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1980-02-01 第91回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十五年二月一日(金曜日)     午前九時四分開議  出席委員    委員長 田村  元君    理事小此木彦三郎君 理事 瓦   力君    理事小宮山重四郎君 理事 村田敬次郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 二見 伸明君    理事 寺前  巖君 理事 小沢 貞孝君      稻村左近四郎君    浦野 烋興君       小里 貞利君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       亀井 善之君    倉成  正君       始関 伊平君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       浜田 幸一君    藤尾 正行君       藤田 義光君    細田 吉藏君       松澤 雄藏君    村山 達雄君       阿部 助哉君    稲葉 誠一君       大原  亨君    川崎 寛治君       兒玉 末男君    野坂 浩賢君       八木  昇君    安井 吉典君       横路 孝弘君    岡本 富夫君       草川 昭三君    坂井 弘一君       正木 良明君    工藤  晃君       不破 哲三君    松本 善明君       大内 啓伍君    岡田 正勝君       塚本 三郎君    中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 倉石 忠雄君         外 務 大 臣 大来佐武郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 谷垣 專一君         厚 生 大 臣 野呂 恭一君         農林水産大臣  武藤 嘉文君         通商産業大臣  佐々木義武君         運 輸 大 臣 地崎宇三郎君         郵 政 大 臣 大西 正男君         労 働 大 臣 藤波 孝生君         建 設 大 臣 渡辺 栄一君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       後藤田正晴君         国 務 大 臣         (内閣官房長官伊東 正義君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      小渕 恵三君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      宇野 宗佑君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久保田円次君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      正示啓次郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      長田 裕二君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 土屋 義彦君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 園田 清充君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         総理府人事局長 亀谷 禮次君         総理府人事局次         長       川崎 昭典君         警察庁刑事局長 中平 和水君         警察庁警備局長 鈴木 貞敏君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁長官官房         長       塩田  章君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁人事教育         局長      夏目 晴雄君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛施設庁総務         部長      菊池  久君         防衛施設庁施設         部長      森山  武君         防衛施設庁労務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    白井 和徳君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         環境庁企画調整         局長      金子 太郎君         環境庁大気保全         局長      三浦 大助君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省情報文化         局長      天羽 民雄君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵省主計局長 田中  敬君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 山崎  圭君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林水産大臣官         房長      渡邊 五郎君         農林水産省経済         局長      松浦  昭君         農林水産省畜産         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   松本 作衞君         通商産業大臣官         房長      杉山 和男君         通商産業省貿易         局長      花岡 宗助君         通商産業省立地         公害局長    島田 春樹君         通商産業省機械         情報産業局長  栗原 昭平君         通商産業省生活         産業局長    児玉 清隆君         資源エネルギー         庁長官     森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君         資源エネルギー         庁公益事業部長 安田 佳三君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸大臣官房長 杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局長      山地  進君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         気象庁長官   窪田 正八君         郵政大臣官房電         気通信監理官  寺島 角夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省郵務局長 江上 貞利君         郵政省人事局長 林  乙也君         郵政省経理局長 守住 有信君         労働大臣官房長 谷口 隆志君         労働省労政局長 細野  正君         労働省労働基準         局長      吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省計画局長 宮繁  護君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    宮尾  盤君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         日本電信電話公         社総裁     秋草 篤二君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)   仁杉  巖君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月一日  辞任         補欠選任   荒舩清十郎君     亀井 善之君   江崎 真澄君     小里 貞利君   小山 長規君     浦野 烋興君   塩崎  潤君     浜田 幸一君   則武 真一君     不破 哲三君   林  百郎君     工藤  晃君   岡田 正勝君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     小山 長規君   小里 貞利君     江崎 真澄君   亀井 善之君     荒舩清十郎君   浜田 幸一君     塩崎  潤君   塚本 三郎君     岡田 正勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十五年度一般会計予算  昭和五十五年度特別会計予算  昭和五十五年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 田村元

    田村委員長 これより会議を開きます。  昭和五十五年度一般会計予算昭和五十五年度特別会計予算及び昭和五十五年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。阿部哉君
  3. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、財政危機財政再建にかかわる問題を主として総理にお伺いしたいと思います。しかし、財政が一国の政治の具体的なお金による表現でありますので、財政問題に入る前にまず、総理政治理念政治姿勢についてお伺いしたいと思います。  総理は八〇年代はわが国が興亡の岐路にある、「一歩その対応を誤まれば破局を招来しかねない」こう危機を訴えておられるのであります。国民意識革命を求めておられるのであります。しかし、精神革命が必要なのは何よりも総理、あなた自身じゃないでしょうか。そして政治に携わる私たち自身じゃないでしょうか。私はここを指針としなければ国民協力を求める道はないと思うのであります。  私は、一九三〇年代の歴史を振り返ると、経済危機政治危機に転化し、ついに世界大戦の悲劇をもたらした、その原因は、国民政治不信を抱き、ファシズムの台頭を許したことであったと思います。具体的に言えば、世界恐慌によって深刻さを増した貧富の差の拡大、これを放置して大企業救済に走った経済政策と、党利党略のみ求め、あるいは汚職腐敗政治不信を生んだのではないか、私はこう思います。本当危機は、情勢危機である、それが危機じゃないのだ、問題はそれに対応する政治が貧困であるということが私は本当危機だ、こう思うのでありますけれども、三〇年代の歴史の失敗を繰り返してはならない、そのためにまず、力のある者、富める者がますます豊かになり、貧しい者を一層虐げる政治を行ってはならないと思うのであります。公平な社会の実現を特に追求しなければならない、この点について首相はどのようにお考えになっておるのか、まず所信をお伺いしたいと思うのであります。     〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  4. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 危機打開にとりまして一番大事なことは、国民に何を求めるかということではなくて、政治をやっておる主体側がどういう姿勢で、どういう心構えで臨むかということの方が大事であるという御指摘は、そのとおり私も考えております。国民に求める前に行政綱紀を正さなければならぬと思います。政治が倫理を、姿勢を確立していかなければならぬと思います。行政綱紀を正す場合におきまして、内閣自体がまず最初にそのことに徹しなければならぬと思います。内閣の問題にとりましては、まず私自身が真剣にこれに対処せなければならぬ、仰せのとおり私も考えて、不敏でございますが、そういう心構えで臨んでおるつもりでございます。  第二に、政治は公正を旨としなければならない、力ある者が得をし、弱い立場にある者が不幸に呻吟ずるようなことがあってはならないじゃないかということでございました。公正を実現すること、不公正をなくすること、これが政治の最大の眼目でなければならぬと思っております。すべての施政に当たりまして、そのことを軸として施策をしていかなければならぬことは、仰せのとおり私も考えております。
  5. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それで、政治に対する国民の信頼を早急に回復する必要がある、そのために首相はいま何を直ちに行う決意があるのか、もう一つ伺いしておきたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま申し上げましたように、まず施政最初心構えなければならぬこと、実行しなければならぬことは、行政上の綱紀の粛正が第一だと心得ておるわけでございます。すべての施策の前にそのことに全力を挙げなければならぬと考えております。  第二は、厳しい内外の環境のもとにおきまして、国の外において安全を確保しながら、内に国民生活を守っていかなければなりませんが、それに当たりましては、いま阿部さん仰せのように、不公正を是正していくという考え方を基調に置いて内政に当たらなければならぬと思っております。外に対しましては、日本の力量に相当した責任を積極的に果たしてまいるということを通じまして、世界の平和と国際経済秩序の維持に貢献してまいることが火急の責任であると考えております。
  7. 阿部助哉

    阿部(助)委員 内外ともにいろいろむずかしい情勢であります。幾つかの緊急な課題が述べられたけれども、私はその全部に触れるわけにはまいりません。しかし、生活の安定、公平な社会をつくるという点では、私は大変に今度の予算を見て疑問に思わざるを得ないのでありまして、その点でこれから財政問題でお伺いをしたいと思います。  大平総理三木内閣大蔵大臣の当時、初めて当初予算特例公債を盛り込んだ。その責任を感じてか総理は、財政危機宣言を発したり、財政体質の改善を強調しておられた。当時、あの特例公債をお出しになったとき、ここで私は論争した記憶がいまでも生々しくあるわけでありますけれども、その後、総理就任以来四回の施政演説財政危機の解消を強調し、昨年八月の閣議決定で行った新経済社会七カ年計画、この中にも、私は本当財政というのは手段であってその目的ではないと思っておったのです。ところが総理は、多くの学者の反対を押し切って、この財政再建五大目標一つになさった。財政再建こそが何か大平さんの執念にも似た政治目標になったのであります。  しかし今日、その再建の目安は何一つ立っていない。ことに、総理がその再建の切り札として強行しようとした一般消費税は、国民の強い反撃で実施不能になった。もはや総理の手で財政再建は見込みがないのじゃないだろうか。本来ならば私は、その責任を感じて総理の座からおりられるのが本当だと思うのですけれども、どうなんですか、責任はお感じになりませんか。
  8. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 財政阿部さんも仰せのとおり、いろいろな政策を支える手段で、実行する手段でございます。しかし言いかえれば、財政がしっかりしていないと大切ないろいろな政策が実を結ぶことができないわけでございますので、財政再建はいろいろな政策を実効あらしめるために実行しなければならない今日の急務であると考えておるわけでございます。  財政がこのようになりました、公債に非常に大きく依存する体質を招来いたしましたゆえんは、あなたと何回かここで論議を通じて明らかに申し上げましたように、四十九年、五十年ころの日本財政は、ともかくも一応健全な状態であったと私は思うわけでございますけれども、その後起きてまいりました石油危機等に対処するために、また、そのために生じました不況を克服するために、雇用を維持するために、経済の失速を回復するために財政がここでその本領を発揮いたしまして、国民生活全体を守らなければならぬ、こういう羽目に陥りまして、不況のために非常に激減いたしました歳入不足公債によって賄うという選択をせざるを得なかったわけでございます。その選択は私はいまに間違っていなかったと思うのでございまして、そのために日本は、この石油危機に対しまして有効に対応できた国として諸外国からも評価を受けておると思いまするし、国民生活もその危機の間ずっと守り抜くことができたと思うのでございます。  しかし、ようやく経済も立ち直ってまいりましたので、いち早くそういった不正常な状態である財政は正常に戻さなければなりません。財政再建をお願いするということは、だれが政権の座にありましょうとも、なさなければならない当然の任務でございます。したがって、私といたしましては、五十五年度を第一年度といたしまして、その仕事に取りかからせていただいておるわけでございます。野党各党におかれましても、また国民全体の考え方といたしましても、財政再建自体には反対される向きはないようでございます。その手段選択のいかんにつきましては、いろいろな議論があることはまた当然のことと思うのでございますけれども、私どもとしては、いま与えられた状況のもとで鋭意努力をいたしまして、公債発行額を減らしていく、歳出規模を圧縮する、しかしながら必要な歳出の財源は確保するという姿において第一年度の予算をつくり上げたわけでございます。  いろいろな御批判はあろうと思いますけれども、この困難な状況のもとにおきまして、第一歩をともかくも踏み出すことができましたことは、私は大変ありがたいことであったと思うのでございまして、これを起点といたしまして鋭意再建に努力いたしまして、ここ数年の間に財政再建の実を上げて、八〇年代の険しい時代に対処するだけの財政対応力を取り戻さなければならぬと考えております。
  9. 阿部助哉

    阿部(助)委員 総理いろいろおっしゃるのですが、経済をどうしたとかこうしたとか、これは政治の行動は風が吹けばおけ屋がもうかるみたいなもので、台風が来たら土建屋がもうかるみたいなものでして、何かやればプラスの面とマイナスの面が出てきます。しかし、財政がここまで来たという点は、これは大変な間違い。まさに日本財政は、サラ金財政と言っても間違いがないくらいひどくなってしまった。総理は、財政再建を数年間でやる、その第一歩を踏み出した。恐らく昨年の当初予算よりもことしの当初予算が一兆円の公債を減らしたということをおっしゃっておるのだと思う。数年間でこの財政危機を健全にするとおっしゃるけれども総理、どうなんです。財政危機という話は聞くのだけれども、では、どういう財政状態になったときに財政危機が解消されたのかというのが一つ国民に示されていないのですね。財政危機の解消された時点というのは、どういう状態になったときにその財政危機が解消されたのです。
  10. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 財政公債依存が過度であってはならないわけでございまして、できるだけ公債依存する度合いが少ない状態でなければならぬと思いますが、少なくとも特例公債がない状態にすることが当面、財政再建の道標でなければならぬのじゃないかと考えております。
  11. 阿部助哉

    阿部(助)委員 では、建設公債は何ぼ出しても、特例公債がなくなりさえすれば健全だと総理はおっしゃるのですか。
  12. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういうことを申し上げていないのでございまして、できるだけ全体として公債に対する依存が少ない方がいいと先ほど申しましたとおりでございますが、当面少なくとも特例公債、これはいま建設公債より多い状態でございますが、この特例公債をなくするということを当面の目標として財政再建の実を上げたいと申し上げておるわけでございます。建設公債といえども公債でございます。これは過度にわたってならないことは申すまでもございません。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席
  13. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから国民には、私にもわからないのですよ、いまのおっしゃるお話では。財政危機なんだ、再建をしなければいかぬということは私たちもだれも異存がないのです。しかし、政府危機だ、危機だとおっしゃるけれども、一体どういう時点になったら危機が、財政が健全になった、こうおっしゃるのか。その目標なしに走れと言ったって、走るわけにいかないですよ。そこを明確にしてくれ。後でまた問題をお伺いをしますけれども、まずこれをどういう時点に持っていきたいんだという目標を、依存率をできるだけ少なくなんという程度では私は非常にあいまいなお話だと思うのです、そこを明確にできませんか。
  14. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先々数年の財政の具体的な展望を述べるというようなことはなかなかむずかしいことでございますが、いま申し上げている目標といたしましては、当面特例公債をなくしていく、こういうことが当面の財政再建目標というように御理解をいただいてよろしいと私は思います。
  15. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、当面特例公債をなくす、それがなくなれば財政再建は一応めどをつけた、こうおっしゃるんですね。これだけは何といったって、皆さん再建をおっしゃるし、財政危機を訴えておられるんだから、国民にはっきりわかるようにしていただかないと、これは御協力のしようがございませんので、詳しく、くどいようだけれども、まずこれをちゃんとしてもらいたいのです。それでないと、後で私、問題を出しますけれども、何か抽象的に財政再建財政再建という宣伝の中で、大合唱の中で、社会福祉の切り捨てだとか大衆課税の強化だとかいう形でやられてくるので、財政危機だ、こうおっしゃる、再建だ、こうおっしゃる、それならばどういう状態になったときにこれが再建されたのかということを明確にしてもらわぬことには、この財政再建論議なんというものはしたって意味をなさないんじゃないか。だから私は、まず、基礎をきちんとしておいて論議をしたいと思うので、もう一遍、くどいようだけれども言ってください。
  16. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま申し上げたとおりでございまして、当面特例債をなくする。特例債というのは、財政法上も認められていない、特別の立法をお願いしてようやくしのいでおる財政でございまして、まずこれを取りやめていく。これを一挙に取りやめることはむずかしゅうございますが、数年の間にこれをなくするということを目標として、これが実現いたしますると、まずまず私どもの見当では、財政欧米先進諸国状態と比肩いたしまして、そんなに見劣りのする状態にあるようには思わないのであります。
  17. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは、大蔵省にお伺いしますけれども、一昨日この委員会へ出されたあの収支試算ですね、あれは、六十年のいわゆる新経済七カ年計画基礎にして、それにいまのこの五十五年度予算、これとをまあ直線的につないだというかそういうものなんで、七カ年計画基礎になって、これに合わせて一応試算をしてみると、こういうことなんでございましょう。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 そういうことでございます。
  19. 阿部助哉

    阿部(助)委員 何かきのうの質疑のあれを聞いておりますと、何もかにもが試算でございましてということでぼやけてしまったように私は拝聴したのですけれども、この中で、六十年度のこの数字は、一応親ガメである七カ年計画を踏ま見て、皆さんのこれは政策目標と見て間違いがないのでしょう。
  20. 竹下登

    竹下国務大臣 そのとおりでございます。
  21. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その間の中間は、これは直線的につないだので、経済の動きによって変動する、それは皆さん、そういうことでつくったのだろうと私は思います。しかし、最終年次の六十年度のこの数字は一応政策目標である。もう一つ、いま総理がおっしゃったように、五十九年度で特例公債をなくするという、これははっきりした政策目標なんですね。そうでしょう。
  22. 竹下登

    竹下国務大臣 特例公債から脱却する、そのとおりでございます。
  23. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、この試算は、その中間は大体まあ真っすぐ線を引いただけなんだから変動はしますよ、だけれども、二つだけ、最終年次のこの数字は政策目標、もう一つは、特例公債を五十九年になくするというこれは政策目標として、この二つは私はきちんとしておるんだと思うのです。  そこで、もう一つ伺いしますけれども、そうしますと、何か新経済七カ年計画基礎で、親ガメで、中期財政試算は子ガメみたいなものなんですね。そうでしょう。
  24. 竹下登

    竹下国務大臣 そのとおりでございます。
  25. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そこで私はお伺いしますけれども、これを見てまいりますと、公共事業費の伸びが異常に高い。しかも、この公共事業費の単価は五十三年度価格で二百四十兆。もう最近、卸売物価は上がっていく、消費者物価も上がろうとしておる。まあ二百四十兆でおさまるはずがない。これは大変な数字になってしまう、物価上昇を掛けていったら。まあまあそれはそれにして、この公共事業を今度何か改正をするとか修正をするとか言っておるけれども、見直してはいないのです。一般会計予算の伸びが一一・二%、公共事業費の伸びが一二・九%ですから、これは大変な公共事業の伸びであります。これは確認だけいたします。  その公共事業の主たる財源は建設公債で賄う。昭和五十五年から六十年までの公共投資の総額、一般会計分ですが、六十三兆九千億。そのうち建設公債の額が五十七兆六千五百億。公共投資の国債依存率は九〇・二%。ここまでどうですか。私、この数字で計算したのですが、間違っていませんか。
  26. 田中敬

    田中(敬)政府委員 阿部委員の御指摘の数字がここにございます数字を累計した御数字であるとすれば、そのとおりだと存じます。
  27. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この結果、国債費は大変に激増する。国債残高が昭和六十年度に百三十一兆六千億。そうしますと、五十五年度末に予定されておるのが七十一兆三千億でございますから、六十兆三千億ふえてくる。それで建設公債分がそのうちの五十七兆六千五百億です。累積増加額に占める建設国債の割合は九五・六%になる。  もう一つ、国債費は昭和六十年度に十二兆四千六百億になりますね。五十五年度、来年度は国債費は五兆二千七百億。二・四倍になる。私がさっき申し上げたように、この基礎の数字は五十三年度の物価をもとにしてはじいておられるが、さらにこれよりも物価上昇分だけよけいになると見なければいかぬのですが、それはさておいても、二・四倍になるという大変な公債の増加を来す。これはこの数字からいって確認できますね。
  28. 田中敬

    田中(敬)政府委員 御指摘の数字は私の方も検証いたしておりませんが、そのとおりになろうかと存じます。  ただ、阿部委員は、これは五十三年度価格によっておるのだから、六十年度までの数字はここにあらわれている数字以上のものになるはずだという御説でございますが、たとえば公共投資一つとりましても、ここに記載してある六十年度の公共投資額十四兆一千二百億というのは、この期間中の物価上昇を全部見て計上したものでございまして、ここはそれぞれの物価分は勘案してあるということでございますので、そのように御理解願いたいと思います。
  29. 阿部助哉

    阿部(助)委員 皆さんの物価、来年度一年拝見をいたしますけれども、皆さんの御期待する、また国民の期待するような形で物価が安定していくのか。国際情勢を踏まえ、またいまの国内の卸売物価情勢を踏まえ、また土地の値上がり傾向を見てまいりますと、決して皆さんの期待どおりにはいかないだろう、こういうことを踏まえて私は発言いたしておりますので、皆さんがそれに物価のあれを掛けたことは承知しております。  そこで、一般会計に占める国債費の割合は一七%、五十五年度が一二・四%ですから、大変一般会計を圧迫するわけです。特例公債がなくなっても建設公債が大量に出るから、そのために国債費はふえる。それが一七%にまで達するのですから、これは大変財政を圧迫する。財政健全化にはならないと私は思うのですが、総理、どうなんです。特例公債がなくなった時点で大体財政再建の一応のめどがついたとさっきおっしゃったけれども、このように六十年度には皆さんの物価指数を信じてみても一七%。危機だ、危機だとおっしゃっておる五十五年度の財政に占める国債費の割合が一二・四%なんです。これで危機なんですよ。これが一七%に上がっていって、それで特例公債がなくなったから建設公債がふえても財政再建のめどはついた、こうおっしゃるのですか、総理
  30. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 六十年度における日本経済の姿、そしてそれを投影した財政収支試算を踏まえてわれわれがどういう判断をそれから引き出すかという問題だと思うのでありまするが、昭和六十年度における日本経済の姿がいろいろな想定のもとにできておる状態でございますが、そういうバランスのとれた状態が現出いたしますならば、財政もそれを投影してそういう姿のものになるということでございますならば、それは一応そう不健全なものではなくて、考えられ得る日本財政としては相当評価していい状態になるのではないかと思うのでございます。  ただいま先進諸国の国債依存率を見ておりましても一六、七%というところもございまするし、一〇%程度のところもあるようでございます。その国柄によりまして一概に言えないと思いまするけれども、その表にあらわれておる姿そのものから見ますと、一応バランスのとれた姿になるのではないかと思うわけでございまして、当面われわれがねらっておるのは、特例公債から脱却することを急がなければならぬということにアクセントを置いていま申し上げておるわけでございます。  しかし、阿部さんが御指摘のように、建設公債だから無制限であっていいとは考えないのでございまして、そのときの経済状態財政状態から見ましてその健全か否かの判断は具体的にその時点において判断すべきものと思うわけでございます。
  31. 阿部助哉

    阿部(助)委員 総理は国際的比較をしたらこうだとおっしゃるけれども、確かにアメリカとイギリスは公債がよけい出ております。これはあの大戦のときのものが残っているからなんです。ところが、そのほかの国はそう多くはない。ただ日本公債の増加率が最近非常に急激であるということで私は心配しておるのでして、イギリスやアメリカはなるほど多いけれども、戦争中のが残っておるという特殊な事情です。日本の場合はそうじゃない。この二、三年大変な増加傾向にある。  そこで、私、さっき皆さんの数字で確認をいたしましたように、特例公債はなるほどゼロになるけれども建設公債はどんどんふえている。公債費がいま申し上げたように、一二・四%の五十五年度から六十年には一七%とこうなる。これはさらに増加傾向を持っているとすれば、総理の言う財政再建どころではないんじゃないか。こうなれば公債費という、予算の中である意味では全く政策効果を発揮しない経費が一七%もかかる。社会保障全額に匹敵するなんということになって、これで財政再建と言えるんだろうか。特例公債なければ財政再建だという一応のめどをつけたとおっしゃるけれども、めどはつかないんじゃないか。ますます悪化するんじゃないだろうか。ここは総理、与党、野党じゃないんだ、本当言うと。真剣になって考えないと、どうしようもないところに来てしまいますよ。まさに日本財政サラ金財政だ。サラ金に苦しむ財政になってしまっているんじゃないだろうか。その不安があるから、国民みんなに理解してもらうためには目標をきちんと示して、それに向けて国民協力を要請するというのでなければ、何かごまかしのような、言いわけのようなことを言っておったって国民協力するはずがないじゃないですか。  そこで、私は、さっき前提に目標はどうなんだ、財政再建というのは一体どうなったときに言うんだということをくどくお伺いしたのはそのためなんでして、総理、一体これで、国際比較をしてごらんになったけれども、それは私も見ております。だけれども、これじゃ国際比較なんてする暇はない。日本の方が急激なんですよ。総理どう考えるのです。
  32. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ですから、当面建設公債よりもむしろいままだ特例公債が多いような段階なんですから、まず特例公債からの脱却を図るんだということでございます。  第二は、あなたの仰せのように、建設公債だからといってもこれは借金でございまするし、またこれには発行についてのいろいろな要件を考えなければならぬことでございますし、財政の健全性は維持していかなければならぬことで、これに節度がなければならぬことは当然だと私も考えております。
  33. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうも総理の気持ちはどうか知らぬが、節度とおっしゃるけれども、その節度がなかったからここへ来たのですよ。節度があればここへ来なかった。特例公債を発行するとき、本当にここで、あなたには失礼だったか知らぬけれども、くどいほどなぜ再建計画をつけないんだ。これが一つの歯どめなんですよ。再建計画は当然国民の税金によらざるを得ない。国民は不満を持つ、それが歯どめなんですよ。その歯どめがなしに、あなたは十年たったら返すんだという決意表明だけで終わってしまったんだ、あのとき。だからあのとき、あなたの大蔵大臣の決意表明というものであって返済計画というものではないんだということを、私はここでくどくあなたに食い下がったのはそのためだった。まさに節度がなくなって日本財政サラ金財政になってしまったというのが現実なんですよ。そこの反省なしに財政再建なんということを大合唱されること自体が私には理解ができないのですよ。  もう少し進みます。六十年度の新規増税と新規増税による自然増収増加額の税収見込み、これは試算ですが約八兆一千億、六十年度の税収総額の一三・九%。国債費十二兆四千六百億、新規増税八兆一千億、差し引き四兆三千億、こうなってくる。こうなってくると、特例公債をなくしたって、くどいようだけれども、新経済七カ年計画を前提とする限り、国債の累積額は六年間で六十兆以上も増加する。国債費は先ほど言ったように二・四倍になり、一般会計総額に占める割合が一七%台に突入するという。そうすると、財政再建をなさるためには、私は、この七カ年計画の大修正か、いま皆さんがお示しになっておるこの経済社会七カ年計画は全面的な改定か放棄かせざるを得ないと思うのですが、いかがですか。それとも、これはやるんだから財政再建はもうぶん投げる、放棄する、こうおっしゃるのですか、どうなんですか。総理、いかがです。
  34. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 経済七カ年計画はいろんな前提を置いて試算いたしましたものでございます。財政試算はそれを財政に投影した数字をそのまま正直に出してあるものでございます。しかしながら、われわれの財政計画は毎年毎年具体的に予算の形で編成していかなければならぬものでございまして、われわれはこの二つの七カ年計画とそれから財政収支試算からいろんな考えについての示唆をくみ取りまして、年々歳々の予算の編成に生かしていかなければならぬ。そういう意味で、この試算なり七カ年計画というのは意味があるものでございます。もしこれがなければ毎年毎年場当たりのことになりかねないわけでございまして、いま阿部さんがこれを基礎にいたしましていろんな御批判をされ、あるいは非常に憂慮されておりますゆえんのものも、この七カ年計画なり財政試算が持っておる一つの効能でございまして、これをかがみにいたしまして、われわれはいろいろな工夫をしながら年々歳々の予算を組んでいかなければならぬものでございます。  で、政府といたしましては、そういう方向にできるだけ近づけたいという努力をしていこうじゃないかということでいま進めておるわけでございまして、その間の間差をできるだけ少ないものにしていこうという努力はあくまでもしなければなりませんけれども、現実の予算の姿はそれから相当距離のあるものにならざるを得ないということは、あなたがすでに読み取っておられることでございましょうし、われわれも予算編成はそういうものであると心得ております。
  35. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それにしても、われわれの論議の勉強材料に出したんだとおっしゃれば、それで結構ですけれども、しかしそうはいかないですよ。余りにも開き過ぎた、矛盾が多過ぎればこれは何とかしなければ論議の対象にもならなくなるんじゃないですか。これを出したから阿部委員の質問の材料ができたんだからいいじゃないかとおっしゃれば、これはそうかもわからぬけれども、これだけ開き過ぎたんでは政府の権威にも関する。国民政府を信頼しなくなる。だからもう少し真実性のある実行可能なものにする努力をしなければ、いまの時点では、余りにも財政危機打開とこの七カ年計画とは乖離し過ぎるんじゃないですか。将来を展望することも大切であります。しかし、何といってもこれから国際経済が変動する、国内の景気もまだ流動的だという中で、財政の占めるウエートを感ずれば感ずるほど、まずその財政再建というものにもっともっと全力を挙げるべきだ、私はこう思うのですが、どうなんですか。
  36. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほど来の議論でございますが、財政収支試算につきましては、いま総理からお答えになったわけでございますが、いま阿部さんのおっしゃっているような議論が、あるいは多賀谷書記長からも矢野書記長からも出てまいりました財政計画そのものを出すべきだ、こういうことに展開することになろうかと思うのであります。したがって、その財政計画につきましては、一昨年以来勉強しておりますが、他の先進諸国においてもこれをつくるのに十年かかったとかあるいは十一年かかったとか申しますが、その日本型の財政計画というものをどうしてもつくろうという気構えで、いま各省庁との関係におきましても、勉強をかなり密度を濃厚に始めておるというところでございます。  確かに公共事業等の問題も出ておりましたが、公共事業等につきましても、それではそれぞれの年次計画をどのようにその中へ組み込んでいくかということになりますと、大蔵省だけでできるものでもありませんし、したがって、かなりの時間がかかるということは素直に最初から申さなければならぬと思うのでありますが、本当に鋭意詰めて、政府責任における、収支試算大蔵省で出せるわけでございますが、財政計画というものに取り組んでいきたい、こういう考え方でございます。
  37. 阿部助哉

    阿部(助)委員 大蔵大臣、もう一つ聞きますけれども、あなたは特に財政を担当するわけでありますけれども総理がおっしゃるように特例公債がなくなれば大体一段落なんだ、そんな気持ちでこの財政再建に取り組んでおるのですか。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 総理が申されておりますのも、当面特例公債からの脱却ということを一つのめどとしてお考えになっておることでありまして、そして総理からも申されましたように、それでは建設国債というものは野放しであっていいかというものでは、これは断じてありません。また、野放しであって国債が売れるはずのものでもない。したがって、そこには当然のこととして一つの節度というものが必要になってくるわけでありますが、その節度を、いままでの政府側の答弁をずっと全部調べてみますと、数字の上で言っておる、いままで申しております一つの数字は一〇%、こういうことを言っておりますけれども、必ずしもそれも政府部内で決めた数字ではございませんが、先進諸国等と対比いたしまして、やはり逐年これを減らしていく、そしてまた減らしていくことが、財政による景気のてこ入れ等が求められた場合にも、それに対応する体質自身を持つことになるわけでございますから、財政再建とは、総理からも申しておりますように、当面特例公債からの脱却を図り、そしてその後も公債依存率というものについては十分に配慮しながら、それが減少して、どんな場合にでも対応できる財政体質を回復する、こういうふうに申しておるわけでございます。
  39. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だから私は、大蔵大臣総理の枠を乗り越えるわけにいかないのだから、これはしようがないけれども、皆さんのお話を聞いておると、財政再建は、なるほど皆さんの計画どおりいけば、私はくどいようだけれども、五十九年には特例公債はなくなりますね。だけれども建設公債がふえ、公債費の予算に占める割合は、これは大きくなっていく。これが一体財政再建なんだろうか。依存率とかいろいろおっしゃるけれども財政が機動的に動くためには、公債費の予算に占める割合が圧縮されなければ、財政が機動性を持たないわけでしょう。それが解決されないでだんだん太っていくというのが、一体何が財政再建なんだろうか。だから私は、本当を言うと、特例公債がなくなったのが一応のめどだなんという目標設定には大体納得ができないのです。財政再建はそんなものじゃない。公債費というものがなくなる。本当を言うならば、いま財政法というあの重要な法律第四条、これは本文がなくなっちゃった。ただし書きの方ばかりが生きちゃって、本文がなくなった。これは本末転倒もはなはだしい。財政法第四条、五条、これはもう財政法のかなめですよ。そうして、ある意味では日本の平和憲法と言われる憲法九条を担保すると言われたほど重要なこの第四条、しかも第五条、皆さんことしもまた二兆五千億を財投で引き受けるなんと言うけれども、ある意味で市中消化の原則もこれは踏み外してしまった。公債に何も歯どめをかけていない。特例だ、建設だなんということの論議よりも、公債に歯どめをかけるというのが私は財政法の精神だ、こう思っておったのだけれども、いまやその精神はなくなって、本文は要らなくなり、ただし書きが生きてしまい、そして五条の日銀引き受けの禁止、なるほどいま日銀に引き受けさせてはいないけれども政府の金を右の方から左の方へ渡すだけじゃないですか。これが一体市中消化の原則を守っておると大蔵大臣はお考えになるのですか。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 確かにいま阿部委員の国債費が特例公債脱却後どんどん、国債費の一般会計に占める比率は多くなっていくのじゃないか。それはそのときにまさに償還期に達する、五十年発行のものの償還期に達するわけでございますので、それはふえてまいります。しかし、当面はとにかく特例公債からの脱却を図っていく。  それから、いま一つのお尋ねでありますところの財投引き受けの問題でございます。これはいろいろ議論のあるところでございますが、国債引き受けというものに対する、国債管理政策とでも申しましょうか、について、引受関係者の懇談会等々で各般の意見を聞いてみて、そのときの市中消化のおよその限界というようなものも考えた上で、財投引き受けということになったわけでございますので、それそのものが私は精神に反するものだとは思っておりません。すなわち、市中で引き受けてもらえることは、やはり極論しますれば発行額が大きいから市中の引き受けがなかなかむずかしい問題になるものでございますから、基本的にはやっぱり発行額を減らしていく。そこでことしは一兆円だけは減らそう、こうなったわけでございますので、そのときの市中の引受能力等を勘案して二兆五千億というものを財投で引き受けた、結果的に引き受けていただくということになるわけでございますから、基本的にはやっぱり発行額が大きいということを認めざるを得ないということであります。
  41. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、私がお伺いしたのはそういうことじゃないのですよ。財投引き受けというものが一体市中消化なのかどうか、こういうことなんです。
  42. 竹下登

    竹下国務大臣 わかりました。財投で引き受けるのは市中引き受けの原則に反するではないかということですが、財投資金というものは郵便貯金等が主たるものでございますから、やはりその民間の資金をもってこれを引き受けたというふうに解釈していい、こういう考えであります。
  43. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これはずいぶん問題のあるところでございまして、私は時間がないから次の問題に移らにゃいかぬから、いずれやりますけれども、財投引き受けが市中消化の原則に外れないなんということは私は納得ができません。市中消化というのは、みんなが買ってくれるということなんであって、財投は政府国民から預かった金なんです。右手に持っている政府の金を左手で渡すみたいなものなんだな。これが一体市中消化と言えるのか。そういう観点でやれば、恐らく皆さんは歯どめなしに建設公債を出すのじゃないか。政府の、保険やなんかで集めた財投資金を、市中消化の原則に外れないということで、最後には財投資金で全部公債を引き受けるつもりなんですか。こんなことやったら国債発行には歯どめはなくなりますよ。これは大変重大なお考えだと思う。ことしはやむを得ない、緊急避難でやむなくやっておるというのなら私はまだ目をつぶることもあるけれども、それがあたりまえの市中消化でございますなどと言ったのじゃ、市中消化の原則は歯どめはないですよ。財投はみんな建設公債に化けてしまいますよ。これが市中消化と言うのですか。これは重大なことですよ。もう一遍御答弁願いたい。
  44. 竹下登

    竹下国務大臣 これは原則的には、やはり諸外国ともまさに市中消化である、こういう解釈でございます。
  45. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、それを野放しに認めていけば、いま言ったようにみんな財投資金は建設公債に化けてしまう。そうすれば、政府は右の手で公債を出し、左手の財投に移すだけの話になってしまう。これが市中消化だと言ったら大変なことになってしまいますよ。では、この問題は残して、いずれ後で議論しますけれども、これは私は納得ができません。私は、皆さんがやはり公債発行にどこかで、何かで歯どめをかけなければ、財政再建はできないのだと思うのです。  その一つは、私は納得できないけれども特例公債がなくなるというのがめどだとおっしゃるけれども、これも不満であります。総理、何とか本腰を入れて財政再建をしようというならば、どうしたって国民にも多少のお願いをせにゃいかぬでしょう。そうするためには、やはり政府がこういう姿なんだということをもっと明快に目標を示すことと、いまのようにサラ金で借りてやっておるような財政を立て直すための歯どめをもっと真剣に考えませんか。たとえば、私はこれがいいとか悪いとかは申し上げませんが、西ドイツがやっておるように、好況のときには増税をして積み立てておく、予算の余りは中央銀行に積み立てておく、自然増の分についても積み立てて、そして不況のときには国会の議決を経てそれを出しておる、これが西ドイツの一つの歯どめでしょう。日本の場合も、やはり財政法四条による財政運営が可能になるとき、私はこれが財政再建されたという時点だろうと思うのだけれども、そこに向けていくにはこれから大変苦難な道だと思います。その苦難な道を国民にお願いをするためには、もっと政府が勇気を出してきちんとこの目標を設定し、それに対する方法を設けていかなければならぬと思うけれども、どうも皆さんのお考えは国債に対してルーズ過ぎると言っても言い過ぎでないような気がする。  私は、ここで一応この問題を終わって次に移りたいので、その意味で総理の締めくくりの決意をまずお伺いしたいと思うのです。
  46. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 財政法の想定するような経済財政の姿に持っていかないと財政再建と言えないじゃないか、単に特例公債を取りやめるということだけで甘んじておってもいけない、建設公債というようなものに対してりっぱに歯どめをつけていかないといけないじゃないかという御指摘、阿部さんの言われるとおりと私は思います。しかしながら、手順といたしまして、政府としては、特例公債の脱却をまずここ数年の間になし遂げようといたしておるわけでございまして、建設公債につきましては十分の節度ある歯どめを構えまして、公債政策並びに公債管理につきまして慎重に対処していかなければならぬ、そして再建の実を上げなければならぬと考えておりまして、究極において志向される財政再建の目的は、あなたと政府と変わったものではないことを申し上げておきたいと思います。
  47. 阿部助哉

    阿部(助)委員 本当はずいぶん変わっています。違いがありますよね。  そこで、総理はそうおっしゃるけれども本当総理財政再建の意思はないのじゃないか、ただ大合唱をやって、それで財政危機だ、危機だ、だから国民大衆課税をやるぞ、福祉は切り捨てるぞ、こういう国民に対するおどかしをかけておるのじゃないかというふうにしか私は思えない。それはなぜか。そのあらわれは、なぜ法人税の引き上げをやらなかったのです。これは重大な問題でありますから、国民にわかるように明快にお答えを願いたい。
  48. 竹下登

    竹下国務大臣 法人税をなぜ引き上げなかったか、こういう御質問でございますが、正確に申し上げます。  五十五年度におきましてはかなりの自然増収を背景に、その上租税特別措置の大幅な整理合理化等によりまして必要な財源が確保できたというところから、法人税の引き上げ等のいわゆる一般的な増収措置は講じないということで、今年度はそのような措置をとったわけであります。
  49. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まず自然増が多かった、こう言う。自然増の一番大きな負担をした人はだれなんです。源泉課税じゃないですか。物価が上がり給料が上がれば減税をされるのが当然であるのに、勤労大衆は物価でたたかれて税金でまた持っていかれる。自然増の主力は源泉課税でしょう。大衆の課税じゃないですか。特別措置を直したと言うが、一体何を直したのです。どれだけの金額を直したのです。ほんのわずかじゃないですか。財政が確保されたからいいんだとおっしゃるけれども、十四兆何がしの公債は依然として出るじゃないですか。公債を減らして財政再建をしようというのに、なぜ増税ができなかったのです。これはもうとてもあなたの答弁では私は納得できません。
  50. 竹下登

    竹下国務大臣 今年度、五十五年度予算編成に必要な財源は、本格的な増税をすることなくして予算が組めたということでありまして、増税をしろという——増税をしろというわけでもございませんが、なぜ増税しなかったかということにつきましては、五十五年度予算はそれをしないで組むことができた、こういうことであります。そうして、いわゆる国民の皆さん方に新たなる負担を求めるということになりますと、それはいろいろな客観的情勢もございます。特に、今年度はそのような形で予算編成ができたわけでございますけれども、将来にわたって財政再建を進めていくためには、いま阿部委員の御指摘の法人税等を検討の外に置くということはできないというふうに考えております。
  51. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうもわからぬですね。ことしは予算を何とか組んだと言うけれども公債なしに予算が組めたのなら私はその御意見を承りますよ。公債を減らさなければいかぬと言いながら、十四兆も公債を出しておって予算を組んだ。毎年組めますよ、公債さえふやせばね。それは理屈に合わないんじゃないですか。財政再建を皆さんおっしゃっておる。これは時間がないから読み上げませんけれども財政再建は緊要だと言うて本会議であなたはお話なすっておる。公債をよけい出せば予算は組めます。そんなものはちっとも、これは何も皆さんでなくたって、大蔵省の人たちでなくたって、中学の生徒でも予算組めますよ、こうなれば。足らない分みんな公債予算を組むとすれば、こんなものはだれでも組めます。それでは予算組めたんじゃない。なぜ公債を減らさないか。財政再建をしなければならないと言う皆さんが、なぜ財政再建の道へもっと踏み込んでいかないのです。公債を出さないで予算が組めたのならば、私はあえて法人税の増税を申し上げるつもりはないのです。公債を十四兆も出しながら、財政再建ができたんだ、一歩を踏み出したんだなんということは、国民に言ったってわかりませんよ。それが本当の意思ならば、再建の意思なんかないんだから、ここでもう初めから財政再建なんか皆さんおっしゃらなければいいし、私は論議やめますよ。これなら私は論議したって意味なさない。十四兆もの公債を出しながら、予算が組めたから、これは必要がなかったんだなんと言うならば、それならば勤労者の減税をしなさいよ。所得減税をしなさい。当然のことなんです。どうなんです。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 その足らないところは無制限に公債発行すればいいではないかということでございますが……(阿部(助)委員「いや、いいではないかじゃない」と呼ぶ)この公債というものは、もちろん消化されなければ現実的にその効果を生むものではない、そこにおのずからの限界というものもあるわけであります。  まず、ことしの予算編成の基本的な考え方は、とにかく増発傾向にある公債そのものを前年度に比べて減す、この基本方針に基づきまして一兆を減したわけであります。これは、一兆よりも一兆三千億減せば十三兆台になりますから、姿として好ましいというようなことを私ども予算編成の段階でもとより考えてみたことでございます。しかし、一応の今日のバランスからして、まあ一兆というものにとどまったわけでございますけれども、とにかく増発傾向にあったものを、ここで減額することによってこの一歩を踏み出したという考え方に立っております。  それからいま一つは、歳出の問題でございますが、とにかく一般歳出におきまして、昭和三十一年以来の低い伸び率である五・一%というものに抑えて、そこで、それにはたまたま民間の努力によって得たところの自然増収というものにおいてその規模が賄い得た、こういうことであります。  もちろん、公債依存度をもっと下げていくことが財政そのものの姿としては好ましいことであるということは、私も阿部さんの主張と違ったところはないというふうに理解をいたしております。
  53. 阿部助哉

    阿部(助)委員 やはり増税には理由とタイミングが必要だと私は思うのです。財政危機の打開を一日も早く行おうとするのであれば、増税ができるところから直ちに増税を行って国債の償還に充てる、国債を減らす。もう償還に充てるより減らきにゃいかぬ。ところが、勤労者に対しては一般消費税をやろうなんという考えを持った。これは国民の反撃でつぶれたけれども。自然増税という名の大増税を行っておる。  これは大蔵省からいただいた資料でありますけれども、五十四年度は給与所得が八・四%の伸び、これに対して源泉の増加は一五%、六千七百億、そうして五十五年度は給与の伸びが八・七%に対して税金は一六・四%、八千四百三十億の増税を見込んでおるでしょう。ある意味では、これは非常に粗っぽい言い方をいたしますと、不景気でございます、だから、景気浮揚ということで公共事業を伸ばした、おかげで大企業は軒並み好況になった、国民の税金で大企業は大変な景気になった。これは資料で後で申し上げますけれども、そっちの方は増税はいたしません。そうして大衆の勤労者の方は、税金はうんと取られる。一般消費税でなお取ろうなんという考えすら出てくる。そうすると、一般消費税や何かの大衆課税では公債を減らすけれども、大企業の負担によっては公債は減らしません、こういうことになってしまう。私は、これが一体政治の公平なのか。これが一体政治の公平なんですか。総理、どうです。
  54. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ことしは財政再建第一歩を踏み出させていただきたいと思いまして、当初予算におきまして発行予定額を一兆円減らすことにいたしたのでございます。  この理由は、これができましたのは、あなたの御指摘のように増税によってでなくて、自然増収を主たる財源としてできたわけでございまして、自然増収は、これはひとり個人の所得税の自然増収ばかりでなく、法人税その他、すべての税金の自然の増収によりましての税収でございまして、個人からだけ受けたものでないと私は承知しております。
  55. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私が言ったのは、主として大きな部面が給与からの源泉課税の自然増です。それは皆さんの大蔵省の資料がちゃんと出ておる。もちろん法人の好況による自然増もあります。しかし皆さん、東京証券取引所の一部上場企業、ここで四社に一社が創業以来の利益を上げておる。大体四期連続の増益です。鉄に至っては、これは半期決算ですが、二千四百十六億、前の期の四九%も伸びておる。これは大体において、企業はいろいろな努力もあるでしょう。しかし、いわゆる減量経営、公共事業の伸び、多少輸出もあります、こういう中でこの利益を上げておる。ある意味で言えば、国民の犠牲の上に大変な利益を上げ、好況なんですね。このときに法人税を取らないで、一体いつ財政再建に寄与させるんです。  私は、やはり法人税というのは景気のよいときに取る、それで不況のときに、こういう公共投資や何かをやって景気を回復していくというのは、これはフィスカルポリシーと皆さんがおっしゃる、フィスカルポリシーの常識でしょう。あえて法人税は取りません、それによっては公債は減額しません、勤労者の税金でだけ減額しますとおっしゃるなら、それはしようがない。しかも日本の法人税の実効税率は、これは先進国の中で一番低いじゃないですか。西ドイツと比べれば、日本は実効税率が四九・四七%、西ドイツが五六・五二%ですから、約七%も日本の法人の実効税率は低いんですよ。この景気のとき、総理、いままでの考えを改めて、これからでも遅くはない、時限立法でもいいから、やはりこれだけ利益を上げておるときに法人から取り、そして公債の減額に充てるというぐらいの皆さんの決意なしに財政再建のキャンペーンを張ることは、私は間違いであると思うが、総理どうです。
  56. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど申しましたように、自然増収が予期以上期待できることになりましたので、所定の公債の減額もできたので、ことしは法人税率の改定というのはやめさせていただきました。しかしながら、特別措置の整理は、主として企業に関する特別措置の見直しによっておるわけでございまして、個人に対すると法人に対すると非常にバイアスをかけたとか、法人側にフェーバーをもたらすような考えは毛頭考えていないわけでございます。  企業の方の財務体質、私は必ずしも阿部さんが言われるように好転いたしておるようには見ないのでございます。しかし、個人の経済は、実所得の改善から漸次正常になってきておりまするし、法人税の実効税率を比較いたしますと、なるほど仰せのように若干まだ引き上げの余地がないとは私は申しません。しかし、そういう比較をしておりますと、個人所得税におきましては非常に日本が低いということもあわせて勘案していただかなければならぬのじゃないか。税金が低いということはいいことなんでございますので、必要な場合は増税を求めますけれども、必要でない場合にはできるだけ増税をしないということでないといけないのではないか。長い目で見まして法人の体質をよくしておきまして、これこそはやはり財源を健全に涵養していくということを政府としては終始考えておかなければならぬことじゃないか。そういうことに対するあなたの御理解を求めたいと思います。
  57. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これは私はとても御理解をするわけにはいきません。これだけ法人はよその国に比べても低い。しかも、財政の投資によってある意味で利益はうんと上げてきたわけです。しかも、財政再建を皆さんはしよう、そして国民にその犠牲をお願いしたい、こういうときに、これだけ四期連続も大変な利益を上げておるときに、なぜ一体法人税を取らないのか、上げないのか。特別措置を直したと言うけれども、引当金なんていったって、あれは何かいままで積んでおる引当金を崩して税金取ったみたいなことを一般に印象を与えるけれども、何も積み増しをとめただけであって、これから後四〇%以上積んじゃいかぬよというだけの話なんです。それでもあれだけ税金が入る。いかにも大企業から積んでおった金を持ってきて取り上げたみたいな印象を与えるけれども、そうじゃないです。こんなに情け深い増税はありませんよ。  法人はいま取らない、私はここに国民不信が出るのじゃないか。マスコミが言っておるように、参議院選挙資金目当てに法人税の増税をしなかったなんという話が出てくるあたりに、国民は皆さんを信用しなくなってしまう。仮にもしこんな話が出る、それだけでもこれは大変な国民不信ですよ。もし本当だとすれば、党利党略によって国を売るものだと言っても間違いがない。私はこのとき、時限立法でもいいから法人税は引き上げるべきだ、これを強く訴えて次に移りたいと思います。  大蔵大臣は、財政演説の中で、租税特別措置についていろいろ直しました、不公平税制は大体一段落がついたというようなお話をしておられますけれども、そう思っておられるのですか。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる租税特別措置につきましては、税制調査会等においても、五十一年から五十五年に至る間の努力に対して「税負担の公平を確保する見地からの政策税制の整理合理化は、おおむね一段落したものといえよう。」こういう評価をいただいておる、こういうことであります。
  59. 阿部助哉

    阿部(助)委員 だれから評価を受けたのか知らぬけれども、世間は特別措置だけが不公平な税制だとは思っていないのですよ。企業が上げた利益を隠して税金を逃れる制度を不公平税制、こう見ておるのじゃないでしょうか。だから、これは特別措置だけの問題ではない。  そこで、私はお伺いしたいのだけれども、法人間の取引、この受取配当は益金に算入されない。しかし、株式を持っておるのは法人が大体もう七割になっている。個人の持ち株は三割近くになってしまった。だから、個人に渡るのだから、最終的には個人のものだからと、いわゆる法人擬制説をとっておられるわけだけれども、もうその実態は違ってきておるのじゃないか。私、もう時間がないから、数字を持っていますがもう言いませんが——簡単に言います。ことに旧財閥の企業集団では、発行株式の二八・三五%を持っておる。だから法人間で株式を持ち合いしているのだから、行ったり来たりする、これが何ら課税されないなんというのは理屈に合わないと思うのですが、大蔵大臣、どうです。
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 いま阿部さんの御意見というのは、株式の大部分は企業間の持ち合いになっている実態から見れば益金不算入はおかしいじゃないか、こういう御意見であると思うのであります。  この点につきましては、いわゆる現在の法人の持ち株割合は、個人の約三割に対して七割となっておりますから、確かにふえておることは事実であります。しかしながら、法人間の受取配当の益金不算入の制度は、法人間で行われる配当についての法人税の二重課税を排除するための技術的な措置でありまして、企業相互間の株式持ち合いがあるからといって、不適当な制度であるということにはならないかと考えられます。仮に法人の受取配当が益金不算入にならないと、配当原資について二重、三重に課税が行われまして、配当原資が次第にやせ細ることとなって適当でない、こういうことになっておるわけであります。  このような考え方は、諸外国でも法人の受取配当についての二重課税の排除は相当徹底した形で行われております。たとえば、所得税と法人税の調整をしないという考え方をとっておるのは、アメリカにおいて八五%の益金不算入制度をとっておりますし、イギリス、西ドイツはいずれも全額益金不算入とされているところであります。  なお、現行の受取配当益金不算入制度においては、その配当を得るために要した借入金の利子は受取配当から控除することとされておりますので、実際に益金不算入となっておりますのは法人の受取配当の半分程度というのが実情であります。  そこで、阿部さんの御意見でありますが、受取配当の益金不算入制度は、配当軽課制度や配当控除制度を含め法人税の基本的な仕組みの問題でありますので、これらの制度のあり方につきましては、その変更が、企業の資金調達の形態、個人投資家の金融資産選択、企業間税負担のバランス等に及ぼす影響や効果を慎重に見きわめて、諸外国の動向も考慮しながら、十分に検討した上で結論を得たい、すなわち法人税全体の問題の一環として検討して結論を得たい、こういう基本的な考え方であります。
  61. 阿部助哉

    阿部(助)委員 まだ私は全部納得しませんけれども、やはり税というものは現実の実態を踏まえて、合うように直していくのが本当だと私は思うので、これはいずれまた機会を見て論議をすることにいたします。  次に、一般消費税についてでありますが、いろいろ論議され尽くしております。そこで私は、総理の真意を承りたいのでありますが、五十四年度予算編成方針と新経済社会七カ年計画においては、一般消費税を五十五年度実施することを閣議で決定されたのですね。これは閣議で決定ですね。しかし、現実には、五十五年度実施は事実上消えたと思うのでありますけれども、どうも閣議決定というものは、私、法律を見たけれども、大変重要な決定なんですね。閣議決定というこれは行政の最高機関の決定、総理が主宰されて決める。そこで決定された。そうすれば、当然のこととして、下の行政機構はそれなりの行動をせざるを得ないのだ、こう思うのですが、一般消費税はただ何かもやもやと消えてしまったのですか、それともこれからこれは当分やらないというのですか、それとも閣議決定は生きておるので、五十五年度は事実上つぶれたけれども、この閣議決定は生きておるからどんどん作業は進んでいく、準備は進んでいく、こういうことなんですか、どうなんですか。
  62. 竹下登

    竹下国務大臣 一般消費税、五十五年度に向かって諸般の準備を進めるというものが閣議決定になっておる。しかし、一般消費税を五十五年度予算財政再建の手法として使わなかったから、断念したということをやはり権威ある閣議で決めたらいいじゃないか、こういう御議論が一つでありますが、この問題につきましては、いわゆる一般消費税(仮称)については昨年の十二月二十一日の国会における財政再建に関する決議が行われておりまして、これに対して御決議の趣旨に十分配意する旨答弁しておるところであります。したがって、昭和五十五年度には一般消費税によらない予算案を御提案申し上げておりますので、その実質的な行為が最も確実なことであるというふうに理解をいただきたいと思います。
  63. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうすると、閣議は決定はしたのだけれども、本会議で発言をしているので五十五年度はやらない。しかし、この後のことはどうなんです。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 私があえて「いわゆる」と言い「仮称」と申しておりますのは、私は消費支出一般に、税の体系の中に消費に着目した税制体系そのものが未来永劫に日本の税制の体系の中から姿を消してしまうというわけにはいかないというので、「いわゆる」「仮称」こういうことを御決議のときにもお願いをしてそういう言葉にしていただいたわけであります。したがって、これから歳入、歳出両面にわたって幅広い検討をしていかなければなりませんので、消費支出一般に着目するという意味での一般的な消費税を一切断念するとか、あるいは日本の税制体系の中からなくしてしまうとかいうような性質のものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  65. 阿部助哉

    阿部(助)委員 ちょっと私理解が、頭が悪いのかちょっといまよくわからない。消費何とか言ったですね、消費一般。いわゆる付加価値税、消費段階でかけていくいわゆる付加価値税という、これはまだ考えておるということなんですか。消費何とか一般、私ちょっと意味が受け取れなかったので、大変失礼ですがもう一遍。
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 税制体系の中には直接税と間接税がある、あるいは所得税といま申しました消費税というものがある。そういうときに、消費支出一般に着目するという意味の一般的な消費税そのものを、税制体系の中から未来永劫に外してしまうという性格のものではない、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  67. 阿部助哉

    阿部(助)委員 何か一般消費税をわけのわからぬ形にあなたしてしまったみたいだけれども、どうも私は、この点は何かわかったようなわからないようなあれですが、いわゆる一般消費税のことをずばり言っておるのであって、それをやるかやらぬかということなんです。個別消費税というのはいまでもあるのですよ。それは私もわかっていますよ。何かわかったようなわからないような、ここは国民にわかるように言ってもらわなければいかぬ。私がわからないのだから、恐らく大半がわからないと思うのだが、もう一遍言ってください。どうもわからないな。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 私が、御決議をいただくときからずいぶん苦心いたしましたのは、一般消費税というものの税制上における定義からして、それそのものが否定されたとしたら、日本の税制体系の中から消費一般というものが消えてしまうというのは、理屈の上でもできないことではないか。そこで、先般導入をするという目標で諸般の準備を行った、あれそのものの手法をこれから使っていくという環境にはないということは、私も理解いたしておるところであります。     〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席
  69. 阿部助哉

    阿部(助)委員 どうもこれはわからないですね。もう、これは後でまた一般質問のときにでもお伺いすることにします。  それで私、次に移りますが、総理の言う日本型福祉、福祉切り捨て政策が私は本当に不満でならぬのでありますが、健康保険法の改悪、その中で薬の問題について私は聞きたいのです。  健保の赤字があるから国民に薬代を上げる、二分の一負担してもらいたい、こういうお話のようでありますが、これは総理、私はやめた方がいいと思うのです。これは全面的に再検討して出直すことがいいと思うのですが、どうなんですか。
  70. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 薬剤問題につきましては、健保改正法案におきまして医療費の二割を患者負担にするということに取り上げておりますことは、これはどうしても取りやめることはできないというふうに考えておるわけでございます。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席
  71. 阿部助哉

    阿部(助)委員 余り先走って答弁されないでもいいですよ。皆さんの方がしつこくどう聞くんだ、どう聞くんだと言うから、ある程度言ってやったものだから、あなたは答弁要領を見て先走っているみたいだけれども、やることをさっぱりやらない。厚生省は資料を出せと言えば、資料を満足に出さないで、それで何を質問するか、何を質問するかと言うて質問を聞きに来るけれども、もう少しやることをやってからしてくれないかな。だから私、なけなしの金でこんなふうにして有価証券報告書を買って、みんなそろばんを置いて経常利益率なんかはじき出さなければならぬのだな。こんなものすら出せないような厚生省ではどうしようもない。やることを何もしていない。だから、全部私は資料をとっておりませんから、私が言うから、間違っておったらこれは訂正してくださいよ。時間もないし、私の方から申し上げます。  第一、医療給付のうち薬代が異常に高い。ほぼ三四%に達する。諸外国は大体一〇%台が多いのですがね。  第二に、薬代の増加が社会保険支出を押し上げて赤字の原因をつくっておる。私の試算によれば、昭和五十二年度に社会保険が負担した薬代は六千八百億、前年度に比べて八百七億の増加である。五十二年度の単年度赤字は百五十三億である。薬代の増加の一九%にすぎない。逆に言えば、薬代の増加分が二割少なければ赤字は発生しなかった。薬代そのものの二割じゃないのですよ。薬代の前年度の増加分の二割なんですからね。これで赤字が解消したはずである。  第三に、薬生産高の増加は異常な状態である。昭和四十五年に一兆円産業となり、五十一年には二兆円産業となり、最近五年間で一・六倍の増加である。  第四、生産された薬の八四%以上が医者によって使われておる。  大体これは、間違いなら間違えたところを指摘してください。
  72. 石野清治

    ○石野政府委員 ただいま御指摘のありました数字の大半につきましてはおっしゃるとおりでございますが、一つ御理解願いたいと思いますのは、外国の薬剤費との比率の問題で、大変低目におっしゃられましたけれども、一九七四年におきまする各国との比較で見ましても、たとえばフランスでございますと二四・一%という数字になっておりますし、西ドイツでも約二〇%になっております。もっともこれは薬剤費のとり方が各国まちまちでございますので一概に比較できませんで、たとえば日本の場合の三四%と申しましても、外国の場合に直しますと約三〇%を欠ける、こういう数字だと思います。  あとの数字につきましては、大体先生おっしゃるとおりの数字ではないかと思います。
  73. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでも日本は一番高いということだけは間違いないですな。そうでしょう。
  74. 石野清治

    ○石野政府委員 間違いございません。
  75. 阿部助哉

    阿部(助)委員 これらの数字から言えることは、薬づけ医療の実態をこれらの数字は遺憾なく明らかにしておると思うのであります。私は、いわゆる薬づけ医療、これが赤字の主な原因の一つであると思うが、どうです、厚生大臣。
  76. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 わが国の医療におきまして薬づけ医療という問題が大きなポイントになっておると言わなければなりませんので、したがいまして、この問題について今後解決をいたす方向に努力をいたしてまいりたいと考えております。
  77. 阿部助哉

    阿部(助)委員 今後解決するとおっしゃるならば、その問題を解決した上で国民大衆に二分の一の負担をしてくれと言ってくるのが順序じゃないですか。まず負担をしてください、赤字ですと、その赤字の原因もきわめないで国民に負担をしてくれと言うところに私は問題があると思うのですよ。  大体薬づけ医療の責任は患者にはないのです。患者は薬をそれだけくれないで、少しくれないかなんてなかなか言えないですよ。患者にはその自由はないのです。また、患者がもっとよけい薬をくれと言ったって、もし本当に良心的なお医者さんであったならば、それは必要がないと言って断るのが当然だと私は思う。ところが現実は、少なからぬお医者さんが薬を使いたがって薬づけにしてしまう。どうしてそうなるのか。その原因はどうなんですか。
  78. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 医療費の二割程度を患者負担にすることといたしておりますその一つは、これは医療といえば薬といったように、薬剤が医療において最も一般的である。また、薬というものに対する代金を支払う、そういうことで負担する者にとって大変わかりやすい。また、欧米諸国のほとんどの医療保険制度で採用されていること。さらにまた、五十二年十一月の社会保険審議会の意見におきましても薬剤が患者負担の対象として指摘されておる。さらに、薬剤を使う医師ともらう患者の双方におきまして、薬剤に対するコスト意識が高まって、薬剤の使用がより慎重に行われるようになることなどの理由によるものでございます。  この薬剤問題につきましては、患者負担の導入と同時に、薬価基準の適正などを通しまして、患者の実質的な負担の軽減を図っていくように努力をいたしたいと考えております。
  79. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私はそうは思わぬのであります。どうも薬に対する国民のどうだこうだということを言うけれども、それならお伺いしますが、本当国民は、最近の薬づけ医療というか、大量の薬を出すことに大きな不安と不満を持っておるのです。これは春闘共闘委員会がアンケートをとって調べたところによると、三〇%は薬が多過ぎると答えておる。医者が薬を出せば出すほど医者がもうかるという仕組み、これが保険制度の中にあるのです。このことを解明しなければ、この問題は解決しないと私は思う。  私は厚生省に、お医者さんの仕入れ額が医療費の中で、経費の中でどれくらいあるかということをお伺いしたけれども、資料が出てこない。こんなものを出さぬでどうして上げたのですか。これは大蔵省からの資料で、実際経費の中で薬の値段は一九%と書いてある。皆さんの方はこれが出てこない。ところが、お医者さんの方が今度この保険単価でいって薬代として受け取る金は全体の三七%、大体二倍です。もっとわかりやすく言うならば、一千万円の薬を仕入れて患者にこれを渡すと、お医者さんの収入は二千万円になるという計算なんです。これは間違いないでしょう。そういうことを皆さんは資料すら持たないで、どうして健康保険の赤字がどうだこうだ、国民に負担をしてくれという資格が出るのですか。どうなんですか。
  80. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 医療機関におきまする医薬の実態につきまして、政府委員より説明させます。
  81. 石野清治

    ○石野政府委員 先生のお示しいただきました資料は、たしか社会保険診療収入に対する実際経費率の割合ということで、会計検査院の方でおまとめになった資料ではないかと思います。それを見ますと、一九%という薬価の経費になっております。  なお、私の方で調査いたしておりまする社会医療診療行為別調査というのがございますが、それでは五十三年度につきましては三四・二%、ところが、この会計検査院の資料と私の方で調査しております資料との間には、とり方がいろいろ違いまして一概に比較はできないわけでございまして、この差額がすなわち薬価差益だというわけには直ちにはまいりませんで、そういう差があることは間違いございませんけれども、ストレートな数字の比較にはならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  82. 阿部助哉

    阿部(助)委員 時間がないそうでありますし、いろいろな都合があるようでありますから、残念ながら私はやめますけれども、それならそれで、厚生省は違うなら違うと言って、なぜ資料を出さないのです。資料も出せないで薬代を上げてくれなんと言う。それで、ここであれは資料が違いますなんて言われたって、私は承知できない。こんなものの計算すらできないような厚生省で、何で国民に負担をかけられるのです。私はこれは絶対承知はできません。  総理、この法案は引っ込めた方がいいと思うのですが、私は、残念ながら時間でありますので、これで終わります。
  83. 田村元

    田村委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  84. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、八〇年代の展望も踏まえながら、内外政策の幾つかの問題について総理並びに関係閣僚に質問をしたいと思います。  まず最初に、安全保障、外交の問題でありますが、私どもは、日本自体が軍事同盟のない非同盟中立の道に進むことを目指すと同時に、この地球上からあらゆる軍事同盟がなくなる、そういう平和の状態を築くために努力をしております。しかし、残念ながら、八〇年代を迎えた現在、あのイランの問題やアフガニスタンの問題を契機にして、軍事同盟や力の政策を前面に押し出す傾向が、特に日本が組み込まれているアメリカ側の体制の側からも非常に顕著になった。イラン、アフガニスタンの問題それ自体については後で御質問いたしますが、私がまず問題にしたいのは、最近のそういう傾向に対する政府考え方であります。  具体的に申しますと、先日、カーター大統領は一般教書で、前から問題になっている緊急投入戦力あるいは緊急投入軍、そういう構想についてアメリカがいよいよ具体的に取りかかるということを言明しました。政府はその構想について御承知だと思いますが、そのことをまず伺いたいと思います。
  85. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 私どもの方もこの構想について承知いたしております。これはラピッド・デベロプメント・フォースと言っておりまして、外務省では緊急展開部隊と一応訳しておりますが、いま御指摘の緊急投入軍と同じものかと考えております。  近年、米国はNATO以外の地域での緊急事態に対して迅速に展開ができ、さらに外部からの後方支援がなくとも一定期間行動することのできる部隊の編成を行ってまいっておりましたが、今次国防報告によりますと、同部隊の編成は、既存の全米軍の中から適当な部隊を、必要とされる場合に今般フロリダに設置されました緊急展開統合任務部隊司令部のもとに組み入れるという形をとるということでございまして、同部隊の規模は、あらかじめ決まっているわけではなく、事態のいかんにより種々あり得るわけでございます。  同部隊が有効に機能し得るためには、空輸、海上輸送能力が不可欠であるところから、現在米国は、同能力の改善を図るとともに、これを補完するものとして、たとえば艦船による海兵用装備の事前前方展開等を計画しているとのことでございます。  同時に、今次国防報告には、本件の計画は、いかなる国の主権侵害も企図するものではなく、また、要請もないのに米国が一方的に介入することを意味するものではないということを明確に述べておるわけでございます。  本件構想の概要は以上のごときものと理解しておりますが、要するに米国は、このような構想によりまして、種々の地域における紛争を抑止することによって、平和と安全に貢献しようとしているものと承知しております。
  86. 不破哲三

    不破委員 要するに、NATO地域以外、つまり解説によりますと、中近東あるいはアフリカ、それから南西アジア、そういう地域も挙げられておりますが、NATO以外の地域の事態に備えるために、特定の場所に、あるいは米本国に一定の部隊を常備して、そしてフロリダにある緊急司令部の指示のもとに出動させる、こういう新しい戦力構想ですね。  それで、こういう戦力構想がいま具体化されつつあるわけですけれども、この緊急投入戦力の基地、施設、これの提供を求められた場合に、日本政府はこれに応じるつもりがあるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  87. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 いわゆるこの緊急展開部隊がわが国の施設、区域を使用する場合にどうかというお尋ねでございますが、安保条約の点から考えまして、この部隊がたとえば中東、インド洋などに展開するためにわが国から移動していく場合でありましたら、これは従来からも政府側から申しておりますように、安保条約上の問題はない。また、一般に米軍部隊がわが国を中継基地として移動していくケースも安保条約上問題はないと考えております。
  88. 不破哲三

    不破委員 きのうもそれに関する問題が議論されて、その基地の使用目的ということはかなり明確に言われたわけですね。今度アメリカが編成しようという緊急投入戦力というのは、使用目的がきわめて明確であって、NATO以外のすべての地域に対応する任務を持っているわけですね。つまり、極東の平和のためという部隊ではなしに、極東の平和というのはごく一部であって、解説によればむしろ最大のねらいは中近東だと言われている、そういう任務を持った部隊にわが国の基地を提供するとか施設を提供するとかいうことは、日本の安全と極東の平和と安全に寄与するために基地を貸すという、これまでの安保の解釈とは話が違ってくるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  89. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この点は、最初に申し上げましたように、現在、米国で考えております構想、考え方といたしましては、特別にこの緊急展開部隊というものが特定されているわけではございませんで、四軍の中で各地に配置された軍隊の中から、その事態に応じて一部を引き抜いて緊急部隊を編成することになっておりますので、いまの御質問の点については、ただいまお答えしたようなことで、日米安全保障条約との関係では別段問題がないと考えておるわけでございます。
  90. 不破哲三

    不破委員 それは実際に使われる戦力はいまある戦力の編成でしょうが、緊急投入戦力として新たに編成される——これはまだ編成を終わってないのですね。報道によると、本格的に展開されるのは約二年後だという報道もあります。そういうふうに新しく任務づけられる部隊、これは性格が変わってくるわけですよ。  それからまた、今度の一般教書や国防報告にもありますように、その部隊のための特別の施設ですね。先ほど外相は輸送の問題を言われましたが、緊急輸送の問題を含め特別の施設も前方に展開することになる。そうすると、ただ従来どおりの基地ということではなくて、この緊急投入戦力構想にもし日本の基地が対応するということになれば、これはその任務にかなった施設あるいは部隊、そういうものの提供が新たに問題になってくると思うのです。  これまでは、まあ安保の解釈で言えば、日本の安全、極東における国際の平和と安全、それを目的にした部隊が日本にいて、たまたまいろいろな事情のもとでそれが移動するということが問題になったわけですけれども、今度のカーター構想では、初めからNATO以外の諸地域全般、中でも中東やアフリカをにらんでの部隊の編成と配置、そのための施設の提供ということが問題になるわけですから、これに対して日本政府が応じるかどうか、あるいはまた、それが安保の枠の中に入り切るかどうか、私はこれは新しい問題だと思うのです。それを従来の解釈で、そういう戦略構想に当たる部隊が日本にいても、これは移動だから差し支えないということで済ますのだとしたら、これは私はやはり八〇年安保の新しい展開を自民党政府が踏み出すことになると考えるのですが、その点の解釈はいかがでしょうか。
  91. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの件でございますけれども、まず第一に、緊急投入軍の実態、あるいはそれがどういうふうに動くかということがまだ決まっておりませんので、具体的にいかなる場合に日本の基地を使用するかということは明らかでございませんけれども、仮定の問題といたしまして、日本の基地に出入する、あるいは中継基地として立ち寄っていくということは安保条約上禁じているわけでございませんし、それから基地全体の使用方法が日本の安全あるいは極東の安全と平和ということに寄与しているということであれば、安保条約上何ら問題がないというふうに私たちは考えております。
  92. 不破哲三

    不破委員 私は、部隊の配置目的を言っているわけです。安保条約第六条には明確に「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため基地を提供する」と書いてある。ところが、この緊急投入戦力あるいは緊急投入軍、大来さんのあれでは緊急展開軍ですか、というものは、極東の平和や安全に関係があろうがなかろうが、中東における、アメリカが言う平和と安全に寄与するために必要だとすれば出動する部隊、アフリカにおける平和と安全に必要だと考えたら出動する部隊、そういうことが初めから大統領の構想で明示をされている部隊ですね。仮に日本にいる海兵隊がその部隊に編入されるとすれば、これはそういう任務を改めて持って、そうしてその任務のための部隊という性格になるわけです。私は、ただ現状の海兵隊がなるだけではなしに、やはりそれに相応した基地の態様の変化とか新たな施設の提供とか、こういう問題がこの構想の展開過程で必ず問題になってくるに違いないと考えますが、それが問題になっても、全部そのまま受け入れる、従来どおり変更なしだというのが政府のお考えかどうか、総理伺いたいと思うのです。
  93. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 若干事実関係及び条約関係でございますので、私からお答えいたします。  まず、緊急投入軍が必ずしも中近東あるいは特定の地域というものを目的にしているわけでなく、アメリカの考え方は、いわゆる一カ二分の一戦略というのもございますけれども、局地戦争がある地域で発生した場合に、それに対応する準備をするということでございます。それが第一点でございます。  それから、第二点の日本の基地を使用することはどうかということでございますが、日本の基地に立ち寄り、あるいは日本の基地から移動していくということは、安保条約上何も極東に限られていない、禁じられていないことでございます。
  94. 不破哲三

    不破委員 私が言っているのは、立ち寄りとか移動じゃなしに、それを初めから主任務の一つにした部隊が日本に基地の提供を求めているときに、それに応じるかどうかということなんです。それは政府の判断の問題ですから、大平さんにお答えを願いたいと思うのです。
  95. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いうところの緊急展開部隊ということでございますが、これはアメリカの戦略のことで、私から云々すべき問題ではないと思います。  問題は、仰せのように、わが国の安保体制にどういうかかわり合いをそれが展開される場合に持つかということだと思いますが、わが国の安保条約、これは申すまでもなく、わが国の安全、極東の平和と安全に寄与する、目的が限定されておりまして、そのためにわが国の施設と区域を利用するということでなければならぬと思うわけでございまして、この展開部隊のみに利用されるというようなものであってはならないと考えるわけでございます。そういう要請があった場合に、安保条約の条章に照らしまして、差し支えないというものでありましたら容認いたしまするし、そうでなければ応じがたいものがあろうかと思います。
  96. 不破哲三

    不破委員 それでは、その問題が起きてきたら、安保条約の条項に照らして、イエスもあればノーもあるということでいいですね。
  97. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 安保条約というものは、本来そういうものと思っております。
  98. 不破哲三

    不破委員 先ほどの答弁でもう一つ問題があるのです。さっき、移動は構わぬというお話がありましたが、これもきのう議論されたことですけれども、安保条約第六条では、極東の平和と安全というように目的が限定されている。それで、従来の政府の解釈では、極東以外の地域で事が起きた場合でも、それが極東の平和と安全に影響があると判断されるならば、その事態のために米軍が出動してもよろしい、出動といいますか、対処するために移動してもよろしいという解釈だったと考えておりますが、それでいいですか。
  99. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの件の移動は、いわゆる直接戦闘に従事するというような戦闘作戦行動ではございませんで、艦船が日本の港に立ち寄ってまたどこかの地域に移動していくということは、軍隊の属性から見ても、かつ安保条約としても、それを禁じている問題ではございません。
  100. 不破哲三

    不破委員 そうすると、遠隔の地域で、事態が極東の平和と安全に関係がないと考えられる地域の紛争に米軍が介入するために日本から出ていくということは、安保のもとで許容範囲でしょうか。
  101. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 直接の戦闘行動に日本の基地から米軍が出動する場合には、これは安保条約によりまして事前協議の対象になりますが、そうでない場合には差し支えないという解釈でございます。
  102. 不破哲三

    不破委員 たとえば日本にいるアメリカの部隊が、もう日本を出るときから中東の戦争に参加するつもりで出ていくというのは、これは戦闘作戦行動にかかわることでしょう。
  103. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 ただいまお尋ねの件でございますけれども、安保条約第六条、それに基づく交換公文におきまして、日本からの戦闘作戦行動ということは、日本を発進して直接戦闘に従事するということでございますので、いまお尋ねの件がもしそういうことであれば、もちろん事前協議ということになりますけれども、私たちとしては、現在の事態では、そういうことは現実の問題としても起きないというふうに考えております。
  104. 不破哲三

    不破委員 たとえば緊急派遣部隊、緊急投入部隊というのは、そういう部隊なんですね。日本に米軍がいる、それで、アメリカの大統領判断でこの戦力をアフリカならアフリカ、中東なら中東に投入しなければいかぬ、それで出かけていくわけですよ。あるいは中東に行くときに、インド洋の島にちょっと寄るかもしれませんよ、しかし、この緊急展開部隊というものが出動するというときには、これはもう日本の港を出るときから、そういう緊急展開部隊なんですから、戦闘作戦行動を目的にして出ていくわけですね。  だから私は、従来のように単に米軍が配置をされていて、それが、地球上のどこかで紛争が起きたときに、警戒的に出ていくとかいうものとこの配置は性格が変わってくると言うのです。何しろ、わざわざ緊急と称して、事態が起きたときの介入の部隊として配置するとカーターが言っているわけですから。ですから、いま、そういう目的で出ることについては事前協議にかかるという言明は、この部隊に対してきちんと守るということを総理は確約できますね。
  105. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまのお尋ねの点は、直接戦闘行為ということの解釈にかかるわけでございまして、政府の方では、たとえば空母が日本から出動して中東あるいはインド洋に行くという場合には、直接戦闘行為に出動するとは考えておらないわけでございます。日本の基地から直接航空機が飛び立ってどこかの地点を爆撃するというような場合は、直接戦闘行為というふうに解釈しておるわけでございます。
  106. 不破哲三

    不破委員 たとえば海兵隊ですね、これはこれまでのアメリカの、それこそ二十世紀の歴史全体を考えても、最初に飛び出していく地上部隊は海兵隊なんです。ベトナムでもそうでした。だから、今度の緊急投入戦力の司令官になったのは海兵隊の副長官ですね。この海兵隊が日本から出ていく、そして中東に軍事介入する目的で出ていく、ちょっとインドの例の島に寄るかもしれませんね、しかし、そういう目的で、そういう装備をして、そういう行動のために出ていっても、どこか途中で寄りさえすれば、これはもう安保の協議の対象にならぬというお考えですか。
  107. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 まず最初に、緊急展開部隊という言葉の意味するところが、何か非常に事態が起きるのでもう差し迫った状況だというような意味にとられますけれども、英語では、これはラピッド・デベロプメント部隊ということを言っておりまして、部隊の動くのが急速に動けるという意味が一つございます。  それから、いまお尋ねの問題でございますけれども、先生もよく御承知のとおり、戦闘作戦行動の基地としての使用というのは、日本から発進されて直接戦闘作戦に従事するということでございますので、いまのような御指摘の、日本から離れてどこかの港へ行ってそこから出ていくというようなことは、安保条約で予想しているような戦闘作戦行動でないということは、従来から御説明しているとおりでございます。
  108. 不破哲三

    不破委員 だから危ないと言うのですよ。緊急展開戦略が速く動ける部隊だと、何かアメリカに速く動けない部隊があるかのようなお話ですけれども、これは全くの言葉のごまかしですね。国防教書でも一般教書でも読んでごらんなさい。ともかく事態が起きたら、すぐそこへ投入できる戦力というのが緊急展開戦力なんですよ。それから、ちょっとでも、途中で一分間でも中継したら、これは安保の対象にならぬということは、自由に使ってくださいということなんですね。これはこのカーター戦略の新しい展開に対して、それこそ全く無防備といいますか無警戒といいますか、政府のそういう体制だと考えざるを得ないのです。しかも、これが単なる将来の問題でないということを私は申し上げたいのです。  昨年十一月四日にイランの例の大使館占拠事件が起きました。十二月の末にアフガニスタンへのソ連の介入が起きました。私ども、もちろん、どんな国であれ、他国の民族主権を侵したり自決権を侵したり内政に介入することに反対であります。ですから、ソ連のアフガニスタン介入に対しても、一月の十日に常任幹部会の声明を出して、これに反対して、早く撤兵せよという要求を出しました。  昨日もこの委員会で、共産党は日ソの会談をやったから気がねをしてソ連に余り物が言えぬのじゃないかという議論があったようでありますが、これは全く事実と違うことであります。私どもは、あるいはアフガニスタンの問題であれ、あるいは千島や歯舞、色丹の問題であれ、あるいはサハロフの問題であれ、相手が社会主義の国であっても資本主義の国であっても、間違っていることに対しては堂々物を言うし、去年の会談にしても、十五年前からの干渉の非を相手側が認めたために、世間並みの国交といいますか、これを回復したにすぎないわけであります。民族主権の尊重とか、あるいは戦争に勝ったからといって領土を併合しないということは、これはもともと社会主義の精神であります。社会主義の精神に反することに対しては、われわれは相手がだれであっても容認しないというのがわれわれの立場であります。この立場は、それこそ相手がだれであっても守られなければいけないことであります。  私は、中東の問題を考える場合に、自民党の政府大平さんの外交というものが、この点では正確に全方位になっていないということをこの際指摘しておきたいのです。参議院の本会議でわが党の宮本委員長が質問したときに、大平さんは、アフガニスタンに対して、アフガニスタンの領外で基地を設けて、そこで訓練して反政府を支援する、そういうようなことが行われていることは知らないというお答えをされました。そのことはまた後で問題にしますが、一国の領外で基地が設けられて、そこで訓練された部隊が、絶えずその国内へ送り込まれて反政府活動をやる、そしてその領外の基地に外国から支援が与えられる、こういうことは内政干渉であり、安保条約で言う間接侵略の一種に当たるものだということは、これは大平さんお認めになると思うのですが、いかがでしょう。
  109. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 アメリカ戦略についての御批判はそれとして承りましたけれども、わが国の立場は、アメリカとの関係におきましては、安保条約とそれに基づく交換公文によって規律されているわけでございます。この交換公文並びに条約は、双方とも相互信頼の上に立って誠実に運用をいたしておるわけでございまして、いろいろな新たな事態が、どういう事態が起きましても、この基本姿勢に変わらないわけでございまして、この運用を誤らないようにしてまいることが政府の任務であると考えております。  それから第二に、わが国の外交姿勢についてのお話でございました。わが国の外交姿勢といたしましては、かねがね申し上げておりますように、対米協力を軸といたしまして、自由国家群との協力を強めてまいるということを基本の方針といたしておるわけでございます。これにはいろいろな御批判があろうと思いますけれども、わが国としては、そういう方針に従いまして、世界に生起するいろいろな事態につきまして、できるだけ強調的な行動をとって、緊張の緩和と平和の招来ということに寄与するというように努めてまいるべきものと私は考えております。
  110. 不破哲三

    不破委員 質問したのは中東問題ですが、一般的に言って、ある国の国の外に反政府分子の基地が設けられて、そこで訓練されたり武器が提供されたりして、その国に入って反政府活動をやられる、こういうことは、その国に対する外国の干渉だというふうにわれわれは考えるのですが、安保条約でよくそのことを間接侵略と言って議論をしておりますけれども、そのことについての大平さんの見解を伺っているのです。
  111. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 一般論としてそういう間接侵略、あるいはそれにつながる準備というようなものが好ましいことでないことは当然でございまして、そういうことに対しまして協力するというようなことは、われわれの外交政策上好ましいことでないことは申すまでもありません。
  112. 不破哲三

    不破委員 そういう形の間接侵略あるいは介入、これは容認できぬというお答えだと思うのですが、大平さんは、一昨日の参議院の本会議で、アフガニスタン国内におきまして抵抗運動が続けられておりますが、これに対して外国よりの介入が行われていることは承知していないと答弁されました。しかし、あのいわゆる反政府勢力への支援基地がお隣のパキスタンに設けられていて、ソ連の軍事介入が行われるよりよっぽど前から、そこからゲリラの訓練だとか武器の提供だとかが行われていることは隠れもない事実なんですね。  たとえば最近でも、私ここに一連の新聞の切り抜きを持ってきておりますが、日本のジャーナリスト、新聞記者がパキスタン領内の反政府基地に実際に行って書いたルポルタージュが、ここにあるだけでも相当数ありますよ。私は、大平さんは、日本の外交をやられるときに、政府部内で用意される文書だけじゃなしに、せめてこういう日本の新聞や雑誌ぐらいには目を通されて、誤らない外交をしてもらいたい。内政干渉許さぬと言うのなら、それをきちんとあらゆる国に対して守る外交をしてもらいたいと思うのですが、このことは念を押しておきます。  そして、もう一つの安保にかかわります本題の問題は、あの緊急派遣軍の構想の具体化が、実はソ連のアフガニスタン介入よりも早く始まって、しかも、その拠点が日本に圏かれて、その介入の準備が、まさに日本の領土内で行われているということにあるのです。  これは、もう新聞に出ていることですけれども、後でこの緊急投入合同機動部隊の司令官に任命された海兵隊のケリー中将という人物が、十二月七日に、まだ政府が方針決定する前に、海兵隊はそういう緊急投入部隊の訓練と行動を始めるという記者会見をやったわけですね。そのことについては国防長官の了承を得ている、そういう記者会見をやりまして、それで、もうその当日の、これは沖繩の海兵隊の新聞、コピーですが、「オキナワマリーン」という海兵隊の新聞には、この緊急投入部隊の先頭に海兵隊が立つのかということがトップの記事で出ているわけですね。(「公然か」と呼ぶ者あり)これは公然としたものですよ。  それで、それから昨年の十二月の十一日から十三日まで沖繩で海兵隊が、これは私ども手に入れたのは、第三海兵師団第十二連隊のブレティンの第三千百二十号、十二月三日付ですが、十二月十一日から十三日まで、火力支援調整演習と言いまして、砲兵部隊の砲撃演習が行われているのです。その演習はどういう想定でやられているかと言いますと、中東のバンダールという国が中東のサラダンというインド洋に面した国に攻撃を仕掛ける、サラダンという国がアメリカに要請をして海兵隊が出動する、そのときの、どこの山を攻めるとか、これは一応全部仮定の地図ですけれども、そういうことを想定した砲撃演習ですよ。まさに中東に海兵隊が出かけていってやる砲撃演習の訓練を十二月にやっているわけですね。これはアフガニスタン介入の二週間前ですよ。  調べてみますと、バンダールというのは、ペルシャ語で港という名前なんですね。あのアラビア海の入り口にはバンダールアッバースという港がありますけれども、これはペルシャ語で港という名前だ。サラダンというのは、アラビア語でカニという言葉なんです。つまり攻める方はペルシャ語、攻められる方はアラビア語。ですから、大体これはイランがといいますか、直接書いてはいないのですけれども、想定がつくと思うのです。  それで、海兵隊がそういう緊急合同部隊の編成をやるということを発表したときのワシントンからの記事には、イランへの介入という情勢のもとだということがはっきりうたわれています。つまり、先ほどから政府が言っておりますように、この話は遠い先の架空の話じゃなしに、私は、去年党首会談をやったときにも、大平さんに言ったのですけれども、中東への軍事介入で石油を押さえるというのは、去年の二月からアメリカが言っていることです。特にイランの政権が親米から反米に変わってから、これはどうしても不可避だということを言ってきた。そして、軍事介入論が表から出てきた。それが去年イランの大使館事件の後、急速に具体化をされて、日本でこういう訓練までやられて、まさに一触即発なんです。私は、まずそういう沖繩での中東介入準備の状況について、政府側が多少でも知っているかどうか、そのことを伺いたいのです。
  113. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 この部隊が新たに設けられることになりましたことは、御指摘のようにアフガニスタン事件あるいはイラン事件の前でございまして、これはアメリカの防衛方針の中で、そういう面が従来弱点であるという認識を持って緊急展開部隊を設けるという方針が決められたものと了解しております。  ただ、先ほど申しましたように、これは各地の基地の中から三軍といいますか、こういう陸海空あるいはマリーンの中から随時一部を引き上げてそういう部隊を構成するということでございまして、このことは、外務省から国防省に念のために照会いたしまして、次のような回答を得ておるわけでございます。  すなわち、将来緊急展開部隊の構成要素となり得る部隊の内容は、航空、地上、海上及び海兵隊のすべてを含み、その意味では沖繩海兵隊も含んでいるけれども、具体的に個々の緊急事態についていかなる構成がとられるかはそのときの状況によるもので、一概に述べることはできないということを、私ども国防省からの返事として得ておるわけでございます。
  114. 不破哲三

    不破委員 それが政府間のたてまえと表だけの話なんですね。ところが、実際にはもう沖繩の海兵隊は、その話が出た直後からそういう訓練を目の前でやっている。相手はイラン、それから応援はアラブの応援のためという形式で、そして実際に海兵隊が中東へ投入されて、これは砲兵の訓練ですけれども、実際に戦闘に介入するその根拠地は、まさに沖繩なんですよ。港にどこか寄るかもしれないけれども、そのすべての部隊を装備して出ていく根拠地、出動命令を受けて出る根拠地は沖繩なんです。その訓練や準備が、大来さんの言うように、将来の緊急投入軍の編成についての一片の文書だけのやりとりで、全く政府も知らないでいるとしたら、私はこれは重大だと思うのですね。そういうことを知らないで、一体対イラン外交だとか対中東外交だとか、できるはずがないじゃありませんか。  私、大平さんに伺いたいのですが、沖繩の海兵隊がそういう訓練を公然とやっていたということ、不確定な戦闘の想定じゃないですよ、実際に中東へ介入をして、さっき言ったような形で、イランを相手国として介入する準備を公然としていたということ、これについて日本政府は通知を受けていたのかどうか、それを伺いたいのです。
  115. 淺尾新一郎

    ○淺尾(新)政府委員 事実問題でございますので、私からお答えいたします。  もともとアメリカ軍は、あらゆる事態を想定して訓練を行っておりますので、沖繩におけるその訓練も、特定のシナリオに基づいてやったということでなくて、全体の訓練の計画の一環としてやったというふうに私たちは理解しておりますし、さらにもう一つつけ加えるならば、いわゆる緊急展開部隊というのは、先生が御指摘のように、中東というのを目的地の一つとしておりますけれども、同じくカリブ海あるいはその他の地域ということも入っておりますので、特に中東だけを特定しているわけではございません。
  116. 不破哲三

    不破委員 特定のシナリオがないなんというのは、全くうそなんですよ。これがその文書ですけれども、こういう作戦をやるときには、必ず状況の指定があるのです。これには、全般的状況とありまして、バンダールという国がインド洋の島国のサラダンの政府の転覆を策して強力な行動を行ってきた、それでその行われた相手が、いつアメリカに要請をして、そして海兵隊が出動する、そしてどこに上陸してと、全く明瞭な政治的シナリオ、軍事的シナリオを書いてあるものなんです。恐らくこういう中東介入の具体的なシナリオは、私は今度が初めてだと思います。つまり中東介入、イランの人質事件、それへ介入というアメリカの方針があって、海兵隊がその部隊として編成されるという計画がこういう形で具体化されるわけですね。それを、そういうことは一切知らされないのがあたりまえでございます、日本の全領土、全国民を預かっている政府が、そんな重大なことをやられているのに何の通知も受けない。一体、こういう状態で外交ができますか。  それからまた、これから緊急投入戦力の展開について、安保条約に照らして、イエスもあればノーもあると先ほど言われましたけれども、こういう政府自身がアメリカから何も知らされていない状態で、一体そういうカーター戦略の展開に対して、日本の安全や自主性をどこを頼りにして保障できるというのか。私は、そこは大平さん黙っていないで、総理としてはっきり答弁をしてほしいと思うのです。
  117. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 たびたび申し上げておりますように、日米間相互信頼に基づきまして約諾いたしました安保体制というものを誠実に履行していくつもりでございます。もちろんその誠実な執行に当たりましては、日米間に間断なく意思の疎通がなければなりません。できるだけ双方に情報の疎通を欠くことのないように気をつけていかなければならぬことは当然と思っております。
  118. 不破哲三

    不破委員 これが日米相互信頼の実態のわけでしょう。情報疎通があるように努力すると言っても、そういう肝心なことは知らされてない。それで、ただ知らされないで信頼をする。私はここに安保の実態があると思うのですよ。そこを根本的に自民党の政府が反省しない限り、八〇年代自主外交とか、受け身から自主へとかそういうことを言っても、まさにアメリカの戦略に振り回されるだけ。知らないうちに日本は中東介入の拠点にされていた、そう言っても、世界では通用しないわけですね。私はその反省をまず根本から求めたいわけです。  もう一つ重大なことは、もういまや極東の問題よりも、世界全域を相手にして介入の準備を始めたアメリカの在日米軍と自衛隊との共同が、この数年来非常に新しい深まりを見せていることですね。その代表が私は今度のリムパックだと思うのですが、念のためにお聞きしますが、今度行われる環太平洋の合同演習、これに自衛隊が参加するのは戦技訓練のためである、別に参加する国々が相互に防衛し合うという集団自衛権の発動の用意ではない、日本が個別的な自衛権を発動して有効に働くための戦技訓練のためであるということを昨年来説明されておりますが、いまでもそのお考えに変わりはないでしょうか。
  119. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  リムパックの参加につきましては、再三お答えをいたしておりますように、集団的自衛権の行使を前提とした訓練ではございませんで、戦術技量の向上のためのものでございます。防衛庁といたしましては、このリムパック参加決定の以前におきまして、十分この演習の性格あるいは目的というものをアメリカ側に対し打診をし、確認をいたしました。その結果、この訓練はホストとして行いますのが第三艦隊でございます。アメリカの第三艦隊は、先生よく御承知のように、ハワイに根拠地を持っておる艦隊でございまして、その任務の大きな一つといたしまして、アメリカの海軍艦艇のうちで個別訓練、応用訓練を終えた段階の艦艇に対しまして、第七艦隊等の第一線の艦隊に配備する前に総合的な仕上げをする艦隊レベルの訓練を行うことを任務といたしております。  この任務を行いますために、ハワイには大変すぐれた訓練施設がございます。その一つの例が、パシフィック・ミサイル・レンジ・ファシリティーと申します、PMRFという略語で呼ばれております誘導兵器評価施設でございます。  私、承っておりますところでは、これはカウアイ島の沖にございます訓練施設でございまして、約五十平方マイルにわたる海域に碁盤の目状に聴音機あるいはレーダー施設が整備をされておって、この海域において魚雷発射訓練あるいはミサイル発射訓練、航空機、艦艇、潜水艦等の訓練を行いますと、陸上のモニター施設においてその軌跡が全部記録をされ、正確にデータづけられる。その結果、参加艦艇の能力評価を行うことができるものでございます。  このほか、陸上施設といたしましてもアスロック発射シミュレーター訓練施設であるとか、潜水艦からの脱出訓練施設であるとかあるいは電子戦訓練の施設がございます。これがあるために、アメリカ海軍といたしましては、毎年そういう自国の艦艇の訓練をやっておるわけでございますが、二年に一度の程度においてこの外国艦艇の訓練参加を認めて、ここでもって総合訓練を行っておるものでございます。  リムパックはそういう性格の戦術技量向上のための訓練であるということをまず確認をし、また、従来行われております訓練内容をいろいろ調べてみましたところ、いま申しましたように対空、対水上、対潜あるいは電子戦総合訓練を行う訓練と承知をいたしまして、わが方といたしましては、わが国の特別な平和憲法のたてまえその他を十分御説明をし、個別的自衛権の行使を前提とした訓練である、またわが国にとりましては許容されておらないところの核攻撃等の攻撃訓練は行わない、指揮権は対等であるというような点についてアメリカ側の了解を得て、これでは防衛庁設置法五条の規定によりまして防衛庁に与えられた権限によります所掌事務の遂行に必要な教育訓練の範囲内である、憲法並びに基本政策に反しない、わが国の自衛隊のわが国防衛のために必要な教育訓練の範囲内であると判断をいたしまして、防衛庁長官責任と権限においてこの参加を決定したものでございます。その意味におきまして、考え方は従来と変わりません。
  120. 不破哲三

    不破委員 長い答弁でしたが、大体従来自衛隊がやっている訓練の少しにぎやかにしたものだという説明だと思うのですね。ところが、私は、従来海上自衛隊がやっている訓練というのがこの数年来非常に奇怪な訓練になっていると思うのですよ。  たとえば、七七年の十月からアメリカの空母との共同訓練を始めましたね。七七年十月にはアメリカの空母コンステレーションを中心に米艦十隻、自衛隊の八隻の艦艇による共同訓練がやられている。それから七八年の四月には空母ミッドウェーを含めて米艦五隻、自衛隊の護衛艦等八隻による共同訓練がやられている。七九年の二月にはこれが非常に大規模になって、アメリカの空母ミッドウェーを含めて米艦十四隻、潜水艦を入れると十八隻、日本の護衛艦など五隻による訓練がやられている。こうやってアメリカの空母を中心とした、いわば機動部隊の訓練というものを日本の自衛隊が七七年の十月以来やっているわけですね。  私はそこで聞きたいのですが、その米国空母との共同訓練に参加をした自衛艦は、アメリカの空母を中心に輪形陣、輪のように張って空母を護衛する、いわゆる輪形陣に参加して対空訓練や対潜訓練をやったことがあるかどうか、それを伺いたいのです。
  121. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 アメリカ海軍との共同訓練は昭和三十年以来もうすでに八十四回やっておりますが、御指摘のようにアメリカ空母との共同訓練も実施をいたしておりますが、この訓練種目は対潜訓練でございます。  御指摘のミッドウェーあるいはコンステレーションというような空母は、これは攻撃空母であるから、攻撃型の空母に合流をして攻撃訓練、輪形陣を組んでの訓練をやっておるかというお尋ねだろうと思いますけれども、御承知のように、アメリカの海軍の編成が変わりまして、この大型空母、艦隊正規空母も、今日では対潜戦機能も持っておる複合的な目的を持った空母に変わりつつございます。その意味で、その対潜訓練の範囲内におきまして訓練を行っておりますけれども、いわゆる輪形陣方式というのは昔の考え方でございまして、今日では、対潜戦訓練、外周において対潜戦訓練を行うということはございますけれども、そういうミッドウェーそのものを防衛するための輪形陣を組む訓練というものではございません。
  122. 不破哲三

    不破委員 これはうそ言ったら困るのですよ。去年、七九年の一月二十四日に、わが党の柴田議員が横須賀へ行って、斎藤自衛艦隊司令長官とそれから自衛艦隊の門松幕僚長にあって確かめているのです。輪形陣を組んでやっている、輪形陣をやることもある、その状況は大体半径四千から五千ヤードの輪形をとって、空母の航空機の発着がわかるところまでやるとか、それから実際に、随伴と言って、ミッドウェーが右へ行けばそれに沿って日本の自衛艦も右へ行く、左へ進めば左へ進む、そういう訓練もやっているとか、まさに空母を護衛する輪形陣訓練をやっているわけですよ。一体何のために日本の自衛艦がアメリカの空母を護衛するためのスクリーンを張って輪形陣に参加する必要がある、こういう戦技訓練は一体何のために必要なのか。日本の自衛隊はやがて航空母艦を持つつもりなんでしょうか。
  123. 原徹

    ○原政府委員 自衛隊と日米安保条約によりまして有事の場合には共同対処をすることになっておるわけでございますから、その共同対処をするための訓練をするのはこれまたあたりまえなことでございまして、それで、輪形陣とかなんとか申しますけれども、その輪形陣、まあ仮にそうなったとして、それは何も、要するに共同の、何と申しますか、潜水艦なら潜水艦、それを見つけて攻撃をする、そういう訓練をするためにどういうのが一番いいか、こういう話なんでございまして、仮に輪形陣があったといたしましても、それは別に何ともないというふうに私は考えます。
  124. 不破哲三

    不破委員 大平さん、防衛局長に任命するならもう少し軍事のことを知っている人を任命してほしいですよ。  たとえば、私ここにアメリカの海軍省が出した海軍作戦という教科書を持っています。これには、たとえば輪形陣のスクリーンですね、作戦の定義があります。その定義は、その機能が、主力を防衛するためにある艦艇の演習配置だ、つまり中心にある主力を防衛するための演習配置なんだ、これが輸形陣のスクリーンだということをはっきり書いてあります。  たとえば、ここには輪形陣の張り方が分類をされています。ごらんになれるかどうかわかりませんが、一番右にあるのがこれは空母護衛の輪形陣、真ん中にあるのが輸送の場合の配置ですね。それで……(「どこからスパイした」と呼ぶ者あり)国会図書館にあるんですよ。  それで、つまりいまの海軍のやり方では、空母護衛の輪形陣というのは特有なものなんですよ。それから、たとえば輸送船団を護衛する場合には大体二十ノットでしょう。空母の場合には三十ノット以上出ないと飛行機が発進できないわけですね。だから、その空母を囲んで輪形陣で守るという訓練をやるためには、特別な訓練が要るのですね。これまでは空母抜きのいわゆる対潜訓練しかやっていなかった自衛隊が、ちょうどガイドラインができるころから、七七年十月から、アメリカの空母を中心にした輪形陣の訓練をもう三回もやっているわけですね。一体何のためにこういうアメリカの航空母艦——この輪形陣というのは機動部隊の定型なんです。そういうものに日本の自衛隊の軍艦が参加する必要がある、それが戦技訓練だというのは、これは航空母艦を守るための戦技の訓練であって、ほかには転用不可能なのです。わざわざお金を使って、アメリカの航空母艦を守るつもりがないというならそういう訓練を何でやる必要があるのか、明確な答弁を求めます。
  125. 原徹

    ○原政府委員 先ほども申しましたように、わが国に対する攻撃があれば共同対処をすることになるのですから、その共同対処のやり方として、たとえば私の方は対潜訓練が中心でございますけれども、そういう対潜訓練、潜水艦を見つけるのに一緒にやる。空母も対潜機能を持っている。そうであれば、その際、そういう部隊に対して空からの攻撃があったらどうするのか、それは守らなければならないわけです。ということは、別にアメリカを守っているのでも何でもないので、日本に対する攻撃を防ぐための訓練でありますから、私は何とも、普通のことであると考えております。
  126. 不破哲三

    不破委員 これはまるで子供だましの話ですよ。空母を守るための対潜訓練と、船団を守るための対潜訓練と、自己を守るための対潜訓練は種類が違うのです。そんな種類の違いがわからないで、何で新しい戦技訓練をやるためにハワイが必要だとか言えるのですか。実際にこの教科書の六十六ページには、機動部隊を護衛する駆逐艦の任務について特に書いてあって、「攻撃空母打撃部隊の中での駆逐艦の第一義的機能は、空母をスクリーンし、潜水艦、航空機及び水上の攻撃から空母を支援することである。」まあ、あと詳しいことがありますけれども、そういうことまで明確になっている常識的なことなのですね。こういうスクリーンは、機動部隊の空母を守るためにしか展開をしないわけです。それをそういう詭弁でごまかして、この数年来、実際に自衛隊がアメリカの機動部隊の事実上の護衛部隊化している。私は、これは重大だと思うのです。  はっきり伺いたいのですが、共同対処、共同対処と言われますけれども、いよいよ共同対処することになったら、アメリカの航空母艦を守る部署に日本の自衛艦がつくということもあるのかどうか。これは従来の国会答弁との関係がありますから、明確に答えてください。
  127. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 事実関係について一点だけ、私どもの事務レベルから申し上げさしていただきます。  先生は、四十九年以降空母との訓練を始めたというお話なのでございますが、実は、空母との共同の対潜訓練は過去においてすでに十七回実施いたしております。一々申し上げると長くなりますので省略いたしますけれども、第一回目は三十三年ヨークタウン、三十四年シャングリラ、同じく三十四年ホーネット云々と、過去十七回こういう訓練を行っております。  それから先生のお持ちのマニュアルは、アメリカ海軍のマニュアルであろうかと存じます。わが海上自衛隊はアメリカ海軍ではございませんので、アメリカ海軍のマニュアルとは関係なく、海上自衛隊のマニュアルによって対潜訓練をアメリカの協力を得て実施しておるものでございます。
  128. 不破哲三

    不破委員 過去にやっていたのは対潜空母との訓練なんです。攻撃型空母との共同訓練は最近が初めてのはずです。じゃ日本の自衛隊のマニュアルを提供してもらいたいのですが、アメリカのマニュアルに基づいてやられているアメリカの艦隊訓練に日本の自衛艦が参加しているじゃありませんか。  私が質問したのは、一体アメリカの航空母艦を、一朝有事の際でも、公海上で護衛することを日本の自衛艦が任務とすることがあるのかどうか、この点はどうですか。
  129. 原徹

    ○原政府委員 どうも前提が違っていると私は思うのです。何かアメリカの戦略に組み込まれて、日本の防衛以外に自衛隊が参加するがごとき御認識ではなかろうかというふうに思いますけれども、私どもがやっていることは日本を守るためでございます。日本に攻撃があった場合に共同対処するわけです。共同対処ということは、そこに日本の敵と言っていいのかどうかわかりませんが、そういうものがあるわけです。それを一緒に攻撃するわけです。それはあたりまえのことです。そのときに向こうが反撃をしてくれば、それに対して一緒に反撃をすること、これもあたりまえのことでございます。そのとおりでございます。
  130. 不破哲三

    不破委員 質問に明確に答えられないならば、防衛庁長官にお願いします。  アメリカの空母を護衛する任務に、一朝有事の際に日本の自衛艦はついて平気なんですかということを聞いているのですよ。共同対処一般じゃないのです。スクリーンというのは、明確にアメリカの空母を護衛する隊形なんですから、この隊形に日本の自衛艦が一朝有事の際に参加することがあるのかどうか。そしてアメリカの空母の護衛を任務とすることがあるのかどうか。これは国会答弁でいままで否定されているのです。
  131. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 長官という御指名がございましたので御答弁申し上げます。  防衛局長が答弁したとおりでございます。
  132. 不破哲三

    不破委員 防衛局長が答弁していないから言っているのです。一体、日本の自衛艦がアメリカの軍艦の護衛とか防衛を任務とすることができるのかと言っているのです。
  133. 原徹

    ○原政府委員 どうも大変よくわからないのでございますけれども、要するに共同対処するわけでございます。私どもは、そこに日本の敵がいるから、それを一緒に攻撃をするわけでございます。それが今度どこに反撃をしてくるかわからない。その反撃をしたものに対しては防衛しなければならない。これはあたりまえのことでございます。
  134. 不破哲三

    不破委員 じゃ、言いかえましょう。有事の際には、さっきの輪形陣のように、アメリカの機動部隊に自衛艦が参加してその一翼を担う、そういうこともあり得るのですね、共同対処の中で。それをはっきりしてくださいよ、訓練しているのだから。
  135. 原徹

    ○原政府委員 それは共同対処の仕方でございますから、一番有効な方法を考えればよろしいわけで、それが輪形陣を組むことが一番有効であれば、輪型陣を組むこともあり得ると考えます。
  136. 不破哲三

    不破委員 これは非常に重大な答弁ですね。つまり、これまでは政府はいざとなった場合でも日本が発動するのは個別自衛権の発動であって、アメリカの艦船の防衛ということは任務に含まれないのだ、日本の自衛艦がみずから行動することは、結果としてアメリカの艦船の防衛になることはあり得る、しかしこれを任務とすることはないのだということが、去年までのリムパックに関連しての政府の答弁ですよ。今度の防衛局長はそれを全部御破算にして、共同対処なら何でも許される、日本の自衛艦が、アメリカの攻撃型空母ですよ、他国を攻撃する、そういう空母の護衛の任務について、そしてアメリカの駆逐艦、巡洋艦と一緒になって相手側の潜水艦から空母を守る任務につく、これも共同対処で一番有効な方法を選べばいいのだ。それで大平さん、政府の、大平内閣のこの問題に対する答弁だと考えていいですね。
  137. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私はリムパックの性格は従来どおりと心得ております。いまの防衛当局の答弁もその趣旨に沿ったものと思っております。
  138. 不破哲三

    不破委員 昼の時間になりましたから、討論は午後に残したいと思いますが、問題は非常に重大だということを強調したいと思います。
  139. 田村元

    田村委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  140. 田村元

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。不破哲三君。
  141. 不破哲三

    不破委員 私、午前中に緊急投入軍の問題を含めて安保の問題を質問いたしましたが、質問が終わって控え室に帰りましたらちょうどニュースをやっていました。それで、アメリカの議会でまさに海兵隊の問題が問題になっていた。アメリカの議会で海兵隊のパロー司令官が証言をして、沖繩とハワイに駐留する第三海兵師団の任務は、西太平洋からインド洋に加えて、中東とアフリカでの必要な事態に即応するものだ、沖繩の海兵隊も今度中東とアフリカでの事態に即応する任務を持つようになったということを証言をし、アメリカ海兵隊の任務が中東地域などを想定したいわゆる緊急投入軍の主要な戦力となる点を改めて強調し、アメリカ海兵隊自身が第三師団の中東、アフリカ地域での展開を真剣に考えていることを示唆した、こういうことがちょうどアメリカの議会で証言されたというニュースを聞きました。まさにこの司令官自身が言っているように、緊急に真剣に考えられている問題だ、決して遠い将来の問題じゃないということが、いわば海を越えての両方の議会での討論で明らかになっているわけです。そういう道に日本の基地が安保のもとでどんどん展開していくこと、それからまた、それに連動して、海兵隊と陸上自衛隊の共同演習まで話題になっていますけれども日本の自衛隊がそういう戦略に組み込まれていく、そのために今度の予算でも全体の予算の伸び率以上にこの軍事費の増率が高くなっている、ここに非常に重大な危険があるということを指摘し、これからのさらに一層の追及は今後の同僚委員の討論などにも引き継いでもらうことにして、次の問題に移りたいと思うのです。  次の問題は経済の問題ですけれども、本会議での議論でも、大平さんとの間で七〇年代論、八〇年代論がずいぶん話題になりました。どうも私は、大平さんが七〇年代を振り返るのに大分認識の誤りがあるように思えて仕方がないのです。たとえば、参議院でのわが党の宮本議員の質問への回答の中で大平さんは、七〇年代を振り返って消費者物価は二・三%、われわれの所得は五倍ふえた、そういうことを言われました。後でこれは、消費者物価は二・三倍の間違いで、所得は三倍の間違いだったという訂正があったのですけれども、私は以前に大平さんが別の会合で発言されたのを聞いたことがあるのですが、やはり賃金五倍論というのを七〇年代の総括として述べられていたわけですね。私は、そういう誤った認識から、何か日本の労働者や一般国民生活水準が七〇年代非常に向上した、もうそこに問題はないのだというようにもし政府が考えられてこれからの経済政策をやられると大変だと思うのです。実際に、たとえば賃金なんかにしましても、最近の日経連の発表でも、実際の購買力で比較をしてみますと、日本の賃金はアメリカの五〇%、西ドイツの六七%です。それから社会保障、年金の問題なんかでも、実際の購買力で比較をしてみますと、ヨーロッパ諸国の大部分は、年金を受けるお年寄りの大部分に十万円台の年金が支給されている。ところが、日本では、実際には年金受給者の大多数が二万円台だ。これぐらい国民生活は違いがあるわけですから、私は、経済政策を立てる冒頭に国民生活の向上と防衛ということをやはり最優先の柱にする、それが八〇年代の政策を展望するに当たって大事だと思うのですけれども、そういう点についての政府の見解、姿勢というものをまず伺いたいと思います。
  142. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 七〇年代を振り返りまして、非常に厳しい試練に遭遇いたしましたけれども、わが国といたしましては、国民の英知と活力、技術によりまして、ともかくも諸外国にまさる対応力を発掘できたことはありがたいことであったと思います。しかし、私はそれが全然問題がなかったということを申し上げたつもりはないのでございまするが、環境の厳しさに相対的に比較いたしまして、対応は比較的順調にいった、これはやっぱり国民の活力であったということを言いたかったわけでございます。そして、八〇年代を迎えてわれわれがどういう試練に遭遇するかわかりませんけれども、しかし、この教訓とこの経験、これは大変とうといわけでございますので、これを土台にやってまいれば克服できない試練はないのではないかという意味のことを申し上げたわけでございます。これは、個々の政策をそういう基本的な考え方に立ってどのように組み立ててまいらなければならぬか、これは八〇年代の具体的に対処していかなければならぬことでございますけれども、基本的な姿勢といたしましては、そういうことであって間違いないのではないかということを申し上げたつもりでございます。
  143. 不破哲三

    不破委員 実際問題としますと、今度の予算あるいはこれからの一年間の経済政策を考えましても、福祉の後退、特に物価の問題、これは非常に重大な問題になってまいります。  私、その中できょうは主として物価の問題にしぼってお伺いしたいのですけれども総理の演説、それから大蔵大臣の演説、経済企画庁長官の演説、どれを伺いましても、物価対策を政策の基本に置く、最大の重点だ、そういうことが言われていました。しかし、実際の物価の動向を見ますと非常に危険な事態が進んでいるのに、政府対応というのはいわば無対応のままこれからの物価の上昇を迎えようとしている、そういう危惧を持たざるを得ないのです。  私は多少具体的に伺いたいのですが、いま物価を考えますと、石油の値上げの国内への影響、これをどう最小限に抑えるかということがやはりまず第一の問題だと思います。大平さんは昨年の事態について、原油が大分上がって石油製品価格の値上がりがいろいろな方面で国民に被害を及ぼしたわけですけれども、便乗値上げというものはなかったというように認識をされておられますか。
  144. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 物価担当者といたしましてお答えをいたします。  確かに原油は大変な値上がりで、昨年末とその前の年の年末をとりまして円ベースでは、これは円の下落の問題がございましたので、合わせて二倍を超す値上がりになっておるわけでございます。これに対しまして、いま御質問のポイントは、いわゆる便乗値上げはなかったかどうか、こういう点を中心にお尋ねでございますが、私どもは、まず便乗値上げというものを排除することを一番大きな主眼にして物価対策を進めております。前回の石油危機以来の諸外国における状況と比べまして、いま日本は、とにかく国民の皆様の大変な御協力によりまして、まずまずの成果であったという先ほどの総理お話のとおりにいままでのところは進んでおる。そこで、それを一番端的にあらわしますのは、卸売物価は一八%近い上昇になっておるのに、消費者物価は、この年度末で、年度平均といたしましては当初見積もりの四・九%よりも低い四・七%でおさまるというふうにわれわれはいま努力を続けておるわけでございます。  この一事をもちましても、便乗値上げは相当程度というか、ほとんどわれわれの所期の目的を達した、こういうふうに申し上げていいわけでございまして、それに至る財政、金融、経済、そして国民の皆様のインフレに対する嫌悪感、警戒意識、こういうものが打って一丸となりまして便乗値上げを防いでおる結果については、今後ともこれは心を許すわけにはまいりませんけれども、いままでのところは相当の評価を受けておる、かように考えておるわけでございます。
  145. 不破哲三

    不破委員 その認識が私は大変甘いと思うのですよ。私調べてみたのですけれども、大体石油というのは原油を買って加工して製品にするわけですけれども、常識的に言うと大体二カ月ぐらいかかるわけですね。ところが、製品の方はどんどん先を見越して上げていくということになります。  それで、たとえば製品価格で昨年の十二月の価格を一昨年の十二月の価格と比べ、それに対応する原油の値上がりを比べて計算してみますと、私どもの計算ですと四千八百五十六億円ぐらいの差額が出てくるのです。それで、この差額の値上がりのひどいのは、これに非常に傾斜がつけられているわけですね。たとえば原油は二カ月ずれを見ますから、一昨年の十月と去年の十月を輸入価格で比較しますと、約一万六千円上がっています。ところが、去年の十二月と一昨年の十二月を比較しますと、ガソリンは三万円上がっているんですね。灯油は二万三千五百円上がっているのです。ところが、C重油というのは大企業ですから、たった一万三千五百円ぐらいしか上がらないわけですね。こっちの方が原油の値上がりよりも上がり方が少ない。そうしますと、一般の国民が使うガソリンだとか、あるいはC重油を除く灯油とか軽油とかA重油その他を合わせますと、こっちの方の負担分は六千四百五十一億円も余分に上がる仕掛けになっているのですね。だから、私はいまの状態を大ざっぱに見て、一年間便乗値上げはなかったというように見るのはいわば初めからの思い込みであって、これは実際とはかけ離れておる、その点をぜひ政府はしっかり調べて対処してほしいと思うんですよ。  それで、大平さんはこの間の演説で、これからの石油値上げの問題について言われました。便乗値上げが起こらないように十分監視をしたい。問題は、去年のことから教訓をくみ取って、これから予想される原油の値上げに対応して、それが不当な被害を国民に及ぼさないように監視をし、抑制をする、私はこれが政府の務めだと思うのですが、大平さんは、石油二法などを特別に発動しないでも、現状のままなら十分監視ができるというお考えのようであります。一体政府は、ことしは去年よりももっと激しい原油の変動が予想されるわけですけれども、こういう状況の中で、便乗値上げを防止するためにいまどのような監視の段取りをされているのか、その体制について伺いたいと思います。
  146. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 申し上げましたように、いままでのところ非常に努力が実っておりますけれども、今後において心許すことなく、物価対策、財政、金融、諸般の物価、インフレ抑圧のための施策を強化していくということは当然のことでございます。  そこで、便乗値上げに対する監視体制はどうなっておるか、こういうことでございますが、原油の価格が上がりますと、仰せのとおり若干のタイムラグをもってこれが製品価格の方に合理的に反映されていく場合は、これは説明がつくわけでございますけれども、その間に便乗的なものがあればこれを監視していかなければならぬわけでございます。  そこで、元売りの仕切り価格、そういうものについて、通産当局では資源エネルギー庁を中心によく事情を聞いていただいて、そしてそれが末端にどういうふうに波及するか、これについて十分な事情をまずつかんでいただく。そういうことがそれぞれのルートを通じまして中央官庁、出先官庁、そして地方公共団体、また一般の物価モニター、監視員、こういうところにずっと行きまして、監視員の数というのが一万何千人かに上るかと思いますが、そういう方々に見張っていただいておる。私は、この監視体制というものは本当に全国的に大変な皆様の御協力で相当よく整備されておる、こういうふうに見ておりますが、それをさらにこれからも励行していただきまして、およそ便乗的な動きがある場合は、消費者の賢明な判断によってそれを拒絶していただく。たとえば不破委員も御承知のあのかずのこ問題等はこれは典型的な問題でございまして、ああいう教訓をもって、私どもはあらゆる場合に賢明な消費者として対処していただくように、国を挙げてインフレに対処していきたい、こういうことでございます。
  147. 不破哲三

    不破委員 どうもお答えですと、監視役は通産省のようですね。通産省はどんな監視体制をとっていますか。
  148. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 元売り会社が仕切り、まあ卸売価格でございますけれども、引き上げをする場合には、そこの段階で不当な値上げがありますればこれは困りますので、その防止の観点から、事前に値上げをするときには事情を聴取いたしまして、そして不当な値上げをしないようにしてございます。その卸からいよいよ小売に入って、小売価格につきましてどうしているかと申しますと、地方の通産局あるいは都道府県等におきまして、ただいまも御説明がございましたように小売価格調査、それから消費者モニター調査等によりまして監視をしておるところでございます。
  149. 不破哲三

    不破委員 どうもよくわからないのですけれどもね。私、通産省の資源エネルギー庁で監視を担当しているところへ行って調べてもらったのですよ。そうすると、価格の監視の方法は三つあるというのですね。一つは、日銀の卸売物価統計を見ること。つまり、これは日銀が調べて、これが上旬、中旬、下旬とそれぞれ出ますね、何日かたってそれを見る。これは非常に簡単な方法ですね。それから総理府の小売物価統計で見る。原油と石油製品は日銀で見て、ガソリンや灯油は総理府の小売物価統計で見るというのです。総理府の小売物価統計を調べてみますと、これは今月の中旬の価格を調べたものが来月の下旬に発表されるわけですね。だから、大体月おくれの数字しかわからぬ仕掛けになっている。  それからモニターについても、先ほど一万何千人いると言われましたが、私が聞いたところですと、家庭の主婦を中心に七百十五名だというのです。それで、そのモニターが大体毎月中ごろに買ったものについて、その月のうちに郵便で結果を知らせるようになっている。それで実情がわかるかと聞いてみましたら、大体近所の業者から買うわけだから、余り業者に悪いことは言えないので、義理を立てて、余り事実はこれではわからないようですというのがお答えでした。  要するに、日銀の卸売物価統計と総理府の小売物価統計、これならわれわれでも見られるわけですね。それからあと全国七百名の主婦の方にモニターで郵便で送ってもらう。それで苦情や問題点がわかったことはまだ一件もない。大平さん、大平さんが施政方針演説で厳重に監視しますと言った政府部内の体制はこんなものなんですよ。だから、私たちは前からこういう点について、原油が上がって石油製品価格にどんどん影響が及ぶようなそういう事態のときには、ちゃんと国会で決めた石油二法があって、それを発動すれば、価格調査官というのを設けて、この危険な時期について専門にそれに当たって機動的に対処できる、これを早く発動しなければ便乗値上げを抑えられぬじゃないかということを去年から言ってきたわけですけれども大平さんは自然体でいきたい、現状のままで十分監視ができるというお話でした。しかし、現状の監視の状況というのはこういうことなんですね。私は、中東の石油事情がああいう状況になってこれからなかなか予想がつかない問題もある、そういう中でそれがどのように国内に響くのかという問題について、大平さんが厳重監視を国民に公約された以上は、それに必要な、またそのことを可能にする体制をとる責任があると思うのですが、いかがでしょう。
  150. 正示啓次郎

    ○正示国務大臣 ただいま不破委員は、通産省の資源エネルギー庁だけでお調べになって、いわゆる消費者価格モニターは七百十五名、こういう数字をお挙げになりました。これは通産省のモニターでございます。そのほかに、物価安定対策事業で職員として全国に千五百名、それから民間調査員が全国に約七千四百名、そのほかに県のモニターが六千名、こういうふうな大きな監視網を張っておるということをまず申し上げます。なお、民間の方々が自発的にこのほかにいろいろ御協力くださって情報を提供しておられることも御承知のとおりでございます。  そこで、ただいま総理へのお尋ねでございますが、私どもは昨年十一月二十七日に総合的な物価対策を一層強力に展開することを申し合わせまして、これは物価対策閣僚会議で細かく申し合わせたわけでありますが、閣議においても、総理以下全閣僚が物価問題の重要性を特に重要視されまして、それ以来ずっとやっております。  なお、物価対策と不離一体の関係にあるのは資源エネルギーの節約運動でございまして、これは七%に強化してやっておることもあわせて申し上げておきます。
  151. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 石油の価格政策につきましてはずっと論戦を重ねてきたわけでございますが、私が申し上げておりますのは、価格政策の基本は需要供給がバランスがとれた状態に置く、すなわち需要に対して見合うところの供給を確保することが第一じゃないか。去年も一応予定いたしておりました入荷が実現いたしましたことは、不破さんも御承知のとおりでございます。それから備蓄にいたしましても、石油製品の在庫にいたしましても、前年度よりは多く確保できておるわけでございまするから、この状態に置きますと、価格の形成を市場のメカニズムにゆだねておきましても、そう無理な価格の形成ができるはずはないと私は確信するのです。したがって、供給の確保ということに一番力点を置いて、そのことにつきましては成功してまいったわけでございます。もし供給が需要にどうしても間に合わぬという事態でございますならば、あなたがおっしゃるように公権力が介入してまいる必要がありますけれども、いまの石油経済の実情というのはそういう状態ではないと私は判断いたしておるわけでございまして、需給のバランスを適正に保っておれば、価格政策にそんなに神経質になる必要はないのではないかと考えております。それが基本だと思います。  ただし、個々のケースによりまして、便乗値上げがないという保証はないわけでございまするので、この点につきましては厳重監視してまいるということを申し上げておるわけでございまして、監視機構がどのように現実に機能しておるか、どのように効果を上げておるかということにつきましては、エネルギー当局からお聞き取りをいただきたいと思います。
  152. 不破哲三

    不破委員 去年の実態は原油の不足はなかった、つまり大平さんが言われるように供給が十分あった、にもかかわらず原油が上がったということで、原油の値上がり以上の製品価格の値上がりが強行されたというところに問題があるのです。つまり、供給不足があってパニックが起こったわけではない。それなのに、原油の値上がり以上に大企業、石油会社がああいう値上げをやった。さっき挙げましたけれども、原油が一キロリットル一万六千円しか上がっていないのにガソリンは三万円上げ、灯油は二万三千五百円上げた。これが監視すべき問題だと思うのですよ。だから、石油が十分供給されるならば後は市場メカニズムに任せて安心できるというのは、大平さんはそうお思いかもしれないけれども大平さんは国会では十分監視するという約束をされたのですよ、それがいまの機構で果たせるのかどうか、そのことを伺っているわけですよ。先ほど私伺いましたし、それから、私の方からも調べておくと言いました。だから大平さんに、こういうような実情で、これでもあくまでこれが自然体だから結構だと考えられているのかどうか、その点を伺いたいのです。関係省庁の事情説明はわかりました。大平さん、そのことだけ伺っておきます。
  153. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 一々のケースについて私は詳しい知識を持ちませんけれども、私の懸念するのは、公権力が下手に入りますとかえって混雑をしてくるのではないか、できるだけ市場のメカニズムに任せておく方が価格が落ちつく状態を招来するのではないか、私はそう思っておるわけでございます。  監視の実態につきましていろいろなデータを持っておりましょうから、役所側から必要あれば説明させます。
  154. 不破哲三

    不破委員 公権力の介入と言うけれども、問題は、大平さんが約束された監視の問題なんですよ。監視した結果介入すべき事態が生まれれば介入する、生まれなければ介入しない、これは法で決められていることですから。ところが、それもやられないというのでは、実際には便乗値上げは野放しだということになるわけですね。その姿勢を確認して、今度は値上げの次の問題にいきたいと思うのです。  第二の大きな問題は公共料金の問題です。政府が決める公共料金がどんどん法定制が外されて、国鉄に続いてたばこ、郵便料金、みんな法定制が危なくなっている。これも非常に大きな問題ですが、それに先立って、電力とガスの大幅値上がりということがいま国民生活を直撃しようとしているわけですね。これは恐らく政府がこれから審査をすると言うのでしょうし、まだ答えは出されていないと思うのですけれども、しかし、後から出た八電力会社の加重平均で六四%の値上げ、それからガス大手三社の平均で五二%の値上げ、これが強行されたら、まさに国民生活に真っ先に直撃が来ることは目に見えているわけですね。ですから私は、政府が結論を出される前に、こういう問題に対処される政府姿勢の問題として幾つかの点を伺いたいのです。  第一は、電力の場合でもガスの場合でも、原油などの燃料費の値上がりの見込みを一番大きな値上げの要因としていますが、これから政府が審査をする場合に、大体五十五年度の原油価格をどれぐらいに見込むのが妥当だという立場で審査をするのか。これで値上げ幅から何からうんと変わってくるわけです。もうすでに北海道電力の値上げの審査は始まっているわけですし、やがて八電力の審査が進むでしょうが、その一番かなめになる五十五年度について、これは見通しの問題ですけれども、どれぐらいの値上がりを見込んでこれが妥当と考えるのか。六・四%という消費者物価の上昇率を計算されている側からいっても一定の前提があると思うのですけれども、その姿勢考え方、これをまず伺いたいのです。
  155. 森山信吾

    森山(信)政府委員 五十五年度の原油の値段を幾らに見ておるかという御質問でございまして、これは端的に申し上げましてなかなかむずかしい予想になります。現在私どもが考えておりますのは、油の構成が、先生御承知のとおり、いわゆるGSP価格で購入できますものと、それ以外で購入するものと二通りございます。大体八五、六%がGSPで入ってくるのではないか、こういう考え方でございまして、その残りがいわゆるスポットあるいはプレミアムつきの原油、こういうかっこうになります。一月現在、つまり二月に通関されるであろうと想像されます原油につきましては大体三十ドルをある程度上回る価格形成が行われているものというふうに推測いたします。  そこで、それを基準にいたしまして五十五年度中にどの程度値上がりするかということでございますが、従来はOPECが年度間を通しまして値上げをいたしておりますが、このところの顕著な動向といたしまして、昨年は四回に分けて値上げをしたわけでございます。それから、御承知のとおり昨年の暮れに行われましたOPEC総会におきましては統一価格制がとられなかったものでございますから、各産油国がばらばらに上げる、こういうメカニズムになってきております。したがいまして、過去のように一年間の値上がり率の予想をすることは大変困難でございます。私どもは今後の需給動向によって価格は決まるもの、こういうふうに考えておりますが、今年度五十五年度の世界の需給動向を見ましてそれほど大幅な値上げはないもの、こういうふうに想定いたしております。
  156. 不破哲三

    不破委員 大体いま三十ドルで、それからそれほど大幅な値上がりはないという認識だと思うのですね。それで、たとえば日本石油が最近明らかにした一月から三月の価格を見ますと二十八・五八ドルですから、これは私は三十ドルは少し高目に読んでいるというふうに思うのですけれども、そんな大幅な変動はないと予想されている、これは大事な点だと思うのです。  ところが、今度電力各社が政府に申請をした値上げの申請書をずっと吟味してみますと、ともかくべらぼうな、めちゃくちゃな原油の価格を想定しているわけですよ。たとえば低い方からいきますと、北陸電力が六万六千二百九十二円、これはドルに直しますと二百四十円レートでキロリットル六万六千二百九十二円ですから、バレル当たり四十三・九ドルですね。それから東京電力が原油六万七千七百三十五円、これはバレルにすると四十四・九ドルですね。東北電力が六万八千百九十六円、これはドルにしますとバレル四十五・二ドルですよ。関西電力に至っては七万一千二百八十六円、四十七・二ドルですね、五十五年度の平均価格の想定が。政府の見通しが三十ドルから大して上回らないだろうというのに、電力会社が四十五ドルから四十七ドルを超えるような想定で、これが主要な原因だといって大幅な値上げを政府に申請する。私はこの値上げの申請というのはそれだけ見てももうちょっと検討の余地のないようなめちゃくちゃな値上げ申請だと思うのですが、その点いかがでしょう。
  157. 森山信吾

    森山(信)政府委員 先ほどお答え申し上げました私の予想を、三十ドルを上回ると申し上げたわけでございまして、はっきりした数字をちょっとつかみにくいという問題がございますから、三十ドルを若干上回るというふうに申し上げたわけでございます。  それから、いま先生の御指摘になりました電力会社の燃料費の上昇の見込みにつきましては、先ほどお答えいたしましたとおり、過去のパターンが年に一回値上がりをするというパターンをとっておりました。これはOPECの総会によって決められるというのが過去の通例であったわけでございます。しかしながら、去年あたりからだんだんとその価格形成メカニズムが変わってきておりますので、そういった価格形成メカニズムが果たして変更になったのかどうか、これが臨時的なものなのか、あるいは年に一回上げる、こういう従来のパターンに戻るのか、その辺の想定がなかなかしにくいという問題がございまして、電力会社の申請は現状の価格にプラスいたしまして一定の上昇率を見込んだものというふうに私どもは想定いたしております。しかしながら、私ども考え方と各社の申請の間には若干のギャップがございますので、私どもは私どもなりに燃料費の見方を考えていきたい、かように考えておる次第でございます。
  158. 不破哲三

    不破委員 さっきあなたは余り大幅に上がらないだろうというように言ったのですよ。これは記録を見ればわかりますけれども、上がるだろうというふうな話をしたのではなくて、余り大幅に上がらないだろう。三十ドルが現在で、この間サウジアラビアが上げたのもたしか二十六ドルでしょう。三十ドルというのはわりと高い方ですね。そういうときに、電力会社がそれの五割も六割も上がることをまだ上がっていないのに想定して、上がる根拠もないのに四十五ドルとか四十七ドルとかいう価格を想定して平気で政府に出してくる。政府もこれはずいぶんばかにされたものだと思うのですけれども、私はこういうような値上げ案は、いままでの政府のやり方のように、値上げがあった、ちょっと減らして認めるなんてことは絶対やってもらいたくない。この一番肝心の燃料費の値上げ問題でもこういうめちゃくちゃなことをやられていて、たとえば私驚いたのです。北陸電力ですか、原油が六万六千二百九十二円、加工した重油が五万八千三百二十九円、原油を加工したら安くなるというような、もう常識にも反するような申請を平気でやっているわけですよ。ここにまず第一の今度の電力値上げの大問題があるわけで、私はこの点を国民が納得のできるように厳正に対処してほしいと思うのです。  それから第二の問題は、減価償却の問題です。今度の電力会社の値上げに関しては、減価償却のやり方をたしか各社一斉に変えているわけですね。従来定額法がとられていた。これは少し減価償却の割合が少な過ぎるから定率法に変えてよけい償却できるようにしようという制度の変更を、たしか今度の申請から始めているようですね。この変更で九電力全部合わせますと大体どれぐらい減価償却が余分になっているのか、お答え願いたいのです。
  159. 森山信吾

    森山(信)政府委員 お答え申し上げます。  従来の定額償却法にかえまして定率法を採用した場合の料金への影響は、八社平均いたしまして……(不破委員「いや償却分の」と呼ぶ)償却分の収入比が二・四九%でございます。
  160. 不破哲三

    不破委員 パーセンテージではなしに、どれくらいの金額をふやしたかということです。
  161. 森山信吾

    森山(信)政府委員 定額で六千六百三十七億六千九百万に対しまして、一兆一千億ということになります。
  162. 不破哲三

    不破委員 つまり一兆一千億というと四千三百億円ぐらい従来よりも減価償却をふやしているわけですね。  それで、大体たとえば日本の減価償却は実際の機械の耐用年数よりは短くとられているのです。あの新東京火力のタービンやボイラーにしても減価償却は十五、六年で計算していますけれども、二十四、五年たっていまりっぱに使っているわけですからね。いまの定額法でも減価償却は過大だということが常識になっているわけです。それをわざわざ、定額法では少しコストへの繰り込みが少な過ぎるから定率法に変えよう、そしてこれだけの大幅値上げを燃料費を理由にして国民に吹っかけるときに、わざわざ減価償却の方法を変えて、いまのお話でも四千三百億円も余分にコスト高にする。これも政府がオーケー言ったかどうかまだわかりませんけれども、私はこれも国民の目から見れば、この時期にこういう変更をやるのはがまんができないことだと思うのです。第二の問題点です。  それから第三の問題点です。たしか電気事業のコストの計算では事業報酬といってあらゆる資産に対して、建設中の資産は半分になりますが、八%の報酬をコストに算入するということになっていますね。間違いありませんか。
  163. 森山信吾

    森山(信)政府委員 八%のとおりでございます。
  164. 不破哲三

    不破委員 私は、それが公益事業としては、国民のための料金を決めるものとしては大変問題だと思うのですよ。つまり、どんな放漫経営をやって不要な資産がふえても、コストを計算するときにはそれに対して八%のもうけをちゃんと原価に入れて、それで国民に料金を決める、これはもう何をやっても天下安泰で企業は繁栄するけれども、これを全部吹っかけられる国民はとてもなことじゃないわけですね。  たとえば、最近こういうことがありました。ドル減らしというので、原子力発電所で核燃料を大分買い込みましたね。あの原子力発電所に装荷されている核燃料と、それから装荷しないで予備としてとってあって、あるいは加工中だという予備の核燃料、これは大体どのくらいになりますか。おわかりだったら教えてほしいのですが。
  165. 森山信吾

    森山(信)政府委員 手元に資料がございませんので、ちょっとわかりかねます。
  166. 不破哲三

    不破委員 私、ちょっと最近のものを知らないのですけれども、五十三年度末の数字は調べたのです。そうすると、去年の三月末、原子力発電所では、炉の中へちゃんと入って稼働している核燃料が千三百七十億七千六百万円ですか、約千三百七十億円ですね。そのほかに挿入しないで予備にとってある核燃料が一兆七百二十四億ある。なぜこんなにふえたかというと、ドル減らしだというので盛んに政府が奨励して買わしたわけですね。それで、いま原子炉に入っている千三百七十億というのは三・六五年分あるわけです。一遍入れれば四年使えますからね。そうしますと、買い込んだ核燃料が何と三十二年分だというのですね。三十二年分の核燃料を政府政策で買っておいて、それが一兆円余り寝ている。今度のこの認可申請を見ますと、この一兆円にみんな八%かかってコストに入っているわけです。そんな政府政策で三十二年分もの核燃料を買って、それを寝ているからその分の八%はちゃんと利潤として保証してコストに入れて料金でもらう。通用しますか。  それからまた、発電所があるでしょう。発電所を建設する。建設中の発電所は電力を出しませんね。ところが、建設中の発電所の発電資産というのは全部これは二分の一が資産勘定に入っている。これに八%のもうけがつくわけですよ。だから、要するに発電所に関しては建設中のものに四%のもうけが入る。まだ電力も出していない、われわれ利用もしていないのに、その分についてまで四%のもうけをいまの国民がとられる。一体いつでき上がるかわからないような発電所があるのに、これがいまの電力会社のコストの計算の基礎になっているでしょう。私はこれは抜本的にこの時期には検討しないと、もう大変なことになると思うのですが、この事業報酬という制度についてもう少し国民が納得いくように考え直すつもりはありませんか。
  167. 森山信吾

    森山(信)政府委員 事業報酬は、先生も御指摘のとおり、資産に対しまして幾ら幾らの率をかけるという基準は、有効かつ真実な資産ということになります。そこで先ほど申し上げました八%の率につきましては、従来から私どもはその率を一定にいたしているわけでございますけれども、そこで問題は、しからば果たしてその有効、真実なる資産とは何かという問題が起こってくると思います。  私どもはいわゆる特別監査制を設けておりまして、料金改定の申請がございますと特別監査をいたしまして、その有効かつ真実なる資産の内容を厳密に審査をいたすわけでございます。したがいまして、その八%の率につきましての変更を検討することは考えておりませんけれども、その基準になります資産の内容につきましての電力会社からの申請が、果たして有効かつ真実なものであるかどうかの審査は十分やらしていただきたいというふうに考えるわけでございます。  それから、先ほど御指摘のございました核燃料の問題につきましては、確かにドル減らしの際に長期的な手当てをしたわけでございますけれども、これも世界的に見ますと国際的には大変逼迫する商品でございますので、長期的な観点から言いますと、早目の手当てをしなくちゃならぬという問題から、私どもはそういう配慮をしているわけでございます。  それから、建設中のものにつきまして有効かつ真実なる資産と見ることはおかしいではないか、こういう御指摘でございますけれども、電力は御承知のとおり大変資本費が高くかかる企業でございます。相当の投下資本を投じまして一定の期間を経て電力を供給できるわけでございますので、その建設中といえども電力安定供給のためのコストというふうに私どもは判断いたしますので、それにつきましての事業報酬を掛けますことは当然のことである、こういうふうに考える次第でございます。
  168. 不破哲三

    不破委員 有効かつ真実な資産という言葉ですけれども、だから私、核燃料を買ったことの是非をいま言っているわけではないのですよ。三十二年分も買い込んだ核燃料、それにもうけを掛けていまの国民から料金を取ることが妥当かどうかという問題。それから発電所を建設するのが悪いと言っているのじゃないですよ。建設中でまだ電力は生まない発電所が利潤だけは生む。その利潤が国民の料金にかかってくる。これが合理的かどうかという問題ですね。そこを検討してほしいわけです。きょうはまだ政府が結論を出しているわけではないから、私は問題点だけ挙げますよ。  それからその次の問題は、一体いまの日本の電力会社の設備利用率はどうなっているか。どれくらいですか。
  169. 森山信吾

    森山(信)政府委員 現在の設備利用率につきまして、五十三年度を申し上げますと、水力につきまして四五・七でございます。火力につきましては五二でございます。それから原子力につきましては五六・六でございまして、これは設備利用率という表現で呼ばれたものがいま申し上げた率でございます。
  170. 不破哲三

    不破委員 それは間違いないと思うのですが、たとえば四十五年度をとってみますと、いま四五・七%と言われた水力が五五・三%でしたね。それから五二%と言った火力が、四十五年は六七・二%ですよ。五六・六と言った原子力が七一・八ですね。つまりこの八年間とってみますと、非常に低下しているわけですよ。それで大体、利用率は一〇%上げるとコストが一割下がると言われているわけですね。こんなに低い状態で設備利用率をほうっておいて、いわば大きな金をかけて建設したものが半分しか動いていない。そういう状態でほうっておいて、その分でコストがどんどん上がる。それをまたほうったまま、それで原価計算をやって国民に料金を掛ける。私はこれも納得ができないと思うのですよ。  私はいま問題を五つほど挙げました。一つはべらぼうな、めちゃくちゃな燃料費の増加見通しですよ。あれが本当だったら大平内閣の物価値上げ見通しなんかは一遍で吹っ飛んじゃいますよ。そういうめちゃくちゃな前提での燃料費の値上げ見込み。それから減価償却をこの時期に方式をわざわざ変えてコストを無理に過大にしている問題。三番目には事業報酬ということで寝ている核燃料だろうが建設中の発電所だろうが、何でも利潤をかけてそれを料金に吹っかける問題。四番目には、設備を半分しか動かさないで、それも年々低下させて、それによる割り高を料金に掛ける問題。大きなもの五つを挙げましたが、これだけ見ても、私は簡単なことで今度の値上げをのんでもらっては困ると思うのです。  そしてこういう問題をちゃんとしませんとどういうことが起きるかといいますと、今度の値上げ申請書を調べてみると、みんな何とかつじつまが合うのはことしだけですよ。いまのやり方を続けていきますと、来年からまた赤字がふえるわけですね。それで五十九年度、四年後には東京電力の場合で三八%また上げないととんとんにならない。関西電力だと五二%上げないと一年間の収支がとれない。北陸電力だと五〇%上げないとバランスがとれない。北海道だとまた三〇%以上値上げしないとつり合いがとれない。こういう計算がちゃんとこの申請書には全部付加されているのですよ。  だから、私がいま挙げたような問題点にメスを入れないでなあなあで今度の値上げを通したら、また数年後には五割の値上げとか四割の値上げとか、それがもう連続かかってくることになるわけですね。だから、私は政府がまだ結論を出しているわけじゃないからぎゅうぎゅうは言わないけれども、こういう問題点があるのであって、国民の前にちゃんと結論を政府が出した後で申し開きができるような対処をしてもらいたいということを総理大臣に厳重に要望したいのです。どうでしょう。
  171. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いまわれわれが面面している最大問題の一つでございまして、政府といたしましては厳正に、慎重に原価主義にのっとりまして査定いたしまして、国民にお願いするだけの理由立てを構えていかなければならぬと思っております。
  172. 不破哲三

    不破委員 それで、これだけの問題がある公共料金ですから、私は本当なら国会で権限を持ってちゃんとあらゆる面から審議をして、国策上こういうやり方でいいかどうかということをやるのがあたりまえだと思うのですよ。議会制民主主義のもとで国会が国民責任を負うとなれば、そういう基本についてはちゃんと権限を持って明らかにできなければいけない。ところが、残念ながらそうじゃないわけですね。初めに言いましたように、いままで国会の権限として財政法で決められたものまで取り上げられようとしている。これは私は非常に残念だと思うのです。  それに加えて心配なのは、こうやって値上げを申請してきている電力会社、ガス会社に、前から問題になっているいわゆる天下り官僚ですね、非常に数が多いことですよ。審査する方の政府の役人とその先輩とが、いわば先輩が今度は業界に入って、そしてこちらで後輩が——後輩というと皆さん方には悪いけれども、後輩がそれを受ける。やがては自分もあそこに行かなければいけないと思いながらこの審査をやるとしたら、厳正な審査なんかできるわけがないわけですね。一体、電力会社、ガス会社にどれぐらいいわゆる天下り官僚と言われる人が現在重役の地位を持っているか、御承知でしたら通産省でも結構ですし人事院でも結構ですが、お答え願いたいのです。
  173. 森山信吾

    森山(信)政府委員 はっきりした数字をつかんでおりませんけれども、現在九電力それぞれに大体一名ずつ通産省から、かつて通産省に在籍した者が行っております。  それからガスにつきましては、大手三社のうち二名重役として行っております。
  174. 不破哲三

    不破委員 ほぼ近い答えだと思うのです。私が調べましたら、九電力の重役に十二人、局、次長と言われた役人の方がいますね。それで通産省から十名、大蔵省から一名、科学技術庁から二名。それからガス会社には大手三社に二名の方がいて、それで日本瓦斯協会にも一名いるということになっているわけですね。  私、その中で調べてみて驚いたのは、通産省の公益事業局長、この人が四人もいるわけですよ。公益事業局といえば、やはり電気とかガスとかを扱うことになると思うのですが、たとえば四十二年にやめられた公益事業局長は九州電力の顧問をやる、四十三年にやめられた公益事業局長は東京瓦斯の取締役、四十六年にやめた公益事業局長は中部電力の常務取締役をやって、そして現在電気事業連合会の専務理事で、事務局長で副会長ですね。つまり値上げの総本山。それから四十八年にやめられた公益事業局長は関西電力の重役をやっている。つまり、歴代通産省でそういうことをやっていた担当者が、間はいろいろあるけれども、現在ではみんな電力やガス会社の重役になって、先輩が値上げの推進役をやっている。それから日本瓦斯協会の中心である専務理事は、たしか前の東京通産局長ですね。  私は、ここに天下りの問題があると思うのですよ。悪い言葉で言えば、将来自分がそこへ行くかもしれない産業の世話を通産省の方でやらなければいけない、あるいはかつて世話になった先輩が全部値上げの中心になって、その間で交渉が行われる。そして、その交渉の結果に、交渉といいますか、中身に関しては国会もまともに権限を持って介入できないし、全部政府の権限のもとでやられる。主権者である国民が物を言う場所がまともに保証されていない。私は、この体制を改めなければ、物価問題で大平内閣、自民党政府が、国民信用してくれ、今度はいろいろ厳重に審査したが、これだけの値上げはやむを得なかったんだと後で発表しても、だれも信用する者はいないと思うのです。その点で私は、いまの天下り防止の私企業からの隔離をわざわざ決めた国家公務員法には大きな穴があると思いますし、それからまた、こういうものの審査の体制は、もっと国民の声がちゃんと反映して、国民の利益が国会も介入できて守られるような体制に切りかえる必要があると思うのですが、その点の抜本的な検討をこの際大平総理に要望したいわけです。
  175. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 公務員のいわゆる天下り規制につきましては、公務員法によりまして人事院の規制にまつことになっております。従来の関係を薄めまして一定の期限経過後民間への就職が認められておると承知いたしておるわけでございまして、そういったことは、いま御指摘のように、権力と民間側との関係に公正な関係を樹立しようという立法の意思にほかならぬと考えておりまして、それは厳正に執行していかなければならぬと考えておりまするし、またそういったことを抜きにいたしましても、公務員の、とりわけ高級公務員の天下りにつきましてはよほど自制してかからなければならないわけでございまして、今度の行政改革におきましても、その点につきましてはいろいろ調整を加えて、行政の信頼の回復に努めておるところでございます。
  176. 不破哲三

    不破委員 たとえばいまの法律の完全適用といいますと、これも大分人事院のさじかげんで抜けていますけれども、さっき例に挙げた東京瓦斯の副社長なんかは、いまの法律ではやめて二年間たったらいいことになっているわけですね、四十三年十月にやめて四十五年十月にさっと重役になっているわけですよ。だから違法ではないけれども、結局そういうことで天下りの悪い結果があらわれるわけですね。フランスなんかはやめてから後五年禁止していますからね。こういう点はそういう法の穴も含めて抜本的な検討を私は願いたいし、それから、こういうものの審査に国会その他の介入が——大平さんは公権力はどうも余り好かれないようだけれども政府も公権力なんですから、政府だけで取り仕切らないで、国会を含め、もっと国民の発言や要望や問題点の解明ができるような仕掛けを考える必要があると思うのですが、その点はいかがでしょう。
  177. 森山信吾

    森山(信)政府委員 事務的な考え方をまず申し上げておきたいと思います。  ただいま不破先生からの電気料金の査定の途中経過におきまして通産省以外の広く一般の意見を聞くようなシステムをとったらどうか、こういう御指摘に対しまして、私どもは申請がございますと、もちろん私どもの内部の審査を十分するわけでございますけれども、公聴会をやるわけでございます。これは法律に基づく公聴会は当然でございますけれども、その後いわゆる説明会と称しまして、広く地域住民の方々に認識を深めていただくために会社側に十分説明会を開かせる、そういう方向で、できるだけ広く御意見を求めながら私どもの査定に反映をさせていきたいと考えておるわけでございますが、このほかに、通産省だけがこの問題を決めるというシステムではございませんで、当然に物価問題の責任官庁でございます経済企画庁とも御相談いたしますし、あるいは関係の閣僚会議にもお諮りする、こういうことでございますので、現状におきましては、私どもはそういう方法を徹底することによりまして、ただいま先生から御指摘のございました広く意見を聞けということにはこたえ得るのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  178. 不破哲三

    不破委員 私がさっき言ったような大きな問題点を、国の政策の問題として解明できるような場所はどこにもないのですよ、この料金の決定機構の中には。ただ意見を聞いて、会社の意図をよく説明するPR会ですね。そんなものがあっても問題の解決にならないわけで、私はこういう国民生活の全体に大きな影響を及ぼすような公共料金の問題に関しては、国会なら国会がもっと権限を持って問題の解明ができるような仕掛け、あるいはもっと専門的にこれを追及できるような仕組みをどうしても政府がつくらないと、値上げの問題に関して国民の納得のできるような結論は得られないということを最後に強調したいのです。  総理、この点について今後、いまの現状のままでいいと考えるのか、その点の改革について少なくとも検討するつもりがあるかどうか、最後に一言だけお答えを承って、次へ進みたいと思います。
  179. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 公共料金制度に対しましては、国会の議決にかけるということより、政府に一定の国会で定めた基準のもとでお認めをいただきたいという方向にいまお願いをしておりますことは御案内のとおりでございまして、政策の機動性を発揮する意味においてもそのことが望ましいと考えて、これまでお願いをしてきておるわけでございます。これをさらに逆にもう一度国会に返す、そればかりでなく、いままでも国会にかけなかったものを国会にかけてはどうか、それが民主化じゃないかという御趣旨のようでございますけれども、傾聴すべき御見識とは思いますけれども、にわかに賛同いたしかねるわけでございまして、私どもといたしましては、政府に国会の場を通じましていろいろ御注意もいただき、正すべきことは正していただき、国会の御意思は十分反映させていただいて、政府にともかく責任を持って善処するよう御信頼をいただくのが望ましいと私は考えております。
  180. 不破哲三

    不破委員 それでは公共料金の抑制とか国民に対する責任は果たせないと思うのだが、私は今後とも政府がそういう点で抜本的な、それこそ八〇年代という新しい年代を迎えるなら、もっとこういう点についても旧来の陋習を破るという点でメスをふるうことを要求します。この問題は、特に先ほど申しました問題点を十分考慮して今後の電力値上げ問題に当たられることを要望して、次に移りたいと思います。  次はエネルギーと特に原子力の問題です。エネルギー危機が言われているわけですが、私は実は九月の代表質問でも言ったのですけれども日本の場合、エネルギー危機は単なる天災ではない。特に、たとえばいまは石炭の見直しが言われていますが、二十年前に、もう石炭の時代は古くなったと言って国内の石炭を放棄してしまった石炭放棄政策、それから七〇年代の初めに、大体石油というものは安いものが幾らでも入ってくるという前提に立って、列島改造論に見られるようなエネルギー浪費型の産業や運輸の仕組みの確立をやってしまったこと、それから大体あらゆる資源の半分近く、特に石油に至っては九七%まで発展途上国に依存しながら、発展途上国や非同盟諸国との関係を大事にしないでメジャー中心にやってきたこれまでの経済外交、そういういろいろな姿勢がいまその総決算をエネルギー危機として日本にもたらしていると思うのですが、私はそういう姿勢に加えて、いま政府が石油にかわる代替エネルギーの中心に据えている原子力問題に、新しい根本問題が非常に深刻な形で生まれつつあると思うのです。ですから、きょうは特にこの原子力問題にしぼって政府政策をお聞きしたいと思うのです。  最初に、通産大臣でしょうか、いまの日本の原子力発電の現状と総出力、それからこれからの拡大の見通し、どうなっているか伺いたいのです。
  181. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 ただいまは二十一基運行しておりまして、たしか千四百九十万キロワットと記憶しておりますが、将来の計画等もあわせまして間違いないように報告させたいと思います。
  182. 児玉勝臣

    児玉(勝)政府委員 現状につきましては、ただいま通産大臣からお答えしたとおり、二十一基、約千五百万キロワットでございます。  今後の開発の見通しといたしまして、昨年の八月末に行われました総合エネルギー調査会需給部会におきましての見通しによりますと、昭和六十年で二千八百万、六十五年で五千三百万、七十年には七千八百万という予定でございます。
  183. 不破哲三

    不破委員 つまり、あと五年たちますと現状の二倍、十年たちますと現状の四倍近く、それから十五年たつと六、七倍、非常に大きな拡大計画を立てているわけですが、そこで、私は、この原子力の高度成長計画といいますか増強計画が、いまの日本世界の技術の水準からいっても、十分な安全体制のもとにやられているかどうか、これが一番の問題だと思うのです。  私は四年前にもこの問題で、たしか通産大臣が科学技術庁の長官じゃなかったかと思うのですが、伺ったことがありますけれども、核エネルギーというのは人類の発見した新しいエネルギーですから、これを平和的に利用する方途を探求するのは私は当然だと思うのです。しかし、そのときにも申しましたように、これは未完成の技術であって、そのことを十分心得て安全性について今日の技術の許す限りの体制をとらなければ非常に危険なことになる、これが根本問題だと思うのです。  実は原発の最先端を行っていたアメリカ、あらゆる技術をここから輸入しているわけですが、アメリカが例のスリーマイル島の事故以来、原子力政策の大転換期に来ているわけです。あの事故が起きたのは三月二十八日で、それまで理論上はあり得ると思われていたが、よもやと思われていたような原子力災害の一歩手前まで行って、そして大統領以下、住民の避難など最悪の事態の想定をして対策を立てなければいけなくなった、こういうことが去年の三月に起こりまして、それについてアメリカで各方面で徹底的な研究が行われているのは皆さん御承知だと思うのです。中でも一番中心になりますのは、最近出された報告の中で一番重要だと言われているのは、大統領命令でつくられたケメニー委員会が発表したケメニー報告ですね。これは政府としてもすでに十分研究されていると思うのですが、いかがでしょう。
  184. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 政府でも研究しております。
  185. 不破哲三

    不破委員 研究しているのならこれからの話もやりやすいのですけれども、それでこのケメニー報告には非常に重大な幾つかの問題が書かれているのです。これはいろいろな報告が出されていますが、このケメニー報告の特徴というのは、大統領命令で委員会がつくられたこと。その委員会が、政府の高官であろうとあるいは企業の代表であろうと原子力規制委員会の人間であろうと、だれに対しても証言を求めることができる。その証言は、ちょうど国会の証人喚問と同じように全部宣誓した上でやるわけですから、うそはつけないわけですね。アメリカでは記憶はございませんということは余りはやらないようで、大体皆さんちゃんと証言しているようですが、そういうことで六カ月研究した上で発表されたものですから、これは非常な重要性があって、カーター大統領自体が十二月に、この書かれている勧告を原子力規制委員会初め全省庁で徹底的に実行せよという大統領命令まで出しているぐらいの文書なんです。  そこで、幾つかの大事なことがありますが、一つ考え方の問題として、こういう事故が起こった一番の背景としてこれを言っているわけですね。「原子力発電所は十分安全だという考えがいつの間にか確固たる信念として根をおろすに至った。」これが失敗を招いたんだ。日本では、何かあっても原子力は大丈夫だ、大丈夫だという宣伝をやっているんだけれども、原子力は大丈夫だということを宣伝しているうちに自分までその気になって、安全を管理する者、動かす者、会社の方も政府の方も、「原子力発電所は十分安全だという考えがいつの間にか確固たる信念として根をおろすに至った。」これが危険なんだ、だからこれからはこうした態度を改め、原子力は本来危険をはらんでいるということを口に出して言う態度に変えなければいかぬ、これが基本的な勧告の考え方なんですよ。私はスリーマイル事故の後の日本対応を見ますと、あれはアメリカの、あの会社から買った発電所だったからまずかったんで、日本はウエスチングハウスとゼネラル・エレクトリックだから大丈夫だとか、そういう話が広まりましたね。アメリカはそんな態度はとらなかった。あの一つの事故が起きたのをとらえて、全原子力発電所の問題として、特定の会社の特定の発電所の問題とはしなかった。そこまで掘り下げたというのが私は一つの問題だと思うのです。これはぜひ通産大臣も科学技術庁長官も大平さんも認識していただきたいのです。  それで、そこからこの報告は二つ大きな結論を出しているわけです。こういうような大事故を防止するためには、原子力規制委員会の組織や手続や業務のやり方、問題に対する態度を根本的に改めなければいけない、それからもう一つは、原子力災害に対してもっとリアルに本気に備えなければいかぬ、この二つの問題を結論を出したのがケメニー報告の一番大事な点ですね。  つまり、アメリカは日本よりも先輩で、後でも言いますが、原子力規制については、これは私どもの目から見ますと何十倍と言っていいぐらいわりあいに大きな体制を持っています。ところが、そのアメリカが今度の事故を契機に、いまの原子力規制委員会の体制ではだめなんだ、これを改めなければいかぬということの結論を出した。それから災害の問題なんかでも、日本に比べれば原子力災害に対する備えは前から言われていたわけだけれども、これは根本的に立て直さなければいかぬ。だから、私がきょうここで言いたいのは、まだ続々いろいろの報告が出ておりますが、そのいまのアメリカの到達点で見て、大平さんも通産大臣も本会議で大丈夫だ、大丈夫だに近いことを言われましたけれども政府が保証をつけている安全体制とか防災体制とかというのはどの程度の水準に来ているのかということを、実はきょうは議論してみたいと思って問題提起したわけです。  第一に、安全審査、安全管理の問題です。アメリカのだめだといってレッテルを張られた原子力規制委員会日本の原子力安全委員会大平さんは衆議院の本会議でのお答えの中で原子力安全委員会について、行政庁と一線を画した立場から調査、審議する方がその厳正中立、客観的な審査をやれるのだといって評価されたわけですけれども、この体制と比べてみると大きな違いが二つあるのです。  一つは、日本の原子力安全委員会は、原子炉の審査をやる機関がありますね。原子炉の安全審査の部会、全部パートタイマーだということです。もう十何年原子力発電をやっていながら、この審査をする人が、そこに専従して全力を傾けてやっているのじゃなしに、ふだんは大学の研究所にいたりどこかの施設の研究所にいたりしている人がパートタイマーで頼まれてそれに当たる、この体制が依然として変わっていないということですね。そうじゃないですか。実際に原子炉安全専門審査会のメンバーというのは全員パートタイマーじゃないですか、これは科学技術庁の所管だと思いますが……。
  186. 長田裕二

    ○長田国務大臣 安全管理の体制についてのお尋ねでございますが、原子力安全委員会のあり方そのものにつきましても初めにお話がございましたけれども、直接の御質問は、検査官というようなものあるいは専門部会のメンバーが現在九十人、五十五年度から百五十人までふやすことができることになりましたが、専門委員等が非常勤だ……(不破委員「審査委員」と呼ぶ)審査委員につきましても非常勤でございます。これは実は専門委員とか審査委員とかそういう方々は、それぞれ学識も経験も豊富な方の中から選ぶ必要がありまして、現にいままでそういうものを専門に養成してきているといういきさつがない関係もございまして、しかも有能な人、それぞれほかの方でも活躍している有能な人をできるだけその陣容に取り入れるというようなことから非常勤の形をとっておるわけでございますが、それだけにすばらしい人材を集め得るということがございます。  それから専門の検査官の問題ですが、専従そのものもおるわけでして、実はそれにつきましては、アメリカと原子力施設一個当たりについてほぼ同じ程度のメンバーも擁している、そのように考えております。
  187. 不破哲三

    不破委員 実はこの問題は政府自身、これではいかぬということは十分御承知のはずなんですね。というのは、もう大分前になりますが、昭和三十九年に原子炉安全審査調査団というのがアメリカへそういう審査のやり方を調べに行ったことがあるのです。そのときの団長は通産省の電気試験所の電力部長だったと思うのですが、つまり政府が中心になって編成をして調べに行ったわけですね。その報告がここにありますけれども、アメリカへ行ってみたら、当時は原子力委員会ですが、規制部門だけでも大体百五十人の専従者がいて仕事をしている、そのほかにパートタイマーの諮問委員会がある、日本にある安全審査の機関というのはアメリカのパートタイマーの審査機関に当たるんだとちゃんと書いてあるのですね。つまり、わざわざアメリカへ調べに行って、いままでつくってきたパートタイマーの審査委員会というのは、アメリカの原子力規制の機構から言えば、これは百五十人の専従の陣容を擁する規制局の横にある諮問機関、これに当たるんだということをちゃんとこの報告書には明記してある。  ところが、それから十何年たったいまでも、これだけ原子力発電所ができているのに、アメリカの大きな機構の中の一諮問機関に当たる部分だけだと自分でわかっているはずの機構をそのまま引き継いで今日に至っている。いまではアメリカの原子力規制委員会は、推進部門から離れて、総スタッフは三千人近いわけでしょう。安全審査の専従者だけでも技術者が六百三十人いるんですよ。ここにあらゆる運転経験から設計経験が蓄積されて、それこそ審査が、それでも十分じゃないわけだけれども、一応できるようになっている。ところが、わが日本の方は依然として昔のパートタイマーの諮問委員会のかっこうで続いている。  それから、もう一つ言わせてもらうと、例の「むつ」事件が起きたときに、これではだめだということがはっきりしましたね。たしか佐々木さんにあのとき申し上げましたが、この「むつ」事件の審査に当たった、政府がつくった「むつ」放射線漏れ問題調査委員会、いわゆる大山委員会は、安全審査の最大の問題点をそこに求めたわけですよ。「原子炉安全専門審査会の委員は非常勤と定められており、一般に大学、研究所の研究者がパートタイマーという形態で審査に当っている」、だから「審査の実態についても、申請された原子炉の安全性について、」電力会社側の計算を自分で計算して調べ直すということも困難だ、これでは本当責任の持てる審査ができるはずがないということを、ちゃんと「むつ」の教訓として書いたわけです。それから五年たって、依然としてパートタイマーのまま。日本世界で第二番目の原発国になっているわけですから、私はこれは非常に危険だと思うのです。  もう一つあるのです。第二番目の大きな違いは、アメリカの原発の審査は三段階方式なんですよ。まず立地の審査があります。NRC、原子力規制委員会が、ここに原子力発電所をつくるという申請があったら、ここに置いていいかどうかということを原子炉の安全性や原子力の安全性から審査をする、これが第一段階。第二段階が基本設計の審査。その上につくられる発電所があらましこういう設計だが、これでこの場所や任務に適合するかどうか、それで初めて建設が始まる。最後に、運転の前に詳細設計の審査というのも原子力規制委員会がやるわけです、基本設計ではあらまししか見られませんから。それで、最後の詳細設計までやって、基本設計で予定されたとおりの機能が材質その他を含めてこの発電所で成り立っているかどうかまで原子力規制委員会責任を持つ。それで初めて運転が許可される。立地、基本設計、詳細設計、あるいは立地、建設、運転と三段階審査をずっとやっているわけです。そのこともこの安全審査調査団の報告には出ているのです。  アメリカへ行ってみたら三段階でやっていた。このような方式を採用している理由はなぜかというと、「原子炉技術が進歩途上にあるので、最初の一回の審査だけで最終的に許可を与えることは実情に合わないと考えているからである。」つまり、原子炉技術は完成していないから一回じゃ危ない、未完成のものだから三段階の厳重防護をやって、それで初めて最小限の安全が保障できる。そういうステップ・バイ・ステップのアメリカの方式に対して、わが日本ではワンステップでいっている。ちゃんとこれは十六年前に報告が出ているのです。  ところがアメリカは、それからずっと三段階方式をむしろ強化しているわけですね。公聴会をやるときでも、住民から疑問が出れば疑問が解決されるまで公聴会を続ける。三段階方式を強化している。日本はあくまで原子力安全委員会の方は一段階方式でやっているわけでしょう。それで、立地の方は電源開発調整審議会の方でしょう。電源開発調整審議会の方で一応許可してから安全委員会の方に来て、安全委員会で基本設計をやるときにあわしてやるだけでしょう。詳細設計は通産省と科学技術庁がそれぞれやるでしょう。  それで、たとえば問題になる大飯原発の基本設計を私ここに持ってきていますけれども、基本設計書というのはこれだけのものですよ。付属資料がこれですよ。たとえばいま原子力発電所がいろいろな故障を起こしますけれども、この間も大飯原発で故障が起きて、そこに使ってあった弁がステンレスを使っているつもりだったが銅だった。これはそんな、どんな材質を使うなんということは全然出ていない設計です。だから、いま起きている原子力発電所のトラブルなんかは、この基本設計だけでは何も解決されない。予防できないわけですね。この点でも日本の原子力審査体制というのは、二十年前にも古かったんだけれども、いまのアメリカのやってきているその水準に照らしても、大変な問題があると思わざるを得ないわけです。  もう一つ紹介をしておきますと、アメリカではその原子力規制委員会が今度ロゴビンという委員会に審査を頼んで報告書を求めたわけです。そうしたら、このロゴビン委員会というのは原子力規制委員会から頼まれた委員会なんだが、一月二十四日に報告書を発表したのを原子力産業会議で要約したのを見せてもらいますと、この原子力規制委員会が頼んだ委員会の報告が、いまの原子力規制委員会はだめだ、われわれはいまの原子力規制委員会がアメリカの国民を発電所の危害から保障するような包括的な問題を扱う能力がないことがわかった、そういう結論まで出しているわけです。  私は、これだけの違いがある原子力規制委員会を持っているアメリカでなおかつ、スリーマイルの事故を経験する、そういうことを言わざるを得ない。言いますと、いまの日本の原子力の安全体制の現状ですね、大体パートタイマー方式で、ワンステップ方式で、あとの詳細設計はいわば推進側である通産省その他に任されている。これでいまの世界の水準からいって、本当国民に安全が保障できると言えないということは明瞭だと思うのですが、その点について抜本的な検討を行うつもりがあるかどうか、伺いたいのです。
  188. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 不破さんも当然御承知のことと思っておりましたが、「むつ」の問題が起きたときに内閣に非常に膨大な原子力安全審査機構と申しますか、そういうものの検討の審議会ができまして、日本の一番大家とおぼしき人が一年間、非常にエネルギッシュに問題を取り上げまして結論が出ました。  御承知のように、実用炉に関しては、まず第一次は通産あるいは運輸、第二次的には新しくつくるであろう原子力安全委員会、ダブルチェックをしなさい、これは立地はもちろんのこと、基本設計も詳細設計もあわせてダブルチェックをしなさい、こういうことになっていると思います。  そこで法改正をいたしまして、ただいまの段階ではそういう方式で二段階になっておりまして、通産は通産でまず第一次の審査を十分にいたしまして、そしてその結果を安全委員会に持ち込みまして、安全委員会で審査をする、こういうことになっております。  たって申しますと、あるいは電源開発調整審議会等もございますので、三段階と言えるかもしらぬけれども、正確には私は二段階でただいまやっているものと思っております。そしていままでの経過を見てみますと、私は少なくとも日本ほど丹念な審査をやっているところはないんじゃないかと思われるくらいやっているというような感じがいたします。
  189. 不破哲三

    不破委員 ちょっと余りにも認識がひど過ぎると思うのですね。大体アメリカでは、そういうダブルチェックは原子力規制委員会の中の規制局でやっているのですよ。規制局が六百三十人の部隊をもってやるでしょう。そのほかにACRSというのがあって、これがいまの日本でいえば安全審査会に当たるのですよ。これがダブルチェックをやって、それが規制の一段階なんですね。そういうものを立地、それから建設、運転と、詳細設計まで原子力規制委員会でやっているというところにアメリカの仕組みがあるんですよ。そういう推進側と別の、大平さんが言われる行政とは別の客観、公正なその審査機関にそれだけの機能を持たせるということが大事なわけです。ところが日本の現状は、せっかく「むつ」のあの教訓がありながらそれをやられていない。一番大事な点でパートタイマーによる審査、それからその安全審査は基本設計だけ。だから「むつ」の報告では「この審査と現実的な設計との間には工学的、技術的な空隙が生まれるおそれがある。」この粗筋の設計書を見たら何とかなっているけれども、実際につくってみたら空隙があってえらいことが起こりかねぬ、そういうことをちゃんと書いてあるんだが、残念ながらあの原子力安全委員会をつくったときに生かされなかったわけですね。いまからでも遅くないので、いまアメリカがあの教訓の中からアメリカなりに到達しようとしているところを一つの目安にして、抜本的な検討をやる必要があると私は思っているわけです。  それから、もう一つの教訓は防災問題です。というのは、いままで企業側や政府側の話を伺いますと、大体原子力災害というのはないように設計してあるんだというのが常なんですね。ところが、アメリカは昔から、設計されている予想を超えた原子力災害に備えよということを、原子炉の立地についても、あるいは周りの体制についても、それからいざというときの緊急事態対策についても、これを防災の原則にしているわけですね。つまり、設計ということはすべてのことを備えられないんだから、設計の予想を超えた原子力災害が起きたときにどうするか、これがいわば国のがんばりどころだというのがアメリカの考え方だったわけですよ。ところが、それについても今度のスリーマイルの教訓というのは、従来のやり方ではだめだということが非常にはっきりしてきたわけですね。  それで私、ここに一つの最近そういうことで得たアメリカの文書を持ってきているのですが、これは実は、アメリカの原子力規制委員会それから環境庁が、自治体から要望されるわけですよ、原子力災害に備えよと言うが、大体どれぐらいの範囲で備えたらいいのかと質問が出る、それに対して答えなければいけないというので、これはスリーマイルの前です、おととし発表したものですよ。この最後に表が出ているのでわかりいいのですけれども、こういう表ですね。原子力発電所から十マイルの範囲は、これは放射能雲がいざというときに出て直接人間の体に危害を及ぼす危険がある。だから、防災対策を立てるときには、防災計画地帯というのですが、第一の防災計画地帯は十マイル範囲で、そこは人間が必ず退避できるような計画を持たなければいかぬ。これが最初の円ですね。外側の円は何かといいますと、これは牛だとか水道の栓がかいてありますが、これは放射能雲が直接人間の体に当たらないかもしれないが、水源地だとか食糧を汚染することによって口から放射能が体内に入ってくる危険がある。その水源と食糧についての対策を立てなければいけない地域として、これは五十マイル引いているわけです。つまり、この退避計画が十マイルで、十六キロですよ。食糧や水源のいざという対策を立てなければいけないのが、これは五十マイルで、八十キロです。これはスリーマイル事故が起きる前に、アメリカの原子力規制委員会と環境庁が出した数字なんですね。ところが、スリーマイルの事故が起きてから、これじゃいかぬということがだんだんわかってきた。  ここに私、もう一つのアメリカの最近発表された文書を持っておりますが、これはアメリカの原子力規制委員会が、原子炉をどういうところに立地するかという立地政策に関して最近発表したレポートです。これは実は一昨年から作業が始まっていたんだが、去年の三月スリーマイル事故が起きたので、そのことを含めて去年の夏発表されたものです。これによりますと、これまで原子炉を設計して退避地点なんか考える場合、原子炉の設計の度合いといいますか、安全度の度合いに応じて退避計画の幅を動かしていた。これじゃだめなことがわかった。やはり退避計画を義務づけるのだったら固定的な線を引かなければいかぬというのがこの結論ですね。それでこの結論では、少なくとも十マイル、さっき言った十六キロですね、十六キロ以内の範囲、原子力発電所ができて十六キロの円周、その中からは一時そこに来た人、お客さんを含めて短時間に退避できるだけの退避計画を必ず義務づけなければいかぬ、それからその退避計画は、二十マイル、三十二キロについても考えなければいかぬということが書いてあるわけです。実際に原子力規制委員会がスリーマイルの事故のときに最大限考えた退避が二十マイルだったわけですね。それが書いてある。  それから先ほど言いましたロゴビン報告、これによりますと、これはもっとその点は強くなっていて、十マイルというのは、ただ逃げる計画ではだめだということを言い出したのです。十マイルの範囲には人口密集地帯があってはいけない、都市がその中にあってはいかぬ、そして退避計画は十マイルよりももっと広い範囲で設定しなければいかぬということ、これが一月二十四日に発表された報告の結論ですね。  まだこういう問題はもちろん完全な結論は出ていないけれども、去年からことしにかけてずっと出されたアメリカの報告書を見ますと、大体最低限十マイルの人口密集地を除いたり、退避計画を立てる、それから二十マイルに広げる、水源や食糧問題から言うと五十マイルの範囲は防災計画を立てなければいかぬということは、大体かなりの合意線に来ているように私は見ているのです。  これに対して、いま日本で原子力発電所を建てるとき、一体立地の点とか防災計画の点ではどんな考え方に立っているのか、それからどういう指導を実際に発電所や県にしているのか、そこら辺を伺いたいのです。
  190. 長田裕二

    ○長田国務大臣 アメリカの昨年のスリーマイルアイランドの発電所の事故に対応しまして、日本の原子力安全委員会におきましても、非常に真摯に、真剣に取り組み、その中から多くの教訓を学び取ろう、そういう努力を積み重ねてきたと思っております。そして、当面の措置としまして、安全管理の再点検、これは通産側とも協議の上で全面的にそれがなされましたし、さらにまた事故調査委員会等の活動を通じまして、あのスリーマイルアイランドの事故から五十二項目にわたります点検すべき項目というものを選び出しまして、それの具体化についての作業が進められております。まだ全部済んではおりませんけれども、すでに実施されているものも相当あるわけでございます。  それらにつきましての原子力委員会側の精力的な活動のほかに、防災という観点からもただいまお話がございました。  御承知のように、日本におきましては、かねて災害対策基本法によりまして国や地方自治体がそれぞれの防災計画を立てるということになっておりまして、これに原子力施設が置かれます場所につきましての防災計画も新しくつけ加えるというたてまえにはなっておりますが、昨年のTMI事故が起こりました経緯にもかんがみまして、去年の七月中央防災会議で、当面とるべき措置というものが決定されております。さらに、原子力安全委員会におきましては、防災対策専門部会で、必要な専門的事項を目下検討中でございます。その結論を待ちまして、国内各機関が防災計画に一層の充実整備を図ろう、そのような方針で進んでおりますが、とりあえず当面とるべき措置の内容につきましては、御承知かとも存じますけれども、中央と地方自治体とそれから業者との間の緊急連絡網をまず整備していこう、それから緊急モニタリングを広く実施していこう、その機器を整備してまいろう、また、その際の医療施設の整備につきましても、これは五十五年度予算措置をも含めまして相当広くこの施策が展開されるはずでございます。さらに、原子力研究所を通じまして、防災関係の研究も今年度予算の裏づけをも持ちまして相当幅広く実施することになっておりますし、また防災の研修につきましても、原子力研究所あるいは科学技術庁あるいは放射線医学総合研究所等におきまして、地方の責任者あるいは実務担当者、そういう人たちを集めましての研修も相当広く展開されているところでございます。  現状を御報告申し上げます。
  191. 不破哲三

    不破委員 結局、言葉はいろいろあるのですけれども、到達点はないのですね。私は、これが非常にいまの日本の原子力行政を象徴していると思うのですよ。  私、この間、福井県をちょっと視察してきたのです。福井県というのは現在全部で六百十九万キロワットの原子力発電所があるのですね。いま計画中のものが四基ありまして、これを合わせると九百三十九万キロワットの原発が福井県一県でできるようになる。現在、アメリカが一番、日本が二番で、三番目の原発国の西ドイツの原子力発電所の出力が九百二十五万キロワットですから、いまのまま福井県にあと四基の原発ができますと、あの一県に現在の西ドイツ一国あるいはソ連一国、フランス一国、イギリス一国よりも大きな原子力発電所が集中するわけですね。私は、こんな原子力の過密地帯というのは世界にないと思うのですよ。ここで防災計画が立っていなかったら、これは日本に防災計画なしと言っていいと思うのですね。  それで、防災計画の実情も調べてきましたが、私、特にアメリカの最近の研究から考えて非常に重大だと思うのは、あの福井県が関西に非常に近いことですよ。ちょっとおわかりになるように地図を持ってきましたが、これは関西の地図なんです。こういうものですが、この敦賀、美浜、大飯、高浜という四カ所に原子力発電所がある。それからさっき言いました十マイル、つまりいまアメリカではここには人口密集地があってはいけないとか最小限退避計画を立てなければいけないとか言われるところを線を引いてみますと、敦賀とか舞鶴とかいう都市がこっぽり入るわけですね。それから二十マイル、三十二キロの線を引きますと、これは琵琶湖の北側が入ります。そして、一昨年アメリカの環境庁と原子力規制委員会が水源対策や食糧対策は汚染を考えなければいけないというふうに言った五十マイル、八十キロの線を引きますと、何と滋賀県と京都府がこっぽり入って、京阪神の水源である琵琶湖が全部覆われる。兵庫、大阪、岐阜、石川、ここにまで半径が及ぶ。  私は、いまのアメリカの防災対策の到達点から見ると、この福井にこれだけたくさんの原子力発電所が林立したということは、たとえば事故の回数は確率を掛ければそれだけふえるわけですから、きわめて重大なことだと思うのです。ところが、いろいろ調べてみるのだが、福井県にこれだけの原子力発電所、四カ所に当然この原子力発電所があるわけですけれども、こんなに集中立地をしていいかどうかということをまともに審査したところはどこもないんですね。一体、福井県という県がこれだけの原発過密県になることが、防災面とか安全面とかどういう面からいっても大丈夫だという結論を審査して出された機関があるかどうか、通産省でも結構ですが、科学技術庁でも結構ですから、もしあったらお答え願いたい。
  192. 児玉勝臣

    児玉(勝)政府委員 ただいまの集中立地の問題につきましては、立地そのものにつきましては地元とそれから企業の合意ということに相なるわけでございますが、国といたしましては、その安全面についてどうであるかということを審査しております。  一つは、平常時においてどのような被曝線量になるかということにつきまして、これは発電所の周辺におきまして五ミリレム以下ということで規制しておりますので、いまのような重畳した問題での被曝線量の増加というのはないと考えております。また、事故の場合の各種事故におきまして、実際の重大事故、それから仮想事故というのはサイトの判定をするときに使うわけでございますけれども、そういう場合におきましても、非常に厳しい条件におきましてどのような線量が出るかということの審査をしております。  そういう意味で、原子炉が集中しておりますけれども、その原子炉がすべて全部一緒に事故が起きるということなく、一つの事故が故障を起こすということでの審査はしております。(「どこでやっているんだ」と呼ぶ者あり)審査は通産省でいたしまして、通産省には二十五名の安全審査官という専門職がおりまして、それに管理職四名ということの陣容で実際やっております。それが六十三名の技術顧問の意見を聞きながらやっておるわけでございまして、先ほど先生おっしゃいますように、すべてパートタイムというわけじゃなくて役員にもその専門家がおるということでございます。それで、その後原子力安全委員会にダブルチェックをお願いいたしまして、そこにおいてその安全性の妥当性を認めていただく、その後通産大臣名で許可するということでございます。
  193. 不破哲三

    不破委員 大体会社と地元で立地が決まる。それを後で個別に審査する。このやり方が集中立地、つまりこれだけの原発が集まってどうかということの吟味をしてない証拠なんですよ。さっき言いましたアメリカの原子力委員会の立地政策についてのレポートも、これまで大体会社が立地したらそれを合理化する傾向があった、これじゃまずいんだということを非常に反省しているわけですね。いまの日本のやり方でしたら、福井は一遍落としたんだから、あそこは新しい原発をつくるにも非常に簡単だということで福井へどんどん集中する。集中した結果がどうなるかということに関してはどこも責任を負わぬ。確かに原子力発電所の事故は一カ所起きたら連動するものじゃない。しかし、五つあれば確率は五倍になるのですよ、その地域にとっては。それから、いまのように九つあれば確率は九倍になるのです。いま計画しているように十三基も建てれば、確率は十三倍になるわけです。しかもその被害が、いまアメリカで想定されているように、日本では非常に狭く考えているんだが、それではだめだということが本当になったら、五十マイルなんという範囲で防災対策を立てなければいかぬとなれば、十三倍の確率になって関西全域にかかってくる。そういう問題をどこも責任ある審査をしないまま、いろいろな電力会社が既成事実でどんどん土地を手に入れて、そこの地元をなだめて建てるから、その結果としてこういうように生まれてしまった。私は、ここに非常な無責任の結果が出ていると思うのです。  しかも、そういう状態になっている福井県でどれだけの原子力防災の計画が立っているか、私は実際に行って県の担当官に会ってきましたよ。そうしたら、たとえば災害のときに避難しなければいかぬというようなことが言われて、十年ほど前に避難場所が決められています。ところが、逃げるべき避難場所が全部十五キロ以内、逃げなければいけないところに全部指定してあるわけです。これは恐らく政府の指導だったと思うのです。何の改定もしてないです。それから原子力防災についての条項はあります。しかし、たとえば部内にしろ何にしろ訓練をやったことがあるかと聞きましたら、一回だけある。あの福井県でですよ。何の訓練かというと、有線が使えなくなったときに無線で連絡する訓練だけ市町村とやった。しかし、それも台風とぶつかってしまったので余りうまくいかなかったそうですけれども、それ以外何の訓練もやってないのですね。私は、それは福井県を責めるのじゃないのです。なぜできないかというと、担当者が言ってました、政府が原子力災害が起きたらどんな状況になるかということの想定を出すと約束している。大体火事の被害防災計画だってあるいは地震の防災計画だって、どういうところから事故が起きて、どんな被害があるかということを想定しなければ立ちようがないじゃないか。この原子力発電所で事故が起きて放射能がもし漏れたら、どういう風向きのときにはどれくらいの広さに逃げなければいかぬとか、そういう状況想定を全部出してくれなければ手の打ちようがないじゃないか。ところが、いまだに何の手当てもしてくれないから、いまだに待機の姿勢でいざるを得ないのだ。まさにあの世界最大の過密地帯の福井県がそういうことを、早く何とかしてくれということを非常に言っていましたが、政府は先ほど研究するとか研修するとかいろいろ言っておりますけれども、あのスリーマイルの事故というああいう重大な事件、日本が輸入した相手の国で起きて、それについてアメリカではともかく最大限の体制を立てようと思っていろんな手だてが講じられているのに、日本はどんどん原発の増設を組みながら、防災面で何をやろうというのか。私はもっと責任ある計画と答えを伺いたいと思います。
  194. 牧村信之

    ○牧村政府委員 ただいま先生の防災訓練のお話でございますが、先ほど大臣からわが国の防災対策の概要のお話がありましたけれども、災害対策基本法に基づきまして県並びに国一体となって行う体制を、昨年七月の中防の決定により当面とるべき措置としてつくりあげたわけでございます。その中に、確かに先生がただいま御指摘されましたように、地方公共団体の方々の原子力災害というものに対しての御認識がまだまだ不十分である、したがって国の指導をぜひやってほしいということで御注文を受けておるわけでございます。そこで、私どもの方としては、万々一の原子力災害が起きましたときにその防災対策が円滑に行えなければ意味がないということで、安全委員会の中に防災対策専門部会を設置いたしまして、いろいろな防災対策を開始する指標の問題であるとか、防災対策をどの範囲で決めたらいいだろうかというような問題等を含めまして、いま鋭意検討中でございます。可能な限り早く御審議をお願いいたしまして、それを国並びに地方の防災計画の中に盛り込んでまいりたい、このように考えて作業を進めておるところでございます。
  195. 不破哲三

    不破委員 こういう状態では、もしいま事故があったら、まさにもう手のつけようがないということだと思うのですね。県に聞きますと、政府は去年緊急助言組織というのをつくって、いざというときにはこれが働いてくれるのだということを言っていましたが、本当ですか。
  196. 牧村信之

    ○牧村政府委員 先ほど大臣も若干この点に触れられたわけでございますが、中央防災会議で五項目の決定をいたしております。概要を申し上げますと、まず災害が起きた場合には国も直ちに対策本部をつくるということでございます。それから地方公共団体との連絡網を整備すること、それからもう一点は、原子力安全委員会の中に技術者を集めまして、災害が起きたときに緊急助言組織を設けて国並びに地方公共団体を指導し得るようにすること、それから幸い科学技術庁に原子力研究所並びに放射線医学総合研究所並びに動燃事業団を抱えておりますので、原子力の専門家を常時用意しておきまして、万々一の事故があったときには、直ちに専門家として、また機器等を帯同いたしまして現地に赴いて防災対策の円滑な推進を期するというふうなことを決めまして、その体制をもうすでにとって、いつでも発動できるようにしておるところでございます。
  197. 不破哲三

    不破委員 緊急助言組織というのは県では大分頼りにしていますが、いざというときにはその組織が防災対策の指導に当たったり助言してくれると考えていいのですね。
  198. 牧村信之

    ○牧村政府委員 すでに人選も終わっておりまして、場合によっては現地に安全委員を含めまして行く体制をとるようなことになっております。
  199. 不破哲三

    不破委員 現地に行って指導をするとなれば、やはり緊急助言組織のメンバーというのはいろんな発電所の事情も知らなければいけないだろうし、いろんな準備も要ると思うのですが、去年設けてからどれくらい会合を開きましたか。
  200. 牧村信之

    ○牧村政府委員 二回たしか開いております。それで、いろいろな御注文を受けまして、いまどういう資料等を整備する必要があるかということでそのデータの収集等を事務局がやっておる段階でございます。
  201. 不破哲三

    不破委員 私はその緊急助言組織のメンバーの人に意見を伺いましたけれども、顔合わせの会議があっただけで、そのときに事情があって欠席したのだが、あとは全然何の会合の連絡もない、そういう話でしたよ。私はこれは大変だと思うのですね。  たとえば、ここに福井県の原子力広報「アトム」というのがあります。これによりますと、いよいよスリーマイルの事故を見て国が本腰になって体制をとった。応急対策計画といって、いざというときには原子力安全委員会を中心とする緊急技術助言組織が招集されて、それでやってくれるのだ。私が担当官に会いましたら、ともかくわれわれはわからないのだけれども、中央ではそれをつくってくれたから、何とかしてくれるだろう。みんな期待しています。ところが、帰ってからそれに参加している人に伺ったら、ともかく原子力安全委員の人がずっと片っ端から任命されて、それで一遍顔合わせをやったらしい、しかし、私はそのときにいなかったのであと何の連絡もない。この緊急技術助言組織というものが、お互いに顔を合わせて、はい、そうですかと別れただけで、その現地の事情も、たとえば福井のような大きな発電所があるところの状態もお互いに下相談も何にもしない。いざというときにこの組織はどんな機能を果たすかも考えない。そういうことをしないで、去年夏に任命しましたから万全でございます。私はこれが本当のお役所仕事だと言うのですよ。  さっきから伺っておりますと、会議は開きました、審議会があります、いざというときには専門家が行くことになっております。私は行く専門家のリストを見ましたよ。名前が書いてないのです。どこそこの何とか官と書いてある。だから、固有の人が任命されたのじゃなくて、あそこのお役所あるいはここの研究所から何人か出してくれということだけにすぎないでしょう。そして、実際に緊急助言組織の人に聞いてみると、そういう現地の事情も知らない、防災の指揮をしたこともない、そういうわれわれが物が言えるのは、事故が起きたときにこれは科学的に言ってどんな事故の広がり方になるだろうかということの物が言えるだけで、防災の指揮というのは自治体に任せるしかないのだ。はっきり言っておりますよ。自治体の方は、緊急助言組織があるからいざというときにはやってくれると言い、その緊急助言組織の方は、政府として手だてもしないで、いま資料を整えております。もう半年以上たっているのです。いま資料を整えております。実際から言っても、防災の専門家なんかいないのですから、いざというときに、大事故が起きたときに指揮をとって動けるようなところはどこにもない。  去年政府はスリーマイルの後ずいぶんたくさん決定したようですが、これがいざという事故に備えていまの自民党政府が総力を挙げて到達できる到達線なんでしょうか。私はここにお役所仕事の典型があると思うのです。原子力の安全審査管理の体制にしてもお役所仕事。自分で行った調査団が、パートタイムではだめ、一段階では足りないということを見てきても、それを何にも組み入れようとしない。その調査団の報告をつづりにしまったらそれっきり。それから防災対策にしても、あれだけのことが起きながら、組織をちょっとつくってみて、万全でございます。文書の山はありますよ。何にも進展していない。こういう状態のまま日本世界第二の原子力発電国になり、今後十五年の間にそれを六倍にも七倍にもする。これは今後の民族の将来にとって取り返しのつかないことが起きかねない。エネルギー問題で数え上げた失政の最大のものがここにあるのだということを私は言わざるを得ないと思うのです。  この点について、実情は大体おわかりになったでしょうから、総理の見解を伺って、時間が過ぎましたので質問を終わりたいと思います。
  202. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 石油にかわるエネルギー源といたしまして、石炭と並びましてわが国といたしましては最も原子力に信頼を置いてその開発を急いでおりますることは御指摘のとおりでございます。  しかしこれは、その前提といたしまして、安全性が何としても確保せられなければならぬことは申すまでもないことでございまして、政府といたしましてはそれに全力を挙げて努力をいたしまして、この開発の前提を確立していかなければならぬと考えております。  いまの御指摘には、重要な、いろんな示唆に富んだ御指摘がございました。政府といたしましても、慎重にかつ周到にこの点については配慮してまいるつもりです。
  203. 田村元

    田村委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に、塚本三郎君。
  204. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、当面する内外の問題につきましてお尋ねをしてみたいと思います。  まず最初に、エネルギー問題につきまして御質問をいたします。  ただいま質疑を伺っておりまして、日本のエネルギー問題がいかに重要な問題になりつつあるかということにつきまして、改めて認識を新たにせざるを得ませんでした。エネルギー問題は国民の最大の関心事となっております。イラン政変によって、次の変化に対し、国民はどうなることかと息をひそめて中近東の成り行きを見守っております。日本に来ている油の六〇%はサウジアラビアを初めとするその周辺の国々に集中されております。アフガニスタンへのソ連の軍事介入によって中東は一触即発の危機をはらみ、すでに石油は完全な戦略物資に置きかえられてしまいました。  この中にあって、日本におきましては、所要エネルギーの七五%を輸入石油に依存しているという状態であります。産業界はもちろん、国民生活の立場からも、一体これから先、特に中期的に見て五年ほど、どうなっていくのかということが心配であります。その見通しにつきまして、最初総理から概括的にお答えをいただきたいと存じます。
  205. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのように、わが国の所要エネルギーの七五%を輸入石油に仰いでおりまして、そのうち中近東には五〇%程度を仰いでおるということ、御指摘のとおりでございます。これが今後どういう状況になりますか、重大な問題でありますこと、御指摘のとおりでございます。  ただいままでのところ、いろいろの不安定要因がございましたけれども、わが国といたしまして、所要の石油の輸入を確保することができたわけでございますが、八〇年を迎えまして、今後どうなるかということにつきましては、事態は非常に不安であり、流動的でございます。比較的楽観的に見る向きもあれば、大変悲観的に見る向きもあるわけでございます。しかし、われわれといたしましては、できるだけ多角的にエネルギー源、石油の輸入源を確保いたして、所要の輸入を確保せなければならぬと思っておりますが、これは国際的に一応のシーリングが設定されております。国際協力のたてまえから、われわれはそれを厳守しながら、その範囲内におきましてできるだけの確保を図ってまいらなければならぬと思っておりますが、さらに中近東以外の各第三国に対しまして新たな供給源を発掘してまいらなければならぬ、求めてまいらなければならぬと考えて、経済外交をもっと多彩に展開しなければならぬと考えております。  国内におきましては、まず節約をいたしますとともに、広く石油にかわる資源の開発ということに国策の重点を置いて鋭意努力してまいって、産業と生活を支えるエネルギー源の確保につきましては、政治責任といたしまして万全を期していかなければならぬと思っています。
  206. 塚本三郎

    塚本委員 代替エネルギーにつきましては後ほどお聞きいたしますが、輸入量の確保とともに、問題はお金の問題が心配になってまいりました。先ほどの森山長官の御説明のごとく、原油は一バレル三十ドル時代を迎え、中国の大慶油田は三十二ドルを要求してきたと報道されております。  昭和五十三年には二億七千万キロリッターの原油を輸入いたしまして、二百三十億ドルの外貨を日本は支払っております。これが五十四年度においては、急速な値上がりによって、同じ二億七千万キロリッターに対して三百八十億ドルを支払う。同じ量で、二百三十億ドルが三百八十億ドルに上がってしまいました。ために外貨は約百二十七億ドルを減らして、三百三十億ドルありました日本の保有外貨、外貨準備が、すでに二百億ドルに減ってしまったことは御承知のとおりであります。その間産業界は、自動車を初めあらゆる物資を円安の波に乗せて約一千億ドル、驚異的なドルを獲得して、なお外貨が右のごとく二百億ドルに減ってしまったことは御承知のとおりであります。  この状態をこれからの五十五年度に照らしてみますと、同じ一バレル三十ドルの基準価格で計算をいたしますると、よけい入れるんじゃない、増量でなくして、同じだけの量しか入れないとして、なおこの三百八十億ドルの油は四百八、九十億ドル、約五百億ドルの支払いと見込まれるのであります。まずこれは、昨年の三百八十億ドルと比べて大きく上がっただけではなく、先ほどの多角的ということで、同じようにいわゆる天然ガスとか石油製品等もふやすと、それが約百億ドル、一千億ドル努力をして得た外貨のうちで合わせて六百億ドルを、量をふやさなくて実はエネルギーだけに費やしてしまう。そして原子力はだめだという御意見、一時間ほど実は問題点を指摘されたのを聞いたとき、一体日本の国のエネルギー、いや油は入ってきてもお金は大丈夫なのかということにつきまして、これは大蔵大臣ですか、見通しと支払い能力、ことしは二百億ドルをゼロにすればいいが、来年の貿易と国民生活は一体どうなるか心配でたまらない。お答えいただきたい。
  207. 竹下登

    竹下国務大臣 いま石油価格上昇の事情からする国際収支が悪化しておる、したがって来年度二百億ドルほどの赤字が見込まれるが、わが国のドルの備蓄がなくなることになるが、通貨当局としてはどう対処するか、こういう御趣旨であります。  確かに、いままでいま御指摘になりました自動車、鉄鋼あるいは家庭電気製品等々のものがわが国の輸出の主たるかせぎ手であったわけでございます。しかしながら、今日御指摘のような事情でございますので、われわれ通貨当局といたしましては、どうしてもいわゆる輸入代金の決済等について不都合が生じてはならないということを絶えず念頭に置きながら、国際会議等において先進国同士の意見交換も行っております。当面、今日の状態におきましては、いまの外貨準備の減は、基本的には、輸入ユーザンスの増加等の民間部門の借り入れ増加などによって日本、アメリカ等は賄える、現在こういう見通しになっておるわけであります。ただ、さらに御心配な非産油開発途上国というような問題、どうして還流するかという問題につきましては、これからもっとIMF等の公的機関でも協議を進めていかなければならぬ問題である、こういうふうに理解いたしております。
  208. 塚本三郎

    塚本委員 そうすると大蔵大臣、ともあれ世界で西ドイツに次いで二番目のお金持ちと言われた日本の国は、この二年間のうちにゼロになって、来年からは借金と資本を投下してくださいという、いわゆる政府の赤字だけではなく、日本国と外国との貿易上において世界で二番目の金持ちが、ゼロになって借金で賄うという見通しだという御答弁ですね。
  209. 竹下登

    竹下国務大臣 五十五年度の見通しでは、ことしよりは好転するという見通しの上に立っておりますので、まるまるが借金であるというふうな理解では……。
  210. 塚本三郎

    塚本委員 好転するというその見通しは、どういう意味からですか。
  211. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、特定国に対して集中して輸出が伸びていくなどということはまた輸出の摩擦の問題がございますので、そうしたことは申し上げかねる問題でございますけれども、総体的に経済見通しを見てみますと、円安等の傾向から輸出にある程度のものが期待できるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  212. 塚本三郎

    塚本委員 計算上は、確かに円安になりますとよけいに売れるということはわかります。しかし、そうでなくても、大臣、すでに一番のお得意様アメリカは、オリンピックをボイコットしなかったならば、けさの報道によりますると、自動車も鉄板も制限するぞという、いわゆるマンスフィールド大使の発言のごとく、もうこれが限界だと言われております。もし円安になったならば、今度は逆に、日本経済自身がもっと金をよけいに払わなければ同じ量が買えないような心配になってくる。だから考えてみると、今度は材料の仕入れでもって高くなるから同じことになってしまうんだと思うのです。仕入れ代金が高くなってくるし、輸出が伸びるかわりに、こちらの方でまたよけい材料やほかのものの輸入までふえてくるじゃないか。そういう甘い見通しでは——通産省の統計か見通しによりますると、二一%の輸出の伸びを計算しておいでになるようですけれども、戦後最高のときでも二〇%そこそこなんです。こんなときに、もしここで二〇%の輸出の伸びを期待するといたしまするならば、最低五%ほどはいわゆるGNPを伸ばさなければいけないことになる。それだけ伸ばすとすれば、それに対するエネルギーは、五%余分に輸入する必要はないとしても、六、七%の弾性値と言われておりまするから三%ぐらい、二億七千万キロリットルのなお三%余分に油を入れなければならなくなるから、同じことになってくるのです。  どう考えてみても、もはやこの段階では三十ドル原油をできるだけ少なくして、見通しのごとく十年先には七五%の原油というものを半分にして、ほかに切りかえることを大胆に行う以外には、油の問題で東京サミットの大平総理の約束だけではなくして、お金の問題からまいってしまうという計算が成り立ってくるわけです。この点を一体どう総理はお考えになるのか、お答えいただきたい。
  213. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 そういう心配があるわけでございます。したがって、これに対しましてはまず節約を強化いたしまして、できるだけ単位エネルギーの効率を上げるという努力が最善の対応策であることは申すまでもないことでございます。  われわれといたしましては、雇用を維持しながら、景気を維持しながらどうしてもやっていくという基本の方針でございますので、石油の輸入につきましては、日本の信用力でできるだけ資金を確保いたしまして所要輸入量を確保しなければならぬと考えておりまして、過去の経験から申しましても、第一次の石油危機、ちょうどそのときに私は大蔵省をお預かりしておりましたけれども、毎日のように全世界からの借り入れに狂奔いたしまして、ジャパンレートという不名誉な汚名を着たこともございましたけれども、ともかくも世界の金融市場に当たりまして、必要とする資金の調達には成功いたしたわけでございます。それは、ほかならぬ日本国全体の持つ信用であったと思うのであります。大事なことは、私は、計算の問題もさることながら、日本国の信用力を大事に維持していくことであろうと思うのでございまして、いま政府が立てておりまする経済目標というものの達成にできるだけの努力を結集いたしまして、いま塚本書記長仰せのような難問に対応していく努力が大切でございますし、また、その努力を通じて私はいま提示されている問題の打開ができないはずはないと考えております。
  214. 塚本三郎

    塚本委員 できないはずがないとわれわれも信じております。しかしながら、来年はほとんどゼロになるという心配がある。そのときにどうするかということについて、まさに各国に対して金を借りまくればまた日本の信用が実は失われるという御発言がありました、そのとおりだと思うのです。この実情を、総理日本国民全部に知っていただかなければならぬと思うのです。世界で二番目の金持ちだ、日本人は外国へ必ず一番大金を持っていって有名ブランドに押しかけておる、いまだ日本は大丈夫だ、こういう空気があるのです。だが、ことしで日本はゼロになるんですよ。そういう心配がある。これからの国民の努力によってはこうなる可能性もあるというだけだと思うのです。節約を一生懸命しなければ大変ですよ。それでもろうそくで生活をするわけにまいりませんから、そのときにどうするんだといったときには、代替エネルギーとして石炭を入れるのか、あるいは原子力はいま厳しい御意見がありましたが、これからそれを守っていって、いわゆる政府のような計画をしようとするならば、御承知のとおりいまの状態の倍の設備をふやさなければ、十年先にはできないという見通しも立っております。  まあ聞いてみますると、いま十キロワットですかの電力を起こすのに二十円のコストがかかるけれども、原子力ならば二円で、十分の一だ。しかし、いまの環境状態から道路から学校から港まで、会社はいわゆる条件としてつくらさせられる。したがって、いわゆるコストが十分の一の原子力でも、実際には半分の十円になっておる。いや、それでもいい、安全にはかえられない。それでも三十ドルの油に比べたならば半分でできる。それならば電気料金も半分に下げることができるではないかということ等も国民の前にきちっと説明をして、さすれば二百億ドルの油代金が、原子力に切り変わったときには、全部するわけにまいりませんけれども、その部分だけは半分になるのです。しかも、そのときには学校も道路も港も付帯的によくなるんですということをきっちりと説明をして、それでいかなかったら日本の国はこうなるんだということを、インチキの計算で値上げをしようなんというようなことでここでしかられて、長官が言いわけをするようなみっともないことをしなさるな。とにかく現実に日本のあるべき姿を国民の前にきちっとしていただいて、そうして、おれたち生活と産業と雇用は来年はどうなるんだということをきっちりと示していただかなかったら政府じゃないと思うのです。逃げの答弁だけならば、私は普通のお役人様と同じことだと思うのです。政を行う人の姿として、来年はこういう厳しい状態になります、油の問題がお金の問題と輸入国の問題で限界に来たんですということをきっちりと国民政府責任を持って知らせる。それでいけないならば、きちっと責任をとっていただけばいいじゃありませんか。それが指導者というものの姿だと思います。その決意のほどを伺ってみたいと思います。総理
  215. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございます。したがって、こういう流動的な厳しい内外の環境でございますけれども政府としては五十五年度の経済はこういう展望を持っておるということを、去年の暮れに予算の編成と同時にお示しをいたしたわけでございます。これにつきましては、いま塚本書記長仰せのエネルギーの量並びに価格につきまして一応の前提を置いて考えておるわけでございまして、それに大きな狂いがなければ、国民と一緒に努力すればこの目標は達成できる。それにはもちろんいま御心配の国際収支、経常収支が九十一億ドルの赤字という来年度の見通しを立てておりますことは御案内のとおりでございますが、こういう展望を持って経済運営に当たります、そして御審議をいただいておるわけでございます。この国会の御審議を通じましてこの経済の見通しにさらにみがきをかけまして、運営上周到な配慮をしていかなければいかぬと考えております。  それから第二に、電気料金につきましても、言いわけばかりで困るじゃないかということ、仰せのとおりでございます。われわれといたしましては、国民に対しまして、こういう理由で、こういう根拠でこれだけお願いしなければならぬという確たる根拠を持って御協力をいただくだけの用意でこの改定には臨んでおるつもりでございます。
  216. 塚本三郎

    塚本委員 しかと決意を固めて、国民に不安のないように御努力をいただきたいと思います。  次に、行政改革について御質問いたします。  昨年秋の総選挙は、一般消費税をやめ、そのかわり行政改革によって政府みずからが節約をいたし、納税者、国民の立場に立って、いまこそ徹底した綱紀粛正と行政改革の断行をせよというのが国民の審判であったと受けとめているが、総理はそう思いませんか。
  217. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国民の総選挙を通じての審判でございますが、仰せのように、当時吹き出してまいりました行政綱紀の弛緩、不正経理状態等の問題に絡みまして、国費のむだ遣いの是正あるいは行政綱紀の粛正、政治倫理の確立ということに対する強い国民の怒りと願いが総選挙を通じて示されたことは間違いないと受けとめております。
  218. 塚本三郎

    塚本委員 総理、過日総理が語られたと報道されております、肉を切って骨に達する改革と言明されましたが、その心構えはいまも変わりませんか。
  219. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いまも変わりませんし、今後も終始変わらないで不断に努力してまいるつもりです。
  220. 塚本三郎

    塚本委員 私が心配いたしますのは、こうなったから、総理は時の流れとして、この風が静かになるまではそう言わざるを得ないからいたし方なくおっしゃっただけではないかと、御無礼ですけれども疑っております。  昨年の二月五日、本委員会におきまして総理は、「行政府の諸君は、みんな生涯をその役所にゆだねておる方々でございまして、名誉、浮沈を、運命をかけておるわけでございますから、非常に真剣でございます。したがって、政治家が軽々に改革なんかに乗り出して、これは勝負がつくはずはございません。役人の方が強いのです。」役人の方々は笑ってみえるかもしれませんけれども、と語っておられます。それをしも押して、総理はその命運をかけてやる気がおありでしょうか。私は、いまの進み方を見ておると昨年の二月五日の御発言が本音であって、静かに、いまマスコミを中心とする行政改革のあらしの過ぎ去るのを身をひそめて待っておいでになるような気がして仕方がありません。  なぜこんなことを申し上げるかといいますると、行政改革というものは、宇野長官、あなたが責任を持ってこれは切らなければならぬとしたならば、あなたが主体性を持って切るのを行政改革と言うんじゃありませんか。切るものを出してくださいなんと言って、血の出るようなものを持ってくると思いますか。それを総理がバックアップなさってこそ肉を切って骨に達するということですが、長官どう思いますか。
  221. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今回の行革では、総理みずから四本の柱を立て、さらにはその前に定員管理、それに伴う定員削減、こういう柱がございますから、五本あります。恐らくいま書記長がおっしゃったのは、特殊法人百十一あるが、去年の暮れにおまえは各省庁に任したじゃないか、こういうふうな仰せだろうと思いますが、いろいろ方法はあったと思いますが、私はその方法をあえてとりました。なぜかならば、今日まで臨調を初めあらゆる機関、あらゆる政党、あるいは各内閣におきまして特殊法人の統廃合は常に話題になっておりましたが、残念でございますが、シュプレヒコールのようにやろうやろうということだけで、実は手形は発行したが日付が書いておらなかったという特色は御承知のところだろうと思います。  したがいまして、こうしたことを考えました場合に、どの法人が問題法人であるかということは各省庁が一番よく知っておる、これがまず第一点であります。だから、私はさような意味で一つの基準を示しまして、各省庁から提出を求めました。もちろんこれで私は満足はいたしておりません。したがいまして、近く私みずからの調査に基づくところの見解によりまして第二の案を提出したい、かように思っておる次第であります。
  222. 塚本三郎

    塚本委員 総理大臣、どれがむだなところであるかということを各省庁が一番よく知っておるとおっしゃったけれども、それだったら、おれたちはいままでむだをやっておりましたと言って自分で切るようなことがあり得ましょうか。理屈はあなたがおっしゃったとおりですけれども、それは総理が行管庁長官をしてきちっとやらせるんで、任せるんだったら中学生に数合わせをさせておけばいいじゃありませんか。あなたほどごりっぱな方が、これは評論家でも、今度の大臣で一番りっぱなのは宇野さんだと言っているでしょう。そういう方が、一番よく知っておるなんて恥ずかしいことをおっしゃったらだめだと思うのです。やはりみずからがばしっと総理の権限を盾にとって各省大臣に要求をなさることが行政改革だと私は思いますが、どうですか。
  223. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 さようにいたしたのです。したがいまして、各省大臣とも十分にいままでの経緯を踏まえまして交渉いたしております。もちろん御承知のとおり、第二次大平内閣が発足いたしまして、総理の御指示どおり予算編成時に行革案を出せというまでは五十日しかございません。その間に四本の作業というのは、各省庁に対しましても相当厳しく臨まなければできなかったはずであります。後ほど個々に申し上げますけれども、さような意味で、各省大臣も就任早々ではございましたが、非常に協力をしてくれました。私も各省大臣とかねての案どおりにひざ詰め談判をいたしまして、そしてここに十八の法人の削減ということをやった次第でございます。だから、これで決して満足しておらないということは申し上げておるわけでございまして、続きまして第二弾を撃ちたい、かように存じておるところであります。
  224. 塚本三郎

    塚本委員 決めておいて、そしてそれまで、宇野さんが三年から五年ぐらい行管庁長官をおやりになっておられれば私は信用いたします。ところが、大体一年でおやめになるから、そうすると全部残って——これは三十九年の勧告案ばかりですよ。三十九年といいまするともう十六年たっておるじゃありませんか。これをまたあなたが持ち出しただけのことじゃありませんか。この姿一つを見ても、あなたらしくないぞと申し上げたい。各役所に任せておけば、天下りのうまみのないところと労働組合の抵抗のないところだけを持ち出してくる、こんなことだれが考えたってみんなすぐわかることじゃありませんか。そんなこと宇野さんがおわかりにならずにおやりになっておるはずはありません。私は、これは総理ががっちりとバックアップをなさらぬからだと思いますが、総理、どうでしょうか。
  225. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 行政改革というのはなかなかむずかしい仕事でございまして、これまでも歴代の内閣が試みてなかなか成功しなかった問題であることは、塚本さんも御承知のとおりでございます。今度われわれがっくりました五十五年行革案というようなものは、あなたがおっしゃるように必ずしも満足すべきものとは私も考えておりませんけれども、まずこれを仕上げていくことは行革の第一歩として評価していただいていいのではないかと考えておるわけでございまして、これを仕上げながらわれわれは第二の案を考えていく、行革は不断のわれわれの課題でなければならぬと心得ておるわけでございます。
  226. 塚本三郎

    塚本委員 五十五年に廃止を決められたのはこどもの国協会、オリンピック青少年センター、日本学校給食会と学校安全会の統合、中小企業共済事業団と振興事業団の統合、こんなものでございますね。考えてみると、こどもの国と子供が来るわけです。オリンピック青少年センターと青少年が来るわけです。学校給食会、学校安全会と学校が来るわけです。子供のものばかりで、文句を政治の舞台で言えない人ばかりを切ったというふうに見えてしまうのですね。まともにおやりになった漁業共済基金なんというのは、役員かと思ったら全職員合わせて五名。これで一つ切ったと宇野さんは数の中に入れるのですよ。こんな小細工をやるよりももっとずばりずばりと、私ども民社党が提案しておりますように、少なくとも百十一の中で二割ほどは三年のうちに切りますというふうにお約束なさったらどうでしょうか。これだけ国民が物価高とか税金が高いとか、そして、政府もまた行政のためのお金が足りない。使う方の政府みずからが、納める国民あるいは民間企業の立場になって節約をしなさいと血の叫びを続けております。私も本委員会においてこれで三年目、毎年叫び続けてまいりましたが、今日同じことを言わなければならぬことを残念に思っております。私はまだ幹部と相談しておりませんが、この特殊法人百十一のうちで二割ほどをずばっと三年のうちにはなくすとお約束なさるならば、民社党は予算案に賛成でもしようかと言いたいぐらいの腹でございます。国民のためにはそれぐらいのことをみんな期待しておるのじゃないでしょうか。  総理、うんと大胆におやりいただかなかったら、民間がどんなつらい思いをしてぜい肉をとっておるかということの立場に立って、お役人が強いことも、現在の仕事に誇りを持っているから抵抗してなかなか政治家の意にならないことも私は承知しております、しかし、にもかかわらず納税者、主権者国民の立場に立つのが行政改革であり、それが肉を切って骨に達するほどの行政改革だと思います。総理、もう一度その点の決意を伺いたい。
  227. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 各機関ともそれぞれ法律に基づいて設立されて、使命を持って、誇りを持って仕事をしているわけでございますので、いきなりばっさりやめさすというような乱暴なことはなかなかできないことでございます。そこが行管庁を中心として各省との話し合いの上で、年次計画をもちまして整理計画を立てていっておるゆえんなんでございます。  仰せのとおり、これでは十分でないこともよく承知をいたしておりますし、民社党に大変強く御鞭撻をいただくことは大変ありがたいことでございますが、政府といたしましても鋭意この五十五年行革案、せっかく決めましたことを着実に行ってまいりますが、同時にこれで仕事終われりだとは決して思っていない。先ほど申しましたように不断のわれわれの仕事といたしまして、行政の節減、簡素化というようなことは鋭意進めていくつもりでございますので、今後とも十分御叱正、御鞭撻をお願いいたします。
  228. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 二割という説はかねて民社党の御熱望であることは私もよく承っております。百十一の二割は二十二で、理屈を言うわけではございませんが、一応第一次として十八までやったということは、私はかなり努力をした、本当に不眠不休でやりました。その点はお認め願いながら、今後まだまだありますから、そうした面におきましても私は十二分に御趣旨に沿っていきたいと思うのでございます。  また、こどもの国と、子供ばかり相手にしたとおっしゃらないで、民社党の案にも、こどもの国は民間に移した方がいいじゃないかというのがちゃんとございましたし、私もそうしたことも尊重しながら、各政党がお出しになっておられますのを一回比較検討していただくとわかるのですが、大体やったつもりです。  残っておるのには、地元が反対というのが非常に多うございます。したがいまして、これは私が足で出かけていって、地元が那辺に反対されておるか、それを究明をして、そしてもちろん地元のニーズにこたえながら統廃合を進めたいと考えております。
  229. 塚本三郎

    塚本委員 総理の御答弁の中で、やめさせるわけにもいかないというような御発言がありましたけれども、誤解を避ける意味で申し上げておきますが、これは申し上げなくともおわかりのはずで、私ども民社党は首を切れと言うているのじゃないのです。過去におきまして、五年間に十二万八千人の方がいわゆる自然退職をなさってみえるんです。その十二万八千人の自然退職の補充を半分になさったら、これでばさっと二割ぐらい、二割とまでいかなくても相当数、一割近くはいくはずなんでございます。年に大体四%ずつやめていくのでしょう。そのやめていかれる補充を二%ずつにとどめていくならば、五年間かかれば一割になるじゃありませんか。地方公務員まで合わせたならば五百万人というお役人様のうちで、五年間にそれで五十万人はさっとなくなるのです。一人でも首切れということを言っているのじゃないでしょう。おやめになる人の補充を今度半分にとどめなさいと言っているだけなんです。  しかし、それをするためには配置転換は当然です。これは民間の企業だって当然のこと、子供さんの学校のためにも、言うといろいろあります。しかし、それをやらなかったならば主権者に対して申しわけないじゃないかということを私は言っておるのだから、民社党は行政改革というといかにも役人の首を切れと言っているように宣伝される向きもありますけれども——悪いやつは切ったらよろしい。しかし、普通まじめにやっておいでになる人たちに対して、そんなことを主張したことは私たちは一度もないのであります。宇野さんは三万八千人やめさせると本会議の春日代議士への答弁でおっしゃったけれども、三万八千人本当にやめてもらいますかと聞くと、従来は補充の方が多かったのです、今度はそうならないようにいたしますと、こうなんでしょう。これでは行政改革じゃないのです。  切ることが目的じゃないのでしょう。経費節減だから、いわゆる役所がやっていなくてもいいような仕事を切ることが大事なんですよ。こどもの国協会、りっぱにやってみえるのです。五億からの収入があるのです。給料は一億七千万でいいのでございますから、優良法人なんです。また、払い下げてもらえば三十万坪という国有地がついておるのでございますから、どこが引き受けられるか、くじ引きでもするか、よほど利権を出さなければもらえないだろうというほど優良なんです。これで一つ削ったと、こうなんでございます。  私たちは、経費がかかって仕方がない、しかもむだな仕事と思うものを節約してくださいということでございますから、そんなこと宇野さんおわかりにならぬはずはないのです。今度合併になりますところの日本学校給食会と安全会の問題は、一つになったことは事実なんです。だが、一つになったために、両方で国から得ておったところの補助金なるもの、お金なるものは、三十二億のやつが三十三億どれだけになって、焼け太りだと各新聞は一斉に書いておりますよ。どうしてそんなものを温存させなければならぬのでしょうか。  経過から言いましたら、御承知のとおり脱脂粉乳を扱う窓口をつくっただけでしょう。なぜお役人様が流通のところにまで口を出して、政府は補助金を出して、業者をいじめて、どうしてそんなばかなことをなさるのですか。一つにすることよりも、これをなくして、そんな金があるならばそれだけの物資を買い付けて、子供にただでそれだけでも配ってあげる方が、だれが考えても理想的ではございませんか。生産業務では、採算の合わないところに政府が企業として補助金を出してやっているところがありまするが、いわゆる流通の、仕事にまで金の補助を出して、しかも文部省という、一番銭こには疎い人がこれをやっているのですよ。どうですか。
  230. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 二点ございます。  最初の、二%を補充しない方がいいじゃないかというお説でございますね。大体今日、毎年毎年公務員九十万のうち四%ばかりやめる人がおられますから、したがいまして、半分を新規採用せずに補充しなかったならば、二%である。五年掛ければ、ちょうど一割になる。したがって、九十万の一割、すなわち九万、すぐ首を切らずに済むではないか。これは塚本書記長のお説とちょうど同じような説を、行管の監理委員も申しておられます。ただいま鋭意検討いたしております。  ただ、一つの問題がございますのは、現在は定員でがっちり固めておるわけであります。その定員の中においてやめていく人、だから補充する、こういうふうなことになっておりますが、現在やめる人が、私は商売を始めたいからやめるとか、あるいは田舎に帰りたいからやめるというふうなことならば結構でしょうが、大体のところ、肩たたきにおいてやめてもらっておるというのが実情でございます。だから、本来ならば、各省庁の人事課長がはっきりした意思を持って補充はしないというのならば別ですが、もしさにあらずんば、定員があるのだから、肩たたきをしてやめさせたのに補充をしてくれぬというのだったらどうなるだろうということを、私は、はっきりもう少しく突きとめて、そしてやったはよいが肩たたきはしなかった、だから補充がなかなか四%にも達しなかったということのないように、いまどういうふうにすればよいか、実効を上げることができるか、これを伊東房長官を中心に今日検討いたしておるということもひとつお含み賜りたいと存じます。無視して、そのままこれはだめなんだとは決して私は申し上げておりません。  二番目は、いま給食会と安全会が焼け太りじゃないかということをおっしゃいましたが、過般の国会におきましても、私は、統廃合に関しましては焼け太りにはさせませんということをお約束いたしました。では、予算上一億円ばかりふえたじゃないかとおっしゃいますが、前年より約二億一千万円の増額でございますが、これは焼け太りではございません。御承知のとおり、学校災害に対する共済がございますから、その給付金を補給しなくちゃならぬというので二億一千一百万円。また、職員が二百九十四名おりますが、これもやはり公務員に見習いまして、五十四年度のベアをしてやらなければなりません。これが八千三百万円。合わせまして二億一千万円の増額で、これは決して行革によるところの焼け太りではなくして、当然増でございますので、この点だけは行革によって焼け太りさしたということはやっておりませんし、大蔵大臣もこの点にがっちり目をみはってやられたわけでございますので、お含みを賜りたいと思います。
  231. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣の手元で、合併して新しいビルまでつくろうとした予算要求をばっさり切られたのはみごととおほめ申し上げておきます。それは焼け太りにしようとしてやったのですよ。だけれども、マスコミがわあっと一斉に騒いでくださったものだから、あわてて切ったのです。  いま行管庁長官の御発言でおわかりのように、定員を改めなければこれは減らせないという。そんなことはあたりまえだと私は思っておりましたら、定員だけ持っておいて、そうして減らせと言ったって、こんなこと無理だと思うのです。     〔委員長退席渡辺(美)委員長代理着席総理、それはどれだけ減らすということが目的で簡素化するのだったら、いわゆる人と金を減らさなければならないということだと思うのです。あるいはどうしても仕事があるのなら、それを民間の方に回して結構だと思うのです。そういうことをおやりになって定員をここで改めなければ、これは実行ができないということがわかりましたが、総理、それにも一緒に長官の後押しをして手をつけられるとお約束できますか。
  232. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 七千七百人というのは定員の削減でございます。それはそのとおり実行するわけです。それを、新規に業務量がふえましたり、学校ができたり、学級がふえたり、病院が新設されるとか、いろいろな関係で、どうしても定員をふやさなきゃならないものが現実にございます。従来は、その補充の意味での定員の増加というものの方が、削減定員より多いということもございました。そういうことのないようにやろうというのがいまの宇野長官の説明でございまして、私ども、ちょうど経済の成長期には、非常に気前よくいろんな施設をつくっていったわけでございます。各県に医科大学もつくってみたり、いろいろしてまいりました。そういったことで、どうしてもその進行に伴いまして定員が要るという事態がありましたが、一方において定員の削減計画を続けてまいりましたから、中央におきましては、御案内のように七千人くらいこの十年間に定員は減っておると思います。  そういう努力を重ねましたが、今度はいよいよ低成長時代になりましたし、財政再建に入らなければなりません時代になりましたので、思い切った行革を加えて、相当実効が上がる、実のある行革の効果を生み出したいということで、いま進めておるわけでございます。
  233. 塚本三郎

    塚本委員 ああ、そうか。そうしますと、定員はそのとき減らしておいて、また必要でふやしていく、こうやって一々やるわけですね。
  234. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 御承知のとおり、国家公務員は、現業、非現業合わせて約九十万、そのうちの五十万が一般職、こういうふうにお考え賜りまして、この五十万に総定員法があるわけでございます。これは国会の御審議によって成立しまして、世界でも本当にりっぱな法律だと言われております。これで相当抑えております。片一方の現業の方には総定員法はございませんが、予算のときに予算で抑える。あるいはまた、私の行管庁におきまして、定員査定のときに抑える。こういうふうな姿で、ことしから第五次定員削減計画が始まりますが、今日まで先ほど仰せのとおり十二万八千人、これだけ実のところは抑えてまいったわけであります。(塚本委員「十二万人戻ったのね」と呼ぶ)ただし、いま総理がお答えのとおり、学校あるいは病院等々によりまして、十二万人ほどが戻りました。しかしながら、純減は八千人でございます。  だから、今回の三万七千名を合わせますと、この間、春日前委員長にもお話を申し上げましたがへ大体第五次にわたりまして約十七万名、これだけの定員削減をいたします。だから、ことしは実はこの定員をうんと抑えまして、なおかつ新規需要は、これはやむを得ません。やはり新しい政策をしようとした場合には、どんどんと新規需要がございましょう。外務省だって、いまこのような世界情勢のときでは人が足りない。これもやはり補充してあげなくちゃいけません。しかし、この新規需要も抑えまくって、そして削減数とその差を純減に持っていこうとしたのがことしの五十五年予算編成でございまして、御承知のとおり、初めて七百七十名純減になったんです。     〔渡辺(美)委員長代理退席委員長着席〕 昨年は、この予算査定のときに、三千八百名からプラスになったんです。こういうことを改めてまいります。そして、総数においては常に定員で抑え、新規需要を抑えて、なおかつ総数は縮減する、これが今次内閣姿勢でございます。
  235. 塚本三郎

    塚本委員 それじゃ宇野さん、改めてもう一度聞きますけれども、三万八千名減らすというのは、新たにふえずに、トータルで三万八千名減らすということであって、これは減らすんだけれども、また別に需要は出てくるからふえるということは別の話ですか。もう少しはっきりしてください。
  236. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 御承知のとおり、定員削減計画の三万七千名でございますが、これはこれで、現業、非現業を問わず、全部抑え込んでしまいます。減らします。したがいまして、何々局も減りますし、あるいはまた何々課も減るかもしれません。  この間、前委員長にお答えいたしましたが、三万七千名は、九十万人の公務員からいたしますと四・二%でございますが、一般職におきましては一〇%定員を削減されるという、苦しいところもあるということも御了解賜りたい。そのほかに、これとは全く別に、また何々県に国立大学をつくった、付属病院ができた、だから千名要る、こういうふうなやつも、新しいニーズがあるわけでございますから、それはそれで極力新規需要を抑える。これを行政需要といいますから、それはそれで抑える、定員は定員で削減する、こういうことでございます。
  237. 塚本三郎

    塚本委員 そうしますと、結局のところは、黙っておればどんどんふえていくやつを、ふえる分だけはこちらで削るから、全体でそうふやさないことであります、そしてとんとんになるか、それより若干減るように全力を挙げて努力いたします、こういうことですね。国民はこれをごらんいただいてがっかりするだろうと思うのですよ。三万七千人削減、こう出るから、トータルで三万七千人減ると思っているのです。  文部大臣、さっき申し上げたように、もうお役所がああいうような流通業務なんか廃止して、そういうのをいわゆる民間にしてみたら民間も喜ぶのですから。そうして、もう役人がいつまでもぶら下がっていないで、そういうところをばっさりばっさりと民間に渡して、独立採算でおやりになって、もう少し子供の給食に有利にしてあげたかったならば、その分だけ農林省で余って困るというミカンでも買い付けてあげて、それをそのまま地方の給食会に配ってあげる。こういうふうにすれば一〇〇%その金額三十二億なら三十二億、この半分かもしれませんけれども、その分だけ直ちに子供の給食の内容の改善になって、役人の給料といったそういうことはなくて済むのです。だから、これをばっさりお切りになったらどうでしょうか。それだけでも宇野さんが苦労しているところを助けてあげたらいかがでしょう、どうですか。
  238. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 御存じのとおり、この学校給食会はいま問題になっておりますが、これは最初は確かに脱脂粉乳の問題で仕事があったということでございますが、その後米の給食で米の扱い、小麦粉の扱い、それから海外から輸入いたします輸入牛肉の問題、こういうふうに、片一方で一つの統制的になっております物資を受け取って、そしてそれを配給していくという、その業務がどうしても残るのです。  いま申しましたように、その業務自体をどういうふうに改善していくかという問題はあると思いますけれども、しかし、その業務自体はどうしても残さざるを得ない。こういうことで、両方を合併いたしました定員の縮減でありますとか、それから役員の縮減でありますとかいうことには努力をしてまいるつもりでおりますし、またそういう計画になっておりますが、学校給食会の機能自体をここで全部……。
  239. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、私の言っているのは日本学校給食会なのです。各県の学校給食会が独自でおやりになっているのだから。アメリカから下さったところの脱脂粉乳の場合は、あの当時統制だったから仕方なしにつくったのでしょう。いまはもし扱おうとするなら、統制はお米だけなんです。お米なら府県に学校給食会があるのだから、何も東京で集めてやってみたり、かん詰めをやってみたり、サラダオイルまでやってみたり、スパゲティまで、そんなものを仕入れて配るようなことをやるからかえって高くなってしまうじゃありませんか。あなたは御存じないのでしょう。そんなことをやらずに、もし必要があるとするなら牛肉の輸入だけ、これは畜産振興事業団が全国にありますからこれがやればよろしい。これをきちっと切るだけだって二百人浮くはずでございます。そうなさったらどうです。そうすれば、それだけでもばしっと実質的に浮くじゃありませんか。その金だけはいわゆる各学校の中の給食設備の補助金に使ってあげたらいかがでしょうか。これはいわゆる流通業者の金ですよ。こんなことをなさるものだから、役人だからこれは安いなとか、農林省から頼まれるとがばっと買うのですよ。ところが、いつのまにやらがばっと買ったらその次からすっと安くなる。これは採算が合わないから、府県だって受け取らないのですよ。いつまでも持っておるうちに中身が腐ってきて、豚に食わせるというようなことがときどきあるのですよ。文部省の一番かたいお役人様に、利にさといことなんかやらせるとこういうことになるのです。これはやはりきちっと削る、そういうことをおやりになったらどうですか。これ一つでも私はここに出た価値があると思うのです。いかがですか。
  240. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 いま私が申し上げておりますのは日本学校給食会の問題でございます。これは四十九名の定員でございますからそう大きなものではないのです。そこでやっております仕事は、いま申しましたように、米でありますとか、それから小麦粉でありますとか、そういうものをやっておるわけでありまして、これはやはり窓口を一つにいたしませんと、それに対します補助金もございます。そういうことでございますから、その点でこれをよすわけにはいかないのです。
  241. 塚本三郎

    塚本委員 よすわけにいかないと言ったって、あなたは補助金と言うけれども、地方のいわゆる給食会の補助金や学校の設備に対する補助金なら私は賛成なんです。  いいですか。商社と同じように買い付けてここへ送るだけなんですよ。その集配所をつくってみたりするような補助金に使うのはもったいないということなんです。だから、大体文部省のお役人様がこんなことに手を出すことが間違いであるのに、なくならないように、なくならないようにといって、脱脂粉乳がなまの牛肉に変わっただけならいいけれども、今度はお米になり、小麦になり、肉になって、サラダオイルになり、スパゲティになりで、いま二十四品目ですよ。まだこれを拡大しようとしている。だから、いままで一生懸命やっておる業者が、今度三億の補助金がまた来ましたなんということになると、業者自身がやっていけなくなる。役人の仕事だけは非能率でふえていってしまう。こういうような形になってきているので、その補助金の金だけを学校の給食設備の方に補助をしなさいとか、あるいはせいぜい流通にやるのだったら、各県におけるところの給食会の程度にしておきなさい。何も文部省直轄で日本給食会二百何十名、こんなものを持っていなくたって、統一する必要があるなら、全国のそういった人たちの中から一人ずつ代表を出して、連合会をおつくりになって、そうして自分たちの費用でやっていけばいいじゃありませんか。日本じゅうそれをみんなやっているでしょうが。子供の施設のために食い物にしなさんな。もう一遍伺います。答えてください。
  242. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 もう一度お答えをいたしますが、日本学校給食会の扱っております問題、なるほど油とかそういうものもありますけれども、一番大きいものは小麦粉あるいは米あるいは輸入牛肉等々のものでございます。これはやはり一つの統一した窓口で、これらのものには補助金があるわけです。そういうことで、そこで統制をとった形で配付をしていくという仕事だけはどうしても残るだろうと思います。そういうことで、この仕事は残さしていただきたい。
  243. 塚本三郎

    塚本委員 総理、お聞きのとおりなんです。こういうようなものさえきちっと整理なさって、このお金を子供の設備のためや、あるいはときどきの果物くらい余分につけてあげる金に回してあげたならば、どれだけ子供が喜び、お母さん方が助かるかわからない。今度健康会という名前になさろうとするならば、ぜひぜひそういう形にして、そのお役人様だけは別の方に配置転換、首を切れというのじゃないのです、配置転換をして、実質的にこの金を子供のために使っていただきたい。五年間も抱えておって、仕方なしに、そうかといって、会計上捨てるわけにいきませんから、地方の給食会に押しつける。地方の給食会が調べてみたら、普通の菌と比べて百倍の菌があったというような形が報告されてきているのですよ。おかしいじゃないか。お父さん、きょうの給食はおかしかったよといって子供から折々報告されるのは、こういうお役人様が安いときに買い付けたけれども、それがうまく下に受け取ってもらえなくて、処分に困って、二束三文で出したものがそういうことになってくるのですね。業者ならば、御承知のとおりもうかるときもあれば損することもあって、きちっと会計処理ができますけれども、役所だとそれができないのですよ。だから、流通においてはこういうことは根本的に無理なんだから、一つになさったのを契機にして、二十四品目のものを、大臣がおっしゃったように、それならば牛乳と米と小麦と、事業団から配給になる肉、これくらいにして、あと二十品目は切ります、そうして、民間のほかと競合してやっているのですから、その競合しておるものだけを切りますとおっしゃるだけだって三分の一で済むと思うのですが、どうでしょう。それだけ言っていただければ、何品目と私は言いません。大臣、どうです。
  244. 谷垣專一

    ○谷垣国務大臣 扱い品目につきましていろいろ検討を続けることは必要だと思っております。しかし、先ほど申しました大きな品目は残しておかざるを得ないのでございまして、この点はひとつ御了解願いたい、かように考えております。
  245. 塚本三郎

    塚本委員 こちらの御発言もありましたけれども、安くなるものも確かにあります。補助金を出しておりますから、一括してごそっと買うときには安くなるのです。しかし、それより安くなると受け取ってもらえないのです。そのときに、売れないから、受け取ってもらえないから、会計帳簿で処理ができないから、三年も五年も持っていて悪くなってしまう。これが役所の宿命なんです。だから無理だよと、こういうことを言うのです。よくその点を御理解いただいて、残さなければならぬものがあると力説なさるならば、主要四品目ぐらいになさって、そうしてそういう一般の扱っているものは、業者と補助金で競争なさったら業者だって泣きますよ。その点だけを指摘して、御検討を強く期待しておきます。  次にもう一つ、鉄建公団。これは、成田の問題は、おたくが廃線を、いわゆる凍結を決定なさったのにかかわらず、いまだにこれを行っておられるという話ですが、これはどうしてですか、運輸大臣。
  246. 地崎宇三郎

    ○地崎国務大臣 成田の高速線は、本来、成田空港のアクセスとして計画されたものですが、住民の反対でいまは中止をしております。現在千葉県で、千葉ニュータウン等を含めて、この線路の一部を使わしてもらいたいという話がありますので、検討をしております。
  247. 塚本三郎

    塚本委員 委員長であります田村さんが運輸大臣のときに凍結を決定なさったはずです。その凍結してないところをやったって、鉄道というのは途中がなければ、これは全然役に立たないんですよ。これは開通の見込みがあってやっているのですか、運輸大臣。
  248. 山地進

    ○山地政府委員 成田新高速というのが、成田の別のアクセスとしまして、成田のニュータウンを通ってつくる線というのがいま考えられているわけでございます。それで、成田の新幹線というものが成田線という国鉄の線を乗り越えて空港の方へ入ってくるわけでございますから、その成田線とそれから新幹線の交差点までをいま工事しておりまして、その線は、いま言いました成田新高速鉄道というのが考えられているわけでございますが、そちらの方に転用できる、つまり工事として手戻りしない範囲内で現在工事を進めておる、こういう実情でございます。
  249. 塚本三郎

    塚本委員 こんなのは素人でもわかると思うのですけれども、成田線とそして新幹線とで、それは使えますよ。使えますけれども、なぜ新幹線の工事をしなければなりませんかということです。普通の工事と新幹線なら、倍以上金がかかるでしょう。こういうむだなことをやって、鉄建公団を生き延びさせようとして国民の金が——新幹線はすばらしいスピードで、すばらしい設備です。それを在来の成田線につなぐ。それは、その上は細い普通のレールを乗せればいいのです。なぜそんな何倍もの工事をしなければならぬのですか。こんなばかなことをやっておるから、いつまでたっても減らないし、仕事がまたなくなってしまったら、今度中国へ総理がおいでになって約束したからしめしめと思っておるような声が聞こえてまいりますけれども、使えないことはないけれども、なぜ新幹線工事をやっておいて在来線につなぐのですか。  こんなむだな金を投ずるような、これは住民の反対等があったのだからこの着手には問題があると思いますけれども、それならかつての大臣がなさったように、凍結したら潔くそれはストップをして、そうして新幹線開通まで仕方がないから待つという形にしておいたらどうでしょうか。廃止されるところの、そういういわゆる事業団だとか特殊法人が往き延びるために、むだな給料だけならともかく、むだな設備と金をどんどんとつぎ込んでおるということが、私どもにはたまらないわけであります。東京から成田まで六十五キロ、これまでにすでに二百九十億円を投入しております。しかし、買収し終わったのは、二百九十億を投入したけれども一二%に満たない、こういう状態でしょう。すでに成田空港の地下にはりっぱな、御承知のとおり駅からホームができ上がっておると報道されております。しかし、こういう中において、これから見通しが立たないのになおかつどんどんと金をつぎ込んで仕事をするんだったら、借金だらけでいまは困っておるでしょう、政府は。そんなときぐらいはストップしておいて、もっと緊急な方向に回して、そうして仕事をしていただくことの方が必要ではございませんか。直ちにこういうものはやめて、つなぐんだったらそれに行かれるような工事をなさったらいいじゃありませんか。一つ一つつぎ込んでまいりますると、仕事はありますよ。ありますけれども、必要のないこと、矛盾しておること、私が言いまするのは、いわゆる国鉄と鉄建公団とを一つにするだけでなく、むだな仕事を切ることが一番大事なのです。これをおやりなさいと言うのです。行管庁長官、どうですか。
  250. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 鉄建公団に関しましては、私と運輸大臣が詳細詰めまして、そして決定をいたしましたのが、計画書に出ております、上越線並びに青函トンネル完成の昭和五十八年、他への「統合等を図る。」ここでございます。もちろん、いまの御指摘のとおりに、きのうもちょうど自民党の渡辺議員からもよい質問がございましたが、国鉄もやはりいま子だくさん、非常に困っております。鉄建もたくさんの子供を連れて、のこのこと統合していいか悪いか、これはやはり政治家としても政府としても考えていかなければなりません。五十八年ならば、ちょうどことしから三年先のことでございますから、したがいまして、その間に国鉄においてもやはり再建途上にあるからどうするか。また、鉄建においても、国鉄に統合するなら統合するで、どういうふうにするか、これを十二分に検討しようじゃないか。党にも諮りまして、党が中に入っていただいて、きちっと決めた案がいまの案でございます。  きのうもちょうど公明党からも同様の質問がございましたが、たとえば中国におきましては、わが国の借款におきまして鉄道建設が進められる。そのときには相当トンネルの仕事があろう。鉄建のトンネルの技術は世界一である。しからば、そのときに別の形態において、そうしたことに大いに国際的な協力をされてもいいじゃないか。だからいろいろな方法があるということを私たちは想定をいたしまして、他への「統合等」と、こう書いたわけでございます。したがいまして、その点は、運輸大臣におかれましても十二分にお考えの上で、今後五十八年をお迎えになる。また、これは一たん閣議決定をいたした次第でございますから、そのとおり実施をしていかなければならない、かように存じております。
  251. 塚本三郎

    塚本委員 そのとおりにいかれますよ。「統合」じゃないんだから、「統合等」なんだから、そういうふうに似たようなことをやれば、何とでもできるというのが閣議の決定なんですから。そうでしょう。わざわざ「等」と力説せられたのは、統合することもあるし、しないこともある、こういうことでしょう、日本語で言いますと。
  252. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 民営に移行ということをわれわれは考えております。決して、統合ができなかったならば、現在のまま、そのまま生き延びなさいという意味ではありません。民営移行ということであります。たとえば、世界からそういう話が来た場合、あるいは国内におきましても、今後民営でやれないことはございません。私は、そういう意味で、国鉄との統合並びに民営移行、そうした意味合いにおきまして「等」という字を入れた次第でございます。
  253. 塚本三郎

    塚本委員 ごりっぱだと思うのです。そのことを貫いてほしいと思うのです。あなたが五十八年まで行管庁長官をやっておれないことを、私は残念に思います。また、内閣がかわってももう一度——わが党内閣になったら、宇野さん、真っ先に行管庁長官にお呼びすることになるかどうか、なってもらわなければならぬと期待をするほどであります。  これはぜひそういうむだな、しかし、私は鉄建公団をどうこうするんじゃないんですよ。むだな仕事をやって、そうして国民の金をむだ遣いしなさるな、これが一番の問題です。だから、それが生き残ってりっぱなことをおやりになって、そうして世界各国からまで称賛されるなら、それはすばらしいことです。いま申し上げたように、開通の見通しがなく、わずか一二%しか用地取得の見通しがないのにかかわらず、五百億もあるいは六百億もこれからなお金をつぎ込もうとするようなばかげたことはしなさるなということを言っておるわけでございまして、それが在来線の安い、通るところのそれとつなぎますというような、そんなお役人さんの答弁を国民がお聞きになったら、それは国民としてもたまらないと思うのであります。先ほどおっしゃった決意を持ち続けていただきたいと思います。  もう一つ、米の検査官、これはあらゆるところで取り上げられておっても、なお、どうしたことか、宇野さんの出現が遅かったから実現できなかったかもしれませんけれども、なかなかしぶとく生き残っておるいわゆる役所であります。戦後の食糧難時代に、米の供出奨励と品質の検査に目を光らせた食糧Gメンがいまでも全国に一万三千人を超す勢力であります。東京支所と多摩支所とを抱える東京食糧事務所、三百十四人の職員、こういうふうになっております。しかも、米の検査は八千俵で多摩支所は四十五人、片や山形県の酒田支所は百二十万俵ですね。だから百五十倍ですか。八千俵で四十五人、山形県の酒田支所では百二十万俵ですから百四、五十倍の量だと思いますが、検査官の人員は三十四人で、四十五人に比べて三十四人、少ないわけであります。これでできるということは、いわゆる逆に言いまするならば百二十分の一しか仕事がないということです。にもかかわらず、なお東京の中においては三百十四人、こういう人たちを忙しいところへどうして持っていかないのでしょうか。  しかも、時間が少のうなってまいりますから結論だけ言いますけれども、米の検査などはもう農協に任せたらどうでしょうか。役人が一々おやりにならなくたって、農家と農協は誇りを持って検査をしておいでになるのだから、こんなところに一万三千人もお役人様を養っておかれるお金があるならもっと別の方に流用なさって、この組織を切ってしまうことが、この仕事を切ることが必要だと思います。いかがでしょう。これは行管庁ですか。
  254. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 本来の仕事はまた農林大臣からお答えがあると思いますが、行管庁の立場からひとつお話をしておきたいと思います。  御指摘のとおりだと思います。きのうもちょうど自民党の渡辺議員から同様の質問がございました。私は非常に卓見であると存じて傾聴いたした次第でございますが、今日まで歴代農林大臣の御協力を得まして、食糧事務所は、御承知のとおり町単位からございました。町には出張所というやつがあって、そして郡単位には支所、そして県には県で食糧事務所、こういうふうな構造になっておったのでございますが、今年度のこの行革によりまして町単位の三千カ所全廃と相なります。今回五十五やってしまいますので全廃と相なります。なおかつ郡単位の支所にまで手を伸ばしております。その間、私は過去十二年間に十二万八千人の削減があったという話をいたしましたが、米の検査員は八千人、これは純減でございます。それだけ協力をして農林省はやめてもらっておるという実績がございます。定員管理の面からいたしましてもこれは今後非常に大切でございますから、いま仰せのとおり外務省あるいは厚生省、労働省、各省庁間の厚い壁がございましたが、今回はその壁を取り除くための配置転換というやつを初めてやるわけでございますので、これによりましても相当数の方々が将来その方面において新しい国家公務員としての道を得られるであろう、こういうふうに考えておりますし、また、年輩者が多うございますから、この方々は極力何らかの道を講じてあげればいいのではないか、かように考えております。
  255. 塚本三郎

    塚本委員 過去において八千人減ったという話を聞きますと、先ほどのことを思い出すのです。十二万八千人おやめになって十二万人実は補充なさった、米のところだけ減ってもうこれで終わり、こういうことになる。もう全然やらなくてもいい仕事二万何千人を八千人切っただけで、まだ一万三千人残っておりますぞということと同じになるのです。だから、御努力のほどはわかりますけれども、三千かそこらと言ってみたって個所を切るだけのことであって、これで米の検査員が、いまおっしゃった何年間で何人減るかという個所でなくて、期限と人数をちょっと報告してくださいませんか。
  256. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 いまの八千人は、たまたま先ほど申し上げた削減したのが十二万八千、そして新規需要でふえたのが十二万、これでちょうど八千でして、いまこれとは別に、この中にも含まれておりますが、米の食糧事務所にかかわる方々に関しては純減八千という努力を、われわれもいたしましたし農林省も協力をしていてくれるわけでございます。  したがいまして、ことしは省庁間の配置転換はわずか二百二十人ぐらいにしかならないと思います。しかし、これはこの間も前委員長に本会議場でお答え申し上げましたごとく、いままでやれなかった突破口を開くわけでありますから、これを契機として大きな道づけをしたいという意味でございまして、したがいまして、農林省におきましても、もし仮に一万三千人いるが三千人で大丈夫だとか五千人で大丈夫だという数字を確実にお出しになれば、十二分に行管とも相談をいたしまして今後そうした計画を進めていきたい。しかし、あくまでも十二分に働いた方々には満足な道を与えてあげたいというのが私たちの気持ちであるということも、この際申し添えておきます。
  257. 塚本三郎

    塚本委員 鉄建公団の総裁せっかく来ておいでになりますから、いまの成田の仕事を含めて決意のほどを伺いたい。
  258. 仁杉巖

    ○仁杉参考人 昨年の暮れに政府の方針が確定いたしました。運輸大臣初め運輸省の方々からいろいろ御指導をいただいておりますが、政府の方針に乗りまして鋭意努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  259. 塚本三郎

    塚本委員 総裁ちょっとここで……。  行管庁長官から、五十八年になったら民間に移行することもあり得る、そして合併することもあり得る、生き残ることはあり得ないという代替含みのいわゆる「等」という言葉の解釈を聞きましたが、そのことをしかと腹に置いて、全力を挙げて後世に名の残るような鉄建公団の最後の仕上げをしていただきたい、そのことを強く要望しておきます。一言決意のほどを……。
  260. 仁杉巖

    ○仁杉参考人 政府の御方針に従いまして、混乱のないように処理してまいりたいと思います。
  261. 塚本三郎

    塚本委員 どうも御苦労さま。  農林大臣、行管庁長官は極力減らすということの趣旨でありましたけれども、農家の立場で見たときには、いまだに検査員がいるということは、おれたちの米の品質の管理について信用されていないんだなという気持ちがあるはずです。いまや量さえあればいいという時代でないことは申し上げるまでもありません。新潟県におけるところのコシヒカリだとか宮城県におけるササニシキ、みずから自慢して、その仲間が食べてくださいと言って自慢げにときどき私どものところにも送ってくださる。産地はわざわざ自分たちで商標をつくって全国に売り出し、宣伝までしてみえる。そのときに実は検査員が行って、これはいい、悪いなんということは御無礼なことだと思う。だから、この際はもはや農協に任して、そのお役人を農林省だけで使い切れなければ、先ほど行管庁長官のおっしゃったような総理大臣の指令をもとに、日本の役所なんだから横断的にどこへでも、必要があって定員をふやしたい、新規採用がなかなかむずかしいというところへ第二の人生を送るようにするために、この際全廃をして、農協からの信頼を獲得すると同時に行政改革に対する大きな道を開いていただくわけにはいかないか。新進気鋭の大臣として決意のほどを述べていただきたいと思います。
  262. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 きのうもお答えをしたのでございますが、一つは、この米の検査というのは、現在政府が買い上げておる米につきましては、一応会計法上政府が直接購入するものについては国が直接検査しなければいけないという問題が一つ残っていることは、どうしてもこれから考えていかなければならない問題かと思います。  それから、いま一つは、何とか農協に少しでも御協力をいただいて、いまも実は相当農協に協力してもらっているわけでございまして、先ほど御指摘のような山形などでは、人が足りないものですから農協に補助してもらっているわけでございます。そういう意味において、農協でできるだけこれから後も協力していただきたいと思っております。  そこで、私は、しかしどういう方法があるのか。一番問題は、いままで袋にしたものから一々検査をしているところに非常に問題があるんじゃなかろうか。これをバラ検査なりあるいは抽出検査なり、こういう形をどんどん進めていけば、結果的に人間は減ってまいりますし、そういう方向を進めていきたい。いままで試行的にやってもらっておりましたけれども、五十五年度からはこれを本格的にやっていきたい。大体五十四年米穀年度は、たしか四十八万八千トンぐらいをやったと思うのでございますけれども、五十五年度におきましては、いまのところの計画では約百三十万トンぐらいをひとつやってみたい。そして、これを一年一年思い切ってふやしていきたい。そうなれば、それに要する検査の手間は非常に助かるわけでございますから、結果的に人間が減っていくことになるのではないか。やはり仕事の方を合理化をしていかないことには、逆に人を先に減らすというわけにもいかないと思いますので、やはり仕事に応じて人を減らしていく、こういうことをやりたいと思っております。
  263. 塚本三郎

    塚本委員 私は反対なのです。仕事をなくしなさいと言っているのです。いまだって、先ほど農協からお手伝いいただくとおっしゃったように、一人に対して六人も農協から手伝いに来ているのでしょう。何も農協の人を監督者がましく監督なさらなくたって、自分たちが悪かったらもう食べていただけなくなるんだといって、わざわざレッテルまでつくって、日本じゅう、あるいは市場にまでみんなでチラシまで配って宣伝なさっているほど品質に対する競争が始まっているときに、これが悪いぞ、これがどうだなんということをやる、その仕事自身をなくしなさいということなんです。合理化するだけじゃ遅々としてなかなか進みませんし、現に、実際立ち会っても、農協に手伝わせておるのだから、これをぷっつりと農協に任せてしまったらどうだろう。農協も、私たちにやらせてくださいという声の方が強いのですよ。だから、合理化の方法をお聞きするのではなくて、その決意がとれるかとれないかという御返事を伺いたいと思います。
  264. 武藤嘉文

    武藤国務大臣 最初に申し上げましたように、やはりその問題については、国営検査を全くなくすかどうかという点については、私は会計法上の問題があると思います。そこで、将来の問題、農協にある程度任せるにいたしましても、最終的な責任はありますから、私がいま食糧庁と話をしておるのは、いまの検査官を大体二分の一くらいにできないか。それはこれから検討しておるわけでございますから、できるだけ早いうちに結論を出したいと思いますが、その半分にする計画をひとつ立てたい、こう思っておるわけであります。
  265. 塚本三郎

    塚本委員 これも五年も八年もかかったのじゃ何にもならないと思うのですね。全廃するのじゃなくて半減するのだったら、二年とか三年とかということをやっていただかなければ国民は納得しないと思いますから、その点、その計画だけでも今国会中にはっきり出していただく。それはできるだけ近い機会にということで希望を申し上げておきます。  以上、行政改革につきまして私はなお触れたいと思いますが、ほかの問題等もありますので、これぐらいにさせていただきたいと思いますが、総理、この際、すでに多くの先輩から述べられておりまするように、行政改革に当たっては大胆に行っていただくと同時に、お役所の天下りと渡り鳥、これは厳に戒めるとおっしゃってみえましたけれども、先ほどの料金値上げの問題にも絡んでまいりますが、すべて通産省はどこ、大蔵省はどこという自分たちの天領のごとく、老後の天下り先を放さないという形になってきております。いろいろなことをおっしゃるけれども、最後にはそういう形になる。今度だって切られたところを見てみますると、天下りの必要のないところだけを切っておるのですよ。こどもの国だって理事長さんは非常勤で、天下っても一銭の給料もない。日本給食会だって合併なさったのは、理事長さんが私立大学の学長になってしまって、七月以来欠員になっておるから全然心配ない。言ってみるならば、われわれ政治家はいろいろとこき使われて利用はされますけれども本当はお役人さんたちの、あそこにおいでになる方たちの天下り先のために、必死になってあなたたちに逃げの原稿を書いているだけじゃありませんか、私はそうとしかとれないのでございます。  だから、極論を申しますけれども、やはり天下りと渡り鳥、これは厳に慎んでいただいて、これから補充なさるところについては、少なくとも特殊法人は半分は民間から採用して、天下りは半分に遠慮していただくということを総理の口から言っていただきたい。
  266. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま仰せのとおり、特殊法人につきましては半分以下にするように決めて実行にかかっておりまするし、その処遇につきましても自粛の措置を講じております。
  267. 塚本三郎

    塚本委員 行管庁長官、もう一つ私が申し上げたかったのは、国の出先機関です。これも昨年も申し上げました。中央において省庁があります。そうして中部にも関西にも九州にも四国にもあるいは東北にもと、八つないし九つのブロックに国の出先機関があります。現業でなければ必要がない。だからこれを廃止するなり、あるいは地方の県なり府に事務を委託しなさい。中央におけるお役人様は二〇%で、八〇%は地方に散っている。これに手をつけるのが一番大切であり、この仕事もなお実は余分な仕事で、府県の諸君に言わせると、国からの出先機関があるから仕事がむだになってやりにくい、こういうふうな形になっておる、これが実情です。県の議会においては、もう廃止してくれというような議論さえもある。  しかも、人事の面だってそうでしょう。私どもの愛知県にしましたって、愛知県における各部長さんが知事さんの任命かと思うと、形式は任命だけれども、しょっちゅう通産省から押しつけられたり農林省から押しつけられたり建設省から押しつけられて、見たことがある人だなと思ったら、あなたの地元の愛知県におりましたなんていうようなことでしょう。こういうふうに人事が一緒ならば、何もここにいわゆる県があって、その隣に各省庁の局がおる必要がないじゃございませんか。  あなたのところは今度は削減するとおっしゃったけれども、そういう不必要なものを削減するのではなくて、九州だけは二つあるものを一つにするという削減だけで、言葉のあやで、私たちにとっては不満足であります。全国的に見て、そういう現業でないところの国の各出先機関は、この際地方に移管するなり、そういうことをして統廃合なさいというふうに提言いたしますが、どうですか。
  268. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 仰せのとおり、国の機関は極力簡素、効率化、しこうして自治体あるいは民間に過剰介入しない、むしろ民間の力を培養する、官民の格差を是正する、これが私、今回の行革の目的でなければならぬと思いまして、それに従いまして、過般も本会議で申し上げましたとおりに、地方支分部局の整理をいたします。したがいまして、二つございますが、一つはブロック単位、これは三月三十一日までに成案を出します。まず隗より始めよだから私と大蔵大臣が、やりますということをこの間閣議で明言をいたしました。恐らく他の省庁も従ってくれるであろうと私は確信いたします。府県単位のものはやはり六月の三十日、それまでに成案を出します。そして、そうした道におきましても、この行革におきまして大きな足跡を残して、それが将来へつながるような、大道に通ずる道をつくっておきたい、私はかように考えております。
  269. 塚本三郎

    塚本委員 いまのお話を聞くと、非現業部門を全部削ってくださるように誤解して受け取る危険性があります。あなたの腹はそうじゃないのでしょう。やるというのは、そういうダブっているところだけを、たとえば九州は福岡と熊本と二つあるからそれを一つにしようというだけのことで、そうすると廃止された方が困るから、住民運動が、便利だからおるところのものは廃止されないようにという運動になる。  私は、日本じゅう現業でないところは全部廃止しなさい、こう言うのです。そして必要な事務は府県に移管しなさい。それが地方自治という政治の姿ではございませんか。そうやって、中央が監督しておらなければならないものだけはこれは中央でやればよろしいし、できると思うのです。大体府県というのは、選挙でこそ公選制になっておりますけれども、ほとんどの頭は国の出先機関としての扱いでしょう。そこへどうして直轄したものを置いていくのでしょうか。だから、どう考えてみたって、これは現業以外のところは全部廃止することを前提にして、とりあえずこういうふうにするというふうに受け取っていきたいと思いますが、そういうふうに解釈してようございますか。
  270. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 各省庁によりまして、ブロックが七つになったり八つになったり九つになったりいたしております。いまの御指摘は財務局だろうと思いますが、これは北九州、南九州にございます。だから、決してこうした例を私は挙げておるのではございません。各ブロックにおきましても、中二階と言われるものは極力これは整理した方がよろしい、そういう趣旨でやっていきたいということでございます。
  271. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。  最後に、総理、各種の審議会というものがたくさんあります。同僚委員の方からも全廃しなさいという御提案がありました。卓見だと思います。政府の仕事の隠れみのにされておるといううわさが立ってからすでに数年たっております。各種審議会があらゆる答申案を出しておりますので、もうこの際全部廃止をしまして、これから新たに必要なものだけはまた総理の権限でつくっていく、まずゼロにして、それから必要があるものだけつくっていくという形にしたらいかがでしょうか。これなら被害はないと思うのです、審議会ですから。あるものを削れと言うと、どれとどれとか、いろいろなことで問題が起こってくる。全廃なさったらどうでしょうか。そうしておいて、新たにこれから必要なものからつくっていく。これでなかったら、一つだって削れませんよ。審議会全廃するという自民党の同僚議員からの発言、私は大賛成でございます。いかがでしょうか、総理
  272. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 現状をまずお伝えいたします。  現状は、きのうも自民党の浜田議員から同様の発言がございました。私もそうしたことに対しましては、決して全面的にノーだというものではありません。ただ、今日までの経緯を申しますと、行革はもうあちらもこちらも手をつけたいのですが、あちらもこちらも手をつけると皆中途半端になります。だから、四本柱をもって今回臨んでおりますが、審議会も私は決して無視はいたしておりません。ただ、現状をお話しいたしますと、福田行革と言われる昭和五十二年の行革で、審議会一五%を目途として廃止ということが決定いたしまして、三十四の審議会が廃止されまして、その法的手続をやっと去年終えたばかりでございます。したがいまして、いま別の特殊法人とか地方支分部局等々、許可、認可いっぱいあるものを各省庁に渡しておりますので、いますぐやれとおっしゃいますと、私たちの的というものがばらばらになってしまいますから、決してこれは無視するものではございませんが、現状はそういうことであるということだけをお含み賜ります。
  273. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 行政の民主化のために、それぞれの理由があって法律等で設けられておりまするものの整理でございます。容易ならぬ仕事だと思いますけれども、そのやり方といたしまして、一たん全部やめて、必要なものからまたつくってもいいじゃないかという御提言でございます。御提言は御提言として承りまして、政府の方でも検討してみます。
  274. 塚本三郎

    塚本委員 御提言は御提言として考えてみますなんというのは、答えにならないと思うのです。これは一度全廃をしなさい。これとこれというといろいろな問題が起こってきて、あれよりこれとこうなるのですから、一度廃止しなさいとあなたの身内からもいい御意見が出てきたのですから、私はなかなか勇気のある発言だと思いまして、わが党が従来考えておったことでございますから、これこそ自民党さんに応援してあげつつ国民の期待にこたえていきたい、こう思って提言しておるのですから、もう一遍いわゆる全廃を前提にして検討するということのお答えをいただけませんか。
  275. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 まだそこまで私は自信がつきませんけれども行政整理の一環として審議会の整理には大胆に取り組むこと、その一つのやり方として自分はこう思う、そういう御提言でございますので、そういうラインでひとつ吟味さしてもらいます。
  276. 塚本三郎

    塚本委員 もう行政改革は、エネルギー問題とともに国民の一番関心の多い問題でありますから、この点しかと総理の決意を固めていただきまして、きっぱりと言ってくれました宇野さんの行動に対して総理が全責任を持つ、こういう体制で各省に対してきちっと実行させるように強く期待をいたしておきます。  次に、この年末年始にかけまして国際電電会社の問題がかまびすしく報道されておりますが、その中におきまして、国際電電会社、KDDは電電公社と一緒にさせるというふうな声が出てまいりました。私はその際、電電公社の中におけるところのとかくの話がございますので、これを、秋草総裁おいでになっていますか、お伺いしたいと思います。  五十三年十二月十三日に合理化反対のストライキを予定し、組合員の八八%前後の賛成ですでにスト権を確立しておりましたところが、その日の早朝になって突然スト中止になりました。なぜかと言うと、一時金にして三十一時間分の時間外手当三万四千六百二十七円を会社側が出すということにしたからだそうです。言ってみれば時間外手当、これは空超勤というやみ給与の獲得とスト中止を取引したわけであります。五十三年だけでもそういうことで合計すると、平均給与十六万円の一・一カ月分に当たります、すなわち十七万円が出ているそうであります。大体現業の部門の職員ではそんな残業をやることなんかないはずです、というのが中における声のようでありますが、こういうことがどうして行われたのか、御説明いただきたいと思います。
  277. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答え申し上げます。  この問題は一月、ある新聞にも大きく記載されまして、私ども国民の皆様、先生方に非常に御迷惑をかけたことを深くおわびしたいと思います。  この問題は、いまに始まったことではございませんで、歴史的にはもうすでに二十年ほど前から行われていた労使の慣行でございます。それで、いまのここ二、三年の電電公社の現状から見ますると、積滞は一掃されたし、自動化は完全に終わった。財政も、料金値上げのおかげで今日非常に結構な推移をたどっております。そういう時点から見ますると、非常にじだらくな、何かなあなあで労使間がアベックでやったというふうにとられますけれども、五十三年もこれは強烈なストを構えて、労使団交の場で深夜に解決しだ事態でございますが、十年あるいは二十年前のことを考えますと、なかなかこの問題は、先生も御案内と思うのですが、今日の労働組合のような姿ではなくて非常に荒れ狂った現状でございました。その間私どもは、組合には団体交渉権というものがございます。一〇〇%の団体交渉権がございます。この団体交渉の主なテーマというものは、やはり待遇、賃金の問題だと思いますが、春の賃金闘争は御案内のように公労法十六条、資金上、予算上不可能な支出はいかなる協定も政府責任を負わないという規定がございます。そこで、どうしても公労委、仲裁のあっせん、国会で議決、大蔵省予算をつけていく、こういう措置によって解決するのでございますが、吐け口としてわずかにできるのは、この超過勤務手当の団交ぐらいしか余地はないのでございます。その間二十年ぐらい、必ずこの手当の出る場合には労使はごたごたしまして、いまの労使は、労使近代化の線に乗って非常にいい歩みをして、私はほっとして、非常にいいときに総裁になっていると思っておりますけれども、長い歴史を顧みますと、本当に血のにじむような激しい闘争に次ぐ闘争でございまして、なかなかそう簡単なものではございません。  詳しく申せば幾らでも切りがございませんが、それをしかも、超過勤務という原資で出しております。これは給与総枠の中で基準内給与と基準外給与というものが、十五、六年前に藤林さんの調停のときに、初めは合算でございましたけれどもはっきり分かれまして、基準内外の流用というものはかたく禁じられております。基準内の給与は流用自在でございます。その中で、予算の範囲内で私どもやったのでございますが、ただ事務処理におきまして、超過勤務というものを超過勤務簿につけてそういうものを分けた、時間に応じて各人の超過勤務をつけたというところに不手際が、事務処理に遺憾な点が非常にあったと私は思います。私この問題を、この十一月から鉄建公団初めいろいろな問題がございましたので、検査院にいち早く、検査院では五十三年度の検査は終了しておりましたけれども、五十四年度もこれからもう実施の準備にかかっておったので、検査院に洗いざらい包み隠さず全部報告しろということで、行って報告しておりました。もちろん検査院に、いいとか悪いとか結構ですとかいうお答えはいただいておりませんけれども、一切合財克明に報告しておったのでございます。  そういうことで、五十三年度はまた特別に少し多かったということは、五十三年の暮れに労使が非常に大きな、私にとっては、公社にとっては明るい団交の結末ができたということでございます。それは、世の中に発表しておりませんけれども、長い間の労使のとげとげしい問題もここ五、六年来非常に好転いたしまして、要員の問題が、オペレーターの過剰要員というものを行政管理庁からも非常に強く要望されておりましたので、これはもう当然五、六年前から解決しなくちゃならぬということで長い間労使間で交渉を続けておりましたところ、組合も要員の流動化、要するにオペレーターを営業なり保全なり経理なりそういう部門に動かしてもいいという、私にとっては非常に明るい決着ができたということは非常にうれしかったのであります。その点で五十三年度は例年よりも多少多かったように思いますが、先生が先ほどおっしゃいました数字はそのとおりでございまして、そういういきさつがございまして、このごろは政府がこれだけ行政改革あるいは財政再建というものを強く言っておる時代でございますから、電電公社もやはり姿勢を正して今後は改めて、またこの点については逐次厳粛な気持ちで改善していかなければならぬと思っております。
  278. 塚本三郎

    塚本委員 ルーズなKDDをルーズな電電公社にひっつけたらどういうことになるかということが私たちにとっては心配でございます。御努力と御苦労のほどはわからないわけでもございませんけれども、果たしてこれでいいのであろうかということについて私は首をかしげております。  空出張の問題もあります。その上、鉄建と同じような空出張も行われております。各課でやって浮かした金をレクリエーションに回した例もあります。出張にしてありますから自宅研修してくださいと言われます。仕事せずに、空出張だから自宅研修だそうです。出勤簿にはちゃんと出張の判こが押されてあります。労務対策という仕組みがあって、それを利用して出張になることが多い。もちろん、実際には出張に行かないけれども、日当、宿泊など旅費はちゃんと規定どおり出ておるわけで、一回四万とか五万になります。こういった空出張は順繰りに職員がやらされておる。からくりは局や課によって違うにしても、ねらいは労務対策上の資金づくりだと内部の者は語っております。  だから御苦労のことだけれども、やり方がよくないのですね。こういうふうな形で、いま深刻な総裁のお話を承って、結果としてよくなったということは、これは後ろめたい気持ちがないからおっしゃったのでしょう。だけれども、やり方としてそういうような形で金をつくっては、そういうふうな形でよそへ持っていったりする。電電公社は最も労使関係がよいとほかから見られておりますが、それでもこんなことをしなければなりませんかと言いたいところ。しかしそれとも、こういうことをして公金を流用してようやく労使関係をほころびないようにしておいでになる、こういうことだと判断しなければなりません。  この点、いま秋草総裁の方から、二十年ほど前からとおっしゃったが、知野さん、会計検査院の立場から、この点、前に指摘をなさったことはありませんか。
  279. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 電電公社の超過勤務手当の一律支給の問題につきましては、現在、検査に入っております。現在、検査の途中でございますので、まだ断定的なことを申し上げる段階ではもちろんございませんけれども、今後、時間外勤務の実態、それから支給の時期、方法等につきましてさらに検査を進めまして、検査の結果、会計検査院として指摘すべきものがあれば指摘をするという考えております。  過去におきまして……(塚本委員「二十年も前からやっているとおっしゃるよ」と呼ぶ)という話がございました。会計検査院は千二百名の職員をもちましてたくさんの検査をいたします関係で、どうしても事業費といいますか、金額の大きいものに重点を置いてきたきらいがございまして、過去におきましてそういう指摘をいたしたことはございません。
  280. 塚本三郎

    塚本委員 それだけではなく、やみの休日。電電公社は四十六年から、変則だが週休二日制を採用しているはずであります。四週で六休、六日間の休み、つまり隔週の週休二日というやり方で、一日ふえた休日を出勤扱いにする労働協約が結ばれておるようであります。五十一年になりますると、これが四週八休ですから、完全週休二日制になっております。この休日も空出勤になっているはずであります。閣議決定と違った方向で労働協約が結ばれておるようであります。  政府はもちろん承認していないと思います。週休二日制はまだ実施を閣議で決めていないはずですね。それだけれども、労働協約では五十一年からすでに週休二日制をやっておるということでございますが、一体こういうやり方が認められるかどうか、法制局長官、いかがですか。
  281. 角田禮次郎

    ○角田政府委員 伺った限りで断定的なことはちょっと申し上げられませんけれども、週休二日制の問題につきましては、別に公労法なり公社法の上で週休二日はいけないという規定があるわけでございませんから、労働協約で定める限りにおいては、それは違法だとは言えないと思います。ただ、政府の方針との調整、そういう問題は一応あろうかと思いますが、少なくとも違法とは言えないような気がいたします。
  282. 塚本三郎

    塚本委員 労働大臣、これは週休二日制を労働協約で決めて五十一年から実施されておるということですが、その点は労働大臣はどうお考えになりますか。
  283. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 先生の御指摘の電電の場合にどうなるかということは、いま法制局長官からもお話がありましたけれども、質の高い労働を常に確保し、労使が円満に話し合って進めていくということでありまするならば、週休二日はむしろ世界の大勢としてわが国でもできる限り推進をしていきたいというふうに考えておる立場でございますので、いまの法制局長官のような見解のもとで進められるならば、週休二日もあり得るというふうに考えております。
  284. 塚本三郎

    塚本委員 私ども週休二日制賛成なんです。それを早く実施しなさいということの提案をいたしたこともあります。しかし、それを空出勤というような形で扱わなければならないというところに問題があるのではないか。総裁がおっしゃったように、いわゆる質の高い生産性をしたならば、それだけ報われるような方向をとっていかなければならないことは、これは当然だと思います。しかし、それが頭で抑えられておる、閣議決定等抑えられておる、その矛盾をどのように解決をするかということがいま政府において問題のところだと思います。私はだらだらとやって、そしていわゆる作業をどうにかやっておるという程度よりも、能率を上げることの方がいいと思います。それならばそれで、そういうところだけはきちっといわゆる能率を上げたところから週休二日制を実施することも、政府でなくして公社、現業等においてはこれはやって結構だということなら、それでこの際きちっと方針をお出しになったらいかがでしょうか。この点はだれでしょうか、総理、お答えいただいたらどうでしょう。
  285. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 きのう公明党の矢野書記長からも御質疑がございまして、いろいろないままでの慣行上行われておる、形の上で違法である、しかし違法意識は余りなくて一つの慣行として行われておるというようなケースについてどうするかというお尋ねでございましたが、それと同工異曲の御質問と思いますが、政府といたしましてはあなたがおっしゃるように、新しいルールの上に表に出してきちんと処理すべきものは処理する、それから今後改めなければならぬものは改めるという、何かけじめをつけて処理していく方向で、内閣の官房を中心に具体的改善案を考えてみよということにいたしてございますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  286. 塚本三郎

    塚本委員 あいまいなことをしておきますとやる気もなくなってまいりましょう。だから、すっぱりとそれならそれで週休二日制を、官庁は困るけれども、まず現業だけは、能率を上げたところはやるならそうしなさい。きちっとそういうことができれば、それなら私はそれが大きな前進だと思います。それをとやかく後ろめたく、土曜日だけは出勤でございますというふうないわゆる空の判を押したり、そういうところに問題があるのじゃございませんか。私どもは労働者の立場から考えてみて、生産性の向上と合理化が進んで、住民に対するサービス等が行き届いたならば、これはやはり週休二日制に進むのは自然の流れであり、期待するところだということを申し上げておきます。したがって、そのあいまいさを捨てておくということはよくないことだ。  ついでに、五十三年十一月、この十年間に全電通のストで処分をされた昇給停止の組合員に対し、昇給停止処分を取り消し、組合員の実害回復措置を図ったのは本当でしょうか。どうも本当らしい。政府はそれをいつ承認したのか。何か隠しておって、見つかったからわびを出されたとかというような情報も流れております。その間なぜ公社は政府に相談しなかったのか。昇給停止は、戒告だけでも数億の回復だが、将来にわたる昇給に影響するものを取り消せば、違法をして処分を受けた者に対してお金の面でいわゆる回復されてしまえば、もう違法のストライキなんかこわくないということになってしまうと思うのです。何がために処分をしたのかということになると思うのです。これからそういう違法なものはやりませんということできちっとしておるなら一つの方法でありますけれども、ずるずるとそういう処分というものを回復をしてしまう。戒告一つを取り上げてみても、そのときには金は減らされないけれども、次の昇給のときに何分の一かは少なくしか昇給できない、こういう規定になっておるようであります。そのとき、それをもとへ戻されたら、その分だけは、四億か五億だと言われておるけれども、これからずっとその地位から上がっていくのでありますから、はかり知れない大きな問題になってくると思うのでございます。そういうこと等考えたならば、堂々と政府と相談をして、こういうふうだから、法に照らして処分をしたけれども、こういうふうにいわゆる原状回復をいたしますというふうにきちっとなさるのが本当ではないかと思います。労使関係が苦しい状態を一生懸命改善してきたんだという総裁の御意見は私は多といたします。しかしながら、そういうルーズなやり方をやってきておることが、いま不審の目をもって見られておるし、しかも不審のあるKDDとやがて一緒になるんだということになったら、これはどうなってしまうかしらと国民は心配すると思うのであります。最後のその点、総裁から考え方伺いたいと思います。
  287. 秋草篤二

    ○秋草説明員 お答え申し上げます。  その前に、先ほど先生が電電公社はやみ出張などと、これは定かに記憶いたしませんが、あるということをおっしゃられましたが、私はやみ出張というものがあったら厳罰に処します。私はそういう事実を聞いておりませんので、先生がどこでそういう資料を手に入れたか、まあこう言ってもどこかに一つか二つ後で見つかるかもしれませんけれども、私は電電公社に関する限り、やみ出張などというものは許されないことでございます。それをちょっと答弁しておきます。  それから、いまの処分の実害回復の問題は、これは五十三年の十一月に、役員以外の、兵隊といいますか、普通の従業員、これは一番長いのは十年間処分を延伸して滞らせておきました。短いところは五年、五年以後は戒告と注意処分になりましたので数が少のうございますが、これを兵隊だけは、つまり従業員の、役員以外の者だけは早く実害を回復してもいいのじゃないか。と申しますのは、一時この問題は、四十一年の非常に荒れ狂っているときに十五万人の処分を私どもが断行して、世間を騒がせたことがございます。その後六・二五事件といいまして、この処分の回復をしまして大きな騒ぎを起こしまして、これは自民党の政調会等でも非常に論議になった問題でございます。自来、それ以後は処分の回復というのはしておりませんが、その後年々歳々ストをやって、処分したのが、一番長いのが十年、一番短いのが五年。この中で、役員以外の者だけはひとつ早く回復したらいいじゃないか。というのは、ILOの勧告等も二度三度出まして、この処分の実害が永久につきまとうようなことは、何ぼ何でも早く回復してやるべきだということは、労働省にも来ておりますが、ILOの会議でも出ております。それから、例の公共企業体基本問題会議でもそういう答申が出ております。ただ、これは政府が受けて、政府が何かそれの基準のようなものをつくろうとしているときにわれわれはそれをいち早くやってしまった、政府がまだ基準を出さないのにやってしまった。しかし、私の意見を申さしていただくならば、これは政府といって、大臣にお許しを得たり了解を得たりという筋のものじゃなくて、やはり労使の問題は私が責任を——究極には大臣が許さないと言ったといって、法律というようなものでできるものではありませんので、個々の処分の実害回復、処分はしなくちゃならぬ、その実害の回復というものは、各企業体の総裁が組合の方向を見て、これがいい方向に進むというならばそのペナルティーを解除してやる。しかも、もとに戻って全部実害をくれてやるわけじゃなくて、おくれたのを普通の人と同じように上げてやるということでございますので、私は所見としますると、そういうことをやったことを悪いというふうには思っておりません。  それから政府からしかられたということは、ある国会議員の方から、それはもっと連絡を密にしてやるべきじゃなかったかという御注意はありましたけれども、実害回復自体を悪いと言っているのではないということをおっしゃったことを私は記憶しております。
  288. 塚本三郎

    塚本委員 そういうことをきちっとおやりになるならば、政府にしかられてみたり、あるいは自民党さんに注意をされておわびをなさる必要はないと思う。堂々とおやりになったらどうだと思うのですよ。そういうことだったら堂々とやったらいいと思うのですよね。自民党さんの労働部会の方でこれはけしからぬと言われて一札出してみたり、あるいはまた政府から言われて謝るようなことだったら、私は後ろめたい点があるのじゃないかと思う。総裁の決意は私はごりっぱだと思うのですよ。それだったらこれからも堂々と、政府であろうと与党自民党さんであろうとびしゃっとおっしゃって、そんな一札出すようなことをやりなさんなということだけ希望を申し上げておきます。  それと空出張の件、私いま時間の制限がありますから、後で教えてあげますから、きちっとやってください。  じゃ総裁はもう結構ですから……。  同じ郵政関係で、大西郵政大臣、きょうの昼のNHKのニュースで、NHKの受信料支払い義務について放送法を改正したい旨の発言が放送されておりました。放送法を改正して受信料支払いの義務を課せるような法律をつくるということは、いままでの経営とは性格を変えることになりはしないか。この点、いままでの経営は経営委員会だけでよかった、国会はイエスかノーかの承認だけでよかったけれども、義務づければ第二の税金となると判断いたします。その点、これからどういうふうになさろうとするお考えでしょうか。
  289. 大西正男

    ○大西国務大臣 お答えを申し上げます。  私、きょう記者会見でそのことに触れたわけでございますが、これは、先生いまおっしゃいますように、NHKの性格を変えないということを前提にしての考え方でございます。と申しますのは、現在、三十二条であったと思いますけれども、これによりますと、受信料というものが定められておるわけでございます。そしてその受信料については、受信の設備を備えた一般の方々はNHKと受信契約を義務づけられておるわけでございます。でございまして、要するにこれが私の考えでは、完全な私権、私の権利だといたしましたら契約は自由でございますから、義務づけておること自体が間違いだということが言えると思うのです。しかし、そうではなくて、この受信料というものは放送法によって創設をされた一種の負担金ということではないかと思うのでございます。また、そういうふうに従来関係の審議会ですか何か、そういう意見も出ておるというふうに私は承知いたしております。そこで、現在におきましてそういう義務、契約を締結することが十分に行われておらない、そこで非常に受信者の中に不公平が生じておるわけでございます。そこでこの不公平を是正をしてもらいたいというのが、NHKと受信契約を結んでおる大多数の国民の声だというふうに私も承知をいたしております。そこで、このNHKの性格を変えずに一般の——一般と申しますか契約をしておらない、したがって支払いをなさっておらない方々にも、大多数の国民の方々の声に耳を傾けていただいて、十分にこのNHKの受信料の性格というものの御理解を深めていただくために、そして深めていただいたことに立ってお支払いをいただけるようにということで、この支払い義務を課したらどうかということで検討しているということでございます。
  290. 塚本三郎

    塚本委員 それは私は一つの方法だと思うのです。払う人と払わない人と不公平になってはいけませんし、それは相当の費用が要ることは当然のことです。しかし、これを義務づけるとなるならば、いままでのように国会でイエスかノーかだけではなくして、修正をするとかこうしなさいとかいうような大まかな点くらいは、余り会計検査院が入りますと報道、言論の自由とかいうようなうるさい問題が出てまいりますから限界があろうと思いますが、少なくとも国会の審議の対象として、それをイエスかノーというだけのいままでよりも、これはこういうふうに修正したらどうかというようなところまで入らないと、義務づけるというわけにはいかないのではないかというふうな気がいたします。その点をこれから法律をおつくりになるときは勘案しておつくりになると思いますが、そのお考えをお聞きしたいと思うのです。
  291. 大西正男

    ○大西国務大臣 もちろんそういうことでございますので、成案を得ましたら国会において御審議を願わなければならないところでございまして、そこで十二分に御議論を拝聴いたしたいと存じているのでございます。
  292. 塚本三郎

    塚本委員 法律の審議は当然のことですが、その中身についていわゆる毎年の決算、予算について国会審議の対象にしなければ、義務づけるということは立法上むずかしいのではないか。金は取るけれども中身のことは政府も国会も関係ありません、これでは国民は納得しないと思うのです。しかし、言論の自由の問題もありまするから、私は、謙虚にこの問題を受けとめて、大まかな問題だけでも修正権くらいは与えるということでないと、この法律はむずかしいのではないかということだけ御注意を申し上げておきます。
  293. 大西正男

    ○大西国務大臣 この問題は、先ほど申しました審議会、ちょっと名前を忘れましたが、その審議会におきましても従来問題になっておりまして、この改正問題が過去においても論議をされた実績があるやに私は承知をいたしておるところでございます。
  294. 塚本三郎

    塚本委員 大来外務大臣、時間が少のうございますが、せっかくの機会だから一言だけ触れておきます。  過日、一月十五日に大平総理と大来外相がオーストラリアにおいでになって、帰りにパプア・ニューギニアにお寄りになりました。そのとき、環太平洋経済構想でもって、いままで経済の投資が途切れておったところのパプア・ニューギニアに対して、これはここで二回にわたって福田総理にお尋ねしたことがございます。しかしうまくいかなくて、強制的に国有化されてしまった問題があります。したがって、そのことによって結果としてはいわゆる接収されてしまって、政府は、投資保険を適用したから、以後再投資、これから投資することの保険の適用をストップをかけられておって、経済断交のごとき状態になっております。これを、せっかく外務大臣がお寄りになったので再開されようという報道がなされました。私は結構なことだと思います。これからの問題として、仲を悪くしたままでおくことはいけないと思います。しかし、あのときに不法に取り上げて、いま同国の憲法違反として訴訟問題になっておりますし、また政府から保険をもらったその会社は、やがてはそのパプア・ニューギニアの国からその債権を回収して政府に払うというのがいわゆる保険の制度になっております。したがって、この紛争を、裁判をそのままにしておいていわゆる投資保険を続けるというのはいかにもまずいと思います。したがって、せっかく仲よくしようと総理までおいでになった懸案であり、しかもこの問題については大来さんみずからが、海外経済協力基金の総裁として金を出している立場においでになったからよく御存じです。したがって、これを行うのを契機にして裁判になっている問題を解決するように、通産省と努力していただくことを念頭に置いてひとつやっていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  295. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの問題につきましては、先般の総理に随行して参りました際、ソマレ首相にもお会いしたのでございますが、実は、本件につきましてはその一月ほど前に参りましたオレワレ副首相から話がございまして、その際、日本側としても関係方面と話し合って処置をしたいということでございました。それで、わが国はパプア・ニューギニアとの経済関係が近年緊密化していることにもかんがみまして、同国に進出するわが国企業の活動が円滑に行われることが必要であるというふうに考えているわけでございますが、現在引き受けが停止されている対パプア・ニューギニア投資保険の再開のためには、停止となった原因である事故等も踏まえまして、同国の投資環境が改善されることを見きわめつつ、両政府の間で話し合うことにいたしたいと考えております。この点につきましては、投資保険は通産省の所管でございますので、両省の事務当局で打ち合わせいたしました。
  296. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、ですから問題を残したままでそのままやっておってもらってはまずいということだから、裁判そのままでいわゆる投資保険の引き受けをストップしているでしょう。それを再開するというのだから、紛争の問題を解決するために外務省も通産省も一緒になって、これはこれで別途の方法で解決の努力をすることを、いわゆる窓をあけておいていただいて進めてほしい、こういうことなんです。ようございますか。
  297. 大来佐武郎

    ○大来国務大臣 ただいまの御趣旨、了解いたしました。事務当局ともよく相談いたします。
  298. 塚本三郎

    塚本委員 通産大臣、いいですか。
  299. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 御協力申し上げたいと存じます。
  300. 塚本三郎

    塚本委員 次に、もう一つ。  いま繊維業界がずいぶん大きな問題になっております。一昨年から輸入が急増し、前年対比七〇%、昨年は三〇%の増となっております。国民の衣料の二割が輸入となっております。この傾向はオイルショックの後から顕著であります。その結果、繊維労働者が激減し、綿を中心にした紡績の労働者は半減しました。すなわち、十一万人がわずか六万人になってしまいました。織物も三割が実は減ってしまったのであります。この際は輸入の問題が重要な問題となってまいりましたけれども政府としては有効な手が打たれておりません。普通ならば、いつの間にやらこの産業は全滅するのです。しかし、この繊維は労使がきわめて緊密に生産性の向上、合理化に必死の努力をしました。労働者が半分になってもがたがたせずに産業を必死に守ってきたということであります。だから、どうにか回復しつつあるのです。そのときに、があっと綿糸やらあるいはまた織物等が四〇%も輸入が入ってきたのではたまったものではありません。こういうときにはガットの特例で二国間協定を行うことの規定があります。アメリカを初め先進諸国はそれを行って、業界と労働者の雇用不安の解消に努めております。政府は、いままだちょっと景気がいいからということでなかなかおやりになりませんけれども、アメリカを初めよその国からは、日本だけいいかっこうをするな、こういう非難の声さえ出ておるはずであります。したがって、二国間協定をできるだけ速やかに結んでいただくこと、その間は政府として暫定的に行政の措置をしていただきたい。産業界からの強い希望、特に産業労働者の方からの声であります。通産大臣、いかがでありますか。
  301. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 繊維製品の輸入につきましては、政府といたしましても従来秩序化に努めてきておるところでございますが、御指摘の綿糸等の輸入につきましては、韓国に対して官民双方のルートで輸出の秩序化を要請してきております。幸い、お話しのように、最近は輸入の実績、成約とも鎮静化してございます。政府といたしましては、今後とも輸入動向を十分注視いたしまして、問題の生じた場合には必要に応じて行政指導等の措置を講じていくつもりでございます。  お話しのMFAに基づく二国間協定の問題でございますけれども、その締結問題に関しましては、種々の要件が定められておることでもございますので、慎重に検討いたしたいと存じます。
  302. 塚本三郎

    塚本委員 慎重にはわかるのですけれども、がたがたとつぶれてしまってからではだめなのです。いまやっておかないと、来年はもうどうなるかわからない、こういう状態になっているのだから、慎重もいいけれども、間に合わなくなってはいけませんので、直ちにそれに対して取りかかってみて、そうしてやるかやらないかは決めるにしても、もう準備だけはしていただかないと間に合わないという状態に立っておるのです。もう一度お答えいただきたい。
  303. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 相手国の事情もございましょうから、こちらの方といたしましては準備を進めていきたいと思います。
  304. 塚本三郎

    塚本委員 もう一つ。  いまもう一つ労働問題として大きな問題は、佐世保重工の問題であります。御承知のとおり、毎日のごとく報道されております。人権闘争だという声まで出てきております。この件に関しましてはすでに政府みずからも、つぶれかけたのを助けるためにあの坪内社長の就任方について御努力いただきました。そうしていまは原子力船「むつ」もそこに入っておるはずであります。あるいはまた護衛艦も修理をいたしております。新造船もまた海上保安庁の、いやとにかく自衛隊関係の船も新しく発注されつつあります。そのところで長期にわたるところの労働不安というものは政府としても看過し得ないところだと思います。したがいまして、せっかく政府が御努力いただいた再建の途上でこういう状態が起きてしまいましたので、先ほどのニュースでも、初めて労使が話し合うというニュースがありました。一つの明るいニュースだと思いまするけれども、やはりせっかく社長を引っ張り出してくださったのが政府であるとするならば、いわゆるいい点はいい、あるいは労働者も反省しなさいという点があるなら、おっしゃっていただいて結構です。あそこの組合は一番理性のある組合だと評判の高い組合のはずです。あらゆる労働組合から支援体制が整っておりまするので、労働大臣、何らかの形で解決に対する助力の約束をしていただきたい、いかがでしょう。
  305. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 佐世保重工業の問題につきましては、労使の意見の食い違いがありまして紛争になっておるわけでございます。労使双方が合意をいたしました再建策の実行をめぐっての紛争でございますので、それぞれにいろいろな言い分があるわけであろうと思いますけれども、労働省としては、労使双方の意見を聴取しながら今日に至っておる。ただ、基本的には労使双方の話し合いが自主的にまとまることが望ましい、このように考えまして今日まで来ておるわけでございますが、いまお話しのように、きょう朝、長崎県の要請によりまして会社側から組合側に団体交渉の申し入れを行った。多分今晩話し合うことになろう、こういうふうに思っておりますので、その推移を見まして、必要があれば、同時に、労使双方がそのようにぜひ考えてもらいたいというような御意見でございますれば、何らかのお手伝いをするという意思は持っておりますけれども、あくまでも自主的な話し合いを時間をかけて見守りたい、こういうことで来ておりますので、特に今晩の団体交渉の様子を見守らしていただきたい、このように考えております。
  306. 塚本三郎

    塚本委員 しかと組合から要請があったときには受けて立っていただきたいと思います。
  307. 藤波孝生

    ○藤波国務大臣 労使双方の意見を聞いた上で、よくその中に入るようにいたしたいと思います。
  308. 塚本三郎

    塚本委員 次は、厚生年金につきまして。  サラリーマンの老後の生活を保障する厚生年金の支給開始年齢を、男子六十歳を六十五歳に、女子五十五歳を六十歳に引き上げる改正案が上程されるようであります。民間の企業の定年延長がはかばかしくない上、役所と比べて年金の官民格差が全く解消されないまま、約二千五百万人の厚生年金の加入者だけに既得権の放棄を求めていることは不公平だと思います。六十歳定年が一般化していない現在、支給開始年齢だけを引き上げるのはおかしいと思います。  社会保険審議会は加入者と事業主側がそろって反対し、公益代表だけが賛成しております。多数が反対している意見を無視するのはおかしいではありませんか。日本の慣習として終身雇用制が主流を占めている中において、定年と年金の支給年齢がドッキングすることが一番望ましい。定年延長と六十歳年金を一致せしめる方向こそ福祉国家の方向だと思います。ところが、定年延長がはかばかしくないのに、片一方の支給だけを六十歳を六十五歳にしようというような形になったならば、いわゆる福祉の後退だと国民が叫ぶのは当然ではありませんか。何か一部の報道によると、自民党さんなどの意見で延ばすような明るい希望のニュースも出てきております。この点どうなりましょうか。われわれは、これは引き上げてはならないというふうに主張いたしますが、厚生大臣。
  309. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 政府といたしましては、五十五年度の年金制度の改正におきまして、将来の高齢化社会を見通しまして、やはり年金水準を確保していくためには、年金水準の引き上げと同時に、御要望の強かった遺族年金の改善などにつきまして大幅な改善をいたしていこうとするものでございます。同時に、将来の年金の長期的な安定の上に立ちまして支給開始年齢の引き上げに着手すべきではないか、こういう考え方に立っておるのでございます。しかも、このことは避けて通ることのできない問題でもあるわけでございます。  しかしながら、今日、年金制度の改正に当たりまして、関係審議会に答申を求めておるわけでございます。その御審議の結果を踏まえながら、慎重に御意見を尊重しながらこれに対処してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  310. 塚本三郎

    塚本委員 避けて通ることのできないことは承知いたしておりますが、それなら、もっと避けて通れないところの共済の方をなぜ先に手をおつけにならないのですか。地方公務員や国家公務員が加入するところの共済年金の支給開始年齢は五十五歳だったが、二十年かけて六十歳にすることに改めようとしております。それでも厚生年金が六十五歳になってしまったならば、また五年開いてしまうじゃありませんか。その上、今国会に上程される公務員の六十歳定年が実現すれば、定年と年金がきちっとドッキングしていくわけであります。民間と比べてこんなうまい話はないわけであります。国の財政が乏しいとかあるいは年金の中身が悪いとおっしゃるならば、共済の方がもっと悪いのですよ。給付水準はうんといいし、共済の方が悪いのです。その上、支給額についても格差があります。共済年金の方が給付水準が高い上、退職後に企業に勤めても年金はまるまるもらえる。二重にもらえるのですよ。学校の先生をやっている、警察官をやっている、五十五歳で定年で、これからまた十五年働きます、両方もらえるのですよ。だから普通の給料ぐらいみんないただいておるのですね。こういうことのできるのはいわゆるお役人だけになっておるのです。厚生年金は現行制度では、受給資格を得た六十歳以降でも、働いているともらっている給料に比較して今度は減額されてくる、こういうことになっているでしょう。五十二年の調べによりますと厚生年金は月額七万六千円ですよ。国家公務員の共済年金は十万六千円ですよ。地方公務員は十一万八千円。もう一遍申し上げますと、厚生年金は七万六千円、国家は十万六千円、地方公務員は十一万八千円。だからこそ社会保険審議会におきましても、労使ともに三分の二の代表が反対をしているのですよ。それを押し切ろうとなさっておる。年金制度の長期的な安定のため、後の世代の急激な負担増を避けるためにも支給開始年齢の引き上げに着手すべきだとおっしゃっておられます。  厚生省のこの御意見に従ってもしやられようとするのだったならば、先に共済年金の方をおやりになったらどうでしょうか。財政をおっしゃるならば、現在厚生年金は一人に支給するのに十六・七人が背負っているのですよ。ところが、国家公務員等の共済の方においては、一人を養うのに五・八人でいま支給しているのですから、三倍悪いのですよ、国家の方あるいはまた地方公務員の方の共済年金の方が。これを、八十五年といいますから三十年先を計算してみますと、三十年先でもなお厚生年金は三・五人で一人。ところが、共済の方は二・三人で一人と、こうなるのですよ。だから改めなければならぬとおっしゃるなら、その理屈はわかります、それだったら三倍悪いところのこの共済、お役人の方を先にお改めになったらどうでございましょうか。自分たちの方の行政改革は先ほどのようになかなかおやりにならずにおいて、取るものだけはがっちりとりっぱにお取りになる。これじゃ国民は踏んだりけったりではございませんか。もはやこの六十五歳に六十歳から引き上げるというあれは、自民党さんの方も幸いそういうような御意見が強いようでありますから、大臣、すっぱりとあきらめたと、これは総理からお答えいただきましょうか。いかがですか、総理
  311. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 官民格差の問題でございますが、確かに共済組合の給付水準というものにおきましては、公的年金部分のほかに、いわゆる職域年金的な性格を持っておるということでございまして、給付水準を平面的に比較するということに一つの問題があると思います。しかしながら、御指摘のように、同一加入期間で比較いたしますと、その水準の差は一割から二割程度であろうと思うのでございます。しかしながら、公的年金制度というものをできるだけ整合性を高めていくということがより大事でございますから、政府におきましても、一体となってこの年金制度の整合性をどう持っていくかということについて検討をいたしておるわけでございます。  それから、先ほど財政の問題について御指摘がございましたが、いわゆる財政難と言うならば、現在の共済年金の方が三倍も悪いではないかという御指摘でございますが、これは、厚生年金保険が発足いたしましたのは昭和十七年でございます。共済年金が社会保険システムに基づきまして発足しましたのは、御承知の昭和三十四年でございます。したがって共済年金の方が非常に成熟度が高く見えておりますのは、恩給期間というものを引き継いで給付を行っておるという実態からでございます。したがいまして、このようなことを考慮いたしますと、現状では共済年金の方が厚生年金よりも財政的にゆとりがあるではないかというふうに考えられます。ただ共済組合につきましては、今後恩給期間の含まない加入者が増加することを考えてまいりますと、将来においては、厚生年金と同様に急速に成熟化が進んでまいることは予想されるのでございまして、共済年金におきましても、財政の安定化の対策を講ずる必要が生ずるということは承知をいたしております。
  312. 塚本三郎

    塚本委員 そんなことは、先ほどから申し上げていることをあなたが繰り返しておっしゃっただけでしょう。ですから、この際は官民格差をなくするということと、定年制の六十歳延長を民間が実現されるまでは六十五歳に支給開始年齢をおくらすことは撤回をして、それをしてから考えるというふうにしていただきたいということを申し上げるのです。だからそれをとにかくお答えいただいたらどうでしょう。
  313. 野呂恭一

    ○野呂国務大臣 現在、関係審議会に諮問をいたしておるわけでございます。その結果を踏まえまして十分に慎重に対処してまいりたいと思います。
  314. 塚本三郎

    塚本委員 それじゃ、行うことを決めたわけではなく、諮問しておるのでその結果を踏まえてということと、ここで各党から発言がありました御意見を十分加味しておやりいただく、そうするならば、これは開始年齢をおくらすということはまずは無理だという結論になると受けとめていきまするので、結論はどうなるかわかりませんけれども、もはやこの問題はしばらくその結論が出るまではおやりにならない方がいいということを強く御注意申し上げておきます。総理、どうでしょうか。
  315. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 その問題は、いま厚生大臣言われましたように、関係審議会に諮問してある、その答申を待って処理しよう、党の方からもそういう申し入れがございますので、よくそれを踏まえた上で慎重に処理いたします。
  316. 塚本三郎

    塚本委員 それじゃ前向きに御答弁いただいたと受けとめて、期待をいたしておきます。  自衛隊スパイ事件について御質問いたします。  自衛隊スパイ事件について、元陸将補宮永幸久が陸上自衛隊を舞台にしてソ連側に資料を売っていたことは、情報の管理責任者である彼が犯した犯行は、あたかも金庫番が金を盗み出したものに等しい。防衛のイロハは情報の管理から出発するのが常識とされております。今回の事件を通じて自衛隊員のモラルをどう思うのか、いまだに占領ぼけが続いていることを心配しております。政府政治責任をどう果たされるつもりか、総理からまずお聞きしたいと思います。
  317. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 宮永事件につきましては、自衛隊の事件でございますけれども政府全体の綱紀にかかわる重大な問題と受けとめまして、まず情報管理に遺漏がないかどうか徹底を図らなければならぬ、総点検して遺漏なきようにしなければならぬと存じております。  それから、これに対する行政政治責任につきましては、いまこの事件の全貌が捜査当局の手によって解明されておりますので、その状況を踏まえた上で判断さしてもらいたいと考えています。
  318. 塚本三郎

    塚本委員 防衛庁長官はいかがですか。
  319. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 今回の事件は自衛隊の名誉を著しく失墜させるとともに、全自衛隊員の士気を低下させる等その影響は大きいものと考え、事件発生の原因等について徹底的に究明を行うとともに、一月二十八日に、現在指導監督すべき立場にある事務次官、陸上幕僚長等十一名に対し厳しく処分を行ったところであります。また、防衛庁としては、この際、上下相携え、一致団結、規律を一層振興するとともに、きめ細かい対策、指導を講ずることによりこの種事案の根絶を期し、もって国民の信頼にこたえられるよう努力する所存でございます。
  320. 塚本三郎

    塚本委員 きのうも同じような文章を聞かしていただきました。自衛隊の機密は国民の生命を守るための機密だと私たち民社党は判断いたしております。自衛隊法五十九条には守秘義務が規定されておりますが、一年以下の罰則規定があるだけであります。これは軽犯罪法と全く同様で、軽過ぎるという声が強いのであります。たとえばその当事者が秘密を漏らしたときは、フランスにおきましては死刑であります。スパイで最も軽い刑を決めております西ドイツにおいてさえ、無期または五年以上の刑となっております。防衛庁長官、軽過ぎると思いませんか。
  321. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 いまの先生の御指摘でございますが、犯罪は重いとか軽いとかという問題ではないと私は思います。かかってモラルの問題でございまして、幾ら重くしましても、たとえば自衛隊におきまして、その士気におきまして、その指導におきまして、もし欠けておったならば、幾ら重い処刑をしようという法律であっても必ず抜け道はあるわけでございます。私は、そういうふうな観点から、今回起きましたこの自衛隊の犯罪に対しましても、やればやれるところのいまの制度の中において当然私どもはやらなければならない、この責任を痛切に考えておる次第でございます。
  322. 塚本三郎

    塚本委員 モラルがいけなかったならば一番初めにモラルを確立しなければなりませんが、その最高司令官のあなたが責任をおとりになるのがモラルの第一じゃないかと受けとめますが、いかがでしょうか。そんなことまでおっしゃっていいんですか、長官。
  323. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 もとより防衛庁長官としてその責任の重さは痛感しております。今回の処分決定に当たりましては、私自身の進退問題も含めまして種々苦悩を重ねてまいりました。私自身が身を退いて余人に託するということも、これも一つ選択ではないかと考えたこともございます。しかし、二度とかかる不祥事件を絶対に起こさないよう、この際、一刻も早く厳正な規律と秘密保全体制を確立いたしまして、もって国民の信頼を回復するためには、政治家として安易な逃避は決して許されないものであります。私は苦しくとも身をとどめ、隊員とともに一致団結して、揺るぎない防衛の基盤を確立するため着実な歩みを進めることこそ、この重大な時期に私に課せられた責務であると考えている次第であります。
  324. 塚本三郎

    塚本委員 善意のほどはわかるのです。久保田大臣が人格的にごりっぱなことはわかるけれども、この緊急事態やあるいはまた問題の性格から考えて、三軍の長となられる方がこういうような御態度で果たしていいんでしょうか。私はポジションが違っておるような気がしてなりません。刑が重過ぎるか軽いのかと聞いておるんでございます。それをモラルでございますというようなお答えをしておる。敵がこちらから来たかと思ったらこっちでございますと、こういうふうな答弁と同じことなんです。  それではお聞きしますけれども日本人が日本の国内で起こしたスパイでも、米軍の機密を探知収集し外国に漏らした場合には十年以下の懲役ですよ。日本の機密の場合は一年以下で、同じ日本人が同じ日本の国にある米軍の場合だけ十年となっておるのですよ。一体これはどういうことでしょうか。あの当時は日本は何も秘密がなかった、独立国でもなかったような状態だとおっしゃればそれまでだけれども、いまは二十万のアメリカ軍がいた時代と違いまして、自衛隊だけでも二十六万人。そしてアメリカはほとんど地上にはおりません。そういう状態の中において米軍だけ十年で、われわれ日本国民の生命を守る秘密を盗まれて一年以下。これは重過ぎるか軽過ぎますかと聞いておるとき、モラルでありますなんというお答えがありましょうか。大臣、もう一度お答えいただきたい。
  325. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 現在の制度の中で、やはり自衛隊といたしましては、まず第一番にこの制度を犯すようなことであってはならぬと思うわけでございます。かような点から推しまして、いまの制度の中におきまして、私といたしましては監督も十分いたしまして、再びこういう問題が起きないように努力するつもりでございます。
  326. 塚本三郎

    塚本委員 総理、かわってやっていただけましょうか。軽いか重いか。アメリカの軍事機密の場合は、日本の国内にある米軍であっても十年以下、日本の自衛隊の秘密の場合は一年以下。これは軽いか重いかと言ったとき、これは軽過ぎると判断するのが国民で、心配しておられるのです。だからお聞きしているのですから、モラルの問題でございますじゃないと思うのです。総理、お答えいただきたい。
  327. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 安保条約に関連いたしました機密の場合、特別刑法では仰せのように重い処罰になっておりますが、自衛隊法、国家公務員法は同様大変な格差のある処罰になっておりますことは御指摘のとおりでございます。これはどういう立法政策上の配慮からそうなったか、その当時の経緯を私よく存じないのでありますけれども、この問題は、確かに塚本書記長の言われるお考えは私にもよく理解ができるわけでございますが、久保田長官の場合は、その立法政策上の是非についていま自分としては意見を申し上げる立場でなくて、むしろ現行制度のもとで機密保持のために全力を挙げたいという責任を述べたこととして御了解をいただきたいと思います。  いまの御質問は確かに立法政策上の大問題でございまして、今度の事件の全貌につきましての解明がいま捜査当局によって行われておるわけでございまして、そういった実態も踏まえまして慎重に検討の上、私どもとしては適正な判断を下さなければならない問題ではなかろうかと思います。
  328. 塚本三郎

    塚本委員 いましばらくとおっしゃるけれども、こんな不合理な、だれが考えてみたって日本の国内において——もう一度申します。日本のいわゆる国民の生命財産を守る自衛隊の秘密に対しては一年以下で、米軍だけは、経緯はわかりますが、十年以下となっておるならば、この整合をしなければ、日本国はいまだにアメリカの従属国だということを宣言するようなものになるのです。したがって、経緯はわかりますが、この際はそんな説明は聞きたくないのです。やっぱり日本人の素朴な気持ちとして自衛隊を信頼したいし、こういう国際情勢になってくると、やはり自衛隊は厳然として規律ができておるんだ、そうして処罰もきちっとしておるんだ。新しくそういうふうな秘密保護法をつくれと申し上げるつもりはありません。この五十九条において一般隊員に対するそういう責任の罰則規定があるならば、ついでにその二項の中に、それを守らなければならない幹部についてはという一項だけ入れれば、これで幾らでもできるじゃありませんか。それくらいのことをして規律に対するあかしをこの際だから立てると総理おっしゃったらいかがでしょう。
  329. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 立法政策上の非常に大きな問題だと思いますので、国会の御審議や、それから、いま防衛庁でも秘密保持についての総点検を行っておるわけでございまして、そういった経過を踏まえた上で検討しなければならない問題だと思います。
  330. 塚本三郎

    塚本委員 今度の事件発覚につきまして、一月二十日の新聞では「今回のソ連スパイ網摘発の端緒は、昨年十月、わが国からアメリカへ亡命したソ連記者の証言だった。治安当局筋は十九日、元陸将補と現職尉官の逮捕というショッキングな漏えい事件に発展した警視庁のソ連スパイ網摘発について、昨年十月二十四日、わが国からアメリカへ亡命したソ連誌「ノーボエ・プレーミャ」の東京特派員スタニスラフ・アレクサンドルピッチ・レフチェンコ記者が、亡命先で米当局に語った証言記録に基づくものであることを明らかにした。」こういう報道があります。ところが、同記者とコズロフ大佐、というのは、情報を買い受けていたソ連側の大佐です。「同記者と大佐の在日時代の親交が事件発覚の端緒となった。自衛隊内に張りめぐらされたコズロフ機関が発覚しないまま今後も作動し続けたならば……。全容解明を急いでいる警視庁公安部では、胸をなでおろしている。」このままであったら大変であったなあ、こういうことのようでございます。  問題はこれからでありますが、そういうふうに、アメリカに亡命した、それから端緒を得て今度の摘発になったというふうに言われております。ところが、アフガニスタン問題で米ソ関係が極度に緊張している折に起きた防衛庁スパイ事件に、アメリカ政府当局はすっかり苦り切っておる。これは、アメリカが日本に与えておる重要情報が自衛隊員らの手を通じてソ連側に流れただけではない、同盟国日本には重要情報を秘匿しておかなければならないという基本的認識に欠ける体質があります。そういう甘い体質から今回のような事件が発生した、そういうことから出てきた問題でございます。こういう状態から見ると、防衛庁だけではない、知らしてくれたその秘密までも実は漏らしておるんだ。  それは、新聞が報道なさるのは、新聞はごりっぱだと思うのです。だけれども、新聞にまでまたそういうことの端緒まで漏らしてしまうというところが問題ではございませんか。総理、いかがでしょうか。
  331. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今回の宮永事件の捜査の端緒は、いまお話しのようなことではございません。昨年の秋ごろにアメリカに亡命しましたソ連の通信機関の記者がございますけれども、それのアメリカにおける調べの結果によって判明をして警察が捜査に入ったということはございません。これは亡命の時期が秋でございます、私どもが内偵捜査に入ったのは去年の四月でございますから。
  332. 塚本三郎

    塚本委員 うまく逃げておりますけれども、もう新聞に全部すっぱ抜かれておるのですよ、長官。そういうものを警察の中でマスコミに流したことが問題だといって、アメリカでは怒っているのですよ。アメリカで怒っている記事までちゃんと新聞に出ているじゃありませんか、公安委員長
  333. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 捜査はあくまでも事実に基づいて証拠を一つ一つ固めていくわけでございまして、新聞にどのような記事が出ておったのか、あなたがお読みになっているものがどういうものか知りませんけれども、事実は私が申し上げておるとおりでございます。
  334. 塚本三郎

    塚本委員 防衛庁長官、SS20に対する対処の方法について御説明いただきたい。
  335. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 これは防衛局長から答弁をさせます。
  336. 田村元

    田村委員長 原防衛局長
  337. 塚本三郎

    塚本委員 こんな大事な問題を局長に答えさせるなんて、ちょっと委員長……。
  338. 原徹

    ○原政府委員 SS20というのは中距離のミサイルで、核を持ち得るものでございます。そういたしますと、これはわが国独自で対処できるものではなくて、結局、これはアメリカの核抑止力に依存してそれを未然に抑上する、それ以外には道はないわけでございます。
  339. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、きょうの新聞を見ますると、有事の場合には三海峡の封鎖ということの要請がアメリカからあったというふうな記事が出ております。きちっとした要請がなくても、日本としては、津軽、宗谷、対馬三海峡は日本の領海内でありまするから当然守らなければならないというふうな当局の認識のようであります。一体、本当に三海峡がどうして守れるのか。機雷や魚雷の問題等は相当な時間等がかかると承知いたしておりますが、長官、どうでしょうか。
  340. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 これは重大な問題でございまするので、技術的な点もございますし、種々なる関係上、防衛局長から答弁をさせます。
  341. 塚本三郎

    塚本委員 三軍の司令官であるところの長官がこういうような状態で……(「長官が答えろ」と呼びその他発言する者あり)
  342. 田村元

    田村委員長 塚本君、いまのは相当高度な技術論でございましょうから、防衛局長からでいかがでしょうか。原防衛局長
  343. 原徹

    ○原政府委員 三海峡につきまして、いまのお話でございます。海上自衛隊は三海峡を含む周辺海域において行動することはもちろんでございまして、そのためにいろいろのことを考えております。いまの機雷とか魚雷、確かに海上自衛隊につきましては、即応性という見地で機雷とか魚雷の整備が不十分であるということも認識しておりますので、その点を十分考えて現在整備を進めつつある、こういうことでございます。
  344. 塚本三郎

    塚本委員 委員長、お聞きのとおり。私、まだたくさんいわゆる中身についてお聞きしたいと思っておりましたけれども、全部防衛庁長官は事務当局にお任せになって、そうして責任問題も一つも解決しないままこんな状態になってきております。私は、長官自身の人柄や欠点を責めるつもりはありません。ごりっぱな方です。しかし、事日本の防衛のいわゆる最高責任者がこんな状態では、国民は不安です。私は自衛隊は必要だと思っているのです。安保条約も民社党は必要だと思っているのです。その場合てきぱきと先頭に立って防衛の問題を解決して、こたえていただかなければならぬと思うのです。そういうときに、全然そういう答えができないだけではなく、スパイに対する政治責任もあいまいなまま、このまま続けるわけにはいかぬと思うのです。この際は、ほおかぶりでなくして、私は、辞職の要求というよりもおやめになることをお勧めして、自発的に辞意を申し出られたらどうでしょうか。先ほど公明党さんのおっしゃったようなそういうような立場で、私もこの際は辞任要求じゃなくて辞職の勧告をしたいと思いますが、いかがでしょうか。長官どうですか、決意を述べてください。
  345. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 私は、いまの自衛隊の現状を顧みましたときに、再びその職にとどまりまして、あくまでも国民の負託にこたえられますよう私といたしましてはその責任を果たす覚悟でございます。
  346. 塚本三郎

    塚本委員 お答えになれないのでしょう。担当者に答えさせます、答えさせますと言って、私これからどれだけ出しても全部そういう形になっていくのです。これでは困るのです。ですから(発言する者あり)やってみよと言ってみても、いままでこんな状態でしょうが。この際、私の党から辞任の勧告をいたしますが、委員長いかがでしょう、お取り計らいいただきたいと思います。
  347. 田村元

    田村委員長 これは委員長が取り計らう問題でもなさそうでございますので……。
  348. 塚本三郎

    塚本委員 では総理大臣いかがでしょうか。
  349. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 久保田防衛庁長官といたしましては、その責任を果たす方法として、いま申しましたように、部内の機密保持の総点検と事態の解明を急ぐということによってこの再発防止に全力を挙げたいと申し上げておるわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  350. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。それでは政治責任はどういうふうに決着をつけられるか、もう一遍答えていただきたいと思います。
  351. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政治責任は、私と久保田さんと二人が負うべきものと思います。この問題につきましては、とりあえず政治責任としては、いま申しましたような保持の体制を総点検するということ、捜査当局に協力いたしまして全貌の解明に努めるということがとりあえず責任を果たすゆえんであろうと考えておりまするけれども、全貌の解明を通じまして政治責任をどのように判断したらいいか、これはこの解明の進展を待って、重要な問題でございますから判断させていただきたいと思っております。
  352. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、全容解明までどれだけの時間がかかりますか、およそのめどを言ってください。
  353. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ほぼ全容がつかみ得る段階でございまして、いま、まだ警察当局から報告を受けておりませんけれども、私が判断するに足るだけの材料を掌握できる時期と御了承いただきたいと思います。
  354. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、それまでの間はああいう形で、お気の毒ですけれども恥をさらすような形で、ここへおいでになっては事務方の方にばかりやらす、陸海空の責任者、国防の最高責任者が、ああいう形のままでずっと、ここで一言発言しては全部事務方に任せる体制を総理、おとりになっていいのですか。
  355. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 防衛問題というのは大きな方針もございますし、大変技術的な問題もございます。問題によりまして事務当局に御答弁をお願いするというケースは多いことと思いますので、そのあたりは御理解をいただきたいと思います。
  356. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、もう一度お尋ねしましょう。  スイング計画によって、極東のアメリカ艦隊、NATOからもペルシャ湾やインド洋に集結します。そうしますると、極東におけるところのアメリカのプレゼンス、存在が薄められるという状態になりつつあります。そのときに、跡をどういうふうに埋めるかということについて長官からお答えいただきたい。
  357. 久保田円次

    ○久保田国務大臣 米国は、わが国に対する防衛約束を繰り返し明確に表明してきております。いわゆるスイング戦略によってわが国の防衛に支障が生じるとは考えておりません。
  358. 塚本三郎

    塚本委員 こういう答弁ですよ。空になってあいてしまうから充実をしてくださいと言ってきているのでしょう。私がことしの正月を越えてからわざわざアメリカの国防省に行きまして、クレーター副長官やあるいはピンクニー極東部長に会ったときも、そういう意向をはっきりと、われわれは油を守るためにペルシャ湾やインド洋を守らなければなりません、これはアメリカだけではなく日本のエネルギーのためにも共通の問題です、だからそのあいたところをどうしてくださるか、日本はやはり自分のことだから、日本及び周辺における防衛力を強化してくださいということをはっきりと副長官は私に言ったのですよ。それは私たちはイエス、ノーとも答えられる立場じゃありません。政府も言っているでしょう。だからこそ、きょうもそういう新聞記事が各社一斉に出ているでしょう。ああいう答弁で、守ってくれると思いますというような原稿を読んで一体いいのですか。  どうでしょうか。こういう状態なんです。まだ幾つか質問申し上げようと思っています。(発言する者あり)せよと言う話もありますけれども、痛々しいじゃございませんか。一億の国民におけるところの防衛の最高司令官を、こういう姿でいつまでも総理、たなざらしにしておいでになりますか。
  359. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 久保田君を初め、政府として全力を挙げて御答弁申し上げます。
  360. 塚本三郎

    塚本委員 御答弁申し上げますと言ったって、きのうの原稿をいま読んだというような感じでしょう。アメリカは、こちらの部隊を中東へ持っていくから、手がすくから、日本に対してあとは穴埋めのためにしてくださいと言い、それも必要であろう、しかし、それならば相当のお金がこれから要りますよ、それが困ったことだと思っておるということまで一斉にきょうは各紙に出ているでしょう。それを、守ってくれると思いますなどという答弁を私が聞かされて、そうでございますかと言って黙って下がれますか。一生懸命答弁していただくということじゃないのですよ。どうするかということは、長官みずからが責任者となって計画を推進させるということでなければならないにもかかわらず、守ってくださるなんてことだったら、日本の防衛庁の長官じゃないじゃありませんか。総理、いつまでもこんなところでお気の毒にたなざらしにしておきなさるな。やはりはっきりとこの際、日本の防衛というのは大切なんだ、先頭に立って、だれが何と言おうとも、一応国民だけは安心しておきなさいとおっしゃるのが総理大臣の務めじゃありませんか。一生懸命答えさせます——私は法律論を申し上げておるのじゃないのです。これは困ったことだ、こういう心配なのです。総理、お答えいただきたい。
  361. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政治責任の問題と、それから防衛庁長官として責任をどう果たすかという問題でございますが、精いっぱい、いま申しましたような精神でやってまいるということでございますので、その意思は御理解をいただきたいと思うのでございます。国会の審議でございまするから、御審議に御迷惑をかけてはなりませんので、これは政府全体を挙げて全力を尽くしますから、その点は御了承をいただきます。
  362. 塚本三郎

    塚本委員 時間が参りましたから、残念でございますが、私は政治責任だけで潔くおやめになった方が御本人のためにごりっぱだと思いました。しかし、答弁能力までここでさらけ出しておやめなさることは、自衛隊にとって痛々しい限りであります。だから、民社党としては一刻も早くおやめになることを強く総理に勧告をさせていただいて、私の質問を終わります。(拍手)
  363. 田村元

    田村委員長 これにて塚本君の質議は終了いたしました。  次回は、明二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会