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1980-02-02 第91回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月二日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事小此木彦三郎君 理事 瓦   力君    理事小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君       荒舩清十郎君   稻村左近四郎君       越智 伊平君    大坪健一郎君       金子 一平君    北川 石松君       倉成  正君    小山 長規君       近藤 元次君    始関 伊平君       澁谷 直藏君    白川 勝彦君       田中 龍夫君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    藤田 義光君       細田 吉藏君    松澤 雄藏君       村山 達雄君    阿部 助哉君       稲葉 誠一君    大原  亨君       川崎 寛治君    兒玉 末男君       野坂 浩賢君    八木  昇君       安井 吉典君    横路 孝弘君       岡本 富夫君    草川 昭三君       坂井 弘一君    正木 良明君       矢野 絢也君    安藤  巖君       栗田  翠君    林  百郎君       松本 善明君    大内 啓伍君       岡田 正勝君    中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長官伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久保田円次君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房総務審議官  和田 善一君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁参事官  多田 欣二君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         防衛施設庁労務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁自然保護         局長      藤森 昭一君         国土庁長官官房         長       谷村 昭一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁大都市圏         整備局長    伊藤 晴朗君         国土庁地方振興         局長      四柳  修君         法務省民事局長 貞家 克己君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      梁井 新一君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 渡辺 喜一君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生大臣官房審         議官      竹中 浩治君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省環境衛生         局長      榊  孝悌君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁医療         保険部長    此村 友一君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産大臣官         房技術審議官  松山 良三君         農林水産大臣官         房予算課長   田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省構造         改善局長    杉山 克己君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         農林水産省食品         流通局長    森実 孝郎君         農林水産技術会         議事務局長   川嶋 良一君         食糧庁長官   松本 作衞君         林野庁長官   須藤 徹男君         水産庁長官   今村 宣夫君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省通商         政策局次長   真野  温君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         運輸省船員局長 山元伊佐久君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 石月 昭二君         運輸省航空局長 松本  操君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省人事局長 林  乙也君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         労働省職業訓練         局長      岩田 照良君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 宮繁  護君         建設省河川局長 稲田  裕君         建設省住宅局長 関口  洋君         自治大臣官房審         議官      久世 公堯君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 石原 信雄君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第四局長  岡峯佐一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二日  辞任         補欠選任   江崎 真澄君     越智 伊平君   奥野 誠亮君     近藤 元次君   海部 俊樹君     北川 石松君   小山 長規君     浦野 烋興君   塩崎  潤君     大坪健一郎君   藤尾 正行君     白川 勝彦君   工藤  晃君     林  百郎君   不破 哲三君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     小山 長規君   越智 伊平君     江崎 真澄君   大坪健一郎君     塩崎  潤君   北川 石松君     海部 俊樹君   近藤 元次君     奥野 誠亮君   白川 勝彦君     藤尾 正行君   林  百郎君     栗田  翠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 質問最初に、昨日政府としましてはオリンピック参加の問題に初めて発言をいたしたわけであります。このオリンピック参加の問題は、私どもは、歴史的に見ると、長い間戦争と平和、オリンピック、こういう深いかかわりのある問題といたしまして、政治はできるだけ最小限度意見を言うにとどめてオリンピック委員会自主性を尊重する、そういう原則でなければならぬと思うわけです。  そこで、伊東官房長官発言されたわけですが、官房長官から真意をお伺いしたいわけです。つまり、いま世界情勢は、八〇年代、言うなれば非常に多極化の時代において新しい対立時代を迎えておるわけですが、しかし、後で同僚川崎委員からも質問があるわけですが、アフガニスタンにいたしましてもイランにいたしましても、情勢は動いているわけです。ですから、政治発言をする時期が妥当であるかどうか、その内容がどうかということを明らかにすることが必要だと思うわけです。それで、政府発言JOCの自主的な判断の余地を残しておるのかどうか。それから、もう発言したわけですから、早きに失したということを言ってもどうかと思うわけですが、しかし、どうも外から見ておると、やはりアメリカを意識し過ぎて発言をしておるのではないか、主体性の問題であります。  そこで、この点も加えてお聞きしたいのですが、政府発言としてはこれが最初発言ですが、これは最後発言であるのかという点です。この点について率直な見解を述べていただきたいと思います。
  4. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  昨日、昨夜でございますか、オリンピック関係につきまして政府JOCに対しての意見を発表したわけでございます。といいますのは、実は二月四日から五日、メキシコシティーでNOCの協議会、これは各国のオリンピック委員会がございますが、そこの理事会がございまして、日本からも代表が出る。それから二月七日から九日までレークプラシッドでIOC理事会、引き続いて総会がある。そこへも代表が出るということでございまして、日本側としてもオリンピックにつきまして意見をそこで述べるということになるわけでございます。それで、その前に、やはり政府としてどういうふうに考えているかということをJOCの方々に伝えておく方が時期としてはいいではないかということで、昨夜意見を伝達したということでございます。  内容につきましては、先生御承知のとおり、オリンピック大会というのはスポーツを通じまして世界の平和あるいは国際親善ということに寄与するということでございまして、世界から祝福されてオリンピック大会が催されるということが望ましいわけでございますので、そういう目的をオリンピック大会というのは持っているのだ。ただ片一方には、いまソ連のアフガニスタンに対する軍事介入ということに起因しまして厳しい世界世論が起こっている。国連緊急総会でも、それを非難し、撤退しろという決議もあったようなことでございまして、それに起因してオリンピックに関しましても非常に厳しい世論世界並びに国内でも出ているということは、政府としても非常に関心を持っているところである。  ただ、先生がおっしゃいましたように、オリンピック参加するかどうかというような問題はJOCが決める問題でございますので、私どもとしましては、政府としては、その参加不参加とかそういうことについては言及はしておりません。日本オリンピック委員会が以上の事態を踏まえまして諸外国国内オリンピック委員会と緊密に連絡をとって対処してもらいたいというような意向を伝えまして、JOC日本国内オリンピック委員会外国委員会連絡をしてもらいたいということを伝えたわけでございまして、私どもとしましては、あくまで国内オリンピック委員会に自主的な判断をして行動をしてもらいたいということを要望したというのが現状でございまして、これは参加するとか不参加とかいうようなことを言ったのではございませんで、これからの情勢でまだ流動的なことがございますので、委員会が諸外国委員会十分連絡をしてもらいたいというのが真意でございます。  政府意見はもう発表しないのか、これで終わりかという御質問がございましたが、これは今度の国際オリンピック委員会IOCがいろいろ相談をされる。そして五月十九日が一応参加するかどうかの締め切りになっております。ですから、その前に日本オリンピック委員会としては参加するかしないかという最終態度を決められる。最後はそこにしっぽは決まっているわけでございますので、あるいは場合によってはそういう時期にもう一回意見を言う機会があるかもしらぬ、ないかもしらぬ。そこのところはまだわかりませんが、これで最後で後は何も言わぬというつもりではございません。必要があれば言うこともあるかもしらぬ。ただ、オリンピック委員会が自主的になるべく決めてもらいたいという態度でございます。
  5. 大原亨

    大原委員 第二は、これから八〇年代の最初国会における、つまり高齢化社会、これは革命的とも言うべき高齢化社会石油危機、スタグフレーション、こういうことを踏まえて日本内政外交、特に内政をどう進めるかという問題で、本年度予算にかかわる基本的な問題を総理大臣に通告してあります。これは総理大臣から最初お答えは簡潔にしていただく、これについての各論的な質問は引き続いて後でやるということにいたしますから、お答えをいただきたいと思います。  四つの項目を挙げておるわけですが、最後項目ですけれども、それに関連いたしまして、日本の八〇年代の政策を決定する問題で、核に対する基本的な政策を確立する必要があるのではないか。日本唯一被爆国でありますし、平和憲法を持っておるわけです。日本の平和と安全を切り離すわけにはいかないわけですし、一日五百四十万バレルの重油がインド洋、太平洋を通って日本に運ばれておるわけです。そういうことですから、その八〇年代の課題として、核政策基本に関する問題として一つ考えられることは、最近、核拡散防止条約が実質上骨抜きになっているというか、そういう状況があるのではないか。  たとえば七〇年に核拡散防止条約米ソ中英仏の五カ国で発効したわけでありますが、核保有国拡散しないという趣旨でありますけれども、インドの核実験の問題があり、また南アフリカの核実験の問題が伝えられておるわけです。アフガニスタン問題に関係してパキスタンの核問題、またアメリカ軍事援助の断絶を復活する問題等も出てきておるわけですけれども、やはり日本は、新しい冷戦時代とはいっても、この緊張を緩和する方向で核政策を進める必要があるだろう。  こういう意味において、たとえば、本国会でも二回にわたって決議をしておるわけです。核兵器の不拡散条約に関する件では、昭和五十一年四月二十七日の衆議院外務委員会でやっておりますが、その第五には「世界平和維持非核化地帯構想が重要な意義を有していることにかんがみ、我が国はこの為に国際的な努力をすること。」それから五十三年の五月二十三日の衆議院会議では、国連最初国際連合軍縮特別総会に関する決議をもって、第三項目に「非核武装地帯構想が、世界の平和の維持に重要な意義を有していることにかんがみ、適切な条件の整っている地域から漸次世界の各地域非核武装地帯の設置が実現するよう国際的努力をするとともに、同地帯核保有国による核攻撃が行われない保証をとりつけること。」というのがあるわけです。当時これらの問題を含めては、南米は二十二カ国が参加いたしまして中南米非核地帯条約を結びまして、そして核保有の五カ国にこれを承認させておるのでありますが、これは何も社会党だけの専売特許ではなしに、核不拡散と、そして日本平和憲法を踏まえて、国益を踏まえて、日本の主体的な外交一つの大きな基本問題としてこの問題を展開することをわれわれは決議しておると思うのですが、この問題について、もう少し積極的な指導的な役割りを国際的に果たす、こういう決意があるのかどうかという問題が一つです。  これに関係して、第四項目に挙げておる問題を一緒に質問いたしますが、これは橋本厚生大臣時代の非常に数少ない功績の一つでありますが、いま厚生大臣の私的な諮問機関といたしまして、被爆者基本問題に関する懇談会を持ちまして、茅さんを座長にいたしまして田中二郎大河内一男、諸先生参加いたしまして七人委員会がつくられているわけです。これは今日まで、昭和三十二年に原爆医療法を制定いたしましてから、国家補償かあるいは社会保障かという議論で法廷でも闘われたし、最高裁も国家補償理念によるべき点を強調した判決を下しておる。国会もしばしば決議をしたわけです。それらの情勢を踏まえて、社会保障制度審議会が昨年の二月、被爆者援護についての基本理念を明確にすべきだ、そしていままでの実績を踏まえて法律の体系を整備すべきであるという点を勧告いたしたわけです。それを政府は受けまして七人委員会をつくって、いま作業が進んで最終段階に来ておるというふうに私は理解をするわけです。その審議を拘束するわけではありませんが、これはプライベートな機関として権威のある七人委員会の決定を尊重するという国会決議もありますので、プライベートなことではありますが、しかし、これは国会でも決議をいたした問題です。政府はこれを受けて誠意を持って実現すべしという決議をいたしておるわけです。  そういう情勢を踏まえて、大平総理大臣としては、この被爆者援護基本理念日本唯一被爆国として平和憲法を踏まえて——その議論の中には、毒ガスや細菌兵器実定法として国際法で禁止されておる、しかし、核は爆風、熱線、放射能、それ以上の深刻な脅威をもたらす非人道的な兵器であることは認めながらも、実定法として禁止されていない、そういうたてまえから国家責任の問題が不明確になるということはおかしいではないかという議論が続いておるわけです。それに一定の基本理念について結論を出す段階に来ておるわけですが、これを大平総理大臣政府としてはどういうふうに受けとめて対処するつもりか、この二つの点についてお答えをいただきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 最初核拡散防止軍縮問題でございますが、わが国平和国家としての立場におきまして、国連を初めとする国際場裏におきまして、わが国のあり方こそが世界平和への大道であるということを絶えず訴えてきておるわけでございます。  その具体的な措置といたしましては、国際場裏におきまして実現可能な措置一つ一つを積み重ねていくことが肝要であると存じまして、核拡散防止、核軍縮を中心とした軍縮の進展をあらゆる機会をとらえて主張し、推進していくということは、大原さんの仰せのとおり不断に怠ってはならないし、ますます意をかたくして取り組んでいかなければならないわれわれの崇高な義務であると考えております。アフガニスタン問題等が出てまいりまして、この核拡散防止軍縮の契機がこれによって阻害されるというようなことになりますことはどうしても避けなければいかぬことでございまして、この紛争の中におきましてますます意をかたくして取り組んでいかなければならないものと考えております。  第二番目の御質問でございますが、原爆被爆者対策についてでございます。  これにつきましては、仰せのように、被爆者の特殊な事情に着目いたしまして、特別の社会保障制度として原爆医療法並びに原爆特別措置法の制定をお願いいたしまして、これに基づきまして対策を推進しておるところでございます。大原さんの主張されるように、国家補償の精神に基づく理念に立って対策を推進すべきじゃないかという御主張は承っておるところでございますが、国家補償の精神に基づく理念に立つということになりますと、他の一般戦災者との均衡等の問題がございまして大変むずかしい問題であると思いまするけれども、現在被爆者対策基本理念をどう打ち立てるかということにつきまして、御指摘の厚生大臣諮問機関である原爆被爆者対策基本問題懇談会で検討をいただいておるところでございます。懇談会の結論を待って政府として適切に対処していかなければならぬと考えております。
  7. 大原亨

    大原委員 国会でも、社会労働委員会でも決議をいたしておるわけです。これは総理の答弁は、また後で質問いたしますが、前向きに対処するというふうに政府として表明された、こういうふうに理解をしておきます。よろしいですね。——頭を下げておりますから、よろしい。  それから第二の問題は、こういうことであります。     〔委員長退席、渡辺(美)委員長代理着席〕  日本型福祉とかあるいは福祉見直し論が言われておるのですが、私は、年金にしても医療にいたしましても、これは八つも九つも、そしてその中がたくさん分かれておってばらばらに積み上げた制度ですから、全体の生活的な課題と結びつけて総合的に見直していくということが必要だと思うのです。見直し論についてそのことは否定しない。しかし、見直し論について二つの意見があって、一つは、言うなれば財政主導型で骨まで切れというふうなことで、財政的な見地からばんばん切っていく、福祉切り捨て的な、大蔵省主導型といいますか、そういう後ろ向きの見直し論と、それからいま申し上げましたように内容を体系的に整備をして中身を充実させる、こういう二つの立場があると思うのです。私は、八〇年代を迎えておるわけですから、高齢化社会で低成長の時代ですから、私が後者で申し上げたような体系的に整備をして中身を充実させるんだという観点で見直していくんだ、こういう二つの立場があると思うのですけれども、総理の見解は、率直に、簡単に、簡明に、どちらの方の見解でありますか。
  8. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 福祉切り捨てという言葉は間々耳にするわけでございますけれども政府におきましても自由民主党におきましても、福祉切り捨てどころか福祉水準をどのようにして維持向上させてまいるか、その体系的な整備を高年齢化が進む中でどのように図っていくかということがわれわれの政策の最重要な眼目の一つになっておりますことは、大原さんも御理解いただいているところだと思うのでございます。切り捨て論、財政至上主義か内容を充実させて体系的な整備を図るか、どちらかという選択の問題ではなくて、福祉対策といたしましては後者に決まっておると私は思います。
  9. 大原亨

    大原委員 第三の問題ですが、この高度成長時代に矛盾がいっぱい累積をいたしました医療の問題ですが、医療の問題は、本年度は、渡辺委員からも話がありましたように十二兆円時代を迎えるわけです。去年は十一兆六千三百億円の総医療費の負担なんです。これは三十八兆円の予算の十五兆二千七百億円は国債ですから、残りの二十三兆円が税金の負担なんです。国民の負担なんですね。その半分以上に匹敵するような負担を保険と自己負担で医療に支払っておる、こういうことになります。ですからこの問題は、ちょっとさじかげんで五千億円、一兆円、二兆円はすぐ違う問題なんです。これは後で議論いたしますが、その健保改正問題について大平内閣がとってきた態度はきわめて無責任ではないか。こういう点について私は指摘をしたい。  たとえば健保改正案をおととし、五十三年の五月の国会末に突然出しました。拝み倒して継続審議にいたしました。そして昨年の国会を通じましてほとんどこれは審議されていない。社労で二名の自民党の委員質問をしてもらったわけですけれども、その質問を聞いてみますと、政府案の健康保険改正案反対なんです。これは総選挙を前にしておりますから医師会向けであったと思われますが、反対なんです。そうして川俣委員大平首相との、当時の厚生大臣のやりとりをずっと私は議事録を全部調べました。最終的に武見メモに関係して、財政調整に関係をいたしまして、党と政府関係を十分判断をして総理、総裁として判断する、こういう答弁が議事録に載っている。しかしその直後、突如といたしまして、昨年の五月、国会も終わろうとしているときに、齋藤幹事長を筆頭といたしまして社労理事諸君も全部並びまして、そして七十二名の署名による財政調整案が出たわけです。そういたしますと、健保改正案、健保の体系の中で考える改正案と、健康保険制度を否認するような、保険料を必要なだけ取る、がらがらぼんで必要なだけ払っていく、そういう税金と同じような考え方で保険料を取っていくような考え方の財政調整案で、これは自民党の諸君に聞いてみても、あれはオリンピックだ、いやそうじゃない、あれは選挙対策だ、あれは日本医師会向けだというようなことをみんなが言っているのだ。そういうのを議員立法で幹事長が出しておる。そうして医療のその基本問題についての真剣な討議を全然させない。しない。やる意思がない。大平総理は、口を開けば責任政党ということを言うわけです。こんな無責任な政党はないわけです。むちゃくちゃです、これは。大平総理は最後の答弁、議事録に反しまして、総理、総裁として一定の決断をしているのかといいますと、そうではないと私は思われる。  こういう医療問題に対する大平総理の、この一問でよろしいから、あなたは財政調整案については内容的にも手続上も承知しておったと思われるけれども、再び、もう一回国会に出すつもりかどうか。参議院選挙があるから参議院対策で出すのか。去年は衆議院対策で出したと言われておるが、この点だけを一点にしぼって御答弁下さい。
  10. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 端的にお答えいたしますが、医療保険における制度間の財政調整問題につきましていろいろな経緯があったようでございますが、現在党内におきましても論議されていないということで御理解をいただきたいと思います。
  11. 大原亨

    大原委員 これは一問だけ。一問一答だけで後へ進むわけですが、論議されていない。ということは、総選挙が終わって情勢も変わったので出す意思はない、こういうふうに、表の発言にすればそういうことになると思うのです。そうなんですか。
  12. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま党内において論議されていないというところで御理解をいただきたいと思います。
  13. 大原亨

    大原委員 第四の質問は、日本の年金制度については責任を持って処理する行政官庁もないし大臣もいない。恩給絡みの共済年金があるわけですが、共済年金もたくさん分かれておる。国鉄なんかは成熟度が六四%ですから、百人が六十四人の保険料を見ている。これは一番古い歴史を持っていますし、そして満鉄その他の人々が入ってきたのが一斉に出てまいりますと、四十五歳以上の人が半分以上でありますから、これは年金としてはパンクいたしまして成立しない。これは全部ばらばらの共済年金、たとえば呉市の共済年金をとってみましても、これはもうだめだ。このままいきますと共済年金はパンクするのに、全体の問題が議論されていない。特に厚生年金の問題との関係で大きな議論になっている。  きょうの私の質問に対しまして、一体だれが責任を持って一問一答して、政府代表して年金について責任ある答弁ができるのか。総理大臣はどういうふうに理解しておりますか。この一点だけ。
  14. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 申すまでもなく、年金制度は複雑な制度的構成を持っておりますので、一省で総括して処理するという体制になっていないことは御指摘のとおりでございますが、政府部内におきまして関係閣僚の懇談会を設けまして、連絡調整を密にいたしまして、整合性を保つように努力をいたしておることでございますので、どなたにお尋ねいただきましても同じ答えが出てくるように思っております。
  15. 大原亨

    大原委員 大平総理大臣、何を言っているんですか。いいかげんなことを言っちゃだめですよ。何ですか、そんなことは。でたらめのことを言っちゃいかぬですよ。もう少し真剣にやってくださいよ。ここは政治的な論争の場ですからね。  一月二十五日に、国会に対する答弁用だと思うのだが、官房長官を座長とする年金の閣僚懇談会を開いた、このことだと思うのです。その中では、やったばかりだから、共済年金の六十歳、それから厚生年金の支給開始年齢六十五歳、これは二本立てで行くんだ、これは定着させるんだというふうな申し合わせをしたやに言われている。そうしたら、明くる日、よく出てくるのですが、自民党の三役が出てまいりまして、そして選挙に不利だから六十五歳はだめだぞ、こう言った。  私は、これから実際に各論で議論いたしますが、だれが責任を持っているかわからぬです、行政官庁。大蔵省が予算査定の観点だけでやるだけです。財政主導型です。これでは、矛盾した年金を体系的に整備をして、あなたが答弁いたしましたような、中身を充実させる、そういうようなことはできないわけです。そんなことはできないのですよ。あなたが答弁しただけでしょう。だれが一体責任を持って答弁するのですか。だれですか。厚生省に行ったら、厚生年金、これは健康保険とは違う。健康保険は厚生大臣が責任を持って右へならえだ。そして、それがもたもたしていると全部むちゃくちゃになっちゃう。厚生年金は共通項を設けなければ、老齢化社会で給付率が上がっていくのですから、分母が安定しないと、加入者が安定しないと年金制度は安定しないのです。たくさんの有益な提言が出ておるんです。しかし、政府の中は大蔵省、運輸省、農林省、全部ばらばらだ。これは何回も議論してきたことですが、一体だれが責任を持ってやるのか。全然無責任じゃないか。高齢化社会に対応する年金制度の充実はできないじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  16. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 申すまでもなく、沿革的にそれぞれの年金が特別の固有の沿革を持って生まれて育ってきたわけでございまして、所管が違っておるということはその生い立ちのいたすところでございます。しかし、政府一つでございますから、こういったいろいろな沿革がございますけれども、この年金間の調整につきましては政府としては非常に苦心をしておるところでございます。もともとそういう状態にあるところをどのようにして調整を図っていくかというところにわれわれの任務があるわけでございまして、道はまだ道程にあるわけでございまするから、各省はそれぞれの立場で、それなりに苦吟をしておるところでございますから、そういう意味で御理解をいただきまして政府を御鞭撻いただきまして、この調整が進みますようにお願いしたいと思うのでございます。
  17. 大原亨

    大原委員 国会議論の仕方にもいろいろ問題があると思うのですけれども政府が三十六年以来ずっと皆年金で続けてきて、皆年金制度がもう十数年たっておるわけです。二十年近くなろうとしておるわけです。ですから、経過から見て、ばらばらであることは十分理解できるのですが、皆年金ということを国民の立場から見るならば、これは一元性がなければいかぬ。民間から公務員が高いと言っても、公務員の企業年金的なものについてどうするかということも結論を出してない。そうすると、てんでんばらばらの意見が出てくるということになる。責任官庁はだれもない。国会答弁用に伊東官房長官を出して、答弁させていいですか。できますか。できないでしょう。厚生大臣だってできないですよ。そういうことではいけないと私は思うのです。  そこで、これは後へ問題を回しておきまして、予算編成の過程で、これは異例のことなのですが、自民党三役立会で覚書が交わされた。この覚書の内容は、児童手当の存廃の問題、それから老人保健医療については受益者負担を含めて、つまり有料化の問題と、社会保障政策全体の所得制限の問題があるわけです。  私は、この覚書は大蔵省の官僚がつくったと思うので、善良な竹下大蔵大臣は知っているかどうか、わからぬですが、大蔵省はどういう立場で自民党三役立会でこういう覚書をつくらせたのですか。厚生大臣がつくると言ったのですか。いかがですか。
  18. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この覚書につきましては本格的な、不確実性の時代とかあるいは不透明の時代とか言われる八〇年代でございますが、きわめて確実なこと、きわめて透明なことは、老齢化社会になるということだけはまさに確実性があるわけでございます。したがって、そういうような中にありましてやはり先ほど総理からもお答えがございましたように、社会保障政策の水準を維持向上していかなければならないという至上命題に立ってまいりますと、長期的観点に立って諸施策の見直しをやる時期がまさに到来したではないか、だれがどう言い出したということでなくして、まさにみんなが統一してそのような意見になったわけでございます。したがって、覚書は、老人保健医療、児童手当等の基本的見直しを進めることが緊要の課題であるという認識を政府と党が確認し合ったものである、このように御理解いただきたいと思います。
  19. 大原亨

    大原委員 各論的なことを別にいたしまして、厚生大臣、この覚書によりますと、昭和五十六年度にはこれらの問題に決着をつける、こういうことなんですが、厚生大臣はこれに黙って判こを押したのですか。
  20. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 御指摘の覚書は、先ほど大蔵大臣から御答弁がありましたように、本格的な高齢化社会にどう対応していくか、社会保障を推進するについては従来にも増して長期的な視点に立たなければならない、そういう立場に立って、いろいろの現行制度を見直していくということがある意味においては要求される一つの問題ではなかろうか、そういう点に立ちまして、この大事なことを与党を含めて政府の中でお互いに確認したということでございます。  厚生省といたしましては、この内容については必ずしも財政的見地から後退を意味するものではないのでありまして、場合によっては前向きな見直しもあるであろう。どこまでも長期的な視野に立って社会保障制度をよりよき展開を遂げるためには、工夫すべきものはやはり工夫していくということが私は大事ではなかろうかという認識に立ちまして、お互いに確認をした、こういうことでございます。
  21. 大原亨

    大原委員 各論ですが、簡潔にやってくださいよ。  児童手当の問題ですが、児童手当の問題はたしか昭和四十二年ごろから予算委員会でもずっと議論をいたしまして、四十七年ごろから実施をしたと思うのですね。つまり、日本のは第三子からなのです。十五歳以下の子供で第三子からなのですね。非常にしぼってしぼって、三つぐらいしぼってあるのです。第三子からですから、たて続けにだっだっだと子を産まないとつかないようになっておるわけです。それでも二百数十万人おるのです。この児童手当はいろいろ議論いたしまして、費用負担の問題で事業主が確かに文句を言っていると思うのです。いろいろ文句はあると思うのですが、これは性格上そういうふうにやったわけです。世界各国では第一子、第二子から全部やっているのです。  そこで、児童の問題を考えてみますと、日本は高齢者労働力はずっとふえていくわけです。しかし若年労働は、少産少死で余命率は上がっているわけですから、少産なのですから少なくなっているのです。そこで、これが逆転いたしまして日本では大きな問題になるから、片一方ではこの中高年労働力の雇用の問題がこれからは大きな課題になってくるわけです。しかし、生産年齢人口に対して従属の人口と言われるのは十五歳以下と六十五歳以上ですが、その合計は余り変わらぬわけです、これから十年間も。だから、児童の問題、青少年の問題は、やはりよりよい児童で、われわれの後継者をどうつくるかという観点で、全体の中で私ども政策を考えていっているわけです。もう六十何カ国もやっているわけです。そのときの、亡くなった佐藤総理の答弁は、小さく産んで大きく育てます、こういうことだった。だんだんよくしますというのだ。これはだんだん、法華の太鼓ではなしに悪くなってしまった。そこで切っちまおうというわけです。(「児童年が終わったからだ」と呼ぶ者あり)まあ、児童年が終わったから切るのですか。児童手当について厚生大臣の見解を聞かせてください。
  22. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 まさに釈迦に説法ということで大変恐縮でございますが、児童手当制度を実施している国は、一九七七年におきまして六十五カ国でございます。そのうち五十七カ国が第一子から児童手当を実施しておることは御指摘のとおりでございます。したがいまして、わが国の児童手当につきましても、イギリスや西ドイツにおけるやり方を参考にしながら、わが国における社会保障各制度、さらに税制との整合性を考慮しながら、国民の理解の得られるような形で所要の改正を図っていくべきであって、厚生省といたしましては、直ちにこの児童手当という問題を廃止するということに対しては必ずしも考えていないわけでございます。ただし、制度の発足以来、必ずしもこの制度が十分に充実されておるとは考えておりません。大原先生の御指摘のように、小さく産んで大きく育てる方向に向かって、この問題については検討を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  23. 大原亨

    大原委員 自民党三役が立ち会いました覚書には、児童手当制度については、制度の存廃、費用負担のあり方、所得制限の適正化、適正化というのは所得制限を強化しようというのだ、基本的見直しを進め、五十六年度に所要の制度改正の実施を図る。これはやめるということを含めてやるという覚書なのです。  これはそうではないと厚生大臣はいま言っておられるのですが、大蔵大臣の覚書についての認識をお聞かせください。
  24. 竹下登

    ○竹下国務大臣 特に覚書の一、二についての御質問でございます。  いま児童手当問題につきましては、すでに審議会でございますか諮問をしておるところでございますので、その方向を見定めながら措置をしていこうという考え方でございますし、老人保健医療制度につきましては、これから関係審議会に諮問をしていこう、こういう前提の上に立ちまして、五十六年度から所要の制度改正の実施を図りたいという趣旨のものであります。  したがって、重ねて申し上げるようですが、不確実性の時代の中において、ただ一つ確実な老齢化社会への進行、こういう状態にありますので、その中で、先ほど総理からもお答えがありましたように、水準を落とすことなくどういうふうに工夫していくか、こういうことでございますので、後退をせしめようとかいうような基本的な考え方はございません。
  25. 大原亨

    大原委員 それならば、こんな覚書なんか出てこないです。自民党の三役が立会して、こんな覚書によって来年からこうしますという。これはいまの問題だけでも突き詰めてずっと追跡いたしますと問題です。これは後に残しておきます。  それから、老人の保健医療制度について受益者負担の制度を入れる、こういうのですが、確かに日本はいま六十五歳以上の老人の比率は八%台でありますけれども、医療費は二五%を超えておりまして、しばらくいたしますと四〇%になります。ですから、昭和五十四年度の総医療費、国民が負担する医療費は十一兆六千三百億円というふうに推定を政府は出しておるのですが、これは昭和五十八年には、間もなく二十兆二千八百億円になる。この前も話があったように、五カ年で倍々ゲーム。一年間に一五%程度自然膨張の名前でふえてくる。これがほとんど一五%のうちの九%だそうですから、そこで老人の保健制度をどうするかということは、高齢化社会において非常に大きな問題です。これは総理が総論的に答弁されましたが、体系的に内容を充実させるということで、これは医療改革の先決問題だということで、昭和五十二年の十一月に前の健康保険法改正案を通すときに——これは渡辺厚生大臣のときではない、その前のとき、そのときに衆議院の社会労働委員会、参議院でもそれぞれ政府言明や特別決議をいたしまして、老人保健医療制度を早急に整備確立するということでした。これは老人による病院のサロン化とか住宅問題とも関係あるが、時間があって働く場所もないし、そこで暇を過ごす。そして、二つも三つも病院のはしごをやる。そういたしますと、サービスだけよくいたしまして、お医者さんの中には盆、節季につけ届けを患者にする人もある、よく来てくれるといって。病院へ行きますと、歯を五つも六つも入れておる人もあるし、持っている人もある。また、前に行った病院のことを言わぬものですから、二つ、三つ行きますと、どの病院でも馬に食わせるほど薬をくれるわけだ。もらってさましたら、たんすの中にぽっと入れておいて捨ててしまう。  そういうことの現状を踏まえて内容を整備充実させまして、健康管理を中心にリハビリテーション等を加える。日本は薬を飲ませる、注射を打つということだけが治療だという考え方で、これを中心にできておるのですから、それを改革いたしまして、健康管理とかリハビリテーション中心。脳卒中でも薬なんか飲ませないで、リハビリテーションだけでスウェーデンでもドイツでもやっているわけだ。そうしたら機能回復訓練で家庭復帰できる。日本はどこだってそういうことはできやせぬ。老人の保健医療制度を確立するということは先決的な課題であるのに、医師会その他の関係で主体的な合意を得ることができない。こんなものは一党派の問題ではないのです。渡辺厚生大臣あそこに座っておるけれども、私とよく似ておるところがたくさんある。だからここで、予算委員会決議をいたしまして、ぴしぴし行政のゆがみを直していくことが私は必要だと思うのです。どこで医療問題の合意を得て、健康保険の改正案だって軌道に乗せるんだ。衆議院選挙の前になると、参議院選挙の前になると、すぐ財政調整じゃ何じゃ言って選挙向けのやつを出しちゃう。そんな主体性のないことで、密室の中でやるようなそういう政治でこの医療問題は解決できない。財政再建の中で最大の問題はこの問題である。  一つ聞いてみるんだが、政府全体、大蔵大臣もそうですが、財政再建に関係して三K赤字という——国鉄についても言いたいことがあるし、食糧についても後で議論に出る。しかし、健保の赤字というのは一体どういう意味のことを言っているのですか。財政危機に関係して健保の赤字、健保の赤字の危機というのはどういうことを言っているのですか。中身をひとつ説明してください。
  26. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 政府管掌健康保険の財政状況が大変悪化しておるわけでございますが、これは御承知のとおり、石油危機を契機といたしまして経済情勢が著しい変動をいたしまして、賃金が伸びず、したがって、保険収入の伸びがそれほど期待できなくなったわけでございます。一方また、人口の高齢化あるいはまた成人病が増加するなど疾病構造の変化あるいは医療の高度化、そういうことによりまして、給付費が賃金の伸びよりも高い割合で増加しておると考えておるわけでございます。
  27. 大原亨

    大原委員 それも一つの問題ですが、大蔵省の主計局長でも答弁してもらっていいのですが、三K赤字、三K赤字といって、健保の赤字というのは一体何のことを言っておるのですか。
  28. 田中敬

    田中(敬)政府委員 三Kのうちの健保につきましての財政当局のとらえ方は、かつて健保において赤字が発生いたしましたが、その健保自体の赤字を問題とするのではなく、そこに象徴されております現行の医療の実施状況、その他現行の医療制度自体も含めましての医療の実態というものと国庫負担との関係というものに着目して健保問題というふうにとらえております。
  29. 大原亨

    大原委員 三K赤字の健保の赤字の問題は、こういうふうに私は三つに分けて考えているのです。その点について大臣はどう考えておるかということを聞きたいわけですが、一つの健保の赤字の問題は、政府管掌の健康保険、一番でたらめな経営をしておる政府管掌の健康保険、親方日の丸の経営しておる、政府が経営しておって一番悪い。政府管掌健康保険で赤字がどんどん出てくる問題、この問題のことを国庫負担の問題に関係して赤字だ、こう大蔵省当局は言っておる。  もう一つは、医療に対する全体の国庫負担が、全部集計してみますと、昭和五十三年で大体三兆二千億円ぐらいで、いまは恐らく四兆円台になっておるわけです。その上に、医療費に関する国庫負担が出てくると財政が硬直するということで、そのことの、国庫負担全体のことを言っているのが第二。   それから第三は、私どもが言っておるのですが、つまり税金であれ国費であれ保険料であれ自己負担であれ、最低の国民の願いの医療が、五十四年度であるならば十一兆六千三百億円、今年は十二兆円台になる。一兆一兆、だっとふえておる。その負担が国民の所得を超えて、賃金を超えて、そして一五%ずつでどんどんふくれておる。高度成長と同じようにふくれておる。それにメスを入れる。つまり、医療費膨張の中でむだはないか、国民から考えてむだはないか、むだがあることによって医療が荒廃してないか、こういう立場でメスを入れることを通じまして適正な負担で適正な医療をやっていく、いつでもどこでもよい医療をやっていくという考え方。そういう構造的な要因で医療費全体の膨張について考える政策が必要であるということが問題。  この三つの概念があると思うのですが、大体近欲な主計局や大蔵省はそういう立場だろうが、目先のことだけでやるからますます全体が矛盾を深めて混迷に陥るという結果になっているのではないか。それは、逆に裏返せば厚生大臣の責任でもある。主体性の問題、そういう点について、どのことを赤字だというのか、お答えいただきたい。
  30. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 医療保険制度の抜本改正というものをやはり考えていかなければならぬと思うのでございます。特にその財政対策には、ちゅうちょすることなく、赤字の構造的な要因はどこにあるのかということを御指摘のようにきめつけてまいらなければならないと思うのでございますが、わが国の医療保険制度としては、その体系として現行の被用者保険と地域保険という二本立ての仕組みをとっておるということは、私は妥当であると考えておるわけでございます。そのうち、健康保険、共済組合などの被保険者は、それぞれ加入者も全国民の六割を超えておるという現状、また、わが国の医療保険制度の歴史においても常に改革の先駆けをしてやってまいったということでございまして、したがいまして、すでに政府といたしましては、国会にお示し申し上げております十四項目の医療保険制度改革の基本的な考え方、その第一段階として健保法の改正というものを提案いたしておるわけでございます。これは、ぜひとも御審議を速やかにお願いを申し上げて結論を出していただきたいと考えるわけでございます。  もちろん、今後の健保法の改正に当たりましては、医療費の増大あるいは低経済成長への移行などの社会経済情勢の変化に対応するために給付の平等と負担の公平、特に高額な家計負担の解消を実現することを目的といたしておるわけでございまして、必ずしも政管健保の財政的な立場に立っておるというわけではございません。ただし、この改正とあわせまして薬価基準の適正あるいは指導監査の推進など医療費の適正化に向かって今後とも努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  31. 大原亨

    大原委員 時間もなんですから、第三で挙げておるのを引き続いてやりまして、二と三の質問の順序を変えますから、答弁の順序を変えときなさい。  引き続いてですが、医療費の構造的な中身についてメスを入れていって、そして国民の医療のあり方を追求するんだという意味の答弁です。しかし、実際は政府全体がそういう姿勢になっていないことが一つあるのです。健康保険の改正案は二カ年間ずっとたなざらしになっているわけです。それには理由があるわけです。政府・与党の中がある一定の段階まではほとんど、たとえば社会保険その他でも決定してなかったわけです。予算として通しておるから提案しておるというようなばかな答弁ばかりしておって、全部ほかのことをやっておったわけだ。ほかのことをやって、去年五月は財政調整がぽかっと出たものだから大ごとになったのでしょう。  そこで、あの健康保険の改正案の中で、私も全部が全部否定していない。しかし、構造的な要因に対してメスを入れるということが非常に大切な八〇年代の課題であるとするならば、総合的な見直しです。そうすると、保険制度負担の問題の改善と一緒に、三つの点が大切ではないか、これを並行するなり、これを先に解決すべきじゃないかというのが私の意見ですが、その意見は三つあるのです。  一つは、渡辺委員も指摘をいたしましたが、医療費の支出について、国民の立場から行政上適正な指導と監査をやっていくということ。  いま支払基金を通じて審査しているのはほとんどノータッチの状況です。ですから、渡辺委員が指摘をされたような問題がたくさんあるわけです。この問題に関しては、渡辺委員も出しておりますが、昭和三十五年の医師会との間における覚書、申し合わせの問題がある。この問題をぴしっとしないと、たとえば、お医者さんの中でも良心的な者ほど損するじゃないかという意見がいまたくさん出ている。ですから、こういう議論が盛んになりますと、お医者さんの意識がぐっと変わっている、それが医療費にあらわれているという点もある、少し減っているわけですから。指導監査の問題が一つある。  第二は、薬づけの問題がある。私の最近の調査で見ますと、神田に薬の現金問屋がありまして、そこへ行って買う人もたくさんおるわけです。その現金問屋は、一流メーカー以外で二千もゾロゾロメーカーがある。それが日本の特色です。ゾロゾロメーカー、中小メーカーがいっぱいある。これが開発に努力しないで乱売するということもあるのです。一流メーカーの価格の資料がここにありますが、最高が七割の値引きをしておる。少なくとも三割の値引きでここで公然と売っている。薬価基準と比べますと、平均五二%値引きしている。そして、薬が全体の医療費の中で、診療所の外来については四十数%占めておる。平均で三七%。イタリーは、行き詰まったから国営化いたしまして、薬剤費の一部負担をやっている。フランスは療養費払いにしております。窓口で現金を払って、後で保険事務所に行くようにしております。西ドイツは、賃金上昇程度で抑えるということで、保険者と保険医の医療機関が共同契約をするようになっております。日本はこれが大げんかしております。そして医師会の方は、下の第一線は相手にしないで、自民党の幹部の方に駆け込むというかっこうで、がたがたになっております。これは全部困っておるのですが、何らかの手を打っておるのです。ですから、差益があって薬を出せば出すほどもうかるという点数出来高払いの問題と一緒に、薬価基準の決め方の問題に根本的なメスを入れなければならぬ。行管庁の長官はあっちこっちに行って非常によく働いておりますが、国民の立場から見て、そういうところにメスを入れなければならぬ。悪貨が良貨を駆逐して、悪徳医師ほどもうかるという仕組みは、国民の立場から見ていけない。  第三の問題は、高齢化社会において老人の医療保険制度を別立てにするという問題。  いままで何回も国会決議して案を出した。小沢試案、橋本試案。しかもやめる間際に出すわけです。それで、違ったものをばらばら出している。行政管理庁は見ているかどうか知らぬが、厚生省は、老人医療の準備室にスタッフを設けてやっておるが、何をしていいかわからぬのだ。小沢厚生大臣は一体何をするのかということだ。老人医療の保険制度について、社会党は案を持っていますよ。私も持っている。イデオロギーにとらわれないいい案を出してあげますが、それを出して議論をして、討論を進めて集約する場所がないじゃないか。  不正請求に関係して指導監査の問題、薬価基準の決め方の問題、老人医療の問題、この三つの問題は、健保の改正案と並行してあるいは先決してどんどん処理できるものがあるのですから、これをぴしっと処理することが必要じゃないか。そのことをやらないで健保の改正、健保の改正とぶち回っておるから、総スカンになっておるのではないか。この三つの私の見解について、厚生大臣総理大臣はどういう考え方を持っているか、御答弁をいただきたい。
  32. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 医療制度の今後の強化充実の上で大変大事な三点の御指摘に対してでございます。  まず、指導監査に対しての私の考え方でございますが、保険診療の適正化のために指導監査を強化することは当然のことでございます。積極的にこれを実施いたしてまいりたいと考えております。特に、五十四年度は、中央に御承知のような医療指導監査官、地方に医療事務指導官を新設をいたしまして、さらに五十五年度はこれらの増員をいたします。中央、地方一体になりまして、指導監査の推進に当たってまいりたいと考えております。  もう一つ、薬づけ医療と言われる現状の問題でございますが、わが国の医療においては薬の使用割合が諸外国に比べてきわめて高いわけでございます。これが薬づけ医療だと指摘されておるわけでございます。この問題を解決することが医療保険制度の健全な運営にとりましてもきわめて大事であることは、御指摘のとおりでございます。薬価基準と、医師が実際に購入するいわゆる実勢価格と申しますか、これとの間に格差がある。したがって、診療に際しまして薬剤を大量に投与しがちになるわけであります。つまり、お医者さんの方も薬をかなり多く使うという形、あるいはまた、国民自体も薬好きという国民性があるのではないか、そういう点などがこの問題については指摘されておるわけでございますが、いずれにしても、薬価基準を適正化し、医薬分業を推進し、医療機関に対する指導監査の強化を図って、特に御指摘の薬剤問題は、健康管理について国民に指導、啓蒙を図っていく、こういうことを総合的に進めていかなければならないのではないかと考えておるわけでございます。したがいまして、今国会にも提出いたしております健保法の一部改正におきまして、この薬剤問題に対処するために薬剤費の半額負担制度を導入しておることも、解決の一助になるのではないかという考え方があるわけでございます。  さらに、老人医療制度の問題でございますが、これは御承知のとおり、関係審議会の意見を聞きながら検討を加えて、できるだけ早く結論を出して所要の改正を進めてまいりたいと考えますが、その老人医療制度をつくり出すための一つ段階として、健康保険改正法案をぜひとも御審議の上成立をさしていただきますようにお願いを申し上げる次第でございます。
  33. 大原亨

    大原委員 こういう議論をするだけで、国民健康保険あるいは政府管掌の健康保険の昭和五十三年、四年の医療費の伸びが少しこうなっているのです。それは患者の側、国民の側にも責任があるのですよ。あるのだけれども、いままでのやつはでたらめであったわけですよ。お医者さんの中にだって、これじゃかなわぬ、これじゃそのうち療養費払いになるだろう、というのは、窓口で現金で払うことになったら患者は半減するだろう、こう言っておるお医者さんもありますよ。もうみんな言っているのだから。一番おくれているのは政治ですよ。  そこで、具体的に、渡辺委員がここで指摘をされまして、テレビに乗ってずっと放映されているが、昭和三十五年に医師会との間において交わしました、健康保険法の四十三条の監査の基準を法律内容を骨抜きにするような覚書があるわけです。われわれも経過については覚えがありますけれども、これは自民党が悪いとかなんとかということは言わないですよ。しかし、その覚書を見ると、医師会が立ち会わなければ監査できないようにしてあるのだ。それは指導についての条文もあるわけですから、指導も監査もしなければならぬのですが、その姿勢がきちっと確立しないと、お医者さんの中には、いろいろな期待がまちまちになって、悪いことをすればするほど得だということになる。それじゃいけないじゃないかという議論がたくさんあるのですから、そこで行政の中立性と公正性が必要なわけです。  それで、昭和三十五年の申し合わせ、覚書を破棄しなさいという意見があったわけです。私は賛成です。これは自民党も賛成するんだから全部賛成だろう。そういうことになりますと、これだってやろうと思えばできますよ。たとえば、できなければ予算委員会決議してもよろしい、これは予算に関係が深いから、国民生活に。厚生大臣いかがですか。
  34. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 この指導監査を強化充実していくということについては、先ほど申し上げましたとおり、厚生省としては、重要な課題でございますから大いに進めてまいりたいと考えております。いろいろ国会の御指摘もございます。種々の問題もありますので、十分慎重にこれに対して対処してまいりたいと思います。
  35. 大原亨

    大原委員 慎重にということはやらぬということだ。いつも大臣答弁というのは、慎重にと言ってここで答弁したらやらぬということなんだ。総理大臣、いかがですか。
  36. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ただいまあなたの医療保険につきまして指摘されました三点、いずれもその改善にとりまして避けてはならない中核的な問題だと思います。それは与党とか野党とか、あるいは保険者であるとか被保険者であるとかの立場にとらわれないで、みんなが一緒になって改善にそういうラインに沿って努力しなければならぬ課題だと私も思います。  したがって、三番目に挙げられました、そういう議論を展開して実のある成果を上げるような場が乏しいということでございましたが、そういったことをできるだけつくって、議論が伸長されるように、それが成果を生むように努力をしたいと思います。
  37. 大原亨

    大原委員 去年二人ほど、ことしは四人ほど指導監査で専門官を設置するというのですが、それの方針を決めたら医師会が厚生大臣をボイコットしたというような新聞も出ておりましたね。その後どうなっているのですか。やりますやりますと言ったって、ボイコットすると言ったら予算執行できないのですか。いかがですか。
  38. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 監査に関して厚生省は、昭和三十五年に日本医師会及び日本歯科医師会と申し合わせを行っていることはすでに御承知のとおりであり、御指摘になっている点であります。このことについては、指導の徹底をいたしまして、不正請求の事故を極力未然に防止するというものでございます。この趣旨によって指導監査が適正に行われる限りにおいて、この医師会との申し合わせについては廃止する必要はないと考えておるわけでございます。  同時に、御指摘のように、これは大変大事な問題でございますので、厚生省としては指導監査の充実強化をなお一層続けてまいりたい、御理解をいただきたいと思います。
  39. 大原亨

    大原委員 予算を審議して決めましても、これは動いていないですよ。そして、四名指導官を設置いたしましても、四名で全国できますか。それが機能もできないような状況じゃないですか。これは皆保険のもとでおかしい現象ですよ。  基本的に私はもう一つ聞いてみます。いまの問題を踏まえながら聞いてみますが、日本の医療保険制度を一体どういうふうな方向へ持っていくんだ。やり方としては、先進国の例にあるわけですが、社会保険主義でいくのか、あるいはもうそうではない公共保健サービスでやっていくのか、方向は二つしかないのですよ。これからの医療改革をやる制度の運営で、どっちをやっていくんだ、じゃその理由は何なんだ、簡潔にひとつ述べてください。
  40. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 わが国の医療保険におきまして、いわゆる健保組合方式をとるのか、あるいは公共保健サービス方式をとるのか、どっちかしかないではないか、どっちをやっていくんだというお尋ねであろうかと思うのでございます。  すでに御承知のとおり、医療保障を実現する仕組みといたしましては、ドイツ、フランス等に見られるような社会保険方式として、それからイギリスに見られるようないわゆる公共保健サービス方式も考えられるわけでございますが、わが国におきましては、政府や地方公共団体のほかに健康保険組合などを保険者とする社会保険方式を採用してきておるわけでございます。それとも公共保健サービス方式、いまどちらをとるか、どちらが適当であるのか。それは、その国のいろんな社会経済体制あるいは医療供給体制によって、一概に決めることは大変むずかしい問題ではないかと思うのでございます。  したがいまして、私どもは、自己の責任、相互扶助の精神によって、一般的に保険者の運営努力と加入者の連帯意識というものを今日の方式において期待いたしておるのでございますし、また、給付と負担の関係がむしろこれの方が明確である、安定した自主財源が確保できるというメリットがございますので、わが国は長年にわたりまして健康保険を中核とする社会保険方式をとってきておるわけでございます。したがいまして、社会保険方式の方が適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。また、社会保障制度審議会におきましても、その勧告においてもこのことが指摘されておる、こういうことでございます。
  41. 大原亨

    大原委員 厚生大臣の責任者としての所見はわかりました。つまり、私ども意見は、やはり医療がここまで来ると、税金のような形で取って公衆衛生のようなサービスでやらなければいかぬのじゃないかという気持ちが基本的にはあるわけです。しかし、政府がやったからいいと言うなら、政府管掌健康保険が一番でたらめだからな。厚生大臣がやっているのが一番でたらめなわけだ、保険庁でやっているのが。だから、当面はやっぱりいま言われたように社会保険のメリットを生かすべきじゃないか、こう思うんです。  そうすると、当面の政策としては一致しているわけですから、そこを改善する。そこで、改善する場合に問題は、たとえば、その中から突然武見医師会長が出したという財政調整案まるのみの齋藤提案の財政調整案があるんですが、あれは、必要なだけがらがらぽんでずっと取って、そうしてこの年の医療費がこれだけ要るからというので政府がだっと医療機関に流していく、そういう法律です。これは一歩進めますと、保険料が税金になるんですから、国営論なんです。公共保健サービス方式なんです、医師会の考えは。しかしこっちだけは、医療供給だけは自由にやろうという、これが片手落ちなわけです、勝手なわけです。そんなことは許されるわけないわけです。つまり、いまの答弁から、財政調整案については内容的にも反対である、そういう厚生大臣の見解と考えてよろしいか。
  42. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 いろいろ審議会の見解等も伺って、慎重にこれは対処してまいる問題であろうと思いますので、よろしくお願いします。
  43. 大原亨

    大原委員 いまのは答弁の読み違いじゃないですか。財政調整法がいいと言ってこのことを審議している審議会は、日本じゅうにどこにもありませんよ。全部探してごらんなさい。それは答弁の読み違いです。いかがです。賛成か反対か言いなさいよ。
  44. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 財政調整法につきましては、これはいままでのいきさつから申しまして党側の問題でございますので、厚生大臣としては、これに対して意見を申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  45. 大原亨

    大原委員 そんな、あなたは内容的には社会保険制度のメリットを生かす方向でやる、こう言うんですよ。そのことは財政調整のメリットを殺すんですからまるきりだめじゃないか。そのとおりですと言えばいいんだ、そのとおりですと。
  46. 石野清治

    ○石野政府委員 制度間の財政調整の問題でございますが、これはいろいろなやり方があると思うわけでございます。現在の保険制度全体の中で考えた場合に、先生のおっしゃるように、確かに組合方式によるメリットは大変あると思うわけでございます。それを生かしながら、なおかつ全体の医療保険制度の整合性をどうするかという問題、これは基本的にあると思うわけでございます。そこで、私の方は、今度の健康保険の改正法案の中では、とりあえず健康保険組合間で財政調整をやりなさい、いずれ今度別の法律をもって、全体のコンセンサスを得られた場合には、医療保険制度、被用者保険制度全体の中で財政調整をやったらどうか、こういうことで御提案申し上げておるわけでございます。
  47. 大原亨

    大原委員 それでは中身がないのですよ、後段のやつは。それで私の意見だけは、この点は言っておく。これにこだわるわけにいかぬから。  つまり、いまの健保の健保闘争、健保国会でずっと来た中で確立された一定の基準は、財政調整は、年齢が高いとか給与が低いとか、いろいろな条件を考えながら財政調整をする。そのやり方は、政府管掌の健康保険は、中小企業が集まっておるということだけではないのだが、経営も悪いから一六・四%ほど国庫補助を入れて底上げをしているのです。組合管掌の健康保険は、相互保険といって、中小企業だけが集まったところへも一六・四%やっていないのですよ。平均事業場、一七・五人ぐらいのところをとってみましても、一六・四%なしで自主的にやっておって、相互保険で健保連に入っておるのです。国民健康保険は、医療費に対して四割の財政調整をいたしまして、調整交付金は五%で調整しながら臨時調整交付金を出しておるわけだ。国費でバランスをとっておるわけだ。そして保険の制度の自主性と相互扶助の自律性を生かしながら競争さしているのです。それが日本の健康保険の制度なんです。それを殺すようなことをやって医療改革になりますか。逆にどんどんふえてパンクしますよ、そんな無責任なことをしたら。そういうことを言うだけでも非常識じゃないかと私は言っておるわけです。  そこで、この問題に関係して、後ろからも発言がありますが、例の三十五年の覚書の問題で、医師会との間に交わした覚書は、行政の中立性と公正性を阻害するから、私どもは排除すべきであるという意見は、偶然か何か渡辺委員発言とも一致いたします。これは、政府は明確に態度を決定してもらいたい。決定できなければ私は、委員長、予算委員会において、この問題は非常にはっきりした議論ですから、予算委員会議論をして、予算委員会の意思が表明できるような措置をとってもらいたい、いかがですか。
  48. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 追って理事会で相談の上、お答えいたします。
  49. 大原亨

    大原委員 答弁を求めましても、そういう問題がありますからね。この問題については、時間があれば後にいたしまして、今度は年金の問題が残っておりますから。  そこで、年金の問題は、この六十五歳問題がいま出てきたわけだ。六十五歳問題については、私が質問いたしますと、恐らく答弁は、社会保障制度審議会、社会保険審議会の審議を待って政府態度を決めます、こういうことになる。しかし、社会保険審議会も、もう大多数は労使ともに反対ですから、決まっておるわけです。社会保障制度審議会もしばしば、いままでの経緯を踏まえて、余りこれは、雇用の問題を解決しないでおいて年金だけを厚生年金で、しかも厚生年金だけでやることはおかしいではないか、こういう議論は、これは当然の公理です。この問題について明確な答弁をいまの段階で私はひとつしてもらいたい。これは総理大臣。  もう一つは、この問題に関係をして、年金の問題の改正に関係いたしまして、内容的な改善、プラスの面で付加年金、高齢者、あるいは子供を持っておる寡婦の寡婦加算、その問題があります。遺族年金の問題に関係して出てきた寡婦加算の問題があります。この問題は、共済年金の改正、恩給の改正、労働者の労災の改正とも横並びで全部ずっと出ているのです。それで、六十五歳をカットいたしましてそういう給付の改善の面についてはどうするのかという問題があるわけです。関係各省はどういう意見を持っておるかということを聞きたいが、これはだめだから聞けないが、事実上はそういう法律案の準備をしておるわけだ。六十五歳の開始は、総理大臣昭和六十三年からという案です。六十歳定年が昭和六十年ということで、その中身がはっきりしないということは後で議論をいたしますが、そういう問題があるわけです。そういう矛盾を抱えているのですから、いまやぶから棒にこの問題を持ってこられて、カットしておいて改善部分だけは改善してもいいではないかという意見もあるし、いろいろな意見がある。これに関連をして改正するというふうに政府が予算に——予算はそういうふうに出ておるのですから。予算はそういうふうに出しておいて、法律案もそういうふうに改正する準備をしておりますが、六十五歳をカットした場合に、改善部分の措置についてはどうするのか、保険料負担をどうするのか、この問題について一歩突き進んだ答弁を、予算の審議関係して、してもらいたい。
  50. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 御指摘の高齢化社会の本格的な到来に対しまして年金制度の長期的な安定を図っていくということは、これは大変大事な問題でございます。したがいまして、現在における雇用問題も十分考えながら、そしていろいろの制度の均衡も考えつつ、この問題を抜本的に進めていかなければならぬ。少なくも二十一世紀の始まる前までにそういう年金財政の長期安定化を明らかにしていくということは私は大変大事であるということでございますが、いずれにしましても、六十五歳問題を含め、今日のこうした施策についての審議会の審議の結果を実は待っておるわけでございまして、大原先生もその委員のお一人でございますから、その委員会を通しての御意見を十二分に尊重いたしまして、そして、これに対処してまいりたいと考えておりますので、今日の給付の改善についてどうするのかということもあわせて、委員会あたりのいろいろの、審議会の意見を十分聞いた上で、これに対応してまいりたいと考えておるわけでございます。
  51. 大原亨

    大原委員 支給開始年齢を六十五歳にするという厚生年金の改正案については、本年度の予算に出ていないです。予算にはないわけです、昭和六十三年からですから、総理大臣。しかし、他の——大蔵大臣、他の給付の改善の面は、全部国庫負担との関係で、たとえば厚生年金でしたら給付の二〇%出すのですから、予算に出ておるわけですよ。だから、その問題は審議会の答申を得るということもありますが、しかし、審議会の方は年金全体について一元的にどう改革するかということについてはもう案を出しておるのですよ。ぼくは社会保障制度審議会委員だけれども、私が一〇〇%賛成する案ではないが、しかし非常にいい提案があるわけだ。出ておるのです。ですから、これは予算にも関係があるのですから、この給付の改善の面に対する法律の改正というものがなければ、ないということになれば、予算は修正しなければならぬ。ですから、この問題については総括質問が終わるまでに、政府としては給付の面を含めて、労災や共済全部あるのですよ、各省全部。全部含めまして態度を決めてもらいたい。これは理事に対しまして意見を言っておきます。よろしいですか。理事会においてこの問題の処理を諮ってもらいたい。
  52. 渡辺美智雄

    渡辺(美)委員長代理 後日、理事会において相談の上、お答えいたします。
  53. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、厚生年金の抜本的な改正に当たりまして、現在、関係審議会で御審議を願っておりますので、その答申を踏まえてこの問題についても対応してまいりたいと考えておりますので、この改善の内容をどうするとかこうするとかということについての見通しも、またそれに対する対応の姿勢も申し上げられない、また申し上げることではないと思いますので、御理解願いたいと思います。
  54. 大原亨

    大原委員 わかりました。  趣旨はどういうことかといいますと、委員長聞いておられるか。私が言っているのはこういうことなんです。六十五歳開始繰り上げの問題は昭和六十三年ですから、いま直ちに給付とは関係ないので、予算とは関係ないのです。しかしその他の給付の改善は、国庫負担を伴うておりますから、国民年金にもずっと全部関係あるのです。恩給にも関係あるのです。ですから、遺族に対する給付の改善、寡婦加算その他の問題、そういう問題は予算の審議の中でこの問題を議論しないと予算修正の問題に関係いたしますから、この問題は重要であるという点を指摘をして、速やかに、審議会の態度はもう決まっておるのですから、あとはもう六十五歳はだめだとみんな言っておる。自民党三役も言っておる。いま言わなかったとか慎重にやってくれとか言いよるが、あれはそうじゃないのだ。参議院選挙前でだめだ、こう言っておる。参議院選挙が済んだらやるのかと言ったら、それはうにゃうにゃと言っておるからわからぬ。その点について、予算の修正と関係がありますよという問題点を指摘をしておきます。  それから大蔵大臣、覚書の問題で残っておる問題は所得制限の問題です。所得制限はいっぱいある、本人等あるわけです。所得制限をだんだん切り詰めていきますと、今度は老齢福祉年金でも老人医療の無料化の問題でも、医療扶助とか生活保護に近づいてくるのです。そうすると恩恵的になってくるのです。これは八〇年代の人間らしい制度といたしましては、所得制限の問題は逆行するのです。非常に本質的な問題です。しかし所得制限が必要なものもあるのです。しかし、それをやってはいけないものがたくさんあるのだ。それをわからないで一律にやるような覚書なんというのはもってのほかである。大蔵省は、老齢福祉年金に対する所得制限で八八%老齢福祉年金をもらうようになっておる。一二%カットしてあるが、これをさらに引き下げて半分くらいにしようとか、老人医療の問題について受益者負担の問題と一緒に所得制限をうんと切り詰めていこう、こういう二つのねらいが私はあると思うのです。間違いありませんか。
  55. 竹下登

    ○竹下国務大臣 所得制限という問題につきましては、今年度の予算編成の中途におきまして、一つの考え方として、老人医療の問題にいま一つの所得制限を加えて一部有料にする階層をつくるという一つの考え方、それから児童手当についての所得制限の問題を、大蔵省は予算に対する調整権とでも申しましょうか、そういう形で議論をしてきたことは事実であります。したがって、社会福祉全般にどれにもこれにもつけるという意味で考えておるわけではございませんけれども、こういうような状態になってくると、所得制限というものの考え方は御理解がいただけるのじゃないか。これは予算編成の間におきましても、ことしから早速取りかかることは、結果としてはできなかったわけでございますけれども、私は各方面の理解を得ることもできる課題ではないかというふうに感じております。  ただ、大蔵省という役所は悪者じゃございませんので、その辺は御理解を賜りたいわけであります。
  56. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 所得制限の問題につきましては、各制度の趣旨あるいは目的、給付の対象者の実態を考えて慎重に検討、見直しをしなければならないと考えておりますので、老齢福祉年金については、いまの時点においては大きな問題になっていないということを申し上げたいと思います。
  57. 大原亨

    大原委員 いまの発言は非常にはっきりした発言でした。重要な発言でした。大蔵大臣、異議ありませんね。——もう一回質問してみますよ。  大蔵省がねらっていました老齢福祉年金の所得制限強化については、これは毛頭考えておらぬ。大蔵省のねらいは私は知っておるのですよ。老齢福祉年金と老人医療の有料化の問題に関係をして所得制限を強めていこうという二つがねらいなんです、これは予算に非常に関係するから。財政主導型から言えばそうなんですよ。非常にはっきりした答弁がありましたが、大蔵大臣、その趣旨に賛成ですか。
  58. 竹下登

    ○竹下国務大臣 厚生省で各種審議会の意見等を聞かれまして、これから答えを出されるわけでございますので、直接の政策官庁でない私が、ただ予算の調整権があるという立場あるいは財政当局の立場だけで正確に申し述べる資格があるかどうかということも、ここに立ちながら考えておるわけでございますけれども、私どもは老人医療の問題について所得制限をつけるという考え方が、審議会等に審議をお願いする外にあるとは考えておりません。     〔渡辺(美)委員長代理退席、委員長着席〕
  59. 大原亨

    大原委員 覚書の内容が、この議論を通じまして漸次明らかになってまいりました。  大平総理大臣、この覚書はやはり主計局が原案をつくったらしいですね。そして自民党三役が入りましてこれを確認したことになるのですが、これは来年度、昭和五十六年度を期してやるのだという議論なんですけれども、そういうことはないのだと言っているわけです。いままでの経過についてわかりましたね。これはちょっと時間がむだになるから省きましょう。  そこで、予算修正に関係深い問題で、老齢福祉年金とか五年年金、十年年金と言われる日本の皆年金体制の中における大きな穴があるわけです。これは制度上の欠陥から出てきた経過措置であります。これは七百万を超えてあるわけです。一千万近い人が対象です。日本の年金制度はかなり整備されているというのは、非常に低い経過年金を含めて言っているのです。老齢福祉年金について、厚生大臣の答弁どおり所得制限を強化する意思がない、私は全く賛成です。老齢福祉年金は七十歳以上、明治四十四年四月一日以前に生まれた人のことであります。そのころは制度がなかったのですけれども、そのときには自分たちがいろんな人を扶養してきたのですから、自分がかわって扶養されるという立場に立って皆年金の中でできたのです。  そこで、これは二万円になっておるわけでありますが、これが二万一千五百円というふうに予算の編成をいたしました。これが適当かどうかという議論が問題であります。私はこう考える。二万円を二万一千五百円と一千五百円上げたというのは、昨年の四・九%の物価上昇分程度である。今度の年金制度の改正は五年以内、ことしは四年目ですが、四年目に年金の見直しをすることになりましてやっておるわけです。これは物価スライド以外に国民生活水準に合わせましてスライドしていくという趣旨ですから、大蔵大臣、二万一千五百円というのは物価上昇分程度であるというのと改善分が入っていないというのと……。たとえば現在の厚生年金の十万円のベースの人が物価スライドいたすといたしますと、四・九を五%といたしますとこれは一万円です。たとえば国民年金はその半分ですから、合わせて一本ということになりますから五千円といたしましても、五千円の改善分を積み上げておるわけです。その中には物価上昇分もありますけれども、改善分を積み上げておるわけです。そういう制度になっておる。そういうときに、一番年金制度の穴であるところの老齢福祉年金や五年年金、十年年金というものについて所得制限を強化したり、たとえば十年年金の掛金は昭和三十六年から十年間掛けますね、その人は大体二万五、六千円しか掛けていないわけです。しかしこれは掛金を掛けますと所得制限はない。しかしその給付のために、本体年金、みんなが出した国民年金の加入者が全部金を流しておって、あとは二兆円くらいしか残っておらぬわけです。これは国鉄の年金もがたがたであるけれども、国民年金もがたがたなんです。だから、これは発想を転換して改革をしなければならぬ。これは議論があって、これは社会保障制度審議会も出しておるのです。  そこで、問題は、老齢福祉年金は二万円を二万一千五百円に修正しただけでは物価修正分だけであって、物価修正分だけで率を掛けますと、二万円の人と五万円の人と十万円の人は、上にいくほど同じ率でありましても金額は上がるわけですから、下は改善分を含めてもう少し厚くしなければ格差を是正することにならない。年金を改革することにならぬ。そういうことで社会保障制度審議会も社会保険審議会の年金部会も、経過年金は、老齢福祉年金を含めて、改善については十分努力しなければならぬという答申があるわけです。いま答申しておるわけだ。ですから、二万一千五百円ではなしに、いまの財政事情、収支の状況を見まして、私どもは二万四千円程度は改善分を積み上げる。二万一千五百円を二万四千円ですから二千五百円、この程度積み上げることは最低必要である。そうしないと、活力ある社会とか自由競争というのは平等ということが裏づけになっているのですから、公平ということが、これは民主主義ですから、自由平等ですから。ですから、高度成長時代のゆがみ、八〇年代の高齢化に対処いたしまして、所得の公平な再配分をするということが大きな仕事です。それを全体で工夫してどう出すかということが仕事なんです。老齢福祉年金は、もう十年いたしますとがたっと人員は減ってしまうわけです、経過年金ですから。五年年金も十年年金も全部そうです。ですから、財政上の工夫をいたしましても、老齢福祉年金は最低二万四千円を基準にいたしまして、五年年金、十年年金、これは六十五歳からもらっているのですから、こっちは七十歳ですから、そう差がなくてもいい。その是正、底上げをすべきである、第一次の改正としては底上げをすべきである、そういう考え方であるが、私の考え方に対して政府はどういうように考えているかということをまず厚生大臣から聞きましょう。
  60. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 福祉年金の上げ幅がきわめて低い、今回の厚生年金の財政再計算におけるようなものと歩調をそろえて大幅に引き上げをすべきではないかという御指摘であると思うのでございます。  御承知のとおり、福祉年金の改善につきましては、きわめて厳しい財政のもとで、十年年金の引き上げ率の七・三%、これを勘案しまして老齢福祉年金を七・五%引き上げて、月額現行二万円を二万一千五百円に引き上げようとしておるわけでございます。一方、厚生年金におきまする改善につきましては、被保険者の方々の保険料の引き上げをお願いいたしまして、収支のバランスをとりながら給付の上げ幅を決定いたしておるものでございますが、福祉年金は、その財源は申すまでもなく一般財源に頼っておるわけでございまして、国としては大変厳しい財政状況にあるわけでございますから、これ以上引き上げるということは困難であり、また、十年年金の七・三%の見合いから申し上げまして、今日の七・五%の引き上げは適正ではないかと、私はこういうふうに考えておるわけでございます。
  61. 大原亨

    大原委員 大蔵大臣に答弁を聞きましても、まだ悪い答弁になるだろうから答弁聞きませんが、これは底上げとか、長い間私がしゃべったのを全然無にして原稿を読んだんだから腹が立つけれども、まあこれはこれ以上総理大臣に聞いたってなんですね。  そこで、これはそういう問題が非常に重要な問題である。八〇年代を見まして、やはり老齢福祉年金はもう十年余りでなくなるのです。ですから、経過年金、保険料を掛けておるからといったって、十年年金の場合は二万四、五千円ですよ。一カ月分もらえば——国の費用の負担を入れましてもちょっとで済むようなものですね、いま。当時は三百円とかいう時代だったんだから、そういうことは言いませんけれども。だから、そういう時代で、経過年金ですけれども、インフレで、特にこの間のインフレで徹底的に積立金が、保険料が目減りしておるんだ。だから、それは目減りしたって、財政投融資で使っている、大蔵省が国民年金と厚生年金は全部取って。共済年金は取っていないわけです。そういう財政投融資をてこにいたしまして天下りをやっておるわけです。公団、公社の問題があるわけですよ。ですから、そういう財政投融資のメカニズムにメスを入れながら保険料——保険料で負担するか税金で負担するか、これは政策の選択の問題です。しかしながら、老齢福祉年金を高齢化社会に対応して引き上げていくということは、いろんな住宅とか医療とか、全体を考えてみましてこれは非常に必要である、こういう必要な観点と、年金体系全体からあるいは各審議会等の総意といたしまして底上げをすべきであるという意見なんです。そういう点について、私が主張いたしました点について、大平総理大臣は、賛成、反対は別として、私の言うことを理解できますか。いかがですか。
  62. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 水準を上げること、それから公平を図らなければいかぬということ、そうして第三に、あなたは、そういう財源をどういうふうにして工夫するかということが問題だという御指摘でございますが、まさにその一番最後に挙げた、そういう財源をどのようにして工夫するかということが私たちにとりまして最大の問題でございまして、こういう状況になってまいりまして、そのためにどういう工夫をしていくかということがこれからの、われわれが真剣に取り組んでおる問題でございますることはあなたも御承知と思います。で、一緒になってこの問題は打開の方途を見つけたいものと思うのでございます。
  63. 大原亨

    大原委員 いろんな審議会の議論あるいは各方面の議論で言い得ることは、八〇年代の施策は年金だけの問題を議論したのではだめなんだ。結局は高齢化社会で六十五歳以上がいま一千万突破したのですが、これは、十年余りたちますと二千万になるわけですね。そうして一方では若年労働が減っているわけですね。それで労働力が逆ピラミッドになる。そこで、中高年齢の労働者を、労働力を、パワーを活用しなければ八〇年代の労働力の充足はできない、だから雇用と産業構造全体についてこれを考えていかなければいけない、基本的にこういう考え方。  そこで問題は、時間の関係で雇用の問題にしぼって言うのですが、六十歳定年といういまの人事院や労働大臣の考え方では、いままでの質疑応答を聞いておって、これはだめではないかという意見です。  どういうことかと言いますと、少なくとも、退職勧奨その他を一切しないで六十歳まではそこまでの一律の定年を設けておいて、そうして六十歳を超えても意思と能力のある者は、局長、次官にいたしましても全部持っていくということにするのだ。そうしたら、五十二、三歳ごろで局長でもやめて、そうして同級生が次官になったら後はぞろぞろっと公団、公社へ圧力をかけて天下っていくわけだ。それで、財政投融資の資金をおみやげに持っていっては、そこで非能率な経営をしておるわけだろう。そういう態勢とも関係があるわけですから、六十歳を超えても意思と能力のある者については雇用上の差別をしないというのが先進国の常識なんです。だから、六十歳定年法というのは、年齢による雇用上の差別をしない。たとえばアメリカは、ことしの一月からもうすでに実施をいたしておるが、七十歳定年というのは七十歳まで全部働くというのではないのだ。年金と雇用をつなぐということが前提で、年齢を理由として雇用上の差別をしないということが前提なんだ。(「それは賛成だな」と呼ぶ者あり)荒舩委員にしたって年をとっているわけだから、もう定年を過ぎて、しかもどんどんああいう大きな声が出るわけだから、意思と能力のある者は活用していくということが八〇年代の労働力活用の姿であって、年金は先行き取る、そういうことは間違い。雇用の問題を、私が言うように、六十歳定年、六十歳以上は差別しないというふうな保証をつけると、そうすると、年金をもらう年齢が下がるのだから、あるいは在職老齢年金の制度もあるのだから、年金の給付が下がっていくのだから、減っていくのだから。年金だけをやるからいけないのです、そういうことは。  労働大臣、あなたは厚生大臣と同じ選挙区だろうが、厚生大臣に負けぬような雇用上の政策についての答弁をしてもらいたい。
  64. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 大原委員御指摘のように、今後急速に高齢化社会に入っていきます中で、どのように雇用を確保していくかというのは非常に大きな問題でございまして、したがいまして今回の年金の問題等を通じましても厚生省と種々協議を重ねてきておるところでございます。  当面、昭和六十年度までに六十歳定年を一般化をいたしますように第四次の雇用対策基本計画でも策定をいたしまして、いろいろな角度からあらゆる努力をいたしておるところでございます。しかし、それは六十歳で終わるということではありませんでして、すでに企業によりましては労使いろいろ話し合いをいたしまして、六十歳を超えてもいま御指摘のようにその意欲と能力のある方はどんどん働いてもらうというふうに、だんだんと高齢者の雇用、労働を大事にしていくという方向に向かって動いておるわけでありまして、政府といたしましてはいろいろな対策を講じ、アメリカのように年齢で差別をしないように法律で持っていくという仕組みをとっておる国もございますけれども、国によって労働慣行がいろいろでございますので、終身雇用、年功序列で動いていくということが非常に大きなウエートを占めております日本の国におきましては、労使の積極的な話し合いの中で六十歳の定年を一般化する、さらに六十歳にこだわらず、六十五歳に向かって努力を積み上げていくことによりまして国全体の一般化を図っていくようにいたしたい、こう考えておるのでございます。特に先般の閣議におきましてもお願いをいたしまして、先生御指摘のようにこの高齢者対策をどのように進めていくか、これは政府全体の大きな課題でございますので、厚生省や労働省やあるいは生涯教育といった面では文部省や、さらにお年寄りをどのような生活環境に置くかということでは住宅問題などの建設省も関係があることでございますし、各関係省庁一緒になって高齢者対策を講じていくための懇談会を出発させていくようにお願いをしたい、こういう提案もいたしまして取り組むことにいたしておりますので、今後はさらに各省庁の壁を乗り越えて、先生の御指摘のような方向に向かって努力を重ねていきたい、このように考えておる次第でございます。
  65. 大原亨

    大原委員 いまの最後の高齢者対策については、各省の壁を破って閣僚が衆知を集めるようにする、有機的な政策を立てる、こういうことですが、これはぜひ必要だ。ただし、私が注文をつけておきますが、六十歳以上の労働力を生かすことをどうするかという——五十五歳の定年が大企業中心で四十数%あるんですから、現実に。そしてそれをやめている者は、六十を超えておる人もそうですが、大部分仕事についているのです。ついているのですが、これは雑役的な仕事なんだ。いままで一生やってきた仕事をやるという仕事ではないのです。ヨーロッパでは先任権というのがあって、経験年数の長いのは尊重されるのです、意思と能力があれば。そういう慣行があるわけだ。アメリカは七十歳定年を設けておる。日本が人事院を含めて一番おくれているのです。自治省も、国家公務員の総務長官も、これは時間がないから言わないけれども、いかにして首を切っていくかということだけじゃないか。そんなことをやっていて公務員の民主的な改革ができることはない、行財政改革の基本である、こういうふうに私は申し上げておきたいと思う。  いまの質疑応答を通じまして、たとえば覚書問題とか、あるいは年金については責任官庁がない、一元的な行政能力が欠如しておる、プロジェクトもない。そういうことで、これは一般質問等踏まえて議論を進めていくということにいたしますが、たとえば児童手当の問題でも、覚書の問題を究明いたしますと、これはどっちも残す、前向きに改善をして残すということなんだから、こういうことについてはだんだんと中身がわかってまいりました。これをひとつ、十分ではありませんけれども——医療問題の改革は、どこか意識の共通の場を設けないと、健康保険の改正案は絶対に進みませんよ。また流れますよ、宣言しておきますが。会期延長はできないわけですから、衆参両院あるのですから。ですから、基本の問題について合意を得たならば、これを実行する体制をきちっとつくる、そういうことでなければ、この予算というものは八〇年代当初の予算に値しない、そういうことを私ははっきり申し上げておきまして、今後の課題を残しながら質問を終わりたいと思います。(拍手)
  66. 田村元

    田村委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  67. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  68. 正木良明

    ○正木委員 事前に質問を通告いたしておりますが、それに入ります前に、政府が昨夜発表されたオリンピックに対する考え方についてお尋ねをいたしたいと思います。  非常に発表の内容は巧妙な言い回しというか、微妙な言い回しというか、玉虫色というか、あれだけではちょっと判断のできないような内容でございますので、確かめておきたいと思います。  あれは日本オリンピック委員会JOC判断に任せるようにとられるような内容でございますが、モスクワ・オリンピック参加するかしないかという問題はJOCに一切任せるという内容なのかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  69. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問の点でございますが、昨日政府の意向を日本オリンピック委員会に伝えたわけでございます。それで、この内容は、JOC自主性を尊重するというたてまえで意向を伝えたわけでございます。  オリンピックというものは、平和と友好の祭典でございますので、そういう原則で世界の祝福のうちに開かれるべきだ。ただ、いまの現状は、ソ連のアフガニスタン軍事介入ということからオリンピック参加の問題、あるいは世界のそのほかの政治情勢国内世論、非常に厳しい世論等があるので、政府としては参加するかどうかという問題につきましては重大な関心を持っておる。ただし、オリンピック参加するかどうかというような問題につきましては、これは日本オリンピック委員会がいま申し上げました事態を踏まえまして、各国の国内オリンピック委員会との打ち合わせ、協議、あるいはIOC理事会総会等ございますので、その事態を踏まえまして、その場でいろいろな主張があると思いますので対処してもらいたいということで、きのう意向を伝えたわけでございます。  これに対しまして、JOCの方でも、オリンピック大会というのは、世界の若人が友好と平和裏に安心して競技のできる雰囲気と状態のもとで開催されなければならないと確信をしている、そういうことが確保できるように強く国際オリンピック委員会に要請するんだという見解を発表されたわけでございまして、このJOCの見解と政府の見解というものは方向も私は一致するというふうに見ておるわけでございますし、文部省当局も、総理の指示によりまして日本オリンピック委員会とは十分連絡をとっておられるわけでございますので、今後参加するかどうかという問題は、最終的には五月十九日に申し込みの期限がございますので、そこで申し込みの最終の期限が来ます。その間にまだ大分時間がございますし、国際的な状態も流動的なことがございますので、最終的に政府の見解をどうするかということはいまは何も決めておらぬわけでございまして、きのう申し上げたようなことをJOCに言ったわけでございますので、JOCとしては十分政府の見解も考え、世界情勢も踏まえ、また世界各国の国内オリンピック委員会と相談をして、平和裏に友好裏にオリンピック大会が開かれるという努力を今後されるわけでございますので、今後まだ時間がございますので、また御相談を受けるような機会もあるかと思いますが、できるだけJOC自主性を尊重するという態度で意向を伝えたわけでございます。
  70. 正木良明

    ○正木委員 JOC最終的な意思決定は別として、こういう発表をなさった政府の意思としては、私はやはり行間に不参加の方が好ましいというふうな意思が働いているようにも思うのですが、その点どうですか。簡単に答えてください。
  71. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  きのうの意向は参加不参加とかそういうことには一切触れていないのでございますが、オリンピックの精神そのものから言えば、いまの世界情勢は、ソ連の軍事介入をめぐりまして、世界じゅうがこぞって平和裏に祝福してオリンピックが開かれるというような情勢ではないじゃないかという判断に立っております。
  72. 正木良明

    ○正木委員 発表文の中には参加不参加ということは書いてないけれども、しかし、「モスクワ・オリンピック大会について、政府はソ連のアフガニスタンへの軍事介入、これに対する厳しい国際世論等に重大な関心を払わざるを得ない。」こう言っていますね。しかも、総理が施政方針演説の中で、オリンピックとは名指しはしていないけれども、「ソ連のアフガニスタンに対する軍事介入」云々ということについて非常に非難の言葉を連ねられて、「政府としては、この重大な事態の解決に資するため、米国との連帯を中軸として、欧州その他の友好諸国との協調のもとに」云云、そうしてさらに、「それがたとえわが国にとって犠牲を伴うものであっても、それを避けてはならないと考えます。また、わが国として、他の友好諸国の措置を阻害し、あるいはその効果を減殺するようなことは、いたさないつもりであることもあわせて明らかにしておきたいと考えます。」こうおっしゃっていますね。  御承知のように、アメリカとの友好関係を中軸として考えるということであり、かつアメリカは明らかにモスクワ・オリンピックに対しての不参加という意思を明確に表明しておる。  そうすると、こういう事情を考え合わせますと、この発表文は明らかにJOCという自主的な委員会の意思は尊重するけれども政府の意向としては不参加になってもらいたいという意思だと、これはあたりまえに考えればそうとしか解釈できないのですが、どうですか。
  73. 伊東正義

    伊東国務大臣 ここの文に書いてございますように、日本オリンピック委員会外国国内オリンピック委員会と緊密な連携をして適切に対処してほしいということは、IOC総会が開かれるわけでございますから、そこでいまおっしゃったようないろいろな議論が出るわけでございまして、第一次的には、どういう議論があるかというときに、日本政府は、こういう厳しい国際世論等については重大な関心を払っておるのですということをここで言ったわけでございまして、先ほど言いましたように、オリンピックというのは世界の各国から祝福されて平和裏に友好裏に開かれるということが前提でありますれば、いまの状態はなかなかそこまでは行っておらぬでしょうということをわれわれの認識としてJOCに申し上げたわけでございます。
  74. 正木良明

    ○正木委員 アフガニスタン問題では、国連では圧倒的な非難決議が議決されているわけでしょう。そういう背景があり、しかもアメリカは行かない、不参加ということをはっきり明言しており、そのアメリカときわめて協調的にやっていくのだ、彼らの意図というものを阻害するようなことはいたしません、減殺するようなことはしない、こう言っている。これはどう読んだって、できたら参加しないようにしてもらいたい、政府がいま参加するなとは言いにくいから言わないけれども参加してもらいたくないという意思だと私は判断せざるを得ないと思うのです。これは余り押し問答してもしようがありません。  そこで、政府としては不参加の意思というものが非常に濃厚であるという前提を私は持っておるのですが、仮にそれと全く反対の決定をJOCがした場合、要するに参加するというふうに決めた場合、政府はそれに対する何らかの措置をとるのですか。たとえば旅券の発給をしないとか、補助金を出さないとか、選手団の派遣費を出さないとか。そういう点はどうなんですか。
  75. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答えを申し上げます。  意向を決めまして、JOCに意向を伝達したというのがきのうまでの段階でございまして、これからIOC理事会総会議論が出る、あるいは世界各国の政府がどう考えるか。いまのところは、たとえばアメリカでも、アメリカ政府アメリカのUSOCに対しまして、IOCの場でたとえばボイコットでございますとか延期とか、そういうことを主張してくださいということを言っているわけで、政府自身がどうということを、それに対しまして旅券を出すとか出さぬとか、そういうふうなことは私はまだ聞いておらぬのでございまして、日本政府もこれからIOCの場で決定をするだろうし、あるいは世界情勢で、世界政府がどういうことをするとかいうことを見守りながら、JOCが将来どういう結論を出すかということを見守った上でそういうことは考えていきたい、どうするかということは判断したいということで、まず第一段階としまして申し上げただけでございまして、いま先生がおっしゃるようなことはまだ今後の問題でございますので、態度を決めておりません。
  76. 正木良明

    ○正木委員 そうするとその答弁は、一切JOCの決定を尊重するということでもなさそうだな。JOCの意思決定というものを絶対尊重します、仮に政府が予想しているような事態にならない、決して好ましいと思っていない参加という問題がJOCにおいて決定されたときには、そのJOCの意思にわれわれは従います、こういうことですね。もうそれしか方法はないということですね。
  77. 伊東正義

    伊東国務大臣 いまの御質問は、これはもう将来の問題でございますので、そういう政府が考えていることと望ましくない方向で決まったときにはどうするか、こういうことでございますが、私どもは、政府JOC関係をなるべくそういうようなことにならぬように、よく十分事前に打ち合わせもできるということの関係を保っていくということが望ましいことじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  78. 正木良明

    ○正木委員 いまの答弁から先ほどの答弁も総合して、政府の発表とJOCの発表とは大体方向が一緒だとおっしゃっておったし、同時にまた、政府が発表するとすかさずJOCがそれに対応して発表しましたね。これは事前に御相談があったとしか考えられないわけなんだけれども。そうすると、今後はやはり政府の考えている方向にJOCを説得して、その方向へ持っていこうという考え方であるというふうにしか私は解釈できないのです、これはいま議論してもしようがありませんが。私は、最終的にJOCの意思を尊重するというわざわざこんな発表なんかする必要はなかったと思うのですがね。それをあえて発表したということについては、政府の意思をある程度JOCの決定に響かそうという考え方があったんだろうと思う。そうすると、これが時日を経過いたしましてIOC理事会が終わったり、またあの内容を検討したりしながら、五月十九日ですか、エントリーの締め切りまでにまた何らかの意思表示をしますか。
  79. 伊東正義

    伊東国務大臣 いま先生が前段におっしゃいました、JOC政府の考えのとおりに持っていくのだという御発言があったのでございますが、そういうつもりを申し上げたのじゃないのでございまして、あくまでそれはJOC自主性を尊重するというたてまえは変わらぬのでございますが、いま先生がおっしゃいました最後の点で、もう一度何か言うかということでございますが、これはそのときになってみましてJOCともよく相談をしなければならぬことが出てくるというようなときには相談もしますし、政府が何か言う必要があるということが起こればあるいは意思表示をすることもあるかもしらぬ、いまの段階ではまだ、するともしないともはっきりは申し上げかねるということでございます。
  80. 正木良明

    ○正木委員 いろいろ複雑な国際情勢問題等もあり、これ以上聞いても恐らくお答えなりにくいだろうと思いますから、これはこれで終わります。  さて、問題が変わりますが、現在の大阪国際空港、伊丹の空港ですが、これの現状、航空輸送需要の推移、今後の国際化社会への対応、こういうことから、関西に新しい国際空港を設置する必要性が全くないとは言えないと私は思うのです。しかし、関西新空港を建設するに当たっては環境にまず悪影響を及ぼさないこと、そうして地域の福祉向上に役立ち、地域の繁栄と共存できるものであること、こういうことを見定めなければなりません。  そこで、関西新空港建設については、昭和四十三年度以来調査が続けられて今日に至っておりますが、このような地域社会に対して環境的にも経済的にも大きな変化をもたらす大プロジェクトは、何よりも地域住民の納得と合意が必要であると私は思うのです。したがって、新空港予定地の周辺の住民が新空港建設の可否、いいか悪いかを判断する重要な材料というものができるだけたくさんなければならぬと思う。そういう豊富な情報が必要であるという立場からちょっと質問をしてみたいと思うのです。と申しますのは、近々、空港建設計画であるとか環境アセスメントの結果であるとかいうものが提示されて、地元の大阪府、兵庫県、和歌山県の三府県と協議が行われるということを聞いているものですから、そのことについて特に言っておきたいのです。  そこで、まず一番最初に大前提として確認しておきたいことがあるのです。関西の新しい空港は国策として国の責任において建設するものである、こういうふうにはっきりとお考えになっていますか、運輸大臣。
  81. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 関西国際空港については、昭和四十九年八月に航空審議会の答申を受けて以来、泉州沖候補地について環境影響等の調査を鋭意進めてきておるところであります。今後は調査成果を踏まえて、航空審議会の意見を徴した上で、できるだけ早く空港計画案を、環境影響評価案を取りまとめ、関係府県、大阪府、兵庫県及び和歌山県でありますが、意見を聞きまして、関係省庁との協議が調えば具体的な計画を決定いたしたいと考えております。
  82. 正木良明

    ○正木委員 運輸大臣が航空審議会へ諮問したんだから、国の責任だと思っておるわけですね。そのことです、聞きたいのは。思っていますね。国の責任でやりますね。それだけ答えてください。
  83. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 関西新空港は関西においての日本代表的な空港になるわけでありますから、もちろん地元住民の合意を得まして、環境等も十分調査いたしまして、国の責任で執行しなければならないと考えております。
  84. 正木良明

    ○正木委員 それじゃ、いま考えられている事業主体というのはどういう考え方が進んでいますか。たとえば国の直轄でやるのか、成田のように公団方式でやるのか。また、第三セクターという方式の問題も出ているようでありますが、どういうお考えですか。
  85. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 建設主体につきましては、まだいろいろ検討中でございます。第三セクターという考え方もございますし、関係府県の出資その他を受けまして、新しい空港に対するあり方、いろいろいま公団をつくるという考え方も、最近公団、事業団の整理等も非常に厳しい時代でもありますから、もう少し詰めて考えてまいりたい、かように思っております。
  86. 正木良明

    ○正木委員 いつ決まりますか。
  87. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 まだ工法その他いろいろ問題等がございますので十分そういう面を詰めまして、答申を受けて決定をいたしたい、かように考えております。
  88. 正木良明

    ○正木委員 あなたの前任者の森山運輸大臣は、昭和五十四年度中に出すと言っているよ。大阪湾サミットというのが行われたときにそのことをはっきり言っていますよ、記者会見の席上でも。いつかわからぬじゃ困るな。工法の問題だってその問題だって、やはり地元と協議するために必要なプランでありましょう。どうですか。
  89. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 この三月ごろまでには大体の工法その他についての答申を受ける予定ではおりますが、まだそれぞれの埋め立て工法あるいは浮体工法、こういうものについていろいろ詰めていただかなければならぬものですから、それをお待ちしているところでございます。
  90. 正木良明

    ○正木委員 重ねて運輸大臣、大体あなたの頭の中にあるスケジュールというのはどんなスケジュールですか。これも同じく大阪湾サミットで大体森山運輸大臣が話しているんだけれども、また河本政調会長もお話しになっていますが、五十五年に閣議決定して五十六年に着工して六十三年か六十四年に開港すると言っているのは、これはどうですか。
  91. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 大変大型の空港でございますから、工法その他がまだまだ十分審議されておりません。したがって、工法が決まってからでなければ、五十五年あるいは五十六年、五十七年というような期間をはっきり決定することはできないと思います。
  92. 正木良明

    ○正木委員 埋め立て工法、浮体工法、この工法の問題については後でまた質問を改めてします。  そこで、あなたのお話では、でき得る限りこの二月ごろまでに地元と協議ができればしたいというお話ですね。できないかもしれないけれども、できるだけそういうふうにしたい。ところが、地元では、この空港計画であるとかアセスメントの結果であるとかというのは非常に重要である、これは何よりもその空港設置の可否を決める上においてはきわめて重要であることはもちろんでありますけれども、これだけでは空港設置の可否を決めるわけにいかぬ。要するに、地域住民にとっては地域整備という問題がどのようになっていくのかということの青写真が同時に示されなければならぬということをやかましく言うておるんですが、これはもうすでに御承知のように、昨年の十二月、大阪、兵庫、和歌山三府県がこのことについて国に要望書を出しております。同時にまた、政府与党である自民党の国土開発近畿圏委員会も同様趣旨の要望を出されておって、この中では地域整備の問題も同時に提案してもらいたいということを言っているんですが、この点どうですか。
  93. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 この空港建設の場合の周辺地域整備については、地方公共団体の創意と工夫に期待するところでございます。国としてどの程度協力すべきかについては、新空港が大規模な事業であり、その周辺地域に種々の面で影響を与えるものであることから、公益、根幹的な交通施設などについての政府役割りも考慮の上、府県がまとめられる周辺地域整備計画の内容を見て十分検討いたしたいと考えております。  なお、阪和地域の広域、根幹的な交通施設については、昭和五十二年度から国土庁、通産省、建設省及び運輸省等において共同で調査を実施しているところであります。  三府県知事からの要望については、関係省庁とも十分協議して具体的に諮ってまいりたいと存じます。
  94. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、地域整備の問題についてはまだまだ時間がかかるから、とりあえず地元と協議をするのは、空港計画と環境アセスメントの結果だけで協議を始めようとしているわけですか。
  95. 松本操

    松本(操)政府委員 事務的手続というような面でございますので、私がお答えいたします。  現在やっております環境調査、それから空港基本計画は、大臣がお答え申し上げましたように、年度末を目途に最終の詰めをしたい。地域計画につきましては、これもただいま大臣からお答え申し上げましたように、地元のいろいろな計画というものを踏まえた上で、国の協力すべき面あるいは国がみずからやるべき面、振り分けをしていく必要もあるわけでございますので、この点につきましては多少時間がかかるかもしれません。ただ、いま先生の御質問にもございましたように、地元の方としてはその三位一体となって初めて議論ができるのではないかという非常に強い御希望のあることも十分承知しておりますので、タイミングが余りちぐはぐなことにならないように、できる限りの努力をしていきたい、このように考えております。
  96. 正木良明

    ○正木委員 タイミングが余り違わないということは、二、三カ月ということですか、半年以内ですか。
  97. 松本操

    松本(操)政府委員 できることなら同時にやりたいとまで思っておりますが、そこに多少の差が出ることは地元の方に御了解を願おうか、こういう考え方でございます。
  98. 正木良明

    ○正木委員 この三府県のうち、一県でも反対だったらやめるのか、どうするのですか。
  99. 松本操

    松本(操)政府委員 このプロジェクトは、冒頭大臣がお答え申し上げましたように、地域社会との調和の上に初めて成り立つものでございますので、一府、一県といえども基本的に反対ということであるとすれば、プロジェクト全体を考え直さなければいけないのではないか、こう考えます。
  100. 正木良明

    ○正木委員 やめるということですな。  大阪湾の泉州沖に関西新空港をつくることに地元が余り賛成でなければ、うちへ下さいという長崎市と名古屋市の運動があるそうだが、聞いていますか。
  101. 松本操

    松本(操)政府委員 かつて大阪湾周辺で、現在でも形式的にそのようになっておるわけでございますが、非常に激しい反対の意向がありましたときに、それではわれわれの方でいかがだというふうなお話が、どれほど真剣に詰めた上での御提案であったかどうかは存じませんけれども、そういうお話があったことは耳にいたしております。
  102. 正木良明

    ○正木委員 そこで、この地域整備の問題については、いま鋭意協議を進めているということでございますが、国土庁による調査として、空港アクセス等について、五十二年度から五十四年度にわたって調査がされたと聞いておりますが、どの程度進んでおりますか。その関係省庁として、国土庁、運輸省、建設省、通産省、農林水産省、五省でやられておるようだけれども、これはどの程度進んでいますか。
  103. 園田清充

    ○園田国務大臣 お答えをいたします。  いま御指摘のございました調査が、五十二年から三カ年計画で進められておることも事実でございます。同時に、本年度末をもって一応国土庁として、地域社会に経済的また環境的にいろいろな点でどう影響してくるのかという調査を進めておりますが、さっき正木先生からも御指摘がございましたとおり、実は本年度の予算の編成時に関西から、特に泉南の地域からお見えになりましたときに、私どもの方からお願いをいたしましたことは、国は国としていろいろな調査をし検討しているが、問題は、皆さん方も地方議会の代表であるから、地域住民の利益ということ、同時に、これが泉南地域の繁栄にどうつながるのかということは、ひとつお互いにテーブルに着いて話し合いをして、みんなが納得するような計画を立てようじゃありませんかということで、まず話し合いのテーブルに着いていただくということを、実は私どもの方からお願いした経緯がございます。  というのは、先生御指摘のとおり、泉南市だけが市議会で反対の意思を撤回されまして、あとは全部まだ反対の意思がそのままでございますので、まず調査の結果を踏まえ、地元が何を求めていらっしゃるかを同じテーブルに着いて話し合いをし、後で異論の出ない空港計画を立てたいと思うので御協力をお願いしますということで、申し上げております。
  104. 正木良明

    ○正木委員 いや、その辺がちょっと問題なんですよ。どうも国の方は、関西の経済的な地盤沈下ということが叫ばれているときに泉南に国際空港を持っていけばそれで地元が繁栄するだろう、だから、国は積極的に持っていきたいという意思よりも、地元の要望が強いから、地元がそのことで地盤沈下を防ぐことができるか、地盤沈下というのは経済的な地盤沈下ですよという、ちょっと恩着せがましいところがあるんだな。だから、いまの国土庁長官みたいな話が出てくるのです。  確かに地元は、もう一斉に反対決議をしているわけです。地元に一番近い泉南市というところで反対決議を撤回したのです。大阪府を初めとして、まだ反対決議はずっと残っておるのです。あなたの言葉をそのまま素直に聞けば、まず反対決議から撤回してテーブルに着いてくれよという話のように聞こえるのですが、それからでないと話は進みませんか。要するに、この周辺整備の青写真はできませんか。これと同じことを、同じように協議にあずかっている運輸大臣、建設大臣、通産大臣、農林水産大臣、一音でいいから言ってください、どこまで進んでいるかということを。
  105. 園田清充

    ○園田国務大臣 お答えいたします。  地元が反対だからということで私どもは関西に空港を云々ということではなくして、皆さん方がどの辺について地元の発展とこの空港とを結びつけ、同時に公共的な事業をどの辺に御要望になっていらっしゃるか、いろいろな面から検討したいと思うので、反対は反対の意思でも結構ですが、どの辺に問題があるのか、その辺をひとつ同じテーブルに着いて話し合いを願いたいということを申し上げているわけでございまして、決して国の責任を回避しているわけではございません。その辺、御了承賜りたいと思います。
  106. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 空港建設に当たりましては、十分地域の住民の方々、自治体の御賛成をいただきまして……。
  107. 正木良明

    ○正木委員 いや、そのことじゃなくて、どの程度進んでいますか、地域整備の関係省庁の協議は。
  108. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 まだいまのところ、いろいろな工法その他の調査依頼をしておる審議会の答申を待っておるところでございますから、御相談は、全く各課長級程度で相談をしているという程度でございます。
  109. 正木良明

    ○正木委員 いや、恐らく後も同じでしょう、建設省も。要するに、こんなていたらくなんですよ。航空局長に言わせると、この年度内に地域整備大綱までできたら一緒にやりたい。ところが実際、関係省、この中には自治省も環境庁も入りますが、七省庁になるが、この関係省庁会議というのがいまあるのです。この間の一月二十一日も四回目か何かの会議をやっていますね。これはいま運輸大臣がおっしゃったように、まだ課長クラスなんです。三月の末にその答申を出そうというときに、答申というか地元協議のプランを出そうというのに、課長クラスでぼつぼつぽつぽつやっている。  総理、これはほんまにえらい問題でっせ。それはそんな簡単なものやおまへんのや。だから、これは次官までいってもらいたいけれども、次官とは言わぬけれども、少なくともこの地域整備大綱をつくるための非常に強力なメンバーでないと、これはできません。地元が反対しているから相談は進めないのだというようなそんな思い上がった考え方では、いつまでたってもこの問題は解決しませんよ。これは総理、どうです、とりあえず局長クラスまで格上げしませんか。それは各大臣ではよう決めぬわな、それは大平総理、言うてあげんと。
  110. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ええ、検討いたさせます。
  111. 正木良明

    ○正木委員 あんたが検討いたさせますじゃ、検討いたさせる方にも聞こう。七省庁の大臣、どうする、一言ずつ順番に。
  112. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えいたします。  経過はいまお話しのようでございますが、建設省は交通量調査をいたしておりまして、交通流動構造調査と言っておりますが、なお一部が五十五年度に残っておる状況でございます。建設省はいままでも空港につきましては相当前向きにやってきておりますので、今回運輸省の空港計画の進捗を見ました場合、関係府県と協力をいたしまして所轄施設整備の推進を前向きに検討いたしたいと思っております。  なお、昨年関西のサミット会議がありまして、渡海大臣が出席をいたしておりますので、経過は十分承知いたしておるつもりであります。
  113. 正木良明

    ○正木委員 局長に昇格できませんか、関係省庁会議は。
  114. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 現在まだ関係省庁連絡会議そのものが発足していないように聞いておりますが、そういう段階で十分各省と御相談をいたしたいと思います。
  115. 正木良明

    ○正木委員 じゃ窓口の国土庁。
  116. 園田清充

    ○園田国務大臣 お答えをいたします。  課長クラスでいま事務的に詰めておるということでございましたが、近々、いま総理からも御答弁がございましたとおり、私のところを窓口に、一本にしぼって、そしてこのプロジェクトの問題に取り組んでまいることにいたしたいと思います。さよう御了承願いたいと思います。
  117. 正木良明

    ○正木委員 もう大分時間がたってしまいましたから……。  そこで、事業主体がまだはっきり決まっていない、直轄でやるとも、公団方式でやるとも、第三セクターでやるとも決まってない。公団は宇野長官が許さぬだろうから、恐らく第三セクターになるかもしれませんがね。いずれにしても、新空港の建設費というのは膨大なものになるだろうと予想される。五キロ沖合いにつくるのですからね。成田のように内陸じゃありませんから。しかも水深は二十一メートルぐらいですから、これは大変な工事になる。  そこで、まず運輸大臣にお聞きしたいのですが、大体埋め立て工法では幾らぐらいかかるか、浮体工法なら幾らぐらいかかるか、概算わかりませんか。
  118. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  現在、工法につきましては航空審議会の小委員会におきまして鋭意技術的な面を詰めている段階でございますので、現時点で幾らということをはっきりと申し上げる段階ではないと思います。(正木委員「概算でいい」と呼ぶ)  それでは概算的な問題でお答え申し上げますと、埋め立てということで私どもがある地方建設局に試算をさせましたところによりますと、一応空港の面積を千二百ヘクタール程度、こういうふうに仮定をいたします。これはいろいろ前提がございますが、まずそういうふうに仮定をいたしまして、約一兆三千億というふうに考えております。ただし、この金には、連絡橋あるいは上物、こういうものは含んでおりません。  それから、浮体につきましてはさらにむずかしいわけでございますが、運輸省の船舶技術研究所及び港湾技術研究所が行いました調査の結果に基づきまして試算をいたしました。ターミナルエリアとかあるいはハンガーとか、こういうものがない、したがって空港面積が六百ヘクタール程度しかない、わりあい小さい形で計算いたしまして、約一兆四千億というふうにはじかれております。  したがって、これもやや冒険ではございますが、単純に一ヘクタール当たりの単価というものを出してみますと、埋め立て工法が十一億、浮体工法が二十三億、こういうことでございますが、これは建設費の中の一部でございますし、大きさもいま申し上げたように倍ぐらい違っております。  さらには、空港を開港しました後の維持運用費と申しますか、そういったようなものについての詰めも必要になってまいるかと思います。現時点では、いま申し上げた数字は、申しわけございませんが余り参考になる数字には現在のところなっていないというふうに考えます。
  119. 正木良明

    ○正木委員 この金はどこが持ちます、運輸大臣。
  120. 松本操

    松本(操)政府委員 まあ一兆幾ら、あるいは上物を入れてもっとになろうかと思いますが、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、建設主体をどういう形のものにするかというのが現時点でまだ正確に定められません。一つの例といたしまして、成田空港あたりの公団の例で言いますと、二割ないし三割が出資でございまして、他は借金という形になります。でございますから、公団であるかあるいは第三セクターであるかというふうなことを別にいたしましても、まあやはり二、三〇%あるいはやや多いかもしれませんが、その程度の出資金というものと、他は財源をいずれに求めるかは別といたしましても、借金という形で運営されていくということではなかろうか。  したがって、先ほどの工費の中に、私言い落としましたが、金利負担等も入れませんと、全体の正確な工費は出てこないというふうに考えます。
  121. 正木良明

    ○正木委員 それを入れますと大体埋め立て方式で二兆かかると言われている。大体これは概算ですけれども、これはまだまだふえてくるかもわからぬ。  そうすると、いま松本局長が御説明になったように、成田の公団方式でやるということになって二〇%の出資、あとの八〇%を財投でやるということになってきますと、これは返していかなければいけませんわ。これが「まあどれぐらいの長さで返すかということで変わってくるけれども、仮に二十年をとるか三十年をとるかで大分変わってくるけれども、しかし、少なくとも大体成田の現在の離発着料、これが一・五倍から二倍になるというふうに計算されているんだが、間違いありませんか。
  122. 松本操

    松本(操)政府委員 先ほど来私がお答え申し上げております数字はきわめて前提を置いた試算でございますので、そういうことを前提のまま据え置いて勘定いたしますと、現在の成田の現行着陸料のたしか五割増しから、何年によるかによりますけれども、もう少し多い着陸料になるかもしれない。ただし、それは着陸料だけに依存するという計算でございますので、テナント料等にどの程度かぶせていくかというあたりの問題との絡みがございますので、いま正確なお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  123. 正木良明

    ○正木委員 ですから、どうしてもここで発想として出てくるのは、地元の発展につながるという意識がありますから、もう何しろ宣伝がすごいのですよ、地元では。空から金が降ってくるような話をするのですから。そんな、絶対金は降ってこぬ、排気ガスが降ってきても金は降らぬと私はやかましゅう言うておるんだが、どうしてもここで発想は、地元の地方自治体に対して一部費用負担を求めてくるということになってくると思うのですがね。これはまだわからないけれども、くぎを刺すという意味で申し上げておきますが、地元の公共団体としてはこれは負担できません。そんな余裕のある金はありませんわ。  同時にまた、これは法律的に考えても、空港整備法によって、これは国際空港ですから第一種空港ですよ、第一種空港というものは国が全額費用を負担せねばいかぬことになっておる。これは地元自治体はもう金を負担できませんから、その点念を押しておきますよ。また、そんな理由はないというふうに私は考えておるわけです。わかったらわかったと言ってください。
  124. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 成田空港も一種空港で公団方式をとっておりますので、必ずしも先生のおっしゃるようなわけにはいかぬと存じます。(正木委員「どういうこと、地元へ負担を求めるか」と呼ぶ)まあ第三セクターその他いろいろ考えていかなければならない、こう考えております。
  125. 正木良明

    ○正木委員 それだったら法律違反になるやないか。これはどう言おうと私は反対しますぞ、そのときは。  それから、公害の問題が大変です。環境庁の長官、ひとつ聞いておってください。  ボーイング747、要するに747ジャンボです。あいつが一回飛びますと、排気ガスが大体自動車千五百台分出るというわけです。特に窒素酸化物ですね。大体、空港が予想しているのは二本の滑走路と補助滑走路一本、三本です。これをフルに使うと離発着二十七万回です。これはボーイング747ばかりじゃないけれども、二十七万回ということで計算すると、窒素酸化物が六千二百二十一トン。これの環境調査のために六十九測定局が建っているのですが、これが全部オーバーです。制限以上です。ところが、国が窒素酸化物の基準緩和をしましたな。この結果、六十九局が二十六局まで減った。ぼくはあの基準緩和には反対ですけれども、こういう状況があるわけです。  これとは直接関係あるようでないけれども、事のついでにちょっと聞いておきますが、環境庁長官、これは公害問題でも非常に重大なのだが、あの環境アセスメント法というのはいつまでたっても出てこぬが、あれはどうするのですか。
  126. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさしていただきます。  環境影響評価法の制定は、わが環境庁に課せられました使命でございます。歴代長官が国会に提出いたすべく大変な御努力を今日までなされた次第でございますが、残念ながらついに日の目を見なかったような次第でございまして、昨年、私と上村前長官との引き継ぎ事項の中でも冒頭に取り上げられました問題でもございます。そしてまた、昨年の四月には中公審の答申も得ております。また、川崎市、北海道庁におきましては、すでに条例を制定しておりまして、今日、全国の自治体から、国において早くこの法制化をしてもらいたいという強い要請も受けておるような次第でございます。また、アメリカにおきましては、すでに十数年前にこの法律を制定いたしまして大変な成果を上げております。また、わが自由民主党の政務調査会の環境部会におきましても、去る一月二十三日におきまして、各省庁との話し合いに入ってよろしいというゴーサインをいただいておるような次第でございまして、党並びに政府部内におきましてもいろいろ検討いたしまして、早急に国会に出していただくようにさせてもらいたい、かように考えております。
  127. 正木良明

    ○正木委員 長官、いままで歴代長官がこの国会へ出す出すと言いながら、内閣官房が国会へ毎年出す「内閣提出予定法律案等件名調」、これは四回出て今度五回目、四回ともパアです。パアというのは出なかったということ。どこが反対しているのですか。どこの省庁が反対しているのですか、はっきり言ってください。その後ろにいるから、今度どないするか聞いてみるから。あなたが上村さんから引き継ぎを受けたときに、どこがうるさいとか聞いているはずや。はっきり言った方がいいです。あなたは参議院や、選挙は余り心配ない。
  128. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えさせていただきます。  政府部内におきまして真剣にいろいろ調整をさせていただいておりますので、御了承願います。
  129. 正木良明

    ○正木委員 だれと協議していますか。どこの省庁と協議していますか。
  130. 土屋義彦

    土屋国務大臣 お答えいたします。  各省と協議をいたしております。
  131. 正木良明

    ○正木委員 環境庁は今度提出予定法案二件です。この中の一つが「環境影響評価法案(仮称)」と書いてある。これは間違っていれば失礼だと思いますが、世上うわさされておるこの環境アセスメント法、事前評価法について強い反対の意見をお持ちの省庁というものは大体わかっている、こんなの法務省が反対するわけがないのやから。そうでしょう。大体建設省と通産省や。当たってなかったら失礼ですけれども、そう思い込まれたのが不幸だと思って、今度どうするかということを言ってください。そうでなければ、賛成しているなら賛成と言ってくれればいいのだから。
  132. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 私の方は、アセスメントの実施の項目に応じての調査あるいは予測の技術的な手法あるいは評価基準などに対しましてはまだ十分練れておらないのじゃないか。  ついでに申し上げますけれども、私の方自体がアセスメントの実施をしていないかと申しますと、そうではないのでありまして、電源開発立地の問題、これは非常に重要な問題ですから、五十二年の七月に省議で決定いたしまして、昨年六月、環境庁とも十分相談の上、アセスメント実施の要綱というものを作成しまして、その実施を実は指導しているところでございます。  そういう実施の上、実際の資料等が整備されてまいりまして、先ほど申し上げましたような技術的な手法あるいは評価基準等に対して大体これでよろしいというふうな判断がつくようになりますれば、もちろん必要だと思いますので賛成いたしますけれども、そういう疑点を持っておりますから、もう少し行政運用の実績を見てもらいたいということでただいま進んでおります。
  133. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 建設省は、現在たとえば高速道路の整備計画等を行うにいたしましても、やはり環境調査をいたしておるわけでございますから、この法案そのものにつきましては前向きに対処していきたいと考えております。  ただ、これを施行する場面におきまして、混乱、停滞の起きるようなことは大変困るわけでございますので、その点現在ありまする制度との間におきまして十分調整がとられるようなことを、ぜひ私どもといたしましては希望いたしておるわけでございます。  以上でございます。
  134. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、環境庁長官は非常に力まれて今度こそということをおっしゃっておりますけれども、事実本当に今度五回目なんです。これは仏の顔も三度と世間では言いますけれども、五度も見逃すわけにいかぬだろうと私は思うのですね。したがいまして、この国会中に提案できるように、通産大臣の方がちょっと問題が残っているようでございますから、よく相談して、この国会中に出すという方向でいけませんか。
  135. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 先ほど申しましたように、実際ただいまわが方でも実施しておりまして、実績を積みつつございますから、その実績を積んだ上で、大変重要な問題だと思っておりますので、技術的な手法とか評価標準がこれであればよろしいというふうな確信を持ててまいりますれば、もちろん賛成いたします。もう少し時間をかしていただきたい。
  136. 正木良明

    ○正木委員 もう少しというのは、この国会中はだめですか。
  137. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 この国会はとても。
  138. 正木良明

    ○正木委員 総理、何というか、こういうアセスメント法なんてつくると、公害反対の住民運動に何か武器を与えてしまう、ますますうるさくなるだろうという牢固として抜きがたい気持ちが頭の中にあるのです。私は逆だと思っているのですよ。はっきりしたデータが住民の皆さん方に提示されないから、そこに揣摩憶測が起こってオーバーな考え方が出てきて、反対しなくてもいいものを反対するという場合だってあり得るわけであって、むしろ権威をもって事前評価をして、これがこうなったらこうなるんです、これをこういうふうに防いでいけるんですということを住民の皆さん方に、国民の皆さん方に説得していくということ、これがぼくは民主主義の手法だと思うのですが、それとまさに逆行しています。言葉は余り適当じゃないかわかりませんが、何か敵に武器を与える、だからこんなよけいなものはつくらぬ方がいいのだという考え方が牢固としてある。これは総理、どうしますか。載せてあるやないの。これは何で載せるんね、あかんもんなら。載せといてあきまへんというのは人を食った話ですよ。しかも五回目ですよ。どうします総理、何とか調整してもらわぬと困ります。
  139. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 みんな各省とも所管に熱心に仕事に当たっておるわけでございますから、決してただいちずに反対しておるというものではないと思います。したがいまして、環境庁を中心に協議が進むように督促をいたしたいと思います。  提出案件としてその予定表には載せてございますけれども、これは今国会に必ず出すということで政府部内の意思が帰一いたしましたからあそこに提示してあるわけではございませんことは国会の方にも御説明済みでございますが、ともかくも鋭意協議のまとまるような方向に努力しています。
  140. 正木良明

    ○正木委員 官房長官、これはあなたのところでまとめたのやな。こう書いてあるのだよ。この冊子です。「この調べは、各省庁において、今国会に提出することが確定しているもの又は提出予定のもの等を取りまとめたものであり、今後件名の追加、変更等があり得る。」いいですか、「提出予定のもの」ということがはっきりと入っているじゃないか。そうすると、内閣官房では、こういう法案を提出するのだという予定を各省から言ってきたら、ただそれを機械的に載せるだけですか、どうなんですか。
  141. 伊東正義

    伊東国務大臣 お答え申し上げます。  各省庁から今度の国会にこういう法案を出したいということで希望のあるものをそれに掲上したわけでございますが、私ども議運の理事会に行きましてそれを御説明申し上げたのでございますが、この中のもので話し合いがつかないで場合によっては提案ができないものもあるかもしれません、あるいはそこに載っておらなくても話し合いのついたもので追加をお願いすることもあるかもしれませんという御了解を得まして議運では御説明をしてまいったようなわけでございます。
  142. 正木良明

    ○正木委員 しかし、現に「提出予定以外の検討中のもの」と丁寧に書いてある。それじゃどうしてここへ入れないのですか。ぼくの言っていることは、これをなくせと言っているのじゃないですよ。やってもらわなければ困るのだけれども、そんな無責任なことじゃ困るということですよ。これはやはり通産省が反対だな、確定したね。やはりよくないですよ。それは国民をばかにした話だと私は思う。まあ時間がないからいいですよ。  そこで建設工法の問題にまた戻りますが、これは恐らく工法小委員会の方に諮問をして答申を待っているから、どっちになるかまだ答えられませんという答えが返ってくるであろうと思うから、そんなことは聞きません。そこで、私のところにも両方から物すごい陳情合戦です。いわゆる浮体工法推進派、それから埋め立て工法推進派。これは先ほどお聞きになったように、埋め立てで本体だけで一兆三千億、浮体工法でも面積は少ないけれども同じような額がかかる。これだけの大きなプロジェクトというのは大変な利権です。したがって、私が心配するのは、この工法をめぐってまた汚職事件が起こる可能性がきわめて濃いと見なきゃなりません。起こるとは言ってませんよ、起こる可能性がある。起こってからじゃ遅い、ますます国民の政治不信を買うに違いないから、この点については厳格にそれぞれ各省庁身を処していただきたいと思うのですが、総理、いかがですか。
  143. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 当然のことでございまして、各省は十分心得て対処いたすことと思います。
  144. 正木良明

    ○正木委員 余り時間がありませんから急ぎましょう。  運輸大臣、そういう状況の中で、金の問題があり、地元の関係があり、公害の問題があり、工法の問題があり、前途多難だと思うのだが、航空局長、どうですか。羽田空港の拡張計画というのは進んでいますね。東京都が大体基本的に反対でないために実現の可能性が強いわけなんだけれども、沖合いに移転して新しい羽田空港ができる。その離発着は二十六万回にふえると言われているすごい空港ができるんだが、この費用が四千五百億ぐらいで済むらしいのですよ。これと関西新空港と同時進行でこんな大プロジェクトはやれないでしょう。この羽田の方はどのくらいの進み方ですか。これが先に手を加えられるということになったら、関西新空港は相当向こうの方へ持っていかれる、延期されると思うのだけれども、その点の経緯、見通し、話してください。
  145. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  羽田の沖合い展開計画につきましては、基本的な構想はすでに一年余前に都の方にお示しをしまして、その後、地元を交えて議論を重ねておるわけでございますが、遺憾ながらまだ完全な合意を見るには至っておりません。したがって、この作業にどの程度の金がかかるかというのは、全体の計画が定まりませんので正確な数字は申し上げられないわけでございますが、いま先生のおっしゃいましたような、おおむねそんな数字であろうかというふうにも思われます。  そこで、関西と羽田を同時並行的に行うとした場合に巨額の資金が要るので、これをどのように扱うのかという御趣旨かと存じますけれども、今後の空港整備の全般的なあり方につきましては、これから十分に想を練りまして、年次の順番で申しますと第四次になりますが、長期計画的なものを十分に詰めてまいりたい、こう考えております。その長期計画的な中で収支いかになるかというふうな点をも十分考量いたしました上で、両方の計画をどのようなあんばいで段取りをつけるかということを詰めたいという段階でございますので、申しわけございませんが、いまの段階で具体的に資金手当てをどうこうするということを直接はっきりお答えできる状態ではございません。
  146. 正木良明

    ○正木委員 経企庁長官、この関西新空港は新経済社会七カ年計画に入っていますか。
  147. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 お答えを申し上げます。  いわゆる公共事業全体として、その中に空港事業というものを見込んでおることは事実でありますが、これが関西かあるいは羽田かというふうに特定はしていないと承知しております。
  148. 正木良明

    ○正木委員 この五十四年八月閣議決定の新経済社会七カ年計画というのは、いつのやつや。今度のでしょう。前の分か。
  149. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 新経済社会というのは昨年決定をしたのでありまして、今度は暫定試算でほんの一部的な見直しをさしております。
  150. 正木良明

    ○正木委員 そうするとあなた、あんじょう読まないかぬわ。「航空輸送需要の増大に対応するため、」「関西国際空港の建設の推進を図り、」と書いてある、新経済社会七カ年計画の中に。
  151. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 最初につくりました分の中にそういう文句があることは事実でございますが、具体的にはただいま運輸当局から御説明いたしましたようになかなか確定をいたしませんので、ただいまのところそれをはっきりと計上しておるという段階ではない、こういうことでございます。
  152. 正木良明

    ○正木委員 全体の公共事業の枠の中に入っていますね。
  153. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 先ほど来御説明をしましたように、地元あるいは環境アセスメントその他が順調に入っていったときには、総枠の中で処理できるものと考えております。
  154. 正木良明

    ○正木委員 そこで運輸大臣、もし仮にこの関西新空港ができたとして、いまの伊丹空港は廃止しますか。
  155. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 新空港ができる時点において伊丹の空港を、廃止等を含めて地元の市町村の意向をよく聞きまして決定をいたしたいと思います。
  156. 正木良明

    ○正木委員 廃止を含めてそのときに検討するということであって、いま廃止するかどうかということは未決定だということですね。そうすると、伊丹空港廃止を前提として関西新空港をつくるのではないということだな。
  157. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 新空港開港の時点を踏まえながら、地元市町村の御意向等も承って廃止を含めて検討していきたい、かように考えております。
  158. 正木良明

    ○正木委員 もういいでしょう、それでやっていると、とてもじゃないけれども時間が足りませんから。  そこで、総理に最後にこの関西新空港の問題でお尋ねいたしますが、私も実は賛否を決めかねているのです。賛否を決めかねておる理由は何かと言えば、賛否を決めるに足るだけのデータがないということです。したがって、空港計画であるとか環境アセスメントの結果であるとか、さらに地域整備の大綱という青写真を同時に示すということでなければならぬと思うのです。どうかひとつ総理は、関係省庁がたくさんありますから、総理大臣として、こういうデータをそろえて、できるだけ早い機会にそれを地元に提示するというふうにお約束をいただきたいわけでございますが……。
  159. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのように、所要のデータを取りまとめまして、審議会の方をクリアいたしまして、そのデータを三府県に示して意見を聴取する手はずをできるだけ早く取り進めてみるようにいたします。
  160. 正木良明

    ○正木委員 そこで、問題が変わりますが、ことしの昭和五十五年度の経済運営、財政運営というのはきわめて重要な局面になっていると思うのです。その中で私がやはり一番心配しますのは、物価の上昇が続いてインフレになっていくということが非常に心配なわけなんですが、同時に、日本の国民というのは実に賢明だなと思うのは、あの第一次石油ショックのときと違って、今度はもう高い物は買わぬという心理や行動になってきています。あのかずのこが典型的ですわ。そうすると、物価が上がるということは、それはインフレを高進すると同時に、その裏側で非常に大きなデフレ効果が働くということになるのですね。ですから、物価の安定というのはきわめて重要なんだけれども、同時に心配しておかなければならぬことは、あの長期不況が再現されたらどうなるか、再発されたらどうなるかということなんです。  ようやく長い不況のトンネルをくぐり抜けて、景気の問題についてはある程度回復の兆しを見せてきております。しかし、私に言わせれば、経済指標だとか大資本の調査結果なんかで言うと底抜けの好景気に沸いているみたいな感じだけれども、ちょうどわれわれの家庭のふろと一緒で、上だけ熱うて下はまだ冷たいんですよ。こういう二重構造というものはやはり厳として日本の産業構造の中に、経済構造の中にありますから、ですから、いまこの政策運用を一歩誤るということになると、再びあの不況に落ち込むという危険が多分にある。民間の経済調査機関なんかは、非常に批判的な見方をするところは、とても政府のような四・六%の実質経済成長率なんというのは見込んでいません。やはり二%、三%台というのが多い。そういう状況の中で景気が失速するということになると、私一番心配なのが、もう今度、あの不況時のように大量の赤字国債を発行して、財政主導のもとに景気回復を図るというような財政に余力がないということです。これはできませんわ、とても。そう考えてくると、物価の上昇を抑えながらも常に気を配っていかなければならぬのは、やはり景気の基調を維持していくという政策が非常に重要になってくると私は思うのです。これは物価と景気の両にらみなんということをおっしゃっていますけれども、そのことを意味するのだろうと思いますがね。ところが、実際問題として、今年度予算等を通じて経済動向を見てきたときに、果たして再び不況に落ち込むような危険がないかと言えば、私は多分にあるだろうと思うのです。したがって、この景気維持ということが非常に重要な政策のポイントであるという考えを私は持っているのですが、この点総理、御意見どうですか。
  161. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私は正木さんと全く同じように考えております。財政は、いわば景気効果といたしましてはほんのわずかしか寄与しない、概して言えば中立性を持った予算になっております。仰せのように、財政に景気を支える力はない、退路を断たれた上での景気政策でございますから、よほど気をつけなければなりませんので、いま公共事業の繰り延べでございますとか若干の財政上の配慮はいたしておりまするけれども、財政は当てにならぬということでございますならば、民間部門、国内経済、輸出部門でこれを支えていく工夫を物価をにらみながらやってまいらなければいかぬわけでございまして、最終消費を堅調に持っていこうとすれば物価を安定させなければなりませんし、物価を安定させようと思いますならばインフレに対する備えのためにいろいろ気をつけなければならないという、全くあなたが言われたとおりの狭い尾根を全神経をとがらして落っこちないように運営していくという、きわめてむずかしい運営になるのではないかと考えておるわけでございます。  しかし、あなたが冒頭に申しましたように、日本人は非常に賢明でございまして、最終消費は非常に慎重でございます。きのうもここで日銀の総裁も言われたように、あの狂乱物価時代のようなマネーサプライから見ましてももう三分の一程度になりながら経済の運営を確保できておるわけでございますので、政府もまた機動的に慎重な運営をやってまいりますならば、これは越え得ない困難ではなかろうと考えております。
  162. 正木良明

    ○正木委員 時間がありませんので、相当テンポを速くして申し上げたいと思います。  そこで、原油価格が連続してずっと上がってきている、こういう情勢、それによるところのデフレ効果というものも非常に大きいだろうと私は思うのです。世界経済が、OECDの調査によったって非常に停滞ぎみですね、成長率一%なんという予想が出ている。そのほか、国内経済の動向から見ても、個人消費、民間住宅、民間設備投資、海外経常余剰、輸出も問題ですが、これは細かく言うとちょっと時間がありませんので、そういうことで問題点がある。  さて、それじゃ再びあの不況に落ち込むということになりますと、先ほど申し上げたように、景気回復を財政主導でやるような余力が財政にないということ。さらにまた、一番深刻にあらわれてくるのは雇用の悪化だ、やはりここに出てくるだろうというふうに考えますね。特に雇用の問題については、いままでいろいろと質問がありましたから余り詳しく申し上げませんが、中高年の求人倍率なんというものは、ほかのものについては比較的一を超えるような状況になっているけれども、一未満です。そういう状況の中でさらにここへしわ寄せされてくるという問題がある。さらに景気が悪くなれば当然、これは国、地方ともに税収の減、それによって起こる財政の硬直化、こういう問題が起こってくるでありましょう。そういうふうに考えてくると、非常に恐ろしい状況というものが待ち構えているのを、いま総理がおっしゃったように、片方は断崖絶壁、片方は山という細い道をたどっていかなければならぬ。これはよほど大事な政策運営をやっていかなければならぬと私は思うのです。  そこで、しからばどういう方法をもってその景気維持という問題を図っていけばいいか、このことでちょっと御質問申し上げたいのですが、個人消費の問題、これはやはり非常に重要だろうと思うのです。民間最終消費支出というものだな。これはGNPの五二%も占めるような大幅なものでございますから何とかしなければならぬ。ところが、このために物価の安定ということが必要なのだけれども、物価問題はまた後ほど申し上げますが、最近、可処分所得の伸び率が非常に落ちてきております。五十三年度は伸び率六・八%であったのが、去年の十月は五・二%、十一月は四・三%というふうに可処分所得の伸び率が落ちてきている。五十三年度は曲がりなりにも所得税減税があったからなんです。五十四年度は所得税減税が見送られましたからね、そういうことで去年はそういう可処分所得の伸び率が落ちてきている。そういう意味から、いま国税の減税をするというには余りにも財政的には窮屈過ぎると思いますから、私はむちゃなことは言いませんが、これは総理よりも自治大臣かな、今度、生活保護費との関連で地方税、住民税の課税最低限を百五十八万四千円ですか、約十万円ほど上げましたね、これをさらに上げるという気持ちはありませんか。課税最低限をせめて百六十二、三万に。
  163. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいま御質問のように、生活保護基準の引き上げに伴いまして、その人たちに地方税がかかるというのではぐあいが悪いということもございまして——いま全般的にはやはり地方も減税の時期ではないと私は考えております。しかし、そういった関係で無理算段をして、とにもかくにも百五十八万四千円ですか、それに上げたわけですね。これをもう一遍百六十万円にしろというのは、先行きの問題は別ですけれども、五十五年度の税制改正としては私はちょっと無理だと思います。したがって、御意見はよく承っておきますけれども、実施する計画はございません。
  164. 正木良明

    ○正木委員 それはそれだけ地方税に穴があくのです。たとえば百六十二万というふうにしますと、私の計算によると、三万六千円さらに上積みするわけですから、やはり三百億ほどまた金が要るのです。これだけ地方財政は赤字になるのだけれども、これはとりあえず地方交付税の特例金か何かで補てんして、大蔵大臣、利子配当分離課税というのがありますね。これは、昭和五十九年一月一日からグリーンカードでこれを総合課税にしようとしているわけです。ところが実際はこれをもうちょっと早められないですか。これをやりますと、当然地方交付税がふえてくるんです、自治大臣。所得税の増税になりますから。これで約六百億くらい出てくるのです。大蔵省の試算によってそうなっている。  ですから、昭和五十五年度はこの財源はとりあえず無理であったとしても、たとえば五十七年の一月一日からやるとしたら、ことしは五十五年でしょう、来年は五十六年、二年でグリーンカードできませんか。そうして五十九年のやつを二年繰り上げて五十七年の一月一日。だって、五十九年の一月一日から実施するということは、新経済社会七カ年計画は六十年が最終年度ですよ。五十九、六十しかこの問題については増収が期待できないわけです。せめて五十七年度から、七年というのは五十七年一月一日からでも五十七年四月一日からでもいいから、このグリーンカードを早めるという形で利子配当分離課税を総合課税にする。そのことは三二%の税率は変えないとしても交付税の方へばんとはね返ってくる。そうすれば、それは全部埋まるのです。いいですか、自治大臣、どうですか。
  165. 竹下登

    ○竹下国務大臣 グリーンカードの普及、それの趣旨の普及でこれから精いっぱいのことでありますので、早急にそのような短縮を図ることはできない、このように思っておりますが、具体的な問題でございますので、主税局長からお答えをいたさせます。
  166. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 現在、源泉分離を選択しておられます納税者の数、はっきりわかりませんけれども、それともう一つ、非課税貯蓄を使っておられる方、それから郵便貯金を利用しておられる方、これらの方がグリーンカード制度の対象となるわけでございます。源泉分離はしばらくおきまして、非課税貯蓄を利用されておる方は恐らく六千万近いと思います。それらの方々に申請があればカードを交付する、その番号を管理いたしまして、非課税貯蓄の限度枠が一人当たり三百万になっておるということを国として把握をいたす。そのために必要な機械なり組織なりをつくってまいりますと同時に、預金者の方に広く周知徹底をしなければなりませんし、金融機関の店と申しましても十数万ございます。そういうところの方々にも取り扱いについて周知を願わなければならないわけですから、いま仰せのありましたように極力実施を早くした方がいい、利子配出の総合課税というのは、長年私どもがぜひ達成しなければならぬと思ってきたことでございますから、一口も早くやりたいと思っていろいろ検討したのですが、ただいまも大蔵大臣からお答え申し上げましたように、どうしてもそういう三年間の準備を要するというのがただいままでの結論でございます。
  167. 正木良明

    ○正木委員 四年かかっておるのです。五十五、五十六、五十七、五十八。三年と違うのです。しかし一般消費税のときは早いでしたな。あれはこの間の選挙に勝っていたら五十五年度からやっているはずだ、そうでしょう。ああいうものについては手早くやるけれども、こういうものについては、私は勘ぐりたくありませんけれども、これはやはり銀行筋からの何やらかやらというやつが相当影響しているのではないか、そのために時間がかかる、時間がかかると言いながらおくらしているのではないかというふうに考えるのですが、どうしても五十九年からしかできませんか、どうですか。
  168. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど主税局長お答え申し上げましたように、できるだけ早くということで詰めた詰めた計画が五十九年ということになったわけでございますので、これを短縮するということはまことに困難なことであるというふうに理解しております。
  169. 正木良明

    ○正木委員 これはまた私の同僚が重ねてやることになっておりますからさらに申し上げますけれども、しかし少なくとも理屈から考えて、あの収支試算を拝見したときに、ここで大増税ということが考えられなければ要するに数字が合わないわけですね。そういう状況の中で当然取るべきところがら取るということで、税金をまず取るべきだと私は思うのです。恐らく一般消費税に反対した国民は、いろいろの理由があっただろうと思うけれども、いろいろな不正事件がありむだ遣いがある、さらに取るべきところからちゃんと取っていないではないかというのが反対の理由であったわけですから、取るべきところから取るということについては、この利子配当分離課税の問題は不労所得の問題に属する問題ですから、これはどうしてもやらなければならぬ問題だ。四年間も猶予期間を置かなければできないということは、それは長い方がいいに違いはないけれども、どうしても四年間置かなければならぬということはどうも私は納得ができないわけです。これはひとつ、そういう強い意見があるということを大蔵大臣、覚えておいてください。これまた、うちの同僚議員が別にやりますから。  そこで、そうすれば、まあわずかです、わずかだけれども、しかしそれは少なくとも、国税の所得税としては免除されながら地方税の住民税の所得割はかかるという人たちを救済することになるのです。ですから、これがやはり個人消費の問題にある程度の力を持ってくるものであるというふうに考えなければならぬと私は思うのです。  そのほかに、これから予定されている春闘のベースアップ賃金というものがある程度確保されなければいかぬだろうと思うのです。これはむちゃくちゃな上げ方をする必要はないだろうと思うけれども、これは労使の交渉にまたなければならぬ問題でありますし、労働組合の方も制度要求の方に重点を移して賃金の要求についてはきわめて良識を発揮されるような空気が感じられますが、ひとつ政府としてはこれをむやみに制限しないようにしてもらいたいのだが、これは労働大臣、いかがですか。
  170. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先ほど来経済の運営についていろいろな適切な御指摘をちょうだいをしておりますが、総理からもお答えがございましたように、今後の経済の運営につきましては、雇用といったような面も十分配慮して運営していただくように、経企庁ともいろいろな相談をしてきておるところでございます。  そのような中で春闘を迎えることになりますが、これまた先生の御指摘のとおり、あくまでも労使の自主的な話し合いの中で解決をしていく問題でございますので、政府自身がとやかくお話を申し上げる筋合いではございませんけれども、こういった経済の状況などを踏まえて良識のある話し合いが進められるように見守っていきたい、このように考えておる次第でございます。
  171. 正木良明

    ○正木委員 それともう一つ、福祉の問題です。福祉の問題が来年度きわめて不安な状況というものを、あの申し合わせで該当者の人たちはひしひしと感じているわけですね。やはりこういう問題をきちんと確保していくという考え方に立たない限り、これは消費に回らないで全部貯金に回ってしまいます。来年からどうなるかわからぬということになってしまいます。そういう意味では、児童手当であるとか教科書無償配付の問題であるとか、教科書無償配付を福祉の中に入れていいかどうかわからぬけれども、老人医療、これは先ほど大原委員がさんざんやった問題でありますけれども、私は別な観点から言うと、五十五年度の個人消費を支える意味からも、来年そういう大きな切り捨てをやるとか制限をするとかということをこの際撤回しておくことが必要だと思うのですが、厚生大臣どうですか。
  172. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 先ほども大原委員から御指摘になりました覚書につきましては、これは与党を含めて政府間において、やはり将来の長期的な展望に立った医療の問題、とりわけ老人医療の問題あるいは児童手当などの問題について、いろいろ認識を確認をしたということでございまして、したがって、この覚書によって将来の福祉がどうこう左右されていくという、そういう物差しでもないと私は思うのであります。お互いに心配しなければならぬ問題だ、どう工夫するかということについてお互いの認識の確認であるというふうに御理解を願いたいと思います。
  173. 正木良明

    ○正木委員 いいでしょう、ちょっと本当に時間がなくなりましたから。  法人税の引き上げの問題と関連して、実は民間設備投資の問題、これは非常に重要なんですが、民間設備投資の動向というものはいまはきわめて好ましい方向に向かっているようでありますけれども、この後、やはり景気動向によってはインフレが過熱ぎみとかなんとかということになってくると、どうしても公定歩合の引き上げ等が行われる可能性がきわめて強いと見なければなりません、これは当然の経済の原則ですから。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕 そういうときに、やはり設備投資というものについて何らかのてこ入れをしていかなければならぬだろうと私は思う。そこで、これは思い切って大胆なことを申し上げるのですが、政府が見送られた法人税の引き上げをやって、そうして片方では、省エネルギーとかなんとか特別な部分に限定しなければなりませんが、機動的にその投資減税をやるとか、そういう裏表の関係で、そういうことで民間設備投資がずっと衰えてくるというときにはそれを政策運用としてぶち込むとか、そういう点どうですか。法人税を引き上げて投資減税するんじゃ同じことじゃないかという考え方があるのかもわからぬけれども、倉成さんあたりそう思っているかわからぬけれども。法人税の引き上げというのは不公平税制の是正ということから言ったって当然だと思っているのですよ。これは、資本金一億以上のいわゆる大資本での実効税率というのはマイナスになっているという面から見たら、むしろ不公平税制の中に入れるべきであるから、当然法人税の引き上げということをやっていかなければならぬ、これは今度見送られましたけれども。それをやるということにして、さらに財源的に非常に困難であるならば、それを財源として、もし設備投資が伸び悩むというような状況があったときには投資減税を適用していく、しかもこれはきわめて時限的にそれをやっていくというような機動的な方法が必要じゃないかというふうに考えるのですが、どうですか。
  174. 竹下登

    ○竹下国務大臣 法人税の引き上げというものは、たびたび申し上げておりますように、一般的な増収措置を講じないでも、それこそ先ほど来の民間の労使を含めた努力によって増収が期待できた、自然増収というものが確保できたということによって見送ったわけでございますが、来年度以降の問題につきましては、もとより歳入歳出両面、各方面の意見を聞いて対応しなければならないわけでございますので、その中にあって法人税を初めから例外措置に置くなどという考えは全くありません。したがって、それが当然のこととして検討の対象になり得るものであると思っております。  ただ、いわゆる投資減税でございますが、私は、特定の不況業種について、いわゆる一般的な投資促進対策としてではなく、産業構造の転換を促進するための構造不況業種に属する事業者等を対象にした産業転換設備等を取得した場合の税額控除制度というものがいま残っておりますが、その他のものについて今日さらに投資を促進する、税制面からさらに促進することが必要である状況にはない、やはりそれ以上に厳しい財政事情というものから見ても、このような措置はできないというふうに考えております。
  175. 正木良明

    ○正木委員 いや、いまのように投資の意欲のあるときにそれをやれと言っているわけじゃないのです。だから、投資意欲がずっと減退してくるような時期がもし仮にあるとするならば、それを機動的に運用する、そういうことを考えたらどうか。そのためにはあらかじめ財源として法人税を上げておくということだって必要だろうということですから、それは一回検討してみてください。  それから、あとは公共事業なんですが、公共事業は伸び率ゼロ%。ここでやはり考えなければならぬのは、こういう財政状況の中で公共事業費をうんとふやせなんということは言えないし、言いたくもないわけですが、少なくともその公共投資の中で非常に選択的に、景気維持という面に限ってやはり公共事業の実行ということをやっていかなければならぬだろうと私は思うわけであります。これはしばしば予算の編成前の申し入れの中にもいろいろ言っておりますけれども、いま地価が非常に急騰してまいりまして、これがインフレの大きな原因の一つにはなっているんだけれども、少なくとも公共事業を執行するという形でさらに地価を引き上げるというようなことは断じて避けなければいかぬだろうと思うのです。そのためにはやはり大型のプロジェクト、ぼくがさっき言った関西空港なんかうんと後へ回して、大型のプロジェクトは後にして、そうしてやはり国民生活関連の公共事業、しかもその中で用地費や補償費なんというものが比較的少なく済むような事業を選択的にやっていくべきだと私は思っているわけなんです。  これはもう少し詳しく聞きたいと思っておりますけれども、さて、その前に大蔵大臣、五十四年度の公共事業の五%の留保分というのがありますね。これは補正予算の中でやるのかどうか知らぬけれども、六千四百億ぐらいあるのですか、これはどういう措置をするのですか。六千八百四十五億円。たとえばこれを完全に昭和五十五年度に繰り越してしまうのか、それとも機動的にこの三月までに使ってしまうのか、ないしは三月までに使わないで、これを不用額で落としてしまって、それを国債の発行減の方に回すのか、どういうことですか。
  176. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先般の物価対策閣僚会議で決めましたその一つ対策といたしまして、物価に十分警戒をしながら、その一つ政策として公共事業の五%留保ということを決定をいたしたわけであります。したがって、これはあくまでも五十四年度予算の執行の留保でありますので、いついかなる時点においても環境に応じてはこれは執行し得る状態のまま当面留保をいたしておる、こういう性格のものであります。
  177. 正木良明

    ○正木委員 ですから、それだとて三月三十一日までに契約を完了しなければこの予算が余ってしまうじゃないですか。その場合五十五年度へ繰り越すのか、それとも使われなかったら不用額で落としてしまうのかということです。
  178. 竹下登

    ○竹下国務大臣 仮定の事実でありますが、繰り越しということが考えられるわけであります。
  179. 正木良明

    ○正木委員 私は、五十五年度の景気動向というのはきわめて不安定で不透明でありますから、でき得るならば五十五年度に繰り越されることが一番好ましいものであるというふうに思います。  そこで、その後いろいろとあるわけだ。これは毎回私は予算委員会で言っているんだが、土地の要らぬ仕事をもっとやれということです。これは文部省の関係では義務教育諸学校の老朽校舎、危険校舎の建てかえ、それから屋内体育館の鉄筋コンクリート化、これは一たん災害が起これば、そこらは付近の住民の避難場所になるわけなんだから。それが鉄筋化されておる、耐震耐火の建造物であるということがきわめて好もしいので、こういう銭のないときには二つも三つも政策目的が達成されるような政策運営をやらなければいかぬ。どだい土地は要らぬということなのですから。これは文部大臣にもお答えいただきたいと思います。  それからもう一つは、建設大臣、中小河川で時間量五十ミリ以上の雨が降るとあふれる中小河川というのが山ほどある。これは細かい資料をあなたのところへ要求したけれども、ちょっと出てこないのです。これは五十三年の記録だけれども、七万三千五百キロメートルある。毎年一%ぐらいずつしか進んでいないというのですが、こういうものは、つけかえ道路とか河川のつけかえとかなんとかは新しい土地が必要であるとしても、現在のものをしゅんせつしたり護岸をしたりするということで河川改修をするということについては、大して土地は必要ないだろうと私は思うのです。やはりこういうものを中心にやってもらったらどうだろうかと思うのです。  それともう一つは、公営住宅で古い木造平家建てがある、しかも都心に近いところに。こういうものを建設省としてはやはり中高層に建てかえるというような考え方がないのかどうか。  この三つ、それぞれにお尋ねいたしましたので、時間がありませんから簡単にそれぞれに答えてください。
  180. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 正木先生から前から言われておった問題でございます。老朽校舎の建てかえ問題は、五十二年十二月の六百五十万平米という建てかえの必要な建物を三年間でとにかくやろう、こういうことで、あのとき以来事業量を約二倍ぐらいにいたしまして続けております。五十五年度の予算も前年に比べましてかなりの増額をいたしまして、これで大体予定量を百万平米くらい超過してやれるような状況にまでなっております。今後とも努力を続けたい、かように考えております。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕
  181. 渡辺栄一

    渡辺国務大臣 お答えします。時間の関係でなるべく簡潔に申し上げます。  いま先生お話しの用地買収を伴わない河川改修、特に中小河川をやったらどうかということでございます。私も実はそのように考えておりまして、五十五年度予算も五十四年度並みという公共事業でありますが、その中で生活関連が伸びてまいりますので非常に厳しい情勢でございまするけれども、少なくとも前年度予算並みは確保いたしたわけであります。そういう意味で、私どもも中小河川、特に都市河川等につきましても重点的にこれを施行してまいりたいと思っております。  参考に申し上げますと、五十三年度でございますと建設省全体の用地費は二五・一でございますが、河川は一五・六、五十四年度は全体が二五・一、河川が一六・四、五十五年度は二四・七、河川は一八・五ということでありまして、先生の御趣旨のようでありますから、極力用地費に予算を使わないで事業を進めるようにいたしたいと考えております。  もう一つ、いまお話しの公営住宅の建てかえでございますが、実は私も就任以来木造アパートの建てかえということに努力をいたしております。すでに公営住宅の建てかえにつきましては従来も努力をいたしておるところでありまして、今後とも私どもは推進をいたしまして、特に用地費の問題、土地の高度利用の問題あるいは環境整備の問題あわせまして公営住宅の供給を進めていきたいと考えております。  最近の情勢を申し上げますと、公営住宅全体で百七十一万戸ほどございますが、その中で耐用年数の来ております木造住宅は十五万四千二百戸でございまして、特に昭和五十年でありますと建てかえは一一・二%でございましたけれども、五十四年度は、全体も伸びておりますが、建てかえは一七・八%ということでございまして、先生のお説のように進めてまいりたいと考えております。
  182. 正木良明

    ○正木委員 時間がありませんので重ねて質問できませんが、最後国土庁長官、地価問題なんです。地価が暴騰していますね。国土利用計画法なんていうのは、あれはぼくらが一生懸命かかってつくったのだけれども、あの中では、地価が暴騰し、また暴騰のおそれがあるとき、投機が行われ、また行われそうなとき、あれは十一条ですか、決めてありまして、都道府県知事がやらない場合には内閣総理大臣がそれをやれと言って勧告できるようになっておる。これは本当は総理に聞きたいのだが、あなたが一生懸命やっていることは新聞で見ているのだが、あなたの決意を言ってください。やるべき時期が来ていると私は思うのだが、どうなんでしょうか。
  183. 園田清充

    ○園田国務大臣 私からお答えを申し上げます。  いま御指摘のとおりでございまして、実は私どもも全国五百五十カ所で四半期ごとに報告を待って、地価の動向についての公表をいたしておるわけでございます。地価が上がるのに三つの大きな原因がございます。一つは効用増と申しますか、道路ができる、鉄道ができるというようなこと……(正木委員「やるかやらぬかでいいです」と呼ぶ)ただ、いまの状況の中で見てみますと、投機的なものを目的とした土地の売買というものは、私どものところでは調査の段階からしまして入っておりません。そこでやはり需給のバランスをとることが一番大事だということで、総合的に農地の転換の促進、あるいは税制を短期、長期に分けまして、長期の土地に対しては課税制度を改正していくというようなことで供給の増を図って、地価の安定を図っていきたいというのがいまの立場でございます。
  184. 正木良明

    ○正木委員 新聞で拝見したのだけれども、あなたが自治大臣にA、B農地の宅地並み課税を強化しろ、大体、ああいうものをやって、しかも地方自治体で減免しておって、それを地方交付税で埋めておるのはけしからぬじゃないかという話をしたらしいけれども、どういうことですか。
  185. 園田清充

    ○園田国務大臣 自治大臣に検討をお願いしたことは事実でございます。御指摘のとおりです。と申し上げますのは、A農地、B農地は宅地並み課税をすることになっていますが、それぞれの自治体の長に減免の措置がゆだねられておるということで、現在大体三大都市圏が特に地価が高騰いたしておりますけれども、その中で、面積からいたしますと約九万ヘクタールというのがC農地でございます。そこで税制上の問題から検討いたしますと、宅地並み課税の対象になっていないためにかえって税金の重いものを売買のときにかけられるという面もございます。そこで私どもとしては、ひとつ税制上からもいまのように交付税その他の問題から自治省として検討していただきたいということを要請いたしたわけでございます。
  186. 正木良明

    ○正木委員 自治大臣はそれはどうしましたか。指示しましたか。一部の新聞にあなたは事務当局に指示したと書いてある。簡単に、したかしないかでいいです。
  187. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 国土庁の長官からそういう申し出がございましたから、これは大変むずかしい問題だ、しかしながらせっかくの御要望だから検討をしてみてくれということは、事務当局に指示してございます。
  188. 正木良明

    ○正木委員 私は、この農地の宅地並み課税というのはもうあかんと思います。できぬと思う。むしろ、本当に農業をこれからも続けていくか続けていかないか、いまの減免の特例の場合には三年ですね、あれはやはり二十年以上にしなければいかぬ。そうして農民に選択してもらって、そうしてもうずっと農業をやっていくんだという人には、しかもずっと農業というのは二十年以上ですよ、それは農地並みの課税でいいでしょう。しかし、市街化区域内の農地で、将来宅地に転用するという人は、もうそのかわりに宅地並み課税を払ってもらうというふうな選択的なものを導入しなければいかぬと思うのです。そのために、どうでしょうか、仮にそういうふうにもう二十年以上農業を続けていくのですというような人の持っている土地は、市街化区域から外して市街化調整区域にしちゃう、そのほかのものについては市街化区域にする、こういうことは法律的に可能ですか、どうですか。
  189. 園田清充

    ○園田国務大臣 正木先生の御提案は、私どもが実はいま現在法案を提出する準備をしていることとまったく同趣旨のことだと思います。と申し上げますのは、市街化区域内にある農地も、やはり十年ということで継続的に農業をやろうとおっしゃる方にはひとつ基盤整備、それからもし宅地に提供しようということであるならば、ひとつこの人のための公共投資といいますか、そういう面でのお手伝いをしてまいりたいということで、農住構想という考え方の中で実は本国会に提案する準備をいたしております。
  190. 正木良明

    ○正木委員 では最後一つだけ、これはまた私の同僚にやってもらうつもりですが、意見だけ申し上げておきます。  今度土地税制を緩和しますね。二〇%のあの分離課税を二千万から四千万に上げてしまって、その後は四千万を超える八千万までは二分の一に下げて総合課税にする。八千万以上は三分の二ですか。こんなことしたって土地は出てきませんぞ。それよりも、そういう土地取引の税制というものをしょっちゅう変えるとだめです。いま市街化区域内で土地を持っている人なんというのは、私たちが売らなきゃ政府ももう皆音を上げて、きっと税制を緩和するに違いない、優遇するに違いないと思い込んでいますから。しかも、今度の税制で、大蔵大臣、徹底的なその欠陥は何かといったら、時限を外したということです。これから先ずっと税金は安いんですよ。この前は五十五年で時限立法だったからまだましだった。だから、あれはやはりするならば時限にして、その後物すごい重課というものが来るぞという形にしない限り、それは絶対売らぬわ。私は土地を持っておらぬけれども、仮に持っていたとしたらやはりそう考える、欲と二人連れですから。ですからその辺を——何しろ税制を緩和したら必ず土地が出てくるということはあり得ません。たった一つの救いは何かと言えば、いままで二千万円ずつの切り売りをしていたのが四千万円ずつの切り売りになるだけの話です。そんなに大量の宅地が、あの税制の緩和によって市街化区域から出てくるわけは絶対ない。これはだれかがやってくれますから、私はもう時間がありませんのでこれで終わりますけれども、私の意見として申し上げておきますが、土地に対する宅地供給の問題に税制緩和だけで対処するということは、とてもじゃないけれども、そういう情勢ではないということだけはわかっておいていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  191. 田村元

    田村委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  192. 川俣健二郎

    ○川俣委員 初めに、食糧外交を外務大臣にちょっと伺ってみたいのですが、そういうものだと思って私たちはやってきた食糧の需給問題なんですが、年末、アメリカの対ソ穀物輸出禁止措置、二千五百万トンを契約しておったのに千七百万トンをああいう形で出した。これからの外交は、これを戦略物資と言うべきかどうかは別として、食糧というのはそういうものだと私たちは思うのですが、日本の外務大臣はそれに対して、ああいう措置を見てどう感じられたか、その辺をお聞かせ願いたいのです。
  193. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまお話のございましたように、アフガン問題に関連いたしまして、アメリカが対ソ穀物輸出二千五百万トンの契約のうち千七百万トンをとめるという措置をとったわけでございまして、アメリカといたしましては穀物を政治的な目的に使わないということを従来言っておりましたのですけれども、今回はこういう対ソ措置一つとして穀物の輸出をとめるという措置をとっております。これが将来もそういう形になるのかどうか、今度の場合だけにとどまるのか、現在のところではまだ判断できません。
  194. 川俣健二郎

    ○川俣委員 日本外交筋は信頼しておった、アメリカはそういうことをしないと信じておったのに、ついに現実化した。しかし、これからはこういうことがあるだろうかということはわからない、こういうことで自主外交ができるのだろうか。その辺はもう少し姿勢を聞かしてもらいたいのです。
  195. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 今回の場合はソ連のアフガンに対する軍事介入ということに端を発して起こりましたことでございまして、特別の場合と考えておりますので、わが国の場合についてこういう可能性が起こるということは現状においては予想いたしておりません。
  196. 川俣健二郎

    ○川俣委員 こういう認識ですから、やはりさらに深めて質問したいと思うのですが、きょうはいままでこの場に出なかった食糧、農業、さらに政府の考え方を聞いていきたいのですが、いま農林行政をめぐっていろいろな問題がある。大平総理、総理が年末白菜を買いに行ったあれがあった。白菜を手にして、ほーっと言った。どういう意味でほーっ、あーとは言わなかったが、ほーっと言いました。正月の楽しみのかずのこに消費者はそっぽを向いた。ふたをあけてみたら、ああいうことであった。さらにまた、今度は食品公害ですが、過酸化水素騒ぎでゆでめん、讃岐うどんあるいはかまぼこ、そういうわけです。かと思ったら、いきなり使用してもよろしいという、こういう見解を同じ官庁が出した。かと思うと、選挙のどさくさを中心に、三年間はこれだけはぜひ頼む、固定化するという減反面積を、手続を踏まないであっさり通達変更を流した。あるいはまた、政府委員が選挙違反の問題にまつわって注目されておるのに、まだ農林行政の政府委員に居座っておる。あるいはまた、農林省の監督下にある全共連、農民の積立金でいわゆる世界一金持ちになった全共連の総辞職、こういった一連の問題。しかし、いま現実、この寒空に東京都には何十万という出かせぎ農民が妻子と別れてつるはしを持っておる。皆さんがお帰りの際に車の中で見る道路工事なり水道工事は全部出かせぎ農民である。こういうことを考えますと、いまの外務大臣のように、軍事介入した仕返しで特別にああいうことをしたのであって、これからどうするかわからないというような状態で外務省の最高責任者が考えておる。しかし、そうはなかなか安閑としていられないものがあるんだろう。  そこで、それにつけ加えて、今度は農林大臣に伺いたいのですが、日本の農業というのは、いわゆる食糧需給問題というのは、その千七百万トンというのを、当然値が下がるわけですから、よしこの機会に買ってこいとフォーラムの団体なんかが勧告した。こうなると、農林大臣、これはそういう気があるのですか。
  197. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 政策フォーラムという形で学者グループが発表されたのは私も新聞で承知をいたしておりますが、正直、私ども小麦にいたしましても実はいま二・六カ月分の備蓄を持っておるわけでございます。あるいはえさにいたしましても、配合飼料供給安定機構で約一カ月分、民間で約一カ月分、これも大体二カ月分備蓄を持っておるわけでございます。  また一方において、倉庫が相当それで手狭になっておるところへ、御承知のとおり六百五十万トンという米を抱えておるわけでございまして、少なくとも内地へ持ってきて備蓄をするという点については相当無理をしなければならないのではなかろうか。  もう一つの考え方は、あの政策フォーラムにもございましたけれどもアメリカに備蓄をしたらいいんじゃないかというのもたしかあったと思うのですが、アメリカに備蓄と言いましても、私どもの承知をしておるのでは、アメリカの食糧倉庫は大体流通のために使われておる倉庫がほとんどでありまして、備蓄に使い得るような倉庫はないというふうに聞いております。また、日本よりもずっと広いあの国土の中で、どういう形であちらこちらなものを、たとえばサンフランシスコとかロサンゼルスとか、あの近くの港のところに集まっているなら別でございますけれどもそうじゃないわけでございまして、そういうものをどこへストックするのかということを考えましても、実際問題としては非常にむずかしいんじゃないかという考え方で私はあの政策フォーラムを読ましていただきました。
  198. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一部のあるグループだけの問題で、あるべき姿として農林省がそういう考え方でいるではどうも通らないような問題がある。それは総理が参議院の本会議で答弁したこと、言葉じりだけを取り上げるのじゃなくて、たとえばいまの日本の農業政策、あなた方の農業政策というのは、昭和三十六年の農業基本法に基づいてやっておる。その与党と野党の対決法案を私ら後輩が読ましてもらうと、これだけ精力的に一年かかって中央公聴会、地方公聴会、もちろん政府は時の総理池田さんが周東農林大臣を引き連れて地方公聴会、バラ色の農村になる、自給率も高まる。ところが結果的に二十年後どうか。  そこで、いまの問題に話を戻すのですが、ちょうどたまたま昭和三十六年六月二十二日の池田総理と向こうの大統領との共同声明によれば、やはりこういう項目もあるわけだ。「両国間に存するこの提携を強化するために貿易および経済問題に関する閣僚級の日米合同委員会を設立し、これによって相互協力および安全保障条約第二条」、経済協定を結んであるわけだが、「第二条の目的達成に資することに意見の一致をみた。」この両者間の協定があるから、外務大臣はアメリカに限って日本にはそういうことはしないだろう、こういうような思想を持っているんだが、ただ農林大臣は、いまは就任早々で張り切っておられるし、私もそういう考え方に同感なんですが、農林大臣は参議院本会議で、くしくもこの千七百万トンに上る穀物の対ソ輸出をとめたことに触れて、こういうようにおっしゃっています。  「日米関係上無関心ではいられない。」日ソ関係の問題で無関心でいられないというのは、これは一般的な理念だが、「日米関係上無関心ではいられない。国際的な協力の方途はないかとただいま検討中であります。」これらの穀物の一部を日本が輸入するか、買い上げて援助に振り向けるかなどの方策を検討中である旨をここで明らかにした。そうなると、一部の学者のグループの見解であって、農林大臣は何を言うかと一笑には付されない問題があるんじゃないか、こう思うのですが、この辺は総理大臣、どう思いますか。
  199. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日米関係外交の基軸でありますことはたびたび政府が申し上げておるとおりでございます。  今度のアフガニスタン問題に関係いたしまして、アメリカが穀物の輸出禁止という措置を講じたということでございます。これはアメリカといたしましてはよほど思い切った措置であったと思いますが、アメリカはこういう大胆な措置を講ずることによって国の内外にいろいろ困難を覚悟しておやりになっておる、友好国といたしましてそれに無関心ではおられないと思うのでございまして、日本外交を推進する上におきまして、日本の農政を展開する上におきまして支障がないということでございますならば、そこに何らかの協力の方途がないものかということを考えるのは、私は当然のわれわれの仕事ではなかろうかと存ずるわけでございます。しからばどうしたらいいかという方寸が立ったわけではございませんけれども、そういうことについて検討をすることが私どもの任務ではなかろうかと考えておりまして、一方、政策フォーラムの方からはいろいろな角度から検討されての提言があるようでございます。それはそれなりに評価すべきものではなかろうかという感じを申し述べたものでございます。
  200. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうしますと、外務大臣にもう一遍持っていきますけれども、やはり日本の場合だって四十七年の例の大豆の問題があったわけだが、それは信頼関係があるから日本の場合は大丈夫なんだ、まして値が下がるだろうからというあれが——総理大臣の中から、たとえ検討中であろうとも、絶対そんなことはしないよ、買わないよというのじゃなくて、何か買ってやる方法はないかという前向きの検討中であるということをやはりあなたもよくかみしめなければならぬ。逆に言うと、その思想の理念には、食糧というのは、やはり需給関係というものから、できれば自給率は高めておかなければならない。これはあなたもできると思うのです。そうすると、自主外交をこれから進めていくということをときどき申されますけれども、食糧というのは、概念的だけじゃなくて、いま現実に戦略物資になりつつあるというぐらいの自覚はあったっていいのじゃないかな、外交の中に。どうですか。
  201. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 やはり一国の経済それから国民生活から考えまして、食糧とエネルギーというのが一番基本的な品物だと存じます。日本は両者の自給度がきわめて低いわけでございます。食糧の中にも国民の生存上きわめて重要な、不可欠な食糧とそれほどエッセンシャルでないものとがあると思いますが、基本的なものにつきましてはある程度の自給率を維持する。それから可能な程度のストック、在庫を持つということは必要だと思いますし、現在の情勢で、私ども外交的な見地から見れば、ただいま総理大臣も言われましたように、千七百万トンのアメリカの食糧について、日本世界でも有数な穀物輸入国の一つでございますので、ある程度の買いつけによる寄与をすることは望ましいことだと考えておるわけでございます。
  202. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、農林省は食糧を買い集める専門屋じゃないので、それはもちろん言わずもがなでしょうが、例のFAOの「二〇〇〇年の農業展望」というのを十分検討されておると思うのですが、いわゆる食糧危機が二〇〇〇年代はこういうような形でやってくるというFAOの展望を農林省としては認めておりますか。この統計数字を認めておりますか。どなたでもいいです。
  203. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  ただいま川俣先生のおっしゃいましたのは多分紀元二〇〇〇年の時期におけるローマ・クラブの提案かと存じますけれども一つの御意見として私ども研究をいたしておりますが、しかしながら、これにはいろいろな仮説、仮定がございますので、その点につきましては現在なお研究すべき課題であるというふうに考えております。
  204. 川俣健二郎

    ○川俣委員 さらにこの問題、後で触れます。  そこで、農林省は、昭和四十六年から十年間、かつては休耕、かつては減反、そしていま再編成。何のことはない、稲を植えるなということ、ほかのものを植えろということ、奨励金を出すということ。一体、この十年間でどのぐらいの投資をしたのだろうか。さらに計画としてはもう七年あるわけですね、来年を入れて八年か。そうすると十二、三兆円になる。  委員長、いま一覧表の資料を配らしてもらいたいと思います。  そこで、一体、こういう減反政策は結果的にはどういうことだったのだろうか。——それじゃこちらの手違いで配るのを忘れておりましたが、この十年間投資して、しかも減反さして、米の需給関係の一覧表を見ると、農民は割り当てられた面積を消化しなかった年がない。むしろ去年なんかは一二一%消化した。しかし、米は減らない。かつてここで中川農林大臣当時に、いまのやり方で、その割り当てでは米は減らないよ。そうしたら大将、力が強いものだから構えて、面積が減ったら米が減るのはあたりまえじゃないか、こうおっしゃる。しかし農民は、緊急避難的に、できの悪いところは面積に出したかもしらぬが、できのいいところにさらに一層励んで、むしろ米がふえるあんばいだ、こういう現状になっている。  それからもう一つは、たとえばこの間の北海道のタマネギの転作物の騒ぎ、これは一トン、二トンの廃棄じゃない。皆さん新聞でごらんになっただろうが、私にも当事者から訴えがあるのです。  一万九千トンのタマネギが、転作物の流通機構、過程、価格保障その他でどうにもならない。大蔵省というか、国の税金で出している奨励金がそういう形で化けておる。ところが需給関係、後で説明してもらえばいいが、農林大臣がさっきこれだけの蓄えがあると言うのだが、それはほとんど輸入なんだ。輸入の規制があるから、日本国内で畑作に転じたところでそれがどうにもならないという状態が今日なんだ。こうやってみると、あなたはこれから減反政策というのを続けますか。
  205. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま御指摘のとおり、確かに今日までのいわゆる水田利用再編対策、生産調整と言いますがを見ておりますと、反収の悪いと申しますか、少ないと申しますか、わりあいそういうところの田が利用されて、反収の非常に多いところは正直残っているというのは私ども承知をいたしております。御指摘のとおりだと思います。しかし、それじゃいままでの計画が全く効果がなかったかという点については、私は必ずしもそうではないと思っておるわけでございまして、たとえば小麦の自給率にいたしましても、たしか五十二年が四%ではなかったかと思います。五十三年度が六%になり、いま、五十四年度はたしか私の記憶では九%になるだろう、こういう見通しでございます。  これは一つの例でございますけれども、そういう点のメリットももちろんあると思いますし、タマネギの問題と先ほどの白菜の問題、私ども大変頭が痛い問題でございまして、その辺はもう少し行政指導をうまくして、生産段階のときからうまく計画的にやっていただくように行政指導をしていかなければならないという反省をいたしておりますが、そういう転作の作物をよりつくっていくことは、先ほどの自給力をより強化をしていくという面からも私は大切な国策だと思っておりまして、今後とも、これについてはできるだけ農民または地方自治体あるいは農協などの農業団体の御理解を得ながら進めてまいりたいと考えております。
  206. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは事務局で読んでもらってもいいけれども、農林大臣はそういうようにパーセントが上がっているように報告されておるのかな。この需給表というのは農林大臣官房調査課で出しておるのだが、たとえば大豆は五十二年の輸入量は三百六十万トン、五十三年の転作が始まってかえって四百二十六万トン。それからいまおっしゃる小麦は、五十二年の輸入は五百六十六万二千トン、五十三年の輸入は五百六十七万九千トン。これは一方的に読んでいるけれども、私、間違っていますか。
  207. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  需給表に出ておる数字はそのとおりと考えますが、転作とは直ちにつながらない全体の需給表でございます。
  208. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはどういう意味ですか。いま自給率が非常にとんとん拍子に上がっているように農林大臣答えているじゃないですか。私がいま読んだのはうそじゃないのだとすれば、自給率と必ずしも結びつかないというのは、うんと消費するようになったという意味ですか。そこを弁護してください。
  209. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 ただいまのは国内生産量、大豆の場合五十三年十九万トン、小麦の場合三十六万七千トン、大麦二十七万六千トン、このようになっておりまして、これを自給率で表現いたしますと、五十二年の場合小麦ですと六%、大豆で五%、このような数字になるわけでございます。
  210. 川俣健二郎

    ○川俣委員 余りそれには時間をとられたくないけれども、自給率は上がっていますか。
  211. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 小麦の場合には、五十年から五十二年までが四%の自給率でございました。五十三年が六%でございます。五十四年につきましては食料需給表ではなくて、私どもの推算をいたしておりますが、これで現在推算いたしておりますのは八%でございます。大豆につきましては五十二年は三%でございましたが、五十三年の需給表によりまして五%、五十四年の推計は五%、大体この程度の自給率になっておる、こう考えております。
  212. 川俣健二郎

    ○川俣委員 小麦を盛んに言うけれども、小麦の場合は食管法でいわゆる保証があるわけですよ。ところが野菜、さっき言ったタマネギ、農林大臣が頭を痛めているとくしくも言ったのですけれども、こういうのがいわゆる外交上の問題でどうにもならないのだ。歯どめがかからなければ転作物はこれからどんどんふえてくる。今度五十三万五千ヘクタールでしょう。五十三万五千ヘクタールになった場合の需給関係は一体ちゃんと計画しておるのか。これはどうです。
  213. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答えを申し上げます。  五十五年度の転作等目標面積五十三万五千ヘクタールということにいたしておりまして、これの県別配分等の内定通知等もいたしておるところでございます。  問題は、この五十三万五千ヘクタールによりまして何をどれだけ植えるか、転作するかということにつきましては、特定作物等について奨励金等の面で戦略作物ということで優遇をいたしておりますが、具体的にどういう作物をどのくらいつくるかということにつきましては、やはりその地域の実情等に応じまして農家の方が転作作物の選択をするということになろうかと思います。その他の市町村なり農業団体等の指導というのもその辺に絡みますけれども、そういうことになろうかと思います。具体的にどのくらいということは、的確には決めておりません。
  214. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで私は警鐘を鳴らしておくのは、やはり大臣、五十三万五千ヘクタール、突如通達変更されたけれども、面積の割合に米が減らないからひとつ面積をふやしてやれという、そういう場当たり式ではなく、食糧問題全体に絡んで計画を立ててあげなければ、いまの一つの例をとってみましても私は成功しないと思うのだ。  そこで、この問題は十年になったわけだが、これはいままで米を植えないでくれればという金が約二兆円流れているわけだ。おたくの計画によるとこれから八年間ですから、恐らく五兆円。それから畑作用になるように土地改良してあげなければならぬ。その土地改良が、私の推算によれば昭和四十八年から十三兆円でいっていますね。しかしこの中にはいろいろの土地改良があるでしょう、ひん曲がった小さな土地を真っすぐにするとか。だけど、あくまでも減反に即応した土地改良をやるとなると、やはり私の計算によると七兆円。こうやっていまの減反政策を、しかもさっき言うように農民は受け身ですから、半強制的ですから、こういう形で面積は出すけれども米の量は減らさないよ、こういう姿勢は当然なんだ。それがやがて自由米がふえたという結果になってしまっているわけだ。  そうなると大蔵省、一体こういう米を植えないでくれれば奨励金出すぞという政策日本の財政は進んでいっていいんだろうかということ。ちなみに、いま一万七千何がしの生産者米価、ところが、一俵減らしてもらいたいために換算すると一万三千円出します、この政策はいかがなものでしょうかね。大蔵大臣どうですか。
  215. 竹下登

    ○竹下国務大臣 農政としては農林水産大臣からお答えになるのが当然であろうと思います。財政当局の立場として考えたときに、好ましい姿ではないというふうに思います。
  216. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると農林大臣、財政当局はこうおっしゃるのだが、これはどうするのだ。  それからついでに申し上げますと、三十九万一千町歩割り当てたものに対して、四十二万、四十八万と協力が多くなってきましたね。黙って、通達を出さなくたって五十万はできるように行政指導あるいは後ろの方でむち打つとは言わないけれども、やることができた。ところが、今回はもう信頼ががた減りになった。何をやっているのだろうか、三年間固定するかもしれぬ、固定してくれると言ったのにどうしたのか、こういうことなのだ。しかも、結果的にはこういうことなのだ。そうなると財政当局はこうおっしゃる。そこで、五十三万五千ヘクタールの予算を見ると三千億だ。三十九万一千ヘクタールの予算を見ても三千億近くかかっておる。ところが、減反というのは、ただ黙って休ませるいわゆる単純休耕の場合は四万円、特定作物の場合は七万五千円出すというプレミアム的なものがある。もし農民がだんだんに土地改良が進んで、農林大臣がお勧めするように、単純休耕と逆に、単価の安いものはやめて単価の高い転作物に、特定作物の方に向けてみようという指導をやる。これは農林省として当然なのだ。ところが、いま大蔵大臣はそういうことをおっしゃる。そうなると、三千億円の予算はもらったけれども、もしもみんなが特定作物、一般作物、永年作物の方に集中した場合はこれが四千五百億ぐらいになる。その場合は自然増でいいのだろうか。
  217. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 水田利用再編対策だけを考えて、ただ米の需給関係だけでこれを議論をいたしますれば、いま大蔵大臣からもお話しのように、大変財政的に負担があるし非常に大変だということでありますし、そういう点でいけば、先生御指摘のようにそれこそ四万円で何もつくらないでおった方が、財政面からいけばその方がプラスであろうと考えます。しかし私は、いろいろいま農政の見直しを農政審議会でもお願いしておるわけでございますけれども、これからの農業のあり方といたしまして、正直いままでの実績を見ておりますと、いわゆる施設利用型農業というのは相当粗収益を上げてこられております。しかしながら土地利用型についてはなかなか問題があるわけでございまして、そういう点で実は土地利用型の農業の経営規模を拡大をしたいという考え方を一つ持っておるわけでございますが、そういう考え方から参りますと、ある程度コスト的にも相当いい方向にいくのではなかろうか。そうすると、そこでほかのものをより多くつくっていただくということもこれからお願いができるのではなかろうか。そうすると、米の需給関係とあわせてそういう他の作物の自給力も高まっていく、こういうことになるのではなかろうかと思いまして、何とかそういう方向で努力をしたいと考えておるわけでございます。  なお、しかしながら私ども、いまもう一つの問題といたしましては、全部が特定作物をつくってしまった場合どうか、こういう御指摘でございますけれども、私どもは一応過去の実績、五十三年度のときのベースを基準にいたしましていま計算をして、三千億ちょっとの金を考えたわけでございますけれども、どうしてもそうなってしまった場合は、われわれはこれでは奨励金は出さない、こっちのは出すということにはなっておりませんので、そういうときにもしそういう事態が起きれば、これは財政当局にもお願いをして何とか考えていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  218. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ここで財政当局の意見がこういう予算委員会の場で正式に述べられて、農林大臣はそういうように努力するという別の方向を持っていて、果たして調整がとれるのだろうか。それが大平総理の務めだろうけれども、一体どっちに進むのか。  総理、いまの減反政策というのはこのまま進めていくのか。これだけの投資額を進めて、果たして成功しているのだろうか。しかも、いま審議会にかけているというでしょう。一呼吸したところだ。いままでのやり方でいいかどうかということをもう一度農林省が謙虚な姿勢で審議会にかけたと思う。そういう段階で三年間の通達を変更するというこの態度がどうにもがまんできないのだ。これは農民はもちろんそうだけれども、農業団体、生産者にすべて農林省の態度、いわゆる政府態度というものの一貫性に対する信頼がなければ、一俵一万三千円の奨励金を出すのに、総理大臣、これはどう思います。私の質問が回りくどくてわからなかったかもしれないけれども、これからどうしますか。減反減反という問題ですね。
  219. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私からお答えさせていただきます。  先ほど申し上げますように、われわれは、過去のベースがございますので、それでなるべく御理解をいただくようにお願いを申し上げたい。農民にも、また農業団体にも地方自治体にもいまお願いをしておりますことは、このままその生産調整がうまくいかなくて米がより多くとれてしまいますと、それこそいまの六百五十万トンがまた将来七百五十万トンになり八百五十万トンということになってまいりますと、食管というものに対してどうするかという声が強く出てくる。私どもは食管というものは堅持をしていくべきである。それは先ほどの将来の日本の安全保障という点から考えても、米の需給関係というものはいまは幸い非常に良好でございますが、もしこれが食管がなくなってしまって農民が米がつくれないという事態にまでなっていっては大変であるということで、私どもは食管を堅持していきたい。食管を堅持していくにはある程度米の需給関係をもう少しすっきりしたものにしていかなければならない、こういう考え方からお願いをいたしておるわけでございます。
  220. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはとにかく、政府のやることに今回の通達変更で不信感がつのったということだけは認識してかからなければいけない。  さらにもう一つは、あなたは米は余っているということなんだが、消費拡大は、農林のベテランである人が文部省に座って学校給食でがんばっておられるのだが、これだってしれたものだ。  問題は、きのうから消費者米価が上がったね。これは一年間の収入はどのぐらいのアップになりますか。
  221. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いまのところ六百五十億の増収を考えております。米で六百五十億円でございます。
  222. 川俣健二郎

    ○川俣委員 財政当局の考え方の埋穴めが、米と麦で、消費者米価の値上げである程度埋めさせられているなという施策はこの予算書を見るとわかるのだ。この消費者米価が上がると、米というのは政府が管理しなければだめなわけだが、管理される米からこぼれるということはわかりますか。というのは、消費者は、私のところのような周りが全部農民というようないわゆる地方都市の場合は、農民のところに行けば配給所で買う米よりも安くてうまくて間違いない米が入るわけだ。一方政府は限度数量は買ってくれるわけだ。そうすると、ああこれならうんとつくったってという米が、自由米といういわゆるやみ米がどんどんふえていく。現在やみ米はどのくらいですか。その辺の話を聞かせてください。
  223. 松本作衞

    松本(作)政府委員 やみ米、自由米と言われておりますものは、平年ベースで約百万トンというふうに考えております。
  224. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大体いま現在で百から百二十、これから管理体制を緩めこそすれ、もっと管理を確実につかんでいくべきだという方向がどうしても政府の姿勢に見られない。  たとえば一つの例ですが、きのう、おとといあたりの論議を聞いてみると、食糧検査員の問題がくしくも行政改革の俎上に上った。ところが、その論議に、農林大臣が悪乗りしたのか調子に乗ったのか知らぬけれども、食糧検査というものを民営にするという方向が出てきた。国の財産を買うのにそういうやり方があるんだろうか。じゃ税務調査は税理士でいいのかということになる、ここに税理士のベテランがいるけれども。国の財産を買うのに、いま農林省はカドミ米は何とか処分したい、それからうんとうんと古い米は何とかしたいというけれども、これは国の財産だから手をつけられない。その国の財産を買い取るときに、食糧検査員という国家機構の人ではなくて、民営の組織でやらせる。まして生産者側に検査をやらせるという理論はわからぬな。どうです、法制局の考え方は。
  225. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 先日来の農林水産大臣の御答弁申し上げましたことを私なりに理解いたしますと、農林水産省の考え方は、民営にするのではなくて、何か国営の上でやり方を改善するようなふうに理解しておりますけれども、ただ恐らく御質問の趣旨は、強制検査になっているものを民間にやらせるということが法理的に許されるかどうかという御趣旨だろうと思います。  そこで、一般的な問題としてお答えいたしますけれども、ある物資の検査を制度としては強制検査として行う、しかもそれを国以外の機関に任せることが法律的にできるかどうかということですが、それは、その機関が公正な検査を実施する能力があり、かつその機関に対して国が十分な監督ができるということであれば、法律的には無論可能であると思います。現にそういうような立法も例がないわけではないと思います。
  226. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは少し例を知らせてくださいよ。  たとえば、労働省に労災の監督をやる監督官というものがあります。それから農林省には国の財産の米を買うのに検査所を持っています。補助は違いますよ。農協とかそういう人たちに、あるいは労働者に判こを押させたり運ばせたりするという補助はいますよ。だけれども、検査そのものを国家機構じゃなく農協でやるというから。あなた、よく聞いておきなさいよ。民営もいいところでしょう。でなかったら一万三千円要らないでしょう。
  227. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 農協でやるかどうかということについては私がお答えすべき問題ではないと思いましたので、いま一般的に公正な検査ができるならばというふうに申し上げたわけです。  それから次に、民間にやらせている例があるということを申し上げましたが、その例としては、たとえば旅客船以外の船舶の船体、満載喫水線等の検査を財団法人である船級協会にさせるとか、輸出検査法に基づく指定検査機関、そのほかガス用品の検定を指定検定機関でやるとか、計量器の検定を同じように指定検査機関でやるとか、いろいろ例はあると思います。
  228. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の言うのは、みんな民間人の検査員はいないかという質問じゃないんだよ。国の財産を買い取る検査を民間の人にやらせているということはあるかというんです。
  229. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 きのう答弁をいたしましたことをもう一回繰り返させていただきますけれども、私は全部を民間に委託することは無理であるということはきのう申し上げたつもりでございます。会計法上からいっても、国が直接購入するものについては国が検査をしなければならない、こう書いてありますので、それはやらなければいけない。ただ、先生も御承知のとおり、私どもバラ検査、抽出検査を従来試行的にやってまいりました。その結果、これは相当いけるんじゃないかという判断をいたしましたし、正直、いま国の私どもの補助事業でも、ライスセンターなりカントリーエレベーターなり、こういうものを促進をして、補助金を出しているわけでございます。あるいは町においては、共同の精米所に対して補助金も出ているわけでございまして、そういう点からいけば、バラで貯蔵し、バラで輸送されますとコストが相当安くなるわけでございます。これは消費者にも非常にいいことになるのではないか、こういう考え方も持っておりまして、そういう方向で、これからできるだけバラの検査とか、あるいはいまの個別の検査ではなくて抽出的な検査をするようにしたい。そうすると、それに対しては農協の協力を得なければいけない。そこで、農協の協力を得ながらそういう検査をやっていけば結果的に検査の人間は減る、こういう考え方で私はきのう申し上げたつもりでございます。
  230. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると私の誤解でありましたかな。これはいけるということですが、そうすると最終的に確認しますと、いわゆる米検査というのは、検査所は、民間の人に持たせるという意味じゃないんだね。その検査の仕方の合理化を図るということですね。
  231. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 そのとおりでございます。
  232. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法制局の長官よりも農林大臣の法解釈の方がいいな。私はそう思います。  それから今回、総理大臣、農村で非常に農政というものに対する信頼を回復しなければだめですわ、はっきり言って。たとえば総選挙が終わった。大平さんがんばってまた総理大臣になった。さて、農林大臣はだれがなるだろう。農村地区、穀倉地帯ではその話題がほとんどだ。決していまの武藤大臣が不足だという意味じゃありませんが。そこで、やはりあらっという言葉があった。それは十一月の段階ですが、糸山英太郎さん忘れてないものな。あの選挙違反で、穀倉地帯というのは非常に汚れたものなんだ、水田地帯が汚されたものなんだ、これだけのあれだから。そうしたら、くしくもきのうそれにまつわる公判があった。そこで連座制になるだろう、ここまで言われて、しかし上に上訴すれば立候補は大丈夫だろう、こういう解説もある。これは普通の議員なら私はあえて言わないのだけれども、いま政府委員で、しかも農業の曲がり角、農業政策の信頼を回復しなければならないこの重大な段階に、一体大平内閣はこれでしらを切っていくつもりなんだろうか、こういうことなんだ。どうですか。これはやはり任命権は、官房長官いないのだけれども官房長官がいればそのいきさつを聞きたかったのだが、まあ大平さんにしてみればいろいろとバランスもあるだろうし、七月の選挙のこともあるかもしらぬけれども、一遍大平内閣、大平さんの考え方というか姿勢というか、ずうずうしいといえばずうずうしいけれども、法律的にできないことはないけれども政治姿勢としてはここで伺ってみたいね。どうですか。
  233. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 任命は私ではございませんが、私ども推薦をした責任がございますので、それだけは申し上げます。やはり若い馬力のあるのを、これからの時代には十分政治世界で活躍をしていただきたい、こういう形で推薦をいたしました。
  234. 川俣健二郎

    ○川俣委員 若くて馬力があれば減反政策できると思うから、力ずくでやろうとしているわけだよ。ペナルティーまでかけてやろうとしているわけだ。だけれども、農民は守らなければならないから信頼がなければだめだ。やはり総理大臣じゃないかな、この答弁は。任命権は総理大臣じゃないですか、どうです、これ。どうしますか、これから。
  235. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 農業政策ばかりではなく、あらゆる政策、信なくば立たずということであることは、私もよく承知をいたしておるつもりでございます。農政の場合におきましても、われわれは農民に対して信頼を壊さないように、農民のために利益になるように考え抜いてやっておるつもりでございます。かつて農民の方々にお約束をいたしましたことを変更せざるを得なかった事情は、この激動期でございまして、政府が予想いたしておりました事態と非常に情勢が変わってまいりましたことでございまして、その点につきましては、よく御説明を申し上げて御理解を得ながら政策の遂行に当たっておるわけでございます。返す返すも信頼を壊すというようなことがないように努めなければなりませんのは、あなたの御指摘をまつまでもなく、私ども農政ばかりでなく万般につきましてそのことを第一義と心得てやっておりまするし、またやってまいらなければならぬと思っております。
  236. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは前に進みませんよ、しかし、私も少し割り切って進みたいものだ。  そうすると、農林大臣は、推薦は間違いなかったなと思っておりますか、いまでも。若くてばりばり、これから有望な人だから推薦をしたと言うんだけれども。それから総理大臣に聞きますから。
  237. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私としては、推薦をいたしました以上、いま大変不幸なことになったと思っておりますが、推薦をした私の責任は私の責任でございまして、間違ってはいないと思っております。
  238. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理大臣に推薦した手前上そうおっしゃるんだろうけれども、推薦したことを私はとがめていませんから。いまの段階になって、こうなればやはり内閣の姿勢にかかわるから、今後検討の対象にするのですか、一切もう関係ないですか。
  239. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 選挙違反の問題でございますが、ただいま刑が確定したという段階ではございませんので、この問題につきましてのお答えは慎重でなければならぬと考えています。
  240. 川俣健二郎

    ○川俣委員 しかし、ちょっとしつこいかもしらぬけれども、あなたも総理であって総裁だわね。自民党の公認も考え直すと言っているんじゃないの。自民党が公認を再検討するというときに、政府委員になって座らせておくというのはおかしいんじゃないの。もう少し姿勢というのは素直になっていいんじゃないですか、農民は非常に注目しておるから。どうですか、これは。検討の対象じゃないですか。
  241. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 まだ判決の確定を見ない段階でございますので、一人の政治家の公的な地位の問題でございますので、軽々にいまどうこうというお答えをするわけにはまいりません。慎重に判断していかなければならぬと思います。
  242. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私も御本人の名誉のためにも申し上げますけれども、それは確かに軽々ではないけれども、しかし、自民党の名誉のために公認を検討しているというとき、総裁側としては検討の対象なんだ、総理大臣としては一切政府委員の検討の対象にならないという考え方。だから信頼がないのよ。どうです、もう一遍。
  243. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 こういう、判決の確定を見ない段階でございますので、この問題につきましては慎重であらねばならぬと私は考えておるということを申し上げておるのです。
  244. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、農林大臣、大分言うようになってきたけれども、だんだんにしゃべっていくと言ってくれると思うんだけれども、やはり農林大臣も推薦した手前上、農林大臣から取り下げるような話、済みませんでした総理というぐらい一言なければ……。もう一回言いますけれども、ここまで言って、まだはっきりしないものというところで粘るという言い方は、総裁選挙で粘るのと事が違うよ。農林大臣の考え、やはり推薦したことを検討する対象だというぐらいはどうですか。
  245. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 大変申しわけございませんが、私は、自分の責任において推薦したということにおいて、大変自分の責任を感じてはおりますけれども、いまここで取り下げてもらいたいということを総理にお願いをするような気持ちはいまのところは持っておりませんし、何とか農民の信頼を取り戻すように私が一生懸命努力をしてまいりたいと考えております。
  246. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはり態度で示さなきゃ、これは信頼を回復すると言ったって、いま新しく就任された農林大臣のために、いろいろな農村の声を聞かして、これから農政を考えてもらいたい問題がたくさんあるんだけれども、これは入り口なんだ。信頼の入り口。総理大臣、どうですか、もう一度。
  247. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 何事も信頼を基礎にしなければならぬという考えは、私、あなたと全く同感に存じております。
  248. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私と同感と言うのはどういうわけか知らぬけれども、同感だったら、私はすぐ処分せいとかなんとか言っているんじゃないのですよ、人事の問題ですから。だけれども、これだけの問題を起こした人をそっち側の政府委員に座らしておるという姿勢がやはり問われているんじゃないのですか。いま結論を出せと言っているんじゃないんだから、詰め寄り方が。検討の対象にはなったのじゃないでしょうか、どうでしょうか。これどうですか、もう一度どうぞ。
  249. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりでございまして、こういう第一審の判決がございまして、関係者が控訴いたしたということを聞いております。そのことが糸山君にどのように及ぶかということも——第一審の判決については私も聞いております。しかし、これは判決が確定したということでございませんので、この段階におきましてどのように措置すべきかということにつきましては、軽々にいまあなたに申し上げるというわけにはまいらないということを言っておるわけでございます。
  250. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは何も確定したら私は質問しませんよ。やはり農林大臣も、これまで総理大臣がのぞかしているんだから、本人に聞いてみるなりそういったことをやってみるというぐらい言わないと、これから五十三万五千ヘクタール四月一日から農民はこなすんだぜ、あなた。
  251. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、いまのところの気持ちは変わっておりませんが、いませっかく先生からも御指摘をいただきましたので、判決があって、正直言って私はまだ本人に会っておりませんので、本人に会ってよく本人の気持ちも聞いてみたいと思います。
  252. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは農林大臣、これは別に予算の問題と絡ましたいわけじゃないけれども理事会でも話し合いしてみたいが、やはりもう少し本人のあれを聞いてみたいという気持ちはありますか。
  253. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 いま申し上げましたように、本人の気持ちをよく一遍聞いてみたいと思います。
  254. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、信頼の課題をひとつ変えて、またもう一遍それに戻るから……。  そこで、いま土地改良がなされていますね。そうしますと、いま農村でざわめいているのは、土地改良をしてもらうのに国も金を出してくれたし、県も出してくれた、しかし本人も出さなければならぬ、いまこういう途中ですね。しかし、畑作に適しているようにつくってくれているかどうか、そういう技術的な問題は別として、でき上がった暁は二五%畑作に転換しなければならないという通達がある。これは土地改良との念書でもっていまはっきりした、農民はですよ。政府は知っておったのだから。いま農民は、二五%は畑作をしなければならなかったんだなということをぼつぼつPRされ出した。これはどう思いますか。何年後の現在、ちょうど現在、あなたは国から補助金をもらったのだからたんぼにはだめなんだよ、真っすぐなたんぽになった以上は二五%を畑作にしなければだめだよ、こういうようにいま言われ出した。これは大きな信頼度だね。
  255. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 新規の採択につきましては、農林省の米の転作というものはやはり総合的な立場からこれを推進しなければいけないということで、圃場整備をやる場合は二五%、これは国全体としてでございます。個々の圃場、地域の問題ではなく、国全体として二五%程度の転作をやるようにということを計画の上で明らかにすることを慫慂いたしております。  現在までのところ、おおむねその線は実現されてきているような状況にあるわけでございます。私どもといたしましては、現地の実情に応じて無理のない形でこれを消化するようにということで指導しながら進めてまいっているところでございます。
  256. 川俣健二郎

    ○川俣委員 二五%程度全国的に、なんということをおっしゃるな。通達書によると、「二五%とする。」じゃないの。  それじゃ地目は変更しなくたっていいの。
  257. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 地目は、畑あるいは水田という地目はございますが、私ども、畑作物をつくるから畑として永久に地目を変更しなければならないと機械的に考えているわけではございません。むしろ水田が水田として活用されるのは、稲作ばかりでなく、排水をよくして条件整備して状況によって畑作物も生産できるようにするというところに意味があると思っております。その意味では、どうしても地形上あるいは土地の性質上地目変換をしたらいいというようなところについては、これは恒久的な畑地としてまたそれなりの控除のしようもございます。転換することも考えますが、一般的にはいま水田で畑作物をつくるという形での事業を進めているところでございます。
  258. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、会計検査院の五十三年度決算検査報告というのを見ると、大きく注意されておるのは、「農用地の地目別集団化により水田面積の減少を伴わずに水田から畑等に地目変換されたものを除外する取扱いを明確にしていない」からだめだ、こう書いてある。そこで云々と書いて、「地目変換されたものについては奨励補助金の交付対象から除外するよう要綱等関係通達を整備する」ことが必要だ云々と書いてある。会計検査院、ちょっとこのくだりを言ってくれませんか。
  259. 岡峯佐一郎

    ○岡峯会計検査院説明員 昨年の決算検査報告に掲記した事態でございますが、ごく簡単に骨子を申し上げますと、農林水産省では生産性の向上を図るために各地に散在いたします水田や畑等の農用地をそれぞれ地目別に集団化する、いわゆる土地改良事業を実施されているところでございます。この場合には、水田が畑に変換する一方、見合いの水田が造成されることとなるわけでございます。また、昭和四十六年度以降は、この土地改良事業の実施におきましても、米の生産調整に資すために積極的に水田を減らすことをされているわけでございます。したがって、水田が畑に地目変換したものの中には、実質的に水田面積が減っていくものとそうでないものとがあるわけでございますが、このように農用地の地目別集団化によりまして、水田面積の減少を伴わないで水田から畑等に地目変換されたものについてまで奨励補助金を出すことは、奨励補助金の趣旨からいって不合理である、このように感じまして改善の意見を出したわけでございますが、その基本的な発生原因は、この奨励補助金の要綱におきまして、ただいま先生おっしゃいましたように、農用地の地目別集団化により水田面積の減少を伴わずに水田から畑等に変換されたものを除外する規定が、要綱で必ずしも明確でなかった、そのことが原因である。そのほか、土地改良事業を進めるに当たりましていろいろな通達が出されておりますが、その通達におきましても必ずしも明確でない点があった、こういったことが原因となって起きた事態と考えております。
  260. 川俣健二郎

    ○川俣委員 以上のとおりで、農林省はこれから先どうするんだろうかと思うのです。  そうすると、もう一遍農林省の土地改良に言うけれども、二五%は必ずしも一戸一戸は二五%畑作にしなくたっていいんだね。それを確認しておきたいのですよ。しかもそれは命令されないですね。大丈夫ですな。
  261. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 土地改良につきましてはそれぞれ計画を作成して、これを地方農政局に提出するということになっております。この計画を審査する段階におきまして、各地区のそれから各県ごとの全国の計画上にあらわれました数字を見まして、それが全国的に二五%が達成されているということならば、個々の県、個々の地域、個々の生産者について一律に二五%でなければならないということを強制いたしておりません。全国平均で二五%ということで考えております。かなり地域的に差もございます。
  262. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、農林省の信頼度にかかわるわけだけれども、いわゆる減反面積の割り当てもそうだった。ここで大論争してペナルティーという文言は除去してと言って再通達を出した。したがって、農林省としては県単位に一〇〇%こなせばよろしいということなんで、あとは県の中でお互いに譲り合ってやってください、こういうことなんだ。ところが、この責任体制はどこにあるかといったら、町村長にどうしてもかかってくる。そうなると、土地改良してもらったって、うちはもう二五%以上畑作する必要ないだろう、これは当然農民の意欲、単作地帯に生きるのですよ、農林大臣。そうすると、農林省の担当官がこのようにおっしゃいますけれども、現実は各家々に二五%の割り当てよ。どうなんです。
  263. 杉山克己

    ○杉山(克)政府委員 私が面積のうち二五%ということを申し上げておりますのは、現実に新規の事業として土地改良を行っている地区についての数量でございます。ところが、生産調整でもって全国的に割り当てているのは、これは何も新規の農地に限りません。およそ米をつくっている全体の水田についての話でございます。ですから、地域的に見れば「個々の新しい事業を行っている地域はいま申し上げましたような二五%を前後するような事情がありましても、県全体あるいは県からさらにそれをおろしていった町村段階では、やはり減反の割り当てといいますか、この数量については、それなりに実情に応じての配分ということがなされていくわけでございます。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  264. 川俣健二郎

    ○川俣委員 よくもしゃあしゃあと、言葉はそう言えるけれども、現地を見て回りなさいよ。おたくは大変だろうからうちは五〇%やってあげます、そのかわりおたくはゼロでいいんですなんてならないから言うのであって、それを理解できないかな。農林大臣ならわかるかな。
  265. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私もそういう報告を受けておりますのでそう思っておりますが、もし先生が御指摘のように、そういうところがないということがはっきりすれば、そういうのを教えていただければできるだけ私どもでまた善処したい、こう考えております。
  266. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、またこの土地改良その他で減反、いわゆる転作を半強制的にやったわけだが、転作面積を確認しているのでしょうね。これは確認していますか。本当に転作したのか、転作したふりをしているのか。
  267. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  転作につきましては水田利用再編奨励補助金等を交付いたしておりますので、これにつきましては、その辺の転作の圃場等も確認した上で奨励金を交付するということによりまして、確認をやっております。
  268. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だれが確認するのですか。
  269. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 奨励金の交付事務につきましては、これは知事に機関委任事務として委任しておるわけでございますが、圃場が全国的にあるわけでございますので、知事の方から市町村の方に委託をいたしております。したがいまして、だれが具体的にやっておるかということになれば、市町村の職員が確認をやっておる、こういうことでございます。
  270. 川俣健二郎

    ○川俣委員 また法制局に聞いたってしようがないかな。機関に委任するとくしくも言ったけれども、やっぱりこれは機関委任事務だな。
  271. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水田利用再編対策の推進等、この対策につきましては、これは国として全国規模において推進をしていくという政策的な責任はあるわけでございますけれども、これは市町村の固有事務というふうに考えております。私がただいま申し上げましたのは、奨励補助金の交付事務、これにつきましては機関委任事務として知事にお願いをし、その圃場が全国的にございますので、県の方では市町村の方に委託をしておるということで、現実的には市町村の職員がやっておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  272. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間があればもっと超過負担に触れたいのだけれども、かなり苦しんでおるので、やっぱりこの仕事はそこに非常に多くかさばるわけですよ。同じ部落で隣の人のたんぼを見るわけですから、民間がいわゆる検査するわけですから、隣同士で本当にやったかどうか検査するわけです。これは固有事務で片づけられない。そこで、いわゆる野帳というので確認していくわけですね。野帳、帳面を持って歩くわけです。そうすると、転作はこれだけのものをこなしなさいと言っているのと土地改良との関係が符合しなければだめですね。そうすると、農林省は土地改良をいままでやってきたのだが、五十三万五千ヘクタールというのは最低土地改良済みのたんぼでなければだめですね、いわゆる畑作に。いままでたんぼのものが五十三万五千ヘクタール。そう質問すると、恐らく農林省の当局は、いや全国でもっとありますよ、土地改良したのは五十万どころじゃないよ、こうおっしゃると思うのですが、問題は、五十三万五千ヘクタールというものは皆さんがおっしゃるように公平を確保する意味で各家々に平等に割り当てるものですから、それは確認されておりますか。いわゆる個々の土地改良を、水田のままになっておるのに畑作をさせておるかどうかというチェックができていますか。
  273. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほど構造改善局長の方から答弁をいたしましたのは、圃場整備等を新規採択をいたします際に総体として二五%は転作をするということでございます。それは受益面積ということでのことでございます。そこで転作の確認でございますけれども、転作をすれば奨励補助金等を交付いたすということにいたしておりますので、先ほど申し上げましたように、圃場ごとに確認をいたしております。したがいまして、その圃場ごとに確認をいたしました際に、圃場整備の新規採択に伴いましての総体としての二五%という関係でやっている転作も当然あると思います。その分も奨励補助金を払う以上はしっかり確認をして間違いのないということで支払いをするということでございます。
  274. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間がありません。そこで、大蔵大臣もああいうお考えだし、総理大臣はこれから何年総理大臣をやられるか、これから進めていくのでしょうが、これはあと何年やるのですか。
  275. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 五十三年度から十カ年でございますから、あと七カ年でございます。
  276. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、農民の意識を申し上げると、七年たてばまた水田に戻っていいですか。農林省は田畑汎用の土地改良を推進しています、こういう表現ですけれども、七年たてばまた水田に戻ってもいいわけですか。
  277. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど私申し上げましたように、水田利用再編対策というのは、ただ単に米の需給関係の均衡を図るというだけでなくて、やはり総合的にできる限り他の食糧についても自給力を高めていきたい、こういう考え方を持っておりますので、なるべく転作していただいたものは定着していただきたいというのが私どもの考え方でございます。
  278. 川俣健二郎

    ○川俣委員 定着させて奨励金を出していく。そうすると、農林省の将来の農村づくり、農家の規模その他いろいろとおっしゃるのですが、一遍ここに総理大臣以下みんな並ぶところで、いまの農村の経営のあり方というものはどういう絵を描いているのか。特に、私は単作地帯だから言うわけじゃないが、どうしても大きく食糧を供給しているところは単作地帯に多いものですから伺いますけれども、ああいうのはどういうように農林省としては青写真を持っているのですか、その辺を一くだり話してください。
  279. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 これこそいま農政審議会で昭和六十五年に向かってのこの十年間の農政の見直しをするためのいろいろ議論をしていただいているわけでございますが、要約するならば、やはり生産性の高い近代的な農業という意味においては、できる限りいわゆる私どもの言っている中核農家を中心としてお願いをしたいと思っております。特に施設利用型の農業におきましてはある程度粗収益が上がってきておりますけれども、土地利用型の農業におきましてはまだまだそういう点は低いわけでございますので、そういう意味においては、農地の規模の拡大をぜひ図ってまいりたい。それにあわせて、それぞれの地域にやはり特性を持っておりまして、たとえばどうしてもお米しかできないところはやはりお米をつくっていただかなければならぬと思いますけれども、米以外のものをつくっていただけるところはできるだけそこの土地に適したものをつくっていただきたいという考え方も持っていかなければならないと思います。また、そういう農家が一生懸命やっていただくためには、その地域の生活環境整備が生産環境整備と一体となった形で、やはり十分そこに定着するという気持ちを持っていただける、定住する気持ちを持っていただけるような社会をつくっていかなければならぬのも当然かと思います。あるいはまた、その農業の、たとえば小麦をよりつくっていただきたいとお願いをしておりましても、小麦というのは雨に弱い品種でございますから、そういうものについては、いわゆる梅雨どきよりももっと早く収穫のできるような小麦の品種ができ上がれば、やはりそれもつくっていただけると思いますので、そういうような考え方で、技術の開発もより強めていかなければならない、こんなようなことを考えておりますが、いずれにいたしましても、いま農政審議会でいろいろと私どもも一緒になりまして議論しておりまして、その議論の成果がこの春には出てまいりますので、その成果を踏まえてひとつ今後の農業のビジョンをつくり上げたい、こう考えているわけでございます。
  280. 川俣健二郎

    ○川俣委員 その中核農家というのは、具体的に言うとどういうことですか。
  281. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 六十歳以下の男子の就業者が一年間に百五十日以上就労していただく方がいらっしゃる農家を私どもは中核農家と申しております。
  282. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると百五十日というと、相手の面積がなければだめなんだろうけれども、どの程度の規模のものなんですか。
  283. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 中核農家の定義はただいま大臣の御説明のとおりでございます。経営規模につきまして、現況で中核農家とされますただいまの定義に合致いたしますものの平均耕作面積でございますが、都府県の平均で現況、五十三年の統計でございますが、約一・八ヘクタールでございます。それで、お話しのありました水田単作地帯なりということで東北地方、東北六県の平均を例にとりますと、約二・四ヘクタールというのが現況でございます。
  284. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、せっかく東北の単作地帯を言ってくれたんだが、現在は何ヘクタールですか。それを二・四ヘクタールにするのですか。
  285. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 ただいま申し上げましたのは五十三年度の現在でございます。二・四ヘクタールでございます。
  286. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の言うのは、農林大臣の意見は将来の展望として中核農家にしたいというんだろう。それは二・四ヘクタールの農家にしたいという意味ですか。その辺がわからない。そこをちょっと聞かしてください。
  287. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 ただいま申し上げましたのは中核農家の現況でございます。中核農家をどの程度にするかということにつきましては、農政審議会等に諮っておるわけでございますが、一般的に中核農家の農業経営の適正規模という概念につきましては、地域の実情あるいは経営作物、技術水準ないしはその地域をめぐります経済社会の諸条件で規定されますので、これを一概にお示しすることが困難であろうということが目下の段階でございます。なお、私どもとしては検討いたしたいというふうに考えております。
  288. 川俣健二郎

    ○川俣委員 現在の農家の総平均面積。
  289. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 一般農家ですか。
  290. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いやいや、東北全体の農家の面積。
  291. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 いま統計を持っておりませんので、ちょっとお待ちください。
  292. 川俣健二郎

    ○川俣委員 後で言ってください。  そうすると、いずれにしても大臣、規模を拡大しないことにはどうにもならないというわけだ。そうですが。
  293. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 土地利用型の農業はぜひ規模を拡大をしていただきたい。しかし、規模の拡大のできないところもあるだろうと私は思うのでございます。規模拡大のできないところはなるべく、これは強制はできませんけれども、われわれいまの実績を見ておりますと、施設利用型という農業に行っていただけるならば、ある程度土地の狭いところでも相当収益を上げておられますので、そういう方向にお願いをできれば大変ありがたい。  しかし、土地利用型というのは、やはりある程度規模を拡大をしていかないと、これは非常にいま規模が小さいためにコストが相当高くなっておりまして、それがいろいろ批判を受けておるものでございますから、その辺は農民の理解も得て、ぜひそういう方向でお願いをしたい、こう考えておるわけでございます。
  294. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは施設利用型とか土地利用型とかと言うけれども、農業というのは、対象、土地がなければだめなんで、土地があって初めて複合経営もできる。できれば部落に山林もあった方がいいんだ。  私の聞くのは、東北の単作地帯で、いまの総平均が一戸何ヘクタールで、それを何ヘクタールの農家にしたいのだという青写真があるんじゃないのかな。
  295. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど官房長が申しましたように、たしか私の承知しておるのでは、東北で平均が二・四と聞いておるわけで、大きいのが二・四でございますね。  そこでいずれにしても、そういう東北においてそれじゃ将来どうするのかということでございますが、これは先ほど申し上げましたように、まだそこまで結論は出しておりません。農政審議会でいろいろそういう点も議論をし、先ほどの考え方に基づいてやってまいりたいと思います。
  296. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまたんぼの平均が二・四で、そして二・四にするというんじゃないんだろう。いま一戸平均が何ヘクタールですかというんだ。それを二・四にするというんだろう。
  297. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 先ほどお答えしました二・四ヘクタールというのは、東北六県におきます中核農家の平均耕作規模でございます。いま東北の数字を調べておりますので後ほど御報告いたしますが、全国平均の耕作規模、一農家当たりは〇・九四ヘクタールぐらい、昔の言葉で言いますと九反四畝ということになるわけでございます。
  298. 川俣健二郎

    ○川俣委員 全国平均と東北の中核と一緒に言ったって何も意味はない。それをちょっと早く言いなさいよ。いま東北でどのぐらいのヘクタールなんだ。わかるだろう、全国の〇・九がわかるんだから。
  299. 渡邊五郎

    渡邊(五)政府委員 東北の一戸当たりの平均耕作規模は一・二七ヘクタールでございます。
  300. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、さしあたり二・四ヘクタールの中核農家ですね。大規模農業だね。大規模だったんだね、農業基本法、総合農政のころは、大分後退したようだけれども。それにしても二・四、いま一・二七、二・四、単純に平均しても二軒に一軒だね。そうなるとどうなるんだろうかね。これはどういうことになるんですか、二軒に一軒が農業をやる……。
  301. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先ほど私が施設利用型と言ったら、そんなことはそううまくいかないという御指摘でございますが、私どもといたしましては、土地がどうしても狭い農家の方にはなるべくいろいろの施設をつくっていただいて、それによって収益を上げていただくようにしたい、それから、土地利用型でどうしてもいこうという農家に対しては、できるだけ経営の規模を大きくしていただくように、われわれは法制その他の問題も含めてそういう方向で進んでまいりたい、こう考えておるわけであります。
  302. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この問題、同僚の議員が詰める時間が後日ありますけれども、もうちょっと聞きたいのは、私はうまくいかないとかいくとか言っているのじゃないんだよ。二軒のうち一軒を農家にするわけでしょう、いまの農家の二軒のうち一軒、面積的に言えばだ。そうだな。
  303. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先生御承知のとおり、兼業農家が全体で約九割ございます。その九割のうちの約六割は、私どもはすでに就業が安定しておられると聞いておるわけでございます。もちろんそれは全国平均でございますから、東北とかあるいは山陰とか、地方によっては正直、なかなかそうはいかないところもあろうかと思いますが、全国平均はそういうことになっておると思いますし、また今後、田園都市構想とか、これから地方の時代とか言われているわけでございまして、なるべく地方により工業が進出され、あるいはまた、いま地場産業振興の対策も考えられておりまして、それによって将来、そういうところにも就労の機会はあるであろう、こういう考え方を持っております。私どもとしては、余剰労働力が出るという考え方ではなくて、もう農業以外の収入ですでに安定して、またより多くの収入がある方からは、できればひとつ農地をお貸し願えるように持っていきたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  304. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農地法改正を考えているわけですか。
  305. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 この通常国会にはぜひ出さしていただきたいと思っております。
  306. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大体どういうことですか。
  307. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 まだいま研究会でいろいろ議論をしておりますが、しかし余り時間もございませんので、できるだけ結論を早く出さなければいけないと思っておりますが、大体大きく言えば、やはり小作料の問題が一番大きな問題になるのではなかろうかと思っております。法的には物納は認められておりませんけれども、それを法的にぜひ物納を認めていきたい、あるいは、小作料についてはできるだけ自由の方向に向かって進んでいきたいというようなことでいま議論を進めていただいております。
  308. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一番大きな問題に小作料を挙げたけれども、そうすると地主がいることということだな。その地主はどっちかといったら、もちろんたんぼを貸す人の方だろうけれども、それは当然だが、そういう中核農家をつくるわけですね。二軒のうち一軒、面積的に言うと。そこに小作料が一番大きな問題だと言うから、したがって当然、一軒の方は農業をやめるということですね。
  309. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 先生御承知のとおり、農振法の改正によりまして、農用地利用増進事業というものを五十年につくったわけでございますが、これなどの状況を見ておりましても、最近、貸していただける面積が相当ふえてきておりますので、私どもはそういう方向で中核農家を育成していきたいと思いますけれども、二つのうちの一つがなくなるとか、必ずしもそう単純な計算ではいかないだろうと思うのでございます。ということは、先ほど申し上げたように、施設利用型の方は土地は狭くてもいいわけでございますから、必ずしもそういう単純計算にはいかないと思いますけれども、いずれにしても、貸していただける方が、出していただける方がなければいけないわけでございまして、そういう点では、掘り起こしをするために五十五年度の予算の中で、そういう流通促進のための推進員というような制度も私どもは考えていきたいと思っておるわけでございます。
  310. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農林大臣、新しいんだからもう少し張り切って、もっと率直に言わなければだめだと思うんだ。はっきり言って、一・二七を二・四の農家規模にするわけだから、それだけでは施設園芸型で暮らせるわけはないでしょう、あなた。やはり土地が対象にならなかったら農業はできないわけだ、特に単作地帯というのはね。  そこで、複合経営というのを盛んに農林省が推奨をしているんだが、私もそう思います。昔の農家は鶏を飼うとか飼わないとか言わないで、鶏というのは周りにいるもんだったんだ。堆肥があったもんなんだ。いろいろとあるんだ。そのときに欠かせないものは山林なのよ、民有林。この民有林の地主というのはそこの土地にいないわけ、東京とか都会にいるわけよ。そうなると、その民有林の、山林の解放とまでは言わないけれども、びっくりされるから、第二次革命なんと言われるから。山林の解放は日本の国は終戦後はやらなかったんだ、たんぼだけで。山林の解放とまでは言わないんだが、その民有林の土地を持っている地主が都会にいる。財産として持っておる。これをいろいろな利用の仕方があるんだな。人間というのは山林を、おれの林だと思えば非常に精力的に育てる、こういうことを私は考えるんだが、農林省の施策の中に一つありませんか。
  311. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 現在、草地開発などには私は相当そういうものも含まれておるんではなかろうかと思っておりますが、将来、それをいま先生御指摘のようになかなか強制的にはできませんけれども、お互いの話し合いによって、いまの複合経営をより進めていく上においても、話し合いができればできるだけそういうものをわれわれも勧め、裏において推進をするということは私は大変大切なことだと思っております。
  312. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういうときには非常に民主的なことを言うけれども、たんぼを割り当てる、減反面積を割り当てるときはかなり強制的に農林省は言う。むしろ山林の地主が都会におって、山がそこにある、その山を複合経営の一環としてやるべきだというのは、私はもっと農林省が強く出たっていいと思うな。そこでどうですか、それはもう少し強い施策。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  313. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 私有権の問題がありますからあれでございますが、利用権というのはまた別でございますので、そういう点においてはできるだけ私ども努力をしてまいりたいと思います。
  314. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは後日の論争に任せるとして、やはり農業というのは、昔は三本ぐわで始まった農業がいま完全に変わりましたね。しかも冬場は、単作地帯の話をすると、冬の労働力というのは自分の使う俵を編んだりなわをなったり、それからみのをつくったりというこういう農業だった。いまはそれはみんな消費経済であおられて要らなくなった。したがって農家も、これは通産大臣に伺うんだが、御承知のように油なくして農業は絶対できないという世の中になってしまった、園芸にしろ何をやるにしても。そこで地熱というのが、単作地帯には方々に温泉があるんだけれども、そういうのは考えられているか、そういう施策はどうですか。
  315. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お説のとおり、日本は地熱に恵まれておりますから、これを大きく開発いたしまして、単に発電ばかりでなしに農業関係、特に温室栽培とかあるいは養魚等に利用していけば大変よろしいんじゃないかということで、予算その他も四倍くらい急に上げまして、本格的に取り組んでいくつもりでございます。
  316. 川俣健二郎

    ○川俣委員 佐々木通産大臣は原子力だけの大臣だとかと言われているが、結構いろいろと考えておられるようですが、地熱に対する積極的なあれをやっていますが、いま現在地熱というのは、どうしても砒素その他の関係で国立公園その他にある。環境を非常に大きく使わなければならぬ。そこで環境庁と通産省が覚書を結んだ。それは、既存の六カ所以外は地熱開発をしてはいけないという覚書があるはずだと思う。これはこれからどうすることなんだろうね。環境庁、どうです。
  317. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 お話のように、四十七年ですからいまから八年ほど前に、六カ所だけは開発しようということで両省間に取り交わした文書がございます。その後、先ほど申しましたように、エネルギー情勢がこういう情勢でございますから、地熱開発を大いにやろうというので、いまほとんど八万キロぐらいだと思いますけれども、これを十カ年で三百五十万キロワットまで上げたいという大変野心的な計画でいま進めております。そういうふうに地熱開発を大いに進めようという一方、何といっても環境保全の問題がございますから、と言ってまた、環境保全の技術もその間に大変進歩してまいりまして、掘削の技術とか、あるいはいまお話のございました公害になりそうな砒素とか硫化水素、そういうものの除去技術も非常に発達しまして、八年前とは大分違っておりますので、そういう情勢を踏まえまして、取り交わした文書のように六カ所に限らないで、ケース・バイ・ケースでひとつ両省でよく相談して、よろしいものはよろしいように進めようじゃないかということにただいまなっております。
  318. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうも時間がないからあれですけれども……。  それから農林大臣、やはり単作地帯というのはいわゆる豪雪に悩むわけです。すべて豪雪に悩む。その場合、公務員には寒冷地手当、少ないけれどもいまいろいろとアップの問題で話し合いをしているけれども、一般の人方の雪にまつわる措置というのはないわけですね。そこで大蔵省は、雑損控除というのがあるじゃないか、それは一年間の所得の十分の一以上雪に関係した経費に使った場合は証明書を持っていらっしゃい。三百万の場合は三十万以上になる。ところが、囲いの費用、雪おろしの費用、それから要った施設その他をずっと考えると、雪にまつわる経費というのはこれからかなり出てくる。  そこで大蔵省、これは各委員会でかなりいろいろやってきたし、議員連盟もありますけれども、この豪雪の所得控除的なものを検討する検討するという約束は各委員会でやっておられるようです。一体その検討はどの段階ですか。
  319. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず最初に申し上げますのは、昭和五十二年の十月の「今後の税制のあり方について」という答申におきまして、「新規控除創設の要望教育費控除、住宅ローン控除、豪雪控除等の新規控除創設の要望があるが、新規控除を次々に創設していく場合、税制をいたずらに複雑にするし、そもそも個別的事情を税制においてしん酌するにはおのずから限界があるので適当でない。」というのが五十二年で一遍あったわけです。しかし、今日の時点で申し上げますならば、いわゆる豪雪控除などの特別控除を設けるべきではないかという御提案については、今度は新しく税制調査会にも紹介して審議をいただいておるということであります。しかし、これまでの税制調査会の答申、先ほど読み上げましたもの等がございますので、きわめて困難であるという御理解をいただきたい。
  320. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一つだけ。穀物輸入、食糧問題、戦略物資等から入ってきたんだけれども日本の穀物の輸入もかなりなものなんですが、その中に飼料の問題があるのです。えさ米ですね。これはタマネギ植えたって一万九千トン捨てないといけない世の中ですからね、いまの転作物は。だから、これからどんどん転作物が出ますから、それに対して農林省はどうするか、時間があれば伺いたい。  えさ米は、これはきわめて技術的に、いわゆるインディカ米、いまの日本のジャポニカ米以外のインディカ米を植えれば、これは一トン、十六、七俵できるという技術も確認されてきた。これの受け入れ体制は農林省もいろいろと御意見があると思うのだけれども、これから先えさ米の転作はどういう考え方でおりますか。それは食糧問題、穀物の輸入問題に絡めて質問しておきます。
  321. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 えさ米につきましては、全国でたしか十一県の試験場でいま試験もやっていただいております。また、先生の地元かどうか知りませんが、何か秋田でも大変御熱心にやっていただいておる人があることを承知いたしております。そういう非常に御努力をなされている方々の実績を踏まえていかなければならないと思いますが、いまのところ、私が事務当局なりあるいは技術会議から聞いておるのでは、相当いまの、これはトウモロコシの値段と比較するのがいいかどうかは別といたしまして、やはりその辺の値段と比較すると全然まだ相当違いがあるということでございますが……(川俣委員「どういう違い」と呼ぶ)値段的に相当開きがある、こういうことを聞いております。しかし、将来の問題として、えさ米というものについてもこれは真剣に考えていかなければならない問題であろう。ただそのときには、やはり流通上の問題がございまして、現在の主食の米と一体どう流通で問題にするのかという点もありますので、そういう点も考えますと、いますぐそれでは早速これはどんどんやれるという状態にも私はならないのではないかと思いますが、しかし、えさの需給状況から考えて、将来ともえさ米を研究していくということだけはこれは今後も続けていきたい、こう考えております。
  322. 川俣健二郎

    ○川俣委員 終わりました。(拍手)
  323. 田村元

    田村委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。
  324. 川崎寛治

    川崎委員 私は、大変いま大きく動いております世界政治や経済の情勢の中で、日本がどう対応すべきかという立場から幾つかの問題をお尋ねしたいと思います。  八〇年代が不確実であるとか、あるいは不透明であるとか、あるいは混迷であるとか激動であるとかということは、要するに枠組みが大きく揺らいでおるということだと思います。イランの大使館員の人質事件やアフガニスタンへのソ連軍の武力侵攻という大変不幸な事件が起きておりますが、これはやはり一つの大きな枠組みの変化の中での問題だ。といたしますと、それは東西問題、また南北問題というものの鋭く交差をしておる問題であろうと思います。  わが日本が軍備を持たずに、まあここのところは非常に意見のいろいろと違うところでありますが、総合安全保障ということを今日政府の諸君はよく言うわけでありますけれども、総合安全保障の立場をとるにいたしましても、要するにデタントの中で相互依存関係というのが、東西間においてもあるいはそれぞれの陣営の中においてもいま大きく深まりつつある。そのことがいま、今度は揺らいできておるというわけです。  具体的に日本とイランとアメリカの三つをとってみましても、日本とイランとは、石油という問題を考えますときには、またイスラムとの関係を考えてみましても、非常に生命線の問題である。日本の生存にとっても大変基本的な問題である。一方、日米もまた大変大きな依存関係にある。強い関係が日米間にもあるわけであります。ところが、その相互依存関係というのが、今度の日本とイランの問題をとってみましても、イラン側の問題の解決でいこうとするとアメリカとぎくしゃくする。アメリカの方によくしようとするとイランとの関係が決定的になっていく。つまり、相互依存関係というものは一方では非常にもろいということですね。このことは、デタントがいま大変大きな危機の中にあるだけに、相互依存関係というものが一方では大変もろいものを持っておるということ、私たちは党派を超えてそのことについては深く考えなければならない、深刻に考えなければならない問題だ、こう思うのです。  そうしますと、昨年来、大きな激動の中で大平内閣がどういう姿勢で世界政策あるいは世界政治なり経済なりの政策をとってきたかという点については、残念ながらあなたの党の政調会長からもだめじゃないかと突きつけられておる。その方向は、われわれと一致する方向ではありません。しかし、ありませんけれども、党内からも大変頼りないということで突きつけられている。伊東官房長官は後ろで頭を振っていますが、しかし、あなたにしてみれば、いやそうじゃないのだ、待てば海路の日和かなで情勢を待っておる、世論を待っておる、じっとしておることがむしろ結果がいいことになっていくのだとあるいはお考えかもわからぬ。しかし、それじゃ済まないのですね。大きく動いていく中で、それじゃ済まないわけです。  そこで、今日の激動しておる中で国際正義をどう確保するか。一方、冷戦というものの危険性がある。その中で冷静にリスクをどう計算していくかということが求められると思うのでありますが、今日の日本独自の外交戦略というものをあなた自身はどうお考えになるか。これはこれからずっと質問いたします問題で個別に詰めてまいりますが、まず総括的にお尋ねをしておきたいと思います。
  325. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 川崎さんも仰せのように、いままで世界を支えてきた既存の秩序が揺らいでおる中で、相互依存関係は逆にますます深まりを見せておるという状態だと思うのでございます。したがいまして、世界が挙げて非常ないらだちと不安を覚えている時代だと思うのでございます。  日本といたしましては、政治面におきましては、平和、安全を世界の中でどうして確立していくかということの基本は、いままでとってまいりました外交戦略、すなわち日米友好関係を軸として諸外国との友好関係を強めていくという基本線を変えないでいこう、私はこれは間違いでないと思っておりまするし、間違いでないばかりか、こういう不安定な時代にはこれはますます強く堅持してまいる必要があると思います。したがって、日米間の信頼を確立する、不信を除いていくということは、そういう意味で基本でなければならぬと考えております。また、それがちゃんとしていなければ、体制を異にする国々との間の外交も実りあるものにならぬ、そのように考えておるわけでございます。  国際経済におきましては、国際経済秩序、これはわが国としてはより自由な経済貿易体制を確立していくということ、そして世界経済の安定を維持していくために、わが国の持っておる力量にふさわしい貢献をしていかなければいかぬと思うのでございまして、十年前三%程度でありました世界経済に占めるシェアが、一割見当というところまでのし上がってきた日本といたしましては、それにふさわしい責任ある貢献をしてまいる、これは世界も期待をいたしておりまするし、われわれはそういう貢献を通じて世界の中で名誉ある生存を確保するということでなければならぬと思っておりまして、そういう基本の考え方は、去年以来事態が大変深刻になってまいりましても、変わることなく追求しておるところでございます。
  326. 川崎寛治

    川崎委員 きょうの新聞の情報によりますと、二月中旬にアフガニスタン侵攻への対ソ対応措置を調整するために先進国の外相会議を開きたいということをアメリカの国務省筋が言っておるということですね。情報によりますと、アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、西ドイツ、イタリア、日本がロンドンかボンでと、こういうことでありますが、二月の中旬ということであればもうすぐのことであります。とするならば、そのことを踏まえて国際問題の議論はしなければならないと思いますから、そういう招待というか連絡が来ておるのかどうか、それに対する態度をお示しいただきたいと思います。
  327. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいま御質問の前段のアメリカが主宰する外相会議について、日本側に要請が来ているかどうかという点でございますが、私たちは二、三日前からの外電、新聞報道で承知している程度でございまして、そういう要請が来ているということは現在のところございません。
  328. 川崎寛治

    川崎委員 外電では入っておるということですね。
  329. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいま申し上げましたように新聞で拝見しているということでございます。
  330. 川崎寛治

    川崎委員 それでは、正式のものではないがそういう動きはあるというふうに見れるわけですね。あるいはアメリカの大使館、日本の大使館がそのことに対してどういうふうに考えておるのか、国会議論がある、国際問題として大きい、特にそういうときにそういうものが外電で入っておる、新聞で入っておる。しかしそういうのを、はっきりするまではほっておけということでほってあるのか、その辺のコンタクトはどうなっているのか。決められてしまってからのこのことやっていく、ああ日本も呼んでくれた、これでよかった——いつでしたか、どこかのときには日本は呼ばれなかったから困ったなんということもあったのですけれども、そういうぶざまなことではいかぬと思うのです。
  331. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御指摘の点は新聞情報で、正式の外交ルートを通してはございませんで、ただ、私自身としても、できるだけ早い機会にワシントンに参りまして、国務長官等と話し合いたいということの申し入ればしてございます。そのことに対する返事は、三月になってからがいいということで、二月半ばのそういう会議についての返事を、外交チャネルではまだ全然もらっておらないわけでございます。
  332. 川崎寛治

    川崎委員 イランのアメリカ大使館員人質事件についてお尋ねをしたいと思います。  私たち日本社会党は、この大使館員人質事件が国際法に反するものである、速やかに釈放すべきである、こういう立場に立っておりますことは、委員長も明確にしておりますし、私もそのことを明確にしておいてお尋ねをしてまいりたい、こう思いますが、ただ、アメリカの大使館員の人質事件というものに対する日本の対応の仕方というのは、本当に振り回されておった。これはもう国民のひとしく受けておる印象であろう、こう思います。  イランがアメリカに要求をしておるのは三つあると私は思うのです。一つはシャーの返還、二番目には不当持ち出し財産の返還、三番目にはアメリカ大使館がスパイ活動をしてきたし、しておる。その三つが一つ基本となっておる、こう思います。ところが、アメリカ側の対応の仕方というのは、その人質をとられた以降の問題で対応しようとしている。  そこで、この経済制裁の問題を考えますときに、これは中東の情勢というのが大変激しく動いておりますし、特にこれから米ソが力と力で対決し合うということになりますと、中東の問題というのは、やはり大事な関係を持たぬといかぬだけに、また一方では十分冷静に考えておかなければいけない、こう思うのです。  その経済制裁の持っておる問題点は何があるだろうかという点を考えますと、まず第一に、アメリカは一向に困らない。人質の問題はありますし、これは釈放させねばいかぬ。このことはありますけれども、経済制裁自体をとってみますと、アメリカは一向に困らない。それから日本と西欧は、経済的な打撃を受けるのは大変大きい。それから、経済制裁の効果の問題でありますが、これはローデシアの制裁のときもそうでありますけれども、効果はなかった、薄かった。しかも今日の情勢を見ますときには、ソ連側に確かに有利に動いた、こういう点が経済制裁から出てくる問題であろう、こう思うのです。  この問題について、ヨーロッパはヨーロッパのそれぞれの立場、イギリスにしましても、また西ドイツにしましても、あるいはフランスにいたしましても、それぞれのスタンスを明確にしながら、それぞれ物を言っているわけです。ところが日本の場合には、その点が非常に明確でなかったハビブ特使が参りましたときに、ちょうど総理がいなくて、伊東官房長官が臨時代理外務大臣としてハビブ特使と話し合いをしたわけでありますけれども日本側の姿勢というのは、ただ人質事件の問題について触れるだけ、そして基本的にどうしていくかということについては触れていない。しかし、現実にいま動いておる方向は、国連のワルトハイム事務総長を中心にいたしまする国際的な調査機関をつくって、そして一括的解決をしていこう。まだイランの国内の、選ばれたバニサドル大統領自体も安定しておりませんから、いろいろございます。しかし、イラン側も一応オーケーしている、こう言われている。  そとで、外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、いまのこの人質事件の問題の解決の方向ですね。つまり、今度のアメリカのカーター大統領の一般教書なり一般報告なりにも落ちておるわけです。ほっとしたと思うのです。しかし、ここまでに来る過程というのを、去年の暮れの国連における決議以来ずっと考えてきますときに、日本国連中心ということを言いながら、果たして国連中心のそういう動きをしてきたのか。ワルトハイム事務総長が動いたそのことに対して、日本はどれだけサポートをしたのか。あのワルトハイム事務総長が、インドにも行き、パキスタンにも行き、イランにも行く、そしてお互いの間の窓口を開くために必死の努力をした。シャーにやられた、両親を殺された、片腕のない子供にも会って涙を流した、そういう努力がイラン側にも通じておるわけですね。  その中で日本は何をしたか。ただIJPCを除外してくれ除外してくれということだけしかわれわれには響いてきてない。そんなのでよかったのかということが深刻に考えられるわけです。ですから、今日のこの問題についての解決の方向を、外務省としてはどう見るか。いまいろいろ新聞でも報道されておりますけれども、結局解決の方向は、ワルトハイム事務総長を中心に、国連でそういう方向で行かざるを得ないんじゃないかと思うのであります。イスラムの外相会議も、アメリカとイランは話し合え、平和的に解決せいということを決議しておるわけです。だから、この方向についての外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  333. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 イランの問題には、一つにはアメリカとイランという関係、人質の問題がございます。実はこの問題は、単にアメリカとイランの問題だけではございませんで、大使館を占領し、外交官を人質にするということは、国際的な秩序全体に関係してまいりますので、これは関係当事国以外にも、国際的な秩序を守る、これが守られなくなりますと、全体として世界各国の秩序が混乱してくるという点で、これに対してはやはりはっきり、イランの行為に対する批判をすべきであるということでやってまいったわけでございます。  ただ、経済問題になりますと、これはただいま先生御指摘もございましたが、日本は特にイランとの関係が深いわけでございますし、歴史的にも友好関係を持っておる。また、最近の政変以後においても、比較的友好な状態を維持しておるわけでございまして、日本の立場といたしましては、基本的にイランとの関係、将来の関係も含めまして、それを余り損なうことなしに、できるだけ早く人質の解放を求める。そういう意味での要求を、しばしば現地の大使を通じて、あるいは私どもこちらのイラン大使を通じて、あるいは国連の場を通じて努力してまいっておるわけでございます。
  334. 川崎寛治

    川崎委員 だから、いま国連の方向で解決する方向に行きます、そうしますと、これは後の経済制裁の問題とも絡むのですよ。だから、私の言ったような方向で、ワルトハイム事務総長を中心にした、そういう方向で行かざるを得ない。そのことは、一方で言うならば、アメリカの経済制裁ということの日本への要求はなお続いておるのか。つまり、IJPCの再開のために山下社長が向こうに行ったというふうなことも報道されておるのでありますけれども、そういたしますと、そのことは、経済制裁の問題は一応たな上げになったというふうに考えておるのか、あるいは別個にまだ制裁の問題は続くというふうにお考えになっておるのか、端的にお答えいただきたいのです。
  335. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 御指摘のように、ワルトハイムの仲裁の活動もございますし、イスラムの会議もございます。それからイラン自身の大統領選挙もございました。また、来月には議会の選挙もございます。いろいろ情勢がただいま動いております微妙な段階だと心得ております。  国連でのイランに対する制裁決議は、ソ連の拒否権で否決になりましたが、アメリカとしては、情勢を見ながら、イランに対する経済措置というものを現在でもあきらめていない状態でございますので、もう少し推移を見る必要があると考えております。
  336. 川崎寛治

    川崎委員 では、次にIJPCの問題ですが、これは三井物産が始めるときには、自分たちでやるんだと言ったけれども、だんだん情勢が悪くなったら、去年の総選挙の後、政変でごたごたしている最中にこれをナショナルプロジェクトにしたわけですね。しかし、現にイランには昨年の二月の革命以後とってみましても、二十一ですかプロジェクトが続いておるわけです。しかも、IJPCのプロジェクトはイランとのプロジェクトの契約総額における比率は五〇%、なるほど一つとしてみれば巨大だけれども、全体の中の五〇%、なぜこのIJPCだけナショナルプロジェクトにしたのかという不満も大きいわけでありますが、これを明確にしていただきたいと思います。
  337. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 このプロジェクトは、イランといたしましても大変重視をしておりまして、早期完成を強く要請しております。イランは、申し上げるまでもなく産油国ではわが国とは大変関係の深い国でもありますし、また、このプロジェクトは大型経済協力案件でございまして、大変大型でございます。そういうことでございますから、イランとしても大変熱望しておりますし、わが国といたしましても、先ほど申しましたようなイランとの友好関係を考えまして、非常に重要な問題だと判断いたしましたので、一企業のみに任せずに海外協力基金を出資いたしまして、そして支援しようということに決めた次第でございます。
  338. 川崎寛治

    川崎委員 イランとのプロジェクトの中の五〇%ですよと言った、しかし、これだけ取り上げたということについてなぜかということについては、お答えになっていないのですよ。しかも、これは細川隆元さんが、放談ですからあれですけれども、黒いうわさがあるとあの選挙の直後にテレビでも言っているわけですよ。だから、そういう不明朗なものであってはならない、こう思います。  イランの問題にかかっていますと時間がありませんので、少し急ぎますが、園田前外務大臣が中東方面を訪問されると決定されたようでありますが、私は大変結構だと思う。しかし、遅かったと思うし、本来なら総理大臣なり外務大臣が行くべきじゃないだろうか。アフガン問題をめぐるイギリスやあるいはドイツやフランス、そうしたところの動き等からいたしますと、大変鈍いわけでありますが、園田前外務大臣はイランにもぜひ行きたい、こういうふうに新聞報道を見ますと言っておりますが、それはどういう予定でしょうか。
  339. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいま園田前外務大臣と外務省当局とで日程等について打ち合わせをいたしておりまして、さらに現地の中東諸国の都合の照会をただいま始めておるところでございまして、現在の段階ではまだ確定をいたしておらないわけでございます。
  340. 川崎寛治

    川崎委員 今度の一連のイランなりあるいはアフガンなりの問題等を通じて、これは本会議質問においても、与党の中からも鋭く指摘をされたわけでありますが、情報の収集、情報の判断政策の決定ということについて非常におくれておる、間に合わぬじゃないかという点が与党からも、政調会長からも指摘があった。私もそうだろうと思います。こういう国際情勢が非常に激しく動いておるときに、それはただ単にホットなニュースを早くつかむというだけじゃなくて、たとえばアフガンの問題について言うならば、土地制度について日本できちっとこれを研究しておる機関がなかった。だから、アミン政権の土地政策の失敗というものがどう絡んできたのかという点について、日本政府関係それぞれで十分に分析をするだけの材料を持っていなかった、私があっちこっち聞いた感じではこう思います。これは非常に残念なことだろうと思うのです。しかし、これだけ国際化をしておるし、特に日本が国際化の中で平和と安定を求めなければいかぬ、こういうことになりますと、そういう二つの問題があると思うのです。  一つは、情報収集についての外務省なり、あるいは石油問題で言うと通産省なりの情報というものがそれぞれあって、イラン問題をめぐるいろんな発言にしても、通産大臣と外務大臣とが全く違ったことがぽっぽっと出てくるわけですね。通産省の方はメジャーなりあるいは商社なり石油関係からのニュースがわりに入るでしょう。報道しておる各新聞社にしても、中央の新聞社でも全世界に三十数カ所しか特派員を出してないわけです。しかし、三井物産等だと数千人出ている。これは情報公開法の問題などとも絡んでくる。つまり巨大企業が情報を持っておる。政府が情報を独占をしておるだけでなくて、巨大企業が情報を持っておる。そのことが今日の国際政治なり国際経済を考えるときに非常に大きなファクターとして大変これは深刻な問題だ。むしろ国会が一番情報がない。その点は、いまの国会の調査機構のあり方などについては、これは国会機関の予算分科会等でもこれまで議論してきたこともありますけれども国会の情報収集についてはいまのままでいいのか。これは与党の諸君も含めて、与野党でもっと考えなければ、国会が一番古い、もう二遍も三遍も四遍もふるったような情報を土台にして議論しなければならぬ、これではいけないと思うのです。そのためには、国会のそういう情報収集、調査機関をどうすべきかということについては、私は深刻に考えております。これはひとつ与党の諸君と話し合いたい、こう思うわけです。  そこで、政策決定の問題についての中央の司令部がないということは、大平総理の指導性の問題にもかかってくるわけですが、とりあえず長期的な、非常に動いておりますから、その中で、たとえばアフガンの土地問題等にしても、パキスタンの問題等にしても、そういうことを考えると、土地の制度自体も調べておかなければならぬ。それが十分できていない。となりますと、やはりそういうものを本当に収集をし、分析をしておく機関というのがなければだめなんです。  私は提案があるのです。総理はひとつぜひこれを慎重に、慎重にと言うとなかなかやりませんから、深刻に考えてほしいのです。それは具体的に挙げます。たとえばアジア経済研究所、これは通産なり経企庁ですね。それからジェトロ、これは通産省と経企庁と、こうなる。それから中東経済調査所、これは経企庁と通産ですか、それから中東調査会が外務省、こういうふうにありますが、私はこのジェトロなりアジ研なり中東経済調査所なり中東調査会なり、これはそれぞれ非常に不十分な条件の中で、みんなそれぞれ一生懸命やっている、こういうふうに私は高く評価をします。ですから、その研究が本当に統一的にやれるようにして、そのためには中東研究所というのが必要です。京都大学の梅棹先生の提案をしておる問題については、文部省でいまいろいろと検討しておりますが、その中東との基本的な、文化的な、歴史的な、そういう問題等についての研究は、中東研究所というのが早くできればいいなと私も期待をしておる一人でありますが、これについては、後ほど文部大臣から伺いたいと思う。  もう一つ、その前に、いま私が提起したアジ研なりジェトロなり中東経済調査所なり中東調査会なりを一本にしたらどうだ。これは行政機構改革にもつなかるのです。そうして一本にして——行政改革はちょっと除きますよ、また宇野さんが変なことを言い出すと議論がこんがらがりますからね。そうじゃなくて、これを一本にして、そして強大なものにする。そして各方面に対する分担もできるように機能はきちっとする、そういう方向でぜひ検討してほしい、こう思うのです。総理大臣自身も、いろいろな情報等についての不足、あるいは解析力のなさ、そういうものについては、ただアメリカの情報だけに頼っていて失敗をしたというイランの問題もあるわけだし、そういうことでは十分にお考えになっていると思いますので、私の提案に対してどういうふうに御検討いただくか、伺いたいと思います。
  341. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのように、情報に関しましては、情報が一面非常に過多であって消化が十分でないという面が一つあります。それからまた、あなたが御指摘のように、情報収集がある意味において少ないという面もあるわけで、それは充実を図らなければいかぬということ。第三は、情報の管理をどうするかという問題。第四は、いまあなたが言われた情報の整理、分析、解明の機関をどうするかという問題でございます。一つの御提案をいただいたわけでございます。それぞれの調査機関は沿革、歴史を持っておりまして、あなたが言われるように簡単にこれを一つにできますかどうか。そうした方がいいのか、あるいはいまのままの状態で、もっと一つのコーディネーションをうまくやってまいる方法を考えた方がいいのか。そういうような点は、私は相当深く検討する必要がある課題であると思いますので、いまの御質問をいただきましたことを契機といたしまして検討をさせていただきます。
  342. 川崎寛治

    川崎委員 ぜひ御検討願いたいと思います。  次に、アフガン問題、イラン問題その他を通じ、あるいはイスラム外相会議の動向等を通じて、大変中東が米ソの力の対決、そして分割の修羅場になるという状態にあります。もしそうなったら、パレスチナの問題というのはますますまたむずかしくもなります。しかし、中東問題というものを解決をしていく根幹の問題としては、包括的な平和を確保していく問題として、パレスチナ問題の解決を急がなければならぬ、こう思います。総理大臣が、十二月一日、参議院の本会議で、これは御質問はなかったのですけれども、総理の方から積極的に言われたので、大変熱心だと思うのでありますけれども、この総理のパレスチナ問題についての発言は、PLO側も大変高く評価をしておると私は思います。一歩踏み込んだものとして、私はよろしいと思います。  ただ、これは本会議というところできちっとされたわけでありますから、公式のものとしていいわけでありますけれども、PLOの正式の招待ということが、PLO側からしきりに言われているわけです。いまアブダビの方で、昨年来、つい最近も含めて二回、村田大使がPLOの方と接触をしておるという新聞の報道等もございます。アラファト議長の来日は年内に実現かと言っておりますし、また、その新聞の報道によりますと、PLO幹部が来日の際には、政府の対応として、大平首相、大来外相らとの会談を初め、PLO幹部は他国の首脳と同等に接遇するということを村田大使が言われたというふうに報道されておるわけです。そのことに対して、総理から、つまり日本政府として公式に接触をし、そういう機会が出たときには、そういうふうに接遇するということについての方針であるかどうかを伺いたいと思います。
  343. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 中東紛争の底にある核心的な問題がパレンチナ問題であること、仰せのとおりでございます。この問題につきましての日本政府の公式の見解はたびたび申し上げておるとおりでございまして、いま引用になられました、最近の参議院本会議における私の言明どおりでございます。  それから、PLOに対する日本態度でございますが、いま仰せのように、村田大使と先方との間で接触がございまして、そのあらましは私も報告を受けておるわけでございまして、いま川崎さん仰せになりましたような姿で接触が行われて、そして双方の話し合いが進んでおるわけでございまして、日本政府といたしましても、そういう心構えで対処いたしてまいるつもりでございます。
  344. 川崎寛治

    川崎委員 ぜひ、ただ単なる情報でなしに、つまり情報でいろいろなのが流れるというのが一番いかぬわけです。やはりきちっと公式の態度としてそれが伝わるということが必要ですから、そういうことで進めていただきたい、こう思います。  もう一つ、これはより基本的な問題になってくるわけですが、国連決議の二四二号、これは前回の中東戦争の際に国連決議をされておるわけでありますけれども、これはパレスチナ人というのを難民扱いしておるわけでありますから、この二四二号の決議の修正ということがより基本的な問題であろう、こう思います。そのためには、その前にどうしても通らなければならぬのがアメリカとパレスチナとの問題でありますが、このアメリカとパレスチナあるいはアラブとの関係、そういうものに対して日本がより前進をすると同時に、さらに調停者になる。人のやったことをやるのは、これは外交じゃないんですよ。人のやっていることをただやるというのは外交じゃないのです。そうしますと、この際、中東の問題について日本がより一歩踏み込んでいくというために、そういうアメリカとの問題が一つですね。  それからもう一つは、いま言った二四二号の修正、このことは、アメリカとの問題が解決しませんから、どこも国連に提案をしないわけです。しかし、修正をしなければならぬ。修正をするためには、決議の修正という形でないとしたならば、新たな決議というのが必要であろうかと思うのでありますが、その点についての日本政府態度を伺いたいと思います。
  345. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 昨年の夏、ニューヨークの国連の場におきまして、アメリカとアラブ側の間でいろいろな話がございまして、まさにいま川崎委員御指摘の二四二を補足するような決議案をつくろうではないか、そういう話があったわけでございますが、いろいろとやりとりがあったようでございます。詳しいことは聞いておりませんが、結局うまくいかないで、残念ながら実りませんでした。ただし、いまでも舞台裏でいろいろな折衝が行われているように聞いております。日本といたしましては、ただいま先生御指摘の、一番肝心なアメリカとアラブ諸国を通してPLOがおるわけでございますから、その両当事者の話し合いをいま少し見ていった方がよろしい、こう思っておる次第でございます。
  346. 川崎寛治

    川崎委員 次に、これは鹿児島の問題に関連するので、どうもちょっと気がひけますけれども、御承知のように中東は水に困っているのです。ですから、海水の淡水化のプロジェクトもずいぶん巨大なやつが行って、日本も協力しております。ところが、鹿児島の屋久島というのは、林芙美子さんの「浮雲」でも言っておりますように、屋久島には一カ月に雨が三十五日降ると言われるほどのところなのです。そのすばらしい水が、いま屋久島電工で水力発電をやっておりますが、後はもう流れっ放し、非常に惜しいのです。そこで、中東に向かうタンカーに屋久島の豊富な水を積んで持って行く、これは飲料水にもなる、生活用水にもなる、またプロジェクトの場合の工業用水にもなるだろうし、いまいろいろな引き合いもあるわけです。これはぜひ政府もサポートしてほしい、私はこう思います。  いま中東から二億五千万トンぐらいの油が来ておるわけですが、いま中東のタンカーの洗浄については、IMCOの方で規制が非常に厳しくなりました。そういうことで、いまタンカーで水を運ぶことについてはある程度の条件が出てきておる、こう思います。そうしますと、最大限二億五千万トンぐらい水を持っていけるのです。これは大変功績があると私は思うのですね。通産省としてどうお考えになっているか。森山長官、鹿児島だからというわけじゃないけれども、エネルギー庁長官森山さんに伺いたいと思います。
  347. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま御指摘のございました屋久島の水を中東方面へ輸出するという話は、大変おもしろい構想として私どもも受け取っております。  ただいま先生から御指摘のございましたように、IMCO、いわゆる国際海事協議機構におきまして、タンカーの原油をアンローディングした後のクリーニングをするということが義務づけられる、こういう方向がいま打ち出されておりますので、そういうことになりますと、原水の供給が大変しやすくなる、こういうことでございまして、最近急速にこの話が進捗しているというふうに聞いております。現在、商談の対象国といたしましてはサウジアラビア、クウェートあるいはアラブ首長国連邦、こういう三カ国に対して商談が進められていると聞いておりますけれども、特にクウェートとアラブ首長国連邦に対しましては近く具体的な商談を進めるという話も聞いておりますので、私ども、先ほど申し上げましたように、大変おもしろい構想でございますので、興味を持って、これをできればサポートしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  348. 川崎寛治

    川崎委員 次に、アフガン問題からアメリカ世界戦略というのが急速に軍事力増強という方向で動いておるわけです。先ほど来申しておりますけれども、ペルシャ湾の防衛という問題については、これは非常に深刻な問題である。衆参の本会議でもあるいは本委員会でも議論をしておりますが、アメリカのブラウン国防報告に基づいたその観点からだけの議論をしておったのでは、私は大変間違いだ、こう思います。ですから、日本が本当にこの中でどう対処をしていくかということは、いま非常に重要な態度の決定を求められておる課題だ、こう思うのです。  そのことは、ペルシャ湾の防衛という問題に対して総理は、実力行使をする場合にそれを支持する、実力行使の意思ありというカーター報告に対してはそれを支持するとまで明確に言っておるわけでありますが、このことは後でまた議論しますからこれは除いておきますが、アメリカがよし武力で応援してやるぞということに対して、肝心かなめのその湾岸諸国自体がどうかというふうに見ますと、大変距離を置いている。そのことを私たちは考えなければいかぬと思うのですね。たとえばサウジのファハド皇太子は、サウジアラビアにはアメリカの基地は設置させません、こう言っておる。クウェートもそういうふうな姿勢であるわけです。そしてその前にもう一つ、イスラム外相会議の動きを見ましても、ソビエトの武力侵攻に対して厳しく即時無条件の撤退を要求しますと同時に、アメリカの姿勢に対してもやはり厳しくしておる。だから、両超大国が力で対決をして、この産油地域の分割競争をやるということに対しては反対だという、イスラムは一つの国民なりということでいま固まっておるわけです。だから、米ソの冷戦の論理でここの問題を考えたら間違いだ、こう思います。そういうアラブ諸国、それから湾岸諸国の動きというものをどう見るのか。エジプトやソマリアなど一部の国だけがアメリカの軍事力提供に対しては応ずるかっこうになりますが、それが進んでいきますならば、先ほどのパレスチナの問題等はいよいよ解決が遠のいていく、こういうことにもなるわけです。  そういう今日のイスラム外相会議の動き、それから湾岸諸国のアメリカの軍事力増大に対する拒否反応というか距離を置こうとする姿勢、そういうものに対してどう考えられるか、総理の見解を伺いたいと思います。
  349. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日本としては対米協力を軸といたしておりますことはたびたび申し上げておるとおりでございまして、政治信条を共通にいたしておりまするし、日米関係非常に濃密な相互依存関係にございます。したがって、対米協調という意味で一般的にアメリカを支持していくという基本態度に変わりはありません。ただ、アメリカがみずからの戦略で実行されるいろいろな政策があるわけでございます。それにはいま仰せのように中近東、南西アジア地区におきましても、その周辺の国々の要望あるいはそういう国々との十分な意思疎通を通じてやられることでございましょう。また、そうしなければ実りある成果が期待できないことはアメリカもよく承知しておるはずだと思うのでございまして、アメリカがそういう国々の意向とかかわりなく行動をするというようなことは、私はまずそういうことはあり得ないことではないかと考えております。
  350. 川崎寛治

    川崎委員 日本がイラン等からも大変一面においては信頼されておるということは、これまでの日本がよかったということではなくて、つまりイラン革命というのは西欧文明に対する挑戦でもあるわけです。そして、日本がヨーロッパ的な近代化をしておるけれども、西欧という面から見ると一番遠い、そういう距離の中において、高度成長してきた日本に対する期待というものもあるわけです。もしも経済制裁をやっておれば、この信頼は失ったと思うのですけれども、あーうー外交情勢を待っておったから、幸いにしていまそれを免れそうな情勢ですね。しかし、それであるならばそれだけに、積極的に今後の中東関係全般についてもぜひそういう方向で、日本は距離を置くという自主的な姿勢で臨んでもらいたい、私はこう思います。  そこで、次にブラウン報告と沖繩基地を中心に少し問題を検討してまいりたい、こういうふうに思います。  まず第一に、第七艦隊は、昨年の九月以来横須賀から中東地域に行っております。横須賀は、大変な現地の反対を押し切って、予算をうんと組んで母港にしたわけです。その母港を離れて中東地域に行っておる。それから沖繩の海兵隊というのがすでにこれに七百人、洋上訓練もあるし、乗って行っているということは、外務大臣自身も答えておる。現在沖繩の海兵隊四千人が、この一月の四日からソウルの北東部の方で厳寒地域の訓練をやっておるわけですね。だから、アフガニスタンを想定をしたそういう訓練を、いま沖繩の海兵隊は四千人行ってやっておる。船で輸送をやる、あるいはC130で空輸をやる、そういうことが実際に行われておるわけです。  それから、沖繩を中心に考えますと、これは毎年やられてきましたが、米韓の合同演習、チームスピリットがあります。昨年の八月にはフォートレスゲール、はやてのとりでと言われる沖繩を巻き込んだ大演習が沖繩の陸海空軍でやられ、自衛隊もこれには出ていっておる。それから、これは後ほどまた議論いたしますけれども、ANZUSのオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの三国の合同演習も行われておる。それからアメリカとフィリピンの合同演習が行われておる。ことしもまた三月には、先ほど言いましたチームスピリットがやられる、こういうことになっておる。そうしますと、迅速展開部隊だとかあるいはスイングだとかいう図上作戦のようなことを議論しているのではないのですね。現実に沖繩を中心に、沖繩の海兵隊、沖繩の空軍、それはそういう合同訓練というのをずっとやってきているわけです。  そういたしますと、このペルシャ湾の問題は、外務大臣はこれは例示だ、沖繩のスイングで行ったときの例示なんだ、こう言っておるが、そんなものじゃない。そして海兵隊は六カ月交代ですでに動いておるわけです。それは中東にも行っておるし、アメリカ本国との交代もやっておる。絶えず動いて、そういう中で有事即応の迅速展開の力をつけることをすでに実行しておる。でありますから、そういう状態の中にあるといういまの現実です。それを土台にして日米安保条約との関係というのは議論をしなければいけない、こう思います。  そういたしますと、在日米軍の行動の問題にいたしましても、今度のブラウン報告では、日本が太平洋のかなめ石だ、いままでは沖繩が太平洋のかなめ石だったのだけれども日本全体が太平洋のかなめ石だということになりますと、アメリカ世界戦略、軍事戦略の中に日米安保体制は、その条約区域というものを議論しているようなものを超えてすでに組み込まれておる、そういう現実を総理はどうお考えになるか、伺いたいと思います。
  351. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 アメリカの戦略はアメリカが決めることでございまするし、詳細なことは私も存じませんが、常識から申しまして、軍隊は機動性を持たなければいかぬわけでございますか、ら、世界に配備されておるアメリカの部隊が、緊急事態が生じました場合、またそのおそれがあるところには他の地域から移動してまいるということがあっても不思議じゃないと思うのであります。日本に配備されておる在日米軍もアメリカの部隊でございますから、これをどのように動かすか、アメリカの戦略にかかることでございまして、私どもが第一義的にかかわることではないと思うのであります。  われわれが考えておかなければいかぬことは、安保条約の誠実な運営でございまして、私ども、安保条約は、最近の事態の進展にもかかわりませず、相互信頼に基づきまして満足のまいる運営ができておると日米双方とも考えておるわけでございます。若干の人員が日本からよそに移動いたしましても、この地域の安全に支障があるというようには私どもは考えておりません。
  352. 川崎寛治

    川崎委員 それでは外務大臣にお尋ねしますが、いま総理は、艦隊なり飛行機なりの機動性というものを保障しなければいかぬ、米軍が動くのだからあちこちへやるだろう、こういうことで言いましたが、日米安保条約の条約区域はどこですか。
  353. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米安保では、極東の安全を脅かすことに対処することと言っております。
  354. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  日米安保条約は、日本国を防衛するという目的を持って結ばれたものでございまして、第五条に、わが国の施政のもとにある領域を攻撃された場合には、両国が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の手続、規定に従って共通の危険に対処する。したがって、わが国が攻撃されましたような場合には、アメリカと一緒になって共同に対処をするということがございます。これが第五条でございます。  なお、第六条には……(川崎委員「聞いていることにぴしゃっと答えなさい」と呼ぶ)第六条には、日本国の安全はもとより、極東の平和及び安全の維持に寄与するということがございます。これは日米両国が極東の平和及び安全の維持に共通の関心を持っているものでございまして、そのために日本は施設、区域を提供し、アメリカはその施設、区域を使用して極東の平和、安全の維持をするということになっておるわけでございまして、条約の適用地域ということになりますれば、具体的にはこの極東の地域であるということが言えると思います。
  355. 川崎寛治

    川崎委員 そうしますと、いま総理は、在日米軍は米軍の戦略上世界どこでも動けるんだと言った。それなら相互防衛同盟条約で言う活動区域なんですよ、それは。違うんですよ。日米安保条約の条約区域というのは、防衛同盟条約の条約区域とは違うのです。しかし、総理の頭にはもう——あなたが外務大臣のときにずいぶん議論してきたのですよ。しかし、それはもういまの世界戦略の中で邪魔になっているわけです。だから、たとえば第七艦隊が母港を離れて中東に行っておるということは、明らかに条約区域から離れているわけですよ。そして行動しているわけです。こう言いますと、すぐあなたは安保条約六条の交換公文の事前協議の問題を言われると思う。しかし、そうじゃないのです。そうじゃなくて、条約の適用区域はどこになるか、そのことを明確にしなければいけないのです。ところが、いまの条約局長の答弁でも不十分ですね。あれでいったならば、極東だけに限られるのですよ、いまの答弁だと。そうでしょう。いまの答弁は、六条の極東だけを言っているのだから。周辺は言っていないわけです。この間、周辺は少し踏み込み過ぎたものだから、びくびくして周辺を言わぬで、極東地域だけ言っている。そうですが。極東地域だけですか。
  356. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日本の安全、極東の平和と安全に寄与することを目的とするということで共通の関心を持っておる地域というのはあなたが言うようにございますが、安保条約はそこから在日米軍が移動することを禁じていないと思うのです。そこを基地といたしまして戦闘活動に従事する場合は事前協議の対象になりますけれども、そうでない限りにおきまして、そこから移動すること自体を安保条約は禁じていないわけでございまして、これは政府の解釈は終始変わっていないと私は承知いたしております。
  357. 川崎寛治

    川崎委員 いま極東の地域だけに限定して条約局長が答えましたから、それでいいのですかと言っているのだ。
  358. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 条約区域はそうでございますが、安保条約は条約区域から在日米軍の艦隊とか飛行機がそこから外に移動することを禁じていないということを私は言っているのです。
  359. 川崎寛治

    川崎委員 それでは、先般の条約局長の答弁というのは、いままでの、新安保以来ずっと議論してきたやつからいたしますと大変問題です。だから少しずつ詰めてまいりますが、まずこの間の条約局長の答弁の中にも、フィリピンの以北、台湾を含んでおる地域を言っておりましたが、この極東の中に台湾は依然として入っておるのだ。このことは四十七年の十一月、本委員会でも公明党の矢野書記長からずいぶん問題があり、統一見解も出ているのです。それ以後、日中の平和条約の交渉の前後にもいろいろ議論が出てきておるわけです。今日においてもこの点は変わらないのかどうか、まずお伺いをいたします。
  360. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 全然変わっていないと承知いたしております。
  361. 川崎寛治

    川崎委員 それじゃ次に、ベトナムはどういうことになっておりますか。ベトナムはこの極東の周辺であるかどうかという議論も、これは国会議論になった。そして園田外務大臣は、検討しなければならないと、検討を明確に外務委員会で答えておるわけですね。でありますから、このベトナムを外すことについて、外務省の中でどういう検討があったのか、あるいはアメリカ側とどういう話があったのか、それを明らかにしてほしいと思います。
  362. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 日米安保条約にいう地域は極東しかございませんのですが、実際に在日米軍が行動する範囲として極東の周辺という観念があるわけでございます。その極東の周辺というのは、具体的な地域の定義はございませんで、この周辺から極東の地域への脅威が存在するということで申しておるわけでございますが、条約の解釈に関する問題でございますから、政府委員から追加返答させたいと思います。
  363. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ただいまベトナムについて川崎先生から御質問でございますが、ベトナムと申しますのは、ただいま大臣からも御説明申し上げました極東の周辺という概念に、かつてはそういう認識を持たれたときがございましたが、ベトナムの事態が現在のようになっておりますので、ベトナムは現在は周辺の地域とは認識されていないということでございます。したがって、この点につきましては別に日米間で相談をしたということではございませんで、ベトナムの事件が片づいてしまったので自然にそういう事態がなくなったということになっております。
  364. 川崎寛治

    川崎委員 これは外務大臣の答弁をそういうふうに整理をされたということだと思います。そこで、極東の周辺という問題については、ベトナムのときに当時の椎名外務大臣が周辺地域を言いますについても、大変厳しい議論をしてきているわけです。この周辺地域の拡大をやっちゃいかぬということは、国会議論の中で絶えずあったわけです。でありますから、極東の周辺の問題については六六年の通常国会でやっておるわけですが、そのときには極東の周辺で起こった事態でも、極東の平和と安全に脅威を与えるような場合、米軍の行動範囲は必ずしも極東地域に局限されない、こういうことで周辺地域をつけたわけですね。周辺地域の解釈を出してきた。ベトナムはここでいう極東の周辺だ、こういうふうにして非常に厳密に。そのことは三木外務大臣の当時にも、極東の周辺の拡大をやっちゃいかぬということを明確に答えておるわけです。極東の範囲というのは無制限に拡大すべきものではない。日本の安全と極東の範囲というものは非常に深い関係を持っているので、日本の安全に関係のない極東の地域まで考えることは拡大解釈にすぎず、安保条約の根底にあるのは日本の安全の保持である、拡大していく考えはよくないということで、三木外務大臣は、これは佐藤内閣の当時、そういうことで極東の周辺ということを非常に厳密にやってきたわけです。  ところが、この間の伊達条約局長の極東の周辺というのは、極東の安全、平和が脅かされるというときには米軍の行動というものはその極東の範囲に限定されるものではない、こういうふうにはっきり言っておるわけですね。だから、周辺がどこまでであるかということは、これはどこであろうと、いずれにいたしましても極東の平和及び安全に脅威であるという事態が生じましたところが極東の周辺という観念になるわけでございます。これはいままでの非常に詰めた議論からいたしますと、周辺がどこであろうと構わぬのだ。しかも、非常に欠落をいたしておりますのは、沖繩の議論のときでもベトナムの議論のときでも、日本の安全というのがまずあったわけです、そして並びに極東の平和と。ところが伊達局長の答弁というのは、在日米軍の行動としての厳密さがないわけだし、だから周辺がどこであるかということは、どこでもよい、要するに戦争が起こって、それが日本に危ない、こういうふうに判断さえすればいいのだ、こういうことになるわけでありますから、今日の状態で言いますと、ペルシャ湾も紛争が起きたら極東の周辺ですということをこれは言っておるわけですね。(大平内閣総理大臣「そうじゃないです」と呼ぶ)いや、これから来たらそうなるじゃないですか。  しかも、事前協議を総理は崩しておるわけです。事前協議を崩しておるということは、スイング作戦で、あるいは迅速展開部隊の沖繩を中心にした行動というものに対して、ブラウン長官が来たときにオーケーを与えた。そして、アメリカの国防白書の中、国防報告、それからその世界戦略の中で沖繩の基地の行動、そして、あなたが言う艦隊なり飛行機の行動の自由、機動性というものを承認をしておる。でありますから、それからいくと、現実には沖繩の基地というのは自由発進基地ということで承認をしておる、こういうことになるわけです。(大平内閣総理大臣「そうじゃないです」と呼ぶ)いや、そうじゃないですか。  だから、この条約の活動区域というものも相互防衛同盟条約の活動区域と同じ。つまり駐留目的区域、それからそれの周辺地域ということで、厳密に極東の範囲、周辺地域の問題というのを議論してきたわけでありますけれども、伊達答弁というのはこれをどこであろうと構わぬのだ、こういうことで踏み込んでおる。しかも後の方で、現時点においては考えられないけれども、現在の時点におきましてそういう論理の帰結だ、こういう言い方をしておるわけでありますが、ペルシャ湾の事態が極東の平和及び安全を脅かすようなことになるかということになりますれば、現在の時点においては考えられない。ですから、要するに極東の周辺なんというのはいつでもいかにでも拡大ができる、どこにでも拡大ができるということを大平内閣はこの極東の範囲については考えておる、こうならざるを得ません。
  365. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 誤解が二つあるようでございます。  まず前提として、安保条約、またそれに基づく交換公文、そんなに伊達君や私が勝手に拡大したりする資格はないわけでございます。国会で決められた条約でございます。われわれは神経質なまでにこれに忠実に運営せねばならぬ立場にあるわけでございまして、そう簡単に答弁であめん棒のように伸ばしたり引っこめたりすることはできない性質のものでございまして、伊達君のこの間の答弁、従来の解釈と私は少しも変わっていないと思います。これは本人から弁明させます。  それから第二の、軍隊の移動でございますが、これは従来から安保条約の解釈上とっておる解釈でございまして、在日米軍は、日本の安全と極東地域の平和と安全を守るために主としてここで存在しあるいは行動いたしておるわけでございますけれども、その艦船や飛行機が条約国内から出てはならぬというような規定はどこにもないわけでございまして、移動を禁じておるという新解釈は、私は川崎さんから初めて聞いたわけで、そんな安保条約は私はないと思っています。
  366. 川崎寛治

    川崎委員 いや、単なる通過とか単なる移動ということじゃないのですよ。ちゃんと中東に任務を持って行っているのですよ。日本の基地から出ていって任務についているわけです。それから在日沖繩米軍というのはこれは全世界どこでもたっと飛んでいけるのだということになっているわけです。そうなると、これはもう日米安保条約の在日米軍の活動区域というのは全世界どこでもいいのだというふうにあなた方はお考えになっておる。(大平内閣総理大臣「そうじゃないですよ」と呼ぶ)そうじゃないですか。ただ単に軍隊がちょっと行って帰ってくるというのじゃなしに、任務についておるわけですから、母港はもう空っぽじゃないですか。そしてその後を日本が埋めましょうということになるわけです。
  367. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの点は、伊達条約局長の先日の発言につきましてさらに補足させたいと思います。
  368. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 一昨日の私の答弁につきましてただいま川崎先生から御指摘があったわけでございますが、まず私の御説明申し上げる冒頭に、ちょっと簡単に極東の周辺ということについてのお話をさせていただきたいと思います。  極東の周辺、これは繰り返しになりますけれども、極東の周辺地域と申しますものは、安保条約自体には書かれているものではございませんで、このことは先生もよく御承知でございます。  そして統一見解によりますれば、極東の区域に対して武力攻撃が行われたりあるいは極東の周辺に起こった事情のために極東の平和及び安全に脅威が及ぼされるというようなときに、アメリカ軍がこれに対処するためにとることのある行動の範囲というものはこの極東の範囲に限られるものではなく、それよりも広く及ぶことができるものだということを言っているわけでございます。そしてその範囲と申しますのは、すべて極東の平和及び安全に脅威が起こってくる、ないしは武力攻撃がかかるという、その武力攻撃、脅威の性質いかんによるものでございまして、したがって従来の政府の立場といたしましては、あらかじめどこが極東の周辺であるかということを明らかに定めることはできない問題であるということになっているわけでございます。私は、そのあらかじめ定めることができないものであるという点を非常に頭に置きましていろいろ御説明申し上げたわけでございまして、従来の政府の答弁は、それに加えまして、おのずからそこに限界があるでしょうということも申しているわけでございます。おのずから限界があると申しますのは、つまり極東の周辺に起こる事態がどんな事態であるか、それによって、その事態に応じてアメリカ軍が行動する範囲というものはわかりませんけれども、したがって、それは明らかにいろいろな事態を想定して考えて、それを明らかにこの区域はこういう場合にはこういう行動、こういう場合にはこういう行動ということは言えないということをしつつも、しかし、実際の問題としては、極東の周辺というものは際限なくどこまでも広がるものではないでしょうというところを、おのずから限界がありましようということを言っているわけでございまして、私も一昨日の答弁において、おのずから限界がございましょうということを述べているわけでございます。
  369. 川崎寛治

    川崎委員 それじゃ、やはり世界じゅうどこでも紛争が起きた、たとえばペルシャ湾が、カーター報告で、ブラウン国防計画で言っているようなそういう事態に不幸にしてなったということになれば、ペルシャ湾は極東の周辺地域ということになり得るということですね。
  370. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ペルシャ湾につきましては、いわゆる極東の範囲または極東の周辺地域ということには、現実問題としてあの地域、ペルシャ湾地域での事態が極東の平和と安全に脅威となるということは予想されないという判断でございます。
  371. 川崎寛治

    川崎委員 では次に、リムパックの問題に入りたいと思いますが、NATOとANZUSと日米安保条約がそれぞれかかっておるわけですね。そうしますと、ANZUSは御承知のように平和条約締結の前に結ばれたわけです。このANZUSには琉球の米軍というのがこの中に書かれておるわけです。つまりフィリピンの米軍、琉球の米軍、こういうことです。本来ですと、このANZUSは日本の平和条約発効以後においては当然変えられなければいかぬ、こう思うのですが、それをいまのこのANZUSが生きたままでまいりますならば、このNATOとANZUSと、それから先ほど言いましたような日米安保というものの在日米軍の活動区域というのが、いま言われるように世界じゅうどこでも動ける、こういう状態になってまいりますならば、しかもアメリカのスイング作戦の中で言う在日米軍なりあるいは日本の自衛隊なりというものが世界戦略の中で絡んでくるわけです。そうしますと、今回のリムパックというのが、共同作戦、共同行動という点について言いますならば、これは防衛庁長官が決して集団自衛権のものじゃない、こう言うのですが、集団的な共同作戦であり、共同行動である。その点については日本だけがこのANZUSなりNATOなりの軍と離れて独自の日米安保条約に基ついての行動ですと言って切り離せる、そういうものととれないわけです。でありますから、つまりわれわれが判断できるように、その実態というものをひとつ防衛庁長官は明らかにしていただきたいと思います。
  372. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 ただいま御指摘のように……(川崎委員防衛庁長官」と呼ぶ)御指名をいただきましたので、私から事務的な点について御説明をさせていただきます。  御承知のように、リムパックには御指摘のようにNATO加盟国であるカナダ、それからANZUS加盟国であるニュージーランド、オーストラリアが参加しておることは事実でございます。しかしながら、このANZUSを例に申し上げますと、ANZUS加盟国は、これはまたリムパックとは別にANZUS加盟国だけの訓練をやっております。  一例を挙げますとカンガルーという訓練がございます。このカンガルーという訓練は従来三回行われておりますけれども、七九年十月四日から十月三十一日まで、このANZUS参加の三カ国、すなわちアメリカ、ニュージーランド、オーストラリアの三カ国の艦艇二十七隻、航空機百三十機、人員約一万七千名以上を参加させてやっておりますが、この訓練の目的は非常にはっきりとオーストラリア防衛のための共同連携要領の演練と発表されております。また、実施場所はオーストラリア北東海岸地帯及び沖合いということで、共同防衛を前提とした、すなわち、この三カ国のいずれかの一カ国に攻撃があった場合に、この三カ国が共同してその軍事侵攻に対抗することを前提とした訓練という形で行われておりますが、この訓練にはカナダは参加しておりません。日本参加しておらないことはもちろんでございます。  その意味におきまして、リムパックというのはもう再々申し上げておりますので説明は省略をいたしますけれども、ハワイの沖においてすぐれた訓練施設を利用して行う戦術技量の訓練ということで別扱いになっております。  もう一つ例を挙げさせていただきますと、チームスピリットというのがございます。これは米韓合同訓練でございますけれども、これもはっきりとその訓練目標が、韓国に対する北からの攻撃に対して米韓が合同してこれを防衛するための訓練ということが明示されております。これにはもとよりほかの国は参加をしておらない。  そういう意味におきまして、リムパックという訓練の性格がほかと異なって、戦術技量向上のための訓練であるということが御理解いただければ幸いと存じます。
  373. 川崎寛治

    川崎委員 残念ながらこれは理解できぬのです。ただ、私、時間の関係があるものですからこれは後の一般質問の方に回しますけれども、この点はもう一つ外務大臣にお尋ねしておきますが、先ほど私が指摘しましたように、このANZUSは日本の平和条約発効前の条約です。だから沖繩の米軍というのは、特別にアメリカが施政権を持っておった米軍なんですが、それが条約に生きておるわけです。そうしますと、そのままの条約として今日見るのかどうかですね。もし何だったら条約局長でもいいです。
  374. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  沖繩にANZUSがかぶっているかということの御質問だと受け取ったわけでございますけれども……(川崎委員「沖繩の米軍」と呼ぶ)沖繩の米軍は在日米軍でございまして、安保条約における在日米軍ということでございます。(川崎委員「ANZUSに入っているからね」と呼ぶ)ANZUSの軍隊とは関係がないということでございます。
  375. 川崎寛治

    川崎委員 あと一般質問になると総理が出ないことになりますから、どうしてもここでひとつ詰めておきたい問題があります。それは文教関係です。教育問題について二、三お尋ねをしておきたいと思います。  大平総理は、施政方針演説では大変高い教育に対する姿勢も言っておられます。「子供は未来への使者であり、文化の伝承者である」、「その健全な成長に資するため」云々「ゆとりある学級編制を推進」し、「教育の諸条件を改善」、こういうことを述べておられるわけです。ところが、総理は、教育を大変政争の具にされた。それは新自由クラブとの政策協定の問題、連合の問題もございます。それから、現在の田川代表を文部大臣に入閣させよう、こういうふうなことでしたが、そのときの政策協定の四項目の中に、教育制度の見直しを行う、こういうことをあなたはお約束になっておるのでありますが、どういうふうに教育政策、教育制度の見直しをやろうと総理としては新自由クラブと約束をされたのか。あるいはあなたが約束をした後あなたはしばらく文部大臣だったわけですから、そういう文部大臣の間にどういう指示を文部省にされたのか、その方向を明らかにしてもらいたいと思います。
  376. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 現在大きな変革期でございまして、ひとり教育ばかりでございませんで、各領域におきまして既存の考え方、慣行、制度というようなものが見直されて、新たな考え方で対処しなければならぬ時代であるというように私はかねがね申し上げておるわけでございます。  教育制度につきまして私は詳しく存じませんけれども、教育制度もまたその例外でないのではないかと考えておるわけでございまして、新たな時代に即応いたしまして、教育制度もまた新たな眼で見直していかなければならぬのじゃないかという問題意識を持っておったものでございます。したがいまして、そういうことのために努力をすると申し上げても、私は私の考え方と決して矛盾するというふうには思わなかったからであります。
  377. 川崎寛治

    川崎委員 だから、具体的にあなたが文部大臣のときに文部省にあなたの考えをそういう考え方で検討を命じておるのか、あるいは谷垣文部大臣に、あなたの後の文部大臣に、任命されるときにそういう教育制度の見直しを指示しておられるのか、いかがですか。
  378. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 それはいつ何をどうするというお約束はしてないわけでございまして、私が政治に携わっておる以上そういう問題意識を持って教育政策には取り組むという一般的な姿勢を申し上げたわけでございまして、こういう方針で政府各部を指導していくというのが私の任務であろうと思っております。
  379. 川崎寛治

    川崎委員 それでは次に、四十人学級の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この問題は、予算編成の過程でも大変大きな課題として最後まで残りました。私たちも、この問題については長い経過がありますから、そういう経過を踏まえながら、四十人学級というのをゆとりある教育への道筋として実現を願い、社会党としては六カ年計画でわれわれの考え方を提示いたしておりましたけれども、しかし、文部省が九カ年という案を今日の状況の中で出された。われわれとしては、全体の足並みをそろえて要求をしていく、こういう立場から、やむを得ない線として九カ年の案の実現を念願したわけです。これは経過を見ますと、決して財政問題だからということで簡単に処理できない背景があると私は思うのです。ところが、この四十人学級について一番反対をされたのが総理大臣だ。これはあの予算編成の過程で、復活折衝要求の中で報道されたものを見ますと、要するに総理が、財政再建の目玉としてこの四十人学級は何とか実現するな、こういうふうに言明をされてきた。しかし一方、これはいままでもいろいろ議論がありましたが、児童手当の問題や教科書の問題や厚生年金の問題や、その他いろいろなものがあったけれども、その中でこれが実現については最後までもめてきたわけですね。  これは経過を見ますと、四十九年の五月十日の全会一致の決議、これは自由民主党の塩崎潤君外四名が提出をして、全会一致で可決をされてきた決議なのです。その決議というのは「四十五人をこえる学級を直ちに解消する措置をとること。」こういうことで、きたわけです。  ところが、今度の政府の考え方、これについては、過密地域、いま最も問題がある、自殺の問題もある、落ちこぼれもある、そういう中で最も解決をしなければならない過密地域の問題が、十年後になっておるのですね。そうしますと、この全会一致の四十九年の決議というのは踏みにじられたし、そしてこれは十項目ありますけれども、「以上、各項目措置を早急に実現するため、これまでのように標準法を五年計画に即して五年ごとに改正する慣行を改め、本法案に基づく五年計画実施中に以上の各項目措置実現のための法律改正を行うこと。」まだ高度成長の過程なんです。財源の問題じゃないのです。しかし、これが実現されなかった。  そうして一昨年の暮れの、七八年の十二月二十一日の文教委員会において、全会一致で小委員会決議が承認をされた。  あなたは文部大臣のころ、つまりまだ谷垣さんに文部大臣を譲らぬ段階のときに各党の理事諸君と話し合ったときに、この四十人学級というのは全会一致だったのか、自民党も入っていたのか、こういうことを言ったのでびっくりしたと社会党の理事の木島君からは報告を受けておるのでありますけれども、そういうあなたの認識だったから、あなたはこの予算編成の過程で四十人学級について財政再建という名のもとに最後まで反対をされた、こう思うのです。  でありますから、やはりこれはこの予算委員会の論議の過程でこれからこの議論を通じ、予算の修正の問題としてこの四十人学級の問題は、私たち、公明党、民社党、共産党各党の皆さんともそれぞれ相談をしなければならぬ、こう私は思っております。でありますから、そうなります前に、これは文部省がなかなか実態調査も時間がかかって、案を出すのに時間がかかったわけです。しかし、ようやく出してきた九カ年計画というのがこういうふうにつぶされたわけでありますから、私は九カ年計画に戻すべきだ、こういうふうにひとつ総理の決断を願いたい、こう思います。
  380. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私は、何もこの学級編制の改定につきまして、これを目のかたきにして反対したというようなやぼな男ではありません。これはいつの日かやらなければならぬことと存じておることでございますけれども、財政再建の間は御遠慮いただくわけにいかぬかと思っておったわけでございますが、政府部内、与党の強い要請もございまして、財政再建の途次でありましても、いろいろ工夫を重ねて、この実現を図ろうということになりましたので、政府・与党一致してそういう案ができましたことを喜んでおるわけでございます。  これをさらに九カ年計画に戻せという御要請でございますが、そのお気持ちもよくわかりますし、そうやりたいのでございますけれども、このような財政事情でもございますので、せっかく政府の方で踏ん張ってつくりました政府案につきまして、御理解と御支持を賜れば幸せと思います。
  381. 川崎寛治

    川崎委員 それじゃ時間があれですから、私は次に、やはり総理の施政方針演説の生涯教育の問題ですが、総理はこの生涯教育の問題についても、けさもわが党の大原委員から労働大臣に、これとも関連する問題があったわけでありますけれども、「国民の多くが生涯にわたってみずからを啓発し、それぞれの能力と個性を伸ばそうという最近の傾向を高く評価し、」「諸条件の整備と充実には、特に力を入れてまいりたいと考えます。」これは「特に」が入っているのです。  そこで、私は特に明確な答弁を願いたいのでありますが、それはILOの百四十号条約です。これは教育の有給休暇を定めておる制度なんでございますけれども、このILOの百四十号条約について、たとえば法政大学などが社会人から入学できるような方向等もいまやっておる、実験的にいま進めておるわけですし、これは大変いいことだと思います。だから、いまの受験地獄を解消していく道としても、つまり一遍高校から実社会に出た、それから実社会を通してまた大学に入っていく、そして勉強していくというふうなそういう制度ができますと、これは安心をして自分の将来の決め方というものについて、あるいは家庭の事情やら、ましていまのような大学にひしめくという受験地獄の解消にもつながる。現に文部省が進めようとしておる教員養成大学は、現場の教職員を二年間有給休暇で入学をさせるわけですね。そういたしますと、文部省自身もそのことは一つ制度として考えておる、進めようとしておるわけです。また、放送大学の問題にいたしましても、これは三分の一はスクーリングなんです。ところが、広島大学の実験を見ますと、結局スクーリングがだめなんです。できないんです。参加できないのですよ、実際に時間がないということで。そういたしますと、やはり実社会で働いておる人が生涯勉強していくというのは、カルチュアセンターでやればいいという問題ではないのです。いまずいぶん民間にありますけれども、そういうカルチュアセンターでやればいいといえばこれも一つでしょうけれども、そういう問題でなくて、やはり制度として教育の有給休暇制度というのが確立される必要があると思うのです。  でありますから、そのためには百四十号条約というのをどうしても批准をすべきである。ところが、日本政府はこの批准について大変ちゅうちょしておるわけです。でありますから、特に条件整備に力を入れるという大平内閣としては、この百四十号条約について速やかに批准の手続をとってほしい。ひとつ労働大臣の見解を伺いたいと思います。
  382. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生御指摘の、一人一人の国民が生涯にわたって教育を進める、あるいは職業訓練などを進める、こういう考え方につきましては、生涯教育については文部省、職業訓練については労働省、それぞれ連絡をとり合って今後も充実をしていきたい、このように考えておるところでございます。  特に労働省としては、生涯にわたって、有給の休暇を与えてそして教育を進めるあるいは訓練をするという百四十号条約の趣旨に沿いまして、奨励金なども出してその方向でぜひ進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。特に五十六年度から第三次の職業訓練基本計画を進めていくことになっておりますので、新しく、生涯にわたってどのように教育し、訓練をしていくかということについての懇談会も出発をさせまして、そういった方向をぜひ強力に打ち出していきたい、このように考えて努力をいたしておるところでございます。  ただ、先生御指摘のILOの百四十号を批准せよというお話につきましては、従来もいろいろ論議を重ねてきておりますが、国内法規との関係がございまして、今日なお批准に至っておりません。いろいろな検討をしてきておりますけれども、特になぜ批准できないかという大きな問題の一つは、先生御存じのように、この百四十号の中には、次の目的のための有給教育休暇を付与するという中身として、「あらゆる段階での訓練」また「一般教育、社会教育及び市民教育」の実施、「労働組合教育」こういったことが含まれておりますが、特にその中の「労働組合教育」この問題が、わが国の労働組合法第七条に不当労働行為がずっと並んでおりますが、その中に、使用者が「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。」こういうことになっておりまして、使用者の負担、すなわち有給ということは使用者の負担でありますから、使用者の負担で労働組合が労働組合教育を行うということを目的とするこの教育について、やはりどうしても抵触をしてくるということになるわけでございまして、いろいろと今後整備をしていかなければならぬ問題もございます。  しかし、先生御指摘の百四十号の精神を踏まえまして、今後実質的にひとつこの方向で動いていくようにあらゆる努力をしていきたい、こう考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  383. 川崎寛治

    川崎委員 先進工業国がそういう方向で進んでいるわけですから、労働組合の問題にかかわっていま批准をちゅうちょしておるわけですが、やはり国内法の整備、そして批准の方向に向かって私は努力をすべきだ、そのことについて総理の見解をひとつ伺いたいと思います。
  384. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 わが国は従来、ILO条約の批准につきましては、その実態が熟してまいりまして、批准しても大丈夫だというところまで要件を整備して、そして批准するという、非常に誠実なやり方をやってきたつもりでございます。したがって、百四十号の批准につきましても、いま労働大臣が仰せになりましたように、いろいろな点を検討いたしますとまだ批准には至らないということであろうと思いますが、仰せのように、これの前提になる要件の整備につきましては、政府としても鋭意努力をしていかなければならぬと考えております。
  385. 川崎寛治

    川崎委員 もう一つ教育問題でお尋ねしておきたいのは、教科書の無償制度の問題なんです。  これは昭和三十七年にこの義務教育教科書無償法案を国会に提案をしましたときの提案理由は、「このたび政府は、義務教育諸学校の教科書は無償とするとの方針を確立し、これを宣明することによって、日本国憲法第二十六条に掲げる義務教育無償の理想に向かって具体的に一歩を進めようとするものであります。」これをもって義務教育無償だというんじゃなくて、一歩を進めようとするものである、こういうことで、つまり所得の段階等による社会保障的なものじゃないんだということを高らかに宣明している。このときの文教委員会委員長はいまのおたくの幹事長櫻内さん。ですから、こういう経過があるわけですから、二度と再びこの教科書の無償制度をもう一遍また所得別だなんということで、五十六年度の予算では絶対にやらぬということを言明していただきたいと思います。
  386. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 教科書の無償問題はかなりもう経過を経ておりますし、またいわゆる義務教育無償の精神を拡大してやっておるところでございますので、文部省といたしましては、今後ともにこれは継続してやっていきたいと考えております。
  387. 川崎寛治

    川崎委員 これは大蔵大臣もよくいまの議論はきちっと踏まえて、主計局長もおりますけれども、この点はよく、五十六年度の予算編成の中で問題にならぬようにきちんとしておいてほしいと思います。  そこで最後に、もう時間がありませんので、私は実はきょうは極東の範囲の問題その他ももう少し詰めたかったわけですけれども、どうしても教育の問題は総理大臣がおるときにやっておかなければいかぬ点であったものですから少し時間を急ぎました。大変残念に思っておるんですが、この伊達局長発言というのは、これはいま理事会預かりになっております。私へのいまの答弁も含めまして、私は非常に不満も持っております。でありますから、これは理事会でさらに処理されるよう希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  388. 田村元

    田村委員長 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十分散会