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1980-02-05 第91回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月五日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事小此木彦三郎君 理事 瓦   力君    理事小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君       荒舩清十郎君    小里 貞利君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       小山 長規君    近藤 元次君       始関 伊平君    澁谷 直藏君       白川 勝彦君    田中 龍夫君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       福家 俊一君    藤田 義光君       松澤 雄藏君    村山 達雄君       粟山  明君    阿部 助哉君       稲葉 誠一君    大原  亨君       兒玉 末男君    後藤  茂君       野坂 浩賢君    八木  昇君       安井 吉典君    横路 孝弘君       岡本 富夫君    草川 昭三君       坂井 弘一君    工藤  晃君       辻  第一君    則武 真一君       藤原ひろ子君    三浦  久君       大内 啓伍君    岡田 正勝君       中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院事務総局         管理局長    加藤 圭朗君         内閣総理大臣官         房会計課長兼内         閣参事官    京須  実君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      三島  孟君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁長官官房         会計課長    城内 康光君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁長官         官房審議官   中  庄二君         行政管理庁長官         官房会計課長  田代 文俊君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         北海道開発庁総         務監理官    大西 昭一君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁長官官房         防衛審議官   友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         防衛施設庁労務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁長官         官房長     山口 光秀君         経済企画庁長官         官房会計課長  吉岡 博之君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁長官         官房会計課長  永井 和夫君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         沖繩開発庁総務         局長      美野輪俊三君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         法務大臣官房会         計課長     石山  陽君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 豊島英次郎君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務大臣官房長 柳谷 謙介君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省関税局長 米山 武政君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省大学局長 佐野文一郎君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房予算課長   田中 宏尚君         農林水産大臣官         房経理課長   渡邊 信作君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業大臣官         房審議官    神谷 和男君         通商産業大臣官         房審議会    尾島  巖君         通商産業省通商         政策局長    藤原 一郎君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         通商産業省産業         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸大臣官房長 杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 石月 昭二君         郵政大臣官房長 小山 森也君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省経理局長 守住 有信君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省都市局長 升本 達夫君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 関口  洋君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治大臣官房審         議官      久世 公堯君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁次長   鹿児島重治君  委員外出席者         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   石原 周夫君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     白川 勝彦君   江崎 真澄君     小里 貞利君   塩崎  潤君     粟山  明君   藤尾 正行君     近藤 元次君   川崎 寛治君     後藤  茂君   小林 政子君     辻  第一君   中路 雅弘君     工藤  晃君   松本 善明君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     江崎 真澄君   近藤 元次君     藤尾 正行君   白川 勝彦君     荒舩清十郎君   粟山  明君     塩崎  潤君   後藤  茂君     川崎 寛治君   辻  第一君     藤原ひろ子君   三浦  久君     則武 真一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。  大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 短い時間でございますから端的に承ってまいりますが、最初に、金大中氏の事件につきまして総理にまず伺いたいのであります。  昨年十月二十六日の韓国政変以後、政府外務省のこの事件に対しまする扱い方が大変変わってきているというふうに受け取れるのでありますが、金大中氏の申請があれば政府入国許可するなどという記事も目につきますし、総理みずからがこの問題は政治的決着云々という問題を含めまして御存じでございますから、この金大中氏がもし日本入国をしたいという場合には、許可をなさるというお考えが基本的にございますか。
  4. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 別に拒む理由はないと思います。拒む理由はございません。
  5. 大出俊

    大出委員 拒む理由がない。公民権はまだ回復されておられぬようでありますけれども、実はいみじくも、きょう私は日韓問題を少し詰めたいのでありますけれどもアメリカにおきましても、韓国の問題に関しまする聴聞会がきょうからアメリカでは始まるわけであります。どういうことになりますか、私はこのアメリカ聴聞会に期待をしておりますけれども、後から触れさせてもいただきますけれども、その聴聞会に絡んでも、日本側からいろいろな人が実は不思議な形でアメリカに出ていっているわけでありまして、二月五日から、アメリカ下院アジア太平洋小委員会、L・ウルフという方が委員長でございますが、韓国問題聴聞会がきょうから開かれる、何日やるか知りませんが。こういうわけであります。  そこで、いまの、金大中氏の日本入国したいということの意思表示があれば、別に拒む理由はない、つまり政府入国許可する意思である。  それからもう一点、須之部大使金大中氏と会談をいたしておりますが、むしろ積極的に日本側からという、その日本側意思が前に出ている感じのする金大中須之部会談であります。ここらは外務省扱いが大変変わってきていると私は思っておりますが、あるいは将来公民権回復をされた金大中氏が、アメリカ側の物の考え方も非常にいいわけでありますから、また大統領選挙などということだってあり得るわけでありますから、そこらを含めて扱いが変わっておるように思うのでありますけれども、最近どういうふうにごらんになっておられますか、外務大臣
  6. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 昨年の朴大統領の死去以来の情勢に基づいて、外務省としても韓国情勢の推移を注意深く見てまいっておるわけでございます。ただ、まだ従来の方針に変更があるということを申し上げられる状態ではないと思います。
  7. 大出俊

    大出委員 私に言わせれば民主化への胎動といいますか、変化があります。  さてそこで、具体的な問題を承りたいのでありますが、李厚洛氏が十二月六日にバンコク出国をいたしました。金大中事件のときのKCIA部長として、当時の朴大統領から責任をとらされた、当時やめたわけであります。KCIA部長をやめたわけであります。ところが十二月六日バンコク出国をして、十二月の下旬に二週間の出国予定韓国国会に提出しておいでになる。十二月の二十六日ないし七日に、確実にこれはアメリカに入っておいでになる。韓国合同通信、東亜日報などなどが伝えています。ニュージャージー州に長男がおいでになるからというのでしょうけれども、これはニュージャージー州じゃないようでありますけれども、あるいは歯の治療などという理由で。  そこで、これは私は事実上の亡命だろうというふうに言わざるを得ぬ周辺の事情を耳にいたしています。御家族への電話等のことも、これは私が特に調べたわけじゃありませんが、ここに私は「コリア・レポート」というのを持っておりますけれども鄭昇和戒厳司令官陸軍参謀総長全斗煥保安司令官全斗煥保安司令官というのは一貫してCIC責任者でございますが、彼が逮捕した。このときの鄭昇和戒厳司令官容疑の中に、一〇・二六事態以後行動が不透明で、外国旅行が不適当な人士に対し出国を拒否するよう建議したにもかかわらず、個人的な依頼を受けて出国させ、戒厳司令官としての施策までも放棄した事実、これを罪状に挙げています。丁一権さんではないかという話があったりいたしましたが、これが実は李厚洛さんでございました。逮捕されておる鄭昇和戒厳司令官出国を認めさせた、こういうわけであります。  この件に関しまして、私は、事実上の亡命で、さっき申しましたひょっとするとアメリカ聴聞会に、まあストレートで出てくることはないかもしらぬが、影響力を持っているのではないかという気がするのでありますが、この李厚洛さんの動向について御存じでございますか。
  8. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私はその件については承知いたしておりませんので、政府委員に返答させます。
  9. 木内昭胤

    木内政府委員 ただいま大出委員の御指摘の人物がアメリカに行ったということは、私ども新聞紙上で承知いたしております。かつ、同人が駐米金溶植大使を訪ねたというような報道も承知いたしておりますが、それ以上についてはフォローいたしておりません。
  10. 大出俊

    大出委員 二週間の滞在許可をとっておりまして、韓国議会にもその旨の届け出をしていますが、それは一月の十七、十八日で切れておりますから、まずもって帰れない。十七、十八日で切れた翌日、一月十九日に、いまお話がございましたアメリカ大使、さきの韓国外務大臣金溶植氏に会っております。ここに意図ありという感じもいたしますが、御存じならそれでいいわけです。  次に、崔世鉱という方が、日本流に読めばサイ・セーゲン、チェ・セヒョンと言うのでしょうが、この方は、実は私はひょっとしたことで気がつきましたが、これは偉い方でございまして、在日韓国大使館の名簿の中の非常に上の方に書いてございます。ここにございますが、この方がいつの間にか大使館を離れて、これまたアメリカヘと、李厚洛さんと時を同じゅうしてアメリカヘと、こういうことでございました。しかも、この方の部下二人もどこへ行かれたのかわからぬのではないかと、私は推測でございますがいたしております。  このことについて法務省入管局長に承りたいのでありますが、一体いつ崔世鉱さんは日本出国をいたしましたか。
  11. 木内昭胤

    木内政府委員 ただいま御指摘崔世鉱公使は、たしか十二月八日に成田空港を立っておるというふうに承知いたしております。
  12. 大出俊

    大出委員 もう一遍入管局長に承りたいのですが、成田空港を本当に出国しておりますか。出国記録が明確にございますか。
  13. 小杉照夫

    小杉政府委員 お答え申し上げます。  ただいま木内アジア局長が申しましたとおり、昨年の十二月八日、明確に成田から出国いたしております。
  14. 大出俊

    大出委員 続いて承りますが、安昌植という方、それから朴京鎮、このお二人はいまどうなっておりますか。
  15. 木内昭胤

    木内政府委員 お尋ねの二名の方についての動静は承知いたしておりません。
  16. 大出俊

    大出委員 この方の出国記録はございますか。
  17. 小杉照夫

    小杉政府委員 突然のお尋ねで、いつ出国したのか、あるいは現にわが国におりますのか、私どもまだ調査してみないとわかりません。
  18. 大出俊

    大出委員 突然じゃないんですよ。私はあなたの方に書いてもらったものを出してもらっている。政変以後ディプロマティックリスト、つまり外交官リストに、これは十二月のリストです。ここには載っている。十二月のリストに載っている、載っているが、以後いない人がある、調べてくれと外務省に申し入れました。新しいリスト、訂正をして書き込んだものをいただきました。この中に、ここには載っているけれども、現在おいでにならないお二人の方の名前が記載されております。それがお一人は安昌植さん、お一人は朴京鎮さん、こうなんです。これは皆さんの方で印刷して持ってこられた。知らないで通りますか。自分のところで持ってさておいて、何だ。そんなことで質問ができるか。儀典室を通じて正式にもらっているんだ。何言ってるんだ。
  19. 木内昭胤

    木内政府委員 ただいま御指摘安昌植氏は、私どもの資料によりますと、本年一月十七日に着任したということでございます。もう一人の方のお名前をもう一度教えていただければ……。
  20. 大出俊

  21. 木内昭胤

    木内政府委員 調べましてお答えいたします。
  22. 大出俊

    大出委員 着任をした限りは別な方がお出になっているのだろうと思うのでありますが、そこのところはいかがですか。
  23. 田村元

    田村委員長 だれが答えるのですか。――アジア局長
  24. 木内昭胤

    木内政府委員 別な人が出ておりますということでございますが、出ておる人がいることは事実でございます。
  25. 大出俊

    大出委員 出ておる人がいることは事実ということになりますと、安昌植さん、朴京鎮さん、お書きになって出していただいた人が逆であって、おかわりになった方と言ったらこれを出してこられたのですけれども、いまのお話では逆でございまして、新任だとおっしゃるなら、この二人が新任なら、だれかお二人がかわったわけでございまして、あたりまえでしょう、役職が決まっていて数が決まっているのですから。そこがわからぬというのは非常に私は気になるところでありまして、実は入管手続が正規にとられていない方があるということを私は耳にしていますが、それがどこかの基地からアメリカに行ったということになりますと、大変に大きな関心を私は持たざるを得ませんので、詳細御調査の上、御回答いただけますか。――委員長、いかがでございますか、わからないんだから、後で結構ですから。
  26. 田村元

    田村委員長 よろしいか外務省。(木内政府委員「承知しました」と呼ぶ)
  27. 大出俊

    大出委員 かなたで声ありでございますけれども議事録に残していただけるなら私は承認をいたします。深夜ひそかにどこかの基地からなんということになりますと、これはちょっと関心を持たざるを得ませんので。あるところの報道に、崔世鉱さんは二人の部下を伴って、あるところからロサンゼルスに行ったという情報もございます。もしもどこかの基地からということになりますと、国家主権という問題もございますので、関心を持っておりますからお調べをいただきます。いまのところ明らかでございませんから、この点は保留いたします。  次に、尹英老さん、この方は参事官韓国大使館おいでになられた方であります。この方が十一月の八日に、つまり十月二十六日の政変以後わずかな時期に参事官として来日をされたように承っておりますが、この方は、私の手元にあります名簿によりますと金大中事件のときの現場の責任者の一人、これは後にフレーザー委員会からもこの名前指摘を受けている人物でございます。金大中事件に直接現場でかかわり合いを大きく持っておいでになる方、この方が十一月八日に着任をしたときに、外務省は警察庁にその旨連絡をなさったはずですが、いかがでございますか。
  28. 木内昭胤

    木内政府委員 尹英老氏が十一月八日に着任したのは大出委員指摘のとおりでございます。その後警察庁に連絡いたしましたことも事実でございます。
  29. 大出俊

    大出委員 警察庁に承りたいのですが、何で十二月二十四日、クリスマスイブの日に外務省を通じまして事情聴取を行いたい旨連絡をおとりになったのですか。なぜこんなに長い期間ほうっておいたのですか。警察庁に承りたいのでありますが、後藤田さんでも結構でございますが。
  30. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  警察庁が尹英老氏の来日に関する情報を入手いたしましたのは、昨年の十二月の初めころでございます。そこで直ちに入管当局に対しまして入国事実の照会を行いまして、十二月十日回答に接したわけでございますが、別途、同時に外務省よりも、尹英老参事官の着任があった旨、それから同人が金大中事件当時在勤した尹英老参事官と同一人物であるとの確認を行うこととしているというような通報をいただきまして、当方としましてあわせて確認方を要請したわけでございます。その後、外務省よりその回答に接しましたので、同氏の事情聴取が実現するよう韓国側に対する申し入れを外務省に要請いたしました。本年一月五日韓国側の拒否回答に接した、こういう経緯でございます。
  31. 大出俊

    大出委員 承りますが、十二月の二十四日というのは違うのですか。外務省に警察庁から物を言って、大使館の方にその旨を伝えたのはいつでございますか。
  32. 木内昭胤

    木内政府委員 同日に韓国大使館の方へ伝えてございます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  33. 大出俊

    大出委員 そうすると、十二月二十四日なのですね。これは警察庁にもう一遍聞きますが、違うのじゃないですか。昨年十一月八日に参事官として来日した、その旨警察庁に伝えた、そうさっき外務省はお答えになった。そうすると、十二月二十四日同日に申し入れをした、明らかにこの間に、十一月八日から十二月二十四日でございますから、一カ月余も時間がたっている。なぜこんな時間がたつのですか。外務省の方に何かあったのですか、外務省
  34. 木内昭胤

    木内政府委員 十二月十三日に、尹英老参事官金大中事件当時在勤しておった同一人物であることが確認されまして、直ちに捜査当局に通報したわけでございます。それで、その結果、警察当局としましては参考人として事情聴取したいということで、先ほど申し上げましたように十二月二十四日に韓国側に通報いたしまして、一月五日に先方からノーという返事をちょうだいした次第でございます。
  35. 大出俊

    大出委員 現在、尹英老さんは日本おいでになるのですか。
  36. 木内昭胤

    木内政府委員 目下出国して、本邦にはおりません。
  37. 大出俊

    大出委員 まことに不思議なことでございまして、私がここに持っております「これがKCIAだ」という本の中に明確に載っておりますが、尹英老さんは下手人というところの一人になっている。尹英老参事官金大中事件の。この方が日本に来たというときに、なぜ間髪を入れずというところまでお考えにならなかったのか。警察庁にもう一遍私承りたいのでありますが、お答えください。
  38. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように、警察庁が尹英老氏の来日等の情報を入手したのは十二月初め、それからそれぞれの日時を追いましてアクションをとっておるということでございまして、その段階まで警察としてはそういう情報を入手しなかった、こういうことでございます。
  39. 大出俊

    大出委員 私はどうも勘ぐりまして、政変以後の韓国情勢等の見きわめという問題もございましょう。かといって、これがやがて表に出たときに、警察庁は何をやっていたのだと言われる世論を恐れなければならない。だからぎりがりまで延ばしておいて、尹英老氏が韓国にお帰りになったその後で申し入れたのじゃないかなというふうに勘ぐったのですがね。私のこの勘ぐりが杞憂でございますように。私は、やがてこの事件は明らかになるときが来る、それもそう遠くはない、こう実は思っております。なぜならば、崔世鉱さんという方も、これは重ねて承っておきますが、アメリカに行っているはずであります。入管は行き先を私に明らかにしませんでしたが、アメリカに行っているはずであります。私の得ている情報で、二人の部下を伴ってというふうに私の耳に入っております。そうなると、かわられてこられた方か前からいた方かわかりませんが、行っている方がある。くしくも時を同じゅうして、韓国のポスト朴という意味における権力争いの中で、どうやらうまくいかずにというふうに新聞の報ずる李厚洛さんは、まさに時を同じくしてアメリカに行っておいでになる。崔世鉱さんという方は奥さんが、金載圭さんなる、ついこの間までKCIA部長、中央情報部長をやっておられて、朴さんを射殺された御本人である金載圭さんとこの崔世鉱さんは、奥さん同士がきょうだいである。しかも、李厚洛さんがKCIA部長のときに次長に引き上げて、そこで右腕として使ってきたのが崔世鉱さんです、調べてみると。しかもその二人の部下、この方々が時を同じくしてアメリカに行った。しかも韓国には帰れないという足跡を残しておいでになっている。  そして、ここでもう一つ中心点を承りたいのですが、きょうからアメリカでは韓国問題の公聴会が始まるのですけれども、本当に金大中事件金大中拉致事件を起こした張本人は李厚洛氏であったのかどうか。どうもそうではないようで、逆に、ある新聞が報じておりましたが、金大中拉致事件のときにいち早くこれをアメリカ側に知らせ、アメリカが懸命に金大中救出を考えた時点で協力をした韓国朴体制の中における有力な人物、逆にこれは李厚洛さんではなかったのかという気がする。このことをいずれかの場所で明らかにしなければ、李厚洛さんなる人物の復権はない。そうなると、ここに大変に大きな問題が実はある。  もうここまで言えば、ここから先申し上げぬでもおわかりだと思うのでありますけれども韓国国内の問題ですからこれ以上は申し上げませんが、そういう意味でもう一遍承っておきたいのですけれども、一体金大中事件の本当の責任者はだれだったのか、この辺はもう外務省おわかりでなければならぬはずでありますけれども、いかがでございますか。
  40. 木内昭胤

    木内政府委員 金大中事件に金東雲氏が関与しておったということは承知いたしておりますが、それがその背後にどういう関係がありますか、その点については十分つかんでおりません。
  41. 大出俊

    大出委員 新しい事実があらわれて周囲の状況が変わるとすれば、そのことを恐れている国内のいろいろな方がおいでになることも知っているし、早くその真実が表に出た方がいいと考えている方々の存在も知っていますが、総理に承りたいのですけれども、状況のかくのごとき変化が出てきたとすれば政治決着を見直しますか、総理
  42. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この事件はすでに政治決着をいたした事件でございまして、改めて政治決着というようなことは考えておりません。
  43. 大出俊

    大出委員 ここで水かけ論はしたくはありませんが、新しい事実が出てくればその事実について検討をする、そうでなければならぬでしょう。私もいまここでは言い切れないけれども、次の機会あたりには物が言えるようになると思うのだが、新しい事実が出てくれば当然それについて――いいですか。金東雲氏はKCIAの部員であったかもしらぬが個人でやったのだ、KCIAがやったのだというなら主権の侵害だが個人だから侵害ではない、こういう論理でしょう。新しい事実が出てくれば改めて検討するのはあたりまえじゃないですか。総理、いかがですか。
  44. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 それは政治決着の中に新たな事実が出てくればそれを問うということになっていることは申すまでもございません。
  45. 大出俊

    大出委員 それが単なる言いわけではなくてそこに大変大きなウエートがかかる時期に来た、これだけ指摘をいたしておきます。  次に、浦項の製鉄所にかかわる問題を承りたいのでございますが、第三回日韓閣僚会議がございまして、このときに大平さんはおいでになっておられるわけでございますけれども、どういうお立場でおいでになったわけでございましょうか。かつまた、時の外務大臣は故人になられました愛知揆一さんでありましたし、大蔵大臣は福田赳夫さんで、おいでになったのだと思うのですが、あわせて第三回日韓閣僚会議の現在の総理大平さんのお立場と、いま私の挙げたお二人、御確認いただけますか。
  46. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま先生御質問の第三回日韓定期閣僚会議昭和四十四年八月に行われたわけでございますけれども、その際、韓国側から浦項製鉄所に関します協力の要請がございまして、日本側は浦項の製鉄所に対します必要な調査を行うということを言っております。
  47. 大出俊

    大出委員 どうも、おいでになった方が目の前においでになってお答えにならぬとすると、何かすねに傷が――これはひとり言でごさいますが、気になりますですな。  調査をすることになってと言うが、当時の記録や当時の記事によりますと、六九年日韓定期閣僚会議第三回、全面協力の約束ができた、でかでかとした見出しで書いてあります。ちょっといま外務省はそれに類することは言いましたが、声が小さい、弱い。  もう一遍総理に承りますが、総理はこのときにいかなる資格で御出席でございましたか。
  48. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 当時、私は通商産業大臣として日韓閣僚会議に出席いたしておりました。当時の外務大臣、大蔵大臣はたしか御指摘のとおりの方であったと思いますが、よく確かめてからと思いまして答えなかったわけです。
  49. 大出俊

    大出委員 調べて聞いているんですから、間違いございません。総理は時の通産大臣でおいでになりまして――大変なプロジェクトでございまして、数々の物を輸出するのでありますから、それは通産大臣の権限、許可がなければ輸出ができない。しかも輸出をするということになりますと、その写しは通産省に回る。なかなか念が入った仕組みでございまして、通産大臣がどうしてもいやだと言ったらできない、そういうお立場でございます。  七〇年の第四回日韓閣僚会議で借款決定。ここには第三回全面協力の約束をし、第四回借款が決定をした、こうなっておりますが、第四回のときには総理は何をおやりになっておられましたか。
  50. 梁井新一

    ○梁井政府委員 ただいま御質問の第四回日韓定期閣僚会議、一九七〇年でございますが、会議には大平総理大臣は出席しておいでになりません。
  51. 大出俊

    大出委員 いや、会議に出席してないのは知っておりますが、役職をといま承ったのでございますけれども、時間がかかりますから……。第三回の日韓閣僚会議で全面協力の約束ができて、第四回の日韓閣僚会議で借款が決定をいたしましたが、この約束のときには、総理は御自分が通産大臣で、福田さんが大蔵大臣、愛知さんが外務大臣で御出席をされておった、こういうわけであります。だから、私はこの前が大事で、この事件について一番よく知っているのは大平さん御自身じゃないかと思っているのですよ。ソウル地下鉄のときもあなたのいる前で質問したのだが、あなたはお答えにならないのだけれども、私どもにこう苦労させぬでも、総理がここで言っていただければみんな片づいちゃう。  そこで、承りたいのでございますが、朝日新聞にも書いてありますし、その他の書籍にもたくさん書いてありますが、浦項製鉄所という問題は、これは地下鉄どころの騒ぎじゃない。大変な莫大なリベートが韓国にばらまかれている。また、国内の政治分野等々にもいろいろな金が流れていると、こう書いてあります。人の名前まで書いてある。  だから、一つずつ申し上げますが、朝日新聞の昭和五十二年一月二十三日、「総合商社」という特集がございます。この中で、住友商事会長の津田久さんは、社長当時の昭和四十一、二年ごろ、東京神田の旧本社ビルに韓国の有力者K――Kという人の来訪を受けた。そのとき柴山幸雄社長――現在の社長です。当時の専務も同席してのやりとりは次のようなものだった。Kさんが、本日伺ったのは、実は韓国政府が浦項に建設を計画している総合製鉄所のことについてです、韓国で初めての一貫生産方式ですが、これを住友商事に引き受けてもらいたい。大変な話ですね、どういう計画ですか、詳しく事情をお聞かせください、と津田さんが答えた。Kさんは、「ところで、おたくに全部おまかせする代わりに、この浦項の事業費から少なくとも一割以上のカネをつくり出してもらいたい。」そう言った。津田さんは、一割以上の金ができるような手だて、その金を韓国政権の方に献金してほしいのですか、と言う。Kさんは「一割以上のカネができるように手だてして、そのカネを韓国政権の方に献金してほしいのです。」と言い切った。津田さんは「それは無理というもんです。このような大型プロジェクトには多数のメーカーが参加します。それらの企業に、こうした性質の、多額のカネをひねり出させることは難しい。」「なんとかやってもらえませんか。」「とてもできかねます。」断った。このときに津田さんは、「国民の税金をかすめとるようなことはできない」と考えたから」であると言っておられる。  さてここで、Kという人はだれだったのか。膨大な資料、私の部屋の戸だなに入り切れないような資料を一昨年の十二月の初めに私は入手をいたしまして、細かく調べた。一年余にわたって調べてまいりましたが、いまおおむね明らかなことは、このKという人はほかならぬS・K・キム、金成坤その人だ。ソウル地下鉄について三菱商事の藤野さんに二百五十万ドルという金を集めてくれ、外国との争いの中で日本の三菱にお任せをする、これがこの席で田部文一郎さんが私の質問に答えて参考人としてお答えになったことであります。そのときに、ついにお名前を言わなかった。だが、フレーザー委員会の調査の結果、S・K・キム口座という形で金成坤さんが出てきた。当時、この方は韓国与党、民主共和党の財務委員長、双竜財閥の当主。いみじくも同じ人。これだけ申し上げればおわかりでしょう。同じパターンですよ。  ところで、もう一点。簡単に申し上げます。  「身の毛もよだつ“怪談”」こういうふうに書きまして、小野田修二さん「商社の陰謀」、ここに私の持っている本がございます。とんでもない方が出てまいります。それはどういうことか。「朴大統領に「百万ドル」献金?!」「身の毛もよだつ“怪談”その一」。晩秋の十一月、ときは昭和四十六年。話し合った場所は日商岩井本社ビルの役員の部屋。相手はだれか、日商岩井のダグラス、グラマンのときに大変に大きな役割りを果たしたと言われていた、しかも外国に飛んでいた塩田淑人さん。当時日商岩井機械総本部企画調整室長。りっぱな役職においでになりました。この方が、いろいろな争いが韓国で行われている、相手商社に対してずばり物を言っておいでになる。  「その第一の問題は――四十七年に実施される韓国大統領選挙で三選を狙う朴正煕大統領に、その選挙資金として「百万ドル(約三億円)の大金が三菱商事から贈与された」」「この政治献金は三菱商事の藤野忠治郎社長(当時)が中心となって、三菱グループ各社から集められたものだが、これを朴大統領側に手渡すための役割を担ったのは、岸信介元首相の筆頭秘書である中村長芳氏である、という内容のものであった。この中村長芳という人物は、」云々と、その後の役職を書いてありまして、「なかなかの“策士”でもある。」なんて書いてありますが、今度のグラマン事件で主役として登場した川部美智雄さん、国内の方の責任者が中村長芳さん、これが岸さんの左右の腕であった。  さらに塩田さんのお話は続く。「この三菱商事からの「百万ドルの政治献金」は“現ナマ”でアタッシュ・ケースに入れられて、これもまた朴正煕大統領の専用機として献納された「完全武装ヘリコプター」(川崎重工製だという)に乗せられて韓国へ持ち運ばれたのだ、という」。ここで小野田さんは当時を振り返りまして、何年かたったけれどもきのうのことのように塩田氏の言葉が私の耳に残っている、この塩田さんの話はそれほどショッキングな内容であったと述懐しております。  「第二の問題点は、「浦項総合製鉄所」の存在は、現在でもなおかつ日韓癒着のなまなましさを伝えるものとしていわば“象徴的”な問題」、この建設をめぐって、「やはり三菱商事をはじめこの建設計画にかかわった各大企業一三井物産、丸紅、伊藤忠商事、トーメンなどの商社も含む)から、総額推定「百億円単位」の政治献金=リベートが韓国の政財界要人たちにバラ撒かれている」ということを塩田さんが言った。細かく書いてある。「この問題にも「岸元首相が深く関係しており、韓国政府要人と日本の商社企業との“橋渡し”役は中村長芳氏である」」と明確に書いてある。  私が言っているんじゃないですよ。大出、とんでもないことを言うと言うかもしれないが、そうじゃない。「商社の陰謀」を小野田修二さんが書いている。しかも国内版の方は、マージャンをやりながらと言って、日本の政治家の名前が出てくる、浦項製鉄所の問題で。国内にも金をいろいろやったんでしょう。似たようなことを角度は違いますが、朝日ジャーナルで中川信夫さんも述べておいでになる。ほかにも記録がございますが、私がたくさん調べた中で一番信憑性のあるのはこれです。いろいろ周辺も承りました。  私はとりあえず申し上げておきますが、塩田さんは当時、日商岩井、ダグラス、グラマンのときに証人でお出かけいただきたいと私は思ったのですが、そんなにたくさんお呼びするわけにいかないので遠慮しましたが、参考人でも結構ではございますが……。しかも、この小野田さんにも私一遍お話ししようと思っているのですけれども、小野田さんにも、大変詳しい方でございますから、参考人でお出かけいただいて、お話をこの席で聞かせていただきたい。  もう一人、中村長芳さんについては後からいろいろ立証いたしますが、どうしても改めて証人で実はお出かけをいただきたい。この点を委員長に申し上げて、理事会等でお取り上げを賜るようにお願いを申し上げたい。  あわせて藤野忠次郎さん、田部文一郎さん、それから住友商事の津田久さん、柴山幸雄さん、Kという人は一体だれだったのか、この席で明らかにしたいのでありまして、こちらの方々は参考人で結構でございます。ぜひひとつ、中村長芳先生は証人でおいでいただかぬと本当のことをおっしゃらない、こう私思いますから、その相談を理事会でさせていただきたいとお願いをいたしておきます。よろしゅうございますか。
  52. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 ただいまの大出俊君の御要望につきましては、後刻理事会において協議いたします。
  53. 大出俊

    大出委員 ここまで申し上げて、時間がありませんから、私の資料に基づきましての浦項製鉄所にかかわる証拠に基づく立証をさせていただきたいのであります。私の調べた結果として手元にある資料だけで約五十億円、部品単価がいずれも――もちろんこれは個々に当たれるほどの少ない部品じゃございませんから、また比較の対象もございますから概数になりますが、五十億円前後の金が抜けている、どっかに流れている。物の本には百億を超える――筋道からすれば百億を超えるのかもしれぬと実は思うのです。なぜならば、この工事は、第一期工事総額が一千億を超えております。一千億を超えております工事でございますから、最初の一〇%の話からいたしますと百億を超えても不思議ではない。総額一千八億円、こういうわけです。  そこで、まずもって経済協力基金に承りたいのでありますが、何年から何年までどういうふうに金をお出しになりましたか。で、総額円借款、有償しか恐らく扱っておられぬと思うのですが、有償も無償も商業ベースもございまして、また外国資金が多少入りまして二千億を超えるのでありますが、基金のお扱いの金についてお述べいただきます。
  54. 石原周夫

    ○石原参考人 浦項製鉄所に関しまする経済協力基金の借款は、第一期の事業、第二期の事業に分かれております。有償借款とおっしゃいましたが、六年目から浦項製鉄所の関係が始まっておりまして、七一年の七月に二十八億八千万円、翌年の七二年の五月一日に百七億四千九百万円、その翌年七三年の七月に十億八千六百万円。第一次分といたしまして百四十七億一千六百万円。  第二期事業は翌七四年に始まりまして、七四年分が百二十七億八千八百万円、七五年は金額が小そうございますが、二億二千五百万円。第二期分が合計いたしまして百三十億一千三百万円。第一期、第二期を合計いたしますと二百七十七億二千九百万円でございます。
  55. 大出俊

    大出委員 資料を差し上げたいのですが、よろしゅうございましょうか。――委員部の皆さんにお手数をかけて恐縮ですが、皆さんに差し上げていただきたいのです。  念を押しておきたいのでございますが、いま基金の総裁のお答えになりましたように莫大な金が   最後は一九七三年でございます。したがいまして今日までに六年何カ月しかたっていない。第一期工事分だけですよ。第二期工事からいたしますと、一九七六年でございますから、ここから起算いたしますとまだ四、五年しかたっていない。五年たたないかもしれない。だから五年以内のものもあるのではないかと思っているわけでありますが、第一期工事の方からすると七年足らず、まだ七年に足がかかっていない。六年何カ月だろうと思うのでありますが、それでこれはなぜこういうことを言うかというと、後から関係が出てくるからであります。保存期間その他との関係がございます。だからそんなに昔の話じゃない。しかもこの金は七年据え置き、二十年返済のはずでございますが、そうでございますか。それと第一期分は何年に償還が終わりますか。第二期分は何年に償還が終わりますか。簡単にお答えください。
  56. 石原周夫

    ○石原参考人 お答えをいたします。  先ほどお話ございましたように、据え置き期間七年、償還期間二十年ということでございます。五十四年十二月三十一日現在、償還開始されておりますのは第一期計画のうち総合製鉄事業第一期、第二期の分でありまして、二億五百九十万及び七億六千九百八十万円、償還は現在まで予定どおり行われておるわけであります。償還期限は先ほど申し上げました借款から二十年でありますから、二十年を加えていただければ結構であります。
  57. 大出俊

    大出委員 昭和六十五年を過ぎていかなければ返ってこない金、こうなりますとまだまだ遠い先の話であります。まだ返し始めたばかりであります。だから古い話じゃない。しかもこれから本番であります。しかも第三期工事はいまやっている。まだ完成していない。続いている。私はダグラス、グラマンのときに時効云々と言われるのがこわいので包括一罪と申しましたが、継続してきている。これから始めている。返還はこれからまだはるかかなた。一期工事が六十五年でなければ償還は済まない。二期、三期はまだ償還していない。三期はもちろん有償資金はありません。こういうことですね。この点を念を押しておきます。  そこで、時間がございませんので、要点を先に申し上げて後からつけ加えて申し上げることにいたします。  まず、お手元に差し上げました資料について、実は真ん中で折っていただくとこういうものになるのですが、時間がございませんでしたので読みにくくて失礼でございますが、ページ数が振ってありますから、第一、①がございます。あけていただいたところにあります。ここに「ソウル地下鉄 浦項製鉄所 疑惑の共通点 両プロジェクトは日本政府の協力によって実現」こう書いてありますが、さっきすでにやりとりをいたしましたように、第三回日韓閣僚会議、ここで約束ができました。大平さんが通産大臣でございました。第四回で借款決定でございます。六九年第三回。七〇年第四回。さて、七一年第五回のときは金大中氏と争って僅差で金大中氏が敗れた大統領選挙でございます。資金が流れるとすれば当然な時期でございました。ソウル地下鉄では二百五十万ドルのうち百数十万ドルが朴大統領選挙資金に流れたことを、アメリカのフレーザー委員会の最終報告が指摘をいたしております。こちら側も流れていないとはどこから考えても考えられません。明確に言い切っております。  次に、二ページ、②をごらんをいただきたいのであります。一つの大きな特徴がここにございます。よけいなことは申しません。政府借款というものはどういうものかという点だけを明らかにいたしておきます。商業借款と異なり金利が極端に低い。POSCOと書いてありますのは浦項製鉄所のことであります。請求権資金に基づく有償資金でありますが、金利は三・五%であります。大変に安い。七年も据え置く。ソウル地下鉄は四・一二五%ですからこれよりもなお浦項が安い。金額は浦項よりはるかに多い。四倍を超える有償資金であります。そこでどういう形になっているかといいますと、韓国側はノータッチなんです。閣僚会議その他で枠が決まった。有償資金を幾ら貸す枠が決まった。あと事務レベルの会談をやる。そこで細かい手続、手続はここにありますが、時間がありませんから申し上げません。必要があるなら後から申し上げますが、そうすると、つまり工事が完成しようがしまいが支払いは行われる。値段が幾ら高くても大丈夫だという特徴がある。本当は高い低いのチェックをしなければならぬのですが、調べてみるとほとんどノーチェックでいっている。借款は政府間同士で決める。金額や条件が決められる。  「その結果、実際に円が相手国に支払われるのではない。政府間の借款協定は信用供与のワクを設けるだけで、実際の支払いは協定にあるプロジェクトを受注した日本の業者に対して行なわれる。この間、借りる側(つまりは韓国)はノータッチである。」一言で言いますと、借款の枠が決まった。決まると、そのプロジェクトをとった日本の三菱商事が品物を集めて韓国に輸出をする。この通関手続が済んでしまえば日本の銀行が三菱商事に金を払う。この枠の中の金をみんな次々に払う。韓国に金は行かない。韓国日本との間で、三菱商事との間でプロジェクトの契約ができた。そうすると、部品その他を集めて三菱商事が輸出申告書を出す。ここで大蔵省、税関を通って船積み、送られた。金はほとんど自動的に銀行から三菱商事に入ってくる。その中に莫大なマージン、賄賂まで入っているものがそっくりそのまま全部三菱に入ってしまう。積算の上に幾らあんこを入れても、高くても、通れば全部金はあんこも賄賂も含めて三菱商事に入ってしまう。きわめて簡単な仕組み、きわめてまたひどい仕組み。だから、三ページのところに念を押しておきましたが、張基栄さんという韓国の副総理が、七〇年当時、このころです、「円借款を評して「日本の業者のためにあるようなものだ」と述べている。」三ページに書いておきましたが「錬金術」、まさにそのとおりであります。ここのところをしかとひとつおくみ取りいただきたいのです。  三ページの下の方に、タイドローンというところがございますが、タイド、アンタイドという二つの借款の契約の仕方があります。タイドローンというのは、借款の枠、日本がこれこれ金を貸すという枠が決まったら相手の国が日本の製品しか買えない、ほかの国のものは一切買えない、それがタイドローンです。この契約はタイドローンです。だから、この契約ができた限りは日本の商品しか買えない、まことにはっきりしている、こういうわけであります。競争相手もヘチマもない。日本の大きな関係の企業みんな入っている。そういう仕組みである。アンタイドはほかからも買えるのですが、アンタイドでなくてタイドです。ここのところを念を押しておきます。  さてそこで、六つ、七つの疑問がありますが、疑問は申し上げません。読んでいただけばよくわかります。六、七、八、こうありますが、時間がありませんからこれを飛びまして、さて問題の焦点である九ページでございます。⑨「異常に高い三菱商事の浦項製鉄所むけ輸出品」、こう書いておきましたが、何とも高いわけでございまして、私もこれは部屋の戸だなへ入り切れぬくらいと申しましたが、うんとあるのです。実はこれは一年余かかっておりますが、これは全部輸出申告書なんですが、山のようにある。そこでひとつ承りたいのですけれども、この輸出申告書、これは焼結工場、これは鋼片工場、これは分塊工場。この中の部品全部集めると分塊工場が建ってしまう。この部品全部集めると焼結工場ができてしまう。日本でこれと同じものをつくろうとすれば、この部品を集めてつくればちゃんと鋼片工場ができてしまう。これは熱延工場。熱延工場というのは大きいですから、こんなにたくさんある。全部あります、たくさんある。とてもじゃないが持ち切れぬ。ここへ持ってこられません。  そこで輸出申告書の仕組み、これをひとつ大蔵省から承りたいのでありますけれども、どういう条項に基づきまして――関税局が所管でございますが、輸出課長さんのところが所管でございますけれども、つまり高い安いを含めてチェックをしなければならないようになっているはずであります。しかも輸出貿易管理令の関係、輸出貿易管理規則六条の関係がございます。安ければダンピング、高ければ不当利益、国際問題も起こります。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 三通つくるはずでございまして、輸出申告書は三通つくる、そして税関に行きます。インボイスは通産省に行きます。もう一通が大蔵省の統計に行きます。もう一通は取扱商社、メーカーに返されます。こういう分かれ方をする。この三通、書式も決まっている、そして高い安いいずれもチェックをしなければならないようになっている、この関係をまず大蔵省からお答えいただきます。
  58. 米山武政

    ○米山政府委員 お答えいたします。  委員指摘のとおり、輸出申告書は三通出ますが、これは関税法の規定によりまして、いかなる輸出を行なう場合でも、輸出申告を行い、税関の審査を経た後でなければすることができないことになっております。  輸出の通関審査に当たりましては、申告された貨物の品目、数量、価格等について書面審査及び必要な場合には現品審査が行われます。さらに、関税関係法令以外の法令の規定によりまして、許可、承認を要するものにつきましては、その許可、承認がなされているかどうか、その書類も提出していただきまして、その審査を行います。
  59. 大出俊

    大出委員 高い安いというところはどうですか。
  60. 米山武政

    ○米山政府委員 輸出申告書には、いまお答えいたしましたように、価格についても申告することになっております。したがいまして、その価格が適正かどうかという審査をいたすわけでございますが、御承知のように、なかなか品目の機能その他によりまして価格の決定というのはむずかしいわけでございます。私どもは、その価格が輸出の承認が要る場合には、通産省の輸出承認書に記載された価格であるかどうか、それから銀行からの認証がございますが、その銀行の認証済みの価格であるかどうか、それから当然にインボイスの価格とも突き合わして検査するわけでございます。
  61. 大出俊

    大出委員 米山さん、局長さんですからそのくらいで結構ですが、私は輸出課長さんとやりとりをいたしましたが、高いものも安いものもチェックしなければなりません。高いものは不当利益、安いものはダンピング、いろいろございます。こういう形でございまして、輸出申告書というものは何年保存でございますか。
  62. 米山武政

    ○米山政府委員 保存期間は三年でございます。
  63. 大出俊

    大出委員 大蔵省の統計の方に行ったものは、どういうかっこうで残りますか。
  64. 米山武政

    ○米山政府委員 大蔵省は毎月貿易通関統計をとっておるわけでございますが、そのために、いまの申告書の一部が統計の方へ参ります。したがいまして、この統計で公表されたものは、もちろん本になっておるわけでございますが、申告書は、その用が終わりますと、三年たちますとこれは焼却いたします。
  65. 大出俊

    大出委員 つまり、こういうことになって残るわけですな。ここにございますが、こういうことになって残る。後から申し上げます。  ところで、私は課長さんに、輸出申告書の本物であるかうそであるかという、これは見ればわかるかと言ったら、もうそれは一目でわかります、税関の判がばんとついてあるのです、担当者の名前もありますから、すぐわかります、それはすぐわかるはずであります。皆さんのところにはないとどうせお答になっているのですから、私が聞いたらそうおっしゅっているから、むだな論議はいたしません。出せ出せとは申しません。私の方から出します。  いま差し上げました資料の片方、浦項製鉄所の疑惑メモでない方、これが書式であります。何枚かございますが、一枚あけていただきますと、黒で消してあります。この黒で消したのは、私のところに出てきた資料の出どころがわかってしまいますから、消したのでございまして、担当者の名前がここに書いてあります。これは墨で消してあります。ずいぶん一生懸命調べましたから、大抵のことはわかっております。  そこで、ごらんをいただきたいのですが、それ、本物だというふうにお認めになりますか。ならなければ、原本がこっちにございますから、ごらんください、工場が全部建っちゃうやつがあるのですから。それでよければいいのですが、いかがでございますか。お答えください。こっちの方には明確にきちっと記載してありますから。リコピーですから少し薄くて、もう全部ここには何もかも全部載っておりますから、どう見ていただいても結構です。見ていただいたところでお答えください。見てください。どれでも結構ですけれども、消してありますから出どころはわかりませんから、御心配なく見てください。
  66. 米山武政

    ○米山政府委員 フォームと形としては、私どもいつも受け取っておる申告書と同じでございますが、内容につきましては、私ども確認することはできません。
  67. 大出俊

    大出委員 フォーム、形、いつもやっているのと同じだ、こう言う。内容、それはそうでしょう。これだけあるものを局長にわかつては大変だ。私が一年以上かかってまだわからぬところがある。内容は私が言いますから。  ところで、御説明いたします。比較の方法は、この統計資料のナンバーがあるのです。それによって、統計品目番号といいますが、その年度に輸出されている統計品目番号の同じ番号のそれはどこに出てくるかといいますと、これは見ていただきたいのでありますが、一枚目の下から二番目、六七四-一三二というふうに番号が入っております。これが統計品目番号です。六七四-一三二。これはどういうことをあらわしているかというと、鉄鋼の厚板でございます。この厚板は、この統計の資料の方との関連がございまして、同じ品目番号がこの統計資料に記載されているのであります。その年度全体の日本から輸出した厚板の平均単価が割り掛けですぐ出るようになっています。数量とどれだけ輸出したか、そのほかにその年度の韓国初め世界各国、輸出した国の国別に国別表というのが。ございまして、その年度厚板はどこの国にはどれだけ、どこの国にはどれだけ、どこの国にはどれだけと、同じ品目番号のところに整理して載っています。この比較方法は、おおむねの価格の見当がつくということでありまして、専門家にずいぶん私、聞きましたが、だから誤差もあり、幅もありというので、狂いは多少はございます。  一つここで立証を先にいたしますが、③と書いてある輸出申告書をごらんいただきたいのでありますが、この上の欄に「高アルミナ耐火レンガ」と書いてあります。品目番号が六六二-三二三、こういう数字であります。このメモの方の、おあけいただきたいのでありますが、メモの方の⑩、十ページの一番上に「高アルミナ質耐火レンガ」と書いてあります。メモの⑩の一番上「高アルミナ質耐火レンガ」、これはこの年に、大蔵省統計の一九七一年の一年分、十二月分、こうなっておるわけでありますが、ここに六六二-三二三、五百六十トン、これが韓国に六千四十六万九千円という価格で五百六十トンの厚板が売られた。これは韓国に売られた厚板の総量であります。その中で、浦項製鉄所の分が輸出申告書の、いま私が申し上げました――失礼しました。厚板じゃございません。いま私が申し上げたのは、耐火れんがであります。高アルミナ耐火れんがというのが五百六十トン、六千四十六万九千円、六千万円ちょっと出るのですが、この価格で五百六十トン韓国に売られた。もう一遍言いますが、五百六十トンの高アルミナ耐火れんががこの年度韓国に売られた、その価格が六千四十六万九千円、こういうことです。  それで、アメリカにもこの年には耐火れんがが売られています。アメリカには同じように六六二-三二三という番号で売られていますが、その金をトン数で割りますと、一トン当たり単価が出ます。それと③に書いてある高アルミナ耐火れんがというのが、数量というところを見ていただけばわかりますが、ここで数量二三二五一、これはトン数、この後ろが金です。一千百七十九万四千円、二三・二五一トン売られている。だから、金をトン数で割りますと、トン当たり単価が出ます。こういう仕組みです。そして、このMTと書いてあるMというのは、これは統計番号上のやり方でありまして、簡単にトンというふうにお考えいただけばいい。メガトンじゃありません、トンです。後から申し上げますが、実はそういう仕組みになっているわけであります。  そこで、メモの方をごらんいただければわかるわけでありますが、このメモの方に七一年十二月十八日、熱延工場用に赤穂市チドリ岸壁から輸出されたこのれんがは、トン当たり五十万七千二百五十三円である。この申告書の金額をトン数で割りますと、一トン五十万七千二百五十三円になる。ここにありますが、いま申し上げました同年韓国向けに輸出された同じ統計品目番号のものは十万七千九百八十円である。四・五倍だ。アメリカ向けのものはトン当たり十五万九千円。「三・一九倍の値がつけられていることになる。」こういうふうにここに説明いたしております。  これはどういうことを言っているかといいますと、つまり、この高アルミナ耐火れんがというのは、アルミナ質の入っている度合いによって価格に幅のあることは、私はいろいろ調べてよくわかりました。それから関係商社、関係メーカーを歩きまして、ソウルに送ったこの高アルミナ耐火れんがなるものがどの程度のものであったかということも聞いてあります。その結果、単なる統計の割り掛けだけじゃない。聞いてみた結果、やはりどうやら三倍ないし四、五倍、こういう高値で申告書が書かれている。ようやくそこにたどり着きました。それをここに、高アルミナ耐火れんが高い、こういうふうに書いてあるのです。統計の割り掛けだけじゃない、一年以上もかかっておるのですから。やり方はいま御説明いたしましたが、最初から申し上げます。  鉄鋼の厚板、ページ⑨、七二年三月十五日、鋼片工場用として三菱重工広島造船所から浦項に向かったこの製品は、トン当たり十五万一千五十六円になる。同年同国、つまり韓国に輸出された同じ統計品目番号の製品の平均価格は、トン当たり四万二千五百八十三円になる。つまり、三・五四倍の値がつけられているわけである。同年アメリカ向けの三・三五倍、インド向けのものの三・六八倍である。これも周辺を全部当たりましたが、やはりほぼ似たような金額になる。不思議なものであります。  次の山形鋼、山形になっている鋼でありますが、七二年三月十五日、鋼片工場用として三菱重工広島造船所から船積みされた。この製品は一トン当たり二十六万九千八百九十四円、同年韓国向けはトン当たり五万三百六十四円、何とこれまた五・三五倍の値段、インド向けがトン当たり三万六千二百四十九円、七・四四倍、アメリカ向けがトン当たり三万九千九百八十九円、六・七四倍。  次の高アルミナ耐火れんがは申し上げました。  その次の鉄鋼製の管用継ぎ手、管をつなぐものですが、三菱重工高浜から分塊工場用に輸出されたこの製品の価格は、トン当たり五十九万五千七百四十四円、同年韓国向け管用継ぎ手の平均価格は、トン当たり四万三千八百三十四円、何と十三・六倍の値がついています。アメリカ向けが十二万八百三十四円だから四・九三倍。  継ぎ目なし鋼管、七二年五月十八日、三重工広島から焼結工場用、これがトン当たり二十四万二千八百十五円、このときの韓国向けの平均価格が九万一千六百四十四円だから二・七倍、インド向けの二倍、こうなるわけですね。気がつくのは、開発途上国行きというのは、どうも比較的高いですね。アメリカ行きなんて案外安い。これは不思議なことですね。何かそこに介在しています。日本の商法のあり方が浮かんできます。  溶鍛接鋼管というのがございまして、これも二・二八倍に四・五四倍である。  鉄鋼製の重軌条、この重軌条を調べてさましたら、ある人が私に、いいから適当に乗せて早く出してくれといってさんざん催促された。どこへでも金を乗っけて、言われたとおりの金を乗せてくれということで、どうもふざけた話でありますが、いま、この場面では名前は申し上げられません。これが皆さんのお取り上げいただけるところになるとすれば、やがて申し上げられる時期も来ると思います。  最後に、天井走行クレーン、まことに奇怪であります。不可思議であります。七五年九月五日、天井走行クレーンという、こっちから鉄を積んだクレーンが天井を走っていくようになっている天井走行クレーン、七五年九月五日、三重工高浜から分塊工場用の天井走行クレーンが四台輸出されている。この四台のクレーンの輸出申告書は二枚あります。これはぜひひとつ御検討おきをいただきたいのでありますが、不思議なことがあるのです。どういうことかと言いますと、どうも一枚の申告書の方には三台なんです。⑨というところがありますが、一番最後の⑨の一番上の欄が天井走行クレーンであります。左の方に「天井走行クレーン」と鉛筆で入れてあります。⑨の一番上の欄、キログラムが単位でありますが、三台で十五万五千三百四十八という数字が入っております。これはキログラムの数字であります。三台分です。ところで、値段は一億三千八百九十万、三台で。それから、一つ手前の⑧をごらんいただきますと、同じ欄に一台五三・五二三キログラム、こう書いています。一台で価格が二千三百八十六万一千円、こうなっています。ところが、単価がうんと違うのですが、調べてみましたら、どうやら同じ製品のようであります。なぜ二つに分けたかといいますと、走行クレーン一台の方には部品をいっぱい一緒につけた。それで船積みした。だから一台です。片方は三台一緒であります。ところが、いいですか、同じときなんですから、つまり荷づくりが違う。一台の部品。これは割り書きをいたしてみますと、こうなります。ちょっと先に読みます。  一枚目に三台が、二枚目に残りの一台が記載されている。二枚目に記載されている一台のクレーンの価格は二千三百八十六万一千円で、同年韓国に輸出された天井走行クレーンの平均価格二千九百五十四万六千八百九十二円に近いものである。お読みいただけばわかりますが、二千三百八十六万一千円というのは、同じ年に韓国に走行クレーンがいっていますけれども、その平均単価とほとんど似たような価格なんです、一台の方は。ところが、一枚目に記載された三台の平均価格は、何と一台当たりが四千六百三十万円なんですよ。二倍になっちゃった。同じものなんですね、調べてみると。トン数の違いがあるじゃないかという御意見があるかもしらぬが、三台の方は一五五・三四八キログラム。これを三で割りますと、五一・七八二というキログラム数になる。つまり、一台当たりが五一・七八二キログラム。一台の方の目方は五三・五二三キログラム。五三・五二三から五一・七八二を引きますと、一・七四一キログラム残る。この一・七四一キログラム残る差は何かというと部品なんです。実はここにちゃんと英語で「ネセサリーズアクセサリーズ」という言葉が入っているわけであります。この輸出申告書をごらんになればわかります。「ネセサリーズアクセサリーズ」、これがついている。⑧のところの、一番上の天井走行クレーンの一番左の英語で書いてあるところ、「オーバーヘッドクレーンウイズネセサリーズアクセサリーズ」、こうなっている。部品がついている。部品の目方だけ違うだけでありまして、キログラム数はほとんど同じであります。  それで、これはいろいろと調べました。どうも同じ製品のように受け取れます、御説明をいろいろ方々で苦心して聞きましたが。なぜ、しからば一体片方は平均単価二千三百八十六万、ほとんどそれで近い数字になっているが、片方は四千六百三十万円、部品もないのに。片方は部品がついている。さっき私は、重軌条のところで申し上げましたが、いいからこれこれのものを乗せろと言うから乗せて、どうせノーチェックなんだからと、こういうことになっちゃった。もっとも当時は、まさかいまになってこれを調べるやつはいないと思ったのでしょう。  つまり、ここに幾つか例を出しましたが、どれを見ましても高い。のみならず、時間がありませんから、この辺にいたしますが、私は、ここにこの比較しましたものを大量に持っています。何しろたくさんあるのですから。ところが、低いものがほとんどないのですよ。全部高いのですよ。これは、まあそれこそここにあるだけで百の部品以上のものがありますが、どれもこれもめちゃくちゃに高い。全部高い。一・三倍というのは、三割乗っているということです、概数で言えば。たくさんございます。きょうこれ全部お配りしようと思ったのですが、説明し切れませんので、次の機会に、何遍か御質問しないと全部明らかにするわけにまいりませんから、何遍でも質問するつもりで実はおる。何年たってもやるつもりでいる。反論があって結構です。  ソウル地下鉄のときも、やれ寒いところだからとか、軌道が広いとか、やれ背が高いとか、いい物を使ったからとか、なに、一番悪い品物、うそばかり。寒いところだから三段のヒーターでこんなでかい、うそばかり、安い。寒いところはドアの開閉が特殊な装置、ちっとも特殊じゃない。全部基金はそう言ったわけですね。今度私が基金をお呼びして物を聞こうとしたら、何と言ったかというと、前回のソウル地下鉄のときには、基金がやるべきことではないことまでやってしまいました、価格調査までやってしまいました、それがみんなうそだったものだからばれちゃった、今度はやる気がないと言う。これじゃ、この経済協力基金というのは、金庫番で何の役にも立たぬ。実は私は、総裁以下やめてもらいたいと思っている。  そこで、私は承りたいのですけれども、かくて全部の、私の目を通した限りで言うと、五十億円近く高い。単なるこれの比較だけじゃない。一年余にわたって聞いて歩いた結果がそうです。政治的雰囲気ができれば証言してくれる人もいる。ちょっといまのところ、ぽっと言われてもという方が多い。当時対立した商社の方々からもたくさん聞いている。三菱のやることはと、こう言う。さっき小野田さんのこれ読みましたが、ソウル地下鉄は二百五十万ドル、八億円です。チャソイル・エンタープライズが二億円です。合計十億円です。四倍のプロジェクトだから、つまり有償資金も使っているのだから、同じ時期に同じ金成坤さんですから、民主共和党の財務委員長として大統領選挙資金をおつくりになったんでしょうから、だから、その四倍金が抜けていてもおかしくない。十億円がソウル地下鉄なら、通常四十億円あってしかるべきである。私の調べた限り、それ以上になる。ほかの話を聞いてみると、百億ぐらいあるのかもしれない。  こういうわけなんですが、まずもってひとつ、メーカーに、三菱商事以下みんなにこれは返っている、この輸出申告書の三通のうちの一通が。これは商法上何年保存ですか。どなたか答えてください。
  68. 田村元

    田村委員長 だれが答えますか。
  69. 大出俊

    大出委員 じゃ、ちょっと……。  国税庁長官に承りたいのですが、私がいま御指摘をいたしましたが、ちょっと簡単に反論できませんから、後で反論をつくってくれればいいですが、その約束だけ総理としたいのですけれども、そのためには材料がなければ困る。私のところにあるのを全部お貸しするというのも、政府があって妙な話だから、私は通産大臣じゃないんだから。だから、皆さんでこれはお集めいただきたい。そのためには保存期限を聞いておかなければいかぬというのが一つ。  それともう一つは、いま申し上げたのは例だけれども、あんこが入っていて四十億も抜けているとすると、これは賄賂で向こうへやっちゃったんだから、あるいはこっちにばらまいちゃったんだから、私どもの利益じゃございませんよと三菱商事さんが言ったって、税法上は、税務調査の観点からいけば、これは利益でしょう。まだ五年たっていないのもありますよ、第二期なんというのは。税務調査の対象にしてもらいたいと思っているのですが、いまは一般論として答えていただきたい。つまり、利益になるだろう、こういうことで私は確信を持っているが、ここでは、もしも仮に向こうにやった金が上積みになっていることが明らかならば、原価プラス利益プラス上積みなんだから、これはその社の利益である、こういう解釈が成り立つかどうかという点が一点。それから税務調査をおやりになる面では五年だろうけれども、商法上五年のものもありますが、一体このような重要書類というのは何年ぐらいあることになっていますか。まあ磯邊さんに聞くのは妙だけれども、二番目は、ほかのお答えないので、ちょっと承りたい。
  70. 磯邊律男

    磯邊政府委員 御承知のように、法人税法の規定によりますと、同法第二十二条の規定によりまして、各法人の所得というのは、当該事業年度の益金の額から損金の額を差し引いて、それによって所得を計算するということになっているわけであります。したがいまして、まず第一点の点で、先生御指摘の点について、それが益金に算入されるべきものなのかどうか、今後の税務調査の段階において見たいと思います。  それから、商法上の保存義務の規定でございますが、これは、私は専門でございませんので申し上げるわけにはいきませんけれども、ただ、税法上の規定では、先生御承知のように、法定申告期限年度から三年たった場合、あるいは特に偽りその他不正な行為があった場合には、五年たった場合、それぞれ更正できるわけでありますけれども、いずれにしましても、最大五年たちますと、すでにもう更正の除斥期間が満了いたしますので、私たちの方としては調査の権限がないということになるわけでございます。
  71. 大出俊

    大出委員 じゃ、申し上げましょう、時間がないですから。  商法第六条、商業帳簿その他営業に関する重要書類という表題の条項であります。商法第六条、ここで保存期間は十年と明確になっております。商法上十年。おまけにこれは念のために書いてある、「帳簿閉鎖ノ時ヨリ之ヲ起算ス」こうなっている。十年なければいけない。法律上はっきりしている。例外措置があるが、これには当てはまらない。どなたかお答えになりませんか。反論がなければそういうふうに受け取っていただきたい。
  72. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 内容はいま大出委員がお読みになったとおりです。条文は三十六条です。
  73. 大出俊

    大出委員 失礼、三十六条です。めがねが要る年になりましたので、済みません。間違いありません、三十六条。六条と言ったようでありますが、三十六条と私も書いてありますから、直させていただきます。  そこで、そうなると、法制局長官お答えになりましたから念を押しますが、契約がなければならぬ。三菱商事と各メーカーの間に契約がなければならぬ。契約に基づいて納品をする納品書がなければならぬ、それを受け取った受領書がなければならぬ、関連一括書類がなければならぬ、こういうことになります。だから私はこの際、大平さんも第三回日韓閣僚会議に通産大臣で御出席なんですから、そしてある約束の段取りを話し合ったんですから責任がございます。さっきもう御質問で明らかなように、通産省はそれなりの輸出手続に従う法令によりまして責任がございます。そういう意味でひとつ政府として、私が申し上げたように、一通は商社、メーカーに返っているのですから、しかも関係書類がなければならぬ商法上の規定も明確にあるんですから、前回は海外経済協力基金をお通じになって、ソウル地下鉄のときにはお調べをいただきましたが、これは経済企画庁長官でございますが、これをひとつ皆さんの方でお調べいただきたい。いかがでございますか。
  74. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 当然政府の方で調べます。
  75. 大出俊

    大出委員 明確な御答弁をいただきましたが、念を押します。政府間契約、タイドローンでお金が出ていく。これは経済協力基金から貸した金、さっき石原総裁がお答えになった金は、全額日本国民の税金でございます。そして第一期工事、昭和六十五年まで支払いにかかります。はるかかなたであります。まだほんのわずかしか韓国日本に返していないんだが、返してくる金は韓国民の税金であります。だから皆さんは気が楽だ。商社の方も気が楽だ。チェックもしないでこんな割り掛けしてあるものがどんどん出ていってしまう。  ところで、お答えいただいたように、高いものも安いものもチェックしなければならぬようになっている。おやりになっていない、こんな高いもの。これはいけませんですよ。両国民の税金です。日韓二つの国の将来のために、いまやまさに政変以後、民主化と一言に言っていいかもしらぬけれども、その方向に動いている、いみじくもきょうからアメリカにおいて韓国問題聴聞会が続けられようとしている、この時期です。だから私はいまからでも全く遅くない、三期工事はまだやっている、二期工事が終わってまだ五年たっていないものがある。だからそういう意味で、当然これは御調査をいただく筋道でございまして、のんべんだらりと調査されては困るのでございまして、できるだけ速やかに皆さんの御努力をいただいて、私の疑問というよりは国民的な疑問でございます浦項製鉄にかかわるこれらの資料に基づく解明をいただきたい。できるだけ速やかに、こうお願いしたいのですが、総理いかがでございましょうか。
  76. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 できるだけ速やかに調査いたしましょう。
  77. 大出俊

    大出委員 別なところからも、あるいはフレーザー委員会がソウル地下鉄を途中で取り上げましたように、出てくる可能性なきにしもあらずでありますが、そのことを私はある意味で――私はもう一年余にわたって資料を集めて調べておりますから確信を持っておりますが、非力でございまして、その辺のことを期待をしているわけでありますが、ぜひひとつ御解明への努力を政府側も懸命におやりになってしかるべきもの、私はこういうふうに判断をいたしまして、総理ができるだけ速やかに調査をするということでございますので、後刻改めて質問をさせていただきます。  残り時間が少なくなりましたから、防衛問題、KDD問題を承りたいのでありますけれども、残念ながら時間の制約がございます。これはせっかくたくさん印刷しましたが、もし御必要な方があれば、ここにたくさん高いものばかり集計して、安いものはないのですけれども、高いものばかりございますから、後から差し上げてもいいのでありますけれども、とりあえず説明ができませんからしまっておきます。御要望があればいつでも差し上げます。  次に、新防衛庁長官と申し上げるのは二、三日前になったのですから御無礼かもしれぬが、細田さんに承りたいのでございますが、記者会見で、ソ連戦略は日本にとって重大なる脅威、こういうふうにお述べになっておりますね。アフガニスタン問題は「私の情報では早急に解決できるような状態ではない」という見解をお述べになっている。それから「ソ連が軍備にかけているカネの累積だけでも大変なものであり(ソ連の脅威は)国民の常識になっている」こういう御発言。それから宮永スパイ事件について、再発防止については「(やたらに秘密をつくるのでなく)機密事項を限定的に絞り、それを絶対的に守っていかねばいけない」この三点が中心のようであります。  それぞれ承りますけれども、ソ連戦略は重大なる脅威である、新たな発言であります。いままで潜在的脅威という言葉は大平総理からもたびたび承りましたし、山下防衛庁長官からも承りましたが、ずばり重大脅威という御発言は、この国戦後長きにわたる議事録を読みましたが、生でずばりというのは初めてでございます。これはこの席で言ったのじゃないですけれども、記者会見でおっしゃったということになると、これはちょっと承っておかぬといかぬ。お答え願います。
  78. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げます。  昨日、記者会見におきましてソ連の関係についての質問が記者の方からあったわけでございます。そこで、昨日の予算委員会で本件に関しては防衛庁としての答弁もあり、総理の御答弁もありました。したがいまして、防衛庁として公式にはといいますか、政府として公式にはそのとおりであるということでございます。  さらにまた、いろいろの御質問がありましたので、私からおおむねいまおっしゃったようなこと、いろいろ前後の関係はございます。ございますから、速記があるわけでもありませんし、記者との懇談でございますから、そこで私が脅威ということを単純に申し上げたということは、私は、後から事務当局からこれまでの経緯その他を承りました。したがいまして、本日記者諸君にもお断り申し上げたのですが、これは在来の防衛庁のいろいろないきさつ、使い方から言うと、潜在的脅威という意味で私は申し上げたと御理解いただきたい、かように訂正もいたしたわけでございまして、ただいままでの防衛庁がとっておりましたことを、その三字があるなしということで、特にこれは非常に変わったというふうに御理解をいただくというものではない。ただ、さらにきょうも新聞記者から御質問がありましたが、潜在的脅威が非常に強くなっておるかどうかという点については、非常に厳しいものになっておる、さように私は理解しております。かように申し上げておる次第でございます。昨日、実はなったばかりでございまして、大変どうも、その点……。
  79. 大出俊

    大出委員 弱ったな、長官。また長官やめてくれと言わなければならぬことになると、たび重なって、どうも防衛庁長官のやり手がなくなっちゃうんじゃないかと思うので、私は個人的には仲のいい細田さんだから、どうも……。かつまた、運輸防衛大臣ですからね。あなた運輸官僚で、防衛庁は素人なんだからね。そこへもってきて、原さんがまた大蔵防衛局長ときているわけだから弱っているのですが、ひとつここで念を押しておきたい。  またいまもよけいなことをつけ加えたけれども、脅威の定義というのは何か。侵略する能力、つまり攻撃をする攻撃力、軍事的に、これが一つ。もう一つは攻撃する意思、これが一つ。二つによって成り立つというのが軍事常識。アメリカがいかに巨大な戦力を持っていて、日本を簡単に占領できる状況にあっても脅威にならないのはなぜか。日本を占領しようという意思がない。まあ、基地いっぱい持っているからあるいは占領しているのかもしらぬけれども意思がない。だから脅威にならないというだけのこと。ソビエトもアメリカに対抗する莫大な軍備を持っているが、さて、そこで日本に直接的に入ってくるという意思がなければ脅威にはならない。アメリカと同じ意味で。その意味で、今日まで潜在的なとついていたはずであります。それを取っ払ったということは、三字が抜けただけでそう変わらぬと言うが、冗談ではない、根本的に違うのだ、これは。三字が抜けているということは何を意味するかと言えば、日本を攻撃する巨大な軍備を持っている、だれの目にも明らか。その上に意思が加わった、それが潜在的が消える理由ですよ。あなたの発言というのは、巨大な軍備を持っているソ連が日本を攻撃する意思を持った、こういう発言ですよ。こんなことを軽々しく言われてたまりますか。もう一遍、その点だけきちっと答えてください。
  80. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  攻撃する意図があるというようなことではございません。潜在的脅威でございます。その点は、私大変どうも申しわけなく存じております。
  81. 大出俊

    大出委員 次に承りますが、いま最後に、さっきの答弁でつけ加えた潜在的脅威は大変に大きなものになっている。潜在的脅威が大きくなるということになると、何を根拠にそうおっしゃるのですか。防衛庁長官、答えてくださいよ。
  82. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答えいたします。  きのう参事官からいろいろ最近の情勢についてお答えをいたしたわけでございますが、軍事力が非常に増強されておる、その意味を申し上げただけでございます。軍事力が増大しておるという意味を申し上げたことでございまして、中身につきましては、きのう参事官から報告いたしました。
  83. 大出俊

    大出委員 幾ら軍事力が強化されても、アメリカも強化しているのでありまして、それが脅威にならない。ソビエトが軍事力が強化されただけで、それは脅威にはならない、意思がなければ。だから、潜在的脅威が非常に大きくなったということは軍事力だけ、それならアメリカもそうなのです。根拠にならぬでしょう。何を根拠にしますか。もう一遍答えてください。軍事力が幾ら大きくなったって、アメリカと競争して両方とも大きくしているんだ。それは脅威にはならぬでしょう。潜在的脅威がうんと強まったというのなら、意思が少しずつ日本を攻撃する方向に出てきた。そうでなければならぬでしょう。軍備だけならばアメリカだって強化しているのだ。答えてください。細田さんでなくていいから、大蔵防衛局長の方で答えてください。
  84. 原徹

    ○原政府委員 おっしゃいますように、意図と能力が加わって脅威になる。その意図の方は明確ではないというか、ただいまの段階で日本を攻撃する意図があるとは考えておらない。そうなりますと、残りは軍事能力。軍事能力はこの数年間、例の北方領土への配備、バックファイア、SS20その他極東の艦隊の増加、そういうことを着目して、だけれども何といいますか、潜在的でありましても軍事能力で注目すべきものであるという意味でございまして、そういうことでございます。
  85. 大出俊

    大出委員 それじゃ細田さんのおっしゃったことを、いまここでつけ加えられたことを、注目すべきことであるというふうに置きかえてよろしゅうございますか。細田さん、いかがでございますか。簡単で結構でございます。一言で結構です。
  86. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 さよう御理解いただきたいと思います。
  87. 大出俊

    大出委員 ところで、大変詳しくなっておられる原さんがいま少しよけいしゃべりましたが、質問をいたしておきますから、簡単にお答えください。  まず一つ、三海峡封鎖という問題がございます。矢野さんの質問にもございました。これはアメリカ政府筋から出てきているものと――時間がありませんから説明いたしませんが、アメリカ議会予算局リブリン局長のところ、女性局長でございますが、大変りっぱな方でございました。私も会っていろいろ――一昨年の七月にお目にかかっておりますが、ここから出てきています。短期間なら日本は三海峡封鎖ができる、こう言っている。つまり宗谷、津軽、対馬三海峡を封鎖、スイング作戦と絡んで日本の三海峡を日本の自衛隊は封鎖をしてもらいたい。アメリカ意思です。できるとお考えですか。
  88. 原徹

    ○原政府委員 第一点の要請があったかという点については、要請はございません。  日本の自衛隊の能力でございますが、三海峡を含む周辺海域で行動をするわけでございますが、その際、必要に応じて共同対処ということでございます。日本単独での能力ということになりますれば、必ずしも十分でないというふうに考えます。
  89. 大出俊

    大出委員 必ずしも十分であるのか必ずしも十分でないのか。いま必ずしも十分でないと言うのだが、全く能力がないのか、必ずしもなのかはっきりしていただきたい。その意味で承ります。――ちょっと待ってください。ソビエト海軍、アメリカ海軍。めんどうくさいから私が先に言いますが、トン数で比較するのが一番いいのでしょうが、アメリカが五百五十二万トン、ソビエトが四百二十四万トン、トン数で比較しますと。これは英国のジェーン年鑑の五十六年版です。五百五十二万トンがアメリカ海軍、四百二十四万トンがソビエトの海軍、こういうわけですね。そして空母というのは、アメリカがソビエトの二十一倍、逆に潜水艦というのは、ソビエトの潜水艦が百二十二万トン、アメリカは六十七万トン、だからソビエトは倍です。こういうことなんですが、これをあなたの方はそのように理解しておられるかというのが一つ。  もう一つ、ウラジオストクにいるソビエトの極東艦隊、これはトン数と隻数でどのくらいございますか。
  90. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 米国とソ連全体の比較で申し上げますと……(大出委員「簡単でいいですよ」と呼ぶ)はい。米国五百三万トン、ソ連四百九十五万トンでございます。これを極東のソ連太平洋艦隊と米国の第七艦隊を比較いたしますと、極東太平洋艦隊百三十八万トン、七百七十隻、第七艦隊は約六十万トン、五十五隻でございます。
  91. 大出俊

    大出委員 いまおっしゃった中でジェーン年鑑と違うのは、七百七十隻と申しましたが、七百七十五隻と書いてあります。そこで、これは補助艦艇入れてでございまして、ソビエトのウラジオストクにおる極東艦隊、太平洋艦隊と言ってもよろしゅうございますが、使える艦艇、第一線級の昔で言う軍艦三百九十隻ですね。巨大なものです。ところで第七艦隊は多いときには百二十五隻、五十万トン。多いときがございました。六十万トンの時代もございました。だが、これはスイング作戦で行っちゃうんだからいない。大した勢力は残らない。  そこで、三海峡封鎖とこう言う。日本の自衛隊の方は、軍艦、護衛艦というのですか五十九隻、その中でDD千五百トンぐらいから上のところは何隻ありますか。あわせて、対潜ヘリコプター搭載DDH、それから艦対空ミサイルDDG、これは何隻ずつありますか。
  92. 原徹

    ○原政府委員 対潜水上艦艇ということで、全体で申しまして約六十隻を目標にして、現在は五十八隻程度でありまして、DDGが三隻、それからDDHが四隻になりつつある、まだなってないですけれども、契約ベースで。その他がDDとDEに分かれるということでございます。
  93. 大出俊

    大出委員 日本の海上自衛隊の勢力は比較にならぬほど違うのですね。そこで、機雷敷設艦というのは日本に二千百五十トンの「そうや」だけ一隻ありますが、一トン機雷でいうとこれで何個持っていけますか。それからもう一つ、掃海母艦で機雷敷設能力は多少ありますけれども、これは機雷を何個持っていけますか。それからもう一つ、P2VじゃなくてP2Jの方で機雷を幾つ持っていけますか。実はトンキン湾のときは艦載機A6が機雷を敷設していますが、やれますか。簡単に答えてください、時間がないのだから。
  94. 原徹

    ○原政府委員 「そうや」は三千ポンド級の機雷二百六十六個、掃海母艦は同じく百十五個、それから潜水艦でありますと若干小さくなりますが二十八個、それからP2Jは四個、P3Cが八個でございます。
  95. 大出俊

    大出委員 大変に広い地域で、宗谷海峡というのは向こう側がソビエトでしょう。もうこれ以上聞いていると時間がないから私が言いますが、中央にしてもザバイカルにしてもモンゴルにしても極東にしても、四軍管区で一千からの飛行機がある。しかも最近はスホーイ19フェンサーまである。ミグ23が来ている。これはファントム対抗あるいはそれ以上の飛行機で一千機ある。国際海峡の相手方のソビエトのところへ「そうや」なんという船がちょこちょこ行って、機雷をゆっくり敷設している暇がありますか。ないでしょう。総体的に後で答えてください。ない、できない。津軽海峡ならばやろうとすればできるかもしれない。あと掃海母艦だのP2Jだの潜水艦だの、そんなものをとことこ持っていったって、宗谷海峡のあんな広いところに機雷なんか敷設できやしない。対馬海峡だってだめ。一体何を持ってきて機雷を敷設するのですか。封鎖なんぞは日本の自衛隊にやろうといったってできやしない。できやしないのに背伸びして、ソビエトの脅威だなんと言って騒いでもしようがない。  ここでひとつ私が指摘をする。五十四年三月、米上院軍事委員会西太平洋アドホック委員会、アドホックはラテン語で特別という意味だから、アメリカ上院軍事委員会西太平洋特別委員会が日本調査に来ている。ここに翻訳が全部あります。話にも何にもならぬ。この中でハート、これは有名な人です。アメリカの議員の軍事専門家ハート氏の見解、わざわざハートさんという人は細かく調べているわけです。調べて何と言っているかというと、日本に三十二隻の千五百トン以上の駆逐艦がある。艦対空ミサイルまたは有人ヘリコプター能力を有しているのはわずかに五隻。六隻にしてもいいですよ。これしか使い物にならぬと書いてあるのです。艦対空のミサイルも何もない。潜水艦が近づいたってヘリコプターもない。こんなものは使い物にならぬという。だから、日本という国は三海峡封鎖の非常にいいところに位置的にはある、そして大変まじめな規律に従った自衛隊の人がいる。いるけれども、さあというときに日本の能力で三海峡封鎖をやろうとすると六カ月かかる。いいですか。状況に応じ、必要な速やかさでこうした三海峡封鎖の行動、三海峡に効果的に機雷を敷設するには六カ月ほども要すると見られる。そうでしょう。相手が攻めてこないところで封鎖したって、広過ぎるんだから、六カ月間かからなければ機雷を落とせないのです。そんなところに、北米局長や防衛局長が、共同行動、シーコントロールだからそういうこともあり得ると示唆するなんてばかげたことはないでしょう、できもしないのに。そうでしょう。  そこで、リブリン局長の言うように、仮に短期間の封鎖をする。突破作戦をやるでしょう。自衛隊の陸上、六師団というのは秋田、山形、宮城、福島警備ですよ。九師団、青森、岩手、これが自衛隊の方の内容を見ると津軽海峡に向かって、いざというときには、三海峡封鎖の一つだから、北上するのです。自衛隊の要域は十カ所あるが、半分の五つは海峡だよ。北上して、この津軽海峡の両側に行く。なぜか。津軽海峡は二十キロしかないから、陸上から砲撃されればソ連艦隊が通れないから。そうなれば突破作戦で両方を占領される。だから行くのです。短期に機雷を敷設した。攻撃された。リブリン局長はその後でも言っている。突破されたら、日本韓国と米軍が何がしか手伝って、もう一遍敷設しなければならぬという。突破されたらもう一遍敷設する、そのときには青函の間はソビエトが占領しているでしょう。それをもう一遍敷設に行けばまさに戦争でしょう。また突破されたら戦争が始まっちゃうでしょう。そうなれば北海道の千歳の飛行場、松島、三沢が先にやられちゃうでしょう。大湊の海上自衛隊の基地もやられちゃうでしょう。八雲、ここのホークだってやられちゃうでしょう。ナイキだってやられちゃうでしょう。まさにこれは川俣健二郎君のいる秋田なんていうのは戦場でしょう。能力のないのにそんなことを軽々しく国会で答えちゃいけませんよ。  答えてください。だから、私はつまらぬ負ける戦争をするなと言うのです。日本人の生命、財産を守れない。答えてください。能力がないことをお認めになればそれでいい。
  96. 原徹

    ○原政府委員 御指摘のように大変十分でない能力でございますので、ぜひともその質的改善をしたいと思っているのが私どもの立場でございます。
  97. 大出俊

    大出委員 これで終わりますが、ちょっと待ってください。そうじゃないのです。質的改善をいかに訴えても、ソビエトの極東艦隊を、スイング作戦でアメリカがいなくなったところで機雷封鎖できるために、C130を買うにしても、十二機つくろうというので五十五年度から五十九年の中期業務計画を検討しているが結論が出ない。そんなものをつくろうとしたら金が山ほどあっても足らない。五年や十年ではできない。いま私が指摘した点の補強だけで十年は間違いなくかかる。いまの間に合いやせぬじゃないですか。だから質的向上と言ったってできないじゃないですか。いまの騒ぎは十年先の騒ぎじゃないんだ。そうでしょう。そうならば、専守防衛ということで、防衛に金を使わぬで、国民生活に脅威を与えないように外交能力を使って、できる限り日本がこの種のことに巻き込まれないような努力をすべきじゃないのですか。私はそう思います。最後に一言お答えください。これで終わります。
  98. 原徹

    ○原政府委員 外交努力をなさることは大変大事なことだともちろん思っておりますが、また同時に、やはり防衛力というものも質的改善を図って、日米防衛協力の度合いを高めていけば日本は守れる、そういうふうに私は考えております。
  99. 大出俊

    大出委員 総理、ひとついまの点について答えてください、簡単で結構ですから。
  100. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政府が申し上げておりますように、やはり軍事力だけで防衛ができるはずはございませんで、外交力もあわせまして、緊張した姿勢で戦争防止、緊張緩和に努力すべきものと思います。
  101. 大出俊

    大出委員 私どもも一生懸命やりますから、そちらの方でも御努力願いたいと思います。終わります。
  102. 田村元

    田村委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  103. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため出席が少しおくれますので、御出席になるまで、指名により私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。岡本富夫君。
  104. 岡本富夫

    ○岡本委員 質問の通告の前に、実はけさ、午前中、大出委員の方から若干お話がありましたが、私はやはり憲法では自衛権を認められているという立場から質問をいたします。  実は、防衛庁長官にお伺いいたしますけれども、けさの新聞を見ますと、先ほどもお話がありましたけれども、重大な脅威、それに対して言い直して、潜在的脅威というようにおっしゃいましたが、潜在的脅威が今度は厳しいというようにお話しになったわけです。潜在的脅威が厳しいというのは、いままでは総理は、ソ連というものは潜在的脅威だ、こう言わはったわけですけれども、今度は潜在的脅威が厳しいというような答えがあったようでありますけれども、間違いございませんか。
  105. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 さように申し上げました。
  106. 岡本富夫

    ○岡本委員 総理は、いままではソ連の脅威というのは潜在的脅威と、これのみを発表されておったわけでありますけれども総理の御意見はいかがでございますか。
  107. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ソ連の軍事力の増強の問題は、私どもとしては潜在的脅威として受けとめておるということを申しました。最近におけるソ連の軍事力の配備の状況を見てみますと、アフガンへの介入、もとよりでございますけれども、すでに北方領土における配備も増強されておるという状況は厳しくなっておる、防衛庁長官としてそう感じておるということではなかろうかと私は理解いたしております。
  108. 岡本富夫

    ○岡本委員 防衛庁長官の御意見は先ほど承りましたけれども総理のいままでの見解と現在の御心境はいかがですか。
  109. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 従来から申し上げている見解に変わりはございません。
  110. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、総理は、潜在的脅威のみだ、これと変わりはない。ところが防衛庁長官は、今度は潜在的脅威が厳しくなった、こういうように受け取れるわけでございますが、防衛庁長官、ちょっと見解が違うように思うのですが……。ちょっと待ってくださいよ。  その前に、あなたが記者会見をなさっている。記者会見というのは、新聞記者の方にお話しするということは、国民に話をされることであります。したがって、きょうこの新聞、これは朝日新聞でございますけれども防衛庁長官の「ソ連は大変な脅威」というお話の後に、「ソ連艦十隻、対馬を南下」こう続いているわけです。そうすると、国民はこれを見て、これは大変だ、ソ連の脅威というのはすごいのだ、いまにもこうというように受け取れるわけです。防衛庁長官は個人的の意見とおっしゃっておりますけれども、先ほど大出委員の質問のときには、個人的の意見に対して、防衛局長でしたか答弁した。ずいぶんこれはおかしいなと思って見ておったわけでありますけれども、いずれにいたしましても、国民はこれを見て、さあ、防衛力をもっとつけないかぬ、こういうようになってしまうのじゃないか。国民に対して特別な脅威を与える、これをねらって防衛力を強化する。この新聞を見ますと、「「大綱」の見直しに含み」というようなことも出ております。  したがって、まずその前に聞きますことは、防衛庁長官としてか、あるいは個人でこの会見をなさったのか、この点をひとつ明らかにしてほしい。
  111. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 言うまでもございませんが、会見は防衛庁長官として会見いたした次第でございます。
  112. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、やはりこれは防衛庁の意見だ。新聞を見ますと、個人的な意見といいますと、防衛庁はまだ考えていないのだけれども私の意見だというように受け取れるわけであります。  そこで、こればかり言うわけにいきませんが、申し上げたいことは、私たちも防衛力については、これはもう国会で委員会をつくって論議をして、国民の皆さんのコンセンサスを得られる適正な日本の防衛力がつくられなければならぬのじゃないかということで、実は防衛委員会を提唱しておるわけでありますけれども、少なくとも防衛庁ではシビリアン・コントロールの頂点にありますところのその方が、まことに失礼な話でありますし、また細田さんは、私も議運でもよく知っておりますし、りっぱな方だと思っておりますけれども防衛庁長官になられた限りは、国民に向かってお話しなさるときにはやはり気をつけてもらわなければならぬ。特に、最初に総理からのお話もあったということでありますから、この点どういうように解釈なさるか、ひとつ防衛庁長官に再度お答えいただきたいと思います。
  113. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 お答え申し上げたいと思います。  いま御注意がございましたように、まことに責任重大でございますから、発言について十分注意をいたしたいと存じます。  実は、私、昨日任命されまして、これまでの言葉自体に対しましてもいろいろな経緯がありまして、まだ十分それらについて勉強が足りなかった点がございまして、今後十分注意いたしたいと存じております。
  114. 岡本富夫

    ○岡本委員 まあ新任防衛庁長官でありますし、今後注意するということでありますから、これはこれぐらいにいたします。  次に、わが党の竹入委員長が代表質問で総理に対して質問いたしました。その中に御答弁漏れがありますので、これをひとつ。  それは、アフガン問題につきまして総理は、ソ連に対して不快感を与えるような行動を起こすのだというようなお話があった。まあオリンピックの不参加のようなJOCに対しての発言があったようでありますけれども、それのみで、あとは何もやっていないわけでありますけれども、このときの質問で、シベリア開発を今後どうするのか、この質問に対しての確たる御答弁をいただいていないわけです。これをひとつまず明らかにしていただきたい。
  115. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 その問題につきましては、まだ政府として結論を得ておりません。検討中でございます。
  116. 岡本富夫

    ○岡本委員 検討というのは、このシベリア開発を一時中止する、あるいはまた続行する、中止するか続行するかという前か後ろか、どういうように御検討をなさるのか、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  117. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 現に御案内のように、シベリア開発につきまして幾つかのプロジェクトについて民間レベルの信用供与をいたしておりまして、そういったものがいま継続中でございます。一方、ソ連側からは、そのほかに新たなプロジェクトについての要請がアフガン問題が起こる前から寄せられておるわけでございます。そこへアフガンの問題が起こってまいったわけでございます。したがって、こういったものを、継続中のもの、新規のものをどのように対応してまいるか、政府部内におきましてもいろいろ検討する必要がございまするし、ヨーロッパ各国などの対応ぶりというようなものも勉強しておかなければいかぬと思いまして、いままだそういうことについて検討中でございまして、結論を得ていないというのがいまの段階でございます。
  118. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、少なくとも新規のプロジェクトについては、これはまだ相談に乗らない、こう解釈してよろしいですね。
  119. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 それも含めましていま検討いたしておるということでございまして、いずれ政府の方針が固まりますれば、御報告をいたすつもりでおります。
  120. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもガードがかたいので、これは次のときにいたしましょう。  そこで総理、今度は朗らかな話をいたしますが、総理が最も得意とするところの環太平洋連帯構想、これを頭に描いていろいろとやっているようでありますけれども、これについてひとつ詳しく十分な説明を皆さんにしていただきたい、国民に知らせていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  121. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 太平洋のいろいろの国々の連帯をどのようにして達成するかということにつきましては、関心のある多くの方々がおられましょうし、また構想を御提言なさっておる方もおありのことは、岡本さん御承知のとおりでございます。私は就任に当たりまして、環太平洋連帯構想というものをひとつ勉強してみたいと存じまして、わが国のすぐれた学者、学識経験者等を煩わしまして研究グループをつくっていただき、御検討をしていただいておるところでございます。去年の十一月に中間報告をちょうだいいたしまして、本報告はことしの春にはいただけるのではないかと期待いたしておるところでございます。これはみんなで勉強をいたしましたものでございますので、政府の方針とかいうところまでまだ固まったものではございませんけれども、それはそういうものとして関心のある国々にも中間報告を差し上げまして、御検討の材料にしていただいておるということでございまして、先般、私は豪州、ニュージーランドを訪問いたしましたが、この両国もわれわれの研究に大変積極的な関心を持っておられて、その研究には進んで参加しょうという意欲を示されたことに私も大変心強く存じたのでございます。  その中間報告に盛られておる大体の考え方は、この太平洋地域の国々の連帯構想としては、政治的、軍事的な問題に立ち入るのは遠慮して、経済とか文化とかいうような領域における連帯を目指すべきじゃないかという点が第一点でございます。  第二点は、この連帯構想は比較的ルーズな、非常にリベラルなかつ開かれたものとして、余りかた苦しく考えないようにしたいものだ、したがってこの事柄によりまして参加する参加しない、そういったことについては別にあえて壁を設けるようなことはしない方がよろしいのではないかという考え方が第二にあるわけでございます。  そういったことで、ひとつ基本的な考え方として、いまもう少し掘り下げて検討いたしておるところでございまして、各国とも相当の興味を持たれて、関心も持たれて、そういう検討が行われる場合には進んで参加しょうというところが多いわけでございますので、私どもといたしましては、今後こういうことが、どこがスポンサーするかは別といたしまして、そういう催しには、研究にはわが国も参加いたしまして、この地帯の連帯構想をつくり上げるにつきまして、日本日本なりの貢献をすべきじゃないかという感じを持っております。
  122. 岡本富夫

    ○岡本委員 外務大臣はその点について、総理のこの構想について、この間あなたの方でこういう施政演説があったわけです。「また、太平洋地域」――これ全部読みますと長くかかりますから、率直に申し上げましてどういう構想を持っていらっしゃるのか、実務についてひとつお聞きいたしたい。
  123. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 大体の構想はただいま総理からお話がございましたことでございます。今回、豪州、ニュージーランド等に参りましたときに、こういう問題は国際的な協力のもとで進められる性質の問題でございまして、特定の国がほかの国の意見を十分に聞かないで推進するということはできない性質のものでございますし、その言うたてまえからいたしまして、ことしの秋ごろ、オーストラリアの国立大学で民間のシンポジウムを催す、ただし民間と申しましても、一部には政府からの出席者もあるかと思いますが、それはあくまでも政府の訓令で出るのではございませんで、エキスパートとして出るという形で各国から集まって自由に意見を交換して、もしそういう構想が具体化するとすれば、どういう内容を持ったものが望ましいかということをその機会に十分討議したらどうだろうかという話になっておりまして、オーストラリア国立大学も、各国が賛成であれば自分たちがそういうシンポジウムのお世話をしてもよろしいということのお話が先回ございました。
  124. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、壁のないということでありますから、その地域は自由主義国とそれから社会主義国、この区別がない、こういうように解していいのか。中国やソ連も含むと理解してよいのか、ベトナムやカンボジアも含めるのか、こういうことをちょっとお聞きしておきたいと思うのです。
  125. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 それは私が決める、日本が決めるとかいうふうなものではなくて、いま研究しておることでございます。私の方がこうありたいと願う構想では、参加しようという意思を持っておる国でございますれば、拒む理由はないというように考えております。
  126. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま一番国民が関心を持っておりますのは、総理の環太平洋構想ということを見まして、中身は戦時中の大東亜共栄圏みたいなものを考えているのじゃないかというようなことを言う人もおりますけれども、これは別として、そこで今回のリムパック、このリムパックについては当委員会で何遍か話がありましたからこれはおくとして、こういうことを考えますと、この環太平洋におけるところの集団防衛安全保障体制というところにどうしても話がめり込んでくるのじゃないか、経済協力、文化協力が。そのときに、そういう軍事協力あるいは集団安全保障体制、こういうところに入らない、こういう歯どめはどうなさいますか。
  127. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 これは構想自体を各国それぞれいろいろな立場で、官民それぞれの立場で検討いたしておる段階でございまして、すでに定立して各国の合意を得た環太平洋連帯構想というのがあるわけではございませんので、そういうものがあってその代表者として私が答弁しておるというようなものではないんですね。いま皆で勉強しておるということでございまして、われわれの構想としてはこうありたいということを先ほど申し上げたわけでございます。その中に軍事的な連帯とか政治的な連帯とかいうようなことになりますとめんどうでございますので、そういうことから入っていくべきではなくて、やはり経済とか文化とかいうものの協力関係というものを模索していくというものでないといけないのじゃないかと私どもは考えておるということを先ほど岡本さんに申し上げたわけでございます。
  128. 岡本富夫

    ○岡本委員 総理、この間の施政演説でも環太平洋問題が出ておる。勉強しておるのだというのとあなたが構想に描いてこれから進めようとするのと、これはもう大きな違いがある。これをこういうようにして進めていこうというニュアンスがもう非常に大きく出ておるわけですね。いまの御答弁は何かこれから勉強するのだ、それから各国とも勉強していくのだというようなニュアンスでは施政演説はなかった。それでお聞きしておるわけですけれども、これを何遍も言っても仕方ないと思います。  そこで、いま総理が頭に描いておる環太平洋構想、この間あなたの方から、どこから出たのか知らぬけれども、これは研究グループでしょうね、中間報告が出ておるのですが、この環太平洋地域構想が決まるとどうしてもやはり組織づくりをしなくてはいけない。この組織図の形態についてお考えになっておるのは、たとえば欧州のOECDとかあるいはまたECだとか、こういうようなことをお考えになっておるのでしょうか、またその基金の規模はどのくらいのことをお考えになっておるのでしょうか、これをひとつお聞きしておきたいのです。
  129. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問の中でOECD構想、これはオーストラリアやアメリカの学者、一部日本の小島清先生などが参加した太平洋協力機構の構想というのがございまして、これはOECDに近い、つまり域内の特恵関税とかそういうものを含みません相互の政策を相談し合うようなルーズな組織、そういう点ではヨーロッパの共同体などとは違うわけでございます。  組織図の点は、私もよくどういう組織図か――基金構想というのは、これは野村総合研究所の方で出されたアイデア、太平洋協力構想の中に基金構想というのがございますので、あるいはその方のお話かとも存じます。
  130. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、外務大臣、あなたから先ほどお話がありましたように、この前オーストラリアへ行って、キャンベラとかあっちこっち回られたそうですが、そのときに向こうの首脳とも話した。そのときに、何の構想もなく話をされたのではなくして、やはり提案されたと思うのですね。そうすると、いまおっしゃったような一つの組織づくり、それから基金、こういう問題ならどうだろうという提案がなければ、ただ行って勉強したらどうですかでは、こんな情けない外交ではないと思うのですね。その点、どういうお話と、どういうあなたの構想で話をされて持っていったのか、これをひとつお聞きしたい。
  131. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、従来からいろいろな方面からいろいろな構想がございまして、大平総理が一昨年出された構想、それからせんだっての研究グループの中間報告、それからいまの太平洋地域の学者が一応まとめた、いわゆるOPTAD構想と言っておりますが、太平洋地域の協力機構の構想等がございまして、どういう形がよろしいのかということは、先ほど申しましたように、日本なら日本が余り詰めた形で提案するというよりも、むしろ各国の専門家の話し合いの中からおのずから具体的な姿が出てまいるのがよろしいのじゃないか、そういうことで従来比較的幅のある考え方をしてきておるわけでございます。
  132. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、オーストラリアへ参りましてもそういう漠然とした話で、たとえばこういう組織づくりとか、基金はこのぐらいがいいとか、だから皆さんのところも研究してみたらどうだとか、あれはひとつどうだというような話はしなかったのですか。ただ本当に漠然とした話を持っていかれたのですか。私はどうもそうとはとれないのです。国民はみんな関心を持っていますからね。
  133. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 具体的な構想の内容は、先ほど申しましたようなシンポジウムの中でだんだんまとめていくという考え方でございますが、その場合にコアメンバーといいますか、世話人会みたいな形で会合を開くというような構想、それから、どういう問題が太平洋地域として取りかかるのに適当であるか。これは別の会議でまたマレーシアの副首相が、各国にとって取りつきやすい問題、抵抗のない問題から取り上げてだんだん実績をつくり上げていくのがいいのじゃないか、たとえばこの地域全体の海洋気象の問題とかいろいろな問題がございます。それから、ニュージーランドのマルドーン首相といろいろお話し合いをしましたときに、南太平洋の島嶼諸国の経済の将来というような問題をぜひそういう場で考えるべきではないか、また、エネルギーの問題とか産業構造調整の問題とか漁業、海洋の問題、いろいろな問題が考えられるわけでございますが、これは総理の当初のお考えの中にもあると私どもは理解しておるのです。たとえば問題別によって違ったメンバーが集まる、太平洋の島の国々の将来を考える場合には、その島々の代表が集まって、他の国々ができるだけその島の国々の人たちの意見を聞くというようなやり方、つまりテーマ別に適当なメンバーが参加して議論する、そういうような方法も考えられるかと存じておりますが、こういう点も含めていまの秋の会議でいろいろ議論したらどうだろうかというふうに考えておるわけでございます。
  134. 岡本富夫

    ○岡本委員 こればかりやってもいけませんので、最後に、日米の間では外務省はもう何か計画が始まっていったというようなことも承っているのですが、これを一つだけ明らかにしてください。
  135. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御質問の件は環太平洋の構想と別個でございまして、総理が昨年の五月にワシントンに行かれましたときに日米間の共同声明に盛られた、太平洋地域の国々に対する援助で可能なものについては日米が協力してやれる援助を検討しょう、そういう一環として出てまいりましたのが最近、新聞紙上等に出ております構想といいますか、項目が挙げられておるわけですが、そのアイデアでございます。
  136. 岡本富夫

    ○岡本委員 総理、これはもう余り深くは言いませんけれども、この環太平洋の中には、さっき話がありましたマレーシア、こういうものも含まれる。実は田中内閣のときに、経済協力あるいは対外投資ということで日本の企業がずいぶん向こうに行っているわけですが、これは名前を挙げて恐縮ですけれども日本農薬ですか、こういう会社が向こうと合弁をするということで、日本で製造禁止になっておるものを向こうで製造する、こういうことは公害輸出になるのじゃないかということで当委員会で議論をしております。その当時、三木さんが環境庁長官だったと思いますが、やはり何らかの一つの規制というものが必要じゃないかというような答弁があり、大平総理はちょうど外務大臣だったので、そこまではなかなか手が届かない、こういうふうな話があったわけですが、現実にこの間向こうへ行って帰ってきた人に聞きますと、マレーシアのペナンという工業団地にある工場、その付近の環境が破壊されて大変なことになっている、あるいはまた、その農薬に起因するのか、一人亡くなったというわけで、これから訴訟をしようというわけです。こういうことになりますと、いかに国民の大切な金を使い、いろいろ構想をやって仲よくしましても、向こうの指導者階級といいますか政府とは仲よくなるけれども、住民の皆さん、要するに国民の一般の方から反日感情を受ける、こういうことになりますと、りっぱな構想が結局今度は、田中総理がタイへ行ったときにすごい反発があったわけですが、こういうことになって、いいことがかえって悪くなるということを考えますと、やはりその辺の――きょうはもう一つ一つ言って、とうなったということは言いませんから、環太平洋の朗らかな話でありますから、これは特にひとつ御注意いただいて、進出する企業に対するところの何らかの規制をきちっと心得てやっていただきたい、それではどうするかということは検討していただきたい、これだけを申し上げておきたいと思うのですが、これは各省にまたがりますので、伊東官房長官からひとつ。あなたは所管が違うかな、やはり総理から言っていただいた方がいいですな。
  137. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 発展途上国に対する経済協力は、その受益国の意思に従って、その国の民生の安定向上、経済の安定に役立つように協力申し上げるという性質のものでございまして、そこに何か害悪を送り込むというようなものであっては大変なことなのでございます。本来そういうことは考えられないことだと思うのでございますが、御指摘がございました点につきましてはよく調査してみなければなりませんけれども、考え方といたしましては、いま申し上げましたような方針に従いまして、われわれとしてはあくまでも受益国の立場に立って推進していかなければならぬものと考えております。
  138. 岡本富夫

    ○岡本委員 今度はころっと話が変わりまして、若干お耳が痛いかもわかりませんが、総理、昨年ちょうど私テレビを見ておりますと、昨年末に十五分間ほど青物市場に行かれて野菜なんかを見学されておる。非常に高いのに驚いていらっしゃった。すなわち物価がどんどん日増しに上がっておる。政府は全体から見て物価を抑えているんだというけれども、全然使わないわらじみたいなものを履いて計算しておるわけですから、非常に物価を抑えているように見えますけれども、そうではなくして日常品は非常に上がっておる。また家賃は高い、公共料金は上がる、税金は高い。給料をもらった、少し上がったけれども、諸経費と税金で所得は減少した。その中でロッキードやグラマン事件、あるいはまたKDDのあの公費のむだ遣い、やみ給与の問題、こういうことを見まして、いま国民は、私たちはもう税金を払うのがいやになった、私たち国政に携わる者に対して真剣に訴えがあるわけです。そこで、こういう庶民感情を考えましても、実際少しでも公費のむだ遣いをやめようというわけで、行政改革とかあるいはまたいろいろなものになってきておると思うのですが、総理のこの公費の節約についての基本的な御所見を承っておきたいと思います。
  139. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 公費を節減いたしまして、安くて劾率的なサービスを提供するというのが本来、政府のあり方だと思います。国民もまたそれを強く期待いたしておることでございます。したがいまして、公費のむだ遣いあるいは不正使用というようなことは許されていいはずがないのでございます。しかるに、そういう事例が昨年来次々と発覚いたしてまいりましたことを大変残念に思うわけでございまして、その実態を究明して、正すべきものは正し、罰すべきものは罰していかなければなりませんが、同時に私どもといたしましては、行政の綱紀を基本から正していく措置を講じなければならぬと存じまして、行政の綱紀粛正ということを施政の一番基本に据えまして、政府全体を挙げてこれにいま鋭意実行に移っておるところでございます。同時に、財政におきましても、冗費を省くように歳出の節減に努めており、新たな増税というものを期待しないで財政の切り盛りをいたすということに努めておりますことも御案内のとおりでございまして、層一層緊張した姿勢で、真剣にその方向に進んでいかなければならぬと決意いたしておるところでございます。
  140. 岡本富夫

    ○岡本委員 大蔵大臣は、国費節約についての考え方あるいは方策、これはお持ちですか。これは一番お金を持っておるところですからね。
  141. 竹下登

    ○竹下国務大臣 基本的にはただいま総理からお答え申し上げたとおりでありますが、なかんずく昭和五十五年度予算編成に当たりましては、公費の節減ということについては最も注視をいたしましてこれが編成に対応していったということであります。
  142. 岡本富夫

    ○岡本委員 その決意あるいはまた方針というのはわかるわけですけれども、これは私ども公明党が去年からずっと、何とかして経費をむだ遣いなく、要するに役人天国といいますか、あるいはまた公費天国というようなことがあればこれは申しわけないということで調査をいたしておりまして、これは各省庁のタクシーの利用券ですが、私たちから書類で報告を求めたそのあて先が大体三十省庁に及んでおります。これは五十三年度分だけでありますけれども、各省庁から御協力をいただいて、在京の中央官庁だけの金額を集計をいたしました。何だタクシーぐらい、こう仰せになるかもわかりませんけれども、ひとつ総理、聞いていただきたい、また各大臣もひとつお聞きを願いたいと思います。  質問通告してありますので、大蔵大臣、あなたの方が一番財布のひもを締めくくるところでありますから、あなたの官庁で五十三年度にタクシーを利用された金額を御存じであればお答え願いたいのです。
  143. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十三年度大蔵本省の自動車借り上げ費の実績は一億五千九百万円となっております。職員が二十三時三十分以降深夜勤務を余儀なくされた等の場合、タクシー券を利用させておるというふうに承っております。そして、これは目の庁費の中から支出したものでございます。  支出の具体的な方法等についての御質問がありました際は、事務当局をしてお答えさすことをお許しをいただきたいと思います。
  144. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは大蔵省は、この三十省庁の在京官庁の総計を握っていらっしゃいますか。
  145. 田中敬

    田中(敬)政府委員 予算統制上は、包括的な目・庁費を統制いたしておる関係上、庁費の支出の細部については把握いたしておりません。
  146. 岡本富夫

    ○岡本委員 けさ一部の新聞に出ておりましたけれども、大蔵省を初め在京官庁分だけで十一億二千四百五十万円。私はタクシーを絶対使うてはいかぬとは言わないのです。しかし、この巨額なむだ遣いといいますか、ここらに若干メスを入れなければならぬじゃないか。そこで、わが党がこのタクシー券の利用を全国の官庁にわたって五十二年度分のを出してもらいたい、こういうことで早くからお願いをしてあったわけですけれども、中央官庁の分だけ書類で御報告が来ておるわけであります。  そこで、この中央官庁の分を職員一人当たり利用額を出してみました。そうしますと、十一億二千四百五十万円割る三万一千五百八十五人としますと、一年間に一人当たり三万五千六百円、こういうような数字が出てまいりました。そこで、これは大蔵省に聞きましても、全然つかんでないというのだから聞いても仕方ないわけですけれども、主要出先の職員数八十六万七千五百五十一人、これだけいるわけですが、中央は三万五千六百円でありますから、地方はちょっと現業のところがありますから、そうはかからぬだろうというわけで三万円を掛けてみた。推定したわけですが、そうしますと、三万円に八十六万七千五百五十一人を掛けますと二百六十億二千六百五十万円。そして、この二百六十億円に中央官庁の十一億余を足しますと、二百七十一億五千万円余りとなるのです。このわが党の試算はどうですか、大蔵大臣。
  147. 田中敬

    田中(敬)政府委員 五十三年度についてのお調べでございますので五十三年度について申し上げますと、地方も含めまして、こういうタクシー代等に支出し得るいわゆる目・庁費の総額は八百九十二億円でございます。この中から光熱水料、通信費等すべて支払って事業を推進しているわけでございまして、二百五十億円もの多額のタクシー代が支出し得るものとはとうてい思えないわけでございます。
  148. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと主計局長、はっきりしたタクシー代はあなた、つかんでいますか。つかんでいないのでしょう。
  149. 田中敬

    田中(敬)政府委員 予算というものは包括的な目・庁費ということで統制をいたしておりまして、その庁費の執行につきましては、各省各庁の長が責任を持って執行していただくことになっております。各省とも、その執行に当たっては十分適正を期しておられるというふうに存じます。この庁費の細目を大蔵省がさらに会議費あるいはタクシー代というふうに分けて統制をするというようなことは、予算の効率的な執行上、いかがなことであろうかというふうに考えております。
  150. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、これは大蔵大臣どうですか、いろいろ予算があってそして決算がある。予算がなくて決算がある、これもおかしいんじゃないですか。  会計検査院長、来ていませんか。来てないな。  では、お聞きしますけれども、五十三年度の各省別の予算を大蔵省はどうつかんでいますか、タクシー利用券について。
  151. 田中敬

    田中(敬)政府委員 先ほども申し上げましたように、全会計に占めます庁費の総額が八百九十二億円である。これはもちろん、各省別にもこの目・庁費の数字は細目ができておるわけでございますが、五十三年度予算の執行につきましては、もうすでに会計検査院で検査をしておられまして、庁費がいかなる支出をなされたか、適正な支出であったかというような点につきましては、すべて会計検査院の検査によるところと存じます。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 岡本富夫

    ○岡本委員 大蔵大臣、予算があって、何もかもひっくるめて、どう使っておるかわからぬというようなことになるから、こんなにどんどんめちゃくちゃにいっているわけですよね。そこで今度、私どもが五十三年度の予算を、決算は出たのですから予算をもらいたいと言うと、どの省もないと言うのですよ。どの省も、どんぶり勘定になっているからその項目はありませんと、こう言う。どこかの省に一遍聞いてみましょうか。まず大蔵省、その予算があるように言っていましたか。これは質疑通告をいたしておったわけですが、いかがですか。
  153. 松下康雄

    ○松下政府委員 主計局長からも申し上げたところでございますが、予算の配賦を受けておりますのは、目・庁費の項目で一括して配賦を受けているわけでございます。したがいまして予算の統制は、この目の中のさらに細分までの統制ということでございませんために、私どももこの庁費の中でタクシー代に相当する部分というものは金額としては承知していないわけでございます。
  154. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは大蔵大臣、あなたにばかり言っても悪いんだけれども、国のお母さんみたいなものです。お父さんというのは、国民が一生懸命にかせいできて税金で払っている、これがお父さんだ。非常にこのごろ、うちのお母さんのところは財政が苦しいと言っているけれども、どこかでむだ遣いしているのではないか、いや焼き芋を買いに行っているのではないかということで子供たちはみんな心配しているわけです。  そこで、こんなタクシー利用券のところの予算なんというのはありません、別にしておりませんと言う。ところが、これはわが党が当委員会で五十一年に要求した。五年間、四十七年、四十八年、四十九年、五十年、五十一年。そのときに、タクシーの利用券については全部出てきておるのですよ、予算が。そうして使われておる。ところが五十三年、五十二年は聞いておりませんのであれですが、五十二年になりますと、この予算というものがなくなっている。これは各省の大臣に、なぜなくしたのか一遍聞いてみたいと思うのですが、そういうわけにもいきません。  そうしますと、五十一年までは予算があって、そしてコントロールされておった。また、使用については十一時半以降、こういうように規定のあるところもある。ないのか出してくれないところもある。まあその話は別として、五十三年のこの予算はなぜ各省が出せなくなったのか。こういうことで細かく出していると非常に手間がかかるしということで、五十三年度からは予算をこうして計上しないようになったのですか。これはだれに聞いたらいいかな、主計局長に聞こう。
  155. 田中敬

    田中(敬)政府委員 御質問の御趣旨が十分理解できない点がございますので……(岡本委員「じゃ、もう一遍言おう」と呼ぶ)いいえ、おっしゃっていることはよくわかるのですが、私どもの予算計上との関連におきまして、若干御意見の違うところがあろうと存じますので、その点を申し上げたいと思います。  いわゆるタクシー代というものは、御承知のように、予算科目としては目・庁費というところがら支出されるわけでございます。いわゆる官庁の事務遂行上必要な物の取得でございますとか、維持でございますとか、役務の調達等の目的に充てる経費として、総合複合科目として目・庁費というものが設定されております。これの使途は、たとえば備品を購入する、紙等の消耗品を購入する、あるいは守衛の被服品を購入する等がございますが、そういう複合科目の庁費として計上いたしております予算でございますので、その中身につきまして、タクシー代が幾らという予算を計上した例はございません。ただ、各省が庁費の執行上、各省の会計コントロールとしてどれくらいのものをタクシー代に充てるというような執行上の問題でございまして、予算の問題ではございません。
  156. 岡本富夫

    ○岡本委員 当委員会にこれもこういうようにみんな来ているはずです、五十一年度まで。ここに予算額と書いてあるのです。予算を提出してもらいたい、そうするとちゃんとこのように、各省全部あるのですよ。ところが五十三年になったらないと言う。あなたがそんなに抗弁するのであれば、実はきのう、これをどこからか聞いて予算額を持ってきた省があるのですよ。そうすると朝方になって取り返しに来た。どこで圧力をかけておるのか。そんなことをあなたが言うならば、これは全部ばらさなきやしようがない。五十一年度までは、こうしてわが党がこの予算委員会で要求し、そしてちゃんと出てきておった。五十三年度になったらそういう予算がないというのは、これはどういうわけですか。こんなもの答弁できないはずはない。あなたはすりかえた答弁しておるのじゃないか。もう一遍聞いてみようか。
  157. 田中敬

    田中(敬)政府委員 いま御提出を申し上げております資料は、私の察するところでは各省庁がお出しになったものと存じます。各省庁といたしましては、財政法に従いまして目に区分された予算の配賦を受けました際、その予算の年間の執行予定額として計上されたものが各省庁におけるいわゆるタクシー代の予算というふうに整理をされているものではないかと存じます。
  158. 岡本富夫

    ○岡本委員 大蔵省も同じよ。大蔵省も出ているのですよ。今度出してくれと言ったら、大蔵省はありませんと言うのですよ。あなた、大蔵省じゃないのか。いずれにしても、五十一年度まであって、五十三年度になったらない。同じ項目です。こういうばかげた――これは委員長、どうですか。そうでしょう。ちゃんと五十三年度の予算をやはり出してもらわなければ納得できない。だから、私たちがこう推定するしかないということで二百七十一億、これに対する反論は、あなたの方は大まかな、そんなに使うていないだろう、こういうことだけの話であって、じゃ何ぼだと言ったらわからない。こういうずさんなことでは私は国民は納得しないと思うのです。ちゃんと予算を出してくれるのか出してくれないのか、そうでなかったらもう審議できない。五十五年も出すかということも聞きたいのですけれども、いずれにいたしましても、私たちはタクシーを全然使ってはいかぬと言っていませんよ。余りにもずさん過ぎると言うのです。これもちゃんといろいろあるのですけれども、中には本当に各省の中からようやってくれた、やってくれという激励もあるのです。そのくらいむだ遣いもあるわけです。本当はタクシー券の使い方とかいろいろあるのですけれども、これはまた次の機会に同僚に譲りまして、このくらいにしておきます。  最後に、官房長官、あなたは各省にわたるわけですからどういう決意で今後臨まれるのか、五十三年度の予算についてはどうするか、これをひとつ聞いておきたいのです。
  159. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  いま伺っておりまして、全国的に幾らになりますか、これは決算で時間をかければわかることだと思いますが、それはそれとしまして、先生前段におっしゃいました公費、これは国民の皆さんの税金でございますので、これを厳正に、使用に当たっては節約をしながら使っていかなければならぬというのはもうそのとおりでございます。この前、電話代の問題でございますとか公務員宿舎の問題があったわけでございまして、これはわかりましたら直せるところからちゃんと直していくということでやってまいるつもりでございますし、いまの点につきましても、これはある程度は使うことは先生もお認めになっておるとおりでございますので、使用方法につきましては厳正にこれを使いますように各省庁に伝達をするということをやりたいと思います。
  160. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、予算の使い方について一言だけ申し上げておきたいことがあるのです。  年度末になりますと、残ると大蔵省が次は切るというのでもう大変なんですね。残したところ、仕事を十分やってそして節約したところはほめて、何といいますか、報賞金というのはおかしいけれども、そういう人は出世させるというぐらいの――とにかく年度末になると使ってしまわなんだら次は大蔵省に切られるというので、各省戦々恐々としておるわけです。そういう悪弊は、せっかく行政の簡素化もやろう、いろいろやろうと言うておるときですから、これはひとつ主計局長にしかと言うておいてもらいたいと思うのです。これは注意しておきます。  そこで次、いよいよ本論に入ります。一九八〇年代のエネルギー問題に当たって、提言を交えながら質問をいたしたいと思います。  いまわれわれは、第四次中東戦争による第一次石油ショックに次いで、イラン革命を契機に第二次石油危機に直面しておる。この時点で最初に必要なものはエネルギーの節約であり、省エネルギーであるということは言うまでもない。しかし、いまのままの産業構造、都市構造のままではせいぜい五%から七%どまり、うまくいっても一〇%どまりであろう。現在のエネルギー多消費型の産業構造と都市構造を転換するのには相当長い期間が必要であろうと思う。現代語で知識集約型の産業への転換は、そう手軽にはできない。都市構造の改造も、現代のビルは外界と遮断する閉鎖型で、必要エネルギーの二ないし五倍をむだに消費し、さらに、職住近接が計画的にできていないゆえにマイカーを初め輸送に大量なエネルギーを浪費している。  なお、省エネルギーといっても節約に限界があり、代替エネルギーといいましても、新エネルギーの開発といっても、一九八〇年代に関する限り余り期待はできない。太陽熱の大量利用は二十一世紀のエネルギーであり、石炭も、石油と比較にならぬ公害問題と貯炭増あるいは石炭灰の処分地問題が付随して起こり、その解決が決め手になると思います。  そこで、石炭の液化、ガス化の開発も恐らく九〇年代にならぬと商業ベースには乗らぬのではないか。原子力発電も稼働率が低過ぎる。一年のうち半分はとまっている。その原因は放射能漏れ等のトラブルであります。なお、燃料の核燃料物質ウラン235の輸入も大半は米国の許可が必要で、カーター大統領の核政策により、いつとまるか不安定である。水力、地熱発電も、環境問題、水利問題で相当困難で、八〇年代には多量には期待できない。したがって、まだエネルギーの大半は石油に依存する以外にないと思います。  そこで、中国石油、メキシコ石油等もそれぞれすぐには間に合わない等を考慮に人れますと、八〇年代は、わが国の石油の中東依存度はやはり七〇から八〇%に近いと見られ、これを引き下げるのはちょっと困難ではないかと考えられます。したがって、日本日本経済の運命は、中東石油をいかに安定的に一バレルでも多く、一ドルでも安く買うことができるかにかかっていると言っても過言ではないと思います。  そこで、総理にこの中東外交についてお聞きをいたしたいのでありますけれども、わが党の竹入委員長が、こういう状況を踏まえまして、わが国の石油の約三〇%を輸入しているサウジアラビアを中心とした中東諸国との友好こそが大切だということで、昨年末の臨時国会及び今国会で中東外交を強く要求した。それに対して総理が今回特使を派遣することに決定したということはまことに当を得たと思いますけれども、園田さんが、きのうはイランへ行くということだけわかりましたけれども、今度どういう国に、あるいはまたどういう内容を持っていくのか、あなたの特使でありますから、どういう考えを持っておるのかを先にお聞きしておきたいと思います。
  161. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 中東並びに南西アジアはいま非常に緊張が高まっておる状況でありますことは御案内のとおりでございます。したがって、こういう時期におきましてあの方面の首脳と意思の疎通を図っておく必要があると存ずることが一つでございます。  それから、いま岡本さんも仰せになりましたように、わが国の原油の七割五分程度を中東から輸入いたしておるわけでございます。それは漸次分散化を図っていくにいたしましても、当面急にそれを減らしてまいるということも仰せのように大変むずかしいわけでございまして、産油諸国との間の理解と友好はいよいよ確実なものにしておかなければならぬことはもとよりでございます。したがって、こういう平和外交の立場から、石油資源外交の立場から、特使を煩わして関係国との間の理解を深めていくということが目的でございます。  どこへ行くかという問題でございますが、きのう八木委員に対しまして私が一応お答え申しましたけれども、受け入れ国側の事情もいろいろ打診をいたしておりまするし、特使を中心にいま鋭意検討いたしておりまして、まだ最終的にどこへ行く行かぬというところまでは決めておりませんけれども、あの付近の主なる国々はお訪ねいただかなければならぬと考えて、いま鋭意検討をいたしておるところでございます。時期でございますけれども、今月中旬にはお立ちいただくような手はずにいたしたいものと考えております。
  162. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、中東外交について、実はこの間まことに申しわけない話ですけれども大平さんがオーストラリアへ行かれた、これに対してこういうコメントが出ているのですよ、神風訪問。確かに外務省がずっと刻んで現地の時間表をつくって、さっと風が通り抜けたような勢いで回ってしまったというのです。だから、地元のそこの国の一般の方々に対する印象というものはほとんどなかった。せっかく高い公費を使って行くのですから、やはり少し落ちついて、特に向こうの国なんかは日本と違って食事を二時間もかけて食べるところですから、外務省のスケジュールに沿ってばっと行くというようなことは、これは一考が必要なのではないか。  そこで経済研究所の提案もありますがこれは後にしまして、総理、これは「大陰謀」という名前がついていますけれども、この本を私は読んでみました。この方は志村さんという方ですが、新聞記者なんです。この方は江崎さんが通産大臣のときに中東にずっとついていかれた。非常に克明に、また大切な提案をされておるのです。だから、これは私は、ひとつ総理も、それから今度行かれる特使も、それからお金を出す方の大蔵大臣、それから外務大臣、こういう方は一遍一読する必要があると思うのです。私は、この本だけ読んだのではなくして、やはり百聞は一見にしかずということで御本人さんに会ってみまして、今後の中東外交のあり方ということをよく聞いてみたのです。この中にたとえば、江崎通産大臣がサウジアラビアを訪問したときに、実力者であるところの皇太子のファハドさんと石油相のヤマニさんに会えなかったというのです。これは日本から来たときはただ油ごいに決まっておるのだということで、通産の事務当局が会わしていろいろしょうと思ったのだけれども、両方とも逃げてしまって会えなかった。  それから、これは外務省はよく聞いておいてもらいたいのですが、この江崎さんが会えなかったという原因の一つに、わが国の石油の三〇%を依存するところのサウジアラビアの大使が七九年の六月以来四カ月も空席だった。それが一つと、それからサウジアラビアの大使館は、館員十三人のうち外交官試験をパスしたいわゆるキャリア外交官は、臨時大使の参事官と一等書記官だけであった。アメリカのワシントンに日本大使館がありますけれども、ここではキャリアだけでも十三人いる。いかに外務省がこの大切なサウジアラビアを軽視しておるかということで、向こうへ行って非常に憤慨をしておるわけです。聞くところによると、外務省は欧米が主流で、色の違ったところはどうもというようなあれがあったのか、七三年三月の十五日、六日にOPECのウイーン総会があった。そのときに取材に行ったところが、パーティーがありましたけれども、そこに日本の大使が来ておった。ほかの各国の首脳はヤマニ石油相とかあるいはそういう産油国の首脳と一生懸命に話をしておったけれども日本の大使は三十分か一時間もいずにすぐ帰ってしまった。こういうような非常に示唆に富んだお話があるわけです。私はこの本をお読みし、また本人とお会いしましていろいろ聞きまして、非常に大切なことだと感じました。  もう一つは、各国、要するにフランスとかあるいは西ドイツ、英国、こういうトップクラス、外務大臣とかあるいは首相とか、こういう人たちは気軽に中東を訪問して、そして何遍も何遍も行って話をして仲よくなっている。ところが、日本の外交というのは、本当に鐘や太鼓でわあ行くぞということでありますけれども、非常に少ない。これは一々言うわけにいきませんが、ただ記録に残ったのは六回であった。ここにこういうことが書いてあります。「アラブ首長国連邦という国があるけれども、この小さな国に世界で最も威厳の高い大統領、フランスのジスカールデスタンが七八年一年間に七回も訪れておる。そして、日本は便りのないのがよい便りだというけれども、アラブはそうではないのだ。それは通用しないのだ。」だからトップ外交、それから気軽に行く、こういうことを提案いたしております。しかも、直接お話を聞いてみますと、アラブ民族は日本民族の研究を非常にやっている。特に明治維新を尊敬しているというのですね。要するに、油のある間に何とか国をちゃんと立て直したいというので、非常に研究もしている、こういうようなときだ。したがって、向こうの実情をよく調査をし、じっくりひとつ、何日から何日間、こう言わずに、向こうの実情あるいはどうすれば協力できるかを勉強してもらいたい。聞きますと、サウジアラビアなんてお金持ちですから、医療問題とか技術とか、そういうものを持ってくればいいのだ。韓国ですか、非常にうまくやっておるらしいです。こういうことが全部ここに細かく出ておる。  そこで、これは外務大臣に聞きますけれども、これをお読みになったことがあるかどうか。また、先ほど申しました中東外交にいまより十分な考え方をひとつ、前の外務大臣と違いますから考えていただいて、そういうような手を打っていただけるのか、これをまず外務大臣に聞いておきたい。
  163. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 残念ながらいまの御指摘の本はまだ読んでおりませんけれども、なるべく早い機会に拝見したいと思います。  中東問題につきましては、これは園田前大臣も非常に重視しておられましたし、私も同様に中東が日本の外交の一つの大きな重点であるということで、先だっての外交方針演説の中でも申しておるわけでございます。一つには、アラピストといいますか、アラビア語を話す人の数はこの五年で約倍にふえて、現在外務省で五十四名程度おりますけれども、人の養成にかなり時間がかかる点がございますけれども外務省としては極力力を入れておりまして、このアラビア語でも重要なポジションにつく人たちも、現在大使があの地域に二人アラビア語の人がおりますけれども、御指摘のように、私どもの方としても中東外交の重要性を認識いたしておるわけでございます。ただ、全体として中東問題を、資源だけではなくて中東の平和と安定ということに将来はだんだん日本の外交も役割りを果たす必要があるということもあわせて考えておるわけでございます。
  164. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、向こうの安全から何もかも考えてやろうというより、まず向こうの内情を知ってくださいよ。大きなことを言ったって、向こうの方と全然かけ違ったら話にならない。これを要求しておきますよ。  総理、こればかりやっているわけにいかぬので、結論といたしましては、今度園田特使に対して、要するに、向こうの首脳級と会うのもよろしいけれども、現地に行っている日本人、最前線で働いている人たちとも会って本当に――この中に石油会社の林さんなんというのは非常に向こうの現状をよく知っている。また、そういうことですから本当に現状をよく知ってもらいたい。  最後に一つだけ、この点について、実は居眠り外相という名前が出ているのです、悪いのですけれども。実はこれはクウェートの皇太子が日本へ来たときに、外務大臣、ちょうどお体が悪かったのか、居眠っておったというのですね。それで非常に腹を立てて、それがまだ向こうにずいぶん根強く残っておる。外務省があのときはかぜを引いておったのだと言ったのだけれども、なかなかまだ語りぐさになっているらしい。ですから総理、あなたが、この前竹入委員長が提唱したように近い将来一遍お行きになって、やはり会えば、そうでなかったんだ、ああ、やはり日本総理大臣はりっぱな人だ、こういう印象を与えておかなければならぬ、こう思うのです。だからひとつ、やはり総理自身が一遍、特使が帰ってきた後、早急に中東を訪問なさる考えはないか。これをひとつお聞きをしておきたいと思います。  それからもう一つは、民間外交が大事ですので、超党派でやはり気軽に定期的に、一年に一遍とか、こういうようなことを考えたらどうかというような提案があったのです。総理、ひとつこの二点について最後にお聞きしてこの中東問題を締めくくりたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  165. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 民間外交、これは、外交は総力を挙げて官民を問わず一体となってやらねばなりませんので、私どもとしてはその点気をつけてまいらなければならぬと考えております。  それからまた、私は中東訪問でございますけれども、そういう願望を持ち続けておりますが、まだそういうスケジュールを組むに至っておりませんけれども、できるだけ早い機会にそういう機会を持ちたいものと考えております。
  166. 岡本富夫

    ○岡本委員 答弁漏れがありましたね。特使に対して向こうの現地であの人たちの意見も聞いてきてほしい……。
  167. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 特使に対しまして、現地で御苦労いただいております日本人の御意見も十分承るように申し伝えておきます。
  168. 岡本富夫

    ○岡本委員 それでは、本当の本論の長期エネルギー問題、先ほど冒頭に申しましたエネルギー問題の中で、これは通産大臣ですが、「長期エネルギー需給暫定見通し」ということで資料をいただいております。きのうも若干お話があったようでありますけれども、このエネルギー調査会の長期暫定見通し、これは政府が承認したわけですから政府の案と見て差し支えないと感ずるわけですが、そこで五十二年度の輸入原油が全エネルギーの七四・五%、六十年度は六二・九%、六十五年度は五〇%、七十年度は四三・一%、こういうように代替エネルギーに転換しようとしている。この意欲は非常に結構だと思うのですけれども、実現が確かに可能なのか、これが疑わしいのです。必ず達成できるのか、ひとつ通産大臣からお返事をいただきたい。
  169. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 その中にいろいろ前提はもちろんございますけれども、しかし、私どもといたしましてはそのような考えであります。代替エネルギーをぜひとも予定どおり確保したいものだということで、原子力に関しましては、岡本先生は科学技術特別委員会の委員長をやっておられましたからよく御承知のはずで、私から申しませんけれども、それ以外の特に新エネルギー等の開発に関しましては、今年度から思い切った躍進を遂げようというので、財源もつくり、あるいは開発機構もつくりまして、そして近く法案等は御審議いただきますけれども、新しい体制でぜひとも所定の目的どおり進みたいということで、せっかく努力中でございます。
  170. 岡本富夫

    ○岡本委員 進みたい、やりたいと言いましても、できないと困るのですよ。そうでないと、このエネルギーの見通しというのは根底から崩れてくる。これが崩れると、このエネルギーは新経済七カ年計画の基礎になっておりますから。それは後で申しますが、そこでまず最初に、一般炭、これは大体主として石炭火力に使うものでありますが、前提として先に申し上げたいことは、石炭は百万キロワットの発電所に対して二百三十万トンの石炭が要る。これはもう皆わかっておりますから答弁は要りません。  そこで、六十年度に政府が見通しておりますのが、二千二百万トンの一般炭を目標にしておるわけです。ところが、日本エネルギー研究所の見通し、これは非常によく調査しておりますが、その見通しを見ますと、六十年度に火力発電として松島の百万キロワット、竹原の七十万キロワット、これが二つできたらいいところ、それ以上に順調にいって松浦一号の七十万キロワット、苫東、苫東というのは北海道苫小牧の東ですが、二号五十万キロワット、これを全部合わせますと大体二百九十万キロワットになるのです。これに要する石炭は六百六十七万トン。これ以外にセメント業界あるいはその他の業界が使いますから、この見通しを立てますと五百万トン。そうしますと、六百六十七万トンと五百万トンを足しますと千百六十七万トン、これぐらいが火力発電あるいはその他に一般炭を使える。そうすると、二千二百万トンというのは、一千万トンも差がある。これは通産大臣、ちょっとお答えむずかしかろうと思うのですが、いいですか。うそを言っちゃいけませんよ。
  171. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 御承知のように、原料用炭の必要分はまず国内炭を優先的に使うのはもちろんでございますけれども、しかしそれで足らぬ分は豪州あるいは華北あるいはカナダ、アメリカ等から輸入する予定にしておりますので、石炭に関しては私は心配ないと思っております。
  172. 岡本富夫

    ○岡本委員 それはとんでもないこと言われたら困るのですよ。エネルギー庁長官、答えてください。いま大臣が言うたのは、二千二百万トンも多過ぎるじゃないかと言っているのに、それにまだ豪州から引っ張ってきたんじゃ話にならないわけであって、書いてあるのを先に言ったんじゃ話にならぬということですよ。エネルギー庁長官
  173. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 事務的に私からお答えを申し上げます。  石炭火力発電所の建設計画は、先ほど岡本先生から御指摘のございましたとおりでございますが、私どもは、現在工事中のものが北海道苫東厚真、それから電発の松島一、二号、それから北海道の砂川四号、これは工事中でございますので、大体そのとおりいくのではないかと思っております。それから着工準備中のものが、電発といたしまして竹原三号、それから常磐共同火力の勿来八号、九号、そのほかに新規のものが三基ございまして、合計いたしますと大体一千万キロワットぐらいになるんではないか、こういうことでございます。  そこで、石炭火力で用います石炭の需要量につきましては、先ほど先生は百万キロワットにつきまして二百四十万トンとおっしゃいましたけれども、私どもは操業率六〇%ではじきますと大体二百万トンという計算をいたしております。そこで、昭和六十年には大体千六百五十万トンぐらいの石炭の需要があるんではないかということでございまして、先ほど先生のおっしゃいましたほかの産業部門、たとえばセメントそれから紙パ業界等の需要分を含めますと、大体計画の数値と一致する、こういうような見解を持っておる次第でございます。
  174. 岡本富夫

    ○岡本委員 二百万トンになりますとさらに減るわけですが、私の言ったのは、あなたは発電所の計画をたくさん言いましたけれども、実際に一つ一つの火力発電所の実情、周囲の反対もありますし、いろいろなところの実情をきちっと踏んだものを私はエネ研からもらったのです。  そこで、六十五年度は五千三百五十万トンの目標に対して火力発電所、いまおっしゃった松浦二号、三号、四号、これを合わせまして二百七十万キロワット、苓北一号七十万キロワット、三隅一号七十万キロワット、能代六十万キロワット、計三百七十万キロワット、六十年度の見通しの二百九十万キロワットと三百七十万キロワットを足しますと六百六十万キロワット。私どもは百万キロワットに対して二百三十万トンと踏んでいる。あなたが言われたように、確かに稼働率は少なくなるから、百万キロワットに対して石炭の必要量は二百万トンとなるかもしれない。一〇〇%稼働したとして大体二百三十万トン要るわけですから、千五百二十万トン、セメント業界あるいはその他の業界で必要なのは七百万トンぐらいと見ますと二千二百二十万トン、こうエネ研では踏んでいるわけです。そうすると、政府の五千三百五十万トンとエネ研が踏んでおるところの二千二百二十万トンを引くと三千百三十万トンの開きがある。六十五年になるとこんなに開きがある、こう言うのです。どうですか。
  175. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほど私がお答え申し上げましたのは、電調審を通りまして現在計画中のものを申し上げたわけでございまして、それ以降の分につきましては、先生御指摘のようなことを私どもも検討はいたしておりますけれども、環境評価等の問題がございまして、電調審を通ります前はまだ検討中ということでございます。もちろん、御指摘の点はよく踏まえておるつもりでございます。  そこで、そういう石炭火力がどの程度の石炭を必要とするかの問題につきまして、稼働率の問題が問題になってくるんではないかということでございまして、その点を踏まえますと、私どもは六十五年の計画もさほど過大なものではない、こういう評価をしているわけでございます。
  176. 岡本富夫

    ○岡本委員 森山長官、ちょっと話がかみませんが、稼働率の問題で私どものところは一〇〇%見た計算ですよ。あなたの方は六〇であるからもっと減るというわけだ。もう少し少なくてもいい、だから、多いんですというのは、これは話がおかしいんだな。次の火力発電所の場所というのは私の方から――最初の六十年度は認められたけれども、後のはまだ電調審を通ってないからというのでおっしゃらなかった。だから、大体いけそうですということであって、根拠はないのです。このエネ研の方がどことどことどこというのをはっきり出してこうやっておるから、積み上げ式でいくときちっと出る。あなたの方は大体いけるのですと、こう言いますけれども、本当ですかと聞くと、ぐあい悪い。なぜか。昨日あなたはこういうふうに答えられた。今度のエネルギーの暫定見通しは、まず石油を四十何%に減らすという目標の上からつくった試算です、こう言う。ところが現実は違うのです。いまになったら、きょうはきのうと話が違って、ちゃんとできます、こういうように聞こえる。これはまあ余り言うてもいかぬ。  そこで、次はLNGについて申しますと、液化天然ガスの導入計画、これは六十年度でこの表を見ますと二千九百万トン、エネ研では東京電力の四百万トン、東京瓦斯の二百万トン、東北電力と新潟共同火力で三百万トン、これを足しますと九百万トン、それから、現在供給されておるものが千五百六十六万トン、これを足しますと二千四百六十六万トンが消化できる。しかし、政府の見込みは二千九百万トンで、四百万トンも過剰見積もりになる、こういうようにエネ研は言っているわけです。  それから次、もう時間がありませんから、新エネルギーの問題につきましては、政府見通しは五百二十万キロリットル、これがエネ研では八十五万キロリットルしか達成する見込みがない。中身を見ますと、石炭液化はだめ、それから太陽エネルギーは七十万キロリットル、アルコールは十五万キロリットル、オイルシェールサンドもゼロ、したがって八十五万キロリットルしか六十年度には達成できない、こういうように見ているわけです。  なお、今度は原子力発電、これは佐々木通産大臣、ぼくと一緒にやったからよくわかると思いますけれども、六十年度に三千万キロワット、こういうように見ておりますけれども、現在運転中が千四百九十五万二千キロワット、それから建設中が五百八十三万九千キロワット、準備中が七百九万キロワット、これで二千七百八十万キロワットを見ているようでありますけれども、たとえば柏崎・刈羽の原発百十万キロワット、それから女川の五十二万四千キロワット、これは非常にむずかしい。こういうことを見てまいりますと、結論としましてこの計画は実現が不可能である、こういうように考えます。  したがって、結論として、新経済七カ年計画の不備はこの間大蔵大臣も認められ、これはやはりもう一遍再試算しなければいかぬという話がありましたから、このエネルギーの長期見通しも、もう一度現実に立って、もう一遍ちゃんとしてもらいたい、これをひとつ申し上げておきたいと思うのですが、通産大臣、これだけはひとつはっきりお答えください。
  177. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お言葉を返すようで大変恐縮ですけれども、たとえばLNGの新規につくる分だけをおっしゃっておりますけれども、そうじゃなくて、いままでの石油火力をLNGに切りかえるという計画も同時に進めていくわけでございますから、そういう点等も考慮し、あるいは原子力等も必ずしも目的どおりいかぬかと思いますけれども、しかし、いま立てております計画はそれぞれ現に折衝中、進めつつあるものばかりでございますので、いまのこの時点でこれを変えて、そしてもっとダウンするということは余りやらぬでもいいのじゃなかろうかというふうに思っております。しかし、せっかくの御趣旨でございますから、できるだけもっと精密な検討もしてみたいと思います。
  178. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産大臣、あなたはLNGはいままでの使っているものも入っていないと言いましたけれども、私千五百六十六万トン入れておるわけですから、間違えないようにしてください。  そこで、もう一遍検討するということですから、これはもう時間がありませんから、大分残ってしまったのですが、最後に日韓大陸棚開発、前に自民党さんが相当強引に押したこの日韓大陸棚開発の問題はどう進んでいるのか。  それからもう一つは、尖閣列島の共同開発について、新聞報道では李副首相が提案をしたとかあるいはまた符浩駐日大使、要するに領土問題をたな上げにして、そして共同開発しようじゃないかというような報道もありますけれども、これに対する政府の取り組み方。日韓大陸棚は通産省ですか、それから尖閣列島の方は総理外務省、これをお答えいただきたいと思います。
  179. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 日韓大陸棚の共同開発につきましては、所要の手続を経まして、昨年秋から具体的に探査作業に着手してございます。第五小地区あるいは第七小地区におきましては日韓両国の開発権者によりまして十月末から十二月初旬まで物理探査が実施されました。ことしはこの物理探査の結果を踏まえまして、第五、第七では試掘をやるつもりでございます。そのほか第八小地区におきましては物理探査を今年度やるという予定でただいま進めております。
  180. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 尖閣列島付近の開発問題でございますが、この東シナ海の大陸棚につきましては、大陸棚に関する海洋法の法理の適用に問題がございますほか、尖閣列島につきまして中国側はわが国と異なった主張を行っているという事実もございます。いずれにせよ、わが国といたしましては、東シナ海大陸棚の石油資源開発に関しましては、同海域における日中間の境界画定問題に関する中国側の考え方も十分聴取することが必要だと考えておりまして、今後ともいろいろな機会に中国側と意見交換を行った上で、共同開発の問題を含め慎重に対処してまいりたいと考えております。
  181. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう時間がありませんので、あとの問題はまた一般質問でやりたいと思っております。  そこで最後に、きのう「むつ」問題が出ましたが、「むつ」法案は五十三年三月に延長したわけですが、五十六年で期限が切れる。したがって、この後、いまの状態で見ますととても修理はそれまでにできない、新しい法制をどうするか。  それからもう一つは、スリーマイル島のあの原発の事故禍を参考にして、原子力発電所の強力な防災体制を早急に計画して、地方自治体や国民に示す、これが大切であろうと思うのですが、これは本予算審議中にこういうことができるかどうか、この二点を科学技術庁に聞いて終わりたいと思います。
  182. 長田裕二

    ○長田国務大臣 原子力船の「むつ」の処理、法的措置がこの国会にできるかというお尋ねでございますが、御承知のように、ことしの十一月末で原子力船開発事業団法が廃止されることになっておりまして、ただいまの法案を御審議されました昭和五十二年のときの御審議の経緯などからいたしまして、新たに研究機能をこの事業団に加えていくということと、それからその後第二次大平内閣の際に非常に重要項目になりました行政改革の問題、そういう趣旨なども織り込みまして、ただいま提出法案の準備中でございます。  なお、スリーマイルアイランドの原子力発電の事故以後の防災体制につきましては、もうかねてからあります災害対策基本法の各県、市町村段階での施策のほか、昨年あの事故が起こりました直後開かれました中央防災会議でさしむき措置すべき事項などということに基づきまして、去年じゅうにも各種研修、専門家の助言、連絡機構等もやりましたが、五十五年度予算におきましても相当の予算がいろいろな措置について裏づけを得ておりまして、これをしっかりと展開していくつもりでございます。
  183. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。(拍手)
  184. 田村元

    田村委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。  次に、工藤晃君。
  185. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して質問を行います。  最初に、去る一月三十日、参議院本会議におきまして、わが党の宮本委員長の質問への大平首相答弁について伺いたいと思います。  大平首相が七〇年代を振り返って、もっぱら困難は外から来た、エネルギー危機で来た、しかし、すぐれた対応力を示してというわけで自民党の対応を非常に自賛して、みずからの政策の結果非常に困難が生まれた、国民生活にいろいろ困難が生まれたということに対して真剣な反省が足りないではないかという趣旨の質問を行いましたことに対しまして、次のような答弁があった。これを全部読み上げる必要もないと思いますが、要するに、消費者物価は二・三%、卸売物価は一・八%、所得は五倍。その後訂正をいただきました。消費者物価は二・三倍、卸売物価は一・八倍、所得の五倍というのは三倍であったという訂正をいただきましたが、どうも最近、七〇年代に国民の賃金や所得が五倍に上がったということを大平首相が方々で述べられているようにちょっと伺いましたし、そういうことが癖になってそういうことを言われたんじゃないかと思いますが、参議院の本会議以外でそういうことを申されていないかどうか。もし申されているならば、参議院の本会議もテレビで伝わっておりますから、わが赤旗はその訂正文を出しましたけれども、何らかの形で訂正していただかなければという感じがいたしますが、その点についてまず首相の見解を伺いたいと思います。
  186. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 七〇年代十年間に、消費者物価指数は仰せのように二・三六倍、卸売物価は指数で申しますと一・八二倍になっておる、そういうことは申し上げたし、われわれの所得は約五倍になっておるんじゃないかということを申し上げたことは事実でございます。その根拠は、国民所得が三・五二倍でございますが、雇用者所得は四・四七倍になっておるということが記憶にございまして、そのように申し上げたと記憶いたしております。
  187. 工藤晃

    工藤(晃)委員 いずれにせよ三倍という訂正が来ましたね。それはもう訂正されたわけですからそれに基づくわけですが、実は七〇年代について言うならば、名目賃金でいえば七〇年から七八年までは、いままで判明したところでは三・〇五倍なんであります。私はこれ以上、大分方々でそういうことを言っておられるのではないかということを追及はいたしません。しかし、七〇年代、あのオイルショック以後大変な経済危機が表面化して、国民の暮らしがどんなに苦難をなめ、そしてまた実質賃金が押し下げられあるいは横ばいになる、そういう実情を体験してきた国民にとってみますと、大変ずれた話だということを感じざるを得ないわけであります。  そこで、もう少しこの議論を進めるために、各国の賃金とか生活の水準を比べるときに一体何で計算するか、それこそ毎日毎日変わる為替レートで比べるのがいいのか、それとも購買力平価で比べるのがいいのか、いずれが合理的と思いますか、この点についてだけ、もう簡単に結論だけお答え願いたいと思いますが、これは経済企画庁長官よろしいですか。
  188. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えを申し上げます。  国民生活を国別に比較する、こういうことでございますが、これはなかなかむずかしい問題でございます。しかし、いろいろな機関がいろいろな調査をいたしておるようでございますので、たとえば日経連でございますか、ああいうようなところの調査も私ども参考にしております。  ただ、いろいろな資料がございますけれども、私はやはり一定期間における消費者物価の上がり方がどうであるか、これが一番大事な問題ではなかろうか、こういう感じを持っておりまして、本年度、五十四年度の消費者物価が、非常に苦しい情勢の中ではございますけれども、諸外国に比べて日本は一番上がり方が少ない。こういう点において、やはり国民生活の基本的な条件というものは、政府の施策だけというわけではございません、労使の間の賃上げ、その他経営者また消費者、あらゆる方々の御協力によってそういう条件がつくり出されておるということが、国際的に比較して日本の生活条件は比較的安定しておる、こういうふうに申し上げてよろしいのではないかと思います。
  189. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私の質問は、国際的な比較をするときに暮らしとか賃金、毎日、きょうは二百三十円だとか二百四十円だ、あれを使うのと、もう一つは消費者の購買力をあらわす指数、それをやるのとどちらが合理的かということを聞いたのですが、それにお答えにならなかった。  消費者の購買力指数というのは、大体同じ内容の生活をやるとき、日本で何円かかりました、アメリカで何ドルかかりました、西ドイツで何マルクかかりましたというそこから出てくることなんですよ。いまみたいに毎日為替変動が激しくて、二百三十円から二百四十円になった途端、その日のうちに日本の労働者の賃金が上がったり下がったりするわけではないのだから、この購買力平価の方が合理的だということは国際的にも研究が進んでいるのです。そういう合理的な比較をやったことありますか。
  190. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 御趣旨のとおり、為替相場が変動しないということが一番望ましい、余り大きな激動がないことが一番望ましいことだ。  それから、生計費指数あるいは購買力平価、こういう点によって私も日経連等で調べておることは承知をいたしております。
  191. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それでは、そういう購買力水準の平価の比較ということもいろいろ関心を持たれているというので、幾つかここで紹介いたしたいと思うのですが、国連でやっている生計費指数、これはニューヨークを一〇〇といたしますと、国民一人当たりのGNPを購買力水準に直しますと日本は十八番目であるということを、東洋経済の統計月報の昨年一月号が伝えているところであります。サミット七カ国集まりましたが、日本が最低でありますし、これは七〇年代の最初のサミットのときも同様であります。  さて、先ほど日経連日経連と出ましたから、これについても申し上げておきますが、これは日経連の労働経済特別委員会が七八年十二月七日に出したものでありますが、これなどは五つの内外の購買力平価の比較と総合を行っているわけであります。西ドイツの連邦統計局と「日経ビジネス」、これは日本の雑誌であります。先ほどの国連職員生計費指数、「ビジネスインターナショナル指数」、これはアメリカの雑誌です。それからユニオン・バンク・オブ・スイッツァランドの指数、この五つを並べまして、一番高いところと低いところを除いて間の三つをそれぞれとっていったのが指数なのでありますが、これによりますと、七七年について日本の賃金は、アメリカを一〇〇として四三・五、西ドイツを一〇〇とすると五二・九、イギリスの七三・〇、フランスの七四・一、それからイタリアの六四・九、それから税引き後でもアメリカの五〇・五、西ドイツの六七・一、イギリスの八六・二、フランスの八四・〇ということになるわけなのであります。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕  いまこれは賃金について述べましたけれども、もしこの日経連の指数でそれこそ年金の水準を比べますと、これは厚生大臣もよく聞いておいていただきたいのですが、厚生年金の夫婦受給者平均七万五千九百三十円、これは七七年です。これはモデルでありません、平均であります。それをいまの指数で見ますと、アメリカは十四万二千百九十九円、西ドイツは十二万八百十八円などとなります。しかも、日本の厚生年金、その老齢年金は全体の老齢年金受給者のわずか一六%でありますから、これは比較にならないわけなのであります。  そこで、以上、東洋経済や日経連が使いましたより合理的な購買力平価の比較におきまして、日本の賃金水準や福祉の一つの大事な指標であるところの年金受給額がこのようなものであるということは、いやがおうでも結果として出てくるわけなのでありますが、こういうとき総理が先ほどもいろいろ数字をお挙げになりまして七〇年代の国民の生活は何もかにもよくいったというような認識ではなしに、こういう真実にもっと政治を近づける必要があるということでありますが、どうですか。こういう点で日本の生活水準の国際比較、購買力平価指数、こういうものを使ってもう一度政府としてもやり直すべきだと思いますが、その点については大平首相の見解を伺いたいと思います。
  192. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま工藤さんの仰せになりましたこと、客観的な調査として私どももこれを認めなければならぬことと思います。それもいわばフローの所得でございまして、ストックの面でなお日本は欧米各国に劣るものがあるように思うのでございまして、私はそういうことを認めないということを強弁いたしておるわけではないのであります。七〇年代、いろいろむずかしい厳しい条件のもとでございましたが、あの十年の間に所得と物価とを比較いたしてみるとこういう状態になっておるということ、このことは他の諸国に比べましてまずい対応であるというよりは、評価できる対応であったのではなかろうかということを客観的に申し上げたわけでございまして、事実を曲げたつもりではないのであります。  そこで、あなたの言われるそういういろいろな角度から日本の所得というようなものを検討して正しい見方をつくっていくということの必要を感じないかということでございますが、それは当然政府として努めなければならぬことだと思います。
  193. 工藤晃

    工藤(晃)委員 客観的な比較はやらなければいけない、しかしまずい対応でなかったということでまだ言われるわけでありますが、どうですか。政府機関として購買力平価指数というのはつくっていますか。それとも研究していますか。これはだれか答えられる人いますか。
  194. 小金芳弘

    ○小金政府委員 企画庁の国民生活局長の小金芳弘でございます。  ただいまの生計費指数なり購買力平価のことにつきまして技術的にお答え申し上げます。(工藤(晃)委員「やっているかどうか」と呼ぶ)はい、これは政府としてはやっておりません。
  195. 工藤晃

    工藤(晃)委員 じゃそれだけでいいですよ。政府としてやってないそうですが、実は労働省の中でやっているのですよ。これは労働統計調査月報の昨年の六月号ですが、「購買力平価の国際平価について試算」というのがあります。それから七七年にもやはりこの中に載っております。  それで、昨年の分についてちょっとどういう結果になっているかといいますと、推計結果によると、昭和五十三年平均では日本の物価水準はアメリカよりも約四割高く、西ドイツよりも約一割高い。したがって、為替レートで換算した名目賃金の比較では、日本を一〇〇としてアメリカ一四二、西ドイツ一四四程度であるのに対し、物価水準を考慮した実質賃金の比較では、日本を一〇〇としてアメリカは一四二ではなしに二〇一、西ドイツは一四四ではなしに一五七程度である、こういうことをもうやられているのです。  ところが、いまみたいに大変皆さん関心がないわけですが、私としてはぜひこういう統計も、労働省の中でもやっておりますから、早急に正式に行うべきだと思いますが、その点についてだけ簡単に御答弁願いたいと思います。
  196. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えいたします。  労働省で国際平価で比較をいたしましたようなことを私も産労懇の場で聞いたことは事実であります。これは非常にむずかしいといういろいろのリザベーションがございまして、しかし、あえて大胆に試算するとこういうことだということをお出しになったことは、私もよく承知いたしております。  それで、いま工藤委員が御指摘になったように、私どもとしては、日本の国民生活の水準はどうであり、またこれから努力すべき方向はどうであるかということは、これはあらゆる角度から検討し、努力の目標を立てていくことは大切なことでございますから、今後においては、先ほど総理がお答えになりましたように、客観的な資料を収集いたしましてあらゆる角度から検討することをお約束いたします。
  197. 工藤晃

    工藤(晃)委員 大変あいまいですが、先ほど大平首相の御答弁の中にも、フローだけでなしにストックの面での乏しさ、住宅であるとか環境であるとか公園であるとか、そういう点もお認めになったと思います。  さて、そこで私は次の問題に移りたい。これは第二の財政危機という問題なのです。これは大変重要な問題なので、ぜひよく聞いていただきたいと思います。  いまわが国が陥っているところの財政危機の深さは、わが党はずいぶん前から強く指摘してまいりました。これは国際比較するときには、国債依存度であるとか、国債の対GNP比であるとか、政府の長期債務残高の対GNP比であるとか、あらゆる角度からもうすでに数字が挙がっておりますので私は繰り返しません。  さて、今後、予算の中の国債費という名前の元利償還ですが、これが一体どうなるかということで、もう今度の委員会におきましてもすでに議論がありましたけれども、今度の財政収支試算で見ますと、まず五十五年度から五十九年度の合計が三十九兆三千八百億円になります。これは表を足していただければそのとおりになります。  さて、その次は、六十年度から六十九年度はどうなるであろうか。これはきょう予算委員会に提出されましたところの資料もあります。これは一つは「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」、仮定計算というのは、六十年度以降の予算の伸びとかあるいは国債発行の伸びというのを仮定を設けなければなりませんから、ここでは六十年度発行額を基礎とし、毎年度の伸びを一〇%と仮定するということに基づいた計算であります。これともう一つ、昭和六十五年度における利払い費もここに書いてあります。こういう表が出ております。  さて、これによりまして、いままで五十五年度から五十九年度は数字が出ておりますから、六十年度から六十九年度について、六十年代のことについて考えなければいけないわけですが、昨年はこういう計算に基づきまして、三月二十日、衆議院大蔵委員会での大蔵省主計局次長答弁で、それは百七十三兆円であるという答弁をいただいております。  さて、ではことしの場合どうだろうか。これは実は利払いの方が六十五年度までなので足し切れないのですが、たとえば私が言うようなやり方でいいというならばそれだけで確認いただきたいのですが、これは繰り入れ状況についてはケース2を使っておりますから、六十五年度の場合は二枚目の表の中で定率繰り入れの二兆六千六百億円と予算繰り入れの五兆四千百億円を足しまして、最後の表の利払いの十三兆六千億円、これを足した数字、つまり二十一兆六千七百億円が当時の国債費になる、仮定を設けた計算ならばなると思いますが、大体それでよろしいですか。
  198. 田中敬

    田中(敬)政府委員 お説の前提に立てば、その程度の数字になるだろうと思います。
  199. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そうしますと、昨年の計算でやりますと六十年度から六十五年度までの国債費が九十三兆円だったのが、今度はさらにふえて百一兆円に上がっているわけです。ところが、あとの五年間につきましては、その後の国債残高の伸びを推していきますと、私たちの計算では昨年は約八十兆円だったのが八十六兆円になります。そうしますと、昨年の百七十三兆円は、ことしの計算でいいますと百八十八兆円ということになりますが、いずれにせよ百七十兆円台から百八十兆円台ぐらいの答えになるという大体の推算はどうでしょうか。
  200. 田中敬

    田中(敬)政府委員 六十五年度までと同じような前提で計算をいたしてみますと、約百八十九兆円程度と思います。
  201. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そうしますと、先ほどの三十九兆円とただいまの首八十九兆円を合わせますと二百二十兆円台に乗るという、こういう大変な国債費になるわけなんであります。  そうすると結論がはっきりします。つまり大平内閣は、五十九年度に特例公債をなくしましょう、こう言っておられますが、それはそれで結構なことだと思いますが、その後に実はいま言いました百八十九兆円という国債費が目の前に出てくるわけであります。そうしますと、この次の段階、第二の財政危機だと思いますが、一体政府はこれに対してどういう対応を持っているわけですか。まず大蔵大臣から伺いましょう。
  202. 竹下登

    ○竹下国務大臣 恐らく工藤委員のお考え方というのは、五十九年までに特例公債からの脱却を図る、そこまでを仮に一つのけじめとして第一期財政再建期間と言うならば、その後は累積した公債の償還に入ってくるわけであるから国債費等が急速度にふえていく、それに対応するのが第二の財政危機だ、こういう御認識であろうと思うのでありますが、財政危機という言葉を使う使わないは別といたしまして、私も、一つの期を画する財政再建のまた一つの年代に入っていくというふうに理解をいたしております。
  203. 工藤晃

    工藤(晃)委員 ともかく六十年度以後十年間で約百八十九兆円、この負担というのは大変なものだと思いますが、この大変さというのを、ひとつ歴史的な比較において考えてみたいと思いまして、私は第二次大戦のときの日本の戦費との比較を行ってみました。  一九三七年の日中戦争から四五年、第二次大戦敗戦の年までであります。幸いなことにこの戦費についての研究は行われております。大蔵省の昭和財政史編集室編、「昭和財政史」第四巻、臨時軍事費があります。監修者は大内兵衛氏、執筆者は法政大学の宇佐美誠次郎教授であります。そこで戦費の総額が一九三七年から四七年、五千二百四十六億円余りが掲げてありますが、実はこの中には四七年まで、つまり敗戦以後の復員費だとかあるいは外資金庫の損失といいまして、敗戦に伴うそれこそ軍票などを出して勝手にばらまいていたそのいろいろな補償などを含めて特殊な費用がありますから、そういう敗戦に伴う特殊な費用を除きますと、今度は一九三七年から四五年の一般会計の陸海軍省費、軍需省費、徴兵費、臨時軍事費の合計について、実は同じ宇佐美誠次郎教授が亡くなられた井上晴丸氏との共著の中で書いておりますが、これが千七百五十四億二千八百万円となるわけであります。いま問題とする戦費と言うときにこの方が近いということは私は宇佐美教授からも伺いましたが、宇佐美教授のこの計算は、いま言った項目についてはそのとおりですか。
  204. 田中敬

    田中(敬)政府委員 失礼いたしました。質問を聞き漏らしましたので、恐縮でございますが……。
  205. 工藤晃

    工藤(晃)委員 だれか聞いた人、答えてください。
  206. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 聞いた人はどなたですか。
  207. 田中敬

    田中(敬)政府委員 委員指摘の軍事費につきまして、「昭和財政史」の計数について照合いたしましたが、大体そのとおりであろうと思います。  それと物価指数の修正でございますが、歴年で指数をお持ちになっておりますけれども、大体これも、その推計額としては正しいと存じます。  ただ、私どもは、軍事費は五十四年度価格に直るわけでございますが、国債費については六十年から六十九年という名目額でございますので、あるいはそれに比較するといたしますともっと軍事費が大きくなるのではないかということのような感じがいたします。  それともう一つ、戦前の経済財政規模と現在のそれとが著しい差がございますので、単純な比較はいかがであろうかと存じますが、相当の大きな財政負担であるということには間違いないと存じます。
  208. 工藤晃

    工藤(晃)委員 先回りして答えていただいたわけでありますが、これを七九年価格に直す。これは戦前は消費者物価指数が整っておりませんから日銀の卸売物価でやる以外にない。これでいきますと、七九年五十九兆二千六百四億円になります。五十九兆円であります。先ほどの今後十五年間の国債費の負担というのがそれこそ二百二十兆円台でありますから、先ほど主計局長が言われた中に、もっと今後物価が上がるだろう、実は物価が上がってもらっては困るのであります。上がらないとするならば、これは三倍を超える負担になります。仮に上がるとすれば、それこそ国民はインフレで苦しむということになってしまうのであります。  このように私がこういう比較を持ち出したのは、第一の点としまして、これまで七〇年代までに行ってきました政府・自民党の公債増発政策というのは大変な誤りがあった。これは、過去こういう誤りがあったというだけでなしに、今後国民に対して十五年間、かつての戦費の何倍にも比較するような負担をかけるような、そういうこれから大きな災いを起こす誤りであったということを、総理、率直に認めなければいけないと私は思うのですよ。  軍事費と公債費、国債費と大変似た点があります。国民の予算の中から福祉をそれだけ押し下げて持ち出されていってしまいます。軍事費では少数の軍需産業の大企業がそれで大もうけします。国債費の方は一番それを持っている金融機関や何かの利益は保証されるわけであります。その点では大変共通性があるわけであります。こういう点におきまして、第二の財政危機がこういう重大な内容を持っているということは国民の前にもはっきり明らかにし、また政府としても真剣にその反省あるいは今後の対応を示すべきだと考えますが、大平首相、どうでしょうか。
  209. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど来、最初の総理との問答の中で総理からもお述べになったことでありますが、私ども、いろいろな手法の相違とかあるいは立場の相違で意見の分かれるところであろうかと思うのでありますけれども、一九六〇年代というものは、まさに所得倍増計画に始まったところの繁栄の時代であったと言えると思うのであります。そこに、やはり基礎になっておるのは、三ドル数十セントの油がついに七〇年には一ドル八十セントまで下がってきた、そういう状態の中で日本はひたすら高度経済成長の道を歩んで、そうして自然増収等々にも支えられてきた。あの東京オリンピックの翌年におきましても、あの苦境を乗り切った力があった。七〇年代になりましてから、まさに原油価格というものは上昇の一路をたどってまいりました。そうしていわゆる一九七一年でございますか、三百六十円の固定相場が崩れました。これは私は新しい時代に入る期を画した出来事であったと思うのであります。そのときに要するに国民の選択は私は間違っていなかったと思うのは、あの苦しいときになお福祉政策等の水準を維持向上せしめながら、それを国民自体の負担にお願いすることなく、政府自体が公債政策というものによってこの不況からの脱出を図って、とにかく今日自律的に民間企業がその基調として拡大傾向にあるという意味においては、私は誤りではなかったと思うのであります。  ただ、おのずからそこに限界がありまして、いま工藤委員工藤委員としてのいわゆる軍事費と国債費との観点から御論じになりましたが、公債依存率から考えてみると、まさに一九七九年、昭和五十四年度当初予算を見れば、四〇%になんなんとした。それがたまたま敗戦の年である昭和二十年の四二%に近づいておる。そこにおのずからの限界ができて、そこで今度は経費の節減とか、そうした歳出、歳入両面にわたって国民の皆さん方の理解を得ながら財政再建をやって、いつでも財政が経済に対応する、その対応力をつくっていこう、こういう時代に入ったのが八〇年代ではなかったか。  したがって、七〇年代、少なくともこの水準を落とさないで維持してきたということは、政府がよかったとはあえて申しません、国民の選択が正しかった、このように私は理解をいたしております。
  210. 工藤晃

    工藤(晃)委員 政府は誤っていて、国民の選択が正しかったということになるわけですが、大体、敗戦のときの四二%を限度にして経済政策をやられたらたまらないですよ、これは。敗戦というのは大変なことなんですから、戦争をやって。それが基準でこのくちいまでふやしていいだろうということをやってきたということをはからずも伺ったのですが、そういうところが誤りだったということを私は言っているわけであります。  さて、それで、第二の点と申しますのは、こういう今後十五年間見渡して、このままいくと、まさに国民は十五年戦争の負担を負わされるようなことになる。しかし、そもそもこういうひどい財政危機を起こした大もとであるところの日本の大企業の資本蓄積のスピードは物すごく速い。昨年は、アメリカを除く五百社のうちに、四分の一の百二十五社が入ってしまった。もうイギリスや西ドイツをはるかに追い抜いている。そしてどの年もGNPに対する企業の設備投資の大きさがもうずば抜けて大きい。そして内部の蓄積も大きい。こういうことできたわけでありますが、これを助けたのが財政、税制の仕組みであったわけであります。  だから、ここのところにメスを入れて徹底的な転換を図らないと、それこそ将来にわたって、十五年にわたって二百二十兆、二百三十兆という重い負担がもろに国民にかぶされてしまう。そのはしりが一般消費税のあの最初の動きだったと思います。今度の予算の中にも公共料金の引き上げや、それこそ福祉の後退などで、大変な負担がかけられようとしている。こういうことでありますから、私はどうしても、この財政危機の大もととなったようなところの、私たちが指摘する大企業本位の仕組みを徹底的に直さなければいけない、それで初めて国民の暮らしを守りながら財政再建の道へ進むことができる、ここではっきり決意すべきだと思います。  そういうことを前提としまして、少し具体的な問題に移りたい。これが道路建設と特定財源の問題であります。ここでは建設大臣、大蔵大臣にも伺いますから、用意しておいてください。  その一つは、いま言いましたように、揮発油税などを道路建設の特定財源として、道路建設とモータリゼーションを急激に進めた方式、これは明らかにもう高度成長の方式であります。  さて、建設大臣いいですか、建設省の「道路行政」によりますと、二百八十四ページに、それこそ第一次道路整備五カ年計画の始まった二十九年から五十四年度まで、GNPが三十倍、一般会計が三十九倍、これに対して道路投資は九十一倍になった。これは大体そういうことですね。
  211. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お話しのように進めております。
  212. 工藤晃

    工藤(晃)委員 その結果どうなったかといいますと、わが国の道路は、それこそ欧米諸国と比べて、道路の延長の絶対値でアメリカに次いで二位であります。国土面積当たりの道路延長では日本が一位であります。さらに、日本は山地が多いわけでありますから、低平地面積、あるいは可住地面積と言っていいでしょう、そこではずば抜けて日本が高いわけであります。そしてこの道路建設の進み方というのは、第一次から第八次までありましたが、第一次が大体四年間で次へ移った、第二次から第六次は三年で次のさらに大きな五カ年計画に移るという、これだけは独特の進み方をしたわけであります。  そしてどういうことが起きたかといいますと、道路建設が行われるために自動車がふえる、自動車がふえるためにまた道路需要がふえる、それでまた道路が建設されるという一つの循環と、特定財源があるから道路建設ができ、自動車がふえて特定財源がふえるからまた道路建設がふえる、そしてその途中で足りないというと特定財源を上げるというやり方が行われたわけであります。これで実際に大もうけしたのは鉄鋼とか石油とか自動車の大資本であったことは明らかでありますが、しかしそういうことだけでなしに、私は、こういうやり方というのは非常に多くのゆがみを生んだと思うのですね。公共投資の中のゆがみがあると思うのですよ。この道路建設のスピードに比べて、公共住宅の建設はどうですか、公園の建設はどうですか。環境問題では低平地面積当たりの道路延長の長さから出ておりますが、エネルギー問題でも大変な問題が出てくると思いますが、エネルギー政策と今後の道路建設と一体整合性があるのかどうか、この点について建設大臣に伺いたいと思います。
  213. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えします。  これは鶏と卵の議論になりますけれども、私どもは毎年二百万台ぐらいずつふえております自動車社会、これに対応するために大変努力はいたしておりますけれども、なお交通問題は十分な解決を見ていない。せっかく努力を続けておるところでありまして、道路の整備が進むことによって逆に自動車の増産を進めてきたとは考えておりません。
  214. 工藤晃

    工藤(晃)委員 いまわが国は大変重大なエネルギー危機を迎えております。東京サミットで原油の割り当ては今後五年までこれ以上だめだということになってしまったわけでしょう。そうしますと、大体今後の輸入の原油でも、ことしの限度が約三二億キロリットルだとすると、六十年度に約二丁六億キロリットル台になって、その後ずっと横ばいになっていくわけであります。ところが、建設省の方が持っている道路の計画ないしは長期構想を見ますと、第八次計画としていま約二十八兆円を進めているだけでなしに、五十三年度から六十五年度の十三年間にはその三・六倍の百兆円、さらには二十一世紀にかけて二百二十七兆円、八・二倍という長期計画を出しているわけであります。エネルギーの方はもう三億キロリットルで横ばいにしなければいけないのに、道路だけがどんどん延びていく、これでどうして政策の上で整合性がありますか、これは大平首相、お答えください。――これは総理大臣だよ、大蔵大臣と関係ないのじゃないか。
  215. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大蔵大臣と大変に関係があると思います。  いま道路というものがその利用者によって消費されるエネルギーと、いわゆるエネルギーの長期計画というものとの整合性はないではないか、こういうことでありますが、今後の問題につきましても、その整合性を保つような形で国民のニーズにこたえて施策を進めていかなければいかぬというふうに考えております。
  216. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これからの国民のニーズにこたえてと言いますが、さっき私が言ったのは、それこそ特に原油の輸入がいよいよ限定されてきますと、当然揮発油類などが限定されてくるのは明らかであり、そういうことも見通して公共交通機関の問題とか、そういうことを真剣に考えなければいけないときに、道路を建設する側からいうと、二十一世紀まで大変雄大な計画をお持ちになって、およそいまのエネルギー見通しでは考えられないような計画を出している、このことを私が問題にしているわけでありますが、こうした発想が出てくるもとにも、道路というのはいつまでたっても財源があるということからなんですよ。これをやめたらどうですかということでさらに質問を進めますから、やめたらどうですかということのお答え、また後でお願いしたいと思います。  一つ私が言っておきたいのは、これは東京大学の西村肇助教授が計算したことでありますが、自動車を生産するためのエネルギー、使用するエネルギー、道路建設するエネルギー、これは原油の総輸入量の二一%ということなんです。一つのそういう商品でこれだけ使うものはないのですよ。だから、この点は真剣に考えなければいけないということで、このことを前提にしまして次の問題に移りたいと思いますが、それは自動車重量税についての問題であります。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕  さて、自動車重量税につきましては、ここに建設省の「道路行政」五十四年度版という本があります。この中に、三百二ページからこのいきさつなりこれまでの経過が書いてありますから一応読むことにします。自動車重量税、その四分の三が国の一般財源とされた分だとされておりますが、その取扱いは、自動車重量税創設を審議した第六十五国会で問題となった。自動車重量税の創設の理由は、「道路その他社会資本の充実の要請」があげられているが、そもそもの発端は道路財源とくに第六次道路整備五箇年計画の財源不足に対する措置として提案されたものである。しかし、この税の使途について昭和四十七年度予算に反映させるべく、昭和四十六年秋までに総合交通体系のビジョンを明らかにしたうえで、結論を出すこととされた。総合交通体系については、その後運輸省、建設省、警察庁がそれぞれ素案を発表し、これらをたたき台として検討が進められ、昭和四十六年十二月十七日の臨時総合交通問題閣僚協議会において「総合交通体系について」として発表された。」これで結論が出なかった。「自動車重量税の使途配分についてその後明確な規定はなされなかったが、現在は、その税の創設の経緯等に鑑み、国分の八割相当額が道路整備費の特定財源として運用されている。」こう書いてありますが、これは建設省の公式のお考えですね、建設大臣。
  217. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、後ほど詳しく道路局長から御説明をいたしたいと思いますが、その前に、ただいまお話のございました件につきまして私どもは、道路整備の現況は先ほどお話のありましたように、外国と比べまして非常に進んでいると思っておりませんので……(工藤(晃)委員「時間がないから簡単に」と呼ぶ一簡単に申します。むしろ二、三十年おくれておりまして、外国から比べますと、道路整備は半分ほどではないか、二分の一程度ではないかと考えておりますし、また現実に御承知のような現状の中でございますので、私どもといたしましても大臣就任以来、道路整備の必要性につきまして大変な御陳情、御要請をいただいておるような現状でございます。しかも第八次道路整備五カ年計画につきましては、先般二五%のガソリン税の増徴をお願いいたしましたが、なお一割程度の一般財源の補充を必要とする、こういう現状でございます。私どもはそういうような意味におきまして、現在の日本経済あるいは国民の安定という意味からいきまして道路整備は非常に必要であると考えておりますので、その点におきましてはこの特定財源を他に振りかえるというようなことは、現状におきましては適当ではないと考えておりますが、詳しいことは道路局長から説明をさせていただきたいと思います。
  218. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私が聞いているのは、いま私が読み上げた、いまでも自動車重量税の国分であるところの四分の三の八割相当額は道路建設に充てている、運用しているという経過はそのとおりかと聞いたのですから、イエスということだけ言っていただけばいいので、それは何も局長は要りませんよ。イエスですか。
  219. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 実績といたしましてそのように進めております。
  220. 工藤晃

    工藤(晃)委員 実績と言われましたけれども、この八割相当というのは一体どこで決まったんですか。だれが決めたんですか。
  221. 山根孟

    ○山根政府委員 お答え申し上げます。  自動車重量税創設の段階におきまして、道路を使用するそのことのために道路に損傷を与える、これは自動車の重量に応じまして、これは具体的な車軸その他と関係があるわけでありますが、そういった点に着目をして創設をされたわけでありまして、したがってこの損傷者負担、さらには、道路の整備が行われることによる受益がある、そういった観点から、主として道路整備の財源に充てるということから当時八割に見合う額が投入されたというぐあいに承知をいたしております。
  222. 工藤晃

    工藤(晃)委員 その受益負担だということはわかっております。そうでなしに、八割という数字が延々と続いているのはなぜか、どこでそういうことを決めたのか、そういうことです。
  223. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの八割ということは、大蔵大臣の答弁によりまして、そのことが政府の方針としてその後継続しておる、こういうことであります。ただ、おっしゃいますが、この受益者負担の原則とかいう問題は、いま道路局長の答えがありましたし、工藤さんもそれは御理解いただいておるところでございますが、道路整備の水準は近年向上しておりますけれどもいまだ不十分で、そしてその特定財源の額を上回る国費を投入しておる、こういう実態というものを御認識いただきたいということであります。特定財源だけに押し上げられたものでない、こういうことであります。それだけのニーズの多いものに対して政策的に対応しておる、こういうことで理解をいただきたいと思います。
  224. 工藤晃

    工藤(晃)委員 自動車重量税の八割が道路整備に運用されている。しかもそれは一度大蔵大臣が、これは六十五国会のことですかに申されたら、それが延々と続く。何か慣性の法則みたいなもので、最初の一撃が永久に続いているわけなんです。これ自体大変不思議な話なんですが、これは後で聞きます。  それじゃ聞きますが、この道路建設のための受益者負担として自動車を持っている人から新しく税金を取ったわけですが、実際この取ってきた税金を道路建設に向けるというならば、その分は当然、四条公債、建設公債は発行しないで実際税を充てているわけですね、それはどうですか。これは大蔵大臣。
  225. 田中敬

    田中(敬)政府委員 道路財源に自動車重量税の八割を充当しましたのは昭和四十六年度からでございますけれども昭和四十六年度から昭和五十年度までは一般財源からの充当ということで、これに充当された金額は公債の発行対象経費にはいたしておりませんでした。私どもいわゆる経常部門、投資部門と分けておりますけれども、経常部門、投資部門と整理を始めましたのは昭和五十三年度予算からでございまして、その以前はそういう分類をいたしておりませんでしたが、その際におきましてはいまの考えで言えば、いわゆる投資部門の税収という形で一応整理をしてまいりましたが、昭和五十年度に税収不足によって特例公債を発行するような段階に至りまして、私どもはそれ以降は、特定財源でございますところの揮発油税等を除きました道路事業費に対応する一般財源分は、税収といたしましては経常部門の税収、すなわち自動車重量税は経常部門税収として計上いたしておりまして、その財源として別途、道路事業費に見合うものとして四条債を発行いたしております。
  226. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そうしますと五十一年度以後は、税金を払っている人に対しては、あなたの税金は道路建設に充てますと言いながら、充てていないじゃないですか。公債発行しているじゃないですか。財源の二重取りということにならないですか。いいですか、先ほど事実上の特定財源で運用されていると言いながら、実際税金は充てていなくて、そしてそれこそその分は公債発行している、公債費のその負担はまた自動車を持っている人にかかってくるというまことに不合理なことなんですが、つづめて言いますと、八割はこれは特定財源として運用する、運用すれども充当せず、こういう奇妙な税金なのでありますが、この不合理を一体どうしますか。
  227. 田中敬

    田中(敬)政府委員 前提といたしまして、私どもは、税法上もそのように規定されておりませんし、特別会計法上も規定されておりません。いわゆる特定財源と申しますものは、税法もしくはその他の法律によって明定されたものを特定財源といたしております。したがいまして、この自動車重量税につきましては、譲与税になる分あるいは公害補償金等に回る分以外はすべて一般財源であるという認識でございます。  そこで、いま自動車重量税が特定財源として道路に充てられておるのに云々という御説でございますが、私どもは自動車重量税の八割というものを道路事業費の国費負担分のめどとして算定をしておるということでございまして、実質的にこれが特定財源に充てられているというわけではございません。建設省の方の御説明も、特定財源的に実績的にそういう計算のめどに使われているというだけでございます。
  228. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それはおかしな説明ですよ。大体この税金をなぜつくるかというとき、第六次道路計画の税収の見積もりが三千億円足りないから新しい税金をつくりましょう、国民にはそう説明してつくったわけですね。「建設省三十年史」をごらんになってくださいよ。あの中の道路の特定財源表の中にちゃんと入っているじゃないですか。その八割分というのは書いてありますよ。「建設省三十年史」を見てごらん。建設省はさっき言ったように、八割は特定財源として運用するというふうに書いてありますよ。それから、実際予算を決めるときにどうですか、これは大蔵省、よく知っているでしょう。大蔵原案の段階のときに、いわゆる揮発油税と石油ガス税プラス自動車重量税の国分の四分の三がちょっと下回ったということが大問題になって、結局ことしの予算はまさにその部分が確保されたわけでしょう。そしてまた第一、昨年の八月二十二日に道路予算及び道路特定財源の確保に関する決議というのが自民党の政務調査会道路調査会でなされ、この中で、「揮発油税、自動車重量税等の道路財源は、今後にわたり、全額道路予算の財源として確保し、」こういうことになっているわけですね。これは記者会見で発表されたものだから私たちよく知っておりますよ。  私がこういう問題を出したのは、いままで延々と続いたことを、これまで続いたからというのでなしに、この際思い切って、それこそ第二の財政危機ということを前にして、真剣に変えることを考えなければいけないと思ってこういう問題を出しているわけなんです。そういうことで、実際に国民に対しては重量税、これは道路建設のための税金だと言って負担させながら、実は充当してなくて四条債を発行しているという、こういう現状ですから、この問題を解決するには、文字どおりこの自動車重量税はいかなる意味においても、つまり予算の枠を取るという意味においても運用しないということをはっきりさせるべきだと思いますが、どうでしょうか、大平首相。
  229. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今日まで、いま主計局長から申し上げましたとおり、これは法律に特定された特定財源ではない、まさに一般財源であるが、その八割に当たるものを道路財源として実質これを歳出財源に充てておった、こういう事実でございまして、今日もなお道路に対する国民のニーズというものにこたえて、その六十五回国会でございましたかに大蔵大臣から答弁の形で申し上げた方針をいま直ちに変えようという考えはございません。
  230. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そんなのはだめですよ。実際、法律上は特定財源でないということはもう最初からそうなんです。しかし、やり方としては、実際に道路に充てるとするならば、一般財源として受け入れて、税収から道路特会へ回す方法だってあるし、かつてはやったということもあるわけなんですから、それをやってこそ本当の意味で充てたということになるんで、実際に特定財源でないというのであるならば、文字どおり運用の面でもやめることを私は要求しますし、この問題は今後も追及します。  最後に、この道路財源の問題では、先ほど私は第二の財政危機ということを申しましたが、それは何といっても特例公債の償還が昭和六十年度から始まるがゆえに、あのすさまじい負担が起きるわけでありますが、たとえば揮発油税、石油ガス税合計でも五十五年度予算で約一兆六千億円、これをもし一般財源にするならば、五十五年度予定される特例公債は七兆五千億から五兆九千億ぐらいに減るわけであり、これは将来の第二次財政危機対策にもなるわけなんです。もちろんそうすれば、ほかの公債がふえるじゃないかといいますが、公債の総額を抑えるならば、構成として見ればこの方が第二次財政危機対策にはなるわけでありますが、こういう揮発油税も含めて道路の特定財源とすることをやめることを検討すべきであるということに対して、これはこの問題での締めくくりですから、大平首相、答弁してください。
  231. 竹下登

    ○竹下国務大臣 やはり道路特定財源のあり方につきましては、道路整備の必要性、負担と受益の関係等、種々の角度から総合的に検討する必要がありますので、赤字公債から建設公債に振りかわるという理由だけで結論を出すことは適当でないと思っております。ただ、強いて申しますならば、五十一年度税調、五十五年度税調等で答申をいただいております。それは、両論あるところであるが、今後さらに検討することとしたいという御答申がございますので、検討の外に置くというような考えはございません。
  232. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 財政再建は急がなければなりませんし、それの眼目は減債、公債を漸減してまいることでございます。何とかいかにかして公債を減らしていくということにわれわれは真剣に取り組まなければならぬわけでございます。それはひとり道路財源の問題ばかりでなく、あらゆる角度からその目的に傾注した努力が要請されておるものと私は心得ております。  道路財源との関係につきましては、いま大蔵大臣からもお話がございましたことでございまして、長い経緯のある問題でございますけれども、なお検討させていただきます。
  233. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これはきわめて大事な検討事項であり、こういうこと一つ検討できないようならば、これから迫る第二次財政危機とかそれに対しては、それこそ国民にもろに負担がかかるということを意味するわけであります。このことを強く申しまして、私は防衛関係費の問題について伺います。  時間がありませんのでお答えも簡単に願いますが、昭和五十五年度から五十九年度の防衛庁の中期業務見積もりについて伺いますが、その必要経費をどのくらいに見込んでいるのか、この経費のうち、艦艇、航空機はそれぞれ幾らかお答えください。
  234. 原徹

    ○原政府委員 中期業務見積もりは、防衛関係費の全体を見積もったものでございませんので、主要な正面装備事業についてどのくらいになるかという概算をしたものでございます。それは五年間で、正面装備事業でおおむね二兆七千億ないし二兆八千億でございます。それから、おおむねそのうちの二割が艦艇、四割が航空機でございます。
  235. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そうすると、二兆七千億から二兆八千億、その二割が艦艇、四割が航空機、その四割の航空機というのはP3CとかE2C、F15ですから、ほとんどがアメリカ軍の兵器を買うというねらいだということになりますが、ついでにこれも簡単にお答え願いたい。  防衛関係費予算で、第四次防の最後の年である五十一年度と比べて五十五年度は総額でどれだけふえているか、指数的に言って。それから防衛庁本庁の人件費はどうか。それに比べて、武器車両等購入費、航空機購入費、艦船建造費、施設整備費、装備品等整備諸費、施設整備等附帯事務費、研究開発費、この合計で見るとこの間どれだけふえているか、防衛庁。
  236. 渡邊伊助

    渡邊(伊)政府委員 お答えいたします。  四次防終了年度、五十一年度でございますが、五十一年度の人件費、糧食費、これは八千四百七十七億でございます。(工藤(晃)委員「指数でいいですよ、何倍になっているか」と呼ぶ)これは名目でございますが、大体三〇%程度でございます。それから物件費が約七〇%程度伸びております。ただ、これは名目でございますので、私ども仮にこれをGNPデフレーターによってデフレートするとどのくらいになるか……。
  237. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それはいいです。時間がありませんからもう結構です。  このように五十一年度から五十五年度と比べて人件費は約三〇%ですが、武器車両購入費等々は合わせて七〇%ふえている。それをさらに急激に進めるというのが中期業務見積もりなのでありますが、この性格について、これは私伺いましたが、防衛庁内部の参考資料であって、それで、これは大平内閣としての政府の公式な軍事力増強計画とかそういうものではないのかどうか、そこを伺いたいと思います。それもイエスかノーかで結構です。
  238. 原徹

    ○原政府委員 防衛庁が毎年予算要求をいたしますが、そのために業務計画というのをつくるわけでございますが、そのための参考資料としてつくったものでございますから、防衛庁限りのものでございます。
  239. 工藤晃

    工藤(晃)委員 防衛庁限りのものですということになりましたが、先ほど言いましたように合わせると二兆七千億から二兆八千億、相当膨大なものであります。国防会議、これは首相が議長をやっておられますが、この国防会議で何を検討しなければいけないのか、かけなければいけないのかという中には、非常に整備に数カ年の長期を要しかつ多額の経費を要するもの、こういうことになっておりますが、なぜ中期業務見積もりの方はかけなくて済むわけですか、これはちょっと議長答えてください、国防会議の議長、総理です。
  240. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国防会議に諮らなければならぬ段階になりますと当然出てくるものと思います。
  241. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これは大変なことになりますよ。これは五十五年度からですよ。中期業務見積もりはことしからですよ。もう来ているんじゃないですか。ことしの予算は関係があるんじゃないですか。
  242. 原徹

    ○原政府委員 中期業務見積もりはそういうものでございますので、毎年度防衛庁が概算要求いたしますそのものになって要求されるわけでございまして、その毎年度の要求の中で、たとえばF15というようなもの、長期に要するものでございますが、そういうものは国防会議に最終的に御決定をいただいてことしの予算ができておるわけでございます。
  243. 工藤晃

    工藤(晃)委員 いま総理は中期業務見積もりについて、かけなければならない段階にはかけると言いましたが、それと少し違うと思いますが、はっきりさせてください。
  244. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私の言葉が足りませんが、それは概算要求をする場合に、防衛庁として資料として持っている防衛庁限りのものでございましょうけれども、それが概算要求されまして財政当局の間で検討が行われまして、その中で国防会議の議を経なければならぬものにつきましては国防会議に出てくるはずですということを申し上げたわけです。
  245. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それはごまかしですよ。P3Cだとか、そういうような個々のものはかけるけれども、その全体の中期業務見積もりの方はかけないというのは、これはもう完全にごまかしです。しかも、もう一つついているのは、三年ごとに見直すというわけでしょう。見直してまたふやすというわけでしょう。そうすると、ますます自由自在ということになりますが、それこそ、政府が言っているシビリアンコントロールということも大分おかしくなってくるんじゃないかと思います。  さて、三年後に見直すというときに、一体何を基準として見直すのですか。これは国防計画の大綱、あれに基づいて見直すわけですか。
  246. 原徹

    ○原政府委員 五十一年度に防衛計画の大綱ができまして、それで部隊の規模等は防衛計画の大綱の別表にありますところで、あとは更新、近代化をやっていくという基本方針ができたわけでございますので、それを実施するわけでございますが、五十二年、五十三年、五十四年と単年度をもとにやってきたわけでございます。そういうことでもできないことはないわけでございますが、そういたしますと、これから何をするかということにつきまして防衛庁内のコンセンサスができないということもございまして、五十五年から五十九年までの防衛庁限りの見積もりをつくって概算要求を毎年しておこう、こういうことでございますから、まだ防衛計画の大綱の水準に達しませんものですから、三年後に見直すときもやはりその線に沿ってやるということでございます。
  247. 工藤晃

    工藤(晃)委員 防衛計画の大綱に沿って、この中期業務見積もりが三年後にどうも行ってないとか判断するというのですが、国防計画の大綱を決めるのは国防会議じゃないのですか。そして、国防計画のこの大綱に合っているかどうか判断できるのも、これは国防会議じゃないのですか。それがまた、防衛庁の方が勝手に、ああまだ達してない、もっとやろうということになるのですか。これは大変なことなんですよ。いいですか。だから、その点で大変矛盾があるのですね。三年後に見直す、見直す基準は国防会議で決めた国防計画の大綱である。その大綱に合っているか合ってないかを決めるのは国防会議であるはずなんだけれども、それは防衛庁が勝手にやってしまう。はい、これは内部資料でございます、これでいいんですか。
  248. 原徹

    ○原政府委員 防衛計画の大綱には、部隊規模とともに主要な装備品、航空機とか艦艇とか、それが何隻あるいは何機ということが決められてございますから、それに達しなければ自動的にその水準に達していないことになりますものですから、そういうことでやっていくわけでございます。
  249. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それは、国防会議が何をここで検討しなければいけないか、会議にかけなければいけないかという事項からいっても、全くのごまかしなんですよ。そしてまた、この大綱に沿っているかどうかということを決めるのも国防会議のはずなんですよ。それを防衛庁が勝手にやるということなんですが、先ほどの話からいいますと、これはまさに防衛庁内部の内部資料である。ところが、大変注目しなければいけないことは、ブラウン国防長官が一月二十九日に議会に提出した八一年度国防報告の中で「われわれの日本との防衛協力は他の分野でも拡大している。日本はその自衛隊に重要な質的改善を加えている。今後数年間に日本はP3C対潜哨戒機四十五機、F15戦闘機百二十三機、」これは百二十三になっているんですね。括弧して「(主として米製造業者からのライセンスによる生産)E2C早期警戒機八機を含む主要な兵器に約百四十億ドルを投入することになっている。」とありますが、この百四十億ドルを投入するというのはどうも先ほどの二兆八千億と合うようですが、そうすると、日本政府としてはオーソライズされていないところの防衛力あるいは戦力増強計画が、まさにアメリカ政府としてのオーソライズした報告の中に日本政府の計画として出てきたのは一体どういうわけですか。これは日本政府の計画であると言って一体だれがアメリカ政府に伝えたのですか。外務省ですか、それとも防衛庁ですか、それをはっきりさせてください。
  250. 原徹

    ○原政府委員 アメリカ政府に、これは防衛庁限りのものであるという前提をつけて説明したことはございます。
  251. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これは重大な問題ですね。アメリカ政府のオーソライズされた報告の中では、日本の軍事力増強計画として書いてある。それならば、じゃ直ちに取り消してください。アメリカ政府に対して、あれは防衛庁限りのものであって、そして日本の計画ではないということで取り消してください。これは総理、取り消しを早くやってください。――防衛庁長官、出てください。
  252. 原徹

    ○原政府委員 もう非常に条件をつけて、これは防衛庁限りの見積もりである、財政事情が非常に厳しいこともあわせて、防衛庁限りのものであるということで伝えてあるわけでございます。
  253. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私の質問は、国防教書に載った以上、これは日本政府として正式に訂正すべきであります。しかも、ことし予算が組まれてからアメリカのブラウン国防長官が来まして、そして防衛庁長官、久保田さんもうおやめになりましたが、会ったときの模様を私は防衛庁から聞きましたが、ブラウン長官が一番関心を示したのは、中期業務計画が今後見直しできますかということが一つと、今度の予算に中期業務計画は入りましたか、それを何と答えたかと言うと、入りました。にこっと笑いましたかと言うと、にこっと笑いました。つまりアメリカ政府は、ブラウン長官は、これはもう日本政府の確実にやる計画であるということを前提として話を進めている。そのときに防衛庁長官、かわったばかりかもしれませんが、ちゃんと引き継いでいるはずでありますから、その場でやはり、あるいは今後訂正すべきじゃないですか、これは日本としての計画じゃないと。訂正しますか。
  254. 細田吉藏

    ○細田国務大臣 ただいま防衛局長からお答え申し上げましたように、防衛庁としての案であるということについてはっきりさせて、これは向こうへ言ってあるわけでございますので、いろいろな条件がある、厳しい財政事情というようなこともございます。でありますから、これを訂正する必要はないと考えております。
  255. 工藤晃

    工藤(晃)委員 訂正するのは、それこそ年次教書、国防教書にはっきりと日本の計画として出た以上、そうではありませんということをはっきりさせるべきでありませんか。これはもう国防会議の議長以外ありません、総理
  256. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 アメリカの正しい理解を取りつけてあるものと思いますが、なお念を入れて調べてみます。
  257. 工藤晃

    工藤(晃)委員 念を入れて調べて、そしてそういう誤解があるならば解くということですが、しかしこういうやり方というのは、実はそもそも第一次防衛整備計画のときから、アメリカの軍事援助を受けるその受けざらみたいにこれをつくり、またこれに経団連の防衛生産委員会などがいろいろかみまして、アメリカの側と財界の側からこの増強計画というものをまさにいろいろな形で操ってきたというのがこれまでの実態であります。そこにあの航空機疑獄が生まれたんじゃありませんか。このことをやはりはっきりさせると同時に、わが党としては、この問題は引き続き追及する決意であります。  さてそこで、時間も大分たちましたので、私は最後に、予算の問題でどうしてもがまんできないのは、先ほど言いました財政危機、それを打開するという名目で、道路の問題でも軍事費の問題でも、あるいは大企業、大資産家優遇税制の問題でも、これを根本的に見直そうとせずに、それこそ財政危機をもろに国民にかぶせようとしている、こういう姿勢であります。  こういうときに、ひとつこれは大蔵大臣に主として伺うことになりますが、大蔵原案が決まったときに、私は、財政制度審議会の十二月十九日の報告、建議、これを比べたわけでありますが、非常にこれに忠実に盛り込まれたという印象を受けたわけでありますが、そのとおりですか。
  258. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政制度審議会の報告を大変参考にさせていただいたことは事実であります。
  259. 工藤晃

    工藤(晃)委員 事実、財政制度審議会報告の「検討事項」の中の食糧管理、国鉄、社会保障、その中の老人保健医療、結核公費負担医療、児童手当、文教の中での第五次学級編制及び教職員定数改善計画あるいは義務教育教科書無償給与、これらについては文字どおりこの中に取り入れられたと見ざるを得ないわけであります。しかも重要なことは、大蔵原案の段階から政府案に至る間に若干これらの手直しがあったというものの、大蔵大臣、厚生大臣、内閣官房長官、そして党三役が、それこそ児童手当制度について、老人保健医療制度について、その他社会保障施策の所得制限問題全般について五十六年度に見直しするということを出したのは、まさにこの財政制度審議会の内容がこういう形で五十六年度予算にまで引き継がれようとしていることを私たちは見たわけなんです。私は、ここに一つこういう審議会のあり方として非常に重要な問題があると思いますが、この財政制度審議会というのは一体何をやるところですか。これは大蔵大臣に伺います。
  260. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政制度審議会は「国の予算、決算及び会計の制度に関する重要な事項を調査審議」することとなっております。財政法附則第八条でございます。
  261. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そのとおりでありますが、一つ問題なのは、私はこの財政制度審議会の十年間の構成メンバーのリストを手元に持っております。それから、財政制度審議会がこの十年間何を報告し、建議してきたかもしさいに検討してきたわけであります。  この財政制度審議会の特徴というのは、それこそ七五年九月までは経団連常務理事であった小林中さんが会長になって、その後ずうっと元日経連会長の桜田武氏が会長になってきたわけでありますが、まさに財界の最も重要なメンバーがここにずうっと入っているわけであります。なお、最近の構成につきましては、肩書きは、行政管理庁の「審議会総覧」の五十四年版でありますから、その後若干の出入りがあるかもしれませんが、二十三名中七人が大学教授であるとして、あと十人ははっきりとした大きな会社の社長や会長、重役あるいは総裁。桜田武氏のほかには、住友銀行の取締役会長伊部恭之助氏、近畿日本鉄道の取締役会長の佐伯勇氏、三菱総研の社長の中島正樹氏、海外経済協力基金の総裁の石原周夫氏、こういう人たちで占められており、文字どおりわれわれが言っている財界主導の構成になっているわけであります。もちろん大蔵省の審議会に対しましては、財政制度審議会しかり、金融制度調査会しかり、金利調整審議会しかり、保険審議会しかり、関税率審議会しかり、外資審議会しかり、それこそもう財界人がうじゃうじゃ入っているような審議会ばかりつくっているわけでありますが、先ほど大蔵大臣が読まれましたように、国の予算の重要なことを決めると言って、この十年間の答申を見ますと、それこそ社会保障制度はこうしなければいかぬ、農業はこうしなければいかぬ、地方財政はこうしなければいけないということであります。  それで、いまこの地方財政も含めまして、いわゆる予算というのは、特別会計その他合わせますとGNPに対しまして四四・六%という重みを持ったこの部分の一番基本的なあり方というものを、大蔵省のこの審議会の中で財界人が中心になって、そしていろいろ報告や案を出す、それを、先ほどまさしく言われましたように、忠実に大蔵大臣がこれを受けて原案をつくる、そしてそれが若干修正されると、来年度は必ずやるということが自民党党三役と政府の関係閣僚との間で取り交わされるということになっていることを私たち見ているわけでありますが、第一、こういう三菱グループだとか住友グループだとか、経団連とか日経連、こういう人たちがGNPの四四%も超える大事な部分を自分たちの利益に合わせてあっちこっち変えようとするということを放置する、こういうことが一体あっていいのでしょうか。こういうことが放置されれば、それこそこれからこの審議会が、かつては特例公債もっと出せ出せというようなことを出しながら、今度は財政危機だというとたちまち社会保障を後退させようという方向になってきて、それが予算案に入ってくるということを見ているわけでありますが、まさに金権政治というのは贈収賄罪に係るようなことだけでなしに、それこそ財界から献金を受け取って、そして彼らが審議会にポストを占めて、それが政策に入っていくような構造そのものを変えなければいけないと思うわけでありますが、その点、大蔵大臣どうでしょうか。
  262. 竹下登

    ○竹下国務大臣 とにかく先ほど読み上げましたように、この財政制度審議会というものは、個々の経費の配分等を審議するものではなく、まさに大局的な見地から財政制度及び財政運営について審議をいただいておるところでございますので、したがって私は、これらのメンバーを見ましても、現在いわゆる経済界四名、言論界六名、学界五名、その他八名――その他八名というのは、主としてこれは学識経験者としての、従来とも財政にそれぞれの立場で参画された方が多いわけでございますが、そういう構成になっております。したがって、まさに大局的見地から財政制度全般について御審議いただくには適当な方であるというふうに理解をいたしております。
  263. 工藤晃

    工藤(晃)委員 まさにそこに、それこそ財界べったりの姿勢ということを言わざるを得ないわけなんです。まさにこういう人たちが大局的なことを審議して決めるということが重大なんです。さっきも私がGNPの四十何%と言ったのはそうなんですよ。大局に関して影響を与えるような、第一、こういう財界人が自分たちの税金を重くするような提案をするわけもないし、あるいはまた軍事費を減らすというような提案もないし、そうすると結局は大局だけでなしにきわめて細かく、それこそ教科書も無償化をやめなさいとか、児童手当のあれもどうしなさいとか、きわめて大局から突き進みまして細かいことまで出して、それがそっくり入ってきているということを見ているわけなんです。そういうことですから、やはりいま清潔な政治を打ち立てなければいけない、金権政治をなくさなければいけない、幾つか重要な問題がありますが、こういう大事な審議会の構成そのものは、もっと国民の意思が公正に反映されるとか民主的に運営される、こういう方向に向けることもいまの行政改革の重要な観点だと思いますが、管理庁長官、これについて御答弁願います。
  264. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いま大蔵大臣お答えのとおり、財政審に関しまして、そのスタッフをながめましても、決して財界に偏っておるというわけではございません。マスコミも中央紙のそれぞれの方が代表して出ておられまするし、また有名大学のプロフェッサーも参画をしておられて、工藤さんお読みのとおり、財界とおぼしき人は四名程度でございます。もちろん審議会の人選に関しましてはやはり厳正公平でなくてはなりませんから、すでに昭和三十八年の閣議口頭了解におきまして、極力それに関する分野から広く人材を挙げること、並びに長期の留任は禁止すること、あるいは兼務も四回以上はこれを認めないこと、いろいろとそうした厳しい人選の制限がございますから、今後も審議会に当たりましてはそれを守っていきたいと存じます。
  265. 工藤晃

    工藤(晃)委員 四名ぐらいということではありませんよ。実際マスコミという人の中でも、ここに入ってくるのはいわゆる論説委員とかそういう人ではなしに、日本テレビ放送網社長とか、それこそ第12チャンネルの社長とか、社長が入っておられるわけであります。その点が違うということを言っておきます。これは一つ一つ挙げたら大変なことになりますよ。だから、ここでは挙げませんが、しかしそういう姿勢では、これからの大平内閣の行政改革というのは本当に金権政治をなくす、そういう見地を貫くことができないということを強く申しまして、私たちは引き続きこの審議会の構成の民主化ということを求めるものであります。  そこで、残された時間が大変少なくなりましたので、エネルギーの問題につきまして一つだけ重要な問題を指摘し、質問を続けたいと思います。  参議院の本会議におきますわが党の宮本委員長の質問や、予算委員会におきます不破書記局長の質問を通じまして、石油の大会社が輸入原油の価格上昇を上回る製品価格の値上げを行い、電力の大会社が製品価格の上昇をさらに上回る値上げを行っているという実態を明らかにしたわけであります。このように、いま海外の原油が上がっていてその影響をこうむっているとは言うけれども、国民にとって言うと、それは石油大会社がその影響を上回る便乗値上げをやり、さらに電力会社がそれを上回る値上げをやるという二重の便乗値上げが行われているということを見てきたわけであります。  この点については、私はこれ以上もう追及しませんが、ここでは事実を挙げませんが、もう一つ大事なのは、日本の場合は二重の便乗値上げどころか、三重の便乗値上げが行われているというところが大事なのであります。それは何かと言うと、メジャーの問題と総合商社の問題があるからであります。七〇年代に発展途上国が天然資源の恒久主権確立の運動の末、メジャー系の石油開発会社の国有化を進めたことは事実であり、メジャーの原油確保がむずかしくなってきたことも事実であります。しかし、それにもかかわらず、驚くべきことに、第一次石油危機前の七二年と比べて七八年は、メジャーの利益が二・三倍に上がっている。危機で大もうけをした。ところが、第二次石油危機を機会としまして、昨年テキサコは約二・一倍、モービルは約八〇%、ガルフは約七〇%、エクソンは約六〇%利益を上げているわけであります。そしてこの利益は、主として海外で上げているということが伝えられておりますが、政府はこの問題についてどのような調査を行いましたか。
  266. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ちょっと工藤委員は、原油価格の騰貴の二倍どころか三倍の便乗値上げをやっておるという、大変聞き捨てならない発言をなさいましたが、私どもは、先ほど申し上げましたように、物価を抑えることに全力を挙げておるのです。そして便乗値上げは許さない、原価に基づく最小限度のものはやむを得ないけれども、およそ便乗値上げは絶対に許さない、こういう政策をやっておることをはっきりと申し上げておきます。
  267. 工藤晃

    工藤(晃)委員 二つの点があります。  私が言ったのは、便乗値上げが二重、三重に行われておるという点で、二倍、三倍にやっているということをだれも言っていないわけであります。これは速記録を起こして十分ごらんいただきたいと思います。この二重、三重の意味が大事であります。  それならば、どうですか。私たちが出したところの原油の通関価格、その動きをずっと追っていって、二カ月おくらして製品の値上げ価格もずっと追ってきて、ちょうど昨年一年間で、不破書記局長指摘したように、どう見ても約五千億円の水増しがある。十三カ月で言いますと、五千億円台になります。私たちは、この製品の価格を日銀の卸売物価統計によって調べました。あるいは日本経済新聞がちゃんと価格を出しております。さらに私は、卸売十二社の、それぞれ一次から七次にわたりどれだけ値上げしたかという資料を手元に持っております。どう見ても納得がいかない。いいですか。それが一つ。  電力会社の方は、これは指摘したでしょう。値上げの方に一バレル四十七ドルだとか、そんなとんでもない、政府の来年の経済見通しだって三十ドルじゃないですか。どうして四十七ドルなんですか。これが水増しです。しかも、私たち言ったのは、日石の大口値の、それこそ卸売価格、電力の一-三月のですよ、それと比べて電力のあの申請は大変水増しがある。一兆円超える、こういうことを言っているのですが、もし私の意見に御不満なら資料を出してくださいよ、どこが違うか。
  268. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 もう一度お答えいたしますが、原油価格は、去年のうちに二倍以上に、これは石油の単価だけじゃなくて、円レートの低下という問題もありまして、二倍以上になっておるわけです。しかし、灯油とかガソリンは絶対それ以上値上がっておりません。これもはっきりと数字でおわかりでございます。  それから電力会社の問題は、北海道と沖繩については、すでに政府はこれを認可いたしましたが、ほかはこれから査定をするんです。そういうときに、そういうふうな発言をなさるということは、国民に対して私は大変な誤解を与えると思うのです。ですから、われわれはこれからそんなことは許さぬということをはっきり申し上げたい。
  269. 工藤晃

    工藤(晃)委員 大体、いいですか、原油輸入価格の動きと、それから、ここにありますよ、各製品の価格の動きを追っていって、明らかにガソリンの場合は四千八十一億円ばかりの差額がある。こういう計算がどうしても出てくるのです。これは、日銀の卸売統計からやってみても、日本経済新聞からやってみても、私の手元に入りました各社のやつから見ても出るのですよ。これに対して私たちが、これまで繰り返し指摘しましたが、そうではございませんという、これを否定する資料を何一つ出さないでおいて、何ですか。  それからもう一つ電力のことで、電力会社がいま一斉にこういう値上げの申請をやり、その申請のやり方に対して、それこそこの燃料費の見積もり、何ですか四十六ドルとか四十七ドル、こういうとんでもないものを出したり、あるいは減価償却のやり方、さらにはまたあの事業報酬八%という中には、それこそまだ掘ってもいないようなウランをいっぱい入れてやるような、こういうけしからぬやり方をやっている。問題になったばかりじゃありませんか。だからこれを追及しているのに、何を弁護されるのですか。それこそ弁護する必要はなくて、やるべきことは、国民の暮らしを守る立場からそれを厳しく規制することじゃありませんか。それこそやってください。どうですか、通産大臣。
  270. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 手元に私いま資料を持っていないのは残念でございますけれども、私の記憶では、去年十二月とおととしと比較しますと、大体二倍半が――二・三倍が原油の値上がりでありまして、その他のものは大体一七〇か一八〇くらいというふうになっておりまして、決しておっしゃるように原油よりも製品の方が高いというふうにはなってございません。資料を出して御説明申し上げます。
  271. 工藤晃

    工藤(晃)委員 大体そんな大ざっぱな答弁しかできないのがおかしいのですよ。この問題は何度も出しましたし、ちゃんと月々のやつで出してくださいよ。
  272. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま工藤先生から二つの問題が提起されましたので、お答え申し上げます。  一つは、石油製品価格でございます。一つは電力の関係でございますが、まず石油製品価格につきましては、私どもは原油の値段が上がりました後、二カ月後に製品の転嫁を認めているわけでございます。これは国際市況商品でございますから、直ちに値段に反映をする国もございますけれども、従来、日本は二カ月間を経過しないと製品転嫁を認めないというパターンでございますので、それをそのとおりやっているわけでございます。  そこで、二カ月といいますと、油を買いまして通関に大体一カ月、それから通関いたしました後、製品にするのが一カ月ということでございますから、私どもは通関後一カ月、共産党の方で試算されましたのは通関後二カ月という数字をとっておられますので、その間に差が出てくるということでございます。私どもは二カ月のギャップをもって製品価格を決めるということでございますので、これは従来からそのとおりやっておりますので、便乗値上げとは思っておりません。  それから、電力の油の問題につきましては、先般不破先生からの御指摘がございまして、若干私も舌足らずの答弁でございましたけれども、油の値段は、CIF価格である一定の量入れますが、問題は、CIF価格で通関した後にそれぞれの電力会社の発電所へ持っていくコストその他を計算いたしますと、通関価格よりはある程度上回ることは事実でございますので、その間の差が出たものというふうに考えます。
  273. 工藤晃

    工藤(晃)委員 時間が来ましたので、いまの、一カ月ずらして計算したってそういうことは出ませんということを申しますが、さっき私が質問したのに全然答弁していないのは、メジャーが海外で大もうけをしている、これに対して政府、通産省は一体どこでどういう調査をしたのか、この点について最後に御答弁願います。調査する気があるのかどうか、やったのか。
  274. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 メジャーの利益につきましては、一九七九年につきまして、先ほど先生お挙げになりましたように、エクソンが四十三億ドル、モービルが二十億ドル、テキサコが十八億ドル、ガルフが十三億ドル、BPが十二億ドル、こういうことになっております。  その理由につきましては、たとえばエクソンの申しておりますところは、従来極端に低迷しておりました米国外での下流部門、これは精製販売部門でございますが、これは一九七八年は大変需給が緩和したときでございましたので、それに比べまして、七九年は精製と販売部門が大変活発な活躍をした。そのための大幅な収支の改善でございます。それから二番目に、北海の採掘権、これはイギリスの北海でございますが、エクソンは北海に参加いたしております。それから、マレーシアの採掘を行っているわけでございまして、この北海とマレーシアの原油生産増加に伴う増収でございます。それから三番目は、エクソンがやっております化学事業の増収、この三つが増収の理由ということを私どもは聞いておるわけでございます。
  275. 工藤晃

    工藤(晃)委員 もうそんな答弁、お話になりませんが、時間が来ましたので、これで終わります。(拍手)
  276. 田村元

    田村委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  277. 野坂浩賢

    ○野坂委員 質問の要旨を提出をいたしておりますが、順序が若干逆になる場合があろうかと思いますが、総理以下関係大臣の皆さん方の真摯な御答弁をまず期待しておきたいと思います。  最初に、三項目にあります朝鮮の問題についてお尋ねをしたいと思います。  二月一日の朝日新聞の夕刊「素粒子」の中にこういうことが書いてあります。「暗雲たれこめる世界に、一すじの陽光。つかの間のカゲロウにしたくない、南北朝鮮対話。」こういうふうに述べられております。総理もこの問題に触れられまして、本会議で施政方針の演説の中でこう述べられております。「わが国は、朝鮮半島の平和の維持と緊張の緩和を強く希望し、このための国際的な環境づくりに努力を払うとともに、現在韓国において進められている秩序ある変革への動きを歓迎し、」日韓関係を発展させたい、こういう趣旨を御発言になっております。  そこで、あしたから開かれます南北朝鮮の対話、これについて強く緩和を希望されておるわけでありますから、その国際的な環境づくりあるいは日本がこの対話を成功させるためにどのような努力を払ってこられたのか、また、どのような努力をしようとしておるのか、まず総理にお伺いをしたいと思います。
  278. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 南北の対話は、朝鮮半島における南北両当事者の問題でございまして、この話し合いが平和のうちに実のある成果を得ることを私どもは心から願ってきたわけでございます。そういう機運が出てまいったので、これを阻害するようなことのないようにわれわれは十分気をつけなければなりませんし、その進展の過程におきまして、日本としてできることがあればいたさなければならないというように終始考えてまいったわけでございますが、このたび両当事者におかれまして、責任者の間で話が持たれるということになりましたことは、実質的な大きな前進でございまして、このたびの対話が実のある成果を得ることを心から願っておる次第でございます。
  279. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまのお話はきわめて抽象的でありますが、従来しばしば総理は、朝鮮の自主的平和統一を促進をしたい、こう述べられておりますが、間違いないと思います。それで、そのために対話が進められるということは望ましい、こういうことであります。したがって、この環境づくりをやるための根回し、いろいろやられたと思うのですけれども、たとえば中国においでになったときに、中国の首脳部ともお話になった。いろいろなお話があった。そういう中で、韓国側だけにそのことを要望してもなかなかむずかしい。そのために朝鮮民主主義人民共和国とどのような話し合いをするか。言うなれば、外務大臣は、初日にお話がありましたように、経済、文化、貿易、こういうものを積み重ねていきたい、人事が落ちておるではないか、人事もこれから強く進めていきたい、こういうことでございました。したがって、その環境づくりというものを外交的にやっていかなければならぬ、こういうふうに私は思います。  いまの韓国と朝鮮と比べて、貿易の実態というのは一体どういうことになっておるか。あるいは朝鮮民主主義人民共和国とわが国との貿易は、時間がありませんから私から申し上げますが、六十四対三十六、こういうかっこうで、わが国の輸入の方が少ない、こういうことになっておるわけです。これをできるだけフィフティー・フィフティーにしてもらいたい、こういう希望もありますね。あるいは、関税というものは、韓国と比べて非常に違いがあるではないか、こういうことが指摘をされております。これらについての基本的な考え方、それはどういうふうにお考えでしょうか。
  280. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 以上の点については、政府委員から事実の問題について答弁させます。
  281. 木内昭胤

    木内政府委員 韓国との貿易につきましては、往復百億ドル近いものがあるわけでございます。北朝鮮との関係では、いまだいろいろな制約がございまして、四億ドルぐらいにとどまっておると承知いたしております。北朝鮮との貿易につきましては、民間の関係レベルにおかれまして、北朝鮮の方々と鋭意努力されているものと承知いたしております。
  282. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は、そういう意味での環境づくりを進める必要があるのではないか、こういうことを指摘したいわけであります。その関税につきましても、非常に差異があるわけですが、たとえば一例を挙げてまいりますと、銀にいたしますと、北朝鮮は二・四%、韓国は無税。銑鉄は四%、無税。鋼板は五%、無税。セメント八%、無税、こういうことになっております。それは最恵国待遇、いろいろありましょうが、そういう意味で、これから貿易を大きく伸ばしていきたいということになれば、この関税の障害というものはあり得る。これらについて十分これから検討をする必要があるではなかろうか、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
  283. 木内昭胤

    木内政府委員 北朝鮮とは政府間の関係はございませんので、その面での制約がございますけれども、関係の省庁と相談してまいりたいと思っております。
  284. 野坂浩賢

    ○野坂委員 確かに、国交が正常化をしていない、こういうことはよくわかるのでありますが、たとえば中国とは国交が正常化をし、平和協定も実現ができたわけであります。その条約締結ができる前に中国との関税問題等はある程度処理をした。それは衆議院の委員会あるいは参議院の委員会でも附帯決議がつけられて、そういう措置がされておるわけですから、それにならって措置をするということになれば可能性があるということが端的に言い得ると思うのであります。かつての衆議院の大蔵委員会、四十三年三月二十一日あるいは同月の二十八日の参議院の大蔵委員会の附帯決議を生かす、こういう必要はあろうかと思うのでありますが、その点について十分御検討いただけますか。
  285. 木内昭胤

    木内政府委員 御指摘の点につきましては、検討させていただきます。
  286. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう一つ、書記長も述べられたわけでありますが、やはり相手の気心がわかる、そのためには人的な交流が必要である。そういう意味で、ここにお座りになっております田村委員長も、自民党でありますけれども、朝鮮民主主義人民共和国を御訪問になっておる。そして、その中でやはり理解と納得というものをしていく必要があろうか、こういうふうに思うのであります。しかし、行くだけで、呼ぶということは一切政府はやらない。こういう点については、やはり向こうの要人も迎えて、真に朝鮮半島の平和と安全を期する、そういう意味では、やはり進んでそういう交流を図るべきじゃなかろうか、こういうふうに思うわけであります。いろいろな障害もありましょうけれども、そのような措置をとってこそ真の環境づくりということが言い得ると思うのでありますが、外務大臣いかがですか。
  287. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 朝鮮半島におきます南北間の微妙なバランス、最近の事態の推移等もございまして、情勢を判断しながら、長期的には御説のような方向で考えるべきだと思っております。
  288. 野坂浩賢

    ○野坂委員 長期的にお説のとおりということよりも、現実に、あすは朝鮮の自主的平和統一を目指して、朝鮮民主主義人民共和国と韓国との予備会談が始まるということであります。その方向を進めるというのが日本政府の態度であります。さすれば、長期的に考えるというよりも、直ちにそのような方針を決めるべきだ。私は、外務省としてはその方向を進めることが真の日本の平和と安全に寄与するところが大じゃないですか、そのとおり実施をすべきじゃないか、こう思うのです。どうですか。
  289. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 明日から南北の対話が始まりますので、わが国といたしましては、その状況をいましばらく注意深く見てまいりたいと考えます。
  290. 野坂浩賢

    ○野坂委員 常に、日本の外交政策というのは、事実が決まってから、その後で様子を見て、こういうことでなしに、積極的に、口を開けば経済大国、こういうことを言うわけでありますから、日本の国民も朝鮮の民族もそれを願っておる、これが現状なのですから、そういう関係からして、当然そのことは進めるべきじゃなかろうか、こういうふうに思うのです。長期ということではなしに、いまの現状にかんがみて、日本政府外務省のとるべき態度、こういうことは、韓国の皆さんにも理解が必ずいくであろうし、朝鮮民主主義人民共和国はこれを歓迎するであろう、それが日本の、隣国としての果たすべき役割りではないか、私はこういうふうに思うのです。総理はどうですか。
  291. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま外務大臣も申し上げましたように、そしてあなたもいまいみじくも言われましたように、韓国側も理解しできれば納得するというような状態において北朝鮮との関係を徐々に進めてまいるということが手がたいやり方でございまして、一挙に進めていくというようなことはかえって事態をむずかしくするおそれもございますので、そのあたりは外務省として慎重に対処しておることと思います。
  292. 野坂浩賢

    ○野坂委員 慎重に対応して善処していただきたいと思います。  いまの韓国ですね、十月二十六日、朴前大統領射殺事件以来政変が起きた。いまの韓国情勢というのは、外務大臣の外交演説なりをお聞きをいたしますと、非常に秩序ある民主化が進んでおる、またそれを期待しておる、こういうことでありますが、どのように韓国民主化情勢を現状として把握されておるのか、この点について伺いたい。
  293. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 朴大統領死亡事件後、韓国政府は憲法体制について漸進的に秩序ある変革を進める方針を打ち出しまして、昨年十二月六日に崔圭夏大統領も国民の融和を通じ経済的、社会的成長に応じた政治的発展の達成に努力する旨を明らかにいたしました。崔大統領は、右方針に沿って十二月八日、大統領緊急措置九号を撤廃し、それに伴い同措置により拘束された人物が釈放されました。さらに同大統領は、就任式において、今後特別な事情がない限り一年程度の期間内に憲法を改正し、その後できる限り早い期間に大統領選挙等の選挙を実施できるようになることを望む旨を述べたわけでございます。  さらにその後、崔大統領は本年一月十八日の年頭記者会見におきまして、右の政府側の方針に沿って二月中に国政諮問会議を設置し、さらに三月中に大統領の直属機関として憲法改正審議委員会を設置する意向を明らかにいたしました。また、韓国の国会内にも昨年十一月二十六日、与野党議員同数から成る憲法改正審議特別委員会が設置されておりまして、審議が始まろうとしております。今後、憲法改正の方法、内容、時期等について国内各方面の意思の調整が行われるものと見られておるわけでございます。  以上が私どもの見ております最近の動向でございます。
  294. 野坂浩賢

    ○野坂委員 韓国でいま日本の評価といいますか、あなた方政府が発行されております「レファレンス」というものがありますね。これで韓国の国民にアンケートをやっておりますね。日本が悪い、こういうのが約七〇%程度、ごらんいただければ結構でありますが、それは一体どういう事情なのか。先ほども浦項の汚職、疑惑に絡む問題が指摘をされておりましたけれども、今日、日本企業が先を争って韓国に殺到したという事実がございます。今日ここにデータとして持っておるだけでも、太陽電とか、韓国産研、電子キャビネット、マーベル、東京電波、中谷、マフニー、ウェスト電気、大友化成、理想ガラス、東京PAC、東昭電子工業、チノン、韓国テレビ、三星電子部品、起亜産業「韓国ナショナル、こういうところが撤退または給料の遅欠配、そして撤退準備中、こういうリストであります。そういうのが韓国の国民感情を日本に対して悪化させておるという一つの方向でありますが、そういう指導なり措置というものはどのようにされておるのですか。向こうの韓国との合弁の場合は、日本の役員はこちらに帰って辞表を出してしまう、あとは知らぬ、こういうかっこうが随所に起きておるという証拠がありますね。御存じですか、それは。それについてはどのような対応措置をお考えですか。
  295. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの具体的な点につきましては、政府委員から答弁いたさせたいと思いますが、一つ一般的な条件としては、韓国経済がいま全体としてかなり強い不況に見舞われているという状況があるように承知しております。補足的に政府委員から説明いたさせたいと思います。
  296. 木内昭胤

    木内政府委員 韓国における日本に対する評価、これは世論調査などを行っておることを私どもも承知いたしております。韓国における日本の評判というものは北朝鮮に次いで悪いという数字も、これが正しいものかどうか、その評価は別としまして、そういう数字が出ておることも承知いたしております。東南アジアなんかでも問題になりますが、私どもとしては、エコノミックアニマル的な評価もございますので、その点については十分注意してまいらなければいかぬということはっとに承知いたしております。
  297. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういう現実であり、民主化が進んでおるということでありますけれども、注意をしなければならない点がたくさんあるということを御認識をいただきたいと思います。外務大臣責任を持って韓国民主化が進んでおる、こういう評価でありますから、それを前提にして考えていかなければならぬだろう、あなたのペースで考えていかなければならぬ、こういうふうに思います。  そこで、ここにも載せておりますように、午前中にも若干の問題がございましたが、金大中事件がありました。一九七三年の八月の八日、事件発生以来六年六カ月今日たっております。時間がありませんから省略をするところが多いわけでありますが、尹英老、これはかってのフレーザー委員会の中で下手人として規定されております。それは午前中にもありましたとおりにすでに帰国をしておった。外務省と警察庁の連携はきわめて不緊密であったということを指摘しないわけにはまいらぬと思います。その中で、あの事件はKCIAが関与しておったというのは公然たるものだ。田中さん、当時の法務大臣でありますけれども、そういうふうにもお述べになっております。御承知だと思うのです。ここに議事録その他ございますが、要約をして申し上げますと、こういうことが言われております。時間がありませんから一つだけ申し上げます。  七三年九月十三日田中法相が参議院法務委で、明らかに私的犯罪ではなく、公権力の指示なしには起こり得ない犯罪、政府機関の職務行為に関連ある犯罪である、こういう答弁をされております。一連のそういう御答弁があるわけでありますから、そういう実態の中で問題になりました金東雲一等書記官、これにつきましてもKCIAの部員であったことは明らかであります。  そこで、当時のKCIA部長でありました李厚洛、きょうも話がありましたように、一月の十七日、十八日で切れた。週刊ポストあるいは週刊誌の中では、これは米国に亡命をした、こう言明をされております。断定をされております。それで、週刊誌でありますから、信憑性その他についてはいろいろ議論があるだろうと思うのでありますが、そういう状態の中で、いまも警察庁としてはこの金大中事件について捜査を行っておるかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  298. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  警察といたしましては、結論的に言いますれば、継続して捜査をいたしております。現在捜査体制は約二十名でございますけれども、この体制を維持いたしまして鋭意捜査を続行中、こういう状況でございます。
  299. 野坂浩賢

    ○野坂委員 捜査の中で、船についてはたしか天敬丸、それと竜金号、こういうことにしぼられて、最後は竜金だ。自動車については、当時横浜副領事の劉永福、この人の自動車だ、こういうところまでは出て、問題はアンの家というのが問題になったことは御存じのとおりです。いままでの委員会で、アンの家は百六十もあったけれども、二つにしぼってまで調べたということがこの委員会等で御発言になっております。その後六年間も経過をしておるのでありますが、どの程度の成果が上がったのか、具体的にどこから船は出て、金大中氏の発言によりますと、そのときにモーターボートに一時間くらい乗った、静かなところであった、船の中では非常に寒かったというようなことを言われておりますが、六年間の中でどのように捜査をされ、前の高橋警察庁長官でしたか、大方捜査は終わっておるのだ、こういうような発言もあるわけですから、今日までの事情の推移、経過を詳しく述べていただきたい。
  300. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  いま仰せの、船なり自動車なりモーターボートあるいはアンの家、こういったひとつの捜査上のものが出ておるわけでございますけれども、いままでの警察の捜査といたしまして、まず車両でございますけれども、これは犯行当時ホテルの地下駐車場に駐車してありました車三十台、このナンバーを手がかりに、全国で約八千五百台を対象に捜査をいたしました。その結果、地下駐車場から犯行当日の午後一時十九分に出庫いたしました下四けた二〇七七のナンバーの車両に容疑がしぼられるに至りまして、この番号の車両千二百十九台でございますが、これを捜査したところ、横浜にあります大韓民国の領事館の劉永福副領事所有の車両、ナンバーが品川五五も二〇七七、これに対する容疑が濃厚となったということでございます。  それから、次のアンの家でございます。これは金大中氏が連れ込まれた、こういうふうに言われておるアンの家でございますが、これにつきましては、アンという名前、姓、それから金大中氏の供述にございまするエレベーターつきマンション、こういった関連につきましてシラミつぶしにいろいろ予想される地点を調べ、その数約六千件でございますけれども捜査をしたわけでございますが、具体的な特定をするまでには至っておりません。  また、モーターボートの件でございますけれども、これも犯行に使用された可能性のあるものということで約三千隻、それから船舶、これにつきましては約三百五十隻、それぞれ捜査をいたしましたが、発見に至っておりません。  いずれにしましても、出国ルートが、誌上等ではあるいは日本海とかいろいろございますけれども、警察として出国ルートの解明には至っておらない、こういう状況でございます。
  301. 野坂浩賢

    ○野坂委員 六年前と何にも進展していない、こういうことですか。
  302. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 六年前鋭意それぞれ捜査を続けましていまのような状況下にありまして、現在も約二十名の捜査員をもちまして、それぞれの情勢に応じまして新しい補強捜査なりの捜査をそれぞれ続けておる、こういうかっこうでございます。
  303. 野坂浩賢

    ○野坂委員 どういう捜査をやっておるのですか、警備局長
  304. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 どういう捜査といいますか、捜査の内容というものは、一般的に申しますと、われわれの捜査の重点は、まず新たな情報の掘り起こしをしなければいかぬということでの裏づけ捜査でございます。それから関係者の洗い直し捜査、それから既存資料の再検討、あるいは補充捜査ということを重点にいたしまして捜査を継続しておる、こういうことでございます。
  305. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先ほど、田中当時の法務大臣の答弁を申し上げたわけでありますが、そういう事実がない、公権力介入というような証拠は挙がらぬ、そういう意味で、第一次政治決着、第二次政治決着、当時の外務大臣大平総理、財政再建の赤字国債導入も当時の大蔵大臣大平総理、こういうことになっておりますね。そういうことをみんなあなたがおやりになっておる、こういうことになっておるわけであります。  そこで、そういう事実なり、現在李厚洛KCIA部長アメリカ亡命をした、こういうふうに御判断でございますか。それとも、アメリカ大使館等に御連絡になればその真相はわかるだろうと思いますが、御連絡になっておりますか。その実態について外務大臣
  306. 木内昭胤

    木内政府委員 李厚洛当時のKCIA部長アメリカにおるであろうということは、新聞紙上を通じて承知しておるのみでございます。
  307. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかっておるのですね。昨年の暮れに園田外務大臣は、「「日韓」は柔軟対応を 外相が当局に注意喚起」こういう見出しで昨年の暮れに出ておりますが、それは、これまでどおりアメリカから情報その他が出て、朴大統領体制にあった場合には、これを壁として否定をしてきた。しかし、韓国の示す証拠で外務省が誤解をしてはならぬから、いままでどおりのような対応の仕方ではだめだ、こういうことを政変以後は述べられております。外務大臣は御承知ですね。  それで、いま李厚洛の状況というものもある程度把握をされておるわけですから、たとえば警備局長が、何にも国内では進展がない、それならば李厚洛KCIA部長のところに行って十分それを調査するという必要があるのではなかろうか、そのことが金大中氏に対する日本国民としてのとるべき態度だろう、こういうふうに思うのですが、どうですか、政治的な問題ですから外務大臣
  308. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 これは捜査当局の所管の範囲でございまして、米国まで参って調査をするかどうか、諸般の情勢から判断を要する問題だと考えます。
  309. 野坂浩賢

    ○野坂委員 警察当局はどうお考えですか。警備局長ではこういう考え方はなかなかむずかしいと思いますので、国家公安委員長にお願いいたします。
  310. 後藤田正晴

    後藤国務大臣 外国の公権力が介入したという事柄自身が捜査の結果判明しておりませんので、李厚洛さんのところへ当方から出かけていって、それがいかなる事情であれ、お聞きするという段階にまでは捜査が進んでいない、かようなことでございます。
  311. 野坂浩賢

    ○野坂委員 全く誠意がない。一月の二十二日に大平総理日本記者クラブで皆さんと昼食会をやられた。その中で、証拠があればそういうものについての介入は見直しをやらなければならぬ、両国とも、主権国家の間の問題でもあるので、私が命令しても韓国側が了承しなければできぬ、こういうふうにおっしゃっております。国際間には常に諸制約が伴うのだ、いい話があったら教えてくれ、こういうようなお話をなさっておりますね。韓国民主化がされたんだ、こういうふうに外務大臣はお答えになりました。それなれば新たな段階として、また政変後に、園田外務大臣アメリカ情報はあってもこれを否定してきた、しかしこれからは変わるんだぞ、こういうときに、午前中もありましたように金大中氏が望めばわれわれは迎えるんだというようなお話、拒否はしないというお話がありますが、私は事件の推移から見て、大統領候補として接戦をして闘ったあの金大中氏に対して、日本の主権を侵されておるわけですから、大変迷惑をかけた、そういう意味で民主化をされたとする韓国政府に向かって金大中氏に来日をお願いをして、そこで原状の回復をし、謝罪をする、現在おられるわけですから。そのような措置をとるというのは、私はいまの日本政府のとるべき態度、国際的な信用をより確立するためにもその方が望ましい、こういうふうに御提言を申し上げるわけでありますが、総理はどうお考えでございますか。
  312. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この事件は、御案内のように日韓両政府の間で政治的決着をつけた問題でございます。その政治的決着の中には、新たな事実が出てまいりますならば問題を提起することあるべしという留保がありますことも、たびたび申し上げておるとおりでございます。われわれといたしましては、そういう事実が出てまいりますならばこの問題を提起いたしますけれども、そうでない限りにおきまして、この問題につきまして韓国政府にいま問題を提起するというつもりはないのであります。
  313. 野坂浩賢

    ○野坂委員 新たな証拠のない限りは第三次政治決着とか真相究明はおぼつかないというような意味のお話でございました。私どもは、この政治決着が壁になって捜査が進まない、また捜査を進めないというふうにさえ勘ぐられるわけでありますから、真相究明に一層の努力をされて、国民の理解、国民が非常に疑惑を持ってながめておるということを総理は頭の中に置いてこれからの真相究明に一段と強く指示をして進めていただきたい、こういうふうに思います。そういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  314. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いまお答えいたしたとおりでございますが、あなたの御要望は承っておきます。
  315. 野坂浩賢

    ○野坂委員 在日韓国人の政治犯の家族が去る一月七日から、国連の人権部長やあるいはローマ等七カ国の訪問をいたしました。そして人権問題について強く訴えられたわけでありますが、その渡航手続なりあるいは再入国問題について外務大臣なり法務大臣にずいぶんとお世話になりました。元気で二月の上旬にお帰りになったわけであります。心から謝意を表する次第でありますが、これからもこのような人権擁護のために在日韓国人の政治犯の家族の皆さんがお行きになる場合もあろうかと思います。今後ともこれを前例として善処していただきたいと思いますが、そのとおりに考えてよろしゅうございますか。
  316. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回の件は、いまお話しのようなことでまいりました。今後かかる事案が生じました場合には、法務省等関係省庁と協議しながら、人道的な見地からの考慮も加え、ケース・バイ・ケースに対処してまいりたいと存じます。
  317. 野坂浩賢

    ○野坂委員 法務大臣、お願いします。
  318. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま外務大臣の御答弁がありましたとおり、国益を中心にして判断をいたしたいと思います。
  319. 野坂浩賢

    ○野坂委員 きょうもあの傍聴席には、おいでになった方々がたくさんおいでになっておるわけですが、いまもお話がありましたように、国益を害さないというようなことを言っておられますが、人権問題でおいでになった。いわゆる国際人権規約というものも昨年批准をされたわけでありますから、人命は何よりもとうとい、人命は守っていかなければならぬ、そういう意味で私は申し上げておるわけです。外務大臣も前例にならって対処したい、こういうふうにお考えですから、いまの実績から照らして法務大臣としても善処してもらわなければならぬ。国益に照らしてという国益とはどういうふうな関係があるわけですか、教えてください。
  320. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 申し上げるまでもないことでありますが、北朝鮮とはいまだ国交を回復いたしておりませんので……(野坂委員「北朝鮮の話はしてないですよ」と呼ぶ)前例のことを申し上げております。われわれは、やはり関係当局と十分に打ち合わせまして善処いたしますと、こういうことを申し上げております。
  321. 野坂浩賢

    ○野坂委員 今回問題がなかったわけでありますから、善処するということですね。――出てもらうと時間がかかりますから……。  記者会見その他で私たちが承知をしておるところによりますと、国連なりローマ、ニューヨークなり、いろいろと人権部会の皆さんにお会いしたのですけれども、その中でいろいろな意見が交わされております。人権擁護は、生々しくこれは決議されたわけであります。いまの在日韓国人の皆さんはいろいろとでっち上げをされて罪名が着せられておる。しかも徐さん等は刑期が終わっても安全法というかっこうで、また何かがあるかもわからないというかっこうで監獄にぶち込まれている、こういう実態です。だから、人権擁護の立場に立って政府としては十分善処するように韓国側に申し入れをすることが妥当ではないか。     〔委員長退席、瓦委員長代理着席〕 かつてここに座っておりました荒舩委員長等は、政府に対してそれは申し上げる、こういうことをこの委員会の席上で述べられております。また決議もあります。多くを申し上げませんが、そういう点にかんがみて人権擁護の立場に立って、国際人権規約を批准をしておる日本政府としても――他の国際会議において、ワシントンにおいてもローマにおいても、国連の皆さん方が、人権擁護の部会長が、それについては善処する、直ちにワルトハイム国連事務総長に申し上げるけれどもその前にわれわれは動く、こういう言葉で述べられているわけでありますから、日本政府としても善処されるべきだと思いますが、その点について政府の見解をお願いします。
  322. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御質問の点でございますが、在日韓国人は日本にとりましては外国人ということでございます。本件政治犯と言われる人物は、韓国において韓国のの法令に基づき処断されている者で、本件は基本的には韓国人に対する韓国の司法の問題でございまして、日本政府としては容喙し得ない立場にあるわけでございます。しかし、在日韓国人は日本に生活基盤がございまして、日本に親族がいるなど、日本との関係が特に深い外国人であるという観点から、日本政府としてこの問題に関心を持たざるを得ない立場にございます。すなわち、すでに刑が確定した者、特に死刑が確定した者については、韓国政府が人道的観点に立って理解ある配慮をすることは日韓友好関係を促進するものであると信ずる旨、韓国側に折に触れて伝えておるわけでございまして、外務省としても、過去一年間に十数回申し入れをいたしておるわけでございます。
  323. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これからも強く進めていただきたいということをお願いをしておきます。  次に、いまもお話をしましたように、国際人権規約が批准をされました。これを受けて当時の園田外務大臣は、国内的には人権の保障に関する従来の国内施策を一層充実強化するため大きな契機になるという意味を持つものと考えられる、きわめて大きな意義を有するところであり、まことに喜ばしいことであると述べられておるのでありますが、今後、国内人権擁護の水準向上を一層図る必要があると思います。これに対する総理の見解。  そしてもう一点、いまの社会の状況の中で部落問題というのは非常に重要であります。国内の差別問題の中で部落問題は最大の社会問題だ、こういうふうに考えます。同対審の見解においても、市民的権利、自由を十分に保障されないという最も深刻でかつ重大な問題であるというふうに述べられておるわけでありますが、これについて、総理のこの部落問題に対する基本的な見解を述べていただきたいと思います。
  324. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 同和問題は基本的人権にかかわる重大な問題と心得ております。政府は、従来からそうした立場で同和対策関係施策の推進に努めてきておるところでございますが、さらに早期解決のために今後とも積極的な努力を傾注いたしてまいりたいと存じます。
  325. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 人権問題は、内政、外交全体にわたりましてその擁護は基本的に最重要なわれわれの任務でございまして、それを踏まえた上で諸般の問題に対処してまいります。
  326. 野坂浩賢

    ○野坂委員 基本的な見解はわかりました。  同和対策事業特別措置法、これを昨年、三年間延長いたしました。その際に附帯決議がついておるわけでありますが、その意義ですね。附帯決議は尊重をするというお話総理からもございましたけれども、この附帯決議の意義については総務長官はどのように把握をしておられますか。
  327. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 野坂委員指摘のように、昭和五十二年におきまして法律の延長が行われましたが、その際、本院におきまして三項目にわたる附帯決議がなされたわけであります。政府といたしましては、この三項目の附帯決議の趣旨を踏まえて尊重いたしていくことは当然のことと心得ております。  そこで、第一の項目につきましては、実態の把握をせよ、こういうことのようでございまして、昭和五十年におきます基礎調査に基づきまして現在諸施策を執行いたしておるところでございますが、法律の改正に伴いましてさらに実態の調査をせよ、こういうことでございますので、現在各自治体との連絡を密にいたしながら、現在における実態の把握に相努めておるところでございます。  二項目目の問題は、地方公共団体の負担の軽減の問題でございますが、この問題につきましては、補助対象事業の拡大あるいは補助単価のアップ、さらに奨学金や住宅の補助件数の増加等、補助対象の件数の拡大を図りまして、地方公共団体の重負担の軽減に現在極力努力をいたしておるところでございます。  第三項目目の啓発の問題でございますが、この問題につきましても、昭和五十五年度予算におきまして法務省、労働省と私ども総理府と合わせまして二億三千百四十一万九千円の予算を計上さしていただきまして、前年度比一二三・八%の予算によりましてさらに本問題の啓発に相努めておるところでございます。
  328. 野坂浩賢

    ○野坂委員 基本的なこと以外に具体的にいろいろと聞かぬこともお話しをいただいたわけでありますが、実態把握で各省庁の責任者の方がお歩きになっております。特に、ここにいらっしゃいますが、当時の澁谷自治大臣あるいは労働大臣、法務大臣それぞれお歩きになって、実態の把握をされておるわけであります。それぞれの各省は、時間がありませんから、大臣がお行きになった労働、自治、法務の実態の把握はどの程度か、お話しをいただきたいと思います。
  329. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答え申し上げます。  労働省として同和対策地区の住民の就労実態を把握いたしておりますが、ごく概略申し上げますと、一般平均的な状態と比べまして、たとえば臨時、日雇い的な就業実態が多い、安定的な雇用が少ないとか、あるいは大企業が少なく、三十人未満の小規模の就業が多いとか、あるいは従事する職業につきましても専門技術職とか事務職、そういうものが少なくて、単純労務者、そういうものが多いというような実態を把握いたしております。
  330. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 古井前法務大臣、大変御熱心に地方を視察されまして、その御報告も承っております。やはりお話のありましたように、どうも教育を含めた啓発活動というのが非常に足りないような感じであるというようなことを強調されております。  私どもといたしましても、事情が許すようになりましたら現場を視察をいたしまして、善処してまいりたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  331. 野坂浩賢

    ○野坂委員 自治大臣。
  332. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 自治大臣は七月に奈良県に参っておりまして、そのときの地区の人々のお話ではやはり全体的に財政負担が非常に多い、ですから、なるべく補助事業の率をかさ上げするようにということの御意見が多かったようでございます。
  333. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまのとおりだろうと思うのであります。  総理府総務長官にお尋ねをしますが、いまの部落の個所数、何部落と把握しておられますか。
  334. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 お答えいたします。  五十年調査で把握しております地区数は四千三百七十四地区でございますが、その後の追加報告がありましたのが百五十五地区でございます。
  335. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一九三五年には、政府調査によると五千三百六十五、こういうことになっております。若干の差があります。差がありますが、それについては政府は、地方自治体が認めて上げてきたものはそれはすべて受け入れる、こういうことに従来なっておりますが、そのとおりだ、今後その方針に変わりはない、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。
  336. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 同和地区の考え方につきまして、地方公共団体必ずしも十分御理解願ってない面もありますので、いままで、五十年調査の取り扱い等を十分御説明申し上げた上で地方公共団体の御意見を承っております。
  337. 野坂浩賢

    ○野坂委員 第二項の財政の問題、地方団体の負担の軽減の問題、いままで自治省の財政局長が通達を出しておりますね。全事業に対して各省庁は善処するように、こういうことが言われております。総理府総務長御存じだと思いますが、全国市長会の調べで、「年度別同和対策事業財源調べ」というのがあります。これは御存じだと思いますが、国庫支出金はこの同和対策事業特別措置法には第七条に三分の二の補助と書いてありますが、全体の事業から見ますと、国庫支出金というのは大体一九・二%、こういうかっこうになっておるわけであります。したがって、なぜ三分の二のものがこういうことになっておるか。自治省からいまもお話がありましたように、地方の財政負担が非常に高い。これは、事業を指定してなかなかやらせない、しかし、自治体としてはやらなければならぬ、こういう事情で財政局長通達にまでなっておる。加藤元自治大臣は国会において、全事業に対応すべきものだ、こういうふうに考えるということを、明確に述べられております。そういう事情から、結果的に二〇%程度のものしか負担できていない、こういう実情にあるわけです。  これについては、いま三項目については善処するということでありますから、これに対応するように措置をされるものだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか、総務長官。
  338. 小島弘仲

    ○小島(弘)政府委員 国庫補助は同和対策につきまして特別措置として非常に手厚い、いまお話しのように、施設整備等については三分の二でございます。また運営費等については二分の一という原則がございますので、必ずしも全部が三分の二ではございません。(野坂委員「三分の二だよ」と呼ぶ)運営費は二分の一でございます。真近の状況で、五十三年度で見てみますと、これは自治省の地方債充当結果報告でございます、それで見ますと、住宅関係事業を含みますと、国庫の負担割合は全事業費の四五・八%、地方負担割合は五四・二%という数値になっております。お話のように、国庫補助対象でない、県の単独事業もあるわけでございますが、これらにつきましても、国庫補助として適当なものについては極力取り上げるという方針でいままでまいっておりまして、現在の補助対象事業の総数は六十一事業という数に達しております。
  339. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは同和対策室長がなかなか答弁しにくいと思いますが、総理府総務長官としては、自治大臣からも国会で明確な答弁があるわけですから、地方財政負担の軽減は附帯決議の第二項に明確に書いてあるわけですから、事業の内容を拡大をする、そういう方向で進めてもらわなければ困る、これが趣旨だ、こういうことになるわけですが、そのとおりですか。長官にお話をいただいた方がいいと思う。これはそのとおりだということになるのです。
  340. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、本院における決議につきましては十分心得て対処いたしてまいりたいと存じます。
  341. 野坂浩賢

    ○野坂委員 総理大臣もそうですね。
  342. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 さよう心得ております。
  343. 野坂浩賢

    ○野坂委員 法務大臣にお尋ねしますが、この第三項に挙げられております啓発活動ですね、これに関連をして部落地名総鑑なるものが、一度ならず九つの種類をもって今日もなおある。あなたに質問をするとまた時間がかかりますから申し上げますが、人権侵犯の事件のうち差別待遇の事件の問題は、五十二年は二百二十件で、五十三年は二百四十三件、五十四年は集計中というメモをあなたの方からいただきました。だんだんふえておるわけですね。この同和対策事業特別措置法ができたにもかかわらず、こういう差別事件というものは年々累増しておる、こういう実態である。絶滅を期すためにこの啓発指導というものをどのように進められる考えであるか、いつごろまでにこういう絶滅の展望ができるだろうか、私はよくわかりませんので、法務大臣にお尋ねをしたい。
  344. 中島一郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  法務省の担当いたします啓発活動は、人権侵犯事件調査処理を通じて強力に推し進めてまいりたい、このように考えておるわけでありまして、今後とも、差別が許しがたい社会悪であるということを周知徹底させるために一層の取り組みをしてまいりたい、このように存じております。
  345. 野坂浩賢

    ○野坂委員 展望はできませんね。これはいつごろまでに絶滅できるかということは、なかなかいわく言いがたしだろうと思うのでありますから、今日の現況を十分把握をしておいていただきたい、こう思うのです。  最後に、いまの状況からして、五十三年にも百五十五カ所、個所数もふえておる、これから事業をやらなければならぬ、残事業等はまだたくさん残っております、これから出てまいります、あと二年しかない、こういうのが現況であるわけであります。  そこで、いまこの附帯決議三項は必ず生かしますと総理府総務長官は明言をされましたし、総理もそう考えておりますと基本的な見解を明らかにされました。したがって、残されました二年間の中で、第一項にありますように、この法律の総合的な改正や、財政の問題あるいは補助率の問題あるいは範囲の拡大の問題等含めて、法の運用について十分検討するということになっております。そのようにこれから法律の総合的な改正なり法の運用について、この二年間のうちに十分検討され、一つのものをお出しになる、こういうことがこれの意義でありますから、そのとおりである、こういうふうにお考えでございますか。考えておると思いますが、どうです、総理府総務長官。
  346. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 再度申し上げますように、この附帯決議主項目については、これは政府としては尊重いたしていくことは当然のことでございます。  御指摘にありましたように、残事業につきましてもかなりのものが残されておりますが、昭和五十年の調査段階で七千六百四十億ございましたものが、五十五年におきまして一千三百六十億となっておるわけでありまして、消費者物価指数その他補正をいたしましても、二千九百二十億円でございますので、来年度、五十五年度予算、認められるといたしますと二千百二十億と、こういうことになりますので、計算上から言いますと残りは八百億、こういうことになるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、附帯決議第一項ございまして、実態の把握もいたさなければなりませんし、また事業そのものの規模増大、あるいは新規の希望等もあることも承知をいたしておりますので、そうしたことを十分勘案をしながら、この国会の御意思に沿うように努力をいたしていきたい。しかし、法律は三カ年延長されておるわけでございますので、政府といたしましては、その三カ年の中で問題を早期に解決をいたしまして、この結論を得られるように最大の努力を現在傾注しておるところでございます。
  347. 野坂浩賢

    ○野坂委員 残事業については昭和五十年の調査の結果に基づくものであるし、五十三年の段階で百五十五部落、そして地方自治体、そういうものの申告があればそれは政府は受ける、こういうことになっておるわけです。そうすると、その人たちの事業というものは残されておる。あなたがおっしゃった五十年の七千幾らということにはならぬわけでありますから、それらのことも踏まえて、私が申し上げたように、この法の有効期間中に速やかに法の総合的な改正及び法の運用についての改善をやる、これは尊重するわけでありますから、それについても十分に進めていく、こういうことは確認できると思いますが、そのとおりですね。
  348. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 再度申し上げますように、第一項目は、「法の有効期間中に、実態の把握に努め、速やかに法の総合的改正及びその運営の改善について検討すること。」ということに相なっておるわけでございますので、その趣旨について尊重いたしてまいりたいと存じます。
  349. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま御承知のように石川一雄青年、これが約十七年に上ります長い間獄舎につながれております。これに関連をして質疑をしたいと思うのであります。  まず一つは、一般的に申し上げて、検察側というのは証拠のリストをお持ちだろうと思いますが、大体リストを持っておる、これが一般的な形態でありますが、一般的に言ってそうですが、法務大臣。
  350. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ちょっとお尋ねリストという意味がよくわかりませんので、あるいはお答えにならないかと思いますが、刑事事件の立証に当たりましては、立証すべき証拠というものをそろえておるわけでございます。
  351. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、裁判をする場合に、そのリストはお持ちであるわけでありますから、弁護側が証拠開示を要求する、しかし検察側は不利な証拠は出さないということが間々あるというふうに聞いておるわけでありますが、きわめて民主的に、公正妥当、公平な裁判を進めるためにも、証拠というものはすべて開示をすべきだ、こういうふうに私は基本的に考えるわけであります。そういう点についての証拠開示は、検察官の指揮は最終的には最高責任者である法務大臣がおとりになるわけでありますから、当然、裁判の公正を期するという意味で、証拠は開示をされるもの、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  352. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどのお尋ねにもお答えしたところでございますが、どうも委員のおっしゃいますリストというのが私どもよくわからないわけでございますが、一般の事件で立証いたします場合に提出する資料、証拠を一覧表で出すことはもちろんございます。それは検察官側が提出し立証しようとする証拠の一覧でございまして、不要なものは出さないということでございます。  なお、お尋ねが何か検察官の側にとって不利益な証拠をことさらに出さないというように伺われるわけでございますが、一般論といたしまして、検察当局といたしましてそういう特定な証拠についてことさらにこれを出さないというようなことはないはずでございます。
  353. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、弁護人側が証拠開示を求めた場合は、それは出すということでありますね。手持ちのものの証拠は出す、こういうことになりますか。
  354. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 それぞれの事件によって立証のやり方等も異なるわけでございまして、証拠の出し方につきまして検察官側と弁護人側と意見の違いがあることもございまして、間々裁判所からそれについての指示があるというようなことがございますけれども、そういうようなルールに従った方法で処理されておるわけでございます。
  355. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一般的に言って、手持ちの証拠は出すのだ、こういうふうに理解していいわけですね。
  356. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 同じようなお答えで恐縮でございますが、検察官側として立証に要する証拠は十分出すわけでございますし、先ほど来申しておりますように、何かことさらな意図を持って捜査をするというようなことはないわけでございます。
  357. 野坂浩賢

    ○野坂委員 法務大臣にお尋ねをしますが、再審法の改正が問題になっておりますね。法務省としては再審法の改正を決意した、こういうふうに理解しております。加藤老にしても、白鳥事件にしても、たくさんございますが、これは、被疑者といいますか、受刑者が無罪を確信して出すわけですね。それで、検事がそれに対して意見なり抗告、抗議をするということがあって、基本的な人権というものが非常に問題になるということで、監獄法部会とかあるいは再審法部会とか、こういうことを検討されて、いよいよ踏み切るというふうに承知しておりますが、今度の国会に速やかに提出をしていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、どうお考えですか。やられますか。
  358. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 その前に事務的なことでお答え申し上げますが、いま委員お尋ねでは、法務省で再審につきまして何か法制審議会に諮問するとか、そういうことから近く法案を確定するとかいうような前提でのお尋ねでございました。しかしながら、この再審制度につきましてはいろいろと御意見もございますし、社会党御提案の法案が法務委員会に出ておるというようなことも十分承知しておりますが、私どもといたしましては、この再審制度につきまして、いわゆる再審事由と申しますか再審要件と申しますか、そこが実質的に問題でございますが、現在の刑事訴訟法、必ずしも直ちに改正をしなければならないようなものではなかろうというふうに思っておるわけでございます。  なお、細かい手続的な面につきましては若干整備を要する点があるのではないかというようなことで、事務的に検討は進めておりますが、ただいまお尋ねのように、近くそういう法制審議会の審議を求めるとか国会に法案を用意するとかいうようなところまでの段階には至っておりません。
  359. 野坂浩賢

    ○野坂委員 再審法の問題、さらにこの要旨の中に述べておりますように、仮出獄の問題。この仮出獄の問題につきましても、現在石川一雄青年というのは無期ということになっております。七七年の八月の十六日から今日まで通算をいたしますと九百日ということになります。刑法二十八条でありますか、無期懲役者でも十年たてば資格を得ることができる、こういうふうに書いてあるというふうに理解をしておるわけであります。仮出獄の要件というのは、「懲役又ハ禁錮ニ処セラレタル者改悛ノ状アルトキハ有期刑ニ付テハ其刑期三分ノ一無期刑ニ付テハ十年ヲ経過シタル後行政官庁ノ処分ヲ以テ仮ニ出獄ヲ許スコトヲ得」こういうふうに書いてあります。有期刑だったら三分の一ですが、無期だ。十年間ということになると、問題は法定通算といいますか、刑事訴訟法の四百九十五条に基ついて、三千八百八十六日あるわけです。最低通算ということは、最高裁から却下されたときでありますから約四百日、こういうことになりますね。そうすると一つの資格がある。こういうことが言えるのではなかろうかと思うのであります。  これについて、前々から石川一雄青年は獄舎ではきわめて優秀な服役をしておる、こういうふうに承知をしております。また、皆さん方もそういうふうに理解をされておるようであります。これでこの仮出獄ということの措置を進めてもらったらどうだろうか、こういうふうに考えておるわけでありますが、ぜひ法務省におかれましては、これらの点について十分勘案をして仮出獄についての検討を進めてもらうように、法務大臣にこの際要望しておきますので、よろしくお願いをしたいと思うのであります。法務大臣、よろしゅうございますね。それで時間がありませんから次に進みたいと思うのでありますが、もし法務大臣からいろいろと御意見があれば、この際承っておきたいと思います。
  360. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 事実問題でありますので、事務当局からお答えいたさせます。
  361. 豊島英次郎

    ○豊島政府委員 無期の場合の仮釈放の問題でありますが、現在の刑法では、ただいま御質問のとおり、十年の期間を経過したときに仮釈放の許可条件が成就するということに相なっております。この十年の期間といいますものの中に未決勾留の日数を算入できるかという点でございますけれども、未決勾留は自由の拘束ではあるのでありますけれども、刑の執行ではないということでございまして、十年の期間というのは現実に刑の執行を受けた期間、これが必要だというのが刑法の規定の仕方でございます。したがいまして、狭山事件の場合におきまして、十年の期間経過のときにおきまして本人の情状等をしんしゃくいたしまして仮釈放の点は十分考えていきたいというふうに考えております。  なお、法改正の問題でございますが、刑法の全面改正におきましては、御質問のように、この十年の期間の中に未決勾留日数を算入していくことができるような規定にしようという考え方をとっております。これは、改正刑法が刑というものにつきまして現行法と違った考え方をとっておる、つまり拘禁を主にした刑を考えておるというところから、そういう考え方が出ておるわけでございます。現行法の解釈といたしましては、いま申し上げましたように、無期の場合には十年の期間を経過しないと仮釈放ができないということに相なっております。  立法の問題につきましては十分検討させていただきたいと思っております。
  362. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまお話があったわけでありますが、刑法の二十一条には「未決勾留ノ日数ハ其全部又ハ一部ヲ本刑ニ算入スルコトヲ得」こういうふうに書いてあるわけでありまして、いま局長お話しになりましたように、二十八条、二十一条に照らして、十分これには対応していきたい、こういうふうに理解をしておきたい、こういうふうに思います。よろしゅうございますか。
  363. 豊島英次郎

    ○豊島政府委員 二十一条の規定の場合に、刑期の中に未決勾留日数を算入していくということになっております。この刑期は、先ほどの二十八条にあります無期懲役の場合に、刑期算定の方法として未決勾留日数を算定するのだという形になっておりますので、そのことを言っておるのだというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。無期の場合には、いわば終期のない刑であるという意味で、十年のところに未決拘禁の日数を算入するということはできないというたてまえでございますので、やはり立法措置を必要とすると考えております。
  364. 野坂浩賢

    ○野坂委員 有期刑の場合はそれは算定をされる、無期の場合はそれはむずかしい、こういうことになっておるわけですから、それらについては十分法の運用等もお考えをいただいて、これらについての対処方法を御検討をいただいておきたい、こういうことを法務大臣に申し上げておきます。  次に、時間がありませんから飛びますが、総理も八〇年代の農業の展望については、先ほどの方針の演説の中でいろいろと述べられております。特に「農業については、食糧の安定的な確保が国政の基本であることに思いをいたし、需給事情、エネルギー事情などの厳しい環境に対応して、八〇年代の農業の進むべき方向を明らかにしつつ、近代的農業経営を中核に、食生活の動向や地域の実態に即して推進をする、」こういうふうに述べられました。  いまこの中で、わが党の飛鳥田委員長等も質疑されたわけですが、穀物の自給率というのは総理大臣は、この八〇年代、具体的に昭和六十五年、これについては穀物の自給率で何%自給したいとお考えになりますか。
  365. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 穀物の自給率につきましては、現在三七%程度でございますが、非常に国内でもっと穀物についてもつくれるといいのでございますけれども、どうも現在のところは非常にコストの面が問題がございまして、穀物自給率については現在は、六十五年は三〇%ぐらいになるんではないか、こういう観点から、十一月に農林省といたしましては農政審議会に対して、第一回の中間の見通しと試算を出したわけでございます。
  366. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、食糧の自給率の向上と活力ある農村づくりが当面の大きな課題であると言われました大平総理大臣のお話は、五十年に調査をされて五十二年の一月に農政審議会の議を経て国会に提出をされました需給見通しとはずいぶんと落ちる。それなれば後退ということになりますね。
  367. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私の申し上げましたのは穀物の自給率でございまして、全体の自給率になりますと、特に主食に対しましては何とか現在のレベルを維持していきたい。七〇%程度前後で何とか維持を続けていきたいと考えておりますが、しかし、これも実を申しますと、あれを出しましたのは十一月でございまして、その後アメリカにおきまして、ああいう対ソ食糧のあるいは穀物の輸出停止というような措置ができてきたわけでございまして、私どもやはりこの大きな世界の状況の中で今後どうあるべきかはもう少し考え直すべきではないか、こう考えておりまして、いま農政審議会の人たちと私自身いろいろと折衝をし、この間も第一回の会合を開きまして、その辺のところについても議論を進めておる段階でございまして、もう少しあの見通しよりは高いものを出したいと私は考えております。
  368. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ことし五十五年度の、これから伸ばすということでありますけれども農業所得ですね、農業所得というものは向上をし、営農は保障できる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。所得は向上いたしますか。
  369. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 農業所得につきましては、確かに横ばいないし低下というふうに受け取られるわけでございます。特に実態を見ておりますと、農業外所得の方が多いような結果でございまして、私どもはそれは問題があると考えて、これはいま農政審議会にお願いしておる今後の農政の見直しの中で、やはり結果的には経営規模の拡大を図っていかなければならないし、それによって生産性を高めていかないと、どうしても世界的に見て国際価格と比べて非常に高いいまの農産物の状況でございますので、国民の理解を得ながら、しかも農家の所得を上げていくということについては、私どもは生産性の向上を図っていかなければならない。また、ある程度需要に見合った農業の再生産と申しますか、いわゆる需給関係のとれたような農業の再生産を考えていかないと非常にむずかしいんではないか。だから、そういう方向にぜひこれから努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。
  370. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農業所得は増大をしない、むしろ低下をする、こういうことですか。
  371. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 現在は横ばいないし低下という傾向がありますので、そういういま申し上げたような諸施策を講じていくことによって、結果的に農家の所得を増大をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  372. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農業というのは他の産業との所得の格差はある、したがって経営規模を拡大すればよろしい、そういうものじゃないと私は思うのですね。経営規模を拡大をすればそれで農業所得が多くふえて他の産業よりもよろしい、農業の実態から見てそういう状態ではない。たとえば豚を飼おうとする。豚を飼おうとしても、あなた方が倒産防止というぎりぎりの六百一円よりもはるかに下回っておるというのが現状じゃないですか。去年の十月では五百四十五円ですよ。最近五百七十円になっている。しかも畜産振興事業団は買っていない。だから八万頭も殺さなればいけない。乳牛はどうですか。今日二十一万トンも残っておる。だから五百頭も親牛を殺さなければならない。米は生産調整をする。農業という保障がない、営農しようと思ってもできない、こういうのが現状で、政府は何にも金を出さないで殺せ、殺せ、実質的な生産調整をやれ、これが皆さん方の農政の姿なんです。ブロイラーだってもそうですよ。去年よりも九五%にも所得が落ちておる、これが現状なんです。  そこでどうやって自給率を引き上げるか。また経営規模の拡大と言われておりますが、土地の利用率というのは一体今日どのような状況なんですか、昭和三十五年を基礎として考えれば。
  373. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 耕地の利用率につきましては、私ども調査では、四十八年を底として上昇に転じてきておると承知をいたしております。ただし五十三年度につきましては、例の生産調整と申しますか水田利用再編対策によりまして、農協の預託という形でいわゆる休耕部分がふえてまいりましたし、それから通年施行で優遇をいたしましたので、そういう形でふえてきておりますので、五十三年度は少し減っておるようでございますが、四十八年度を底として私ども調査では順次これは増大をしてきておりますし、特に農用地利用促進事業によりまして、また大分私は今後よりよい方向に向かっていくんではないかと考えております。
  374. 野坂浩賢

    ○野坂委員 四十七年から減反に入ったんだ、そういう意味だと思うのですが、三十五年は一三三・九%ですね。四十年は一二三・八だ、四十五年は一〇八・九だ、現在では一〇二・九だ、こういうふうに年々歳々利用率は落ちておる。五十四年はいま集約中でしょうけれども、もうほとんど裏作はないという現状です。土地の利用率を拡大して、いまある土地というものを最大限に使うというのが国の政策としては当然じゃないですか。それでもつくれない、つくらないということは、農業所得がいかに安いかということをあらわしたものだということを指摘しないわけにはいかない。     〔瓦委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、いまの米というものは生産過剰だ。生産過剰にさせられておると言っても、その方が適当かもしれませんが、まあ生産過剰である。その過剰について、この五年間でいろいろと整理をする、七年間で財政的には処理をする、こういうことがいろいろございますが、私は率直に言って、大来外務大臣のこの本を読みますと、あなたは備蓄せい、備蓄せいと書いてありますね、これについては「世界の中の日本」の中で。そういうことから、余っておるということは――農林大臣は備蓄は限界だと言っておるんですね。小麦は二カ月もある、飼料も二カ月もある、お米はごらんのとおりで外国に出さなければならぬ。外国にこの際思い切って輸出をしたらいいじゃないか。日本の土地柄というのは大体米をつくるようにできておるわけですから、これをつくって、余ればそれを出していく。去年は約八十八万トン出したわけですね。これについてはどういうふうにお考えですか。出したらどうですか、大来外務大臣
  375. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 余剰農産物につきまして、国際的に国内の消費を拡大するのが本筋だという解釈がございまして、このような国内的施策と並行して、余剰農産物を国際市場に輸出する場合には、通常の貿易を歪曲しないように配慮すべきだということが国際的に言われておりまして、具体的にはFAO、国連食糧農業機関において農産物余剰処理原則がつくられておりまして、関係国との協議等の踏むべき手続が定められておるわけでございます。  米につきましても、タイその他ビルマ等の米輸出国がございます。それからアメリカも米の輸出国でございまして、日本が余剰の米を大量に海外に輸出することにつきましては、国際的にいまのような点から摩擦が生ずるおそれがあるわけでございます。
  376. 野坂浩賢

    ○野坂委員 FAO等の加盟国について摩擦が生ずる。しかしFAOの見解、これから二〇〇〇年、人口は約六十億になる、栄養が十分とれない人口というのが非常にふえてくる、具体的に四億一千万トン程度足らなくなるのではなかろうかということも書かれております。だから、いままで輸出をしなかった国も、そういう門戸を開いて輸出をするような傾向さえ持っていかなければならぬというような、そういう論文も出ておることは御案内のとおりです。  それで、いまの水田利用再編対策、これは三千三十四億出ておりますね。たとえば百万トン外国に輸出をする。二十七万円で買ったものを六万円で出すというのは不見識じゃないかという議論もある。しかし、それは財源としては千六百億で済む。そうすると、三千億をやらなくても、むしろその方が、アジアのアメリカよりもアジアの日本、このアジアは大丈夫、穀倉として日本は位置づけていく、こういうかっこうになれば、整々として生産も上げ、それも出す。ある程度百万トンなら百万トン、千六百億を使ってもその方がむしろプラスじゃないか、こういうような見解だってある。確かに先進国で摩擦があるでしょう。それについても十分理解を得て、将来の食糧危機というものを展望してやるならば、それも一つの案ではないかと私は考えておる。それらについては、いまの現状からもっと理解を進めてやるということになれば、日本農業も前進するであろうし、国全体の財政面から言えばそれはむしろ少なくて済む。大蔵大臣は常に金は少ない方がいい、こうおっしゃっておりますが、その方向だってとり得るではなかろうかと思いますが、そういう提言に対してどう思われますか。
  377. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、世界全体として見ますと、食糧の不足、人口と食糧生産のアンバランスというものがあるように考えております。ただ、食糧不足の地域が所得が非常に低いために、栄養上食糧が不足しているけれども、足りない食糧を買う購買力を持たないというのがいまの世界の矛盾といいますか、問題点だと存じます。  なお、この備蓄の問題につきましては、従来、数年に一度は世界的にかなり深刻な食糧の不作が起こるわけでございまして、これは日本の備蓄の問題のほかに、特に貧しい国々のための国際的な備蓄ということが必要だと私ども従来から考えておるわけでございますが、その備蓄の費用をどこが持つかというようなことでなかなか話がまとまらないでおるわけでございますが、ただいま御指摘の点で世界、特に南北問題というものを考えます場合には、食糧を飢えている人たちにもう少しふやすような方法、これは資金的な裏づけも必要になってまいりますが、長期的に見て必要である。同時に、農業生産の変動がございますので、不作に備える備蓄というものが国際的にも必要だろうと私は考えております。
  378. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもも備蓄については、きのう申し上げましたように、米については約二カ月分ぐらい、その他についても大体二カ月分ぐらいということでいままでやってまいりましたが、今後については、国の安全保障という見地からより備蓄をふやすべきではないかという検討はしていかなければならないと思っております。  また、外国へ輸出をするために日本が米をこれから生産をするということは、いまの水田利用再編対策というものは、日本でいま相当外国から買わなければならない小麦などをぜひ日本でもっとつくっていただきたいという意味もございますので、そういう意味においては、結果的に輸出は諸外国との間にも先ほどのFAOの問題で非常に問題があるわけでございまして、そういうものをまた日本でつくるなんということになったら、そちらでもトラブルが起き、また財政的には非常に大きなマイナスになり、また結果的には日本が必要とする、いま外国から多く輸入をしておって少しでも自給率を高めていきたいものの生産ができない、こういうことになるので私はいかがかと思います。
  379. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いや、財政的にはプラスになるのです。それから農業も、地域農政を推進するあなた方にとっては、農家が期待するものをつくらせる、こういうことになるわけです。  それから、あなたは土地利用率が低下しておると言うと、ずいぶん強弁されておりましたけれども、裏作利用というものはやろうとしていない。たとえば水田裏作麦作付奨励補助金というものをことしは切っておるわけですね。裏作はやらぬでもよろしいという姿勢なんですよ。だから、麦が必要であれば、裏作をどんどん奨励して麦をつくらしたらいい。それをやらせないで土地利用効率を落として、全く政策は言うこととやることと矛盾しておるじゃないですか。そうですよ、今度の補助金切っておりますよ。裏作を振興しない。だから土地利用率というものは一〇二・九にしかならぬのです。これは政府の政策なんです。言っておきますけれども、悪政です。  それから、時間がありませんからまとめて答弁してください。今度あなた方は三十九万一千ヘクタールを五十三万五千ヘクタールにかさ上げした。三年間動かさぬと言ってこの予算委員会で確認をしてきた。それでもやった。いわゆる約束違反、国会軽視、こういうことになっております。それで、そういう中でこの十四万四千については、いままでの三十九万一千のようにペナルティーはつけない、こういうことを確認してもらいたい。  それから、いままでの四十六年からやってまいりました、いわゆる休耕問題については緊急避難的な政策であった、今度五十三年から行われたこの十年間は構造政策だ、こういうことですね。したがって奨励金もありますね。この奨励金は十年間は間違いなくつく、こういうふうに農民は考えて、それまでに再編対策、政府の方針に従って定着させたい。それまでは、やはり農業所得は他産業よりも低いということは先ほど認めたわけですから、その点の奨励金をやらなければ、米をやめてそれをつくるということは実質的に非常に問題があろう。だから、それはそのように措置をするというふうに考えていいわけですね。
  380. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまの最初の裏作の麦と米との問題で、今度補助金が少し下がったという点を御指摘をいただきましたが、私どもはいま一方においては、米の生産を抑制をするという考え方でお願いをしておるわけでございまして、裏作で麦をつくり表で米をつくるということでは、結果的にまた米が増産ということになるものでございますから、そういう意味においてこの補助金についてはいかがかと、こういうことで削減をしたわけでございます。ですから私どもとしては、土地利用という点からいけば、これは勝手な言い分かもしれませんが、われわれが欲しいのは小麦であり大豆であるわけでございますから、裏作で小麦をやり表で大豆をやっていただければ一番ありがたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  二番目の奨励金の計画達成をした場合の制度については、いわゆる三十九万一千ヘクタールを達成すればそれはまるまる出したらいいじゃないかということでございますけれども、私どもはあの制度はあくまでもわれわれが望ましい転作の形に進めていくという考え方から一定の要件、たとえば集落ぐるみでやったとか、そういう一定の要件のもとにいった場合には出すということになっているわけでございますから、どうもやはりわれわれは、今度の五十三万五千というものは一つの目標面積として決めさせていただいたわけでございますので、これは御批判はありましたけれども決めさせていただいたので、それについては、それを達成していただかない場合には計画加算というのはむずかしい、こう考えております。  なお、奨励金につきましては、これは五十三年度から十年間ということで私どもお願いをしておるわけでございますから、大体今度は五十五年まで、その次五十六年度から何年をやるかはまだ決まっておりませんけれども、各期ごとに奨励金の金額その他についてはいろいろと検討しなければなりませんので、金額はともかくといたしまして、奨励金を出していくということだけはこれはこれでやらなければいけないことだと考えております。
  381. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それはもう金額を変えるということの伏線があるわけですか。奨励金の金額を変えるという伏線ですか。その期その期、毎年毎年ですか。そうやったら安心してつくれぬですね。
  382. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま申し上げましたように各期ごとと、こう申し上げたわけでございまして、だから、いま三年間は固定をいたしております。それで、五十六年度以降下げるのか下げないのかということについては、私は下げるとも申していないわけでございまして、検討をしなければならないと考えておるわけでございます。
  383. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五十六年から七年間ということですか。
  384. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 五十六年度から五十八年度まで三年間となると、その期中のものをやはり五十六年度の始まる前にわれわれは決めなければいけない、こういうことでございます。
  385. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう時間がありませんからまとめてお尋ねをいたしますが、先ほど大蔵大臣は、財政制度審議会というものは非常に重要だということを得々と説かれたわけですが、これを見ると、奨励補助金の水準や交付期間の見直し、休耕的手法の導入等水田再編対策の基本にさかのぼった検討をする必要がある、こう述べられておりますね。いま問題は、大蔵省としては、水田は休耕にした方がいいというふうにお考えなんですか。いま土地の利用の問題が出、これから農政を発展をさせ、農業の所得をふやそうというときに、政府だけのことを考えて、そういうようなことをやめるんだ、こういうことをお考えなんでしょうか。
  386. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる水田利用再編対策につきましては、これは農政上、単なる米の生産調整ではなく、いろいろな意味がございますので、農政上の意義は認識をいたしておるところであります。しこうして、いまこれの財政審等の建議についての御意見がございましたが、財政当局といたしましては、これらの指摘をも踏まえて、農林水産省と十分協議をして検討して答えを出していきたい、こういう基本方針でございますので、農政上の問題を私の方から政策上の判断を先にお示しすることは差し控えさせていただきたい。
  387. 野坂浩賢

    ○野坂委員 十分検討をするということでありますから、農政は農林省がやはり優先をしなければならぬ、こういうことを確認をしておきます。  これで終わらなければならぬのでありますが、水田利用のこれをやる、そのために――いまの農政というのは、耕種農業と畜産農業というのは別個になっておりますね。御案内のように、豚はマンションに入っておるし、鶏は工場だ、こういうのが実態ですね。しかも農地と何ら関係がなくなっておる。これをどうやって一貫をするかということが農政上の柱にならなければならない。そのために、いまなかなかつくれない、土地改良の関係で水位が七十センチ以下になっていない、そういう中で、えさ稲というのは非常に重要な位置を占める。だからこれをやって、畜産とつないで、そしてその肥料をたんぼに返すということになれば、全体的に耕種農業と畜産農業というものは結ばれる、こういうことになると思うのです。しかもそれをやって、いま四百八十一万の農家が牛を一頭ずつ飼えば四百八十一万頭ですね。そういうかっこうになれば農家所得というものもふえていくだろう、こういうふうに政策的に当然考えられるわけです。それが全然別個にして、商社方式というのがとられておるというのが農政の現状なんです。地域の実情というものを考えていない。  だから、えさ稲というものは水田に適性でありますから、えさ稲をこれから勧める。この間の川俣さんの質問の中では、そのことを研究し、十一の実験田でやるというふうにお話しでありましたが、これについては、研究をされるのは当然であります。これは一トン二百とれます。たとえばコシヒカリとキンマゼとの交配、あるいはイタリアの品種、そういうのと交配をすれば十分それができる。一トン二百ある。あなたはそれを、米で食管法に関係があるというふうにおっしゃる場合も答弁としてあろうと思いますが、これはつめでつぶせばぺしゃっとつぶれるわけです。未熟と同じなんです。熟期になってもそういうことであります。はっきりと判別ができるわけでありますから、えさ稲を奨励をして土地を肥やす、こういう意味で、ぜひこの指定作物の中にこれを導入をしてもらう、指定をしてもらう、こういうことにして、日本の農家の皆さんが耕種農業と畜産と一貫的な体系がとり得るように措置をしてもらうためにぜひ奨励品目の中に入れてもらいたいということを申し上げておきますが、それについての御見解を承って、私の質問を終わります。
  388. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いわゆる飼料米というか飼料稲と申しますかこれについては、きのうでしたか土曜日でしたか、川俣先生にもお答えをしましたように、いま十一県の試験場で試験もやっております。しかしながら、それはいま御指摘のように、何かつぶせばいいのかもしれませんが、その識別の問題が一つございますし、それから、いま日本の農家、特に畜産農家の使っておるえさ代はコスト的に非常に安いわけでございまして、これをそれと合わせようと思うと相当高いというのが、私どもいまのところ農林水産技術会議から聞いておる報告でございます。その辺をもう少し検討をしていかなければならないと思っておりますが、しかしいずれにしても、将来の問題として検討を続けさせていただきます。
  389. 田村元

    田村委員長 これにて野坂君の質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十九分散会