども、いろいろなことがそこで話し合われている。他の業者の活動を不当に制限することになるのです。第八条のここにかかりますよ。自然独占ということでこういうことが放置されていい、そんなことは絶対あり得ないことです。いままで余りにもこの問題が放置され過ぎてきた。だから、好ましくないことなんですから、公取委員会としては当然電力業界に対して事情聴取をすべきですよ。いかがですか。
  201. 橋口收

    ○橋口政府委員 たびたび同じことを申し上げて恐縮でございますが、競争関係にある事業者の機能、活動を制約するというのが第八条の規定でございますから、先ほど来申し上げておりますように、競争関係のない事業者の活動を制約するということは起こり得ないわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたように、事業者団体の活動指針というものも出ておりますから、そういう点を十分配慮されて行動されることが望ましいということを裏から申したわけでございます。
  202. 近江巳記夫

    ○近江委員 だけれども、原油の購入であるとか、そういうところは全部適用除外ですよ。違いますか。販売とか、そういうところのそれから外れるのですよ。そういうことが現実に料金算定の中に重要な部門に入ってきているのですよ。違いますか。そういうことが一番の主要な問題点に入ってきている。あなたはいま好ましくないとおっしゃっているわけです。私がいま言ったその問題も含めて、当然電力業界に対して徹底した調査をすべきです。いかがですか。
  203. 橋口收

    ○橋口政府委員 電力供給事業において競争制限的な行為があったかどうかということが問題であるわけでございますから、原料購入とかいう問題には自然独占とか制度独占という問題は本来関係がございません。  徹底的な調査をするかというお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、電事連から事前に内々の照会がございまして、そういうことは好ましくない、慎むようにということを注意をいたしておるわけでございまして、われわれといたしましては一法の執行責任官庁としてはそういう行為をすでにいたしておりますから、これ以上重ねて何らかの行為をとる必要はないというふうに考えております。
  204. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、好ましくないとおっしゃったその中身は、どういう点から好ましくないと、それをはっきり言ってくださいよ。
  205. 橋口收

    ○橋口政府委員 電力会社は高い公益性を持っておるわけでございますから、ことに電力料金の値上げという大きな問題を控えておるわけでございますから、一堂に会していろいろ相談されるという行為自体が世間一般に誤解を招くわけでございます。またそういう配慮がございますからこそ、電事連の方から事前に照会があったわけでございまして、そういう問題につきまして意見を聞かれれば、それは決して好ましい行為ではない、こういうふうに申し上げたわけでございます。したがいまして、先ほど来、いろいろ談合なり協定なり行われたのではないかというお話でございますが、私どもの方は、万に一つもそういうことはなかったというふうに考えております。
  206. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは誤解を招く、だからやめておきなさいと。現実にやっているわけでしょう。談合した結果として、こういう申請日も午前中にぱっちり八社が出して、値上げ幅はほぼ一緒ですよ。結果としては皆一致しているわけでしょう。談合が行われたということは歴然じゃないですか。そういうことは事実としてありません、それではあなたはその場に出ておったのですか。出てもいないのにわかりますか。こんな公取委員長の姿勢でいいのですか。好ましくないということをやっているのですよ。それでは事情をお聞きになったんですか、いかがですか。
  207. 橋口收

    ○橋口政府委員 現在までのところ事情は聴取いたしておりません。
  208. 近江巳記夫

    ○近江委員 事情聴取もせずして、そういう事実はなかったと思います、そんなことが言えますか。こんないいかげんな態度では困りますよ。事情聴取なさいますか。
  209. 橋口收

    ○橋口政府委員 正確に申し上げますけれども、そういう事実はなかったということは私は一言も申し上げておらないわけでございまして、万に一つもそういうことはあるまい、そういうことがあってはならないというふうに申し上げておるわけでございます。
  210. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは言葉の若干の違いがあったかもしれませんが、そういう推測で物を言うことはおかしいのですよ。事情聴取をしますか、好ましくないということをやったのですから。
  211. 橋口收

    ○橋口政府委員 当面事情聴取をする考えはございません。
  212. 近江巳記夫

    ○近江委員 なぜ事情聴取をする考えはないのですか。いま国民生活にこれだけ重大な影響を及ぼす値上げ問題です。公取委員会が好ましくない、そこまで言っておって、それをあえてやって、そうしてこれだけの大幅な値上げ申請が出ておるのですよ。あなたは好ましくないと指導してやったのですから、なぜお聞きになることすらも、事情聴取すること自体に対してもそういうような決断ができないのですか。何か深い事情があるのですか。いかがですか。
  213. 橋口收

    ○橋口政府委員 深い事情は全くございません。先ほど来申し上げておりますような独禁法並びに電事法、電力会社のあり方等から見まして、公正取引委員会として法の権限の行使として事情聴取なりあるいは調査をする考えはございませんし、またその必要なしというふうに考えておるわけでございます。
  214. 近江巳記夫

    ○近江委員 法の立場で動くことはできたい、あなたはこう言っているのですが、それでは好ましくないというのはどういう立場で物を言ったのですか。
  215. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほど申し上げたとおりでございまして、こういう御時世でもございますし、一般消費者の関心の深い電力料金の問題を控えておるわけでございますから、電気事業者の行動としてはいやが上にも慎重でなければならないわけでございまして、それだからこそ前もって電事連から照会があったわけでございますから、そういう点から申し上げますと、世間一般に誤解を受けるような行動をしたことは好ましくないというふうに申し上げたわけでございます。そういう点で申しまして、それでは好ましくないと言ったからすぐ法律の規定を使って調査をするかという問題とは、これはまた別の問題でございます。
  216. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、あなたがおっしゃっているのは、法的にはぴしっと決めることはできないけれども、環境的な面から好ましくない、そういう指導をした。それでは、いまここで、法的な面で完全な疑いがあって調査をするということをあなたは言えないにしても、しかしこれだけ問題になっているわけですよ。するなということをやったんだから、一度事情聴取をしたい、それはできるでしょう、いかがですか。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  217. 橋口收

    ○橋口政府委員 いま先生がおっしゃったような趣旨での事情を聞くということは、これは可能だと思います。
  218. 近江巳記夫

    ○近江委員 委員長は公取委員会として事情を聞くということをおっしゃったわけ、です。  通産大臣にお聞きしますが、公取委員長がこんなに好ましくないとおっしゃったことをあえてやっているのですよ。そして結果的に、私が申し上げたように全くぴったり、これは談合したとしか思われないのですよ。そういう結果をもって出してきている。事情も聴取したいとおっしゃっている。こういう不明朗きわまりない姿勢の中で国民生活に重大な影響を与えるこういう値上げ問題がいま通産省のもとに査定されようとしている。これは大問題であります。少なくとも公取委員長事情聴取をされるそういう間は、これは絶対審査なんかしてはおかしいと私は思うのですよ。はっきり独禁法に抵触するとはおっしゃっていません。おっしゃってないけれども、好ましくない、そういう行為の中で出された申請ですよ。そういうものをあなた方、査定なさるのですか。通産省、いかがですか。
  219. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 公取委員長の見解のとおり、これは競争会社ではございませんので独禁法には抵触しないと、こう言っておられるのですから、そのまま検討を続けたいと思っています。
  220. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取委員長、あなたはいま法的にはきめつけることはできぬとおっしゃっていますが、これは本当に大きな、自然独占の上にあぐらをかいて、余りにもいままでいろんな点で国民の目の届かない中でいろいろなことが行われておると思うのです。そういうことで好ましくないとあなたはいまおっしゃっているわけですが、それは私は、非常に重大な深い意味が背景にあって、言葉としては独禁法違反だということは言えないけれども、そこまでのどから出るところまで公取委員会としては判断していると思う。そうでなければ、そんな、ただ値上げの時期だから好ましくないという単純なことで公取が好ましくないなんということを言うことはおかしい。大きな独禁法の疑義があるから好ましくないと一いまここであなたは逃げたように思いますが、これは非常に独禁法抵触の大きな疑いがある。その間の事情について徹底して聴取をしていただきたい。  通産大臣は、そのまま査定します、そんな態度でいいんですか、あなた。公取委員長が好ましくないと言っているのですよ。平気でそういうことを続けるのですか。
  221. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 法に抵触しないというのですから、私どもはルールに従いまして審査を進めたいと思っています。
  222. 近江巳記夫

    ○近江委員 だけれども、私は公取委員会に申し上げておきたいと思いますが、もう一度公取全体としてその点につきましてはよく検討してもらいたいと思うのですよ。だけれども、通産大臣の態度というのはぼくは非常によくないと思うのですね。これは少なくとも公取の事情聴取が済むまで待つべきですよ、事情聴取をすると言っているのですから。
  223. 橋口收

    ○橋口政府委員 事情を聴取すると申しましても、これはあくまで任意による調査でございますから、強制調査ではございませんし、また間接強制に基づく調査権。発動でもございませんから、任意に事情を伺うということでございますから、それとこれとは別ではないかと思います。  それから、先ほど申し上げましたように、電気事業者の最大の行為は電気供給事業でございますし、その場合に電気料金をどうするかということが一番大事な問題でございまして、それにつきましては通産大臣が許認可の権限をお持ちでございますから、そこで競争制限的な行為というものは遮断されてしまうのでございますから、その途中経過においての問題につきましては先ほど来申し上げたとおりでございますけれども、しかし本来、電事法に基づきまして料金につきましては行政庁が認可権をお持ちでございますから、あくまでもこれは競争制限的な領域だということになるわけでございます。したがいましん、いま近江先生がおっしゃっておられますことは、いまの電事法それ自体を問うということが基本にあるわけでございまして、いまの法体系、実定法のもとにおきましての独禁法の権限の行使にはおのずからの制約があるということを繰り返して申し上げておきたいと思います。
  224. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、いろいろいまのお話を聞いておられて、公取委員会がこの種の会合、談合について好ましくないと言ったことは初めてなのです。これは初めてなのですよ、好ましくないと言ったことは。いままで全く、独禁法成立以来こんな好ましくないという言葉は一回も出たことがない。それはいま、OECDの勧告もあり、国際的にこの問題が高まってきている。そういう中で初めて公取委員長が好ましくないという言葉を言った。それはいま客観情勢としてということかもしれませんよ。だけれども、そこには深い根底があるのです。いま、これだけ国民生活に重大な影響を及ぼそうとしておる電力、ガス等の問題につきまして、安易なこういう引き上げということは、国民にどれほど大きな影響を及ぼすか真剣に考えていただきたい。これは政府としてはひとつ厳重な査定をやっていただきたい。また、公取委員長が好ましくないというような態度をとったことに対しても、総理としても厳しく、これは独占企業でございますから、やはり何らかの形で注意もするべきだ、私はこのように思うのです。今後のそういう公共料金の査定に当たっての基本的な姿勢についてお伺いしたいと思うのです。
  225. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国民に非常に重大な負担が及ぶ問題、経済的にも大問題でございます。それがいま問題になっておるわけでございますから、電力会社といたしましてはエチケットとして非常に慎重な態度に終始していただきたいと思います。同時に、政府といたしましては、そういう問題であるだけに、厳正な審査をいたしまして事に当たらなければならぬことは当然と考えております。
  226. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、この問題は時間をかけますと切りがありませんので、次に進みたいと思います。  最近、大企業の製品値上げの傾向が非常に目立ってきておるわけです。これだけ公共料金が引き上げられ、そういう中でこういう引き上げが行われる、国民生活の上におきまして重大な影響を及ぼすと私は思うわけです。そこで、改正独禁法のときに同調値上げの問題についてやったわけですが、これは原価公表という問題に絡んでとられた措置でございますけれども、そこでその期待が非常に大きいわけでございます。  公取委員長にちょっとお聞きしたいと思いますが、五十四年に入ってからこの十八条の二で価格の同調値上げに関して理由の報告を受けた品目、また現在予備調査に入っておる品目のメーカーごとの値上げ時期、値上げ幅について説明してもらいたいと思うのです。
  227. 橋口收

    ○橋口政府委員 昭和五十四年度におきまして十八条の二で調査をいたしました品目は乗用車と普通板ガラスでございます。  現在予備調査を行っております品目は自動車用のタイヤチューブ、インスタントコーヒー、台所用合成洗剤でございます。これらの品目につきましては、現在予備調査の段階でございますので、正確にメーカーごとの値上げの時期、内容につきましては承知をいたしておらないところでございますが、新聞紙上等で掌握をいたしております値上げの時期、率を簡単に申し上げますと、自動車タイヤチューブにつきましては、ブリヂストンタイヤが五十四年十月一日、横浜ゴムが五十四年六月一日と十一月一日、住友ゴムが五十四年七月一日、東洋ゴムが五十四年六月一日と十月二十一日。値上げの率は八%から四%までばらつきがございます。インスタントコーヒーはネッスル日本が五十四年十二月一日、味の素ゼネラルフーヅが五十四年十二月七日でございます。値上げの率はネッスル日本が五・九%、味の素ゼネラルフーヅが五・四%。家庭用合成洗剤はライオンが五十五年一月一日、花王石鹸が五十五年一月十一日。値上げの幅はそれぞれ八・一%、同じでございます。  以上でございます。
  228. 近江巳記夫

    ○近江委員 この公取の年次報告、これで私も初めていわゆる同調値上げの報告書を読ませてもらったのですよ。驚いたことに三行ですね、値上げ理由というのは。三行ですよ。ぼくは、報告をされるときにはもっと詳しい報告をされる、国民に知らされると思っておったのです。これは三行ですよ、総理。しかもこの報告が出るのは、その事案が出て大体一年八カ月後なんです。こんなことで果たして同調値上げの抑制ができるのかな、こう私は思うのです。これについては、公取委員長、どのようにお考えですか。
  229. 橋口收

    ○橋口政府委員 昭和五十四年度の年次報告に書きました昭和五十二年度中の同調値上げの品目についての説明でございますが、これは三行ではございません、三ページでございます。先生のおっしゃいましたのは、値上げの率の説明が三行程度という御趣旨かと思いますけれども、報告は三ページでございます。  いまおっしゃいましたように五十四年度の年次報告に記載されますのが五十二年度のものでございますので、確かにおっしゃいますようにかなりおくれているなという感触はわれわれ自身も持っておるわけでございます。多少事情を御説明申し上げたいと思いますが、同調値上げの該当品目は、これは五十六品目ですでに明らかにされておるわけでございますが、これらにつきまして、実際値上げが行われました場合に、一体法の規定に該当するかどうかにつきましての予備的な調査をする必要がございます。詳しくは申し上げませんが、基準にかかる価格であるかどうかとか、三月以内に入っているかどうかとか、あるいは該当する商品相互の対応性がどうであるとか、なかなかむずかしい問題がございます。それから、企業サイドといたしましては、やはり同調値上げの対象にされるということにつきましては社会的に不名誉だという感覚を依然としてお持ちでございまして、そういう点から申しまして、相手方とのすり合わせに意外に時間がかかるというのが実感でございます。  それから、いまちょっと申し上げましたけれども、この規定は、本来製品の内容にそう大きな違いのない素材製品を対象としてできた規定であるように思われるわけでございまして、製品差別化が進んでおりますたとえば自動車とか二輪自動車、こういうものにつきましては相互にどれとどれが対応するかという問題もございますし、また機種の数も大変多くなっておるわけでございまして、そういう点から申しまして予備調査に意外に多くの時日を要します。予備調査の結果として法の規定に該当するということになりまして、それから各企業に報告を求めるわけでございます。企業の方もふなれということもございまして、実は出てきましたデータなりあるいは報告書なりをすぐ採用できないというようなこともございます。そういうことで、実際値上げが行われましてから報告を徴収するまでに時間がかかるわけでございますし、また報告を徴収いたしましてから国会報告まで時間がかかるということで、いまおっしゃいましたように、一年八カ月とかあるいは二年近くにわたることもあるわけでございます。ただ、これは法律を施行しましてまだ二年でございますので、ようやく経験を蓄積しつつあるわけでございますし、また法制定の経緯等から見まして、しばらくそういう状態をお許しいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  230. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういうような報告の中身につきまして、またひとつ一工夫やってもらいたいと思うのです。値上げの理由など三行ですよ。いいですか、こんなことでわかりますか。これは十分改善をやっていただきたいと思います。  それから、いままでよくやっておりましたけれども、年次報告ができるまで、いわゆる一般調査の問題としまして、いままでは四十条に基づく調査の事例、これはずいぶんやったのですね。ところが、最近余りやっていないと私は思うのです。それは四十条におきます一般的な調査あるいは公表の制度、これをどんどん活用して、いまこれだけ大企業製品が引き上げようとされておるときなんですからね、この活用については公取委員会としてはどう考えておりますか。
  231. 橋口收

    ○橋口政府委員 ただいまの問題は、改正法を国会で御審議いただきましたときから出ておる問題でございまして、その際政府側がお答えをいたしておりますように、同調値上げの規定ができましても、四十条の規定は存置しておるわけでございますし、その行使は理論上は可能であるということであろうかと思います。ただ、先生よく御承知のように、十八条の二の規定は要件が限定をしてあるわけでございますし、また調査の内容、目的も明定されておるわけでございますが、この四十条ということになりますと、これはあくまでも一般調査でございます。したがいまして、公取委員会がその職務を執行する必要上調査をするという包括的な規定でございますので、値上げの目的それ自体に直接役立つという規定ではないわけでございます。  ただ、それでは四十条の規定を使って一切の調査をしていないかということでございますが、四十条の規定をバックといたしまして任意の調査ではございますが、幾つか調査をいたしております。一例だけ申し上げますと、昭和五十四年の四月二日に新聞の一部売りと申しております駅売りにつきまして、ほぼ一斉に十円程度の値上げが行われたわけでございます。この事態に対処いたしまして、四十条の権限は行使はいたしておりませんが、この規定をバックといたしまして任意的な調査を行ったわけでございまして、そういう活動は今後ともやってまいるつもりでございます。ただ冒頭に申し上げましたように、十八条の二という規定が明定をされておりますので、四十条の権限につきましても、おのずから行政権の行使には慎重でなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  232. 近江巳記夫

    ○近江委員 しかし、それがかえってこの十八条の二、これによりまして、いま申し上げたように年次報告だってそういう一年八カ月もおくれて、しかも値上げ理由はたった三行だ、後はもうそのまま上げてしまえばいいじゃないか、こういう動きもあるのですよ。ですから、そういう点につきまして、四十条の活用についても公取委員会としては十分ひとつ併用してやっていただきたい、このように思います。いかがですか。
  233. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほどのお答えの中で申し上げましたように、十八条の二の規定ができまして、公取委の存在自体が物価に対してある程度の牽制効果と申しますか、抑制的な効果を持っているというふうに考えておるわけでございまして、公取委の方を横目で見てすっと値上げをしてしまう、決してそういう簡単な問題ではないというふうに考えております。したがいまして、十八条の二で十分対応できない場合にどうするか。先ほど四十条の権限の行使につきまして申し上げましたが、四十条の権限を行使するようなときは、あるいはカルテル行為があるのではないかという感じがするわけでございまして、四十条を実際に使いますときには、あるいは審査的な事件としての権限の発動の方が適当ではないかという感じもするわけでございます。そういう点で、四十条の権限の行使に決して慎重過ぎていいというわけではございませんが、いろいろな角度から総合的に法律の権限の行使につきまして考えてまいりたいというふうに考えております。
  234. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近の会社首脳のいわゆる製品値上げの発言、これは私は非常に問題だと思うのですが、それぞれの企業が値上げ時期、値上げ幅等を次々と発表する中で、暗黙の了解または共通の意思が形成される、いまこういう風潮にあるわけです。これはいわゆる一般情報交換による、この言葉が合うのかどうかわかりませんが、言うならば情報カルテル、こういうようなかっこうになるのじゃないかと思うのです。最近の鉄鋼業界なんかそうなんですが、こういう点につきまして、私は最近非常にそういう問題が見えてきていると思うのです。公取委員会が作成いたしました「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」、この中の7の「情報活動」には、「価格に関する情報交換を通じて価格の維持又は引上げについて構成事業者間に暗黙の了解又は共通の意思が形成されれば、違反となる。」このようになっているのですね。この点につきまして、今後の公取の姿勢につきましてお伺いしたいと思います。
  235. 橋口收

    ○橋口政府委員 情報の交換それ自体が問題であるかと申しますと、それは問題だとは言いにくいと思うわけでございますが、ただ、事業者団体なりあるいは企業間で情報交換をいたします目的としましては、価格とかあるいは数量ということがあるわけでございまして、いまお話がございました事業者団体の活動指針の中にも、価格、数量、その他というふうに段階を追って、原則として違反の場合、違反のおそれのある場合等について明らかにいたしておるわけでございます。いまお話がございましたように、情報交換を通じて価格とか数量調整を行う事例というものは決して少なくないわけでございまして、厳重な監視の目を光らせておるわけでございまして、一昨日の二月七日に勧告審決になりました東洋リノリュームほか三社のビニルタイルに関する価格、数量の協定事件も、実はこれは情報交換を伴う事件でございまして、情報交換に対して直接独禁法違反という判断を下したものでございます。
  236. 近江巳記夫

    ○近江委員 いまそういうことが行われておるという一つの新しい事例を出して、注意を促したわけでありますが、いずれにしましても、これからいわゆる独禁法の運用ということは、国民生活の上におきまして私は非常に大きな働きをすると思うのです。今後の公取の行動というものは国民生活の上で非常に重大な影響を及ぼすわけでございます。そこで、この問題は時間がありましたらもっとやりたいのですが、一応公取関係については終わりたいと思いますが、公取委員長の決意を一言聞かしていただきたいと思います。
  237. 橋口收

    ○橋口政府委員 主として物価問題を中心としての御発言でございましたが、最近の物価情勢を見ておりますと、需要供給のバランスが崩れて価格が上がるという現象のほかに、寡占的なマーケットにおきましては企業者の意思が通るという傾向があるわけでございまして、こういう寡占マーケットにおける価格上昇ドライブというものに対しましては、われわれとしましては与えられた法律の範囲内において十分監視をしてまいる所存でもございますし、また法令違反の事実が発見されました場合にはちゅうちょするところなく権限を行使してまいる決意でございます。
  238. 近江巳記夫

    ○近江委員 昭和五十四年度経済見通し、これは昨年末に修正されたわけでございますが、実質成長率六・三を六%に修正されているわけですね。この理由につきまして簡潔にひとつお伺いしたいと思います。
  239. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えいたします。  六・三という見通しでございましたが、御案内のように石油事情その他が大変大きな変化を見ましたわけであります。しかし、国民各位、また企業経営者、労働者、すべての方々が過去の苦い経験にかんがみ、きわめて冷静に、また合理的に行動せられました結果、大体において当初の見通しに近い六%という成長を遂げ得たわけでございまして、私は、非常に大きな変化のあったことはここに改めて申し上げるまでもございませんけれども、大要においては、結果としてはまあまあというところではないか、かように考えております。
  240. 近江巳記夫

    ○近江委員 最終数値は六・三から六ですから、あなたそういうような答弁をしておりますが、中身は見通しと非常に大きな狂いがあることは、あなたも御承知のとおりでしょう。私が一々数値を出す必要はないでしょう。その点はいかがですか。それは政府の見通しが合っていたのですか。
  241. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 大きな点をまず内需と外需、こういうふうに分けて申し上げますと、内需の面では当初一〇・一%、このくらいを見通しておったのでありますが、国民消費、個人消費、企業の設備投資その他が非常に自律的に活発な活動がございまして、一〇・六%というふうに内需の面は当初の見通しを上回っておるわけでございます。しかし、これに対しまして、先ほど申し上げた原油の価格が大変騰貴をいたしましたというふうなこと、また、円レートの関係等で輸入額が非常にふえましたために、外需関係は当初マイナス〇・六ぐらいと見ておりましたのがマイナス二・三、こういうふうな点は確かに変わっております。しかしながら、大きな意味におきまして雇用、それから消費者物価、まあ卸売物価は大変上がりましたが、消費者物価、そういう基本的な点においては政府の当初の見通しは、先ほども申し上げたように、まずまずというところで達成せられる見込みでございまするから、御理解を賜りたいと思っております。
  242. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府支出が非常に落ち込んでおるわけですね。六%の場合と六・三%の場合におきまして、内需について民需と官需の寄与度、これにつきましてひとつ御説明をいただきたいと思うのです。内需寄与度と外需寄与度。
  243. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 いま御指摘のような六・三、これはいま御指摘のように公共事業でございますね、これをけさほどもお話がありましたが五%ほど留保する、こういうふうなことがございまして、これはやはり近江委員よく御承知のように景気のなだらかな成長、こういうことを主眼にいたすと同時に、物価に対する影響ということを重視して行った措置でございますが、その影響からも大体御指摘のような〇・三という程度の影響は出ております。したがって、これは留保されまして来年度において支出せられるということになりますと、来年度においてはむしろ〇・七ぐらいの成長率の引き上げになる、こんなようなことでございます。  なお、詳しいことが必要でございますれば、政府委員から詳しく御説明をいたします。
  244. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは数値を見ればすぐわかるわけですが、民間設備なりあるいは消費、民間の方が政府見通しよりも数値は非常に高いわけですね。これは政府の支出というものが非常に大幅に落ち込んでおる。この数値を見ますと、六%の場合で民需が五・五、政府がゼロ、外需〇・六。六・三の場合、民需が五・〇、政府一・三、外需ゼロ。この数値は合っていますか。いかがですか。合っているかどうかだけ答えてください。
  245. 井川博

    ○井川政府委員 お答え申し上げます。  伸び率、実質で申しまして、六%の場合でございますけれども、国内の民間需要の伸び全体としては七%でございます。それから、外需というふうなことになりますと一一・五%になるわけでございます。  それから、いまお話のございました政府支出ということになりますと、長官から申し上げましたように、五%留保のこともございましてマイナス〇・二%でございまして、これを寄与率で申し上げますと、国内民間需要で五・四、それから海外需要で〇・六、政府支出ではゼロ、合わせまして六%、こういう数字になるわけでございます。
  246. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま寄与度の説明があったわけですが、ここで毎年予算審議をやるわけでございますが、非常に国際摩擦がこの数年続いておりまして、そのときに総理初め経済閣僚の答弁というものは、内需を喚起していくんだ、そして摩擦を防いでいくんだ、こういうお話があったのです。ところが、この寄与度等から見ましても、いままでのそうしたデータを見ましても、政府のいわゆるこういう見通しというものは非常に狂っておるし、政府の落ち込みが激しい。辛じてそうした外需とか民間の設備投資あるいは消費ということで救われて、最終的に六・三に対して六に近づいたということだけなんですね。政府経済運営というものは結果的にはそう近づいたというだけのことであって、非常に問題があると私は思うのです。いま御承知のように、日米間におきましても経済摩擦が非常に高まってきておるわけでございますが、これは政府のそういう方針というものが、経済政策というものが方向転換されたんですか。いかがですか。
  247. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 改めて申し上げるまでもございませんが、輸出がどんどん行われまして黒字がたまって円が強かった時代もございましたが、それが今日は全く逆の状況でございます。しかし、私どもはいま近江委員が御指摘のように、国際摩擦を引き起こすというふうなことは、これからの経済運営だけではございません、これは外交全般を通じまして大変大事な問題でございますから、いま円がアンダーエスチメートと言うのでありましょうか、若干円レートが低くあらわれておる、そういうふうなことから輸出は数量的に伸びておりますから、これは喜ばれて日本の省エネルギー的な商品が買われていくというふうな点で非常にいい面もあるわけでございますけれども、それがだんだんと数量的に大きくなって国際的な摩擦になるというふうな点については、これは政府としても、また民間の企業者その他の関係者といたしましても十分配慮をしていかなければならぬ。すなわち、特定の国に集中的に輸出をするというふうなことについては厳に戒めて、産油国その他に対しましてプラント輸出というふうな方法その他を講じまして、ますます国際的な協力関係を強化しながら、日本の経済を健全に、また安定的に成長させていくような政策をとるべきである、かようにかたく信じておるわけでございます。
  248. 近江巳記夫

    ○近江委員 最近の新聞報道を見ますと、USスチールの鉄鋼ダンピングの提訴、自動車輸出についてのマンスフイールド大使の発言等々ございまして、通商摩擦の発生を予言するような記事が非常に見受けられるわけでございます。現在非常に問題になってきておる点、あるいは今後問題になるであろうという問題につきまして、通産大臣からひとつ御答弁いただきたいと思うのです。
  249. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 現在問題になっておりますのは、自動車、鉄鋼等が伝えられてございます。それ以外のものに関しましては、別にいまのところは私ども関心の対象になっておりません。
  250. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま問題になっている、そんなことはマスコミでも出ておるし、国民はみんな知っているのですよ。だけれども、政府としては今後こういう問題が非常に心配だとにらんだ、そういうものはないのですか。いかがです。
  251. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 通商問題は大変重要な問題でございますから、そういう摩擦を生ずるような問題があれば、まだ早い芽の間に摘み取ってしまうのが一番よろしいのでございまして、そういう観点から、私どもも在外公館等を通じまして情報の収集あるいは分析に努めるばかりでなしに、省内にも委員会等を設けまして、事前に早くそういう点をキャッチして対処したいということでがんばっておりますけれども、いまのところは近江先生の指摘するような重大な問題はまだ起きておりません。
  252. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理、五十四年度の分を昨年末修正をされましてその結果からいま論議してきたわけですが、政府支出の落ち込み、外需が非常にこうなってきておる、そういうようなことで政策を変更したのか、国際摩擦も非常に最近は惹起されてきておる、この点について総理としてそういう方向を意図してこういう経済運営をなさってこられたのか、また今後どのようにこういう経済摩擦に対して対処されていくのか、この点についてひとつ簡潔にお伺いしたいと私は思うのです。
  253. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 一昨年は大変輸出超過でございましたが、経常収支も大幅な黒字を記録いたしまして、大分国際的に問題になったことは御案内のとおりでございますが、昨年はいろいろその是正に努めました結果、逆にわれわれの予想以上の赤字を記録するということになってまいったわけでございます。したがって、われわれといたしましてはできるだけオーダリーな輸出を考えなければいかぬわけでございますが、いま仰せになっておりますように、自動車等につきまして若干懸念が表明されておるようでございます。したがって、われわれといたしましてはそういう問題に対応を怠らないで、日米間におきましても問題を前広に相談いたしまして、緊張が高まることのないように処理いたしたいと考えております。そういう経過を見まして、貿易のことでございますからときに消長がございますけれども、わが国といたしましては、長期的に見まして国際信用を損なうことのないように、また経済の自立の足を弱めることのないようにやってまいるという基本の方針は堅持して弾力的に対応していきたいと思っております。
  254. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと一問質問をいたしまして市川君に譲りたいと思います。  補正予算の問題でございますが、非常に自然増収が巨額なのです。これは大蔵大臣も御承知のとおりでございますが、二千億とか三千億というあれでしたらなんですけれども、一兆九千億という自然増収があったのですから結構と言えば結構なのですけれども、やはりそういうことは当初から見通すことはできなかったのかという問題なのです。結局こういうことの見通しが的確であるならば適正な配分ができ、またその使い方についても国の施策というものは有効に働いたわけです。この点についての、申しわけないとか、政府としてこういう見通しが的確にできなかったという点についてのいわゆるお言葉というものは、この間からの代表質問等からずっと私聞いておりますけれども、余りないのですよ。この点については、大蔵大臣総理はどういうお気持ちですか。
  255. 竹下登

    竹下国務大臣 近江委員御指摘のとおり大変な自然増収を見込むことができたわけであります。この理由につきましては主税局長からもすでに申し述べたところでございますが、五十三年度税収見込みを七千七百五億円上回ったということが一つの土台となって、そうして雇用者所得、生産、卸売物価が当初見通しを上回るというようなことから、法人税源泉所得税等について相当の程度の自然増収が見込まれたわけであります。したがって、それに対する私の率直な気持ちを端的に表現しろということでございますが、これはまさに政府のいわゆる公共投資等の下支えによって、それにこたえた民間の皆さん方が、労使に限らず減量経営して大変体質を強化してこられたその努力のたまものであると深く感謝をいたしておるところであります。
  256. 近江巳記夫

    ○近江委員 深く感謝されるのはわかるのですが、当時景気が上向きかけておったのですよ。民間の力はこのくらい出す、そういうことを見抜けなかったのか。違いますか。そういう点があれば、きちっとある程度のそういう自然増収だって見込めたのじゃないですか。その辺の見通しにつきまして、当時竹下さんはまだ大蔵大臣じゃなかったからなんですけれども、それでは後に市川君がおりますからかわりたいと思いますが、総理に、その見通しの点について甘かった、責任感じる、その辺のお言葉が出ないのかどうか、私は不思議に思うのですよ。いかがですか。
  257. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政府としてはベストな見通しと思って打ち立ててそれに沿った経済政策を考えてまいったわけでございますけれども、相当大幅な乖離ができましたことは大変残念でございまして、できるだけそういうことのないように今後努めていかなければいかぬと思います。
  258. 近江巳記夫

    ○近江委員 では市川さんに譲ります。
  259. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 この際、市川君より関連質疑の申し出があります。近江君の持ち時間の範囲内でこれを許します。市川雄一君。
  260. 市川雄一

    市川委員 私は、外交問題と日米安保条約の問題についてお伺いしたいと思います。  もちろんソ連のアフガン侵攻の軍事介入は私たちもいかなる理由のもとにも許せないという立場でお伺いしたいのですが、しかし、このアフガン侵攻以来、アメリカ・カーター政権はソ連の脅威というものを前面に過剰なくらい出してきまして、いまにも米ソ対決あるいはソ連が日本に攻めてくるような、そういう雰囲気がつくられつつあるわけでございます。しかも、日本にアメリカの対ソ強硬路線に対する同調を求めてきておる。あるいはスイング戦略の了解ということで、安保条約が非常に危険な方向に変わろうとしておる。あるいはこうしたことを利用して日本の防衛力をさらに増強していこう、そういうアメリカの一連のソ連の脅威を前面に出した方針に対して、日本はもっと日本らしい独自な立場があっていいというふうに私は思っているわけですが、そういう立場でお伺いいたします。  これはぜひ総理にお伺いしたいのですが、ソ連のアフガン侵攻によって生まれた現在の米ソの対決状況、これがかなり長期的なものになるというお見通しに立っていらっしゃるのか、あるいは短期的なものというふうに考えておられるのか、その辺をまずお伺いしたいというふうに思います。
  261. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この状態が長期化するかあるいは短期的に収拾がつくかというようなことにつきまして、予断を申し上げるというような自信はございません。私どもといたしましては、こういった状態が早く収拾されることを強く望んでおります。
  262. 市川雄一

    市川委員 これは予断が非常にむずかしい問題だと思いますが、しかし、何らかの見通しをお持ちにならないと日本の対応というものは出てこないのじゃないかというふうに思うのです。  それでは問題の角度を変えてお聞しますが、米ソのデタント、ソ連もアメリカも関係者からデタントの継続を望むという意向が伝えられておりますが、今回のアフガン侵攻によって生まれた米ソ間の亀裂という問題が、いわゆる米ソのデタントの崩壊あるいは新しい冷戦態勢に入った入らないというふうに言われておりますが、そういう見方をしていらっしゃるのかどうか。私は米ソのデタントはこれによって崩れたというふうには思っていないのですが、総理はいかがですか。
  263. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 アフガンに対するソ連の軍事介入というのは、直接的には東南関係でございまして、そういう色彩が濃厚だと思います。けれども、このことが米ソ間のデタントに深刻な影響があるということになると、憂慮にたえないことでございます。したがって、米ソ両国とも、このデタントの基本的枠組みを維持していくということにつきましては、責任ある当局がそれぞれその強い意思を述べておるようで、結構であると思うのでございます。したがって、この事態が米ソ間のデタントの基本的枠組みを損なうというようなことにならないように、できるだけ配慮していくということがいまわれわれ世界全体が当面しておる問題であり、われわれの努力もまたそこに焦点を合わせてやっていかなければならぬのじゃないかと考えております。
  264. 市川雄一

    市川委員 米ソのデタントが損なわれないようにということは、いまの時点では総理は損なわれていない、こう見ているというふうに解釈してよろしいわけですね。
  265. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 米ソ両国ともそう申しておりまするので、基本的枠組みはまだ損なわれていないと見ております。
  266. 市川雄一

    市川委員 いまの米ソの対決が長期になるのか短期になるのかということについてはお答えがなかったわけですけれども、こういうやはり確たる見通しをお持ちにならないと、やたらと何といいますか、アメリカの対応に日本がいたずらに振り回されるというか、そういうことになるのじゃないか、こういうふうに思うのです。  そこでお聞きしたいのですが、結局、米ソのデタントの基本的な枠組みがまだ壊れてない、壊れないように努力しなければならない、そういう前提で大枠で考えますと、米ソ間におきましては、このアフガン侵攻問題については、結局は双方の大義名分が立つような形での収拾策というものを恐らく考えているのではないのか、あるいはもうすでに舞台裏でそういう探り合いが始まっているのではないかというふうに思うのですが、外務省の関係としてこういう感触はいかがですか。
  267. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまのお尋ねの点につきましては、このアフガン問題の収拾について米ソ間で話し合っておるという形跡は私どもまだ余り見ておらないわけでございます。ただ、先ほどの独仏首脳会談のコミュニケなどにも、大事なことは、アフガンへの侵入ということはどうしても認められない、この米ソ間の対立を緩和するためにアフガンからの撤退についてヨーロッパの各国もできるだけの努力をすべきだということを申しておりまして、この点は米ソ直接ではないと思われますけれども、友好国、特にヨーロッパの友好国等もそういう考え方で努力しておるように私ども了解しておるわけでございます。
  268. 市川雄一

    市川委員 けさのAP電によりますと、ソ連がアフガンからの撤退を関係各国に通告した、こういうニュースが流れております。それで、米国の国務省は、かねてから予想されていたソ連による平和攻勢の始まりを意味するというふうに語ったというふうに出ているわけですが、外務省、こういう通告というか、こういう何か受け取っておりますか。
  269. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 その通信は承知いたしておりますけれども、まだ公電は受け取っておりません。
  270. 市川雄一

    市川委員 先日の新聞にも、外務省首脳が語ったという形で、ソ連の文化省高官が日本関係者に、ソ連が近くアフガンから軍隊を撤退させるだろうとの感触を伝えたというニュースが出ておりました。あるいは駐米ソ連大使のドブルイニン氏が米国のオクシデンタル石油のハマー会長に同じ趣旨の発言をした、こういうニュースも出ておりましたが、外務省としてはこういう感触は全然いまつかんでおられませんかどうですか。
  271. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ドブルイニン駐米ソ連大使がこういう発言を行ったという報道は承知いたしておりますが、その後、オクシデンタル石油のハマー会長が、近くという言葉は使われなかったという修正をいたしております。
  272. 市川雄一

    市川委員 先ほど総理からは御答弁がなかったのですが、改めて外務大臣にお伺いしたいのですが、現在のこの米ソの対決的な状況というものがもちろん早期に収拾されることは望ましいのですが、外交を預かっている立場として何らかの見通しをお持ちなはずだと思うのですね。むずかしい問題ですから、全く予断を許しませんからと言うだけでは済まないと思うのです。やはり長期的になりそうなのか短期的になりそうなのかという何らかの見通しはお持ちのはずだと思う。総理は先ほど、ありませんというようにおっしゃっておりましたが、外務大臣はどうですか。
  273. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 デタントの解釈につきまして、多少西側とソ連側の解釈の違いがあるような節もございまして、さきの一月十二日のブレジネフ声明の中で、緊張緩和政策の根は深く、この政策は国家関係の主要な流れとして残るんだ、これはブレジネフが言っておるわけです。それから、欧州でデタントの成果を放棄することを欲している国があるとは信じないということもブレジネフが言っておるのですが、ただ、従来の経緯から見ますと、こういうデタントの維持につきまして欧州でのデタントに限定しておりまして、アフガニスタンを東西デタントの枠外と考えているような節もございます。この点につきましては、このアフガニスタンをめぐりまして世界の大きな反響が出てまいったわけでございまして、ヨーロッパにおけるデタントのほかに、グローバルといいますか、世界的なデタントの必要性をどの程度ソ連が認めるか、これはいまの状況では判断できないわけでございます。  一方カーター大統領も、一月二十三日の年頭教書におきまして、核戦争の防止は米ソ二超大国の最大の責任であるということを強調いたしまして、今後とも核管理に努力するということを申しておりまして、いずれにしてもデタントは死んではいない。ただ、このソ連のアフガン進出ということで相当この問題に重要な影響が与えられておる。しかし、基本的に全面的な対立を米ソ両国が避けようとしておるということは、いま申し上げましたようなところでもうかがわれるわけでございます。
  274. 市川雄一

    市川委員 したがって、ですから、対決が長期的になりそうなのか短期的になりそうなのかという見通しについてはどういう判断をしているのかということを聞きたいのです。それをちょっと簡単におっしゃってください。
  275. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 特にその点につきましては、第三地域といいますか、ヨーロッパ以外の地域におけるソ連の動きというものが重要だと思いますが、いままでの情勢から言いますと、この十年間にソ連がかなり軍備力の拡大をやっておりますので、必ずしも楽観は許しませんけれども、基本的な対立を避けるという方向でのデタントは続くというふうに見ておるわけです。
  276. 市川雄一

    市川委員 ということは、いまの米ソの対決はそう長く続かないだろう、こういうふうに見ているのだというふうに受け取ってよろしいわけですか。どうですか。
  277. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 なかなかその辺明快に申し上げるのはむずかしい点でございますけれども、これにはヨーロッパ各国の態度、日本の態度、あるいは第三世界の態度、そういうものも米ソ両国の動きに将来影響を及ぼしてまいると思いますので、これはできるだけ国際的にデタントが継続し、現在の緊張状態が比較的短期に終わることに各国とも努力をしなければいけないというふうに考えておるわけです。
  278. 市川雄一

    市川委員 努力するのは当然で、それを聞いているわけじゃない。だけど、こういう見通しを持たないといまの日本の外交は成り立たないのではないですか。霧の中みたいな見通しでやっていらっしゃるわけですか。そうじゃないと思うのです。
  279. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 見通しを持つこととその見通しを国会で申し上げることとはまた別だと思うのです。わが外交当局もそれなりの展望は持っておやりになっておると思いますけれども、それを国会の場で申し上げるなんということは慎まなければいかぬと思います。
  280. 市川雄一

    市川委員 大体感触はわかったのですが、なぜこういうことを伺ったかと申しますと、米ソのデタントは大枠は崩壊してない。米ソも、デタントの崩壊ということは米ソ対決、核戦争ということですから、これは避けなければならない。そのデタントという大枠の中での緊張ということがあったわけですけれども、その緊張にも限界があって、デタントは絶対壊さないという前提での緊張、そういう関係にあると思うのです。米ソのデタントは壊れない。恐らくソ連は部分的な撤退ということはするでしょうけれども、最終的な撤退というのは、これは私個人としては相当困難というふうに考えているわけです。しかも恐らく、双方がいまの対決状況をなるべく短期的に何らかの収拾策を見つけたいということじゃないかと思うのです。  そういうことになってきますと、カーター政権にソ連の脅威、ソ連の脅威ということで非常にあおられて、二階へ上がってみたら後ではしごを外された、こういう形になるおそれも日本にとってはあるのじゃないかというふうに思うのです。その場合日本に何が残るかということを考えますと、ソ連の脅威の過剰な強調による日本国民の反ソ感情の増幅と、その裏返しとしてのソ連の日本に対する対日不快感、こういうものがソ連に残る。それから、日米安保条約の極東の範囲を超えた歯どめのない、何でも安保条約はもう世界にわたって自由に使ってくださいというような感じ政府答弁、それから、このソ連の脅威、ソ連の脅威という騒ぎに便乗して日本の防衛力を一挙に拡大していこうというそういう世論操作というか、そういうものだけが日本の国に残る、こういうことも私はあり得るのじゃないかというように思うのです。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 これはきわめて危険な対応だと思うのですね。日本には日本のもっと独自の立場があっていいと思う。そういう意味で、そういう米ソ双方が大義名分の立つような形で収拾策を講じてオリンピックが結局開催されるというようなことになった場合は、日米友好はもちろん重要ですけれども、日本は余り米国にただずるずるずるずる引きずられていただけでは、日本の立場というのはなくなってしまうのじゃないか。  そういう意味でお伺いしたいのですが、そういう一つの選択の可能性として認識を持っていらっしゃるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  281. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘のような点につきまして私どももいろいろ考えてまいってきておるわけでございますが、このアフガンに対するソ連の軍事介入というのは、戦後の世界情勢の中でソ連が自己の軍隊を直接他の国に派遣したという意味で新しい出来事でございまして、これは余り簡単に考えるわけにいかない。短期間に撤兵すればまた状態はかなり修復されると思いますが、そういう意味でのソ連の動きにつきましてはやはり注意を必要とすると思うわけでございますが、日本の立場から考えれば、やはり世界の平和と安定なしには日本の安定、日本国民の安全はないという立場でございますので、基本的にできるだけ世界の緊張緩和に貢献するという立場がやはり日本の基本的な政策でなければならないというふうに考えるわけでございます。
  282. 市川雄一

    市川委員 そこで、総理にもう一度お伺いしたいのですが、米国と日本の立場、対ソ外交における位置づけでございますけれども、全部利益が一致しているというふうには私は考えていないのです。全部は利益が一致してない。ですから、日本はやはりどこかで米国の対ソ軍事戦略なりあるいは対ソ外交に対して、それはむずかしいかもしれないけれども、一線を引いた立場というものを持たなければならない、こんなふうに考えているわけですが、総理のお立場でどんなふうにそれを認識してお考えになっていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  283. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございまして、ソ連に対する態度、関係はアメリカと日本とはおのずから違っております。それはアメリカもよく承知いたしておるはずでございます。したがって、今度の場合の対ソ対応策をどうするかということにいたしましても、アメリカから具体的な要請というものはございません。ただ、私どもはアメリカがどういう関心を持っておるかというようなことは一応見当がついておるわけでございます。日米関係というのは信頼関係、協力関係を損ねてはならない大事な関係でございまして、それを十分踏まえながら対ソ外交を展開してまいるということは、わが国の立場に立ってわが国独自が考えていかなければならぬことでございまして、必ずしもアメリカとユニフォームになるというような性質のものではないと思っております。
  284. 市川雄一

    市川委員 次に、日米安保条約の極東の範囲をめぐる問題についてお伺いしたいと思います。  政府はいままで国会で、わが国の施設、区域を使用する米軍が他の地域に移動するのは安保条約上問題ない、こういうふうに総理も言っていらっしゃるわけですが、この政府の答弁によりますと、沖縄の米軍がペルシャ湾、中東地域に移動することは安保条約上問題ないということだと思うのです。なぜ安保条約上問題ないのか、その根拠を具体的に示していただきたいというように思うのです。何条のどの規定に照らして問題ないのかということを伺いたい。
  285. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 従来からお答えしておりますように、日本国は安保条約の第六条に基づきましてアメリカ側に施設と区域を提供しております。それから、それに基づいて地位協定がございまして、その地位協定に基づいてアメリカ側は日本の施設、区域あるいはその他の港に出入するという自由を持っております。それが第一点でございます。  第二点は、いわゆる事前協議の対象となる三点については従来から申してございますが、その中で一つは戦闘作戦行動、これは日本の施設、区域から出ての行動でございます。  それから第三点として、それでは単に移動するのは安保条約のどこにあるかというお尋ねでございますけれども、いままで申し上げた点と、第三点として、安保条約上軍隊の移動というのは禁止している規定はどこにもございませんし、これは軍の属性として移動の自由というのは考えられております。
  286. 市川雄一

    市川委員 安保条約上は何規定がない、軍の属性としていい、こういうことですね。
  287. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、まず施設、区域を使うということが第一点でございます。それから、施設、区域からの出入については安保条約六条に基づいて与えられておりますけれども、その出入については何ら安保条約上は禁じてないということでございます。
  288. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いしたいのですが、安保条約の第六条ですね。第六条には、御承知かと思いますが、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」アメリカ合衆国の陸海空軍は、日本国において施設及び区域を使用することを許される、こういう条文になっておるわけですね。したがって、この使用目的というものがはっきりうたわれておるわけですよ、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」と。そうすると、この移動というのはいまの軍の属性によって動くのですか、安保条約の条文の規定はございませんと。しかし、その移動だって日本の区域、施設を使用することには間違いない。使用する以上は、やはりこの使用目的にかなわなければならないと思うのです。そうでなければ、この条文を決めた意味が全く何も意味をなさなくなってしまう。この点についてどう思いますか。
  289. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 たとえば沖縄におります海兵隊、それから第七艦隊、この両者はいずれも日本にいる、施設、区域を使用しているというその目的は、まさに日本の安全及び極東の安全と平和のためでございまして、そこに駐留しているということ自身が戦争の抑止になっているというふうに理解しております。
  290. 市川雄一

    市川委員 ですから、もう一度確認いたしますが、安保条約によって日本に駐留している米軍が移動することは、安保条約の制約を一切受けないというお立場ですね。そこだけ簡単にお答えください。
  291. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 いま御質問のありました移動については、安保条約上制約はございません。
  292. 市川雄一

    市川委員 そうしますと、米軍は安保条約によって日本に駐留したわけですよね。安保条約に根拠があるわけです。この安保条約によって駐留した米軍が中東なり何なりに移動する。しかし、これは日本の施設なり区域を使わないで移動することはできないわけですね。基地を使わなければ移動はできない。使う以上は、第六条は、使用権は単独に認められていないはずです。使用権と使用目的が条文ではちゃんとセットになって認められている。そうでしょう。したがって、そういう論法は成り立たないはずなんだ。安保条約に基づいて日本に駐留した、その駐留した米軍が基地を使うときはこういう使用目的のために使いなさい、こうなっておる。使わなければならないとなっておる。ところが、移動ですからいいんですというわけにいかない、基地を使うのですから。その使用権にはちゃんと使用目的の歯どめがかかっているはずです。それについてどうですか。
  293. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいま御指摘のように、日本の区域及び施設を使うことには目的がございまして、日本の安全及び極東の安全に寄与するということであります。移動についても、軍隊の特性上移動を禁ずれば、それによって日本の安全あるいは極東の平和と安全ということが守れない場合もございますので、その点、移動については安保条約は禁じてないということでございます。
  294. 市川雄一

    市川委員 安保条約は禁じてない、それは書いてないからという意味ですか。そうしますと、安保条約の条文に明記されているいわば権利といいますか、使用目的が明記されている、日本の安全に寄与し、極東の平和と安全に寄与するためと。その使用目的にかなったときに日本の基地を使用することが許される、こうなっておるわけです。条文を素直に解釈すれば、使用目的にかなわないものは使えないということになるわけですよ。そうでしょう、違いますか。そうなってきますと、条文に明記されている権利が、書いてない、あなた方の解釈によって生まれた権利によって踏みにじられる、こういうことじゃありませんか。それはどうですか。
  295. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 施設、区域を使っていること自身は、六条に基づきまして日本の安全あるいは極東の安全と平和に寄与しているという、そういう目的がないといけないわけでございます。  それから移動について、もちろんその施設、区域を使っている部隊でございますから、これが日本から出ていくということは、そういうことを許さなければ結局日本の安全あるいは極東の安全と平和が維持できないという観点からが第一点。第二点は、軍隊の属性として、移動について全く禁じてしまうことは軍の目的を達成できないという点から、移動は自由というふうに申し上げておるわけです。
  296. 市川雄一

    市川委員 それではお伺いしますが、米軍が中東に移動することは日本の安全と極東の安全と平和にどういう寄与をするというふうに外務省は判断しておられるのか、明快に外務大臣お答えいただきたい。
  297. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 アメリカ軍の移動につきましては、これは先ほど北米局長が申しましたように、軍の属性として移動が必要であるという点がございます。  中東につきましては、現実問題として、地理的な距離その他からして直接に中東が日本の安全と平和を軍事的に脅かすことにはならない。経済的にはもちろんいろいろな影響を及ぼす可能性はございますけれども、軍事的に直接の脅威になることはないという解釈をしておるわけでございます。
  298. 市川雄一

    市川委員 ちょっとお答えになっていないと思うのですね。ですから、安保条約に基づいて日本に駐留した米軍が中東に移動することが、安保条約第六条で言う日本の安全と極東の平和と安全に寄与するという中身を聞いているのですよ。明確に言っていただきたい、どういうふうに寄与するのか。
  299. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  日本に在留する、沖縄と申してもよろしゅうございますが、沖縄に在留する海兵隊ないしアメリカ軍というものは、先ほどもアメリカ局長からお答えいたしましたとおりに、日本の安全及び極東の平和、安全に貢献しているものでございます。その限りにおきまして、第六条の施設、区域の提供目的に合致しているわけでございます。ところが、それが出ていく、移動とおっしゃいますが、これは日本国から出ていくことでございまして、日本国から出ていった先がどこであるかということは別に決めているわけではございません。安保条約でも決まっておりませんし、出ていくということに関して、安保条約は何ら制限を付していないわけでございます。  また、中近東方面にその出ていった部隊が向けられると申しましても、沖縄から直接に戦闘作戦行動を行うわけではございませんので、その限りにおいては問題がないというふうに解釈しているわけでございます。
  300. 市川雄一

    市川委員 要するに、移動は安保条約で言う日本の安全に寄与し、極東の安全と平和に寄与することなんだとさつき説明したでしょう。だから具体的に、何が寄与するのかということを言いなさいと聞いているわけです。これに答えがないことが一つ。答えてもらいたい。  もう一つ。動くことは問題ありません、こう言うんですけれども、ミッドウェーは動くだけですか。冗談じゃありません。また戻ってくるじゃありませんか。はい、これでもうミッドウェーは横須賀の港を出ました、さよなら日本、もう帰ってこない、というなら、それはそうかもしれません。帰ってくるじゃありませんか。あすこはミッドウェーの母港ですよ。出て行って帰ってきて、また行くんじゃありませんか。これは基地の使用じゃありませんか。先ほど言った答弁の論理は成り立たないじゃありませんか。二点。明快に。
  301. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 まさに、ミッドウェーなりあるいは沖縄の海兵隊が日本の施設、区域を使っている、そのこと自体が安保条約第六条に合致している、これは申すまでもないことかと思います。  それから、仮に移動の自由を禁じた場合に、たとえばアメリカの艦船が一たん日本の港を出て、修理その他のためにアメリカの本土に帰るということまで禁じられてしまっては、これでは米軍の使用、米軍の行動というものが確保されないわけでございます。
  302. 市川雄一

    市川委員 全然まだ答えてませんね。要するに、ただ合致している、合致していると言う。なぜ合致しているのかということを説明してくださいと聞いているんです。理由を聞いているのです、具体的な理由を。それはまだ答えてませんよ。ちょっとそれをまず答えていただきましょう。それからにしましょう。なぜ合致するんですか。
  303. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 沖縄の海兵隊あるいは第七艦隊が日本の区域を使用しているということは、そこに在住することによってまさに日本の安全に寄与していることは疑いないことだと思います。
  304. 市川雄一

    市川委員 それを聞いているんじゃない。日本に駐留している米軍が移動と称して中東へ出かけていく、これも先ほどお答えになったでしょう。安保条約第六条の言う日本の安全と極東の平和と安全に寄与しているんだ、だからその移動もいいんだというふうにおっしゃった。どういうふうにこの移動が寄与しているのかを説明してくださいと私さっきから聞いているんです。恐らく答えられないだろうと思うのですが、明快に答えてもらいたい。
  305. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米安保条約の基本的な性格につきましては、日本が武力攻撃を受けた、極東の安全を脅かされたときにアメリカがこれを援助する。しかしこれは、アメリカが危険があったときに日本は援助する義務は全然ないわけでございます。そういう意味では、ある意味で片務的な約束でございまして、このアメリカが日本の安全を守るということに対して、アメリカの兵力の属性としての移動を妨げるということまで要求するわけにはいかない。そういう意味では、日本自身の安全を守るために安保条約というものは存在しているわけでございますから、その基本的な精神に照らして、アメリカの軍隊の移動を縛るということは適当でないと考えるわけでございます。
  306. 市川雄一

    市川委員 それはもう何回も伺っているんですけれどもね。議論をもとへ戻しましょう。  ですから、そうなりますと日米安保条約上米軍の行動を制約できるのは事前協議、その事前協議の第三号、戦闘作戦行動ということになるわけですね。その事前協議も非常に形骸化しておるわけですが、この戦闘作戦行動以外の行動はすべて移動というふうにお決めになって、その移動は自由である、ということは、安保条約はもう自由使用ということですよ。事前協議を除けばあとはもう自由、要するに政府のいまの見解はこういう見解ですね、どうですか。
  307. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日本の基地から直接戦闘行為のために出動する場合には、当然事前協議の対象になるわけでございます。
  308. 市川雄一

    市川委員 事前協議の対象になることを聞いているわけじゃなくて、事前協議の対象外の行動は全部自由でございますという立場に立っていらっしゃるのですねと聞いている。どうですか、その点は。
  309. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 そのほかの問題につきまして、安保条約の運営あるいは極東の平和と安全について関心を持つ事項については、安保条約第四条によって随時協議することができるということで、全く野放しであるわけではございません。
  310. 市川雄一

    市川委員 要するに、先ほど外務大臣は、ミッドウェーなり何なりが中東に移動することは、安保条約の第六条に言う日本の安全に寄与し、並びに極東の平和と安全に寄与しているんだとおっしゃっていましたが、ミッドウェーが中東へ行くことがなぜ寄与になるんですか。どういう理由なんですか。もう一度具体的にお聞かせいただきたい。
  311. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 まず最初にお答えいたしますのは、ミッドウェーが日本の施設、区域を使っている、それ自身はまさに第六条の目的にかなっているというふうに私たちは考えております。  それから第二に、それではミッドウェーが極東の範囲に出て行くことは安保条約上目的にかなっているかどうかということでございますが(市川委員「中東は極東の範囲じゃない」と呼ぶ)わかりました。その点につきましては、第七艦隊が日本から移動して行くことは安保条約は何ら禁止していないということと、それから全体で見た場合に、たとえば横須賀なりを第七艦隊が使って、それが日本の安全と極東の平和を維持しているということは、たまたまミッドウェーがアラビア湾あるいはインド洋に移動することによって何ら変わらないというのが私たちの解釈でございます。
  312. 市川雄一

    市川委員 解釈を聞いているんじゃないのですね。なぜかということを聞いているのです。そういうあなたのいまの解釈で広がれば、もうどんどん際限なく日本に駐留している米軍は世界どこへでも行けるということになるわけですから……。  もう一度お伺いいたしますが、ミッドウェーが中東へ出て行く、これは移動だから差し支えありません、こういう御答弁でした。その場合、このミッドウェーが中東へ出ていくという行動を第六条に照らしますと、これは日本国の安全に寄与し、国際の平和と安全の維持に寄与するためにという立場をおとりになれば、これは第六条でいいわけですけれども、その場合、衆議院の予算委員会で大来外務大臣は、ペルシャ湾は極東の平和と安全にかかわり合いを持っていないし、将来もそういうことは予想されない、そういう趣旨の答弁をなさっている。これは矛盾するのじゃありませんか。移動だからいいんだと言うから、移動でも使用目的にかなわなければいけないじゃないか、こう質問したら、そうしたら使用目的にかなっているのだ、こうおっしゃいますが、じゃ今度は、二月二日のこの予算委員会では、ペルシャ湾は極東の平和と安全にかかわり合いを持っていないし、将来もそういうことは予想されない。それならば、それはただ米軍の属性として動いているというだけじゃありませんか。どうなんですか、その点は。
  313. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、ペルシャ湾が直接の戦闘行動という形で日本の安全を脅かすことは事実問題としてあり得ないという解釈でございまして、基本的には、先ほど来申し上げておりますように、日本に米軍の基地が存在すること自体が日本自身の安全に寄与し、また戦争の抑止力として働いておって、日本国民の安全を保障することに役立っておるわけでございまして、そこの艦船がこの軍隊の属性に基づいて他の地域に出ていくということまで縛るということになりますと、これは日本の安全を維持すること、守るということの日米安保条約自体の存立に非常に影響を及ぼしてくるという点がございますので、中東に出るということだけをそのほかの全体の枠組みから離して論ずることになりますと、全体の枠組みと矛盾してまいるのではないかと思いますが……。
  314. 市川雄一

    市川委員 要するに、軍隊の属性としての移動を禁じることはできない、そんなことは条文のどこにも書いてないわけですね。要するに、日本が日本の知らない問題で米国の戦争に巻き込まれることは困るということで、何らかの歯どめを持とうという立場を日本政府だって持っていらっしゃるわけでしょう。そういうことでは歯どめは全くなくなってしまうわけです。条約に明記されていることが、条約に明記されていない政府の解釈によって、けし飛んでしまう。全く安保条約なんというのは、条文の意味は何にも意味を持たなくなるじゃありませんか。  そこで、総理にお伺いしたいのですが、必ずしも自民党が政権を持ち続けていらっしゃるとは限らない。いま野党だという人の中から総理大臣がそこに座るかもわからない。別の判断が生まれてくるかもしれないわけですが、いいですか、仮に、仮にというか、いまアメリカのスイング戦略というものが一つの焦点になっているわけですが、アメリカの第七艦隊なり沖縄の海兵隊が中東有事のためにスイング戦略で動いた。日本の立場で考えてみて、極東の平和と安全にそんなに寄与するものではない、国際環境の判断から、寄与するものではない。むしろソ連に対する日本の、攻撃とは言いませんが、そういう口実を与えるおそれもある、こういう判断だってこれは出てくると思うのです。  そういう判断に立った場合、米軍の行動を何らかのチェックなり協議、恐らく随時協議で協議されると思うのですが、日本が完全に自分の意思を押し通すということはできるのでしょうか、どうでしょうか。
  315. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 米軍は米軍でございまして、日本の軍隊ではないわけでございまして、これをどのように配置していくかということはアメリカが決めることでございます。問題は、安保条約とのかかわり合いにおきましては、日米間で条約を結びまして、そしてこの米軍が日本の施設、区域を利用する権利はこういう条件のもとで与えられておるということであると思うのでございます。そこで、これはアメリカにとりまして権利でございまして、安保条約上、ここに一遍入ったものは一女日本の許可を得なければ出ていかれないなんという規定はないわけで、本来そういうことになっていないわけでございまして、そういう意味で、移動ということにつきましては安保条約は問うていない、本来自由なんであります。ただ、その場合に日本を基地として直接戦闘行動に出る場合は相談してくれ、こういうことだけが歯どめをかけてあるにすぎない、あとは原則として自由であると見るべきだと思うのです。  しかしながら、あなたが御心配になることは、私は恐らく日米間の信頼関係だと思うのでございまして、アメリカも日本もだてや酔狂で協力関係を持っているわけじゃないのでありまして、やはりこういう世界の情勢になってきた場合に、いわゆるスイング戦法なんというようなものがいま論議されておりまするけれども、緊張が高まりました地域に、ある地域からある兵力を移動するというようなことは考えられることでございます。現にペルシャ湾地帯に緊張があるとすれば、そこへ世界の各地から若干の兵力が移動していくということは、だれが考えても考えられることでございますし、仮に極東地域に緊張がございますならば、よその地域からこっちに移動することも逆に考えられるわけでございまして、スイング戦法なんという戦術用語を使いますとよくわかりませんけれども、平たく言えばそういうものじゃないかと思うのでございまして、そういう問題にどう対処していくかということは、日米間の信頼関係に基づきましてしょっちゅう随時協議を遂げて、お互いの了解の上でやっていくという工夫をしていけばよろしいのではないかと私は考えております。
  316. 市川雄一

    市川委員 もう一回確認いたしますが、アメリカの中東への移動は必ずしも全部日本の安全にとってプラスになる場合のみとは限らないと思うのですね。むしろ、そうでない事態だって将来の世界情勢の中で起きてくるかもわからない。アメリカは、それは巨大な軍事力を持っていて強い国、日本みたいに弱い国じゃないと思うのです。そういう点でどうか日本としての自主的な安全保障に対する歯どめというものをしっかり持っていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  最後に、一つだけちょっと残ったのですが、ガイドラインの問題で調整機関という問題がございますね、日米の作戦を共同して行うために設ける調整機関。五日の米下院軍事委員会の公聴会では、日本政府は八二年に設けると言っていると、こう発言したというふうに伝えられておるわけでございますが、そういう約束というか、お取り決めをなさったのかどうか、それをお聞きして終わりたいと思います。
  317. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御指摘のギン司令官の発言にございます調整機関のことについてかと存じますが、これは「日米防衛協力のための指針」に言う調整機関のことと存じます。同指針によれば、自衛隊と米軍が緊急時において整合のとれた共同対処行動を円滑に実施するために、必要に応じこれが設けられることになっておりまして、自衛隊と米軍との間で本件研究が行われることとなっておると私ども承知いたしております。詳細については……(市川委員「八二年につくるのですか」と呼ぶ)八二年につくるということは全然ございませんで、必要が生じた場合にそういう機関を設けるということと私どもは了解しておりますが、なお、詳細につきましては防衛庁が担当いたしておるわけでございますので……。
  318. 原徹

    ○原政府委員 新聞にそのような記事が出ておりましたが、ギン中将が質疑の中でどういうふうに言われたか、実は正確に承知しておらないのでただいま確認中でございますが、調整機関の性格につきましては、ただいま外務大臣が申されたとおりでありまして、ただいま研究中でありまして、まだその結論を得るに至っておらない。要するに、わが国に対する武力侵攻のおそれがある場合にそれは設置するということになっておりまして、どういうものを設置するかはいま研究中でございます。
  319. 市川雄一

    市川委員 じゃ終わります。(拍手)
  320. 田村元

    田村委員長 これにて近江君、市川君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  321. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この補正予算をちょっと見せていただきましたが、どうも中小企業庁の予算がかなり減少した予算になっておるわけです。それは補正ですから、不要なものばぶった切って、欲しいものは足すというごとなんだろうが、それにしても中小企業庁の予算を八幡三千万もぱしっと切る、こういうあれは最近私も余り記憶がないんです。  そこで、国会の本予算質問をずっと通じて中小企業の問題が余り俎上に出なかったわけですから、それはどういう観点で取り上げたいかというと、大平さんのやり口とか姿勢をちょっと聞きたいためで、たとえば農業でも結局これから減反を進めて、六十年あたりはもうほとんど三割減反。そうすると、四ヘクタールとか五ヘクタールを持っている農家の場合は、いまの生産者米価で換算してもまだいまのこの経済体制の中で生活できるという統計が出ておるわけです。ところが、こういう政策がずうっと続くと弱い者ほど苦しい。四ヘクタールの一割と五反歩の一割と、同じ比率だから公平ではないかと皆さんおっしゃるだろうが、やはり生活にはおのずから収支の採算点というのがあるわけですから、したがって、生産者米価も一物一価主義でやられるものですから、これは大変に弱い者ほど苦しい。そういう意味において、中小企業という問題は大企業に対してどういう感覚でいるだろうか、私はこういう意味においてあえて取り上げさせてもらいます。  そこで、さきに例の社会保障問題がかなり論議になって、審議会も六十五歳なんというのはだめだ、こういう結論まで出ておって、まだそれでも大平さんはやる姿勢なんだが、そこで端的な例ですが、きのう国鉄の運賃値上げの申請が一斉に報道されたわけです。この運賃の値上げという問題は物価問題でいろいろとやられてきましたが、公共料金というのは軒並みに値上げになってきたわけですが、国鉄が運輸省に申請を出したものを見ると、やはり普通弱い者いじめというか、中小企業、特に従量主義から従価主義、採石なんか一番運賃にあおりを食うわけです。それから学生の定期。それにグリーンというのはしばらく上げないで、五十一年に上げて、それから下げた、今回は一切上がっていない。こういう感覚からすると、やはり国鉄運賃一つ上げるにしても、また弱い者いじめかな、こう思うのは庶民の感覚だろうと思うのです。せっかく総裁にちょっと来てもらったので、その点申請の態度をひとつ聞かせてください。
  322. 高木文雄

    ○高木説明員 従来と異なりまして最近、私どもは独占企業の性格からだんだん競争企業の性格になってまいりました。運賃の水準も、飛行機あるいはトラック、バスといったものと比べてはなはだ競争の激しい状態になってきております。しかし一方において、経営が非常にぐあいが悪いものでございますから、多少とも収入を上げて赤字を減らす努力をいたさなければならない。そうした環境の中で具体的に運賃をどういうふうに決めたらいいかということになりますと、従来のいわば社会政策的見地といいますか、国鉄が公共的使命を持っているからという理由でいろいろ配慮されておりました部分について、どうしても手をつけざるを得ないということになるわけでございまして、今回の改定を昨日御提出いたしますにつきましても、私ども大変気にしながらお願いをしておりますのは、学生の通学定期の割引率を直させていただきたいということが一つであり、貨物の運賃の立て方につきまして、従来の等級制を一本化いたしまして、コストに見合うものにだんだん合わさせていただきたいということでございます。その結果、貨物につきましてやはり生活関連物資の運賃が上がるではないかという問題があるわけでございますけれども、この点につきましては、実行上は輸送方等について荷主さんとよく御相談するというようなことを通じて、大量、定形に荷物を送っていただくというようなことについては何とかこれを回避しながらやっていきたいと思っております。  御指摘の点は、まさにそういうことがあらわれておるのは残念でございますけれども、いまの国鉄の現状から言えば、何とかこれを国民の皆様に御了解を得てお認めいただきたいというつもりでございます。
  323. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総裁が確かにそうあらわれておって残念だとおっしゃるように、そのとおりなんです。  そこで、これが本論でないので、せっかくだから運輸大臣に、これから検討しますというだけではなくて、さらに総裁は、その審議の日程が春闘と絡まるのでこれはどう切り抜けるかが問題で、まずい時期に当たった、こう言われておるようですが、やはり私の視点は、取りやすいところから取るというか、取れるところから取る、こういう姿勢が、国鉄の企業性と公共性との板ばさみで政治家がいろいろこれは考えることなんだろうが、大臣として、この中身をまだ検討していないから意見がないよというんじゃなくて、見た瞬間にどう感じられましたか。
  324. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 昨日総裁から受け取ったばかりでございますので、中身はまだ検討しておりませんが、経費を徹底的に節約して、国鉄再建のために努力した答申と見受けられるものでございますので、これから十分内容を調べまして、予算上四月二十日に実施したいと思っておりますので、運輸審議会にかけて、物価閣僚会議等の議を経まして実施に移していきたい、かように考えております。
  325. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総裁、結構ですから。  そこで、いま一つの例を取り上げても、いまの問題はグリーン車の問題、貨物の問題、学生定期の問題等で、総裁もおっしゃったように、そう思われて残念だ、しかし仕方なく上げるんだ、こういうことなんですが、一体この中小企業の予算を何でこんなに減らしたかという論議をしていると、私の持ち時間がなくなるので先へ進めたい。  こういう論議をしている盛りにも企業倒産はとどまらない。そこで総理、倒産件数はいま一体どのくらいあるもんだろうか、大体で結構ですから、細かい数字なんというのは要らないから一いや、私は知っていて質問するんで、調べたから知っているんだけれども、ただ総理大臣に企業倒産は続いているもんでしょうかということを聞きたい。
  326. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 残念ながら最近、倒産件数がややふえてまいっておりまして、月にして千六百件を超えておるのではないかと存じております。
  327. 川俣健二郎

    ○川俣委員 せっかく統計資料がありますから、委員長、ひとつこれを皆さんに配りたいのですが、どうですか。
  328. 田村元

    田村委員長 どうぞ。
  329. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その中で、中小企業関係の倒産が特にひどい。大企業が倒産したというのは余り聞いたことがない。恐らく通産大臣は黙っていないだろうし、総理大臣も、大林や竹中が倒産するといったら黙っていないんだろうが……。  それで、このデータを見ますと、このごろ若干じゃないんだな。倒産はどうしても季節に関係あるから、昨年の同じ月に比べても五十四年度はずっとふえておる。それから、どうしても冬場になって倒産件数が多くなる傾向なんですが、これもずっととめどなくふえておる、こういうあれが出ておる。  そこで、私はここに実例をたくさん持っておるのです。これをずっと読み上げると大変なんですが、政府の施策がないんだろうかというとそうでもない。「活力ある中小企業の育成のために」という一分冊を出してやっておられるようなんです。しかも法律がないのかといったらそうでもない。  そこで一つの問題は、官公需の問題なんです。一体官公需というのは、大企業と中小企業の比率をどのぐらいの比率に維持していこうという方針なのか。
  330. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 御承知のように、逐年中小企業向けの方がふえてまいりまして、五十三年では三五・〇%になっております。
  331. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いま三五%と言われたのですが、それでは、ここで全部読んでもらうと大変だから、公社と公団の比率をちょっと読んでみてください。
  332. 左近友三郎

    ○左近政府委員 公社公団は、専売公社を初め十の公社公団、それから公共事業体が指定をされておりますが、それについての比率は五十三年度二九%でございます。
  333. 川俣健二郎

    ○川俣委員 中身を読んでください。
  334. 左近友三郎

    ○左近政府委員 日本専売公社が四五・六%、日本国有鉄道が三五・二%、日本電信電話公社が二二%、日本住宅公団が三四%、日本道路公団が二三・二%、首都高速道路公団が一七・五%、阪神高速道路公団が二四・五%、水資源開発公団が四一%、日本鉄道建設公団が一二%、それから雇用促進事業団が七〇%、以上でございます。
  335. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いま読んでいただいたように二九%、五十四年は二九・四%が公社公団の目標と伺っております。そこで電電公社は二二%、高速道路が一七・五、例の有名な鉄建公団が一二・〇、こういう官公需の中小向けの比率なんです。さっきの弱い者いじめじゃないんですが、いまのしわ寄せは、公共料金等の値上げはどうしても中小にいくというのは皆さん十分御承知であるわけなんです。  そこで、これからこの問題をどういうように是正して目標の三六・二、それから各官庁にこれをアップさせていくつもりなのか。それとも、しようがない、つぶれるのはやむを得ないんだという感覚なのか、いかがですか。
  336. 左近友三郎

    ○左近政府委員 指摘のように、五十四年度の目標は全体といたしまして三六・二%という目標で、各省と相談いたしまして、それから閣議決定をいたしまして現在実行しておるところでございますが、中小企業の方になるべく契約の機会を大きくする、先生御指摘のように、中小企業の受注機会を拡大するということが法律の目的にもございますので、この五十四年度実績が出た上は、五十五年度にはさらに高い目標について実施をしてまいりたいということでございます。  ただ、先ほどの公社公団の契約実績も、契約の内容、調達の品目の内容によってはなかなか実態が異なりますので、そういう実態を踏まえた上で、今後この率を毎年逐次上昇させていこうということで問題を解決していきたいと考えております。
  337. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この問題は一般質問その他で詰めていきたいと思います。たとえば電電公社などは、まず元請の認定業者にあそこのテーブルをやれ。そして実際に工事をやるのは、私の調べているところによると、大体四つぐらい下のところが出かせぎ農民を使ってケーブル埋めをやっております。そうすると、元請請負金額は一番末端の実際にケーブル埋めをやっているものの金額のどのくらいになるだろうかという比率は、また後日この問題を詰めたいと思うのですが、何はともあれ、一日に五十件か五十五件の倒産である、これだけは皆さん確認できます。一日に五十件から五十五件の倒産件数というのがわが日本の国であります。これだけはこの数字から確認できるわけです。  この中で、いろいろと業種別に調べてみましたら、いろいろの業種にまたがっておるんですが、中小企業の中では特定の産業に限って倒産しておる。これは時間があれば伺いたいのですが、原因を分析したかと質問すると、恐らく放漫経営が一番多いんだ、こうおっしゃられると思うからこれは質問しない。中身を見ると、中小企業が放漫経営をやる余裕はないんだよ。中小企業庁は、この一月になったら要らなくなったというので八億三千万削る余裕があるんだが、件数はこのようにふえていっている。総理、そういう状態ですから、八億三千万をなぜ削ったんだと聞きたいんだが、時間がありませんからね。  そこで、一体日本の国に中小企業を守る法律がないんだろうか。いや、先輩方がたくさんつくっていってくれている。これだけあるので、一々これを読み上げられないのですが、中小企業近代化促進法、これは基本法です。中小企業近代化資金等助成法、中小企業指導法、中小企業団体の組織に関する法律、ずっと拾ってみると六十五あるんです、中小企業を大企業から守らにやならないというほとんどそういう体制で中小企業庁がつくっておりますから。中小企業庁というのは、たしか通産省より先にできましたね、そうですな。この辺でうんと言っているけれども、たしか何々内閣のときにつくったのが中小企業庁だったと私は思うんです。しかし、中小企業庁というのはどういうわけだか、補正予算で額がないから少し財源を出せよと言われたのか知りませんけれども、はいと言って八億三千万不用額です、こういうふうに中小企業庁が出す世の中になった、これが大平内閣なんです。  そこで、ずっと見てみると、法律がこれだけある。それから、おととしでしたか、みんなで超党派で分野法というのをつくった。分野法ができれば倒産件数が減るはずだ、こういうことでつくった。だけれども、大平総理がおっしゃるようにふえてきておる。だから、これはどこに問題があるかといったら、施策というか、法律を——中小企業の倒産、助けてくれという陳情が、毎日のように中小企業庁なり関係各庁に行っているはずなんです。それが一体強い行政指導、大資本の進出から守るという姿勢があるかどうかというところがきょうの視点でございます。  そこで、私の調べておる実例では、倒産業種ではクリーニングが一番多いんです。一体クリーニングというのは、行政指導としてどういう観点で大企業から守り——クリーニソグ法というのは、過去に先輩方が非常に何回も改正してクリーニング法というのをつくってきたという経過をずっと私も見たのですが、いまのクリーニング法でだんだん大企業が進出しやすいように曲げられつつあるという行政指導の施策がこの辺に出てきたと私は思うんです。この辺はどうですか、事務担当でも結構ですから。
  338. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えいたします。  クリーニング法につきましては、クリーニングの衛生的な保持というのが中心でつくられているものでございます。お話しのように、何次かの改正を経ておりますが、いまお話しのような、そういう大企業優先という形では私ども認識いたしておりません。
  339. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私はクリーニングに大企業優先と言ってないから、誤解しないでくださいね。問題は、さっきから話してきた中小企業を守る法律の中に分野法というのをつくった。クリーニングは厚生省だが、ちょうど厚生大臣が商工委員長のときに分野法をつくった。いわゆる大企業優先じゃなくて、大企業が進出するのを防ぐという施策が官庁になければ、幾ら法律、いま申し上げた六十五本つくったってだめなんだという意味で言うておるんで、決して大企業優先でお宅の方が大企業に認可して中小の方は認可しないという意味でないから、それは誤解しないでくださいよ。その辺の反論がありますか。どうです。
  340. 榊孝悌

    ○榊政府委員 いまの御質問ですけれども、クリーニング業というのは、非常に中小の企業が中心でございまして、もともとがそういう性格のものでございます。そういうことで、特に大企業を意識してというふうな形では私ども運営しておらないつもりでございます。
  341. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、局長がさっきおっしゃった、このクリーニング法というのは単なる事業法じゃなくて、あれをずっと読んでみると衛生法ですね。だから、企業化して早かろう、安かろう、悪かろう。クリーニングというやつは、普通の商売と違って、人様のものを預かってきれいにして返すという商売であるし、しかも衛生上、必ず伝染病その他の健康診断や、クリーニング師を置かなきゃならぬ。こういうのの歯どめがないという結果が全国的に悶着が起きているという自覚がありますか、実例知っておりますか。どうです、自覚がありますか、厚生省。そんなこと、聞いたことないということかな。
  342. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お尋ねの趣旨は多分、最近大手のクリーニング業が特定の地域に進出するというふうなことで、いろいろトラブルのあることは承知いたしております。
  343. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大手の進出というのは、そう数多くないんですよ。しかも方々でトラブルを起こしている大手の実例というのはそう多くないんです。比較的全国的に、特に九州を舞台にいまやずっと中国、東北の方に猛威をふるっておるのですが、その実例というのはそう数多くないでしょう。いまのところ厚生省に持ち込んでおる問題は何ですか。
  344. 榊孝悌

    ○榊政府委員 北九州市に本社を持ちます九州化学というのは承知いたしております。
  345. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはやっぱりそれだけ承知しておるんだから、ひとつ北九州の九州化学の猛威ぶりですな、脅威論じゃないけれども、方々で脅威を持ってトラブルを起こしているんだが、厚生省、ちょっとここで披露してみてください。ほかの大臣はもちろんだが、そう厚生大臣にも報告しないで、事務当局で丸め込んで、ばたばた倒産が続出しておることを、私は捏造して言っているのではなくて、シェア五〇%ねらう、低料金とスピードを武器に倒産も続出、新興大手が出店攻勢、それからチェーン網拡大、それから多いしみ、変色、退色、苦情続出、これは安かろう、速かろう、こういう結果は、クリーニング法という衛生法をあなた方が責任を持って法律を持っておるわけだから、その放漫はむしろ官庁の方にあるわけです。ばたばた倒産が続出しておるのは、経営者の方が放漫じゃなくて、このクリーニング法を忠実にやっているかどうかという監督が私はむしろ放漫で倒産に結びついているという論議をしましょう。まずその九州化学というのをおひろめしてみてください。
  346. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えします。  御質問の九州化学でございますが、これは所在地が北九州市にございます。資本金が一億八千万でございまして、従業員数が四百五十人ほどでございます。昭和二十九年からクリーニング業を開始いたしまして、現在の五十三年度の総売上高は四十五億円というふうに聞いております。このうちクリーニング業は二十五億円でございます。そのほか生シイタケ生産とか、そういうふうな仕事もやっておるようでございます。現在全国に直営工場を十七工場持っております。それからさらに、フランチャイズ工場を十五工場持っておるというのが概要でございます。
  347. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大分遠慮されておひろめしておるのですが、クリーニング法を担当しておる厚生省は、もう少し見る角度を変えて、九州化学がクリーニングに手を伸ばしたことに対して、どういうものだということのアウトラインをもう少ししゃべってもらってもいいと思うのだが、まず九州化学は方々にこういう手紙を出しておる。  これは沖縄版なんです。沖縄のクリーニングシーズンがボツボツ近づいてまいりました。こういうことから始まっています。起きるもの、滅びるものと、今後は、二者の盛衰を見ることになるでしょう。それは、特別に沖縄だけの問題ではおりません。日本全国の各所にわがチェーンが進出することにより、さまざまの妨害があるでしょう。こういうくだりから始まって、日本のクリーニング業界七万軒になぐり込みをかけ、それを契機として日本のクリーニング革命を進めたいと思います。それがいまやわが店舗数は、直営、取次店を含め、十五万軒とも十八万軒とも言われるほどの多きに達しているのであります。これがクリーニング業者。ところが、いまあなたがいみじくも言ったように、もとは食品工業。これが厚生省の監督下にあるクリーニング業者に相なりました。こういうことであります。  そこで、この国会で先輩の皆さん方がこのクリーニング法というものをいろんな観点で法改正をやってきたわけであります。それは単なる事業じゃないんだよ、こういう観点であります。たとえば二十二回の国会ですが、「従来のドライクリーニング師の制度を廃止して、新たにクリーニング師の制度を設けたことであります。第二に、営業者は常時五人以上の従事者を使用するクリーニング所ごとに一人以上のクリーニング師を置かなければならないこととしたことであります。」それから「第三に、営業者がクリーニング所において講ずべき衛生上の措置について、都道府県知事が必要な事項を定めることとした」、こういうように、法改正のときの説明がある。  そこで、さっきの「従来常時五人以上の従事者を使用するクリーニング所ごとに、一人以上のクリーニング師を置くこととなっておりましたが、最近における各種化学繊維製品の急速な発達等に対応し、かつ、公衆衛生上遺憾なきを期するため、今後二カ年間を期して、すべてのクリーニング所にクリーニング師を必置することに改めた」。ここまでクリーニング師を置いて、人の物を預かる、手にさわる者は、健康診断を初め保健衛生一切をやって国家試験を受けて、そうして、クリーニング師にした者以外は人様の物にさわっちゃいけないよ、こういうふうにして、国会では、あるときには議員立法、あるときには閣法でやってきたわけなんです。ところが、大手の進出は、かなりさかのぼりまして、こういう法律があったのでは、速かろう、安かろう、資本に物を言わせてざあっとチェーンをすることは困るというので、取次店ということを了解してくれということで出てきたわけです。ところが、それは困る、クリーニング店というのは人様の物を預かるものであるから、たばこを売るようにたばこ屋のところに取次店を置いたのでは、カフスをやられたり、アイロンでやられたと言っても文句の言うところがない。洗うところははるかどこかの工場である。これがいま消費者の苦情となって、父ちゃん、母ちゃんでやっている目の前のクリーニング屋に、このごろのクリーニング屋は困ったものだという苦情がそこに来ている。ところが、チェーンというものが猛威をふるっておるものだから、このクリーニング師をあなた方が守っておるのに、クリーニング師というのは一カ所のクリーニング所に一人のクリーニング師を置かなければならないというところまで規制された、このクリーニング師の経過を踏まえれば、とてもじゃないが、いまのようななぐり込みをかけるという手紙をみずから出す、いわゆる取次店を方々に置いて、そうして速かろう、安かろうで、ざあっと集めて、ざあっと行って、さあっとやるわけだ。こういうことをあなた方はよく黙って見ておるな。これはどうです。
  348. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 先ほど政府委員からお答え申し上げておりますが、クリーニング業法に取次店が入ってまいりました経過は、御承知のように、昭和三十九年以前は法律上の規制は何らございませんでした。したがって、設置は自由であったわけでございますが、取次店がどんどん増加するというような情勢に対応いたしまして、また、これらの施設につきましても衛生上の規制が必要である、こういう見地から、昭和三十九年の法改正によりまして、取次店につきましても規制の対象にいたしておることは、川俣先生よく御承知のとおりでございます。したがいまして、これは都道府県知事に申し出まして、その施設が一定の基準に合致するということが確認された後においてこれが認められるわけでございます。  さらにまた、御指摘になりました取次店にクリーニング師を設置してはどうかということでございますが、これも現在のところ、五十一年の法改正によりまして、県で条例を設けまして、このクリーニング所の業務に従事する者の知識修得あるいは技能の向上のために必要な研修を行わしめることになっておるのでございますが、現在のところ、十一都道府県において実施をいたしておるという現状でございます。  なお、最初の御質問でございました九州化学のクリーニング業への進出についてでございますが、このことは、零細な営業者の多いクリーニング業界にありまして、こうした大手企業が出てまいりますということは零細なクリーニング業者に大きな影響を与えておるということでございまして、私は中小企業の振興という立場から大きな関心を持たざるを得ないわけでございます。したがいまして、厚生省といたしましては、沖縄県に同社が進出してまいりましたに際しまして、分野調整法に基づく調査の申し出が昨年の十月になされたわけでございます。したがいまして、その調査を実施いたし、さらにまた沖縄県に対しまして両者の話し合いをしてもらいたいというあっせんを依頼いたしたわけでございまして、なお今日その解決に努めていかなければならないと存じております。今後この問題につきまして、沖縄県のクリーニング環境衛生同業組合から分野調整法に基づいて調整の申し出がございますれば、分野調整審議会の意見を聞いた上でこれに対処していかなければならないと考えております。
  349. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも大臣は下から持ってきたメモを読んで、何にも魂が入っていない、あなたの答弁には。何も入っていない。いまから異議の申し立てがあれば審議会にかけてなんというほどの余裕がないわけ、毎日のように倒れているわけだから。クリーニングというのは、もともと零細な本のなんだ。なぜかというと、人様の物を一点ずつ預かるというものは、大型化ではだめなものなんだよ、人の物を預かるんだから。だから全然知識のない者が、郵便を集めるような形にはいかないものなんだ。その辺の認識はどうなんですか、局長。いまのようなメモを渡すなよ。問題だよ、あれは。
  350. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えいたします。  お話しのように、クリーニング業の場合、確かに非常にきめ細かいサービスといいますのがやはりその業の信頼に非常に大事なものでございます。そういうふうなことで、各地でいろいろなトラブルがあります中でも、やはり従来からのクリーニング業の信頼が取り戻されているというふうな例もいろいろ起きておるようでございます。そういった意味で、そういったサービスの向上というものに私どももさらにいろいろ努力をしてい弐たい、こういうふうに思っております。
  351. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いままでの施策が間違っておったというふうにとるのはちょっと早とちりかもしらぬけれども、五十四年の六月二十五日に、皆さん方が認定しておる全国クリーニング環境衛生同業組合連合会、ここから厚生大臣あてに陳情をしておるでしょう、何とかしてくださいませんかと。これに対して、どうしてほうっておいたのですか。何とかなりませんかと、陳情書の段階ではだめだと言ったのですか。
  352. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えします。  私ども聞いておりますのは、九月の下句でございます。
  353. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、私が読んだのは六月二十五日の日付だから私はそう言ったのだけれども、九月になって陳情を受けたということだから、質問には答えられないという意味ですか、日にちが違っておるから。そういうふうに受け取れるな。局長、その言い方は何ですか。そうでしょう。六月二十五日付の陳情書が来ているという質問を、いまだにその段階でほうっておいているということを聞いたら——担当課長でもいいよ、それは九月に私の机のところに来ましたと言うだけで、そんな答弁というのはあるかね。いまの政府の答弁は、そんな答弁かね。
  354. 榊孝悌

    ○榊政府委員 私ども、県の方からそういう陳情があるということを聞きましたのが九月の下旬でございます。
  355. 川俣健二郎

    ○川俣委員 このクリーニング法によれば、県の段階には権限がないんだよ。厚生省が指導するようになっているじゃないですか。それじゃ県知事に一切権限を与えるか、クリーニングのこういうもめごとは。いいですか。だから、厚生大臣に陳情しておるじゃないですか。でなかったら、知事に行きますよ。それじゃクリーニング法を少し見てくれますか。分野法と一緒になって見直してくれますか。もう少し親切に、課長でもいいよ、ちょっと答えろ、実際見たのだから。
  356. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えしますが、クリーニング業法の権限は知事でございます。それから分野法は大臣でございます。
  357. 川俣健二郎

    ○川俣委員 局長、私が負けて、そうですがと引っ込めばいいだろうけれども、そんな簡単なものではないんだよ、倒産問題だから。クリーニング師の許認可のあれは知事にあるかもしらぬけれども、それだったら、あなたの言い方だったら、分野法だけの問題で現地に行ったの、どうですか。厚生大臣の問題は分野法だけだ、だから現地に行きました、こういう言い方ですか。あなたの答弁はもう少し……。ひどいよ、これは。
  358. 榊孝悌

    ○榊政府委員 先ほど申し上げましたのは、九月の下句に県の方からそういう話があるという連絡がございまして、十月一日付で分野法による調査の申し出があったわけでございます。
  359. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでどうした。
  360. 榊孝悌

    ○榊政府委員 それで厚生省としては、分野法に基づきまして、現地の調査をいたしたわけでございます。
  361. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それからどうした。
  362. 榊孝悌

    ○榊政府委員 それで、調査につきまして当事者間に連絡をとり、協議をするように指導しているわけでございます。
  363. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、あなたの指導で、もめごとが、とまったまではいかないにしても、ある程度緩んだのですか。そして倒産件数が減ってきたですか。とまったですか、どうなんですか。そこまで見るのが行政指導じゃないの、クリーニングを預かっている官庁として。そうじゃないかね、現地にわざわざ行っているんだから。中小企業庁が行ったんじゃないんだからね。分野法というのは、所管は中小企業庁なんだが、クリーニングの問題だというので、厚生省が預かって沖縄に行ったんでしょう、どうです。
  364. 田村元

    田村委員長 局長の下の課長、答えなさい。その方が手っ取り早い。——榊君。
  365. 榊孝悌

    ○榊政府委員 先ほどお話ししましたような経緯をとりまして、現地の調査を行いまして、分野調整法に基づきます指導を行っているわけでございます。
  366. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、結果的にはどういう返事を出しました。法律に基づいて厚生大臣に調査の申し出があったわけでしょう。結果的にはどういう返事を出しましたか。現状をあなた方は知らないという言い方だから、私は、これ以上は時間がないからあれだけれども、どういう返事を出したか。私は、結果まで見るのが行政指導だと思ったんだけれども……。
  367. 榊孝悌

    ○榊政府委員 五十四年の十一月十二日付をもちまして沖縄県のクリーニング環境衛生同業組合長あてにその調査の結果について報告をいたしております。(川俣委員「その内容は」と呼ぶ)  まず第一に事業拡大についての問題でございますが、沖縄県において、今後クリーニング工場建設の計画を九州化学が持っておるということでございますが、その具体的な内容についてはまだ決定していないということを、これは九州化学から調査をいたしております。  それから、現在操業中の浦添工場につきましては、その処理能力から見て取次店は三十店舗程度が限度であるというふうなことでございまして、今後この取次店の拡大等につきましてそういったことが行われないような指導を行っていきたい、こういうふうに思っております。
  368. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だんだんにしゃべってくるけれども、その返事は、日にちを間違えるとまた注意されるから、十一月十二日付で出しておるんだが、野呂さんが厚生大臣新任早々でございまして、ぱっと判こを押させて出したんだろうが、いみじくも野呂さんはこの分野法の問題でかなり中心的におやりになった方なんですが、こういう返事を出してみたって、いわゆる九州化学の進出で困る、クリーニング師も置かない、取次店だといってチェーン方式でやっておる、何とかしてくれないかという陳情、それが六月二十五日。ところが局長は九月にお目にかかった。ところが十一月十二日に分野法による法律に基づいて調査の報告をやった、何のことはない、これは九州化学の方の聞き込みだけをやった報告なんです。九州化学に行って酒を飲んで、酒を飲んだかどうか知らぬけれども、九州化学の方へあいさつに行って名刺を出して、まだそこまでやる予定じゃないですよ、工場だって三十店程度の限界でとどめるつもりですから、そういじめませんよ、こういうことで帰ってきている報告文書なんです。  大臣、これはどうなんですか。これは見たんでしょう。見たから判こを押した、それとも就任早早だから余り見てないのですか。厚生大臣、これはもう一遍調査して……。
  369. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 零細業者でございますクリーニング業界にとって、この問題は大変重大な影響を与えておるわけでございますから、調査が不十分であればさらに調査を続行いたします。また同心に、この分野法に基づきまして調整の申し出をいただきまして、その調整に積極的に乗り出していきたいと考えております。
  370. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大臣の姿勢の方が先に積極的になったんだが、それじゃ事務当局は、各党の専門の皆さん方が知恵をしぼってつくった分野法のいまの法律だけではどうにも防ぎようがありませんでしたと。あなた方はクリーニングを守るのも仕事だろうけれども、法律を逸脱してまでも中小企業を守れないという弱みがあるんだろうから。そういう意味ですか。いまの分野法では猛威をふるう大手の進出を防ぐことができませんか。どこか欠如していますか。
  371. 榊孝悌

    ○榊政府委員 分野法でどうかという御質問に対して、私どもとしては、分野法をできるだけ使いましてお話しのようなそういう点がないような努力を払っていくということにつきましては、従来からやっておるところでございます。
  372. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何か欠如してませんか。
  373. 榊孝悌

    ○榊政府委員 この辺につきましては、主管省にお聞きいただいた方がよろしいかと思うのでございますけれども……。
  374. 川俣健二郎

    ○川俣委員 問題は、理屈を並べるのでもなければ、私が大きな声を出すのも目的ではなくて、倒産を早く防ごうではないか。クリーニングを守ろうではないか。クリーニング法を大事にしようじゃないか、そして消費者の苦情を大手の安かろう、速かろうという進出から防ごうではないかという観点でやっているんだから、いまの既存の法律だけでは、いまこういう論議をしている中でもどんどん全国的に進出しておるんだ。先生方みんな御存じだよ。だから、この法律がどこか欠如しておるのかということなんだ。どうです、中小企業庁でもいい。
  375. 左近友三郎

    ○左近政府委員 分野調整法につきましては、御審議の結果各般の事情を勘案して生まれた法律でございます。ただ、大企業の進出というのはこれまたいろいろな形でやってまいります。したがいまして、この分野調整法の運用については弾力的にやっていくということが必要かと思います。ことに分野調整法の第三条に大企業の責務というのがございまして、そもそも大企業というものは中小企業者の利益を不当に侵害することはしないようにということが宣言してございます。したがいまして、そういう精神を生かして分野調整法を運用していけば現在の事態は十分防止できると思いますし、われわれ中小企業庁といたしましても、十分各主務大臣の行為を側面から応援してまいりたいというふうに考えております。
  376. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だとすれば、厚生省事務当局は伺っているんだろうが、これはすぐ防げるんではないの。どうです、これ。もう一遍悶着起きたところへ行ってきますか、どうですか。
  377. 榊孝悌

    ○榊政府委員 お答えします。  私、先ほど申し上げておりますように、私どもとしては、そういったことのないように実はすでに二度にわたって環境衛生同業組合との話し合いを持たしておるわけでございます。そういった意味で、できるだけ先ほど申し上げましたようにこの法律によりましてそういったトラブルが生じないような努力というものは私ども今後も続けていきたい、こういうふうに思っております。
  378. 川俣健二郎

    ○川俣委員 トラブルが続かないようにと言ったって、いまわあわあやって、こういう手紙自体がもう殴り込みかけるんだと言っているのだよ、沖縄は一切私の配下にならなければあなた方ひどい目に遭うぞ、こう言っているのだ。手紙自体であなた方はもうびっくりしなければだめだよ、クリーニングというものを守る行政官庁なんだから。そうでしょう。いまの答弁じゃどうも弱いな。厚生大臣どうです。
  379. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 すでに調査をいたしておるわけでございまして、さらに厚生省としては積極的にこの問題に取り組んで、調査不十分な点は十分解明し、そして同業組合と十分話し合いを進め、調整を積極的にいたしていきたいと考えております。
  380. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ことほどさように、総理、さっき総理が所用で立たれた時間をいただいたのでもう三十秒ばかりあるようですが、さっきからずっと話してきたストーリーを振り返ってみると、法律は六十五本ある、しかも一日に倒産件数が五十件、こういうことなんです。法律も結構あるし、予算もある。問題は、監督官庁の姿勢いかんじゃないか。かなり倒産は守れると思いますよ。こういう中においていまの法律も見直す、こういうことでもあるようですから、私はこれ以上の詰めば分科会なり一般質問の方に譲りますけれども、総論として、倒産件数が毎日五十件ある、その中でクリーニングがひどい、ここまでは数字が示しておるのだから、総理大臣、最後の質問ですけれども、これに対してどうです。
  381. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 中小企業対策に対する法律その他の手だては十分できておると思いますが、これに対する各所管のやり方が、周到でかつ親切に対処していくことが大事だと思うのでございまして、その点政府として十分気をつけて対処してまいります。
  382. 川俣健二郎

    ○川俣委員 終わります。(拍手)
  383. 田村元

    田村委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、中島武敏君。
  384. 中島武敏

    中島(武)委員 きょうは、先ほど同僚議員の方からKDDの捜査問題について質問がありましたが、私はその点を避けながら、KDD問題の捜査問題についてまずお尋ねしたいと思うのです。  つい先日、KDD問題の重要な関係者である保田参与がみずから命を絶ったわけであります。保田氏を何回か取り調べておられるわけですけれども、取り調べは被疑者としておやりになったのか、参考人として取り調べられたのか、この点をまず国家公安委員長に伺います。
  385. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 参考人として事情を聞いておった、このような報告でございます。
  386. 中島武敏

    中島(武)委員 この保田氏の前にやはり自殺をされた山口氏ですね、山口氏に対しては被疑者として取り調べておられたわけですか、または参考人だったわけですか。
  387. 中平和水

    ○中平政府委員 参考人としての事情の聴取でございます。
  388. 中島武敏

    中島(武)委員 重ねてお尋ねいたしますが、板野前社長、それから佐藤前社長室長、これはやはり参考人として取り調べておられるわけですか。
  389. 中平和水

    ○中平政府委員 ただいまのところ、そういう事情の聴取をしたという警視庁からの報告は受けておらない次第でございます。
  390. 中島武敏

    中島(武)委員 そうすると、世上うわさに出ている人の中で、参考人としての事情聴取をやっていない人、それからまた、さきに自殺された二人の方は参考人として事情聴取をやっておられた、こういうことでありますね。この事件が発覚してからもう四カ月になる。一斉捜査をやられてからでも、もう二カ月を過ぎているわけです。そしてその間に、非常に残念なことに自殺者が二人も出ているというわけです。ところが、これだけたちましても、現在まだ被疑者としての取り調べにも進むことができないでいる。私は、ここのところに、いま国民の皆さんはこの警察の態度に対して大変いらいらがつのっているのだと思うのです。  私は重ねてもう一つお尋ねしますけれども、政界や官界に対してKDDから金品を贈ったという問題については調査をしておられますか。
  391. 中平和水

    ○中平政府委員 この事件につきましては、御案内のように、関税法違反等で告発を受けまして、その捜査を遂げつつ、十二月四日にKDD本社等二十三カ所の捜索を実施いたしまして、多量の帳簿その他を押収いたしまして、現在その押収しました帳簿等の克明な分析あるいはそれに基づく裏つけの捜査等を鋭意進めている状況でございまして、御指摘のように、捜査が大変遅いではないかというおしかりもあろうかと思いますが、警視庁としては全力を挙げてやっておる次第でございます。  なお、後段の政官界云々の問題につきましては、そういうことをいろいろと含めまして、現在鋭意捜査中でございます。
  392. 中島武敏

    中島(武)委員 含めて調査をしているというのですけれども、これは重ねて伺いますけれども、贈収賄罪として調べておられるのかどうか、この点どうですか。
  393. 中平和水

    ○中平政府委員 捜査と申しますのは、これは証拠に基づいて事実関係を固めてまいるわけでございますから、将来の問題だというふうに思います。
  394. 中島武敏

    中島(武)委員 これは非常に大きな事件であるにもかかわらず、いろいろな犠牲者を出しながら今日なおこういう事態にある。しかも、いまの答弁を聞きますと、金品を贈与しているという問題については、含めて調べてはいるというのですけれども、贈収賄罪、こういうところまでは結局いっていない、こういう話なんですね。この問題で、これだけいろいろすでに新聞にもリークをされておって大問題になっておるにもかかわらず、その金品を政界あるいは官界に渡したというのは、一体どういう問題として調べておられるのか、含めて調べておられるというけれども、そこのところをもう少しはっきり言ってもらいたい。
  395. 中平和水

    ○中平政府委員 現在、先ほども申し上げましたように、押収した資料に基づきましで、物の流れだとかあるいは金の流れだとか、そういうものを究明している次第でございまして、その金の流れあるいは物の流れの行き先いかんによってはいろいろな法条に触れてまいる場合がある、これが捜査というものだというふうに私ども考えております。
  396. 中島武敏

    中島(武)委員 それでは、結局まだ一般的な調査、こういう段階だということですね。これは元東京地検の特捜部長をやっておられた河井信太郎氏が新聞でも述べていますけれども、ちょっと読ませてもらいますが、「国民が一番知りたいのはどの政治家にどれだけの金や物がいったかということなんだ。途中経過の話よりも、政治家の腐敗をあばくことが大事なんだよ。このままでは、疑惑が解明されないまま終わってしまうのではないかという疑問を国民は持ってますよ」「デパートのリベートがどうとか、美術品を運んだ、隠したとか、そういうことまで一々報道されている。途中経過はどうでもいいよ。腐敗した政治家を摘発する。それが議会制民主主義を守っていくことになる」こういうことを発言されている。私も同感だと思います。  さっきから言っておりますように、もうすでに四カ月たっているわけです。しかも、捜査をやってからもう二カ月に及んでいる。それにもかかわらず、まだこうぐずぐずしている。さっぱりわからない。これからだ。こういうことでは、国民が一番期待をしていることにこたえることにならないと思うのです。いや、国民の中には、この事件は自殺者が二人も出て、そしてうやむやにされてしまうのじゃないかというふうに大変疑惑を持っている人、不信を持っている人も多いのであります。私はそういう点では、国家公安委員長がこの問題をどういうふうに指揮をするのかという問題は非常に重大な問題だと思うのです。やはり国家公安委員長責任にかかってくる。国家公安委員長にもっとしっかりしてもらいたい。そういう点で決意をちょっと聞きたいと思う。
  397. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 この事件は、御質問のように国民の注目を集めておる事件でございますから、警察としてはこれは全精力を傾注して事態の解明に当たってくれるもの、かように考えております。ただいまの河井君の記事も読みました。これはまあその道の先輩でございますから、それなりに傾聴いたしたいと思いますけれども、事件というのはやはり当事者でないと、なかなかおか目八目的にはいかない点があるわけでございます。しかし、御質問のように事件が大変複雑ですから、時間がかかっておるということもこれまた否定はいたしません。  なお、国家公安委員長しっかりしろ、こういうお話でございますが、国家公安委員長というのは警察全体の管理をするわけでございまして、個々の事件についての指揮監督権はございませんので、その点はひとつお含みおきを願いたいと思います。
  398. 中島武敏

    中島(武)委員 最後の方の部分はわかっているのです。わかっているけれどもしっかりやってくれ、こういうことであります。また政府としても、また警察としてもこの問題に十分にこたえられるようにならなければ、何のためにあるのか。国民が本当に期待しておるところを大いにやってもらいたいというのがそれこそ国民の声だと思うのです。  それでは次の問題に移ります。  いままで当委員会における議論を聞いていましても、政府は、税金の問題で言えば、一般消費税についての意図を捨てているわけではありません。あるいはまた大企業優遇税制、これを改めているわけでもありません。あるいは所得税減税は三年続きやられていない。いま大平内閣の増税路線には国民の厳しい批判が集中しておるわけであります。本補正予算でも一兆九千億円の自然増収でありますけれども、私はこの中身が問題だと思っています。  私は、増税路線の一環として、次に税務行政のあり方について質問をしたいと思うのです。  まず総理大蔵大臣お尋ねいたします。  憲法八十四条に規定する租税法律主義の意義は、昭和三十九年の五月二十三日東京地裁の判決が示すように、課税要件を法定することにより行政庁の恣意的な徴税を排除し、国民の財産的権利が侵害されないためのものである、私もそう思いますけれども、総理大蔵大臣の見解をまず伺いたいと思うのです。
  399. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的な判決の中身でございますので、国税庁長官からお答えをいたします。
  400. 磯邊律男

    磯邊政府委員 そのとおりだと思います。
  401. 中島武敏

    中島(武)委員 大蔵大臣、よろしいですね。国税庁長官から答弁がありましたが、大臣もそう思われるのでしょうね。
  402. 竹下登

    竹下国務大臣 具体的な判決の問題を知らなかったものですから、私の信頼する国税庁長官が申したら、そのとおりであります。
  403. 中島武敏

    中島(武)委員 戦後ずっと更正または決定が税務行政の主軸をなしてきたわけですけれども、最近は修正申告の慫慂に切りかわってきています。昭和五十二年分で見ますと、国税庁に出してもらった資料によりますと、申告所得税に関する調査件数十一万八千五百十七件中更正あるいは決定が約二万五千件、修正申告が約八万件、その他は、これはいわゆる申告是認でしょう、一万三千七十一件、増差金額六百二十億円になっておるわけであります。つまり六七・五%が修正申告であります。更正より修正申告にというのが最近における税務行政の大きな流れになってきているということを見ることができるのであります。  ところで、この修正申告を慫慂する現在の行政指導には重大な問題があって、行政指導の弊害も大変目立ってきていると私は思います。五十一年十一月八日福岡国際ホールで開かれた日税連の公開研究討論会の記録を見ますと、中国会がまとめた更正処分と修正申告の実態が報告されています。税務調査の結果、本来ならば法律上は更正という行政処分の対象となるものが、実際に更正されたものはわずか一%、残りの九九%が修正申告。ところが、修正申告した人の二四%もの人が不満を持っており、納得しないまま修正申告に応じているという、こういう調査結果が出ています。この二四%という数字は私は少ないのではないか、実際にはもっと多いのではないかと思っております。一体本人が納得しない修正申告とはどういうことなんだろう。そこには税務当局による修正申告の強圧的な慫慂、事実上の強要があることを示していると思うのであります。税務署員の圧力に抗し切れないで、不本意ながら泣く泣く修正申告に応じた納税者がどれだけたくさんいることか。国税庁からいただいた資料から仮に二四%として推計してみますと、調査を受けた十一万人のうち約二万人の人が泣いているということになるのであります。私は、こういうことをほうっておきますと、租税法律主義の根幹を危うくすることとなるのは間違いないと思うのであります。この点で私は、竹下大蔵大臣そしてまた国税庁長官に、租税法律主義の精神に反する不当な調査や行き過ぎた修正申告の慫慂、強要を厳に戒める指導をしているのかどうか、この点をまず伺いたいわけであります。
  404. 磯邊律男

    磯邊政府委員 まず最初にお答えいたしますが、私たちが税務執行するに当たりまして、税法に基づいて正しくその権限を行使するということは、これは国家公務員として当然のことであります。それからまた同時に、現在わが国の税法というのは御承知のように申告納税制度をとっております。したがいまして、納税者の方も税金というものの意義を理解され、正しい、正当な申告を進んでやっていただくというのも、これまた民主国家として当然のことだろうと私は考えているわけであります。  ところで、いま先生は、修正申告の悪癖が非常に多過ぎる、そのために納税者の中には、泣き寝入りといいますか、あるいは税務署の圧力に負けて心ならずも修正申告書に判を押しているケースが多いではないかという御指摘でございますが、私たちは税務申告書をお出しいただきましてそれを審査いたすわけでございますが、それを正しい税額に修正していただきます方法といたしましては、御承知のように更正の方法がございますし、それから同時に、修正申告を出していただくという二つの方法があるわけでございます。ただその場合に、私たちは、単に誤った申告書が正されたというだけをもって事足れりとするわけではなくて、やはり誤った申告書をお出しになった納税者の方に、税務署の調査並びに指導を通じましてその間違っているところを理解していただき、それからまた今後の税務申告を正しく出していただくということを念願いたしまして、納税者の方といろいろとお話をいたしまして、それによってこの点が誤っておるということを御指摘申し上げまして、納税者の方からも御納得いただいた上で修正申告に捺印をして出していただいているものと私は考えておりますし、また修正申告というものはそういったものでなければならないということを考えているわけであります。したがいまして、先生がおっしゃいましたように、修正申告の趣旨というもの、それを余り拡張解釈いたしますと、そこに税務署員からの押しつけあるいは無理な修正申告の慫慂等が出てこないとも限りませんので、そういった点については十分第一線に対しまして注意を喚起しておる、そういうことでございます。
  405. 中島武敏

    中島(武)委員 私はここに一つの典型的な事例を紹介したいと思うのです。この事例を通じて税務行政上のいま答弁のあった問題点、また修正申告慫慂の税法上の問題点について質問をしたいと思います。  ちょっと長くなるかもしれませんが、昨年の秋、東京の板橋税務署が個人タクシー業者に対して大がかりな調査をして修正申告の慫慂を行いました。その数は板橋在住個人タクシー業者約二千名のうち百数十名に上っております。調査を受けた個人タクシー業者から次のような訴えが出されております。青色申告なのに帳簿書類は一切見られていない、計算方法もわからないまま修正申告に判こを押させられた。これは五人や十人ではありません、私の手元にある訴えは五十人分あります。これがそうですけれども、五十人分の訴えが来ているのであります。  どんな調査がやられたのか、どのようにして修正申告を押しつけられたのか、私は数十人の人から事情を聞きました。その結果共通しているのはこういうことなんです。青色申告なのに帳簿書類を見ず、いきなり親メーター、これはどの自動車にでもついている距離計です、それから定期点検記録簿、月報を調べるわけです。また、納税者の承諾なしに、しかも事前に整備工場の調査もやっているのです。整備記録簿は本人が持っているんだからあえて反面調査の必要はないわけであります。さらに、親メーターの走行キロ数とそれから確定申告の基礎とした月報の走行キロ数との差をはじき出して、そしてその差は一体どうしたのか、過少申告ではないのかと追及するわけであります。私用、つまり私の用で使ったと説明すると、営業車には本来私用はない、こういうふうにうそを言って、私用は認められないものと思い込ませてしまう。私用を認める場合には立証をする責任が本人にあるかのように、証拠を見せろ、領収証を出せ、こう言うわけです。もともと私用については記録義務はないのですから、田舎やあるいは旅行に行ったり日常の私用で走った分の領収証などあろうはずがないのです。高速道路の領収証を出した人がいます。そうしたら、あなたのものかどうかわからない、日付の入った写真を撮っておけ、こういうふうに言われた人もおります。こうして追い詰めた後にお情けで年間二千キロ程度ほど私用分として認めてやって、それ以外はすべて所得の原因とする、こういうやり方がやられているわけであります。親メーターと料金メーターの誤差も課税対象とするわけであります。親メーターは単なる車の付属品です。料金メーターは年に一回検定を受けて絶対お客に損がかからないようになっている。その誤差は一般に五%から八%あります。年間の走行キロが仮に五万キロとすると、五%の誤差があれば二千五百キロ、そしてこの二千五百キロは約二十五万円の所得だとされて二万五千円から三万円の課税をする、こういうやり方であります。計算はすべて税務署員がやる。本人は計算方法もわからないままに修正申告に判こを押させられた。判こを押さないと五年分調べるぞとおどかす。どうしてこの税額になったんですかということを聞きますと、これでもあんた低い方だ、こういうふうに回答が返ってくる。さらに、税金もサラ金並みに延滞税を取るんだから借金しても払った方が得だ、こういうことも言われるわけであります。税務署の床にお金をたたきつけて帰ってきたという人もおります。  私がいま申し上げた事実というのは、いまの税務行政のゆがみを浮き彫りにしていると思うのであります。  そこで、まず第一の問題は、青色申告者の帳簿書類の軽視という問題であります。これは全国的な風潮ではなかろうかと思うのです。業者の皆さんは、こんなことであるなら、せっかく帳簿をつけているのに、この帳簿を何も見ないというのでは青色の意味がないというふうに言っているわけであります。まさにこの問題というのは、青色申告制度の存立の意義さえ失わせかねない問題であると私は思うのです。青色申告者の帳簿書類の位置づけというのは、所得税法第百四十八条、第百五十五条、法人税法百二十六条、百三十条によっても非常に高いはずであります。調査に当たって青色申告者の帳簿書類を見もしないでいきなり親メーターに関心を持つ。一体、国税庁は帳簿書類を尊重せよという指導をやっているのかどうか、まず長官に伺いたいと思うのです。
  406. 磯邊律男

    磯邊政府委員 最後の御質問でありますが、青色申告者に対しては帳簿書類を重要視することは当然であります。
  407. 中島武敏

    中島(武)委員 当然だというお答えですけれども、現実には私がいま言ったようなことがやられているわけですから、これをもっと本当に徹底して尊重する、そういう指導を国税庁としても貫いていただきたいと思います。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕
  408. 磯邊律男

    磯邊政府委員 現在の私たちの税務行政の大きな柱の一つの中には、健全な青色申告者の指導育成ということが入ってございます。これは、青色申告者がそれぞれ誠実に記帳をする、それによって正しい申告をしていただくというのが大前提でありますが、私たちはそういった意味におきまして、今後とも青色申告者の方々に対しては正しい記帳をしていただく、それからその記帳に基づいて申告していただく、同時にまた税務職員に対しましては、青色申告者の調査に当たりましてはその記帳の内容を尊重して慎重にこれを取り扱うということを基本といたしております。
  409. 中島武敏

    中島(武)委員 次に、この問題についての推計課税の問題についてでありますけれども、推計課税一般がいけないとか、そういうことを私は何も言う気はありません。しかし、推計方法を誤るととんでもない問題が起きてきます。個人タクシーの場合には、営業とは関係のない親メーターから推計するという誤った方法をとったために、所得の発生しない私用に、また親メーターと料金メーターの誤差、ここに課税をするということが出てきたわけであります。しかも、この誤った方法を押し通すために、営業車の私用は認められない、こういうふうにうそを言って、そう思わせる。そして、本来私用には使えないんだというふうに思い込ませた上で、私用を認める場合には、立証の責任があんたの方にあるんだ、業者の側にあるんだというふうに思わせて、そして、その立証ができない限り所得の原因とするというこういうやり方、私はこれは違法な行政指導じゃないかと思うのです。長官の見解を伺いたいと思うのです。
  410. 磯邊律男

    磯邊政府委員 先生の御質問、きわめて具体的な最近の事例をもとにして御質問されておられますので、私もその観点から御答弁させていただきます。  板橋税務署におきましては、あそこの税務署の管轄区域には個人タクシーの業者の方が多いわけでありますが、そういった方々の中の特定の方たちを調査いたしますと、その業界においてほぼ共通した申告誤りがあるのではないかということになったわけであります。そうしたことから、ただいま先生おっしゃいましたように、約百人の方々に対しまして共通した誤差に基づいていわゆる申告指導といいますか、調査というのをやったわけでありますが、その中に、必ずしも帳簿書類が的確でない方もおられたやに聞いておりますが、いずれにしましても、そこで若干の推計課税をせざるを得なかったというのも事実でございます。  それで、その推計課税の根拠になりましたのは、ただいま先生御指摘のように、親メーターと運賃メーターの誤差であるとか、あるいは私用に供した走行キロ数が二千キロであるかあるいは三千キロであるか、こういったことが問題になりまして、そういったことで、現在板橋税務署におきまして調査上のいろいろな紛糾があるということも、私、報告を受けております。  ただ、現在、大部分の方は修正申告をなさっておられるわけでありますけれども一まだ若干の方が修正申告をお出しになっていない。その見解の相違といいますか、税務署の方の調査あるいは推計といいますか、それと納税者の方の主張との大きな食い違いは、ただいま先生おっしゃいましたような親メーターと運賃メーターの誤差の問題、あるいは私用に供したキロ数の推計といいますか、その問題がございます。  そういったことから、私たちは、板橋税務署の方からのそういった具体的な報告も聞いておりまして、最終的には納税者の方と十分お話をすることによって円満な解決を図るようにという指示を出しておりますが、ただ一律に私たちは納税者の方々にわれわれの推計課税の方法を押しつけるということはございませんで、中にはやはり特殊な方もおられると思います。ですから、そういった特殊な方の個々の実情につきましては、十分それを取り入れた上で結論を出すということにしておるわけでございます。
  411. 中島武敏

    中島(武)委員 いまの問題で私用の問題、あるいは誤差に課税するということはあり得ないことだと思うのです。この点は見解として伺っておきたいのですけれども、私の用に供したこと、これは所得を生み出さないわけですから、これに課税するという道理はないわけでして、あるいはまた誤差があるとすれば、その誤差に課税するなどということもあり得べからざることだと思うのです。細かいことですけれども、重ねてちょっと伺います。
  412. 磯邊律男

    磯邊政府委員 もちろん私用の用に供された場合には、それは売り上げには全然関係ございません。それから同時にまた、私用の用に供されました場合のガソリン代、償却費等はいわゆるこれは家事関連費として所得計策上の必要経費にもならない。いずれにしましても課税には関係ないことであります。
  413. 中島武敏

    中島(武)委員 私、さらにこの問題に関連をして、話がどうも具体的過ぎるのですけれども、私用つまりプライバシーの記録を押しつけるという指導の問題について伺いたいのです。  一月二十三日に板橋区民会館で板橋個人タクシー協同組合の税務講習会が開かれました。ところが、この席上で板橋税務署の統括官が、相変わらず営業車には本来私用はないとか、私用で走った場合には、何のために、どこからどこまで何キロ走ったか日報につけなさい、こういう指導をしておるのであります。私はここにそのときの統括官のテープを持っております。二月三日にも板橋徳丸出張所における西武タクシー協同組合の税務講習会において同じような指導をしています。税務当局が国民のプライバシーの記録を押しつける行政指導をやっているということは、私はまことに重大な問題だと思うのです。  大蔵大臣、運輸関係の法令上からいっても、税法上はもちろんのことです、何の規定もないのです。こういうプライバシーの侵害というものを許しておけるかどうか。これはまさか私は国税庁の指導ではないとは思いますけれども、しかし、一税務署が誤ってやっておるとも考えにくい。これも長官の見解を伺います。
  414. 磯邊律男

    磯邊政府委員 おっしゃいましたように、税務職員というのはすべての個人の営業上の秘密、一身上の秘密あるいは企業上の秘密、それを強制的に知り得る立場にございます。したがいまして、税務職員の守秘義務に対しましては、税法に従いまして一般の公務員以上に重い罰則をもって臨まれておるということがございまして、私たち国税の執行に当たる者は、税務上知り得たことはもちろん外部にはこれを発表しないということは、これはもうわれわれの国家公務員としての、特に税務職員としての倫理であると考えておりますが、同時に、税務職員というのは的確な調査をするためには、やはり個人のそういった外部には言いたくない、そういったことまでも明らかにおっしゃっていただかなければ適正な申告はできないということも実事でございまして、そこに御承知のように、税法には間接強制権を持って臨んでおるということもあるわけであります。  ただ、ただいまおっしゃいましたそれでは、なぜ当該税務署の統括官がそういう指導をしたかと申しますと、それはたとえばここに八百屋さんがおる。それで八百屋さんはだんだん品物が減っていくわけでありますけれども、その品物が減っていくのが売り上げによって減ったのか、あるいは自分のうちの晩のおかずにそれを店から持ってきていわゆる自家消費したのかということがやはり最終的な売り上げを算定する、あるいは仕入れの的確性を認める特に非常に重要な要素になることがあるわけでございまして、八百屋さん等につきましては売り上げ幾ら、自家消費に幾らというふうなことで記録していただく、それによって、これは売り上げを抜かしておるのではないかとかあるいは自家消費に行き過ぎるのではないかというふうなことがないように記録していただくというのが私たちの指導でございます。  したがいまして、細かい実態を私はわかりませんけれども、板橋税務署の方におきましても、やはりそれだけガソリンの消費量が大きいということになりますと、これは私用で自家消費に使ったのだというふうなことを記録しておかれまして、そして後から税務調査のためにトラブルが起きないようにそれを記録した方が後のためによろしい、正しい申告のためにいいという意味で御指導申し上げたのじゃないかと私は考えておるわけでございます。もちろんプラバシーの侵害云々のことは、もしそういったことがあるとすればこれはもう大変な問題でありまして、そういうことがないように十分に気をつけているつもりであります。
  415. 中島武敏

    中島(武)委員 これは非常に重大な問題だと思うのです。どのように記帳するかという技術論の問題ではなくて、実際に言っておりますことは、先ほども言いましたけれども、何のために、どこからどこまで何キロ走ったか日報につけておけ、こうなっているのです。自分の個人的な用で歩いたことを全部記録をしておけということを指導するわけであります。私はこれはプライバシーの侵害だと思います。先ほども言ったように、二度も同じことをちゃんと言っているわけですね。私は、これはいけない、ここのところは非常に重大な問題ですから、きちんと調べて、こういう指導を改めるようにしてもらいたいと思うのです。  なお、ついでに申せば、どういう記帳をするかという問題については、法律の上にきちんと書かれておるわけでありまして、たとえば取引等の記録について、所得税法施行規則の五十七条で非常にはっきり、私用に使ったのか事業用に使ったのか分けがたいというような問題がある場合にはどういうふうにするのかという問題については、「そのつどその総収入金額又は必要経費に算入されない部分の金額を除いて記録しなければならない。」というふうにきわめてはっきりと、除いて記録するのだということが決まっているのです。だから私は、指導としては、プライバシーの侵害に至るというようなことは、これは即刻改める、そして、きちんと法律で決まっているそういう記帳の仕方を指導するということが必要だと思うのです。この点、ぜひひとつ、具体的な問題でもありますから、調査の上、この指導を改めるようにしていただきたいと思います。
  416. 磯邊律男

    磯邊政府委員 調査に行き過ぎがあったり、あるいはプライバシーの侵害といいますか、そういったことがあってはならないということは当然であります。行き過ぎがないように十分気をつけます。
  417. 中島武敏

    中島(武)委員 最後に、私は、納税者の権利擁護と救済手段の問題についてお尋ねしたいと思っています。  先ほど来お話し申しましたように、帳簿も調査しないで推計課税をする、所得の発生しない私用にも課税をする、こういうことがまかり通るのは修正申告だからであります。長官よく御存じのように、更正処分の場合にはとうていこういうことはできないのです。ところが、税務当局は手間がかかって大変な更正処分をしないで、更正にかわるものとして修正申告を安易に慫慂している、事実上の強要をする。私は、ここのところに現在の税務行政上の最大のゆがみ、問題点があると思っています。このゆがみを正して、行政指導の行き過ぎや乱用に歯どめをかけなければならないと思うのです。  私は、そのためには、修正申告を慫慂する際には理由開示を行うべきではないかと思います。更正処分の理由付記は、これはもう長官よく御存じのように、最高裁の判例によって判断の慎重、そして恣意の抑制、さらに不服申し立ての便宜を期することにある、そうされておりますが、不服申し立ての道が開かれている場合でさえも詳細かつ合理的な理由を示さなければならないのでありますから、納税者の武装を解除し、修正申告に応じさせよう、そういうときには、慫慂する際には、それにも増して十分納得のいく理由開示がなされなければならないのは私は当然ではないかと思います。大蔵大臣にもこの点をお聞きしたいところですが、悪意的な徴税を排除して納税者の権利を守るために、修正申告を慫慂する際、文書で理由を開示すべきであると思いますが、いかがでしょう。
  418. 磯邊律男

    磯邊政府委員 修正申告を慫慂いたしますときには、それまでに一対一といいますか、納税者の方に修正申告をしなければならない理由というものは十分御説明してございますので、その上で納税者の方に修正申告を出していただくわけでございますから、それ以上に文書でその理由を示すということは私たちは考えておりません。
  419. 中島武敏

    中島(武)委員 先ほどから言っておりますように、すべてがそうなっておるならば問題はないのです。また修正申告が、進んで自分が申告をするものである、そういう形をとっているものであることも私は十分よく承知している。ところが、実際はそうはなっていないところに私は歯どめをかけなければならないのじゃないかというように思うのです。この修正申告を仮にいやだと言う人があらわれてきたらどうしますか。それは更正処分をするのでしょう。つまり、確たる理由がありて初めて修正申告の慫慂をやっているのじゃありませんか。確たる理由なしに修正申告の慫慂をやるということはあり得ないことだと思うのです。だとするなら、私は、そのときには確たる根拠、理由、このことをしっかり文書で示しておくということが納税者の権利を守ることになるのじゃないか、こういう見解なんです。私が聞いているのは、形だけのことじゃない。実質、税務行政は、金さえ入ればよろしいというものじゃないはずです。そうじゃなくて、やはり納税者の権利もきちんと守られていく、納得がいくということがあって初めて税務行政はスムーズに進むのじゃありませんか。私はそういう立場から、重ねてこの問題について聞きたいのです。
  420. 磯邊律男

    磯邊政府委員 もちろん納税者の権利を十分尊重しながら税務調査をし、それからその結論を出さなければならないということは、そのとおりでございます。  その具体的な方法としましては、青色申告者に対しまして更正いたしますときには、これはその帳簿に基づいて調査をしなければならない。それから更正する場合にはその更正の理由を付記しなければならないということは、所得税法なり法人税法で規定されているとおりでございます。  ただ、修正申告の慫慂という問題につきましては、これは行政上の問題でありまして、したがいまして、私たちは調査の段階であえて理由付記ということで文書を残すことなく、その場において理由を説明し御納得いただいた上で修正申告をお出しいただくということをやっておりますので、その段階まで文書でその理由を開示するということまではいまのところ考えておりません。
  421. 中島武敏

    中島(武)委員 大蔵大臣、どう思われますか。
  422. 竹下登

    竹下国務大臣 手続上の問題でございますので、私には理解ができませんので、国税庁長官の答えが正しい、そのように信じます。
  423. 中島武敏

    中島(武)委員 この問題で納税者の人がよくわからないから文書で理由や根拠を書いてください、こういうふうに言ったら、理由を文書で開示することは差し支えないと思いますけれども、その点はどうですか。
  424. 磯邊律男

    磯邊政府委員 それはその当該調査官が、それじゃ書いてあげましょうと言って書くということは何ら差し支えないと思いますけれども、書かなければならないというふうなことまで指導するということは私たち考えておりませんし、それから事実、現在の税務の実態から考えますと、とてもそういった時間的な余裕はないのじゃないかということを私は考えております。
  425. 中島武敏

    中島(武)委員 この問題で、いま修正申告が実際には調査件数の中で七割を占めるというところまできている。だからこそ、この問題についてもっとしっかりしておかなければいかぬということを私は申し上げているのです。ですから、この点はさらに考えていただきたいと思うのです。  それからもう一つ、最後ですが、修正申告が終わってからの権利の救済問題です。この問題では、道は更正の請求という道しか税法上はないと思うのです。しかし、更正処分は三年から特殊なものは五年までできることになっているのに、一方、更正の請求の方は一年分しかできないわけであります。これは、税金を取る方は三年間あるいは五年間取ることができる、ところが、返す方は一年間しかできない。どうも入る方は何ぼでも入るようになっておって、間違っておっても返す道が開かれていない。私はこれはどうもおかしいと思うのですね。大変バランスを欠いているといいますか、公平を欠いているといいますか、そういう時代だと思うのです。私はこういう点では、これは本当は法律改正の問題ですから大蔵大臣に聞きたいのですけれども、国税通則法のこのバランスを欠いている点は検討する意思がないかどうかということを伺いたいと思う。
  426. 磯邊律男

    磯邊政府委員 御承知のように、現在、国税通則法によりますと、いわゆる更正決定の除斥期間でございまして、それは普通の場合には三年間、それから仮装隠蔽行為があった場合には五年間、それを過ぎたらこれを更正することはできないといういわゆる除斥期間の規定があるわけでありまして、一番長いのは五年間さかのぼって更正することができるということになっておるわけであります。それに対しまして、更正の請求、つまり申告書を出したけれどもそれが間違っておったということで減らしてもらいたいという場合の更正の請求は、法定申告期限から一年以内でなければできないというようなことも事実でございます。  なぜそういうことになっておるかということは、これは立法上の問題でありますから、私たち税の執行に当たる者はそこまでお答えする立場にございませんけれども、更正の制限の問題は、これは国の債権債務の時効が五年であるということのバランスから、こういった最長五年ということがとられておるものと私は思っております。  それから同時に、やはり税務関係を含めたもろもろの法的安定性というものが、いつまでも不安定な状態になってはならないというふうなところから、更正の請求の期限あるいは更正決定の期限というものの限度があると思うわけでありますけれども、ただ申告した場合、その申告された人が、自分でまたそれを減らしてくれというふうな御要望があるというのは、そもそも自分がこれで正しいと思って申告をされて、それが何年もたってまたそれは減らしてもらうというようなことになりますと、当初の御自分で出された申告書の内容が一体何であったかというようなことにもなりまして、やはり現在の自主申告納税制度のたてまえから考えますと、余りにも長期間にわたって申告書の内容の法的関係が不安定になるというところから、そういうふうに制度がなっておるのじゃないかと私は私なりに理解しておるわけであります。  ただ、しかし、永久にそれが救われないということではないのでありまして、そこにはやはり税務署長の職権による減額更正の方法もございまして、そういった救済の道というものは開かれておるということを申し上げておきたいと思います。
  427. 中島武敏

    中島(武)委員 大蔵大臣はどうですか。やはり同じですか。
  428. 竹下登

    竹下国務大臣 国税庁長官お答えのとおりであろう。私詳しく存じませんので、それをもって御了解をいただきたいと思います。
  429. 中島武敏

    中島(武)委員 これで私の質問は終わりまして、東中議員の方から関連質問をいたします。
  430. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 この際、東中君より関連質疑の申し出があります。中島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。東中光雄君。
  431. 東中光雄

    東中委員 先ほど宮永幸久ほか二名が起訴されたことについての報告がありました。起訴された事実によりますと、軍事情報月報別冊四点のコピーと軍事情報月報三部と公電等五通というふうに明らかにされておるようでありますが、この捜査の過程ではずいぶんいろんなことが捜査当局から流された。共産党が関係しているのではないかということまで流されたことがあります。結局は合計十二点だけであって、それ以外に他に漏れた文書、漏洩の対象になった文書はないということなのかどうか。新聞報道によると、若干ほかにもある、しかしその秘密文書の存在自体が秘密だから起訴しなかったのではなかろうかというふうな論評もされておりますので、その点について法務当局に説明を求めます。
  432. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの点でございますが、昨日起訴しました公訴事実に含まれておりますものは、先ほど御指摘のような合計十二点でございます。  それだけかというお話でございますが、端的に申しまして、ほかにあるかどうかということは、本件のこれからの公判の立証に関しまして直接間接に関係する事実でございますので、この機会に申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  433. 東中光雄

    東中委員 ほかに存在しないということを否定をしないという状態であります。  そこで、起訴された月報、軍事情報月報、この秘密文書なるものは、将来公判延において明らかにしていく所存かどうか、並びに漏洩されたという秘密の文書じゃなくて、文書に書かれておる内容を明らかにするのかしないのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  434. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 当然秘密を漏らしたということで起訴しておるわけでございますから、当該文書を交付したことが秘密を漏らしたことに当たるという立証は必要なわけでございます。  ただ、その立証方法といたしましては、いろいろなやり方があるわけでございまして、過去の例にもいろいろとあるわけでございますので、本件の場合には本件に適した方法で立証がされるものと考えております。
  435. 東中光雄

    東中委員 漏洩した文書が問題になっている場合に、その文書自体の存在あるいはその同種のものというのは、いわゆるベストエビデンスであります。ベストエビデンスは、秘密漏洩を追及する以上は、その秘密の内容を明らかにすべきである。そうでなければ、秘密であるかどうかは究極的にはわからない。私が担当した事件でも、そういったことで無罪になった例があります。もちろん控訴されていろいろ長い間争いましたけれども、こういう重要な問題があるわけですが、この軍事情報月報というものを、防衛庁にお伺いするのですけれども、秘密文書であるというふうに指定をするのは、だれがどの権限に基づいてやるのか明らかにしてもらいたい。
  436. 原徹

    ○原政府委員 防衛庁では秘密保全に関する訓令というのがございまして、それぞれのものにつきましてどの階級の人がこの文書を指定するということが決められております。機密であれば幕僚長等というようなことで、秘でございますと大体課長レベルの方が指定をするということになっております。
  437. 東中光雄

    東中委員 本件の起訴された秘密文書というのは、防衛庁長官の訓令に基づいて課長の判断でやっているということをお伺いしたわけでありますけれども、これが秘密文書であるかどうかということについては、もし秘密文書であれば、これは犯罪になるわけであります。犯罪は罪刑法定主義でありますから、どこまで犯罪になるのかということの範囲は法律で決めなければいけないということになっているわけですが、いま訓令によって、しかも一課長が決めた。決めてなかったらこれは犯罪にならないかもしれない。決めておるということで犯罪になるということになるわけです。ですから、形式上の秘密だけではだめだ、実質上の秘密であるかどうかということが必要である。この内容を明らかにすることがどうしても必要であります。  本件、起訴された軍事情報月報についての内容、何が書かれておったのか、そのもの自体を明らかにしないということであるならば、その趣旨は一体何なのかということについて御答弁をいただきたい。
  438. 原徹

    ○原政府委員 内容につきましては、ただいま捜査当局の方で処理をいたしておりますので、私の方からちょっと申し上げるわけにはまいらないわけでございます。
  439. 東中光雄

    東中委員 秘密指定をしたのは防衛庁である。長官訓令に基づいて課長がやったのだ、これは防衛庁が第一次的に判断をしておるわけです。その防衛庁がやった一つの秘密指定処置の内容を防衛庁がなぜ言えないのですか。防衛庁がやらなければ、捜査当局は出てこないかもしれないのです。そういう性質のものじゃないですか。やはり防衛庁秘密主義で、一切そういうことは言いませんという姿勢をとるわけですか。
  440. 原徹

    ○原政府委員 陸上幕僚監部でつくっております軍事情勢に関する秘に指定された執務参考資料でございます。
  441. 東中光雄

    東中委員 それは内容じゃなくて、外からの説明をしているだけじゃありませんか。  きょうの某新聞によりますと、宮永が流した軍事月報の内容は、秘密文書軍事情報月報は、陸上幕僚監部調査部と陸上自衛隊中央資料隊が公刊資料などで収集したソ連、中国、北朝鮮の一般的な地上部隊の状況を、同調査部別室のこれらの諸国に対する軍事無線通信傍受によって得た刻々の情報で裏打ちして、軍事動態報告として仕上げたものであるというふうなことが書かれておりますけれども、これによりますと、公刊の資料と、あと自衛隊の調査隊、要するにスパイ専門家です、スパイ専門家がスパイして集めた資料で裏づけをして、そしてまとめたものだ、こう書いてあるのです。だから、この宮永は調査隊にいたわけですから、スパイをずっとしてきて集めてきたものを、今度はまたスパイをしておるわけです。それがもうあたりまえになっておるわけですね。そこに非常に問題があるわけですけれども、こういう報道がされているわけです。  しかし、この国会では、さっき言ったように、一切何にも言わない。これはどこから出ているのでしょうか。非常に奇妙なことじゃないですか。国会に対してはそんなに秘密主義を貫いていくのか。ここに書かれているようなことは、これはやはり秘密なんですか。いかがでしょう。
  442. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ちょっと誤解がございますといけませんから私から申し上げたいと思いますが、いま捜査当局で持っておられるいろんな、証拠になるのでございましょうね、いま持っておられるわけですね。それが、自衛隊秘密として扱っておる資料があるということでございます。  そこで、その秘密の扱いをしておるというのは、行政機関として一定の規定がありまして、三種類に分けまして、これは秘密だと言っておるわけでございます。したがって、その秘密が守られなかったということでございます。したがって、これは私が申し上げることでないかもしれませんが、今後捜査なり訴訟の段階において、いまちょっとお話がありましたように、これが実質上の秘密かどうかなんという話は、これは私どもが実はあずかり知らないことでございまして、役所といたしましては、こういう訓令に基づいてこういう秘密の扱いをしておるということでございます。  それから、いま中身をどうこうというお話でございますが、きのう起訴されたばかりでございますし、私どもはこの中身についていまとやかく申し上げる時点ではないということでございますから、特にわざわざ隠してどうこうということではないわけでございます。
  443. 東中光雄

    東中委員 軍事情報月報は、証拠として持っていったものだけじゃないのです。百部つくって関係のところへ配ってあるものだというふうなことも報道されております。これは真実かどうか私は知りませんけれども……。月報というのですから、極秘の一枚のヒラじゃなくて、月報で、どうぜ回すんでしょう。そのうちの一部ということになっているんじゃないですか。だから、そういうものは防衛庁の中にたくさんあるのでしょう。七十四万点あるということをこの前も証言されているわけですよ。そうでしょう。  だから、これはどういう内容の——個々のたとえば中国のどこそこの地域にどういう部隊が配備されておるというような情報まで書いてあるのかどうか私は知りませんけれども、それが書いてあるんだったらその内容まで言えと言っているのじゃないのです。中国や北朝鮮やあるいはソ連のそういう情報を収集したことを書いてあるものでありますというんだったら、そう明らかにすればいいじゃないですか。
  444. 原徹

    ○原政府委員 先ほど申しましたように、月報でございますから毎月つくるわけでございまして、それは、いろいろのところからの情報を収集したもの、それを集めて、そして部内の参考資料としてしかるべきところに配付している、そういう文書でございます。
  445. 東中光雄

    東中委員 配付しているんだから、防衛庁にほかにもあるんだから、私が言っているのは、捜査になっているのは——証拠書類として持っていっている捜査の問題、これは捜査の問題は公判で明らかにすればいいのです。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 だから、私はそのことをいま聞いているのではなくて、その書類を秘密だと指定した防衛庁自身、しかも、それをたくさんいま持っているわけでしょう。その内容について聞いているのであって、それさえ言わぬというんだったら、そういう秘密主義だということで結構です。あくまでもそういう秘密主義を貫いていくんだということで結構です。それで、そういうことは結構ですが——答弁は結構だと言っているので、そういう態度が結構だと一つも言っていない。これははっきりしておいてもらいます。  それで、これは防衛秘密ということを盛んに言われておるわけでありますけれども、防衛秘密というものは、自衛隊法上そういう規定は何にもありませんね。それはどうですか。
  446. 原徹

    ○原政府委員 日米相互防衛援助協定に基づくものを防衛秘密と、そういう法律になっておりますが、防衛庁秘密は例の自衛隊法五十九条のものであり、それは庁秘ということに言っております。
  447. 東中光雄

    東中委員 自衛隊法上は防衛機密ということについての定義もなければ規定もないということは、いまMSA秘密保護法について私は言っているのではないので、その点は認められたと思うのです。  それで、きのうの新聞報道によりますと、外務大臣法務大臣、官房長官ですかが協議になられて、自衛隊関係者の秘密漏洩罪の罰則強化について検討するというような方向を出されたという報道が一部でなされております。それからまた、防衛庁秘密保全体制検討委員会で自衛隊法の罰則強化の改正を含めて検討する、亘理事務次官がそういう方向を出したというふうにも報道されておるわけでありますけれども、先ほどの総理の答弁では、秘密漏洩罪の罰則強化へ向けての、秘密漏洩罪といいますか、自衛隊法の秘密漏洩の罪の罰則強化を含めて検討するというようなことはないというふうに言われたと思うのですが、その点は一体どうなのですか。
  448. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま当面、このスパイ事件の後の処置といたしましては、自衛隊の内部の秘密保持体制の総点検をやるということにいたしておりますことは御案内のとおりであります。それが当面われわれの任務でございまして、政府として、このスパイ事件があったからいま直ちに自衛隊法の改正を国会にお願いするというようなことは考えていないということです。
  449. 東中光雄

    東中委員 検討を始めているのですか、それともそういう検討はしない。何か検討するような方向の答弁、そういう発言がずっといろいろ出てきておったようでありますが、罰則強化のための改正検討はしないということですか、するということですか。そこのところをはっきりしてください。
  450. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 当面私どもの任務は、現行法制のもとにおいて秘密保持体制の総点検をやるということを私はいま指示いたしてあるわけでございまして、自衛隊法の改正について検討するということを指示したことはないのでありまして、いまのスパイ事件がございましたからといって、直ちにこれを新しい立法をお願いすることにするというつもりは、いまのところありません。
  451. 東中光雄

    東中委員 自衛隊法の罰則強化の改正を検討することを指示しておるわけではないということでございますので、次の問題に移りたいのです。  いわゆる奇襲対処問題につきまして、あるいは有事立法問題につきまして、総理は総裁選挙、党内の選挙でありますが、そのときに「大平正芳の政策要綱資料」を出されたわけであります。これによりますと、「現行の自衛隊法はすでに周到に作られた有事立法であり、急迫した攻撃の恐れがある場合には国会の事後承認で首相が防衛出動命令を出せる。有事への対応は一応できている」、こう言われ、また「私は現行法で有事に対応できると思う。この有事立法の問題が突如として大問題になることが理解できない。冷静、慎重に対処してゆくべきだ。」こういうふうにも言われておることが書かれています。それから「奇襲が起こった場合の論議や有事立法の必要性の強調はいたずらに国民の危機感をあおることにもなる、と受け止めて批判しているわけだ。」というのもここに載せられておるわけであります。  ところが、せんだっての六日の当委員会における答弁で、奇襲対処問題がいろいろ議論になりましたときに、どのように有効に対応していくかは事実問題と法律問題がある、法制面についてはいまの自衛隊法のもとで政令などを整備することで足りるか、立法措置が心要か、法的側面を含め防衛庁内で鋭意検討している、できるだけ早く研究を進めるよう促進したい、こうおっしゃっているのです。こっちはできるだけ慎重にやるべきで、いたずらにあおり立てるのは遺憾である、こう言うて総裁になられ、総理になられたわけでありますが、この答弁とは、わずか一年少しの間にえらい変わったものだなと思うんであります。その点は総理大臣、いかがでございますか。
  452. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど国会で申し上げたとおりでございます。
  453. 東中光雄

    東中委員 そうすると、この前の政策要綱資料で大平さんが出されたこれとは見解を変えたんだということになると思うのでありますが、それでよろしいのですか。
  454. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 別に変えたつもりはございませんで、国会で答弁申し上げたことと矛盾するとは思いません。
  455. 東中光雄

    東中委員 これが矛盾してないというのは、大平さんはそう思われるかもしれぬが、普通の日本語の理解としては大いに矛盾していると思うのであります。非常に強弁をされておるように私は理解いたします。といいますのは、いたずらにそういうことで論議をして、迫っているようなことを言うのはいかぬのだと言って批判しているのだ、冷静に慎重に対処していくべきだと言っていた人が、早くやるように促進しておるのだ、こう言っているわけです。  それでは内容的にお伺いしますが、いわゆる奇襲対処について、この問題が問題になり、統一見解が出されたときに、金丸防衛庁長官は、私は、奇襲という問題につきましては万々一、絶対ないと思うのです、「いまの科学の進歩しておる、あるいは通信網の完備とかあるいは宇宙衛星、情報を得るとか、そういう中で奇襲というものが起こらないようにすることが政治だ、総理の権限を一つでも譲ることはいけない、それがシビリアンコソートロールだ」、こういうようにも言っておられます。いま申し上げたのは五十三年十月三日の予算委員会における答弁であります。これは私が質問したのに対して答えておられる。  それから、十月十六日の内閣委員会の答弁でも、「奇襲の問題につきましては、奇襲は絶対ないようにしなければならぬ、ないようにすることが政治だ」、こう言っているわけであります。「あらゆる設備、施設をすれば、絶対奇襲というものはあり得ないという考え方。また、その奇襲という問題の中に、一つの何か立法をするということになれば、実際は文民統制というものはどうなる、シビリアンコントロールはどうなるということを考えてみれば、これは絶対譲ってはいけない」、こう言っているのであります。だから法律を変えるということになったらいかんのだというふうに、絶対譲ってはならないのだと言っているわけであります。  また、五十三年十月六日の衆議院の予算委員会で、「奇襲というものは、」隊法の第七十六条「第一項、第二項によりましてその奇襲に対処できるような態勢をとれるように法律上なっているというふうに私どもは判断をしている」、ここまで言っているわけです。法制上はそうなっているのだということを言って、ただ制服が奇襲奇襲と言うから、そういう場合に自衛隊自衛隊として生き抜くための応急措置、そういったものが一体どういうことになるかということをおまえら検討せいということを言っているだけなのだ、奇襲問題についてはいわゆる有事立法とはあの統一見解もはっきり分けているわけであります、こういう立場であったと思うのでありますが、防衛庁長官、金丸防衛庁長官の答弁を変えられる考えなのか、どうなのか。
  456. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  いま御質問の最後のところでおっしゃいました、いわゆる奇襲対処の問題と有事法制の問題とは当然分けて考えておる次第でございます。奇襲対処ということにつきまして、いまお挙げになりました金丸元防衛庁長官、これは政治家として特にシビリアンコントロールというものを絶対大事にするという立場で発言をしておられるところでございまして、法制上も防衛出動については「おそれのある場合」というようなこともございますし、またいろいろ通信の問題なども日進月歩でもございます。ですから、そういうものについてはあるいは外交で、あるいは政治の力で、あるいはそういったようないろいろな点で最善を尽くすということは当然だと思います。したがいまして、金丸さんがその時点で答弁なさったところでは、奇襲というものはないのだという御答弁だ、かように承知しております。  ただ、絶対ということが、政治家ですから、そういうものは絶対なくすべきであって勝手に部隊が行動するということは許せないのだということを非常に強くおっしゃっているのだと思います。私どももその精神でなければならないと思います。ただ、客観的な問題として、奇襲という言葉の解釈にもよりましょうけれども、絶対にと言えるかどうかという点については、実は私どももまだ十分研究しなければならぬと思っております。しかし、仮にあるとしても、少なくとも最小限度ぎりぎりのものにしなければなりませんし、その場合でもなおかつこれは独断専行するとかシビリアンコントロールの外であるということは絶対に避けなければならぬ、さように考えておる次第でございます。
  457. 東中光雄

    東中委員 総理大臣は、事後にしろ国会の承認を得ての防衛出動命令が出される前に奇襲対処ということで自衛隊が現地の判断で行動するというふうなことは絶対にあってはならぬのだということを強調されているわけであります。その点は当時の福田総理大臣も同じことを言われておりますし、内閣法制局長官もそのことをはっきりと言っておったと思うのでありますが、その点は変わりはないのでしょうね。大平総理大臣、いかがでしょうか。
  458. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 しばしば申し上げておりますように、奇襲攻撃に対しましては、現行法で基本的には対処し得るものと考えております。したがって、自衛隊が奇襲攻撃に対してとるべき方策は、防衛の体制を整備して実際上奇襲を受けることのないよう努めることがあくまで基本であると考えております。  なお、仮に奇襲があり得るとした場合に、自衛隊がこれに対していかに対処するかについては、文民統制の原則と、組織行動を本旨とする自衛隊の特性とを踏まえまして、法的側面も含めて慎重に検討するとの従来からの考え方に基づきまして、政府部内において検討しておるところであります。この方針に変更はございませんで、私としてはその結果を待って判断したいと考えています。
  459. 東中光雄

    東中委員 現場の判断で勝手にやるということはあり得ない、その検討は、奇襲というものがあるとすれば——これは福田総理も、理論的、観念的にはあるかもしれぬけれども、実際上は常識的にはない、こういうふうにも答弁されておりました。ただ理論的、観念的にやかましく制服から言うからその点についてのことを検討する、そういうことだと、経過から見て、いままでの態度と変わらないということでありますから、私は理解をするわけですが、それでこの防衛問題が問題になったときに、いわゆる内訓問題というのがありました。領空侵犯に対する措置の問題で、スクランブルをしていった航空自衛隊が相手方の出方によって武器を使用するということを規定しているということで、そういうことは自衛隊法の八十四条の規定からいって許されないことだということで、私はずいぶん質疑を重ねたわけでありますけれども、この内訓自体はその後変更されたのかされなかったのか、まず変更したかしないかということについてお伺いしたいと思います。
  460. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  三十九年のこれに関する防衛庁内訓は、変更いたしておりません。
  461. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、この防衛庁の内訓には、これは昭和五十三年八月十六日の内閣委員会のわが党の松本議員の質問に対する答えでありますが、内訓の中には武器の使用という項目があって「この要撃機が武器を使用する場合には、正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合に限って武器の使用が許されるということが書いてあるわけでございます。」こういう答弁がありました。ところが、この内訓はいまもそのままあるということだと思うのですが、防衛庁長官、その点確認してよろしゅうございますか。
  462. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  変わっておりません。
  463. 東中光雄

    東中委員 ところが、先日の本委員会における答弁で、そしてまた昨年の三月六日の予算委員会における答弁で、これは八十四条のあの領空侵犯に対する措置の権限の一環として武器の使用はできるのだ、緊急避難、正当防衛というものとは関係なしにそうするのだという趣旨の答弁をされています。これは非常に重大な変更になるわけですが、この答弁、先日の六日ですかの答弁は、この内訓がそのままだとすれば、リップサービスだったということになるのですか。
  464. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘の昨年三月六日、本予算委員会におきまする八十四条、領空侵犯の御質問に対しまして私どもが明らかにいたしましたのは、領空侵犯措置の法的根拠が八十四条であって、武器使用の法的根拠も八十四条であるということを申し上げたわけでございます。ただし、武器を実際に使用をして相手を撃墜するという場合、すなわち確認、警告、誘導という措置をとってもなお指示に従わず、さらに信号射撃等をしても指示に従わずに実力をもって抵抗して来るような場合、この場合には武器を任務遂行の必要な措置の一貫として使用してよろしいというのが八十四条の解釈であるという御答弁を申し上げました。  ただいま御指摘の正当防衛、緊急避難、刑法の三十六条、三十七条は先生よく御存じのように、これは個人の行った刑事事件等に対する免責、刑の減免規定でございます。領空侵犯措置というのは、主権国家が自分の主権の範囲内の領空の侵犯を排除するところのいわば主権国家の警察行動でございまして、これは自衛隊法三条の規定の中でもって重たる任務として防衛庁に与えられており、かつ領空侵犯につきましては、海上保安庁が海上警備を第一次的にやっておりますけれども、領空侵犯については自衛隊が担当いたしておるわけでございます。その場合、相手が抵抗してきたような場合に武器を使用する根拠は自衛隊法八十四条である、個人の刑の減免を定めたところの刑法の三十六条、七条という規定でこれを解釈するのはおかしいということでございまして、内訓に書いてございます正当防衛、緊急避難は、これは危害許容要件、すなわち相手が抵抗してきたときやむを得ず任務遂行の必要上、自分が落とされては任務が果たせなくなりますので、やむを得ず武器を使用する場合、一般の刑法で定められておる正当防衛、緊急避難の要件を借りて危害を加えるのもやむを得ない、こういうことでございまして、いわゆる危害許容要件でございます。法的根拠は八十四条でございます。
  465. 東中光雄

    東中委員 もっともらしいことを言うても、それが重大な変更なんですよ。先ほど申し上げました五十三年八月十六日の内閣委員会における当時の伊藤防衛局長の答弁を読んでみますと、「八十四条は、領空侵犯に対する措置として航空自衛隊に任務が与えられているということでございます。ここに書いてございますのは、必要な措置を講ずることができる、わが国の領域の上空から退去させるために必要な措置を講ずることができるということが書いてございまして、その際に、じゃ武器が使用できるかどうかということでございますが、この「措置を講じさせることができる。」ということだけでは武器の使用は許されないというふうに考えておるわけです。私どもは、その武器の使用が許されるのは正当防衛であり、緊急避難の場合にその合理的な範囲で使用ができるだろう」と考えてやっているんだ、こう言っているんですよ。あなたがいま言ったのとはまるっきり違うでしょう。八十四条の規定では、措置を講じさせるということでは武器は使用できないんです、はっきりそう言っているじゃないですか。  そして、海上警備の場合の武器使用、これは自衛官の武器使用です。それも、警察官職務執行法七条を準用して、そして武器が使用できるように規定されている。  自衛隊はいろいろな任務があります。いろいろな行動をとること、これは法律で規定がある。あの六章の規定を見てごらんなさい。全部、自衛隊の行動の中に防衛出動あり、治安出動あり、そして海上における警備行動があり、災害派遣があり、領空侵犯に対する措置がある。この規定で武器使用なんということは出てこないということは明白なんだ。だからこそ次の第七章で、自衛隊の権限として、防衛出動の行動の場合にはここの八十八条に規定があって、武力の行使ができるとなっている。海上警備のときは九十三条の規定があって、そこで武器が使用できると書いてある。ところが八十四条に対応する武器使用規定というのは全然ないんですよ。緊急避難、正当防衛としても武器使用ができるとは書いてないんです。海上警備のときには、緊急避難の場合にあるいは治安出動の場合は緊急避難で武器を使えるとなっている。八十四条については全然なってない。だからこの通達にある、内訓で言っておる緊急避難、正当防衛の場合に武器を使用するということ自体が非常に問題なんだということで私たちは追及をしてきたんです。自衛隊法の規定を逸脱しているじゃないかということを私たちは言ってきたんです。総理大臣は何も知らないのにスクランブルに出た飛行機が発砲するということになったら大変なことになるんだということを言ってきたんです。そのときは八十四条からはできません、緊急避難だからできるんです、こう言っていたのです。  ところがきょうの答弁では、武器使用は八十四条でできるんだ、こういうふうに変えたと言う。これは重大な変更じゃないですか。武器を使用した場合には、緊急避難、正当防衛の場合は、その武器を使用したことに刑事免責があるのかどうかというのは捜査官が調べることになる。内訓に従ってやれば捜査官によって調べられることになる、自衛官は。ところが、いま佐々参事官の言ったことによれば、これは部隊として武器が使用できるということ、八十四条の規定の一環としてできるんだ、こう言っているんでしょう。重大な問題です。どうですか。
  466. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 先生御指摘のように、七十六条の防衛出動下令後、武力の行使が八十八条によって行われるわけでございますが、これは御承知のように、自衛隊法の主たる任務である外部直接間接侵略に対して日本を守るための武力の行使であります。これとはほかに、第六章には御指摘のように武器の使用が書いてございます。八十四条の任務遂行のためのスクランブルでございますけれども、これは従来の防衛庁の説明、確かに正当防衛を法的な根拠であるような説明をした時期が若干ございましたので、関係省庁十分協議をいたしまして、昨年の三月六日、この八十四条の解釈の統一見解をつくって御答弁申し上げたわけでございます。  なお、主権国家は、その主権の範囲内において武器を使用することができるわけでございますが、最も排他的な主権は領空主権でございます。これは、万が一それが侵害されたときにその下にいる国民の危害、これに及ぼす危害の大きさからこれが最も重要視されておるものでございまして、国際法上は領空侵犯をすれば侵犯した方が絶対的に悪いわけであります。しかしながら、これに対して領空侵犯措置は、先生御指摘のように撃墜が目的ではございません。領空外から退去させること及び着陸させることが目的でございますので、その任務遂行のためにスクランブルが上がっていくわけでございますが、それに対して実力による抵抗が行われたときには、自分が落とされてしまったのではその任務が果たされませんので、正当防衛、緊急避難の危害許容要件を認められる場合に武器を使用するわけでございます。したがいまして、この武器の使用は、先ほど総理が御存じないうちに発砲が行われるというお話でございましたが、この八十四条の規定によりますと、長官は「自衛隊の部隊に対し」云々ということで長官の権限になっております。したがいまして、内訓と申しますのは長官の出す命令、すなわち訓令でございますが、その訓令によって危害許容要件を付与して、万が一の場合、任務以外の撃墜という行為もあり得るということを認めたものでございます。
  467. 東中光雄

    東中委員 重大な発言を重ねていくわけですが、この武器使用についての内訓では、要撃機が武器を使用する場合には、正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合に限って武器の使用が許されると書いてあるのでございます。その内訓がいままで変えられていないんだ、こう言っているんです。正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合に限って武器が使用されるということが書いてあるのでございます。限っているんですよ。そして八十四条については、そこからは武器の使用は出てこないのであります、これが防衛庁の有権解釈だったんじゃないですか。そして防衛庁が、制服の方から正当行為論だとか刑法三十五条がどうだとかということを言い出してきたんで、そのことで大問題になって見解をころっと変えたということになっているんです。  大平内閣総理大臣、いま部隊行動として、八十四条の一環として武器の使用が許されるんだということを佐々参事官は言いましたけれども、しかし自衛隊の最高の責任者である総理大臣、この内訓の中には、正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合に限って武器の使用が許されるというふうに書いてあって、それは有効なんだ。それとまるっきり違うことをいま言っているんです。そのまるっきり違うことを言って、それを今度はこの内訓とは別に部隊に通達を出しているというふうに報道もされています。福田総理は一昨年の十月段階で、この内訓についてその内容の説明を受けた、読まなかったけれども説明を受けた、それについてはほぼ妥当であると考えるというふうに言われた。だからそれは、私たちは妥当だとは思っていないのですけれども、正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合に限って武器の使用が許されるということを総理大臣として妥当だと思う、こう言われたと思うのです。ところが、それは十月段階ですから、これはもう三月段階になると、いま佐々参事官が言ったように、八十四条の規定によって動くんだ、こういうふうに、個人としてではなしに部隊として——自衛隊法のほかの条文どの部分を見ても、武器使用については、武力の行使の場合以外は部隊じゃなくて、自衛官はというふうに全部主語は自衛官になっているんです。部隊ではない。部隊として行動しているときでも海上警備の場合でも自衛官はと、こうなっている。ところが、この領空侵犯についてはそういう規定すらないのに、今度は自衛官だけではなしに部隊としての行動まで八十四条でできるんだ、これは重大な変更になると思うんです。実際の現場における自衛官のとる態度はうんと変わってくるわけです。総理大臣、いかがでございますか。
  468. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 ちょっと法律的な側面だけ申し上げたいと思いますが、御指摘のように、八十四条というものはもともと部隊活動の規定として規定されている、これはそのとおりだ。その次に、八十四条に直接武器を使用するという根拠条文といいますか、そういう部分がないこともこれも御指摘のとおりだと思います。それから、先ほど来御引用になっている伊藤防衛局長の答弁もあのとおりだと思いますが、私どもとしては、先ほど佐々政府委員からも御答弁申し上げましたように、若干概念の上の混乱があったこともこれも御指摘のとおりだと思います。  そこで、そういうことを全部踏まえた上で申し上げるわけですが、先ほど佐々政府委員から申し上げたように、八十四条というものは、領空侵犯に対処する措置として部隊行動として防衛庁長官が命令をすることができるという規定になっているわけです。そこで、その必要な措置の一環として、万一相手方から攻撃をされて、そしてその攻撃に対して何にもできないということであれば撃ち落とされてそれでおしまいということになるわけですから、そこで必要な措置というものを命ぜられた業務を遂行するための一環として何かができるかということを考えたわけです。そこでそのときに、普通の治安出動だとか何かの場合も武器の使用はできますけれども、そこまではいかないで、恐らく個人の場合ならば正当防衛なら緊急避難という、先ほど佐々政府委員は危害許容要件と申し上げましたけれども、そういうものに該当するより狭い範囲内においては武器の使用を禁止してはいないであろう、こういうことを三月六日に御答弁申し上げたわけです。  ですから、そういう意味において、確かに積極的な明文の規定はございません。しかし、その明文の規定のあるものはもっと広く武器の使用ができるわけです。しかしこの場合は、必要な措置の一環としてぎりぎり、もう撃ち落されても何もできないというようなことは余りにも不合理ではないかというので、非常に狭い範囲内で、言いかえれば、個人で言えば正当防衛なら緊急避難に当たるという場合にのみ許されるであろう。同時に、それは従来内訓で、私は内訓の中身は知りませんけれども、ここで説明を聞いている限りでは、そういう場合に武器が使用することができると書いてあるわけです。その意味も、いま申し上げている部隊活動としてとらえた場合におけるものと私は変わらないと思います。そういうことを申し上げておるわけです。
  469. 東中光雄

    東中委員 内訓を見てないからわかりませんというような立場の人が、内訓の問題について議論しておるのに、求めてもいないのに答弁するとは何事ですか。私はあなたにそんなことを聞いておるわけじゃないんです。重大な答弁の変更であるということを言っておるのであって、向こうが来れば何もしないでおるのではぐあいが悪いんだというその思想が非常に危険な思想なんだ。法律に規定があって、法的根拠が九十三条なり八十八条なり、そういう根拠があって武器を使用するのであって、その範囲内に限定されておるのであって、武器使用の権限が自衛隊の権限として、領空侵犯で行った場合の権限として自衛隊法上はないということは明白じゃないですか。だから、そういうことですりかえて答弁するのには私は断じて承服することはできません。  それで、これはもう最後に、答弁を求めてない者が長い間しゃべるわけですから……。一九三九年の五月、いわゆるノモンハン事件の問題でありますけれども、ここで非常に重要な問題があるんです。いま出くわしておる問題とそのまま、非常に重要な問題がある。というのは、当時の関東軍の司令官が植田謙吉という人ですが、「満ソ国境処理要項」というのを作成した。これは金丸長官時分に答弁があったように、その基本方針には、侵さず侵さしめないというのが基本方針だ、自衛隊と同じようなことを言っておるのです。ところがそこでは、相手方に不法行為があれば現地の判断で断固膺懲するんだ、攻撃するんだということを決めた。それに従って——これは当時の参謀本部のロシア課長をやっておった林三郎という人が本の中に書いておるのでありますけれども、この要項をつくって、それを四月二十五日に出して、その討議が現場でやられたのが五月十三日。そのときに、たまたま数十騎が、これは騎兵ですけれども、数十騎が入ってきたということで直ちに戦闘に入るんです。そしてあのノモンハンなんです。中央には全然知らされていない。そういう規則でやった。それについては中央はオーケーと言っていないのに実際はそれでやった。それで大変な、八〇%近くも死傷者を出す。一万五千人が出ていって一万二千人が死傷するというような状態であれは終結されたのですけれども、外交的な手段で収拾された。そのときに、その後でこれらの関係者が退役処分として予備役に編入された後、梅津中将が司令官になって、そういうことはやるべきじゃない、下がりなさい、それでたまたま侵入があったとしても、二十キロの間では武力を行使してはいけないという要項を出すんです。それから一切紛争がなくなったんです。こういう歴史的な教訓があるんです。ところが、いま言っている思想は、武力で解決する、やってきたらすぐ撃つ。奇襲対処というのもそうなんです。私はそういう感情的な議論をやっておる自民党の諸君のいまの状況というのは非常に危険だと思います。  総理大臣、最後に、法律の規定がなくて、そして内訓も変わってなくて、そして八十四条の一環としてはやれないと言ったのが、今度は一環としてやるんだというような、この数カ月の間に変えたということについての所見をお聞きして、私の質問を終わります。
  470. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 シビリアンコントロールは厳しく厳守してまいらなければならぬものと心得ております。防衛当局においても、この原則からかりそめにも離脱するようなことは毛頭考えていないことと思うのでありまして、法律の解釈について若干あなたとニュアンスの違いがあるように見えますけれども、防衛庁当局のお考えは拡大解釈というような意図のものでないことを私は信じております。
  471. 田村元

    田村委員長 これにて中島君、東中君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会