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1980-02-04 第91回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月四日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田村  元君   理事 小此木彦三郎君 理事 瓦   力君   理事 小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君       荒舩清十郎君    池田  淳君      稻村左近四郎君    小里 貞利君       奥田 敬和君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       金丸  信君    北川 石松君       倉成  正君    小山 長規君       近藤 元次君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    白川 勝彦君       田中 龍夫君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    藤尾 正行君       藤田 義光君    松澤 雄藏君       村山 達雄君    阿部 助哉君       稲葉 誠一君    大原  亨君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       細谷 昭雄君    八木  昇君       安井 吉典君    横路 孝弘君       岡本 富夫君    草川 昭三君       坂井 弘一君    正木 良明君       工藤  晃君    小林 政子君       中路 雅弘君    正森 成二君       松本 善明君    大内 啓伍君       岡田 正勝君    中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 細田 吉藏君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房会計課長兼内         閣参事官    京須  実君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 小島 弘仲君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁長官官房         会計課長    城内 康光君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁長官         官房審議官   中  庄二君         行政管理庁長官         官房会計課長  田代 文俊君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         北海道開発庁総         務監理官    大西 昭一君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁長官         官房会計課長  永井 和夫君         科学技術庁研究         調整局長    勝谷  保君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁長官官房         会計課長    神戸 芳郎君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         沖繩開発庁総務         局長      美野輪俊三君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁長官官房         審議官     柴田 啓次君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁地方振興         局長      四柳  修君         法務大臣官房長 筧  榮一君         法務大臣官房会         計課長     石山  陽君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省人権擁護         局長      中島 一郎君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省銀行局長 米里  恕君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生大臣官房審         議官      竹中 浩治君         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業大臣官         房審議官    尾島  巖君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         資源エネルギー         庁石油部長   志賀  学君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         運輸大臣官房長 杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房長 小山 森也君         郵政省経理局長 守住 有信君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省労働基準         局安全衛生部長 津澤 健一君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省道路局長 山根  孟君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治大臣官房審         議官      久世 公堯君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月四日  辞任         補欠選任  稻村佐四郎君     奥田 敬和君   江崎 真澄君     白川 勝彦君   始関 伊平君     池田  淳君   塩崎  潤君     小里 貞利君   澁谷 直藏君     北川 石松君   細田 吉藏君     金丸  信君   川崎 寛治君     細谷 昭雄君   兒玉 末男君     竹内  猛君   安藤  巖君     正森 成二君   栗田  翠君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   池田  淳君     始関 伊平君   小里 貞利君     塩崎  潤君   奥田 敬和君    稻村佐四郎君   金丸  信君     近藤 元次君   北川 石松君     澁谷 直藏君   白川 勝彦君     江崎 真澄君   竹内  猛君     兒玉 末男君   細谷 昭雄君     川崎 寛治君   工藤  晃君     中路 雅弘君   正森 成二君     小林 政子君 同日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     福家 俊一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  この際、内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平内閣総理大臣
  3. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 自衛隊スパイ事件に関連いたしまして防衛庁長官政治責任の問題が本委員会で提起されておりました。  一昨日の夜、久保田防衛庁長官から、責任をとって辞任したいとの申し出がございました。私はこれを受理いたしました。その後任といたしまして細田吉藏君を任命し、ただいますべての手続を完了いたしました。  右、御報告申し上げます。     —————————————
  4. 田村元

    田村委員長 昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。正森成二君。
  5. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党革新共同を代表して、これからお手元に提出した総括質問項目に基づいて若干の質問をさしていただきます。  その前に、項目にはございませんが、緊急に聞かしていただきます。  二月一日に一部の新聞報道されたところによりますと、ドブルイニン・ソ連駐米大使らを乗せたソ連国営航空アエロフロート機着陸をニューヨーク・ケネディ空港管制官が妨害し、大惨事寸前になったことが判明したということが報道されております。これは、一部の報道によりますと、ソ連高官一般乗客を乗せたイリューシン62ジェット旅客機ケネディ空港着陸するため接近してきたときに、管制官から通常より十数キロも遠い地点で降下を開始するように指示が下されたため、高度が異常に下がって空港に進入した。FBI捜査官の一人は、衝突事故を起こさなかったのは奇跡に近いというように語っているわけであります。  私は、わが日本国民の生命の安全のゆえから言っても重大な関心を持たざるを得ません。なぜなら、アエロフロート機民間航空機であり、単にソ連高官だけでなしに、すべての国籍の人間が乗っている可能性があり、かつ、衝突したとすれば、衝突する相手の飛行機はいかなる国籍飛行機かわからず、場合によってはわが国のJALである可能性すらあるのであります。そうすると、安全を保障すべき管制官がしかるべき管制をやらず、逆に衝突事故を惹起するようなことをやるということであっては、これは、米国における着陸、離陸においてわが国民の安全を保障することもできません。  運輸省は、これにいかなる関心を示して、どのような事実確認等措置をとったか、あるいは外務省運輸省といかなる相談をして、どういう措置をとったか、御報告を賜りたいと思います。
  6. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 本事件につきましては、新聞報道もございまして、直ちに米側に照会いたしましたところ、一月十八日にケネディ空港到着予定アエロフロート機に対して空港従業員がいやがらせをするとの情報に基づき、連邦航空局管制官監督官にかえ管制せしめるなどをしまして、同機を無事着陸せしめたとのことでございました。しかし、本事件については現在連邦航空局及びFBI捜査中とのことでございますので、当面捜査の結果を見守っておる次第でございます。
  7. 正森成二

    ○正森委員 私が質問すると通告をいたしましたが、事実確認等措置がとられていることは結構であります。  最近のアメリカ状況については、たとえばジョージ・ケナン元駐ソ米大使は、ソ連侵攻非難は当然だが、米国平衡感覚が欠落しておるというような論評をアメリカ内で発表しておりますし、フランスや西独の両首脳、たとえばシュミットなどは、いまのようなアメリカ外交が続くならアメリカに対して信頼をすることができないという強い言葉まで漏らしたと報道されております。われわれは、アメリカはオリンピック問題についても非常に不当に政治が介入しているように思いますが、もしそのヒステリー症状が、すべての国民の安全を保障すべきケネディ空港というような中心的な空港管制措置にまで影響を与えるということであれば、これはゆゆしい措置であります。そういうような場合には、わが国外交当局としては、あるいはそれぞれの運輸省等所管当局としては、日本の国益を守るために適切なアクションを起こされることを切に希望しておきたいと思います。  それでは、次の質問に移ります。  まず細田防衛庁長官、新しく就任されて、おめでとうございますと言っていいのか御苦労でございますと言っていいのかわかりませんが、自衛隊の問題について若干伺いたいと思います。  私ども日本共産党は、わが国自衛隊というのは憲法違反軍隊であり、対米従属軍隊であると考えております。したがって、憲法違反軍隊に対して軍事上の秘密というものは本来あり得べからざるものであるという考えをとっておりますが、しかし、現行法制皆さん方が尊重されるというならば、それはすべての国民に対して平等に適用されなければなりません。私たちは、国政調査権に基づいて自衛隊あり方等について国会で論議し、それを国民に知らせる必要があると思っておりますが、自衛隊には国政調査権に基づく要求あるいは国会審議においても明らかにすることができない秘密というものはあるのですか。それはあるとすれば何点くらいあり、それは一般的に言えばどういう類型のものがその秘密になりますか。
  8. 細田吉藏

    細田国務大臣 答弁を申し上げます前に、一言ごあいさつをさせていただきたいと存じます。  はからずも本日防衛庁長官を拝命いたしました。大変微力な者でございますが、委員長初め皆様方の御指導、御鞭撻を得まして、大変な重責と心得ておりますこの重責を全ういたしたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げる次第でございます。  そこで、ただいまの御質問でございますが、前提としておっしゃいました自衛隊に対する考え方は、私どもは全然反対の立場にあるわけでございます。国政調査権によりまして、特にシビリアンコントロールというような大切な問題がありますので、いろいろな点について国会が御調査になり、国民にできるだけのことを知らせなければならぬということについてはわかるわけでございますけれども、しかし、これにはおのずから限界があると考えております。私どもは、防衛に関する問題についてはできるだけの国会国政調査権に対する協力というか、当然のことでございますが、しなければなりませんけれども限界はあると心得ております。それはやはり事防衛の問題でございますので、根本から御否定になる話は別でございますけれども防衛の問題でございますから、秘密というものがあるということはやむを得ないと考えております。したがいまして、これは私ども非常に厳重に解釈しなければならぬということも十分に考えていかなければならぬと思っております。  秘密というものにつきましては、御承知のように日米安保に基づきまして相互防衛援助協定がございます。これに伴います秘密というものは、相手方のあることでございますから、これは秘密として守るべきものは守らなければならぬ、かように考えておるわけでございます。  それから、防衛のことでございまするので、ガラス張りの防衛、何から何までみんなさらけ出しておる防衛というものは、それ自体が私は矛盾だと思います。したがいまして、わが方だけの問題といたしましても、防衛庁並び自衛隊の業務の中で秘密に属するものがあることは、これは御承認を願わなければならぬと思います。大体これを大きく分けますと二種類でございますが、防衛庁といたしましては機密極秘、そして単純なる秘、三種類に分かってこの取り扱いをいろいろやっておるようでございまして、そういうことでございます。
  9. 正森成二

    ○正森委員 機密極秘、秘という三種類ある。秘密類型に大きく分けて対米関係のものとわが方独自のものがあるということでございますが、それでは、わが方独自のものにどれぐらいこの三種類秘密があるのか、そしてわが方独自の秘密であるとされるものの類型、たとえば装備関係秘密であるとか、あるいはわが国防衛計画秘密であるとか、そういう大まかな類型があればお答え願いたいと思います。私が聞いておりますのは、今回問題になりました某々自衛官がどういう秘密を漏洩したかという具体的なことを聞いているのではないのです、一般論として。
  10. 細田吉藏

    細田国務大臣 私、新米でございまして、この点については防衛局長から答弁をさせたいと存じます。お許しいただきたいと思います。
  11. 原徹

    原政府委員 ただいま御指摘の防衛庁プロパーの方の秘密種類でございますけれども機密極秘と秘があるわけでございます。で、件数にいたしまして、約でございますが、機密というのが約千件、極秘というのは約四千件、それから秘というのは八万二千件、これは合計で八万七千件ぐらいございます。それぞれの複写と申しますか、コピーをとる場合もありますので、そういうものを点数に勘定いたしますと合計で約七十四万点になるわけでございます。その中で、じゃ装備のものがどうかというところの分類はいま持っておりませんけれども、要するに装備の主要な性能とかあるいは防衛部の所掌するところでは防衛計画とか、それぞれいろいろございますので、いま直ちにそこのところはちょっと申し上げられません。
  12. 正森成二

    ○正森委員 ただいまの答弁で、わが国防衛計画とかあるいは装備については三種類秘密のどれかに入るという基本的な答弁でありました。  そこで、防衛庁に伺いますが、この秘密とされるものは、原本そのものを持ち出したりコピーするだけでなしに、その内容を了知して自分の記憶に基づいて外へ持ち出して相手方に知らせるとか、あるいは自分で独自に書き方を変えて持ち出すという場合でも、自衛隊法五十九条の禁止に入るわけですか。
  13. 原徹

    原政府委員 原本を持ち出せばもちろんそうでございますが、原本の中に書かれている特定の項目秘密ないし極秘になるわけでございますから、その中身について漏れるということであれば、それはやはり秘密の漏洩であると考えております。
  14. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、私は防衛庁に伺いたいと思いますが、ここに私が「現代」のことしの一月号を持ってまいりました。この中に、元統幕議長栗栖弘臣氏が「ソ連軍ここへ上陸!われらこう迎え撃つ」こういう題目で、延々数十ページにわたって防衛論議を展開しております。この中には、ただいまの基準に従って判断すると、放置することのできない問題が含まれているというように私は考えております。  たとえば、非常に膨大な論文ですから全部を挙げるわけにいきませんが、この人物は、ここにグラビア入りで入っておりますが、自衛隊HUBヘリコプター、こういうものに乗りまして、第五師団管轄下道東予想上陸地点を全部視察しております。さらに、同じヘリコプターに乗りまして、第二師団管轄の道北の状況を全部視察しております。こういうぐあいに、写真が全部載っておる。そして、上空から見た地形や、あるいは自分統幕議長だった知識に基づいて種々のことを言っているのです。その一部を披露いたしますと、こう言っておる。  道東について、  飛んでいるヘリのはるか前方に、根室レーダーサイトがぽっかり見える。航空自衛隊の第二十六警戒群だ。風雨や氷雪を防ぐ、薄緑色のプラスチック構造物で、レーダーがおおわれている。このカバーは電波透過率が九〇パーセントで、凍結した氷なら五十ミリ、雪なら七百七十ミリの厚さまで耐えられる。  道内にはレーダーサイトはこのほか、稚内、網走、奥尻島の三カ所あるが、根室ソ連にいちばん近い。しかし、レーダーサイトを守る防空火器は、なにもない。素裸かだ。ソ連軍のロケット一発で、目つぶしされる心配は十分にある。こう言っているのです。  また、これに対するわが方の配備について言えば、ソ連軍機甲部隊で入ってくるとして、  これに対する第五師団はというと、乙師団で総兵力は約七千人ということになっているが、現在は充足率が七〇パーセント台。実際には五千人程度しかいない。その内訳は、帯広に師団司令部と第四普通科連隊、第五特科連隊、美幌に第六普通科連隊、釧路に第二十七普通科連隊(別海にこのうちの一個中隊、偵察隊)、鹿追に第五戦車大隊である。こういうぐあいに言っております。  また、そのほか第五師団の内容について、  第五師団は、きわめて機動力に乏しい師団である。師団所属の第五戦車大隊(鹿追に駐屯)に四十六両の戦車があるはずなのに、現在は三十二両(六一式戦車二十一両、七四式戦車十一両)しかない。それに、APCと通称される装甲兵員輸送車が十一両きり。広い広い根釧原野にたった十一両のAPCが展開しても、大海に没する雨滴と同じだ。作戦上の効果はゼロに等しい。こういうぐあいに言っております。  こういうような自衛隊の配備やあるいはレーダーサイト状況などというのは、あなた方の言う自衛隊の配備やあるいは防衛計画の一部に入らないのですか。
  15. 原徹

    原政府委員 今回秘密漏洩事件が出たわけでありますので、いま総点検をいたしておるわけでございますが、そういう見地でその論文について私どもチェックをいたしました。チェックをいたしました結果、確かに軍事常識というものがございます、軍事常識を超えるようなものでございますると、それは困るわけでございます。私どもは、その点に関してのことは、要するに年度の防衛計画というのがございます、それから出ているか出ていないかというところでございますが、そういう点に関して秘密の漏洩はないと私は報告を受けております。
  16. 正森成二

    ○正森委員 秘密の漏洩がないというお話であります。  それでは、もう少しこの内容について皆さんに御披露申し上げたいと思います。  この内容を見ますと、単に私がいま挙げたところだけではなしに、第三国が上陸する場合にはその適地はどことどこであるか、それに対してわが方の戦車部隊はどう展開するかというようなことを、統幕議長として恐らく知り得た秘密に基づいて暴露しております。  別海から標津町にかけての海岸線も、国後島から指呼の間で、ソ連軍上陸適地の一つに目される。ここに上陸したソ連軍部隊は、厚床から弟子屈をめざし国道二百四十三号線を北上する部隊と合流し、美幌町の第六普通科連隊の行動を封じる一方、弟子屈周辺に進出する第五師団の基幹部隊を挟撃する行動に出てくる公算が、大である。  これを迎え撃つ第五師団側には、陣地を構築しようにも利用できる丘陵や窪地などのかっこうな地形がない。それに加えて、根釧原野周辺の主要接近経路沿いに散開する第五戦車大隊の戦車も、つまり、ここへ展開すると言っているのです。  国後島や色丹島から発進する、攻撃用ヘリのMi24ハインドに掃討される恐れがたぶんにある。なぜなら道東の対空火力は、はなはだ貧弱だからだ。  また、侵攻作戦が大規模になれば、国後島トウフツを基地とする、空中機動旅団の出動も予想される。その場合、根釧原野の計根別周辺にある旧日本海軍の飛行場跡(七カ所)を占拠して、一日か二日のうちに特殊セメントを使って滑走路を作りあげるだろう。いいですか。計根別周辺には日本海軍の飛行場跡が七カ所ある。これは特殊セメントを使えば一日か二日のうちに軍事上の用途に使うことができる、こういうことを暴露しているのですよ。これは防衛計画でないのですね。  そうすると、宮永はこういうことをたとえいかなる国に暴露しようとも、それは防衛機密の漏洩にならない。また、これからわれわれが国政調査権でこの種のことを質問すれば、それが北海道であれ、九州であれ、小笠原であれ、どこであれ、全部答弁するということですね。——違うと言ったら承知しないぞ。(発言する者あり)いまそう言ったじゃないか。
  17. 原徹

    原政府委員 年度の防衛計画から漏洩しているということであれば、これは機密の漏洩でございますけれども、年度の防衛計画に書いてないことをいろいろ推論されて軍事評論家として書かれても、それは栗栖さん個人の推論でありまして、防衛庁とは必ずしも関係のないことであろうと存じます。
  18. 正森成二

    ○正森委員 そういうことをおっしゃるなら、年次の防衛計画でないから大丈夫だと言うなら、地形などは年次がどうであろうと原則として変わらないのですよ。  たとえば、道北の部分についてはこう言っている。  ソ連軍が道北に侵攻した場合、もっとも可能性が大きい上陸地点は稚内、サロベツ原野、枝幸の三カ所である。こう言って、  上陸作戦の適地としての第一の条件は、上陸用舟艇が、支障なく到達できるところである。海底に岩礁があるとか、遠浅が続くところは困る。だから、比較的に砂浜で岩礁がなくて、しかも海中がある程度深くなっているところが望ましい。二番、  さらに上陸したら、上陸地点を相手の反撃から守り、確保し続けなければ目的は達成できない。そのためには、ただだだっ広い砂浜でも困るし、砂浜から急にけわしい崖になる地形も、兵力がクギづけされて被害が大きくなるから、上陸地点としてはよくない。三、  それに、上陸する際の正面幅がかなりないと兵力を分散できないから、狭い砂浜であってはだめだ。こういう三つの条件を挙げて、  それらの条件を考えると、抜海から天塩にいたるサロベツ原野は上陸適地といえる。こう言っているのですよ。これは、もし第三国が侵入するとすれば、ここが最も上陸適地としてふさわしいところである、こういうことを公然と言っていることではありませんか。  また、次のようにも言っております。音威子府というのは、道北が万が一侵攻にさらされた場合、守らなければならない重要拠点であるというように言われております。  この音威子府の自衛隊防御陣地を撃破するために、ソ連軍は利尻、礼文両島の中継基地から、空中機動旅団や空挺部隊を、音威子府の付近に降下させるだろう。  考えられる降下地点の一つは、音威子府より少し北方の雄信内あたり。もう一つは、音威子府より南の美深、名寄との中間地点である。こういうように言いまして、  どちらの場合も、最大の隘路(ネック)にびんのフタをされるも同然で、自衛隊の作戦行動の自由は完全に奪われてしまう。要衝の音威子府を陥れようとすれば、雄信内と、美深、名寄の中間地点の両方に空挺部隊を投下してこれを挟撃すればいいということを教えてやっているじゃないですか。これは、自衛隊が青軍と赤軍に分かれて図上演習などを行っている、その内容を暴露したものではありませんか。そうではないのですか。  こういうことを元統幕議長ともあろう者が、恐らく自分の知り得た知識に基づいて、おまけにヘリコプターに乗って視察をした上で、書いていいのですか。これも防衛秘でも何でもないと言うのですか。
  19. 原徹

    原政府委員 先ほど申しましたように、年度の防衛計画から出ているものであれば機密の漏洩になるわけでございますけれども、書いてないようなことをいろいろ推論されることは、これは軍事専門家である栗栖さんでございますから、いろいろなことはあるとは思いますけれども、年度の防衛計画からは出ていない。  それからまた、地形ということはいろいろございますが、まあ軍事常識を持っている方であればある程度のことはわかるというようなことも書かれておりますので、全体として見れば年度の防衛計画から出ていないと私どもは承知をしておるわけでございます。
  20. 正森成二

    ○正森委員 年度の防衛計画から出ていなければ何でもいいかのような話であります。  また、私が言いましたのは、地形一般ではないのですね。上陸の適地として、単に地図を見たぐらいじゃわからないことを、領海内のことも全部言っているのですよ。  あるいは、その次のところではこう言っています。  やがて前方に、名寄市が見える。旭川から七十八キロ、稚内から百七十三キロ。道北から道央にいたる重要な中継地点だ。  ここには、第二師団に所属する精強の第三普通科連隊が駐屯している。駐屯地の裏山に、低空侵入機向けの地対空ミサイルのホーク基地が見えた。道北に侵入する敵の戦闘機、爆撃機、ヘリ、空挺部隊輸送機を撃墜するために、配置されているのだ。北海道のホーク基地は、平時はここ一カ所しかない。  ホーク・ミサイルは、四つの白いドームにおおわれている。ドームは雪除けで、敵機を発見すると、電動でドームが真ん中から二つに割れて、ホークが槍のような姿を現わす。そして、セミアクチブ・レーダー・ホーミング誘導で、速度マッハ三、射程三十五キロのホーク・ミサイルが、毎分五発の速度で発射される。こう書いてあります。これは防衛常識ですか。少なくとも私どもはこういうことを知りませんよ。こういうことを公然と発表してもいいのですか。  あるいは、第二師団の配備についてこう言っています。  その兵力の配備状況を見ると、まず旭川に師団司令部と第九普通科連隊、第二特科連隊がある。旭川を中心にして、北の名寄に第三普通科連隊、東の遠軽に第二十五普通科連隊、西の留萌に第二十六普通科連隊がそれぞれ駐屯している。機甲部隊の主力である第二戦車大隊は上富良野にいる。  この配備状況ではっきりわかるように、名寄以北のかんじんの道北の侵攻予想地域には、第二師団兵力は皆無に等しい。こう書いてあります。これもいいのですね。
  21. 原徹

    原政府委員 先ほど来申し上げておりますように、その年度の防衛計画から出ているというものであれば困るのでありますが、それ以上に軍事評論家としていろいろ推論を加えられて書かれるということでございますれば、それは防衛庁とは直接関係のないことでございます。  まあしかし、そういうことを書くのが適当かどうかということになりますれば、私は余り適当だとは思いません。
  22. 正森成二

    ○正森委員 やっと、ここまで読んだら、適当ではない、こう言いました。  しかし、年次の防衛計画からそのものを漏らしたらいかぬけれども、それに基づいて一定の評価を加えたり自分の判断を加えたら、それは推論であって構わないということになれば、大抵のものは構わないことになるのですよ。防衛庁長官、そういうことでいいのでしょうか。——待ってください。もう一つ私が聞きます。  それだけではないのです。いま装備関係についても秘はあると言われましたが、この栗栖氏はこう言っている。  装備開発の責任者であった在職中からこれまで全国の各師団を訪ねてみて、現地隊員が強い怒りすらぶちまけて、いわゆる“欠陥兵器”だと訴える例もいくつか耳にした。こう言って、自分が在職中知り得た秘密に基づいて、六四式小銃、六〇式百六ミリ自走無反動砲、三十五ミリ高射機関砲L90、七〇式地雷原爆破装置、OH6Jヘリコプター等々の欠陥について述べております。  私が特に問題だと思いますのは、今度の宮永事件がありましたときに、わが自衛隊が備えている最新式の戦車である七四式戦車の機密が漏洩されていると報道されている点であります。この戦車は、戦車工場でさえ装甲の厚さを知られてはいけないというので一般の立ち入りを禁止されていると伝えられているものであります。細田防衛庁長官、これについて、この栗栖元統幕議長はこう言っております。  七四式戦車=操縦士用のペリスコープの材質に問題がある。縦隊で走っていると、前の戦車がはねた石でペリスコープが割れる。これでは、敵弾の中じゃ一分ももたないで、操縦不能になりかねない。(車長・一曹)  戦車は置物じゃないのだから、もっと頑丈に造ってもらいたい。荒っぽく扱うと、故障が多い。それに、床部分の装甲板が薄すぎる。こう言っているのです。これは機甲科二佐の言だということになっております。いいですか、委員長。私は、自衛隊についてはもちろん党独自としての考えがあります。けれども、七四式戦車をやっつけようと思えば、ペリスコープを狙撃すれば、ほかがどれだけ動いておっても目が見えないのと同然になって一分以内に行動不能になる。七四式戦車をやっつけようと思えば、対戦車ミサイルやその他も大事だけれども、何よりも対戦車地雷を厚く敷け、下の装甲板が薄いのだから一番撃破しやすいということになれば、この七四式戦車に乗っている自衛隊員の生命に関することではないか。この七四式戦車に防護されている自衛隊の歩兵部隊に対して重大な損害を与えることではないか。これでも自衛隊法五十九条に言う秘密ではなく、在職中知り得た秘密を漏らしたことではないというのですか。それなら、この種のことはだれが漏らそうと、宮永が漏らそうと、あるいは国政調査権でわれわれが言いなさいと言ったら全部言うということですね。これは現在の事件にも関係することですよ。だから答えてください、防衛庁長官
  23. 細田吉藏

    細田国務大臣 「現代」に出ました論文については、実は私はきのう話は聞きましたが、また、出たという題目は承知しておりましたが、中身は読んでおりませんでした。いろいろ御指摘がございました。いま防衛局長から御答弁を申し上げたとおりと存じますけれども、問題は、防衛のいわゆる秘機密の問題と、それから軍事評論家といいましょうか、防衛評論家といいましょうか、評論家としてのいろいろな発言が、これは粟栖さんに限らずいろいろあると思うのです。この問題は非常にむずかしいところだと思います。ですから、先ほど防衛局長が申したように、適当でないと私も思います。  そこで、一体これはどう扱うかということなんです。それをよほど細かく注意をしていかなければ、これから秘密を守る、機密を守るといったって、国会のみならず、一体何をしているんだということになると思う。ですから、ただいま御指摘のような点、きわめて重要な問題だと思いますね。ですから、今度久保田前長官がつくりました、秘密保全体制検討委員会というものをつくっていろいろな角度からこれを守ろうということで検討をしておりますね。その中でこういう問題について十分、中身だけじゃなくて、特に退職された方ですね、退職された方につきまして、退職されて軍事評論家とか防衛評論家になられるという方があるわけですね。そういう際に一体どういうことなんだと、知り得た機密なのかどうかということになるわけですから、この扱いをどういうふうにするかということについて、十分私防衛庁長官として今後検討さしていただきたい、かように思います。ただいまのいまどうなっておるかという具体的な七四式戦車の問題等につきましては、防衛局長からお答えを申し上げます。私は、やはり基本的にこの問題を究明しておかなければしりが抜けてしまうんじゃないかということにつきまして十分考えていかなければなりません。庁内において今度つくりました委員会では、いろいろ細かいこともありましょうけれども根本的な問題について考えていかなければならぬ。こういう時代でございますので、特に重大に考えたいと思っております。  いまの栗栖論文につきましては、ひとつ防衛局長答弁でお聞き取りをいただきたいと思います。
  24. 原徹

    原政府委員 七四式戦車について部隊の隊員がこう言ったああ言ったということが確かに書かれておるわけでございまして、それはまた適当でないことも適当でないと思いますが、私ども、先ほど申しましたように、この総点検の一環としてこの論文をチェックをいたしました結果、秘密の漏洩はないということの報告を受けているわけで、いろいろ書かれたことが適当ではないと思いますけれども秘密の漏洩ではないと考えております。
  25. 正森成二

    ○正森委員 何でも適当ではないけれども秘密の漏洩ではないというように言うておりますが、私ども国民の知る権利や報道、評論の自由というのは最大限認めなければならないという立場です。しかしそれにもかかわらず、一方では宮永等の問題についてあれほど大騒ぎしているという場合には、こういう報道というような形、評論という形で出せば、特定の国や特定の個人に渡すという範囲を広く超えて天下周知の事実になるのですからね、もっと影響が大きいと言わなければなりません。そういう問題について、いままで実際この問題について栗栖氏本人に対しても何ら措置はしてないのですか。たとえば一月二十九日に春日一幸議員は、「およそスパイがねらう情報わが国防衛、作戦計画に関する機密資料がその中心でありましょうが、実にその機密こそはわが国が独立を保ち、国民の生命を守るための機密そのものにほかなりません」と、こう言っているんですね。私は、民社党の立場そのものを支持するわけではありませんけれども、仮にこういう前提を置くとすれば、栗栖氏のこの「現代」での論文というのは重大な問題だというように思わざるを得ないのですね。何ら栗栖氏に注意も何にもしてないのですか。もしそうだとすれば、幾ら秘密防衛の検討委員会をつくってもそれはざるみたいなもので、何ぼでも水が漏れるじゃないですか。防衛庁長官、それでいいんですか。総理、それでいいんでしょうか。
  26. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答え申し上げます。  ただいままでは栗栖君に対して何らかのことはいたしておらないようでございます。私、内容につきまして十分検討をいたしまして、申すべきことがあれば申したいと存じます。先ほど申し上げたように、基本的な趣旨におきまして機密を守るということがしり抜けにならぬように考えたいと存じております。
  27. 正森成二

    ○正森委員 いままでのところは措置していないがこれから考えるということでございますから、私はその細田防衛庁長官の言葉を一応お聞きしまして、法務大臣や国家公安委員長質問することはこの段階では差し控えておきたいというように考えております。  そこで私は、ただこの問題についてグラビアなどを見ますと、自衛隊ヘリコプターを提供して取材させていますね。現職でもない者にどういう根拠でヘリコプターを使用させて、師団長が敬礼をして、こういう便宜を与えて、こういうものを書かせたのですか。
  28. 塩田章

    ○塩田政府委員 栗栖元統幕議長ヘリコプター搭乗を許可いたしました根拠は、航空機の使用及びとう乗に関する訓令というのがございまして、その第八条によりまして許可したものでございます。
  29. 正森成二

    ○正森委員 何のことやらわからぬ抽象的な答弁ですけれども、私は、そういうように便宜供与をしたのがこういう論文になって、適当でないと言われるような、そして私の考えではもし公平に扱うとすれば自衛隊法五十九条違反の疑いがあるような、そういうものを発表される一つの手段として使われるということについて、自衛隊は十分な反省をすべきである。そうしなければ綱紀を維持することができない。あなたは防衛庁長官に任官されたときに、新聞報道によると総理から四つ言われたそうですが、その中の一つに、自衛隊内部の綱紀の維持ということを真っ先に言われているはずであります。そういう点から見ても、今後注意されるように希望して、次の質問に移りたいと思います。  次に私は、自衛隊を含めて政官界の綱紀維持について伺いたいと思います。  行政改革を行う基礎としてわれわれが考えなければならない立場というのはどういうものでしょうか。ごく簡単に行管庁長官、答えてください。
  30. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 行政はあくまで国民に対するサービスを第一と心得なければなりません。したがいまして、そのためには機敏に動き得るように常に政府は簡素にして効率的でなければなりません。そして、民間に対しましては過剰介入を避け、同時に官民格差という問題もやかましく言われているときでありますから、おのずと綱紀粛正に対しましては常にそれを第一目標に挙げなくてはならない、かように存じております。
  31. 正森成二

    ○正森委員 いま行管庁長官は、簡素でなければならないということと同時に、何よりも国民に役立つといいますか奉仕するといいますか、そういうことを重視すると言われました。国民に役立つためにはその前提として何よりも政府あるいは行政というものが清潔に運営されなければならない。いやしくも汚職、腐敗があったり、人事や装備あるいは物資の調達が金で左右されるというようなことが絶対にあってはならない、これはもう前提の前提であると思いますが、いかがですか。総理でも行管庁長官でも結構です。
  32. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 当然行政は常に清潔でなければならないと考えております。
  33. 正森成二

    ○正森委員 総理もそういうお考えですか。
  34. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私もさよう心得ています。
  35. 正森成二

    ○正森委員 法務省に伺いますが、裁判記録の中に提出されている記録というのは、裁判で証拠能力のあり、裁判所がその証明力を判断するために採用された資料のみが裁判記録になっておると思いますが、いかがですか。そして、この裁判記録は裁判が確定した場合には何人でも原則として閲覧することができるようになっていると思いますが、いかがですか。
  36. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 一般論としては御指摘のとおりであろうと思います。
  37. 正森成二

    ○正森委員 昨年の国会で有森國雄氏がこの予算委員会でも証人として出頭して証言し、それが証言拒否罪に問われました。この裁判が東京地裁で行われましたが、昨年十二月に確定いたしました。  そこで私は先日、ここで提出されている裁判資料について閲覧する機会を持ちました。そうしますと、このいま刑事局長答弁したように証拠能力を持っている裁判の資料、検事調書の中にきわめて重大なことが書いてあります。これは特に防衛庁にとって人事や装備が金で買われることがないように努力する上でぜひとも考慮しなければならない内容であります。たくさんありますので、ここに私はその一部、コピーしたものを持ってまいりましたが、これだけあります。本当はこれの二倍以上あるわけであります。その中の幾つかを皆さん方に御披露申し上げますと、こう言っております。  まず第一に、岸信介氏の事務所には昭和四十年の初めごろから日商岩井の海部は接触をして、人事について何遍も要請している。四十年からは月に一回の割合で行っているということを言っております。  松野頼三民には、松野氏の予算委員会等での証言と異なって、松野氏は四十二年の春以後だと言いましたが、四十年の四、五月ころから海部八郎は松野氏と接触をしている。四十年の六月に防衛庁長官に就任したときも、防衛庁長官室に海部八郎と有森國雄が訪問をしている。  検事はここで、長官就任は六月三日だというように言って、それをいま知りましたが六月に行きました、こういうように言っているわけであります。  そしてこの中で人事の問題について、たとえば空幕長を牟田にしてほしいとか、あるいは牟田氏が早くやめないようにしてくれとか、海原の首はどうしても切ってほしいとか、そういうことを言っているだけでなしに、手紙を書いて岸事務所の中村長芳氏に何遍も伝えている、松野氏にも手紙を書いている、こういうことを認めております。そして岸事務所の中村長芳氏は、しかるべき筋に話をしておく、こう言っているわけであります。  そうすると、防衛庁の重大な人事、この調書によりますと、大切な部署だと思ったのは事務次官に防衛局長に、そこにおるようですが、官房長防衛審議官だ、実戦部隊では三つの幕僚長等が重大だ、副長も重大だ、こういうように言って、そこにねらいをつけて人事工作をしたということがはっきりと書いてあるのですね。防衛庁はこういうことを知っておりますか。
  38. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛庁の人事は常に適材適所の主義に基づいて行っておりまして、いろいろいまおっしゃいましたけれども防衛庁の人事には関係ございません。
  39. 正森成二

    ○正森委員 法務省、私がいま指摘したようなことが有森の事件で証拠能力のある資料として裁判所へ検察官自身が提出しているでしょう。
  40. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま御指摘の点は、詳しく私は承知しておりませんけれども、検察官の立証の過程でそういう内容のものを一部含む調書が出たように承知しております。
  41. 正森成二

    ○正森委員 私はここに写しも持っておりますが、その中にちゃんと書いてあるのです。しかもそれだけではありません。われわれの予算委員会の審議では、海部メモは海部氏が実際に書いたものである、マークホプキンス・ホテルで昭和四十年七月二十三日に岸信介氏とダグラス社のフォーサイス副社長がおったのは事実だが、あの中に書かれてあるようなことはなかった、単にF4ファントムの性能の説明を受け、そして若干の陳情を受けただけだというようになっておりますが、それは事実に反するということがここに書いてあります。  まず海部八郎氏自身がこの会談のときに、戦闘機の四機を輸入するという向きの話が防衛庁筋で出ていたように思いますが、フォーサイスの質問に答えて、岸元総理もその事実を確認された、こう言っているわけであります。ですから、あの第一海部メモと言われる戦闘機の四機輸入という点については確認しておる。また、そのライセンス生産につき、マクダネル社として川崎重工と三菱重工がシェアを折半するにつき異存がないといった話をしていたと思います。岸元総理は、われわれに対し、「うん、そうですが、なかなかいい戦闘機のようですな、できるだけ協力しましょう」と申してくれました。こういうように言っているのです。そうすると、あの中に書いてある四機輸入とか、三菱と川崎重工でシェアがフィフティー・フィフティーになったというようなことは根拠があることではありませんか。  それだけではありません。別の調書によりますと、二方ドル、当時の日本円で七百二十万円については、有森の調書でありますがこう言っている。有森はその後海部から、あの七百二十万円はアメリカでせんべつとして渡すつもりだったけれども、岸事務所の中村長芳氏から、先に国内で円でもらいたいというので、出発前に円で七百二十万円お届けした、こう言っているわけであります。海部メモの中に書いてあることは全部本当じゃないですか。  そうすると、元総理という有力者に依頼をし、金を渡すということによって実際上人事が動かされ、それによって装備の導入が決まるということになっているじゃありませんか。こんなことをほっておいて自衛隊の綱紀の維持ができますか。下っ端だけをつかまえて巨悪を逃すというような、そんなことがあって綱紀の維持ができますか。  総理、どう思われますか。これは、あなたの管轄下にある検察庁が取り調べて、証拠能力ありとして裁判所に提出された検察官調書の中に書かれているのです。
  42. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 人事の問題はもとよりでございますが、装備の採択がそういうことによって左右されてはならぬことは申すまでもないことだと思います。
  43. 正森成二

    ○正森委員 その申すまでもないことがそうはなっていないで、ついこの間まで自民党の衆議院議員であった岸信介氏、その方が、月に一回は事務所に来てもらって、あるいは来て、第一秘書の中村長芳氏が詳細に聞いて、しかるべき筋に伝えて、そして相手方の会社の首脳部と会って、重大なことを決めているんですね。  法務省に伺いますが、海部八郎氏の調書によると、そのほかに、岸信介氏は昭和四十年の七月にマークホプキンス・ホテルで一回マクダネル・ダグラスのフォーサイスと会っただけでなしに、昭和四十二年の三月にロサンゼルスのアンバサダー・ホテルで、海部八郎が同伴をして再びマクダネル・ダグラス社のフォーサイスと会っておりますね。そういうように検事調書に出ておりますが、間違いありませんね。
  44. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 正森委員が記録を閲覧されて言っておられると思いますので、そのとおりであろうと思います。
  45. 正森成二

    ○正森委員 いままでたった一回偶然の機会に、昭和四十年の七月にマークホプキンス・ホテルで、たまたま旅行の途中で会ったというように言っておられました。ところがそうじゃない。四十二年の三月に再び同じメンバーが、所は変わったが、ロサンゼルスのアンバサダー・ホテルで会っている。四十二年の三月というのは一体どういう時期かと言えば、四十二年の三月というのは、われわれの調査によれば、佐藤内閣で第三次防衛計画が三月の十三日に国防会議で決まっております。この中で、新戦闘機の機種選定の上整備に着手するということが決まっているのです。その前の一月には、防衛庁が六七年最終原案を決定して、その中で航空自衛隊が次期戦闘機四機を導入するということが決まっているのです。昭和四十年七月のときには約束、努力の段階だった。四十二年三月にはいよいよ第一海部メモに書いてある四機の輸入も防衛庁が決めた。三月十三日には国防会議で新機種の選定も決まった。こういう重大なときにまたロサンゼルスのアンバサダー・ホテルで会っている。それから間もなくして松野氏に対する五億円の支払いが始まっておるのです。これがいかなる内容であったかを解明しないでダグラス、グラマン事件の解明なんかないじゃないですか。防衛庁の綱紀維持なんかないじゃないですか。こんなことで、下の自衛隊員がお国のために命を捨てようと思うでしょうか。上の連中はおれたちの命をダシにして金もうけをしておる、商社は金もうけをしておる、こう考えるのがあたりまえじゃないですか。  政治家としての防衛庁長官は、まずこういうことを正すところから綱紀の粛正をやらなければなりません。そのために、この問題についてもどういうようにして過去のことを調べ、いままでの調査では公正に行われたと思っていた人事についてどういうように洗い直すつもりか。それを防衛庁長官から政治家として伺いたい。
  46. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答えいたします。  ただいまの検事調書につきましてはそのとおりでございましょう。したがって、これらの真実については、手続がだんだん進むにつれていろいろ裁判所としての見解も示されるようなことになるんじゃないだろうかと思います。  私どもは、総理もただいまお答えがありましたように、大事な人事がそういうことによって左右されることは絶対に避けなければならない。おっしゃるように、第一線で働いておる自衛官の諸君のためにも、そのような不正が仮にあるとすれば、不正は許せない。もとを正さなければ姿勢はよくならぬ。お説のとおりだと思います。  具体的にいまどうであったかというようなことにつきましては、せっかくいま国の機関が調査しておることでございますから、私がとやかく申し上げる筋合いはございません。
  47. 正森成二

    ○正森委員 防衛庁長官がそういうことは絶対にあってはならないということを言われましたが、総理もお聞きになっていただきたいと思います。  この検事調書に出てくる内容はそれだけではないんです。海原官房長昭和四十二年七月に官房長をやめさせられて国防会議事務局長に転出しました。その裏にいろいろ怪文書が流れたということが報道されましたが、その怪文書が日商岩井の工作であるということを有森自身及びその事件に関係した恩田がはっきりと認めております。この怪文書、昭和四十一年二月から四月まで配られた「防衛庁の黒い墓標」、「防衛庁の葬送行進曲」、「防衛庁版、汚職の道教えます」及びその後三カ月ほどして、四十一年の八月から九月に出た「新長官へ一筆申し上げます」、「佐藤総理大臣への提言」、こういう五つについてはいずれも当時日商岩井の航空機売り込みの先兵だった有森國雄が原稿を書いて、それを恩田がわかりやすいように書き直し、リライトした。恩田と山辺がいろいろタイプの印刷をしたり、そしてあて先に配ったということが書いてあるだけでなく、このために恩田や山辺というのは月々、当時有森の給料が五、六万円だった時代に三十万円ぐらい飲み食いの供応を受け、一カ月十万円から二十万円の手当をもらい、原稿をリライトしたときには特別に十五万円ずつ報酬をもらった。それについては、有森が知っていただけでなく、全部海部八郎の了解を得た。こういうように書いてあります。しかも、恩田と山辺が四十一年の十一月に逮捕されたら、日商岩井の島田三敬が恩田や山辺を訪れて、四十二年一月から四十三年一月まで、つまり裁判で浪人していた間、両人にそれぞれ七百万円の金品を贈った。合計千四百万円であります。これは日商岩井から出ている金であります。日商岩井が、結局こういう卑劣な作戦を行い、岸事務所や松野頼三氏に手紙を書き、金品を贈り、こういう人事工作をしたことは、この検事調書を見る限り白日のもとに明らかになっているではありませんか。これで何ら問題がなかったということであれば、自衛隊というのは物を見る目がないと言われても仕方がありません。  それだけではありません。総理も委員長も聞いていただきたいと思います。昭和四十四年の一月に恩田は、当時児玉誉士夫の家に、かわいがられて週一回の割合で出入りしておりました。児玉誉士夫が海部メモの存在を知って、有森にそのメモを持ってきてほしいと言いました。有森は、この怪文書の人事工作事件自分だけの判断でなく、海部八郎の了解のもとに行われたにもかかわらず、刑事事件になったら自分だけが悪者にされたことに腹を立てて、それが主な原因で日商岩井をやめました。そこで海部に恨みを抱き、海部八郎氏を失脚させるために何とか利用できないかと思っていたので、児玉邸へ行った。そうしたら、児玉がそのコピーを預かって、その後、十日後と約一カ月後、二回呼ばれた。そして一回目は一千万円、二回目は二千万円お金をくれた。こういうように言っているわけであります。なぜ海部や政治家は児玉に事実上三千万円も渡したのでしょうか。もしそれがはったりであって事実に合致しないなら、三千万円など渡す必要は全くないではありませんか。  ところが、この三千万円の金の出どころはどうかといいますと、この検事調書を見れば、その後、四年後に、児玉事務所の大刀川から、このお金は中村長芳に話をして、岸事務所の中村長芳がいろいろ努力をしてつくって持ってきた金である、こう言っているのです。(「とんでもないことだよ」と呼ぶ者あり)とんでもないことじゃないですか。その中で恩田は、この男ももちろん悪いことをした男ですが、こう論評している。児玉という男は数千万円、数億円お金を取っても情報提供者には何百万円しか渡さない人物だ、その人物が三千万円くれたところを見ると、恐らく日商岩井や関係した政治家は数億円の金を渡したに違いない、ということは海部メモがそれだけの値打ちがあったということだ、その内容が真実だったからこそ児玉誉士夫はこういうように金をくれたのである、こう言うているのです。  これがダグラス、グラマン事件の真相であります。こういう問題について明らかにしないで綱紀の粛正ができますか。  法務大臣に伺いたい。私は、こういう重大な問題が事実としてあるならば、もっと岸信介氏にしても中村長芳氏にしても取り調べるべきであり、海部八郎氏にしてももっと取り調べるべきであったと思うにもかかわらず、その捜査が十分されておりません。私は、こういう事実に基づいて検察みずからがもっと十分な捜査をすべきであると思いますが、いかがです。
  48. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ロッキード、ダグラス、グラマン事件等につきましては、検察は公訴の維持に全力を挙げて、妥当な態度で努力をいたしております。今後もそういう態度で厳密にやってまいるつもりであります。
  49. 正森成二

    ○正森委員 私は、いま御答弁がございましたけれども、こういう事実が出ているのに捜査はあの程度で打ち切ったということについて、国民の一員として重大な疑問を持たないわけにはまいりません。  そこで総理、私がここで、いままで国民の大多数にまだ知られていなかった事実についてお話をして、綱紀の粛正を閣僚に求めることができますのは、裁判記録というものが、一たん確定すれば国民の何人でも見ることができる、つまり情報が公開されているからであります。そこで私は、こういうことが起こったのは日商岩井というところが、企業が政治献金をする、あるいは賄賂を贈るということが許されているから——賄賂の場合は見つかれば罪になりますが、政治献金という名前でなら許される、そういうことだから、こういうことが起こってくる。そこで、いろいろございますが、少なくとも政治献金を許さないという態度をおとりになる。情報公開については、ただに確定した裁判記録でなく、厳格な例外を設けて、それ以外は行政に関することも情報を公開なさるということが必要ではないでしょうか。それについてお考えを伺いたいと思います。
  50. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 企業または団体等からの政治献金を禁止すべきじゃないかというお話は前々からあるわけでございます。これに対しましては、これまでもいろいろ論議がございまして、最高裁の判決もあることは正森さん御承知のとおりでございます。政府としては、企業も法人としての社会的存在である以上、企業家が企業政治献金をしてはならないという筋合いのものではなかろうと思いますけれども、しかし、これはおのずから節度がなければなりませんし、本来個人献金によって政治資金が賄われるという状態が望ましいわけでございますので、そういう方向へ漸次持っていくように努力をすべきものと考えております。いわば、この問題につきましては節度を持って処理して、個人献金への移行について努力をしてまいるというのが、いまの政府の態度でございます。  第二の情報公開の問題でございます。いま、政府は知る権利にこたえて、いろいろな形で政府の持っている情報、知識を国民に公開、閲覧に供しておりますことは御指摘のとおりでございます。いまの体制で果たして満足すべき状態かどうか、もっとこれは改善すべき余地があるのではないか、事実上の問題として改善すべきことはすべきであるが、立法政策上も考えなければならぬという議論もあることはよく承知いたしておるわけでございます。したがって、この問題は、いま政府にとりまして一つの検討の問題としておるわけでございまして、いまどうするかということについて決定的なことを申し上げる段階にございませんが、改善の方途については検討を続けていかなければならぬと思っております。
  51. 正森成二

    ○正森委員 改善の方向で検討するという御答弁でしたが、まだ私どもとしては満足できない内容であります。  総理に一つだけ伺っておきたいのですが、いままで、腐敗を正す九月のあの提言の中でも、また歴代総理も、刑法の贈収賄について刑の一部を重くして、そのことによって時効も三年から五年にするということは何回もお約束になりました。私が調べたところでは、すでに昭和五十二年の四月二十六日の第八十国会で提出をされております。それ以来毎国会提案されて、いままでもうすでに三年たっておりますが、法務委員会では与党議員が反対しているために実際上審議ができない、もちろん通過しない、こうなっておるのです。今国会でも総理はこの問題について御言及になりました。私は、総理として、自民党総裁としての大平さんに、この問題について私が申し上げたようなことが明らかになった以上、断固として政府としてもあるいは与党総裁としても、こういうように政府がやろうとしていることについては推進する、こういう立場をぜひお示し願いたいと思います。
  52. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 今国会で成立をさせていただくように、鋭意政府としても努力します。
  53. 正森成二

    ○正森委員 自民党総裁としてはいかがですか。
  54. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 努力をしてまいります。
  55. 正森成二

    ○正森委員 総裁が努力をしたいと言われたのですから、議員諸公もその点をよく御考慮願いたいと思います。  法務大臣に伺いますが、私がこういうように御質問できますのは、有森や恩田というような諸君が、国会では十分に言えなかった人も、検察官に対しては、全部でないまでも真実の相当部分を述べたからであります。  そこで、もしこれらの人が国会に喚問されたときに、自分が刑事責任を受けるおそれがないというようなことで安心して証言できるという条件をつくってやれば、もっと国民の前に真実が明らかにされたはずであります。私は、昭和五十二年に超党派で議院証言法の調査アメリカに参りましたときに、いわゆる免責制度、イミュニティーという制度についても調査をしてまいりました。これは、しかるべき人物で重大事件の真相を知っておる、しかし、それほど事件の中心人物でないという人に免責を与えて、証言をして仮に自分が罪の一部に触れるようなことがあっても、その証言によっては訴追されないという特権を与える制度であります。これによってウォーターゲート事件では約二十七人が免責を受けて証言をしております。わが党は、この免責条項についても不正防止のために提案をしておりますが、一定の条件で国会が発議、決定したら、裁判所の許可を受けた上で免責を与えるというような点について御研究をなさるお気持ちはございませんか。
  56. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ロッキード事件等について、御存じのようにコーチャン、クラッターというような人々にいまのイミュニティー方式を使いまして、ああいうことをやりました。しかし、わが国ではまだそういうことについて習熟いたしておりませんし、少し慣習も違うようでありますから、いますぐにどうこうということは考えられませんが、研究すべきものだろうと思っております。
  57. 正森成二

    ○正森委員 法務大臣は研究と言われて、いますぐの問題ではないと言われました。しかし、私がきょうこの委員会で申し上げましたことはきわめて重要であり、綱紀を維持するためにもゆるがせにできない問題であります。  したがって、私は委員長にお願いいたします。岸信介氏、松野頼三氏及びすべての点にかかわった中村長芳氏、この三人を証人として喚問していただくことをお願いしたいと思います。(拍手)重大な問題です。
  58. 田村元

    田村委員長 後刻理事会で相談いたします。
  59. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、後刻理事会で御検討ということでございますから、それに従いたいと思います。  それでは、次に私は、財政収支試算について若干の質問を行いたいと思います。  委員長、恐れ入りますが、関係閣僚にこの資料をお渡しするということはよろしゅうございましょうか。
  60. 田村元

    田村委員長 はい、どうぞ。
  61. 正森成二

    ○正森委員 これまで同僚議員が質問をいたしましたが、政府は財政収支試算をお出しになりました。ところが、本年度の財政収支試算と昨年度のものでは非常に大きな違いがあります。それは、昨年の財政収支試算では、参考の資料といたしまして、もし増税をしなかった場合に、GNPの伸びに一定の租税の弾性値を掛けるというだけで税収を計算いたしました額と財政収支試算の税収額の差額、つまり、これだけ分が増税になるのだという資料を前回は添付されたわけであります。御承知のとおりです。それが五十五年度が一兆二千六百億円、五十九年度が二兆四千八百億円、新規の増税分は合計締めて五年間で九兆一千百億円というのを添付されたわけであります。これは国民に対して財政収支試算による五十九年あるいは六十年がどういう姿になるか、それに対して国民はどれほどの心構えが必要であるかについて考えます場合にぜひとも必要な資料であります。ところが今回は、私ども質問に当たって、出ていないから質問のために出してほしいということを大蔵省に言いましても、昨年と違ってお出しにならないのですね。私はぜひともそれを出していただきたいと思います。大蔵大臣、どうしてお出しになれないのですか。
  62. 竹下登

    ○竹下国務大臣 事務当局からお答えをいたします。
  63. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 昨年度は、ただいまもお示しございましたように、財政収支試算の備考の中で、各年度の税収が五十四年度の税制を弾性値一・二、経済成長率一〇・三で伸びた場合に想定される税収と、そこにお示しした等比で結びました税収との差額を書きまして御提出したわけでございます。今年度も新経済社会七カ年計画の暫定試算というものを基礎にいたしまして、お手元にごらんのような財政収支試算をお出ししておるわけでございますが、その中の五十六年度以降各年次の税収として書いてあります額は、たとえば社会保障移転支出が六十年度において一四・五%になるとか、それから公共投資が七カ年間に二百四十兆必要であるとか、しかも経過期間中に特例公債を脱却して財政再建が図られる、そういった七カ年計画の骨子となりますような財政上の目標につきましてそれを織り込んで、出てまいった六十年度の税収と五十五年度を結んだわけでございます。途中の各年次に書かれております数字は機械的な計算の結果でございまして、それと五十五年度の税収を、今度は名目GNP一一・四ということになると思いますが、一一・四と弾性値一・二というものを使いまして延ばしました数値との差額を昨年と同じ手法でお示しをするということになりますと、各年度の税収の見込みそのものが規範的な意味を持っておりませんので、いろいろな面で誤解をいただくということになりがちだということで、お示しをしておらないわけでございます。
  64. 正森成二

    ○正森委員 一応の説明は承りましたが、昨年にできたことをことしはなさらない。しかし各新聞には、大蔵省ではこう言っておるというかっこうで全部出ているんですね。増税をやらないで自然増収だけに任せた場合の税額と財政収支試算の税額を比較して、何年度はどれぐらい新規増税になる、何年度はどれぐらい新規増税になる、総計どれだけだというのを出しておるのです。だからお出しになったらいいというので何回も言いましたが、お出しにならない。  そこで、総理ごらんになってください。大蔵大臣、経企庁長官、ごらんになってください。私どもで電卓をたたいて概算を出しました。それによりますと、GNPの成長率が五十三、五十四年度までの伸びがそれほどではございませんでしたから、五十五年度をベースとして計算しますと大体一一・四の伸びになります。弾性値一・二でございますから一・二を掛けます。そういうようにして計算しますと、五十六年度の新規増税額は一兆一千二百億、五十七年度は一兆三千百億、五十八年度は一兆五千六百億、五十九年度は一兆八千三百億、合計五兆八千二百億円新規に増税しなきゃならないということになります。大蔵省、こういう前提に基づけばこういう数字になるということはほぼ間違いありませんね。
  65. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 そこに書いてございます五十九年度税収と五十五年度の二十六兆四千百十億という税収との間を等比でつなぎまして、そこでいまお話のございました一一・四%、弾性値一・二で現行の税収が伸びてまいるという場合の税収との差額を各年度計算をいたしますと合計して六兆円弱、五兆八千五百億円程度になるというふうに思います。
  66. 正森成二

    ○正森委員 私たちが計算いたしました数字がほぼ理論的にはそうなるということをお認めになりました。ところがこれは新規の増税分だけでありまして、累積の増税になりますと、各年度累積いたしますから六十年では七兆八千九百億円になる、合計すると四年間で十五兆一千五百億になる、こういうことになるのです。そして、これについては地方税が全く抜けておりますから——裏の二枚目をごらんになってください、総理。財政収支試算方式では税額は全部で二六・五%ということになっておりますから、それで計算した数字から財政収支試算の国税の分を引くということをやりますと、地方税の分が出てくるわけであります。これがこの数字であります。それに対して、地方税についても国税の場合と同じように新規の増税を行わないで自然増収のみによるというように考えますと、地方税の場合には租税弾性値は一・一で普通計算されているようですからそれで計算いたしますと、地方税の増税分は五十六年度が八千二百億、五十七年度九千七百億、五十八年一兆一千二百億、五十九年一兆三千四百億、締めて四兆二千五百億円になります。そうすると、新規の増税分だけでも、国税と地方税と合わせると合計で五十九年度までに約十兆円、こういうことになるわけであります。しかも大蔵大臣、これは租税弾性値が国税は一・二、地方税は一・一とした場合なんです。  ところが、十二月十九日に発表された財政審の報告書によりますと、租税弾性値を一応一・二にしておるけれども、過去十年間のうち高度成長期の時分は一・四だから、最近の三、四年をとると大体一くらいだ、こう言っているのですね。租税弾性値一で計算すると、これは国税、地方税合わせて十兆円をはるかに超えるという新規増税をやらなければならないことになるわけです。本年度は増税分はほんの三千億か四千億ですね。一体どうやってこういう増税分を賄われるおつもりか。  私が十一月の二十一日に大蔵委員会質問いたしましたら、あなたは一般消費税もワン・オブ・ゼムである、増税を考える場合にいろいろあるうちの一つであるということを御答弁になりましたが、そしてまた、本予算委員会でもそれを必ずしも御否定になっていないと思いますが、そうすると、一般消費税もそのうちの一つですね。
  67. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が絶えず申し上げておりますのは、本院の決議においても行われまして、財政再建に関する決議案でございますが、その「いわゆる一般消費税(仮称)」という前提のもとにおいて、そういう言葉を前提として財政再建に取り組め、こういう趣旨のことでございます。したがって、「いわゆる」とか「仮称」とかいうことをつけていただきましたのは、これは税制体系上、消費税一般というものが日本の税制体系の中で未来永劫になくなってしまうということは理論的になじまないではないかということでお願いをいたしてきたところでございます。したがって、税制体系上、消費一般にかかわる税というものは、まさに間接税におけるワン・オブ・ゼムではある、このように考えております。
  68. 正森成二

    ○正森委員 そこで、大蔵大臣にもう一つお伺いしたいのですが、大蔵大臣は、五十四年の十二月四日に参議院の予算委員会で上田議員の質問にお答えになって、一般消費税の分野についてワン・オブ・ゼムということをおっしゃった後で、国民の理解が得られなかったという後ですね、「今度はその理解とはどうかということになりますと、これはおのずから議会制民主主義の国でございますから選挙というものも理解の大きな判断の基準にもなるだろう、あるいは国会構成のマジョリティーという問題もその基準になるだろう、そういうところでございます」云々とお答えになっているのでございます。ここに速記録がございます。こう御答弁になったということは御記憶にございますか。
  69. 竹下登

    ○竹下国務大臣 記憶にございます。
  70. 正森成二

    ○正森委員 総理、お聞きになってほしいのですが、そういたしますと、たびたびその機構等について国民の理解が得られなかったというようなことを言うておられるのですが、財政をお任せになっている竹下大蔵大臣のお言葉によりますと、「議会制民主主義の国でございますから選挙というものも理解の大きな判断の基準にもなるだろう、」「国会構成のマジョリティーという問題もその基準になるだろう、」こうなりますと、選挙で勝って多数をとれば理解が得られたということで一般消費税の導入はあり得る、つまり問題は参議院選挙だ。参議院選挙で政府・自民党がやっぱり過半数をとれば、国民の理解が得られたということに少なくともなり得るんだというようにとられても当然であります。それが証拠に、新聞の中でも、五十六年度に導入も、参議院選で自民勝てば、こういうかっこうで要約しておるのですね。こうとられても仕方がないのです。結局、参議院選挙でお勝ちになれば一般消費税を導入する可能性がある、こう考えてもいいですね、総理。
  71. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私が答弁した言葉を援用しての総理に対する御質問でございますから、まず私からお答えをいたします。  私は、いわゆる一般消費税(仮称)ももちろん政策の一つであると思うのでありますが、政策選択の場合、たとえば国民の理解というものにはいろいろなものがある。一つは、税制調査会とかそういうもので理解していただくのも国民に対する理解である。あるいは、それこそ正森委員と私とがここで問答する中において国民がなるほどと思ってくれることも国民の理解である。しかし、議会制民主主義というものの中においては、国会のマジョリティーの問題とかあるいは選挙というものにあらわれる結果というものとか、これも国民の理解の基準として判断する有力なものであって、一般消費税そのものについて私はそのような断定をしたものではありません。
  72. 正森成二

    ○正森委員 断定はなさらなかったと思いますが、国民にそういう理解を与える御発言であった、あるいは感じを与える御発言であったと思います。しかし、時間がございませんのでこの問題について論戦はいたしません。  私、十一月二十一日に本当は国税庁長官に伺おうと思ったのですが、そのときは次長でございましたが、伺いましたときに、時間がないので要約いたしますが、一般消費税を導入しようと思えば、いまの税務署の職員では人員が不足する場合があり得るという御答弁でございました。そこで、現在税理士法が出ておりますが、この税理士法は、三万四千の税理士さん及び十万人の従業員を税務署の影響の及ぶようにして、徴税について便宜を図ろうとしているものであるというように反対する人々から言われております。  そして、この法案をめぐって法案買収が行われたということが言われているわけであります。百一人の議員に対して、九月七日の解散の後数日の間に、五百万円の特からA、B、B、Cということで五十万円に至るまでお金が贈られ、そのうち公明党の関係者はお返しになったということになっております。  そこで、法務省に伺いますが、このときには解散になっていて議員ではございませんでしたから、刑法上は、刑法百九十七条の二項の、公務員たらんとする者請託を受け賄賂を収受したるときは、というのに該当して、たとえ職務権限があっても請託を受けていなければ賄賂にならない、問題は請託を受けているかどうかが問題であるというような解釈もございますが、そうですか。
  73. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねが、現在告発等がありまして捜査の対象になっている案件についてのことでございますので、それについてどうこうというような御印象を与えるような答弁は差し控えたいわけでありますが、一般論とすればそういう点は問題になろうか思います。
  74. 正森成二

    ○正森委員 そこで私は、ここに法務省からいただいた大阪タクシー汚職事件の冒頭陳述を持ってまいりました。ここでの検察の主張を見ますと、この事件については、関谷勝利氏などが被告人になって有罪になった事件でありますが、請託関係と書いてあるところでは、昭和三十九年十一月十九日に始まって、数回にわたって請託を受けておる。そして結局、お金をもらったのは翌年の八月十日であるということで有罪になっております。また、その後、池田正之輔氏らの日通事件については、自己が主宰する政治資金規正法による届け出団体である内外事情研究所に対する寄付金として処理したというふうに、これも検察官の冒頭陳述でなっております。しかし、結局両者とも有罪になりました。  したがって、この検察の考え方からすれば、政治資金規正法によって届け出をしていようと、それは賄賂の成否には事件の性質によって必ずしも関係がない。請託は、金を受け取ったときに請託を受けなくても、その前に請託を受けておれば受託収賄罪が成立する妨げにならない。これは当然のことであると思いますが、そう考えていいですか。
  75. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどのお尋ねについてお答えしたのと同様なことでございますが、いまの点も、現在捜査の一応対象になっている案件に関することでございますので、一般論的にはそういうことがあり得るであろうという程度にとどめさせていただきたいと思います。
  76. 正森成二

    ○正森委員 刑事局長が言われましたように、刑法の一般論としては私が言ったことは十分成立するわけであります。  そこで、資料を見ますと、日税連の幹部たちは傍若無人にこう言っておるのです。四元というのは、「五月段階で、政府案がまとまり、共産党を除く各党との調整もできていた。(それを通すために献金したというのは)釣り上げた魚にエサをやるようなものだ。もし、法案を通すなら、参議院議員にも献金しなければならないところだが、それをしていない」こう言っておるのです。つまりこの人物は国会議員を魚にたとえて、つれた魚とつれない魚、こういう失礼なことを言うており、自分らのが賄賂でない一つの大きな証拠として、法案について決まってしまった段階の後だ、その前ならともかくとか、あるいは衆議院議員だけで参議院議員にはやっていないからというのを大きな論拠にしているのです。  ところが、実際はそれとは違うということがわれわれの調査で明らかになってまいりました。一部の新聞ではすでに、小渕さん、ここに大臣として出てきておられますが、あるいは山下元利さん、こういう方々が、まだ法案として決まる前にそれぞれの政治団体に金品を受領しておられるということは報道されておるところであります。このときに恐らく税理士法案よろしくという陳情をお受けになったと私は思いますが、それはさておき、われわれの調査しただけでも次のようなことが明らかになっております。  五十四年の一月十一日に、衆議院議員の村山達雄氏、これは税制議員懇話会のその後間もなく代表世話人になられ、当時は税理士問題特別委員でありました。この方と津島雄二さん、これは税理士問題特別委員であり、それだけでなしに四人しかいない起草委員の一名であります。この二人の方が千代田区永田町二−七−十三、料亭瓢亭で、夜、日税連の山本義雄、四元正憲両氏等と懇談をして、法案について請願陳情を受けて、よろしい、こういうことを言っておられます。それだけではありません。お帰りにこれらの人物からお車代として三十万円ないし五十万円の提供を受けております。  同じく五十四年一月二十四日、前記瓢亭で参議院議員の鳩山威一郎氏、自民党税制議員懇話会の代表世話人であります。財務委員でもあります。藤井裕久氏、これは税制議員懇話会の常任世話人であり、税理士問題小委員会の同じく起草委員であります。この参議院議員の二人の方に、瓢亭で懇談をし、請願をし、同様にお車代が提供された疑いがあります。  それだけではありません。一月二十五日、今度は元赤坂一−五−二十、料亭文杢で衆議院議員高鳥修氏、綿貫民輔氏、これはいずれも大蔵委員会理事であります。これらの人に対して同じように山本義雄、四元正憲氏が接待し、請願陳情を行っております。このときにもお車代が渡された疑惑があります。  私は単にこれを推測で言っているのではありません。傍若無人に日税連の機関紙の中に書いてあるわけであります。二月一日の日税連の機関紙を見ますと、「村山・津島両議員と懇談」、「一月十一日午後六時三十分から都内において、」こういうことで陳情を行った。料理屋で陳情を受けている写真まで出ているのです。傍若無人じゃないですか。次に三月一日の「日本税政連」を見ますと、「鳩山、藤井氏らと懇談」ということで、一月二十四日には鳩山、藤井両氏、二十五日には高鳥修、綿貫民輔両氏とそれぞれ陳情で懇談した、こう書いてある。刑法の解釈から言えば当然これは贈収賄であります。しかも、それを恥ずかしげもなく機関紙で書いておる。これが法案買収でなくて何ですか。  しかも、それだけではありません。日本税理士連合会は議事録を残しておりますが、きょう一部の新聞にも報道されましたが、この議事録の中でもいろいろ工作をしたということが全部書いてあるのです。  五十三年九月二十二日の理事会の議事録によるとこう書いてある。「この法対策特別資金はあくまでも税理士法改正のために充てられるものであるから、特定の立候補者支援のため、その所属政党に寄附する資金を組合費として徴収することは違反であるとする最高裁判例(昭五〇・一一・二八)とはその趣旨が異なり何等問題はない、」とこう言っているのです。ばれたらその政党のためにあるいはその政治家の今後のためにやったんだということを言っているのに、それよりずっと前の、問題になる前では、そうじゃないんだ、これは税理士法改正のための金だ、こういうように堂々と言っているのです。これで趣旨は非常にはっきりしているじゃないですか。また、三月四日の理事会の議事録によると、四元専務理事から、「カサ上げの問題については小渕委員長を中心とする四名の起草委員に対し、最後の最後まで要望していきたい、」つまり起草委員に対してはかさ上げという特定、具体的なことを要求する、こういうことを議事録ではっきりと言っておる。あるいは五月十日の常任理事会の議事録を見ると、山本会長は「今次の法改正に際しては与野党を問わず多くの国会議員の方々から手厚い協力を頂いており、さらに本会のため身命を賭して活動願っている議員も相当数にのぼっている、問題はこの協力に対してどう報いるかにある、」「可能な限り有効に且つ必要最小限の資金をもって賄うよう充分配意したい、」何です、これは。堂々と議事録の中で金の趣旨を言い、命がけでやってもらう人に報いたい、こう言っており、そして金品を受領した場所の料理屋の写真まで載せておる。  こんな傍若無人の法案買収がいままでにありましたか。検察庁、これに対してあなた方は十分に捜査をして国民の疑惑を解くというようにはぜひしていただきたいと思います。  その点で法務大臣にお願いしたい。あなたは就任されたときに、ロッキード事件について私の懇意な人だから青天白日の身になられることを希望する、こう言って問題になったことは御承知のとおりであります。いま私が名前を挙げた何人かの人は全部与党の議員であります。恐らく懇意な方でありましょう。懇意な方だから青天白日の身を願うというようなことで、検察庁法に基づく指揮権発動をして検察庁の士気を失わしめる、こういうことは絶対にないでしょうね。
  77. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど刑事局長がお答えいたしましたとおりでございます。
  78. 正森成二

    ○正森委員 刑事局長はどう答えたんですか。
  79. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 これはもちろん厳正公平に調査いたします。
  80. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたので終わりますが、私は委員長に、こういう大規模な公然たる法案買収を許しては国会の権威は地に落ちると思います。したがって、私は日税連会長の山本義雄氏、専務理事の四元正憲氏を当委員会に証人として喚問されることを委員長に要請したいと思います。それが一点。  第二点は、総理に、こういうようなことを公然とやっているときに、国会がこのような法案を急速に審議するというようなことはふさわしくありません。現に日税政の増田幹事長はあるところで、十二月の三、四日ごろ、法案が速やかに通るように高等戦術、ウルトラCをつくったんだ、その内容は言えないが、こう言っているんです。選挙が済んでからも法案を臨時国会で急速に通すために工作したということを公言しているんです。しかも、それはどうやら今度は野党議員に対してらしいということまで言っているんです。こういうことで、あなたは法案を政治献金とは本来関係がない性質のものだというようなことを答弁されたようですが、そういう態度は国会の権威のためにもよくないと思いますが、御所見を承って私の質問を終わります。
  81. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国会で審議が行われておる案件でございます。国会の善処に期待しています。
  82. 正森成二

    ○正森委員 証人についてはいかがですか、委員長
  83. 田村元

    田村委員長 ただいまの御要望につきましては、後刻理事会で相談したいと思います。
  84. 正森成二

    ○正森委員 じゃ終わります。
  85. 田村元

    田村委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十五分休憩      ————◇—————     午後零時四十一分開議
  86. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。坂井弘一君。
  87. 坂井弘一

    ○坂井委員 まず総理に伺いたいのでありますけれども、一口に行政改革といいましても、この性格づけあるいは定義づけによりましては非常に大きく異なると思います。つまり、一つは機構の改革、いま一つは行政の簡素化、こういう二つに大まかには分類できるんじゃないか。そういたしますと、総理の言われる行政改革というのは端的にいまの後者を指しているのではないか、つまり行政の簡素化とかあるいは冗費、むだを省く、そういうところに当面力を入れて、本格的な中央省庁の統廃合等については世の中がもう少し落ちついてから考えたい、こういうことを総理はおっしゃっていらっしゃる。この考え方というのは総理は現在も全く変わっていない、いまのような基本的な総理の行政改革に対する考え方でもって臨んでおるのだ、こういうことでございましょうか。
  88. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 五十五年の行革案というのをまとめましたのは、坂井さんの言われる後者のような考え方でまとめたものでございます。前者の、時代の変化に応じて、また国民のニーズに応じて行政機構がどうあるべきかという機構改革の問題も、問題があることはよく承知いたしておるわけでございますけれども、そういうものに対する対応策として提案いたしておるわけではありません。
  89. 坂井弘一

    ○坂井委員 私は、行政というのは、やはりその時代なりあるいは国民のニーズの変化、そういうものに即応しながら、中央機構も含めて改廃すべきものはどんどん推し進めていくというのが本来的な行政改革でなければならぬと思うのですね。総理は、そうした行政改革、本当の意味の行政改革ということについてはいま手をつける段階ではない。将来ということでありますと、いつのどういう状況、情勢になった時点でそうした中央省庁を含める行政改革に手をつけるのか、またそれに対してどういう構想をお持ちなのか、この際ひとつ総理の所見を伺っておきたい。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕
  90. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 この段に関しましては、行革をお任せ賜りました総理ともいろいろ御相談を申し上げましたが、従来の経緯から考えますと、行革はあれもやりたい、これもやりたいということでなく、私は、実はそう思うのですが、やはり順序を立てて、AからB、Cというふうにやっていった方がいいのではないかということでございました。そこで総理の御指示も、いわば中央の省庁に関する機構改革、これは今回は指示をされなかったわけでございますが、物にたとえますと、今日国家財政は大変だ、言うならば世帯のやりくりがつかなくなった、そのときに、ぜいたくにも別荘を持っておる身分じゃないじゃないか、だからまず別荘から整理せよ。その別荘というのは特殊法人でありあるいは地方支分部局、そうしたものを整理する、そして本家にかかる、これが順序ではなかろうかというふうなことでございましたので、実はわれわれといたしましてもそのとおりだという考え方で、現在四本柱を仕立てましてそれにかかっておるわけでございます。  したがいまして、今後大平内閣におきましては中央省庁の機構改革は全く無視しておるというものでは決してございません。ただ、本家もなぶる、別荘もなぶる、支店もなぶるというようなことになりますと、これは私は、従来の経験から申しますと恐らく混乱だけが残るのではなかろうか。やはり行革は一たん手を染めた以上はその効果を上げなくちゃなりませんから、したがいまして、行革に関しまして、大蔵大臣、官房長官、私、三人が主として三閣僚会議を開いておりますが、そういう思想に基づきまして今回は手を染めた、こういうふうにお考え賜りたいと存じます。
  91. 坂井弘一

    ○坂井委員 本家別荘論、これは私から言わせれば、まさに総理のおっしゃるつまり行政のむだを省きたい、簡素化したいというたぐいのものでして、私の言いたいのは、行政改革というのは、本来的には先ほど申しましたように時代も大きく変わったし、国民のニーズも変わってきた。それに行政は縦割りである、しかしながら仕事は各省にまたがる、ばらばらである、そういう中で、やはり総合性、整合性というものも持たしていかなければならぬ。そういう中で、とりわけ今日の時点を踏まえてみますと、やはり根本的なといいますか、本当の意味の行政改革に手をつけなければ、いま宇野長官のおっしゃるのは、むしろ本丸だけ残す、本丸を守るために出城を切ってしまう。私に言わせればこれはつめ切り行革である。これはおよそ行革の名に値しないものではないかと思うわけです。  しかし、百歩譲っていまのところそういうところがら手をつけざるを得ないんだ、またそれを実効あるものにしていきたいんだ、こうおっしゃるならば、それはそれなりに理解しましょう。しかしながら、いま申しましたような行政改革、本格的な行政改革というものを推し進めていかなければならぬ時代にもう至っておるのではないか。ということであるならば、やはり長期的な行政に対するビジョンというものを持たなければならぬ。かつての高度成長期のようにどんどんと税収がある、パイが大きくなる、それをよりどころにしてそして歳出もふやしていく、つまり国民のニーズにこたえるさまざまな行政需要にこたえていきましょう、また同時に減税もやりましょう、こういうような財政事情にないことは国民も百も承知なんですね。したがって、そういう状況から、国民に理解を求めることも必要でありましょうが、八〇年代の行政の像、これを政府はどう描いておるのか、そういう一つのビジョン、そういうものを少なくともこの際には示すべきではないか。またさらには二十一世紀を展望した行政のあり方等についてもいまから検討を進めなければならぬ。その手法についてはこうこういう手法をもってすればというような研究といいましょうか、せめてそういう時に来っておるのではないか、こう思うわけですが、総理、いかがですか。
  92. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのこと、よく私も理解できるわけでございます。私が施政方針で申し上げたのもそういう趣旨で申し上げたつもりでございます。  八〇年代というのはいろいろなことが予想されますけれども、一つには大変国際化が進む時代ではないか。内政と外交が分離できない時代、つまり内政は外交を踏まえてやらぬと効果は上がらない、外交も内政を踏まえてやらぬといかぬ、もう分かつことができない時代になったという時代になるのではないかということ。  それから、地方の時代と申し上げておりますのは、これまで一応百年間近代化を中央集権のもとでやってまいりましたけれども、このあたりで地方の活力、自主性というものを尊重しなければやっていけない時代になってきたのではないか、中央と地方のあり方が問われなければならない時代になってきたのではないかということも申し上げておるわけでございます。  それから、高度成長時代のぶくぶく肥大化してまいりました行政機構は、低成長時代になりましたならば当然見直さなければならないわけでございまして、いまやっておる行政整理、行政費の節減もそういうラインの要請にこたえた一つの対応であるにすぎないわけでございまして、あなたのおっしゃる機構的に申しましても、そういう角度から民間と政府との取り組み方はどうあるべきか、これも施政方針で問題を示唆しておいたわけでございますけれども、そういうことも考え直さなければならぬ時代になってきておるのではないか。  したがって、行革の本来のあり方というのは、そういう時代の趨勢、国民のニーズ、内外の状況を踏まえた上で行政機構はどうあるべきかということを探求していかなければならぬということはわれわれの当然の責任であると考えております。そういう問題意識を持ってわれわれはこれから行政に当たらなければならぬわけでございます。具体的にそれでは行革の問題としてこれを取り上げるという段階には——いま宇野長官から申し上げたように、いまは簡素化、効率化という点にしぼってやっておりますけれども、そういう問題を忘れておるわけでは決してございませんで、いまやっておる仕事はここにアクセントを置いてやるけれども、将来の問題としてそういう問題をわれわれはないがしろにするつもりは毛頭ないというように御理解をいただきたいと思います。
  93. 坂井弘一

    ○坂井委員 それではひとつ提案と申しますか、三十九年の臨調答申、あれはあの当時でも非常にりっぱなものだった。それ以来十六年、社会、経済情勢もかなり大きく変化しているわけですね。したがって、あれがあのままというわけにはいかぬでしょう。いまのような将来にわたる行政のビジョンなり、行政改革の本来的な改革の方向を目指そうとしなければならぬということであれば、三十九年当時の臨調に匹敵するような大規模な調査会を設けてこの際やってみたらどうでしょうか。いかがでしょうか。
  94. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 一つの提案であるかもしれませんが、率直に申しますと、国民のいま行革に対する御熱意なり要望というものには、できるだけ早く私たちといたしましてもおこたえしなければならぬし、また事実今日の状態であってはいかぬと思いますから、極力われわれといたしましては実行に手を染めていきたい、こう思うのでございます。もちろんそうした何らかの機関によって第三者の公平な意見を承るということを決して忘却するものではございませんが、ただ、三十九年の臨調のような大仕掛けなスタイルということになりますと、最初から最後までおおむね三年かかります。それはそれとしてまた必要であるかもしれませんが、特殊法人にいたしましても、地方支分部局にいたしましても、いまおっしゃいました中央の諸官庁におけるところの機構改革にいたしましても、今日までの経緯もありますし、われわれも十分参考資料を持っておりますので、できたならばそうしたことを中心に進めるものは進めていきたいな、かように思っておる次第でございます。決して御提案を無視するわけではございませんが、そういう気持ちでございます。
  95. 坂井弘一

    ○坂井委員 もちろん政府がやるべきことはどんどんやらなければいかぬ。ただ、このままでは容易に進まぬのじゃないか。それから同時に、本来的、本格的な私が申しますような行政改革ということに手をつけようとすれば、どうしてもそこに一定の限界があるといいますか、第三者的な機関、そういうところでもって思い切った改革案というものを具体的にどんどん検討してもらう、そしてその答申を尊重していこうというのが大きな促進剤になり得るのではないか。  同じような意味で総理に伺いますが、御意見として伺いたいのだが、国会でもそうした行政改革の特別委員会を設けてやってみたらどうだろうかということをわが党は提案しておるわけでございます。これは総理という立場じゃなくて自民党総裁として、国会でこの種の行政改革に対する論議を深め、国民の前にも明らかにし、意見も吸収していくということのために、国会にそうした行政改革の特別委員会を設置するということについて総理はどうお考えになりますか。非常に結構なことだと……。総裁としてお答えいただきたい。
  96. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政府として国会にこれを特にいま要望申し上げるつもりはありませんけれども、非常に重要な時代の問題でございますので、国会においてこれを審議する機構を特別につくられるということは大変時宜を得た判断であろうと思いますが、これは各党の間の御相談に期待いたしたいと思います。
  97. 坂井弘一

    ○坂井委員 よくわかりました。まことに国会のことでございますから国会の方で……。しかし、総理は、国会でもそういうような方向で検討されるならば非常に結構だ。  宇野長官、第二弾の行政改革、これはいつごろでき上がるのですか。今国会中にもできるのでしょうか。また、この描かれる構想の内容のあらましですね、どういうところまで手がけようとするのですか。
  98. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 第一弾といたしまして、先ほど来御説明しております四本の柱の中で、地方支分部局に関しましては、ブロック単位が三月三十一日、府県単位が六月三十日、これまでに成案を発表するということを申しております。  そのほかにも、過般来、たとえば全特殊法人を対象に監察権を強化せよ、こういう国会の御意思も、坂井さんのところから、矢野書記長から意思表示がございました。そうしたこと等も踏まえまして、やはり各省の協力を得ないことにはこれはなかなかできません。各省庁に対しまして、あれもやれこれもやれ一ちょうでは非常にむずかしい問題もあると思いますから、着実にまず三月三十一日までのものをやり遂げよう、いま私はこう思っております。  したがいまして、その後におきましてできるだけ近い機会に、いわゆる第二弾というものを制定し、計画を閣議決定に持ち込みたい、かように考えておりますが、具体的にある程度案は煮詰めておりますけれども、まだこの場で発表する段階ではないということもお含み賜りたいと思います。
  99. 坂井弘一

    ○坂井委員 それから、先ほどの問題に関連してですけれども、行政改革白書を、白書と名づけられるかどうか、そんなものをお出しになったらどうでしょうか。前には行政監理委員会が発表していましたね。四十一年に「行政改革の現状と課題」を刊行して、四十六年の第四巻で終わっているわけですね。それ以後ずっと出ていないわけです。ですから、行政改革の必要性がこれだけ叫ばれておる現在、やはり国民にもそれなりの理解を求め、政府もやろうとしておる行政改革、この監理委員会の意見、これはそうした形で広く国民によく認識もしていただく、その上でまた国民の意見もよく聞く、そのためにそうした白書とも名づけるべきその種のものを刊行されたらいかがでしょう。
  100. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 非常に御親切な御提案を賜りましてかたじけなく承る次第でございます。もちろん行革は国民に知っていただかなければなりませんから、十二分にその点を考えまして計画をいたしたいと思います。
  101. 坂井弘一

    ○坂井委員 五十五年度の予算編成の基本方針を見ますと、「五十五年度予算は、公債発行額をできる限り圧縮して財政再建の第一歩を踏み出すとともに、経済の着実な発展に配意することを基本とし、次のような方針で編成することとした。」こうしまして行政改革ということをその柱の一つに挙げておりますね。したがって、今回五十五年行革と言われる行革によって反映された五十五年予算、これはどういう形で反映されておるのか、それが私は実はさっぱりわからぬわけです。それで一定の説明が、たとえば補助金等については千六百六十何億、これだけ節減できました、切りましたとか若干のあれはあるわけです。五十五年行革においてそれが五十五年度予算にどういう反映、どういう寄与がなされたのか、これはどういうことでしょうか。
  102. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 具体的にお答えいたしたいと思いますが、五十五年行革の最終年次は昭和五十九年でございます。したがいまして、その間に特殊法人を初め地方支分部局あるいは許可認可、補助金の整理をいたしますし、さらには御承知の三万七千の定員の削減をいたします。これらを全部入れまして、この三年ないし五年の間に実施される計画全体の効果の試算をいたしますと、約五千百億円でございます。ただし、この五千百億円の中には補助金整理はびた一文も入れてありません。  その説明を申し上げますと、では初年度、昭和五十五年度はいかがかという御質問でございますが、昭和五十五年度の補助金整理は、過般も大蔵大臣が申されました千六百六十七億円、そこへ先ほど私が申し上げました第五次定員削減計画三万七千でございますが、それの約五分の一、七千四百五十七人、これによりまして二百九十億円、このほかに特殊法人の統廃合も今後行いますし、さらにはまた特殊法人の役員の削減もいたしますし、いろいろの面におきまして予想される高を入れますと、おおむね昭和五十五年度におきましては二千二百七十億円でございます。先ほど五年間のものが五千百億円と申しましたが、ここには補助金は入っておらないという話を申し上げましたが、ことしは補助金が千六百六十七億円で、大蔵省が今後三年間にわたりまして四分の一を下らざる補助金整理ということになりますと、やはりその分だけこれに追加されるわけでございます。ただし、五千百億円の中には御承知の国鉄再建に要する要員縮減が三千億ございます。これが入っております。  以上でございます。
  103. 坂井弘一

    ○坂井委員 いまのそうした計画、五十五年度予算がどれくらい軽くなったのか。それから今度の五十五年行革は三年ないし五年ということですが、これは資料として提出していただけますか、内容を。
  104. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 提出いたします。
  105. 坂井弘一

    ○坂井委員 それで、今回の行政改革ということで閣議決定されたわけですね。この閣議決定というのは、法的な効果といいますか、あるいは閣議決定の責任といいますか、それが全くなおざりにされておるのではないか。つまり閣議決定された従来の行政改革というものがほとんど履行されないままに今日までに至っている。現実には閣議決定そのものは有名無実みたいな感じなんですね。こんな閣議決定というのは一体何なんだろうかということなんです。今回の五十五年行革のこの閣議決定は必ずこれは実行いたします、実現を期しますと明確にお答えになるんだろうけれども、できなかったらどういう責任をおとりになるのでしょうか。従来の閣議決定が全部しり抜けであるという経緯にかんがみ、この際お聞きしておきたいと思います。
  106. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 現状だけ申し上げたいと思いますが、三十九年臨調以来しばしばいろいろな案が出されましたが、率直に申し上げまして、日付が入ってなかったというふうなうらみがございました。だから、閣議というものは、決めた以上はやらなくちゃならぬでございましょうが、そこがやはりおくれた原因の一つではなかろうかと私は考えましたので、第二次大平内閣におきましてはそうであってはいけないから、きちっと日付を入れろ、こういうふうな総理からの強い御指示もございましたから、各省庁大臣と協議をいたしまして、特殊法人におきましてもすべてその実施時期を入れたわけでございます。なお、三月三十一日までに成案を出そうというブロック機関に関しましてもこの国会に法律案を提出する、そうしたことで各省庁大臣には理解を求めております。そういうふうにして今次の改革は一つ一つ実行に移したいと私は思います。  ただ、よく与党からも注文をつけられるのでございますが、政府がせっかく法律案にして国会に出しましても、実はオリンピックセンターのごとく二度、三度、なかなか御審議願えなかったというふうなことでは、これはちょっと行革の実行を伴いませんので、この点は今回は特別でございましょうからいろいろとお願いを申し上げまして、私たちといたしましては、閣議決定の線で法律案を国会に提出し、どんどんと御審議を仰ぎたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
  107. 坂井弘一

    ○坂井委員 長官、どんどんやりなさいと言うのはどんどんやっていいのですよ。やらなければいけないわけです。過去においてこうだああだ、いろいろな経緯、いろいろなことがあったということは私も承知しております。私がいま聞いておりますことは、閣議決定された今度の行政改革は本当にできるのだろうか、どうだろうか、非常に疑いを持つわけです。何で疑いを持つかというと、いままでの行革がしり抜けになってきた、やられてないということですよ。いま長官は、この間から繰り返しおっしゃっておりますね、今度は日付を入れましたと。それは特殊法人でしょう。むしろ日付は、五十二年の福田行革の案に、たとえば地方事務官制度を廃止する、きちんと二年以内と入っておるでしょう。これは日付を切ってあるのでしょう。それができなかったのでしょう。だから日付の話をするならば、五十二年行革だって日付の入ったものもある、入っていないものもある。今度の行革だって、大体この時点で検討します。いまおっしゃったように法案も出しますということですから、それはそれでよろしいのですが、日付が入っておる、入ってないと言っても、前の行革だって日付の入ったものはある。しかし、やられていない。閣議という非常に重要な、重みのある決定がその決定どおり行われないでそのままに、そのままにというか、何一つというわけではないけれども、しかし、それを担保するものがない。したがって責任の所在も明らかでないままに今日に至っておるという経緯にかんがみ、今回の行革案については、なまぬるいものでございますけれども、ここに閣議決定した以上は必ずこれを実行いたします、じゃそうならば、できないときには政府は、内閣はどういう責任をおとりになるのですか、こう私は聞いておるわけです。総理いかがですか。
  108. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 閣議決定いたしました以上は、そのとおり実行しなければならぬと考えております。それができない場合は、それ相当の責任を内閣はとらなければならぬことは当然と思っています。
  109. 坂井弘一

    ○坂井委員 具体的に補助金の問題に入りますけれども、先ほど申しましたように行政改革に対します中長期にわたるビジョンがない、そういう中でとりあえずということで今回の補助金の整理が行われたようでございますが、確かに一般会計に占める補助金総額というのは三分の一、省によっては半分以上、七割以上が補助金の省もございます。したがって、ある課、ある係では補助金を配給するためにあるような、かなりえげつない言い方をしますけれども、そんなようなところもある。それは必要であるか必要でないかは別としましても、実際問題、補助金行政のためにわざわざ課が設置されておる、実体的にはそういうところもあるわけなんですね。そういう中で今回の整理が行われたわけですが、新たに三百二件の新規補助金、これは新規補助三百二件全部が予算補助だと思います。新規補助金は自分の所管の省では何件で、金額は幾ら今度新しく予算に計上されておりますということが各省大臣おわかりでしょうか。皆さんがおわかりなんでしょうか。大蔵大臣は全部わかっておりますか。
  110. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私の方で言えますのは、新規に認められた補助金等は三百二件、九百八十一億円となっております。
  111. 坂井弘一

    ○坂井委員 したがって、私は三百二件の内訳を聞いているのです。個別に、項目別に全部わかっておりますか、こういうことなんです。
  112. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 新規補助金は、通産省は二十三件で、金額は二十六億でございます。
  113. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 これは全部やるのか。
  114. 坂井弘一

    ○坂井委員 ずっと各省大臣全部お答えいただけますか。
  115. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 代表してでいいじゃないか。
  116. 坂井弘一

    ○坂井委員 それじゃもう結構です。  ただ、私ども実はわからなかった。で、各省予算説明を全部ひっくり返して見比べているわけです。どこで何が廃止されたのか、整理されたのか、それで新しく三百二件と言うけれども、それはどこにあるのだろうか、調べてみるけれども、なかなか出てこないのです。これは補助金便覧を見ればわかるんだということでしょうけれども、これはずいぶんのんびりした話で、八月か九月でしょう。これは早急におまとめになってお出しになりませんか。  実は、私はそのことを再三申し上げましたら、けさほど資料が来たのです。「重立った」とこう書いてあります。件数別に全部くれと言ったら「重立ったもの」というわけで幾つか書いてきてあります。新規を見ましても三百二件にはならぬわけだ。それから廃止、整理、特に廃止の分は三百二十八件ございますね、これは何が廃止になったのか。新規は三百二件、何が新設されたのか。これも一覧表にして資料としてお出しいただけますか。
  117. 竹下登

    ○竹下国務大臣 坂井委員にお届けいたしましたものは、まさに主なるものとして双方二十ぐらいずつを抽出したのを資料としてお届けしたわけであります。いささか時間がかかると思いますが、極力御要請に応じたい、このように思います。
  118. 坂井弘一

    ○坂井委員 早くお出しをいただきたいと思います。  それで、今回の補助金整理につきましては「昭和五十五年度以降四年間に、その件数の少なくとも四分の一を整理するものとし、各省庁別の整理目標数は、別途定めるものとする。」これは件数ですね。およそこの四年間で一千件近いものを整理する、こういうことでしょうか。そうすると金額的にはどうなりましょうか。
  119. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは坂井委員質問のあるところだと思うのでありますが、十一月九日に、補助金整理計画というものをつくろう、こういう閣議決定がなされたわけであります。十一月九日というのは初閣議でございます。私もそれからそれを精査してみて、先ほど来お話しのように、たとえば義務教育半額国庫負担の問題とか、そうした膨大な補助金も一つの補助金だ。どういう形でこれを整理計画を立てるかということになりますと、年末、予算編成が終わりますまでに、この計画をつくることについてずいぶん協議を重ねてまいりました。したがって、そこでできたものがこの四年間でおよそ三千八百の四分の一という、いま仰せの数というものを整理しよう、こういうことまでは決まったわけです。  されば、それをトータルしたものが金額で幾らになるかということになりますと、ことしのはわかります。そうすると、来年度はどのような形で整理し、どうして金額が幾らになるかということは、その予算編成を通じてでないと結果として数字は出ないものである、いまそのような結論に到達しておるわけであります。  したがって、昨年はサマーレビューというものがしきりに言われましたが、あるいは私は、まだ部内で確たる相談はいたしておりませんけれども、たとえばスプリングレビューというようなものから始めるとすれば、その辺から取りかかる一つの課題ではなかろうかと折々いま考えておる、こういう段階でございます。
  120. 坂井弘一

    ○坂井委員 だから私は一番前提として、将来における、中長期の計画をやはり持たなければいかぬのではないか。つまり、いま財政再建という非常に大きな要請があるわけですけれども、それらと行政改革が大きな結びつきがあるということであればなおさらのことなんでして、つまりいまの一般会計の三分の一、こういう補助金を将来においてこの率は大体どれぐらいまで下げる、基本的に下げるのかあるいはもう現状でいくのか、そういうところを根っこを押さえませんと、検討して計画を立てていきませんと、数合わせでは何にもならぬということですよ。四分の一削ってみたとて、新規もどんどんふえてくるわけだ。そのことだけでも、これはもうしり抜けのただ単なるつじつま合わせにしかすぎない。ましていわんや、その補助金行政のあり方の中で、必要な補助金はこれは必要なものです。しかし、言われるようにずいぶん指摘もたくさんされてまいりました。まことにむだな、あるいは政策効果も失った、あるいは二重のとか類似のとかいろいろな補助がいっぱいあるわけですね。特に予算補助等に至っては、予算の分捕り合戦の中でつかみ金的につかみ込んだというような補助、あるいは当然そこにはある圧力団体なりあるいはまた政治家が介在する、密室の中で非常にゆがめた形で補助金がどんどんふくらんでいく、こういうところを根本的にこの際是正しましょう、そのためにはいま三分の一と言われる補助金を今後五年あるいは十年、中長期に展望しましてこれぐらいの率まで下げるのだというようなところを根っこで押さえませんと、こんな四分の一削るんですよなんて言ったって、これは実際の効果を伴うものにはならない。むしろこの件数合わせのために必要な補助金まで切られる、あるいは声の弱い補助が切られる、そうして一方においては、声の大きなところが新規補助でもってどんどんまた出てくる、こんなことになりかねませんよ。そこのところを私は心配するから聞いているわけなんです。どうでしょう。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 坂井委員の御説、私どもも十分理解するところであります。  そこで、ただ額でどのようにして抑えるかということになりますと、たとえば例示いたしますと、生活保護費補助金、これはことしだけ見ましても三百三十五億円、それから老人保護費補助金、これは二百四十六億、あるいは老人医療費補助金二百十三億、児童保護費等補助金二百七十四億、療養給付費補助金千三百九十一億、それから義務教育費国庫負担金千百六億、あるいは大きなもので言いますと災害復旧、これも補助金でありますから七百四億とか、住宅金融公庫の補助金が四百五十一億とか、それから国有鉄道財政再建利子補給金が千七百四十八億等々で、九千七百八億というものが増加した一番大きな部分でございます。  この中には、いわば減らしていくという対象にはなじまないものも確かにございます。したがって、まさに補助金というものは補助金性悪説という空気も確かに強いわけでございますけれども、そうした種類のものが補助金性悪の対象にはならぬ。むしろ坂井さん御指摘のように、ややもすると既得権化するなどの弊害が指摘され、このため補助金等の役割り、効果等をいわば既得権化したものの弊害というようなものが一番性悪説につながるものであると思うのであります。したがって、これらの役割り、効果等は常に見直していかなければならないと思いますが、一般的また新規なニーズに基づきまして新設された補助金等を見てみますと、これはやむを得ないことでございますけれども、ことしの場合は国勢調査が二百七十三億でございますとか、あるいは参議院通常選挙が百八十四億でございますとか、そういうやむを得ざるものは別としまして、新しいニーズのもとには、インドシナ難民の問題、重症スモン患者の問題、あるいは高年齢者労働能力活用事業費等々がその新規なものとしてあるわけでございます。したがって、そういうものはその時代のニーズにこたえた場合には、ある意味においては補助金性善説とでも申しましょうか、行政のニーズに対応する行政補助というものもそれなりの意義があるものでございますので、いま御指摘の硬直したもの、もちろん同じようなことをやっているんじゃないか、こういう御批判のあるもの、そういうものにメスを入れることによって、そして結果として数字というものは出てくるものだ、そのように御理解をいただきたいと思います。
  122. 坂井弘一

    ○坂井委員 今回廃止されましたけれども、衣がえして出されたような補助金ございませんか。
  123. 竹下登

    ○竹下国務大臣 衣がえをして出したようなものはございません。
  124. 坂井弘一

    ○坂井委員 では農林水産大臣に伺いますけれども、五十四年度の農林水産省予算、ここに説明書を持ってきてあります。ここでは、農林漁業村落振興緊急対策事業百億ございます。これが今度五十五年度予算の説明を見ますと、農林漁業構造改善村落特別対策事業、ちょっと名前が変わっただけで同じく百億。五十四年度のところでは、これは前年度ゼロだったわけです。それから五十五年度を見ますと、これは前年度やはりゼロ。内容的にはこれは全く同じです。多少語句を変えているだけです。これはどういうことでしょうか。
  125. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私どもはいまの農村、漁村、山村の生活環境整備をより充実するために必要である、こういう観点からこの予算を要求し、そして予算づけがなされてきたわけでございまして、いま中身について全く同じではないかという御指摘でございますけれども、私は必ずしも全く同じとは考えておりません。大変似通った点はありますので、そういう誤解があったのではないかと思います。
  126. 坂井弘一

    ○坂井委員 全くと言ったのが誤りであれば訂正いたします。語句の一部が違うだけ、表現を変えただけ、内容的にはまずほとんど同じである。各事業別に予算も組んでありますけれども、これも金額も全く同じであります。何でわざわざ名前を変えたのですか。何でわざわざこれをゼロにしてまた新規にこの予算を持ってきたのですか。何もそんなことをしなくたって、これがこのとおり必要だというならば必要で、これは廃止すべきものではありません、整理すべきものではございません、当然のことながら、そういうことでございますので、今年度もこの予算を計上いたしてございますと言うなら話はわかるわけです。わざわざゼロにしちゃったのですよ。これは整理でございます、それで今回また新しく出してきたのですね。一体何のためにこんなことをしているのか。私は何も農業団体とか農民に対していやがらせでこんなことを言っているわけじゃない。あなた方のやり方が余りにもこそくじゃありませんかと言っているのです。  特に大蔵省、そうだったんでしょう。大蔵大臣、お聞き及びだと思うけれども、これは去年初めてついたわけです。言うならばつかみ金みたいなものです。だから大蔵省はこの一年限りだと去年言ったんでしょう。五十四年度限りでこれは切りますよと約束した。それがことしになったら、五十四年度切りますと言ったんだから廃止にしました。それからまたこの三百二件の新規の方に今度は衣がえをして新しく出してきました、こんなばかな話がありますか。こんな補助金整理を幾らやったって補助金整理の実効なんか上がりはしませんよ、こう申し上げているわけです。これは大蔵大臣、こんなところをしっかり目を通さないと、件数合わせだけに終わりますよ、むしろ弊害だけが残りますよ、こう申し上げているわけです。よくひとつ目を通してみてください。これは一つの事例として、こういうことがありますよと申し上げておきます。それからあとには、類似の補助とかいろいろなことがいっぱいあるようですけれども、一々指摘する時間がございません。一つの事例として申し上げました。まあ金額についてはなかなか出にくいということです。  それはさておきまして、五十四年九月の地方制度調査会の答申がございますね。総理、篤と御承知のところだと思いますが、つまり、三割自治と言われる地方公共団体を真の地方自治に値するような転換を図るべきであり、地方政治に密着した事業、つまり都市計画、公共下水道事業、道路管理、農地転用等について国の行政権限を地方に移譲し、国庫補助金の整理合理化によって浮いた財源を地方自主財源に充てよ、こういう地方制度調査会の答申でございます。今回の補助金の合理化を見る限りにおいては、このような配慮はまずなされていない。ただ件数、額よりもむしろ件数だけ。額の方は一応はふえているわけですから、ただ件数合わせにしかすぎない、こう言わざるを得ぬわけでございまして、総理が施政方針で、「国と地方自治体との事務の配分の見直しを進めるとともに、地方においても、行財政の整理、改編を進め、新しい地方の時代に対応した真に活力ある行政が展開されるよう期待」している、言葉はまことにきれいであります、りっぱであります、高らかにうたい上げました。つまり、先ほどおっしゃった地方の時代の到来であります。しかるに、いまのこの地方制度調査会の答申にもありますごとく、地方自治制度の見直し、国の大幅な権限の移譲、財源の配分、これは私もずいぶん注目したわけでございますけれども、何ら見るべき措置がなされていないと思うわけです。総理、今度の行革、また予算をごらんになって、どうお感じになりますか。
  127. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 詳細は自治大臣からも御答弁があると存じますが、地方自治体と国との関係の問題に関しましてはいろいろとございます。したがいまして、それをも含めまして自治大臣も協議に参加をしていただきまして、具体的には三月三十一日までにブロック、六月三十日までに府県単位の地方支分部局の整理、こういう案の中にいまおっしゃいました問題も含まれておるわけでございますので、御了解賜りたいと思います。
  128. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理、あなたが田園都市構想、これは政策理念だ、こういう御説明をなさっていらっしゃるわけなんです。それはそれで結構だと思うのだけれども、ただ、総理がそう政策理念だとおっしゃるものだから、実際にはそれが非常に、私から言わせれば悪用といいますか、予算獲得のためのダシに使われた、あるいは各省庁間のなわ張り争い、功名争いといいますか、何もかも田園都市構想だというところに名をかりて、予算を取ろう取ろう、こういう風潮、そういう中で予算の分捕り合戦が行われた。またそこにこの補助金行政、私はやはり行財政改革を根本的に進めていく一つの有力な手法として補助金行政を見直すべきである、こういう観点から申し上げているわけですけれども、せっかくの総理の田園都市構想というものが実はいまのような非常に悪い面を助長させてしまった。むしろ本来的な行政改革に水をぶっかける、そういう逆効果を現実には来らしめているのではないか、私はそういう点を非常に懸念し、憂えるわけでございます。  自治大臣に伺いますけれども、国土庁では定住圏、建設省では地方生活圏、それから自治省の広域市町村圏、こういう三つの構想がある。そこで、定住構想関連事業といいますか、各省が盛んに、定住構想関連事業だ、これは総理が高らかに言われた田園都市構想にちなむものでございます、これを政策的に推進する上で必要でございますというわけで、ずいぶん各省から群がって予算獲得に狂奔した。自治省からごらんになりまして、この五十五年度予算に定住構想関連事業が適切、確実に反映されたか。そうではないと思うのですね、類似のものもある。非常にその辺の整理がうまくできていない、そう私は思うのですけれども、自治省はどういうふうに判断されていますか。
  129. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 お答えを申し上げます。  その前に、補助金行政に関連しまして行政改革等についてもいろいろ御質疑ございましたが、行政改革、まずその一環としての補助金の問題等については、やはり国全体で行政の守備範囲といいますかそれの見直しをやる、その過程で仕事減らしということを考えなければならぬ、それに関連して、同時に機構の簡素化もやる、人減らしもやる、それが金減らしにつながっていく、こういうことをねらいとして行政改革というものはやらなければならぬ。しかも、いまの国全体の統治機構のあり方から見まして、行政改革あるいは行財政の改革、こういうものはやはり地方と国、別個のものであってはならぬ。やはり国の行財政改革は同時に地方の行財政改革につながる、しかも双方は密接に関連をするんだ、こういう観点で取り組まなければならぬ。いまお話しの地方制度調査会等からもそういう御答申をいただいておりますから、そういう線で私は、いま政府が進めておる行政改革の方針に従いながら、地方の問題についても鋭意取り組んでいきたい、かように考えておるわけでございます。  そこで、ただいま御質問の田園都市構想の問題でございますけれども、これはやはり私は、文化の香り豊かなゆとりと活力のある地域社会づくりをやって、その地域社会全体の集積の上に立って新しい国づくりをやろう、こういう一つの政策理念といいますか哲学だと思います。それに相応じて、三全総計画の中にある定住圏構想というものが出てきたものと考えております。そこで自治省としましては、従来から広域市町村圏構想というものができ上がっておるわけで、これはもう十年余りの実績を持っておりますから、その実績の上に立って新しい広域市町村圏行政を進めていきたい。こういうことで、五十五年度の予算でもその計画の策定等のために、たしか四億何千万でございましたか補助金をいただいておるわけでございます。同時に、それに伴う起債等については千数百億の起債を準備してこの仕事を進めたい。同時にまた、国土庁におきましてはモデル定住圏構想ということで、新しいそういった地域社会づくりのモデルといいますか手法を見つけたい。同時に、建設省には従来からこれまた生活圏構想ですか、これもある。こういうことで、今日の段階ではまだ各省それぞれ予算を要求して、それぞれの所管において、お互いの間では調整をしながら圏域の設定であるとかあるいは計画の内容を十分調整の上で実施をしよう、こうしておるわけでございます。したがって、各省間においては十分な連絡調整の上やっておりますから、御心配のような点はないと思います。  しかし、これを受ける地方団体の側においては、やはり御説のように若干の戸惑いがあることは私は事実であろうと思います。しかし、こういう新しい仕事をする場合は、それぞれの役所がさしあたりはそれぞれの所管において仕事を進めていく方が私はかえって実績が上がるのじゃないか、その間の混乱はできるだけ避ける、しかし遠い将来は私はこれは当然一本化をすべきものである、かように考えておるわけでございます。
  130. 坂井弘一

    ○坂井委員 類似、重複したものがかなりあるように私は思うわけです。まして、いま少し説明ございましたけれども、これは地方自治体、公共団体は、若干の迷いじゃないんですよ、もう困っているんですよ。とにかくややこしくて仕方がない。公共団体はとにかく予算はできるだけたくさん欲しい。しかしながら、もう各省がてんでんばらばらに事業予算だと言って取るものですから、整理ができないのですね。  だから総理に申し上げたいんですが、政府は理念だけ先行させておりますが、この際、政策の立案、これをどう具体的に進めていくかというプログラム、そういうものを早くおまとめになってきちんとした方がよろしい。総理は従来の御答弁で、総理のおっしゃっている田園都市構想と三省がそれぞれ言っていることとは矛盾するものではない、それぞれがそれぞれの立場でよく調整しながら推進していくんだというようなことをおっしゃっておりますが、現実にはどうかというと、決してそうではないわけですね。総理の田園都市構想、これは非常にいいことを言ってくれたというわけで、予算分捕りの一つの旗印になるわけですね。こんなことはよろしくないのじゃないか。したがって、そういうことのために、総合性がない、整合性がない、縦割り行政、それがずっと地方自治体へおりていく。地方自治体もそういう旧態依然たる補助金行政に金縛りにされながらさらに複雑化していく。これなんです。同時に、自治体としても、自主性、創造性、地方の時代だと総理が声高らかにおっしゃっても、一体これは何をやっているんだ、おりてくるそういう国の予算、補助金の関係は皆まるで違うと迷いを持っております、不信を持っております。  したがって、この種の事業を一体どう交通整理をするのか。予算の効率的な運用を進めるということも非常に大事でありますし、同時にまた、血の通った行政という行政本来の立場から考えてみましても、いまのこういう補助金行政の中における総理の田園都市構想、これに対する関連事業、これは一遍交通整理をきちんとして、その上で地方におろしていく、あるいは地方の意見を吸い上げていく、その実施、推進の主体は地方に持たせていく。そうでないと、地方の自主性を尊重するということにならぬと私は思うのですよ。早く交通整理をすべきだと思いますが、いかがですか。
  131. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私が提唱いたしておりまする田園都市国家構想というのはまだ検討をいたしておりまして、中間報告が研究会から出ておりますが、いま中間報告というか総論だけが出ておりまして、各論の検討をいままだ進めておるわけでございまして、完結したものではございません。  それから第二には、この構想は、先ほども申しましたように理念でございまして、具体的な政策を申し上げているわけではございませんで、各省がいまやっておりますること、地方がいまやっておりますること、そういうことをこの理念の光に照らして調整を考えていただきたいという念願を込めてやっておるものでございまして、これを中心にいたしまして交通整理をしなければならぬほどいろいろな計画が、もくろみが行われているというお話でございますけれども、まだ本体自体がいま総論が出た段階でございますので、もう少しこの構想の熟するのを待って評価していただきたいと思うのでございます。  それから、しかし現実に坂井さんおっしゃるように、定住圏構想にいたしましても、広域行政圏構想にいたしましても、各省がいままでやられておりましたことと地方との間の問題は依然としてあるわけでございまして、これはどのように整理していくか、その整理する場合の一つの考え方として、田園都市国家構想というのが役に立ちはしないか、そういう念願で私は提唱いたしておるつもりでございまして、この構想が固まってまいりますし、報告が出てまいりました段階で、仰せのような問題点につきましては検討をいたしまして、できるだけ整理する、整理というか整合性を持って展開して、むだのないようにやっていくことは私は必要であろうと思っております。  それから、地方も大変迷惑をしておるということでございますが、地方はやはり自主性を持って、仕事をイニシアチブをみずから持ってやるというような工夫をしてもらいたいと思うので、中央から押しつけの政策を漫然と受け取るだけでなくて、やはり地方は地方として、地方の発想によって政策の新たな展開が期待できるような活発な議論の展開が望ましいと私は考えております。
  132. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理、そうなんですよ、地方の自主性、創造性、大事なんですよ。行財政の配分の問題、それから地方に自主財源を持たせろという先ほどの地方制度調査会の答申ですね、要するに、地方の時代を開花させるために地方公共団体にそうした自主性、創造性を持たせる具体的な政策、それが整合された形でおりていないのだということを申し上げておるわけです。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕 私はいま田園都市構想そのものの評価をするわけではない。総理がせっかくたとえば田園都市構想ということを発表された、これは政策理念でございますとこう言った。そうすると、田園都市構想の威をかりて、各省がばらばらに予算をとっちゃうわけですよ、実態的には。それがそのまま地方へおりていくから地方は非常に困っておる、混乱をしておる、こう申し上げておるのであって、そういうところの実態によく目をお通しになることが大事でございますよ、そうしなければ、せっかくの行政改革だと言い、また財政再建ということになれば、行政改革と財政再建ということはこれは表裏一体のものでしょう、そういうまとまった整合性のある、実効性のあるものが期待し得ませんよ、したがって早急にそうした交通整理をなさって、政策としてきちんとおまとめになる必要があるのではありませんか、こう申し上げておるわけです。総理のいまのお答えは全く居直って、そのためにやっておるのだ。実態はそうじゃありませんよということを私は申し上げておるわけですから、そういうようなことであるとするならば、これはやはり早急にそうした田園都市構想に基づく各省庁間の調整もやらなければいかぬと思う、政策的に一元化された総合性のある、整合性のある、そういう形でもって早くまとめてやるべきだと思います、こうお答えになるのが至当じゃございませんか。
  133. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういう混乱が起きておるとすれば、それは早く見直していって整理していかなければならぬと考えておりますが、田園都市国家構想というのは、いままだ総論が出た段階で、各論の検討に入っておる段階で、まだでき上がったものではないということだけは御了承いただきます。
  134. 園田清充

    ○園田国務大臣 総理の答弁に若干補足をさしていただきますが、総理自体がおっしゃっておりますとおり、田園都市国家構想というのは政治理念だということであります。私どもが今日進めておりますモデル定住圏構想というものは、この総理の政治理念の基盤づくりだということで進めておりますし、同時に、先生からいま御指摘のあった各省庁間の調整をどうするかということでございますけれども、実は十七省庁、国土庁に集まりまして連絡会議を設定をし、五十五年度の予算では調整費として四億要求をし、認められております。  そこで、各省庁間の調整でございますけれども、さっきお話がございましたとおり、広域市町村圏あるいは建設省の広域生活圏というものも、おのずから執行の段階でいまの推進会議の中で調整の機能を果たしてまいりたいと考えておりますので、御了承賜りたいと思います。
  135. 坂井弘一

    ○坂井委員 総理、補助金の整理統合をやっていきますね、整理をやりますね、結構です、大いに進めてもらいたい。先ほど大蔵大臣のお答えのように、硬直したものとか、もう政策効果を失ったものとか、そういうものをどんどん今後も整理されますね。そうすると、それだけの財源というものは出てくるわけだ。これを地方公共団体の自主財源の方に移すということを基本的にお考えになりませんか。
  136. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 それは一つの見識だと思います。いまのような日本の行政機構の中でそれを実行に移す場合には、非常に大きな摩擦が起こることも予想されるところでございまして、私の考えとしては、そういう方向にどのように円滑に持ってまいるか、方向は私はそういう方向に持っていくのが正しいと思いますし、各省を説得しながらできるだけ円滑にそういう方向に持っていくのがわれわれのいまの任務ではなかろうかと思っています。
  137. 坂井弘一

    ○坂井委員 基本的にはそういう方向がよろしいのではないかとお答えでございますから、了といたします。確かに補助金行政というか、補助金の経緯をずっと振り返ってみますと、一時期戦後のあの復興期、それから高度成長期、非常に急激な変化がだあっとあの荒廃の中から起こったわけですね。そうした時代を振り返りますと、地方公共団体も人的にもあるいは行政水準といいますか能力の問題、これは必ずしも十分ではなかった。したがって、国がいろいろな形で事業を推進していくという必要上、補助金行政というのは、そういう意味ではそれなりの補助金の必要性といいますか、あるいは政策効果といいますか、それはあったと思う。しかしもう時代は違いますよ。いま交通にしましても情報にしましても、非常に大きく発達をした。同時に、何よりも地方の自治体、公共団体の行政水準というのはぐんと上がりましたね。この経緯の中には、いろいろな試行錯誤があり、失敗もあり、あるいはまた住民運動等がその間展開されて、そうした中で非常に賢明になったと私は思うのですね。ですから、旧態依然の中央がコントロールするのだとかいうような考え方はもはやないとは思いますけれども、行政の二重構造あるいはむだをなくして効率性を求めると同時に、やはり血の通った行政を推進するための財政のあり方という見地から考えまして、いま総理、せっかくの御答弁でございます、そういう方向でできるだけ地方の自主財源をふやす、自主性、創造性をそこからさらに培っていく、こういう方向のお答えであったと思います。推進していただきたいと思います。  具体的に次に特殊法人に移りたいと思うのですが、行管長官、一言。鉄建公団の問題ですけれども、これは五十八年度、つまり上越新幹線、青函トンネルの本体工事の完了が大体五十八年、民営に移行するのですか。大体もう八、九割まで民営移行だということをこの間おっしゃったわけですか。
  138. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 五十八年本体工事終了のときに国鉄等他への統合等を図るという、こういう字句の解釈でございましたから、民営移行もあり得る、こう申し上げたわけで、したがって、では、その両方なくて命長らえることがあるのかという再質問でございましたが、そうしたことはございません、こういうことでございます。
  139. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうしますと、他との統合等を図る、他というのは常識的に国鉄ですね。国鉄との統合ということを本来的に考えておるのであって、むしろここで言っている八、九〇%までは国鉄との統合だ、それから万に一つと言いますか、一部はもしかそれができない場合には民営移行、こういう考えですか。民営移行の方が比重は小さいのですか。
  140. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 比重はどちらに重点を置いておるというわけではございません。いままでの大体の各統廃合案に従えば、国鉄への統合ということがイの一番に言われておるわけでございます。しかし、現在の国鉄、再建途上にある、整理もしなくちゃならぬ、また鉄建そのものもそのためには整理もしなくちゃならぬ、そういうふうな猶予期間が必要じゃないか。同時にまた、その間においては、さらに民営にしても、当然あるいは世界からのいろいろな要望で国際協力もし得る面もあるではないか、いろいろな議論がございますから、さような意味を含めたわけでございますので、決してどちらが四分六だとか七、八だとか、そういうわけではございません。
  141. 坂井弘一

    ○坂井委員 多く申し上げませんけれども、国鉄との統合というのは無理でしょうね。これはそれ以上お答えを求めません、いまのお答えでとどめますけれども。  それから東北開発株式会社、これは六十一年度の民営移行、これは実際問題できますか。いま累積赤字五十八億残っていますね。どうでしょう。
  142. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 これは計画案といたしましては、六十一年までに、近い機会にひとつ民営に移行しよう、こうしたことを書いたわけでございまして、坂井議員も御承知のとおり、東北開発株式会社は各行革のたびに話題になります。これは一つの特色がございまして、成立は二・二六事件勃発の昭和十一年でございます。つまり、疲弊こんぱいした東北を救わんがために東北開発株式会社は設立された。そして法律上その期限は五十年。したがって六十一年。毎回言われるのですが、準備がなされておりませんし、民営移管のためには六十億になりました累積赤字の始末が必要であります。だから私は、今回の行革はちょうど本年度初年度で五十九年が最終年度でございますから、二年早いが、できたならば大蔵財務当局の適正な判断によってそれまでに統合した方が借金もふえなくていいではないか、そしてスムーズに民営移行した方がかえっていいのではないか。こうした点に関しまして十二分に総理の指示を仰ぎながら大蔵大臣とお話をいたしております。したがいまして、国土庁並びに大蔵省におきましては、そういう面に関しましても今後どうするかという話し合いが進められておりますから、だから六十一年までに民営移行ということをここに決定した次第であります。
  143. 坂井弘一

    ○坂井委員 会計検査院長、御出席ですね。国際電電株式会社について「その予算及び決算を主務大臣の認可等に係らしめるほか、その会計を会計検査院の検査対象とすること等」云々とありますが、会計検査院は内閣からこのことを聞いておりますか。
  144. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 国際電電を会計検査院の検査に付するという問題につきまして、まだ正式ではございませんけれども、郵政省の方から事務的にいろいろな聞き合わせがあることはございます。
  145. 坂井弘一

    ○坂井委員 えらい歯切れの悪い言い方。正式には相談してないのですか。会計検査院に、こんなことやろうと思うのだけれども、閣議で決定したのです、どうですかと——むしろ決定前の問題だろうと思うけれどもね。検査院、こういうことで検査できますか、こうしたいのだけれどもと、どうして相談しないのですか。どうしてきちんと言わないのですか。
  146. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 これは本来郵政省の問題でございますが、私は、行革の本旨に基づきまして郵政大臣には、たとえばNHKも特殊法人であるが、そのNHKにおいては会計検査院の検査を受けることがその法律に示されておる、したがってそういう方式をおとりになってはどうかということでございますので、郵政大臣もそういう方向において考えておられるということでございます。
  147. 坂井弘一

    ○坂井委員 宇野長官、ブロック機関ですが、これは行管庁管区行政監察局、大蔵省財務局と郵政省の地方貯金局等について五十四年度末をめどとして整理再編成の成案を得る。これは個所名は書いてませんよね。大体どんなところを用意しているのでしょうか。それから、等というのは、以上の三省のほかに考えている省があるのですか。
  148. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ブロック単位の支分部局に関しましては、これはわが党からも強い要請がございまして、ひとつこの際にぜひ少なくとも各省庁一ブロック一つくらいのものは整理すべきであるという強い要望をわが党からちょうだいいたしております。これは初めて行うことですが、こういうときに一番大切なのは、いつも国会でも御指摘を願う、まず隗より始めよということであります。過般、私はこれを金言と申し上げました。いわゆるたっとばなければならない言葉だと思いますから、その意味で本当にやるのかやらないのかというふうな常に疑問がございますから、そのために、われわれ行管庁も出しましょう、大蔵省も出しましょう、そしてまた郵政大臣も、私もその決意を表明しましょう、こういうことでございますので、ただこの三省庁だけではなくして、他の各省に及びましても、この精神で三月三十一日までにそれぞれのブロックの機関の整理を行いたいということであります。まだどこをやる、いわゆる地域でございますね、管轄区域、これに関しましては、それぞれ各省庁と相談をいたしたいと思っております。
  149. 坂井弘一

    ○坂井委員 それから地方事務官制度ですが、この廃止につきましてはもうしばしば廃止の方向の論議がされて、五十二年の福田行革でも廃止が決定のままで今日に至っているわけですね。今回の行革では五十五年六月末をめどとして結論を得る、これは大後退だと私は思う。六月末をめどとして結論を得るというこの結論というのは、廃止という方向での結論を得ようということですか。  それからもう一点、地方事務官制度を廃止するということになりますと、地方自治法の改正案をお出しになるということになると思うのですけれども、いつごろお出しになりますか。
  150. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 これは御指摘のとおり、六月三十日までに府県単位の政府の支分部局の整理に関する重要な一環として行政監理委員会にひとつ最終的な答申をしてもらおうということで、直接総理から行政監理委員会にそのことが申されたわけでございます。もちろん私が委員長でございますが、そこで鋭意検討いたしたいと思います。  すでに福田行革でお示しの点は、ほとんど順次やっております、実のところは。期日の入っておりますのは着実にその後の内閣におきましてもやっております。地方事務官に関しましては、運輸省に関するものは、もう御承知のとおり、去年、おととしでございますか、その法案が国会に提出されておるわけでありますが、なかなか審議をしていただくところまでやってまいっておりません。残りますのは厚生省、労働省ということになりますから、これと現在自治省が鋭意話はしておられますが、どちらもいろいろ言い分があります。したがいまして、現在御承知のとおり九十万人国家公務員がおりますが、この中にもちゃんと地方事務官は給与として、定員として、勘定されておるわけでございますから、したがいまして、その身分を地方に移すのか、いや、いままでどおり国家公務員でと、いろいろと議論がなされております。したがいまして、この二つが実のところは残っておるわけでございまして、これは監理委員会において、そうしたものも含めまして、ひとつよろしき答えを出していただきたい、こういうふうにお願いしているところであります。
  151. 坂井弘一

    ○坂井委員 事務官制度は、こういう廃止が言われながらかなりやっているということですけれども、まだ十分ではないわけですね。  この事務官の数は年々ふえていますね。制度を廃止するのだといって、五十五年度またふえましたね。厚生省は一万五千七百六十五人、昨年に比べると六十四人増。運輸省は二千九百六十八人、これも二十五人増、労働省がようやく二十一人減った。トータル、この三省で六十八人ふえている。これは現状ですね。いまこのことを直ちにどうこう申しません。ただ、総定員法の枠の中の問題と現場における実際に必要な仕事、またそれに伴う人という問題がありますから、それなりの御説明がなされることでございますし、これはあえて触れませんけれども、ふえていく傾向というのはやはり抑えていく必要があろう、当然そう思いますから、そのことだけを申し上げておきます。  それから次に、五十三年度の会計検査院の決算検査報告で、御承知のとおり不適切な経理処理百九十三件、二百六十九億八千余万、これが指摘されたわけです。この指摘された中に、いわゆる旅費等の不正経理が六件ある。この不当金額が三億二千二百一万円である。これは防衛庁、環境庁、通産省、それから国鉄、鉄建でございますから運輸省、この四省庁の所管大臣にお伺いいたしますが、これらの金は返されましたか。防衛庁は全部お返しになったのですね。環境庁、通産省、運輸省はいかがですか。
  152. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 鉄建公団における不正経理総額は三億九千五百万円でございますが、このうち使途不明確なもの、使速について業務との関連性が認められないもの等七千三百万円について、管理職以上の役職員で返還することとし、三月二十日までに全額を取りまとめ公団に納入することといたしております。また個人支給額のうち、超勤手当見合い額に認められるものに対する課税措置については、公団において国税庁と具体的に協議中でございます。  なお、関係職員の責任問題については、総裁以下六名の役職員が辞任したほか、二十一名の減給処分を含む約三百五十名の役職員について、その責任の程度に応じた処分を行っておるところであります。  国鉄の不正経理については、国鉄において昨年十二月二十六日付で関係者の処分、戒告十八名、訓告十四名を行ったところであります。  返還問題については、最終的には会計検査院の検定を待っているところでありますが、現在、国鉄において部内規程から見て理由のないものについては、任意返還する方向で作業を急いでいるところであります。  運輸省としては、予算の適正な執行を含め、今回の不正経理については適正に対処するように厳しく指導しているところであります。
  153. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 不正経理返納に関しましてただいま検討中でございますけれども、考えといたしましては、支出面から見まして本来会議費等として公費で負担できないようなものが入っているとすれば、当然返納すべきものだと考えております。
  154. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  国民生活に直結いたしました環境行政を預かる環境庁におきまして、御指摘のような不正事件が起きましたことはまことに申しわけなく、まずもって国民皆様方に心から深くおわびを申し上げる次第でございます。  御案内のとおり、環境庁は十八省庁から職員が出向をいたしておりまして、すでに役所へ戻ったり、またやめた方もおられますし、ただいま返還の金額、返還の方法につきましては誠意を持って検討させていただいておりますので、しばらく御了承願います。
  155. 坂井弘一

    ○坂井委員 会計検査院長、それでいまの件につきまして、弁償責任の有無及び弁償額につきましていま検定されていると思うのですけれども、この結論はいつごろにお出しになるのでしょうか。
  156. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 架空経理につきましては、すでに自発的に弁済が行われました防衛庁を除きまして、環境庁、通商産業省及び日本国有鉄道の旅費等の架空経理のうち予算執行職員の責任に関係のあるもの、予算執行職員が法令に違反をしたり、あるいは故意または重大な過失によりまして国に損害を与えたと考えられるものにつきましては、個別的に現在検定を進めておるところでございまして、除斥期間の来るものもございますけれども、非常に個別的な検定になりますものですから、いつごろ全部終わるということは、いまの段階ではちょっと申し上げかねます。
  157. 坂井弘一

    ○坂井委員 会計検査院法三十三条、この間うちの矢野書記長が指摘したことでございますが、確かに三十三条通告はあるいは形式かもしれません。しかし、会計検査報告に報告されておるということも一理あることですが、この三十三条の通告の発動というのは、私は発動すること自体に意義があるのじゃないか、端的に申しますと、検察庁に対する、国家機関である検査院の通告がなされるということ自体に意義がある、こう実は考えておるわけでございます。今回の問題につきましては、たまたまこの告発からそれに伴います一部の検察の動き、これは軌を一にしたというか、同時に起こったものですから、その辺の事情もあったかと思うのです。これはまさに犯罪だと思うのです。今後このような事件が会計検査院の検査において出てきた場合には、三十三条に基づいて通告されますか。
  158. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 お答え申し上げます。  検査報告に掲記をするということと、会計検査院法三十三条によりまして通告するということは、本来法律的には全く別のことでございます。ただ、このたびの件について申し上げますと、検査報告で出張命令書等の関係文書に作為があったということを明らかにしておりまして、この点につきましては捜査当局も十分に御承知であろうということから、今回は通告をしないということにしただけのことでございまして、将来、国及び公社の会計職員に職務上の犯罪があるということが検査の途中で明らかに認識をされるという場合におきまして、検査報告というのは時期が一応決まっておりますので、非常に早い段階でそういうことがわかり、検察当局もまだ御承知がないというふうな場合におきましては、法律の規定するところによりまして通告があり得ることは当然でございます。
  159. 坂井弘一

    ○坂井委員 法務省の刑事局長に伺いますが、これらの六件は、この不正経理というのは、明らかに私は犯罪だと思いますが、捜査されておりますか。
  160. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のいわゆる不正経理でございますが、そのすべてが犯罪になるというわけでもないかと思います。  ただ、先ほども質問の中でございましたように、このことの関連で一部告発等も出ておるわけでございますので、いわばこの一連のものが、広い意味での捜査の対象になっているということも言えようかと思います。したがいまして、具体的にどのようなことをしているかということになりますと、大変恐縮でございますが、捜査の内容ということになりますのでお許しいただきたいと思います。
  161. 坂井弘一

    ○坂井委員 内容を聞いているわけではありません。そこまで立ち入って私は申し上げているわけではない。鉄建はやっているわけですね。いま申しましたそれぞれの省庁、この関係の捜査をしているのですか、いないのですかと、こうお聞きしているのです。
  162. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 補足して申し上げますが、捜査をしているかどうかということも、それ自体捜査秘密というようなことの一部になろうかと思いますが、ただいま御指摘の関係省庁につきましては、先ほど来お話のありますように、検査院の御報告の中にも触れておられることでありますし、そのことは検察当局も承知しておるわけでございます。また、国会での御論議も十分承知して適切に対処するものと思います。
  163. 坂井弘一

    ○坂井委員 そうでしょうね、会計検査院が、これは不当事項である、不正経理であるとして検査報告の中に掲記したわけですから。いまの御答弁は、はっきりと検査院のそこまで指摘した事項であるので捜査をいたしておる、こう私は理解をいたしております。当然だろうと思います。しないはずはないと思います。  同じように、五十三年度の決算検査報告で会計検査院が不当事項として、契約処理が適切でないもの十二件を指摘しておりますね。物品の購入です。非常に高値買いをした。これはずいぶん各省にまたがっておるようですな。北海道開発庁防衛庁、国土庁、文部省、通産省、運輸省、郵政省、それから専売公社、本州四国連絡橋公団、さらに総理府、国会図書館。総理府、国会図書館はこの金を返しておりますね。ほかの九省庁は返すのか返さないのか知りませんが、検討されておるのかどうかも知りませんが、いずれにしましても、総理、非常に高い買い物をしているのですよ、常識を逸するような。市価の三倍とか五倍とか十倍とか二十倍の値段で買うのです。  これは何でそんな買い物をしたかと実情を調べてみますと、一部は買わされているのですな。つまり脅迫ですわ。これを買わなんだらというわけで業者に脅迫されて買うのですよ、いま言ったこの省庁。それだけかなと思ったら、そうではまたなさそうなんですね。つまり、なれ合いですな。長年の癒着。だから、持ちつ持たれつなんだ。それも、これは一回だけ指摘されているのですが、これは年々ですな。そういうよからぬ業者、悪いのが悪い一部のお役人となれ合いで、ぐるでもって公金を五倍にも十倍にもして金を出している。とんでもないことでしょう。これは本当にぼくは犯罪だと思うのですね。  検査院長に伺いますが、こういうような高値買い、これは検査あるいは検定の過程で犯罪ありと認められる場合、これにつきましては、刑訴法二百三十九条による告発または院法三十三条による通告を当然行うべきであると思いますが、いかがでございましょうか。
  164. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 高価購入につきましては、いわゆる犯罪といいますか、国の、または公社の会計職員の職務上の犯罪というものは、私どもは現在のところ聞いておらないわけでございます。  それから、告発といいますのは脅迫とかそういう意味でございましょうか。その点につきましては、実は、私どもが指摘をいたしました十二省庁のうちで、指摘をいたしました段階で、被害届でございますとかあるいは脅迫あるいは恐喝、そういうものがあったというふうな告発がそれぞれのところで行われておったという事実はございません。私どもも、その点につきましては、もしそういうことがあるならば、むしろ告発というのは、刑事訴訟法の一般規定としましてすべての官吏に課せられておる義務でございますから、当該の被害官庁において出されるべきではないかと思いまして、私どもの方では特にそういう点の告発はいたしておりません。
  165. 坂井弘一

    ○坂井委員 検査院長の答弁はそれしかできないんだろうと思うのですね。しかし、聞いていないというのは、確かに検査官がそこまで権限を持って実態を調べたわけじゃないのですよね。ですからそれは無理からぬことだと思うのですよ。そのことについては後ほどまた含めて御答弁を総理からいただきたいと思うのですが、その前に、いまのようなきわめて不当な、けしからざるそういう買い物をしている、これは犯罪性が非常に濃厚だと私は思うのですが、法務省いかがですか。刑事局長、こういう検査院の検査報告はきわめて着目することだと思うのですが、注目しておりますか。
  166. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどお答えもいたしましたように、この検査院の御報告は検察庁も承知しておるわけでございますが、その内容がいま御指摘のような犯罪になるかどうかというところまでは、報告書自体ではうかがえないようなものであろうかと思います。したがいまして、先ほど会計検査院の方からお答えもございましたように、もし、脅迫であるとかあるいはだまされたということであれば詐欺になろうかと思いますが、そういうことであれば直接の関係者の方がそれぞれの処置をとられるのが適当ではなかろうかと思いますし、そういう事件捜査でございますと、捜査権を持ちますのは検察当局ばかりではなくて警察にも当然あるわけでございますから、それなりに応じた処置をとっていただければその方が適当ではなかろうかというふうに思います。
  167. 坂井弘一

    ○坂井委員 やはり実情、実態というものをつぶさに検査できるというところまでいきませんと、この種の事件というのは根が絶ちにくいと思いますね。  これは後ほどお聞きするといたしまして、各省大臣に一遍聞いてみたいと思うのですが、もしわかっておったらお答えください。  自分が所管する省庁の一年間の会議費というのは一体幾らあるのか。五十三年度決算における会議費が幾ら、それから五十五年度予算で要求して決定した会議費は幾ら。まず、各大臣皆さんおわかりですか。
  168. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは会議費の問題でございますから、まとめて私からお答えをいたします。  目でございます庁費は、行政事務の遂行に伴い必要となるきわめて多様な財貨サービスの購入に充てられる経費であって、会議に伴う経費についても庁費の中から支出をいたしております。この目・庁費について、一般的に予算積算の内訳は存在すると言えるものの、庁費の広範囲かつ多岐にわたる内容の中から種々の会議に伴う経費のみを抽出するということは、事実上できないと言わざるを得ないという性格のものでございます。
  169. 坂井弘一

    ○坂井委員 つまり技術上できない、わからないわけですね。それで問題は、会議費は庁費の中の細目でしょう。これが適正に予算計上されて執行されておるとするならば、それはそれなりに必要なものですから結構だと思う。しかしそうじゃなくて、先ほどの空出張のあの問題にしましても、ずいぶん目間の違法な流用というものが行われて、実際の会議費というのはこの旅費の中に隠されてしまってわからないわけですね。つまり、計上されました庁費の額が、その細目である目の積み上げの中で会議費も幾らとあるわけですよ、当然ながら。それがそのとおりに執行されていないのですよね。目間の流用というのは、ぼくは違法だと思う。それが勝手気ままに行われる。この辺にやはり問題があろうと思うのですね。  予算の編成過程では、庁費といいましても目細の積み上げがありませんと当然庁費は決まらぬでしょう。またどこを削るか、どこをふやすかというような折衝の段階においても、会議費のここのところはこれだけ狭めろとかいうことは当然あるはずだと思う。根拠のない予算編成なんてあるはずがないですね。だから、そういう実態が予算、決算上厳正に行われておるかどうかというようなことについて、その内容まで出せとは私は申し上げておるわけじゃない、そこまで言うつもりもさらさらありませんが、しっかり各省大臣はそういう内容について、執行のあり方についてやはり目を向けていきませんと、いまのような会計検査院の指摘事項が後を絶たないことになりますよ、こういう注意を喚起だけしておきたいと思います。  それで、総理にお伺いいたしますが、会計検査院法の実は改正の問題でございます。御承知のとおり、改正要綱につきましてはもうすでに出されまして、その経緯もずっとあることは総理よく御承知だと思います。総理も、昨年六月四日の決算委員会でわが党の林委員に対しまして、検査院の方で各省との間で個別にいろいろ調整をしたが、うまくいかない、今後は内閣で処理を願いたいという趣旨と承った、これを踏まえて政府とよく検討してみますというお約束をされた。その後、六月の十二日に官房副長官が中心となりまして、関係各省及び検査院と話し合いが行われましたけれども、各省の中からは反対が出てきたということで取りまとめるに至らなかった。この経緯につきましては、官房長官が昨年の十二月の七日の決算委で報告をされております。そこで、昨年十二月に官房長官はこの問題に一生懸命取り組みます、こういう御答弁をされているわけでして、その後いろいろ検討されてきたと思うのですが、いずれにいたしましても、総理、あなた御自身が御答弁されておりますように、これはもうもはや国会におきましても二回もこの決議がなされまして、検査院の方でも早くこの法改正をやってもらいたい、国会もやりなさい、いま申しましたような委員会における総理の答弁もあるわけですが、一にかかって総理の決断次第だと思うのです。総理は政府とよく相談してということで、官房長官に命ぜられまして、官房長官が各省大臣、それから検査院と集まって協議したけれどもまとまらぬというわけですね。問題は、総理が検査院法の改正は検査院の要請どおり、また国会の二度にわたる決議どおりこれは必要である、総理みずからが検査院法改正を御指示されるということでありませんと、いつまでたってもこの問題は結論が出ないと思うのですね、改正には向かわないと思うのです。いかがでしょうか、総理、決断されるべきじゃないでしょうか。
  170. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  昨年の十二月七日の決算委員会で御質問がございまして、検査院法の改正がどうなっておるかということでございました。私、就任間もなくでございますので、ひとつ取り組んでみます、検討してみますということを申し上げたのでございますが、その後、検査院の事務総長以下関係者にも来てもらって、関係省の担当局長にも来てもらいまして、実は別々に私のところで意見を聴取したのでございます。現在では、関係当局の方では、検査院法強化の法定化をするということは借入者に与える心理的な負担が非常に大きい、特に中小企業者でございますとか農民とかというものも対象になるわけでございますし、そういう人々から見れば非常に必理的負担があるので、むしろ政策的な金融が阻害されるのではなかろうかということで、実はまだ検査院と関係省庁の意見が一致しないというのが現状でございます。私としましては、今後もこの問題、何とか現実にうまくそれが行われますように工夫はないものかということをいま調整をしておる最中でございますが、先生おっしゃられるように、なかなか法案の提案までに現在至っておらぬというのが実情でございます。
  171. 坂井弘一

    ○坂井委員 現状の説明をいただいたのですが、総理、これは必要最小限の法改正だろう、われわれはそう思っております。つまり、ロッキード事件のときにも、例の輸銀融資をめぐりまして全日空に対する調査が、これは会計検査院の手が伸びないということでもって非常にもどかしい思いをしたという経緯もあるわけですね。幾つもの問題につきまして、何もかも検査院が民間まで出かけていって全部やれと、こう言っているわけじゃないのでありまして、まことに必要最小限、総理が言われる綱紀粛正、不正腐敗の防止というようなことで、少なくとも政府としてあるいは政府関係機関が——これはもう検査官が検査に乗り出す場合には、合議で決定しなければあえて行こうとしてもできないのですから、そういう歯どめもちゃんとかかっているわけですね。そんなようなことでございますから、少なくともやはり今国会中に決着をつける、法改正に踏み切る、そういう方向で結論を得る。総理、決断されるべきじゃないでしょうか。何回も何回も議論しながら今日まで来ておる。検査院だってぼくはもうやる気を失うと思うね。現場の声をお聞きになってください。総理の不正腐敗の根絶、公正の確保、政治に対する信頼の回復ということを受けて、本当に一生懸命になってまじめに検査しようと思ってもできないのです、だからやらしてくれ、こう言っているわけです。そのためにこれだけのことはせめても法改正をしてください、こう言っているのです。いかがですか。
  172. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 腐敗防止のためにやらなければならぬこと、いま検討いたしておりまして、成案を得次第国会に御審議を願う予定でいろいろやっておりますこと、御承知のとおりでございます。本問題につきましては、その問題と別個にかねてからの政府部内の問題として検討を重ねてきたわけでございまして、まだ決着をつけるまでに至っていないことは、いま官房長官から御報告申し上げたとおりでございます。  いま坂井さんからせっかくの御提言がございましたので、なお引き続き官房長官中心に調整を進めさしてみます。しかし、いつまでも未決定のまま置いておくということも適当じゃないと思いますので、ある時点が来れば決断をせにゃならぬことと思いますけれども、もうしばらく官房長官のところの調整を待ちたいと思いますので、御了承いただきます。
  173. 坂井弘一

    ○坂井委員 今国会中には結論を出すべきだと思うのですね。総理、各省庁が反対するのはぼくはわかるんですよ。検査される方だからやってもらいたくない、これは人間、常識みたいなものですわ。それを検査をやらなければいけない。それをやりませんと、いつまでたったって、こんな決算報告で不当事件何件だと、また金額が上がったと、こんな繰り返しをいつまでもやっておっちゃなりませんよ。これはまさに総理の決断。総理がもう命じられて、これをやりますよ、だから検査院の改正案どおりこの改正をやるよということを各省大臣に総理からそうおっしゃってこそ、初めてできる問題と私思うのですよ。総理、あと一言、今国会中に結論を得られますか。それをやってくださいよ。そうでありませんと、次に延ばすなんということになりますと、何の国会決議だということになります。また従来の答弁も、前向きに前向きに検討してきながら、今日なお結論が得られない。もういつまでも待てない問題だと思いますね。いかがですか。
  174. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 できるだけ早く結論を急ぎたいと思います。今国会中には見当をつけて御報告するようにいたします。
  175. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間が参るようでございますので、最後に一言。  同和対策特別措置法の三年延長、これが決まりました。例のとおり附帯決議が三項ございます。この間本会議で総理も御答弁されたわけでございますが、それで前に稻村長官も言っていますね、三年で打ち切るものではないと。いまこの同和対策事業をどう進めていくかということについて、基本的な問題、人権的な問題、教育問題、そういう問題を研究をしたり、現地の実態を調べてもらったりして、これから同和事業をどう進めていくか、そういうことをやるところに意義があるのだというようなことが、前回の附帯決議を付しました際の稻村長官の答弁でございますが、今国会で二年目に入ります。総理が先般お答えになりましたのは、いま実態を調査させているのだ、こういうお答えでございました。この調査はいつ終わるのでしょうか。また各省の実態調査はどう進んでいるのか。この実態に基づいて検討が加えられ、一体結論がいつごろ出るのだろうか。そんなことを考えまして、三年で打ち切るというならばいまさら実態調査も必要はないのじゃないか、裏返して言えばこういうことになるわけでございますが、総理も幹事長時代に幹事長責任でこの三年延長を提示された、そういう経緯もございますが、この問題に対します総理の基本的な、根本的な見解だけを承りまして、質問を終わりたいと思います。
  176. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 お答えいたします。  先生御指摘のように、現在同和対策事業特別措置法を延長いたしまして、残り五十五年、六年になっておるわけでございます。この推進のための総合的な基礎調査は、御案内のように、すでに昭和五十年の調査によりまして把握をいたしておるところでございますが、前回法律改正の時点で、本院におきまして三項目にわたる附帯決議をちょうだいいたしていることも十分承知いたしております。したがいまして、同法は二年残っておるわけでありますが、その間に十分本院の附帯決議の趣旨を実行いたしていくために、さらに各省庁を通じまして現在その実態の把握に努めておるところでございます。しかし、五十六年度の予算のこともございますので、可及的速やかにその調査の終結を見ていきたい、こう考えておる次第でございます。
  177. 坂井弘一

    ○坂井委員 時間でございますので、機会を改めまして引き続き見解をただしてまいりたいと思います。終わります。(拍手)
  178. 田村元

    田村委員長 これにて坂井君の質疑は終了いたしました。  次に、大内啓伍君。
  179. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、予定した質問に先立ちまして、午前中に共産党の正森委員から提起されました、雑誌「現代」に掲載された栗栖弘臣氏に関する記事について、その質疑応答の中で看過できない問題がありますので、まずこの点を伺いたいと思うのであります。  まず、共産党の正森氏の質問は、多分に来るべき参議院選挙を意識したと一般的に思われるようなそういう質問がなされたわけでございます。というのは、防衛庁自衛隊の退職者の秘密保全ないしは守秘義務という問題を取り上げるならば、これまで数え切れないほどのこの種の問題が実はあるわけでありまして、たとえば元国防会議事務局長の海原治氏の著書や談話、あるいは「日本もし戦わば」というタイトルで論じられました元三幕長の所論等々は、これは同種の問題がたくさんある中で、あえて栗栖氏だけの発言を取り上げたという点において、私の指摘した点があるわけであります。しかし、その点はきょうは論ずるのは一応やめましょう。  しかし、午前中の答弁の中で看過できない問題が幾つかありますので、一つ一つ確かめたいと思うのでありますが、まず雑誌「現代」に書かれたこの栗栖氏の所論というものは、午前中の防衛局長の答えでは、自衛隊法五十九条に言う自衛隊員もしくはその退職者の守秘義務に違反したものではない、このことが指摘されましたが、それは間違いありませんか。
  180. 原徹

    原政府委員 間違いないものと考えております。
  181. 大内啓伍

    ○大内委員 同時に、防衛局長はいま間違いないと確認されましたが、とすれば、その栗栖氏の記事というのは法律に違反したものではない。法律に違反したものではないにもかかわらず、同様に、適当ではないとおっしゃっておる。それはどういう理由ですか。
  182. 原徹

    原政府委員 確かに適当でないという言葉を使いましたが、一般の方があれを読みますと、栗栖さんの前歴は統幕議長という最高地位にある方でございますから、ひょっといたしますとそれが防衛計画の中身であるがごとく受け取る向きがあるとなるならば、これは適当でないというふうに思いましたので、適当でないと申し上げました。
  183. 大内啓伍

    ○大内委員 そんな変な理屈がありますか、この国会答弁の中で。そう思う人がいるといけないから適当でないなどということは適当ではありません。取り消しなさい。取り消してください。委員長、取り消してください。でなければ論をさらに進めます。答弁頼みます。
  184. 原徹

    原政府委員 私が申しましたのは、そういう趣旨で栗栖さんの立場が、自衛官の最高の地位についていた方でございますから、読者が読みますとそういうふうに誤解をするかもしれないということを適当でないという表現で申したわけでございまして、適当でないという表現がよかったかどうか、私もただいまのところ、いい言葉であったかどうかは十分考えさせていただきたいと思います。
  185. 大内啓伍

    ○大内委員 納得できません。考えさせてくれなどということは納得できません。それならもっと重大な問題にこれは発展するのですよ。私がこれから述べればもっと重大な問題に発展するのですよ。その前に取り消しなさい。法律に違反していたものでもないのにそれが適当でないなどということは、そんなことは承服できません。第一、この記事は栗栖さんが書いたものじゃありませんよ。そういうことを発展させていきますか。取り消しなさい。
  186. 原徹

    原政府委員 適当でないという言葉を使いましたことは、私が不用意であったかと存じます。
  187. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、以上をもって了承いたしますが、この「現代」の記事は栗栖さんが書いたものではないのです。これは一人のルポライターが、栗栖さんの談話を基礎にしながら、文責は講談社が持つとして書いた記事なのです。そして、さらにもっと重要な問題がありますが、それは伏せます。しかし、いま防衛局長が、適当でないといったような言葉は適当でないとおっしゃったのですから、これは了承いたします。しかし、すでにこれはテレビのニュース等で流れております。国民の皆さんには、この栗栖さんの記事を防衛庁当局の偉い人々が適当でないときめつけたということがもう全国に知れ渡っております。この損害は、本人はもとよりのこと、取り返しがつきません。しかし、この問題は決着がつきました。  それでは本論に戻りまして、まず最初に、総理並びに官房長官にモスクワのオリンピックの問題についてお伺いしたいと存じます。  政府は、ソ連のアフガンへの軍事介入、これに対する厳しい国際世論等に重大な関心を払わざるを得ない、こういう立場から、事実上JOCに対しましてモスクワ・オリンピックへの不参加を間接的に表明された。もとよりその前提としては、この種の問題はJOCないしはIOCが決定すべきものであるという慎重な配慮のもとに出されたことをわれわれとしては理解いたしております。しかし同時に、もしそのような不幸な状態の中でモスクワ・オリンピックが開けないということになりますと、これはその時期を目指して忍耐と努力を積んできた選手諸君はもとよりのこと、役員を初めとする関係者の皆さんにとっては、まさに断腸の思いであろうと思うのです。一人の人間にとりましては、そのことが崩れてしまうということは、あるいはその人の青春の一つをも台なしにしてしまうというようなことであるかもしれないのです。  そこでお伺いをしたいのでありますが、たとえば、二月一日にカーター米大統領は全米の体育会議で次のように演説をされています。「モスクワ五輪が計画通り開かれた場合、同五輪をボイコットした選手は盛大な代替オリンピックで競技できるだろう、」今度のモスクワ・オリンピックの参加問題については、すでに各国の多くがその態度を表明しておりますように、恐らく不参加の国々もたくさん出る、参加できない選手もたくさん生まれる。その人々が目標を失うというようなことを何とか救済しなければならぬ。政府としては、もとよりモスクワ・オリンピックが今後も開けるように一層の努力をするということは論をまたないところでございますが、もし不幸にしてモスクワ・オリンピックが開催されないという場合のそうした選手等の救済については何らかの対応を考えているかどうか。特にこのカーター大統領の提案と関連いたしまして、官房長官、お答えをいただきたいと思います。
  188. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 お答え申し上げます。  先般、政府の意向をJOCに伝達をしたのでございますが、これはオリンピックが平和なうちに、世界の祝福のうちに開かれることが望ましいことは当然でございますので、現在の状態におきましては、ソ連のアフガニスタン軍事介入に基づいて厳しい世界世論あるいは国内の世論が起きているわけでございまして、こういうことに政府は十分に重大な関心を持っている。しかし、参加、不参加ということの決定は、これはJOCあるいはIOCというところで相談があるわけでございますから、いまのような状態を踏まえて各国の国内オリンピック委員会と十分相談をして適切な対処をしてもらいたいということを、ちょうどIOCの理事会、総会がございますので、私ども意向を伝達をしたわけでございます。総会、理事会でどういう決定になりますか、各国の国内委員会が集まるわけでございますので、私どもは注意深くそれを見守っておるところでございます。  最終的には、五月十九日が各国の申し込みの期限でございますので、その間、まだ世界的な情勢は流動することも考えられますので、われわれとしては様子を見ているところでございまして、その結果、いま先生のおっしゃったような、極端に言うと西側だけの大会というようなことになるのか、どういうことになるのかは、いまのところでは判断がつかぬわけでございますので、先生のおっしゃったような事態の場合にどうするかということにつきましては、いましばらく私どもは様子を見守っていくということを現段階では申し上げておく次第でございます。
  189. 大内啓伍

    ○大内委員 五月十九日の最終の段階を見守ってからでは、恐らく準備等の問題で間に合わないケースが起きましょう。したがって、もちろん形式的にはそういうことだと思うのでありますが、政府としても選手諸君の希望を打ち砕くことのないように、その辺を十分配慮していただきたいと思うのであります。  実は総理、これはカーター大統領からの呼びかけ等も間接的に行われておりますので、お差し支えなければお答えをいただきたいのでありますが、このカーター大統領の演説については総理としては関心を持って聞いているということで理解してよろしいでしょうか。
  190. 伊東正義

    ○伊東国務大臣 私からお答え申し上げます。  いま先生のおっしゃった選手のオリンピックにかけた熱情といいますか希望といいますか、そういうものに十分注意を払うようにということはよくわかりますので、いまの五月十九日ということは最後の申し込みでございますので、その前に情勢等わかれば、そういうことにつきましては十分な注意を払うということを申し上げる次第でございます。  それから、今度の政府の意向を申し上げましたのは、どの国がどう言ったということでなくて、今度二月七日から九日まで理事会、総会がございますので、各国からいろいろな意見が出ております。ボイコット論が出たり、あるいは慎重に見守っている国もあれば、参加をするという国もある、いろいろな意見を言っておりますが、JOCの理事の方が出られまして、政府の意向が全然わからぬということは私は好ましくない状態だと思いまして、ああいう意向を伝達したのでございまして、これはあくまで日本が自主的に判断をして意向を伝えたわけでございます。  いま先生のおっしゃいましたカーター大統領の演説もわれわれはよく知っておりますので、こうしたことにつきましてももちろん考慮を払いますし、西欧諸国の対応の仕方についてもやはり考慮を払っていくということで、最後は自主的に日本日本として判断するという態度で参りたいと思います。
  191. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは経済問題に移ります。  まず、本年度、つまり五十四年度の税収見積もりの問題でございますが、周知のようにこの五十四年度の税収見積もりが約二兆円も大きな税収見込み増となった。この額は相当大きいものでございます。したがって、なぜこんな税収見込み増が起こったのか、この辺を大蔵大臣からお願いいたします。
  192. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今年度税収につきまして、最近までの収入実績や政府経済見通し、これは「昭和五十五年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」による昭和五十四年度実績見込みのものでございますが、これらを基礎といたしまして見込みますと、当初予算額に対して一兆九千九十億円、いま委員が約二兆円とおっしゃったものでございますが、この自然増収が出るものと見込まれますので、今回の補正予算におきまして同額を補正増として計上することとしたわけであります。  そこで、委員はその原因は何か、こういうことでございます。今年度に一兆九千九十億円もの自然増収が見込まれますのは、今年度税収見積もりの土台となりました昭和五十三年度税収が見込みを七千七百五億円上回ったことが一つあります。それに加えまして、税収見積もりの基礎となります雇用者所得と生産、そして卸売物価が当初見通しを上回ると見込まれることなどから、法人税、源泉所得税等について相当程度のものの自然増収が見込まれることによるものでございます。  ちなみに、雇用者所得は、当初予算では一〇七・〇としておりましたのが一〇八・四、こういうことになります。それから鉱工業生産が一〇六・〇が一〇八・〇ということになったこと、それから卸売物価が、これは一〇一・六と見込んでおりましたのが一一二・一、それから消費者物価におきましては四・九を見込んでおりましたのが四・七というようなこと、これらがいわゆる当初見積もりと違った点でございます。
  193. 大内啓伍

    ○大内委員 いま大蔵大臣からいろいろ述べられましたけれども、大蔵大臣よく御存じのように、主な諸指標はそう変わっていないわけなんですね。たとえば名目成長率でも九・五%が八・二%になったのでしょう。本当は税収減が起こってしかるべきなんですね。減の要素ですよ。それから鉱工業生産指数でも、いまちょっと数字が違うと思いますが、一三一・七が一三五でしょう、これは少し上がりましたね。しかし、いまの名目成長率との関係で相殺されてしまうわけなんですよ。それから卸売物価は予想以上に上がりましたね。しかし、消費者物価はほとんど変わりませんね。それから、一人当たり雇用者所得も三〇五・七が三〇六ですから、ほとんど変わらないわけなんです。主な指標はほとんど変わらないのに、税収だけが二兆円もよけい出てくる。  高橋主税局長ここにおられますけれども、恐縮ですけれども引用しますと、高橋主税局長はこう言っているのですね。「私ども、実は税収の見積もりをいたします際には、五十四年度の経済見通しとの整合性を図っておるわけでございます。名目成長率にいたしましても、鉱工業生産の伸びにいたしましても、卸売物価の伸びにいたしましても、消費者物価指数にいたしましても、一人当たりの雇用者所得にいたしましても、」等々と述べまして、「経済企画庁の策定いたしました五十四年度経済見通しに乗っかって推計しております。したがって、経済見通しそれ自体が上回って伸びるという要因がございませんと、五十四年度の税収が予算を上回るというようなことを申し上げるような判断の材料がないんです。」と言って、実はもっと税収があるぞ、こういう指摘に対して、いや、そうではないということをおっしゃっておられるのですね。しかし、これは、その諸指標がいま申し上げたとおりほとんど変わらないのに税収だけがふえているというようなこの状況を見ますと、大蔵省というのはいつもそうですけれども、意識的に税収については過小見積もりをしたとしか見ようがないのですね。そうでしょう、違いますか。  いま大蔵大臣からいろいろ説明がありましたけれども、経済企画庁が出した諸指標はほとんど変わっていませんよ。にもかかわらず、税収だけは多くなるというようなことがしょっちゅう繰り返されておりますと、五十五年度のこの四兆数千億という税収見積もりも、これはまゆつばじゃないかというふうに国民は信頼しませんよ。この辺、はっきりさせておいたらどうでしょう。
  194. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 税収の積算の基礎となります経済諸指標につきましては、ただいま大蔵大臣からお答えがございましたとおりでございます。  私ども、税目の中で一番大きなウエートを占めております源泉所得税、これは支払われます賃金総額と申しますか、雇用者所得の伸びというものを使って推計をいたすわけでございますから、したがって、先ほども大蔵大臣が述べられましたように、当初七・〇の伸びと見ておりましたものが八・四の伸びということになりますと、もともとが百兆からある雇用者所得でございますから、したがいまして、税額としては相当大きなものになるわけでございます。  それから法人税は、各企業から三月末の決算見込みの状況等を聴取することはするわけでございますが、マクロの数字で申しますと、鉱工業生産に物価を掛けまして、それで売り上げを推定いたしまして利益率の変化を勘案いたして出すわけでございます。したがって、物価が一〇一・六または一〇四・九から一一二・一というふうに、卸がかなり大きく伸びますと法人段階の売り上げが非常に大きく出てまいるわけであります。その売り上げの伸びに対して経費をどう見るかということが、物価その他、所得率と申しますか、利益率の変化率で見ておるわけでございますけれども、先ほど大臣からお答えのありました数字はかなり大きく、私どもとしては税収を兆円のオーダーで左右する要素であるというふうに思います。  それともう一つ、大臣からもお答えございましたとおり、五十三年度の後半から急激に景気が上昇いたしまして法人の利益率が高くなりました。それによりまして五十三年度に年度内で、補正予算の時点では税収の増減なしと見ておったのでございますけれども、税収を七千七百五億上回って入ってまいりました。それが五十四年度の基礎になるということでございますので、それらの点を全体合わせますと一兆九千九十億という増収になった次第でございます。
  195. 大内啓伍

    ○大内委員 たとえばいま雇用者所得という問題を大きな理由の一つとして挙げられましたけれども、この雇用者所得だって五十四年度の見通しは百十七兆七千億円でしょう。そして実際には、実績見込みは百十八兆九千億、一兆円しか違わないでしょう。ですから、そういう中でこういう税収見積もりが、二千億とか三千億という単位じゃなくて、二兆円も出てくるというような税収見積もりというものを出されていたのでは、大蔵省も信頼を失うのではないかという点だけを今後の問題として指摘しておきたいと思います。  そこで問題は、赤字国債の解消問題です。これはやはり財政再建の基本になると思うのです。今度のこの財政収支試算を拝見いたしますと、赤字国債の解消の時期を昭和五十九年度としている。これはしばしば論じられてきたわけなんですけれども、しかし、もしこの五十九年度で赤字国債をゼロにしようとする場合には、新規増税必要額は、これは午前中もちょっと議論がありましたが、名目GNPの伸び率を一一・四%、租税弾性値を一・二とした場合には、ここに書いてある数字を追っていきますと、昭和五十六年度が一兆一千二百九十九億円、五十七年度が一兆三千二百三十三億円、五十八年度が一兆五千七百八億円、五十九年度が一兆八千四百二億円。午前中に主税局長からは大体五兆八千五百億程度というようなお話がございましたが、ほぼそれに近い新規増税を行わなければならぬということになるわけです。そして地方税等を合わせますと十兆円ぐらいの新規増税というものが起こってくる。このほんの四、五年の間に十兆円もの新規増税をやらなければならぬというのが五十九年度に赤字国債をゼロにするという考え方なんですね。つまり、逆に言いますと五十九年度に赤字国債をゼロにしようと思えば、これだけ膨大な増税を国民に新規に要求しなければならぬということになりますね。この十兆円はどういう税制改正でやりますか。
  196. 竹下登

    ○竹下国務大臣 午前中の議論にもちょっとございましたが、とにかく歳出というものを新経済社会七カ年計画の六十年度というものの指標に合わせて主なるものを積み上げてみます。それから税収の伸びを積み上げてみます。そうするとそこに不足するものが公債発行額となって出てくるわけでありますが、それを年々の計画におきましてはきわめて機械的にラインを引いたものであります。しかし、総合的にお説に対しますお答えといたしましては、結局五十五年度予算というものは国債を一兆円減額して、特別な新たなる税目等を設けることなくこれに対応することができたわけでございますが、五十六年度以降につきましては、やはり自由主義経済社会におきます経済の変動等々を総合的に勘案しながらその都度歳出というものをどれだけ切り詰めていくことができるか、そして歳入の手段としてはどのようなものを考えていくか、それこそ各界各層の意見を十分聞いた上でこれに対応していかなければならない問題であるというふうに基本的には考えております。
  197. 大内啓伍

    ○大内委員 途中の数字はともかくとしまして、いまの経済七カ年計画及びこの財政収支からすれば、いま私が申し上げたような増税をこの数年の間に行わなければならぬというのがこの財政収支試算であることは間違いないわけなのですね。そうしますと、これはやはり相当の一般大衆に対する新税の導入というものを考えないとどうしても無理があるのではないか。私どもの立場からしますと、なぜこのような大きな増税を不可避とするような五十九年度の赤字国債ゼロという問題に固執されるのか、それが経済的に一体どういう意味を持つのかということがどうも理解できないのですよ。これは恐らく大蔵大臣も非常に常識的な方ですからおわかりになると思うのですけれども、財政再建というのはひとり歩きするものじゃありませんね。少なくとも経済の安定成長、つまり一定の景気を維持しながら、たとえば政府で言うならば、ことしは四・八%つまり五%程度の景気を維持しながらそれを前提として財政の健全化を実現するということが財政再建という意味ですな。そういう見地からしますと、昭和六十年度には公債の償還が始まるから赤字国債は五十九年度までにゼロにしなければならぬというのは、これはちょっと理由が立たないですね。つまり財政論だけから財政再建を考えているので、財政再建というのは経済運営の中の一つの問題であって、重要なことは、経済の安定成長を維持しながら段階的にスムーズにこの財政再建を実現するということが財政再建の本旨とすれば、六十年度から償還が始まるから五十九年度までに終わらなければいかぬのだなどという機械的な考え方は、どう見てもおかしいと思いますよ。いかがでしょう、大蔵大臣。
  198. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大内委員のかねての御主張を私もよく存じております。すなわち、六十年度から償還が始まった場合も、あるいは借りかえ等の施策において一切五十九年で特例公債からの脱却を図るという無理な姿勢でもって対応しなくても、経済というものには弾力性があるから財政もそれに対して弾力的に対応すればいいではないかという、必ずしも正確ではございませんが、そういう御意見、絶えず承っておるところでございますので、確かに一つの意見であるというふうに私も理解をいたしております。  ただ、経過的にいろいろ考えてみますと、財政再建のためには財政の公債依存体質からの脱却、それから特例公債依存からの脱却というのがやはり一つのめどになるものであるというふうに考えております。したがって、六十年度から五十年度発行の特例公債の現金償還が始まります。そうして償還財源について考慮をしなければならないということになりますだけに、私はやはりこれは一つのめどではないかというふうに考えます。  と同時に、五十年にはこの特例公債について借りかえをしない旨の規定は置いていなかったわけでございますけれども、五十一年度の特例公債法から借りかえをしない旨の規定を設けて今日に至っておる。一応そういう根拠法というものもあるわけでございます。したがって、やはり私どもといたしましては、このような規定を設けた趣旨そのものが、できるだけ早い機会に特例公債依存の財政から脱却して、そして満期時にはその全額を現金償還するという姿勢の中で財政の健全性を確保しようという考えを、今日引き続き持っておるわけでございます。  したがって、毎年度の予算編成に当たって歳入、歳出の両面においてやはり最大限の努力を続けていく、御意見は御意見として私どもも十分理解できることでございますけれども、私どもは、そのような経過からしてやはりそこにめどを置いて財政再建に取り組もう、こういう考え方でございます。
  199. 大内啓伍

    ○大内委員 赤字国債を解消する政府の決意というのはよくわかります。しかし、角をためて牛を殺したのじゃしょうがないでしょう。というのは、赤字国債解消をいまのような形で無理なテンポで進めますと、私どもの計算では景気は非常にダウンしますよ。したがって、雇用は悪化して政策経費がゼロないしはマイナスに陥るという事態に入りますよ。これじゃ何のための財政再建かということがわからなくなってしまうし、経済政策上これほど拙劣なことはないと思うのです。あまつさえ、国民には先ほど申し上げたような膨大な増税のツケが回ってくる。私は今度の政府の財政収支試算を見ながら、まさにそういうことをねらっているのがこの財政収支試算にあらわれている。だって、公債発行の漸減が行われていれば財政インフレにはならないでしょう。ふえているのじゃなくて公債発行の額が漸減していれば、財政インフレにならないじゃないですか。したがって、政府としては財政インフレにならないという保障があれば借りかえをやってもいいじゃありませんか。もちろん法律に番いてあるということはよく知っておりますよ。しかし、それを実行すればいま言ったような諸情勢が生まれるなら、法律に書いてあるなら改正したらいいじゃありませんか。  現に昨年十二月十九日の財政制度審議会の報告を拝見いたしますと、こういうふうに指摘していますよ。「国債管理政策の観点から、特例債についても長期債、中期債の選択の弾力化が望ましいことを考慮すると、現行の現金償還原則を見面し、借換えを行うこととすべきではないか」、はっきり意見が出されていますよ。そして「特例公債について現行の一〇年の期間内を限って借換えを認めてはどうかとする意見もある。」と書いてありますよ。そしてさらに「財政節度を保つという精神は十分に尊重していかなければならないが、償還時における大量の通貨供給の増加が、その時点における経済に及ぼす影響等の問題も無視することはできず、今後なお慎重に検討していく必要があると考えられる。」はっきり問題点を指摘して残しているのですね。  ですから、余り五十九年というものにとらわれ過ぎてはむしろ経済運営としては大失敗を犯すということを、私どもは本当に真剣に憂えているわけなんですよ。政府の方針を撤回させることにわれわれのメンツをかけているのじゃなくて、そのような状況が非常に強く推測されるとすれば、五十九年度の赤字公債ゼロへの固執というのは意味がないし、しかもそれは、私が再三指摘しているように、国民に大幅な増税を強い、一般消費税を中心とする消費課税に入ってこざるを得ない。ですから、そういう意味からいいますと、この際借りかえを認めるというような措置をとった方が、今後の公債政策としては政府としては非常にいい状況が生まれるのではないか。  では、赤字国債分だけの累積残高は五十四年度末で幾らですか。
  200. 田中敬

    田中(敬)政府委員 五十四年度末におきましては赤字国債の残高は二十一兆六千四百四十五億でございます。
  201. 大内啓伍

    ○大内委員 約二十二兆円ですね。そして五十五年度分はここに書いてありますように七兆四千八百億円ですね。そして五十六年度から五十八年度までを合計してみますと、赤字国債は十五兆二千七百億円に達しますよ。これは合計四十四兆七千二百億円という膨大な赤字国債が累積残高として残るのですよ。もしこれをこれまでの方針に従って、昭和六十一年からさあ償還だというので——六十年から入るわけですが、借りかえできないのは六十一年からですね。ですから六十一年から六十八年までに返済するということは、現在利子等の返済分で計上されている国債償還費だけだって五兆円以上でしょう。それに加えて毎年平均五兆円近い新たな国債償還費を計上しなければならぬということですよ。そうでしょう。そして五十九年度においてゼロにしようとすれば、五十八年から五十九年にかけてその分だけだって三兆一千九百億の穴埋めをしなければなりませんよ。そんなことできますか。毎年一兆円赤字国債を減らすのでもいまきゅうきゅうとしている。その状況の中で、どんどん累積してくるその利子支払い分の国債償還費を一方において計上し、そして五十八年度から五十九年度においては三兆一千何がしかの穴埋めをしなければならぬ。そしてそれに加えて毎年五兆円もの新しい国債償還費を計上しなければならぬなんということが予算上できますか。そんなことはできないじゃありませんか。五十四年度、五十五年度のような思いもかけないような、あるいは私が意識的な過小見積もりではないかと指摘しましたような自然増収がどんどん起こってくるなら別ですよ。そうじゃなくて、これからの税収が非常に厳しいという状況の中で五十九年度というものに固執すれば、このような状態でこんなものはできやしませんよ。早晩いま言っている政府の所論は崩れますよ。しかも、国民に対しては膨大な増税を押しつけられてくる。つまり、五十九年度で赤字国債をゼロにし、国民に対して膨大な税金を要求するということが重要なのか、それとも、赤字国債の償還を少し先にずらすことによって財政インフレを引き起こさずに、そして増税も最小限にとどめるということの方が国民にとって有益なのかという問題が、私は五十九年度の赤字国債ゼロ論だと思うのですよ。しかも、これは財政審議会においても貴重な意見としてこういうふうに提起されているのですよ。  私は、そういう見地から、この際、政府に提案したいと思うのでありますが、私ども電算機に入れてこれを詳細に検討してみました。そしてその結果、赤字国債の償還を六十二年まで延長いたしますれば、われわれの試算では増税は昭和六十二年の時点で二兆円程度におさめられるのではないかと思われるのです。私はこの方がいいと思うのですが、この際、借りかえを認める措置についてもぜひ検討し、かつこの赤字国債償還時期を六十二年度まで延ばす、こういうことについて検討をされるという意思はございませんでしょうか。
  202. 竹下登

    ○竹下国務大臣 当然のこととして「公債に関する諸問題及び歳出の節減合理化に関する報告」というものを、財政制度審議会からいま御指摘がありましたように五十四年の十二月十九日にちょうだいしております。そこにはいま御指摘の意見があります。しかし、またその以前の意見として、いわゆる財政運営の健全性を確保するという政府の決意を示すということにおいては、五十九年度に何とか赤字公債から脱却するというその姿勢に対する評価もございます。したがって、私は赤字公債の借りかえというようなことは、きょうの時点では考えておりません。ただ、いまの御趣旨とそして財政審からの報告について勉強はさせていただきたい、このように思います。
  203. 田中敬

    田中(敬)政府委員 財政制度審議会から先ほど御引用になりました特例公債の借りかえに関する中間報告をいただいておりますが、ここに記載されておりますことは、十年の期間の借りかえ、十年たってさらにそれを借りかえるということの検討でございませんで、特例公債がただいま十年で発行されておりますが、国債管理政策上二年、三年の短期債というものの発行も必要であろう、そうすれば、財政節度を示す意味におきまして十年という期間を限って、その中で二年債、三年債という形でころがしていくことを、その範囲で借りかえていくことを検討してはどうかという御趣旨でございますので、その財政制度審議会の趣旨だけここで御報告申し上げたいと思います。
  204. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、主計局長は五十六年度の予算についていろいろなお話をされていますね。この中であなたはこう言っているのですよ。「税収は」——五十六年度予算ですよ、「税収は五十五年度より三兆円くらいしか自然増収がないだろう」、こう言っているのです。したがって、国債発行一兆円減額すれば、一般歳出は二千億円ぐらいしかふえない。これでは予算組めませんね。つまり、あなたは言外に五十六年度の予算でも二兆円ぐらいの増税をしなければやっていけないということをおっしゃっているのでしょう。これはたとえば五十六年度予算一つとったって大蔵大臣、こうなんですよ。ましてその後の、後年度の問題を累積してみますと、私が先ほど来指摘したようなものすごい増税を考えないと、この財政収支試算はやっていけないのです。  ですから、この赤字国債の解消の時期についても、政府の決意は決意として、より重要な経済運営としてこれからもっと弾力的にお考えになったらどうかということを申し上げているのです。どうかその点について、ひとついままでの行きがかりにとらわれず、と言っても、政府はいま財政収支試算を出し予算の審議をお願いしている状況の中で、それを直ちに違えたような言動をすることはむずかしいでしょう。しかし、いま大蔵大臣おっしゃったように、十分御検討いただきたいと思うのです。再度お願いしたいと思います。
  205. 竹下登

    ○竹下国務大臣 絶えず大内委員から御提言いただいております問題については、もとより勉強さしていただきます。
  206. 大内啓伍

    ○大内委員 まだたくさん聞きたいこともございますが、この予算委員会で議論になっておりました財政計画ですね、私の仄聞しているところでは、大蔵省としてはできればこれまでの勉強の成果を年内にまとめたいというふうに仄聞をいたしております。つまり、昭和五十六年度予算編成に際して、間に合うような形で財政計画を政府として国会に提案する用意ないしは準備があるかどうか、そのことだけお伺いしたいと思います。
  207. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この財政計画作成の問題でありますが、これは大変大量な作業量を要することでございますので、いま何月何日までに必ず仕上げてみせますと言うだけの自信はございません。
  208. 大内啓伍

    ○大内委員 私は何年何月何日まで聞いておりませんで、昭和五十六年度予算編成に間に合うような形で財政計画はつくられますか、こう聞いているわけです。
  209. 田中敬

    田中(敬)政府委員 大内委員の御説が、五十六年度予算をベースにした財政計画を、五十六年度予算の御審議をいただく本委員会にタイミングとして間に合うように提出できるかどうかという御質問でございますと、私は五十六年度予算をベースにした財政計画をその時期に出すというのは、現在の作業の見通しから見て非常にむずかしいことであろうと思います。しかしながら、すでに種々の検討を重ねてまいっておりまして、五十五年度予算をベースにした将来の後年度負担推計というようなことを基本とする財政計画の策定作業を、現在各省の協力を得て進めておる段階でございますので、その分につきましてはある時期にめどを得ることができるというふうに考えております。
  210. 大内啓伍

    ○大内委員 ある時期というのは年内ですか。
  211. 田中敬

    田中(敬)政府委員 私どもの努力目標としては、年内にめどをつけたいと思っております。
  212. 大内啓伍

    ○大内委員 自治大臣にお伺いいたします。  自治大臣はつい最近、国土庁長官の要請を受けるという形で、例の宅地並み課税の強化について一つの方針を固められつつある、こういうふうに聞いておりますが、その内容は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏の市街化区域内農地の宅地並み課税を強化する、こういう方針のもとに、一つはA、B農地に対する宅地並み課税の減額特別措置の廃止等を進めたい。これは御案内のように、現在は市町村の条例によりまして減額ができるようになっておりますが、それを廃止する等の措置を進めたい。二つは、減額措置をとっている市町村への特別の地方交付税交付金を廃止する。三つ目には、これまでかけられておりませんでしたC農地にも宅地並み課税を実施する。そして、これらの三点については五十七年度から実施したい、こういう意向で方針が固められつつある、こういうふうに聞いておりますが、間違いありませんでしょうか。
  213. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 先日の本委員会でお答えいたしましたように、国土庁の方から、検討してもらいたい、こういう御要望がございましたので、大変むずかしい作業だけれども検討いたしましょう、こういうお答えをいたしまして、その件について事務当局にともかく検討してもらいたい、大変むずかしい問題ではあろうけれどもという指示はいたしましたけれども、ただいま御質問のように、三項目にわたって細かい点について私自身から指示をしたことはございません。  ただ、この問題は御承知のように昭和四十八年に発足したかと思いますが、その後いろいろな経緯がございまして、今日御承知のような一部について減免措置を講ずる。減免措置を講じた以上は、これは法律上の制度でございますから、基準財政収入として全額をはじいてそれを交付税でめんどうを見ぬというわけにはいかぬ。やはりその面については理論計算上大体いまのところ七五%程度だと思いますが、交付税でめんどうを見ておるわけでございますが、御承知のように五十四年、去年、さらに五十六年度までこの宅地並み課税、A、B農地、C農地含めて課税の適正化について検討をすべし、こういうことになって、結論は五十六年度までに出す、こういうことになっておりますので、それまで十分検討さしてもらいたい、かように考えております。
  214. 大内啓伍

    ○大内委員 別の問題でお伺いをいたします。例のソ連のアフガン侵攻に伴いまして、アメリカ等からこれに対するいろいろな経済制裁問題というのが提起されてきておりましたが、これは外務大臣にお伺いしたいと思います。最近、それらを調整するための日米欧の外相会議を開きたいというような意向がアメリカ筋に台頭しているようでありますが、そのような提案をすでに受けているのかどうかということと、それからもう一つは、もしそういうことが事実であるとすれば、日本としてはどういう立場でそれに参加するのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  215. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いまお尋ねの件は、新聞にそういう報道が出ておるのでございますが、ワシントンの大使館あるいは米国の在日大使館双方から、目下のところ正式の連絡がございませんので、アメリカ政府内の一部の考えではないかと存じておりますが、目下至急確かめております。
  216. 大内啓伍

    ○大内委員 日本はすでにソ連に対して直接の借款をたくさん与えております。たとえばシベリア資源開発関係であるとか、あるいは各種のプロジェクトに対しましてなされているわけでありますが、もし国際的な立場からそういう問題について日本に対しての協力要請等が来た場合、また来たというようないろいろな報道もなされておりますけれども、それらの対ソ直接借款を凍結するというようなことを検討されているかどうか。  と申しますのは、大平総理は一月二十五日の施政方針演説の中で、ココムによる輸出規制の強化などを含む適切な措置を検討、実施していく所存だ、そしてそれがたとえわが国にとって犠牲を払うものであっても、それは避けてはならないと考える、こういうお話がございましたが、これは非常に異常な決意を表明したものだと思うのでありますが、その適切な措置というのは一体具体的にどういうことかということと、それからいま私が指摘したような対ソ直接借款というものの凍結という問題も検討の対象にするのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  217. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 対ソ借款問題につきましては、現在輸出入銀行から約十五億ドルの貸し付けがございますけれども、この貿易関係、対ソ貿易との関係が非常に密接でございまして、政府内部で目下検討中ということでございます。
  218. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、対象にしているということですな。
  219. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そうでございます。それと同時に、特に西独その他西欧諸国のこの問題に対する対処方針も注意深く検討中でございます。
  220. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、石油問題でもいろいろお伺いした、いと思いますが、時間が余りありませんので、一つだけお伺いをしておきたいと思います。これは通産大臣。  通産省としては、これからの石油供給というものは非常に困難な事態にぶつかってくる、そして一時期予想もしないような重大な事態に立ち至ることをも考慮して、三月をめどにいたしまして石油配給割当システム、これはいろいろなやり方があると思うのです。これはすでにアメリカでも御存じのとおり検討しておりますが、石油需給に著しい混乱が起こった場合に、たとえば石油需給適正化法第十二条の発動、これは御存じかと思いますから、長くなりますから申し上げませんが、要するにいろいろな割当、配給等を実施するという規定でございますが、そういうものを発動して、今後緊急事態においては石油の配給、割当、こういうシステムを実施する準備を進めているかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  221. 森山武

    森山(信)政府委員 ただいま御指摘の石油の配給制の問題につきましては、ただいま引用されましたように石油需給適正化法第十二条の規定に基づいて発動するものでございまして、そもそも石油需給適正化法が、需給の困難さが国民生活に大変な支障になるという事態になったときに発動することは、先生よく御承知のとおりでございます。  私どもは、現時点におきましては需給関係は大変バランスがとれているというふうに感じておりますので、石油需給適正化法十二条を発動する意思は全くございませんが、ただ、昭和五十四年度の予算で一部その予算が計上されておりますので、その準備だけはしておきたい、かように考えておる次第でございます。
  222. 大内啓伍

    ○大内委員 準備ということはしておきたいというお話がございましたが、通産省は緊急時対策研究委員会、これは通産省の資源エネルギー庁長官の諮問機関ですが、この結論を待って政令として公布をしたいという報道も伝えられておりますので、いまの御答弁は大体そういうことを裏打ちされたものだと理解をいたします。  そこで、防衛問題についていろいろお伺いしたい点がたくさんございますので、そちらに移りたいと思うのであります。  まず第一に、久保田長官の辞任の問題について、これは総理にお伺いをしたいと思うのであります。  大平総理は、今回の宮永スパイ事件政治責任の問題につきまして、本委員会でこういうふうに述べられております。私と久保田長官との政治責任は残る、そしてその責任のとり方については事件の全貌解明を待って政治責任を考えたい、こう言ってこられました。今回の久保田長官の辞任によって政府としての政治責任は一応とった、こういうふうにお考えでしょうか。
  223. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 久保田長官はこの事件責任を痛感されまして辞意を表明されて、私はその意思を尊重して受理いたしたわけでございます。久保田長官といたしましては、文字どおりみずからの政治責任辞任によって果たされたものと承知いたしております。政治責任といたしましては、私も政治責任がございますことは申すまでもありません。
  224. 大内啓伍

    ○大内委員 私の政治責任があることは申すまでもない。そうしますと、総理としてはどういう形で今後政治責任をとろうとされるのか。と申しますのは、言うまでもなく、総理の地位は、自衛隊法第七条によりまして「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を有する。」その自衛隊に国家と国民を売るような事件が発生した以上、シビリアンコントロールの原則からいいましても総理は何らかの形でその責任を負うことが筋道である、これは論を待たない。そのことを踏まえたただいまの御答弁だったと思うのでありますが、総理としては、それではどういう形で今後政治責任を負われるつもりでしょうか。
  225. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 かねてから申し上げておりますように、本スパイ事件捜査当局がいま全貌を解明中でございます。この進展を見まして、私としての見解をある時点において表明しなければならぬと考えております。
  226. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、総理が何よりもまず留意されたいことは、やはりこの種事件の再発防止だと思うのです。したがって、一般の公務員よりかより重い守秘義務を求められる防衛庁職員あるいは自衛隊員の秘密保全というものについて、やはり万全の体制を確立するために防衛庁長官を指揮される。同時に、これは塚本質問でも指摘したところでありますが、自衛隊法の五十九条の罰則は、たとえば他の国内法との比較あるいは外国の法制の現状に照らして余りにも均衡を失している。したがって、たとえば五十九条の改正といったような問題もやはりきちっとされることが、私は一つの政治責任だと思うのです。これらの法改正には着手されますか。
  227. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのように、こういう不祥事件の再発防止に全力を挙げて取り組まなければならぬと存じまして、防衛庁当局を督励いたしまして、目下部内の機密保持体制の総点検をいたしておるところでございます。これは申すまでもなく、現法制のもとにおきまして何ができるかということを検討しておるし、できることを懈怠しておるところはないかという点を、いま総点検いたしておるところでございます。  それから、事件そのものは捜査当局が解明に当たっておりますけれども、そういうものを踏まえまして、立法政策上の見地から国会にお願いしなければならないようなことがあるのかどうなのか、それは真剣に検討しなければいかぬ課題だと思っております。
  228. 大内啓伍

    ○大内委員 これまでの予算委員会の審議で総理もほぼ感触をつかんでおられると思いますが、いま私が具体的に指摘しました自衛隊法の改正というものはほぼ必要だ、こういうふうにお考えでしょうか。五十九条の問題、自衛隊法の罰則の強化の問題。
  229. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 これは仰せのとおりのいま現行規定になっておりますが、これがどういう立法理由で行われたか、こういう規定になっておるのかという点にいろいろな沿革があると思うのでございまして、それはそれとしてよく検討してみなければならぬと思いますが、今日のこの事件を踏まえた上で、新たな立法政策を考えなければならぬかどうかという点もあわせて当然検討の要のある問題だと思います。
  230. 大内啓伍

    ○大内委員 防衛庁長官、いま総理のお答えを受けて、防衛庁長官としては、この前あたりからいろいろな議論がありましたこの自衛隊法の第五十九条、これは御存じのとおり今回のようなスパイ事件を引き起こしましても一年以下の懲役、三万円以下の罰金、これではどうしようもないでしょう。改正が必要だとお考えですか。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕
  231. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答え申し上げます。  すでに御報告をいたしましたが、ただいま防衛庁の中におきまして、今回の事故に関連して秘密保全体制検討委員会というものを次官を長としてあらゆる方面にわたっての検討を始めております。その中の一つに、やはり法律の改正が必要であるかどうかということは重大な項目だと存じております。ただいまの五十九条の問題につきましては、国家公務員と同じ扱いでございまして、私どもこれではよくないのではないか、改正を検討すべきではないか、もっと責任を重くすることがいいのではないかという意味で、前向きで検討を進めておる次第でございます。
  232. 大内啓伍

    ○大内委員 わかりました。  今度防衛庁長官に就任されるに当たりまして、総理から四つぐらいの指示がなされたというふうに聞いております。これは防衛庁長官ですが、この四項目の指示の中で、一つは防衛計画大綱水準の早期充実、つまり中期業務見積もりの再検討という問題と、それから有事法制の検討、あるいは日米関係その他いまお話がありました綱紀粛正等の問題がございましたが、これらの問題については新長官としてはどういう抱負を持って対応しようとしていますか。
  233. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答えいたします。  順序があるいは違うかもしれませんが、いわゆる有事法制という問題につきましては、自衛隊そのものが有事に対応をするものでございますが、いまの自衛隊法で適当であるかどうか、また自衛隊法で決まっておるような点が政令その他で完全に補完されておるかどうかといったような問題もございます。そういう問題につきましては、すでに私どもの方と法制局とで累次にわたりまして検討を重ねておる次第でございまして、いわゆる有事の場合に防衛が全うできるようにいろいろな角度から検討を具体的に進めておる、こういう状況でございます。  それから、総理から、特にアメリカとの関係については、もう申すまでもないことでございますけれども、特別な配慮をし、水も漏らさないというような感覚でいろいろやってまいらなければならぬということについての、御指示というよりも、これはよく私ども承知しておることでございます。  そこで、いわゆる防衛計画というものをどうするかという点でございますが、私ども防衛の基本計画というものについては、まだ実は到達をいたしておらないわけでございます。したがいまして、憲法や法律その他で許されている範囲での能率的な防衛体制をつくるためにいろいろ全力を挙げてやってまいらなければならぬわけでございますが、ただいま御質問にございました見直しということで、できるだけ早くこの防衛計画の線に到達し、またその質を高めていくという方向で、実際の問題としては見直し計画を立てていくということにしておるわけでございます。この見直し計画は、ただいまの世界の情勢、日本防衛に対する国民の要望、そういった点から十分考えていかなければならぬ、対応していかなければならぬ、このように考えておる次第でございます。
  234. 大内啓伍

    ○大内委員 防衛計画の見直しの問題につきましては、後でもう少しじっくり質問をしたいと思います。いま防衛庁長官からは、実質的な見直しというものに取り組んでいきたい、これは非常に重要な御発言をいただきましたので、この辺は後でもう少しじっくり申し上げたいと思います。  さてそこで、例の宮永幸久元陸将補のスパイ事件についてでございますが、現在警察当局としては、このスパイ事件捜査は、日米安保条約関係の刑事特別法違反という形で調べているのか、それとも自衛隊法ないしは刑法違反として調べているのか、いずれかお答えをいただきたい。
  235. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 お答えいたします。  現在捜査当局としましては、自衛隊法違反被疑事件及び窃盗の被疑事件、この両方の被疑事件として捜査中でございます。
  236. 大内啓伍

    ○大内委員 もしそうであるとすれば、これは流出の資料がアメリカの関係のものがないということを前提にしませんと成り立ちませんわね。そうすると、アメリカの資料は流れていないという意味ですな。もしアメリカの資料が流されているということになれば、これは日米安保条約の刑事特別法で起訴しなければならぬということになる。そうではないんですか。いかがですか。
  237. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 押収されました資料を含めまして具体的な分析、そういったものは最後の慎重なる全貌解明のための詰めをやっているわけでございますけれども、いまの段階での捜査は、自衛隊法五十九条の守秘義務及び窃盗容疑ということでやっているわけでございます。
  238. 大内啓伍

    ○大内委員 これはいま捜査の段階だから、流出資料をここで細かく述べることはできないでしょう。しかし、すでに辞任をされました永野陸幕長、あるいは語ったと伝えられる久保田前防衛庁長官等々の言質では、米国関係の資料は流れていない。その主たるものは中国関係の資料である、こう言われておりまして、これをいまこの場で特定せよということは恐らく捜査の段階で困難だと思いますが、午前中に議論になりました機密極秘、秘、この三つの秘密の中のどれが流れたくらいは言えるでしょう。いかがですか。
  239. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 資料の内容あるいはグレード、こういった問題につきましては、現在全貌解明のために捜査中であるということ以上は差し控えさせていただきたいと存じます。
  240. 大内啓伍

    ○大内委員 犯行の動機については言えますか。これも言えませんか。というのは、たとえば宮永氏のスパイの動機は、一つはソ連情報収集活動に取り込まれてしまったという説と、あるいは金欲しさである、あるいはスキャンダルをおどかされた、あるいは共産主義という信条に立った確信犯である、いろいろ言われているわけなんですが、この動機は明らかにできますか。
  241. 鈴木貞敏

    ○鈴木(貞)政府委員 動機と非常に簡単な言葉でございますが、この種事件につきましての動機、これはなかなか一言で言えないいろいろの事情があろうかと思いますが、そういう面を含めまして、本当の動機は何であるかという点を含めまして現在鋭意捜査中でございます。
  242. 大内啓伍

    ○大内委員 宮永氏の起訴はいつになりますか。
  243. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 現在捜査中でございまして、いつということは申しかねるわけでございますが、一応身柄の勾留満期日は来る八日ということになっております。
  244. 大内啓伍

    ○大内委員 では、それ以上は言えないと思いますので、これ以上は問いません。  そこで問題は、緊急展開部隊の問題についてお伺いをしたいと思います。  二月一日の本委員会におきまして、大来外相は次のように述べております。RDF、つまり緊急展開部隊が日本の施設、区域を使用する場合、日米安保条約から考えて、この部隊が中東、インド洋へ移動しても問題ではない、こういう答弁をされておりますが、これに間違いありませんか。
  245. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 そのとおりでございます。
  246. 大内啓伍

    ○大内委員 しからば、在日米軍の一部が、たとえば沖繩海兵隊がこの部隊に編入され、移動ではなく戦闘作戦行動として日本から出発する場合はどうなりますか。このケースはあり得ると思いますが……。
  247. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 戦闘作戦行動と申します場合には、これは一般の軍事行動を指すものではございませんで、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動という限定的な性格を有するものでございます。そういう意味におきまして、仮に中東、インド洋の問題を考えました場合に、中東、インド洋地域とわが国との距離などの相対的地理関係にかんがみますると、この兵力運用あるいは作戦戦術に関する軍事常識上、右に申しましたような戦闘作戦行動を米国わが国の施設、区域を発進基地として行うことは考えられないということでございます。
  248. 大内啓伍

    ○大内委員 そんなのは独断ですよ。そんな解釈は成り立ちませんよ。パロー米海兵隊司令官は一月三十一日の下院の軍事委員会で証言されています。お読みになりましたでしょうか。そこでは、「日本(沖繩)、ハワイ駐留の第三海兵師団は、西太平洋からインド洋さらに中東、アフリカでの必要な事態に即応するものである」。海兵隊の役割りは全世界的である。必要な事態に即応するというのは移動だけではないのですよ。戦闘作戦行動も含まれるのですよ。アメリカのパロー海兵隊司令官はちゃんと議会でこう証言しているじゃありませんか。たとえば沖繩の海兵隊が出動するというのが、戦闘作戦行動としてでは絶対なくて常に移動であるとどうして限定できるのですか。そんなことは独断でしょう。
  249. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 もしもそれが戦闘作戦行動であれば、日米安保条約に基づいて事前協議が必要になります。
  250. 大内啓伍

    ○大内委員 その議論もおかしい。これは日米安保条約を知らないからそういう議論をする。いいですか、極東の安全、平和が脅かされたとき、米軍の行動は極東に限られない、いままでこれは政府の説明でしょう。しかし、たとえばペルシャ湾というものは極東と直接関係がない。それならば安保条約の事前協議の対象にならないじゃありませんか。極東に関係のないものを、どうしてこの条約外の問題を事前協議するんですか。おかしいじゃありませんか。
  251. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  確かに安保条約上事前協議にかかる場合、すなわち事前協議にかかる戦闘作戦行動と申しますのは、アメリカがその戦闘作戦行動の目的対象地域として考えているところが、この予算委員会でも問題となっておりましたいわゆる極東の周辺地域であるかどうかということにかかわるわけでございまして、全く極東の周辺地域と観念されないところに事前協議というようなことは、安保条約の範囲外でございます。
  252. 大内啓伍

    ○大内委員 外務大臣のいまの言ったことは違いますな。いま条約局長がはっきり否定されました。しかし、伊達条約局長はこう言っているのですよ。ペルシャ湾が極東の安全と平和を脅かすとは考えられない。したがっておのずから限界がある。本来理論的あるいは論理的に言えば、極東の安全、平和が脅かされるときは米軍の行動は極東に限られない。どこであろうと極東の平和、安全に脅威が生じたところが極東の周辺というのが論理的帰結だ、こう強弁された。しかし、それが拡大解釈ではないかということで、そこにはおのずから限界があり、ペルシャ湾が極東の安全と平和を脅かすとは考えられない、こうきちっと言ってきた。そしていまもその種のことをおっしゃられた。じゃ、沖繩の海兵隊が移動ではなくて戦闘作戦行動がパロー海兵隊司令官の議会証言のように行われたら、事前協議できないじゃありませんか。じゃこれはどうするんです。  いま皆さんに真剣に考えていただきたいのは、今回のこの米緊急展開部隊の問題が国民の中にいろいろな不安を引き起こしているのは、この沖繩から出る海兵隊が事前協議の対象にもならない、そういう中でどんどん日本の基地から行動が起こされる、そういう可能性について国民の皆さんは不安を持っている。そしてそこに日米安保条約の一つの限界もある。そして政府は、いや、沖繩から出ていくときはそれは移動であって、戦闘作戦行動はあり得ないんだという独断をこの議会の中で押しつけている。そんなことはありません。軍事常識に反するなどということは軍事常識に反します。沖繩から海兵隊のペルシャ湾等への出動が移動オンリーと断定できる根拠があるなら示してください。そんなことは示せないでしょう。
  253. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 お答えいたします。  まず最初に、アメリカが考えております緊急展開部隊というものは、NATOあるいは核戦争以外の局地戦争に対処する部隊でございまして、現在のところ、四つの軍隊、陸海空及び海兵隊をすべて含むということでございますので、私たちは沖繩の部隊もその中に含まれるであろうというふうに推定しております。  しかし、その現実的に中東に事態が起きたときにどこの部隊がどういう目的を持って移動するかということは、現在のところアメリカの中でもまだ検討の段階でございます。したがって、現実の問題として考えられておるわけでございません。  第三に、先ほど先生の御質問のありました戦闘作戦行動ということはないというのは常識外だという御指摘でございますけれども、安保条約上戦闘作戦行動と申しますのは、日本の基地から発進して直接戦闘に従事するという行動でございまして、先ほど大臣から答弁いたしましたように、中東と日本との間の距離あるいは現在のアメリカ軍の装備、能力から考えれば、そういうことは現実的に起こらないというのが私たちの考えでございます。
  254. 大内啓伍

    ○大内委員 どうしてこんな独断を重ねてこの議会で答弁、強弁するんでしょう。そんなことが軍事技術的に考えられないと言って、じゃどういう根拠で言っているんです。あなたは防衛の専門家じゃありますまい。証拠を出すなら出しますよ。私が問うているのは、いまあなたはどこの部隊が編入されるかわからないなどととぼけたことをおっしゃっている。しかし、私はさっきバロー米海兵隊司令官の証言すら引用しているじゃありませんか。ちゃんと沖繩の部隊がその中に編入されて、西太平洋からインド洋、中東、アフリカに必要な事態に即応する体制をとると言っているじゃありませんか。あなたは戦闘作戦行動はあり得ない、何の根拠をもっておっしゃっているんですか。そんな強弁されちゃいけませんよ。一つでも可能性があれば……。
  255. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 先ほど申し上げましたのは、緊急展開部隊というものが、では、どういう部隊で構成されるかということをまず申し上げて、それは一応四軍というものを指定されている。しかし、具体的事実に即応してどの部隊がその緊急展開部隊になるかということは、まだ決定してないということを申し上げておるわけでございます。  第二点として、バロー海兵隊司令長官の証言でございますが、海兵隊司令長官が海兵隊の任務について述べた中で、米本土にある海兵隊あるいはハワイにある海兵隊、さらに沖繩の海兵隊の三つについて述べ、それぞれの任務を述べておりまして、沖繩の海兵隊については、極東はもちろんでございますけれども、インド洋あるいはペルシャ湾の事態に即応する能力を持っているということを申しているわけでございます。
  256. 大内啓伍

    ○大内委員 あなたは何を言っているんですか。それじゃ、あなたに聞きましょうか。  いまアフガンで問題になっている。そのカブールは首都だ。沖繩から何キロあるんです、言ってごらんなさい。そんなことが軍事技術的に不可能だなどという議論を立証してごらんなさい。そんなでたらめを言うもんじゃありませんよ。常に米軍の沖繩からの出動が移動であって、戦闘作戦行動に該当しないなどということを強弁することは許されません。
  257. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 私、具体的に沖繩からカブールまでの距離というものは現在記憶しておりませんけれども、大体五千海里ということじゃないかと思います。  それから実際問題として、現在の事態で沖繩を発進基地としてカブールなりあるいは中東に直接戦闘作戦行動が行われるということは予想されないということを申し上げているわけでございます。
  258. 大内啓伍

    ○大内委員 どうして予想されないのでしょう。だからその根拠を示しなさいということを言っているんです。どういう根拠か言ってごらんなさい。
  259. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 従来からの答弁の繰り返しで恐縮でございますけれどもアメリカ軍の装備、能力からそういうことは考えられないというのが第一点でございます。  第二点は、アメリカ側が考えているのは、いま沖繩に置いているのは前方の展開部隊であって、国防教書その他で述べておりますけれども、米本土から展開するよりもより距離的には短いだろう、しかし、ほかの部隊に比べればペルシャ湾あるいは地中海に到達するのに約二週間要するということを言っております。  そういう点をいろいろ勘案しますと、現実の問題として、沖繩から直接発進して戦闘作戦行動に従事するということはないというふうに考えております。
  260. 大内啓伍

    ○大内委員 そうでしょうか。それでは、たとえばアメリカのC5Aギャラクシー、これは大型最新輸送機です。これは五十トンを積載して一挙に一万キロ飛びますよ。しかもそれは戦闘作戦行動部隊を載せて行くのですよ。こんな演習はいままでずいぶんやりましたよ。いまカブール、アフガニスタンは沖繩から四千七百二十九キロです。あるいはイランのテヘン、六千百十四キロです。クウェート、六千七百五十四キロです。みんなカバーしていますよ。どうして不可能だなどということを強弁されるのですか。
  261. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 私たちの持っている資料によりますと、沖繩からアラビア海までは大体五千八百海里でございまして、他方、アメリカの持っている飛行機の能力は、航続距離としては大体二千三百からあるいは三千ということでございますので、往復、沖繩から飛び立ってインド洋あるいはアラビア海に行くことは能力的にも不可能じゃないかというのが私たちの考え方でございます。
  262. 大内啓伍

    ○大内委員 私は防衛庁からいただいたメモに基づいて申し上げているのですよ。外務省防衛庁の見解は違うのですか。このC5Aギャラクシーというのは五十トンで一万キロ飛べるのですよ。戦闘作戦行動部隊を載せてその現場に持っていけるんです。外務省はその能力はないと言うけれども防衛庁はちゃんと私にメモをくれましたのですよ。それで申し上げている。それでは外務省防衛庁と見解が違う。しかも防衛庁の方がこの問題では専門的であるはずだ。これはちゃんとした統一見解を出してください。——まあそんなことで余りいじめてもしようがありますまい。  そこで、私はひとつこれは外務省にも提案しておきたいのです。こういう問題について国民の皆さんは不安を持っているのですね。ですから、少なくとも外務省がそこまでおっしゃるなら、この点についてはアメリカとの間にさらに話し合いを行い、たとえば沖繩から日米安保条約を無視するような形で戦闘作戦行動に、たとえばペルシャ湾等に直行するというようなことはアメリカとしてはいたしませんというようなことを裏できちっととっていただいて、そしてそういうことをおっしゃられるなら、国民の皆さんはある程度納得すると思うのですよ。そうではなくて、あなたの解釈だけで問題を議論しようとすると、いま言ったような問題もあり得るではないかという議論になってしまうのですよ。その点どうでしょう、少し手を尽くしたらいかがでしょう。
  263. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどのC5の件でございますけれども、空で行った場合には一万でございます。ただし、兵員その他を積んでいると五千というふうに能力が落ちます。  それから第二の御指摘の点については、私たちとしても十分その点は念頭に置いていますし、今回の国防白書の中でも、緊急展開部隊というものはよその国の意思に反して行動することはない、あるいは主権を侵害することはないということを明瞭に述べております。
  264. 大内啓伍

    ○大内委員 いまの話も違うのですよ。私の方で防衛庁からメモをもらったこのメモと話が違うのです。私がさっきから言っておるように、完全部隊等を積んで五十トン積んで一万キロ飛べる、百トンの場合は六千キロメートル飛べる、これが防衛庁から出された私に対するメモです。ですからあなたの言うこととは違っています。  そこで外務大臣、いま言ったような形でこの際やはりアメリカとの間に、こうした疑惑のある論議にかんがみて、そのようなことはしないという確約をとっておいた方がこの問題についての建設的な打開ができると思いますが、そのような措置をとる意思がございますか。
  265. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点につきましては、従来のブラウン報告あるいは国防教書等を目下外務省の立場で検討しておる段階でございまして、できるだけ近い将来、先方とよく話を詰めてみたいと思っておりますが、現在の段階でお話しのような申し入れをするかどうか、申し上げられない段階でございます。
  266. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、国会でこの問題がこれだけ論議になっているわけでありますから、外務大臣の方で、いま私が申し上げたような諸点を適切に処理されるように希望しておきます。  次の問題として、日米欧の合同防衛計画努力の問題と、それから、その一環としての日米欧の装備の画一化問題についてちょっとお伺いしたいと思います。  アメリカの国防報告では、今後日米欧の防衛合同計画努力、この必要性を強調していることは論をまちません。これに対しまして大平総理は、さきの参議院の本会議で、この点については欧米が努力している方向で日本もやってほしいという一般的願望を述べたものだ、こういうふうに指摘しておられるわけでありますが、これが一般的願望であるにせよ、日本としてはこの点は非常に重要な問題でございますから、何らかの対応を考えておかなければならないと思っておりますが、こうした日米欧の防衛行動計画づくりに参画するという立場をとられるかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  267. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 最初に、国防報告の中で述べている点で、いま先生の御指摘のありました共同の計画努力、防衛計画ということでございますが、これはアメリカ側が、日本が自主防衛の計画を実施していく中でアメリカあるいはヨーロッパの防衛の方向を念頭に置いてやってほしいということでございまして、その点は、国防報告が発表された直後に国防総省に確認済みでございます。
  268. 大内啓伍

    ○大内委員 竹田統幕議長は一月三十日の記者会見で、米国が日米欧使用の装備品などの画一化をすでに求めてきている、これは防衛庁長官、そういう見解を明らかにしております。記者会見の中身をここで申し上げてみますと、「昨年十月、ブラウン長官の来日時、装備品などはなるべく(米欧と)同じものを使った方がいいのではないか、とは言っていた。欧州も、(対ソ戦略で)努力しているのだから、日本も“中期業務見積もり”の着実な実施ぐらいは進めてほしい、とも言っていた」こういうのですね。すなわちこのことは、いま私が質問いたしました日米欧の防衛計画努力の要請が、総理のおっしゃるような一般的な願望といった段階を超えて具体的な提案になってきている、こういうことを意味しているわけなんですが、こうした要請に日本はこたえる方針かどうか、防衛庁長官からお答えをいただきたい。
  269. 細田吉藏

    細田国務大臣 やや専門的なことに属しますし、非常に重要な問題でございますので、正確を期する意味で、防衛局長から先に答弁をさせていただきます。
  270. 原徹

    原政府委員 十月にブラウン長官が参られましたときにも一月の場合でも同じでございますが、要するに考え方は、ソ連の軍事力の増強というものは全世界的なものである、それに対してアメリカもNATOも努力をしている、だから日本もそういうアメリカ、西欧の努力というものを考えて、それで日本日本なりに努力をしてほしいというのが真意でございます。共同防衛計画というと、何か本当の計画をつくってやるみたいな印象があるのでございますが、その点は、外務省が先ほど答弁したようなことで、私どもはそういう意味で、われわれ日本みずからの防衛努力をしなければならぬ、そういうふうに考えている次第でございます。  それから、いまの竹田統幕議長の話でございますが、ブラウン長官が参られたときにそういうことがあったかなという感じのことを言われたものが実は新聞に出たのでございますが、ブラウン長官のときにそういうことが出たということはございません。ただし、装備品そのものにつきましては、補給とかそういうことを考えますと、やはり画一的であった方がよりベターであるという一般論は確かにあるわけでございますが、それも何をどうするというようなところにはなっていないわけでございます。
  271. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと防衛庁としては、いま竹田統幕議長の言質についていろいろな疑問もあるようですけれども、この事実上の日米欧の防衛計画努力の一環として、こうした装備の画一化の必要性というものについては認めておられるわけですね。
  272. 原徹

    原政府委員 一般論として申しますと、補給あるいは足りなくなった場合に一緒にできるという意味がございますから、一般論としては成り立つ議論であろうとは思います。しかし、実際にわが国装備を考える場合に、日本日米安保条約でございまして、欧州とは直接関係がないわけでございますから、たとえばF15というのはアメリカの戦闘機でございまして、そういうものの採用は考えておりますが、欧州というのはちょっと考えにくいと思います。それからまた、日本装備を考える場合には、やはり国内にその基盤がないと非常に弱いことになりますので、そういう日本防衛産業ということも、日本の技術力というものも考えながらやっていかなければならないので、一概に全部画一というわけにはまいらない、そういうふうに思っております。
  273. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、部分的にはそういう画一化という問題があり得るということに解釈をされるわけですが、竹田統幕議長はこの記者会見で、したがって「五十七年三月までには、五十五年中期業務見積もりを大々的に見直すことにはなっている」、こう言っているのですね。防衛庁としても大体そういうふうに考えているわけですか。
  274. 原徹

    原政府委員 先ほど大臣から答弁もございましたが、とにかく私どもとしては、現下の情勢にかんがみて、できるだけ早く防衛計画の大綱の水準に持っていきたいというのが第一でございます。そのために中期業務見積もりというものを一応つくってあるわけでございますが、中期業務見積もりは年々見直すことになっておりますので、その見直しの際に、それをさらに努力をするという方向で毎年見直すわけでございますから、その際そういうふうに考えてみたい、そういうことでございます。
  275. 大内啓伍

    ○大内委員 さきにブラウン国防長官が来日されたときに、日本の自衛力強化について要請があったという一連の報道がございました。これは総理なんでしょうか、ブラウン国防長官は日本防衛費については、そのときに満足の意を表明したのか、それとも疑問ないしは不満足を表明したのか、これはどちらだったのでしょうか。
  276. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私のところへおいでになりましたのは、表敬でおいでになったので、会見はきわめて短時間でございましたが、ちょうど予算編成を終えた段階でございまして、わが国防衛費計上の努力を多とするというお話がありました。
  277. 大内啓伍

    ○大内委員 ブラウン国防長官は日本の自衛力の増加を要請されたんでしょうか。と申しますのは、私も実はアメリカの方の状況も調べておりますが、私の印象では、かつてない、ある意味では露骨な表現で、日本防衛努力というものを求めた。もちろんこれはアメリカの重要な要人でございますから、露骨といってもそこにはおのずから限界がありましょう。しかし、いままで使わなかったような表現で、あるいは引例をもって日本防衛費の増額努力というものを要請した、こういうふうに聞いておりますが、それは間違いでしょうか。
  278. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ブラウン長官は私どもの方、外務省の方にも来られまして、先ほど総理のお答えのように、〇・九%の予算を評価するということを申しました。同時に、最近の情勢の変化に対応して日本側も考慮していただきたい。これについては、具体的なことはございませんでしたが、ブラウン長官が帰りまして一月三十一日の米上院軍事委員会での証言がございますが、その中では、「日本防衛費はGNPの〇・九%であるが、軍人恩給等を含めるわれわれの算出方法によれば、それは一・五%程度になる。依然日本のGNPは非常に大きく、その結果として日本防衛費は恐らく世界では第六、七位、または八位であろう。防衛費はさらに増加される必要がある。これまでも防衛費は増加されている。また、日本は在日米軍経費の負担を増額してきている。言いかえれば、それは日本にとって適切な寄与の仕方であると私は思う。日本は適切な方法でさらに寄与すべきであると考える。そして、同盟国がそれぞれ違った方法で寄与すべきである。」これはアメリカの上院軍事委員会でのブラウン長官の証言でございます。
  279. 大内啓伍

    ○大内委員 ブラウン長官は日本に来たときにこう言ったのじゃありませんか。アメリカとしては、日本防衛費のドラスチックな増加を期待していないけれども、いまの増加には疑問がある、そしてさらに、日本防衛費は必ずしも称賛に値する増加を示していない、こういうことをおっしゃったのじゃありませんか。いかがでしょう。
  280. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私の外務省での会談ではそういう表現はございませんでした。
  281. 大内啓伍

    ○大内委員 これは速記を見ての議論ではありませんから水かけ論になりましょう。しかし、これは私も、相当詳細に調べました結果、そういう言動がなされたのではないかというふうに認識をいたしております。  そこで、時間も余りありませんので、国際情勢の認識、ソ連の脅威という問題について若干お伺いをしたいと思うのでありますが、大平総理は一月三十一日の衆議院の予算委員会で次のように述べておられるわけであります。「ソ連は近来軍備の増強に努めていると言われ、北方領土への配備からうかがえる客観的な事実は、わが国の安全を考える上で潜在的脅威と考える。」こうおっしゃっている。私よくわかりませんのは、潜在的という意味はどういう意味でお使いになったのですか。
  282. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 顕在的でないという意味です。
  283. 大内啓伍

    ○大内委員 ソ連の意思ないしは決意いかんによっては日本を侵攻し得る客観的な条件が整っている、こういう意味でしょうね。
  284. 原徹

    原政府委員 潜在的な脅威と申しますのは、要するに脅威というのは意図と能力から成っておるということでございますが、その意図というのは必ずしも明確でない。必ずしも明確でないよりは、いま現在で考えれば、日本に対する侵攻の意図があるとは考えられないと言う方が正しいと思いますが、しかし、その軍事的な能力、意図というものは非常に変わりやすいということも一方において考えなければならないわけで、そこの軍事能力を潜在的な能力という意味で、注目すべき能力であるという意味で潜在的な脅威であるというふうに理解をいたしているわけであります。
  285. 大内啓伍

    ○大内委員 むしろ意図というのは何か紙にあらわしていればすぐわかりますが、あらわしていなければなかなかこれはわかるものではありませんので、その意図があるかどうかは、客観的な配置とか装備を見て決めるわけですね。そうしますと、総理のおっしゃられた潜在的という意味は、ソ連の意思ないしは決意いかんによっては日本を侵し得る客観的な条件が整っている、こういう意味ですね、総理。いかがですか。ほかに解釈のしょうがないじゃございませんか。そうでしょう。
  286. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そのように解釈されることも間違いでないと思います。
  287. 大内啓伍

    ○大内委員 いまわが国が進めております防衛計画大綱決定時、それから今日との間では、極東ソ連軍には具体的にどのような変化が起こっているでしょうか。
  288. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 最近の極東ソ連軍の増強は著しいものがございますけれども、十年前に比べますと極東地上軍はたとえば二倍になっておりますが、このうち極東ソ連軍十七個師団が三十個師団までふえましたのは一九七二年まででございます。これは主として中ソ関係の悪化に対応するものと考えられます。ただ、われわれにとって心配でございますのは、その後昨年までにもう約五個師団ほど増加しておりまして、しかもその増加はほとんど極東地域、極東と申しましても日本に非常に近い部分の極東地域に集中しているようでございます。その最も具体的な例が択捉、国後及び色丹に対する地上軍の配備でございます。それから他方、太平洋艦隊につきましては、特に昨年ミンスクグループが到着いたしまして主要戦闘能力が格段に増加されたと考えます。そのほか、バックファイアのアジアにおける配備、それからダナン、カムラン湾のソ連海空軍による使用、それによりましてわが国の海上交通路に対しまして潜在的な脅威が増大しております。さらにSS20が配備されたと聞いておりまして、SS20はわが国をその射程距離の中におさめる能力を持っておりますので、これまた新たな潜在的脅威を構成しておると考えます。
  289. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、いま政府が進めております防衛計画大綱の前提である国際情勢、特にまたわが国周辺の極東ソ連軍の配置、装備、さらには周辺の国際政治構造が大きく変化している、こういう事実をいま認められたわけですが、防衛庁長官、大きく変化している事実はお認めになりますか。
  290. 細田吉藏

    細田国務大臣 ただいま政府委員からも一部についてお答えをいたしましたが、大きく変化いたしておると存じております。
  291. 大内啓伍

    ○大内委員 いまお許しをいただいて「極東ソ連軍装備の変化」というのを配らせていただきましたが、これは昭和五十一年時と現在とではもう比較にならないほどの大変化が極東ソ連軍の中に起こっているということなんですね。ですから、たとえば、具体的にいまいろんなことを述べられましたけれども、空母ミンスクが配置されただけではなくて、揚陸強襲艦イワンロゴフ、この配置によりまして、防衛計画策定当時ソ連がもし侵攻し得るとすれば北海道の一部に限定されるであろうと見られていたこの問題が、ソ連がその意思さえ持てば北海道はもちろん裏日本一帯のほとんど全域にまで上陸対象が拡大した、こういうようなことも現実に起こっておりますし、また、もちろんバックファイアの配置という問題が現実の問題になってまいりまして、これはほとんど対応措置がないのじゃないかと思うのですね。もちろん先ほど指摘されましたSS20、これは中距離弾道弾でございますが、これも新配備されて、実際にはこれは日本を完全にカバーしているわけです。日本をカバーしているのは大体何基と見ていますか。
  292. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 数については詳しいことは確認しておりませんが、バックファイアは十機前後であろうと考えております。SS20も同様十基程度であろうと考えられます。
  293. 大内啓伍

    ○大内委員 いま大体ソ連ではSS20は百二十基ぐらいではないか。そしてそのうち日本をカバーしているのは大体二割から三割ではないかとここに指摘をしておりますが、これは実は防衛庁が出している数字なんですよ。あなたの言っている数字とは違いますね。ですから、そういう数字をいつも使い分けてごちゃごちゃ言われると本当に困るのです。  このことから、たとえば今度宮永スパイ事件で引責辞職されました永野陸幕長は、極東情勢は大きく変化している、したがって、近い将来に計画の修正に目を向ける必要がある、そして実はその理由として、たくさんの理由を挙げられております。その中で、一つ重要なことを指摘しておりますのは、防衛計画の大綱編成時にはソ連陸軍が今日ほど優秀な師団に改編されるとは予想していなかった。これはやはり防衛専門家の述懐として、防衛出動命令を出される総理もこういう問題については耳を傾けておく必要があると思うのです。これをうのみにせよということではありません。しかし、やはり総理大臣、大統領というのは、常にその道の専門家の率直な提案に耳を傾ける、これがシビリアンコントロールの長に立つ総理大臣としての重要な任務だと私は思うのです。  したがって、そうした事態は明らかに、今日日本が進めております防衛計画大綱、そしてそれを具体化する一つの方法としての中期業務見積もり、これは五十五年から五十九年でございますが、こういうものについて見直しをし、常に再検討する、こういう段階に入ったのではないか。ましてアメリカが、御存じのように、いままでの二カ二分の一戦略から一カ二分の一戦略へ転換し、そしてアメリカ自体の戦略が大きく変化をしたという意味は、具体的には防衛計画の重要な前提が変化しているということであって、先ほど来私がお示しを申し上げたような極東ソ連軍装備の変化等々と相まって、当然防衛計画大綱、中期業務見積もりというものについては再検討を加える。特に防衛計画大綱ではこう言っているわけなんです。この防衛計画大綱というのは、「国際情勢及びわが国周辺の国際政治構造並びに国内諸情勢が、当分の間、大きく変化しないという前提」に立って進めるものだ、こう規定している以上は、その重要な前提がいま私が指摘したような形で大変化を遂げているという状況のもとにおいては、これは当然再検討しなければならぬ。これは決して、そのために自衛力を増強せよとか、そういう議論とは別です。やはり国際情勢の変化に対応して、常に自分たちの持っている防衛計画、中期業務見積もりというものを再検討していくという姿勢がなければ、私は、日本防衛を現時点で全うしていくということはなかなかできないんじゃないか、こう思います。  私の質問時間も参りましたので、最後に、さっき防衛庁長官は実質的に計画の見直しをしていきたいというお話がございまして、ほぼ結論が出ているようにも思いますが、改めてこの点についての御見解をお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。
  294. 細田吉藏

    細田国務大臣 お答え申し上げます。  その前に、初めにちょっとお断り申し上げなければなりませんが、先ほどの私の答弁、全体としては速記録を読んでいただけばおわかりいただけると思いますし、またただいまの御質問の中にもございましたが、基本計画自体をただいますぐ変えるとかどうとかいうことは、先ほどの意見で申し上げておるわけではございません。中期業務見積もりというもので、毎年毎年質的なもので防衛計画を、まだ到達しておりませんので、これを到達するという意味で先ほどは答弁申し上げたわけでございます。  そこで、ただいま最後の御質問は、情勢が大きく変わっておるから、こういうものについても検討し直すべき時期ではないか、こういう御意見、大変貴重な御意見だと存じます。これにつきましては、私どもただいまのところでは防衛基本計画自体を変えるという考えには立っておりません。その実施の段階で、中期見積もりをどうするかということでいろいろ対処するということは考えておるわけでございます。ただ全体の問題としまして、日本防衛につきまして、もう申し上げるまでもなく日米安保体制のもとでいろいろな制約を受けた防衛の体制を持っておるわけでございますので、その体制の中でいかに対処するか、国民の皆さんに安心していただくためにはどうするかということについては、何としましても重大な問題でございますので、ただ防衛庁だけでなくて、政府も、また国民の皆さんにもお考えいただかなければならぬ問題だろう、かように存じておる次第でございます。今後とも十分そういう点については、私ども防衛の一応責任者でございますので、いろいろな点から検討をいたさなければならぬ、かように存じておる次第でございます。
  295. 大内啓伍

    ○大内委員 以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)
  296. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長代理 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、八木昇君。
  297. 八木昇

    ○八木委員 私は、エネルギー問題、特に原子力の問題を中心に質問をいたすつもりでございますが、このことと間接的にはかかわりも持っておりまするので、先に総理大臣に二点お伺いをいたしたいと思います。  一つは、今度のいわゆるアフガンの情勢にかんがみて、アメリカの国防総省がイラン極秘報告というものをまとめた。七十ページに及ぶものであって、これまでアメリカ政府が行った最も徹底的な軍事研究文書だと言われておる。そこで米国防総省は、ペルシャ湾地域で紛争が発生した場合、そういう場合には核兵器の使用を検討すべきであるとの重大な内容を明らかにしておるという報道がなされておるわけであります。きわめて重大な事柄でありまするので、ニューヨーク・タイムズの報道等を日本の各社いずれも繰り返し報道しておるわけであります。この事態について、その内容を御承知だと思うけれどもアメリカ当局に照会をされ、その内容を御承知になっておるかどうか。もしそうでないとするならば、重大な問題であるので直ちに照会をし、内容を把握すべきであると私は思うのでありますが、その点お伺いをいたします。
  298. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 お答えいたします。  現在のニューヨーク・タイムズの記事そのものの大綱は、われわれは日本新聞で承知しておりますが、国防報告そのものの中にそういう記述はございません。
  299. 八木昇

    ○八木委員 大体こういう重大な問題について、あなたたちは新聞で承知しておるだけですか、外務大臣。
  300. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 本件については新聞でございますが、先ほど申しましたように、ブラウン報告その他を含めまして、最近の動きについて先方と十分話し合いをしてみたいということで省内で検討中でございます。
  301. 八木昇

    ○八木委員 私が持っておりまするこれはある新聞なんですけれども、けさの新聞じゃないんです。もう何日か前の新聞なんです。それから新聞報道されてからでも何日かたっております。唯一の被爆国として、しかもその被爆都市として長崎市においては、長崎の市会議員を初め、このことに抗議して座り込みをやっております。御承知ですか。  そこで、大体あなたは、核兵器を使った、その場合に相手側はそれでやられっ放しで、それに通常兵器で対抗するということはあり得ませんので、これは大変な事態です。直ちに照会するのはもう当然のことであるけれども、そう思いませんか、総理大臣。  それで、改めてお伺いをいたしますけれども、これはもうお伺いするまでもないと思う。私も国会に出てから二十数年になりますが、その間ずうっと一貫して歴代の総理大臣は、わが国は非核三原則を厳守します、政府として、と言っておりますね。直ちに照会をすると同時に、厳重に抗議すべきである。その点、これは総理からお答え願いたい。
  302. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日米間は安保条約を持っておる同開国でございます。したがいまして、常時細大漏らさず意思の疎通を図っておかなければならぬことは当然でございまして、いま御指摘の点につきましても、外務省で検討して、照会すべき要があればすることは当然だと考えております。  第二に、非核三原則、これはわが国の定立した国是でございまして、あくまでもこれを踏まえて、内政はもとより外交に当たらなければならぬことは当然私の責任だと思っています。
  303. 八木昇

    ○八木委員 これはもう本当に戦後かつてない重大なることであると思うのですよ。それで、私どもは残念ながらこの新聞報道で内容を承知するしかないのですけれども、そのように実際に核兵器の使用を検討すべきであると結論していると書いてある。これはもう直ちに照会をしていただくと同時に抗議をしてもらいたい、私は重ねてそのことを申し上げておきたいと思います。  それから第二の点ですけれども、総理大臣、今度特使を派遣されます。その特使はイランに行かれるのでしょうね。
  304. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま受け入れ国側の意向を打診いたしておりますので、先方に支障がない限りは伺ってもらいたいものと思っています。
  305. 八木昇

    ○八木委員 どうもずばっとのお答えでない。私は頭のめぐりが悪いのですけれども、私は、イランに今度の特使は行きますねと、こう聞いたのですが、政府はイランに今度の特使は派遣するつもりかどうかということをずばり答えていただきたい。いろいろと報道されるところによりますと、インドとかパキスタン等にも行かれるというようなこと、それは確定じゃないかもしれません、先方の国との話し合いもありましょうから。でありますけれども日本政府としてはイランにその特使は派遣する、行くということで手だてをしていらっしゃる、こういうふうにずばり理解してよろしゅうございますか。
  306. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 イランについてはそうでございます。パキスタン、インドについては考えておりません。
  307. 八木昇

    ○八木委員 それでは、イランにこの特使は行かれるということでございます。それは当然先方の国と事前の連絡の上でございましょう。  そこで、これはイランのみならずでございますけれども、石油は日本にとって生命線でございます。日本は第一次石油ショック以降若干消費がふえぎみでございましたけれども、ヨーロッパ各国等の石油の輸入は大体横ばいであったと思う。それで、ひとりアメリカがどんどん輸入をふやして、ほぼ三〇%輸入をふやした。そうして、各新聞が大きく報道しておりまするように、アメリカのいわゆる巨大石油資本は、これはもう莫大な、許すべからざる巨額の利益を上げておる。それなのに、つい先ごろのことでございましたけれども日本がイランから石油を買うことについて、高い値段で買おうとしておるなどということで抗議めいたことをアメリカから言われたというのですけれども、まことに私は日本国民として片腹痛い話であると思うのであります。  それはさておきまして、特使がイランに行かれるという以上は、何の方針も考えも持たないで行かれるわけじゃないわけでしょうから、新聞でも報じておりまするように、イランのモインファル石油大臣は、イランに対する経済制裁は敵意ある行動とみなし、そのような措置をとる国に対しては石油供給を停止すると言っておりますね。  ところで、先日の本会議における飛鳥田社会党委員長質問に対しまして、総理大臣は次のように答弁をしております。イラン、ソ連に対する経済制裁は、国際社会の大多数の見解であり、こうした努力を支援するのは当然の任務であると、きわめて内容的には明快に答弁をなさっておる。その特使はそういう態度で行かれるのですか。アメリカの経済制裁要求に対して違ったニュアンスを持って行かれなければ、これは何のために行くのかわけがわからぬことになる、私はそう思います。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕  それから、イラン・ジャパン石油化学だけじゃありません。全体としての先方の国の経済的な要請にどうこたえるかという態度を持っていなければならないと思うのですけれども、その点についてお答えをいただきたい。
  308. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日本とイランの関係でございますけれども、大使館の占拠、人質解放問題、この問題につきましては、国際秩序を守る上から申しまして是認できないことでございますので、その旨イランにも申し上げてございまするし、国連等を通じましてその実現について協力をしてまいりたいという態度に変わりはありません。  それから、それがなければ日本とイランとの間には何も問題はないわけでございまして、日本とイランとの友好関係はもとよりでございますけれども、貿易も経済協力も投資も各般にわたって濃密なものがあるわけでございますので、これは私どもとしては維持していきたいという気持ちに変わりはないわけでございます。  ただ、人質解放問題に絡みましてイランがアメリカに対しまして石油の禁輸をやったということでございますが、そういう両国の緊張に乗じて日本が利得を得るようなことをやることは慎まなければならぬ、これは日米の友誼にかんがみまして当然心得なければならぬことだと思っておるわけでございます。  今度特使を先方が受け入れるということでございますれば行っていただきまして、全体として国際情勢、日本とイランとの関係というようなものについて隔意のない意思の疎通を図っていこうということでございます。
  309. 八木昇

    ○八木委員 総理大臣からお答えをいただきましたので、蛇足だとは思うのですけれども、もしそうだとするならばきわめて遺憾な話で、外務省は一体何を考えているのかと言いたい。いろいろと伝えられましたね。園田特使自身は当然イランにも訪問をしなければならないと希望しておるが、外務省筋がそれに抵抗しておる、そういうようなことでまだ特使がイランに行くかどうか決まっていないということが、私が質問に立ちますまでの時点ではささやかれておりましたね。そんなことはよもやなかったと思うのですけれども、外務大臣、どうでございますか。
  310. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの問題につきましては、外務事務当局のいろいろな情勢判断もございまして、適当であるという見方と適当でないという見方、これは大きな政治的な判断による問題でございますので、総理の決断、総理の判断にお願いするというたてまえでございます。
  311. 八木昇

    ○八木委員 そういう外務省の姿勢についても言いたいのですけれども、それは時間がありませんから先へ進みます。  エネルギー問題についてお伺いをいたします。  長期エネルギー需給暫定見通しが昨年の八月末に決定したわけです。通産省はそれを受けておられるわけですが、それまでの見通しに比べまして約一〇%下方修正をされたものであり、省エネルギー後ではほぼ五年ずらしたという形になっておると私は理解をいたします。それはそうなんでありますけれども、それでもなお実際よりも過大に見通しを立てておるのではないかと私は思うのです。そうしてそういう中から、ともかくこうなればどうでもこうでも、原子力発電所をどんどんつくらなければどうにもならぬというようなことに何となく持っていくという底意があるのではないかと私は感ずるのでございます。  そこで、一点だけ聞きたいと思います。  たとえばこの見通しの基礎の一つとなっておりますエネルギー需要の対GNP弾性値、これは申すまでもなくエネルギー需要の増加率を実質経済成長率で割った数値ですね。一九七七年から八五年〇・七七、一九八五年から九〇年〇・七六、一九九〇年から九五年〇・七三、算定の基礎としてこういうふうになっております。ところが実際、石油危機以降、一九七三年から七八年までの間の数値はわずかに〇・二五であります。これは当然そのような大幅な数字の低下でございましょうが、経済がほぼ正常に復したと考えられます一九七五年から七八年にかけての数値は〇・五三にすぎません。  この原因をどう見るかというのは、申すまでもなく不況のもとにおいて民間設備投資が減少した、また、エネルギー多消費産業の不況の長期化、それからエネルギー価格の高騰によって、エネルギーの消費が省エネルギー化への努力が行われ始めたということでございましょうが、いま三つ申しましたが、最初の一、二は循環的に作用をするわけです。多少ふえることがありましても、今度はまた減少する。  こういうことを考えますると、一九七七年から八五年、ずっと先の数値はさっき申しましたが別としまして、この間における〇・七七という弾性値は高過ぎやしませんか。せいぜい〇・五、それを上回っても〇・〇二、三、〇・五三前後と見るのが、これは私は学者の意見も聞いてみたのですが常識だというのですが、どうですか。
  312. 森山武

    森山(信)政府委員 ただいま先生の御指摘になりました長期エネルギー需給暫定見通しにおきます私どもがつくりました弾性値は、〇・七七、〇・七五、〇・七二、こういう状況でございます。それから一方、昭和四十年から昭和五十二年までの平均値を見てみますと、御承知のとおり〇・九でございまして、確かに石油弾性値は低下いたしておりますけれども、エネルギー全体の弾性値といたしましての実績は、〇・九という実績がございます。  それから、一昨年のボンのサミットで各国のエネルギー弾性値の話し合いがございまして、欧米主要国とも〇・八程度の弾性値にするのが好ましいのではないか、こういう話し合いをいたしたところでございまして、私ども先ほど申し上げました数字はいずれも〇・八以下でございますので、計画の暫定見通し上はこの数字を一応使わしていただいているということでございます。
  313. 八木昇

    ○八木委員 それらの論争はまた別の委員会でするとしまして、全体としてそういうように私は思っておるのですが、にもかかわらず、石油の消費量というものはこの計画のようにはいかない、むしろもっと大きなものになる、こういうふうに私は思います。  なぜかならば、この暫定見通しの三本の柱は原子力とLNGと石炭だとおっしゃるのだけれども、LNGというのは、ある意味では石油と同じなんでありまして、原子力オンリーというものじゃありませんか。原子力については膨大なる設備費、本当に巨額の設備費、そうして年数を要する。また、これは後で主として質問をいたしまするが、いろいろな問題を持っておる。それを十五年後にはいまの原発の八倍にするというのでしょう。七千八百万キロワットという原子力発電設備なんというのは大変なものです。そんなものできますか。  それについては後で具体的に質問をいたしまするけれども、問題は石炭です。代替エネルギーの開発への努力と同時に、当面一番政治が全力を尽くさなければならないのは石炭だと私は思うのです。まずその認識から伺っておきましょう。
  314. 森山武

    森山(信)政府委員 先ほどお答え申し上げましたエネルギーの長期需給暫定見通しは、ただいま先生がおっしゃいましたような観点と実は逆の発想をいたしておりまして、今後輸入石油の期待分がどうなるであろうかということからスタートしたわけでございます。  御承知のとおり、昨年の東京サミットにおきまして石油の輸入上限を各国が合意したということがございまして、日本は去年及びことしは五百四十万バレル・パー・デーということが決まったわけでございます。それから、昭和六十年におきましてはこれを六百三十万バレル・パー・デーないし六百九十万バレル・パー・デーにしようという合意があったわけでございますので、逆に言いますと、昭和六十年には六百三十万ないし六百九十万バレル・パー・デーの石油しか入ってこなくなる、これが国際公約だ、こういうことでございます。  そこで、昭和六十年のエネルギー需要を見込みますと、これは大変な大きな数字になりますので、相当思い切った省エネルギーを実行いたしましても、なおかつ相当なエネルギーの期待があるわけでございまして、それを先ほど申し上げました石油の上限とのバランスにおきまして需給暫定見通しをつくったということでございまして、石油の方からスタートして計画を推進していく、こういう発想でやったわけでございます。  そこで、いまお尋ねの三本柱、石炭、原子力、LNG、こういったことが当面の三本柱になってこようかと思いますが、その中で当面私どもが期待をいたしておりますのは、おっしゃるとおり石炭ではなかろうか。原子力につきましては、相当な努力をもってやりますけれども、いずれにいたしましても、大変懐妊期間が長い、こういう問題がございますので、御指摘のように、石炭にウエートを置くということは当然のことではなかろうか。ただ、そうはいっても、原子力とLNGにつきましてやはり相当な努力をしてまいる必要があろうか、こういう感じでございます。
  315. 八木昇

    ○八木委員 ちょっと一点だけ。この見通しの、昭和七十年度海外石炭一億七千八百万トンというのは、そのうち火力発電用炭に消費すると考えておるのは何万トンですか。
  316. 森山武

    森山(信)政府委員 昭和七十年度におきます海外炭といたしまして期待いたしておりますのは一億七千八百万トンでございますが、そのうちの一般炭として期待いたしておりますのは八千五十万トンでございます。
  317. 八木昇

    ○八木委員 そこで、通産大臣にお伺いをいたしますが、それは的確な数字でなくて結構なんですが、通産大臣、どうお考えになっていますか。アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、それらの各国で、発電電力総量の中で石炭火力で発電をした電力の量は何%ぐらいになっておるか、いま頭の中で考えておられますか。
  318. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 五十一年のOECDの統計しかないのでありますけれども米国は四八・九%、西ドイツは六三%、英国は六四%、フランスは資源がございませんので、二二・七%、イタリアも同様でございまして六・七%、こういうふうになっております。
  319. 八木昇

    ○八木委員 わが国は何%ですか。
  320. 森山武

    森山(信)政府委員 石炭火力の依存度は三・五%でございます。
  321. 八木昇

    ○八木委員 皆様方御自身よく御承知のとおり、また皆さんお聞きになったとおり問題にならぬですね。  それで、私はごく最近のものを海外電力調査会に照会をして、最近の数字を調べたのですが、大体どの国ももっと大きくなっておりますね。もうアメリカが五〇%近く、四十何%、イギリスでは六十数%、西ドイツで五十何%、フランスにおいてすら二四%、全体の発電電力総量の半分というのは石炭をたいておる火力発電所から電気を送っておるのだが、わが国はたったの三・六%でしょう。たったの三・六%。これはいまの通産大臣だけの真任じゃないと思うのですけれども、あの炭鉱が非常に困難に逢着した時代以来、電力会社あたりがどういうことをやってきたか、そうして、政府は一体どういうことをしてきたかということの事柄が、いまになって重大な事態にもなってきておる。それは国内炭だけではない。当時以降、原料炭の輸入については、鉄鋼を初めとして、がしっとやはり相当やってきておるけれども、火力用炭については手つかず、責任を感じませんか。それから、今後一体具体的にどうしていくのですか。  それで、いまの責任の問題と同時に、この表では、数字づらではこんなことを書いておって、七十年度には火力発電用に使う石炭を八千万トンも使うというのだけれども、火力発電所の建設計画はないじゃないですか。私が承知しておるところでは、電発が松浦の一号機、二号機、九州電力が同じく松浦、それから北、これは昭和六十四年というのだけれども、あるいは松島というのはいま工事中のもののことです。私が言っているのは計画中のことです。工事中のものは松島と竹原です。ですから、計画中のものはこれしかないでしょう。日本の電力の動脈地帯であるところの関西電力、中部電力、東京電力は火力発電所の建設計画が全くありませんね。どういうふうになさるおつもりかお答えいただきたい。
  322. 森山武

    森山(信)政府委員 まず、石炭火力発電の計画を申し上げますと、現在、北海道電力の苫東厚真、砂川四号、電源開発株式会社の松島一号、二号、この四基でございまして、約百五十万キロワットでございます。それから電源開発株式会社の竹原三号等の三基につきまして百九十万キロワットの着工準備の段階でございます。それから昭和六十年度までに運転開始するものといたしまして新規に三基、二百三十万キロワットが計画されておりまして、昭和六十年度における石炭火力の規模は一千万キロワット程度になる、こういうふうに考えております。  それから、ただいま先生から御指摘のございました昭和七十年度を見通した長期計画はどうなるか、こういう御指摘につきましては、御承知のとおり、火力発電所の建設につきましては環境アセスメント等の準備、その他地元住民の方々との話し合い、こういったものが先行するわけでございまして、いま私どもは、六十年度までは大体電調審で審議をいただいたものを計画いたしておりますけれども、それ以降につきましては、各方面の御協力を得ながら計画を作成していくということでございますので、六十年度以降につきましては計画に出してない、ただ、裏といたしましてはいろいろ検討はしておる、こういうことでございます。
  323. 八木昇

    ○八木委員 六十四年度以降というものが東北電力と中国電力に二つだけ、考えられておるという程度のものが二つだけ挙がっていますね。東電、中部電力、関電なし、にもかかわらず、火力発電所の構成は、昭和六十五年度には石炭火力を全体の発電所の施設構成の一〇%にするという計画でしょう。電源構成で一〇%というのは、発電電力量ではもっと上のパーセンテージになりますね。水力発電というのは、ピーク時にのみ運転して平常時はとめておるという水力発電所が多いわけですが、火力はフルロードでずっと運転を続けますから、なりっこないですね。なりっこないでしょう。  そこで、これらは何らかの行政的な措置によって、おまえさんのところの石油火力の建設は許可できない、かくかくしかじかの点から石炭火力の建設を考えろ、そういうことを政治でもって相当やらないと、実際はできないですね。なぜかといいますと、もともと火力発電につきましては、特に石炭火力につきましてはいろいろな要件があるわけで、それは地点からいっても、東京電力や中部電力やあるいは関西電力の地点に適地やその他が求めがたいということ、それでも絶無じゃないと私は考えますからつくらなければならぬと思いますけれども、そういう要素もありましょう。だからといって、原発のように、東京電力の石炭火力発電所を東北の福島県や宮城県につくって、そうして東京電力の費用で膨大な費用がかかる超高圧送電線をずうっと引いてきてやるなんということはできない。そうすれば、火力発電というものの立地点というものもおのずとそういう問題が出てくる。電力会社は九つに分割をしてある。そういう隘路というものにいよいよ逢着してきておるのじゃありませんか。  その二点は、これは局長答弁でなくて、やはり大臣が今後やっていくべきことであると思いますから、この際、お答えをいただきたい。
  324. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 石炭火力に関しましては、いまお話のあったのに付加して、その後いろいろ希望の個所と申しますかも出ております。たとえば秋田県で、いま東北ではないようなお話でございますけれども、能代港などは膨大な計画をして、ただいま東北電力でもって進めつつございます。  それから、従来の油を専焼しておった炉あるいは混焼しておった炉、そういうものをやはり至急石炭に切りかえた方がよかろうということで、今年度の予算に補助金を相当量盛りまして、そしてできるだけ早くひとつ石炭専焼炉に切りかえてもらいたいというふうにして、ただいま進めようとしてございます。  お話しの長距離の問題でございますけれども、それはできるだけロスの少ない、近い方でやるのが一番好ましいわけでございますけれども、現在立地条件がむずかしい事態になってきておりますから、技術で解決のできる限り、遠くに持っていってもこれはやむを得ぬのじゃないかというふうにして計画を進めつつございます。
  325. 八木昇

    ○八木委員 余り時間がとれないので残念なのですけれども、ただ、これまでのような通産行政では、火力発電所は、関電や中部電力や東京電力なんというところではとてもつくれやしないということを言いたいわけなんですよ。自主的に計画をつくって持ってくるということは、それは世間に対してもいろいろな全体の事情から全然石炭火力の建設を計画せぬわけにはいかぬだろうというので、申しわけ的に幾らかの計画をして申請するということは絶無とは言いませんけれども……。  幸い今度代替エネルギー導入促進法というものも考えておられるようでございますが、その中身について承りたいけれども、いわゆる一定量以上の石油を使用しており、かつ、エネルギー転換を推進する必要があると認められるものについては、その計画の変更等々を命ずることができる、勧告することができるというような法をつくろうというお考えがある。その一定量以上の石油を使用しておりというのは、これは発電用に使用しておる、そういう電力会社等についても、これは当てはめようというふうにお考えなのかどうか。そうしてまた、今後、この代替エネルギーの新しい公団は、莫大なる資金の計画が通産省としてはあるのですけれども、原子力開発利用の推進というのには、五十五年度から六十五年度資金需要見込みとして一兆三千億円、こう書いてあって、これはほとんど原子力に過度に偏っている。石炭の問題について対策をなきなければならないと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  326. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先生にお言葉を返して恐縮ですけれども、LNGの問題を全然抜かして御議論なさっているので、これは東京でも関西でも中部でも、御承知のように大変大きい計画で進めつつございますので、その点も御承知いただきたいと思います。
  327. 八木昇

    ○八木委員 私の質問に対する直接のお答えじゃないので、非常に不満なのでありますけれども、この際、もう一点伺っておきたいと思います。  いわゆる自家用発電所というのがわが国でもずいぶんだくさんございますね。全体として、私が調べた分をここに持ってはおるわけですけれども、設備として何万キロワットでしょうか。
  328. 安田佳三

    ○安田(佳)政府委員 お答えいたします。  自家発につきましては、千三百万キロワット程度でございます。
  329. 八木昇

    ○八木委員 日本の全発電設備の大体一割だと私も承知をしております。千三百万キロワットという設備は全体の一割。稼働率は何%ですか。
  330. 安田佳三

    ○安田(佳)政府委員 ただいま稼働率につきましては、手元に資料を持ってございません。
  331. 八木昇

    ○八木委員 大体のところは見当がつくでしょう。
  332. 田村元

    田村委員長 安田君、大体のところと聞いていますよ。
  333. 安田佳三

    ○安田(佳)政府委員 推定でございますが、大体五〇ないし六〇程度ではなかろうかというふうに考えております。
  334. 八木昇

    ○八木委員 電気料金を今後大幅に値上げをしますと、大分模様が違ってくるという要素があるとは思うのですけれども、実態は私はもっと低いと思う。せいぜい三分の一じゃないですか。でありますから、これは重大な問題でして、これは何とか活用しなければならない。電力会社とリンクさせなければならない。そういうことを御努力されたことがありますか。今後どういう方策を考えておられますか。
  335. 安田佳三

    ○安田(佳)政府委員 自家発につきましては、電力事業と直接的にはリンクさせておりません。それぞれ自家発を持っているところが自己の熱効率をいろいろ考えまして、蒸気の使用、電力の使用等を考えているのが実情でございます。ただ、今後の問題といたしましては、やはり自家発につきましても十分検討を加える必要があろうかとも存じております。
  336. 八木昇

    ○八木委員 石炭問題ばかりやっていても切りがございませんので、やはり今後脱硫あるいは脱硝技術の進歩に努力を払ってもらわなければならない。こういう点については、資金を惜しんでもらってはならぬと思うのです。  それから、海外炭の、特に一般炭の輸入体制を確立しなければならぬと私は思うのです。それで鉄鋼の原料炭等々については巨大な輸入体制がすでに確立されておりますね。特に電源開発が今度松島火力をいま建設中ですけれども、中国炭や豪州炭を入れるわけですね。これは一つのモデルケースとして非常に貴重でありまして、全体としての海外炭の輸入体制、開発体制というものを政府として一貫した方針を持って確立されるように要望をいたして、先へ進みたいと思います。  そこで、原子力の問題でございます。けさほどの一部の新聞に載りましたのでお読みになったかと思うのでございますけれども、名前を挙げて申し上げます。もしこれが事実だとすならば、もう大変なことだと私は思いますので、ちょっと時間をとりますが、数分説明をいたします。  これは電業社機械製作所という会社でございます。本社は東京ですが、そこの静岡県三島工場で起こったと言われております。この会社は原子力発電所の各種ポンプを東芝から受注いたしましてどんどんつくっておる会社であり、工場でございます。その工場は、今日までの間に東電福島第一の一、二、三、四、五、六とあります各原子力発電所、それから東電の福島第二の一、三号あるいはまた敦賀、浜岡、島根という原発に今日まで約二百台各種のポンプを納めておるわけです。そうしてそのポンプが動いておるわけでございます。たとえば、この東電の福島第二の場合について言えば、第二、一号の五十台のポンプのうち二十二台はこの工場でつくられたものでございます。  そこに働いていた方でごく最近定年退職をなさった方でございまするけれども内部告発をされました。その内容がきわめて重大でありまして、工場でこの品質検査をごまかしておるというのであります。そうして品質管理がきわめてルーズになってきておる。汚染物、一遍原子力発電に使った機械の一部が修理のために工場に持ち込まれてきたという非常に濃厚な疑惑がある。  もっと具体的に言いますると、昭和五十四年六月、仕上げ組み立て等の部門にポンプケーシングと言うんだそうでございますけれども、これは原子炉補機冷却系、私も専門的にそんなに詳しくわかるわけじゃありませんが、ECCSの過熱を冷却するために水を送る場合のポンプとかあるいは平常時には洗浄のために水が回っております、冷却材が。それを回すための補助のポンプというようなことでございまするけれども、それをポンプケーシングと言うんだそうでございます。そのケーシングというのは、そのポンプの羽根の部分をおわんのようなもの上下二つでかぶせて覆っておるものだそうでございます。これは鋳鉄製である。これは設計図から福島第二、一号炉の原子炉補機冷却系の第二ループポンプであるということがはっきりとしている。鋳造番号一一〇一三二六である。この組み立てを終わった後耐圧テストをやった。これは一応異常がないということになったそうでございますが、その後このケーシングの合わせ面のカラーチェックを実施した。カラーチェックというのはどういうことかといえば、薬品でおわんのようになっておるものの内部を洗浄した後に、金属浸透剤を塗る。そうしますというと、ひび割れがあったり傷があったりすると、それが浸透していくそうです。そうして今度は、その後一定の時間がたってから現像液をかける。まずいまの浸透剤を塗って、そして一定時間がたってそれをふき取って、そうして現像液をかけると、その浸透剤が入った部分には、ひび割れの部分には赤色の色が出てくる。そういう検査をやるそうでございます。その結果、上下二つ、そして三つのポンプですから六個の合わせ面から、最長十ミリほどの線状の傷や米粒の半分大の円形の傷が、各個とも数十カ所それぞれあることが判明をした。ところがその後、水ガラスと一般に言うんだそうですが、珪酸ソーダを傷に埋め込む作業が行われた。埋め込む作業の要領等もここに詳しく図面をかいてきておるのですが、それを言っておる時間はないかもわかりませんが、二つのわんを合わせまして、そうしてそこに水ガラスを入れて高い圧力にするんだそうでございます。十五パー平方センチという圧力ぐらいに上げまするというと、その水ガラスが割れ目、傷のところに浸透していく。そして一定時間を置いてその水ガラスを抜き取る。そうして一定時間しますと、割れ目に入った部分はかたく固化するそうでございます。そういうやり方をやってごまかして、そうして検査を受けて合格しておるというのです。まことにこれは重大なる事態でございまして、実はこれは原水禁その他にも本人からの告発があっておるのです。それから該当の労働組合等は、会社側に真相究明の交渉を申し入れておって、近日中にその交渉が行われるとも聞いておるのでありますけれども、そういうこと御存じでしょうか。
  337. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 ただいまの件につきましては、本日の新聞並びにその以前に報道関係の者から聞いております。それで、この問題につきましては、ただいまちょうど設置が終わりまして配管工事が実施されております。通産省といたしましての手続からいきますと、五月に国の使用前検査ということでこの三台のポンプを検査することになっておりますので、その際、先生ただいま御疑念の点につきましても十分調査した上で検査したい、こう考えております。
  338. 八木昇

    ○八木委員 非常に重大な問題でございまして、現在原子力発電所におきまして各種のひび割れ事故が頻発をしておりますね。ここに表を持ってきておるのですけれども、昨今の原発の事故をこの一年間分だけを取り上げましても、おたくの方からもらった資料で十幾つもあるわけであります。それは、主蒸気管のパイプにひび割れがあってみたり、これは福島第一の一号でしたでしょうか、いまの冷却材を送るパイプと原子炉との接点の部分にひび割れがある。原子炉側にひび割れがあった。それを今日では削り取って、そして運転をやっておるというようなこと等、大変に問題が続発をしておるわけでございます。  そこでお伺いをいたしたいのでございまするけれども、原子力発電所の炉にかかわるそういう機械、機器等につきましては特に重大でございまして、それらの製造過程、それから製造後機械の製品になった時点、それから組み立てられた時点、それぞれの時点においてどういう品質の検査等をやっておられるのでしょうか。
  339. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 原子力機器の検査につきましては、法律の定めるところによりまして、各工程ごとに検査をすることになっております。  ただいま先生おっしゃいました工場での検査と申しますと、容器の検査の場合には溶接検査、これは溶接の工程ごとにエックス線の検査をいたしまして、そのエックス線の写真を検査官がすべて見ております。そういうことで、機械ができましたところでは、その機械の検査、配管の大きな検査というようなことも工場で実施しております。  また、実際に現場におきまして据えつけをする場合、たとえば格納容器の組み立てのような場合も、そこの溶接がある程度できますと、そこの部分のエックス線の溶接検査をするということで、逐次工場から建設の現場までずっとやりながら、実際の運転に至るまで検査を続けていくというかっこうにしてございます。
  340. 八木昇

    ○八木委員 私が聞いているのは、民間のメーカーが検査をやっておることを聞いておるのじゃないのですよ。監督官庁としてどういう手だてをしておるかということを聞いておる。
  341. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 いま申し上げたわけでございますけれども、法令の定めるところによりまして、当方の検査官がやっておるわけでございます。ただ、ポンプのような機器の場合には、それは据えつけた後、機能検査、それから漏洩検査、耐圧検査、そういうような検査をいたしますが、ただいま申し上げたような大きな、たとえばベッセルとかそういうようなものの検査につきましては工場で実際実施しておる、こういうことでございます。
  342. 八木昇

    ○八木委員 たとえば、すべての民間のメーカーの検査に全部立ち会ったりなどということは、それは事実上不可能でしょう。たとえ原発機器に限ったとしても。しかし、当然そこまでやはりやるべきものである。特に最近、原発の事故というのは、こういうひび割れ事故というのがほとんど大部分ですね。これはもう恐るべきもので、非常に極端な場合ですけれども、私は十年前の事故を思い起こすのですが、三菱重工業の長崎造船所で、三十万キロかの火力発電用のタービンの羽根をつくって試運転中に、それが全部粉々に吹き飛んで、そうしてその相当大きな破片が工場を飛び出していって、付近の住家の二階から一階まで突きはがして死傷者を出したという大事故がありました。原因は、そのタービンの羽根の鋼材にひびがあったとしか考えられない。こういうことすらあるわけで、放射能というのは、私がいまさら言うもおこがましいけれども、それは大変なものですからね。どういうふうにやっておるのですか、監督官庁として。
  343. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 先生おっしゃいますように、放射能を内蔵しております機器につきましては、これはその工場検査においても実施するわけでございますけれども、今回のような、これは放射能を実際に内蔵するポンプでもございませんし、それからそのケーシングというのは普通の鋳鉄でございますし、特に新しい技術を使っている問題でもございませんので、このポンプにつきましては官庁検査はしておりません。しかし、一次系の放射能の水を実際に運転いたしますような大きなポンプ、そういうものにつきましては、工場で検査するということでございます。
  344. 八木昇

    ○八木委員 その工場の検査なるものが大問題だということなんで、それは後でもうちょっと触れます。  そこで、これは通産大臣にお伺いをいたしますが、いまのような重大なるひび割れ事故等々が続いておる、特に福島原発の場合、この後被曝問題で私は質問をいたしますけれども、そういうときに、通産省としては原発の定期検査期間を短縮するのですか。それは、現在原発の稼働率が非常に悪い。この新聞について言いますると、これは大変大きな記事でございまして、「稼働率七〇%めざす 通産省方針 運転止めずに実施も「手抜き」との批判出る恐れ」という見出しですね。もっともっと慎重に、製造、組み立ての段階からすら厳重にやらなければならないというときに、これは本当に考えているのですか。
  345. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 原子力発電の稼働率は、先生御存じのとおり、ただいま非常に低迷しておりまして、それを何とか向上をさせたいということは、これはエネルギー事情の問題もありますし、またそういう大きな投資した設備を有効に利用するという意味からも、重要なことだと思っております。  それで、安全上どうかということは、これはスリーマイルの教訓も得まして、かえって定期点検の場合には点検項目数を今度ふやしてやることにしておりますし、そういう意味で点検項目または検査の内容は多くなりますが、一方、検査の効率化ということをやはり考えなければならないのではないかと思っております。たとえて申しますと、検査の中で非常に時間をとっておりますのが、八時間労働といいますか、そういうことでやっておりますので、工程を見直しまして、それがたとえば二交代制でできるようなところであれば、検査官もその場合二交代で検査をするというようなことで縮めていくという努力をしたいということを申し上げておるのでありまして、決して安全性を無視して何とか電気を発電させようという意味合いではございませんので、その辺誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。
  346. 八木昇

    ○八木委員 誤解じゃないですよ。私が誤解しているようなことを言われるのははなはだもって心外千万なんですが、いま原子力発電所の稼働率が低いのは、いわゆる定期検査の日数が長過ぎるためなんですか。そうじゃないでしょう。事故の頻発のためでしょう。そして、定期検査で検査をしてみると、必ず事故の個所が発覚する。そこで三十日というつもりであったのが、極端な関西電力の原発なんというのは、二年も三年もとまりっぱなし、こうなっている。そうでしょう。だから、もっと厳重にやらなければならぬのじゃないですか。私の質問をあなたの方が誤解をしているのじゃないですか。
  347. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 稼働率の低下の問題といたしましては、ただいま先生おっしゃいますように、事故といいますか、故障点の改造ということで多くの時間がかかっているのが実態でございます。また、実際に定期点検そのものにつきましても相当な時間がかかっております。いまも九十日という予定でやっておりますが、それをいつも超えるようなかっこうになっておりますので、そういう点につきましても、その点検それから機器検査の効率化という問題についてわれわれは考えておるわけでございます。
  348. 八木昇

    ○八木委員 全然それは了承できない答弁でございまして、通産大臣もそうするのですか。今後は二カ月にするのですか。
  349. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 新聞に書いてございますのは大分時間が短く書いてございますけれども、われわれとしては、ただいま標準改良型というような日本型原子炉の開発を考えておりますけれども、そういう設備面の改善を含めまして、いずれはそういうふうにいたしたいというふうに考えておりますが、いますぐにとても六十日にするとか何日にするとかということは、これは実態を見まして逐次やっていく問題でもございますし、先生の御懸念の安全を無視してやるのではないかということについては、われわれは安全第一に考えていきたいと思っておりまして、そういう点で、できればむだのない検査をしていきたいということでございます。
  350. 八木昇

    ○八木委員 肝心の私の質問に答えていないじゃないですか。私は、戦争障害で少し耳が遠いので聞き漏らしたかもしれませんが、いま原発の機器については、設計構造等も大問題なんですけれども、その品質、材質等々の問題が非常に大きな問題ですね。そこで、原子炉等規制法によって検査官が、いよいよ原子力発電所が組み立てられた、そうすれば検査に立ち会いに行く、それから試運転を始める、立ち会いに行く、あるいは定期検査のときには立ち会いに行くということはしているけれども、機器そのものの製造過程において品質を検査するということはやっていないのでしょう。しかし少なくとも、全部についてなどということを言うつもりはありませんが、幾つかについては抜き打ち検査とも言うべきでしょうか、事前に知らせるのではなくて、ずばっと行ってそして検査に立ち会う等々のことをやるべきではありませんか。
  351. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 おのおのいろいろな機械がございまして、たとえば核燃料体のようなものにつきましては全数検査官が立ち会いまして検査しております。それから、個々のいま仰せられましたような機械、それも非常に特殊な機械でない機械である場合には、われわれとしては組み立てられたときの機能検査のときに、この機械がどのような材質を使い、それをどういう品質管理のもとに加工したかという記録をすべてチェックいたしまして、それでその上で検査をするというふうにいたしております。
  352. 八木昇

    ○八木委員 私が言っているのは、そんな記録なんか見たってしようがないのじゃないかということを聞いているわけですよ。ずばりお答えをいただきたい。いま私のこういう質問にもかかわらず、将来ともいまのようにメーカーに行って、そしてここの場合には東芝側が検査に立ち会っておりますけれども、そういうのに立ち会うということをするつもりはありませんか。
  353. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 ただいまの日本の産業のいわゆる工作技術それから品質管理レベルからいきまして、原子力に関するすべての機械についてそのようなことをするという……(八木委員「すべてと言ってないですよ。抜き打ち的に」と呼ぶ)そういうようなことはいまのところ考えておりません。
  354. 八木昇

    ○八木委員 それは私はぜひやってもらわなければいけないと思いますが、それはまた将来とも問題にしたいと思います。  そこで、私が提起したこの電業社機械製作所の問題に戻ります。何か新聞等では、その後再検査をした、そしてもう終わったみたいなことを言っておるのですけれども、この際通産省として責任を持って徹底的に事実を究明してください。そしてその結果を私に報告をしていただきたい。しかる後でどうするかということは、私も党側の皆さんとも相談して対処したいと思うのでございますが、どうでしょうか。
  355. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 五月に通産省の検査をいたしますので、その際十分ただいまの御懸念の点につきまして調査をいたしまして御報告いたしたいと思います。
  356. 八木昇

    ○八木委員 あなたは五月と言っていますけれども、この問題が告発をされましたのは昨年の十二月なんです。事実そのとおりなんで、新たに問題がこのように提起をされておるのでございまして、そしてこれだけの告発内容というものが実際に来ておりますから、これに対して、私もまだ草々の間でございますし、それからまたその手だてもありません、私がぴょこぴょこと工場に行ったからといって見せてくれるわけでもないし、専門家でもありませんから、だから行政的な権限をもって事実を徹底的に究明、調査をしてください。それはできるでしょう、大臣。
  357. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 ただいまこの機械は東芝からまだ東京電力には引き渡してないわけでございますので、でき上がった設備と言えないわけでございます。したがって、私たちとしても検査をするのは東電のいわゆる設備として検査をする、そういうことでございますので、配管の工事を終わりましたところで検査をいたしたいということでございます。
  358. 八木昇

    ○八木委員 あなた、よもや意識的に答弁をずらしているわけじゃないでしょうね。検査のこともですけれども、私が言っているのは、こういう告発が事実あるのだから、こういう事実があったかどうかについて徹底的に事実究明をしろ、そして、その調査結果を報告しろと私は言っているのですよ、その製品の検査をやるとかやらないとかということの答弁をあなたは繰り返しておるけれども
  359. 森山武

    森山(信)政府委員 本件に関しましては、先ほど児玉審議官からお答え申し上げましたとおり、現在製作の過程でございまして、東京電力への据えつけは今後の問題になるわけでございます。したがいまして、エネルギー庁の立場といたしまして、まだ設置をされておりませんので検査はなかなかできにくいということをお答えしたわけでございますが、いま先生御指摘のように、問題の提起がございますので、関係者の意見を十分に聞きまして、私どものできる限りの調査はしてみたいと思います。
  360. 八木昇

    ○八木委員 この出来事は、昨年六月にこういうことがあったという告発ですから、昨年六月にそういう事柄があったかどうかを徹底的に調査、究明をして、その結果を報告してください。よろしゅうございますね。
  361. 森山武

    森山(信)政府委員 いまお答え申し上げましたとおり、こういう事実が判明をいたしておりますし、私どももその事実であることを調べる必要もあろうと思いますので、関係者を至急呼びまして、その話を聞いた上で御報告をいたしたいと思います。
  362. 八木昇

    ○八木委員 少しくどいかもしれませんけれども、それは私はいまの段階で疑いとしかまだ申しておりません。おりませんけれども、常識的に考えて、こういうことをうそ八百で言えるものじゃないですよ。そう思いませんか。ですから、これは本当に徹底的に究明してくださいよ、徹底的に。どうですか。
  363. 森山武

    森山(信)政府委員 いま先生がおっしゃいましたように、この問題、一つの内部告発に端を発したわけでございますので、当事者の一方の方の御意見がそういう御意見でございます。したがいまして、私どもは、両当事者の意見は十分聞く必要があるのじゃないかということでございまして、私が先ほど御報告申し上げるという趣旨は、両方の関係者の話を聞いて、その結果を御報告申し上げる、こういった次第でございます。
  364. 八木昇

    ○八木委員 両方の関係者というのは、これは私も頭が悪いから聞き違いをしておったらいかぬと思ってくどく念を押すのですが、この会社と東芝の両方という意味でなくて、いわゆる電業社と東芝、そしてこちらは告発者の両当事者という意味でしような、もとより。
  365. 森山武

    森山(信)政府委員 御指摘のとおり、告発ということがございましたので、告発をした方のお話を聞き、それから製造しておる方の意見を聞く、こういう意味でございます。
  366. 八木昇

    ○八木委員 では、しかる後に、その皆さんの調査の結果を待って、改めてこの問題については私どもも方法を考慮いたしたいと思います。  そこで、原子力発電の問題は大変に幾多の問題があるのですけれども、そのうちの一つ二つしか聞く時間がなくなってしまいましたが、あと放射線被曝、特に働いておる労働者の被曝問題について聞きたいのですけれども、その前に当面する一、二の問題を、これは一まとめで質問事項を二つ、三つ重ねてお聞きいたしますから、それぞれの関係大臣からお答えをいただきたいと思います。  一つは原子力船「むつ」の問題であります。一体どうするのですか、この原子力船「むつ」なるものは。私は、正月の三日に佐世保に行きまして、そして佐世保重工のドックの上の山にホテルがあるのです、そこへ所用がありまして一晩泊ったのですが、夜もこうこうと「むつ」の周りに電気がついております。これは生き物じゃありませんけれども、まことにうらぶれて悄然とした姿であそこにぽけっと浮かんでいますね、ついこの間それを見てきたのですけれども。  大体岸壁使用料の契約すら話し合いがもう一年何カ月もできていないですね。この佐世保重工の坪内社長はどう言っておるか。十一月三十日に松山市で記者会見をした。そうして坪内社長は、勝手に入ってきたもので、修理を引き受けるつもりはない、現状で佐世保重工がやれるのはかき落としとペンキ塗りぐらいだ、「むつ」は再建中の佐世保重工の足を引っ張りに来た感じだ、改造工事が多く、月七、八億から十億の契約ができるのに、たった一千万円で危介なものを引き受けるつもりはないと言っておりますね。で、どうです、この岸壁使用料等々の契約はできるのですか。九州方面で報道されたものによりまするというと、十一月三十日、科学技術庁の須田監理官は、来月中旬までに話し合いがうまくいきそうだ、こう言ったのです。ところがその後、いまの坪内社長の、まことに何と申しましょうか堂々たるこういう発言があるのですね。できるのですか。
  367. 長田裕二

    ○長田国務大臣 「むつ」につきましては、御承知のように昭和五十三年の十月に佐世保港に回航されまして、佐世保重工の佐世保造船所に入って岸壁につながれている状態でございます。私も着任以来、その後の経緯、それから今後につきましての方策などもいろいろと打ち合わせをし、また坪内社長にもお会いしてお話をしたこともあります。坪内社長は、就任のときにあの問題をよく知らされていなかったというようなこととか、その他若干のいきさつなどから、かなり先生がただいまおっしゃったようなことを強調している面もありましたけれども、基本的に何でもかんでもあれをおっぽり出すという構えではないというふうに考えております。そして、その入渠料あるいは岸壁の係船料等につきましての希望を持っていることも私ども承知しておりますが、その点につきましては、長崎県知事が、従来からの経緯もありまして、中に入りましていろいろな話をしている、まとめる方向でおり、また私どもといたしましても、坪内社長にそういう要請もしているところでございます。  ただいまのところ、その後かなり進展できるのではないかと思っておりましたところ、御承知の、労使関係が大変こじれてまいりまして、以後余り進展しておらない、大変残念な状況に思っているところでございます。
  368. 八木昇

    ○八木委員 私は、これは労使関係の問題と直接かかわりがある問題じゃないと思っておるのですがね。  それは別としまして、時間がありませんから、あと二点一括して質問をいたしますけれども、「むつ」は佐世保には三年しか船をつないでおくことができませんね。それはもう来年の十月過ぎに期限が来ますね。それで三カ年間で改修点検をやると言ったのだけれども、その半分近くがもう過ぎましたね。だめじゃありませんか。もともと日進月歩のこの世の中に、十何年前からこれは始めたものです。そうして、あなた、森山長官時代に一遍船出して立ち帰ってきてからもう何年になりますか。もう古色蒼然とした炉じゃありませんか。御破算にしたらどうですか。これが一点です。  それから、科学技術庁の須田監理官が長崎県庁で、高田副知事や住江長崎県漁連会長に安全点検の結果によって所要の改修工事をも行うという説明をしたということで、現地は憤然としております。約束はそうなっていない。いわゆる遮蔽についての修理と安全点検である。だからこそ核封印でやるという協定をしたのである。改修工事もやる、たとえばスリーマイルなんかで問題になったので日本の原発の一部がやったような新回路を新たに設けるとか、それまでやらないにしても……。  そこで、五十六年十月から後もなお居座るということはないでしょうということが一つと、それから、この際思い切ったらどうか、廃船にしたらどうだ、新たに出直したらどうだ。それから三点は、よもや実際にそういう新しい所要の補修工事なんかを本当にやろうと思っておるのかどうか。三点、端的に答えてください。
  369. 長田裕二

    ○長田国務大臣 佐世保造船所の岸壁につながれまして以来、昨年の一月から炉の点検などを行っておりますし、また昨年七月からは、船底とか外板などの点検や塗装なども行っておりまして、ただいま日本原子力船開発事業団におきましては、あとの遮蔽改修工事をやる予定にしております企業と契約の締結につきましての準備をだんだん進めているところでございます。今後の展開、ただいまもまだそれが進め得ない状況でありますことは御承知のとおりでございますが、早期にそういう問題が解決し、その後の契約が早く締結され、作業に全力を挙げて取りかかりますならば、初めのお約束でございます約三年間というものの範囲内で、そういうものを超え処理し得る、あるいはしなければならない、そのようにかたく私どもも考えているところでございます。
  370. 八木昇

    ○八木委員 よもやそれはもう廃船にしますなんということはいま言えぬでしょうから、まあそう承っておきますけれども、もうできっこありませんな。これはどうにもならぬですわ。いいです。  それでもう一つは、これは通産になると思うのですが、使用済み核燃料再処理会社をつくると言うのですね。これは、まだいま動燃事業団ですかで再処理工場をやっておりますね。やはりまだ徹底的な試験段階である、そういうふうに私は思うのでありまするけれども、もう昭和五十七年には予定としては用地を取得すると言うのですね。そうでしょうか。そしてこれだけまだ原子力の安全の問題が非常に問題になっておるときに、世界各国の動向まで言いたいですけれどもそれはやめますけれども、とても土地の取得なんというものはできやしないと私は思うのです。  それからさらに、もうすでに鹿児島県の徳之島あたりでは住民が大集会をやって反対の運動をやっておりますが、九州電力の副社長をこの再処理会社の社長にしたのですから、日本の原子力の主力は申すまでもなく関西電力、中部、東京電力なんでありまして、九州電力の副社長をこの再処理会社の社長にしたということは、だれが考えても、一般の報道を待つまでもなく、九州にその用地を求める腹であるというのは見え見えですね。そうでしょう。そうして、資本金百億で発足する。そのうち七割、七十億は電力業界が出す、あと鉄綱業界等々に出させる。これは今後とも膨大なる資金を食いますね。相当期間、金が入ってくるところはない。それで、これらも全部電気料金値上げのコスト、原価に入るのでしょう。二、三点伺いましたが、あと被曝問題だけはぜひ聞きたいので、端的に御答弁いただけませんか。
  371. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 再処理会社の件でございますが、再処理技術につきましては動燃事業団がパイロットプラント的に二百十トンのものをつくったわけでございますが、それの運転経験、それから技術蓄積が大分図られてきたところでございます。また、海外におきましても、英仏の商業運転経験を含めまして十分な技術を有しておるというふうに判断しております。したがいまして、第二再処理工場が昭和六十五年に運転開始するということでこの計画を進めることは、技術の面からも一応妥当ではないかというふうに考えております。  それから、この会社は本年の三月一日に設立すると聞いております。また、社長につきましても、ただいま先生おっしゃいますように、九州電力の後藤副社長が社長になるというふうにも聞いております。  立地の場所につきましては、これは新しくできましたその会社自身が考えることでございますけれども、自然環境とか社会環境、それから地元の意向等を十分配慮しながら具体的に立地していくものと考えております。
  372. 八木昇

    ○八木委員 あれは答えましたか。莫大な費用をこれにつぎ込むのだけれども、それはどうするのか。
  373. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 この再処理会社の資本金、百億でございますけれども、その七〇%を電力会社が負担するということでございます。この出資は、電気事業の適切な運営のために必要かつ有効であり、かつ、出資後のかなりの期間を見ましても収益が期待されませんので、出資に伴うコスト分については電気料金の中に算入するということが適当である、こう考えております。
  374. 八木昇

    ○八木委員 私は全く不適当であると思うのですけれども、きょうはいまの事実関係だけにとどめておきます。  あとまだ電気料金が残っておるので、時間が残ればそれもやりたいのですが、さらにほかにもあるのですが、放射線被曝の問題をお伺いいたします。  一つは、わが国の場合、国際放射線防護委員会、ICRPの勧告は、許容線量として、職業人に対しては年五レム、一般人には五百ミリレムとなっております。なるほど、わが国においても、五レム、そして三カ月三レム、そして一般人には五百ミリレム。これをアメリカが数年前に百分の一に下げて、一般人には五ミリレムとしたことによって、わが国も実際上はそれを目指すというようなことにしてはおるようでございますが、いずれも法律では決めていない。それで規則に基づくところの何ともわけのわからない通達というもので決めて通達をしております。そのことを触れておる暇はないのですけれども、私がお聞きをいたしたい点は、三カ月三レムと言っても、その原子力発電所で事故があった。それでその修理作業に炉内に入らなければならぬ。それでその場合に三カ月三レムだから、その日一日で三レムまで被曝してもよろしい、そしてそのかわり、後は三カ月間は仕事はするな、炉内には入るなとすればいいというわけにはいかぬわけですね。そういうわけにはいかぬ。だから、そういう作業に当たっての作業員の一日の放射線を浴びる許容線量の限度というものの基準を定めて通産省としては当然指示をしておるものと思うのですが、そうでしょうか。
  375. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 放射線下の作業につきまして、ただいま先生おっしゃいましたように、三カ月三レムという法令で定められた許容被曝線量はございますけれども、それを遵守する一つの方法といたしまして、一日にどれくらいの量にするか。たとえて申しますと、百ミリレムという数字を一応の目安として考えておりますけれども、そういうことで、その量を超えますと、管理区域の出入口における監督員のチェック基準といたしまして、特別の報告またはその作業内容の調査というようなことで特に精密な調査をするということにしております。したがいまして、そういうようなことで、特にそれを出てはならないとかということではなくて、三カ月三レムを遵守するための一つの方法として考えております。
  376. 八木昇

    ○八木委員 そこでお伺いをいたしますが、昨年の十二月七日、参議院の科学技術振興対策特別委員会でわが党の吉田正雄参議院議員が政府に福島一号の修理に関する被曝問題について質問をしておりますね。「政府委員(児玉勝臣君)」と議事録に書いてございますが、資源エネルギー庁の長官官房の審議官資源エネルギー庁の技術の最高責任者です。各電力会社に対しまして、それぞれの現場において一日の被曝線量の許容限度百ミリレムということで、それを目安として行っております、「各発電所におきまして一日当たり百ミリレムというのを目安として」実施をしておりますとお答えになりましたね。  そして、時間の関係でさらに追加してお尋ねをいたしますが、実際はそうじゃないじゃないかということをこの吉田参議院議員が激しく追及をしておりますね。  それで、請負の業者の作業員としてそういう作業に当たっておる人たちは、実際は十倍の放射線の許容限度量になっておって、百ミリレムどころか十倍の千ミリレム、すなわち一レムだということを訴えてきておるのだけれども、そういうことはないかということをさらに追及したのに対して、
  377. 児玉勝臣

    ○政府委員(児玉勝臣君) 一日の被曝線量をふやすというような計画は、聞いたこともわれわれも考えたこともございません。
  378. 吉田正雄

    ○吉田正雄君 本当ですか。事実が出たらどうしますか。
  379. 児玉勝臣

    ○政府委員(児玉勝臣君) 私はまだ聞いたことも、また私自身も考えたことはございません。と答えておりますね。それで、この委員会の席には原子力安全委員会委員、それから通産大臣も御出席になっておりますね。このとおりでしょう。
  380. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 一日の目安線量として百ミリレムということは、そのとおりでございます。また、ただいまおっしゃったことについても間違いないと思います。
  381. 八木昇

    ○八木委員 ところが、事実は全くそれに相違しておるということに確信がございましたから、私どもの党は、吉田参議院議員の名前で政府に質問主意書を出しました。これに対しまして、内閣総理大臣臨時代理、国務大臣倉石忠雄の名前をもって一月十八日に答弁書が参りました。  何と書いてあるか。時間が余りもう多く残っておりませんからずばり申し上げますけれども、「福島第一の一号炉の今期定期検査の具体的な点検、修理計画、被曝線量管理計画について明らかにされたい。」それから、「この際、」こうずっと書いてございますが、「ノズルコーナー部の修理を行う計画があるとすれば、被曝線量の管理目標値をどのように設定しているか示されたい。」というこのわれわれの質問主意書に対して、回答は、総理大臣の臨時代理の名前をもって、「一日ごとの計画被ばく線量については、圧力容器内関係の作業にあっては千ミリレム、圧力容器外の作業にあっては三百ミリレムと定めていると聞いている。」という答弁書が来ていますね。  これはどういうわけですか。この答弁書はまさか、ここに倉石さんも座っておられるけれども、倉石さんが書かれたのじゃないでしょう。児玉審議官が書いたものでしょう。これは一体どういうことなんだ。何度も念を押しておる。一日の被曝線量百ミリレムをはるかに超える基準でやっているじゃないかと言ったら、そんなことはございません、聞いてもいなければ考えたこともございませんと、二度もしゃあしゃあと答弁しておる。どうですか、この答弁。  それからもう一つ言いますよ。私は顔を知らなかったのだが、あなたが児玉さんですか。そこで、もう一つの点も重大ですよ。そういう場合に、工事の方法や被曝管理等の妥当性を通商産業省の原子力発電技術顧問会に諮った上で、こういう千ミリレム、そうして容器外作業に当たっては三百ミリレムということの確認をあらかじめしておると答弁書は答弁をしておるじゃないですか。  これはもうあなたに聞いたってしょうがないのだ。大臣、どうなんです。責任を明らかにしてもらわなければならぬ。全然資源エネルギー庁等に私は質問できない。これはどうなんだ。
  382. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 ただいまの私申し上げておりますのは、目安線量ということで、三カ月三レムの法定の許容線量をいかに守るかという一つの方法といたしまして一日百ミリレムという一つの目安線量を使っておる。それを千ミリレムにするというようなことは私たちとしては考えていないということを申し上げたわけでございます。  そこにお話がありましたような問題は、これは計画線量という言葉が使われておると思いますけれども、これは特殊な工事の場合にはどうしても一日百ミリレムということで工事ができないという場合もございます。今度のところのように炉の中に入って工事するというような場合には、とてもその線量ではできませんので、その場合にはその百ミリレムを超える場合の工事の方法といたしまして、時間の管理とか、それから放射線管理の要員を増員させるとか、それからそこの放射線のいわゆる測定を厳密にするとか、そういうことでその作業をするわけでございます。そのときに全体の、何しろ何百人という人が入って工事する場合もございますので、その全体の人が大きなダメージを受けるか、それともある人間の量としてやるのがいいのか、その辺の作業の実態を見ましてその計画被曝線量というものは考えているわけでございます。  したがいまして、その計画被曝線量が千ミリレムということでございまして、私の申し上げているのは目安線量でございます。したがいまして、そこの間には考え方が違うということであると思います。
  383. 八木昇

    ○八木委員 ごまかしてもらっちゃ困りますよ。あなた、この議事録を読んでみたらいいじゃないですか。いわゆるそういう計画というものを修理をやるときには立てる。そうしてこれだけの人間を入れてこれだけをやる、全体としてこのぐらいの被曝線量になるだろう。そうすると、全体としてこれは二十レムなら二十レムの被曝ということになるとするならば、何人の人間をしなければならぬか、百ミリレム以上は被曝をさせることができないから。そういう計画をつくります、そうして、そういう事柄についてあらかじめ電力会社から話があり、承認をする。そうして、この質問はどこからどう読んだって、われわれが出した質問書が第一そうなんだから、どんな場合でも一日には百ミリレム以上の被曝はさせないという目安でやっておる。それが実際はそうじゃないじゃないか、人によっては三百ミリ被曝する、四百ミリ被曝してもいいということになっているじゃないかと、くどくくどく質問したのに対して、あなたは、いま私が申したように答えているんでしょう。なぜごまかす。承知できない。  そこで、これはあなたの答弁書だけではない。これはもう新聞でお読みになっているでしょうが、中国電力でも答えておりますよ、中国地方の原水禁その他に対して。昭和五十二年一月、中国電力鹿島原発定期点検においては、実は職員は百五十ミリレム、外部職員は三百ミリレム、被曝線量の限度を設定して作業した。これはきのう、きょうじゃない。あなたは聞いたこともないとかなんとかと言うけれども、五十二年一月のことでしょう、このことはちゃんと中国電力からも事前にあなたのところに相談があって、その計画について、被曝限度の問題についても含めて了承を与えてこの工事が行われておる。そうでしょう。そのことを中国電力広報室は承認をしたわけです。認めたわけです。この鹿島原発の場合はまだ新しいので、福島の場合のように千ミリレムまでも上げなくてもいいと思ったので、三百ミリレムということにしたとまで答えておる、中国電力は、会社側が。  どうなんですか、大臣。これはもう厳正に処置をしてもらわなければいけない。私はもう質問を保留します。何を聞いたって、これむだじゃないか。あなたが答弁したってしょうがない。もう事実明瞭だから。(発言する者あり)
  384. 田村元

    田村委員長 八木君、ただいまの八木君の発言の件につきましては、理事会におきまして協議をいたしたいと思います。よろしいか。
  385. 八木昇

    ○八木委員 はい。
  386. 田村元

    田村委員長 それでは、さよう取り計らいます。でありますから、あとの分は保留。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大来佐武郎君。
  387. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 先ほど園田特使派遣の件につきまして総理大臣から御答弁いたしましたが、この件につきましては、相手国の事情等まだ確定できない点もございますので、最終的には多少の変更があるかもわかりませんので、このことをお断り申し上げたいと思います。
  388. 田村元

    田村委員長 これにて八木君の質疑は、保留分を除いて一応終了いたしました。  次回は、明五日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十七分散会